衆議院

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第11号 平成18年3月10日(金曜日)

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平成十八年三月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中谷  元君

   理事 佐藤  勉君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 後藤  斎君

   理事 渡辺  周君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    石破  茂君

      岡部 英明君    奥野 信亮君

      上川 陽子君    木挽  司君

      近藤 基彦君    桜井 郁三君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    土屋 正忠君

      土井  亨君    永岡 桂子君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 良彦君    松本 洋平君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      安住  淳君    泉  健太君

      田嶋  要君    寺田  学君

      仲野 博子君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    横光 克彦君

      富田 茂之君    古屋 範子君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   総務大臣政務官      古屋 範子君

   参考人

   (日本放送協会会長)   橋本 元一君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟会長)         日枝  久君

   参考人

   (東京大学名誉教授)   齊藤 忠夫君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  谷本 龍哉君     近藤 基彦君

  福田 良彦君     松本 洋平君

  逢坂 誠二君     泉  健太君

  田嶋  要君     仲野 博子君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     谷本 龍哉君

  松本 洋平君     福田 良彦君

  泉  健太君     逢坂 誠二君

  仲野 博子君     田嶋  要君

    ―――――――――――――

三月七日

 通勤の範囲の改定等のための国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

三月七日

 三位一体の改革に伴う地方公共団体の財政への影響及びその調整に関する予備的調査要請書(中川正春君外五十名提出、平成十八年衆予調第一号)

は本委員会に送付された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 情報通信及び電波に関する件(情報、通信及び放送のあり方)


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     ――――◇―――――

中谷委員長 これより会議を開きます。

 情報通信及び電波に関する件、特に情報、通信及び放送のあり方について調査を進めます。

 本日は、参考人として、日本放送協会会長橋本元一君、社団法人日本民間放送連盟会長日枝久君及び東京大学名誉教授齊藤忠夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、橋本参考人、お願いいたします。

橋本参考人 NHK会長橋本元一でございます。おはようございます。本日は、発言の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 お手元にNHKの十八年度から二十年度にかけての三カ年計画というペーパー、資料をお配りしていますが、きょうは、これを直接御説明ということではなくて、この中に込めました私の思いといいますか、こういうところをお話しさせていただきたいと思います。

 メディアの世界は、今、デジタル技術の進歩に伴う通信と放送の融合という中で、大変大きな変革期にあるというふうに受けとめております。八十年の長い歴史を持つNHKとしましても転機を迎えているというふうに考えております。

 この状況下、一昨年夏の不祥事発覚以来、受信料の支払い拒否が拡大しまして、NHKは視聴者の信頼回復に積極的に取り組んでまいりました。視聴者の回復第一ということでございます。ことしに入りまして、不祥事をきっかけとしましたこの受信料の不払いの累計というものは減少に転じてございます。支払いを再開してくださる方がふえたということでございます。受信料制度によって成り立つNHK、公共放送NHKとして、視聴者の信頼と支持、これが基本だ、これなくしては存在することができないということでございます。受信料の支払い再開がふえてきたという実感の中で、やはり視聴者からの信頼、支持、これが唯一、不可欠の基盤だと改めて確信したわけでありますから、この上に立って、組織と業務の今後の改革をたゆまず進めるとともに、NHKの今後を考えてまいりたいというふうに思っております。

 公共的役割ということについて述べさせていただきます。

 公共放送NHKの業務目的というものは、放送法の中で、具体的に言いますと九条という中で規定されておりますけれども、具体的な果たし方というものは、やはり社会の変化とともに、時代の変化とともに変わっていこうかと思っております。私は、このNHKを考える場合には、変えなければならないものと変えてはいけないものとあろうというふうに考えております。変えてはいけないもの、これはやはり公共放送の理念だと考えております。大変厳しい状況のもと、NHKが改めて確認したことは、この公共放送の原点に立ち返るということでございます。この原点というのは、やはり放送法の中にもありますが、あまねく視聴者第一主義だということだと考えております。多様な視聴者に対して、頼りになる情報を分け隔てなくできるだけ安く提供していく、これが原点だと考えております。

 多少詳しく申し上げますと、まず、信頼できる情報を提供するという役割があると思います。特に、災害情報などを提供する場合、国民の生命財産を守るという大切な、重要な役割があります。言うまでもありません。もちろん、NHKは自主自律、公平で公正な放送を出していくということでございます。

 その上で、受信料という税金でも広告料でもない財源に基づきまして番組の多様性を確保していくということが必要だと考えておりますし、受信料で成り立つNHKは、一部の人だけを対象とするのでなく、多様な考えをお持ちになっています国民・視聴者を対象としまして、質の高い番組を一本でも多く放送していくということが必要だと考えております。生活の役に立ち、心が豊かになるような番組が必要かと思います。NHKと民放がそれぞれ強みを発揮しまして、ちょうど共鳴し合うように放送界全体の質を高めていくということが、日本全体の国民力の向上、あるいは文化の向上に寄与できる方法ではないかというふうに考えております。

 また、この多様性を確保するためには、それ相応の規模、範囲、こういうものも必要になると考えております。特に、今後、通信と放送の連携によりまして情報の流通が一層盛んになる時代を迎えます。こういう中で、情報量が飛躍的に拡大していきます。これまで以上に確かな情報というものが求められてくるのではなかろうかというふうに考えております。

 また、NHKは情報の格差の解消にも努めていきたい。視聴者の皆様の身体的ハンディキャップあるいは地理的なハンディキャップなどの情報格差、あるいは、新たな課題となっているデジタルデバイドといいますか、こういうものについても解消のお手伝いをしてまいりたいというふうに考えております。

 さらに、地域に密着した放送ということであります。視聴者に密着、あるいは地域に密着した放送の充実に努めまして、それぞれの地域の視聴者に共助の精神を培うきめ細かな情報を提供する必要があると考えておりますし、この考え方は日本全体にも敷衍できることだと思っております。

 放送法で必須業務とされている国際放送につきましては、国際社会に円滑な相互理解を築く上でますます重要だと考えておりますが、NHKは、世界各国の外国人向けの放送とともに、在留邦人向けの放送も行っております。今後、受信料を財源に英語化率を高める方法で国際放送を強化してまいります。

 それ以上の強化策ということにつきましては、具体的な内容によって、国内で集めた受信料をどこまで使っていいのか、どういう範囲までだったら視聴者の御理解が得られるかということの、視聴者のコンセンサスが必要になってこようかというふうに思っております。

 また、必須業務として、放送技術の研究開発ということも取り組んでおります。NHKの放送技術研究所の研究成果は、直接、放送サービスの充実に充てるほか、社会に還元することを考えております。医療応用とか産業応用等、広く貢献してまいりたいと思います。

 また、経営改革、業務改善ということであります。これも、社会の変化に合わせて、変えるべきものは変えるということで、経営情報の公開を進めるほか、視聴者の意向をしっかりと受けとめて経営や番組づくりに生かすフィードバックシステムを整えてまいりたいと思います。また、透明性の高い経営に変えてまいりたいと思います。

 また、今後、人々がパーソナルの端末を使いましてデジタル化した通信・放送の恩恵を受ける、いわゆるユビキタス時代に入るわけでありますが、個人個人の国民・視聴者のニーズにきめ細かに対応してまいらなければいけないと思っています。そのために、まず、二〇一一年、地上デジタルを完成し、今後の普及に全力を挙げたい、また、その上で、通信と放送が連携した新たなサービスを展開したいと考えております。

 新しいサービスとして、携帯端末向けのワンセグサービスというサービスを四月一日から始めます。また、今後、従来型放送とIP網が連動したサーバー型放送サービスというものも開発、実用化されてくるということであります。こういうものに対してもサービスを考えていきたい。

 また、NHKが八十年間の歴史の中で培ってまいりました質の高い番組ソフト、こういうものもアーカイブとして蓄積してまいりました。インターネットが当たり前の時代に、このアーカイブの活用ができるのではないかというふうに考えております。

 こういう新しい時代を考えるにつきましては、いろいろ、国家的視点で解決しなければならない権利処理の問題、法制度上の問題がございます。こういうものも、NHKだけではできないこともございますが、ぜひ今後、御議論をいただければと思います。

 こういう完全デジタル時代に向けて、NHKも一種の社会システムとしてお役に立っていきたいと思いますので、ぜひ御支援のほどをいただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

中谷委員長 ありがとうございました。

 次に、日本民間放送連盟会長の日枝参考人から御意見を伺います。日枝さん、よろしくお願いいたします。

日枝参考人 おはようございます。

 本日は、こういう機会に私の参考人としての意見を陳述させていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、十分程度、民間放送連盟が抱えている当面の課題というか問題点について俯瞰的に申し上げたいと思います。

 先ほどNHK会長からもお話がございましたように、放送界は、民間放送は五十年という大きな歴史の流れの中にあるわけですが、全くこれまでに経験したことのないような激動の中にあると言っても過言ではないと私は思っております。

 小泉総理が二〇〇四年の施政方針演説で述べられておりますように、地上波放送のデジタル化を国策として二〇一一年七月までに完成させるという強い意思を述べられましたが、私ども民間放送といたしましても、この基本線に沿って、鋭意、全国的に現在この地上波デジタルを推進しているところでございます。

 今申し上げましたように、地上波デジタルというのは、これまで五十年やってきたアナログ放送から放送秩序が大きく変わることでございますし、昨今言われております放送と通信の、私は連携と申しまして、融合という言葉はどうもなじみませんものですから、申しわけございませんが連携というふうに申し上げますが、放送と通信の連携という非常に大きな秩序の変化が今起こっているというふうに思っております。それにどう対応していくかというのが一番大きな民間放送の抱える課題でございます。

 連携に向けましても、言葉は簡単でございますが、いろいろな問題を、制度、物の考え方、それから秩序、法律、いろいろなものを変えていかないと、簡単には連携がいかないというふうに私は思っているわけでございます。と申しますのは、放送と通信の役割が違うからだと私は思っているからでございます。端末を見ますと放送と通信から送られてくる映像は同じように見えても、役割が違うものであるということを我々は認識しておく必要があるだろうというふうに思います。

 したがいまして、それをちゃんと国民の皆様にうまい形で、放送と通信がうまい連携をとりながらサービスが行われるようにするためには、いろいろな問題を解決する必要がある。例えば、放送なのか通信なのかという著作権上の問題も、今、当面起こってきておりまして、いろいろな著作権の団体あるいは民間放送あるいはNHKさんも含めて、これらの問題を検討している最中でございます。

 それから、放送が持っている地域性、多様性、これをどういうふうに考えていくか、これも、法律の問題、秩序の問題、そういう問題も解決していかなければならないんだろう。したがいまして私は融合という言葉よりも連携という言葉がいいというふうに申し上げたわけでございまして、放送と通信は、それぞれの特徴を生かしながら、国民の役に立つ連携サービスを実現することが必要であろう。そして何よりも、そこの中で一番大事なのは、単なる産業論、経済合理性ばかりではなく、文化という視点も決して忘れてはならないというふうに思っている次第でございます。

 また、放送が果たすべき役割でございますが、放送はエンターテインメントとジャーナリズムという大きな二本の柱がございますが、放送には、教育、教養、娯楽、報道という調和原則というのが義務づけられております。これは通信にはない役割でございますが、こうした問題をこれからもし変えるんだったらどうしていくのかという問題もございます。

 それから、放送の役割の中の大きな使命として、国民の生命財産を守り、国民の知る権利にこたえて民主主義の健全な発展に役立つという大きな使命もございますし、防災のときの国の安全保障上の問題も大きく我々に義務として課せられているところでございます。

 それから、先ほどちょっと放送の地域性ということを申し上げましたが、地域情報の発信や地域経済の発展にローカル放送が果たしている役割が大変大きいということも、皆様方にぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。

 BSあるいはCSというのは全国一律に放送が行われますけれども、基幹放送である地上波放送までこの全国一律で果たしていいんだろうか、全部そういうふうにしちゃっていいんだろうか。今の基幹放送である地上波はローカル的な放送の自主性も認められているという中で、この辺の調和をもし全国一律にしちゃった場合にどうなるのかという問題も残っているような気がするわけでございます。

 それで、先ほど申しましたデジタル化でございますけれども、二〇一一年七月までに行うようにしておりますが、二〇〇三年の十二月に、東京、大阪、名古屋、首都圏で既にもうフルパワーに近い形で放送しておりますし、そこの中で、先ほどNHK会長がお話しのように、ワンセグという新しい放送の使い方、携帯用の電話で、ユビキタス社会の先陣を切るようなワンセグという新しいサービスが実現できておりますが、これらの首都圏だけでこういうサービスが行われるのでは情報格差があるわけでございまして、ことしから随時全国でデジタル化が行われていくということでございます。

 今日現在では、大体九〇%ぐらいが自主的な放送事業者の努力によって行われますが、僻地とか、デジタル化するのが非常に難しいところをどうしていこうかという中で、衛星を使うのはどうかとか、あるいはIPマルチキャストを使うのはどうかとか、ギャップフィラーを使ったらどうかとかいろいろ、現在、行政あるいは各社とも相談しながら、情報格差があってはならない、広くあまねく全国民にデジタル化の波を共有してもらおうということを考えているわけでございます。

 最後に、私どもが一番心に銘じなければいけないのは、国民の信頼の上に成り立っているのが放送であるということを常に肝に銘じなければいけないというふうに考えておりまして、財源と制度を異にする民間放送とNHKの二元体制によって我々は我が国の放送文化をこれまで築き、最も身近なメディアとして発展してきたということは間違いないと私は思っております。NHKには、公共放送の原点に立って、民間放送と切磋琢磨しながら、共存共栄して放送文化の発展に寄与していただきたいということを民間放送からも期待する次第でございます。我々放送事業者は、放送に当たって、常に謙虚に、みずからを律しつつ、今申し上げたような放送文化の向上のために貢献していかなければならないというふうに思う次第でございます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

中谷委員長 ありがとうございました。

 次に、東京大学名誉教授の齊藤参考人から御意見を伺います。齊藤さん、お願いいたします。

齊藤参考人 齊藤忠夫と申します。

 きょうは、衆議院総務委員会において、放送・通信に関連して意見を述べさせていただくということで、御礼申し上げたいと存じます。

 私は、もともと、東京大学で通信工学を教えていたエンジニアでございます。通信における技術の発展をどのように社会に結びつけ国民のものにしていくかということに関して、総務省の審議会、その他を通していろいろお手伝いをさせていただいたということでございますが、放送と通信の連携、融合ということに当たって、いかにフェアな競争を保ちつつ、技術の進展を国民が享受できるようにしていくかということについて、一言述べさせていただきたいと存じます。

 申すまでもございませんが、技術の進展は時間軸上での進展でございます。一九六〇年ごろから急激に電子技術が発展してきたということでございまして、エレクトロニクスのコストパフォーマンスと申しますか、性能当たりのコストは、一九六〇年ぐらいから今日までにほぼ十億倍に達した。同じ値段で十億倍のものが買えるようになったということでございます。これによって、それ以前極めて困難であったことがたくさんできるようになってきたということでございます。

 きょうの話題のことでいうと、ネットワークのブロードバンド化というのはその代表的な成果でございます。現在、各種の方法を通して、ブロードバンド加入者は日本では二千万というふうに言われておりますが、これは総合的な性能、価格を含めて世界一の状況になっているわけでございまして、これは、こちらの委員会の適切な通信政策上の御指導があったからである、日本の通信政策の勝利であるというふうに申し上げてよろしいと思います。

 問題は、これをいかに次に続けていくかということであります。世界一になったからそこで安心しているのではなくて、それをどのようにその次につなげていくかということについていろいろ御議論になっていらっしゃるということで、深く敬意を表したいと存じます。

 現在、インターネットの通信容量というのは、皆さんが使っていらっしゃる容量ということでございますが、電話でお話しになる通信量の、昨年の五月の段階で電話の二十五倍でございます。一九九九年ぐらいに電話の通信量とインターネットの通信量はほぼ等しかったというふうに推定されておりますが、インターネットの通信量は毎年ほぼ二倍増加しているわけでございます。

 今、放送のオールデジタル化ということが言われております。二〇一一年にはすべてのアナログの放送はデジタルに変わるということでございますが、そのころにはインターネットの容量は電話に比べて千倍になるというふうに推定されています。これだけの容量があれば、ネットを通して現在のテレビに相当するものを日常的に送ることもできるようになる。

 しかし、そのときには、よりコスト優位性のある電波のほかにもう一つ同様の容量を持つネットワークができるということでありまして、それの両方をどのように活用して連携させながら日本の全体の発展を図っていくのかということが、世界最大のブロードバンド国となった日本の、これから数年かけて実現していかなければならないことではないかというふうに思います。

 しかし、それもすべて時間軸上のことでありまして、そのとき、どのようなビジネスをやったらこれが成立するかということについて確定したものがあるわけではありません。これは世界一になったということの宿命でありまして、模範にするものがないということであります。これから五年間、いろいろなことを皆さんで知恵を出しながらやっていく、試行していく、そういうことができるようにすることが非常に重要であります。それには、新しいトライアルの障害になっているようなことがもしあれば、それは取り除いていただくということが非常に重要ではないかと思います。

 そういう問題の中で、技術的な発展は恐らく間違いなく来るわけであります。適切なマーケットを形成していかなければ、今申しましたような千倍になるというような発展も期待できない。これは技術だけでできるものではなくて、技術がマーケットをとらえ、それに対して適切な投資をなさる方がおられるということが、すべての発展の前提でございます。現在まではそれがうまく回転していた。どのようにそれを回転させていくかということでございます。

 それと同時に、今まで、通信も放送も社会の文化の基礎であったわけでございます。通信は、例えば電話でいえば、電話機の形をしていれば基本的にはどこでもつなげるということがございました。そういった相互接続性、相互活用ができるということが重要でございます。放送においても、受信機があればどのような放送でも受信できるということでございます。それぞれに皆さん自由になさっていてもそれが実現できる、そういう不都合の生じないということとは違う、相互接続性、相互活用性ということが、放送も含めてネットワーク型の技術にとって非常に重要な問題でございます。どのように秩序を保っていくのかということが大事でございます。

 それとともに、通信でも放送でも、それが果たしてきた社会的なインフラストラクチャーとしての役割、放送を通して見れば多くの信頼できる情報が得られるということもございますし、多くの国民が同じ情報をシェアすることによって共感を持つことができるということもございます。そういう社会の基本的な文化のもととしての性質をどのように変化の中で維持していくのかということも重要なのではないかというふうに思います。

 また、技術開発におきましては、日本のIT技術はアメリカに依存するところが多いということもいろいろ言われるわけでございますが、例えば、放送においては、現在のハイビジョンの技術というのはNHK技研が過去三十年にわたって積み重ねてきた結果である。日本には、それを利用して、たくさんの機器製造会社が存在するわけであります。非常にたくさんございますので、メーカーさんの間で標準をつくることが大変難しくなっているというのが一面の問題であります。

 アメリカのような国へ行きますと、同じようなものをつくる会社は大変数が少ないわけでございまして、そういう場合には、ベンチャー的なものも含めて、自分のいっている標準をそのまま国内の標準にするということが比較的抵抗がないわけでございます。そのかわり、独占的な供給というものでマーケットをとることはありますが、競争的な供給になると大変難しいことが生じてくる、たくさん生じております。

 日本では、たくさんのメーカーさんが競争しながら、現在の放送の場合でいうと、NHKさんの先行的な研究ということで、両方生かしながら、世界の放送機器市場における大きな存在を持つようになっている、大きな産業のもとになっている。これもNHKさんの社会還元の一つではないかというふうに思う次第でございます。

 今後、こうした技術の発展とそれを支える競争の促進、さらに社会文化の安定な発展、この中には矛盾する要素もあるわけでございますが、そういうことを全体でとらえながら、どのようにブロードバンド大国としてのその次の地位を保っていくかということが、現在の放送・通信政策に課せられている課題ではないかというふうに存ずる次第でございます。

 そういうことに向けて、技術の進展、社会の安定、文化の発展、これを両立していくための知恵が求められているということではないかと思います。それは、現在の技術の発展が急速である、四十五年で十億倍というふうに申しましたが、今後ともその調子の発展は続くわけでございます。そういう中でどのようにそれを進めていくか、これが成功するかどうかが日本の二十一世紀の成功のかぎになっているというふうに思います。

 こういった問題は世界じゅうで皆さん知恵を絞っているところであります。世界に負けない知恵が日本の通信政策の中で出てくることをぜひお願いして、私の最初の話にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

中谷委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより参考人の方々に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。やまぎわ大志郎君。

やまぎわ委員 自由民主党のやまぎわ大志郎です。本当に貴重なお話をありがとうございました。

 本当に、今お話しいただいたとおりに、放送界全体に大きな変革期が来ている、また非常に激動の時代だ、あるいはまた四十五年間で十億倍という話がございましたけれども、物すごいスピードでそれが起きているということを実感いたしました。

 日枝会長の言葉をかりると、通信と放送の連携ということでございますけれども、これについては、恐らくきょうのメーンのテーマにもなろうかと思いますが、これから続く質問をされる方々に譲りまして、私が常々放送について少し思っていることがございますので、その点についてまずお伺いをしてみたいと思います。

 お二方から、放送の役割というものについて少しお話がございました。特に、放送の中に民間放送とNHKというものの二元体制を維持するのが望ましいというお話が、両会長からもございました。私も、実はこのお二人の御意見には賛同する者の一人でございますが、しかし、二元体制でいくということは、やはりそれぞれにそれぞれの役割がはっきりとあって初めて二元体制というものが維持される意味があろうと私は思うんです。両者が同じようなことをやっているんだったら、何も二元体制でいく必要はないわけですね。

 そうすると、おのおのには何が求められているんだろうかということをおのずと考えなくてはいけなくて、これは、私なりに理解するに、やはり民間放送というものは商業ベースに乗って、それこそ、楽しくなければテレビじゃないという標語があるとおりに、娯楽性がより強いものになってくるんだろう。これも国民にとっては非常に大切なことで、私は絶対に欠くべからざるものだと思うんですね。一方では、NHKには、お話しにあったとおりに、公共放送としての役割というものが第一義的にあるんだろうというふうに思うんですね。しかし、だとすると、民間放送には例えばジャーナリズムというものが必要だというお話もございましたけれども、報道というものを考えたときに、どうしてもひっかかってくる部分が私はあろうと思います。

 実は、そんな勉強も党の中でもやってきていたんですけれども、もう私が説明するまでもありませんが、放送法の中に、第三条の二というものを持ってきましたが、いわゆるフェアネスドクトリンというものが日本の放送法の中にはあるわけですね。例えば「政治的に公平であること」とか「報道は事実をまげないですること」なんというのも書かれていますし、また、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などというふうに書かれております。

 これは、ちょっと聞くと、ああそうだな、そのとおりだなと思うんですけれども、私は、実は、絶対的な基準というものが存在しないということに、何か非常に矛盾をはらんでいるような気がするんです。何が公平で、何が事実で、何が多角的な議論になるのかということは、絶対的な基準というのはやはりあり得ないだろうと思うんですね。

 こんな例を言うと怒られるかもしれませんけれども、よく、ニュース等々を見ているときに、事実をねじ曲げてはいませんけれども、事実が正しく国民に対して印象として与えられているか甚だ疑問だなんという話がよく出ると思うんですね。

 こんな例はどうかわかりませんが、例えば象という動物をイメージしたときに、私だったら、大きな耳があって長い鼻のあるすごく大きな動物を象だというふうにイメージします。しかし、仮にそれが、テレビの画面を通じて映ってくるときに、象のしっぽの部分が映ってきたとしたらどうでしょうか。それは、確かに象を映しているんですよ。だから事実は曲げていないんです。象を映しているのは間違いない。だけれども、それを見た人からは、象というものをイメージするときに本来大体の人がイメージするものと違ったものとして受けとめられるということは往々にしてあろうと思います。

 ですから、ここの部分に関しては、やはり今、私は、国民の皆さんがかなり誤解をされている部分が残念ながらある、そのように思っておりまして、そして、その誤解の大もとになっているのが実は放送法じゃないかなと思っているんですね。

 放送法の中に、もともと、報道に関してのところでしょうけれども、これは公平でなくてはいけないとか、中立じゃなきゃいけないとかというニュアンスのものがたくさん書き込まれているだけに、テレビから映ってくるものに関しては客観的な事実なんだろうという誤解を国民の皆さんがどうも持っているような気がしてならないのです。

 ですから、国民の皆さんが、実はテレビから映ってくるものは生の情報ではないんだということをきちっと認識した上でテレビそのものを見ていくということは決定的に重要だろう。こういう意識を変えるために、放送法の中にあるフェアネスドクトリンと言われるようなものはこの際全部削ってしまって、そして、各社、自分たちの主張というものをきちっと生の情報に乗せて、それでそれを国民の皆さんに提供するということの方が、うそがないというか、国民にとってずっとわかりやすいんじゃないかなと思うんです。

 しかし、そうなったときに、では生の情報というのは一体何なんだろう、基本的な情報というのは一体何だろうと考えたときに、私は、NHKの存在意義というのがそこにあろうと思います。要は、脚色をしていない生の基本的な情報というものを、公共放送と呼ばれるNHKが、余り無味乾燥でおもしろくないものかもしれないけれども、きちっとこれを提供していくということがいいんではないかなと思っているんですが、その点につきまして、両会長、橋本会長と日枝会長から御意見を賜りたいと思います。

橋本参考人 お答えの前に、一つ訂正させていただきたいことがございます。

 先ほど私のスピーチの中であまねくという言葉を使いました。これが放送法の九条にあるかのように申し上げましたけれども、九条は業務の範囲を規定するものでありまして、あまねくという言葉自体は七条にございますので、訂正させていただきたいと思います。

 お答えさせていただきますが、日ごろから、NHKはとにかく、できるだけ生、忠実に事実をお伝えするということを心がけておりますし、これからもそこのところに公共的な役割があろうというふうに考えて、今後もそういう姿勢で取り組んでまいりたいと考えております。

日枝参考人 お答え申し上げます。

 今、放送法三条はなくてもいいんじゃないかというお話がございました。公正公平なジャーナリズムはNHKに任せればいいじゃないかという趣旨かもしれませんが、やはり我々民間放送も、放送法三条を遵守して公正公平な報道をしていくということが国民に信頼されるテレビ局になるわけでございますから、これをなくしたら国民から遊離してしまう。そのために、我々は社内に番組審議会をつくったり、あるいは放送基準を民放連でもつくり、あるいは各社で、それぞれの中でそういうことのないように注意する基準をつくっているわけでございます。

 先ほど私のごあいさつの中で申し上げましたとおり、テレビ局というものが存在するには、国民の信頼があって初めて成立するということを申し上げましたけれども、まさにその点でございまして、事実でないことを報道する、偏向した報道をすれば必ず国民からの批判あるいは信頼を失うことになるわけでございまして、やはり自律自浄作用をしながら放送の質を高めるということが大事でございますし、それから同時に、それでも対応できないという問題については、現在、BPOという第三者機関がこれらについていろいろな問題を監視するということで、二重にも三重にも、今先生の御指摘の問題を直していこうという最中でございます。

やまぎわ委員 ありがとうございます。この点については、本当に議論を深めた上で結論を出していくものだろうと思いますので、今回こういう形でお話しさせていただきましたが、私たちの方でもこれは一生懸命勉強させていただきたいと思っております。

 それと、今のお話に絡みまして、やはり公共性を持つという話になりますと、一体コストはだれが見るべきなんだろうなと。基本的な情報を、それこそなるだけ多くの皆さんに分け隔てなく、そして安い値段で、できればただに近い値段で提供できれば最高なわけですから、その任をNHKが負っているんだとすると、私は、公共性が強まれば強まるほどそのコストも公の部分が持つのが筋なんじゃないかなという気がするんです。

 今は受信料という形でこれを国民の皆さんが負っているわけでございますけれども、いつも勉強会等々でお話を伺うと、私、これは税金にしたらどうかという話をするんですよ、そうするとお答えとして、模範的回答として返ってくるのは、やはり大本営発表のときの話というのが出るんですね。政治の管理下に放送というものが置かれると、情報が操作されたり政治的な圧力がかかって、これがよくないんだという話なんですね。

 しかし、これは、きょう民放連の会長さんも見えていますけれども、この世の中において、ましてやこれだけ通信と放送が連携するかなんという話をしているときに、間違ったまやかしの情報というものを流そうとしたって、それはほかがほっておかないと思うんですね。ですから、政治的な影響を受けると間違った情報が流されるかもしれない、そういう危惧は、受信料を収納するためにたくさんのお金がかかるというものと両てんびんにかけたときに、私は非常に軽いものだろうと思うんです。

 これからコストダウンというものを図っていこうとするときに、本当に受信料という形でそのコストを持っていくというのがいいのかな、これを非常に私疑問に思っておりまして、その点についてどうお考えか、これもまた両会長から、民放連の立場からも少しお話をいただければと思います。

橋本参考人 いろいろ具体的な例でお話しいただいたわけでありますけれども、やはり模範的な回答になってしまうんですが、現在、直接視聴者の方々から受信料という形でいただいているシステムをとっているという中で、やはり、税金でもない、広告料でもないという、直接視聴者からいただいているという性格がございます。しかし、問題はおっしゃられた収納コストの問題でありまして、この点は我々も、やはりここを何とかしないと、公共放送を守るということで言えば、問題意識、これは大変強く持っております。

 それで、収納コストを下げるための努力というのを、やはりこれから新しいITとかいろいろなシステムが使える時代になりますので、一方、社会システムとしてはオートロックマンションだとか、それから単身世帯がふえて面会がなかなかできないということがございます。そういう中で、そういう問題を抱えつつも、しかし、カード払いだとか、あるいは最近は携帯電話によるキャッシュサービスとか、こういうふうなものがございますし、いろいろICTを使ったような手法等もできるだけ効率的な手法を導入しますし、それから来年度からは、多少これまでと変わって、支払いに対する民事手続の活用、こういうふうなものもいろいろ工夫させていただきまして、より効率を高める、そこが大事だと考えていますので、これを地道に着実に努力させていただきたいというふうに考えております。

日枝参考人 橋本会長と同じく、基本的には模範回答になってしまうわけでございますが、国営にいたしますとやはり公平公正ということが侵食されるということは疑いのない事実だろうと思いますし、世界各国を見ても、全体主義の国の放送は国営でございます。民主主義の発展している国はそういうことはございません。そういうことから見ても、やはりそういう危惧は我々としては考えなければいけないのではないかというのが一点。

 それから、会長がおられますけれども、先ほど会長がおっしゃられておりましたけれども、不祥事から加入者が減ってきたということですが、まだ三千六百万世帯の方々が支持をしているという中で、NHKさんにはコストダウンをしながらいい運営をしていただいて、せっかくこれだけの方々が今の二元体制を支持してくれているわけですから、民主主義の健全な発展のためにも、国営ではなくて、受信料によって健全な運営がされることが日本の放送のためにも好ましいと私は思っております。

やまぎわ委員 明確なお答えをありがとうございました。またこれからの審議の材料にさせていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、最後に質問をさせていただきたいんですが、齊藤先生から技術の発展というものについてお話をいただきました。先日NHKの放送技術研究所も視察させていただきまして、本当に感動するぐらいに驚きました。日本の放送技術というものがいかに世界の最先端を行っているかということを目の前で見させていただいて、そしてそこでさまざまな説明をいただいて、幾つか考えることがございました。その中の一点に、現場を持っているから、あるいは現場ときちっとかかわる状況にあるからこの研究というものが実のあるものとしてできるんだというお話が説明の中にございました。私自身も、この職につく前は研究者をやっておりましたので、それはよくわかるんですね。やはり、フィールドを知らないで机の上だけで研究をやれと言ってもどだい無理な話でございまして、やはり今のあり方というのは正しいあり方なんだろうな、私自身はそう思っております。

 しかし、残念ながら、今国民の皆さんが、NHKの中に世界の最先端の技術を担う研究所がきちっとあって、広く社会に対して貢献をしているんだ、そういうことを知っている方は、私も知らなかったわけですが、そうそういらっしゃらないだろうと思うんです。

 これからは、やはり研究を行うことの重要性があると私は思いますが、そこについての御見解をお伺いしたいのと、やはり国民に対してそれを広く知らしめるという努力を私はするべきじゃないかなと思うんですが、その点についてどうお考えかということを橋本会長と齊藤先生からお伺いしたいと思います。

橋本参考人 NHKの技術研究所の成果に対して大変高い御評価をいただきまして、ありがとうございます。

 医療応用あるいは産業応用、いろいろなシチュエーションの中で、あるいは暗い中でよく見えるカメラなんかはこの前の中越地震の救助活動等も映し出したりとか、やはり、こういうふうな直接放送にかかわるもの以上に、また広がり、医療応用等もございます。そういう点で社会に広く貢献したいと思っております。

 ただ、残念なことに、先生おっしゃいますように、よく知られていないというところにつきましては、やはり反省すべき点だと思います。これからしっかりと、NHKの番組を通じ、あるいはいろいろな機会をとらえてこういうものは御紹介してまいりたいと考えております。

齊藤参考人 研究開発とフィールドとのかかわりについて大変いい御見解をいただきまして、全く同意でございます。

 研究というのは、いろいろなシーズから何かできるということを示す部分と、それから、それが現場にどのように使えるかということを開発していく部分と大きく二つに分かれると思いますが、特に後半の部分については、現場に密着した、その企業の将来戦略と密着した開発ということが非常に有効であるというふうに思います。大学の研究室にも、それから国立研究機関にもそれぞれの役割はあると思います。私の見ているところでは、現在のNHKの研究所は、そういう意味で現場とそれから技術シーズを結びつけるということで大変成功している、大きな実績を上げているというふうに考えます。それをどのように今後続けていくのか、それが国民に深く理解されるようにするということは御注意のとおりだと思います。そういう面で今後とも成果を上げていただくように、ぜひよろしくお願いしたいと存じます。

 ありがとうございました。

やまぎわ委員 まさにPRをするメディアでございますから、ぜひともPR活動をやっていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

中谷委員長 次に、田中良生君。

田中(良)委員 自由民主党の田中良生でございます。

 私は、ちょうど半年前の総選挙で初当選をさせていただきました。それまで民間の中小企業の経営をしておりました。自動車教習所ですとか、タクシー会社ですとか、織物事業をやっておりました。と同時に、新規の事業挑戦ということで、インターネットのプロバイダー事業ですとか、あるいはケーブルテレビの事業も経営をしておりました。ですから、デジタル化の推進、地デジ放送ですとか、そういう同時再送信、と同時に、NHKの集金の代行もやっておりましたので、そのような現場の見地も踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 NHKと放送の公共性、そして二元体制という部分について、まずお尋ねをさせていただきたいと思います。

 NHKには公共放送としての成り立ちと長い歴史があります。公共放送が担うべき役割といたしまして、市場原理に任せたのでは十分に達成できない、そのように考えられる多様で質のよい番組を供給すること、これが原則としてあります。NHKが公共放送としてのその責務を担い、運営のコストを受信料という形で得ているといったところから、民間が行う同様の事業を過度に圧迫するというその活動や、あるいは子会社との不透明な取引、子会社のNHKとの関係を背後にした過度の商業活動、利益追求活動、これに対して批判が集まるということもやはり当然のことである、そのように私も考えているところでございます。

 私は、今後の公共放送のあり方、役割などの分担の議論を離れて、民営化の議論や改革の議論、これはあり得ないことだ、そのように考えております。公共放送の事業体としてのNHKと、そしてまた、自由な運営を行う一般放送事業者、民間放送が役割を分担してきた放送の二元体制、この議論ですとか、あるいは規制改革・民間開放推進会議が唱えたNHK放送のスクランブル化、この是非について、橋本会長からどのようにお考えなのかお聞きしたい。

 そしてまた、こうした批判を踏まえて放送研究会報告に基づいて策定した、NHKのインターネット利用、子会社の業務範囲に関するガイドラインの妥当性などを踏まえまして、民放連としましては、NHKの業務、公共放送としてあるべき姿をどのように考えているのか、橋本会長そして日枝会長の方からお伺いしたいと思います。

橋本参考人 では、私の方からスクランブル化という点についてお答えさせていただきたいと思います。

 やはりスクランブルと申しますのは、限られた受信者に情報を届けるという限定的な方式でございます。もともとそういう性格のものです。それから、NHKの場合には、同報性といいますか、同時性、同報性という、できるだけ広範な方々に共通の情報を提供するという理念で、いわゆるあまねくという考え方もございますし、広く提供しろというふうなことが理念としてございます。

 この同時・同報性の考え方と限定性という考え方につきましては、ここをどういうふうに組み合わせて考えていくかというふうなことにつきましてはこれからまたいろいろな御議論が必要かと思いますが、やはりNHKとしては、受信料で行うという役割というのは、まず第一義的には同時・同報性というところにあろうかと考えております。したがって、スクランブルについては公共放送の役割になじまないのではないかと考えております。

日枝参考人 今、民放連を代表しまして、NHKとこの問題、どういうことかということでございますが、先ほども私が申し上げましたように、日本の放送はかなり世界でも先進的に進んでいる放送大国だと言っても間違いないと思います。これはやはり、NHKさんと民放がうまくすみ分けをしながら、共存共栄をしながら日本の放送文化というのをつくってきたということは間違いございません。

 それは、まず、民間放送は広告収入による財源によって行われてきている、NHKさんは受信料収入によって行われてきている。この二つによって今申し上げました二元体制ができて、放送先進国としての日本、世界に誇るべき放送立国だと私は思いますけれども、そういうことからしますと、やはりNHKさんのやられる業務というのは受信料収入の範囲内の中でぜひ完結していただきたい、それが二元体制を維持するために絶対必要であるという立場に立っているのが民間放送の立場でございます。

 結論を申し上げますと、このすばらしい二元体制を維持するためにもスクランブル化はいかがなものか、やはり受信料の範囲内の中で業務を行っていただきたいというふうに考える次第でございます。

田中(良)委員 ありがとうございます。

 次に移りまして、災害時における放送の役割等について御質問させていただきたいと思います。

 スマトラ沖の地震津波ですとか、新潟県の中越地震、あるいは福岡県の西方沖地震など、近年の自然災害、これを見ておりますと、災害の広がりをできる限り抑えて、そしてまた、人心を安定させるために、被災者への早急な情報伝達、これが必要なことは明らかなところであります。放送の公共性の重要性という部分が問われている、そういう部分でもあると思います。

 そして、この四月からワンセグ放送が開始されます。テレビつきの携帯電話ですとか画質のきれいな移動体向け放送が利用できるようになりますと、災害時における放送の有益性というのはますます高まってくるものと考えます。

 関東地方におきましても、首都直下の地震の切迫性、これなども指摘されておりますが、非常災害時における今後のメディアの役割、位置づけをどのように考えているのか。こちらも橋本会長、日枝会長、両会長からお伺いしたいと思います。

橋本参考人 ワンセグサービスといいますのは、携帯端末でテレビが見られるわけですから、移動中にこういう情報が入手できるということは大変有益な手段かと考えてございます。

 NHKは、災害報道あるいはニュース、情報、こういうものに対しては、災害といいますか、大事件、大事故も含めてですが、非常に重く扱っておりまして、特に、国民の生命財産を守るというライフラインの機能、こういうところを重要視しておりますし、国からも災害対策の部分では指定公共機関として指定されて活動しております。指定公共機関として指定された唯一の報道機関ということでございます。

 こういうことも含めて、こういう性格、役割をこれからもきっちりと果たしてまいりたいというふうに考えております。

日枝参考人 先生御指摘のとおり、まさにテレビの大きな使命の一つが災害対策に対応することでございます。これまでも、国内はもとより、海外の災害について迅速に対応してきたわけでございまして、それは、先ほども申し上げましたテレビの持つ役割、国民の生命財産を守るあるいは情報を伝えるという大きな役割の一つとして我々は取り組んでまいりましたし、今後とも減ることはなく、ますますふえることだろうと私は思っております。

 そのときに、まず大事なことが、放送の中でハードとソフトが一体になっているから災害にすぐ対応できるわけでございまして、これがばらばらですとできないということでございまして、ぜひこの際、先生には、災害対策を強化する意味からも、ハードとソフトが一体になって放送局としての使命を果たすように御支援をいただきたいと思います。

 それから、今のワンセグでございますが、まさにこれはデジタル化の大きなメリットの一つでございまして、ユビキタス社会の先陣を切る一つの器具だろう、端末だろうと思います。まさにデジタル化は移動体、双方向という大変なメリットがございますので、そういう意味で、こういうものがますます国民に対するサービスに働くだろうと思っております。

田中(良)委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっとハードという観点から御質問させていただきたいと思います。

 首都圏におきまして、昨年の三月に、在京六社、この放送事業者の方から、六百メーター級の新タワーの建設、この候補地について、まず第一候補といたしまして墨田・台東エリア、そして第二候補地としてさいたま新都心との方向性が示されました。

 東京タワーでは、地上波デジタル放送への完全移行ですとか、あとワンセグ放送、電波発信に対して問題がある、あるいは高さに対して十分ではない、そのような観点から第二の新東京タワーの建設を計画することになった、そのように理解しております。しかし、現実におきましては、東京タワーにおきまして試験放送も始まって、また大きな問題なく放送できている、これも現実であろうとは思います。

 しかし、その一方におきまして、公的な立場にある専門家からも、災害時における情報伝達の重要性、これを第一に勘案しますと、防災面ですぐれたさいたま新都心の方に建設した方がいい、そのような意見もあるようであります。さいたま新都心自体が、首都圏の広域防災、この拠点としての性格を備えておる。そもそも新都心自体がそういうものであります。

 災害放送との連携などを考えてみますと、新都心の有効性はより大きい、そのように私は考えるところでございますが、ぜひこの点についての御見解を、これも橋本会長そして日枝会長の方からお伺いさせていただきたいと思います。

橋本参考人 現在、この新タワーにつきましては、民放各社さん、NHK合同でプロジェクトで検討を続けているところでございます。これは我々放送事業者としてタワーをお借りするという立場で検討を進めているわけでありますが、NHKとしての肝要な点は三点あろうかと考えております。

 まず、おっしゃいますように、災害に対していかに耐力があるのか、耐性があるのか。これは多少説明させていただきますと、もともと放送というのは、関東大震災によって、これは大正十二年、関東大震災がございまして、被害が大変多うございました。これで、やはり放送というシステムで正確な情報をきちんと届けることが被害を減らすことにつながるということで、大正十四年に東京でラジオ放送が開始されたということで、災害に対するライフラインの機能が大変強うございます。したがって、この点はまず第一に考えたいと思います。

 それから、あとの二点は、やはり視聴者の方々に、現在の送信システムからの移行に当たって、デメリットといいますか、混信などとかいろいろな技術的なものもございます、そのデメリットをできるだけ少なくしなければいけない。それからもう一点は、やはり移行のメリットをいかにして出すか。こういう三点で検討していますし、耐災害性ということについては大変重要な案件だと考えております。

日枝参考人 タワーの重要性につきましては、今橋本会長がおっしゃったことと全く我々は異論ございません。

 タワーの建設地につきましても、NHKと民放五社が一緒のチームをつくって検討しているわけでございまして、今の、災害を重視するということも一つの大きなテーマでございます。

 それから、お断りしなければいけないんですけれども、私はきょう民放連会長として出てきておりますが、タワー問題というのは、実は民放連マターではないのでございますね。東京のエリアの問題でございまして、東京のエリアの責任者として考えますと、今おっしゃった話と全く同一でございますが、現在、鋭意、専門家による、有識者による検討が行われている最中でございまして、その結論を見て、また六社で最終決定をすることになるというふうに思っております。

田中(良)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、防災性という部分に関しては一番大きな要因となると考えられますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、最後に一点、NHKの受信料の徴収に関して御質問させていただきたいと思います。

 NHKの受信料は、法的には、受信料という形では定義されていないということであります。税金でも視聴の対価でもない、費用分担的な性格を持つ特殊な負担金、そのように位置づけられています。しかし、受信料の徴収について、おおむね発生する料金の二割程度が受信契約がまだできていないということでございます。

 また、料金の未収となっている部分に関しても、制作費の不正問題を機に料金の支払い拒否が多発して、現在、さらにその上一割、合計三割程度未収が生じている、そのように聞いております。視聴者にはこの受信料支払いにもっと理解を当然のことながら深めていかなくてはいけないことは当然であります。

 その一方で、昨今、スカイパーフェクですとかあるいはWOWOW等、民間の有料放送の普及によって、相対的に、NHKのコストパフォーマンス、それに対する疑問、はっきり言えば割高感というものが視聴者に大きく生じている。それが不払いに通じているのではないか、そんなような気もしております。公共放送の財源のあり方や、強制徴収やスクランブル化などの方法、こういったものも話が出ておりますけれども、やはりこれでは視聴者の疑問はますます募るばかりだろう、そのように考えます。

 現在の収支におきまして、財政的に均衡しているということであれば、こうした未収の料金、これをきちんと回収することで料金の値下げというような余地も生まれると私は考えておりますが、その辺についてどのようにお考えなのか、橋本会長からお願いしたいと思います。

橋本参考人 今、大変厳しい財政状況の中で経費の削減に努めております。この具体的な方法としましては、放送所あるいは放送会館、こういう補修、建設というふうな投資を繰り延べるといいますか、一時凍結にするとか、いろいろやりくりで財政を削減しているわけであります。したがって、回復してきたときには、やはりこういうふうなものを取り返し、これからの、またさらに安定的な放送を継続してお届けするというためにこういうものも手がけていきたいというふうに考えております。

 しかし、この三割の未払いという件について、大変重たく、厳しく受けとめております。こういうふうな未払いの方々につきましては、本当にパーフェクトに、コンプリートにといいますか、視聴者の方々の対象世帯の把握等がきめ細かに行われるという環境が仮にできまして、そういうところに対して徴収の、収納の可能性が広がっていけば、仮にですが、なかなか大変なんですが、そういうことで整っていけば、いわゆる値下げといいますか、そういうふうなものもこれはフランクに考えられるというふうには思っておりますが、なかなか現実的には、現在、そういうものについて、すべて限りなく一〇〇%に近い形でそれが可能になってくる現実にはございませんので、大変残念ながら、今のところはできないでいるということを御承知おきいただきたいと思います。

田中(良)委員 今のところはできないということでございますが、ぜひ先にはできるように努力していただきたいと思います。

 NHKの民営化という話もありますけれども、私は、必ずしもその意見には賛成はできかねる考えであります。公共放送としての役割を今後もきちっと再検証して、そして適切な業務に専念できるように、ぜひその責務を果たしていただきますようにお願い申し上げまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 三人の参考人の先生方には、貴重な御意見、本当にありがとうございました。何点か質問をさせていただきたいと思います。

 今、竹中総務大臣の私的懇談会ということで、通信・放送の在り方に関する懇談会が開かれております。昨日もあったようですが、その中で、NHKのあり方、中身としては、公共性、事業範囲、ガバナンス、受信料、また、放送業界のあり方、中身としては、融合時代の放送業界、公共放送と民間放送の二元体制等について議論を進めるんだというふうに伺っていますが、この懇談会の議論の進め方また方向性等について、橋本参考人、日枝参考人がどのような感想、関心あるいは期待を持たれているか、一般的な点でまずこれをお伺いしたいと思います。

 特に、橋本参考人には、一般論としての御意見と、地上放送局の放送設備、ハード面と、番組制作、ソフトの分離が必要なんじゃないかというふうに座長が言われている、この点について、NHKとしてはどのように考えているのか。先ほど日枝参考人の方から、災害情報の提供というのはハードとソフトは分離しちゃだめなんだというような御意見がありましたけれども、NHKとしてどのように考えているかという点。

 それと、先ほど来、やまぎわ委員の方から、放送技研はすばらしい仕事をしているというお話がありました。いろいろな資料を読ませていただきましたけれども、本当に最先端の技術を開発されている。この放送技研についても、NHKと分離して独法化あるいはほかの体制と一緒にしたらどうだというような意見もこの懇談会の中で出ているようなんですが、NHKと放送技研の分離ということについて橋本参考人はどのようにお考えになっているのかをお伺いしたいと思います。

 加えて、日枝参考人には、IPマルチキャスト放送の普及が進めば県域免許制というのは要らないんじゃないか、もう全国一律にいくんだから県単位の免許というのはおかしいんじゃないかという議論がこの懇談会でなされているというふうに伺っておりますが、この点について特にどのような御意見をお持ちか、それぞれ見解を伺いたいと思います。

橋本参考人 まず、ハードとソフトの分離と、それから技研の分離、こういう話の前に、通信・放送の在り方に関する懇談会、こちらに対する一般的な所感ということでございますけれども、やはりこういうふうな時代の変革期、いろいろな新しい社会に向けてのとらえ方、こういうものが御議論が出るということは当然かと思います。

 しかし、それを実際に、実現に向けてそういうものを考えるということであれば、やはり大変慎重な検討、こういうものが必要だというふうに考えております。また、国民的なコンセンサスといいますか、こういうものが当然必要だと思います。放送・通信というものは国民・視聴者の方々に大変大きな影響を与えるものでございますから、ぜひそういう面では、国民的なコンセンサスそれから慎重な検討ということをお願いし、しかし、新しい時代に向けての取り組みを考えていただければというふうに考えております。

 それから、具体的に、地上放送局のハード、ソフトの問題でございます。

 これはもう日枝会長と同じ考えでございまして、やはりいざという場合も含めて、このソフト、コンテンツをつくる事業者がそれに基づいて電波を発射し、情報をお伝えするという、ここが一体となった連動した仕組み、これによって放送の機能というものが果たされてこようかと思います。ここが、通信型放送といいますか放送型通信の、映像を単にデリバリーするだけの事業と違うところかと思っております。

 そういう点で、ハード、ソフトは一致ということが放送事業の中では好ましいというふうに、日枝会長と同様の考えでございます。

 それから、技術研究所につきましては、やはり我々、非常に現場の意向を酌み取りながら、またNHKとしましては、視聴者の利便性、受益、こういうところを目的に研究目標というのを掲げておりますし、実際に研究過程においてもいろいろなフィードバックによってそれを磨き上げてきているということで、やはり先ほど齊藤先生からも御意見をいただいたわけですが、現場に即してNHK自体が研究者の研究テーマを開発していく、この考えでございます。

日枝参考人 今、橋本会長とほぼ同じ考えのところは省略させていただきますが、まず、竹中懇談会についての総括は橋本会長とほぼ同じでございます。

 ただ、要するに、我々としては、NHKさんは八十年の歴史がございますが、民間放送は五十年の歴史の中で、これだけ大きな変革期にあるわけです。この変革期にあるということは、それだけいろいろな問題を抱えている、変更に当たっては。したがって、それらを国民的な意見を広く聞いて、問題点はどこにあるのかということを国民に明らかにして、そこの中から新たな方向性を出していただきたいというのが一点。

 それから、放送を考える場合に、単なる産業論や経済論だけではなくて、文化という面もこの委員会の中ではぜひ御議論をいただいて、どういう体制、どういう改革がいいのかということもぜひ御議論をいただきたい。

 そういう意味におきましては、放送というのは非常に身近なメディアになっているだけに、各界からいろいろな御意見を集めていただいて、慎重にも慎重な国民的コンセンサスを得てやっていただきたい。それが国民が望んでいる放送に対する考えだと思っております。

 それから、県域のことでございますが、私たち民間放送は県域の置局免許でこれまで免許をいただいてきております。これはこれで正しいと思いますし、国から地方へという今の大きな流れからいっても、地方を無視するということは私は決して合ってはいないと思います。

 インターネットで全部が流れることもありますが、では、地方でも情報発信できるような地上波デジタル、つまり基幹放送が、本当に地域の免許をなくしていいのかどうかということは十分考えないと、地域の方々、視聴者に対する考え方、文化に対する考え方などいろいろございますので、慎重に検討していただきたいなというふうに思います。

 というのは、五十年間、そういう制度のもとに我々は放送事業を行ってきたわけで、地上波というのは置局免許、そういう中で行われてきているわけですから、全国一律はBS、CSあるいはインターネットで十分カバレッジできるわけですから、全部そうした方がいいかどうか、これは広い議論が必要だろうというふうに思っております。

富田委員 ありがとうございました。

 特に今、日枝参考人の方からメディアという観点で、またお二人から国民の観点から議論してもらいたいというのは、そのとおりだと思います。

 ちょっと新聞報道で見たんですが、立命館大教授の鈴木みどりさんがこんなふうに言っていました。「例えばイギリスは、文化・メディア・スポーツ省が放送を所管し、政策を立案している。ところが日本は総務省が中心で、放送を産業としか見ていない。メディアは文化であり、文部科学省や文化庁、内閣府の少子化担当などが積極的に政策立案にかかわるべきだ。」と。ここはもう日枝参考人がおっしゃられたとおり、広い観点から今後の通信と放送のあり方をこの懇談会でも議論していただきたいなと、私も同じように思います。

 また、地域のことに関しまして、日枝参考人の最初の意見表明のときに、地域情報の発信とか地域経済の発展に関してローカル放送が果たすべき役割は大きいんだというふうに言われましたが、そこがこの県域免許とのかかわりも出てくるんだと思うんですね。今おっしゃられたような意見を十分この懇談会の方でも参考にしていただきたいなというふうに私も思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 もう一つ、この竹中大臣の懇談会の松原座長さんが、毎回毎回、記者会見をしていただいているんですが、その中で、私、ちょっと気になることがあります。

 これは、放送法第一条第二号の「放送の不偏不党」、また第三条の二第一項第二号、「政治的に公平であること」、これは先ほどやまぎわ委員の方からもお話がありましたが、この規定によって現在の放送局は不偏不党とか横並びの色彩が強くなっているというような御指摘があった上で、数多くの放送局があり電波の希少性が薄くなってきた現状では、むしろ多様性があった方が民主主義の発展に寄与するのではないかというような御意見を述べられて、政党の放送局等ができてもいいんではないかというような御発言をされたようであります。

 ただ、放送法の「不偏不党」とか「政治的に公平」というのは、受け手の側のことを考えて、国民の知る権利にきちんと放送が奉仕していくんだということを考えての重要な規定だと思うんですね。こういう規定は要らない、ある部分を除いて放送を考えてもいいのじゃないかという考え方は私はどうも余りよくないんじゃないかなと思うんですが、この点に関して、橋本参考人、日枝参考人はどのような御見解をお持ちか、教えていただければと思います。

橋本参考人 富田委員のおっしゃいますように、やはり現在の放送法の精神というのは、大変高邁な精神、いわゆる健全な民主主義の発展というところをうたっているわけであります。そういう点から、NHKとしましては、現在の放送法に準じて、しっかりと自主自律、公平中立、こういうことを守って、これを規範にやっていきたいというふうに考えております。

日枝参考人 基本的には橋本会長と同意見でございます。

 要するに、健全な民主主義を発展させるためには、やはり放送法で示しているように、不偏不党、公正公平というものがないと、今先生御指摘のように、取材するとき、知る権利を取材するときも含めまして、国民から遊離してしまう危険性があります。そうすると、やはりテレビ、あるいはジャーナリズム全体かもしれませんが、放送は免許がありますから放送法が適用されるわけですけれども、国民とメディア、テレビの間の信頼関係を失うことになると思います。したがいまして、やはり放送法の精神というものはあくまでも中心に置いて、健全な民主主義の発展のために尽くすべきだというふうに私は思っております。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に、二〇一一年七月の地上デジタル放送完全移行に関して何点かお伺いしたいんです。

 先ほど来の御説明で、アナログ放送は開始以来五十年かけてほぼ全世帯に届くようになった、今度、地上デジタル放送は、総務省によりますと、二〇一一年までにアナログ放送と同じ範囲をカバーできるように放送事業者の皆さんに努力を求めているということであります。

 日枝会長の先ほどのお話では、九〇%ぐらいは民放の方でも何とかなるというふうに言われていましたが、では残りの一〇%をどうするんだと。難視聴地域とか、また、せっかくデジタル放送になったのに、橋本会長言われていましたが、デジタルデバイドというか、また差別されてしまう、格差が生まれてしまう。せっかくいいものができたのに、その中で新しい格差が生まれるということでは、本当に国民にとって不幸なことだと思いますので、カバーできない地域についてどのような施策を考えているのか、まず日枝参考人にお伺いしたいと思います。

日枝参考人 確かに九〇%まで来ておりまして、今月末には各局がロードマップを発表いたしまして、その地域の住民に、いつからこの地域ではデジタルが見られるかというような地図を発表する段取りになっております。間もなく出ると思います。

 そして、九〇%以上は自主的に中継局の設置等ができていきますが、今先生おっしゃるように、残りのところをどうするか。広く、あまねく、それからデバイドがあってはいけないわけで、そのために今総務省あるいは我々と一緒になって研究しておりますのは、IPマルチキャストで送るのか、あるいは衛星を使ってするのか、いろいろな手段について検討している最中でございますので、これもいずれ明らかになってくるものだと思います。

 いずれにしても、二〇一一年七月二十四日にはアナログ波が停止になりますので、そのための対策は全力を挙げて今取り組んでいるというところでございます。

富田委員 その点に関して橋本会長にちょっとお伺いしたいんですが、NHKの関連会社と地元の放送事業者で、岐阜県の方ですか、ギャップフィラーという放送の仕組みを検討して、今実験しているというような報道がありました。

 これは、難視聴エリアに新設した電柱まで光ファイバーで送信して、電柱に取りつけた送信アンテナから今度再び電波で各家庭に届けるというような実験のようです。ただ、これはやはり電波塔の設置の投資費用とか維持管理費なんかをどうするんだという問題点があるようなんですが、ここはどんな検討状況なんでしょうか。それを教えていただきたいと思います。

橋本参考人 このギャップフィラーといいますのは、やはり大きな中継所、親局を含めて、遮へいされて電波が届かない小さな対象地域に電波を送るという装置で、非常に簡便な中継局と考えておりますが、こういうものについて、やはり岐阜だけでなくて、今ほかの数カ所でもいろいろ実験を繰り返しているところでございます。

 こういうふうなものがどこまで有効かということをこれから検証しまして、それについて、大変有効だと。有効のためにはコストも考えなきゃいけません。そういうものについてはどこまでコストダウンできるかとか、こういうものを総合的に考えまして、今後の導入の計画、そういうものを考えていきたいというふうに思っております。

富田委員 最後になりますが、齊藤参考人、今の点で、民間放送事業者の方でどうしてもできない部分とか出てくると思うんですが、その放送に接せられない、そういった地域が出てきた場合に、技術者の観点から、国の方でこういったことをやったらいいんじゃないかというような御提言がありましたら、最後にお聞かせ願いたいと思うんです。

齊藤参考人 ありがとうございます。

 こういう通信でも放送でも、経済的に成り立ちにくい地域というのは昔からございますし、今後とも、それはいつも工夫の対象であるというふうに思います。

 通信の方ですと、光ファイバーが行かない地域というのは今でもございますし、それをどういうふうにするのかということは大きな問題になっています。

 今、放送も通信もでございますが、それをどのような方式で埋めるのかということに関して言えば、それはその地域特性によって大幅に違うということでございまして、光ファイバーをつけて光ファイバーの中でIPマルチキャストをするという方法もあると思いますし、それから衛星を使うという方法もあるかもしれませんし、電波で行くという方法もあるかもしれません。電波で行く方法についても、比較的低コストで距離を伸ばすという方法も技術的にいろいろな可能性が多数あるということでございます。

 そういうことにつきまして、今私どもいろいろ考えておりますのは、その地域でその地域の方がどのようにお考えになっているのか、地域の自主性を持って方法をお選びいただいて、それを国が支援するという枠組みが一番早道なんではないかというようなこともあると思います。

 放送の場合と通信の場合ではそこら辺のやり方についていろいろな考え方の違いがあるかと思いますが、技術は今後ともいろいろあるということでございますので、ぜひ多面的にやっていただくということが大事ではないかというふうに思います。

富田委員 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、安住淳君。

安住委員 会長、御苦労さまです。私も、会長が御就任なさって、こうやってまみえるのは初めてでございますね。去年というか、六月まで当委員会で筆頭理事を四年もやっていましたから、十年くらいお給料をもらっていましたので、会長も御苦労なさって、失礼ですけれども、会長になる予定もなく急になられたから、本当に心配しておりましたよ、不祥事もありまして。

 一年たちまして、しかし私も、正直申し上げて、全くNHKのこれまでの、この一年半の中で起きたことに対しては一切公的なところでコメントしたことはございませんでした。ですから、そろそろ、一年たちましたので、一言きょうは言わせていただいて、もし足りなければ同僚議員が時間をくれるというものですから、話をしたいと思います。

 日枝会長には、後でもし関連があればというふうに思っておりますので。齊藤先生、もしかしたら質問しないかもしれません。

 会長、私は、多分ここにおられる委員の中では一番NHKのことは知っているつもりではおりますけれども、それはそうですね。

 まず、一つ基本的なことを伺いますけれども、私は、今のNHKの問題というのは何もきのう、きょう始まったばかりだとは全く思っていないんです。まるで何か放送と通信の融合みたいなことがぽんと話題になっていますが、実はこのNHKの問題というのは私はちょっと違うんだと思うんですね。違うということが表面化したのが去年の一連の問題だったのかなというふうに思うんですね。

 まず、端的に伺いますけれども、放送法の三十七条とそれから十六条について、会長はどういう御認識を持っておられる方なんですか。

橋本参考人 ちょっと放送法の方も確認させていただきますけれども……(安住委員「こちらで言いましょうか」と呼ぶ)はい。では、問題点のところを。

安住委員 つまり、放送と通信が問題じゃなくて、政治との距離が一番問題なんですよ、NHKというのはやはり。私がいたときからそうなんですから。

 そこで、つまり、会長、十六条というのは、経営委員会の任命は総理にあって、それを国会が同意するという法律の中身ですよ。それから三十七条というのは、国会の承認ですよ、財務の、予算の、収支の。この今の制度について、技術畑が長い会長ですから、今までそういうことに対してそんな直接的な関係やかかわりを持っておられなかったわけだけれども、一応会長になられたわけだから、これについての基本的な考え方をまず教えていただかないとちょっと議論にならないものですから、そこを教えていただきたいと思います。

橋本参考人 御指摘の三十七条の問題それから十六条のところであります。

 ここは、基本的には、予算、事業計画では、やはりNHKの受信料ということは視聴者・国民の方々からいただいているものですから、その代表としての議員の方々に国会の場で御議論いただいて御承認いただくという仕組みであろうと思いますし、そういうものを受けて、NHK経営委員等、あるいはそれを通じてまた執行部の役員ということであろうと思いますけれども、指名するというガバナンス、こういうのがつながっていると考えております。

 やはり我々、もとをたどれば、今回の改革の中でも考えましたのは、原点は視聴者の方々にどう立脚していくのかというところで、そういうものを踏まえながら、やはりこの国会での事業計画承認ということは、これは放送法で定められた業務の進め方として守っていきたいというふうに思っております。

安住委員 ちょっと私の質問の意味が理解いただけなかったかもしれませんけれども、もう時間がないからちょっとありていに言いますけれども、結局、根本的に民放とNHKが違うのはそこなわけですよね、受信料の話はちょっと後でしますけれども。

 会長、きのう、きょうこのNHKの構造問題が始まったわけでないというのは、私が会長にこういうお話をするのは全くやぼな話ですから、しかし、ごらんになっている方もいらっしゃるし、委員の中には知らない方もいらっしゃるから言いますけれども、それは前田会長だって、田中さん、元総理との関係でこれは大きな問題になってやめたんですよ。私が身近にいたときは、島会長だってそうですよ、大騒ぎしました。あのときは宮沢さんが総理になるかならないころのことだ。つまり、政治との距離をどうはかるかというのは絶えず悩ましい問題なんですね、NHKというのは。

 その中で、実は、制度上どうしても政治にグリップを握られているから、局内で自由闊達な放送を職員の皆さんにさせるためには、経営サイドは政治との距離をうまくはかりながらしのいできたというのが歴史なんですよ。それをやるのが会長の仕事なんですよ。私は、そういう認識を持っていないと会長職は、大変失礼な言い方ですけれども、務まらないんでないですかと言っているんです。放送法があるからそういうことをやるなんという話の答弁では、ちょっと私は不満なんですよね。

 だから、そこで番組改編疑惑というのが起きた。朝日とNHKで、大変失礼ですけれども、つまらないバトルをやった。しかし、私はそのときにやはり思ったですよ、だって、それは関係者は私の上司だった人たちだから。しかし、接点をどこかで設けていかなければならない宿命があるんじゃないですか、NHKは。

 そこで、二十分しかないからもう言いますけれども、今、小泉さんは波が多いとか勝手に発言しているんですよ、公共放送に波が多いと。つまり、多分、波を分割しろと言っているんでしょう。どこまでわかっておっしゃっているかはわからない人ですから、それはあったとしたって、これは総理が言っているんだから重いんですよ。

 それから、今質問にあった、竹中さんのやっている私的懇談会なるものだ。きのうになって、広告収入を国際放送に入れると言っている。何でこういう話が出てくるんでしょうか。

 大変辛らつな言い方をさせてもらうと、やはり会長たるあなたが明確なリーダーシップを持って、今私が言ったことに対して明確な方針、つまり、これは問題なので、絶えず海老沢会長もこれで苦しんでこうなった、だから、放送法の十六条と三十七条を何とかしてほしいんだったら、何とかしてほしい、改正した方がいいんじゃないかと。独立した委員会制度としての工夫の仕方はあります、いろいろな意味で。そういうことに対してまず基本的な考え方がなければ、これは実質的には、番組改編介入疑惑なんかとは次元の違う政治介入をあなたは今許しているということになるんですよ。

 首相や総務大臣が放送行政に対して発言することは私は好ましいことだと思わないから、あえて、会社の先輩に対して大変失礼ですけれども、そういう話をしているんです。いかがですか。

橋本参考人 放送の、NHKの公共性を守るための自主自律、この考え方は、私以下、大変大事に、本当に四六時中、三百六十五日、肝に銘じて、みずから律していかなきゃいけない問題だと思っております。

 予算なりなんなりという中で、手続的に当然こういうふうな御議論、国会の場で御議論いただく、あるいは放送と通信、こういうふうな御議論の中でいろいろな意見が出てこようかと思いますけれども、それに対して、やはり公共放送を守るという形でこれからしっかりと努力してまいりたいというふうに考えております。

安住委員 日枝会長、私のさせていただいている話が深くて大変悩ましい問題だとわかっていただいていると思うんですけれども、日枝会長は、聞くところによりますと、きのうですか、きょう新聞に載っていましたけれども、これは株主に対して、ライブドア問題で訴訟を起こすという方針だというふうに聞きました。それは事実でございますか、ちょっととりあえず確認だけさせてください。

日枝参考人 各論はあれですけれども、正確に申し上げましたのは、損害賠償も選択肢の一つとして行うと。これは実は、強制捜査、逮捕のときから言っていることで、別に急に新しいことではないんですが、報道ではそうなりました。

 ですから、もちろん損害賠償を選択肢の一つとして行うということは決まっております。

安住委員 これは株主に対する責任を果たしていくということなんです。だから、そこは、NHKの場合は国会ということに放送法上はなっているということです。私はこの制度が悪いと言っているんじゃないんです。ただ、この制度を生かしながらいかに中身の濃い放送をやっていくかという話は非常に重要なんですよ。

 しかし、その中で、残念ですが、私は実は、きょうは質問に立たせていただくので、この一年間、会長がどういう発言をこれまでしてきたかは、一応、公的な場での発言は調べさせていただきました。しかし、会長御自身はみずから、例えば具体的な私の話に対しては、何かヒントになるような話をなさった場所というのは一つもありませんね。

 例えば、波をどうしたいのか。今ある波というのは、つまり、総合テレビからBS2、ハイビジョンまで、また海外放送やラジオ電波まで。つまり、首相が波がちょっと多いんじゃないかと言っている。しかし、これに対して打ち返さなければ、やはり多いんだというふうにNHKは思っているのかなと思うと思うんですと言っているんですよ。

 私は、今からの時代に、波が多いかどうかというのは非常に悩ましい議論だなと思います。しかし、実のことを言うと、そこは公共放送以外のところでやってもらってもいいようなところもあるのかなと思っていますよ。いますけれども、やはり中から何かそういう話といいますか改革のエネルギーがないと、NHKという組織はもたないんじゃないかと思うんですね。

 私は、それは国会議員の同僚議員よりもはるかにNHKの職員の中に友達がいますから、やはりみんなモチベーションが下がっていますよね。しかし、それは将来に対する不安じゃないでしょうか、会長。ひしひしと感じておられると思うんですね。

 そういう中にあって、政治の世界の方から何か発言されてリードされるんではなくて、さっき私が言いましたけれども、十六条や三十七条への考え方をしっかり持って、その中で会長御自身を含めてどういうふうにしたいのかということを、もう一年たちましたから、しっかり言わないといけないんではないかなというふうに私は思っているからこういう発言をさせていただいたということなんです。

 いかがでございますか。

橋本参考人 私、冒頭の考え方の中で、まず、公共放送としての第一義的な原点として自主自律というものがあるということをお話し申し上げました。それから、NHKが提供している放送番組につきましても、多様な日本の国民・視聴者の方々にマッチした番組を届けるために相応の規模というものが必要だというふうなことで申し上げました。

 実際的に申し上げますと、やはりNHKに対して、再放送の要望とか、あるいはより豊かな番組、それからニュース、報道、こういう番組の強化、そういうふうなものが求められてきております。また、インターネットを含めたりして情報が拡大していく中で、より確かな情報源としてのNHKの役割というものはより一層高まっていくものと思っていますから、そういうものに見合ったチャンネルの数、波の性格、そういうものをこれからも主張してまいりたいというふうに思っております。

安住委員 それは、NHKとして何らかの方針を、例えば近い将来、近々に出すということですか。出さなきゃ、私、まずいんじゃないかなと思っているんですね。

 つまり、失礼ですけれども、じり貧状態でしょう、いずれにしても。給料だって減らさないといけないという話も何かなさっているという話を聞いていました。受信料収入も頭打ち。将来に対して、今まで持っていた波に対して、今この時点で会長がそういうところの基本認識ではちょっと、大変申しわけないんですけれども、やはり心もとないんじゃないかなと思っているんですけれどもね。これは早急に局内できちっと考え方を示さないと、私は決して政府や政治の世界で何か発言されるのは好ましいと思いませんよ。

 会長、いかがでございますか。

橋本参考人 これまで私も、お耳に届くことが少なかったかもしれませんけれども、記者会見とかそういう場でも、この波の問題、あるいはもっと言えば波のジャンルの問題、NHKが扱う番組の問題、こういうふうな中で今の考え方は述べてきたつもりでございますし、これからもそういう場を通じて述べていきたいと思っています。また、職員に向けても、これについては年頭所感、そういうふうな場を通じていろいろ、あるいは職場の集会、そういうところでお話はしているところでございます。

 また、三カ年計画の中でも、こういうものについては、確かにいろいろな議論にはフランクに対応していきますけれども、NHKが行う番組の重要性ということはこれからも説明してまいりたいというふうに考えております。

安住委員 二点について伺いますけれども、まず一点は、受信料制度のことです。

 三割未納、未払いという状態の中で、収入が頭打ちをしている。しかし、そういう中にあって、一部、私的懇談会の話は余りしたくないけれども、国際放送だけ広告収入でやろうじゃないかとか、随分、私は、民放連から見たらやはり虫のいい話に聞こえるんじゃないかなと思うんですよね。しかし、頭打ちになっている受信料収入の中で放送と融合の事業を展開するなんて、こんなことはもうはなからお金がないから無理なんですよ。

 だから、二元体制の維持維持というのはきれいごとのように聞こえますが、実はもう、事業運営をやっていかないといけないNHKと民放の壁というのはもう崩れかけているというふうな認識に私はありますよ。だから、それをどうするかということは、ただそれが望ましいだけじゃ済まない現実じゃ、原点じゃないんですか。

 いかがでございますか。これは日枝会長から少しお話しいただいて、その後、橋本会長に話を聞かせていただきたいと思います。

日枝参考人 御質問が多岐に、今の御質問があるので、どこをお答えしていいかと思いますが。

 まず、二元体制が崩れてきているのではないかという先生の危惧でございますが、私どもは、二元体制を維持していただきたいがために、受信料収入をこれから徴収してもらって、国民的信頼を得たNHKになってもらいたいというのが一点でございます。

 国際放送につきましては、基本的には、CMを入れるというのは今までの原則が崩れるわけですから、受信料収入の範囲内で国際放送をやるということはやむを得ないんですが、それを踏み越えるということは、受信料制度以外でも事業をやっていいということに広がりかねませんので、民放連としては反対でございます。

橋本参考人 受信料の未払い、不払いの件につきましては、大変重く受けとめております。現実的に、高い目標、しかし実現可能な目標、こういう中で具体的な目標を掲げて、ここに向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 そういう裏づけになります財源的な根拠をつくった上で実際の放送に取り組むわけでありますが、国際放送につきましては、やはりこの三カ年の計画の中で、現実的に英語化率一〇〇%というものを目指して行っていきます。これはやはり受信料という制度の中で行っていきたいというふうに考えています。

 基本的に、我々、広告料というものを導入しようという考えはございません。

安住委員 同僚委員の協力を得て、ちょっと五分ほど延長させてもらいますけれども、つまり、ということは、橋本会長も民放連の日枝会長もこの私的懇談会なるものの今のこの考え方には反対ということでよろしいわけですね。

日枝参考人 これまで何回か会合を開かれておりますので、それについて、まだ私ども民放連としてはコメントを述べておりません。また同時に、呼ばれておりませんので、私どもが意見を開陳する機会がございません。近々ヒアリングに呼ばれることになっておりますので、そのときに私どもの意見は申し上げたいというふうに考えております。

安住委員 つまり、私は、それはそれで結構だと思います。しかし一方で、今の財源の中で、民放連はちょっと置いておいて、これは会長、受信料収入だけでやっていくとなれば、事業縮小せざるを得ないわけですよ、そうでしょう。これは拡大するということにならないわけですよ。だって、放送会館だって、私が知っている限りでも相当建てかえを今ストップしているわけですよ。では、それをどうするんですか、どん詰まりにならないんですかという心配も一方であるから、やはりそこをどうするのかをきちっとということなんですね。

橋本参考人 いろいろ御心配をかけておりますが、やはり国際放送の英語化率一〇〇%というものを平成二十年度を目指して行ってまいります。この財源につきましては、現在、十七年度、十八年度、この二年間、大変厳しい財政状況でございますが、十九年度、二十年度、この伸びの中で、財源に見合った形で英語化率一〇〇%という強化策をとっていきたいというふうに考えております。

安住委員 本当に残念ですね、ちょっとかみ合わなくて。私は、あったお金の中で何をするんだと聞いているんではなくて、財源が絞られてきてこれからの展開が苦しくなるから協会としてどうするんだということを聞いているんですよ。だから、今度もう一回やりますから、そのときまでにきちっとやはりその辺の考えを少し持っていただければありがたい。

 それから、日枝会長、通告しなくて大変恐縮なんですが、さっきの富田議員の話の続きでいうと、私も実は、田中郵政大臣時代から始まったこの免許制度にそろそろやはり限界が来ているんじゃないかと思うんですよ。これは民放連は否定するかもしれませんが、しかし、事実上、もう地方放送局の、実効支配と言ったら大変失礼ですけれども、系列化はもう非常に固定化していて、しかし、その中身を見ますと、県域局、ローカル圏の放送局というのは経済的にもなかなか成り立たないような状況にもう立ち至っているわけですね。独自のソフトがつくれなくて、フジ系列であれば大概、八〇%近いんですか、フジテレビの放送をやはり流す。これではもう県域の免許制度というのは私は成り立たないような気もしているんですね。

 これについて民放連としてどうお考えになっておられるのか、そこだけちょっと聞かせていただけませんでしょうか。

日枝参考人 各局によって自己制作比率というのは異なりますから一概に言えませんが、八〇%は東京のということはありません、決してありません。

 実際、例えば各地でだんだんふえてきておりますのは、地元の情報番組をふやすことによって広告主からコマーシャルをとっているということがふえていることも事実です。それから、各局が独自に番組をアーカイブから買ったり、あるいはプロダクションから買ったりして、実際は、六〇%ぐらいは、六〇から七〇ぐらいの間は自社の編成によって行われているというのが実態だと思います。

安住委員 しかし、事実上、もう役員等は各キー局から派遣なさっている会社も多いですね。そういう中で、やはり僕は、逆に言えば、それは統一化をする時代であってもいいのかなというふうに思いますから、そこはちょっと考えていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間が参りましたので、また、もしかしたら来週お会いするかもしれませんけれども、終わります。

中谷委員長 ただいまの安住委員の質疑の中で、質問者が、朝日新聞とNHKの問題でつまらない議論との発言、表現がございましたが、後ほど議事録を精査し、理事会で協議させていただきます。

 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。よろしくお願いします。

 きょうは、貴重な時間を、お三方、ありがとうございました。

 事前に質問通告はしていない点でございますが、今まで出てまいりました放送と通信の融合の私的懇談会に関して、一つ、まず冒頭、質問をさせていただきたいのでございます。

 新聞にもあり方に関して疑問を投げかけるような記事を拝見したことはあるんですが、ちょっと私も総務省関係の私的懇談会がどういったものがあるのかと調べてみましたら、全部で二十五種類ございました。議論の中身はともかく、その私的懇談会の中で、放送と通信の融合の私的懇談会が外形的に三つの特徴があるということがわかりました。

 一つ、その二十五の中で、秘密主義というか非公開、これがその放送・通信の融合の懇談会だけでございます。二つ目、構成メンバーの人数、八名でございますが、これもほかの二十四種類と比べて突出して数が少ない構成メンバーになっております。それから三点目、きょうお見えの民放さん、NHKさんや、その業界の中の方、放送業界の方とか通信業界の方とか、ゼロでございます。ちなみに、八名の中で四名が大学の先生、そのうち二名が慶応大学、竹中さんのお友達でしょうか、そういう構成になっているということですね。これがいいか悪いか、よくわからないんですが、非常に突出していたということなんですね。

 これは何か理由があるのかな。非公開とか、いろいろあると思うんですが、きょうは総務省ではございませんが、お三方それぞれいらっしゃいますので、ほかの二十四の私的懇談会と比べて、なぜこういう突出した形の懇談会でやられておるのか。既に四回行われましたけれども、もうすぐ参考人としてお呼びがかかっておるとは思うんですが、いずれにしても、今三つ挙げたこの特徴、若干数字は違うかもしれませんが、そういうことだと思うんです。

 その点に関して、こういった特別な状況下でやる懇談会のあり方に関して妥当な理由があるとお考えかどうかというのを、イエスかノーかで、それぞれお答えいただきたいと思います。

橋本参考人 こういうふうな場でいろいろな新しい……(田嶋(要)委員「時間がないですから」と呼ぶ)はい。

 まず、なかなか賛同できかねます。

日枝参考人 イエスかノーかというと、もう少し我々の意見も聞いてほしいな、今度ヒアリングでお答えしたいと思っております。

齊藤参考人 一つの形としてそういう形もあるかと思いますが、そういう意味ではイエスです。しかし、それで実行できる結論が出るというのは大変難しい。ですから、問題提起をしていただく形としては、あり得る形ではないかと思います。

田嶋(要)委員 今申し上げたようなことの事実を御存じなかったのだろうと思うんですが、いずれにしても、こういう形で会議が行われているということをお三方にも御報告させていただきたいと思います。

 続きまして、質問通告した中に入らせていただきますが、まず最初に、放送の公共性ということを放送法の関係でちょっと質問させていただきたいと思います。

 放送法の一条に「公共の福祉」という言葉が出てまいります。「公共の福祉」という言葉がまず出てまいりまして、それから七条の、NHKのところの冒頭に、さらに「公共の福祉」ということがもう一回出てくる構造になっておりまして、七条は「公共の福祉のために」、一条は「公共の福祉に適合するように」と、微妙に表現が変わっておるわけです。

 そこで、日枝会長にお伺いしたい。

 いわゆる公共放送といえばNHKでございますが、民放というのは、公共性、社会に公共性というか、そういうことに関しては、程度の違いこそあれ、何らかの役割を担っているものだというふうに理解しておるんですが、その辺、対NHKとの比較において、どういった公共性を帯びているという御理解でしょうか。

日枝参考人 先生御指摘の公共性に関しては、私ども、NHKと何ら変わるところはないと思います。財源が、受信料によって営まれているNHKと、それから広告放送によっている我々ということで、放送法の適用は同じだと私は考えております。

田嶋(要)委員 そういう意味では、公共性ということでは同じであると。ただ、民放には公共放送というのは当たらないわけですね、そういうことですね。

 そういうことで、やはり有限な資源である電波を割り当てられている、それから免許制に基づいているという意味では全く同じなわけで、そういう意味で、確かに世の中の普通の目からすると、放送業界というのは特別な規制の中にあるルールのもとで行われている事業だ、そういう認識があると思うんですね。

 そこで、もう一つ質問をさせていただきたい。同じく日枝会長ですが、民放会社というのは純粋な営利企業であるというふうに言えるのでしょうか。

日枝参考人 純粋というのがどの辺かわかりませんが、大変公共性を持った営利事業というふうに御理解いただければいいと思います。

田嶋(要)委員 そこで、資料をお配りしておりまして、国会がいろいろ口出すような話ではないというふうに言われそうな感じもするんですが、これは民間企業の給与比較。毎年一回ぐらい必ず出て、多くのサラリーマンは注目をして、自分の働いている会社の業界はどの辺かななんて見るわけでございますが、これは基本的には、民間会社でございますので、それぞれの経営判断ということです。

 ただ、私はあえて日枝会長にお伺いしたいのは、これは会社ごとの差が出ているというよりも業種ごとの差が出ているんですね。御案内のとおり、フジテレビジョンを筆頭に、放送、民放というのは非常に高い、これは毎年でございます。ちなみにNHKは二十位ぐらい、テレビ東京と同じぐらいということでございます。

 私が思うのは、純粋な営利企業とはいえ公共性を大変帯びている、それで電波の問題、免許の問題があるということであれば、これはよく言われるとおり護送船団方式で、最後の護送船団方式という言い方も時々書かれておりますが、そうすると、金融界と大変似ているわけですね、金融界も護送船団方式と。そうすると、両方とも護送船団方式で、護送船団方式の業界は給与もいい、そういうような認識が世の中にあると僕は思うんです。

 一体、なぜ業界がこういう構造になっているのか。いいとか悪いとかということは別ですよ。なぜ業界として、他業界と比較してこういうふうに非常に際立った、突出したことができるのかということを、その辺、お差し支えない範囲で仕組みを教えていただきたいなと思います。

 その仕組みと、そして公共性という観点からして、そのことがどのように世間から見られているか、あるいはどのような御認識であられるか、その点も教えてください。

日枝参考人 仕組みは各局の経営上のことですから、私が全体をまとめて申し上げるのはいかがかと思います。

 私ども、今配付していただきました資料、この数字が本当かどうかというのはまだ検証していないわけですね。ですから、これについてのコメントもちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、放送は給与がいいんじゃないかという御指摘について申し上げますと、基本的に言いますと、私どもの企業は人材しかないわけですね。一人の人間が一つの価値をつくるわけで、大変クリエーティブな仕事でございます。優秀な人材をとらなければ私たちの企業そのものが成り立たないということがございますので、当然、経営努力をしながら、生産性に見合った仕事をしてもらう、そのために優秀な人材に来てもらう、それに対する労働の対価として社員に配っている。それから、労働時間も含めて他産業と比較していただいて、本当の労働の密度というものから給与というものは考えるべきだというふうに私は考えております。

田嶋(要)委員 お答えにくい部分もあるかと思うんですね。ただ、先ほど申し上げたとおり、これは会社として突出しているんじゃなくて、業界として突出しているということで、それぞれの会社の事情というよりは、多分業界としての構造の中にやはり理由があるのかな。今おっしゃった、クリエーティブな、おっしゃるとおりだと思うんですが、ただ、ほかの業種にもやはりクリエーティビティーは求められるので、なぜ民放はというところに関しての十分な説明にはなっていないような気がいたします。

 やはり公共性ということからは、これは毎年常に新聞に出るような、雑誌に出るような情報でございますので、大変注目をされるのではないかなという印象を持ちます。むろん、民間の意思決定に基づくものですから、国会が余計なおせっかいという部分もあるかもしれませんけれども、やはり電波、免許ということで、公共性を帯びた事業体ということから、一言質問をさせていただきました。

 次の質問でございます。地上デジタルの関係のデジタル投資のことでございます。

 この業界は常に大変な技術革新のもとに置かれておるということで、それはある意味、経営リスクが極めて高いということだと思います。これは、あるときの設備投資、数百億、数千億の巨額な設備投資をするんですが、その時点ではベストだと考えておったところが、検討しているうちにまた次の、より安価ですぐれた技術が出てくるといったことはもう日常茶飯事だと思うんですね。

 そこで、今回のデジタル投資でございますが、民放さんもNHKさんも、約五割とか七割とか、かなり設備投資が済んだという理解をいたしておりますが、そういった中で、例のIPマルチキャストの話が昨年出てまいりました。そうすると、普通考えると、ではこれまでの投資は一体何だったんだろうか、無駄な投資ではなかったか、あるいは、これからの投資をするときの投資計画をするときに、今まではブロードキャスティングしかなかったけれども、これからはIPマルチキャスト、通信を媒体として使うこともあり得るということになると、投資判断に関してかなりの影響が出てくるのではないかなというふうに私は考えております。

 まず、お二方、民放、NHKに、そういった新しい技術が出てきて、今後の設備投資に与えるこのIPマルチキャストの考え方、きのうお話を伺ったところでは、ワンセグなんかを考えると、いわゆるIPだけではできない部分がある、おっしゃるとおりブロードキャスティングでいかなきゃいけない部分はある、それはよくわかるんですが、でも、かなり設備投資の額、例えば中継局とかそういった部分に与える影響、下方修正を迫られる影響が十分出てくるんじゃないか。それは決して悪いことではなくて、私は、その数百億という設備投資をもっと違う分野の資源に向けていくことができる可能性があると思うんです。もちろん著作権の問題とかいろいろクリアしなきゃいけない問題はあるにしても、技術革新の果実をとっていくということは大変重要だというふうに考えておりますが、その点に関してお二方から御意見をいただきたいと思います。

橋本参考人 では、まず私から。

 新しい技術開発のテンポと、現実にそういう目的を実現したいというターゲットをどういうタイミングで使うかというのは大変難しい問題で、おっしゃいますように、パソコンなりワープロを買いたいんだけれども、いつまで待ったら一番いいのが買えるのかというと、待てば待つほどになってしまう、こういうふうな問題に相当近いと思っております。早くやればお金もかかったり陳腐化する、本当にその御意見のとおりで、私もそういう点では悩んだ経験が大変ございます。

 しかし、そういうものを、ある環境をつくるということによって全体環境を誘導していく、引きずっていくという先導的な役割もあるという中で、国としては地上デジタルの具体的なターゲットであります二〇一一年というものをお決めなさったというふうに考えておりますし、それを目指して、我々も、中継局の建設のロードマップとか、そういうものもできるだけコストダウンする方法で、それを駆使して、まずはメーンとなる親局から始め、それから重要中継局、それからその先の中継所という形で、できるだけコスト的な負担がない形でつくってきている。これはもう、民放さんを含めてオール・ジャパンの体制でロードマップをつくっているということであります。

日枝参考人 デジタル化はNHKと一緒にやっておりますので、その考え方に全く差異はございません。

 ただ、技術進歩というのは、ドッグイヤーと言われるように、本当にこの数年の激変がございますから、それに対応していかなければいけないのも事実ですし、このデジタル化をしたからこそ、いわゆる通信との連携によって双方向性とか移動性とかユビキタス社会ができるということにもなるわけですから、完全な無駄な投資というふうに言ってしまっていいかどうかとは私は思います。

田嶋(要)委員 全然無駄な投資ではないと思うんですが、特に今回のこの件に関しましては、例えばNHKを例に挙げますと、実際に地上波デジタルの投資がスタートしたのは二〇〇一年から、それとIPマルチキャストの実用化が実現したのはここ数年ということでございますので、現実的に考えて、設備投資を始めたときにはそういう技術がなかったから仕方がなかったという面もあるんですね。

 そこで、齊藤先生にお伺いしたいんですが、こういった世界の中で、やはり株主利益、あるいは受信料を払っている方々、国民の利益を考えると、間違った巨額投資をするというのは最悪な事態でございまして、公共事業ではそういうことも多いかもしれませんが、特にこういった放送の世界で間違った投資をしないように、特に技術にお詳しい分野の方々からも、最新の技術革新、そしてそういったことをしっかりと、政府の判断が誤らないように、そういったアドバイスも賜りたいんですが、今後の地上波デジタルの投資の観点から、こういったさまざまな技術選択肢、どのように見られておるか、一言いただきたいと思います。短くで結構です。

齊藤参考人 大変悩ましい問題について御質問いただきまして、ありがとうございます。

 放送業界もございますし、通信業界もありますし、先ほどからお話しになっているコンピューター業界もありますし、すべてそういうことをみんな悩んでいるということで、そういうことでいろいろな議論がございますし、成功したところもございますし、これはちょっとまずかったんじゃないかという話も往々にしてあるわけで、そこのところについて、常に慎重な技術的判断が必要だというのはおっしゃるとおりでございます。

 例えば通信でいいますと、もっといろいろバラエティーがございますが、例えば、携帯電話の方式は十年ごとぐらいに変わるということが過去継続しているわけでございます。長距離の光ファイバーのようなものですと、投資すると五年で価格が十分の一になるというようなことがあって、五年分投資した方がどうするんだという議論がございます。しかしながら、光ファイバーのアクセス系、お客さんのところに行くものですね、あれなんかは三十年ぐらいはそのとおりになる。

 放送についていえば、アクセス系に近い性質をかなり持っている。お客さんが直接受けるということで、投資は長いだろうと期待しています。特にデジタル放送についていえば、日本は世界の先進国の中で最後に方式を決めた。これはいろいろ、なぜおくれたんだということについての御批判もあるかと思いますが、大変慎重に検討された。今後ともそういうような慎重な検討が必要であろうと思っております。

田嶋(要)委員 あと一、二問だと思うんですが、民放にとりましてもNHKにとりましても、これから収入源の多様化ということが大変重要になってくる。先ほども話がありましたが、NHKがじり貧じゃないかと。同様に、民放のコマーシャルの場合でも、コマーシャルの拡販のリスクというのを聞きましたが、やはりインターネットとかコマーシャルを打つチャネルがふえれば、当然コマーシャル単価も下がるかもしれない。民放のコマーシャル、なかなか厳しい状況になってくる可能性もあると思うんですが、そういった中で、特に今回は、先ほども出ました日本版CNNみたいな話をちょっとお伺いさせていただきたいと思います。

 今、実際にラジオの国際放送でこれはやっておるわけでございますが、その中に交付金というものが入っております。この交付金というのは現在二六・五%ですね。要するに、NHKの国際ラジオ放送は、二六%、約四分の一は税金で行われているということでございますが、そこからくる、先ほど出た政治との距離ということですね。

 それから、では今後、テレビで何かやっていくときの財源の話でも当然出てくるわけでございますが、テレビの国際版をやっていくに際して、その辺の財源、そして政治との距離。

 それから、日枝会長からは、では民放はこの事業を一つのビジネスチャンスとしてとらえることはできないか。先ほど宣伝を載っけられたら困るという話もございましたが、むしろもう少し積極的に新しい収益源の多角化の一環としてとらえることはされておらないのか。

 お二方から最後に御意見をいただきたいと思います。

橋本参考人 ラジオの短波で行っています国際放送は、二六・五%、いわゆる実質二十二億ぐらいの国からの交付金を受けております。

 ただし、こういう財源と、NHK自身の放送、これとを、NHKの自主放送の中で、もっと言えば、NHKという編集主体の中で、編成権の中で、放送して行っています。テレビは丸々NHKの編集権の自主放送ということで、大変、海外の視聴者の方々もNHKブランドで見聞きしていただいている、こういうふうな状況が望ましいというふうに考えております。

 したがって、政治的なそういうふうな圧力、そういうものは受けない形で行ってまいりたいというふうに考えております。

日枝参考人 先生御指摘のとおり、これは、各社によって経営姿勢が違いますから一概に言えません。

 私どもの会社の例で大変恐縮でございますが、多分そういう時代になるだろうということで、私どもは通信事業にもかなり手を伸ばしておりますし、ビデオ・オン・ディマンド放送も始めたり、あるいはポータルサイトのビジネスも始めたり、いろいろ始めております。そういう時代に変わっても対応できるようにしております。

 そのほか、映画製作による二次利用収入あるいはイベントなどで、放送収入以外で数年前は一〇%の利益を上げよう、今は二〇%以上の放送外収入を入れるようにしております。これから多分その部分が全体の産業界の動向によって三〇%になるかもしれませんし、二〇%いくかという中で経営をしていこうと思っております。

田嶋(要)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

中谷委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田学と申します。よろしくお願いいたします。

 私、民間企業の出身でありまして、三菱商事というところにおったんですが、その同僚及び先輩にNHKのことを伺うと、非常に評判がいいです。NHKの民営化なんてけしからぬぞというぐらいのことまで言われる方がおるぐらい、NHKに対しての支持が高い。

 それはなぜかと申しますと、いろいろ原因はあるんですが、海外に赴任して、NHKばかりを見て、日本語の恋しさを知って、帰ってくるというときになると、何かNHKのファンになって帰ってくる。海外における在留邦人に対してのNHKのプレゼンスというか役割というものは非常に高いんだなということはそういうところからもうかがい知ることができます。

 ちょっと十五分しか時間がないので端的に質問させていただきたいんですが、そもそもNHKの海外放送というのはだれのために行っているとNHK側ではお考えになられているのか、お答えいただけますでしょうか。

橋本参考人 海外放送の目的は二つございます。やはり海外にいらっしゃる在留邦人の方々に対して日本の情報を届ける、これは日本語というものが大変重要でございますが、こういう放送がまず一つあります。それから、海外各国の外国人の方々に日本の事情を知っていただき、相互の理解を深めるというふうな形での日本の情報をお伝えする、こういう放送と、二種類ございます。後者につきましては、英語とか現地語、こういうものを使って放送しているということでございます。

寺田(学)委員 では、ちょっと確認のために聞きますけれども、英語放送を付されているという理由、目的は、海外に住まわれている日本人以外の方にお見せをするために英語及び、今違う言語のことも言われましたけれども、そういう言語を付されているということですか、よろしいですか。

橋本参考人 仰せのとおりでありまして、やはり共通語に近い形での英語の理解率が各国でも高まっておりますので、そういうものをベースにしておりますし、必要な国につきましては各国の言語も使っているということでございます。

寺田(学)委員 それでは、そのような外国に住まわれている外国人の方は、私たちはNHKを公共放送として受信料を払って支えているんですが、その外国の方も公共放送のサービスを受けるべき、NHKの公共サービスを受けるべき対象の方だと思われているということでよろしいんですか。

橋本参考人 海外に対しても日本の実情というふうなものを知っていただく、これは、広く言えば、日本の国民・視聴者からいただく受信料の中から賄って、国際放送にも、わずかですが放送している。そのためには、やはり英語とか各国言語、こういうものを必要とするというふうに考えております。

寺田(学)委員 日枝会長にお伺いしたいんですが、NHKは私たちの受信料で支えられているんですが、海外にいる邦人だけではなく、海外に住まわれている外国の方までも、やはりその財源をもとに公共サービスをして日本のことを知らせるということが必要なんだ、いわば公共サービスを提供すべきなんだというお話を会長はされたんですが、いかが感じられましたか。

日枝参考人 これは、NHKさんの考えで、日本の情報を海外に伝えることがNHKにとって大事だと御判断されたからしたのだと思います。我々が問題にするのは、それによって収入を得たかどうかということが我々の問題でございまして、それに尽きると思います。

寺田(学)委員 一応、日本に住んでいて、公共サービス、NHKに限らず、消防であるとか警察であるとか、もちろんこのような国会も含めて、税金で払って、その負担者がそのサービスを受けるということが大原則だと思っております。

 そういう意味でいうと、橋本会長にお伺いしたいんですが、海外の外国人の方々が公共サービス、公共サービスという言い方はよくないかもしれませんが、ある種、負担者じゃない方が受益すること、負担者との関係でいろいろ問題があると思うんですよね、考え方にいろいろ違いがあると思うんです。その受益者との負担関係において、外国人の方にNHK、英語であるとか何々語をつけてまでお伝えをすることに、公共放送として担われているNHKとして、受益者との関係をどのように考えていますか。

橋本参考人 まず、NHKがどういう根拠で国際放送をやっているかといいますと、放送法の中に、七条で、とにかく、NHKの設立目的の一つとして国際放送を行うことということがございますし、放送法の九条でも、必須業務として国際放送を行うことというのがございます。四十四条では、国際放送の目的として、先ほど申しました、一つは国際理解の促進、それから海外にいる在留邦人の情報提供、こういうことがうたわれているわけであります。

 こういうふうな中で、実際に総事業規模の中でいえば一・八%の規模、これでテレビとラジオの放送を行っております。こういうものを具体的に、例えば、現在こういう状況で行っていますけれども、それ以外に行っていくような場合には、やはり基本的には国内の受信者の方々のコンセンサスというふうな中で行っていかなきゃいけない。現在は、この放送法の中での業務範囲、あるいはNHKの自主的な放送の部分と国の交付金の範囲で行っているということでございます。

寺田(学)委員 今話題になっているのが、海外においての国際放送を強化するために広告収入を得てやっていこうという考え方が一つ浮上してきて、それに対してさまざまな方が御意見を述べられていると思うんです。そこも端的に橋本会長にお伺いしたいんですが、広告収入を得てまで財源を強化して現状の国際放送以上のことを行っていく使命がNHKにあると思われているのか、思われていないのか、どちらでしょうか。

橋本参考人 私は、広告料収入を国際放送に導入したい、NHKがそういう意図を持っているということは申し上げたことはございません。受信料の現在やっている工夫として、しかしできるだけ見聞きしていただきたいということで、英語化率一〇〇%というものを、これからの財務規模の中からスクラップ・アンド・ビルドでつくり上げていって、強化していきたいということを申し上げております。

寺田(学)委員 これも端的にお伺いしますが、今NHKがやっている国際放送の業務というのは現状ではまだ足りないと思われているのか、それとも、いや、もっと拡大すべきだと。財源の問題は問いません。業務の範囲及びNHKの使命として、現状でいいのか、それとももっと広げるべきだと思われているのか。業務のことで結構です。いかがですか。

橋本参考人 国際放送の具体的な程度といいますか、ここにつきましてはいろいろな意見がございます。我々は現在の時点で最大限の工夫をやっておりまして、これ以上例えば拡大するとか、このままでいいとかというふうなところについては、国際放送の目的といいますか、こういうところが具体的に決まらないと、そこの目標設定、新たな設定といいますか、そういうものはできないかと思います。

 私は、現在の状況で、三カ年、英語化率一〇〇%という手段をもって強化していきたい、規模でやっていきたいということを考えております。

寺田(学)委員 では、今お話を伺ったところを簡単に整理すると、現状のままでいい、現状の方向性、英語化率をより拡充していくという、その部分で、NHKとしての国際放送、現状での目的としてはその程度でいいと思われているということですね。

橋本参考人 現在のまま英語化率一〇〇%ということはできません。したがって、当然、スクラップ・アンド・ビルドとか、現状を変えるという、現状の仕事の仕方というもの、業務の進め方、こういうものは見直す必要が当然ございますけれども、そういう中で、限られた財源の中でありますけれども、こういう一〇〇%化という目標を掲げて努力していきたい、いや、それを実現するということでございます。

寺田(学)委員 それでは、現状の今の国際放送のNHKで考えられている内容の中を充実させていくためには、財源としては新たなものを考えるんじゃなく、その中でスクラップ・アンド・ビルドをして充当していきたい、新たな目的が設定されたとしたら、そのときはもちろん他の財源ということを考慮されるという仕切りでよろしいですか。

橋本参考人 先ほど申しましたけれども、国際放送というのは、ただ単に強化という言葉以上に、具体的に、どういうところを対象とする国際放送であるか、どういう目的で行う放送であるか、海外のお客様、在留邦人の方々もそうなんですが、どういう手段で届けるかということによって相当、具体的な目標、内容によって、かかる財源等それから業務の進め方が変わってまいります。そういうものを具体的に意識形成していく中で考えなければならないことであって、ただ単に今のものを変えればいいとか、それだけが先に進む話ではなかろうというふうに思っております。

寺田(学)委員 本当におっしゃられるとおりで、海外、国際放送を提供する相手、その対象の方、及びそれにどのようなものをNHKとして提供すべきなのかというところが決まって初めて財源の話が出てくると思うんですね。

 会長自身は今のような広告論議が活性化してくることを望まれていないのかもしれないけれども、はっきり言って、目的が何ら決まっていなくて、ただ漠然と国際放送を強化したらいいと小泉総理が言われたことをもって、いきなり財源はどうしましょうかという話に行っていることに、受信料を払っている人間としても国会議員としても違和感を覚えていて、そこをまさしく、安住委員が言われていましたけれども、NHKさん自身が主体性を持って目的を策定し、さまざまそこからいろいろな関係各省との取引及び考え方のすり合わせが出てくるんだと思うんです。そういう順序でやっていただきたいなというのが思いであります。

 日枝会長にもう一問お伺いしたいんですが、今のNHKの国際放送の業務及び今橋本会長がさまざま話された業務範囲というものがNHKとしては適正な国際放送としての任務だと思われているのか、いや、NHKとしてもう少し業務としては拡大されてもいいんじゃないかと。財源ベースのことは聞きません。どのようにお考えになられているのか。

日枝参考人 今、三波、国際放送をやっておられると存じておりますが、これが今適当かどうかというのをここで申し上げるのが果たしてどうかというのは、私は内容を見ておりませんし、内容の幅もわかりません。

 ただ、私ども、これは民放連会長ということでなくて、フジテレビもアメリカ、ヨーロッパで国際放送をしております。ですから、NHKだけがやっているわけではないので、民間放送の側の採算、我々は採算で行っているわけでございますので、NHKさんの場合は法律によって国際放送をするということであるわけですから、そういうトータルの議論の中で国際放送はいかにあるべきかというのを考えるべきだと私は思っております。

寺田(学)委員 十五分しかないので、もう終わってしまったので質問ができないんですが、NHKのことに関しては、私自身、非常に大事な機関だと思っています。ですので、役割の明確化というものを、この国際放送しかり。あとは、私が質問したかったのは、番組の二次利用に関してもいろいろ質問がありました。そういう部分に関してもしっかりとしたガイドラインというか輪郭を見せた上で信頼をかち取っていただきたい。そのために私自身も頑張りたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、放送・通信ということではいろいろなテーマがありますけれども、きょうはまず、放送界の皆さんが取り組んでいらっしゃる二〇一一年七月をめどにした地上波アナログのテレビはこれを停止してデジタル放送に移行するという、これは非常に大きな事業ですし、それだけに現状が今どういう状況にあるかということを伺っておきたいと思います。

 それで、NHKも民放も、皆さんの地上波アナログテレビ放送というのは国民生活に非常に深く浸透して、大事なものとなっていると私は思っております。それだけに、デジタル放送への移行が円滑にいかなかったら、これは、そのままアナログ停止となりますと国民生活にとっても大変重大な影響を及ぼすことになってしまうことはもう明白だと思うんです。

 最初にNHKの橋本参考人の方にお伺いし、それから、幾つかやりとりをさせていただいた後、日枝参考人の方に伺いたいというふうに思います。

 NHKは、放送法でもあまねく日本全国において受信できるように放送を行うということ、これを目的として設立されているわけですから、NHKが現在行っているアナログ放送のエリアはデジタルで一〇〇%カバーする、こういうことにならないとやはりまずあかんわけですね。

 第六次デジタル放送推進のための行動計画というのを見ておりますと、これは例えば北海道の例にしても、あくまでもシミュレーションに基づくものですからあれですけれども、例えば北海道の北の方の地域で、電波の方、だからこれは中継基地局ですね、これが二〇一〇年末で九八・二%、共聴、ケーブルで〇・六%ということですから、これで合計しますと九八・八%。要するに一・二%は二〇一〇年末現在では達成できないということになりますね。そうすると、それから七月までの約半年間、この間に本当にその時点でどうするかとなったときには、これはなかなか大変なことです。

 ですから、まずこの点で、なぜ二〇一〇年末で一〇〇%カバー率が達成されるということになっていないのか。これは各県によって皆違いますから、もちろん全国の状況を見せていただいておりますが、例えば北海道の場合にそうだということですが、なぜ一〇〇%になっていないのか、これをまず伺いたいと思うんです。

橋本参考人 この地上デジタルというのは、現在のアナログのネットワークに代替されるものということで、現在アナログでごらんになっている受信者については限りなく一〇〇%カバーするという考え方で、いわゆる置きかえの考えです。したがって、置きかえるに当たっては、やはり非常にきめ細かな手段を必要としまして、我々、直接的な電波発射をベースとしますけれども、CATVだとか、それから現在でも行っていますが、衛星による救済、こういうものも含めて一〇〇%にしていかなきゃいけない。これはただ単にアナログのエリアだけを対象にするんじゃなくて、やはり基本的には全国、世帯があるところは全部カバーという考え方で、それらを複合的に組み合わせて難視は解消していきたい。

 現段階の、第六次のロードマップでは、そこの九八・数%というところまで目指している。しかし現実には、それをさらにCATVとか、それから衛星活用とか、そういうものを含めてカバーしてまいりたいという努力目標で考えております。

吉井委員 実は、これはあくまでもシミュレーションなんですね、コンピューターを使って。NHKの技術力からすれば、発信器搭載車と中継器搭載車その他、機器を総動員すれば、かなり、例えば北海道にしても、現実に実証して何%いけるかということになってくるかと思うんですが、そして、これはシミュレーションですから、もちろん誤差がかなり入っているので、一〇〇%に達する可能性もあるかもしれないけれども、逆に言いますと、九八・八が九五、六%とか、もっと悪いということもあり得るわけなんですね。ですから、二〇一〇年末で一〇〇%いっていますということが現時点で言い切れるのかどうか、この点、ちょっと重ねて伺っておきたいんです。

橋本参考人 非常に専門的な誤差という考え方まで御理解いただいて、大変ありがとうございます。

 シミュレーションには誤差はつきものだというふうなことでありまして、これを乗り越えるのが、やはり実際に現場へ行っての検証実験、こういうふうなものを積み重ねまして、そこの実態がわかった上で、ではそこに対してどういう手だてを加えるかという活動というのは、実はこれからやっていかなきゃいけない。

 その努力の中で実際に、先ほど御質問にも出ましたギャップフィラーというふうなものとか、純粋なCATVだとか、そういうものを具体的に、その地域地域にどういう形で適用できるかということを考えてまいりたいと思います。そういう中では、当然ながらIPネットワークとか、そういうふうなものも新しい技術の手段としては考えられるんじゃなかろうかというふうに考えております。

吉井委員 ギャップフィラーの話もありましたけれども、しかし、NHKの方の、ロードマップをもとにやっていらっしゃるこの計画でも、例えば岐阜県の場合は、共聴、ケーブルが二十六カ所で中継局は二十二局ということで、非常に共聴、ケーブルの比率が高いところですね。

 そのときに、改めて私、NHKの皆さん自身が出していらっしゃる本の中で、会長御自身、技術屋さんで専門家ですから、今さら申し上げるまでもない話であるんですけれども、例えばIPマルチキャストでいったとしても、この場合は、著作権問題とか、技術的進歩ももちろん必要になるんですが、解決しなきゃいけない問題はあるし、それからCSデジタルの場合は、衛星中継器にやはり容量上の限界というものもあるという問題がありますし、CSデジタルでやっていますと、ワンセグの方はせっかく携帯が普及したとしても生きてこないという問題はあります。では、ケーブルテレビの場合はどうかというと、大体、人口密度の低いところは、これまであるものに乗っけるのはともかくとして、新たな設備設置となると非常にコストがかかってくるという問題。それから、では共聴施設は現にあるものを使うということももちろんあるわけですが、そのときにデジタル波が届かないところの問題が出てきますと、そもそも、せっかく施設があっても使いようがないとか。

 そういったことを考えたときに、やはりこれから二〇一一年の七月までに、技術的にも、それからコストの面でもかなりの問題を解決しないと、最初に例えば北海道の例で九八・八%の例を挙げましたけれども、これ自身を達成していくということ自体が現段階ではなかなか大変な問題を抱えているんじゃないかというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。

橋本参考人 まさにおっしゃるとおりの課題を抱えております。やはり、こういうふうなシミュレーションを実現するということの保証を得る作業、それからもう一つは、財政的にいかに低コストでこういうものを行うか、この二つの具体的な努力が、もう検討というより努力が必要だと思っています。

 技術の可能性につきましては、いろいろな手段を組み合わすということで相当可能性は広がってくるというふうに思います。コストの問題も、これは具体的には、民放さんと一緒に電波を発射するところにつきましては共同建設という手段は大変有効でございまして、共同建設を進めることでのコストダウン、それから、そういうふうなコストダウンそのものを実現するための技術開発、これも、現在、NHKの技術研究所等で行っているところでございます。それを組み合わせて、我々は二〇一一年実現に向けて努力しているというところでございます。

吉井委員 二〇一一年七月ということで努力をしていただいているのはよくわかるんですが、努力のままで時間切れになりますと、アナログできちんといろいろ電波を受け取り、暮らしの中で非常に深いかかわりを持ってきた人たちがそこから外れてしまうというようになります。ですから、私は、こういう点では、努力でとどまらない問題があって、現実には、現段階では一〇〇%までにはかなりすき間があるということを今のお話を伺って感じました。

 この点では、日枝参考人に引き続いて伺っておきたいんですが、民放の方も、現在行っておられるアナログ放送のエリアをデジタル放送でカバーするというこの計画について、第六次デジタル放送推進のための行動計画を見ますと、中継塔の整備について検討中というところが非常に多いですね。今月末にはというお話もあるんですけれども、例えば、これも北海道の例で、インターネットで見ることはできますから、北海道テレビは、百六十一の中継局中、二〇一〇年までのデジタル中継局設置は三十三ということですから、あとは、残りが検討中、圧倒的に検討中なんですね。その検討中の内容については、先ほど言いましたように、これはNHKと同じように、他の手段によって本当にカバーできるのかどうかということがまだあると思うんです。

 北海道放送も数は同様なんですが、ほかにケーブルで二地域とか、北海道文化放送も数は同じですが、ケーブルで四地域とか、それぞれありますが、二〇一一年まであと五年と迫っている現在、この中継塔の整備計画がいまだにまだ明らかになっていない。これで本当にうまくカバーできるんだろうかという、これは地域の人々からしても深刻なやはり心配なんですね。

 ですから、この整備計画をまず具体的なものとして、ここはいつまでにどうしますというその計画をいつお出しになって、いつ一〇〇%達成のめどをつけられるのか、このことを伺いたいと思うんです。

日枝参考人 先生御指摘のように、民放はこれから開局するところにつきましては、今月の末までに各エリアごとのロードマップを発表いたします。いつから見られるようになるか、いつから普及するのか、これはお出ししましたときに御説明した方がいいので、今ここで私がどこがどうとは言えません。ただ、一〇〇%というのが、実際問題としてかなり問題点はあると思います。

 そこで、先生おっしゃったように、ワンセグが見られないじゃないかという衛星放送を使うかとか、あるいはIPでいくのかとか、それはデジタル放送は見られるわけですけれども、それらのワンセグがどうなるかという問題は懸案として残ります。これらの問題はこれからの検討事項に入ると私は思います。

吉井委員 時間が来ましたので、もっと突っ込んでいろいろ聞きたいんですが、齊藤先生の方には質問がなく大変申しわけないですが、これで終わらせていただきます。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 参考人の皆様方には、大変お忙しい中、この委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。それぞれ質問いたしますので、簡潔明瞭に答弁いただきたいと思います。

 本委員会の命題は、放送と通信の融合ないし連合という問題について、集中して議論がされているわけであります。そういうふうに言われますけれども、その具体像となりますと、必ずしも我々のイメージとして定着したものはないわけですね。強いて言いますと、ワンセグであるとかあるいはCS放送、こういうふうなものが現時点ではこれに当たるのかな、こういうふうに考えておりますが、この具体像について、放送界のリーダーとしてどのような姿を描いておられるか、NHK会長並びに民放連の会長に伺います。

橋本参考人 まず、デジタルというのは、インフラ的にいいますと、通信的手段それから放送的手段が共通の連結を見るという中で、そこへ乗っかってくるコンテンツというものが非常に縦横無尽に広がりをつくってくる、また形を変えることが、古風な表現ですが、変幻自在というふうなメリットがあろうと思います。そういう中で、国民・視聴者に、いろいろ共通的な基盤の中で、端末の多様性、伝送路の多様性といった形の中で情報が届く、情報空間が広がるというふうな表現になろうかと思いますが、そういう環境ができる。

 そういう中で、NHKとしては、デジタル化のメリットとしまして、やはりこういうワンセグみたいな形で緊急時の報道などを伝送できる、お届けできるような環境が整ってくるのは大変うれしい話だというふうに思っていますけれども、基本的にこれまで非常に固定的な受信方法だったのが移動型のツールになっていく、あるいは家庭主体の情報が個人主体の情報になっていく、そういうふうに対象が非常にきめ細かに情報が届くことができる。また、その受け手の方々のニーズに合わせた情報の使い方ができる。

 そういうデジタル化のメリットを、これからやはり地上放送のデジタル化も含めて、ぜひインターネットあるいはIP手法、そういうものを組み込んだ形で、通信と放送の連携の時代を、いろいろなビジネスモデルを、放送サービスを形づくってまいりたい、開発してまいりたいというふうに思っております。できるだけデジタルの利便性を国民・視聴者に享受していただく、この体制を整えていきたいというふうに思っております。

日枝参考人 今、橋本会長がおっしゃられたことと相違はございませんが、いずれにいたしましても、私が考える放送と通信の連携としつこく言っているわけですが、それにはお互いの、放送と通信の持っている役割、長所をうまく連携し合いながら、国民一人一人のニーズに対応できるような新たなサービスを我々がつくり上げていく。そうしませんとデジタル化の意味がないと私は考えているわけでございまして、それぞれの各社も経営努力の中で新しいビジネスモデルを考えていると思います。

 ただ、非常に多岐にわたりますので、ここで申し上げるわけにはいきませんが、例えば放送と通信の連携の中で出てくるのは、双方向性というのは一つ大きなメリットでございます。それから、さっきの、これは放送だけかもしれませんが、ワンセグという、一セグを使ったこれも一つのメリットでございます。

 それからあとは、使った一つのイメージとして考えていただきますと、ビデオ・オン・ディマンドというのをもう既に私どもの会社でやっておりますけれども、サーバーの中にコンテンツを置いておいて、視聴者が見たいときにそれをクリックして見るというような、つまり双方向ですね、そういうようなビジネスも、それぞれ各社が採算に合うような形のビジネスモデルを今考えている最中でございまして、いずれにしても、採算が出てきますとこれは大きな花が咲くものだと私は思っております。

重野委員 放送と通信の融合あるいは連合と申しましても、利用者にとって信頼し得る情報を得られるか否か、これが公共放送としての決定的な意味を持っていると思うんですね。テレビ放送の持つ社会的インフラとしての安定性、これが最も重要な要素である、このように私は考えておるんです。したがって、これを軽視した融合あるいは連合というものはあり得ない、そういう私なりの認識を持つわけですが、両会長の、テレビ放送の果たす今後の役割、テレビはどういう役割を果たすのだということをお聞かせください。

橋本参考人 今、御質問にありました放送の信頼性、安定性、これはこれまでも放送として希求していく第一の命題であったというふうに思いますし、これはインフラ的にいいますと、やはり同時同報する電波の拡散力といいますか、発進力、それから同一性の保持といいますか、中に乗っかってくる信号を変形されることなく届ける、この同一性という問題というのは、放送の特徴として大変強いものでございました。したがって、これから通信と放送が連携する時代にありましても、我々NHKとしましては、やはり放送というもののこの貴重な特性、これを大事にした上で、電波確保をしながら、通信のよさをあわせて取り込みながら、これは日枝会長の方から双方向あるいはワンセグみたいなお話がございましたが、そういうふうな通信のよさも取り込んだ、同時に、放送の基幹的な非常に重たい役目を果たす、その組み合わせで新しいサービスを開発したいと思います。

 それから、コンテンツにつきましても、やはりインターネットとかいろいろな多種多様な情報が広まっていく中で、やはりNHKとして、署名性の高い、しっかりと自主自律を守った、頼りになる、また安心、安全の情報を届けていって、情報がたくさんの社会にあっても役割を果たせるようにしてまいりたいというふうに思っております。

日枝参考人 先ほども申し上げましたけれども、放送というのはジャーナリズムとエンターテインメントという二つの大きな柱がございます。そして、放送が出す情報に価値と倫理が生まれるというこの放送の機能というのは通信と違う非常に大事な機能でございます。

 つまり、放送事業者、我々がそういう意識を持って、放送に求められている公共性といいますか、国民から信頼されるということがなければ、幾らデジタル化になっても、それから通信と連携してもその価値は生まれないわけでございますから、そうした放送に与えられた責任、公共的責任というものをまず持って連携していかなければならないというふうに考えております。

重野委員 それでは次に、齊藤参考人にお伺いいたします。

 デジタルデバイドの問題で、先生が一九九三年にお書きになっておられます「マルチメディア情報通信絵とき読本」という本がございます。その中で、将来のマルチメディア市場の主要なユーザーは大学生から若手のビジネスマンを中心とする比較的若い世代だと考えられる、こういうふうに論じておりますし、将来のマルチメディアに対して、その利便性への欲求や必要性に疑問を持つ意見も一部にある、しかし、それは一種の世代ギャップ的意見だ、こういうふうに申しております。

 二〇〇四年末の世代別インターネット利用率、これを調べてみますと、六十歳以上が二六%、五十歳から五十九歳が六五・八%と、他の世代より利用率が低くなっております。

 問題は、高齢化社会がどんどん進んでいくわけですが、こういう五十歳以上の世代のデジタルデバイド、これをどう解消していくのかということもマルチメディア社会の重要な課題と私は思うんですが、この点について、齊藤参考人のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。

齊藤参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりのことは非常に大きな問題だと思います。

 現在のIT時代の進展というのは、それまで存在しなかったいろいろな技術があらわれて、そして、それがそこにあると、珍しいものだということではなくて、そのときの、そこに生活しておられる方々ほとんどの仕事の仕方を変え、生活を変えるということであります。そういうことが、技術と生活の変化というのが並行的に生ずるというのが今のIT時代の特徴ではないかというふうに思います。

 そういうときに、自然なこととして、それまで別のライフスタイルに長いこと浸ってきた方々よりは若い方々の方が早くそういうものに溶け込むということは当然であります。しかしながら、同じ時間をかければ、あるいはそれより短い時間でそれが急速に他の層に広がっていくということだと思います。

 そういう意味で、なじみやすい使い方を技術的に考えるということもございますし、それから、場合によって、非常に高齢な方で、いろいろな、目の御不自由になっている方その他も含めて、そういう方に使いやすい技術を開発していくということは同時に並行して進めなければならないというふうに思います。

 しかし、その過程で、若い人から広がり、そしてそれがより広い層に広がっていくその途中で、世代別デジタルデバイドという言葉が使われることもあって、それも現実としてそういうことが起こるということでありまして、それに十分注目して、そして、それを解決するような、技術的な、あるいはそれ以外の手段を講じていくということが非常に重要ではないかというふうに存じております。

重野委員 貴重な意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 時間が来ましたので、以上で終わります。

中谷委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 お三方には、参考人として貴重な御意見を述べていただき、ありがとうございます。

 関連して、若干の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、橋本参考人でございますが、先ほど、受信料の下げどまりといいますか、大体底を打って、これからは回復をしていくんだということで、それがそのとおりで推移すれば大変結構なことだと思っておりますけれども、私は、将来、この問題を展望して、必ずしも楽観を許さないな、そういう気持ちを持っております。

 私の世代あるいはそれ以上の高年齢層になりますと、NHKに対する信頼というのは非常に強いと思います。それから、地方、過疎地、離島等についても特にそういう傾向は強いだろうと思っておりますけれども、大都市で居住しておられる、多種多様な刺激があり、またメディアについても多種多様な選択肢を持っている、そういう若い世代からしますと、もうNHKの番組を見ても全然おもしろくない、もうNHKは切ってもらっても構わぬというような、極端な意見を持っている人もかなりいるわけですね。

 そういう人たちがいずれ社会の大宗を占めるということになってくるわけですから、このNHKをどうやって若い人たちの間に一つの存在意義というものを徹底していくかということは相当な努力が要ることだと私は思うんです。

 ところが、その受信料をいかに確保するかということに集中をしてしまいますと、若い人たちにむしろ受け入れられやすい、若い人たちが好む、そういう番組をつくればいいんだ、そういう方向に進んでしまう危険がある。そうなりますと、まさに民放と同じような視聴率競争の世界にNHKみずからが入っていくことになってしまって、それをやりますと、今度は、本来NHKを信頼してきた多くの視聴者というものを失ってしまうことになりかねない。それはもうまさに元も子もない話だと思うんですね。ですから、私は、どういうやり方で受信料収入を確保していくかということは、よくよくNHKのスタンスをきちっと決めていただかないと難しいだろうなと。

 そこで、私は、やはりただ単に娯楽性の高い番組をつくればいいということではなくて、また、お金さえかければいい番組ができるということでもないと思うんですね。やはり若い人たちが関心を持つ、そういうテーマをとらえて、社会意識を持てるような、そういう啓発をしていくためのすぐれた番組をつくっていく、そのことをやはり私はもっともっと心がけていただきたいと思うんですが、そのことについての橋本参考人の御意見を承りたいと思います。

橋本参考人 若い人をどうキャッチするかということはNHKでも大変重要な問題で、しかも、今に限らず、昔からある問題でございます。

 やはりここの点につきましては、我々、放送番組の中で若い人を引きつけるテーマ、こういうものをいかに選ぶか。当然、番組のつくり方というのはNHKとしての考え方によったつくり方があろうと思います。こういう点では、今、大変財政的にも厳しいわけでありますから、工夫しながらつくらないといけないわけでありますけれども、いずれにしても、テーマが大変大事だと思います。

 それともう一つは、若い人という場合には、やはり大変自分というものを大事にする考えがございますから、視聴者参加型番組とか、こういうふうな企画というのは大変賛同を得る企画である。こういうふうな番組制作の手法、テーマの選定、こういうところでいかに若い人をキャッチアップするかという努力をこれからも続けてまいりたいと思います。

 それから、それ以上に、小さな幼児、青少年、児童を対象とした番組からNHKとのきずなといいますか結びつきを強めていく、そういう番組等もつくって、できるだけ年代層を広げてまいりたいというふうに考えております。

亀井(久)委員 時間がありませんので次の質問に移りますが、受信料をもっと下げるべきだ、また下げられるんじゃないかという意見も一部にはあるわけで、その中に、NHKが保有しているチャンネル数が多過ぎる、そういう話が出てくるわけで、チャンネルを削減すれば受信料を下げられるんじゃないかね、こういう話もあるんだと思うんです。

 しかし、受信料を下げるというようなことに集中をしてしまいますと、何かチャンネルの削減ありきみたいなそういう話になってくるわけで、やはりNHKの保有メディアというものは、それぞれ異なった役割を担っていると思うんですね。

 ですから、その異なったそれぞれの役割というものがどういうものなのかということを、やはり明確に一つのメッセージとしてNHK全体として出していかないと、何か総理がチャンネル数が多いぞみたいなことを言うと、それをNHKがもう既に、先ほどもほかの委員の指摘にありましたけれども、のみ込んでいるんじゃないかというように思われては困るわけで、やはりそれぞれが異なった重要な役割を果たしているんだというメッセージを積極的に出されていくということは非常に大事なことだと思います。それぞれの役割を一々伺う時間がありませんので、またの機会に譲りたいと思いますけれども、私の要望としてそのことはお伝えしておきたいと思います。

 それから、国際放送についてですが、これも何か総理が意見を言われたというようなことのようですけれども、NHKと同様にイギリスのBBC、これは私自身は大変高く評価しております。

 それで、私の友人のイギリス人なんかに聞きますと、あそこのBBCというのは、とにかくどこの政権、労働党政権だろうが保守党政権だろうが、非常にBBCを嫌がっているんだ、そういう話をよくするんですね。サッチャーさんがサッチャー改革をやったときにもかなり批判的なそういう番組もつくったし、また、現在のブレアさんでも、かなりBBCは意識して、また嫌がっているところもある。やはりそこに国民の信頼性というものがつくられてきていると私は思うんです。

 ですから、広告収入を求めろとか、あるいは国の交付金をもっとふやして国営放送的なものにしてしまえとか、そういう意見も出てきていると思いますけれども、私はやはり、NHKの基本的な公共放送としてのスタンス、これは国営放送ではないわけで、私に言わせれば国民経営と言ってもいい、そういう経営形態をとっているわけですから、そのスタンスというものを明確に持つことが大切で、国際放送で妙な方向に行くことによってNHK全体のスタンスというものがゆがめられるようなことがあってはならないだろう、そのように思いますので、そのことについて一言承りたいと思います。

橋本参考人 国内放送にしても国際放送にしても、やはり公共放送として信頼されるということは、視聴者の方々の視点から番組をつくる、届ける、そういう姿勢、自主自律、公平、そういうものが大変大事な根幹であろうと思っています。

 これからいろいろな機会があろうかと思います。そういうことでぜひ視聴者の方々にも御説明し、今後の改革といいますか改善の中でも、それを第一に取り組んでまいりたいと考えております。

亀井(久)委員 次に、日枝参考人にお伺いしたいんですが、先ほど日枝参考人は、エンターテインメントとジャーナリズムということを言われた。それから、公共性ということについては、NHKと同様に公共性を持っているということもおっしゃった。また、国民の知る権利にこたえる、そういう趣旨のこともおっしゃったわけですが、私は、国民の知る権利ということに関して若干御意見を承りたいと思うんです。

 国民の知る権利というのは、憲法のどこを読んでもそういう文言はないわけで、憲法の大きな柱である基本的人権を尊重するということ。それから、旧憲法下において、国家権力が個人、国民の権利を侵害するようなところがあった。その反省から新しい憲法がつくられたわけでございますから、権力がその権力を濫用したり、また国民の権利を不当に侵害するようなことがあってはならないので、権力がどういうことをやるのかということを常に国民として知る権利がある、それにこたえるメディアの公益性もあるんだ、そういう整理を私はしているわけですね。

 ですから、個人情報保護法という法律、今、大分そのことによって社会が混乱しておりますけれども、その法律をつくるために、私、かつて与党のPTの座長を務めた経験もございますけれども、こういうことを大変私は重要に考えておりまして、その国民の知る権利にこたえるという公益性を持っているんだ、それからまた一方で、憲法に保障されている言論の自由、出版の自由等の表現の自由はこれは保障されているんだ、そこをまさにメディアとしてはよって立つ基盤にしているんだと。

 そういうことでございますから、私はそのメディアの一つの役割というものは十分わかっておりますけれども、同時に、国民にはそれぞれプライバシーというものがあるわけで、やはり人のプライバシーをのぞき見したいという気持ちもだれでも多少はあるのかもしれませんけれども、やはり国と国民との間で今のような整理になるわけで、お互い国民同士ということになれば、これは知る権利があると同時に知られたくない権利もあるわけでございますから、お互いにそのプライバシーというものは尊重しようというのは当然のことだと思います。

 そこで、かつてBRO、そして今BPOというように組織が変わっておりますけれども、やはりメディアについては、そういう憲法上保障された表現の自由、言論の自由、報道の自由、そういうものがある。そういう公益性を持っているがゆえに、またその知る権利にこたえるという公益性を持っているがゆえに、いかなる政治的な干渉も受けてはならないんだということを常に主張されるわけで、私は、それはそれなりによく理解をしております。

 しかし、それだからこそ、やはりメディアには、自主的に規制をするというところが一番重要な視点だというように思っておりまして、どこからも干渉されない、しかし、同じ日本国民として憲法というものを守らなくてはいけないというのは当たり前の話で、基本的人権の尊重というものは、言論の自由を尊重するのと同じようにやはり尊重されるべき権利でございますから、そこのバランスをどうとるかということをやはりメディアは自主的に判断をされるべきだというのが私の基本的な考え方でございます。

 そういうことから、BROをつくっていただきたいということもお願いし、それが単なる苦情処理機関ではなくて、もっとその機能を強化して、やはりメディアの側に過剰報道とか偏向報道とかそういうおそれがあるようなときには敢然として自主的な勧告を出していただく、そういうようなところまで高めていけば、私は、民放また放送界全体に対する国民の信頼というものももっと強まってくるのではないかというように思いますが、その点についての民放連の会長としてのお考えを承りたいと思います。

日枝参考人 ただいま亀井先生から、テレビあるいは言論、表現の自由、言論機関に対する包括的な、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 その中で、プライバシーの侵害、これはあってはならない、もちろんのことであります。これにつきましては、今先生お話しのように、もし当事者同士が話し合いがつかなければBPOに持っていく、それでもだめな場合には法的な諮問をするという一応の形で、自浄作用で直していくという形が今とられております。

 それから、知る権利につきましては、もう申し上げるまでもなく、言論、表現の自由あるいは健全な民主主義をはぐくむためには、やはり知る権利があって言論の自由が保障されているからこそ健全な民主主義ができると私は思っております。

 そういう観点で、我々民放といえども、先ほどから申し上げましたように、公共的責任というものを十分理解しているつもりでございますから、今後とも、プライバシーの侵害には注意すること、それから言論、表現の自由との兼ね合いでどうするかというような問題も、十分慎重にかつ自律的にも放送を通じて行ってまいりたいというふうに思います。

 貴重な御意見、ありがとうございました。

亀井(久)委員 齊藤参考人にもお伺いしたいことがあったんですが、もう時間になりましたので、今回は、大変失礼でございますけれども、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、参考人の皆様方には、大変貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

     ――――◇―――――

中谷委員長 この際、御報告いたします。

 去る七日、議長より本委員会に送付されました、議員中川正春君外五十名からの三位一体の改革に伴う地方公共団体の財政への影響及びその調整に関する予備的調査の要請につきましては、理事会の協議により、衆議院規則第五十六条の三第三項によって、本日、調査局長に対し、予備的調査を命ずることといたしましたので、御報告申し上げます。

 次回は、来る十五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十三分散会


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