衆議院

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第13号 平成18年3月17日(金曜日)

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平成十八年三月十七日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 中谷  元君

   理事 佐藤  勉君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 後藤  斎君

   理事 渡辺  周君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    飯島 夕雁君

      石原 宏高君    岡部 英明君

      奥野 信亮君    加藤 勝信君

      上川 陽子君    木挽  司君

      桜井 郁三君    笹川  堯君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    谷本 龍哉君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      永岡 桂子君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      松野 博一君   山本ともひろ君

      渡部  篤君    安住  淳君

      逢坂 誠二君    田嶋  要君

      田村 謙治君    寺田  学君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      横光 克彦君    富田 茂之君

      古屋 範子君    吉井 英勝君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   総務副大臣        菅  義偉君

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   総務大臣政務官      古屋 範子君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      佐藤 壮郎君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            竹田 義行君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   清水 英雄君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 辰野 裕一君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         石原 邦夫君

   参考人

   (日本放送協会会長)   橋本 元一君

   参考人

   (日本放送協会理事)   原田 豊彦君

   参考人

   (日本放送協会理事)   小林 良介君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中川 潤一君

   参考人

   (日本放送協会理事)   小野 直路君

   参考人

   (日本放送協会理事)   衣奈 丈二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   西山 博一君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     笹川  堯君

  谷本 龍哉君     松野 博一君

  永岡 桂子君     飯島 夕雁君

  橋本  岳君     石原 宏高君

  安住  淳君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     永岡 桂子君

  石原 宏高君     橋本  岳君

  笹川  堯君     加藤 勝信君

  松野 博一君     谷本 龍哉君

  田村 謙治君     安住  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     石破  茂君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第九号)

 独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案(内閣提出第二四号)

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)

 通勤の範囲の改定等のための国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

 独立行政法人の組織・業務の見直しに関する件


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     ――――◇―――――

中谷委員長 これより会議を開きます。

 第百六十三回国会、内閣提出、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案及び内閣提出、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案の両案を議題といたします。

 両案に対する質疑は、去る十五日終了いたしております。

 これより両案に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。

後藤(斎)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案については賛成、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案については反対の立場から討論いたします。

 まず、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案の賛成の理由を申し述べます。

 消防研究所が担っている消防防災に関する研究事業は、国民の生命財産にかかわる重要なものであることから、国の関与が不可欠であります。したがって、消防研究所を国の組織に統合する本法案には賛成であります。

 一方、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案の反対の理由を申し述べます。

 本法案は、機構の職員の身分を単に公務員から非公務員に変えるだけのものであり、機構の研究開発事業をいかに適正なものにしていくかという観点が十分ではありません。

 非公務員化するのであれば、運営費交付金など国からの財政支出を減らすために、事業のスリム化や人件費削減に努めなければなりません。しかし、本改正は、機構の情報通信政策における重要性を強調しつつも、事業の必要性と財源の確保の見通しが中途半端であり、研究成果の検証や費用対効果に関する情報の公開も不十分であります。

 また、機構の職員が非公務員となれば、現行の天下り規制の対象から外れることになります。その結果、機構を経由した天下りがふえるなど、民間企業との不適切な関係が危惧されます。

 よって、さまざまな懸念だけを残す本法案には反対であることを申し述べ、私の討論を終わります。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、二法案のうち、まず独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。

 反対する第一の理由は、機構の基礎・基盤的研究は、直ちに企業利益に結びつかなくても、国として必要な研究分野であり、これは本来国の責任で行うべきものであります。職員の非公務員化は国の責任をあいまいにしてしまうから、反対をいたします。

 機構の研究業務の中には、時刻や周波数などの物差しである標準時の設定・通報や周波数標準値の設定、標準電波の発射という重要なものがあります。周波数や時間のもととなる国家標準値を定めるもので、極めて公共性が高く、本来国が行うべきものです。国の責任という観点から、こうした業務を行う職員の非公務員化は認められません。

 第二の理由は、非公務員化により、研究環境の不安定化が進み、基礎・基盤研究の後退を招くおそれがあることであります。

 独立行政法人に関する有識者会議は、〇四年十月に、研究開発・教育法人について、民間を含めた人事交流を促進する観点からも非公務員化を積極的に推進すべきとしており、本来国が行うべき基礎・基盤研究になじまない商品開発第一主義とでもいうべき民間的効率化が進行しかねません。

 基礎・基盤研究を行う国の研究機関であった通信総合研究所を独法化し、大企業を中心に研究補助金などを交付するトンネル団体の性格を持たせ、情報通信研究の実用化を支援してきたTAO、通信・放送機構と統合し、あわせて非公務員化を図るという手法で、国が行うべき公共性の高い基礎・基盤研究の土台を掘り崩していくことは認められません。このことを強調するものであります。

 なお、独立行政法人消防研究所解散法は、国の機関に戻す法律であり、賛成します。その場合、研究員を削減することなど研究機関の後退につながることはやってはならないことを付言して、討論を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案に反対、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案に賛成の立場で討論を行います。

 独立行政法人情報通信研究機構について、反対の理由を申し上げます。

 第一は、今回の措置が朝令暮改に過ぎる点です。独立行政法人情報通信研究機構は、現行の独法になってまだ一年少ししかたっていないにもかかわらず、見直しが行われることになりました。特に、通信・放送機構からの職員は、民間から公務員型独法に統合され、今また民間に戻れというのは余りにも御都合主義です。

 第二に、非公務員化が機構の行う試験研究に大きな影響を与える懸念がある点です。非公務員となることで身分の安定が失われ、より効率性や成果が重視されることになれば、かえって基礎研究がないがしろにされるのではないか、企業との癒着が進むのではないかなどの疑問がぬぐえません。

 第三に、周波数の標準値の設定及び標準時の通報など国民生活の基本となる仕事や、電波の伝わり方、観測予報、情報通信技術の基礎的な研究開発などの業務の高い公共性です。「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他」に該当するがゆえに公務員型の特定独法とされた経緯があり、機構の事務事業が変わらないのに、役職員の身分だけが非公務員化されるのは問題です。

 なお、独立行政法人消防研究所については、災害発生直後から初動し、生命や身体に危険が及ぶ可能性が高い第一線で消防庁や消防警察機関などと一体となって活動する場合があることなどから、国家公務員から成る組織となることは当然です。その点では法案について賛成する立場ではありますが、ただ、人員の半減が消防防災に果たす役割を損なう懸念もなしとはしません。また、法案で解散を決めるものの、その後のあり方について政省令に丸投げしようとすることは立法形式として問題が残る手法であることを指摘し、討論を終わります。

中谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより採決に入ります。

 まず、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、岡部英明君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。岡部英明君。

岡部委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法施行に当たり、次の事項に配慮すべきである。

 一 政府は、独立行政法人情報通信研究機構(以下、「機構」という。)の業務の評価を適切に行うとともに、機構は、情報通信技術の研究開発の国のセンター機能としての役割を果たし、国の政策と密接に連携すること。

 二 機構は、非公務員型の独立行政法人となることのメリットを生かし、内外から広く優秀な人材を集め、さらに研究開発を充実させ、情報通信分野の発展、国際競争力の強化に寄与すること。

 三 機構は、業務の一層の効率化を図り、研究開発予算の費用対効果の最大化に努めること。

 四 情報通信は国民の重要な社会基盤となっていることから、機構は、その公的な役割を認識し、研究開発を通じて、安心、安全で豊かな国民生活の実現に貢献すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

中谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 次に、内閣提出、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、谷公一君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。後藤斎君。

後藤(斎)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、独立行政法人消防研究所を解散し、その事務を国が引き継ぐに当たっては、次の事項について十分配慮すべきである。

 一 新しい災害や被災の様相の変化に対応する消防防災の科学技術の向上が急務とされていることを踏まえ、独立行政法人消防研究所が果たしてきた機能を損なうことのないよう、今後においても、その充実・強化を図るとともに、行政評価制度の活用等により、業務の継続的向上が図られるよう、特に留意すること。

 二 消防本部に置かれた研究部門との連携を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

中谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、両附帯決議について総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 ただいまの両附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

中谷委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

中谷委員長 次に、行政機構及びその運営に関する件について調査を進めます。

 この際、土井亨君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による独立行政法人の組織・業務の見直しに関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。土井亨君。

土井(亨)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人の組織・業務の見直しに関する件(案)

  政府は次の事項について配慮すべきである。

 一 独立行政法人については、行政改革推進の観点から、絶えず見直しを図り、事業の効率化、不要な事業の廃止、組織の統合等を推進するとともに、国民生活の安定と社会経済の健全な発展の観点から必要とされる事業については、重点的に充実・強化を図ること。

 二 役職員については、かかる見直しを進める中にあって、役職員総数の縮減合理化を徹底するよう特に意を用いるとともに、各府省からの再就職について厳しく見直しを進めること。

 三 運営費交付金等の国からの支出については、事業、組織の見直しと合わせて、個別具体的な検証を行い、経費の節減合理化を徹底するとともに、必要な経費については確実に措置すること。

 四 財務面においては、法人事業の運営の合理化と透明性の向上の観点から、会計区分の見直し、一般競争入札の下限額の国に準じた見直しを検討するとともに、法人が保有する現預金、有価証券、土地建物等の資産について法人の業務運営上引き続き保有する必要性があるか常時点検し、必要性が乏しいものについては国庫に納付する等適切な処理に努めること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

中谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立多数。よって、本動議のとおり、独立行政法人の組織・業務の見直しに関する件を本委員会の決議とするに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

中谷委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

中谷委員長 次に、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長竹田義行君、政策統括官清水英雄君及び文化庁長官官房審議官辰野裕一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

竹中国務大臣 日本放送協会の平成十八年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入、事業支出がともに六千二百十七億円となっております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出がともに七百五十七億円となっております。また、建設費が六百九十八億円となっております。

 次に、事業計画につきましては、組織及び業務の見直しや放送のデジタル化の推進等が盛り込まれております。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 これに付する総務大臣の意見につきましては、十八年度収支予算の受信料収入が前年度比五百三十八億円の減と大幅に減少したことを遺憾としつつ、協会が放送サービスの充実等に予算を重点配分し、経費削減により事業収支の均衡を維持しており、やむを得ない内容と認めるとしております。

 その上で、収支予算等の実施に当たり、経営委員会は、協会内のガバナンスの強化に向け指導的役割を果たすこと、協会の経営、業務等に関する情報公開を一層積極的に進めること、協会は、受信料回復の具体的目標を設定の上、責任を持って当該目標を達成することなど、特に配意すべき八点を付記しているものであります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

中谷委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長橋本元一君。

橋本参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十八年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。

 平成十八年度の事業運営に当たりましては、改革・新生に向けた三カ年計画の初年度として、公共放送の原点に立ち返り、改革を断行し、視聴者の信頼を取り戻して受信料収入の回復を図ってまいります。あわせて、組織及び業務の抜本的な見直しなどにより経費を削減し、財政の安定を図り、デジタル時代にふさわしい公共放送としての役割を果たしていく所存でございます。

 事業運営の基本となる放送サービスにおきましては、公共放送として、自主自律を貫くとともに、迅速で的確なニュースや質の高い番組など、NHKだからできる放送に全力を注ぐとともに、放送のデジタル化を進め、視聴者の皆様にとって利便性の高い、新しい放送サービスの開発に努めてまいります。

 同時に、受信料の公平負担に向けた取り組みとして、未払いの方などへの対策を強化するとともに、より公平で合理的な受信料体系へ改めてまいります。

 あわせて、受信料をお支払いいただいている方々への新たな視聴者サービスも実施してまいります。

 また、経営委員会の機能強化や執行部の改革など、信頼される公共放送を構築するため、経営の改革を進めるとともに、不正の根絶に向けて、コンプライアンスの徹底に努めてまいります。

 次に、建設計画におきましては、平成二十三年の地上デジタルテレビジョン放送への完全移行に向け、放送設備の整備などを計画的に実施いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千二百十七億九千万円、国内放送費などの支出六千二百十七億九千万円を計上し、収入の範囲内で支出を賄う予算としております。また、資本収支につきましては、支出において建設費など総額七百五十七億六千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額七百五十七億六千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、平成十八年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、NHKの改革に向けたこれらの施策を一つ一つ誠実かつ着実に実行し、デジタル時代にふさわしい公共放送としての役割を果たしていく所存でございます。

 委員各位の変わらざる御理解と御支援をお願いし、あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

中谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩生田光一君。

萩生田委員 おはようございます。自由民主党の萩生田光一です。本日の審議のトップバッターということで、順次進めてまいりたいと思います。

 今、竹中大臣また橋本会長から十八年度のNHK予算のあり方についてお話がありました。

 私は、今NHKが、ある意味では国民の信頼を失い、再建の途上にあるわけですけれども、この一連の不祥事の源というのはどこにあったのか。NHKが公共放送としての使命を忘れ、ある意味では民間と肩を並べるかのような経営をした、そういうことの枝葉でのいろいろな問題が結果としてさまざまな事件を招いてきたんじゃないかなというふうに考えているんです。すなわち、民間の経営感覚というのはこれからのNHKを考えたときに必要なことでありますけれども、同時に、NHKはやはりもっとひたむきに公共放送に徹するべきではないか、こう感じている一人でございます。

 今、大臣の私的諮問機関の中で、NHKのあり方、いろいろな議論をされています。かつては民営化なんということは考えられなかったんですけれども、今ではそういうことも視野に入れる、こういうお話も出ておりますけれども、私は、それよりも、やはりNHKが一日も早く視聴者・国民の信頼を回復して本当の役目を果たすこと、今いみじくも橋本会長が、NHKでなくてはできない放送をしていくんだという、こんな決意も述べられましたけれども、そのことにぜひ期待をしたいというふうに思います。

 そこで、ちょうど二年前にもNHK予算の質疑をしたときに、当時の会長が、未収率、未納率の改善のために一軒一軒歩いてでも回収をするんだという決意を述べましたけれども、その後、そういう姿勢が残念でありますけれども国民には映らないんです。私は、たとえパフォーマンスだという批判をされてでも、役員や職員が一斉に休日返上で受信料をお払いいただけないそういった加入者の方たちの家を一軒一軒回ってでも、NHKのあり方というのをきちんと説明するべきじゃないかなというふうに思っていまして、そういった意味では、経営姿勢が相変わらず問われるところがあるということをあえて指摘しておきたいというふうに思います。

 私は、NHK自身が経営感覚を磨くこと、あるいはバランスシートに常に敏感になること、こういったことはぜひ必要なことだというふうに思いますけれども、だからといって、一方で、民間と同じような視聴率の至上主義に走ったり、あるいはコスト第一主義に走るようなことがあれば、公共放送としての使命を見失うことになるんではないか、そのことを危惧しております。

 たとえ不採算であっても、国民に有益な映像、情報を提供すること、大手資本や政治力に左右されない公平な放送に徹すること、公共放送としての役割をもう一度しっかりととらえて、NHKのあるべき姿をしっかりと示してもらうことが平成十八年度必要なことだということをまず冒頭申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、幾つかの点についてお尋ねをしてまいりたいと思います。

 まず初めに、何度か視察をさせていただきましたNHKの放送技術研究所についてお伺いをします。

 放送法の第九条に基づきまして、もう七十五年の歴史のある研究所、この間、我が国の放送技術の発展に寄与してきたことは評価をしたいと思います。

 大臣もよく研究マネジメントという言葉をお使いになりますけれども、技術革新というのは、一カ所に専門家を集めて同じ価値観のもとにひたすら前へ進むんじゃなくて、いろいろな価値観の人たちが同じ目標に向かって研究をし、その成果物を国の評価として世に出すというのがある意味では研究のあるべき姿だと思いますから、そういった意味では、NHKの技研のあり方というのは私は否定をしません。

 否定をしませんけれども、視察に行っていろいろ見せてもらったり説明を聞きますけれども、確かに大事な研究だし、確かに大事な視点なんだけれども、率直に申し上げて、国の関係機関でも同じような研究をしている、あるいは民間はもっと進んだ部分で技術革新に走っている、こういうある意味ではかぶった研究というのがたくさんあるんじゃないか。NHK技研の役目はもし研究のきっかけづくりでいいんだとすれば、その後のことは民間に任せるべきであって、最後まで研究を貫く、たとえ不採算であっても研究を貫くその必要性がこの九条にはあるのかというと、私は疑問に感じるところでございます。

 具体的には、例えば、ハイビジョン放送、プラズマディスプレー、デジタル放送やFM多重放送、話速の変換等を実績としてNHKはおっしゃっていますけれども、残念ですけれども、世の中に出たときには、これはNHKの研究の成果だとユーザーの皆さんが理解しているものというのはほとんどないんじゃないですかね。それはメーカーの成果物であって、NHKの成果ではないというふうに思うんです。

 私は、こういった研究の内容を含めて、民間とのかぶり、競合についてはどうやって今後整理をしていく必要があるのか、あるいは国の関係研究機関との連携はどう図っていくのか、民間がやるべき研究をNHKがずっとやらなきゃならないというこの必要があるのかどうか、基本的なお考えを聞きたいというふうに思います。

 また同時に、所管をする総務省としては、NHK技研の存在あるいは研究内容についてはどのような位置づけをし、どのような評価をしているのか、総務省側の御意見も聞きたいと思います。

橋本参考人 お答えいたします。

 NHKの運営といいますか、これにつきましては、やはり委員御指摘のとおり、NHKらしさ、これを強く持つことが大事だと思っております。我が国の放送は、民間放送、民放と、NHK、公共放送とのお互いの切磋琢磨で豊かな放送文化を築いてきたということでございます。今後とも、公共放送としてのNHKらしさを強調して運営してまいりたいと思いますし、その一方、経営につきましては、やはり効率的な仕事の進め方、こういうものを追求してまいりたいと思います。

 技術研究につきましては、大変世の中に、医療あるいは産業に対する応用、直接放送以外の広がりも持った研究につながっております。これは、NHKの技術研究所におきましては、国とか大学が行っています非常に学術的な基礎研究と、それからメーカーさんなどが行っているいわゆる商品化、実用化研究、この間のところを埋める、こういう役割を果たしております。

 当然、このつながりのところは、そういう研究機関等と共同研究等も含めて連結を図る必要があるということでありますが、基本的には、放送のニーズというところ、現場に即したものから目的というものを打ち出しまして、その中で、いかにして基礎的な結果を活用し、それを商品化に結びつけるかというところでいろいろ研究しているところでございます。

 今後とも、このような形で国民・視聴者に還元していきたいというふうに考えております。

清水政府参考人 先生御指摘のとおり、NHKが、放送法上には、放送の全国の普及義務ですとか番組提供義務のほかにも、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務というものを必須業務として指定しているところでございます。

 NHKの方におきましては、やはり基本的に、NHKの放送技研では、視聴者ニーズだとか放送現場を熟知した、そういういわば基礎から実用化まで一貫した研究を実施しておりまして、また、実際NHKの中にあることでのそういう放送現場の熟知云々というようなメリットも活用しながら、いろいろな技術開発をやってきているところでございます。

 先生、先ほど御指摘のありましたようなプラズマディスプレーの表示ですとか、デジタル放送方式の新しい開発ですとか、古くはケネディ暗殺のときの衛星の中継、ああいうような中継技術ですとか、そういうもののほかに、最近では、例えば医療現場でも応用されているような高感度カメラ、こういうような開発等々も実際に行われているところでございます。そういう意味では、今までNHKは我が国の放送技術の中では先導的な役割を果たしてきたところでございます。

 ただ、放送技術の研究開発も含めまして、NHKが公共放送全体の中でどういう役割を担っていくべきかについては、大臣の懇談会の中においても検討が進められているところでございます。

萩生田委員 私は、技術研究そのものを否定しているんじゃなくて、やはりNHKの立ち位置というのをもう少し国民にわかりやすくするべきじゃないかな、このことをぜひ提案しておきたいというふうに思います。

 続きまして、海外向けの放送のあり方について、これは大臣にお尋ねをしたいと思います。

 今、大臣の諮問機関では、海外向け日本放送の充実強化という点で、NHKは外資のコマーシャルを導入してもいいんじゃないか、こういう意見も出ているやにお聞きをしております。私は、冒頭申し上げたように、やはりNHKは公共放送としての立場、役割を貫くべきだというふうに思っていまして、たとえ外資といえども、あるいはたとえ海外放送といえども、コマーシャルの導入というのはいかがなものかなというふうに考えている一人なんです。

 といいますのは、今国会で観光立国基本法、上程ができればと考えているわけですけれども、まさに外国人観光客の皆さんをこの日本に、現在六百万人を一千万人にふやそうじゃないか、こういう努力をしようとしているさなかに、そのツールとして、海外放送というのは日本の魅力を発信する大きな役割があるというふうに思うんですね。すなわち、結果として外国人観光客が多く日本に来ることのきっかけをもしNHKの海外放送が担ったとすれば、これは国策として大きな貢献をするんじゃないかというふうに思っていまして、そのためのインフラ整備として、私は、一定の国費で助けてさしあげることというのは決して国民の理解を得られない問題じゃないんじゃないかというふうに思っています。

 この海外放送につきましては、ぜひそういった視点から充実を図っていくべきじゃないかと思っていますけれども、大臣の御所見をお伺いします。

竹中国務大臣 まず、今の冒頭で萩生田委員がおっしゃった、やはり立ち位置を明確にしろというのは全くそのとおりだと思います。そして、この国際放送の問題を考える場合も、そのNHKの立ち位置というのを、そこから議論を出発させなければいけないというふうに私自身も思っています。

 NHKは、海外への情報発信という非常に大きな使命を担っております。これは、主に今は受信料を財源としましてラジオの国際放送そして国際映像放送を行っているわけでありますけれども、ではそれが十分かというと、大変残念でありますけれども、NHKももちろん頑張ってはいるわけですけれども、同様の国際放送の規模と比較してもやはり十分とは言えないというふうに多くの方が指摘しておられるというふうに思います。

 一方で、では、これからそういう発信をどのように行っていくか。これは小泉総理からもこの点をしっかり考えろという指示を私いただいておりまして、その取りまとめをしなければいけないのでありますけれども、例えば全額を国内の受信料で賄うかというと、これはなかなか国内で受信料を払っておられる方の同意は得られないんだと思うんですね。これは諸外国の例等々いろいろありますので、諸外国の例等々も我々研究しなきゃいけませんが、やはり諸外国の例を見ても、国費を充てるということは私は十分に考えられるのではないかと思います。

 今懇談会でいろいろ議論してくださっているのは、まさに先ほどの立ち位置の威信に絡みますが、ちょっとこれは迂遠な話かもしれませんが、以前、技術専門家の石井威望教授が大変おもしろいことを言っておられたんですが、日本の場合、プロダクトスピークス、つまり、多くの方は日本という国を、非常に優秀な電気製品とか自動車とか、そういうものを通して日本というものを知っていると。つまり、プロダクトといいますか、CMの中で提供されるものにも日本の社会、文化を、そうした総合的な情報発信があるという解釈も実はあるわけでございます。そういう面も含めて、どのように考えていくかという議論はなされてよいのではないかと思います。

 ただ、その場合も、やはりこれは公共放送でございます。その意味で、委員がおっしゃっている立ち位置を鮮明にして考えていくという姿勢は貫かなければならないと思っております。

萩生田委員 時間がなくなってしまって残念なんですけれども、最後に、その立ち位置の関連で、オリンピックの放送についてお尋ねしたいと思います。

 トリノ・オリンピックが終わりました。このトリノ・オリンピックにつきましては、NHKが七割、民放が三割という放送比率で国内放送をしました。これは、ちょっと時間がないので過去のいろいろな経緯をお話しできないんですけれども、民放も放送権は獲得したい。しかし、民放の場合は、視聴率の上がる種目や人気のアスリートについては注目したいけれども、余りそうじゃない番組は放送したくないという都合のいいことを言うわけですね。それで、その割をNHKが担っているんですけれども、私はこれでいいんじゃないかと思うんですよ。

 もし民放がさらにお金を出して番組放映したいというんだったら、視聴率に走らないで、たとえ地味でも、NHKはその余った放送、余った放送と言ったら失礼ですけれども、民間がとりたがらない放送を堂々と放送するべきだと思うんです。そして結果として、その民間とのやりとりの中で浮いたお金で、橋本会長がおっしゃったNHKでなくてはできない放送、例えば荒川静香さんがウイニングラン、日の丸を背負って走ったあのシーンは残念ながら国際放送の中ではなかったわけですね。しかし、現場に技術者がいるわけですから、直ちに編集してそれを国内放送に送る、これが僕はNHKのあるべき姿じゃないかな。あるいは、オリンピック選手として到達するまでの長い間のそのフィルムストックというのを、きちんと番組として、教育材料として、子供たちにも夢を与えるようなもので後日放送する。そういうことでNHKの存在意義というのは示すことができるんじゃないかと思いますけれども、最後に会長の御所見をいただきたいと思います。

原田参考人 お答えいたします。

 まず、トリノのオリンピックでございますけれども、現地との時差は八時間ございましたけれども、大変多くの国民の皆さんに、女子のフィギュアスケートを初め、ごらんいただきました。

 オリンピック、四年に一度のスポーツの祭典ということでございます。国民の関心が大変高いということで、これを全国あまねくという形で放送していく、そして視聴者の期待にこたえるということは、公共放送としてのNHKの役割であろうかというふうに考えております。

 ただ、放送権料の高騰という問題がございます。そのためNHKは、民放の皆さんと力を合わせて、ジャパン・コンソーシアム、JCという形で共同で放送権料の交渉に当たる、そのことで過当な競争での値上がりを防ぐという努力をしてまいりました。その上で、放送では、地上波につきましては、民放とNHKで競技を振り分けて放送しているということでございます。

 オリンピックの放送につきましては、今申し上げましたように、ジャパン・コンソーシアム、これが有効であるというふうに考えておりまして、今後もこうした形をとりながら視聴者の皆さんの期待にこたえてまいりたいというふうに考えております。

萩生田委員 終わります。

中谷委員長 次に、永岡桂子さん。

永岡委員 自由民主党の永岡桂子でございます。

 本日は、橋本会長初めNHKの役員の皆様、大変御苦労さまでございます。

 それでは、早速質問させていただきます。

 NHKは、一昨年に発生いたしました不祥事によりまして国民の信頼を大きく損ねましたが、公共放送としてこの後どのように対策を講じられてきたのか、お伺いしたいと思います。

 まず、NHKの内部規律について伺いたいと思います。

 週刊誌やインターネット上でNHKの中から現執行部に対して批判的な意見があり、内部で混乱を生じているというようなことを耳にすることがあります。もちろん大きな組織ですから、また組織の中にいろいろな専門性を持った集団を抱えているわけですから、経営に対してはさまざまな意見や現在の取り組みに関して批判があるということはある意味では当然だと思います。また、そういう議論が経営委員会等でなされて、具体的な経営方針が練り上げられていくことは、むしろ健全なことであると思っております。

 問題は、まず、NHKにとってこの困難な時期に、NHKを思う内部の意見が適正に吸い上げられているか、公正で透明な内部規律をNHKが持っているかどうかということでございます。この点についての御所見を伺いたいと思います。

 もう一つは、NHKが議論して決定していく経営方針というものが、一般の会社と違いまして国民全体に影響を及ぼす性格を持って、また、その経営方針の実施が受信料によって支えられているという事情による問題でございます。今回審議されている予算案につきましても、NHK内部での議論については、私たちもまた国民も十分に承知しているとは思えません。議論途中の情報についてある程度オープンにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

橋本参考人 お答え申し上げます。

 まず、現在、一連の不祥事以降、我々は改革に取り組んでまいりました。信頼回復ということで、いろいろなテーマ、提案を考え、また実行案を練り上げながら進んできたということでございます。

 この過程でいろいろな意見が確かにございますし、そういうものを、組織全体あるいは広く視聴者の方々の御意見も我々吸収させていただいて、三カ年計画というものをつくってまいりました。こういう中では本当に多種多様な意見がございました。その上で、計画を取りまとめまして、実際にこれを改革に移すという段階でございます。

 これにつきましては、役職員一丸となって、真剣に、わき目も振らず、この改革に専心してまいっております。そういう中で、いろいろな御意見が寄せられる。こういう中で、我々、とにかく改革というものをいちずに実行し、実現していくという、この思い一筋に進めてまいりたいと思っております。

 こういう中で、実際に一番大事なことは、私が図りましたのは、率直に各職場の意見を聞く、特に若手の意見を聞くというふうなことを大変大事にいたしまして、いろいろ職場における、直接、職員との面談における意見吸収、それから私のところへ直接メールで意見、提案を送り込む仕組み、こういうものも行いまして、この計画を練り上げてまいったということでございます。

 これからもこのような風通しのよい状況の中で改革を実行していくことは大変大事だと思っていますし、これからそういう面にも配慮して、一層強化してまいりたいと思います。

 受信料の点につきましては、担当役員の方からお答え申し上げます。

衣奈参考人 お答えいたします。

 収支予算及び事業計画の策定に当たっての議論の過程でございますが、御案内のとおり、十八年度編成に当たりまして、九月段階で新生プランを、経営計画の骨子を公表いたしました。このときに、さまざまな方法によりまして視聴者の皆様の御意見をいただくということをしてきております。私どもにお寄せいただくお電話やメール、あるいは私どもが実施する世論調査などによりまして、視聴者の皆様の御意見を聞かせていただくということをしております。

 また、経営委員会からは予算、事業計画に対する基本的な考え方を指示いただきまして、これを受けて、執行部として議論を行ってきたところであります。この議論は、内部として、十月以降一月までの間に六回ほど行っております。例えば、各部局の要求の概要ですとか、あるいは予算編成方針、あるいは編成要綱、それから御審議いただく、お手元の資料にございますいわゆる予算、事業計画、資金計画というところについて、理事会、経営委員会の審議を経ておりますが、経営委員会については審議内容をホームページに公開させていただいております。十九年度以降、理事会での審議の内容も公開していくことを考えておりますので、さらに充実させていきたいと思っております。よろしくお願いします。

永岡委員 ありがとうございます。

 国民皆、注目しているところでございますので、さらに透明性を高めていっていただきたいと思います。

 次に、NHKの情報公開基準についてお聞きいたします。

 国や独立行政法人は法律によって情報公開が義務づけられております。NHKは、公金によって運営されている公的な団体であることから、自主的に基準を設けて情報を公開していらっしゃいます。この基準は国に準じたものであると言われておりますが、細かく見ますと、必ずしもそうではないようでございます。

 不公開情報のところですが、二件お聞きいたします。

 NHKでは、事業や業務に関する情報であって、開示することによって、NHKの権利利益、地位もしくは事業活動に支障を及ぼすおそれがあるものとなっておりますが、国では、当該事務または事業の性質上、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれとなっております。つまり、国の事業の中で、限定的にある事業分野は、その性質上、公開できないものがあり得るという想定でございますが、NHKの場合は、すべての事業において公開ができない可能性がある、そういうふうに読み取れます。この点、見直す可能性はあると思いますが、いかがでしょうか。

 次に、審議、討議、協議に関する情報であって、開示することによって、その審議、討議、協議が円滑に行われることを阻害するおそれがあるものも不開示になっております。国では、率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれとなっておりまして、NHKの場合には原則、会議の過程、内容も不開示が及ぶと位置づけられているように思えます。この部分の改正の可能性についてお考えをお聞きいたします。

中川参考人 お答え申し上げます。

 まず、一点目のところでございます。

 確かに、事業活動のところでは国の基準とは違う基準になってございます。一点目の、権利利益、地位、この部分でございますが、これは、国の場合は法律で権限が担保されているということがございます。しかしながら、NHKは報道機関でもございまして、新聞あるいは民放、そういったところと、つまり他の事業者といろいろ競争する立場にございます。そういったところから、国の情報公開法でも、国や独立行政法人等以外の法人につきましては、その権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは不開示情報としている、こういう規定がございまして、NHKもこのような考え方でやっているところでございます。

 なお、この業務支障の規定ということはございますけれども、これは乱用せずに厳格に適用してまいりたいというふうに思っております。情報公開を開始いたしました平成十三年から十六年度まで、この業務支障を理由に不開示というふうにしました事案は十七件でございます。開示を求められたうちの七%弱ということでございまして、したがいまして、今すぐこの基準を見直すということは考えておらないというところでございます。

 また二点目の、審議、検討、協議につきましても同様でございまして、表現は国とは違いますけれども、その趣旨、内容については同様のものというふうに考えて運用してまいっております。また、こちらは平成十三年から十六年までで不開示にしたのは一件にとどまっておるということで、これも今すぐ文言を見直すということは考えておりません。

永岡委員 どうもありがとうございます。

 この件につきまして、国民は透明性を本当に求めておりますので、乱用のないようにひとつよろしく実施していただきたいと思います。

 では、次に、財源の徴収についてお聞きしたいと思います。

 現在、NHKでは、不祥事によります受信料不払い契約者に対して、全国に五千人いらっしゃいます地域スタッフ、つまり訪問勧誘員のほか、職員を総動員して、理解を求め、説得に当たらせていらっしゃるようでございますが、それで事態が好転するほど簡単なことではないと思います。

 受信料を払わなくても済むものなら払いたくない、そう考える視聴者が多いのではないかと思います。NHKの契約は義務であるにもかかわらず、その契約が履行されなくても罰則もなければ強制的な手続などもなくて、本当に国民との信頼関係で成り立っているわけでございます。国民の理解、納得を得るにはどうしたらいいのか、事態は極めて深刻であると思っております。

 昨年末より若干は改善の兆しが見えてきたとのことですが、どうしても御理解をいただけない方々には、最後の方法として、放送法を遵守する立場から、この四月以降、準備ができ次第、民事手続による支払いの催促の申し立てを実施するそうですが、その効果についてはどうお考えになっていらっしゃるのか、お聞きいたします。

小林参考人 ただいま御指摘のように、四月以降、準備ができ次第、受信契約を結ばれている方のうち受信料未払いの方につきまして、簡易裁判所へ申し立てまして、裁判所からの支払い督促を実施したいというふうに考えております。もちろんこれも、何度も申し上げたとおりでありますけれども、あくまでも最後の最後の手段である、それまでは誠心誠意、意を尽くしまして御理解を得ていきたいと思っています。

 効果につきましては、明確に数値で見込むことは非常に困難であろうかと思っておりますけれども、この申し立ての対象の方からいただく受信料による効果だけではなくて、視聴者の皆様の間で受信料お支払いについて幅広い御理解につながるものというふうに考えておりまして、そういう面での効果は大きく出てくるというふうに考えております。

 また、お払いいただいていない方をそのままにしておくのは非常に不公平であるという御意見は多数いただいておりまして、そういう声にもおこたえできるものというふうに考えております。

 未契約についても同様の趣旨で考えております。

永岡委員 大変ありがとうございました。

 NHKの未払いに対します不公平感、これは大変国民にとっても不公平であるとともに、非常にNHKに対しての信頼を損なうことと思いますので、これからも一層積極的な努力をしていただきたいと思います。

 きょうはこれで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中谷委員長 次に、木挽司君。

木挽委員 自民党の木挽司でございます。

 昨年、私の地元では、JR福知山線の列車脱線事故が発生いたしました。私の支援者、知人も、けがに遭われた方そして亡くなられた方も少なからずいらっしゃいます。間もなく一年、そうした方の御冥福をお祈りするとともに、またこうした事故が二度と発生しないよう、私も政治家としてしっかり取り組んでいく所存でございます。

 さて、私、きょう、NHKに関する質問をさせていただく中で、そのとき、事故が発生したときのことをよく覚えております。非常にショッキングなことでございましたが、当日のニュース、NHKのニュース10で報道されました。私、NHKを見ておったんですが、そのときの視聴率が、同日同時間に放送された別の民放の放送番組と比べて一〇%近く引き離されていた。NHKの視聴率の方が下だったということですね。

 私、小さいころからの記憶でありますと、私の父なんかはよく、台風が起こった、さあNHKを見よう、地震災害が起こった、さあNHKを見ようと。何かあれば、こういった大きな事故や災害があったとき、皆さんNHKに流れていたと思うんですね。それが、こうした大事故だとか災害のときに、最近、民放に流れておるような傾向が出てきたんじゃないのかな。その内容にもよると思うんですが、昨今の話題になっておりますNHKに対する不信感だとか番組の質に関するところがこうしたところにあらわれているんじゃないのかなと懸念をしております。

 さて、そうした中で、NHKの内部の改革に取り組んでいく。先ほど橋本会長がいみじくも、若手との交流、風通しをよくするんだということをおっしゃっていただきました。そうしたことで、私、NHKの新生プランの中に盛り込まれた受信料にかかわる内容だとか組織のあり方、そういったものにずっと目を通させていただいたんですけれども、そうした論議の中で、さまざまな観点から今までもずっと質問されているとは思うんですが、特に私は、組織内部の改革の取り組みについて御質問をさせていただきたいと思います。

 特に、現場の最前線で働く二十代、三十代の職員が改革の当事者としてNHKの将来を真剣に考える場にするため、経営に直結したプロジェクトとして設置したウエーブプロジェクト、まず、これについて御説明いただきたいと思います。NHKの方からお願いいたします。

中川参考人 お答え申し上げます。

 ウエーブプロジェクトというのは、今先生から御指摘ございましたように、二十代、三十代の職員を中心としておりまして、昨年の四月にスタートいたしました。

 これは、一昨年の不祥事を踏まえまして、NHKの組織の中の風通しが非常に悪い、特に若い者たちの意見が経営に反映されていないというようないろいろな不満が渦巻いておりました。そういうものを受けまして、これは何とかしなくてはいけないということで、改革・新生委員会というのを会長をトップといたしまして設けましたけれども、その下にこのウエーブプロジェクトというものを設けまして、若い人たちが中心になりまして、全国の仲間、職場に呼びかけまして、実は三百余りの改革提案を募りました。それをまとめまして、ウエーブプロジェクトの連中が改革・新生委員会に幾つか提案をしまして、それもやろうということで、今取り組んでおるところでございます。

 なお、このプロジェクトメンバーは、一応コアメンバーが三人でございまして、放送、営業、技術というところでございますけれども、そのほかにも兼務で、さまざまなところから七、八人、常時いて、やっておる。

 それからまた、ウエーブカフェというものをやっておりまして、これは小人数、例えば十人から二十人程度の職員を集めまして、そこに会長以下私ども役員も参りまして、いろいろな意見交換をしていくということを随時やっております。これも二月までで延べ六十回ほどを数えて、そういう中でいろいろな意見を吸い上げつつコミュニケーションを図ってまいりたい、それを改革に生かしてまいりたいという考え方でございます。

木挽委員 ありがとうございます。

 三百件余りの提言があった、この中身を見させていただくと、例として、視聴者対応の改革、縦割り組織の見直し、NHKブランド戦略、地方局の独自編成、支払い拒否への対応、そしてNHKの名前を変えたらどうかというようなことまで含めてあったそうですね。数々、今まででは考えられないような意見も出てきたというふうに承っております。

 こうした動き、NHKとして当然取り組んでいる、内部で改革を積極的にやろうとしておられるとは思うんですが、総務省としてはどの程度把握されているんでしょうか。

清水政府参考人 今先生御指摘のウエーブプロジェクトの関係についての詳細な活動内容については、総務省として承知していない状況にございます。

木挽委員 こうした改革の論議が積極的にされなければならない中にあって、総務省ではそうした内部の改革についてまだ把握できていない。

 今月十三日、竹中大臣の私的懇談会、通信・放送の在り方に関する懇談会の中で、初めてNHK側の意見を聴取されたというふうに承っております。NHK側が受信料制度の見直しや事業範囲の縮小に消極的な姿勢を示した、これまでの懇談会での議論に事実上のゼロ回答で応じたと聞き及んでおります。

 それについては、総務省、間違いありませんか。

清水政府参考人 先生御指摘の通信・放送の在り方に関する懇談会、その三月十三日のヒアリングの場におきましては、NHKの方から、まず、保有チャンネル数等につきまして、テレビ、ラジオ各波にはそれぞれの役割があることから、どの波、どの役割が不要かという具体的な議論を抜きに一概に多い少ないと言えるものではないけれども、八波を、これは地上二波、ラジオ三波、衛星三波のことでございますが、八波を将来とも持ち続けなければならないというかたくなな考え方を持っているわけではなく、総合的に検討すべき課題だと認識している、こういうような御回答をその場でされたと認識しております。

 また、受信料につきましても、その徴収については、支払い督促など現行制度の範囲内で最大限努力し、また公共放送の財源については、実効性ある方法について十分な議論が必要であるという旨の回答があったと承知しております。

木挽委員 ありがとうございます。

 NHK一体となって改革に取り組んでいかなければならない中にあって、そうした内部の、本当に現場で頑張っておられる若手の取り組みというものがまだまだ紹介されていない、これは僕は残念なことだと思っております。

 当然、NHKの改革をめぐる論議の中、私的懇談会のような限られた時間枠の中でさっきのウエーブプロジェクトのような取り組みが紹介されることはないのかもしれませんけれども、特に通信・放送の在り方だとかそうした懇談会の場においては、私ずっと、その経過、そしてさっきの総務委員会での橋本会長のお話、誠実に誠心誠意改革を進めていくんだというお言葉をちょうだいしておりますが、やはりその波動が強いものになって私にまだ伝わってこないんです。

 こうした内部の若手の取り組みこそ、こういうふうにやっているんだ、これからこういうふうに向かっていくんだ、ベクトルをこっちの方向でやっていくんですよというようなことを、もっと僕は外部に向けて発信すべきだと思うんです。

 新生プランのプロジェクトが出たときに、先んじて、そんなものは待っていられないよということで、えてして外部からの追及が非常に先行してあったと思います。その中で戸惑いもあったとは思うんですが、内部でこれだけ取り組んでいる、若手との交流を図っている、そして現場の人の意見を吸い上げてやっていくんだという姿勢があるなら、それこそもっともっと外部に紹介して、NHK改革の姿勢をアピールすべきだと思います。

 私、そういった中でNHK側さんからもいろいろと事情聴取させていただいたんですが、組織の壁があってスピードを求める対応がなかなかできないというような若手の意見があった。ほかにも、NHKの中で仕事をするときには即効性がない、これが非常に問題だととらえている方がいらっしゃる。ある人は、一昨年の十二月十九日の「NHKに言いたい」という放送を見て、視聴者の期待や声を裏切ってしまったと感じた、非常に悲しいと。

 もう一つ、ある女性がこんなことを言っていますね。このウエーブプロジェクトに招集されて、過去の改革プランがその後どうなったのかを知ったとき、要するにそのままだったんじゃないか、改革とは名ばかりだったんじゃないか、私たちこそ本当に新しい改革に向かって努力しなきゃいけないんじゃないか、決意とともに残念だったなという声、生の声がやはり聞こえてきていると思います。

 会長自身、先ほど、若手とのこうした交流、メールでのやりとりということもありますけれども、実際に現場に赴いて、そうした若手との交流というのはどの程度の頻度でされているのでしょうか。お願いします。

橋本参考人 この信頼回復という活動というのは、大変地道に、着実にやっていかなければいけない。しかも、若い職員の力というものは大変大事だというふうに思っています。

 委員冒頭で御指摘ありましたニュース離れとかそれから活字離れ、こういうふうな問題につきましても、やはり若い人の中で解決策を持っている可能性というのは十分あると思っています。その意味では、私、三カ年計画をまとめていくに当たっては、いろいろな職場を回って、ウエーブカフェと先ほども説明ありましたが、こういう中にも入り込んでいろいろ直接意見を聞いてまいりましたし、やはりその熱意というものを大変私も感じてまいりました。

 それはこの三カ年計画の中にも盛り込んでございますけれども、やはりそれを、内外ともにその熱意を、改革の熱意を伝えていく必要は、これからも一層力強くやっていきたいと思っていますし、具体的には、NHKでもこれから定量定時、NHKの経営広報番組といいますか、こういうものを設けてPRに努めてまいりたいと思います。そういう中で、この若手の取り組み、あるいは我々のNHK全体として考えていることをどのように実践していくかというふうな思いをぜひ示して、あらわしてまいりたいと考えております。

木挽委員 ありがとうございます。

 私自身が、倒産に瀕するある機械メーカーを再建してきた、そういう経験をわずかばかりでは持っております。また、商工会議所に勤めていたときもございまして、地域の中小企業の方々の悩みに、実際にその現場に及んで、生の声をお互い交わしながら、実際に現場で取り組んできたという経験を持っております。

 トップの姿勢、経営者の姿勢というものはもちろん大事でございますけれども、そうした現場での若手との交流、ぶつかり合いですね、生々しいものであります、どろどろしたものもあると思いますが、そうしたことが改革に向けた波動ということになるのは間違いないと私は思っております。ましてや、特に小さな会社なんかでは、それでも出入りしているような、周辺の方々ですね、周囲の方々が、そういう動きがあったときに、それをまた肌で感じてくれる、そしてある意味協力してくれるということも体験してまいりました。

 ぜひとも再生NHKには、そうした姿勢とともに、そうした環境づくりにもっともっと力を入れていただきたいと思います。

 時間が参りましたが、最後に竹中大臣、こうしたやりとり、論議を聞いていただいて、御所見をいただければと思います。

竹中国務大臣 大変重要なやりとりをいただいたというふうに思っております。

 考えてみると、NHK、いろいろな不祥事で、内部の方も努力しておられるわけですけれども、普通、政府系機関でこういう不祥事が出ると、やはり非常に厳しい意見が出てきます。そんな組織は要らない、つぶしてしまえ、これは出てくるわけですけれども、考えてみると、NHKではそういう議論は出てこないわけです。やはりそれだけ国民は公共放送に対して非常に期待しているし、NHKに対して期待をしているということだと思うんです。私も総理も公共放送は必要だということを常に申し上げているわけですけれども、ぜひそういう期待にこたえていただきたいと思います。

 木挽委員もおっしゃいましたけれども、私も地方都市で子供のころからNHKのニュースを見て、やはりそれに対しては絶大な信頼感があって、ちょっとオーバーに言えば、日本の良心のようなものをその中に感じてきたと思うんですね。そういうものをぜひいろいろとさらに発展していただけるような努力、これはやはりポイントは、委員おっしゃったような内部のエネルギーだと思います。それを引き出すような経営をしていただきたいし、それが引き出せるような枠組みを我々もつくらなければいけないということだと思っております。

木挽委員 ぜひそうした若手の取り組みが形骸化しないようによろしくお願いしたいと思います。

 これで質問を終わります。

中谷委員長 次に、橋本岳君。

橋本委員 おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。

 きょうは、お忙しいところ、橋本会長初め、また経営委員会の石原委員長にもお越しをいただきまして、ありがとうございます。

 私は、NHKの平成十八年度予算の審議に当たりまして、受信料をお支払いしている国民の一人としまして、NHKが適切で健全な運営をするためいろいろな改革を行っていらっしゃる、その取り組みについて、特に評価というものの活用について御質問をしたいと思っております。

 例えば、公共的な団体、国あるいは地方自治体もそうですけれども、経営改革、改善というのをしないといけないという取り組みは、もう既に多々取り組みがされております。その中でも、行政の場合は行政評価という言葉になるわけですが、そういうような、いわゆるPDCAサイクルを回していくということに大変取り組まれておりますし、それを通じて業務を継続的に改善し続けていく、あるいはこういうような取り組みをしましたよということをきちんと客観的に示すことで透明性を向上させていく、そういうような重要なツールとして、今評価というのは取り組まれていることであります。

 これはNHKにつきましても、やはり同様の取り組みというのは必要なんであろう。もちろん、受信料がどのぐらい支払いがされているか、あるいは視聴率というものによってもある意味で評価されるわけですけれども、公共的な役割を担うNHKというものは、それだけで経営の方向性というのを決めてはいけない難しさというものがありますから、同じような意味で評価というものに取り組むというのは重要なことだと思っています。

 ただ、残念ながら、地方自治体におきましても、ややもすると形骸化をしているような例もございまして、これがどのぐらい適切に運用されているかということが重要だというふうに考えておる次第でありまして、きょうはそのような視点から質問させていただきます。

 さて、NHKさんにおいても、去年の五月からNHK約束評価委員会というのを設立されまして、視聴者の意見や意向をより的確に事業運営に反映させていくため、NHKの掲げる事業運営の目標を約束として示し、約束による活動の達成状況や成果を視聴者の視点から評価するシステムを導入したということとされております。

 これにつきまして、まず、その評価の対象であります平成十七年度の約束、これがどのぐらい達成されているかということを測定されるのが評価委員会なのだろうと思われるわけですけれども、その約束自体が、どなたが主体となってどのように設定をされたのか、それと評価委員会との御関係について、まず確認をさせていただきたいと思います。

中川参考人 お答え申し上げます。

 この約束でございますが、今年度は大きな項目で六項目を掲げております。放送を中心といたしまして、受信料制度それから事業運営等々でございます。これは、会長以下執行部の方で、役員会を初めといたしまして、さまざまなところで幅広い議論を行いました。その上で、経営委員会でもまた御議論いただいて、昨年の六月二十一日にこうした項目をやろうということで決まっております。

 それで、この約束の中身でございますが、これは今年度のNHK事業計画をベースにしておりますけれども、昨年の国会で今年度の事業計画を御審議いただきましたときにつけられました総務大臣意見及び衆議院、参議院の附帯決議、こういったものを踏まえまして作成してございます。

 また、この評価委員会でございますけれども、これは外部の専門の方々三人で構成しております。したがいまして、NHKから一応完全に独立した組織であるというふうにしております。もちろん事務的なことはNHKのところでもお手伝いはしておりますけれども、そういうことで、今、その評価手法も含めまして新たに開発をしていただきながら、実際にその評価を進めていただいているというところでございまして、結果が出るのはことしの六月を予定しております。

橋本委員 事業計画そのほかを初め、そういったものを約束という形でまとめられる、それを評価委員会が客観的に第三者の目で評価されるということであると御答弁をいただきました。

 では、その評価をされるに当たりまして、その評価の方針、あるいは具体的にどのように、資料によりますと、できるだけ定量化し、公正かつ客観的に評価をするというふうにされております。この公正かつ客観的に、あるいは定量化しというのは、少し技術的に難しいところもありまして、例えば、平成十七年度の約束というもの自体は「みなさまにお支払いいただく受信料にふさわしい、豊かで良い番組を充実します。」こういうものが約束になっているものを、定量化するあるいはそれで客観的に評価をするということは、多分何か基準になるもの、目標と比べてそれを上回っている下回っているというような形での評価をすることが定量的で客観、公正な評価ということになると思うんですが、約束というのはかなり定性的にできておりますから、これをどう実現していくかというところで少し難しいこともあると思います。しかしながら、それはそれとして、多少限界もありますけれども、やはり定量的に評価をするというのが大変重要だと思います。

 その中で、委員会としてはどのような方針で評価をされていきたいと考えていらっしゃるか、教えていただけましょうか。

中川参考人 お答え申し上げます。

 実は、昨年の十二月二日に評価委員会の方でその評価方針を記者発表を行いまして公表しております。それまで、どういう形でこの評価をすればいいのかというその手法をいろいろ研究していただいておりました。

 それで、その公表のときのポイントでございますが、一つは、視聴者アンケート、三千人規模の視聴者アンケートをまず実施したいということが一つ発表されました。

 それからまた、視聴者の受益感とか満足感、これは放送に対するものが主でございますけれども、これを定量的にはかる尺度、これをどういうふうに求めるのかということでございます。CVM法という、仮想市場法というものを導入したいということをそのときに発表されました。

 NHKには毎年七百万件を超えます視聴者の方々からのお声をいただいております。その大部分は番組についてでございますが、そういったもの、それからモニター制度というものもございまして、さまざまな番組、ニュース等につきましても御意見をいただいております。それからまた、放送文化研究所では個人視聴率の調査というものも随時やっております。

 こういったものの調査はございますけれども、どうしても、先生御指摘のとおり、若干、いま一つ主観的なところもあって、どうやったら客観的な評価が得られるんだろうかという疑問もございましたので、そこで改めて、先ほど申し上げましたCVM法という、これはすべての満足度みたいなものを例えば経済的価値に、つまりお金に換算して、それでもって例えばNHKが行った放送がどの程度価値あるものなのかということを目安として出して、それで定量的に計測していこう、こういうものだと聞いております。

 それからまた、そういう視聴者の方々の御意見を伺うときの認知度調査、そういったことも必要だということで、いずれにしましても、統計学的に信頼性のある方法に基づいて行いたいという評価方針が発表されたところでございます。

橋本委員 ありがとうございました。

 例えばCVMというお話もありましたが、これは、例えば高速道路を建設するとか、そういうときに事前に評価をするときなどにも用いられるような指標と承知をしております。そういうような形で客観性というのを担保させながら評価をされているということを伺いまして、一安心をしたと思っております。

 さらに言うと、実際、例えばCVMでこういうようなコストが、ある数字が出ましたというものが、それがふさわしいものか、それともまだ足りないものかということを、どこかで基準を決めて判断するということが必要になってきます。この判断基準というものの設定というのが大変重要になってくると思いますので、その六月の評価の報告書を作成される際には、ぜひ御注意をいただきながら作成をしていただきたいと思います。

 さて、それで、六月に委員会から評価の結果が出るということで、今度はNHKさんとしてこれをどのように受けとめて、しっかりと、評価されたものですから、これを改善につなげていかないと意味がない、受け取りっ放しになってはしようがないわけでございます。これをどのような形で生かしていきたいと考えておられますか。

 また、受け取って、いろいろな改善をしました、そういうことをぜひ、受信料を支払っている国民を初め、それからもちろん評価委員会の方々にも、こういうことをきちんとアクションしましたとフィードバックをしていただきたいと思っておりますが、この点について御見解を教えていただけましょうか。

橋本参考人 この約束評価委員会というものを設けたねらいは、やはり視聴者の方々第一、その御意見等を、あるいはお考え、納得度といいますか、NHKの活動に対する納得度というものをいかにできるだけ定量的にはかって経営に反映するかというところがまず大きな役割でございます。

 そういう点で、本当にNHKの執行部とは違う専門家の方々の定量的な評価手法、こういう中で評価していただいた結果については、今後の、具体的には十八年度以降、いろいろこういう活動をする中で、できるだけ早く迅速に可能なものから結果を経営の中へ反映してまいりたいと思いますし、また、それ以上に大事なことは、やはり今御指摘ございましたように、いかにそれを、また視聴者の皆さんからいただいた意見がどう反映されているかということを視聴者の方々にフィードバックするというところが大事でございます。スタートのときから、この活動につきましては、いろいろ報道発表したり、メールをホームページに張ったりとか、いろいろそういう形で公開してございます。

 そういうことについては、この二点でございますが、やはり経営への反映と、それからフィードバックの状況をお示ししていく、この二つは大変重要なこととして今後力を入れてやってまいりたいというふうに思っております。

橋本委員 せっかくの評価結果ですから、ぜひ生かしていただきたいと思っております。

 最後の質問になりますが、この平成十八年度から二十年度のNHK経営計画の中で、「経営委員会に「評価・報酬部会」を設置し、執行部に対する目標管理・業績評価を導入し、評価結果をその処遇に反映します。」「評価にあたっては、視聴者のみなさまの視点に立った評価を行う「NHK約束評価委員会」の」、これはさっき取り上げた委員会ですが、「評価システムを活用します。」ということにされております。

 具体的にどのような形で経営委員会としてこの部会で、その約束委員会の結果も多分受けてだと思うんですが、取り組みをされて、経営改善につなげていこうとされているのか、経営委員長からお伺いできればと思います。

石原参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと存じます。

 もともと役員報酬につきましては、放送法の規定によりまして、経営委員会の議決事項ということになっております。そういった中で、今回の三カ年計画の中で、まさに業務執行に応じた成果を踏まえた上で役員報酬というものを決定したい、こういう思いを込めたものでございます。具体的には、平成十八年度、この業績を評価いたしまして、その結果を平成十九年度の役員報酬に反映したい、こういうふうに考えております。

 これによりまして、個々の役員にとりましては、課せられた役割を十全に果たすこと、また、執行部といたしましては経営委員会に提案するわけでございますので、その際の説明責任をしっかりと果たしてもらう、こういったようなことをねらいとしたものでございます。

 具体的な内容につきましては、経営委員会の中に評価・報酬部会というものを設けまして、経営委員を中心としまして、経営委員数名で構成する、その中で役員の業績報酬に関する審議、これを的確かつ実効性のあるものにする、それを私ども経営委員会の方に提案してもらって決定するというふうにしたいと思っております。

 当然のことながら、NHKの業績そのものもその一項目になろうかと存じますので、ただいまお話ございました評価委員会、そちらからの答申等も参考にし、活用していきたい、こういうふうに思っている次第でございます。

橋本委員 ありがとうございました。

 NHKさんについて、これまでも例えば何か不祥事みたいな出来事があって、それに対応してこういうふうな改善をしますというようなこともあったわけですけれども、やはりこれからは、絶えず改善をし続けていく、経営の執行部の方々にもきちんと成果を上げた分だけ、今報酬にも反映されるというお話でしたので、それに見合った、努力に見合った報酬になるということがやはり経営の改善を続けていくという大きなインセンティブになるものと思いますし、しっかりとこれについて引き続き取り組んでいただきたいと思っております。

 質問を終わります。

中谷委員長 次に、谷公一君。

谷委員 橋本委員に続きまして、経営委員会のことについて幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。せっかく、お忙しい中、石原委員長が来られていますので。

 経営委員会につきましては、言うまでもなく、一連の一昨年からの不祥事で、経営委員会は一体何をしていたのかという国民の声が大変多かったと思うんです。それを受けて、新たな体制で法に基づく適切な対応を期待しているわけであります。

 そういう中にあって、では、今、経営委員会の方の勤務状況はどうかということをお話を伺いますと、非常勤で、定例会議は基本的に月二回だ。さすがに専任のスタッフは昨年の一月に四人設けられて、七月からさらに一名ふえて五人ということであります。そういう現状を、石原社長は東京海上日動火災保険の社長でもあるわけですが、一体、与えられた職責を果たすに十分なスタッフなり体制なのかということについて、まずお尋ねします。

石原参考人 経営委員会がその職責を十分果たしているか、並びにそれを補佐する上での事務局等が十分であるか、こういうような御質問だったかと存ずる次第でございます。

 私ども経営委員会は現在、原則といたしまして、月に二回、定例的な会合を行っております。ただ、その月の二回の会合だけがすべてかと申しますと、実際にはそうではございません。経営委員同士のお互いの意見の交換、あるいは執行部との個別協議等々、実は経営委員会の本会議そのもの以外の中で相当の時間を割いているのが実態でございます。

 一方、経営委員、現在十二人おります。十二人のうちの八名は、全国八地域のそれぞれのところに住居を有する方々から選出されております。さらに四名については、それぞれの分野において知見を持っておられる方、そういう中から選ばれるということになっております。したがいまして、少なくとも、それぞれがそれぞれの領域において知見を持つだけの仕事もしておられる、あるいは活躍もしておられる、あるいはそれぞれ全国の中に住所を構えておられる、そういう中で、現在の二回という会合については、それをさらに例えば週一回とかいうことについてはなかなか難しいのではないか。

 では、それを実効あるものにするためにどうしたらいいかということにつきましては、私も随分腐心いたしまして、その結果といたしまして、まさにインターネットの活用、メーリングの活用等々、クローズドなお互いの情報交換の場をつくりまして、そういったものを補完するということをやっているわけでございます。

 また、一昨年から専任の事務局を設けまして、それにつきましては、人数もふやしてまいりましたけれども、さらにその内容を充実する。例えば、外部人材の活用等々につきまして現在検討を重ねているわけでございます。

 いずれにいたしましても、私ども、課せられた使命の重さ、これを果たすために、それをいかに効率的に実効性のあるものにするか、日々腐心しているところでございます。

谷委員 委員長の持つ、お聞きするところによれば、現場第一主義ということで、今までそういう考え方で会社経営をやってこられ、また企業の社会的責任あるいは法令遵守について大変熱心な方だというふうにお聞きしています。ぜひそういったものを外部から新しい風として、新風を送っていただきたいと思います。

 もう一つお尋ねします。

 経営委員長はもっともっと、例えばイギリスのBBCのように、NHK会長と同じように、NHKの顔となってもっと国民の前に出るべきではないかという声がございますけれども、そういう声というか考え方について、委員長としての考え、あるいは今後の取り組み方針といいますか、お尋ねしたいと思います。

石原参考人 ただいま先生から御指摘ございましたように、実は、イギリスのBBCにつきましても、現在、改革についての論議が最後の段階を迎えようとしております。ついせんだってホワイトペーパーというものが出されまして、その中で、先ほどの受信許可料制度の維持のほかに、経営委員会制度の改革というものが盛り込まれているわけでございます。その中で、現在、経営委員会と執行部との間の関係について、より監督と執行の関係を分離していこう、これがBBCの考え方でございます。

 現在、我が国におきます経営委員会につきましては、放送法制定以来どういう立場になっているかと申しますと、まさに経営と執行の分離の中で現在の経営委員会が行われているわけでございまして、私どもといたしましては、NHK執行部の運営等につきまして監督をしていく、それについていろいろな形での助言、アドバイスあるいはいろいろな形での改善提案をしていくという形でやっているわけでございます。

 したがいまして、執行責任はNHKの執行部にございます。したがいまして、視聴者の皆様方との直接の顔となるという立場においては、現在のNHKの会長ほか執行部の皆さんというふうに現在やっているわけでございますけれども、昨今、そういったコーポレートガバナンスと申しますか、ガバナンス強化ということがさらに叫ばれている昨今の状況でございますので、経営委員会といたしましても、みずからの声というものをいかに発信し、なおかつ説明責任を果たしていくか、透明性を高めていくかということにつきまして、実は私ども、NHKの中でホームページというものをつくりました。経営委員会専門のホームページでございます。一度ぜひごらんいただければありがたいと思う次第でございますけれども、私ども経営委員会の顔が見えるように、なおかつ毎回の経営委員会の論議がどういう形でなされているかをより詳細に、なおかつ発表された方のお名前も出ております。そういう形で出ておりますので、そういった中で私どもとしての存在感をさらに高めていくことが必要なんではないか。その努力を現在している最中でございますので、ぜひ、先ほど申し上げましたように、ホームページをごらんいただいて、その中でまたさらに御批判いただければ、御指導いただければと思う次第でございます。

谷委員 既にホームページは見ました、見させていただきました。最近、個々の委員の名前も出るというふうに変えられたということもわかっております。それでもなおかつ、もっと前に出てほしい、そういう思いでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 BBCの話が出ました。その話の方に移ります。

 先ごろ、今週の火曜日ですか、イギリスの政府はBBCの向こう十年のあり方を提言する報告書を発表され、今委員長の話にもございましたように、十年間の受信料制度の維持、それと執行部門と独立したトラストと呼ぶ監督組織を設けるというようなことが発表されたところであります。

 このBBCの経営委員会のマイケル・グレード会長は、BBCは公共の利益のためにだけ運営され、支払った金に見合う価値と質の高いサービスを提供しなければならないということを常に述べておられる。あるいは、ある大学教授によると、BBCは国民が支払ったお金に見合った価値を届けているかということを、そういう考え方が職員の間に徹底しているというふうに聞いているわけでございます。

 さて、橋本会長、そういうBBCの職員に比べてNHKの職員はどうでしょうか。

橋本参考人 BBCは本当に世界に冠たる公共放送としての役割を果たしていただいていると思っていますし、NHKもBBCに負けないように公共放送としての使命感を持って働いてまいりたいと思います。

 その意味では、こういうふうなそれぞれ社会の変革の中で公共放送としての役割が問われている、そういう中でのBBCの改革ということも含めまして、NHKみずから公共放送の使命感を職員全体に持つように、内外ともにしっかりと共有の精神として持つように、我々執行部としても努力してまいりたいというふうに考えております。

谷委員 前に、NHKの永井副会長が、我々の手本はBBCだという記事を読んだことがあります。私も、正直な話、十分把握しているわけではないんですけれども、見る限り、やはりNHKが学ぶべき姿がBBCの中にもあるのではないかと思っておりますので、ぜひ世界のBBCに負けないNHKになっていただくように頑張っていただきたいと思います。

 最後に、やや実務的な話、NHKと子会社、関連会社との話に移らせていただきたいと思います。

 三千万円以上の多額の子会社、関連会社との取引というデータをNHKさんにお願いしますと、一千億を超えている、一千四億。平成十五年も十六年度も変わらない。そのうち随意契約は、件数で九四%、金額で九八%。逆に言うと、いわゆる競争契約というのはほんの一%強にすぎないという状況にあります。

 あるいは、いわゆる天下りといいますか、NHKの関連団体、これは子会社とか関連会社、関連の公益法人などを含めるわけでございますけれども、その常勤役員の方が百七十三名、そのうちNHKの出身者は百五十名、八七%がそう。ほとんどがOB、百四十六名という状況で、ほとんど変わっていない。

 経営委員長、こういう状況についてどうですか。やはりいろいろなプランを見ても、もっと競争契約を導入するということも明記されておりますけれども、余り改善が見られないというふうに思うんです。

石原参考人 ただいま先生御指摘ございましたように、子会社等関連団体との取引につきまして、その透明性を高め、さらに効率的な運営をしていくという観点から、競争契約等の推進ということにつきましては三カ年計画の中の一つの項目として入っているわけでございまして、そういった観点から、私ども経営委員会といたしましても、NHKの運営につきまして目を光らせまして、監督してまいりたい。

 さらに、競争契約を推進する、あるいは今先生がいろいろお話ございましたような点についての疑問を払拭できるような形で対応していくことも必要なんではないか、こういうふうに思っている次第でございます。

谷委員 私は、何もNHKの方がうらやましいとかそういうことではなくて、そういう子会社、関連会社との取引の透明性を高めないとやはり信頼回復への道というのがなかなか困難になる、そういう思いでございますので、もう質問は終わりますけれども、どうか会長、この点についてもきちんと汗をかく覚悟で頑張っていただきたいというふうに要望いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口でございます。

 先ほどから議論を聞いておりますと、NHKの職員の不祥事等がございまして、かなり信用が失墜したわけでありますけれども、その失墜した信用を回復しようということで、橋本会長を中心にして、今NHKが改革を進められている。これは大変すばらしいことで、ぜひ国民の信頼を回復していただくために頑張っていただきたいと思う次第でございます。

 公共放送は非常に、先ほど竹中大臣もまさにおっしゃっておられたように、重要な使命を担っていらっしゃるわけでございますし、民間とは違う観点で放送していただいておるわけでございますから、ぜひそういう信頼を回復していただきたいというふうに思う次第であります。

 きょうは非常に時間が短いので何をしようかと考えたわけでありますが、先ほど谷議員がおっしゃった経営の透明化についてお話をお伺いいたしたいというように思うわけでございます。

 総務省の有識者の放送政策研究会というのがありまして、平成十三年の十月に論点整理が行われております。この中でも言及されておりますけれども、NHKの子会社等のあり方について言及されておるわけであります。経営の透明性ということからしますと、子会社のありようも透明性が当然求められるわけでございまして、その論点整理の中には連結決算のことを言及しておりまして、そんなこともございまして、今NHKでは連結決算を導入されておられるわけであります。

 それで、この連結決算の状況を見せていただいたわけでありますが、十六年度の連結決算の状況を見ますと、連結子会社が二十三社、また連結対象の関連会社が四社、合計二十七社持っていらっしゃるわけでございます。塩川さんがおっしゃって大変有名になった、母屋でおかゆをすすって、離れですき焼きを食っておるというようなことのないように、やはり国民は大変心配しているところもありますから。

 そういう観点で見てまいりますと、私、この二十七社全部、決算書を見せていただきました。概括的に申し上げますと、過半が、総資本に占める自己資本の比率、自己資本比率といいますけれども、これが五〇%を超えておりまして、非常に財政的には立派な子会社が多いわけでございまして、二十七社すべてが利益を計上しておられるわけでございます。

 そんな状況の中で、本体のNHKが受信料の未収等で業況が低迷をいたしております。その状況の中で、このNHKグループ全体が、本体の方は経営の緊張感を持っておられても、NHKグループ全体の経営の緊張感を持っていただかなければならないと思うわけでございます。

 そういうようなことで申し上げますと、このグループの配当政策は一体どのような考えのもとで行われておるのかということが気になるわけでありまして、ちなみに、ちょっと私、気になるところだけ引っ張ってまいりましたが、例えば、子会社のNHKテクニカルサービスという会社がございますが、この会社は約十三億円強の処分対象の利益がありますが、これを配当しないでそのまま繰り越しておるわけであります。また、関連会社でありますが、放送衛星システムというところがありますが、ここも二十八億弱の未処分利益がありますが、これをそのまま繰り越しておられるわけでございます。これを配当しますと、NHKの方にも収益が当然ながら上がるわけでございます。

 まず初めに、そういう配当政策について、グループとしてどういうお考えを持っておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

橋本参考人 詳細の説明は担当の方から後ほどさせますけれども、子会社につきまして、この配当の考え方、現状、おっしゃられるとおり本体が大変厳しい中で、本体だけが、母屋がおかゆばかりじゃ困ります。そういう点で、具体的にこの配当政策というものも現在見直しております。

 これは三カ年計画の中にも盛り込んでございますけれども、具体的には、やはり配当をNHK本体に十分返す方法、それからまた子会社自身も役員の退職金をやめるとか、それから業績評価型の報酬に変えるとか、こういう施策を取り込んでまいりたいと計画しております。それから、子会社自身の将来に向けた体制というものも考えながら、これまで、ひととき過去には六十五の子会社がありましたけれども、これがもう半数規模になっています。こういうふうな流れの中で、子会社全体の経営体質の改善、これについて本体と連動した形で考えてまいりたいと思います。

 詳細は担当の方から答えさせます。

中川参考人 配当の方針について御説明したいというふうに思います。

 NHKの子会社は、公共放送の使命である業務を確実に遂行していくということの一翼を担っておりまして、そういった意味から、これまでは経営基盤の安定というところまで優先して、どちらかというと配当は抑制してまいりました。

 ただしかし、現在では、三十四団体ございますが、一番新しく設立された団体でも設立後十年を経ておりまして、経営基盤も相当安定してまいりました。そういうところから、これまでの配当の方針を改めまして、十七年度の期末配当から、原則として、配当規模を当期純利益の二〇%を下限とする業績連動とするというように、積極的な配当をする姿勢に転換することにいたしました。

 それに加えまして、一定の財務体力を持つ子会社に対しましては、当期の利益を上回る大型の配当を特別に要請しております。十八年度のNHK予算の中では三十三億円ということで、十七年度が五億八千万円でございますので、比べまして、相当大型な配当金を計上しているというところで、こういったものを積極的に行ってまいりたいというふうに考えております。

 また、先ほど御質問いただきましたテクニカルサービスと放送衛星システムでございます。

 このテクニカルサービスというのは、番組制作技術の会社でございます。そのために、中継車でございますとかあるいは編集設備、こういったものの設備整備にできるだけ資金を充てたいということで、そういう資金を留保してきたものでございます。

 それからまた、放送衛星システムといいますのは、NHKと民間放送事業者が出資しまして平成五年に設立された会社でございまして、衛星放送の調達それから管制等を主な業務にしております。ところが、衛星の調達には多額なお金がかかる、経費がかかるということで、これらを借入金で賄っております。したがいまして、財務体質の、運営の安定化が経営の重要課題であるというところで、できるだけ配当よりもそういった財政基盤の確立というところに民間放送事業者も含めました総意として行っているというところでございます。

 御理解を賜りたいと思います。

谷口(隆)委員 次は、子会社の中で役員賞与を出しているところがあるんですね、利益処分。それで、この利益処分で役員配当を出すということになりますと、役員の方が当然ながら実入りがふえるといいますか、そういうようになるわけで、その役員賞与もどういう観点で出されたのかわかりませんが、ちょっとこれも申し上げますと、この二社だけなんです。一社はNHKアイテック、これが三千万円の役員賞与が出ております。それともう一つは日本放送出版協会、これが配当金が七百七十七万六千円に対しまして、役員賞与が一千九百五十万出ております。

 この役員賞与を、これもどういう観点で、グループ全体の中でNHK本体がこういう役員賞与の出し方等にもおっしゃっておられるのか、それか子会社の立場で判断をされてこのようにされたのか、お伺いをいたしたいと思います。

中川参考人 先生御指摘の、まずアイテックでございますが、この会社は昭和四十四年に設立されました会社でございまして、非常に古い会社でございまして、ずっと安定配当の施策をとってきております。それからまた、出版協会につきましても、これは昭和六年に設立されました大変に古い団体でございまして、ここも安定配当を施策としてとってきているというところでございます。

 ただ、役員の報酬、賞与につきましては、こういった利益処分に賞与を計上している会社、それとそうでない会社も含めまして、報酬と賞与を合わせました年間総受取額ということで、子会社から報告を受けまして、NHKの方でチェックをして進めているというところでございます。

谷口(隆)委員 今、役員賞与と配当のことは申し上げましたが、総じて、この子会社、NHKグループ全体の経営のあり方について、竹中大臣、どのようにお考えになるのか、御所見をお伺いいたしたいと思います。

竹中国務大臣 十八年度予算に関連して、谷口委員がおっしゃったような問題意識は我々も持たなきゃいけないというふうに思っております。

 予算においては、大変例年にない厳しい経営環境にあるということを踏まえまして、前年に比べて、新たに特別配当を含めて二十七億円の増、三十三億円の配当を子会社から受けるという形になっているわけでございます。

 結果的にではありますけれども、公共放送であるNHKが子会社の株式会社からこういう厳しい状況の中で支えられているという面が、部分的ではあるけれどもあるわけで、こういったものをどのように考えるかということを含めて、これは配当政策全体を見直すというふうにNHKも言っておられますし、ここはやはり適切な判断をしていただかなければいけない問題だと思います。

 一義的には経営の判断の問題ではありますけれども、我々も、全体の方針の見直しを含めて、適切な判断がなされていくことを期待しておりますし、それを見守っていきたいと思っております。

谷口(隆)委員 橋本会長にお伺いしたいんですが、NHK本体のみならず、子会社も含めたNHKグループ全体の経営の緊張感がやはり求められていることなんだろうと思います。これに関しまして、御所見をお伺いいたしたいと思います。

橋本参考人 御指摘のとおり、これから、関連子会社を含め、NHK全体の透明性を含めて、また組織のありよう、これは三カ年計画でも盛り込んでございますけれども、しっかりと引き締めてやってまいりたいと思っております。

谷口(隆)委員 ちょっときょう時間がありませんので、もう一つ質問したかったところがありまして、これは、アルジャジーラというカタールに放送局がありますが、ずっと中東地域に流しているのはアルジャジーラ・ニュース・チャンネルということなんですが、このたびNHKのコンテンツをアルジャジーラ・チルドレン・チャンネルのところに売却されるというようなことであるようでございます。

 これはすばらしいことだと思うんです。こういうように我が国のNHKの持っておられるようなコンテンツを売却していただくと、収益的にも貢献もいたしますし、我が国の文化だとか生活を海外の人たちに知っていただくという観点では、これは私はすばらしいことだと思っておりますので、ぜひそういうことも含めまして頑張っていただきたいと思います。

橋本参考人 JCC、アルジャジーラ・チルドレン・チャンネルといいますが、こちらの方に現在、三歳から十五歳を対象とした幼児あるいは少年少女向けの番組を提供しています。およそ二百時間分ということがありますが、この前も社長と会談しまして、これからさらにその年齢層を拡大しまして二十五歳までということで、NHKと番組を一緒につくる、あるいは番組提供を行うというふうなことで、主にこれはやはり日本文化を吸収するということもございますし、日本の青少年向けの教育、識字率を高める、そういうふうな役割としては放送が大変有用だというところを買っていただいているということで、これからも協力して積極的に進めてまいりたいと思っています。

谷口(隆)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

中谷委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。よろしくお願いいたします。

 私の方からは、まず、受信料収入の目標についてということでお尋ねをしたいと思います。

 事前にNHKの皆さんの方から資料をいただきました。十七年度の受信料収入の減収額が、見込みですけれども、五百十八億円だというかなり厳しい数字が出てきています。これを踏まえて、NHKの方の十八年度から二十年度の経営計画の中では、受信料収入の目標についてこのように記載されているんですね。

 「平成十八年度予算では受信料収入を、五千九百四十億円と見込んでいます。平成十七年度の受信料収入は五千九百六十億円となる見込みですが、平成十八年度は、平成十七年度に口座払いから訪問集金に変更された方への受信料収納活動が遅れていることなどの影響で、さらに八十億円の減収が見込まれます。その一方で、公平負担のための施策をいっそう強化し、六十億円の増収を図ることにより、差し引き二十億円の減収にとどめます。」というふうにうたわれています。

 これはこれでいいんですが、ただ、五百億円を超える減収が見込まれるということについて、現段階で会長としてどのように認識されているのか。また、それを踏まえて十八年度の見込みを言われていますが、この見込みは、去年の予算から五百億円を超える減収があって、また十八年度の予算でこのように見込まれるというのは、客観的に見てちょっと甘いんじゃないかなというふうに思うんですが、そこはいかがお考えですか。

橋本参考人 詳細につきましてはまた担当の方から説明させますが、まず、やはり私が大変今年度の財政の規模あるいは来年度の財政の規模につきまして考えますのは、いろいろ、信頼回復の取り組みあるいは受信料収納活動を強化する、こういう中で、回復の兆しというものは感じ取っておりますけれども、まだまだ厳しい状況が続いているというふうに認識しておりますし、この状況をできるだけ着実に回復する必要がある。しかし、目標はきちんとつくって達成していきたいという思いで三カ年計画をつくってございます。これからも身を引き締めて回復に向けての努力を継続してまいりたいと思います。

 具体的な内容につきましては、担当の方から説明させます。

小林参考人 ただいま会長から申し上げたとおりでございますけれども、現在の受信料収入が予算に比しまして大幅な減収になるということにつきましては、大変厳しく受けとめております。今それを何とか回復すべく努力しているところでございますけれども、おかげさまで、ようやく受信料収入につきましては回復の兆しが見え始めているというふうには考えております。

 さりながら、なお大幅な減収であることは間違いないということでありまして、それで、来年度以降の三カ年の経営計画でございますけれども、二十億円の減収にとどめたいということでございますけれども、来年度につきましては、先ほど委員御指摘のように、口座から訪問集金への変更が急増した関係でどうしても取り切れないという面がございまして、全体で八十億の減収は、これはもうやむを得ない状態として出てくるということになりますけれども、その一方で、先ほど来申し上げましたように、支払い再開の動向が現行は顕著になってきている。

 NHKは二カ月単位で集計してございますけれども、二カ月で八万件の新たな支払い再開の方がいらっしゃるという経過で、第四期、五期、六期、六期というのは今現在進行中でありますけれども、そういう状況が続いている。これは年間足せば四十八万件になりますけれども、ただ、新たにまた拒否に回られる方もいらっしゃらないわけではございませんので、そういう差し引きを含めて、来年度、三十万件は支払い再開の方がふえるというふうに思っています。

 その他、契約総数あるいは衛星契約も伸びておりますので、その増を見込みまして六十億円は何とか取っていきたいということでありまして、差し引きで二十億円ということは何としてもさせていきたい。これはやはり信頼回復の一つのあかしにもつながりますので、そういう努力はしていきたいということでございます。

 十九、二十年度の百億ずつにつきましても、支払い再開を同様の推移でやらせていただくということと、契約総数につきましても、あるいは衛星契約につきましても、同じような趣旨で契約増を図っていきたいということでございます。その根底の水準は、率直に申し上げまして不祥事以前の水準に戻していきたい、契約増は。そういうもくろみで、その前提に立ちまして我々としては計画化しているというものでございます。何としてもそれは達成していきたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 今、十九年度、二十年度百億増をもくろんでいるというところの御説明もいただいたんですが、不祥事前に戻したいというその意気込みは買いますけれどもね、十八年度でもかなり厳しいんじゃないかな、そこにプラスして百億百億という増収を見込まれていますので、よっぽど肝に銘じてやらないとこれは大変なことになると思うんですね。その点はぜひお願いをしたいと思います。

 もう一つ、この三カ年の計画を見ておりまして、コーポレートガバナンスの改革ということをかなり真剣にうたわれております。この点について御質問をしたいんですが、これだけコーポレートガバナンスの改革についてNHKとして真剣に考えるということは、いろいろな不祥事がありましたけれども、不祥事が起きたその背景について、どこにどういう問題があってこういうふうになったというふうに認識されているんでしょうか。

 ちょっと心配なのは、不祥事は去年、おととしの問題だ、もうそこで決着がついて、新たに新生NHKとしてやっているんだというふうにいろいろ答弁されるんですが、実は、今回、質問に当たって、インターネットでNHKの不祥事と引いてみたんですね。そうしましたら、二〇〇〇年以前に発覚したもの、二〇〇〇年から二〇〇三年に発覚したもの、二〇〇四年に発覚したもの、二〇〇五年に発覚したものと、まだ続いているという形でこういう集計がいまだにされているということは、やはりまだどこかに問題があるんじゃないかというふうに国民が思っているんだと思うんです。

 それを踏まえて、どこに問題があったというふうにまず認識されているのか、教えていただきたいと思います。

橋本参考人 私、昨年一月二十五日にこの会長職をお預かりしているわけですが、一番真剣に考えたのはこの点でございます。やはり、NHKに働く者が、いわゆる倫理観と申しますか、これが乏しくなってきている、ここは大変問題だと考えております。

 したがって、現在、改革の中でも、なかなか見えにくい話なんですが、この意識改革という改革が大変重要だと思っております。いろいろなスキームを変える以上に、魂を入れるというところを私は考えてまいりたいという取り組みをしております。

 このためには、やはり職場そのものを非常に風通しよくするというふうなことも必要ですし、人材のトレーニングということも大事だと思って、こういうところを強化しているわけでありますが、やはりこの倫理観の欠如、あるいは受信料についてこれを公金として扱う意識、公金意識と言っていますが、こういう点について、この改革の底の底のものとして、意識改革、ここに努めてまいりたいと思っています。

 また、私は、この問題につきましては、過去にさかのぼっても、そういう疑いといいますか、うみは出し切りたいというふうに思っていますので、そういう意味で、わかる範囲でありますけれども、できるだけ追及して、こういうふうなことが再発しないような手だてを図りながら、また、発生した場合には厳しく対処するということを考えて、実施してまいっております。

富田委員 橋本会長には先週も総務委員会に参考人で来ていただいて、いろいろお話をいただいたんですが、会長のお人柄でNHK全体を引っ張っていく必要があると思うんですね。国民の目から見ると、やはりNHKは規模が大き過ぎて、歴代の会長さんの中には何となく自分の派閥みたいなのをつくっていて、その中で不祥事が起きてきたんじゃないかというふうに思われる節もありました。

 今回、橋本会長は技術畑出身ということで、そういう意味でも、新たな風をNHKに吹き込めると思うんですが、実は、事前にNHKの方にもお知らせしたんですが、この委員会で質問をするというのが決まりましたら、「NHK予算で、国会への重大な偽証・詐欺行為発覚 石原・橋本体制の組織ぐるみの隠蔽を告発する」という、突然議員会館にこんな文書が送られてきたんですね。何だこれはと。

 ガセネタというのがいろいろ問題になりましたけれども、中身を読むと全く不正確。五百億を超える受信料収入について、きちんとNHKの内部で報告がされていなかったんだというようなことを書いているんですが、実は、昨年のこの総務委員会できちんと会長が答弁されて、委員からもかなり質疑がされているんですよね。そういった経緯があるのに、いまだにこういう文書を、私が質問するというのがわかっているものだから送ってくる。こういうところに、まだまだNHKの内部に問題があるのではないか。

 内部通報制度というのがもうできていますよね。本当に何か問題があるんだったらそこできちんと取り上げればいいので、こういった形で、NHKの予算を審議する委員会の直前に委員に対してこういうものが送られてくる、こういうことについてどう思われますか。

橋本参考人 この文書は全く出所不明だということで、何とも申し上げにくいんですが、私としては、NHKの改革を役職員一丸となって進めている中でこういう文書があらわれてくるという、この意図というものはよく存じませんが、大変不快でございます。

 基本は、私どもNHKはとにかく改革に向けて全力を尽くすといういちずでやっていますし、職員も、先ほどのように、NHKに働く職員としての倫理観をぜひ隅々まで行き渡らすように努力してまいりたいというふうに思っております。

富田委員 もう時間ですので終わりますが、今の御決意のとおりぜひ行動していただきたいと思いますし、昨年のこの委員会でNHK予算に対する附帯決議というのが出ています。その中にこういうふうに書いてあります。「NHKは、今こそ全職員をあげて出直す決意をし、真に生まれ変わった姿を国民・視聴者に示さない限り、受信料制度の根幹をも揺るがしかねない事態に発展するおそれのあることを謙虚に受け止めなければならない。」

 これは、会長を初めとする執行部だけじゃなくて、やはり全職員、皆さんが真剣に考えてもらわなきゃならない問題だと思いますので、ぜひその点を考えていただけるように、今後も野党の皆さんから審議があると思いますので、これをしっかり受けとめていただきたいということをお願いしまして、質問を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 先ほど来、NHKのあり方について、公共放送という点については何度も、質問者からもあるいは橋本会長からも、関係者からも答弁されているところでありますが、一言で言って公共放送というのは、私なりに考えますと、視聴率あるいはスポンサー、商業主義にとらわれることなく番組を提供できるというのが、私は、まず公共放送の第一義的な意味だろうと思っているんです。

 この予算審議も今夜二十三時から放映される、録画で放送されるということでございますが、はっきり言ってこの後ぐらいからになってきますともう午前二時とか三時とかの話になって、一体だれが見ているんだろうかというぐらいの時間帯でございます。しかし、視聴率がとれるとれないは別にしても、こういう審議をちゃんとやっているということをちゃんと流すということがやはり公共放送の使命。

 こういうことを言ってはいけませんけれども、国会の例えば予算委員会あるいはクエスチョンタイムを、民放は、何か例えばガセメール事件でもあって、当事者でも出てくるときだったら中継をする、ワイドショーの番組の中で例えば緊急生中継と言ってやる。ところが、それ以外の、民放側が判断をして、余りこれは視聴率がとれないなと思ったら、もうこれは全然放送されないわけです。下手すると、NHKもどれぐらいの視聴率で放映されているのか知りませんけれども、聞くところによると、予算委員会の中継あたりが一%ぐらいの視聴率だとか聞くわけでございまして、そういう意味で、公共放送のあり方ということが非常に私たちは重要な問題だろうと。

 まさに、そうしたスポンサーの意向であるとかあるいは視聴率によって打ち切りなんかを気にしなくても、良質な番組あるいはどうしても伝えなければいけない問題については伝えられるということがNHKの使命だと思いますが、反面で、その公共性という大義のもとで、逆に言うと視聴率にさらされて客観的な判断をやはり数字として突きつけられるわけです、民放の番組ならば。あるいはスポンサーからやはりクレームもつくでしょうし、やはりスポンサーがおりることだってあるわけです。そういうある意味では緊張感があって、切磋琢磨して、やはり何とかしてその維持をしなきゃいけないという思いが民放にはある中で、やはりNHKはそこを意識しないで逆にあぐらをかいてきた部分というのもあるんじゃないのかなと。その点について会長の率直な御見解をいただきたいと思います。

 あわせて、総務大臣、いろいろ私的懇談会で検討されていると思いますけれども、そうした、今申し上げた公共放送の必要性そして民間放送、いわゆる二元体制についてどういうお考えかということにつきましては大臣のお考えをあわせて伺いたいと思います。

橋本参考人 NHKの番組、やはり民放さんの番組と違う点、こういう点については、大変、これからも、情報がいろいろたくさんになる中でそれぞれの役割があろうかと思います。

 NHKが公共放送として日ごろ努めております、公平公正あるいは自主自律、あるいは国民・視聴者の方々の福祉の向上といいますか、いろいろ、毎日毎日を力づけて生活していただく、そういうふうな役に立つ番組というものを主眼点で、これからも視聴率にとらわれず、見ていただくんだったらできるだけ視聴率が高い方が望ましいわけですが、視聴率にとらわれず、やはり民放さんとお互いに切磋琢磨しながらもそれぞれの役割を果たしていく、そういう番組をどんどん、性格をしっかりと認識しながら行ってまいりたいと思います。特に現在、NHKの再生、新生をかけた改革の中の取り組みとして、この姿勢というものは基本として大事だというふうに考えております。

竹中国務大臣 二元体制についてのお尋ねでございますけれども、委員自身もおっしゃいましたように、NHKというのは、やはり視聴率にとらわれない豊かでよい番組放送を提供する大変重要な役割を担っていると思います。一方で、広告の収入を財源とする民放が、聴視者の好みとかに非常に敏感に、またローカル局は地域に根差してということで、これはやはりお互いが、この二元体制のもとで切磋琢磨してそれぞれいい意味で競争しているという面と、国民に対してやはり少し土俵の違う放送文化を提供した、私はやはりこれは大変重要な日本の特徴であるというふうに思っております。

 私の懇談会におきましても、公共放送は必要である、そして二元体制というのは維持されるべきだということでは非常に広い一致がございまして、こういうことを踏まえながら、さあ、その上でどうするかということを私たちは議論を進めたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 また改めて大臣とはいろいろと折を見て議論をしたいと思います。

 時間がないので次の質問に移りますが、先ほどからも各委員から指摘をされているいわゆる受信料の問題でございます。

 いただいた資料で、いろいろと御苦労をされて、地域で六千人ほどのスタッフの方々が、追跡調査といいましょうか、各家庭を訪ねて一生懸命契約をお願いしている。そういう涙ぐましい努力も伺っているわけでありますが、ただ、ここで見て腑に落ちないのは、受信料がおよそ六千億円、しかし、ここにかかるコストが、地方の契約スタッフとNHKの本体を含めまして、トータルでさまざまな管理費も入れると約八百億円ですね。八百億円弱の費用をかけて六千億円の受信料を集める。比率にして一二・七%。

 説明を聞きましたら、それでも以前に比べれば、一五、六%だったのがここまで、何とか一二・七%まで来たんだというふうにおっしゃっていますけれども、やはりここに対してNHKが、とにかく受信料のある目標額を確保するためにどれぐらいコストがかかってもいいんだというようなもしお考えであるなら、これは大間違いでございます。ある意味で、これは受信料契約の額の一〇%とかあるいは一けた台に抑える、何らかの目標数値みたいなものをつくって、やはりそれに向かってコスト圧縮に努力をしていく、そういう姿勢が必要ではないかと思いますけれども、その辺についてお考えあるいは具体的な取り組みが何かありましたら、ぜひお答えいただきたいと思います。

小林参考人 御指摘のように、約八百億円経費をかけてございます。この営業経費につきましては、従来から、営業業績の確保と並びまして、我々としては重要な経営課題であるというふうに認識いたしまして、その抑制に努めてきているということでありまして、コストは全然関係ないということは全くございませんで、そのことも常に留意しているところであります。

 しかしながら、受信料につきましては、転居などによりまして新たに生活が始まるときに、視聴者の皆様から自主的な契約届け出をいただければ非常にありがたいんですけれども、そういうお願いをしておりますけれども、なかなかそれだけでは十全ではなくて、どうしても常に全世帯の点検をせざるを得ない、その活動が欠かせないということでございまして、その観点からどうしても一定の経費がかかってしまうということがございます。

 それで、何らかの手だてということでございますけれども、そういった努力はいろいろしておりまして、不動産会社あるいは引っ越し会社あるいは郵便局さん等々と連携を図りながら、さまざまな活動をさせていただいております。インターネットによる契約取り次ぎ等も同様でございます。あるいは、衛星デジタルでございますと、いわゆるCASというシステムを使いまして把握をさせていただいているということで、営業経費の抑制に努めているところでございます。

 一方、例えば海外の放送機関等における事例でございますと、電器店からの受信機購入者情報といったものが、購入した場合には通報義務制でもって放送局に通報されるというやり方、あるいは、住民基本台帳のデータを受信料徴収に活用させていただいているケースであるとか、さまざまなケースが諸外国にはございます。

 そういったものが公的な制度として実施されているというふうに聞いておりますけれども、現在、NHKでは、みずからそれらを行わざるを得ない状況にあるということは事実でございまして、そういった中で、御指摘のように、より収納コスト、契約コストを下げていく努力は日常やっていこうと思っております。そういった中で取り組みながら、さらなるコストの削減に努めていこうというふうに考えているところでございます。

渡辺(周)委員 いろいろ今諸外国の例も出されまして、我々も当然他国の例を参考にしておりまして、これはNHKがというよりも、当然我々としての政策判断あるいは政治的な決断になろうかと思います。その点につきましてはまたこれは議論するとしましても、もう精神論だけでは乗り切れない。頑張ります、努力します、NHKらしさを訴えますと言っても、精神論だけではこれはもう乗り越えられないと我々は思いますので、システムはもちろんですけれども、とにかく、ぜひNHKとしていろいろな取り組みをしていただきたいと思います。

 一つ、これはこの間技研に行ったときのことをちょっと思い出しました。これは、アドバイスと言ったら変ですけれども、どうしてこういうことをしないのかなということについて、ちょっと触れさせていただきたいと思います。

 NHK技術研究所研究成果の応用例というのをちょっと資料としていただきました。その中で、NHKの技術研究所の研究成果が医療へかなり応用されているんだと。例えば、超高感度カメラ、スーパーHARP。研究テーマが、例えば次世代のエックス線診断装置。私も見ましたけれども、これはラットでしたか、造影剤を打ったネズミの血管を見せていただきました。つまり、がん細胞ができると、そこにはみずから栄養分をとろうとして細い血管ができていくんだと。それを実は、NHKの高感度カメラから転用していく技術によって早期発見につながることができるようになった。あるいは、ここにあります白内障の手術への応用研究ができる。

 いろいろ、北里大学の医学部でありますとかあるいは東海大学の医学部と研究をしながら、事実これまでもそういう研究成果を実は社会還元してきたということがあるわけです。実際これは行ったから我々もわかったのであって、こういうことというのは、NHKの受信料によって技術研究をやっているんだけれども、実は、これが回り回って社会還元されて、我々の健康だとかあるいは医療だとかというところに役立っているんだということをどうしてもっとおっしゃらないのかなと思うんですね。

 奥ゆかしいNHKが、ひょっとしたら、いや、そんな自分の手柄みたいなことを言うのはやはり日本人の美学に反するとおっしゃるのかどうかわかりませんけれども、ただ、もうここまで来ると、会長、死に物狂いになって、やはりこういうトップセールスでもしたらどうですか、番組で取り上げて。皆さんの受信料によって社員がいい暮らしをしているなんというのじゃなくて、ここは、もっと逆に言うと、受信料を払っている人たちのためにもなっているんです、医療の現場でも使われていますということを、どうですか、もっと番組でも取り上げたらいいなと思うんですけれども、そういうことを本当に死に物狂いでやる御決意はないんですか。簡潔にお願いします、時間がないから。

橋本参考人 技術研究所の成果が、放送直接目的のみならず、産業界、医療界、こういうところでお役に立っているというふうなことにつきましては、これまでなかなか紹介し切れなかった点があろうと思います。

 これについては、NHKの経営広報番組といいますか、こういう中でも、NHK全体の受信料の成果がこういう形でお役に立っているという点につきまして、これからは積極的にPRしてまいりたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 それはやはり、例えば医療の現場だとか、我々の健康、病気の早期発見につながっているなんということになれば、受信料に対する考え方も少し変わると思うんですね、すべて特効薬じゃないにしても。ぜひそこは死に物狂いで、先頭に立ってやっていただきたいと思うんです。そうすれば、これだけのコストをかけて、八百億円ものコストをかけて六千億円の受信料を集めなくても、地域のスタッフの方々が、どなられているか水かけられているかわかりませんけれども、言われたくないことも言われて、ほうほうのていで追い返されるようなことはもうしなくていいんじゃないか。ぜひ会社を挙げてそういう努力をしていただきたいなというふうに思います。

 さて、残り数分になりましたので、先ほども公明党の委員さんからお話がありました子会社のことにつきまして、指摘と質問をさせていただきたいと思うんです。

 幾つか、ホームページからわかるだけ、この子会社等三十四のうち、私、三十一団体を調べました。そうしましたところが、常勤、非常勤役員一覧を見まして、三百二十八人中、NHKのOBや関係者、NHKの現職の方を含めますと、二百二十二人、大体七〇・七%、七割がもうNHKの関係者でございまして、大体どこの社長さんもNHKの放送局の局長を経られたいわば天下りでございます。また、監査役を見ますと、外部の人間が監査役をしているというのは、NHK東北プランニングというところの一社のみでございます。ほかにも複数あって、二人いるところで、一人が民間の、外部の方というところはありましたけれども、これは監査役も含めて、ほぼNHKの関係者でございます。

 また、もう一つ申し上げますと、先ほど、平成十年度から十六年度で、六十五団体が約半分の三十四団体になったというようなことをおっしゃられますけれども、実は、社員数を見ると、人数は四千九百十一人から五千五百四十五人、六百三十四人ふえている。つまり、整理統合はしたんだけれども、実は社員数で見るとふえている。反面で、本体の方、NHK本体は六百九十三人減っているんですね。つまり、本体の方が減っているけれども、子会社はふえている。子会社の整理統合で半分になりましたといっても、実態的にはこれは実はふえているんですが、現実問題として、子会社の整理統合あるいは人員の縮小も含めて、先ほどもお話ありました外部の競争入札なんかも含めて、これからどうしていくのかということについて、一つお尋ねをしたいと思います。

 あわせてもう一つ、子会社の社長、理事長の報酬というのが平均一千四百万円、取締役が一千百万から一千二百万円。いわゆる一般の退職金に当たる退任慰労金というものが、特に公開はしていないけれども出されているということでございます。NHK本体については、平成十七年度の予算から役員の報酬額と職員の給与額を公表するようになりました、遅いぐらいでございますけれども。

 まさに、番組の質がどうとかということでみんなNHKに対して不信感を持っているんじゃないんです。隠ぺいされた、よくわからない、一体何に使われているかわからないというこの会社の体質について、子会社も含めてやはり大勢の方々がどこかわだかまりを持っているからこういう結果になったのであります。

 ぜひ、この点については、今、自主的と言われている情報を、やはり積極的に公開するべきだと思います。その点についてどのようにこれからお考えになっていくのか、ぜひNHKに伺いたいと思います。

 済みません、もう一回質問しますので、簡潔にお答えください。

中川参考人 まず一点目についてお答えしたいと思います。

 子会社等も含めました要員の数でございますが、実は、NHKは昭和五十五年からずっと本体の方の要員を減らしております。その数が、十六年度まででマイナス五千九十八名でございます。それからまた、一方、子会社の方は、アウトソーシングを含めまして、子会社の方へ移転するということで、こちらはこの同じ期間に三千九百七十九人ふえております。差し引きでは、NHKグループ全体としては千百名余り減っているというところでございます。

 それから、いろいろ御指摘いただきましたように、子会社の今後につきましては積極的に、今の業務実態も含めまして、昨今の状況も踏まえまして、これでいいのかどうなのか、統廃合も含めて検討してまいりたいというふうに思っております。

 それから、関連団体役員、子会社等の役員の報酬でございますが、おっしゃるとおりまだ公開しておりませんが、これにつきましては、トータルで、一般の企業と同じような格好で、十八年度より営業報告書で発表いたしまして、ホームページでも公開してまいりたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 必ず、NHK本体あるいは子会社も含めまして、情報の不透明さということが議論になるわけです。確かに、報道の自由の根幹であります取材プロセスまでも、我々は別に本体に対して公表しろとは言っておりません、私も若干はマスコミの世界にいた人間でございますので。ただ、こういう組織の、特に人件費、運営費に関して一体どうなっているかということについては、これは報道や表現の自由とは関係のない話でありますので、これは当然公開すべきだというふうに思います。ぜひこの点については積極的にやっていただきたい。

 最後に、竹中大臣、今の議論を聞いていて、自主性に任せるのか、それとも法律によって一部やはり公開を義務づけるのか、その辺についてはどういうお考えを持っているか、最後にお伺いをして終わりたいと思います。

竹中国務大臣 委員御承知のように、放送法上は、NHK本体及び子会社の役員の給与、退職金について公表を求める規定は今ございません。現在は、NHKにおいて、本体の給与を十七年度予算から自主的に公表しているということだと思います。

 子会社についても、今御議論をいただきましたけれども、基本的には経営判断によるものでございますけれども、これはやはり言うまでもなく、可能な限り情報公開を進めて経営の透明化に努めていただかなければいけないという思いでおります。自主的にやっていただけるのであるならば、これはこれで私はぜひ経営判断を尊重したいと思いますけれども、しかし、進まないということであるならば、枠組みをどうするかということは、これはこの国会の場で御検討いただかなければならないと思います。

渡辺(周)委員 終わります。

中谷委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 さきの質問とダブるところがあるかと思いますので、ぜひ簡潔明瞭に答弁をお願いいたします。

 まず初めに受信料減に対する対応策について、先ほど、富田委員からですか、質問がございまして、回答があるようでございますので、ぜひ橋本会長の決意のほどだけまずお聞かせください。

橋本参考人 一昨年の一連の不祥事発覚以来、私、この状況、視聴者・国民の方々の信頼を失ってきたということ、あるいは財政的な形であっても大変危機的な状況だというふうなところから、何とか全力疾走してここまでやってきたつもりでありますが、これからもやはり、受信料収入の回復あるいは信頼回復、こういうところについては、とにかく組織一体となって真剣に取り組んで、全力疾走してまいりたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 多分、国民の信頼を得るためには相当時間がかかるかと思いますけれども、ぜひ全職員一丸となって頑張っていただきたい、そのように思っております。

 次に、NHKの再生方策についてお伺いをいたします。

 NHKの経営計画を見させていただきますと、その中に、「信頼されるNHKをめざして」ということで五点書いてございますが、時間の関係で三点だけ質問をさせていただきます。

 まず一点目は、放送の自主自律の堅持についてでございます。

 「NHKは、何人からの圧力や働きかけにも左右されることのないジャーナリズムとして、いかなる場合でも放送の自主自律を貫きます。」と書いてありますが、国民に情報を提供する基本的な考え方についてお伺いをいたします。

 また、放送の自由を守るために、税金でもない、広告料でもない、受信料制度は今後とも堅持をすべきだと思いますが、御所見をお伺いいたします。

橋本参考人 言うまでもなく、報道機関というものは、公平公正、また自主自律、この考え方が基本でございます。我々、仕事に携わっている場合も、四六時中この規範をモットーに進めていくということが基本でございます。

 その中でやはり大事なことは、国民・視聴者に対して、こういう形を信頼の上でしっかりと認識していただく努力、こういうことが大事だと思いますし、そのための受信料であろうというふうに考えております。

 したがって、これはもう一体として、これからも我々自身、NHKに働く者がこの規律を守り、また視聴者の方々にも御理解いただくような活動を、実現を継続していくということが一番大事なことだろうと思います。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

福田(昭)委員 そういうかたい決意であれば政治の影響を受けないとは思うんですけれども、しかし、今までもたびたびそんなことがありました。

 私も、今勉強中でございますが、実は、ドイツの例が非常に参考になるかなと思って勉強しているところでございますが、御承知のこととは思いますけれども、ドイツにおいては憲法におけるメディアの自由がしっかりとうたわれているようでございます。

 ドイツ連邦共和国の基本法第五条第一項には、「各人は、言葉、文書および絵画を用いて自由に発言、流布し、一般的に利用できるソースから邪魔されず情報を得る権利を有する。報道の自由、ラジオ放送・映画による報道は保障される。検閲は行われない。」こう規定されているようでございます。

 さらに、ドイツにおける放送に関する裁判がございまして、第一回から第八回まで判決があったようでございますが、一九九四年二月の二十二日に行われた第八放送判決によりますと、国家からの放送自由と受信料制度について判決がありました。

 中身は、受信料の決定は国家とは関係なく決定するよう手続されなくてはならない。各州の政府や議会は受信料額の決定に対して間接的にしか関与できない。受信料値上げについては、各州の首相から任命された放送協会財政需要調査委員会の十六人のメンバーが放送協会の財政状況を調査し、それを州議会に報告し、値上げ申請があった場合、州議会はその値上げ幅が社会的に許容できるかどうかについてのみ審査することができる、こういう判決があったそうでございます。

 こうしたドイツにおける公共放送のあり方の考え方について、私は、我が国においてもしっかりと参考にして頑張っていく必要がある、そういうように考えているところでございます。

 次に、二点目でありますが、二点目はNHKの約束評価委員会についてであります。

 これにつきましても、先ほど橋本委員の方から質問がありまして、お答えがありましたので、簡潔にお願いしたいと思っておりますが、NHK経営計画の中では、外部の第三者の評価にゆだね、その評価を事業運営に反映する取り組みは、放送事業の分野では世界初だ、こう誇らしげに書いてありますので、ぜひ、NHK約束評価委員会についてどのように活用されるのか、その決意のほどを、やはり橋本会長からお伺いしたいと思います。

橋本参考人 まず第一点の、ドイツの放送機関の例でございますけれども、我々公共放送として通ずる面がたくさんあろうかと思います。いわゆる報道機関としての姿勢、ここのところは尊重してまいりたいと思います。

 それから、第二点目でございます約束評価委員会の約束評価活動というものは、やはり視聴者に向けて、NHKとのきずなといいますか結びつきというものを非常に具体的にあらわす、世界初ということでございますが、こういうふうな放送番組の定量的な評価というのは大変難しいことでございますが、こういうふうなものを初めて取り組んで、ぜひこれを定量的なものにして、経営の中に具体的に反映して、視聴者の方々にまたそれをお見せするということで、公共放送としての御理解を深めてまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 外部評価につきましては、今、きっとさまざまな分野で行われていると思うんですね。福祉の分野でも、あるいは学校の分野でも、あるいは病院、医療の分野でも、さまざまな分野で第三者評価が行われているわけでございますが、そうした中で、放送分野ではNHKが世界初だというんですから、ぜひしっかりとやっていただきたいなというふうに思っております。

 次に、CS、お客様満足向上運動についてお伺いをしたいと思います。

 視聴者第一主義に立ったお客様満足向上運動にNHKの全職場で取り組むというふうにしておりますけれども、ぜひとも、この際には視聴者からいろいろなところで御意見を伺う、こう書いてございますけれども、私は、特に地域あるいは地方の情報をしっかりと伝えるNHKであってほしいなと思っておりますが、御所見をお伺いしたいと思います。

原田参考人 お答えいたします。

 地域放送は大変重要な役割を持っております。一つは、地域にありまして、地域の応援団という形で、地元の地域の活性化あるいは文化の振興、それに役に立つということでございます。それからもう一つは、やはり地域の視点に立って、それぞれの地域のすばらしさ、あるいは多様な地域の文化というものを全国に発信をしていく、伝えていくということかと思います。

 また、その際、今、各地域では大変大きな課題をさまざまに抱えております。地域の皆さんと一緒にその課題の解決を考えていくというふうな取り組みをする中で、例えば少子高齢化とか全国に共通するテーマもたくさんございますので、そういうものをまた全国に発信していくことで地域の連携も深まっていくという役割も負っているかというふうに思います。

 地域からの全国発信というのを、私ども一層力を入れて、これからもやってまいりたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 今、竹中総務大臣が中心になって地方分権を進めておりますけれども、情報の発信も中央集権なんですね。そういった意味では、やはり情報も地方から発信できるような環境にしていかないと、なかなか社会全体が地方分権の社会になっていかないんじゃないか、そう思っておりますので、ぜひとも力を入れていただきたいと思っています。

 そういった意味では、竹中大臣がちょうど不良債権処理に邁進しているころ、NHKが、日本の元気は農村にありという番組をやったんですね。多分朝八時半から十二時まででしたか、あの番組は、私も、全部は見られませんでしたけれども、見せていただきました。大変すばらしい番組だったというふうに私は思っておりまして、そういった意味で、今後ともぜひ地域の情報あるいは地方の情報をしっかり伝えてほしいなというふうに思っております。

 次に、公共放送のあり方について、世界の主な公共放送と比較を通しながら、ぜひ質問をさせていただきたいと思います。

 皆さんのお手元に資料を配らせていただきましたが、これは、今竹中大臣が進めております通信と放送の在り方に関する懇談会で出された資料でございますけれども、まず、ちょっと資料の順序が逆になってしまいましたが、二枚目の方からごらんいただきたいと思っています。

 財政面の課題について質問をさせていただくわけでございますが、まず「主要国の受信料制度」を皆さんごらんいただきたいと思います。

 受信料等の位置づけについてでございますが、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、日本、こう見てみますと、どこも受信許可料とか使用税とか、あるいはほとんど受信料と位置づけがされているようでございますし、また、強制徴収があるところとないところとある。さらに、罰則等につきましては、日本と韓国はない、そのほかの国々には罰則等がある。そして、右の方へ行きまして、料金の年額を比べてみますと、NHKの受信料はそれほど高い方でもない、ほどほどでもあるのかなというふうに思います。

 そして、一番右の端でございますが、受信料収入が占める割合、これを見てみますと、イギリスのBBC放送が七六・七%、フランスが六四・二%、ドイツが八一・九%、イタリアが五五・二%、韓国が三九・三%、日本が九六・一%ということでございまして、受信料が占める割合というのはやはりどこの国も大きいのかなというふうに思っておりまして、そういった意味で、やはり受信料制度をしっかりと堅持をしていくということが大事なことなのかなということが、こんな資料からも読み取れるのかなと思っております。

 これらのことから私が考えてみますと、まず一点は、健全な公共放送を守るためには何としてもこの受信料制度は堅持する必要があるというのが一つ。それから二つ目は、NHKの料金は諸外国の公共放送と比べてそれほど高くはないというのが二点目。そして三点目は、そうした中で諸外国では罰則などもあるということ、しかし現在のNHKの状況を考えるととてもとても罰則を言い出せるような状況にはないと私も考えております。しかし、将来本当に国民の皆さんの信頼が回復できて、しかもドイツのようなレベルまで公共放送の地位が向上して、国民の皆さんから真に信頼されるようなNHKになったときには、これはもしかすると罰則等も必要な時代が来るのかなと、この諸外国の例を見て感ずるわけでございますけれども、こうしたことに対して、総務大臣、そしてNHK会長のそれぞれからぜひ御所見をお伺いできればというふうに思います。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、谷委員長代理着席〕

竹中国務大臣 まさに今、受信料約三割未納ということで、これが国民から見ても不公平感を募らせて、NHKの経営にもやはり大きな影響を与えているという重要な問題を提起していると思います。

 もう委員よく御承知のように、今のやり方というのは、受信契約、契約の強制を義務づけているんだけれども罰則はない。諸外国を見ますと、ここにいろいろ書いてくださっていますけれども、結構いろいろな工夫をしている。機器の販売とか貸し出しをするときに、ちゃんと払うべき人のアドレス、住所、氏名等々がわかるような、そういう仕組みを立てているところもあるし、罰則を設けているところもある。委員の資料でもありますように、日本は気がついてみると諸外国の中でもとりわけ受信料に対して大きく、高く依存しているにもかかわらず、その受信料を取るいろいろな工夫というのが今までなかった。逆に言えば、それだけ国民の信頼を受けてしっかりと払っていただいてやってこれたということの裏返しでもあろうかと思います。

 ただ、今はとにかく三割未納という大きな問題がございますから、どのようにするか、諸外国の工夫も参考にしながら、これは予断を持たないで幅広く検討をしたいというふうに思います。

橋本参考人 各諸外国、海外の公共放送機関がいろいろな制度を取り込んでいるということでございます。基本的には、財政安定を求めて罰則あるいは強制徴収あるいは通報制度、そういうふうなものを導入しているわけでありますけれども、我々、まず基本としますのは、現在のNHKの受信料制度というものが、やはり国民との信頼関係に立って成り立つものだということがまず基本にございまして、公共放送としての公平公正、自主自律、この大変高邁な理念を実現する具体的な方法として受信料制度というものが考えられ、長い間この制度で培ってきたわけであります。

 こういう制度なり方法、こういうものにつきましては、やはりいろいろ外国と日本との違い、法意識だとか、そういう国民性、考え方の違いという中で、長い歴史の中でそれぞれが培ってきたものだと思っています。私は、公共放送としての現在NHKが行っている活動というのは受信料が、御指摘のようにベストだというふうに考えております。

 こういう中で、いろいろなほかの諸外国の徴収方法あるいは罰則的なもの、強制的な考え方、こういうものについてはやはり国民的なコンセンサスというものが必要でございますし、やはりその前に、まずは現在この現状の中で、NHKとしては受信料制度の中でいろいろな努力をさせていただきたい。特に、オートロックマンションとかあるいは単身世帯がふえるとか、面会がなかなか難しい、いろいろな社会動態の変化の中でこの未払いの率が高いというふうなことがございます。こういうところは、今後、料金支払いを簡便にする方法だとか、そういうことを含めていろいろな工夫をまずやらせていただきたい、努力してまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 また、ちょっと資料の中にはありませんけれども、受信料制度がやはり大事だということはきっとだれも承知していることだと思いますが、そうした中で、国際放送につきましては受信料を払っていただかない人たちに放送するということになりますと、受信料で賄うということについては異論があるのかなというふうに思っておりますので、その際にはやはりしっかりと、国なり、あるいは、地方公共団体もこれから海外へいろいろな農産物なども輸出をいたしますので、地方公共団体とか、あるいは広告収入とか、そういったものでやはり国際放送は賄われるべきか、そのように今考えているところでございます。時間の関係で、もう一つ質問しなくちゃならないので、これは答えは結構でございます。

 もう一つは、一枚目の資料の方を見ていただきますと、「主要国(公共放送)の保有チャンネル数」の一覧表がございます。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、アメリカ、日本とございますが、アメリカは対象にならないのかなと思いますけれども、いずれの国のチャンネル数を見ても、NHKのチャンネル数が多いとは思えない資料でございます。

 そうした中で、聞き及ぶところによりますと、どうも通信と放送の在り方懇談会などでチャンネル数を削減するべきだというような御意見があった、こう伺っておりますけれども、しかし、今回のNHKの不祥事によって受信料が大幅にダウンをした、五百三十八億円ほど十八年度は減る、そんなことのためにチャンネル数を減らすということであれば、それは全く違うんじゃないか、私はこう思っておりまして、しっかりと今後とも健全な公共放送を続けてもらう、あるいは国際放送もしっかりやってもらうということであれば、チャンネル数を減らす必要は全くない、このように今考えているところでございますが、総務大臣、橋本会長の御所見をお伺いいたします。

竹中国務大臣 懇談会ではいろいろな議論を今していただいております。基本的には、デジタルな多チャンネル時代、まさに放送と通信が融合するようなデジタルな技術革新の中でのそれぞれのテレビ、さらには公共放送のあり方でございますから、多チャンネル時代という設定の中で議論をしなければいけないと思っております。

 各国いろいろな例がその意味ではありますから、そもそも、公共性、公共放送への期待をどのように持つかというのは、これは各国でまた違うと思います。それと、民放がどのように存在しているか、存在していないかということも違うと思います。また、組織のガバナンスが現実に発揮されているかされていないかということも違うと思います。その意味では、技術の変化を背景にして、今申し上げたようなことをやはり総合的に勘定していくわけで、単純に諸外国と比べてどうか、今が多いかどうか、そういう問題ではないというふうに認識をしております。

橋本参考人 この問題につきましては、やはり我々、現在、それぞれのチャンネルの役割を担って放送しているという現実がございます。そういう中で、今後のチャンネル検討に当たりましては、やはり、視聴者の方々が何をお求めになっていくのか、大臣も申されましたけれども、そういう視聴者の観点を第一に総合的に考えていくものであろうというふうに考えております。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 それで、最後に激励の意味を込めて申し上げて質問を終わりにしたいと思いますが、やはりNHKは公共放送として国民の幸せと世界平和に貢献するためにしっかりと存続していかなくちゃならない、こう思っているんですね。そのためには、先ほどからも話がありましたけれども、コーポレートガバナンス、企業統治をしっかりやり、また、職員の皆さんには、コンプライアンス、法令遵守をしっかりとやって、しっかりと再生をしていただいて、それこそ一段レベルの高い公共放送としてNHKがこれからもしっかりとやっていただくことを期待して、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

    〔谷委員長代理退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

佐藤(勉)委員長代理 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 きょうは、NHKの新年度予算に関連して質問をさせていただきます。

 私は、昨年もこのNHKの予算案の質問に立たせていただきまして、そのときに発言したことの中から、放送ガイドラインを新たに策定してそれを公表するといったことを取り上げていただくことができました。これは、本当にNHK全体で意識改革をしていこう、そういう気持ち、姿勢が形にあらわれたことだというふうに評価させていただいております。また、本当にこの間、経営委員会の中身などについても私たちは知ることができなかったわけですけれども、これも議事録などが公開されるようになりましたことは、視聴者全体にとって、こういう方針でNHKはやっていこうとしているんだということが非常に見えやすくなった。これについても私は高く評価をさせていただいているところでございます。

 そこで、放送ガイドラインの新たな策定と公表に当たっては、ぜひ、さらなるNHKの意識改革を促すようなものであっていただきたいというふうに思っております。お伺いしたところですと、今月末をめどに策定を行いまして、今月中には公表されるということでございますけれども、策定作業の中に、実際にこれからガイドラインを使うという人たちが参加して、そして、これは本当に自分たちでつくったガイドラインであるという意識を持っていただくことによって、さらなるその意味というのは深まるのではないか、こういうふうに思っておりますけれども、現在の策定作業の状況について伺いたいと思っております。

 あわせて、私がこの中でぜひ明記していただきたいのは、放送と政治との距離、これをいかにとるのかということでございます。放送法第三条、ここの中に大原則は書いてあるわけでございますけれども、実際に個別具体のことになりますと、今まで倫理基準の中では明確な記載はございませんでした。これについて書きぶりがどのようになるのか、それについても伺いたいと思います。

原田参考人 お答えいたします。

 今月末に新しいガイドラインを公表すべく、今準備をしております。

 これは、NHKの放送にかかわるすべての人たちが実際に取材に当たったり、あるいは番組制作に当たったりする上で判断の指針というものになります。この作成に当たりましては、本部のあらゆる部局それから全国のすべての放送局、多くの現場から意見あるいは要望を集めております。その上で事務局で素案をつくってまいりましたけれども、これも何度か素案の段階で現場にもまた打ち返して、フィードバックをし、さらに意見を聞くということを積み重ねてまいりました。そういう意味では、現場の意見は可能な限りこの新しいガイドラインに盛り込まれてきたというふうに考えております。

 こうした作成過程そのものが、職員が新しいガイドラインを理解することにつながっていく、これを仕事の上でより生かしていくということにもつながっていくというふうにも思っておりますし、これが出ました後、しっかりと現場にこの新しいガイドラインが根づきますように、私どもも努めてまいりたいというふうに思います。

 それから、新しいガイドラインは、私どもの大原則であります放送の自主自律の堅持、このことは第一章にきっちりと盛り込んでおります。NHKは報道機関として不偏不党の立場を守って番組編集の自由を確保すること、そして、何人からも干渉されず、放送の自主自律を堅持するんだということを記述してございます。

 それから、平成十八年度から二十年度の経営計画、一月に発表いたしましたけれども、あの中でも、例えば放送に直接関係のないNHKの予算あるいは事業計画の国会承認を得るに当たっても、全役職員は、放送の自主自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき業務に当たるということを記述しております。新しいガイドラインでもこうした内容を盛り込もうということでございます。

 いずれにしても、すべての職員がガイドライン、大原則を胸に刻んであらゆる業務に当たるということが私は大事かというふうに考えております。

西村(智)委員 放送法第十六条及び放送法第三十七条でございますけれども、この規定がある限り、NHKと国会との関係、NHKと政治との関係というのは、これは切っても切れないわけでございます。今、私たち民主党の中でも、この規定について考え直したらどうかというような議論をやっておるところでございますけれども、この法律条文がある限りは、やはりそこはNHKの姿勢として明確にきっちりと分離する、つまり、不偏不党を貫き、放送の編集権はきっちりと独立を守るという姿勢を今この段階では示していただかないと、やはり本当の意味での信頼回復にはつながっていかないのではないかと私は考えております。

 今おっしゃった、私も今繰り返し申し上げた不偏不党、自主自律、これはいわば大原則、精神論と言ってもいいようなものでございます。このガイドラインというのは、それをさらに具体的にどうするのかということを記述する、いわば具体論を記載するものだというふうに私は認識しているんですけれども、どうでしょうか、そのことについてさらに、例えば、政治家とかかわるようなときに、きっちりと、例えば予算案、事業案、こういったものについて説明するときには報告を義務づけるなどのルール化、これをされるおつもりはないか、さらに伺いたいと思います。

 そして、あわせて伺いたいのは、このガイドラインを何冊くらい作成されるのでしょうか。現場で実際に制作に当たられる方が持たれるのは当然だというふうに思いますけれども、私は、これを、新たに時代が変わるごとに視聴者全体含めて見直していくという必要性があると思いますので、例えば番組モニターの方々などにも持っていただく、こういうことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

原田参考人 お答えいたします。

 いずれにせよ、あらゆる業務において、すべての役職員は、放送の自主自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるという認識、それが一番肝要なことである、そのことを刻み込むことが大事であるというふうに私は考えております。

 それから、ガイドラインでございますけれども、今のところ、二万部程度印刷をしようとしておりますけれども、あわせて、今月末ぎりぎりになるかと思いますが、NHKのホームページでも公開をいたします。それから、御希望があれば、実費程度をいただきまして冊子をお分けするということも検討をしております。

西村(智)委員 何もおっしゃらないうちにいずれにせよと言われるのはいかがなものかというふうに思います。二つの事柄を述べて、あるいは二つ以上の事柄を述べていずれにせよとおっしゃるのが日本語ではないかと思いますので、ぜひお願いいたします。

 続きまして、国際放送について伺ってまいりたいと思います。

 ここのところ、随分活発な発言が続いておりまして、今まで委員の中からも何人かの方が質問をされました。ことし、予算案、収支計画、事業計画に対して総務大臣から付された意見で、今回、国際放送のところが新たにつけ加わった部分があるということでございます。具体的に「下記の点に配意すべきである。」そういう項目の中で、七番目でございますけれども、下の二行がことし新しく加わった部分だそうでございます。それは、総務大臣、よろしいですね。七をちょっと読み上げさせていただきます。「また、我が国からの海外への情報発信を一層充実させる観点から、時代の変化に応じた新しい国際放送の在り方について、検討を行うこと。」このように新しくことし、初めてここの部分が、意見が付されたということでございます。

 まず、NHK、日本放送協会の方に先にお伺いいたしたいと思います。このように意見が出されておりますけれども、どんなふうに対応していかれますか。

橋本参考人 NHKは、具体的に三カ年計画の中で、やはり国際放送強化ということを大事に考えておりまして、日本から発信する情報を各国の国民の方々が受け入れやすい環境をつくるということで、現在考えている計画案をお示ししておりますのが、二十年度までに放送の内容を充実するとともに英語化率を一〇〇%に持っていきたい、こういうことによって強化を図ってまいりたいという計画案をお示ししてございます。

西村(智)委員 NHKの中には国際放送を審議する、国際放送審議会でしたでしょうか、ちょっと正確には名称を申し上げることができませんけれども、そのような審議会も設置されておりますし、国際放送の毎年毎年の基本計画、こういったものも策定されているということでございますので、そういったところを含めても対応されていかれるのかなというふうに思います。

 ところで、通信・放送の在り方に関する懇談会、竹中大臣の私的懇談会だということでございますけれども、ブリーフを拝見いたしますと、どうもこちらの方でも国際放送のあり方ということについて検討しておるようなんですね。既に第一回から第六回まで開催をされておりますけれども、ブリーフされた、記者会見された記録を拝見いたしますと、少なくとも第二回会合と第五回会合、この中でNHKの国際放送のあり方について議論された形跡があるようなんです。

 NHKの方に確認で伺います。既にこのように竹中大臣の私的懇談会で国際放送のあり方を検討されているようなんですが、それでもNHKとしては、総務大臣がことしの予算に付した意見に基づいて国際放送のあり方を検討していくということでよろしいですね。

橋本参考人 現在御審議いただいています十八年度の予算、事業計画でありますが、我々、三カ年、十八年度から二十年度の計画を示してございます。この中で、三カ年の計画としましては、先ほど申し上げました内容を充実しつつ、英語化率を一〇〇%に二十年度までにする、この具体的な計画を御審議いただいているというふうなことでございます。

西村(智)委員 NHKの方はNHKで、英語化率一〇〇%を目指しつつ検討していくというようなことなどなど、議論されておるということでございます。

 そこで、竹中大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、大臣は、NHKの収支計画、予算に関して付した意見の中で、繰り返しませんけれども、このように書いておられるわけでございますけれども、これは総務大臣の御意見ということでよろしいですよね。そこを確認させていただきます。

竹中国務大臣 大臣意見としてそのようにつけ加えております。

 新たにつけ加わったのかというお尋ねも先ほどございましたので、そのとおりでございます。

西村(智)委員 それで、この通信・放送の在り方に関する懇談会でございますけれども、これは竹中総務大臣の私的な懇談会として設置されておるということでございます。いわば竹中大臣の私的な懇談会でございますので大臣の意向で議題は選択されていく、こういうことになるんだろうと承知をしておりますけれども、NHKの方に検討しなさい、国際放送のあり方について検討せよと言いつつ、こちらの私的懇談会の方でも議題としてNHKの国際放送のあり方について議論を行っている。私には、こういうことがいかがなものかというふうに思えるわけでございます。

 この私的懇談会は「国民の視点から見た通信・放送の問題点」などを検討するというふうに書いてあるわけでございますけれども、大臣、私は、NHKがこのように大臣の意見に基づいて独自に国際放送のあり方を検討するというふうに発言されておられるわけですから、新たに懇談会の方に国際放送のあり方を議論していただくというのはちょっと失礼な話ではないか、これは懇談会の方に失礼な話ではないか、このように思うんですが、いかがですか。

竹中国務大臣 西村委員、それは私はそのようには思っていないわけでございます。

 私のもとにある懇談会というのは、通信と放送の技術面での融合という大変新しい、デジタルな時代において通信と放送はどのようにあるべきか、放送の公共性はどうあるべきか、そして国としての情報発信はどうあるべきかという非常に大きな枠組みの議論をさせていただくわけです。一方で、今NHKは現に国際放送の業務をしておられるわけで、それを執行する側として、今の執行体制の中で当然しっかりとやっていただかなきゃいけないこともあるし、今執行している側から見てこういう問題点がまだあるというような、私たちにはなかなか見えない問題点もあるわけです。私は、こういう問題というのは非常に重層的に幅広く議論するところに意味があるんだと思っております。

 例が少し違うかもしれませんけれども、国と地方のあり方についても、これは総務省の側から見た議論もしますけれども地方の側から見た議論もしてください、そして議論を深める部分は深めましょうと。私はそういうやり方をとっておりますので、例えばですが、NHKに検討してくださいというふうに言っておいて、こっそりと私たちで何か決めていたら、これはちょっと失礼かもしれませんが、私たちがこういう議論をしているということはNHKさんも御存じでございますので、ぜひお互いにいい議論をしたいと思っております。

西村(智)委員 いい議論をしていく、そしていい方向を見つけ出していくために重層的な議論を行っていくということは、これは私も全くそのとおりであるというふうに思います。であればこそ、ぜひ、この通信・放送の在り方に関する懇談会を公開ということにしていただけないか。

 大臣は、この私的懇談会を非公開とする、公開しないと、第一回の会合の後の記者会見、ブリーフでおっしゃっておられます。どうも、確かに第一回から第四回、五回までは非公開だったようなんですけれども、第六回及びこれから行われる第七回、こちらの方は、外部からヒアリングをするということで、公開される。しかもブロードバンドで映像までお流しになるということなんですけれども、公開、非公開としたその判断基準を伺いたいと思います。

 先ほどおっしゃった、いい議論をしていく、いい方向を見つけていく、これはやはりみんなで議論していくのが大前提だと私も思います。ですので、それはぜひ見えるようにしていただきたい。公開していただくということについては、どんなふうにお考えですか。

竹中国務大臣 私は、やはり議論というのはできる限り公開するというのが基本的な方向であろうというふうに思っております。

 ただ、経済財政諮問会議の場合もそうでございますけれども、いろいろな問題について率直に意見交換するような場合には、むしろ内部でしっかりと議論していただいて、結論についてしっかりとその情報を公開していくというやり方の方がよい場合もあるというのは、私は事実だと思います。

 通信・放送の懇談会に関しましても、会議そのものについては、いわゆる部屋の中でやらせていただきますけれども、その後、必ず、直後に記者会見でブリーフをして、そして議事要旨を数日後だったと思いますけれども公開をして、その形での情報公開はきちっと行っている。何度も言いますが、経済財政諮問会議のやり方と同じようなやり方をしているわけでございます。

 その上で、では、どうしてヒアリングについてそういうふうに公開したのかということなのでございますけれども、実はこれは、今この問題にはいろいろな立場の方がかかわっていて、いろいろな立場についてわかりやすく見えるような場という意味で、これを公開してもらえないかという非常に強い要望がありました。私は、これは、率直な、ああでもないこうでもない、こういう考えはあるかどうかという試行錯誤的な意見交換の場ではなくて、きちっとお互いの立場を言う場であるから、これはオープンにさせていただいてよいのではないかというふうに判断をしたわけです。

 実は、これも、政策金融機関に関する改革で諮問会議が行った手法と同じなんです。政策金融改革についても、これはいいか悪いか、いろいろな率直な意見交換の段階でそれが外に出てしまうとかえって誤解を招くということで、諮問会議の方式でやらせていただきましたが、ヒアリングに関してはこれはオープンでやらせていただきました。

 そういう位置づけであるということを御理解賜りたいと思います。

西村(智)委員 経済財政諮問会議も同様な形で行われたということ、率直な意見交換を保障するというような、実は全く同じことを昨晩質問取りに来られた総務省の役所の方がおっしゃっておられました。全く大臣と同じことをおっしゃっておられました。

 ですけれども、通信・放送の在り方に関する懇談会の開催要綱、検討内容の目的に「国民の視点から見た」というふうに書いてあるわけです、「国民の視点から見た」と。本当にそこに国民の視点が反映されているのかどうか。これは国民は知る権利があるというふうに思います。ぜひそこのところは改めて検討していただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、最後の質問に移ります。

 国際放送といいますと、どうも日本人の発想は、海外で放映するテレビ、ラジオ、こういうことにすぐ結びつきがちなんですけれども、それは言ってみればグローバル化する中でごく自然なことではあるわけですけれども、足元を見てみると、実は私たちが暮らしているこの国内社会も随分国際化しているんじゃないのというふうに私は考えております。

 ここのところ、在留外国人の数が急激にふえておりまして、今、総人口に占める在留外国人の人口比率は一・五五%でございます。観光立国などといううたい文句で観光政策も一生懸命やっていることの反映でしょう、観光客もビジネス関連の方々もふえてまいりました。こういうふうに、実は今もう既に日本の社会の中が多様化している。こういうことを踏まえて、これは少し理念的になるかもしれませんけれども、そういったことを前提とした国際放送のあり方、つまり、多様化する、国際化している国内社会を見据えた中での国際放送のあり方、これはぜひ検討していただきたい、このように思いますが、橋本会長、いかがですか。

橋本参考人 これは、海外に発信するというよりも、国内向けのいわゆる国際放送ということでございますよね。これにつきましては、やはりこういうふうな現状の日本のありようを考えて、国際化に対応した番組編成というものは考える必要が出てこようかと思いますし、実際、我々、今行っていますのは、テレビの番組なんかでも、日本語の音声チャンネルと英語の音声チャンネル、こういうふうなものを組み合わせて行うとかいうことはやっております。それから、ラジオなんかでも、一部ポルトガル語とか、こういうふうな言葉で発信するというふうなこともやっております。

 そういうふうな通常の、現在では大変限られた手法でございますが、こういうことをやっていきたいと思いますし、それから、デジタル化の世界になりまして、デジタルチャンネルというふうなことになれば、またそういうふうな技術を用いた副音声といいますか、外国語音声をやったり、字幕をつけるとかいうことは相当可能になってくるんじゃなかろうかというふうに考えております。

西村(智)委員 時間ですので、終わります。

 ありがとうございました。

佐藤(勉)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十八分開議

中谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横光克彦君。

横光委員 民主党の横光克彦でございます。

 ちょっと大臣にお尋ねしたかったんですが、向こうの方が延びておるということで、別な質問から入ります。

 二〇一一年七月をもってアナログ放送の役目は終わるわけでございます。そして新たな地上波デジタル放送の時代が始まるわけでございますが、このデジタル放送への完全移行に向けて、総務省初めNHKももちろんそうでございますが、関係者の皆様方が今精力的に取り組んでいるわけでございます。そこで、いわゆる通信と放送の融合という大きな流れについて、ちょっときょうはお尋ねしたいと思うんです。

 総務省が中心となって進めておりますこの計画では、いわゆるIPマルチキャスト放送、これによって地上デジタル放送の再送信を行うことを進めていると承知しておりますが、これは、再送信を実現するためには、放送事業者の同意を得るための技術的な条件整備が大前提となります。これらの整備に向けて総務省が精力的に取り組んでいるということは御報告を受けております。この技術的条件が整備された次の段階の問題の一つとして、私は著作権の問題があると思っているわけでございます。つまり、IPマルチキャスト放送が、これは従来なかった新たなサービスですよね、であるならば、そこで著作権法上の扱いを明確化しなければならない、そのことが重要な課題となってくる、このように思っているわけです。

 そこで、まず総務大臣にお尋ねいたしますが、このIPマルチキャストによる放送は著作権法上通信なのか放送なのか、どちらかはっきりお答えいただきたい。それだけで結構ですので。

菅副大臣 お答えをいたします。

 著作権法を所管している文部科学省におきましては、現在そのように取り扱われている、通信とということで取り扱われている、そういうふうに承知しております。

横光委員 それでは文化庁にお尋ねいたしますが、これは著作権法上、自動公衆送信、つまり通信であるということでよろしいんですね。

辰野政府参考人 お答えを申し上げます。

 通信回線を用いた著作物等の送信につきましては、著作権法上、まず公衆送信という大概念がございます。すなわち、公衆によって直接受信されることを目的として無線あるいは有線の送信を行うことでございまして、この公衆送信のもとに三つの概念がございます。

 一つは、放送でございますが、これは公衆送信のうち……(横光委員「まず通信か放送かだけを教えていただきたい」と呼ぶ)それをちょっと正確に申し上げようと思っているんでございます……(横光委員「後で聞きます。ちょっとそこだけ確かめたい」と呼ぶ)

 それでは、そこを先に申し上げますと、放送につきましては、この公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行われる無線通信。有線放送につきましては、それが有線電気通信によって行われるものをいうわけでございます。さらに自動公衆送信という概念がございまして、これは、公衆送信のうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うものを指す。

 著作権法上は、実は通信という概念はございません。この三つでございまして、このうちIPマルチキャストにつきましては、利用者の求めに応じて当該利用者に送信されることから、現行著作権法上は有線放送ではなく自動公衆送信に位置づけられるということでございます。

横光委員 わかりました。つまり、自動公衆送信、通信の分野に入る、そういう位置づけだということでございます。

 このIPマルチキャスト放送のシステムは、IPマルチキャスト事業者が放送センターで受信をして、そしてそれを再送信によって家庭へ番組を送るというシステムでございます。それが今お話しのように通信ということになりますと、IPマルチキャスト事業者が再送信するに当たっては、個別に実演家の皆様方から許諾を得なくてはならないわけでございます。こういうことになりますと膨大な事務量となるため、非常に実務的には困難となってきます。

 このことが円滑な再送信を妨げるのではないかという声も耳にするわけでございますが、だから、この問題を解消するために、著作権処理の円滑化を図るために、IPマルチキャストを有線放送という扱いにしようとする動きがあると聞いております。これは、総務大臣の私的懇談会、総理が本部長を務めております知的財産戦略本部、そして今の著作権を所管しております文化庁、それぞれが同じ方向で検討されていると伺っております。

 しかし私は、このIPマルチキャスト放送というのは、今お話ございましたように、各家庭からリクエストがあって初めて情報が送られるという性質ですから、著作権法上の有線放送には当たらないのではないかという疑問を持っておりますし、現に今、文化庁は、これは自動公衆送信の分野だということを言われました。

 それが、IPマルチキャスト放送がインターネットでありながら通信ではなく有線放送の扱いにするという法改正を、これはもう法改正をしようと今聞いておりますが、これまた今月の頭に小坂文科大臣もそのような趣旨のことを表明されております。

 そこで、文化庁にお尋ねいたします。

 そのことで著作者や実演家等の権利者にはどのような影響を与えることになるのか、御説明をいただきたいと思います。

辰野政府参考人 ただいま先生御指摘のとおり、これは現行の著作権法上は自動公衆送信ということになるわけでございます。

 自動公衆送信と有線放送の著作権法上の違いでございますけれども、自動公衆送信における放送番組の同時再送信につきましては、原則どおり権利者の許諾が必要である。しかし、有線放送でありますと、放送番組の同時再送信につきましては実演家の権利は働かない。そういうところで違いが出てくるわけでございます。

横光委員 今簡単におっしゃいましたけれども、これは実は大変な影響が出てくるということですよね。有線放送に位置づけてしまうと実演家の権利は働かない、無権利になってしまうということを今説明されました。同じIPマルチキャストについて、通信という解釈であるならば権利がある、しかし放送という解釈だと実演家の権利がなくなってしまうというわけでございますが、これは非常におかしいことでございます。

 文化庁としては、権利の円滑化を図るためという意味で法改正をしようという思いでございましょうが、法改正するということは、事務手続上の円滑化を図るというためであって、権利の円滑化になるのか。むしろ私は、今言われたように無権利になるわけですから、権利がもう全く奪われてしまうような法改正になるんじゃないかと心配をしておりますが、いかがですか。

辰野政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、現在、このIPマルチキャスト放送につきましては、これは著作権法上有線放送というふうには解釈できないと明確に考えております。

 しかし一方、今お話ありましたように、二〇一一年のアナログ停波の際の補完路といたしましてIPマルチキャストを用いた通信インフラの積極的活用が検討されているということもございますので、このような状況も踏まえ、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取り扱いについて文化審議会著作権分科会において検討を開始することとしているわけでございます。

 ただ、この検討に当たりましては、著作権法というのはもともと、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する、すなわち権利の保護と公正な利用というもののバランスをとっていくという考え方でございますので、これをこの審議会の中でどのような形で結論を持っていくのかというのは、これから議論をするというところでございます。

横光委員 今、通信の場合は許諾の権利がある、しかし有線の放送の同時再送信になると権利がなくなるというお話。しかし、IPマルチキャストはそのシステムなんですよ。そうすると、そこで流される情報あるいはコンテンツ、映像等には、全く実演家の皆さん方の権利が奪われてしまう。

 これから審議され、いろいろ相談するということですが、これは新たな、いわゆる放送と通信の融合の第一のスタートですね。ここのところでしっかりとこの問題ははっきり明らかにしておかないとこれから大変なことになるという意味で私は今質問しているんです。

 では、そもそも著作権法上、なぜ有線放送では実演家とレコード製作者は権利が制限されてきたのでしょうか。

辰野政府参考人 これは、放送の持つ公共的な性格、それからそれに対してさまざまな法制により適切な規制というものが行われている、そのことによって公的な目的を達成するための一つの手段というふうに考えております。

横光委員 今非常にわかりにくい説明、もっと具体的に言ってくださいよ。これは区域内の限定的な難視聴対策という形で始まったんでしょう。それであるなら、公共性という意味からも実演家の皆様方の権利を制限してもやむを得ないだろうということで始まったんでしょう、今難しいことで答弁されましたが。それは、当時としては、実演家の皆様方もやむやむ、そういった意味であるならばそれはやむを得ないということで制限されてきておるんですよ、有線放送の場合は。

 それが今回、またそういった有線放送の扱いにしようというIPマルチキャストの放送、これは考えたら、これから限定的な区域どころじゃなくなるんですよ。今回、IPマルチキャスト放送というのは、これまで制限された理由として、区域限定の難視聴対策という意味があったところで制限をされてきた。今度、そこにまた戻すということは、対象範囲が膨大になるわけですよ、膨大に拡大されていくわけですね。そこで権利が同じように制限され続けるということになれば、これはもう実演家にとっては天と地ほどの差になってくるわけです。

 ですから、私はここの問題を今取り上げているんですが、これを、これまでの有線放送の場合の制限の理由と、今回のマルチキャストの放送による対象範囲の拡大を考えたときには、私は、到底同列に扱うことができないという気がいたしております。

 私は、メディアやあるいはIT産業の技術の進行によって新たな産業が生まれるというようなことを否定しているのでも何でもないんですよ。これは今、私たちの国にとって大変重要な分野であるということをちゃんと認識した上で質問をしているんです。実演家の皆様方も、新たな産業が生まれれば、そこにはどうしても新たなコンテンツが必要になってくる、そうすると、そういった活動する場も広がってくる、むしろ歓迎をされているんですよ。

 しかし、ただただ経済性とかあるいは技術の進行とかあるいは効率化ばかりを追いかけて、肝心かなめのメディアの中身の部分をつくり出している担い手、いわゆる実演家やレコード製作者、こういう人たちの、ソフト産業の方々の権利をおろそかにしていいということにはならないと思うんですよ。

 ですから、このことはもう重々おわかりのことと思います。であるならば、通信であるものを放送と定義し直すのであるのならば、それに伴ってやはり実演家やレコード製作者の権利をしっかりと保護していただかなければならないわけでございます。つまり、著作権法第九十二条第二項の一の有線放送で制限されている権利を撤廃して、放送と同じ扱いにすべきだと私は思いますが、法改正に向けて、文化庁はどのようにお考えでしょうか。

辰野政府参考人 今の御指摘の中に、有線放送とIPマルチキャスト放送とはメディアとしての特性や利用の実態が必ずしも同じでないという御指摘がありましたが、このことは重々承知をいたしております。

 そこで、IPマルチキャスト放送に係る実演家の権利のあり方を検討する場合には、御指摘の点も十分留意しながら、実演家の権利を不当に害することのないように十分に留意しつつ検討してまいりたいというふうに考えております。

横光委員 国の文化を守るということが文化庁の最大の役割だと私は思っております。生活を豊かにする文明も必要です。しかし、心を豊かにする文化も重要であることは論をまちません。

 どうか、今御答弁いただきましたように、この問題が効率化の観点からのみ検討をされ、結果として権利者の権利が損なわれていくことのないように、著作権法の改正に当たっては、現場の実演家の皆様方の意見を十分に配慮した上で検討を進めていただきたいと私は思っております。

 総務省、どうですか、この問題で。

菅副大臣 委員の御指摘にもありましたように、これから通信・放送のまさに融合が進展する中で、コンテンツ市場の活性化を図るために、これは著作権の問題が極めて重要な問題でありまして、総務大臣の懇談会であります通信・放送の在り方に関する懇談会においても主要な検討課題の一つとして私どもは取り上げております。

 そして、この懇談会において、IPマルチキャストに係る著作権の問題については、役務利用の放送法と著作権法で放送の概念がずれておるわけでありまして、現在、IPマルチキャスト方式による役務利用放送は著作権法上通信として扱われ、コンテンツ流通を妨げていることから、早急に解決をされるべきである、こういうことが指摘をされました。

 また、懇談会におきましては、先日、実演家団体の皆さんからもヒアリングを行いました。こうした権利者団体からの意見聴取、あるいは利用者、さまざまな立場に目配りをしながら検討をすべきだというふうに思います。

 いずれにしろ、やはり国民が何を望んでいるのか、こうしたことの観点から議論をしたい、こう思っております。

横光委員 私、ソフトなくしてIT技術、メディアの活性化はないと思っております。

 それで、これは文化の問題ということで今取り上げたんですが、NHKにお尋ねをいたします。これは大臣にも本当は聞きたかったんですよ。

 NHKの川口のアーカイブス、あそこには現在五十万本のいろいろな資料が貯蔵されている、蓄積されている。しかし、そのうち公開、閲覧可能なものは五千本ということを聞いておるんですが、これは事実ですね。五十万本あって、実際閲覧可能あるいは活用できるのは五千本ということは、結局、あとの九分九厘はいわばあるだけ、眠っているだけということにもなりかねませんね。

 この五十万本というのは、私は大変な国民の財産だと思うんですよ。これは受信料という制度で長い間の中ででき上がった大変な財産なんですよね。それがこういったマルチメディアの時代になったときに、さらにそれを生かす時代が来たわけです。しかし、眠ったままである。いわゆるこれは原石のままじゃ意味がないわけですね。これを磨いて磨いてダイヤモンドにして、初めて意味が出てくるわけです。

 デジタル化するためには、大変な時間あるいは手間、さらにはこの著作権の問題も含めて、いろいろな予算も財政も含めてかかるわけですが、このいわゆる宝をいかに活用していくための施策をこれからどのようにされるおつもりなのか、NHKにお聞かせいただきたいと思います。

原田参考人 今お尋ねがございましたように、放送番組を保存し、継承し、活用するということは、公共放送、私どもの本当に大切な役割であるというふうに考えております。

 今、現状では、これらの映像資産、NHKでは、一つは日々の番組、例えば「NHKアーカイブス」とか「新日本紀行ふたたび」とか、ああした番組で日常活用しておりますけれども、そのほかに、関連団体を通してDVD化をする、あるいはビデオ化をする、それからケーブルテレビあるいはCSの事業者に番組提供も行っております。それから、海外に無償提供という形で、十六年度二千三百本出しましたけれども、これまでおよそ四万本の番組を出しております。

 今、五千本とおっしゃいましたのは、番組公開ライブラリーというもので、NHKの局所に来ていただければ、視聴者の方がアーカイブスにつながった回線で映像を、アーカイブスの番組をごらんになれるというものでございますけれども、これも、それぞれ御協力いただいた方の許諾を得て、無料で公開をしているものでございます。

 これからのことでいいますと、一つは、インターネットでアーカイブス番組をごらんになりたいという視聴者の要望、ニーズ、これも高まってくるものというふうに考えております。こうした声にこたえて、NHKとしても、インターネットによる視聴者サービス、これを検討してまいりたいわけです。

 ただ、その場合に、例えばNHKが直接視聴者向けに番組提供を行うことは現状の制度では難しいというような制度上の課題が幾つかございます。現状では、例えばアーカイブスに保存されている番組のリスト、これをインターネットで検索していただけるようにするとか、あるいは映像情報をデータベースでインターネットで利用していただけるとか、そういったことも含めて検討を始めておりますけれども、貴重な文化資産としてのアーカイブスの生かし方、真剣にこれから検討してまいりたいというふうに考えております。

横光委員 NHKの今回の予算、経営、大変厳しいわけでございますが、それと同時に、やはり今言われたような国民の財産とも言ってもいい宝を、デジタル時代になって、これからますます重要な宝になってくるわけです。そういった意味での有効活用のための御努力も忘れてはならないと思っております。

 それと、今回、五百億の減収の中での予算を立てられておりますが、その中で私が非常に心配するのは、いわゆる制作ですね。いろいろな番組の制作の質というものが、これはどうしても、一般的に見ると、落ちてしまうのではないか。例えば職員の皆さん方、役員の皆さん方、世の中ベア、ベアと言っている中に、さらに減給という厳しい中で国民にそういった思いを訴えている。それはそれで、私は本当に頭が下がる思いですが、そういうことが、人員の削減とか予算の削減とかいうものが番組の質の低下につながるんじゃないかと非常に心配しておるんです。

 例えば、これはちょっと聞いたんですが、イギリスのBBCと何か共同で番組をつくろうとしていますよね。「地球!ふしぎ大自然」という番組がありますが、やはりNHKでは、ああいった番組というのは民放ではなかなかつくるのが難しいと思う、毎週ゴールデンアワーに流しますからね、ああいったことをこれからBBCと共同でやるという話を私も聞いたんですが、まさにその場合は、国際間のテレビ局と共同でやるということは、より質のいいものができるだろうし、それにかかる費用は、共同ですから、半分で済むかもしれない。いわゆる小さな金で大きなサービスという一つの典型だと思うんですね。そういうことはぜひ進めていっていただきたいし、むしろNHKの目玉にこれからしていただきたいし、そういった類似のことを努力していただきたいと思っております。

 終わります。ありがとうございました。

中谷委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二と申します。

 きょうはNHKさんに、主に放送の公共性とそれから情報公開のことについてお伺いをしたいと思います。

 先ほど質疑をいたしました横光先生はまさにテレビの現場にいて活躍されていた方でありまして、テレビの裏も表も現場を知り尽くしている。私は田舎生まれ、田舎育ちで、テレビの裏じゃなくてテレビの外にいて、子供のころからテレビの世界の奥の世界にあこがれて育ってきたような人間でありますので、いろいろとんちんかんなこともあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 私は、実は生まれて初めてテレビに出ましたのがNHKのテレビでございました。「こどもニュース」というのがございまして、あれに出たことがございます。今からもう三十数年も前のことで、小学校の一年生か二年生のときだったと思いますね。それから、初めてラジオに出ましたのも実はNHKでございまして、これも音楽番組でありましたが、「こどもニュース」のときは帰山礼子さんというアナウンサーだったでしょうか、それからラジオのときは伊瀬知さんというアナウンサーだったと思います。そういうことは非常によく覚えているものです。

 それはともかくといたしまして、私が生まれたとき、近所には余りテレビがございませんでした。私の家にも生まれたときはテレビがなくて、少したってからテレビが来た。そのころは残念ながら、私は北海道の小さな町、ニセコという町の生まれでありますけれども、そこには民放の放送は一社しか入っていなかった。余り画面もきれいじゃなかった。それで、民放を見るためには、北海道のあのホッケの開きのような大きなアンテナを立てないと、そして方向を変えてやらないと民放を見られないんですね。NHKさんだけはちょっと小さ目のアンテナでも見ることができたということで、私のような田舎に育った人間であってもテレビに出られたとか、あるいは田舎のニセコであっても早い時期からNHKだけは見ることができたということで、やはり民間の商業放送がやっていたのであればこういうことはきっとできないんだろう。公共性ということについていろいろな観点から言われているけれども、ちょっと古い時代にさかのぼってみれば、NHKが果たしてきた役割というのは、私はやはり相当に大きいというふうに言わざるを得ないと思っています。

 しかしながら、時代がどんどん変わってまいりまして、その果たしてきた役割というのも時代の変化に応じていろいろと見直していかなければいけない。だがしかし、公共性というものは、これはNHKの存在意義、起源からいっても絶対大事なことである。

 そこで、一つ目の御質問でありますけれども、現在のところ、この公共性というものをどういう仕方、手順によって担保しようとしているのか。将来の話はまた後に伺いたいと思いますが、現時点でどのような手順あるいは仕組みによってやろうとしているのか、少し勉強させていただきたいと思います。御答弁お願いします。

橋本参考人 お答え申し上げます。

 NHKが公共放送としてのクオリティーを保つため、これは当然ながら、放送法に以下いろいろございます、公平公正あるいは自主自律、こういうふうな報道機関としての姿勢、それから豊かな放送を多様な視聴者の方々に届ける、こういう精神を基本として、日ごろの番組制作から含めて細心の努力を払っているところでございます。

 具体的に幾つかの具体例がございますので申し上げますと、まず大きなものは、やはり基本的に、国内番組基準あるいは国際番組基準というふうな、一つの番組指針というふうなものを規範として、これに照らしながら番組をつくり、送出しているというふうなことでございます。

 それから、放送のガイドラインというものにつきましても、今日的な、現在に合う形で今つくり直しておりますけれども、新しいガイドラインというものを改めて公表していく、あるいは我々自身の規範としてこれも用いていくということでございます。

 それから、放送番組審議会というものがございます。これは、中央放送番組審議会あるいは地方放送番組審議会、国際放送番組審議会という形で外部の方々に集まっていただきまして、番組総体について、あるいはそのときそのときの話題になった番組、こういうふうなものについていろいろ御議論いただいたり御意見をいただいて、これを実際の制作現場に反映するということを行っております。

 それから、全国でおよそ千人規模のいわゆる番組モニターという方々から御意見をちょうだいする。また、これは非常に統計的に均一さを求めるために、放送文化研究所というところがいわゆる世論調査的にいろいろな意見を、番組に対してあるいは放送に対する取り組みについての御意見をいただく、こういうことも行っております。

 それから、実際にNHKに寄せられる視聴者の声といいますか、これが年間およそ、昨年度で七百七十万件ぐらいございますけれども、そのうちの三百三十万件ぐらいが番組についての御意見等でございます。こういうものを分析する。あるいは、以上のような視聴者の方々の御意見あるいは専門家、有識者の御意見等を、総合的にNHKの番組の中に、番組制作あるいは実際の取材とかこういう活動の中に生かしていくというふうなことで、大変きめ細かな意向吸収ということで、みずから、我々できるだけ公共性を守っていくという活動をしているところでございます。

逢坂委員 細かくお話しいただきましたが、放送法に規定があるよというふうなこと、放送基準というものがあるよというようなこと、ガイドラインの中に規範があるよ、審議会がある、モニターあるいは視聴者の声というようなことでやっている、端的に言うと、こういうことだったかと思うんです。

 これに対するNHKさんとしての現在の評価、これは本当にうまく機能しているだろうかというあたり、あるいは、評価とあわせて課題、いや、実はこれだけやっているんだけれども問題があるんだというあたり、ございましたらお知らせいただけますでしょうか。

橋本参考人 およそNHKの番組総体としましては大変高い評価をいただいています。これは、このような日ごろの我々の努力というものについての御評価をいただいているものというふうに考えていまして、いろいろ、番組審議会以下、放送機関に勤める者としての規律、番組制作にかかわるこういう問題につきましては、大変機能しているんじゃなかろうかと思っています。

 やはり今日的に重要になってきますのは、いかにそういうふうな視聴者の御意見等をフィードバックするか、視聴者の御意見そのものをどういうふうに番組の中へ反映しているのか、あるいは、そこのところで我々自身もより一層定量的な把握というものが必要ではなかろうかというふうに考えまして、約束評価委員会という中で、豊かで多様な番組をつくっていく、視聴者の視聴ニーズに合った番組になっているかということをできるだけ定量的に評価しまして、これを実際の制作現場の方へ反映するシステム、これが必要だなというふうに考えまして、今年度からそれを導入して、取り込んでいくということを行ってまいります。

逢坂委員 現在、公共性を担保する仕組みというのは機能しているだろう、おおむね評価しているというような話がございました。ただし、課題としては、視聴者の声というものをより番組に反映するというようなことが大事だ、まさにそうだというふうにも思うわけです。

 私も余り詳しくないのですが、いわゆる世界ラジオテレビ機構によりますと、放送の公共性ということで、普遍性、多様性、独立性、特殊性というようなものがあるというようなことが世界ラジオテレビ機構では指摘をされているわけです。

 例えば、実は今、三位一体改革とか市町村合併などのいわゆるこの総務委員会で扱うようなテーマというのは全国的に沸騰しまして、一部だんだん今ちょっと収束の方向にありますけれども、五年前、七年前、こういった市町村合併の問題でありますとかあるいは国と地方の税財政の問題、これは、実は根っこは、きのうきょう始まった問題ではなくて、もうずっと前から議論しなきゃならない課題だったわけですね。

 しかしながら、こういう課題について、民放のテレビ局さんに、例えば市町村合併の特集を組んでほしい、あるいは国と地方の税財源の問題をニュースでやってほしいんだということを言うと、例えば夜の十時台、十一時台に民放のテレビでいわゆるニュースのワイドな番組をやっていますけれども、その制作の方々は私に口をそろえてこう言うんですよ。いや、それは、逢坂さんの気持ちはわかるけれども、そんなものを流した途端に視聴率が落ちるんだ、これは流せない、もっと何か社会的に話題のあるものじゃないと残念ながら流せないんだ、いや、本当に逢坂さんの言っているのはわかる、それを今から議論しておかなければ後に大変になることもわかるから、本当はジャーナリストとしてはやりたい気持ちはあるけれども、できないのが、これは世の仕方のないところなんだというふうに言われるわけですね。こういったところをやはりやるのがNHKの公共性の、一つの公共たるゆえんだろうと思うわけですね。

 だから、そのときに、先ほど橋本会長さんおっしゃいました、視聴者の声だけを聞いていれば私は公共性は担保できるものではないと思うんですね。自己を律するというか、組織の中にどうやって、そういう自分たちの放送の内容であるとか、あるいは政治からの独立というものがうまくいっているのかというようなことを、まずみずからがというところが大事だと思うんですが、このみずからがという点ではどのような仕組みをお持ちでしょうか。

橋本参考人 まさにこのみずからという規範のところは、そこに働く、NHKに働く役職員がその考え方に徹することにあるわけで、精神規範であろうというふうに思っています。

 そういう中で、当然ながら、先ほども申し上げましたような視聴者の声を吸収する一方、一つは番組審議会などでも、社会の良識といいましょうか、そういう声も吸収しているわけでございますし、またNHK自身が、役割としまして、いろいろな先導的な役割といいましょうか、世の中の一種スタンダードといいましょうか、高いクオリティーを設ける、こういうふうな規律は当然ながらみずから持った上で番組をつくる。

 そういうあらわれとして、実際に十七年度からも、「日本の、これから」という大変大型の番組でございますけれども、日本が抱える今日的なテーマ、少子化、高齢化を含め、あるいはいろいろな課題がございます、こういうものを実際に放送の場の中で国民・視聴者の方にいろいろ考えていただく場をつくる。そういうふうなことを含めて、一種啓発的な番組、こういうものに取り組んでいるところでございますし、これはやはりNHKならではの取り組みだというふうに考えております。

逢坂委員 いろいろと御努力されていることはいろいろな話から理解はできるわけですが、私、NHKさんのいろいろな経営の方針でありますとか改革の中身などを見せていただいて、総論として感ずるのは、いろいろな対策を講じようとする文章としての姿は非常によく見えるわけですが、その次、具体性ということになりますと、いま一歩、説明といいましょうか、我々に対する説得力が弱いのかなという印象を持っているところであります。

 きょうはこの点についてはこれぐらいでやめにしたいと思いますけれども、ぜひ具体的に、現場を変えていくということは、やはりスローガンだけでは変わらないわけでありますので、どうやって実際にそのスローガンを担保していくかということを、今よりもより一歩突っ込んでお考えをいただければなというふうに思います。

 今、NHKが大変つらい、厳しい状況になっているわけですが、こういうときにはやはり、先ほど視聴者の声ということがございましたけれども、何よりも組織の実態や実情を明らかにしていくということが大変大事なことであります。情報公開、そういう点ではこれは非常に重要な概念かと思いますが、これに対するNHKとしての基本姿勢をお知らせいただきたいと思います。

中川参考人 お答え申し上げます。

 御案内のように、NHKは平成十三年の七月より自主的に情報公開を始めておりますけれども、これは当時、特殊法人情報公開検討委員会で、NHKは政府の諸活動として放送を行わせるために設立された法人ではないということを理由に、他の特殊法人と区別して、法律の対象外とするかわりに、自主的な情報公開の整備を求められたという経緯がございまして、この趣旨を大変私どもは重く受けとめております。したがいまして、放送法第三条にございます放送番組編集の自由、これを確保しつつ、いかに視聴者の方々に説明責任を果たしていくのかということが基本であるというふうに考えております。

 ただ一方で、NHKの場合は、他の民放さんと同じ放送という分野で競争関係にございます。特に、受信料の使い道といいますか、使途といいますか、番組経費等につきましては、大変そのあたりがある種ノウハウが含まれている部分がございまして、そういった意味からも、ある程度情報の公開というのは限られてくるだろうというふうに思っておりますけれども、基本は、番組に限らず、さまざまな経営情報も含めまして、できるだけ視聴者の皆様にお知らせしていくということが大事だというふうに認識しております。

逢坂委員 組織を改革していくときに、情報を明らかにして、課題を、自分たちにとって不都合だと思われるような情報も開示をしなければ変えていけない。特にNHKのような国民から広く負担を願って放送をしなければならない組織、団体では、なお一層それが重要だというふうに思うわけですね。

 これは、私が前、仕事をしておりました北海道のニセコという町で発行している予算の説明書であります。中には、実は、単に予算の中身が書いてあるだけではなくて、借金が幾らあるかとか、近隣の町と比べて税収が多いか少ないかとか、あるいはどのぐらいの借金を何年で返せるかとか、どちらかというと嫌な情報を積極的に開示する資料なわけですね。今、全国の自治体レベルでは、相当数のところがこういったものをつくるようになってまいりました。

 私の生まれたところは小さな町でありますから、小さな町だからできるんだろうという御指摘も多方面からいただくんですが、実はこちらに、これは北海道札幌市のものであります。北海道札幌市は人口が今百八十万ぐらいでしょうか。そういうところでもやはり同じように、札幌市にとっては必ずしもよい情報ばかりではないことも、財政上のいろいろな課題なども出しているわけですね。こういうものを出すことによって、市民の皆さんみずからが、これはおかしいんじゃないかとか、ここは改善すべきだというような動きにつながっていくわけですね。

 したがいまして、NHKにおかれましても、ぜひとも、単なる受け身の情報公開ではなくて、真の意味で組織を変えて、国民のためになる公共放送たり得る積極的な情報公開、求められてから聞かれた部分だけ出すんだとか、あるいは、そもそも放送にはノウハウがあるから出せないところが多いからと言って小出しにする姿勢を先に出すのではなくて、まず、基本的には情報は視聴者のものだというぐらいの姿勢でやることが大事だと思うんですが、この点いかがでしょうか。

中川参考人 私も、今先生お示しになられましたニセコの予算書を拝見いたしまして、大変わかりやすく、それからまた、住民の方々にとって、つまり、ごらんになる方々にわかりやすい、イラストも入って、非常にすばらしいものだと思っております。

 できるだけNHKもそういったことを御参考にさせていただきながら情報公開を進めてまいりたいと思いますけれども、相当さまざまな情報を今ホームページを通じまして公開しております。

 特に今年度は、番組のところでは、ジャンル別の番組制作費、十七番組でございますが、トータルコストをお示ししております。それを、来年度につきましては、さらにチャンネル別でお示しする。それから、実際にどう使ったかというジャンル別の決算のところを総額でお示ししたい。

 それからまた、私ども理事会の議事録、これは今もございますけれども、非常に簡潔過ぎてなかなか中身がわかりにくいという御指摘もいただいておりますので、そういったものは、きちんと実名入りで、中身が、どういう議論をしたかわかるような格好で、それも充実いたしましてホームページに載せてまいりたいというふうなことで、一層充実を図ってまいりたいと考えております。

逢坂委員 ぜひ、情報公開そのものが改革の大きな力になるんだということを御認識いただいて、積極的におやりいただきたいというふうに思います。

 それともう一つは、外に対する情報公開ということも大事なことでありますけれども、内部で働く皆さん、組織の内部の方たちに対する情報公開というのも非常に重要なことだと思っております。

 私、この世界に身を置くようになってもう十年以上になります。マスコミの皆さんとのおつき合いもあるわけですが、そうした中で、これは本当かどうか私は確証がありませんし、事実かどうかということは全くわからないんですが、NHKの現場の職員の方からこんな声を聞くことがあります。いや、うちの組織は二世採用が結構多くて、何か採用の状況がよくわからないんだよなと。これは要するに居酒屋なんかで飲んでいるような中で出る話ですから、私はその実態というのはどういうものかよくわからないところがありますけれども、例えばそんな話が出る。これは一度だけではなくて、私がおつき合いしたNHKの職員の方、複数の方から聞いた話でございます。そんな話がある。

 すなわち、採用の透明性だとかあるいは組織内の昇進、昇格の透明性といったことも組織の改革には非常に重要なことなのですが、このあたりについてはどんな手段を講じていらっしゃいますでしょうか。

小野参考人 お答え申し上げます。

 言うまでもなく、NHKにとりまして、優秀な人材の確保は最も大事な点でございます。

 職員の採用に当たりましては、公募による募集を行っておりまして、書類選考、筆記試験、面接試験、三段階の試験を実施しておりますけれども、その各段階ごとに担当者を変えまして、多角的に判断できるように工夫を凝らしております。当然のことですけれども、人材確保は大変重要でございますので、厳正、公正に行っているということでございます。

 それから、職員の人事評価といいますか、内部のことですけれども、これにつきましても、複数の目で、直接の上司から局長までの三段階で業績を評価するということを行っておりますのと同時に、透明性を確保するために、上司と部下が面接を行いまして、今後の課題等について話し合うことなどを通して、評価の透明性、納得性というものを高めるという工夫を行っております。

逢坂委員 きょうはまだ、私がNHKさんのことについて質疑をするのは一回目でございますので、表面を軽くなでたという程度の質問でございますけれども、いずれにいたしましても、公共性を確保するということと透明性、しかもそれを受信料を負担いただいている皆さんに説明する責任というのは非常に大事なことだというふうに思います。

 北海道のニセコには今も私の父が半分寝たり起きたりの生活をしているんですが、その父が見るテレビ番組のほぼ八割と言ってよいでしょう、NHKです。私は何でそんなにNHKばかり見るのかわからないのですが、多分あの世代にはNHK神話みたいなものがきっとあるんだと思います。ニュースならもう是が非でもNHKを見なきゃだめなんだというような感じで、いつもNHKを見ているわけですね。

 多分、国民の皆さんは相当やはりNHKに期待をしているというふうに思いますので、その期待にこたえられるように、ぜひ、ほかの放送局とは違うんだという、責任を持って進めていただきたいということを申し上げて、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、受信料収入の落ち込みにかかわってくる、政治からの中立性、公平性、公正性、それから不正経理問題などについて、NHKの執行部が真相の解明と信頼の回復に向けて真摯な態度で臨んでいくことが重要だ、こういう角度からきょうは質問をしたいと思います。

 「ETV2001」「問われる戦時性暴力」のいわゆる番組改編問題ですね。この番組の国会議員への事前説明について、昨年一月十九日、NHKコンプライアンス推進室調査結果報告では、本件番組についてその概略を説明したことについては、事業計画の説明等に付随して今後放送される放送番組について説明を行うことも通常行われていることも考え合わせると、このことについても業務の遂行の範囲内であるということを言っておりますが、この見解は今もこのとおりですか。

橋本参考人 この番組に限らず、とにかくNHKの基本的な方針としては、公平公正、自主自律、こういう中で不偏不党を守って日常の番組をつくっていくことが基本だ、生命線だと考えております。この自己的な規律をいつでも、四六時中守る、これがNHKの姿だというふうに私は考えておりますし、いろいろ、放送の場面だけでなく、通常の、予算、事業計画、こういうふうな国会承認を得るに当たるような、こういう経営的な中でも、この自主自律の精神は変わらないものとして守ってまいりたいというふうに思っております。

吉井委員 自主自律を貫いていっていただく上で、今言いましたように、いわゆる事前説明が通常の業務の範囲内であったという昨年のお話であったわけですけれども、昨年七月に、これはホームページでNHKの方が公開しておられることですが、この発表の中で、「編集過程を含む事実関係の詳細」、少し長いタイトルになりますから、詳細というふうにこれからは略して呼びたいと思いますが、二〇〇一年一月二十五日から二十六日ころ、NHK総合企画室の担当者が古屋圭司議員など、自民党総務部会所属の複数の議員を訪れた際に、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会所属の議員らが昨年十二月に行われた女性国際戦犯法廷を話題にしている、NHKがこの放送を番組で特集するという話も聞いているが、どうなっているのか、予算説明に行った際には必ず話題にされるであろうから、きちんと説明できるように用意しておいた方がいい、こういう趣旨の示唆を与えられているということが書いてあるわけです。

 そこで、きちんと説明できるように、野島国会担当局長みずから試写にも同席していて、NHKは、予算説明の際に若手議員の会が女性国際戦犯法廷を話題にしてきたときにきちんと説明できるように、マニュアルを作成していらっしゃったようなんですが、この点はいかがでしょうか。

原田参考人 当時、今御指摘ありましたように、一部議員の間で、NHKが四夜連続でいわゆる女性法廷をそのままドキュメントで放送する、これは誤ったうわさなんですけれども、これが流れていたということで、その誤解を解く必要があるということで、若手議員の会のメンバーの方にも説明をしたというふうに聞いております。

 ただ、マニュアルがあったかどうかということでいいますと、特にマニュアルのようなものをつくったことはないと聞いております。

吉井委員 資料Aを皆さんのお手元に配っていただいておりますが、これは裁判に証拠として提出されている説明マニュアルのコピーを出したものです。

 内容から、若手議員の会が女性国際戦犯法廷を話題にしたときにきちんと説明できるように作成したマニュアルではないかと思われます。つまり、一遍に何人もの人のところへ担当の方が行かれるわけですから、ばらばらの説明をしておったら話にならぬわけですから、ですからこういうマニュアルをきちんとつくっていかれたというふうに思うんですが、どうですか。

原田参考人 先ほど申し上げましたように、説明のためにマニュアルをつくってはおりません。

吉井委員 裁判の中では、長井デスクが証人として、この文書について、一月二十八日ぐらいだったと思いますが永田さんからコピーを一部いただいていったように記憶しておりますとお話しになっております。

 それで、いわゆる詳細の中で、中川昭一議員、若手議員の会会長と伊東番組制作局長とのやりとりが書かれておりますが、そこでは、中川議員は女性法廷自体の問題点等について意見を述べたとこのホームページで書いていらっしゃるわけですね。

 松尾総局長と安倍議員とのやりとりでは、安倍さん自身が、昨年一月十二日付の毎日新聞の夕刊で、コメントとして、「裁判官役と検事役はいても弁護側証人はいないなど、明確に偏った内容であることが分かり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した。」というお話であります。

 資料Aにあるように、この中で、国際戦犯法廷を取材対象として取り上げた理由をNHKに説明しなさいと事実上言っているようになっていて、そしてまた、慰安婦問題そのものについては、詳細の中で、安倍議員が慰安婦問題の難しさや歴史認識問題と外交関係などについての持論を語ったとホームページの方で書いてあるわけですが、NHKが扱うのであれば公平公正な番組になるべきだと意見を述べたとも書いてあります。

 そこで、安倍さんの持論について見たのですが、当時、既に出版されていて、伊東局長も入手しておられた、若手議員の会編集の「歴史教科書への疑問」というのが、きょう私持っておりますが、そこに寄せている安倍さんの小文の中に持論というのが書いてあります。

 四月まで勉強会を八回開催し、賛否の立場からなる講師の御意見、さらに資料を検討した結果、軍、政府による強制連行の事実を示す資料は、二次にわたる政府調査、各民間団体の執拗な調査によっても発見されなかった、平成五年八月四日の河野官房長官談話は、当時つくられた日韓両国の雰囲気の中で、事実より外交上の問題を優先し、また、証言者十六人の聞き取り調査を、何の裏づけもとっていないにもかかわらず、軍の関与、官憲等の直接な加担があったと認められて、発表されたものであることが判明したと安倍さん自身が本の中で書いてあるわけですね。つまり、若手議員の会は、旧日本軍による強制連行の有無及び日本政府の法的責任などを問題にしていたということは、これらのことでわかるわけです。

 この点について、説明しなさいと、それに対してこう答えていくんですということでNHKの見解を準備したのがこのマニュアル、この資料ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

原田参考人 まず、現在、この番組をめぐりましては、市民団体とNHKとの間で、東京高等裁判所で裁判が続いているところでございます。政治的圧力で番組が改編されたのかどうかということが焦点になっております。

 NHKとしましては、この誤解を解き、視聴者に対する説明責任を果たすということで、先ほどお話がありました、関係者から事情を聞くなどしてまとめた編集過程の詳細、事実関係をまとめたものを公表しております。ただ、先ほど申し上げましたように、この番組をめぐる裁判は現在も続いておりまして、今後も証人尋問が予定をされております。

 いずれにせよ、裁判は相手があることでございますし、司法の場でのことでございます。詳細につきまして、ここでの発言は控えさせていただきます。

吉井委員 私は、今、裁判に首を突っ込んでの話をしているんじゃないんです。

 つまり、政治からの中立性、公平公正性の問題ですね。そこをやはりきちんと真相を解明して信頼を回復する努力をしないと、落ち込んだ受信料収入が戻ってこないとか、そういう問題があるから私は今取り上げているんです。

 この資料Aにあります、皆さんの方で準備したということは関係者の中に証言しておられる方がおられるわけですが、囲みの中で、「シリーズの企画意図は何か。」とか、「慰安婦問題で、旧日本軍による強制連行があったかどうかの事実関係について、NHKはどう考えているのか。」と聞かれたらこう答えましょうとか、「慰安婦問題で、日本政府の法的責任、国家補償の必要の有無について、NHKはどう考えているのか。」これを聞かれたらこのように答えるんだということで、その回答を準備しているのがこの資料Aのマニュアルであります。

 そこで、私は会長に伺っておきたいんですが、実はNHKの方からいただいたんですが、二〇〇一年一月十二日のNHKウイークリー、ウイークリー情報ですね。この資料ですが、これは放映の三週間前に、NHKがこの番組の紹介を書いて、各新聞社など、番組欄を載せますから、配付しているものですね。これは一般的な紹介だと思うんですよ。

 しかし、この一般的な紹介とマニュアルの内容とは全く違ってくるんですね。マニュアルにあるような、企画意図の詳細な説明とか、女性国際戦犯法廷を取材した理由は何かとか、慰安婦問題で日本政府の法的責任、国家補償の必要の有無についてどう考えているか、これはもう、この質問にどう答えるかという話になってくると、こういう説明というのは通常の業務の範囲内を超えてくることになるんじゃないでしょうか。どうですか。

原田参考人 まず、私どもの事実認定といたしましては、先ほど申し上げましたが、去年七月に公表いたしました編集過程の詳細、それに書いてあるとおりでございます。

 それから、これは裁判が今続いている段階で、法廷の場でないところで当事者である私が、例えば裁判に出された証拠、それをめぐって云々ということを申し上げるのは控えさせていただきます。

吉井委員 繰り返すようですが、私は、裁判に首突っ込んでの話じゃないんです。これは、ちゃんと裁判外で、ウイークリー情報を出しておられて、この内容と実際には説明に行かれるために準備された内容とは違っているじゃないかと。これは、やはり事前説明が通常の範囲のこととしてやっているとしたら、放送の中立性は常に揺らいでしまっているということになってくるわけですね。

 これは、言論、出版、報道の自由については、政治権力から、また国家権力からも干渉されない、何人からも干渉されないという権利とか編成権の独立性、自律性を失ってしまったら、これは戦前の大本営発表みたいになってしまうわけですから。だから、これは、やはり放送した後いろいろな批判、意見はあり得るんですよ。私はそれはそれでいいと思うんですが、放送する前に取材対象の選択理由とか取材対象の見解に対するNHKの見解などを国会議員に説明することが通常業務の範囲内ということになれば、それはもう政治介入の温床になってしまう。

 だから、会長さんは冒頭に、中立、公正、自律性のことをおっしゃったけれども、今こういう点で、やはり政治家に対する事前説明などということでもって政治介入の道を許しちゃならない、そういうことは許しませんという立場をきちんとやはり貫いていくということが大事だと思うんです。会長に伺います。

原田参考人 放送の自主自律というのは私どもの大原則でございます。本件におきましても、説明の段階でお伺いを立てるような形での説明ということはやっておりません。

吉井委員 あなたがまた会長になったら、私が会長にと聞いているときにお答えいただいていいんですけれども、私は会長の答弁を求めていたんです。

 それで、先ほどのホームページで公開していらっしゃるこの詳細、この中で、放送前日の二〇〇一年一月二十九日午後四時ごろ、野島さんや松尾さんらが安倍議員のもとへ行ったということ。そして、この詳細によれば、安倍議員が、慰安婦問題の難しさや歴史認識問題と外交の関係などについて持論を語った上で、こうした問題を公共放送であるNHKが扱うのであれば公平公正な番組になるべきだと述べたと書いているわけですね。だから、私は裁判のことを言っているんじゃないんですよ。ここにかかわることを今聞いているんです。

 その後、局に帰られて、試写が行われ、松尾放送局長初めNHKの幹部たちの協議の結果、この詳細に書いてあるわけですが、一つは、日本国及び天皇に責任があったとする女性法廷の判決の内容を削除。二つ目、町永アナ、高橋助教授、米山準教授らの発言のうち、女性法廷をラッセル法廷と同等の存在のように評価する部分を削除。三つ目に、海外メディアの反応のうち判決内容や日本政府の責任に触れているものを削除。四つ目に、ナレーションのうち、日本政府の関与を断定的に述べている部分を客観的な表現に変更。五つ目に、マクドナルド裁判長のインタビューを追加など、具体的な番組内容の変更方針が決められたということがホームページで公開されているわけですね。

 ですから、まず安倍さんとお会いになって、局へ帰られて、そして変更方針が決められた、その変更方針の内容はこの五点であったのは、これは発表しておられることですから、間違いないですね。

原田参考人 それは準備書面に既に公表して書いてあるとおりでございます。

吉井委員 次に、資料Bをごらんいただきたいと思うんですが、この詳細によると、町永アナ、高橋助教授、米山準教授らの発言についての変更方針は今言った二番目に当たるもので、町永アナ、高橋助教授、米山準教授らの発言のうち、女性法廷をラッセル法廷と同等の存在のように評価する部分を削除するということだけなんですね。

 ところが、資料のBのところを見ていただくと、まず一ページ目のところ、これは念のために言っておきますと、スタジオシーンは四つあるんですが、その中のコメンテーターの発言削除というのはスタジオ三のシーンだけなんです。その中で、一ページの真ん中に米山さんの発言、線引いたところがそうですが、ばっさり抜けてしまっていますね。そして、三ページ目のところで、高橋さん、また町永さん、米山さん、そして町永さんの発言がどのように削除をされたか、このことがわかります。

 この発言部分を二十九日に実際にどのように削除したかというのを明らかにしたものなんですが、これは四十四分版と、そして四十三分に縮めたものとの違いなんですが、この最後の部分の高橋助教授、米山準教授らの発言が削除された理由は、この発言というのはどう考えても女性法廷をラッセル法廷と同様に評価するということには当たらないと思うんですが、どうなんですか。

原田参考人 今お配りになりました資料、台本をもとに作成された文書ということでございますけれども、当方としてそれを確認するすべは持ち合わせておりません。

 いずれにせよ、どこをどのように削ったか、その詳細につきましては、編集の自由というものにかかわってくる問題でございます。確かにNHKでは、この裁判の編集過程につきまして去年七月に公表いたしました。これは、あくまでもNHKとしての説明責任を果たすということで、通常は明らかにしない編集過程について踏み込んで公表したものでございます。

 しかし、編集の段階の具体的な詳細、これ以上詳しく述べるということは、今後の私どもの取材、制作活動を萎縮させるおそれもございます。そういう意味で、ここでお答えすることはできません。

吉井委員 私は、取材活動は、萎縮する方じゃなくて、萎縮してしまったんじゃないか、萎縮しちゃ大変だ、政治の介入はあっちゃならないということでこの問題を取り上げているんです。そして、それは既にホームページでNHK自身が明らかにしていらっしゃることにかかわることです。

 この資料Bの四十四分版と四十三分版で削除された部分を見て、改めて皆さんおわかりのように、「被害者の人達からは、政府、国家が責任を免れるためのものではないかというふうに理解されているわけですね。」という、この高橋さんの言葉は消えるわけです。米山さんの「日本軍あるいは日本政府が、かつて過去に犯した行為が、犯罪であったかどうか、その判断ですね。」というところなども消えるわけです。この部分は、どう見てもラッセル法廷と同様に評価したという話にはならないわけですね。実際にはラッセル法廷の評価とは関係なく、要するに日本政府や日本軍の責任につながるようなコメントが出てきたところは全部削除してしまった。これが現実の姿として出てきているということは、この資料Bを見れば、これは実際に皆さんの方はテープをお持ちなわけですから、見ればわかる話であります。

 それで、さらにホームページの詳細のところなどに沿って見ていくと、海外メディア反応のうち判決内容や日本政府の責任に触れているものを削除と変更方針に書いてあるわけですが、実際そういうふうになっているのが、もとのものと比較してみればあります。

 それで、あわせて伺っておきますが、コメンテーターの削減した部分のうち米山さんの部分については、BRC、放送と人権等権利に関する委員会によって、これは放送倫理違反の認定を受けているということではありませんか。

原田参考人 私どもが公表いたしました編集過程の詳細、ここで視聴者の皆さんに明らかにしておりますのは、この番組は政治的圧力で改編されたのではないということでございます。

 一言申し上げますと、この番組をめぐりましては、提案段階で番組の当初の趣旨、それが番組に携わった関係者の間で十分伝わっていなかった。そういうことで、これは番組の通常の制作とは違う状況になるんですけれども、放送の一週間前になって制作を委託していた外部のプロダクションからNHKの本体が引き取って、その段階から制作をし直すということがございました。

 そういう意味では、放送の直前まで公正な番組をつくるというために関係者がそれぞれの立場でいろいろな試行錯誤を重ねて、最後まで努力をしたということでございます。

吉井委員 放送の前日に安倍さんとお会いになって、帰られて、五つの変更方針が決められて、そしてその中で変わってきたというのは、これは一つの事実なんですね。

 最後の資料Cのものをごらんいただきたいんですが、Cの二ページ目、これは中国の被害者たちの証言の部分が全部削除ですね。これは、放映の日の四十三分版と実際に放映になった四十分版の番組の中で、明らかに違いがあるわけですね。そして、三ページ目のところも、日本軍兵士の証言も全部削除なんですね。ですから、実際にVTRでのナレーション及び証言の部分で放送直前に削除されたというのは、中国人被害者の紹介と証言、東ティモール慰安所の紹介と慰安婦の証言、みずから体験した慰安所や強姦についての日本軍兵士の証言、これらが消えています。

 どう見ても、この二十九日の変更方針というのに余り当たるように思えないんですが、私は、削除された証言内容を見ると、日本兵と日本軍の強姦に触れたナレーションや証言が削減されているというのが一つの削減のポイントです。一月三十日放送直前の削減で、慰安婦に強姦、性暴力を加えた主体である日本軍、日本兵が国際法廷の証言から一切消えてしまっております。これが削減の客観的な実際の姿であるというふうに思うわけです。

 それで、安倍長官、当時の官房副長官、若手議員の会の元事務局長と会って、持論をNHK幹部が聴取し、安倍議員から公正公平な番組であるべきだと言われた後に大幅な放送内容の変更が起こっている。これは事実の問題として見ていくことができると思うんです。

 実際に削除された部分を調べてみますと、資料Cにあるように、放映当日の四十三分版、最終の四十分番組になった放送分では、証言シーンの削除では、コメンテーターの高橋助教授、米山準教授のコメントのうち、日本政府の責任について言及したコメント部分が削除されております。もともと四十四分版から四十三分版のときには、日本兵と日本軍による強姦があったとする証言が削除されています。

 それで、NHKがホームページで説明している協議された変更方針を見ていると、なかなか説明がつかない変更があるんですね。削除された内容というのは、繰り返すようですが、日本政府の責任、それにつながる日本軍及び日本兵士による強姦、性暴力の加担の事実です。実際に削除された内容を見ると、客観的に安倍さんの持論と一致しているものが見られます。その後、NHKの協議の中で実際に行った変更が安倍議員の持論に沿った変更になっているのも、事実の問題としてこの資料B、Cを見ればわかってきます。

 NHKが明らかにしていない番組の変更内容が明らかになってくるのは、私は、紛れもない政治介入と、それに迎合して番組改編を行ったという事実だと思うんです。ところが、NHKは、変更内容を具体的に明らかにしないで、一方的にNHKの主張をホームページで公開しているわけです。

 ですから、私は、やはり当初の四十四分版、それから四十三分版、放映した四十分物それぞれの番組を明らかにしてきちんと検証していくことが、真相究明という点でNHK幹部が真摯な態度で臨む立場に立っているかどうかを示すことにもなってくると思うんです。それが国民の中にある不信を払拭して、前進していく道につながることだと私は思うんです。

 NHKの執行部の皆さんが前進の道に転換していかれること、そして、やはり真相を究明し、信頼を回復して、受信料収入についてももとに復するように、歳入欠陥が生じたら大変ですからね、そういう前進の道に転換されることを期待して、時間が参りましたので質問を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 それでは、答弁はなるべく簡潔にわかりやすくお願いします。

 まず大臣に最初にお聞きしたいのでありますが、それは通信・放送の在り方に関する懇談会についてであります。

 この懇談会は、設立時に五つの項目を検討内容としていたはずでありますが、改めてこの五項目について大臣から説明をお願いします。

竹中国務大臣 御答弁の前に、先ほど参議院予算委員会の関係で中座させていただきまして、大変御迷惑をおかけいたしました。とりわけ横光委員と逢坂委員には大変申しわけございませんでした。

 今のお尋ねでございますけれども、要綱において五つの点を書かせていただいています。国民の視点から見た通信・放送の問題点、つまり携帯でテレビが見られるのか見られないのかとか、そういういろいろな御疑問をお持ちだと思います。いわゆる通信と放送の融合・連携の実現に向けた問題点、放送には放送の公共性があり、通信には通信としての秘密の保持があり、そういった問題点。これらの問題が生ずる原因、背景には法律の枠組みの問題等々があるのかどうか。四番目に、通信・放送、いわゆるこの融合・連携のあるべき姿。そして五番目に、望ましい行政の対応のあり方。通信・放送に関連する行政が今各省庁で分かれているというのも事実でございますので、そういうことも含めて検討をしたいというふうに考えております。

重野委員 この懇談会のメンバーでありますか、構成員の中に、放送系といいますか放送界といいますか、そういう人は構成員の中にはいないようでありますね、私の理解違いかもしれませんが。

 それで、そもそも、今大臣も答弁しましたように、この懇談会の目的は、いわゆる放送と通信の融合という主眼でこれが設置されたと理解をするわけです。したがって、NHKに関しても、その範囲内でのNHKのあり方の検討という縛りが私はおのずとあると思うのであります。

 しかし、この間、この会議の議論の内容等々をインターネットで拾っていきますと、それが、民営化を視野に入れたNHKの改革論という議論が飛び出したり、あるいは総理の公共放送維持論というものが出されて、それをきっかけに国際放送強化、そしてCM導入論、こういうふうなものが飛び出してまいりまして、懇談会の本来の目的を逸脱した、そういう議論の展開がなされたのではないかというふうに私は理解をするわけですが、その点について大臣はどのように受けとめておられますか。

竹中国務大臣 これは決して当初から方針を変えたとか逸脱したとかいうふうには考えておりません。私自身、一番最初の問題提起で、日本の放送業界は四兆円産業、通信業界は十六兆円産業、しかし、アメリカには、海外には、日本の放送業界四兆円を一社で上回るような企業だってあるではないか、その意味では大変大きなフロンティアが開けている時代に、放送にも通信にももっと大きくなっていただいて消費者の利便を満たしてほしい、そういう思いでこの懇談会を始めるというふうに申し上げました。当然のことながら、その中には国際的な分野というのが入ってくるわけでございますし、さらには財務の基盤として、どういう形で財務の基盤を強化していくのがよいかという意味で、CMの導入も含めたいろいろな問題が入ってくるということは想定されていたわけでございます。

 そういう意味では、具体的な議論がいろいろ出ているというのは事実でございますが、まさに当初から考えていたような、新しい技術体系のもとで総合的な放送・通信の議論をしたい、そこはもう一貫しております。

重野委員 今大臣も触れましたけれども、国際放送の財源論というところから出まして、いわゆるCMの問題が出てきたわけですね。私は、今までNHKの論議の中でコマーシャル、CM云々という話は聞いたことがない、それが唐突に懇談会に出てくる客観的な必然性というのは那辺にありや、それを聞きたいんです。どうぞ。

竹中国務大臣 委員は聞いたことがないというふうにおっしゃいますが、実は本当にこの業界、どんどんどんどん進化をしているというふうに思います。例えばでございますけれども、海外のいろいろな国際展開を見てみますと、いろいろな国でこのための大変な努力をしておられます。しかし、BBCでも、例えば海外については子会社をつくって、そこでCMで一部つくっているというものもありますし、国によってはいろいろなスクランブル方式を考えているところもあるというふうに聞いております。その意味では決して唐突ではなくて、世界各国がどういう形でやっていこうかということについていろいろ努力をしておられるということだと思います。

 CMというふうにいいますと、日本国内のCMとどうしてもイメージがダブるのかもしれませんけれども、午前中も少し申し上げたかもしれませんけれども、海外でCMを流すということの中には、私は全部CMでできるなどというふうには全く思っておりませんけれども、中には、日本の企業のイメージを外に知らせるという意味で、これは広い意味での情報発信になるという考え方を言う方もいらっしゃるわけです。

 その意味では、もちろん私たち、まだ何も決めておりません、議論を始めたばかりでございますけれども、決して制約を設けずに、幅広くいろいろなことを議論してみようではないかということを申し上げているわけでございます。

重野委員 先般本委員会に、NHKそれから民放の代表者の方がお見えになりまして、参考人としてそれぞれ思いを開陳されておりました。私はあの参考人のお話を聞きながら、そして今、竹中大臣の諮問機関と申しますか諮問委員会と申しますか、その会議の意見をまとめられておるその内容というのはちょっと肌合いが違うな、私はそういう受けとめをしております。

 そこで、国際放送の問題がかなり話題になっておるんですが、現在のNHKが行っている国際放送について、大臣はどういう認識をされておられますか。

竹中国務大臣 参考人のお話をされて、思いが違うというお話をされました。当事者の思いはしっかり我々も聞いて、そこは真摯に受けとめたいというふうに思っております。

 ただ、当事者の皆さんは、これは政策金融のときも典型でございましたけれども、政策金融、今度大きく改革したいと思っておりますが、ヒアリングして政策金融のトップの方がいらっしゃったときは、ほとんどすべてのトップの方が、今のままが一番いいというふうにおっしゃいました。これはこれで一つの思いですから我々もしっかりと受けとめますけれども、やはり改革すべきところは改革しなきゃいけないというのが私たちの責任であるというふうに思っております。

 NHKの国際放送の現状についてでございますけれども、大変これは重要な役割だというふうに思っております。現在NHKは、ラジオ国際放送については二十二言語で一日延べ六十五時間実施、また映像国際放送については英語及び日本語で一日二十四時間実施でございます。しかし、まだそれについてもっと大きな役割を果たしてほしいという期待は各方面であるというふうに承知をしております。

 各国、そういった意味での大変な努力をしているということも重要だと思います。フランスが国策として設立しましたフランス国際情報チャンネルなど、最近もいろいろな動きがあるというふうに承知をしております。

重野委員 国際放送の議論の経過ですが、私は二つあると思うんですね、国際放送の役割は。やはり一つは、海外に暮らす日本国民への情報提供という側面が非常に強いと思いますね。また、諸外国に対してこの国の社会文化的情報を発信する、そういう役割もある。それを担う主体や財源というのはおのずと定まってくるわけですけれども、この議論をやはりまず十分に深めていく必要がある。そこのところが深まらない中で、NHKの国際放送強化、先ほどCMと言いましたけれども、CM導入といった話が先行するというのは、これは本末転倒ではないのか。まして、現在、NHKは受信料収入の面で深刻な問題を抱えております。そこのところがどういう展望を切り開いていけるのか、そういう重要なファクターもある。そういうふうなものがある中で、大臣は国際放送に対する基本的なあり方というのはどういうふうに構想しているのか、あるいは考えておられるのか、その点をお聞かせください。

竹中国務大臣 どうしても報道が一部のキャッチーな言葉に飛びついて大きく報道されますので、CM導入、CM導入というような記事が先日も出ておりましたが、そういうことはまだ私たちは何も決めておりません。そういうことも含めて議論をしようではないかというスタートラインにいるわけでありますので、そこはぜひ御認識を賜りたいと思います。

 今、重野委員がおっしゃいましたように、足元のこと、今の枠組みの中でできることをしっかりやるというのは、これは言うまでもなく大切なことであると思います。そして、それは、現場でNHKの皆さんがやはり汗を流して今も一生懸命やってくださっていると私は思っております。その努力はぜひ続けていかなければいけない。しかし同時に、先ほど御紹介しましたように、フランスも含めて各国が新しい国際的な情報発信を考えている中で、今の枠組みの中で頑張るだけでいいだろうか、それで十分だろうかという問題もやはり私たちは考えなければいけないということだと思っております。そういう議論もやはり同時に進めたいということを申し上げております。では、しからばそれがどうあるべきかというふうに言われますと、今の時点で私は明確なお答えを申し上げる素材を持っておりません。そういうしっかりとした考えをまず総務省として持てるようにするために、この懇談会でしっかりと議論をしていただきたいと思っております。

重野委員 いずれにしても、例えば二十四時間ニュースを流す、あるいは、その場合にそれを可能にする体制はどういう体制をつくっていかなければならないのか、そういうふうなことが当然、この前段に議論をされなければなりません。そうした要素を勘案して積み上げていって、そして、期待される国際放送、こういうふうなものを構築していかなきゃならぬわけで、さっきから私がなぜこだわるかというと、そこら辺の議論がどういうふうにされているのかというのがまだ私に見えませんものですからね。そこで唐突に、CMを流して金取って、こういうふうな話になりますから、それはないんじゃないですか、こういう思いがありますものですから、その点を私は強く指摘をするわけであります。

 次に、NHK会長に質問いたしますが、今回の予算は、会長就任以来、みずからの責任において初めて編成した予算であります。それだけに執行に対する責任は重いと言えます。

 そこで、確かに、支払い拒否、保留数の低減あるいは支払い再開数の増加など、若干の好ましい改善傾向が見られます。喜ばしいことだと思いますが、これが、二〇〇七、二〇〇八年にそれぞれ百億円の見込み増の根拠となっていると考えるわけですね。そうなると、三カ年の経営計画で定める経営委員会のガバナンスの強化は当然です。その中で、平成十七年度の約束、NHK約束評価委員会がありますが、そこにおいて、当然、ここで示された受信料回復見込み額あるいは見込み件数、これをどう達成するか、これは大きな大きなテーマになる。そこら辺の認識、それをお聞かせください。

橋本参考人 仰せのとおり、いわゆる財政安定、信頼回復の目標というのは、私が、今回の改革の具体的な目標として根拠になるものとして真剣に取り組んだ問題でございます。

 この問題につきまして、やはり一つは、改革というのは具体的な目標を立てない限り、その道へ近づくことはできないだろうというふうなことでありますけれども、当然ながら、回復件数あるいは財政的なもの、経費そのものにつきまして、これからの私自身に対する業績評価というところに結びついてくるものと考えておりますし、いろいろNHKに対する改革の評価、視聴者の評価もございましょう、それから経営委員会から執行部を見る評価ということもございましょう、そういうものをきっちりと、責任を果たすべく取り組んでまいりたいというふうに思っております。

重野委員 会長の意気込みはわかるのでありますが、しかし、正直言って、営業現場の実態、今、人をどんどん減らしていますからね、そういうふうな実態からしますと、この百、百という数字は高いハードルだ、私はこのように思います。

 同時に、公共放送たるNHKに対する期待と、あるいはその期待を裏切らない番組の質的な充実、それから受信料の的確な収納、これはもう不可分ですね。これはどれも欠くことができない。それぞれがきっちり連携を図って達成に向けて同方向で動き始める、こういう状況が出てこないとやはりこの目標達成というのは非常に難しい、こう見るべきだろうと私は思います。

 同時に、それを支えるのはNHK本体だけではなしに、NHKにかかわるいろいろな団体があります、その団体もそういう思いにならないとこれは実現できない。だから、経営が厳しいからカットする、カットする、そういう短絡的な手法では回復はできない。やはりそこら辺をきっちり、連動しているんだという認識に立って、そして事に当たっていくということが必要。必要経費を落とすんだというそれも一つの方法ですが、そんな単純なものではないという点を私は強く指摘したいと思うんですが、会長のお考えを。

橋本参考人 大変厳しい財政の中で経費削減を迫られております。その中で、実際にNHKとしての信頼を一番やはり伝えるものは番組でございます。この番組にかかわる経費は、全体の経費を圧縮、削減する中ではありますけれども、非常にウエートを置いて、番組の質を損なわないということに細心の注意を払う、そういう形で重点的な配分をしております。やはりこれは、番組をつくる仲間といいますか、ここのモラル低下、こういうものは防ぎたいと思っていますし、そういう中で、限られた財政ではありますけれども、番組の質を落とさないというところはもう基本線として守って、ここへ重点配分をしながら、しかし厳しい財政を乗り越えてまいりたいというふうに思っております。

 この百億、百億という経費については、もうおっしゃるとおりハードルは大変厳しいと思いますけれども、しかし、実際に財政回復に向けてのデザインというものは十分根拠ある数字ということで我々考えております。

重野委員 その目標に向かって全職員が頑張るぞ、そういう意識を持つことが当然大事です。私は、ちょっと厳しい言い方かもしれませんけれども、橋本会長、この計画をみずからの職を賭してでもやり上げるというぐらいの決意を披瀝すべきだ、このように思うんですが、いかがですか。

橋本参考人 私、この改革を達成するということでは職を賭して頑張るつもりでございます。

重野委員 今、決意もお伺いしました。

 さて、次にかえますが、データベースの問題についてお伺いいたしますが、これについて、その整備を大臣意見として述べておられます。具体的にどのような内容で、またいつまでに整備するようNHKに求めているんですか。

竹中国務大臣 今現在、NHKにおかれては、受信契約者の住所、氏名でございますとか、支払い状況等の情報を電子的に管理したデータベースを保有しているというふうに聞いております。しかしながら、不払い者等の情報を、例えば滞納年数別に見たらどうなるのかとか、地域別に見たらどうなのかということを検索するような機能が必ずしも十分ではないというふうに聞いております。

 今、未納、いわゆる未収世帯等の割合が全体の三割に達するという深刻な状況になっておりますので、そういう意味では、こういった受信者データベースの精度と機能を高めることが大変重要であると思っております。NHKにおいては具体的な改善内容や整備スケジュール等について速やかに検討していただきたいというふうに思っております。

重野委員 これは、言うはやすく行うはかたしと、非常に微妙な問題がありますね。一方においては、保護しなきゃならぬという大きな流れがありますよ。今言っていることは、それをもっと取り出すんだと。ですから、これは相対立する事項なんですね。これは、やれやれと言うその気持ちもわかるし、しかし、わかりましたと簡単に言える代物なのか、こういう懸念を私は持つんですが、会長、いかがですか。懸念が単なる懸念で終わればいいんですが。

橋本参考人 これは、おっしゃるとおり、大変相反する問題をはらんでいるということで難しゅうございますし、しかも、両方とも必ずしもNHKの放送というだけに限らない問題だというようなことがあって、いろいろ具体的に問題がございますので、その点につきましては、担当の方から説明させます。

小林参考人 NHKのデータベースについて御説明させていただきますけれども、営業システムの骨格のデータベースとしまして、視聴者データベースというのがございます。これにつきましては、受信料の請求、収納に必要な全国の契約者に関する情報がおさめられている、規模的には数千万件の規模で大変膨大なデータベースでございます。

 ただ、いわゆる未契約者の方につきましては、引っ越し等、常に流動しているということもございまして、その情報につきましては必ずしも十分な蓄積があるとは言えないというのが現状でございます。

 海外の公共放送機関におきましては、電器店からの受信機購入者情報の通知義務、あるいは住民基本台帳データから転用するといったような公的な制度も実施されているケースもございますけれども、NHKに関しましては、現在は、みずからの手で情報を収集し、蓄積していかざるを得ないという状況でございます。

 ただ、先ほど申し上げたように、未契約情報に関しましては、不在がちな方も多くて、訪問してもなかなか把握できないというケースが非常にございます。したがって、現在、簡単ではございませんけれども、インターネットによる契約の推進でありますとか、あるいはCAS、衛星デジタルに関してはいわゆる限定受信システムを導入させていただいております。それによって把握していくなど、いろいろな工夫を凝らしながら全力で取り組んでいるという状況でございます。

 なお、個人情報の保護については、今会長が申し上げたとおりでございます。

 以上でございます。

重野委員 そういうことだろうと思うんですが、まかり間違っても、他の機関に情報提供を求めるだとか、そういうようなことは絶対にあってはならない。NHK自身による、しかも公共性というものを十分に自覚した、その上でのデータベースの整備であらねばならぬという点、それをひとつ確認しておきたいと思います。

 したがって、例えば住民基本台帳法に基づくネットワーク化された情報だとか、あるいは年金番号などとのネットワーク化などということはまかり間違ってもないという点を、大臣にひとつ断言していただきたいと思います。

竹中国務大臣 私も以前、少し前まで個人情報保護法の担当大臣でございました。このデータの活用と保護については人一倍配慮しているつもりでございます。

 官の保有する情報は、基本的には法律によってしっかりとした利用の制限がかかっているわけでございます。今委員が御懸念のような、NHKが受信者データベースの整備に当たって、法令に反して官の保有する情報を使用することはございませんし、また、官の持っている別の情報と突合したりとか、そんなことも断じてございません。

重野委員 次に、アナログ衛星第一、第二テレビ放送の問題ですが、第一放送は二〇〇七年の十一月、それから衛星第二は二〇一一年に終了することになっておりますが、その後の衛星放送用の周波数の利用のあり方についてはどういう利用が望ましいとNHKは考えておりますか。

中川参考人 お答え申し上げます。

 来年、アナログ衛星放送のうちのハイビジョン放送が終了いたします。それからさらに、二〇一一年に衛星第一、衛星第二、それからWOWOWさんの三つのアナログ放送が終了する予定でございます。アナログハイビジョンの方の跡地につきましては、既に新規参入の三社が新たにハイビジョンデジタル放送を行うという予定になっております。

 それからまた、二〇一一年の衛星第一、第二、WOWOW三チャンネルの跡地につきましては、現在、総務省の衛星放送の将来像に関する研究会で検討が行われているというふうに聞いております。

 その研究会におきまして、NHKといたしましては、まず受信者の利益を最優先して、現在の受信機でも受信できる方式にすべきであるというふうに主張しております。その上で、新たにあいたチャンネルにつきましては、一、サーバー型放送などの新サービスへの展開、二、新規事業者への開放、それから、三、地上デジタル放送の補完などの利用について検討を進めるべきだというふうに考えております。

重野委員 時間も来ましたから、通告しているのを一つ残してやめさせていただきます。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 朝から長時間にわたる審議で、皆さんお疲れだと思いますが、最後の質問でございますので、もうしばらく御辛抱いただきたいと思います。

 まず、竹中大臣、小泉内閣が発足をして間もなく五年でございますが、その間、一貫して中心におられて、大きな役割を担ってこられたと思います。小泉内閣そして竹中大臣もよく言われていることですが、官から民へとか、あるいは民間にできるものは民間にということをおっしゃられるわけでございます。私は、国民生活を支える上で必要な仕事というのは多種多様あると思いますけれども、民にできるものは民へ、そういう原理原則論だけではなかなか割り切れない、そういう分野がかなりあるだろうと思っております。官と民が力を合わせなくてはいけない分野もあると思います。

 そういう意味で考えますと、私は、公共放送であるNHKの存在そのものが原理原則でなかなか割り切れない、そういう存在ではないのかなというように思っております。申し上げるまでもありませんが、NHKというのはもともと社団法人日本放送協会という民間法人だったわけでございます。民間法人であったNHKが今日のような公共放送として、官でもなければ民でもない、その中間的な存在の、いわゆる公という立場に立った公共放送というものになっている。そのことについてそれなりの背景と理由があるわけでございますが、そのことについて、まず大臣の御見解を伺いたいと思います。

竹中国務大臣 官から民へという言い方を簡単にはいたしますが、正確には、民間でできることは民間で、そのことに尽きているんだと思います。ということは、民間でできないことがあるということです。ここら辺は、私も非常に強くそのように思っておりますし、亀井委員にも御理解を賜っていると思います。

 非常にわかりやすい例が、やはりこれはNHKなんだろうなというふうに思います。そういう意味で、通信・放送の改革の早い段階から、公共放送は必要である、そして今の二元体制は重要であるということを明確に申し上げてきたつもりでございます。

 とりわけ、日本において、世界にもいろいろな公共放送がございますが、やはりBBCとNHKというのが本当に世界に冠たる公共放送である、そういうものを持っている日本国民というのは非常にある意味で幸せであるというふうに私は思います。だからこそ、NHKにもっとよくなっていただきたいという思いで、いろいろな改革はしていかなければいけないと考えております。

亀井(久)委員 大臣のおっしゃることはよくわかりますが、私は、やはりNHKがこういう独特の立場を得るようになったというのは、それなりに歴史的な背景があると思うんです。

 戦前、御承知のとおり、日本が戦争への道を歩んでいった、そのことに対して、NHKがその道へ導いていったと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、国民に多大の犠牲を与えることになった、その責任の一端はやはり私はNHKの報道にもあったというように思います。そしてまた、戦争に入ってからは大本営発表を無秩序に流した、そのことの責任も大きくあるだろう。そういう中で、戦後、GHQの占領政策がいろいろ行われたわけでございますが、農地解放とか、財閥解体とか、そういうことが行われる、さまざまな民主化立法というものが行われる。そういう中で、新しい放送法に基づいて公共放送としてのNHKというものがスタートをした、そういう経緯があろうと思います。したがって、やはり国家権力というものと公共放送としてのNHKというのは常に一定の距離を持つべきだというのが私の基本的な考えでございます。

 今、大臣、BBCの話をされました。私の親しいイギリスの友人は非常にBBCに誇りを持っておりまして、BBCというのは保守党からも嫌われているし労働党からも嫌われているんだ、そういうことを言って、それこそがBBCのBBCたるゆえんなんだと言って、非常に誇らしげに話すわけでございます。

 御承知のように、サッチャー政権のときにフォークランド紛争というのがありました。このときに、BBCはかなりサッチャー政権を批判する報道をした。それで、かなりサッチャー政権と緊張した関係にあった。その対抗措置として国際電波をとめる、そういう強硬手段をサッチャー政権がとったことがあります。

 最近では、イラクの大量破壊兵器を持っているか持っていないかという疑惑のあった、そのことについて、今度はブレア政権と厳しく緊張関係を持った。そのときに誤報があったということで、最終的には経営委員長とBBCの会長が辞任をせざるを得ない、そういう状況があったわけでございます。

 BBCの番組編成基準というものによりますと、対立をする意見があるような、そういう重要な問題については、常にその双方から取材をする、そして複数の取材をするということ、そしてまたどういう取材をしたかというメモをしっかり残すことになっております。ところが、調べたところその取材メモがなかったということで、誤報ということを対外的に認めたわけでございます。

 そのときに内部で特別調査委員会をつくって、そこでしっかりとその調査をしたということで、幹部が辞任をしましたから何かBBCが敗北をしたかのように見えますけれども、私は決してそうは思わないわけで、やはり自主自律、そういう考え方を貫いた、そして内部の調査委員会の調査結果というものを堂々と公表して、きちっとけじめをつけた、そこにこそ、私は、BBCのBBCたるよさがあるんだというように思います。

 そういう報道の中立性、また、政府、国家権力との距離をどう保つかということは、NHKにとっても大変重要な視点だと私は思いますので、そのことについての竹中大臣の御見解と会長の御見解を承りたいと思います。

竹中国務大臣 大変重要な、よいお話を賜ったと思っております。

 実は、今のお話を聞いて一つ思い出すことがございますのですが、イングランド銀行のマービン・キング総裁、中央銀行のある種の見本ですけれども、お話ししましたときに、実は中央銀行の歴史は政府からの独立の歴史であったと。実はそのとき、マービン・キング・イングランド銀行総裁はBBCについても同じだという話をされました。政府から独立して物事を考えるということが私は本当に必要なんだと思います。

 同時に、これはニーマン・ファンデーションというハーバードのジャーナリスト養成講座のトップが言っておられたことですが、常にジャーナリズム、メディアというのは権力からも距離を置いて、そして大衆からも距離を置かなければいけない、それがメディアの役割である。私は、大変重い言葉であるというふうに思います。

 NHKにおかれても、そういう志を持って、しっかりと前に進んでいただけるというふうに思っております。

橋本参考人 NHKにとって大変役に立つといいますか、教訓にすべきお話をたくさんいただいたと思います。

 やはり、私もBBCの幹部といろいろ意見を交換する中で、基本はジャーナリズム精神といいますか、これが基本だ、その上でいかに社会に対して納得を得る説明責任を果たしていくか、こういうふうな取り組みも必要になってこようかと思います。これが双方ないと、やはりBBCもNHKも、受信料という財源、これは視聴者・国民の信頼のあかしでございます、ここにしっかりと結びついてこないということを話し合ったことがございます。

 基本的に、我々、これから大変複雑な社会に変わっていこうかと思いますけれども、そういうふうな中で、いかにしてこの社会の規範となりますか、灯台といいますか、こういう役割をどう持てるか、日に日に追求して心がけてまいりたいと思いますし、その根幹となりますのは、やはり何人からの介入も受けない権力からの中立といいましょうか、やはり公正公平、自主自律、この精神を守って、今後とも努力してまいりたいというふうに思います。

亀井(久)委員 竹中大臣のお話がそのとおりであれば、大変私も安心なんでございますが、大臣が先般参議院の委員会でNHKの公共性を論じられるときに、国の使命という観点から論じられたように伺っております。NHKは確かに特殊法人ではありますけれども、国の役割をゆだねるという、かわりにやってもらうという、そういう多くの特殊法人とは、私は基本的にNHKというのは違うんだというように思います。

 ですから、国家権力の肩がわりとしての国の役割を果たすというような、そういう意味で国の使命ということをまさかお考えになってはおられないと思うんですが、そのことをちょっと確認をしておきたいと思います。

竹中国務大臣 重要な点を御指摘いただいて、ありがとうございます。

 たしか私は国の使命というふうな言葉を使ったと思いますが、それは、報道コンテンツをつくるのが国の使命だという意味ではなくて、そういうしっかりとした独立した公共放送機関が、しっかりとした基盤のもとで、まさに独立してやっていくような枠組みを準備することが国の使命である、そのような趣旨で申し上げたつもりでございます。御理解賜りたいと思います。

亀井(久)委員 わかりました。

 先ほどBBCの話の中で、経営委員会の果たす役割というものは非常に大きいということで、BBCもこれからまたそのあり方を改めて考えていこうということのようですが、NHKにとっても、やはりいわゆるガバナンス、統治能力を高めていくという視点からも、経営委員会の役割というのはますます大きくなってきている。また、経営委員会がどういう視点で、どういう議論をされ、どういう判断をされるかということが、国民、利用者、受信者の間の多くの信頼のもとになっていると思います。

 したがって、経営委員会の今のあり方というのはもう少し考え直す必要があるんじゃないか、強化する必要があるんじゃないか。今の経営委員の方が立派じゃないとは私申しませんけれども、皆さんが兼任でやっておられるわけで、中には名誉職じゃないかなという受けとめ方をされているところもあると思います。ですから、私は、経営委員会を強化して国民の信頼を高めていくということからすれば、専任の経営委員の方を置くということも考えていいんじゃないかというように思いますが、その点について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 実は私も、総務大臣を拝命して、NHKの仕組みを改めて勉強させていただいて、経営委員が全員非常勤であるということを知りました。これはいろいろな経緯でそうなっているんだとは思いますが、やはりちょっと考えると、社外取締役は重要だけれども、ボードメンバーが全員社外取締役の会社というのはあり得るだろうかと。これはやはり正直言いまして不思議な仕組みだなというふうに思っております。

 きょうの時点では、もちろん私は結論は申し上げる立場にはございませんですけれども、その意味では委員と同じような問題意識を持っておりますので、ガバナンスをどのように強化するかというその議論の中で議論を深めさせていただこうと思っております。

亀井(久)委員 もう時間がありませんので、最後に一言だけ伺いたいと思いますが、竹中大臣の私的懇談会でいろいろな議論が進められておりますけれども、先般、参考人質疑の中で、他の委員がそれぞれその懇談会についての意見を求められたわけでございますが、その中で、やはり一つの選択肢としてはそういうこともあり得るかもしれないけれども、なかなかその実現可能な意見が集約されるとは思えないという参考人の御意見もあったわけでございます。

 大臣、何か、六月の骨太方針の中にこれを反映させるんだというようなお考えもあるやに承っておりますけれども、果たしてそういう実現可能な考え方がその懇談会でまとまってくるというように思っておられるのかどうか、また骨太の方針との関係をちょっと最後にお伺いします。

竹中国務大臣 骨太方針との関係におきましては、私は次のように頭を整理しております。

 郵政民営化のときに、いろいろと議論、本当に込み入った議論をさせていただきましたですけれども、やはり基本方針とそして制度設計と、しっかりと時間をかけて、分けて議論をさせていただきました。

 もちろん、今回、制度設計の議論というようなことは、とてもとてもそのような議論には至りません。しかし、一つの方向性について何らか合意できるような問題があるんであるならば、これは先生方にもぜひいろいろ議論していただいて、基本方針的なそういう方向性について政府としての考えをまとめることができれば、それはそれでやはりよいことであろうかと思っております。

 これは制度設計というようなイメージからするとまだ先の話だと思いますが、しかし、一歩ずつ歩を進めませんと改革はできませんので、可能な範囲でできるだけ基本方針的な方向について何らか結論が出るように努力をしたいと思っております。

亀井(久)委員 終わります。

中谷委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤勉君。

佐藤(勉)委員 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、日本放送協会の平成十八年度収支予算、事業計画及び資金計画に対し、賛成の討論を行うものであります。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、受信料未収世帯等の割合が全体の三割に達すること等により、受信料収入が二年連続して前年度に比して大幅に下回るものになっていることはまことに遺憾であります。NHKは謙虚に反省しなければなりません。

 しかしながら、NHKにおいては、国民・視聴者からの信頼回復の途上にあり、受信料収入が大幅に落ち込む中、放送サービスの充実やデジタル化投資に予算を重点配分しつつ、経費節減を行うなど、選択と集中により事業収支の均衡を維持しているところであります。

 NHKにおいては、公共放送としての使命を深く自覚し、さらに再生・改革に向けてあらゆる取り組みを組織を挙げて全力で推進し、国民・視聴者の信頼の早期回復に努めることを引き続き強く要請いたします。

 以上のような前提のもと、賛成の意を表するものであります。

 つきましては、新年度が始まる前に、一日も早くこの収支予算等の承認が得られることを要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)

中谷委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対し、承認の立場により討論を行います。

 NHKの一連の不祥事による受信料の支払い拒否件数は加速度的にふえ、十七年十月、十一月期には百二十八万件に達しました。その後、減少には転じておりますが、支払い拒否件数の動向については予断を許さない状況であることには変わりはありません。

 それにもかかわらず、危機的状況が表面的に多少改善したように見えるからでしょうか、NHKの経営陣には緊張感を欠く部分が見受けられ、NHKの経営や体質が根本的に変わったと一〇〇%信じることはできません。

 緊張感のなさは、今後三カ年の受信料収入額の見込みにもあらわれています。NHKは、十八年度は比較的現実的な数字を挙げているものの、それ以降の二年間における毎年百億円の増収という数字には確たる情報が示されていません。

 また、肥大化した子会社群の改革が不十分であり、NHKと子会社との間の契約のほとんどが随意契約で行われ、受信料が無駄遣いされているとの指摘があります。

 さらに、経営委員会の議事録公開が実施された一方、番組改編問題で視聴者から批判を受けた過去を反省し、NHKが政治的に中立な組織に生まれ変わったのか、不祥事の再発防止策を徹底するなど、国民の信頼回復の取り組みが万全であるのか、そのような点については十分な理解が得られていません。

 一方で、受信料収入の大幅な減少に合わせ、人件費や管理経費を初めとした事業支出の削減に取り組むという予算編成を組んでいる点など、来年度予算には一定の評価を下すべき点も示されています。

 以上を総合的に勘案した結果、NHKの全役職員が、視聴者から託された受信料の意義を十分理解して、公共放送としての使命を果たしつつ、公平公正な放送の徹底に努め、必要であれば三カ年計画の見直しにもちゅうちょしないことを含めて、今後も徹底した改革に継続的に取り組むことを条件に、来年度予算に関しては承認の立場をとることを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、二〇〇六年度NHK予算等の承認を求めるの件に反対の討論を行います。

 反対の理由は、今日のNHK不信の端緒となった不正経理問題や、放送の自由の根本が問われた番組改編問題に対して、現NHK執行部が、国民の疑問に答え、真摯に取り組む姿勢を欠いていると判断せざるを得ないからであります。

 特に、本委員会でも私が取り上げましたように、「ETV2001」「問われる戦時性暴力」番組をめぐっては、NHKが公表している「編集過程を含む事実関係の詳細」を見ても、実際にどのように番組内容が変更されたかを検証できないなど、一部の与党の国会議員による政治介入の疑念は晴れません。これは放送の根本にかかわる問題であり、国民の不信に正面からこたえることが求められています。

 不正経理問題でも、なお解明すべき問題が存在しています。

 受信料不払いの増加による大幅な受信料減収というかつてないNHK不信の中、NHKが国民の信頼を回復していくためには、受信料徴収の強制的措置に頼るのでなく、不信を生んだ根本の解決に真摯に取り組むことが何よりも求められています。私たちは、国民の声にこたえて、NHK現執行部がこうした立場に立つことを強く求めて、反対討論を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、NHK予算案に賛成の立場で討論を行います。

 この間、NHKは、国民・視聴者の負担する受信料により維持運営される公共放送でありながら、協会職員による経費の不正支出、私的流用、不適切な経理処理等の不祥事が相次いで発覚し、特集番組作成をめぐる政治的介入、政治家とのかかわりによる改編など、報道の中立性、独立性も問われる大きな問題が発生しました。国民・視聴者の怒りは受信料の不払いの増加の形であらわれ、NHKの新生が求められていました。

 その後、NHKの経営陣も一新され、NHKの改革・新生に向けた三カ年の経営方針と具体的な事業計画であるNHK経営計画が打ち出されました。今回の予算案は、その初年度の予算であり、NHKの改革・新生に向けた第一歩です。激減した受信料収入についても、新年度からは毎年度百億円ずつの増を見込んでいますが、新経営陣がみずからの責任で編成した予算であり、執行に対する責任は重いと言えます。

 今まさに、国民・視聴者の怒り、失望をNHKは真摯に受けとめ、信頼を回復し、再起の糧とすることが必要です。そのために、国民・視聴者から、さすがNHKと評価され得る良質な番組づくりに加え、不偏不党と言論、放送の自由の確保が不可欠であり、NHKは変わったという明確なメッセージを打ち出すべきであります。

 なお、職員数の大幅削減や給与カットの継続、子会社のあり方、国際放送のあり方、難視聴地域対策の進め方、会計処理のあり方などについては問題なしとはしませんが、NHKが国民・視聴者の期待と負託にこたえ、信頼される公共放送の担い手として真に生まれ変わるよう強く求め、討論を終わります。(拍手)

中谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより採決に入ります。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。

 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、谷公一君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。寺田学君。

寺田(学)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)

  日本放送協会においては、一連の不祥事を契機とした受信料の不払い・保留の増大により、二年連続の大幅な収入減となっている。現在の協会の経営基盤は、受信料制度のうえに成り立っており、国民・視聴者の不信感をぬぐえないまま、受信料不払い・保留等が続けば、協会の存立、公共放送の根幹をも揺るがしかねない。協会及び政府は、かかる事態を重く受け止め、協会に対する国民・視聴者の信頼を回復し、公共放送の使命を全うできるよう、次の事項の実現に努めること。

 一 協会は、会長を先頭に組織をあげて、再生・改革に向けたあらゆる方策に取り組み、国民・視聴者の信頼回復に最善を尽くすこと。

 二 公共放送が国民・視聴者との信頼関係に基づき負担される受信料により維持運営されていることを深く認識し、その効率的な執行、経費の削減及び透明性の確保に努めるとともに、全役職員が、公金意識の徹底、高い倫理観の確立に努めること。

 三 受信料の不払い・保留のほか、受信契約の未契約の件数も加えると、約三割が受信料を負担していないと推計されていることから、受信料の公平負担に向けて、国民・視聴者の理解が得られる抜本的な対策を早急に講じること。

 四 経営委員会は、協会の最高意思決定機関として、国民・視聴者の信頼確保の視点に立って、執行部に対する目標管理・業績評価等を適切に行うとともに、その機能を十分発揮するため、更なる改革に取り組むこと。

 五 協会は、放送が社会に及ぼす影響の重大性を深く認識し、放送法の趣旨を踏まえ、放送の不偏不党と表現の自由を確保して、公平、公正な放送の徹底に努めること。

 六 現在、政府において、協会の保有チャンネル数、業務範囲、財源の在り方等について検討が行われていることから、協会においてもこれらの課題について早急に検討を行い、協会としての考えを国民・視聴者に提示すること。

 七 協会は、子会社等の業務内容等について、徹底的な見直しを行い、子会社等の統廃合等を含め一層の合理化・効率化を進めるとともに、子会社等との取引については、原則として競争契約とするなど適正性、透明性の向上を図ること。

 八 国際放送については、在留邦人への情報提供、海外における我が国に対する理解の促進手段として、重要性が高まっていることから、運営に関する財源問題も含め、その在り方について早急に検討を行うこと。

 九 高齢者、障害者に関わるデジタル・ディバイドの解消が喫緊の課題となっていることから、字幕放送、解説放送等の更なる拡充と番組内容の充実を図ること。

以上であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

中谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、竹中総務大臣及び日本放送協会会長橋本元一君から発言を求められておりますので、これを許します。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

中谷委員長 次に、日本放送協会会長橋本元一君。

橋本参考人 日本放送協会平成十八年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいただきました御意見並びに総務大臣の意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと思います。

 また、ただいまの附帯決議につきましては、協会運営の根幹をなすものでございますので、これを十分踏まえて、視聴者の皆様の信頼回復を着実に果たし、業務執行に万全を期すことで公共放送の使命を全うしたいと考えている次第でございます。

 まことにありがとうございました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

中谷委員長 次に、内閣提出、通勤の範囲の改定等のための国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

    ―――――――――――――

 通勤の範囲の改定等のための国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

竹中国務大臣 通勤の範囲の改定等のための国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 昨年、人事院から国家公務員災害補償法の改正に関する意見の申し出が行われました。この申し出のとおり、労働者災害補償保険制度との均衡を図る等のため、国家公務員災害補償法について改正を行うとともに、地方公務員災害補償法についてもこれと同様の改正を行うものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 国家公務員災害補償法及び地方公務員災害補償法について、複数就業者の就業の場所から勤務場所への移動及び単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居との間の移動を通勤の範囲に加えるとともに、障害等級ごとの障害について、国家公務員災害補償法にあっては人事院規則で、地方公務員災害補償法にあっては総務省令で定めることとしております。

 このほか、施行期日、経過措置等必要な規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

中谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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