衆議院

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第27号 平成18年6月8日(木曜日)

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平成十八年六月八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中谷  元君

   理事 佐藤  勉君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 後藤  斎君

   理事 渡辺  周君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    石破  茂君

      岡部 英明君    奥野 信亮君

      上川 陽子君    木挽  司君

      桜井 郁三君    実川 幸夫君

      杉田 元司君    関  芳弘君

      田中 良生君    谷本 龍哉君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      永岡 桂子君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      逢坂 誠二君    北神 圭朗君

      郡  和子君    田嶋  要君

      寺田  学君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    柚木 道義君

      横光 克彦君    富田 茂之君

      古屋 範子君    吉井 英勝君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   総務大臣政務官      古屋 範子君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      谷  公士君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          吉田 耕三君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 吉夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  高部 正男君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   久布白 寛君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     杉田 元司君

  安住  淳君     柚木 道義君

  逢坂 誠二君     郡  和子君

  寺田  学君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     奥野 信亮君

  北神 圭朗君     寺田  学君

  郡  和子君     逢坂 誠二君

  柚木 道義君     安住  淳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

中谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局職員福祉局長吉田耕三君、内閣府大臣官房審議官中村吉夫君、総務省大臣官房審議官岡崎浩巳君、行政管理局長藤井昭夫君、自治行政局長高部正男君、自治行政局選挙部長久保信保君、自治財政局長瀧野欣彌君及び政策統括官久布白寛君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩生田光一君。

萩生田委員 自由民主党の萩生田光一でございます。

 住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして、法律の趣旨につきましては、もう私は賛同するものでありますけれども、確認の意味で何点か指摘を申し上げ、質疑をしてまいりたいと思います。

 まず初めに、今回の住民基本台帳法の改正は、個人情報に対する意識の高まりに的確に対応するため、住民基本台帳の一部の写しの閲覧の制度につき、個人情報に十分留意をした制度として再構築するものであるというふうに認識をしております。

 住民基本台帳は、住民の居住関係を公証する公簿として、従来から法に基づいて広く一般に公開することが原則とされ、閲覧制度は、行政機関において利用されるのみならず、民間においても、一般的な商取引などを初め、世論調査、学術調査、市場調査などの研究調査、さらにはダイレクトメールなどの営業活動にも幅広く利用されてきたところです。

 今回の見直しは、主に個人情報保護の観点から行うものとのことですが、現に幅広く利用されている制度を見直すということで、平成十七年度に住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会が九回にわたって開催されたと伺っております。この検討会では、学識経験者を初め、閲覧制度を活用している者や現場の市町村の意見も踏まえて検討がなされ、この結果を踏まえて今回の改正法案が立案されたということでございます。

 今回の住民基本台帳法の改正により、従来の閲覧制度がどのように変更されることになるのか。確認の意味で、今回の改正の目的とあわせて、新制度の概要を改めて御説明いただきたいと思います。

竹中国務大臣 萩生田委員にお答えを申し上げます。

 今、趣旨等々について、既に委員お示しくださいましたが、今回の改正では、まさに個人情報保護意識が本当に高まってきた、それに対応するために、ダイレクトメール等営業目的での大量閲覧を認めないことにするというのがその大きな内容になっております。

 その上で、しかし、国、地方公共団体が法令の定める事務の遂行のために必要とする場合、さらには世論調査、学術研究などの調査研究のうちで公益性が高いと認められるものを実施する場合等、そうした場合に限って閲覧を認めることとしている、そういう内容でございます。

 また、あわせまして、閲覧手続等をしっかりと整備する、そして偽りその他不正の手段による閲覧でありますとか目的外利用等に対する制裁措置、そのような強化などの改正をするというものも含まれているところでございます。

 いずれにしましても、個人情報保護意識の高まりに対応しまして、これまで我々にとって本当に便利な制度として存在してきたこの制度をさらに必要に応じてしっかりと役立てるようにしよう、そのような趣旨で改正を行ったつもりでございます。

萩生田委員 世の中の流れから考えますと、当然の措置と言えるというふうに思います。

 ただ一方で、私ちょっと、きのうも渡辺野党筆頭の地元熱海市に視察でおじゃまをさせていただく中で感じたんですけれども、確かに、不必要なDMがばんばん送られてくる、こういう世の中はちょっといかがなものかなと思う反面、例えば、地場産業ですとか地元のまじめな中小零細企業の皆さんが本当に背伸びをしないで地元に根差した営業活動をする上で、住民基本台帳の活用というのは、ある意味、大きな意味があったんじゃないかというふうに思うんです。

 例えば、個人情報につきましては、住基のみならず、もう既に、例えばカードに加入をされている方ですとか生命保険に加入をされている方ですとかデパートのカード会員になっている方ですとか、さまざまな方法で、ある程度、完成品ではないけれども、一定のカテゴリーで情報をまとめようと思うと、民間の大資本の中ではまとめられる世の中ができてしまっているというふうに思うんですね。

 何を言いたいかといいますと、大臣、私の地元は織物の町でございまして、いまだに着物などをつくっているところがございます。新成人になりますと、すべての女の子の家庭に、成人おめでとうというDMと同時に、着物の営業のお手紙が地元の織物屋さんから来るんですね。その人たちは住民基本台帳の閲覧をしてお手紙を出しますから、その家庭の収入だとか年収だとか、そんなこと関係なく、おめでとうという気持ちが届くんですけれども、これがデパートですとか調査会社から得た情報によれば、着物を買えない、買うわけない、そういう人たちには残念ながらそういう手紙がきっと届かないんだというふうに思います。

 そんなことを考えますと、日本の風土や伝統や文化というものが今回の制度ですべて打ち消されてしまうことのないように、何かこれからいい運用というのを考えていかなきゃいけないなと、きのうちょっと感じたところでございます。

 そこで、昨年四月に個人情報保護法が全面施行されましたけれども、これにより、必要な個人情報の提供まで制限されたり各種の名簿を作成することができなくなるなどの過剰反応と呼ばれるような事例がさまざまな分野で起きております。例えば、町内会の事業がやりにくくなったとか、あるいは同窓会名簿がつくれないなんということもたびたびニュースになります。

 個人情報の取り扱いについては、いろいろな議論があろうと思いますけれども、地域の活用と保護のバランスをとることが肝心だというふうに考えております。例えば、地域のコミュニティーにとって有用な情報については、個人情報に十分配慮しつつも、地域で共有することが必要であるというふうに思いますし、また、昨日の視察先でもあったんですけれども、例えば、ひとり暮らしのお年寄りの情報などはやはり皆さんで共有していくことがその方の安心、安全にもつながるんじゃないか、こんなことも指摘がございました。

 余りにも過敏な反応をし過ぎますと、結局、御近所のおつき合いに支障を来すことになったり、地域のコミュニティーが崩壊をしてしまうことにもなるのではないかというふうに思っております。ひいては、地域の社会の力が生み出す信頼感が失われることにもなったりするんじゃないかということを大変危惧しております。

 個人情報保護をめぐる過剰反応の要因として、個人情報保護意識が高まってきたということのほかに、そもそも制度の誤解に端を発するものもあるというふうに思います。個人情報保護法は、何も個人情報の保護一辺倒の法律であるわけではなくて、その第一条において、この法律は、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」とされておりますけれども、にもかかわらず、制度の誤解に基づいて過剰な反応がこれほど世間を騒がせているのは一体どういうことなんだろうかというふうに思わざるを得ません。

 こうした誤解については、制度の周知を図るなど政府としてしっかりとした対応をとるべきものと考えますが、今までどのような対応をとってきたのか、説明をお願いしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年四月に個人情報保護法が全面施行されたことによりまして、御指摘がありましたように、個人情報の保護に関する国民の意識が高まるとともに、また事業者の取り組みも進んできております。

 しかしながら、一方で、法律に対する誤解等に起因いたしまして、必要とされる個人情報の提供までもが行われないなど、いわゆる過剰反応と言われる状況も一部で見られるところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、政府といたしましては、去る二月の末に関係省庁の連絡会議を開催いたしまして、次に申し上げますような申し合わせを行いまして、政府一体として取り組んでいくということを強化しておるところでございます。

 具体的には、一つとして、インターネットの活用あるいは説明会の実施等によりまして法制度の周知徹底を図ることでございます。二つ目といたしましては、過剰反応と言われる現象の中で、法二十三条におきましては、個人データを提供する場合には原則として本人の同意を得るということが定められておるわけでございますけれども、幾つかの例外も定められております。こうした本人からの同意がなくても個人情報を提供できる場合等につきまして具体的な例を示して考え方を整理する、これが二つ目でございます。それから三つ目といたしましては、法の解釈や運用基準を明確にいたしまして、あるいは関係省庁でガイドラインを作成しておるわけでございますけれども、こうしたガイドラインを必要に応じて見直す。こうした措置につきましてあらゆる省庁が情報を共有する、こうした取り組みを進めることによりまして連携をとって進めていくという申し合わせを行いました。

 内閣府といたしましては、先ほど先生の御指摘のありましたように、個人情報保護法の目的でございます、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」という目的を実現するために、引き続きわかりやすい情報の提供に努めまして、国民及び事業者に制度の周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

萩生田委員 小学校のクラスの名簿がなくなったり、あるいはイニシャルで連絡網がつくられたり、担任の先生の住所も電話番号もわからない、こういうことを国は望んだわけじゃないというふうに思うんですね。ですから、余りにも過剰な反応が結果として日本の暮らし方、文化そのものを否定するようなことにならないように、私はやはり、今内閣府から御答弁ありましたけれども、総務省としてもきちんとした対応、メッセージを発信していっていただきたいな、こう思うところでございます。

 今回の住民基本台帳法の改正が、今述べましたように、過剰反応を助長するようなことにならないのかということを一番懸念しております。

 そこで、総務省においては、全国の地方公共団体と連携しつつ、今回の制度改正の趣旨が正しく理解されるよう十分な取り組みをすべきであると考えますが、制度の周知について具体的にどのように取り組んでいくのか、考え方をお示しいただきたいと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の改正では、個人情報保護意識の高まりに対応するために、ダイレクトメール等の営業目的での大量閲覧は認めないとする一方で、公益性の高いものなど一定のものにつきましては、引き続き閲覧が認められるという仕組みをとっておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、これまでの制度からしますと大きな改正だというふうに認識しておるところでございます。

 なおかつまた、公益性の高いものについて閲覧を認めるということになりますので、関係の地方公共団体と密接な連携のもとで運用していくことが非常に重要なことだと私ども認識しているところでございます。

 こういうことを踏まえまして、この制度改正の趣旨を踏まえて、各市町村におきまして適切な運用が図られますように、私どもといたしましては、市町村の担当者向けに説明会を開催するなどいたしまして、十分な周知に精いっぱい努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

萩生田委員 もともとといえば、国民のモラルの低下といいますか企業のモラルの低下、あるいはこのことによって犯罪につながってきた、こういったことが改正を早く進めるきっかけになってきたというふうに思うんです。突き詰めていくと、やはり日本人がある意味正しい価値観というものをもう一回取り戻していけば、そんなにぴりぴりする問題じゃなかったんだろうな、こんなふうにも思うところでございます。

 同時に、住民基本台帳、今ネットワークシステムをどんどん進めているわけでございますけれども、これまた地方の自治体の財政規模ですとかあるいは取り扱う住民基本台帳の数によっては、管理の方法というのは必ずしも一元化されていなくて、例えば、町内にホストコンピューターを持ってきちんと管理ができる自治体もあれば、ホストコンピューターを購入したりリースするまでの財政力はなくて、ある意味アウトソーシングなんかを使いながらやらざるを得ない自治体もあるわけでありまして、私は、そういうことを考えますと、やはりすき間というか盲点というのは今後もあるんだろうなと。

 本来、皆さんが市民の住民基本台帳を正しくきちんと管理していればそんなに心配するようなことじゃなくて、この記載された四項目というのは、このことが本人の生活そのものに大きな影響を与えるような、私はある意味では、正しく運用さえされればそういう心配をされる情報ではないというふうに思っております。自治体の皆さんの意識も含めて、ここは大事なところだというふうにも思いますので、総務省の対応といいますか、これからのしっかりとした指示また支援を期待して、質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、山本ともひろ君。

山本(と)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の山本ともひろです。

 本日は、住民基本台帳法の一部を改正する法律案について、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 今回、この住民基本台帳法を一部改正するというのは、従来であれば、何人でも閲覧の申請をして見ることができる、簡単に言えば、だれでもかれでもこの台帳の情報を得ることができる。それがいいように使われればいいですけれども、そこでいろいろな問題が出てきたり被害に遭う人がいる、事件が起きてくるということで、少し条件を設けて、閲覧の条件を求めて少しハードルを高くする、規制をかける、こういったことは非常に大事なことで、今回の改正する法律案も大変いいことだと私は思っております。

 その中で少し疑問がございますので、幾つか御質問させていただきたいと思います。

 まず、閲覧の条件ですけれども、例えば、学術研究あるいは世論調査、そういった調査研究活動に使うのであればいい、認められれば閲覧できるということですが、では実際に本当に調査しているのか、学術研究に使ったのかという報告をする義務というのはあるんでしょうか。もし義務がなければ、なぜそういった報告する義務がないのか、御説明をお願いいたします。

高部政府参考人 今回の改正におきましては、閲覧が認められた者に一律に報告の義務づけというものはしておらないところでございますが、閲覧の申し出の際に明らかにされた事項がその後適切に実施されているかどうかにつきまして、市町村長の判断により報告が求められるというふうに考えております。

 また、改正法の中に第十一条の二の第十一項というのがございまして、市町村長が勧告、命令等を行うに際しまして、報告徴収を行う権限というのを明確に位置づけているところでございます。

 こういう権限を適宜行使することによりまして、市町村長において適切な確認等が行われるというふうに思っているところでございます。

山本(と)委員 本来であれば、何か調査をします、研究をしますということであれば、私は別にだれもかれも怪しいとは思っておりませんが、きちっと使いましたよという報告があってしかるべきだとは思いますが、自治体の長なり責任のある方が必要があればきちっと報告を求めることができるということで、今の御答弁を聞いて少し安心をいたしました。

 次に、例えば、こういったしっかりした要件を持って請求して、認められて台帳を見た人というのはちゃんと使用されるんだと思います、目的どおりに使用されるんだと思いますが、仮に、偶然台帳のデータを手に入れた、道端で拾った、あるいは世の中で今話題になっているウィニーのようなものでたまたま手に入れてしまった、偶然台帳のデータを手に入れた。その人が、少し悪ふざけで、おもしろがって、愉快犯的に公表してしまった、そのデータを公表した。それが百人だろうが千人だろうが、おもしろおかしく公表してしまった。その公表したことをとらえて、罰則を設けているということは、今の現行の法体系では、ないと思います。私は、そういったものを偶然手に入れた人が故意におもしろおかしく出してしまうということに対して刑罰を設けた方がいいのではないかなと思いますけれども、現状では、そういうことは今の体制では、ないと。

 また、今のこのネット社会ですと、一たんネット上に出てしまうと、もう本当にあっという間にいろいろなところに行ってしまう、世界じゅうに行ってしまう。ユビキタス社会がどんどん進んでいけば、だれでもどこでもネットに接続ができて、情報網に接続ができて、いろいろな情報が手に入れられる。そういった中でそういう情報が出てしまうというのは、本当に私は、ある意味恐ろしい、危険なことだと思います。一たん出てしまうと、それを抑制するというのも技術的に無理でしょうし、なかなか法体系としてもそれをすべて網羅してやっていくということも大変困難だと思います。

 そこで、では、ファーストステップとして今できることが何かといえば、水際でしっかりととめる、そのもとのもとのもとでとめる。基本台帳が外に出る、あるいは情報閲覧者がいる、そういった中できちっと、そういうことが起きないように水際でしっかりと安全管理をしていくということが大事だと思うんです。

 そういった水際作戦といいますか、もとのもとのもとでしっかりと安全管理、事件が起きないような抑止力、そういった方策というのはどのようになっていますか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘いただいた点は大変重要な点だろうというふうに認識しているところでございます。

 今回の改正におきましては、まず出すところが非常に重要だということでございますので、閲覧を申し出るに際しまして、閲覧した事項の管理の方法、保管でございますとか廃棄の方法について明らかにするようにしております。市町村長は、そういうものが適切かどうかという観点で審査をいたしまして、閲覧を認めるかどうかという判断をまずしていただくことになります。

 次に、実際に閲覧を許されて閲覧した者に対しましては、閲覧した事項の適切な管理のために必要な措置を講じるということがこの法律で義務づけられているところでございます。

 さらに、閲覧した事項につきまして、本人の事前の同意を得ないで目的外に利用あるいは第三者に提供するといったことは法律で明確に禁止されているところでございまして、これに違反した者に対しましては、市町村長は勧告、命令を行うことができるというふうな規定も置いておりまして、一定の場合には刑罰も科せられるといったような体系で、今御指摘の点に対処するような形になっているものと考えております。

山本(と)委員 しっかりとデータの安全管理をしていただけるということで、本当に頼もしい御答弁でありますが、そういった公的な書類にしてもデータにしても図面にしても、そういうものを偶然に拾ってしまった、偶然得てしまった、それを故意におもしろおかしく公表した、その段階で実はそれは本当は罪にすべきことではないかな、私は個人的にはそのように思っておりますが、水際でしっかりと住民基本台帳を守っていただけるということでしたので、安心をいたしました。

 次に、閲覧を申請して、それがきちんとした理由であって、大丈夫ですよということでデータを得た。その得た人がしっかりと学術研究にも使用した、あるいは世論調査にもしっかりと使っている、ちゃんと調査研究に使いました、そういった報告もきちっとできる。できるんだけれども、実はその人は別に会社を持っていた。その会社で、何かDM等々、別の、申請した目的以外のことに使ってしまったということになると、これは不正使用、目的外使用に当たると思います。

 しかしながら、今言いましたとおり、その人はちゃんと学術調査をしているんです、世論調査もしている。そのデータを本当に使用したんですかと聞かれたら、はい、ちゃんと使用しましたと報告もできる。こうなりますと、不正使用といいますか目的外に使っている人、これは今回の改正案ではきちっと罰することができるということでありますが、しっかりと申請した内容どおりのことを真っ当にやっているんだけれども、実は陰で別の、目的外のことに使っていた、こういったケースも考えられる、予想される事態だと思うんです。こういった不正使用をどのようにチェックしていくのか、追跡していくのか。安全管理というのはどのようになされるんでしょうか。お答えをよろしくお願いします。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 仕組み的には、先ほど申し上げましたような体系で対処するという形になっているところでございますが、現実に、不正が行われていることについてどこまでチェックが働いていけるのかどうかという御指摘だろうと思います。

 不正への対処というのは、なかなか巧妙にやられた場合に、どこまで追いかけられるかというところについて課題があるのではないかという御指摘でございましたら、そういう課題は確かにあるんだろうと思っております。

 ただ、こういう大量に使うというものでございますので、例えば、不正使用された情報に係る住民等からの情報提供といったものがある場合も考えられるだろうと思いますし、まず、それよりもさらに前に、閲覧の申し出に際して、主体等につきましてもいろいろな観点からのチェックを働かせるということになるだろうと思いますし、その際に報告徴収をどういうふうにやっていくのかということもいろいろ検討されると思います。そういうことの中で不正使用といったことが明らかになる場合もあるのではないかというふうに考えているところでございます。

 こういう不正使用が明らかになった場合につきましては、個人の権利利益を保護するために必要があると認めるときは、市町村長は当該違反者に対して勧告を行うことができるという仕組みになってございますし、また、一定の場合に、勧告に係る措置命令といったようなこともできるようになってございます。また、重大な権利利益を害する事実があるような場合で、勧告を経るような時間的な余裕がないといったようなときには、勧告を経ないで違反行為者に対して直ちに命令を発するというようなことも用意されているところでございます。こういう命令については罰則を用意するという形になっておりますので、こういう仕組みの運用の中で対処していきたいと考えているところでございます。

山本(と)委員 なかなか完全な制度というのは難しいものなんだと思います。しかしながら、不安を抱いている国民も多数いると思いますので、完全な制度を目指して頑張っていただきたいなと思います。

 最後に、閲覧をする際に、公共的団体で公益性が認められれば閲覧が可能であるということですが、では一体、その公共的団体というのは何なんでしょうか。

 例えば、自然体験をする、自然体験学習をやっているようなNGO、NPOみたいな団体がありまして、そこが自分たちの自然体験学習塾の塾生を集めたい、そういう対象年齢の子供をその地域でリストアップしたい、それで閲覧を申し出てきた。自然体験学習ですから、およそ青少年の健全育成で、いいことなんだと思いますが、では一方で、学習塾が受験期の生徒を地域でリストアップしたい、これは営利目的なのか、あるいは地域の人たちの学力向上のための公益性なのか、非常に難しいと思うんです。

 例えば、こういう自然体験をするNGO、NPOというようなところが求めてきた場合、これは公益的団体になるんでしょうか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 ちょっと技術的な御説明になりますが、今回改正法の中で使わせていただいております公共的団体という用語方法につきましては、既に地方自治法の規定の中で公共的団体の監督等についての規定がございまして、それと同じ考え方で整理しているところでございます。

 従前から、この公共的団体という考え方につきましては、いやしくも公共的な活動を営むものは含まれるというふうに解しているところでございます。今回の法体系の中でも、一つは公共的団体という縛りもございますけれども、さらに、閲覧の必要があるのかどうか、それから活動内容といったような審査もあわせて考えるということになりますので、公共的団体ということにつきましては、今申し上げたようなことで、余り限定的に初めから考えるわけではなくて、全体の中でチェックしていけばいいものというふうに理解しているところでございます。

 したがいまして、御指摘のNPO法人というのは、直ちに公共的団体から外れるというような解釈はする必要はないのではないかというふうに思う次第でございます。

 個別具体になりますと、閲覧が認められるかどうかにつきましては、市町村長の判断ということになるわけでございます。今申し上げましたような必要性でございますとかいろいろなことを総合的に勘案して決めていくということになろうかと思いますので、適切な運用が図られますように、私どもといたしましては、この辺も具体の判断ではなかなか迷うところもあると思いますので、具体的な事例の積み重ねというのが大事だというふうに思っておりますし、そういうものを集めまして、情報提供に努めたいと考えているところでございます。

山本(と)委員 しっかりと適切に審査をしていただいて、みんなが安心できるような制度として運営管理をしていただきたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

中谷委員長 次に、西村智奈美さん。

西村(智)委員 おはようございます。民主党の西村智奈美でございます。

 富田委員が列車事故で少しおくれるということで、急遽時間が早まりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 住民基本台帳法の一部改正案につきまして質問させていただきますけれども、ようやく改正案が出てきて、そしてこの委員会の中で審議することがようやくできたかという思いがございます。

 私たち民主党で、実は、もう一昨年の通常国会で住民基本台帳法の一部改正案を提案させていただいておりました。愛知県での母子家庭をねらって少女へのわいせつ事件を起こしたあの事件から、これはもう急ぎ対応しなければいけないということで、党でそういった提案をしたわけでありますけれども、それに比べて、やはり政府の対応は遅きに失したのではないか、率直に言って、このような感想を持っております。

 恐らく政府の方といたしましては、検討会の報告を待っていたのでこういう時期になりましたということなんだと思うんですけれども、しかし、基本四情報、これを公開していることについての危険性はこれまでずっと指摘されてきたことでもありますので、やはりここはしっかりと、対応にスピードが欠けていたということをお認めいただいて、そして、ぜひ今後の対応についても、その反省を踏まえて取り組んでいただきたいと思うものであります。

 まず最初にお聞きしたいのは、今回の一連の、住民基本台帳法の公開、大量閲覧にまつわって、いろいろな事件が発生してまいりましたけれども、これに対しての総務省としての見解を伺いたいと思います。

 先ほど申し上げました事件だけではなくて、これは総務省の方でも調査されてきたことだと思いますが、全国で大体一年間に、これは二〇〇四年度の数字ですけれども、百五十万件の閲覧請求件数があった。このうち実に約六割がダイレクトメールなどの営利目的のものであって、そうした請求業者の実態を法人登記などで確認していた自治体は、何と驚くべきことに四割弱であったということであります。

 こういった状況を見ますと、閲覧したい側の権利は保障されているけれども、閲覧されたくない側の権利はやはりなおざりにされてきた、何ら保障されてこなかった実態はあると思います。これについて総務省の見解を伺います。

高部政府参考人 何点か御指摘をいただきました。私どもといたしましても、こういう制度改正の対応というのは、今委員御指摘いただいたような点も真摯に受けとめまして、対応しなければいけないというふうに考えているところでございます。

 この住民基本台帳の閲覧制度というのは、委員厳しい御指摘をいただきましたけれども、いろいろな経緯と社会経済状況の変化というものがあるんだろうなというふうに感じております。

 この制度は、昭和二十年代の住民登録法の仕組みから始まりまして、昭和四十年代の住民基本台帳法、それから住民基本台帳法についても、順次、何人でも請求できるという形をとりながらも、閲覧の内容でございますとか、不当な目的の場合には拒むことができるというような改正をしてきたところでございます。

 制度発足時におきましては、こういう営業目的の請求というのも広い意味での公証の一環という形で認められてきたというような経緯もあるわけでございます。そういう中で今までの仕組みができてきたということでございます。それで、いろいろな環境の変化の中で、今回、制度改正をさせていただいたということでございます。

 これも御指摘ございましたように、閲覧制度を悪用した事件の発生というのはまことに遺憾なことだというふうに思っているところでございまして、今回は、閲覧することができる場合を制限いたしますとともに、閲覧の手続等の整備を図りまして、あるいは制裁措置の強化といったこともさせていただきまして、悪徳事案といいますか、こういう事案に対しても効果を上げていくものではないかというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 各市町村で、閲覧請求があったときにかなりこれまで対応にばらつきがあったということを御承知だと思います。ある自治体は、営利目的だ、ダイレクトメールを発送する目的だというときには大量閲覧を拒否していた自治体もあるようでありますけれども、また一方で、申請書の申請目的のところに何か書いてあればよろしい、そういう自治体もどうもあったようであります。

 そういたしますと、現行法の第五十条では、偽りその他不正の手段により閲覧した者は十万円以下の過料に処するというふうにありますが、実際に法人登記などで確認していた自治体が四割弱しかない。実際に追いかけていってみたところが架空の業者であったというケースも多数報告されているわけですけれども、実際にこの現行法の第五十条の適用ケースというのは今までにあったんでしょうか。

高部政府参考人 御指摘いただきましたように、市町村の対応についてかなり差があったということは現実だろうと思います。

 これも先ほどちょっとお答え申し上げましたけれども、この四情報というものに対する考え方が随分変わってきたということだろうと思っております。今回、選挙人名簿の抄本の閲覧制度もあわせて改正されているところでございますけれども、かつては、正確性を期するという意味で、かなり広くこういうのが配られて、確認することによって正確性を期することができるというような考え方で対処されてきたような状況もあったわけでございますが、今回改正させていただくわけでございます。

 ただいまお尋ねの、現実にあったかということでございますが、今確認しましたところ、平成十六年で、内訳をちょっと詳細把握しておりませんが、閲覧の場合とそれから写しの交付の仕組みと両方合わせてでございますが、十七件の事例があったというふうに把握しているところでございます。

西村(智)委員 十七件でありますか。

 実は民主党の中でも、対策を検討していたときに、この住民基本台帳法の閲覧請求が自治事務であったということが非常に悩ましい、難しい点でありました。原則閲覧禁止だというところまでは私たちも合意はした。その先に例外的に閲覧を認めるケースもあるだろうというときに、自治事務ということからすると、これは法律的に縛りをかけるのではなくて、条例で、自治体で検討してもらうということも考えたりはしたわけです。

 しかし、この住民基本台帳法というのは、正直申し上げて、一つの自治体の中でおさまる話ではなくて、広域的な問題であるわけです。名簿が売買されるときというのは全国的に行われるわけでありますし、市町村の行政区画というのは余り意味をなさないということからすると、これはむしろ国で対応すべき事柄なのではないかというふうに考えますけれども、これについてはいかがでしょうか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 先般の分権一括法による改正の中で、機関委任事務が廃止されまして、事務の区分についても、今御指摘いただきましたように自治事務と法定受託事務という区分になったわけでございます。

 法定受託事務につきましては、自治法の規定からいたしますと、国が本来果たすべき役割に係る事務であって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものというのが法定受託事務の考え方でございます。

 機関委任事務の整理に当たりましては、当時いろいろ議論をしまして、できるだけ自治事務の方に位置づけるような形で、できるだけ地方公共団体の自主性が増すようにというような形で整理させていただいているところでございます。

 御指摘ございましたように、先般の地方制度調査会の答申等でも指摘されているところでございますが、できるだけ国の法令は地方の自律性を高める内容とすべきだという一般論は当然ございます。その中で、特に自治事務につきましては、地方公共団体ができる限り条例等により行うことができるようにするという考え方は基本的な考え方だろうというふうに思っているところでございます。

 ただ、市町村の窓口の事務の中で、戸籍の事務と住民基本台帳の事務というのは一番すぐ住民の方に思い浮かぶ事務でございますけれども、戸籍については、法定受託事務ということで国が全体として管理をする体系で考えておるところでございますし、それから住民基本台帳による事務というのは、住民を把握といいますか、公証したり記録を管理する仕組みということで、自治事務というふうに考えているところでございます。

 そういうものの中で、方向性としては先ほど一般論として申し上げたようなことにはなるわけでございますが、基礎的にデータをそろえていくというような部分もございまして、一定の全国的な統一性というような事情もあるわけでございます。特に、今回の改正につきましては、閲覧できる場合を法律で規定いたしまして、さらに閲覧の手続等の整備を行うというような形にさせていただきましたので、法律で規定するといったことは個人情報の保護の観点といったことも含めまして必要だと考えた次第でございます。

西村(智)委員 ちょっとよくわからない部分もあるんですけれども、住民基本台帳は市町村で管理をするということ、これは今の法体系ではそういうことになっているわけです。しかし、もう既に全国的に境界線はないですね、今の住民基本台帳が置かれている状況というのは。ですので、ここはやはり広域的な課題だというふうにとらえて、もう一度仕切り直しをしていただく必要があるのではないかと思いますけれども、ちょっとここから先は大臣に伺いたいと思います。

竹中国務大臣 いろいろ御議論を賜りまして、ありがとうございます。

 一番最初に委員がおっしゃった、もう少し早く対応できなかったのか云々のことも含めて、我々はしっかりと重く受けとめなければいけないと思っております。

 その上で、国と地方の役割の分担をどのようにしていくかという非常に大きな議論の中で、今委員御指摘の、この法律に関連して個別の問題もある、私もそのように認識をしております。

 これを根本的に見直す必要があるのではないかという御質問に対しては、私は、これも含めてですけれども、国の関与のあり方、さらには、そもそも国の責任、地方の責任をどのように考えるのか、区切るのかということについては不断に見直さなければいけませんが、とりわけ今の時点で抜本的に見直す必要があるというふうな認識を持っております。

 そうしたことで、先般諮問会議においても、分権一括法の見直しをしてはどうかということで私はお示しをしているわけですが、実は昨日、地方六団体からもそのようなお申し出をいただいております。地方六団体の方は地方分権推進法という言い方をしておりますが、前回も推進法を定めた後で分権一括法の見直しをしているわけでございますけれども、そういうプロセスが必要であるというような認識は私自身は持っております。

 しかし、これは非常に大きな問題でございますので、今後、各省庁で賛成、反対、いろいろな意見が出てくると思いますけれども、先般の私の懇談会でもまた同じ方向が示され、また地方六団体の検討委員会でも同じような議論がなされている。そういう時代の流れの中で、ぜひ前向きに私としては判断をしていきたいと思っております。

西村(智)委員 私は、今回の法改正が自治事務という性格に照らして適当かどうかということも含めて質問したつもりでございますので、どうぞその辺は理解をいただきたいと思います。

 それで、今までにもうずっと議論になっております、いわゆる公益性という判断基準であります。

 公益性というのは、公益法人改革のときにもずっと議論になる言葉でありますけれども、だれが判断するかというのは私は非常に重要だというふうに思います。今回は市町村長が判断するということになりまして、これは私は現時点では適切な判断だろうというふうに受けとめておりますが、しかし、何をもって公益性の有を判断するのか。そこのところは立法者の意思としてきちんと示すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 公益性の基準についてのお尋ねでございます。

 公益性の基準としましては、その調査や研究の成果がまず公表されなければいけないと思います。そして、国の施策の検討や学術研究、まさに公的に利用されることによりまして、それが社会に還元されることが必要だと思います。そういうこと等を告示で定めたいというふうに考えているところでございます。

 いずれにしましても、公益性は、最終的には市町村長に適切に判断していただくべきものであると思います。市町村における事例の積み上げがその意味では重要でございます。総務省としては、閲覧が認められた具体的な事例等をしっかりと収集して、各市町村に提供するなどの支援を行ってまいりたいと思います。

 また、これとあわせまして、市町村において適切な運用がなされますように、総務省としましても、市町村の担当者向けに説明会を開催するなど十分な周知に努めてまいる所存でございます。

西村(智)委員 その告示の内容ですとか、市町村への説明の中身、ここのところを実は本当はぜひ具体的に伺いたいわけなんです。

 具体的に申し上げますと、例えば、新法の第十一条のいわゆる公用閲覧の部分に関してでありますけれども、行政機関による閲覧については、その他特別の事情により請求事由を明らかにすることが事務の性質上困難であるものについては明らかにしなくてよろしいですよということになっておりますけれども、私は、ここのところ、使い方によっては非常に難しい規定になると思っています。

 実際にこれまでもたくさんの事例が報告されておりますし、御存じだと思いますけれども、例えば警察が閲覧をするときに、申請書とそれから警察手帳の明示だけで住民基本台帳を閲覧していたというような事例もありました。これが事務の性質上困難であるものだということでもうブラックボックスに入れられてしまうと、外部からの統制というのはできないわけですね。市町村長も判断はできません。ここのところをどういうふうにお考えなのか。

 つまり、事務の性質上請求事由を明らかにすることができないというのは具体的にどういうことを指すのか。また、その請求事由を明らかにできない場合には、何らかの内部統制の仕組み、これが絶対に必要だというふうに思いますけれども、いかがですか。

高部政府参考人 まず、性質上請求事由を明らかにすることが困難なものとは何かという点でございますが、「犯罪捜査に関するものその他特別の事情により請求事由を明らかにすることが事務の性質上困難であるもの」というのが条文の規定でございます。犯罪捜査をするためのもの、あるいは類似のものでございますけれども、税務調査でございますとか、具体的にどういう形で出るかはっきりわからないところがありますが、公正取引委員会等々がやるような場合といったようなものが想定されるところでございます。

 それから、どういう形で統制するかということでございますが、今回は、こういう公的な閲覧請求につきましても、こういう請求をするということを公文書を持ってきていただくというような形にさせていただこうかというふうに考えているところでございますので、そういう形で適正を確保したいというふうには考えているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、犯罪捜査等々の場合で理由がこうだと明らかにしにくいというものでございますので、すぱっと割り切ってどうこうというところはなかなか難しい面はあろうかと思いますけれども、制度の趣旨等々も御理解いただいて、なおかつ、先ほど申し上げましたような公文書を持ってきていただくというような形で適正な運用を確保していきたいと考えているところでございます。

西村(智)委員 今、住民基本台帳法、基本四情報を保有しているのは市町村、自治体なわけであります。そこのところが保有している情報について、やはり閲覧のプロセスもぜひできる限り透明化していただくようにお願いをしたいと思います。

 行政機関が情報を持っているがゆえに閉鎖的になってしまうということも指摘をされているようでありますけれども、そこのところは、ぜひきっちりと心して明確なルールづくりに今後とも取り組んでいっていただきたいと思っております。

 次に、個人または法人の申し出による閲覧であります。

 営利目的の大量閲覧が非常に件数が多かったということから問題になり、今回の改正につながっているわけなんですけれども、実際に、現行の住民基本台帳法でも、これはと思うような申請目的が幾つかあるわけなんです。

 どういうことかと申しますと、例えば、幼児、小中学校向け学校教材の案内。案内ですので、これは営利目的とは恐らく言えないんだろうと思います。あるいは結婚観に関する意識調査と申しますと、したいという人にはそういうDMが多分送られるということを前提にしている意識調査なんだろうと思います。あるいは世帯主の子供の何とかさんが当社に就職を希望しているので、家族構成及び家族の生年月日を確認したい、これは非常にプライバシーにかかわる重大な請求だと思います。あるいは兄弟の住所確認、家族に関することですと、これはそもそも何らかの問題のあるケースだろうかなというふうには想像はできるわけです。

 こういった事例に対して、法改正によって、どういったものが閲覧がだめだということになって、どういうことが閲覧が可能だということになるんでしょうか。

高部政府参考人 包括的なお尋ねでございますのでなかなかすべて答え切れませんが、十一条の二の中で、一号から三号まで閲覧を認めるものについて規定しているところでございます。

 委員御指摘いただいたのは、抄本の交付請求の部分も一部あったようにも思えますが、閲覧についていいますと、多分、問題意識でいいますと、一号の世論調査等々に係るものを主に考えておられるのかなと思います。その中で、例えば教材の案内というのはわかりにくいということでございますけれども、一般的に言うと、教材の案内というのは営業のために使うということに私なんかはとれるわけでございます。そういうようなものについては、現実に何に使うんですかということを市町村の窓口で審査がなされると思いますので、そういう中で公益性が判断されるということはあると思います。

 先ほど大臣がお答え申し上げましたけれども、公益性の判断がなかなか難しいということの中で、公益性というのは、分野ごとにその公益というのはいろいろな態様があると思いますので、それを一つにまとめてこういうことですと言うのは難しい中で、それで今回、公益性の判断をするもの、判断材料として、調査結果が公表されて、それが社会に還元されるということを一つの要素にしたらどうかというのが検討会の報告の内容だったわけでございます。

 そういう観点からいたしますと、ただいまの教材の案内というようなものは、その結果が社会に還元されてというような基準に照らしたときにどう見えるのかなというようなことになって、一定の判断がつくんだろうと思います。

 それから、もう一つお示しになられました、今度、結婚観についての調査ということになってきますと、もう少し判断が、現実にいろいろな要素を加味しないと難しくなってくるのかもしれませんが、この結婚観の調査をして、どういう研究なり調査目的なんでしょうか、どういうふうに成果を扱うんでしょうかといったような点で、そういう観点からしたときに、どこまで閲覧が必要であるか、あるいは事後の管理がどうなっていくかというようなことを総合的に加味した上で市町村で判断されるというふうに考えております。

 そういう意味で、事例の積み重ねが非常に大事になってくるのではないか。だから、そういう情報交換についてしっかりやっていきたい、かように考えているところでございます。

西村(智)委員 公益性を判断するときに、例えば意識調査なり世論調査なりの成果が社会に還元されていくというのを一つの指標にされるということでありましたが、やはり私は、自分の情報は自分でコントロールしたい、そういう自己情報コントロール権と言われる流れでありますけれども、そこのところの認識もぜひきっちりと持っていただきたいというふうに思うんです。

 それとあわせて一点伺いたいのは、取得された個人情報というのは、一たん手を離れますと、どういうふうに使われるのか、大変コントロールの難しい状況になっていってしまいます。閲覧して得た情報を適切に管理してもらう、そのために閲覧者がそうだということがわかるように管理をすべき、そういうことを求めていくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

竹中国務大臣 今の御質問の点は、これは閲覧の申し出の際に、閲覧した事項の管理の方法、保管とか廃棄の方法を明らかにすることとしておりまして、市町村長は、管理の方法が適切かどうかも含めて閲覧を認めるか否かを判断する、こういう仕組みに法律上はなっております。

 また、これにあわせまして、実際に閲覧をした者に対して、閲覧した事項の適切な管理のために必要な措置を講じるということも義務づけを行っているところでございます。

 さらに幾つか申し上げますと、閲覧した事項について、本人の事前の同意を得ないでこれを目的外利用、第三者提供するということは禁止されているわけでございまして、これに違反した者については、先ほどから御説明させていただいているように、市町村長は刑罰により担保された勧告、命令を行うことができる、そういう事後的な措置も講じられていると思います。

 これらの措置につきましては、閲覧して得た情報が閲覧をして得た情報であるとわかるように管理されていることを担保する、そういうことを促す一つの全体としての仕組みになっているというふうに考えております。

西村(智)委員 この法律を考えるときにやはり行き当たるのは、情報はだれのものかという、もともとの問題なんですね。情報はだれのものか。それはやはり情報の所持者といいますか、その個人、その人のものであります。住民基本台帳法は、いろいろな戸籍等の関係もあって、それを市町村に預けている。その情報がどういうふうに使われるのかということをやはり保持者は知る権利があるんだと思います。ただ、そのときにぜひ酌み取っていただきたいのは、行政機関が預かっているから行政機関だけのものではないという、その閉鎖性についてもぜひ気を配っていただきたいなと思います。

 先ほどどなたか過剰反応というようなお話をされておりましたけれども、例えば、私の地元での災害のときに、NPOが、要援護者がどこかにいないかと障害者団体が対策本部に駆け込んだところが、これは基本台帳法の問題とは少し離れますけれども、それは個人情報なのでだめですというようにはねつけられたというようなケースが実際にありました。そういったことがすべからく行政機関、役所の中に浸透していくということはまた一方で問題でありますので、そこのところのバランスはぜひ留意していただきたいと思うところであります。

 せっかくお越しをいただきましたので、国勢調査について一点お聞かせくださいませんでしょうか。

 六月五日に、総務省で設置した統計法制度に関する研究会と内閣府で設置した統計制度改革検討委員会がそれぞれ報告書をまとめています。何についての報告書かといいますと、統計業務に係る報告書であります。

 この中で、国が行った統計業務によって得たデータを二次利用することについて道が開かれたようなことになっているわけでありますけれども、来年の通常国会で二次利用について改正案が出されるなどという一部報道もございました。具体的なスケジュール、それから二次利用されるデータの対象あるいはその範囲、これが明確にはなっておりません。匿名性が果たして本当に担保されるのかという非常に重要な問題がありますけれども、この匿名性を確実なものにするためにどんな方策を考えておられるのか、それを伺って終わります。

久布白政府参考人 お答え申し上げます。

 統計法制度に関する研究会の報告に関する御質問でございます。

 まず、総務省といたしましては、統計法制度に関する研究会の最終報告それから内閣府に置かれました統計制度改革検討委員会の最終報告を踏まえまして、速やかに法律改正のための体制を整え、改正案の立案作業に着手してまいりたいと考えております。

 具体的な法律改正のスケジュールにつきましては、現段階ではちょっとまだ確定的なことは申し上げられませんが、今後、関係各方面とよく調整いたしまして、なるべく早く国会に法案を提出させていただきたいというふうに考えております。

 また、内容の方でございますが、御指摘いただきました統計法制度に関する研究会の報告書におきましては、二つの制度の導入が提言されているところでございます。一点目は、統計データの利用を希望する者のオーダーに応じまして集計を行い、その集計結果のみを提供するオーダーメード集計の実施でございます。もう一点は、調査票から氏名や住所のほか個体の識別につながる情報を消去いたしまして、匿名性を確保いたしました匿名標本データの作成、提供でございます。

 また、報告書では、前者のオーダーメード集計につきましては、集計作業は調査実施府省が行うものでございまして、依頼者自身は調査票を直接使用するものではない。そういうことで、秘密の保護が確実な仕組みであるというふうに考えておられます。

 それからまた、後者の匿名標本データにつきましても、作成段階におきまして、他の情報との照合による識別の可能性の観点からの検証なども含めまして、あらかじめ匿名性の確保に十分留意するとともに、匿名性の確保について特に慎重な検討を行うため、第三者機関におきまして専門的、技術的な観点からの審査を行うことが適当であるというふうに提言されておられます。

 また、調査対象者の秘密の保護に万全を期すため、匿名標本データを利用する者に対しましては、データの第三者提供を禁止することなどについてもあわせて法制上の措置を講ずることが必要とされているところでございます。

西村(智)委員 終わります。

中谷委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、住民基本台帳法の改正について若干お伺いをしたいと思います。

 実は、自治体の現場ではこのことについては随分悩みを持っておりました。随分とトラブルが多くて、これまでは原則公開だったものですから、私も町の議会でこのことについて随分糾弾を受けまして、何とかしろというふうに言われておりました。私も、それでは独自に条例か何かでやろうかと言ったら、いや、それは法律に規定があるから条例ではできないんじゃないかというような話もあったところ、熊本市が法律に先駆けて条例でやったという事例がございまして、私も議会答弁で、熊本のようにうちも条例をつくるかもしれない、それとあわせて国にも働きかけて法律の改正をお願いするというような答弁を、多分昨年かおととしの議会でやった覚えがございます。今回こうして改正されるというのは、よかったなというふうに思っております。

 ただ、残念ながら、やはりちょっと対応が遅いですね。これはもう少しレスポンスよくやってもらわなきゃ困るのではないかなという感じがするわけであります。

 今回のこの法律ですが、公布後六カ月以内に施行ということであります。それで、その中で、閲覧可能なものの中に公益性という言葉があるわけですが、これについてはこれまでも何人かの方が質問しておりますけれども、この公益性については総務省の告示でその範囲、基準なんかを示すということですが、いつ告示を出すつもりでいらっしゃるのか、そしてその内容はどの程度の範囲になるのか。

 それから、当然これは、今市町村の現場では窓口対応が随分ばらばらだという指摘も先ほどございましたけれども、どうやって統一を図ろうとしているのか、例えばそのための説明会のようなものを開こうとしているのか。このあたり、まず政府参考人の方にお伺いしたいと思います。

高部政府参考人 告示の内容につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、公益性ということはいろいろな分野でいろいろなことがあり得ますので、検討会の中でもいろいろ御議論いただいて、一つの考え方として、調査結果が公表されてその成果が社会に還元されるというような報告をいただいておりますので、こういう内容を定めたいというふうに思っております。

 それから、いつやるのかということでございますが、お認めいただければ、法律施行後できるだけ早く進めたいと思っておりますけれども、当然のことながら、告示につきましても、施行までの間の中でできるだけ早いタイミングでお示しいたしまして、地方公共団体の方に周知を図れるようにしたいというふうに思っております。

 それから、御指摘いただきましたように、現実の運用の中では窓口のところでいろいろ御苦労いただいていると思います。内容的にも全部を画一的に、これを何かで示せばすぐわかるという形でお示しできるものではないだろうと思いますので、そういう意味では、これまでもいろいろな積み重ねはあろうかと思いますが、こういう中で、いろいろな対処方法についての情報交換というのが非常に重要だと思っております。

 ですから、一つは、新しい制度の内容の周知というのをしっかりやりたいということとともに、あわせて、いろいろな情報交換の枠組みといいますか、情報が伝わるようなものについても少し意を用いて、できるだけそういう情報交換の中で全国的に円滑な取り組みが図られるようにしたいというふうに考えておるところでございます。

逢坂委員 今の答弁でわかるようなわからないようなというか、要するに、社会に還元されるようにというふうに言われているから告示の内容は社会に還元されるような内容になると思いますという答弁は答えになっていないような気がするんですが、きょうはここは余り突っ込まないことにいたします。

 もう一つ、今回の法律で原則非公開というふうになっている、これは理解をするわけです。ただ、これまで地域では余り明確じゃない基準で公開しているものもあったと思います。しかし、それがその地域のコミュニティーにプラスになるとか、地域の人間関係をうまくやっていくために非常によくなるというようなものがあったかと思います。

 例えて言うならば、町内会というんでしょうか、町会というんでしょうか、そういうものの構成員みたいな、うちの地域にどんな人がいるのかねみたいな話、特にこれは小規模な自治体においてはある種日常的に行われていたものかなというふうにも思います。それから、全国的にあるかどうかわかりませんけれども、女三十何歳それから男四十何歳とかいう厄年の会みたいなものが田舎へ行くとまだあって、そういうものの仲間を募るためにも、結構役所へ来て、おれと同じ年の人たちの住民台帳を見たいんだけれどもどうだろうねなんという話もあったんです。

 今回のこの原則非公開で、こういった地域のある種潤滑油的なコミュニティーに資するようなものまで阻害されることになるんでしょうか。公開しないということになるんでしょうか。このあたりはいかがですか。

高部政府参考人 お答え申し上げます。

 地方自治にとりまして、今御指摘いただきました地域コミュニティーあるいは地域の連帯感、参加意識というのは非常に重要な要素だと思っております。そういうものの醸成というのは非常に重要な視点だろうと我々は思っているところでございます。

 そういう地域の中でのいろいろな対応があり得るだろうというようなこともございまして、今回は、十一条の二の二号で「公共的団体が行う地域住民の福祉の向上に寄与する活動のうち、公益性が高いと認められるものの実施」ということを入れておりまして、地域の中で市町村長が判断して対応できるような条項を設けているところでございます。

 御指摘いただきましたいろいろな活動も、地域でいろいろな対応があろうかと思いますけれども、その地域地域の状況に応じて、各市町村長が適切にこの体系の中で判断していっていただけるものだというふうに思っているところでございます。

逢坂委員 住民基本台帳に係る事務は、いわゆる自治事務ということで交付税の基準財政需要額の中に盛り込まれているんですね、ある種義務的な事務として。これを見ますと、標準団体の一般財源として一億六千九百万とかいうデータを総務省の方からいただきましたが、これが盛り込まれている。確かにこれは自治事務であるということでありますけれども、例えば、住民基本台帳ネットワーク導入のときの経過、あるいは今回の、ある種全国統一的に住民基本台帳の仕組みを動かすというような実態、そういうところから見ると、果たして自治事務でいいのかなというのは、先ほど西村委員からも指摘のあったとおりかなと私も感じるんです。

 高部局長、もし住基ネットなんかの更新をするということになると、その経費というのはやはり自治体が持たなきゃならぬものなんですか、住基ネットの更新なんということになると。その辺はいかがですか。

高部政府参考人 まず、住民基本台帳に係る事務というのは、住民を把握するシステムでございますので、私どもといたしましては、この事務というのは全国的、統一的にやる必要があって、いろいろな行政のベースになるという意味で、そういう事情があることはもとより承知しているところでございますが、事務の性質としては自治事務のものだろうと思います。

 それから、全体の方向として、これも先ほどお答えしましたけれども、法定受託事務というもののウエートが増すことは地方自治にとって決して好ましいことではないというのが基本認識でございますので、既に法定受託事務に分類されているものであっても、可能である状況の変化に応じては、自治事務というような位置づけはできるものならするというような方向の方が望ましいと基本的には思っております。

 そういう事務の性格の中で、では財源措置をどうするかということでございますが、財源措置の方法については、当然のことながら、経費の支弁といいますか、とりあえず出すのは、これは地方公共団体に出していただかざるを得ないわけでございます。その後の財源をどう手当てするかということにつきましては、それはいろいろな物の性質といいますか事務の中身によって、例えば自治事務であっても補助制度を持っているところもあろうかと思いますし、あるものについては、交付税制度の中で一定の位置づけがされているものもあるだろうし、それはその時々、いろいろな状況の判断の中で考えられていくものではないかなというふうに思っております。

逢坂委員 通告していない話を聞いて大変申しわけございませんでした。

 財源の話が出たわけですけれども、そこで、今、我々が全国の市町村長あるいは役所の職員と話をすると、どうしても議論になるのが将来の財源の問題なわけであります。

 それで、大臣の方にちょっとお伺いしたいんですけれども、今、二十一世紀ビジョン懇の中で新型交付税の議論がされている。新聞報道を見ると、例えば、新型交付税を二〇〇七年度から導入するというような話でありますとか、新型交付税は三年間で五兆円規模にしていくという話でありますとか、基準財政需要額で算定する現在の地方交付税というのは、社会保障費など国の義務づけに基づくものにぎゅっと圧縮をしていくようなニュアンスの内容でありますとか、そんなことが報道されているんです。

 今の私が言った新型交付税に対する認識というのは、大体二十一世紀ビジョン懇の議論として正しいのでしょうか。いかがですか。

竹中国務大臣 例のビジョン懇において、新型交付税について議論をいただいております。まだ最終的な取りまとめではございませんが、中身につきましては、今おおむね委員がおっしゃったように、基本的な考え方で一番重要なのは、ここは逢坂委員と多分完全に一致すると思うんですが、国の基準づけが多過ぎる。国の基準づけがあって、地方にいろいろな自由がない。だから、その基準づけをとにかく減らしていってもらわないと本当の意味での分権社会はできない。だから、そのために、先ほど申し上げたような分権一括法のようなもので、しっかりと国の基準づけが減るような、国と地方の役割の明確化をしながら国の基準づけを減らすようなことをやっていこうではないか。

 その上で、それでも今、国の基準づけがない部分がございます、ないしは弱い部分がございます。それがどのぐらいかというのはいろいろ議論があるにしても、最低何割かはあるだろう。そういう部分に関しては、簡素な基準で歳入を保障するような形でいわゆる新型交付税を導入していったらどうなのか。

 ビジョン懇としては、何年で何兆円というような数字が出されております、これは委員の意見として出されております。しかし、今後は、私たちとしては、政府・与党一体でこのことを進めていかなければいけませんので、ビジョン懇の意見をお受けして、政府・与党でよく相談した上で、どのような形で進めていくかということを決めていくということが必要だと思っております。

 いずれにしても、考え方として御理解を賜りたいのは、国の基準づけを減らすこと、そして国の基準づけのない、ないしは弱いものについて、より簡素な基準について考えていってはどうなのか、それがこの提言の御趣旨であるというふうに理解をしております。

逢坂委員 要するに、国の義務づけというか基準づけをどんどん減らしていくんだということでありますけれども、それでは、例えば今回の住民基本台帳事務のようなものというのは将来的にどのような位置づけというふうにお考えですか。

竹中国務大臣 この事務そのものに対して、ちょっと今、私すぐ、これはかくあるべしというふうな判断ができかねる状況にございます。実際にどのような仕事が今後出てくるかということも踏まえまして、実態的に判断をしなければいけないと思います。

 先ほどの御答弁でも私自身申し上げたかったのは、そうしたことを含めて、やはりもう一度、国の関与はどうあるべきなのか、どうないべきであるのか、そして、どれに対しては国が本当に責任を負う、どれに対しては地方が責任を負う、今非常に重層でわかりにくくなっておりますので、それをもっと明確にするような大作業を一度行う必要があるのではないか、そのような趣旨で分権一括法の話をさせていただいているわけでございます。その中の重要なお話としてこの事務の話も出てくるのでございましょう。その中で幅広く御議論をいただきたいと私は考えております。

逢坂委員 よく大臣がお使いになる言葉でありますけれども、今まさにこの時間も地方の事務というのは現在動いているわけであります。全体的に広い観点から考えたいという気持ちはわかるのでありますけれども、やはり財源の問題を含めて、自治体の現場では今はらはらどきどきの日々を送っているわけでありますので、これはやはり、大局的な見地もわかるんですが、具体的なものを示すということも大事ではないかなというふうに思っております。

 そこで、新型交付税ですけれども、大臣の目標としては、これは二〇〇七年度からできれば導入したいというふうにお考えなんでしょうか。

竹中国務大臣 私としては、やはり大きな方向を決めて、それに向けて動き出すということが大変大事だと思っております。そういう観点からは、この新型交付税、もう御承知のように、今でも人口そして面積というのは重要な算定要素になっているわけでございますから、国の基準づけの弱い部分について、ないしは、ない部分について、これはやはり速やかに入り口をつくって導入をしていくということが大切であろうと考えております。

逢坂委員 ということであれば、二〇〇七年度からできれば導入したいという意向のように私は今聞こえたわけでありますけれども、本当に大臣、人口と面積を算定基礎とするこの新型交付税で今の地方交付税制度が果たしている役割というものに取ってかわれるというふうにお考えですか。もし取ってかわれるというふうにお考えであるならば、その根拠というか、何をもとにそうお考えになるのかをお聞かせいただきたいということが一つ。

 それと、人口と面積で算定してはみた、だけれども、現状の交付税制度の実態を考えると、プラスアルファの変動要素というものもやはり加味せざるを得ないという結果にもしなったとすれば、現行交付税制度を抜本的に見直す意味、意義合いというものも薄れるわけですが、このあたりについて、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 よい機会でございますので、新型交付税について、賛成の意見もいただいておりますけれども、御懸念の意見もいただいておりますので、ちょっと二、三点整理をさせていただきたいんです。

 まず、一つよく言われるものとして、新型交付税を導入することによって交付税を減らすことを考えているのではないかという、仕組みの話と量の話を結びつけた議論がございます。これは明確に、量の話は量の話として極めて重要であって、私は何度も申し上げておりますけれども、必要な地方の一般財源はその総額を必ず確保しなければいけない、そのように考えて、また行動をしております。ただ、その量の問題、この交付税を入れるから量が減るんだというような、そういう議論はぜひ避けていただきたいというふうに思います。

 申し上げたいのは、ここは交付税の仕組みの話でございますので、しかし、仕組みの話は仕組みの話として、一体どうなるんだろうかという、それはそれで、まだ御懸念といいますか、不安があるかと思います。

 今逢坂委員が、これは取ってかわれるのか、今の交付税の制度に新型交付税は取ってかわれるのかというふうな御指摘、御質問がありましたが、これは、全面的に取ってかわるというようなことを私は全く申し上げていないわけです。今、一割程度、基準づけがないところがある、そういうところから入っていきましょう。そして、基準づけがないところがふえれば、それはふやしていけばいいと思います。少なくとも九割についてはいろいろな基準づけが行われているわけですから、これについては、従来と同じように、やはり基準財政需要をしっかりと積み上げてやっていかなければいけません。ですから、今までの交付税制度というのはその中心として当然残るわけです。あくまで一割とか二割とかそういうものについて新型のものを導入してはいかがか、そういうことを私は申し上げているわけなんです。

 その上で、しかし、人口、面積という単純な手法でどの程度やれるのかということについては、これはしっかりとしたその制度設計が必要であると考えております。例えば、人口の少ないところについても行政需要がありますから、その人口が少ないところについての行政需要はしっかりとその中に加味をしていかなければいけないと思います。つまり、人口十万についても、例えば人口一万から十万までの自治体の十万の意味と、人口一千万のところの一千万から一千十万までの意味は、これは明らかに違います。こういうことは当然のことながら加味しなければいけません。我々は、実際のまさに今この瞬間行われている行政に支障を来さないように、責任を持って制度設計をしたいと思います。

 実は、ちょっと思い起こしていただきたいんですが、税源移譲で、住民所得税について、これを今度移譲するときに、これでちゃんと地方がうまく配分できるのかという御心配がありましたけれども、ここは自治税務局のプロが非常にうまい制度設計をして、実態的にそごがないような制度設計をさせていただきました。そのような意味での、きちっとした、現実に即した、支障が生じない制度設計はできるというふうに私は考えております。

 加えて、最後に、プラスアルファの要素というお言葉を逢坂委員使われましたが、実は、このビジョン懇談会の中にも、真に配慮を必要とするところについてはしっかりとしたシステムを確保していくということを明記してくださっています。それは、制度設計の上で真に配慮を必要とするものについてどのようにするかということもあわせてしっかりと議論をして、それらを含めた責任のある制度設計をしなきゃいけないと思っております。

 したがって、決してこれが今すぐ全部人口、面積に変わって大混乱が起きるとか、そんなようなことでは断じてございませんので、そこの点につきまして、ぜひ御理解を賜りたいと思っております。

逢坂委員 今の話からしますと、例えば基準財政需要額の中で義務的経費の割合というのが、市町村では約八割というふうに言われていますね、都道府県では約九割と言われている。では、市町村分のこの約二割の部分について新型交付税を検討してみてはいかがか、都道府県分については一割だというようなニュアンスに受け取りましたが、それについてさらにお聞きをしたいということ。

 それと、いわゆる変数の部分ですね。それぞれの事情を酌み取るというところ、それも含めてうまくいくんだという判断をしているという御発言が今ございましたけれども、私が聞きたいのは、うまくいくんだという判断をしている基準は何かということを聞きたいんですよね。それは大臣、全然おっしゃっていないような気がするんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 正確に一割か二割かというのは厳密にはなかなか申せないというふうに思うんですが、先ほどから申し上げておりますように、国の基準づけのない部分ないしは弱い部分が一定割合はあるだろう、これは皆さん、専門家も言っておられることですので、そういうことをしっかりと見定めた上で、この制度の導入を混乱なく図りたいというふうに思っております。

 第二点目の、うまく生かせることができるという、私はうまく生かせるような制度設計をするというふうに申し上げているわけで、しかし、そういうことが全く不可能ではないと考えている理由は何なのかという御質問だと思います。

 これは、何人かの財政の専門家が、結果的に今の交付税の額というのが、非常に広い統計的な分析によると、人口、面積で九十何%説明できる、そのような統計的な分析がございます。かねてから、人口、面積でやってよいのではないかという論者がいらっしゃいましたが、その論者たちの一つの根拠としまして、今のような分析があると思います。

 しかし、これは統計的に見て、全体の統計で見て九十何%の確率でそれが説明されるということでありますから、それだけですべてがうまくいくとは私は思っておりません。全体としてうまくいっても、個別でうまくいかないところが出てくれば、これは制度としては失格でございますから、そこはきちっと議論を詰めなければいけない問題だと思っております。

 ただ、全体としてそのようなベースがある上でしっかりとした制度設計をやっていきたいというふうに私自身は申し上げておりますので、これは、とんでもない、とてもそんなことは無理だというような状況ではない、そういうことではないというふうに私は判断をしております。

逢坂委員 今のお話を聞いても私は感ずるんですが、義務的経費の割合というのは、八割か九割か、それはいろいろあるだろうけれども、厳密には申せないというような話をされました。厳密には申せない、義務的経費の割合が八割か九割、私が先ほど、市町村は八割で都道府県はおおむね九割というふうなことで今言われているけれども、そのことですねという話をしたら、それはそうだろうけれども、厳密には申せないという話をされたわけですね。

 それから、統計的分析によると、およそ九割が人口、面積で現在の交付税を説明できるというようなことだと思うわけですが、やはり自治体の不安は、厳密には申せないとか、およそ九割とか、そういう非常にアバウトな議論があるのではないかというところに相当な懸念、危惧を抱いているんだと思いますので、この点はまず一つ指摘をしておきたいと思います。

 それから、統計的に見て、人口、面積で現状の交付税制度が、再帰的にというんでしょうか、説明がつく、人口と面積を基準として配分しても九割ぐらいは現状の交付税も何とか説明がつくんだということのお話でありますけれども、例えば、いわゆる基礎的自治体の適正規模というものをよく議論されることがありまして、人口十五万人ぐらいで、大体、対住民一人当たりの税金の支出がちょうど効率よく出ているんではないかという現状が市町村においてあるという場合、それでは、すべての全国の市町村を十五万人でくくれば本当に最適な自治体ができるかというと、必ずしもそうでもないというところがあるわけですね。

 これは実は統計のマジックだというふうに私は思っておりまして、やはりこれは、現実に合わせて具体的なシミュレーションをするとか、やはりもっと詳細なデータに基づいて、こんな状態だから導入を検討しても大丈夫だというものがなければ、一応導入することだけは目標は定めてやるんだ、制度設計はうまくいくようにやりますからという、その意図がやはり私にはどうもよくわからないんですね。

竹中国務大臣 これは少し議論が並行するのかもしれませんが、もしそういうことがあればお許しいただきたいと思いますが、私は、制度をつくっていくときというのは、やはり大きな方向をまず決めた上で、そして一丸となって、委員おっしゃるような精緻な制度のシミュレーションをやっていくということしかないと思うんですね。ただし、その大きな方向を決める上で、これで大丈夫だろうというそれなりの判断の基準はなければいけないと私は思います。

 これは、郵政の民営化のときも同じような議論が実はあったわけです。郵政の民営化、民営化してやっていけるのかと。やっていけるのかということに関しては、これは詳細な制度設計が必要で、どういうビジネスをやって、どれだけ人員を割り振って、これはまさに郵政株式会社で今やっているわけです。

 これは、方向を決めて、体制をつくって、その上で初めて最終的なビジネスのプランというのが出てまいります。だから、方向は先に決めないと、こういう実際のワークするものはできないというのが私は現実だと思うんです。ただ、それが本当に、とんでもなく無理なことはやってはいけませんから、そうではないということの確認はしなければいけません。その趣旨で、例の骨格経営試算という、ラフだ、アバウトだという御批判もそのとき受けたわけですが、そういうものを示させていただきました。

 今、この交付税については、一割か二割なのかは厳密には申し上げられないというふうに申し上げましたが、ビジョン懇談会で議論したときは、基準財政需要のうち、義務づけが九割だというようなことを言っております。しかし、一割はそうではないものがあるというふうに言っている。一方で、一部の学者等々では、三割か四割、基準づけがないというふうに言っているところもあります。したがって、我々は、かためにとっても、一割とかそのぐらいはそういう基準づけのない部分があるんだというふうに判断をして、そしてそこからやろうということの今判断をしているわけでございます。

 委員おっしゃることは私は理解しているつもりであります。つまり、さはさりながら、本当に自分のところはどういうふうになっていくのかという御不安は皆さんにあると思いますから、今私が申し上げたような形できちっとやっていくんだという我々のその考え、決意については、これはもっとしっかりと御説明をしなければいけないなというふうに思っているところでございます。

 いずれにしても、全部最初から決められたら、それはそれで、安心は安心ですが、現実には、制度設計としては、これはできない。これは、郵政についてもまさにそういうプロセスでやっているんだというふうに私は考えております。

逢坂委員 それは最初から、一から十まで、右から左まですべて詳細に決まっているということはあり得ないと思うんですね。しかしながら、今の交付税制度の問題点をどこに大臣が見ていて、新型交付税というものを導入することは、なぜそれが是であるのかというような、大きな方向を示すとはおっしゃっておられましたけれども、そのことは必ずしも自治体の側には伝わっていないのではないかというふうに思うんですね。

 それから、私は、何も一から十まで最初に詳細を示してやりなさいと言っているんではなくて、大臣もこれはよく申されていることですが、自治体とよく相談をするという言葉、よく相談をさせていただいてやらせていただきますという答弁をこの場でもされているわけですが、それでは具体的にどういうスケジュールで、どんな手法で自治体と相談をしようとしているのか、このあたりも見えないわけですよ。

 ビジョン懇の具体的な個別の議事録は示されない、要旨だけしか示されない。そうして、報道を見ると、あたかも来年から導入されるようなことが流れている。これではもう全く自治体の側が不安でしようがないわけですよ。このあたり、もっと精緻に説明しなければ私はだめなのではないかと思うんですけれども、いかがですか。

竹中国務大臣 もっと説明のための努力が必要だという点に関しては、私も実は実感をしております。もっと説明をさせていただかなければいけない。そうでないと、今、報道というふうにおっしゃいましたが、何も決まっていないことを、さもそれに向けてもう国が動いているような報道が毎日のように出ているわけで、そういうのを見るたびに、大変不安をお持ちの方、お持ちの自治体というのは多い、これは残念ながら現実だと私は思います。であるからこそ、我々としても、もっと周知、そして意思疎通には努めなければいけないと強く感じております。

 相談の仕方ですけれども、私はこういう問題は本当に難しいと思います。だからこそ、もう何回か御説明しておりますが、一番最初に地方六団体に対して私の方からお願いをしたわけです。私たちは全体のことを考えます、だから六団体も全体のことを考えてください、全体のことを考えて議論していただけば、私は必ず一致点は出てくると思います、そのように申し上げました。

 そして、私たちは懇談会、地方六団体は検討委員会をつくって、そこももうほぼ取りまとめが進んでおります。そして、懇談会と検討委員会のそれぞれの専門家の方々で今まで何度か議論をしていただいております。お互いに問題点の指摘をするプロセスをやっております。今週も一度、大田先生と神野先生たちでやっていただいたはずでございます。

 一方で、総務大臣と六団体の議論の場というのをほぼ月に一回ぐらい持たせていただいておりますので、その場でも御説明をさせていただいております。そして、実は昨日、御承知かと思いますが、六団体の長の方に経済財政諮問会議においでをいただきまして、議論に参加をしていただきました。そういうプロセスも踏んでおります。しかし、これはまだ、国と地方の協議の場も含めて、もっともっとしっかりとやっていかなければいけないと思っております。

 私の認識では、六団体の例の検討委員会の議論と懇談会での議論というのは、違うところもありますが、大きな方向としては非常に一致してきているというふうに思っています。六団体においても、簡素な交付税の仕組みをつくるということは言われているわけでございます。

 そして何より、わかりにくいというふうにおっしゃいましたが、これはやはり全体でやっていかなきゃいけないわけですね。どういう理念でこの交付税の改革をしているのかということにつきましては、先般、私が諮問会議で、それぞれの今の解決しなければいけない四つの問題とそれに対する六つの処方せん、これをトータルでやっていかなければいけないんだ。その中の一つに、実は新型交付税が入っておりますし、分権一括法も入っておりますし、そして税源移譲の話も入っているわけです。これをパッケージでやるということをお示ししております。これがまさに改革の方向性である。

 ただ、一つでもなかなかわかりにくいのに、六つになるとなかなかわかりにくい面もございますので、そこはさらに努力をして、まさに地方とよく御議論をしていかなければいけないと考えております。

逢坂委員 それでは、もう少し詳しくお聞きしたいんですけれども、具体的なスケジュールは、仮に二〇〇七年度に導入するとすれば、具体的にどのような手順でお進めになろうとしているのか、その際に自治体の意見というのはどういう形で反映されていくのかをもう少し詳細にお知らせください。

 それからもう一つですが、二十一世紀ビジョン懇は竹中総務大臣の私的な懇談会であるというふうに伺っており、しかもそれは、そこで政策が決定されるものではなく、総務省内部として、総務大臣として、最終的に政策を決定するために多様な意見を聞くための一つの場であるんだというふうに私はこれまで聞いていたかと思いますが、そこの座長といわゆる地方六団体が議論をするということの正当性ですね。あたかもそこに大臣が関与をせずに、私的な懇談会の座長、トップと六団体の方に議論をさせることの正当性というのは、私は少しおかしいのではないか。それはまさに大臣が六団体の声を直接引き取っておやりになることではないか。そうして、私的な懇談会の意見も踏まえて、それをどうバインドするというか、くっつけるのか、調整するのか、そういうことが、政治家として、大臣としての責務ではないかというふうに私は思うのですが、それはいかがでしょうか。

 それと、もう一つでございますが、認識の点で、おおむね方向は一致している、地方六団体とビジョン懇の認識はおおむね一致しているとのお話がございましたが、おおむね認識が一致していると言ったのは、ビジョン懇の方がそう言ったわけでありまして、地方六団体の方の座長の方は、考え方は随分違いますねと、あの特徴ある細い声でおっしゃったのではないかというふうに私は思っているんですね。大臣、このあたりいかがでしょうか。

竹中国務大臣 それぞれ重要なのを三点、今御質問があったと思いますが、順番に申し上げます。

 プロセスそのものでございますけれども、御指摘のとおり、私的な懇談会でございます。それを受けて、私自身の私案については、既に諮問会議で並行してお示しをしております。

 しかし、これは政府の中でまだ意見がいろいろあります。税源移譲を私たちはぜひ実現したいと思っておりますが、税源移譲に対して必ずしも十分な理解がまだ政府の中でも得られていないんだと思います。しかし、これは何としても実現したい。

 その上で、今、歳出歳入一体改革とあわせまして、この制度の改革も御議論をいただくことになると思いますので、当然のことながら、政府・与党で、その方向について一致していけるところを見出していかなければなりません。その中で合意できることについては骨太の方針に反映させていく、これが通常の政府・与党の意思決定のプロセスであると思います。その通常のプロセスでぜひ粛々とやっていきたいと思っております。

 二番目に、座長と委員長が話をしたということは無責任ではないかというふうにおっしゃいますが、それだけで終わったら無責任ですけれども、これは重要なプロセスとしてやっていただいているわけで、その上で、実は六団体の長の方も、もちろん私と話をしますけれども、懇談会の座長とも話をしたいという、いろいろな申し入れがあります。できるだけいろいろな申し入れに応じていきたいというふうに思います。

 当然のことながら、これは、六団体と私と話して、そして最後は六団体と内閣でしっかりと話して、やっていかないと、骨太の方針に、国と地方が納得のいく形で改革をやっていくんだということを明記しておりますから、その責任は果たせません。今、その途上でありますから、当然、委員御指摘のように、行政の責任者として、トップとして、そういう話し合いは、もちろん今もやっておりますが、今後もやっていくわけでございます。

 三番目の、認識が一致しているのかどうかについては、これは、コップの水が七分目か八分目あったときにどう言うかという問題であると私は思います。

 私が申し上げたのは、座長の話じゃなくて、私はそう認識していると。私はそのように実に認識をしております。地方分権一括法のような抜本的な見直しが必要である、これは一致しています。そして、不交付団体を大幅にふやす、そのための税源移譲、税配分の見直しを行う、これは一致しています。そして、簡素な交付税ができるところを簡素にしていく、これも当然一致をしております。私は、これは非常に大きな方向の一致であると。

 一致していないところもございます。国と地方の協議の場をより法的な性格の強いものに格上げというか、見直してほしいという要望を地方は示しておられますけれども、政府の中では、議会との関係もあり、なかなかそこまでできるかどうかという、自信がまだございません。そういうところで違うところはあります。しかし、大きな方向としては、今回、地方にも検討していただいて、我々も検討して、一致が見出されつつあるというふうに私は考えております。

逢坂委員 骨太の方針で最終的な方向が大体決まるという今のお話ですが、骨太の方針は、これまでの例によりますと、夏前には多分決まるんだろう。そうすれば時間はそんなにないわけでありますので、ぜひ自治体の皆さんにきちんとした議論のプロセス、情報を提示して、どういう根拠に基づいて今度決まるであろう方向に行ったのか、そして自治体の皆さんの意見がどう取り入れられたのか、早速これは明示をしていただきたい。報道が勝手にやっているなどというのは、それは私は断じてまずいことだというふうに思います。

 と申しますのは、このビジョン懇の議論を初め、全国の市町村、都道府県の皆さんはかたずをのんで見守っているんですよ。自分たちは発言できない、そして中身もよくわからない、毎晩毎晩みんな悩んで悩んで大変なんですよ。オーバーだという思いの方がいるようですが、とんでもございません、それぐらいみんな必死なんです。だから、その責任の重さを感じて、やっていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと論点を変えて、現在の地方交付税の中に、基準財政需要額に地方債の元利償還額が算入されていますね。今後、新しい交付税制度を導入するに当たって、これをどう考えていくのかということが一つでございます。

 それからもう一つ、現在の地方交付税特別会計に五十兆近い借財、借金があるわけですが、この扱いはどう考えるのかということが二つ目でございます。

 それから三つ目でございますけれども、地方財政計画ですね。地方財政計画というものがございますけれども、これの意義、意味合いを大臣はどのようにお考えか。そして、この将来像について現時点でどう考えているのか。

 地方財政計画と地方交付税制度は密接に絡んでいる問題でありますので、地方交付税制度に手を入れる、抜本的な改革をするということになると地方財政計画に言及せざるを得ないわけでありますけれども、このことを考えずして、交付税制度だけを直せばいいということには多分ならないわけですので、この三点、簡潔にお願いいたします。

竹中国務大臣 なかなか簡潔にお答えするのが難しい、大きな問題ばかりでございますけれども、まず、基準財政需要に算入されている元利償還の話でございます。

 地方債に対する地方交付税措置の廃止を長期的に行うということを申し上げておりますけれども、この提案については、既に発行済みの地方債に適用することを想定しているわけではもちろんございません。これは十年後までに地方債の自由化を進めていく中で実現をしたいというふうに申し上げているわけですが、もちろん、それにあわせて、投資的事業についての国、地方の役割分担、その際必要な事業量をどのように設定していくかといった抜本的なことも含めて、つまり、投資的事業に対する財政措置のあり方を抜本的に見直しながらやっていくということが必要になってまいります。

 二番目の、特会の話だったでしょうか。まず、新型交付税というのは、さっき言った交付税の算定面における仕組みの改革でありまして、交付税の総額や特会の借入金に影響するというようなものでは性格上ございません。したがって、そこは従来どおり、先ほど言いましたように、私としては、総額を確保する、そしてしっかりと借入金を償還することができるような状況に持っていく、これは総額の面で大変重要であると思います。いずれにしても、特会借入金の早期償還が必要であるという認識は持っているところでございます。

 そして、最後の三つ目の、地方財政計画についてどうなのか、交付税を変えても、地財計画そのものについてちゃんと認識を持たなきゃいけないのではないかという御認識でございますが、まさに、地財計画の改革という中で今回の議論が出てきているわけでございます。

 言うまでもありませんけれども、地方財政計画は、地方財政の運営上、標準的な行政水準を確保できるように地方財源を確保するということ、そして、地方財政と国家財政、国民経済との整合性を図るということ、また、地方団体の毎年度の財政運営の指針を示すこと、そういった包括的な役割を担っているわけであります。

 言うまでもなく、地方財政計画の基本的な役割は今後も必要でありますから、今回、新型のことを議論して、それで地方交付税が廃止されるとか、そんなこととは全くこれはつながらない話であると思っております。

 もちろん、今後、国の関与の大幅な廃止縮小、ないしは国、地方の税源配分の見直しなどの改革が今から画期的に進めば、地方財政の自主性が飛躍的に高まるというようなことに、これは大変好ましいことですけれども、その場合は、地方財政計画の役割もそれに応じて変化していくということはあり得るわけでございますけれども、当面、地方財政計画そのものの役割というのは、私が申し上げた総合的な意味で、大変重要なものであるというふうに認識をしております。

逢坂委員 今お話をいただいた中で、基準財政需要額に算入されている起債の元利償還額でございますけれども、これが十七年度の例で見ると七兆七千五百二十億ということで、基準財政需要額全体の一七%に達しているわけですね。これは実は、過去から見ますと、年々増加をして、この額に今なってきているわけであります。

 実は、この七兆七千五百二十億円というのは極めて重要な数値でございまして、何が重要かというと、例えば、現在の公債費負担比率ですとか起債制限比率ですとか、そのたぐいの地方の財政の状況をはかる指標のベースになっているものなわけですね、交付税にどれほど算入されているかというものが。したがいまして、先ほど大臣がおっしゃったように、この額というものはやはり変えてはいけないものだ、既発行のものについてはきっちりと保障しなければいけないという性格のものだと私は思っております。

 それから、交付税特別会計の借入金でありますけれども、今おおよそ五十二兆あるわけですが、これをもし、総務省からいただいた償還計画によれば、例えば平成十九年度ですが、三兆八千二百四十一億円返すということになっているわけですね。ですから、私は、大臣が先ほど、義務的な位置づけのないものの、要するに八割、九割の議論の一〇%、二〇%のところを新型交付税に、そして義務的なところはできれば圧縮をしていきたいというような話でございますけれども、今のこの二つの、起債償還費と交付税特会の借金の返済ということを考えてみても、本当にそういう議論が現実的なのかというところを相当不安に思うわけですね。

 もう時間がありませんので、きょうはこれ以上論議はできないわけですが、いずれにいたしましても、自治体の皆さんが相当恐れおののいているのは事実でございますので、やはり大きな方向を示すというのは大事である、私も当然そういうことは大事だとは思うのですが、まさに現在、この時間この時点でも生活して、仕事をしている、その人たちのお金のことを我々はここで議論しているわけですから、ぜひ大きな方向とともに緻密なものも出していただかないと、それは最初から出せというのではなくて、議論のプロセスの中で間違いなく出して、これで大丈夫かなというようなことをやらないと大変なことになるというふうに思いますので、最後に大臣の御見解をお願いします。

竹中国務大臣 委員がおっしゃることは、私もそのとおりであると思います。

 そして、やはり我々は、ともすれば、大きな方向を議論するに当たりいろいろな障壁がありますので、そういうところに目を奪われて、今委員がおっしゃったようなことに関して配慮が行き届かないようなことにならないようにとりわけ注意をしなければいけないと思っております。今の点をしっかりと踏まえて、私としても全力で対応していきたいと思います。

逢坂委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

中谷委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 大臣と同じようなシャツを着ております。さっき気がついたんです。これまでもいろいろと、大臣とは何度も議論をさせていただきました。ひょっとしたら、大臣には、今国会で私も質問に立つのがこれで最後になるかもしれませんので、まず冒頭、いろいろなことをちょっとお尋ねしたいと思います。

 ここに、けさの新聞にも出ておりますけれども、いわゆる地方六団体からの十二年ぶりに提出をされたという要望がございます。この点について。これは突然のことでもなく、これまでもずっと地方分権の議論をしてまいりました。

 私も地方議会の議員をやっておりまして、これは前、お話ししたかもしれませんが、私ども、静岡県の沼津市というところに防潮堤があって、そこが、台風が来たときに下がえぐられて、倒壊の危険性がある、これは早く何とかしなくちゃということで、高潮の防潮堤の緊急整備で、当時の建設省に来たことがございます。目の前にある防潮堤の工事で、なぜ東京まで行かなきゃできないんだろうかということでございまして、そのたびに、たくさんのお土産とたくさんの書類を持って、何でこんなに要るのかと思うぐらい同じような写真をたくさん撮って、我々の町はどこにあるかということを、まずそこから説明するんですね。

 ところが、説明する時間が五分ぐらいしかありませんから、見てください、一ページ目にまず静岡県の地図があって、二ページ目に私ども沼津市の地図があって、三ページ目に現場の写真があって、それをめくっていく、ここですと。見た人は、ふんふんと言って、ああ、そうですか、富士山の見えるいいところですねみたいな。行ったこともないような、見たこともないような方に何回も頭を下げないと、我々住民が住んでいる目の前の防潮堤の工事もできぬのかというような素朴な思いを持ったわけであります。

 そのころから、なぜ地方の、例えば静岡県なら静岡県の土木事務所なりがすぐできないのだろうかというような話をしました。そうすると、海岸線のここは国の管轄だ、ここからは県だ、このところは市だとか民間だとかとあるわけでありまして、これが、本当に行政の効率を考えたら、まずやはり自前の財源があって、自前の予算を持って機動的に対応できるようにすれば、住民にとってこんなに効率的で手っ取り早い話はない。これは地方の行政体あるいは議員はみんな、だれしも思うわけであります。

 大体そうなんですけれども、住民の方々がまず行くところは市役所でありまして、もしくは市会議員さんに陳情に行く。そうすると、一応話は聞くんだけれども、市役所へ持っていったら、いや、これは実は県がとか、国がとか言って、県だ国だと言っていると、またそれが差し戻されて、またもう一回県に持っていく。市に要望したんだけれども、あれは県だと言われて、生煮えの返事だから、今度県会議員に頼んで、あれ、どうなりましたかと県議に聞いてみたら、いや、それは実は今、国と協議していますみたいな。何だかんだ言っているうちに三カ月も四カ月も、下手すれば一年も二年もほったらかしになっちゃうことがあるわけであります。

 地方分権というのは当たり前の改革でありまして、歳出削減が今、地方に対して言われていますけれども、歳出削減ができないような無駄なコストアップの部分も実はあるんですね。ここのところをこれからどうしていくかということについて、これはもう総論は出ているわけであります。ただ、総論が出ているんだけれども、いざとなると、これは正直、さまざまな中央省庁が、国の関与がなくなってしまうと、自分たちの存在意義が問われる、あるいは薄れるということで、総論が出ていながらにして、なかなか遅々として進まない。

 業を煮やして、もう地方六団体のみならず、地方から、あるいは識者も、もう何度も何度も指摘していますが、地方分権はもう何とかしろと。なぜ総論は言い続けられていて実現しないのかということで、このような形で、十二年ぶりでしょうか、出されてきたわけでありまして、国と地方の協議の場を設けることは当然だと思いますけれども、総務大臣も、今の内閣の後、どのようなポストにつかれるのか、一議員に戻られるのか、全くわかりませんけれども、ぜひ地方分権について、やはりこの委員会の中で明確なビジョンを示していただきたいと思うし、今後、地方からの要請に対してどう取り組んでいき、またどのような形で、今後のポスト小泉の政権ができた場合、どのようなことを残していくのか。御自身が残っていれば、また引き続きやるとおっしゃるでしょうけれども、この世界はどうなるかわかりませんので、ぜひ御決意を、お考えをまず冒頭伺いたいと思うんです。

竹中国務大臣 決意を述べよということでございます。

 私自身、経済財政政策担当大臣として、いわば行司役の立場で三位一体の改革を見てまいりまして、改めてこの改革というのは本当に難しい改革であるというふうに思います。

 理由は幾つかありますけれども、まず、やはり制度が大変難しくて、一般の皆さんは、地方の自治に大変関心はあるんですけれども、政策の議論になると正直なところよくわからないということなんだと思うんです。

 これはちょっとエピソードで恐縮ですが、先般、タウンミーティングに行ったときも、タウンミーティングで道州制の話、地方分権の話をやったわけですけれども、たくさんの方が集まってくださったんですが、質問された方の三分の二は公務員の方でした。つまり、皆さん、関心はあるんだけれども、質問をして意見を言うまでにはなかなか一般の方はやはり知識が持てない。私は、これはこの問題の一つの特徴なんだと思います。しかし、だからこそ三位一体の改革というのは非常に大きな改革なんですけれども、郵政なんかに比べると、やはり国民の皆さんの理解度というのは十分ではないのかなと思います。

 私自身、この改革を続けるに当たって、三位一体についてはいろいろな御批判もあったかもしれませんが、土俵を限定して、今まで全く動かなかったものをぐりっと動かしたということは一つの前進であったんだと思うんです。それを今度いわば新しい三位一体の改革として引き続きレールに乗せることが総務大臣としての私の今の役割であると思います。時間がかかります。しかし、だからこそレールに乗せたい。

 それが、先ほど逢坂委員にも申し上げましたけれども、国と地方の役割分担を抜本的に見直す分権一括法のようなものに歩み出そうではないか、そして、交付税のあり方についてもできるところから始めようではないか、そして、明確に、財政的に自立できる、つまり交付税に頼らないところの比率に数値目標を定めて、それに向けて必要な措置を議論していこうではないか、そういう入り口をぜひつくりたいというふうに思っているわけでございます。

 その入り口がつくれれば、政権がかわっても、それに向けてこれはもうやらざるを得ない重要な改革になってまいります。あと数カ月しかありませんけれども、その間に、今申し上げたようなこと、そしてこの場で御議論いただいたようなことについて、総務大臣としてぜひ一つのレール、入り口をつくりたい、それが私の思いでございます。

渡辺(周)委員 地方分権というのはずっと言われてきて、本当の構造改革というのはやはり地方分権だと我々もずっと主張してきました。いわゆる補助金行政それから陳情行政、この二つがなくなるだけで、コストのみならず、意識もかなり変わると思うんです。

 これは余談かもしれませんが、先般のこの委員会で、地方自治法の改正の法案審議をしました。それから、地方議員の年金、地方公務員共済法の改正の議論もしました。実は、こういう地方の問題を議論したときに、地元でこういう話をしてもほとんどの方は御関心がないんです。御関心がないというよりも、仕組みがわからないから聞いてもらえないんですね。

 もっと言うと、地方の議員さんからも、この点についての問い合わせだとか、こういうことを聞いてくれとか質問してくれというのもなかなかない。これは住民の方にもやはり意識の問題があって、行政の例えば交付税の話とか権限の移譲の話というのは、役所同士の話なんだ、一般の住民には関係ないんだよなというのが物すごくあるんですよ。

 ですから、これをやるには、例えば今みたいにわかりやすく言えば、何も静岡県の人間が新幹線とバスを乗り継いで百万円のコストをかけて霞が関に行かなくたっていいんですよと。ああ、そんな無駄なことをやっているんだと、そういう例を出して初めてわかるんです。

 そこのところで、住民に対してももう少し、地方分権をしたらいかに暮らしが変わるのか、あるいは税の使い道が、無駄がなくなるのかと、やはりわかりやすいアプローチをしないと、玄人の議論だけしていると、何か非常に地方行政や地方自治の専門誌の中にはいろいろなことが書かれます、あるいは学者の方々がいろいろ議論したりしますけれども、それははっきり言って、玄人しか、関係者しか読まない、一般の人たちは読まないんです。

 ですから、そんなことよりも、窓口であのあくびしている役人を早く減らせみたいな話の方が、この間市役所に行ったらとんでもなく待たされた、あいつは何だみたいな、そういう議論に集約しがちなので、この点については、地方に対して、六団体のトップだけが会う話ではなく、ぜひ地方自治体に、我々もそういうフィードバックをしなきゃいけないと思いますし、もう少し国としても、やはりやるからには、そうか、そういうことかというふうな、何かいつもの一つの流れで、毎回これは恒例行事でやっているんだみたいな話ではなくて、本当にぜひこれは進めていくべきだなと思います。

 これはお願いしていることじゃなくて、我々も一緒にやらなきゃいけないことだ、そんな思いを、この委員会の質問で私も立つのがこれでおしまいかもしれませんので、ちょっとそんなことを申し上げさせていただきました。

 それともう一つは、歳出削減の問題、これは絶対に当然やっていくべきであります。可能なものはやればいいし、その点について、民間にできるものは民間に任せる。ただし、公の関与が必要な部分、責任が必要な部分については、やはり何でもかんでも民間に任せて、あとは責任の所在があいまいになるようなことがあってはいけないわけでありますが、しかし、できる限りスリム化をするということは当然のこと。これは国も地方もやらなきゃいけないわけで、まずは私たちがこの間の行政改革の特別委員会で民主党案を出しました。

 いろいろ御批判もいただきました。三年間で二割も公務員を削減するなんてできっこないという御批判もいただきました。我々のは、国家公務員の人件費を削減するという法律でありました。国家公務員の人件費を削減するということは、その仕事を地方公務員に当然つけかえる。まさに、北海道に権限を移譲する話と全く一緒なんです。

 その点については、正直、内輪からもいろいろな異論がありました。そんなことをやったら地方があふれ返っちゃうじゃないかと。三十三万人一般職国家公務員がいるうちの二十一万人が地方支分部局に出ている。では、そのうちの、考えられる、我々の試算で何万人というところの例えば国土交通省の出先だとかあるいは幾つかの出先を、都道府県が持っている土木事務所なり港湾管理の方に全部移行すればいいじゃないか。要は、国家公務員が地方公務員になって同じ仕事をすればいいじゃないかと言ったら、それはいろいろ批判もありましたけれども、実際、それをやらなかったら構造改革にならないわけであります。

 これは、行革法案で出して与党に否決された話ではありますけれども、権限移譲をこれから本当にどうするんだということ、国家公務員でなくても地方公務員でできる、つまり国家公務員の方が格上で地方公務員になるのは嫌だみたいな、そういうレベルじゃなくて、同じ仕事をするわけですから、その点についてやはり根本的に考える必要がある。

 そして、では地方の公務員があふれ返っているじゃないかといったら、それは、市場の原理というのはあれですけれども、当然、需給のバランスの中で考えればいい話だと思うんです。やはり住民から見ていて、何かあそこにあふれ返っている、何でこんなところにこんなたくさん人がいるのかとなったら、それに対して積極的に取り組まない市長なり知事なりあるいは議会なりは、当然四年おきの選挙で審判を受けるわけであります。

 やはり住民の目の届くところで、淘汰されるべきところは淘汰されていくというような形で権限を地方に移譲するということ、そして、何の分所を地方に移しかえるかあるいは権限移譲することができるかということについて、これはぜひ交付税改革のみならず検討して進めていただきたい。

 何か北海道の話だけで、結果的には余り本質的な議論にならずに終わってしまうのではなくて、それはぜひ残していただきたいと思いますが、この問題の最後にもう一度、大臣のお考えなりを伺いたいと思います。

竹中国務大臣 地方分権の趣旨は、まさに今渡辺委員御指摘のように、権限を地方に任せることだ、権限にふさわしい財源、財力も持ってもらうことだ、そして自由と責任を持ってもらうことだ、自立することだ、そのことに尽きると思います。

 その意味で、新聞等々では、新型交付税のことだけが、それともう一つ破綻法制の問題だけがやたら取り上げられておりますが、まさにパッケージが必要でありまして、その中心になるのが先ほどから申し上げている分権一括法の見直しである、そこの分権一括法の見直しを通して、まさしく国と地方の権限の再配分をしっかりと行うということだと思っております。

 同じことを、地方六団体は、分権推進法をつくってくれと。御承知のように、九〇年代の後半から二〇〇〇年にかけてこの議論を行うときに、まず分権のための推進法をつくって、それに基づいて分権一括法をつくっていったというプロセスがありますから、推進法と言うか一括法と言うかはともかくとして、地方六団体も私も実は同じことをそこで申し上げているわけでございます。

 しかし、これは三位一体のときも実感をいたしましたけれども、中央省庁は権限を放したくありません。だからこそ、三位一体の改革であれだけ大きなエネルギーを使って、しかも、権限が移譲した部分もありますけれども、移譲しない部分も残念ながらあったということだと思っております。

 この分権一括法は、霞が関、永田町を挙げた大議論になるわけでございますけれども、そこにまず向かおうではないかという意思決定を私としては何としてもしたいわけでございます。その意思決定をするに当たって既に物すごい抵抗がございますが、ぜひそこは与野党を超えて御支援をいただきたい。そして、正々堂々と、国の役割、地方の役割、それぞれの権限そして財源をもう一回議論しようではないかという土俵にぜひのせたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 たまたま私の地元の静岡新聞というところで、どなたかが社説というかコラムで書いていらっしゃったんですけれども、今国会は行革国会だと言われたときに、オール永田町対オール霞が関の戦いだと。戦いという言葉はどうあれ、今おっしゃったとおり、やはりそこの権限を移譲して、財源も税源も当然移譲すると。そして、国が関与するべき部分というのは、外交だとか安全保障だとか大きな経済政策だとかに限定すれば、国会議員が何か地元の陳情でたくさん名刺をいただいて、何とか促進何とか大会で来ましたと、だれが来たかも本当はよくわからないのに、はあはあってこんなのをいっぱい積み重ねる、これは与党の方がもうよくおわかりだと思いますけれども、結局そういう政治体制も変えることができると思うんですね。

 本当に政策に取り組んでいくことによって、国会の議員だってそうしたら少なくて済む、国会の職員だって少なくて済む。そのかわり、あとは自立した地方と自立した住民が、やはり責任を持って地方の身の回りの行政についておかしなところは正すし、厳しく問いただすところは問いただされて、淘汰されていくところは淘汰されていくというふうな社会に変えていかなければならないんだということを、これは私たちの考え方として申し上げました。

 ただし、何でもかんでも民間ではなくて、公が関与をして最後の責任はとるというところはやはり守るべきだということは、これは私たちの考え方でありまして、そんなに大きく与党とも違うわけではないので、そういう意味では、オール永田町の中で、霞が関に対して戦うというよりも、改革をともにやっていくという姿勢で、これからも影響力をぜひ発揮していただきたいと思うし、私どもも、また具体的な提言をしていきたいなと思います。

 さて、それでは法案の話に入りますけれども、住民基本台帳法の改正について、なぜ改正までこれほど時間を要したのかなということについて、まず冒頭お尋ねをしたいと思うんです。

 総務省は、平成十六年の五月の三十一日に事務処理要領というのを出しております。この中に、いわゆるドメスティック・バイオレンス、夫の暴力あるいはストーカー被害に対して、被害者の保護のための措置というようなことを書いて、既に要領を出しております。

 ストーカー、DV犯罪を防ぐような通達をしておりましたけれども、御存じのとおり、平成十七年の三月、愛知県で少女が襲われるという本当にかわいそうな事件がございました。これは昨年の三月でございまして、いわゆる住民基本台帳から選び出した少女に暴行を加えた。これは、本名で申し込んで、目的としては音楽教室の無料開放の案内を出すためだと記入をして、閲覧していた。捕まってみたら、実は百八十人分の情報が書かれていた。うち十数人分の名前は斜線で消されていた。そして、調べによれば、今回被害に遭った中学生のほか、被害が確認されたほかの少女の名前もあった。恐らく、斜線で消したというのは自分が犯行に及んだということなんだと思います。

 なぜこういう事件が起きたのか。まさに盲点をつかれたと言ったらそれまでだと思うんですけれども、性善説に立つか性悪説に立つかという話で、性善説に立ってこれまで住民登録をしてきて、唯一の公に証明するものであったということできた。まさかこんな犯罪が起こるとは思わなかったけれども、悪用する人間がどんどんふえてきて、今回のこの例は極端な例ですけれども、人間、やはり性善説だけでは成り立たない。まあ、性悪説に立って、利用して悪いことをしようと思えば幾らでも悪用するやつが出てくるということが、法改正の当然この事件は契機になったということは承知をしているわけなんです。

 結局、こういう要領を出しても、ストーカーでもドメスティック・バイオレンスでもなかった、こういうふうに音楽教室の案内を出すんだという営業目的で、それならということで出してしまった、そうしたらこういう事件が起きたということを受けて、私たちも昨年の六月に閲覧規制をかける改正案を出したんです、示したんですね、民主党として。そして、ようやっとこの通常国会ということになりましたけれども、本来もう少しスピードアップしてできたんじゃないだろうかというふうに我々は思うわけです。つまり歯がゆくて仕方がない。もう既に我々言ってきただけに、その点について、なぜこれほどの時間がかかったのかということについてお尋ねを冒頭したいと思う。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたが、私自身も、その御批判に対しては重く受けとめなければいけないというふうに思っております。しっかりと対応してきたつもりではございますけれども、幾つかの理由を申し述べたいというふうに思いますけれども、現に、この制度は定着して幅広く利用されてきているという実態がございます。したがいまして、市町村の現場における実務に即したものにしなければいけない、そういう観点から各般の検討をする必要があったということが一つでございます。

 さらに、検討会を開催しまして、学識経験者など各方面からの幅広い御検討をいただいたわけではございますけれども、それを集約して、さらに市町村の現場の担当者、閲覧制度の利用者からのヒアリングやパブリックコメントの実施など、十分な検討を行う必要もございました。その上で今回の法案提出に至ったものでございます。

 なお、この閲覧制度でありますけれども、住民基本台帳の前身であります住民登録法においても原則公開とされていたものでございます。今回の改正は、個人情報保護に十分留意した制度としてそれを再構築するためのものでございます。そうした大きな見直しであったということもありまして一定の時間を要したというのも一因であったというふうに考えております。

渡辺(周)委員 国に先駆けて、昨日行きました熱海市もそうでありますが、地方の自治体では、既に条例ですとかあるいは要綱を設けて、さまざまな対応をしてきたわけでありまして、それはもう先ほども、萩生田委員だったでしょうか、御質問が冒頭にありましたので、同じようなことは申しませんけれども、熱海市の場合は閲覧の七〇%が商業目的であったと。

 そして、昨年の総務省の統計ですと、閲覧の六割が民間業者。これは昨年の六月の総務省の調査、発表されたものでありますけれども、二〇〇四年度の閲覧請求件数が百五十一万件、請求者はダイレクトメール業者など営業目的の民間業者が六二・二%でありました。利用目的は営業活動が六九・九%、七割ですね。要は、言ってしまうと、これまで公の情報を使って民間が商売をやっていたということなんですね。

 こういうことというのは、恐らく、多分、地方自治体なんかはわかっていた話。当然、閲覧理由の中には書いてあるわけですから。つまり、ほとんどこれは商売のために閲覧をしていた方たちばかりで、この総務省の調査によっても、本人または同一世帯者、つまり、本人が確認に来るというのは滅多にないと常識的にも思いますが、〇・六%、はっきり言って、いないということなんですね。

 これは何か商売人が、先ほど性悪説とか性善説と言いましたけれども、つまり、こんなに便利な制度があって商売になるんだということでやってきたわけでありまして、その点について、これまで地方から、こういう問題何とかならぬのかという話がなかったんですかね。つまり、もうほとんどがDM業者、そういうものがやたら送られてくるじゃないか、気持ち悪い話だという中で、なぜこの時期までなったのかということについて、どういうことがあったのか、一言で結構ですから、ちょっと総括していただけますでしょうかね。

高部政府参考人 現在の閲覧の状況を御指摘いただきましたけれども、そのとおりでございます。

 若干大臣からもお答え申し上げましたけれども、この閲覧の制度そのものが、過去からの経緯を引きずってといいますか、経緯を踏まえてできておって、制度発足当初から、こういう目的の閲覧についても、広い意味での公証だというような位置づけの中で認められてきた。当時の意識の中で、そのこと自身は必ずしも問題がなかったというようなことで今まで来たということだろうと思います。

 ただ、この住民基本台帳の制度そのものにつきましても、時代を経るごとにいろいろな課題が指摘されたということの中で、これまでも何度か制度改正をし、閲覧に供する書面を限定的なものにするとか、あるいは不当な目的の場合には閲覧を拒むことができるといったような改正を順次してきたところでございます。

 そういう状況の中で、やはり個人情報に対する意識が相当大きく変化したという中で、いろいろ検討会で御検討いただいて、根本的な制度のあり方について見直しをして、新たな制度を構築させていただくべく今回提案させていただいたということでございます。

渡辺(周)委員 過去の経緯を挙げると切りがないのでこれ以上は申しませんけれども、これからこの閲覧の制限が行われる、大変喜ばしいというふうに思っているわけでございますが、この後、法施行までの間に駆け込みが当然考えられる。これは人海戦術で、今の間に写し取れるところは、熱海市の場合はかなり要綱で制限をしていましたけれども、そうでないところについては、駆け込みでさまざまな業者がいろいろなことをしてくる可能性は当然あるだろうというふうに思うわけです。この駆け込み対策についてどうするかということを、まず一つお尋ねしたいと思います。

 それから、公益性と、今御答弁にありました不当な目的の境目というのは例えばどういうふうにしたらいいのか、これは難しいと思うんです。

 これはちょっと後で言おうと思ったんですが、この間の公選法でも改正をされましたいわゆる選挙人名簿で、これもあいまいな規定だったものを目的をある程度明記したという中で、これは読売新聞のある論説委員がある雑誌に書いているんですが、新聞社が調査のために、これは世論調査、政治的な目的のために、内閣支持率だとか、いろいろな形で聞いた。ついでにと言ってはなんですが、それ以外に例えばスポーツのことや結婚観についてアンケートをとると言ったら、それは拒否された。しかし、この読売新聞の方が書いているのは、スポーツというのはある意味では教育行政にも当然かかわることだし、結婚観というのは少子化対策と関係するじゃないか。そうすると、政治、選挙とは無関係だといって拒否はされたけれども、しかし無関係とは言い切れないのだというような主張もあるわけですね。

 ちょっと話が選挙人名簿の方に行きましたけれども、いずれにしても、選挙人名簿だってこの住民基本台帳から当然登録されているわけでありますから、実際そこのところが、ここに限定されている公益という部分、公益ではないというふうに窓口で判断した場合、これは不当な目的だという話になった場合、どこのところで線を引くのか、ガイドラインというか考え方を一応お持ちなのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

高部政府参考人 まず一点目の駆け込み対応でございますけれども、この点につきましては、昨年の六月に閲覧請求の取り扱いについて通知を発出いたしまして、審査に必要な相当の期間を確保するといったこと、その際、請求事由を明らかにさせる観点から法人登記とかプライバシーポリシー等の資料を添付させること、目的外使用や第三者への情報提供をしないことについて誓約書を出させるといったような当面の対応について通知を出しまして、厳格な運用をするように助言をさせていただいているといったところでございます。

 こういうことで一つの取り組みをお願いするといった状況でございます。こういうことで対処いただければ、駆け込みということで直ちに問題になることがふえるというふうには思っておりません。

 今の時点でいいますと、こういう制度改正を提案させていただいたので駆け込みがふえて問題を生じているといった現場の声は、ただいまのところ承知してございませんけれども、先ほど申し上げましたような通知の趣旨をさらに徹底いたしまして、また、この制度改正について御議決いただければ、できるだけ早く施行させていただいて、万全を期してまいりたいというふうに思っております。

 それから二点目は、まさに御指摘の点、なかなか難しい点でございまして、公益性の判断について、一つの視点として、先ほど来ちょっとお答えさせていただいておるところでございますが、その成果が公表されること、それで、そのことによって社会に還元されるといったような視点でいろいろな調査等についてはひとつ見たらどうかということで、基準等は考えているところでございます。

 ただ、それは一つの見方でございますので、現実的に言いますと、御指摘いただきましたように、境界的な事例についていろいろ悩むところは出てこざるを得ない部分があろうかと思います。そういうことがございますので、私どもといたしましては、いろいろな閲覧を認めた事例等々についての事例を集めましてといいますか、情報交換ができますようにということで、情報提供を積極的にする中で、円滑な施行が図られるように努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

渡辺(周)委員 何で今新聞社の例を出したかといいますと、住民基本台帳のこの点についても、いわゆる公務に係る請求以外の市場調査、世論調査、公益性を基準として云々とありますね。例えば放送機関とか新聞社とか通信社が報道に供する目的だとか、あるいは大学が学術研究を目的として行う、それ以外の機関等が統計的手法を用いて行う調査、それは、言ってしまえば、報道機関ならばある程度許されている。しかし、目的にさっき言ったようなスポーツだとか結婚観みたいな話が入ってくると、それはだめだと。つまり、内容によるのか。

 もっと言っちゃうと、生命保険会社だとか金融機関が持っている研究所がありますね、シンクタンク、これが同じような質問をする。例えば、その会社の研究所なりシンクタンクが、これは全くの社会調査に使いたいんだ、少子化対策や女性の意識調査あるいは家庭の経済状況について統計をとりたいんだという話になったときに、目的としては正しいんだけれども、金融機関だとか生命保険会社のシンクタンクがやると、実はそれで何か利益につながるような活動に使われるんじゃないかと、今度は主体として判断された場合、これはどう判断するかということになる。

 そこの点については何らかの形で協議されて結論が出ているんでしょうか。つまり、閲覧を申請した主体なのか、あるいは、主体は民間企業であっても目的が社会に還元される公益性が高いものだったらいいとするのか。その辺はどうなっているんでしょうか。

高部政府参考人 まず、全体的な枠組みを申し上げますと、十一条の二という規定の中で、こういう活動のために閲覧が必要だということを言っていただく必要があるわけでございます。ですから、何をするかによってどういう閲覧が必要かという審査が一つあります。

 それから、そのほかにいろいろな手続を整備しましたので、例えばどういうふうに管理するのかといったようなことも含めて、それから、なおかつかなり制度的には工夫しまして、例えば取扱者の範囲なんかもはっきりさせるような仕組みをとったりとかいう形をとらせていただいております。そういう全体の中で閲覧が相当かどうかというのを市町村長に判断していただく仕組みになっております。

 今御指摘いただいた点で、だれか人を見て決めるのかという問題なんですが、やはりどういう形で管理していただくか、どういうふうに利用していただくのかという意味で、主体がどういう方かということは審査の判断材料にはなると思いますが、そのことだけで決めるということではないものというふうに思っておるところでございます。

 そのときに、例えば同じような目的で同じような調査をしたときにどうなのかという言い方がございましたけれども、そういうときに公益性をどういう形で判断したらいいかというのは、例えばそれがどういうジャンルの調査なのかとか、そういう意味でのいろいろな判断材料もあると思いますが、それともう一つあわせて、外形的といいますか、一つの基準として、自分のところだけのものにしないでやるような調査、つまり、調査結果について公表する、それが社会に生きていくというような視点で閲覧請求の内容を見させていただいて、それで判断材料にしたらいいのではないかというふうな議論でございます。この辺は検討会でもいろいろ議論していただきました。

 そういう観点で審査をして、相当なときに認めるという形をとったらどうかというふうに考えておるところでございます。

渡辺(周)委員 例えば生活意識なんという漠然としたものでは、あるいはさっき申し上げた結婚観だとかそういう話になると、これは漠然とし過ぎてなかなか難しいところがあると思うんです。

 例えば、私が窓口に座っていて、それが何とか生命保険研究所の人だったら、生活意識調査です、あるいは何か健康に関する意識調査ですと言われれば、これはいずれ全国で集計して公表するんですと言われれば、確かにそうかなと思うし、だけれども、それを理由に保険の勧誘に走るのかなと思うと、また、実効支配、こんな言葉はいかぬのだけれども、実効支配されているような例えば研究所だったら、会社が迂回路を使って何かやっているんじゃないか、そういううがった見方にもなる。そこら辺の対応というのは、実はこれは窓口で非常に難しいと思います。

 例えば東京都のある市へ行ったら閲覧が認められたのに、隣の県の方へ行ったら、そんなうさん臭い話はだめだといって断られた。そうすると、全国統計調査、例えばそういう純粋な目的であっても、窓口がばらばらで、全国の調査ができなくて調査の意味をなさないという可能性も出てくると思うんですね。

 これについては総務大臣も、公益ということについて個々の可能性を考え始めたらもう何百通りも出てくると思うんですよ。そこのところは大変苦しい答弁だと思いますけれども、これはどういうふうにその兼ね合いを図るか。まさに公益的なのか、そうでないのかということについて、どういうふうにお考えですか。もう時間もありませんので、どうぞ簡潔に。

竹中国務大臣 基本的な考え方は、公的なリサーチであって、そしてそれが社会に還元される云々というのは局長から答弁させていただきましたけれども、私も今の渡辺委員の質問を改めてお伺いして、例えば生命保険会社の関連会社がやるにしても、そこが出捐している財団法人が、非常に公的な何かパブリケーションを出しているところがやるのか、子会社のマーケティング的なことをやっているところが会員に配っているようなところでするのか、これはイメージが全然違うのだと思います。

 実は、まさにそこは実態判断をしていただくしかないというのが、この法律のたてつけだと思います。その場合に、地域で一番住民に近い、かつ、そのリサーチする会社に近いところの自治体で判断をしていただくのが一番正確なのではないかというふうに、結論としてはそう申さざるを得ないと思います。

 ただ、結局のところ、これはやはり事例の集積の話だと思いますので、その辺に関しては、我々としてはさっき言ったような基準については明確化いたしますけれども、その上で実態判断をしていただく。そして、その実態判断については、一つの事例集のようなものでしっかりと各自治体の判断の材料に供せるようなものを提供していく、そういう形で、少し制度そのものを成熟させていくことが必要であると思っております。

渡辺(周)委員 いずれにしても、法律が成立して施行されれば、もう各自治体から問い合わせが殺到すると思うんです。かなり、何だ、よその県と違うじゃないか、東京と大阪で違うじゃないか、川崎と横浜で違うじゃないかなんということが出てくる可能性は当然ありますから、やはり、それに対しての対応をするだけの準備は今から当然されていると思いますし、しなきゃいかぬ、していくべきだろうと思います。これは自治体に任されていると、自治体だって、勝手に判断しちゃって後で何か世論のつるし上げでも食らったらえらいことだ、そういう防衛本能が働きますから、やはりある程度国が対応できるようにしていただきたいと思います。

 それで、一つ、個人情報保護について。

 さはさりながら個人情報保護について行き過ぎているという話も先ほど委員からありました。その辺が、実際、きのうの熱海の話を聞いていても、民生委員さんに渡す例えば独居老人の情報なんかについても、渡してもいいものやらどうやらわからないというような現場の声も上がっておりました。

 もう時間がありませんから一つだけ挙げたいんですが、いわゆる耐震偽装事件のときに、姉歯元建築士の聴聞記録を非公開にされた。これは公の資格において行った業務についての聴聞についてであっても、個人情報保護を理由に公開を拒否された。これは世論の批判も浴びましたけれども、結果的に、この行き過ぎた個人情報保護の解釈が実は官の情報隠しになったじゃないかと。つまり、情報公開と片っ方で言いながら、個人情報と言う。

 しかし、公の人間に対してはやはり私は個人情報というものは制限されると思うんですが、なぜこういうことが起きたのかということについて御答弁をいただき、そして、こういう公の資格において行った業務について、このようなことが二度とあってはいけない、許されるべきではないと思うんですが、この点については、何らかの対応をしていくべきだ、あるいは、やはり何らかの見解をまとめるべきだと思いますが、いかがですか。時間もありませんので、最後にお尋ねいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 世上、個人情報保護法というのはいわば情報隠しのために利用されているんじゃないかという御指摘、それは私どもも十分承知しております。

 そもそも、個人情報保護法制というのは、これは基本法制も同じですが、当然、個人情報の取り扱いに伴う権利利益の侵害を防止しようというものでございますが、あわせて、やはり個人情報の有用性、それを配慮しながら守っていくという、要は保護と利用のバランス、それを骨格として制度設計がされているところでございます。これは行政機関等個人情報保護法も同じでございます。この辺のところがちょっと一方的に保護の方に解釈が偏っているんじゃないかというようなことから、そういうような御批判が出ているかと思っております。

 私どもは、これは内閣府なんかも民も含めてやっておられるんですが、やはり、まず法律の趣旨を的確に、適正に理解していただくことが肝心だと思っていまして、行政機関についても、いろいろ連絡会議等を通じて、あるいは個別に、今後、趣旨を徹底していく必要があるというふうに考えているところでございます。

渡辺(周)委員 もう一度ちょっと再確認をしたいんですけれども、つまり、こういう公の資格において行われた、聴聞するということは、かなりのこれはやはり公の責任だからこそ、問われてやっていることなんですね。こういうことが個人情報保護の理由に当たるのかどうなのか。公の仕事。この点はどうなんですか。この点について明確なお答えをいただいて終わりにしたいと思います。

藤井政府参考人 個別の事案についてのお答えは、具体的な事実認定に基づいてなされるべきものだと思いますので、私どもの立場からは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、一般論として申し上げますれば、聴聞会の議事録なんかをどなたかに提供する、これは保護法制からいったら、いわば目的外の利用提供ということになるわけですが、その目的外の利用提供をする場合、これは民間よりは、実は国の場合は違っておりまして、必ずしも本人の同意がなくても提供できる場合を認めております。それはどういうことかというと、特別の理由があるということと、あと、本人の権利利益が不当に損なわれるおそれがない、そういう要件をかけております。

 この場合の特別の理由があるかどうかとか、あるいは不当に本人の権利利益を損なうおそれがあるかどうかというのは、まさに、その提供行為によって本人が具体的にどういう権利利益侵害があるのか、あるいは、その提供行為によってどういう公益的な利益があるのかとか、そういう、いわば法律論的に言えば利益考量ですね、利益考量で判断しろ、こういう制度設計になっているということでございます。

 ですから、その利益考量をやはり行政機関の長が適正に行っていただく必要がある、こういうことになるということでございます。

渡辺(周)委員 納得はできませんが、時間でございますので、終わります。

中谷委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 質問に入ります前に、総武・横須賀線の人身事故でおくれまして、委員長初め各党の理事の皆様に質問の順序を変えていただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございました。

 質問に入らせていただきます。

 この法案の提出の経緯について、ちょっとまず確認をしておきたいんですが、先ほど渡辺委員の方から、民主党は昨年の六月に法案を出したのに政府は何をやっていたんだというような厳しい御指摘がありました。先ほど渡辺委員の方で新聞記事を指摘されましたが、あの記事が三月、朝日新聞だったと思いますが、出まして、本当に衝撃を受けて、公明党の方でもすぐ総務部会を開きまして、総務省の方に要望をしました。そのときの記事をちょっと探してきたんですが、三月三十一日に総務会を開いて、総務省の皆さんにも来ていただいて要望をしたというふうに、翌日、四月一日の公明党新聞の二面に載っておりました。こんなふうな記事になっておりました。

  公明党総務部会は三十一日、参院議員会館で会合を開き、住民基本台帳の閲覧制度を悪用した事件の再発防止のため、住基台帳を閲覧する際の本人確認の強化など、閲覧制度を抜本的に見直すよう総務省に強く申し入れた。

  住基台帳の閲覧は、住民基本台帳法に基づき、不当な目的に使用される恐れがない限り、だれでも氏名、生年月日、性別、住所の四項目について請求できる。今年三月には、この制度を悪用した男が、愛知県内で母親が不在がちな母子家庭を狙い、少女に対して強制わいせつ事件を起こし逮捕された。

  席上、公明党側は、こうした事件などを踏まえ、「プライバシーを守るため、自らの情報をコントロールする権利があるはず。再発防止策としても台帳が”原則公開”の状態は、早急に改めるべきだ」と主張した。

というふうに記事はなっています。

 私もこの部会に出ていましたのでよく記憶しておりますが、とりあえず、こういう不正目的が明らかな人からの請求はもう現場でやめられるように、早急に手当てをしたらどうだというふうに申し上げた記憶があります。それは、総務省の方できちんと通知等をして現場で徹底しますということで、その後、すぐ法改正するというわけにもいかない、先ほど、大臣がなぜこの国会になったのかという経過を御答弁いただきましたけれども、検討会をつくると。ちょうどそのときに、事件だけではなくて、個人情報保護法も施行されるし、悪用事例が多々ほかにもあるんじゃないかというような批判もあったということで、住民基本台帳の閲覧制度のあり方に関する検討会を設置して、ここできちんと議論しますというふうに総務省の方では答弁されて、それでできる限り早く法改正をしたいというような御答弁だったというふうに記憶しています。

 この住基台帳の閲覧制度のあり方に関する検討会が報告書を出して、今回の法改正になったわけですが、そもそも、このあり方に関する検討会の設置の経緯というのはどんなところだったんでしょうか。そこをちょっと教えていただきたいと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度は、行政機関等の職務上の請求のほかに、世論調査、学術調査、市場調査等に幅広く利用されております一方で、社会経済情勢の変化や個人情報保護に関する意識の変化などから、その見直しを求める意見も寄せられていたところでございます。

 また、ただいま御指摘いただきましたように、当時は私の前任の局長の時代ではございますけれども、公明党の総務部会で大変厳しい御指摘もいただいたというふうに引き継ぎを受けているところでございます。

 こういった御意見とか御要望を踏まえながら、総務省といたしましては、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度のあり方について専門的な検討を行うことを目的に、昨年の五月に住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会を立ち上げさせていただいたものでございます。

富田委員 それで検討会の報告書が出て今回の改正になったわけですけれども、その中で論点と言われるところをちょっと質問していきたいんですが、先ほど来、閲覧を認める場合の公益性について、局長また大臣からいろいろ御答弁いただきました。

 検討会の報告書の方でも、調査結果が広く公表され、その成果が社会に還元されていること等、総務大臣が定める基準でその公益性を判断していくんだというふうに書かれていて、先ほど来そういう御答弁が続いているんですが、総務大臣告示でやるわけですよね。これはいつごろ出されるんですか。まずそれをちょっと確認しておきたいんです。

高部政府参考人 まず、この改正について御議決いただければ、制度そのものの施行も、政省令等の必要な準備をした上でできるだけ早くしたいと思っております。施行は政令で定める日となっておりますので、そういうものについての整備をあわせながら、少なくとも施行前のできるだけ早いタイミングでこういう告示が出せるように努力していきたいというふうに考えております。

富田委員 大臣は先ほど、いろいろ情報交換をして基準を告示で出すけれども、実態判断は一番地域に近接している自治体がやはり最終的には判断してもらうしかないだろうというふうに答弁されていました。

 情報交換も、恐らくこの法が施行されてからいろいろな事例が出てきて、うちの自治体ではこういうふうに判断した、どうだろうというような交換になると思うんですね。この改正法では、公布後六カ月以内に政令で定める日に施行となっていますから、これから成立すれば、ある程度、六カ月とは言わないでも、それなりのスパンがあるわけですから、その間にでも、これまで各自治体がちょっとこういうのはどうだろうかというふうに迷った事例なりを集めるなりして、それに基づいて大臣告示を出すような、そういう踏み方はできないんですか。

高部政府参考人 御指摘いただきましたように、御議決いただければ、施行までに何もしないということではなくて、検討会の中でも、具体的にどうしたらいいのか、どんなものがあるのかなんという議論もさせていただいたところでございますし、それから、これまで例えば条例に基づいてやっているところ、要綱に基づいてやっているところ、いろいろございますので、我々としてはいろいろな情報交換には努めたいと思っております。

 それから、告示との関連で申し上げますと、検討会の中でもいろいろ議論がございまして、くくる概念としてどういうことがあり得るのか、余り抽象的なことではなかなか範囲が明確にならないだろうというような御意見があったわけでございますが、やはり公益性という概念は一つ考えていいだろうということで、公益性のあるものについて認めるということにしているわけですが、それをどういうふうに判断していくのかという議論の中で、一つの判断の仕方として、世論調査等の成果が公表されて社会に還元されるという視点で見れば、そこで公益性というのを見出し得るのではないかというような御議論の中で検討会の報告ができているところでございます。

 ですから、告示等については、そこで報告いただいたような内容で私ども考えているところでございますが、そのほかに、やはり具体の事例の積み重ねの中で具体の判断に資するものがあろうかと思いますので、そういうものはそういうものとしていろいろな情報提供には努めたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 ちょっと教えていただきたいんですが、実際に閲覧を担当されている自治体の職員が、申請が出てきたという場合に、大臣の告示に従って判断に迷う、どっちなんだろうと。今局長が言われたように、条例とか要綱で、そういった場合に審査する機関等を設けているところもありますよね。そういったところはそこで判定してもらえばいいと思うんですが、そういうものがない自治体の場合に、今回この法が改正されて新しい基準が出てくる、その基準に合致しているかどうかという最終的な判断は現場の自治体の職員の方にはできないですよね。その場でとりあえず判断せざるを得ないんですけれども、先ほど、渡辺委員も、後で問題になったらどうするんだというようなことを言われましたが、多分、自治体の現場の職員の皆さんは、自分が拒否した場合に裁判を起こされたらどうするんだろうというふうに一番心配されると思うんですね。そうすると、ちょっとそういうことをやりそうな人が来たら、しようがないなというふうになっていっちゃうと思うんですよね。

 そういったものを、総務省なり国の方で、そうならないようにきちんと、不正閲覧されないような、何か自治体の職員の皆さんが安心して対応できるような担保措置をとっておく必要があると思うんですが、そのあたりは何か考えていることはありますか。

高部政府参考人 今御指摘いただいた点は、今回の基本的なスキームが、今までのネガリストからポジリストといったらよろしゅうございましょうか、今までは何人でも閲覧請求できるという仕組みをとっておりましたのが、今回の仕組みはこういう申し出があって相当と認めるときは閲覧させることができるという仕組みにそもそもなっておりますので、逆に言いますと、だれでもできるなら見せろよという話から、こういう事例に該当したら見せられるという仕組み、そういうことに変わっていることが、まず一つ根本的な違いだろうというふうに思っております。

 それから、個別具体には、過去のいろいろな事例とかそういう積み重ねの中で、やはり最終的な判断は市町村でやっていただかなきゃいけないだろうと思いますが、その辺は、御相談があれば私どもいろいろ答えさせていただくとか、いろいろな情報提供、あるいは、いろいろな自治体の中で仕組みを持っているとすると、自治体の中での例えば第三者委員会を活用するとか、いろいろな工夫はあるだろうと思いますので、ともかく取り組み事例についていろいろな情報を提供できたらというふうに思っています。

 ただ、おっしゃられるような、ともかく強い人が来たからその場で困っちゃうということについて言いますと、仕組みがそもそも根本的に変わっておりますので、その点は大きな変化だろうと思っております。

富田委員 ぜひ現場が困らないように協力をしてやっていただきたいと思います。

 次に、自己情報コントロール権ということについてお伺いしたいんですが、先ほど西村委員の方からも、自己情報コントロール権に配慮していろいろな対応をすべきだというような御質問がありました。ただ、西村委員は、自己情報コントロール権が当然憲法上認められているかのような御趣旨で質問されていましたが、なかなか憲法上の通説もまだそこまで行っていない、現場の、裁判になっても、判例もまだそこまで行っていないということは理解した上で、住基ネットの審議をずっとしていたときにも、自分の情報をコントロールする権利というものにもう少し配慮すべきじゃないかというような議論がありました。

 私も、チップの中にいろいろな情報が将来入ってくるようになるときに、誤った情報をそこに入れられたときにどうするんだ、それも訂正できないで、誤った情報のまま自分に関する情報がいろいろなところに流れて、それに基づいて何かいろいろな判断がされていった場合に取り返しのつかないことになるから、やはり自己情報に関して、誤ったものに対しては訂正権はせめて認められてしかるべきではないかという議論を当時の地方行政委員会で大分やらせていただきました。

 そこまで結論的には行きませんでしたけれども、その後、何か日弁連の方も住基ネットが動き出すときに、やはり自己情報コントロール権がきちんと認められるべきだというような宣言をされて、幾つかの、こういうことが必要だという点を挙げられたようであります。

 後で書類をいただきまして、日弁連はそういうことを考えているのかというふうに思いましたが、日弁連と全く同じに考えるわけではありませんけれども、日弁連の宣言の中に、「個人の統一的管理システムの構築を認めない。」というのと、「国及び地方自治体が収集・管理する個人情報の分散管理を意識的に進める」というような提言をされていまして、これは、私は個人的にはこの方が本当はいいんだろうなというふうに思いました、今総務省にそうやってやれとは言いませんが。

 そういった個人情報コントロール権というような議論があることを踏まえて、今回の検討会の報告書を読ませていただきましたら、こういうことが書いてありました。報告書の六ページですが、「本人及び国や地方公共団体以外に閲覧させる場合には、本人が拒否するときには申出を受け付ける制度(オプトアウト)や本人から改めて申出を受け付ける制度(オプトイン)を導入すべきかどうかについても議論されたが、上述のように国や地方公共団体、公益性の高い場合等に閲覧を限定するのであれば、それらの制度を導入する必要はないと考える。」と結論づけられて、ただ、「また、プライバシー権を自己情報をコントロールする権利として捉えるべきではないかとの観点から、導入すべきとの意見もあった。」というふうに付記されています。やはり私と同じように考える委員の方がいらっしゃったんだなと思ったんですが、この意見がわざわざ付記されているということを考えると、オプトアウトとかオプトイン、また、個人情報をコントロールする権利等についてもこの検討会でさまざまな議論がされたと思うんですが、差し支えない範囲で、どうしてこういう最終的な報告書になったのか、経過をちょっと教えていただければと思います。

高部政府参考人 今回の検討会では、かなり幅広い方々の御参加をいただきまして御検討いただいたと思っております。そういう中で、委員さんの中では、今御指摘がございましたけれども、プライバシーに関する権利を自己に関する情報をコントロールする権利としてとらえる立場で、こういうオプトインとかオプトアウトといったものを導入すべきではないかといった意見を言われる方もおられました。また一方で、こういう統計調査だとか学術調査といったような観点から、こういうものについては、かえってサンプルの偏りとかいったような問題があるというような視点でありますとか、あるいは市町村の現実的な事務、現場の対応といった点で問題があるのではないかと、いろいろ意見が出されたところでございます。

 そういう中で、いろいろな意見がございましたので、全体で見ますと、こういう制度を入れることは要らないということではございましたけれども、こういう意見があったということについては報告書の中に書き込んでおこうということで、こういう形でまとまったものだというふうに認識しております。

富田委員 わかりました。ありがとうございます。

 次に、今回の見直しに直接はかかわらないのですが、検討会の報告書の中でも取り上げられていました住民票の写しの交付制度の見直しについて、ちょっと何点か確認をしたいと思います。

 この報告書の八ページで、こういう記載があります。「住民票の写しの交付制度については、現在でも請求事由の審査等がかなり厳格に運用されており、個人情報保護の観点から、更に厳格な運用を確保することにより適切に対応することが可能である」「特に、国や地方公共団体の職員による職務上の請求や弁護士等の職務上の請求については、その職名又は資格及び職務上の請求である旨等を明らかにして請求する場合は、請求事由を明らかにしなくてもよいこととされている中、近年行政書士等による職務上請求用紙の不正使用等の事件が発生していること等も踏まえ、各業士からの職務上の請求に当たっては、詳細な請求事由まで明らかにさせることは必ずしも必要ないが、住民票の写しの使用目的(根拠法令等)、依頼者名、提出先については、職務上の請求であることを明らかにする観点から記載させるなど手続を明確にする必要がある。」という指摘がされて、「また、請求者に対する身分証明書の提示等本人確認を徹底する必要がある。」というふうな報告がなされています。

 これは、私も弁護士ですので、弁護士時代にいろいろこういう請求書を出しまして、何ら問題なくずっと自治体の窓口も対応してきていただいていました。ただ、今の報告書の中にあった、近年行政書士等による不正使用の事件があった、これは、行政書士会の皆さんの方も請求書の様式をつくっていて、多分用紙が一体になっていると思うのですが、行政書士会から用紙を行政書士さんが購入して、本来それを一枚ずつ各自治体に送るんですが、その用紙の束を探偵社か何かに事実上渡しちゃって、探偵社が事実上請求していたというような事件があって、それをされた行政書士さんも処分をされたというふうに伺っていますが、そういう事件があったからといって、こういうふうに急に全部取り扱いを本当に変える必要があるかなという疑問を持っています。

 日弁連の方も、住民基本台帳の閲覧制度のあり方に関する意見書に対する補足の意見書として、二〇〇五年の十月五日付で意見書を出しています。その中にこういうふうに指摘があるんですね。「弁護士による職務上請求の制度では、個別のシリアル番号が振られた当連合会統一の職務上請求用紙を各弁護士会が管理し、会員たる弁護士に交付する仕組みがとられており、交付にあたっては、交付数が制限され、どの弁護士に何番の用紙が交付されたかを弁護士会が記録することによって、職務上請求用紙が資格者以外の手に渡らないよう、あるいは弁護士によって濫用されることのないよう防止措置がとられている。」仮に「弁護士によって職務上請求の制度が濫用された場合には、弁護士会が対象弁護士に対して懲戒処分をすることが予定されている。」と。

 こう考えると、現行の取り扱いをもう一歩踏み込むべきだというふうにこの検討会の報告書では言っているんですが、弁護士会としては、それは必要ないんじゃないかというふうに意見書では書いてあります。

 この報告書の、今言ったように、使用目的、依頼者名、提出先を記載しろとか身分証明書の提示等本人確認の徹底というふうなことについては弁護士会としては反対だと。それは、今ずっと述べたように、請求書の用紙はきちんと管理されているし、この用紙で請求される場合、弁護士は自分の職印を押すわけですよね、自分が押したというのが間違いなくわかる、また、登録番号も記載するので、弁護士の特定にはもうそれで十分ではないかというふうに弁護士会としては主張されていて、身分証明書の提示まで要らないだろうと。

 もう一つは、使用目的、提出先、依頼者名がそろうと、通常、弁護士が住民票をなぜ必要にするかというと、裁判を起こすときに附属書類として必要になるわけですね。依頼者と提出先を特定してしまうと、どこにどういう裁判を起こすかがほぼ明らかになっていってしまう。そういう意味では、弁護士の守秘義務とか依頼者のプライバシーもやはり侵害することになるのではないかというふうに懸念をされて、やはり依頼者名や具体的提出先まで記載すべきではないんじゃないかというふうな意見書が出されています。

 ただ、行政書士会の方は、事件が起きたということで、それまでシリアル番号がなかったのをシリアル番号を入れて、依頼者名は入れるというふうに様式を変えられたようです。ここは御自分たちで自治の範囲でやられたと思うんです。

 今後ここの部分も検討されていくようになると思うんですが、日弁連の意見を踏まえて、今後はどんなふうになる予定なのか、ちょっと教えてもらえればと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 詳細に経緯等も御指摘いただきましたので、改めて申し上げませんけれども、行政書士の不正使用事件を契機に、私どもとして、八つの士業の団体に対しまして通知を出させていただきました。行政書士会の方については見直しをしていただいた。適正な管理といったようなことも含めてお願いをしているところでございます。

 弁護士会の方で、ただいま御指摘いただきましたようなお考えをお持ちだということも私どもとして承知しているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、住民票の写しの交付制度そのものにつきましては、御指摘の各業士からの職務上の請求の取り扱いも含めまして、現在、法制審議会で行われております戸籍の謄抄本の交付の見直しに関する検討等も踏まえまして、私どもも適切に対処してまいりたいと考えているところであります。

富田委員 法制審の方の動きも見ながら、今御紹介しました日弁連の意見もぜひ参考にしていただきたいというふうに思います。

 残り時間ももう余りありませんので、最後に一点、社会保険庁と国税庁と総務省の方が連携して、これまでなかなかそういうことはできなかったけれども、保険料の未納の方に対して免除申請ができますよというような通知をするためにも、地方税の減免世帯だということがわかるような情報を社会保険庁の方が欲しいというような要請があって、この三者できちんと情報を共有していこうというようなシステムが動き出しています。今回の社会保険庁のはそこを悪用した形で、勝手に免除申請を自分たちの方で使ってしまったようです。

 ちょっとこの件で少し気になるんですが、このシステムがずっと動いていくと、社会保険庁の方では、住民の方の所得関係をほとんど情報として持てるようになってしまう、本来、これまで持てないはずだったのが。目的はいい。目的は正しい。個人住民税の減免を受けようとして、自分は国民年金保険料払っていますよとうそを言う人も結構いたようですから、そういうのを防ぐというためにもこの情報共有はいいんですが、これまで出ていなかったところに情報が出ていくということで、その情報が今後どういうふうに利用されてしまうんだろうか、ちゃんと目的内にきちんととまって、大丈夫なんだろうかというような懸念を持っている方も大勢いると思うんですね。

 けさのテレビのニュースを見ていましたら、社会保険番号の導入を政府で検討しようというような報道がされていました。納税者番号、社会保険番号、国民全体にきちんと番号を振って、漏れのないようにしようという目的だと思うのですが、それぞれの目的はいいんですが、私はちょっと懸念しているのは、この住民基本台帳に係る住民票コードがあらゆるところに、もとの番号として、本人の識別の番号として利用されて、結局住民票コードが総背番号になっちゃうんじゃないかというような、住基台帳ネットワークの審議のときにもそういう懸念が出ていましたけれども、いや、そんなことはないんだ、目的外利用は禁止されているんだ、民間利用も禁止されているんだとずっと言われて、大丈夫だ大丈夫だと言ってきたんですが、その当時予想もしなかった社会保険庁や国税庁との情報の共有も出てくる。ここに来て、また社会保険番号というようなものが出てきた。

 この情報の共有も、十六年度は紙でやられていたようですが、十七年度以降は電子媒体でやると。電子媒体とは何だというふうに事前にお聞きしましたら、CDに落として相手に渡しますよというようなことのようですので、直接ネットワークでやるのではないということで少し安心しましたが、今後、こういういろいろな情報の共有というのが出てくるときに、やはり総務省としても、住基コードという一番大事なところを担当しているわけですから、変な形で情報が不正利用されないように、そういった点についてきちんとやっていくというところを意見をいただいて、質問を終わりたいと思います。

高部政府参考人 納税者番号制度とか今御指摘ございましたようなことについていろいろな検討がなされているということは、私ども承知しているところでございます。

 ただ、もう委員よく御案内のとおり、住基コードの利用につきましては、いろいろな御議論をいただきながら今のような形で制度化をさせていただいたものでございまして、住民基本台帳法に定められた行政機関等あるいは事務等に限定されているところでございまして、この法に定められた範囲を超えた利用、提供といったものは禁止されているという体系になっているわけでございまして、私どもとしては十分、制度導入時のいろいろな経緯等について頭に置いておかなきゃいけないというふうに認識しているところでございます。

富田委員 平成十六年九月六日付で総務省自治税務局市町村税課長から各都道府県の市町村税担当の方に、「国民年金保険料未納者対策及び社会保険料控除の適正化について」という通知が出ていますけれども、その通知の一番最後に、「電子媒体による情報交換について」ということで、「平成十七年度において電子媒体による情報交換を実施するために、各市町村と社会保険事務所等の間で協議を行うこととなるが、協議の内容(市町村で必要となるシステム開発及び運営に要する経費の標準的予算基準、使用可能な媒体やデータの形式等の仕様)等については、別途、できる限り早期に社会保険庁から社会保険事務所等へ連絡を行うこととする。」となっているので、今はCDなりで渡しているけれども、ここの部分を読むと、今後いろいろ変わる可能性がありますので、ぜひ今の局長の答弁どおりやっていただきたいということを要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。

中谷委員長 この際、暫時休憩し、本会議散会後直ちに再開いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十四分開議

中谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋です。三十分、よろしくお願いいたします。

 きょうは、住民基本台帳でございます。昨年も一度質問をさせていただきましたが、その後検討が進み、今般の改正ということになったと思うんですけれども、ちょっと法案の前に、せんだって教育委員会の関係の質問もさせていただきまして、先日、私、文科委員会の方でも、教育基本法の一環として、教育委員会制度の必置義務の話に関しても指摘をさせていただきました。総務省は一生懸命必置義務をなくそうという努力もされているようですが文科省の強い抵抗もあってできないということもちゃんと念を押しておきましたので、どうかさらにその点も今後協力をして進めていただきたいというふうに改めてお願いを申し上げたいと思います。

 特に、教育基本法の議論は、継続審議ということになれば、休会中も含めて、いろいろな地域、地元で議論がさまざまに行われて、それ自体大変いいことであるというふうに私は思っております。その中の一つの要素として、教育委員会の議論も出てくるだろうというふうに考えておるわけでございます。

 先日、私、北海道におりまして、行くことはできなかったんですが、旭山動物園の関係者とお話をする機会があったんですね。やはり行きたいなと思うぐらい、もうだれでも知っている動物園になりました。札幌にもあるということはほとんど知らなかったんですが、札幌にもあるらしいんです。

 話してみると、やはり地域の方のすごく誇りになっていて、なぜああいうような成功というか、今や上野動物園を超える入園者ということでございますが、聞いておると、やはり現場の飼育係の方に、どのように動物を見せ、そしてお客様と接する形をつくっていくといいかということを本当に徹底的にやらせたというか、そういう現場の創意工夫を引き出したということを複数の方から聞くことができました。今度こそ行ってみたいというふうに思っておるんですが、言ってみれば、とても個人の努力で突然魅力が出るような部分なんというのは一見するとありそうもないような地方の動物園が、突然全国の注目を浴びて、今、札幌とか千歳空港に着くと、もうそこからツアーがあるわけですよね。いやあ、すごいことだなと思って、やはりそれは地域の力、地方の力、そしてそのかぎはやはり創意工夫だろうというふうに僕は思うんですね。

 これはあらゆるところに当てはまってくるので、まさにそういう意味でこの総務委員会で御指摘をさせていただくんですが、特に教育委員会との関係でいえば、やはりこれから、基本法の話も含め、教育ということをキーワードに地域にいろいろな議論が巻き起こってくることが地域の活性化につながっていくのではないかなという感じがいたしております。この旭山動物園のように、それぞれの地域にすばらしい地域のエネルギーが引き出されていくということが、まさに地方分権社会の目指すべきところかなというような感じがしておりますので、大臣、もし一言ありましたら、よろしくお願いします。

竹中国務大臣 田嶋委員から大変よい点を御指摘いただきまして、私も全く同感でございます。

 実は、旭山動物園なんですが、ちょうど一年半前に、郵政民営化の議論をしておりますときに、地元でタウンミーティングがございまして、当時の麻生総務大臣と私と行きました。飛行機までの間に時間がある、私が旭山動物園のことをちょっと知っておりましたものですから、麻生大臣にぜひ行きましょうということを申し上げて、参りました。まだ当時は今ほど有名ではありませんでしたが、それでも、実はその当時で既に、夏に限っては上野動物園の次に入場者が多い、そういう状況になっておりまして、私もちょっと感銘を受けました。

 それで、どうしてこんなことが可能なんですかというふうにお伺いしまして、非常に何か専門家がいらっしゃるんですかというふうにお伺いしましたら、そうじゃないんですと。一人一人の飼育係の方のアイデアと知恵なんです、動物園そのものがつぶれかけて、必死になってやってこういう成果になりましたと。これはすばらしいことだと思います。それこそがまさに、分権につながる、地方自治につながる話だと私は思います。

 今委員挙げてくださいました教育委員会の必置義務をどうするかという話も、実はこれも昨日の経済財政諮問会議で、中馬大臣と宮内議長においでをいただいて、この話をまさに議論いたしました。文科大臣も御出席でございまして、その場では議論は残念ながらまだ平行線ではございましたが、これは本当にしっかりと議論をしていかなければいけない、今後休みなく議論をしていく上で大変重要な一つのテーマだと思っております。総務省としても全力を尽くしたいと思っております。

田嶋(要)委員 いろいろな議論が巻き起こるきっかけとして、ぜひこの教育という課題に取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ。最近は国会でもエレベーターに乗るときにメーカーを見てしまうというようなことが、多くの方はやられるんじゃないかなと思うんですが、きょうもテレビを見ていましたら、日本だけじゃなかった、アメリカで三百ぐらいの訴訟が起きているとか、香港や中国でも死亡事故が起きている。

 私は、とんでもないなというのは当たり前の話なんですが、メーカーの問題と同時に、何でそんな情報が共有されていなかったのか、その情報共有、まさにきょうは個人情報の関係ですけれども、そういったことも共有されていないことによって、防げた事故が防げない。日本という国では初めての事故かもしれませんが、本当になぜ、それだけ訴訟も引き続き、あちらこちらで死亡事故が起きているのに、だれもそれを知らなかったのかというようなことが驚きでございます。

 やはり、必要なところで情報をきちんと共有していかなければ人の生命にもかかわってくるということが改めて痛感をされたわけでございますが、その点で、きょうちょっと最後に話をする予定でございました個人情報の関係でも、災害との関係で、この国会にも与野党何名かで既に問題提起をされていることがございます。

 私の所属というか、地元の千葉県の県議会の方から三月に意見書が出されまして、これは、大臣、実は参議院の本会議でみずから御答弁されていることでございますので、御記憶もあるかと思うんですが、簡単に言えば、これは個人情報保護法の関係の両方の極端の問題がいろいろと噴出をしてきた一つの事例であるわけでございますが、特に、自然災害のときの、緊急を要する場合に福祉の部門の情報が生かされていなかったという話でございます。

 これも、先ほどの情報共有をしっかりやっていないために、当たり前のことだと思うんですが、それが見えない壁によって共有されずに、人の生命にもかかわってくる大問題になりかねないという感じがいたしておるわけでございますが、この問題も、詳細はどういうことかというような背景は御理解いただいていると思うんですけれども、個人情報保護と地域、地方の自治体のそういった福祉あるいは災害の部門における情報共有の問題に関しまして、どのような御認識であられるかということをまずお伺いいたしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護法は、基本法に相当する部分と規制の部分から成っておりますけれども、規制につきましては民間事業者に対する個人情報の取り扱いのルールを定めたものでございまして、国の行政機関が保有する個人情報につきましては行政機関個人情報保護法、地方公共団体の保有する個人情報につきましては条例等に基づいて保護を図ることになっております。

 お話のありました意見書の事案につきましては、地方公共団体内部で個人情報の目的外利用をどのような範囲で認めるかという問題でございまして、地方公共団体の判断において対応されるべきものと考えております。

 なお、内閣府では防災も担当をしておりまして、災害時要援護者の避難支援ガイドラインというものを昨年三月に策定しております。さらに、要援護者情報の収集、共有の進め方などにつきまして内容を充実させ、本年三月にガイドラインを改定し、内閣府、消防庁、厚生労働省の連名で地方公共団体に通知をしたところでございます。

 その中で、要援護者情報の収集、共有につきましては、保有個人情報の目的外利用や第三者提供ができるよう、市町村の個人情報保護条例の規定を活用した具体的な取り組み方策についても紹介しておるところでございます。

田嶋(要)委員 つまり、国の法律とは別個に、地方自治体に関してはそれぞれ条例でやってください、まずそういう基本構造だということでございますね。それと、しかしながら、現場がいろいろ混乱をしているので、その部分に関しては、マニュアルというかガイドラインをおつくりになって、これを参考にしてください、そういうやり方をとっておるということでございます。

 そういう理解はしておるんですけれども、そういう説明をしても、やはりそれでも全国でいろいろな混乱が起きているということを地方の現場では直接私は耳にしておる。きのうももう一度同じ話をさせていただいたんですが、やはりこれは、情報共有というか、これは相手がわかっていないんだというふうにおっしゃるかもしれませんが、何か個人情報という言葉がひとり歩きをして、やはりその中身に関してしっかりとまだまだ周知されていないんじゃないかなという感じが私はするわけでございます。

 きょうは、この関係は余り深入りはいたしませんが、ガイドラインが出ているということでございますけれども、またこれで誤解をされているような自治体があっては、また人命にかかわるような問題も出てまいりますので、どうかこの点は、地方の自治体あるいは地方の議会、議会から実際に意見書も出ておるわけでございますから、どうか、そういったところの混乱ないしは十分な理解がなされていないところに関して、周知徹底の方をぜひお願いいたしたいというふうに思います。

 それでは、続きまして、住民基本台帳法の中身に関してお伺いをいたします。

 これは、いろいろ御検討いただきまして、検討会の結果、大体予想されたとおりの改正になっておるわけですが、要するに原則と例外がひっくり返ったという、ある意味大きな変更であるというふうに考えております。

 まず、これは期待される効果として具体的なことをイメージしますと、午前中もお話が出ていましたが、私自身の経験でも、あるとき家族の構成によって突然いろいろなダイレクトメールが来て、引っ越し早々に何で私の住所を知っているのかとか、子供が生まれると何でとか、男の子だと五月の節句の何かが来たりとか、不思議だな、不思議な国だなということをよく感じていたわけでございますが、さらに驚いたのは、実はその構造のど真ん中に役所の情報があったという話で、そういう国は珍しいんだなということは後からわかったわけでございますけれども、要するに、そういったダイレクトメールは今後なくなるということでよろしゅうございますか。

竹中国務大臣 今回の改正は、もう今いろいろ委員御説明くださいましたけれども、個人情報保護に対する意識の高まりに対応するというのが大きな背景でありまして、何人でも閲覧を請求できるという現在の制度を廃止して、個人情報に十分留意した制度として再構築を行うもの、したがいまして、ダイレクトメール等営業目的での閲覧は認められない、これはもう明白でございます。そういう意味での法律の効果は間違いなく私は出てくると思います。

 委員が、そういうダイレクトメール等々が一切なくなるのかというようなところまで、これはいろいろなルートでまた個人情報のやりとりが行われていく可能性がありますから、そこはしっかりと目配りをしなきゃいけないわけでございますが、繰り返し申し上げますけれども、ダイレクトメール等営業目的での台帳の閲覧はなくなる、これはしっかりとそういう運営をしてまいりたいと思います。

田嶋(要)委員 私の確認したいことは、この法律がこういうふうに改正された以降、それでもなおダイレクトメールを発送したい業者の方が合法的に得るルートというのはあるのかないのかということでございます。

 もちろん、私の家の前まで来て表札を確認したら名前と住所はわかるとか、そこまで努力をする人は郵送物は送れると思うんです。しかし、そうじゃなければ、今後、考えられるものとしては、今まで既に情報を得た場合、前の法律のもとで住民基本台帳の大量閲覧をして、その情報に基づいた発送か、さもなくば、違法な行為をしている、どこかで何か違法な形で入手をした情報に基づいての発送か、この二つしかなくなるというふうに考えてよろしゅうございますか。

竹中国務大臣 ちょっと個人情報全般のことでございますので、私のキャパシティーだけでは全部お答えできないかもしれませんが、例えば、私もいろいろ送られてきたときに、どうして私の住所を知っているんですかと以前聞いたときには、私の卒業した高校の名簿で知りましたとか、そういう人が現実にはいるわけですね。そういうのが残念ながらどうもいろいろ出回っているようで、それで今でもダイレクトメール等々が送られてくるというのが現状ではないかと思います。

 我々が所管しているこの法律に関しては、基本台帳に関しては、法がこのようにきちっと決定され、そして我々それを厳正に運用してまいりますので、これを活用したものというのはなくなる。それ以外のことについては、これはちょっといろいろなものがあり得ると思いますけれども、それは個人情報保護法全体の範囲の中で、しっかりと政府全体としては対応していかなければいけないというふうに思います。

田嶋(要)委員 法律改正前にこれからもしばらく駆け込み閲覧というのがあるのかなと思うんですが、これは、今回のこの改正法が施行された後、利用は自由なんでしょうか。

高部政府参考人 今回の改正は住民基本台帳の閲覧制度の改正にかかわるものでございますので、既に閲覧されたものについて今回の改正が規制の対象とするといったものではございません。

田嶋(要)委員 だから、もう既に閲覧が終わっている情報に関しては御自由にどうぞ、そういうことですね。

高部政府参考人 ただいま申し上げましたのは、住民基本台帳における閲覧制度としては直接的な対象としていないということを申し上げたことでございます。

 それは、当然のことながら、他の法体系の中でいろいろ規制がかかることはあり得ると思います。例えば個人情報保護法の規制がかかる場合もあるでございましょうし、そういうことはあろうかと思いますが、いずれにしても、今回閲覧制度として定めたものが直接的にかかってきて規制されるということにはならないものだということでございます。

田嶋(要)委員 そういう意味では、引っ越しをしない限りは恐らく今後もダイレクトメールはそういったところからいろいろ届くことは十分あり得るなということで理解をいたしました。

 午前中にも御指摘ありました、地域コミュニティーというか、地域の例えばお店の方が営業努力の中でというようなことで、そういった努力にとっては今回の法改正がマイナスなのではないかな、確かにそういう可能性もあるのかなと思って聞いておったわけです。

 当然、大変頼りにしていたというか、ありがたい制度だったというふうに重宝がっていた業者の方は大変多くおったとは思うんですが、特に、地域のそういった、いろいろほかに情報ソースのないようなところの方がこの制度をうまく活用されていた。そういう方々にとってはかなりショッキングな出来事になると思うんですが、これは、いわゆる緩衝というか激変緩和というか、あるいはこの制度が変わるに当たってのいろいろな陳情とか意見交換もあったかと思うんですが、その辺は今回どういう対策をとられていたのか。それとも、もう問答無用に、時代が変わりましたとばさっと、そういうことでしょうか。どちらでしょうか。

高部政府参考人 制度を構築するに当たりまして、どういう形で仕組むかということでございます。

 今回は、基本的に閲覧の仕組みを変えたということでございまして、激変緩和、当分の間は見ていいとかというような仕組みは設けておりません。

田嶋(要)委員 午前中、多分同じ答弁者だったと思うんですが、そもそも昭和四十年か何かの法律でこの制度ができたときは、当初のもくろみとしては、地域の例えば営利目的にも利用されることを想定してできた制度だというような御説明を伺いましたけれども、それはそういうことでよろしゅうございますね。

高部政府参考人 この法律の目的の中で、居住関係の公証という仕組みになってございますが、午前中申し上げましたのは、この法律が住民登録法という仕組みから住民基本台帳法と、昭和四十年代に変わりました。当初から、公証の中で、例えばデパートなんかが見るというようなことを想定されたような記述がされておりますので、制度発足当時はそういうことを否定する仕組みではなかったというふうに理解しております。

田嶋(要)委員 そういう意味では、民間の営利のいろいろな活動に資する部分も制度最初の目的としてはあったということですが、今回、激変緩和の措置もなく、そういう意味では一気に切りかえられていくという理解をいたしました。

 そういった中で、今回、確かにかなり時間がかかって行われたなという印象も私自身持っておるわけでございますが、これは、個人情報保護法ができたということがなければ今回のような制度改正というのは検討されていなかったんですか。いかがでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 答えから申し上げますと、個人情報保護法の成立だけが今回の改正のきっかけ、トリガーになったのではないというふうに御理解をいただきたいと思います。

 これは、情報通信技術の著しい発展等経済情勢全体の変化がある。そして、その中で、これもいろいろな事案がございますけれども、個人情報保護に対する意識の高まりがある。そういう中で、制度そのものの見直しを求める意見が強くなった。そういう中で、全体的、総体として我々としては判断をさせていただいているということでございます。

田嶋(要)委員 次に、多くの方がもう既に質問されていますが、公共性の件に関して質問させていただきます。

 十一条の二でございますけれども、公共性の判断というのは大変難しいという御指摘はいろいろ出ておりますが、「総務大臣が定める基準」というふうに法律の中ではなっております。

 これは総務大臣委任事項というのでしょうか、こういう形で規定をされた理由というのはどういうところにございますでしょうか。なぜ法律の中に基準を明記しなかったのか、あるいは総務省令で定めるということにはしていないのかという点に関して御答弁ください。

竹中国務大臣 まず、今回の改正の中身そのものでございますけれども、これは、国や地方公共団体による閲覧というのはいいわけでありますけれども、そのほかに、世論調査、学術研究等の調査研究のうち公益性が高いもの、社会福祉協議会等の公共的団体が行う地域住民の福祉の向上に寄与する活動のうち公益性が高いと認められるもの、それについて閲覧が認められる。そして、このうち、第一に申し上げた世論調査、学術研究等の調査に関しては、市町村による公益性の判断に資するように総務大臣が告示により基準を定める。ちょっとややこしいですけれども、そのような形になっているわけでございます。

 この公益性の判断に関する基準、これは公益性という抽象概念をより具体的に示すものであること、そういう意味で告示としたものでありますけれども、これは省令なのか告示なのか。ともにこれは大臣が定めるものでございますけれども、告示は、公の機関がその決定した事項その他一定の事項を公式に広く一般に知らせることである、またはその形式の一種というものでありまして、今回の公益性の判断のための基準は、今申し上げたような趣旨で告示で定めるのが適切であるというふうに判断をしたわけでございます。

田嶋(要)委員 これは、大臣、総務大臣なんですが、現実的には市町村というか、現実的な出すか出さないかという判断、閲覧させるかどうかというのは市町村、しかも市町村長ではない方がやるのであろうというふうに思うんです。

 その公益性を判断するための例えば十のチェックポイントとか、何かもう少しかみ砕いたというか、そういったようなものがないと現場が非常に戸惑うのではないかなという感じがいたしておりますけれども、その点はどういう御計画がありますか。

竹中国務大臣 どういうものになるか、さらに必要でしたら事務方からも答弁をさせますが、公益性の基準としては、調査や研究の成果が公表されて、それで国の施策の検討や学術研究に利用されることによって社会に還元される、そういうことを告示で定めるというふうに考えております。

 ちょっと委員が言われる十のチェックポイントというような形になるかどうかあれでございますが、趣旨としては、今申し上げたようなことを告示で定めたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 そして、公共性だけではなくして、やはり公共性があって、しかも、どうしても基本台帳の閲覧をしなければいけないというその必要性の側面がないとやはり閲覧はさせてはいけないというふうに私は思うんですね。みんな必要だから閲覧するんでしょうけれども、客観的に見てもっとほかのやり方があるだろうという話になることもあり得ると思うんです。

 その必要性ということに関しては今回この法律の中では何も触れていないと思うんですが、その点はどのようにお考えでございますか。

高部政府参考人 規定ぶりの話なので、私から答えさせていただきます。

 十一条の二の規定で位置づけているところでございますが、「市町村長は、次に掲げる活動を行うために住民基本台帳の一部の写しを閲覧することが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、」というふうに規定しておりますので、各号に列記している活動に該当するかどうかという判断、それから、あわせての提出事項がございます、例えば管理のあり方とかといったものも含めて、そういうことが判断されて、それとあわせまして必要性についても判断して、閲覧が必要だというふうに認め、それが相当だと認めた場合に閲覧させる、こういう仕組みになっております。

田嶋(要)委員 公共性というのも必要性というのも非常に判断は難しいと思うんですね。求めてくる人は必要性があると言うに決まっているわけですから、それを相当と認めるかどうかというのは大変難しい、多くの方が現場で迷われるのではないかなというふうに思うんですね。私がチェックポイントと申し上げたのは、少なくともそういう判断される側が余りストレスなくできるように、ある程度のそういったものが目の前にあると大変助かるのではないのかなということでございます。

 それと、もう一つ私が思いますのは、市町村長が判断をするわけでございますが、これはなぜ閲覧を認めたかということの判断根拠を何か記録に私は残すべきだと思うんですね。そうしないと、やはり将来から過去に振り返って、一体これは何で閲覧させたのかといったときに、そのときどういうことを判断して閲覧させたのかということが、ある程度は、ある程度ですよ、それはもう限界ありますけれども、やはり一件一件、市町村長が、一言でもいいから、これはこういう理由で認めたということを記録に残していくべきだと私は思うんですが、いかがでございますか、大臣。

竹中国務大臣 基本的に閲覧を認めるか否かというのは、最終的に市町村長が判断をします。そして、その判断の根拠をどのようにして記録に残すかどうかについても、これは市町村長が適切に判断をするというのが基本的な考え方でございます。

 今回の改正では、閲覧を行った者や利用の目的等を原則として公表するというふうにしております。したがいまして、住民の目からどのような閲覧が行われているのかチェックもできるようになっております。これを実効あらしめるような形で、市町村長が適切に判断をしていくというふうに考えております。

田嶋(要)委員 今度はちょっと逆のことを質問するんですけれども、いわゆる公共性が強く認められるということで、閲覧を認める場合の方の話でございます。

 私は、せっかく改正するのであれば、この点もちょっと考えた方がいいのかなと思うんです。実務上どういうことが起きるかにもよるわけでございますが、その調査がどういうような広範囲な形の調査かにもよると思うんですけれども、今というのは、閲覧させるかどうかが市町村単位で判断が行われていくということでございますね。そうすると、広範囲な調査、非常に公共性の強い調査であれば、それをもうそれぞれのところで行っていかなければいけないのかということを考えると、一たん、全く問題のない公共性の強い調査ということであれば、むしろ閲覧手続の簡素化、要するにワンストップで閲覧手続を、例えば全国でも全地域でもいいですが、そういったことも逆に簡素化をしていかないと、効果的というか効率のいいそういった公共性の強い調査目的には資することができないのではないかなというふうに私は考えておりますが、大臣はいかがお考えですか。

竹中国務大臣 今の御質問は、まさに今我々が広く議論している個人情報の保護、広い意味での保護というのはしっかりとそれを活用したいためなんだ、活用するからこそ必要なことの保護をしなければいけないんだという、非常に微妙なバランスの問題であるというふうに思います。

 この改正後の閲覧手続におきましては、これは申し出の際に、調査研究の内容、実施体制等を明らかにすることとしているところでございます。これらの明らかにされた事項を市町村長において審査をして、そして申し出がなされた調査研究についての公益性が高いかどうかを判断するものであります。

 したがいまして、市町村長がやはり必要な所要の審査を行って初めて公益性があるのかないのかというのが判断されるわけでありますので、所要の審査手続を経るということはやはり必要なことだと思います。

 もとより、この審査に当たりましては、所要の手続を求めているところでありまして、過重なものになってはいけません。そこは、窓口において、現場においていろいろな工夫の余地もあるわけでございますけれども、これはやはり必要なことはちゃんとチェックしていただく、それがまさに個人情報の保護であるというふうに思っております。

田嶋(要)委員 時間が来ましたので、あと最後一つだけ人事院の方にお伺いをしたいと思います。

 その個人情報ということに関係をするわけでございますが、住民基本台帳とは関係ございませんが、今手元にございますのは、「懲戒処分の公表指針に関する通知について」というものでございます。これは結構地元でも話題になるものでございまして、公務員が何か悪いことをしたときに、名前を出すか出さないかという話でございます。

 この通知の一枚表紙に書いてあるのは、個人が識別されない形での公表を基本とするということですね。つまり、住民基本台帳は今回全くルールと例外を逆転させたわけですが、この懲戒処分の通知の中身は、公開しないのがルールで、しかも下の方に、なお、事案の社会的影響を勘案して別途の扱いをすべき場合がある、つまり、公開する場合があるということで例外を置いているわけですね。だから、原則は公開しないということで、二〇〇四年にも懲戒処分の国家公務員三十四人のうち六割は匿名で発表されたということがございますが、私は理解がとてもできない制度だというふうに申し上げたいと思うんです。

 これは恐らく多くの方がなぜというふうに思っておると思うんですが、せっかくでございますので、なぜこういうふうなルールと例外の置き方にしているのか、これは逆じゃないでしょうか。お願いします。

谷政府特別補佐人 これは御案内かと思いますけれども、近年、公務員の不祥事が多発をいたしました際に、各府省の中では、職務遂行上の行為に係る懲戒処分を行った場合にそのことを公表しないというようなことがございまして、国民に対する説明が十分でない、そういう御意見が出てまいりまして、私どもとしても、懲戒を所管する立場から、懲戒処分の公表についての一般的な考え方をお示ししたものでございます。

 懲戒の立場から申しますと、公務では非違行為に対しまして厳正に対処しているということを国民の皆様にお示しするということが基本的な目的でございまして、その意味からいたしますと、個人の氏名まで公表しなくてもよいと考えられますことから、そのことを原則として申しました。

 ちょっと所管をはみ出すことにもなりますけれども、懲戒を行いますには、当然、これに先立ちましてその対象となる非違事実があるわけでございます。懲戒処分はこの非違事実に対する事後措置の一つであるわけでございます。国民に対する行政の説明責任を全うしていきますためには、行政執行上起きました不適切な事案、事件につきまして、その内容、及ぼす影響、それから対応措置などを、必要と考えられます範囲で公表して、国民に対して御説明をするということが必要と考えます。

 その説明の中で、対応措置の一つといたしまして、関係者に対する処分等について、これは懲戒処分に限りませず、訓告、注意等の矯正措置もあれば、それから人事異動等も含まれるということがあると思いますけれども、そういったことを公表いたします際に、対象者の氏名についても公表の対象とするか否かということにつきましては、その不適切な事案の性格、それから個人情報保護の観点、こういったことを総合的に勘案されまして、事案の公表に当たられます府省庁において判断をされていくのが適当であると考えるわけでございまして、そういう趣旨をこのなお書き的な部分で述べているわけでございます。

田嶋(要)委員 理屈はどういうふうにでもつけられると思うんですけれども、なぜルールと例外をこういうふうに置いているかということは、私は国民の理解は得られないと思います。

 要するに、自分たちの身内を守ろうというか、悪いことをした人たちですよ、そういうことをやっていると、やはり僕は国民の理解を得られない制度であるというふうに最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

萩生田委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょう、住基台帳法に先立って、ちょうど一昨日も、大臣の方に、村上ファンドの村上氏の問題、規制緩和の問題について伺いましたので、最初にこの間の続きを少しやっておきたいと思います。

 それで、政府の行政改革推進本部の規制緩和委員会委員長だとか、それから規制改革・民間開放推進会議の議長などに大体十年近くついてこられたのがオリックス会長の宮内義彦さんですが、この宮内氏が村上ファンドのM&A社の設立時に資金を出した問題とか、設立登記の場所はオリックスの一〇〇%子会社ブルーウェーブに本店所在地を置いていた問題とか、このオリックスの研修施設の運営会社である休眠会社であったところに二〇〇〇年一月に村上氏が代表取締役に就任して、社名も目的も変更してM&A社ができてきたということですが、ことし五月十六日までは、大分危ないということで逃げ出すまではオリックスから村上ファンドに取締役も入っておりましたから、会社の設立の資金も役員もオリックスとは非常に結びつきの強いところであったわけです。

 ところで、今回また改めて問題になっておりますニッポン放送株のインサイダー取引で株売買した投資顧問会社のMACアセットマネジメントにも、ここもことし五月十六日までオリックス・クレジット社長などが取締役として送られていたといいますか、入っていたわけですね。実は、このニッポン放送株買収事件が起こったときに、これは昨年の二月ですが、予算委員会でも、例えば民主党の中山さんの質問に答えて大臣は、堀江氏らの買収劇について、ルールを無視して、ルールのすき間を縫ってとか、そういうことであってはいけないということが予算委員会での大臣の答弁でしたが、考え方は今もこの考えでおられるかどうか、最初に伺います。

竹中国務大臣 今御引用いただきました答弁は、私が、堀江さんのこととかよく存じ上げる立場にはない、その上で、一般論としては、これはやはりルールをしっかりと守っていかなければいけない、そのような趣旨で申し上げたのだと思います。そのことはもちろん今も変わりはございません。

吉井委員 ですから、インサイダー取引などは、これはルールを無視したもの、この点は間違いないですね、今も考え方は。伺っておきます。

竹中国務大臣 したがいまして、現実にいろいろな事案でインサイダー取引があったかどうかというのは私にはわかりません。わかりませんが、インサイダー取引というのは、これは違法でございます。

吉井委員 一昨日のこの委員会で、ライブドアと村上氏のインサイダー取引について、また、規制緩和推進に働いて、金融担当大臣、今は総務大臣として務めていらっしゃる竹中大臣がインサイダー取引の規制にどう取り組んできたかという質問をせんだって行いました。竹中大臣は、規制を緩和しながらルールを強化するということは小泉改革の中でしっかりやってきたつもりというお話でしたが、しかし、現実には、やったやったといっても、堀江氏や村上氏の逮捕など相次いでいるわけですし、この間会計法の話もされましたが、中央青山の事件だとか次々と起こってきたのが実態です。

 村上ファンドの立ち上げのときの四十億円の資金の多くを提供し、二〇〇〇年度の昭栄に対する敵対的TOBを仕掛けた資金百四十億円をオリックスからの融資で賄う約束があったということなど、図書に出ているもの、紹介されているものもせんだって私出しましたけれども、インサイダー取引を行った村上氏の支援を行ってきた規制改革・民間開放推進会議議長でオリックス会長の宮内義彦氏に少なくとも道義的責任があるのではないかということをこの間私は質問しました。大臣は、規制緩和担当の議長として宮内さんは立派な仕事をしてこられたと思っているというお話でした。

 きょうの毎日などでも、村上氏は実態は総会屋という話などを大きな見出しで紹介もされておりますが、インサイダーや総会屋というふうな、そう言われるようなことをやっている者をこの宮内さんが支援してきたということになってくると、冒頭紹介しましたが、これは会社設立からずっとそうですから、それはちょっと立派な仕事をしてきているというふうには簡単に言える話じゃなくて、むしろ道義的には責任はやはり考えなきゃいけないというふうに見なきゃいけないんじゃないかと思うんですが、これはどうですか。

竹中国務大臣 前半のお話と後半のお話、それぞれ答えさせていただきます。

 まず、現実にはそういう問題が起きたではないか、規制強化、ルールの強化はしてきたけれども現実にそういう問題が起きたではないかということに関しては、私も大変その事実に関しては遺憾に思います。これはやはりさらにいろいろなルールの強化をやっていかなければいけないということであろうと思います。

 しかし、同時に、この間いろいろな強化をしてきました。そして、証券取引監視委員会の人数は二・六倍にしました。そういう事実があったからこそ今回のような摘発がなされてきたという面もあったというふうに私は考えております。

 それと、後半の話でございますが、委員はいろいろ宮内さんと村上さんのお話をされますが、この事案については私は全くわかりません。そもそも村上さんを個人的に存じ上げません。宮内さんは規制改革会議の議長をしておられますからその限りにおいて存じ上げておりますが、その場合も、ビジネスにおいてどのような関係があったのか、出資があったのかなかったのか等、私は知る立場にはございません。私が知っていますのは、宮内さんの規制改革会議の議長としての仕事ぶり、これは知っております。その仕事ぶりに関しては大変よくこの間やってこられたというふうに私は認識をしております。

吉井委員 インサイダー取引の問題で、これは、最近になって規制を強化したの何のの問題じゃなくて、八〇年代末のリクルート事件、まさにインサイダー情報に基づいて未公開株をばらまいて利益を与えたということで、これ自身が大きな問題になり、その後も証券不祥事とかが九〇年代にありました。ですから、何か最近になって急に強化したから捕まったという話じゃなくて、もともと、きちんとやれば、これは昔から大問題にもなればとっ捕まえるということにもなった話です。

 それで、宮内さんが立派な仕事をしてこられたと思っているというお話なんですが、しかし、今毎日のように報道されている中で、オリックスが村上ファンドの会社の登記や、所在地から、資金の提供から、役員派遣から紹介されているもとで、だから、ニッポン放送株買収劇のときも後ろに控えておったものでもあるわけですよ、役員を派遣していたわけですから。何か五月の十六日ごろでしたかね、急にどうもやばいということで逃げ出してしまってから、オリックスは役員を皆引き揚げておられるわけですが。

 ですから、大臣が言われたように、もともとインサイダー取引などはルールを無視したもので、とんでもないものなわけですね。そのとんでもないものを、現実に今報道されている事実の中ででも応援をしてきたわけですから、それで立派な仕事をしてこられたというふうに簡単に済ますことができるのか、むしろ道義的責任はやはり考えていかなきゃいけないんじゃないかということを大臣としてはお考えになっていかれるのか。私はそこは非常に大事なところだと思っているんですが、どうなんですか。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 今、吉井委員は、インサイダー取引を応援してこられたというふうに言われたわけですが、その事実関係、何度も申し上げておりますが、私にはわかりません。私は、そういうことを知る立場にはございませんし、そのことに関して別に政府を代表して何か物事を申し上げる立場ではございません。

 繰り返しますが、一般論としては法律は守っていただかなければいけません。そうでない場合は、当然いろいろな形で、これは摘発もあり、また検察も、また証券取引等監視委員会もそういう仕組みの中でしっかりとした行動をされるのだと思っております。

 したがいまして、繰り返しになりますけれども、そのインサイダー応援云々について私は知る立場にはございませんので、ちょっとコメントのしようもございません。

吉井委員 資金を出し、そして役員も派遣してきているというそのファンドがやってきた問題ですから、だから、個人的にどうだこうだというのは今後捜査の手が伸びる中で解明をされるでしょうけれども、しかし、そういうふうなあり方について、これは少なくとも道義的責任というものはやはり考えなければならないものだと思うんですが、道義的責任も余りないというお考えですか。

竹中国務大臣 そういう責任があるかどうかということを判断する材料、そういうことを知る立場にはございませんし、また判断をする立場にもないと思っております。

吉井委員 例えば、オリックス・クレジットの社長がここに入っていたという話は先ほどいたしましたけれども、これは既に紹介されていることです。そのオリックスの方は、そういうまさにクレジットなどで第三者納付を可能にせいという要望を一方では出して、これは地方自治体の場合であれば、せんだっての地方自治法改正で実現しているわけですが、その一方では市場化テストを求めて参入していく。そしてそれは、参入して、収納率を上げようと思ったら、オリックスのカードでどうぞお払いください、あとは債権回収ビジネスでということで、まさに個人的な利害などと結びついた方向でかかわりがあったわけです。

 政府は、そういうオリックスなり宮内氏を、規制緩和推進のさまざまな会合のメンバーに任命したり、あるいは責任者をさせてきた。そのことは事実であるわけですが、そのことについて、大臣としては余りそういうことについて責任を感じておられないのか。大臣自身がこうした事態について余り責任を感じていないのか、あるいは責任を感じておられるのか、ここのところを伺っておきたいと思います。

竹中国務大臣 規制改革推進の会議の任命や運営に関しましては、これはちょっと急なあれですけれども、行革担当大臣が実質的なことをいろいろと責任を持ってやっておられるというふうに思います。担当大臣において適切に御判断をなさっているものというふうに承知をしております。

吉井委員 規制緩和という言葉だけでいきますとそうですけれども、証券・金融を含めて、竹中大臣自身が金融担当の大臣のときからもずっとこの分野ではかかわりを持って進めてこられたわけでありますから、私は、こういうことについて政府としての責任をやはりきちんと考えて対処するということをしないで、あいまいにしておくということでは、村上ファンドのような類似事件というのは、リクルート以来たびたび、リクルート以前からもそうですが、起こっておる話であって、これはなくならない。

 やはりこれは、まず道義的責任をやっている人たちにもきちんとさせるとか、それから、国がそういうことをやっている人を国の改革メンバーなどに登用してやっているようなやり方というものは、きちっとそれは正していかないと、こうした類似事件はこれからもなくならないであろうということを申し上げまして、本題の方の住基法に入っていきたいと思います。

 個人情報の漏えいとのかかわりがきょうも随分議論されておりますが、私、四月二十日の総務委員会において、全国町村会が市町村などを対象にした個人情報漏えい保険を検討しているという問題を取り上げました。当時、詳細、承知しておりませんという話でした。これはその後すぐに日経などでも報道されたものですが、既に六月一日から始まっているということですが、どういうものですか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘いただきました個人情報漏えい保険でございますけれども、全国町村会が、個人情報をめぐる保護意識の高まりや情報流出トラブルの増加を受けて、町村を対象に創設したものというふうに認識しておるところでございます。

 総合賠償補償保険制度といったような中に、今までも、町村等が所有したり使用したり管理したりする施設等々のこのような保険があったわけでございます。それに加えて、個人情報漏えい保険というものを追加したというふうに聞いているところでございまして、被害者への損害賠償による地方公共団体の負担でございますとか、漏えい発生時の対応費用等々について補てんするような内容のものだというふうに承知しているところでございます。

吉井委員 全国市長会なども今後検討するとしているわけですけれども、保険での対応が必要になるように、個人情報の漏えい対策というのは非常に重要な課題なんです。

 地方自治体における個人情報の漏えいの実態、それがまずどういうものなのか。保険では、もう少し具体的にはどのような漏えいを想定して対応していこうとしているのか、これを次に伺いたいと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 この保険では、先ほど言いましたように、町村が行う業務の遂行に関して、個人情報を漏えいしたこと等に起因して損害賠償請求がなされたことによって、町村等が法律上の損害賠償責任を負担するといったようなことでの損害の補てんというような内容、あるいは、町村等が行う業務の遂行に関して、個人情報の漏えい等に起因して市町村が、例えば謝罪のための会見でございますとか発表だとか広告費用だとか、こういうような費用の負担等々について補てんするものだというふうに聞いているところでございます。

 最近、個人情報漏えいにかかわる事故について報道されているものを把握しているところでございますが、この損害賠償との関連でいいますと、ある市におきまして情報の漏えいに起因しまして損害賠償をしたというような事案もあるというふうに承知しているところでございます。

吉井委員 いや、その一般的な話はちゃんとわかった上で聞いているんです。例えば、住民票に係る分野ではどういうことだったのかとか、あるいは税に関してはどういう個人情報が流れたのかとか、住基ネットとかかわるものではどういうふうなものがあったのかとか、何か具体的な事例があって、この保険で対応しよう、漏えい保険をということなんでしょう。

 だから、もう少し具体的な話がないと、何か、一般的な話だけだったら、要するに、それは市町村でやっているんだから総務省は知らないよというだけの話になるわけですね。具体的なものをつかんでいるわけでしょう。

高部政府参考人 地方公共団体の個人情報の漏えい事例について、今の時点で網羅的に把握しているわけではございませんけれども、自治体からの自主的な報告でございますとかマスコミ報道等により把握している範囲では、最近は、職員等が自宅等に持ち帰った個人情報データを、ファイル共有ソフトのウィニーを介して漏えいするといった事例が多いと承知しております。また、個人情報データの入ったパソコンや記録媒体が盗難に遭ったり紛失して個人情報が流出する事例もあるといったようなことと承知しているところでございます。

吉井委員 そういう場合に、では、どういう情報漏えいにどれぐらいの損害賠償が保険によって行われるのか、伺っておきたいと思うんです。

高部政府参考人 保険の金額でございますけれども、てん補限度額というのがありまして、被害者への損害賠償について言いますと、五千円、一億円、二億円といったような限度額が設定されて、それに応じた保険料の分担率というのが定められているというふうに承知しております。

 また、これはトータルでこういう損害ということでございますけれども、精神的苦痛に対する損害賠償金については、一件の個人情報について三十万円を限度といったような内容になっているというふうに把握しているところでございます。

吉井委員 いずれにしても、今度、住民基本台帳法改正で、個人のプライバシーが流出し、個人情報が侵されることのないようにという、このことは非常に大事なことで、私たちは当然のことだと思っております。

 あわせて伺っておきたいのは、市町村の電子申請システム、都道府県単位で協働が行われている場合が非常に多いわけですが、例えば岐阜県では、二〇〇五年度からの本格運用見送りとなっているということで、二〇〇五年夏号の広報誌、ネット&ラインによると、「平成十七年度からの電子申請・届出システムの本格運用については、ひとまず見合わせることとし、継続して検討を進めていくこととなりました。」「財政事情が逼迫する中、利用者数の伸びが見込めない現状では、費用対効果に疑問があるとの意見が多数を占め、共同運営に参加意志を示す市町村が少なく、共同運営の枠組みが成立しなかったため、十七年度からの本格運用は見合わせることになったものです。」そういう紹介がありました。

 それから、二〇〇六年度から高知県で県の申請・届け出システムが休止ということになっていますが、高知県のホームページを見ますと、高知県電子申請・届け出システムは、平成十五年度より運用を開始して以来約三年間、県民の皆様に御利用いただいておりましたが、平成十八年三月末をもちまして休止することといたしました、今後は、利便性の高い新しい電子申請・届け出の手法等の検討をしていきますので、よろしくお願いしますということです。

 要するに、電子申請・届け出システムというのは、市町村単独での本格運用には無理があるという問題が考えられます。結局、それは財政とコストの面からかなり問題があるのではないかというふうに思うんですが、この点はどうでしょうか。

高部政府参考人 電子申請システムを初めといたします地方公共団体におきます情報システムにつきまして、その構築、運用を効率化するといったこと、あるいはシステムの利用促進を図ることが課題だというふうに認識しているところでございます。この点について言いますと、国民等の利用者が、利便性、サービスの向上を実感できていないといったような御指摘があることも承知しているところでございます。

 総務省といたしましては、複数の自治体が共同でシステムの運用を委託する共同アウトソーシングを推進するなどいたしまして、地方公共団体と協働しながら、共同化、標準化による情報システムの構築、運用の適正化を図るべく取り組んでいるところでございます。また、利用促進といった観点でも、IT新改革戦略に基づきまして、現在、オンライン利用促進のための指針を策定中といったところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、地方公共団体におきます情報システムの構築、運用のさらなる効率化と利用促進に向けまして、地方の実態も踏まえつつ、必要な助言、支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

吉井委員 いずれにしても、財政の問題というのは、やはりこれは随分絡んでまいりまして、ここに中国地方知事会緊急アピールというのがありますけれども、これは、新型交付税反対の緊急アピールが五月二十九日に採択されたという報道があってこれを見たんですが、新型交付税については、地域間の格差を拡大させる見直しは断固受け入れられないとするとともに、さらなる地方自治体の歳出の削減が行われるのであれば、住民基本台帳ネットワークの運用に関する事務などを国に返上せざるを得ない事態になるということが述べられております。国に返上せざるを得ない事務の筆頭に住民基本台帳ネットワークの運用というのが挙げられているんです。

 そこで、最後に大臣、一言だけで結構なんですが、住民基本台帳ネットワークの抜本的見直しが求められているのではないか、財政の面からもあるいは効率性の面からもそこが今問われているときではないかと思いますが、このことを伺って、質問を終わりにしたいと思います。

竹中国務大臣 直接の御質問が住基ネットをどうするかということであったと思いますが、住基ネットは、これは必要不可欠な基盤であり、適切かつ効率的に運用していくことが求められているというふうに思います。

 前半で御指摘のありました、いわゆる新型交付税とさらなるそれの削減というのは、これは、量の話と仕組みの話は全く違うんだということをけさほども申し上げました。そして、これによって格差がつかないような形での制度設計をするんだということをまた繰り返し申し上げたいと思います。

吉井委員 財政と効率性ということをよく考えたときに、力ずくで嫌な人までネットワークにつなぐというやり方は必ずしもいいことじゃないということを申し上げて、質問を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 住民基本台帳法の一部改正案に対する質問を行います。

 まず最初に、住民基本台帳法の今後の性格との関連で、本改正案は非常に重要な内容を有していると思います。

 そこで、まず、現行法第十一条に定める住民基本台帳の閲覧主体としての「何人」について聞きます。この「何人」を構成するものは何か、まずそこから聞いてまいります。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず最初に、大変恐縮でございますが、先ほど吉井委員にお答えした際、私、五千万円と言うべきところを五千円と申し上げたようでございます。申しわけございませんが、訂正させていただきたいと存じます。

 ただいまのお尋ねでございますけれども、住民基本台帳の閲覧制度は、住民票の写しの交付制度とあわせまして、住民の居住関係を公証する制度として設けられているものでございます。

 公証すべき相手方といたしまして、検討会の報告書では、一つとして本人または同一の世帯の者、二番目に国及び地方公共団体、三番目に、今申し上げました一番目、二番目以外の者のうち住民の居住関係について確認することについて正当な理由を持つ者という形で挙げているところでございます。

重野委員 確かに、今答えがありましたように、住民基本台帳制度のあり方に関する検討会報告、これを見ますと、今の答弁にありますように、住基台帳の閲覧制度、公証すべき相手方として、1、2、3と、今述べられた内容が書かれております。

 この三つがあるわけでありますが、その中で、この1、2、3が今回の改正でどのように扱われるのかという点を見ますと、まず、第十一条の一では国及び地方公共団体を閲覧主体としております。それから、三分類のうちの3、つまり住民の居住関係について確認することについて正当な理由を持つ者、この内容に相当する条文は第十一条の二と私は思いますけれども、そういう見方でいいのか、確認したいと思います。

高部政府参考人 御指摘のとおりでございます。

重野委員 そうなりますと、本人または同一の世帯の者を閲覧主体とする定め、これは何条に明記されておるんでしょうか。

 現行法はもとより、改正規定のあらゆる条文にもこれを定めたものは見当たらないと見るのでありますが、これを閲覧主体から除外した理由は一体那辺にありや、お伺いいたします。

高部政府参考人 これは検討会でも議論されたところでございますが、本人または同一の世帯の者の場合につきましては、対象となる住民が特定されておりますことから、当該住民以外の住民の個人情報が閲覧されるのを防ぐという観点で、閲覧制度よりも住民票の写しの交付制度で対応することが適当と考えられるということで、特に法律上閲覧の主体として規定しているということではないということでございます。

重野委員 今の説明によると、本人または同一の世帯の者は閲覧主体となり得ない。つまり、自己あるいは同一世帯の者は住基の写しを閲覧することはできなくなる。これが本改正案の条文にあらわれない一つの特徴である、このように理解いたします。

 そこで、本人または同一の世帯の者が閲覧することができなくなるとした場合、自己情報はいかに閲覧し得るのか、他の法的措置について説明願いたい。

高部政府参考人 先ほど若干申し上げましたけれども、本人または同一の世帯の者が自己情報を取得するといった場合には、基本的には住民票の写しの交付制度で対応したらというのが今回の考え方でございます。

 住民基本台帳法、住民の居住関係の公証を目的とするわけでございますが、その中で、抄本の写しの交付制度、それから閲覧の制度、二つがございまして、特定された情報は写しの交付制度で対応したらというのがこの考え方でございます。

重野委員 もう一度確認いたしますが、何人でも閲覧を請求できるという現行の閲覧制度は廃止します、個人情報保護に十分留意した制度として再構築した、これが本改正案である、こういう理解でいいのかどうか。つまり、住民票の写しの交付に特化することで住民基本台帳制度の公開原則は廃止したんだ、こういう理解でいいのか、再度確認いたします。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、居住関係の公証という仕組みの中に、多数を見ていただくことを一般とする閲覧という仕組み、それから住民票の抄本の写しの交付ということで個別に写しを交付する制度、二つがあるわけでございますけれども、今回改正いたしておりますのは閲覧の制度でございまして、この閲覧の制度については、何人でも閲覧を請求することができるという仕組みは廃止した上で、御指摘ございましたように、個人情報保護に十分留意した制度として再構築をさせていただくとするものでございます。住民票の抄本の写しの交付制度は今回、改正の対象としてはおらないところでございます。

 そういう意味で、閲覧制度について今回は改正させていただいたものだというふうに御理解をいただけたらと思っておるところでございます。

重野委員 わかりました。

 そこで、また違う視点で聞いておきたいんですが、「何人」を構成する三つの閲覧主体のうち、二番目と三番目は改正案に明記された。ところが、一番目の本人または同一の世帯の者、これは閲覧者たり得ない。これを、この改正によって住民基本台帳制度は公開制度から原則非公開制度に転換した、そういうふうになるんでしょうか、くどいようですが。

高部政府参考人 先ほど来お答え申し上げておりますように、写しの交付制度と閲覧の制度があるわけでございます。これを二つ合わせて、今まで居住関係の公証という仕組みになっているわけでございます。

 そういう体系の中で、今回は、「何人」も、その半分と言ったら正確じゃないかもしれませんが、その一つを構成する閲覧の制度について、原則公開という制度を廃止いたしまして、新たな制度にしたということでございます。

 もう一つの抄本の写しの交付制度はいじっておりませんので、その意味で、トータルとして変更したというような内容ではなくて、閲覧制度について改正をさせていただいたというふうに御理解をいただけたらと思っております。

重野委員 当該本人及び同一世帯の者、並びに国、都道府県及び他の市町村に利用させることは、その本来の目的に含まれている、検討会報告はそのように指摘をしているんですね。

 検討会報告に言う本来の目的に含まれるものを閲覧主体から除外する、そうした内容の法改正によってもたらされる新たな制度の性格、これがどうして原則非公開制度に立つものと言えないんですか。どうもその点が理解できないんですね。そうでないとするならば、より積極的な、わかりやすい理由を明らかにすべきではないか、このように思うんですね。その点についてはどうですか。

高部政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、本人がといいますか、対象が特定されている場合の公開の仕方をどう考えたらいいのかという議論の中で、抄本の写しの交付制度は特定された者についてその写しを提供するという仕組みですので、一方で、閲覧は抄本の閲覧になりますので、個々に見る格好ではなくて、並んでおりますので、個人情報保護という観点からしたときには、相手が特定されているものについて言えば、抄本の写しの交付制度で対応する方が個人情報保護により適した仕組みになるのではないか。こういう考え方のもとに、それで十分足りることから、今回は本人等の閲覧という仕組みは必要ないということでこういう形にさせていただいたものだということで、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

重野委員 なかなか議論がかみ合わないんですが、検討会報告との関連からして、どうしても納得できないんですね。

 しかし、今のような答弁内容で一貫性を持たせようとするならば、個人情報保護に十分留意した制度として再構築する、そういうふうなものに見合う法改正を考えるべきではないか。例えば、第一条に、住民の個人情報の適切な管理、そういった趣旨の文言をこの法律の中に明記すべきではないのか、こういう提案をするのでありますが、その点についてはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 委員の御主張、先ほどから賜っておりますが、今の点につきましては、これまでも法律の第一条におきまして、「住民に関する記録の適正な管理を図る」という目的が規定をされているところでございます。

 今回の法改正は、先ほど局長からも重ねて答弁させていただいておりますが、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度について、閲覧できる場合を限定する、そして審査手続等を整備することによって再構築をするものでありますけれども、今回新たに設ける個人情報を保護するための各種規定、例えば審査手続、それと報告、勧告、命令等々ございますけれども、これについても、住民に関する記録の適正な管理を図るための措置として位置づけられているものでございます。

 したがいまして、御指摘のような趣旨は既にこの法律の第一条の目的に含まれているというふうに御理解賜りたいと思います。

重野委員 次に、十一条の二項第二号について聞きますが、この請求事由に定める「犯罪捜査等のための請求」の場合、現行法の請求と具体的にどのように変わるんでしょうか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 現行法令におきましては、国または地方公共団体の職員が、住民基本台帳の一部の写しの閲覧を請求する者の氏名、住所、並びに請求に係る住民の範囲、それとその請求者の職名、職務上の請求である旨を明らかにして請求する場合においては、請求事由を明らかにすることを要しないというふうになっているところでございます。

 改正法におきましては、当該請求が犯罪捜査に関するものその他特別の事情により請求事由を明らかにすることが事務の性質上困難であるものにあっては、当該請求をする国または地方公共団体の機関の名称、住民基本台帳の一部の写しを閲覧する者の職名及び氏名、その他総務省令で定める事項、これは閲覧請求に係ります住民の範囲でございますとか請求事由を明らかにすることが困難な理由等を予定しておりますが、こういう事項のほか、法令で定める事務の遂行のために必要である旨及びその根拠となる法令の名称を公文書をもって明らかにするということにしているところでございます。

重野委員 犯罪捜査上請求事由を明らかにすることが困難なものについては、必要たる旨と根拠法令のみを示せばよい、そういうふうに理解をいたしますが、そうなりますと、犯罪捜査上請求事由を明らかにすることが事務の性質上困難と判断するのは市町村ではなく犯罪捜査機関となるわけですね。そうなる以上、この条文は実体的にどれだけの意味があるのか、こういうふうな思いを持つんですね。その点についてはどうですか、大臣。

竹中国務大臣 国または地方公共団体が閲覧する場合には、犯罪の捜査または税務調査など、高度の密行性、秘密性が要求されると思います。同時に、関係者の名誉、プライバシーに対する配慮が要求されるケースもあるところだと思います。

 このような場合には、請求事由を明らかにすることが事務の遂行に著しい支障を来すおそれがあると考えられることから、例外を認めることとしているわけであります。

 なお、請求事由が明らかにされない場合におきましても、事務の根拠となる法令の名称そして閲覧者の職名及び氏名等について公文書の提出を義務づけることを予定しておりまして、請求が公務によるものであるということはこうしたことによって十分担保されるというふうに考えております。

重野委員 そこで、同条第三項に定める市町村長の公表について聞きますが、同項の規定によりますと、犯罪捜査等のための請求に係るものについては公表対象から除外しているんですね。この理由は一体どこにあるんですか。

高部政府参考人 国または地方公共団体の機関による閲覧のうち、犯罪捜査等のための請求に係る閲覧につきましては、公表した場合に事務の遂行に支障を来すおそれがありますことから、公表対象から除外しているものでございます。

重野委員 今の答弁はやはり問題があると思うんですね。閲覧請求について、犯罪捜査となれば、もう実態的に何でもかんでも閲覧できる、まさに自由、全く自由に近いものになる。その上、公表もない、公表する必要もない。これでは犯罪捜査機関に対する牽制力というのは全くゼロではないか。少なくとも閲覧請求件数ぐらい公開してしかるべきではないか、そのことぐらいは私はあってしかるべきだ。件数の公開をすることが犯罪捜査に支障があるとは思えません。その点についてはどうですか。

竹中国務大臣 先ほどから、公表した場合に事務の遂行に支障を来すおそれがある、そういう場合、公表対象から除外するんだという御説明をさせていただいておるわけですが、それに対して委員は、捜査機関といえどもやはり何らかの牽制が必要で、このような制度だと牽制力がゼロになってしまうのではないかという御懸念からの御質問だと思います。

 そういう牽制力については、当然、ある程度配慮しなきゃいけない問題だと私たちも思います。であるからこそ、繰り返しになりますが、閲覧の申し出の際に、それが必要である旨そして根拠法令等について公文書により請求するということを求めているわけでありまして、その意味での閲覧に当たっての適正性は担保されるというふうに考えるわけです。

 具体的に、委員はせめて件数ぐらいいいのではないかという御指摘だったと思うんですが、これもいろいろなケースがあろうかと思いますが、例えば、市町村でそういう捜査当局からの閲覧の件数が何件ある、そうすると、今ここでこういう捜査をいろいろ当局がやっているとか、件数だけでも、これはやはり一種の、こういう状況の中で一つの憶測を呼んだりいろいろな影響を及ぼすということは、私はやはりあり得るのだと思います。

 その意味では、先ほど申し上げましたように、必要性の旨そして根拠法令、それを公文書で求めるというような形で担保するのが適切であろうというふうに判断をしているわけでございます。

重野委員 捜査機関から閲覧の申し出があれば、まず一〇〇%、はいどうぞ、こういうふうになるんですか。私は、それはやはり問題があると思いますね。犯罪捜査の名においてすべてそういうものが提供されるということについて、そこに私が言う一定の牽制力というものが具体的に働かないと、捜査機関の暴走が、ないかもしれないけれどもあるかもしれない。その点で、いわゆるチェックするとか、その辺の牽制をする必要がある。私は、その一つの点をきちっと確認しておく必要があるんじゃないかという点で、くどいようですが、もう一度聞きます。

竹中国務大臣 その辺の判断のポイントが委員と私どもで少し微妙に違っているというところはあるのかもしれません。

 確かに、犯罪捜査ですから、これはしっかりやっていただかなければいけないという思いがあります。一方で、そういうところが、ともすれば無制限に、牽制力がゼロの形になって云々という委員の御指摘も、これは民主主義社会において重要なポイントの一つだと思います。繰り返しになりますが、そういう意味では、その必要性の旨そして根拠となる法令、それを公文書で要求という形での担保を我々は考えているわけでございます。

重野委員 時間も来たようですので、以上で終わります。

中谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 住民基本台帳法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、谷公一君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・日本・無所属の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。谷公一君。

谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。

 一 住民基本台帳の閲覧の公益性に関する市町村の判断が、厳格かつ公正に行えるよう、適切な助言に努めるとともに、市町村間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めること。

 二 住民票の写しの交付制度については、個人情報保護の観点から、さらに厳格な運用を確保するよう努めるとともに、制度の見直しを早急に検討すること。

 三 行政機関の保有する個人情報が漏えいする事件が頻発していることにかんがみ、住民基本台帳法関係事務の運営に当たっては、データ保護及びコンピュータ・セキュリティの確保等について徹底した管理に努め、責任体制を明確化する等、個人情報保護に万全の措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

中谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

中谷委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

中谷委員長 この際、御報告いたします。

 昨七日、地方関係六団体より国会に地方自治法第二百六十三条の三第二項の規定に基づく地方分権の推進に関する意見書が提出され、本日、議長より当委員会に参考送付されましたので、御報告いたします。

 次回は、明九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十四分散会


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