衆議院

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第31号 平成18年8月24日(木曜日)

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平成十八年八月二十四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中谷  元君

   理事 佐藤  勉君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 渡辺  周君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    石破  茂君

      石原 宏高君    浮島 敏男君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      岡部 英明君    奥野 信亮君

      上川 陽子君    木挽  司君

      桜井 郁三君    実川 幸夫君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    田中 良生君

      土井  亨君    長島 忠美君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      林   潤君    広津 素子君

      福田 良彦君    盛山 正仁君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      逢坂 誠二君    田嶋  要君

      寺田  学君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    三谷 光男君

      横光 克彦君    富田 茂之君

      古屋 範子君    吉井 英勝君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   内閣官房副長官      鈴木 政二君

   内閣府副大臣       櫻田 義孝君

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   総務大臣政務官      古屋 範子君

   政府参考人

   (人事院総裁)      谷  公士君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          吉田 耕三君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            関戸 秀明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松山 健士君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  須田 和博君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   西村 清司君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   森  隆政君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   藤本 栄助君

   参考人

   (日本郵政公社常務執行役員)           塚田 為康君

   参考人

   (日本郵政株式会社代表取締役社長)        西川 善文君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           伊東 敏朗君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           和田 光正君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           米澤 友宏君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白金 郁夫君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白川  均君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           高橋  亨君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十四日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  奥野 信亮君     鈴木 馨祐君

  谷本 龍哉君     石原 宏高君

  土屋 正忠君     安井潤一郎君

  永岡 桂子君     大塚  拓君

  橋本  岳君     長島 忠美君

  渡部  篤君     広津 素子君

  安住  淳君     三谷 光男君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     谷本 龍哉君

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  大塚  拓君     永岡 桂子君

  鈴木 馨祐君     越智 隆雄君

  長島 忠美君     林   潤君

  広津 素子君     渡部  篤君

  安井潤一郎君     盛山 正仁君

  三谷 光男君     安住  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     柴山 昌彦君

  林   潤君     矢野 隆司君

  盛山 正仁君     土屋 正忠君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     奥野 信亮君

  矢野 隆司君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

六月十六日 

 一、独立行政法人平和祈念事業特別基金等に関する法律の廃止等に関する法律案(宮路和明君外三名提出、第百六十三回国会衆法第二号)

 二、戦後強制抑留者に対する特別給付金の支給に関する法律案(長妻昭君外六名提出、第百六十三回国会衆法第一八号)

 三、独立行政法人平和祈念事業特別基金等に関する法律を廃止する法律案(長妻昭君外六名提出、第百六十三回国会衆法第一九号)

 四、行政機構及びその運営に関する件

 五、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件

 六、地方自治及び地方税財政に関する件

 七、情報通信及び電波に関する件

 八、郵政事業に関する件

 九、消防に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件(人事院勧告)

 郵政事業に関する件(日本郵政公社平成十六年度財務諸表の承認に関する報告)


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     ――――◇―――――

中谷委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 去る八日、人事院より国会に国家公務員法第二十三条の規定に基づく育児のための短時間勤務の制度の導入等のための国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見及び一般職の職員の自己啓発等休業に関する法律の制定についての意見の申し出があり、議長より当委員会に参考送付されましたので、御報告いたします。

     ――――◇―――――

中谷委員長 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、特に人事院勧告について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として人事院総裁谷公士君、人事院事務総局職員福祉局長吉田耕三君、事務総局給与局長関戸秀明君、内閣府大臣官房審議官松山健士君、総務省人事・恩給局長戸谷好秀君及び自治行政局公務員部長上田紘士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 去る八日の一般職の職員の給与についての報告及び給与の改定に関する勧告並びに公務員人事管理についての報告につきまして、人事院から説明を聴取したいと思います。人事院総裁谷公士君。

谷政府参考人 人事院は、去る八月八日、国会と内閣に対しまして、公務員の給与に関する報告及び勧告を行い、あわせて公務員人事管理についての報告を行いました。また、育児のための短時間勤務の制度の導入等のための国家公務員の育児休業等に関する法律の改正及び自己啓発等休業に関する法律の制定について意見の申し出を行いました。

 早速その内容について御説明申し上げる機会をお与えいただき、厚く御礼申し上げます。それでは、その概要について御説明を申し上げます。

 まず、職員の給与に関する報告及び勧告について申し上げます。

 国家公務員の給与水準は、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させることを基本としております。本年は、この官民給与の比較方法について、官民給与の正確な比較を実現し、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるため、比較対象企業規模を従来の百人以上から五十人以上に改めますとともに、比較対象となる民間企業の従業員の範囲を見直すなど抜本的な見直しを行った上で官民給与の比較を行いました。

 その結果、月例給についても、特別給についても、その水準がほぼ均衡しておりましたことから、本年は給与水準の改定を行わないことといたしました。

 このため、公務員の給与水準は据え置きとなりますが、仮に今回の比較方法の見直しを行わなかったとした場合には、月例給でプラス一・一二%の官民較差が生じることとなり、ボーナスにつきましては〇・〇五月増加することとなります。

 また、給与構造の改革については、昨年の勧告時において、公務員給与に地場賃金を反映させるための地域間配分の見直し、年功的な給与上昇の抑制と職務、職責に応じた俸給構造への転換及び勤務実績の給与への反映の推進を柱とした給与制度全般にわたる改革を行うことを表明し、本年四月から実施に移されております。この改革におきましては、俸給表の水準の引き下げを段階的に実施することにより生じる原資を用いまして、新制度の導入や手当額の引き上げを計画的に実施することとしております。

 平成十九年度は、広域に異動を行った職員に支給する広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化等を行うことといたしました。

 この給与構造の改革にあわせまして、国全体として進められている少子化対策に対応して、扶養手当の三人目以降の子等に係る支給月額を千円引き上げ、二人目までの子等と同額の六千円とすることといたしました。

 続きまして、公務員人事管理に関する報告について御説明申し上げます。

 公務は、国民生活を支える社会的基盤であり、多様な有為の人材を確保し、育成していくことが重要であります。このため、時代の要請に対応した人事管理の改革を進め、公務員が、高い専門性と市民感覚を備えた行政の専門家集団として、誇りと志を持って生き生きと公務に従事できる環境を整備していくことが課題と認識いたしております。

 このような基本認識のもと、本年の報告では、能力、実績に基づく人事管理、多様な有為の人材の確保、勤務環境の整備及び適切な退職管理の観点から、人事評価制度の着実な実現、キャリアシステムの見直し、分限制度の適切な運用、超過勤務の縮減、再就職規制制度の厳正な運用、複線型人事管理の導入、退職給付の調査検討などの課題について考え方を表明いたしました。

 次に、育児のための短時間勤務の制度の導入等のための国家公務員の育児休業等に関する法律の改正及び一般職の職員の自己啓発等休業に関する法律の制定についての意見の申し出について御説明申し上げます。

 我が国の急速な少子化に対応するためには、国家公務員についても育児のための短時間勤務の導入等、職業生活と家庭生活との両立支援を推進することが求められております。このため、常勤職員のまま一週間当たりの勤務時間を短くできる育児のための短時間勤務の制度を設けるとともに、あわせて、その後補充のための職員を任期付短時間勤務職員として採用できる制度及び週二十時間勤務をする育児短時間勤務職員二人を一つの常勤官職に並立的に任用し、あいた官職に常勤職員を任用できる仕組みを導入することが適当と認め、国家公務員の育児休業等に関する法律を改正されるよう意見の申し出を行いました。

 また、職員の自主的な大学院等への修学や独立行政法人国際協力機構等が実施する国際貢献活動への自発的な参加を可能とするために、職員としての身分を保有しつつ、職務に従事しない無給の休業制度を導入することが適当と認め、一般職の職員の自己啓発等休業に関する法律を制定されるよう意見の申し出を行いました。

 以上、本年の報告及び勧告並びに意見の申し出の概要を御説明申し上げました。

 人事院といたしましては、今後とも、人事行政の公正性の確保と労働基本権制約の代償機能という責務を担う中立第三者機関、専門機関として、引き続きその役割を適切に果たしてまいる所存でございます。

 総務委員会の皆様におかれましては、人事院の勧告制度及び意見の申し出制度の意義や役割に御理解を賜り、この勧告及び意見の申し出を速やかに実施していただけますようお願いを申し上げる次第でございます。

中谷委員長 以上で人事院からの説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自民党の葉梨でございます。残暑厳しい中、委員各位、それから政府の皆さん、大変御苦労さまでございます。

 ちょうど一年前の本日なんですけれども、私の地元でつくばエクスプレスという鉄道が開業いたしました。ただ、ちょうど一年前といえば、考えてみれば、皆さん選挙の真っ最中でございまして、人事院勧告というのは、実は昨年、給与構造改革ということで非常に大きな改革の勧告がなされたんですが、こういった審査の機会を持つことができませんでした。ただ、ことしの改革においても幾つかの重要な改革があるというふうに認識しております。

 そこで、まず総裁にお伺いしたいんですが、実は昨年、私ども自民党の中で公務員給与改革断行を求める若手議員の会というのをつくりまして、いろいろと研究を進めておりました。特に、公務員の給与の関係ではこういった議連の勉強会というのは余り数が多くないんですけれども、人事院に対する圧力団体あるいは応援団としての役割を果たそうということで、自民党の中でつくらせていただいたんです。そして、昨年の五月の二十五日に緊急提言というのを出しまして、現行の民間準拠方式について、その妥当性を徹底的に検証すべきである、そういうような内容の提言を行わせていただきました。

 そこで、人事院にお伺いいたしますけれども、本年の人事院勧告に関連してどのような議論、検証を行われてきたのか、総裁から承りたいと思います。

谷政府参考人 ただいまの若手議員の会の皆様の緊急提言についても承知申し上げておりますが、人事院といたしましては、昨年の勧告時の報告におきまして、官民比較の方法について、学識経験者による研究会を設置して検討を行っていくということを表明しているところでございます。

 その後、昨年十一月に学識経験者による官民給与の比較方法の在り方に関する研究会を、さらにまた、本年一月に各界の有識者による給与懇話会を設けるなどいたしまして、官民給与の比較方法について検討をしてきたところでございます。

 このうち、特に研究会におきましては、主に労働経済学、計量経済学の観点から、現行のラスパイレス方式による官民比較のあり方について技術的側面から検証と検討を行っていただいたところでございます。

 本年の勧告に向けましては、この研究会の報告書の内容などを踏まえまして、またさらに、各府省の人事当局や職員団体の意見もお聞きしながら、民間企業の給与水準をより適正に反映する方法として、比較対象企業規模、比較対象従業員の範囲の拡大等、官民給与の比較方法全般について慎重に検討を進めて、結論を得た次第でございます。

葉梨委員 今総裁からもお話がございましたが、昨年の給与構造改革では、まず非常に大きな改革としては、俸給表全体を五%ほど下げるというような改革が行われたわけですけれども、ことしも、官民比較という中で、先ほどの総裁の説明にもあったわけですけれども、四十二年ぶりに比較対象の企業規模を百人から五十人にするという形での改革が行われたわけです。

 これについては、非常に厳しい見直しであるという声も片っ方であります。四十二年前に、ちょうど時の太田薫総評議長とそれから池田勇人総理が話し合って百人規模にしたというような歴史のあるものなんですけれども、ただ、その一方で、先ほどの総裁の説明にもございましたけれども、まあ下がるとしてせいぜい一%ぐらい、そんなものかというような意見も片っ方であることも事実なわけです。

 特に組合側の話からは非常に厳しいという意見もありますけれども、そうじゃなくて、辛口の評論からすると、後でもちょっとお聞きしますけれども、歳出改革PT、自民党の中に置かれたもので、公務員の給与関係では二・六兆円ほど削減をしていこうというようなことに黄信号がともったんじゃないかというような報道も中にはあるというふうに承知しています。

 私自身は、まず百人を五十人規模にするということは、これは妥当なことなのかなというふうに思っていますけれども、ただ、公務の性格上、単純に賃金を平均で比較するということはできないので、やはりどうしても、今総裁のお話にもあったラスパイレス方式というのは、今の現状においては維持をすることが妥当なのではないかというような個人的な意見を持っていますけれども、まず、人事院の給与局長さんに、今回、比較対象規模を見直したものの、ラスパイレス方式を堅持したその理由について伺いたいと思います。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員も勤労者でございまして、勤務の対価として適正な給与を確保するということが必要なわけでございますが、労働基本権が制約されておりまして、労使交渉により給与を決定することができないということもありまして、公務員につきましては、民間の賃金に準拠して給与を定めるということが最も合理的であるというふうに考えているところでございます。

 その場合、公務と民間という異なる組織間において、これは実は民間の組織の間でも程度の差はあれ同じようなことはあるわけですけれども、当然業務内容が異なっておりまして、構成員の属性、役職段階ですとか勤務地域とか学歴とか年齢等といった属性に応じた人員構成、構成員分布も異なっておりまして、両者の給与を比較する場合に、それぞれの給与を単純な平均として比較するということになりますと、人員構成や構成員分布が異なるということによる給与の差が平均値の差に影響するということになりますので、このような方法は適当ではなく、公務員と民間従業員の給与を比較する場合には、仮に公務員が民間企業に勤務をして、現についている立場、職務と同じような立場で同じような業務、仕事に従事したら民間企業ではどのような給与になるのか、それを全体として総合すればどのような給与水準になるのかということで公務員の給与と比較することが最も適当と考えられるところでございます。

 そのために、官民に共通の事務・技術関係職種、いわゆるデスクワークでございますけれども、公務の場合は行政職俸給表(一)の適用者としているわけでございますが、事務・技術関係職種を対象に、給与の決定に影響を与える主要な要素でございます役職段階、勤務地域、学歴、年齢を合わせて、同種同等の者同士の給与を比較するというラスパイレス比較方式で比較を行っておりまして、この方式により民間準拠を図っていくことが現時点では最も適切な民間賃金準拠方式であり、公務の給与について適正な給与水準を確保していく方法であるというふうに考え、堅持したところでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 四十二年前と比較すると大きく変わっていますのは、民間の雇用形態として、ほとんどパートタイマーというのはなかった時代から、三五%がパートタイマーという時代になっている。ですから、企業規模としては、かつては百人の企業規模だったもので、同じ生産量ということになりますと今は七十人規模であるというようなところはあるのかなと思いますけれども、片一方で、ではパートの方々と全く同じ形で比較するわけにもいかないし、やはり公務の性格上、私自身は、今のところはラスパイレス方式というのに準拠するという形で、比較対象の企業規模を小さくしてラスパイレス方式を維持するという方向はおおむね妥当なのかなというような感じを持っているところです。

 このような形での国家公務員についての給与構造の改革、さらには比較対象規模の見直し、こういったことが行われているわけですけれども、例えば昨年の人事院勧告を見ましても、人事委員会の勧告にどれだけ反映されたか。なかなか政令指定都市がおくれているというような状況もございます。

 また、さらには、独立行政法人全体としてのラスパイレス指数は国家公務員と比べて一〇七程度ですけれども、特に特殊法人由来の独立行政法人のラスパイレス指数は高いというような指摘もあるところです。

 したがいまして、このような地方公務員あるいは独立行政法人、この関係の職員の給与改革というのも今後非常に大事だというふうに思いますけれども、こういった形での人事院勧告を参考にしながら、今後どのような形での給与改革を進めていかれるおつもりか、総務大臣から御見解を承りたいと思います。

竹中国務大臣 今、葉梨委員、国家公務員の給与の決まり方についていろいろと議論してくださいましたけれども、この国家公務員の給与構造改革を踏まえまして、それを地方公務員の給与の改革、さらには独法の給与改革に生かしていくということは、これは当然我々の重要な務めであるというふうに思っております。

 地方公務員の給与のあり方に関しましては、御承知のように、ことしの三月に研究会の報告も出されております。その中では、これは従来、いわゆる国公準拠、国家公務員の給与に準じて地方公務員の給与が決まるという考え方があったわけでございますけれども、そうした考え方を刷新する、給与水準については、むしろ地域の民間給与を重視するという形で刷新するということの提言をいただいています。また、民間給与の調査対象となる企業を拡大する。これは今一部御議論いただいているわけでございますけれども、さらには、人事委員会の機能を強化する。大変重要な提言をいただいております。

 我々は、これらを踏まえまして、既に比較対象企業規模の引き下げでありますとか、さらに公民比較を精緻にするというような取り組みも進めているところでありますけれども、これについては、これは引き続き、より地域の民間給与を的確に反映するという方向に向けまして、地方公共団体への助言、さらには、所要の制度整備に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 独法に関しては、ラスパイレス指数、今一〇七程度というお話がございましたけれども、これは前年度よりも若干は低下しているわけでございますけれども、御指摘のような今数字、一〇六・四という数字になっているところでございます。

 御承知のように、独法というのは、これは少し仕組みのつくり方が違っております。これは、法人の業績などを踏まえまして、労使交渉を経て各法人が定めるんだ、そういう自主性を認めるんだというのが大前提でございます。一方で、その基準の公表ですとか事後評価はしっかりと行う、そして、その適切性をチェックしていくということになります。

 給与水準全体につきましては、行革推進法で、平成十八年度以降五年間で五%以上の人件費削減を行う、これを基本として取り組むこととされております。

 各法人が適切な給与水準の確保に向けて取り組むように、我々としては、この評価のシステム、場合によっては勧告のシステム等々を活用してしっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

葉梨委員 今、国家公務員、それから地方公務員、さらには独法という形での給与改革についても議論をしたわけですけれども、実は、ことしの六月、これは給与改革だけではなくて、今の財政が非常に厳しいという中で、歳出改革というのをやらなきゃいけないということで、我が党の中で歳出改革プロジェクトチームというのが立ち上がって、各分野においてのいろいろな形での歳出改革をやっていこうということの取りまとめが行われたわけです。メンバーとしては、政務調査会の各部会長それから部会長代理、さらには政府側から副大臣、政務官といった者が入って、公務員の給与関係では、公務員総人件費、独立行政法人、それから公益法人分野という形での検討が加えられたものというふうに承知しています。

 そして、ここでは一々紹介はいたしませんけれども、さらなる改革として各種の提言が行われている。そして、総体として、全体ですけれども、十一兆から十四兆ぐらいの歳出改革につなげていきたいというようなものを示されたわけなんですが、そこの、さらなる提言というのを具体的にどういう形で実現していくのか、非常に大事なことになるだろうと思います。

 そこで、本日は国家公務員の給与改革関係がメーンということですから、検討に加わられた立場から、上川政務官、お越しいただいております、そこで、その点について御答弁いただきたい。それから、続きまして総務大臣から、政府として、このような提言、党としての提言をどう受けとめて、全体としてどういう形で具体化をしていくべきなのか、それを順次、政務官、大臣から伺いたいと思います。

上川大臣政務官 ただいま葉梨委員から御指摘がございました、自民党の中に歳出改革PTという形でチームが組まれまして、そして自民党の政調の方と、そして総務省を中心として、大臣、副大臣、政務官ということで参加をさせていただきました。

 今御議論をいただきました公務員の給与の問題につきましては、とりわけ歳出削減の大きな柱になるということで、四十二年ぶりの改革ということでありますけれども、官民較差の縮小と並んで、地域の民間の給与になるべく準じるというような形での目標を定めながら、それぞれの立場から激しい議論をしながら提言という形でまとめたところでございます。

 これまでの既存の提言と並んで、改革と並んで、さらなる提言ということでございますが、先ほど来のお話のとおり、対象の企業規模を百人から五十人に縮小していく、下げていくということにつきましては、大変大胆な提言であったというふうに思っておりますし、そのことを踏まえた形で、恐らく人事院の勧告の中で、具体的にその五十人の見直しをするという目標の中で今回の勧告がなされているというふうに理解しているところでございます。

 総務省は、基本的には人事院勧告の趣旨、制度そのものにのっとってその実施を適切に図るということでございますので、国政のさまざまな情勢等も踏まえた上で、そうした趣旨にのっとって勧告の実現を最大限に図っていくということで取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

竹中国務大臣 詳細につきましては、今政務官がお答えしたとおりでございます。

 今回の与党のプロジェクト、歳出改革のプロジェクトというのは、これはやはり、かつてこのようなことはなかった、大変なことであると思います。これだけ具体的な歳出費目について与党がしっかりと議論を積み上げたというようなことは、これはもう日本の、ちょっとオーバーで大変恐縮ですが、政治史に残るような話だろうというふうに私は思っております。それだけ、歳出削減に関して、国民にできるだけ負担をかけないようにするということに関して、与党の強い政治的な決意が示されたものというふうに私は理解をしております。

 その意味で、今回の提言は大変重要なものであるというふうに考えておりまして、国家公務員、地方公務員の給与等の見直しに関しましても、我々もしっかりと決意を持って受けとめて改革に取り組んでいきたいというふうに思っております。

葉梨委員 この歳出改革PTでは、私自身も公共事業分野の副主査というのをやらせていただきまして、いろいろなところからいろいろなリアクションがあったんですけれども、相当な決意を持ってつくらせていただいたということをしっかりと受けとめていただきたいというふうに思います。

 そして、最後に一問、地域手当について伺いたいと思うんですけれども、実は、昨年の人事院勧告の中で、俸給表を引き下げるということの代償措置として地域手当というのが一部の地域で設けられました。ただ、これは非常にレアなケースなんですけれども、特に私の地元であります取手市あるいはつくば市といったところになりますと、企業城下町的な地方都市にあっては、国の方式に忠実に準拠すると俸給を引き上げなきゃならないというようなことも起こってきてしまいます。

 ただ、私自身はやはり、住民感情ということを考えますと、削減努力というのはすべきだけれども、俸給の引き上げという場面で、必ずしも国の方式に準拠する必要はないんじゃないかというようなことを考えておりますけれども、公務員部長から見解を承りたいと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 地方公務員におきます地域手当につきましても、これは当該地方公共団体における給与構造の見直しを進める過程で、国の地域手当の基準に基づいて、原則としてはこのコンセプトに従ってお定めいただきたいというのが基本でございます。

 ただ、先生の御指摘ありましたように、国の新しい基準によりますと従来の給与水準が相当上がってしまうという地域が一部に見られるということも事実でございます。やはり給与は、もちろん給与としての理論的一貫性も大切ですけれども、究極的な支払い者である住民の理解と納得ということがやはり重要なことだというふうに考えますので、御指摘のような地域の場合には、ただ漫然と、国と同じだからいいでしょうということではなくして、住民の皆様方の理解と納得が得られるのかどうか、よくお考えをいただきたいというふうに思っておりまして、この旨は既に関係の地方公共団体にもお伝え申し上げているところでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 この公務員給与改革は、本日は二十分という時間ですけれども、大事な問題だと思います。やはり大変な決意を持って、また、かつ、今後とも丁寧な議論をしていかなければならないということを申し上げまして、私からの質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

中谷委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田でございます。よろしくお願いいたします。

 ただいま葉梨委員の方から、勧告の基礎となります官民給与の比較方法について御質問がありました。また自民党の取り組みについてもお話をいただきましたけれども、私もその点について何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 葉梨委員の方から、昭和三十九年の池田総理と太田薫さんとのお話が出ましたが、私の記憶では、たしかあれは現業職員のことについてトップ会談がされて、当時、それまで五十人規模での比較だったのを百人以上に上げたというふうなことだったと思うんですが、非現業についても、それに合わせるような形で、それまで五十人の規模を比較対象にしていたものを百人に上げたわけですよね。そのあたりの経緯というのは、どういったところでなったのか、まず教えていただきたいと思うんです。

谷政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、これは昭和三十九年に、池田総理、太田総評議長、そのお二方の会談を受けまして、当時の公共企業体等労働委員会におきまして、当時の三公社五現業の職員について仲裁裁定を行います際に、企業規模百人以上の民間給与との比較検討を行うという建前が採用されたということでございます。

 非現業の国家公務員につきましては、このことを勘案いたしまして、昭和三十九年における人事院勧告を行います際に、人事院みずからの判断として、これと平仄を合わせまして、比較の対象規模を百人以上の企業規模に改めることを決定したという経緯でございます。

富田委員 そうすると、五十人規模で比較したものを百人にした、その後ずっとそれは続いていたわけですよね。

 人事院勧告の十五年、十六年の報告等を見ますと、こういう比較方法について、改善する必要はないというような表現ぶりも見受けられるんです。それが、先ほど総裁の御説明の中で、国会でも議論になったし、閣議決定で何度か、検討すべきだというような指摘もあったということで、官民給与の比較方法の在り方に関する研究会をつくり、また給与懇話会等で有識者に議論していただいて今回のような結果になったという御説明なんですが、人事院としては、十六年までの判断としては誤りはなかった、十七年以降、いろいろな議論の中でやはりここは見直すべきだと考えたというふうに理解してよろしいんでしょうか。

谷政府参考人 確かに、これまでこの問題について余り検討してこなかったというのは事実でございまして、それは、多年にわたりましてこの方法について社会的なコンセンサスがあると私ども考えてきたわけでございますけれども、近年、各方面から、特に国会あるいは政府の方からいろいろな御意見もございまして、改めて、やはりこの問題は見直す必要があるというふうに考えたわけでございます。

 もっとはっきり申し上げますと、経緯はございますけれども、私といたしましては、比較企業規模の問題ということよりも、官民比較の基本は、同種同等の者同士を比較するといういわゆるラスパイレスにその基本がある、企業規模は調査対象の、言葉は悪いですが、ある意味では一つの手法であると思うわけでございまして、同種同等の者を的確に拾うことができれば、対象は広く求める方がよいということであると思うわけでございます。

 特に、民間の企業規模につきましては、確かに、一般的に申しますと、もちろん例外はございまして、企業の業種その他によりましては、職員数から見れば小規模でありましても非常に効率性の高い企業もあるわけでございますが、概括的に申し上げれば、その企業の勢いを反映しているということも言えるわけでございますけれども、公務における組織の規模と申しますのはそういう原理とは全く異なる性格のものでございまして、公務をその内容や性格に応じて分析、分類し、それをどのような規模で分担管理するかという考え方から出てきているものと考えるわけでございますので、民間の企業規模と公務の組織の規模というものが直ちに同じような土俵の上で比較されなきゃならぬというものとは思っていない、むしろ同種同等の者をどのように拾うかという、その積み上げの中に一番基本的な問題があるというふうに考えている次第でございます。

富田委員 今の総裁の御答弁のとおりだと思うんですね。同種同等をきちんと比較して、本当に公務員の皆さんが意欲を持って働けるようにというのが人事院の勧告の使命でもあると思うんです。

 報道によりますと、今回、百人規模を五十人規模に下げたということで、百人規模のままであったらある程度プラスの勧告が出たであろうということから、組合の皆さんの方からちょっとこれはどうなんだというような意見があって、なかなか給与関係の閣僚会議でも決定に至らなかった、持ち越しになって、これからまた慎重に議論するというふうに安倍官房長官の方でも記者会見をされていたようです。報告会とか給与懇話会で労働界の皆さんの意見もきちんと聞かれていたと思うんですが、なぜこの勧告が出る段階になってこういう異論が出てくるのか、そのあたりについてはどんな感想をお持ちですか。

谷政府参考人 今回の勧告を行います際の私の談話にも書きましたけれども、それから先ほどの御説明の中でも申しましたけれども、現実の問題といたしまして、この企業規模の見直しを行うことによって水準に差が出てくるということも事実であるわけでございます。したがいまして、職員の皆さんの側からすれば、今回は見直しを行わなければ引き上げの勧告になった可能性が大なわけでございまして、そういう意味では、非常に痛みを伴う勧告であることは事実であると私は思います。

 ただ、私どもといたしましては、これまでの百人規模で比較をしておりました比較の方法も、比較としては別に間違っているわけでも何でもない。ただ、多くの御意見を受けまして、改めてこの方法について見直しました際に、五十人規模以上といたしましても、比較の趣旨は達することができますし、また調査の精度も確保することができる、それであれば、やはりできるだけ比較対象は多い方がいいということで、最終的な判断を、中立の専門機関としての判断をさせていただいたということでございます。

 ただ、繰り返しになりますけれども、これを受けられる皆さんの側からすれば、現実的に差が生じたということは事実であるわけでございますので、そのことは私どもも十分考えていかなきゃならぬだろうと思っております。

富田委員 マスコミの報道等では、今回の勧告によって、総人件費改革の流れに沿って、縮減効果もかなりあったというような報道もされています。

 人事院は、別に人件費の縮減を目的に設立されている機関ではありませんから、本当に先ほど総裁が言われたように、同種同等の比較をきちんと行って公務員の皆さんの意欲をかき立てる、それが本来の使命だと思います。ただ、実際問題として、五十人規模を比較したということによって、二百七十億ぐらいですか、縮減効果が出たというような効果も出ていますので、やはり今回の人事院の抜本的な見直しは私は高く評価されるべきだというふうに考えております。その点を申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 給与構造の改革について、先ほど葉梨委員の方から地域手当の点の御質問がありましたが、昨年の勧告でかなり大きく発表されたわけですけれども、給与構造の改革、この改革の本来の目的というのはどこにあるんでしょうか。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 給与構造の改革、昨年から段階的に実施しておるものでございますけれども、地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間配分の見直し、年功的な給与上昇を抑制して職務、職責に応じた俸給構造へ転換すること、また勤務実績の給与への反映を推進することなどを目的として、俸給制度、諸手当制度全般にわたって改革を進めるということにしているものでございます。

 この給与構造の改革については、先生御指摘のとおり、昨年夏の勧告時におきまして、改革の全体像について、その具体的な措置の内容とともに、平成二十二年度までに完成させるわけですが、そのスケジュールも示したところでございまして、十八年度実施分については昨年給与法を改正していただいたところでございますけれども、今年は、勧告としては、十九年度に実施する分について勧告を行わせていただいたところでございます。

富田委員 ちょっと細かな点を何点か確認したいんですが、地域手当の支給割合の改定がされましたが、勧告の本文を読んでいてちょっとよくわからなくて、別表の七に割合がふえていく表が全部載っておりましたが、これは三つの区分以外は全部割合がふえていっている。なぜこんな全部ふえるのかなと思って、本文を読んでもよくわからなかったので、御説明を聞きました。これは二十二年までに目標が決まっていて、それが法律事項で、そこまできちんとやっていくというふうに御説明を受けたんですが、そういう理解でよろしいんですか。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、この地域手当の導入につきましても、俸給水準の引き下げを段階的に実施することによって少しずつ原資が生じてまいりますので、その原資を用いて実施することとしておりまして、地域手当の支給割合の引き上げについては二十二年度まで、段階的に実施して二十二年度に完成させるということにしております。

 その完成時の支給割合については法律で定めておりますけれども、完成までは暫定的な支給割合ということになりまして、改正法附則によりまして人事院規則で定めるということにされております。今回の報告でもそのことを触れているものでございます。

富田委員 わかりました。

 もう一つ、広域異動手当を新設されたわけですが、勧告の本文の十七ページに広域異動手当の新設についてずっと説明があるんです。これは、地域に準拠するような基準を決めると、広域異動するような企業は地域に根差した企業よりはかなり給与水準が高い、それが公務員の給与に反映されない、そこを考えて新設したんだというふうな記述になっているんですが、これだけ見ると、これで、このパーセンテージを上げなきゃならないのかというのが何も出てこない。

 御説明を伺いましたら、こういう資料がありますということで、約三・五%ぐらいですか、地域型の企業に比べたら異動するかなりの規模の企業というのは給与水準が高いんだというような数字もいただいたんですが、そこはきちんと民間の方の地域密着型の企業と異動するようなある程度の規模の企業とを比較して、きちんとしたデータを持った上でその三・五というのを出して、公務員の場合は六十キロ、三百キロと、かなり異動する方もいらっしゃるので二段階に分けたというふうな理解でよろしいんですか。

関戸政府参考人 この広域異動手当につきましても給与構造の改革によって実施するものでございますけれども、給与構造改革によりまして、職員の俸給水準を全体として、民間賃金水準の低い地域の水準というのを考慮いたしまして引き下げます。その引き下げる中で公務員の中の配分をどうするかということでございますけれども、民間を見ますと、他県に支店を持って広域的に転勤のあるような民間企業の従業員の賃金水準というのは、先ほど話にありましたように、調査をしてみたら、それ以外の、地域の平均的な民間企業の従業員の賃金水準に比べまして三・五%程度高いという実績がございます。

 そういう実態を考慮いたしまして、公務において広域異動を行っているような職員というのは、下げるだけじゃなくて、四・八%下げることになりますけれども、四・八%下げるだけじゃなくて、ある程度上積みの調整を行う必要があるということで、そういう調整を行って広域的な人事異動の円滑化を図るということで新設をしたものでございます。

富田委員 御説明はよく理解できますので、了解をいたしたいと思います。

 もう一つ、今回の改正で扶養手当の改善、お子さん三人目の扶養手当、これまで五千円であったのを千円アップして、一人目、二人目と同じように六千円にするというふうな改善がされていますが、その件に関する勧告の記述を読んでいますと、あれっというふうにちょっと思いました。

 ちょっと御紹介をさせていただきます。二十一ページにこんなふうに書いてあります。「民間における家族手当の支給額と職員の扶養手当の現行支給額とを比較すると、配偶者と子二人に係る支給月額についてはほぼ見合うものとなっている。」これについては参考資料もいただいて、ほぼ同額の金額になっているという資料もいただいたんですが、この本文で、次に、「一方で、現行の扶養手当においては、三人目以降の子の支給月額が五千円となっており、二人目までの子が六千円であるのに対し千円低い額となっていることから、我が国全体としての少子化対策が推進されていることに配慮し、扶養親族である子等のうち、三人目以降に係る支給月額を千円引き上げ、二人目までの子等の額と同額とすることとし、給与構造の改革の実施とあわせて平成十九年四月一日から実施することとする。」

 これは、先ほど来総裁が言われていた同種同等の比較は、二人目までは比較しているけれども、三人目については少子化対策をぼんと表に出してきて、五千円であったのを同じ六千円にするんだというのは、ちょっと何か合わないんじゃないかな。もし少子化対策をと言うなら、三人目の方についてはもっとどんと出せという、児童手当の議論じゃありませんけれども、そういうふうになるのではないか。同種同等を比較して、子供三人目の民間の手当がどうなっているのかという数値も持っているというふうに説明では聞いたんですが、実際にはその資料はありませんので、そのあたりはどういうことでこうなったんでしょうか。

関戸政府参考人 扶養手当の額をどうするかということについては、官民給与を比較して、民間賃金準拠ということで、全体の給与水準をどうするかということが決まった後の公務員の給与の配分の問題として改定をさせていただきます。

 ただ、そのときに、民間の動きというものを無視するわけにはいかない、やはり参考にしながら考えていかなきゃいけないということで、御指摘のように、扶養手当額の今までの改定に当たっては、配偶者と子二人の世帯について、民間で家族手当がどのような仕組みになっているのかということを参考にしながら、全く合わせてきているというわけじゃございません、参考にしながら改定を行ってきているところでございます。

 ただ、その参考にしている数値を見ますと、民間と公務でことしの場合はほぼ見合っていた。具体的にいいますと、二万五千三百五十二円と二万五千円ということでほぼ見合っていたということで、そういう意味では、民間の家族手当の支給状況との比較を参考にするということで考えた場合には改定の必要はなかったということでございます。

 ただ、現行の扶養手当の制度において、三人目以降の子の手当額が二人目までの子の手当額よりもまだ千円低いという状況が残っているわけで、これは平成五年以降大分改善をしてきたわけですけれども、まだ差が残っている。この差は、今、全体としての少子化対策が進められているということに配慮すれば、早く是正をする必要があるだろうということで、今回、給与構造改革の実施とあわせて、給与構造改革の原資を活用させていただいて来年四月一日から改定を行うこととしたというものでございます。

富田委員 別に趣旨に反対しているつもりはありませんので、御説明は御説明として了解したいと思います。

 退職管理について質問通告をしていたんですが、もう残り三分となりましたので、ちょっと申しわけないんですが割愛させていただきまして、育児のための短時間勤務の制度の導入について最後に御質問をしたいと思います。

 これは、私どもの党も少子化対策に一生懸命力を注いでおりまして、こういった取り組みが必要だという指摘もこの春させていただいております。

 今回の短時間勤務制度の導入について、意見申し出に至った経緯について簡単に御説明いただきたいんです。

吉田政府参考人 御説明いたします。

 現在、急速な少子化が進行する中で、官民を問わず、少子化対策として職員の仕事と家庭生活の両立支援を進めていくことが求められております。

 現在、国家公務員につきましても、フルタイムの育児休業制があるわけですけれども、一年を超える育児休業の取得者が少ないこと、それから男性の取得率が低いことなどが認められまして、仕事から完全に離れることなく育児を行うことができる短時間勤務制を導入することが、勤務をしながら安心して子育てができる環境の整備として重要ではないかと考えたところでございます。

 この観点から、平成十六年、十七年の勧告時の報告におきまして、常勤職員のままで短時間勤務をする、そういう仕組みの導入について検討することを明らかにいたしまして、その後随時検討を進めてきたところでございます。

 この点につきましては、昨年六月のいわゆる骨太二〇〇五や、十二月の男女共同参画基本計画におきましても「常勤の国家公務員に育児・介護のための短時間勤務制度を導入する。」というふうに閣議決定されているところでございます。今般、昨年来、関係者との調整も調いまして成案がまとまりましたので、給与勧告を機に、これとあわせまして、国会及び内閣に対しまして意見の申し出を行ったところでございます。

富田委員 今の御説明を受けて、最後に総務省に現在の状況を確認したいんですが、今説明があったように、これまでの制度ではなかなか育児休業を利用しづらかった、部分休業制度等もありましたけれども、やはり同僚に遠慮してなかなかとりにくかった。そういったことで今回のような制度の導入の提言になったと思うんですが、そういうふうに考えると、秋の臨時国会にでも総務省の方できちんと法案を用意して提出すべきだというふうに思うんですが、現在、どんな検討状況なんでしょうか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 八月八日に、人事院から、育児のための短時間勤務制度の導入について意見の申し出をいただいたところでございます。当該申し出は、御案内のとおり、職員が職務を完全に離れることなく育児を行うことができるようにするものであり、職員の職業生活と家庭生活の両立の支援に資するものというふうに私どもも考えております。

 人事院の意見の申し出を受けまして、私どもいろいろ検討作業に入っているわけでございますが、人事院からいただいた意見の申し出というのはやはり一般職にかかわるものでございまして、意見の申し出の対象外となっている特別職である防衛庁職員とそれ以外の特別職の方々の取り扱い、あるいは、かなり新しい考え方に基づきまして、法制的な詰めも必要でございます。あるいは、私どもとして考えなければならない退職手当の取り扱い等の問題がありまして、今、必要な法律案の作成につき鋭意作業を進めているところでございます。

 先ほど臨時国会という話がございましたが、私どもといたしましては、臨時国会をどう考えるかというのは申し上げにくいのですが、かなりこれらの検討については一定の時間をいただきたいというふうに思っておりまして、臨時国会というのはちょっと厳しいというふうに考えております。

富田委員 厳しいのはわかるんですけれども、もう少し熱意を持ってやらないと通常国会も間に合わなくなるんじゃないかと思いますので、その点だけ指摘させていただいて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

中谷委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 私は、基本的には、事務事業の抜本的な見直しや権限の地方への移譲、そうした地方分権を促進することなどによって公務員の総人件費を削減する、そういうことについては大賛成でございますけれども、しかしながら、優秀な公務員を採用するためにはいたずらに公務員の給与を引き下げるべきではない、そういう基本的な考え方を持っております。

 そうした基本的な考え方に基づいて、以下、質問をさせていただきますので、執行部の明快な答弁をお願いしたいと思います。

 まず、大きな一点目として、給与関係の勧告、報告について質問をさせていただきます。

 まず、比較対象企業規模を変更した理由について、人事院にお伺いをいたします。

 今回、企業規模を、御案内のとおり、百人以上規模の事業所から五十人規模の企業そして五十人の事業所というふうに見直しをしたわけでありますが、その見直しをした、変更した理由について、私、幾ら読んでも全くよく理解できないんです。明快にお答えをいただきたいと思います。

谷政府参考人 従来、官民比較に当たりましては、比較の対象として百人以上という企業規模を採用してきたわけでございますが、これは昭和三十九年の勧告から長い間続いてきた考え方でございました。そして、これによりまして、従来、民間従業員の過半数をカバーしてまいりましたので、そういう点からも社会的なコンセンサスが得られてきたものと考えておりました。

 しかしながら、近年、国会における御議論あるいは政府の閣議決定その他におきましても、比較対象企業規模を含めたこれまでの官民給与の比較方法につきまして見直すべきだという御意見が強いわけでございまして、そういう意味で社会的なコンセンサスが得られているとはもう必ずしも言えない状態になってきたのではないかと考えたところでございます。

 こういった状況のもとで、あわせまして職員構成の官民における変化もございますので、このあり方については検討しなきゃならぬという問題意識もあったものでございますから、それらも含めまして検討しようということで、昨年来、学識経験者によります研究会あるいは各界有識者によります給与懇話会というものを設置いたしまして、その意見をお聞きいたしますとともに、各府省の人事当局や職員団体の御意見も聞きながら、慎重に検討を進めてまいりました。

 その結果、人事院といたしましては、この比較対象企業規模につきましては、月例給における同種同等の者同士を比較するというこの原則は一番基本的な原則でありますので、これは堅持しなきゃならぬわけでございますが、そのもとで、同種同等の業務を行う民間企業の従業員の給与をできる限り広く把握する、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるということが適当であると考えられるわけでございますので、そのような基本的な考え方に立ちまして検討いたしましたところ、企業規模百人未満の民間企業のうち企業規模五十人以上の民間企業につきましては、多くの民間企業におきまして公務と同等の役職段階、部長、課長、係長などを有している、この状況は百人以上規模の場合とほとんど変わらない、そういうことから、役職の責任の大きさを基本として公務と同種同等の者同士を比較するという比較が可能であるということ。

 それから二つ目に、企業規模五十人以上の民間企業であれば、これまでどおり精緻な実地調査が可能であり、そういう意味で調査の正確性を確保することができるということ。

 それから、本年の職種別民間給与実態調査におきまして、企業規模五十人以上の民間事業所を含め調査いたしました結果、企業規模五十人以上百人未満の民間事業所におきましても、八四・三%の事業所において調査を完了いたしまして、官民の給与比較の対象となる役職段階別の調査実人員も十分に確保することができました。

 こういったことを踏まえまして、比較対象企業規模を従来の百人以上から五十人以上に改めるという判断をいたした次第でございます。

福田(昭)委員 そういう説明はわかりますが、なかなか理解できませんが、今までは、今御説明のとおり、同種同等の原則を維持してきたわけですね。昨年の答申でも、この比較対象規模は変える必要がない、こう書いてありますね。それなのに、なぜことしからより広くという原則を取り入れたのか、その辺をもう一度説明していただきたい。

関戸政府参考人 先生御指摘ではございますけれども、昨年の勧告、報告の中では比較企業規模については特に触れておりません。おっしゃるとおり、比較企業規模を見直すということまで明確には書いていないということはそのとおりでございます。

 今総裁の方から御答弁しましたように、当時から、組織構成等が相当変わってきているということで、比較方法の見直しをやらなきゃいけない、研究会を設けましょうということだったんですけれども、その後、最近の国会における御議論ですとかということを踏まえまして、比較企業規模も含めた比較方法のあり方について改めて検証する必要があるということで検討させていただいた結果、今回の見直しになったというものでございます。

福田(昭)委員 一応そういう経過を踏まえたということでありますが、四十二年前には池田・太田議長の政労トップ会談があったわけです。それでは、今回の見直しに当たって、そのような会談をやらなかったのはなぜでしょうか。お答えいただきたい。

谷政府参考人 三十九年当時の会談も三公社五現業についてのお話でございまして、非現業の職員について同等の基準を採用しようということは人事院独自の判断で行ったものでございます。

福田(昭)委員 人事院独自の判断だったから今回は聞かなかった、こういうことですか。

谷政府参考人 当時も、人事院としては、非現業の職員については人事院として責任を持って判断をいたした次第でございます。もちろんその際に当時の三公五現についての政労の合意というものを十分勘案した上で同等の選択をしたわけでございますが、それ以来随分時間もたちまして、先ほど申し上げましたように、このあり方に対する世間一般のお考え方も随分変わってきておる。それから、当時、合意がありましたけれども、そういう合意がありましたような状況そのものもずっと変わってきておるわけでございまして、その中で改めて、いろいろな方々の御意見を聞きながら、人事院としてより適切な比較のあり方はどうかということを考えさせていただいたということでございます。

福田(昭)委員 ぜひとも、これからでも遅くないので、ぜひ政労トップ会談は行うべきだと私は考えております。

 今回の企業規模の変更をしたことについては、私から言わせていただければ、これはあくまでも、政府の公務員の総人件費削減、そのためにはどうしても企業規模を縮小せざるを得なかった、そのための理由づけを今回したにすぎない、そのように考えることができる、私はそのように思っているところでございます。

 そこで、次に、質問通告から一つ飛ばして進みますけれども、比較対象の変更を行わなかった場合の勧告についてお伺いをさせていただきます。

 従来の比較方法によりますと、その差が月例給で一・一二%、一時金で〇・〇五カ月の改善勧告が行われたということでございますが、このことについてはそのように理解してよろしいでしょうか。

関戸政府参考人 今回の官民給与比較方法の見直しでございますけれども、総裁からも先ほど答弁しましたように、官民給与の正確な比較を実現して、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるという目的で行ったものでございまして、人事院としては、今回の見直しを行った上で、比較した結果としての公務員の給与水準というものが適正なものと考えているところでございます。

 ただ、参考のためにということであくまでも申し上げているものでございますけれども、今回の比較方法の見直しを行わなかった場合には、先生御指摘のように、月例給ではプラス一・一二%、四千二百五十二円の官民較差が生じることとなりますし、特別給につきましては〇・〇五月分増加するということになっていたところでございます。

福田(昭)委員 そうしますと、本当は、実は公務員平均当たり九万円の給与の改定があったということでございまして、これが全くなくなったということでございます。御案内のとおり民間では、景気の上昇もありまして、賃金の、給与の改定があったということでございまして、民間の方は給与が上がった、一方、公務員は据え置かれたということでは、公務員の士気がますます下がるのではないか、そういう心配もありますし、また、聞くところによりますと、ことしの国家公務員、地方公務員の受験応募者も非常に急激に減った、こんな話もございます。優秀な公務員を採用するということを考えれば、ここは慎重に対処すべきことと私は考えますが、いかがでしょうか。

谷政府参考人 今回のことにつきましては、いろいろ政府の御事情ということもあって、閣議決定での御要請ということもありましたけれども、私どもはあくまでも中立第三者の専門的な機関として、同種同等の業務を行っている方々同士を比較するという民間準拠方式、この原則のもとで民間従業員の給与をより広く反映させるという考え方のもとにこの判断を行ったものでございます。

 しかし、その結果、現実的には、従来基準でいけば引き上げ勧告となった可能性が大なわけでございまして、その分、得べかりしとまでは言えませんけれども、支給を受けられたかもしれない給与が今回の見直しによって受けられなくなるという、このことはそのことなりに事実でございます。そのことはそうではございますけれども、今回の見直しの趣旨は今申し上げたような趣旨のものでございますので、このことが直ちに人材確保の問題に結びつくというものではないかと存じます。

 しかし、御指摘の応募者が減っておりますことの原因についてはまだつまびらかにはできませんけれども、しかし、やはり公務部門に有能な人材を確保していくということは非常に重要なことでございますし、まずその先に、現在公務部門で働いておられる方々が十分な士気を持って、保ちつつ公務に従事されるということも非常に重要なことでございますので、そのことにつきましては、このこととは別に、私どもとしても十分考えて努力をしていかなければならぬと思います。

 それからまた、今回のことにつきましても、私の談話でも申し上げましたけれども、国民の皆様にも深い御理解を賜りたいと考えている次第でございます。

福田(昭)委員 総裁の話を伺っておりますと、あくまでも人事院が、政府の要請ではなく、人事院みずからの考えでこの給与改定の企業規模の比較見直しをしたんだ、変更したんだという話でございますけれども、第三者から見ますと、どうも政府の圧力に屈して、人事院の中立性、そういったものをみずから放棄した今回の判断ではなかったのか、そのように私は考えるわけであります。

 そうした批判も実際あるわけでありますが、そうしたことに対して総裁はどう考えていらっしゃるのか、今回の人事院勧告、報告が非常に適切なものであったと考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

谷政府参考人 私どもは、私はもちろんでございますけれども、人事院のこの問題に関与しました職員全員が真摯にこの問題について取り組んでまいったわけでございまして、私といたしましては、自信を持って、中立公正な第三者機関として判断をさせていただいたと考えております。

福田(昭)委員 それにしては、組合側の反発が物すごいんですね。ぜひとも、人事院が自信を持って勧告、報告をしたということであるならば、もう少し組合側に納得のできる説明をしっかりと果たしていただきたいな、そういうお願いをしたいと思います。

 さて、それでは次に、ことしの勧告等の取り扱いについて、これは内閣官房の方にお伺いをしたいと思っております。

 民間の給与の改定があったにもかかわらず、今回は公務員の給与の改定がない、据え置かれたということでございます。そうした中で、先ほども申し上げましたが、今回のこの勧告の取り扱い方針を決めるに当たって、今からでも遅くはないと思うんですが、政労のトップ会談を開く考えがあるかどうか、お伺いをしたいと思います。

鈴木内閣官房副長官 福田委員にお答えを申し上げます。

 国家公務員の給与については、労働基本権制約の代償措置の基本である人事院勧告制度が定められ、人事院は専門第三者機関としてその時々の経済雇用情勢等を踏まえて勧告を行っており、政府としては同制度が実効を上げるよう最大限の努力をしなければならないと考えておるわけであります。今の御質問の中で、いずれにしても、政労トップ会談を実施することは考えておりませんが、人事院からの勧告の検討に当たっては、関係者の意見を十分お聞きしていきたいと考えております。

福田(昭)委員 今さらとても恥ずかしくて行えないということですかね。よくわかりました。

 それでは次に、この取り扱い方針の決定については、いつ、どの内閣が、現小泉内閣で行うのか、それとも次の内閣にお任せするのか、その方針の決定時期についてお伺いをしたいと思います。

鈴木内閣官房副長官 お答えをいたします。

 政府としては、御存じのように、去る八月八日に人事院勧告を受け取りまして、八月十五日の給与関係閣僚会議において国家公務員の給与の取り扱いの検討に着手したところでございます。

 政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢のもと、国政全般との関連を踏まえつつ、人事院勧告どおり実施すべく最大限の努力を尽くすべきものと考えておりまして、本年度においても、こうした方針のもとで、国民の理解を得られる結論を早急に得るように今検討をしている最中でございます。

福田(昭)委員 早急にでは困るんですよね。それはやはり、小泉総理も九月にはやめると言っているわけでありますから、通常のスケジュールですと、大体九月に閣議決定しているわけですよね。ですから、小泉総理がやめる前に決断をするのか、それとも新内閣に任せるのか、これは明快にしないと、やはり地方の方も困っちゃうんじゃないでしょうか。

 国のいろいろな方針決定を受けて、それぞれ地方自治体でも、これから都道府県の人事委員会から勧告が出るのかもしれませんけれども、そんなことも踏まえて、地方でも取り扱いを決めていくということになるわけですから、やはりしっかりとまず国が決めるということが大切なことだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木内閣官房副長官 同じ答えになると思いますけれども、国民の理解が得られるよう、結論を早急に得るよう検討していく所存でございます。

福田(昭)委員 二度三度聞いても仕方がないのかもしれませんが、そういう意味では、残念ながら、きょうは安倍官房長官は何か忙しい仕事があって来られないそうでありますので、非常に残念でございますが、しかし、もしかすると安倍長官が責任を持って対応しなくちゃならない話ですから、これはぜひきょうは明快にしてほしかったな、こういうふうに思っているところであります。

 それでは次に、今回の比較対象規模等の見直しが地方公務員の給与に与える影響について、総務大臣にお伺いしたいと思っております。

 何か、けさの新聞を見ておりましたら、総務省は昨日、地方公共団体に対して、それぞれの人事委員会の勧告に当たって企業規模を百人から五十人規模に見直すようにという通知を出したという新聞報道がございましたけれども、そんなことは本当なのかどうか、それを確認させていただきたいと思います。

上田政府参考人 お答えいたします。

 今年度の各地方公共団体の人事委員会におきます勧告の作業を進めるに当たりましてどういった点に留意すべきであるかということを、先ほどから人事院についていろいろ御議論がありますように、今回、対象となる企業規模を広げるといったことがありますので、そういったことについて、地方公共団体でもそういう点に留意して進めるようにという趣旨の通知を、八月二十三日ですからきのうですか、発出したところでございます。

福田(昭)委員 ということは、もう政府の方針は決めたというふうにも考えられるんですよね、基本的に。どうなんでしょうか。

上田政府参考人 お答えいたします。

 官民比較の手法というものは、現在の私どもの考え方は、現実問題、人事院と人事委員会はいつも一緒に作業しておりますし、基礎となるデータというのは共有しております。したがって、比較方法についてもやはりバランスをとっていくことが必要だと思っておりまして、人事院においてこうした対象企業規模を五十まで拡大したものを勧告のベースにしたということを踏まえますと、地方公共団体においてもそういう調査結果をパラレルに活用してやっていただくことが必要だと私どもは考えている次第でございます。

福田(昭)委員 私もその趣旨はよくわかるんですよ。しかし、政府でまだ決定していないものを地方公共団体に通知するということについていかがなものか、私はそう聞いているわけですね。

 それはそれとして、本題の方へ入りたいと思います。これは通告いたしておりませんが、もしわかればお答えをいただきたいと思っています。

 地方公務員の国家公務員に対するラスパイレス指数が、平成十七年、昨年の四月一日現在では全地方公共団体で九八・〇、こうなっておりますが、ことしの十八年四月一日現在で幾つになっているのか、お答えをいただきたいと思います。

上田政府参考人 給与実態調査は、例えば十八年の四月一日現在の数字は、その日のデータを今、各市町村なり都道府県なりに我々ヒアリングをして集計をする作業の途上にあります。特に、県分は大体出てきていると思いますけれども、市町村分が大体九月ぐらいにデータが出てきますので、やはり例年のペースを見ますると、年末ぐらいにならないと当該年度の四月一日のラスパイレス指数というのは数字としては固まらないというふうに考えております。

福田(昭)委員 そういうことではいたし方がありませんが、きっと、ことしの四月一日、十八年の四月一日現在のラスパイレス指数はもっと下がっていると予想されますね、基本的には。九八以下にもっと下がっていると思いますね。

 そうした中で、今回、企業規模の変更があるわけでございます。国家公務員の給与は今回据え置かれたということでございますけれども、しかし、地方自治体によってはマイナスの勧告が出される可能性が非常に高いのではないかと私は思っておりますが、その見通しについて総務省で何か考えておれば、ぜひお答えをいただきたいと思います。

上田政府参考人 ことしの勧告が各人事委員会でどうなるかということはちょっと予想はいたしかねますけれども、先ほど来議論がありますが、ここ一、二年、給与構造の改革等でコンセプトにしておりますのは、民間の水準が地域ごとに違うので、公務員のようにこんなに日本全国一律でいいのだろうか、こういう問題意識を踏まえて、例えば本俸の水準を低いところに合わせて地域手当で調整をするというようなことをやってきております。

 したがって、そういった一連の改革の趣旨を踏まえて人事委員会で勧告をすれば、ばらつきというものが今後出てくることはあり得ると思いますけれども、これが直ちにマイナスになるかどうかというと、ちょっと私は断言をいたしかねるところでございます。

福田(昭)委員 総務省では全然考えていないような話でございますが、実は今回も、人事院の勧告に当たりましても全国の企業を調査したわけですね。五十人規模にしたおかげで企業の数もふえたわけであります。そうしますと、実は五十人規模程度の企業のサンプル数が東京と地方では全く数が違っております、割合が違っております。お伺いするところによりますと、東京ではわずか八%しかないそうでありますが、沖縄では五〇%、五十人以上の規模の企業が含まれているそうであります。そうしますと、当然、私は相当の格差が出ると思っております。

 したがって、この辺、このとおりやれば沖縄では相当大幅なマイナス勧告が出るのではないか、私はそう予測をいたしているわけでありますが、そうしたことに対して総務省では全く予測をされていないわけでありますか。お伺いをしたいと思います。

上田政府参考人 先生のおっしゃるのは、我が国の場合に、一般的に小規模企業の方が給与水準が低い傾向があるから、そういうものを母数に持ったところの方が低くなるのではないか、こういう御推測だというふうに思います。確かにそういう推測はあり得ると思いますけれども、しかし、だからといって、その結果がどうなるかということを私が今の段階で申し上げることはちょっといたしかねますので、御容赦をいただきたいというふうに思います。

福田(昭)委員 なかなか答えにくいかもしれませんが、部長さんは昨日の日経新聞をごらんになりましたか。昨日の日経新聞には、財務省が昨年の全国四十七都道府県の地方公務員の給与を調べた結果が発表されておりました。これによると、地方公務員の給与は民間より二一%高く、こう書いてありまして、特に東北、九州では三割も高い、こう書いてありますね。こうなりますと、まさに企業規模を百人以上から五十人以上の規模にしてやりますと、この財務省の調査結果のとおり格差は明確に出る、私はそう思っているんですね。

 ですから、そういった意味で、これは、国の方は幸か不幸か据え置きということになりましたけれども、地方では相当のばらつきが出て、それこそ経済力の弱い地方では大幅なマイナス勧告が出る、そういう予想が私としては立てられるわけであります。こうしたことに対してもやはり慎重にやらなくちゃならないんじゃないか、私はこう思っておりますが、いかがでしょうか。

上田政府参考人 申しわけございません。今のはちょっと、データのことについて一言私から申し上げて、大臣から御答弁があるかもしれませんが。

 財務省のデータというふうに新聞に出されたデータは、先ほど来ここで議論しておりますいわゆるラスパイレス方式でなくて、要するに、どういう仕事をしている人を合わせるかということを無視して、例えば、いろいろな、国でいえば行政2種とかそういう人たちも全部含めて、企業規模は合わせておるようですけれども、やっておりますので、あの格差が人事委員会が勧告する場合の格差になるというふうには考える必要は全くないと思います。それは比較のベースが違いますので。

 財務省としては、多分歳出をけちろうと思っているので言っているんだと思いますけれども、給与比較の方法としては、公務員給与はあそこまでいくというわけではないということ。ちょっと言い過ぎかもしれませんが。

竹中国務大臣 今、公務員部長が私よりも大胆に発言をされましたが、要するに、こういう比較というのはやはり技術的に難しい問題がございます。何と何を比較するか、同じものを比較しなければいけないということで、例えば、給与であれば、年齢とか学歴とかを調整するラスパイレス指数を用いるというのは大変定着した一つの工夫であるわけですが、同時に、今回はそのサンプルそのものを、やはりできるだけ広い方がいい。できれば全数調査をすれば一番いいわけです、これはもう全部わかります。しかし、それができないからサンプルをとるわけですが、そのサンプルを広げようではないかと。広げるに当たって、例えば五十から百の間が比較可能であるかということについて、先ほど総裁が御答弁されましたように、そこについても精査をして、これは比較可能であるだろうということで、そういう意味では、できるだけ広げた方がよいのではないかというのがあの勧告の趣旨であったというふうに私は理解をしております。

 委員の御懸念は、その意味では地域の格差が今後どうなっていくのかということなわけですけれども、我々もそこはしっかりと見ていきたいと思いますが、現時点では、それがどのように影響が出るかというのは、特にこれは数字でありますので、数量的に申し上げるのは難しいということは御理解を賜れるのではないかと思います。

 地方公務員の給与の地域間のばらつきについては、これは民間の給与に準ずるというのが大原則であるわけですが、その民間の給与が確かに地域でも違います。市場で決まる民間の給与は、ちょっと理屈っぽく言えば、その地域地域の労働の限界生産力によって賃金が決まる、それに地域の生活費等々のコストの要因が加えられて現実には決まっていくわけでございますけれども、それは当然同じではございません。むしろ今までの地方公務員の給与というのは民間に比べて画一的に過ぎる傾向があるのではないか、そういう御指摘があって、いろいろな工夫を今まで我々はしてきたし、だからこそ、地域の民間給与の実態をより正確にとらえて反映させようという努力を我々もしているわけでございます。

 そういうふうに、できるだけ適正に反映させるという観点から今回の人事院の勧告等も出ているわけでございますので、そうした国の見直しに準じた取り組みを地方公共団体についても徹底して行っていくことがやはり方向としては必要であろうというふうに思っております。

福田(昭)委員 財務省のもくろみどおりこれは下がらないんだったら、地方の公務員もうれしいことかなと思いますけれども、本当にこれは大変な数字だなというふうに思っております。

 それでは、給与の関係の勧告、報告については以上で終了して、大きな二点目に入りたいと思います。

 給与構造の改革についてでございますけれども、ここも三点ほど用意をいたしておりましたが、時間の関係で一つだけ御質問をさせていただきます。それは、今回の総人件費の削減二・六兆円についてでございます。これは経済財政・金融担当の副大臣にお願いしたいと思っております。

 御案内のとおり、今回の企業規模の見直しを行うことによって、本来なら、国家公務員が約九百四十億円、地方公務員が二千四百九十億円、本当は人件費を増加させなくちゃならなかったわけでありますが、今回据え置くことによってこれが実は削減できたというのが財務省の見解でございます。

 そうした中で、今回、政府がまさに骨太の二〇〇六の方針と同時に歳出歳入一体改革の工程表をつくったわけであります。その中で、御案内のとおり、公務員の総人件費を五年間かけて二兆六千億円削減する、こういう目標を掲げているわけでありますが、今回の勧告が据え置きだということになると、初年度からその予定が狂ってしまうんじゃないかというふうに思われますが、いかがでしょうか。

櫻田副大臣 お答えいたします。

 基本方針二〇〇六の別表における人件費のマイナス二・六兆円の歳出削減は、比較対象企業規模の見直しによる給与の抑制や定員純減等により達成されるものであるというふうに理解しておりますし、今般の人事院勧告は、比較対象企業規模の見直しを行った結果、前年度据え置きとされたものであり、基本方針二〇〇六で示された考え方に沿ったものであると考えております。

 今後とも、定員純減についても努力を行うなど、基本方針二〇〇六に沿って公務員人件費の抑制を進めてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 時間の関係でこれ以上質問いたしませんが、そうしますと、人件費が抑制できたので方針に沿っているんだ、こういうお答えでよろしいでしょうか。(櫻田副大臣「はい」と呼ぶ)結構です。ありがとうございました。

 それでは次に、大きな三点目の人事管理について質問をさせていただきます。

 人事管理についてもたくさんありましたが、時間の関係で、まず、天下り問題への対応についてお伺いをしたいと思います。

 天下り問題をしっかりと解決していくためには、複線型人事管理制度の具体化とか、あるいは専門スタッフ職の給料表といいますか俸給表、そういったものを新設する、そうしたことによっていち早く早期退職勧奨制度を廃止する、こうしたことが大切だと考えておりますが、これらに対する対応が今非常におくれている。どちらかというと、余りやりたくないんじゃないかというようなことも考えられるわけでありますが、このことに対して、例えば今回の行政改革の法案の中にもこうしたことを急いでやるというようなことがなかったわけでありますが、今後政府としてはどんなふうに進めていく考えなのか、お伺いをしたいと思います。

鈴木内閣官房副長官 お答えをします。

 いわゆる天下りの問題の一因とされる早期退職慣行の是正については、今、政府全体として取り組んでいくところであります。

 そのためには、能力・実績主義の徹底により、年次主義やピラミッド形の人事構成の見直しを進めるとともに、複線型の人事管理を進めるために必要なスタッフ職の整備や充実、幅広い民間との人事交流を図り、個々の職員の能力を生かした人材活用を行っていくことが極めて重要だと認識をしております。

 その上で、複線型人事管理の具体化に向けても各府省を督励してきたところでありまして、今後とも人事院と密接な連携を図りながら、さらに検討を進めていきたいと考えております。

福田(昭)委員 これはお答えは結構でございますが、私は、この天下り問題をしっかりと抜本的に解決するためには、やはり担当省庁といいますか担当大臣をしっかりと決めてやっていかないと、これはなかなか是正できないんじゃないかというふうに思っております。

 特に、複線型の人事管理制度ですか、これについては、まさに専門スタッフ職の、そういったことについて各省庁の検討を待ってというような人事院の報告などもありまして、この辺は内閣がしっかりと管理をしながら進めていかないと、とてもとても、いつになっても解決できないんじゃないかというふうに思っておりますので、ぜひ御検討いただきたい、こう思っております。

 その中で、もう一点だけお伺いいたしますが、特殊法人、独立行政法人等の天下り先の給与及び退職金などについてお伺いしたいと思っています。

 こうしたことについて、どうも事前ヒアリングをしたところ、どこもまとめて調査をしているところがないというんですね。そうなると、全く解決策、処方せんの書きようがないということでございますから、こうしたことも含めて、天下りをしっかりと廃止していく、担当する省庁というのをしっかりと決めていく必要がある、そのようにつけ加えをさせていただきます。

 それでは次に、育児のための短時間勤務制度についてお伺いをいたします。

 まさに育児のための短時間勤務制度につきましては、私も、問題点はあるものの、勤務の多様な働き方を保障するものとしては評価をしたいというふうに思っておりますが、その際、やはりこの任期付短時間勤務職員の処遇が余り違っているということについては少し考えるべきではないか、あるいは介護を行う職員のための支援についても、これが見送られてしまったわけでありますが、やはり早急に申し出を人事院としては早くすべきではないか、このように考えておりますが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の任期付の短時間勤務職員、これは後補充のために採用される職員でございますが、この職員は、育児のための短時間勤務を行う常勤職員が処理することができなくなる業務を分担させるために任用する職員でございますので、常勤職員と同様に俸給表を適用するということを考えております。

 また、諸手当につきましても、基本給としての性格を持つ地域手当、あるいは特別給、いわゆるボーナスでございますが、これにつきましては常勤職員と同様に支給するなど、働きに応じた処遇を確保しておりまして、常勤職員である育児短時間勤務職員と比べて基本的には給与処遇に差はないものというふうに考えております。

 なお、先生御指摘のように、任期付短時間勤務職員は非常勤職員という位置づけでございますので、共済や退職手当につきましては適用されませんが、それにつきましては、制度を所管しております財務省あるいは総務省からそのような説明を受けております。

 それから、介護の問題でございますが、介護につきましては、介護休暇という形で既に最長六月間の休暇をとる仕組みがございますが、この利用状況等を見ながら、あるいは民間における普及状況等を見ながら、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 それでは、時間が来ましたので、二点要望させていただいて終わりにしたいと思います。

 一つは、この育児のための短時間勤務制度、これも悪くない制度だと思いますけれども、私は、やはり抜本的な少子化対策をこれからとるためには、北欧で行われておりますようなパパクオータ制度、父親の役割制度、これをやはり、公務員はもちろんでありますが、民間企業にも普及していく、それが非常に大切だと思っておりますので、このパパクオータ制度の日本に合ったような仕組みの導入を一日も早く検討すべきだというふうに思っておりまして、そのことを一つお願いしたいと思います。

 それからもう一つは、最初から、二回ほど申し上げておりましたが、今回の勧告において、月例給における官民給与の比較方法の見直し、変更、これについては、先ほどから話がございましたけれども、四十二年ぶりの変更ということでございますから、これは三度目になりますが、やはりここは小泉総理の最後の仕事として、小泉・高木トップ会談を行って、何としても労働者側の理解を得ていく、それが大事なことではないかと思っております。

 この二点を要望させていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私、きょうは、人事院の参考人の方にまず最初に伺っておきますが、人勧報告をまとめるときは、これは職員給与に関する報告書なども資料として出されておりますが、そういう勧告をまとめるために各種調査をやっているわけですね。消費者物価指数はどうなっているのかとか、民間賃金指標で給与はどうなっているのか。上がっているとき、下がっているときで当然判断は変わってくるわけですが、まず、その基本となる指数、指標がどうなっているのかを最初に伺います。

関戸政府参考人 お答えをいたします。

 人事院は、御承知のとおり、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させるということで、それを基本として勧告を行っておりまして、勧告に当たりましては、御承知のとおりでございますけれども、民間企業従業員の給与と国家公務員の給与を精緻に調査した上で、双方の給与をラスパイレス方式により精密に比較して勧告を行うということでやっております。

 ただ、そのときに、報告文でも示しておりますように、物価、生計費ですとか給与改定の状況ですとかということを調査いたしております。また、企業の経営努力の状況なども把握しているところでございます。

 本年の場合、ちょっと特徴的なことを申し上げますと、雇用調整などを行っている事業所は大きく減少をしておりますし、賃金改定についても、概観いたしますと昨年よりも改善しているという状況が見られるところでございます。

吉井委員 えらい長い御答弁をいただいたんですが、要するに、私が聞いた二つの点でいいますと、消費者物価指数については昨年四月に比べてことしは〇・四%の増加だ、それから民間賃金指標で給与も昨年四月に比べてことし四月で〇・六%の増加だ。これは人事院の資料の方で出していらっしゃるわけですね。もちろん、物価も上がり、民間賃金も上がっているわけですが、一方で、税負担、社会保障負担増などで可処分所得というのはやはり落ち込んでいるものですから、勤労世帯の消費支出はマイナス三・七%。こういう状況を全体として明らかにしておられるわけですよ。

 そこで、民間であれ公務員であれ、要するに、生活水準維持のために給与をどのように改善していくのか、私はこれが出発じゃないかと思うんです。そういう点で、消費者物価指数が伸びている、民間の賃金指標で給与が伸びている、そういう中で、給与の改善というものはその上に立って考えていかなきゃいけないものだと思うんですが、まず基本のところを伺っておきます。

関戸政府参考人 御指摘のとおり、本年四月の消費者物価指数は昨年四月に比べまして〇・四%増加していますし、所得についても〇・六%、決まって支給する給与については〇・七%ふえているという状況でございます。

 また、賃金についてでございますけれども、生計費等の問題が御指摘ございましたけれども、民間の賃金につきましても、労使交渉などを通じまして、物価とか生計費とかさまざまな要素を織り込んで決定されているわけでございまして、その民間賃金と均衡を図るということを通じて公務員給与を決定するということで、結果として、そういうもろもろのものが含まれた給与水準になるものというふうに考えております。

吉井委員 要するに、消費者物価指数も給与も上がっていて、一方、消費購買力は落ちているという中には、負担がふえていますから可処分所得が減っているわけですね。そういう中で、働く皆さんが、公務員であれあるいは民間の労働者であれ、生活水準を維持していくということ、それをやっていくには、やはり賃金の改善というものを当然考えていかなきゃいけないわけですね。

 そういう点で、人事院というのは、これは冒頭に総裁からもお話ありましたように、労働基本権制約の代償として、労働者の賃金や労働条件を守る立場で、政府の言いなりじゃなくて政府から強い独立性を認められた行政機関ということですね。これは人事院のホームページにも書いてありますが。私、総裁にもう一遍確認しておきたいんですけれども、政府方針とか政府からは強い独立性を認められた行政機関、これが人事院ですね。

谷政府参考人 そのとおりと考えております。

吉井委員 そこで、私、少し不思議に思いましたが、今回の人事院勧告の背景に、例えば、昨年九月二十八日に官民比較方法の見直し検討について閣議決定が行われ、昨年十二月二十四日に見直しをするという閣議決定が行われ、そして、ことし七月七日の骨太二〇〇六ですね、閣議決定されたもので、公務員人件費の抑制の方針と、そのための「人事院において比較対象企業規模を見直すことを要請する」と。要するに、百人以上を五十人以上としたこの決定、骨太で方針が出されて、政府方針どおりのことを進めてきたわけですよね。

 これは事実の問題としてあるわけですが、民間賃金指標で給与が増加している。そういうときに、勧告する賃金を伸び率ゼロにする、抑制したりとかあるいは賃下げを行うとか、政府方針に忠実ということだけじゃなしに、労働者の意見をやはり求める。政府方針を聞いているだけじゃなくて、労働者の声をよく聞く。そういう話し合いを積み重ねてよく検討を深めるとか、そういうことをやはり考えていかないと、人事院というものが政府から強い独立性を認められた機関だといいながら実は閣議決定に示されてきた方針に沿ってやっておったのでは、その手法を含めて、やはり、本当に独立性を持っているのかな、こういうことになってくると思うんです。

 この賃金の扱いなどについて、広く労働団体の皆さん等の意見もお聞きになって、政府の意見を聞くだけじゃなしに労働側の意見もちゃんと聞いて、そして第三者として、中立機関として判断をされたのかどうか、伺います。

谷政府参考人 たび重なる閣議決定の重みというものは十分認識しなきゃなりませんけれども、私どもは、それだけではなくて、政府の方針以上に、国民の意見を代表されます国会での御議論、それから各報道機関等での御意見、それから私どもが独自にお聞きしております地方の方々の御意見、それらすべてを勘案しまして、具体的には、私どもとして学問的、技術的な事項も十分踏まえながらどうあるべきかということを判断させていただいたつもりでございまして、決して御懸念いただきましたような、政府の方針に従ってやったということではございません。

 人事院が中立公正な第三者機関としていろいろな方々の御意見を聞き、その中ではもちろん最大の当事者でございます職員団体、それから各省人事当局、その御意見もお聞きした上で人事院としての判断をさせていただいたわけでございます。

吉井委員 もともと、民間だったら、賃金について合意しないとき、争議等によって、そういう行為を含めて解決を図られるわけですね。しかし、争議権がありませんから、その代償措置としての人事院制度ですから、だから、人事院の方が、政府の方針は非常に重いとしっかり聞いているんだけれども、しかし、労働組合の皆さん、労働者の皆さんの声というものをきちんとよく、繰り返し聞いていくことを積み重ねていくということがなかったら、これは第三者機関、独立機関としての役割を果たしたということにならないと思うんですね。

 人勧というのは私はそういうものだと思うんですが、じゃ、政府方針は重いといってお答えがあったんですが、労働者の、労働組合の皆さんとはどういうふうに意見交換をして判断されたんですか。

関戸政府参考人 毎年の勧告におきましても同じでございますけれども、勧告の作業を進めるに当たっては職員団体からの意見というのを十分に聞きながら行っているところでございまして、本年の勧告について申し上げますと、本年の一月から、これは処遇改善の要求ではありません、ちょっと細かいところは正確ではありませんけれども、一月から勧告までの会見で、百五十回職員団体と会っておりますし、本院で五十五回、地方事務局で九十五回ということで、いろいろな形で職員団体から御意見を聞きながら検討を進めているところでございます。

吉井委員 それで、百人規模を五十人にするということについて、職員の側の皆さんと、労働組合の皆さんと別にそこが一致したわけじゃなく、つまり、政府方針はそっちなんですよね、組合の皆さんはまた違うわけですね。だけれども、何回やったとかいいながら、結局政府方針に忠実な立場でやっていかれたということが現実の問題としてあらわれておりますから、人事院が政府から強い独立性を持った中立機関という、今そのことに疑問符がつけられてくるような事態になっている、こういうことでは人事院制度そのものが危うくなってくるということを私は申し上げておきたいと思います。

 次に、二〇〇四年度民間給与実態統計調査結果によると、民間企業が支払った給与の総額は二百一兆七千七百四十二億円で、前年比〇・九%、一兆九千八十五億円の減少となっています。一方で、給与所得者の数は十八万六千人ふえております。つまり、日本の労働者が受け取る給与総額は毎年減少を続け、給与所得者の数はふえている。経済財政白書にあるように、企業のリストラによる人件費削減圧力を背景として非正規雇用が増加して、結局受取額はどんどん減ってきておる。

 もう少し長いレンジで見ますと、二〇〇〇年から二〇〇四年の四カ年で賃金が十一兆円も下がっていますが、国民の消費購買力は言ってみれば十一兆円、実際には産業連関を考えなきゃいけませんから、それを無視した仮定で、本当はもっと大きなものになりますが、十一兆円落ち込んだということになるわけですね。だから不況の長期化の要因にもなってきた。つまり、賃金の抑制というのは、これは同時に経済にとって重大なマイナスの効果を及ぼすものだということを私はきちんと見なきゃいかぬと思うんです。

 この間、正規労働者は三百万人減少して非正規雇用が三百万人増加していますが、大企業の側は、正規雇用をパート、派遣、偽装請負、アルバイトなど非正規に置きかえて低賃金を押しつけてきました。こうしたときに、国と地方を合わせて公務部門で三千四百三十億円の賃金カットということは、日本の労働者全体の給与総額をさらなる減少へと進めていってしまう要因になるではないか。これは働く人々の暮らしにとってもそうですし、日本経済にとってもマイナスになってくる、このことをきちんと考えて、簡単に賃金抑制という方向には走るべきじゃないと私は思うんです。

 勧告を受けて、じゃ、政府の方で賃金をどうするかというふうになってきますが、竹中大臣に伺っておきたいと思います。

竹中国務大臣 人事院勧告に関しては、我々は、これは労働基本権の代償措置としてそれを尊重する立場にあります。この方針は変わりません。政府全体としてのいろいろな状況の中で、尊重するという方向で議論をしていくということになるのが当然の方向であるというふうに思っております。

 今吉井委員が、マクロ経済的な効果から考えても問題があるのではないか、そういう視点の御指摘であったので、これはそういうマクロ的なことについても当然考えなければいけない重要な問題であろうかと思います。ただ、経済の状況というのは、御指摘のように不況が長期化しているというような話ではなくて、景気は今上向いているわけであります、上昇しているわけであります。そういう中で、二〇〇〇年以降の給与総額の話を吉井委員はされましたけれども、その前の十年間の状況まで踏まえてみますと、労働分配率、資本分配率等々から考えて、むしろ今まさにそれがようやく均衡する状況に向かいつつあるのではないかというふうにマクロ的には私は判断をしております。

 民間の給与は、市場の動向等々、先ほど言いましたような生産性の状況等々で決まります。そして、民間の状況に準拠する形で公務員の給与を調整していくという今までのメカニズムは適正に働いてきているというふうに私は思っておりますので、そうした状況も踏まえまして適切に判断をしてまいりたいと思います。

吉井委員 民間も公務員も賃金を抑制するという立場に、今財界の方の賃金政策は進んでいっています。日本経団連「経営労働政策委員会報告」の二〇〇六年度版ですが、賃金の総額管理、要するに抑制ですね、この方向を出しています。

 だから、企業の方はリストラ効果もあり、史上空前の利益を上げているという大企業は随分たくさんありますが、しかし一方では、雇用の状況は依然として深刻であり、非正規が多くて、年収百五十万円以下の若者も今ふえています。結婚や出産、子育てに不安が生まれていますし。大企業はリストラ効果で利益を伸ばしたんだが、労働者の所得の伸びは抑えられてきているのが現実だし、税金や社会保障などの負担がふえて、可処分所得が十分に伸びていない。

 こうした中で、安定した経済の成長というのは、やはりそこは是正しないと望めませんから、だから、人事院が民間給与の伸びる中で公務員賃金をゼロに抑えていくという今回のやり方は、民間賃金の抑制のばねとなってしまって、賃金の問題でも悪循環の道に進んでいくという問題があります。

 私は、人事院は、日本の労働者の給与を抑制する、そういう考えに立ってはやはりおかしいわけで、だから、民間で給与が伸びているときに、その民間給与の伸びを抑える役割とか給与水準を悪循環の道に追い込む、そういうふうなやり方というものはとってはならないと。

 私は、そういう点で総裁に改めて伺っておきますが、日本の労働者の給与を抑制する効果をもたらすような、そういうやり方というものはやはりとってはならないと思うんですが、この点、総裁の考えを伺っておきます。

谷政府参考人 人事院といたしましては、政府の財政事情を考慮するという立場でもございませんし、また、御指摘のような、日本経済全体あるいは日本経済の中における労働者の賃金水準全体といった、そういう非常にマクロな問題を考慮して勧告をするという立場でもございません。民間準拠の考え方のもとに、できる限りそれを適切に反映するような方法は何かということを考え勧告をさせていただく、そういう立場であると考えております。

吉井委員 人事院から、短時間勤務制度、それからもう一つの自己啓発休業制度、あるいは、これに係る育児のための短時間勤務制度を実施するときの任期付採用の問題についての意見書が出されました。

 私は、これについては、これは本当に、ただ制度として形をつくるだけじゃなしに、実際に実効あるものにしていくには、例えば、ちゃんと無利息の奨学金等を受けて、そして大学に行くことができるようにするとか、その提案を裏づける制度というものをきちんとつくっていくということを政府としては考えていかないとだめだということについて議論をしたかったわけでありますが、時間が参りましたので、きょうの質問はこれで終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 最後になりましたので、質問の内容によっては重複している部分があるやもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。また、答弁は簡潔明瞭によろしくお願いいたします。

 まず、総裁にお伺いいたします。

 ことしの給与勧告に当たっての人事院総裁談話を読ませていただきました。公務員バッシングなど、最近の公務員を取り巻く厳しい環境が背景となっているのか、例年になく公務員や国民に対する強いメッセージや思い入れが感じられました。

 しかしながら、官民比較対象企業規模の見直し、これについては、これまでもそれぞれ委員から質問もありましたけれども、私としても、大いに問題がある、このように受けとめております。

 そこで、今回の勧告の場合、比較対象規模の変更問題の妥当性、それから、比較対象企業というときのその根幹にある民間準拠の具体的妥当性、この二つの点でまず問題があると私は考えます。

 第一の問題に関して申しますと、昨年の勧告では、「官民比較の方法については、今後とも、民間企業の実態等を的確に把握していくほか、学識経験者の研究会を設けて、検討を行っていくこととする。」このように昨年は勧告の中に盛られております。これに対しまして、政府の側は、昨年九月二十八日の閣議決定、十二月二十四日閣議決定による行政改革の重要方針、さらに本年七月七日の骨太方針も、すべて基本的には、人事院に対し、あるいはこの給与問題に対し、「要請する」という言葉でくくられております。

 その限りにおいては、人事院の主体的研究は、少なくとも制度的に最小限保障されているというふうに受けとめるのでありますが、今回、比較対象企業規模の変更を行ったことは、少なくとも労働基本権の代償措置として権利保障された公務員労働者からすれば、人事院の中立性に疑問符を持たざるを得ない、このように考えますが、この点に対して総裁はどのように考えておられるか、明確に答弁願いたいと思います。

谷政府参考人 経緯からいたしますと、確かに、閣議決定の御要請の内容と、結果的に私どもが出しました結論とが一致しているということで、その影響を大きく受けているのではないかという御懸念をいただくということを理解できないわけではないわけでございますけれども、私どもは、そういう政府の御意見も、それから各界の御意見、さらに、それよりも国会におけるいろいろな御意見、そういうことも含めまして、この比較のあり方について一度基本的に見直しをしようという考え方に立ちまして、昨年来、学者の方々、有識者の方々の研究会、懇話会も設けて御議論をいただきました。

 そのことを十分参考にさせていただきながら、私どもとして、この内容についていろいろと判断をさせていただき、企業規模の見直しを行いましても、基本的な民間準拠の考え方であります、手法でありますラスパイレス、同種同等の比較、これは確保できる、それからまた、調査の精度も従来同様確保できるという確信を得ましたので、それであれば、できる限り対象を広くとって比較をさせていただく方が適当であるという考えのもとに今回の判断をさせていただいた次第でございます。

重野委員 私が指摘するのは民間準拠の問題ですね。どうとらえるかということです。

 人事院が本年七月に公表しました官民給与の比較方法の在り方に関する研究会報告でも、民間準拠の考え方を詰めていきますと、結局、同種同等比較の原則に行き着くわけですね。しかし、それだけで公務員賃金水準を判断し得るのかという問題提起があるわけですが、公共事務を担う社会集団としての公務員がどの程度の人材によって担保されなければならないのか、そこにはおのずと求められる社会的水準があるはずです。その点で今回の比較企業規模を五十人に下げたことがこの課題と本当に合致するのか、これが私の問題意識です。

 一例を挙げますと、十七年の国家公務員試験の平成十八年度の内定者が同時に内定を得ていた民間企業の規模別割合を見ますと、これは官民給与の比較方法の在り方に関する研究会報告の中に書かれているのでありますが、1種試験合格者では、幾つかのランクが書かれてありますけれども、百人以上の規模が全体の九九・二%、千人以上では七七・九%、2種試験の合格者でも、百人以上が九八・三%、千人以上が六二・七%となっています。つまり、どちらも百人未満の企業にはほとんど就職しない。これはもう現実そういうことが書かれているわけですね。

 それは一つの例であるにしても、比較対象企業規模の見直しに当たっては、こうした要素を考慮して多面的に比較することが求められていたのではないか、このように思うんですが、総裁はどのように受けとめられますか。

谷政府参考人 確かに今御指摘のような数字があるわけでございまして、人材確保の観点からいたしますと、そういうことも十分考えなきゃならぬということは私も十分理解しているつもりでございます。

 ただ、比較をいたします際に、企業規模と行政組織の規模というものを、規模というもので比較して適当かといえば、百人といえども公務と比較するのに適当かどうかということはあるわけでございまして、私は、むしろ、同種同等の業務に従事している方々、そういう立場にある方々を選択していく際にどのように細かくそれを選んで当てはめていくか、その立て方というのは非常に重要だろうと思うわけでございまして、そういう意味では、この同種同等を具体的に積み上げていきます際に、どのような立場にある公務員についてはどのような民間の方々を同種同等としてとらえていくかということにつきましては、今後も引き続き検討を怠ってはならないと考えているわけでございます。

 しかし、一番基本は、やはり、公務はほかと比較するものがございませんので、民間の同種同等の方と比較するという方法以上に合理的と考えられる方法もないものでございますから、そういう考え方のもとに組み立てていくということが最も合理的なのではないかというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、今回、その目的を達することができるという判断ができましたので、規模の見直しを行わせていただいた次第でございます。

重野委員 今私が具体的に挙げた数字は、そういうものを含めた中で、実際にこの試験を受ける、新たに学校を卒業して就職をする方々がそういう状況の中で出した回答なんですね。これは、問題はいかにして優秀な人材を集めるか、私はそこに尽きると思うんですが、そういう視点で私は見ていかなきゃいけないということを申しているんですね。だから、単に五十人だ百人だという、それは一つの方便であって、問題はいかにして与えられた条件の中で立派な人材を採っていくか。そのための試験なんですからね。そこのところをやはり明確にしておかないと誤りを犯すのではないか、私はこのことを指摘しておきたいと思います。

 そこで、本年度のこの見直しにおきまして、民間の正社員の比較対象従業員の範囲を拡大しております。この拡大に当たって、今、非正規職員あるいは派遣労働者というものが非常にふえておるのでありますが、そういうものについても対象とするべきであるという話があるやに聞いておりますが、私はこのような指摘は不適切であると断じていいと思うのでありますが、その点について人事院の見解をお聞かせください。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 官民給与の比較につきましては、公務員と民間企業従業員の同種同等の者同士を比較するということで、同種同等の者というのが民間企業でどこにおられるかということで比較をしているということでございまして、非正規社員とか派遣労働者については、昨年の勧告時の報告でも言及いたしましたけれども、短期雇用を前提に、時給制が多くて、また諸手当の支給割合が低いとか、雇用形態、賃金形態が常勤職員とは明確に異なっているということから、同種同等の者同士を比較するという原則に照らせば、公務の常勤職員と比較の対象とするということは困難であるというふうに考えているところでございます。

 なお、この点につきましては、学識経験者によって行っていただきました研究会の報告書においても同じような指摘がなされているところでございます。

重野委員 それでは、以降、個別問題について具体的に聞いておきたいと思いますが、国家公務員の場合、広域的な人事異動をせざるを得ない、そういう現実がありますが、その場合、職員に対し何らかの手当を支給することは、私は妥当であると考えます。

 今回、広域異動手当が支給されることによって、転居を伴う異動がふえたり、三年以内に転々と異動させられる職員がふえたり、そういうふうな状況が起こってくるのではないか。そういう意味では、この手当の支給によって悪影響というものを及ぼすのではないか、こういうふうな懸念を持つのでありますが、これについて、そういうことにはならないというふうに答弁していただきたいと思うんですが、局長。

関戸政府参考人 広域異動手当につきましては、御説明しておりますとおり、職員の俸給水準が全体的に下げられますので、広域異動を行う職員についてプラスの調整を行うということで支給をする手当でございますが、三年間支給いたします。

 それで、委員御指摘のような転々と転勤をさせられるというようなことのないように、広域異動手当の実施に当たりましては、各府省に行われている異動、各府省が異動を行うわけでございますので、その異動が公務上の必要性に基づき適正に行われなければいけない、公務上の必要性に基づいて行っていただかなければいけないということで、適切に行われるよう十分留意することが必要であるということで、各府省にもお話をしていきたいと思いますけれども、本年の報告においてもその旨明確に指摘をさせていただいているところでございます。

重野委員 次に、管理職手当の問題についてお伺いいたします。

 今回、管理職手当が定率制から職務の級別定額制に移行する、こういうことになりました。民間の管理職手当が定額化の方向にあるのか、また、これまで俸給に基づく定率定額制であった管理職手当を定額化した場合、今後民間企業の賃金がアップしていった場合にそれはどういうふうに反映されていくのか、どういう仕掛けになっていくのか、どのように調整するのか、その点について説明願いたい。

関戸政府参考人 俸給の特別調整額の定額化についてでございますけれども、これは、現行の定率制による年功的な給与処遇というものを改めまして、管理職員の職務、職責を端的に反映できるような手当にするということで、民間企業においても役付手当が定額化されているという実態も踏まえて行うものでございます。

 民間企業の同等のものと考えられる役付手当につきましては、役付手当制度がある事業所が人事院の調査で七七・二%、約八割ございますけれども、そのうち九三・七%の事業所が定額制を採用しているところでございます。

 また、第二点目の特別調整額の定額化後の手当額についてでございますけれども、特別調整額については、在職分布の中位のところを定額化いたしますので減額になる人がおります。減額になる職員につきましては、当然経過措置が必要でございまして、平成二十二年度まで経過措置を適用することにしております。この経過措置が適用される期間については手当額を据え置くということを基本とせざるを得ないと考えておりますけれども、その後の改定につきましては、公務におきまして俸給表の改定がどういうふうになっていくのか、その改定状況と、職員の号俸別の在職分布状況がどう変わっていくのかというものを基本的には見ながら、また、民間企業における役付手当など役付者の給与の状況も考慮しながら、その改定について検討していかなければいけないというふうに考えております。

重野委員 次に、育児休業についてお伺いいたします。

 育児休業を促進する措置を講ずること、それは結構なことでありまして、歓迎いたしますが、育児休業にかかわる職員補充の問題です。平成十六年度の状況を見ますと、代替措置として臨時的任用等何らかの措置が行われたというのが約八割で、残りの二割については特段の任用行為が行われていない、そういう数字が示されております。それは実績なんですね。

 このことを考えると、今回の措置で育児休業を拡大しても、その後の代替職員確保にかなりの困難を伴うのではないか、それができなかったらなかなかそういう休業制度を活用できない、こういう状況も出てくるのではないか、こういうふうな危惧を持つわけでありますが、この点についてはどのような考えを持っておられるか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 後補充要員につきましては、常勤職員がそれまで行っている業務を分担して処理していただくということになりますので、高い専門能力が求められます。したがいまして、委員御指摘のように、その要員を確保していくということにつきましては、各府省で相当の努力をしていくことが必要になるものというふうに考えております。

 ただ、現在、具体的に考えられる要員といたしましては、まずは、かつて公務員として働いていて結婚や育児、介護等を機に退職された方、あるいは定年退職された方など、公務経験を有する方があるのではないかと考えられます。またさらに、今後この制度が軌道に乗って、公務においてこういうニーズがあることが明らかになれば、民間からも官職が必要とするような専門的な能力を持っている方の応募が広がるのではないかと期待しております。

重野委員 もう時間も来ました。通告をしておりましたけれども、時間の都合で今回は保留したいと思いますが、最後に、今回の勧告及び意見の申し出を受けて、政府としてどう対応するのか。先ほども質問がありましたけれども、私は、速やかに法案を提案して審議に付すべきものである、このように考えますが、大臣の答弁を重ねて求めます。

竹中国務大臣 お答えを申し上げます。

 人事院勧告制度の性格につきましては、先ほども申し上げましたけれども、国家公務員に対する労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものでございます。政府としては、この制度を尊重するとの基本姿勢のもとで、国政全般との関連を踏まえながら、人事院勧告どおり実施すべく最大限の努力をすべきものであるというふうに考えています。本年度においても、このような方針のもとで、国民の理解が得られる結論を早急に得られるように検討してまいりたいと思います。

 また、育児のための短時間勤務制度の話、そして自己啓発等休業に関する人事院からの意見の申し出がございましたけれども、この意見の申し出を踏まえまして、それぞれ必要な法律案を検討してまいりたいというふうに思います。

重野委員 以上で終わります。

中谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

中谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 郵政事業に関する件、特に日本郵政公社平成十六年度財務諸表の承認に関する報告について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官山崎穰一君及び総務省郵政行政局長須田和博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、本日は、参考人として、日本郵政公社総裁生田正治君、日本郵政公社理事西村清司君、理事森隆政君、理事藤本栄助君、常務執行役員塚田為康君、日本郵政株式会社代表取締役社長西川善文君、執行役員伊東敏朗君、執行役員和田光正君、執行役員米澤友宏君、執行役員白金郁夫君、執行役員白川均君及び執行役員高橋亨君、以上の方々に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

中谷委員長 まず、総務大臣から説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 日本郵政公社平成十六年度財務諸表につきまして、その概略を御説明申し上げます。

 本件は、日本郵政公社法第六十四条第二項の規定により、日本郵政公社が提出した財務諸表について承認した旨を国会に報告するものです。

 まず、日本郵政公社全体ですが、貸借対照表については、平成十七年三月三十一日現在、資産合計三百八十七兆八千七百二十二億円、負債合計三百八十一兆七千三百二十九億円、資本合計六兆千三百九十二億円となっております。損益計算書については、経常収益二十兆六千三百三十三億円、経常費用十八兆七千五百二億円、経常利益一兆八千八百三十億円、当期純利益一兆二千三百七十八億円となっております。

 次に、郵便業務ですが、貸借対照表については、資産合計二兆二千三百三億円、負債合計二兆七千五百三十九億円、資本合計マイナス五千二百三十五億円となっております。損益計算書については、営業利益三百七億円、経常利益二百六十二億円、当期純利益二百八十三億円となっております。

 次に、郵便貯金業務ですが、貸借対照表については、資産合計二百六十四兆八千六百四十九億円、負債合計二百五十九兆五千九百二十七億円、資本合計五兆二千七百二十一億円となっております。損益計算書については、経常利益一兆二千二百三十五億円、当期純利益一兆二千九十五億円となっております。

 最後に、簡易生命保険業務ですが、貸借対照表については、資産合計百二十一兆二千六百八十八億円、負債合計百十九兆八千七百八十一億円、資本合計一兆三千九百六億円となっております。損益計算書については、経常利益六千三百三十三億円、契約者配当準備金繰入額千二百七十三億円となっております。

 なお、監事及び会計監査人の意見を記載した書類においては、いずれも、監査の結果、財務諸表等は平成十六年度の日本郵政公社の財産等の状況を正しく示しているものと認められております。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

中谷委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本郵政公社総裁生田正治君。

生田参考人 ただいま議題となっております日本郵政公社の平成十六年度の財務諸表並びに監事及び会計監査人の意見の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、公社全体の貸借対照表について申し上げます。

 平成十六年度末の資産合計は、三百八十七兆八千七百二十二億六千七百万円でございます。一方、これに対する負債合計は三百八十一兆七千三百二十九億七千三百万円でございます。その結果、資産合計と負債合計の差額である資本合計は六兆千三百九十二億九千四百万円となっております。

 次に、公社全体の損益計算書について申し上げます。

 まず、経常収益は二十兆六千三百三十三億二千二百万円でございます。次に、経常費用は十八兆七千五百二億五千七百万円でございます。以上の結果、経常利益は一兆八千八百三十億六千五百万円となりました。これに特別損益を加え、さらに簡易生命保険業務の契約者配当準備金繰入額を差し引いた結果、当期純利益は一兆二千三百七十八億九千三百万円となりました。

 この当期純利益一兆二千三百七十八億九千三百万円は、全額を利益剰余金として資本に積み立てました。このほか、資本にその他有価証券の評価差額金として一兆三千三百七億五千万円を計上したため、資本合計は六兆千三百九十二億九千四百万円となっております。これにより、自己資本比率(総資産額に占める資本総額の割合)は、公社設立時の〇・三%から一・六%となっております。

 続いて、郵便業務、郵便貯金業務及び簡易生命保険業務のそれぞれの業務区分ごとに貸借対照表及び損益計算書について申し上げます。この業務区分ごとの貸借対照表及び損益計算書は、公社全体の貸借対照表及び損益計算書の内訳という位置づけとなっております。

 まず、郵便業務について申し上げます。

 当年度末の郵便業務の区分に係る資産合計は、二兆二千三百三億九千三百万円でございます。一方、これに対する負債合計は二兆七千五百三十九億四千九百万円でございます。その結果、資産合計と負債合計の差額である資本合計はマイナス五千二百三十五億五千六百万円となっております。

 次に、郵便業務の区分に係る損益計算書について申し上げます。

 まず、営業収益は一兆九千二百四十八億五千百万円でございます。次に、営業原価は一兆七千九百四十一億八千五百万円、販売費及び一般管理費は九百九十八億九千三百万円でございます。以上の結果、営業利益は三百七億七千二百万円となりました。これに営業外収益八十一億三千三百万円を加え、営業外費用百二十七億三百万円を差し引いた結果、経常利益は二百六十二億二百万円となりました。さらに、特別損益を加えた結果、当期純利益は二百八十三億三千七百万円となりました。

 この当期純利益二百八十三億三千七百万円は、全額を利益剰余金として資本に積み立てましたが、資本は、依然として五千二百三十五億五千六百万円の債務超過となっております。

 引き続いて、郵便貯金業務について申し上げます。

 まず、当年度末の郵便貯金業務の区分に係る資産合計は二百六十四兆八千六百四十九億八千七百万円でございます。これに対する負債合計は、二百五十九兆五千九百二十七億九千二百万円でございます。その結果、資産合計と負債合計の差額である資本合計は五兆二千七百二十一億九千四百万円となっております。

 次に、郵便貯金業務の区分に係る損益計算書について申し上げます。

 まず、経常収益は四兆九百八十九億七千九百万円でございます。次に、経常費用は二兆八千七百五十四億二千三百万円でございます。以上の結果、経常利益は一兆二千二百三十五億五千五百万円となりました。これに特別損益を加えた結果、当期純利益は一兆二千九十五億五千六百万円となりました。

 この当期純利益一兆二千九十五億五千六百万円は、全額を利益剰余金として資本に積み立てました。このほか、資本にその他有価証券の評価差額金として、マイナス百七十二億九千二百万円を計上しました。その結果、資本合計は五兆二千七百二十一億九千四百万円となっております。

 引き続いて、簡易生命保険業務について申し上げます。

 まず、当年度末の簡易生命保険業務の区分に係る資産合計は百二十一兆二千六百八十八億五千三百万円でございます。これに対する負債合計は百十九兆八千七百八十一億九千八百万円でございます。その結果、資産合計と負債合計の差額である資本合計は一兆三千九百六億五千五百万円となっております。

 次に、簡易生命保険業務の区分に係る損益計算書について申し上げます。

 まず、経常収益は十四兆六千六百五十億八千五百万円でございます。次に、経常費用は十四兆三百十七億七千八百万円でございます。以上の結果、経常利益は六千三百三十三億七百万円となり、この中から、内部留保として価格変動準備金に五千二百十三億三千七百万円を積み増しました。これを含む特別損益を加えた結果は千二百七十三億五千二百万円となり、全額を契約者配当準備金に繰り入れました。

 資本合計については、設立時資産・負債差額四百二十六億千二百万円に加え、その他有価証券の評価差額金として一兆三千四百八十億四千三百万円を計上したことから、一兆三千九百六億五千五百万円となっております。

 なお、監事及び会計監査人の意見書では、監査の結果、財務諸表は公社の財産、損益等の状況を正しく示しているものと認められております。

 これをもちまして、概要説明を終わらせていただきます。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

中谷委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤勉君。

佐藤(勉)委員 自民党の佐藤勉でございます。

 郵政公社が設立をされまして三年五カ月、民営化まで残すところ十三カ月ということになりました。郵政公社におきましては、本日お越しをいただいている生田総裁の指揮のもとにさまざまな改善が進まれてきたものと存じますが、民営化という大きな転換期を目前に控えて、総裁を初めとする郵政公社の経営に携わる皆さんの責任は大変大きなものになってきているように私は思います。

 そこで、まず生田総裁にお伺いをしたいと思います。

 公社発足以来の生田総裁の経営手腕には、本当に、いろいろな面でいろいろなアイデアを、そして特に人と人とのつながりを大事にするという、いろいろな経営的な手腕を発揮していただいているということに対しては非常に敬意を表したいと私は思っておりますが、一方で、郵便の利益が大きく落ち込むなど、公社を取り巻く経営環境は非常に厳しくなってきているというふうに思わざるを得ないところもございます。

 そこで、生田総裁は、郵便、貯金、保険の各事業の経営の状況をどのようにとらえているのか、また、民営化までの残された期間において、大変生意気な言い方で恐縮でございますけれども、御自身の役割、使命をどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、谷委員長代理着席〕

生田参考人 お答えさせていただきます。

 二〇〇三年四月に公社がスタートいたしまして、三事業の経営につきましては、経営ビジョンとしまして三つ示してきました。簡単に言いますと、国民の利便性はしっかり守るということと、事業の健全性を整備していく、それから働く職員の将来展望と働きがいということでありますが、それを実現するためにアクションプランをつくって、改革を極力前倒しして今日に至っております。

 結果としまして、過去三年間は、政府に提出しておりますといいますか、政府からいただいている中期経営計画を上回る実績を上げてきておりまして、公社法という非常に厳しい枠内で見れば、改善をしてきており、健全性を増してきているわけでありますが、そういう枠を横に置きまして経営として市場から眺めると、非常に厳しい経営状態であると言わざるを得ないと思っております。

 簡単に三部門に触れてまいりますが、例えば十七年度決算を見ましても、郵便が二十六億の黒ということで、いわばゼロであります。初年度、二年度はかなり効率化、合理化の幅があったもので、よく言われるようにぞうきんを絞る部分があったわけなんですが、三年目になってそれがかなり行き詰まり、余り余力がなくなってきているということで、今見ますところ、三年間で累計の利益は五百七十二億ということで、多少債務超過を減してはきているんですが、黒字になるような、黒字構造への構造転換、本格的に転換するというのはまさにこれからだというふうに認識しております。

 貯金の方は、金融環境がかなり順調だったこともありまして、十七年度は一兆九千三百四億の黒字ということなのでありますけれども、金利上昇期に入っておりまして、定額貯金という特殊な商品も持っておりますので楽観は許されない、こういう感じでおります。

 他方、簡易保険の方は、株価上昇によるキャピタル益がかなりありまして内部留保の積み増しが可能となっておりますが、他方、持っております商品メニューというのが大体皆貯蓄型でございますので、金利がほとんどゼロに近いという現代では貯蓄型というのはなかなか人気を得ることができませんので、そういった意味で基本的な大きな問題を抱えている、こういうふうに思っております。

 押しなべて申しますと、三事業とも、過去との比較では改善に向かっているし、公社法という枠内で考えれば、その枠内でのほぼ目いっぱいの努力はしているのでありますが、事業として考えるとなかなか難しい点があるし、ましてや市場にある同業他社との比較ということになりますと利益率で大変大きな差があいている、こういうことであります。

 次に、私自身の役割、使命、残された期間をどう考えるのかということでありますが、私としては、何が何でも、いい民営化、本来の趣旨を生かした立派な民営・分社化をしてほしい、こう思っておりますので、それへのジャンプ、そのジャンプするためのジャンプ台をできるだけしっかりするために、現在やっておりますアクションプラン、経営計画でありますが、これを貫徹するということに全力を尽くしていきたいとまず考えております。

 そういったことで、日常の業務は、きちっとこれで目標を達成していくことは無論でありますが、加えまして、民営化準備に関しましても、来年十月一日の民営・分社化というものが確実に実施できるように、民営・分社化作業に万全を期すということで準備の本部をつくっておりますし、日本郵政株式会社と連携して努力していきたいと思っております。

 使命の三つ目、これが本当は物すごく重要なことなのでありますが、職員に民営化の意義、可能性、それからどういうことになるのかということをしっかり理解してもらって、その上で、前向きに明るく士気高く新会社に移行していくことができるように最善の努力を尽くしたい、こういったことを使命と考えております。

佐藤(勉)委員 決意を聞かせていただいて、大変力強く感じております。

 去年の今ごろは、私どもは、顔を真っ黒にして、汗をかきかき、民営化論を国民の皆さんに訴えて選挙をして、私どもは、その民営化が正しいんだということを国民の皆さんに訴えてきた。その成果がいろいろな面であらわれたという結果がございました。

 したがいまして、今総裁がおっしゃられたようなこと等々を含めて、来年の民営化のスタートに向けて、私どもと一体となった、いろいろなものをこれからもぜひ御協力をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 総裁に続けてお伺いをいたしたいと思いますが、ここ最近の郵政公社のイメージダウンにつながりかねない事件、事故が立て続けに新聞紙上で報道されているというのは御存じのとおりであります。特に、五月には長岡の郵便局で郵便料金の不適切な収納が発覚をいたしまして二十七億円もの損失が発生、七月には簡易保険の契約者の配当金の支払いミスが発覚したり、また、八月には郵便業務のコンプライアンスに関する総務大臣による経営改善命令が発せられるような状態になったということになっているということは御承知のとおりだと思います。

 民営化を控えて、コンプライアンスの徹底は国民の信頼を基盤とする郵政事業にとって極めて重要な課題であることと考えますが、最近のコンプライアンス違反の状況についてどのように総裁はとらえられているのか、また、コンプライアンスの徹底のためにどのように取り組まれる御所存なのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 業務改善命令をいただきまして、大変それを深刻かつ厳粛に受けとめておりまして、改善に万全を尽くしていこうとまず考えております。

 公社の前身である郵政省でありあるいは事業庁の時代、これは官庁会計でありまして、三事業が多くの場合、本当の意味で一体で行われていたと思います。そういった意味では、今のコンプライアンスという概念というよりも、むしろ、規律に関しては、いろいろ郵便局ということで問題もあったのかというふうに思っております。

 公社化のスタートと同時に民間会計基準になりまして、事業総本部制をとって事業を明確に区分する、それから、コンプライアンスという概念を明確に入れまして、それを徹底していく、情報開示をさらに徹底するということで、起こったことは全部開示するというふうにして今日に至っております。

 公社発足と同時に、ガバナンスとコンプライアンスをつかさどる委員会を設けまして、そういった面のあらゆる努力をし、マニュアルもつくる、研修もやる、こういうことをやってきたわけでありますが、残念ながら、郵便料金の不適正収納事件とか資金の横領事件とか保険の不適正募集とか、いろいろコンプライアンス違反が出てきていることをまことに遺憾に思いますし、おわび申し上げたいと考えております。

 大体、こういったことが大きく整理がつきまして、対策も考えられたのが五月だったんですが、その五月に、ガバナンス・コンプライアンス委員会に加えまして、内部統制強化本部という本部をつくりまして、委員会と連動しながら、日常業務としまして、全社的に、かつ横断的な課題に本格的に取り組むということをいたしている次第であります。

 同本部は五月から全力で走っておりまして、緊急度の高い課題を整理しながら、いろいろな問題の解決に向けまして経営資源、要するに、監査をする人間を思い切ってふやすとか、経営資源を集中的に使う、抜本的な解決につながるような改善策をつくるということで、大体今月いっぱいぐらいで素案ができるというふうに考えております。

 そのように最善の努力をしているわけでありますが、一言ざっくばらんなお話をいたしますと、実は公社化後、コンプラ意識の浸透とシステム改善で、新規発生分、これは実は過去から比べますと漸減傾向にありまして、改善の途上にはあるんです。だんだん改善途上にある。

 公社になりまして、過去のものも全部総点検せよということでやってまいりまして、実は、現在問題となっているケースの、先ほど先生からも御指摘があったような、金額の大きいもの上から三つとりますと、実は三つとも随分古い話でございまして、例えば長岡局の二十七億とおっしゃったものは七年前、まだ郵政省の時代から始まっていたということでありますし、千葉のBee―One局というのも、これも二けたの億になるんですが、実は十三年前からずっと続いていた。三番目の、福岡の渡辺通局の件も五年前ということで、実は、源流といいますか、事件が発生したのは郵政省、郵政事業庁時代のものがかなりございまして、それがそのまま是正されないまま流れてきていて、それが総点検で引っかかって、現在、全部それの整理に当たっている、こういうことであります。

 私としましては、現経営の責任におきまして、極力こういう郵政事業の積年の負の部分を今のうちにもう洗いざらい出して総括をして、それで正常な形で民営化につながるように最善の努力をしていきたいと考えております。

佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、いろいろなものを引きずって、新会社にそういうものが引きずられないように、ぜひ、この際しっかりとした対応をお願い申し上げたいと思います。

 大変しつこくて恐縮でございますけれども、総裁にもう一問だけお伺いをしたいと思います。

 民営化議論以降でありますけれども、国民の皆様から、郵便局は一体どうなるんだろうといった地域住民の不安、そして、さらには、公社で働く職員が勤労意欲をなくすことなく安心して働く環境づくりといったことが大変大切だろうというふうに私は考えております。

 こういう言い方はまずいのかもしれませんけれども、公社の民営化に否定的な職員も多かったと言っても私は過言ではないと思うんです。かく言う私も少しそんなところもございまして、いろいろ論議をした経緯もありますが、現在、郵便局員の受けとめ方はどうなっているのか。私は、そういう中でモチベーションが下がるような話では困るわけでありますし、十三カ月後には新会社ということで大変なエネルギーを消費するわけでありますから、そのときにかなりのモチベーションを上げておかないと、それを乗り切れなくなってしまうんじゃないだろうかという懸念がございまして、民営化、分社化に向けてのシステムの構築とか職員の研修など、公社の実務作業が大変だろうと。

 総裁がみずから出かけていってやっているというのは十分私ども理解をしているところでありますけれども、民営化準備作業と日常業務の両立ということではどんなふうなことになっているのか、ぜひお教えをいただきたいというふうに思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 民営化についての職員の受けとめ方でございますけれども、これはもうざっくばらんに申しまして、組合も全特も、それ自体が組織として反対したわけですから、その下にいる職員たちも多くの人たちが、民営化が決まるまでは反対ないしは不安に思っていた人たちが多いというのは、これは紛れもない事実であると私も思っております。

 しかしながら、法案可決後はかなり風景がさま変わりしてきておりまして、可決後は、組合も、極めて短期間に新しい時代の到来ということを極めて正確に理解いたしまして、よい民営化に向けて大変前向きに対応してくれております。私は、全特もほぼ同様の方向にあるのかな、このように感じております。

 民営化によりまして公社法の規制が次第に緩和してきまして、自己責任ではあるんですが、自分の責任なんですが、むらなく一生懸命努力すれば、事業は維持されるのみならず発展し得る、そして、パブリックな使命も自律的に果たすことができる。こういったことをよく職員に理解してもらう、こういう努力をやるべきだと考えておりまして、いろいろなフォーラムを通じてやっております。いろいろな、紙でもやっておりますし、集会もやっています。

 私自身も、この春以来、北は北海道から南は沖縄、石垣島まで約四十カ所参りまして、行った先々で、約十人ぐらい壇上に上げて私と質疑応答をずっとやらせまして、二百人ぐらいに聞かせておいて、最後の一時間ぐらいはその二百人ぐらいと私で対話するというようなことで、四十カ所ぐらい対話してきているわけでありますが、話をすると非常に理解が深まって前向きになります。それをやる前にアンケートをすると過半が不安というふうなところでも、やった後でアンケートをとり直すと七、八割が前向きというふうなことで、やはりよく知ってもらうということがいい民営化につながることであるというふうに私は確信しておりまして、役職員挙げまして、その方向で努力をさらに深めていきたいと思っております。

 それから、民営化の作業と日常業務の両立の問題でありますが、確かに苦しいんです。日常業務だけでもほぼ目いっぱいぐらい忙しいものですから大変苦しいんですけれども、きのうもお話ししたんですが、これはやはり民営化というものに向かって峠を越えていくところですから、峠を越える間はちょっと呼吸も苦しくなるときもあるよ、だけれども越えなきゃならない峠だから頑張ろうということで、苦しくとも両立させねばならないという考え方で、具体的には、まず私を本部長にいたしまして民営化推進本部というものを設けまして、システマチックに民営化に向けての作業を進めている。常にモニターして進捗度合いも見ておるということと、日常業務の方は、いずれにしても、先ほどお話ししましたアクションプランの貫徹、コンプライアンス体制の徹底ということを中心に、これも後戻りや遅滞ないように推進の真っ最中であります。

 その両方をどう調整するかという調整機能というものは、私が議長をしております経営委員会というところでその両方がうまく整合するように調整をいたしておりまして、必要に応じて、無駄な仕事ややらなくてもいいプロジェクトはそこでどんどん省力化していくというふうなことも織りまぜて努力中であるということでございます。

佐藤(勉)委員 今総裁が努力していること等々を踏まえて、ぜひ頑張っていただきたいと思うんですけれども、私のイメージは、今峠という話がございました、峠を一生懸命皆さんで越えている。そこに霧が出てきてちょっと先が見えていないという不安も職員の皆様方にあるのではないかなというふうに思いますので、ぜひその霧が早く晴れるようなこと等々も、ぜひ晴らしていただくように努力をお願い申し上げたいと思います。

 以上の答弁を踏まえて、大臣にお伺いをしたいと思います。

 郵政公社の経営の状況、課題をどのように認識しておられるのか。また、今後、郵政公社に対してどのような取り組みを大臣自身期待されるのか、お伺いをしたいと思います。

竹中国務大臣 郵政公社の課題につきましては、今、生田総裁のいろいろな御答弁の中で示されていたことだと思います。

 まず、郵政公社を取り巻く経済環境に関して申し上げますと、郵便物数がやはり減少し続けている、保険契約件数等々が減少し続けている、経営環境は依然として厳しい状況にあると思います。特に郵便業務におきましては、平成十七年度に利益の大幅な減少が生じているわけでありまして、郵政民営化のときにこれは随分といろいろ議論させていただきましたけれども、そういう厳しい環境が続いているというところだろうと思います。

 また、各事業におきましては、不適正な事務の取り扱い等々が引き続き多く発生しているという面もございまして、郵政事業が抱える困難な課題というのがそこに顕著にあらわれてきたものだというふうに認識をしております。

 我々としては、このような認識のもとに、八月九日に日本郵政公社の平成十七年度の業績評価というのを行ったわけでございますけれども、特に二点求めているところであります。

 郵便業務における財務内容の健全性の確保等について取り組みをもっと強化してほしい、これが第一点。第二点は、各事業におけるコンプライアンスの徹底について取り組みを強化してほしい、こういう点を求めているところでございます。

 さらに、これも今委員お触れになりましたけれども、郵便料金の不適正収納事案、これは大変残念なことでございます。この再演防止の取り組み等が十分とは認められなかったということで、公社法に基づきまして、この収納に係る内部管理態勢の充実強化を求める経営改善命令を八月十日に発出したところでございます。

 本当にあと一年一カ月、来年の十月には民営化を控えているわけでございます。公社におかれては、国民の信頼と期待、いろいろな御不満が出るということはまさに国民の信頼と期待の裏返しであるというふうに思いますので、それに向けて円滑な民営化に向けた準備をしっかりと進めてほしいというふうに思っております。

佐藤(勉)委員 ありがとうございました。

 次に、西川社長にお伺いをしたいと思います。

 このたび、四つの子会社のCEO、最高経営責任者というんでしょうか、COO、最高執行責任者の方々の候補者名が発表されたということは皆さんも御承知のとおりだと思います。四つの子会社のCEO、COOの候補者の選任については、大変残念なことでありますけれども、我々は新聞紙上でしか事実を知り得なかったというところでありまして、私は、その選任については、先ほど申し上げましたように、信を問うという意味では、私ども本当に国民に信を問うて選挙に勝ち抜いてきた一人として、国会と一体となって行うべきではないかという気持ちを持っております。

 そういう中で、四つの子会社のCEO、COO候補者の選任の経緯についてお伺いをしたいと思います。

西川参考人 お答えをいたします。

 各候補者は、これまでの御経歴などから、郵政民営化という重要な国家プロジェクトを担っていただくにふさわしい適切な知識、経験、能力等を有すると思われる方を、竹中大臣にも適宜御相談の上、内定をいたしたものでございます。

 具体的な経緯につきましては、人事に関することでございますので、コメントを差し控えさせていただきたいと存じます。

 以上でございます。

佐藤(勉)委員 そういうことを言われればこれ以上言いようもないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、私たちの思いというものもぜひ受けとめていただいて、いろいろな面で一体となった取り組みをお願い申し上げておきたいというふうに思っております。

 そこで、公社を取り巻く経営環境が厳しくなる中、来年の十月には民営化が実施されるということになります。日本郵政株式会社の西川社長を初め、新会社の社長に経営がバトンタッチされることになります。先月末、その民営化の青写真というべき日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格が日本郵政株式会社から政府に提出されております。これを見させていただきますと民営化後の各会社のイメージがある程度見えてくるわけでありますけれども、昨年の国会での法案審議等も踏まえ、この骨格に関しまして、西川社長に幾つかお伺いをしたいと思います。

 民営化の関係法案の国会審議において、多くの方々が心配をされた点は次の二点だったと思います。国民の貴重な財産である郵便局ネットワークが維持をされるのか。もう一つ、その郵便局において、郵便のほか、貯金、保険のサービスが確実に提供され、万が一にも国民の利便に支障が生じないことが担保されているのか。

 こうした観点からこの骨格を見させていただいたときに、郵便局については現行水準の約二万四千六百の郵便局を置く予定であるとしております。局数としては、民営化当初は問題ないように思われます。一方、郵便局において、サービス水準については、郵便会社、貯金銀行、保険会社からの委託を受けて郵便局会社が窓口業務等を行うこととなっております。また、各会社の業務内容を見てみますと、一応、公社で行っていた業務はほぼカバーしているように思えます。しかし、その委託契約の詳細な内容はまだ明らかになっておりませんし、郵便局単位で見たときに、これまで提供されていたサービスがなくなるケースがあるのかどうかまではまだ明らかになっておりません。

 そこで、社長にお伺いをしたいと思います。まず確認でありますけれども、民営化後、どこかの郵便局がなくなっていたということはないという理解でよろしいのか。また、郵便局単位で見ても、郵便、貯金、保険などのサービスが引き続き提供され、民営化後、一部の郵便局で何らかのサービスがなくなっていたということはないという理解でよろしいのか。大変しつこいようでございますけれども、確認をしておきたいと思います。

西川参考人 お答えをいたします。

 今回の骨格では、郵便局の設置につきまして、郵便局会社法に定める、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置する義務、総務省令で定められている設置基準、これに従うということがまず第一でございます。そして、承継の際に郵便局で提供されているサービスの水準が維持されるよう各社の業務等を定めるということ、そして、現在の郵便局は、民営化時には、郵便局会社の郵便局、郵便貯金銀行の直営店などグループ各社のお客様の窓口として引き続きサービスを提供すること、これを明らかにさせていただいております。

 したがって、委員がただいまおっしゃられたような、どこかの郵便局がなくなっていたとか、あるいは、郵便局単位で見たときに一部の郵便局で郵便、貯金、保険などのうち何らかのサービスがなくなっていたといったような事態は生じないと考えております。そのようにきっちり努力してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

佐藤(勉)委員 これで終わりますけれども、また違う機会でお話をしておきたいと思っておりますけれども、政府・与党の郵政民営化法案に関する合意というのがございまして、後々の株の持ち合いの話が出てくると思います。きのうの部会でも出てまいりました。そこの点についてもしっかりとこれから私ども論議をさせていただきたいというふうに思っておりますし、大変大事なことでございますので、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

谷委員長代理 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、日本郵政公社の平成十六年度の決算の状況について主にお伺いをいたしたいと思います。

 お伺いする前に、日本郵政公社の決算に対して、従来、この総務委員会で株主総会的な役割を果たすということで、総務大臣の方から日本郵政公社の決算状況の御報告を受けて、委員会の決議を行うということであったわけでありますけれども、十六年度の決算について本日審議をいたしますが、今回はこの委員会決議をやらない。九月中に、もう十七年度決算が出ておりますから、十七年度決算と一緒になってこの決議を行うことになっておるということであります。

 そこで私、今一つ申し上げたいのは、昨年は、ああいう混乱状況でございましたのでこの委員会決議ができなかったわけでございます。ことしも、これは早くやれば、もう既に十七年度決算が出ておるわけでございますから、できるわけでありますけれども、日本郵政公社の方は、決算取りまとめを非常に急いでやっていただいて、この決算書を見ますと、六月の下旬までには決算がとり終わって、会計監査人また監事の監査報告書もとられておるわけでございまして、その後、総務省に回って総務省の手続が行われて、あとこういう印刷物のことなんかがあるんだろうと思いますが、やはり八月の中下旬になっちゃうんですね。これはやはりいささか遅いように思うわけでございます。

 御存じのとおり、財務書類、財務諸表というのは、その決算時点の財政状況とその事業年度の経営成績を表示するのみならず、次年度の大変有効な情報を提供するという意味合いがあるわけでございます。そういう意味において、民間企業であれば、なるべく早く決算を出して投資家に見てもらいたい、こういうようなことになるわけでありますので、日本郵政公社の方ではそういう観点でやっていらっしゃるわけでありますけれども、どうもその後を受けた総務省の方の手続がどうしても若干おくれておるというように言わざるを得ないと思うんです。

 かといって、先ほど佐藤理事がおっしゃったように、来年の十月には完全民営化になるわけでありまして、ですから、この十六年度の決算と、この九月にやる十七年度決算、あと十八年の決算が来年の三月で終わるわけでありますが、十九年度の決算の途中で民営化になるという、ほとんど残るところは少ないわけでありますけれども、しかし、あと残りの十八年度、十九年度の途中の決算が非常に重要であります。

 そういう意味で、これからすべてというわけではありませんが、残りの決算をなるべく早く委員会に持ってきていただくということで、ぜひ総務省の方で頑張っていただきたいと思いますが、大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。

竹中国務大臣 谷口委員はまさに会計と監査の御専門家でいらっしゃいまして、確かに企業の会計、財務のサイクルからいうと遅くなっています。これはもっと早くできないものかなという思いを私自身も強く持っております。

 御承知のように、公社法の第三十条に基づく公社の財務諸表の承認を行うに当たりましては、幾つかの手続を今経ているわけであります。監査人等々の意見書も含めて内容を確認するために、公社の経理部門からヒアリングをする、監事及び会計監査人からもそれぞれヒアリングをする、さらに、より客観性を確保するために郵政行政審議会に諮問をして御審議をいただく。その分、実は長くなっているわけでございます。

 結果的におのずと一定の期間を要しているわけでありますけれども、委員の御指摘のように、速報性というのは大変重要であります。ちょっとこの場で、来年からこんなふうに早くしますというようなお約束は、こういった手続もあるものですから、この時点ではできないのでありますけれども、早くする努力をしなければいけないという必要性は感じておりますので、総務省の内部ででも引き続きよく検討してみたいというふうに思います。

谷口(隆)委員 ぜひそういう方向でお願いをいたしたいと思います。

 私は、政治の場に出て、御存じのとおり、予算委員会が非常に重視されておりますけれども、決算が余り重視されておらなかったり、過去の情報がまた未来の情報になるわけでありますから、一刻も早くこの情報を提供する、政治全体も、あらゆるところもそういう観点が必要だと思っておるわけでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、お伺いをいたしたいわけでありますが、先ほども申し上げましたように来年の十月に民営化になるわけでありまして、日本郵政株式会社では、業務等の承継に関する実施計画の骨格をこの七月三十一日に公表されております。持ち株会社が中心で、その下に四つの会社ができるというような状況でございます。

 それで、この日本郵政株式会社、十六年度決算の段階では民営化が決まっておりませんでした。十七年度決算の事業年度中に民営化が決定したわけでございますから、この十六年度決算について尋ねますとまだこれは決まっておらないので、私が今お尋ねしたいのは、九月に行う予定でありますけれども、十七年度決算についてちょっとお伺いいたしたいわけであります。決算そのものについてというわけではありません。

 どういうことかといいますと、日本郵政株式会社が、民営化に向かって、あと残るところ一年数カ月の間、いろいろなことをやっていらっしゃいます。今、国際物流のところでTNTがどうもうまくいかなかったり、全日空との間で提携をやられるというようなお話もお伺いいたしておりますけれども、そういうようなこと等、民営化前後に大きく変化が起こるということを避けていかなければなりません。スムーズにつつがなく民営化できるような状況、私はこれが非常に重要であると思うわけでございます。

 そういうことを前提で考えましたときに、郵政公社が経営運営上移行時に大きな支障を生じないという観点で、どのようなことを今念頭に入れてやっておられるのか、生田総裁にお伺いをいたしたいと思います。

生田参考人 公社の経営そのもの、決して楽観できないということはさっき申し上げたとおりなんですが、十七年度の決算を見ましても、公社法という非常にがんじがらめの規制の中においてはまずまずの成績ではあるんですけれども、市場対比で見ますと、金融関係なんかでも、利益率ということで見ると、対持っている資金であっても、対資産であっても、大体民間の二分の一か三分の一なので、大変な問題を抱えていると思います。絶対額だけを見ますと、一兆九千億というと大変よく見えるんですけれども、比率にすると大変なものを含んでいる、こういうことでありますね。

 それから、郵便の場合に、一年目、二年目、二百六十三億、二百八十三億ととりあえず多少の黒を出したんですけれども、三年目は二十六億ということで実質ゼロに近いわけで、これは、とりあえずできる合理化というのは大体二年で終わってきていて、あとは構造改革しなきゃならないということで、今まさに構造改革の真っ最中でありまして、JPSという集配区分の合理化対策であるとか、購買費の思い切った合理化であるとか、郵便局の改革であるとか集配再編であるとか、いろいろなお客様の利便性はきちっと維持して、そこには少しもマイナスのことは出ない大前提のもとに内側でできる合理化をやっておりまして、さらに民営化後も引き続いてそういうことをやっていけばかなり構造的にいい要因になってくるということが言えると思います。

 それからもう一つは、公社化するまでは、普通郵便とそれ以外の分野の売上比率というのが九対一で毎年ずっと来ていたんですね。郵便は減るんだけれども、市場分野のものも大体市場で負けるから、九対一がずっと変わらなかった。今やっとそれが八対二まで来ておりまして改善の途上にあるんですけれども、これを私は、公社の間にできれば七対三ぐらい、将来的には六対四、これぐらいまでのバランスをして、総売り上げが毎年減るというような事態が起こらないようにすることが郵便の課題だろうと思っておりまして、これは大体今、減るのに歯どめがかかりつつある、こういう感じであります。

 それから、貯金も、これは一見、大変金額的には大きな利益を出しているわけでありますが、利益率から見ると悪いということと、金利の上昇期になりますと、預け入れかえ自由の定額貯金というものの商品性も問われるということで、これは今公社内ではさわれないんですけれども、民営化になった後はよく経営でいろいろな御工夫を必要とする分野かなということであります。少なくとも健全にはお渡しできますけれども、余り長い時間をかけずにいろんな克服をされる必要があるだろうと思っております。

 保険の方は、何といっても縮小ですね、今。持っているメニューがほとんど貯蓄型ですから、今ほぼゼロ金利で、貯蓄型の保険をお買いになる方は余りいらっしゃらないわけですね。そうすると、どうしても新規契約が激減してくる、なかなか歯どめがかからない、こういう状況です。今のところは、それに対する歯どめをやろうと思うとすぐに民業圧迫論というのが起こりまして、できるような客観情勢じゃありません。

 これは、去年の郵政特別委員会でも何度も申し上げたように、この簡保だけに関しては、少なくとも入り口から多少の商品性の見直し、第三分野への適度、適切な開放と、上限を例えば三千万円ぐらいに上げるというようなことをやっていただく必要があるんじゃないのかなと申してきておりますが、そういった課題を抱えながら、とりあえずは、公社内では、公社法の枠内で目いっぱい健全化にまずは努力します。健全化します、少しは。それで健全な格好でお渡ししますけれども、だけれども、よく見るとおのおのにかなり深刻な問題がありますから、民営化後、新しい経営陣でよく考えていただく必要があるだろうと期待しているところであります。

谷口(隆)委員 総裁おっしゃるように、なかなか公社の間にできることも限りがあるんだろうと思うところであります。公社といっても、総裁は民間から来られていますので、民間のことをよく御存じで、そういう競争原理の中で今までやってこられたわけですから。ところが、今まで、郵政省、郵政事業庁、郵政公社と、その推移の中では、民間の競争原理が徹底されているかといえば、やはりまだ必ずしもそのようなことではないところもあるんだろうと思うんですね。

 ですから、それは、民営化するわけでありますから、民営化後の会社が競争原理でやっていただかなければいけないということになるわけでありますが、例えば今総裁がおっしゃった簡保、保険でいえば、保険の収益は減ったけれども利益はふえたんだ、そういうような、でき得る限りの業務費用をコストカットしてそのまま民営化後の会社へ持っていただく。いろいろ削るところは削る、政府の方も今やっておりますけれども、そういうこともやりながらやっていくということも一つ必要なんだろう。今おっしゃったことはこういうことも含めておっしゃったんだろうと思いますが、そういう観点でぜひ来年の十月まで頑張っていただければと思います。

 大臣に、このような、今私申し上げましたような、来年の十月に、大きな変化なく、大きなトラブルなく民営化にならなければならないわけですが、このような観点で、日本郵政公社の経営のあり方で大臣が考えていらっしゃることがあるならば、おっしゃっていただきたいと思います。

竹中国務大臣 方向として、今、生田総裁がお答えになったことと重なるというふうに思うんですけれども、まさに民営化を円滑に実現するための土台を生田総裁につくっていただかなければいけないわけでございます。そのためには、財務内容の健全性を向上させる、そして業務全体を効率化して経営の健全性をしっかり確保する、経営を健全にするということが大事だと思います。

 同時に、対外的には、消費者の信頼と期待にこたえられるようなサービスの水準を維持、さらに向上させる。そうすることが、さらに翻って財務内容の、経営内容の健全化にも当然つながっていくわけでございます。

 それと、これまでは市場の評価にさらされていなかったわけですけれども、さまざまな面で市場レベルの評価にたえられるように、こたえられるように、経営管理を高度化していくということも当然やはり求められていくということだと思います。

 そうした認識で我々も十七年度の業績評価を行わせていただいたわけでございます。その結果、先ほども申し上げましたように、郵便事業における財務内容の健全性の確保の面、そして各事業におけるコンプライアンスの徹底について、この二つの面で、特にこうした面で取り組みの強化をお願いしたいという結論に至ったわけでございます。

 いずれにしましても、総裁以下一丸となって、公社において円滑な民営化の実現に向けた取り組みをぜひ積極的に進めていただきたいというふうに願っております。

谷口(隆)委員 先ほど申し上げましたが、あと一年数カ月でありますけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 それで、今度は、ことしの一月に、公社における郵便局改革についてということで、郵政公社の方から何点かにわたっておっしゃっておられます。一つは、人事のことだとか、あとはマネジメント、また局舎のこと等々を日本郵政公社がおっしゃって、それに対して総裁御自身が意見をおっしゃっておられるところがあります。それを拝見した上でお伺いをいたしたいと思います。

 まず初めに、転勤について言及されているところがあるんです。窓口郵便局の局長は、現在の普通郵便局、特定郵便局の区別なく、原則として他局への転勤ありという運用でやっていきたいということで、従来行われていた方向と違う方向でやっていきたい、こういうことをおっしゃっておられるわけでありますが、今までは地域密着で、原則転勤はないということであったわけであります。総裁の発言では、よい緊張感を生むために今回原則転勤ありということに変えたということであります。また一方で、普推連、特推連で現在行われております指揮命令系統を一本化するというために、特定局から普通局への転勤もあるんだということもおっしゃっておるようでございます。

 現場の特定局の局長さんも従来は転勤なしということで来られたわけでありますけれども、現場の意見をお聞きになったのか、また聞かれてどういうようにお感じになったのか、総裁のお考えをお伺いいたしたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 今提案しているのは、要するに原則なんですね。原則なしから原則ありに変えよう。実態はそんなに変わらないと思います。ただ、それは新経営陣がやることですけれども、新経営陣も多分、実態をよくわかれば私と同じ考えになると思うので、かなり自信を持って言えますけれども、実態は変わらないと思う。では、今は全然転勤していないかといいますと、一年間に二百三、四十人は転勤しているんです。これは、いろいろな都合でやはりその方がいいから、納得ずくで。そのぐらいはあると思いますよ。だけれども、変えようとしているのはあくまでも原則。

 その理由の一つは、やはり、今度はいわゆる郵便局ではなくて金融機関になるんですね。そして金融庁の監督下に入る。金融庁の出している規律の中では、金銭を取り扱う者は一定期間で必ず異動させろというのがあるわけですよ。だから、これはいい悪いじゃなくて、少なくとも原則的にそういうことができるようにしておかないと、これは金融庁から、それこそ業務上のいろいろなリマークがつくんじゃないかと思います。現に、大変残念ながら、郵便局長の金銭絡みの犯罪というのは比率からいうと多いんです。一般職員よりも多いぐらいあるんです。これはやはり、転勤がないからとは言いませんけれども、そういうことが起こらないような手だてはみんなしておく必要があると思うので、そういった意味でも必要であるということが一つです。

 二番目に、なぜ原則を変えるかというと、やはり適材適所です。非常によくできていて、もっと大きなところ、もっと広いエリアで活躍してもらいたい人も、転勤なしだから動かないというのではせっかくの能力が生かせない。逆に、たくさんいますから、特定局長といっても一万九千人、中には向かない人も正直言っているわけです。そのとき、どこか場所を変えれば何とかなるんじゃないかといってもできないんですね。だから、やはり経営として適材適所の人事配置をしていくということの自由は一応持っておいた方がいい、原則で。そういう大きな二つの理由があります。

 しかしながら、郵便局というのは、まさに地域密着型、地域との共生であり、地域の皆様にかわいがっていただかなければ信頼ができない、商売もうまくいかない、これはよくわかっています。だから、原則はそういうふうに変えて、いい意味の緊張感を生みながら、実態的には目いっぱい地域に密着しながらやってもらいたい、そういう施策になる、このように考えております。

谷口(隆)委員 おっしゃるとおりだと思います。また、現場の方と当然ながらいろいろな話をやっていらっしゃるんだろうと思いますが、総裁のおっしゃっていることはよく理解できます。ただ、どうもトップダウンでやっちゃうと、そこでギャップが出てくるとちょっと大変だなというような思いがあるので、そういうふうに申し上げたわけです。

生田参考人 済みません、そこをお答えするのをつい飛ばしちゃいました。

 この一月から、私自身ももう四、五回、高橋会長以下と直接話しておりますし、部会でもしょっちゅうやっておりまして、大変率直に申し上げると、大きくはそうだなという空気をもう既に示してくれているというふうにつけ加えさせていただきます。

谷口(隆)委員 それで次に、定年について、今まで特定局の局長は六十五歳ということであったようですが、全社員一律六十歳定年ということでおっしゃっていらっしゃいますが、これも、現場との間のお話をやった状況等についてお話しいただきたいと思います。

生田参考人 今、理解をとるように努力していますのは、普通の職員は六十、特定局長の場合は六十五、今度の民営・分社化で郵便局会社になった場合に、実は窓口会社ということで普通郵便局と特定郵便局の壁がなくなっちゃうんです。みんな同じになるんですよ。そこの経営陣から見れば、郵便局は郵便局になっちゃうんですね。そうすると、やはり一つのシステムで律していかないと、なかなかきちんとした経営はできないだろう、こう思います。ただし、六十五歳で今やっている人たちを突如六十にするとかだんだん本当に減ってしまうと、これは不公正であるし、当事者もなかなか理解しにくいことだと思います。

 したがって、今提案しているのは、実質的には六十五を守るんですよ。だけれども、入り口もそれで六十五歳にして、その後、二年目ぐらいから一年ずつ定年は減すけれども、新しいシステムをつくって、再雇用システム、そっちの方で、六十四になったときはあと一年足す、六十三になったらあと二年足すということで、合算すればずっと六十五でいける。逆に一般職員の方も、定年延長の政府方針あるいは法律もあるわけですから、それに合目的に、何年かかけて、六十歳プラス再雇用という格好でいずれ六十五にしまして、数年かけて全く同じ、実質六十五にしていこう、こういうことで、これも幹部を初め何遍も話し合いをしておりまして、理解は次第に深まりつつあると思います。決して強行したり、上意下達でばさっというような乱暴なことは考えないで、できるだけ理解をきちっと得るような努力をしていきたいと思っています。

谷口(隆)委員 総裁が考えていらっしゃっておっしゃっていることはよく理解できるので、私が申し上げているのは、そういうきちっと一体的な、公社としての一体感を、全社員の方、局長も含めて持っていただかなきゃいかぬという観点で申し上げているわけであります。

 その次に、局舎のことでおっしゃっていまして、既存の局舎について、集配特定郵便局については、原則公社が建物を買い取るものとする、それで、無集配特定郵便局については、当面借り入れを継続しつつ、借料については、適宜適正な額に改定する、また、移転、改善等を行う場合、新局舎は新たな方法により確保する、こういうふうにおっしゃっておられます。集配特定郵便局の場合に公社が建物を買い取るということになった場合に、建物を買い取るというと、土地は地主のもの、建物を買い取りたいといった場合には借地権つき建物、こういうことになるわけで、こういうような買い方もあるだろうし、その際に土地も買ってくださいよと言われた場合には土地も買っちゃうということになるわけであります。

 それで、その対象になりそうなのが大体二千三百局ぐらいあるというような話を聞いておりますが、これは正確なのかどうかわかりません。このような場合の資金の調達についてどのようにお考えなのか、十分今の自己資金で賄える状況であると思いますが、そのような資金調達についてどのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 今集配再編というのをやっておりまして、四千七百ぐらいの集配局を、本当の拠点になるのは千百ぐらいにしまして、残りの二千六百ぐらいは無集配になるわけですね。

 それで、今提案しているのは、そういう無集配になる郵便局はやはり大きいです、今集配をやっているわけですから。それを借りたままで、ここに要らなくなったからといって、返すあるいは値切るというようなことがあるとこれは不公正だと思います。したがいまして、集配局に関しては、もうこちらで責任持つから、一たん、公正な値段で買うから売ってくれませんか、その方が、今持っておられるところも無集配になって不便になるよりは、それで心配されるよりはいいんじゃないでしょうかという話し合いをしている最中であります。

 これは、考え方については大体こなれているとは思います。いわば、これは団体対公社というよりも個人対個人の問題になりますから、貸し手としまして。今、個人対公社ということで、私どもとしては本当に誠意を持って、経済的に不当な、マイナスにならないように、目いっぱい公正に物を考えながら交渉して話が進展中、こういうところであります。

 必要とする資金は、ここで値段がまだ何も決まっていませんから正確には申し上げられませんけれども、七百億から八百億ぐらいの幅だろうと思います。この程度であれば、三事業、現に今健全にありますから、郵便はそれほど健全じゃありませんが、三事業まとめて言えば健全にありますから、郵政、我々のやっている事業の事業収入の範囲内で、先生のお言葉をかりれば自己資金で賄える、このように考えております。

谷口(隆)委員 郵便局改革についてお伺いをいたしたわけでありますが、これは、総体としてばっと見ると何か非常にドラスチックな改革のように思えるし、現にそうなんですが、公社の職員の方、また特定郵便局の局長の方々等の意見を十分お聞きしていただいてやっていただきたいという意味でお伺いをいたしたわけでございます。民営化後の郵政三事業のそれぞれの会社がしっかりと歩めるような前提条件をつくるのに今頑張っていただいておるわけでありますけれども、ぜひそういう観点でお願いをいたしたいと思う次第であります。

生田参考人 さっき無集配になるのは二千六百というふうに口走ったようでありますけれども、四千七百あるものをどういうふうに区分していくかといいますと、統括センターを千百、これはさっき申し上げたとおりですね。それから、二千六百は配達センター、出先のハブ。真ん中に統括センターがあって、配達のハブをつくるわけですね。それが二千六百で、無集配になるのは千でございましたので、謹んで訂正をさせていただきます。

谷口(隆)委員 あともう残り時間はないんですけれども、最後にちょっと、先ほど佐藤議員もおっしゃっておられた不祥事の問題ですね。

 長岡局において、別納郵便料金不適正収納事案で二十七億ほどが収納漏れになったというような報道がありました。これは、先ほど総裁がおっしゃったように、郵政省また郵政事業庁の時代のものであります。ですが、やはり今の公社の中にそういう体質を引っ張っておるということも間違いない話であります。

 二〇〇〇年の三月から二〇〇五年の十一月までの間に、長岡郵便局を含む全国三十二の郵便局で不正があったというような報道もあります。過剰ノルマの問題だとか民間との競争の激化の問題だとか、こういうことでこのようなことになったのではないかということでありまして、何通の郵便物がどこからどこへ配達されるかという資料がない、事業全体がどんぶり勘定になっている、そういう意見もあるわけでございます。

 最後にこのことを総裁にお伺いいたしまして、終わりたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 長岡局のが一番金額が多くて二十七億なんですが、これは八年越しなんですね。当時、郵政局にお伺いを立ててまでやっていたと。それを今、総点検でだんだんそういうものが出てきて、ほとんど網にかかったと私は思いたいんですけれども、まだ網をかけている真っ最中であります。

 いずれにしましても、経営改善命令、現時点でいえば受けるのが当然なわけでして、私どもは、それをばねにしながらさらにコンプライアンスの徹底を図りたい、こう思っているわけでありまして、内部統制強化本部をつくって取り組み中、この五月から全力で走っております。九月には、それがアクションプランで実施に移ります。

 それで、おっしゃった中で二つ問題があると思うんだけれども、一つは、営業のノルマを課して、それを達成するためにむちゃが行われるんじゃないか、これはあったようですね。これは、公社化とともに実は厳禁しているんですよ、本気で厳禁しているんです。なかんずく年賀状、もう絶対やめてくれと。だけれども、やはりずっと長年やっていたのがなかなか、幾らそう言っても一部で散見されて、やっとことしの年末年始ぐらいでほとんどなくなってきている。それほど根深いといいますか、意識を変えてもらうのには時間がかかるんだけれども、これはもう過激にやめるように言っています。

 なぜならば、これは公社として損するんですよ。ぱっと金券ショップに売る、その分、例えば自分の売らなきゃならないターゲットの半分を持っていったとしますが、そうするとその人は急に楽になるわけですね。だから、本当の意味で実需を掘り起こす営業努力をしなくなる。それで、最後に売れない年賀はがきは、金券ショップを回ってはがきや切手に交換に来られるわけですよ。そうすると、公社としてはダブルコストになるんですね。

 だから、もうとんでもないことなのでやめてほしいということを徹底しておりますが、ことしさらに、本当になくなるように、去年もまだ一、二カ所あったかもわかりません、なくなるように最善の努力を尽くしたい、ノルマについてはそう考えております。

 ゆうパックについても厳禁しております、同じであります。

 それからもう一つは、何となく仕事がどんぶりになっていて境目がなくて、いいかげんという言葉は使いたくないんですけれども、いいかげんになっているところがあるんじゃないのか、不整備になっているところがあるんじゃないか、それはあったんだと思います。

 だから、それを今一生懸命直しているわけですね。どうやって直しているか。それはいろいろなやり方がありますが、まずシステムでありまして、機械化できて、システムでもう間違いようがないようにするところは、極力ハードのシステムを使っていく。二番目にソフトのシステムで、仕事の仕方ですよ、これを思い切って、そういう事故が起こらないようにしていく。それから三番目に、全部過去はシングルチェックシステムだったんですよ。本人がやればそれでよかったんですね。これは事故がいっぱい出てくるんです。だから、それに気がついて取り組み出したのが二年目ぐらいからですけれども、今ほとんどがダブルチェックシステムになって、網にかかるようになっております。

 それからさらに、非常にこれはシステム上直すのが難しかったんだけれども、改善してきているのは、郵便物に例えますと、郵便物を引き受ける物の流れと金銭収受がどこでもマッチングしないんです。別の流れなんですね。これを何とかどこかでマッチングして、突き合わせができるようなシステムに変える。

 こういうことをやりながら、改善に最善の努力をして、民営化する前に何とかきれいな格好にしてお渡ししたいと考えております。

谷口(隆)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

谷委員長代理 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。きょうはお世話になります。よろしくお願いいたします。

 まず、きょうの本題は郵政の関係なんですけれども、その前に、総務大臣にちょっとお伺いしたいことがございます。

 ちょっと本題を外れて恐縮ではございますけれども、今、全国の自治体が相当財政面で厳しい状況を迎えております。その中でも、とりわけてもなお北海道の産炭地で財政破綻を来すような事例が今出ているわけでございますけれども、こうした状況を見ると、現在の財政再建のあり方、あるいは財政のチェックの仕方というのではどうも十分ではないのだろうという議論が出てきているわけですが、私もまさにそうだなというふうに思います。

 そこで、現在の財政再建の仕組みを変えるのか直すのか、そのあたり、あるいは破綻法制というものを制定すべきなのかどうかという議論はいろいろあるでしょうけれども、それはともかくといたしましても、先般報道を見ましたら、九月中にも総務省の方でこれらについてある種の方向を出したいというようなことが新聞報道されておりました。しかも、八月にはそのための研究会をつくりたいんだ、そして九月中には方向性を出すというようなことが言われているわけですが、要するに、破綻法制の整備に向けた研究会、これについて現時点で大臣の方でどのようにお考えなのかをまずお知らせいただきたいなというふうに思います。

 と申しますのは、事務方にいろいろお聞きしましたら、事務方としては余り情報を持っていないということもあったものですから、ぜひ大臣の方からお聞かせ願いたいと思います。

竹中国務大臣 事務方が情報がないというのはちょっとどういう意味かわかりかねる面がございますが、これは閣議決定をしております。七月に決めましたことしの骨太二〇〇六において、再建法制等も適切に見直すというふうにされているところでございます。

 また、これも通常国会でいろいろと御議論を賜りましたけれども、例の地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の報告において、地方自治体のいわゆる再生型破綻法制の検討に早期に着手して、三年以内に整備すべきであるというふうにされている。そして、制度の概要をこの秋までに作成、公表すべきであるというふうにされているところでございますので、この方向に沿ってしっかりとやっていくというのが総務省としての明確な姿勢であります。

 これを受けまして、実は、この二十一世紀ビジョン懇談会のメンバーでもございました宮脇淳北海道大学教授にお願いをしまして、宮脇先生に座長になっていただきまして、有識者数名で構成した研究会を今月末に発足して、第一回の会合を今月中には開くようにということで準備を進めているところでございます。

 研究会の検討項目につきましても、今、宮脇先生を中心に整理していただいておりますけれども、これは、ビジョン懇等々でも議論してきたことを踏まえますと、やはり、早期是正機能の具体的なあり方、これが必要だと思います。

 夕張の例を挙げてくださいましたけれども、そうした問題も早期是正の問題にやはり改善すべき点があるということを示唆しているのだと思います。

 それと、再生スキームの具体的な内容をどうするか、これはいろいろ幅広い御意見があるところだと思います。過去の債務、ストックの調整をどのようにするかということについては、いろいろな要検討項目があるというふうに承知をしておりますけれども、それもやはり避けて通れない課題であろうというふうに思います。

 会議の運営につきましては、座長や委員とも今御相談しつつありますけれども、これは、当然、会議の内容や資料等については適切に公開をしてやっていかなければいけないと思います。

 いずれにしましても、この研究会の検討結果をさらに踏まえて、さらに、これは総務省として検討を深めた上で法整備に結びつけられればというふうに考えているところでございますけれども、法的な課題も含めまして、これは地方団体ともよく意見交換しながら検討を進めていきたいというふうに考えております。

 委員御指摘のように、今、各自治体、大変この問題に対して高い関心を持っているということは十分に承知をしておりますので、それを踏まえてやっていきたいと思っております。

逢坂委員 大変ありがとうございました。

 それで、ちょっと二点だけ再確認をさせていただきたいんですが、秋までにというようなことを今大臣はおっしゃいましたけれども、それは九月中というような押さえでよいかどうかということと、報道によれば、第三者機関、要するに、自治体がある種危険水域に達した場合に第三者機関が改善計画の策定を勧告するというようなことが報道されております。あるいはまた、裁判所が再建計画の承認などに関与するのではないかということも報道されているんですが、この二点についてはどんな状況になっているかお知らせください。この点についてはこれで終わりたいと思いますが。

竹中国務大臣 まず、前半のスケジュール観でありますけれども、とにかく例のビジョン懇でも、早期に着手して三年以内に整備するという報告をいただいておりますので、またその方向については閣議でも決められていることでありますので、やはりできるだけ急がなければならないというふうに思います。

 ただ、秋までにといいますか、九月中に何かすべてを決めるというような報道があるやにも聞いておりますけれども、九月中にすべてを決めるというのは、これはちょっと難しいのではないかな、幾ら何でも。できるだけ急いで、しかし方向は何とか早い時期に明確にしていきたいというふうに考えております。

 それと二番目の話は、これは中身の話であります。第三者機関云々については、私自身、今の時点で明確な考えを持っておりませんし、それこそがまさに検討項目の第二点目、再生スキームの具体的な内容にも依存する話であります。報道機関でいろいろな憶測記事がありますけれども、これはまさにこれから議論するところでありますので、通常国会のこの委員会での御審議も十分念頭に置きながら、専門家の意見も踏まえて、そして地域の声を聞きながら、よく検討してまいります。

逢坂委員 どうもありがとうございました。それでは、この問題につきましてはこれで終わりまして、きょうの本題に入りたいと思います。

 郵政の民営化に関しましては、さまざまな議論があって今日を迎えているわけでありますけれども、この国会の休会中も、私自身の場合、北海道だけではなくて全国の各地をいろいろと歩かせていただいている中で、やはり相当な不安の声が多いのも事実であります。

 それで、やはりそうだったかというような、懸念はしていたけれども、やはり来たかというような声が随分ある。その代表例が、ことしの六月二十八日に報道発表されました郵便局の集配拠点のある種の整理統合といいましょうか、先ほど合理化というような言葉も出ていたようでありますが、この問題であります。

 まず、日本郵政公社の参考人の方にお伺いしたいんですけれども、この集配拠点の再編計画、六月二十八日に発表されましたが、発表される以前、要するに六月二十八日より前の議論の状況というのをお聞きしたいんですが、この計画というのはいつごろから検討されて、どんな経過を経て発表に至ったのかというところをお伺いしたいと思います。

塚田参考人 日本郵政公社が発足されまして以来、郵便事業の近代化ということで、郵便ネットワークのあり方につきましては継続して検討してまいったわけでございますけれども、昨年の十月に郵政民営化関連法の成立を受けまして、私ども、法案審議過程におきます国会答弁とか附帯決議にも配意しまして、また分社化に伴う職員管理、それから業務運行を円滑に行いましてサービスダウンをしないという観点から、この再編についての検討を進めてまいりました。

 これで、昨年の十一月に本社案をつくりまして、その後、地域実情を大変熟知している支社とか郵便局にこの案を提示いたしまして御意見等を聞くということでございまして、また、労働組合や関係団体についても協議を重ねまして、十八年の三月末に私どもの経営委員会の審議を経まして再編案を取りまとめまして、その後四月の理事会で御承認を得ましてオーソライズされたというものでございます。

逢坂委員 それでは、塚田執行役員に改めて確認をしたいんですが、この計画というのはことしの一月時点ではもう既にあったということでよろしいのかどうかということですけれども、どうでしょうか。

塚田参考人 一月時点では、本社案というか、そういう公社内部での案は原案としてはありました。

逢坂委員 それで、この集配拠点の廃止の判断でございますけれども、これは一律の基準というものがあってやったのか、どんな基準をもって判断をされたのかお知らせください。

塚田参考人 郵便事業財政でございますけれども、平成十五年から十七年、三カ年にわたって黒字を確保してきたということでございますけれども、平成十七年度、昨年でございますけれども、決算において純利益が二十六億円ということで、対前年比二百五十六億円の減ということになっておりまして、大変厳しい財政状況にあるということでございます。

 再編案の策定に当たりましては、このような現在の郵便事業の経営状況というのを踏まえまして、局舎施設などへの新たな投資は行わない、現有施設を最大限活用するということを前提にいたしまして、送達速度やサービスレベルの維持ということを基準といたしまして、個別に検討し決定したということでございます。

逢坂委員 局舎施設設備なども考え、あるいは送達速度も考えということでございますけれども、判断の基準の先になるのは、局舎施設の問題も重要だとは思いますが、その地域でのサービスが低下しないということが最初に来るべきではないかと思うんですね。局舎施設があるかないかということだけで判断をするというのは、住民本位のサービスという観点からすると少し違うのではないかという気がするわけですが、いかがでしょうか。

塚田参考人 先ほど冒頭に御説明したように、サービスの低下というのをしないというのが大原則になっております。

逢坂委員 それでは、六月二十八日に発表される前に、いわゆる計画策定途中というふうに言ってよいかもしれませんが、地元の関係自治体でありますとか住民などへの説明というのは、その計画策定の段階では行われたのでしょうか。もし行われていて、出された意見などというものがあれば、これは六月二十八日以前の問題ですけれども、それについてお知らせください。

塚田参考人 自治体に対しましては、先ほど申し上げたように三月の末に私どもの公社としての案が出た、それを踏まえまして、今年の四月中旬以降、いわゆる全国六百六十七の自治体すべてに、今回の再編案の目的や基本方針、それからサービスレベルの変化に対する代替施策等について説明を行いました。

 その過程でいろいろ御意見等がございましたけれども、二、三申し上げますと、一つは、集約されますと職員が別の町に移住してしまうということのため町や村の人口が減る、あるいは、自分の町より小さい町の郵便局に集約されるのは住民感情が許さない、あるいは、隣町の集配局が残るのに自分の町だけ集配局がなくなるのは納得できない、それから、一自治体に一集配局を残すべきであるというようなことが意見として出されました。

逢坂委員 この六月二十八日の発表に当たっては、いわゆる今出されたような意見、職員がいなくなるとか、あるいはまた、一自治体に一つの集配局は残してほしいとか、自分の町より小さい町に集約されてしまうのは感情的に許せないというような、そういうことを加味して、変更してこれは発表されたものでしょうか。

塚田参考人 私どもの策定の基本というのは、先生先ほどおっしゃったようなサービスの低下をしないという観点とか、私どものネットワークをいかにつくっていくかという観点からやりまして、こういうのはお話を伺っている中で出てきたものであります。

逢坂委員 といいますと、今のお話からすると、いろいろ説明はした、それでもう聞いた、だけれども、それは計画には、直すとか、やはりこの点は指摘のとおりだなというようなことがあって直したということはないというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

塚田参考人 先ほど申し上げたような自治体の御意見につきましては、今回、それを受けて変えたということはございません。

逢坂委員 それでは、今度は、報道発表、六月二十八日以降の話を伺いたいんですが、二十八日以降、大々的に発表されまして、今度は関係自治体でも、以前からいろいろと気にしている自治体はあったようでございますけれども、発表以降、さらに地元関係自治体などではいろいろな声が上がるようになりました。それらに対しての説明あるいは地元住民への説明会、そういったことはどのような感じでやられているのか、お知らせ願いたいと思います。それから、その際にどんな意見が出されたかということについてもお知らせ願いたいと思います。

塚田参考人 報道発表後の、議会を含めました自治体への説明ということをさせていただきましたけれども、私ども、そういう自治体に対しましては、現行のサービス水準をダウンさせないという観点から、実際そういう自治体の中で、サービス面でどういうような不安を覚えていらっしゃるのかとか、そういう内容を個別具体的にお伺いいたしまして、その対応策を説明するという形で説明に臨んでおります。

 その中で、先ほど申し上げたような意見のほかに、やはり一日おくれるのではないかとかいうような具体的なお話がございまして、それについて対応策を示して御説明しているというのが現状でございます。

逢坂委員 それでは、発表以降きょうまでの間にいろいろなプロセスがあったとは思うのですが、きょう現在でもきのう現在でも、直近で構わないんですけれども、この再編計画に対して明確に、これは受け入れられない、この計画のままでは困るというふうに言っている自治体というのは該当自治体のうちどれぐらいあるのでございましょうか。

塚田参考人 八月中旬の状況でございますけれども、私ども、六百六十七自治体にお話をさせていただいていますけれども、その中で、住民説明もしてもらっては困るという自治体は四十強あります。

逢坂委員 住民説明をしてもらっては困るということは、そもそも反対であるから住民に説明などをされては困るというような意味でしょうか。それとあわせまして、反対だけれども住民説明をしてくれというようなところはなかったんでしょうか。いかがですか。

塚田参考人 初めから言いますと、九十九の自治体がこの再編案につきまして反対だということでございまして、そのうちの四十強が住民説明すらも拒んでいるというものでございます。

逢坂委員 まず二つお伺いしたいんですけれども、反対している自治体に対して今後どのような対応をとろうとしているのかということが一つと、今までの話を聞いてみますと、公社の中でいろいろ議論をして計画をつくった、意見は聞いた、だけれども、意見は聞いても、その意見というものを反映されているようには全く思えないわけですね。あくまでも、正しいのは公社の側でつくる方が正しい、聞くことは聞いたけれども、それによって、やはりここは違っていたねというようなものはないというこれまでの経過でよろしいんでしょうか。

塚田参考人 先ほど申し上げたように、反対している自治体に対しましては、どのようなことが具体的にサービスレベルダウンということで御不満なのかとか、そういうお話を具体的に伺っています。

 それで、それについての対応につきましては、私ども、議論の中でそういうことがあれば、今までのいわゆる運送便とか、そういうものを具体的に変えるとかというような形で取り入れて御説明をしているということでございます。

逢坂委員 ここで生田総裁にお伺いしたいんですけれども、今までいろいろと塚田執行役員から説明をいただきましたが、私は自治体の皆さんの話を聞いていると、やはり効率化、今のこの時代において、何でもかんでも地元にたくさんいろいろなものがあればいいということではない、少しでも少ないコストでちゃんとしたサービスが提供されることが重要だということは、自治体の皆さんも多く理解をしていると私も思っています。

 しかしながら、今回のこの集配の再編計画において、自治体の側が反対している理由というか、これは困るよと言っているその理由に正当性があるものについては、幾ら発表したからといっても、多少柔軟に対応するという姿勢があってもよいのではないかという気がするわけですが、そのあたりはいかがでしょうか。あくまでも、発表してしまった、つくってしまった、だからもうこれ以上変えられないんだということで、本当にそれで住民本位のサービスというものは提供できるのかどうか、そのあたりについて御見解をお伺いします。

生田参考人 塚田が繰り返し申しましたように、大変大きな前提を置いているわけですね。今回の改編に当たっても、利用者の皆様方、私は国民という言葉は使わないんですけれども、国民ですね、利用者の方々にマイナスがあっちゃいけない、利便性はしっかり維持するという大前提と、頭の体操だけでできても、実際上、季節が厳しいときなんかはできないとかそういうのはだめだよ、本当に現実に、物理的にできるかどうか、これをきちっと検証すること。この二つをクリアして今の案ができておりまして、地域住民の皆様方に重大な生活上の支障が出るということは起こらない前提で、起こさない前提で進めているということだけ、まずあらかじめ申し上げておきたいと思います。

 それから、今回やっている集配再編というのは、これだけ急に思いついて一つやっているんじゃなくて、公社化して、いろいろな合理化はしてきているんですね、郵便救済のために。何とか黒字構造に変えにゃいかぬ。債務超過も減らさにゃいかぬ。例えば、コンビニとの提携もやりましたし、集配区分の合理化、生産性向上のJPSとか、それからゆうパックも、もう昔のゆうパックと今は別の商品になっていますでしょう、ゆうパック全面リニューとか。いろいろなことをやってきたうちの一環でありまして、それも、さっき申しましたように、民営化法案も通った今日でありますから、もう非常にはっきりしておりますから、法的な要件、それから国会答弁、附帯決議、しっかり尊重してやっていこう、こういうことで進めております。

 率直に申しまして、過去何十年か全く見直しができていなくて、過去の基盤の基準というものは徒歩と自転車だった。ところが、今や高速道路ネットワークがこれだけあって、余り徒歩と自転車の方はいなくてバイクと自動車となると、やはりどこかの時点できちっと見直すことが必要なんだろう。私どもとしましては、結果的にそうなっているわけでありますが、十九年十月の民営化、分社化を完全な形で迎えるためにも、公社のうちにしっかり取り組むべき問題だと認識しているところであります。

 若干例えて言いますと、市場をグラウンドに例えると、来年十月一日に市場というグラウンドに出るわけですから、出てから予備運動、助走をしたのでは、出た途端に息切れする可能性があると思うんです。やはり出る前から、出てからもたつかないように、でき得る範囲で、公正な範囲で予備体操をしておくということは重要なことだろうと考えております。

 今塚田が言いましたように、だけれども、その内容につきましては御心配だと思います、周りの皆様方。下手したら悪くなるんじゃないかと思われるのは当然だと思います。だから、そういう御心配を何とか払拭して正確に理解していただくために、国民生活に直結する事業でありますから、役職員手分けをしまして、地域住民の方、あるいは地方自治体の皆様方にもお話をしてきている、こういうことでございます。

 そういうことでございまして、私どもとしましては、民営化が決まろうと決まるまいと、これはやはり社会インフラの進化に合わせてシステムも変えていこうというわけですから必要なわけでありますが、民営化が決まったら、ますます立派な民営・分社化ができて、それで事業が維持できて、その結果としてきちっとパブリックなサービスも維持できるように、パブリックのサービスを維持するためにも、内側でできること、お客様の利便性はきちっと維持するし、パブリックの使命も果たすけれども、内側でできる効率化というものは、これはやはり自分たちが自律的にやっておくべきだろう、こういう性格のものであろうと思います。極めて多くの地方自治体の皆様や地域住民の方たちの御理解ももう既に深まってきておりますので、そういう方たちとの不公正が生じることも、逆に言うとこれもいかがかというふうに思いますので、何とか今予定しているタイムテーブルでやらせていただきたい、こう思っておりますし、私どもとしましては、最後まで、正確な御理解をいただけるための努力をしていきたいと思っております。

 それから、御指摘のあった、いろいろな御注文がついたときに妥当性のあるものはやらないのかというのは、妥当性があるものはいっぱい伺いまして、かなり取り入れて、なるほどそうだな、そうはいうけれども冬はここは無理だよというふうなところは、ああそうだ、もう一つセンターをつくろう、ハブをつくろうというふうなこと等、手直しをいたしてきております。ただ、郵便局員が二、三人減るから、だから反対と言われても、ちょっとこれは難しいんですね。

 そういうふうな状況でございます。

逢坂委員 今の大変丁寧な答弁で、最後の一言が欲しかったわけですが、要するに、主張している事由に妥当性があればそれは柔軟に考える部分もあるんだということでございますね。しかも、サービスの低下を起こさない前提でつくっているけれども、頭のトレーニングだけではだめなんだ、実際に現場へ行ってみて、これはやはり違うよというところがあれば、それはそれなりに対応するという御答弁だったというふうに理解をいたしましたので、ぜひその方向でよろしくお願いしたいと思います。

 そこで、総務大臣にこの点について最後にお伺いしたいんですけれども、今回のように、これから民営化に向かっていわゆる郵政関連事業が地域に対していろいろと変化を起こしてくるわけですね。とはいうものの、郵政民営化法に盛り込まれた不採算の地区でもサービスを維持するという考えは、これは徹底されるんだということで、再度確認ですが、よろしいんでしょうか。

竹中国務大臣 これは法律の枠組みを議論する際にもうしっかりと御議論いただいたことでございます。これは、法律の枠組みでユニバーサルなサービスはしっかりと守るということを決めております。また国会答弁でも、個々の問題について丁寧に答弁させていただいたつもりでございます。その方向をしっかりと守って、今、郵政公社にも日本郵政株式会社にもいろいろな対応をしていただいているわけであります。

逢坂委員 それと、総務大臣にもう一点だけ確認をさせていただきますが、今後こういったような新たな郵政関連に関する変化の計画というものが出てくる場合に、やはりこうした計画策定というのは、地元への十分な説明、関係者への十分な説明というのが非常に大事なものだと思いますし、透明性を持ってやるということが非常に大事なのではないかと思うんですね。先般ある新聞を見ましたら、国民が気がつかないうちにサービスの質を落としてしまえばいいんだみたいなことを書いている新聞もありまして、とんでもないことを書く新聞だなと思ったんですが、こういう姿勢ではだめだ、だから十分な説明と、透明性を高めた今後の民営化に向かって進んでいくんだということで、大臣もお考えはこの点でよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 透明性の話でございますけれども、とりわけ、きょう今御議論いただいております郵便事業に関しては、民営化された後も特殊会社になります。法律に基づいて、法律の枠組みに基づいて、しかし民間企業としての活力を発揮していただく。そのための枠組みもしっかりとつくっているわけであります。その中で透明性は当然確保されてまいりますし、会社の運営に当たってもそういうスピリットを持ってやっていただけるものと考えております。

逢坂委員 今後ともその精神をしっかりと持ってやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは次に、郵便事業会社の収益見通しのことについて若干お伺いをしたいんですが、きょう、日本郵政株式会社から白金執行役員さんにもお越しいただいております。

 先般、七月三十一日に業務等の承継に関する実施計画の骨子というのが出されまして、これの五十九ページに郵便事業株式会社の収益見通しが出ているわけです。ここには純利益が五百億、三百億台、四百億台というような収益見通しが出ているわけですが、お伺いしますと、どうもこれには共済組合の追加費用の負担というものが入っていないということで聞いておりますので、共済組合の追加費用を職員数などの単純比例で加味すればこの収益というのは一体どうなるのか、お教えいただけますでしょうか。

白金参考人 今先生御指摘の点でございますけれども、先生おっしゃるとおり、整理資源、いわゆる現在支給されている共済年金のうち昭和三十四年以前の恩給公務員期間に係る共済の追加費用につきましては、今回の郵便事業会社の費用負担には入れておりません。今回の経営見通しの作成に当たりましては、この関係、各社のものすべて持ち株会社の方で負担するという条件を置いております。

 仮にこれを各社が職員数比で負担するということにした場合、郵便事業会社の場合は平成二十年度ベースで約五百億円の費用増ということになります。現在、先ほど先生がおっしゃった数字でいいますと、経常利益で六百三十億ということでございますので、これから五百億引いたものが経常利益ベースということになるところでございます。

逢坂委員 もし資料をお持ちでしたら出し惜しみしないで、二十年度だけじゃなくて、表に載っている十九、二十、二十一、二十二、二十三と教えていただきたいんですけれども。これは通告してあったはずですので。

白金参考人 ちょっと手元に細かい数字を持っておりませんが、毎年度数十億ずつ減っていく感じでございます。だから、五年ベースでいくと四百億ちょっとということになると思います。

逢坂委員 さて、その一方で、今度は郵政公社の方にお伺いをしたいんですけれども、部門別の採算で、郵便事業の方の純利益が、十六年度は二百八十三億でしたね。十七年度の決算でいくと二十六億ということだったかと思います。先ほどの生田総裁のお言葉をかりれば、ほぼゼロに近いというような発言をされていたわけでありますけれども、そういう黒字の状況になっていますが、十八年度の見通しというのは今どのようにお持ちでしょうか。

藤本参考人 ちょっと手元に資料がございませんので、若干記憶の部分がございますが、平成十八年度でございますけれども、たしか三百五十億の当期純利益を予想しておったと思います。三百億だったかもしれません。ただ、その中で、民営化の準備費用等もございますので、若干赤になる程度、たしか五十億程度の赤になる当期純利益の見通しを立てておったというふうに記憶をいたしてございます。

 また、確認の上、正確な数字をお知らせしたいと思います。

逢坂委員 要するに、私が議論したいというか問題にしたいのは、先ほど、七月三十一日に発表された日本郵政株式会社の、いわゆる郵便事業会社の収支見通し、経常利益によれば、共済の追加費用を除いても常に百億以上の純利益が出るような説明になっているわけですが、現時点で、部門別採算をとっているこの郵便事業の決算の純利益がどんどん下がっていく、しかも、来年度もそれは赤字見通しのような今発言でございましたけれども、そのことを加味しても、日本郵政株式会社が発表した七月三十一日の経営見通しというのはこの数字で正しいということなんでしょうか。

白金参考人 先ほどの数字でございますけれども、いわゆる整理資源を除いた場合、大体、約百三十億ベースというお話をいたしましたけれども、公社の十七年度決算は、経常利益ベースでは百五十一億円、あと特別利益、特別損失を入れた結果二十六億円ということでございますので、経常利益ベースではほぼ同じレベルではないかというふうに考えています。つまり、十七年度決算の実績をベースに連続性があるというふうに考えております。

逢坂委員 改めて確認ですが、それは、十八年度決算も、今説明が公社の方からございましたけれども、それを聞いた上でもほぼ大丈夫ということでよろしいでしょうか。

白金参考人 十七年度決算ベースの収益構造あるいは費用構造、例えば郵便物数の推移であるとか、あるいはコストの、例えば人件費あるいは集配運送費の変化、そういったものを見込んだものでございます。

逢坂委員 わかりました。

 ということであれば、現在の公社の決算あるいは将来の見通し、将来といってもあと一年半しかございませんけれども、それらを含めて、今これから新しく動き出すであろう株式会社の事業見通しも整合性がとれているということでよろしいわけですね。

白金参考人 そのとおりでございます。

逢坂委員 今回の民営化は、いわゆるユニバーサルサービスというものが議論の大きな争点になっていたわけでありますけれども、仮に郵便事業会社の決算が赤字になったというようなことがあってもその前提は崩さないということで、総務大臣、よろしいでしょうか。

竹中国務大臣 それは法律で義務づけられているサービスでありますので、それを実現するために政府も責任を持つし、また特殊会社も責任を持つということであります。

逢坂委員 それでは、次にお伺いしたいのは、先ほどの公明党の谷口委員の質問とも関連するんですが、現在の郵政公社の職員の身分といいましょうか処遇でございますが、これについてどうなるのか。特に、現在言われている特定局長さんに関してのところを再度御説明いただきたいというふうに思います。

 と申しますのは、先ほど生田総裁からいろいろと説明がありましたが、実際に現場を回ってみていろいろな方にお会いしてみますと、やはり相当に不安が広がっています。先ほど総裁が御説明くださったような内容が必ずしも多くの方に共有されていないのではないかという節もあるわけですね。

 その点を含めましてわかりやすく、特定局長さんの退職年齢の問題でありますとか今後のことについて、再度御説明をいただければと思います。

西村参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、特定郵便局長の今後の処遇についてでございますけれども、今郵便局改革の一環として、郵便局の人事制度それから郵便局の管理、マネジメントの制度、それから郵便局舎の調達の仕組みといったことを、トータルとして改革していこうという提案をしておるところでございます。

 今、それにつきましては、ことしの一月以来、関係団体、関係者との間でかなり頻繁な議論も行ってまいりまして、御理解を求めようということをやっておりますし、また、私ども自身も、現場といいましょうか地方にも出かけまして、地方の郵便局長さんたちにもその内容等を説明してきているところでございます。

 簡単に申し上げますと、今御指摘の処遇につきましては、今国家公務員制度のもとで特定郵便局長という仕組みがあるわけでございますけれども、その中で講じられてまいりました一つは定年の特例制度、これを今後民間企業になった場合には一般の新しい会社の社員の一律の定年制度の方に段階的に移行していこうということがございます。

 それから、これは制度ではないわけでありますけれども、実際上の運用として、先ほども話題になっておりましたような転勤といった事柄につきまして、原則不転勤だと言われておったものを原則転勤あり得べしといった制度に変えていこうといったこと。

 それから、特定局長さんたちの任用の仕組み、つまり局長になる仕組みのところが、今は国家公務員制度のもとで、国家公務員制度に基づきます選考任用という特別な任用制度をとっているわけでございますけれども、これからは民間企業の一社員として雇用契約の世界で運用されていくわけでございますので、そういった選考の仕組みについても見直していこうといったことを大きく今人事に関しては提案をしているところでございます。

 これらにつきまして、まだほかの改革項目も含めて理解を求めているところでございますけれども、特に勤務条件に関する、処遇に関する事柄につきましては、最終的には新しい会社との間の雇用契約、労働協約といった中で決まっていくべきものでもございますので、いずれしかるべき時期に、新日本郵政株式会社の方に引き継いで最終的な決定をしていっていただくといったことを考えているところでございます。

逢坂委員 実は、私ごとで大変恐縮なんですけれども、私の実家は郵便切手の売りさばきの業務をずっと長い間やっておりまして、要するに、郵便局という存在というのが地域で果たしている役割、あるいは特定局長さん、いろいろ世間で取りざたされていますけれども、やはり普通の職にはない苦労もされてやられているというようなこともございます。

 そういったこともありますので、ぜひこれは、やはり個人として相当不安も抱えていらっしゃると思いますので、きめの細かい説明をして、円滑な、あるいは特定局長さんたちだって将来設計を描かなければいけないわけですので、十分に説明をして納得をいただいた上でいろいろな対応というものをしていただければなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後ですが、これは最後に竹中大臣にお伺いしたいんですけれども、お手元に資料として「あすなろ村の郵便局」というカラー刷りのものを用意させていただきました。これは、自民党のホームページから拝借をしてきたものであります。ホームページで公開されているものでございます。

 それで、これは、実は私も昨年のきょうの時点でまだ北海道のニセコの町長でありましたけれども、そのときも、この郵政民営化について、いろいろ不安だよねという話をするときに、自民党の方から、いやいや、大丈夫なんだよ、この「あすなろ村の郵便局」の例を見てください、こういうふうになるんですよというふうに言われて、ああそうかなというふうに思った。これは、説明資料として見た方が首長さんの中には結構多いようでございます。

 それで、先般も私の地元をいろいろ回っていましたら、逢坂さん、去年こうやって「あすなろ村の郵便局」のものを見せられたけれども、結果は全然違うでしょう、ほら、早速集配局がなくなるでしょうと。この七ページを見たら何かいろいろなことが、例えば、郵便局がコンビニみたいになっていろいろなものが売れるようになる、コンサートのチケットの予約ができる、オープンカフェやレストランが併設される、「二十四時間営業だって夢じゃないぞ。」「介護や福祉のサービスもやればいいじゃないか。」「キミたちのやる気とアイデアを活かす、それが民営化なんだ。」と書いてあるわけですね。それから、ここの最後のところを見ると、前島さんという方が出て言っているんですが、「大丈夫、みんなの望むサービスが、次々に実現されていくのが民営化のいいところなんじゃ。」ということも書いてあるわけですね。さらに、ここには「どんな小さな田舎の郵便局だって、工夫しながら頑張れば町おこしや村おこしの役にも立てるんだ。そうですよね、」というふうなことが書いてあるわけですね。

 そういう説明を受けて一年なわけですね。これは自民党のつくったものでありますから、どうこうということはないのかもしれませんけれども、とはいうものの、竹中大臣のお立場からすれば、こういうものをある種、昨年、多くの方に見せて説明をして、この民営化というものに乗り出したわけですが、果たして「あすなろ村の郵便局」というのは、この最後の方のページにあるようなことにこれからなるのでしょうか。私は、それは甚だ心もとない。これはまやかしだったのではないか、この紙芝居は幻だったのではないかという日が来るのではないかという気がするんですが、竹中大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 今御紹介いただきました紙芝居、当時大変、いろいろ賛否両論、話題になりました。

 今委員が御指摘くださいましたように、これは党で武部幹事長を中心におつくりになったものでありますので、その中身そのものについて、ちょっと行政の立場ではコメントいたしませんが、その中に書いていることは、実は、表現の仕方はともかくとして、やはり二つのことを言っているわけです。いろいろ新たなサービスができるようになりますよということを一つ言っています。もう一つは、民間の経営の規律の中で、JRの例等々を出して、値段が下がるかどうかはともかくとして、値段が上がらないようにJRだってなったじゃないですか、それでサービスがよくなっているじゃないですかということを言っているわけです。

 その意味では、そういう方向に実は向かうんだということが、さきの承継計画の骨格の中で私は示されてきているというふうに思っております。自由にやって選択を広げるということと、そして経営を効率化するということ。先ほど生田総裁の話の中に、サービスは低下させないで、しかし内側でできる努力をするんです、まさにそれはコストを削減するための努力をするんですということをおっしゃって、それが今回の集配特定局に関する改革であるんだと思います。

 その意味では、実は今、公社で準備として行っていること、そして実施計画の中で、骨格の中で示されていることというのは、自由度を高めるということと経営規律の中で効率化するという方向において、私は着実に実現されてきているというふうに思っております。

 もちろん、まだ今は法律が公社の法律ですから、新しいことは今はできません、今は見えません。しかし、そのための準備をしっかりと進めていくわけで、まさにそこに示されたようなことが、郵政民営化のメリットが実現できるように、我々も最善を尽くしたいと思っております。

逢坂委員 総務大臣の立場としてなかなか言いにくいところはあるかと思いますが、この「あすなろ村の郵便局」の紙芝居には、「そんな郵便局ができて、田舎の暮らしが便利になれば都会に行ってる仲間たちも、きっとこのあすなろ村に帰ってくるなあ。」というくだりがあります。郵便局がよくなって便利になれば村が活性化するよということをこの紙芝居では言っている。

 私は、個別の中身はどうこうということは大臣に言いましたけれども、現実は全く逆。集配局がなくなることで、先ほど、ただ人がいなくなる、職員がいなくなるということだけの理由で反対というのは適正な反対事由ではないというような答弁がございましたけれども、そうじゃない。地域では、やはり一人でも人口を確保したい、そういう思いでみんな暮らしているわけでありますので、ここで書いてあることと現実は違うのではないか、そういう思いを持って、やはりこれから地域のことも考えて仕事をしていただきたい。決して単に経営効率だけを考えてやることではないということを前提に、またお考えをいただきたいなというふうに思います。

 以上で終わります。

谷委員長代理 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 きょうは、この総務委員会で初めて質問をさせていただきます。委員長初め理事、委員の皆様方には、こうして質問に立たせていただく機会を与えていただきまして、心から感謝を申し上げます。

 きょうは、民営化に向けて歩を進めております郵政事業につきまして質問をいたします。特に、去る七月三十一日に日本郵政から示されました日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格の内容を交えて、郵政事業の民営化について質問をさせていただきます。

 まず、郵便業務についてお尋ねをいたします。

 先ほどから逢坂さんあるいは谷口委員のお話の中にもございました、十七年度決算において、当期純利益は大幅に減って、もう十分の一以下になっておりますが、二十六億円になっています。先ほどの総務大臣のお話の中にもございました、郵便引受数の減少が年々続いている、一方でまた、原油価格の高騰、燃料費の高騰も純利益を押し下げた原因の一つになっているんでしょうか。確かに、物流各社は、ヤマトホールディングスを初め軒並み厳しい決算の数字になっています。

 むしろ、ここで気になりますのは、先ほども総務大臣が言われた、こうした大変厳しい経営環境が続く中で、この実施計画の骨格、その中で示されている経営見通しについて、十九年度で五百二十億円、二十年度で三百八十億円、ずっと順調に推移して、二十三年度五百三十億円、非常に順調に推移をしています。

 先ほどの逢坂委員からの共済年金のお話、少しはわかりました。これは一つの根拠だと思います。そして、あくまでこれは既存の業務に関する経営見通しであって、新規事業はこの中には含まれていません。ならば、先ほどの共済年金の話があったとしても、当期利益二十六億円、それでもなお、まだまだ順調な純利益の見通しだと思います。よほど効率化そしてコスト削減が図られるのでなければ実現できるような数字じゃないというふうに思っています。

 この骨格の中にはコストの削減策は見当たりません。もちろん骨格ですから見当たらなくて結構なんですけれども、具体的にこれからどういう効率化を進めていくのか。先ほどお話の中にも出ました集配局の見直し、これもその一つだとは思います。幾つかコスト削減策があろうかと思いますけれども、民営化後の経営見通し、純利益の数字、おおよその、これだけの数字になる根拠も含めて、効率化していく中身について教えていただけないでしょうか。お願いします。

白金参考人 先ほどの繰り返しになりますけれども、まず、整理資源の関係でもう一度御説明したいと思います。

 先ほども申し上げましたように、二十年度ベースで約五百億円程度、郵便事業会社が仮に職員数比で負担するということになれば費用負担増ということになるわけでございます。十七年度決算の二十六億円の数字との関係でございますけれども、この五百億円の数字というのは経常利益から引かれるものでございますので、経常利益ベースで比較するのが適当ではないかというふうに考えています。そういたしますと、先ほど申し上げましたように、骨格ベースでは六百三十億という経常利益を考えておりますので、百三十億ぐらいに減少するんじゃないかということでございます。一方、公社時代の十七年度決算の関係でございますけれども、経常利益ベースで申し上げますと百五十一億ということでございますので、この百五十一億と百三十億、これを比較するということになるんではないかなというふうに思っております。それが一点でございます。

 それから、効率化の関係でございますが、先生おっしゃるとおり、実施計画の骨格の経営見通しの中では、効率化施策について具体的な内容の記載はしておりません。経営見通しの中で「費用については、業務の効率化等を進めることにより削減を行う」ということで書いておりまして、経営見通しにおいて一定の効率化施策は見込んでおります。

 例えば、先生のお話にございましたけれども、民営化前に公社において取り組んでいる集配再編等による要員削減効果、こういったものも踏まえております。それから、郵便事業の場合、どうしても労働集約性が高い産業ということでございますけれども、間接部門、この販管費の割合が非常に高いわけであります、こういったもののスリム化。それから、通常郵便につきましては物数が減少しております、これに伴う必要労働力の削減。そういったことを踏まえまして、年間約四千人程度と見込まれる自然減の退職者数の範囲内で採用抑制を図れるよう、効率化施策の実施を考えているところでございます。

三谷委員 今のお話の中で、郵便引受数の減少に伴う労働力の削減、自然減というふうにおっしゃいました。これは確認なんですけれども、退職による人員減の補充をしない、そういう意味だと思うんですが、この合理化策の中には人員の削減はないんですね。

 もう一つ、それと、先ほど来出ております、集配局の合理化、削減に取り組まれていると。片方ではまた、大きな問題にもなっています、反対運動も出ています。もちろん効果の問題があろうかと思います。おおよそで結構ですので、この集配局の合理化、削減、額にすればおおよそどれぐらいの削減効果ということになるのか。

 この二点を教えていただきたいと思います。

白金参考人 まず最初の方の関係でございますけれども、人員削減を行わないのかという御質問であろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、毎年約四千人程度の自然減がございますので、黙っていれば四千人ずつ減るということでございます。当然、通常郵便物は減っておりますが、ゆうパック等はふえております、そういった業務量に見合った人員の配置とか、そういったこともございますので、その四千人がすべて減るわけではございませんが、できるだけその四千人の範囲の中で採用抑制を図っていきたいということでありまして、出発時といいますか、民営化時十万六千八百人ということを予定しておりますから、それからは当然減っていく。そういう意味では人員削減はあるということでございます。

 それから、集配再編の関係でございますけれども、これは公社の方で現在行っておるところでありますが、それの数字をお伺いしますと、大体百億円ぐらい経費が減るというふうに聞いております。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 続きまして、また郵便事業のことでお尋ねをさせていただきます。

 先ほどの谷口委員のお話の中にもございました、私にとっても大変大きな関心事なんですけれども、公社によって進められてきました、郵便事業株式会社が国際物流事業に乗り出していく上で欠かせない提携先でありましたオランダ物流大手TNTとの提携交渉がことし六月、破談になりました。四社の中では一番いい提携先かなというふうに個人的には考えておりましたけれども、まず、どうしてこのような破談というようなことになったのか。そして、これからまさに民営化をされて国際物流に乗り出す上で、今後の提携先、あるいは展開も含めてどのように考えておられるのか、またどういう見通しを持っておられるのか、聞かせていただきたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 オランダのTPGと提携しようと思っていました。二年近く交渉しました。なぜTPGだったか。いわゆるインテグレーター、ああいう物流業者は世界で四つあるんですけれども、一、二、三と並んで大きいんですけれども、TPGはちょっと小さいんです。ちょっとじゃない、大分小さいんです。したがって、我々とコー・ブランドをつくる、共同商品を開発するということに同意してくれたので、それが、我々としてはメンツも立ちますし、いいかなと思うことでやってきたんですけれども、いよいよ調印しようという一カ月前になりまして、実は大変条件の大幅変更をしてまいりまして、商業上のことですから内容は詳しくは申しませんが、公社としてはのめないようないろいろな条件が出てきたわけです。例えば何百機と飛行機を持つことの割り勘要員になってほしいというようなたぐいの話であります。

 これはちょっと、何で最後の一カ月で言ってきたのか、若干いろいろな意味で問題がある可能性があると思いましたので、長期にそこと組むのは公社のためならずというふうに思いましたので、白紙にしたわけであります。欠くべからずというところまで思い詰めていたわけじゃないんですが、そういう意味で、共同商品をつくる相手としてはちょうど手ごろかな、こういう感じでいたわけであります。

 公社というのは、公社法のもとで三月末までは手も足も出なかったんです。法を改正していただいて四月から可能になったということで、やっと当事者能力を持ちまして、各国の業者及び国内の業者の方たちといろいろな話し合いを今しております。

 一番皆様の目に触れるところでは、ANA&JPエクスプレスという会社をANAと共同でつくりまして、もう飛行機が三機飛んでおります。毎週、上海、アモイ、大連、天津、香港、ソウル、さらに秋からはアメリカということで直行便を飛ばしておりまして、これを公社が、ジョイントベンチャーのパートナーであると同時に大口のユーザーといたしまして、EMSを中心に事業展開を進めているというところであります。

 インテグレーターとの交渉を今後はどうするのか、するのかしないのか、することも十分視界に入れながら、いっぱいお誘いが来ていますから、多少時間をかけて、焦らずに、いいところを見きわめていきたいと思います。外資系だけではなくて、日系の業者の方からもいろいろなお話があります。ただし、今回はコー・ブランドという、これぞというのは、こういうことで一遍、大変難しいということがわかりましたので、それにアイデアを限ることなく、もっとみずからが商品価値を高めて、相手のネットワークを活用するというふうなアイデアも含めまして、今後早急に考えを整理していきたいと思っております。

 ただ、一言最後に加えますと、我々はまだやっていないんですよ、これからビギナーで出ていくわけですから、これができたらすぐ利益の根源になるということじゃないんです。中長期的なプロジェクトで、何年かして利益の根源に徐々に育つということで、入り口の二、三年というのは、こういう場合は大体、むしろ利益がすぐ出て黒字に貢献するということよりも先行投資として費用の方が勝つというようなたぐいの大型プロジェクトになるだろうということを付言しておきたいと思います。

三谷委員 このことでは一点だけ。

 お話ししづらいとは思いますけれども、例えば、今提携の話ばかりですけれども、KPNがTNTを、自分のところよりも大きいものを飲み込んで買収をしましたように、四社のうちの一社を買うというのは、なかなかこれは難しい話かもしれませんけれども、どこかを買い取るというような発想、お考えというのが今のところありませんでしょうか。

生田参考人 お答えします。

 少なくともことしの三月までは全然できなかったんですね。今もかなり難しい場があると思います。だけれども、民営化すれば少なくとも法的には可能になるので、あとは経営判断で、それが本当にプラスになるか、それから投資効果が本当にあるのかという経営判断になってくると思います。

 したがって、決して排除することは新経営陣はされないでしょうけれども、その場合も、必ずしも四大インテグレーターのうちの一つというよりも、これは何兆円の話になると思いますから、ひょっとしたらそれ以外の、いろいろな日系も含めまして、我々の力を蓄えるのに一緒になったらいいところも対象に含めながら、幅広くそういう選択肢を使っていくことになるだろう、こういうふうに考えます。

三谷委員 お答えしづらい話をありがとうございました。

 また質問をかえます。

 これもまた、先ほど来お話が出ておりますけれども、ことしに入りまして、郵政公社にかかわる不祥事が続いております。先ほどからもお話が出ておりました。一番近いところでは、長岡郵便局、二十七億円の損失。二〇〇三年から三十二局でこうした事件が起こっています。

 先ほど生田総裁のお話の中でも、うみを出し切るんだということがございました。もちろん、うみを出すことが大事ですけれども、郵便局の不正値引き事件、こういう不適正収納事案だけじゃなくて、例えば、また近いところで、大阪での特定郵便局長さんの一億円の持ち逃げ事件でありますとか、また先月は先月で、簡易保険における契約者向けの配当金の支払いミスというような不祥事もございました。

 コンプライアンスの強化をどのように考えておられるのか。もちろん、この郵政公社のディスクロージャー冊子の中にも書かれてあるようなありきたりのことではなくて、それぞれまた事案によっても再発防止のための取り組みというのは違うんだろうというふうに思います。その取り組みについて、関係先それぞれにお答えいただけませんでしょうか。

 また、民営化の後のことを考えますと、特に郵便局がそうですけれども、実は金融庁の監督下にも入りますし、実に多様な業務、そして、さまざまな金融商品を初め、実に多様な商品の販売窓口ともなります。この法令遵守、細かなことも含めて、あるいは人事管理も含めて、強化徹底しなければ必ず問題がまた起こることだと思います。

 この郵便局の関係も含めて、今進めている取り組みについて、具体的なお話を聞かせていただけませんでしょうか。

    〔谷委員長代理退席、委員長着席〕

森参考人 お答えいたします。

 先ほど先生御指摘ございましたコンプライアンスの徹底でございますけれども、私ども公社になりまして、経営の最重要課題の一つということで位置づけまして、公社発足の当時から、例えば、本社にガバナンス・コンプライアンス委員会を設置する、あるいはコンプライアンス基本方針を策定、コンプライアンスマニュアルをつくりまして全職員へ配付するといったような法令遵守体制の整備を図りまして、全社を挙げて取り組んできたところでございます。

 しかしながら、先ほど先生御指摘ございましたように、長岡局におきます郵便料金の不適正事件でございますとか、近畿におきます特定局長の資金横領事案といったような、犯罪とかコンプライアンスの違反といった事案が後を絶たないということで、大変危機的な状況であるというふうに認識をいたしております。コンプライアンスの徹底の取り組みにつきまして、さらにこれを強化いたしまして、郵便局を御利用いただくお客様の信頼の回復に全力で取り組んでいく必要があると考えております。

 そこで、本年度におきまして、具体的にということでございましたので、毎年、コンプライアンス・プログラムというのを策定して取り組んでございますけれども、その中で三つほど具体的な取り組みを御紹介いたしますと、このような、先ほどの近畿におきます資金横領事件等に対応しますために、犯罪の発生、あるいは犯罪の早期発見、あるいはその抑制といったことで、郵便局長等管理者が必ず実施をしなければならない点検事項等をまとめまして、防犯職務指針という形で策定をいたしまして、これを徹底させております。

 それから二点目に、そういった不適正事案等を未然に防ぐあるいは早期にその解決を図るという観点から、コンプライアンス相談窓口というのを設けておりますけれども、それにつきましても、さらに外部の弁護士事務所にもその窓口を拡充いたしておるということを一つやっております。

 それから三つ目でございますけれども、今既に取りかかっておりますが、全国の郵便局長あるいは管理者すべてを対象にいたしまして、ケーススタディー等を用いまして、実践型の、実践的な事例をもとに研修を実施するといったこととか、あるいは、そういう必要なコンプライアンスの知識を身につけていただくために、システム、ネットを利用しましてEラーニングを導入する、これによって学んでいただくということ、そういったことに今現在取り組んでおります。

 あわせまして、先ほどの、私ども総裁から答弁をさせていただきましたけれども、コンプライアンスのみならず、これを含めまして内部統制全般の強化を図るという観点から、本年五月に内部統制強化本部を立ち上げておりまして、役員主導によりまして、先ほど御指摘の部内犯罪の防止でありますとか郵便収入の適正管理といった全社横断的な課題を中心とした抜本的な改善策を、現在検討を進めているところでございます。

 以上でございます。

白川参考人 新会社、日本郵政株式会社での今後の取り組みの計画といいますか、それについて先ほど先生の方からお尋ねがありましたので、今考えていることを御紹介申し上げたいというふうに思います。

 今般、公社の方で不祥事が相次いだということで、先ほど森執行役員の方から御説明がありました。新しい民営・分社化に向けて、その円滑な実施のために郵政公社において十分な改善が図られるということを強く期待申し上げているところでございます。

 日本郵政株式会社といたしましても、グループ各社のコンプライアンスの徹底は民営・分社化に向けた最重要課題の一つだというふうに認識しております。

 とりわけ、先生御指摘のように、郵便局会社でございます。

 まず、郵便局会社におきましては、一つは、全国津々浦々に約二万四千六百の営業拠点と多数の社員を有しております。お客様に直接接する機会が非常に多いということでございます。

 そしてまた、次に、先生もお触れになりましたように、特に金融代理店として、お客様からの信頼と業務の品質の確保が求められるということでございます。例えば、リスク商品の販売については元本割れのリスクがあるということをきちんと説明していくとか、そういうことをやっていかなきゃいけないというふうに思います。

 いずれにいたしましても、郵便局会社にとりましてコンプライアンスの強化は特に重要な課題だ。そのために、郵便局会社におきましては、コンプライアンスを推進する組織体制、これをまず整えたいというふうに思っております。そして、コンプライアンスマニュアルの作成、コンプライアンス状況の把握、コンプライアンス研修、こういった施策を充実させることによりまして、十分なコンプライアンス体制を確立していきたいというふうに思っております。

 そしてまた、営業拠点そして社員の多さという郵便局会社の性質、特性を踏まえまして、これらの措置に加えまして、一つは、社員にわかりやすいルールブックをつくって、その中身を、当該ルールの徹底を各郵便局にまで図っていくということ。そして、ルールが遵守されているかの内部監査の徹底を行いまして、内部統制の強化を図っていくということを現在検討しているところでございます。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 それでは、話をかえます。民営化後の新規業務についてお尋ねをいたします。

 郵便局株式会社については、ほかの三社と異なりまして、新規業務を届け出だけでできることになっています。郵政民営化委員会に諮ることも主務大臣の認可も要らないということだと思います。利益を上げるために考えられる業務は、届け出さえすれば郵便局株式会社の場合は何でもできる、こういう受けとめ方になるのですが、郵便局株式会社は、郵貯、簡保と異なりまして、これは移行期以降も政府関与の特殊会社ということに、もちろん民営化時もですけれども、特殊会社ということになります。

 また一方で、郵政民営化法の中に当該業務と同種の業務を営む事業者の利益を害することのないよう配慮しなければならないという責務規定がございます。これは四社全部にかかっているんだろうと思います。同種事業者の利益を損なうという意味では、ほとんどすべて、新規業務が何らかの形で、これは当たり前のことですけれども、同種の業務を営む事業者の利益を害することにはなります。だから、そこで判断が必要になってくるんだろうと思います。

 この郵便局株式会社、新規業務について、同種民業の阻害になるかならないか。これは民営化委員会に諮ることもまた認可も要らない話ですので、監督官庁である総務省の判断ということになると思いますけれども、どういう基準で、この業務については民業阻害になるんだ、ならないんだという判断をするのか、これを教えていただきたいと思います。

 この骨格の中にも示されております、郵便局株式会社の民営化後の新規商品・サービスの提供として行う、例えば自動車保険等々の損害保険商品の提供、あるいは敷地を利用した駐車場事業、再開発関連の不動産事業等々はオーケーなのかどうなのか、どういうことがだめでどういうことがオーケーなのか、その判断の基準について教えていただきたいと思います。

竹中国務大臣 今、三谷委員御指摘されましたように、郵便局会社につきましては、総務大臣への事前届け出によって新規業務を提供するということを可能にしている。これは郵便局株式会社法の第四条第四項で規定をされております。この点につきましても、郵政民営化に関連する法案の審議の中でいろいろと御議論を賜ったところでございました。

 言うまでもなく、民営化は、経営の自由度を持っていただく、それによって、先ほどから経済環境が厳しくなっているというお話が続いておりますけれども、そういう中で新たな収益源を探していってもらいたいということを目指しているわけでございます。とりわけ郵政全体の中で、この郵便局会社が持っている可能性につきましては、潜在力が非常に高いということも踏まえまして、できるだけ自由にやっていただきたいというのがこの法律の立法の趣旨であったというふうに考えております。

 他方で、これも委員御指摘になりましたけれども、一方でしかし、これはフェアな競争でなければいけないわけでありますので、日本郵政公社から引き継いだ人的・物的資産を活用してこの郵便局会社は始まるわけでありますから、これが他の民間業者にはない優位性を持って事業を営むということは可能になるわけでありますので、とりわけ移行期間中は、この届け出業務に関して、同業他社の利益を不当に害することのないよう配慮する義務、配慮義務というのを課しているわけです。

 問題は、不当に害することのないようにということで、そこについてはしっかりとした御判断をまず一義的には郵便局会社でしていただかなければいけないわけであります。しかし、郵便局会社が同業他社へのこの配慮義務に反すると認められる場合には、行政として必要な措置を講じていくことになります。

 お尋ねは、その際の当局、我々の判断の基準でありますが、今具体的にこの駐車場の業務はいいのか悪いのかというお尋ねがございましたけれども、そこは具体的な事案で判断しなければいけませんので、個別具体のことを申し上げることは今の段階ではできませんが、判断の大まかな方向といいますか基準に関して申し上げれば、日本郵政公社から人的・物的資産を引き継ぐことによる同業他社への優位性をどのように見るのか、これは判断の基準だと思います。届け出業務の目的及び実施方法が適切であるかどうか、そういうことも判断の基準になろうかと思います。そして、同業他社に及ぼす影響、この影響は、産業組織的に見てその業界がどういう業界にあるか、特にローカルな影響はどうかということも踏まえた判断が必要になろうかと思います。

 したがいまして、判断はあくまで総合的に行わなければいけない、個別具体的に判断をして総合的な判断をする、そういう一般的な言い方になって大変恐縮でございますが、法の趣旨に沿って適切に運営をしていきたいというふうに思います。

三谷委員 はい、わかりました。

 次は、上場についてお尋ねをいたします。

 郵便貯金銀行、郵便保険会社、この二社の株式については、この骨格の中に示されております、遅くとも民営化後四年目の上場を目指し、五年間で処分をする方針というふうに示されております。これは十年で完全処分ということがありますので、四年目に上場して残りの五年間で処分、こういうきつい話になるわけですけれども、四年目の上場というのはかなりきつい、無理のある話ではないでしょうか。

 この上場についての必要な条件整備について、いろいろなことがあると思いますけれども、どういうことがあるか、あるいはそれをどのようにクリアしていくのか、その見通しについて聞かせていただきたいと思います。

米澤参考人 お答え申し上げます。

 郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式につきましては、郵政民営化法によりまして、移行期間中に段階的に全部を処分するということが求められているわけでございます。このような条件のもとで両社の株式の円滑な処分を図るためには、来年十月の民営化以降、可能な限り早い時期に処分を開始することが望ましいということが一点ございます。そしてもう一つ、上場の申請要件、形式基準と申しますか、これにおきまして、事業継続年数が三年以上という要件がございます。これらのことから、今回の実施計画の骨格におきましては、遅くとも民営化後四年目の上場を目指すということにしているわけでございます。

 そのために必要な条件整備、いわゆる上場審査基準と言われるものにつきましては、例えば企業の継続性及び収益性、これにつきましては、継続的に事業を営み、かつ、経営成績の見通しが良好なものであること、あるいは企業経営の健全性、事業を公正かつ忠実に遂行していること、また企業内容等の開示の適正性、これは企業内容等の開示を適正に行うことができる状況になっていること等々の要件があるというふうに承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、このような審査基準に適合できますよう、各社において経営体制、業務執行体制等の整備を進めまして、遅くとも民営化後四年目の上場を目指してしっかり努力してまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

三谷委員 この十年の規定というのがありますので、また事業継続三年以上ということもありますし、ぎりぎりのところという御判断があるんだろうと思います。急がなければなりませんけれども、やはり先ほどお話の中にもありましたさまざまな審査基準だけではなくて、例えば先ほども申し上げましたような不祥事が続くようなことになりますと、上場にももちろん影響がございますし、上場後の話だったら株価にも影響する話でもあります。そういう意味では、急がなければなりませんけれども、体制づくり、先ほどのお話以外のことも含めて、慎重にしっかりとやっていただきたいと思います。

 続いて、民営化後のゆうちょ銀行、かんぽ生命の資金運用についてどのように考えているか、お伺いしたいと思います。大変大事なことだと思っています。

 運用は、確かにこれまでもやってきたこととはいいましても、あくまでも制限の中でやってまいりました。民間では例のない巨額な資金ということが言えます。郵貯は、今二百二十兆円、減るとはいっても、民営化時で百八十八兆、二十三年度で百六十一兆という見通しになっています。簡保は、今百十四兆円、民営化時に百八兆、二十三年度で九十一兆。

 財投債を含めた国債が大変大きな比率を占めています。国債の利率の上昇が今後予想をされるのではないでしょうか。この骨格の中での経営見通しにもあるように、国債金利が四%に上昇した場合のことが書かれていますけれども、収益は大変大きく損なわれます。今の金利が前提なら平成二十三年度で四千八百八十億円、金利が四%に上昇なら五百九十億円に減少しますよということもこの中で書かれています。ゆうちょ銀行、かんぽ生命の健全経営が危うくなれば、金融市場への影響ははかり知れないものもございます。国債の暴落だって、これだけ抱えているわけですから、起こり得ないということもありません。

 資金運用についてどのようにしていくか、できるだけ詳しく、できるだけ具体的に、どのように考えているか、お教えいただきたいと思います。

高橋参考人 お答え申し上げます。

 先生御案内のように、郵便貯金の出入りといいますか、小口の貯金を集めて、それを有価証券中心に運用している、国債の比重がたくさん多いということでございまして、先生が御心配いただいたとおりでございます。

 民営化後の郵便貯金銀行について考えますと、郵便貯金銀行発足時点、民営化の時点では、リスク管理手段とか運用手段を含めまして、業務範囲といいますのは公社のときのままという前提になっております。また、民営化の時点で新旧勘定に分かれて、旧勘定の分は特別預金という形で銀行の方にまた返ってまいりますが、その特別預金の額以上を安全資産で運用するようにということにもなっております。こういったことを考えますと、民営化後、その基本的な運用の姿、債券中心といったものが直ちに変わるというふうには見ておりません。

 であるがゆえに、今後の金融環境をよくよく見ながら、健全な経営というものを確保していくためには、何よりもALMというものを適切にやっていくことが重要であると考えております。

 その観点から申し上げますと、現在、一般の銀行が当然のように行えているリスク管理の手段、これが現在の公社ではできるようになっておりません。そういった金利スワップですとか金利先物といったものを直ちに民営化後は行えるようにしていただきたいということで、骨格でも記している次第でございます。

 また、国債というものが大宗を占めている。先ほどその基本的な姿というのは急には変わらないと申し上げたのでありますけれども、長期的にはその多様な資産というものをもってALMをより適切に行えるようにしていきたいということもございますので、骨格の中では、リスク分散や収益源の多様化といったものを図るために、シンジケートローンであるとか株式の本体運用、信託受益権といったものも希望していると記させていただいた次第でございます。

三谷委員 時間が少なくなってまいりましたので、重ねては尋ねません。

 今おっしゃられました、この骨格の中にも示されています、スワップ、先物、リスク管理の手だてはもちろん、シンジケートローンあるいは株式の本体運用等々、対象を広げなければなりませんけれども、運用の経験者がいないので、これは持ってくるわけですよね、持ってくることもお考えなんですね。――はい、わかりました。

 続いての質問に移らせていただきます。同じくゆうちょ銀行のことでお尋ねをさせていただきたいと思います。

 このゆうちょ銀行ですけれども、完全民営化までの移行期の郵便貯金銀行の新規業務、特に貸出業務につきましては、去年の十月、衆議院の郵政民営化特別委員会で私も質問に立たせていただきまして、郵政民営化法案の審議の際でも議論をさせていただきました。あえて再度尋ねさせていただきます。

 このゆうちょ銀行は、民営化時から商法上の会社、銀行法上の銀行といえども、完全民営化すなわち日本郵政が完全に株を手放すまでは、政府が事実上株を持つ政府関与の銀行だというふうに思います。政府関与の銀行が、貸付業務等々、ここにも考えられるものがすべて羅列をされておりますけれども、民間銀行と同じ貸出業務を行うことについては、私は問題だというふうに思っています。イコールフッティングではないと思います。預け入れ限度額の撤廃も、話がかわってしまいますけれども、これも私はすべきではないというふうに思っています。

 ゆうちょ銀行は、全株処分するまでは、政府出資という形で国の信用と関与が残ります。加えて、規模は巨大です。そして、一般事業会社を子会社に持つ持ち株会社の傘下に特例的に置かれる。民間企業には認められておりませんけれども、この移行期においては特例的に認めています。その意味で、先ほども竹中大臣の御答弁の中にも優位性という言葉が出ましたけれども、明らかに一般の金融機関にない競争上の優位性を持つというふうに思います。加えて、規模が巨大であるということは申し上げましたけれども、国の事業としてずっと行ってきた郵便局のネットワークが使える、こういう優位性もございます。

 中小企業向けの貸出業務、あるいは法人向けプロジェクトファイナンス等ともこの中には書かれていますけれども、ここに列挙された新規の業務、いろいろございますけれども、考えられることがすべて盛り込まれ、確かに本当にこれができるのかどうか、こちらの方も不安なところはありますけれども、できるとするならば、本当に強い銀行ができ上がるというふうに思います。特にこの移行期にはまさに特別な競争上の優位性を持つ銀行だと思います。

 私も、この一月に郵政民営化特別委員会の視察でオランダに行かせていただきました。この郵政民営化の制度設計、これはオランダに行ってわかりましたけれども、オランダの民営化がやはりモデルになっているんだなという感想を持ちました。INGグループ、ロイヤルTNTポストがどうやらイメージをされている、そのように思いました。そのときにもING金融グループの方々もおっしゃっておられました、まさに郵便局の信用ネットワークが大いに役立ったんだと。それはそのはずだと思います。だけれども、オランダ・ポストバンクの場合は資金量でせいぜい五兆円程度です。日本の郵貯は現時点で二百二十兆です。規模が巨大なだけ格段の優位性を持つと私は思います。

 話を戻しますけれども、企業向け貸出業務を初めとする新規業務、信用リスクビジネスについて、経営の自由度と、民業圧迫になるのかどうか、これを勘案して民営化委員会が判断をして、主務大臣が認可ということになっています。もちろん民営化委員会の委員の御意見もあるでしょうけれども、認可をするのに、ある程度明確な基準と申しますか、ガイドラインが私は必要だと思います。あの十月の審議のときに竹中大臣おっしゃいましたけれども、何も収益率が何%とか細かい規定のことを言っているわけではありません。例えば、株の持ち株比率が一割以下に落ちた場合にはこうするとかいうような基準というものが私は必要ではないかというふうに思っています。

 この移行期のゆうちょ銀行の新規業務、特に貸出業務の認可について、竹中総務大臣の考えを聞かせていただきたいと思います。

 また、あわせまして、金融庁にこれもまた再度尋ねます。政府関与の銀行が信用リスクビジネスに乗り出す、金融秩序に与える影響はないのかということを問わせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

竹中国務大臣 三谷委員御指摘の点は、まさに郵政民営化の今後のプロセスの中で最も重要な点の一つ、そのことをずばり御指摘くださっていると思います。

 これまでもそうでありましたけれども、この銀行部門の競争力については、非常に大きく振り子が振れるように、両極端の議論があり得ます。一つは、資金調達のノウハウはあるけれども、資金運用のノウハウがなくて本当にやっていけるのか、競争力は極めて弱いのではないかという懸念が一つ。その一方で、いやいや、大変な競争力上の優位性を持ってしまって民業を圧迫するぞという議論。しかし、答えはどちらでもない。しっかりとした中間の道を歩むように郵政にも努力してもらうし、かつ行政の方でもしっかりそれを見ていく、それに尽きるわけでございます。

 当初は、日本郵政公社と同様の業務範囲から始める。国の信用関与が残る期間については、郵政民営化委員会の意見聴取の上、透明公正なプロセスで、イコールフッティングの状況、経営状況を勘案しながらやっていく。そして、業務範囲については段階的に緩和をして、移行期間終了後は撤廃する。つまり、最初は、今の現状のままという意味で、新たな自由度はゼロから出発して、約十年後には一〇〇%の自由度を持つ、その間は段階的にやっていく。そして、その間の段階的な移行においては、経営の自由度とイコールフッティングをしっかりとバランスさせる、そういう枠組みを法律の中でしっかりとつくったわけであります。そして、その判断に郵政民営化委員会がしっかりとした意見を述べるということも位置づけているわけであります。

 今、委員は、もうその仕組みそのものは踏まえた上で、具体的なルールないしは基準をどのようにしていくんだろうかという点により具体的な御関心があろうかと思いますが、今申し上げましたように、主務大臣認可に際しての判断の大枠は法律で定めているわけでございます。

 一方で、具体的にどのような基準をつくったらいいか。余り細かい基準を先に用意するということは柔軟な判断の妨げにもなる、これは前回御答弁をさせていただきました。判断の透明性、公平性を確保するための枠組みとしては、郵政民営化委員会、これは郵政民営化法に基づいて意見を述べたときは遅滞なくその内容を公表する。したがって、そのような枠組みも定めているわけであります。

 さらに、郵政民営化委員会がみずからの準則として判断基準となるようなガイドラインを定めておくというようなやり方も、これは当然考えられると私は思います。現に、本年四月に発足した郵政民営化委員会において、こうした基準についてどういうふうに取り組んでいくべきかというような議論が出ているという報告も受けておりまして、その意味でも、今後の郵政民営化委員会における審議を私としては見守っていきたいというふうに思います。

 いずれにしても、この大枠はかなりきちっと決まっております。これをぜひ適切に運用していきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま総務大臣が御答弁されましたように、移行期間中の業務範囲の拡大につきましては、郵政民営化法で明確な枠組みが用意されてございます。

 この枠組みのもと、業務範囲の拡大について検討を行うに当たりましては、委員御指摘の他の民間金融機関とのイコールフッティングの状況やゆうちょ銀行の経営状況、及びオペレーショナルリスクの管理を含む金融機関としての適切な業務運営体制、リスク管理体制の整備の状況等を勘案することが重要だと考えております。

 金融庁といたしましては、こうした制度設計の趣旨及び金融監督上の観点から、適切に判断してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

三谷委員 終了時間が参りますので質問を終わらせていただきますけれども、本当に大事な話ですので、このガイドラインについてはよく考えていただきたいというふうにお願いをいたしまして、質問を終了とさせていただきます。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 まず、二〇〇四年度決算について一言申し上げておきたいと思います。

 先ほど来、個々の不祥事の問題もありました。同時に、二〇〇四年度というときには、ちょうど二〇〇四年十一月の総務委員会で我が党の塩川議員が取り上げましたけれども、サービス残業の問題ですね。全国の労基署から随分多くの是正勧告が出されて、それで、このとき、二〇〇四年の十月から十二月の三カ月分だけで、五万七千人の人たちに対して三十二億円のサービス残業代が後ほど支払われました。

 それは当時報告を受けているんですけれども、二〇〇四年度となりますと、是正するまでの間の四月から九月までの分、十月から十二月は是正されたということですが、四月から十二月ということで計算をすると、突然サービス残業というのが出てくるわけじゃありませんから、およそ百億円というサービス残業代の支払いをしなきゃいけないということになってくるわけです。

 当時、生田総裁は、このサービス残業というのは経営の恥だと非常に厳しい答弁をされました。私、そういう点では総裁は非常にきちんとした発言をされたと思っているんですが、そうすると、四月から少なくとも十二月までの分で見れば約百億円になりますが、そうしたサービス残業代についてはきちんと是正をして、そして、二〇〇四年度決算については、経営の恥と指摘されたようなことがないような決算として提出をするということが必要であると思うんです。

 この決算については、そうしたサービス残業の問題などはきちんと全部是正されて出されたものかというこの一点だけ最初に伺って、通告しておりました質問に入っていきたいと思うんです。この点だけ、まず最初に伺っておきます。

生田参考人 お答えします。

 具体的な数字その他は今手持ちがないので、考え方とどういう現状かということだけお答えします。

 やはりサービス残業というのは、市場の一流の企業では通常あり得ないわけで、これはやはりあってはいけないことだと私は認識しております。

 ただし、公社化、二〇〇三年四月だったわけですが、どうやら恒常化していたようだったと思います。それに気がつくのに相当時間がかかったわけでありますけれども、そこで、サービス残業は一切しない、ただし、適切に働けと。適切に働かないで収入だけというのは困るわけで、全員が適切に働く、それに対して適切に支払う、これはもう当然のことであるということで、何度も厳命を出しておりまして、その後はそういうことはないというふうに理解しております。

 したがいまして、その二〇〇四年の決算、数字がどうかという具体的な今手持ちの数字はございませんけれども、適切にその辺は処理をして決算が出ているというふうに考えております。

吉井委員 私は、十月から十二月まできちんと支払いをしたという、これは国会でも答弁をしておられますし、報告を受けておりますので、その分は当然決算の中でも是正されていると思うんですね。それ以降、こういうことがないようにきちんとやっていくんだ、経営の恥になるようなことはしないんだということを生田総裁自身がきちっと答弁してこられましたから、そこはそう思うんです。

 しかし、ずるずる来ていた問題という、今のお話にあったように、要するに、四月から九月まではどうであったのかとか、そこがきちんとしたものになっているのかとか、本来決算を出すときには、問題になって以降の話だけじゃなしに、その年度についてはきちんと是正をして、そしてきちんとした決算として出すべきものであって、私は、この点については、必ずしも明確になっていないから、本来その部分は修正して提出をするべきものだということだけ申し上げまして、きょうは、六月二十八日に郵政公社が発表した、郵便局の「集配拠点、郵便貯金・簡易生命保険の外務営業拠点の再編について」ということについて、今問題になっていることを質問したいと思います。

 具体的な再編計画を見ると、実施予定月というのがありますが、この中で、長崎県の伊王島、高島、松島、久賀島、五島椛島、黒島、有川、魚目、平島局、これらの集配業務の廃止予定は十月が予定月となっているんですが、これらの計画は延期されたと聞いておりますが、いつに延期されましたか。

塚田参考人 集配再編の関係でございますけれども、六月の二十八日の日に公表させていただきまして、その際に、ことしの九月から来年の三月末までに行うということで、実施予定日と書いてございますけれども、これについては、変更があるということを前提にいたしまして、予定として公表させていただいたというものでございます。

 今回の本施策の実施に当たりましては、現行サービス水準をダウンさせないというような観点から、これまで個別にサービスレベルについて詳細検討を行ってきたということでございまして、この結果、集約のための事前準備が整っていない事例もあるというようなことでございまして、実施時期を数週間延ばすとか、年内に実施を予定していた一部の郵便局につきまして、年末年始繁忙期を避けて年明けに先送りするものもあるということでございまして、今御指摘のあった長崎県についても、このうちのジャンルに入るというものでございます。

吉井委員 何か二週間ほど延ばすようなものもあるみたいなお話なんですけれども、これは来年二月まで延期をすることにしたというのがこれらの局ですね。

塚田参考人 具体的には何月ということはまだ決めておりません。

吉井委員 しかし、これは二月だということが既に言われておりますが、いずれにしても延期をするものがあるということですよね。最初の、実施予定月と決めておっても、それが十月が二月になったりとか、そういうものがあるということです。十月実施を二月にすれば、もちろんこれは延期というわけですが、実施を延期することにした変更の理由というのは何ですか。

塚田参考人 先ほども申し上げたとおり、私どもの集約のための諸準備ができなかった、おくれてきたということで、そういうような変更もあり得るということでございます。

吉井委員 オペレーション企画部の七月二十一日に出された文書を見ると、「再編計画の地元自治体への説明に際して、関係自治体の理解を得るのに時間を要すること等から、実施時期を変更し円滑な実施にむけた取り組みを行う必要があるため。」というふうになっていますね。

 当然、再編計画で実施時期を定めたからといって、先ほども、さきの質問者の方への御答弁の中でも、一五%の自治体は反対だというところがあるわけですし、反対を明確に言っていないところでも、別に合意をしていない、納得しているわけじゃないというところもあるわけで、だから関係自治体の理解を得ないで強引に実施をするべきものじゃないと思うんです。

 今回も、関係自治体の理解を得るのに時間を要するところというのは延期をして、実施を決めておったけれども延期をして進めているということだと思いますが、長崎県の離島の郵便局の実施計画変更のように時期の変更を行うということがほかにもあると思うんですが、どういったところで変更ということにしているんですか。

塚田参考人 先ほども申し上げたように、私どもの諸準備が整わなくて実施時期を先送りするというものでございまして、これにつきましては、ことしの九月から来年の三月までの中で実施をするということでございまして、改めて、今おっしゃったような個別の具体的な、ここはという話は、今申し上げることはできないということです。

吉井委員 しかし、オペレーション企画部の方では、中国支社管内は一自治体一局、九州支社管内は八自治体十二局としてきちんとリストも発表されておりますし、ホームページその他でも計画そのものは出ているわけです。ですから、みんな不安に思っているわけなんですから、余りあいまいな話にしないで、自治体の方でこういう問題があるんだから強行しないようにという話の出ているところについては、それは率直に、既に幾つかのところで延期もしているわけですから、延期をする、強引に強行はしないということが必要だと思うんです。

 長崎県以外であっても、オペレーション企画部の文書を見ますと、山口県の見島とか熊本県の湯島とか大分県の姫島、保戸島とか北海道の尾田、生花が延期になったというふうに聞いております。だから、まずそういうことはきちんと明らかにして、同時に、一五%の反対している自治体などについては、お話は聞きました、説明はしました、それでとにかくやらせてもらいます、そういう強引なやり方じゃなしに、きちんと地元の皆さんから出ている問題にはこたえていく、それがきちんとするまでは予定月を決めたんだからということで強行実施するようなことはしない、そういう立場で臨むのが私は普通の社会のやり方だと思うんですが、この点はどうなんですか。

塚田参考人 自治体の中で反対をしているという中にも、サービスレベルが落ちるというような話、個別具体的にございまして、それについて手当てをするということで対応するというのが基本的なスタンスでございますので、実施するかしないかについても、そういうサービス面についての個別具体的なものを伺いながら対応していくということでやっていきたいと思っています。

吉井委員 具体的に対応したいと言ったって、対応すると言っていること自身が机上の空論だよということが現場をよく知っている人たちから出されているから、だから、一五%の反対している自治体や、その他のところでも必ずしも別に賛成だとかいうことになっているわけでもありませんから、例えば九月十九日実施だとか十月何日実施だとか決めたから強引にやるということじゃなくて、出てきた問題については、こういうふうにやりたいんだけれども、現場の実情に合わせてもこういくんじゃないかと言えば、やはりそれは、現場の実態にこういうふうに合っていないと言われたらまた考え直さなきゃいけないわけですから、実際、言われて持ち帰って検討ということになっているところもありますよね。ですから、この日に決めたからということで強引に強行突破はしない、やはりそれはよく話し合いを尽くしてということでやっていく、そういう立場で臨まれますね。

塚田参考人 先ほどから繰り返し申し上げているように、自治体に対してはきちっとした説明をしながら進めていくということでございます。

吉井委員 説明をするといって、説明するだけして、後は、納得しようがしまいが、現実に現場の実態に合っていようが合っていまいが、とにかく説明したからやらせてもらいます、これじゃ話にならないわけで、だから、説明して、しかし現場の実態に合わないよと言われたところについては、強引なやり方で強行実施はしないということなんですねということを聞いているんです。

塚田参考人 申しわけございませんが、先ほども申し上げたように、サービス面で個別具体的にいろいろなお話を伺いまして、それに対してきちんとした対応をとって、御説明をして、御納得を得て進めるというのが基本的なスタンスでございます。

吉井委員 納得を得てというお話ですから、納得が得られていないときに強行実施はしないということだというふうに理解をしておきます。

 それで、竹中大臣は、昨年の国会での郵政民営化法の審議のとき、郵便局のネットワーク価値について再三言及されました。例えば、昨年七月二十二日の参議院の特別委員会で、郵便局の設置に当たっては、国民の利便性に万が一にも支障が生じないように十分に配慮し、郵便局ネットワークを国民の資産としてしっかり維持していきたいと。それからまた、昨年六月十日の衆議院の郵政特では、集配特定局というのは、いわゆるネットワーク価値の中で見ますと、非常に、地域の中の中心的な役割を担っているということから、このネットワーク価値は高いと一般的には考えられますということを答えておられます。

 集配特定局のネットワーク価値はなぜ一般的に無集配局などに比べて高いと考えておられるのか、ネットワークの価値は非常に大事なもの、高いと見ておられるのか、改めて伺っておきます。

竹中国務大臣 ネットワーク価値は、全体としてまさしくネットワーク価値を持っているわけであります。その中の一つの重要な拠点として集配特定局があるというふうに私は認識をしておりますし、そういうことを踏まえた答弁はさせていただいたというふうに思っております。

 集配特定局、いろいろな例があろうかと思いますが、基本的には、そのコミュニティーの中心的な場に位置をして、そして町の存在感を非常に高めるような存在になっているんだと思います。今回の公社のいろいろな経営改善というのは、そうしたサービス水準を下げずに、配送のシステムを変えることによって効率的で競争力の高い集配ネットワークを構築するというものでありますから、サービス水準を下げずに、そしてコストを下げるということでありますから、私は、今回の改革というのは、むしろネットワーク全体の価値を結果としては上げるものであるというふうに考えております。

 いずれにしても、ネットワーク全体として価値がある、そして、その中で集配特定局は大変重要な地位を占めておりますから、そういうロケーションを生かして、今後、民営化後、新規の業務等々でさらに価値を高めていっていただきたいというふうに思います。

吉井委員 サービス水準を下げない、中心的な役割を占めているというお話なんですが、私、この間、特定集配局をあちこちお訪ねしましたが、本当に地域の中の中心的な役割を果たしています。

 それで、例えば、滋賀県の志賀局に行ったら、取扱量は県下でも最大の部類なんですが、だからそこはお客さんが多いというので、ヤマト運輸が大津に近い堅田のところからさらに拠点を延ばしていっているんですね。ところが、今度は、宅配業者は拠点を延ばしていっているときに、そこを集配を廃止する局にして堅田へ引き揚げるというんですね。効率性やコストから考えても、逆向きのことを今やろうとしているんですね。

 それから、鹿児島県の瀬戸内町、奄美の方の離島です、加計呂麻島では、貯金の外務員さんが訪問して振り込め詐欺にひっかかりかけるお年寄りの方を助けたりとか、それはそういう地域のまさに大事なネットワークなんですよね。

 高知県では、これは宿毛市の沖ノ島の方で、郵便配達員が郵便ポストに配達物がたまっていることから倒れている高齢者に気がついて、命が助けられたんですね。これは地元紙でも紹介されたんですね。離島や過疎地の特定集配局では配達員や外務員は地域社会を実際に支えている、これがネットワークの大事な意味ですね。

 高知県の馬路村のユズポン酢、委員長よく御存じのところ、それから越知町の土佐文旦とか、滋賀県志賀局の近江米だとか、兵庫県の淡路島の由良局ですとハモとか、ゆうパックを通じて地域経済や産業に貢献するという役割も果たしているわけですね。あるいは、兵庫県有馬の局ですと、温泉旅館と結んでポーター便というのを開発したところですね。

 そうして新たな地域の観光や産業と結びついて役割を果たしている、地域の中心であるとともに大事なネットワークとしての価値を持っているところを、それを廃止するということ自体がサービス水準の低下になるということは明確であるわけですが、大臣はそういう特定集配局が持っている地域の中心的役割とかネットワーク価値というものをきちんと御存じなのかどうか。一般的なお話ではあるんですが、私はそこのところを伺っておきたいと思うんです。

竹中国務大臣 今例に挙げられました滋賀県の例でありますとか温泉の例でありますとか、その個別の例は私はちょっと存じ上げません。

 しかし、今委員は、今回やろうとしていることはむしろ効率性に反することだというふうにおっしゃいましたけれども、私は公社からは、効率性を高めて、しかもサービス水準は低下させないという報告を受けております。そのようにサービス水準を落とさないで効率性を高めることは、ぜひしっかりやっていただきたいと思っております。

吉井委員 福島のある局長さんが言っておられますが、配達距離が今も三十キロ以上ある局があるのに、再編後、これは明確にサービスが低下すると。そういったことは、実際に現場を預かる方たちからはたくさんその声が聞こえております。机上の空論じゃだめなんだと。

 問題は、要するに、今進めようとしているのは第一段階の計画で、第二段階では、千八十八の拠点、ここへほとんどを引き揚げてしまって、配達センターそのものをなくしてしまおうということにつながってくるという、その第一段階のところが今問題になっているときですから、簡単にこういうものは強行するんじゃなしに、反対や意見の出ているところについては、その地元の理解、納得等が得られるまではこれは強行するべきではないということを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 質問するに当たりまして、西川日本郵政株式会社社長に一言申し上げます。

 郵政公社十六年度財務諸表について本委員会で審議することは、民営となる郵政事業に資するためのものでありまして、したがって、本委員会で指摘された問題点について、率直に耳を傾け、経営に生かされるよう強く要望しておきます。

 そこで、郵政公社法第二十五条に定める年度経営計画と二十六条における業績評価について聞きます。

 二十六条によって総務大臣は業績評価を行うよう規定しており、これに基づき十五年度から開始された評価は本年をもって三年目となっています。まず、この三年間における全体の評価について大臣の見解をお聞かせください。

竹中国務大臣 民営化を控えて、生田総裁以下公社の皆さん、厳しい環境の中で前向きにいろいろなことに取り組んでいただいているというふうに私は思っております。

 そうした中で、今回、十七年度の業績評価も行っているわけでありますけれども、貯金業務、簡易保険業務等々、その財務内容の健全性の確保等について、取り組みが順調に進捗しているという点は評価をしております。一方で、郵便業務における財務内容の健全性の確保、そして各事業におけるコンプライアンスの徹底等について、取り組みのさらなる強化が必要であるというふうに、この点は厳しくも評価をしているところでございます。

 今回の業績評価に当たりましては、したがって、郵便利用の拡大、生産性の向上、費用の削減を通じて損益を改善してもらいたい、コンプライアンスの徹底のため内部統制強化等を図る、そうしたことを経営の最重要課題として取り組みを強化してもらいたいというふうに求めているところでございます。

 こうした取り組みを強化しまして、中期経営目標の確実な達成に向けまして、より一層の努力をされるということを期待しているわけであります。

重野委員 今、大臣から説明がございました。

 この三年間の経営に係る評価を見る限り、公社全体からいえば、向上したものはございません。業務運営の効率化においては一ランク下がっているのが実態であり、また、郵便、貯金、保険の三業務でいえば、保険の財務関係において向上したのみで、他の部門ではワンランクないしツーランク下がったものもあります。総じて横ばい、ないしは低下しているというのが実態ではないかと思います。

 そこで、こうした三年間の評価実績を直視するならば、来年後半の民営化に対しこうした評価はどれだけ生かされるのか、確たる見通しがあるのか、まずその点、大臣の見解を聞きます。

 また、総務省のこうした評価について西川社長はどのように受けとめておられるか、また今後の経営にどのように生かそうと考えているか、お聞かせください。

竹中国務大臣 先ほどからも生田総裁の御答弁にありましたけれども、公社としては、公社という公社法の制約の中で、できることを一生懸命、今改善をしてくれていると思います。しかし一方で、環境変化はそれを上回るような速度で進んでいる。だからこそ、こういう厳しい環境に適応できるためにやはり民営化は必要なんだというふうに、昨今の状況を踏まえて、私自身は改めてそういう思いがしているところでございます。であるからこそ、この民営化を円滑にぜひともなし遂げなければなりません。サービス向上とともに、公社の経営基盤の充実、そして内部管理態勢の強化というのがこの時点で特に重要であるというふうに判断をしております。

 公社におかれては、来年十月の民営化に向けて、今般の評価結果を十分に踏まえて、財務健全性確保に向けた取り組みの強化、コンプライアンスの徹底といった点を御尽力いただいて、国民の信頼、期待にこたえる民営化を実現したいというふうに思っております。

西川参考人 今回の評価結果は、公社におきまして民間経営手法により事業の円滑な遂行や発展に取り組まれていると承知しておりますが、まだ成果を上げる途上にあるためのものであるというふうに私は理解をしております。

 もとより、財務内容の健全性の確保及び業務運営の効率化は郵政民営化を円滑に行うために極めて重要な課題と認識をしておりまして、財務内容の健全性の確保及び業務運営の効率化に向けて引き続き公社においても御努力をされるものというふうに考えておりますが、新会社の経営を預かる立場といたしましても、公社におけるさまざまな取り組みを、新会社においてもこれを生かせるよう懸命に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 今、竹中大臣の答弁をお聞きしながら、この郵政民営化の議論をした当時のやりとりを思い返すわけであります。その当時の議論については、大臣も十分御承知のことと思うんですが、私どもは、この中期経営計画を策定するならば四年間の実績を評価した上で民営化すべきかどうか、そういう議論をすべきではないかという指摘をしたのでありますが、結果的に、四年間の実績と評価を待たずに昨年民営化法が成立をした、これが経過であります。

 そこで、公社全体の目標のうち、核とも考えられる財務の健全性、業務の効率性が評価として低下傾向にあるのは民営化にとって阻害要因ではないのか、こういう認識を私は持つわけでありますが、大臣の見解をお聞かせください。また、この点について、同様に西川社長はどのように考えているか、お聞かせください。

竹中国務大臣 今、重野委員御指摘のように、今般の評価において、財務の健全性の確保、そして業務運営の効率化、これはC評価でございます。C評価というのは、取り組みの強化が必要だというふうにしているわけであります。

 これは、積立金、事業経費率に係る中期経営目標の達成について予断を許さない状況になっているというふうに判断をしているためでありまして、来年十月の民営化に向けて、公社に対して取り組みの強化を求める必要があるというふうに判断をしたわけでございます。

 これが阻害要因にならないかという御質問でございますけれども、阻害要因にならないようにしっかりと取り組みを強化してくださいということを今お願いしているわけでございます。公社がこの業績評価での指摘を踏まえて取り組みを強化して、懸念なく民営化を迎えられるように我々としても適切に対応してまいりたいと思います。

西川参考人 お答えいたします。

 ただいまも申し上げたのと若干ダブりますが、公社の取り組まれている方向については決して間違ったものではありませんで、しかるべき方向に向かって進んでおられるというふうに私は理解をしております。残念ながら、まだその成果を上げる途上にあるということであろうかというふうに理解をいたしております。

 私どもは、新会社におきまして、そういった取り組みが決して阻害要因になるわけではございませんで、さらにこれを推し進めていただくということによりまして、いずれ、やがて成果は出てまいるというふうに考えておりますし、私どももこれを新会社において生かしてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 では、もう少し具体的数字をもってお聞きいたします。

 郵便事業について聞きますが、十七年度の当期純利益二十六億円、これは前年度の二百八十三億円の一割弱ですね。経営計画では二百八億円見込んでいたわけで、計画計上額のおよそ一割強、こういう数字であります。ところが、承継計画における郵便事業株式会社の経営見通しは、二十年度で三百八十億円、さらに二十三年度には五百三十億円の黒字、このようにしております。

 もちろん経営の黒字は歓迎するところでありますけれども、十七年度のこうした大幅な黒字の縮小による経営計画との乖離、これを見ますと、新会社のこの経営見通しはいささか説得力に欠けると言わなければなりませんが、再度、西川社長の説明をお願いいたします。

西川参考人 お答えをいたします。

 今回の骨格における経営見通しにつきましては、郵便事業会社に承継する業務、資産、負債の帰属をもとに、公社の十七年度決算の状況も踏まえて作成しているものでございます。

 郵便事業会社の経営見通しの作成に当たりましては、収益については最近の郵便物数の推移、費用については今後の業務量の増減に対応した人件費、集配運送費の変化などを見込んでいるところでございまして、二十年度におきましては、そういう観点から、六百三十億円の経常利益、三百八十億円の純利益を見込んでおるわけでございます。

 なお、今回の経営見通しの作成に当たりましては、これはさきの先生の御質問に白金執行役員もお答えしているとおりでございますが、整理資源と呼ばれる恩給負担分に係る共済組合の追加費用については、持ち株会社がすべて負担することといたしまして、各社の費用に含めておりません。この点は公社のときと異なる条件を置いているわけでございます。

 仮にこれを各社が職員数比で負担することといたしました場合、郵便事業会社では二十年度ベースで約五百億円の費用増ということになりまして、これを差し引きますと、経常利益は百三十億、純利益は八十億円程度となりまして、公社の十七年度決算ベースの経常利益百五十一億と比較的近い数字となるということでございます。

 いずれにいたしましても、郵便事業は、今後も通常郵便物の減少が見込まれるなど厳しい事業環境にありまして、楽観視できないというふうに認識をいたしておりまして、業務の一層の効率化など経営改善に努めますとともに、新規事業の検討も進めまして、安定した経営の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 それでは、今度は違った視点でお聞きいたします。

 まず、民営化されるわけで、現状と民営化後の展開がどうなるのかという点については不透明な部分がたくさんありますが、一つ、今、現状の、先ほども質問がありましたけれども、簡易保険の資金運用であるとか郵便貯金の資金運用であるとか、そういう点についていささか懸念があります。

 例えば、簡易保険の資金運用状況、十七年三月末で四八%が国債に振り向けられております。十八年三月末見込みではこれが五一・九%にも高まることになっております。同様に、郵便貯金も四九・八%から六二%へと見込まれている。このことをもってしても、我が国財政の現状からすれば、簡保、郵貯の存在はなくてはならないものだ。大臣が言うように、この資金が民間金融システムに統合、そうなった場合、困るのは政府ではないのか、こういう指摘もあながち的外れではないと思うんですが、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 今の郵政のお金の流れといいますのは、政府保証のある郵便貯金、簡易保険等々で国がお金を集めて、そして、主として国債、国で運用する、国で集めて国で運用する、そこに多額のお金が流れているわけであります。郵政民営化の目指すところの一つは、やはりそうしたお金がより民間に回るようにすべきではないのかということで、郵政そのもの、入り口を民営化するとともに資金運用を多様化していくというものでございます。これそのものは、日本の市場経済の活性化、資本市場の活性化という観点からもやはり避けて通れない課題であると思います。

 しかし一方で、今、国債で多額の運用をしているわけでございます。その国債の市場が混乱しないようなそういう工夫は当然しなければいけません。これも去年さんざん御審議をいただきましたけれども、旧契約分の運用については、安全性を重視し、これまで公社が行ってきたのと同様に国債等の安全資産で運用する。したがって、これは徐々には減っていくわけでありますけれども、そういうショックを和らげるような工夫はしているわけでございます。そして、新規分につきましても、段階的に貸し出し、つまり信用リスクビジネスに入っていくわけで、それまではそうではありません。したがって、そういったショックが和らげられるような仕組みはつくっているわけです。

 しかし一方で、より長期的な観点からしますと、やはりそれは国債の発行額を減らしていくことであり、国債管理をしっかりしていくことであり、そのための財政、歳出歳入一体改革を一体として行っていかなければいけないという問題意識を強く持っております。歳出歳入一体改革につきましても、さきの骨太の方針でその方向を明示しているわけであります。そして、財務省は国債管理政策をさらにしっかりとやっていくということを表明しているわけで、そういうことの合わせわざで資本市場に、資産市場に混乱が起きないように、しかし一方で、やはり中長期的にはより多くのお金が民間資金でも利用できるように、そうした意味での民営化を実現したいと思っております。

重野委員 時間が来ましたので、そのほか通告をしておりましたけれども、その内容については次回持ち越しということで御理解いただきたいと思います。

 以上で終わります。

中谷委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 最後の質問でございます。皆さん方、長時間でお疲れと思いますが、もうしばらくの辛抱でございますので、よろしくお願いいたします。

 公社発足をして三年五カ月、その間、生田総裁、強力なリーダーシップを発揮されまして、今日まで立派な経営を続けてこられたと思っております。三事業それぞれ、この三年間、単年度でも黒字を出される、大変厳しい環境の中でそうした成果を出されたということ、私は大変高く評価をしているわけでございます。これは、生田さんの強力なリーダーシップはもとよりでございますけれども、やはり管理者の人たち、職員の方々、そういう現場で働いている人たちが生田総裁の経営ビジョン、経営方針というものを十分に理解して、そして精いっぱい新しい環境の中で頑張ってきた、その成果でもあろうと思いますので、そのことを私は同時に高く評価しているわけでございます。

 ところが、最近になりまして、非常に私、心配をしていることがいろいろございます。特に、地方、過疎地、高齢地域にありますような特定局の職員、特定局長さんたちと話をしておりますと、将来に向かって全く明るい展望が開けない、非常に不安だ、自分たちの立場も不安だけれども、郵便局そのものが本当に維持できるのかどうか、そのことについても不安だし、また、地域が本当にこれから同じように、そこに住んでいる人たちが安心して暮らせるような環境を維持していけるのか、今日までその中でその生活を支えてきた大きな拠点施設としての郵便局というものが続いていけるんだろうか、そういう不安が非常に強く出てきているわけでございます。

 地域の方々が局長さんに聞くと、局長さんも、それはわかりません、いや、私らも非常に不安に思っているんですよ、そういう答えしか返ってこない。ですから、非常に地域の不安というものが私は強くなってきていると思います。ですから、地方議会の人たちも、やはり郵政民営化のときにも反対をしたそのことが現実のものになってきているんではないかという危機感が非常に強いだろうというように私は思うわけでございます。

 今、生田総裁は郵便局改革ということを強力にまた進めようとしておられる。生田さんにお伺いをいたしますと、これは公社という経営形態がそのまま続いていったとしてもやはりやらなくてはいけないことだと思います、そのことを自分はこの任期中に何とかやり遂げたい、そういう思いでやっているんだということをおっしゃったことを私思い出すんです。

 私は生田総裁のお考えは確かにそのとおりだろうと思うんですけれども、やはり特定局という制度がこの百三十年を超える長い歴史を通じて国民に理解をされながら今日まで郵政事業を支えてきた、そのことは私は正しく評価をされなくてはいけないと思いますし、また、郵政三事業が持っている公益性、公共性というものはなくなるわけではない。特に、郵便局会社あるいは郵便事業会社というものはその公益性、公共性というものをきちっと引き継いでいかなくてはいけない。だからこそ、こちらは純粋の民営会社にはできなかったわけでございまして、特殊会社という形で残して、その株はすべて持ち株会社が保有をするんだ、そういうことになっている。

 ですから、郵政民営化というのは、郵政三事業の民営化ではなくて、保険、貯金という金融部門を切り離してそれを純粋民営化する、それが郵政民営化であって、郵政三事業の民営化でも何でもない。その三事業が一体としてうまく成り立っていたわけですから、もし、あえて今の郵便事業会社や郵便局会社と同じような、そういう大くくりの中で貯金や保険も一体性を持って運用していくということであるならば、公社とそれほど変わりはないわけですけれども、公社というものをただ特殊会社というものに変えていけばそれで十分だったんじゃないか。それをなぜ貯金と保険を分離する必要があったのか、そこの疑問はいまだに私には全く解けないわけでございます。

 でも、竹中大臣と議論をしますとすぐ時間がなくなってしまって、竹中大臣とは、小泉政権発足以来、経済政策も金融政策も財政政策も、それから総務大臣になられてからは、電気通信政策も電波政策も、郵政の政策はもちろんでございますけれども、全く私とはちょっと考え方が違うわけですね。これはしようがない。やはりつくろうとする社会、つくろうとする国家のビジョンが私とはどうも基本的に違っておられるから、それはどうしたって相入れないと思うんですね。だから、そういう議論はもうこれ以上しません。

 これ以上しませんけれども、今、そういう不安が非常に強く職員の間にも出てきているという中で、郵便局改革、例えば、人事の問題、任用の問題、定年制の問題、あるいは転勤の問題、あるいは特定集配局を無集配化する問題、あるいは局舎買い上げの問題、いろいろなことが今同時進行で進もうとしている。そういうことが、私は、これから仮に民営化が順々と進んでいったとしましても、やはりその働いている人たちが一生懸命やるんだというそのやりがいを持った状況でつながなければ、これは民営化したってうまくいくはずはないと思うんですね。

 ですから、私は、生田総裁のお考えはよくわかるんだけれども、何か経営ビジョンを三つ打ち出されて、まさに顧客重視で真っ向サービスをやるんだということとか、三事業をよりたくましく健全な経営をやっていくんだということとか、その三つ目にすごい大事なことを言われているわけで、みんなが明るい将来展望を持って働きがいのあるそういう公社をつくろうということを三つの経営ビジョンの三つ目に掲げておられる。その三つ目を今一番大事にされるべきときじゃないかというように私は思うんですね。

 ですから、生田さんが今度民営会社のトップ、西川さんの立場におなりになるというのなら、私はまたそれなりのお考えがあっていいと思うんだけれども、公社の総裁はもうあと一年数カ月でおやめになるわけで、後は西川さんにバトンタッチなんですから、バトンタッチのときに、やはり職員の人たちや管理者の人たちが本当にやる気を持って、それで引き継いでもらうという、そこに一番重点を置かれるべきだと思うんですが、今の状況をどのように把握されているのか。そして、今申し上げたことについての御見解を伺いたいと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 亀井先生のお話は、主として公社の中の局長や職員の雰囲気は今どうかという御質問だったと思うので、そういう切り口でお話し申し上げますけれども、確かに組合も反対した、特定郵便局も反対したで、民営化法案が通るまでは職員の多くは反対だったと思います。だけれども、組合自身が見事にその辺を割り切って転身したのに象徴されるように、法案が通った後はがらりと空気は変わりまして、組合自身がいい民営化へ向かって、改革のための先頭に立って牽引をやってくれつつありますし、特定郵便局長の会もかなり変わってきていると思います。それから、一般職員は随分変わりました。

 先ほどもお話ししたんですが、いろいろな会を通じまして、とにかく話をして、彼らによく民営化の内容というものを理解してもらうと、おのずから前向きになるんですよ。だから、私自身も、この正月以来、日本国じゅう約四十カ所ぐらい行きまして、対話集会をしながら職員と話し合う。話し合う前に五、六割が不安を持っていたのが、終わってアンケートをすると、七、八割が、よくわかった、頑張ろうということになるというふうな空気に、今、大分なってきておりまして、職員自体は、私は相当前向きと見ていただいていいと思います。もちろん、人数が多いですから一色じゃありませんよ。だけれども、大多数はそうだと思います。

 それから、特定郵便局長の方も、実はいろいろな意見があると私は見ております。決して一色じゃありません。特定郵便局長のある層、あるいは年齢、あるいは立場によりましては、やはり民営化が決まったんだから、そこで負けちゃいけないから、できるだけ今のうちに改革して、やらないかぬ、そのためには、やはりマスタープラン、集配再編を早く推進してほしいという声も実はかなりオープンに出てきているんです。

 だから、そういったことも踏まえながら、私ども経営としては、よく話し合って、とにかく納得してもらうという努力をしてきておりますし、今後も続けていくつもりでおります。

 いずれにしても、民営化はもう決まったわけですから、その前提は変わらないわけですから、どうせ民営化するんでありますから、私どもがやれる範囲はやっておいて、全部はできません、それは公社のままでもやらなきゃならなかったことに今手をつけているだけですから、今やっていることをできる範囲でできるだけ整理しておいて、いい格好で新会社に引き継ぎたいと思いますし、新会社になりましたら、強いリーダーシップのもとでよい民営・分社化が実現するように非常に心から願っております。

亀井(久)委員 よくわかります。今おっしゃったことはそれなりに理解をいたしますけれども、どうも特定局の方々と話をしていると、生田総裁は、一つの国の中にもう一つの国があるみたいな特定局の仕組みというものがある、これはトップリーダーとして、やはり企業の経営者として認めるわけにはいかない、そういうお考えがあって、特定局制度というものをこの際もうたたきつぶしてしまおう、そういうお考えを持って進めておられるんじゃないか、そういう懸念を持っている人たちが結構多いわけですね。

 ですから、そういうことがありますと、それが結局地域にまた広がっていく。地域に広がっていきますと、今まで郵便局を支えていた一番大事なお客さん、そういうものがまた離れてしまうことになっては元も子もない。そのことについて、よくまた現状を把握していただいて、精いっぱいの御努力をお願いしたいと思います。

 それから、時間がありませんので、西川社長にもお伺いしたいんですが、西川社長は、申し上げるまでもなく金融機関のトップリーダーとして御活躍いただいたわけでございますが、今回、貯金銀行のトップになられるとかいうことであれば、私、それなりにわかるんですけれども、そうではなくて、まさに全体のリーダーという立場に立たれたわけです。

 私は、やはり郵政事業が持っている公共性、公益性というものはなくなっているわけではないので、より収益性というものを追求していく、そのための民営化であろうとは思うんですけれども、その公益性、公共性というものを軽視してしまうと、結果として、やはり今まで支えてきた多くの利用者が離れてしまう。そうなれば、ますます貯金だって減ってくるでしょうし、保険だって減ってくる。そういうことは全体の危機につながってくるということだと思いますので、公共性、公益性についての西川社長のお考えを伺いたいと思います。

西川参考人 お答えいたします。

 これまで長年にわたりまして郵政事業が果たしてきた地域への貢献でございますとか、あるいは公共的な役割の大きさというものにつきましては、私も十分に認識をいたしておるつもりでございます。

 民営化といいますと、公共性はどうなんだということをとかく考えられるわけでございますが、民間におきましても企業の社会的責任というものが非常に重要視されまして、この責任を果たしていかないと、マーケットからの評価も得られないし、お客様からも評価されないという状況でございます。

 今度の骨格の中でグループ経営理念というものを打ち出しておりますが、この理念の趣旨にもはっきりとさせておりますとおり、特に郵政事業は、民営化後も、今申しました企業の社会的責任としての公共性を最大限重視していかなければならないというふうに考えております。

 以上でございます。

亀井(久)委員 そこのところは大事なポイントだと思いますので、しっかり踏まえていただきたいと思います。

 それから、今、御就任されたばかりですし、まだ本格的な民営・分社化はスタートしていないわけですから、今の時点で十年間の移行期間のことをあれこれ言うこともどうかと思いますけれども、私は、やはり郵政三事業というのは今まで一体で初めてうまく回っていた、それをばらばらにするわけでございますから、ばらばらになったとしても、持ち株会社のもとで連携というものをうまくとっていただかない限りうまくいくはずはないだろうというように思います。

 そのときに、持ち株会社が金融二社の株式をすべて保有している、その間はいいんですけれども、それをどんどんどんどん市場で売却していく、次第次第に持ち株会社の影響力というのは低下していくことにならざるを得ない。そのときに、例えば、貯金にしても保険にしても、郵便局会社と一括契約だということになっていたとしても、やはり一括契約は金融二社としては不利だという判断になったときには、純粋民営会社であれば当然そんなことをやるはずもないわけでございますから、結果として、やはり過疎地等の郵便局において貯金や保険のサービスができないようなことが起きてくる、そういうことも当然あり得ると思うんですね。

 ですから、やはり、ばらばらにされたけれども、その連携というものをうまくとっていくんだということが非常に大事なことで、それを失敗すれば、結果的に、郵便局会社やあるいは郵便事業会社に新たな財政支援をせざるを得なくなる。今の基金でもつはずはありませんから、そういうような事態になってくる。そうしたら、何のために民営化をやったのか意味がないということにならざるを得ないわけでございますので、その三事業の一体性というものを何らかの形でしっかり担保していくんだ、そういうお考えをぜひ私は承りたいと思いますが、いかがでしょうか。

西川参考人 お答えをいたします。

 まさに亀井先生おっしゃられるとおりでございまして、郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社から見ましても、大変数多いお客様をカバーしていく、お客様にサービスを提供していくためには、全国の郵便局ネットワークを代理店として活用するということが不可欠でございます。そういう意味合いもありまして、もう釈迦に説法でございますが、移行期間経過後も郵便局会社を相手方とした代理店契約等を締結するということになっておると思います。そして、これまでと同様、全国津々浦々の郵便局でお客様に貯金、保険のサービスを提供していくということになりますし、それが必要不可欠なことであるというふうに思います。

 銀行の場合も幾らか、二百三十カ店余りの直営店を持ちますが、現在の資金量で見まして、それは全体の七%程度のものでございまして、直営店はいわばパイロット店として活用する。そこで得たいろいろな情報、そしてそれから編み出した商品、サービス、これを全国の郵便局でお客様に提供していただく、そしてより一層評価を高める、こういうふうなことを考えておるわけでございまして、これはしっかりと守ってまいりたい、しっかりとした一体運営を確保してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

亀井(久)委員 時間が来たようでございますけれども、最後に竹中大臣に。

 竹中大臣は、民営化を推進していかれる中心的な役割を果たされたわけですけれども、当初から竹中五原則というのを打ち出されて、その五原則の考え方が生かされるような民営化の法案をつくるんだということを終始言われてきた。五原則、詳しく一つ一つ申しませんけれども、私はそれを今思い出しながら、現状と照らし合わせ、また民営化の行く末というものをいろいろ考えておりますと、何かだんだんだんだん竹中さんの言われていることと違った方向に行きやせぬだろうか、どうも大分かけ離れたものになってきたな、そういう感じがしてならないんですが、そういうことがあってはならないと思いますので、その辺をしっかりまた踏まえて御努力いただきたいというように思います。

 もう時間でございますから、これで終わります。

中谷委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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