衆議院

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第6号 平成18年11月14日(火曜日)

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平成十八年十一月十四日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 谷  公一君

   理事 谷畑  孝君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    今井  宏君

      岡部 英明君    加藤 勝信君

      鍵田忠兵衛君    川崎 二郎君

      木挽  司君    実川 幸夫君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      田中 良生君    平  将明君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      丹羽 秀樹君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    福田 康夫君

      吉川 貴盛君    渡部  篤君

      安住  淳君    石関 貴史君

      逢坂 誠二君    田嶋  要君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      松木 謙公君    三谷 光男君

      森本 哲生君    谷口 和史君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房タウンミーティング担当室長)   谷口 隆司君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   参考人

   (全国知事会会長)

   (福岡県知事)      麻生  渡君

   参考人

   (立命館大学経済学部教授)            古川  彰君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      小早川光郎君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  渡部  篤君     片山さつき君

  吉井 英勝君     高橋千鶴子君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     渡部  篤君

  橋本  岳君     加藤 勝信君

  福田 良彦君     平  将明君

  後藤  斎君     三谷 光男君

  西村智奈美君     松木 謙公君

  高橋千鶴子君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     丹羽 秀樹君

  平  将明君     鈴木 馨祐君

  渡部  篤君     片山さつき君

  松木 謙公君     西村智奈美君

  三谷 光男君     石関 貴史君

  吉井 英勝君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     福田 良彦君

  丹羽 秀樹君     吉川 貴盛君

  石関 貴史君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  吉川 貴盛君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方分権改革推進法案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方分権改革推進法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、全国知事会会長・福岡県知事麻生渡君、立命館大学経済学部教授古川彰君及び東京大学大学院法学政治学研究科教授小早川光郎君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言いただくようお願いを申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。

 それでは、麻生参考人、お願いいたします。

麻生参考人 全国知事会会長で福岡県知事の麻生でございます。

 きょうは、地方分権改革推進法の審議に当たりまして、このように発言の機会を与えていただきました。まことにありがたいことでございます。心からお礼を申し上げます。そしてまた、日ごろから私ども地方自治につきまして格段の御支援をいただいております。心からお礼を申し上げます。

 この分権改革推進法でございますが、私どもは第二期の分権改革の最も重要な出発点になるというふうに考えておりまして、ぜひこの分権改革推進法を早期に成立させていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 平成五年でございますけれども、地方分権の推進に関します衆参両院の決議がなされました。両院が一致しまして決議をなしたということは、憲政史上、非常に前例のないような大きな決定でございました。これが出発点になりまして、その後、平成七年には地方分権推進法ができ、そしてまた、これで検討された結果を具体的に立法化するということで、平成十一年には地方分権一括法ができたわけでございます。この一括法によりまして、国と地方の関係が、それまでの上下関係ということから対等の関係であるというふうに位置づけられました。そして、機関委任事務が廃止をされ、自治事務が位置づけられ、そして多くの権限が地方に移されたわけでございます。

 このような権限面の改革が進みまして、その後、財政面の改革を進めなければいけないということでございました。この改革がいわゆる三位一体の改革でございます。これによりまして、三兆円の税源の移譲、そして補助金、負担金は四兆円の削減をするということが行われました。三兆円、しかも所得税という基幹税制で地方に対する税源移譲が行われまして、これだけ大きな税源移譲が行われましたことは我々の地方自治史上初めてのことでございまして、これは私ども大変大きな成果であったと思います。ただ一方で、補助金の方は四兆円ばかりやったんですけれども、このやり方が、率を変えるというものが多くあったわけでございまして、自由度という点からいいますと、まだまだ十分ではないという改革でございました。

 そして、私どもは、ぜひ第二期の分権改革に進みたい、進まなければいけないと考えております。

 まず、特に今、再び、三たび、東京への一極集中が猛烈に進んでおります。東京に行きますと、どんどん大きな高いビルが建っているわけでございますが、私ども地方の方は、これはシャッター通りというようなことに象徴されますように、大変疲弊をいたしておりまして、まさに、格差という点からいいますと、このような東京と我々地方との格差、これが非常に激しくなってしまっておる。

 加えまして、東京の方は、ずっと人口が集中し、増加をいたしております。私ども地方の方におきましては、既に人口減少時代に入っておるわけであります。ただ、出生率を見ますと、全国が一・二五でございますけれども、東京は〇・九八でございます。したがって、今行われておるモデルは、いわば子供が一番生まれないところで人口がふえるということでございまして、人口の減少を加速するような形で我々の社会、日本全体は動いておるという状況でございます。

 また一方、私どもの地方の実態を見ますと、少子高齢化が進んでおります。少子高齢化、まさにこれは非常にきめ細かい行政サービスをしなければいけないわけでございます。そうなりますと、やはりそれぞれの地域のいろいろな物の考え方、伝統、地域社会のそれぞれの特色を生かしてやらなければ、満足度の高い行政は、サービスはもう提供できないという状況でございます。

 そういうことを考えましても、これまでのようにいろいろな制度設計が国中心で行われるということから、早く、地方の創意工夫が生かされる、そして満足度の高い行政サービスが提供できるような分権社会、地方の活力、創意工夫を引き出す社会にしなければ、日本全体として幸福な社会にならないし、日本国民全体の大きな能力を引き出すことはできない、そのように考えている次第でございます。

 そして、このような意識から、私どもは今後の分権のあり方につきましていろいろ研究をいたしました。そして、この第二期の分権改革に進むに当たりまして、地方自治法に基づきます内閣と国会に対する意見の提出を行ったわけでございます。十数年ぶりのことでございます。

 そして、この我々の意見提出、この意見の最も重要な出発点になっているものが、御審議をいただいておりますこの地方分権改革推進法の制定でございます。ぜひ、まずこの分権改革推進法がつくられまして、この推進法の目指しております国と地方の役割分担、これをもっと明確にしまして、そして、思い切って地方に仕事をやらせる、責任を持たせる、その意味での権限の移譲、これを進めていただきたい。

 また、いろいろなことをやるにつきましても、やはり補助金とかいう形でいろいろな枠をはめたお金をもらっても思うようなことはできないわけでございまして、どうしても自主財源が不可欠でございます。そうしなければ、いろいろ自主的にやれ、責任をとれといいましても、責任をとる余地がないわけでございます。そういう意味でも、税源移譲を思い切って進めていただきたい。

 そして、今私どもの行政は、実際上は、いろいろなことをやろうとしましても、国からのいろいろな基準、関与が非常に大きいわけでございますが、それを整理する。そしてまた、実際には、国の行政、出先の行政と私どもの行政は二重になっております。その部分が多いわけでございますから、このような整理をする。それによりまして、もっと簡素で効率的な、国全体として、地方と国との協力関係をつくり上げていきたいというふうに考えている次第でございます。

 このようなことでございますが、一方で、大変申しわけないんですけれども、このところ地方側で不祥事が続いております。この点につきましては、まことに遺憾なことでございまして、私ども、一層真剣に、かつ規律を正しまして、行政能力、統治能力というものを高めていく一層の努力をしてまいる考えでございます。

 一方で、そのような状況になっておるわけですけれども、実態を見ますと、実は財政改革、この面では、これまで平成七年から十年間では歳出総額七・八%削減をいたしておるわけであります。国の方は、一方ではずっとふえておる中で、地方側はもう随分早くから歳出削減に取り組んで、またこのように実績を上げております。これは、そうせざるを得ないという、むしろ非常に財政が厳しいということの反映でもあるわけでございます。

 また、人員削減、この点におきましても、最近五カ年で十六万人、約五・一%の削減をしておる。これも我々、ずっとこの削減、簡素化に努めてきているわけでございます。

 また、背に腹はかえられないということでございまして、我々、給料は人事委員会勧告で行うんですけれども、その勧告の給与水準とは別に、さらに何%かの職員の給料のカットを行っている、大体半分以上の自治体でそのようなことを行っているという状況でございます。

 このようなことでございまして、当然のことでありますけれども、地方側としましても、我々、責任を持って、そしてまた自主的に行う、このための地方側としてのきちっとした規律と体制をつくりながら進めてまいる考えでございます。

 そのようなことで進めてまいりますから、どうかこの分権改革推進法をぜひ通していただきまして、次の大きな、日本全体をさらによくするための分権改革を進めさせていただきたい。ぜひこの点をお願い申し上げまして、私の発言とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、古川参考人、お願いいたします。

古川参考人 立命館大学経済学部、古川彰と申します。

 本日は、地方分権改革推進法案への意見を申し述べる機会をいただきまして、まことに感謝しております。

 私、現代の日本経済全体を見ているという観点から、この法案について、あるいはもう少し一般的に、日本経済そして地域経済の発展性ということについて申し述べたいというふうに思います。

 申すまでもなく、人口減少、グローバル化、情報化・サービス化といった大きなトレンドというものがございます。その中で地域経済社会を活性化するということになりますと、ほかの地域にはないような魅力というものをつくり出して、ほかの地域と競争していくということがどうしても必要になるということだと思います。それによりまして、企業とかあるいは住民にその地に来てもらい、住んでもらうということがなければいかぬ。そのためには、地域の持てる力を最大限に活用して魅力を高めるということが必要かと思います。そのために地方行財政がどうあるべきかということになるわけであります。

 地域間競争を促進しなければいけないというふうに考えますが、地域間競争をすると、どこか勝ち組と負け組が出てくるという御指摘があろうかと思いますが、私自身は、これはゼロサムゲームではないというふうに考えております。プラスサムゲームである。お互いに力を合わせ、競い合えば、日本経済全体も、そして各地域も活性化するというふうに考えております。

 戦後の地方行財政というのは、一言で申しますと、発展途上国の発展型財政構造であったというふうに考えます。そもそも非常に低い途上国並みの所得水準からスタートいたしまして、人口がふえる、また経済は急速に拡大する、税収もふえる。こういう形の中で、しかし、地方によっては非常に公共サービスの水準が低いということで、ここを高める。そのために、効率よくやるためには、全国横並びでナショナルミニマムというものを設定して、それを保障しようとしてきたというのが戦後の姿であったというふうに考えます。

 また、欧米先進国に追いつき追い越せという明確な目標がありましたので、そうなりますと、効率よくやるためには、例えば、国の政府が主導権を握って、それに同じように、打って一丸となって協力をするということで、国と地方との関係もそういう関係であったというふうに考えております。

 しかし、今や、日本は国際的に見れば豊かな社会になりました。人口がまたピークアウトして、地域によってはもうとっくに人口減少に至っている。それから、税収がふえ続けるという時代でもなくなり、財政バランスも国、地方とも厳しくなった。こういう中で、またグローバルな競争が展開される。産業構造も、ソフト化、サービス化し、工業中心のものではなくなったという時代で、それに対応しなければいけないだろうということでございます。

 そのときに、これからの時代というのは、企業に地域を選んでもらう時代であるというふうに考えます。しかも、経済のグローバル化が進んでおりますから、企業は、国内のみならず世界どこにでも立地する、そういう選択肢を手に入れたというふうに考えております。そうなりますと、企業にとって魅力ある地域経済社会をつくっていくということになりませんと、企業あるいはビジネスが来ない、経済の活性化そして雇用の確保もままならないということになろうと思います。

 企業と申しましたが、会社が来る、あるいは工場が来るというだけではありませんで、従業員の皆さんが安心して心地よく住めるということも非常に大きな条件になるということで、教育、文化、交通事情、そして子育て支援といったことも含めまして、広く総合的な戦略をとって競い合っていかなければいけないというふうに考えます。

 そういう観点からいきますと、どうも我が国の企業立地補助金であるとか低利融資であるとか地域開発の特別な立法であるとか、こういう助成制度はどうしてもやや画一的で総花的であるというふうに考えます。

 配付させていただきました資料の四ページに、私どもが二年ほど前に全国の自治体にアンケート調査をさせていただきましたときの結果の一つが紹介されております。

 市町村の産業活性化策として、どういうことを今やっておられ、あるいは検討中であるか。上の方のランクを見ますと、税制、財政、工業用地、金融という、言ってみれば従来型の産業活性化策が並んでおりますが、一方で、もうお金がなかなか十分でない時代、金よりも知恵と情報で勝負する、こういうたぐいの政策として、例えば、構造改革特区などの規制改革によるビジネス環境の整備であるとか、地域の大学、研究機関との連携であるとか、こういったところが考えられるわけですが、なお、大学の力不足もありまして、まだ十分な施策になっていないということかと思います。

 そういう中で、地方財政の問題点というところをごく簡単に述べてみますと、一つは、地方税の税源配分がまだまだ十分ではないのではないか。そして、国の補助、助成のうち、個別補助金といいますか、国庫補助負担金の部分ですが、こちらでは地方政府ごとの独自性発揮がしにくい。それから地方交付税についても、貧しい時代にナショナルミニマムとして設定されたものが依然として残っているという状況で、改革が必要というふうに考えます。

 したがいまして、これからの地方行財政改革は、もう一段の三位一体改革ということが必要であろうというふうに思います。

 それから、財源の移譲であるとか税源移譲、そして補助金の削減といった財政の分野のみならず、地方の持てる資源、手段を総動員して、お互いに競い合うということが必要であるというふうに考えます。

 それから、地方政府が責任を担えるためには、やはりある程度の規模が必要であるということで、そのために、道州制の検討を含めて、ある程度の規模の確保ということがこれからの課題になろうというふうに考えます。

 以上の点を踏まえまして、地方分権改革推進法案につきまして、私は法律の専門家ではありませんので、ごく一般的に幾つか述べさせていただきます。

 一つは、地域活性化という観点から、このたびの法案というのは、大きな異論は私はないということでございます。

 その中で、しかし、できるだけ地方団体の自主性、自律性を高める、その責務や財源の線引きを、非常に変化する時代でありますので、固定することなく、柔軟な形で運用していただきたいというふうに考えます。

 それから、基本的に、国が主導権を握るということはこの法案の趣旨に反することかと思いますので、地方団体の提案をベースにしながら検討、策定がなされるように明らかにされることが望ましいというふうに考えます。

 それから、基本方針におきまして、権限移譲の実施は明言されているわけでありますが、第二の三位一体改革ともいうべき財政上の措置の実施について、検討ということになっておりますが、これを必要とし、実施するということをできるだけ明確にしていただければというふうに思います。

 それから、地方分権改革推進委員会につきましては、これは推進計画策定のためのガイドラインを作成するところというふうに承知しておりますが、検討の過程では、具体的な権限移譲とか財源移譲に限られることなく、地方の経済社会の再生、活性化のための総合的な戦略を議論していただくことが望ましいというふうに考えます。

 また、住民へのアカウンタビリティーを保つというためにも、ある程度の地方団体のサイズというものが必要であるということで、適正な規模についての議論、さらには道州制についての将来ビジョンといったものも含めて、この委員会で御議論いただければというふうに考えます。

 以上、この新たな法案が、今後の地方分権そして地域の活性化ということのために大いに資する、またそう資するように運用も含めてお願いしたいということで、私の意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、小早川参考人、お願いいたします。

小早川参考人 東京大学の小早川と申します。

 本日は、地方分権改革推進法案についての私の意見を申し上げる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私自身は、大学で行政法とか地方自治法などを専門に研究している者でございます。私ごとで恐縮でございますけれども、先年のいわゆる第一次分権改革の際に、地方分権推進委員会で参与を仰せつかりまして、仕事をさせていただきました。私にとりましてはかなりハードな仕事であったというふうに記憶しておりますが、その後も、地方自治制度あるいは国・地方関係システムに関する各種の検討作業にかかわらせていただいております。

 本日、私は、結論から申しますと、この地方分権改革推進法案のあり方に基本的に賛成でございまして、そういう趣旨で、また、主としては、今申しました地方分権推進委員会における経験も踏まえまして、意見を申し上げさせていただきたいと存じます。

 この地方分権改革を考えるに当たりましては、私、今言ったような観点からしますと、三つの点が重要ではないかというふうに思っております。一つは、改革の理念の問題、第二は、当面の課題の絞り方の問題、第三には、その課題に取り組むための作業の進め方の問題であります。その順に、若干のことを申し上げさせていただきます。

 第一に、地方分権改革によって何がもたらされるかということは、いろいろな見方、とらえ方が可能であり、またそこにいろいろな目標を描くことができますが、何が究極の理念であるかということをはっきりつかまえておくということが、一貫した改革の作業のためには必要なことではないかと思っております。

 もちろん、いろいろございまして、例えば中央集権的な行政はコストがかかる割にサービスのパフォーマンスがよくない、それを分権化することで行政サービスの質をよくするのだ、こういうことも大変大事であります。それは、費用対効果の面からの行政のあり方の改善ということになるかと存じますが、私は、それも大変重要でありますけれども、やはり事は民主主義そのものの問題ではないかというふうに思っております。

 一言で申しますと、行政サービスを与える側と受ける側との距離が大き過ぎる。サービスの受け手が受け手としての立場に置かれて、余りにも受け身の立場で行政サービスの受益者の地位に置かれているということであります。

 今さら申し上げるまでもございませんが、行政の機能は非常に巨大なものになっております。国民、住民の生活それから事業活動が、こういった行政の活動、行政の作用によってプラスの、あるときにはマイナスの影響を受けるという状況は非常に大きいものがございます。

 もちろん、無駄な行政が多いのではないかということはありまして、小さな政府を目指すということは大変重要でありますが、しかし、それにしても、今後も行政そのものが非常に大きなものであり続けるだろうということは否定できないと存じます。

 その行政の大部分につきましては、御案内のとおり、国の行政組織だけではなくて、自治体がその執行にかかわっているわけであります。執行にはかかわっておりますけれども、それにつきましては、国の法令や国の行政、国の府省庁の定めるさまざまなルール、膨大なルールの束があるわけでございまして、要するに、行政の決定中枢はそういった国の立法、行政の側にあるというのが実態でございます。自治体の長及び議会は住民から選挙されますけれども、しかし、その行政の運営、執行に当たっては、そういった国の側から定められたルールにかなりの程度縛られているというのが実情であるわけでして、そうなりますと、住民の立場から見ますと、行政の決定中枢というのは実は非常に遠いところにあるということになるわけであります。

 地方分権によって、行政の決定中枢と行政サービスの受け手とのその距離を縮めるということで、住民、サービスの受け手の側からの行政のあり方への関与、参与の可能性は増すはずであります。そのことがやはり重要なのではないか。その場合、その中心になるのは何よりも選挙でございます。住民が長や議会を評価して、選挙によって必要があればそれを取りかえることができるということがやはり極めて重要なことではないか。

 先ほどもお話がございました、昨今、自治体の各種不祥事が非常に目立つということは確かに事実でございます。ただ、だからといって、自治体は信用できない、行政の決定中枢はやはり国の側に重点を残すべきであるということにはならないと思うわけでありまして、不祥事があれば不祥事があったで、住民としてはその自治体の責任者を取りかえることができるわけであります。

 どういうふうに取りかえるのか、あるいは取りかえないのかということ、これが問題なのではございません。とにかく住民が評価をして取りかえることができる、そういうシステムであるということが重要であります。そういう自治体のシステムに行政の決定中枢も位置づけるということ、これがやはりどうしても重要な意味を持つと思うわけであります。そうすることによって、人々が、自分たちの生活や事業活動に多大な影響を及ぼす、そしてそれを支えてくれるはずの行政のあり方について自分たちの責任において自分たちで決定する。これがまさに民主主義、民主政治の初歩的な原理原則でありまして、そういう民主主義、民主政治の可能性を広げるためにこの地方分権というものが不可欠なのであろうと考えるわけでございます。

 要するに、責任に裏づけられた各地域ごとの民主的な自己決定ということでございまして、それを可能にするような具体的な制度改革ということ、具体的に申しますと、行政システム及び財政システムの改革ということであります。民主政治の確立という点からしますと、もちろんそれだけではございませんで、自治体サイドのいろいろなシステムの改革も必要でございます。地方議会の改革、活性化といった問題、地方自治行政における情報公開の問題、住民参加の問題、さまざまございます。

 ただ、それはもちろん重要ですが、それと並んで、国、地方間のシステムの問題として、行政システムをいかにするか、財源の配分をどうするかということでございます。この財政問題と行政システムの問題というのは、車の両輪であると存じます。

 第一次分権改革は、どちらかといえば国、地方間の行政システムの改革に重点を置きました。財政面の改革は後の課題とされ、それが三位一体改革によりある程度の進展を見たというふうに思います。ですから、車の両輪といいますが、なかなか両方一緒に動かすということは難しいのでございましょう。右足を前に出して、次に左足を前に出すということを何度か繰り返していくということで、この行財政システム全体の改革を通じた地方分権の実現ということになるのではないかと存じます。これが第一点であります。

 第二に、そういった改革の理念を実現する作業でございますけれども、やはりその際に当面の課題を適切に絞るということも大事だと存じます。

 さまざまな点に目配りをしながら改革案づくりをしていかなければならないというのは当然でございますが、具体的に、例えば道州制の問題、これは大変重要であり、日本の国の将来にとって非常に大きな位置を占める問題だと思います。これの検討は大変重要でありまして、また、その将来の方向性を視野に入れた上でさまざまな議論をするということも必要ですが、ただ、改革のための現在ある力、ポテンシャルというのは限界があるわけでありまして、さまざまな大きな問題を一緒に短期間で処理するということは実際上非常に難しいと思います。当面、できる範囲のことに力を集中するという観点も必要であるかと存じます。

 当面何が比較的取り組みやすくかつ成果が期待できるかといいますと、私は、先ほど申しましたような国の法令による自治行政の縛り、これを抜本的に見直していくということを一つ重要な課題とすべきではないかというふうに存じます。ただ、これも恐らく大変な作業量の仕事になるかと存じますが、しかしこの際、これまでの第一次改革そして三位一体改革、さっき申しました右足から左足、次の右足はどうかという場合には、このあたりの作業を本格的に腰を入れて取り組むべき時期ではないかと考えているわけであります。

 そういった国の法令による縛りを見直した上で、そのことと論理的には表裏をなすわけですけれども、国、地方間の財政システムの組み直しを検討する。その際、私は法律屋でございまして財政問題にはさほど詳しくはございませんが、やはり税源の移譲を一番の基本といいますか、それを軸にして、かつ、自治体間、地域間の水平調整の要素をきちんと組み込んだ、将来にたえ得る地方財政システムを構築し直すべきではないかと考えております。

 第三は、そういった特定の課題に改革の力を集中するための工夫であります。

 第一次分権改革におきましてはそれなりの成果が上がったと存じますが、御承知のとおり、その際には、地方分権推進委員会におきましてかなり具体的な改革内容まで踏み込み、その詰めをして、それをもとに地方分権一括法が立案され、制定されたわけであります。それは大変ハードな仕事であったということは最初に申し上げました。ただ、それでも、そのときの仕事は、膨大な国の側のルールの中身について一々その是非を論ずるとか、そこまでは基本的には行っていないわけでありまして、それぞれの事務を国の事務とするか地方の事務とするか、法定受託事務とするか自治事務とするかという、カテゴリーへの配分ということが主であった、私の感覚としてはそのように思っております。

 それと比べますと、今申しましたような今回の課題というのは、さらに行政に関するルールの中身に立ち入った話になるわけでありまして、前回よりももっと大量な作業が必要なのではないかというふうにも思います。

 今回の法案を拝見いたしますと、改革推進委員会を設けるわけですが、ただ、そこは比較的短期間に、恐らくは基本的な方針を明確な形で確立する。それで次の段階は、恐らくは総理の強力なリーダーシップのもとにその方針を具体化していく、そういう構想ではないかというふうに読んでおりまして、恐らくそれは適切な考え方なのではないかというふうに思うわけであります。

 私は、以上のような観点から、この法案に対して多大の期待を抱くわけでありますし、それに基づいて地方分権がさらに大きく推進されるということを期待しているわけでございます。

 以上で私の意見を終わります。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩生田光一君。

萩生田委員 おはようございます。自由民主党の萩生田光一でございます。

 三名の参考人の皆さん、早朝より、本当にありがとうございます。

 限られた時間でございますから、多くを尋ねることはできないと思いますけれども、せっかくでございますから、各先生方から一項目ずつ、今のお話を聞いて感じたことを聞いてまいりたいなというふうに思っております。

 最初に、知事会の会長として大変御活躍をいただいている麻生知事にお尋ねをしたいんですが、平成の大合併が進みまして、来年の四月以降、三千三百あった自治体が千八百二十までに言うならば凝縮をされる。ある意味、地方の形というのは、これからがそのフォームを整えていかなくてはならない大事な時期でありまして、私は、率直に申し上げて、地方分権、これは大賛成でありますし、私自身も地方議会の出身でありますから、現場感覚を持った地方の行政マンも議員も、現場を知らない霞が関に時には憤りや疑問を感じたこともたびたびございましたので、地方に任せるものは任せてくれ、こういう思いは非常に強く持っておりました。

 他方、国会議員になってみまして、こちら側からもう一度地方を見渡したときに、確かに、十分な行政能力があって、幾ら難しいボールを投げてもしっかりそのボールがとれるキャッチャーになり得る自治体もあれば、真っすぐゆっくりな球を投げてもやはりぽろりと落としてしまう、こういう自治体もあるんだなということを改めて感じて、ある意味では、霞が関の役人が地方に対して信頼感を十分に発揮できない理由というのが、国会議員をやっていますと薄々感じるようになってまいりました。

 麻生知事は知事会の会長というお立場でございますし、この地方分権を進めるに当たってのある意味でのカウンターパートは地方六団体の皆さんであります。私の地元、八王子市というのも、東京都内にあっては非常に人口が多く、歴史が古いものですから、全国議長会の会長市が回ってくる自治体なんですね。回ってくるというのは、何も望んでいないんだけれども、やってくれということで、何年かに一回回ってくるわけです。

 失礼ながら申し上げますけれども、地方六団体の構成というのは、その地方六団体の長になり得る人員が配置をされていたり、行政規模があったり、あるいは歴史がある自治体の代表の方が役員を務められているわけでありまして、我こそがという形の中では、知事会はいろいろな活発な議論をされていますけれども、県議会あるいは市町村長会、こういったものにつきましては、御本人がなりたくても、あるいは先進的な地方自治を、だれもがうらやむようなことをやっていても、なかなかそういう役職にはつけなくて、非常におっとりしているんだけれども歴史が古く人口が多い町の代表で、しかも職員がたくさんいて、時間的余裕のある人がなる、こういう状況にあるんだと思うんです。

 ですから、地方六団体の皆さんが積極的に国に要望をしたにもかかわらず、そのまた逆の意見書が全国の県議会や市町村議会から出るというのは、私は国会議員としてすごく違和感を感じるわけですよ。あなた方の代表が、進めてくれ、やってくれと言ったことをやろうとしたら、いや、それはやめてくれ、国が責任を持ってくれというのでは、これでは私は地方の分権というのは進まないなというふうに思っているところでございます。

 先ほど、東京一極集中のお話もございました。知事の得意分野でございますが、よそから見ると、稼ぎの多い御主人のいる家がうらやましいと思うこともあるんですが、家の中に入ってみると、寝たきりのお母さんがいたり、あるいは、実は離婚歴が二回もあって、前の奥さんとの間の養育費を払っていたり、会社の個人保証をしていたりということで、外から見る収入とは違う財政需要というのがそれぞれの自治体にある。東京は、まさしく全国四十七都道府県の中で唯一の不交付団体であって、そして、外国人不法労働者が二十万人もいる、あるいは知事のところからもたくさんの学生さんがいらっしゃるけれども、住民票を移さないで東京で生活する、ある意味では住民票のない都民の皆さん、昼間だけ働きに来る三百万を超える労働者の皆さん、こういう人たちの行政需要も、国のお金は一切使わないで東京都民の皆さんのお金でサービスを提供している。東京都民の皆さんが国に納める国税の東京への還元率というのは一一%ですよ。八九%はよその道府県のために使っているわけですから、そういうそれぞれの自治体の抱える事情というのは余り刺激をし合わないで、一つの自治体チームとしてぜひ要望を進めていただきたいな。この分権は東京の力をそぐための分権ではなくて、先を走れる人はどんどん走ってもらう、そして、稼いで、その足らざるところには分配をしていく、そのことは必要だと思うんですけれども、ぜひそんなことも知事会でこれから議論をしていただきたいと思います。

 駄弁を申し上げましたけれども、私が心配しているのは、受け皿となり得る地方の皆さんの成熟度。平成の大合併を経て、このままのスタイルで第二期も第三期も進めろと知事たちはおっしゃいますけれども、国が投げたボールをきちんととれるだけの地方自治体の成熟度が本当に期待できるのかどうか、その辺をどう考えているか、まずお伺いをしたいと思います。

麻生参考人 我々地方の能力という点でございますが、今お話がございましたように、一つは、市町村合併をずっと進めてまいりました。この合併というのはやはりいろいろな歴史がありまして、場合によりましては江戸時代まで話が及びまして、なかなか大変であるわけでありますけれども、そういう中で、千八百まで市町村の数を減らしてきておる。これは、県、各市町村、随分いろいろな話し合いをしながらやってきた成果でございます。

 これの根底にありますのは、どうしても私どもの行政能力を高めなきゃいかぬ、特に人材能力を高めなきゃいかぬ、そういうようなことから出発し、また、財政としましても、いろいろな簡素化をやっていくというためにもこの合併をやってきたわけでございます。

 したがいまして、我々が今一生懸命進めてきました合併というのは、まさに御指摘がありましたような、我々の能力を高めていく、受け皿としてしっかり信頼できるような体制をつくっていこうということでございます。

 もう一つの点は、我々都道府県段階でございます。これにつきましても、当然いろいろな努力をいたしております。特に、今私どもは、このいろいろな新しい時代に合った政策をつくるという政策能力を高めていく必要があるわけでございますが、知事会といたしましても、先進政策センターというものをつくっております。ここにおきまして、各分野におきまして、福祉とか産業の問題、あるいは教育とか、そういうことにつきまして、それぞれ工夫した政策、これを持ち寄りまして、いいものをお互いに採用し合う、切磋琢磨するということを進めてまいるわけでございます。

 そのようなことを通じまして、御指摘がございましたけれども、ぜひ、皆様方から信頼される、またきちっとした能力を持った自治体をつくっていきたいと考えております。

萩生田委員 ありがとうございました。

 古川先生に経済学者というお立場も含めてお伺いをしたいなと思ったんですけれども、地域の能力を高めるために、自治体それぞれが知恵と情熱を持って自分たちの町の個性をしっかり発揮するべきだと。私も大賛成だと思います。ただ、仕事柄、全国の自治体を回りますと、どんなにはいつくばって頑張っても地形的な問題や地理的な問題でその力を発揮できない自治体があるのも、これまた正直なところだというふうに思います。

 もう一方は、やはり地方の公務員の皆さんというのは、国からの呪縛といいますか、市町村でいえば県からの呪縛といいますか、前例のないことはやりたがらないという中で、実はそれぞれの自治体は潜在的な力をいろいろ持っていたりするんですけれども、それを十分に発揮し得ないという現状にあって、せっかく進めようと思っている分権がその効果を発揮せしめないのではないかということを私は危惧しております。

 それで、先ほど先生が自治体のサイズのお話をされました。今のキャッチボールの話じゃないんですけれども、ここは大事なところで、地方地方と言うんですけれども、我々が言う地方というのは一体どの規模の地方のことを言うのかというのを国も地方もある程度同じ感覚でいかないと、さっき申し上げたように都道府県も地方でありますし、村も地方でありますし、同じ地方自治法上の自治体であるわけですから、この辺のカテゴリーというのを整理してこれからの分権を進めていかないと、あんたの地方とこっちの地方は違うのよと言われても、地方の人たちも気の毒だというふうに思います。先生が御指摘になったサイズというのは、道州制と絡めて、どのような適正規模を考えていらっしゃるのか。

 もう一つは、地方の皆さんがその力を発揮するときに、先ほど私は潜在的な力と言いました。例えば、今の地方会計の仕組みでいきますと、戦前からすごい膨大な土地を持っていて、その土地の簿価が幾らなんだ、取得年度が幾らなんだなんて県議会や地方議会で質問があっても即座に資料が出ないような自治体がたくさんあるんです。すなわち、単年度決算に縛られて、自分たちの町や村や市がどんな財産を持っているか、どんな力を発揮するかということがなかなかクリアにならない会計制度になっているんじゃないかなというふうに思います。

 そういった意味で、今国でも、公会計の改革、公会計システム、ある意味では小遣い帳のような現金主義から発生主義に基づいたものにどんどん変えていく。こういったものも、款項目節の流用なんというのは地方議会の皆さんはなかなか瞬時に読み取りができないところもありますので、公会計と地方分権のかかわりについて、先生の御所見があったらお示しをいただきたいと思います。

古川参考人 どうもありがとうございます。

 まず第一の御質問の件ですけれども、地方の潜在力を発揮できるところもあれば、なかなかそういうところまでいかないところもあるんではないかと。全くおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、これまでは、地域の力をつくり出す、雇用をつくり出す、これがどうしても国主導であり、おっしゃるように都道府県主導であり、また市町村段階ではお役所主導というところがあったかと思いますが、これからの主役はどうしても企業であり個人であるというふうに考えます。例えば、東京から遠いところにあっても、いかに不利な条件にあっても、情報のネットワーク、グローバルな情報のネットワークというのを使えばかなりのことを企業ができるという事例はいっぱいあるわけであります。むしろ、それを支えるような地域、市町村あるいは都道府県のサポートということで、主役がかわるのではないかというふうに考えております。

 関連しまして、地方団体のサイズということでございますけれども、非常に大きな自治体から小さな自治体まであるということでは、先ほどのお話にありましたような受け皿としては極めて困難があろうというふうに私も思います。財政学の方のいろいろな実証分析によりますと、最も行政コストが節約できる、安くつくというのは大体人口十万から二十万ぐらいの都市というふうに考えられております。より大きくなりますと、規模の不経済といいますか、いろいろまた、非効率とか、あるいは周りの面倒を見なきゃいけないとか、そういったことが出てくるようでありますが、経済の方あるいは財政の方だけから規模を決定するわけにもまいりません。

 また、本来望ましいのは、地域の住民のことを自治体がよくわかり、地域の住民はみずからいただく公共サービスの対価として税金なりなんなりを会費として払う、この一対一対応ができるためにはある意味では小さい方がよろしいわけです。そうはいいながら、規模の経済といいますか、受け皿としての能力を保つというためには先ほどのような規模がどうしても必要かというふうに思いますし、そうなりますと、都道府県というのもどうしても今のままではいられないことになるというふうに存じます。

 それから、公会計の話ですね。全くおっしゃるとおりであります。国では、財務省のいろいろなイニシアチブもありまして、公会計の改革、そして企業会計的な改革が進められている、それに対しまして地方の方はこれがおくれている、全くおっしゃるとおりでありまして、地方分権という観点からも情報の不足ということは私どもみずからも頭が痛いところであります。公会計の改革、そのためにもサイズの問題がどうしても出てこようかというふうに思います。

 ありがとうございました。

萩生田委員 古川先生、ありがとうございます。

 時間がなくなっちゃって、本当はもっと深く議論したいんですけれども、小早川先生に一点だけお聞きしたいんですが、自治体の決定中枢のお話をされました。分権を進めていく上で、先ほどからお話のあった地方の行政力のアップというのも大事なんですが、それをチェックするチェック機関である議会、議員の能力、あるいは議員の構成、こういったものも同時に見直しをしていかないと国が目指す分権にはいかないんではないかというふうに思っています。

 もう既に、都道府県議会議員といえども国会議員より広い選挙区を抱えて、多くの選挙民の民意を反映しなくては議員になれない人たちもいるぐらい、ちょっとゆがんだ選挙制度になっていると私は思うんですね。他方、地方議員の皆さんの議員報酬の支出根拠なども極めてあいまいで、県や市が雇うアルバイト職員の皆さんと伝票は同じでありますから、そういった意味ではその権威づけというのも必要なんだろうというふうに思います。

 これから分権を進める上で地方議員の皆さんがどういう役割を果たすべきなのか、先ほどお話になった決定中枢の中で地方議会に期待するもの、あるいは改革のフォームなどを先生がお持ちでしたら簡単にお話をいただければと思います。

小早川参考人 主として地方議会の関係についての御質問でございました。

 私が日ごろ考えておりますことは、やはり民主政治のシステムの根幹をなすのは議会制度であります。今の地方議会についていろいろな評価がありますが、さらにこれを活性化していくということが必要であろうと思っております。

 今お話がございましたように、基本的な問題の一つは、議会が選挙を通じて構成されるわけですけれども、地域住民あるいは地域の産業を支える人たちの意見をバランスよく反映できているだろうかということが一つあるかと存じます。このことは、各国との比較研究などもいろいろございますけれども、一つは職業としての議員というものをどう考えるかということがありまして、現在の制度は多少いろいろな要素が入っていてそこがすっきりしないところがあるかと存じます。

 ですから、専業職としての議員というふうに考えるか、あるいは、さまざまな自分の職業なり事業なりを別に持ちながら議員を兼ねるということにするか。現在のところは、やはり後の方の面が多少弱いということがあるかと存じます。例えば、サラリーマンが十分代表されているかとか、女性、特に専業主婦が代表されているかといったような問題がございまして、この辺は、議会の選挙制度のあり方と、それから議会の会期あるいは会議の持ち方の問題といったような制度の改善の余地がいろいろあるのではないかと思っております。

 それからもう一つ、議会そのものの情報公開もさらに努力が必要であるかと存じます。多くの自治体では、情報公開条例がありながら議会はその対象機関に入っていないというようなこともございます。ですから、どれだけのことをやっていて、住民に対してどれだけ胸を張れるか、そういう前向きの議会のあり方をそれぞれ模索していっていただきたいということがもう一つでございます。

萩生田委員 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 三人の参考人の皆様には、大変御多用の中当委員会に出席を賜りましてありがとうございます。十五分間でございますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど聞いておりますと、本法案に対しましては三人の参考人の方すべて賛成の意向だったと私は理解しておるわけでありますが、初めにおっしゃった麻生参考人は、平成五年に衆参の決議が行われて、平成七年に地方分権推進法が制定され、平成十一年に地方分権一括法が制定された、こういういわば中央集権の中の地方行政のあり方が、古川参考人の言葉で申し上げますと、やはりここへ来てうまく機能しなくなった、横並びの地方がどうもうまくいかなくなったということもありまして、高度経済成長が安定成長に入ったときあたりからどうもこのようなことが言われ、この法案はいわば第二期の地方分権の法案だというように今おっしゃったわけであります。

 そこで、まず初めにお伺いをいたしたいのは、地方分権改革推進法という法案を制定する際に、前総務大臣の竹中大臣の方は、新地方分権一括法を行おうということで、基本法たるこの法案そのものに手をつけないというようなやり方でやっていこうと思われていた節がどうもあります。それでまた、国の基本方針二〇〇六においても、分権一括法で対応しようというように行われておったと解釈されるわけであります。地方六団体の方で、これはこの基本法そのものも改正をしていく必要があるというようなことをおっしゃったと聞いておるわけでございますが、まず麻生参考人に、今回のこの法案を地方六団体の代表としておっしゃった理由と申しますか、根拠と申しますか、それを教えていただきたいと思います。

麻生参考人 分権推進法と一括法の関係でございますけれども、この分権推進法の方は、一括法の中身、権限の移譲とか、財政の問題とか、国と地方の二重行政とか関与の問題、そういうことについて具体的にどのような改革をすべきかということについて、推進法の中の委員会でまず中身を議論して方向づけをしていくんだという考え方でございます。一括法は、そのような出てきました意見を具体的に法律的に規定をしていくという、いわば実施法であるというふうに考えているわけでございます。

 したがいまして、私どもは、まずこのような推進法ができまして、一括法の中身をどうすべきかということを十分議論し、そして、その中で次の一括法としての実施法をつくっていくという手順でするのが一番いいのではないかということで、提案をいたした次第でございます。

谷口(隆)委員 本法案は、旧法と比較をしますと、新たに創設をされた項目がございます。これは「国と地方公共団体との間の連絡等」についてということで、従来から国、政府と六団体の方は交渉の場があって、やっておられたわけでございますが、新たに今回、この法案でそういう連絡についての協議の場を設けるというような項目が入ったわけでございます。

 これは六団体の方もそのように強くおっしゃったということを聞いておりますが、どういうお考えでここにこのような条項が入ったのか、教えていただきたいと思います。

麻生参考人 私ども地方側とそれから国とのいろいろな意見の調整、共通点の形成ということを積極的にやらなければいけないわけでございますが、その一つの重要な場としまして、三位一体の改革過程におきまして国と私ども地方の協議の場が設けられました。ただ、私どもは、これはどこまでも事実上の協議の場であったということでございまして、今後分権を進めていくに当たりましてはこの制度化ということが必要であるというふうに考え、これを主張しておったわけでございます。

 今回の法案では、制度化という具体的な制度設計まで及んでおりませんけれども、いろいろな意見交換を密にしながら協力してやっていける場をつくらなきゃいかぬ、その前提としてのこの四条ができ上がっているというふうに考えているわけでございまして、私どもの考え方がこの点に反映されておるというふうに思っております。

谷口(隆)委員 では、その次にお伺いをいたしたいと思いますが、小早川参考人は、先ほどお聞きをいたしておりますと、税源移譲が最も重要だと。当然重要なわけでありますが、この税源移譲で十六年から十八年に三位一体の改革を行いましたが、私どもは大変な、六団体もそういうように考えておられると思うんですが、大変な困難の中でこれを行ったわけでございます。

 それで、今回、国と地方との税収比を一対一にしようというような方向でまいりますと、先日菅大臣の方は、現在をベースにして考えると大体五兆円程度の税源移譲をやらなきゃいかぬというようなことになると考えておられるわけでありますが、その際に、偏在度の少ないような税目、これが必要であります。一つは、その税目についてどのようなことを考えておられるのか。

 また、徴税能力が必要なんだろうと思うんです。ただ国が徴収した税額をこの分だけ地方にくれというわけにいかないんだろうと思うんですね。そういう地方の徴税能力を高めるにはどのような方法があると考えていらっしゃるのか、これについてお伺いをいたしたいと思います。

小早川参考人 税源移譲についてのお尋ねでございます。

 私は、先ほど申しましたけれども、税財政制度の専門家では必ずしもございませんので、私の考えている程度のことを申し上げますが、おっしゃるとおり、差し当たり一対一に変えていくという目標は大変望ましいことであろうと存じます。その際に偏在度の少ないものに重点を置くということも当然のことでございまして、一般に例えば消費税が挙げられておりますけれども、私もやはり基本的にはそれがいいのではないかというふうに思っております。

 それから、徴税能力の問題、これはまた非常に難しい問題でございます。地方分権は自己決定、自己責任というわけでございますけれども、自己責任の中のかなりの部分は、やはり地域のための行政を自由に行うためにはそれだけの汗を自分でかかなければいけないということでありまして、その汗をかく覚悟がなければ、しょせんはどこかに甘えの構造が残ってしまうということになるわけでございますので、大変重要な問題なのです。

 ただ、私、行政法をやっておりますけれども、各般行政の中でも対象者との関係が一番厳しいのはこの分野でございますから、今の国税徴収を何とかかんとかやっているそのシステムに匹敵する能力を各自治体が、都道府県はもちろん市町村が独自に持つということは、現実問題としては非常に難しいのではないか。税源を移譲し、かつ、その税は水平調整も含めて地方全体の財源になるということを考えれば、ここはやはり共同の税の徴収システムというものが、共同といいますか、どの程度の共同か協力かわかりませんけれども、協力し合っていくというシステムが何か必要ではないか。さらには、国税の徴収システムとの間の連携をさらに強めていく必要があるのではないかと思っております。

谷口(隆)委員 その徴税能力ということに関しまして、麻生参考人に、六団体でそのようなことについてのお話し合いがあったのかどうか、また御自身はどういうように考えていらっしゃるのか、お述べいただきたいと思います。

麻生参考人 税源移譲が行われますと、当然、徴税ということは我々が担当するということになります。

 実は、徴税というのは大変な努力の要ることでございます。現に今回私どもの所得税を住民税に移すわけでございますが、これにつきましてもしっかりした徴税体制をつくらなきゃいかぬということでございまして、各県ともそうでございますけれども、各市町村と県が一緒になりまして連絡体制を強化し、また、徴税をどういうふうにうまく協力してやっていくかというような具体的な研修作業も行っておるわけでございます。

 また、別途、今地方では、例えば最近でありますと森林環境税というような独自の税制もつくるという動きになっています。こういうことをやろうとすればするほど、同じような徴税の仕組みをきちっと整えるということが必要でございます。

 したがいまして、私どもは、分権に対応いたしまして今申し上げましたような公正でかつ効率的な徴税体制をつくっていく、そのために非常に大切なことは職員でございますから、職員の能力を高めていくという努力を集中的にやっていく考えでございます。

谷口(隆)委員 もう時間が参りましたので最後の質問になりますけれども、先ほども出ておりましたが、また麻生参考人のところにも書いてありますが、地方でもいろいろな不祥事が今起こっていまして、国民の側からしますと、地方分権はいいけれども本当に大丈夫なのかという不安の声もあるわけであります。先日は、夕張市においても財政運営のところで必ずしも適法でないような形にやっておったわけでありますが、これについて、先ほど出ておりました公会計の透明度を高める、ディスクロージャーをしっかりしていくということは必要なんだろうと思うんです。

 古川参考人にお伺いいたしたいのは、今、各自治体が公会計を、東京都もできたようでありますし、いろいろ検討されておりますが、これは私は自治体間の比較をする上でも統一したものがなければ意味がないと思うんですね。その自治体の過去のトレンドがわかるということではなくて、自治体間の比較ができるという意味では同一の基準に立った公会計が必要で、それがないとなかなか比較のしようがないということになるわけであります。それについて御意見がございましたら、お伺いをいたしたいと思います。

古川参考人 ありがとうございます。

 私も、先生御指摘のとおり、標準的な、統一的な方法がなければ比較不可能になるということで、それはまことに賛成でありまして、これについては、国である程度の基準というものを整備するということが必要かと思います。

 ただ、その際にも、規模が非常に違いますと実際にはできないという自治体がたくさん出てまいりますので、やはりそこでも規模の問題が重要かというふうに考えます。

谷口(隆)委員 ぜひ、麻生参考人、六団体の間でもそういう統一的な公会計を一体どうしたらいいかということも含めまして検討いただいて、総務省のところでも今検討しておるようでありますけれども、それからスタートする、そうしないとなかなか状況がわからないということになりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 これで終わらせていただきます。

佐藤委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。

 きょうは、お三方におかれましては、大変お忙しい中、ありがとうございます。

 それでは、早速質問をさせていただきます。

 先に麻生知事にお願いをさせていただきますが、先ほど、三位一体の三兆円の税源移譲については評価をされるというようなこと、しかし補助金については少し不満だというお話をお伺いさせていただいて、そしてまた地方六団体は、本法案の国会提出に際して評価する旨のコメントを十月二十七日に出されておるわけでございます。一方で、地方六団体が九月十五日に本法案に盛り込むべき事項を地方分権改革推進法骨子案としてまとめられた点のうち、幾つか本法案に盛り込まれなかった、例えば一つ目が、地方税財源の充実強化を図るとした点。二つ目が、地方交付税の名称の変更、地方共有税というようなことなんですが、国の特別会計への直接繰り入れ。そして、これは仮称ではございますが、三番目が、地方行財政会議を構築するとした点。それで四つ目が、地方分権改革委員会の委員構成において、委員のうちには、全国の都道府県知事、都道府県議会議長、市長、市議会の議長などが共同推薦した者三名を含むとした点などがございます。

 こうした点を、知事会の会長として、あるいはまた個人的な見解でも結構でございますので、お考えをいただければと思っております。そしてまた、今後政府に対してどのような点を重点的に働きかけていかれるのか、そのことについても触れていただきたいと存じます。

麻生参考人 私ども、分権推進法の提出要望をするに当たりまして、その中身についても言及をいたしました。そして、推進法で今回盛られておりますことと私どもが要望したことが明確な形でなっていないという点も、確かに御指摘の点としてあるわけでございます。

 ただ、私どもは分権推進法という形でお願いしましたけれども、この推進法ができて、その後委員会でいろいろ議論をされて具体的に実行されるべき事項も実はあの中には相当前広に入れているわけでございます。

 例えば財源の問題につきましては、これをちゃんと検討してやっていくんだということでございますが、では、その具体的な中身はどうするのかということについては、もちろん今度は委員会で検討されて一括法の中に入ってくるということが想定されるわけでございますし、また、例えば交付税の名前の変更、こういうことも、この一括法の中でいきなりやれるという性格のものでは確かにないわけでございますから、これはやはり将来ちゃんと議論された結果として出てくるのであるというふうに思っているわけでございます。

 そのようなことでございまして、まず私どもが求めておりますのは、推進法によりまして、私どもが求めておりますような中身、これをしっかり委員会において議論がされまして、それにはぜひ私どもも参加をさせてもらいたい、そして、それで出てきたことをきちっと実行するという仕組みができ上がるということであるというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございます。

 ここのところは、県議会等で議論されておりますからよくおわかりかなと思うんですが、前向きに検討というのと、恐らく御自身も使われると思うんですけれども、検討するということ、これは恐らくほとんど五〇%いかぬのですね、県会で答弁されておるようなその実態が。

 ですから、ただ言葉ですけれども、そうした検討するという言葉が、二割から三割検討して、それが実績とすればいいというような、そういうのが案外多いという事例を踏まえて、しっかりそのあたりは知事会議としても今後積極的に関与していただくようなことをこちらも期待させていただく、そのことできょうはお話しいただきました。

 時間がございましたら、道州制についても少しお話をお伺いさせていただきたいというふうに思っておるんですが、ちょっと時間の関係もございますので、もしありましたらということで、よろしくお願いいたします。

 それでは、古川先生、よろしくお願いいたします。

 今、萩生田議員からも実はよく似た質問がありました。ここのところは非常に私自身も大事だということを申させていただいておりますので、二〇〇〇年の十月には、市場化について、「経済改革のキーワードは「市場化」」とかいう先生のコラムを読売新聞の「論点」で拝見をさせていただいておりますし、そして、二〇〇三年八月には、「産業立地」というところで、地域経済社会の活性化を実現するためには魅力的な地域づくりで地域間競争に打ちかつことが必要とされておられます。地方分権の姿としては、おおむね私もそのような方向であるというふうに理解をさせていただいております。

 ここからが重なるんですが、しかしながら、今、十万、二十万という効率のよい地方というお話でも御意見をいただいておりますが、地方に競争とか市場化、大都市を抱えた地方というところは、またそれでかなり可能性があるわけでございますが、そうでない地方はなかなか生きていくことが難しくなっているということを、私ども地方に住まわせていただいておる一人の人間として、特にここ四、五年、そうした風を感じるわけでございます。

 ですから、そういった面で、市場化、競争原理では立ち行かない地方、これについて、くどいようでございますけれども、取り残されていく地方に対してどのような姿勢で臨んでいけばいいのかという御指摘。先ほど、企業、個人にこれから主役がかわるというお話もいただきましたが、その点を深めてもう少しコメントをいただけたらありがたいと思うんです。よろしくお願いいたします。

古川参考人 どうもありがとうございます。私の大分昔に書きましたものをごらんいただいて非常に光栄でございます。

 おっしゃるように、私の主張は、地域間でとにかく競い合う、それも、財政面、税制面というだけではなくて、あらゆる力を、そしてそこの資源をフルに動員して競い合うということがどうしても必要で、それによって初めて地域の活性化というのが成り立つというふうに考えるわけでありますが、その中で、どうしても弱い地域、なかなかそういう目がないという地域は当然ながらあろうと思います。

 先ほども申しましたように、この時代でありますから、例えばITネットワークを使って世界の企業とつながる、そしてそことのネットワークをつくっていくということで、企業、そしてそこに働く労働者、そして関係の方々の活動の余地というのは、例えば十年前に比べると大きく広がっているというふうに思います。

 さはさりながら、どうしても取り残されるという地域があることは、これまたやむを得ないことでありまして、一般に、個人に対して言われるようなセーフティーネットといいますか、安全網というのは、これはどうしても必要となるかな。あるいは、ある意味では自治体の経営を失敗した幾つかの事例がもう出ておりますが、そういうところでのセーフティーネットというのはやらざるを得ないというふうには思います。

 ただ、これはあくまで短期的な問題というふうに考えておりまして、長期的にはやはり規模を拡大する、そして主役の交代ということによっておのずと活性化していくということが必要で、余りセーフティーネットを強くし過ぎますと、当然ながらまた別の、それに依存するという話が出てまいりますので、最低限、短期的なという条件のもとで整備するということしかないかなと考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、時間もそれほどございませんので、小早川先生には、今の議論も含めましてお伺いをさせていただきますが、地方分権化を進める上で前提となる国と自治体の役割分担のあり方についてお聞きをさせていただきます。

 先生は、三月三十一日に行われた地方分権二十一世紀ビジョン懇談会に提出された資料の中で、国の法令による枠づけや国の省庁による関与の削減の必要性、二つ目が、市町村の役割の強化の必要性、三つ目が、国の役割の重点化の本格的な着手の必要性、その方向性での都道府県の役割の再定義の必要性などを、道州制を踏まえて触れられておるわけでございます。

 そうしたことから、先生、ちょっと省略しますが、九州、十一州、十三州とか、そういう提案もされておるわけでございますが、こうした点を踏まえて、国と都道府県あるいは道州、そして市町村との役割分担のあり方は具体的に何を担うべきなのか。それぞれの意向について、先生のイメージを先ほどの古川先生との議論を踏まえて最後にお伺いをさせていただきます。全部すべて網羅は考えておりませんので、先生の独自の見解で結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

小早川参考人 ありがとうございます。

 私の勝手なイメージでよいということでございますので、お許しをいただいて、ごくポイントだけ申します。

 私は、結論だけですが、要するに、住民に対する直接のサービスは基礎自治体が担うべきである、基礎自治体は、基本的に、平均的にはそれができるサイズ、能力のものになるべきであると思っております。

 広域自治体、今道州制ということにお触れになりましたけれども、将来の道州制も視野に入れた上で、広域自治体の役割というのは、今までのような、市町村にはどうせ基礎的なサービスも十分にできないだろうからそれも補完してやる、そういう考え方はもうやめて、別の役割を担うべきではないかというふうに思っております。

 何がそうかと申しますと、一つは、その地域内での資源配分ですね。ということは、結局、産業政策あるいは雇用政策といったような政策課題というのは広域自治体の問題になるのではないか。それから、いろいろな事業活動に対する規制のようなもの、これは今、市でも頑張っていろいろ条例制定をそろそろ始めておられるところがありまして、それはいいんですけれども、やはり地域を超えた経済効果ももたらしますので、その辺は広域自治体が頑張ってやるべきではないか。国がいろいろ今まで規制立法しているものを広域自治体が頑張って肩がわりをしていくべきではないか。その辺で、広域自治体と基礎自治体の役割分担の基本的なイメージができるのではないかというふうに思っております。

 そういう実績を積み重ねていった上で道州制ということかなと存じております。

森本委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、古川先生、ひとつこれからいろいろ御示唆をいただきたいと思うわけでございますが、三重県は、かなり今元気のある地域なんです。ただ、南北格差がすごくひどい。特に弱い地域に北川前知事が肝いりでサイバーウェイブ、情報化、しかしこれは撤退せざるを得なかった、そういった事情が顕著にあらわれておる地域でございますので、またそういったところに入っていただいていろいろ勉強を我々とともにしていただいたら大変ありがたいな、そのことをお願い申し上げて、意見として言わせていただいて、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆さんには、大変お忙しいところをお越しいただき、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 私は、三人の参考人の方々にお一人お一人まず伺いたいのは、三位一体の改革はああいう形で一段落したわけですが、その段階で、これからの地方分権を推進していく上で何を最重要課題とするべきだというふうにお考えかを三人の方からそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

麻生参考人 地方分権を進めていきます場合に、一つは、何といいましても、もっと思い切っていろいろな決定権、権限を地方側に渡すということであります。

 二番目には、そのような権限が参りましても、実際にそれをきちっとやれるだけの自主的な財政基盤がなければできないわけであります。その意味で、財政基盤をきちっと確立していくということであります。

 それから三番目には、実態として見ます場合には、我々の地方で行っておる行政と、中央、特に出先機関なんかが行っておる行政が二重になっておる、あるいはいろいろな形で基準が設けられるというようなことになってきておりますから、それを整理しまして、国の役割と地方の役割をちゃんと整理しまして、そこについてはもっと関与を思い切って減らしていく、それによりまして、この二重行政の排除、簡素化を進めていく、このような方向での総合的な改革努力が必要であるというふうに考えております。

古川参考人 ありがとうございます。

 私も基本的に知事と同意見ではありますが、まず、私の分野からいきますと、やはり三位一体改革がどうしてもまだ不十分であったということで、そこを一層進めていただきたいということでございます。

 二番目といたしましては、やはり地方分権、そしてその中での地域の活性化というところでの主役は地方でありますので、地方団体の自助努力、そして、そこと企業なり住民の方々との協力ということが第二に重要というふうに考えます。

 第三に、国の経済活性化のときに障害になり得るようないろいろな規制、制度、制約というものがございます。これは構造改革特区の議論で、特区も十分に規制の改革を進めたというふうには私は思いませんけれども、その段階で出てきた、いかにさまざまな厄介な規制があるかということを非常に再認識したわけでありまして、そういう制度の改革ということが第三に必要かと思います。

小早川参考人 私の意見も今のお二方とほぼ同じでございます。

 ただ、順序としましては、先ほども申しましたけれども、まず、差し当たりは、国からの縛りに対して、地方の、自治体の自主性を実現できるような、そういう改革がまず必要であり、それは今、ある権限を持っているようで、実は自由に行使できないというところであります。

 その次には、国の事務権限自体で、なお適正な役割分担の観点からすれば国が持っているのはおかしいという部分があると思いますので、それが次の段階ではないか。その辺を財政システムの改善とあわせながら進めていくということであろうと思います。

 もう一つつけ加えさせていただきますと、きょうもほかのところで御発言がございましたけれども、では、地方が、自治体が、本当にそれだけの責任を持ってやれるのかということでございますが、やはり人の問題が一番大事でございまして、中期的に、優秀な人材を自治体に集めていくような、そういう社会システム全体の変化をいかに実現していくか、それが大事だろうと思っております。

吉井委員 小早川参考人に引き続いてお伺いしたいと思うんです。

 先ほどもお話がありましたように、地方分権推進委員会の参与ということで分権推進にかかわってこられたわけですし、その地方分権は、国と自治体の関係を上下主従の関係から対等協力の関係に、先ほどそういう趣旨のお話も伺いましたが、どちらかというと、団体自治の側面を重点にしてきた改革というものであったと思うんです。

 地方自治の本旨ということには、もう一つの側面として、住民自治の上に立つ団体自治ですから、住民自治ですね、この側面の改革がやはり今後必要じゃないかと思うんですが、この点についての参考人の御意見を伺いたいと思います。

小早川参考人 全くおっしゃるとおりであると存じます。住民自治なくしては、地方自治、地方分権というのは余り意味がない、こういうことになるかと思います。

 ただ、きょうの場がそうでありますように、国の法律、国の側から改革を進めていく、そういう局面で申しますと、住民自治のあり方を、今は不十分だからこうこうこういうふうにすべきであるということを余り事細かに国の側から法律でもって改革を強制するというようなことになりますと、これは何か自己矛盾のようなことになるわけでございまして、そこは、既に第一次改革以後ある程度の自由度が増してきた、団体自治的な側面あるいは役割分担的な側面で自由度が増してきた、それを前提にして、かなりの自治体ではそれなりにいろいろな工夫がされているかと思いますので、その方向での努力をぜひ続けていっていただきたいと思います。

 あと、国の側からできることといいますか、しなければならないことは、その面での過度の縛りをまた再検討するということでございますね。地方議会の制度に関しても、既に若干の緩和、地方自治法の改正もされております。それから、各個別法でいろいろ自治体の意思決定についての、一例を挙げれば、例えば都市計画なら都市計画、どういう仕組みで意思決定をせよということになっておりますけれども、それが、住民参加を標榜しているようでいて、場合によってはかえって自由な工夫による住民参加の障害になっているという面もなくはないわけでございまして、その辺の個別法の縛りについてもまた一つ一つ検討していって、地方が自由な工夫で、議会制度も含めてですが、住民自治を発展させていけるような、そういう空間をつくるべきだろうと思います。

吉井委員 住民自治ということからしますと、合併合併の時代ですけれども、どんどん地域が広くなっていく、自治体が住民から遠くなってしまうという中で、本当の意味で住民自治をどう進めるかということについては、今、道州制議論とあわせてさらに次の合併という話がありますが、やはりそこはよく考えなきゃいけないところじゃないかというふうに思っております。

 次に、引き続いて小早川参考人に伺いたいんですが、先ほどの権限にかかわってなんですけれども、機関委任事務制度が廃止されて、自治体の事務は法定受託事務と自治事務というふうになりましたが、分権一括法審議の際には、当時の小渕総理が「厳に抑制されるべきもの」と言っていたのに、その後、法定受託事務がふえているという現実があります。本来自治体にゆだねるべき自治事務の実施方法が法律で規定されている、そういう事例もふえていますね。また、以前よりは少なくなったんですが、法定受託事務には処理基準とか、また自治事務には技術的助言という通知、通達が出されて、受け取る自治体の方ではそれを機関委任事務制度のときと同じように理解して事務を行う、こういう現状が現実には見られます。

 そこで、参考人に伺っておきたいのは、分権推進委員会の参与として改革にかかわってこられたわけですが、現状をごらんになったとき、分権推進委員会が期待したような方向に推移しているのかどうか。この点、御感想でも結構ですが、今感じていらっしゃることを伺いたいと思うんです。

小早川参考人 現状をどう評価するかというのはちょっと微妙なんですけれども、ちょっと語弊があるかもしれませんが、第一次分権改革の後も、またほっておけばさまざまな国の施策が新しくできてきて、法定受託事務もまたできるであろう、自治事務についてもさまざまなルールなり基準設定がされることになるだろう、それは恐らく、自然現象というと言い過ぎなんですけれども、事の勢いがそういうふうになりやすいのではないかと思っておりました。

 ですから、あの時点では、一度大掃除をして模様がえをしてみる。しかし、また時がたつと、いつの間にかいろいろわけがわからないふうになってくるということはあるわけで、時々大掃除は必要だろうと思っております。

 ただ、時々の大掃除だけじゃなくて、日常的に国の立法をきちんと精査して、余り変なことにならないようにというチェックは必要でありまして、そこは、麻生会長もおられますけれども、地方六団体あたりが綿密なチェックをし、適切な意見表明をされるということが必要だと思います。

 それからもう一つ、今委員おっしゃいました、自治体の現状がどうなのかということでありまして、構造改革特区の運用などもちらっと拝見しておりますけれども、やはり何となく、漠然とした言い方で恐縮ですけれども、自治体の職員の側でも、本来地方自治は自主的な判断でやるべきものだという意識がまだちょっと不足しているのではないか。国の側に何かルールがあるだろうと、それを探して、そこから出発して議論をするというようなところがあって、そこはまた、先ほど申しましたことに重なって恐縮ですけれども、国の側ももちろんですけれども、自治体の職員の方々のその辺の意識といいますか認識、知識、法的にはどうなのかというような判断能力、その辺をさらに高めていただきたいというふうに思います。

吉井委員 今先生の方から何らかのチェック機能を果たすことのお話がありましたが、ここは麻生参考人の方に、その点では、法定受託事務をふやさない、あるいは自治事務に対する国の関与を抑制するチェック機能を果たすもの、そういう仕組みなり機構などについての御意見があれば伺いたいのが一点。

 もう一つ、あわせて、先ほど権限と財源という順番でおっしゃいましたが、財源に関しては、税源移譲について、具体的にどういう税源としてどういうふうに移譲していくということを、何か具体的な方策などについて考えていらっしゃることがあれば、この二点を伺っておきたいと思います。

麻生参考人 第一の点でありますけれども、分権改革で自治事務ということが位置づけられました。その後の状況を見ますと、新しい行政需要がある、課題があるということで、いろいろな法律ができて、まさに新しい行政事務が生まれておるんですけれども、どうしてこれが自治事務じゃなくて国の事務なのかというふうに非常に疑問の多いものがございます。本来ならば、これにつきましては、地方側からいろいろな申し出をしまして調整機関に持っていくという仕組みがあるんですけれども、実際にはもう法律がどんどんできていまして、後で調整機関に持っていったってなかなかうまくいかないというような実態にあると思います。したがいまして、この点は、次の分権改革の際にどのような仕組みをつくっていくかということは非常に重要な課題であるというふうに考えております。

 それから二番目の、税源移譲をした場合の偏在の問題でございますが、これは非常に大きな問題でございます。一言で言いますと、偏在のできるだけ少ない税源を移譲していく、あるいはそのような新しいタイプの税をつくっていくということまで考えていかなければいけないんじゃないかと思っています。現実に、今ある税の中で一番偏在の少ないのは何といいましても消費税でございますから、消費税は地方消費税というのがあるわけでございますが、このような実態をよく考えながら、税源移譲の問題をいろいろな工夫をしていかなきゃいかぬと考えております。

吉井委員 今おっしゃいましたように、国と地方の係争処理委員会とか、一応機構はあっても、ほとんど現実的には機能していないという問題などがあって、なかなか御苦労いただいていることと思いますが、時間になりましたので、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 まず、参考人の皆さんにおかれましては、公私ともに何かと都合があったと思うんですが、こうして本委員会に出席をいただきまして、先ほど来貴重なお話を拝聴させていただきました。改めて厚く御礼を申し上げます。

 社会民主党の重野安正であります。

 それでは、早速質問に入りますが、まず麻生参考人にお伺いいたします。

 本法案の個々の条文については、私もいろいろと疑問を持っておりますし、また、全国知事会におかれましてもいろいろな意見が提案をされておりますけれども、そうした問題は問題としつつ、本案の五条、六条をいかに確実に実行たらしめるか、このことが極めて重要であります。そういう点においても、地方六団体の監視と参加、これは不可欠である、このように考えておりますが、まずこの点で、参考人、今後具体的に内閣に対しどのように対処していかれるか、お聞かせをいただきたい。

 それからもう一点、本案に基づく地方分権改革推進委員会とは別に、総務省は本年度から新型交付税を導入するとしておりますが、これについてどのように受けとめておられるか、お聞かせいただければありがたい、このように思います。

麻生参考人 今回の法律では、五条で、国と私ども地方との関係は、どのように役割分担をすべきかという基本的な考え方が述べられているわけであります。この基本的な考え方のもとに、今後、権限問題、財源問題、国の関与問題等々幅広く委員会で検討はされるということになるわけであります。

 私どもは、ここで掲げられておりますように、身近な行政はぜひ地方に任す、そして国は主権国家としてどうしても必要な、特に今のようなグローバルな時代でございますから、世界の情勢の中で、いろいろな幅広い観点から国としてどうしてもやらないかぬことがあるわけでありますから、そういうところに思い切って集中するという形で、国全体として活気のあるものをつくっていくということで努力をしていく考えでございます。その意味で、この委員会がどのような活動をするかということは非常に大事でございまして、ぜひ委員会の中におきましても、私どもは積極的に意見を述べていきたいというふうに考えております。

 それから、新型交付税の問題につきましては、今総務省を中心にいろいろな検討がなされております。そしてまた、いろいろな考え方について、具体的に私どもの地方の実態に合うかどうかというような点検をしながら議論を進めているところでございまして、やはりもっと簡素化しなきゃいかぬということ自体はそのとおりでありますけれども、地方のいろいろな条件がございます、そのような条件がうまく反映されるような形のものにつくっていかないかぬ。そのために、積極的に今、総務省に対してもいろいろな意見を申し上げて、やっているというところでございます。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは次に、古川参考人に伺いますが、参考人は、「日本経済三十年の軌跡」と題する特集論文の中で、いわゆる三位一体改革は不可欠だ、こういうふうに論じておられます。そこで、この間、三位一体改革ということはいろいろな角度から議論されているわけですけれども、どのように評価しておられるか、この点について、まずお聞かせいただきたいと思います。

古川参考人 私の書いたものを御参照いただきまして、どうもありがとうございます。

 三位一体改革、これは最初の方でも申しましたように、長い戦後のトレンド、それの大きな変化という中で、どうしても必要なものであるという認識でございます。

 この三年間にわたって行われてきました具体的な内容につきまして、三つの点について申し上げます。

 一つは、税源の移譲というところにつきましては、第一の段階としては一応達成したかなというふうに考えます。と申しますのは、本来は、先ほどからの御議論にもありますように、地方自治体により適した税源というのは、恐らく個人所得税とかあるいは法人税のようなものではなくて、先ほどから出ておりますような消費税であるとか、あるいは固定資産税のたぐいですね、あるいは住民割といったものが望ましいというふうに思いますので、これは、長期的な課題としては、まだまだこれから課題があるなというふうに存じております。

 それから補助金の削減につきましては、税源移譲に見合った分はなされたわけですけれども、ここにつきましては、なお国からの縛りというのが残念ながらかなり色濃く残っているということで、さらに地方の自主性を高めるような形での改革が必要かというふうに考えます。

 それから地方交付税につきましては、金額的には大分スリムにされたということですが、地方交付税が戦後でき上がり、そしてだんだん拡大してきた、ここについてのいろいろな問題がまだ残っているということですので、ここは早急に、さらにまた改革の議論を進めていただきたいというふうに思います。

重野委員 次に、内閣がことしの七月に決定しました、いわゆる骨太方針ですね。その骨太方針における歳入歳出一体改革、大きく分けて、二つの議論があったと思うんです。この骨太方針においては、経済成長重視による歳入拡大を図って、財政の収支バランスを図るというところに力点が置かれているようでありますが、この内閣の政策について、参考人はどのような見識を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

古川参考人 ありがとうございます。

 御案内のような、これは国も地方も含めまして、特に国についてですが、財政の状況、危機的な状況にあるということで、我が国のみならず、世界的にも大きな注目を集めているということでございます。

 私の個人的な見方といたしましては、経済成長を促進することによって歳入を拡大する、もちろんこれは基本的な考え方としては大いに賛成でございます。ただ、それによって歳入自体をある程度拡大していく。これは、ほかの主要国に比べましても、日本の歳入構造というのは非常に脆弱になっている、特に九〇年代に多くの減税などをやりまして、実際には歳出の六割ぐらいしかカバーできていない、経済が多少よくなって少しは改善しましたけれども、構造的なものはまだ残っているということで、歳入自体の増加策ということも避けては通れないというふうに考えます。

 もちろん、申すまでもなく、歳出の削減、合理化ということが最優先であることは間違いありませんが、歳入の拡大策、消費税拡大なのか、あるいは所得税のいろいろな意味での抜け穴を埋めるということも含めまして、総合的な税制改革というのは私としてはどうしても必要かというふうに考えております。

重野委員 ありがとうございました。

 次に、小早川参考人に質問をいたします。市町村合併についてお聞かせいただきたいんです。

 いわゆる平成の大合併、このように言われておりますが、当初、総務省は分権の受け皿づくりということを強調されていたようです。それがだんだんトーンが下がって、分権時代の総合的行政主体論なんという話が出されてくる。最終的に、竹中大臣の時代でありますが、地方交付税の削減効果論、こういうふうな話に変わってきたように私は受けとめているわけであります。

 三千二百の自治体が千八百、こういうふうになったわけですが、こういう状況の中で、今回の改革推進法について、市町村合併の評価、どのように評価されておるのか。この点について、小早川先生のお話をお聞かせいただきたい。

小早川参考人 ありがとうございます。

 平成の市町村合併につきましては、いろいろな見方があると思います。御指摘のとおり、これを行政コスト全体としての削減という観点から見る見方があるということも事実でございます。そのこと自体は悪くないと思いますが、ただ、コスト削減が先行して、これが自治体に対して、せっかく自主性を高めようという動きがある一方で、その手足を縛るといいますか、やりたいこともやれない状態になる、そちらの方に使われるというのは、地方自治、地方分権の観点からは嘆かわしいことでございます。

 ただ、市町村合併自体は、私自身は、やはりこれからの行政サービスを基本的に担っていくべき基礎自治体の体力を強めるという意味では、それなりの効果は期待できると思います。そういう意味で評価したいと思います。

 目下のところは、まだ合併が施行されて間もないところがございまして、自治体の行政運営におけるいろいろな混乱もまだあるかと思いますけれども、もう少し時間がたてば、その合併の効果というものは住民の福祉のために出てくるのではないか、そのように期待したいと思っております。

重野委員 もう時間もありませんが、あと一点。

 小早川参考人、二〇〇〇年の地方分権一括法施行の際、ある雑誌の中で、地方公共団体の行政体制の整備や今後に残された課題というふうに指摘をされております。この指摘からして、本法第七条「地方公共団体の行政体制の整備及び確立」、この条文に関し具体的に望むことは那辺にあるのかという点について、お聞かせいただきたい。

小早川参考人 ある意味での、普通言われているのとは違う意味の受け皿の問題でございます。分権の結果をいかに自治体できちんとした体制をつくって効果あらしめるかということでありまして、これは極めて重要であります。

 御指摘の第七条でございますけれども、ここに書かれていることはそのとおりではないかと思っております。特に重要なことは、先ほどもちょっと申しましたけれども、国の側からそれぞれの自治体の行政体制かくあるべしということを細かくルールを定めて指図するというのではなくて、自治体の創意と工夫に基づいてその体制を整備していくということだと思います。

 ただ、それも、まるっきり勝手にやっていいということではなくて、憲法にも規定がありますように、差し当たりは、二元代表制の原則というものが基本でありますので、私は、地方議会の制度とその機能をぜひ充実させていっていただきたい、そこが何よりも大事ではないかというふうに思っております。一般的な住民参加の問題ももちろんございますけれどもということでございます。

重野委員 ありがとうございました。終わります。

佐藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様方には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時九分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、地方分権改革推進法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房タウンミーティング担当室長谷口隆司君、総務省自治行政局長藤井昭夫君、自治行政局公務員部長上田紘士君、自治行政局選挙部長久元喜造君、自治財政局長岡本保君、自治税務局長河野栄君及び情報通信政策局長鈴木康雄君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 地方分権改革推進法案の質疑を行わせていただきます。

 ただ、法案の審議に入る前に、NHKの命令放送について聞かなければなりません。

 再三、当委員会で慎重な対応を総務大臣には求めてまいりました。残念ながら、八日、答申が電監審から出され、そして即座に九日に命令を出されました。審議会ですので、特に電監審にあってはその答申内容に拘束されるということが大方の識者の分析でありますが、かといっても、やはり即出すというのはいかがなものかな、慎重な対応があってほしかったというふうに思わざるを得ないんですが、なぜ翌日出されたのか。また、再三、国会あるいはそれこそさまざまな関係者からも慎重な対応を求めてきたのに、どうして翌日すぐ出されたのか。御所見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 委員御承知のとおり、放送法の規定に従って、去る八日、電波監理審議会が開かれ、そこに諮問をし、同諮問について適当との答申を受けたところであります。今回は、そうした答申を受けまして、人道的問題、そして私は、現在進行中の問題である、そういう観点から、そういう重要性にかんがみまして、速やかに措置をすべきだ、実はそういう判断をいたしました。

武正委員 お手元に資料を、理事会の御了承を得て配らせていただいております。これは大臣が電監審に諮問されたときの、その文書の写しでございます。

 それで、放送事項、(1)、(2)ということで分けて、「上記事項の放送に当たっては、北朝鮮による日本人拉致問題に特に留意すること。」こういうような形で諮問をされたということでございます。私は、これまでのやりとりで、この4に例えば北朝鮮による日本人拉致問題ということで事項の変更をされるのかなというふうに思っていたんですが、(2)ということで、(1)の三項目の放送に当たってはという、全部にかかるような形で記載をされております。

 こういうような形でNHKに対しての命令事項の変更をされたというふうに理解をしておりますが、なぜ4という形で並びでされなかったのか、お答えをいただけますでしょうか。

菅国務大臣 確かに、委員からお配りをしていただきましたこのような内容で諮問をしました。私自身も4にするのがいいのかも含めて検討しました。しかし、この拉致問題というのは、やはり1、2、3、この三つすべてに関係をしてくることだろう、そういう判断をしまして、今回のように「上記事項の放送に当たっては、」そういう形で諮問をすることといたしました。

武正委員 過去の命令事項、これを見てみますと、過去もこの1、2、3と大体同じようなものがありまして、昭和三十三年四月一日は、そこに4ということで「その他放送効果を高めるため適当と認められる事項」、昭和三十五年四月一日は、同じく4「その他国際親善、外国との経済交流及び海外同胞に対する慰安に資する事項」、こういった形で4ということで並列になっておりまして、昭和四十一年から三項目に絞られ、そのときは「時事」「国策」「国際問題に関する政府の見解」、そして昭和五十九年に、この2の「国策」が「国の重要な政策」、こういうふうに変更になってきて、以来、このお手元の資料のような1から3が、四月一日に命令放送がされてきた事項だったんですね。

 ですから、私はやはり4というふうに理解をしていたのでありまして、この(2)ということになりますと、大臣おっしゃるように、時事、国の重要な政策、国際問題に関する政府の見解、すべてにわたってこの拉致問題に留意という、個別的な事項をさらに強くNHKに対して命令していくということで、果たして、命令事項の変更、個別的な事項を書くということも戦後初めてのことだけに、さらに、こうした(2)ということでやっていくその命令のやり方もいかがなものかなというふうに言わざるを得ないのでございます。

 そして、三番目に移らせていただきますが、電監審のその審議についてです。

 我々民主党あるいは野党の委員からは、公開あるいは意見聴取なども行うべきである、こういったことも求めてきたんですが、結局公開もされず、それから議事録については、大臣は議事録をつくっているんだよというふうにおっしゃられますが、聞くと、できるのは一カ月後と。これは、総務省の通信基盤局の方四名が事務局を兼任されているわけですね。

 こうしたおよそ開かれた審議会と言えない実態について、大臣はどのように所管大臣としてお考えになられますでしょうか。

菅国務大臣 電波監理審議会は、審議そのものについては公開しないものとされております。そのかわりに、審議後に電波監理審議会会長が記者会見を行って審議状況を発表し、また議事録も事務局で閲覧できるようにいたしております。

 特に、論点が編集の自由に関する配慮と明快であり、北朝鮮の拉致問題が現在進行中、そういうこともあって、審議会も即日答申をしていただいたのかなというふうに実は思っております。

 そういう中で、今委員から指摘がありましたけれども、審議会終了後に、今回も審議会の会長が記者会見をし、そして議事要旨も公開される、そういうふうに考えております。

武正委員 総務省に尋ねましたら、議事録ができるのは一カ月と言うんですけれども、これはちょっと余りにも時間がかかり過ぎだと思うんですが、速やかに議事録を公開されるお考えはございませんか。

菅国務大臣 できるだけ早くというのは、ある意味では当然だと思います。

武正委員 そこで、この四月一日、当時の竹中大臣名で三項目の命令放送を伝えた。そのときは統括官がその文書を手渡したはずなんですけれども、当時、大臣は副大臣であったわけですので、これも戦後初めて、その文書を渡すときに口頭での要請が行われたわけなんですが、そもそもこれはやはり菅大臣の発案だったのかどうか。それから、ちょっと私、まだ聞いていなかったんですが、そのときは統括官が渡されていますけれども、今回のようにNHK会長が受け取ったのかどうか。それから、今回、大臣が直接渡して、NHK会長が受け取ったのはなぜなのか。会長が受け取るように伝えたのはいつだったのか。四項目にわたりますが、お答えいただけますか。

菅国務大臣 まず、前回の命令の際の口頭要請でありますけれども、私は、副大臣に就任してから、やはりこの拉致問題、総務省としてできることはすべてやりたい、そういう思いで当たってきました。そして、朝鮮総連の施設に対しての減免措置の問題等もやはりきちっと対応すべきである、こういう通達も出すべきだ、これも実は私は考えておりました。そして放送について、特にNHKについてそういうことができないかなということを日ごろ言っていたものですから、そういう中で、拉致、大規模災害、テロ、大規模災害とテロについては以前にも要請という形で行った経緯がある、そういうことを伺っています。その中で、四月のことでありまして、私、記憶が定かではなかったんですけれども、説明を受けまして、もう一度調べ直しまして、事前説明があって、私が適当と判断をしたということも私は判断をいたしております。

 前回の命令書につきましては、当時の清水政策統括官からNHKの橋本会長に交付された、このように伺っております。そのときに三項目を口頭で伝えた、そういうことだというふうに思います。

 今回、これだけ大きな問題、またさまざまなマスコミ初め国民の皆さんからの関心事になっておりますので、これはやはり私から直接NHK会長に命令書を手渡すのが自然かなという判断を実はいたしました。

 そして、今回の命令書交付については、電波監理審議会、この答申が得られ次第できるだけ早く対応できるように、私から事務方に指示をいたしました。

武正委員 ちょっとよく聞き取れなかったのですが、四月のときは受け取ったのはどなただったんでしょうか。

菅国務大臣 NHKの橋本会長です。

武正委員 今回は、やはり事の重要性ということを大臣も十分認識されて行ったということがわかったわけでございます。

 下村官房副長官、後で質問をということで、きょうは御出席をいただきまして、ありがとうございます。林副大臣にも後ほどお聞きをさせていただきます。

 特に、官房副長官もこの拉致問題には大変熱心に取り組んでおられることは私も承知をしておりますが、やはりこの間、この総務委員会では、拉致問題への支援、その解決のために、国会として、あるいは民主党ももちろんでありますが、全力を挙げる、これはもう論をまたない。

 そしてまた、もともとこの論議のきっかけは、先月の十日の予算委員会で、民主党の中川正春議員が総務大臣あるいは総理に、北朝鮮拉致問題の解決に政府として何ができるんだろうと。そのときに、北朝鮮に対する短波放送「しおかぜ」への支援ということで取り上げたのがきっかけだと、我々はそのやりとりの発端を理解しているんですね。そのときに総務大臣は、「しおかぜ」への支援、これをやりましょうということを言ったので、予算委員会の民主党の議員も、あっ、踏み込んだ発言をしたなと。そういう意味では、大臣のやる気みたいなものも十分伝わったわけですが。

 ただ、翌々日の閣議後の記者会見で、NHKの命令放送を行うと。今の大臣のお話では、もう前々から温めていたし、四月一日の命令放送についての口頭での要請は、今の大臣、菅大臣の案である、アイデアである、そういうことも先ほど言われたと私は理解いたしましたが、やはり放送の独立性あるいは報道の自由、これは放送法三条で放送番組自由編集ということでうたわれておりますので、やはりここは守ってあげなければならないんじゃないのか。それこそNHKが、海外でもその放送の内容が確かなものである、これから国際的な評判を高めていく、ちょうど今その時期であるだけに、やはり個別具体的なテーマ、内容について踏み込んで、しかも所管大臣がそれを命令するということが大変危惧されるわけでございます。

 この間、菅大臣は記者会見で、答申を受けた後、内閣の最重要課題だ、こういうふうにも言っておられます。最重要課題は幾つかおありになる内閣だと思いますので、最重要課題の一つということだと思うんです。そういった中で、官房副長官として、このやりとりをお聞きになって、どのようにお考えになられますでしょうか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今お話がございましたように、安倍内閣になりまして、拉致問題対策本部、安倍総理が本部長のもとに組織をされました。それだけ日本政府としても拉致問題を何とかして解決したいという、そのあらわれが、この総理を本部長とする拉致問題対策本部にあらわれているというふうに思いますし、この中にはすべての閣僚が参加されておられます。

 その中で、今菅大臣からお話ございましたように、菅大臣、総務省としても全力でこれについて対応したいということでございまして、また今回の件におきましても、法律にのっとって対処されていることだというふうに承知をしております。

武正委員 菅大臣は、やれることは何でもやりたい、こういうふうに言っておられて、今回の命令放送を即日出された。まさに法律にのっとっての命令なんですが、ただ、放送法の三十三条にはのっとっているんですが、放送法の三条は、番組自由編集、これが認められているわけなんです。ですから、同じ法律でも、その法律にのっとってやることが、その法律の三条に抵触する可能性がある。こういうことで、今法律にのっとってと大臣もあるいは官房副長官もおっしゃられるんですが、その点がやはり危惧の念を抱かざるを得ないのでございます。

 この点については、私は、この地方分権改革推進法案の審議が終わった後は、ぜひ委員会としてじっくりと、拉致問題の解決も含めてしっかりと議論を、日本政府として、あるいはそれこそ総務省として何ができるのか、こういった議論をやはり委員会としてやっていくべきだと思いますので、これは委員長にぜひお取り計らいをお願いします。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

武正委員 官房副長官にもお答えいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、地方分権改革推進法案の質疑に移らせていただきます。

 先ほど、午前中は参考人からのいろいろなお話や質疑がございました。その中でもやはり、この法案でなぜ道州制を外したのかと。古川参考人からは自治体の適正なサイズの議論が必要なんだということもありましたし、前回の地方分権推進委員会の最終報告でも、残された改革課題として、道州制論、あるいはまた補完性の原理を参考とした国と地方の役割分担などが挙げられていたわけですね。もちろん、いわゆる財政規律、地方への税財源の移譲、これも残された課題の一つでもありました。

 総務大臣には、まず、地方分権推進法、地方分権推進委員会、そして地方分権一括法、この評価と、それから、一括法が平成十一年に制定された後、四百七十五本の改正ですか、その後の事後検証をやってこられているのかどうか。そして、今回の改革推進法は、三年間を経てそしてまた一括法を制定していく、こういうプログラム法だと思いますが、事後検証をその後やっていくおつもりなのかどうか、やるべきだと考えておられるのかどうか、あわせてお答えをいただけますでしょうか。

菅国務大臣 まず最初の質問でありますけれども、平成七年に制定をされた地方分権推進法、これに基づいて設置をされた地方分権推進委員会は、二百四十五回という膨大な回数の審議を行ったというふうに聞いています。そして、その委員会が出した勧告を踏まえて作成された地方分権推進計画に基づいて、平成十一年に四百七十五本の個別法を一括して改正する地方分権一括法が制定をされた。さらに、これによって、機関委任事務制度が廃止をされたり、あるいは各省の包括的な指揮監督権が廃止されるとともに、国の関与の廃止縮小が行われるなど、一定の成果を上げることができたというふうに私は考えております。

 さらに、機関委任事務制度の廃止などによって、従来、機関委任事務とされていたものは、地方公共団体の事務、国の直接執行事務、または事務自体が廃止され、整理もされました。地方公共団体の事務とされたものについては、国の包括的な指揮監督権が廃止されるとともに、法令に違反しない限り条例を制定することが可能になった、地方議会や監査委員の権限が原則として及ぶことになったというふうに思っております。

 新たに設置をされる地方分権改革推進委員会における審議の内容については、基本的にはそれぞれの委員の判断によるもの、こうされておりますけれども、国と地方の役割分担を見直す中では、やはり平成十一年の地方分権一括法の制定によってなされた措置については、私は当然検証することになるのではないかなというふうに実は思います。

武正委員 私が特にお聞きしたかったのは、前回の一括法、平成十一年からこの七年間、四百七十五本の法律が制定された後の検証、これをやっておりますかどうかということでございます。

菅国務大臣 今回の改革推進委員会では、そうしたことの検証の上に今回の勧告につながる、私はこういうふうに思います。

武正委員 私がお聞きしているのは、もう一度聞きますと、分権一括法は、平成十一年に法律が制定されて、四百七十五本の改正を行ったわけですね。改正した後の検証というんですか、改正して、それがよかったのか悪かったのか。

 ですから、これからの分権改革推進法あるいはまた分権改革推進委員会でやるというのが今のお話だとすれば、この間はやってこなかったということでよろしいでしょうか。

菅国務大臣 その後には、三位一体改革、こういうことに取り組んできました。私としては、地方の自主性、自律性を高め、真の分権型社会を構築するために引き続きこの地方分権というのを進めていく、そういう主張をずっと唱えてきたわけですけれども、三位一体改革というのはそうした前の一括法を踏まえての一つであったというふうに私は思っています。

武正委員 やってこなかったということで私は承りました。

 であるならば、今度の分権改革推進法、そして一括法、バージョンツーをやったとすれば、そのバージョンツーができたらすぐにその後事後検証を始めるべきだというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

菅国務大臣 参考にさせていただきます。

武正委員 ぜひそういう形で、プラン・ドゥー・シーと多くの委員が言われますので、やはりドゥーの後のシーを速やかにやるプログラムを今からつくっていただきたい、このようにお願いをしたいと思います。

 私は、分権一括法のときにちょうど埼玉の県議会議員をしておりまして、そのとき地方事務官ということで県庁にそれこそ雇用政策あるいは社会保障ということで来られていた国家公務員の方々が、分権一括法制定後、みんな国に戻る。それこそ地方事務官、厚生省は厚生事務官に、労働省の職業安定関係事務官は労働事務官に、そして、それぞれ四十七都道府県に労働局がつくられて、今回いろいろと不適正な支出が会計検査院で挙げられておりますが、こうしたことになったのが、あれっ、地方分権といいながら、何で県の職員が、職員だと思っていたんですが、実は国から来られていたんですが、戻っちゃうんだろう、地方分権に逆行するんじゃないのかな、こういうふうに思ったわけなんです。

 私は、こうした分権の流れと逆に集権してしまったようなことは、前回できなかったことの一つとして、あるいは二つとして、やはり今回は検証していくべきだと思いますが、特に今二つ挙げたことについて、総務大臣としてどのようにお考えになっておられますか。

菅国務大臣 地方分権一括法におきましては、国と地方の役割分担の原則から見て国の役割に属し、かつ、その事務の性格や事務処理の現状から見て国が直接執行すべき事務については、国の直接執行事務、そういう形にいたしました。

 従前、地方事務官が従事していた職業安定関係事務については、国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務といたしています。

 その際、雇用対策法が改正をされ、国と地方公共団体の連携の規定が創設をされて、国と地方公共団体の連携協力により、地域の事情に応じた雇用対策を円滑に展開することといたしております。

 一方、国民年金の事務につきましては、国が保険者として経営責任を負い、不断の経営努力を行うことが不可欠であること、さらに、効率的な事業運営を確保するためには一体的な事務処理による運営が要請されていること等から、原則として国の直接執行事務にした、こういうふうに当時は整理をされたということであります。

 私も、今の現状を見るにつけては、委員の指摘することも一理あるのかなというふうに今思っています。

武正委員 御案内のように、国民年金、それまで市町村の職員が徴収をしていたのが、いわゆるこれから大きな議論になる社会保険庁の職員がということも、変わったちょうどそのぐらいのタイミングで未納率がどんどん高くなっていった。十一年が二五・五、十二年が二七、そして十三年が二九・二、十四年に至っては三七・二%まで未納率がはね上がっていった。やはり身近な職員の方が社会保険庁の職員よりも徴収がしやすい、こういったことが指摘をされたわけでございます。

 また、当時、地方事務官、あるいは労働局を設置したときの地方分権一括法では、雇用政策に関する国と地方公共団体との連携強化、こういった項目もうたわれているんですね。確かに今、ハローワークから地方自治体は求人情報は情報をもらっています。どんな企業がどんな人を求めていますかという情報は、ハローワーク、厚生労働省から地方自治体はもらっていますが、相変わらず、求職情報、その地域のだれがどういう仕事を求めているかという情報は、ハローワーク、厚労省は自治体にくれないんですよ。地方自治体が雇用政策をやろうとしたら、地域のそれぞれの市町村、もうちょっと大きくていいでしょう、都道府県で、その県民の皆さんがどういう仕事につきたいかという情報が少なくとも県でわかっていないと、やはり的確な雇用政策は打てないと思うんですね。ですから、この分野もまだ依然、中央集権、地方に分権されていない一例ということです。

 私は、十一年のとりわけ象徴的なこの二つ、社会保障、雇用政策、これはやはり象徴的に今回分権をすべきというふうに考えております。

 そこで、先ほど官房副長官も、総理を本部長に、そしてまた全大臣が参加、そうした強い体制で拉致問題の解決に当たる、こういうふうに言っておられます。前回の地方分権推進委員会は、秩父セメントの諸井さんが委員長で七名の体制ということでありまして、御案内のように、分権の改革、勧告が出ても、それを法案にする際に中央省庁の大変な抵抗に遭った。そしてまた、当然、その中央省庁の応援をするというんでしょうか、いわゆる族議員の抵抗で、その分権の改革、勧告が次々にねじ曲げられていった。これが過去の分権推進委員会の反省、より強い推進体制が望まれる。まさに拉致問題の解決と同じように、総理が本部長、全大臣が参加、そして全省庁を挙げてこの分権をやるんだ、そういう体制が望まれるんだというのが十一年前の反省だったわけなんですが、残念ながら、今回、前回と同じような、いや、後で触れるように後退をしているのではないかと言わざるを得ないのでございます。

 そこで、まず、特に中央省庁等改革法四十六条、公共事業などの見直し規定というのが、前回も勧告そして法案化を進めようとしたんですが、要は公共事業をできるだけ地域にゆだねようということをやったんですが、大変な抵抗があってそれができなかった、こういったことが反省として当時の関係者から述べられているんですけれども、今回これがしっかりとできるんでしょうか。その公共事業の見直し規定、前回まだできなかったこと、同じ推進委員会の七名の体制でできるんでしょうか。これは総務大臣、お答えいただけますか。

菅国務大臣 今回の地方分権改革の具体的内容は、地方分権改革推進委員会の調査審議、勧告の内容を踏まえて、政府として地方分権改革推進計画を作成していく、そういう中で内容というのは明らかになってくるというふうに思いますが、この地方分権改革推進委員会において、行政の各分野の国と地方の役割分担を見直していく中で、当然、この公共事業の見直しなどについても、地方分権改革を推進する上で、所要の具体的な取り扱いについても検討して勧告してくれる、そういうふうに思っています。

武正委員 神野さんという大学の先生を委員長として、これは地方六団体の考え方をまとめる前の地方分権構想検討委員会でしょうか、このときの組織としてイメージしていたのは、それこそ官房長官が本部長、そして全大臣が参加、それにさまざまな方々が入って強力な体制でやるべし、こういうような案でもありました。

 また、地方六団体は、そうした求めの中でも同様の考え方を持って求めてまいったわけでございますが、今回は前回と同じ体制になっております。とりわけまた、地方六団体は、地方の声をといったことを法律に書き込むように求めましたが、これができていない。先ほど全国知事会会長も、文書とそれから答弁で、質疑の中で触れておられます。

 民主党は、この四月、行政改革推進法案、民主党案で行政刷新会議をうたいまして、本部長が総理、そして各大臣がメンバーということで、地方分権も含めた行政改革のそうした会議を強い体制でやらなければ、先ほど触れたように、中央省庁あるいは国会のさまざまな議員の思惑でなかなか分権がうまくいかないんだ、これをやはり強力な体制で行うべきということを四月の法案では提案したわけでございます。

 先ほどもう総務大臣からお答えいただいたので、官房副長官、どうでしょうか。拉致についてはそういう体制で臨むんだけれども、後で触れるように、この間、特に前内閣のときに、地域再生なりあるいは構造改革特区本部なり、いろいろと本部をたくさんつくっていて、結局、何か横並びの地方分権推進委員会なのかな、地方分権改革推進委員会なのかなというふうに思ってしまうんですね。それこそ、なぜ、今回のこの法案提出に当たって、そうした強い体制で分権をやるんだ、安倍内閣の最重要課題の一つだ、こういう形で臨めなかったのか。ちょっと質問通告にはないんですが、お答えいただければ幸いです。

下村内閣官房副長官 今回の地方分権改革推進委員会は、委員御承知のように、地方分権の推進についてすぐれた識見を有する方の中から、内閣総理大臣が両議院の同意を得た上で任命する委員を構成員としまして、そして、地方分権改革の推進に関する基本的事項について調査審議をし、その結果に基づく地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針の内閣総理大臣への勧告等を行うということでございまして、よくほかの審議会がございますが、これは諮問ということでございますが、勧告というのは大変強制力を持った言葉であるというふうに思います。

 そして、今御指摘がございましたように、拉致問題対策本部もそうでございますが、総理のもとに各閣僚が参加して組織をする、同じようなことができないのかということでございますが、特に地方分権につきましては、両院で承認をしていただいたすぐれた方に、これから我が国にとってどういう形での国と地方の役割分担、地方分権がふさわしいかということについては、まず専門家の方々にきちっとした議論を積み重ねていただき、その結果を踏まえて政府がそれに対して一体として取り組むということでございまして、政府がこの地方分権について積極的に取り組むという、ある意味ではシステムの違いはありますが、しかし、それによって姿勢が少し引いているということではないというふうに承知しております。

武正委員 拉致問題は安倍内閣の最重要課題、あるいは最重要課題の一つということをおっしゃられましたが、この地方分権は安倍内閣の最重要課題の一つということでよろしいんでしょうか。

下村内閣官房副長官 今臨時国会におきましても、この地方分権改革推進法、これは安倍内閣になりましてから、急遽この推進法を重要法案としてこの臨時国会で提出させていただいているという姿勢からも、大変重要な課題であることは間違いございません。

武正委員 最重要課題の一つということで理解をいたしました。

 そこで、次の質問に移らせていただきたいんですが、地方分権推進法での税財源の充実強化が今回の改革推進法ではなぜ検討になってしまったのかということが一点。それから、これから三年間議論していく間に、今も進めている地方への税財源の移譲が議論している間はとまってしまっては元も子もないわけですから、この流れは引き続き続いていく、当然これがあってしかるべきと思うんですが、以上二点、お答えをいただけますでしょうか。

菅国務大臣 今回の法案では、委員御承知のとおり、まず最初に事務事業をできる限り地方にゆだねる方向で見直しを行って、これに応じて、国、地方の税源配分の見直しなど財政上の措置を盛り込むこと、実はこういう組み立てになっておりますので、地方税財源を充実する方向で検討が進められていくこと、これは当然のことであるというふうに思います。

 前回の法律で地方税財源の充実確保が規定をされたのは、当時まだまだこの地方分権を取り巻く環境というものが高まっていなかったというふうに思っておりますので、地方税財源の充実の方向が明らかでなかった、そういう当時と今日の状況の変化というのも実はあるというふうに思っています。

 そして、第八条において、検討の結果としての財政上の措置の内容を地方分権改革推進計画に盛り込むこと、こういうこともしっかりとうたっておりますので、まさにこの税財源というのは極めて大事である、こういう観点からこの法律ができていることも御理解いただきたいと思います。

武正委員 この三年間とまることがないようにということはちょっとお答えがなかったんですが、ぜひ。

菅国務大臣 それは当然のことであるというふうに思います。

武正委員 ただ、先ほどの答えですけれども、今回の新法では、いわゆる三位一体改革に伴う国と地方の税財源配分など財政上の措置のあり方について検討、こういう書きぶり、旧法は、国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るということで、やはり明らかに税財源の地方への移譲ということでは今回は後退をしている、こう言わざるを得ないんですね。

 ですから、私は、やはりここは国会としても強い意思を地方に対して、先ほども知事会長も来られておりますし、あしたまた公聴会もありますが、強いメッセージを出すべきである、このように申させていただきます。

 そしてまた、もう一つ指摘をさせていただきますが、今回の法案では、首相の分権改革推進委員会からの勧告の遵守義務それから国会への勧告報告義務が、前回はあったんですが、今回は抜けているんですね。なぜ抜けたのか、お答えをいただけますか。

菅国務大臣 地方分権改革推進計画の作成など、最終的な政策決定については政府の責任において行われる、そういう兼ね合いから、勧告の尊重に係る規定を置かないことにしたということであります。これは、中央省庁再編時において、同様の趣旨により、勧告等の尊重義務に係る規定について、各府省共通の取り扱いとして一律に廃止をされた経緯を踏まえたということであります。

 また、政府は、三年という限られた期間で、地方分権改革推進委員会の勧告を受けて速やかに地方分権改革推進計画の策定及びこれに基づく措置の実施まで行う必要があることから、国会への報告というのは、政府の責任で作成をした地方分権改革推進計画、これで足りるだろうというふうに判断をいたしました。本案では、国会の報告義務の規定はそういう中で置かない、こういう形になったところであります。

 なお、委員会の勧告等については、インターネット等を活用して公表したい、こう思います。

武正委員 中央省庁等改革法の五十一条二号の地方分権では「委員会の勧告を尊重して着実にこれを実施し、」ということで、やはり勧告尊重ということが政府のそれこそ義務として中央省庁等改革法でも盛り込まれているんですね。

 ですから、こうした法律は生きているんですね。政府は、いや、そういう尊重義務は、政府として、内閣として、もうどの法律にも入れていませんよ、こういうふうに言いますが、現にそういう法律が生きているわけですから、私は、やはり法律にちゃんと明示する、明文化する、これが説明責任として政府に求められるということで、この尊重義務を、あるいは報告義務も当然入れていくべきだ、このように考えております。

 お待たせをいたしました。

 構造改革特区本部、地域再生本部それから地方分権改革推進委員会、それぞれ地方分権あるいは地方の活性化あるいは地域再生、そしてまた、この後、林副大臣には、来年にも政府は特区法の新法を提出する、こういったことも既に公表されておりますが、本部がいっぱいできていて、一体どこが、それこそ地方分権あるいは地方自治体の活性化、結局横並びなのか、だれがリーダーシップをとるのか、そしてまた、それぞれ相互の関係は。

 まずは、特区本部と地域再生本部と分権改革推進委員会、この関係について、官房副長官、整理してお答えをいただけますでしょうか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 まず、構造改革特区推進本部は、構造改革特別区域基本方針の作成等、構造改革特別区域において特定事業を実施し、またはその実施を促進することによる経済社会の構造改革の推進及び地方の活性化に必要な施策を集中的かつ一体的に実施するため、内閣に設置されているものでございます。

 同様に、地域再生本部は、地域再生基本方針の作成等、地域再生に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に設置されているものでございます。

 また、先ほど申し上げましたが、地方分権改革推進委員会は、地方分権の推進についてすぐれた識見を有する方の中から、内閣総理大臣が両院の同意を得た上で任命する委員をその構成員といたしまして、地方分権改革の推進に関する基本的事項について調査審議し、その結果に基づく、地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針の内閣総理大臣への勧告等を行うものでございます。

 いずれにしても、地方分権の推進は内閣の重要課題でございまして、地方分権を進めていくに当たっては構造改革特区そして地域再生の経験を生かしていくとともに、構造改革特区、地域再生の推進に当たっても地方分権の推進という視点を十分に踏まえつつ取り組んでまいります。

武正委員 細かいですが大事なことなので、内閣の重要課題と今おっしゃられましたが、先ほど最重要課題の一つと、うんとうなずかれたんですが、最重要課題の一つということでよろしいでしょうか。

下村内閣官房副長官 先ほど申し上げたのは、今臨時国会におきまして地方分権改革推進法を提案させていただいたのは、内閣重要法案の一つ、最重要課題の一つでございますが、当然、地方分権も最重要課題の一つでございます。

武正委員 臨時国会と通常国会と分けて対応されては、やはり継続性ということで問題があると思いますので、地方分権は安倍内閣の最重要課題の一つということでお取り組みをいただきたいと思います。

 今、構造改革特区は集中的、一体的、地域再生本部は総合的、効果的と、こう説明されてもよくわからないんですね。そして、ここに地方分権改革推進委員会が絡んでくるということなんですね。やはり、リーダーシップ、これが問われてくるというふうに思うんですね。

 私は、それこそ最重要課題の一つとして、総理を本部長に、そして全大臣を参加させ、地方分権改革推進本部なり、やはり政府としてのそういう組織があってしかるべきと思いますが、副長官、いかがでしょうか。

下村内閣官房副長官 先ほど、構造改革特区本部、そして地域再生本部、また地方分権改革推進委員会、それぞれの役割分担について御説明いたしましたが、それぞれの役割のもとで、また委員の今の御発言についても一つの御意見として承りたいと存じます。

武正委員 ぜひそうした強いメッセージを内閣として出していただけるように求めたいと思います。

 そこで、副大臣、お待たせをいたしました。

 構造改革特区法案を準備中と承りましたが、特区制度の申請件数も若干先細りという中で、先ほど集中的、一体的と。集中的ということで言われましたが、さらに法案を出される、そういうお考えのようであります。出す以上は、地方分権との連携、整合性、これが必要と思われるんですが、例えば特区法案にその分権の視点をしっかりと取り入れていくお考えはあるのかどうか。あるいは、分権推進委員会との連携などが特区本部で、それこそ再生本部とは車の両輪というふうに言っておられますが、分権推進委員会とも車の両輪、あるいは政府がこれからつくる地方分権改革推進委員会、これとしっかり連携をしてやるんだ、こういったお考えであるというふうに承ってよろしいでしょうか。

林副大臣 まず、先ほど、いろいろな本部があってということでございました。実は私どもも参りましたときにそういう印象を持っておりまして、構造改革特区、地域再生本部に加えて、中心市街地活性化、都市再生、四つのものが今までいろいろなところでやっておりましたのを、今、佐田大臣、私のところに集約させていただきました。

 まさに、委員が御指摘のように、今度、地方分権改革推進法、これを通していただけますと、改革委員会というのをつくるということになっておりますが、それも内閣府に置いていただくという方向のようでございますから、やはり一元的に実務がきちっといくようにしてまいりたい。

 その先駆けといたしまして、関係の局長級の会議を既に発足させておりまして、こちらではこうやって、こちらではああやってということがなるべくないように、今委員の御指摘のあった趣旨に合うようにやってまいる準備を既に始めておるところでございます。

 お尋ねの、特区制度に分権の視点を入れるべきではないかということでございましたが、まさにおっしゃるとおりでございまして、そもそも特区は、規制改革の議論をしたときに、一部地区だけでも先行的にやってみようということから始まったところでございまして、まさに地域でアイデアを出していただいて、そしてそれを、規制改革の導入を一部その地域だけでやってみることによって、地域活性化に貢献するものであるというものでございます。

 きょうはせっかくの武正先生のお尋ねでございましたので、実は、地方分権的な構造改革特区、例えば、地域における教育上の特別の事情がある等の一定の要件を満たす場合には、都道府県の教育委員会が有する教員職員免許状の授与権を市町村におろす、こういう特区があるのでございますが、北海道の清水町、これは第九の町として非常に有名になっておるんですが、この第九の合唱をやる活動を中心にまちづくりをやるということで、そういうことに携わっていらっしゃる指導者なんかが教壇に立てるようにする、こういう特区をやっておるところでございます。

 まさに、そういうことを通じまして、特区で既に一部先行型で分権をやっていただいているというのが幾つかあるわけでございますから、今御指摘のように、申し込みの件数が少し減っているというのもありますので、こういうことがさらにさらに推進されますように、特区法の改正に当たっては、委員御指摘のありました地方分権の視点というものを十分に生かしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

武正委員 分権改革推進委員会でもこの特区という考え方を加味していく、そういう相互の連携が現内閣でのさまざまな取り組みでは必要ではないかな。

 物の考え方をがらっと変えたとすれば、先ほどの雇用とかあるいは年金とか、もう地方に任せてしまえばすっきりするわけですよ。地域再生本部でも一生懸命雇用の開発というのはいろいろやっていますけれども、もう地域に任せちゃえばいいんですよね。ですから、ここのところがやはり中途半端な感であるということを、現内閣、何としても最重要課題の一つとしてお取り組みをいただきたいと思います。

 とりわけ今、教育基本法の議論では、教育委員会に対して、かえって中央政府のいわゆる締めつけを強くしようなどと伊吹文部科学大臣は言っておりますが、これは内閣の地方分権に逆行する行為であるということを言わざるを得ないということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。

 きょうは、地方分権改革推進法案、四十分ちょうだいをいたしました。法案に入る前に、二つほどお伺いをしたい分野がございまして、武正委員に引き続き、林副大臣にお越しをいただいておりますので、まずその関係からさせていただきたいと思います。

 先週金曜日、教育特の方でも、林副大臣に対しましては、いわゆるタウンミーティングのやらせの問題に関して三十分ほどいろいろと質問させていただきましたが、そのときに、私の方からも御提案として、今の内閣府を中心に行われている調査の体制というのが、事の発端に関与している内閣府自体が調査をしていても国民から信用は得られないのではないか、そのような趣旨の指摘をさせていただきまして、その後、外部の方々のいろいろな参加も得ながらの調査というような形で、発展的に今動いているというふうに理解をいたしております。

 その点に関しては、もしそういうことが事実であれば、前向きな一歩として評価をしたいというふうに思っておりますが、その点は、まずそのようなことでよろしいでしょうか。

林副大臣 田嶋委員からもこの間の委員会で御指摘がありまして、私からも、信頼の回復が一番最優先の課題である、そのためには、問題のあったところが自分で調査をするのではなくて、やはり外部の方に入っていただいて、きちっと透明性を持った形で検討していきたい、田嶋委員の御質問に対して私が答弁をさせていただいたと思いますが、その方向で今、外部の有識者の方を入れた、ファイアウオールがきちっと、内閣府のタウンミーティングをやっていたところとはファイアウオールができるような形でこの調査をやっていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

田嶋(要)委員 大変いい一歩だと思うんですが、もう一つ確認は、そのときに、内部監査と外部監査というようなことも文部大臣の方からも表現としてございましたが、その外部の方々も入る調査というのは、これまで内閣府が行われている調査に外部の方も加わって一体として行われる調査なのか、それとも、内部監査のようなものがこれまでのものだとすれば、それとはまた別に外部監査として外部の方々の調査も行われるという意味でしょうか。どちらでしょうか。

林副大臣 まだ完全にイメージを固め切っている段階ではございませんけれども、今の委員の御指摘によりますと、外部監査のイメージを強くしたいと思っております。

 内閣府で各省と連携をしながらタウンミーティングをやっておったという実施部隊でございますから、実施部隊そのものがやる今の調査と、それをまた、きちっと調査をやっているかということも含めて外部監査的にきちっと見るというものを今検討しておるところでございまして、そのことがないと、冒頭申し上げましたように、信頼の回復というのはなかなか難しいのではないかというふうに認識しております。

田嶋(要)委員 ぜひ、今おっしゃったような方向で調査を進めていただきたいというふうに思います。

 ただ一点、私が気になるのは、前回金曜日の大臣等の御答弁でも、期限を余り明確にされておらないような印象を受けました。一方で、今回の八回にわたる教育改革に関するタウンミーティングは、二日あるいは三日ぐらいで回答が、八回のうち五回はやらせらしきものがあったという内部調査の結果が出てきたわけでございます。

 タウンミーティングというのは、全部で百七十四回、小泉政権のもとでありました。私もその全容を全部見させていただきましたけれども、例えば郵政民営化に関しては三回あった、あるいはほかの分野に関しては十回あった、テーマごとに数多くあるのもあれば数回のもあるわけでございますが、これはある意味、内閣府が、この間も申し上げた自転車のハブとスポークであれば、まさにハブにいる内閣府がそれぞれの役所にいろいろ指示を出して、やったかどうかの事実確認をするのに、そんなに一カ月も二カ月もかかるはずはないのではないかな。

 現に、教育改革に関して一両日に出てきたのであれば、私は、もう少し明確に期限を切って、少なくとも内部監査だけはこの一週間以内にやってもらう、そして外部の方のさらに信用度の高まる外部監査に関しては、新聞の報道等でもございましたが、一カ月ぐらいかかるのか、そういったもう少し長期の、しかし、さらに徹底的な、客観的な調査になってくると思いますが、少なくとも内閣府を中心にやられる内部監査の方は、これはせいぜい一週間しか、期限をそれ以上先延ばしするのはこういった状況の中で許されないのではないかな、またそういったことが今の政府の取り組みに対する不信感を高めていくだけじゃないかな、そのような印象を持っておりますが、この期限に関して、今どういうお考えでしょうか。

林副大臣 今、外部の有識者も含めて委員をお願いして、なるべく早く立ち上げたいと思っております。今の御指摘も非常に理解できるところではあるのですが、この有識者の皆様といろいろ話をして、こういう方法で内部監査をやってもらおうという前に、早くやれ、こうやった場合に、後でやり方が、実はここはやっていなかったとかいうものが出ても、また御不信を招くということになってもいけないなと私は思っております。

 そういう意味では、まず有識者を入れた形をなるべく早く立ち上げまして、これは今週中には立ち上げたいと思っておりますが、その上で、そこできちっと内部調査をやるのならやるし、そのやり方はこれでいいですねということをやはり確認した上で、きちっとした内部調査をまずやってもらう、このことが肝要か、こういうふうに思っております。

 そういった意味では、今、内部はいつまで、外部はその後いつまでというイメージがなかなかわいてこないというのが現状でございます。

田嶋(要)委員 そういたしますと、既に八回のうち五回ありましたという報告を受けました、教育改革に関するタウンミーティングの調査も、外部の方々を入れてもう一度徹底的にやるという意味ですね。要するに、三回は何もなかったというんですが、私は本当にそうなのかなという思いも持っておりまして、八回、もう一度徹底的に見直していただく、そういうことでよろしゅうございますか。

林副大臣 まさにおっしゃるとおりでございます。

 やはり、緊急に内部調査をまずはやるということでやらせておりますが、それも含めて、改めて有識者が入った外部監査的なところで全部やる、こういうふうに考えております。

田嶋(要)委員 そういう意味では、ぜひとも一日も早くそういった徹底的な調査の報告をいただきたいと思います。特に、この場は総務委員会でございますので、先ほど申し上げた郵政民営化に関するタウンミーティング、これが麻生大臣のときに三度行われております、平成十六年の八月下旬に三度行われておりますので、そのタウンミーティングに関する調査もしっかりと御報告をいただきたいんですが、この関係は委員長の方にお取り計らいをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

田嶋(要)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、タウンミーティングに関しては以上でございますので、ありがとうございます。

 もう一つ、法案の前にお伺いをさせていただきたいことでございますが、先ほどの命令放送の関係でございます。

 これは、命令放送の命令が行われた、そういうことでございますが、では、これからどうなるのだろうかということが、多くの国民、マスコミ関係者も含めて、いろいろと心配な声もあるかと思うんですね。実際に、大臣の方のアクションの後も、やはり命令などというおどろおどろしい文言はというようなコメントがあったり、いろいろなコメントが新聞にも出ておるわけでございます。

 この命令放送は、一つは、これは毎年度、国が負担をするということで、年度を切っての命令ということでございますが、であれば、新たな年度に切りかわっていくということで、このままいけば、もう一度新たな年度のときに命令放送を行うことになるのか、逆に言えば、状況がどのように変わったら次の命令放送は行わないというふうに大臣自身は考えておられるのか、その点をお答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 委員御承知のとおり、第三十三条の第一項において、総務大臣は、協会に対し、放送区域、事項その他を指定して国際放送を行うべきことを命じることができると。この指定事項については法律上の制限がないというふうに私は思っています。

 ただ、総務大臣としていざ命令を行うについて、やはり国の最重要課題、あるいは人道上の問題だとか、そうしたものでなければこの命令放送というのは発動すべきでないというふうに実は思っています。

 今回について言えば、何回となく答弁させていただいていますけれども、やはり新しい内閣ができて総理を本部長とする対策本部ができた、そしてこの拉致問題というのはまさに人道的な問題で緊急を要する問題である、そういう判断から、私、命令放送を下したわけであります。

 しかし、来年の四月一日になりますとその拉致問題がどのように進展をしているかというのは、まだよく想像することは実はできないわけでありますけれども、やはり北朝鮮の地で自由を奪われて救出を求めている、そうした被害者の方がいる間は、私は、この命令放送というのは来年も同じような形で出したい、このように思っています。

田嶋(要)委員 もう一回確認ですが、来年の四月一日時点でその拉致の問題がどういう状況になっていれば命令放送を行わないというふうな、その基準というか、大臣自身の思いで結構でございます。

菅国務大臣 私、やはり全容が明らかになって、拉致をされた日本人が一人残らず日本に戻ってくる、そういうことを想定しています。

田嶋(要)委員 そういう状況にならなければもう一度命令放送を行う意思だ、そういうことでございますね。

菅国務大臣 そのとおりです。

田嶋(要)委員 次に、同じ命令放送ですが、一回こういうふうに行われますと、では、現時点の国政にとって最重要課題と目されれば、ほかの分野でも次々と命令放送の可能性があるのかというようなことも議論になると思うんです。今は、おっしゃったように、人道的な観点から拉致の問題ということですが、例えば、半年後にまた違う話が出てきたときにどうかというような議論は当然出てくるかと思うんです。

 大臣、今回実際に踏み出されたわけですが、ほかの分野のさまざまな最重要課題、これはいろいろあると思うんですが、どういった判断基準で、こういったことをこれから再度検討する可能性があるとすれば、判断基準としてどういうものをお持ちかということを御披露いただきたいと思います。

菅国務大臣 基本的には、私は、人道的な問題というのがやはり第一だと思うんですね。今まで要請を出したものについては、大災害だとかあるいはテロだとかそういうもので出していますけれども、それは多分一時的なものだというふうに思っていますから、そういう意味で、この拉致問題のように、数年あるいは何十年にわたって人権問題、まさに生命の危険にかかわることとされているから私は今回この命令放送をしたわけでありまして、そして、先ほど来申し上げていますけれども、内閣にそういう対策本部、総理を本部長とするものができた。そういうことを考えますと、命令放送に必要とするものは、そう何にでもあるようなものではないというふうに私は思っています。

田嶋(要)委員 いずれにいたしましても、こういった法律があること自体を疑問視する声もあるわけでございますので、ぜひ、今後ということでは慎重に、慎重の上にも慎重な御判断をお願いしたいというふうに思います。

 それでは、法案の方の質問に移らせていただきます。

 この分権改革推進法案、プログラム法ということで、正直言って、中身があるようなないような法案だなという感じで読ませていただいたわけですが、先ほど午前中の参考人の方々、割かし前向きというか評価をするコメントがいろいろ出ておりました。特に、麻生知事の方からそういうコメントがございました。

 この今回の法案がなぜ必要なのかということをちょっと過去にさかのぼって考えてみますと、旧法というのは五年間の時限立法でつくられ、それが一年間は延長されました。そして、その延長された直前に小泉政権が始まったわけでございますね。その旧法と今回のこの新法の間には、相当なある意味ブランクの期間があるわけでございます。その期間というのは地方分権というのは全く足踏み状態にあった、そういう御認識で大臣はいらっしゃいますか。

菅国務大臣 前回の一括法を受けて、さまざまな国から地方への、事務の廃止等もあって、それなりの一定の評価というのは確かにあったというふうに私は思っています。しかしまた、さっきの推進委員会の方で指摘されたような、まだまだ国から地方に対してさまざまな関与が行われているということも事実であるというふうに思っていますので、そうしたことを踏まえて、今回、改革推進法案を提案したということです。

田嶋(要)委員 小泉政権のもとで、いわゆる三位一体改革、あれも分権改革というふうに位置づけされておると思うんですが、まさにその改革は、こういった旧法の期間の外で、終わった後で、失効した後で、しかもこの新法が来る前に実際にずっと続いていたわけですね。私は、そう考えると、この新法をここでつくることがどういうことに資するのかというのが若干見えない部分がある。

 逆に言えば、これまでもずっと改革は進められてきた。現に、旧法は、一年は延長したけれども、それから先はないわけですよね。ない中で、前の分権委員会の終わった後で調査会がつくられました、西室さんを代表とした調査会が行われた。そういう意味では、形を変えてはいますけれども、脈々と分権の検討というのは続いてきて、そして実際に政府の言うところの三位一体の改革も行われたということですね。ここでカーボンコピーのような、前回の旧法と非常に中身の似通ったものを出す意味というのがいま一つわからないんです。

菅国務大臣 地方分権というのは、私は、常に連続的に行われていくべきものだというふうに実は思っております。

 今回、平成十一年の地方分権一括法によってさまざまな機関委任事務の廃止が行われて、先ほど申し上げましたけれども、それなりの評価というのは出ていたというふうに思っております。

 しかしながら、十三年六月の地方分権推進委員会の最終報告にありますように、地方公共団体に対する法令の事務の義務づけ、枠づけの廃止縮小等の解決すべき課題がまだ残されている、こういう報告もあったことも議員は御承知かというふうに思います。

 さらに、本年の七月に閣議決定をされた骨太の二〇〇六において、「地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。」こういうことも実は明記をされています。

 さらに、地方六団体からも、改めて地方分権一括法、そうしたものを出してほしい、そういう要望もあって、これからの時代というのは、やはり国と地方の役割というのを明確に分担して、住民に最も近い地方自治体が責任を持ってそうした住民自治を行う、そして国はまさに外交、防衛あるいは国全体に資するものをやる、そういうことにさらに踏み込む必要がある、こう思って今回の改革法の提案になった、このように私は思います。

田嶋(要)委員 それはよくわかるんですが、だとしたら、あの三位一体改革の時期というのは一体何だったんだろうかというふうな素朴な疑問がありますね。要するに、旧法が失効した後、すぐさま第二ステップとしてこういうものが始まっていかないと、まさに委員会の中でこれからの課題として六つ指摘された。ということは、分権改革という大きな流れの中で、私は、かなりブランクがあいてしまったという印象は相変わらず否めないものがあります。

 続いてお伺いしたいんですが、そういうことで、旧法があって今回新法があるということですが、今もう既に地方分権改革としてここまでやるということが全体像が見えていて、そしてその中で、第一次の旧法のもとで行われたやり残しを今回すべて片づけるという御認識のもとでのプログラム法であるのか。それとも、全体が一〇〇だとすると、旧法が三〇、今回が二〇、残りがまだ五〇あるよというふうに見ておられるのか。全体と今回の新法の関係というのをどのようにごらんになっておられますか。

菅国務大臣 基本的には、今度の新しい委員の人たちがさまざまな内容を調査して勧告することになっていますけれども、やはりその基本となるのは、前回指摘をされた、そこがその中に入ってくるということは間違いないというふうに思います。ただ、今委員おっしゃいましたけれども、数値で示すということは非常に困難かなというふうに実は思っております。

 平成七年に制定された地方分権推進法と、これに続いて十一年に制定された地方分権一括法、ここで、先ほど来申し上げていますけれども、機関委任事務が廃止をされて、それに伴って各省庁の包括的指揮監督権を廃止するなど、そういう形で国の関与が縮小あるいは廃止されてきた。さらに、十三年六月には、にもかかわらず、まだまだ地方公共団体に対する事務の義務づけ、枠づけの緩和等の解決すべき問題がある、そういう指摘をされました。そういう中で、時代が経過する中でもこういう形が指摘をされている。そういう意味で、地方分権に終わりはないというふうに実は私は思っております。

 そういう中で、前回指摘をされていることも踏まえて、また町村合併等もありましたから、あるいは少子高齢化社会も進行しますから、そうしたものを踏まえてさらに改革を行うという形で今回を見ていただければありがたいと思います。

田嶋(要)委員 終わりがない、それはもうそうだと思うんですが、であれば、政府は、地方分権改革というものの全体像を、少なくとも今時点で見えている全体像というものをつくって、そこの中で一次、二次というふうに考えているんじゃなくて、その都度その都度、前のときに残った課題を次の新しいプログラムとして取り組む、ある意味では極めて場当たり的な体制でやっていくという理解でよろしいですか。

 要するに、旧法のもとで六つの課題が残された、だから今回はそれを中心にやるんだよということですけれども、全体が一〇〇あって、今三〇終わったから今回四〇取り組むとか、そういうような発想に立っていないということですね。

菅国務大臣 前回の中で指摘されたことが当然その中に入るということは間違いないことですよね。しかしまた、これから、市町村合併がこれだけ進むということは当時多分予測していなかったというふうに思っていますから、そうしたことも踏まえて、また新たな法案をつくろう、そういう形で今回提出させていただいた、こういうことです。

田嶋(要)委員 質問を変えますけれども、前回の改革では先ほどの機関委任事務の廃止というのが大きな目玉だったと思うんですが、では、今回は何が目玉ですか。

菅国務大臣 ですから、まず、前回積み残されたことが、その中の指摘になるというふうに私は思います。いずれにしろ、内容については、それぞれの委員の先生方が議論をして、それを私どもは、政府に対し勧告を受けるわけでありますから、そういう面では、前回の、先ほど委員が指摘されました六項目、それを踏まえて、さらにこれから国庫補助負担金だとかあるいは税の問題だとか、そうしたことも当然今回の大きな課題になってくるというふうに思います。

田嶋(要)委員 午前中、参考人の方々も、前回以上に今回は作業量が膨大だというような御指摘がございましたが、今回はそういう同じ認識ですか。

菅国務大臣 やはりこれだけ地方分権の声が高まってきているときというのもなかったのではないかなというふうに私は思っています。そういう中においては、今度の改革の中でも、前回に匹敵、あるいはそれを上回る、国と地方の役割というものをさらに明確にして、権限、財源とも移譲しなきゃならない、こういうふうに思っています。

田嶋(要)委員 そういう認識に立っておられながら、実際の法案は、今回三年間の時限ということでございますけれども、これもわかりにくいと思いますね。前回五年で、今回さらに大変なタスクを抱えているのに五分の三の期間でやろうというのかどうなのか。なぜ三年というふうに今回はしておるんでしょうか。

菅国務大臣 私、当初説明を受けたときに、前回五年、プラス一年、六年だったですかね。しかし、これだけ地方分権に急を要されている中で、やはり五年という中では余りにも時間が長過ぎる、集中的にやるべきだ、そのぎりぎりの期間が三年、こういうふうに私は考えております。

 さらに、もっと言うならば、今回の三年にした中の一つの理由としても、前回の経緯を踏まえて、前回のまだ積み残しの分、前回の反省の上に立って、既に先ほど言っていますように六分野について指摘されていますから、そうしたものを踏まえれば、三年でいけるのかなと思っています。

田嶋(要)委員 では、またちょっと違う角度の質問でございますが、前回の通常国会で行革推進法というのがございました。普通考えると、中身的には極めて重なる分野の改革ではないかなという印象を持つわけでございますが、大臣は、行革推進法の方の中身とこの分権の中身というのがどのような関係にあるというふうに御理解されておりますか。

菅国務大臣 行革推進法というのは、国の行政機関のあり方を中心に、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革について、その基本理念、重点分野などを定めるとともに、行政改革推進本部を設置することにより、これを総合的に推進する、そういうふうに考えています。

 地方分権改革推進法というのは、国と地方の役割分担のあり方を中心に、国及び地方公共団体の責務として、地方分権改革の推進に伴って、国、地方公共団体を通じた行政の簡素化、効率化、こうしたものを規定しているというふうに思っています。

 地方分権の推進と簡素で効率的な政府の実現は相互に密接に関連があり、相互に連携してこの施策を推進することが必要であるというふうに思います。

 さらに、行革推進法におきましては、地方公共団体への補助金交付事務、地域振興事務等について、地方公共団体に権限を移譲する措置を講じることなどを規定もいたしておりますので、お互いにこの二つのことは連携をし合っていく必要があるというふうに思います。

田嶋(要)委員 まさに、中身を見ていますと、非常に共通した部分が多いのではないかな、そういう印象を受けるわけでございますが、その検討体制というのは、横の連携がしっかりとられているのかなということに若干の不安を抱きます。

 例えば、行革推進法の中を見ますと、仕分けという言葉が何度も使われるわけですね。今回の法案の中でも、国の役割は何かということをしっかり明確にしていく、そして地方公共団体の役割は何かということを明確にしていく。その中に補完性の原則とかそういうことは明確にはうたわれておりませんけれども、やはり考え方としては全く共通なことなんだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味で、きょうちょっと参考資料でお配りしておりますが、これはある民間団体の検討ですけれども、私も地元の千葉の方に、仕分け作業というのが行われておりまして、実際にその活動に、プログラムに参加をさせていただいたことがございます。

 これは、行革であろうが今回の分権であろうが、やはりこれをきっちりとやらないことには、国の役割は本当に何なのか、重なっていることがないのか、無駄がないのか、地方公共団体の役割は何か、そういうことを明確にはできないと私は思うんですね。しかし、分権の話になった途端に、例えば仕分けの話がどこにも出てこない、その先には恐らく道州制という話につながっていくわけですけれども、どうも何か、言ってみれば、大都会の集合住宅の隣同士みたいに、隣の家族構成もわからない、一体どういう暮らしをしているのか全然知らない同士で、意思疎通がないままに、こちらは分権改革、あちらは行革推進というような感じでやっておるような印象を受けます。

 つまり、実際の検討過程が大変無駄が起きているんじゃないのかな、もっと一体として進める必要があるんじゃないか。まさに、同心円じゃないけれども、かなり重なっている二つの大きなテーマだと思うんですね。そこが私は大変弱点じゃないかなというふうな印象を持っておるわけですけれども、大臣、その辺はどのようにお感じですか。

菅国務大臣 先ほども申し上げましたように、お互いに重なる部分はありますし、連携をしてやろう、きっちり連携をし合う、そういうことを先ほど申し述べさせていただきました。

 今回の法案では、地方分権改革の推進に関する国の施策として、行政の各分野において、国と地方公共団体との間で適切に役割を分担することとなるよう、権限移譲や事務の見直し、関与の整理合理化等の措置を講じることを定めている。これについては、行革推進法における国の事務事業の見直しと同様に、事務事業の必要性や実施主体のあり方について、事務事業の内容や性質に応じた分類、整理等を踏まえて検討がなされる、このように思っています。

田嶋(要)委員 まさにそれが仕分けということで、ゼロベースに返って、本当にこれが国のやる仕事なのかということを一個一個調べて、それを地道に積み上げていくことによってしか、無駄を徹底的に排して、地方に任せられることをどんどん地方に任せる、そういうことにはなっていかないんじゃないかな。やっている中身が非常に重なって見えるわけでございますが、行革の方にも分権という言葉は出てきませんし、お互いに非常に遠慮されているような感じで、それぞれが全く別個の生き物として動いているような印象を強くいたします。

 それでは、具体的な条文の関係で、残された時間で質問をいたしますけれども、先ほども質問がございました同じところでございますが、第六条の地方税財源の充実確保というところに関しまして、私も質問をさせていただきます。

 これは武正委員からも同じ指摘がございましたが、最後はここに何が書いてあるかだけですよね。途中どういう思考回路があったかではなくて、やはり最後、この法律の文言として何が残るかというのが非常に大切と私は思うのです。

 この点、午前中の麻生知事も、ここに何が書いてあるかよりも、まさにこれから委員会の中で検討していただきたい課題も含めて、地方六団体からは提案をさせてもらったと。つまり、今回のこの法案に反映されなくとも、実際の実施法というんですか、今度の一括法ですね、新一括法の方に入ってほしいものも含めて提案させていただいたというような趣旨の発言がございました。

 どうもやはり旧法で明確に、ある一定の方向に向いて、明確にベクトルのある文言ですね、つまり、地方税財源の充実確保という一つの方向性が見えているコメント、言葉が入っているのに対して、今度の法律の中では、極めて中立な、無味乾燥、無色透明な文言に変わっているのは、どう見ても、相対的には中身が後退しているというふうに読めると私は思うんですよ。それはもう素直に読んで、そういう印象を受ける。なぜ税財源の充実確保というその一言を今回は入れないんでしょうか。

菅国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、地方税財政関連の規定ぶりについては、まず事務事業をできるだけ地方にゆだねる方向で見直しを行って、その見直しに応じて、国、地方の税財源の配分の見直し等、財政上の措置を盛り込むとしているので、当然、地方税財源を充実する方向で検討されるというのはこれから読めるというふうに私は思います。

田嶋(要)委員 個別の分権の検討課題によっては、充実と逆の方向になってしまうケースはあるんでしょうか。

菅国務大臣 分権改革推進法というのは、先ほど来申し上げていますように、国と地方の役割を見直して、地方にできる限り、権限、財源、税源を移譲させよう、そういう中でこのプログラム法が提出をされておりますので、先ほど来申し上げておりますけれども、地方にゆだねる事務事業が明らかになってくれば、当然税財源というものも充実される、これは当然のことであって、その逆はないと思います。

田嶋(要)委員 当然そういうことだということであるのであれば、なおのこと、入れない理由がないような感じがするわけでございます。前回、明確に文言としてうたわれて、しかもその表題にも「充実確保」というふうに書いておるわけでございますので、これは、普通考えると、やはり多くの方がけげんに思うのではないでしょうかという御指摘を私からもさせていただきます。

 それから第四条でございますが、これは新設された条でございます。これも若干細かいことかもしれませんが、しかし、二〇〇〇年の一括法で、垂直関係から、上下関係から水平関係に変わったと言っておることでもございますので、確認をさせていただきたい。

 表題のところには「国と地方公共団体との連絡等」ということで、立場を尊重、密接に連絡をするというふうに書いてあるわけですが、この書きぶりが私はどうも気に入らないわけでございます。

 これを読むと、「国は、」という主語で始まるわけですね、国は地方公共団体の立場を尊重すると。対等になったんだったら、やはり双方が双方のという書き方をするのが普通ではないかなと思うのですが、国が地方公共団体の立場を尊重する。要するに、学校の先生が子供の立場もよく尊重する、だけれども、学校の子供たちが先生の立場を尊重するとは言わないですよね。つまり、そこから類推すると、やはり相変わらず垂直関係だと。上下関係がここにあるんだということが私は読めるんですね。

 本当に対等関係になっているのであれば、やはりこういうところの相互の連絡というか、あるいは相互に尊重する、密接に連絡をする、そういうことは主語として両方が出てこないと、実現された、達成された、そういう精神が言葉としては反映されていないんじゃないか。やはりこういうところに、どうも政府はここは引けないみたいな感じで主語を「国」にされておるのかな、そういう印象を受けるんですが、大臣、こういう細かいことで恐縮ですけれども、どうでしょうか。

菅国務大臣 地方分権改革を推進していくには、当然、国と地方が十分に議論を積み重ねていくことが不可欠であって、国と地方がそれぞれの役割を理解し、連携をしなきゃならない、このことを委員も十分承知の上でのこの質問であるというふうに思います。

 この書きぶりについての今の質問でありますけれども、やはり私ども、国に対して、地方分権に当たっては、地方公共団体の役割を理解することでその立場を尊重し、そのためにこれと密接に連絡をする、そういう観点からこのように書いた、そういうふうに理解をしていただきたいと思います。

田嶋(要)委員 精神論だけでなくて、やはり実際に地方の声が反映された形で分権改革を進める、もう当たり前のことでございます。きょう午前中は麻生知事も大変評価をされておりましたけれども、ふたをあけたら期待外れだったということにならないように、これはプログラム法でございますが、これから三年間の改革を、ぜひ地方の声を十分聞いて、取り入れて、進んでいただきたいということを最後に申し上げて、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 私は、この地方分権改革推進法案が第三次の地方分権改革を推し進めることに生かされて、安倍総理の言われるあいまいな美しい国ではなく、真に地方分権型の、地方主権型の新しい国づくりに資するものとして生かせるかどうかという観点から質問をさせていただきますので、菅大臣におかれましては、簡潔明瞭にお答えをいただきたいと思います。

 まず、三位一体改革の評価についてお伺いをいたします。

 御案内のとおり、三位一体改革は、小泉内閣の当時、平成十六年から十八年まで三年間にわたって行われたものでございますけれども、その総合的な評価は非常に惨たんたるものがある、私はこのように思っております。

 そこで、まず一つ目でありますが、国庫補助負担金の改革についてお伺いをいたします。

 御案内のとおり、三年間で約四兆七千億円の削減をし、約三兆円の税源移譲をしたわけでございますが、これについてはどう評価されるか、簡潔にお願いいたします。

菅国務大臣 今、委員御指摘のとおり、この三位一体改革においては四・七兆円の国庫補助負担金改革、これは、地方の意見にも配慮しつつ、政府・与党間における協議や地方とも協議を重ねて、三兆円の税源移譲に結びつく国庫補助負担金の廃止縮小、その他のスリム化、交付金化の改革としてまとめた、こういうことであります。

 さらに、この改革によって地方の自由度は高まらないのではないか、そういう意見も出ていることも私は承知はしております。しかし、例えば、公立保育所の運営費、学校、社会福祉施設の施設整備等の施設費の一般財源化によって、地方みずからの創意工夫と責任で政策を決められる幅も拡大したということも事実であるというふうに思っています。

 三兆円の税源移譲の実現による地方の自主財源の拡大とあわせて、全体としては地方分権の進展につながっているのではないか、このように考えています。

福田(昭)委員 地方からすればそこまでは評価することはできませんけれども、大臣の答弁としてはいたし方ないのかな、こう思います。

 それでは次に、交付税の改革についてですが、財源対策債も合わせますと、総額の抑制という形で三年間で何と五兆一千億円の大変な実は削減をされたわけですね。これについては、段階補正の縮小とか、あるいは事業費補正の大幅な縮小とか、やむを得ない点もあったかと思います。しかし、これによって地方は相当、特に貧しい市町村は大変な苦労をされたんだと思っているんですが、大臣はいかがですか。

菅国務大臣 今、委員御指摘にありましたように、この三位一体改革というのは、地方分権に加えて、財政の健全化というのを目標として取り組んでまいりました。地方歳出の抑制については、これまで実質的な地方交付税は五・一兆円、御指摘のとおり抑制をされています。

 これについては、地方が、定員削減や給与水準の見直し、投資的経費を初めとする事業の厳しい抑制に懸命に取り組んでくれた、そういう中で、地方財政のスリム化とかあるいは効率化、それによってこうしたことが図られたというふうに認識をいたしております。地方自治体にとって非常に厳しい財政運営とは思いますけれども、地方財政の現状を考えるときに避けて通ることができない措置であったというふうに思っております。

 今後も、引き続き二〇〇六に従って、歳出の見直しとあわせて、しかし地方は非常に厳しい状況であるということも私は認識をいたしておりますので、地方に必要な交付税等の財源措置というものはきちっととっていかなきゃならないというふうに思っているところであります。

    〔委員長退席、岡本(芳)委員長代理着席〕

福田(昭)委員 交付税についてはまた論議をしたいと思います。

 今回の交付金化改革についてでございますが、これに対しては、私も当時の谷垣財務大臣にも質問をいたしましたが、地方の評判が非常にいいというのが当時の谷垣財務大臣のお答えであります。しかし、それは全く違うんですね。

 それは、地方六団体から、この三位一体の改革が決着する前にも、交付金化はよしてくれという要望も出しておりましたし、また、この三位一体の改革が決着した後からも、一つも地方の自由度が高まらないから交付金化はよしてくれ、こういう要望が出ているわけでございますので、これから進めるさらに新たな、第二期の三位一体改革になるのかわかりませんけれども、ぜひともそうしたことをしないようにここはお願いをしておきたいと思っております。

 それでは四点目で、三位一体改革の総合評価についてお話をお伺いしたいと思います。

 先ほどから話がありますように、三年間で何と、これは小泉内閣は大変なことをやってくれたんですよね、国庫補助負担金を四・七兆円削減をし、交付税を五兆一千億円削減をしたんですね。それで税財源の移譲は三兆円でありますから、差し引きいたしますと、実は、今まで地方に配っていたお金、六兆八千億円という大変巨額なお金を地方に配らなくしたんです。一方では国民に対しては税金や社会保険料で八兆八千億円という大変な負担をふやしておきながら、地方に配るお金は実は六兆八千億円減らした。これが実は三位一体改革の正体なんですね。

 このことに対する評価をどう考えていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 委員は市長をやり知事も経験をして、地方自治に非常に精通をしていらっしゃる委員のさまざまな御指摘でありますけれども、しかし、スリム化によって、あるいは効率化によって減った部分というのも当然あるわけでありますし、あるいは、この間に地方税収もふえたということも事実であるというふうに思っています。

 この三位一体の改革に関しては、そういう意味でさまざまな御意見がある、これは十分承知しております。三兆円の税源移譲の実現による地方の自主財源の強化、補助金改革による地方の自由度の拡大とあわせて、今回の改革全体として、地方分権の進展に資するものであると考えておりまして、三兆円が決定をしたときには、評価すると地方六団体から表明もあったということも、これ事実であります。

 また、税源移譲による地方税収は、国の財政状況にかかわらず地方の自主財源として安定的に確保されることにより、経済成長や地方の税源涵養努力によって今後増収というものが期待されていく、そういうふうに思っております。

福田(昭)委員 物すごい話を紹介いたしたいと思います。

 これは、本来ならば小泉政権なり安倍政権を大変褒めたたえる人なんです。産経新聞の十一月六日月曜日の朝刊でありますが、御存じの評論家、今では秀明大学の学頭だそうでありますが、西部邁先生が「保守再考」ということで書いているんです。「「地域」を壊す「三位一体」」というタイトルです。ちょっとだけ御紹介いたします。

 「「地方再興」が時代の標語となりつつある。だが地方衰退の原因は、一体全体、何だったのか。平成という時代を染め上げてきた市場原理主義(およびその一環としての「三位一体」の地方財政改革)がその主因だ、といってさしつかえない。」こう言い切っております。西部先生ですよ、これは。本来なら小泉政権や安倍政権を褒めたたえる人がここまで言い切っております。

 さらに、最後のところを御紹介いたしますと、「「三位一体」(その実質は地方補助金・交付金の減少、財源の地方移譲、公共事業費の削減)とやらは、地域共同体の自律性を噛み砕き、住民の慣習体系を打ち砕かずにはいない。つまりそれは「悪の枢軸」めいた三策同盟ではないか。」こういうことを西部先生が実は産経新聞に書いているわけでございます。

 まさに、小泉内閣が進めてきた三位一体の改革は、地方のよさ、日本のよさ、日本人のよさをことごとく打ち壊すような本当にひどい改革であったというふうなことを私は考えているわけですが、いかがですか。

菅国務大臣 いろいろな意見があることもこれ事実でありますので、一つの御意見として参考に聞かせていただきます。

福田(昭)委員 それでは、こればかりやっているわけにはいかないので、次の方へ行きたいと思っています。

 次に、竹中前総務大臣がまとめました地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の報告書についてお伺いをしたいと思います。

 まず最初に、菅大臣はこのビジョン懇談会の報告書を尊重されますかどうか、お伺いいたします。

菅国務大臣 基本的に、私も当時副大臣でありましたので、このことは十分に参考にさせていただきたい、こう考えています。

福田(昭)委員 ありがとうございます。尊重されるということなものですから、以後、六点にわたって質問させていただきます。

 まず一つ目は、ビジョン懇報告書に書いてあります分権の五原則についてであります。自由と責任、小さな政府、個性の競争、住民によるガバナンス、情報開示の徹底という分権の五原則が書いてございますけれども、何か足りないような気がいたしますが、これをどうお考えになりますか。御意見をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 いずれにしろ、私どもが求めております地方の自主性、創造性、さらに魅力ある地方をつくるためには、これはすべて重要なことであるというふうに私は思っております。

福田(昭)委員 大臣の言われるとおり、私もこの五つは大事なことだと思います。

 しかし、このビジョン懇談会の中に欠けているのは、先ほど私どもの田嶋委員もちょっと触れましたけれども、地方分権を進める上で、あるいは地方自治を進める上で大事な補完性の原理が全然入っていないんです、全く。これはビジョン懇の報告書としては失格だなと実は私は思ったりしているわけであります。

 これは私から申し上げると釈迦に説法になってしまいますが、我が民主党の分権調査会は、この補完性の原理をこんなふうにまとめております。

 問題はより身近な単位で解決されるべきであり、個人、家族、企業、非政府組織では解決困難な問題に限って基礎自治体が解決を図り、基礎自治体でも解決困難な問題に限って広域自治体が解決を図り、広域自治体をもってしても解決困難な問題に限って中央政府が解決を図るという原理に基づいて、国と地方で役割分担をしてこれからの地方自治を進めるべきだ、そのような考え方を整理しているところでございます。

 これから我が国を新しい分権型の国、あるいは地方主権型の国づくりを進めるに当たっては、そうした考え方を基本に置くことは大事なことかなというふうに思っております。

 次に、税源配分の見直しについてお伺いをしたいと思います。

 ここでは、国と地方の仕事量、歳出比が現在四対六であることを踏まえて、十年後までに国と地方の税収比についても四対六に近い水準を目指すべきだ、その姿に向かう工程として、今後三年を目途に一対一を実現し、地方交付税と国庫補助負担金の削減額の一定割合、五兆円規模の税財源の移譲を行うべきとしておりますけれども、これについてはいかがでしょうか。お伺いをいたします。

菅国務大臣 今回の法案においても、国と地方の役割分担の見直しを進めて、その見直し内容によって財政上の措置のあり方も検討することにこれなっております。この検討を行った上で、税源移譲を含む税源配分の見直しなど必要となる財政上の措置については、三年以内に作成する分権改革推進計画に盛り込んでいきたいというふうに思っています。

 こうした地方分権改革や税制の抜本的な改革を通じて、一対一として地方税の充実を図っていく、これは私ども当然のことだというふうに思います。

 それと、仕事量から考えれば、基本的に仕事量に合った形で税源を移譲するというのも、これは自然な考え方じゃないかなというふうに私は思います。

福田(昭)委員 ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 そうした中で、税源配分に当たっては税源の偏在性等に配慮すべきだ、こう書いてありますけれども、このことについても、そのとおりだと思っていらっしゃいますか。

菅国務大臣 それは全くそのとおりだと思います。

福田(昭)委員 それでは次に、交付税改革についてお伺いをいたします。

 平成十九年度から人口と面積を基本とする新型交付税を導入し、三年間で五兆円規模を目指すという考えがあります。この考えについては、既に菅大臣も実施をすると表明しているようでございますが、この新型交付税のねらいは一体どこにあるのか、教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 委員御承知のとおり、抜本的に算定の簡素化と、さらに予見可能性。私、地方自治体の長の皆さんと相談して意見を聞いているときに、どれぐらいの地方交付税になるかというのはなかなかわかりにくい。そういう中で、今算定項目が九十幾つありますから、簡素化できて、そんなに変動ないところは簡素化すべきじゃないかな、そういう発案から今度の新型交付税というものを私どもは導入したい、こう考えたことであります。そういう意味では、簡素化と予見可能な部分をできるだけふやしたい、そういうふうに思っています。

福田(昭)委員 この新型交付税は、ただ簡素化だけがねらいですか。要するに、不交付団体をふやしたいというねらいがあるのと違うんですか。

菅国務大臣 そんなことは全くありません。

福田(昭)委員 それでは、違う質問をいたしますが、このビジョン懇談会の報告書の中には、真に配慮を要する自治体への具体的な対応策が必要だ、こう書いてございますが、これはどんな対応策を考えていらっしゃいますか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 新型交付税の場合、人口と面積を基本に算定をいたすことになるわけでございますが、当然、その同じ人口と面積の中におきましても、例えば寒冷地でありますとか島でありますとか、それぞれの地域のところにおきますかかり増しの経費といったものはあるわけでございますので、そういうものは、地域振興費というものを創設いたしまして、その中で個別のそれぞれの自然的あるいは地理的、社会的な条件差につきまして、現在も行っておりますが、そういう算定を加算していくという措置をとる予定にしております。

福田(昭)委員 では、これは岡本局長に答えてもらったらいいのかわからないけれども、大臣がお答えいただくときはお答えいただきたいと思いますが、要するに、よくやり玉に上がっていた名古屋市とか大阪市とか、あるいは横浜市とか、こんなところが何で交付税をもらっているんだ、こういう議論があって、そうしたところに対する交付税を実は交付しないようにしようということで新型交付税を導入するのと違うんですか。全く違うんですか。

岡本政府参考人 先ほど大臣からもお答えさせていただきましたように、今回の新型交付税は、交付税の算定上の問題として、簡素化し、わかりやすく、またその予見可能性を高めるという観点から導入するものでございまして、よく言われます大都市の団体について不交付団体にするとか、そういうような意図を持つものではございません。

福田(昭)委員 そういう意図がないとすると、では、最終的な目標として、不交付団体をとりあえず二十万以上都市の半数以下にするとか、十年後には十万都市の半数以下にするという目標はどうやって達成するんですか。

菅国務大臣 私、ここでも何回か申し上げていますけれども、やはり一対一の目標というものを、この一括法の中で当然国と地方の問題、関与の仕方を整理する中で、そういう方向になってきた中でぜひ実現をしていきたいと思っています。

福田(昭)委員 それでは、税財源をしっかり移譲して交付税は出さないようにする、こういう考えでよろしいですか。

菅国務大臣 当然、そのようになると思います。

福田(昭)委員 それでは、後でまた申し上げますが、その割には今回の法律で税財源の移譲が明記されていないというのは、ちょっと物足りないです。それはそれとして、わかりました。

 それでは次に、国庫補助負担金の改革についてお伺いをいたします。

 地方提案を踏まえ、引き続き計画的に廃止、削減すべきである、その際、地方の自由度が実質的に拡大するよう項目数も減らしていく必要があるとの記述がございますけれども、地方六団体では、提言の中で、四百以上もある国庫補助負担金をぜひ半分以下、二百以下にすべきだ、こういう提案をいたしておりますが、これをどう思われますか。

菅国務大臣 まず、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の報告書にある国庫補助負担金の計画的な廃止縮小については、その項目数の削減も含めて、三位一体改革の成果も踏まえつつ、引き続き取り組んでいく。

 さらに、今回の法案に基づく国と地方の役割分担の見直しに応じて、地方の権限あるいは責任の拡大にふさわしい地方税財源の充実を図る観点から、この国庫補助負担金の廃止縮小のあり方、これについても当然勧告が出ると私は思いますし、その数については、地方団体からの、今、委員御指摘がありましたけれども、そういう方向になるというふうに私は思っています。

福田(昭)委員 ぜひそういう努力をしていただきたいと思います。

 それでは次に、地方の基礎的財政収支についてお伺いをいたします。

 この中では、国と地方のプライマリーバランスの黒字化に向けて、地方のプライマリーバランスも目標を定めて大幅に改善すべきである、具体的な改善目標額は歳出歳入一体改革の中で結論を得るということでございますけれども、もう既に結論が出ているのかなと思いますけれども、決定された地方のプライマリーバランスの目標額を教えていただきたいと思います。

岡本政府参考人 骨太の二〇〇六におきましては、国、地方を通じて二〇一一年までに国、地方のプライマリーバランスを黒字にしていくということでございまして、それぞれの財政収支で歳出削減の目標を設定しているということによって、両方あわせて達成していくということでございます。

福田(昭)委員 財政局長、それはちょっとおかしいですよ。財政局長もビジョン懇談会の報告書をお読みになっていると思うんですが、そこを読むと、そう書いていないですよね。もちろん、今局長がお答えになったように、国と地方を通じてプライマリーバランスを黒字化するんだと書いてありますが、地方独自に目標額を定めると書いてあるんですよね。しかも、歳出歳入一体改革の中で定める、その定めた目標額に向かってやっていくんだと書いてあるわけですよね。ですから、今の答えじゃ答えになっていないですよね。いかがですか。

岡本政府参考人 現段階として、二〇〇六におきまして、現在の、平成十八年ベースの地方の具体的なプライマリーバランスは、御案内のとおりプラス二・一兆円という形になっておりまして、これを踏まえまして、二〇一一年までの歳出削減の形を示しているわけでございます。その結果としての国、地方トータルのプライマリーバランスを持っていくという目標を政府として決定しているわけでございまして、そのうちの国、地方それぞれが幾らという形については、ビジョン懇では、それだけを目標に持っていきたいという提言はございましたが、現段階として、それぞれ、国、地方別の数値目標はないという状況でございます。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

福田(昭)委員 それもおかしいですね。

 実は、これは局長の前の局長のときですけれども、五月の九日ですけれども、私が総務委員会で当時の竹中大臣に質問をいたしました。ちゃんと議事録も残っておりますが、その中で、実は財務省がつくった国と地方のプライマリーバランスの比較表がありますね。それを見ると、平成十八年度予算でいえば、地方の方が四・四兆円の黒字だ、国の方が十一・二兆円の赤字だ、こういうプライマリーバランスの表があったわけでございますが、しかし、私がこの話をしたら、竹中大臣が、いや違うんだ、地方はこんな黒字なんてものじゃないんだ、本当はもっと厳しいんだ、こういう話をしたわけです。

 その話の中身が、実は、交付税を配分するに当たって、一般会計からの特例加算だとか、あるいは特別会計の借り入れとか、そういうものを含めたら地方だって赤字なんだ、もっと厳しいんだと。では、そういう一覧表を私がつくれと言ったら、はい、そのようにしますと言ったはずなんだけれども、まだつくっていなければ、これは大変な問題ですよ。

 地方は本当に黒字なんですか。一般会計からの特例加算だの、特別会計の借り入れだの、五十兆円もある借り入れを入れたら赤字なんじゃないですか。いかがなんですか。

岡本政府参考人 国、地方のプライマリーバランスにつきましては、内閣府がSNAベースで計算したものも今出ておりますが、国が十六・四兆円の赤、それから地方が二・一兆円の黒というふうになっております。

 例えば交付税特別会計の借り入れといったものをどういうふうに取り扱うかということが、今、御指摘ございました。例えば交付税特別会計は、現在、国のプライマリーバランスというふうに整理をいたしております。現在、国、地方を合わせてこの借り入れが一・二兆円行われておりますが、地方の借り入れ分、この半分でございますが、仮にそれをプライマリーバランスの赤字要素といたしましても、これは〇・六兆円ということになるわけでございます。

 また、一部の議論で、交付税特会のために現在特例加算をしているという状況がございますが、一般会計加算というのは、本来であれば交付税の法定率を例えば改正すべきだというような議論、それを特例的に加算という形で加えているものでございますから、これを赤字要素とするということは、やはりいろいろな御議論があるのではないかというふうに思っております。

福田(昭)委員 いろいろ言いわけはあるようですけれども、しかし、これは大臣、ぜひ頭に入れておいていただきたいのは、大臣の耳に既に入っているかどうかわかりませんが、先週の金曜日ですよね、財政制度等審議会があって、その中身について新聞報道があります。

 来年、地方の税収は黒字だ、その黒字分を国の借金返済に充てろ、そういう提言が、議論が財政制度等審議会で行われた、こういう報道がございます。

 こんな調子じゃ完全にこれは財務省にやられますよ。こんなことでは、地方への税財源の移譲だとか交付税の総額を確保するなんというのは、なかなか難しくなりますよ。いかがですか。

菅国務大臣 財政審においてそういう報告があったということでありますけれども、諮問会議で私申し上げました、地方が歳出抑制の中で頑張った分交付税を減らして国債の残高圧縮に使うなんということは、これはとんでもないことであると。私はそのように思っていますし、やはり地方の努力が報われるような形にしなきゃならないというふうに私は思っております。

 いずれにしろ、地方財源に余剰が生じるということがこの議論の前提になっていますけれども、しかし、平成十八年度の地方財源の不足というのは八兆七千億円でありますから、そういうことはあり得ないというふうに私は思っています。

福田(昭)委員 大臣はそう思っていらっしゃるのだと思いますけれども、しかし、財務省がつくる国と地方のプライマリーバランスのあの表を公のものにしたのじゃ絶対だめですよ。ですから、岡本局長、地方の本当のプライマリーバランスはどこなんだというのをしっかりつくらないとだめだと思います。ぜひ、それは大臣、局長に命じて、しっかりつくってくださいよ。ちゃんとしたものですよ。そうでないとこれは財務省にやられっ放し。こんなことでは地方分権が本当に実現できませんよ。今回法律をつくってもだめですよ。ぜひそれはお願いしたいと思います。

 次の方に行きたいと思いますが、道州制についてお伺いをいたします。

 道州制についても、第二十八次の地方制度調査会、今年の二月二十八日の答申でありますが、これを踏まえて、十年後の姿として、道州制への移行の検討を含め本格的な地方分権を目指すべきである、こう書いてございますが、大臣、いかがですか。

菅国務大臣 地方分権二十一世紀ビジョン懇の報告では、二十八次の地方制度調査会の答申を踏まえて、十年後の姿として道州制への移行を目指す、こういう報告になっています。

 道州制については、市町村合併の進展や都道府県を越える広域行政課題の増加といった社会情勢の変化を踏まえれば、その導入というのは重要な問題であると私は認識をいたします。そして、地方制度調査会においては二年間精力的に審議をいただいて、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の報告書もこの答申を踏まえた形でできておる、このように認識をしています。

 今回の組閣において、道州制導入に向けて施策を各府省横断的に、また一体的に進める観点から、新たに道州制担当大臣が置かれ、道州制の本格的導入に向けて、国民にわかりやすいイメージを提示するために、幅広い国民的議論を行いながら、道州制ビジョンを策定することとされている。

 しかし、道州制というのは、やはりどうしても十年先の話になりますし、地方分権というのはまさに目前の話でありますので、しっかり整理をしながらも、お互いに連携をとりながら進めていきたいと思います。

福田(昭)委員 確かに道州制は先の話だと思いますけれども、大臣、佐田担当大臣と連携をとっているかどうかわかりませんが、ついこの間、これは十日の日だったかな、私は北海道の道州制特区の法律を質問いたしましたが、佐田大臣の答えも、二、三年のうちに道州制ビジョンをまとめたいと言うんですよ。この地方分権改革推進法案も三年間ですよね。計画期間が大体同じなんですよ。そうしたら、考え方はやはりまとまってくると違うんですか。いかがですか。

菅国務大臣 私は、道州制というのは、やはり国民の皆さんが、さまざま議論を通じて道州制のイメージというものをつくり上げて、それなりの合意がないとなかなか難しいというふうに実は思っています。

 そういう意味で、今委員指摘されましたけれども、佐田大臣が、この懇談会を、ここ三年ぐらいですか、その中にまとめたいというのは、その方向を打ち出すということではないかなというふうに私は理解をしています。

 しかし、先ほど申し上げましたけれども、やはり地方分権というものは今すぐにでもやらなきゃならない。現実的にさまざまな障害が出ておりますし、やはり地方が自由で、自分で責任を持ってできるような仕組みをつくることが、この国にとって極めて大事なことであるというふうに私は思っておりますので、この改革推進法を成立させていただいて、そして一括法を制定し、その中で地方分権を進めながら、その先に道州制があるのかなというふうに思っています。

福田(昭)委員 菅大臣のそういう考え方は正しいと私も思いますが、しかし、検討するのは地方分権と一緒じゃないとおかしいと思うんですよね。

 これからいよいよ本論の方に入りますけれども、それでは次に、この地方分権改革推進法案についてお伺いをしたいと思いますが、一つ目は、この法案を提出した理由についてお伺いをしたいと思います。

 地方分権を進める法案は、今回で三回目になるわけですよね。名称にも今回は改革という名前が入っているわけです。今までは改革も入っていなかったんですね。改革という名前が入っている割には、やはり臨時国会に慌てて提出するというのはいかがなものか。しっかりと通常国会に出して、竹中前大臣は、二十一世紀ビジョン懇談会の中では、第二十九次の地方制度調査会に諮問をして、三年以内に新分権一括法を提出すべきだ、こう実はまとめているわけでありますが、それが急に臨時国会で菅大臣が出してきたというのは、安倍総理が出したんでしょうけれども、これはどんな意味があるんでしょうか。今法案を提出した理由についてお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 確かに、地方分権二十一世紀ビジョン懇では、三年以内に提出、そういう形になっておりました。新たな地方分権一括法の制定に向けては、七月七日に閣議決定をされました骨太の二〇〇六において、「地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。」とされ、そして、その後に地方六団体から、新たな地方分権の推進に関する手順等を示す新地方分権推進法の制定について意見の申し出がありました。

 竹中大臣も、自分の二十一世紀ビジョン懇談会の報告をした後に、この骨太にも携わっていましたし、そして地方六団体からの要請を受けて、竹中大臣としても、今度の臨時国会に出したい、そういう思いは大臣就任時に持っておりました。そして、私と引き継ぎの際に、何としてもこの地方分権というのは今できる限り早くやらなきゃならないと。私に対して、事務の申し継ぎの中で、今度の臨時国会で何としても提出してほしいという前大臣からの話もありまして、私も実は、やはり地方分権改革推進法というのはプログラム法ですから、それぞれの政党の御理解をいただいて、やはり今度の臨時国会にできるだけ早く出して、その後に一括法につながるわけでありますので、そのことが必要だ、そういう判断の中で今回の臨時国会に提出をさせていただいた経緯であります。

福田(昭)委員 大臣の考えはよくわかりますけれども、しかし、今回の第三次の地方分権の改革、これは本当に、我が国の国のあり方、国の形をしっかりと考え直す、決める、そういう大事な法律だと私は思うんですよ。その中に道州制が入ってこなかったら、我が国の新しい国の形は決まってこないんじゃないでしょうか。

 大臣がいろいろなところで答弁しているように、市町村合併も進んで、三千二、三百あった市町村も今や、来年の三月には千八百十にまで減るわけですよね。そうすると、当然、都道府県の役割をやはり見直さなくちゃならない。そういう時期が来ているのに、ここで道州制の議論をせずして地方分権がどう進むのか、ちょっと私には理解できないんです。

 そこで、これまた新聞記事を紹介しますが、まさかこんなことはないんでしょうね。これは大臣にとっては嫌な記事でしょうけれども、ちょっと紹介いたします。これは十一月四日土曜日の毎日新聞の朝刊です。これは、記者の名前入り、記名入りですから、記者も責任を持って書いたんだと思いますが、記者の名前は言いませんけれども、こういうふうに書いてあるんですよね。

 法案提出に至る過程は安倍政権の分権に対する熱意への疑念を地方側に強めたと。安倍政権は地方分権に余り熱心じゃない、こういう疑念を地方側に持たれたと。もともと安倍晋三首相が法案の今国会提出に踏み切ったのも、菅総務大臣が、来年の統一地方選を控えて、安倍政権が地方を最重要視しているというメッセージを送るべきだと強く要請したためだったと書いてあるんです。

 こんなことないんでしょうね。いかがですか。

菅国務大臣 私は地方議員を経験しました。横浜市会議員を二期八年務めました。そういう中で、やはり国と地方のあり方に実は非常に疑問を持っておりました。そして、私自身が総務副大臣になって、そして竹中大臣のもとで、副大臣としてこの二十一世紀地方ビジョン懇というものに携わってまいりました。

 そして、まさに市町村合併が進む中で、地方に権限と財源、税源、やはりこれがないと自立した地方はできないと、実は非常に強い思いがありました。そして、竹中大臣も、先ほど申し上げましたけれども、ビジョン懇を受けて、地方六団体の皆さんとの話し合いの中で、皆さんの中も、とにかく早く今度の臨時国会にやってほしい、そういう強い要望でありました。そして、安倍総理も、所信表明演説の中で、地方の活力なくして国の活力なし、このことを明言しています。

 そういう中で私は受けて、安倍総理のもとに、今度の臨時国会でこの法案を提出したいと。総理も実は即座に、それはやろうとすぐ言ってくれました。

 臨時国会というのは、委員御承知のとおり非常にタイトな国会で、さまざまな前回の国会からの継続もありますから、そういう中でこの推進法をやろうというのは、やはり総理も地方に対して極めて強い思い入れがある、そういう中で今度提出させた、このように理解をしていただきたいと思います。

福田(昭)委員 大臣の強い思いを聞かせていただいて少し安心いたしましたが、しかし、新聞報道も半分ぐらい本当なんですかね。

 それでは、そういう話になりましたからですが、二つ目は、この法律の一番大きなねらいである、国と地方の役割分担の見直しについてお伺いをいたします。

 国と地方の役割分担につきましては、御案内のとおり、地方自治法の第一条の二に規定されているわけでありますが、しかし、地方分権改革推進計画を立てる中でどこまで見直す考えなんでしょうか。お伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 国においては、本法第五条等で定める国と地方の役割分担の一般原則をもとに、行政の各分野において個別法令における役割分担の見直しを行い、権限移譲の推進、そして事務の義務づけ、枠づけの整理合理化、さらに関与の整理合理化等の措置を講ずることとしております。

 具体的には、地方分権改革推進委員会から、個別の法令ごとに具体的な権限移譲、法令上の義務づけ等の見直しのため具体的な指針についての勧告等がなされ、政府としては、地方分権改革計画、このことを進めていく、こういうことになっております。

福田(昭)委員 私は、これ以上国と地方の役割分担を見直していったら必ず道州制にぶつかると思います。必ずぶつかると思います。だって、市町村が千八百十になっちゃうんですね。都道府県の役割はもう本当に限定されてくるんですよね。こうなると、どうしたって、今まで合併できなかった市町村をどうするか、そして都道府県をどうするかということを考えていかなかったら、国と地方の役割分担の見直しはできないと思いますよ。ここのところをぜひ私は指摘させていただきたいと思っています。

 時間がなくなってきましたので、少しはしょって、先に質問を進めていきたいと思っていますが、次は、地方六団体が本法案に盛り込むべきとした事項について何点かお伺いしたいと思います。

 まず一つ目、地方税財源の充実強化について。

 これについては、我が党の武正委員も、また先ほどの委員も質問をいたしておりますが、ここは私も質問したいと思っているんです。先ほど大臣がお答えになりましたように、安倍総理が、地方の活力なくして国の活力はない、確かにこう言われているんですが、では、大臣、活力の源というのは一体何ですか。お伺いいたします。

菅国務大臣 自分で物事を考えて、自分で企画をして、自分で実行できる、そういう仕組みだと思います。

福田(昭)委員 活力の源はそういう抽象的なことじゃないと思うんですね。私は、活力の源はまさに税財源そのものだと思います。お金がなくちゃ活力は出てきません。だから地方がお金をどうやってつくるかだと思うんですよね。そういう意味で、まさに先ほどから申し上げてきたように、小泉内閣は地方に配るべきお金を三年間で六兆八千億も減らしたんですよ、さらにこれから減らしていったら、これは地方に活力なんか出ません。ですから、税財源の移譲をこれからどうやっていくのか。

 先ほど岡本局長も答えましたが、この二十一世紀ビジョンの中にもありましたが、国庫補助負担金を削減して、削減した部分の財源とそれから交付税を減らした分の財源、これをあわせて地方に配るという話ですけれども、この辺のところをしっかりと。一般財源総額確保じゃだめなんですよね。

 一般財源というのは、総額は幾らでも確保できるんですよ。それはそうですよ、行政需要額を減らしていけば、幾らだって総額は確保できるわけですからね。その具体例が、先ほど大臣がちょっと答えましたけれども、公立保育所の運営費、この補助金が一般財源化になった。そのときに、地方の市町村から、何でこんなに減らしてと文句が出たんですよ。そうしたら、当時の総務大臣、麻生大臣でしたが、どういうふうにやったと思いますか、御存じですか。これは簡単なんですよ。交付税を算定するときに、公立の保育所の需要についてはここへ算定したよ、これで終わりですよ。これは総額は全然ふえないんです。

 こんなごまかしでやってきたのが、実は今までの小泉内閣がやってきた三位一体の改革なんです。こんなことでは地方は自立できません。

 そこで、次に、地方交付税の見直しについてということでお伺いをいたします。

 地方六団体からは、今度は名称も変えようと。今の状況ではどうしても、地方交付税は国がくれるものだ、こういう認識でしかない、したがって、地方固有の財源だということを明確にするために、地方共有税としようというのが六団体からの提言であります。

 この地方共有税は財源の調整金にしよう、財源の豊かなところと貧しいところがありますから、その調整するお金にしようというのが一つですよね。それから、先ほど特例加算の中で話が出ましたけれども、法定率を見直して、交付税特別会計に直接入れちゃおう、国の一般会計は通さない、さらに、特例加算それから特別会計借り入れはやめる、こういう、地方六団体からは非常に前向きな提言が出ているんです。

 これぐらい実現できなかったら、これは菅大臣、後世に名前が残りませんよ。いかがですか。

菅国務大臣 後世に名前が残る残らないは別にしまして、私は、国と地方の税源の割合を一対一にしたい、このことを強い決意で、これは諮問会議でも申し上げましたし、この法案成立の暁にも、そのことについては全力で取り組んでいきたい、このことはぜひ私の決意として御理解をいただきたいというふうに思います。

 その中で、委員指摘されました地方六団体が提案する地方共有税ですか、これは、交付税特別会計への直接繰り入れ、こうしたことを内容としているということでありますけれども、この点は、総務省としても、地方共有の固有財源である地方交付税の性格を明らかにする意味からすれば望ましいと思っていることも事実であります。しかし、国全体の中でこのことを盛り込むことができなかったということを申し上げたいというふうに思います。

 しかし、今回のこの法案というのは、地方分権改革に向けた推進体制の整備、これが中心的な内容でありますので、具体的な見直しについては、今後まずこの地方分権改革推進委員会で調査審議をしていく。その中で、このような六団体からの提案について当然議論の対象になっていくだろう、このように私は考えます。

福田(昭)委員 ぜひ大臣には頑張ってほしいと思いますし、総務省の皆さんにも大臣を助けてぜひ頑張ってほしいと思います。

 御案内のとおり、大臣はもう既に起債の自由化、完全自由化を目指してスタートしているわけでありますが、お金を借りる方だけは地方独自にやれ、これは大変な話なんですよね、起債の自由化は。財政の乏しい市町村なんかじゃ簡単に借りられなくなっちゃいますよ。そうすると、やはり地方自治体が共同して、では機関を設置して発行しようか、こういう検討が始まっているわけですけれども、この起債の自由化を認めるならば、交付税もやはり共有税として地方が独自に運営するように認めるべきじゃないか、私はこう思っているんですね。

 時間がなくなってきたようですので返事は結構ですけれども、一方で、借金する方だけは地方が勝手にやれと言っておいて財源は認めないというんじゃ、これはとてもとても地方は自立できません。ですから、そういうことをやはり検討してほしいなというふうに思います。

 時間が来ましたので、最後にちょこっとだけお話しして終わりにしたいと思います。

 私は、この地方分権改革推進法には出てきておりませんが、最近問題になっております地方の首長の多選禁止、これはぜひ検討すべきだと思います。私は、そういう意味では、内閣総理大臣も任期制にすべきだ、こう思っているんですが、やはり憲法違反の話がございますけれども、しかし、これは法律で決めれば憲法違反じゃなくなるんです。

 一番いいのはアメリカですよ。アメリカの大統領がなぜ二期八年制になったか。これは、ワシントン大統領が偉かったんですね。大変人望のある方だったそうで、三期目出ろという声がいっぱいあったそうです。しかし、ワシントン大統領が、だめだ、権力は腐敗する、だから絶対二期でやめるということで、ワシントン大統領の決断でアメリカの大統領は二期八年になったそうであります。こうしたことをやはり我が国でも参考にするべきだと思います。

佐藤委員長 時間が参りましたので簡潔にお願いします。

福田(昭)委員 そして、最後に申し上げますが、この法案は、やはり税財源の移譲は大臣の……(発言する者あり)静かにしてください。大臣の先ほどの決意というものがありましたので、税財源の確保については、私は、しっかりやるためには法案の修正も必要かなと思っていますので、ぜひとも御検討いただきたい、そんなお話をして終わりにさせていただきます。

 大変ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、前回、税源移譲の問題について質問いたしましたが、移譲という言葉と配分という言葉、ここはきっちりしておかなきゃいけないわけですが、税源移譲は税源配分の見直しによる手法であって、税源移譲は税源配分の概念の中に含まれるというのが菅大臣の答弁なんですよね。

 それでは、税源配分の見直しの結果、国と地方の税収比率、割合が五・六対四・四というのが、この割合が一対一に近づいていくことになるのかどうか、これを最初に伺います。

菅国務大臣 地方の自由度を拡大して、自己責任の徹底を図ることで、魅力ある地方、自律する地方、こうしたものをつくるには、地方分権を支える地方税というものを充実させることが極めて重要であることは私、今も申し上げております。

 今回の分権改革を通じて、税源移譲を含む国と地方の税源配分の見直しを行って、国と地方の税収比一対一というものを目指して、地方税のさらなる充実を図っていきたい、こう思います。

吉井委員 私は、増税なしの立場で税源の移譲ということを聞いているわけなんですよね。つまり、税源配分の見直しということになってきますと、仮に増税があったとき、増税があった後に国と地方の税源配分を見直すということになってきた場合に、そういうこともあり得るわけなんですね、そうすると、増税となりますと、地方税収の総額はふえた、しかし、国と地方の税収総額に占める割合は、これは一対一になっていくのか。逆に、国と地方の税収総額に占める割合で見ると地方は減ったということも生じてくることがあり得るわけなんですね。こういうことにはならないのかどうか、伺います。

菅国務大臣 今回の地方分権改革、税制の抜本改革を通じて、国と地方の税源配分の見直しを行って一対一にしたいということで私は今申し上げました。

 そして、今後の税制改革、経済動向によっては、国税、地方税の税収というのは当然変動するものであるというふうに思っています。仮に、委員が御指摘のとおり税収総額が拡大する場合においても、税源移譲を含む税源配分の見直しによって、国と地方の税収比というものは一対一を目指している、このことには変わりはありません。

吉井委員 税源を移譲することによって、配分の方では、これは減るということはない、ないようにするということでいいんですね。確認しておきます。

菅国務大臣 結果として一対一になるようにするということですから、そういうことです。

吉井委員 次に、事務配分の問題について質問します。

 機関委任事務制度が廃止され、自治体の行う事務というのは法定受託事務と自治事務に振り分けられたわけですが、法定受託事務はふやさない、こういう方針であったと思うんですが、この点は間違いありませんね。

菅国務大臣 地方分権一括法の附則第二百五十条においては、いわゆる第一号法定受託事務については、できる限り新たに設けることのないようにすべきである旨が規定をされております。

 あわせて、第一号法定受託事務とされているものについて、地方分権を推進する観点から検討を加えて、適宜適切な見直しを行うものともされております。

 今後とも、法定受託事務の創設を抑制するとともに、既存のものについては不断の見直しを行っていく必要があるというふうに考えています。

吉井委員 ちょうど九九年五月二十五日に衆議院の行政改革に関する特別委員会で、当時の野田自治大臣、野田さんの答弁の中で、「基本的に法定受託事務というものもできるだけ制限をしていかなければならぬというのは、これは当然のことでございまして、極力、国から地方に対する関与の仕方というのは、より必要最小限のものにしていかなければならぬというのは、このとおりでございます。」こういう答弁があって、五月三十一日の委員会では、「法定受託事務の創設は将来にわたって厳に抑制されるべきものであると考えております。」とありました。

 当時、小渕総理の時代ですが、小渕さんも、地方分権推進の理念や今日に至る一連の経緯にかんがみるとき、法定受託事務の創設は将来にわたり厳に抑制されるべきもの、法定受託事務が機関委任事務の果たしてきた役割を踏襲することは是といたしましても、これが従来拡大してきたような経過にかんがみれば、今後、こうした法定受託事務につきましては、まさに将来にわたって厳に抑制し、慎んでまいるべきものと考えておりますと。

 だから、この法定受託事務はふやさない、抑制するというのがもう七年前の政府答弁だったわけですね。

 そこで伺うんですが、地方分権一括法の施行時の二〇〇〇年四月の時点の法定受託事務関係の法律と政令が幾つあったのか、事務の数が幾つだったのか、現在その数は幾つになっているのか、数字でお答えいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 法定受託事務のうち、いわゆる一号事務、国と都道府県の関係における法定受託事務であって、かつ法律・政令ベースということでお聞きいただきたいんですが、平成十二年四月一日付では三百二十七ございました。それが本年一月一日現在では三百三十六ということで、九ふえているということになります。

吉井委員 今のお話でふえているということなんですが、実際には、項目で数えればもっと多いですね。多くなっていますね。その後の状況というのは、当時の総理、自治大臣の言っていたことと違うと思うんですね。大臣、どうですか。今の数でもふえているんですけれども、本当はもっとふえていますね。

藤井政府参考人 当然、私ども、法定受託事務については、新設に当たってはチェックをして抑制することとしております。

 法定受託事務の要件というのは決まっておりまして、これに基づいてきっちりチェックした結果でございますが、例えば平成十二年には特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律とか、あるいは、平成十三年には高齢者の居住の安定確保に関する法律とか、それぞれ非常に国民の安全、安心にかかわるような重要な案件であり、また法定受託事務と認めるとしても問題ないというようなものについて認めてきた、そういう結果であるということを御理解いただきたいと思います。

吉井委員 二〇〇三年の二月七日に地方分権改革推進会議事務局の方で、「新たな法定受託事務及び自治事務に係る特別の関与等」という資料をまとめられて、総括表というのを載せていますね。法定受託事務については、法律にかかわるもので百二十項目、政令にかかわるもので二十二項目、だから百四十二項目、これが、二〇〇一年の四月一日から二〇〇二年七月三十一日の一年四カ月の間にこれだけふえている、こういうふうに当時きちっと報告していらっしゃるわけですね。

 だから、その後の数字をきちっと私はつかんでおられると思うんですが、せっかく、三百二十七が三百三十六にふえたとかいう話ですが、実際にはもっとふえていると思うんですが、どうなんですか。

藤井政府参考人 お答えしますが、事項数についての数字は私ども手元には持っておりませんで、あくまで法令の本数ベースの数字ということで先ほど御報告を申し上げました。

吉井委員 いや、持っていないって、あれでしょう。二〇〇三年度でいえば、法律関係で五本、施行令関係二本で三十九項目の法定受託事務がふえている、減った方は一本の施行令で十八項目、だから、差し引きすれば二十一項目法定受託事務がふえているというのが二〇〇三年度でしょう。二〇〇四年度では、四本の法律と一本の施行令で二十六項目ふえて、減ったものがない。

 だから、二〇〇三年、二〇〇四年を見ただけでもそういうふうにふえているわけですから、項目でいえば、新たに、二〇〇〇年度からいえば、大体二百項目超えるぐらい法定受託事務というのはふえているということになってくるんじゃないですか。

藤井政府参考人 先ほど申し上げたのは、私どもの地方自治法の別表ベースでの数字で御説明しているところですが、委員の御指摘の数字というのは私どもの手元にありませんので、ちょっとその数字についての見解は述べかねるというところでございます。

吉井委員 ないというのは、私、不思議なんですね。大体、きちんとそういう法定受託事務が幾らあるのかをつかむのは、これは総務省でつかんでいるわけでしょう。

 一本の法律や政令で幾つもの法定受託事務がふえているわけですね。だから、例えば水産業協同組合法では、法律は一本なんですが、新たにこれで法定受託事務とされている項目は十八項目あるわけですね。使用済自動車の再資源化等に関する法律、これは一本の法律ですが、二十六項目あるわけですね。しかも、法律改正でふえる数よりも政令改正でふえる方が項目として多いわけでしょう。

 だから、法定受託事務についてやはりどうなっているのかということをきちんとつかまないことには、一括法のときの話も、大体あれは一体何だったのかというようになってきますね。

 政府参考人にもう一遍この辺のところは伺ってから、次に大臣。

藤井政府参考人 お答えします。

 私どもも、法定受託事務の新設についてのチェックに当たっては、個々の事務についてそれぞれ、メルクマールに適合しているかどうかということをもとにチェックしているところでございます。

 ただ、委員御指摘のような数字については、これは実際なかなか、事務というのはそれぞれ多様でございまして、いろいろな整理の仕方があるということで、とりあえずはそういう形での数字の整理としてはしていないということでございます。あくまで法令ベースの数字として私どもとしては把握しているというふうに御理解いただきたいと思います。

吉井委員 何か、都合が悪くなると数字の整理をやめちゃったのかなという感じがしますけれどもね。

 最初に御紹介したように、野田自治大臣にしても、小渕総理にしても、きちんと答弁してこられたわけですよ。それで始まっているはずなのに、ふたをあけてみたら随分話は違うんですね。実際には、まずチェックしていない、きちんとカウントしていない。少なくとも、数えられる限りでカウントしていったら、最初、二〇〇三年二月七日にはカウントされたんですよ、地方分権改革推進会議事務局の方で。このときには、法律関係と政令関係で合わせて百四十二項目だった。これが新たに一年四カ月でふえているわけですね。

 では、この法定受託事務は抑制するという話とか、けさほどの参考人質疑のときにもこのことを私取り上げましたけれども、法律や政令関係に係る法定受託事務については処理基準だとか、自治事務については技術的助言という通達、通知等によって、実際には今までと同じように、地方自治体は実質的に機関委任事務、そういう受けとめ方をされている中で、とてもじゃないが、仕事の面でも国の仕事がどんどんどんどんふえていっている。

 大臣、この事務配分の問題についてはこれをどう改善していくのか、ここのところを考えなきゃいけないんじゃないですか。大臣としてはどう改善するお考えなのか伺います。

菅国務大臣 法定受託事務については、法令の立案作業において地方自治法上規定されているとともに、平成十年に閣議決定をされた地方分権推進計画で規定をされているメルクマールに沿って、これまでと同様その新設を抑制していく、そして、既存のものについては不断の見直しを行う。このことは、先ほど答弁したとおり極めて大事なことであるというふうに思っております。

 また、法定受託事務については、当該事務を規定する個別の法律またはその委任を受けた政令の中で法定受託事務であることが明らかにされているところ、さらに、これに加えて、一覧性を確保し、国民にわかりやすく示す観点から、個別の法律に定める法定受託事務については地方自治法の別表に、個別の政令に定める法定受託事務については地方自治法施行令の別表に、それぞれ網羅的に掲げているところであります。

 これによって、地方公共団体関係者や住民にとってその現況と推移の把握が十分に可能になる、そのように実は思っておるわけでありますけれども、しかし、基本的には、冒頭申し上げたように、まず抑制をするというのは当然のことであって、さらに新しい法律の中で、安全だとか、そういう中でこうしたことが必要な部分については、できるだけ最小限に抑えるというのが当然のことだというふうに思います。

吉井委員 当時の野田自治大臣の方から、事務区分の見直しは不断に行われるべきもので、法定受託事務の見直しも常にチェックしていかなければならない、こういう答弁がありました。これは九九年六月十日の衆議院の行革特です。

 どの事務が法定受託事務であるかは地方自治法の別表に載っているという今のお話ですけれども、載ってはいるんですが、これは見ただけでわからないんですね。法定受託事務が一体幾つあるのか、ふえているのか減っているのか、これは国民にはわかりません。それで、実は先日も、うちの方で、資料が欲しいと求めたんですよ。そうしたら、法律名だけが書かれたものが出てきたんです。法律の名前だけ幾ら見ても、要するに法定受託事務が何項目ふえたのか減ったのかさっぱりわからないんです。

 効果的なチェックを行うためにはチェック体制の整備がまず必要だと思うんですね。その体制整備と、法定受託事務が幾つあるのか、国民にわかるような書き方に改める、そういうことを大臣としてやはり取り組んでもらう必要があると思うんですね。大臣に伺います。

菅国務大臣 法定受託事務を新設する場合は、その根拠となる法令の立案作業の中で、その所管省庁等において、定義規定に沿って、その必要性についての検討がなされる、ここもやはり厳しくチェックをしていきたいと思います。

 いずれにしても、法定受託事務の新設を抑制するとともに、既存のものについては不断の見直しを行っていく、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、今般の地方分権改革推進委員会においても、国と地方の役割分担の見直しの中でそうした検討が当然行われるだろう、このように考えております。

吉井委員 省庁でチェックする、これは当然だと思うんです。

 同時に、やはり総務省として、チェック体制なりチェックする機構をきちっとつくって、それで不断の見直しをやるというふうにしないと進まないと思うのです。

 最後に、一言でいいですから、そういうチェック体制は検討していかれますね。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、新たな事務の新設については、その立案の中で厳しく定義等の見直しを行う。私どもも今行っていますけれども、さらにこのチェックをきちっとした形で努めていきたいと思います。

吉井委員 時間が参りました。終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 それでは、早速入りますが、まず、地方分権と交付税制度の関係について質問をいたします。

 昨年七月閣議決定されました経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六では、「地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、簡素な新しい基準による交付税の算定を行うなど見直しを図る。」こう述べております。

 つまり、新たな交付税制度を導入するかのような指摘と私は受けとめるわけでありますが、ここで言う「簡素な新しい基準による交付税の算定」というのは、竹中前大臣のもとで、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会、そこで言われました新型交付税と同じものなのかどうなのか、まずこの点について確認いたします。

菅国務大臣 人口と面積を基本として簡素な算定を行う新型交付税については、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会における議論を踏まえて、竹中前大臣が経済財政諮問会議の場において導入を提案したものであります。

 そして、この提案を踏まえて、基本方針二〇〇六においては、「簡素な新しい基準による交付税の算定を行うなど見直しを図る。」とされたところであります。委員から今御指摘のありました、簡素な新しい基準による算定とは新型交付税と同じ意味である、このように考えております。

重野委員 これに関連いたしまして、総務省は、「地方税財政改革について」と題する事務連絡文書でありますが、その文書におきまして、「国の基準付けの廃止・縮小に対応して複雑でわかりにくいとされる基準財政需要額の算定方法について、人口と面積を基本とした簡素なものとする新型交付税を導入する」というふうにいたしまして、これについて「平成十九年度から導入し、三年間で五兆円規模を目指す」、こういうふうに具体的に述べております。

 そこで、確認でありますが、この文書でも明らかにしておりますが、来年度いわゆる新型交付税を導入するということを言っているのかどうなのか、確認いたします。

菅国務大臣 人口と面積を基本として簡素な算定を行う新型交付税は、国の基準づけがない、あるいは弱い行政分野を中心に十九年度から導入していきたいと思います。

 現在、この導入に当たって、地方公共団体と意見交換を行って制度設計を行っているところであります。次期通常国会に新型交付税の導入を盛り込んだ地方交付税法改正というものを提出する予定であります。

重野委員 そこで、地方分権改革推進法案との関係について聞きますが、本案第六条「財政上の措置の在り方の検討」においては、「国の負担金、補助金等の支出金、地方交付税、国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置の在り方について検討を行う」、このようにされております。少なくとも、地方交付税も改革推進委員会の検討すべき課題とされているわけですね。そのときに、交付税の基準財政需要額の算定方法について別の方法を先行導入する、そのことは妥当なことなのかどうなのかという疑問を持ちます。それも含めて改革推進委員会で検討すべきものではないのか。

 大臣はこの点についてどのようにお考えか。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたように、新型交付税は、現在でも、国の基準づけがない、あるいは弱い行政分野が少なくとも一割程度あることを踏まえて、抜本的な算定の簡素化を図り交付税の予見可能性を高める観点から、十九年度より導入をしたいというふうに思っています。

 さらに、三年間で制定する地方分権一括法、これによっての国の関与の縮小とあわせて拡大をしていきたいというふうに思います。

 このように、新型交付税は、地方分権一括法と確かに密接に関連するものでありますけれども、しかし、十九年度から導入することについては問題はないというふうに認識をいたしております。

重野委員 初年度約一兆五千億、三年間で五兆円、こういう話でありますが、その言うところの新型交付税のいわゆる定義づけをどうするか。いわゆる骨太方針では「簡素な新しい基準」という文言がございますけれども、というだけで、何をもって新型と言うのか、その具体的な定義となりますと明確ではないと私は思います。

 一般に交付税がわかりにくいとされていることは事実です。ただ、具体的に何をもってわかりにくいというのか、こういう点については私もよくわからないのでありますが、新たに導入すると言われるその税について、総務省として、その定義について具体的にどのように定義づけするのか、その点をお聞かせください。

岡本政府参考人 新型交付税を導入する際の一つの議論は、まさに今委員御指摘のように、地方交付税の算定方法でわかりにくい部分があるという御指摘がベースでございます。そういう意味で、地方行財政の各分野、福祉でございますとか衛生でございますとか、そういう部分におきます細かい規制、関与といったものに対応して基準財政需要額の算定といったものは今組み立てられる設計になっております。

 今回導入しようとしますいわゆる新型交付税と言っているものは、現在、そういう意味で関与の少ない、ない部分につきまして、具体的には投資的経費の部分を中心といたしまして、そういう段階におきます細かな算定といったもの、基本的には人口と面積を基礎の数値としまして、これにより大まかな計算ができる形に変えていこうというものでございまして、そういう意味での新型交付税というのは、従来の法律規制等によって細かく組み立てられていた算定とは異なるという意味で、新型交付税というふうにいわば呼んでいるというものでございます。

重野委員 今の説明を私なりに理解しますと、今、交付税というと、補正係数、何でそういう数字が出るんですかというふうにいつも、そんなのがもうたくさんありますし、複雑であります。あるいは、単位費用にしても大変多いんですね、こんな厚い本を見ぬと出てこぬみたいな。そういう意味では、現行交付税算定のわかりにくさというものを改善していく、そういうことについて私はそれなりに理解をするわけであります。

 付言しますと、この税について、だれの目で見てもわかりやすい、そういう意味では、より簡素化されたものでなきゃならぬというふうに私も思います。

 そこで、都道府県、市町村とも、これまでの投資的経費について、これを人口と土地利用形態のコスト差を反映した面積に基づいて算定する、そのことによって、言うところの簡素化が、ああ簡素になったな、わかりやすくなったと、どこまでそれが実現することになるのか、その点についてもお聞かせいただきたい。

岡本政府参考人 新型交付税の具体の算定方法につきましては、現在、地方公共団体と意見を交換しながら具体的な案を策定しているという段階でございます。

 したがって、今後変更が生ずる可能性といいますか、まだ確定的な案を策定しているということではございませんが、その途中過程として計算しているものといたしましては、新型交付税の導入によりまして、現在、都道府県と市町村の基準財政需要額の算定項目として合わせて約九十五程度の算定項目がございますが、これをおおむね六十八程度、約三割ぐらい減少するなどの簡素化ができる、これに伴いまして補正の数も減っていく、減少になるのではないかというふうに考えております。

重野委員 この新型交付税と称する需要額算定の法的妥当性、その点について聞いておきたいと思うんですが、この需要算定は、現行交付税制度における需要額算定といかなる関係にあるのかという点について、どういうふうに考えていますか。

岡本政府参考人 新型交付税におきましても、現行の基準財政需要額で算定をいたしております地方団体におきます標準的な財政需要を算定するという基本的な考え方に変更があるものではございません。

 人口と面積を基本として算定し、先ほども御答弁させていただきましたが、自然的あるいは社会的な条件によって、離島でございますとか寒冷地といったようなもので、条件的な不利があるものにつきましては、地域振興費といったような費目をつくりまして、そういうものも算定をしていく。そういうことによって、地方団体の現実の具体の財政運営に支障が生じないように設計をしていくということで、現在、地方公共団体とそれぞれ御相談をしながら制度の設計をさせていただいているというものでございまして、基本的な考え方は変わっておりません。

重野委員 そこで、これによる試算をした場合どうなるのかという点について聞いておきたいと思うんです。

 今年度交付税の需要額算定と比較した場合に、都道府県の需要額はどのように変動するのか。その変動幅について、数字があれば具体的に示していただきたい。

岡本政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、現在、地方公共団体と、現段階におきます途中過程の案をお互いに議論しながら、成案を得るべく調整をしているという段階でございます。その段階におきましても、基本的考え方は、先ほど来申し上げておりますように、地方団体の現実の財政運営に支障が生じないよう変動額を最小限にとどめるということでございます。

 そういう過程のものというふうに御理解をいただいた上でお聞き取りいただきますが、十八年度の算定に用いました数値に基づきまして現段階の検討中のものを見ますと、都道府県では最大でもおおむねプラスマイナス十億円以内の変動になるということを目指しながら、今議論をさせていただいているという状況でございます。

重野委員 わかりました。

 十億と一言に言いますが、地方団体から見れば、これは決して小さな額ではないと私は認識いたしております。

 そこで、財政力の強い弱いとか、中ぐらいとか、こういうふうな分け方がされていると思うのでありますが、その場合、財政力の強いところ、中ぐらいのところ、弱いところ、そういうふうな分類をしたときに、それぞれにどのような影響を与えるのか。

 きのう私、通告のときに、上位五団体、中位五団体、下位五団体、それぞれに具体的な数字で示せと申しました。なかなか具体的な数字を今示すという材料がないみたいな話だったので、ああ、そうかと言ったんですが、そこのところを、言える部分をひとつ言ってもらいたい。そして、どういう傾向にあるのか、そのことも示していただきたい。

岡本政府参考人 先ほど申し上げましたように、現在、一定の途中過程の案につきまして、地方団体と実務担当者の全国会議を開催したり、各ブロックごとに意見交換をしているという段階にございます。

 したがいまして、具体の制度設計案といったものについて、現段階でこれだということが確定しているわけではございませんので、今、個別の地方団体の変動額というのをお示しし得る状況には至っていないということで、今委員御指摘のように、財政力の上位、中位、下位、そういう分類でもそういう変動額を示す状況にはないということを御理解いただきたいと思います。

重野委員 時間も来たようであります。

 これを最後にいたしますが、今まで新型交付税について総務省の説明をお伺いいたしました。それだけで、よしわかったというふうに納得し得るものではありませんが、問題は、受け皿となる地方自治体にとって、結果として、義務的支出にこたえる、あるいは、それに係る財政需要にこの新制度導入が大きな影響を及ぼす。これは、結果として、交付税総額の抑制ということになり、交付税制度の基本を揺るがすことになりかねない、そうした点をやはり十分に考慮してこの問題に当たらなければならないのではないか。最後に、その点について大臣の見解を聞いて、質問を終わります。

菅国務大臣 新型交付税は、今説明がありましたように、交付税の算定面における改革であって、交付税総額や交付税の基本的な機能に直接影響を与えるものではない、このように思っています。

 交付税の総額は、地方財政計画において、歳出歳入水準の設定を通じて行われるものであるというふうに考えています。また、地域間に大きな税源偏在がある中で、地域間の財政力の格差を調整し、全国どのような地域であっても一定の水準の行政を確保することが極めて必要であり、その財源を保障する必要があるというふうに思っています。

 このため、交付税の基本的な機能であります財源保障機能、財源調整機能、このことについてはしっかりと堅持をしていきたい、こう思います。

重野委員 終わります。

佐藤委員長 次回は、来る十六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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