衆議院

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第7号 平成18年11月28日(火曜日)

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平成十八年十一月二十八日(火曜日)

    午前八時四十五分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 谷  公一君

   理事 谷畑  孝君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    今井  宏君

      岡部 英明君    鍵田忠兵衛君

      川崎 二郎君    木挽  司君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    土屋 正忠君

      土井  亨君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 康夫君    福田 良彦君

      武藤 容治君    渡部  篤君

      安住  淳君    逢坂 誠二君

      後藤  斎君    田嶋  要君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      森本 哲生君    漆原 良夫君

      谷口 和史君    吉井 英勝君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣         菅  義偉君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  高橋千鶴子君     吉井 英勝君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     渡部  篤君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     武藤 容治君

  江田 康幸君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 容治君     萩原 誠司君

  漆原 良夫君     江田 康幸君

    ―――――――――――――

十一月二十一日

 独立行政法人の組織等に関する予備的調査要請書(武正公一君外五十四名提出、平成十八年衆予調第三号)

は本委員会に送付された。

    ―――――――――――――

十一月十七日

 檜原郵便局の外務業務を廃止し、あきる野局に統合する計画の白紙撤回に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四五六号)

 同(亀井静香君紹介)(第四五七号)

 同(辻元清美君紹介)(第四五八号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第四九一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第四九二号)

 同(日森文尋君紹介)(第四九三号)

 同(滝実君紹介)(第五四〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五七五号)

同月二十四日

 檜原郵便局の外務業務を廃止し、あきる野局に統合する計画の白紙撤回に関する請願(阿部知子君紹介)(第六三一号)

 ゆうメイトの雇用を守り、労働条件の改善を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七〇一号)

 同(石井郁子君紹介)(第七〇二号)

 同(笠井亮君紹介)(第七〇三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七〇四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七〇五号)

 同(志位和夫君紹介)(第七〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七〇八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七〇九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方分権改革推進法案(内閣提出第九号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方分権改革推進法案を議題といたします。

 この際、本案審査のため、去る十五日、秋田県及び静岡県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。

 まず、第一班の秋田県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、理事谷公一君、谷畑孝君、武正公一君、委員井澤京子君、鍵田忠兵衛君、土井亨君、福田昭夫君、森本哲生君、高橋千鶴子君及び私、佐藤勉の十名であります。

 会議は、去る十五日午後一時より秋田市内の秋田県市町村会館において開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の本法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、秋田県知事寺田典城君、秋田市長佐竹敬久君、井川町長齋藤正寧君及び秋田商工会議所名誉会頭辻兵吉君の四名でありました。

 その陳述内容について簡単に申し上げますと、分権改革を推進することにより国も行政コストの削減を図る必要があること、国から地方への税源移譲をさらに推進する必要があること、国・都道府県・市町村の三重行政を是正する必要があること、地方公共団体間の税財源の偏在に対処するため地方交付税の確保等が必要であること、強制的な市町村合併は行わないこと、地方分権を進めるに当たって国によるインフラ整備及びジェトロに対する財政支援の充実を図る必要があることなどであります。

 次いで、各委員から陳述者に対し、地方公共団体のチェック機能を果たす新たな仕組みの必要性、国と地方の役割分担を明確化する必要性、地方公共団体側から見た構造改革特区制度の問題点、税財源の移譲が本法案に明記されていないことに係る所見、三位一体の改革が地方公共団体の財政に及ぼした影響などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、第二班林幹雄君。

林(幹)委員 静岡県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、理事岡本芳郎君、寺田学君、谷口隆義君、委員片山さつき君、実川幸夫君、萩生田光一君、萩原誠司君、逢坂誠二君、重野安正君及び私、林幹雄の十名であります。

 会議は、去る十五日午後一時より浜松市内のオークラアクトシティホテル浜松において開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の本法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、静岡県知事石川嘉延君、浜松市長北脇保之君、函南町長芹澤伸行君及び浜松商工会議所会頭中山正邦君の四名でありました。

 その陳述内容について簡単に申し上げますと、国、地方の代表者が協議する場として地方行財政会議を設置すべきであること、地方財政改革の推進に当たって中期的見通しを地方公共団体に明示すべきであること、地方分権改革推進委員会の委員の人選に当たっては地方の実情を十分にわきまえた者を選ぶべきであること、中山間地域を取り込んだ新しいタイプの政令市にも対応した政令市制度とすべきであること、第二期の三位一体の改革において補助金制度の改革を徹底して行うべきであること、分権改革に伴う業務拡大に地方公共団体が対応することができるよう十分な税源移譲を行うべきであること、民間でできないことを官に任せるという観点により国、地方及び民間の役割分担を明確化すべきであることなどであります。

 次いで、各委員から陳述者に対し、行政内容について、地方公共団体ごとにその特色に応じた多様な選択を可能とするような柔軟な分権推進のあり方、分権改革により権限が増大した地方公共団体の首長や事務部局に対するチェック体制のあり方、国と地方あるいは都道府県と市町村との間の業務の重複を調整する際の考え方、政令市とその周辺の市町村との協調及びその際の都道府県との協力のあり方、小規模団体が地方分権の受け皿としてふさわしい能力を身につける方策、地方分権一括法制定後の分権改革の住民との関係における成果などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。議事録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

佐藤委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長藤井昭夫君、自治行政局選挙部長久元喜造君、自治財政局長岡本保君及び自治税務局長河野栄君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 おはようございます。民主党の西村智奈美でございます。

 菅大臣、朝から御苦労さまです。どうぞよろしくお願いいたします。二十八分という私にとっても初めての時間枠でございまして、限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 私は地方議会に四年おりました。菅大臣も地方議会の御経験がおありだということで、この間、国と地方との関係については、いわゆる地域の立場からいろいろなことを大臣も見られてきたのではないかと思っています。

 私は、地方自治あるいはそれを確立するための地方分権というのは、本当の意味でのこの国の形を変える大きな政策だと思っておりまして、中央集権が余りに長く続いてきたものですから、当然それは戦後復興を図る上で必要な、経なければいけないプロセスだったとは思いますけれども、やはりここに来て、住民ニーズも多様化しておりますし、また世界全体が画一的な価値というものではなくて多様性というものを追求するようになってきた。そういう中で、日本も地方自治を覚悟を持って追求していかなければならない時代に入っているんだろうというふうに考えております。

 私の基本認識は大体こういう感じなんですけれども、大臣の地方自治に対する基本的なお考え、これをまずお聞かせいただけますでしょうか。

菅国務大臣 私の地方自治に対しての認識は委員と全く同じであります。やはり地方が自分で自由に物事を決めて、そして実行に移していく、そのかわり責任もとってもらう、そういう仕組みをぜひつくっていきたいと思いますし、また歴史的にも、中央集権体制がすべてでないという観点から、私は、やはり国の形のあり方というものを決めていく時期がもう差し迫ってきている、そういうふうに思っておりますので、そういう中で、今回、地方分権改革推進法案、それを出させていただいた、こういうふうに考えております。

西村(智)委員 菅大臣がそういうお考えで、私と全く同じ考えであるとおっしゃいましたら、そちらの方から全く同じじゃ困るという不規則発言も聞かれたところでありますけれども、私はやはりそのとおりだと思うんですね。ですので、内閣全体として、この課題については一致して取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。

 しかし、ほかの委員会などで議論させていただいておりますと、内閣の中で、いわゆる地方の力、これを信じることについていささか懐疑的な方がおられるのではないかというふうに思って、きょうはまずその点について質問させていただきたいと思います。

 少し確認から入らせていただきますけれども、教育委員会制度について伺いたいと思います。

 私、この間、教育基本法に関する特別委員会で何回か質問してまいりました。民主党も、民主党の提案をさせていただいて、この中で、やはり教育行政のあり方を変えないと、今の高校のみならず義務教育課程での未履修問題、あるいはいじめが隠ぺいされるような問題、あるいはタウンミーティングでのやらせ発言等々、いろいろありましたけれども、そういうことを解決するためにやはり教育行政のあり方を変えていかなくちゃいけないんじゃないか、そういうふうに提案をさせていただいたわけなんです。

 地方制度調査会の方でも、いわゆる行政委員会制度については、特に教育委員会それから農業委員会について答申が出されております。教育委員会制度については、そもそも委員会制度そのものを選択制にするということについて答申がなされているわけでありますけれども、これを受けて、大臣はどのような考えでいらっしゃいますか。

菅国務大臣 委員御指摘のとおり、二十八次の地方制度調査会の答申において、地方の自主性そしてまた自律性を拡大する観点から、必置規定を見直して設置の選択制を導入することが適当である、実はこういう答申を受けております。当省としても、文部科学省にこのことの内容をお伝えし、検討を依頼したところであります。

 さらに、去る七月に閣議決定をされた骨太の二〇〇六、これにおいても、教育委員会制度については、抜本的な改革を行うこと、そして早急に結論を得ること、こういうことにもなっております。

 総務省としては、教育委員会を含めた地方公共団体のことについては、できる限り地方が責任と自由を持って決めて行うことがいいだろうというふうに考えております。地方の声というものを真摯に私ども受けとめながら、これからも進めていきたい、このように考えております。

西村(智)委員 地方に一定の権限を持ってもらう、責任を負ってもらう、こういうふうな御答弁だったと思うんですけれども、そのときの地方が何を指すかというのもまた問題になるわけなんですね。

 私たち民主党は、教育委員会制度を改めて、住民の参画がもっと可能なように、いわゆるオンブズパーソン的な機関を設置したらどうか、現場に一番近いことはそのオンブズパーソンのところでしっかりとチェックをしてもらう、しかし、教育委員会制度はこの際廃止であるというような大胆な提案もさせていただいたところなんです。

 そういう質疑の中で、実は伊吹文部科学大臣が、首長にいろいろな権限をおろすことは、特定のイズムによって支配されるというような御趣旨の発言があったわけなんです。

 具体的にどういうことかと申しますと、これは十月三十日の鳩山委員に対する答弁でありますけれども、「特定の政党によって地方の首長は選ばれます。ですから、首長が特定のイズムを持って政治を管理するということ、」こういうふうに続くわけなんです。特定の政党によって地方の首長が選ばれるということ、この答弁もいかがなものかなというふうに思うわけなんですけれども、この御発言について総務大臣はどのような見解を持っておられますでしょうか。

 私は、やはり地方自治、地方の選挙というのは、住民に一番身近なところで暮らしに直結したいろいろな政策を決める、そういう首長を選ぶプロセスというのは本当に民主主義の原点であるというふうに思うんですけれども、この私たちの基本認識からいたしますと、この特定のイズムという発言はいささか理解、納得が得られないというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 教育委員会の委員というのは、地方公共団体の長が、教育における中立性というものを確保する中で、年齢だとか性別だとか職業だとかそういうバランスをとりながら、議会の同意をもって任命する、そういうことに実はなっているところであります。

 このため教育委員会は、いやしくもそのような政治的中立性に疑念を抱かせるような、そういう人を選ぶことがないように、やはり私は地方公共団体の現場において適正に行われるべきであると思っていますし、行われている、こういうふうに思います。

西村(智)委員 答えてもらっていないような気がするんですけれども、そこはやはり大臣としては答弁されにくいことなのかなというふうに思います。

 伊吹大臣はこういうふうにも答弁されているんです。「首長は選挙で選ばれておりますから、特定政党が支配している町もあります。」仮にそうだといたしましょう。仮にそうだといたしますと、では、国はどうなのかということになるわけですね。

 国の長、これは首相、総理になるわけですけれども、議院内閣制ですから国民が公選制で直接総理を選んでいるわけではありませんが、間接的に、一人一人の有権者の投票によって選ばれた国会議員、それによって総理が選ばれているわけですね。そういたしますと、やはりこれは間接的ではありますけれども特定政党が支配するということになるのではないか。

 菅大臣、どうでしょうか。首長は選挙で選ばれておりますから、特定政党が支配するということになるんでしょうか。

菅国務大臣 今、伊吹大臣の答弁を私は見ていますけれども、先ほど委員言われたとおりに、長所と短所、両方があるということもつけ加えていますから、いろいろなことを想定していると思います。

西村(智)委員 長所と短所とそれぞれいろいろあるんですけれども、私は、やはりいろいろな、住民が自分の投票行為による結果に対して責任を持つ、それも含めての住民の選択だというふうに思っておりますので、やはりこういった地方自治に対する信頼を疑うような、こういう発言はぜひ内閣の中でないようにしていただきたい、このように強く要望したいと思っております。

 これはまた伊吹大臣に機会がありましたらぜひ質問させていただきたいと思っておりますけれども、ぜひ機会がありましたら菅大臣の方からもよろしくお伝えいただければ幸いでございます。

 ところで、教育委員会制度なんですけれども、やはりこれは見直しが必要だ、本当に多くの方が共通認識を持っておられるわけでありますけれども、では、見直すときにどの方向で見直すか。今、政府の方では教育再生会議を中心にこの教育委員会制度の見直しを議論するということのようでありますけれども、どうも仄聞するところ、いわゆる国の関与を強めるという方向での策が検討されているように思います。

 私たちは、そうではなくて、やはりもっと学校は開かれたところであるべきだ、そのためにも教育委員会は地域住民の参画がもっと確保されるべきだ、こういうふうに考えるんですけれども、大臣御自身はどちらの方向で教育委員会制度が改革されるのが望ましいとお考えですか。

菅国務大臣 この教育委員会制度につきましては、国の関与を見直し、地方分権を推進する観点から、平成十一年の地方分権一括法によって、教育長の文部科学大臣による任命承認制度の廃止等の改革が行われてきています。

 総務省としては、先ほど申し上げましたけれども、教育委員会を含めた地方公共団体の運営のあり方についてはできる限り地方公共団体が判断すべきものである、こういうふうに考えていますし、その中の一つとしても、地域住民の意向が反映する、それもやはり私は重要なことである、こういうふうに考えています。

西村(智)委員 地域に開かれた教育委員会制度であることが望ましいという御答弁だと伺いました。ありがとうございます。

 それでは、時間が半分になりましたので、次に、法案について何点か伺っていきたいと思います。

 今回の法案、もう既に何人かの委員の方が質問されまして、やや論点は尽くされたような感もありますけれども、しかし、私としては、さらに何点か伺わなければいけないところがある。

 その第一は、まず、地方六団体から出されていた要望についてであります。

 新地方分権構想検討委員会、検討委員会と略させていただきますけれども、こちらの報告でそのメーンに据えられていたのは、私の受けとめとしてはやはり地方行財政会議だと思っています。ここをしっかりと設置して、そこで地方もまじってこれからの行財政改革のあり方を検討していく、そして方向を見出していく、これが検討委員会の要望の最大のポイントだったというふうに私は思いまして、実は前通常国会で当時竹中大臣にこの点について質問をさせていただきました。そうしましたら、検討委員会のそういった提案については多面的な検討が必要だと思っている、そういう御答弁をいただいていたわけなんです。

 今回、この法案の中では地方行財政会議の設置というのは見送られました。見送られたということは何らかの検討をされたんだろうと思います。ここで竹中大臣が多面的な検討が必要だと思うとおっしゃいましたので、恐らくそれをされたと思うんですけれども、設置するしないについて一体どのような検討を行ってこられたのか、伺いたいと思います。

菅国務大臣 地方六団体から提案があった地方行財政会議、この法定化については、国の政策決定プロセスに地方がどのような形で関与するかという極めてデリケートな問題でも実はあるというふうに思っています。内部でもいろいろ検討はしてきていますけれども、さらに検討する必要があるのかなというふうに実は思っております。

 ただ、その方向性というのは、具体的には見えてきていませんけれども、しかし、この地方分権を進める中においては、やはり地方の声、地方と国との議論が十分でないと地方分権というものは進んでいかない、こういうふうに考えておりますので、本法案の第四条に、国に対し、地方分権改革の推進に当たって、一般的に、地方公共団体の役割を理解することでその立場を尊重し、そのためにこれと密に連絡をする、こういうこともこの趣旨としてありますので、そういう中で地方の声というものを十分に尊重しながら進めていきたい、こういうふうに思っています。

西村(智)委員 検討してきたけれどもさらに検討が必要と。私はどういう検討をしてきましたかと伺っているんですけれども、それでは検討してこなかったということですか。

菅国務大臣 いろいろな問題点というものは検討しました。

西村(智)委員 そのいろいろなの中身を伺いたいわけでありますが、お答えはいただけない。例えば法律関係でどの権限とどの権限がぶつかるとか、そういったようなことをお答えいただければよかったんですけれども、ちょっと時間がありませんので先に進みます。

 竹中大臣はそのときに、私に対する答弁のときにこんなふうにもおっしゃっておられた。国と地方の協議の場というのは、これはもう法律に書き込まれていなくても実際にやっている、今までもやってきたし、これからもやっていく、こういうふうにおっしゃってきたんですね。

 法律に基づかないが、そういったことが可能であったとすれば、その国と地方の協議の場から分権政策の推進に向けて何が生み出されてきたのか。ここは具体的に伺いたいと思います。今まで成果としてどういったものがそこから生み出されてきたのか。大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 全体について私からお話しさせていただきます。

 私も、就任してから、例えば麻生知事会会長とたしか五回くらいお会いをしています。その中で、例えば今度の地方分権改革推進法案というのは、まさにそうした皆さんの声を反映して今度の臨時国会に提出させた、そういうことも実はあります。いずれにしろ、緊密に連携をしているということだけは御理解をいただきたいと思います。

藤井政府参考人 私の方から過去の事実の方について御説明したいと思います。

 まず、過去どういう会議があったかということでございますが、これは御案内のように、総理と全国の知事との場ということでは全国知事会議がございますし、あと、各大臣、特に総務大臣と地方との協議の場というようなものは、今ほど大臣からも御説明があったところでございます。いずれにしても、地方の意見、意向を適切に反映するさまざまな仕組みが設けられているところでございますので、これまで国と地方が議論をいろいろ積み重ねてきたところでございます。

 一般的にも、地方にかかわりのある国の政策を決定するに当たっては、こうした場で示される地方の意見、意向をも十分に踏まえた検討が行われているものというふうに認識しております。

 特に、例ということでございますならば、三位一体の改革が行われた際に、平成十六年八月に地方六団体から出された国庫補助負担金等に関する改革案というものに対して、政府・与党で真摯に検討された結果、平成十六年十一月、政府・与党合意という形でお答えさせていただいているところでございますし、また、平成十七年七月に地方六団体から出された国庫補助負担金等に関する改革案(2)に対しては、平成十七年十一月に同様に政府・与党で協議した上で合意を示していただいているところでございます。

 このように、地方から提案があった事項をもとに国の施策を具体化させるということはこれまでもやっているところでありますし、非常に意味のあることだというふうに考えております。

西村(智)委員 局長はそういうふうに御答弁になるでしょう。ですけれども、地方の側から見ますと、そういうふうに肯定的な評価は実はほとんど聞かれない。政府・与党合意も、言ってみれば政府と与党の間でなされた合意であって、また、意見を聴取されたとされる地方の側にも、意見を十分聞き取ってもらってないという声は非常に強いですよ。それは大臣もいろいろなところへ行かれてお感じになられるでしょう。

 つまり、どういうことかといいますと、三位一体改革を進めるときに、地方の声が大切だとはいいながら、実は聞いているだけで聞きっ放しになっていることというのが多いんじゃないか、私はこういうふうに考えるんですね。これは、例えば補助金の改革などを行うときもそうだと思います。ここのところ何年か、予算編成のたびに各省庁の予算獲得に向けての競争というのは物すごいものがあった。これに抵抗されて、いわゆる財政改革というのは実際にはうまくいってきてないというふうに私は思います。

 これをさらにどう進めるかということで考えますと、私は、分権というのがこの国で本当に必要な改革だということを裏づけるためにも、やはり国と地方の場というのを法的にきちんと設置して、そこで上がってきている声だから、それを法的な裏づけにしてやっていく、こういうことが必要なのではないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

菅国務大臣 委員御指摘のとおり、国の政策決定のプロセスに地方がどういう形で関与するのか、地方と国はどういう関係が適切なのか、そうしたことについてはこれからもまさに検討する必要は確かにあるというふうに思います。

 ただ、問題は、やはり地方がしっかりとした財源の裏づけのもとに自分で物事を考えて、自分で実行して、そのかわり自分で責任をとってもらう、そうした分権を実現することが一番大事であるというふうに思っています。ぜひ、そういう中でこの法案が御理解をいただいて成立し、そして一括法の中でそうしたことが実現できれば、そんなふうに思っています。

 ただ、それまでの間にも、やはり地方と国の関係というものは極めて大事でありますので、地方の声を十分に聞きながら、当然配慮していく必要があるというふうに思います。

西村(智)委員 国が地方の声に配慮すると言っている限りは私はだめだと思いますね。つまり、さっき大臣はおっしゃいましたよね、地方からも一定の責任で分権改革にかかわってもらう、参加してもらう、これだと思うんですよ。だから、いかに国がそういう場をきちんと法的に裏づけを持って設置するかということだと思うんですね。

 地方六団体の検討委員会は今回、いわゆる推進委員会の委員の選任に当たって推薦枠の設置というのを求めていたと思います。これはまた、今回、行財政会議とともに不採用、採用されなかったわけなんですけれども、この案が採用されなかったという理由は何ですか。大臣がそこまで、地方からも責任を持って参加してもらうというようなことをお考えになっているのであれば、この提案についてはのめたんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 これは私、逆に、やはりその枠は決めない方がいいと実は思いました。と申しますのは、当然、委員を決めるに当たって地方の声というのは、これは総理が最終的に決めますけれども、私は十分に総理にそのことは伝えたいと思いますし、尊重してくれるというふうに実は思っております。

 これは地方分権のあり方を決める極めて大事な委員会になるわけでありますけれども、それと同時に、委員が冒頭に発言ありましたけれども、この国の形というものを決める極めて大事なものであるというふうに私は思っています。そういう意味においては、やはり幅広く人選をした方がいいのかなというふうに私実は思いまして、あえてこの枠を設けることに私はちゅうちょしました。しかし、地方の皆さんの声は十分聞いていきたい、こう思っています。

西村(智)委員 それは十分聞いていただけると思っています。十分聞いていただけると思っておりますが、だから、それを一つの政策として、霞が関の中で、要するに各省庁の中で協力してもらって進めていかなくちゃならないわけですし、この三年間の中で分権の推進計画をつくっていかなければいけないわけですよね。そのときに、地方が、例えば六団体がまとまってこういう意見ですということがきちんと法的に裏づけられている場で発言されたのであれば、それこそが一番の総務省にとっては後ろ盾になるのではないかと思って私は伺っているわけなんです。

 同じ質問ばかりしていてもしようがありませんが、大臣、この点についてどうですか。

菅国務大臣 思いはよくわかりますけれども、しかし、この国の形を決める今度の七人であるというふうに私は思っていますので、やはり地方の声というものをその中で最重要視しなきゃならないというのは私もそれは理解していますけれども、国全体の枠組みを決めるのに、七人のうち三人を地方の人たちに決めた枠の中で国全体の形を決めることがどうかな、そういう懸念も実は私は持っているということも事実です。

西村(智)委員 大臣、分権は菅大臣御本人が先頭に立って取り組むというふうに御答弁をいただいております。私はその言葉に期待をしたいと思いますし、この分権改革推進法が成立したときには、ぜひ地方の声が、やはり今回も自分たちの意見は聞きっ放しだったということのないように、しっかりと合意を図っていくように心からお願いをしたいと思います。

 最後に一点、今回の推進法ですけれども、三年間の時限立法となっております。推進委員会が勧告を出して、それを受けて政府が計画をつくるというふうになっておりますけれども、その計画をつくるまでの三年間、この間、いわゆる総務省が進める分権改革が滞るようなことはまさかありませんよね、確認をさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 それは全くないと思いますし、やはりその間も改革というのは進めていかなきゃならないというふうに思っています。今回、頑張る地方応援室というのもそういう意味の一環であるというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 やはり地方にはそれぞれ特徴があって魅力がありますから、それを引き出して、地方が頑張れる、そういう仕組みをつくるというのも、この法案が成立し、そして一括法が成立した暁には、私は、自分たちで自由に、そして責任を持ってそうしたさまざまなまちづくりや事業ができる、そういうふうにするまでの一環としてもこういうこともやっていきたい、そういうことでありますので、御理解をいただきたいと思います。

西村(智)委員 最後に、「頑張る地方応援プログラム」ですけれども、私は、これはぜひ再考していただきたいと思うんです。頑張る地方じゃなくて、頑張れる地方をつくるためのプログラムであるべきだ、このことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私、先日、質問レクをとりに来られたときに、九八年五月二十九日に閣議決定された地方分権推進計画、これを、これまでの機関委任事務をどう分類したかということにかかわる話ですから、ごらんいただくようにということを言っておきましたが、まず、ごらんいただいたでしょうか。

菅国務大臣 委員からそういう御指摘があったということで、私なりに目を通させていただきました。

 そして、その内容というのは、今言われましたように、平成十年五月二十九日に閣議決定されたもので、地方分権推進委員会勧告を最大限に尊重し、地方分権の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために、政府において講ずべき必要な法制上または財政上の措置その他の措置を定めたものである、このように理解をいたしております。

吉井委員 それで、九八年五月二十九日に政府が閣議決定した地方分権推進計画には、どの法律のどういう事務が法定受託事務ということになるのかということが載っていると思うんですが、この点はどうですか。

菅国務大臣 そのとおりの内容です。

吉井委員 これを見ると、要するにどの法律のどの事務が法定受託事務かというのは、ぱらぱらっと見たら一目でよくわかるわけです。例えば国民年金法であれば被保険者の任意脱退の承認申請の受理とか、黒ポツでずっと項目を挙げていますから、どれが法定受託事務か、これを数え上げていったら法定受託事務が幾つあるかというのはすぐわかるわけですね。新しい法律等ができるたびに、さらに追加されるものを数えていったらいいわけですから、法律と政令の数でしかこれまでつかんでいないように思うんですが、なぜきちんと法律、政令でその数をつかんでこなかったのか。大臣、これは何で数えてこなかったんでしょうね。伺っておきたいんですが。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、法定受託事務の事務ごとの件数、これは数え上げようと思ったら、若干技術的に難しいところがあります、一まとまりをどの程度にやるのかとか、いろいろの法律によって書き方の違いがあるので、そういう技術的な問題点はあるんですが、数え上げて数え上げられないものではないと思っております。

 ただ、なぜそういう事務ごとの件数をこれまで計算してこなかったかということになりますと、一言で言えば、私ども、どのようなものが法定受託事務として地方に任されているのか、そういう内容、質、そこが非常に重要だと思っておりました。したがいまして、新設なんかの場合にはそういった内容については十分チェックしているつもりでございますし、あと、今委員まさに御指摘だったんですが、どのような法定受託事務が設けられているのかということにつきましては、まさに今御指摘の分権計画並みの事務の内容は現在地方自治法の別表に明記して一覧性を持っている、そういう一覧性を持って明記するということで透明性は十分足りるということ、それプラス、全体的に法定受託事務がふえているのか減っているのかというような傾向を見るということであれば、むしろその根拠法の数字を挙げるということで十分御理解いただけるのではないかというようなことで、今までこういう対応にしてきたということでございます。

吉井委員 これは全体の傾向をつかむというふうな話じゃないと思うんですね、大臣。

 これはこの間も私紹介しましたけれども、野田自治大臣のときに、基本的に法定受託事務というものもできるだけ制限をしていかなければならぬ、これは当然だ、極力、国から地方に対する関与の仕方というのは、より必要最小限のものにしていかなきゃいけないと。だから、ずっとこれを減らす、抑制するということで来たわけですね。全体の傾向をつかむような話じゃなくて、具体的に、これは数がわかるわけですから、この黒ポツを数えていったらいいわけですから、それがふえているのか減っているのか、どう抑制するのかということできちっとやっていくべきものなんですね。

 新たに法定受託事務ができるときには総務省はチェックしているというふうにこれまで答弁しているわけですが、地方分権推進計画というのは、閣議決定、政府が決めているんですね。これをもとにして、ふえているか減っているか、ふえるならばどう抑制するかとか、どう自治事務に移していくのかとかやらなきゃいけないのに、なぜそれをやらなかったのか、大臣に伺います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 改めて繰り返しの答弁みたいになってしまうかもしれませんが、私どもは法定受託事務は抑制すべきだと思っております。ただ、その趣旨は、やはり内容が問題だろうと思っております。地方公共団体の自主性、自律性を妨げるような、あるいは国が関与し過ぎるような、そういう法定受託事務、そういったものをふやしてはならないと思っておりまして、その面については十分審査させていただいていると思っております。ただ、外形上の数についてどうかというと、確かに事務数でカウントするということは、ある程度外形的にもふえているかどうかという推定の根拠になるかとは思っていますが、私どもはあくまで質が問題だと思っております。

 例えば、これはちょっと余計な話になるかもしれませんが、規制緩和でもよく許認可の整理合理化をやるということになると、必ずしも規制緩和で整理合理化したら数が減るかといったら、ふえる場合もあるわけです。これは、部分的により簡易な許認可にする場合は、従来一つであったものが二つに分かれちゃうということで数がふえるとか、そういうふうな話がありまして、私どもとしては、数は、実際の事務負担の問題もあるんですが、法令の件数ぐらいで十分ではないか、むしろ内容は厳密にチェックさせていただく、そういうスタンスで来たということでございます。

吉井委員 数は何かどうでもいいみたいな話ですね。しかし、質、内容を見るというのは一つ一つの項目をきちっと見ていくことでしょう。項目を見てこそ質、内容がわかるわけですよ。ところが、はなからこれは調べようということをしてきていないんですね。だから、私はそれがもうとんでもない話だと思うんですよ。

 なぜそれをやらなかったのかという理由を聞いているのに、言いわけはしたけれども理由は言っていないんじゃないですか。

 野田大臣のときには、抑制をする、これははっきり打ち出してきたわけですね。抑制をするということは、内容がああだこうだと言う前に、内容をきちっとチェックしようと思ったら項目を一件一件見なきゃいけないんです。その上で、こういうものは内容からしても自治事務に当然移すべきものだとか、そうして抑制しないことには法定受託事務はふえるばかりなんですよ。

 だから、私が大臣に、これは政府参考人じゃなくて大臣に、なぜそれをやってこなかったのかという理由を伺っているのはそういうことなんです。大臣、どうですか。

菅国務大臣 地方分権一括法による改正時の附則に基づく新設の抑制については、政府内でも法令案の検討時にそれなりに実施をしてきた、このように実は思っていますし、また、これからの地方分権改革推進委員会においても適切な見直しが行われるだろう、ここは期待をしていきたいというふうに思いますし、法定受託事務の条項数の推移を算出することについては、その必要性だとかあるいは効果等も含めて検討していきたいと思います。

吉井委員 これは、こういう計画は本当に膨大なものですよ。あったこと自体を今大臣は初めてお知りになったんじゃないかと思うんですが、先日、法定受託事務を規定した法律、政令の数、三百三十六本という答弁があったんですよ。しかし、これを見ると、法律一本でも法定受託事務の数というのは物すごくたくさんありますね。これを見ていると、例えば国民年金は五十七の事務があるわけですね。それから、農地法ですと百十三の事務。だから、法律一本で何か法定受託事務が一つだけかと思ったら全然違うんですね。物すごい数ですよ。分権推進委員会の基準で数えたら、四けたの数は下らないどころか、ひょっとしたら万を超えるぐらいの数になるんじゃないかというふうに思われます。

 ですから、総理とか自治大臣が厳に抑制するともともと答弁してきたものですから、こういうものがあるわけですから、これに基づいて、どの項目がさらにふえたとかこの項目はどうだときちっとやっていけば抑制はできたはずなのに、法律はつくっても地方分権が進みますとか、法定受託事務は減らして自治事務をどんどんふやすんですと言っても、この間の実績を見れば、法律はつくったけれども逆だったじゃないか。そのことをやはりきちんと検証しなきゃいけないと思うんです。

 だから、なぜ地方分権推進計画をきちっと使ってこういうことをやらなかったのか、改めて大臣に伺います。

菅国務大臣 先ほど答弁しましたように、地方分権一括法を踏まえて、抑制すべき点は抑制をさせていただきました。ただ、新しい法律の中で、例えばバリアフリー法案だとか福祉の問題だとか、そういう新しい法律の中でやはり必要なものはやってきた、そういうことで御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 そうすると、法律をつくるたびに新しく法定受託事務がふえて当たり前のような話になってきますから、私は、地方分権といいながら、実は自治事務がふえていくんじゃなしに法定受託事務が新しい法律のたびにどんどんできていく、国のかかわりというものがどんどんふえていく、そういうことを自然現象のように見ておったのでは、これは話が全然違ってくるというふうに思います。

 次に、自治事務について伺いますが、自治事務というのはどういう事務ですか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 地方自治法一条の二では国と地方の役割分担が明記されているところでございますが、いわば、自治事務というのは、そういう本来地方公共団体が果たすべき役割に係るものとして、法定受託事務以外のものをいうということになるかと思います。

吉井委員 それは、法律に書いてある言葉の説明といいますか、読んだだけの話ですね。

 そういう法律的な説明じゃなくて、国民にわかるように言えば、要するに平たく言うたら、自治体が地域の特性に応じて自主性を持って行うことができる事務、そういうものが自治事務なんだということなんでしょう。

藤井政府参考人 地方自治法一条の二は、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うもの、まさに委員御指摘のとおりのことが書いてあるところでございます。

吉井委員 それで、そういう自治事務について、法律でその処理の仕方を定めようという動きが目立ってきているように思うんです。例えば、さきの通常国会で医療制度の改正がありました。七十五歳以上の後期高齢者の医療制度を運営する団体として、一つの都道府県を区域として、そこのすべての市町村が加入する広域連合が指定されるということになりました。

 広域連合を設立するという事務、これは本来自治事務だと思うんですが、どうなんですか。

藤井政府参考人 高齢者の医療に関する法律に規定する後期高齢者医療広域連合は、地方自治法に規定する広域連合の通常の手続にのっとって設置することとされているところでございます。したがいまして、当該広域連合の設立に係る事務というのは自治事務であるというふうに認識しております。

吉井委員 それでは、ある市町村が、広域連合に入りたくない、加入したくない、うちは財政基盤があるから単独でやっていきたい、こういうふうに言ったら、これは認められることになりますか。

藤井政府参考人 御質問の趣旨が制度的にぎりぎり詰めた場合はどうかということかと思うんですが、ただ、現実には、高齢者の医療に関する法律において、この後期高齢者医療というのは、高齢者の疾病、負傷、死亡、そういう重要な業務を行うこととされているところでございまして、いろいろ市町村それから都道府県、国が話し合われて、いわば財政上の問題も含めて、やはり広域でやった方がいいということでこういう制度ができたものと承知しております。

 したがいまして、こういう趣旨を踏まえて、都道府県の区域内のすべての市町村が当該広域連合に加入していただくことになるのではないかというふうに考えているところでございます。

吉井委員 ことしの法案審議のときにも、厚労省の水田保険局長が、この広域連合というのは都道府県単位ですべての市町村が加入する地方自治法に基づく地方公共団体でございます、要するにこの広域連合はすべての市町村が加入するものなんだと国会でも答弁しているわけですね。

 広域連合というのは、地方自治法に基づくものは、これは地方が自主的に判断して加入するものなんですね。

 そうすると、新しく法律がつくられてくる中で、今も言いましたように、ある市町村が、うちは財政基盤がしっかりしているから単独でやっていきたい、だから広域連合に加入したくないと言った場合に、これは、この法律に基づくものについては認められないということになるんじゃないですか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 厚労省の局長がお答えになったことを私が説明するのもいかがかと思うんですが、ただ、一つの立法政策判断として、厚労省の政策としてはすべての市町村が入るべきであるということでああいう制度がつくられているというふうには私は認識しているところでございます。

吉井委員 だから、制度がつくられているものという認識はいいんですけれども、広域連合に入らないというのは、単独でやりたいという場合ですね、これはこの法律で認められるんですか、認められないんですか。

藤井政府参考人 健康保険法の規定の趣旨については、私の方から御答弁するのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、広域連合の制度というもの、地方自治法の広域連合の制度というものは自治事務であるということは変わりないということだと思います。

吉井委員 これは認められないんですよ。それは、法律の立法過程で厚労省と総務省できちっとそこの議論をして詰めておられると思うんですけれども、詰めているはずなのに実は詰め切れていないんじゃないですか。厚労省の方は、認められないという立場ですよね。

 広域連合というのは、地方自治法第三編特別地方公共団体に規定がありますが、広域連合には、市町村だけのもの、あるいは市町村に都道府県を含んだものがあります。いずれも、広域連合を設立しようとするところは手を挙げて総務大臣や都道府県知事の許可を受けるということになっているんですね。これが広域連合です。これは、法律で強制されるものではなくて、あくまで希望する自治体が手を挙げる、こういう仕組みになっていますね。ところが、医療制度の改正で導入された方の広域連合というのは、自治法で言う広域連合とは明らかに違うものじゃありませんか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 高齢者の医療に関する法律におきましては、市町村は、後期高齢者医療の事務を処理するため、都道府県の区域ごとに区域内のすべての市町村が加入する広域連合を設けるものとすることとされているということですが、これは、先ほども申し上げましたが、財政運営の広域化とか安定化を図るための一つの立法政策としてこういう判断をされたものというふうに考えております。

 一方、後期高齢者医療広域連合につきましては、地方自治法に規定する広域連合の通常の設置手続にのっとって設置することとなっているというところは繰り返し御説明しているところですが、具体的には、関係市町村による協議とかあるいは関係市町村議会による議決を経た上で、その上で都道府県知事の許可を得て行われるものであるという意味では、まさに地方自治法上の広域連合の手続にのっとってつくられるものであるということです。

 結局、そういうことは制度的に矛盾するのかどうかという御質問かと思いますが、これは、一つの政策判断として全部入った方がいいという政策判断と、それのいわばスキームというか制度として地方自治法の広域連合をお使いになるということが別に矛盾することでなければ、それはそれでよろしいのではないかというふうに認識しているところではございます。

吉井委員 何か一生懸命法律を読んではったんですけれども、そういうことじゃないんです。

 これは簡単なんです。

 川崎厚労大臣が、これはことしの六月十三日の参議院の厚労委員会での会議録にありますが、要するに、この広域連合の設置は市町村に義務づけられているものですとはっきり言っているわけですよ。だから、広域連合なんだけれども、市町村が自主的に手を挙げてのものじゃないんです、義務づけられているんです。

 自治法の広域連合というのは、広域連合をつくろうという自治体が手を挙げて許可を求める、手を挙げることは自治体の判断にゆだねられる、こうなっているんですね。ところが、後期高齢者医療制度の広域連合というのは市町村の参加が義務づけられている。厚労大臣の答弁に義務づけられているということがあるんですが、広域連合という名前は一緒なんですね。名前は一緒で、厚労大臣もこのときに、後期高齢者医療の事務は地方自治法上の自治事務だと言っているんですけれども、これは同じ自治事務という言葉を使いながら全く違うものだということになってくるじゃありませんか。

藤井政府参考人 自治事務の具体的な内容がどういうものか、いわば地方公共団体にどの程度の自主性、自律性がゆだねられているかというようなこと、あるいは国がどのような関与を行うかというようなのは、これはやはり個々の法令によって規定されるということになろうかと思っております。

 ただ、私どもとしては、地方の自主性、自律性を高めていく見地から、国の関与等は必要最小限のものとすることが求められていると認識しておりますし、依然として地方の自由度の確保については必ずしも十分とは言えないというような状況にあるとは認識しているところでございます。

 その意味で、第二十八次地方制度調査会からも、事務事業の執行方法、執行体制に関する国の法令は、地方公共団体の自律性を高める内容とすべきであり、特に自治事務については、国は制度の大枠を定める云々のことから、条例等により行うことにすべきであるというような答申をいただいているところでございますが、この広域連合の問題についても、やはりそういう目ではいつもチェックしていきたいとは思っております。

 ただ、現段階では、後期高齢者医療の一つの立法政策判断として、厚労省の方ではやはり全員参加の制度にしたい、そういう制度につくっておられるということで、それに対しては、そういう一つの判断もあるというふうに私どもは認識しているところでございます。

吉井委員 法律の話をしているときに、立法政策上の判断があったら法律はどうでもいいという話になるとこれはとんでもないことなんですね。

 地方分権、地方自治の拡充、地方の自主性の尊重ということを言っているんですが、このときに広域連合といいながら、名前は同じなんだけれども内容が全く違う。広域連合といって自治事務だといいながら、しかし全部が加入しなきゃいけないと義務づけられてくる、これがこの問題なんです。

 法律で設立義務づけの前に、当然、総務省に立法過程で事前に相談があったはずなんですね。どういう理由でこういう制度の導入を了解したのか。法律上矛盾がないようにしなきゃいけないわけですが、どういう理由で了解したのか説明してください。

藤井政府参考人 これも繰り返しの御答弁になろうかと思いますが、高齢者の医療に関する法律におきましては、市町村は、後期高齢者医療の事務を処理するため、都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合を設けることとされているところでございますが、これは、財政運営の広域化、安定化を図るためにはやはりそういう制度にする必要があるんだという一つの立法政策、私は立法政策と申しましたが、単なる政策判断じゃなくて、あくまで法律として制定されるに至った判断だというふうに申し上げているんですが、いわばそういう法律上の判断があったというふうに承知しているところでございます。

 一方、後期高齢者広域連合につきましては、これも繰り返して申し上げていますが、通常の地方自治法に基づく設立手続に基づいて設置されるわけでございますが、具体的には、関係市町村による協議とかあるいは関係市町村の議会の議決を経るというのは先ほど申し上げましたとおりですが、そういう中、あるいは都道府県の許可、そういう中で関係市町村間における合意形成が多分既にできているんじゃないかと思うんですが、改めてそういったものは確認されているということであれば、そんなに地方の自主性、自律性を損なうということにはならないのではないかというふうに認識しているということでございます。

吉井委員 長々しゃべったけれども、それは全然説明にならぬと思うんですね。

 それで、大臣、法定受託事務についても、冒頭に取り上げましたように、地方分権推進計画に基づいて、閣議決定したものに基づいてカウントしたものもあるわけですから、だから、本当に地方分権だ、改革だ、推進だと言うのであれば、これまでから野田自治大臣が答弁されたように、それ以降、きちっと項目をつかんで、これはもう自治事務に移すべきものだとか、新しく法律をつくっても法定受託事務をふやさない、地方の自主性を前進させるんだということで取り組んでこそ、地方自治の拡充という名に値すると思うんですね。

 一方、自治事務については、その処理に当たっては、地域の特性に応じて自治体がその自主性を発揮できるように特に配慮しなきゃいけないというのが自治事務ですよね。そういうものであるのに、だから国の関与も法定受託事務に比べて抑制的でなきゃいけないのに、新しく法律をつくって義務づけてしまう。名前は広域連合、自治事務だというんだけれども、実態は義務づけだ、抜けられない、このやり方というのはどうしてもおかしいわけですね。

 このおかしいことが分権の名において次々と膨らんでいったら、私は、名前は地方分権であっても逆の方向へ行くと思いますから、今提起したことをきちっと正すということについての大臣の考えを伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 地方分権改革一括法の方向性に基づいて私どもこれを徹底してやっていきたいと思いますし、今度の改革推進委員会でも適切に見直しが行われるものと思います。

吉井委員 今のようなお話ではとてもきちんと進むというふうには思えないということを指摘して、時間が参りましたので、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 重要と思われる部分について、答弁を確認する立場から質問をしてまいります。

 本案第五条「地方分権改革の推進に関する国の施策」では、確かに、「国は、国際社会における国家としての存立に」云々と、旧法第四条に相当する条文を置いております。しかし、これが独立条文となっているわけではありません。

 そこで、このような条文上の扱いになった意味、あるいは理由について、まずお聞きします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 旧地方分権推進法第四条は、御指摘のとおり、国と地方の役割分担について規定したところでございます。その後、この旧法の規定を踏まえながら、国と地方の役割分担の一般原則として整理するという趣旨で、平成十一年の地方分権一括法の中で地方自治法が改正され、その第一条の二第二項として規定されたものでございます。

 分権推進法は、もともと時限法でございました。だから、その時限法の役割分担ということから、むしろ地方自治法で役割分担のいわば恒久化を図ったというふうに御認識いただければと思います。

 本法案の五条第一項は、地方分権改革の推進に関する国の施策について規定しているところでございますが、これはやはり、地方自治法一条の二の二を受けた趣旨でございまして、そういう役割分担の観点から各分野の行政を見直す、それを基本とする必要がある。今回の分権改革推進に当たっても、やはりこの国と地方の役割の分担、この考え方を基本にするべきである、そういうことで、今回明記することとしたということでございます。

 したがいまして、由来としては旧地方分権推進法の四条に由来するんですが、直接的にはやはり地方自治法一条の二、これを受けて、今回の分権改革を進めるに当たっての基本的な視点というものを再確認して明記したという趣旨だということでございます。

重野委員 確認しますが、私なりに今の局長の答弁を受けとめますと、国の事務、地方公共団体が担うべき事務、いわゆる国、地方の事務に関する役割分担については地方分権一括法でもう片づいているんだ、したがって、五条一項中の規定は、旧法の規定を踏まえたわけではなくて、地方自治法一条の二の規定を引用したもの、こういうふうに受けとめていいんですね。

藤井政府参考人 私も御指摘の趣旨のように説明したというつもりでございます。

重野委員 そういうふうになりますと、今回の改革推進法案に基づく地方分権改革推進委員会、これは、国、地方の新たな役割分担を検討する必要はない、そういうふうになるんですが、この点、大臣の見解を。

菅国務大臣 委員御案内のとおり、平成十一年の地方分権一括法、これによって、地方自治法の第一条の二第二項に、国と地方の役割分担の一般原則が規定をされました。この規定は、国が担うべき役割の類型を例示し、国はこれらに重点化すべきという方向性を示し、それ以外のものはできるだけ地方公共団体にゆだねる、そういうある意味では原則、基本的なものであったというふうに思います。

 今回の新たな地方分権改革においては、この一般原則の方向性を、個別の法令における国と地方の役割分担について一層徹底する必要がある、そういう思いから、実は見直しを行う必要があるというふうに思っています。

 そういう意味で、地方分権改革推進委員会でもそのような方向で検討してくれる、このように思います。

重野委員 では、大臣に聞きますけれども、今回、総理の冒頭の所信表明演説はこのように言っております。「二十一世紀にふさわしい行政機構の抜本的な改革、再編や、道州制の本格的な導入に向けた道州制ビジョンの策定など、行政全体の新たなグランドデザインを描いてまいります。」こういうふうに総理は言っておられます。

 ここでいう「策定など」は、道州制ビジョンだけを契機としているものではないはずですね。それも一つの契機とする新たなグランドデザインと考えるべきである。こうなると、総理の新たなグランドデザインに見合う国、地方の役割分担の見直しが当然必要になるのではないか。

 この点、本案と総理の所信表明との整合性の問題、その点についてまず大臣に確認したい。

菅国務大臣 行政全体のグランドデザインを描くに当たっては、国と地方の役割分担の見直しが必要である。そして、今度のこの法案によって、国から地方へ権限、財源、税源を移譲して、地方が自由でそして責任を持って行政をできるような、できるだけ国の関与を少なくする、そういうことが趣旨で行われているわけでありまして、これを着実に推進していくということが、総理の「二十一世紀にふさわしい行政機構」、そこに私はつながってくると思いますし、さらにその先には道州制というものが見えてくるだろう、このように思っています。

重野委員 次に、五条後段の、事務処理またはその方法の義務づけ等に関する規定について聞きますが、これらの規定によって改革されるべき事務処理のあり方が膨大なものとなることは、十分承知をしております。それだけに、前回の機関委任事務制度の廃止以上に大変な努力が求められているということは言うまでもないこと。

 そこで、法案は総務省提案になっておりますが、成立後の改革推進委員会は内閣府、こういうふうになれば、まずもって必要となること、それは、改革推進委員会の委員の構成、とりわけ委員長の選択になると思います。これがいわゆる分権改革を理解しているか否か、これはもう成否を左右する極めて重要なポイントになる。

 その点では、旧推進委員会の委員選択は私は極めて貴重な経験であったと考えます。貴重な経験だったという点の指摘の裏にある意味は私は御理解いただけると思うのでありますが、この旧推進委員会の委員の構成あるいは選択等々を大臣はどのように評価され、そして今後の委員選択に対する政治責任について大臣の見解をお聞かせください。

菅国務大臣 本法案に基づいて設置をされる地方分権改革推進委員会の委員についても、旧法と同様の規定ぶりで、地方分権にすぐれた識見を有する者の中から内閣総理大臣が両議院の同意を得た上で決定をするということに実はなっております。

 今、委員御指摘ありましたように、この委員長の人選だとか委員のメンバーの人選というのは極めて重要になってくるというふうに思っています。そういう中で、地方の実情を十分に把握できるような人でなければならないですし、国民全体の意見を反映できる、そういう人でもなければならないというふうに思っております。

 旧地方分権委員会の委員についても、首長経験者を初めとして財界人、学識経験者など、委員七人について適切な人選がなされたというふうに思っています。

 いずれにしろ、新たにつくる分権改革推進委員会は、地方の実情、意見等も十分に配慮しながら、委員長を含めて、改革に情熱のある、そして実行力のある、そういう人から総理大臣が選定をしてくる、このように思います。

重野委員 旧法と決定的に違うことは期間が三年ということであります。旧法の場合は五年プラス一年、六年ですね。となれば、改革推進委員会の運営方法もまた変わってくるんだろう、そのことが成否を左右するとまで言っていいと私は思うのでありますが、重要な問題であります。つまり、限られた時間の中で何から手をつけるかという点だけでも大きな問題です。課題の優先順位の設定が問われることになります。

 そのためには、五条二項に定めております「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。」というこの規定は極めて重要な意味を持っていると私は考えます。地方の自主性、自立性ということをあえて書くならば、それを最もよく知っている地方代表を委員に相当数加える、こういうことがなされなければならない、そういう構成の中からおのずと優先順位というものが決まってくるんだろう、このように思います。

 その点で、五条を推進していくために提案者に求められる戦略的立場、委員を選任するに当たっての戦略的な立場、この点をひとつ明確にしていただきたい。

菅国務大臣 まず、地方の実績、実情というものを十分に把握できる人であって、そしてまた国民全体の意見を反映できる、そういう人でなければならないというふうに私は思っています。そういう意味で、そうした有識者の皆さんが地方の実情、意見というものを十分踏まえて検討してくれるだろう、そういうふうに考えています。

重野委員 事はそれだけでは済まないわけでありまして、旧推進委員会の運営方法のもう一つの特徴はどこにあったかというのを振り返ってみますと、いわゆる機関委任事務制度の廃止と新たな事務区分について各省庁との合意、これを基本としていたことは言うまでもなく御存じのとおりであります。

 さてそこで、本案に基づく改革推進委員会は各府省との関係でどういう運営方法をとっていくんだろう、これも気になるところであります。合意を基本とするのか、それともある段階では、見切り発車という表現がいいかどうかわかりませんが、その上で勧告するのか。特に今回はわずか三年という限られた期間で、その点を一つ最初に十分押さえておくことが必要ではないか。途中で混乱するようなことがあってはならぬということを考えますと、この点をきちっと押さえていく必要がある、私はこのように思うんですが、それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

菅国務大臣 私は、基本的には各省庁間の合意というのは必要ないというふうに実は考えています。

 いずれにしろ、この地方分権改革推進委員会は、政府の作成する地方分権改革推進計画の具体的な指針についてその勧告等を行う機関でありますので、その調査審議の進め方については委員会みずから判断をする、こういうふうになっていますけれども、省庁間の連携をしたらなかなか思いどおりの分権はできないというふうに私は思っていますので、前回の分権推進委員会の進め方とはかなり変わってきているというふうに私は考えます。

 そのためには、勧告を受けて政府は地方分権改革推進計画を行うことになって、三年という限られた中で行うには、やはり政府一体となって地方分権改革の取り組みを行うことができることが極めて大事なことであって、そういう意味では政治のリーダーシップというのが極めて大事だというふうに思います。

重野委員 そこで、六条関係について聞きます。

 この六条に規定する「財政上の措置の在り方の検討」に関連して、いわゆることしの骨太方針に言う二〇一一年度までの基礎的財政収支の均衡化、このことと六条に規定する「財政上の措置の在り方の検討」というこの部分、フレーズはどのように関係するのかという点です。

 骨太では、要対応額十六兆五千億円のうち十一兆四千億円以上は歳出削減によって対応する。この方針は歳入歳出対策というところに立つものとなっていると私は理解しています。当然、本案は地方分権を推進するものである以上、この六条に定める措置とはかかわらず別に措置されるものと私は考えますが、こういう理解でいいのか、大臣の答弁をお願いします。

菅国務大臣 歳出歳入の一体改革は、主として、今後歳出削減をそれぞれの分野でどのように進めていくか、そういう方向で定められたものであって、このような量的側面は今回の分権改革推進法案にはない、このように考えています。

 ただし、この一体改革の中で、同時に制度面の改革も盛り込まれておりました。これについては、地方分権に向けた関係法令の一括した見直し等ということも実は含まれているというふうに思っています。

重野委員 最初のフレーズはよかったんですが、後段の部分になりますと、相殺すると何なのかな、こういうふうな感じになります。どうも答弁がその点ははっきりしない。今まではずっと割合明快に答弁されていましたが、この部分はどうもはっきりしておりませんね。

 この六条は、骨太とは関係なく、五条の規定に沿って、そういうふうな形で措置されるんですか。この点ははっきりしてもらいたい。それがはっきりしないということになると、この間の三位一体改革、これも、地方から見ればプラス・マイナス・ゼロみたいなもの、いや、むしろマイナスの方が大きかった、こういう話すらある状態がありますから、その二の舞にはならぬという点を私は確認したいんです。その点は明確に言ってくださいよ。

菅国務大臣 繰り返しになりますけれども、この第六条の「財政上の措置の在り方の検討」は、歳出歳入一体改革における歳出の削減と直接関連するものではないと思っています。あくまで、地方分権にふさわしい税財政制度というのはどうあるべきか、そういう観点から進めていくべき問題である、このように思います。

 ただ、極めて厳しい財政状況であるということも事実でありまして、国も地方もスリム化、効率化に向けた努力というのは避けて通ることができないというふうに思います。基本方針二〇〇六に従って歳出見直しに取り組んでいくが、あわせて、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方税あるいは交付税の一般財源の確保ということは、これは責任を持ってやっていきたい、こう思います。

重野委員 もっと別の角度から聞きますが、これはうがった見方かもしれませんが、歳入歳出一体改革と連動する、この点については明確に大臣は否定しない、連動するんですね。

 そうした歳入歳出一体改革の範囲内で行う財政上の措置、五条とはそういう意味ということなんですか。今までの答弁をうがってとらえれば、そういうことすら言えるんですね。この点、もう一度確認します。

菅国務大臣 うがって考えなくてもいいと思います。

重野委員 今の言葉は非常に重要であります。しっかり記憶にとどめておきたいと思います。

 それにしても、この六条は基本的に問題がある。つまり、「前条第一項に規定する措置に応じ、」とあるように、財政上の措置のあり方について検討することは五条との相関関係とされている。これはどういうことかということが一つですね。

 これを言うのであれば、前回の委員会のときにも質問しましたように、新型交付税導入問題ですね、これも、この五条の進展状況を見て改革推進委員会で審議してからにすべきではないのかな、こういうふうな感じを持つわけですが、この点について大臣、いかがですか。

菅国務大臣 新型交付税でありますけれども、地方交付税の基準財政需要額の算定方法というのは極めて複雑である、そういう中で、地方分権推進計画や累次の基本方針の中でも、このことについては簡素化すべきである、こういう指摘を実は受けております。

 そうした指摘に基づいて交付税の算定方法の簡素化に順次取り組んできていますけれども、さらに抜本的な簡素化を図る、そして、この交付税の予見可能性を高めるために、現在でも国の基準づけのない、あるいは弱い行政分野が少なくとも一割程度ありますので、新型交付税を、その部分について十九年度から導入をしようとするところであります。

 さらに、三年間で制定する一括法による事務の義務づけの見直し等の進展を踏まえてこれは順次拡大をしていきたい、このように考えております。算定の簡素化をより積極的に推進する意味から十九年度から導入をする、このように御理解をいただければありがたいと思います。

重野委員 最後になりますけれども、大臣が十月二十四日の経済財政諮問会議において、国と地方の税収比一対一を実現することを目指し、地方税の充実を図る、こういうことを明言しておられますが、こうなると、六条との関係で、この六条を、そうであればそうであるようにもっと明確に書くべきではないか、このように私は思うんですが、その点はどうですか。

菅国務大臣 今度の法案というのは、地方の役割を強化する、そのために事務事業というものをしっかりと見直して、具体的な見直しによって、補助金や交付金、そして税源配分の見直しを行っていく、そういう手順や推進のための体制を定めたものであって、事務事業をでき得る限り地方にゆだねる方向で見直しを行って、これに応じて国、地方の税源配分を見直す。そういう意味では、財政上の措置を盛り込むことによって地方税財源を充実する方向で検討を進めていく、そういう流れになっていくというふうに実は思っています。

 私としては、国民にもわかりやすい目標として、国、地方の税収比一対一を目指して、さらに地方税の充実というものを図っていきたい、こう思っています。

重野委員 今後とも、この問題については大臣としっかり議論していきたいと思います。

 総理も到着したようでありますので、以上で終わります。

佐藤委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷畑孝君。

谷畑委員 自由民主党の谷畑孝でございます。

 限られた時間でございますので、手短に安倍総理に質問をいたしたい、このように思っています。

 まず最初に、初の戦後生まれ、五十二歳という若い力、そして、総理になるべく一定程度帝王学を学んでこられました安倍総理の誕生に心より祝福をしたいと思いますし、また、私も自由民主党の総括副幹事長として、しっかりと支えて、支えて、支えていかなきゃならない、こういう決意でございますので、よろしく御支援のほどをお願い申し上げます。

 さて、安倍総理が出現したわけでありますけれども、安倍総理の出現には、その位置づけというのか、これからどう日本のかじをとっていくのか、そういう意味でも、小泉政権の五年間というのはいろいろな意味で大きな意味を持つのじゃないか。特に、小泉総理が出現したとき、私も強烈なる印象を持っております。まさしく改革なくして成長はない、特に、バブルがはじけて日本に閉塞感がいっぱいのこの社会の中で果敢に改革で頑張ってこられた小泉総理、しかも、改革を進めない自由民主党をぶっ壊すんだ、まさしくこの発言は大きなインパクトを与えたと思います。

 私が記憶しますには、総理に小泉さんが立候補されて、まさしく大阪で初めての会合、これは私が責任者でやったんですけれども、わずか三日間で千人集めました。あっという間に人が集まったわけであります。

 私は、そういう意味では、ぜひ安倍総理も、自由民主党が、改革の先頭を走る政権政党として、国民に政権を持っていくというこの責任をぜひひとつ踏襲していただきたいな、こう思います。

 同時に、安倍総理のやはり筋と情というお話がいろいろとあります。そういうものもいろいろ絡み合わせながら、政治もやはり情も大事でありますし、恵まれない人たち、いろいろな人たちに光を当てる、これも政治だと思いますので、安倍カラーというのか、踏襲しながら安倍カラーをしっかりとひとつ出していただくのが大事じゃないか、そういうことを冒頭に申し上げたいと思っています。

 それで次に、安倍総理のいろいろな課題、教育改革であったり、あるいは憲法問題であったり、あるいは国際競争に勝っていくためのシステムであったり、あるいは経済成長を三%にして、やはりきっちり歳入歳出改革をして後世に借金を残さない、あるいは私どもの、豊かにするためのセーフティーネットだとかそういうことは当然あるわけでありますけれども、その中で、総理が再チャレンジという、これも非常にインパクトのある政策であろうと思うんですけれども、このことについて私、二つほど少し質問したいと思っております。

 その一つは、今やはり、普通高等学校を出て大学へ行って、そして一流企業に入って人生を終える、これが幸せだ、こういうワンエレベーターというのは浸透してきたと思います。しかし、よく考えてみれば、中学卒業で金型に勤めたり、あるいは職人になったり、あるいは、専門学校、工業高等学校、商業高等学校を出て、日本の物づくりというのか、そういうところに働く人々にもしっかりとした光を当てることが大事じゃないか。スポーツ選手はげたを履いて大学へ推薦入学ということがある場合がありますけれども、中学を卒業して工業高等学校を出て技能オリンピックをとったり、本当にそこですばらしい人たちが時には大学にもう一度戻って勉強したいという場合、やはりそれに対して大学へ行けるようなそういうシステムが私は必要じゃないかと。だから、ワンエレベーターじゃなくて、ツーエレベーターもスリーエレベーターも、いろいろな価値判断が認められる、そういう社会というのをぜひひとつ、安倍総理のもとでこの再チャレンジの中に入れてほしいなということ。

 もう一つは、最近、私の地元でも、企業自身は好景気で収益も上がっていいんだ、こういう発表があるんですけれども、どうもまだもうひとつ景気が悪い、消費が伸びない、こういう話をよく聞くわけであります。

 これは、私、よく考えますと、今日の働くあり方というのか、正規社員と非正規社員、そういうことで、とりわけ、常用雇用が五千四百七万人おる中で、このうちの三割がパートであったり、あるいは派遣社員であったり、請負社員であったり、そういうような非正規社員になっておるわけでありますけれども、問題は、正規社員の賃金に比べて平均六割、それしかないということでありますから、私、形の上は景気がいい、景気がいいと言う人がいたって、結局はやはり消費が伸びていかない要因はそういうところにもあるのではないかと思います。また同時に、これから三%の経済成長を進めていこうとすれば、もちろん科学技術をしっかりするということも大事ですけれども、同時に、それを支える人材というものが、すべての人材能力というものがきちっとやはり開発された状況であるということが私は非常にこの国にとっては大事だと思いますので、その点についてひとつ、再チャレンジのことについての意見がありましたらちょっとお聞きをしておきたい、このように思います。

安倍内閣総理大臣 まず初めに、谷畑委員から、しっかりと改革を続行していくようにというお励ましをいただきました。小泉改革によって進めてまいりましたこの構造改革については、私の内閣におきましても引き続きまた、改革なくして成長なしとの考え方のもとに、さらに改革を加速させていきたい。また、今後の仕事を見ていただければ、私が、改革に対して、しっかりとした考えのもとに改革を進めていくという意思を持っているということは知っていただける、認識をしていただけるのではないか、このように思っている次第でございます。

 その中で、再チャレンジできる、そういう社会をつくっていくように、あるいはまた、物づくりを見直しをするようにという御指摘でございます。

 私は、確かにそのとおりなんだろうと思います。

 日本の強みの一つが物づくりであり、まさに現場で努力をしている方々、このいわば物づくりには、技術を開発するという側面と、物づくりを進めていく上において操業をしていく、この操業技術、この両方で日本はすぐれているのではないか、このように思います。この現場での実践的な知恵から、例えば、日本が世界で最も競争力のある金型において、手先でミクロン単位での誤差を認識しながらすばらしい金型をつくっていく、そのノウハウの蓄積があるからこそ日本は高い競争力を持っているのだろう、このように思います。また、鉄鋼の現場においても、何とかラインをもっと効率化をしたい、こんな現場の意欲が日本の世界トップレベルの競争力を支えている、この全体的な努力によっての日本の物づくりの強さであろう、このように思います。

 ですから、技術を開発する最先端で頑張っている人たち、あるいは三交代勤務の中で、夜勤の中で頑張りながらいろいろなことを開発して努力をしている人たちのこの努力の結晶としてのいわば改善の結果等々もあるでしょう。そうした場面で頑張る人たちを奨励していく、また、そういう中において、ではもう一度学校に行ってみようという方々に対して、会社が支援をしたり国がそういう環境を整えていくことが私は重要であろう、こんなようにも思います。

 また、十月から開始をいたしました実践型人材養成システム、これはいわば正規雇用ではないわけでありますが、非正規の雇用ではありますが、非正規の雇用の中で、しかし、実際仕事をしながら、そこで訓練を受けながら、と同時に、職業訓練校に行きながら、さらに自分のスキルを磨いていく中によって、会社側に評価され正規雇用となっていって、しかも自分はさらにキャリアアップをしていく。そういういろいろな道を用意していく、人生のいろいろな場面で多様な機会、チャンスのある社会をつくっていくことが、これは日本国民にとっても豊かな人生につながっていきます。機会、チャンスの多い豊富な人生になっていくわけでありますし、国におきましても活力のある社会、経済が実現できるのではないか、このように思います。

 先生の御指摘のとおり、そういう社会を私はつくっていきたいと思っております。

谷畑委員 どうもありがとうございました。

 もうあと一問だけ質問したいと思います。

 きょうの地方分権改革推進法案でありますけれども、自分たちが生まれ、あるいはまた自分たちが住んでいる町に対するやはり愛情というのか、いい町をつくりたい、こういうことが基礎だろうと思いますし、また、こういう地方分権を進めた国がやはり再度、日本自身が活力を持っていける一つの大きなキーポイントだ、このように実は思っております。

 ところで、この地方分権については、総論はいつも賛成で各論になったら反対というのか、非常に難しい状況があろうかと思います。

 この間、平成十一年に地方分権一括法ができまして、それから、財源移譲の問題だとかそういう問題の中で、三位一体ということでずっと我々も参画をしてやってきたわけであります。そういう状況の中で、地方分権改革推進法、今回、三年の時限立法でできるわけでありまして、しかも、これをさらに進めていくのには、どうしても政治のリーダーシップというのか、あの三位一体改革のときも小泉さんの強いリーダーシップで推し進めてきたと思いますので、もう時間がないということでありますので、一言だけこの決意についてお尋ねをして終わりたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 現在のこの地方分権改革推進法をぜひ速やかに成立をさせていただきまして、その上において、地方分権改革推進委員会において、政府が作成する地方分権改革推進計画について、そのための具体的な指針の勧告等を内閣総理大臣たる私に対して行うことになっております。

 これを踏まえまして、政府としては、地方分権改革推進計画の作成から実施までを本法案が失効するまでの三年間で集中的かつ一体的に推進することとしております。

 そのためには、本法施行のさまざまな局面において、当然、内閣において私もリーダーシップを発揮していかなければ実効たらしめることができない、このように思います。特に、地方分権については、委員が御指摘になられたように、総論賛成でも各論に入るとこれは反対だ、そういう問題が生じてくるわけでありますが、そこは、この推進法の精神にのっとって、リーダーシップを持って、日本の未来のためには、また地域の活性化のためには、この地方分権を着実に力強く進めてまいらなければならない、そのためのリーダーシップを発揮していくということを申し上げておきたいと思います。

谷畑委員 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 総理とは初めて質問させていただくわけでありますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 先ほど谷畑議員の質問にもありましたけれども、公明党は連立を組ませていただいて七年になるわけでありまして、小泉内閣五年半の連立を組んでまいりまして、このたび、小泉総理から安倍総理、我が党も神崎代表から太田代表ということで、いわば連立第二期に入ったということでございます。

 先ほど、大変力のこもった改革の意欲を総理の方は披露していただいたわけでありますけれども、やはりこの国の方向をたがえないように、また国民の安寧を実現できるように、この連立内閣を、安倍総理を私たちも支えてまいりたいというように思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思いますし、ぜひまた頑張っていただきたいと思う次第であります。

 それで、私の方は、大体この法案に沿って、非常に短い時間でありますが、質問させていただきたいと思います。

 この法案は、先ほど総理のお話にもありましたけれども、戦後の日本が中央集権的な地方行政体制があって、その地方行政体制が非常に効果があったんだろうと思うんですね。それで高度経済成長を達成ができたわけでありますけれども、しかし、その後、非常にいろいろなところに問題も起こってきたということもありまして、平成五年に衆参の地方分権の推進決議が行われ、それ以降、平成七年に地方分権推進法が成立をし、後、推進委員会に五次にわたる勧告をいただいて、平成十一年に地方分権一括法が成立をしたわけでございます。

 それで、この地方分権の推進に関しまして、特に政治の舞台で、非常に私自身も大変だった思い、総理もそのような思いでいらっしゃると思いますが、平成十六年から十八年の三位一体の改革であります。この三位一体の改革は、国庫補助金を削減する、また地方交付税を削減する、また税源を移譲する、こういうようなことであったわけでありますけれども、終わってみますと大変な疲れが出てきて、これ以上の地方分権が本当にできるのというようなことを皆さんが感じられたことなんだろうと思います。

 それで、それを振り返りますと、例えば補助金の削減ということを行ったわけでありますけれども、この補助金の削減も、補助率の引き下げで行ったり、これは地方団体の方からも、やはり国の関与は残っておるじゃないか、地方の自由度を高めるというような方向になっていなかったのではないか、こういうようなことをおっしゃるわけであります。

 ここで、より一層の地方分権を進めていくということに対しまして、これから、この法案は基本法、プログラム法であります、先ほど総理がおっしゃったように、これから各論に入るわけでありますが、各論に入りますと、間違いなく、中央省庁の役人がいろいろな反対の行動を起こしてくることも考えられるわけであります。このような状況の中で、総理はこの地方分権を断固進めていくというような御意思を当然ながら持っていらっしゃるだろうと思いますが、総理のリーダーシップが非常に重要であります。また、総務大臣のリーダーシップも必要であります。ここで、総理のそういう観点でのリーダーシップ、どのように考えていらっしゃるのか、御所見をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 かつて、日本が右肩上がりの高度経済成長を実現している段階においては、この高度経済成長によって得た果実を国が地方に分配することができたわけであります。ある意味では、当時、谷口委員が御指摘になったように、中央においてメニューをつくって、その中である意味効率的に分配ができたという指摘もあるかもしれません。しかし、いよいよ、かつての高度経済成長は難しい、そしてまた人口が減少していく中にあって、さらに財政の健全化のために国、地方がバランスよく歳出歳入の改革を行っていかなければ、私どもが今目指している二〇一〇年代、二〇一一年のプライマリーバランスの黒字化をまず達成して財政を健全化していく、そういう道のりに乗せていくことも難しいわけでございます。

 そういう中におきましては、徹底した歳出の見直しを国、地方で行っていく。と同時に、地方において、地方の発展を考えていく際に、かつて、国がメニューをつくって、そのメニューで、こういうメニューをやりたい人いますかと手を挙げさせていくという手法において、補助金をつけて、お金をつけて、そして国も口も出してという形での地域の活性化は、これはもう壁にぶち当たった、私はこのように認識をしております。これからは、いかに地域が本当に本気になって、やる気を持って、地域のよさを生かして地域の未来をつくっていくことができるかどうか、そういう仕組みをつくっていかなければならない。そのためには、権限を地方に移していく、まさに地方分権を行わなければ、地域にとっての未来、それはやはり国にとっての未来になっていくわけでありますから、活力がなくなってしまう、私はこのように思います。それを必ずやらなければならない。そのために、私はリーダーシップを発揮していく決意であります。

 先ほど申し上げましたように、総論では、恐らくほぼすべての方々が賛成していただけるのではないかと思いますが、しかし、各論に入りますと、こういう権限はやはり国に残しておいた方がいいという意見もあるでしょう。しかし、それを乗り越えて、地方に分権を進めていく。権限を渡し、そして、それと同時に地方にも責任を持っていただいて、自主的に、そして意欲を持って、工夫をして将来をつくり出していただく、そういう仕組みをやはり政治のリーダーシップによって私はつくり出していきたい、このように決意をいたしております。

谷口(隆)委員 強いリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、一方で、最近の地方の状況、いろいろな情報があるわけでありますが、例えば福島県の知事の逮捕だとか、先日は和歌山県の知事の逮捕がございました。また、岐阜県では裏金問題等があって、国から地方に権限、また財源、税源を移譲していくわけでありますけれども、受ける方の地方は一体大丈夫なのかといったような声もあるわけであります。

 このような状況を総理は一体どのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 昨今の一連の地方の首長による、知事による不祥事、大変残念でございます。本来であれば、こうした不祥事にかかわっていると指摘されている知事の皆さんも、初めて選挙に出たときには大きな志を持って、有権者の皆さんと約束をして、地域を必ずよくしていく、そういう志に燃えておられたんだろう、このように思うわけでありまして、その志を我々政治家たるもの決して忘れてはならないと思います。

 そして、それと同時に、チェックのきく、そういう仕組みを強化していく。例えば議会との関係や、監査委員会もそうでしょう。そうしたこともやはり検討していく必要もあるのかもしれない、このように考えております。

 いずれにいたしましても、行政の長たるものは常に襟を正していく、この精神が必要ではないかと思います。

谷口(隆)委員 総務大臣の方にも、地方の首長の問題、また地方のこのような、国民から非常に批判を受けておるような状態をかんがみて、具体的な対策等があればぜひ打っていただきたいと思う次第であります。

 あと、時間が限られておりますので、もう一問、これで終わりたいと思います。

 夕張の問題なんかがありまして、再建法制をどうしようかとか、また、地方団体のディスクロージャーがどうも明らかでない、透明性がないというようなことだとか、同じような基準を採用しておりませんのでなかなか比較がしにくいとか、こういう実態があるわけで、私は、まず、地方分権を進めていく上では、それぞれの自治体がみずからつくった公会計ではなくて、統一的な公会計をつくって、それを採用していただくということによりまして自治体間の状況も比較ができるわけでありますので、考えておるわけでありますが、総理、どのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地方の自己規律による財政健全化を促すため、まず財政情報の開示を徹底する必要があります。財政の悪化を早期に防止することが必要であり、こうした観点から地方公共団体の再建法制の整備に向けた検討を進めております。

 この再建法制を実効あるものにするためには、団体間の比較が可能な公会計の整備が重要であります。本年八月末に、原則として国の作成基準に準拠して財務書類の整備を進めるよう、地方公共団体に対して要請をいたしました。

 委員は公認会計士であられますからこの分野は御専門だろうと思いますが、公会計と再建法制の整備が相まって、財政情報の徹底した開示と地方の規律ある財政運営を図っていかなければならないと考えております。

谷口(隆)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきますが、総理、先ほどの公会計もそうでありますし、総論的におっしゃっていただいた地方分権改革、ぜひリーダーシップを持ってやっていただきますよう、また我々もそれを支えてまいりますので、頑張っていただきたいと思います。

 以上でございます。

佐藤委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。地方分権改革推進法案、総理出席のもと質疑を行わせていただきます。

 この法案の四条には、「地方分権改革の推進に関する国民の関心と理解を深めるよう適切な措置を講ずるものとする。」こういう条文がございます。そういった条文を踏まえますと、きょう総理に出席をしていただいてこうして議論を行い、総理みずから先頭に立って、この第四条にうたうように、国民の理解増進のために地方分権改革を先頭に立って訴えていただきたい、まず冒頭、このようにお願いをしたいと思います。

 本法案に入る前なんですけれども、実はこの総務委員会では、NHKに対する命令放送について累次質問をさせていただいております。私は、放送法第三条の番組編集の自由に抵触するおそれがある、こういうふうに考えるからでございます。

 もちろん、拉致問題の解決、これに全力を挙げる、これはもう論をまつことはないわけでございますが、どうしても、放送、報道の自由、こういったものに懸念を感じるからでございまして、菅総務大臣とも、あるいは下村官房副長官とも、累次この委員会で質疑をしておりますが、この懸念について、総理としてはどのように考えておられるのか、総務大臣の任命権者として、今回のNHK命令放送、個別的な事項変更についての御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま武正委員が述べられたように、今、北朝鮮において救出を待ちわびている被害者のために何をなし得るかという観点から、個々おのおの、いろいろと努力をしているわけであります。その観点から、NHKへの命令放送も含めて、できる限りの対応をしていきたい、こう考えたわけでございます。

 ただいま御指摘になられた報道の自由、表現の自由とのかかわりでありますが、放送法第三条においては、法律に定める権限に基づく場合でなければ何人からも干渉されない旨規定されていますが、今回の命令放送の事項変更は、同法第三十三条の定める権限により、電波監理審議会への諮問など、放送法に定められた手続に従って適切に私は行われたと認識をいたしております。

 いずれにせよ、最初に申し上げましたように、表現の自由、報道の自由は極めて重要である、このように認識をしておりますから、当然、番組の内容自体に踏み込むということはない、このように承知をいたしております。

武正委員 今回、電監審への諮問そして答申、そして翌日の命令、事項変更ということでございますが、ただ、電監審自体も会議の内容は公開されず、また議事録も、きょうになってもいまだできておりません。この間、総務大臣は速やかにということを言われましたが、もうそれこそ三週間以上経過をしております。こういった大変クローズドな審議であるということもぜひ御認識をいただいて、これは民主党がこれまでも二度国会に提出をしております。今総理が言われたように、放送の自由、報道の自由を守るためには、独立した国家行政組織法三条の行政委員会が必要である、そこが電波の許認可、放送の許認可、あるいは電波をどのように使うのか、こういったことを決めるべきである、こういったことを提出していること、これを指摘をさせていただきたいと思います。

 また、それこそ二〇〇三年秋の総選挙後、総理は幹事長として、当時テレビ朝日に対して、ニュースステーションでの報道内容をめぐって、BPO、BRCに対して申し立てを行い、そしてまた、その間、三カ月から四カ月、自民党議員はテレ朝には出演をしない、こういったことを当時責任者として担当されております。そのとき、自粛を解いて番組に出られたときに、報道の自由に対して権力側は謙虚になくてはならない、こういうふうに述べたと報じられております。

 まさに、今総理が言われたように、やはりこの点については、放送法第三十三条は確かにいいんですが、放送法三条に抵触するおそれがあるということで、私は、慎重な対応があってしかるべき、これを重ねて申し上げたいと思います。

 そこで、既に下村官房副長官からも、拉致問題は内閣の最重要課題である、総理みずから本部長になって取り組んでおられるというお話でございますが、この地方分権ですね、地方分権改革は安倍内閣にとって最重要課題の一つということでよろしいんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁をいたしましたように、地方分権を行うことによって、地方みずからが責任を持って、また意欲を持って地域づくりを推進していく、地域の活力に結びついていくと思いますし、またそれこそが、地域の、地方の未来であろう、このように私は思います。

 そのために、この地方分権というのは、これは待ったなしであり、私の重要課題の一つであるということは申し上げておきたいと思います。

武正委員 前回、下村官房副長官も、最初は最重要課題の一つですねと言って、うんとうなずいたんですが、その後の答えで重要課題というふうに後退をされたものですから、再度最重要課題の一つですねと確認をして、しっかりと、そうだと言っていただいたんですが、今総理は重要課題と言われたんですね。もう既に、最重要課題であるということは、拉致問題の解決、それから教育再生ということで安倍内閣としては発表されているというふうに認識しておりますが、前回下村官房副長官に最重要課題の一つであるとはっきりと言明をいただいたんですが、この点、再度確認をさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 最重要課題の一つであります。

武正委員 はい。しっかりと確認をさせていただきました。

 さて、そうした中の本法案でございますが、ただ、平成七年の法案と比較をしますと、地方への税財源の移譲について残念ながら後退したなという法案ととらざるを得ません。

 平成七年の当時は、「地方税財源の充実確保を図る」とはっきりと条文に書かれていたのが、今回は、「国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置の在り方について検討を行う」、こういうような形で、先ほど与党委員からも、三位一体改革での大変な中央省庁の抵抗と、こういったこともあったのか、後退をした今回の法案提出になっていると言わざるを得ないのですが、この点、安倍内閣として、最重要課題の一つ、地方分権改革にあって、地方への税財源の移譲、これは後退を余儀なくされたと認識してよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、まったく後退をしていないということは申し上げておきたいと思います。

 本法案におきましては、事務事業をできる限り地方にゆだねるとともに、国の関与を縮小する方向で見直しを行う、そして、これに応じて、国庫補助負担金、地方交付税、国、地方の税源配分等、財政上の措置を検討する、そして、その結果を地方分権改革推進計画に盛り込むこととしているわけでありまして、このように、本法案の全体の規定や文言の具体性を見れば、地方税財源を充実する方向は明らかであり、私は、最初に申し上げましたように、決して後退したものではないということは明言をいたします。

武正委員 後退はしていないということであっても停滞では困るんですが、前進をしているということでよろしいでしょうか。地方への税財源の移譲はさらに前進をさせる、しかも、三年間の地方分権改革推進計画を立てているときもしっかりとその前進はとまらないのであるということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この地方税財源の充実拡充につきましては、私が総裁選挙の際からも申し上げておりますように、来年の秋には抜本的な税制の改正を行います。そのときの論点の大きな一つとして、地方の税財源について、どのようにこれは拡充していくか、充実したものにしていくかという観点からも、この税制の改革を行わなければならないと考えております。

武正委員 ちょうどきのうですかね、地方分権改革推進の全国大会が憲政記念館で行われまして、総理は出席できず、官房副長官が代理で出られてあいさつ文を読んでおられましたが、そのときも、全国知事会会長を初め、このような御意見がありました。財政審の答申でしょうか、来年の予算編成に当たっては、それこそ税収が当初見込みよりも大幅に好調である、こうしたときに、国債の発行を抑えて、地方交付税もやはり削減すべし、こういったことを尾身財務相に提言した、こういったことはやはり問題である、地方交付税の維持、こういったことがその大会でも決議をされております。

 私も、総務委員会に以前三年半所属していたとき、片山元総務大臣とのやりとりもありましたが、交付税特会、その借り入れが今や五十三兆円になっております。それは、財政が非常に厳しい中で交付税の総額確保のために借り入れを特別会計でふやしてきた、こういった経緯が実はございます。そういった意味では、やはりこの特会の借り入れを返していかなきゃいけない。こういったこともありまして、単に交付税を削って国債発行額を、今報道では二十五兆円とかいうような報道がありますが、国債の発行額を下げればすべて財政的に規律がとれているというわけでもないし、まして国と地方のあり方を考えていけば、今回の財政審の答申はいかがなものかというふうに思うわけでございます。

 そこで、この地方分権について、前回は事後検証というものがやはり弱かったというふうに私は思っております。四百七十五本一括法の改正後の検証というものも行われておりませんし、また、委員会は、前回は五年を一年延長した六年、今回は三年で失効でございます。また、本法案では、総理の勧告遵守義務もなければ、勧告を国会に報告する義務もありませんし、旧法の第十条の計画の施策の実施状況の監視という、先ほどチェックということを総理言われましたが、この委員会がチェックする権能も今回の法案にはなくなってしまっております。

 ですから、私は、この法案が成立後、委員会が立ち上がったら速やかに、そのさまざまな勧告、そしてまたそれを実施していく、あるいは今の状況などの事後検証が必要だというふうに考えますが、これについて総理の御所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 この法律によりますと、本法案が成立をして失効するまでの三年間に集中的かつ一体的に地方分権を推進していくことになっております。その後、今回の改革によって講じられた措置による効果も含めて地方分権改革の推進状況については、今委員が御指摘になられましたこの検証は極めて重要でございますので、検証を行ってまいる考えでございます。

武正委員 そういったことを、今回の委員会立ち上げと同時に事後検証を進めていくということでお願いをしたいと思います。望みたいと思います。

 そこで、今、政府には、構造改革特区本部、地域再生本部、それから都市再生本部、中心市街地活性化本部、こういった地方にかかわる本部が四つある。林副大臣に前回おいでいただいたときも、それこそ内閣府に入ってびっくりした、こういうようなことを率直に述べておられましたが、やはりそれを集約していく必要があるだろうというようなことも言っておられます。

 また、構造改革特区については、来年通常国会に新法を出したい、こういうような政府の意向も既に発表されておりますが、そこにやはり分権の視点を入れていくべきであろう、こんなやりとりも林副大臣と前回しております。そういった意味では、今回のこの地方分権改革推進委員会の立ち上げと同時に、その残りの四つの本部とのやはり整合性、連携あるいは統合、こういったものを図っていく必要があるんではないかと考えますが、この点について総理の御所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 こうした内閣府に今置かれている本部でございますが、その本部ができたときにはそれぞれ理由があるわけでございまして、特区については地域を限定して規制の特例措置を講じる、あるいはまた、地域再生は省庁横断的な交付金や地域に貢献する株式会社への課税の特例等を通じて地域の独自の取り組みを支援するというものでございますが、しかし、もちろん、お互いに連携をしていくことが重要であろう、このように思います。また、もちろん、この構造改革特区を生かして地域の再生をしていく、いわば特区というのはそのツールの一つにもなるわけであります。

 一方、この構造改革特区というのは、改革を進めている極めて重要な柱、また、やはりそれも構造改革を進めていくツールの一つでもあり、我々も重要視をしているわけでございまして、それを一緒にすることによって重要性が薄れる危険性も他方ある。

 そういう中で、常にこれは目配りをしながら、これは合体させた方がもしかしたらいいのかもしれないということは頭に入れながら、構造改革を進めていく、あるいは地域活性化を進めていくためにはどういう体制がいいかということは常に検討をしていかなければならないと考えております。

武正委員 地方分権改革推進委員会が立ち上がっても、三年でそれは役割を終えます。また、前回も、地方分権推進委員会を六年間、そうした意味では存続をして計画を練り上げていった。そして、それが一括法につながっていったわけでありますが、委員会後の体制というものがやはり必要だと思うんですね。

 今言われた四つの本部は、いずれも本部長が総理であり、そして副本部長が三名から四名。拉致対策本部については副本部長は官房長官でありますが、そして、先ほどの四つの本部は、全閣僚が本部員、メンバーである。こういうような強力な全省庁挙げて地方分権改革推進をというような体制が私は他の四つの本部に倣って必要だというふうに思います。こうした本部をきちっと立ち上げて、その分権改革推進委員会が三年でそれこそ役割を終えた後のそうした体制づくり、それはもう今から同時に本部を立ち上げていい。先ほどの地方分権推進法あるいは一括法についても事後検証がきちっと行われていないということにもかんがみて、すぐ本部をつくり上げるべきだというふうに思いますが、総理がみずから本部長になってそうした本部を立ち上げる、そうした御決意、御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この地方分権改革の推進については、政府が一体となって集中的に、強力に推し進めていくことが必要だろう、このように思います。その中においては、内閣が、そして私がリーダーシップを発揮していかなければならないと認識をしています。その中で、どういう組織がいいのか、そういう観点から検討をしてまいります。

武正委員 地方分権改革推進委員会は、皆さん民間のメンバーでございますし、前回もやはり、先ほど与党委員からあったように、地方分権推進一括法のときも大変中央省庁の強い抵抗に遭ったわけでございますので、その轍を踏まないためにも、今度は、総理みずから本部長になった強い、そうした推進委員会をバックアップする組織をつくっていただくよう、これもお願いをしたい、望みたいと思います。

 さて、先ほど、地方の首長の逮捕あるいは辞職、これについては、総理からそれに対する考え方は述べていただいております。既に、二十四日の知事会でも、先ほどのようなことを全国の知事を前にして述べておられることは報道でも承知をしているわけでございますが、では、具体的にどうするかということでございます。先ほど、チェックあるいは議会というお話もございました。

 今回の法案の七条では、行政の公正確保、透明性向上、住民参加の充実、これを地方公共団体が実現しなければならないという項目がございます。そして第二項では、国はそれを支援するんだという項目があるわけでございます。先ほどの議会改革なども含めて、地方公共団体の統治ですね、それこそ内部牽制、外部監査、ガバナンスという言葉もございますが、これをやはり七条の二項にあるようにしっかりと国が支援する、これを総理として行うんだ、これを言っていく必要が、それこそ地方自治体に対して国の取り組む姿勢として必要だと思うわけでございますが、この点については、御所見いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まずは、こうした不祥事に対する取り組みについては、基本的にはやはりその地方自治体が、地方自治という精神のもとに、みずからがしっかりと対応していくことが大切ではないか、このように思います。

 各地方公共団体において、情報公開の徹底等により透明性の向上に努める、また行政運営をチェックする立場にある議会や監査委員会等がその権限を確実に行使するなど、その自律機能が十分に働いていくことが重要であろう。つまり、国がまず出向いていって、国がいわば権力の行使を行う、くちばしをまず入れる、指導するというよりも、まずは地方自治体そのものが、地方自治の精神のもとに、みずから自浄機能をこれは生かしていかなければならない。そして、今申し上げましたような、そういう整備を行っていく必要、あるいは効率あるものにしていく、既にある仕組みを実効あるものにしていくという努力をしていくことが大切だろう。しかし、当然そういう努力に対する支援は国がしていかなければならない、このように考えております。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

武正委員 まずは分権であるというようなお話もいただいたわけでございますが、ただ、今、全国の知事の出身省庁を調べますと、四十七都道府県のうち二十六の知事は中央省庁出身でございます。四十七分の二十六でございます。半分以上中央省庁出身。内訳は、旧自治省十五、旧通産省七、旧建設省二、旧農水省一、旧文部省一ということでございます。そしてまた、二十四の都道府県の財政課長は旧自治省出身でございます。つまり、四十七都道府県の半分が中央省庁出身者、そして半分以上の財政課長が旧自治省から地方自治体に出向している、こういった現状。

 やはり地方分権がまだ道半ばであるゆえに、こうした国から、中央省庁から知事をあるいは財政課長をということが現実に行われているわけですので、これはやはり中央省庁も改めるべきところは改めなきゃいけない。国の関与を減らす、あるいは地方支分部局、これをなくしていく、こういったことはもう地方分権推進法のときから出ているわけでございます。これが実はまだできていないということがこの知事の現状、財政課長の現状になっているわけです。

 知事があるいは財政課長が半分以上中央省庁あるいは自治省から占められているということについては、総理としてどのようにお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 知事の選任に当たっては、選挙において都道府県の有権者が決定をするわけであります。その経歴が中央官庁の出身であるということも含めて、これは情報が開示をされて、その結果選ばれているということではないでしょうか。

武正委員 地方分権が進んでいないために、中央省庁から知事を、あるいは旧自治省から財政課長を、こういった傾向があるということでありますので、ぜひ七条二項に基づいてしっかりと支援を国としてしていただきたい、このように思うわけでございます。

 さて、お手元に資料を配らせていただきましたが、地方自治体しっかりせいと総理はおっしゃられましたが、では国はやっているのか、こういう話でございます。六月十三日、官房長官として、それこそ随意契約の見直し、これを徹底されました。随意契約についての見直し状況、公益法人についての見直しは、それぞれ省庁で取り組み状況は既に発表されておりますが、それこそ民間契約についての見直しについてはまだ道半ばでございます。これについては、中央省庁の五百万円以上の契約の七割以上が随意契約であった、しかも合い見積もりは一切とっていない、こういったやりとりを経て、一般競争入札が原則である、そして随意契約の見直しをということをみずから官房長官として指示した。そして、新内閣でそれを当然受け継いでやっていただきたい、時間の関係もありますので、これは要望とさせていただきます。

 そして、お手元の、人事管理についての、九月十五日、中馬前大臣の、いわゆる天下り二年規制撤廃ということでございますが、私は、これはとんでもない提案だというふうに思っております。既に与党が平成十六年六月九日にもこの前段となるものは提案をしておりますが、内閣への事前報告、チェックなどを求めておりますし、二年規制、五年ルールなどの撤廃を与党も求めておりません。それが今回こうした形で出てくることは甚だ遺憾であるというふうに思うわけでございます。

 本来であれば、総務大臣に人事院の天下り二年規制をどう評価しているのかを聞きたかったんですが、時間の関係もございますので、総理に。

 この中の1、2、3、この項目でございますが、今回の二年規制撤廃をする前提として、「再就職ルールは廃止する。」その条件として、「1自らの職務に密接に関係する企業に対して、現職国家公務員が自らの再就職の打診、依頼等を行うことを禁止する」。「2再就職後の元国家公務員について、退職前一定の期間在職していた機関に対し、退職後一定の期間、就職先企業に関する契約・行政処分につき不正な働きかけを行うことを禁止する」。

 今さらこういうことを書かなければならないということは、では今こういうことはやっているのか、横行しているのか。そして、個人個人の再就職の働きかけはもちろん、省を挙げてのいわゆる再就職のあっせん、こういったことが既に行われているということもありますので、私は、二年規制撤廃は言語道断だと思いますが、こういったことを今改めて提案するということ自体が、地方自治体が襟を正す前に、まず国が襟を正すべきではないか、このように考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この中馬前大臣の私案でございますが、この中馬プランにおきましては、この前提となる基本的な考え方ということについては、これは、現在グローバル化している社会の中にありまして、日本の政府の意思決定も迅速に的確な判断をしていかなければならない。そのためには、官民から優秀な人材を集めていく必要があります。そのためにも、ある意味では、人事の交流、より開いていくという姿勢、これをあわせて進めていく必要があろう、私はこのように思うわけであります。

 民間で経験をした人たちが、その民間の経験を生かして官において地域や社会や国に貢献をしていただく、あるいは、官において経験を積んだ人が一回民間に出て、その民間での経験、官での経験を生かしてさらにもう一度、では官でそうした経験を合わせて貢献をしていこうということも可能な、柔軟な人事的な対応もできることによって、より行政も活性化されるであろうし、いろいろな人材も集まってくる、そうした観点から、どういう仕組みにすればいいかということにおいての一つの提案だろう、私はこのように思うわけであります。

 その中で、当然、再就職後の公務員の不正な行為に対しては厳正なる対処をする、いわば行為規制を極めて厳しく行うと同時に、今までの年限、いわば再就職するまでの間の再就職ができない期間との兼ね合いをどうするかというのが一つの中馬さんのプランとして出てきているわけでございまして、これも一つの考え方として、また、やはりまだ国民のいわゆる天下りと言われるものに対しての厳しい目もあるわけでございまして、そうしたことを総合的にこれから検討していかなければならないと思っております。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

武正委員 あした経済産業委員会で、官製談合防止法、ようやく民主党案、政府案両案審議となりますが、やはり官製談合と天下り、これが密接に結びついている。このことはもう申すまでもないわけでございまして、今のように総合的な検討ということを国が言っているようでは、とても地方公共団体に対して襟を正そうということは言えないということでありますので、国もみずからその襟を正していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田学と申します。

 二十分という短い間ですが、総理、よろしくおつき合い願いたいと思います。

 本法案の質疑に入る前に、新たに総理に御就任されたということも含めて、改革に関しての御決意と意気込みについて、お考えについてお伺いしたいと思います。

 地方分権に関して言えば、前総理の小泉政権の間でも最重要課題の一つとして議論されておりました。三位一体の改革という名前のもとにいろいろ進めておりましたが、あの小泉総理でさえ、最後の最後には、省庁からの巻き返し、いわゆる族議員と言われる方々の猛烈な意見具申等々がありまして、野党側から見てみても、一歩前進とは言いがたいような、半歩前進に終わってしまったんではないかなという残念な思いもあります。そしてまた、少しでも気を許してしまえば後退ということもあり得るのではないかなというふうに思います。

 そういう意味において、総理に御就任される際に、改革のたいまつを引き継ぐというお言葉を使われておりましたけれども、小泉政権の改革を引き継ぐ安倍総理に関して数点お伺いしたいのです。

 安倍総理におかれましても、小泉政権、本当にいろいろなことをされてきたと、官房長官としてお支えになられた御経験もあるでしょうから思われると思いますが、郵政の問題に関しても、非常に国民の議論を惹起させる、そしてまた解散・総選挙という本当に大きな形での政治の動きがありました。その点において、昨日等々から郵政解散に係る復党問題というものも国民の間を非常ににぎわせております。

 その点に関してですが、小泉総理が巻き起こした改革の大きな一つである郵政解散というもの、その解散に係り、郵政民営化に賛成しない者は公認としないという形で選挙を行い、大きな支持を得て、自民党は非常に大きく議席を伸ばしました。復党問題というものはそのときの正当性とかかわってくる問題だと思いますが、総理にお伺いしたいんですが、復党ということ自身、小泉改革の後退になるのではないかというお考え、あるでしょうか、ないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 政党というのは、一つの政策だけではなくて、さまざまな政策を推し進めてまいります。昨年の、政権公約二〇〇五、総選挙の際の二〇〇五におきましても、さまざまな改革のメニューについて国民に信を問うたわけであります。内政だけではございません、外交もあります。また、内政の中におきましても、社会保障の分野等々多岐にわたっているわけであります。そして、私が小泉総理から政権を受け継ぎ、所信表明で私の国づくりの方向について政策を述べたわけでございます。種々の政策についてお話をさせていただいたわけでございます。その中で、私の国づくりに賛同して一緒にやっていきたいという方々においては、ぜひ一緒に協力をしてもらいたいと私は考えています。

 他方、今議員が御指摘になられましたように、昨年の総選挙は、確かに郵政の民営化是か非かということにおいて国民の審判を仰いだわけでございますから、郵政民営化について反対であるという方、既にこの法律は通過をしたわけでありますが、これからも民営化に向けて実際にいろいろなことを運んでいかなければならないわけであります、実際に郵政民営化に向けて進めていくわけでございます。ですから、このことそのものに反対をする人は、ほかの政策が一緒の方向であったとしても、それは残念ながら復党は認めるわけにはいかないという判断をしたのでございます。

 そうした条件についても、国民の皆様の前に党としてお示しをいたしました、どういう条件であれば復党を認めるということもお示しをした。かつての自民党であればそういうことはしなかったのだろう、このように思うわけであります。いわば、そうした密室の中においての判断ではなくて、国民の皆様の目の前で、どういう判断において我々はこの復党を認めたのか、その過程についてもオープンにしてまいったつもりでございます。大切なことは、改革を進める上におきましても、やはりオープンに進めていくことが私は大切であろう、その考え方は今後とも持ち続けていかなければならない。

 そして当然、改革について申し上げれば、今、世界はグローバル化しました。そしてまた、日本は人口が減少していくという局面に入りました。もちろん少子化対策に対しましては、着実な少子化対策を実行していかなければならないと考えておりますが、この人口減少局面においても日本は成長していかなければ豊かな未来はつくれない、そのためには当然、構造改革は力強く進めていく、加速をさせていく決意であります。

寺田(学)委員 最後にもう一問だけ、整理ですけれども、そういうことであれば、郵政民営化法案に賛成しない方の復党はあり得ない、今後もあり得ないという御発言ということで理解してよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 これは自由民主党の問題でございますから、国会の場でそれについて私が述べるのもどうかとは思いますが、今私が申し上げたとおりでございます。

寺田(学)委員 今言われた部分を整理すると、この間の選挙は、一つの政策、郵政民営化是か非かだけで選挙を国民に対して行った。そして、政党というものは、一つの政策だけではなくていろいろな政策で議論し、合致して、結びつくものであるという話をされました。しかし、その後、今回の復党に関しては、オープンな形で、皆さんにわかる形で、郵政民営化法案に賛成するということでなければ復党は認められないんだということをひとつ国民の皆様にお示しいたしましたということをさきの答弁では言われておりましたので、今後とも、郵政民営化法案に賛成しない方の復党はないんだなということの整理で理解させていただきたいと思います。

 法案の方の審議に入りますけれども、この法案が通った後、改革推進委員会ですか、ちょっと名称の方は正確ではないかもしれませんが、それのメンバーが総理の指名によって形成されます。そういう意味において、この法案の審議もさることながら、その後のことに関して、このメンバーがどのような方になるのかということは非常に重要な問題になると思います。地方六団体の方からも、メンバーの選定に関しては、六団体が推薦する方をぜひとも入れてほしいという話も要望として挙げられております。

 その点に関して総理にお伺いしたいんですが、本当に地方の自立、みずから立つということ、そしてみずから律するということも含めて考えますと、自分たちが自立して仕事をしていくという暁には、自分たちで物事、政策決定にも関与したんだ、決める側の立場にひとつ立ったんだということの結果があればこそ、みずから律することも、みずから進んでやることができると思うんです。

 そういう意味においては、六団体が、どなたになるかわかりませんが、この方をメンバーに入れてほしいという要望に関しては、総理が指名する範疇においては取り入れるべきではないかなと私自身は思っているんですが、メンバーの選定に関して六団体の意見を取り入れるということはないでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 地方分権改革推進委員会のメンバーにおきましては、地方分権を進めていく上にあって、すぐれた識見を持った方々に参加をしていただきたい、このように思います。当然、その中には地方の実情等に精通した方々にもお入りをいただく必要もあるでしょうし、また、地方分権を進めていくということは国のあり方にもかかわるわけであります。ですから、国全体のことを考えて、あるいはまた国民的な視点に立って意見を言っていただける方々にも入っていただきたい、このように思うわけであります。

 今委員から御指摘になられました点におきましては、全国知事会議におきましてもそういう御指摘がございました。当然、我々も地方のそうした声にも耳をよく傾けながら委員の選定を行っていきたい、このように考えております。

寺田(学)委員 確認のためもう一回聞きますけれども、地方六団体が推薦してきた方を取り入れる御意向はあるのかないのか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 委員の構成全体につきましては、先ほど申し上げましたような観点から決定をさせていただきたい、このように思うわけでありますが、いわば、今申し上げましたように、よく地方六団体の皆様方の声にも耳を傾けながら委員を決めていかなければならない、こう考えております。ですから、当然、六団体の方々にもそれなりに御納得のいただけるように我々も努力をしていきたいと思っております。

寺田(学)委員 御検討されている最中だという認識に立ちますけれども、言い方は悪いかもしれませんけれども、私は地方が甘えている部分というのは多分にあると思っています。国が勝手に決めたんだとか、国が面倒を見てくれなきゃだめだとか、さまざまなことが理由としてあるからこそ、甘えの体質というのが地方には残っている部分がまだあると思います。ですので、いや、地方が決めたんでしょう、自分も参画して決めたんでしょうということが言いわけをさせない一つの大きな理由にもなると思いますので、こういう実質的に勧告を出す委員会ということで直接的に加わることではないでしょうけれども、この分権改革推進委員会の方に六団体が自分たちで推薦してきた方を入れるというのは、そういう意味において非常に有意義なことだとも思います。

 議題を移しますけれども、今度は、地方と国の協議の場についてお伺いしたいと思います。

 現状、さまざまな場合において、地方と国とが協議し合う場というのはその時々設置されていると思いますが、まず一般的な認識ですけれども、今の協議の場は、頻度及び内容等々を含めて十分であると総理自身は思われているのか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私も、国と地方の協議の場には、官房長官時代また副長官時代も含めて何回か出席をいたしました。例えば知事会議も先般ございました。そしてまた、官房長官時代は、三位一体の改革を進めていく上において六団体と協議の場もあったわけでございます。

 十分か十分でないかということでありますが、これをどの程度をもって十分とするかということはなかなか難しいわけでございますが、我々といたしましても、なるべく地域の実情について触れなければなりませんし、そういう意味におきましては、地方の団体の方々からの声を伺うことは極めて有意義であろう、私はこのように認識をしております。

寺田(学)委員 十分であるかないかは、まさしく当時官房長官、そして今総理である安倍総理の主観的な判断が一番重要なことだとは思います。それを満たす上で制度というものをいろいろつくっていかなきゃいけないんですが、前々総務大臣の麻生太郎現外務大臣の総裁選挙時の公約というものを、他党である私が持っているのもなんですけれども、拝見させていただきました。さすがに総務大臣をやられていた御経験があるからか、地方との協議の場に関しては非常に強く言及されております。

 その中の一つのアイデアとして、国と地方の協議の場は自分がつくったんだという自慢とともに、「これを制度化し、」言っていることは法制度化し、「経済財政諮問会議と同様の総理主宰の会議とします。」ということを総裁選時の公約に掲げられている。

 私はこのことは検討の余地がある一つのアイデアだと思うんですけれども、安倍総理自身そのような具体的な策は提案されていなかったですけれども、このような前の麻生総務大臣が提案されているアイデア、検討の余地はないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私も麻生大臣の御意見は承知をしております。私も麻生大臣と総裁選を争っておりますから、麻生大臣のこの点に対する考え方も承知をしております。

 国と地方のかかわり方につきましては、国と地方の役割分担という考え方、あるいはまた国と地方のかかわりについての考え方等、これはさまざまな論点があろう、このように思うわけでありますが、多角的な観点から、どのような国と地方の対話の場を設けるか研究をしていかなければならないと思います。

寺田(学)委員 多角的にいろいろ検討されるんでしょうけれども、このアイデア、具体的なアイデアですが、このアイデアに関して検討していただけますか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 どういう形で場を設けていくのかにつきましては、どういう場が実際に実効的なものになっていくかという見方もあるでしょう、そういういろいろな観点から検討をしていかなければならないと思います。

寺田(学)委員 いろいろな観点から検討されるのも大事だと思うんですが、先ほどから申し上げているとおり、地方自体が政策決定の場に、自分たちの地方の政策、国が今管轄として持っているいろいろな権限に関しても、地方みずからが入って自分たちも参画して決めたんだということは、自分たちで決めたんだからちゃんとやれよということの発信のエネルギーになると思いますので、別に外交問題等々ということに関して地方の方々を巻き込んで議論してほしいと言っているのではなくて、まさしく地方のことに関しては地方で決められるように、国の政策決定の場にも、六団体なのかだれなのかわかりませんけれども、代表者を入れて議論するということが私は非常に重要だと思いますし、今後の大きな検討課題にはなると思います。

 時間ももう三分ぐらいしかないので、小さな問題を少し総理にお伺いしたいのですが、公選法に関してです。公選法の話を総務大臣にお伺いすると、各党各会派においていろいろ御議論していただきたいという決まり切った御答弁でありますので、まさしく総裁である安倍総理に一言お伺いしたいんです。

 来年、統一選挙がありますけれども、地方の首長または地方議員の選挙において、ただいまマニフェストは配れるどうこうということでいろいろ話をしておりますが、法定ビラすら配れないような状態になっています。今、多選禁止だ何だとか、地方の自立だとか、地方ができることは地方でという話がありますけれども、それの根源をなすものは選挙で正当に選ばれることだと思います。今も正当には選ばれていると思うんですけれども、情報が十分開示されているような選挙法になっているとは限りません。

 来年四月の選挙ですけれども、知事選もあります、都道府県議会の選挙もあります、市町村議会もあります。その選挙において、せめて自分の名前が入って自分の政策を述べられるような、公選はがきではなくて、法定ビラを配れるような制度にしなければならないと思っています。民主党としてはそのような改正に関しては一刻も先を争って成立にこぎつけたいと思うんですが、自民党さんの協力もなければできないし、各会派の方々の御協力も必要だと思っています。

 そういう意味において、来年の統一選挙です、もう時間が迫っています。そのときに各候補者が自分の名前の入った、政策を述べているビラを配れるような法改正を進めていきたいと思うんですが、総裁として、その必要性をお感じになられて改正するお考えはないでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になられましたように、地方選挙におきましては、通常、頒布可能なものははがきに限られているけれども、それを何とか拡充すべきではないか、そういう声があることは私も承知をしております。

 しかし、菅大臣も述べられたように、これはやはり各会派、政党間において協議をするべきではないか。私は自由民主党の総裁でもありますが、ここに立っているのは、総理大臣としてこの場に立っているわけであります。まさにこれは選挙のあり方の根本にかかわることでございますから、やはり政党間で協議をした上において議論を深めていただき、判断をしていただきたいと思います。

寺田(学)委員 質疑の時間が終わりましたので、以上で終わりにします。

佐藤委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 それでは、これから二十分間という時間ではありますが、総理を中心に幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 早いもので、総理も就任されて二カ月が経過をし、お祝いの時期でももうないだろうというふうにも思います。先般の新聞を見ておると、安倍内閣の支持率一四ポイントも減ということで、そんな報道もされているわけでありますので、この二カ月をそろそろ振り返る時期でもあるのかなというふうに思うわけです。

 冒頭に、総理、この二カ月間を振り返って、御自身として、これは自分としてよくやったな、これは評価できるぞ、あるいはもう一点、ここはちょっともう少し力が足らぬかったなというようなところ、それぞれ一点ずつ、あれば簡潔にお願いします。

安倍内閣総理大臣 まだ私は二カ月しかたっていない、このように認識をしております。これからまさにこの国会において重要法案が、この地方分権改革推進法もそうでありますが、他の重要法案もいわばいよいよ最終段階に議論も至っている、このように思います。そうした実績を上げた上において国民の皆様に御評価をいただきたい、こう思うわけであります。

 また、来年度の予算編成に当たって、予算編成というのは、どのような国づくりをしていくかということを予算をもって示すものであると私は思います。そういう意味におきましては、どういう予算編成をしていくかということにおきましても、これは御評価をいただかなければならない。当然、財政を健全化していくという考え方のもとに予算編成を行っていきたい、歳出改革を進めていく、そしてまたさらにめり張りをきっちりとつけていく、そういう予算編成を行ってまいりたい、このように思うわけであります。

 外交につきましては、主張する外交、これは日本の国益をやみくもに主張するものではなくて、地域や世界の平和と安定のために何をなすべきか、また日本は何をする考えが、どういうことをする用意があるかということを説明していく、主張していく外交を展開していきたい。そういう意味におきましては、APEC等の首脳会談におきまして、私は、主張する外交は展開できているのではないか、このように自負をいたしておる次第であります。

 いずれにいたしましても、私が自分で評価をするというよりも、これは国民の皆様に、これからどういう仕事をしていくかということについて御評価をいただきたいと思っております。

逢坂委員 そこで、ちょっと別件なのでありますが、いわゆる郵政民営化に反対された方を今度復党させるという問題について一点だけお伺いしたいんですが、この皆さんたちから誓約書をおとりになったということが報道されておるんですけれども、その中に、この誓約に違反した場合は政治家としての良心に基づき議員を辞職いたしますという誓約書を、自民党総裁安倍晋三殿あてということでこれをとっているわけですね。私は、この問題は、離党するという誓約書ならまだいざ知らず、議員を辞職するという誓約書というのは憲法に抵触するのではないか、こういうものを徴取するということはいかがなものかと。

 この点について総理の御見解をお伺いします。これはまさに院の問題であろうというふうに思うわけです。

安倍内閣総理大臣 昨年の総選挙において、実は小泉総裁に対して、私も当時は幹事長代理でありましたが、我々全員がその文書に署名をして出したものでございます。ですから、そういう意味におきまして、昨年の総選挙においてすべての候補者が書いたもの、当時はいわば造反したと言われている方々についてはこの文書は書いていないということもありまして、ほかの議員と同じ文書を書いていただいたということでございます。

逢坂委員 質問の趣旨は、今回こうした誓約書をとるということが憲法上問題がないのかということと、これは院の問題であろうと。辞職するしないということを誓約をとることそのものに重大な問題があるのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いわば議員にとってまさにこれは最大の責任のとり方であります。そういう精神において、同じ方向に向かって、昨年は小泉総裁が進めていく郵政民営化という大きな課題がありました、それを一緒に進めていくという意思表示をしていただいたということでございまして、今回も同じ手続を踏んでいただいたということでございます。

逢坂委員 同じ方向へ向かっていく意思を表示するということは、それはそれで問題はないというふうには思うのですが、だからといって、その担保として議員をやめるという誓約をとることに問題はないのかどうか、憲法上の問題はないのかどうか。しかも、議員というのは国民に選ばれているわけであります。事実、保利耕輔元文部大臣も憲法上問題がある表現だというような発言をどうもされているようでありますけれども、この点、いかがですか、もう一度。的確にこの点答えてください。

安倍内閣総理大臣 私は、政党の一つの方向として、きっちりとこの方向性とけじめをつけたということであって、それは私は憲法に抵触するものではないと思っております。

逢坂委員 きょうの本題はこれではありませんのでこのぐらいにしたいと思いますけれども、この点、重要な課題ありというふうに私は思っておりますので、いろいろな声があるようでありますので、真摯に受けとめていただきたい。オープンに議論をしているということでありますけれども、これが果たして国民に認められることなのかどうか、よくお考えいただきたいなというふうに思います。

 さて、本題に入ります。

 九月二十九日の総理としての初の衆議院での演説の中で、総理は改革という言葉を十六回、数え方によっては十七回ほどお使いになっているようでありますけれども、総理の思うところの一般的な改革というのはどういうことなのかというのをお聞きしたい。総理は改革とはどういうことなのかというふうに考えているか。

 それともう一つ、私の手元にある辞書によれば、改革というのは、悪い点を改め変えることというふうに、たまたま私の手元にあった国語の辞書には書いてありました。総理が思う日本の改めるべき悪い点というのは何かというふうにお考えなのか。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 改革については、改革する対象が悪いことかどうかというのはこれはまた別の問題であろう、このように思います。つまり、今まであった制度も、その時代の要請においてその制度がつくられた、その制度は有効であり意味があった。しかし、時代の変化とともに、むしろその制度があるために前に進めなくなっていく、時代の要請に対して対応できなくなってくる、そういう仕組みもあるわけでありました。それを変えていくということが改革であろう、私はこのように考えるわけでございます。

 つまり、改革というのは、一度やれば終わるものではなくて、日々これは改革に努めていかなければならない、きょうよりもあしたをよりよくしていくためには、常に改革の精神で我々は取り組んでいく必要があると思っております。

逢坂委員 そこで、今回の法案でありますけれども、この法案の中には、地方分権改革推進法案ということになっているわけですが、以前の分権の法案はこの改革という言葉が入っておりませんでした。今回の法案に改革という文言を入れ込んだその意図、思いというのはどういうことなのでありましょうか。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 地方分権を進めていくというのは、まさに中央集権的なこの国の姿を、地方にできることは、また地方がやるべきことは地方にお任せをする、権限も渡していく、そして当然税源についても考えていくという大きな仕組みの改革であろう。つまりこれは、改革をしていくんだという、やはり政府一体となった意気込みが必要であり、その意気込みを込めたものであると御理解をいただきたいと思います。

逢坂委員 時代の要請に合わなくなった制度を時代の要請に合う形にしていくことが改革の一つだというような話を先ほど総理はされましたが、国と地方の関係を見直していくということもぜひしっかりとやっていただきたいというふうに思うわけですが、この改革の推進の主体というのは一体だれになるのかというところ、そしてこの改革というものを進めていく原動力、力になるものは総理は一体何だというふうにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 改革を進めていくまさに原動力は我々政治のリーダーシップであろうと思います。そしてそれを進めていくためには、国民また地域の皆さんの御理解がなければ実際に物事は進んでいかない。つまり、改革のエネルギーについては、我々がまさにエネルギーを持ってこの改革を進めていく、しかし同時に、国民の協力がなければ前には進んでいかないと思っております。そのためにも、国民の皆様と対話を行い、我々が説明責任を果たしていくことが重要である、こう認識をしております。

逢坂委員 私は、改革の主体というのはやはり国民だろうというふうに思うんですね。政治のリーダーシップというのも極めて大事だというふうに思いますが、国民がやはり主権でありますから、主権者たる国民が、これはやはり直すべきだ、これはやはりこのままでいいんじゃないかというような、そういう声、それこそがやはり改革の主体ではないかというふうに思うわけです。

 そうして、しかも、国民の皆さんがそう思う、そういう気持ちを持つということ、それもまさに実態を明らかにしていくというところから始まるであろう。今の時代の要請に合うか合わないか、この制度はどうだ、それがちゃんと国民にわかっているかどうかということが大事だというふうに私は思うのです。

 したがって、徹底した情報公開が必要であり、その情報公開のないところに国民のきちんとした世論の形成というのはできないというふうに考えますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 当然、情報の公開は私は基本であろうと思います。

 特に、改革を進めるということは現状を変えるわけでありまして、今までの現状になれ親しんでいる方々も多い、そういう方々にとっては、痛みが伴う場合もあります、戸惑う場合もあるでしょう。しかし、そうしたことをできる限り避けていく、納得をしていただいた上で一緒に進んでいく必要が私はあると思います。そういう意味におきましては、特に改革を進めていく際には、情報を公開していくことが重要であろうと思います。

 また、地方分権改革推進委員会におきましても、そういう意味におきまして、国民的な視点から、高い見識を持った方々にお入りをいただいて議論をしていただきたいと思っております。

逢坂委員 さてそこで、分権改革でありますけれども、せっかく分権だと言っている中で、昨今、自治体の首長の不祥事が随分出ているという話が先ほど来もございました。この自治体の首長の不祥事と多選との関係ですね、自治体の首長の任期が長くなるから不祥事が出るんだというようなことについてもいろいろと今議論が進んでいるようですが、この点についてどう思われるかということと、自治体の首長の不祥事が発生することと分権化の流れとの関係ですね、不祥事があるから分権化を少しとめた方がいいのではないかという議論も特にこの週末のテレビのニュースなどではあったようですが、このあたり、二点について、総理、どうお考えですか。

安倍内閣総理大臣 不祥事と多選の問題なんですが、要は、これはやはり、どういう方が責任を持って首長として行政を行っていくかということに私は基本的には尽きるんだろう、このように思います。

 しかし、いろいろある議論の中におきましては、多選することによって、組織がこの首長だけを見詰めていくという組織になって、硬直化をすることによっていろいろな弊害が出てきやすいという指摘もありますし、それはそのとおりなんだろう、私もそう思うわけであります。しかし、多選を重ねながら、立派に住民の信を得ながら政策を進めておられる方々がいるのも事実でありまして、これはもうすべてを一つのことではかれないだろう。

 しかし、一方、そうした不祥事が起こりにくい仕組みを考えていくということも、私はそれは当然大切ではないか、このように思うわけでございまして、この多選の問題につきましては、総務省に設置をされた首長の多選問題に関する調査研究会において御議論をいただけるものと期待をいたしております。

 それと、地方分権推進とのかかわりでありますが、むしろ地方分権を進めていくということは、これはもっと責任感を持って事に当たっていただくということになるわけでありまして、不祥事があるからやはり地方に任せられないというのは、私はむしろ本末転倒だろう。進めていくべき地方分権は進めていきながら、その中でさらに、進んでいく地方分権、責任がより重くなっていく地方の自治において、チェック機能がどう機能していくかということについて考えていくべきではないか。先ほど申し上げました、議会との関係、また監査委員会との関係等、このチェック機能を強化していくということも議論をしていくことも必要ではないかと考えております。

逢坂委員 総理から後段、不祥事があるから分権の流れをとめるということではなくて、分権をきちんとすることで、とめるということは本末転倒なんだという話がありましたけれども、私もまさに同感でありまして、どんどん分権化を進めることによって、こうしたことについても地域の自己規律が働いていくものというふうに思いますので、ぜひ、いろいろな声、世論があるようですけれども、それに屈することなく、分権の流れをがっちりとしたものにしていただきたいというふうに思います。

 そこで、私たちは、とかく分権というと、国から自治体、地方へ権限などの移譲をしていくことが分権だというふうに思いがちでありますが、地方六団体の主張などを聞いてみても、国と地方が対等の立場で物を決定していける、その仕組みを持つこと、これが実は分権の本当の姿ではないかというふうに思うわけですが、総理、この点いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国と地方の関係でありますが、これはまさに国と地方それぞれの役割があろうと思います。その中で、それぞれが責任を持って行政を進めていかなければならない。国には国の役割があって、そして地方には地方の役割がある、地方の役割については国が一々口出しすることではない、私はこのように考えております。むしろ主従の関係ではない、こういうことではないかと思います。

逢坂委員 きょうは冒頭に少し重たい問題を話したものですから、予定のことをすべて聞けているわけではないんですけれども、市町村合併について、総理はどのようにお考えでしょうか。

 これまで随分進めてまいりましたが、これの評価、よい点、あるいは市町村合併をしたことによって地域ではこんな困っている点が出ているのではないかということについて、御認識があればお知らせください。

安倍内閣総理大臣 市町村合併は、これは当初の予測よりも私は進んでいると認識をしております。例えば、私の選挙区も二市七町あったわけでありますが、今は二市だけになりました。

 当初はいろいろな懸念もあったわけでありますが、この市町村合併というのは、まず、地方分権を進めていく上において、地方が行政力、行政能力を高めていく必要があります。そのための合併でもあろう。そしてやはり、さらに、行政改革を進めていくためには合併をしなければならない。これは、かつての大合併から随分、五十年近く時を経ているわけでございます。地域のインフラの状況も随分進んだろう、インフラの整備もされた中において、やはり進めるべき行政改革も進めなければいけない。そういう観点から、私は、この地方分権は有意義であろう。

 しかし、その際、きめ細かな住民への行政サービスが少し毀損されるのではないか、不便になるのではないかという声もあるわけであります。そうした声に対しては、行政サービスの質が落ちないように努力をしていかなければならないと思っております。

逢坂委員 最後に、合併に関して、日本の国土の実態を見ると、人口密度の高いところ、人口の多いところもたくさんあるのも事実でありますけれども、人口が極めて希薄なところもたくさんあるわけであります。私の住んでいる北海道・ニセコなどは、人口十万人集めようと思うと、面積四千平方キロが必要になるんですね。こういうところでのいわゆる市町村合併と都市の合併あるいはさまざまな地域の合併というのは随分性質が違っているんだろうと思うわけでありまして、一律の合併政策だけで今総理がおっしゃるような分権の受け皿になり得るか、あるいは行政改革が進むかというと、必ずしもそうでもないというふうに、私は地域をいろいろ歩いていて感ずるわけであります。合併そのものを否定するわけではありませんけれども、やはり基礎自治体のあり方には多様性が必要だというふうに思いますが、この点について最後にお伺いをしたいと思います。

 それと、冒頭に申し上げた誓約書の問題でありますが、憲法に抵触しないというふうに先ほど総理はおっしゃったようでありますけれども、これはやはり重大な発言ではないかというふうに私は感じます。

佐藤委員長 質疑時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

逢坂委員 この点について、もし何かあればもう一度お伺いして、終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 基礎自治体のあり方についてでありますが、先ほど市町村合併の進め方についても、これはやはり地域によって進捗ぐあいがそれぞれの事情において大分差が出てきているのも事実であろう、このように思います。それぞれの地域の実情に応じて地域の住民の皆さんが判断をされていくことであろう、このように思うわけでありますし、それはむしろ多様性が私は大切ではないか、このように認識をいたしております。他方、先ほど申し上げました市町村合併の意義についても十分に認識をしながら判断をしていただく必要があろうと思います。

 冒頭での誓約書の件につきましては、憲法に反するものではないと私は考えております。

逢坂委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 地方自治の拡充とか地方分権の推進というのは、これは憲法第八章に由来するものですから、私は、憲法についての質問を少ししておきたいと思います。

 それで、一九九四年、ほぼ十年前になりますが、「リベラル政権を創る会」という会の発起人の名簿のトップには、あいうえお順ですから、衆議院議員安倍晋三というふうに出ています。これは、「新たな対立軸を提起する」とこの設立趣意書にあって、「それは全体主義的強権政治対リベラルな政治である。すなわち、日本国憲法の精神を尊重し、堅実で自由・公正な社会と民主主義的な手続を重んずる政治である」ということで、この基本理念、政治姿勢等もうたっているわけであります。

 安倍総理はもともと憲法を変えようという方の改憲論者だと思うんですが、政権に復帰してからも憲法を変えるということを、今は自民党は自民党案も発表しておられるし、総理も五年をめどに憲法を変えるということでお話もありますが、このリベラル政権をということで、十年前には、もともと改憲論者なんだけれども野党に転落した自民党が政権に復帰するためにリベラルとか憲法の尊重ということを言っておられたのかどうか、これを最初に伺います。

安倍内閣総理大臣 当時、私どもは野党であったわけでありますが、私は、いわば自由主義という意味においてのリベラルという方向性については賛同したわけでございます。そして、当時の与党の政治の進め方については、これはいわば憲法の精神に反するのではないか、強引なやり方ではないか、こう批判をしたわけでございます。

 いわば、憲法が改正されていない時点においては、時の行政府は当然、憲法を遵守していく、憲法を尊重する義務が課せられているわけであります。これは当たり前のことであろうと思うわけでありまして、現在、私は、行政府の長として憲法を遵守していく、尊重していく、これは憲法九十九条にあるとおりであります。

 一方、憲法には改正手続についても書かれているわけであって、私は、その手続にのっとって、憲法を遵守しながら憲法を改正する必要があるのではないか、こうずっと考えてきているわけでありまして、その観点におきましては私の考えは一貫しているということを申し上げたいと思います。

吉井委員 もともと改憲論者の安倍さんなんですが、野党に転落したときにはリベラルだ、憲法尊重だということを言ってこられたという点では、全くの御都合主義でやっておられるなということを感じております。そういうことがよくわかりました。

 次に、外務大臣や中川政調会長の核保有発言が繰り返されておりますが、安倍総理自身が官房副長官であった二〇〇二年、早稲田大学で「憲法上は原子爆弾だって問題ないですからね、憲法上は。小型であればですね」という発言をされたことについては、当時、二〇〇二年六月十日の衆議院の武力攻撃事態特で、安倍官房副長官の答弁で、そこで申し上げたことは岸答弁をいわば引用したということでございますとありました。

 この岸さんの答弁というのは、一九五七年五月七日の参議院の内閣委員会で、侵略を阻止するという性格のもの以上を持つということは憲法が禁止しておる、つまりそれは自衛の範囲を超える、憲法違反だ、ただ核兵器と名がついたら一切いけないのだということは私は行き過ぎだと思うというのが岸元総理の答弁でした。

 一九六〇年五月十八日の衆議院の安保特での岸元総理の答弁は、どういうものでも核兵器と名がついただけで憲法上は禁止されているのだというふうに憲法は読むべきではないという発言でした。

 ですから、安倍さんの早稲田での発言、「憲法上は原子爆弾だって問題ない、憲法上は。小型であればですね」という話は、結局、岸総理の、自衛のためなら核兵器も禁止されていないとする一九五七年の発言を受けて、それを紹介されたわけですが、あなたも、岸元総理と同じように、憲法上は自衛のためなら核兵器も禁止されていない、こういう立場に立っておられるのかどうか、これを伺います。

安倍内閣総理大臣 官房副長官当時も国会で答弁をいたしております。今委員が御指摘された点については、早稲田大学における講義の際に、かつての総理の答弁を引用して紹介をした、こういうことでございまして、それを紹介する際にも、政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持しているし、私もその考え方と変わりがないということを申し上げているわけでありますし、政策上はそれを放棄しているということを申し上げて、純法理上についてのかつての発言として紹介をさせていただいた、こういうことでございまして、ですから、この純法理上の憲法解釈についてお話をすると、政策上のことが全くそぎ落とされてしまって、政策も変えたのかという誤解が意図的にされる場合もございます。

 ですから、はっきりと申し上げておきたいわけでありますが、非核三原則は堅持をしていく。また、原子力基本法において、原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限り行う旨が規定をされています。さらに、我が国は、核兵器の不拡散に関するNPT条約上の非核兵器国として核兵器の受領、製造等を行わないという義務を負っている。条約上あるいは法律上について今申し上げた、そして政策上について申し上げた、その上で、法理上につきましては既に官房副長官当時も答弁をしているとおりでございまして、それはもう既に委員も御承知のとおりではないかと思います。

吉井委員 日本の核兵器に関する法律は、今も少し挙げられましたが、憲法九条で戦争放棄と武力を持たないということとしているとともに、さらに、憲法九十八条により、憲法の範囲内で原子力基本法を定めているわけですね。その第二条で「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、」として、憲法を受けた法律で明確に核兵器の開発というのは禁止をしております。

 また、九十八条の二項、これは国際条約に係る遵守義務の方ですが、我が国が批准した核防条約第二条により、非核保有国として一切の核兵器は持ってはいけないと。もし日本が小型であれ大型であれ核兵器を持てば、条約違反となることは明白であるわけです。

 安倍総理の早稲田での講演にあった、憲法上は小型核兵器だって問題ないという発言なんですが、これは岸内閣以来の政府解釈で、自衛のための必要最小限度を超えない実力として核兵器保有は容認するということから、核兵器保有議論に道を開いてしまっているんですね。

 だから私は、ここで二つ伺っておきますが、改めて、あなたは岸元総理と同じように、憲法上は自衛のためなら核兵器も禁止されていないという立場なのかどうか。もう一つは、やはり核兵器というのは憲法違反だとはっきり言って、その立場を法律上も政策上も貫くべきだと思うんですが、この二点を伺います。

安倍内閣総理大臣 憲法上の解釈について言えば、従来からの政府の見解どおりでありまして、純法理的な問題として申し上げれば、我が国が自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法第九条によっても禁止されているわけではなく、たとえ核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有することは必ずしも憲法の禁止するところではないと、政府として従来から解釈として申し上げてきているとおりであります。

 一方、先ほど申し上げましたように、政策論として非核三原則を堅持するということを私は既に総理として申し上げております。そしてまた、法律によって、原子力基本法、また条約上においても禁じられているということは明確であるということは申し上げておきたいと思います。

吉井委員 結局、核保有論が繰り返される根底には、憲法九条第二項の政府解釈があるんですね。ですから、このままではこれを繰り返しやっていくわけで、やはりそれは憲法解釈として間違っていて、核兵器は憲法九条違反だと、はっきりそのことを言い切って、法律的にも政策的にもやっていくということが必要だ、このことを申し上げて、時間が参りましたので終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 まず、総理の憲法観、歴史観、重複する部分があるかもしれませんが、あえてお聞きしたいと思います。と申しますのは、憲法第八章「地方自治」、九十二条、九十三条、九十四条、九十五条と、明確に憲法の中に位置づけられているからであります。

 そこで、総理の所信表明演説で総理が示した改憲理由、私なりに見ますと三つあったと思いますが、一つは、押しつけ憲法論ですね。それからもう一つは、古い憲法論というか、時代に即した憲法に変えなきゃならぬということ。それから三つ目に、新しい時代にふさわしい新しい憲法、二項めと重複しますが、そういうふうなことだったと思います。

 その第一点の押しつけ憲法論について、実は、本院の憲法調査会最終答申で何と言っているか。十七年四月の話でありますが、総理も十分承知していると思うんですけれども、その報告では、「GHQの関与を「押しつけ」と捉えて問題視する意見もあったが、その点ばかりを強調すべきではないとする意見が多く述べられた。」承知していると思うんですが、こういう報告書がございます。

 つまり、本院の正式な調査会の中での議論はそういうふうな形で集約されている。それを本院から選出された総理が改憲理由に挙げるということは、私は理に合わないんじゃないかな、こういう感じがするんですが、その点についての答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘された院のそれぞれの意見でありますが、これは多数決で決定されたということではなくて、それぞれが自由に意見を述べられたんだろう、このように思います。私も一議員として、当然、憲法に対する考え方、なぜ改憲を目指すかということについて、私の考え方を述べたということでございます。

重野委員 いや、私が指摘をしたのは、憲法調査会の最終答申では明確に、「GHQの関与を「押しつけ」と捉えて問題視する意見もあったが、その点ばかりを強調すべきではないとする意見が多く述べられた。」という記述があります、それに対して総理はどういう認識を持っているんですか、こういうことを聞いている。

安倍内閣総理大臣 それは、憲法調査会においていろいろな議論がなされたんだろう、このように思います。一々、個々の議論について、いわば占領軍の影響があったけれども、それを理由として挙げるべきではないという意見もあっただろうと。これはしかし、影響があったということについては、やはり影響があったということではないだろうかと。ですから、これは一々、これはざっくりと総括をするということではなくて、一人一人の意見をそれぞれよく吟味しながら尊重していくことが大切ではないか、このように思うわけでありまして、私は私の意見として申し上げているわけでございます。

重野委員 憲法調査会の中でそういうふうなまとめをされている部分がある、それはそれ、安倍晋三は自分はこういう考えでいくんだ、こういうふうに受けとめていいんですか。憲法調査会の中でどういう議論があったか知っているけれども、だけれども、自分は自分の主張としてこういう考えを持っている、自分の憲法観はこうです、そういうことを今言っているわけですね。

安倍内閣総理大臣 憲法調査会において、最初に申し上げましたように、そこで議決をとって、それが院の意思であるということは全く決めていないわけであって、そこで、憲法について、それぞれが憲法観について自由闊達な議論がなされたわけでありまして、それはそれで極めて意義深いことである、私はこのように思うわけでございます。

 そして、当然、私も一議員として、憲法を変えることを政治スケジュールにのせていくべきである、こう申し上げている以上、私の考え方を開陳する、これは当然のことであろうということでございまして、それがなぜ憲法調査会でやられたことに反するということになるのか、私は全く理解ができません。

重野委員 ちょっと視点を変えまして、総理がお書きになられた「美しい国へ」の中に総理の憲法観が開陳されておりますけれども、その端的な例は、憲法前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とのくだりに対して、このように書いているんですね。「敗戦国としての連合国に対する”詫び証文”のような宣言」だ、こういう決めつけをされているんです。

 私は、現行憲法に基づいて総理として選出をされた、そういう立場において、この憲法をかくのごとく、おとしめると言っていいと思うんですが、そういうふうな理由は一体何なんですか。お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 私は、党首討論におきましても、現行憲法の主権在民、自由と民主主義、基本的な人権、そして平和主義、こうした基本的な精神、理念については、憲法を新たに制定するに際してもこの精神は受け継いでいくべきであると考えている、このように述べておりますし、自民党の憲法改正草案もそのようになっております。

 私が前文について述べましたのは、私の感想を述べたわけでございまして、今委員が引用されました「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」こう書いてあるわけでありますが、私の当時の感想として述べたことは、これを除去しようとしている国際社会というよりも、除去しようと我が国は主体的にそれに努めるべきだという書きぶりにするべきではないかという思いをそのような表現を使ったわけでございますが、しかし、当然、先ほど申し上げましたように、現行憲法の持っている基本的な精神、原則については、これは引き継いでいくべきだということも述べているわけでございます。

 それと同時に、私は、先ほども吉井議員と議論をしたわけでありますが、行政府の長として、憲法を遵守していく、憲法尊重義務を当然負っている、これは当然のことではないかと思います。

重野委員 この憲法論議は安倍総理が総理の座にある限り続くんだろうと思います。

 そこで、最後に、憲法と地方自治というのは、冒頭に申し上げましたように、憲法の中にきっちり位置づけられている問題です。戦後初めてそういうふうなことができたわけですね。

 総理は戦後レジームということをよく口にされておりますが、憲法体制が初めて地方自治を明記して、そして方向を定めて、それに向かって戦後、地方自治体、国を挙げて取り組んで、今をつくった、そういうふうな点から見ますと、まさしく憲法体制そのものが今日の地方自治、それは不十分な部分はあるかもしれませんが、なし得たというふうに私は思っています。

 そういう意味では、私は、地方自治という視点に立っての憲法観、こういうふうなものを明確に、是とするのであれば是とするということを明確にやはり発信しなきゃいけないんじゃないかなと。そうしないと、今審議しているこの改革推進法案も意味のないことになってしまう。その点を総理はどのように受けとめますか。

安倍内閣総理大臣 地方と国の役割をしっかりと仕分けしていって、そして、地方がやるべきこと、国がやるべきこと、これを仕分けした上において、地方がやるべきことは地方にやっていただく、地方に責任を持っていただく、国があれこれ口出しをしない、そして税源についても考えていく、地方分権を進めていく、着実に力強く進めていく。この地方分権を進めていくという考え方で、私は、内閣において、この地方分権を最も重要な方針の一つとして、重要課題の一つとしているわけでございまして、当然、それは地方自治を重んじているということにほかならないと思います。

重野委員 終わります。

佐藤委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 以上をもちまして本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、本案に対し、谷公一君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。谷公一君。

    ―――――――――――――

 地方分権改革推進法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方分権改革推進法案に対する修正案につきまして、その提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 内容は二つであります。

 第一に、財政上の措置のあり方の検討についての観点の修正であります。

 政府原案では、第六条において、国は、地方公共団体に対する国の負担金、補助金等の支出金、地方交付税、国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置のあり方について検討を行うものとされております。

 本修正案では、財政上の措置のあり方について検討を行うに当たっては、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保等の観点からこれを行うことが必要であることにかんがみ、第六条中にその旨の文言を追加することとしております。

 第二は、地方分権改革推進委員会の勧告に係る国会報告についての修正であります。

 政府原案では、第十条第一項において、地方分権改革推進委員会は、地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告するものとされております。

 本修正案では、地方分権改革推進計画の作成に当たり、地方分権改革推進委員会が勧告する指針が有する重要性にかんがみ、内閣総理大臣は、地方分権改革推進委員会から地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針の勧告を受けたときは、これを国会に報告するものとし、第三項の規定を追加することとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、地方分権改革推進法案に反対の討論をいたします。

 反対の第一の理由は、法案は、地方分権改革の推進や地方公共団体の自主性、自立性を高めることをうたっておりますが、その財政的な保証である税財源の充実確保が明確にされていないことであります。

 地方分権の推進は当然ですが、今、地方分権を言うなら、地方の税財源の充実確保こそが最重要課題であります。三位一体の改革も、この地方の税財源の充実確保方策の一つとして国から地方への税源の移譲が提案されたにもかかわらず、国の財政悪化の中でその方針がゆがめられ、税源移譲三兆円に対し、国庫補助負担金や交付税など約十兆円の国から地方への財政支出が圧縮され、税財源の充実どころか財政基盤を掘り崩す結果となりました。ところが、法案には、九五年の法案にあった「地方税財源の充実確保を図る」との文言もなく、「財政上の措置の在り方について検討を行う」と一般的な規定があるだけで、これでは地方の税財源の充実確保の確たる保証がありません。

 第二に、法案は、社会保障の切り捨てや消費税増税など、今後十年余りにわたって国民に一層の犠牲を押しつける骨太方針二〇〇六の歳出歳入一体改革の一環に位置づけられるもので、交付税の削減を初めとする今後の国から地方への歳出削減をねらう先駆けの法案ともいうべきものだからであります。

 骨太二〇〇六は、歳出歳入一体改革と称して、社会保障の切り捨てや消費税増税など、今後十年余りにわたって国民に一層の犠牲を押しつけるものであります。この骨太方針二〇〇六の歳出歳入一体改革に向けた取り組みには「地方分権に向けて」という文言はありますが、それは、国民の地方分権の推進に対する期待を逆手にとって、交付税や国庫補助負担金などの国から地方への財政支出の削減をやりやすくしようというもので、憲法で保障された地方自治の本旨、すなわち住民自治と団体自治を拡充強化することを意図したものではありません。この間、地方分権の名のもとに、福祉や教育の分野などで国の責任の後退あるいは放棄が行われ、それとともに、国から地方への財政支出が削減されてきました。法案は、こうした動きを一層促進し、これまでにも増して交付税や住民生活に密着した国庫補助負担金などの国から地方への財政支出の削減を行おうという意図を持ったものであります。こうした法案を容認するわけにはまいりません。

 最後に、修正案によっても地方税財源の充実確保の問題点は解決されていないことを指摘して、討論を終わります。

佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 地方分権改革推進法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、谷公一君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、谷公一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党・無所属の会の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。寺田学君。

寺田(学)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと思います。

    地方分権改革推進法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 今回の地方分権改革が国と地方の関係の基本にわたる見直しを行うものであることを踏まえ、地方分権改革推進委員会の委員の人選に当たって地方公共団体の意見の反映に特に配慮するとともに、地方分権改革推進計画の作成に当たっても、地方公共団体の意見を幅広く、誠実に聴取するよう、最大限の配慮を払うこと。

 二 地方分権改革を集中的かつ一体的に推進するためには、地方分権改革推進委員会の調査審議が円滑かつ効率的に進められることが必要不可欠であることにかんがみ、同委員会の権限が地方分権改革に関係するあらゆる事項に及ぶとの前提の下に、同委員会の要請に応じ最大限の協力を行うよう、万全の措置を講ずること。

 三 地方分権改革を集中的かつ一体的に推進するためには、地方公共団体との密接な連携と関係府省の誠意ある対応を確保し、国民の関心と理解を得ることが必要不可欠であることにかんがみ、地方分権改革推進委員会の調査審議の基本方針を可能な限り早期に示すことを同委員会に対して要請すること。

 四 地方分権改革推進計画の作成に当たっては、地方分権改革推進委員会の勧告を最大限尊重してその実現を図ること。

 五 本法に基づき地方分権改革推進計画が実施に移されるまでの間においても、地方分権改革のための措置を検討中であることを理由として、地方分権に向けた動きを停滞させるようなことのないようにすること。また、この間において、地方に関係する制度の改正を行う場合、当該改正が本法に基づく地方分権改革と整合性がとれたものとなるよう、特段の配慮を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

佐藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

佐藤委員長 この際、御報告いたします。

 去る二十一日、議長より本委員会に送付されました、議員武正公一君外五十四名からの独立行政法人の組織等に関する予備的調査の要請につきましては、理事間の協議により、衆議院規則第五十六条の三第三項によって、去る二十四日、調査局長に対し、予備的調査を命じましたので、御報告いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十四分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の秋田県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年十一月十五日(水)

二、場所

   秋田県市町村会館

三、意見を聴取した問題

   地方分権改革推進法案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 佐藤  勉君

       井澤 京子君   鍵田忠兵衛君

       谷  公一君   谷畑  孝君

       土井  亨君   武正 公一君

       福田 昭夫君   森本 哲生君

       高橋千鶴子君

 (2) 意見陳述者

    秋田県知事       寺田 典城君

    秋田市長        佐竹 敬久君

    井川町長        齋藤 正寧君

    秋田商工会議所名誉会頭 辻  兵吉君

 (3) その他の出席者

    総務省大臣官房審議官  門山 泰明君

    総務省大臣官房総務課長 渡会  修君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

佐藤座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院総務委員長であり、今回の派遣委員団団長の佐藤勉でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様方御承知のとおり、当委員会では、地方分権改革推進法案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を賜るため、当秋田市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いをいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いを申し上げます。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。

 次に、議事の順序につきまして申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の谷畑孝君、谷公一君、民主党・無所属クラブの武正公一君、自由民主党の井澤京子君、鍵田忠兵衛君、土井亨君、民主党・無所属クラブの福田昭夫君、森本哲生君、日本共産党の高橋千鶴子君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 秋田県知事寺田典城君、秋田市長佐竹敬久君、井川町長齋藤正寧君、秋田商工会議所名誉会頭辻兵吉君、以上四名の方々でございます。

 それでは、寺田典城君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

寺田典城君 公聴会がこの秋田県で開催されることを感謝申し上げます。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 過去のこと、現在、これからのことを含めて三点をお話しさせていただきます。

 七年に、皆さん御承知のとおり、分権推進法が成立して、十二年には分権一括法として四百七十五本の法律のもとで国の機関委任事務が法定受託とか自治事務になったわけなんですが、その状況の中で、私たち地方にとりましては、これからの分権型の社会が到来だということで、そして、十二年には新しく市町村合併特例法が大改正されて、私自身も、六十九市町村、秋田県はあったわけなんですが、すべての町村に対しまして、これからの分権時代、市町村合併のあり方について説明に回りました。そして、現在は、市町村合併のもとで、六十九が二十五の市町村になっているわけでございますが、その節、これからの分権時代のあり方、国、県、地方のあり方について説明をどのようにして歩いたのかということを少し説明させていただきます。

 この赤い、まあ、親方赤丸なんですが、これは日本国家だと思ってください。国がこういう形、秋田県はこのような形になっています。市町村はこうでございます。現在の国家の体制のあり方は、要するに、事務から権限からすべてがこのように県と重なっているという説明をさせていただく。そして、県も市町村とも重なっています。このような形でとらえることができるんじゃないでしょうかと。ですから、これからの地方分権の中では、一括法の中では権限も移譲されるし、それこそ税源も移譲される時代になるので、自己決定、自己責任のもとで市町村運営をしなきゃならぬということで、このどこが矛盾しているか。例えば、この高さをコストだとしますと、コストがこんなにかかっています、三分の一ぐらいは要らないじゃないの、このくらいのコストでやれるんじゃないかという話をして歩きました。

 ですから、こういう中で、今、市町村合併というのはどういうことですかという問いの中で、これが市町村の仕事の範囲、これが権限とコストだとすると、これからは合併することによって権限がふえて仕事がふえてコストを落としてください、こういう時代になりますということで、県民、住民に訴えて、市町村合併が進んできたわけだ。

 ところが、現実としてはまだ権限も財源も移譲されていない。三兆円の税源は移譲されたことにはなっていますが、交付金だとか、補助金が交付金の形になったりしている、実際はほとんど何も変わっていないというのが現状じゃないんでしょうかということなんです。

 それで、現在は六十九市町村が先行して合併して二十五になったもので、こんな形になったと想定していただきたい。十年間で行政コストを三割落とさなきゃならぬということで、私は、国家財政の再生にもつながるんだ、市町村が行政コストを落とすことによって国家の財政の再建にもつながるということで一生懸命努めてきたわけです。

 秋田県もこのような形で七十二の条例を改正して事務事業を委託しています。隣に秋田の市長さんがおりますけれども、秋田県としては、各市町村に中核都市並みの権限を移譲するということで、プロポーザー、申し込み、手挙げ方式でみんな権限を移譲しております。ところが、現実としては、まだ国家は権限もすべて移譲せず、まだこのような形で、内政というか国内の地方自治に対する配分とかそういう形の行政が進んできている。ですから、私としては、これからの行政の中で、日本国家の行方というのはどうなるんだろうと。

 今ここに一つの、これをちょっと参考にしていただきたいんですが、例えば、秋田県は、この表の中では、私は平成九年に知事に就任したんですが、その当時の人件費は千八百六十五億でした、警察から学校の先生から入れて。それが、平成二十五年には千五百億までになります。平成十八年には、現在千六百四十三億でございます、これは警察から学校教育から。

 そして、例えば、知事部局に関しては五千人体制から三千五百人という形です。行政コストとしてはどうなるんですかと言われますと、昭和六十三年並みの一般会計予算になります。簡単に言うとそういうことです。交付税は、現行のシステムの中では約三割減というふうな見当をして行政運営をしております。ですから、昭和六十三年並み、平成元年並みの行政コストでいかなければ日本の国家ももたないだろうという形の中で、サービスを落とさずにやっている。

 ただ、これはいかんせん、公共投資なんかはやはりピーク時の二千八百億とか、そういう当時から、八百八十億、九百億ぐらいになっちゃうということは事実ですね。それは避けられないんですが、社会保障負担費だけは一・二倍ぐらいになっちゃう、そのような形です。

 それで、今の行革の中で、私たちがこれから国に訴えたいのは、まず、一つの現状として、国が骨太方針で今後五年間の歳出改革の概要というものを出していますね。それの中で、ひとつ人件費を見ていただきたい。二〇〇六年は地方と国を合わせて三十兆円です。それが、自然体のままでいきますと三十五兆円。そして、いろいろな面で人員カットとかいろいろなあれをして三十二・四兆円にしますという形なんですね。二・六兆円を削りましたから、何とかかんとかそれで全部で十四兆とか十一兆とか、改革をして、ふえるのをふやさないで進めていきますというような形で骨太方針を出しているんですけれども、これは本当のまやかしで、まやかしというか、こんなことをやっていけるでしょうかということなんですよ。

 秋田県は、その前、またもとに戻してもらいたいんですけれども、例えば人件費、緑の棒で、十八年度は千六百四十三億が、二十五年度では、申しわけないですけれども、千五百億になります。そこまで進めなきゃなりません。平成九年は千八百六十五億だった。ここまで下がって、こうしています。これが現実。

 秋田県は、人件費とか庁費、トータルでいけば、全国でかからない方から二番目とか三番目の範囲に入っていますが、私、市町村合併のとき、十年間のこれからの財政見通しを各町村にお願いして立てていただきました。県議会からも非常に、少し県として越権行為じゃないのか、自治体にそんなに関与するのかと。ですが、それよりも、市町村が生きていくには行政コストを削減しなきゃならぬということで、基本的には、市であったら人口千人当たり行政職員が、すべての職員含めてトータルで七人ぐらいでやっていかなきゃならぬだろう。今は恐らく十二人ぐらいおるでしょう。それから、小さい町だったら十人ぐらいでやっていかざるを得ないだろう。これでできますよということです。私も市長をやっておったものですから、そういう経験はしていますので。それから、秋田県行政としては、行政職で人口千人当たり三人でやっていける。ですから、県行政が三人プラス市町村行政七人で十人でやっていける数字というのはどうなるんですかというと、恐らく二割を削れる。

 だから、人件費とかそういう基礎的なものを削らずに、国家が、地方が無駄遣いをしているとかこうだとか言う。国家自体が、今現在、日本国はどういう状態であるかというと、私は夕張市よりひどいじゃないかなと思うんですよ、申しわけないですけれども。五十兆円ぐらいの歳入があって、地方には十兆円ぐらい出さなきゃならぬでしょうけれども、まず五十兆円ぐらいの中であって、御承知のとおり、五百七十五兆円も借金があります、まだふえていきます、こういう行政をどうしますかと。

 なぜかというと、私たち地方行政をやっていると、成り行き管理じゃやっていかれないということですよ。国、国家財政の見通しと交付税の問題とか税源移譲の問題を、少なくとも三年、五年先のことの見通しを地方分権社会の中で早く、分権法、今度は分権改革推進法となっていますから、改革が本当に進むんじゃないのかなと思っていますけれども、確実な形で進めていかなきゃならない。

 ところが、これはやはり政治主導ですよ。政治マターでなきゃやっていけないと思います。官僚、霞が関がやろうとしても、これはやっていけないと思う。まだ同じ形です。はっきり言って、国家が地方に配分とか、権限、予算をあれして、このような形でまだ高コスト。ところが、これじゃ、秋田県でも市町村も行政コストは落ちないんです、皆さんから関与されたのでは。二重行政になりますから。国に全部書類を届けなきゃならぬでしょう。

 ですから、分権型の社会はどうあるべきかということを、これがある面では国家財政の再生にもつながるんだという、もちろんそういうことによって市町村行政もより豊かになる。

 ですから、現在の市町村、国の財政というのは、日本丸食堂だとすれば、例えばカレーライスを売るのを、千円のカレーライスは五百円の材料費を出してやるから、補助金を出すから持っていけ、そのかわり、レシピは全部国で決めますよと。秋田県は比内鶏があるんだけれども、比内鶏を使ったカレーライスじゃなくて、東京で決めた、まあ、豚肉でも何でもいいですよ、豚骨で、豚肉入れて、あれ入れて、これ入れて、カレーライスをつくりなさいと。ラーメンでも何でも同じです。すべてのメニューが東京のレシピで決まるということ自体が、今、これからの分権型の社会ではもう通らないだろう。それから、国家自体が経営の能力の範囲を、地方が余りにも大きくなり過ぎて、管理能力を超えちゃっているということをひとつ御理解賜りたいと思う。

 そういうことで、十五分間、私、決められた時間ですが、くどいようで何かあれなんですが、現実の問題をひとつそのような形で表現させて、ですから、分権型の社会を早くつくらせて、そして、市町村、地方行政に対して自己決定、自己責任のもとで地域の特性を生かした行政のサービスを提供する、これがこれからの日本の姿じゃないか、それが基本的には財政再生につながる、私はそういうことを公聴会で発言させていただきたいと思います。

 以上でございます。よろしくお願いします。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、佐竹敬久君にお願いを申し上げます。

佐竹敬久君 秋田市長の佐竹でございます。

 意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私からは、分権の本論に入ります前に、実は、地方分権というのは単に行政制度だけの問題ではなくて、さまざまなファクターを、いわゆる三次元的に物を考えていかないとなかなかできないのではないのか、そういうことで、若干前置きをお話し申し上げまして、その後、本筋に入らせていただきます。

 まず、秋田市でございます。秋田市は明治二十二年に市制を施行しております。東北では最初の市制施行でございます。平成九年には中核市となっておりまして、十七年には旧河辺町、旧雄和町と合併いたしまして、ほぼ県人口の三分の一ということになっております。旧雄和町というのは飛行場のあるところでございます。

 ちょうど紅葉シーズンも終わりまして、あと一カ月足らずで雪の季節を迎えるわけでございますが、実は、今冬といいますか、昨年の暮れからことしのお正月ちょっとにかけまして、秋田市の歴史上最大の積雪であります。実は一年間に降った雪はそう大したことはございませんけれども、これは多分、異常気象であろうかと思います。四百年前までさかのぼって、藩政時代には特に気象台はないわけでありますけれども、藩の日誌がございます。そういうものを含めて調べましても、四百年来初めて。というのは、一年分の雪がたった十日で降ったということであります。

 これで我々は大変苦労いたしまして、通常の年でありますと五、六億円ぐらいの除排雪経費で済みましたのが、三十四、五億プラスその後のさまざまな復旧のために約四十億という金がかかりまして、市の金庫が空っぽになった。実は、この状態を東京に伝えることが私ども大変苦労いたしました。

 雪は非常にきれいなものというふうにとらえられておりますけれども、一番大変だったのが雪を捨てる場所でございます。田んぼに捨てると、その田んぼは買い取らなきゃならないんです。雪というのは大量の泥を含みます。単に河川に捨てますと、河川の汚染の原因にもなります。当然、道路の除雪をする際、グレーダー、ブルドーザーでかきますとアスファルトも一緒についてくるということで、雪は、私ども緊急措置として小学校のグラウンド、広場、公園に捨てましたけれども、全部もう一回土を入れかえなきゃならない。これを東京の方にお伝えしますと、きれいな水になるんだから川か田んぼに捨てたらというので、大変苦労いたしました。

 ただ、秋田市は通常はこういうふうな雪は余り少ないのでありますけれども、これほど最近の気象がおかしくなっている。これは私は非常に重要なことではなかろうかと思います。そしてまた、同じ秋田県内でも全く雪が大量に降るところと余り降らないところ、同じ秋田県内でも多様な気象状況だということでございます。

 もう一つは、格差の問題であります。

 今、格差の是正ということが非常に叫ばれております。実は、これを産業経済面からちょっとお話を申し上げたいと存じますが、かつて日本の、これは結果論としていいか悪いかは別にいたしまして、産業立地について一定の哲学を持ってやっておりました。首都圏の光化学スモッグ等の要因等もありまして、地方への産業分散、地方の産業立地を支援する、あるいは地方への産業立地にインセンティブを与えるようなさまざまな施策があったわけでありますが、これは今、国としては非常に薄まっております。

 そういう中で、今、バブル崩壊後のいわゆる経済、景気の立ち直りという中で相当な投資が始まりつつありますが、東アジアも含めて、先端産業あるいは新しい将来を見据えた産業政策には国が相当程度の投資的な政策をとっておりますが、実はこの分をほとんど自治体が肩がわりしているのではないのか。国による産業政策といいますか立地政策がほとんどない状態であります。そういう中で、当然、例えば、来る企業、企業誘致をする際にも、今はそういうものがないわけでありますので、直接そのインセンティブを与えるいろいろなものについて自治体が求められます。これは、端的に言いますと現ナマであります。

 そうしますと、旧来はいわゆる大きな装置型産業でありましたので首都圏近郊ではなかなか立地ができなかったんですけれども、最近の産業形態はそう多くの土地が要りません。そんなに多くの水も使いません。そうしますと、首都圏から余り遠くない非常に富裕な団体が、我々からしますととてもとてもできないような金額を提示して、そちらの方で新増設が始まる。まさに自治体の格差というものは、産業と結びつきまして、ますます格差の固定というものがあるわけであります。それがいいのか悪いのかということは別ですけれども。

 よく考えてみますと、これの象徴が東京であります。東京はもうヒートアイランド化しまして、夏は四十度になります。それに、片や京都議定書の遵守ということで、あれは、まさにエネルギーの非常に多消費型の地域を一方でつくっておいて、これは環境もくそもあったものじゃ、言葉が悪くて済みません、ないわけであります。

 まさに国家としての環境あるいは地域戦略、国家戦略、産業の面においては非常に薄くなっているのではないのか。このまま任せておきますと、全く地震が来たら日本は全部壊滅になります。そういうことで、私ども、何とか行政改革を進めながら地方の産業政策について今一生懸命頑張っておるわけでございますが、この大きな隘路があるわけでございます。

 そういう中で、私ども、地場産業の振興というものと企業誘致というものの二本立てでやっておりますが、いずれにいたしましても、この産業の偏在というものは、将来、いわゆる地方分権とも絡んでかなり難しい問題になるということを御理解いただきたいと思います。

 次に、行革の問題。

 自治体でございますが、私ども秋田市におきましては、ガス事業とバス交通事業がございました。これが、平成七年度時点、十年前は、市職員の一割に相当する三百三十人余りの公営企業職員を持っていましたけれども、昨年までに全部民営化しております。これによりまして、その関係の職員、まだ残っている職員は一般の方で若干引き取っておりますけれども、両事業に係る職員はゼロ。そしてまた、年間で約十億円の繰り出し金について削減をしておるわけでございます。

 また、十七年に合併をいたしまして、一市二町の職員が約三千六百人程度でございましたが、これは、三百数十人ふえたわけでありますが、少なくともこの十年間に、いろいろ総務省の目標値、六・何%とかいろいろありますけれども、それを上回る一〇%以上の削減という形で今動いておるわけであります。

 いずれにいたしましても、行財政改革については、議会とも議論を重ねながら、やはり相当自治体はスピードアップしてやっているということについて御理解をいただきたいと思います。

 そしてまた、この後本論でございますが、地方分権の実情でございます。

 今知事もお話し申し上げましたけれども、三位一体の改革ということはございましたが、これはいまだ半ばといいますか、入り口に立ったという時点でございます。この後のやはり地方分権改革第二期改革ということでより実態に近いものに、理想に近いものにしていかなければ、いずれにいたしましても、全体の効率性というものについては近づくというのは非常に時間がかかるのではなかろうか、そういう感じがいたしております。特に、これも知事がお話し申し上げております、いわゆる重なる部分、重複する部分、これが我々自治体から見ますとはっきり見えるわけであります。

 実は、国、都道府県、市町村で重なるところの中で、都道府県と市町村での重なりについては、これは非常に私ども、県と市町村はもう毎日のごとくやりとりしながら、この整合性といいますか、整理にかかっておりますけれども、実は、国と都道府県、あるいは国と中核市、もう一つは国の内部であります。国の内部の二重行政か三重行政というところが、我々実際に感ずるのはそこが非常に大きいわけでございます。

 ですから、国、都道府県、市町村というこの団体種別ごとのほかに、やはり、国の中の二重行政、三重行政について、これを切り込まないことには全体としての効率性あるいは行財政改革、全部を含めての公の行財政改革というのはかなり難しいのではなかろうか、そういうことを感ずる次第であります。

 次に、財政の問題であります。

 いずれにいたしましても、三位一体の改革の中で、税源移譲ということで、私ども、今度は地方税の部分が、所得税が減って地方税がふえるわけであります。より住民に対して説明責任を果たさなければなりませんし、より透明性の高い予算執行をしなければならないわけでありますが、一方で、やはり税財源の偏在というのは、これはいかんともしがたいところがございます。実際、秋田市については、一般会計のうち市税収入が大体四十数%ですけれども、やはり秋田県全体になりますと、一〇%も行かない。これをどうにかしようといったって、これはなかなか難しい。これは日本全体の、国土の形成の中の自然発生的にできた面もございます。

 そういう意味では、やはり地方交付税の機能というものは、いずれいろいろな議論はありますけれども、この後も交付税制度というものは続くでありましょうし、私どもは、地方の固有の財源として地方共有税という形でということを地方六団体で提言しておるわけでございます。

 そういう中で、骨太の方針二〇〇六では、法定率の堅持ということがこの夏に言われましたけれども、直ちに今、また景気がよ過ぎるからその分をカットというような話が載っておりますけれども、いずれにいたしましても、さまざまな形で国と自治体が歩調を合わせながら財政再建というのはわかるわけであります。それはそのとおりでありますが、分権あるいは三位一体の改革といわゆる財政の地方へのしわ寄せ、こういう形については、私どもはなかなか納得しがたいというのが現実の状況でございます。

 そういう中で、今回のこの法案でございますが、法案の中身一つ一つについてはさまざまな議論があるところでございますが、私どもとしては、まずは第一歩としてこの法案を成立させていただきまして、問題は成立した後であります。それらの一つ一つの条文は大変いい理念でありますが、どうやってこれをやっていくのか。これは非常に難しいのでありますが、法案をつくった後の道筋というのは、私ども地方団体においてもそれぞれ今研究をしておりますし、また、利害のぶつかり合いだけになってはならないわけでありますので、国と地方がお互いに意見を尊重し合いながら、お互いに痛みを共有しながら、どうやってこれを改革していくか、そういうことではなかろうかと思います。

 いずれにいたしましても、地方から見ますと、なかなか国全体を統括したビジョンというものが見えてこない。都道府県、市町村は、大体企画というところがございまして、企画ですべての利害調整を行って一本でやりますが、日本国をどうするのかというところが我々としてはなかなか見えにくいということ。やはり、一方で地方分権という中での地方の自立、地方の責任の重さを自覚しながら住民との協働で自治行政をやっていく。もう一方で、やはり国家としてどうすべきか、どういう形でこれを運営すべきか。まさにそこのところがなかなか私どもも見出せないというのが実態であります。

 そういうことで、地方分権というのは何も地方だけの問題ではございませんで、国家運営にかかわる非常に基本的な問題でありますので、この法案の成立の暁には、そういうことでより大きな取り組みをしていただければ幸いでございます。

 もう一つは、地方分権改革推進委員会への意見ということではございますが、いわゆる国と地方の協議の場というものについて地方六団体で要望してまいったものでありますが、こういうことでこれが設置されるというような形になっておりますけれども、これについては大変期待をいたしておるわけでございまして、これも、一つ一つの大きな事案のみならず、やはり定期的な形で、国と地方との意見の交換の場、さまざまな調整の場とするような形にすべきではないのか。そういうことで、地方自治体の関係者からの委員も任命されるというような流れでございますので、地方の声の反映についても十分御配慮をいただきたいものと思っています。

 最後に、時間でございますので、結びでございます。

 私ども、みずからの責任というものを、住民と非常に近いところにおりますので、常々、住民の理解なしには物を進めることができないわけでございます。そういう中で、少子高齢社会、産業の偏在、異常気象の問題等々、さまざまなこれを抱えながら苦悩しておるわけでございますが、何とぞそのような点についても、繰り返しになりますけれども、この地方分権を大きなマトリックスとして考えて、いろいろな方面からの議論を今後国政の場においてもしていただくことを期待いたすものであります。

 以上でございます。ありがとうございます。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、齋藤正寧君にお願いをいたします。

齋藤正寧君 立って発言させていただきたいと思います。

 井川町長といっても、どういう町だかほとんどわからないと思いますので、まず町の規模に若干触れておきたいと思います。

 私の町は、昭和三十年に二村が合併して新しい町になりました。合併当時、七千八百人の人口です。現在六千人で、今回の合併でも、三町による合併協議を行いまして、法定協議会まで参りましたけれども、住民の合意に至らずということから当面自立をする、こういう町であります。

 今回のこの地方分権改革推進法、国会に提案されて、衆議院では近く成立するだろう、こういうことでありますので、このこと自体は心から歓迎を申し上げたいというふうに考えております。ぜひ、こうした法律に基づいて、具体的に問題点を解決するような、地方分権一括法みたいな形で行政法令の問題点をぜひ解決していただきたい、そういう期待を実は持っております。

 平成十二年、二〇〇〇年の地方分権一括法で機関委任事務が廃止になった、こういうことは、地方自治関係者からは非常に高く評価されておりますけれども、私ども末端の自治体からすれば一体何が変わったんだろう、こういう疑念を実は抱かざるを得ない。本来、機関委任事務は地方自治のいわば実体を侵害するというようなことを言われておりますけれども、これはあくまでも理念上の話で、廃止されたから一体全体どう変わった、こういうことで、全く変わらない。もちろん従来も、これが国の機関委任事務だ、これが町の事務だ、こういうことで区別して仕事をしていたわけではありません。よく責任逃れで、これは国のいわば権限に基づく法律で何ともならぬという弁明をするなんというような話も、町村に対して批判としてはあるわけでありますけれども、恐らく大方の自治体はそういうことはないのだ、こういうことをまずお話ししておきたい。

 特に、この機関委任事務の問題については行政法は事細かにいろいろなことを規定しておりまして、三位一体の改革、第一次分権改革で権限を移譲した、こうはいっても、実は地方の自由度あるいは裁量というものはほとんど働いていない、こういう実情にあるからこそ、改めて今回地方分権改革推進法というものが提案され、具体的な行動を起こそう、こういうことだろうと思います。ですから、この機会に、ぜひ地方、国、末端自治体、この役割分担を明確にしてほしいし、そうなるだろうという期待を実は持っております。

 特に、前回の分権改革では、権限の移譲というのはほとんど県。末端自治体にはほとんどない。県から条例に基づいて移譲する、こういう位置づけであります。秋田県でも積極的に権限の移譲ということを展開しておりますけれども、ここで知事さんがいて申し上げづらいのですけれども、私どもの町は四件か五件しか実は移譲を受けておりません。なぜかというと、末端自治体で権限を条例上移譲されたにしても自己完結ができないと。言葉は悪いですけれども、このことはある意味では県の事務を代行している、こう言って差し支えない面があるわけでありまして、そういう意味では、権限の移譲と地方分権というものの本来の姿に立ち返って、町村に担わせるべき事務はきちんと担わせてほしい、こういうことを実はお話し申し上げたいと存じます。

 ただ、もう一つ、この機関委任事務の廃止について申し上げたいことは、確かに通達とかそういうものはなくなりました。そのかわり、国、県からアンケート、調査物、こういうものがふえている実態にある、このことを実は理解をいただきたいなと思います。

 それから、権限の移譲も、ある意味では人口の規模、自治体の規模に応じた移譲という性格があるわけでありますけれども、必ずしも末端自治体、まあ受け皿論で、能力がないから合併しなさいと途中から分権改革は変な方向に走って、町村合併の強力な推進、こういう形になったわけでありますけれども、本来的には地方分権と町村合併は、私は相入れないものがあるのではないのかと。ここが、今回の法案でも、いわば地方自治体の責任を遂行するために体制の整備をする、こういうような表現があるわけでありますけれども、このことが多分強制合併につながるのかどうか、このあたりをひとつ、ぜひ強制合併ではなく、あくまでも自主合併、こういう形で運営していってもらいたいなと思います。

 三位一体の改革については、市長さんからもお話ございました。これは一歩前進と受けとめておりますけれども、ただ、基本的に、先ほど申し上げましたように、交付金化というような形で、必ずしも地方の裁量、自由度というものは上がっていない。このことは、先ほど申し上げた行政法の、すべて法定で、こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないとやっていることと無関係ではないなと。こうしたいわば残された分権改革を、今後、推進法に基づいて内閣で具体的な計画を立てるわけでありますけれども、ぜひそういう点をひとつ立法府の皆さんからもよく理解をいただいて、膨大な数の法案の改正になると思いますけれども、そうした地方の裁量を広げる、こういう観点から御議論いただきたいものだというふうに考えております。

 交付税の改革、これは知事からもお話ありましたし、市長からもお話ありましたとおりで、基本的にお話しいたしたいことは同じであります。

 ちなみに、私どもの一般会計の決算の状況を持ってきましたけれども、平成十一年度には地方交付税、これは特交も含めてでありますけれども、十七億五千万、配分されております。十二年度が十七億六千四百万、このことがピークでありまして、その後、十四億七千万、十四年度は十四億五千万、十五年度は十三億三千五百万、十六年度は十二億八千万、十七年度は十二億九千五百万、今年度は十二億ちょい、こういうふうに、実は急激に地方交付税は落ち込んでおります。

 先ほど知事から三〇%減るんだというお話がございましたけれども、私どももそれに基づいて、平成十五年度ベースで実は三割減るという試算をいたしておりますけれども、既にもう三割が減る、来年度からは臨財債の償還が始まる、こういう状況の中で、とても三割どころじゃないよと。財政再建をしなきゃならないという至上課題があるわけでありますから、私どもも責任の一端を負うつもりは当然ございます。

 バブルがはじけ、地総債を活用して経済対策を徹底してやりました。ですから、平成十一年度には、介護保険が始まるということで特別養護老人ホームを建てる、こういうことで、予算規模は四十九億まで実は膨らませました。ことしは二十七億二千万まで落としております。

 ただ、景気対策をやった当時、私どもは、これは当然財政再建はあるよと。いろいろな動きの中から、町村合併は必ずやってくる、こういう予想のもとに、基盤整備を積極的に実はいたしました。行政改革も徹底してやっております。ですから、繰り上げ償還も、この間、平成六年以降は二十億近く、実は繰り上げ償還をしている。それでも、積極投資をした関係で、起債残高は必ずしも減りません。利息を安いのに借りかえた、こういうことでありまして、今回新しく出た実質公債費負担比率、特別会計も全部入っているわけでありますけれども、何とか一一%と、全県で下から二番目に低い数値を確保できております。

 ただ、交付税に関連しては、これは新しい交付税その他もありますけれども、非常に地方の実情というものを理解しない批判、あるいは交付税そのものの機能を本当にわかっているのかというような批判が、交付税に対してありますね。地方の自律性が全くないとか、でたらめやっているとか、財源保障をなくしなさいとか。そんなことで日本の国が維持できるのかどうか、このことをきっちりわきまえながら、財源保障あるいは財源調整、この機能は徹底してやはり維持していただかないと、地方は、人も住めない、投資もできない、こういう状態に多分なるだろうと思います。

 しかも、今、国債、地方債を発行して未曾有の財政危機に陥っているわけでありますけれども、最近の交付税のことに関する具体例を申し上げますと、どうも本質を外れた議論がなされている。政治的なマターであることは当然でありますけれども、例えば行革インセンティブというものを尺度に交付税を増額するだとか、頑張る自治体に交付税を増額する、どういう基準でやるのでしょうね。

 だから、行革インセンティブは、IT投資だとか、平成四年、五年と現在とを比べて、経常経費で幾ら減ったか、これで判断しているわけです。あくまで一般会計の話でしょう。特別会計も含めた実態を見なきゃいけない。そういう矛盾したことが今行われているんですよ。

 頑張る自治体、何をやるんですか。行政改革、私は町長になってちょっと長いんですけれども、二十七年になるんですよ。昭和五十四年からやってまいりまして、当時、私が町長になったとき、職員は百十四名おりました。臨時職員は一切使いません。今現在、八十六人になっております。仕事量は相当ふえております。特に福祉関係、保健衛生関係、全部、末端町村の仕事だと。ですから、採用した職員は保健婦だとかそういう専門職だけです。臨時職員も使っておりません。それでも、昭和五十四年に就任しましたけれども、当時の人件費は三億五千万程度です。現在、六億になっています。決算額で、五十四年当時、町の一般会計は十二億ですよ。今現在は二十七億、ピークには四十九億なんという膨大なことをやっているわけですけれども、人はその間ずっと減ってきている。

 臨時職員、民間委託だ。そうすると、年金をもらっている人を使っていると、何だ、年金もらっているじゃないかと年金返還させられた。民間委託しなさい。そういうような問題も体験しております。

 そういう状況で、ぜひひとつ、国、県、市町村の役割分担を明確にする、それからやはり税財源の移譲をきっちりやってもらう。同時に、この法案には書いてありませんけれども、財源の充実強化、こういうようなこと。市長さんがおっしゃったように、地方六団体からお話しいただいておる中身を、この後の具体的な計画にぜひ盛り込んでいただきたいということを申し上げて、終わります。

 時間をオーバーして、大変失礼いたしました。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、辻兵吉君にお願いを申し上げます。

辻兵吉君 まず最初に、四十七都道府県の中でいつもびりから数えて五番目ぐらいの中に入る秋田県の産業界がどんなものかということをちょっと御説明したいと思うんです。

 ここ二、三年で、日本経済、二%、三%と上がっていますので、恐らく五百十兆円ぐらいが国民総生産だと思っております。データは古いんですけれども、平成十六年時点で実質三兆九千億ですから、大体〇・七五%、そして平成十七年、十八年も大体せいぜい一%前後しか伸びていませんので、それも含めて大体そこら辺のところを往復している、こういうふうにお考えいただきたいと思います。

 そして、産業構造は、皆様のお手元に既にございますように、一次産業、本当は農業県で、この一次産業がもっともっとシェアとして大きくなるべきでありますが、わずか三・三%。そして、製造業、これも電機、機械等素材産業関係はかなりいい数字が出たのでありますが、それでも建設業の大激減によって、これも本当に〇・四%と大変わずかな伸びに終わっております。三次産業に至っては、特にこの時点では金融、保険が非常に悪かったのでこういう数字でありますが、いずれにいたしましても、三次産業が七五%を占める。しかも、これも非常に経済成長率が低いわけでありまして、トータルで大体一%。したがって、国が二%ないし三%というときに、常にその半分もしくは三分の一ぐらいというのが現状でございます。ということは、かなり格差のある、非常に低レベルな産業の状態であるということを御理解いただきたいと思います。

 ただ、皆様のお手元の資料の二ページにございますように、非常に有望な産業がございます。これは、貿易をしておる業者が非常に最近ふえてまいりました。これは、秋田港を利用するコンテナ便、後で図で説明いたしますけれども、非常に伸び率が高いわけで、一次産業、二次産業合わせて九千億前後の中で、千二百八十七億円という大変大きなシェアを貿易が占めておる。しかも輸出が六三・四%もふえ、これは平成十七年の数字ですが、輸入が一六・九%もふえた。こういうことで、今、日本海岸におきます港としての活力が非常にふえてきておる。こういうことで、東北では仙台塩釜に次ぐ二位、日本海側では新潟、富山に次ぐ三位、こういうことでございます。

 このことにつきましては、五ページをお開きいただきますと、ここに大体の貿易の動向がついておりますが、バブルがはじけた後、大変な不況の中で、一九九八年以降、この貿易度はどんどんふえていきつつあります。特に輸入が非常に多いのでありますけれども、いずれにいたしましても、今我々の需要先というのは、海外、特に中国が非常に多いのでありますけれども、こういった形でございます。

 その次の六ページにはコンテナ便の輸出額、それから七ページはコンテナ便の輸入額がございます。大変残念なことに、港のインフラが必ずしもよくないということから、輸出産業、秋田県にも相当輸出産業がございますけれども、ほんの一部しか輸出していない。したがって、これは平成十七年でありますけれども、輸入額が二百四十八億に対して百億ちょっとしか輸出していないという、ここら辺に非常に大きな問題がございます。

 八ページの図をごらんいただけると、コンテナの取扱量がこういう形で、九八年ちょこっと落ちましたけれども、平成七年から始まったのでありますけれども、こういう形で、非常にコンテナの取扱量がふえております。

 そして、その次の九ページをごらんいただければ、他港との比較がここに出ておりますが、さっき申し上げましたように、新潟港、伏木富山の日本海側の三番目、それから仙台塩釜、これは東北では二番目だ、こういうことでございます。

 それで、その次の十一ページをお開きいただきたいと思いますが、この中で、右の方の輸入のところをごらんいただきたいと思いますけれども、秋田県で輸入しておりますものの八九%が秋田港から直接入っておる。それに対して、秋田港から出ておる輸出の方が五三%。これでごらんになれますように、いかに東京港に東北の六県の貿易が偏っているか、こういうことの証拠でございます。

 それから、飛びまして十四ページの図は秋田港の内容でございますが、どうして今輸出が伸びていないかと申しますと、定期船が非常に数が少ない、つまり、一週間に二本とか三本とかといったような、毎日出ていないという非常に残念な数字。

 それはなぜかと申しますと、まず、冬になりますと、国の防波堤が非常に遅々として進まないものですから、このインフラが悪いために、どうしても北の方の港が荒れます。したがって、全部南側の方に回ってきます。ところが、水深が一番深いところで今十三メートルあるわけですけれども、左側の方の静穏度の低い方は非常に水深度が低いために、どうしても大きな船が入ってこられないというものがございまして、それが定期便を必ずしもふやしておれない、したがって輸出がふえないし、貿易にとり非常に大きなマイナスになっております。

 それから、その次の十五ページでありますが、これは高規格道路の数字でありますけれども、今度道路財源が何か一般財源になるという話ですが、私どもにしてみると、この一番上にあります能代と小坂を結ぶ、ここが我々の日本海沿岸高速道路の何十年来の希望であって、ここができますと、リサイクル産業、特にパソコンや携帯を、小坂鉱山で持っておったいろいろな分析技術を利用したいわゆるリサイクル産業がここでできるわけでありますが、これがなかなかすぐ近くから入ってこられない、したがって、青森やあるいは東京から持ってくるというような形になってきておりますので、これをもしも海運で、例えば能代港から直接運ぶとなりますと、この道路ができますと非常によろしい。

 それからもう一つは、この高速道路で、ごらんになれますように、山形県と全くぶった切られておる。そういう意味で、我々は、昔は山形市に電車で真っすぐ行けたのに、今は新幹線ができたために必ず新庄というところで乗りかえなくちゃいけない、そういう逆の不便さが、同じ東北でありながら非常に交流が落ちておるという結果でございます。

 それから、十八ページにジェトロの内容が出ていますが、これは後でひとつごらんいただくことにいたしまして、図面でごらんいただければ大変ありがたいのでありますが、二十四ページに、今年度、ジェトロが開発してくれた新しい中小企業の技術を海外にどんどん今輸出しております。我々のところでは、ジェトロに相談をしないと、実際の市場がどうなっているか、海外の市場がどうなっているか、どういう技術がどういうところで必要であるか、なかなかわかりません。したがって、ジェトロに非常に依存度が高いわけであります。

 次の二十五ページをごらんいただければわかるのでありますが、ジェトロに対する貿易の相談、そしてその次の二十六ページをごらんいただきたいと思いますが、これは、名古屋と福岡、それから大阪、北海道、横浜に次いで秋田が非常に多いということは、いかにジェトロに対して依存度が高いかという、しかも、ジェトロが貿易で新しい市場を非常によく探してくれておるということの結果だろうと思うわけであります。

 私の申し上げたいのは、地方分権は確かに大変いい制度だと私は思いますけれども、実際問題として、今申し上げました道路の問題それから港の問題、これは直接貿易産業に結びつく、そしてこの部分は、一次産業、二次産業問わず今どんどん伸びておるわけでありますし、もしもこの便が非常に定期的に、特に今ロシアとの便がございません、これからBRICs時代だと言われておりまして、ロシア便さえまたこれも新しくできていけば、まだまだ秋田の貿易産業は伸びる可能性を持っております。

 私の申し上げたいのは、とにかく地方分権というものは非常に立派で非常にいいのでありますけれども、我々は秋田県や秋田市にこういうインフラの整備をお願いできません。あの財政の内容を見ておりますと、とてもお願いできるような数字ではございません。したがって、そういう点について、ぜひひとつ国がやるものは十分にやっていただきたいし、それから、もし仮に各地方でこれをやっていただけるとするならば、それなりのひとつ国庫補助金なりあるいは地方交付税なり、国庫補助で地方自治体も補助金が多くなるとちょっと困るとすれば、できるだけ交付税をふやすとか、いろいろな面でとにかくインフラ整備と、それからジェトロをぜひ充実させていただきたい。ジェトロについても、非常にピンチで、地方から人を引き揚げるなどという話がありますけれども、地方ほどジェトロに頼っておるものはないわけでありますので。

 私の申し上げたいのは、地方分権は大変結構な法律ですが、これをやるための前もってのそういうインフラ整備、あるいはそういうジェトロのような専門の機関、県庁や市役所に貿易の専門課を設けるといったって、これは非常に無理でありまして、ここら辺の問題をぜひ解決していただければ、将来とも我々が地方税を負担できるようなそういう産業社会をつくっていける、非常に希望の持てる産業社会ができていくだろうというふうに思うわけで、この点についてぜひひとつ御配慮をいただきたいというのが我々産業界の非常に大きな熱望であるということをひとつ御理解いただきまして、私の発表にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 座って、限られた時間でございますけれども、質問をさせていただきます。

 先ほど来、秋田の地域の実情を踏まえて、地方分権であるとか地域再生あるいは行政改革あるいは法案に対する要望等々、大変貴重な意見をありがとうございました。改めて、我々国政に携わる者として、そういう実情を踏まえたしっかりとした政策を進めていかなければならないというふうに思ったところでございます。

 それでは、まず、佐竹市長にお尋ねをいたします。

 私は、地方分権をしっかりするためには、市とか町に権限とか財源を一番充実させなければならないというふうに考えているわけでございますけれども、しかし、現実問題、先ほど来少し話が出ましたけれども、地域によって相当経済力、財政力に格差がある。

 そういう中で、現在、国の方では、人口二十万人以上の都市の半分は交付税をもらえなくてもいいような、そういう税財源の充実という方向にあるわけでございますけれども、そういうときに、秋田は三十三万ですから、そうなると、不交付団体になるかもわからない。不交付団体を目指すべきだと思うんですけれども、そういう方向についての第一線の市長さんの考え方について簡単に教えていただければと思います。

佐竹敬久君 今の、いわゆる不交付団体をふやすということであります。どこでこれを線を切るかということでありますが、実は、秋田市の状況を見ますと、市税と国税、秋田市内で生ずる国税、これを合わせると、大体今の一般会計予算にほぼ同じということで、少なくとも、そういうことになりますと、秋田市における国税はゼロですね。ですから、大体秋田市クラスの財政力のところでは、なかなかそこまでは行かないのではないのか。実際、約一千百億から一千百五十億で四百四、五十億の市税ですから、大体その一・二五倍ぐらいが国税なはずですので、そこら辺は、秋田市ではとてもそこまでは行かない。

 ただ、標準財政規模ぐらいまでは、これはやり方ではできるのではないのか。そうしますと、自由度がそこのところでは相当高まってくるということで、一つの流れとしては、税源移譲によってできるだけ国への依存度を減らす、この道筋は私は正しいものではなかろうかと思います。

谷委員 ありがとうございます。

 齋藤町長の方にお尋ねします。

 夕張の、ああいうむちゃくちゃといいますか、考えられないような財政運営を一つの大きな契機として、新たな再生制度、今のままではなかなか自律的に、自治体の方がみずから律するということは難しいのではないかということで、国なりあるいは自民党の方でもそうでございますけれども、新たな仕組みというのを考えていかなければならないのではないかということでいろいろ検討を進めているわけでございますけれども、その点について、町長としてのお考え方を簡単にお尋ねいたします。

齋藤正寧君 夕張の場合は、禁じ手を使っちゃったんですよね。それは、道なり総務省なりが当然わかっていたはずだと私は思います。ですから、今の総務大臣が副大臣だった、それは道と国が指導しなかったからでしょうと。

 夕張は、私は特殊事情があると思います、産炭地という。ただ、あれをもって、すべての自治体だ、こうお考えになるのは、これは当たらない。少なくとも、一時借り入れの限度額というのはきちんと議決しておりますから、それを超えるということは、帳じり合わせ、こういうことでは使えない、全くの違法行為。ですから、そういうものと一般論と混同しないでいただきたいと思います。

谷委員 ありがとうございます。

 実は、私は、兵庫県という自治体に長く勤務しておりまして、若いころは当時の自治省にもいて、自分としては、自他ともに、衆議院議員でも指折りの分権論者だというふうに思っているんですけれども、最近、大変危惧しているのは、今の夕張、それから、問題は違うといっても、福島、和歌山のいわゆる汚職の問題、あるいは奈良の、五年間で八日のみ出勤して二千七百万もらっている、そういうような実例。しかも、夕張も含めて、議会みずからのチェック機能というのが全く働いた形跡が見当たらない。監査委員の機能も果たしていない。地元のマスコミもそうだ。そうなると、国民に、やはり地方には任せられないのではないかというような空気が広がるということを私個人としては大変危惧しているわけです。そのためにいろいろな仕組みも考えていかなければならないし、単なる決意だけでこれは済まないのではないかというふうに思っております。

 みずから律するといいますか、そういうことについて、チェック機能ということについて、寺田知事の方にお考えを伺いたいと思います。

寺田典城君 これは難しい、個々のケースで、福島だとか和歌山というのは、私たちにとってもこれは考えられないことで、私の場合は、政党の推薦とかそれから団体に推薦を依頼しないという形の中で進めさせていただいているのであれなんですが、夕張の場合は、私は齋藤さんがおっしゃった、町長がおっしゃったとおりの禁じ手だと思います。普通としては、これは地方自治体の常識を外れている、ルール違反ということですから、禁じ手、違反ということでお話しできる。

 あとは、議会のチェックというのは、普通は情報公開もされているし、このことによって地方にいろいろな権限も移譲できない、任せられないということを、もしそういう考えで国政を進めることになるとすれば、私は、これからの二十一世紀の日本のあるべき財政再生から地方分権、それから地域の特性、そういう将来性をすべて失ってしまう可能性があるんじゃないのかなと。

 ですから、こういう問題があるからこそ、ある面では分権型の社会を進めるべきだ、私はそう思っています。

谷委員 私も寺田知事と結論は同じなんです。同じですけれども、やはりもっと、我々国会議員もそうですし、自治体の方も、市長だけではなくて議会の方も、それについていろいろな官製談合であるとか、あるいは奈良市とかそれから京都市でも、当局と組合と議会がいわば悪の三位一体のように、だれも言わなければああいう問題はなかなか表に出ないというようなことについて、問題視というか問題提起をすべきではなかったかというふうに思います。

 具体的には、例えば、今、教育で履修漏れとかいじめとか、一体教育委員会の機能はどうなのか、どういうことをしていたのか、責任はあるのかないのかというようなことについて、もっと自治体の方も声を発していただきたいというふうに私個人としては思っているわけでございますけれども、佐竹市長、その点についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。

佐竹敬久君 いずれ、この地方分権という問題を論ずる場合、今の執行部の制度あるいは監査制度、一時私どもは、例えば外部監査、中核市でありますので、ただ、それが果たして今理想どおりになっているかというと、なかなかそういう場合でもない場合もございますが。

 もう一つは、地方議会の制度、ここまで及ぶのではないのか。今の状況からしますと、地方議会は、どちらかというと、議会側が要望、陳情、それを執行部側が受けとめてという、そこでさまざまな調整措置というものが出てくるわけでありますが、最終的にはすべて執行部が責任を負うというような形。

 同じ一つの税を議論するとなると、やはり執行部も議会も責任の共有化というような形になりますと、総論賛成、各論反対にはならない場合がございますので。例えば、日本の地方議会の制度というのは、世界じゅうで一番特異なんですね、特別なんです。ほとんど日本と同じような議会制度は、実は世界じゅうないのであります。ここら辺もやはり踏み込んでいかないと、執行部の方の体制のつくり方も、これはこの後の大きな議論になるのではないかと思います。ぜひそういった点は議論はいただきたいと思います。

谷委員 それでは、最後に、辻名誉会頭の方にお尋ねします。

 私は、自治体あるいは国もそうでございますけれども、特に自治体の場合は、他団体との比較ということを、財政状況とか行政改革の進みぐあいとか、そういうことはよくやるわけでございますけれども、実質的に、民間のような競争というのが大変不足している。ですから、そこでどうしてもインセンティブが弱いという、いろいろな取り組みが、競争がないのでほっておいても何とかなる、外からも厳しく言われないという面があるのではないかというふうに思っているわけでございますけれども、民間の目から見て、名誉会頭の方のそういう行政、自治体のあり方についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。

辻兵吉君 私も既に三十年以上も産業人としてかかわり合っていて、最近の財政事情の悪さというものによって大変大きなショックを受けているものであります。

 私は、地方自治体の中で、逆にいくと、優先順位みたいなもの、我々が昔若いころに非常にサポートした例えば石田博英さんなんかにいろいろなことを陳情に参りますと、君たち、今、日本国は追いつけ追い越せの時代なんだ、おれたちは国会議員だから、とにかく日本国を豊かにするために、先にどうしても優先順位をつけなくちゃいけない、そういう順位があるんだけれども、いずれ豊かになれば公平になるだろうということをよく聞いたのであって、そういう意味で、秋田県というのは、少なくとも昭和三十年代、四十年代、あの焦土と化した各都市に木材を提供し、米を提供し、非鉄金属を提供し、石油を提供した、そのはね返りがこのような惨めな産業社会。それはなぜかというと、インフラのおくれ、徹底したインフラのおくれが我々の産業を、どうしてもうまくいってくれない。

 ですから、私は、逆にいくと、むしろ今の県なり市なりというものの財政事情をよく我々が知っているだけに、なぜあの時代に優先順位を先にしてくれなかったか、そういう思いはありますけれども、競争がないからなのじゃなくて、非常な競争力を持って他県に勝とうとしておる意欲は、私は、知事も市長も町長さんもみんな、そういう意味では非常なファイト、意欲を持っていると思います。

 ただ、大変残念なことに、インフラが非常におくれたということのプアさが非常に残念だというふうに感じます。

谷委員 ありがとうございました。

佐藤座長 次に、土井亨君。

土井(亨)委員 自由民主党の土井亨と申します。よろしくお願いをいたします。

 きょうは、大変貴重な御意見を賜りまして、まず心から御礼を申し上げさせていただきます。

 私、宮城県仙台出身でありまして、県議会議員も経験をさせていただいて、寺田知事さん初め北東北三県の知事さん方がいち早く広域行政、広域連携ということで取り組まれた、その姿を大変うらやましくも感じさせていただいたところでございましたし、また、そういう広域行政を展開する中で、国と地方のいろいろな摩擦やら壁というものを実感的に感じられながらの広域行政推進だったというふうに思っております。また、資料を見させていただくと、今度は北海道さんも加わって、北海道と北東北三県ということで頑張っていらっしゃるということでございまして、まず寺田知事さんに、この推進に当たりまして、やはり国とどうしてもぶつかる、国がこれほど障害になるとは思わなかったという事例があれば、私の勉強のためにも一言お教えいただきたいと思います。

寺田典城君 具体例としてこれがだめだったとかというのは、いろいろな面で、例えば何々特区ということで、どぶろく特区だとかいろいろあったり、これは私、どだい特区制度というのは無駄なことなので、権限移譲すべき、ますます事務を繁雑にしているということでは言ってあるんです。やはり制度を変えなきゃならぬというのが基本的です。制度を変えなければ社会は変わらない。そういうことで、北東北三県で物を進めていくに当たって、現在の国の制度の中で執行せざるを得ないというのが、基本的にやはり物の考え方が狭められている、形としてはそういうことです。

 ですから、はっきり言って、北東北三県一緒になりましたら、一国二制度の中で、北東北三県は、それこそ雇用なんかは〇・六とか青森が〇・四だから、税制は、法人税は二〇%にするとか、それから、日銀がやる全国一律の金融制度ではなくて、金融制度は地方によっても変わるとか、制度を変えない限りは格差はますますついていくだろう、そのように思っていますから、やはり分権のある姿をしっかり方向づけをして、分権型の社会の中で地方が生き残る道筋を立てる必要があるんじゃないかな、そう思っています。

土井(亨)委員 ありがとうございます。

 寺田知事さんには道州制についてもいろいろお聞きしたかったんですけれども、それは別の機会にぜひお聞きしたいと思いまして、きょうは、推進法の法案について具体的にちょっとお聞きさせていただきたいと思うんです。

 私ども、地方議会にいたときも、地方分権ということで随分騒ぎました。その際一番やはりこだわったのは、地方と国の役割分担。これはいつの世にも、国と地方の役割分担ということで明確にせよという、地方制度調査会も含めて必ずその役割分担の明確化というのが出てくるわけですが、本当の意味で今現実に分担が明確になっているかというと、私はどうもそうではないのではないかと。地方自治法の一条の二、これは十一年に新しく追加をいたしました。今回の法案も、分担すべき役割を明確にせよ、その基本理念にのっとって法案ができているというふうに私は思っておりまして、まずは、遅まきながら、国と地方の役割分担というものをしっかり明確にすることによってこの法案のすべてが成り立っているんだろうというふうに私自身は思っております。

 そういう中で、先ほども事務事業の移譲とかいろいろな意味でございましたが、この役割分担を明確にすることによって事務事業が移譲されて、それによって私は税財源というものがしっかりと明確になってくるんだろうというふうに思っていますので、その点、国と地方の役割分担というものを具体的に、もし、こういう形だという思いがあれば、知事さん、市長さん、町長さん、地方自治という中で国に対していろいろ物を言っていただいているわけですから、御意見をいただければというふうに思います。

寺田典城君 基本的には、二十一世紀の日本の国家像というのは、私たちに、国民に示されていないですね。

 やはり、中央省庁が、国内の内政というか、自治体行政とかそういう形に対して主なエネルギーを注いでいることで、グローバルな社会に対応した、要するに国の役割は、その中で防衛だとか外交だとか、それこそ全体的な財政だとか金融制度のあり方だとか含めて進めるべきであって、例えば今問題になっている教育だって、教育の基準は何であるかということをきっちり進めれば、どこの県だって市町村だって、自分たちの町はいい教育をしたいというのはだれだって思っているわけですから、それを道路の財源に使っちゃうんじゃないかなんということはあり得るわけがない。そういう町長なんか当選できるわけがない。やはり骨格を、基本を国がすべきであって、あとは、実際の住民行政にかかわること、それから地域振興にかかわることはやはり広域行政でやらせるべきだ、私はそのように思っています。

 ですから、知事会議でも具体的な例として、きょうは時間がないですから、私は例示できるんですが。要するに、そうなってくると、国家のやるべきことというのはおのずと決まってくると思いますし、県行政も、これは将来やはり道州制でなければやっていけない行政システムだと思います。そういうことで力をつける、あと市町村、そういうような形でやはり進めるべきだろう。住民に密着したものはすべてが市町村行政だろう、そのように思います。

 ですから、ある面では、私の県行政というのは、市町村行政あって初めて県行政だという割り切り方をしておりまして、市町村のサポーターが県行政であるという形で進めている。ですから、地方のサポーターとして国家があるべきだ、そういう考えになったら、もっと効率的に、もっとパワフルな自治体もできるし国家の姿にもなるんじゃないでしょうか。お願いします。

佐竹敬久君 なかなか財源と権限との問題というのは難しい点がございます。財源が先か、権限が先かという。

 ただ、日本の行政制度、国と地方との行政制度を大きく考えますと、どちらかというと、ヨーロッパ、アメリカ等の分権社会が進んでいると称されるところは、まちづくり関係というのはほとんど自治体の権限、逆に、福祉政策というのは国が相当大きく、きっちり統一的にやる。これが実は、今の方向は逆なんですね。福祉関係についてはより細かく地方の方の負担が非常に大きくなっているし、それはそれで、地方として、我々、創意工夫の中でルール以外のことについても特色に合わせてやる。

 ただ、まちづくりの面というのは、これは非常におもしろい点なんですけれども、片方で規制緩和というのは必要なんですけれども、例えば、秋田市内のマンションの建築、ほとんどこれは東京のいわゆる建築確認、私どもはどうしようもない。一方で規制改革ということで、これは例の姉歯の問題にもつながってきたんですが、それが悪いというんじゃないですけれども、まちづくりというのは非常に目に見えるところです。これはやはり、雪の降るところ、降らないところ、同じ雪の降るところでも全然違います。ですから、大きな高速道路、あるいは骨格的な、そういう国が本来一義的にやるものと、地域でそれぞれの住民の理解と議会の理解とを得ながらやるものと、ここら辺が逆転しているというのが今の日本ではないのかなと。

 ここら辺を考えていきますと、これは農業政策でも同じであります。最も地域の特色を生かさなければならないところが、ほとんど統一的になっている。そこら辺が、これは全体の問題として非常に大きな問題ではないのかな、そういう問題意識を私は持っております。

齋藤正寧君 仕事の分担で申し上げれば、福祉、保健、介護、教育、これは幼児教育も含めてです、こういった住民生活に深くかかわっているものはやはり基本的に市町村の権限だ、こういうことをしっかり私は分権社会の中で形づくっていくべきだなと。

 たまたま私、保育園と幼稚園を統合しようと。職員の理解を深めたり、給料法の統一を図ったり、準備を七、八年やりました。実際、合築しようとすると、できないんですね。当時はまだ平成七年ですから、補助金をもらわなきゃいけない。そうすると、県の窓口、教育委員会に行く、県の担当官に行く。それぞれの担当官はやはり本省に向けていい顔をしなきゃいけない。本省もそれなりの縄張りをやる。結局、どうやったかというと、建築基準法上、七メーター離して、後で廊下でつなごう、こういう形で実は統合したんですよ。でも、やはり合築と違って使いづらい。今度、県から幼保一体化ということで認定保育園の承認はしていただけるわけですけれども。そういうことは、やはり縦割り行政が末端まで来ている。

 町の中でもそういうことが起こりました。では、この管理をどこでやるの、教育委員会でやるの、町長部局でやるのと。教育委員会でよければ、どうぞ教育委員会でと。こうやって実は建てた経験があります。そういうようなことで、町村の裁量の中で対応できる、ここがポイントだと思います。

土井(亨)委員 ありがとうございます。

 十一年の地方分権一括法のときから、国と地方は対等な関係と言われたんですが、今までお聞きして、なかなか対等にはいっていないなと。最初の寺田知事さんの、やはり国のそういう役所、官僚を打破する、それは政治の力だ、政治がしっかりと取り組まなきゃいけないというようなお話はもっともだなというふうに思っております。

 時間もありませんので、最後に、第七条で「地方公共団体の行政体制の整備及び確立」という、先ほど町長さんから、その整備、確立というのは合併か、そうじゃないだろうというお話もございましたが、この整備、確立を図るという、これは地方から見てどういうものなのか。そして、二で、こういう地方団体の活動に必要な支援を国はするというふうにうたっているわけでありますが、この国の必要な支援というものはどういうものを想定されているのか、質問をしておいて一言というと変ですが、簡潔に御意見を伺えればというふうに思います。

佐藤座長 どなたに。全員の方にということですか。

土井(亨)委員 では、齋藤町長さんは先ほどここの部分で御意見を御披瀝いただきましたので。

齋藤正寧君 素直に読めば、これは強制合併をやるのかな、私はそう受けとめていますけれども、分権と町村合併は全然別次元の問題ですよというふうに私は考えております。役割分担をきっちりすれば、小規模自治体は合併するか、こういう動きになると思うんですけれども、これは発想が逆です、平成の合併も。財政問題にみんな集約されている、こういう反省を踏まえれば、ここは慎重に考えてほしい。

土井(亨)委員 二の、「地方公共団体に対し必要な支援を行う」ということでうたっていますので、この支援というのは、地方からするとどういう支援を想定されるか、もしあれば。

齋藤正寧君 交付税の算定特例とかそういうことでしょう、従来の合併促進法の。そんなことを、もっと何か特例債みたいなものをやるんですかね。このあたりは不明です。

土井(亨)委員 ありがとうございました。

佐藤座長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 きょうは、意見陳述者の皆様、ありがとうございます。

 それでは、まず寺田知事さんにお伺いをしたいんですが、先ほど特区のことをちょっと触れられましたが、実際、今、政府の方では構造改革特区、地域再生本部、それから都市再生本部、そしてここで地方分権改革推進委員会、その整理というか、どこがリーダーシップをとるのかも含めて必要なんではないかなというのが、この法案の質疑の中でも問われているところでございます。

 秋田では、特区ということで、秋田スギ利活用推進福祉特区、こういった特区も活用されておりますが、先ほど、やはりなかなか煩雑であるというようなお話があったので、ちょっとその点、どういったところが煩雑であり、もともと規制改革からスタートした特区でありますが、来年の通常国会では新法も出てくるやに聞いておりまして、今度は地方分権の視点を特区でやるんだ、本当は全部地方にばっと分権すればいいんでしょうけれども、それを特区という形でやらざるを得ない今の中央省庁、政府のまだまだ中途半端さも多分自治体の皆様お感じだと思うので、先ほどの特区の現状についてお話を伺えればと思います。

寺田典城君 秋田スギ利活用特区、これは余り私は勉強していないんですけれども、わかる範囲で、考えの範囲でお話しさせていただきます。

 福祉施設は危ないから、火災だから、杉とかの活用は無理だという単純な考えのもとでそういうことがなされているわけなんですが、例えば、これが特区に認められて、杉の活用だってこの範囲しかできないよという範囲では、やはり特区のあり方としては余りにも幅が狭いんじゃないのか。杉の活用、木材活用の特区はこの範囲ですよという決め方は、かえって将来に向けてそれが縛りになる可能性があるんじゃないのかなと。ですから、基本的には、どういう火災と、どのこととどのことはだめだからという形の制度だったら、木材の活用というのはますますまだ出てくる可能性が出てくる、そのように私は思っております。

 ですから、特区制度というのは、ますます権限を移譲したという形の上で、これからの行政のシステムの進め方に縛りをかけているというか、部分縛りをかけている形はかえってよくない。これからの時代というのは、そういうことでエネルギーを注ぐんだったら、分権をして、自己責任、自己決定の中で進めるべきだ、私はそう思います。

 以上です。

武正委員 ありがとうございます。

 平成十一年の地方分権一括法で、当時私も県議会に所属していたんですが、地方事務官として雇用政策それから国民年金などの方々が、それぞれ労働事務官、厚生事務官ということで国に戻っていったんですね。その後、国民年金の未納率、結局、市町村が徴収をしていたのが今度いわゆる社会保険庁の職員の方がやる、これによって未納率がぐんと高くなった。

 これから社会保険庁改革あるいは解体に伴ってこの点の議論が出てくると思うんですが、そうはいっても、機関委任事務だった国民年金保険料の徴収ですね。当時、それこそ市長さんも徴収に当たっておられたんですよね、秋田市も。なかなか機関委任事務ということは隔靴掻痒なところがあるでしょうから、実際に権限というものが限られているということはあったにせよ、やはり年金ということがこれだけ国民の皆さんの関心が高い中で、例えばこうした事務を分権していった場合に、市としてそれをやり得るのかどうか、これについて御所見を伺えればと思います。

佐竹敬久君 いずれ、正直なところ、やはり国の制度のものを私ども集めるというのは、ずっとそういう歴史的経緯でやってまいりましたので、ありていに言うと何かすっきりしたと。ただ、それによって未納率が大変高くなった。

 この種の問題を考えるときに、例えばさまざまな税等々について、非常にやはり国、都道府県、市町村、それぞれがそれぞれ同じようなことをしている。今、県と市町村は徴税関係は大分連絡をとり合ってやっておりますけれども、国は全然別格という形。これは、できるだけまとめることによってできるのかなと。

 例えば、フランスなんかすべて一本で、商工会議所の会費だとか農協の会費もそこへ委託して集めるというような制度でほとんどやっているんですけれども、それがいいのか、分権と関係あるのかどうか別にいたしまして、全体効率を高めるためには、やはりできるだけ一本化した方がいいと思います。それを市町村にやるかやらないかという話はまた別であろうと思います。

武正委員 ありがとうございます。

 町長さんにお伺いをしますが、先ほど地総債のことを言われまして、私も県議会にいたとき、将来、交付税でこれは補てんされるんだ、有利な県債だ、こういうように当時総務省から県に出向している方が県議会で説明した言葉を非常に覚えているんですね。

 実際そのときに携わっておられた身として、やはり、将来交付税で面倒見るよ、有利だよ、ぜひ使ってください、こういうようなお話が多分あったんだと思うのですが、いや、待ってくれ、将来本当にどうなるかわからぬからこれは我々としてはもう一度考えたいとか、そういうようなことが当時言えたのかどうかとか、そういうようなことも含めて、お答えいただけますか。

齋藤正寧君 県からは、これは有利ではあるけれども借金は借金だよ、ですから、ちゃんと管理しなさいよと。これは当たり前の話ですよ。

 ただ、残念ながら、財政規模が二十億そこそこでは、補助金を獲得して基盤を整備していく、こういう点ではなかなか難しかったんですよね、当時は。ですから、フルに計画を立てて使った。ですから、下水道はもう一〇〇%できています。幹線道路は八〇%完了しました。私の町はですよ。そういう意味では、基本的なインフラはほぼ終了と。ただ、個別事情を言えば、少子高齢化の中で子供の数はやはり減っています。将来的に学校が二学級維持できるかどうか、このことが非常な課題になっています。ですから、小中一貫校をつくろうか、こういうことを実はずっと考えてきたんですけれども、残念ながら一番最後になった。

 交付税の動向がよく見えない、ですから今交付税改革を注視しているんですけれども、地総債は管理して使えば非常に私ども末端自治体には有効な手段である、こう思います。ただ、野方図にやると、これはやはり借金は借金ですから。

武正委員 ありがとうございます。

 辻さんにお伺いをいたします。

 先ほどの御所見は私も意を得たりというところが実はありまして、今、中国の貿易が非常に活発になってきております。私もこの間、七月、天津新港も見てまいりまして、意欲的なそうしたインフラ整備をかいま見ております。これは、まだ統計はなかなかないでしょうけれども、日本海を通って米国に行く、そうした物流が非常にふえているという話も聞く中で、日本の港の整備が、釜山などに比べてあるいは天津新港などに比べて非常におくれている、劣っている。これは国としての国家プロジェクトとしてやらなきゃいかぬ、こういうような問題意識を持っておりますので、そういった意味では我が意を得たりというところでございます。御所見をいただきまして、非常にありがとうございます。

 ただ、ちょっと申し上げにくいことを伺うんですが、この間、NHKでワーキングプアということで番組がございまして、秋田県の一地域、あるいは仕立て屋さんですかね、この方が取り上げられておりまして、その状況を見て非常にショックを覚えました。やはり仕立て屋さんが、それこそ服がもう仕立ての注文がなくて、大変厳しいお店の経営をしているという実情をかいま見た思いがいたしましたが、秋田のそうした中小企業あるいは零細企業も含めて、実情として、貿易という新しい伸びていくお話は今伺いましたが、実際、今の現状をどのように認識されているのか、お伺いをできればと思います。

辻兵吉君 今仕立て屋さんの話がちょっと出ましたけれども、確かに呉服屋は今、昭和四十年代と比較すると半分以下になっている。これは、日本の女性が着物を着なくなったというか、もう一つは非常に着物が高くなったというふうな、そういう背景もございまして、そういう面で、仕立て屋さんでかなり気のきいた方はむしろ洋服の縫製の方に、簡単にはなかなか動けませんけれども、そういう研究、勉強も盛んにされていらっしゃる方もいます。いずれ、今会議所では、そういった古い体質の方々に新しい産業への取り組みをいろいろな形でアピールしております。

 ただ、どちらかというと、年配者、例えば少なくとも終戦前、昭和十七、八年から二十年前後に生まれた方々で六十歳を超えた方々のそういう技術屋さんたちは、今非常に後継者に困っているところと、それから、仕立て屋さんがだんだん少なくなってきたことによって、逆に非常に貴重な存在になりつつある仕立て屋さんもいらっしゃる。

 そこら辺の中途半端な姿のものをどうやって会議所で救っていくかということで、年配によって新しい方向づけをそれぞれ仕分けしながら、今県内の会議所あるいは商工会でいろいろな勉強会を設けてやっておりますが、いずれにしても、そういう面について積極的な、例えばリーダーなりあるいはディスカッションなりをする場合でも、やはり県内だけではなかなかいいアイデアを持っている人たちがいないので、外からそういうことに対する刺激を与えてくれる人を呼ぶんですが、そういう場合に、市町村なり県なりにいろいろお願いはしますけれども、細かいところまでは、県あるいは市町村も非常に今ピンチなものですから、産業界自体が実は行政を余り財政的に当てにしないでやるような方向を一生懸命今努力している最中で、なかなかそれが表に出てこないのが残念だと思っております。

武正委員 ありがとうございます。

 最後に、知事さんにまたお伺いしたいんですが、先ほど国民年金の徴収の話をしましたが、あわせて雇用政策でございます。

 雇用政策、これはやはりこれから非常に、雇用の創出というんですかね、雇用をつくり出すこと、生み出すこと、それこそ、もちろん企業誘致あるいは企業が雇用をどんどんふやしてもらえるように、こういったことが都道府県あるいは地方自治体の大事な政策になってくる。こういうふうに認識しておりますが、例えば、今、ハローワークから県の方には求人情報は提供されてきていると思うんですね、規制緩和で。ただ、いまだ求職情報はハローワークから県の方に提供がないと思うんです。

 すなわち、秋田県の県民の方がどういう仕事につきたいか、どんな企業を求めているか、こういった情報が例えば県の方に届けられると、より有効な雇用政策ができるんではないのかな、こういうふうに私は考えておりまして、四月、当時、川崎厚生労働大臣ともそんなやりとりで、検討するというようなところまではお話をいただいたんですが、こうした求職情報が県の方に厚労省から提供される、こういうふうになった場合の県としての雇用政策、どのような変化があるでしょうか。

寺田典城君 私たちは、日本の国は戦後ずっと成長社会を迎えてきて、バブルが崩壊した、ようやく雇用問題とかというのが出てきたわけですが、労働省の政策というのはほとんどなかったんじゃないのかな、厳しい言い方をすれば私はそう見ています。

 ですから、例えば、今求職はハローワークだということで私たちの方に入ってこない、私たちはどうすべきかということですが、雇用拡大については、企業誘致から、それから企業を新たに創成するとかというので、先ほど佐竹市長も申し述べておりましたけれども、多大な予算を単独事業として取り組んでおります。それを議会に諮っているんですが、それこそ何々企業がいらっしゃるということになれば、オーダーメード的に支援制度とかあれして雇用の拡大、これは二百人とか五百人とかというふうな形で進めているんですが、これからの社会の中では、地域性というのは、求職というのはやはり県行政ともう合体してやるべき姿に来ているんじゃないのか、私はそう思います。

 ですから、ハローワークが、労働局が上の姿を見て、東京は東京のシステムだと思うんです。東京スタンダードでこちらの制度はやっていけないということをひとつ御理解賜りたい、そう思っています。やはり地方は地方制度の雇用政策を進めるべきだ、そういうふうに思っています。

武正委員 ありがとうございました。

佐藤座長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。これから質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、地方分権の残された課題、大きく言うと五点ほどあるかなと思っています。一つは、市町村合併できなかった市町村を今後どうするんだというのが一つ。それから、税財源をこれから国から地方へどうやって移譲していくんだというのが二つ目。それから、都道府県の合併をどうするんだ、あるいは道州制をどうするんだというのが三点目。それから四点目が、県から市町村への権限と財源の移譲をどうしていくんだ。そして五点目が、首長の多選禁止についてどうするんだ。この五点が、これからの地方分権を進める上で大きな課題かなというふうに思っております。

 その中で、本日は、時間の中で、都道府県の合併あたりまでお話をお伺いしたいと思います。

 まず最初に、市町村合併ですけれども、御案内のとおり、三千二百もあった市町村が、来年の三月では千八百十まで減るという話でございます。秋田県でも、六十九から二十五ですか、大変合併が進んだわけでございますが、たまたま本日の読売新聞を見ておりましたら、ことしの十月一日現在での千八百十七の市町村に、市町村合併したことについてのアンケート調査の結果が出ておりました。それを見てみますと、合併できなかった自治体が、危機感を抱いている自治体が七割を超えているというんですね。先ほど齋藤町長さんからもいろいろございましたけれども。

 そうした中で、三人の首長さんに、知事さんと市長さんと町長さんにお伺いしたいのは、その中でも出ているんですが、合併はあくまで自主的、主体的な合併だ、したがって、知事が関与するのはよしてくれというのが七一%いるんです。このことについてどう思われるか、御三方にお伺いをしたいと思います。

寺田典城君 私は、合併特例法で合併は推進しました。ですが、強制はしませんでした。あくまでも自己判断にしてくださいということで、それで結構だと思います。自分の町が三千人であろうと五千人であろうと千人であろうと、それは自己が考えてまちづくりをすべきであろう。

 ただ、言えることは、自己完結型の市町村行政はもうあきらめた方がいいでしょう。ですから、そういうことについては温かくいろいろな面でサポートを県行政はするべきだろう。そして、これから分権型の時代の中で特性のある、特徴のあるまちづくりをしていただきたい、そう思っています。

佐竹敬久君 私も、合併について、強制的なというのはそもそも地方自治の論旨からするとなかなか難しい話で、また、これをそう簡単に地域住民が受け入れられるとは思わないわけでありまして、これをまさにするかしないか、その選択は自己責任なわけであります。

 ただ、小規模町村の問題、あるいは非常に合併して大きくなった周辺に小規模の町村、このお互いの補完関係、お互いに助け合いながらできるだけその格差をなくしていく、そういう制度、これはやはりあってもいいのかなという感じがいたします。

 ですから、小規模町村が残ったとしても、今知事もお話ありましたけれども、そこですべて完結するんじゃなくて、隣の大きな都市との連携、ある部分は連携しながら、ある部分は非常に自主性で、これはやはり住民にそういう決定をしていただきながらやる、こういういろいろな仕組みはこれから工夫するべきだと思っております。

齋藤正寧君 私は、合併できなかったというよりも合併しなかったのです。

 私は、二年間の間で、二十八集落あるんですけれども、五回合併座談会をやっています。アンケートを三回とっています。県でも二回とっています。具体的に合併しようか、こういう段階で。

 その中で、住民というのは、町長に任せた、議会に任せる、こういうのが最初の反応です。だんだん協議が進んで実態が見えてくると、これではやはりだめだなと。ですから、三回のアンケート、ただ、県で二回か三回やっているんですが、いずれも五割には達しない。町でどうしてもやらなきゃいけないと、最高行ったときで四七%まで行ったんですけれども、まちづくりのいわば素案、ビジョンを出した途端に、おくれにおくれて遅かったんですけれども、反対が四割、賛成が二七、八%、こういう状況で、結局、住民もやはり成長したなと。ですから、意識は非常に変わりました。

 そういう点で、こういうことはきちんと情報を公開しながら一緒にやはり地方自治を勉強しよう、こういう観点からいうと、私は、非常に住民は進歩すると。

 同時に、合併じゃなくて、いろいろな利害、損得のあるマターがたくさんありますね、例えば迷惑施設だとか。最終処分場をつくるのに、一年間で三十回座談会をやったことがあるんですよ。そうすると、非常に住民は進歩する。

福田(昭)委員 ありがとうございました。簡潔で結構でございますので、よろしくお願いいたします。

 私は、合併については、確かに自主的、主体的な合併というのは地方自治を進めるという上では非常に大事な理念だと思っていますが、しかし、国民全体の幸福というのを考えたときには、これはしっかり議論して方向づけするべきだと私は思っているんです。

 やり方として、きっと御案内だと思いますが、二通りあるんですよね。フランスの場合は、市町村合併を進めないんですよ。ですから、いまだに三万四千もコミューンがあるんです。しかし、そのかわり、市町村連合というのをたくさんつくらせているんですよね。フランスの場合は、地方自治を三層制でやっています。州があり、県があり、コミューンがある。一方、スウェーデンは逆なんですね。しっかり議論した上で、法律で市町村合併を強烈に進めるんです、これは強制的に。二千五百もあった市町村を二百七十五のコミューンにしちゃうんです。

 どちらも私は正解だと思うんですが、このことをやはりしっかり我が国では議論せずに、実は、自主的、主体的の名のもとに合併が進められた。それがこれからの道州制に向けていろいろな議論が出てくるのかなと思っていますが、実態は、実は、自主的、主体的であったけれども、兵糧攻めだったんですよね。小泉さんの三位一体の改革では、国庫補助負担金と交付税で何と三年間で六兆八千億円、地方に配っているお金を削減いたしましたから、地方は、先ほど齋藤町長さんからはえらい話を聞きましたが、そういう努力をせざるを得なかったということなんですよね、基本的に。そのことを一つ申し上げておきたいと思います。

 二つ目は、税財源の移譲ということでございますが、税財源の移譲につきましては、特に今回の法案の中には明記されていない。我々としては、もしかすると、今までより後退してしまうんじゃないか、そういう心配をしているわけでございます。

 そんな中で、地方六団体は、御案内のとおり、非常に税源の偏在が少ない地方消費税などでぜひ移譲すべきだという提案をいたしております。先ほど辻名誉会頭の話を聞いておりましたら、秋田県も七割は第三次産業だ、こういう話でございますから、消費税の移譲が行われれば偏在が少なく行われると思うんですけれども、そうしたことについての税財源をぜひとも今度は法案の中に明記すべきだ、それぐらい強い思いがあるかどうか、御三人の方にお伺いしたいと思います。

寺田典城君 今回は税源移譲とかそういうものについては明記されていないですから、何か後退しているような感じがするわけですが、私としては、これから地方分権の中で税源移譲というのがあって初めて分権型の社会になるわけですから、同一であるということで、これを書いていなくても、分権をして、新たな分権一括法が出る時点で税源の問題というのは必ず出てくる。

 だから、霞が関の官僚がどこまで私たちと、何かうまく扱うように考えているのかなということを楽しみにして見て、率直に言って、今この状況で省益だけでもう物はやっていけないと思うし、お互いに力を合わせなきゃ、私は、日本の国家は、一番大事なのは財政再生だと思うんです。でなければ私たちは安心して眠れないですよ、地方は。そうでしょう、今の状況で。そういうことを……(福田(昭)委員「済みません、時間がないので簡潔にひとつお願いいたします」と呼ぶ)あとは国会の先生の力ですから、何とかやってください。

佐竹敬久君 簡潔に申し上げます。

 第六条に、財政上のあり方については検討、そもそも法律に検討するという条文が入るというのは珍しいですね。やはりこれは国の各省庁の内部での合意ができていない。いわゆる財務省マターと総務省マターで相当やりとりがあったと思いますが、検討するなんという法律は余り聞いたことがないというのが実態です。

齋藤正寧君 財源移譲は、これはやはりやってもらわなきゃいけないんですよ。ですから、交付税を共有税にするとか、あるいは、先ほど秋田市としてできるの、こういう話がありましたけれども、所得レベルに応じてやはり逆比例するような、そういう交付税制度をつくっていかないとこの問題はなかなか解決しない。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 これまた簡潔にちょっとお答えいただきたいんですが、読売新聞のアンケートによりますと、新型交付税、人口と面積を中心として配分する交付税、これも反対だというのが七三%いるんですよ。ですから、皆さんも反対か賛成かだけ簡潔にお答えください。

寺田典城君 面積と人というのは、私はこれは反対ですね。

佐竹敬久君 私も、交付税を自分で計算したことがありますが、かえってこれは面倒くさくなって、事務量がふえます。

齋藤正寧君 簡略化するという意味では理屈はわかりますよ。ただ、個々の市町村全部それぞれ事情が違うのだ、それをちゃんと設計するなりなんなりできちっとやれるのかどうか。こういうことで、必ずしも簡潔にはならない。ですから、必ずしも賛成じゃない。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 昨日、私が質問しましたら、地域振興費というのでそこをよく見るんだという話でございますが、どういう設計ができるかはこれからですから、ぜひ皆さんも関心を持っていただきたいと思います。

 それで、三点目ですけれども、いよいよ都道府県の合併ですけれども、これが将来は道州制につながるのかなと思っていますが、安倍総理はどうも、市町村合併は究極の行政改革につながる、地方分権を進めることによって。この市町村の合併、道州制も実は究極の行政改革につながるということで、今回、地方分権の法律に入れなかったんですよね。行革担当大臣に道州制担当大臣を命じて仕事をやらせることにしちゃったんです、今回。

 ですから、確かに安倍総理はそこまでは、もう行革をやるんだといって考えているのかもしれないですが、まずしっかりと地方分権の中で都道府県の合併なりあるいは道州制というのを考えていかないとうまくいかないのかなと思っていますし、そのためには、国と地方の役割分担というのをしっかり考えて、先ほど秋田の市長さんから話がありましたように、日本の国をどういう形にしていくんだ、一番大きなポイントだと思うんですね。

 ここのところをどういうふうに考えていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。

寺田典城君 地方分権の行き先というのは、分権型の社会というのはやはり道州制につながると思うので、それは二つで追いかけるべきだと思っていますので、どういう形の道州制がいいのか、それはそれで一生懸命走るべきだと思うし、分権は分権で走って、その中でシンクロナイズというかシンクロできると思いますので、そういう点では、安倍さんの考えについては私は異論は唱えておりません。

 ただ、交付税とかいろいろな考え方の中で、私はよく言わせていただきますのは、白河以北山三文ということがあります。今、果実のない広大な土地を持っているところに対して、例えば、山林が今果実を生みますか、それから、水田があって今それが果実を生むような米価の制度ですかということになると、こういう地域がいかに生き残っていけるかということが、これからの日本国家の形成の上で、東京の視点、要するに永田町それから霞が関、六本木あたりだけのマターで物を考えた行政というのは、私は、それは日本の国は最終的には立ち行かなくなるんじゃないのかなと。ですから、地域があって初めて社会があるということをやはりこの格差社会の中ではよく考えていただきたいねと。

 ですから、新型交付税がどうなるのか、そういうことも含めていろいろ議論すべきであろう、そのように思っています。

佐藤座長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私は、青森県の出身でありますが、生まれは秋田県の能代市でございます。きょう、このような機会をいただきまして、皆さんからの貴重な御意見を聞くことができましたこと、本当に光栄に思っております。本日はありがとうございました。

 今回の地方分権改革推進法はプログラム法でありまして、具体的な中身については本当にこれからいろいろなことが決められていくんだろう。そうなったときに、これまでの地方分権というものが一体どうであったのかということをいろいろな角度から検証するということがやはり問われていると思っております。

 そこで、きょうは、二つの大きな課題ということで伺っていきたいと思うんです。

 法案の目的の一つであるのが、国と地方公共団体の役割分担の見直しを行うということであろう、もう一つが、財源のあり方を見直しをするということであろうかと思うのですけれども、秋田県は、先ほど来お話が出ているように、大合併で六十九市町村が二十五市町村に再編をされた。知事さんは強制はしていないよというお話でしたが、かなりのイニシアチブを発揮したということは先ほど来お話があったのかと思っております。

 一方、秋田市の方では、平成九年から中核市になっておる。もう既に九年の時点で二千二百七十五項目の事務が移管をされて、この間、昨年の六月に地方分権推進プロジェクトチームが、県からの権限移譲プログラムということで、どんなものが移譲の対象になるか、あるいは必要がないものということで、一定整理をされたという報告書が出されております。

 それで、私は知事さんと市長さんに両方伺いたいと思うのですが、知事さんは、中核市をもっとふやしたい、もっとふやして権限を移譲するんだということをおっしゃっておりました。そうなったときに県は何をするんだろう。国の仕事をもっと県がやるというふうになるかもしれませんけれども、そういう意味で県がやるべき仕事は何だろうかということを知事さんに伺って、市長さんには、県と市の役割分担、ではどんなふうに整理していこうとされているのか、伺いたいと思います。

寺田典城君 県は、先ほど、九十二本ですか、要するに市町村の手挙げ方式で権限移譲していますので、それをサポートして、できるだけそれを早目に完成させる。そうすると中核都市並みの権限移譲になってしまう。

 そうなってくると、県は何をすべきかということはよく庁内で議論しているんですけれども、それはやはり秋田県全体の地域振興に対して、産業振興だとかそういう広域的な行政、広域観光だとか広域的な医療行政だとか、それから、雇用の関係も含めたこととか高等教育の問題、そういうことを含めて、秋田県として生き残れる場所というのはあるわけですから。ただ、とにかく今現在としては、市町村の自立に向けたことをサポートすることが県の一番大きな役割じゃないのかなと。

 ですから、県がこのようにあるべきだというよりも、国の制度がどう変わってくるかわからないし、非常にフレキシブルな考えで私たちは考えておるということなんです。

佐竹敬久君 私どもの方で、いろいろと県と市町村の事務の関係、その間に県の方からも出されたわけでありますが、必ずしも全部県からのものを受けておるわけではございません。

 一つに、ある部分を受けたとしても、自己完結しないものがあるんです。どうしてもそこの部分は、国との関係、法律の関係で、ある部分は、同じ一つのルーチンの中でここまでは絶対県でなきゃならない。そうすると、そこだけ部分的に市に移しても、逆に、相手方からすると、例えば民間の方からすると非常に迷惑な場合もある。ですから、やはりこれは非常に単純ではないんです。

 物によっては、私ども、あくまでも行政だけのものではないんです。住民サービスとしますと、住民が利便性が逆によくならない場合もあるのですね。一本で全県のものを許認可できるものが二十五に分かれると、二十五の窓口へ行かなきゃならない。これは企業は嫌います。

 ところが、そこが県と市町村との間だけで調整できるものであればいいんですけれども、必ず国との関係で、なかなか部分的にそこが隘路になっている。これが結構あるんですよ、個別にやっていきますと。私、昔県にいたときに、実際、権限移譲で相当いろいろやりとりしたんですけれども、やはりあります。

 ですから、今のところ、県と市町村との間は、この後も毎年いろいろやりながら、できるだけ権限移譲をしていただくということになるんですが、最後には国との関係で絶対残ると思います。

寺田典城君 福祉パッケージなんかはやはり権限移譲していないですよ、余り。移譲を受けようとしません、市町村が。後でデータをお見せしますから、持っていってください。

高橋委員 ありがとうございました。

 地方分権を進めるといいながら法律がまだまだネックになっているというところが、それは本当にいろいろな事務、現場の声を生かして整理をしていくことはさまざまあるのだろう、私もそういうふうに思います。

 そこで、三位一体の改革で、この間、例えば義務教育の国庫負担ですとか児童手当ですとか生活保護だとか、これを地方に移すということが非常に大きな問題になったわけです。その間、法律的には国が責任を持つと書いているはずなのに、そこまで地方に移すというのはいかがなものかという議論を、私などは厚生労働委員会におりますので、そうした議論もさせていただいたところであります。

 それで、例えば、一般財源化という形で整理をして、基本的には基準財政需要額に入っていますよというのですけれども、総額の交付税額も減額をされている。そういう中で、従来どおりの制度を維持できるのかということは常に悩む場面ではなかったかと思うんです。

 ですから、例えば県でいいますと、国の補助はやめたんだから県もやめますというふうになる場合、あるいは、市町村にしてみたら、これまでやってきて、国と県がやめたからといってそう単純にはやめられないという場合、いろいろな形での悩みがあるのではないかということを思うんですけれども、それぞれの知事さん、市長さん、町長さんに、三位一体改革によってそうした財政的な影響はどうだったのかということと、本来これは国として責任持ってやってもらうべきではないかと思うことは何かというのを伺いたいと思います。

寺田典城君 簡単な言い方をすれば、地方の自由度というのはほとんど高まっていないということですね。補助金が交付金に名前を変えられたとか、あとは、三兆円を税源移譲したといったって、例えば、義務教育負担金の場合は二分の一が三分の一ですか、それから児童手当だとかは三分の二から三分の一になる。必ず関与が入っちゃって、国の官僚というのはおもしろいな、そう思っていますね。もう少し頑張れ、うちらでサポートするよということでやればもっと効率的にいくのに、なぜそういうものを持っていなきゃならないのかというのは、私たちにとっては不思議なんです。

 ですから、そういう点では、今回、改革推進法になりました。今まで分権推進法だから、改革推進法という言葉が一つ入ったから、本当にいくのかなと思ったりしてやっているんですけれども。あとは、政治家がやはりこれはあれしていただかなきゃ無理ですよ。県庁の中だって同じなんですよ。やはりトップが変えていかなきゃ制度は変わらないです。それは何とか頑張ってみてください。

佐竹敬久君 三位一体のときのあの税源移譲あるいはそういう問題については、ありていに言いますと、特に厚生労働関係は、財務省から攻められているところについてどうやってそこを切るかということで、ある意味ではそれを地方に押しつけた、そんなところじゃないのかなという感じがします。

 もう一つ言わせていただくと、先ほど知事もお話がありましたけれども、おかしいんですね、法律のつくり方が。私どもの方でも福祉施設を木造でやるといったら、最初だめで、最後よかったんです。建築基準法でいいものを何でそっちでだめなんだという、非常に単純な議論が出たりするんですよ。建築基準法でオーケーな建物を建ててはならないという、そのとき私はそれで随分最後まで抵抗して、結局木造でなりましたけれども。

 いずれにいたしましても、そこら辺の物事の考えが少し整理されていない。ですから、我々も大変困るわけであります。

 以上です。

齋藤正寧君 地方公共団体の今の、県は除くので、市町村の経常収支比率は九〇%を超えていますよね。九一・二か六か、そんなものでしょう。政策的に使える経費はほとんどない。ですから、県がやっていたことを廃止されて町で困るんじゃないか、こういうことは困りますよね、末端としては。

 ただ、現実問題として、お金がなければ、やはり秋田県もキャップ制だと。ただ、末端の住民と接している我々は直ちにそれをやめるわけにはいかない。ルールに基づいたものでやってきたつもりが県の肩がわりをしている実態、こういうものも物によっては出てくる、こういうことであります。

高橋委員 今お話しされたことは、もっと自治体の裁量というのが本来あるはずなのに、交付金とかいろいろな制度になったけれども、国の関与の仕組みが残っているじゃないかというお話だったのかなと。仕組みが残っていながら財源はどうかということなどがあったと思いますし、ただ同時に、国が本来責任を持って、自治体に分担するというだけではなく、国としてきちんとやるべきことはあるのではないかなというふうに私も思って聞いておりました。

 それで、町長さんにももう一度お話を伺いたいのですけれども、時間の関係があるので、先に辻名誉会頭にぜひ伺いたいと思います。

 先ほどの意見陳述は、インフラ整備を急いでほしいということだったと思います。また、秋田港の貿易が非常に頑張っているんだということも拝聴したかなと思っております。同時に、辻兵さんは秋田でも大変歴史のある会社でございますし、中小企業が秋田県の中では圧倒的に多いと思うんですね。そういう点で、地方分権と中小企業がこれから頑張っていけるかということとの兼ね合いで考えてみたいなと思うんです。

 東北六県の商工会議所の連合会からの要望書をいただいておりますが、やはり、三位一体改革の進展により、都道府県への小規模事業対策について十分な予算化がされていないということが要望の中に盛り込まれています。経営指導員等補助対象職員の人件費の問題や、相談窓口の支援体制の強化などの拡充、継続などが要望として挙げられておりまして、やはり小規模事業者への支援というのはきちんと担保されるべきものだと思っているんですけれども、そのことが今どうなっているのか、そして、どうされなければいけないのかという点で、ちょっと具体的に伺えればと思います。

辻兵吉君 私ども一般の経済人からしますと、国、県、市、とにかく今非常に厳しい情勢にあるということで、特に今、県も市も大変な状態にあるということを十分に承知して、なるべく公共に頼らないで、自分たちで何とか稼ぎ出して雇用をふやしていく。一番の問題は雇用ですね。我々のところは今〇・六ですが、例えば愛知県あたりでは一・五とかいう数字が出ているようで、そういうのから比較しますと、とにかくまず職につくと。

 今非常に伸びているのが貿易なわけです。したがって、例えば、秋田市の総所得に対する港の関連の所得が大体三分の一を占め、それから、秋田港で仕事をしておる連中だけで県民所得の約一割を占めているという非常に大きな産業社会を、貿易を通じて秋田港をよくしていって、さらに進めていけば、そういう面で非常に手っ取り早く進んでいく。それから、零細企業が非常に貿易産業に従事しやすい仕事をたくさん港関連に持っております。

 そういう意味で、私は、秋田市の産業界としてはやはりどこまでも貿易を中心に、特にこれからの我々のターゲットとしては極東ロシア。これは資源も相当ありますし、それから、いろいろな意味で今ロシア自体が力がついてきていますので、いろいろなものを輸入しようとしている。とにかく東京港ばかりから出るというのじゃなくて、秋田港から、あるいは能代港から物を出せるというようなものが零細企業にとっても非常に展開しやすいものですから。

 ですから、これからは、秋田県の産業としてとりあえず貿易を盛んにして、そして、産業界として地方税の納税負担を少しでも多くしていこう、そういう気持ちで非常に今、逆に、貧乏であるがゆえに一生懸命頑張っているという情勢です。

 ですから、とにかく国が今やっていただきたいことは、早くそういう経済の効果があらわれるインフラの整備、特に港の整備と道路を早くやってもらいたい。あるいは、もしどうしても国ができなければ県にお金をやっていただければ、県は我々の言うことをすぐ聞いてくれますから、とにかく税金で戻ってくるものに対しては県も市も町も非常に敏感に反応してくれます。

 そういう意味で、秋田県がこれから伸びていくにはそれしかないんだということを確信を持って言えます。

 以上。

高橋委員 せっかくですので、知事さんにこの点で一言伺ってよろしいでしょうか。

寺田典城君 小規模事業所がやはりこれからの大きな課題だと思います、率直に。これは、どのように生き残りをしていけるような指導が県行政としてサポートできるか。私たちの県としてはそれを全面的に、ワンストップセンターとして企業活性化センターということで、県の職員からプロパーから入れて、七、八十人の人間が一つの活性化センターの中ですべての相談を受けるという、雇用から人材育成から金融から含めて、そういうことでしていますけれども、中小企業の問題というのは、所得も低いし、これからの格差問題としてのあり方で、やはり政治もある面では取り上げなきゃならないときに来ている、私はそう思っています。

高橋委員 ありがとうございます。ぜひ期待をしております。

 齋藤町長さんにもう一度伺いたいと思うのです。

 井川町の自立計画、それと行革大綱の集中改革プランも拝見させていただきました。非常に興味深く思っております。もちろん、行革のためには思い切って職員の整理だとかそういうことが提起されている一方で、町民参加を重視していくですとか徹底したサービスという点で、やはり町ならではの独自性を出しているのかなというふうに思いました。

 そこら辺のところで、厳しいながらも、町としてこれをきちんとやっていく必要があるんだと思っていることは何かということと、そうはいえ、合併を選択しなかった町が自立するためにはやはり厳しい行財政改革を迫られているということもこれありだという点で、課題とするものは何かという点で伺いたいと思います。

齋藤正寧君 現実には、合併しようとしまいと固定費を削減していく、これをやっていかないと政策的なこともできませんから、これは当然やっていかざるを得ない。ですから、六十四人ですか、自立計画を見ていただけていれば話は早いんですけれども。そういうもので浮いたものを政策投資していく。

 特に、高齢化社会で、地方の場合は範囲が広い。山間部もある、平場もある。混住社会だ、しかも少子化だ。こういう中では、やはり地方自治体は住民により近いところにいないと、私は、住民の生活が成り立たなくなるのではないかなと基本的には思います。

 ただ、合併は否定はしません。

佐藤座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに派遣団を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の静岡県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年十一月十五日(水)

二、場所

   オークラアクトシティホテル浜松

三、意見を聴取した問題

   地方分権改革推進法案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 林  幹雄君

       岡本 芳郎君   片山さつき君

       実川 幸夫君   萩生田光一君

       萩原 誠司君   逢坂 誠二君

       寺田  学君   谷口 隆義君

       重野 安正君

 (2) 意見陳述者

    静岡県知事       石川 嘉延君

    浜松市長        北脇 保之君

    函南町長        芹澤 伸行君

    浜松商工会議所会頭   中山 正邦君

 (3) その他の出席者

    総務省大臣官房参事官  吉田  靖君

    総務省自治行政局長   藤井 昭夫君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

林座長 これより会議を開きます。

 衆議院総務委員会派遣委員団団長の林幹雄でございます。

 この会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、地方分権改革推進法案の審査を進めているところでございます。

 当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方からの御意見を承るため、当浜松市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の岡本芳郎君、民主党・無所属クラブの寺田学君、公明党の谷口隆義君、自由民主党の実川幸夫君、同じく萩生田光一君、同じく萩原誠司君、同じく片山さつき君、民主党・無所属クラブの逢坂誠二君、社会民主党・市民連合の重野安正君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 静岡県知事石川嘉延君、浜松市長北脇保之君、函南町長芹澤伸行君、浜松商工会議所会頭中山正邦君、以上四名の方々でございます。

 それでは、石川嘉延君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

石川嘉延君 それでは、早速陳述をいたします。

 まず、分権改革推進法案に関係する事項として三点申し述べ、時間がございましたら、関連する事項その他を述べたいと思います。

 まず、法案に直接関係する事項でありますが、第二条あるいは第三条三項関係で、分権改革の理念と行政改革についてでございます。

 分権改革推進法案の前の分権推進法、このもとで、大変分権が進んだという印象がございます。そういう中で、前の内閣における三位一体改革、これが平成十五、十六、十七で作業し、その結果が一年ずつ、十六、十七、十八と、それが実現してまいったわけであります。この三位一体改革は、四兆円の国庫補助負担金の縮減と三兆円の税源移譲ということで行われたわけであります。それはそれで、ほぼそのような形で決着を見たわけでありますが、一方で、この間に、交付税の総額が、臨時財政対策債、これも含めまして五兆円規模の削減が三年間でされております。すなわち、平成十五年と最終年度の十八年度を比べますと、五兆円削減されております。

 これは、三位一体改革とは別に、行政改革の名において五兆円削減をされたということでございましょうが、受け取る地方とすれば、同時発生しておるわけでありますから、三位一体改革によって地方の自主性、自律性が高まると期待しておったのに、実際は懐をぎゅっと握られ、それを縮められて、七転八倒しかねない状態にあるというのが実態なんです。そういうところに、改革という名の入っていない分権推進法のもとですらこういうことが行われたわけでありますから、さらに改革という名の分権改革推進法なんというのが出てきたら一体どんなことになるんだ、こういう心配があります。

 実は、この行政改革五兆円の交付税総額の削減は、あらかじめ予告されていなかったんですね。したがって、いきなり毎年々の地方財政計画で削減が明らかになってきて、それで地方が右往左往するという状態になったわけです。これでは、円滑な地方行政の運営に非常に支障を来すばかりか、見通しが立たないということになるわけです。地方団体は、どこでも大なり小なりある一定の、五年とか十年の中期見通しを持ちながら行財政運営をやっているわけです。そういうところに、来年はどういう財政規模になるか見当もつかないという状態を三年間続けられましたから、もうこれはたまらないということですね。

 したがって、今度、分権改革推進法ということになりますと、これにもっと拍車をかけ、なおかつどれぐらい縮減されるかわからないという状態、これがもし現実化すると、これはもう大混乱に拍車がかかるだけでありますので、ぜひそのようなことがないように改革をしなければいけないということは、地方団体はもう十二分に承知をして真剣に取り組んでいるわけであります。したがって、その改革の実を上げるためにも、ある中期見通し、三年とか五年まで、どのようなテンポで、では、総額を圧縮するなら圧縮する、そういうガイドラインが示されてしかるべきだと思います。

 その関係で、第六条、地方税財源の充実強化ということをうたっておりますけれども、前回の分権推進法のもとで行われた実際の財政改革、財政を通じての行革を迫る、ああいうやり方について、私は、現状では非常に不信を持っておりますから、それを払拭していただかないといけないというふうに思います。

 そういう意味からも、第四章関係で、地方分権改革推進委員会が設けられることになっておりますけれども、これの人選に当たっては、地方団体の、味方をしろとは言いませんけれども、事情を十分よくわかってきっちり取り進めする、そういう見識を持った方、これをちゃんと任命していただかなければ、信用が置けないわけであります。そのためにも、人選に当たっては、地方六団体と事前に十分なすり合わせをしていただきたい。その一つの手だてとして、地方六団体は、地方行財政会議、政府と地方六団体の代表から成る地方行財政会議の設置、これも法律による設置を要請しておりますけれども、これはぜひ実現をしていただきたいというふうに思います。

 以上が、直接法案に関する感想でありますが、そのほかのこれに関連するテーマとして、幾つか申し述べたいと思います。すなわち、この分権改革推進法が通りますと、今後、具体的ないろいろな方策について、一種の個別法といいましょうか具体法がこれに伴って出てまいると思いますので、その法案の作成なり議論の参考に供したいと存ずるわけであります。

 まず第一点は、市町村合併の問題であります。

 平成の大合併は、第一次が一応昨年終わりまして、今第二次の合併作業に我々は取り組んでおりますけれども、この第二次の合併では、潜在的に合併の機運がありながらも、一次のときと比べると、前回と比べるとインセンティブがない。それから、勧告権は知事に与えられましたけれども、では、勧告に従わなかったら強制的に何でもかんでも合併させられるかというと、そういう手だてもないわけでありますから、この勧告権は、実は大した意味も持たないわけであります。

 第二次合併を推進しなければいけないところは、いろいろな困難な問題があって、潜在的には合併がふさわしいと思いながらも、それを乗り越えられないようないろいろな困難性があったということでありますから、むしろ第一次合併のときよりももっと合併を促進するような手だて、インセンティブも含めて手だてがなければその実は上がらないと思いますので、これは真剣に考えて措置をしていただきたいと思うわけであります。

 それから、現在の地方自治制度の中でも、地方公共団体、特に市町村、基礎的な地方団体の自治度を高める制度がいろいろあります。特例市、中核市、そして政令市。この政令市は、現行の制度の中でも基礎的自治体の自治度、自治能力度を最高に高めるものであります。本県は、これを活用してと言ったら語弊がありましょうけれども、これを頼りに、静岡市と清水市の合併、そして浜松市と周辺の十一の市町村との合併、政令市になるということをてこに大型合併が実は実現いたしました。

 そういう経験を通じて痛感いたしますのは、現在の政令市制度は県から市への権限移譲が不十分であります。と申しますのは、権限は、河川行政、そして農業行政、これがすっかり県に残ってしまっております。本県では、独自にこの二つの権限も、これからおいおい、静岡、浜松両市と協議をして、県の財源も含めて移譲したいというふうに考えておりますけれども、これをぜひ制度化していただきたいと思うわけですね。

 そういたしますと、今後、都道府県合併なりあるいは道州制へ向けていろいろ議論するときに、例えば、政令市規模の県が、一県で政令市になった場合は、公安委員会業務以外はすべてその政令市が担うことになるわけでありますから、現状の県とほとんど変わらないわけですね。そうすることによって、規模の小さい都道府県の間の合併を促進する一つの手だてになるのではないか。

 加えて、その政令市は、行政区としての、単なる支分所としての区を設けることになっていますが、区に一定の地域組織的な、一定の自治を認めるような仕掛けにすると、なお一県そのままが政令市になりやすいというふうに存じますので、そういう面の検討、改善をお願いしたいというふうに思います。

 そういうことを通じて、今、都道府県のあり方にいろいろ議論が集まりつつありますけれども、道州制の議論をするにしても、あるいは一気に道州制に行かなくても、合併をてこに現在四十七ある都道府県を半分程度に再編成するにしても、政令市の制度というのにひとつ着目して、ここを改善していただく。

 さらに、この政令市の制度については、現在、法律上は、五十万以上の都市ならば政令市になれるというふうになっているんですけれども、自治法の運用上、従前は百万都市、そして今回の平成の大合併のときに、静岡県から働きかけをした結果、七十万以上でもいいというふうになりました。もう一声、五十万までにすると、非常に自治度の高い基礎的自治体ができます。そうすると、先々は、例えば、もっと市町村の数の集約も期待できるし、都道府県の集約もできるということにもつながってまいると思いますので、そういう提言を申し上げたいと思います。

 道州制の問題でありますが、これはこれからいろいろ議論をされるということでありますので、時間も参りましたから、もし何か発言の機会があれば後ほど付言したいと思います。

 以上でございます。

林座長 ありがとうございました。

 次に、北脇保之君にお願いいたします。

北脇保之君 まず最初に、衆議院総務委員会におかれましては、当浜松市で地方公聴会を開催いただきましてまことにありがとうございます。また、意見陳述の機会をいただいたことにもお礼を申し上げます。

 私の方から三点申し上げたいと思うんですが、まず第一点は、地方自治体の現状についての総括的な意見ということでございます。それから二点目は、浜松市としての合併それから行政改革の取り組みについて。そして三点目に、財政面を中心として、今回の法案についての問題点等に関する意見を申し述べたいと思います。

 まず最初に、地方自治体の現状についての総括的な見方なんですが、私は今、特に市町村レベルで見たときに、自治体間の格差が非常に広がっているというふうに感じております。経済が活発で財政力もある自治体と、他方で、経済が停滞し財政力の弱い自治体がある、その格差が増大していると思います。

 そうした中で、経済や財政の弱い自治体では、行政による経済振興とか文化振興、そういった積極的なことができにくくなっているというだけではなくて、従来から基礎的自治体の仕事とされてきたような学校の建設、維持とか、道路整備、水道の維持とか、そういった基本的な地域の社会基盤の維持保全すらできにくくなってきている、こういう問題があります。

 別の見方でいえば、過疎地域とか中山間地などを中心とする地域において、その地域社会の崩壊、これをどう食いとめるのか、そういったことが大きな問題であるというふうに思っております。

 そうした中で、私ども、浜松市の地域においては、関係自治体の主体的な努力によって、今の問題について一つの答えを出しているというふうに考えております。それが、私どもの天竜川・浜名湖地域、十二市町村の合併ということでございます。

 私ども、昨年七月一日に十二市町村が合併をいたしました。そして、来年四月一日にはこの新しい浜松市が政令市になることが決定しております。この新しい浜松市は、今、人口八十二万になっております。面積が千五百平方キロということで、全国二位の広さがございます。この浜松市は、もとより製造業を中心とする産業が非常に活発な地域で、工業力では全国の都市で第八位、農業は第四位という市でございます。ただ、北部の方には過疎地また中山間地域もある、そういう政令指定都市になっております。ですから、私ども、旧浜松市を中心として、中山間地を含む市となり、そして政令指定都市を目指しているということでございます。

 ただ、この合併についても、決して中山間地域を抱え込むということを目的としているということではなくて、むしろ、もっと積極的な意義を認めて、十二市町村の合意によってこういう合併に踏み込んだわけでございます。

 その意義というのは、もう既に今の新しい浜松市の区域というのは、生活圏、経済圏、この面では一体になっておりますので、それを行政上も統合することが地域振興にとって大きなプラスになっていくという考え方が一つでございます。それから、今回の合併によりまして、都市的な部分と天竜川、浜名湖それから森林地域というものが一つの市になりましたので、環境共生都市、持続可能な都市の実現ということでも積極的な意義があると思っております。それから、政令市になるということで、行財政力、これを活用して地域全体の振興、発展を図ることができる。そういう考え方から、積極的な意義を確認し、私どもの十二市町村合併が実現したわけでございます。

 したがいまして、旧浜松市、人口六十万という規模がありましたし、経済力もあるということで、周辺地域と一緒になっての合併、いわゆる水平的な補完という形で地域の問題の一つの解決方策を講ずることに取り組んでいるということでございます。

 ただ、こうしたことを踏まえて、生じてきている課題ということについては二つあるというふうに私は考えております。

 一つは、今回、私ども、政令指定都市の人口要件として人口七十万でいいという特例ができましたものですから、それを活用して、静岡県内では一歩先行しました静岡市さんと同様に、この特例によって浜松市も政令市になることになりました。したがいまして、新しいタイプの政令指定都市が誕生している。従来の政令市ですと、人口百万という基本がありますし、非常に都市的な、都市化された部分だけでの成り立ちという政令市が多いものですから行政効率も非常にいい。それに対して、私どもや静岡市のような新しいタイプの政令市が誕生してきたので、こうした政令市の地方制度上の位置づけ、これを行財政面で確立していくことが一つの課題になっているというふうに思っております。

 それから、もう一つの問題としては、静岡県西部のような中心たり得る都市のない地域において、建前としてはいずれの市町村も同じ事務をやるということになっているわけですが、それがなかなか実行が難しくなってきている。そうすると、そういう地域では合併では必ずしも問題解決にならない。したがって、そういう地域の市町村をこれからどうしていくかという課題が残っているというふうに思います。そういう点では、合併によって近隣の市町村同士で力をつけていくという水平的な方向だけではなくて、やはり県が市町村を支援するというような垂直的な補完ということについてももう少し踏み込んだ議論が必要なのではないかというふうに感じております。

 それが、概括的な私の意見ということでございます。

 二点目ということで、これまでの合併それから行政改革の取り組みについて、ごく簡単に申し上げたいと思います。

 合併のことについては、今申し上げたことに大体含まれているんですが、経緯だけ申し上げますと、平成十四年七月に旧浜松市から合併政令指定都市構想を発表し、周りの市町村の賛同をいただきまして、昨年七月一日に十二市町村合併が実現し、そして、来年四月には政令指定都市に移行することが先日の閣議決定によって決定をいただいているということでございます。私どもの事例では、本市の合併は、単なる合併ではなく、当初から政令指定都市を目指すものであったということが比較的短期間での合併実現にこぎつけることのできた大きな要因だったというふうに思います。

 それから、合併の特徴としては、十二市町村がそれぞれ対等な立場で協議を行い、対等の精神ということを重視しながら合併を実現したということ。それからもう一つは、それぞれの地域の文化や伝統を尊重した都市内分権を推進する、都市内分権の実践される、私どもの言葉で言えばクラスター型、ブドウの房のような政令指定都市、大都市を実現するということを目指しているというのが大きな特徴と考えております。よく、合併協議の中で、中心となる真ん中の市だけが栄えて周りは取り残されるのではないかとか、今までのまとまりがなくなってしまうのではないかというような心配、懸念が出されるわけですが、それに対して、私どもは、都市内分権、クラスター型の都市ということでそういう不安に対する答えを出しながら合併を進めてきたということでございます。

 その具体的な実践としては、一番中心になっているのは、地方自治法に基づきまして、合併時に旧市町村単位で地域自治区というものを恒久的な組織として設置しております。この地域自治区の構成としては、行政の部分は総合事務所という形で担当するわけですが、住民代表の機関は地域協議会というものを設置いたしております。これは、選挙ではなくて市長からの委嘱ということですが、地域協議会によって地域の意見を集約し、市政全体に反映させるという取り組みをしております。

 来年四月一日に政令指定都市になりますと、区ができますので、少し複雑になる要素があるんですが、基本的には、区の中にも旧市町村単位の地域自治区をそのまま存続させていくということで、市全体と区と地域自治区、こうした構成で都市内分権を実践していこうと考えております。こうしたことも、今後、合併推進の中で特に課題となります合併後の各地域の発展ということについては、一つの事例になる、よい事例としようということで今取り組んでいるところでございます。

 時間が限られておりますので、残りのことについて少しかいつまんで申し上げます。

 行政改革については、私ども浜松市、平成十二年度から、いわゆるNPM理論といいますか新公共経営の考えに基づく行政改革を進めてきておりますし、合併後においては、地域の経済界を中心とする第三者機関としての行財政改革推進審議会を設置し、さらに踏み込んだ行政改革を進めております。そういうふうに、今、国、地方を通じる行政改革、財政再建が非常に大きな課題になっている中で、各自治体においても行政改革を進めているんだということを特に申し上げたいと思います。

 それから、三点目に、今回の地方分権改革推進法案についての意見ということでございますが、その前に、これまでの三位一体改革についてどう受けとめているかということを申し上げたいと思うんです。

 いろいろな意見がありますが、国から地方への三兆円の税源移譲が行われること、それも所得税と住民税という基幹的な税において行われるということは非常に大きな前進であって、それ自体評価するべきだと私は思っております。ただ、その一方で、これも地方側からよく言われることですが、補助金の削減については、やはり地方の自由度を拡大するという本来の目的に沿った補助金の削減になっていないという点については大きな不満がございます。やはり補助率のカットということでは国と地方の関係に基本的な変化が生じない、むしろ補助金の削減というのは、もう根っこからその補助金をやめるかどうか、そういう議論が必要であるというふうに思っております。

 そんなことで、財政面ではまだまだ地方分権推進ということで課題があるというふうに考えております。特に、地方の自由度を高めるためには税源移譲をさらに進めることが必要と思います。国と地方の税源について、最終的には一対一を目指すべきだと思います。そういう中で、偏在度の小さい消費税についてさらに地方の方に配分を多くする。そのことは、消費税全体の議論がありますので、そういう中で地方消費税の拡充ということについてもぜひ議論をするべきだというふうに考えております。

 それから、もう一点だけつけ加えさせていただきますと、前回の三位一体改革の中で、国と地方の協議の場というものが初めて設置されて、そこで実質的なやりとりがあったことは地方分権にとって非常に大きな前進であったと思います。今回の法案の中で、そうした国、地方の協議がどのような形で行われるかということがまだちょっと抽象的なレベルであって具体的にはなっていないというふうに感じておりますけれども、やはり、国、地方の協議の場を前回の三位一体改革のときからさらに実質化する、機能するものとするという方向で国としても取り組んでいただきたいというふうに希望しております。

 以上、私の方から意見を述べさせていただきました。

林座長 ありがとうございました。

 次に、芹澤伸行君にお願いいたします。

芹澤伸行君 私は、静岡県の町村会長として少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 静岡県は、この合併以前は七十四市町村ありまして、合併が進みまして、町村は五十三あったのが十九残った。そういう中で、残っている今の小さな町といいますか、そういうものを含めての環境を少し話させていただきたいと思います。

 地方分権の目的は、地方分権によって住民の暮らしがどう変わるか、どう豊かになるかというような点が大切であります。それには、権限移譲と税源移譲があって分権ができるというふうに思っております。零細な小さな町こそ、こういう点が非常に重要であるというふうに思っているところであります。

 二〇〇〇年に施行されました地方分権一括法では、機関委任事務が廃止され、種々の事務が移譲により市町村におりてきましたが、それなりに成果は上がっているものと思っております。受け皿であります自治体では人的負担がふえました。また税源は、補助金約四兆円が削減され、三兆円が移譲されたにすぎず、しかも、現在、政令、省令が補助要綱等でさまざまな制約が残っております。地域の実情に合った施策を進めていきたいと思っているところでありますが、この辺が壁になっているというふうに思っているところでもあります。

 例えば財政面では、地方交付税は、自主財源を賄えない自治体の財源不足を補うとともに自治体間の格差を調整するための配分をする制度でありまして、これまで自治体運営に重要な機能を果たしてまいりました。しかし、その交付税は年々減少し、我が町でも昨年に比べて八%の減となりました。行政サービス面、特に今最も必要とされている育児支援、高齢者福祉事業など、厳しい財政運営を強いられているのが現状であります。自治体財政が住民サービスに支障を来すほどでは、地方分権改革推進法の理念である国民福祉の増進にも支障を来すというふうに思われるところであります。

 地方交付税の算定方法を人口と面積を基準に配分する方式に変更することが示されておりますが、人口の少ない地方の交付税が減るということが県内各町の不安でもあります。それに加えて、頑張る地方には交付税として支援措置を実施する方式で、成果が上がった自治体に上乗せするなどのやり方は、格差がますます拡大することになりはしないかと懸念するところでもあります。中山間部地域など社会、福祉の基盤整備がおくれている地域では何を目標にしたらいいのか。小規模の町に対して、交付税制度の機能をしっかり堅持していただきたい。

 なお、各自治体として権限や税源の移譲を地域の施策に生かす能力がなければ、分権も絵にかいたもちにすぎないだろう。自治体みずからの判断と責任により行財政運営と実務ができるよう体制を一層整えなければならないという意識を持っていますが、町村のレベルでは、行財政改革に力を入れていますが、入れざるを得ない状況でもまたあるわけであります。そう認識しています。分権により町の事務量のふえる中、住民サービスのさらなる向上を目指すためのマンパワーを考えると、職員の削減も我々の町にとっては限界であると感じています。分権による権限移譲と税源、行財政改革の調和のとれる施策をお願いしたいと思うところであります。

 今政府は、各自治体の職員数を減らすということで御指導が出ております。私どもの町は、人口千人当たり六・四人であります。静岡県の残っている町村の中では二十五・二という多いところもありますが、今、県平均では七・四でありますが、町村では九・一という状況でありまして、市の方が七・二だ。私の町は、その中ではるかに低いわけでありますが、四・六%をまた上乗せされると業務に非常に支障を来すというような点が今痛切に感じているところでありまして、一律のこういった削減はなさらないでほしいというようなことも感じているところであります。

 町村とすれば、今の税源移譲を明確にして、しっかりとしたスタンスがとれるようにお願いをしたいところであります。

 以上であります。

林座長 ありがとうございました。

 続きまして、中山正邦君にお願いいたします。

中山正邦君 浜松商工会議所の会頭をしております中山でございます。

 民間人の私が、地方分権改革推進法案の地方公聴会において意見を述べさせていただく機会を得ましたことを、まずもって御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 私からは、最近の経済界の取り組みと期待について述べさせていただきたいというふうに思っております。地方分権が言われる中、受け皿としての自治体の強化の必要性というのは言うまでもございませんが、浜松市における具体的な事例について、特に行財政改革の取り組みについて前半でお話をしたいというふうに思います。

 先ほど市長の方から、天竜川・浜名湖地域の合併についてお話をいただきましたが、私も、経済界の代表として合併協議会から参加をいたしております。この中で、特別決議といたしまして、行財政改革について、新市誕生後直ちに実施するということが盛り込まれました。合併もスムーズにいき、十二の市町村が昨年七月合併し新浜松市が誕生しましたが、この合併は政令指定都市を目指した合併でもあります。おかげさまで、来年の四月一日、政令市への移行も正式に閣議決定され、また政令の公布がされまして、大変ありがたいことだと、私も、四百余の団体の浜松市政令指定都市推進市民協議会の会長として、厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 合併協議会の中で求められた行財政改革については、昨年八月、新議会の中で、浜松市行財政改革推進審議会条例を市議会において可決され、委員は経済界から四名、そして市民代表が二名、学識経験者が一名、労働界から一名の計八名で構成され、会長にはスズキの鈴木修会長が就任し、会長代行にはヤマハの伊藤社長が就任し、私もその一員に加わりました。

 市長からは、浜松市政全般に関すること、特に、一つ、職員給与及び定員管理に関すること、二つ、企業会計及び特別会計に関すること、三つ、外部団体に関することの諮問を受けまして、この三月に答申書を提出させていただいたところでございます。

 各委員とも行政の知識は薄く、皆仕事を持っておるというような関係もございまして、昨年の八月から十二月までの間は、土曜、日曜を中心に百五十時間以上の勉強会を実施し、うち十三回は土曜、日曜日に市民への公開として、多くの市民が参加をいたしました。参加した市民も行財政改革の必要性を痛感したのではないかなというふうに思っております。

 私個人も全般を通じて感じましたことは、今まで余りにも無関心であったための知識不足を深く反省いたしましたが、逆に勉強会を通じまして、おかげさまでさまざまなことがわかり、民間との相違を改めて感じた次第でございます。

 具体的な、大きな項目だけ少し述べてみますと、市政運営について、市議会の充実、活性化について、組織、機構について、総合計画、新市実施計画について、行政サービスのあり方について、広聴、広報、情報開示について、健全な財政運営、公会計制度の改革について、中心市街地活性化について、さらに、当然のことながら、市長の方から諮問がありました職員給与、定員管理、諸手当、特別勤務手当、福利厚生手当等々、企業会計、特別会計についてしかり、また外部団体についてもしかりでございます。

 全部で二百五十七項目にわたりまして、マクロの問題からミクロの問題まで改善要項を取りまとめ、浜松市でも現在は浜松市行政経営計画の中でしっかりと受けとめまして、個別問題に鋭意取り組んでおり、他の都市にはないような独自の形の、新しい形の政令指定都市を目指し、進んでおるというのが現状でございます。

 続きまして、地方分権への期待について申し上げたいというふうに思っております。三点ほど申し上げたいというふうに思います。

 まず第一点は、補助金行政の見直しでございます。

 国庫補助金等の見直しについては、単に補助金をカットして財源を浮かすことではなく、その事業の主体を地方自治体に譲るとともに、その財源までも移譲することに意義があるというふうに思っております。すなわち、どういった事業を実施していくかというその選択権と財源を地方に与えることであり、一番身近な住民と接している自治体に主体性を持たせることだと考えております。

 例えば、国の補助金が地方自治体を通じて地域に入る産業振興の補助金については、地方自治体にその権限がゆだねられれば、私どもが一番身近な自治体と緊密な連携のもとで事業が執行されることとなり、国や県との調整ではなく、地元の自治体と調整できる点で官民双方の効率化に寄与するものというふうに考えております。

 二点目でございますが、国政の民間及び地方政府への移管についてでございます。

 民間でできることは民間に任せる土壌ができつつある中で、市場化テストのように、既に国から民間に任せる事業が出てきておる状況は、評価し、これからも一層進めていただきたいというふうに思っております。また、補助金制度だけではなく、国が直轄で行っている事業についても、市民に一番身近な地方自治体に任せることの検討をさらに進めていただきたいというふうに思います。

 要するに、まず、国、都道府県、市町村が、民間に任せることができる事業をすべて洗い出しまして、アウトソーシングを進める、このことが日本経済の活性化、ひいては地域の活性化につながるものではないかというふうに思っております。また、国から都道府県へ、都道府県から市町村へと事業をゆだねることで、事業の見直しや統廃合が進み、一層の効率化が図られるというふうに思います。私も、合併の協議に参加した者の実感として、大合併の進展によりまして、地方自治体の行政能力は非常に高まっておるというふうに感じて、このことは十分可能だというふうにも思っております。

 国と地方の役割を明確化し、これまでの国から地方へという業務整理ではなく、まず、住民、地域コミュニティー等民間による自助、共助があり、それを公助として最も住民に近い地方がサポートし、地方単独で対応できない分野はさらに広域的な国が支援する、民間でできないことを官に任せるという観点で業務整理を行うことにより、住民に望ましい国と地方と民間の役割分担の明確化が図られるべきであるというふうに思っております。

 三点目でございますが、規制緩和の促進についてでございます。

 地方再生は、地方からのボトムアップと、国による規制改革、補助金改革等、さらには民間の積極活用により進められております。国の財政的支援措置も、地方からの提案を受ける形で行われるため、地方のやる気と政策立案能力が大きく問われておるのも事実だというふうに思っております。特色ある地域開発やそのために必要な道路等インフラの整備について独自の判断で実施できるなど、各地域の提言や要望が地域レベルでダイレクトに反映されることが必要だというふうに思っております。

 こうした中、地域を限定して規制改革を先行実施できる特区制度の活用は、新浜松市においても必要不可欠であり、今後、浜松市には地方分権と地域活性化に向けた独創的な政策の立案をお願いするとともに、国としても、政令指定都市については、他の地域と比べ弾力的な運営があってもよいのではないかというふうに思っております。それだけ、責任と能力を持った都市については、さらなるインセンティブを与えることで地域全体の発展が期待できるのではないかというふうにあわせ思っております。

 いずれにしましても、今後制定される新たな地方分権改革推進法においては、分権により地域が活性化し、地域住民が主体となって、地方政府とのパートナーシップにより国から自立した地方自治が行われ、ひいては国の負担も軽減され、両者の行政改革が行われることにより、国と地方を合わせた莫大な負債が少しでも早く軽減されることを願ってやまない次第でございます。

 以上で御報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

林座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

林座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩原誠司君。

萩原委員 ありがとうございました。知事、市長、町長さん、そして会頭様、大変御苦労さまでございました。

 この静岡は、いろいろな意味で分権が進み、また地域のリーダーの方々が非常に自治について詳しい地域である、そういうふうに理解しておりまして、ここでこういう公聴会を開けることを大変にうれしく思います。そして、まずは、平素からの大変多忙な中での御労苦に対して、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 私からは、今回の分権改革推進法が今後施行されたという仮定の中で、せっかくですから、いい運用ができるようにという観点から、幾つか御意見を賜っておきたいというふうに思っております。

 前回の推進法のときには、最終的な結果として一括化法ができて、たしか平成十二年だと思いますけれども、地方に権限ががさっと来ました。一括化法というのは、名前のごとくで一括なので、ある意味では、有無を言わせず、好きか嫌いかは別として、権限移譲というのが起こってくる、そういうことなんですが、その後にいろいろなことを見たり、例えば先ほど知事がおっしゃっておられたように、県なら県が独自にいろいろな権限の基礎自治体への移譲の議論がありますね、そういう議論を見る、あるいは、先ほどの芹澤町長のお話を聞く、そして北脇市長の垂直的分業みたいな話を聞くと、どうもこれからの分権の推進の仕方というのは一様じゃないかもしれない、さまざまな配慮というものが必要なのかなという気がするわけであります。

 例えば、こういう権限を移譲しようと思うけれども、芹澤さんどうですか、あなたのところはやれますか、いや、それは五百万くれればやりますよ、いや、予算は百万ですが、どうしますか、やれません、こういう選択的判断が可能となるような分権、ただ、その場合には、県でちゃんとやってねということでまとめていくというようなことになるかもしれない。

 やわらかいというのか、選択的な分権ということについてのお考えがもしありましたら、お聞かせをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

石川嘉延君 一括法で強制的といいましょうか、制度として分権する、これもまだやっていく分野はあると思いますが、萩原先生のおっしゃるように、県と市町村で相談をして自主的にやる、そういう分野もあっていいと思います。

 現に、本県では、今百八十八法令、事務の数にして約一千二百業務を、県と市町村との合意に基づいて市町村に移譲しております。これは経費も見積もって、経費も差し上げてやっていただく、こういうことを進めておりますので、そのようなことが今後ともあってしかるべきだと思います。

北脇保之君 同じお尋ねと思いますので、お答えしたいと思います。

 今の権限移譲ということについては、今回の浜松市の政令市移行に伴っては、前回の静岡県から静岡市への権限移譲を上回る移譲を受けていまして、例えばNPOの認証なども市の事務となるというようなことで、静岡県においては、そういう権限移譲は他に比べて非常に進んでいるというふうに言えるのかとは思います。

 ただ、先ほどちょっと知事から河川の事務の話が出ましたけれども、河川の事務などになると非常に費用のかかることなので、これを財源措置なしにやってくれと言われてもちょっと引き受けかねるので、その辺の整理というか、これは不可欠ではないかというふうに思います。

 それから、選択的分権というお話でありましたけれども、私、先ほど垂直的補完ということで申し上げたのは、これまでの日本の市町村制度というのは、例えば人口三百万を超える横浜市も、人口千に満たない村も、建前の上では同じ仕事をやるというふうになって、それをいろいろな制度で支えてきたということがあるので、その辺がちょっと無理になってきているのではないかというあたりを直視して制度を考えていく必要があるのではないかということを感じておりまして、そのことを申し上げたところでございます。

萩原委員 地方の村でいろいろな意見が多様にありますよね。岡山でも同じ議論をしたときに、岡山市は喜んで全部の権限移譲を受ける、まさに喜んで受けたんですけれども、私の出身の村、人口千七百人ですけれども、一切要らない、こういう議論があったりしました。

 そう考えますと、一口に地方六団体と言えるのかどうかという議論が出てきて、そうすると、さらに、例の、これも知事がおっしゃいましたけれども、前回の委員会をつくったときにも、七名のうち四人をするとか、何かいろいろもめましたね。どういう形で地方の意見を委員として反映させるかということについて、我々も悩んでいるんです。現に、やりますと、例えば知事さんなんかを任命させていただくわけですけれども、忙しいですね、はっきり言って。結局、なかなか御本人の出席というのがかなわなくなってくる、こういった問題もあります。

 そこで、ちょっと若干お尋ねをしたいんですけれども、委員の構成のほかに、やはり地方の思いというものを六団体なら六団体、あるいは市でも、政令市から普通の市までさまざまにありますけれども、そういった段階に応じて聞く作業というのをどうお考えになるか。あるいは、市町村でも、例えば首長の御意見と教育長の意見が違ったりすることもありますね。あるいは、監査委員会の意見というのが重要だったりするということもあるんですけれども、そういった意味での、分権と一口に言っても、規模に応じても、あるいは部署に応じてもいろいろな考え方、見方がある。それを今回の分権改革推進の中で反映すべきかどうか、例えばアンケートのような形、いろいろな形で反映すべきかどうか、お考えがありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。

石川嘉延君 三位一体改革のときにも、都道府県間、それから都道府県と市町村、そして市町村間、各論になりますと、いろいろある意味で利害相反するというようなものがなかったわけではありません。したがって、一くくりに知事会、市長会、町村会、あるいはその他議長会といっても、具体的な問題になればなるほど意見の集約というのは難しくなろうと思うんですね。それは、それぞれの利害を代弁して、首長なり議員がおりますから。

 したがって、意見を聞くという場合も、団体の首長なり、直接だれか構成メンバーが代表で出るというよりも、推薦をした人が任命されるという方がより的確ではないかというふうに思うんですね。もちろん、推薦するという仕組みになった場合に、構成メンバーがだれか選ばれて入る場合もある、推薦される場合もありましょうけれども、構成メンバーであるなしにかかわらず、推薦した人が分権改革推進委員会に入る、そういう方式の方が、より実効性が上がるんじゃないかなというふうにも思います。

 また、イギリスなどの地方制度改革なんかを見ますと、中央政府がもう一刀両断にえいやといろいろなことをやるんですね。結局、それは個々の意見を聞いて、それを尊重するというのは、言葉としては美しいんですが、実際問題になると、なかなかそんなことをやっていると決断できない、あるいはまとまらないということもあって、中央政府でやってしまおう、一気呵成に制度化する、そういうことだと思うんですが、そのプロセスで、今言ったような意見の反映を、構成メンバーが必ず代表にならなきゃいかぬということではなくて、聞いていただくと、より公平な、的確な議論がされるんじゃないかなというふうに思います。

萩原委員 この点、若干芹澤町長の意見をお伺いしておきたいのは、私たちが拝見をしている限りにおいては、知事会の意見というのは割と、そうはいっても強く反映できる可能性が高かったりするんですけれども、小規模の方々、町村の方々の御意見というものの反映というのが必ずしも十分にできているとは思えないような気もするんですが、町村サイドに立って、委員の構成あるいは意見の出し方、アンケートの必要性等についてのお考えがあれば、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

芹澤伸行君 町村の場合は、静岡県の場合、村がなくなりまして、町だけ十九残っていますが、この中でも格差が非常にあるんですね。ですから、物事がやはり一律にはなかなかいかないというふうに私は思っています。ですから、知事さんがおっしゃられたように、そういう面では、そういう町の代表といいますか、そういうところは集約して出させていただけるなら、まずそれがよろしいかなというような気がしているところであります。

 ですから、進め方の中では、いろいろな組織があるんですけれども、ただ、町といっても、川根本町だとか私どもの伊豆半島に近い方の町だとかというと、人口そのものも八千足らずから四万近くという格差もありますね。ですから、努めて町村の意見というのは、やはり県、ましてや大きい市の流れの中の、そこの下にいるというふうにも思っていますけれども、それぞれの思いはあるわけでありますから、そういった面を吸収していただけるとありがたいかなというふうに思います。

萩原委員 次に、分権を進める際の必要な後ろ盾という観点から、幾つかお話を伺っておきたいと思うんです。

 もちろん財政の問題についてはみんな痛いほどわかっていまして、というか、特に平成十六年の交付税のショックというのは大変なものだった。交付税収入が、全く予想とずれるんですね。後から予算を組み替えたり何かして大騒ぎをした、そういう痛い経験を私も持っております。

 ただ、あの経験については、既に自由民主党としても組織内部に取り込んだ上で、これはしっかりと物を言っていこうということですから、あえて言うと、だまし討ちというか、まあ意図せざるだまし討ちだったんですけれども、それよりもっと悪かったんですけれども、そういったことが起こることは絶対ないというふうに申し上げた上で、一方で、今度は財政的なものをしっかりつけたときに幾つか論点が残ってくるんですけれども、渡して大丈夫かという議論をもう少ししておく必要があるのかないのか。

 せんだっても、麻生知事が本委員会の方の参考人としてお越しになられまして、最後に一言、我々の仲間がいろいろ不祥事を起こしておりまして済みませんというようなことをおっしゃらなければならないような状況があるということなんですね。

 我々としては、地方の自治、分権というものを権限面、財政面で支援することについては全く大賛成ではありますが、それがしっかり団体自治あるいは住民自治の関係で民主的にコントロールされて、うまく使われていくことを望む。

 どういうところを強化したらいいか、例えば監査委員会がどこまで活用されているか、あるいは別途議論をしておりますけれども、菅大臣が所信表明の中でおっしゃいましたが、行政不服審査、特に地方における行政不服審査が余り活用されていないところを拡大していかなければならない、つまり自治体運営についてのチェック・アンド・バランスの機能の強化をあわせて議論すべきじゃないかという意見がさまざまにあり得るというふうにも考えているところであります。

 今回の分権法の成果の中にそういうものを取り込んでいくという可能性も実はあるんですけれども、その点についてお考えがあればぜひお聞かせをいただきたいんです。この点については、産業界からの目も大切でございますので、ぜひとも中山会頭からもお考えをお伝えいただきたい。地方をどうチェックしていくか。よろしくお願いいたします。

石川嘉延君 最近、地方公共団体の支出をめぐるいろいろ不祥事が露見しておりますけれども、これは件数としては地方団体の方が多いわけです。それは主体数が多いですからね。過去でいえば三千三百もあったし、今では千八百もある。したがって、数でいえば多いんですけれども、似たような現象は国の、特に支分部局あたりでもないわけではないわけですから、地方だけがこの点であしき慣習的な不適正な経理があったとばかりは言い切れない、地方だけがそうだとばかりは言い切れない。

 これは、私のところも現実に過去にそういうことがあって、今、そういう問題について全部、もう二度と発生しないような体制になったと自負しております。

 その中の手だてとしては、まず、お触れになりました監査委員の制度で、これは実は制度を変えるというよりも運用でいけるんじゃないかと思うんです。公認会計士もしくは税理士を中心とした外部監査を包括監査制度で導入されましたけれども、それ以外に実施する監査に当たって重要なことは、実務ベースで入念な、各会計単位ごとの支出が適法であるかどうか、それから業務監査的な視点から本当に効率的な仕事のやり方かどうかという二点、チェックが必要ですけれども、それを私どもは、それぞれの会計単位が二年に一遍は全部外部の目で見られるという仕組みを導入しております。仕組みというよりも、単独でそういう措置を講じているわけです。したがって、これは内部の人間にとってみると、書類、伝票も含めて全部外の会計士なり税理士の資格を持ったような人たちが見るわけですから、そういう意味で非常にいい効果が出ていると思います。

 こういう仕掛けと、それからあとは、給与の振り込みも含めた財務会計制度そのものですね。現金を直接扱いにくくするとか、そういうようなことを加味していけば、少なくとも組織的な不祥事は防げる。ただし、どんな制度をつくっても、横領とかその他の犯罪行為は一〇〇%防ぐことはどういう場合でも不可能だと思いますから、その場合は結局犯罪行為として厳正に処理をする、そういう割り切りで我々は今対応しております。

 あと、今度は一般的な住民なり議会のいろいろなチェックですね。これは、議会その他に提出をする行政の中身についての説明資料もわかりやすく変えていく必要があるというふうに思います。我々は、今の財務会計制度なり議会への説明書以外に新公共経営方式というやり方を導入し、それぞれの事業を分解して、一つの事業単位に目的、目標、それから投入している人員と財源、今どういう段階にあるかということがわかるような様式を定めて、これを公開すると同時に、決算審査の対象にもなっておりますので、情報の公開を通じてチェック機能を十分に生かしていく、そういうやり方でいいんではないかというふうに思っております。

中山正邦君 先ほど、私が浜松の行財政改革推進審議会の答申書というのを市の方へ提出したということで御報告申し上げましたけれども、その中にも、監査制度の拡充強化という一項目がございます。

 今、市では監査委員による内部監査や包括外部監査というのが行われておるわけでございますが、これだけでは政策実施方法や目標の合理性、効率性のチェックが不十分であるというふうに我々は考えております。それゆえ、どうしてもやはり常勤の監査委員は、市の中をよくわかった方が当然のことながら必要だというふうに思いますけれども、そのほかに、現在は市議会議員から二名出ておるのを一名にしまして、そして公認会計士を二名というような格好で監査の実施体制を強化するというようなことを実は提言申し上げ、市の方でもこの辺についてはいろいろ検討しておるということでございます。

 浜松市におきましては、外部の包括監査が毎年ずっと行われておりまして、非常にチェックが厳しくなってきておるわけですけれども、さらに内部監査というものにつきましても、やはり強化することによってガバナンスがそこで強化されるというふうに思っておりますので、これはぜひお願いをしたいという意味でもこの提言書に載っておるということでございます。

萩原委員 質疑時間が終了いたしました。ありがとうございました。

林座長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 先ほどは、四名の意見陳述者の皆様、本当に地元のそれぞれの立場でおっしゃっていただきました。ちょうど地方分権改革推進法案の審議をしておるところであります。昨日も参考人に来ていただきまして、きょうは地方公聴会ということで、あしたには順調にいきますと、総理に質疑が行われまして、衆議院の採決が行われる予定でございます。このあたりはまだ確たるものではありませんが、そのような状況の中で、きょう、私、二十分ばかりの時間をいただいてお伺いいたしたいと思います。

 過去を振り返りますと、中央集権型の地方行政が明治以来続いてきた、このように言われておるわけであります。野口悠紀雄先生の、「一九四〇年体制」という本があるわけですが、これを読みますと、ちょうど一九四〇年の税制改正の折に、国が税を収受し、これを地方に配分する、この配分率が急に高まったわけでありますね。また、源泉徴収制度ができたり、旧日銀法ができたり、旧借地・借家法ができたりということで、いわば戦争準備のための体制をつくるために中央集権型国家を目指したわけであります。その後、敗戦とともにその制度が残って、いわば戦後の我が国の繁栄の基盤のところに国と地方のその制度があったんだろうと思うわけであります。

 ところが、高度経済成長が終わりまして、いろいろなところで矛盾も出てまいりました。そのようなことから、国会では、先ほど知事もおっしゃったように、平成七年に地方分権推進法が成立をいたしまして、十一年には分権一括法ができ、先ほどおっしゃったような十六年から十八年の三位一体の議論につながっていくわけであります。

 私も三位一体の議論に参加をいたしておりましたけれども、大変な議論で、三兆円を国から地方へ移譲するのにこんなに大変なのかと思うぐらい大変なことであったわけであります。しかし、よく考えてみますと、地域住民の方、我が国の国民の方は、やはり地方の皆さん方の、地方団体の目線で行政を行うということが一番いいわけで、国の目線で考えるということになりますと、どうもちぐはぐになってしまうわけであります。

 そういうようなことで、我が党も従来から地方分権を進めるべきであるという立場で今まで行ってまいったわけでありますが、今、本法案、これは平成七年の分権推進法から、改革を入れて、大変になるんじゃないかと知事の方から先ほどもお話があったわけでありますけれども、新分権一括法だけではだめで、理念だとか、具体的にはこの法案そのものはプログラム法でありますから基本法で、この後に新分権一括法が出てくるわけで、その間に中央官庁の大変な反抗もあるんだろうと思うんですね。そのことも乗り越えて、地方の皆さんに権限も財源も譲っていくということを私どもは進めてまいりたいと思いますし、本日来ていらっしゃる方の大体の総意でございます。

 そういう状況の中で、先ほど石川知事また北脇市長の方からも出ておりましたが、この議論とともに道州制の話が出てきたり、都道府県のありようの問題が出てきたり、先ほど北脇市長の方からは水平的分業というんですか、県と市との間の問題、国と地方とに大きな壁があります。これは、補助率の引き下げ等で税源移譲したということは国のかかわりを断ち切ったわけではありませんから、これを断ち切っていきたいというようなことなんだろうと思いますが、一方で、県と市の間にやはり壁がある、二重行政がある。国と地方との間の二重行政、また地方の中の県と市町村との間の二重行政、こういうことがあるんだろうと思うんですが、これについて、知事また北脇市長に御見解といいますか、お話を伺いたいと思います。

石川嘉延君 分権推進法から一括法を経て、現状を考えますと、今までの分権改革議論がもたらしたものとして、国と県と市町村が全くやっている業務が違うのが理想である、国がやっていることと、県がやっていること、市町村がやっていること、やる任務が全然違うのが理想であるという思いが極端に走った結果、さまざまな社会現象、例えば今回の高等学校の必修科目履修漏れ問題なんかを見ても、あれはやはり分権してはだめだとか、もっと分権しろとか、いろいろな議論が巻き起こっていますけれども、例えばああいう高等学校教育の問題一つとってみても、国でないとやれない、国の役割と、県の役割と市町村なんかの役割というのはあって、ちょうどこの新しい分権改革推進法の二条の一項にありますように、国及び地方公共団体が共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係、こういう精神が今実はちょっと飛んでいきつつあるように危惧するんです。

 これは、地方の側は、国と地方と対等だということから、もう国は我々のやっていることに余分な口を出すな、こういう姿勢とか思いが非常に今強くなってきている。一方で、国の方は、そんなことを言ったら国はばらばらになるじゃないかとか、国として政策誘導したいことがあるのに、地方に補助制度なり交付金制度で何かやると、これは分権に反するということでひんしゅくを買う。

 しかし、社会の実態を見ると、直接いろいろ国も何かやらなくちゃいかぬだろうと思うものですから、どういう現象が起こっているかというと、県とか市町村を経由しないで、NPOとか商工会議所、商工会を経由して国民の各種の活動体、個人までは行っていませんけれども、NPOとか各種団体、そういうところへ直接補助金を出して、あるいは委託金を出して、いろいろな活動をモデル事業とかと称して事業を始めているんですね、環境問題であるとか、地域おこしであるとか。そういう仕事がある団体におりてきて、そこから、こういうことがありました、こんなにお金をもらっちゃってどうしたらいいでしょうかなんというような現象も起こってきて、実は、そういうことでやろうとしていることは、我々県も無関心でおれない、市町村も無関心でおれないような事業なんですね。

 したがって、これはお金の流れは確かに直接団体に行くかもしらぬけれども、では、県も市町村も一緒にこの問題に取り組まないか、金はおれたちが出すよ、地域でそれぞれにつき合って金を出すなり、少なくとも、いろいろな人的な支援をするなり、共同するなり、何かをしないかという呼びかけがあってしかるべきだと思うんですけれども、しかし国の方からそういうものがないために、現場でいろいろごちゃごちゃと今いざこざがあるような感じなんです。

 これが放置されるともっともっと変な問題に発展していきかねない、そんな危惧を持つわけでありますので、従前の中央集権時代のように、国がすべてを決めてしまって地方をそのとおりにさせる、そういうものはもうやめると同時に、一方で、相互の連携、一つの社会現象は国もかかわらなきゃいけない、県も市町村もかかわらなきゃいけないということはいっぱいあるわけですから、そこの関係がうまくいくように、二条の一項の精神がうまく生かせるような気持ちの持ち方についての啓発と、それを実現するような相互の連絡体制を密にする、そういうことを仕掛けとしても用意すべきじゃないかなというふうに思います。

北脇保之君 ただいまの点についてはちょっと知事と考え方が違う部分があるのかなというふうに感じているんですが、私は、いわゆる補完性の原則といいますか、それをやはりしっかり取り組んでいくべきだと思います。市町村でできることは市町村でやる、市町村でできないことは都道府県でやり、また都道府県でできないことを国がやるという補完性の原則、これは従来から今の地方改革論議の中でも言葉としては言われていますけれども、余り具体的な検討にはなっていないというふうに感じております。

 例えば、前回の分権一括法の改革によって機関委任事務がなくなりましたけれども、法定受託事務というような形で、法律によって国、県、市町村の役割が決められているということになると、市町村でできることはそこで完結するというふうなことではないので、実態が余り変わっていないという部分があります。

 ですから、非常に今の日本の行政制度は、市町村、県、国と相互依存になっているので、これを仕分けするというのは難しいことなんですけれども、この際、やはりこの新しい法律の中で、ぜひ総力を挙げてそういう作業をやってほしいという期待がございます。

 そういう中で、今の委員の御質問にありました、国と県の関係、県と市町村の関係についてどう考えるかというと、県と市町村の関係は、やはり県でなければできない広域的な業務、例えば河川なんかでしたら、二級河川等、市町村の区域を越えて流れる河川があるわけですから、そういうのはどこまでも県がやるとか、そういう広域的なものについて県が特に重点的にやるというふうに少し整理が進むといいのではないかというふうに思います。

 国と県の関係では、私は、県を合併して大きくするというのではやはり根本的な改革にはならないと思うので、国の出先機関のあり方を検討する中で、県と国の出先機関の仕事を一つ合体した中で新しい仕組みをつくるような道州制の議論が必要ではないか、そういうふうに感じております。

谷口(隆)委員 芹澤町長は、何かありますか。

芹澤伸行君 特にありませんが、今お二方が申されたように、地方の小さな町といいますか、そういうところについて、県がある以上、やはり県との連携は緊密にしておく必要があるということは余り変えない方がいいのではないか。県がなくなって道州制の形になればまた別なんですが、県があって政令市があって市町村があるというふうな形ですから、そこら辺のことは私どもも県の方を尊重していきたいというふうに思っています。

谷口(隆)委員 権限の問題もあるんだろうと思いますけれども、行政の重複というんですか、重なっているところがあって、今、県も浜松市も、例えば、徴税のところをお互いに無駄をなくしていこうじゃないかというようなことを協議されておられるということをお聞きしたことがあるんですが、このようなところで無駄をなくしていくということは総体的には非常に好ましいことではあるわけで、こういう観点で申し上げますと、具体的に何かなさっていらっしゃることはあるんでしょうか。

石川嘉延君 徴税の一元化は、重複というよりも、性格が共通する業務を一本化すると効率がよくなるんじゃないか、そういう観点から今協議を進めております。

 それから、先ほどの話にもちょっと関連するんですけれども、分権一括法の制定の中で、従来、地方事務官制度によって、国の公務員なんだけれども、都道府県の行政組織の中に入って都道府県の仕事としてやっているような、機関委任事務としてやっているような、労働行政とか年金行政がありますね、あの地方事務官制度が廃止されました。ちょうど廃止されるようなその時期に、実は全国的に雇用失業問題が大きな問題になりましたね。そうすると、県は、雇用対策、失業対策の仕事というのは権限上は何もなくなっちゃっているわけでありますけれども、これを地域の問題として放置できませんね。

 したがって、本県では、地方労働局と県とで人事交流もやって、両方の意思疎通を濃密にしながら、できるだけ国の手の及ばないところは事実上県が政策としてカバーする、そして、県内の経営者とか労働組合も一緒になって、経営者協会と連合と地方労働局と県、四者が政労公使の懇談会というのを設けて、年二回、もう五、六年継続しておりますけれども、ここでいろいろ雇用失業問題を協議してそれぞれに手を打つ、そういう一種の共同関係、コラボレーションをやってきております。これで非常に本県の場合、いろいろなことがうまくいったと思うんですけれども、こういうことが今後ますます必要になるんじゃないか。

 これは重複というよりも、国だけでは全部やり切れない、権限をはみ出ていろいろやらなきゃいけないようなテーマが随分たくさんありますので、そういうものはそれぞれの主体が共同してやる、こういうことになっていくんじゃないかというふうに思って、先ほども申し上げて、今も例示として申し上げた次第です。

谷口(隆)委員 一番大事なのは、やはり税源移譲なんだろうと思うんですね。財源を移譲してもらうということ。例えば、今仮に財源を一対一にするには五兆円程度の税源を地方に移譲しなきゃいかぬ、これは今の状況の中で大体五兆円程度になる、こういうように大臣もおっしゃっているわけであります。しかし、税源を移譲してもらうということは、国で徴収した税を地方に譲ってくれというわけにはいかぬのだろうと思うんです。地方は、やはりそういう徴税の苦労もやって初めてその自由度が高まり、自立がより一層できるわけでありますけれども、大体そこまでの議論というのは私は余り聞いたことがないので、ぜひそういうようなことも具体的に六団体の方でもお考えいただければというように思っております。

 あと、昨日も参考人に来ていただいたときに、今、これからの時代というのは企業に地方を選んでもらう時代だ、ある参考人がこういうようにおっしゃっていたんです。これは、従業員の皆さんが安心して住めるような地方でないといかぬ、こういう話であります。

 中山会頭にお伺いをいたしたいわけでありますが、そうすると、企業に好ましい自治体というのは、一体どういうような自治体が企業が選別する一つの例えば基準になるのか。東京にある企業を誘致するといった場合の基準がおありであればお話をいただきたいなと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

中山正邦君 この地域におきましても、いろいろな企業が、物づくりのメーカーがたくさんありまして、また、各企業の戦略によりまして、今、別の地域へ出ていくとかいろいろな動きが実はあるわけですけれども、いろいろなことが考えられるというふうに思っております。

 今、浜松ということで、単に浜松市が悪いということではなくて、グローバルな社会の中で企業はどうやって生きていくかということが第一でございますし、やはりマザー工場はどちらか大きい、広い場所のあるところへやって、なおかつ有効求人倍率も非常に低いとか、人を集める企業につきましてはそういうようなところを選ぶ可能性もあります。アメリカなんかと違いまして、州のいろいろ税制だとか、それだけを単なる目的として企業が来るということでは全くないなというふうに思っておるわけです。

 さはさりながら、地域におきましても、企業に喜んでここに定住してもらう、または来ていただけるというような条件的なものは当然のことながらやはりつくっていかないと、これからの地域間競争の中ではその地域が埋没していく可能性があるということで、市と会議所とかそういうところと一緒になって、これは戦略的に企業の誘致というものをやっていかなければいけない。

 静岡県なんかの場合には、今、たしか日本の県の中でもトップクラスの企業誘致数を誇っておるということも聞いております。浜松は、今まで物づくりの町ということで非常に大きな企業がたくさんございました。今後の企業誘致につきましても、実はこれから真剣に考えるというようなことで、さらに政令市になるということは一つの大きな条件を踏まえたというふうに思っております。

 そして、先ほど市長も千五百平方キロということで面積を言っておりましたけれども、可住地面積では日本でこの地域は三番目に大きいんですよ。森林が、確かに七〇%ぐらいあるわけなんですけれども。ですから、逆に、人の住める面積が広いということをこれからどうして生かしていくか、十二市町村の合併をこれからこの地域で戦略的にどうやって組み込んでいくかという問題は、政令市になれば、今後一生懸命やはり我々としても考えなければいかぬ非常に重要な問題だと思っております。

 ですから、企業がどういう条件があればそこへ行くかというようなことは、企業サイドの問題が非常に強いなというふうに思っておるわけですけれども、ただ、地域としては条件を整えなければいかぬというのも事実だというふうに思っております。

谷口(隆)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わりますが、いずれにしても、自治体の、地方の自由度が高まってまいりますと、やはり勝ち組、負け組が自治体で出てくるといったときに、きのうの参考人のお話でも、それが総体的に地方全体の引き上げになればそれはいいんだということなんですが、部分的に見ると、そういう負け組になった自治体は大変厳しい状況になる、ですから、いろいろな工夫もしていただかなきゃいかぬということもあるんだろうと思うわけでございます。

 時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。

林座長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田学と申します。

 まずは、本地方公聴会に御多忙のところ御協力いただきましたこと、そしてこのような機会をいただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思っております。

 本法案、地方分権改革推進法案というものは、非常に広範な、全般的な地方分権に対しての施策を練る受け皿をつくる一つの法案でもありますので、地方分権の内容に関して、多少細かい部分に入るかもしれませんが、いろいろ御教示いただければと思います。

 今回、浜松という新たに政令指定都市となる場所で公聴会を開かせていただいたこともありますことから、地方間分権、今回の法案では国から地方にというような分権のスキームを考えることでありますが、地方間の分権のあり方、もっと細かく言うと、一つの政令指定都市とそれ以外の市町村とそれを横断的にカバーしている県の役割というものも、今後地方分権を進めていく中では必ず議論となってくる部分だと思いますので、その点についてお伺いしたいと思います。

 私は東北の出身なんですが、東北にも政令指定都市が一つあります。それは宮城の仙台であります。仙台は東北を引っ張る一つの牽引車として非常に頑張っている部分があるんですが、宮城県だけで物事を考えると少し問題点も浮かび上がってきているというのを宮城の方から聞いたことがあります。

 それこそまさしく県と政令指定都市以外の自治体との関係というところに入ってくるんですが、まず冒頭、知事にお伺いしたいんです。

 政令指定都市が県内に生まれる、聞くところによると、静岡と今回浜松ということで、県内に二つの政令指定都市を抱えられる。教員の採用及び配置に関して、政令指定都市になることによって、県の裁量からまさしく政令指定都市の方に権限移譲されるということを考えると、宮城のケースでいいますと、今まで教員の最大の供給源であった仙台から、教員がすべて仙台の中で完結してしまうものですから、上がってこなくて、仙台以外の教員配置等々に関して非常に苦慮する部分が出てきたという話が聞こえてきます。ですので、今回、静岡の中で二つ、ある種、静岡と浜松という本当に大きな、言い方はふさわしくないと思いますが、供給源というものがなくなって、県としても調整しなきゃいけない部分はいまだしっかりとありつつも、調整する能力というものが若干弱まっていくということも懸念されると思います。

 そういう意味において、県として、今回浜松が政令指定都市になったことによって、県全体を調整する能力にどのような変化を来す、どのような意識を持たれているかということについて、雑駁ではありますが、御感想、御意見等をいただければと思います。

石川嘉延君 本県の固有の事情として非常に東西に長く横たわっていますけれども、今、先生の出身地は俗に西高東低と言われているわけです。県の西側の地域、浜松市を中心にこちらの方の出身の人で教員志望者が多い、東京に近い富士山の山ろくのあちらの地域は比較的少ない。

 そこで、今までどういうことになっていたかというと、県教委で一本に採用しますから、西部地域の出身の人が県教委の異動によって東部へ配置転換する、しかるべき年数がたつとだんだん出身地へ帰すというような循環で今まで人事異動がされていました。そういう中で、静岡市の場合は、静岡市出身の人だけでは全部充足し切れませんから、各地出身の人が静岡市に来て、それでも足りない分を、オーバーフローするこちらの地域から向こうへ転勤というふうな形の配置転換でうまく過不足を調整してきたわけです。

 でも、今後、採用主体が県の西部地域は浜松市と県と二本立てになるということになりますと、ある意味では、就職条件に非常に変化が生ずるわけで、採用総数は変わらないにしても、浜松市に採用されれば、この地域の出身の人はこの地域だけで大体異動が完了するから、こちらの人気が高まって、全県どこに行くかわからぬような県の採用は難しくなるということが発生するかもしれませんけれども、これはしばらくやってみないと何とも言い切れない、そういう状態だと思うんですね。

 今後、県教委と政令市教委との間の協議で、人事交流もやはり必要だと思います。教員の余り頻繁な異動は問題がありますけれども、一定の年数を経ての教育交流は、いろいろな体験を積ませることによって教員の質の向上にも役立つという側面は否定できませんので、今後、そういう視点での教員による交流、これは続いていくと思いますが、それが物すごい太いパイプになるとも思えないので、先々は、浜松地域で限れば、ここでの採用試験は非常に難しいけれども県の採用試験の方がまだ採用しやすいというふうなことで、就職事情にどういう影響を与えるか、これはちょっと予測がつきません。そういう問題として処理できるんじゃないかと思っています。

寺田(学)委員 そこで、市長の方にもお伺いしたいんですが、ある種、浜松は浜松で自己完結できる、本当に自治の強い、高い自治体が完成したことはありつつも、県という広域自治体、広域をカバーしなければならない自治体との協力関係というのも、今、知事がお話しされた部分で多少なりとも出てくると思います。市長として、みずからが管轄される浜松市以外の周辺の自治体との協力関係に関して、県を含めてどのような関係を保って協力関係をつくられていくのか、御意見をいただければと思います。

北脇保之君 今の教員のことに関して言えば、政令市になることによって、教員の採用もまた人事異動も浜松市の教育委員会でできるようになるということは、政令指定都市になることのメリットの大きな一つだというふうに考えております。

 そのことが浜松市の周りの地域にどういう影響を与えるかというのは、今、知事がおっしゃられたとおり、はっきりどうなるというふうには予測はちょっと難しいと思うんですけれども、基本的には、ほかの地域の採用等にそう大きな影響は与えないのではないかなというふうに思うんです。いずれにしても、浜松市の教員と周りの地域との人事交流というか、それは積極的にやっていくべきだというふうに思います。

 その上で、政令市になったときに周りの地域とどういうふうな関係を持っていくかということなんですけれども、政令市になっても、より広い範囲の広域的な連携協力というのは必要だと思っております。

 例えば、浜名湖を取り巻く地域ということでいいますと、湖西市、新居町というのが今までどおり存在しているわけですね。従来の静岡県西部での広域市町村圏というものの中に入っていた湖西、新居との協力関係はこれからも必要ですし、また、より広い範囲でいいますと、天竜川を越えた東側を含めた地方拠点都市という枠組みもありまして、こちらの枠組みもこれからも大事だと思うので、浜松市としては、政令市になっても、決して浜松市だけですべてが完結するというふうに考えていないので、周りの市町村ともこれまで以上に連携を強化したいし、静岡県との間でも、やはり特に過疎対策とか、過疎対策の中でも重要な林業政策であるとか、先ほどの河川政策とか、こういった広域的な部分についてやはりこれまで以上に県とは連携を密にしてやっていきたいというふうに考えております。

寺田(学)委員 芹澤町長の方にお伺いしたいんですが、まさしく今回新たに浜松市という大きな政令指定都市ができたということで、県内の御事情を拝見しても、自治体の規模というものにより一層の格差が出てきたのは否めないものだと思っています。それと同時並行として、国の方としても、地方分権を積極的に進めようということで、分権のメニュー、国と地方の役割というものをこれから精査していく段階に入ってきて、必ずやこれからどんどん今以上の分権が進んでいくことはもう確かなものだと思っております。

 そういうこれからの時代の変化において、町というか、村というのは今はないということをお伺いしましたけれども、いわゆる比較をした上で、これから小さな自治体がどのように国から分権される権能であるとか財源配分、いろいろあると思いますけれども、そのことに対応していくのか、自治体の規模のお話をお伺いしたいのですが、合併するというのも一つのあり方であるでしょうし、近隣自治体と広域の自治体連合を模索していくというのも一つの考え方だと思います。

 これからの分権の受け皿という言い方は適切ではないかもしれませんが、受け皿として十分たり得る自治体を確保するために、国としてどのような制度をつくってくれると、これからある種、分権の受け皿としての自治体として強固なものをつくっていけるどうこうということを、現場の方からの御意見として、どのような自治体の編成に関しての国の施策、アドバイスというのがあるのかということをお伺いしたいと思っています。

芹澤伸行君 今の質問では、私どもの町村の立場とすると、分権の中で地方がそれだけ担えるかどうかという課題が一つあるんですね。

 人間の数といいますか、職員の数そのものも限られている。そういう中では、やはり県と市、町、大きい政令は別として、そういうところは、やはり連携をとった中で進めていただかないと、分権で地方にそれだけの実力がない。当然、小さなところはあるわけはないわけですよ。ですから、そこにそれだけのもの下がっても、それはこなし切れないということになるわけですから、その辺は加味していただくことが大変必要ではないかというふうに私は思っています。

 ですから、一括でそのものが考えられてはいないと思いますが、政令は政令、それからまた三十万は三十万、八千は八千というような形の中でやはり考える必要が当然皆さんの中にもおありだと思いますので、そういう点は重視していただく必要があるだろう。基本的には、やはり私は大きくなっていくということが必要だというふうに思います。

 静岡県の場合は、私は東部でして、三島の次の町なんですが、東部は政令ができない事情があるんですね。県も国の方も恐らく政令をつくった方がいいと言われていると思います。私どもも政令ができることを望んでいるんですが、できないというのは、そこに地域性の中の課題があってできない。それを、解決していかなければならないのも事実なんです。

 ですから、それをやることは当然必要なんだけれども、現状の中で移譲されるということになると、財源がきちっとついてきてやるならば、人間をふやせばいいということですが、今は逆ですよね、職員は減らしなさいというのが総務省の指令ですから。そこら辺が一番隘路といいますか、悩ましいところでありますので、十分御理解をしていただく必要があるのかなと思っています。

寺田(学)委員 中山会頭の方にお伺いしたいと思っております。

 谷口委員からも質問がありましたけれども、地方の活力というものを地方自身が見出していくことがこれからは本当に時代の要請として迫られてくるものだと思います。安倍総理、そして菅総務大臣を含めて、今回、地方頑張るプログラム、ちょっと正式名称ではないかもしれませんが、そういうような形で、地方自身が起業、会社をつくり上げたり、企業数がふえたり、または海外企業の登録数がふえたりすることによって交付税の算定額をふやそうということも一案ではないかということを国会の中でもいろいろ述べられております。

 谷口委員も御質問されていましたけれども、そういう意味においていうと、この浜松というところは、ある種、全国のさまざまな自治体を並べて見てみると、かなり地域の産業づくりというのは成功されている都市だと拝見しております。そういう意味において、やや重複するかもしれませんが、産業を興すコツというか、そしてまた国としてどのようなサポートこそがまさしく企業をふやす、企業の活力を増加させるような施策に結びつくのかということを、国側として何をしたらいいのかということを現場の感覚としてお聞かせいただければと思います。

中山正邦君 私ども、この西部地域は、確かに企業数の増加だとかそういうことで、またいわゆる製造業出荷額その他、非常に恵まれた地域だというふうに思っております。それはこの地域のいわゆる非常にオープンな気性といいましょうか、何でも物を言うというような気性もあるかもしれませんけれども、大きいのはやはり大学等との連携ですね。それと、やはり多くの企業があるものですから、そういうところのスピンアウトした連中といわゆる新規創造をしていく企業をサポートしていく。そういうような体制を、ぜひひとつ国の方でも企業の新規創造についてサポートしていただけるような体制をつくっていければ、どんどんこの地域はやはり伸びていく。

 ただ、先ほど来、話が出ておりますような格差の問題、これは確かにあるわけなんですけれども、やはり地域が全体を引っ張っていくというようなことで、みんな平等にということはとても今の状況ではできないというふうに思っております。できるところからというようなことになっておるものですから、そういう意味で、新規の企業そして新しい分野の産業をやはり地域からつくっていくということで、一生懸命、これも市、そして産官学なんですけれども、そういうものの協力関係が非常に重要だ、その調整をどうするかというようなことが今やはり我々会議所においても非常に大きな問題になってきております。

 政令市になったということで、さらにそれに磨きをかけて、より地域の発展のためにというのが我々経済界の希望であるわけでございます。

寺田(学)委員 知事にお伺いしたいのですが、今地域づくり、地域の活性化のためにどのようなことをしたらよいかということを、本当に国側としてもいろいろ考えているところだと思います。今、産業をされている代表の会頭から、大学があることが一つの大きなメリットである、それがいわば産業を強力にしていく一つのエンジンとなっているようなお話をいただきました。

 そういうものを含めまして、今回、国として、地方に頑張ってもらおうという方策として、交付税の中にインセンティブとして企業がふえたらお金をふやすどうこうということを一つ考えております。こういうような仕組みに関して、実際上マネジメントされる知事にとって、このインセンティブのあり方みたいなものがどのように県政に影響してくるのか、まさしく地方の活性化につながるかどうかというのをお伺いしたいなと思っております。

石川嘉延君 交付税で頑張る自治体を応援するというか、奮い立たせる、そういう計算方式を導入するというお話のようでありますが、まだ具体的なものが見えておりませんので、何とも判断のしようがありません。

 従来、交付税制度の中で、中央政府が交付税を一種の補助金的に使って政策誘導いたしました。これが必ずしもいい結果をもたらしているとも限りませんので、今後この交付税上のプログラムがそういう轍を踏まないようにしていただきたいなというふうに期待をしております。

寺田(学)委員 時間が参りましたので、以上にします。

林座長 次に、重野安正君。

重野委員 まず、皆様方には、大変お忙しい中、わざわざ時間を割いて貴重なお話をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。心から厚く御礼を申し上げます。

 それでは、早速話をお聞かせいただきたいと思うんですが、まず石川知事にお聞きします。

 先ほどの話の中で触れられておりましたけれども、今回の合併以降、あるいは予算編成の中で、話と違う結果が出つつある、そういう指摘がありました。私も、そのように認識いたしております。結局、合併が進んでいるわけですけれども、今第二期の合併のタイムラグに入っておるわけです。私は九州の大分県ですけれども、いろいろな評価が既に出ております。

 まず、率直にこの平成の大合併に対する評価と、これも先ほどちょっと触れましたけれども、いわゆる勧告権、推進するために勧告できるわけでありますが、その勧告権を行使してまで合併を進める、そういうつもりかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

石川嘉延君 平成合併の評価ですが、私はこれは大変評価をしております。

 と申しますのは、最近、地方行政で直面している問題は、地域を問わず、非常に複雑な問題が多々発生しておるわけですね。例えば、発達障害児の問題ですね。この発達障害児というのは、いろいろ専門的な対応を必要とするような、従来の家庭やお母さんのしつけの仕方が悪いんだとかいうことじゃない、要するに一種の病理的な現象だ、したがって専門的な対応をしないといけない、しかもこういう状態は都市、農村、山村、漁村を問わず、大体児童の中の五、六%に発生している、やっとそういう指摘をされるようになったわけですね。

 そういたしますと、どんな市町村でもこういう事態に直面するわけであります。ところが、小さな規模のところでは、例えば臨床心理士とか、あるいはこういう分野に精通しているような看護師とか、あるいは精神科のお医者さんとか、そういうものがその区域にいない場合もあるし、ましてや町の職員として採用し切れないわけですね。そうすると、どうしてもある程度団体の規模を大きくしないとこれに対応できないし、それもかなりの規模にしないと、例えば一人、二人雇っても、毎日毎日の日々の事案の処理に追われて、一方でこういう処理をめぐっての知見というのがどんどんどんどん積み重なってきて、これを常に吸収しながら現実に対応しなきゃいけない、こういう実態があるわけですね。

 そうすると、それをやっている研修の暇もないというようなことから、どうしても団体の規模を大きくしないとこれに対応し切れないという問題があります。また、そういう専門家がいないと、実は首長とか議会も問題の深刻さとか体制を強化しなきゃいけないという必要性を認識しがたくなるんですね。したがって、今回、規模を大きくするという方向で、町村でいえば一万人規模を目標にやりましたけれども、私はこの一万人規模でも本当はちょっと不十分ではないかとすら思えるわけですね。

 では、団体を大きくしたら非常に従来のぬくもりのある地域形成上問題じゃないかという指摘があるんですけれども、先ほど北脇市長の方からも話がありました、地域自治組織制度というのが今度の合併推進法の過程で制度改正で盛り込まれておりますから、そういうものをうまく活用しながらやれば、従来の地域連携、連帯感の持てた温かみのある地域形成を破壊しないで、なおかつ高度な行政需要に対応できるような体制を構築し得る。そういう意味で、合併の推進を積極的にやらなければいけないと思っておるわけです。

 勧告権の問題でありますけれども、現実に対象になりそうなところが、直接、間接、知事は勧告するのかなとはかりに来ているわけですね。実態は、勧告した場合にどういうはね返りが来るかというのを当然警戒されますね。そんなに極端な、例えば勧告に従わなかったから、県のいろいろ予算配分上、物すごいペナルティー的な配分をするとかというようなことはほとんどやり切れないですね。あるいはテーマとしても少ないわけですね。そうすると、強制的な力を持たない勧告権というのは、ただ字面は勧告権といっていても、ただ申し述べただけというような結果に終わってしまうんじゃないかというふうに危惧していますので、インセンティブも含めて、この勧告権が本当に最後、効用を発揮できるような仕掛けを何か考えてもらいたいというのが偽らざる心境です。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは、もう一点お伺いします。

 この「新時代の内政構造改革」、これを見ますと、静岡県というのは二つの指定都市と三つの広域連合、こういう説明がされておるわけですけれども、知事として、今後、県政が二指定都市、三つの連合、そういう区分の中で、県はどういう役割を果たしていこうとしておられるか、その点をお聞かせください。

石川嘉延君 基礎的自治体の役割として、住民に直結するような、非常にかかわりの深いかなり日常的な行政はもう全部基礎的自治体がやるのが好ましいと思っておるわけです。

 しかし、そうはいっても、広域的な対応をしなければいけないもの、例えば全県に、あるいは全県でなくても相当広範囲に影響があるような社会資本とか県土形成事業、あるいは産業経済政策とか高度医療、高度教育政策、あるいは文化政策など、そういうものを県が引き受けることにする。

 政令市ができれば、かなり日常サービス行政的なものを相当範囲、基礎的自治体である市がやることになりますから、これを、政令市ができないところについては、現実の問題としては、県が今出先機関を設けて、毎年毎年予算を配分し、人を置いて、いろいろな事業を直轄でやっているわけですけれども、こういうものも、地域のそれぞれ市町村の行政もうまく連携をとって、県と市町村の合併でもないんですけれども、その地域においては、そういう一体的に運営するという意味で一種の広域連合を形成できないか。そうすると、政令市でなくても政令市的な地域形成ができる。

 それを理想とし、県の仕事は、直接的な地域へのトンカチ行政はもう本当に広域的な仕事と、あとは医療、文化、環境、教育、産業政策などの広域行政に特化できる、こういうイメージでこれから県土形成ができないかと思って、いろいろ試みながらやっているところであります。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは、北脇市長さんにお聞きします。

 昨年の七月に、十二市町村の合併で新浜松市が誕生いたしました。来年四月には政令指定都市になる、そういう予定と聞いております。

 そこで、地方分権一括法が施行されて七年、これによって、市政及び市民自治という視点に立ったときにどういう部分が前進したと実感できるか、また、さらに今後どういう部分を補足しながら進んでいくのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。

北脇保之君 法施行後七年で、市政、市民自治がどのように変わったかということなんですけれども、法律の改正による直接の市民への影響ということになると、これはちょっとはっきり言うことは難しいかとは思います。

 しかし、市民生活の中で、特に市町村自治の果たす役割の大きさというのを意識するということは確実にふえてきているんじゃないかと思うんですね。だから、従来ですと、市民から市政に対する要望というのが、どちらかというと、道路整備であるとか河川の整備とか、そういう自分の地域に何かつくってほしいというふうな事柄が多かったと思うんですけれども、それが非常に範囲が広がってきて、例えば、福祉政策をどうするかとか環境対策がどうであるかというふうな広がりを持ってきたということは確実に言えると思うんですね。

 ですから、私自身も市民との直接対話ということを心がけておりますけれども、そういうときにも非常に市民も熱心に出席されますし、いろいろな範囲の意見、要望が出て、それと直接私がやりとりするというような市政運営を進めているわけです。ですから、そういう市民の関心の高まりとともに、やはり市民自治といいますか、こういうものは私は進展してきているというふうに思います。

 特に、そういう中で、市民が市政に対して何か要望するというようなことだけではなくて、自分たちがボランティア活動とかNPOを結成したりして、みずから主体として地域をよくするために活動するということも非常に活発になってきているというふうに思うんですね。ですから、その辺は、地方分権一括法ということで、地方分権の推進という政策的な方向性と浜松市がみずから市政運営で市民自治を重視しようということとは、ちょうど重なり合う形で今の変化が生まれてきていると思うんですね。

 ですから、やはり結果的に、地方分権を推進するということで、市で決められることが多くなって、市民が議論したことが市の段階でいろいろ実現することが多くなればなるほど市民自治というのは進んでいくと思いますので、そういう意味では法律的な制度改正というものも大きな意味を持ってくる、そんなふうに思っております。

重野委員 それではもう一つ、市長さんに聞きます。

 財源の問題ですね。合併をし、特段、財源の問題で大きく変化したというふうなことにはなっていないだろうと思いますが、私も、財源移譲の問題については、これは非常に根本的な問題意識として持たなければならぬと思っております。

 そこで、浜松市特有の、ほかのところにはないこういう財政需要があるというふうな点があればそれをお聞かせいただきたいということと、その場合に、一般財源の配分に加えて、そういう特有な財政需要に見合う財源移譲というものが現実になされておるかどうか、その点についてお聞かせください。

北脇保之君 浜松市特有の財政需要ということでいいますと、やはり何といっても、合併して市域が広くなりまして、中山間地が市の中に存在するようになったということで、特に道路整備の要望がそうした中山間地の地域から非常に強くあります。

 ですから、今、道路特定財源という形の制度があって、それは今後、国全体の議論になるということを私も承知しておりますけれども、私ども浜松市の立場、今申し上げたように、中山間地が広くて道路面積も広い、かつ、今度、政令市になることで、県から国道、県道の整備の移管を受けるものですから、これが延長で九百キロもある、そういう事情もあるものですから、そうした道路整備の財源をやはり確保する制度がぜひ必要だというふうに思っております。

 それからもう一つ、この機会にちょっと申し上げたいのは、需要の面で、これは浜松の特殊なことではないんですけれども、社会保障制度の中の国民健康保険とか、介護保険とか、今度の障害者自立支援法に基づくサービスであるとか、こういう社会保障制度は、制度設計は国がやるんですが、実施主体は市町村なんですね。そうすると、その需要の増大、例えば対象者数が思ったより多くなってくるとか、そういうことへの対応も必要になってくる。

 それから、特に申し上げたいのは、いろいろ国レベルで制度設計していたときには余り大きな問題にならなかったことが、いざ市町村で実施段階になると関係の当事者の皆様から非常に大きな不満が出てくるということがある。そうすると、その制度改正がされないと結局自治体で対応しなければならなくなるということで、そこにちょっと、本来あるべきでない自治体間競争みたいなのが出て、財政力があるところはそれはできる、ないところはやりたいけれどもできないというようなことが出てしまうんですね。

 そのような意味の自治体の財政需要のあり方ということについては、ぜひ目を向けていただきたいというふうに思います。

重野委員 それでは、芹澤町長さんに一点お聞きします。

 先ほどの話にもありましたように、総務省は段階補正の縮減など、交付税算定を通して市町村の交付税額の削減を図ってきました。それは、私たち以上に強くそのことを肌身に感じていると思うんですね。交付税とは何たるかということを今さら私が申し上げる必要もありませんが、そういう流れに対して、町長さんとして、現在の交付税制度、それに対する不満あるいは要求が当然あるだろうと思うんです。そこについて、ひとつお聞かせいただければありがたいと思います。

芹澤伸行君 今の御質問の中で、不満というとその形が幾つかあるんだろうと思いますが、不満よりも期待としてお願いしたいのは、やはり小さい市町村というのはなかなか自立しにくいんですね。

 ですから、そこら辺については、税源移譲を明確にしてくださればやりようというのは出てくるんだろうと思いますが、今のような玉虫色の、まあこれは二年もすれば明確になるんでしょうけれども、そういう面のことは明確にしていただいて対処するということならば、私は地方もそういう面では頑張っていけるんだろうと思います。ぜひ、その辺は私は強調しておきたいと思います。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは、時間もないようですが、最後に中山会頭さんにお伺いします。

 中小企業の指導育成、これはどこの商工会議所も商工会も大変苦労されておることを私も承知いたしております。そういう意味では、商工会議所と市の行政との連携というのは非常に重要であります。

 そこで、当浜松市において、そういう連携策が具体的にどういうふうな形で、もっと言わせていただくと、他の市にはない、浜松市だからこそこれがやれているんだ、こういうふうなものがあれば、参考のためにお聞かせいただければありがたい。

中山正邦君 他の都市になくて浜松独自というのも、これはというようなものはそうあるわけではないわけなんですけれども。

 我々の商工会議所も、浜松市内の一万四千の事業所を持っております。そして、一万四千といいますと、組織率でいいますと約五〇%ということで、今八十二万余になったわけですけれども、これだけの都市で五〇%の組織率を維持するというのは非常に大変なことだと思いますので、会議所に入ってどういう形のメリットがあるかというようなことをやはり絶えず私としても考えておるわけです。

 今、具体的に言えば、ここは大企業は、スズキさんあり、ヤマハさんあり、自分のブランドで世界戦略を立てておるわけですけれども、これは中小企業庁の方でもJAPANブランドというようなことでやっておったと思います。商工会議所が認定をして、全国へ認定した商品を発信していこうということで、浜松ではやらまいかブランドということでブランド化戦略をとっております。そして、ことしの春には三十五品目をブランド化しましたし、また、最近でもそれに追加した。

 いわゆる中小企業は、みずから日本全国へ発信していくだけの組織力がない。だけれども、それを会議所を通じて発信していこう。そして、これは私ども、個別の企業の個別の商品だとか製品だとか産品をやっているわけですけれども、それと浜松市はシティプロモーションということで、市を売っていこう、地域を売っていこうというようなこと、この地域を売るのと、それから会議所が個別のブランド化戦略によりましてその商品、製品、企業を売っていく、これが両方相まって地域の競争力を強化していこう。そしてまた、浜松へ来れば非常にプラスになるということがわかるような格好で少しでもお手伝いをしたい。

 そして、今般、おかげさまで政令市になったということで、さらにそれが追加して、政令市は得だというようなことでプラスになってくるのではないか。私どもの方は、会議所と市は車の両輪だというふうに考えていつも言っておるわけです。

 そんなことで、最近ちょっと会議所で全国展開しておるということを御紹介申し上げたいなというふうに思っております。

重野委員 ありがとうございました。終わります。

林座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに派遣団を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 また、本日、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を、また御礼を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時十五分散会


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