衆議院

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第21号 平成19年5月18日(金曜日)

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平成十九年五月十八日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 鈴木 淳司君

   理事 谷  公一君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    今井  宏君

      小野 次郎君    岡部 英明君

      鍵田忠兵衛君    実川 幸夫君

      関  芳弘君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      萩生田光一君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      渡部  篤君    安住  淳君

      逢坂 誠二君    後藤  斎君

      田嶋  要君    高山 智司君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      松本 大輔君    森本 哲生君

      江田 康幸君    谷口 和史君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   総務副大臣        田村 憲久君

   国土交通副大臣      望月 義夫君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官

   兼郵政民営化委員会事務局長)           木下 信行君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            河野 正道君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 綱木 雅敏君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            森   清君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  須田 和博君

   政府参考人

   (消防庁次長)      大石 利雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           貝沼 孝二君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           福本 秀爾君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局次長) 大口 清一君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   佐々木英治君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   藤本 栄助君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           伊東 敏朗君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白金 郁夫君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白川  均君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  森山  裕君     葉梨 康弘君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  福田 康夫君     小野 次郎君

  西村智奈美君     松本 大輔君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     福田 康夫君

  松本 大輔君     高山 智司君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  高山 智司君     西村智奈美君

同日

 理事森山裕君同月十六日委員辞任につき、その補欠として葉梨康弘君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案(内閣提出第六八号)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に葉梨康弘君を指名いたします。

     ――――◇―――――

佐藤委員長 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人といたしまして日本郵政公社理事佐々木英治君、理事藤本栄助君、日本郵政株式会社執行役員伊東敏朗君、執行役員白金郁夫君及び執行役員白川均君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として郵政民営化委員会事務局長木下信行君、金融庁総務企画局審議官河野正道君、総務省大臣官房審議官綱木雅敏君、自治行政局長藤井昭夫君、自治財政局長岡本保君、自治税務局長河野栄君、情報通信政策局長鈴木康雄君、総合通信基盤局長森清君、郵政行政局長須田和博君、消防庁次長大石利雄君、経済産業省大臣官房審議官貝沼孝二君、国土交通省総合政策局次長福本秀爾君及び鉄道局次長大口清一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。早朝より御苦労さまでございます。

 どうも、安倍内閣になってから国会の運営が特におかしくなっているような気がいたしておりまして、心配をいたしております。強行採決は言うに及ばずでございますが、委員会の運営もどうもおかしいんじゃないかなと思っております。

 教育特は小泉内閣からでございましたけれども、道州制にしても地方分権にしても公務員改革にしても、これは全部総務委員会の所管ではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。少なくとも、総務委員会と内閣委員会の連合審査ぐらいしなくちゃ国会の存在意義がなくなっちゃうんじゃないか、こう思っております。

 委員長、ぜひこの点について理事会にお諮りいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

福田(昭)委員 政務官もお願いしますよ。

 本当に、これでは総務委員会の価値がなくなっちゃうんですよね。道州制にしても公務員改革にしても地方分権改革にしても、これは総務委員会の所管ですよ。ですから、ぜひ与党の皆さんも御協議をお願いしたいなというふうに思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず最初に、足利銀行の受け皿について、金融副大臣からお伺いをしたいというふうに思っております。

 一つ目は、国立足利銀行の再生計画の進捗状況についてであります。

 足利銀行は、御案内のとおり、平成十五年の十一月の末に無理やり破綻に追いやられたものであります。三年と六カ月に入っているわけでありますが、三カ年の再生計画も、今年、平成十九年の三月末日で終了したわけでございます。まだ決算が出ておりませんけれども、その進捗状況はどうなっているのか、まず教えていただきたいと思います。

大村副大臣 足利銀行についてお答えを申し上げます。

 まず、委員冒頭触れられましたけれども、足利銀行は、平成十五年の十一月の末に、十五年の九月期決算で債務超過となる旨の報告と破綻の申し出が足利銀行よりなされたということに基づいて、金融危機対応会議の議を経てこの措置を講じたということをまず申し上げておきたいと思います。

 それから、御質問いただきました、破綻後の新経営陣のもとで十六年度から十七、十八年度、三カ年を対象とする経営に関する計画を策定いたしたのはもう事実でございまして、この三カ年計画に基づきまして、抜本的な経営改革の推進、中小企業等の再生に向けた取り組みといったものを進めてきたところでございます。

 この同行の三月期決算は、もう委員も御案内かと思いますが、週明けの二十一日の午後公表という予定と聞いておりまして、現時点ではちょっと申し上げられないということを申し上げておきたいと思いますが、直近の、昨年の九月期決算における計画の履行状況を申し上げますと、計画は順調に進捗をしているところでございまして、同行の取り組みの効果が着実にあらわれてきているというふうに評価をいたしております。

 例えば、法人取引先数につきましては、十六年の三月末、計画のスタート時では一万六千であったものが、昨年の九月では一万九千を超えております。また、健全債権も、十六年三月末で二兆四千五百億だったものが二兆六千七百億といった形で回復をしておりますし、不良債権比率も、十六年三月期で二〇%を超えていたものが、昨年九月期では七%強といったところでございまして、そういう意味では、着実にこの計画は履行されていると思っております。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、その取り組みにつきまして、適切にフォローアップをしてまいりたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 回復状況は、本当に、池田頭取初め行員の皆さんが大変な努力をされて順調な回復をしているということは、私も喜んでいるところでございます。

 大村副大臣は当時担当していなかったのでよくわかっていないかと思っておりますので、改めて申し上げておきたいと思いますが、このときは完全に、担保物件を引き下げて、あえて評価方法を変えて債務超過に落とし込んだということですから、そこはよく認識をしていただきたいと思っているんです。

 それはどうしてかと申し上げますと、三号措置に該当する事項、具体的事項については、金融庁がこういうふうに実はルールを定めているんですよね。地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがある場合ということで、具体的な状態、四つの状態を定めているんですね。一つは預金の大幅な流出、二つ目が株の暴落、三つ目が大規模な貸し渋り、四つ目が連鎖倒産の可能性、実はこの四つを重大な支障が生じるおそれのある具体的な場合ということで規定しているんですが、足銀の場合はこの四つの状態いずれにも該当していなかった、いずれの状態もなかったということです。そうした中で担保物件の評価方法を変えてあえて債務超過に追い込んで三号措置に陥れたということを、ぜひ頭に入れておいていただければというふうに思っております。

 それでは二つ目でございますが、二つ目は、栃木県の要望についてでございます。

 栃木県の緊急経済活性化県民会議などが再三にわたり要望を出しておりますけれども、つい先ごろ、四月の二十三日も、五項目でありますが、一つは「足利銀行の現在の機能及び資産・組織・人材等を引き継いでいくこと」、二つ目に「地域密着型金融の機能強化の推進」、三つ目に「中小企業の育成、企業再生に取り組んでいくこと」、四つ目に「地元資本の参入に配慮すること」、五つ目に「長期的、安定的な経営を目指す受皿であること」、こんな要望が出ておりますけれども、こうした要望に対してどのように対応していくのか、具体的に教えていただければと思います。

大村副大臣 足利銀行国有化の経過につきましてはあえて私もこれ以上申し上げませんが、そういった経過も踏まえて、我々はこの再生に向けてしっかりと取り組んでいきたいということを、まず申し上げておきたいと思います。

 そして、今御質問をいただきました、本年四月二十三日に、栃木県、栃木県議会、そして栃木県緊急経済活性化県民会議の代表の皆さんから提出をいただきました「足利銀行の受皿に関する要望」五項目、今委員御指摘のとおりでございます。こうした御要望も踏まえまして、地域からいただいた御意見、御要望も参考にさせていただきながら、金融当局におきましては、現在、足利銀行の受け皿候補から出された事業計画書の審査を進めているというところでございます。

 御指摘の五つの項目について申し上げますと、まず「地域密着型金融の機能強化の推進」、それから「中小企業の育成、企業再生に取り組んでいくこと」、それから「長期的、安定的な経営を目指す受皿であること」、これは二項目め、三項目め、五項目めということでございますが、これにつきましては、昨年十一月の二日に、私どもが受け皿候補の公募に際しまして求める基本的な条件の中で同様の趣旨を盛り込んでいるところでございます。

 それから、残りの二つの項目でございまして、「足利銀行の現在の機能及び資産・組織・人材等を引き継いでいくこと」それから「地元資本の参入に配慮すること」といったことにつきましては、受け皿候補に対する事業計画書の提出を要請した際に、私ども、中長期の経営戦略及びビジネスモデル、営業体制の整備、人事管理、資本政策といったものをこの事業計画書に盛り込むよう求めているところでございます。

 こういった点を踏まえまして、金融庁といたしましては、こうした条件、項目も含めて、足利銀行が引き続き栃木県を中心とする地域において金融仲介機能を持続可能な形で発揮していけるかといった点を十分踏まえながら、この内容について詳細な審査を現在行っているところでございまして、しっかりと進めていきたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 それでは三つ目でありますが、受け皿の選定についてお伺いをいたします。

 その一つとして、受け皿の選定状況はどうなっているのか、教えていただきたいと思います。

大村副大臣 足利銀行の受け皿選定につきましては、この作業は三段階で進めることにいたしております。

 具体的に、まず第一段階といたしましては、先ほど申し上げましたように、受け皿に求める基本的な条件を提示して受け皿候補を公募する、これを昨年十一月に行いまして、その提出された応募書類を審査して受け皿候補の有資格者を選定いたします。この第一段階は実はもう過ぎまして、続きまして第二段階といたしまして、その受け皿候補に対して事業計画書の提出を要請し、その提出した事業計画書に基づいて受け皿候補を絞り込むということが第二段階。第三段階として、第二次審査を通過した受け皿候補に対して、足利銀行の企業価値を適正に評価した上で譲り受け条件を提出するよう要請する、これが第三段階。それを経て最終的な受け皿を決定するということでございます。

 現在は、今申し上げましたように事業計画書を審査しているところでございますから、第二段階ということでございます。第一次審査を通過した受け皿候補から、ことしの三月末、三月三十日までに提出された事業計画書に基づきまして審査を進めているところでございます。

 そういったことで、今審査を進めているところでございまして、できるだけ早くこの審査を終了いたしまして、次の第三段階に移っていきたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 当初の計画では、ことしの夏には決まるんではないか、こういう話でしたが、これが秋にずれ込む理由は何なのか、また、受け皿候補の名称や数をどうして公表しないのか、その点についてお伺いしたいと思います。

大村副大臣 このスケジュールにつきましては、これは、鋭意といいますか速やかにということで進めているところでございまして、その時期につきましては、これまでも確たることを申し上げてきたわけではありませんけれども、これまでのほかの銀行のいろいろな破綻処理などの実績等も勘案いたしますと、昨年九月の選定作業の開始から一年くらいはかかるのではないかということを申し上げてきたところでございますので、その点については、これまでの経過に変更はないということで御理解をいただければというふうに思っております。

 もう一つ、今、数とか名称ということでございますけれども、これは、この受け皿選定作業を円滑に進める観点から、これまでも申し上げてまいりましたが、これは両方とも公表しないということにいたしているところでございます。

 具体的には、例えば受け皿候補の名称が明らかになった場合は、その受け皿候補同士の情報交換が行われたり、また受け皿候補自身、競争相手からいろいろな情報が言われたり、世間の、風評と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、いろいろな話が出たり、また選から漏れた受け皿候補からいろいろな話が出たりといったことで、やはり弊害が生じるというふうに思っております。そういったことで、公表しない。

 そして、数を公表する場合も、昨今のいろいろな報道等を踏まえると、数が幾つというだけでも大体ある程度特定をされてしまうというおそれがございますので、そういったことは公表をしてこなかったということでございます。

 ただ、これにつきまして、それ以外の点につきましては、受け皿選定の作業、そしてまた、いずれこれは決定をするわけでございますので、決定をした場合には、そうした経過も含めて十分国民の皆様には説明をしてまいりたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 それでは、事後には公表するというお話のようですが、足利銀行の破綻の際には、三号措置をする場合にも、知事はもちろんでありましたが、地元の国会議員の皆さんも事前に全然わからなかったという話でございまして、ここはどうしても非常に心配をしているところでございます。

 そこで、実は地元の人たちが一番心配しているのは、やはり外資系中心の受け皿候補に受け継がれるというのを一番心配しているわけであります。具体的に申し上げますと、一番心配しているのは実はオリックスなんですね。

 オリックスは、御案内のとおり、外資が六割を占めている外資系中心の会社でございます。しかも、オリックスについては、小泉内閣の規制改革・民間開放推進会議の議長であった。さらには、足利銀行の子会社の北関東リースを買収して、既に足利銀行の本館七階で仕事をしている。オリックス北関東リースの事務所が足銀本店の七階にある。さらに、その隣接の教職員共済組合の厚生施設でありますプラザイン・くろかみ、これを買収した。

 こんなことで、地元の人が大変心配をいたしておりますが、よもやそんなことはないんだろうと思いますが、いかがですか。

大村副大臣 仮定のお話につきましてはコメントは控えさせていただきたいというふうに思っておりますが、金融庁といたしましては、足利銀行の受け皿の検討に当たりましては、一つは金融機関としての持続可能性、そして二つ目としては地域における金融仲介機能の発揮、そして三つ目としては、これも大事でございますが、公的負担の極小化、できるだけ負担を小さくするといったことの三点が重要であるという認識をしておりまして、そうした点に基づいて今作業を鋭意進めているところでございます。

 また、受け皿の検討に当たりましては、これまでも申し上げてきたわけでございますが、やはり内外無差別といった立場でこれも進めていくことになるわけでございます。足利銀行が、受け皿への移行後におきましても、栃木県を中心とする地域において利用者の信頼を確立いたしまして、栃木県におきまして、地域において金融仲介機能が適切にかつ持続可能な形で発揮できるように、そういった点での受け皿選定を鋭意進めていきたいと存じております。

福田(昭)委員 私も、今の時代ですから、外資が全く入っていないというのはなかなか難しいのかなと思っておりますけれども、しかし、外資が中心の受け皿になるというのはやはり大変心配なんですよね。それは、地元の人たちがそう考えているのは当たり前だと思っています。それは既にそうした事例があるからですよね。

 長銀の買収のときも、あっという間にリップルウッドが大変な大金をもうけて売り抜きました。今度何か東京スター銀行も、株式上場したと思ったら一年もたたないうちに売るんだというんですね。こういうことですから、やはり外資中心の受け皿に決まると、では本当に地域の金融機関として継続的にしっかりやってくれるかどうか、こういう心配を地元の人がするのはもっともな話だ、こう思っているんです。

 ですから、そういった意味で、そうした受け皿にならないように、ぜひともしっかりと副大臣も目をみはってやっていただきたいな、そんなお願いをして、私の質問を終わります。

 次に、地方分権改革について総務大臣にお伺いをしたいと思っております。

 一つ目は、地方自治体のあり方についてでございます。

 地方自治体は、実は、都道府県と市町村とか、あるいはその上に道州制があるとか、二層制か三層制かどちらがよいのかという議論が日本の場合は余りなかったんじゃないかと私は思っているんですね。そうした徹底的な議論をした上で市町村の合併を進めたような形跡がどうもないんじゃないか、こう思っておるんですが、もしそうした議論をした経過があるとすれば、その内容を教えていただければというふうに思います。

菅国務大臣 近年においては、経済のグローバル化だとかあるいは産業構造の変化、そういう中で、広域の圏域におけるさまざまな戦略、こういうものが非常に大事になってきているような中で、市町村合併というのが今進んできているというふうに思っています。

 そうした中で、高度なインフラ整備だとかあるいは経済活動の活性化、また国土保全、環境もそうですけれども、そういう中で、自治体だけでは対応し切れない、そういうときには、広域自治体である都道府県だとか、将来的には道州制、そういうものが対応していくべきというふうに思っています。一方、地域においては、行政の中で身近なものはやはり地域におろした方がいいだろう、そういう方向で権限移譲というのを今進めてきているところであります。

 第二十八次の地方制度調査会において、広域自治体として、現在の都道府県にかえて道または州、いわゆる道州制、こういう議論がされて、二層制とするということを議論されたというふうに聞いております。

 いずれにしろ、私は基本的に、今委員から指摘がありましたけれども、三層、二層の議論というのは、当然これはあってしかるべきだというふうに思っています。しかし、その中で、やはり二層制というものがいいのかなというふうに私自身は今思っているところであります。

福田(昭)委員 自治省なり総務省の中でそうした議論が行われたのかというのは、本当に我々はなかなかよくわからなかったんですね。それは多分、地方六団体、市長会、知事会などでも、そうした二層制がいいのか三層制がいいのかという議論は非常に生煮えだったような気がするんです。

 そういった意味で、ちょっとお伺いしておきたいのは、三十年続けてきた、それこそ旧自治省主導で広域事務組合というのを主導してまいりました。この広域事務組合が果たしてきた役割、これはどういう役割があったのか、成果といいますか、あるいは広域事務組合の評価というんですか、そういったものもきちっとなされなかったような気がするんですが、こうしたものがあるとすれば、ぜひ教えていただければというふうに思います。

藤井政府参考人 市町村とか都道府県を越える事務を処理する制度としては、一部事務組合とか、あと連合という制度が地方自治法上でも設けられてきたところでございます。先生御案内のように、事務組合なんかは、下水道とか水道事業とか、相当程度使われているようでございますし、広域連合についても相当程度用いられている制度であるというふうには認識しております。

 ただ、特に広域連合につきましては、これはいろいろ批判的な御意見もございます。例えば、責任の所在が不明確になるのではないかとか、あるいは意思決定の手続がちょっと複雑でどうしても時間がかかるのではないかというような、そういう御論議があるということでございます。そういう議論を踏まえて、私どもは、今は、広域連合とかそういうことよりは、総合的な一貫的な行政主体、そういったものを設けるという意味で、やはり合併を基本として推進する、そういう考え方に立っているということでございます。

福田(昭)委員 私も全国的に調べたわけではありませんので全体の評価というのはちょっとできませんけれども、ただ、栃木県全体だけで考えますと、栃木県の広域行政事務組合というのは物すごくうまくいっていたと思います。それこそ広域しかできないような、斎場とかあるいはし尿処理場とか、焼却場もそうですけれども、そういったものにしっかり広域で取り組んできましたから、私は、栃木県を考えた場合には、広域事務組合というのは有効に生かされていたんじゃないか、こう実は評価しているんですね。

 ですから、そういう評価が不十分で今回進んでいってしまったんじゃないか、そういう心配をいたしておりまして、そうした自治体同士が連携して仕事をするということじゃなくて、今回の市町村合併の中では、より大きな隣の市に事務を委託するという水平的な委託とか、あるいは県に委託をするという垂直的な委託、いきなり議論がそっちへ行っちゃったんじゃないかということで、私は、この辺が非常に生煮えの状況なんじゃないかなというふうに思っております。

 そこで、二つ目は市町村合併についてでありますが、これはそれこそ、御案内のとおり、理論上も、事務組合とか連合という理論をどっちかというと総務省が捨てちゃったわけです。それからもう一つは、交付税を削減したわけですね。特に、小さな市町村は段階補正を廃止されましたから、三年間で二千億円廃止をいたしましたから、兵糧攻めにも遭ったわけですよね。全体としても交付税も減りまして、大変な兵糧攻めに遭った。だから、理論上も、それこそ財政上も苦しい状態に陥りましたから、これは市町村合併せざるを得ないという判断をした自治体が多かったんじゃないかと思っています。

 そのせいもあって、三千二百余りあった市町村も今回の平成の大合併では千八百四になったというわけですけれども、今後どこまで合併を進める考えなのか。菅大臣はどこかで千ぐらいなんという話もしているようでございますが、どこまで進める考えがあるのか、また、市町村合併ができない地域あるいは合併しない市町村に対してはどんな対応を考えているのか、お伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 先ほどの議論の中で、広域連合というのは、私自身、やはりそれなりの評価があったというふうに思っています。そうした広域連合を通じて今回の合併にもかなりつながってきたんじゃないかなというふうに私は実は思っています。

 今委員御指摘のとおり、現在は千八百四ですけれども、来年一月には千七百九十九、こういうことに予定がされております。そういう中で、まだ全国に一万人規模の町も実は約五百ありまして、住民の皆さんに身近な行政サービスを将来にわたって総合的に提供していくには、やはりある一定規模の組織があった方がいいというふうに私は思っております。

 そして、政府・与党の行財政改革推進協議会、ここの中で実は千という目標を掲げておりますので、私自身も、こうした閣議決定に基づいて、千というものを一つの目標として取り組んでいきたいというふうに思っています。特に、合併新法に基づいて、都道府県と協力しながら市町村合併というものを積極的に推進していきたい、こう思います。

福田(昭)委員 それでは、今後とも合併を進めていくということでございますが、三つ目の道州制についてと四つ目の地方分権改革工程表につきましては、時間の関係でまとめてちょっとお話をさせていただきます。

 それは、私の提言も含めてでございますが、資料をごらんいただきたいと思います。「地方分権時代にふさわしい地方自治体のあるべき姿追及モデル」福田昭夫試案というものをお示しさせていただきましたが、これは、十年間の経過措置と考えていただければというふうに思っています。

 まず、イメージ図の方を見ていただきたいと思うんです。

 まず、基礎的自治体として合併市と市町村連合がある。合併できないところは市町村連合を組んでいただく。組めないところもあるかもしれません。それから、政令市については行政区が同じレベルだ、基礎的自治体レベルだと考えさせていただく。そして、都道府県と政令市はこの際同格にしよう。そして、都道府県と政令市、四十七都道府県、政令市が今十七ですか、ありますけれども、この都道府県と政令市で都道府県連合をつくっていただこう。そして国。こういう行政の一つの経過措置としての、あるべき、追求するモデルとして、こういう形で十年ぐらい進めていったらどうか、こういう私の考え方であります。

 上の方の文章に戻っていただきたいんですが、まず最初に、国と地方の役割分担をしっかり決める。地方の仕事は原則として都道府県に移譲する。その次、二つ目、国の地方支分部局は全部廃止をする。三つ目として、都道府県は、共同処理を必要とするものについては都道府県連合を設立して対応する。つまり、幾つかの県が道州制的な区域の中で都道府県連合を設立して対応する。四つ目として、都道府県の仕事を政令市または合併市及び市町村連合に移譲する。五つ目として、合併しない市町村は、共同処理が必要なものについて市町村連合を設立して対応する。六つ目として、税財源を仕事に見合うように都道府県及び政令市並びに合併市または市町村連合に移譲する。そして七つ目として、その上で十年後に、国と地方の役割分担及び地方自治体のあるべき姿、一層制か二層制か三層制かを、例の補完性の原理に基づいて決める。

 特に、今、経済界から道州制を導入すべきだという提言などがありますけれども、私は、単に経済の論理だけで国の形を決めるのではなくして、今、我々の日本の民主主義を充実させるために、実は住民投票みたいな直接民主主義の方法も取り入れるようになってまいりました。したがって、間接民主主義を基本としながらも、住民投票のような直接民主主義も取り入れながら我が国の民主主義を充実させていく、そして国民が幸せに暮らしやすくできるかどうか、そういう観点から国の形を決めていくべきだ、そのように私は考えております。そして、最終的にどういう形がいいかというのを、しっかりと無理のない形で、道州制がいいのか、あるいは緩やかな都道府県連合でも大丈夫なのかどうか、そういう判断をしていくべきだと思っています。

 こうした改革をするだけでも、政令市における都道府県議会議員と市会議員のダブりもなくなりますし、それから都道府県から政令指定都市に対するいろいろな補助金も必要なくなりますし、これだけでも相当の財源の効率化にもつながるんじゃないか、こんなことを私は思っておりまして、こんなことを続けて、十年後には、本当に道州制がいいということになれば道州制の導入も必要だと思いますし、都道府県連合で大丈夫だということになれば都道府県連合で大丈夫ですし、都道府県連合も要らないということになれば、地方自治体も、都道府県・政令市と、またその下の市町村合併市という形での二層制ということも可能になると思います。また、そのほかの方法もあるかもしれません。

 やはりこうした試みをして、道州制についても判断をして、地方が本当に自立できるような環境をつくっていく必要がある、こんなふうに私は今考えているところでございまして、もし御所見がありましたらお伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 今の福田委員のこの試案のモデル、私、見せていただいていまして、先ほど来お話があります広域の事務組合と多分考え方が、一つの思想の中でこういう形だというふうに思います。都道府県と政令市の問題だとか、今さまざまな問題を抱えている現実問題がありますので、そういう意味では、非常に検討に値する一つの案かなというふうに思います。

 そしてまた、政府の中にも、道州制の担当大臣を今度安倍内閣が初めて置きました。そして、この道州制についても、少なくとも地方分権を、この一番で書いておりますように、国と地方の役割を分担して、地方に権限とか財源とか税源も移譲する。そういう形で進める中で、道州制も、導入しても早くても多分十年先になろうというふうに思いますので、そういう中に行き着くためというんですか、そういう中の一つの有意義な考え方かなというふうに今聞かせていただきました。

福田(昭)委員 それでは、時間が終わりましたので終了したいと思いますが、何といっても地方の自立は財政の自立なくしてあり得ませんので、その辺ぜひよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田学と申します。三十分間ほど質疑をさせていただきたいと思います。

 きょうは公益法人改革についてと市町村合併についてお伺いする予定でありますが、きょう新聞報道を見ていますと、NHKの経営委員長の記事が載っておりました。通告していませんので大変恐縮なんですが、朝日新聞の方に大きく、富士フイルム社長の古森氏に内定したという記事が載っております。記事によりますと、十七日に大臣と総理がお会いになられて内定したという話があります。

 この記事自体について、大臣から何かしらコメントをいただければと思うんですが、いかがですか。

菅国務大臣 NHKの経営委員会の委員というのは、放送法の第十六条の第一項の規定によって、衆参両議院の同意を得て、その後、総理大臣が任命する、こういうことになっております。まだ国会審議にもこれはかかっておりませんので、現時点ではコメントは私は控えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 内定したかどうかということについてコメントはできないということでよろしいですか。

菅国務大臣 ですから、これから国会審議の中でこれは決定をされることでありますので、それを経た上で総理大臣が任命するということになっておりますので、現時点においてはまだ国会に提出もしておりませんし、コメントというものは差し控えさせていただきたいということであります。

寺田(学)委員 手続上はそういう形になっていますが、政府の方で内定されてそれを国会に諮るという形になりますので、政府の方で内定されたかどうかというお話をしていただきたかったんですが、コメントをする段階ではないということですので、これ以上は突っ込まないことにしたいと思います。

 公益法人のことに関して質問させていただきたいと思います。

 我が党の方では、独法やら公益法人も含む天下りの問題、そしてまた、その公益法人、独立行政法人がちゃんと機能しているかどうか、本当に役に立っているかどうかということを各委員会で議論しているところであります。そういうことで、この委員会でも公益法人について質問させていただきたいんです。

 まず、公益法人の実態及び活動、何万とあるとお伺いしていますけれども、それをどのように政府として把握をされているのか、参考人の方でも結構ですので、いかがでしょうか。

綱木政府参考人 お答えいたします。

 公益法人でございますが、現在、国所管のものと都道府県所管のものがございまして、総計で二万五千二百六十三法人、うち、国の所管が六千八百四十一法人、都道府県所管法人が一万八千五百七十七法人でございます。

寺田(学)委員 いや、法人数をお伺いしたわけじゃなくて、その法人の活動やら実態やらを政府としてどのように把握しようとしているのか、その把握の手段についてお伺いしたんですが、いかがですか。

綱木政府参考人 お答えをいたします。

 公益法人は、基本的に、国が所管するものについてはそれぞれの府省の大臣、そして都道府県におきましては知事あるいは教育委員会の長がこれを所管しておりますが、それぞれの府省、都道府県が公益法人を所管するに当たりまして規則を定めておりまして、また、統一的に、総務省の管理室におきまして、指導監督基準という平成八年の閣議決定になるものを定めまして、そこにおいて統一的に各府省及び都道府県の管理、指導の方法に統一性を保つための担保を行っております。

寺田(学)委員 いろいろ調べていくうちに、いわゆるペーパー財団も非常に多く含まれているというのもいろいろなところで散見いたしました。

 ペーパー財団というものの定義というのはいろいろあると思いますけれども、私としては、常任の理事がいないとか専門の事務員がいないとか、そのためだけの事務所がないというところをもってペーパー財団と呼ばせていただいております。どうなんでしょう、中央省庁所管の部分だけでも結構ですけれども、常勤役員を置いていないような法人であるとか、常勤職員がいないようないわゆる公益法人というのはどれぐらいあると把握されていますか。

菅国務大臣 常勤理事と常勤職員のいない国所有の公益法人の数は、平成十七年十月一日現在で三百七十五法人ということを承知しております。

寺田(学)委員 三百七十五ですか。私の方は転記ミスなのかどうかわかりませんけれども、総務省がつくった公益法人白書によれば、十七年の十月一日現在で、常勤役員を置いていないのが八百六十八、常勤職員がいないのが百六十一と聞いていました。数字の方、私の方が間違っているのかもしれませんけれども、いずれにせよ、結構な数がいわゆるペーパー財団として存在をしているということが実態だと思います。

 三年に一度立入検査をされているということも、政府として公益法人をチェックする意味でやられているわけですが、このペーパー法人に対しても立入検査をしてしっかりと指導されているんでしょうか。いかがですか。

菅国務大臣 この公益法人への立入検査は、法人の目的となっている事業の実施状況だとか、あるいは財務状況、会計処理状況を実地に把握するため行うものであって、所管官庁はいつでもできるということになっております。

 立入検査については、「公益法人の指導監督体制の充実等について」、公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申し合わせにおいて、国所管法人については少なくとも三年に一回立入検査を行うことになっております。

 この申し合わせを踏まえまして、平成十五年度から十七年度の間に立入検査を行った国所管の公益法人の数は延べ七千二百二十法人、国所管法人全体の九八%となっておりまして、御指摘されているこのペーパーと言われている公益法人についても、ほぼすべての所管法人の立入検査が行われている、このように理解をしております。

寺田(学)委員 専門の事務員がいない、それの目的、その法人のためだけの事務所もないというものの本当の実態といいますか、公益を目的として設立された法人ですけれども、しっかりと仕事をしているのかどうかということは、それ以外の法人と比べてみますと非常に怪しいなという部分が強くあるんです。ペーパー法人であるどうこうとともに、本当に公益のためにすべての力を注いでいるかどうかということも、公益法人を判断する上では大事だと思います。

 収益事業を挙げられているところも公益法人の中ではたくさんあるんですが、これはまず確認しますけれども、収益事業に関して、設立目的である公益と関係ない部分の収益事業を行うことは認められているのかどうか、そして、それに対して政府はどのような指導をしているのか、お答えいただけますか。

綱木政府参考人 お答えいたします。

 公益法人が行う収益事業につきましては、公益法人の設立許可及び指導監督基準におきまして、収益事業の種類としては、公益法人としての社会的信用を傷つけるものではないこととされております。そして、その基準の運用方針におきまして、収益事業の業種として適当でないものとして、風俗関連営業、高利の融資事業及び経営が投機的に行われる事業を例示しております。申し合わせにおいて例示されているような、社会的信用を傷つけるという事業に当たることがかなり重要な点ではないかというふうに考えております。

寺田(学)委員 端的にお伺いしますけれども、風俗やら何やら、そういう法人自体の信頼を失墜するようなものじゃない限り認められると。ありていに言うと、目的と関係ないような収益事業を挙げていても別に構わないということでよろしいんですね。信頼を失墜するだなんだということじゃない限り、目的とは関係なくてもいいということですね。いかがですか。

綱木政府参考人 お答えいたします。

 総支出に占める収益事業の額が二分の一を超えないようにということを、同時に指導監督基準の中では指導しておりますけれども、その業種におきましては、その支出目的にできるだけ沿ったものであるにこしたことはありませんが、特にそれが関係ないというほどのものでなければ、それは特に指導監督基準から外れるものというふうには考えておりません。

寺田(学)委員 二回の御答弁を総合すると、目的とは必ずしも関係ない部分でも構わない、とはいえ、その収益事業が五〇%、半分を超えないようにしなきゃいけないけれども、いけないというか、しては好ましくないですねというぐらいの結構緩い基準だなというふうにお伺いしました。

 いずれにせよ、政府としては、できる限り公益事業を主眼としてやってもらいたいと思っているでしょうし、できることならば設立目的、公益目的のことに関連する収益事業であればやむを得ないかというぐらいのニュアンスでとらえられているんではないかなと思います。

 一般論だけお話ししていても仕方がないので、一個、具体論に入りたいと思うんですが、交通研究協会という公益法人に対しての雑誌の記事がありました。いろいろ調べてみますと、元事務次官、建設省か運輸省か、事務次官をやられた住田さんという方の公益法人でありまして、今JRの相談役をやられているということでありますが、ここの部分をいろいろ調べてみますと、もちろん、いわゆるペーパー財団の要件というものは満たしておりまして、かつ、私の方で調べた限りにおいては、この財団の公益性というのは、支出ベース、収入ベースで計算しても約一五%ぐらいにしかすぎないというような形で行われています。

 去年、新法ができて、これから公益法人に関しては新しい枠組みでやられるんですが、いずれにせよ、この公益法人が存在する以上、以前に役所として、ここは公益法人として認める価値がありますねということで認められて、その後も立入検査を含めてチェックされていると思うんですが、この財団の実態と、そして立入検査時の国交省の評価というものもお伺いできたらと思いますが、いかがですか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 寺田委員御指摘の財団法人交通研究協会というものがございまして、これにつきましては、昭和五十四年に設立の許可の申請がございまして、昭和五十五年に設立の許可を当時の運輸省がいたしたところでございます。

 許可申請に当たりまして、当該法人の目的につきましては、交通に関する調査研究の促進、援助等を行うことにより交通文化の向上、促進に資することとされてございまして、かつ、業務につきましても、交通に関する調査研究の促進及び振興等というぐあいにされてございました。

 こうした目的が不特定多数の者の利益の実現を図るものであるということで、公益性があると判断をいたしまして設立の許可がなされたものと承知をいたしてございます。また、組織体制につきましても、当該法人の事業規模に応じまして健全かつ継続的に公益事業を遂行できるものと判断をされたことなどから設立の許可がなされたものと承知をいたしてございます。

 それから、立入検査等についての御質問でございますが、私ども国土交通省といたしまして内規がございまして、私どもは二年に一回立入検査を実施いたしてございます。ことしの二月に当該法人に立入検査をいたしてございまして、その結果、特段大きな問題はございませんでした。しかしながら、内部留保に関しましては高いという指摘がございまして、公益事業のさらなる充実を図っていただきたいということを指摘いたしておるところでございます。

寺田(学)委員 菅大臣に確認したかったのですが、予定より一、二分早く出られたので残念です。

 お役所の先輩がやられている財団ですので、今の現役の方々が立ち入って、公益性が低いですねということをどこまで強く指導できるのかというのは非常に疑問に思っています。調べていくと、私も先ほど例示しましたけれども、収入、支出のベースで計算しても、公益性のある事業というのはおよそ半分に達していない状態が長いこと続いているように感じますけれども、役所として立ち入って指導するといっても限界があるのかなと。

 なぜにこの団体が長らく存在し続けているのか。ほかにも公益法人で好ましくないのがいろいろあると思うんですが、この財団自体、具体例を一個挙げてみても、非常に看過できないものがあるんではないか。菅大臣がいなくなりましたのでお伺いできなかったんですが、菅大臣とも御親交があるような話もお聞きしまして、その点もお伺いしたかったのです。

 どうなんでしょう、この財団に対して立入検査をして指導しているということでありますが、法文ないしは規則によっては、余り公益性が高まっていないものに関しては解散を命じることだってできるということだと解釈していますけれども、この財団に関しては、これからも指導をするような形で、改善を望むぐらいの態度で、これ以上役所として、認可した責任者、責任省庁として何かされるというおつもりはないのでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 当該財団法人交通研究協会におかれましては、公益事業としまして大きく二つございます。一つは、交通に関するすぐれた著作、論文、研究あるいは着想というようなものに対しまして賞を出すというものでございまして、三つございました。一つが海事奨励賞、海事関係の研究に貢献した者に対する奨励。あるいは、海事史の研究に貢献した者に対する奨励。あるいは、鉄道奨励賞というようなことで、鉄道の各種調査関係で功績を残した者に対する奨励。そういったような表彰関係でございますね。それから、あわせまして、各交通運輸に関する著作の出版というようなことをやっておられます。そういう意味では、それなりに活動はやっておられるものと認識をいたしてございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、その財務内容をつぶさに調査いたしますと、内部留保が大変多いということで、もう少し公益事業に支出をいただいて事業活動を展開していただくということも必要なのではないかという指摘をいたしておりますので、引き続きその辺の指摘を私どもとして指導してまいりたい、こういうぐあいに思っております。

寺田(学)委員 質問に当たっていろいろ調べたんです。確かに、公益性を判断する上でいろいろ主管的にも考えなきゃいけないんでしょうけれども、表彰等をされていると思います。そういう実績があることも認識をしております。ただ、それに使っている資金というのは百三十万程度ぐらいというふうに伺っております。

 反面、その収益事業というのを見てみますと、多くの不動産を所有されている。この財団は、川越市のスーパーに対して不動産を賃貸したり、都内にマンションを二つ持たれていたり、あと、株券の売却で二千万とか三千万とかという収入を得られている。片や公益的な仕事をされていることは事実としてありますけれども、その割合として考えますと、著しい開きがあることは事実だと思います。

 公益法人ですので、何かしらの税制優遇もされているわけですから、公益性のある事業をされているとはいいつつも、それが、本来その財団自体の主たる業務とは到底思えないような規模で行われている場合は、これは、ある種公益法人というのが隠れみのにされているんではないかなということを疑念として持たざるを得ないと思うんですね。

 役人の先輩でもありますから、省庁として非常に厳しく追及することはできないのかもしれませんけれども、やはり他の公益法人からするとフェアとは言えないような状態でもあるんじゃないかなと思いますので、せっかく副大臣が来ていらっしゃいますので、ここの財団に対してもそれなりに、これだけじゃないと思いますけれども、厳しく監督されるおつもりはあるのでしょうか。御指導も含めていかがですか。

望月副大臣 お答えいたします。

 先生今御指摘のとおり、交通研究協会につきましては、内部留保の割合や職員の体制といった点では、公益法人の設立許可及び指導監督基準に十分適合しているとは言いがたい側面があると思います。

 そこで、このため、事業の実態を踏まえて、基準に適合していないと考える点につきましては、交通研究協会に対して適時適切な指導をしてまいりたい、このように思っております。

寺田(学)委員 一個だけ取り上げてどうこうと言うつもりはありませんけれども、全体的にそういう法人も国交省に限らず多々ありますので、政府として取り組んでいただきたいと思います。

 残りの時間を合併の問題について質疑をさせていただきたいと思います。副大臣、ありがとうございました。

 菅大臣がいらっしゃる間にちょっとそれだけ確認しておけばよかったのですけれども、五月三日の日経新聞の記事で、「市町村数一千目指す」というタイトルで、菅大臣がフランスの内務大臣と地方分権などについて会談をされた際に、「今後、合併などにより千ぐらいまで」、自治体数をということでしょうけれども、「千ぐらいまで進めたい」と述べたという記事がありました。

 これは通告させていただいていますので、これが事実かどうかということを、大臣はいませんけれども、副大臣でも構いませんので、その事実関係をまず教えてください。

田村副大臣 事実関係といいますか、若干御説明をさせていただきたいんですが、市町村合併に関しましては、これまで閣議決定においてその文面がいろいろと決められておりますが、あくまでも、与党行財政改革推進協議会における市町村合併後の自治体数を千を目標とするという方針を踏まえ、引き続き自主的な市町村合併を積極的に推進する、こういうような政府としての閣議決定であるわけであります。

 そういう意味で、大臣があのような形でおっしゃられたというのはそういうことだと思うんですが、あくまでも与党の政治家でありますし、そのようなことを踏まえながら、大臣としてこの閣議決定を踏まえた上でおっしゃられたということであろうと思います。

寺田(学)委員 本当は本人がいれば一番よかったんですけれども、その閣議決定を踏まえられたことを発言されたのであれば、わざわざ記事になることはないと思うんですよね。私としても、短い三年間ぐらいの間ですけれども、合併について議論してくる中で、絶対政府として具体的な数字を挙げてこなかったんだと思うんです。

 今副大臣が言われたとおり、引用する形で、そちらを踏まえて努力したいとかという形で言われたんですが、初めて大臣が、かぎ括弧として書かれているんですけれども、「合併などにより千ぐらいまで進めたい」と言われたのはある意味一つの変化だと思っていまして、それでお伺いしたいと思っていたんです。

 大臣自身がいなくなりましたので、大臣あての質問を用意していたんですけれども、非常に難しいんですが、具体的な数字を設定された意味はどこにあるのかということを私はお伺いしたいですし、もし、副大臣が言われるとおり、それは今までの千というものを踏まえてやるという政府方針を訴えられたのであれば、これは誤報になりますので、それはそれなりに日経新聞さんに、そんなことは言っていないぞということを言わなければならないと思うんです。

 そういう意味を含めて事実関係をお伺いしたかったんですけれども、いかがなんでしょう、もう一度お伺いしますけれども、事実関係として、千を目指す、こういうふうに言われたのか、それは舌足らずだったのか、そういうことは言っていないのか。いかがなんでしょう、まずそこからはっきりさせていただきたいと思います。

田村副大臣 そこまで具体的に限定して、大臣にどうなんだということは、実は私はお聞きをいたしておりません。ただ、ああいう形で報道が流れたということは、何らかのことは言われたんだと思うんですけれども、そこが、一政治家として与党の議員でもある大臣でありますから、それを、大臣としての発言の中において、千というものを政府の方針として言われたのか、それとも踏まえてというところを含めて言われたのか、そこはどうなんだということに関しては、ちょっと申しわけないんですが、私が大臣の心の中までここでは十分に理解できていないということでありますので、私がしんしゃくさせていただく部分においては、踏まえておっしゃっておられるんであろうというふうに思っております。

寺田(学)委員 一応、日経新聞の発言の事実いかんということを通告していますので、こういうふうに言ったかどうかを僕が聞くことを大臣に対しては通告しているわけで、それに対して答弁書を用意されていないのかどうなのかわかりませんけれども、それだけははっきりさせていただきたいと思うんですね。

 パリの方に御一緒されていた方もいらっしゃると思うんですが、政府参考人の方でも結構ですけれども、この発言に対して、事実関係及びその真意等も含めてどのように把握されているか。いかがですか。

藤井政府参考人 私どもの方にも、実際どのように発言されたかというような正確な事実はお聞きしておりません。

寺田(学)委員 通告をしているんですけれども。通告する際に、日経新聞の発言の事実いかんということを通告していて、それを、もしかして大臣が答えられるので答弁書をつくられていなかったのかどうか知りませんけれども、把握をしておりませんと言うのであれば、こちらだって、もう通告したって意味がないということになります。

 そういうことですので、もう大臣もいらっしゃらないので、時間が余っていますけれどももうやめます。私は、千を目指すと言われたことに関しては、ある種政治的に一つ変化があったものだろうなと把握して質疑の時間をとったんですけれども、そういうことですので、またの機会にしますので、きょうは時間が余りましたけれども、以上で終わります。

佐藤委員長 この際、休憩いたします。

    午前十時三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時四十三分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは、放送規制機関の問題と地デジ対策について伺いたいというふうに思います。

 放送法を一部改正する法律案というのは、既に国会に提出されているわけですが、法律案の持っている放送内容への政府介入を強める条項を含む問題など、容認できない内容を持っておりますが、そういう問題については、改めてまた法案審議の中で、そうした問題点を徹底的に究明し、広く国民の皆さんに、危ない問題、危険性というものを明らかにしていきたいと思います。

 きょうは、法案審議に先立って、放送への政府介入を防ぐために各国がいろいろな取り組みをやっているわけですね、国際的にどのような取り組みや工夫がされているのかというのを見ていきたいと思うんです。

 お手元に資料一を配らせていただいておりますが、その上のページです。実は私、OECD三十カ国について求めたんですが、総務省の方からいただいたのが、とりあえずこの資料です。

 それで、放送の免許など許認可を行っている機関というのは、アメリカでは連邦通信委員会、イギリスでは通信庁、フランスでは視聴覚最高評議会、ドイツでは各州メディア庁、韓国では放送委員会というふうになっておりますが、OECD主要国の放送分野の行政機関というのは、日本の総務省のように大臣を責任者とする政府機関の一部なのか、それとも政府機関から独立した行政機関なのかということについて、最初に政府参考人に伺っておきます。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 OECD主要国の法制度、今先生御指摘のように、網羅的に把握しているわけでございませんが、各国の放送分野にかかわる行政機関としましては、大臣を長とする省の形態の組織と、大臣等によって任命される委員によって構成される組織があるものと承知いたしております。

 例えば、アメリカでは、大統領が任命する委員から構成されます合議制の機関であります連邦通信委員会、FCCが放送行政を担っております。

 一方、イギリスでは、法案の作成、英国放送協会いわゆるBBCへの特許状の付与等につきましては、大臣を長とします文化・メディア・スポーツ省が担当いたしておりまして、番組指針の策定、放送事業者への免許付与等につきましては、大臣が任命する委員から構成されます通信庁、通称OFCOMとしておりますが、それが担当しているものというふうに承知しております。

吉井委員 今、要するに、政府から独立した行政機関というのが各国の主な状況だということはお話があったわけですけれども、韓永学さんという方が「放送規制機関に関する一考察」という中で紹介しておられますが、アメリカのFCCというのは「行政府の特定の省庁にも属せず、独立してその業務を遂行する独立規制委員会である。」というふうに紹介していますし、イギリスのOFCOM設置法によると、「OFCOMの法的地位は政府から独立した公社である。」と紹介されております。フランスの視聴覚最高委員会、CSAは「一九八九年同法の改正に伴いCNCLが廃止され、新しい独立行政機関として視聴覚最高委員会が創設された。」「このような規定は、CSAの政治的独立を保障するための措置と考えられる。」と紹介されております。

 ドイツの「公共放送は各放送局内部の放送委員会が規制監督を行い、民放は各州のメディア委員会が規制監督を行う。」「放送委員会は内部的多元主義により、州議会、労働組合、経営者団体、ジャーナリスト、文化、芸術、学術の団体等、社会の主要な集団の代表から構成され、公共放送協会の会長の任免や、番組基準の遵守の監督に加え、協会の基本的な業務について審議し、決定する。」「メディア委員会は州法に基づく州政府から独立した第三者機関として、民放の免許許可と監督を担う。」と紹介しておりますし、韓国の放送委員会は「従来、放送に関する規制監督は政府の影響下にあったが、現行放送法はその権限を合議制の独立行政機関である放送委員会に付与している。」

 つまり、総務省からいただいたこの資料、資料一の方ですね、この中で紹介されている各国についても、要するに、政府機関から独立した行政機関として行われているというのが紹介されているところだと思うんですが、この点については、総務省の方もこういう各国の実情というのは承知しておられますね。

鈴木政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、放送行政というものをとらえた場合に、その法制度の企画立案を行う省と、許認可等を行っておる通信庁といいますか視聴覚最高評議会というものが、ともに存在するということは御指摘のとおりでございます。

吉井委員 規制監督というのは、これはちゃんと独立したところがやっているというわけです。

 これら各国の行政機関というのは、日本の総務省のように大臣の独任制機関ではなく、委員会という名称が示しているように合議制機関ではないかと思うんですが、これはこのとおりでいいですね。さっきおっしゃったのは、政策機関としての問題と、それから規制監督機関が独立しているというお話はあったわけですが、各国の機関は今言ったようなことでいいですね。

鈴木政府参考人 繰り返しになりますが、許認可等を行っている機関については、今御指摘のとおりでございますが、政府機関と呼ぶか呼ばないかということについては、その各国によって表現の仕方がまちまちであると思っております。

吉井委員 これは単なる呼び方の問題じゃなくて、基本的な性格の違いがあるんです。そこをきっちり見なきゃいけない。

 これらOECD主要国では、放送の許認可を行う行政機関はなぜ独立の行政機関で、しかも合議制の行政機関としているのか、ここはなかなか大事なところだと思うんですが、この点について大臣のお考えというものを伺っておきます。

菅国務大臣 OECD主要国の法制度を網羅的に把握しているものではありませんけれども、例えばEUでは、欧州委員会によって規制の枠組みであるEU指令が策定をされている。それを加盟国において、大臣を長とする情報通信担当省が国内法制に適合するよう立法化の企画また立案をして、法律化した事項については規制機関が執行する、こういう体制となっております。また、アメリカにおきましては、三権分立のもとで大統領の権限が強大でありますから、議会に責任を負う独立行政委員会制度が設けられており、その一つとして、先ほど局長が言っていましたけれども、連邦通信委員会が主導的な役割を担う体制となっております。

 このように、法律案の立案及び具体的な許認可を行う行政組織のあり方というのは、各国の事情によってさまざまである、このように考えております。

吉井委員 各国名前がいろいろついているという、そういう問題じゃないんです。一番大事なところは、いずれの国も、放送の政治からの独立を保障するためにさまざまな工夫が行われているということが明らかであるということであります。

 総務省に、OECD加盟国すべてにおける放送の行政機関の資料をお願いしたわけですが、それは出てこなくて、主要五カ国ということだったんですが、実はそれらの国も、指摘したように、いずれも独立した行政機関で合議制機関となっております。私は国会図書館の方で調べたわけですが、OECD加盟三十カ国の中でいわゆる独立規制機関が規制監督を行っている国というのは二十六カ国です。独立規制機関でない四カ国というのは、スペイン、スイス、メキシコと日本の四カ国だけです。日本では、放送局への大臣権限を強化しようという法案が今出てきていますが、OECD加盟国では、大臣の介入が不可能な制度をどうつくり上げるか、こういうところで今非常に工夫が続けられてきているわけです。

 そこで、大臣にもう一度伺いますが、大臣の介入権限強化を考える前に、そもそも大臣独任制の規制機関が放送局の規制機関としてふさわしいのかどうか、この根本のところを今真剣に考えるべきだと思うんですが、どうですか。

菅国務大臣 まず、私は放送に対して政治介入をする意思は全くないということを明言させていただきたいというふうに思います。

 各国における行政組織のあり方は、歴史的な経緯や政治体制だとか、各国の事情によってさまざまであるというふうに考えております。日本においては議院内閣制を採用しておりまして、内閣の一員である各省大臣が責任を持って行政を執行していく、このことが私は原則であるというふうに思います。特に、放送を初めとする情報通信分野は、技術革新が激しく、国家戦略的対応が強く求められる分野でありますから、機動的、一体的そして総合的な対応を可能とする現在の独任制の省の形態によることが私は適当であるというふうに思います。

 なお、日本も、戦後間もないときに行政委員会が広く導入をされましたけれども、結果として、責任が不明確である、また非能率である、こうした理由によって、昭和二十六年当時存続した二十四委員会のうち二十委員会が、日本が主権を回復した昭和二十七年以降順次廃止をされてきたという歴史もあるところであります。

吉井委員 国家戦略という名前でもって放送が国家のもとに、権力のもとに置かれる形になってはいけない。やはり放送の政治からの独立というものをどう保障するかということが、これは世界各国どこでも工夫していることですから、それをやっていかなきゃいけないと思うんです。

 総務省の方は放送法を出しているわけですが、その審議の前提として、やはりOECD加盟国の放送行政機関について、提出してもらっています主要五カ国というものだけじゃなくて、政府から一定の独立性ある機関なのか合議制機関なのかということをきちっと調査をして、総務委員会に資料をまず提出してもらうことが私は大事だと思っているんですが、これは総務委員長の方にまずお考えいただきたいと思います。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

吉井委員 次に、デジタル放送の問題について伺いたいと思います。

 これは今の資料の二枚目の方に出しているものについてもごらんいただきたいと思います。今国会に提案されている放送法の一部改正では、一つは、認定放送持ち株会社制度の導入など、地上放送デジタル化に伴うデジタル化投資で厳しい財政状況になった地方の放送局に対する対策と言わなきゃいけないものがありますが、そういう問題はまた法案審議のときにやるとして、問題は、あと四年と迫った二〇一一年のアナログ放送停止問題、そのとき、とりわけ国民の受信設備、テレビ買いかえ問題がどうなってくるのかということをきょうは聞きたいと思うんです。

 アナログ放送の受信機ではデジタル放送を視聴することは当然できないわけですが、地デジへの移行には、国民がデジタル受信機を新たに購入することは前提となっているわけですね。総務省として、アナログ放送を停止し地デジに完全に移行する二〇一一年七月までに、デジタル受信機をどれだけ普及しなければいけないと考えているのか、参考人に伺います。

鈴木政府参考人 今総務省としてどう考えているかということでございますが、現在、受信機の普及目標につきましては、国と放送事業者、メーカー、販売店、それに消費者団体、地方公共団体等で構成されております地上デジタル推進全国会議で策定いたしました行動計画において設定してきております。

 この行動計画によりますと、二〇一一年までに全世帯でデジタル放送を視聴可能とするということを目標としておりまして、これを達成するために約一億台の受信機の普及を目標といたしております。

吉井委員 一億台という根拠はどこにあるんですか。

鈴木政府参考人 ただいま申し上げました地上デジタル推進全国会議において行動計画を策定するに当たりまして、これを達成するために必要な受信機台数につきましては、平成十五年のときの統計を使っておりますが、世帯数約四千八百万世帯、受信機平均保有台数二・二台ということから、数字を丸めて、わかりやすい数字で普及目標一億台といたしたものでございます。

吉井委員 世帯数約五千万、テレビの台数にして一億台ということですが、総務省の普及目標には、実はデジタルテレビだけでなく、デジタルチューナーやデジタルチューナーつきDVD録画機なども含まれております。普及目標がデジタルテレビで一億台でなくて、デジタルチューナーなども含めて一億台としているということですが、その理由は何ですか。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘のとおり目標は一億台でございますが、その一億台につきましては、もちろんデジタル放送対応の受信機を御購入いただければそれだけで十分でございますが、それ以外にも、デジタル放送対応のケーブルテレビに加入する、あるいは、現在お持ちのアナログのテレビにチューナー機能を持っておりますアダプターやDVDレコーダーなどを付加することによりまして、現在のアナログ受信機でもデジタル放送が視聴できることになりますので、こうした機器も含めて目標一億台としたところでございます。

吉井委員 だから、最初に総務省の目標としては一億台というお話だったんですが、その普及目標というのは、デジタルテレビだけでなくてデジタルチューナーやチューナーつきDVD録画機なども含まれるということです。

 デジタルチューナーやデジタルチューナーつきDVD録画機はアナログテレビに接続すれば確かに見ることはできるわけですが、デジタル受信機普及一億台という目標は、デジタル放送開始時には、これは国民が保有していると考えられるアナログテレビ一億台から始まったわけですよね。二〇一一年にはすべてデジタルテレビと入れかわるのではなくて、一部はチューナー等で接続することで見ることができるということであって、当初はデジタル受信機普及目標一億台と言っておったのが、実はその設定した目標が今では変わってきているということでいいんですね。

鈴木政府参考人 このデジタル放送推進のための行動計画は、先ほど来申し上げている普及台数目標一億台と、第七次計画で具体的な年次を定めながら最終一億台を目指しているものでございますが、これをつくりました当初から、すべてデジタル受信用のテレビのみというふうには想定いたしておりませんで、現実にお持ちの既存のアナログテレビジョンも含めてデジタル放送が受信できる体制をとるということで考えていたものでございます。

吉井委員 今のお話というのは、これは設定目標そのものが、結局、一億台と最初言っておったんだけれども、チューナーつきのものも含めてということに今なってきているわけです。

 そうしたら、現在のデジタルテレビの到達度はどれぐらいになっていますか。

鈴木政府参考人 社団法人の電子情報技術産業協会及び日本ケーブルラボの取りまとめた統計によりますと、本年三月末現在の地上デジタル放送対応受信機の出荷台数は、合計で二千三十七万台となっております。ちなみに、今委員御指摘のテレビあるいはチューナーその他で分けてみますと、デジタル放送対応受信用のテレビが千二百二十万台、チューナー、レコーダー、ケーブルテレビ用のセットトップボックス合わせて八百十七万台、今申し上げたように合計二千三十七万台ということになります。

吉井委員 普及目標が一億台、現在の普及が大体二千万台と。あと四年間で八千万台普及しなければ、五千万世帯、一億台という話になってこないわけであります。そうなると、きょうお手元に配らせていただいております資料によっても、現在の到達が二〇〇七年度で約二千万台、これは毎年一千万台ずつ伸ばしていっても六千万台までということですが、これまでの伸びからして、これはそう簡単にはいかないと思うんです。

 経済産業省の方に伺っておきますが、二〇一一年に普及しているデジタルテレビは何台で、買いかえられずに残っているアナログテレビは何台というふうに業界としては予測しているのかを伺います。

貝沼政府参考人 お答え申し上げます。

 今年三月六日に開催されました家電リサイクル制度の見直しを検討している審議会の会合におきまして、社団法人電子情報技術産業協会から「二〇一一年 地上アナログ放送終了に伴うテレビの排出台数予測」という報告がございました。この報告によりますと、この協会では、二〇一一年には国内に約六千百五万台のデジタルテレビが普及し、約三千五百四十三万台のアナログテレビが残存すると予測しております。

吉井委員 今お答えいただいたように、実際の予測では、二〇一一年にアナログテレビ三千五百四十三万台が買いかえられずに残っていると予想されているわけです。このうち、デジタルチューナーや地上デジタルチューナー内蔵DVD、デジタルセットボックスなどを組み合わせて地上デジタル放送を見ることが可能となると考えられる台数がそれじゃ一体何台なのか、そうした機器と組み合わされずに、デジタル放送を視聴できずに残るテレビは何台というふうに考えられるのか、伺います。

貝沼政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御紹介しました電子情報技術産業協会の報告によりますと、二〇一一年に残存する約三千五百四十三万台のアナログテレビのうち、約二千百十五万台がデジタルチューナーなど地上デジタル対応の機器と組み合わせて使用されると予測しております。したがいまして、残りの千四百二十八万台は、デジタル放送を受信しないアナログテレビとして残存するのではないかと予測しております。

吉井委員 だから、今のお答えにありましたように、家電リサイクルのために業界が予測した数字が今のものですが、つまり、視聴しない可能性のあるアナログテレビは千四百二十八万台残って、二〇一一年にはこれだけ排出される可能性があるということです。

 業界は、二〇一一年七月までのデジタルテレビの普及台数が六千百五万台、アナログテレビと組み合わされるデジタルチューナー等で二千百十五万台、合計八千二百二十万台、デジタル放送が見られないアナログテレビが千四百二十八万台残ると予想しているわけですね。二〇一一年までに一億台普及という目標を総務省は立てているわけですが、業界自体が、一億台の普及は不可能で、アナログテレビが千四百二十八万台残ると予想しているわけですね。

 そうすると、総務省の方は二〇一一年に一億台普及可能ということを言ってきているわけですから、その可能な根拠はどこにあるのかを伺いたいと思うんです。

鈴木政府参考人 ただいま御紹介のありましたJEITAの数字でございますが、この電子情報技術産業協会も、先ほど申し上げました地上デジタル推進全国会議のメンバーとして計画策定に携わっていただいたものでございます。その全国会議で定めております目標によりますと、本年三月の普及台数目標千九百万台に対しまして普及実績二千万台ということでございまして、そういう意味では計画をやや上回る数値となっております。

 そうした上で、本年の三月に実施しました調査の結果、地上デジタル放送の受信機の世帯普及率は二八%となっておりまして、先ほど申し上げました業界団体の調査によります出荷台数は二千三十七万台ということでございます。

 こうしたことから、二〇一一年の四月までで全世帯への普及一億台を目標としております行動計画の普及目標にほぼ沿ったものというふうに考えております。

 引き続きまして、放送事業者や受信機メーカーあるいは販売店等の関係の皆様と御協力をして、地上デジタル放送対応受信機が普及するように努力をしてまいりたいと思っております。

吉井委員 グラフを見ればよくわかるんですけれども、二〇一一年対応で、一番上の真っ白の部分が千四百二十八万台ですね。これは要するに、もう映らなきゃごみなんですね。ごみになってしまうということにもなるわけです。いずれにしても、業界予想では千四百二十八万台の映らないテレビが二〇一一年に残るということになっています。

 総務省の普及目標は、業界から達成不可能ということを突きつけられたに等しいことです。達成不可能な計画を無責任にこれからも掲げ続けていくのか、やはり今の時点で計画の変更に着手をするということを考えるのか、そのことが問題になってくると思うんですが、これは大臣、やはり、一億台という目標を高く掲げて、これでやっていけるという考えですか。

菅国務大臣 総務省では、これまでも、放送事業者、メーカー、販売店等の関係者と連携をしながら、地上デジタル放送の普及に向けて、例えば、受信可能エリアの着実な拡大だとか、受信機の低廉化、周知広報等全力で取り組んできております。

 この結果、地上デジタル放送対応受信機の世帯普及率や出荷台数を見ても、二〇一一年段階で受信機一億台の普及目標に向けて順調に推移しているというふうに考えています。したがって、目標の変更は全く考えておらず、今後とも目標の達成に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。

 また、国民負担の軽減の観点からも、現在使用されているアナログテレビがデジタル放送にかわっても引き続き使用ができるよう、簡単なアダプターの登場が待たれるところであり、現在二万円程度で販売されていますけれども、このアダプターが、アナログ終了時が近づけば、需要が高まり、大きく低廉化が進むのではないかなというふうに思っておりまして、また、私自身もメーカーに対して、今後アダプターが低廉な価格になるように今要請をいたしておるところであります。

 こうしたことによって目標を達成することが可能だ、私どもはこのように考えております。

吉井委員 要するに、六千百五万台まで二〇一一年にデジタルテレビを普及させようという、これまで言ってきたことも、業界の予想からすると非常に甘いんですね。

 実績値で、年間大体八百万台が売れているんです。しかし、それを年間一千万台売って、四年間続けなきゃいけないということで、現在の実績との差は、現在の普及している二千万台からすると、四〇%もの八百万台の差が出てくるんですね。ですから、二〇一一年までに達成するということは極めて困難だということが見えるようになってきております。

 このまま二〇一一年、アナログ停波を強行したら、日本にある使えるテレビの一割以上を無理やり廃棄物にしてしまう。生活の一部となっているテレビの視聴を多くの世帯から強制的に奪うことにもなってしまいます。やはりかなり無理のある計画なんですから、無用な混乱を避けるためにも、一刻も早く、今の時点でどうしていくのが一番いいのか、再検討というものが必要だし、再検討に着手することが必要だと思うんですが、この再検討についてのみ、一点に絞って大臣に伺って、時間が参りましたから、終わりにしたいと思います。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたように順調に進んでおりますので、再検討するつもりは全くありません。

 今のように、どんどんとテレビの値段が下がり始め、既に当初目標より半分以下になっておりますから、さらに引き下がっていって、需要がふえていくものと私ども確信をいたしております。

吉井委員 順調にはいっておりませんので、再検討を要すということを申し上げて、時間が来ましたので、終わります。

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、内閣提出、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官久保信保君、自治行政局長藤井昭夫君及び自治財政局長岡本保君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案についてお伺いをいたしたいと思います。

 いわゆる財政健全化法案ということでありますけれども、そもそも十七年度末に三位一体改革が行われて、その後に新たな地方分権改革の方向性を模索するといったようなことになりまして、当時の竹中総務大臣のときに私的懇談会、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の検討がスタートいたしたわけでございます。大臣はその折に副大臣でいらっしゃったわけであります。その中でも、「数年以内に「再生型破綻法制」を整備すべきである。併せて、第三者機関等を活用した早期是正措置を導入すべきである。」中間取りまとめの段階でこのようになっておったわけでございます。

 それからスタートいたしましてこの法案になったわけでありますが、審議の対象となっておりますこの法案は、早期健全化法、現行の再建法とは異なって、地方団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設けている。財政の早期健全化、財政の再生、公営企業の経営の健全化を図るための計画を策定するとともに、計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講じようとするものであります。

 この法案の基本的な考え方をまず冒頭に菅大臣にお伺いいたしたいと思います。

菅国務大臣 まず、いわゆる竹中懇談会、私も副大臣として参画をしておりました。当時、地方財政の状況というのはなかなかわかりにくい、やはりもっと透明化すべきだ、各委員の皆さんの意見もそこが非常に大きかったわけでありますし、さらにこれからは地方分権が進んでいく、そういう中では財政規律というものをしっかりと確立していく必要があるだろう、そういうことで私ども考えさせていただきました。

 そして、現行の再建法制というのを約五十年ぶりに見直しし、財政指標の整備とか、その開示の徹底、財政の早期健全化や再生のための新しい制度を整備する必要があるだろう、そういうことで、今回、法案化をさせていただいたところであります。

 今回の法案によって、地方公共団体が毎年度、実質的な赤字だとか、あるいは公社、第三セクターなどを含めた実質的な将来負担となるこうした指標を議会に報告し公表する仕組みを設けること、また、それが一定程度悪化すれば、議会の議決を経て財政健全化計画などを作成されること、さらに、外部監査を求めること、こういうものを義務づけることとしたところであります。

 この制度によって、分権時代にふさわしい、地方の自己規律による財政健全化というものを強力に進めてまいりたい、そういう思いの中で、今五十年ぶりにこの法案を提出させていただいたというところであります。

谷口(隆)委員 本法案は、地方公共団体が大変この審議の状況に関心を持って見ておるわけでございますが、特に、財政健全化判断比率というものがあります。この判断比率がどういうようになるのかということに大変関心があるんだろうと思います。

 今回の早期健全化基準と、あとは財政再生基準、このような二つの基準があるわけでございますが、早期健全化基準は、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、あともう一つは将来負担比率、まず初めの三つはフローの指標ということでありますが、最後の将来負担比率というのはストックの指標でございます。どの程度の債務の総額があるかというこの四つの指標で、一つでも早期健全化基準というところを超えますと財政健全化計画の策定が求められるということでありますし、財政再生基準の場合は、将来負担比率が除かれておりまして、それ以外の三つの指標を一つでも超えますと財政再生計画の策定を義務づけられておるということでございます。

 この法案を見ますと、施行期日が、健全化判断比率の公表は公布後一年以内ということで、その他の義務づけ規定は平成二十年度決算からスタートするというような状況のようでございますが、漏れ伝えるところから聞きますと、この基準を年内に政令で定める予定であるということを聞いておるわけでございますが、どのような考え方でいらっしゃるのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

菅国務大臣 地方自治体の皆さんが、今回の法案、また特にこの基準について大変興味を持っていらっしゃるということを私も承知いたしております。

 財政の早期健全化や再生の対象となる団体の基準については、今委員から御指摘がありましたように、年内に政令において定める予定にいたしております。

 その際には、本法案に定められております財政の早期健全化及び財政の再生の規定の趣旨にのっとって検討をしていきます。

 具体的には、市町村については二〇%以上、道府県については五%以上の赤字比率になった場合、再建団体にならなければ起債が制限される現行の再建制度の運用だとか、あるいは、地方債協議制のもとで、実質公債費比率が一八%以上で許可団体となって、そして二五%以上で単独事業等の起債が制限されるという現行の地方債制度の運用などを踏まえつつ、四つの比率間の整合性、こうしたものを勘案して、今までの経緯というものがありますから、余り極端にならないように透明性を高める、そういう中で検討を進めていきたいというふうに思います。

谷口(隆)委員 今大臣がおっしゃったように、既に、例えば実質公債費比率なんというのは、一八%、二五%、三五%というようなところでそれぞれの制約があるわけでございます。先ほども私が施行期日のところで申し上げたわけでございますが、今大臣がおっしゃったように、この比率は年内に政令で出したい、それで、実際の適用は平成二十年度の決算からこれが義務づけになるわけでございます。

 ですから、そういう意味で申し上げますと、二十年度、来年の秋に十九年度決算が出ます、それでこの四つの指標を出すということになるわけでございますが、十九年度の決算では義務づけが行われないということで、一年状況を見守って、二十一年度の秋に二十年度の決算が出るわけでございますけれども、健全化基準、再生基準を超えておったならば、それぞれ健全化団体、再生団体ということになるわけでございまして、今大臣がおっしゃったとおりであります。

 それで、夕張の再生団体のことがいろいろ報道されておるわけで、しかし、我が国の地方公共団体の財政状況を見ますと、夕張のみならず、かなり財政状況が悪化しておるところがあるというところも聞いておるわけでございます。二十年度決算が出て、その段階で義務づけが始まるわけでございますが、スタートの段階で既に再生団体というような認定といいますか指定がされるような団体もなきにしもあらずというようなことでございます。スタートの段階で財政状況の悪い団体について大臣は一体どのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

菅国務大臣 本法案におきましては、財政再生計画の策定義務づけ等に係る規定として、今委員から御指摘のとおり、平成二十年度決算から適用をしてまいります。

 このため、財政再生基準等を上回っている団体においては、平成二十年度の予算編成等を通じ、財政再生基準等を下回るための努力が行われることが見込まれると思います。

 しかしながら、各指標の財政再生基準及び早期健全化基準については、再生等の取り組みがおくれることによって過度の住民負担にならないよう適正に設定すべきと考えておりますけれども、今委員の御指摘にもありましたように、今後、地方公共団体の意見を十分聞きながらこれは検討を進めていきたいというふうに思います。

谷口(隆)委員 本日私は総括的なことをずっとお伺いいたしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、四つの指標があるわけです、早期健全化基準ですね。その中でも連結実質赤字比率というのがありまして、これは今までにない比率でございます。自治体の単体といいますか一般会計だけじゃなくて、特別会計も含めて見ようじゃないか、グループとして一体どうなっておるのかということを見る必要があるねということ、これは非常に重要なことなので、このような必要があるわけでございます。

 しかし、今回の連結実質赤字比率は特別会計を入れるということになりましたが、一方で、一部事務組合、地方独立行政法人、地方公社、第三セクターは連結をされておらない、グループの中に入っておらないということであります。いわば公営企業のところにとどめたということになるわけでありますが、これをここのところでとどめたという理由についてお伺いいたしたいと思います。

菅国務大臣 一部事務組合だとか地方の独立行政法人、また公社、第三セクターというのは、当該地方公共団体とはまず別人格の法人であるということ、そして当該法人における赤字は当該法人が解消するための責任がある、また当該地方公共団体がみずから赤字として直接的に処理しなければならないものではない、こういうことから赤字を連結することにはしていないところであります。

 しかしながら、こうした一部事務組合等の赤字や負債のうち当該地方公共団体の負担になるものについては、将来負担比率の算定において地方公共団体の負担として算入する、こういうことにさせていただいています。

谷口(隆)委員 将来負担するものについては算入させるということをおっしゃったわけでございます。

 そこで、四つの指標の中の将来負担比率というのがあるわけでございますが、将来負担比率というのは、当該団体が負担すべき債務の総量を把握するという、先ほど申し上げましたストックの指標でございます。将来負担比率は、公社、三セクを含めた実質的負債と当該地方団体の財政体力を比較する極めて重要な指標でございます。多くの地方団体は、公社、三セクの金融機関からの借り入れにつきまして、債務保証であるとか損失補償をいたしておるところがあるわけでございます。この場合に、実質的債務が把握されるという意味では、将来負担比率というのは非常に重要な指標になってくるわけでございます。この法案が、そのような公社、三セクの改革に結びついていくということを私は大変期待するところでございます。

 まず、実質的な数字をお聞きいたしたいわけでございますが、地方団体が公社、三セクの金融機関借り入れにつきまして債務保証または損失補償をしておるという金額について、どの程度あるのかお伺いいたしたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の、地方公共団体が第三セクター等に行っております損失補償契約、債務保証契約の具体的な額についてでございます。

 十七年度末の状況について私ども調査しておりますが、十七年度末で、地方団体が二五%以上出資しております商法・民法法人、それから出資割合が二五%未満でございますが貸し付け、損失補償といったような財政的支援をしている商法・民法法人、それから地方住宅供給公社、道路公社、土地開発公社、あるいは独立行政法人といったものを調査対象といたしますと、七千九百四十一ございますが、これらの法人に対しまして地方団体が行っております損失補償契約に係ります債務残高は、約二兆三千百九億円でございます。また、地方三公社に対して行いました債務保証契約に係ります債務残高は約六兆七百二億円、損失補償契約に係ります債務残高は約一兆四十三億円という数字でございます。

谷口(隆)委員 今局長の方から報告を受けましたが、やはりかなり膨大な債務保証また損失補償の金額になっておるわけであります。ですから、この将来負担比率というのは非常に重要な比率で、先ほども申し上げましたように、これが三セク、公社の改革に結びついていくような形に持っていかなければならないというように考えておるわけでございます。

 先ほども言いましたように、早期健全化基準では四つの比率なんですが、再生判断基準はこの将来負担比率が除かれておるわけでございます。三つの比率となっておるわけでございますが、これはどうして再生団体の判断基準から除かれたのか、お伺いをいたしたいと思います。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、将来負担比率はまさにストックの指標でございまして、地方団体の現在の一般会計といったものが赤字を出すとか一定のフローの指標を超しておりますと、それはフローの指標でチェックができる。フローの指標ではセーフなんだけれどもストックを見るとやはり注意をする必要があるのではないか、そういうことから、ストックの指標といったものを導入して、早期の健全化を促すという意味での指標として用いたわけでございます。

 したがいまして、このストック指標、将来負担比率というのは、現に財政運営に支障を来しているということを示すものではございませんで、フロー指標の将来の悪化の可能性を示すものということでございます。そういう意味で、早期の健全化段階でこの指標を用いて健全化に取り組んでいただくということで財政の健全化を進めたいということでございます。

 この指標のみで一定のいわば健全化の努力を課すということについては、健全化努力は自主的なものでございますのでそのぐらいは差し支えないと思っておりますが、フロー指標が一定の指標に至らない場合、このストックのみで、地方債の制限でございますとか国の強い関与を行うといったような再生を図らなければならないということまでは言えないのではないかということから、再生判断基準としては用いないということにしたものでございます。

谷口(隆)委員 将来の財政悪化の予兆を見るというか、そういう意味での将来負担比率ということであるので、財政健全化判断の基準にのみ入れたということの今答弁だったと思うわけであります。

 この将来負担比率というのは、非常に重要な比率だと思います。これがどのような基準になるのかということも含めて大変関心があるところでございます。

 ちょっと具体的な話をさせていただきますと、先ほど、今回の連結実質赤字比率の中に公社が入っていないということを申し上げたわけでありますが、新聞報道等を見ますと、地方自治体の土地開発公社がかなり多額の塩漬けの土地を抱えておるというような報道もあるわけでございます。債務超過に陥っておる第三セクターもあるというような状況でございますが、このような公社の塩漬け土地だとか債務超過の三セクだとか、このようなことに対してどのようにお考えなのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

菅国務大臣 経営環境の悪化などによって、一部の公社だとか第三セクターについては、財務状況が著しく悪化しているものも確かに見受けられております。

 土地開発公社においては、平成十六年の十二月に策定をした経営健全化対策に基づいて二百十一団体が経営健全化団体に指定をされ、経営健全化に向けた取り組みが進んでいるところであります。

 一方、経営状況が深刻であると判断された第三セクターでありますけれども、第三セクターに関する指針の中で、各地方公共団体に対して、問題を先送りするのではなく、抜本的な経営改善策の検討を行い法的整理の実施等の判断をするよう要請いたしてきております。例えば、平成十六年度以降、三十四法人について法的整理が行われたところであります。

 また、本年一月には、三セク等の経営に関する情報の開示について、全地方公共団体に要請をし、経営状況の透明性の確保にも努めているところであります。

 総務省としては、今後さらに、こうした三セクの資産評価手法についてのマニュアルなどの整備を行うとともに、個別の案件に対する具体的な助言、情報提供体制の整備について検討を進め、地方公共団体が行う第三セクターの改革に対する支援体制というものを構築していきたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 今回の対象となっております比率、早期健全化基準比率また再生比率、こういう比率の中には先ほども申し上げたようにこのような公社、三セクは入っておらないわけでございますから、将来負担比率の中に、先ほど大臣がおっしゃったように、地方団体が債務保証をしておって、突然公社がばたっといく、もう運営できないというようなことになったときに、ばっと支払わなきゃいかぬ債務が上がってくるわけでございますので、それが将来負担比率のところにかかっているというようなことで、そういう意味での見方もあるんだろうと思います。

 しかし、経営実態が自治体とは異なるということで、公社、三セクをまるで切り離したような把握ぶりもちょっと問題があるのではないかと思うところでございます。現に、先ほども申し上げた公社の塩漬け土地というのは、バブルの高いときに買ってかなりの含み損、最近の状況を見ると、時価の五〇%程度以上下落をしますとそれを評価減しておるようでございます。しかし、その状況も、透明性を求めておると大臣がおっしゃるわけでございますが、どうもなかなかはっきりわからないところもあるというようなところでございますので、今回のこの比率の中でも将来負担比率はよく見ていただく必要もあります。それのみならず、先ほど局長のお話では、それだけで全部把握するというのはなかなか難しいわけでありますけれども、全般的にこのあたりの公社、特に公社、三セクあたりを見ていく何かの手法みたいなものもやはり検討していただく必要もあるのかなというように思う次第であります。

 それと、これは大臣が非常に関心を持っていらっしゃった債務調整という、もう債権放棄してあげましょうみたいな議論が二十一世紀ビジョン懇の中でもあったわけでございます。それで、一時は新聞報道でもそういうようなことも報道されておりましたが、先送りになったのかどうかわかりませんが、今回はこの法案には入っておらないというような状況です。大臣はこのことに大変関心を持っていらっしゃるということを聞いておるわけでございますが、この債務調整についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

菅国務大臣 私は、就任以来、債務調整の必要性というんですか、そうしたことも含めて研究を依頼しておりました。こうした時代でありますから、私は当然そうした方向に進むだろうというふうに思っています。

 そして、昨年の十二月にまとめられました新しい地方財政再生制度研究会の報告書において、地方行財政制度の抜本改革が進展した場合における地方財政の規律強化に向けた選択肢として評価をできるものの、債権者が債務調整に応じる動機づけとなる仕組みだとか、あるいは財政力が弱い地方公共団体の資金調達のあり方などの課題がある、そういうことで、この課題について検討が必要である、こういうことにされました。そして、こうした課題等については、現在、債務調整に関する研究会において議論をいただいておるところであります。

 そして、私はこれを、今、地方分権改革推進委員会がありますので、そこへつなげていきたい、そういうふうに思っております。

谷口(隆)委員 おっしゃるように、例えば地方債のリスクは今ゼロということになっておるわけですが、債務調整というようなことが入ってまいりますとそういうわけにはまいりません。地方債の評価も変わってくるわけでございますので、いろいろな問題があるということは確かであります。ですから、今後も検討していただきたいというように思う次第であります。

 最後に、以前にも申し上げましたけれども、今回の指標を出すということで、フローの指標もストックの指標もあるわけですけれども、やはり前提は公会計が整っていなきゃだめで、それぞれの自治体がそれぞれの公会計基準をつくって、出しておる計算書類が異なるといったことでは、これは比較のしようもありませんから、今総務省の方では一刻も早くこの公会計を統一したいということでやっていただいておるようでございますが、まずは大前提、そういうことも考えていただくというように私は思っておりますが、大臣、いかがでありましょうか。

菅国務大臣 公会計の整備については、昨年の五月に新たな財務書類のモデルを示すとともに、また八月には地方行革新指針において、全地方公共団体に対して財務書類を整備する、これは要請をいたしております。

 そして、現在は、新地方公会計制度実務研究会を設置し、財務書類の作成方法だとか資産評価について、その実務的な検討というものを行わせているところであります。

 本法案というのは、四つの健全化判断比率及び資金不足比率を整備することといたしておりますけれども、特に将来負担比率については退職手当の引当金相当額を算入するなど、公会計における発生主義の要素というものを加味していますから、公会計の整備が本法案とともに地方の規律ある財政運営の実現に資する、このように考えておりますので、私としてもさらに加速して積極的な取り組みというものを要請していきたい、こう思います。

谷口(隆)委員 冒頭もお話をしましたように、この法案は地方公共団体が非常に関心を持っておる法案でございますし、比率も、十九年度の決算のときには義務づけにならないわけで、一年ちょっと準備期間みたいなものもあるわけですけれども、混乱を生じないようにぜひお願いしたい。比率も、現行の比率と大きく変わる、先ほどはそんなに変えないというようなことでありましたけれども、地方公共団体の側に立った場合に混乱が生じないように、粛々と進んでいくように、ぜひ大臣の方も取り計らいをお願い申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

佐藤委員長 次に田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。よろしくお願いします。

 大臣も長いこと教育特の方にお疲れさまでございました。文部科学大臣ほど大臣には質問がなかったかと思うんですけれども、それでも、私も委員としていろいろと思ったんですが、教育の関係で大臣があれだけいろいろな人の話を聞いたのも初めてではないかと思うんです。地方分権の話と大変いろいろな意味で重なってくる分野で、こちらの方のお仕事を全うされる意味でも大変重要な議論が多かったなと。特に教育委員会の関係がございました。

 本論に入る前にもう一度確認させていただきたいんですが、ここの場で前任の竹中大臣に私は二度質問させていただいて、教育委員会制度、今回、法律が衆議院を通ったわけでございますが、私たちの評価としては、抜本的な改革を必要としている時期であるにもかかわらず、それは行われなかったという評価をしておるわけです。この委員会では二度にわたって前大臣が必置規定の話を、大変勇気づけられる御答弁をいただいたわけでございますが、文部科学大臣の答弁は相変わらず、絶対それは認めないというような感じで、かなりギャップを感じるわけでございます。

 しかし、安倍総理の口からは、本来最重要というのは一個にしか適用されない言葉だと思うんですが、教育最重要といって、片っ方で分権もこれは最重要とおっしゃっているんですよね。そうですよね、後ろでうなずいていらっしゃいますけれども。だから、そういうことであるならば、この教育委員会の話は、今回仮に新しい法律ができて、保護者が一人入らなきゃいけないとかそういうことが実現をしたとしても、やはり今後さらに見ていかなきゃいけない。

 最後の、参考人でお見えになった穂坂さんですか、前の志木市長ですが、あの方が、もう御案内のとおり、特区申請を三度もされた。私自身は、持論としては、選択権を与えるべきだというところをずっと申し上げておったわけでございます。

 そういう意味で、改めて、もとの巣の総務委員会の方に戻ってこられて、教育と地方分権、そのはざまのところの教育委員会に関する必置規定、これでもう全部あきらめたわけではないと思うんですけれども、菅大臣としての、もう一度、今後どうしていきたいか、御答弁をいただきたいと思います。

菅国務大臣 私も、約一カ月でありましたけれども特別委員会に参加をして、実は大変勉強になりました。特に、田嶋委員も何回となくその改革方向という形で質問された。私、委員の考え方も、より以上理解をしてきたというふうに思っています。

 私ども、今回の法案改正について、地方分権を推進する立場から一番配慮したというのは、やはり自治事務で認められる関与の範囲内かどうかということ、実はそこを基本としたところであります。そして、今回のこの教育再生というのは内閣の最重要課題、そして地方分権も課題である。その両立するような形でできたのかなというふうに私どもとしては思っています。

 そして、必置規定でありますけれども、私は委員会の中でも委員に対して、検討に値する考え方であるということを答弁させていただきました。地方分権を進める中で、私はこれは全く否定をしません。これは検討するに値する。

 しかし、今回、私ども、内閣として今回の法案を出させていただいていますので、今の時点においては、今の内閣として出した法案について賛同するというのが私の立場でありますけれども、これはこれから先、否定するものでなくて、地方分権を進める中で検討に値する、このことを改めて申し上げさせていただきます。

田嶋(要)委員 お立場はよくわかります。

 例えば、この間の全国統一のテストなんかでも犬山市がそれに参加しなかったということがございますけれども、そういうように、自分たちは参加しないとかそういう判断を、そういうケースではしておるわけです。

 さらに加えて言うならば、特区制度というものが始まったことによって、一遍に全国一斉に制度を切りかえるのは大変不透明なことが多いというときに、どこかの町で実験的にやってみるということが可能になったわけですね。私は大変すぐれたやり方ではないかと思うんです。そういう余地を残して、だめなら戻すという選択肢も含めて、一番重要なのは、それぞれの地域に選んでもらう、そういう流れをつくっていくのがやはり大事なのではないかなというふうに思っておりますので、今の御答弁は今後もあきらめてはいないというふうに理解をさせていただきまして、引き続き、この教育委員会制度、今回の法律改正が実現したならば、現場、教育委員会がどのように実効上変わるのか、それをよく見きわめながらさらに検討させていただきたいというふうに私も思っております。

 それからもう一つ、教育特の方で私は思ったわけでございますが、私、totoの問題を取り上げさせていただきました。それは、文部科学省の所管の独立行政法人でございます。

 何を申し上げたいかというと、今、前の委員の方からも関連質問があったかもしれませんが、これから地方の財務状況とかに関しての法律を審議するわけですが、国の機関の周りにさまざまな団体があるのとまさにうり二つの形で、それぞれのものが地方にもある。一つ言えば、独立行政法人に対して、法体系は違っても地方独立行政法人というものがあります。そういうことで、やはりそれを一体的に見ていくことが大変重要ではないかなというふうに思っておるんですね。その具体例として、totoをやっている独法に関して取り上げさせていただきましたけれども、そういう目で地方分権を考えていかなければいけないのではないかなというふうに思っております。

 それで、本論の方に入ってまいりますが、この間、統一自治体選挙が終わりました。それで私もいろいろ演説をしたんですけれども、大変特徴的だったのは、どこへ行っても夕張の演説が入るんですよ。投票率が私の地元は上がったんです。皆さんのところはどうかよくわかりませんけれども、やはり一定程度の、夕張に住んでいない方々にとっても、自分の身近な政治や選挙に関心を持たないとちょっとまずいなという意識を植えつけたというか、そういう意味で、夕張の方は御苦労されているにもかかわらず、それ以外の地域にとっては、民主主義の基本に立ち返ったというか、副次的な効果もあったのではないかなというふうに思っておるんですね。そういう意味では、やはり改めて、あの夕張に起きたことが、大きなインパクトが日本全国にあったのではないかなというふうに私は思っておるわけでございます。

 そこで、今回こういった法律が出てきたわけですが、お伺いいたしたいのは、この夕張の問題を契機にはしていないということでございますけれども、改めまして、この法律、どういう目的でこれをつくりたいのかということを最初に確認させていただきたいと思います。

菅国務大臣 まず特区についてですけれども、私も、これはやはり積極的に進めて、試行錯誤というのはあっていいというふうに思っていますから、全面的に規制をしないで、それこそまさに特区でありますから、それは行う必要があるというふうに私自身は思っています。

 地方選挙。実は私も、夕張問題と「あるある大事典」の捏造問題、この二つだけで多くの皆さんに訴えてきたのかなというふうに思っています。それだけ夕張問題については非常に関心が高かったというふうに思います。

 そして、今回のこの法案ですけれども、これは夕張が引き金になったとかそういうことではなくて、やはり、この法律ができてからもう五十年たつわけでありますから、時代がこれだけ大きく変わりました。当時、多分、第三セクターだとか公社だとか、そういうこともほとんどなかったというふうに思っています。

 そして、ここ数年来言われてきましたことは、そうした本体以外の会計が非常に財務状況が悪くなってきている、そういうものをやはりしっかりと連結の中で取り込んでいかなければ、市民の皆さんにそうした情報、自分たちの町がどういう状況であるのか、そういうものがわからない。そういう中で、この再建策、そして、今の夕張の場合はもう既に破産、いきなりレッドカードにいくという仕組みになっていますから、そうしたことも踏まえて私どもは研究会で検討しました。

 そうしたら夕張問題がその研究の後で出てきたというのが実態でありますので、まさに地方自治体の財政というものをガラス張りにする、そして市民の皆さんに、自分たちの町の財政はどうなっているか、そういうものをぜひ常に監視してもらうというんですか、そういう方向の中で、私どもはこの必要性というものの中で提案をさせていただいているということであります。

田嶋(要)委員 私、この法案の中身は賛成できる部分とできない部分がもちろんあるわけでございますが、今大臣が御答弁されたように、時系列的に、夕張が起きたからできたわけじゃもちろんありませんで、もっと前からこちらの検討がされていた、そういう中で夕張の問題が起きたわけでございます。

 そこでお伺いします。

 では、この法律が例えば五年、十年前からあったとしたら夕張の問題というのはどうなっていたか、起きなかったのか、そこはどんな評価をされていますか。

菅国務大臣 やはり私は、途中で財政危機の状況にあるということが明らかになって、今回の法律でいえばイエローカードですよね、そういう形に当然なって、破産までは進まなかっただろう、これは確信を持っています。

田嶋(要)委員 サッカーだと最初からレッドカードであると思うんですけれどもね。この制度の場合は、イエローカードを出してからレッドカードということですので、おっしゃるとおりだと思います。そういう意味では、今回夕張で起きたような事態は、この法律整備がしっかりしていれば恐らくは起きなかった、起きにくかっただろうというふうにごらんになっているんだろうと思いますけれども、そういうことですね。

 一方、この夕張のさまざまな報告書というか資料を見ますと、至るところに、不適正な財務処理、そういう言葉があるわけでございますね。この不適正な財務処理という意味をちょっと確認させていただきたいんですが、これは、正確な言葉なんでしょうけれども、どういうことを意味しているのか。

 要するに、私、何だかよくわからないんですよ、この夕張問題が。全国の統一地方選挙で、恐らく演説で多くの人がこのことに触れました。結果だけ見れば、これは法律用語じゃないらしいですが、財政破綻をしたということですね。マスコミもそういうふうに書きます。これはどこの地域の住民にとっても大変わかりやすいケースなものですから、そうかという感じだったわけですが、しかし、では夕張というのはあれは一体何だったんだろうということになると、私も何だかよくわからないんですよ。

 そこで、資料には不適正な財務処理というふうにありますけれども、これは一体どういうことでしょうか、大臣。

菅国務大臣 地方自治法では、財務の規定について地方公共団体の財務会計の手続ルールというものを定めておって、その中で、会計年度をまたがってはいけないという会計年度独立の原則というルールを定めております。

 北海道庁の報告によれば、夕張市においては、会計年度をまたがる会計間の貸し付け、償還が行われてきたということで、会計年度独立の原則のルールに違反した財務処理が行われてきた、こういうことです。そして、こうした財務処理が行われ、実質的な赤字を見えなくしたことについて、不適正な財務処理という報告でありました。

 そして、夕張においては、違法であるのかそうでないのか、そういう考え方というのは、違法ではないけれども不適切だ、そういう感じの中で不適切ということも出てきたんじゃないかなというふうに思っております。

田嶋(要)委員 だれが有権的な解釈をするのかということだと思うんです。要するに、今おっしゃった、違法ではないけれども不適正だ、もうそれで終わりですか。きのうの御説明とちょっと違うような感じもするんですけれども、大臣。

藤井政府参考人 お答えします。

 やはり言葉遣いの問題だと思っています。要は、委員が違法という言葉をどういう意味で使われるかによるかと思うんです。

 要は、法律に違反すれば即違法だということもよく言われますが、私どもが気にしているのは、むしろ、刑事法制とか民事法制、刑事法制なんかであれば、構成要件が充当していて、それプラス社会的な制裁として罰則を科すのが適当かどうかという合理的判断をする場合に違法性という言葉は使われますし、例えば民法なんかでも、損害賠償請求で損害賠償の義務の帰属を考える場合違法な行為があったかどうかというような場合、違法という言葉が使われているんです。

 今回の夕張市の例というのは、あくまで地方自治法が定めている会計についての手続規定に対する違反でございます。形式的違反だから重大じゃないと言うつもりは全然ございませんが、単に手続的な規定に違反することが即、刑事法制とか民事法制における違法というものと同一にとらえられると、ちょっとこれは誤解を招く可能性があるということで、そこは率直に、夕張市の場合は、地方自治法の定める会計手続の規定から見て不適正だとか、あるいは違背しているとか、そういう言い方をしているということでございます。

田嶋(要)委員 いろいろ聞いてみたい気もするんですけれども、私は、最終的には住民が納得しているのかなという感じなんですね、夕張の方々が。いただいたいろいろな資料にも、私が思っていた以上にいろいろな住民の生活に直結するものが廃止をされているわけですね。先日、NHKでも一時間の番組がありましたけれども、病院なんかも廃止されて診療所に変わって、隣の病院に転院されたような方を番組にされていました。今おっしゃったのも一つの説明だとは思うんですが、住民の方がこれで納得されておるのか。

 私の問題意識は、ほとんどの負担がそこにたまたま住んでいる方にどっと行っているような感じがするんですね。例えば、先ほど損害賠償みたいな話も言われましたけれども、今回の夕張の問題というのは、一体どのぐらいの割合がだれの責任なんだということが何かよくわからない状況のまま幕引きをされようとしているのではないかなという印象を私受けるんです。だけれども、最終的には、大変苦労されているのがこの地域に住まわれている方ですね。私はそういう印象を持つんですが、大臣、どうですか、そこは。

菅国務大臣 最終的には住民の皆さんに負担がかかってきたということは、これは事実だと思います。その責任の問題ですけれども、やはりこれは、当然、そうした不適切な財政措置といいますか、ルール違反だったというふうに思いますけれども、そうしたことをやりながらさまざまな施設をつくってきた、そしてそれに対して議会がチェックをし切っていなかった、ここがやはり私は一番の問題だというふうに思っております。

 ただ、そういう中で、やはり私どもとすれば、国民の皆さんが一定水準の行政サービスを受けることのできる保障をするのが私どもの仕事でありますから、今回の夕張の措置というのは、全国で許容される範囲内のサービスが厳しくなったということだというふうに私は思っていまして、それより以下というところまではないというふうに私は考えております。

田嶋(要)委員 受忍限度内だということですね。それでも、かなり厳しいのはそのとおりだと思います。

 聞いていてもわかるようなわからないような説明なんですけれども、要は私は、国が強く言えないんだと思うんですよ、本件に関して。そういうことだから、こういうふうにしたいということだと僕は思うんですね。

 その一例をちょっと挙げますけれども、お配りした資料の二枚目をごらんいただきたいんです。もちろん御地元では当たり前のことかもしれませんが、私は最近知ったもので、御存じない方もおいでかもしれません。

 夕張の歴史の中で、美しくいわゆるいいスローガンだったと思うんですが、炭鉱から観光という、韻を踏んで、そういう中で、見るからに箱物を連発したわけでございます。NHKでも報道されておりましたから、私も初めて、え、そうなのかと思ったんですが、平成元年か平成二年のあたりに、総務大臣賞というんですか、当時の自治大臣賞というのを夕張市がもらっているわけですね。これがやはり、全責任を負うとは私は言いませんよ、言いませんけれども、かなりきいたんだと思うんですよ。

 要するに、当時の時代を考えますと、二〇〇〇年の改革の以前の話、分権をやるやるといって、今でも中途半端なんだから、当時はもっともっと、言ってみれば中央集権でお上志向が強いわけですよ。夕張の町から見たら、大臣から表彰をもらうというのはすごいことですよね。きのう、あっちこっちに出したという説明、五百ぐらい出していますからそんなことを言われましてもなんという説明を私も受けたんですけれども、これはどう思われますか。

 もうちょっと言いますけれども、次のページをごらんいただくと、石炭の歴史村なんかが評価されたというんですが、その評価されたものが今債務超過なんですね、下の表を見ると。結果論ですよ、結果論。しようがない。当時全部予言するなんて不可能だ、おっしゃるとおりですよ。それでも私は、責任の一端は感じなきゃいけないと思うんですよ。

 当時の大臣じゃないですけれども、どうですか、大臣。

菅国務大臣 実は、私も現場に行きました。人口が一万三千人の町ですね。ちょうど私が育ったところが一万ちょっとでしたから、そこの町とすぐ比較をしました。そうしたら、私が当時高校まで育ったところには、まず病院、町立病院というのはなかったんですね。立派な病院がありました。そういう施設がたしか二十九ぐらいあったんですね。たしか私の記憶では、私の育ったところというのは、町に関係する施設は一つか二つ、そんな程度だったというふうに私は思っています。

 私は現場に行って、今委員から指摘されましたけれども、この石炭博物館、ここだけはやはり町にあっていいだろうなということを私は思いました。そして、ここは何らかの形で残したいということも実は私は言わせていただきました。結果的には、民間の方が今ここを運営していただいています。

 当時のことを私も役所から話を聞きました。地域づくりに関する自治大臣表彰というのは昭和五十八年から実施をしているそうでして、当時、何で表彰したんだと言いましたら、地場産業の開発、産業興しの推進、商店街の活性化、地域イメージの向上等について顕著な功績があった地方公共団体を表彰していると。夕張市の受賞は、石炭の歴史村の建設等によるまちづくりが表彰の趣旨に合致するものとして北海道から推薦をされて、有識者で構成された地域づくり懇談会の審査、その意見を踏まえて決定をされたということであります。

 ただ、言わせていただくならば、現在まで約七百の団体の表彰を行ってきましたけれども、夕張市のような事例というのはないということであります。まさに、私は先ほど来申し上げましたけれども、不適切な財務処理だとか、あるいは私ども、起債を制限するということも、実はスキー場買収等の際は国からしていますけれども、それについても、みずからの地方自治体としての判断で夕張市がそこを買収して多大な債務を抱えたという経緯もぜひ御理解をいただきたい。

田嶋(要)委員 きのうも説明を受けたときに、このプログラムを評価してこういう賞を出したという説明だったんですね。夕張全体の財務状況とかそういうことを別に見ているわけじゃありません、それはそうだと思うんですよ。ただ、それはこっち側からの主張であって、賞をもらう側はどう感じるかですよ。大臣から賞をもらうと、自分たちの行政運営が評価されたというふうに思うじゃないですか。しかも、こういう地方都市が大臣の表彰をもらって、やっていることは炭鉱から観光へ、ああ、ではこの流れがいいんだな、やはりそれはそういう自信を得ますよ。

 ちょっと一枚前へ戻ってもらえますか。全然関係ない話ですけれども、ちょっと話が似ているなと思ったんです。大臣、こういう本を御存じないですよね、「社長失格」という古い本なんですけれども。実は総務委員会とも関係があるんですけれども、これは、通信、インターネットの先駆けの会社なんですよ。ウィンドウズ95が出たときに出てきた会社で、これは知る人ぞ知る会社なんですが、つぶれたんですね。その歴史がこの一枚目に書いてあるんですけれども、つぶれたのが九七年十二月で、その前の年に通産大臣賞をもらっているんですよ。これも、通産大臣賞のために言えば、つぶれた会社はこの会社だけです、こういう賞をもらっている中で。ですけれども、私、ちょっとやはり共通するものと共通しないものを感じるんです。

 それはベンチャーはつぶれますよ、ベンチャーは失敗も成功もある世界ですからね。通産大臣賞を出して、まさか通産大臣に褒められたからといって舞い上がって経営が失敗したわけじゃないと僕は思うんです。ですけれども、ちょっと総務大臣の立場は違うんじゃないかな。

 つぶれる可能性があるベンチャー企業、まさに、このきょうの法律もそうですね、地方自治体というのは清算する選択肢がないんですから。そういうところを相手に、いいことをやっているといって評価を大臣賞で出せば、通産大臣がベンチャーに対してこういう賞を出すのとは違う責任があると私は思うんですよ。大臣、どうですか。

菅国務大臣 この辺になってくると、田嶋委員と違ってくるのかなと実は思います。

 地方自治体、やはり表彰されたことによって励みとなって、活性化のために頑張られる。ただ、それはやはり限られたルールの中で行うべきことでありますから、その表彰と夕張問題というのは、幾ら何でも直接には結びつけることじゃないのかなというように私は思います。

田嶋(要)委員 今の表彰の話は二次的な話だと思うんですけれども、私は、もう一つ、こういうきょうのような法整備がなかったことがやはり本質的な問題だと思うんですよ。中身に全部賛成しているわけじゃないですよ。しかし、これがなかった状態の中で夕張市がああいうことになってしまったから、国として強く言えないということがあるんではないか。逆に言えば、責任の一端は国も感じなきゃいけないということですね。

 だけれども、問題は、これは夕張の市役所の方とかが言えないですよ、大臣に向かって。みんな腹が煮えくり返っているかもしれない。だけれども、こんなことは言えないですよ。だから、本当はもっと、やはり国も責任があった、よくなかったということをはっきりと認めるべきだと私は思うんですよ。余りにも、私は、夕張にたまたま住んでいる住民にだけすごく負担がかかっている印象を受けるんです。私はそういうことを申し上げたいんですよ。

 だから、これは、中身の一部は賛成ですけれども、こういうものがなかったことが、やはり強く言えない立場にあるということの裏返しではないかなと思うんです。

 そこでお伺いしますけれども、これができた暁に、これまでに比べて国の地方自治体への関与は強まっているということでいいですか、強まるんですか。

菅国務大臣 まず、夕張に対しての国の責任ですけれども、これについて、私は、ないと胸を張れるものではないという表現をさせていただきました。それは、国の産炭政策だとか、今言われましたけれどもそうした観光の問題だとか、しかし、そうした政策が途中で挫折した中でも、同じような地方自治体というのは数多くあるんですね。そういうところはやはり歯を食いしばりながら頑張っているわけであります。

 それと同時に、やはり夕張というのは、私びっくりしましたのは、人口の割合において職員の数が圧倒的に多いことだったんです。これは、多分倍ぐらいおりました。あるいは、こんなことまで町で町民のためにやっていいのかなというぐらいのことをたくさんやってきたというふうに私は思っています。そうしたもののチェック体制等がなかった。

 もっと言うならば、夕張について意外だったのは、周りの市町村は、なぜ夕張だけそんなに、そういう感覚があって、私は言われたことも事実であります、夕張に対してですね。今まで夕張は自分たちでいろいろなことをやってきた、逆に、同じような状況であって、私どもの市町村はそれを我慢しながら堅実なまちづくりをやってきたと。そういう中で、ある同じような市町村から言われたことも事実でありますので、多分突出していたのではなかったのかなというふうに私は思っております。

 そして、今度のこの法案によって、関与が強まる強まらないということでなくて、住民の皆さんの監視というんですか住民自治というんですか、そういうものが、これで住民の皆さんが町の実態というものをよりよく知れる、そうした大きな契機になるだろうというふうに思います。

田嶋(要)委員 関与は強まるんですか、強まらないんですか。

菅国務大臣 強まる強まらない……。

 ただ、今回は、私ども総務大臣に対しての報告義務というものがありますので、そういう意味で、これは地方自治体の受けとめ方かなというふうに思います。

田嶋(要)委員 受けとめ方は大変重要だと思うんですけれども、私は関与が強まっていると思うんですね。だから、そこが要するに全部賛成ということではないわけなんです。

 まさに教育委員会と文部科学省の関係でも、今回その辺がいろいろ議論されました。だから、対等の関係にあって分権化の流れを進めていく中で、趣旨はよくわかりますけれども、具体的な条文を一条一条読んでいくと、そこまで必要かなというふうに思うところが多いんですね。

 今大臣おっしゃいました報告なんですが、これは二つのハードルを設けております。低いハードルの場合にも比率を報告させ、そして計画書を報告させ、変更があったら報告させ、それから毎年報告させと。さらに高いハードルでも同じ。それが、都道府県や政令市だけじゃないですよ。全部それを大臣に報告させるんです、直接間接。

 もちろん、その前段として議会への報告がありますね。私、そこまでは賛成なんですよ。そこまでは大賛成。どうして、そこからさらに総務大臣にまで全部報告させなきゃいけないのかというところに私はひっかかりを感じるんですね。これは議会不信じゃないかと。どうですか、大臣。

菅国務大臣 当然、議会には報告することになっていますし、今までもそうです。しかし、私ども、地方自治全体を所管する役所として、全体の財政状況というのはやはり掌握している必要性というのはあるのかなというふうに私は思います。

田嶋(要)委員 昨日、もうちょっと具体的に理由を説明されましたけれども、その掌握する必要性、具体的にもう少し、どういうことですか。

菅国務大臣 この健全化比率の内容を私どもが承知することによって、その概要を、全体を取りまとめて国民の皆さんに公表する、そのための前提としてこれは必要じゃないかなというふうに思いますし、こうした報告、公表することによって、広く他の団体との比較等ができるようなことの情報公開によって、財政再建に対しての徹底したより健全な取り組みができるのではないかなというふうに思います。

田嶋(要)委員 何か統計センターみたいな仕事をするような感じがしますけれども、取りまとめのためにそれぞれの市町村が全部大臣に情報を提供するというのは、私はどうなのかなと。要するに、これは、とり方によるとおっしゃいましたけれども、大臣報告、大臣報告と書いてあれば、現場から見れば、またこれは報告業務がふえたなという印象はやはりあるんじゃないかと思うんですよ。

 おっしゃるとおり、夕張の事例でも、地方議会の議員の数が十八人から九人に半減されました。それで、一体住民代表の議員は何をやっていたんだという厳しい声もあるのは事実だと思うんですよ。しかし、それに乗じてというわけじゃないですけれども、そういうケースが起こっちゃったので地方議会だけには任せておけぬからといってここまで入っていったら、ちょっと私は、本当にいいのかな、分権という観点からいいのかなと思うと同時に、そんなことまで何でやるのかなと。

 要するに、おっしゃるように、横でくし刺し的に見るといったって、それぞれの数字が、それぞれの地方公共団体がホームページにアップしたりすれば、だれだって見に行けるわけですよ。だから、全部を報告させずとも、見たい人は比較しますよ、それは。今だっていろいろな雑誌で、地方公共団体の財政力とかいって出ますね。それは、何も不都合はないと僕は思うんですね。

 であれば、これからこういうものをつくっていくときに、私は二つの点で賛成しているのは、一つは、歯どめをかけるタイミングをずっと早めたことですね。それは、私は賛成です。それからもう一つは、今までの着目している団体の幅をずっと広げて、連結で見ていく。この姿勢も私は賛成なんですが、それを議会に報告させて、自分たちの責任でやっていった方が、これからの流れの中でマッチするんじゃないかな。ここで改めてすべてを大臣報告させることが、私はこの法案の気に入らないところなんです。

 大臣、どうですか。

菅国務大臣 今でも報告は求めているわけでありますし、まして私ども、これで強制力云々じゃなくて、やはり国民の皆さんに全国の地方自治体の情報を公開して、そしてその情報を徹底するということは、極めて私は地方自治を理解してもらう中でもいいことではないかなというふうに思います。

田嶋(要)委員 そこは意見が違うかもしれませんが、私は、余り意味がないと思いますし、やらない方がいいというふうに思います。

 そうやって、私から言わせれば、国の関与は強まるわけですね。報告義務もふえる、報告の量もふえるということですね。それでお伺いしますが、では、先ほども質問が出ていました、どのぐらいのハードルにするかによってこれは変わってくる。現場の方々は、それを大変関心を持っておられるということですけれども、今の時点でイメージはあるわけですか。どのぐらいの団体が実際は低い方のハードルにひっかかる、どのぐらいの団体が高い方にひっかかる、そういう具体的なイメージはお持ちなんですか。

 これは、ハードル設定によっては相当ばらつきが出てくると思います。片や高い方のハードルは、財政再建基準ですから、再建というのは言葉の定義からして瀕死の状態にあるものというわけだから、これはかなり絞り込んでいかなきゃいけないと思うんですね。一体どのぐらいの水準設定をするかによって、シミュレーションされている、これからされるのかわかりませんが、何団体ぐらいがこの低いハードルにひっかかり、何団体ぐらいが高いハードルにひっかかるという、そういう具体的なイメージはお持ちなんですか。

菅国務大臣 まず私は、法律改正によるものでありますから、従来の考え方というものを極端に変えることを必要とするということは、やはり不安を引き起こすことになると思いますので、円滑にこの法を施行できるようにしたいというふうに思います。

 技術的な問題については、局長から答弁させます。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の、いわば財政の早期健全化のライン、あるいは財政再生のラインといったものにつきましては、先ほども大臣から答弁ございましたが、年内に政令において定めるということを予定いたしております。その際、今御審議いただいております法案の中に定めております早期健全化といったものを導入した趣旨、財政の再生といったそれぞれの趣旨に沿って検討していく必要があると思っております。

 その際、その検討の一つのたたき台といいますか、議論のベースになりますものは、現在の再建制度、これが実質的にはある意味では地方団体の規律の一つの目安になっているわけでございますので、市町村でございますと、赤字比率なら二〇、都道府県でございますと五%といったものが再建制度の場合の一つの運用としてやっております。

 また、地方債の協議制のもとで、実質公債費比率が一八で許可団体、あるいは二五、三五といったようなそれぞれのラインがございますので、こういうものを参考にしながら、またそれぞれの比率間の整合性を勘案して、また何よりも地方団体の御意見を踏まえて、円滑に制度が導入できるようなラインを設定していきたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 これから検討ということですけれども、そのラインの設定の仕方いかんによって報告をいろいろしなきゃいけない団体がふえるわけでございますから、先ほど私が申し上げた、国の関与の強弱が調整できてしまうわけですね。だから、そういうこともございますので、やはりこれは、慎重の上にも慎重に検討していただきたいと思います。

 サッカーなんかで、審判が下手だと試合がおもしろくなくなったりしますね。これは、イエローカードの出し方、レッドカードの出し方一つで全然おもしろくない試合になるわけですよ。だから、これはイエローカードをどう出すかということでしょう。要するにそういうことですね。イエローカードをどう出すかですよ。これは大変難しい問題ですよ。

 これは、審判が試合をおもしろくするかどうか決める要素が多いんですよ。私もホッケーをやっていましたけれども、そうなんですよ。だから、本当に重要なんです。この水準いかんでいかようにもできるんですよ、この法律だと。何百者が報告しなきゃいけないか、わずか数者が報告するか、全然わからない、今のこの法律では、そういうことになっている。

 それで、次にお伺いしますけれども、国の関与は強まるんですが、では、もし今後、この法律ができた後で夕張みたいなことが起きた場合に、国の責任のとり方は、国の関与が強まった分、国はもっとしっかりと責任をとる形になるんでしょうか。これは質問通告していないんですけれども、大臣。

菅国務大臣 夕張のようなものは私は出てこないというふうに思います。

田嶋(要)委員 それはそうなんですけれども、それが一番いいことなんですけれども、出る可能性もありますよね。

 もし出た場合はどうなんですか。国の責任のとり方というのは、今までこの法律がないときの国の責任のとり方と比べて変わるんですか、変わらないんですか。

菅国務大臣 やはり全国どのような財政状況の中にあっても一定水準の行政サービスをできるようなことを保障するのが私どもの役割でありますから、そういう中で、今回のこの法案が成立をさせていただいて、その基準ができた段階で、いきなりレッドカードにいく前にイエローカードというものが出せることになって、そこでさまざまな関与、監視が始まるわけでありますから、レッドカードまでいくことはない、このように考えています。

田嶋(要)委員 夕張の関係で最後にもう一点お伺いします。

 受忍限度内ではあるけれども大変厳しい状況にはある。夕張の方々の言い方だと、最も高い負担で最も低い水準のサービスということですね。それを住民の皆様は、たまたまそこに住んでいる、あるいは引っ越して一週間かもしれない、そういう方も含めて甘受していかなきゃいけないわけでございます。

 こういった状況に今ある夕張ですけれども、これから一生懸命借金を返していく中で、さらに人口流出していく可能性もあるのではないかなと思うんですね。実際、NHKの番組もそういうケースを報道されていました。これは大変残念なことですけれども、では私もみたいな流れができないとは限らない。一方で、新たな方々が、夕張に住みたい、夕張に住もう、それは何かどうしても転勤でということでなければ、夕張を選ぶということがなかなかしにくくなってきているような感じもするんですね。

 これは、さらに厳しい状況に追い込まれてしまったらどうなるわけですか、大臣。どうするんですか。

菅国務大臣 私自身、昨年の暮れに夕張市に行って、夕張市の皆さんに申し上げたのは、長い間夕張に住み続けた人がこれからも夕張で生活をすることができるように、そうしたことについて国は一定水準の行政サービスというものを保障しますから、ぜひ安心をして住んでほしい、そういうことを発信させていただきました。

 結果として従来より厳しくなった面はあろうと思いますけれども、しかし、まだまだ他の市町村と比較をしてもそんなに厳しくないということがあることも、これは事実だというふうに私は思ってもいます。

 そして、この財政再建計画でありますけれども、策定をする時点で見込まれる人口あるいは歳出歳入、こうした項目について、北海道庁がかなり精査をしたもの、そこを詰めたものを私どもが承認したということになっておりますので、策定時点で非常に厳しい予測をしておりますので、基本的には、私は再建というのはうまくいくだろうというふうに思っています。

 ただ、予測困難なことが起こった場合は、再建法上にもありますように、必要に応じて、総務大臣と協議をして計画変更ということもあり得ることになっておりますから、そこはやはり、現在の計画をまずしっかりと遂行する。その中で、私もかなり精査した数字だということを聞いておりますので、変更することはないだろうと思っています。

田嶋(要)委員 それで、この法律の私が一番気に入らないところを先ほど申し上げました、総務大臣に何でもかんでも報告させているということですね。だから大臣も、分権の責任者としておかしいと思っていただきたいなと私は思うんです。リスクはあっても、あるいは夕張でも議員の責任が問われたりしても、だからといって何か反動的にこういうふうにしちゃうんじゃなくて、やはり一番のポイントだけ押さえて、こういうところまで連結して情報を出さなきゃいけない、つくらなきゃいけないとか、もっと早いタイミングで指標を見なきゃいけないというのは、国の仕事として意義があると私は思うんですが、さらに、それを全部おれたちによこせというようなところまでするのが、ちょっと節操がない感じが私はするんです。

 一方で、ではどこまで見るかという話に関して、基本的に、私は幅を広げることは大賛成であります。それをちょっと確認させていただきたいんですが、きょう午前中、寺田委員の方からも公益法人の話が出ました。先ほど公明党の委員の方からもいろいろな団体の話がございましたけれども、これはどこまで見ていくんですかという話なんです。

 お配りした資料をちょっと見ていただきたいんですが、上から五ページ目でございます。独立行政法人、国は百一ございまして、これも少しずつ、いろいろ問題があるなということの認識が高まっているわけですが、これは地方にも地方独立行政法人というのが二十五カ所ぐらいあるわけですね。この独立行政法人の問題。

 そしてもう一つ、次のページを見ていただきたいんですが、これは宝くじの関係なんですけれども、これも私、totoをやっていて、何となく地方はどうなのかなと思って見てみたんです。totoは独立行政法人でやっているサッカーくじですけれども、いわゆる宝くじの方は、地方公共団体の協議会という形で五種類あるわけでございます。その協議会がどういうものかというと、地方自治法二百五十二条の二ということでございますが、そういうことであります。

 さらに言うと、一番後ろのページをごらんいただきたいんですが、寺田委員からも御指摘があった公益法人ですけれども、これは全部社団法人なんですね。これは私もまだこれから調査をしなきゃいけませんけれども、ゴルフ場が、公益性があるということで日本には三十一カ所社団法人で経営されていて、この社団法人が、私の知る限り、地方の教育委員会に報告しなきゃいけないということなんですね。これは文科省に聞いても、文科省の所管公益法人じゃございませんので情報を持っておりませんと。総務省に聞いても同じ答弁が返ってくる。要するに、国は今何にもわからないわけですね。国は何にもわからない。これは地方ですね。

 今回連結ということで、あるいは特別会計ということで、財務のチェックを、早いタイミングから情報を出さなきゃいけないよ、そういう基本ルールをこの法律でつくったわけですけれども、今申し上げたように、私もこれから調査していきますけれども、いろいろな団体がある。国も、特殊法人があり独法があり、財団法人、社団法人があり、いろいろありますね。これは、冒頭申し上げたとおり、国のミニチュア版がそれぞれ至るところに地方はあるわけです。

 そういったときに、財政がおかしくなっちゃいけないということであれば、分権ということをわきに置けば、本当は全部見なきゃいけないわけですよ、だれが見るかはともかく。私は、そこで国に全部報告するところが問題だと思うんですけれども。ただ、何を見るかというその対象といったときに、今私が例示として三つ挙げた、地方の独立行政法人、それから、よくわかりませんけれども宝くじの協議会なるもの、あるいは今申し上げた社団法人、そういうところまできっちりと捕捉をしていかなきゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。それはどうなっていますか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案におきまして、地方団体が将来的な実質的な負債を抱えるというようなことを把握するために、将来負担比率といった指標を設けているわけでございます。したがいまして、将来負担比率では、当該地方団体の債務のみならず、一部事務組合、今御指摘がございました地方独立行政法人、公社、第三セクター、要するに民法・商法法人等の債務のうち当該地方団体の実質的負担が見込まれるという部分については、これをとらえるということにいたしております。

 もう一方、今御指摘がございました地方自治法二百五十二条の二の協議会は、これ自体は一部事務組合のように法人格を有しておりません。したがいまして、構成団体としては基本的にはそれぞれ毎年度の事務を行うような協議会がほとんどでございますが、毎年の事務的な経費についての負担金の支出を生じているというようなものでございまして、将来負担というようなものを協議会がしょうということにはなっておりませんので、少なくとも現状でいって、将来負担としてとらえるべき債務はないというふうに考えております。

田嶋(要)委員 私の基本的な考えは、先ほどから繰り返しですが、何でもかんでも総務大臣に上げる形をとらずに、それぞれの地方の議会に、夕張みたいなことがあったにせよ、やはり大きな流れとして分権ということがあるのであれば、最終的にはあんたたちが責任とらなきゃいけないんだよということに法律の形をつくった方がいいと思うのと同時に、そういう意味では、社団法人とかそういうところまで含めて、基本的な情報公開をさせるような仕組みを国でつくってもいいのではないか。それは私は、それを全部総務大臣に上げれば分権のすごい関与になると思うんですが、仕組みとして情報をもっと出させる。

 例えば、なぜ社団法人でこんなに全国にゴルフ場があるのか、なぞですよ。わからないです。本当に公益性があるのか。そういうことを、情報が表に出るような最小限の仕組みをつくっていくのが国の役割ではないかなと。

 もう一度改めて聞きますけれども、ここまでお聞きになって、やはり、大臣にちょっと報告させ過ぎだという率直な印象を持たれたと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 ぜひ御理解をいただきたいんですけれども、今地方分権一括法というものを私は分権担当大臣として行っています。そして、三年以内にその一括法が出てきます。その中で、国、地方の役割分担を明確にして、権限、財源、税源をしっかりさせるわけでありますから、そこはきちっとした形で分権というものを推進していきたいというふうに思っています。

 そして、今の議論の中で、今回の法制について、国が報告を受けた上で強制力を発効することでなくて、全国のそうした財政指標を国が国民の皆さんに逆にオープンにするわけでありますから、そこは委員が少し考え過ぎじゃないかなというふうに私は思います。

 ゴルフ場、確かにこれはそれぞれの地方自治体で認めていることだというふうに思っていますので、それは議会の中の問題だと思いますし、ただ、私ども、こういうことがあることを、地方自治体に、公開することを私どもが言うことについては全くやぶさかでないと思います。

田嶋(要)委員 そこは見解の相違だと思います。こういうときだからこそ、夕張のようなケースが実際に起きた後だからこそ、議員の数は夕張も半分になっちゃいましたけれども、まさにもっと責任感を持って、地方が地方で自律してやれるような仕組みを新しい法律の中で考えていかないといけないと私は思います。

 それから、全部を総務大臣に集めて公表といっても、先ほど申し上げたような理由で、それは何か作業をして集計しているようなイメージで、それぞれのところがホームページをアップして、今はどこの自治体だって立派なホームページを持っているわけだし、それは私は余り説得力がないと思います。

 それで、最後に一点だけ。もう一点は、ではこういうデータを定期的にとればいいのかということですね。要するに数字情報ですよ。それを一年ごとに出させて、それで大丈夫なのか。あるいは、それ以外に国として分権の流れの中で何かできないかということで、私はちょっと一点申し上げたいんですけれども、資料としては四枚目でございます。

 今回、夕張の議員は何をやっていたという話がいっぱいあるわけでございますけれども、私は、まさに大臣と一緒にきのうまで教育特におって、ああ、なるほどと。教育委員会というのは、今も地教行法の中で、傍聴が原則なんですね、公開原則。例外的に、三分の二が合意したときだけ非公開なんですよ。ほとんど見に行かないんですけれども。都道府県は月二回、市町村は月一回程度の会議が一、二時間開かれる。

 それで、調べてみますと、市町村の教育委員会の傍聴者はほとんどゼロですよ。都道府県の場合は結構行っているんです。だけれども、原則これは公開なんですよ。

 これをどこで決めているかといったら、国の法律で決めているんですよ、地教行法という法律で。つまり、何を分権だという理由でさわらない、何は最小限といって国が決めるなんというのは、なかなか難しい判断ですね。特に、助言指導しかできない文部科学省が、法律の中で、教育に責任を持つ教育委員会の傍聴を原則公開させているわけです。

 翻って、今地方自治法の状況で見ますと、これは条例で定めるということになっています、委員会の傍聴が可能かどうか。これは、下を見ていただきますと、原則自由公開しているところがこういう状況なんですね。これはもちろん、物理的に場所が狭いなどいろいろな理由があってできない場合もあるかもしれませんが、私はたまたま教育特にも入っていて、そうかと。教育委員会でも、国が法律で決めて原則公開を規定しているんですよ。

 私は、何が正解かはわからないんですが、夕張の問題、そして、これからこういう財務数値に関して早いタイミングで連結で情報を出させる、それはいいんですけれども、もう一つ重要なのは、数字以外の部分で何か国が後押しできることがあるとしたら、やはり地方の議会の公開性、透明性、情報公開を高めていくプロセス。つまり、もしかしたら、委員会で、夕張市の問題が表面化する前にいろいろな指摘があったかもしれない。だけれども、今は傍聴する機会が与えられていないかもしれない。

 だから、私は何が申し上げたいかというと、教育委員会と比較して、地方議会の委員会制度の情報公開、いわゆる傍聴を原則可能にするということを国で決めたらどうですか。(発言する者あり)いや、しているよじゃなくて、やっていないところが多いじゃないですか。

菅国務大臣 逆に言うと、分権を進める総務省としてそこまで関与していいのかなどうかなというふうに実は私は今思ったところでありますけれども、地方議会でそこはすべてできるようになっておりますので、私はそこにゆだねたいと思います。

田嶋(要)委員 アプローチが違うと思うんですよ、その条例でというところが。これは私は、情報公開、大変重要な一番の基本のところですから、やっていないところがこれだけあるわけですね、そういう状況で財務の数字だけ吸い上げてもどうかなということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十四分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)委員 きょう、私は、前々からどうしてもお尋ねしたいことがございましたので、こういう機会をいただきましたこと、大変ありがたく思いまして、総務大臣また国土交通省にも真剣にお尋ねさせていただきます。胸をかりるつもりで質問をさせていただきますので、ぜひ丁寧にお答えいただければと思います。

 同僚議員の先生方、また政府の側の方も、皆さん携帯電話をお持ちかと思います。毎朝、私たちが家を出て職場に向かうときに、二、三歩歩くと、忘れ物はないかなと内心で確認すると思うんです。ハンカチ忘れた、財布忘れた、そういうこともあろうかと思いますけれども、まあ職場まで行けば何とかなるかなと思います。だけれども、今の時代に携帯電話を忘れたといったら、かなり家から出ていても、ちょっと遅刻するんじゃないかと思っても、家までとりに帰るんじゃないでしょうか。それぐらい、携帯電話というのは、今私たちにとって一瞬たりとも体と離したくない、離したらなかなか仕事ができない、プライベートなライフもうまくいかないというぐらい、社会と自分とを結んでいるゲートウエーみたいなものだろうと私は思っております。

 その携帯電話について、ちょっと私は、きょうお伺いしたいことがございます。

 まず、国土交通省鉄道局の方に、JR中央本線の東京と甲府の間におけるトンネル区間、ここについてきょう焦点を絞って話したいと思いますので、トンネル区間と呼んでいるところの現況についてお尋ねしたいと思います。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 JR中央本線の東京―甲府間の距離はおおよそ百三十四キロでございますが、新宿―甲府間においては「あずさ」「かいじ」など特急列車が一日に往復六十本運行されるなどしておりまして、東京都内と山梨県域を結ぶまさに沿線地域の主要幹線交通機関として大きな役割を果たしているというふうに認識しております。

 御質問のトンネルの状況でございますけれども、JR中央本線は明治時代に単線で建設されまして、その後、昭和四十五年までにあの深い渓谷の中に複線化工事が進められ、終わっております。この工事の際に、山間部では、新しいトンネルを建設した経緯などもあることから、上り線と下り線でトンネルの箇所数などに違いがございます。

 具体的にそれをもう少し掘り下げて申し上げますと、甲府から東京に向かういわゆる上り線につきましては、新笹子トンネルを初めとしまして二十九カ所のトンネルがございます。その合計は二十四キロにも及んでおります。また、東京から甲府に向かういわゆる下り線でございますけれども、笹子トンネルを含めまして三十七カ所のトンネルがございまして、長さは二十キロに及んでおります。

 以上でございます。

小野(次)委員 山はあっても山梨県という言葉がございますけれども、今国土交通省から御説明いただいたとおり、上り下りで六十を超えるトンネルがわずか百二、三十キロの区間に集中しているわけでございます。

 それでは次に、総務省の方にお尋ねします。このトンネル区間における携帯電話からのメールもしくはパソコンからメールを打つ機能が使えないと私は認識しているわけですけれども、とりあえず、携帯電話からのメールが使えない区間について、その現状についてお尋ねしたいと思います。

森政府参考人 今国土交通省からお話ございましたように、東京―甲府間で六十六の列車トンネルが存在しているわけでございますけれども、電気通信事業者、携帯電話事業者からの報告によりますと、当該区間において十一のトンネルで携帯電話が利用できないということでございます。

小野(次)委員 今お手元に、皆様もごらんになっているこの地図を見ていただきますと、後でもうちょっと詳しく触れますけれども、とりあえず、この赤いちょんちょんちょんとなっているところが携帯電話が通じない区間でございます。お役所というのは大変正直だなと思ったのは、東京のど真ん中のところにも赤いのが一つございます。これは皆さん御存じの、四ツ谷駅から信濃町の間のトンネルも通じませんということを御回答いただいているわけでございます。

 ここでもう一度国土交通省にお伺いしますけれども、中央本線の山梨、長野方面、年間で上り下り合わせてどれぐらいの乗客が利用しているのか、お尋ねしたいと思います。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 JR中央本線の東京―甲府間でございますけれども、これは具体的には、新宿―甲府間におきまして、「あずさ」「かいじ」など、先ほど申し上げましたように特急列車が運行されております。

 十八年度の輸送実績といたしましては、運行した列車本数は二万二千五百本、利用客数は八百八十万人というふうになっております。

小野(次)委員 鉄道ではありますけれども、要するに、毎年九百万近い人が通る天下の大道だということが言えるんだと思います。その天下の大道で、総務省の方がお答えいただいたように、十一カ所使えないところがある。

 十一カ所というイメージがわかないかもしれませんが、中央線に乗りますと、大体八時、九時、定時に新宿を出ますと三十三分に八王子駅を出ます。そうすると、車内放送が流れて、公衆電話が電車についていますけれども、その公衆電話も使えませんという車内放送をします。どこまで使えないかというと、塩山という駅に着くまで使えませんので御了承くださいというのを流します。上りの場合には今度は、塩山を出ると、八王子が近づくまで電車についている電話も使えませんという放送をわざわざ御丁寧に流してくれます。それがこの約四十キロ、私の感覚としては四十キロにわたる区間でございます。三十三分に八王子を出て、塩山というところに着くのが次の九時五分ぐらいですから、三十分から三十五分の間使えないということでございまして、所要が一時間二十分から三十分の特急列車のうち、実に三分の一以上の間、外と通信がとれないという状態になっているという現状がございます。

 それでは総務省の方にお伺いしますけれども、東京と山梨、松本方面をつないでいる交通機関としては、もう一つ中央高速道路があるわけですが、中央高速の同じトンネル区間において通信不感対策というのは、私は車に乗っていると通じるような、使えるような気がしますけれども、この対策は完了しているんじゃないかというふうに思うんですが、確認したいと思います。

 総務省の方でお答えいただきたいと思います。

森政府参考人 中央高速道路の高井戸インターチェンジから小淵沢インターチェンジの間におけるトンネルの数は十五ございますけれども、現在、この十五トンネルすべてにおいて携帯電話を使うことは可能でございます。

 この十五のうち七つのトンネルは何ら対策をしなくても回り込んで使えるということでございますが、八つのトンネルについて対策を実施したということでございます。

小野(次)委員 この問題をお役所の方にも、それからまた事業者の方にも問題提起しましたら、最初に返ってくる答えが、だけれども代議士、電車の中じゃ電話を使っちゃいけないんじゃないですかというふうに言う人がいるんですけれども、それを言えば、車の中で携帯を使っていたらまた切符を切られる話なのであります。

 そういう問題じゃなくて、一つは着信という問題もある、留守電という問題もある、さらにはメールという問題もあるし、また同乗者という可能性もあるわけですから、恐らく道路の方は、利便を考えて次々と整備をしていって、小淵沢までそういう障害が生じないというレベルまでのサービスに至っていると思うのであります。

 私はきょうもこのバッジをつけてきています。これは「風林火山」のバッジといいまして、ことし、大河ドラマで山梨県をやっておりますので、観光キャンペーン、これはJR東日本がつくって配っているものなんです、それを一個いただいたんですけれども、つけております。山梨にたくさんの人が来てほしいということでございます。

 バッジだけじゃないんですね。皆さんもお気づきだと思いますけれども、観光キャンペーンということで、JRはポスターもたくさんつくっています。武田信玄だとか山本勘助だとか、皆さん、地下鉄やJRの電車の中で、あるいは駅で、よくごらんになると思うんです。これは今、僕は数えたわけじゃありませんけれども、恐らく何千万、何億という広告経費をかけてやっているんだと思います。

 その交通の間の利便性は、道路と鉄道を比較しても実はこれだけの差があるということでございます。余り中日本道路の方がそういうキャンペーンをやっているのを私は見たことがないので、もしかすると、せっかくJRが広告経費をかけて山梨へ来てくれと言っても、大半の人は道路の方で行っているんじゃないかなという気が私はするぐらいでございます。

 何を言いたいかというと、やはり、利便性ということを配慮しないで、来てくださいというキャンペーンだけやっても、効果が上がるんだろうか、大変大きな疑問があるということでございます。

 では、ちょっと原点に戻りまして、総務省にまたお伺いします。ユビキタス社会という言葉を最近よく聞くように思いますが、このユビキタスという通信に関する概念で、不感地域を解消しよう、それに向けた政府の基本的な整備方針について、確認のためにお伺いしておきたいと思います。

森政府参考人 情報通信インフラの整備は、確かに、今先生御紹介いただきましたように、ユビキタス社会を構築していく上で大変重要な課題であると認識しております。

 こうした観点から、総務省はこれまでも、ブロードバンドネットワークの整備、携帯電話の利用可能地域の拡大、地域公共ネットワークの整備等の総合的な対策を講じてきております。

 このうち携帯電話の利用可能地域拡大につきましては、内閣の情報通信技術戦略本部、いわゆるIT戦略本部でございますが、ここが重点計画二〇〇六というのを十八年七月二十六日に決定しております。その中で、二〇〇八年度末までに過疎地域等の条件不利地域において新たに二十万人以上が携帯電話を利用可能な状態とするということを目標としております。

 この意味は、現状において、携帯電話の全国カバー率が九九・五%でございます。過疎地域だけを取り上げますと九五・四%。残り五十二万人の方が利用できないという計算の上で、〇八年度末までに五十二万人のうち二十万人を減らそうというのが目標になっております。

小野(次)委員 その数の計算、私のこれまでの質問をお聞きになっている人だって、どこから出てきて九九・五%なんだって思うと思うんですけれども、ちょっとそれはとりあえずおいておきまして、要するに、ユビキタス通信社会というのは、いつでもどこでもだれでも使えるようにしようというのを国家の方針として、政府の基本的な方針として努力しているということだと思うんです。

 私は、携帯電話について二つ、自分で、大変いい思い出というかおもしろい思い出がございます。

 一つは、十数年前ですけれども、私は北海道で勤務していました。国と同じように、都道府県も一月になると予算の最終的な作成の時期に差しかかりまして、土日を返上して予算担当者は作業に当たっているのです。復活協議が土日にかかるかもしれぬ、しかしスキーも行きたいということで、札幌国際というスキー場があるんですが、ゴンドラ一本で四・二キロ、ロングコースに上れるんですね。いざ板をつけて滑ろうかなと思ったら、携帯が鳴りまして、大事な施策の予算がついていません、復活協議を二時間後にやるので戻ってきてくれという電話でございました。うまい方だったらさっと滑るようにおりるんでしょうけれども、私の場合にはそううまくないので、文字どおり雪だるまのようになって四・二キロのロングコースを滑り落ちまして、それで市内に向かったわけでございます。もちろんそういうこともあろうかと思って背広は車の中に置いておきましたから、外見上はばれなかったかもしれませんが、そういう経験がございます。それは札幌国際という山の上でございました。

 それから数年たって、鹿児島へ私は勤務しました。坊津というところがございます。これは、遣唐使が中国と行き来するときに使った港であり、また鑑真和尚が本土へ上陸するときに立ち寄った港でございます。そこで、前の晩からいそ釣りをしようということで泊まっていまして、渡し船でいその一番突端に、へばりつくようなところで釣りを始めたところで携帯が鳴りました。東京の家族からで、つまらないこと、たわいないことを調べてくれというもので、今僕はそれどころじゃないんだ、この潮騒が聞こえるか、これは東シナ海の潮騒だと。渡し船が午後に来るので、それで家に帰り着いたら調べて返事をしましょうと言ったことがあるんです。

 いずれもこれは笑い話ですけれども、それぐらい、山の上であっても東シナ海に面したいその地であっても携帯が通じる。そういうことで、今私がこうやって、一応公務員の仕事をチョンボもしないで、何とかこの場で国会議員として質問できるようなことになったのも、この携帯電話のおかげかなと思っているわけでございます。

 札幌の話は十数年前、坊津の話も約十年近く前の話でございます。今でも、海で遭難する人、山で遭難する人、結構携帯電話で一一九番とか一一〇番とかかけてくるという事例が実際ございます。それは、そのためにこの施設をつけているわけじゃないでしょうけれども、しかし防災上も非常に有効だということが検証されるんだろうと思います。

 もう一度私がお伺いしたいのは、山間僻地、離島における通信遮断解消のための制度、特に公からの財政支援の仕組みについてお尋ねしたいと思います。

森政府参考人 御指摘の山間辺地、離島対策といたしまして、二つの方策を準備してございます。

 一つは、移動通信用鉄塔施設整備事業という名前でございますが、携帯電話の鉄塔施設整備費用の二分の一を国が補助するというものでございまして、これは平成三年度から実施をいたしておりまして、平成十八年度においては、十六億円の予算額によりまして四十七カ所を整備しております。

 もう一つの方式が、無線システム普及支援事業といっておりまして、電話局から鉄塔までの間の伝送路、この費用の二分の一を国が補助するというものでございまして、平成十七年度から始まっておりますが、平成十八年度におきましては、三十三億七千万円の予算額によりまして全国で九十八カ所を整備しているというところでございます。

小野(次)委員 そういう公的な支援制度があるスキームと並んで、もちろん新興住宅地とかいろいろな、人の住む、人が活動する範囲が変わる、広がるに従って、不感地域でそれぞれの通信事業者も改善の努力をしていると思うんですが、通信事業者それぞれが行っている年間の工事の、概数で結構ですので、どういうオーダーかということを知りたいので、工事の概数をお伺いしたいと思います。

森政府参考人 平成十八年度に携帯電話事業者が建設いたしました基地局の数でございますけれども、既存の三社合計で約二万七千局でございます。

 このうち、これまで携帯電話が全く聞こえない地域に新たに基地局をつくった数というのは約四千局でございます。残りの二万三千局はどういうことかといいますと、聞こえるところでも、過密に鉄塔を打つことによってより聞こえやすくするということと、それから、現在第二世代から第三世代というふうに携帯の技術の変更を行っておりますので、そのための工事をしているというのが概況の数字でございます。

小野(次)委員 そういった純民間で、公的な支援がなく、万という単位で工事をされている。また一方で、山間僻地、離島については特別な財政支援の仕組みがあるというのに対して、地下というんですか、トンネルの部分については電波遮へい対策事業というのがあるというふうに伺っていますけれども、この対策事業の対象はどういうものなのか、また年間の事業箇所数についてお伺いしたいと思います。

森政府参考人 電波遮へい対策事業は、人工的な構造物により電波が遮へいされて携帯電話が使えないという場所に対しまして、電波中継施設を設置して携帯電話を利用可能にするというための補助制度でございます。具体的には、道路トンネルとか、鉄道トンネルが対象になるわけでございます。かつては地下街でありますとか地下鉄の駅も対象としておりましたが、これについては完了をしております。

 平成十八年度におきましては、五十七の道路トンネルにおきましてこの事業を実施いたしましたが、当該補助事業の予算額は約十二億円でございます。

 平成十九年度におきましては、約二十九億円の予算によりまして補助事業を実施することにしておりまして、道路トンネル約六十カ所のほか、東北新幹線トンネル約三十カ所を予定しております。

小野(次)委員 事前に総務省と勉強させていただいている中でわかってきたことは、この遮へい対策事業というのは国と公益法人との共同でやっているということですけれども、その公益法人の名前が現在、社団法人移動通信基盤整備協会、主なメンバー、構成員は通信事業者ということでございます。実はこの名称も、私の調査で間違いなければ、平成十七年十一月十七日というからまだ二年たたないんですけれども、二年前までは道路トンネル情報通信整備協会だったんですね。

 だから、今、鉄道トンネルも含まれますと総務省はお答えになりましたけれども、もう一遍聞きますけれども、いつから鉄道のトンネルも今申し上げた公益法人と国との共同でやる遮へい対策事業の対象になったのか、あるいはなぜ十七年に道路トンネルの協会から移動通信という協会の名前に変えたのか、その辺の経緯を教えていただきたいと思います。

森政府参考人 対象に含めましたのは、平成十二年度からでございます。

小野(次)委員 今、僕が聞いたじゃないですか、どうして道路トンネルが移動通信基盤整備協会に名前を変えたのか。十二年から鉄道トンネルも対象にするようになったというんだけれども、順番からすれば、対象業務を広げた、広げたけれども名前は道路トンネルだった、それが十七年になって移動通信基盤整備協会に名称も変更した、その経緯はどういうことなんですかと聞いているんです。

森政府参考人 失礼いたしました。

 平成十七年度から、先ほども少し申しましたが、無線システムの事業についても対象に加えましたので、名称を変更したという経緯がございます。

小野(次)委員 それでは、関東圏の列車トンネルについてちょっと話を絞ってまいりますけれども、関東圏の列車トンネルについて、この解消対策、具体的にどういうふうに進捗しているのか、工事箇所を教えていただきたいと思います。

森政府参考人 過去五年間の数字で申し上げたいと思いますが、平成十四年度から十八年度まででございますけれども、関東圏における遮へい対策の実績は五十一カ所でございます。

 そのうち、補助事業によって実施いたしましたのは、東北新幹線の赤羽台トンネル一カ所でございます。

 残りの五十カ所につきましては、公益法人であります移動通信基盤整備協会が自主事業として実施をしておりまして、具体的には、東海道新幹線二十九カ所、つくばエクスプレス十一カ所、東京モノレール三カ所、成田高速鉄道七カ所のトンネルでございます。

小野(次)委員 私もその公益法人ともコンタクトをとらせていただきましたけれども、要するにプライオリティーというのがあるんだ、一に新幹線、高速道路、次いで、成田、羽田のように空港に行くための交通路ということでございまして、結果的に在来線は工事のめどがありませんというお答えなんですね。だけれども、先ほど申し上げたとおり、毎年八百八十万人使用している幹線交通路が、整備のめどはありませんという話はそれでいいのかなと。

 一つは、道路のトンネルの対策も同じですけれども、やはり防災上の見地というのは私はあると思うんです。道路のトンネルの中で、多数の車両がそこでパニックになっちゃいけないというのもあって、私は意味があることだと思っているわけで、道路の整備がいけないと言っているわけじゃないんです。

 では、JRのトンネルの方はそういう視点はないんだろうか。防災上の見地からJRのトンネルについても不感解消対策を進めるべきじゃないかという考えについて、御認識をお伺いしたいと思います。

森政府参考人 今、防災というお言葉でございましたが、災害対策というふうにちょっと広げさせていただきますと、ケースとしては、多分、列車が災害に遭った場合にその人と外の人という場合と、どこかで災害が起きた場合に列車の中からでも通信するという二つのケースがあろうかと思います。

 昨今、いろいろ地震等が起きておりまして、その場合携帯電話は非常に通信が殺到いたしますので、通常の場合は通信規制をかけますのでなかなか通話がつながらないという御指摘もいただくわけでございますが、新潟中越地震の反省といたしまして、通信規制をやるのは音声だけにとどめて、メールについては通信規制を外そうということで、今メールは自由にできるようになっておりますし、それから伝言サービス、これも補充しております。

 いずれにいたしましても、災害時に限らず、防災の観点に限らず、あるいはトンネルに限らず、通信の安定的な確保というのは非常に重要かつ必要なことではないかというふうに考えております。

小野(次)委員 鉄道事業者の方で、業務用としてケーブルをトンネル内に敷設していて、業務で連絡用に無線として使っているという話を知りました。その設備を利用して、列車内での通信、一般の公衆の方の通信に鉄道事業者が通信事業者と協力した事例というのはあるのかどうか、伺いたいと思います。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、鉄道事業者においては、列車の運行のためのいわゆる連絡用無線として、通信ケーブルを鉄路に沿いまして敷設しているわけでありますが、トンネル内にも当然ながら敷設されております。これまで、携帯電話の通信設備としてそれを通信事業者に利用させている例はないものというふうに承知しております。

 ただし、最近、平成十七年八月に開業いたしました、まさに開業したばかりのつくばエクスプレス、ここでは、鉄道運行用に敷設した光ファイバーケーブルについて、その容量に余裕があるということから通信事業者にその利用を認めまして、鉄道車両内での無線LANによるインターネット接続サービスを提供しているところでございます。

 ちなみに、JRにつきましても、鉄道運行のための通信ケーブルを敷設しておりますが、これまで事例はないものの、今後、通信事業者からその利用について相談があったりした場合には、通信ケーブルの容量等に問題がなければ利用を認め得るというふうに聞いております。

 以上でございます。

小野(次)委員 時間が押してきましたので、ちょっと質問を飛ばします。

 山が多いといえば、スイスなんかも山が多い国ですけれども、私が調べた、また総務省にもお調べいただいた範囲では、スイスでも主要な鉄道のトンネルは遮へい対策ができている。また、私の調査では、どういう内容か具体的にわかりませんが、それには鉄道事業者がかなりの協力をして、要するに電話業者任せにしていないという話も私は聞いております。

 最初にお配りした地図に戻るわけでございますけれども、これが東京から出ていく主要な五方向でございます。水戸方面、梶山政務官おられますが、常磐線、それから東北本線があります。うち三本は新幹線ですから、さっき言ったプライオリティーどおりにこれを解消している。残りの在来線二本の中で常磐線の方は、地形的に、福島に近づくまでトンネルがないんですね。茨城のかなり北の方までトンネルがないものですから、余り障害がない。だから、一見公平なルールでやっているようなんだけれども、実は結果として何が起きているかといったら、ものの三十三分、八王子に着いたそのときから、甲府、松本方面だけは通信障害が起きている。だから、これが公平な結果なのかということをお尋ねしたいと思うわけでございます。

 今まで事前に照会しても、小野代議士、別に意図的にやっているわけじゃありませんよと皆さんおっしゃるんですが、意図的にこれをやったら差別となると思うんです。意図的じゃないんだけれども、長い間格差が固定しているから社会的格差と言うんだと思うんですね。

 在来線で時間が、百二十三キロのところを八十三分かかっている。そういう、乗客としてもハンディをしょって、不便を強いられている交通機関を使っている、その線に乗っているがゆえに、今度、通信の方も設備の改善が後回しになっている。このハンディにハンディを重ねるというのが、まさに格差を容認したり固定することになるんじゃないかと思うので、そもそも、そういうことをないようにするというのがユビキタスの考え方ではないかと僕は思うので、その意味では、鉄道が在来線だから整備が後回しになるというのは、非常に不本意というか納得できないところでございます。

 そこで、最後に大臣にお伺いいたします。

 どこでも、長野の知事も山梨の知事も、工場の誘致だとか、とにかく投資の誘致をしたいわけです。だけれども、四角い土地が一個あれば誘致ができるんじゃなくて、やはりそこには、その地域が他の地域と比べてきちんとした競争力を持っていなきゃいけない。そのときに、一時間二十分の東京経済圏との行き来のときに、三十分、場合によっては三十五分通信ができませんという地域が、ほかの同じような距離のところにある地域と比べて、同じように努力したって、なかなか競争力が一緒とは言えないと思うんです。

 総務大臣は自治省的な立場もおありだと思うので、両方の面からお聞きしたいんですが、地域の力をつけるという面からも、こういった格差が生じてしまっている地域についてというか鉄道のトンネルについて、不感対策をぜひ強力に進めるべきだ。

 その中で、今お聞きになって皆さんもお感じだと思いますけれども、鉄道事業者の方は、全く自分たちの問題じゃないと思っている。八百八十万人が使っている場所でも、それは私たちの問題じゃなくて電話業者の問題だと言われる。そういうままでいいのか。私は、地方自治体あるいは鉄道事業者も、物も言うけれども一定の責任も負ってもらうようなスキームの中で、この鉄道トンネルの不感対策、不感解消をぜひ進めるべきだと思いますが、最後に大臣から御見解を承りたいと思います。よろしくお願いいたします。

菅国務大臣 私も、大臣になって、地方へよく出かけるときがあります。数年前であれば、多分地方交付税についての陳情だったと思いますけれども、今は、携帯電話だとかあるいはインターネットが通じるようにしてくれ、そうしないと企業が来ない、そういう陳情をよく受けるわけでありますけれども、まさかこんなに東京の近くで、今小野委員が言われたようなそういう長い、前後六十ですか、トンネルの中で聞こえないところがあるということは、私承知をしておりませんでした。

 私ども、携帯電話の不感地帯を解消して格差を是正することは、まさにユビキタスネット社会の実現を目指している中で、これは極めて重要な視点でありますので、補助事業を設け、民間通信事業者の取り組みを、そういう中で、私どもはユビキタスネット社会を構築するために取り組んできましたけれども、今後とも、こうした補助事業を通じて情報格差の是正に努めていきたいと思いますし、今訴えられましたことも十分視野に入れさせていただきたいと思います。

小野(次)委員 梶山政務官にはせっかくお越しいただいたのに、時間のバランスがとれなくて済みません。

 ただ、このテーマは、私はだれかから陳情を受けたから質問しているわけでもないし、ましていわんや、役所からアイデアをもらって質問したのでもなくて、自分自身が週に何回もこれで通勤しているために、どうしてもこれは解消してもらいたいというテーマでございますので、今後ともこの問題については問題提起を続けていきたいと思います。

 きょうは、こういう機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いいたします。

 きょう本会議でもお話がありました、昨日の愛知県の長久手の事件は、大変遺憾に思っております。林巡査部長の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、木本巡査部長の一日も早い回復を願うばかりであります。

 先般、私はたしか総務大臣に、こうした元暴力団系といいますかそうした方々が、今役所の中で、職員の皆さんにいろいろな意味でプレッシャーと申しますか、勇気を持って対応する方々が非常に困るような、そうした対応について、小さいことを見逃さずにぜひお願いしたいということを申し上げた次第であります。

 こうした事件が出てまいりますと、本当に勇気を持って対応されるすばらしい方々がどうも後ずさりをされるといいますか、これは、これほど大きな問題というものは身近にはそれほど、たくさんあっては困るんですが、私は、小さな出来事はかなりあると思うんです。

 ですから、そういったことにつきましてぜひ再度、くどいようでございますが、警察当局とも、小さな芽からきっちり対応していくようにぜひお願いをいたしたいと思っておりますので、通告はございませんが、何かございましたらよろしくお願いいたします。

菅国務大臣 やはり、私は、こうした凶悪事件に発展をする前、必ずさまざまな要因が実はあるというふうに思っておりますので、こうした事件については、どんな小さいものでも、悪いものは悪いという形でしっかりと対処する必要があるだろうというふうに思っております。

 ちなみに、私は、余計なことですけれども、大臣になる前は自民党の治安対策の事務局長をしておりまして、大臣になりましてから、治安の人数だけは要求どおりつけさせていただいています。

森本委員 ありがとうございます。

 私どもの三重県の方でも、警察の増員については極めて寛大に、要望におこたえいただいた。そういうようなことで、私自身も感謝いたしておりますので、どうぞ、そういったことを生かしていただいて、今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、地域医療提供体制と地方財政についてお伺いをしてまいります。

 さまざまな地域格差の問題の中で、医師や診療科の地域偏在、特に産科や小児科医師の不足の問題など、地域医療の提供体制のあり方をどうするかは、地域にとって今大きな課題になっておるわけであります。そんな中で、救命救急体制をいかに整備するかに、各公共団体が今熱心に取り組んでおられます。

 私どもの地元の三重県内でも、三次救急医療を伴う救命救急センターの設置に向けて取り組んでいるところでありますが、実は、救急医療に必要とされる機能や条件などから国立大学法人の医学部附属病院が最も適合しているために、県の保健医療計画では、同病院にセンターを設置することを計画しておるわけであります。しかしながら、地方財政再建促進特別措置法によって、地方公共団体から国立大学法人に対して寄附をしたり補助したりすることは禁止をされておるわけであります。これが民間になりますと、国二分の一、県二分の一の補助制度があるわけであります。

 地域における医療体制を整備するためには、地域の中核的病院である国立大学法人医学部附属病院と地方自治体が密接な連携を図る必要があります。地方自治体からの財政支援が必要な場合も想定されるわけであります。

 そこで、そうした場合には寄附金禁止の対象機関から国立大学法人を外すなど、地方の実情に応じて地方財政再建促進特別措置法の運用を弾力的に行うべきと考えますが、この件について御見解をお伺いいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のございましたように、地方財政再建促進特別措置法二十四条におきましては、国と地方の財政秩序を維持するという基本的な目標の中で、ともすれば、法令に基づかない地方の自発的な寄附という名目によって国から地方公共団体に負担が転嫁されているということは、これまでも幾つか事例があった、それは委員も御承知のことと思いますが、その現状を踏まえながらこの二十四条という規定が設けられているということでございます。

 しかし、基本的な国、地方間の財政秩序をきちんと維持していく中にありましても、国立大学法人が通常行うべき業務以外で、例えば地方の真の要請に基づいて産業振興等その地域に貢献するような事業については、それぞれそういうものについて議論をするということが政令等で定められております。

 一方、御指摘のように、地域医療の確保といったことは、現在のそれぞれの地域行政の非常に大きな課題でもございます。今御指摘の三重県の事案について、これまで私どもとして三重県からお話を伺ったことはございません。御質問があるということで、ちょっと問い合わせをしてみました。何か聞くところによりますと、二十二年度に救命救急センターを開設する予定で、今いろいろな議論をされておられる段階だというやに伺っております。

 いずれにしましても、そういう今の法体系が、いわば国、地方間の基本的な規律といったものを揺るがすということがあってはなりませんので、そういう中で、地域医療の必要性といったことについて、今までの例もございますから、まずは県の方で十分課題の整理をしていただいて、これを私どもよく伺って議論をしてまいりたいというふうに考えております。

森本委員 局長、ありがとうございます。

 先ほどのお話の中で、三重県なんかでも、産官学の連携というのは今非常に強めて、企業誘致、研究部門、環境部門なんかやっておるわけです。その場合は、いろいろな名目の中で、今のお話にもありましたが、研究をしていただければ研究費用として支払うことは可能。そういう面については、私は余り問題がないと思うんです。

 ただ、この二十四条、上下主従の関係から来るものではないのかなという気持ちを私は持っています。今はむしろ、共同という立場の中では、こういった問題については、今議論と言われましたですね、県側としっかり、地域がよくなる方向で前向きな議論をお願いしたい。きょうのところは要望にとどめさせていただきますので、細かく調べていただいておりますのでまだ年数があると思いますので、よろしくお願いを申し上げます。ちょっとくどいようですが、前向きに検討をいただきますようによろしくお願いを申し上げます。

 それでは、救命救急体制の整備ということで、これは今のお話とは違うわけでございますが、このことについても、私の考えを含めて大臣に少しお聞きをさせていただきます。

 救急車の搬送体制の拡充が今大きな課題でありますが、例えば救急出動件数は、平成十七年度までの十年間で約六一%増加しております。一方、救急隊の数は約九%の増加にとどまっておりますから、救急隊の現場到着までの所要時間が〇・五分遅延するというようなこと、需要と供給の間にギャップが存在をしておるのではないかということでございます。また、医療機関との連携不足から来るたらい回しの実態も大きく問題となりました。

 そうした中で、総務省としても、民間搬送事業者の紹介、頻回利用者に対する適正利用の呼びかけ、緊急度や重症度を選別するトリアージの検討などの取り組みがなされていると聞いております。

 さまざまな議論の中で、輸送に関して有料化を検討すべきだという声もあるようでございますが、私自身は、強制的な有料化については避けるべきだというふうに考えております。しかし、一方で、救急車のお世話になった方が、命を救われたということで消防署にお礼する、これも一つの方法ではないかと私は思っておるんです。

 そこで、お礼の何らかの基準があれば心ある方がかなり応援をするのではないかということ、これは二月二十八日の予算委員会の分科会で提案をさせていただきました。それに対して、きょうは来ていただいておらぬのかな、総務省の寺村局長からのお答えは案外水臭いお答えでして、結論は、個人負担を求めないという考え方は今後も貫いていくと言っておられるんです。これは、あとは余り詳しくは言いませんが、要するに、なかなか難しいということでございました。

 ただ、ふるさと納税を次にお伺いするわけでございますが、地方公共団体に対する寄附金をいかに制度化していくか、ふるさと納税もその中で今焦点になっています。救急搬送に対するお礼を制度化することも検討してはどうかと私は思っていますし、寄附金でなしに強制力のない使用料というようなこともアイデアとして持っておるわけでございます。

 その点、局長にはお聞きしたんですけれども、大臣、ちょっと気持ちをお聞かせいただけませんか。

菅国務大臣 私も水臭い答弁になるのかもしれませんけれども、市民からの寄附というのは市町村は受けていいということになっておりまして、財務会計上全く問題ないということであります。

 しかし、一方で、一般論ですけれども、地方公共団体に対しての寄附というのは、真に私人の任意によるものである場合には問題ありませんけれども、募集が行われるような場合、応募に事実上強制力が加えられ住民に負担が転嫁されるおそれがないとも言えず、そういう意味では、慎重な検討というのは必要だというふうに思います。

 私も、横浜市会議員当時、風邪なのに救急車は何だといろいろな批判もありました。いろいろな検討も、実は試行錯誤しながら、救急車の有効利用というんですか、実際、毎年搬送が多くなって職員は大変な思いをしておりますので、委員の御指摘も一つの御指摘かと思いますけれども、住民の安全、救護を図るというのは、本来、やはり市町村行政の重要な役割であるというふうに思っておりますので、基本的には、救急搬送というのは個人に負担を求めないで従来どおり行うことが正しいのかなというふうに思います。

 ただ、こんなに自家用車のように利用する人がふえてくる中で、それぞれの地方自治体でさまざまな悩みを持って方策を考えているということは事実であります。

森本委員 ありがとうございます。

 ふるさと納税の問題でも、私も今から質問させていただきますが、いろいろな角度から見ると随分あると思います。この件についてもあると思うんです、いろいろな方向から考えてみれば。お金を払うんだといったら、本当に車がわりに、例えばキロ幾らとか決めて使用料を払える人は払ってくださいというと、払えない人が強制力とかいろいろなるんですけれども、気持ちとしては、私の家族でも一回お願いをさせていただいたことがあります、しかし、そういう人たちの中では、本当に心から、少しでも取っていただけないかな、そういう気持ちも、私もあったということ。それと、ほかの皆さんも、あれはお礼をしたいよなというような方がかなりお見えになります。

 絶対それは取らないのが本来の業務なんだという方もお見えになりますが、そうした方々、心ある方々をもう少し応援していただけるような、そんな行政というのもいいんじゃないかなという私の気持ちから、この質問が二回にわたって、きょうは大臣に質問をさせていただきました。

 それでは、ふるさと納税の問題についての質問に移らせていただきます。

 ふるさと納税につきましては、報道などでは、大臣の発案であるというふうに大きく取り上げられました。しかし、前回の当委員会において、隣におっていただく逢坂議員の質問に対しては、大臣は、自民党の税制調査会でもここ数年毎年議論が続けられてきたと実は述べられました。

 これも報道なんですが、自民党の税制調査会の津島会長は、税制になじむのかどうかよほど慎重に検討しなければならない、別の形で対応できるのではないかなど、この案については慎重姿勢であるとされておるように、自民党内でもまだまだコンセンサスが得られないように思うんです。この辺に、何か非常に私自身は唐突感がぬぐえないというふうに思っています。一説によれば、消費税率五%のうち一%の地方消費税を拡充することに対する財務省の反対が強いために提案しているのではないかというようなうがった見方をする方もあるわけでございます。

 先日、総務省の事務方に確認をさせていただきましたところ、ふるさと納税については、総務省としてこれまできちんと議論されてきたことはないのではないかと私は感じさせていただいています。断定はしませんが、政治家主導のアイデアであるんだろうなと。

 大臣、そこで、いろいろな問題がある中であえて今ここで提案された、そのことについてお伺いをさせていただきます。

菅国務大臣 確かに、うちの役所内では、このことについては議論をしたことはなかったと思いますし、私どもの事務方にすれば、毎年一月一日、住所地主義というんですか、そういう形で住民税を取るのがある意味では当然のことだ、そう思って日常の事務を行ってきているだろうというふうに思っています。

 ただ、先般申し上げましたけれども、私どもの党内で、こうしたふるさと納税に対しての議論が何回もあったことも事実であります。そして、昨今も、私が提唱したんだという人が、与党だけでなくて野党からも実は出てきておるような状況でありまして、これは、今の流れというものを考えたときに、ある意味ではだれもが考えられる常識的なことではないかなというふうに私自身は思っております。

 前に申し上げましたけれども、高校まで育つときには地方で、その中で、将来を担う子供たちのためと思って地方は巨額の行政コストをかけるわけです。そうして、いざ回収するようになると私のように東京に出てきてしまって、何らかの形の還元ができないのかと。実は、正直なところ、このところ多くの地方公共団体の長の皆さんから私のところに何回も陳情がありました。

 その中で、今の税制そのものが昭和二十五年にできているわけですから、そしてこれだけライフスタイルがやはり変わってきていますから、金融大臣の山本有二国務大臣は、二地域居住ですか、そうした研究会も立ち上げられています。土日は住むところが違う、違う地域に行って生活をすると。これも聞いた話ですけれども、沖縄のあるところは、もう来ないでくれと言われるぐらいそういう人たちが来て税の負担が大変だとか、そういう話もまた実は聞いております。

 やはり受益と負担ということを考えたとき、ある意味では、一生涯の中でそうしたサイクルというんですか、そういうものの中で考えても私は不思議ではないのかなというふうに思いまして、私自身あえてこのことについて、私ども、ことし暮れの税制改正の中の議論になるわけでありますけれども、そろそろ研究会を立ち上げて、しっかり納得できるような形でこのことを実現したい、こう思います。

 そのことによって、日本に対してふるさと意識というんですか、やはり、両親のいるところに何らかの形で還元をしたいとか、そういう思いというのは皆さん持っていると思うんです、そういう仕組みを何とかつくりたいなという思いであります。

森本委員 御丁寧に説明をいただきましてありがとうございました。

 大臣、私も気持ちはわかるんです。今まで一緒のことを思って私も過ごしてきましたし、総務省の皆さんで、ふるさとで受けた行政サービスの対価のいわば後払い、こういうコメントがされたかされないかわかりませんが、マスコミでも報道されている。

 先ほど大臣言われたように、福祉面では、今若者が非常に少ない中で、地方は高齢者の皆さんを支えながら助け合いでやっておる。出会いとかいろいろな問題が、できたらこの地域から少し楽なところへ引っ越したいというような、そんな思いの中で、私は気持ちとしては本当によくわかります。しかし、ライフスタイルが変わったからといって、このふるさとの納税がいいのかな、そこは少し私も疑問を持つところはあるわけであります。

 この問題は投げかけていただいた。ですから、投げかけていただいたことは、地方と都市の皆さんが一つの問題をある程度共有できたということで、私は評価をさせていただいておるんです。やはりお互いに、都市と農山村、漁村がともに生きるという原点のもとでこれから日本が発展していく、そういった理念の中では、私はそういう面で、投げかけていただいたのは非常にありがたく思っています。

 ただ、時間がそれほどたくさん残っておらないんですけれども、今から少し大臣にお伺いする中で、質疑をさせていただく前提に立って非常に多くの問題もあるなということを私も今感じさせていただいておりますので、その辺を確認させていただきたいと思っております。

 これから研究会を立ち上げられるというふうに今おっしゃいましたが、六月の骨太あるいは自民党の参議院選挙での公約にこれを盛り込む、これを目指しておられるのか、そのことについてはいかがでございますか。

菅国務大臣 私は、公約にするかどうかは党の判断だと思いますけれども、私は骨太の中にこれをぜひ入れたい、実はこう思って、タイミングを見て発言をさせていただきました。

 そして、そのことが、私どもの暮れの党の税制調査会の中でも、そうした一つの大きな方向性を見出すことができるのじゃないかなというふうに私は思っています。

森本委員 それでは、ちょっと矢継ぎ早に質問させていただきますが、この制度は、住んでいるところで行政の利益を得る人が住民税を払うという受益者負担の原則に反するという人も多いわけであります。石原東京都知事などは、東京に対する収奪、税の体系としてはナンセンスとまで言い切っておられますが、この受益者負担の原則に反するのではないかといったような主張に対しては、どのようにお考えですか。

菅国務大臣 私は、これにはいろいろな意見があると思います。ただ、私は、一生涯全体を考えたときに、例えば十八までは行政コストをかけてはぐくんでいただくわけでありますから、将来そこで自分が納税をできるようになったときに、そうしたところに税を還元するということは、理論的にも全くおかしくないことだと私は考えております。

 ですから、さまざまの研究者の方、学者の人とか、あるいは私と同じような意見の方、あるいは反対の方とか、いろいろな人を入れて、問題点を整理するための研究会を来月の早い時期に立ち上げたいということでありまして、今の一月一日という住所地の考え方であれば確かに知事の言われるとおりかもしれないけれども、生涯の受益と負担を考えたときには、私は必ずしもそれは否定するものじゃないというふうに思いますし、これだけ、この税制をつくったときは昭和二十五年ですから、当時は隔週二日でも週休二日制でも何でもなかったわけですから、私は、それを金科玉条のごとく、これが正しいんだということは、やはり見直しをしてもおかしくないだろうというふうに思っております。

森本委員 ありがとうございます。

 私の秘書もふるさとを持っておるようでございますが、やはり秘書は東京で納めると。(発言する者あり)今、声がかかったんですけれども、いや、むしろ東京が多うなる場合もあるでというような話を聞かせていただいて、いろいろな考え方が出てまいります。

 これはこれ以上議論はさせていただきませんが、それと、住民税の最大一割までを対象とすることを想定されているようでございますが、この一割というところの基準はどこから出られたのか、よろしくお願いします。

菅国務大臣 最大一割とかそういう表現というのは、私はしたことがありません。聞かれたときに、例えば一割ぐらいという話はしましたけれども、こういうことも含めて研究会の中の結論にしたいというふうに私は思っております。幾らかということを決めつけるのではなくて、そうしたことも含めて研究会の中で検討していただきたいというふうに思っています。

森本委員 それと、大臣、私は決めつけるわけではありませんが、例えば一割としますと一兆二千億を、あくまでも住民による選択制ということで、果たしてどれだけの方が利用されるか。今も私の秘書の例も出させていただきましたが、住民の一割とか二割とかいった程度、あるいはもっと少ないかもしれないと私は思っておるわけでありますが、総務省として、もしこの制度ができた場合、そのうちどれだけのお金が動くと見込んでおられるのか、ちょっと難しいかもわかりませんが、そのあたりの考え方はございますか。

菅国務大臣 金額については、実は私、どのぐらいということは予測をしていません。ただ、そのとき聞かれたときに、例えば一割ですと、今森本委員が言われましたように一兆二千億円ぐらいですか、そういうことになりますよね。だけれども、それは人それぞれ、出入りというのもいろいろあるでしょうから、そういうことについては全く検討しておりませんので、これもやはり研究会の中で検討対象になっていくだろうと思います。

森本委員 それでは、次の質問、ふるさとの定義についても非常に難しいのかなと思いますので、恐らく同じような回答になろうかと思いますので、それは一つ飛ばさせていただいて、地方交付税額の算定との関係についてお聞かせください。

 これも逢坂議員が指摘をされて、明快な答弁がなかったというふうに思います。ふるさと納税を受けた地域において、その納税額を基準財政収入額に加えるのはどうか、もし加えるということであれば、ふるさとが得る収入は結局ほとんど変わらないということになりますが、ふるさと納税を地方交付税法上どのように位置づけていくのか、お願いします。

菅国務大臣 何かいろいろな意味で先回りの心配をしている質問だなというふうに実は思っております。

 私自身は、今度、研究会の検討課題として、例えば、現在は住所地のあるところで行政サービスに対応するものとして個人住民税との性格の問題であるとか、あるいは納税先の地方団体を納税義務者が自由に選択できる仕組みとして税と住民との関係だとか、あるいはふるさととすべき地方団体の考え方だとか、ふるさと納税の割合だとか、手続だとか事務だとか、森本議員が今心配しているようなところ全部をこれから研究会の対象としても、私はこの税というのは考える価値というのは十分にあるだろうということで、この研究会をつくらせていただいたことであります。

森本委員 ありがとうございます。

 それでは、もうあとのはちょっと飛ばします。いろいろなことを検討していただくということで、私の方は理解させていただきます。

 もう一つ、ちょっとこれは違った方向なんですけれども、中川幹事長が言っていただいております、住民税間の移転ではなくて、個人や企業が地方に一定額を寄附した場合にその全額を所得税や法人税など国税から税額控除する制度導入も主張されておるわけです。

 この場合でも、国税が減ることによって地方交付税が減るなどの問題はありますが、大臣、この国税からの税額控除という考え方についてはどのように御所見を持っていられますか。

菅国務大臣 私は一つの考え方だというふうに思いますし、当然、私ども自民党の暮れの税制調査会の中で、そうしたことも含めて検討するだろうというふうに思っております。

森本委員 時間がせってきましたけれども、最後に一つ、これは急いで言いますので、聞かせてください。

 先般、杉並区へお邪魔をさせていただいた際に、もう前の段階を抜きますから御理解ください、住民税の前年度課税方式をとっておられますが、これは現年課税方式にするということについては検討いただけませんか。よろしくお願いします。

河野(栄)政府参考人 住民税の課税方式の問題でございます。

 個人住民税を含めまして、一般的に所得課税につきましては、所得の発生時点と税の負担時点が近い方がいい、こういう御指摘があるところでございます。現在、個人住民税につきましては前年所得課税の方式をとっておるわけでございますけれども、これを現年課税の仕組みに移行するとなりますと、いろいろな検討課題がたくさんございます。

 例えば、給与支払い者。現在は確定した税額で徴収していただいておるわけでありますけれども、これを新たに年末調整をしていただくといった手間暇がかかるようになってまいるわけでございますし、それから納税者の方々も、事業所得者等の方でありますと、所得税とは別に確定申告もしていただく必要が出てくる。こういったもろもろの課題があるわけでございます。

 この問題につきましては、過去、政府の税制調査会等でも御議論いただいておりまして、最近の論点整理の中でも、近年のIT化の進展でありますとか雇用形態の多様化など社会経済情勢の変化を踏まえて、納税者などの事務負担に留意しながら現年課税の可能性についても検討すべきである、こういう御指摘もいただいております。

 総務省におきましても、実務家等を集めまして、いろいろな問題の把握、整理等は行ってまいっておりまして、今後とも引き続き検討はしてまいりたいと思っております。

森本委員 私は、これは現年度で課税する方が未納も少なくなると思うんですよ。収入がなくなったときにかなり取られますと……。

 そうしたことによる未納というのは、データ的にはとっておられますか。

河野(栄)政府参考人 個人住民税の滞納の要因はさまざまな要因が考えられるわけでございますし、そしていろいろな要因が複合して滞納が起こるということでございますので、事由別に滞納額を特定するということは大変困難でございまして、そういう意味で、前年所得課税制度を原因とする滞納額ということは把握しておらないところでございます。

森本委員 時間が参ったようですからこれで終わりますが、私の考えとしては、やはり未納は少なくなると思うんです。これまでの時代でしたら、きっちり退職をされ退職金をいただいてという、社会システムがそうだったんですけれども、かなり厳しい環境の中で退職せざるを得ない方が、これは時代が変わってきましたからあります。ですから、そういう方は大変なんですよ、住民税が後からたくさんかかってくるということは。逆の立場もありますけれども、そういった意味で、時代背景を考えて、ぜひこれも前向きに御検討いただきますことをお願い申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。きょうもよろしくお願いいたします。

 まず、本題に入る前に、先ほど一時過ぎに私のところへあるニュースが入ってまいりました。愛媛県のある町で、住民基本台帳に記載された個人情報が五万五千人分とかという、これは新聞報道、ネット報道なんですけれども、情報が流出したというニュースが出ているんですが、大臣、こういうニュースというのは大臣のところは即座に入るものなんですか。

菅国務大臣 こうしたことがあったということは承知をしております。

逢坂委員 いや、私もネット上のニュースで見ただけなので。ただ、今までの個人情報の流出としては非常に数が多いのかなというふうに思いますので、ぜひしっかりとした原因究明そして対策というものをとっていただければなというふうに思っております。このテーマはこれだけでやめたいと思います。

 きょうの本題でございますけれども、きょうは、去る五月十五日にNTTの情報通信回線が長時間にわたって不通になった、そのことについてお伺いをしたいと思っております。

 御承知のとおり、情報通信回線は、私たちの生活において極めて大事なインフラになっているというふうに思われます。この回線がとまることによって、国民生活の、あるいはさまざまな経済活動の多くの面に障害が出てくるということであります。例えば、二十年前にパソコン通信が三日とまってもさほどの影響はなかった。二十年前であればですね。ところが、やはり今はもうそういう時代ではないということだというふうに思うわけです。

 きょうは政府参考人にも来ていただいておりますけれども、この事故の概要を教えていただきたいということと、今回の事故は電気通信事業法第二十八条に規定する重大な事故に該当するのかどうか、事実関係だけをまず教えていただければと思います。

森政府参考人 NTT東日本のフレッツサービス、ひかり電話サービスというのがございますが、これが五月十五日火曜日の十八時四十四分から翌十六日水曜日一時三十五分にかけて利用できなくなる障害が発生いたしまして、東日本エリアの約二百三十九万人のユーザーに影響を及ぼしたということでございます。

 原因といたしましては、ネットワークを構成しているルーターと呼ばれる伝送装置がございますが、それが一台故障いたしましたので、装置の交換を行った。その交換を行ったという情報をネットワークのすべてのほかのルーターに伝えるということをやったわけでございますが、その際に、各ルーターが経路情報のソフトの書きかえを自動的に行い始めたわけですけれども、それが実はソフトの処理能力を超える状態になってしまったために自動停止をして、サービスができなくなったということでございます。このため、NTT東日本におきましては、十五日の二十一時ごろからルーターの再起動の作業と事故原因の分析を行いまして、翌一時三十五分までにすべて復旧したというのが概要でございます。

 これは、先生御指摘のような電気通信事業法第二十八条におきますところの重大事故に該当するわけでございます。その重大事故の要件といたしましては、事故の影響を受けた利用者の数が三万人以上かつサービスの停止時間が二時間以上ということが一つの要件として定まっておりますので、これに該当したということでございます。もう一つの要件として衛星、海底ケーブルの事故の場合の基準もございますけれども、その場合ではございませんのであれですが、重大事故に該当するということでございます。

逢坂委員 引き続き政府参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の事故で影響を受けた契約者というのはどれぐらいいたのかということと、先ほどの説明で、ルーターが自動的に書きかえをするんだ、書きかえの処理能力を超えたという話でございましたけれども、その処理能力を超える理由というのは、そこまでは現段階ではわかっているんでしょうか。わかっていなければいないで構わないです。

森政府参考人 契約者の内訳でございますけれども、Bフレッツサービスが約百万人、それからフレッツADSLサービスが約百二十六万人、フレッツISDNサービスが約十三万人、それからひかり電話サービスが約五十万人ということでございます。先ほど東日本エリアと言いましたが、正確に申し上げますと、東京二十三区と神奈川、千葉、埼玉を除く東日本エリアということで、そういった契約数になっております。

 今のもう一つの御質問の、原因の詳細な点につきましては、現在鋭意究明作業を続けている最中でございますので、まだ報告がございません。

逢坂委員 今話がありましたとおり、東京二十三区と千葉、神奈川などを除く東日本ということでありますが、そのエリアの中で約二百四十万に近い契約者の方に影響が出る、やはりこれは相当重大なことなんだろうというふうに推察をいたします。

 ただ、幸いという言葉を使っていいかどうかわかりませんけれども、夕方から深夜にかけてだったということで、日中の商取引などのない時間帯だったのが、もしかすると騒ぎをある程度の中でおさめた一つの事由なのかなというふうにも思っているところです。

 いずれにいたしましても、国民生活にとって、こうした事故が起こると相当大変なことであるというふうに思いますので、ぜひしっかりとこれから原因の究明を事業者とともにしていただいて、こうしたことが起こらないようにしていただきたいということをひとつお願い申し上げたいと思います。

 そこで、まず、この事故に関して、これは重大事故でありますので、NTTから総務省への第一報はいつ、どんな手法で連絡があったのか、その後のNTTとの昨日までのやりとりの状況、時系列で、簡単で結構でございますので教えていただければと思います。

森政府参考人 NTT東日本からは、事故発生直後の五月十五日の十九時過ぎに一報がございまして、それから十六日の復旧いたします一時三十五分までの間に、おおむね一時間ごとに、原因の状況でありますとかあるいは復旧の状況につきまして電話によりまして逐次報告を受けていたところでございます。

 そして、五月十六日の水曜日の段階で、NTT東日本の方から担当の方が参られまして、障害の原因とか復旧対策のすべての経緯、それから今後行おうとしているソフトウエア更新などの対策についての説明を受けました。

 それに対しまして、総務省といたしましては、障害の原因や復旧対策の経緯を広く国民等に周知することが一つ、それから、詳細な原因の究明を徹底的に行って、再発防止策を講じて、これを報告してもらいたいということを指導してございます。

逢坂委員 ネットワークもさまざまな会社が担うようになっておりますけれども、この一、二年、二年程度で構わないかというふうに思いますけれども、その間に、今回のNTTのような事案、事故案件は大体何件ぐらいあったのか、どんな規模のものがあったのか、簡単で結構ですのでお知らせ願えますでしょうか。

森政府参考人 重大事故につきましては、平成十七年度に十社十四件、それから平成十八年度において九社十三件が総務大臣に報告されております。

 これらの事故の主な内容といたしましては、IP電話に関する事故が七件、それから携帯電話に関する事故が十三件、インターネット接続に関する事故が四件、その他三件ということになっておりまして、影響する利用者の数につきましては差がございますけれども、最大千九百五十万人とか最小で七万人とかがございますし、障害時間も長短さまざまでございますけれども、最大二百十八時間というような事例もございました。

逢坂委員 今回の五月十五日のは、NTTの関係、たくさんのユーザーが長い時間というふうに私は思っていたんですけれども、実はこの一、二年の間にも結構な件数の事故が起きているんだなということを今改めて理解した次第であります。

 こうした事故を生じさせないために、総務省としてはどんな対策を講じているのかということをひとつお知らせいただきたいということと、現時点で、万が一こうした事故が起きた場合には総務省としてはどのような対応をすることになっていたのか、この点についてお知らせください。

森政府参考人 まず現状でございますけれども、事故というのはあってはならない、もしあっても早急に回復すべきだというのが基本的なところでございますので、電気通信事業法におきまして、電気通信事業者に対しましてさまざまな義務づけがなされております。一つは電気通信設備を技術基準に適合するよう維持すること、それから電気通信設備を確実に管理運用するための管理規程を設けること、そしてこれを総務大臣に届け出ること、それから電気通信主任技術者を配置して事故の防止に努めること等でございます。

 こうしたことで従来から運用してまいっておりますが、これにつきまして、最近、事故が多発、あるいは事故の影響範囲が広がる、あるいは長時間化する、さまざまな現象があらわれてきておりますので、私どもとしましては、昨年十月から、情報通信審議会に、対策の見直しといいましょうか、さらなる充実を求めて現在も審議をいただいているところでございます。

 こうした事故が発生した場合、私どもがどういう対応をすることとしているかということでございます。先ほどとちょっと重複いたしますけれども、まず、障害の原因とか復旧対策の経緯を詳細に報告を受けて、今後の対策を立てて早急に実施していただく、そしてそのことを国民に周知し、徹底的な再発防止策に努める、こういうサイクルを考えているところでございます。

逢坂委員 やはり国民生活に非常に大きな影響を与えるものでありますから、サービスをうまく維持するということも大変大事でありますけれども、いざ万が一発生した場合にどうするかということも非常に大事なことかなというふうに思っております。

 今回の事故でございますけれども、私のところに寄せられました幾つかの情報によりますと、私自身も実はそうだったのですが、自分のコンピューターなり端末なりがネットワークにつながらない、あら、おかしいというときに、ユーザーは大体何を疑うかというと、まず自分の身近なところからだんだん、もしかしたら自分のコンピューターがおかしいんじゃないかとか、自分の事務所のLANがおかしいんじゃないかとか、自分の事務所のルーターがおかしいのではないかということをさまざまやりまして、どうもこれは変だぞ、どこにも原因がない、変だ、変だ、変だということをどうも多くの契約者、ユーザーは繰り返していたように私には感じられましたし、事実、そういう国民の声が十件ほど私のところに寄せられました。

 これが仮に停電であれば、電気が消えた、それは冷蔵庫の故障じゃない、電子レンジの故障じゃないということは大体わかる。そして、窓をあけて外を見たときに、街路灯がついているとか、ほかの家の電気がついているとなると、ああ、これは我が家だけのことだということもわかりますでしょうし、ほかも全部消えているのなら、ああ、この地域の停電だということがわかるわけであります。

 したがいまして、ネットワークの故障といいますか事故というのは、要するに、国民、ユーザー側から見るとなかなかわかりづらいものだというふうに思うのですが、ネットワークの故障ですよということをうまく伝えられるようにしておかなければ、国民の不利益、被害というものはどんどん拡大をしていくのではないか、あるいは要らぬ苦労をしなければならないのではないかという気がするわけです。

 これに対して、まず政府参考人の方で、今後に向かって何らかの対応というものは考えられるのかどうか、お願いいたします。

森政府参考人 具体的な方法といたしましては、現状ではホームページ等を活用して情報提供がなされてはいるわけですけれども、そのホームページというのは結局ネットですから、相手は使えないわけですから意味がないわけなんです、ほかの人はわかりますけれども。

 今後のIP化の進展等も踏まえた上でではありますが、一つは携帯電話、もう一つは一般的な放送を使う形の提供が考えられるのではないかというふうに今検討を進めつつあるところでございます。

逢坂委員 この点は私、非常に大事だと思っているんです。特に、いわゆるIP電話を救急用に使うということ、一一〇番、一一九番というようなこともありますので、その電話が不通だということがわからずに何度もかけて、おかしいということがあっては、これはまさに人命にかかわるようなこともありますので、ぜひその周知のことにつきましては、これは多分総務省だけの力ではうまくいかない部分も相当あろうかと思いますので、事業者を含め何らかの検討が必要ではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか、このあたり。

菅国務大臣 委員御指摘のこうした事故の際のユーザーへの周知徹底、私も極めて大事なことであるというふうに思っておりますので、私どもも、この徹底方針について、さらに一歩進めさせていただいて検討させていただきたいと思います。

逢坂委員 あと、今回は余り大きな声になっていないというふうには聞いておりますけれども、今回、七時間近くネットワークがとまった。ネットワークがとまることによって、例えば株取引の決済をしようとしていた方が決済できなくなる、あるいはネットオークションなどを活用して、今まさにここで落札と思っていたものができなくなるなどというようなこと。もうちょっと私たちの生活に身近なところでいきますと、私は余り行かないんですけれども、通信カラオケなんというのがあるようでございます。通信カラオケのボックスでお客様に対して選んだ曲が配信できなくなる、結局営業をとめざるを得ないというようなこと。

 そんなことが出てきて、国民に対して利益の損失というものをもたらす可能性は当然にあるわけですが、こうした場合には、国民としてはどういう対応をすればいいのかという点について、まず政府参考人の方、何かお考えはありますでしょうか。

森政府参考人 こうしたことは契約の内容にもかかわることでございますので、現在は、NTT東西の契約約款におきまして、NTT東西の責めに帰すべき理由によりサービスが全く利用できない状況またはこれと同程度の状態が二十四時間以上連続したときに限って、日割り換算した基本料金や通信料金をその損害とみなして、その額に限って利用者に賠償するということになっておりまして、それが限度ということになっておるわけでございます。それ以上の逸失利益といいましょうか機会的な利益の損失についての対応は免責されているような形になっております。NTTに故意、重過失があれば別ではございますけれども、そういう場合には個別の訴訟の問題になろうかと思いますが、現状はそういうことになっております。

 ただ、昔、世田谷洞道火災事件が起きたときなどは、五日以上通話ができない場合に限って払い戻すというような制度が、あの事故をきっかけにして二十四時間というふうに変わったような経緯もございますので、こうしたことは、IT化、ICT化といいましょうか、その進展によっていろいろ検討すべきことが今後出てくるのではないかなというふうに考えております。

逢坂委員 大臣、今お聞きになって御理解いただけたかと思いますが、二十四時間通信がとまる、そうした場合に、日割りで通信料金、いわゆる電話料金を返還するような約款になっているということで、損害をこうむった逸失利益については免責されているという話だったんですが、いかにもこれは国民にとっては随分不利益ではないかなという気がするんですね。

 かつての電話線のときで、もしもしだけの時代、話だけの時代でしたらそうでもよかったのかもしれませんが、ネットワークにさまざまなものが乗っかっている時代に果たしてこういう考え方でいいのかどうか、少し検討していく必要があるのではないかという気もするのですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 昨年もかなり多くのこうした事故が発生をしました。そして、何か、新しい技術であるから許されてもいいという、もしそうした思いがあればこれは重大な問題だというふうに私自身も思っておりますし、今の二十四時間云々という話もありました。こうしたことも含めてやはりもっと厳しく検討する必要があるというふうに私は思っています。

逢坂委員 あともう一つなんですけれども、今回のこの事故、原因を究明する、こうした事故が起こらないように事業者の皆さんにもしっかりとやってもらわなければいけないというのは当然のことだと思うのですが、どんな仕組みでもどんなシステムでもそうでありますけれども、間違いが起こる、事故が起こる、あるいは何か失敗が起こるということを前提にして危機管理対策を立てておくことが極めて大事なことだというふうに思っております。

 特に今回の事故は、お聞きしますと、やはり相当想定外のことだったというふうにも事業者の方から漏れ聞いておりますので、今後、事業者と総務省、国はどういう方向でこの危機管理対策を立てておくべきか、あるいはまた、しっかりとこれから具体的な危機管理対策を立てなければいけないのではないかというふうに私は考えておりますが、まず政府参考人の方、いかがでしょうか。

森政府参考人 御指摘のように、電気通信ネットワークの安全確保、もし通信障害が生じた場合の早期復旧というのは非常に大きな問題でございます。

 それで、先ほど私少し申し上げましたように、これの見直しを進める必要があるという意味で、昨年の十月から、情報通信審議会にさまざまな角度からの検討をお願いしておりまして、組織・体制、人材の育成確保、それから設計・設備能力、保全・運用管理能力、情報セキュリティー管理能力、環境対策等々の項目につきまして現在鋭意御審議をいただいているところでございますので、これを生かしながら、さらにその上をまた目指して頑張っていきたいと思っております。

逢坂委員 この点につきましてはこの程度で終わりにしたいと思いますけれども、今のNTTの事故に関連してもし大臣の方で何か一言ございましたら、特に危機管理対策について何かありましたらお願いします。

菅国務大臣 きょうは、ある意味では大変的確なといいますか、こうしたものに対しての警告を鳴らす意味の質問をいただいて、私はありがたかったというふうに思っております。

 私ども、この問題については、やはりさらにしっかりと体制を整えておかなきゃならないということを今審議を通じて再認識をしましたので、これについても、もう一度私の方からしっかりとこの危機管理対策についても指示をしたい、こう思います。

逢坂委員 では、よろしくお願いいたします。

 それでは、きょうの大きな柱の二つ目に入りたいと思いますが、市町村のこれからの形について多少議論したいと思います。

 まず、平成の大合併を経て、現在の人口規模別の市町村の現況でありますとか、あるいは、平成の大合併の目的の一つは市町村のいわゆる能力向上だったわけでありますけれども、平成の大合併をやった結果、市町村の能力向上というのは達成されたのかされないのか、達成されたとすれば具体的にどういうことをもってして能力向上が達成されたというふうに総務省では考えておられるのか、まずこれは政府参考人の方にお伺いをしたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 まず、全体的な、マクロ的な話でございますが、平成十一年三月には市町村数三千二百三十二あったわけでございますが、十九年四月には千八百四となっているんです。

 これに伴って、人口の階級別の変化について御説明いたしますと、五十万人以上の団体が二十一から二十七、それから十万人以上五十万人未満が百九十九から二百三十五、それから一万人以上十万人未満が千四百七十五から千四十七、それから一万人未満のところは、当然のこと、千五百三十七あったのが四百九十五と減少しているところでございます。

 また、市町村の類型別に見てみますと、現在、政令市は十七、中核市が三十五、特例市が四十四、それから一般市が六百八十六、その他の市町村が千二十二となっているんですが、今回の合併に伴って、政令指定都市についてはさいたま市以下五市が新規にできておりますし、中核市は函館市以下三市、特例市ではつくば市以下六市が増加しているということでございます。

 また、全体的には、従来の一市町村当たりの人口が三万六千人強であったのが、現状では六万六千人になっているということです。

 当然、人口規模がふえますと市町村の職員数というのもふえてくるわけでございまして、それに伴って、特に従来確保しにくかった技術系の職員とか、あるいは福祉関係、公衆衛生関係といった職員の確保が容易になったということは一様に承知しているところでございます。

 また、別途、私ども、今回の合併市町村についてフォローするという意味で、市町村の合併に関する研究会というのを平成十七年十一月に設けておりまして、約五百五十余りの合併市町村の、どういう御苦労をなされてどういうことをやっておられるのかという実情等を調査しているところでございます。

 その中の一つとして、合併の成果としてどういうものがあったのかというようなことを事例的に調査しているんですが、一つは、やはり組織体制面、例えば企画関係とか保健福祉関係、産業振興関係、教育文化関係、都市計画関係、こういった部、課、係の充実が図れたというところ、これが、それぞれ二割から五割ぐらいそうだったというような御返答をいただいております。

 また、高齢者とか少子化対策、あるいは地域雇用対策といった行政が各市町村の現場では課題になっているわけですが、そういった行政というのはなかなか手が出せなかったのが、今回、例えばいきいき長寿課というものをつくって高齢者対策ができるようになったとか、あるいは少子化対策、育児、保健、教育環境、こういった面にも要員を配置してできるようになったとか、あるいは雇用対策課というような課もつくれるようになった、そういうような御報告を受けておるところでございます。

 また、施策面でも、一つは、やはり非常に広域的な市町村になったということで、観光資源とか特産品、こういったものは、広くなった市町村の区域全体で盛り上げて事業ができるようになったというような御報告のほか、従来は小さな市町村ではできなかった無医村地区の解消とか、そういったところにも手が出せるようになったというような回答をいただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、まだ各市町村とも合併直後でございまして、いろいろ御苦労の中、いかに合併の成果を生かそうかということで御努力をしておられるという状況が私どもの把握しているところでございます。

逢坂委員 今の話を聞く限りは、まだ具体的な能力向上、例えばこういう点で能力が向上したということを客観的に言えるというような雰囲気ではなくて、アンケートなり聞き取りなりで、何ができるようになりましたかということを言っているにすぎない。住民の皆さんから見て、本当に能力が上がっているとかというレベルまではまだ評価、分析も来ていないのかなというふうには思っているところでありますが、今後、基礎自治体、市町村の能力を高めていくためにどんな手法をとるべきか。

 先ほど来、菅総務大臣の方から、合併を積極的に進めていくという話もございましたけれども、それも確かに一つの手法だというふうに、私は否定はいたしません。しかし、今、日本の自治体が、横浜市のような三百六十万を超えるようなところもあり、あるいは二百人程度の村もありというような実態、あるいは島などもあります、それから山間部などにおいては谷合いに深く入り込んだところがあって、合併をしても必ずしもいわゆる数の合理性、効果みたいなものも得られないという多様さがあるこの日本のさまざまな地域において、今後、市町村の能力を高める、合併だけで本当にそれは達成されるのかどうかですね。あるいは、合併以外の方法というものを用いなければ市町村の能力は高められないというふうに考えているのか、このあたり、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 市町村というのは、住民にとって最も身近な基礎自治体として、さまざまな住民サービスを提供するところでありますから、ある意味では、財政基盤というのは充実をしておいた方が、充実強化というのは極めて大事なことだというふうに思っています。そして、自立性の高い総合的な行政主体となる、このことを私は望んでおります。

 しかし、現実的に、市町村が広域連合を活用して事務の共同処理を行ってきた、こういうことも選択肢としては当然考えられますし、今までもそういう形でやってきたところも実はあるわけであります。そういう中で、関係団体との連絡調整に時間がかかるだとか、いろいろな議論もありました。そういうことを通じて合併をした団体も今あるわけであります。

 いずれにしろ、私どもとすれば、とにかく地方分権というものをしっかり推進していきたい。そこで、地方の自律というんですか、それぞれの自律の中で行政運営を展開するについて、やはりそれなりのしっかりとした、一定規模の自治体というのは必要じゃないかなというふうに思っておりますので、私が申し上げていますように千程度に、これは、今新しい合併新法の中で、県の協力をいただきながら進めていきたいなというふうに思っております。

 これは余談でありますけれども、私、この間海外の視察をしたときに、こういう地方自治の問題についてもイギリス、フランス、ドイツでさまざまな話をさせていただきました。実はフランスは、人口が日本のちょうど半分だと思いますけれども、三万六千のコミューンがあるというんですね。当時大統領選挙の真っ最中でありましたけれども、この合併ということを、どっちの候補者も絶対に口に出せない、出しただけで総反発を食ってしまうと。それぐらい単位が小さい中ですけれども、ただ、私が会談をした内務大臣は、そのためによって、行政の遅滞というんですか、そういうことも実はあるので、日本のことをある意味ではうらやましがってもいました。国々によってそれぞれいろいろな形態があるんだなということを学んでまいりました。

逢坂委員 菅大臣のお言葉の中から、やはりある一定程度の規模という話と、千という数字が出てまいりましたけれども、ということから推察いたしますと、やはり今後も合併というものを前提にして市町村の能力を高めていきたいという御発言だったかというふうに私にはとれるんです。

 私は、もちろん合併を否定はいたしません。合併をした方がいいところはしてもいいというふうに思っております。しかし、全国のさまざまな地域を歩いてみますと、もちろん大臣もお歩きになられていると思いますが、やはりここでどんなに合併してもうまくいかないだろうなというようなところもあるのも事実かと思っております。

 したがいまして、市町村の能力を高める方法は、地域の多様性に応じた仕組みというものも必要になってくるのではないか。そうしたときに、やはり人口規模が余り大きくないというところでは、すべての事務が担えないというところも出てくるのかもしれません。だから、それは市町村側の自主的な判断によって、あるいは近隣市町村と、あるいは都道府県との相談によって、うちの町はこれだけの事務ならできるけれどもこれはできないというような、担うべき事務に市町村ごとに差があってもよいのではないかという気が私はひとつしておりますが、大臣、この点いかがかということを最後にお伺いしたい。

 あわせて、担えない仕事が出てきた市町村、その仕事をそれではだれがやるんだというときには、近隣の市町村との協力でやる、あるいは都道府県との補完関係で行うというようなことをその地域自身が決めていけるというようなことも、地域の多様性に応じた能力の分担の仕方、高め方としては重要ではないかというふうに思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 当然私どもも、何が何でもこれを強制的に合併させよう、そういうことは全く考えておりません。地理的な条件によって最終的に合併に至ることが困難な市町村といったところ、これは当然想定されるだろうというふうに思っていますし、また第二十七次の地方制度調査会の答申の中においては、都道府県が補完する方式だとか、あるいは市町村間で連携する方式など、こういうことも課題とされておるところであります。

 いずれにしろ、地方自治体のあり方については、今度は二十九次の地制調というものを立ち上げたいということを表明しています。そこでもそうした大きな課題の一つになるだろう、こう考えております。

逢坂委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、二十九次の地制調の中で地域の実態に合った議論が展開されることを強く期待しております。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、郵政行政についてと、それから地デジ対策の続き、共聴施設をどうするかとか、そういった問題について伺いたいと思います。

 総務大臣はことし二月に年賀状遅配問題で郵政公社に報告を求めたというふうに報道がありましたが、こうした異例の報告を求めた理由は何であったのかを、まず最初に伺います。

菅国務大臣 年賀状というのは、ある意味では私は日本の文化だというふうに実は思っておりますから、国民の関心も非常に高い。そしてやはり、元旦の日に年賀状が到着することを心待ちをしている国民の皆さんも数多くいらっしゃるわけでありますし、また経営面からも、年賀状というのは極めてある意味では大きな影響を与えるものでありました。

 こうした重要な意義あるものでありましたから、この取り扱いに関しまして公社に対して多くの苦情が寄せられている、そういうことから、行政としても事実関係ということを十分掌握しておく必要があるだろうと私は思いまして、また来年に備える意味からも、今回、この報告を求めたところであります。

吉井委員 それで、三月五日付で公社の回答がありましたね。元日配達の年賀特別郵便物数は十九億九百万通で前年比九二・八%、前年に比較して一億四千八百万通減少だと。しかし、十二月二十八日までに引き受けたものと二十九日に引き受けたものの一部を元旦の配達便でほぼ配達することができたとありました。だから、十二月二十八日までに引き受けた年賀特別郵便物を元旦にお届けするという目標は、トータルとしては達成したというのがこの回答です。

 郵政公社は、二〇〇七年、ことしの年賀は基本的に問題なかったという自己評価のようですが、郵政公社の三月五日付回答及び三月十六日付回答に対する総務大臣の見解といいますか、見方はどういうものかというのを次に伺います。

菅国務大臣 日本郵政公社からの報告によれば、ことしの年賀状の配達に関しては、利用者の遅出し傾向が進む中で、一部の郵便局での労働力の不足等によって、一月一日に配達すべきものの配達ができなかった、一月二日以降の配達についてもおくれがあった、こういうことを受けております。

 また、公社として、今後、このようなおくれが生じた原因をさらに分析するとともに、今後の対応についての検討を進めて、六月を目途に対応策をとる、このように聞いております。

 総務省としては、公社によるさらなる原因分析や今後の対応の結果を待って、その内容を精査した上で、必要に応じて指導をしていきたい、こう考えております。

吉井委員 皆さんのお手元に、これは総務省の方でつくってもらってあるものですが、日本郵政公社の「年賀特別郵便の取扱いに関する状況等の報告について」、これをもとにしたものです。

 これは丸写しであるわけですが、線が引っ張ってありますので少しだけ解説をしておきますと、「引受」の方の横線というのは、要するに、上の線までに投函されたものについては一月一日配達が行われましたよ、真ん中の線は三日までに配達された分、その下が四日配達ということなんです。

 それから、例えば平成十五年度、二〇〇三年度については、単日で幾ら引き受けたかというのは、十二月二十七、二十八、二十九のところを見ますと、二億五千六百三十三万とかずっとありますが、例えば、十二月二十七と二十八、二十九の三日間だけを、二〇〇三年度、平成十五年度について見れば、この三日分だけ足せばいいわけですから、単純計算で九億二千五百三十二万通。一番右端の平成十八年度、二〇〇六年度を見ますと、同じ十二月二十七、二十八、二十九で足せば、これは七億七千四十万通。

 だから、遅出しという点では、実は平成十五年度、二〇〇三年度の方がはるかに遅出しの投函数が多かった、引受数が多かったということが、郵政公社の資料によってはっきり読み取ることができるというものであります。

 それで、この資料を見ると、二〇〇三年度、二〇〇四年の元日配達数は、この下の方の「配達」で見ればわかるように、二十三億五千五百万通なんですね。二〇〇三年度ですから、その年の年末に幾ら引き受けたかというのは、十二月二十九日までの引受数というのを見れば二十二億七千七百万通で、つまり、十二月二十九日までに引き受けた分は全部元日配達ができたということになるわけです。

 比較のために、二〇〇六年度、昨年十二月三十日までの引受数を見ると二十二億六千五百万通です。つまり、二〇〇四年の元日に配達された年賀というのは、十二月二十九日までに受け付けた分の賀状すべてが元旦に配られたという計算になります。それは、昨年の分で見れば、もし二〇〇四年元旦に配られた配達の実績や配達態勢でいっていたとすれば、実は、昨年の十二月三十日までに引き受けた分はすべて元旦に配達することができた、計算の上ではそういうふうになってくると思うんですが、政府参考人に伺っておきます。

須田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘の数字でございますが、まず一つは、十五年度、十六年度、十七年度、十八年度とございますけれども、一月七日の欄の累計の数字がございますように、年賀状全体がここのところずっと低下傾向にございます。したがいまして、そのそれぞれのところを、全体の総数としての低下傾向の中で考えていく必要があるのかなということが一つございます。

 それから、引き受けと配達の方の数字の関係でございます。

 先生の御質問の御趣旨は十分わかっているつもりでございますけれども、日別にこのような形で引き受けましたということと、元旦に配達したものというのが、必ずしも、先生の御指摘のような形で一致しているわけではございません。例えば、十二月三十日に差し出されたものでありましても、それが一つの配達局の中のあて先であれば、一日に配達することができるわけでございます。ところが、他方で、二十九日に引き受けたものでありましても、非常に遠方の、例えば九州から北海道ということになりますと、その間引き受けた局で計測しましたものでございますので、そういう意味で、その辺の対応関係をそのままの形でするということは少し難しいのではないかと考えております。

吉井委員 そんな話は百も承知の上なんですよ。距離とかいろいろな条件によって変わるのはわかった話であって、だから、私は、計算上はこうなんじゃないかということを言っているんです。

 つまり、昨年の十二月三十日までの引受数でいっても、数からすれば、実は、二〇〇四年の元旦に配達した、あのときの態勢がきちんととられておればいけている数じゃないかということを言っているんです。私も高校のときに年賀状だけアルバイトで配達をやったことがありますけれども、特別態勢をとるんですよね、正月というのは。だから、今のような話は全然、言いわけにも何もならないわけですよ。基本的には、やはり遅出しという話もさっき説明したとおり崩れてくるし。

 そこで私、大臣にここで伺っておきたいんですけれども、二〇〇三年度から二〇〇五年度までは、二十九日までに引き受けた年賀状はすべて元旦に配達されていたし、そして、若干遠いとか近いとか、仮にそういうのはあったとしても、基本的な数ではきちんといけたわけです。二〇〇六年度は二十八日までに引き受けた賀状しか元日配達できなかったということですから、これは明らかにサービス低下ということになってくるんじゃないですか。

菅国務大臣 いずれにしろ、公社からは、これまでも、二十九日までに引き受けた年賀状が元旦にすべて配達をされていた、そういうわけではないというふうに聞いています。

 年賀状を含めた郵便サービスは、国民生活に必要不可欠なものであって、安定的に供給されるというのは当然のことであるというふうに思います。

 特に、私先ほど申し上げましたけれども、年賀状というのは、通常の郵便物と違って、一定期間の中で引き受けたものを集中的に処理しなきゃならないし、また、それに対して多くの国民が期待をしているわけであります。

 いずれにしろ、そうした非常な、多くの国民の皆さんの不満があったわけで、私自身も調査をしたわけでありますので、公社においては、こうした年賀状の特性というものを十分配慮して、やはり、これまで提供してきたサービスを当然提供すべきである、私はこのように考えています。

吉井委員 この資料の二〇〇三年度と二〇〇六年度、ここで元日配達の数を比べてみたらよくわかるわけですけれども、二〇〇三年度、平成十五年度というのは二十三億五千四百六十六万通。ことしの元旦の分は十九億八百七十九万通。つまり、約二割も減っているんですよ。それは、いろいろな問題があるにしても、実際は、前は二十九日までいけておったのが二十八日しか配れないとか、態勢をとればいけているんだけれどもそれができていないということがこういったところにもはっきり出てくるわけです。

 なぜことしはできていないのか。これについては、利用者からの苦情で、大臣もよくつかんではるように、例えば、報道もされましたが、十二月十八日に出しました、遅出しじゃなしに早出ししたんですよね、ところが一月十七日になって届けられましたとか、十二月二十八日までに出したのに元日に届かなかったとか、あて先不明で戻ってきたのが正月の三が日を過ぎていたとか、元日に届いた三十九枚のうち十三枚が誤配だったとか、以前に比べてやはりサービスががたがたというか、随分低下してきているわけです。

 ですから、このサービス低下の原因の解明とこれへの対策をやはり総務大臣としてきちっとやってもらわなきゃいけないし、郵政公社の方が、いや、遅出し傾向だなんだと適当なごまかしを言っても、そんなことじゃこの解にならないんだということをきちっと指示して、解明と対策に力を入れてもらう必要があると思うんですが、これは大臣に伺っておきます。

菅国務大臣 委員御指摘のとおり、遅出し傾向があったからといって、例えば今のようないろいろなことも現実的にあったわけでありますから、そうした苦情について真摯に受けとめるべきである、こう私は思っております。

 先ほど申し上げましたけれども、そういう中で、公社からの報告、確かに年賀状に対してのおくれがあったとか、あるいは生じた原因を分析している、今後の対応について検討を進める、そういうことが私どもに来ています。六月ぐらいまでにということでありましたので、やはり、冒頭申し上げましたように、国民の文化であり、そして日本のよき歴史であり、また伝統でもあるというふうに思っておりますので、私どもも公社の検討を待って、必要であればしっかりと対策を行っていきたい、こう思います。

吉井委員 郵政民営化以降、現実に郵政公社のコスト削減施策が進む中でサービス低下が次々起こっているということは、私はこの委員会でもいろいろな角度からこれまで取り上げてきました。

 例えば、集配業務の統廃合で、これは地域住民の方のアンケートからも、サービス低下が起きているというのはこの委員会でも指摘しました。それから予算委員会では、簡易郵便局の一時閉鎖とか特定郵便局の閉鎖、それからATMの撤去とか、郵便局ネットワークは大幅にサービスが後退しているという問題を取り上げるとともに、それ自身が地域社会とか地域経済にとって大きなマイナスになったり問題になってきている、地域格差の拡大を一層もたらしているという現実も取り上げました。そして、今回の年賀状配達のおくれの問題です。

 だから、現在やられていることは、やはり郵便局の最も基本的なサービスの低下が進んでしまっているということははっきり出てきているわけでありますから、かつての小泉さんの答弁とか竹中さんの民営化問題のときの答弁に反すること、あるいは国会の附帯決議に反することが現に起こっているわけです。

 ですから、これについては、私自身は郵政民営化に問題ありという考えですが、民営化自体に問題なかったという立場の人であっても、大臣がどういう立場であっても、なぜこうしたサービス低下の事態が続くのかということを国民にきちんと報告し、そしてサービス低下を食いとめる、こういう立場で臨んでもらいたい。それは必要なことだと思うんですが、これはそういうことでいいですね。

菅国務大臣 まさに郵便事業というのは、極めて国民に密着をし、そして日々の生活にとって極めて大事なものでありますので、私どもは、附帯決議あるいは国会のさまざまな議論、そうしたものを真摯に受けとめて、やはり民営化してよかった、そう言われるものになるように、十月一日に向けて全力で今取り組んでいきたいと思います。

吉井委員 民営化の方向に向かう中でこれだけ出ていますから、民営化してよかったというのはそんなものじゃないということを申し上げます。

 午前中の質疑の中で、鈴木局長が、デジタル受信機普及目標台数一億台の達成を可能とする根拠について、地上デジタル推進全国会議の二〇〇六年度までの普及目標を普及台数が上回っている、そういう趣旨のことを挙げておられましたが、グラフを見れば、明らかに、これまでの実績をがくんと上げないことには全然達成できないというのが現実の問題です。だから、今までの到達じゃなくて、今後の普及をどうするかということが今問題になっているときです。

 それでいくと、二〇一一年に、がくんと上げる話にすると一億台に達するという話になっているんですが、この普及目標を立てた地上デジタル推進全国会議は、局長も答弁であったように、業界代表である社団法人電子情報技術産業協会が含まれているんですね、そこも入っての話なんですが、この協会が、二〇一一年までに普及台数は普及目標の一億台まで到達せず八千二百二十万台にとどまる、千四百二十八万台のテレビはデジタル放送を視聴できないまま残って廃棄物になる可能性があるということを言っているわけなんです。

 だから、この目標を一緒に立てた電子情報技術産業協会自身が、一億という目標に到達しない、そういう予測を三月に経産省の審議会に報告しているわけです。ですから、二〇一一年に一億台普及というロードマップそのものを国民に示し続けるということは、どう考えてみても欺くことになるんじゃないかと思うんですが、参考人の方に伺っておきます。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘のいわゆるJEITAの数字でございますが、この数字は、デジタル受像テレビジョンと地上デジタル対応機器とあわせて使うチューナーその他、それと千四百二十八万という白抜きになっている部分でございますが、これを、委員から配付されました資料の一番下の右側の下をごらんいただきますと、デジタルセットトップボックスCATV用、地上デジタルチューナー内蔵DVDの数字がございますが、これを合計しまして、こちらの方でも約一億台になっております。

 この中の数字の食い違いというのは、こういったチューナーやコンバーターといったものが、すべてアナログの機器につくというのか、あるいは一部デジタル用の機器につくものもあるということで、その差をどれだけ見るかということの違いでございます。そういう意味では、両方、JEITAも入ってつくりましたこの数字は整合しているわけでございます。

吉井委員 まあ、一生懸命言いわけしてみたって、グラフを見れば一目瞭然なんです。合わないんです。

 次に、世帯普及目標というのを別な角度から見ておきたいと思います。

 デジタルテレビ購入動向について、総務省の方はことし五月七日に浸透度調査の結果を発表しています。地上デジタルテレビ放送受信機を一台も保有していないと答えた人の中で、今後の購入予定を聞くと、今のテレビが故障したら購入するという人が三九・二%、当面の間購入する予定はないと回答した人が二〇・一%、それで、合わせると五九・三%、六割になると思うんですが、あなたのところの調査ではそうなっているんじゃないですか。

鈴木政府参考人 今御指摘のとおり、ことしの三月に行いました調査、五月七日に発表いたしましたが、その中では、現在地上デジタルテレビ放送受信機を一台も保有していないというふうに回答した七二%の方の中で、今後購入するかどうか、故障したら購入するという方が一番多くて、その次に、受信機が格安になったら購入するという方がいらっしゃるところでございます。今御指摘の、購入する予定がないという方も二〇%、もちろんおられます。

吉井委員 あなたの方からいただいた資料で数字を足せば六割になるということです。

 デジタルテレビを持たない二千万世帯の約六割の人が、故障するまで購入しなかったりとかした場合、二〇一一年にアナログ放送を停止すれば、一千万前後の世帯でテレビが見られなくなるという可能性が出てきます。

 それから、受信設備で、アンテナや共聴設備問題もあるわけですが、難視聴地域では二万施設、百六十四万世帯、都市部では五万施設の六百七十万世帯、集合住宅で五百万世帯というふうになっておりますが、実は今、この共聴施設をどう解決するかということは、都市部でも大きな問題になっているんですね。

 それで、十二月の総務委員会で質問しますと、これは基本的には受信者の御負担だということで、辺地共聴施設は一部補助という話はありましたが、基本的に、一千万世帯を超える共聴施設でテレビを見ている世帯について、デジタル化対策はちゃんと進むのかどうかという調査さえできていないと思うんですよ。

 つまり、単純に両方足すというわけにいきませんが、買いかえることができなくてテレビを見られない世帯が一千万世帯出てくることがあり得るということと、共聴施設の方がきちんと対応できないでいくと一千万世帯を超える人が見られないということになりますから、デジタル受信機の普及調査を毎年実施してきていますが、共聴施設でテレビを見ている世帯で一千万世帯を超えているわけですから、ちゃんと対策が進むのかどうかということについての調査とか対策というものを本腰を入れて取り組まないと、二〇一一年問題は非常に深刻な問題になってしまう。私は、このことをやはりきっちり把握しなきゃいけないと思うんです。このまま二〇一一年アナログ停波をやれば、日本にある、使えるテレビの一割以上を無理やり廃棄物にしてしまうし、テレビ視聴をできない世帯が随分たくさん出てくるという問題があります。

 ですから、この点では、やはりきちんとした調査と、それから、現時点で、それに対する対策、アナログ停波でいいのかどうかの再検討に着手するということが必要だと思うんですが、私は、最後にこの点についても大臣に伺っておきたいと思うんです。

菅国務大臣 予定どおり、二〇一一年には地上デジタル化が全地域に行き渡るように、私ども、周知はもちろんですけれども、チューナーの低廉化、先般、私、それぞれのメーカーの社長の方にこのことも依頼させていただきました。しっかりと目標に向かって着実に進めてまいりたいと思います。

吉井委員 時間が参りましたから終わりますが、まず調査、そこからきちんと始めないと大変な問題になるということだけ指摘して、終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。きょうは郵政の問題に絞って質問いたします。もう質問も最後でありますが、ひとつよろしくおつき合いのほど、お願いいたします。

 日本郵政株式会社が四月の二十七日にいわゆる実施計画を認可申請しているわけですが、まず、その内容について、ひとつ的確に示していただきたいと思います。

伊東参考人 お答えをいたします。

 実施計画につきまして、簡単に申し上げさせていただきます。

 実施計画は、日本郵政公社の業務、機能、資産、債務、職員などを民営化後の各社などに承継させるものでございます。日本郵政グループ各社がこれまでの公の機関として培ってきました安心、信頼を礎といたしまして、民間企業としての経営の自由度を発揮し、創意工夫を凝らして、お客様から支持が得られる商品、サービスを提供しながら、収益力を強化し、それぞれが自立して健全な経営を確保する観点から作成したものでございます。

 昨年の七月の三十一日に実施計画の骨格を政府に提出、公表いたしましたが、その後、実施計画の策定作業を進めてまいりまして、政府の方から四月末日までに提出するよう求められておりましたので、先生御指摘のとおり、四月二十七日に政府に認可申請をしたところでございます。

 以上でございます。

重野委員 わかりました。

 マスコミ報道によりますと、郵政公社の二〇〇七年三月期決算が出ておりますが、郵便事業の最終損益が七十億円前後の黒字、これによって二百七十九億円の赤字予想が一転する、このように報じております。これが事実であれば、単年度三百五十億円の利益を稼ぎ出したことになる。

 そこで、まずこの決算見通しについての説明をお願いいたします。

藤本参考人 お答えをいたします。

 公社の平成十八年決算につきましては、現在取りまとめ中でございます。そういう関係がございまして、現時点では詳細な御説明はできないわけでございますが、郵便事業の黒字は確保できるのではないかというふうに考えてございます。

重野委員 まだ正確にというか、最終的なものは出ていないという認識でいいんだろうと思うんですが、仮に、こういうふうな黒字が出る、利益を稼ぎ出すということになれば、それまでの言いぶりは、赤字を想定した書きぶりだったと思うんですね。そうなると、郵便事業会社の収益見通しというのが、今までの見通しと基調が変わってくるのではないか、こういうふうに思うんですが、そういう点についてはどうなんですか。

白金参考人 今回の実施計画におきます郵便事業会社の損益見通しの作成の関係でございますけれども、郵便事業会社に承継する業務、資産、負債の帰属をもとに、公社の十七年度決算、それから十八年度中間決算の状況を踏まえまして、収益につきましては最近の郵便物数の推移、費用につきましては今後の業務量の増減に対応した人件費、集配運送費の変化などを見込んで、二十年度において五百七十億円の経常利益、三百四十億円の純利益を見込んでいるところでございます。

 公社の十八年度決算の関係でございますが、今、公社から御説明があったとおり、現時点で公表されておりませんので、私どもとしては内容を承知しておりませんが、そういう意味で具体的な分析を行っておりませんが、公社が昨年十一月に公表した通期見通しにおきまして約二百八十億円の赤字を見込んでおりますが、これは民営化準備に伴う費用等の要因を挙げており、これを除けば約九十億円の黒字というふうに見込んでいたというふうに理解しております。

 今度の決算がもし黒字ということになりますと、先ほども言いましたが、公表されておりませんのでよくわかりませんが、新聞報道のように、民営化準備費用が当初の見込みを下回ったこと、あるいは、その他経費の削減効果ということが要因でありますれば、収益構造等に大きな変化がないことから、今回の損益見通しの前提には大きな影響を与えるものではないというふうに考えております。

重野委員 そこで、違った視点から質問いたします。

 実施計画の扱いと内容について聞きますが、この実施計画は民営化委員会の審議を経なければならないことになっております。現在、実施計画について民営化委員会ではどのような論議を行っているのか、それについての説明をお願いいたします。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 郵政民営化委員会におきましては、提出されました実施計画につきまして、既に日本郵政株式会社あるいは関係業界の方々からヒアリング等を実施いたしたところでございます。取りまとめるべき意見の内容につきましては、これらを踏まえまして今後調査審議が行われる、このように承知いたしているところでございます。

重野委員 ということですが、さらに聞きますけれども、民営化委員会は、この実施計画に関連して、郵便貯金銀行等における新事業分野の開発に関してどのような方針で検討しているのか、説明願いたい。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 郵便貯金銀行を含みます金融二社の新規業務につきましては、郵政民営化委員会といたしまして、十月の民営化後、両社から主務大臣に対しまして具体的な認可申請が行われた段階で意見を述べる、このようなこととなっております。

 この点に関しまして、郵政民営化委員会におきましては、金融二社あるいは関係業界の方々に予見可能性を与えることが必要という観点から、昨年の十二月二十日でございますけれども、委員会としての調査審議の考え方につきまして、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の新規業務の調査審議に関する所見、こうしたものを公表されたところでございます。

 金融二社の新規業務の実施につきましては、民営化後に申請が行われた段階で、この所見における考え方あるいはその業務の具体的な事実関係などを踏まえまして、民営化委員会において調査審議が行われ、意見が述べられるということになろうと思います。

重野委員 そこで、大臣に聞きますけれども、十月の民営化、もうこれは決まっておるわけですね、この段階で、実施計画の認可はどのような日程を目途にして進めようとしておられるか、お聞かせください。

菅国務大臣 四月の二十七日に認可申請のあった実施計画については、総務省において現在審査中であります。今後、郵政民営化委員会の意見を聴取した上で、できれば九月上旬には結論を出していきたいというふうに考えております。

重野委員 そこで、実施計画の内容について、これまでの国会審議との関係を中心に幾つか聞いておきたいと思います。

 まず、この実施計画で、引き継ぐ職員数は総計二十四万一千四百とされております。しかし、昨年の骨子の段階では、社員総数は二十五万三千二百名とされていたと記憶をいたしております。そこで、このような差はどうして生じたのか、説明願いたい。

伊東参考人 お答えをいたします。

 昨年の七月末に公表いたしました骨格の中で出しました社員総数は、公社の方でつくられておりますアクションプランの中に計画要員という数字が載ってございます。私どもがその時点で把握しておりましたこの十月に想定しております計画人員というものは、二十五万二千人でございました。したがいまして、これを前提に各社の必要な人員、人数を想定いたしまして、今先生から御指摘ございましたように、二十五万三千二百人という常勤職員の数を掲げたわけでございます。

 このたび政府に認可申請いたしました実施計画の承継職員数、これはあくまでも常勤の職員数ですが、二十四万一千四百名というのは、現在公社で実際に働いている職員の数でございます。もともと、この計画人員と実際に働いている職員の数は、おおよそ三千人、年によって違いますけれども三千人前後、場合によっては四千人を超えるときもございましたけれども、そのぐらいの乖離がございます。もちろん、これは非常勤等でその足らない分を補って業務運行を行っているわけでございますが、そういった事情が一つと、これも先生もう御案内のとおりでございますが、十八年度の退職者数がそれまでの年に比べまして、およそ八千人ぐらいだと思いますが、そのぐらい多うございました。

 これらを足し合わせますと、先ほど先生御指摘いただきました数字、差を見ますと一万一千八百人ぐらいになるわけですけれども、そういった数字の差が出ているわけでございます。

 もちろん、これで業務が回るのかということの御指摘がまた次にあるかと思いますが、現在もそうでございますけれども、非常勤などを活用いたしまして、業務を回す上の必要な労働力というものは公社の方でも確保しておりますし、この十月一日以降もそういう形で確保できるものと考えておるところでございます。

重野委員 日本郵政株式会社を初めとしまして、四事業会社すべてが、今指摘をしました引き継ぐ職員以外に、今説明にもありました再任用職員を引き継ぐというふうにしています。郵便事業会社においては、郵政短時間職員を引き継ぐ、このようにしています。

 そこで確認いたしますけれども、国会審議において、当時の竹中大臣は次のように答えています。公社解散の際に公社の職員である非常勤職員については承継計画に従い承継会社のいずれかの職員となる、このように答えておりますが、まず一点、これを確認いたします。

 そして、もう一点。そうであれば、当時非常勤職員は九万一千名とされていたと記憶いたしますが、この実施計画では何人になるのか。また、同じく再任用職員、トータルすると、日本郵政株式会社全体の職員は民営化時点で一体何人になるのか。その点について明らかにしてください。

菅国務大臣 非常勤職員を含む公社職員の承継については、郵政民営化法百六十七条において、公社の解散の際、現に公社の職員である者は承継計画の定めるところに従い承継会社のいずれかの職員になる、こうされております。

 このため、平成十七年七月二十二日の参議院の郵政民営化に関する特別委員会における郵政民営化関連法案の審議の際に、竹中郵政民営化担当大臣、当時でありますけれども、公社解散の際に公社の非常勤職員である者は承継計画に従って承継会社のいずれかの職員になる旨の答弁がされた、このように私も承知をいたしております。

伊東参考人 お答えをいたします。

 今大臣から答弁がございましたように、法律に基づいて承継職員の対象は決まっておるわけでございますが、非常勤職員の中にも二種類ございまして、郵政短時間職員という二年の雇用期間の職員がおります。それから、先ほど先生からも御指摘がございました再任用職員。これらにつきましては、九月三十日現在で公社に所属して十月一日を迎えることになりますので、先ほど申し上げました二十四万一千人の常勤職員と合わせまして、私どもが政府に提出いたしました実施計画の承継職員としてその数が計上されております。

 両方足し合わせますと、再任用職員がおよそ一千九百人、それから非常勤職員の中で二年間の雇用期間のある、これは郵便事業で使われているわけですが、郵政短時間職員というのが七千三百人ございます。したがいまして、常勤職員と足し合わせますと約二十五万六百人ぐらいになりますが、この職員が承継実施計画の中に記載されているわけでございます。

 それ以外にも非常勤はたくさんいるわけですが、この方たちは予定雇用期間が九月末で切れます。したがいまして、十月一日をもって新たに採用する形で私どもはこの非常勤職員を民営化以降の仕事の中で使うことになるということで、承継職員の中には入れてございません。

 したがいまして、先生の御指摘で、承継職員は何人かと言われれば、二十五万六百人ぐらいになりますし、十月一日で新しい会社は、それぞれ足し合わせましてどのぐらいの職員を使うのかということで申し上げれば、今、八時間換算、一般の常勤の職員に換算いたしまして、十八年四月一日現在で非常勤職員は十三万二千四百人おります。十八年四月一日現在で、まだ十九年四月一日現在の数字がございません。恐らくこれよりはふえていると思いますが、およそ十三万数千人の非常勤職員を私どもはこの十月一日に、当然のことながら業務がそのまま引き継がれるわけですから、新たに採用することになるということを想定しておりますので、これらを足し合わせますと、およそ社員数は何人かということの御質問でございますけれども、三十八万三千人ぐらいだというふうに予測をしているところでございます。

重野委員 各計画のどれほどの利益が想定されるという部分について、その計画の中にこれら職員の数はどのように算入されているんですか。今言った二十五万六百人という数字もあるし、三十八万三千人という数字も出ましたが、想定される、利益がこれだけ上がりますという計算を導き出すプロセスの中で、人員はどの部分がその計算の中に繰り入れられて見込まれているんですか。

伊東参考人 お答えをいたします。

 十月一日以降の収益見通し、利益と今先生御指摘でございましたけれども、その利益を出すための収益との対比になります費用の中で見込むわけでございます。先ほどるる申し上げましたので繰り返しはしませんが、常勤職員と再任用職員、郵政短時間職員、それからこの九月末で予定雇用期間が切れる、およそ十三万数千人の非常勤に相当する人件費を、それぞれの各社のコストとして見込んで収支見通しを立てているところでございます。

重野委員 わかりました。

 そこで、今出しておる実施計画の前提条件の中に、当然、各会社への職員の割り振りが決まった、それが基本になって計画がつくられる。そうなると、その割り振りの方法とか、あるいは職員の希望というのがその過程の中でどの程度生かされたのかとか、あるいは全く希望が生かされなかったケースというのがどれくらいあるか、そういうのは全部把握されておりますか。

伊東参考人 お答えをいたします。

 私ども、この実施計画をつくるに当たりまして、実施計画の内容を簡単に申し上げましたときに、現在の日本郵政公社の資産、権利、債務、人を引き継ぐということを申し上げましたが、その中で一番、プロセスといいますか、それから期間も含めまして大変な作業になるということを想定しましたのがこの職員の引き継ぎ、承継の問題でございます。

 昨年の七月末に骨格を出したと申し上げましたけれども、その骨格を出した時点でそれぞれの会社の概要というのもそこに記載されておりましたので、それらを含めまして、それぞれの職員がどういうプロセスの中でこの実施計画にのっかっていくかというものを八月の早々にお示しいたしました。

 要するに、先生から御指摘がありました割り振り方法でございますけれども、現在、ある時点で職員が行っている業務が引き継がれる会社に行く。十月一日以降、突然業務が変わるわけではございませんので、現在行っている業務がそのまま円滑に行われることが必要という観点から、現在行っている業務が引き継がれる会社に行ってもらおうと。例えば、郵便の配達を今現在行っている職員は郵便会社に行くとか、あるいは新東京とか郵便の内務作業だけを行っている局の職員はこれも郵便会社に行くとか、そういう基準表をつくりました。

 しかしながら、大きな郵便局の総務課の職員は局全体の仕事をしていますので、郵便会社に行く必要もありますし、当然のことながら郵便局会社に行ってもらわなきゃいけない必要もあります。そういう人は希望を出してもらう。そういう、言ってみれば、どこかの時点でそれぞれの仕事をしている職員がどこの会社に行くのかを、複数業務が引き継がれるところは希望を出してもらう。一つに決まっているところは、それでいいかの確認を行う。こういうプロセスを職員に示したわけでございます。その基準日というのが昨年の九月一日でございました。

 したがいまして、九月の上旬に、一日の時点での自分の業務を考えて希望を出してもらいました。その希望を十月ぐらいに全部取りまとめまして、各支社単位に帰属調整委員会というのをつくりまして、そこで議論をして、この一月の十五日から二十二日にかけまして職員に内定通知を行ったわけでございます。そういう意味では、年末繁忙等ございますけれども、かなりの期間を私どもはこれに費やしたのかなと思っております。

 内定通知を出した段階でどういう希望状況になったのか、希望がかなえられているのかという御指摘でございますが、そもそも、郵便の配達をしている人は郵便会社だという、言ってみればもう業務が固定されているような人で、それでいいという人がおよそ三分の二おりました。それから、第一希望どおりいった人が二五%。両方合わせますと、九〇%の人が第一希望、あるいは行く会社が固定されているところに行きました。それから、第二希望、第三希望までとったんですけれども、それでもかなえられない人が全体の〇・五%、およそ千三百人ほどおりました。

 私どもは、これですぐ実施計画に人をのせるのではなくて、苦情処理制度というのを設けました。要するに、私どもが内定通知をしたものに対して不満のある人は苦情を申し出るような仕組みでございます。この中で、今の先生の御指摘にぴったり合うかどうかわかりませんけれども、この千三百人以外に、第二希望、第三希望の人も苦情を申し立てた人ももちろんいます。その人たちもいますけれども、さっき申し上げた千三百人のうち、およそ半分がこの苦情の申し立て制度に提出をしました。そのうち、修正した部分がさらにそれの半分弱ですね。したがいまして、数字で申し上げますと、千三百人のうち三百二十人ぐらい、三百二十人というか三百人強ぐらいの人たちがかなえられなかった。率にいたしますと、〇・一五%ぐらいですね。

 これでもって十分なのかというのは当然あるかと思いますので、それから第二希望、第三希望で満足、しようがないなと思う方もいらっしゃいますので、私どもといたしましては、十月一日以降も、出向・転籍制などを活用いたしまして、民営化後になっても、それぞれの希望というものをまた反映させる場というものをつくるつもりで現在取り組んでおるところでございます。

重野委員 もう時間が来ましたのでやめますけれども、調べてみますと、平成十八年度の退職者が二万一千名で、勧奨退職が一万四千名。この十八年度の中には二千名定年退職者が含まれている、そういうふうに差っ引いていくと一万九千名。もっと細かく言いますと、基本的に五十歳以下で退職した五千名の方がおられるんですね。この五千名の中身が、私は今の説明だけでは理解できない数字なんです。結局、今回の公社から会社に移行する過程の中で、そこにおれないというようなことでやめていったのではないかな。しかも五十歳以下ですから、将来のある方たちがそういうような形になったという点については、大変危惧の念を持っております。

 いずれにいたしましても、九月末、先ほど大臣言いましたけれども、それまでに、経営陣もそうですけれども、そこに働く職員が本当に納得をして、そしていいスタートが切れるような、そういう配慮というのをひとつしっかり忘れずにやっていただきたいということを要望して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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