衆議院

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第10号 平成20年3月24日(月曜日)

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平成二十年三月二十四日(月曜日)

    正午開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 石田 真敏君 理事 今井  宏君

   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君

   理事 山口 俊一君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 桝屋 敬悟君

      秋葉 賢也君    井澤 京子君

      伊藤 忠彦君    石崎  岳君

      稲田 朋美君    江藤  拓君

      大塚  拓君    岡本 芳郎君

      鍵田忠兵衛君    川崎 二郎君

      木挽  司君    実川 幸夫君

      関  芳弘君    田中 良生君

      平  将明君    土屋 正忠君

      中森ふくよ君    葉梨 康弘君

      萩生田光一君    萩原 誠司君

      松本 文明君    松本 洋平君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    玄葉光一郎君

      佐々木隆博君    田嶋  要君

      寺田  学君    森本 哲生君

      斉藤 鉄夫君    谷口 和史君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         増田 寛也君

   総務大臣政務官      秋葉 賢也君

   総務大臣政務官      岡本 芳郎君

   会計検査院事務総局第五局長            高山 丈二君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            岳野万里夫君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局次長)     野山  宏君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            小笠原倫明君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   中田  睦君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         古森 重隆君

   参考人

   (日本放送協会会長)   福地 茂雄君

   参考人

   (日本放送協会副会長)  今井 義典君

   参考人

   (日本放送協会理事)   日向 英実君

   参考人

   (日本放送協会理事)   溝口 明秀君

   参考人

   (日本放送協会理事)   八幡 恒二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   永井 研二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   大西 典良君

   参考人

   (日本放送協会職員の株取引問題に関する第三者委員会委員長)        久保利英明君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     松本 洋平君

  土井  亨君     中森ふくよ君

  橋本  岳君     大塚  拓君

  古屋 圭司君     江藤  拓君

  福田 昭夫君     佐々木隆博君

同日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     古屋 圭司君

  大塚  拓君     若宮 健嗣君

  中森ふくよ君     平  将明君

  松本 洋平君     鍵田忠兵衛君

  佐々木隆博君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     伊藤 忠彦君

  若宮 健嗣君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     土井  亨君

    ―――――――――――――

三月十八日

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

 特殊法人の組織等に関する予備的調査についての報告


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 昨年十一月十五日、本委員会から調査局長に命じました特殊法人の組織等に関する予備的調査につきまして、去る十九日、その報告書が提出されましたので、御報告いたします。

 なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願い、また、参考人として日本放送協会職員の株取引問題に関する第三者委員会委員長久保利英明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官岳野万里夫君、証券取引等監視委員会事務局次長野山宏君、総務省情報通信政策局長小笠原倫明君及び政策統括官中田睦君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長高山丈二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。増田総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

増田国務大臣 日本放送協会の平成二十年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入が六千五百七十五億円、事業支出が六千四百七十二億円となっており、事業収支差金百二億円のうち債務償還充当を差し引いた収支過不足六十八億円については、財政安定のための繰越金に繰り入れることとしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出がともに八百四億円となっております。また、建設費が七百六十九億円となっております。

 また、改正放送法に基づき、平成二十年度の収支予算から、新たに番組アーカイブ業務勘定を設けて、区分経理を実施することとしております。

 次に、事業計画につきましては、放送番組の一層の充実、地上デジタル放送の普及や改正放送法に基づく新たな国際放送による海外への情報発信の充実等が盛り込まれております。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 これに付する総務大臣の意見につきましては、協会の平成二十年度の収支予算等について、これを着実に遂行すべきものと認めるが、本年一月、職員によるインサイダー取引が発覚したことは、報道機関としての信頼性を揺るがす重大な問題であって、まことに遺憾であり、協会においては、国民・視聴者からの信頼を早急に回復すべく、抜本的な再発防止策の推進に全力で取り組むとともに、職員の高い倫理意識の確立に努めることが必要であるとしております。あわせて、新たな不祥事が受信料収入に影響を及ぼす可能性も考慮し、一層の業務の効率化に努めることが必要であるとしております。

 その上で、収支予算等の実施に当たり、

1 改正放送法を踏まえ、実効性あるガバナンスの実現に組織一体となって全力で取り組むこと

2 平成二十三年のデジタル放送への全面移行のために欠くことのできない中継局の整備や共同受信施設のデジタル放送対応等にできる限り前倒しをして取り組むこと

3 我が国の文化・産業等の発信を通じて我が国の対外イメージの向上等に資する外国人向けテレビ国際放送を実施すること

など、特に配意すべき点を付記しております。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

渡辺委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長福地茂雄君。

福地参考人 本年一月二十五日付でNHK会長を拝命いたしました福地でございます。

 議題となっております日本放送協会の平成二十年度収支予算、事業計画及び資金計画の御説明に先立って、まず、三人の職員が関与いたしました株のインサイダー問題につきまして、深くおわびを申し上げます。第三者委員会による調査が精力的に行われておりますが、関係者を厳正に処分し、再発防止策の策定に全力で当たってまいります。その上で、内部統制機能の整備によりますコンプライアンスの徹底を図り、視聴者から一層信頼される公共放送を目指してまいります。

 平成二十年度は、三カ年経営計画の最終年度でありますとともに、デジタル時代の新たな公共放送の基礎を築く重要な年度でもあると考えております。

 事業運営の基本となります放送におきましては、放送の自主自律を堅持し、信頼されるニュースと多彩で質の高い番組を制作し、視聴者の要望に的確にこたえてまいります。

 また、幅広い視聴者層、とりわけ若い世代に向けた番組や地球環境問題に継続的に取り組む番組、地域放送の充実等に力を注ぐとともに、報道取材体制の強化、第二十九回オリンピック北京大会や北海道洞爺湖サミットなどの取材、放送に万全を期します。

 さらに、地上デジタル放送の普及や国際放送による海外への情報発信の充実に努めてまいります。

 協会の主たる財源であります受信料につきましては、公平負担に向けて、一層効率的な契約収納活動を推進いたしますとともに、訪問集金の廃止等の新たな施策の実施と、より公平で合理的な受信料体系への改定を行います。

 また、改正放送法の趣旨を踏まえ、番組アーカイブ業務の実施に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

 これらの実施に当たって、引き続き徹底した業務改革とスリム化の推進に取り組みまして、効果的かつ効率的な業務運営を行ってまいります。

 建設計画におきましては、平成二十三年の地上デジタルテレビジョン放送への完全移行に向け、放送設備の整備などを計画的に実施いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千五百七十五億円、国内放送費などの支出六千四百七十二億四千万円を計上しております。事業収支差金百二億五千万円のうち三十三億七千万円につきましては債務償還に使用し、残り六十八億七千万円は翌年度以降の財政安定のための繰越金とすることといたしております。

 資本収支につきましては、支出において建設費など総額八百四億七千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額八百四億七千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、平成二十年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを述べさせていただきましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会の改革に向けたこれらの施策を一つ一つ誠実かつ着実に実行し、視聴者の期待にこたえていく所存でございます。

 委員各位の御理解と御支援をお願いし、あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

渡辺委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩生田光一君。

萩生田委員 自由民主党の萩生田光一でございます。

 福地会長におかれましては、御就任、大変御苦労さまでございます。

 早速ですが、質疑を進めさせていただきます。

 昨年までこの委員会で答弁をされていた橋本前会長でございますけれども、技術畑出身の方でございまして、決して雄弁な方ではございませんでしたけれども、NHKの置かれている危機というものは着実に理解をして、何とか信頼回復に向け組織の体質を変えなくてはいけない、こういう意欲が伝わってまいりました。

 大変残念なことに、会長がどんなに声高に改革を唱え、コンプライアンスの徹底を指示して、そして不正のうみを出し切るんだという決意を示されても、最後まで不祥事に悩まされて、報道機関にあってはならないインサイダー取引の責任をとる形で、任期を残しての辞任となりました。

 私は、職員の綱紀粛正や緊張感の欠如は、もはや職員個人の問題ではなくて、執行部の皆さんがどんなに努力をしてもぬぐうことができない何か厚い雲がNHKには覆ってしまっているような感じがしてならないのであります。だからこそ、ここは何のしがらみもない外部からの経営感覚を持った人材が必要であり、福地会長並びに古森経営委員長のお二人には、国民、契約者からの大きな期待がかかっているというふうに私は思っております。

 二十年ぶりの部外者からの会長ということで、早くも内部では排他的な動きを試みる職員もいると一部漏れ聞きますけれども、民間出身の会長から見れば、逆に、この三年間のNHK改革というのは生ぬるいものがあったんじゃないか、そんなふうにお感じになっているのではないかと思います。

 そこで、新会長に就任をして、NHKの改善をすべき点というのは一体どんな点だというふうに感じていらっしゃるのか、また、会長の目指す新生NHKというものはどんなものなのか、まずお尋ねしたいと思います。

福地参考人 NHKに参りましてまず感じましたのは、企業経営における重要な経営資源と言われます人、物、金、情報につきましては、本当に申し分ない状況と見受けられます。私が感じましたのは、そういった中で、組織の運用と申しますかそういった問題と、それから、各部門でございます放送、技術、営業といった縦割りの組織、縦割りの論理が余りにも強過ぎるという感じがいたしました。そういった中で、縦軸のよさを生かしながら横軸のコミュニケーションを広げていきたいということで、まず最初にやりましたのが、役員十一名の個室の廃止をいたしまして、今、大部屋で皆仲よくやっておりますが、そういった取り組みから始めました。

 公共放送としてのNHKに求められます最大の使命は、質の高い番組と正確かつ迅速な報道を通じて視聴者の皆様のお役立ちに徹することだと心得ております。改めて視聴者の皆様の視点に立ちまして、ビビッドで倫理観のあふれる組織づくりを心がけてまいりたいと存じます。

 以上でございます。

萩生田委員 ありがとうございます。

 私もこの三年間ずっと申し上げ続けてきたのは、NHKはやはり公共放送としての使命をもう一回原点に戻って取り戻すべきだ、決して華やかさを追求したり、民放と一緒に視聴率を競い合うような、肩を並べるような経営は必要ないんだ、たとえ地味であっても国民の皆さんに有益な情報を着実に堅実に報道し続けることがNHKの使命じゃないかということを私は申し上げてまいりました。会長とは相通じるものがあるというふうに信じておりますので、ぜひ今後の御活躍を期待申し上げたいと思います。

 そこで、次に、経営感覚の大きなテーマである受信料の体系の見直しについてお尋ねをしたいと思います。

 公平公正な受信料体系の確立は、公共放送としてのNHKの信頼を高める上で大切なファクターであることは申し上げるまでもございません。三割近い不払いや未契約の解消のためには、昨年、受信料の義務化を望む声が一部ございましたけれども、我が党は、やはりもっとNHK自身が自助努力をしてほしいということで、その方針には拒否を示しました。

 今回の訪問集金の廃止は、自動振替等を活用していない約二割弱の契約者への集金や未契約者や支払い拒否などへの対応に当たる地域の五千六百人のスタッフの業務変更と思われますが、このことでどれだけコスト削減になるのか、人員や業務の内容はどう変化をするのか、お尋ねしたいと思います。

福地参考人 訪問集金の対象となっておりますのは契約者全体の約一二%程度、これは昨年の九月末見込みでございますが、ただし、留守などによりまして何度も訪問することが必要になるなど、結果として多くの要員や経費が必要となっております。

 このため、訪問集金を廃止いたしまして、これまで訪問集金に要していた二千四百人分の委託契約収納員の労力のうち半分の千二百人分を段階的に削減するなどで、平成二十四年度には年額約七十億円の営業経費の削減を図りたいと考えております。残りの千二百人分につきましては、契約の取り次ぎであるとか未収金回収などに振り向けてまいりますことで、受信料の公平負担の徹底を図ってまいりたいと思います。

 以上です。

萩生田委員 続きまして、デジタル化に向けましての難視対策とケーブルテレビのあり方についてお尋ねをしたいと思います。

 先日、内閣委員会でも、山間地での難視に対してケーブル活用で対応するんですが、一軒当たりの負担額が余りにも大きくて何とかならないかという質疑があり、当時、総務副大臣が御出席をされておりましたけれども、さまざまな支援策の検討を示唆しました。

 実は、都市部では、ビル陰などの影響による難視対策として、対策組合を設立して共聴アンテナで対応してきた実態が数多くございます。既に昨年秋にこれらの対応については総務省として通達を発し、一定の指針を示しておりますけれども、要は、民間と民間の問題なので、よきにやってくれというふうに書いてあるだけでありまして、具体的な支援策はどこにもございません。

 実態としては、組合設立から半世紀近くも経過をしたものもございまして、当初の原因者との良好な関係のまま進んでいるものばかりではございません。総務省の通達のように、デジタルになれば受信可能世帯がふえ、個人のアンテナ対応で可というふうになれば、残された難視聴者だけが共聴の後始末を迫られるということにもなりかねません。もともと、国策によって方向転換をしたデジタル放送でありますから、ここは、地域のきずなを壊すことなく新制度に移行できるよう、もう少し丁寧な支援を講じる必要があるのではないかと私は考えます。

 そこで、都市部ではケーブルテレビへの移行が最も有効な手段だというふうに思われますし、既に実施をされていると思いますけれども、初期負担を軽減して、不必要になった共聴ケーブルを撤去しやすいような、そんな支援策が必要と思われますけれども、総務省のお考えをお示しください。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 このデジタル化に当たりまして、いわゆる過疎地域だけではなくて都市部、都市の受信障害対策、特に共聴施設の関係についての改修も大変重要な課題である、こういうふうに認識をしております。

 確かに、今、先生御指摘のように、これへの対策は、建築物等の所有者とそれから共聴施設による受信者との話し合いということを基本に据えているわけですが、それだけで果たして解決できるかどうかといいますと、やはりそのことに対して何らかの支援が必要になってくるということで、これに対しての相談体制の整備ですとか効果的、効率的なデジタル化改修方法というものを検討して、さらに内容のある情報提供、充実を図っていくということを進めていきたいというふうに思いますが、さらに、今、情報通信審議会でいわゆる受信者対策についていろいろ御審議をいただいておりますので、その提言も踏まえて必要な施策を講じていきたいという考えでございます。

 それから、その際、ケーブルテレビについて、これも有効な方策であるということでございますので、このケーブルテレビは地域のいわゆるコミュニティーチャンネルとして重要な役割を果たしているということがございます。このケーブルテレビの関係についても、今調査研究を実施しているところで、近日中に取りまとめる予定でございますが、そうした成果も、今後の地デジの関係、デジタル化改修対策に生かしていきたい、このように考えております。

萩生田委員 総務大臣、実態としましては、共聴組合を解散したくても、なかなか組合員の実態が把握できないようなところもございます。どこにどうつながっているのかというのが明確になっていないところもございますし、また、当時はAという建物が原因者だったんだけれども、その後、BやCやDという大きな建物があって複合的に難視聴が発生しているという場所もございますから、これを考えますと、やはりもう少しスムーズに移行ができる何か後押しをしてさしあげることが私は都市部では最も有効だと思います。検討を待ちたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 関連して、地デジ対応に向けまして、このケーブルテレビの果たす役割というのはいろいろ期待ができます。

 NHKのBS契約でも千三百万件を超えて、光回線の活用によってブロードバンド環境にも貢献をしているというふうに思います。他方、地デジの再送信のためには単体で受信環境を整えることは財政的にも困難で、結果として大規模化、全国展開のMSOなどが伸展していることは御承知のとおりでございます。

 ハード面では有効である反面、経営主体と開設当初の地域住民との距離はどんどん離れ、コミュニティーチャンネルとしての機能は風前のともしびとも言える状態で、ローカルニュースや地方の議会放送などは、削減をされるか、あるいは新たな制作費を自治体に要求する例も出てきております。不採算である自主制作番組がどんどんなくなり、通信販売チャンネル化している地域も少なからずございますけれども、ローカルコンテンツの充実は、当時の設立趣旨から考えても、守らなくてはならない大切な地域文化であるというふうに私は考えております。

 総務大臣は、このケーブルテレビの活用を、単なる再送信のツールにしてしまってよいと考えているのかどうか。今後、地域情報を守るためには、放送の一定量を義務づけるような法整備も必要と考えますが、御所見を伺いたいと思います。

 あわせて、NHKは来年度から重点事項に地域放送の充実を掲げております。現在の地方局とケーブルテレビ局との連携に加えて、よい作品、自主制作番組については全国放送もできるような仕組みがローカルコンテンツの制作強化になるのではないか、こんなふうにも考えておりまして、御所見を伺いたいと思います。

 先ほど、五千六百人の地域スタッフの仕事の内容が変わるというお話をしました。実は、ケーブルテレビに加入していただくと、自動的にNHKの受信料が回収しやすくなるわけですよね。ですから、やはり地域スタッフの皆さんには、逆に地域のケーブルテレビ局を応援してさしあげることが受信料収納率の向上にもつながるんじゃないかと私は思っていまして、こんな点も踏まえて、お考えをお示しください。

増田国務大臣 今、御指摘いただきましたケーブルテレビ、これは、歴史的に見ましても、ケーブルテレビ会社というのは地域社会を基盤として普及発展してきた、したがって、そこではローカルコンテンツというのを大変大事にしてこられて、それを多く発信してくる、そして地域コミュニティーそのものの発展にも大きく寄与をしてこられた、そういう存在であろうというふうに思います。

 したがいまして、総務省としても、ケーブルテレビのコミュニティーチャンネルとしての充実というのは大変重要なことだというふうに思っておりますし、だからこそ私どもも研究会を設けまして、その中でこういったコミュニティーチャンネルを一層充実させることが必要だ、このようなことを打ち出しているところでございます。

 こうしたコミュニティーチャンネルの充実強化につきましては、いろいろな先進事例等もあるようでございますので、こうしたことをさらに分析して、その内容について近日中に取りまとめをしたいというふうに思っております。そして、それを今後の我が省の施策にぜひ活用していきたい。

 やはりこうしたことが、テレビ会社のみならず、ツールとしてのものだけではなくて、コミュニティー自体を豊かにするということにつながる、こういう意識で取り組んでいきたい、このように考えております。

福地参考人 先ほどの御回答の中で、訪問集金の対象が契約全体の約一二%、これは昨年九月末と申し上げましたが、ことしの九月末の見込みでございますので、訂正をさせていただきます。

 御指摘の件でございますが、NHKでは毎月一回、BS2でございますが、「CATVネットワーク」という番組で、全国各地のケーブルテレビ局が制作いたしました番組を紹介しております。また、「おーい、ニッポン」とか「ふるさと絶対主義」「街道てくてく旅」でも、それぞれの地域のケーブルテレビで活躍するリポーターを起用するなど、地域情報の発信をケーブルテレビ局の協力を得て行っております。

 二十年度もこれらの番組を継続いたしまして、ケーブルテレビの番組を含めた多様な地域情報を全国に放送していく予定でございます。

 御指摘のとおり、こういった番組を地域スタッフを使ってPRするというのはお説のとおりであるかと思います。続けてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

萩生田委員 せっかく地域に根差したケーブルテレビがその文化を失うことのないように、ぜひ上手な制度設計を御提言いただきたいと思います。

 続きまして、デジタルアーカイブについて、昨年も指摘をしたんですけれども、いよいよ本格的に始まります。

 会長、私は持論を持っていまして、ほかの番組との、民放とのイコールフッティングという概念は確かに競争の上では必要だと思うんですが、もともと受信料によってつくられた番組が、未来永劫NHKだけのものとして二次商品になっていいのかということに非常に疑問を感じております。

 確かに、イコールフッティングという概念では、民放と同じような番組構成になっているものについては、民放が有料で再送信をするのにNHKだけがただで見せるというわけにはいかないということになりますから、わからなくもありません。

 しかし、例えばネーチャー番組だとか、あるいは長編ドキュメンタリーのように、長い時間をかけたり、あるいは遠いところへ行ってつくったNHKならではの番組については、これを民間とイコールフッティングをやりたくても、民間にはそういう番組はそもそもないんだと私は思うんですね。

 ですから、その辺で、すべてが何か二次送信については有料という前提ではなくて、国民共有の財産として国民が大事にこれからも使うべき映像と、民間と競争が必要な映像というものを、きちんとカテゴリーを分けるべきじゃないか、その上でアーカイブに進むべきじゃないかと思っていますが、お考えをお示しください。

福地参考人 アーカイブの問題は御指摘のとおりだと思っておりまして、私は、NHKに就任いたしましてすぐ、これは国の財産だから震度七の地震があったときにこのアーカイブは大丈夫だろうなということを確認したほどでございます。

 NHKならではと言われるような分野の映像ソフトは特に国民の貴重な文化遺産だと考えております。現在も無償での公開や社会還元の取り組みを進めておりますが、今般、改正放送法によりまして、通信回線による番組アーカイブ提供が可能となりました。民間事業者との公正競争に留意することのみならず、特定の受益者だけに向けてのサービスでありまして、広く視聴者から預かっております受信料でその経費を賄うには限度があると考えております。

 ことし十二月に予定しておりますアーカイブ提供の開始までに、公共放送として受信料を用いて無料で提供することがふさわしいものかどうか、また、受益者負担とするべきものはどういうものか等につきまして、視聴者の声を広くお聞きしながら十分検討してまいりたいと思っております。

萩生田委員 この話をしますと、NHKは、管理をしたり送信をするのにお金がかかるということを言うんですね。それはそうだと思います。

 私は、国民共有の映像財産に指定をされたものは、例えばこれから国が充実を図ろうとする公文書館のようなところに管理運営を任せて、公の財産としてこれから保存していったらよろしいんじゃないかなということも考えておりますので、ぜひ検討に加えていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、最後に国際放送についてお尋ねしたいと思います。

 このたび、「靖国 YASUKUNI」という映画に文化庁の外郭団体が七百五十万円を支出したということが問題視されておりまして、私は、表現の自由は認めますけれども、公費が入るとなればこれは話は別だと思います。

 実はこの中でNHKの映像も使われているようですけれども、前後の脈絡が分断をされ、必要な秒数だけ映像を販売すると、時に間違ったメッセージとして世界に発信されることがあるんだなということを改めて感じました。

 国際放送でも扱われるテーマについては、日本文化の紹介や日本の魅力が伝わるポジティブなものであることが望ましいと思われますし、番組内容についてはNHKがぜひ自信と責任を持って世界に発信をしていただきたいと思います。

 そこで、最後にお尋ねしたいんですが、八月のオリンピック期間中に、いろいろな意味でアジアに注目が集まるというふうに思います。六月には、実はIOCにおいて二〇一六年のオリンピック開催地が五都市に絞られて、国際シティーセールスが許される段階になります。もちろん、ダイレクトに招致活動が認められる放送には制約があるんでしょうけれども、北京、ロンドンの次にぜひ東京へ世界の人々をいざなうような映像発信をして、真に公共放送としてNHKがバックアップをしていくということの必要性があるのではないかというふうに思いますけれども、この件についてお考えをお示しください。

福地参考人 ことし八月に開催されますオリンピック北京大会の際に、東京都の関係者が現地に入りまして、二〇一六年オリンピックの東京への誘致活動を展開するというふうに聞き及んでおります。

 こうした招致活動につきましては、節目節目で、オリンピック誘致をめぐる日本の動きとして、ニュースで海外の皆さんに伝えていくことになろうかと思っております。

萩生田委員 終わります。

渡辺委員長 次に、萩原誠司君。

萩原委員 自由民主党の萩原誠司でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 福地会長さんには、大変な環境の中で、特にNHKを取り巻く環境が非常に揺れ動く中での御就任、まことに御苦労さまでございます。

 昨年から、思い出すだけでもたくさんの不祥事がございました。例えば、熊本の放送局長さんによるセクハラの事件、これが四月。そして五月には、松江の放送局の記者の方による万引き。そして六月は、魔の六月なんですかね、立て続けに、アナウンス室のアナウンサーの方による強制わいせつ、そして経済部の記者による住居の侵入、さらにはNHKエデュケーショナルに出向しておられる職員による児童買春。魔の六月ということだと思うんですけれども。それから、七月になって、制作局のディレクターの方による強制わいせつ。十一月には、大阪の放送局の職員の方が痴漢。

 そして、ことしになって、二月には、放送技術局職員によるわいせつDVDの持ち込みがぼろっと出ちゃった、こんな話もありましたし、あるいは、三月には、水戸の放送局の記者の方による無免許運転。そして、話題になっておりますように、例のインサイダーの問題が一月にあったということでございます。

 これだけたくさんあると、どう言ったらいいのか、そういう会社の経営を一体どうしようかということについては、一般的にはかなり難しいものが感じられるわけでございます。綱紀が緩んでいるということなんです。これが、先ほどの萩生田先生の質問にもあったように、個人の問題なのか、それとも組織全体の問題なのか、あるいは、ひょっとリーダーシップの問題なのか、そんな疑いというものが出てくる。

 職員の方の声を聞いてきても、前執行部において、例えば政治関係者との会食は禁止をしておきながら、御自身たちは平然とそういうことをやっている、いわゆる首尾一貫しない対応があったことなどについてもいろいろな声があったりしました。

 さらには、その後、福地会長さんが御就任を決意されるまでの間の動きを見ていましても、経営委員会の方々に対する、当時の執行部の方々からの恐らく指示だと思うんですけれども、続投のための根回しとか、どこかの局の局長さんが地域の経営委員の方に、これしかないんだというようなことで一生懸命に根回しをして回ったというような情報もあったりしました。あるいは、経営委員の方の親族がどこかの番組に出るためにいろいろ立場を使ったというような話もあったりしました。

 さらには、そういうことの集大成なのかなと思うんですけれども、例の中期の経営計画をめぐりまして、当時の執行部の方々と経営委員会の方々が対立をして意思疎通ができない、結局、ある形で出したものが実行できない形になってしまった。

 さらには、会長がお引き受けになる前に、いろいろな方が、民間から声が上がっていましたが、ほとんどの方がそんなことはちょっと無理だということで逡巡をして内々お断りになってきた。こういう背景がある中で、私は、よくぞ引き受けていただいたという気持ちでいっぱいであります。

 そういう意味で、一体どういう当時の思いを持って、この難局、それを前提にしてお引き受けになったのか、そのときの心境について、テレビを見ておられる方々や国民の方々、あるいは職員の方々も、やはり、福地さんのパーソナリティーというものをよく理解することが改革の原点の一つ、信頼回復の原点の一つ、恐らくそういうふうに思っておられると思うんです。ぜひとも、どういう思いでお引き受けになられたか、お聞かせいただきますようにまずはお願いいたします。

福地参考人 新しいことを始めますには、何事によらず不安はつきものでございます。企業経営につきましては多少の知識、知見はございましたものの、公共放送のトップとしては全く知らないわけでございますので、本当にトップとしての責任を果たせるものかどうなのか、悩みに悩みまして、三たびお断りをさせていただきまして、四たび目に、経営委員長の方から、日本の公共放送を担う使命感の大きさ、重さということについて大変熱っぽく説得をされまして、お引き受けをするような気持ちになったわけでございます。

 ただ、いきさつはともあれ、お引き受けいたしました以上は、就任のときに職員に申しましたけれども、私の人生の最後の、そして最大の仕事として取り組んでまいる所存でございます。

 以上でございます。

萩原委員 そういたしますと、三顧の礼ならぬ四顧の礼ということであったんですけれども、恐らく、その四顧の礼を果たされた方々の思いも、このNHKというものが非常に大切な組織であって、国民の教育や文化、あるいは災害報道を含めて私たちの命を守るというような重要性もあるんだ、だからこそしっかりとした経営をしてほしいという思いに満ちておられたと思います。

 しかしながら、その後、会長をお引き受けになった後、先ほどもありましたように、インサイダーの事件やあるいは幾つかの事件も頻発をしているわけでありますけれども、こういう不祥事が後を絶たない中で、どのようなかじ取りを経営問題についてされるのか、その御決意を若干お伺いさせていただきたいと存じます。

福地参考人 これも会長就任のときに職員に話をしたわけでございますけれども、私の会長としての最大の使命は、NHKに対する、視聴者から失った信頼の回復だと思っております。コンプライアンスの取り組みにつきましては、御指摘のとおり、三年前の不祥事のときからいろいろな対策がとられておりましたけれども、形だけに終わったのではないかというふうに思っております。その形に心を込めなければならない。心というものは、やはり私は、コンプライアンスにかける職員一人一人の熱い思い、かたい信念であろうと思います。そのためには、まずトップから変わらなければいけない。そして変えていく。私は、コンプライアンスの徹底をNHKの組織風土とすることを職員と誓い合いまして、一日も早く視聴者からの信頼を回復すべく努力をしていく考えでございます。

 あわせて、公共放送としての番組及び報道のより一層の充実、地域放送の強化、地上デジタル放送の普及促進、国際放送の強化、受信料の公平負担のための営業改革などの経営課題にも全力で取り組んでまいります。

 以上でございます。

萩原委員 お話を伺っていると、ちょっと、視聴者の方々がなるほどなという感じにどうもなっていない気がするんですね。

 そこで、改めて伺いたいんですけれども、先ほどおっしゃられたように、役員の方々の個室を廃止されて大部屋化するというお話もございましたけれども、この一月半、具体的にどういうガバナンス改革をおやりになったのか。あるいは、私の仄聞するところによりますと、現場主義ということを非常に会長さんは強調しておられる。こういうところで、具体的に、国民の方々にわかるような福地改革のニュアンスというかイメージをぜひとも御提示いただきますようにお願いをいたします。

福地参考人 私は、前職のときから、かねてより、いろいろな情報を、現場で現物を現実に検証していくことが最も大事だと思っております。まして、この公共放送については全くの無知でございますので、あらゆる場面を通じて現場を知ろうということからスタートいたしました。

 最大の現場は報道現場でございます。朝七時の「おはよう日本」、お昼のニュース番組、夜七時の「ニュース7」、報道現場は三回視察しました。あと、技術研究所では、大変NHKの技術の高さに感動いたしました。

 そのほか、まず営業現場が大変苦労しておりますので、上野の営業センター、これは就任前でございました、お伺いしました。川崎のコールセンター、これも就任前でございますがお邪魔いたしました。あと、休日に大阪の千里の営業センター、天王寺の営業センター等を回りまして、放送局も、北九州、福岡、神戸、大阪と、西の方から順次北海道まで回っていきたいと思っております。

 数え上げれば切りがありませんが、まずは現場で知識を得る、現場で検証するということに心がけてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

萩原委員 ということは、現場にまず御自身が顔を出してしっかりと感じていくということなんですけれども、その御訪問されたところについては、事前に御通報されてお行きになるんですか、それとも、ふと、あれ、会長がいる、こんな感じでお行きになるんですか、どんな感じなんでしょうか。

 さらには、西の方からという話がありましたけれども、私は岡山なんですが、岡山には行くのか行かないのか。お答えは必要ありませんけれども、現場主義のときに、やはりある種のサプライズというのか、予期せぬ登場というのは物すごい大きなインパクトがあるんですけれども、その辺の登場のされ方についてお気配りがあればお聞かせいただきたいと思います。

福地参考人 まず、私は、突然行くのが好きでございます。飾ったところに出向くのは嫌いでございます。

 上野の営業センターへ行きましたのが一月十日でございましたか、就任のまだ半月以上前でございますが、十五分前に電話をして伺いました。川崎のコールセンターに行きましたのは休日でしたが、これは突然の不祥事のあれでコールセンターは大変困っているだろうと。やはり一番お電話いただくのはコールセンターでございます。突然コールセンターに行きまして、御苦労さんと言ってまいりました。大体、朝の七時のニュースのときは六時四十分に行きましたが、これも前の日に行きますと面が割れますので、六時四十分に突然行く。意地が悪いわけじゃございませんが、ありのままの現場を見たいというのが私の信念でございます。そういったことをしております。

 西から回りますのは、別に他意が、九州出身だからということでございません。職場内のいろいろな報道が北海道から順番になされているということなので、では私が回るのは西から行こうということにしただけのことでございます。

 以上でございます。

萩原委員 そこで、もう一個この現場主義に関してお尋ねをしたいわけでありますけれども、ちょうど今地震があったようでございますが、いわゆる地震報道その他についての現場主義、どういう方向で、災害報道とかについての現場主義というのは非常に大切なんですけれども、今後、会長としての本当に命を守る報道の現場についての基本的な御姿勢をお聞かせいただければ幸いでございます。

福地参考人 NHKのもう一方の最大の使命は、災害放送だと思います。災害報道のあり方についても、私は、現場の放送局に行ったときにいろいろ確かめてまいりました。まず、長崎放送局に参りましたときに、長崎の雲仙の例の火砕流の跡、長崎港、それから長崎の市内を監視ロボットが監視をしておりました。そういった監視体制が各地にできております。

 それから、私がまず行きましたのは、NHKホール、約四千人の人が入りますが、この前最初にNHKホールに行きまして、災害のときの救難、非常口、私は昼間に真ん中に座りまして、電気を消しまして、今から地上まで誘導してくれといったことを実践してまいりました。NHKの大事な使命だと心得ております。

萩原委員 ありがとうございました。

 これからも、今おっしゃったような現場主義、突然あらわれる福地会長といったことも含めて、ぜひ、動き回る中で、会長の動く姿を職員の方々にしっかり見ていただく中で意思疎通を図っていただきますように心からお願いします。

 ところで、組織の意思疎通あるいは組織の思いを決めるもう一つの大きな柱が人事政策であるというふうに思います。私も岡山の市長に最初になったときに、前市長から引き継いだ人事を一体どうしようかと大変深く悩んだことがございました。ただ、私は、そのときには、人事というものはわかった上でしなきゃいけないということで、そのときの人事は一切やらない、そしてじっくり見させてもらった上で一年後に本格的な人事をするという決断をして、これは結構うまくいったわけでありました。そういう意味で、今回、幹部職員の方々の人事を大幅に変えられました。そのときの思いはいかなものであったか。

 加えて、もう一つ申し上げると、いわゆるインサイダー取引の調査結果及びその処分との関係において、一部の幹部人事がいまだに凍結をされている。この判断自身は私自身も大変妥当なものだというふうに考えておりましたけれども、今後、この人事についてはどのような方針で臨むおつもりであるか。ぜひ、人事についてのお考えをお聞かせ賜りますようにお願いをいたします。

福地参考人 インサイダー問題につきましての第三者委員会の調査結果を踏まえまして、関係者についての厳正な処分を行う予定でございます。手続といたしましては、NHKの就業規則の定めております処分条項に従いまして、責任審査委員会、これは理事五名で構成しておりますが、そこで討議をいたしまして、運用として弁護士の意見を聞くこともございます。その上で会長としての私が決定をいたします。

 その後の役員人事につきましては、現在は二名の放送総局担当の理事を一名増員いたしまして、三名体制で取り進めていこうと思います。そのほかの管理職人事につきましては、当然のことでございますが、適材適所ということで進めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

萩原委員 もう一回、人事の総括的な感想で結構なんですけれども、会長は、当然、民間会社における人事の仕組みや人事の実態を経験された中で、今度はNHKに来られました。そして、人事を執行されました。何か違いがあったか、そして、でき上がった人事というものにどういう自己採点を持っておられるか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。

福地参考人 求められる人材の姿が変わってきたと思います。以前はゼネラリストと申しますか、あの人は何をやらせてもほどほど器用にできるという人材から、その後は一つの仕事についてのスペシャリストが求められるようになってきました。今この変化の時代におきましては、私たちが求める人材はプロフェッショナルだというふうに思っています。

 一月、お正月の特別番組でイチロー選手が出てまいりました。あの中のイチローの言葉で、うまいバッターというのは一つの技能を持っていて、カーブ打ちがうまい、速球がうまい、そういうバッターが多いんだ、しかし、自分はピッチャーが投げる一番得意な球を打つんだと。私は、変化対応ができるこのイチロー選手の言葉がまさにプロフェッショナルだと、職員にもその点を話しました。

 以上でございます。

萩原委員 続いて、今後の経営方針といいますか、予算についてもお伺いをしたいわけでありますけれども、予算についても、あるいは計画につきましても、つくる段階と執行する段階というのはやはり重要性が違いまして、殊にNHK予算については執行というものが最も重要になってくるわけである、そう思っています。そして、執行というものをいろいろな要素が決めていきます。その中の一つに、やはり私は、しっかりとしたリーダーシップというものがあるのではないかと思うんです。

 今までのお話を伺っておりましてちょっと安心をしてきました。私は、本来、もし従前の人事体系のまま、あるいは執行部のままこの予算が出てきたら反対しようかというふうに思った時期もあったわけでございますけれども、今回のお話を聞いて、ぜひお任せをしてしっかりやっていただこうという気にもなりつつございます。

 つきましては、今回の予算について会長が執行責任を負うことになる、その意味での決意のほどをぜひともお聞かせ賜りますようにお願いをいたします。

福地参考人 NHKの平成二十年度の予算、事業計画は、経営委員会の議決を経まして、総務大臣に提出したものでございます。当時私は就任しておりませんが、しかし、経営はゴーイングコンサーンと心得ております。NHKの組織全体でつくり上げた、練り上げた予算だというふうに心得ております。

 執行責任の重さは十分に認識しておりまして、予算、事業計画に盛り込んだ施策を、視聴者の期待にこたえまして、的確に実施してまいりたいと思います。あわせて、予算総則に規定されております予算の弾力的運用によりまして、私なりのカラーを打ち出していきたいと考えております。

 以上でございます。

萩原委員 今、私なりのカラーをとおっしゃいましたので、重ねてお尋ねしますけれども、前執行部に比べて、新福地執行部がやるとどの辺がよくなるか、何がよくなるのか、少し思いをお聞かせ賜りたいと存じます。

福地参考人 職場の中で何から変えようかという話がございまして、私は、今度、十人の理事のうち四人だけが残って、あと理事が全部新任でございますが、NHKの公共放送としての理念、軸足は絶対変えてはいけない、あまねくということと不偏不党ということでございます。この軸足は変えずに、あとは変えられるものはすべてという考え方で取り組んでほしい、何がどこまでできるかというのはそれからの話だというふうに考えております。まずはすべてを見直してみるというところから進めていきたいと思っております。

 以上です。

萩原委員 大体時間になりましたので、最後に一点だけ、利益の還元問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、昨年も中期経営計画の中で、受信料の値下げをするかどうかという議論も含めて、利益というものをどう還元するか、そこのところが問われてきたわけであります。もちろん、一定の留保というものを積んで経営の安定に資する必要はありますけれども、生じた利益についてはどう還元されるおつもりか、まず端的にお伺いをいたしたいと思います。

福地参考人 NHKには、公共放送として、視聴者の生命や財産を守る的確な情報を分け隔てなく提供することなど、基本的な放送サービスを充実させていく責任がございます。また、国家的事業として官民挙げて取り組んでおります地上放送のデジタル化につきましても、相応の役割を果たすべきだと認識をしております。このような事業にしっかりと取り組んでいくことが、まずは大事だというふうに考えております。

 視聴者に対する還元策は、こうした事業に予算を適切に使用しつつ、今後の収入と支出のバランスを考慮しながら検討していきたい、そういうふうな認識に立っております。

 以上でございます。

萩原委員 ありがとうございました。すべてを国民に還元する、そういうふうに受け取りました。

 御活躍を期待して、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、田中良生君。

田中(良)委員 自由民主党の田中良生でございます。

 まずは、福地会長、NHK会長就任まことにおめでとうございます。NHKが公共放送としての役割を果たすために、岐路に立つこの大変な時期に会長をお引き受けになられました。そして、国民に貢献する放送を行うというその使命を全うするために改革の先頭に立たれました。本当に心から敬意を表する次第でございます。私も、会長の思い、これが実現されるように力を注いでまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、質問に移りたいと思います。

 まず、大臣にお聞きしたいと思います。

 NHKには、公共放送としての成り立ちと長い歴史があります。公共放送が担うべき役割として、市場原理に任せたのでは十分に達成できない多様で質のよい番組を供給すること、これがまず大原則としてあります。

 NHKが公共放送として責務を担い、運営のコストを受信料という形で得ている以上、民間が行う同様の事業を過度に圧迫する、そういった活動を展開することや、子会社との不透明な取引、子会社がNHKとの関係を背後にした過度の商業活動、利益追求活動、これに対して批判が集まるということも当然のことと考えております。そこが他の民放放送局と根本的に異なっていると言えるわけであります。

 問題の本質におきましては、その事業の必要性、これを認めつつも、国民からお預かりした大切なお金の無駄遣いを徹底的に排除して、その与えられた使命、国民の負託に対して真摯にこたえていってもらわなくてはなりません。

 NHKは、国民の信頼を失い受信料徴収が大変困難になりました平成十七年度以降、順調に受信料収入が増加しているということであります。と同時に、NHK予算の増額が認められたこと、これを受けて、NHKへの信頼が回復している、そういう自己評価もされているようであります。

 これに対して、前任の総務大臣は、NHK改革の必要性を強く主張して、受信料の見直し、また業務内容の改善について意見を発してこられました。しかし、結果として、大臣意見では、予算案に対して基本的にやむを得ない内容と認めるという評価がここのところ続いておりました。平成二十年度予算案に関しては、増田総務大臣は、予算案そのものに関する記述がちょっと少ないような、着実に遂行すべきであるがといった評価にとどめられております。

 そこで、大臣に改めてお伺いしたいと思いますが、二十年度予算案に対してどのように評価をされているのか、改めてお聞きしたいと思います。

増田国務大臣 お答えを申し上げます。

 前大臣あるいは前々大臣、いずれも、過去三年間の予算案について、ちょうど不祥事がいろいろと発覚をして、それまでの水準を大きく下回る受信料収入、こういうことがございましたので、そういった関係からも、大臣意見で「やむを得ない」という評価をしていた、こういうふうに受けとめております。

 来年度、二十年度予算でございますけれども、これについて、私の方で今回つけております意見、「これを着実に遂行すべきものと認める」というふうに申し上げておりますけれども、これは、受信料の公平負担ということに向けていろいろ効率的な契約・収納活動ということを推進して前年度を約二百億円上回る受信料収入を確保する、こういうふうに言っております。それから、これはまさに公共放送ということでありますが、国民・視聴者の要望に的確にこたえるということで放送サービスの充実に予算を重点配分している、それから、引き続き、業務の見直し、経費削減を推進する、こういうことでございますので、今申し上げましたような意見を付したわけでございます。

 これらの着実に遂行すべきものと認めるということに際して、今申し上げましたような措置にとどまらず、将来に向けて一層改革を進めていく必要がある旨、あわせて私の方からも指摘をさせていただいたというところでございます。やはりNHKとしては、受信料を広く国民に負担をいただいているということ、その重みを十分に理解していただきたい、そして、真に必要な経費を見定めながら将来の受信料の減額といったようなことも検討すべき旨、今回指摘をさせていただいたところでございます。

田中(良)委員 続きまして、会長にお聞きしたいと思います。

 数々の不祥事が発覚する中で、そもそもNHKのコンプライアンス、これについては、国会の同意人事によって就任した経営委員会が責任ある立場にあります。そして、そのもとに諮問機関としてコンプライアンス委員会が設置されて、コンプライアンス委員会が一昨年十二月に答申を取りまとめました。それに基づいてガバナンスをしっかり行っていくべきものであると私は認識しております。

 ところが、こうしたガバナンス強化が図られている間にも、NHK職員による数々の触法行為が発生しております。職員に、NHKが置かれている大変厳しい立場についてどうも危機意識が共有されていないのではないか、そういう懸念が生じているところでございます。もちろん触法行為に関しては個人の資質による部分もあります。一概にNHK組織を責めれば済むという問題ではございません。

 がしかし、ことし一月に生じた株式のインサイダー取引問題、これは、それでは済まない重要な問題であります。報道に携わる人間が職務を通じて知り得た情報を私的な利益のために使っていた、それも一部の人間だけではない、全国複数の箇所で個別に、関係を持たない人間によって同時進行的に行われていた、このところにこの問題の根深さを感じるわけであります。

 今回の問題発生に至るまで、経営委員会及びコンプライアンス委員会によって検討され、現場で実施してきたこのガバナンスのあり方、一体どうなっていたのでしょうか。

 また、二十年ぶりに民間から選出されました福地新会長、就任される以前、民間企業を経営されていたその立場でお感じになっていたこと、これを、NHKのコンプライアンス体制を見て思われるところを、ありのままに評価していただければと思います。

福地参考人 今回のインサイダー取引は、公共放送として、また報道機関として、あってはならない事件でございまして、視聴者の皆様の信頼を裏切ったことを大変申しわけなく思っております。

 これまで、コンプライアンス委員会の意見を参考にしながらコンプライアンス推進の組織を設置しまして、倫理・行動憲章とかあるいはコンプライアンス推進のアクションプランなど、コンプライアンス意識の徹底のための施策はさまざま打ってまいりました。しかし、御指摘のとおり不祥事は続いてきました。

 私は、ほとんどの職員は十分認識していると信じておりますけれども、一部の職員にまだ気の緩みや甘えがあって、コンプライアンス意識が徹底されていなかったと考えております。形はでき上がっていたものの、その形に心が込められていなかったというふうに認識をいたしております。

 現在、職員の株取引問題に関する第三者委員会で事実の徹底した解明に取り組んでいただいております。調査結果を分析いたしまして、なぜこのような事件が同時に三カ所で起こったのか、組織体質にも踏み込んだ、原因を突きとめて、実効性のある再発防止策を行っていきたいと思います。

 御指摘のとおり、緊張感のある、危機意識をきちんと持った組織に育てていくのが私の最大の仕事だろうというふうに心得ております。

田中(良)委員 それでは、経営委員会の委員長にも、その件に関してちょっとお聞きしたいと思います。

 今回のインサイダー取引発覚後、コンプライアンス委員会が、「改革提言が全く生かされていないことへのもどかしさを禁じえない。」という見解を表明しておられます。また、大臣も、今回のNHK予算に関して、インサイダー事件は「報道機関としての信頼性を揺るがす重大な問題であり、誠に遺憾である。」と意見陳述されています。

 コンプライアンス委員会の答申に基づいて経営委員会が提言を行ったにもかかわらず、NHKの行動に対して影響力を持ち得ていないのであれば、これは何かほかに適切な対策を練る必要があるのではないかと思いますが、委員長の御見解をぜひお聞きしたいと思います。

古森参考人 経営委員長の古森でございます。

 ただいまの件でございますけれども、確かに、平成十六年に前回の不祥事が発覚しまして以来、コンプライアンス委員会の設置等々でいろいろな提言、申し込みを行ってきたわけでございますけれども、結果として今回の事件が起きたことは事実でございます。結局、コンプライアンスの規程とかいろいろな対策がなぜ組織全体に浸透しなかったかという問題でございます。

 これにつきましては、私どもも経営委員会として責任を感じておりますが、今後、今回の件に関しまして、内部調査じゃなく、第三者委員会、調査委員会を設立いたしまして、徹底的に洗っていただきたい。それから、それに対してどういう対策が必要であろうか、徹底をどうするのかという話を含めまして、第三者委員会に答申を求めております。

 これが出てまいりましたところで、定着させるために、これは執行部の福地会長以下に先回も申し上げましたけれども、なぜ徹底しないのか、効果的な徹底をぜひ図っていただきたいということも強力に申し入れておりますし、大変大事な問題として、経営委員会としてはさらに関与していきたいと考えておりますが、現在のところそういうことを考えております。

田中(良)委員 ぜひとも、その辺のところのコンプライアンス、しっかりと組織全体に浸透していくように、お力添えをお願いしたいと思います。

 それでは、質問をちょっとかえまして、受信料収入に関して質問させていただきたいと思います。

 二〇〇五年の公金着服事件の発覚によりまして、受信料の不払い件数は大幅に増加をいたしました。その後、関係者の努力の成果か、受信料収入は着実に増加をしてきているようではあります。しかし、これは、国民のめがねにかなうNHK改革が行われてきたというその成果があると見る一方、民事手続などの督促強化の動きがあったことも一因ではないかと私は考えております。

 そうした中、この二十年度予算案の策定がほぼ終わった段階で、今回、再び国民の信頼を揺るがすインサイダー事件が発覚しました。このことによるNHKの受信料徴収に対する影響を会長はどのようにお考えになっていますでしょうか。もし仮に、影響が生じて受信料徴収が見込みどおりにならなかった、その場合どういう対策を立てるのか。また、こうした不祥事が生じた中、引き続き民事手続を経て受信料徴収事務を進めていくというやり方は、改めて国民に、NHKに対する不信、不安をあおることになるのではないかと私は危惧しておりますが、その辺の見解を述べていただきたいと思います。

福地参考人 今回の不祥事に伴います受信料の収納状況でございますが、三月末を若干残しておりますものの、今回につきましてはほぼ計画どおりの収納状況と見受けております。

 しかし、報道機関としての根本的な姿勢を問われる問題だけに、受信料収入への影響があるかどうかを判断するためには、もう少し時間をかけて慎重に見きわめなければいけないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、根本となります良質な番組の放送であるとか、信頼回復に向けた理解促進活動の推進でありますとか、営業現場での活動強化などによりまして、二十年度受信料収入予算はぜひとも確保したいと思っております。

 もし仮に、収入が大幅に予算を下回るような事態になりましたときには、まずは、予算執行段階であらゆる経費の見直しを行います。予算でお約束いたしました事業計画に支障を来さないように最大限の努力をしてまいります。

 以上でございます。

田中(良)委員 続きまして、古森委員長にお聞きしたいと思います。

 昨年、橋本前会長より経営計画案が提示されました。しかし、そのとき、経営委員会から八項目の指摘を受けて、差し戻しを受けたという経緯があります。

 その中には、受信料の値下げの項目が含まれています。また、NHKの次期経営計画について、値下げに関する検討が不十分ということで、経営委員会の承認が見送られた、私はそのように認識しておりますが、次期経営計画の策定に向けて作業を進めていく中で、前回計画を承認しなかったときと同程度の値下げを盛り込んだ計画が提出されたとしても、それなりの改革が実行されていればその経営計画をお認めになる、そういう方針なのでしょうか。それとも、この受信料の値下げについては、経営計画承認の前提条件としてお譲りになるつもりはないということなのでしょうか。お聞きしたいと思います。

古森参考人 昨年九月に、経営委員会は執行部案を承認いたしませんでした。この理由は、値下げ幅が十分ではないという理由ではなくて、いろいろな項目、例えば、今話しましたコンプライアンス体制の確立が十分でない、あるいは受信料の公平な負担という観点からの施策が十分でない、あるいは構造改革等の施策において内容の踏み込みが不十分であったという理由であります。

 この計画を認めれば、昨年の九月、計画を策定いたしまして、二十年度の予算から第一年が始まるわけでございますが、その五カ年の経営が、この経営計画案に従えば、NHKは時代に要請される改革が十分にやれないのではないか、したがいましてこのままでは認めることはできません、三年計画の一年残っておりますから、この二十年度の予算はそれに基づいて、加えられるものはさらにそれに加えてやりましょうということで、見送りました。

 今回の中期計画は、今後、本年の九月まで、また再び打ち出してまいりますけれども、値下げというのが絶対条件だとは考えておりません。これは前回のときも私は申し上げました、最初に値下げありきという問題ではありませんと。しかし、一部のマスメディアがそういうふうに伝えたということもございましたけれども、やらなければいけないこと、増強しなきゃいけないこと、補強しなきゃいけないことはやりましょう、これはやりましょう、お金も余分にかかるでしょう、しかし一方で、効率化しなきゃいけない部分もあるでしょう、それを足して引いて、その結果、値下げは幾らぐらい還元できますという考え方をやりましょうと申し上げております。

 今回の中期計画あるいは予算につきましても、そういう考え方で進んでおりまして、最初に値下げありきという問題ではございません。あくまでもNHKの総合的な諸項目にわたる改革ということを前提に考えております。

田中(良)委員 それでは、大臣にお尋ねしたいと思います。

 菅前大臣は、受信料徴収義務化との関連で、NHKに、目に見える形での改革の実現、受信料の値下げを強く主張されておりました。その実現がない限り受信料徴収の義務化は認められないと、三点の同時実現を主張しておりましたが、増田大臣の御見解はいかがでしょうか。

 私自身は、受信料徴収の義務いかんにかかわらず、必要な改革は進めて、そして無駄を省き、値下げも進めていくべきだと考えておりますが、その点についてお尋ねしたいと思います。

増田国務大臣 前大臣のお話が今ございましたけれども、私もやはり、受信料の支払い義務化ということを考えていく上では、そのためには、受信料の引き下げ、それからNHKの経営改革、これをセットで考えていかなければいけない、これは考え方として相通ずるものがある、このように思っています。

 他方、今まさに先生が御指摘いただきましたとおり、必要な改革とは、どういう状況であれ常に進めていかなければならない、やはりそこは、やるべきことをきちんとやっていかないと国民の信頼が得られないということでありますので、今、経営委員長や会長からも話がありました、コンプライアンスをさらに徹底する、それから公平負担を徹底する、業務全体についても洗い出しをして、そして抜本的な見直しをしていく、こういったような抜本的な改革ということについては、まさに組織を挙げて取り組んでいただきたい、このように考えております。

田中(良)委員 福地会長は、今般、NHKという公共放送の責務を担う組織のトップに就任されました。民間からの出身は二十年ぶりということであります。この人事は、NHKの内輪の論理、甘さを超えてNHKを変えていってほしい、そういう願いのもとに私は実現したものと考えております。福地会長にはぜひ、NHK改革に向けた国民の期待、これをしっかりと受けとめて、NHKに新風を吹き込むこと、改革を実現していっていただきたいと思います。ぜひ、御活躍を御期待いたします。

 以上で終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、関芳弘君。

関委員 私は、自由民主党の関芳弘でございます。

 本日は、NHKの予算に関しまして質問させていただくんですが、まず最初に、先ほどNHKの会長が言われた、現場で現物を現実にという言葉、本当にいい言葉だと思います。実は私も、約十七年ほど民間の企業で働いて、今代議士として一年生でおるわけなんですけれども、常に現場で現物を現実にという考え方を、民間のときから引き続いて、代議士となった今も、何とか実現するように、そのような行動ができるようにと日々頑張っておるところでございます。

 きょうはちょっと声がかれているんですけれども、なぜこのようになっているかといいますと、まさに現場で現物を現実にということで今走り回っております。

 どういうことかというと、先般三月五日に、私の選挙区は神戸の須磨区と垂水区なんですが、ちょうど淡路島と神戸の垂水区の間では明石海峡大橋がつながっておりますが、あそこの海峡のところで三隻の民間の船がぶつかったんですね。沈んだ。亡くなった方まで出たということなんですが、この三隻の船が沈んだときに、沈んだ船からぽこぽこ油が出てきて、そこの現場の漁業関係者の漁ができなくなったというふうな形でございます。

 ちょうどそこでは、イカナゴのくぎ煮、これが申込書になるわけなんですが、そのイカナゴの漁ができない。これは内閣総理大臣賞までいただいているような名物の、つくだ煮のようなイカナゴのくぎ煮なんですね。また、須磨のノリ、神戸市の須磨区でノリの漁をしているんですが、それに油がついて、これはぴかぴか光っていますけれども、ノリが百トンとれても、一滴油がつくと全部百トンは品質保持のために捨ててしまうんですね。

 こういうふうな状況が起こっておりまして、私は、三月五日にその事故が夕方に起こって、六日にはもう東京から現場にすぐ飛んで帰りまして、漁業関係者に船を出してもらって、その現場の沈没した船のところまで行って、油が出てきているのを確認して、これは大変だということで、本当に会長のおっしゃるとおり、現場で現物を現実にということを実践してやっているところでございます。

 民間の事故でございますので、民間の保険だけで対応してくれということで、補償が出ないということで、今大変で、大臣の間を走り回っておるようなところでございまして、先般は、衆議院議長や元総理や各大臣のところを走り回っておるんですが、そういうふうな形をやっておりまして、政治家というのは、国民を愛せないといけない、政治を国民の声に立ってやらないといけない、これがやはり公に仕える者の行動の仕方だと思うわけです。

 一方、NHKさんは公共放送でございます。この公共放送、公ということを今私も一生懸命申し上げたわけなんですが、この公というのは本当に責任が重いですね。

 私は明治維新を起こした幕末の志士が大好きなんですけれども、西郷隆盛さんがこんなことを言っています。「志の道」という本で、小野晋也さんという愛媛の人が出している本なんですが、生命も名声も要らぬ、官位も要らぬという人間は始末に困るんだ、この始末に困る人間でなければ艱難をともにして国家の大問題を処理することはできないと言っているわけですね。この言葉こそが公の、今国民が公の人たちに対してちょっと不信を持っていると思うんですけれども、国家の大問題を処理するにはこういう気持ちがないといけないと思うんですね。

 そうしたら、NHKは公共放送、まさに公でございます。この公共放送が民放と違う、公という、公共という冠がついている、ここのところの意味はどうあるべきなのか。今、インサイダー問題とかいろいろなことで、問題がいろいろ出ています。この公たるもの、我々政治家や官僚も反省しないといけない点は多々あるのかもしれません、まさにあるんじゃないかと私は思っています。一方、公共放送のNHKにおきましても、公たるもの、どうあるべきか。この公共放送の使命、役割、それにつきまして、大臣とNHK会長から、まずは初めに聞かせていただきたいと思います。

増田国務大臣 今先生の方からお話ございました点も踏まえて、私なりに公共放送ということを整理させていただきたいと思いますが、まず、我が国の放送というのは、公共放送とそれから民間放送、NHKと民間放送という二元体制になっておりまして、お互いにそれを切磋琢磨して、そして発展をしてくる、こういうことで来たわけでございます。

 いずれも放送でございますので高い公共性が要求されるわけですが、とりわけNHKにつきましては、まさに今お話ございましたとおり、公共放送として、放送法に基づいて、あまねく全国で放送するという、このあまねくがついておりますし、それから、豊かでよい放送番組を提供する、国際放送の実施といったようなことで、民間放送とは異なる社会的使命がある。民間が必ずしも視聴率だけでということをあえて言うつもりはございませんけれども、やはりそういった視聴率にとらわれることなくいい番組を提供していくというのがまさにNHKであろう、そこが大きな違いの一つではないか、こうも思うわけでございます。

 さらに、もう一つ大事なこと、忘れてならないのは災害あるいは緊急報道ということでございまして、今お話ございましたとおりの瀬戸内での船の衝突、これも大変な緊急事態でございます。あるいは阪神・淡路のような災害といったようなこともございますときに、公共放送としての社会的使命それから責任を十分踏まえて、正確な情報を被災者の皆様方に提供していく、迅速に、しかもきめ細やかに提供していく、こういったこともNHKの大変重要な役割でございまして、そうしたことに今回の総務大臣意見でも言及をしているところでございます。

福地参考人 私は、NHKに参りまして、私の友人、知人あるいはNHKの諸先輩からいただきましたお手紙の中に、本当にNHKに対する期待の大きさというものをしみじみと感じさせていただきました。

 また、NHKが実施をしております、視聴者の皆様にNHKの年次方針についていろいろなお約束をしております。その約束の評価報告書を見ましても、視聴者のおよそ七割の方が、受信料制度に支えられた公共放送としてのNHKはぜひ必要だというふうにお答えをいただいております。こういったことから見ても、NHKの重要性というものを身にしみて感じております。

 NHKは、視聴者の皆様に公平に負担していただく受信料に支えられております公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されることなく、自主自律を貫きまして、信頼される確かな情報やあるいは多様で質の高い番組を社会全体に分け隔てなく提供していくことで、そうした期待にこたえてまいりたいと思います。

 それによりまして、視聴者・国民の知る権利に奉仕いたしまして、健全な民主主義の発展と文化の向上に資することが、公共使命としてのNHKの役割だと心得ております。こうした役割をしっかりと果たしまして、責任を果たしてまいりたいと思います。

 以上でございます。

関委員 まさに大臣や会長の言われるとおりだと私も思います。まさにその公共性、しっかりと今後、今失われつつある信頼を取り戻していただきますように、よろしくお願いいたしたいと思います。

 今も大臣や会長からいただきました言葉の中に、公平性という言葉もあったと思います。この公平であることということを今少し私は問題に感じているんです。

 それは何かといいますと、例えば、未契約の人たちが一千万人いる。また、契約はしていますけれども実際には不払いの人が五百万人ぐらいいて、一千五百万人ぐらいの人が、本当は国民の義務として払わなければいけないこの公共放送料金を払っていないというふうなことがあって、大体その金額は三千億円にも上るのではないかと言われているような次第でございます。

 この払っていない人の中に、例えば、ホテルであればたくさん泊まる部屋がございますけれども、そこの各部屋に一台一台テレビがあって、本当にホテルは全部払っているのかな、また、企業も各部署、各部署にテレビがたくさんあって、NHKの契約をしておかなければならない、全部受信料を払わなければならない、これは僕は当然のことだと思うわけですが、そこが本当は十二分に払われていないのではないかなということが自民党の部会でも以前に問題視されて、どうなっていますかと聞いているところでございまして、もし十分でなければ対策をとってくださいと言っているところでございます。

 そのホテルや企業なんかに関しましての受信料の受領状況はどうなっているのか、また、対策をとっていらっしゃるのであれば、それはどのようになっているか、お聞かせ願いたいと思います。

福地参考人 法人、事業所の契約状況は、平成十八年度末で、契約数二百十万件、契約率は七三%となっております。

 受信規約どおり、設置場所全数分をお支払いいただいているところもございますが、御指摘のように、中には受信料の支払いに非協力的な事業所もございまして、設置状況の把握や、それに基づく契約が十分でないところもございます。今後きちんと対応していくべき課題だと認識をいたしております。

 こうした課題を踏まえまして、二十一年二月から実施予定の事業所割引では、事業者の方に適正な申告を求めまして、敷地内の設置場所の全数分の受信料をお支払いいただくときにのみ二契約目から半額にするということによりまして、設置場所の正確な把握と事業所契約の増加が促進されるというふうに考えております。

 受信料をいただきますためには、公共放送や受信料制度の意義を誠心誠意御説明いたしまして、御理解と御契約をお願いすることが基本でございます。このため、放送局長によるトップセールスを初め、公平負担の徹底に向けまして全力で取り組んでおります。それでも御契約をいただけない場合の最後の手段として、民事訴訟の実施に向けた準備も進めてございます。

 以上でございます。

関委員 公共放送として受信料を国民の方々からいただく、私は、国民の方々もそこは全員が全員しっかりと契約して払っていくべきだと思うわけなんですが、一方、払われない方に対しましては、NHKとしましては、払っている人と払っていない人がいる、これは不公平でございますので、公平性を保つためにも、しっかりとその点につきましては対策をとって実行に移していっていただきたいと思うところでございます。

 続きまして、受信料の問題の二点目でございますが、ここはちょっと考え方をお聞かせ願いたい。実は私のお願いの方でもございますのですが、私の住んでおります地元の神戸市須磨区、垂水区は、十三年前に阪神・淡路大震災という非常に大きな震災を経験して、いまだに傷跡は大きく残っています。このときに私も非常にいろいろな思い出ができたわけなんですが、やはり一番被災地の人たちが要求するのは情報なんですね。

 先ほども、大臣や会長の方から、公共放送というのは、正確に早くきめ細かく、できるだけ震災とかそういうふうな災害情報は流さないといけない、これこそがまさに公共放送の役目であって、受信料をもらえる、また国民の方々に説明のしやすい公共放送としての役割、責任なんだというお話がありましたけれども、まさにそのとおりでございます。

 今、私の地元の方の自衛消防団の青年団の方から意見をいただいていますのが、それぞれの自衛消防団のそれぞれ建物があって、消防車とか入っていて、年末には火の用心かちかちとかいって地元をいっぱい回って、私も一緒に回ったりするんですけれども、あの自衛消防団のところにはテレビが置かれていて、何か緊急事態には、災害、いわゆる火事が起こった、緊急事態だ、情報をとってすぐにそこに走ろうというふうな形の災害に対する対策、消防の第一線としての対策をとらないといけないという役目があって、これはまさに消防署がやらないといけないんですけれども、民間の力も活用しよう、オール・ジャパンで火災に対しては対応しようということで、公の役割を非常に担っているわけでございます。

 そこに置いているテレビ、NHK受信料に関しましては、私は、これは余りにも公的な意味合いを深く持っていますので、例えば学校でNHKの教育なんかの授業を受けるときに、テレビを見て勉強しやすいようにということで、学校なんかには受信料を免除している場合がございますけれども、こういうふうな自衛消防団の団体のところに置かれているテレビについては、本当に年末だとか限られたときしかテレビもつけませんし、非常に公共的な意味合いを持っていますから、ここはNHKさんとすれば、もう受信料は免除ですわとやっても、これは別に公共放送としての役割に対しての責任は十分認識されるんじゃないかなと思うわけなんですが、それに関しましては、会長、どのように思われますか。お願いします。

福地参考人 御指摘の件でございますが、消防団の事務所、集会所でございますかに設置したテレビにつきましては、これも、見ていらっしゃるか見ていらっしゃらないかにかかわらず受信契約の対象でございますが、しかし、原則として、消防団を所轄する自治体から受信料をいただいております。受信料をお支払いいただいているという格好になっております。

 現在、施設に対する受信料の免除は、社会福祉施設と学校の教室に限られておりまして、免除措置は、一般の契約者の皆さんの負担によって成り立っておるものですから、本来は行政で負担していただくという考え方がございます。施設に対する免除措置は、そういったことから逐次廃止をしていく方向でございます。

 ホテルや企業に対しましては、受信機の設置状況に応じまして適正な受信契約への働きかけを行っているところでございまして、消防団の事務所の受信契約につきましても、受信料を公平に負担していただくという観点から、これは自治体を通じてでございますが、御理解をいただきたいと存じます。

 以上でございます。

関委員 今御説明いただきました内容、わからないでもないんですけれども、自治体の方も、あくまでも国家国民に対するいわゆる役目を担っているところでございますので、そこのところにつきましては、今後もう少し検討いただければなと意見として申し上げておきます。

 それでは、最後の質問をさせていただきますが、これは、報道の社会的責任についてという非常に根本的な、マスコミ全体における質問でもあるわけなんですが、きょうはNHKの予算の質問ということで、代表してNHKに答えていただきたいと思うわけなんです。

 報道というのは、当然のことながら、自由性が確保されるべきだと私も思っていますし、信じております。報道の自由性は確保されるべきだ。しかしながら、一方、今、世の中におけますマスコミの影響というのは非常に大きなものがございます。これはもう本当に周知の、みんなの考え方の一致するところだと思います。

 例えば、社会で発生した事件、何か事件が発生して、それは本当は社会の中ではごく一部の、例えば全体でいえば一%ぐらいの影響しかない事件かもしれませんけれども、それを放送することによって、その一%の事件が、それを受け取って、そのテレビを見た、報道を見た国民の方々は、ああ、世の中って今こんなような状況になっていて、全体がこのような状況なのか、これが一〇〇%なのか、丸々すべてがこんなような状況になっているのかなという思いを抱く場合もあるかもしれません。

 通常、報道というのは事件があって報道しますから、それは、例えば一%の影響しかない事象であっても、九九%の何もない通常の日常生活は報道されませんから、一%のことだけが報道されるわけであって、国民はそれに対する影響を非常に大きく受けるんだと思うんですね。それはもう仕方のないことだと思います。

 しかしながら、一方で、国民が、その一%の影響しかない事件の小さなことだけを例えば何度も何度も繰り返して報道されたりしますと、ああ、もう国全体がこうなんだとかいうふうな考え方を持って、自分たちはこれに対してはこういう意見を持つぞと、本当は九九%の何もないところで判断をしないといけないにもかかわらず、一%の部分で判断をしてしまうようなことがあるとしますと、これは国家の世論の形成において少し問題があるのではないかなと私は思うところでございますので、放送の公共性における、いわゆる偏った世論の形成がなされないように、いかなる配慮がなされているのかというところを聞かせていただきたいと思います。

福地参考人 日々の取材や番組制作を行う上での判断の指針といたしまして、平成十八年の三月に公表しておりますNHK新放送ガイドラインというのがございますが、これによりますと、「視聴者にできる限り幅広い視点から情報を提供することを目指す。」というふうに定められております。

 ニュースや番組を取材、制作する場合、特に意見が対立する問題や特異な事象などを扱う際には、できるだけ多角的に問題を明らかにし、異なるさまざまな意見を紹介するように努めております。それによりまして、視聴者がみずから判断することに役立つ情報を提供できると考えております。社会的に関心が高い問題につきましては、事態の展開などに合わせまして、何度もニュースや番組で取り上げることになります。それは、視聴者に必要な情報を届ける報道機関の責務として当然のことだと考えております。しかし、その場合も、単なる繰り返しになることを避けまして、新しい情報や異なる視点を加えるように努めております。

 以上でございます。

関委員 それでは、時間となりましたので、これで質問は終わらせていただきますけれども、新会長に期待するところ大でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本日はありがとうございました。

渡辺委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 会長、今までが自民党、これから公明党でございます。大分質問の性格が変わるかもしれません。国会は、こうやってばんばん質問していきますとだんだん質問が深化しますので、お許しをいただきたいと思います。

 こうしてきょう、古森委員長そして福地新会長をお迎えして議論ができるというのは、与党の一員としてほっとしております。

 一等最初に不祥事の問題も言おうかと思いましたが、先ほど同僚議員から、懇切丁寧な、一つ一つ例を挙げての不祥事の今までの流れも御説明がありましたから、質問を変えたいと思っております。

 せっかく古森委員長がいらっしゃいました。委員長には、新しい会長をお迎えになってどういうお気持ちなのか、これで信頼関係を持ってうまいぐあいにいくというふうに思っておられるのか。ここにいるメンバー、みんな実は大変心配をしていたメンバーでありまして、そんなことも聞いてみたいなと思っているんです。

 具体的には、新体制になったNHKでございます。特に、先ほど古森委員長からも御説明がありましたように、中期計画策定に当たっての行ったり来たりの話もありました。ともかく、三年計画の最後の年、平成二十年度の予算は、まずはこれでしっかり新会長のもとで取り組んでもらう、ただその中で、新しい経営計画に向けて、それはやはり改革できるところはしてもらうんだ、こういう期待のお話も先ほどあったかと思うんですが、古森経営委員長としては、新会長をお迎えになって、新会長に、この二十年度予算、この中で改革をするとすれば、まずはどのあたりを取り組んでもらいたいという期待を持っておられるのか、通告をしておりませんが、お話をいただければ幸いでございます。

古森参考人 質問にはございませんでしたが、二十年度予算は、先ほども申し上げましたように、新しい経営計画ではない、もともとの経営計画に沿ったものでございます。ただし、受信料の、先ほど来あります業務用の徴収をどうするか、あるいは身障者に対してどうするか、こういうものも早目に盛り込みましょう、それから、受信料の収納率の向上その他についても盛り込めるものは盛り込みましょう。

 それから、放送番組の充実というのは、ことしは特に、洞爺湖サミットですとかオリンピック、それからアメリカの選挙等々のいろいろなビッグイベントがございます、こういうものを含めまして、費用的に増強もしなければいけない。それからもう一方は、先生方から特に強い御希望がございます国際放送の充実、日本のオピニオン、日本の情報というのを正確に英語で外国人向けにやっていく、充実しなければいけない、こういうものに対する特別予算。それから、地域放送の充実、これもまた先生方からいろいろお話を、御希望といいますか何といいますか、御指導いただいておりますけれども、そういうものについての充実等々、含められるものは含んでおります。

 以上でございます。

桝屋委員 今、委員長の方から、新会長のもとで二十年度予算の中で期待をする点についてるるお話をいただきました。通告をしておりませんで申しわけありません。

 そこで、会長、受信料の収入の件なんですが、先ほども議論がありましたけれども、ここまで一連の不祥事が続きますと、私の住んでおりますマンションでもそうですが、NHKの受信料はもう絶対払わぬぞというふうにかたい意思を固めておられる方はいっぱいいるわけですね。そんな中で、本当にこの二十年度の六千三百五十億円という受信料収入、この収入予算が確保できるのかということであります。先ほど、十九年度はほぼ三月末、見通しとしては予定どおりいきそうだというお話でございましたが、それは、十九年度予算収入見込み六千二百六十億円、予算数字を記憶しておりますが、そこは何とかいくんだ、いきそうだ、こういうことかどうか、もう一回確認をさせていただきたいと思います。

福地参考人 十九年度は予算を上回りまして、現在の見込みどおり推移すると思っております。したがいまして、二十年度の予算の六千三百五十億円は何としてでも達成したい、これが明年のNHKの業務活動の基本でございますので、達成を目指しておりますし、営業もその面で努力をしてもらっております。

 以上でございます。

桝屋委員 先ほど経営委員長の方からもお話があったわけでありますので、ぜひとも御努力を、お取り組みをお願いしたいと思います。

 先ほどの会長のお答えの中に、もしこれから国民の不信が大きくなって収入不足になった場合どうするんだ、こういう説明の中で、その場合はあらゆる経営努力をして何とか二十年度の予算を執行したい、こういうお話でありましたが、国民から見ると、会長がそうおっしゃると、二十年度予算、まだ大分だぶついているのかな、余裕があるのかなと思われるのが落ちでありまして、私は大変なことだろうと思っておりまして、お答えにはお気をつけいただきたいな、こう思う次第であります。予算を変更するという事態がないように、新しい収納体制も組まれるようでありますが、しっかりとお取り組みをいただきたい、お願いをしておきたいと思います。

 それから、会長になられて直ちにここまで詳しい話をしちゃいかぬのでありますが、きょうはもう一点、次期経営計画策定に向けての話にもつながることでありますけれども、子会社、関連団体の話であります。これもかねてから会計検査院あるいは参議院の決算委員会、警告決議までも受けている事柄でありまして、特に利益剰余金処理の問題、さらにはNHKとの取引の透明性、これをしっかり確保しなきゃならぬという指摘を受けているわけでありますが、この点については新会長としてどうお取り組みになるのか、お答えをいただきたいと思います。

福地参考人 会計検査院からも御指摘をいただいておりますNHKの外部団体からの配当金の増額の件でございますが、NHKは平成十七年に配当の方針を転換いたしました。子会社に対しまして、積極的に配当するように、増配するように指導しております。これによりまして、十八年度は配当総額四十九億円、十九年度は三十三億円の大型配当を実施いたしました。この結果、子会社の利益剰余金の総額は七百億円余りとなりました。このうち、固定資産や日常の運転資金などを除いた、配当や新規事業に充てることのできる余裕資金は百二十億円程度と試算をしております。

 二十年度も大型配当を継続することにしておりまして、NHKの受取額で二十五億円、配当総額で三十四億円を予算計上しておりますが、各社の十九年度決算によってはさらに増配を検討いたすことにしております。

 また、NHKとの取引につきましては、平成二十年度から、前年度の契約を対象に、関連団体の実績原価を外部監査法人によります実地調査で検証することにしておりまして、こういったことで、今後とも契約の透明性の確保ということに一層努めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

桝屋委員 先ほど、指摘を受けて大型配当など相当努力をしている、こういうことであります。今、会長の御説明では、二十年度、六千五百億円ぐらいの事業収入の中で配当は二十五億という数字をお示しになりました。関連会社三十四団体、子会社売上高二千八百億というふうに、そんな規模だろうと理解をしておりますが、その中でこの二十五億という数字が適切な数字かどうかということは、時間があれば、本当は一つ一つチェックをしたいわけであります。

 おっしゃったように、そうはいいながら、二千八百億ぐらいの収入であっても、本当の当期純利益は三十億とか四十億だ、こうおっしゃるのかもしれませんが、やはり二千八百億、そういう大きな規模の中で、NHKにどれだけ貢献してもらっているかというと、二十五億ということになるわけでありますから、そこの取り組みはぜひとも新会長のリーダーシップのもとに、さらに国民が納得できるような形で進めていただきたい、お願いをしておきたいと思います。

 それからもう一点、これからのグループ経営という観点であります。まさにこれから次期経営計画策定に向けての作業に入っていくのだろうと思いますが、これは古森経営委員長にもお聞きしたいわけであります。

 まさにメディアの大競争時代というものを今迎えているというふうに思います。経済社会の構造変化はもちろんでありますし、民間事業所がまさに連結経営の時代に入っているということ、さらには、放送の完全デジタル化、あるいは通信との連携ということを考えますときに、時代は大きく変わっている。その中で、三十四の関連団体、この再編統合をどう進めていくかということ、これは経営委員会で今日までどういう議論をされているのか、ぜひとも聞かせていただきたいなと。グループ経営の観点からどんな方向性をお持ちなのか、まずは経営委員長にお尋ねしたいと思います。

古森参考人 経営委員会といたしましても、公共放送としての価値を最大化していくためには、NHK本体だけでの部分最適では不十分でありまして、グループ経営を最適化することが重要である、御指摘のとおりであります、考えております。

 具体的に、今後、NHKの事業ドメインを明確にいたしまして、何が本体でやる分野か、強化する分野か、それから関連団体に何を任せるのか、あるいはアウトソーシング等々の外部化すべき分野はどれであるか、大まかにこの三つの分野ぐらいに分けまして、より効率的、効果的な業務遂行が図れるようにグループ戦略を策定すべきだというふうに考えております。

 特に関連団体につきましては、これまでNHKの人材の受け入れ、受け皿という一面もございます。今後は、こういうことだけではなくて、副次収入の増加への寄与、あるいは人件費コストの抑制、業務効率化等、目的を明確にして、グループとしての最大の効率化、最大限のパワーを発揮できるように、再編、独立等あらゆる選択肢を考えております。

 今まで何をやってきたかということでございますけれども、今までは、はっきり言いまして、その検討が十分でございませんでした。新執行部とともに、今後、九月までに行います新計画の策定の中で思い切って取り組んでいきたいということをお話ししたいと思います。

 以上であります。

桝屋委員 ありがとうございます。

 今、委員長おっしゃいましたように、私も、こうしたグループ経営の観点からの子会社の再編統合ということは、NHK全体の職員が一万一千ぐらい、その中で五千人以上の職員を抱えるこのグループ経営ということ、これは本当に戦略が必要だと思っておりまして、そうした、次期経営計画に向けて、経営委員会としてもしっかり検討していくということをぜひともお願いしておきたいと思います。

 会長にもお聞きしたいわけでありますが、二十年四月から地域会社を一本化するというようなこと、さらには技術系会社も統合されるということはお決めになっているようでありますが、さらにそれから先、二十一年以降に向けて、会長としての、まだそこまで全部目が行かないかもしれませんが、今、頭を整理されていることを御開陳いただきたいと思います。

福地参考人 御指摘のとおり、現在のNHKにとりまして、別の観点から見まして、グループ経営ということが物すごく大事だというふうに思っています。決算面の連結という見方だけではなくて、いろいろな業務全体の中で、NHKと関連団体が、親子という関係以上に、グループの一員としてそれぞれが最大の効果を発揮していくということが一番大事なことだと思っておりまして、そういった取り組みを進めてまいりたいと思います。

 現在の放送のデジタル化、通信との融合、社会経済構造の変化など、新しい時代に対応するために、関連団体の役割、位置づけを明確にいたしまして、NHKと関連団体が一体となった、透明性のあるグループとして再構築をしていきたいと思っております。

 御指摘のとおり、四月冒頭には、地域制作会社六社を、全国をカバーするネットワーク会社、NHKプラネットとして一社に統合いたします。技術系の子会社二社を、放送技術とITソリューションの融合を目指す新会社といたしまして、NHKメディアテクノロジーとして、これも統合いたします。

 それから、地域制作子会社の統合によりまして、地域から全国へ、地域から世界へといった情報発信力をこれまで以上に強化してまいりますなど、また、子会社の統合ではテープレス化など放送技術のデジタル化にいち早く対応いたしまして、視聴者の期待にこたえてまいります。

 さらに、今後の再編統合は第二次の中期計画の中に織り込んでまいりますが、経営統合によってシナジー効果を生み出すということが大事でございまして、報道部門、事務部門での具体的な検討をこれから進めてまいります。

 以上でございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 新会長と経営委員長にお願いをしておきたいと思います。

 もう一つのファクターは、今、国会の中でもそうでありますが、霞が関全体として、政府関係のさまざまな公益法人でありますとか関連団体の整理統合という大きな流れにあります。そこは、国民の目線から見て信頼される、無駄を省くという観点があるわけでありまして、ぜひとも経営効率化という観点で、とりあえず金と人の流れ、ここは厳格にチェックをしてもらいたい。

 きょうは時間がないからやりませんが、随意契約等の問題についても、そうした観点も含めてしっかり改革を進めていただきたい、お願いをしておきたいと思います。

 最後になりますけれども、公益法人七団体をお持ちだというふうに思っておりますが、これはどうするのか。ことしの十二月からいよいよ公益法人改革が進むわけでありますが、二十五年末までにじっくり考えようと、余りぬるいお考えをお持ちにならないように、早く方針をお決めになって、今のような関連団体、子会社の整理統合も含めて、私は、本当に公益なものは公益として、N響等もそうでありますが、しっかりと育てていただきたいと思っているわけであります。これは、方針は今検討中ですか、語れることがあればお聞きしたいと思います。

福地参考人 NHKの中には、現在、NHK交響楽団を含めまして六つの公益法人がございまして、御承知のとおり、公益事業が五〇%以上あるかどうかということが一つのかぎでございますが、こういった問題を検討いたしまして、この収益業務の他団体への移管でありますとか、一般財団法人への変更、そういったものに抜本的に取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

桝屋委員 くれぐれもお願いしておきますが、二十五年末までにやればいいということではないということ、それから、例えば、もう時間がないのでやれませんが、財団法人NHKサービスセンターあたりは、まさに事業型の財団というようなことを盛んにおっしゃって、全体の事業の中で相当一般事業もある、こんなものは財団としてやっていかなくてもいいのではないか、大胆に、民営化等も含めて御検討されるべきではないか、こう思っておりまして、お願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口和史でございます。

 まず最初に、緊急災害時の対応についてお伺いをしたいと思います。

 先ほども、この委員会が始まってすぐに地震がございました。栃木県で震度四、そして東京では、どうもこの千代田区だけが揺れたようでありまして、震度二ということで地震があったわけでありますけれども、きょう、まずお伺いしたいのは、緊急災害時の字幕放送、それから手話放送についてお伺いしたいと思います。

 昨年の新潟県の中越沖地震の発生のとき、これは午前十時十三分だったわけであります。放送はその直後、緊急災害放送に切りかわったわけでありますが、字幕放送、耳の不自由な方々に対する字幕放送が、その約二時間後の正午のニュースまで行われなかったという状況がございます。つまり、被害状況や避難勧告等の情報がそういう字幕で伝わらなかった、こういう現実がございました。

 NHKは、放送法、それから災害対策基本法により、防災上の指定公共機関というふうに位置づけられております。すべての住民に理解をされるように情報を提供することが公共放送の使命だというふうに考えるわけでありますけれども、今後のNHKの取り組みについてお伺いをしたいと思います。

日向参考人 お答えします。

 御指摘のように、新潟県中越沖地震の場合は、十時十五分に、NHKではすべてのチャンネルを断しまして、速報を伝えております。御指摘のように、そのときにすぐに生放送での字幕放送というのは実施できませんでした。文字放送というのを、アナログ放送ですけれども、やっておりまして、そちらの方は十時四十分ごろから始めております。

 今御指摘のように、生放送での字幕放送というのは非常に今幾つかの課題を抱えておりまして、一つは、どうしても正確な情報が必要だということです。今、音声認識装置というのが開発されているんですけれども、まだ完全なものではないということで、それまでの間、当面はテレビの画面の文字のスーパーを、なるたけ地図とかそういうものも含めて小まめに出そうということを一つ考えております。それから、もちろん音声認識装置の開発を促すということが必要だと思いますし、それは今後精力的にやってまいりたいと思います。

 さらに、放送だけではなくて、データ放送とか、それからインターネットによる、ホームページその他によるサービスも、そこによる情報の提供もあわせてやっていきたいというふうに考えております。

谷口(和)委員 今、音声認識の技術のお話もありました。災害時の情報伝達というのは、時には人命にもかかわる大事な問題でありますので、どうか、その技術的な開発も含めて、一層、災害時の放送について、字幕放送、これが実施できるように全力を傾けていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 それでは、続きまして、先ほどからもちょっと質問には出ておりましたけれども、インサイダー取引のことについてお伺いをしたいというふうに思います。

 私も三年前まで、報道機関に約十六年おりました。この問題を聞いて、初めてこの事件を耳にしたときに、非常にびっくりしました。報道機関にいた者としては、これは本当に基本中の基本でありまして、こういう、報道機関でしか手に入らない情報を使ってみずからが何か利益を生み出す、もうけるということはあってはならないことだというふうに思っております。

 先ほど、会長のお話にもありましたように、会長、就任される前の二十日から、例えば川崎のコールセンターを突然訪問されて、苦情を現場で直接耳にされる、こういうことも取り組みをされているようでありますけれども、そういう意味で、国民の期待は、民間から来られたということで、改革に向けての会長の取り組みは期待をされているというふうに思っております。

 そこでお伺いしたいんですけれども、今回、この事件の原因はどこにあったのか。それから、今後どうやってこの再発防止を図っていくのか。第三者委員会で今検討中ということではあると思いますけれども、ぜひ会長御自身のお言葉で、この原因のホシがどこにあったのか。そして、再発防止に向けて何をコアとしてやっていかなければいけないのか、その辺のことを確認させていただきたいと思います。

福地参考人 御指摘のとおり、この原因を明確にしていくということは現在第三者委員会で進めておりますが、私の見方では、三年前の不祥事以来いろいろなことで手は打ってきております、それにもかかわらず不祥事が絶えなかったということについては、いろいろな要因が複合してこういった結果になったと思っておりますけれども、そういった緊張感の不足、それから、何よりもやはり、この仕事に携わる者としてあってはならないこと、まさに倫理観の欠如というのが大変大きいと思います。

 第三者委員会の結論は結論として、まずできることからやっていこうということで、四月一日から新入職員が入ってまいります、受信料の重みを肌で感じてもらうために、今まで新入職員による現場での受信料収納研修は大体一週間程度でございました。私は、営業当局に、一カ月続けるように指示をいたしました。もっとも、一カ月続けて営業マンに取りつきますと、営業マンの仕事ができなくなってまいりますので、そこは、要するに視聴者と接触するという仕事を一カ月は続ける、視聴者というものがNHKにとってどれだけ大事なことかというものを身をもって覚えてもらうということをまず始めます。

 それから、何をおきましても、やはり緊張感の欠如というものはトップが現場に訴え続けていかないと、一回の書面とか、一回の説示で片づくものではないと思っております。私は、四月一日以降、十五分か二十分か、余り長くはなりませんけれども、毎月、職員に対して、ネットワークを通じて、非常に美点凝視で、いいことを褒めてやることと、視聴者からの耳に痛い話を全員で共有するような活動を続けていく、それから現場での職員との対話を続けていく、そういった中で緊張感を身をもって覚えてもらう、そういうことに徹していきたい、そういうふうに考えております。

谷口(和)委員 ぜひ、これはもう二度と起こしちゃいけない事件でありますので、どうか会長自身のリーダーシップで、二度とこういうことが起こらないように最善を尽くしていただきたいというふうに思います。

 次に、地デジのことについてお伺いをしたいと思います。

 今回の、来年度のNHKの予算、これに対する総務大臣の意見が付されておりますけれども、この意見を見ますと、例えば中継局の整備とか、それから共同受信施設のデジタル放送対応等にできる限り前倒しをして取り組む、こういうことも含めて、完全デジタル化に向けて先導的な役割をNHKに果たしてもらいたい、こういうことが書かれております。

 それで、まず会長にお伺いしたいんですけれども、二〇一一年七月の完全デジタル化に向けての今後の取り組み、それから決意をまずお伺いをしておきたいというふうに思います。

福地参考人 二〇一一年の完全デジタル化に向けまして、NHKは最優先課題として不退転の決意で取り組んでまいります。具体的には、中継局の整備やNHK共聴のデジタル化を積極的に進めますほか、衛星等を利用した補完的な手段もあわせて、すべての御家庭に地上デジタル放送をお送りすべく、最大限努力をいたしてまいります。

 二十年度以降三年間で千八百カ所に及ぶ中継局をつくる、一千億円以上の投資が必要でございます、もちろん予算に織り込んでおりますが、現在、計画どおり取り進んでいるということを技術当局より聞き及んでおります。

 以上でございます。

谷口(和)委員 それで、ちょっと細かな点を確認させていただきたいんですけれども、来年度の予算で、今も御指摘ありました中継局の整備、それから共同受信施設のデジタル化による視聴可能地域の拡大ということで三百二十六億円を計上しております。その詳細と、それから、この対応を打った結果として世帯カバー率がどこまで伸びてくるのか、これをまず確認させていただきたいと思います。

福地参考人 御指摘の投資によりまして、九六%が視聴可能区域になると聞き及んでおります。

 以上でございます。

谷口(和)委員 それからもう一つ、地デジネットワークの整備と受信状況調査ということで十五・三億円の予算を計上しております。この中で、新規のものとして、自主共聴のデジタル化支援のための事前調査として十・二億円、これが入っているわけでありますけれども、一体どういう調査をするのか、それから、その調査を受けて、どういう対応、取り組みをしていくのか、これをお伺いしたいと思います。

福地参考人 十億二千万円の該当する調査の内容でございますけれども、一つは、現在の受信点でのデジタル受信が可能かどうかの調査が第一でございます。

 二番目に、その調査でデジタル受信ができなかった場合に新たな受信点候補地点を調査する、これが二番目でございます。

 三番目は、共聴設備の全般の状況調査でございまして、各施設組合では、事前調査結果をもとに、国の補助を活用いたしましてデジタル化改修を行うことになります。

 NHKといたしましても、改修の進捗状況を見きわめつつ、最大限の協力ができるように検討を進めてまいります。

 以上でございます。

谷口(和)委員 この地デジの問題につきましては、公明党としましても、政府に対して、とにかく全員の人がみんながデジタル放送を見られるということを実現するために、さまざまな要望等をこれまでもさせていただいております。

 今回のNHKの予算の中にも、国やそれから民放と連携をして、衛星とかIP網を使ってデジタルの難視聴解消策を検討していくということも盛り込まれております。ぜひ、すべての人が地デジを見られるように、NHKには先導的役割を果たしていただきたいということをお願いしておきます。

 それから、もう一つの点に移りますけれども、次は、アーカイブス・オンディマンドについてお伺いをしたいと思います。

 これまでの質問の中にも出ておりますけれども、まず、ことしの十二月から、ブロードバンドを通じて、アーカイブス・オンディマンドということで、NHKのコンテンツを提供することになっております。アーカイブス・オンディマンドといっても、大体アーカイブスといってもなかなか国民の皆さんになじみのない言葉でありまして、ぜひまず、このサービスが始まると一体どういうものが見られて、それからどういうサービスを受けられるのか、国民の皆さんにわかるように説明をお願いしたいというふうに思います。

福地参考人 まさにアーカイブスは、NHKの財産と申しますよりも、日本の国の財産だと思っておりますが、これにつきまして、配信番組につきましては三種類考えております。

 特選ライブラリーというものは、過去に放送しましたドラマやドキュメンタリーなどNHKの豊富な映像資産を、サービス開始時に約千本準備いたします。以後、毎月八十本程度を追加いたします。

 それから二番目に、見逃し番組サービスといたしまして、NHKのテレビ五波、総合と教育とそれから衛星三波ございますが、この番組から毎日十本ないし十五本を、放送の翌日から一週間配信いたします。これは見逃し番組サービスでございます。

 三番目はニュース番組でございまして、朝から夜までの代表的なニュース番組五本を放送時間後から一週間配信するというふうに、現在の時点の計画は以上でございます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 そこで、確認をしておきたいんですけれども、二十年度の予算では、今回のサービスの提供による収益として四・八億円、収益はこれだけ上がるというふうに見込んでおります。ただ一方で、サービスに係る費用としては十八・八億円ということで、差し引きしますと、二十年度は約十四億円の赤字になるという見通しであります。

 放送法の改正で、アーカイブスのサービスについては一般勘定と分けるということで、番組アーカイブ業務勘定というのをつくって勘定を区別しているわけでありますけれども、二十年度は、受信料から成る一般勘定からこの十四億円を借りるという形になっております。ですので、私としては、できる限り早く黒字化を図ってもらいたいというふうに思っているわけでありますけれども、今後、この黒字化の目標をいつに置いているのか。

 それから、それも含めて、今後のアーカイブス・オンディマンドの戦略について、黒字化の目標も含めてお伺いしたいと思います。

福地参考人 放送と通信の連携が進む中で、アーカイブス・オンディマンド・サービスをぜひとも成功させて、良質なNHK番組の、社会のニーズに最大限こたえていきたいというふうに考えておるわけでございますが、現在の見通しでは、開始時の会員を八万人程度と見ておりまして、二十二年度までの三年間は赤字が続くと予想しております。会員数が四十万人程度になります二十三年度前半には収支が黒字になると見ております。単年度黒字になりました後も、収支差金で累積損失を埋めることにしておりまして、累損が解消しますのは六年目の平成二十五年度末を予定しております。

 以上でございます。

谷口(和)委員 このアーカイブスのサービスについては、民間でもなかなかうまく進まなかったという状況がございます。今の黒字化の目標、また累損の解消の見通し、確認をさせていただきましたけれども、ぜひ、会長の民間で培ったノウハウで、早く黒字化をできるように全力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 もう時間が少なくなってまいりましたけれども、最後に、国際放送、外国人向けの国際放送についてお伺いしたいと思います。

 これから、外国人向けの国際放送ということで、新たなサービスというか取り組みが始まるわけでありますけれども、過去もかなりの受信料それから国費も入れてこの国際放送をやってきたわけでありますが、なかなか外国人に見てもらえなかったという状況がございます。

 そこで、外国人の方に見てもらえる番組をつくるためにどういう戦略で取り組むのか、それを会長にお伺いしたいと思います。

福地参考人 外国人向けテレビ国際放送につきましては、番組の充実強化と受信環境整備が車の両輪でございます。その両者を強化することが、視聴者をふやすための必要不可欠な要点だと思っております。

 まず、番組の充実強化に向けました取り組みは、平成十八年度からの三カ年計画に掲げましたワールドTVの英語化率を平成二十年度末までに一〇〇%といたします。これを目指して取り組むことにしております。二十年度予算では、英語化率一〇〇%達成を計画より前倒しいたしまして十月に達成するとともに、さらに、ニュース、番組内容の一層の充実強化を図ってまいります。

 受ける方の受信環境の整備についてでございますが、平成十九年度から取り組みを始めたばかりでございますけれども、平成二十年度末までに約一億一千万世帯を対象に整備を進める計画でございまして、既にオーストラリア、香港で整備が実現いたしまして、インド、南太平洋諸島などで現在交渉を続けておる中でございます。

 以上でございます。

谷口(和)委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 民主党の質問のトップバッターでございますので、やや総論的に質問をさせていただいて、意見も申し上げたいと思います。

 NHKの中立性そしてメディアリテラシー、業務の効率化、こういった点について申し上げたいと思います。

 テレビは神様だ、こういう見方をする方がいらっしゃいます。つまりは、テレビの特性、一つは、視聴率主義というのがあると思います。もう一つは、わかりやすくする、わかりやすくするがゆえに、あえて黒白、二項対立を演出する、そういう傾向がテレビにはあると私は考えています。

 本来は多様な意見を有する日本の社会でありますけれども、テレビの場合は、今申し上げたようにわかりやすい二項対立を演出して、その上で、どちらが善玉なんだ、どちらが悪玉なんだ、こういう判断を結局はテレビがしてしまうということがあると思います。だから、冒頭申し上げたように、テレビは神様だ、こういう見方まで最近は出てくるようになったということだと思います。

 つまりは、テレビの場合は、その演出の仕方、これはテレビに限らない面もありますけれども、新聞も一面そういうことがありますが、演出の仕方あるいはコメントの採用の仕方、そういったことで、視聴者に対してある意味ではいかなる印象も与え得るということが言えると思います。

 特に、多チャンネル化が日本では必ずしも進んでおりません。英米などは百チャンネルありますからね。そういう中で、日本のテレビというものの影響力というのは、大変大きいと言わざるを得ないと思います。そういう意味で、日本の場合は、一本の原稿、あるいは、例えば、一つの画像も繰り返し使われる、こういうこともあります。一人の人気司会者、一人の名物キャスター、こういった人たちの影響が、私から申し上げれば必要以上に大きくなってしまっているということがあると思います。

 こういういわばテレビの特性について、メディア以外から会長に御就任された福地会長がどのように認識をされているか、お伺いをしたいと思います。

 さらには、今申し上げたような特性がテレビにはあるがゆえに、公共放送であるNHKには、より政治的な中立性、バランスのとれた報道、多様な意見を公正に中立に報道する姿勢、こういったものが求められると思います。

 現に、先ほども出ておりましたけれども、NHK御自身がおやりになったんだと思いますが、視聴者調査によれば、「広告主・スポンサーに左右されず、番組を制作し提供する」「政治等で意見の対立する課題について、多様な意見を公正・中立な立場で紹介すること」、これが視聴者から見た公共放送の価値として非常に高いわけでございますけれども、この政治的な中立性、NHKの考える政治的中立性について、冒頭お伺いをしたいと思います。

福地参考人 御指摘のとおり、テレビは、映像と音声で広い範囲にかつ同時に情報を提供するメディアでございますだけに、幅広い年代の方々が視聴しておられます。社会的に極めて強い影響力を持っていると認識をいたしております。とりわけ、公共放送として、政治的な公平中立性はジャーナリズムの原則でございまして、NHKでは、この原則にのっとりましてニュースや番組の取材、制作に当たっております。NHKの国内番組基準では、政治上の諸問題は公正に扱うと明記をいたしております。

 意見が対立しております問題を取り扱う場合には、原則として、個々のニュースや番組の中で双方の意見を伝えるようにいたしております。双方の意見を紹介できない場合でも、異なる意見があることをお伝えして、同じシリーズ企画の中などで紹介するようにいたしまして、全体を通して公平性を保つように心がけております。

 以上でございます。

玄葉委員 古森経営委員長、おいでいただいていますけれども、委員長が昨年九月十一日、経営委員会の席上で番組編集権にも踏み込むような発言をして物議を醸したことは、記憶に新しいところでございます。

 残念ながら、現経営委員長、民主党などの反対がある中で、結果として選ばれた、そういう立場でもございます。したがって、その政治的中立性に対してしっかりとした姿勢を持っていただかなくてはならない、こういうことでございます。

 そこで、総務大臣と経営委員長にお伺いをしておきたいと思いますが、そもそも経営委員会の権限に番組編集権というのは含むのかどうかということが一つでございます。同時に、経営委員会の権限、放送法十四条には、番組編集の基本計画の議決ということは書いてあるわけでございます。つまりは、その権限として認められているわけでございますが、そのこととの関係はどうなるのか、お伺いをしたいと思います。

増田国務大臣 お答えを申し上げます。

 先般、ここでの真摯な議論で放送法が改正をされたわけですが、その改正される前の放送法におきましても、個別の放送番組の編集といいますのは、これは協会の業務として会長が責任を持って行う、こういうこととされておりまして、経営委員会がこれに介入することはできない、こういうふうに解しておりました。

 そして、今申し上げましたように、先般、当委員会でもいろいろ真摯な御議論をいただいたわけですが、その上で政府の原案が議員修正がございまして、放送法の第十六条の二の第一項、第二項というものが追加をされたわけです。そこでは、経営委員は個別の放送番組の編集をすることができない旨、これは第一項でございます、それから同じく第二項では、経営委員は個別の放送番組の編集について第三条の規定に抵触する行為をしてはならない旨、こういうことが法文上もはっきりと明確にされました。

 したがいまして、今お話がございました放送番組の編集に関する基本計画、これは放送法第十四条で、経営委員会の権限とされておりますいわゆる議決事項に書いてございますけれども、経営委員会が個別の放送番組の編集に介入することは、放送法の改正前も、そしてなおさら改正の後もということになるかもしれませんが、同じようにこの前後を問わずできないもの、このように私ども、解しているところでございます。

古森参考人 ただいま大臣から話がございましたように、経営委員会の監督の役割と執行部のNHK業務の執行の役割を新しい放送法では改めて明確に規定されております。私は、その趣旨をそのとおり理解しております。

 それから、経営委員会は、番組基準及び放送番組の編集に関する基本計画について、議決する権限と、反面、責任も負っております。その範囲におきまして、必要な意見を申し上げることはあり得るということは言えると思います。

 一方、個別の番組編集に関して言えば、会長以下が行う、執行部が行うものとこれは認識しておりますし、個々の番組の編集について経営委員会として関与するものではないということはよく承知しております。

 昨年九月の私の発言でございますけれども、私の発言は、玄葉委員がおっしゃいましたけれども、そのとおりのことを申し上げたわけでございまして、中立性、公正中立ということについて十分考えてつくってくださいということを申し上げたとおりでございまして、その真意が十分に伝わらなかったということは反省しております。

 以上でございます。

玄葉委員 これは、民主党が特に修正を求めて、今御答弁がありましたように、修正された改正放送法では、個別の放送番組への編集についてまさに規定をしたわけでございます。

 微妙なのが、まさに経営委員長がおっしゃったとおり、番組の基本計画、ここへの議決権が経営委員会にあるわけですね。ここがある意味で、では一体どうなんだと。例えば、わかりやすく言えばですよ、一つの例として、こういった番組、例えば政府系に近い番組をふやせとかあるいは減らせとか、こういう言葉を発することができるのかどうかとか、こういったいろいろ微妙な議論というのが実はあり得るということじゃないかと思うんですよ、個別の編集権には介入できないけれども。

 ですから、私がきょう意見として申し上げておきたいのは、率直に申し上げて、経営委員会への国民の期待というのは、これはガバナンスあるいは業務の効率化、こういったことへの期待だと思います。つまり、番組に介入してくれ、こういう期待じゃないということは私から、ある意味では民主党を代表してもいいと思いますけれども、申し上げておきたいというふうに思います。

 そして、この政治の中立性、経営委員会からの番組に関する中立性、これについて、会長、一言、どのようにお考えになられているか、お考えをお伺いしたいと思います。

福地参考人 NHKは、報道機関といたしまして、不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保いたしまして、何人からも干渉されることのない、ニュース番組が外部からの圧力や働きかけによって左右されることはないようにしております。こうした放送の自主自律を堅持することが公共放送としての信頼されるかどうかの生命線であると考えております。この認識で今後とも業務の執行に当たってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

玄葉委員 ぜひこれは、経営委員会からも番組に対する介入を排するという姿勢で臨んでいただきたいというふうに思います。

 そして、メディアリテラシーについてでございます。今まで、テレビの特性を踏まえたNHK、つまり公共放送の中立性について質問したわけでありますけれども、実は放送法には、民間放送も公正性は求められるんだ、こう書いてあるわけでありますが、実態は、冒頭申し上げたように、はっきり申し上げて、黒白はっきりの二項対立を演出するという傾向にあると言わざるを得ないと思います。では政治が口を出せるのかといったら、これは表現の自由の観点からまさに口を慎まなきゃいけない、こういう問題だと思うんです。ですから、BPOがつくられて、それを通じて我々は意見を言う、こういうことになるんだと思います。そうなると、結局は、最後は視聴者がメディアリテラシーで、番組というのはいかようにもつくることが可能なんだよ、印象づけることが可能なんだよということをある意味では知った上で見る、こういうふうにしていかなきゃいけないんだと思うんですね。

 例えば、最近話題になっている杉並区の和田中の藤原校長先生の最終講義というのをこの間見てきました。なかなかおもしろいもので、中学一年生を相手にして「よのなか」科という授業をしているんですね。ライブドアの堀江さんの六枚の写真を見せて、創業当時、絶頂期、事件直前、あるいは保釈直後、いかにもそれらしく写っているわけですね。だから、これはテレビの例というよりはいわゆる新聞の写真ですけれども、いかにも、まさに番組というのはその編集の意図でどういうふうにも印象づけられる、こういうことを教えているわけですね。いわばこれはメディアリテラシーですよ。確かに、新しい道徳だ、こう言っても過言ではないかもしれませんね。

 ですから、こういうメディアリテラシーという問題を、公共放送であるNHKこそ実は番組で取り上げていくべきではないのか、こういうことを意見として申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

福地参考人 多様なメディアが発達いたしまして、膨大な情報が飛び交う現代社会におきまして、視聴者が情報を読み解く力と申しますか、メディアリテラシーということはますます重要になっているというふうに認識をしております。

 NHKは、平成六年八月に放送しました「メディアは今 痛みのない暴力 問われるテレビの映像表現」という番組で既にこのメディアリテラシーを取り上げるなど、早くからこの問題に取り組んでまいりました。今年度も、「週刊こどもニュース メディアリテラシーってなに?」というもの、これは六月十六日に放送しましたのですが、「クローズアップ現代 ケータイが生む新たな”いじめ”」これは十月十日に放送いたしました、など、このメディアリテラシー向上に資する番組をこれまでも放送してまいっております。

 放送と通信が融合する時代にありまして、このメディアリテラシーはNHKが取り組むべき課題の一つといたしまして、さらに充実をさせてまいりたいと認識をしております。

 以上でございます。

玄葉委員 会長、誤解のないようにですが、これは、ネットリテラシー、携帯電話なんかのネットリテラシーというよりは、先ほど申し上げたように、いかようにも番組というのはつくることが可能なんだ、そういうことを前提にテレビを見る、そういう教育を、できれば大人も含めて、日本社会の中にあってはやった方がいいというふうに私は思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。

 最後に、業務の効率化でありますけれども、財源の大半が言うまでもなく受信料であるNHKでありますので、この業務の効率化は不断に努力をしていくということだと思います。会計検査院から、子会社、関連会社、関連公益法人について、その利益が本体に十分還元されていない、こういう指摘を受けているわけであります。この指摘は十分真摯に受けとめていただきたいと思いますし、さらに、子会社も含めてもっともっとわかりやすく情報を公開していただきたいというふうに思います。そして、受信料の引き下げに向けて業務の効率化を図っていただきたいと思います。

 同時に、先ほどのアンケートによれば、NHKに対して視聴者は、丁寧に時間をかけて取材、制作した番組を放送してもらいたい、こういうふうにも思っているわけでございます。簡単に言えば、よりよいものをより安くということだと思いますけれども、この業務の効率化と番組の質の向上の両立というのをどのように図っていくのか、ぜひ、会長、最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

福地参考人 NHKが多様で質の高い番組を制作、放送いたしまして視聴者の期待にこたえることは、公共放送としてのNHKの最大の使命であろうと思います。業務の効率化やコスト削減によって番組の質を低下させ、ひいてはNHKに対する視聴者の評価を損ねるようなことがあってはならないと思います。私は、一月二十五日の就任に際しまして職員に語りかけ、訴えましたのは、私は、いい番組、いい報道をするためのコストはカットしないということを宣言いたしました。

 しかし、NHKが放送する番組の財源は視聴者の皆様からいただく受信料でございます。番組の品質を高めるためにあらゆる創意工夫を行いつつ、一方では、やはり常にコスト意識を持ちながら効果的、効率的な番組制作を追求するということは、受信料を財源としますNHKにとりまして決して相反することではないというふうに考えております。効率的な業務執行を絶えず念頭に置きながら、これから先の制作につきましても、外注についてはやはり品質競争とコスト競争を両方組み合わせたものを工夫していきたいというふうなことも考えております。質の高いすぐれた番組を視聴者にお届けすることがNHKのかなめだというふうに心得ております。

 以上でございます。

玄葉委員 ぜひ、民間会社を見事に経営されてきた会長さんでございますので、業務の効率化、そして受信料の引き下げ、さらには番組の質の向上、これらを達成していただきますように重ねてお願いをさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 NHKは特殊法人でございますが、平成十九年十一月十五日に、総務委員会命令、特殊法人の組織等に関する予備的調査、私の名前がついていますのでちょっと読みにくいですが、原口一博君外百十二名提出、平成十九年衆予調第四号、冒頭委員長が御報告を本委員会にしていただいて、そのことをまず多としたいと思います。本当にありがとうございます。

 ただ、冒頭、理事会協議をお願いしたいのは、総務委員会の命令であるにもかかわらず、この指示に対して、不当にと申しますか、明確な理由なく回答を拒否している、そういう特殊法人も見られます。そういう特殊法人については、本委員会にその長を呼んでその事情をつまびらかにしたいというふうに思っておりますので、委員長におかれましては理事会で協議方、お願いを申し上げます。

渡辺委員長 後日、理事会で協議いたします。

原口委員 ありがとうございます。

 それからもう一点。年度末に向けて、この総務委員会は逆転国会の中で国会の新たな姿を示してまいりました。数々の修正協議を与野党で協議を重ねる中で成功させてきました。今一番私が懸念をしているのは、時間が迫った中で両方立ちすくんでしまって、地域に関する、地方に関するもの、これは道路特定財源以外にも大事な税法はたくさんあります、そういったものについては憲法五十九条の規定を使わないということを与党の方がしっかり確約いただいて、切り離した上で国民生活、地域を守る、このことを冒頭、御提言申し上げたいというふうに思います。

 その上で、NHK福地会長、新しく御就任されておめでとうございます。お隣の佐賀県でございますので、時々寮歌祭とかでもお目にかかっていたのかなと思います。また、経営委員長におかれましても、同じ御出身ということで大変親近感を持っておるわけでございますが、ぜひこの質疑については、その親近感とはまた別に、与党の委員からも、本当にこれでいいのかという留保つきでまあ賛成かなという話がありましたが、お答えによっては私たちはこれは態度を決めなきゃいかぬというふうに思っておりますので、慎重かつ適切なお答えをお願いしたいと思います。

 さて、報道にあってはならないことが起こりました。NHK職員が報道で得た情報をもとに株式のインサイダー取引、これはSECが調査をしてわかったということでございます。この調査がどうなっているのか、NHK予算のこの審議まで、私たちはその報告書を目にしていません。目にしない中でこの質疑をしなきゃいかぬということは大変遺憾なことであります。

 ただ、きょう、その日本放送協会職員の株取引問題に関する第三者委員会の委員長、久保利委員長にお見えいただきました。まだこれは調査が中途だというふうに思いますので、その範囲の中で結構ですからお答えください。全国調査の概要がどうなっているのか。事件に組織性があるのか。普通、こういったことが行われていて上司が知らないなんということはあり得ないはずです。そして、管理体制にどのような問題があったのか。今現在でお答えできる範囲で結構ですから、委員長におかれましてお答えをいただきたいと思います。

久保利参考人 久保利英明でございます。

 第三者委員会の委員長を務めておりますが、ただいまの先生の御質問にお答え申し上げたいと思います。

 まず、会長から、事実の徹底解明と再発防止策の検討を行えということで、第三者委員会、これを設けました。私としては、弁護士そしてメディア、こういう方々でつくるべきだと思ったので、國廣弁護士と塚原委員を入れました。現在は、全容解明のために独自に、当初問題になりました三名のインサイダー取引の職員を調査対象としたヒアリング及びデータ分析、特にこれは携帯電話あるいはコンピューター等々からのものでございますので、そういう分析を実施しているところでございます。

 あわせて、ただいま委員おっしゃいました全数調査といいますか、全体に対する調査も行っておりまして、いわば全役職員と報道情報システムにアクセス権限のあるスタッフ等合わせて約一万三千二百名ということになりますが、これに、株取引をしたことがあるか、株を持っているかというアンケート、さらに、持っているという者については追跡的な調査をする予定でございますが、これを鋭意継続している、大半の方からは協力をいただいております。

 そういう意味で、この調査の結果、どういう方法でどのようにしてこのインサイダー情報が使われたのかということを、単に三名の方だけではなくてそれ以外の者も含めてその実態を調査した上で、それを防止するためにはどういう方法が最も有効なのかということで再発防止策を考えてまいりたい、かように考えているところでございます。

 まことに申しわけありませんけれども、我々がこの依頼を受けまして、それから約一月ちょっとたちますけれども、まだ中途段階である。ただ、我々としては、できるだけ早くこれを行わなければいけない、NHKの信頼を回復することはできないというふうに確信をしておりまして、鋭意進行中だということで御了解をお願いしたいと思います。

原口委員 今、数点気になるお話をされました。

 一つは、大半の方から御協力をいただいているけれどもというくだりであります。つまり、中には協力を拒否された方もいらっしゃる。そして、まだ全容解明が報告をされない中で、私たちはNHK予算について、まさに報道の根幹、公共放送の根幹を揺るがす事態についてそれをつまびらかにしないままに質疑をしなきゃいかぬことは大変遺憾であるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 本来この三人だったのか、なぜこんなにもたくさんの人たちがアクセスできるのか、そういったことについても後日明らかになるものだというふうに思います。また、管理体制、これはガバナンスの問題は再三再四言われてきたことでありまして、それを上司がわからないということも、そこはどうですか、今の段階でわかったことがあるんじゃないですか。おっしゃれる範囲で結構ですからおっしゃってください。

久保利参考人 当然、上司にもヒアリングをしております。しかし、現状でわかっているのは、上司もそのような取引をしていることは知らなかったというケースでございます。

 要するに、職場でオープンに取引をしているということではございませんので、職場以外のところから携帯電話で電話をしたり、そういう状況がどうもあるようでございまして、したがって、上司の目の届くところでそれをやっていた、あるいはそういう話が職場で出ていたという事実は今までの調査では出ておりません。ただし、これは鋭意さらに幅を広げて深掘りもしておりますので、もしそういう事実があれば我々が認識するところになるであろう、こう考えております。

 以上でございます。

原口委員 これは上司が知っていたとなればまた新たな問題が出てくると思いますが、やはりコンプライアンスの徹底に向けた工程表、あるいは倫理・行動憲章、行動指針を作成されておられるにもかかわらずこういう不祥事が絶えない原因というものは構造的なものであるかどうか、これはしっかり質疑をしなきゃいかぬというふうに思っています。

 さて、会計検査院、このNHK予算について最近指摘したことがあると思いますが、特に子会社についてどのような指摘をしているのか、御報告をお願いします。

高山会計検査院当局者 お答えいたします。

 NHKに関する最近の報告ということでお答えを申し上げますと、平成十七年度決算検査報告では、本院の指摘に基づき、事業所等における受信機の設置状況を的確に把握するなどして、受信契約の締結を促進する処置が講じられたことについて掲記いたしております。

 さらに、昨年参議院から国会法第百五条の規定に基づく検査要請を受けまして、大半が随意契約となっている関連団体との取引について、一般調達への移行を含め、業務委託のあり方を検討するとともに、業務従事者に占める出向者の割合を減少させるなどして委託費を削減させることなどに努める必要がある旨を報告いたしました。

 また、この報告では、関連団体の余剰金の状況について検査を行い、連結子会社の中には十分な財務上の余力が見受けられる会社もあることから、特例配当を要請するなどして協会の財政に寄与させることが必要である旨も報告いたしております。

 以上でございます。

原口委員 福地会長、経営委員長にぜひ見ていただきたいのは、子会社との関係であります。

 例えば、事業継続に必要な資産として、固定資産や中継車などの設備に見合う分が計上されていますけれども、例えばこれはいい例ですから、名古屋放送局はNHK名古屋ビルシステムズで保有して借りているように、リース方式にすれば固定資産が圧縮されますから、その分キャッシュフローがふえます。そういう経営の改善努力を子会社でも行えば、配当が可能な余剰金はふえるはずです。そういう子会社の経営努力がこの予算案の中にどこまで出てきているのか、私はそこを今回見たわけですけれども、その努力の跡というのはなかなか見えてこない。さっき桝屋委員が指摘をされましたが、二十五億という特別配当、それから子会社の配当可能額としてNHKさんが出しておられるもの、これは本当なんだろうか、私はこの部分について明確なお答えをいただきたいと思います。

 また、子会社同士の株の持ち合いが大半なので、子会社に配当される配当金を配当原資に回すこともできる点も除外されているわけです。経営の感覚からすると、これは当たり前な話なんです。当たり前のことがこの組織でなぜ起きていないのか。

 そこで、先ほど委員長が御報告いただきました予備的調査、これを見てみました。見てみたら、驚きますよ、これ。随意契約の山じゃないですか、子会社と。

 そして、子会社にどういう人が行っているか。これは、天下りの問題を私たち予算委員会でもこの委員会でも指摘をしてきましたけれども、道路公団やいろいろな国の特殊法人に対する天下りというのはありました。だから、NHKの元職員の人がこの子会社に行っているというのも全く同じ構造をしています。

 全く同じ構造をしているだけじゃなくて、NHK子会社役員と現職放送局幹部の兼職があるのはどうしてですか。例えば、NHK北海道ビジョン取締役、札幌放送局長じゃないですか。NHK中部ブレーンズ取締役、名古屋の放送局長ですよ。九州も言いましょうか。NHK九州メディス取締役、福岡放送局長じゃないですか。これは給料二重取りしているんですか。いや、非常勤でしょう、二重取りしていないにしても、いいですか、これは発注しているんですよ。各地域の放送局幹部と番組編成の資金管理を担当する編成局計画管理部の幹部職員が地域ごとにつくられた番組制作会社の非常勤役員となり、監査役は放送局の総務担当というのでは、随意契約の金額が適正かどうかチェックできないじゃないですか。これは何をやっているんですか。これは、給料が二重取りでないとしても、適切ではないというふうに思います。

 会長の御判断をいただきたいと思います。

福地参考人 御指摘の、まず配当の問題でございますが、これは、計画以上に利益が出ましたときには配当をふやさせる。両方ございまして、発注するときにキャップシーリングをしてコストを抑える、そういった方法もございますし、一方で、出た利益に対して配当する、いずれにしても、NHK本体に還流をさせるわけでございますが、いずれの方法もよく検討して取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 御指摘の契約の内容でございます。調査の結果出ました随意契約の件数、余りにも多うございますが、これは、随意契約の基準を見直すことにいたしまして、まず三月末までにできること、それから秋にかけてできるものというふうに二つに分けて、随意契約のあり方を現在検討しております。大幅にこれは改善をしていきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、NHKの職員が兼職をしている、だからそこに自動的に発注するとかなんとかいうことは避けたいと思っておりまして、あくまでも、先ほど御指摘ございましたとおり、品質競争もしくは品質とコストをあわせました競争状態の中で、いい作品が出てくる、いい商品が出てくるというふうに考えておりますので、御指摘のとおり、今まで足らなかった競争原理というものをNHKの経営の中にこれから先も織り込んでまいりたい、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

原口委員 これは経営委員長にも同じことを伺いたいのは、さっき玄葉委員がガバナンスだという話をしました。ある程度のキャッシュフローは子会社にも必要でしょう。しかし、NHKの公益性を考慮すれば、通常の配当性向は、三〇とか三五という数字をおっしゃっているようですけれども、五〇%以上にすべきですし、ため込んだ利益を吐き出す特別配当は、三年に一度なんて言わないで、一定の水準になるまで、これは後で申し上げますが、今私たち民主党で公共サービス基本法という法律をつくっています。これの主役は何か、言うまでもなく国民です。国民の公共サービスにおける権利をしっかり明記して、それを中央政府、地方政府あるいは事業体がどのように保障するかという法律なんです。公共性はNHKが判断するんじゃありません。視聴者・国民が判断をします。

 そういうことからすると、経営委員長、この余剰金についてはある程度の水準になるまでしっかりと本体に還元して、そして受信料なり視聴者の満足に資するというのが本来の経営の姿じゃないかと思うんですが、経営委員長の御判断を伺いたいと思います。

古森参考人 おっしゃるとおりだろうというふうに思います。

 一般企業のレベルからいいますと、相当な高額な内部留保が子会社に残されているということはやはり問題でございます。随意契約の問題等含めまして、それから先ほど申し上げました関連団体、関連会社をどう整理するか、本体と子会社をどういうふうな形に持っていくか、それからNHKの職員の受け皿としての存在をNHK全体の人事制度も含めましてどのようにとらえていくか、総合的な問題であろうというふうに理解しております。

 これは、今期の予算ではできるだけのことをと思いましたけれども、やはりもう少し中期的な観点の中で、つまり、次の三カ年計画の中で思い切った見直しをしていくべきことであろうと私も認識しております。

原口委員 基本的な認識を一致させるということができたというふうに思います。

 ただ、私はこの予算とそれに伴うさまざまな議論をお伺いする中で、人員削減と受信料の支払い督促、六十年間もやってこなかった支払い督促をやる、このことによって何が起きるんだろう。一方でこれだけの不祥事があり、一方でこれだけ内部留保がある。では視聴者にとってはどんないいことがあるんだろう。BSの契約をしたけれども、同じ内容が今度地上波で出ている。だから公共放送としての国民の権利を保障する憲章をつくってほしいと思うわけです。

 番組内容についても、年間七百万件の御意見が国民の皆さんからNHKに寄せられています。これも毎日日報をおつけになって、そして情報を共有するということをされているようですが、これも見える化しなきゃいけないんです。自分たちだけで、ああ、こんな意見があったというんじゃなくて、国民の皆さんにしっかり開示をして、そして公共放送に対する信頼性や公共放送に対するさまざまな理解を深めるということをやらなきゃいかぬと思いますが、福地会長の御意見を伺っておきたいと思います。

福地参考人 御指摘のとおり、視聴者からの御意見と、それから考査室が実施しておりますモニターからの意見、それから番組審議会の委員の皆様からいただく御意見というものは、私たちが番組、報道を評価する上の極めて重要な尺度でございます。

 これをどういうふうな形で見える化することがいいのかということについては、御指摘のとおり、十分検討してまいりたいと思います、工夫をしてみたいと思います。

原口委員 前向きの御答弁をいただいたと思います。ぜひ、自己撞着じゃなくて、自分たちがこう考えるから国民はそれについてこいなんてやったらだめですよ。

 人員削減についても、私たちは、働く人たちを大事にしない経営者はあり得ないと思います。単に縮小する、単に現場に厳しいことを言う、これでは企業は伸びません。私たちのお師匠さん、松下幸之助さんですけれども、松下さんは働く人たちを一番大事にした。だから、経営の神様と言われるんです。現場で働く人たちを大事にする経営をやっていただきたいというふうに思います。

 そこで、デジタル時代のNHK懇談会という中で、委員の一人がちょっと看過できないことをおっしゃっています。まあ発言は自由ですから、ちょうど参議院選挙の真っ最中ですけれどもこれから国会はがたがたになるので、こうやってNHK予算案なんというのを国会で審議するのはやめなきゃいかぬというような、国会承認は不要にすべきだというような意見をおっしゃっています。

 異なる意見ですから、どなたがおっしゃったかここではあえて言いませんが、その方には、公の、私たちの場でも、どういう意味でおっしゃったのか、ぜひ議論をしてみたいと思います。言ったからけしからぬとは思いませんが、なぜ国会の承認のもとにあるのか、公共性というものはどこにあるのか、公共放送のNHKの使命について、総務大臣、一言、基本的なことをお述べいただきたいと思います。

増田国務大臣 NHKでございますけれども、これは放送法で、あまねく全国で放送する、それから豊かでよい放送番組を提供する、それから国際放送、これは先ほども申し上げましたけれども、ほかにもありますが、今申し上げました三つの点は、民放とは異なる極めて重要な社会的使命を担っている。だからこそ、受信料を直接国民から徴収することまで認められている、こういうことだというふうに思っております。

 ですから、NHK自身が公共放送としての使命を深く自覚して、そして確実に遂行していく。そして、今度は国民から見ますと、そういうことで納めた受信料が適正に使用されるということが必ずその際には確保されていないといかぬ、こういうことでありますので、きょうもそういう一番目だと思いますが、NHKの予算ということについては、まさに国民の代表者でございます国会の承認を受ける、こういう特別の手続を法律でもきちんと決めて、そして中身をきちんとチェックしていただく。そのような国民から負託された使命をNHKが確実に果たしているのかどうかということをチェックしていく、こういう仕組みになっているもの。

 ですから、NHKにおかれては、このような極めて重要な役割を担っているということをやはり深く自覚して行動していただきたい、このように考えております。

原口委員 私は、ちょうど十二年前、国会に送っていただいたときに、このNHK予算の審議をさせていただきました。受信料をもとに公共放送を支えるこのモデルについて、受信料の性格について、NHKの放送を視聴するとしないとにかかわらず、なぜ必要であるか。それは、すべての人たちがあまねく広く公平に負担することによって、公共性を確保したいからであります。受益に対する負担であるんだという考え方もありますけれども、どう位置づけているのか。ここはとても大事なところなんです。

 私は、この受信料負担モデルというのが、放送と通信が融合した時代において、いつまでもこのままでいいとは思っていません。さまざまな知的財産についても積極活用をしなきゃいかぬのではないか、このように考えております。

 そこで、経営委員長それから会長にお願いをしたいのは、番組制作の中でバリアフリーの観点をぜひ強く打ち出してほしいということであります。

 今、国会は、障害者の権利条約についての批准、これに向けた積極的な取り組みをしています。障害者に対する差別というのは、何も一律差別だけじゃありません、間接差別もあります。つまり、社会の側がバリアを取り払えば障害を持った一人のまさに困難を取り払うことができるとき、それを取り払わないということ自体も差別であります。

 この国会中継においても、いろいろな人たちがパネルや資料を出します。そういったことについて、もっとわかりやすくバリアフリーに放映をしていただきたいし、さっきメディアリテラシーの話がありましたけれども、メディアを見る目についてもしっかりとした啓蒙をお願いしたいというふうに思います。

 そのことをお伺いし、そして、もう一点、総務大臣に伺っておきたいのは、さっきアーカイブス・オンディマンドの話がありました。これからコンテンツファーストの時代において、著作権をどうするかということはとても大事であります。NHKが今まで持ってきたさまざまな資料映像、これは、国民の受信料でできたものだとすると、私物化は許されません。しかし同時に、著作権の問題をしっかりクリアして、死蔵化することもできません。この二つにどうこたえるかというのが、経営戦略の中でもとても大事なことだと思います。

 十二月から始まるこういうアーカイブス・オンディマンドの動きについて、著作権の問題をどのように整理しようとしているのか。著作権をないがしろにすれば、文化は育ちません。音楽や芸術や演劇、いろいろな場面で頑張っている人たちにしっかりとしたその芸術の対価を支払うということを一方でやりながら、とはいいながら、コンテンツを流していく。大変相矛盾する、相違うベクトルをどのように調整するかというのはとても大事なことですが、そこをどう整理されているのか、総務大臣に伺いたいと思います。

増田国務大臣 今の著作権の関係、お答え申し上げたいと思います。

 まず、政府としては、今後十年間でコンテンツ市場を約五兆円拡大させることを目指す、こういうのが平成十八年に閣議決定をされてございます。そういう目標実現のために、今、全省庁一体となって取り組んでいる。そして、放送番組がこの映像コンテンツ市場の約半分を占めておりますので、そういった中では大変重要な位置づけがございますし、それから、放送番組の二次利用を促進することが政府の目標を達成する上でも不可欠だ、こういうことでございます。

 その際に大変重要なことは、放送番組とそれから今委員から御指摘いただきました著作権との関係でございますが、これは二つございます。一つは、権利者が適正な報酬を得られることを確保する、このことが一つ。それからもう一つは、円滑かつ迅速な権利処理の実現。こういう二つの観点から、こうした取り組みを進めることが重要である。

 これは、逆に言いますと、今までこの点がなかなか十分に理解されていない、あるいはおろそかでもあったということの裏返しでもございますけれども、権利者が正当な報酬を得られるということを必ず確保する、それから円滑、迅速な権利処理の実現、こういうことを取り組みとして進めることが重要である。

 そして、先ほど言いましたように、放送コンテンツの市場拡大というためには、さらに、透明でオープンなマーケットを形成するですとか、それから、最近よく問題になっておりますが、番組の不正コピー、それから不正流通の防止ということが重要である、こういうふうに認識をしてございます。

 今、幾つか私どもの認識を申し上げました、それから問題の所在を申し上げたわけでございますが、こうした点を踏まえて、今、情報通信審議会の場で御議論をいただいております。今後、コンテンツ市場というものが自然の趨勢としてもますます拡大をしていくということでございますので、その中で、今情報通信審議会の場で御議論いただいている検討結果も踏まえて、今後の市場拡大に対応していきたい。私どもの極めて基本的な認識だけ申し上げましたけれども、これが私どもが今考えている道筋でございます。

原口委員 もうこれで最後の指摘にさせていただきますが、いろいろなコンプライアンスの議論を聞いていると、コンプライアンスイコール法令遵守というような立場で、狭くコンプライアンスを受け取って議論をしていらっしゃるようであります。そうではありません。公共放送としての社会的責任をしっかり自覚した上で経営をされていくことを祈念申し上げ、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 幾つか質問通告をしておりますけれども、これまでの議論の中で重複するものが多々あるものでありますから、通告の順番に行かないかもしれませんので、その辺、よろしくお願いいたします。

 最初に、来年度NHK予算についてお尋ねいたしたいと思っております。

 まず、この平成二十年度予算でありますが、これは何に準拠して編成したのか、計上したのかというところであります。というのは、三カ年経営計画の三年目でありますので、それとしてとらえたらいいのかということであります。

 それからもう一つは、ちょうど先ほど桝屋委員さんから古森委員長に、突然の質問といいますか、新しい五カ年計画、本来であれば二十年度からということなんでしょうけれども、二十一年度からということになりますか、そうしますと、経営委員会のいろいろな改革の要素といいますか、そういうものが新年度予算案に入っているのか等々、私も疑問に思っていたのでありますが、古森委員長は先取りしてたくさん入っているということでありますけれども、福地会長、それでよろしいのでしょうか。

福地参考人 現在の見通しではまだ定かでございませんが、明年度の六千三百五十億円はぜひとも確保いたしたいと存じますし、今年につきましては、現在の予算、見込みどおり何とかいくのではないかと。まだ数日残しておりますが、そういうような見通しでございます。

 よろしゅうございますでしょうか。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

黄川田委員 時間もないので、簡潔明瞭な答弁でなかなかあれなんでありますけれども、新しいものをつくるときは、やはり前の計画をきちっと総括しなきゃいけないということだと思います。そういう中で、三カ年計画、十八年度、十九年度と総括する中で、事業の評価であるとか、あるいはまたその実績であるとか、そういうものをしていかなきゃいけない、こう思っているわけなのでありますけれども、その点はどうでしょうか。

福地参考人 申し落として申しわけございません。

 まず、私、会長に就任いたしまして最初に聞きましたのが、三カ年計画の三年目の予算は達成できるのかどうか。往々にして、計画はつくった段階で軽視される向きがあります。私は、計画は達成するためにあるということで、各項目について、項目未達のものがあったら申告してほしいということを指示いたしました。

 その中で、先ほど申し上げましたように、受信料問題についてはほぼ達成できるというふうに見込んでおります。

 難しいのは、契約率の達成というのが難しいかと。これは、この予算をつくりましたときにちょうど不祥事が起こりまして、契約がとれなかったということで、あとの二年度については年度別の契約率は達成できるんですが、初年度は惨敗をいたしたということで、大変現場は苦労いたしておりますが、ほかについては達成できる見込みでございます。

 これからつくります中期計画につきましては、経営委員会の方から重要事項の指摘、打ち合わせを十分に行っております。そういった中で組み立てていきたいと思っておりますし、既にこの二十年度の予算の中で消化していくものも含まれております。

 以上でございます。

黄川田委員 会長、特に新しい五カ年計画、ちょうど二〇一一年にはデジタル放送の完全実施ということで、外部環境が大きく変わると思うんですね。そういうものを念頭に入れながらよろしくお願いいたしたい、こう思っております。

 それから、通告の順番を変えまして、一番最後の質問をしたいと思います。通告の最後の方でありますけれども、地域放送の充実についてちょっとお尋ねをいたしたいと思っております。

 私も地方に住んでおりますので、ローカル放送局、NHKの役割はますます高まっておると思っておりますし、それからまた、NHKの社会に対する貢献ということで、その部分でも重要性を増しておると思っております。

 そういう中で、NHK、来年度、地域放送を充実させるというふうにうたっております。これまでも地域放送に力を入れてきたとは思うのでありますけれども、最近、政府は、特に総務大臣、増田大臣は、地域に元気を取り戻す、地域の再生という意味で地方重視ということをうたっておるものでありますから、これと連動してやっているのかなと思われる節もあるものでありますが、いや、そうじゃなくて、そういう向きとは別個なんだ、NHK独自の考え方の中でしっかりとやっていこうという意味なのか、この辺をちょっとお聞きいたしたいと思っております。

福地参考人 地域社会は一層格差が広がりまして、地域の問題は最も重要な課題の一つとして認識いたしております。

 平成二十年度、NHKは、少子高齢化、雇用、教育、医療、福祉、農業などさまざまな課題に積極的に取り組みまして、地域放送の一層の充実を図ります。

 あわせて、地域局制作番組の全国発信をさらに強化いたしまして、全国ネットワークを活用して地域再生の力になるように努めてまいります。最近放映されました番組の中でも、地域で発想して東京で戦略化する、そういった環境関係の番組でも非常にいいものがございます。地域の発想を生かしてまいりたいと思います。

 具体的な番組を少し申し上げますと、総合テレビの金曜夜間の地域放送番組の拡充をいたしまして、十八年度が三百五十二本、十九年度が五百三十五本、二十年度は六百本程度を予定しております。

 また、地域を超えた共通の課題につきまして、NHKの全国ネットワークを生かして全国に発信します。新年度はそうした番組の放送枠をふやしてまいります。

 また、地域向けのワンセグデータ放送の送出開始に合わせまして、新サービスの充実を図るための体制を強化してまいりたい。

 いろいろな取り組みをしてまいりたいと思っております。

 以上です。

黄川田委員 経営委員会の方でも、地域放送の後押しというのでありますか、充実を目指して、地域放送の課題の一元化に取り組むために、本部に地域の放送局を総括する機能を持つことの是非等々を検討したらどうかということみたいなのでありますけれども、これは経営委員長、会長、それぞれこの部分について、まだ検討せよという意味合いと、また、それに対してどう取り組むかというところなのでありますが、現時点で答えられる範囲でお願いいたします。

福地参考人 現在は、地域政策担当の理事はつくっておりますが、組織としてございません。どういうふうな形で地域活性化、地域放送の強化を進めればいいかということは十分検討してまいりたいと思います。

黄川田委員 五カ年計画も平成二十年度一年間でつくるんでしょうから、検討している間に一年間直ちに過ぎてしまいますので、せっかく前段でこういう地域放送をやりたいということで大きな意気込みを話されたのでありますから、具体がしっかりしていないと、形だけはできたけれども、会長が言っているとおり魂が入らないような形になっては大変でありますから、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、地域放送を充実させるためには、やはり人材、人ですね。また一方、三カ年経営計画の中で、千二百人の人員削減という一方の要請もあるわけなのであります。特に、私なんかは岩手でありますので、岩手であれば盛岡地方局なんですけれども、一人で一切合財担当するであるとか、大変厳しいような状況もありますし、そういう中でどうやって力を発揮していくのかなと。

 そして、NHKも会社と同じで、やはり人が力でありますから、人材が汗をかいて、そしてそれで報われなければ、これも空念仏の地域放送の充実になるのではないかと思われますので、その辺の人材の削減との整合性といいますか、あるいはまた、よくわからないのでありますけれども、地方からの発信といっても、ブロック別といいますか、岩手であれば仙台でありますか、そういう形の中で連携をとるとか、そういうお考えがあるのか、その辺もあわせてお尋ねいたします。

福地参考人 一方で、効率化を進めるために人員の節減がございます。一方で、地域の活性化をしていい番組を出していくという、一見二律背反的な取り組みでございますけれども、しかし、一つは、少ない人数、少ないお金をさらに分けてしまいますと、なおさら少なくなってしまいます。人員削減の中で、もう既に四百二十八人、今年度の分の割り振りは済んだ後でございますけれども、地方については、キー局といいますか、そこになるべく集約して人員をプールしておいて、タスクフォース的に人員を使っていく、そういうふうなこともございます。

 それから、制作関係の人員も減らしましたけれども、それは多くは仕事を持って減らしているということで、関連団体に約四六%の人間が仕事を持って行っております。それはいいんですが、地方に行きますと、外に制作される、そういったものがないというふうな悩みも聞いております。そういうところはキー局が中心になって制作を担当してやらないといけないんじゃないかなというふうに考えております。

 いろいろな人員の工夫の中でやりくりをしてまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 NHKの課題といいますか、古くて新しい問題、古くて古い問題といいますか、NHKの体質といいますか、機構が大きいといいますか、そうなると、古森委員長さんが来て大改革を行うんでしょうけれども、ややもすると、閉鎖性であるとか官僚的であるとか、あるいはまた組織が肥大化するとか、あるいはまた権力的になるとか、そういうものを従来から言われてきておるわけなのでありますね。そういうところを払拭しないと、幾ら形を変えてもなかなか不祥事も減ってこない。そのために経営委員会あるいはまた執行部ということで連携しなきゃいけないんでしょうけれども。

 それから、上から下に改革もありますけれども、やはり職員たちがみずから改革するんだというその部分が出てこないと、私は本当の改革にならないと思いますし、不偏不党、それから公共放送としての使命を持ってNHKはやらなきゃいけないのでありますけれども、やはり協会として生き残るためにはみずから変わらなきゃいけないというその命題は常に変わらないと思いますので、しっかりやっていただきたいと思っております。

 それでは、せっかく増田総務大臣ですので、大臣の経験を生かした形の質問をさせていただきたいと思います。

 大臣は岩手の知事をされましたので、岩手は丸ごと中山間地と言ってもいいかもしれません。今のアナログ放送でも、例えば宮城県との境界に接しているところでは、岩手の人間は隣の宮城県の浅野知事を知っている、宮城の人間は隣の岩手の増田知事を知っている、そういう状況のところもあるわけですよね。そしてまた、一生懸命、NHK、総務省が全力を尽くしてデジタルデバイドの解消、情報格差の解消のために地上デジタル対策をやるわけなのでありますけれども、多分、岩手であっても、何ともしがたく、衛星放送に頼らざるを得ないところもあるかと思っています。

 二十年度予算には、本当に何百億というお金をかけて前倒しして整備していくということなのでありますけれども、ちょっと確認なんですが、難視聴対策、中山間地対策ということで、共同受信施設とか共聴施設とかあるわけなんであります。さまざま受け皿があって、NHKが直接改修するところ、自治体、県とか市町村、あるいはまた組合とか団体とかさまざまあるのでありますけれども、最終的には、小さな集落だと地元負担ということで、これまでも議論されていますが、大変な負担になるところがある。それから、そういう人たちは情報弱者であり経済的な弱者でもあるというような形なものですから、地デジの関係は国家が最終的には責任を持つということでありましょうから、それらのNHKがやるところ、それから総務省がやるところ、この切り分けの部分を確認したいと思うんですが、その対策のために。

増田国務大臣 このいわゆる地上デジタル対策でありますけれども、大変大きな事業でございますし、また、逆にそのことが地域間の情報格差を広げるような形になると大変いけないわけでありますので、こうしたデジタル化に当たりまして、特に今お話ございましたような山間地の難視聴対策、私おりました、先生といろいろ御一緒させていただきました岩手などはまさにその代表例でございますけれども、そうしたところの対策というのはやはり念を入れてきちんとやらなければいけない。

 特に共聴施設について、いわゆる辺地共聴でございますが、こうしたもの、受信者側の対策もきちんととらなければいけませんし、それから中継局サイド、送信側の対策もきちんととっていかなければならない。それぞれロードマップを明示したりして、それで今取り組んでいるわけでございますが、いずれにしても、そういった関係者の努力だけでなくて、国としての支援措置もあわせて講じていかなければならない、こういうふうに考えております。

 そこで、具体的に、こうした市町村や、組合の場合が多いんですが、そういう組合が行う山間地域の共聴施設のデジタル化、それから条件不利地域における放送事業者や市町村によるデジタル中継局整備、これについて、今補助率二分の一の支援措置ということがございますが、この予算を拡充しつつ、今、国としての役割を果たしていっている。そうした場合には、当然、補助制度でありますので地元負担が伴っております。そちらの方に対しては、地方財政措置を講じて、そしてその軽減を図る、こういったことを今考えているところでございます。

 いずれにしても、全国の世帯にデジタル放送を二〇一一年の七月二十四日という決まった日までにきちんと送り届けられるようにしていかなければならないということで、そういったさまざまな受信対策、それから送信側の対策、それぞれを今総力を挙げて行っているところでございます。いろいろ関係者の皆様方のお力添えをいただかなければならないところが多々ございますけれども、その実現に向けて全力を挙げて引き続き取り組んでいきたい、このように考えております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

黄川田委員 それでは、あと残り二分でありますので、一つだけ御質問させていただきます。

 経営委員会の方から、放送事業に管理会計を適用してはどうかということで、私からすれば、番組の制作というのは、これは費用対効果でなじむものか、こういうところもあるのですが、ただ、一般企業でもやはり当たり前のことでありますので、原価意識の醸成ということで、その点は会長はどうお考えでしょうか。

福地参考人 管理会計の問題にも及んでこようかと思いますが、視聴者の皆様からの受信料を適切、効果的に使用するための会計情報の作成、活用は大変重要というふうに考えております。

 番組制作費はこれまでも、すべての番組ごとに予算を設定しまして、厳正な管理のもとで施行を行いまして、原価意識の一層の向上に努めてきております。しかし、さらに人件費や減価償却費も含めたトータルコストで把握することも進めていくべきだというふうに考えております。

 一方、管理会計が目指します費用対効果の定量化という面では、放送番組は、コスト面とあわせて、その内容や質についての評価も大変重要でございます。NHKの放送に対する視聴者の評価やNHKの放送への接触など、さまざまな評価指標を活用いたしまして効果的な番組制作を推進していきたいと考えております。

 以上でございます。

黄川田委員 コスト削減によって質が低下しないように、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

渡辺委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。

 まず最初に確認の質問をさせていただきたいんですが、先日の本会議で我が党の森本委員が代表質問をさせていただきましたNHK関係でございますけれども、私の聞いたところ、総務大臣、答弁漏れがあったのではないかなと私は思っておるわけでございますが、確認をさせていただきます。

 NHKという組織の最高責任者はだれですかという質問に対してのお答えがなかったと思うんですが、改めて御質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

増田国務大臣 ちょっと本会議の資料を今手元に持っていないので、正確に当日お答えしたことを復唱できませんけれども、NHKのいわゆる最高責任者というか責任の所在については、法律に規定がございまして、経営委員会と執行部、それぞれ異なる役割を担っている、こういうふうに決められております。

 したがいまして、経営委員会というのが意思決定についての、それから役職員のいわゆるガバナンスについての権限と責任を持っている。それから、会長は対外的にNHKを代表する、こういうことになっておりまして、対外的なNHKの代表としては、会長が国民の前で行動していく。そういうお互いの役割を担っている。それで、報道機関でございますので、お互いに監視と抑制を働かせるような、そういう仕組みになっている。このように理解をしております。

田嶋(要)委員 要するに、普通の企業、例えば古森委員長は富士フイルムですかのCEOだというふうに対外的に明記されておりますが、NHKの場合には一人の最高責任者というのはいないという理解でよろしいですか。

増田国務大臣 NHKは、恐らく、これは歴史的な沿革もあると思いますけれども、公共放送を担うということで、特別に法律に決めがある。したがいまして、通常の商法上の会社、株式会社等とは違う構成にして、そこに国会のさまざまな面での、また住民の代表としての意思を反映させる、こういうことによって公共放送の公共性というものを確保している、こういうふうに考えております。

田嶋(要)委員 それでは、新しく会長になられた福地会長も、執行に関する最高権限のみを与えられている立場だ、そういう御理解でよろしゅうございますね。

福地参考人 私はそういうふうに認識をいたしております。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 インサイダー取引がございまして、前会長がその責任をとって辞任されたというふうに私は理解をいたしておりますが、そういう意味では、そういった社員の不祥事にかかわる最終的な監督責任というか、そういうものに関しては、それはどこにも明記はされておらないと思いますが、経営委員長ではなくして今後も会長である、執行の最高責任者たる会長が今後もそういった状況では最終責任をとる、そういうことでよろしゅうございますね。

福地参考人 私もそういうふうに認識をしております。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 それでは、質問通告しております質問に入らせていただきます。

 NHKの経営の方針、二十年度の重点事項に一番最初に挙げられているのが、「“NHKだからできる”放送」という言葉がございます。あえてちょんちょんがついて「“NHKだからできる”放送」というふうに書いてあるんですが、これは、わかったようでわからないことだと思うんですけれども、恐らくは、視聴率にとらわれないんだということで、先ほども大臣もおっしゃいました、民放とは異なる社会的使命を果たしていくんだということだと思うんですが、はっきり言えばそういうことでしょうか。視聴率にとらわれない、いいものをやるんだということでよろしゅうございますか。

福地参考人 お答え申し上げます。

 一応そうでございますが、私は職員に申しておりますのは、民放のような視聴率にはこだわる必要はない。それは、あまねくという方々、受信料は全世帯からいただいておりますので、しかも所得に関係なくいただいておりますので、これはやはりあまねくということだ。したがって、ある分野からいきますとマイノリティーの分野についても、やはり放送、報道はすべきだというふうに思っています。

 しかし、それでは競争原理が浮いてきませんので、マーケットが小さければ小さい、ターゲットとする視聴者が小さければ小さいだけに、その中での視聴率は一〇〇%をねらうべきだ、そういうふうな指導をいたしております。

 以上でございます。よろしゅうございますでしょうか。

田嶋(要)委員 その中で、いただきました資料にも載っておりました、子供向け番組の強化という点が書かれておりますけれども、その点はどういうようなお考えでそういうことをうたわれておるのか、会長、御答弁をいただきたいと思います。

福地参考人 NHKの番組、とりわけ教育テレビの中の子供番組というのは高く評価されているのではないかなというふうに考えておりますが、そういったことで、これから先、老人問題もそうですけれども、子供向け番組も充実してまいりたい、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 私もまだ子供が小さいわけでございますが、子供がテレビを見ている顔を横で見ていますと、まばたきをせずに、何というか、そこに入り込んでしまうような風景がございますね。本当に子供たちに与えるテレビの影響というのは大きいなという印象、本当に日々思っております。

 そうでありながら、これはいつの時代も言われていることかもしれませんが、なかなか子供に見せたいいい番組がないというような話もございますし、それから、今、インターネット等での違法・有害情報のはんらん、こういうことで、子供たちを取り巻く環境というのは大変難しいなということを私自身思っておる一人でございます。

 そこで、きょう、一つの具体例として例示をさせていただきまして、参考資料の一ページ目にも載せさせていただきました。この番組でございますが、「まんが日本昔ばなし」。国会で何でこういう問題を取り上げるんだというふうに言われるかもしれませんが、私、あえてこれを取り上げさせていただきたいのは、これは、御案内のとおり民放の放送した番組でございます。私自身が子供のときに放送されていまして、あのとき私、実はびっくりしたんですね。私はNHKだと思ったんですよ。そうしたら、NHKじゃなくて民放の番組だったということで、当時大変楽しみに見せていただいた記憶がございますが、最近になって知ったのは、この番組がやはり視聴率の壁で再放送がもうできなくなった、にもかかわらず、既に六千件以上もの再放送してほしいという熱烈な国民の声、特に小さいお子様方を御育て中のお父さん、お母さん方から、全国から寄せられている、こういうような話を聞きました。もちろんこの番組だけじゃないかもしれませんが、私の知っている限り、やはりこれは確かにいい番組だったななんというふうに私は思うわけでございますね。

 そこで、NHKにしかできない役割という一つの切り口といたしまして、視聴率にこだわらない、それからもう一つは、民放がつくった番組でも視聴率の低迷によっていろいろ再放送とかができないようなときに、やはり私は、この投書の中にも結構NHKという言葉が出ているのを後で知ったんですけれども、そういうのを寄せさせていただきました。まさにそういうところにこそNHK独特の役割、確かに視聴率は余りとれなくなったかもしれないけれども、子供に与える影響の大変いいものとして検討に値するのではないかというふうに思います。

 あくまできょうは具体例でございますが、これからの「“NHKだからできる”放送」という意味では、必ずしも独自制作にこだわる必要はなくして、日本の子供たちのためにすぐれたものをやってもらう、そういうことに関してどのようなお考えか、新しい会長から御答弁を賜りたいと思います。

福地参考人 若者のテレビ離れが進みます中で、子供を対象としたいい番組を放送していくというのは大変重要なことだというふうに心得ております。

 その中で、既にNHKでは、民放などで過去に放送しましたアニメ番組をBS2のBS名作アニメ劇場で、配給会社から放送権を購入して放送いたしております。

 NHKでつくったか民放でつくったかにかかわりませず、過去の貴重な映像資産を放送することは、おっしゃるとおり、日本のコンテンツ産業の向上にもつながりますし、公共放送として期待される役割の一つであろうというふうに心得ております。内容が公共放送にふさわしいかどうかということ、それから十分に視聴者サービスに寄与できる番組かどうか、しかも、その番組の放送権が適正な価格で確保できるということでございますれば、放送を検討しております。

 既に平成十九年は、「ふしぎな島のフローネ」、これはフジテレビさんが初回放送をなさっている、それから「名探偵ホームズ」、これは初回放送がテレビ朝日さん、「山ねずみロッキーチャック」、これはフジテレビさん、「南の虹のルーシー」、これはフジテレビさん、そういったことで現在も取り組んでおりますし、これからも御指摘のとおり取り進めてまいります。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 そういう前例があったということで、たしか「あしたのジョー」もやられたそうでございますが。

 いずれにしても、非常に声が来ている。先ほど、NHKに対して全国から七百万通ですか、いろいろな声が寄せられている。そういう中には、NHKがやった番組じゃないけれども、ぜひ、そういうところにやはりNHK独特な役割を国民としては見ていると思いますので、私が言ったからこの番組ということではなくして、なるべく客観的に国民の声を受けとめて、それを、自作か他作かは関係なく、やはりNHKの役割を発揮していただきたいなというふうに思っております。

 それともう一点、これから映像国際放送が始まりますが、その分野においても、例えば日本の古きよきものを紹介する、この番組なんかは大変私はいいんじゃないかと個人的には思っておりますので、これは御答弁は必要ございませんので、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。

 それでは、続きましては、残りの時間で地上デジタルサービスに関してお伺いをいたします。

 かつて、コンピューターソフトウエアに関しまして二〇〇一年問題というのがございました。これは、あの変わった瞬間に何が起こるか、結構心配したものでございますが、かなりの部分、杞憂に終わったという言い方もできるのかもしれません。しかし、私は、この地上デジタルに関しては、実は二〇一一年問題が起きるんじゃないかというふうにかなり心配をしておる一人でございますけれども、まず総務大臣にお伺いしたいと思います。

 本会議討論では、非常に深刻な問題だという御答弁もございましたが、もう一度改めて、総務大臣、この地上デジタルの二〇一一年のXデーに向けた現状をどのように評価されておりますでしょうか。

増田国務大臣 二〇一一年の七月に向けて今まで進めてきたことと、それから、しかし依然として残っている問題と二つございます。

 一つは、これまでの進みぐあいということでいいますと、まず、デジタル受信機の出荷台数でございますけれども、一月末時点で約三千百四十万台、これは、目標を決めて二〇一一年までにずっとカーブで上げていこう、こういう目標を決めているわけでございますが、この普及目標が大体二千八百四十万台をこの時点で予定してございましたので、それを上回っている。これはテレビだけじゃなくて、ビデオのそういったチューナーも全部含めての数でございますが、そこは少し上回っている。それから、こういったデジタル放送対応受信機の普及世帯数でいうと、目標と同じ千四百万世帯、こういうことでございます。いずれにしても、そのどちらも、そういう予定をしておりました目標のカーブの線上に乗っているということでございます。

 一方で、当然のことながら課題もございます。まだ認知度が少ないということがございます。相談体制などがまだ十分にでき上がってきていないということ。デジタル受信機をもっと低廉化していかないといかぬ。それから、やはりアナログの受信機をお持ちの方が大勢おられるわけでございますので、その簡易チューナーの開発、流通といったような問題、これがございまして、今、一方で抱えておりますこうした問題に対して環境整備を行っていかなければならない、こういうふうに認識しているところでございます。

田嶋(要)委員 資料で二ページ目にお役所からいただいたものをつけさせていただきました。おっしゃるとおり、目標は果たしているわけでございますが、大臣、これは、目標がそもそも信用していいかどうかという話もやはりあると思うんですね。私は、全然これは足りないと現状思っております。そして、ここに役所の言葉で、「二七・八%とクリティカルマスの水準に到達し、今後急速な普及が見込まれる。」というふうに書いておるんですが、これは何かちょっと勘違いがあるんじゃないでしょうか。

 例えば、携帯電話のように、世の中に存在しなかったものが突如あらわれて、それが大変便利だというときに、先行して飛びつく人、一番後から乗っかる人、カーブがこうなるというのはよく聞く話でございますが、これは、別に何のメリットも感じない人まで含めて、全国にある一億台のテレビを総入れかえしなきゃいけないということですよね、基本的には。だから、まるっきり一つモデルが違うと私は思うんですね。

 これは、私、実は、ちょうど今から四年前に麻生大臣にも指摘をさせていただきました。そのときは、これからいよいよ始まるということで、検討していきますという話でございましたが、そこから今日までの状況を見ていると、どうも余り状況は変わっていないような感じがいたします。

 おっしゃるとおり、量販店に行くと、私も見てきましたけれども、きちんとされています。シールも張って、外づけのチューナーもありますよという話がございますが、これは、問題はやはり、高齢者の方を含めて、そもそも全然知らない人たちに対してどういう対応をとっていくか。ほかの先進国で行われているようなクーポン券ですか、いろいろな形での財政的な補助も含めて、これは今から真剣に動かないと絶対間に合わないと私は思います。何やら審議会の方で、ことしの夏にひとつ方針が決まるという話も聞いていますが、もうあと三年ですよ。私は全然足りないというふうに思っております。

 それで、もう一つ、それのとばっちりが来るのがNHKですよ。テレビが映らなかったら、まず支払い拒否がまた始まりますね。そういう意味では、会長、先導的役割もいいんですけれども、これは総務省が大迷惑をかける可能性があると思うんですね。ぜひNHKの会長として、その点、はっきり御認識をいただいて、言うべきことは言う。遠慮する必要はないと思いますけれども、会長、いかがですか。

福地参考人 まさに受信者側対策の中心は、放送による周知と、視聴者の皆様からの具体的な質問にお答えできる全国的な対応組織だというふうに考えております。

 放送での周知は、これまでも地上デジタル放送の魅力とかあるいは必要性などにつきましてさまざまな機会をとらえて行ってまいりましたが、おっしゃるとおり、間もなく三年を切る段階に至っております。まず、二〇一一年にアナログ放送が終了するということと、引き続きごらんいただくための具体的な受信方法などについて、放送やさまざまなツールを使ってお知らせしていくつもりであります。

 こうした周知活動の受け皿といたしまして、個々の視聴者のテレビ環境に即した具体的なアドバイスが必要と考えておりまして、国が計画しておられます相談センターにNHKとして最大限の協力をしてまいりたい。恐らく数百人規模の人的支援が必要だというふうに考えておりますが、今そういった対策も取り進めております。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 時間が限られていますので読み上げますけれども、役所とお話をしていて、こういうこともわかってきました。

 要するに、アンテナの問題がありますね。全国にVHFアンテナがどのぐらい、どういうところに残っているか、全く情報把握ができていない。それから、集合住宅に関して、ケーブルですね、アンテナからテレビまでの屋内ケーブルというんですか、これがUHFを通さないケースが相当ある、これ自体も把握できていない。それから、デジタル化すると、アナログの時代に比べて障害がかなり減る、九割方減る、しかし、その一割がどこに残るか、こういうことも、やってみなきゃわからないということなんですよ。

 要するに、期限ぎりぎりに一斉にいろいろな問題が出てくる懸念が大変強いから、私は、ほかの先進国のように、早く早くフェーズでやっていかなきゃいけないというふうに思います。

 時間があと一分でございますので、最後の質問。

 大臣、今、このプロジェクトといいますか、これの最高責任者が総務大臣だと思うんですが、私は、これは総務省でおさまる問題じゃないと思いますよ。新型インフルエンザも深刻なんですけれども、まあ、あっちの方が違う意味で深刻なんですが、同じように、国家で半世紀以上たっている今のアナログシステムを総入れかえするという、これはやったことのない大事業で、しかも、先ほど格差という話がございましたが、これは地域格差じゃないですよ。二万円、三万円払えない人の所得格差がはっきり出てくる可能性がありますよ。お金のない方々あるいは独居老人、テレビを買えないうちに情報チャネルが全く途絶えることが何十万という世帯で起きる可能性がある。

 私は、一日も早く総理大臣をトップにした国家プロジェクトで考えないと大変なことになると思っておりますが、杞憂に終わればいいですけれども、総務大臣、一言コメントをいただきたいと思います。

増田国務大臣 今委員が御指摘をされたような問題意識で、実は私、岩手の知事をしておりましたとき、総務省に相当強く文句を言ったことがございました。やはりこれだけの大きな問題でございますので、国が総力を挙げなければいけない、ここはもう委員の御指摘のとおりだと思います。

 今、国としては、私が最高責任者という形でございますが、さらに言えば、IT戦略本部の中で目標を掲げて今進めていると同時に、各省で連絡会議を持って各省も全部その中に総動員しているという立場でございますが、やはり成果をきちんと出していかなければならない。

 それから、きちんと決められた工程の間の中で、とにかく、今お話ございました、外づけのチューナーだけじゃなくてアンテナから何から全部を含めてかえていかなければならないという大プロジェクトでございますので、私も、政府部内で認識をさらに深めるように、そういう問題意識をさらに深めるように最大限努力をしていきたい。そして、政府総がかりでの対応ということをきちんと行っていくべく最大限努力していきたいというふうに思います。

田嶋(要)委員 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田です。引き続き質問させていただきたいと思います。

 ちょっと一点。二つ質問の大きな枠を用意してきたんですが、冒頭ですけれども、多分、この質疑が今放送されているのが恐らく夜中の三時とかになっていると思います。夜遅くまで国会議員は大変だなと思ってくださる方もいるかもしれませんけれども、常識的な範囲で考えて、本当に年に一度のことですし、NHK自体をどう国民が見詰めていくかという一つの大きなきっかけにもなることでしょうから、二日でも三日でも分けてでも結構ですが、ゴールデンタイムとは言わないまでも、常識的に人が起きているような範囲で放送される方がいいのではないかなというふうに思います。

 通告していませんが、会長、いかがですか。

福地参考人 覚悟いたしておりますので、構いません。どうぞお願いいたします。

寺田(学)委員 与えられた時間が二十分ですので、二つほど質疑をさせていただきたいと思います。

 動物を利用した番組制作の件と、昨年もこの委員会、この質疑で取り上げましたけれども、いわゆる衛星放送の受信に関して、二つを質疑させていただきたいと思います。

 まず一点、動物を利用した番組制作についてです。

 昨年の十二月、秋田市の大森山動物園というところにいたキリンの親子が相次いで死亡しました。これは、NHKのドラマの撮影、NHKさんが制作会社に委託をしてつくられたことになっているそうですけれども、その精神的ダメージによるのではないかということがやはり専ら言われております。生後五カ月という本当に子供のキリンです。非常にキリンというのは警戒心が強いそうですけれども、それを三日間、毎日母親から離して三、四時間撮影したところ、親子ともにキリンが亡くなった。本当にこれは冗談にもならないと思うんですが、それで撮ろうとしていた番組が、命の大切さを訴えるドラマをつくろうとしてキリンの親子を亡くしたという、本当に痛ましいことが起きました。

 NHKさんにお伺いしたところ、動物をドラマとかに出演させて何かしらの映像を撮るときには事細かく書かれているようなガイドラインもないという話もお伺いしましたが、この本当に痛ましいことを受けて、NHKさんとしてガイドラインをつくる等、何かしら取り組まれた方がいいと思うんですが、いかがですか。

福地参考人 今回、親子のキリンを取材していましたドラマ番組は、外部の番組制作会社を中心とした制作委員会からNHKが放送権のみの購入を予約したものでございますが、担当者には、動物の撮影には専門家の立ち会いを含めて、動物愛護の観点から細心、最大の注意をするように伝えておりました。

 御指摘の撮影は、動物園の園長や獣医師であります飼育係の指示のもとで行われました。園長は、番組制作会社からドラマの内容を聞いた上で撮影に協力したそうでございます。事前に綿密な打ち合わせを行っていたというふうに話をしております。動物園としては、今回の撮影と母親のキリンの死に因果関係があるかどうかは不明としておるようでございます。こうした中でキリン二頭が死んだことについては、極めて残念なことと受けとめております。

 NHKといたしましては、本体制作、委託制作につきましては、動物、植物の生命を尊重し、撮影による動植物への影響を与えないように配慮するなどの新放送ガイドラインの趣旨を改めて徹底させてまいります。また、今回のような予約購入番組におきましては、この新放送ガイドラインの趣旨を生かしていただくように改めてお願いをしてまいります。

 以上でございます。

寺田(学)委員 新たに詳細なガイドラインをつくったり、アメリカの方では、動物を使用する場合には第三者機関が認証するような制度もあると伺っております。そういう形で、本当に痛ましい、命がなくならないように、そして損なわれないように、最善の努力を本気で図っていただきたいと思います。

 動物を利用した番組制作については、まず、以上とします。

 もう一つの方、衛星放送に関して質疑をさせていただきます。

 昨年の予算案でも質疑をさせていただいたんですが、一言で言いますと受信料の値上げが行われている、また言い方をかえると衛星放送の押し売りというような形が今現実的なものになっているということであります。

 昨年も質疑させていただきましたし、事務局の方から大体内容を伺われていると思いますが、ざっくりと言えば、今、量販店にでも行ってテレビが見られなくなるからといって地デジ対応のテレビを買おうとすれば、ほぼ例外なく、衛星のチューナーとCSのチューナーが一緒になったものが内蔵されています。最近新しく建った建物ではなくとも、自分の住んでいるマンションでもアパートでも、今はもう、確かなデータかどうかわかりませんが半分ぐらいは、これからどんどん増していくんでしょうが、地デジの電波も、そして衛星放送の電波もCSの電波もすべて受信できる共有アンテナがつけられている。地デジ対応のためにテレビを買いかえて差し込んだところ、結果的に衛星放送まで見られてしまう。

 今の放送法の体系にのっとって言えば、衛星放送が見られる状態にある以上、九百五十円ですか、衛星放送の受信料を払いなさいという形になっています。

 会長自身も民間企業に長く在籍された方でありますので、例え話で言うのもなんなんでしょうけれども、スーパードライを買おうとしたら余計な発泡酒までついてきて、抱き合わせじゃないと買えないぞと言っているのに等しいのじゃないかなと私は思っています。

 衛星放送の起こりを考えれば、難視聴対策から始まり、そして途中からモアサービス、今回も、この衛星放送の受信料を取るときには付加的なという言葉で付加料金という言葉をつけられています。

 ですので、勝手に衛星放送が見られてしまうという今のこの現状に対して、何かしら、衛星放送のとらえ方を考えるか対策をとるかということをしなければならないと思っています。

 増田大臣の前の菅大臣に同じことをお話ししたら強い問題意識を持っていただいて、議事録にもそういうような発言が残り、その後に、第一次報告書という形で公平負担のための受信料体系の現状と課題に関する研究会という中で取り上げていただいて、問題点の所在であったり、講じられるべき措置等についても答申を出していただきました。

 まず根本的なことをお伺いしますが、私は衛星放送の押し売りと言っていますけれども、これは今問題があると、問題認識をお持ちかどうかを大臣と会長にお答えいただきたいと思います。

増田国務大臣 私も、今御指摘いただいた問題を聞きまして、なるほどと。そこの九百幾らですかの金が自動的にもう契約しなければいけないような形で扱われているということを聞きましたので、ここは、視聴者の意識の差にもよりますけれども、やはり不合理な面があるな、問題があるなと。どういうふうにそこを切り分けて、本当に地上波だけを見たいという方を峻別するか等いろいろな問題がありますけれども、しかし、事柄として言えばやはり不合理な面があるのではないか。だからこそ、研究会でああいう検討をしたわけでございます。

 解決方策は、にわかには思いつきませんけれども、やはりその点は何らかの是正があってしかるべきではないかな、こういうふうに考えているところでございます。

福地参考人 いわゆる受動受信の方の中で、見てもいないのに衛星契約が必要となるのは不合理じゃないかという御意見がありますことは、我々といたしましても重々承知をいたしております。一方、放送法に基づきまして受信契約の締結をお願いすることも、これはNHKの責任になっております。

 この受信料制度のもとで視聴者の御納得をいただける合理的な進め方というのはどんなものだろうなということ、現在進められております、先ほど御指摘のありました総務省の第二次受信料体系研究会の衛星受信料のあり方の議論も踏まえつつ、検討を進めてまいりたいと思います。

寺田(学)委員 今、会長の最後の答弁のところで、研究会の答申を踏まえていろいろどうこうという話がありました。きのう質問通告のときに、これは具体的な策を考えるのはどちらですかという話をしたら、総務省の方は、それはNHKの方々ですと。もちろんそれは、利用規約ですか、詳細のものをNHKがつくって総務省が判こを押すという形になるでしょうけれども、具体的なあり方に関してはNHKが判断するということでした。そういう意味を含めて、今、会長の御答弁は、どちらかというと総務省の研究会の方にアイデアをゆだねるような形の御答弁がありましたけれども、NHK自身で考えられることだと思います。

 大きく考えて、方向性として三つぐらいしかないと思うんですね。衛星放送はモアサービスだという概念を取りやめて、本体契約だとすべて含めてしまう、実質的な値上げになりますけれども、そう考えるのか。モアサービスという概念を残したままやるのであれば、今地デジが進行しているのであれば、デジタル化の形でスクランブルにして、衛星だけは払っていない限り見られないようにするか。あとは、性善説に立つという言い方はよくないかもしれませんが、窓口、契約段階において、衛星放送を受信する機器を設置する意図を持って設置したわけでもないが映ってしまっているんだ、だから私は払わないんだ、そういうふうな形で、現場レベル、窓口段階でこの問題を解決するか。いずれかだと思うんです。

 この問題に関して、いつまで、どのような形で解決されるおつもりか。会長、どうかよろしくお願いします。

大西参考人 お答え申し上げます。

 一次報告書で、こういう受動受信の場合の受信契約を継続できるような措置を講じると。講じるのは、NHKとして、先ほど先生がおっしゃったように、トータルとしての総合料金にするのか、あるいはBSのスクランブルをするのか、あるいは窓口の段階でやるのか、こういう三つのことがあろうかというふうに考えております。

 この措置を実現するためには、公共放送を支える負担金という原則が堅持されるということと、措置の対象者を誤りなく把握できるということと、不正利用を正確に防止できるということを考えなくてはいけないというふうに思っております。

 こういうことを含めて、今現在どういう具体的なことができるかということで、今検討を進めていっているということでございます。

寺田(学)委員 検討を進められているのは結構なんですが、現実問題として払っている方々がいるわけですよ。自分の意思として機器を設置していないにもかかわらず、勝手に住居環境によって見られる環境に置かれてしまった方々が、九百五十円ですか、払っているわけですよ。悠長に考えられるのもいいですが、現実問題として出費がかさんでいるわけですから、早急にこれは対応していただきたいと思うんです。

 会長、先ほどの質問と重複しますが、いつまでにこのことに関して結論を出される御予定でしょうか。会長、よろしくお願いします。

大西参考人 お答え申し上げます。

 二十年度中に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

寺田(学)委員 二十年度中のいつぐらいになるのか。それまでの間にお支払いしている方々の払った分はどうなるのか。会長、いかがですか。

福地参考人 いずれにいたしましても、放送法の中で、受信契約の締結をお願いすることはNHKの責務となっておりますので、そういうことで御了承いただきたいと思います。

寺田(学)委員 総務大臣みずからが不合理な点があって是正が必要だと言われていることですので、二十年度中に結論を出すということでありましたが、是正をする必要が私はあると思うんです。福地会長として、今の押し売りの状態を放置されてもいいとお考えなんでしょうか。是正する必要はあると会長自身もお考えになられているんですよね。会長、いかがですか。

福地参考人 受信料の公平性ということから見て、いい方法があればぜひそれは是正していただきたいというふうに思っております。具体的な方法がなかなか難しいというふうに考えておりますけれども。

寺田(学)委員 是正するのは、私たちではなくて、NHKさんが考えて総務省の認可を受けるわけですから、考えるのは会長の方です。民間の中で本当にお客様の満足度というものを最優先に考えられているのであれば、衛星を見たい方、そして衛星を自分で受信してみずから見られる環境に持っていった方は、それは当然払うべきでしょうが、地デジの進行だ、テレビを買いかえなきゃいけないというような話がどんどんどんどん国の政策として進められている中で、テレビを買いかえたら受信料が上がったという方々がたくさんいるわけですよ。

 今、地上波の受信契約数が二千五百万件というふうにお伺いしています。衛星がそれの約半分だというふうにあらあらデータではあると思いますが、いずれ、このままいけば追いつきますよ。ほとんどの方が三波共用のテレビを買われるでしょうし、アンテナをかえるときには、それは三波対応のものにする可能性はたくさんあるわけですから、それを、さも衛星の魅力があるから伸びていっているような形での御答弁はやはりよろしくないのではないかなと思います。結論が出るまでの間払われている方の払っている分をどうするかということもあるわけですよ。

 昨年この問題を質疑したときに、多くのNHKの徴収員の方からメールをいただきました。

 自分自身としては良識的な考えを持っているから余り踏み込んでやらないけれども、あくどい徴収員は、ピンポンを押して人が出てきたら、まずリモコンを持ってこいと。リモコンを持ってきたら、BSのボタンがついているね、ここは三波対応のマンションだから、あなたはBSを見られるでしょう、月九百四十五円払ってくださいと。おばあちゃんとかおじいちゃんとかは、わけもわからないまま、地デジにしないとテレビが見られなくなるということで買ったら急に受信料が上げられたんだと、悲鳴を上げている方もいらっしゃる。

 どうでしょう、その結論が出るまでの間、窓口、窓口という言い方はおかしいですね、徴収員の方、あとは契約を締結するその現場において、リモコンを見せろとかというようなやり方自体はやめさせるべきだとまずは思いますが、会長としていかがですか。

福地参考人 二つの点でお答えいたしたいと思います。

 まず最初の、見ていないのに払わないといけないという問題でございますが、これにつきましては、もう一つ、NHKの衛星放送としての特徴を生かして、やはり見ていただくような番組づくりをするということもまず大事かというふうに思います。

 それから、今のリモコンの問題ですが、これは、そこの世帯の方のお許しを得まして、テレビを持っていらっしゃる方がそのことについて御存じがない場合に、リモコンを借りて確認をしているというふうに聞き及んでおります。

寺田(学)委員 今、会長の答弁ですけれども、どのような形でテレビを見られているか御存じないからというのは、まさしくこの問題の本質なわけですよ。テレビがあるかどうかなんというものは、別に、聞いたら家族全員がわかりますよ。ただ、BSが見られる環境にあるかどうかが、全く自分の意識がないまま見られる環境になっていたりするのが今問題だという話をしているわけです。

 二つ、ちょっと、二十年度中に結論を出すわけですから、それまでの間は、不合理な点があって是正が必要だというものが延々と続いて料金徴収が続くわけですから、現実的な問題として、リモコンを見せろというようなやり方はまずやめさせるということ。

 それとともに、受信料契約をする方々、聞くところによるとインセンティブがいろいろあるそうです、出来高制ですから。衛星に関しては、これは出来高制にしてしまえば、あなた衛星見られるでしょう、こういう受動何とか、押し売りのような形になったとしても、見られるんだったら払いなさいということが、窓口段階、締結段階においても強くインセンティブとして働きますから、とりあえず、二十年度中の結論が出るまでは、そのようなインセンティブ、衛星の契約に関しては出来高制をやめるとか、さまざまな形で、本当の意味での顧客の満足度を上げる努力をするべきだと思います。

 残り一分しかありませんけれども、会長、そのような努力をしますか、しませんか。いかがですか。

福地参考人 何度も申し上げますが、要するに、私たちの受信料の収納活動というのは放送法に基づいてやっておりますので、それが二十年度中に改められるかどうかということを私から確としてお答え申し上げるわけにはいかないと思います。

寺田(学)委員 時間になりましたので。

 こういうような不合理な形を続けていくようなものをもととした予算というのは私は認められないと思います。しっかりと是正するような道筋、期間と方法というものを提示していただきたいと思います。そのことを申し添えて、質疑を終わります。

渡辺委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、私も、先ほど同僚議員が若干行っておりましたけれども、地上デジタル放送についてお伺いをしたいと思います。

 実は、私は心配性なものですから、二〇一一年の七月、本当に安心して迎えられるのかなというふうに思っております。デジタル放送が本格開始されるというよりも、二〇一一年の七月にアナログがとまるということによるさまざまな混乱、このことに対していろいろな懸念を持っているわけでございます。

 こうした中で、NHKが地上デジタルに移行するに当たって果たす役割というのは、私は非常に大きいというふうに思っています。それは、NHKが全国ネットワークを持っているというようなことですね。あるいはまた、NHKさんが持っている電波、エンジニアリングサービスというのがそうでありますけれども、受信機の側に何か支障があった場合にある種の遠隔操作が可能になるような技術もNHKの電波に乗せているということもございまして、民放に先駆けて、NHKは地デジ対応というようなものをやっていくある種の責務があるんだと思っています。

 そこで、会長にお伺いしたいんですが、現時点でのNHKの地デジ移行に向けた対応状況、将来へ向けての課題、そして二〇一一年の七月をNHKとしては、民放はちょっと別にして、しっかり迎えられるのかどうかというところについて御見解をお伺いします。

福地参考人 地上デジタル放送は、今年度末までに三百四十四局が開局をいたしまして、世帯カバー率は九三%となる見込みであります。

 今後は、二〇一〇年までに千七百局以上の中継局を整備いたしまして、カバーエリアを拡大していく予定であります。限られた期間の中での大量整備となります。二十年度以降は、最大で年間六百局を超える中継局を建設する必要がございます。このため、民放との共同建設の推進と工程の平準化を図りつつ、地上デジタル放送のカバーエリアの拡大に最大限取り組んでまいります。

 現在アナログ放送でNHK共聴によります放送をごらんいただいている世帯につきましては、デジタル放送に対応できるように設備の改修を進めてまいります。今年度末までに千三百施設を超える改修を進めております。二〇一〇年までに残り約四千四百施設の改修を行う予定でございます。

 以上でございます。

逢坂委員 会長、もう一言だけ。二〇一一年七月は、NHKとしては万全の体制で迎えることができるのかという点についていかがですか。一言でお願いします。

福地参考人 現在、技術局の方と打ち合わせをしております。万全の体制でできるというふうに聞いております。送信関係につきましてはできると聞いております。

逢坂委員 会長の方から力強い、NHKとしては送信の方は大丈夫だという御答弁をいただきまして、それでひとまずは安心なのでありますけれども、そこで問題になるのが、やはり私は民放だというふうに思うわけですね。

 そこで、まず、総務省政府参考人の方にお伺いしたいんですけれども、民放の地上デジタルの準備状況は一体どの程度進み、それから、今後課題とされているようなことはどんなことがあるのか、政府参考人の方にお伺いします。簡潔にお願いします。

小笠原政府参考人 ただいまNHK会長から御説明があったのと同様に、民放事業者も二〇一一年のデジタル放送の完全移行に向けて、中継局の整備を進めているところでございます。本年一月時点で、整備済みの局は千百四十九局程度でございます。世帯カバー率につきましては、民放におきましては細かい計算をしておりませんが、NHKと同様、おおむね九〇%を超えているものというふうに考えております。

 現在の計画では、民放全体で、今後約五千五百局の中継局整備が必要でございます。このうち、民放につきましては、現時点では、みずからの経営努力のみでは建設が困難であるとして、整備の具体的な日時が示されていない中継局が全国で約七百六十局ございます。私どもとしては、これが大きな課題だと考えておりまして、このために、中継局整備支援のための措置といいますのを平成二十年度予算に盛り込んでいるところでございまして、予算が成立いただければ、この支援措置を活用しまして、民放すべてのデジタル中継局の整備を着実に進めていく必要があると考えております。

逢坂委員 今、政府参考人のお話からすれば、やはり相当な数の中継局などをまだこれからも整備しなければならないということがあろうかと思いますが、これはやはり多額の費用を要することでありますので、相当ギアを入れかえてやらなきゃいけないんだろうというふうに思っています。

 一方で、受信者側の対策ですね、これも国としてはやらなければいけない。

 そこで、デジタル受信機の普及の状況でございますが、これも先ほど同僚委員から話がございましたけれども、総務省からお聞きしましたら、デジタル放送対応受信機、世帯普及率が二〇〇七年七月で三四・二%、それから、二〇〇八年一月現在で、台数としては三千百四十三万台というような話を伺っているわけですが、これは最終的にどの程度まで引き上げるというふうに総務省としては考えているのか、ちょっとお話しいただけますか。

小笠原政府参考人 もちろん、先生御指摘になりましたように、二〇一一年七月二十四日にアナログ停波し、デジタル完全移行するためには、すべての世帯にデジタル波をお届けし、現在日本に一億台のテレビがございますが、そうしたテレビをデジタルテレビに買いかえる、あるいはアナログテレビにデジタルチューナーを接続して、デジタル放送が可能なようにするということが目標でございます。

逢坂委員 すなわち、残されたあと三年の間に、今の世帯普及率約三〇%台を、さらにこれを三倍にするということですね。それから、台数三千万台を一億にするということですから、三年の間にやはり相当なことをやらなければいけないというのは、私自身も含めて改めて認識をしなければいけないことだというふうに感じます。

 それから次に、またあわせて政府参考人にお伺いしたいんですが、いわゆる共同で受信をしている施設、辺地なり都市なりいろいろなところで、共同でユーザーの皆様が受信している施設があるわけですが、これは全国にどの程度の箇所数があって、その整備に対して国としてはどんなバックアップなどを予定しているのかをお聞かせください。

小笠原政府参考人 辺地の共聴施設で申しますと、先ほどNHKの会長から御説明がありましたが、NHK共聴施設と言われているものが約八千五百ございます。それから、市町村等によります自主共聴施設と言われているものが一万一千施設ございます。合わせて全国で約二万施設。約百六十万世帯がそこに接続されているものと推計しております。

 このデジタル改修につきましては、今年度、つまり十九年度から国の財政支援措置を講じておりますが、この支援制度につきまして、これまで市町村から対象主体の拡大あるいは補助率の拡充、そういった要望が出されております。これを踏まえまして、二十年度予算におきましては、こうした事業主体として、市町村のほかに共聴組合を追加する、あるいは国の補助率も三分の一から二分の一へ上げるといった、さらに利用しやすい支援制度を二十年度の予算案に盛り込んでいるところでございます。

逢坂委員 実は、私の住んでいる函館市でございますけれども、函館市には函館山というのがありまして、函館山の上に送信所があって市内に電波を流しているんですね。ところが、函館市は海に面しているところですから、海岸部、入り組んだところなどは、いわゆる共聴施設がたくさんあって、その共聴施設を直さなければいけない。そして、地域によっては函館山からの電波が受信できずに、対岸の室蘭市にある放送局から受信をしている共聴施設もあるんですね。

 今回の総務省の支援策をお聞きしますと、一世帯当たりの負担額といいましょうか、整備額が三万五千円に満たないところは補助対象にしないというような話があるようでございますけれども、私は、そういうことをやっていたのではなかなか進まないのではないかという気がするわけですね。

 だから、その三万五千円というものを設けた意味合いというのも、若干わかるようなわからないようなところがあるんですけれども、こういうものはやはり撤廃をしていくということが大事ではないかなというふうに私は思うんですが、政府参考人、三万五千円というのを設けた意味というのは何なんですか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、三万五千円という件についての御質問でございますが、現実、東京その他こういった都市部の受信世帯でも、屋根の上のアンテナを改修する、先ほどもちょっと委員の御質問があったかもしれませんが、例えばVHFアンテナをUHFに改修するといったような費用も発生いたします。そういった費用が、私どもで平均的にはおおよそ三万五千円ぐらいではないかというふうに推定してございまして、そうした一般の都市の方々の公平性ということも配慮いたしまして、共聴施設の整備に当たりましても、この通常デジタル化に要する費用三万五千円を負担することを前提としているものでございます。

逢坂委員 私はその三万五千円というのは必ずしも適切ではないというふうに感ずるものですから、ぜひこの点は見直すというようなことを強く要望しておきたいと思いますし、そういうことをしなければ、二〇一一年七月、しっかり迎えられないのではないかという気すらいたしますので、この点は申し伝えておきたいと思います。

 次に、二〇一一年七月のアナログ放送の停波、アナログの電波をとめる方式について、現時点で総務省としてどのようにお考えになっているのか。

 といいますのは、全国一律に、一斉に二〇一一年の七月でぴたっととめてしまうのか、場合によっては、モデル地区などをつくってそこで段階的にやっていくのか、あるいは、もっと別の方法でアナログ停波をしていくのか。これはよほどしっかり考えておかなければ混乱を来すのではないかというふうに思うんですが、まず、政府参考人、この点、どのように今総務省としてはお考えになっているでしょうか。

小笠原政府参考人 ただいま先生から御指摘のありましたアナログ電波をどのように停波するのかといったことは、大変重要な論点といいますか課題でございます。

 ある時期一斉に停波するか、あるいは特別な地域を先行的に停波するか。先行する場合には、その先行する地域の住民の方々が、他の地域に先駆けて停波することに御理解いただけるかどうかという非常に難しい問題もあるかと思いますが、いずれにいたしましても、どのように停波するかといいますのは、現在、総務省と放送事業者において検討を進めているところでございます。

 さらに、こうした私どもと放送事業者との検討だけではなく、住民の方々あるいは市町村の方々等の御意見もいただく必要があるということで、情報通信審議会におきまして御検討もいただいているところでございます。そして、こうしたような御議論も踏まえまして、ことしの夏までには、どういったような形でアナログ放送を停波するのかという計画を立案したいと考えております。

 いずれにいたしましても、円滑にデジタル放送に移行いただけるような観点から、適切な案を考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

逢坂委員 アナログ電波の停波の仕方、これは非常に微妙な問題があろうかと思っておりますので、ぜひ、しっかり考え方を明確にしてもらいたいというふうに思います。

 ただ、一つだけ私、申し上げたいのは、昨今、総務省に限らずなんですけれども、いろいろな課題に対して、総務省としてのお考えはいかがですかとか、さまざまな省庁として、行政府としての考えはいかがですかとお聞きすると、みんな、何とか審議会で検討中だとか、何とか審議会の答申を待ってというようなことを言っているんですが、一体、役所の職員というのは何のためにいるんだと。この辺は非常に私は疑問に思うんですね。

 役所としてこういう考えでやろうと思っている、だけれども、では民間の意見も聞いて、それを判断してもらおうというのはいいんだけれども、役所そのものが全く白紙状態で、審議会で検討してもらってそれに沿ってやるなんというんだったら、役所は要らないじゃないですか。大臣、そう思いませんか。いかがですか。まあ、この辺、答弁はいいです、いいです、私はそう思うという話で。

 さて、そこで次の話なんですけれども、皆さん、ちょっと変な話になるようですが、実は飛行機は、滑走路を離陸するときにだんだん加速していきますね、あのときに、離陸決定速度というか、離陸決心速度というのがあるそうなんですね。ある一定のポイントに来たときにある一定の速度が出ていなければ、離陸をあきらめる。場合によっては、ある一定のポイントでその決められた速度以上出ていれば、もし万が一機体にトラブルがあっても無理をして離陸を絶対するというような離陸決心速度というのが飛行機には定められている。しかも、その速度というのは、そのときの貨物の重量だとか天候の状態によってさまざま変わっているわけなんですが、私は、今回の地上デジタル移行について、この離陸決心速度みたいな考え方が必要なのではないかというふうに思うんですね。

 と申しますのは、今、この地上デジタルに円滑に移行していくためには、放送局側の整備、中継局が必要だとか放送局の設備が必要だとか、あるいは受信者側の対応もさまざま必要ですね。だから、こういうもろもろのものが本当にぴっちりそろわなければ、二〇一一年七月にアナログ停波しますといったときに大混乱になりはしないかと。

 だから、そういう意味では、この離陸決心速度みたいな考え方で、ある一定の手前の時期に、本当に二〇一一年七月に停波してよいのかどうか、その諸条件を列挙して、クリアされていないものがあるとするならば離陸できないというようなことを決める必要があるのではないかというふうに私は思うんですが、大臣、この辺はいかがでしょうか。

増田国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 アナログを停波する、二〇一一年七月二十四日というふうにしておりますけれども、この停波の仕方については、先ほど局長が御答弁申し上げましたとおり、ここはニュートラルにして、諸外国でも、地域を限って、これも例えばCATVが行き渡っている地域とか、いろいろ条件が必要だと思うんですが、そういう条件を見て地域ごとに停波の可能性を探っていく、これは一つのやり方かなというふうに私は思っているんです。

 一方で、今、離陸の決心速度というか、そういう考え方をこれに導入したらどうかというお話がございましたが、この点について言うと、私の今の考え方は、こういった大きな問題であるからこそ、国がしっかりと対策をとっていかなければならないんですが、その上で、やはりデッドラインといいましょうか、おしりをきちんと決めて、七月二十四日には絶対に停波をしますという形で、もう明確に、世の中、国民の皆さん方に宣言をする。まだ認知度が六〇%という調査がございますので、この点については少しじくじたるところがございます。これは必ず周知度を上げるということにしなければいけないわけですが、その上で、やはりおしりをきちんと決めて、そこで必ずこうしますということを言っていかないと、なかなかこういった大きな切りかえはできないのではないか。

 それ以前にこの条件だったらもうやらないということよりも、むしろ、絶対にこの日にちになりましたら停波しますということを宣言した上で、必ず、そのことによって伴う国民の混乱を最小限あるいはゼロに向けて最大限努力する、こういうやり方が一番いいのではないかというふうに私自身は思っております。

 ここはいろいろな議論があるので、多様に議論もまたいただきたいと私率直に思っているんですが、今はそういうことで、七月二十四日に向けて、とにかく関係者、これはやはり総務省が国策ですから一番頑張らなきゃいかぬと思います。ですから、そういう思いで私も今旗を振っているところでありますが、そのために、いろいろな課題を御指摘いただいておりますので、その課題を克服する、つぶすということに全力を挙げていきたい、こういうふうに考えております。

逢坂委員 離陸決心速度みたいな考え方ではなくて、しりを決めて、そこに向かって何が何でもやるんだというような御決意だったかと思うんですが、アメリカの例を見ますと、アメリカは二〇〇六年末までにやると言っていたけれども、結局これは二〇〇九年の二月十七日に延期になっている。韓国の例を見ますと、二〇一〇年までにやる予定だったけれども、二〇一二年末までに延期になっているというようなケースもございます。

 最終的には国民に混乱を来さないということが非常に大事なことでありますので、その観点からいきますと、先ほど同僚委員からも話がございましたけれども、私は、今の政府の関係省庁連絡会議ぐらいの体制の中で地上デジタル移行へ対応しているというのは、やはりいかにも手ぬるいのではないかという気がするわけですね。

 私の地元で話を聞いてみましても、中継局の工事に、ある時期集中するわけですね、大体、中継局というのは地形の悪いところにありますから、資材を運搬するためにヘリが必要だと。そんなに一気にヘリなんて稼働できませんぜというような話だとか、北海道だと、冬期施工というのが不可能な場合が非常に多いですから、限られた時期しか中継局の工事ができないじゃありませんかというような話ですね。

 あるいはまた、廃棄のアナログテレビがどのぐらい台数が出るかなかなか予測はつきませんけれども、場合によっては最大で五千から六千万台ぐらい出るんじゃないかとか、これはやはり政府を挙げてやらなきゃならない課題だというふうに思うわけですね。

 だから、やはり大臣、先ほどのような離陸決心速度を持たないということであるならば、これは総理をトップとするような強力な推進体制をつくるというようなこと、そして、予算だって相当多額に確保しないとこれは総務省だってやれないじゃないですか。だから、そのために、総務省と財務省の綱の引き合いみたいなことにならないように、もう政府を挙げてやるんだという体制をつくる、そういう心構えで向かっていくことが大事だと思うんですが、大臣、いかがですか。

増田国務大臣 これは政府を挙げてやらなければいけない、これは委員のおっしゃるとおりだと思います。重くその言葉を受けとめたい。

 それから、今内閣官房と共同で関係の連絡会議等を開いております。これは政府を挙げた体制ということに今後なるのかどうか、あるいはもっと今おっしゃったような形で上げないといけないかもしれません、それは私も十分にそういった体制の構築には意を用いていきたい、とにかく結果を出したい、こういうふうに思っております。

逢坂委員 終わります。ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也と申します。大変長時間の御審議、お疲れさまでございます。

 福地会長には、私、実は昭和四十六年生まれでございまして、会長がアサヒビールに御入社されてから十四年後に生まれました。やはり小さいころからもうカラーテレビが目の前にありまして、テレビとともに育ちました。小さいころは、おじいさんがいつもNHKのニュースをかけているんですよね、それが嫌で嫌でしようがなかったんです、私は漫画を見たいとかいろいろな思いがあるのに。ところが、だんだん年をとってきますと、NHKのニュースとか教養番組というのはすごく波長が合うな、何か不思議な感じがしております。

 今回、六千五百七十億円の予算でありますが、少しわかりやすい数字からまず、経営委員長そして会長にごらんをいただきたいなと思いまして、いただいた資料の中からあえて抜粋してまいりました。委員長にお許しをいただいてお配りをさせていただいております。

 六千五百七十億円、まさに準税金といいますか、税金に近いお金でいろいろな番組をつくっておられる、これは興味深い数字だなと思いました。例えば「ためしてガッテン」、一本当たり一千六百八十万、「世界遺産」、二千三百万、話題の「篤姫」、一本当たり六千万近い費用ですか、「おかあさんといっしょ」になりますと、一本当たり三百万ぐらい、こういうことだそうです。

 一枚おめくりいただきまして、直近の一週間の視聴率、最近報道されておりましたので抜粋してまいりました。堂々たる一位は「篤姫」、二四・七%。以下、六番目には「ちりとてちん」、朝のドラマですか、そして「ニュース7」が十番目等々、NHKの番組というのは大変上位にもランキングしております。一方、上位二十傑のうち、フジテレビが七つ、日テレが五つ、TBSが三、テレビ朝日が二ということで、確かに民放のランキングインも非常に多い状況にございます。

 あわせて、委員長、会長には、御存じかどうかあれですので、若干御紹介申し上げたいと思いますが、NHKは今回六千五百七十億円の予算でありますが、フジテレビさん初め同業他社さん、テレビ朝日が連結ベースで大体二千五百億ぐらいだそうですね、売り上げが。日テレは三千四百億、ちょっとこれは口頭で申し上げていますが、フジテレビがほぼNHKに匹敵するぐらい、六千億近い予算だそうです。しかし、その中で人件費、NHKの人件費は一千八百億、約三分の一が人件費という計算になります。しかし、フジ二百億、日テレ九十億、テレ朝九十億、非常に人件費あるいは償却を持たずに全国のネットワークを使ってやっているというのが実態かと思います。

 さて、ちょっといろいろ紆余曲折いたしましたが、私は経営委員長そして会長に大変期待をする人間の一人であると同時に、やや心配もしております。その観点から率直にお尋ねします。

 まさに古森委員長は総勢七万六千名を擁する富士フイルムグループ、ネガフィルムからファインピクセルですか、非常にもう企業イメージすらを変えられたぐらいのすさまじい経営手腕を発揮されました。また、福地会長におかれても、アサヒビール、あのスーパードライの伝説というのは本当に日本経済現代史に残るような、神話のような活況ぶりだったかと思います。

 お二方にあえてお伺いしたいのは、富士フイルムで経営されてきた経営手腕と、今度NHKの経営委員長として最高責任者たるお立場におられることとで、何が同じで何が違うか。アサヒビールにお勤めになられた福地会長、何がアサヒビールと同じでNHKは違うのか。その二点、それぞれお答えをいただきたいと思います。

古森参考人 お答え申し上げます。

 NHKには企業体といたしまして二つの側面があると思います。

 一つは、公共放送として、良質の番組を提供して、正しい情報あるいは良識の核となるような考え方とか、こういうもの、あるいは文化芸術、広く公共放送として利害ベースに立たないで提供するという側面がございます。

 いま一つは、国民の皆さんから受信料をちょうだいしているわけでございますから、当然効率的に使わなきゃいけない、無駄遣いしちゃいけない、効率経営、二つの側面がございます。

 私は、その効率経営の側面で特にNHKに寄与したいというふうに考えておりますが、一方、民間の経営も、何もただもうかればいいということではありません、効率的経営をすればいいというわけではない。お客に、NHKの場合は視聴者に、何を提供するか、どういう価値を提供するかということで対価を得ているわけで、そういう意味では、我々は物をつくって売りますが、価値を提供するわけでありますが、NHKは良質の番組を提供して、そういう価値を提供して受信料をもらうという面では、全く同じだというふうに考えております。

 以上、お答え申し上げます。

福地参考人 NHKに参りましてまず感じましたのは、前職との違いは、前職は嗜好品でございますので、一〇〇%あまねくということは関係ございません。今度は、好きな人だけ飲んでくださいというわけにはまいりません。視聴者は全員、全世帯からいただいておりますので、あまねく方々に放送、いい番組をお届けするという責任が根本的に違うかと思います。

 二番目に感じましたのは、ステークホルダーズの違いでございまして、前職のときには株主、アナリストというのがございまして、それに社員と顧客という、近隣関係もございますけれども、主に言えば三つのステークホルダーでございまして、NHKの場合には株主はございませんで、視聴者と職員という、ステークホルダーが二つの違い、これが二点目でございます。

 三番目は、競争構造が違う。もちろん、NHK、公共放送としての立場と民放との競争はございますけれども、競争構造は根本的に違うという感じがいたしました。

 三つ目の観点は、今、民の分野ではほとんどがグループ経営ということで、グループ視点ということが大変重視され、グループとしての最大効率を発揮するということが求められております。NHKの場合も今それを志向しつつありますけれども、そこまでに至っていない。先ほどから御指摘の点もございましたけれども、そういった点が主に違う点かなというふうに考えております。

 以上です。

小川(淳)委員 大変ある意味ではいいお答えをいただいたなと思います。

 お二方がお話しになった観点の中で、一つ抜けるかなと思いましたのは、やはり放送に関する専門性ですね、これをひょっとしたらお二方が一番自覚しておられるかもわかりません。

 ちなみに、よく比較の対象になりますが、イギリスのBBCでは、経営委員会に当たります経営トラストが、地方自治の専門家でありますライオンズ委員長、そして会長にはBBC御出身のトンプソン会長ということだったようです。その意味では、きょう御出席になっておられますが、今井副会長のお仕事ぶりといいますか、お二方を補佐しながら放送の専門性を十分に発揮していただくという意味では、お三方にぜひ今後のNHKのさまざまなバランスのとれた経営、ぜひ御期待をこの場をおかりして申し上げたいと思います。

 少し各論で幾つかお尋ねいたします。まずインサイダー取引について、時間の関係で何点かまとめてお尋ねいたします。

 三名の職員が百万円を超える利益を得たそうでありますが、課徴金が四十九万円、その半分を取り上げたにとどまっているようであります。この点も含めて、今後の処分をどうされるのかが一点。

 あわせて、現在、懲戒休職という扱いにこの三人はなっておるようですが、この職員に対して給与の六割をなお支給しておられるという点、これは、NHKの信頼性なりといった観点から、国民の理解を得られるものであるかどうか、その点に関する認識。

 三点目。内部五千名、外部三千名の約八千名がアクセスできたと言われるこの種の特だね情報、この特だね情報にアクセスできる職員を五千名から三千名に絞ったというお話をお聞きしておりますが、なお大変大きな数字、恐らくコントロール不能だと私は思いますが、これで十分とお考えになっておられるかどうか。

 最後に、株式取引については、もちろん今、第三者委員会で議論していると思いますが、既に、日経新聞、日銀、そして経済産業省を初めとして、問題が起きたところでは、職員への報告義務を課すなど、より先進的な対処をとっておられます。NHKは、公共放送としてむしろ他の民放に先立つ形でこの辺は厳しい姿勢を打ち出されるべきかと思いますが、以上四点、お答えをいただきたいと思います。

福地参考人 まず、懲戒休職の考え方でございますが、当初は単なる休職でございまして、単なる休職にいたしますと給料を払う格好になります。したがって、給料を減額するという方向で検討いたしますとき、本来は処分をしてしまえばいいんですが、第三者委員会の方から、第三者委員会の結論が出るまで本人の処分は待ってほしいというふうに言われております。その中で、報酬を減額しながらという工夫をいたしました結果、この三人の問題が懲戒に該当する、その場合には懲戒休職というものが充当できるというふうな社内規定がございますので、しばらくの間でございますけれども、そういった処置をいたしたわけでございます。

 二番目のアクセスの問題ですが、本来はもっと減らすことが必要なんですが、いずれにいたしましても、これは、番組、報道をつくり上げていくためにはゼロにはならない。ゼロにはならない段階でやはり同じ問題が起こってくる。

 私は、今度の問題が起こりましたときに、アクセスする人が五千人もいる、数千人いるというのも甚だおかしいことだと思いましたけれども、それ以上におかしいと思ったのは、アクセスした人をチェックできないという方がもっとおかしい。何時何分にだれがこの情報にアクセスしたんだということがわかりますと、予防措置にもなりますし、その対象者が絞られてきます。

 そういう仕組みがあったんですが数日で消えてしまうということで、インサイダー問題というのは、本件もそうでございますが、一年たって出てきた、少なくとも一年、二年の間、そういう情報が確保されていなければいけないということで、これは即日、すぐ直しました。今は、この情報にだれがアクセスしたか、何時何分の何秒にアクセスしたかということがわかる体制にいたしました。これで随分と予防措置になるというふうに考えております。

 三番目の株取引の問題でございますが、いろいろなお考えがございまして、最終的には第三者委員会の再発防止策に従いたいと思っております。しかし、その前の段階で、一般職員は六カ月の短期売買をやめようということにしたのですが、上に行くほど厳しくしようということで、私たち会長、副会長は六カ月株取引はゼロでございます。そういったことにしております。しかも、この六カ月以内ですが、報告義務を付するようにしております。しかし、これは暫定的な措置でございまして、いずれにいたしましても、第三者委員会の再発防止策の結論が出ましたら、それに従ってまいります。

 なお、六カ月というのはやみくもにつくったわけではございません。これはやはりメディア各社のいろいろな尺度に合わせまして、参考として当面つくった再発防止策でございます。

 以上でございます。

小川(淳)委員 実は、国家公務員の懲戒に関しても、刑事起訴された場合には百分の六十以内で給与を支給できるという規定がございます。あくまで百分の六十以内なんですね。ですから、そこは世の中のNHKに対する厳しい目をよく勘案いただきたいということを重ねて申し上げたいと思いますし、取引の報告義務を課すことができれば、もちろん記録が残ることも大事でしょうが、これは予防措置としては最も進んだ、経済産業省並みのやり方でありますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 あわせて二点、お尋ねします。

 ちょっと時間の関係で端的にお尋ねいたしますが、中期計画で、三年間で一〇%の人員削減を実施したい、千二百名の人員削減を実施したい、どうもこれは達成されつつあるようです、十八年度、十九年度、二十年度で。しかし一方で、今社会問題化もしておりますが、非正規雇用形態でのNHKの職員の数がふえているというデータを少し散見いたしますが、この点に関する御認識。

 そして、この六千五百七十億円、ほとんどが受信料でありまして、受信機は今や、もはや、これからまさに、さらにそうでありますが、テレビとは限りません、携帯電話やパソコン、あるいは録音録画機ですか、多様な受信機に応じて受信料契約をちゃんといただいているのかどうか、把握をすべきだと私は思いますが、これは全く異なる点ですけれども、二点まとめてお答えをいただきたいと思います。

福地参考人 現在、千二百人の効率化を進めております。ことし二十年度が三年目に当たりますが、その減員を非正規雇用に置きかえているものではございません。

 NHKの業務につきましては、職員だけでなくて、関連団体への業務委託とか制作プロダクションなどの活用等、さまざまな形で行っております。NHKにおけるスタッフ、派遣労働者の非正規雇用は、ここ数年、一定規模、二千八百人前後で大体推移をしておりまして、千二百人の要員減員が非正規雇用の増加にそのままつながっているというふうには、現在のところは見受けられません。また、スタッフ、派遣労働者とは定期的な個別面談の実施やコミュニケーションを密にいたしまして、日常的にも適正な雇用、業務管理に努めております。

 二番目の、各御家庭で携帯電話やパソコンを含めて受信機の設置台数や種類といったデータは、まだ私どもとしては把握しておりません。ただ、世帯の受信機所有状況の調査といたしまして、NHK受信実態調査をサンプリング調査で行っているという段階でございます。

 以上でございます。

小川(淳)委員 受信料の収納率が現在七割ということですから、これは高めていく必要があろうかと思いますし、その際、携帯電話で受信している方、あるいはパソコンで見ている方、こういう方について、こういう状況ですということも説明できないと、これは説得力を増すことができないと思いますよ。改めて御指摘を申し上げたいと思います。

 それから、非正規雇用に関しては、こういう数字がどうもあるようです。直近四年間で五百名余りの職員が減らされている、減少している。一方で、派遣職員が三百五十名ふえているということもあるようです。もちろん、こういった部分を通じて効率化ということはあるんでしょうが、やはり公共放送ですから、その体質そのものから、単に合理化、切り捨てといったようなことにはならないように、改めて注意を喚起しておきたいと思います。

 最後に、受信料、例えば、さっきBBCの例を引き合いに出しましたが、BBCは何と日本の倍、三万円の受信料だそうですね。BBCの予算たるや七千億円を超える。つまり、人口とか経済規模は日本の半分でありながら、公共放送に倍の資源を投じている国ということが言えようかと思います。

 しかも、その受信料の収納率は、日本のNHKが七割に対して、BBCは九五%、これは大変高い数字であります。もちろん、義務化とかあるいは電器屋さんからの通知義務、いろいろなことがあろうかと思いますが、私は、これの背景となっているのはやはり信頼度が大きく影響しているような気がします。NHKが最近調査された世論調査では、NHKを信頼している、大体五〇%、五三%。半分近い方が信頼していない。BBCは七五%だそうですね。

 これは私ども政治家の側も偉そうなことは言えません。最近の調査では一割とか二割とか、政治とか国会、行政を信頼しているというのが非常に低い中で偉そうなことを言えませんが、ぜひ、この信頼度を高めていくことが、ひいては納得して受信料を納めていただける、これが予算の獲得にもつながり、効率的な使用がさらに信頼を高めていく、こういういい循環をぜひつくっていただきますこと、主張申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 NHK及び経営委員会に質問をさせていただきます。

 最初に、NHK職員によるインサイダー取引事件の問題についてであります。NHK自身が、公共放送に携わる者、報道を担う者としてあってはならないこと、報道への信頼を損ねる行為と述べている重大な事件であります。

 そこで、もともと、インサイダー取引といいますと、二〇〇六年に日経の記者のインサイダー取引事件が大きな問題となりました。二〇〇六年二月に発覚をした日経記者のインサイダー取引事件、あのときも大きな報道もされました。マスコミ関係の中でも具体的な対策をとったところもありました。その際に、NHKはインサイダー取引防止のための何らかの対応策をとったのか、その点をまず最初に伺いたいと思います。

福地参考人 NHKでは、平成十六年九月に、全役職員がみずからを厳しく律して行動していくことを誓約いたしましたNHK倫理・行動憲章それから行動指針を制定いたしました。

 また、平成十八年の三月にはNHK新放送ガイドラインを公表し、行動指針、ガイドラインそれぞれの中で、取材で得た情報を個人の利益のために利用することは許されないという規定を整備いたしております。

塩川委員 NHKには、インサイダー取引禁止に関する内部規定はあるんでしょうか。

福地参考人 判断の問題でございますが、平成十八年二月に発覚いたしました日経新聞のインサイダー取引事件につきまして、NHKといたしましては、これまでの規定で十分と考えていたようでございます。今回、同様のインサイダー取引事件を未然に防げずに、対策が不十分であったということを深く反省いたしております。

塩川委員 二〇〇六年当時に、NHKとしては具体策を講じておらなかったわけであります。他の大手の新聞社、通信社また放送局などにおきましては、これを機に対策をとってきた。例えばフジテレビなどが、二〇〇六年十月から、企業の重要な情報を積極的に知り得る報道局員を対象に株式の六カ月以内の短期売買を内規で禁止をするとか、毎日新聞も、二〇〇六年十月に、インサイダー取引の禁止に関する規定を新設しております。主要な新聞社、通信社、放送局の中で、インサイダー取引禁止の内部規定がないのはNHKだけと承知をしております。

 福地会長に重ねて伺いますが、配付資料一枚目の方に、これはNHKのホームページにもアップされておりますが、「コンプライアンス活動の推進」ということで、平成十六年からずっといろいろな、コンプライアンス、コンプライアンスとやってきたわけであります。その中に、この日経職員によるインサイダー取引事件が発覚をし、逮捕もされるという経過がありました。まさにコンプライアンスの一つの大きな焦点となるべきインサイダー取引事件について、コンプライアンス、コンプライアンスと言っている最中に起こりながら、何らの具体的な対応策をとらなかった。

 なぜ、あれほどコンプライアンスを強調していたその期間中に起こったインサイダー取引事件について、コンプライアンスの重大なテーマとして取り上げられなかったのか、その点を内部的に深める必要があると思うんですが、会長としてはどのようにお考えでしょうか。

福地参考人 御指摘のとおり、平成十六年の不祥事以降、いろいろな不祥事が続いてまいりました。その中で対策が練られてきたにもかかわらず続発したということは、これは、私は、いろいろな対策が形だけに終わって、それに心がこもっていなかった。心と申し上げますのは、全職員が、こういった不祥事を防ぐ、コンプライアンスを、まさに法令遵守をする、コンプライアンスというのは私は倫理も道徳もひっくるめておると思いますが、そういったものを守っていくんだという熱い思いに欠けていたというふうに思っております。

 それを防いでいくのは、やはりトップの姿勢にあるというふうに思っております。これからは、私は、私自身がそれを心がけて職員に話しかけていきたいというふうに思っております。

 以上です。

塩川委員 心構えの問題ではなくて、他社において、同様の報道機関において、具体的にインサイダー取引事件が起こった、それをみずからの問題として何らかの防止策をとる、それこそが執行部に求められていたことじゃないでしょうか。職員の心構えの話、経営者の心構えの話ではなくて、具体的な対策をとらなかった執行部は、なぜこんなことになったのか、その点をお聞きしたいんですけれども、いかがですか。

福地参考人 日を追って調べてみますと、コンプライアンス対策委員会から行動規範から、いろいろなものがつくられておりまして、つくられておりましたのに守れなかったというところが一番問題ではないかというふうに私は認識をいたしております。

塩川委員 いや、当時を見ても、インサイダー取引禁止の内部規定はつくらなかったわけですから、そういう点での、他にそういう対策をとった報道機関と比べてのNHKの執行部の姿勢が問われているんだろうと思っております。

 古森経営委員長に伺いますが、この点で、経営委員会がまさにチェック機能を果たしていく、監督責任を果たしていく立場にあるわけで、二〇〇六年の九月に諮問機関としてコンプライアンス委員会の設置をしました。その直前に日経のインサイダー事件が起きていたわけであります。この二〇〇六年の日経の社員の事件が起こった当時、インサイダー取引事件の問題について経営委員会で議論にはならなかったんでしょうか。

古森参考人 十八年九月でございまして、当時、私おりませんでしたので、伝え聞いたところによりますと、具体的にインサイダー取引について項目をどうしろこうしろという話はなかったというふうに聞いております。

 その点は、私、昔いたとかいないとかいう話じゃなくて、経営委員会として大変遺憾である、落ち度があったというふうに考えてはおります。今後は気をつけてまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 やはり、なぜそうならなかったのかということを教訓としていく必要があるという点で、なぜ議論にならなかったのか、改めてどのようにお考えですか。

古森参考人 私、NHKの人間にいろいろ聞いてみましたのですが、これは余りにも当たり前過ぎて、そういうことをわざわざやらなきゃいけないということじゃなかったという認識があったというふうに聞いております。

塩川委員 いや、そういう分析で本当にいいのかというところが問われてくるんだと思うんですけれども、私は、NHK執行部と経営委員会と、両者ともインサイダー取引問題へのチェック機能が働かなかったということについて総括をする必要があると思います。私は、NHKに対する主権者の立場にいる視聴者、受信料を支払う視聴者軽視の姿勢が問われているんじゃないのか、このことを申し上げたい。

 二〇〇六年六月十九日に、デジタル時代のNHK懇談会の報告書が出されました。その中では、「相次いだ金銭的不祥事や、政治的中立性を問われたりする行為は、一見別々に見えるが、いずれも視聴者の軽視という同根から発している。」「経費の不正授受等の金銭的不祥事は、主権者に対する明白な背信であったし、政治との距離に対する疑念は、いまだNHKが政府や権力から毅然とした独立をしてはおらず、それが結果として主権者たる視聴者をないがしろにする行為につながってきた」と指摘をしております。

 そこで、福地会長に伺いますが、執行部として、「ETV二〇〇一」問題のような、政府や与党に対する毅然とした対応をNHKが示さなかったことが主権者たる視聴者の軽視となり、結果として個々の職員のジャーナリスト精神を劣化させて、職員の士気を低下させたのではないのか、このように考えますが、お考えをお聞かせください。

福地参考人 前会長時代も、不偏不党、これは貫いていたと思いますが、少なくとも私につきましては、これから先、不偏不党、公共放送としての立場を十分わきまえた経営をしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

塩川委員 経営委員会そしてNHK執行部に、より踏み込んだ総括をぜひしていただきたいと思っています。経営委員長も会長も経済界の出身の方ですから、こういうインサイダー取引事件のような経済犯罪、経済関連のこの不祥事に対し厳しく襟を正す、その姿勢をぜひとも見せていただきたいと思っております。

 次に、地上デジタル放送推進に関連してお聞きをします。

 まず、中継局の補完策でもあります共同受信施設、共聴施設の問題についてNHKに伺います。

 辺地共聴として、NHK共聴が行われています。あわせて、自主共聴が組織をされてまいりました。資料の二枚目をごらんいただくと、枠の中の右側に、辺地共聴ということでNHK共聴と自主共聴というのが挙げられております。

 NHK共聴には当然NHKが責任を負うわけです。一方、自主共聴は、設立の経緯から、アナログ放送についてNHKは受信できるけれども民放が受信できない、そういうエリアにおいて、住民の皆さんが組合をつくり、出資をして共聴施設を建設、維持してきたわけであります。この自主共聴のエリアにおいて、本当にNHKの地上デジタル波が届くのかどうかということがあると思うんですね。

 そこで伺いますが、この自主共聴組合の、実際にNHKの地上デジタル波が届くかどうかという受信点調査の費用は、先ほどの質疑にもありましたけれども、全自主組合分、約一万カ所ですね、NHKがその費用を負担するということでよろしいんでしょうか。

永井参考人 お答え申し上げます。

 自主共聴には実は一万一千施設というのがありますが、その中で、大半はNHKの電波が受かるところであります。なぜつくられたかといえば、NHKだけが受かって民放が受からないということで自主共聴をつくられたというところがあります。

 ただし、その中で、大体三十五万から四十万世帯をカバーする自主共聴については両方とも受からないというところがありますので、その部分について、NHKは、受信点について調査をしようというので、二十年度には十億円相当を計上してあるということであります。

塩川委員 自主共聴組合から受信点調査をやってもらいたいという要望があれば、それにNHKはこたえる、その受信点調査の費用負担を行うということでよろしいですね。

永井参考人 調査は、申請があれば行います。

塩川委員 その理由なんですけれども、なぜ自主共聴なのにNHKが受信点の調査の費用負担をするのか、それはどういう理屈、理由で行うという趣旨なんでしょうか。

永井参考人 地上デジタルを普及促進するというのは、我々にとっても一つの大きな経営課題であります。今の状況を見ますと、自主共聴の中でなかなかそこまで手が回らないということがありますので、全体を促進するという意味でNHKもそこに援助していこうということであります。

塩川委員 受信点調査の結果、NHKの電波が届かないという場所も当然あり得ると思うんですね。その際に、そういう自主共聴組合のその先の設備投資についてNHK側が負担するという考えはありませんか。

永井参考人 基本的には、自主共聴ですので、自主共聴の皆さんが整備をするということでありますが、今後、NHKとしても、実態に即して最大限の協力ができるように検討を進めていきたいと考えています。

塩川委員 福地会長にこの点をお聞きしますけれども、やはり自主共聴は、今までアナログ波ではNHKは届いていたかもしれないけれども、地上デジタル波になったら場合によっては届いていないかもしれない、そういうところについては自主共聴組合においてもNHKが何らかの負担をする、受信点調査に加えて設備費用の負担などについてもこれは前向きに考えるべきだ、負担をすべきだと思いますが、改めて会長のお考えをお聞かせください。

福地参考人 まず、調査の方は、先ほど回答申し上げましたように、申請があればNHKが調査を実施いたします。

 その後の共聴の問題でございますが、これは、まずはNHKとしては地上デジタル放送一〇〇%化が一番重要でございます。もしこれが実現できなければ、私どもも、設備投資面から何から大変なことになってまいります。したがって、そういうことについては十分御相談しながら検討していきたいというふうに考えております。

塩川委員 そこで、二〇一一年のアナログ放送終了時点で、現在NHKのアナログ放送が受信できるエリアにおいて地上デジタル放送の世帯カバー率は、NHKの予算の説明資料でも、NHK共同受信施設を含めると、二十二年度、約九九・五%とあります。つまり、二〇一〇年度末までには九九・五%ということなんですが、そうすると、その残り〇・五%というのは何なんだ、その残り〇・五%についてはNHKとしてはどのように対応する考えなのかをお聞かせください。

永井参考人 先生御指摘の〇・五%という部分は、昨年の九月に総務省が公表しました市町村別ロードマップにありまして、二〇一一年までに中継局などでカバーできない世帯がNHKの場合は十九から二十六万世帯と試算されているということであります。これがアナログ放送の受信可能世帯の〇・五%に当たるということであります。

 この数字は、総務省、それと民放、NHKが共同して検討しているグループの中でいわゆるコンピューターのシミュレーションをやりまして、その中で、ひょっとすると見えなくなる可能性があるところがこういう数字があるというので、実際は、今デジタルの局を順次整備しておりますので、その実態を見ながらこの数字を縮めていこうということで努力しています。

 それと同時に、アナログ放送をとめないとデジタルの電波がどうしても良好に受からないというところもある可能性がありますので、緊急避難的に衛星を使って再送信でごらんいただいて、その後、早急に地上ネットワークの方でこういうところは見えるように整備していきたいというところであります。

塩川委員 配付資料でも、二枚目の方にありますように、右下に、新たな難視・デジタル化困難共聴、約十九万から二十六万世帯、約〇・五%、ここについては、衛星を活用した補完措置、セーフティーネットを検討中ということなんですが、衛星放送では地域情報が提供されません。ですから、東京のを飛ばしても地域の防災情報というのは届かないわけですから、それら今まで受けていたサービスも受けられなくなるということであるわけで、この点では、地域放送の充実を掲げるNHKの方針にも逆行するものだと言わざるを得ません。

 衛星放送を容認したら地デジ投資そのものを行う動機というのは失われますから、放送事業者の責務を棚上げして視聴者にしわ寄せするようなやり方になりかねないという点は厳しく問われてくると思います。

 総務省、NHK、民放で構成する全国地上デジタル放送推進協議会でも「衛星によるセーフティネットに関する検討結果について」を昨年十二月に示していますが、この中でも、二〇一〇年から五年以内、二〇一四年度末までで解消するということを掲げていますけれども、そうであるならば、前倒ししてでも予算措置を行うべきだ。

 ですから、あまねく放送するというNHKの責務にふさわしい措置をとるという点でも、来年度予算は黒字になっていますから、その分についてもっと投入をするとか、前倒しで約〇・五%分についても一一年に間に合うようにやるということを行うべきだし、それについて困難だということであれば、もうそもそも間に合わないということなので、総務省として、二〇一一年のアナログ停波は延期をすべきだ。このことを申し述べて、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 今から質問いたしますけれども、わずか二十分という時間でありますので、執行部の答弁、簡潔明瞭によろしくお願いいたします。

 まず、経営委員会と執行部との関係についてお尋ねいたします。

 自主自律の堅持をもとに、監督機関である経営委員会と執行機関である執行部とが適切な緊張関係のもとでそれぞれの責任を果たしていく、これは至極当然なことでありますが、会長についてはきょう初めて質問するわけで、まずその点について、古森委員長、福地会長それぞれのお立場を明確にしていただきたいと思います。

福地参考人 公共放送NHKを適切に運営していくために、経営委員会は基本事項の決定と監督、そして執行部は業務執行と、それぞれ役割を担っておるわけでございます。今回の法改正でその点が一層明確にされましたけれども、法改正の趣旨を踏まえまして、両者が十分な意思疎通のもとに、連携しつつ、それぞれの役割を果たし、国民の負託にきちんとこたえていくことが重要であると認識をいたしております。

古森参考人 以下同文というか、今会長がおっしゃった話と全く同じようなことでございますけれども、我々経営委員会の方は重要事項を決定いたします権限と役割を持ちまして、執行部はそれを執行するわけでございますけれども、その業務執行の監督を負うということ、この関係ははっきりと認識しております。また、放送法でそのことが一層明確になりましたので、それを踏まえまして今後やっていきたいというふうに考えております。

 以上であります。

重野委員 先日の新聞で、受信料の値下げは困難であるとの会長の発言が載っておりました。その際、デジタル化投資の負担と、それから年金の積み立て不足が一千数百億円あるということを理由として挙げられておりましたけれども、まず、デジタル化投資の具体的な中身と金額がどうなっているのか、この点について明らかにしていただきたい。

八幡参考人 お答えいたします。

 地上波放送のデジタル化については、送信設備とかNHK共聴の整備に加えて、番組設備のハイビジョン化などの放送設備の整備が必要であります。かかる経費は、平成十三年度から投資していまして、総額で三千八百五十億円を見込んでいます。このうち、平成十九年度までは約二千五百億円の支出を予定しており、二十年度以降約千三百五十億円の支出を見込んでいるということであります。

 以上であります。

重野委員 私が聞いたのは、デジタル化投資の負担と、年金の積み立て不足が一千数百億円あるということが理由になっているんですね。積み立て不足が言われるのは今回が初めてではないかというふうに私は理解しているんですが、どのような経緯で積み立て不足が明らかになったのか、その経緯について教えていただきたいんです。

福地参考人 民間企業では、退職給付債務、つまり、年金など従業員の退職に伴って想定される支払いの総額でございますが、これについてあらかじめ引き当てることが求められております。退職給付会計が導入されたのは、平成十三年三月の決算から導入されております。

 NHKでも平成十五年度予算から退職給付会計を導入いたしました。新たな会計基準に基づいて算出した退職給付債務と、その時点で既に積み立てている引当金及び年金資産との差額を一般に積み立て不足と言っておりますが、NHKではこれを十五年で償却することとしておりまして、毎年度の予算で計画的に対応しているものでございます。

 これは合法的なことでございますが、これは会計基準の変更に伴うものでございまして、突然不足が明らかになったというものではございません。

 以上でございます。

重野委員 次に委員長に伺いますが、経営委員会としては、重要検討事項として、受信料問題について値下げありきではないとおっしゃっております。福地会長が値下げ困難とした後で、値下げありきではないという発言が続くわけですが、なかなか連携がよくとれているなと私は感心いたしました。

 ところで、委員長、昨年九月に旧執行部がまとめた七%の値下げ案について、委員会は踏み込み不足として却下されました。今回の値下げありきではないというスタンスとかなり違うように私は受けとめるんですが、なぜこういうふうな話になっているのか、そのあたりの事情を説明していただければありがたい。

古森参考人 昨年九月に経営委員会が執行部案を承認しなかったのは、先ほどもどなたかの質問にお答えしましたけれども、五カ年計画についての経営委員会の見解にも述べておりますけれども、値下げが不十分であったから承認しなかったわけではありません。これは当時の記者発表あるいは議事録にもあったと思いますけれども、今後五カ年の経営計画に盛り込むべき内容、つまり、コンプライアンス体制の確立とか受信料の公平な負担とか構造改革の施策において、十分な踏み込みがない、今後五カ年間この経営計画で進むわけにいかないという理由で否決いたしました。これがまず一つであります。

 それから、今度、福地会長の方が値下げは延期、延期というか当面考えないというふうに一部報道されましたけれども、これは経営委員会として真意を確認いたしましたけれども、最初から値下げありきということを言っているわけではない、言うわけにはいかないと。いろいろなものを調べてみて、ふやすもの、減らすもの、その後にどれだけ値下げするかという問題が初めて来る問題である、そういう発言であったと本人に確認いたしました。

 私も、最初に値下げありきではないというのは、経営委員長に就任いたしましたとき冒頭に申し上げたことでもあります。そういう意味で、私も全く同じことを最初から言っているわけでありまして、何がふえるのか、何が減らせるのか、これをやった後に受信料が決まるべき、下げられる余裕があれば当然下げる、できればその方向で努力すべきであるという考え方は、最初から申し上げていました。そういう意味で、特に違っている話ではありません。

 以上です。

重野委員 値下げありきではないということに絞って私は聞いているんですけれども、この間のやりとりで、総務省も値下げをしろということを言っていました。前の菅大臣の折にその議論があった。

 それで、今の委員長の答弁というのは、今までの流れからすれば、私にとってみればちょっと意外な答弁ですね。その点は、非常に何か値下げ問題というのを隅っこの方に意識的に置いているような感じがするんです。

 そうじゃなくて、この議論をするときに、初めて橋本会長の案がだめだと言ったときの委員長の真意というのは、今のようなことではなかった。それは、やはり下げる率が七%ではだめだ、では一〇%か、一五%か、こういう話になるので、委員長としてはある種の目算というのがあったんだろう、その目算にたまたま当時の会長がそぐわない結果を出したということに対する委員長としての思いというのが、私はあのときは露骨に出ていた感じがするんですよ。

 今の話を聞いていると、全然違うんですよ。いや、最初にそんな数字はありませんよと。当時、数字が躍ったことは間違いないんですよ。その数字よりも七%が低かったということだけであって、それはちょっとやはり話が、橋本会長のときのやりとりの話と今の話というのは随分変わっているというふうに思いますよ。そう思いませんか。再度答弁ください。

古森参考人 違っているか違っていないかと言われたら、違っていないと申し上げるしかありません。違っておりません。天地神明に誓って、違っておりません。

 あのとき、確かに一部のマスコミが、値下げが十分でないということを私が反対していると。経営委員会の方は十分でないと言い、執行部の方はこれでいけるという、この対立があおられたということがございます。しかし、あのとき出しました議事録ですとか経営委員会の見解というのは、なぜ否決したか、承認しなかったかというのは、七項目ぐらいございまして、それはいろいろな理由が、先ほど申し上げたような理由が書いてあります。いま一度、その議事録をごらんになっていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

重野委員 さっきの新会長の答弁と、前の橋本会長が七%という結論に至ったプロセスというのは全く同じなんですよ。積み上げていって、結果として七%しかできないと。新会長と前の橋本会長の、どういうところにどういう金が要るんだと積み上げていったときに、下げるのはこれが限度ですと、そのプロセスは一緒なんですよ。それは一緒なのに、今の委員長の答弁は、いや、そのプロセスが違っているんだということを言っているんですね。だから新会長のそういう言い方には同意するんだと。これは全然違いますよ。

福地参考人 私が申し上げましたのは、値下げを、受信料引き下げを全面的に否定したわけではございませんで、あのときには、ほかの要素と総合的に判断していかなければならない。そのための判断の材料としては、地上デジタル放送への設備投資もございます。これは既に取り組んだものもございますし、予算措置をしているものもございますが、今、何が出てくるかわからない問題がございます。それから、職員の退職給付の積み立て、十五年で本当にいいんだろうか、十五年先の世帯数を考えて、それを償却するに足る受信料が取れるんだろうか。それから、まだ考えられますのは、設備投資と申しますか、放送会館が、各地の放送局が非常に老朽化しております。各地の放送局に万一のことがあって放送ができないというふうなことは、大変なことになってしまいます。

 そういったものも考え合わせて、その中で受信料の値下げもやっていってもいいんじゃないか、今すぐに受信料の値下げだけを取り出して判断するべきではないと私は申し上げたつもりでございまして、その辺は前会長と少し違っておるんじゃないかというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 質問事項もたくさん持っていますので、それはまあ、今後ともまた値下げするということがテーマになるときがそう遠くない時期に来るんでしょうと思うのですが、その折にしっかり議論させていただきたいと思います。

 もうあと五分しかありませんが、インサイダー取引の問題です。先ほどからたくさん議論がされております。

 かつて、前線は大変苦労したんですね。NHKの信頼を回復するために現場は大変努力いたしました。ようやく回復の兆しを見せ始めたときに、こういうインサイダー取引という問題が出てきた。なぜこんなことが起こったのか。くどいようでありますけれども、その原因究明と信頼回復への主体的な取り組み、NHKとしてこうやるんだ、その先にこういうものは解消されるんだという点を明言していただきたいと思います。

福地参考人 今回の職員のインサイダー取引は、公共放送として、また報道機関としてあってはならない事件でございまして、視聴者の皆様の信頼を裏切りましたことはまことに申しわけないと思っております。

 現在、久保利弁護士を委員長とする第三者委員会で、事実の徹底した解明に取り組んでおります。調査結果を分析いたしまして、なぜこのような事件が起きたのか、組織体質にも踏み込んで原因を突きとめたいというふうにお願いしております。

 私の見た限りでは、組織の中にそういった緊張感とかあるいは倫理観の欠如があったのではないか。いろいろな対策を講じながらもそういったことが起きたのは、対策の甘さもさることながら、そういった気の緩みが生じさせたことだ。これは、やはりトップみずからが緊張感、倫理観を持ってこれから先も取り組んでいくべきだというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 次に、三年間で千二百人削減するとなっております。

 ただでさえ現場はぎりぎりの状態で頑張っていると私は思っているんです。それに加えて、人は減らされる、給与費のカットも続いているやに聞いておりますが、それでは現場では疲労感というものに拍車をかけているのではないかというふうな点が心配されます。その点について、どういう基本的な立場で人員管理というのか削減はやろうとしているのか、その点について明らかに願いたい。

福地参考人 一番職員にしわ寄せが行きますのは、人が減って仕事が減らないというのが一番職員にしわ寄せが参ります。

 現在、来年度四百二十八名の削減をいたしますが、約五百五十名になります、四百二十八名になりますが、仕事の方も、四六%、担当部門の仕事も減らせるということで、減員と仕事のバランスを考えて取り組んでいきたいというふうに思っております。そういったことに取り組んでおります。

重野委員 それに関連して、外国人向け映像国際放送に力を入れると聞いております。その場合、なぜNHK本体ではなくて子会社で行うのかという点についてお聞きします。同時に、放送サービスの内容、あるいは制作体制はどうなっているのかという点が一つ。

 それから、それに関連して、近年の民放での不祥事、もう本当にいろいろな不祥事が多発をしているわけですが、そのときに共通しているのは、子会社に制作を丸投げする、制作費は限界を超えて削るという行為が背景にあるのではないか。あるいは、あるというふうに断ずる評論家の方もおられますけれども、そうしたことが決して起こらないように、私はNHKに求めたい。受信料を含めた財源のあり方等々を含めて、お答えいただきたいと思います。

今井参考人 お答えします。

 外国人向けテレビ国際放送は、主として二つの方法でニュース、番組を制作してまいります。ニュースの方は、NHKが責任を持って、NHKの国内ニュースをベースに、アジアからの情報も含めて制作、発信してまいります。一方、関連するさまざまな番組、報道系の番組、社会番組、文化番組、そういった番組につきましては、別に外国人向けテレビ国際放送の子会社をつくりまして制作してまいります。

 この子会社の業務は、大きく分けて二つあります。一つはNHKが委託をして制作する番組、もう一つは、子会社が独自につくる、もしくは民放から提供を受けて番組を放送する。こういう形で、一つのチャンネルを、NHKの制作するニュース、それから関連子会社が制作する番組ということでシェアをしていく、そういう形を考えていただければと思います。

重野委員 あと四項目通告をしておったんですが、今、下の部分の、いわゆる子会社に制作を丸投げし、制作費は極限を超えて削るという行為が背景にあるのではないかという指摘についてはどうですか。

福地参考人 番組制作会社への委託は、制作コストの削減に寄与する面もございますけれども、御指摘のような点も危惧されます。

 NHKは、番組制作会社を大切なパートナーとして位置づけまして、独自の制作手法やノウハウを活用いたしまして、NHKの番組にはない斬新な番組を視聴者にお届けしているつもりでございます。

 質の高い多様な番組を制作するためには、一定のコストは必要であると考えております。NHK本体で制作する場合でも、外部に制作委託する場合でも、同様に、制作システムを不断に見直しまして、効果的、効率的な制作手法を追求していくことが不可欠だというふうに考えております。

 以上でございます。

重野委員 通告して、そこまで行き着かずに時間が来ました。それについてはまた後日質問させていただきます。

 以上で終わります。

渡辺委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党・そうぞう・無所属の会の亀井久興でございます。

 最後の質問でございます。お疲れでございましょうが、もうしばらく御辛抱いただきたいと思います。今まで多くの委員が質疑に立たれましたので、重複をする点があるとすればお許しをいただきたいと思います。

 まずもって、福地会長、今井副会長、御就任おめでとうございます。おめでたいということでお祝いを申し上げると同時に、大変なときにお引き受けいただいたな、さぞ御苦労がこれから多いだろうと思いますけれども、お引き受けされたお二人の勇気に心から敬意を表する次第でございます。

 もう既にいろいろ御指摘があったわけでございますけれども、これでもかこれでもかというばかり、さまざまな不祥事が後を絶たない。そういう中で、内部の規律をしっかりとっていかなくてはいけない。コンプライアンス遵守、申し上げるまでもないと思いますけれども。そういう不祥事を根絶するためのさまざまな御努力をいただくというのは当然のことだと思いますけれども、また一方において、公共放送としてのNHK、この経営形態を維持していくということのために、やはり何よりも不可欠なのは、視聴者・国民からの信頼ということだと思います。

 私は、以前、この委員会で何回となく申し上げておりますけれども、NHKはイギリスのBBCと比較をされることが多いわけでございます。BBCは番組の内容が極めてすぐれているということは、国際的にも高く評価をされておりますし、私自身もそのように評価しております。

 同時に、イギリスの視聴者・国民からBBCに対する非常に高い評価があるということの一つの原因として、政治的な中立性をしっかり守っているという点だと思います。政治権力と常に一定の距離を保っているということであって、これは時の権力が保守党政権であろうが労働党政権であろうが、常にそのことは一貫をしております。ブレア政権のときにイラクの問題で厳しく批判をしましたけれども、しかし、そういう批判をする一方で、取材の方法に誤りがあったということを認めて経営委員長がみずから引かれる、そういうこともある。さすがにそれだけの自律性をBBCは持っているんだなということが国民の信頼のもとにもなっているわけでございます。

 NHKも、もとより戦前は民間の組織としてスタートをいたしましたけれども、戦中、御承知のとおり、軍部の圧力に屈して、大本営発表をそのまま流すというようなことをやってしまった、そのことの反省から新しいNHKが生まれたということは、申し上げるまでもありません。

 今、民放と車の両輪のようになって、そして健全な世論の形成のために大きな役割を果たしておられることは間違いないと思っておりますけれども、その政治的中立性というものがいかに大切かということを常に私は申し上げているわけでございますが、そのことについての会長の御意見と、また同時に、総務大臣の御見解も承りたいと思います。

福地参考人 私は、よく世間にも申し上げますし、NHKの職員にも話をするんですが、今はあらゆる分野で、しかも変化の質が大きい、変化のスピードが速い、まさに三次元の変化の時代だと申しておりますが、そういった変化の中で、変える勇気を持つことと変えない勇気を持ち合わせることが大事だとよく申しております。

 その中で、変えない勇気というのは、NHKが公共放送として不偏不党ということと、あまねく全国に届ける、それから、放送の自主自律を守るということについては、変えない勇気を持ち合わせて、貫き通すことが必要だというふうに考えております。

 NHKは高い倫理観が求められる報道機関でございますし、また、視聴者の信頼に支えられる公共放送として、職員一人一人の自覚を一層高めまして、一丸となって経営改革に邁進してまいりたいと存じます。

 以上でございます。

増田国務大臣 お答えを申し上げます。

 言論報道機関である放送事業者の自主自律ということは、これはもう基本中の基本であるというふうに考えます。NHKも、当然のことながらこれを深く自覚していただかなければいけないわけでございますが、放送法でも、こうしたNHKにつきましては、このような考え方に基づいて特別な規定を用意している。他の特殊法人の規制とは異なって、放送法で、この毎年度の収支予算も、きょうもまさにそうですけれども、総務大臣が意見を付して国会に提出してお認めをいただく、それから、経営委員会の委員についても、両議院の同意を得て総理大臣が任命するといったようなことで、政府の関与を必要最小限として、NHKの独立性を確保しよう、こういう放送法の建前、規定になっているところでございます。

 各国さまざまな事情で、それぞれどのような形で独立性を確保するかということ、歴史的にもその沿革に沿ってさまざまなやり方があるというふうに思っているわけでございますが、やはり我が国のNHKの公共性ということは大変重要なことでございます。私ども総務省としても、放送法の精神というものをしっかり受けとめまして、NHKの独立性というものを確保していかなければならない、このように考えております。

亀井(久)委員 古森委員長はもう外されてしまいましたけれども、NHKの独立性をしっかり守っていくということのために、内部委員会としての経営委員会の役割も極めて大きいということだと思っております。

 アメリカのように、独立行政委員会としてのFCCを設けている、そういうところももちろんありますし、日本の場合も、戦後一時期、独立行政委員会としての電波監理委員会ですか、それを置かれたことがあった。吉田内閣のときにそれはなくされてしまったわけでございますが、その後、内部委員会としての経営委員会ということにゆだねてきているということだと思います。

 その経営委員会が経営委員会としての本当の機能を発揮していただけるような、そういう環境をつくらなくてはいけないということは、私自身、終始この委員会でも申し上げてきたわけで、従来のように執行部のいわば追認機関のような、そういう経営委員会であってはならない。したがって、事務局も充実をしてほしいし、また、専任の委員もふやしてほしい、そういうことも申し上げたわけでございます。そしてまた、できれば経営委員長さんも専任でおやりになるということが望ましいのではないか、そうなればなお権威が高まってくると思います。

 橋本前会長のときに執行部と経営委員会が多少ぎくしゃくしたということはあったと思いますけれども、それがまた逆に経営委員会の権威を高めるということにも一つの国民のイメージとしては役立った面もあるかと思っております。

 経営委員会の今後のあり方について、総務大臣から一言承りたいと思います。

増田国務大臣 先般お願いをいたしました放送法の改正におきまして、経営委員会の組織もかなり充実をされました。常勤の委員さんを経営委員会の中でふやす、それから事務局も充実させる、こういったことが今後ともその精神にのっとって必要であるというふうに思いますし、まさに経営委員につきましては、私どもは、公共の福祉ということに公正な判断をしてくださる広い知識と見識をお持ちの方から今後もきちんと任命をしていきたい。もちろん、その間に国会の厳正な御判断というものがございますので、そういった国会のなされる御判断を厳粛に受けとめながら、そうした経営委員を選んでいきたい。

 それから、これはやはり、経営委員が幾ら常勤といたしましても、事務局が充実をしていなければその機能を十全に発揮できません。これは、NHKの方で事務局の構成については適切に判断をされるというふうに思っておりますけれども、私どもはいささかもそうした中に関与する立場ではございませんし、そのつもりも毛頭ございませんが、NHKの方におかれて適切に御判断をしていただいて、経営委員、しかもガバナンスの機能が高まった経営委員と、それから充実した事務局によって、今先生がお話ございましたような、NHKが真に自主自律、独立をして、しっかりとした良質な放送を提供していただくということを期待しているものでございます。

亀井(久)委員 これから、福地会長、今井副会長を中心にしてさまざまな改革にも取り組んでいかれるだろうと思っておりますけれども、不祥事を起こさないということのために、ぎりぎり内部規律を強化していく、コンプライアンスを徹底していく、そのことは必要だと思いますが、それが余りにも行き過ぎますと職員が萎縮をしてくることになりはしないか、私は一方においてそのことを大変心配いたしております。

 やはりNHKを支えているのは、何といいましても職員の人たちがそれぞれの現場で必死に努力をしている。民放と比べれば所得水準だってはるかに低い。そういう中で公共放送を支えているんだという一つの使命感を職員の方々が持って、そういう、言ってみれば民放と比べれば随分差がある中でNHK魂というものを持って頑張ってやっておられる。その意欲というものがなくなってしまったのでは、NHKは公共放送としての経営形態も維持できなくなってくる、そのおそれがあるわけでございまして、その点は非常に大切な点だと私は思いますので、そのことについての会長の御見解を承りたいと思います。

福地参考人 組織は人なりと申しますが、NHKのように番組、報道をつくり上げる、形のないものをつくり上げる組織は、なお一層人の問題が大事だと思っております。

 その、人の問題でございますが、私は、NHKに参りまして、人材は非常に多いというのを考えました。しかし、打ち続く不祥事の中で、みんな下目がちになっている、かつてのNHKの職員としての誇りを失いつつある。これではいい番組はできないというふうに思っております。今、不祥事は不祥事として、一方ではやはりNHKの職員に、目線を上げて、上げるというのは視聴者を見ながら、視点を視聴者に合わせながら、もっと誇りを持って仕事をしようということを訴えております。御指摘のとおりだというふうに思っておりますので、心がけてまいりたいと思います。

 以上でございます。

亀井(久)委員 もう一つ、ちょっとほかの話でございますけれども、今、受信料の不払いが一時期相当進んだということで、払っている人と払っていない人と比べて、善意で当たり前だと思って払っている、しかし、払わない人はそれなりの理屈はつけるけれども払わない、それに対して罰則が何らないというのは不公平じゃないか、そういう素朴な議論というのがあると思いますね。

 しかし、私から言わせていただければ、罰則がないにもかかわらず、あれだけの不祥事が続いている中でこれだけの国民・視聴者がちゃんと受信料を払っているというのは、そこに、日本のよき社会のならわしと申しますか、よき文化というか伝統というか、そういうものがあると私は思っているんです。ですから、そういう社会を維持していくことが日本のよさをまさに受け継いでいくことになりはしないだろうか、ただ罰則さえ設ければそれでうまくいくんだ、そういうようなことではないと私は思うんですが、この点については総務大臣に伺いたいと思います。

増田国務大臣 確かに、今先生お話しのとおり、日本の地域社会のよさというのはまさに今御指摘いただいたような点にある。そして、そういう国民の皆様方の思いというものに支えられて、今までNHKが成り立ってきた。したがいまして、今回のインサイダー取引というのはまことに残念なことでありますけれども、先ほど会長の方からも話がありましたが、やはり職員の皆さんは目線を上げてこの事態を乗り切っていただきたい。そして、一刻も早く地域の皆さん方のそのような思いにこたえていただいて、信頼にこたえていただいて、そしてぜひいい番組を大いに発信していただきたい、このように思っております。

亀井(久)委員 NHKは、申し上げるまでもなく、全国にしっかりとしたネットワークを持っておられるわけですが、本来、地方民放も、免許を得たその時点で、地域文化を振興させる、地域社会を発展させる、地域と密着をしてそういう役割を果たすということは大きな目的の一つでもあると思うんですが、現実の問題として、それでは民放各社、地域、地方の民放が自主番組をどんどんどんどんつくっておられるかというと、決してそういうわけではない。主に中央のキー局の人気番組をスポンサーをつけて流すということが中心になっている。

 それには財政的な理由も当然あると思うんですね。自主番組をつくればそれだけの制作経費がかかる、それだけの財政力がない、そこへもってきて今度は地上波デジタルの問題が出てきて、これも過大な負担をしなくてはいけない、そういうことになっておりますから、どうやって企業として存続するかということを考えるのに手いっぱい、そんな状況になっていると思います。

 そういう状況であればあるほど、やはり、公共の電波というものを使って、公共放送であるNHKこそが地域文化の振興、発展、地域社会の発展というものに果たしていく役割というのは極めて大きくなってきているというように思います。

 ですから、今東京がひとり勝ちのような状況で、東京からすべて情報が発信されるということになってしまっておりますけれども、地方から中央へ、また全国へさまざまな情報が発信される、そういうことのためにNHKの担っている役割は極めて大きいと思いますので、そのことについてのお考えを承りたいと思います。

福地参考人 地域放送の強化ということは、明年度の計画もそうでございますし、中期計画の中でも大きな柱として取り組んでまいりたいと思います。

 先日、つい数日前でございますが、アフリカの某大使が協会の方に表敬訪問でお見えになりました。そのときに、日本ということに対して、自動車会社でありますとか精密機械メーカーでありますとか、企業のブランドの名前が五つ出ました。しかし、その中で、日本の伝統文化とか日本のすばらしい観光資源についての話は全く出ませんでした。大使も、もっとそういうものを、そういう情報を自分たちに欲しいんだということを、外国の方が申しておられます。

 私たちは、まず、日本の中に埋もれております各地域の伝統文化でありますとか地域の文化、方言もそうでございますけれども、このごろ職場の中で方言を使う職員が少なくなってまいりましたが、方言というものは大変貴重な地方の文化だと思っております、そういったものを大事にしていきたい。

 それから、来年の、今でもそうでございますが、新年度の大きな柱になっておりますのはもう一つは環境問題でございますが、環境問題も、各地域の取り組みを全国に向けて発信していく。自分たちのつくった環境問題の番組が全国に放送されるということで、各地域の職員の励みにもなろうかと思っております。そういったことを心がけてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

亀井(久)委員 公共放送であるNHKも一つの企業体でございますから、企業イメージというのは非常に大事だと思います。

 かつてこの委員会で私が質問いたしました、ある経済雑誌が、民間の大きな会社数十社に一般の人たちがどういうイメージを持っているかという調査をした。その中にNHKを加えたんですけれども、NHKのイメージというのが、大変残念なことながら、もう最下位の方であった。情報に関連をした企業でありながら、情報発信力なんということについての評価というのは極めて低かった。

 そういうことで、NHKさんというのは、現場の方々は非常に一生懸命頑張っておられるけれども、上に行けば行くほどどうも評価がよくないというようなことを言われた時代があったと私は思うんです。やはりトップ、リーダーのお人柄とかあるいはその経営理念とかそういうものが発信されていくことがその企業全体のイメージというものを上げていくことになると思っておりますが、そのことについてぜひ御努力をいただきたいということと、もう時間でございますから質問はこれで終わりにいたしますけれども、何と申しましても、NHKがその信頼をつなぎとめていく、またさらに信頼を大きくしていくことのためには、質の高い番組をつくるということ、このことが何より大切なことだと思っております。お金をかけさえすればいい番組ができるということでは必ずしもないと思いますけれども、内容の充実した番組をつくるということが何より必要だと思っております。

 「NHKスペシャル」でありますとかあるいは「クローズアップ現代」でありますとか、それから、今井副会長がおられますけれども、国際的な取材をされた極めて質の高い番組、そういうものもありますし、また討論番組等でも評価が高い番組がたくさんございます。そういうものをしっかりと充実させていくことによって、さすがはNHKだ、そういう評価が国民・視聴者の間にますます広がっていく、そのことが何よりもNHKを支えていく源であるということをぜひ御理解いただきまして、一層の御努力をいただきますことを心から念願をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十四分散会


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