衆議院

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第19号 平成20年5月15日(木曜日)

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平成二十年五月十五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 石田 真敏君 理事 今井  宏君

   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君

   理事 山口 俊一君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 桝屋 敬悟君

      秋葉 賢也君    井澤 京子君

      石崎  岳君    稲田 朋美君

      岡本 芳郎君    鍵田忠兵衛君

      木挽  司君    実川 幸夫君

      関  芳弘君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      古屋 圭司君    松本 文明君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      玄葉光一郎君    田嶋  要君

      長妻  昭君    福田 昭夫君

      森本 哲生君    斉藤 鉄夫君

      谷口 和史君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣政務官      秋葉 賢也君

   総務大臣政務官      岡本 芳郎君

   参考人

   (年金記録確認中央第三者委員会委員長)

   (元日本弁護士連合会会長)            梶谷  剛君

   参考人

   (年金記録確認中央第三者委員会委員)

   (東京都社会保険労務士会副会長)         小澤  勇君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  長妻  昭君     寺田  学君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 行政機構及びその運営に関する件(年金記録等)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、特に年金記録等について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として年金記録確認中央第三者委員会委員長・元日本弁護士連合会会長梶谷剛君及び年金記録確認中央第三者委員会委員・東京都社会保険労務士会副会長小澤勇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 両参考人には、御多用中のところ、本日、当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、梶谷参考人、小澤参考人の順で、それぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず梶谷参考人、お願いいたします。

梶谷参考人 年金記録確認中央第三者委員会委員長の梶谷剛でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私は、昨年六月、当時の菅総務大臣から委員就任を委嘱されました。

 年金記録問題は、この数年間、国民の大きな関心事であり、特に当時、社会保険庁の記録管理上の不備から、保険料を支払ったにもかかわらずその記録がないという事態が広範囲に発生し、大きな問題となっていることは、国民の一員として承知をしておりました。しかし、御依頼を受けたときには、この問題は、ほとんどの事例が三十年以上の古い事案である、しかも、領収書等の直接的な証拠がない事案がほとんどであるということでありまして、保険料支払いの有無を判断することは大変困難であるとともに、国民の関心が非常に高いことからも、大変重い任務であるというふうに感じたわけであります。

 ただ、私は、弁護士といたしまして、長年にわたって弁護士会活動に従事しておりました。その間、司法制度改革問題につきまして取り組んでまいりました。司法制度改革は、国会議員の皆様方の大変な御協力、御尽力によりまして、多くの法制化がなされまして、現在、もう既に実行に移されつつあるところでございます。

 司法制度改革は、一言で言うならば、法の支配の貫徹、言いかえれば、法の光を社会の隅々にまで当てる、そして、そのことによって、日本の社会が公正で透明なルールによって運用される、そういうことを目指したものでございます。そのような取り組みをしてきた私にとりましては、今回の問題は、いわば今までの活動の延長線上にあるというふうに認識をいたしまして、お引き受けをした次第であります。

 誠実に保険料を支払った国民が、納付記録がないという社会保険庁側の記録管理上の問題、落ち度によりまして、本来あるべき額の給付が受けられないということは大変不条理であります。国民の立場に立って、国民の正当な権利を実現することがこの委員会の基本的使命であるというふうに認識しております。このことは、昨年七月に基本方針をつくりましたけれども、その冒頭に明記をいたしました。

 国民を救済するということではなくて、むしろ国民の正当な本来あるべき権利を回復あるいは実現するというものであります。このことを通じて、社会保障制度の根幹の一つである年金制度の信頼を回復することが役割でもあります。そして、運用に当たりましては、役所的な硬直的な態度ではなく、あくまでも国民の立場に立って、直接的な証拠がなくとも柔軟に判断をするということを基本としておるのであります。

 このような基本姿勢のもとに、判断の基準といたしましては、明らかに不合理ではなく、一応確からしいと判断した場合に、保険料を納付した事実を認め、記録の訂正を求めることといたしました。

 この基準はあいまいではないかというような御意見もございます。しかし、私ども法律実務家の立場からいいますと、これは裁判実務上広く受け入れられている基準であります。

 裁判上は、事実の判断には通常、証明が必要であると言われます。しかし、場合によっては、証明よりももっと緩やかな疎明で足りる場合があります。証明というのは、裁判官が事実の存否について確信をすることを意味いたします。疎明というのは、確信に至らないけれども、一応確からしいと判断されればよいということになっております。これは、民事訴訟法のどの本にも書いてある一つの解釈でございます。

 今回、証明を必要とするということにいたしますと、領収書等の直接証拠がないわけでありますので、ほとんどの場合は認められないということになります。したがって、証明より軽い疎明、すなわち一応確からしいということで判断をすることが基本となったわけであります。

 私たちは、そういうことで、決して独自な見解に基づいて基準をつくったのではなくて、裁判実務上広く取り入れられている考えを基本としたのであります。地方委員会の委員長あるいは委員は弁護士が大変多いのでありまして、この基準は無理なく理解されているものと私は思っております。

 また、一応確からしいと判断される具体的例として別表に類型化した関連資料や周辺事情等の例を掲げて参考に供したわけであります。

 このような基準に基づいて、全国の地方委員会が具体的案件について審議をして、そして正しい判断をしてくれているものであると確信をしております。

 また、厚生年金に関しましては、御本人が給与から保険料を控除されていることが認められても、企業がこれを国に支払われていないという場合があります。年金が社会保険制度をとっておりますので新たな立法がない以上救済できませんので、この場合は、制度がないんですから救済ということでありますが、基本方針において政府の対応を待つというふうにしたのでありますけれども、国会におきまして、早期に、もう十二月には議員立法で厚生年金特例法を成立していただいたということは大変ありがたく、心から感謝を申し上げます。

 年金記録確認第三者委員会は、中央委員会と全国五十の地方委員会に分かれております。中央委員会は、運営の基本方針や判断基準を策定すること、並びに先例となるような事案について具体的に判断をするというものであります。各地方委員会は独立に審議し判断するものでありますので、中央委員会は、裁判所でいうところの上級審に当たるというものではありません。地方委員会の判断に異議があるときには控訴をして高等裁判所で判断をするというものではなくて、地方委員会の判断はそこで完結することになるのであります。

 中央第三者委員会では、現在までに約三百六十件の先例となるべき事案を審議、判断しております。また、現在までに、中央、地方全体で約九千五百件の審議を終えております。申し立て件数が約五万四千件、そのうち第三者委員会に送られてきた件数が三万九千件ございます。約二五%の処理率であると言えると思います。

 これは少ないではないかという御批判があることはよく承知しております。私たちといたしましては、全力を挙げて審議しておりますけれども、数の問題からいえばかなり悪戦苦闘をしていると言わざるを得ないと思います。

 しかし、何分にも関連資料が乏しく、簡単に結論が出ない事案を扱っているのであります。認めようとすればするほどいろいろな資料を収集するということで、時間がかかるという面があります。また、当初予想していたよりも多い申し立てがあったことも事実であります。

 第三者委員会の人数につきましては、発足時点では、委員三百三十八名、事務局職員五百名でありましたけれども、現在はほとんど倍増と言っていいほど大幅に増員をしております。

 私たちは、ことしの三月末までに申し立てをされた方々約五万件につきましては、おおむね一年を目途として処理を終えるということで作業を進めております。適正にして迅速というのは、裁判のみならず私どもの作業にも適用される原則であります。体制の拡大、それに判断の実例が多くなってまいりましたことから、今後より早く対応できるものと思っております。できる限り迅速、公正、適正な判断をして、もって国民の年金制度についての信頼を回復するよう全力を尽くして努力してまいる所存でございますので、どうぞ先生方、御理解をいただくよう、よろしくお願いを申し上げます。

 時間の関係で十分意を尽くせませんが、冒頭の意見陳述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、小澤参考人、お願いいたします。

小澤参考人 私は、小澤勇といいます。

 私は、社会保険労務士業を約三十年くらい営んでまいりましたが、その経験や知識が少しでも役に立てばと思いまして、昨年六月に年金記録確認中央第三者委員会の委員をお引き受けいたしました。

 本日も、これまでの社会保険労務士の観点から見て、年金記録確認中央第三者委員会の状況につきまして、厚生年金関係の事案を中心に御説明をいたしたいと思います。

 まず、審議において苦心している点でございますが、厚生年金につきましては、被保険者が自分の保険料を直接納付するといった国民年金とは異なりまして、厚生年金保険法上、保険料の納付義務が被保険者ではなく事業主にあり、被保険者が保険料を事業主から控除されていても、事業主が被保険者の資格の取得、喪失届を行い保険料を納付しなければ、保険給付に結びつかない点でございます。

 ただし、昨年末の臨時国会におきまして、厚生年金保険法の特例法を議員立法で成立させていただき、事業主が保険料を納付していなくとも、被保険者が事業主から保険料を控除されていると第三者委員会が認めれば、社会保険庁長官は年金記録を訂正するという仕組みができました。この点につきましては、第三者委員会委員として、国会議員の先生方に感謝をいたしております。

 したがいまして、厚生年金事案につきましては、申立人である被保険者が事業主により厚生年金保険料を控除されていたか否か、事業主が被保険者の資格得喪の届け出を行い厚生年金保険料を納付していたか否かがポイントになります。

 しかし、この保険料の控除があったかどうかは、何十年も前にさかのぼっての判断であり、ほとんどの被保険者が、当時の給与明細等保険料控除が確認できるような資料は保有しておりません。一方、事業主の方も、現存していない場合や、あるいは現存していたとしても当時の保険料控除が明らかになる資料を保存していない場合が多く、事業主から明確な証言が得られるケースはほとんど期待できないのであります。

 そこで、当時の上司あるいは同僚などの調査を行うことになるわけでございますが、これらの方々にしましても、連絡がとれなかったり、また連絡がとれたとしても当時の記憶が定かでない場合が多く、このため、保険料控除についての関連資料の収集、周辺事情の把握には大変苦労しているところでございます。

 また、事業主による被保険者の資格得喪の届け出につきましては、加入月は被保険者として、退職日の翌日が喪失日、つまり、四月一日に入社をすれば四月一日から被保険者であり、十二月三十一日に退職すれば一月一日が喪失日である、こういうことから、十二月末日に退職されたようなケースは十二月三十一日を喪失日としたり、間違いのケースが多々ございます。

 保険料控除につきましても、四月分の保険料を翌月五月の給与のときに控除し、翌月五月に国に納付するのが正しい処理でございますが、会社の都合で、当月分を当月の給与から控除する事業所もかなりあります。こういった点で、厚生年金保険料の納付についてもまちまちで、保険料控除と同様、事業主や同僚等から関連資料や周辺事情を入手、把握することが困難な中で、何かしら手がかりがないかと審議を重ねているところでございます。

 一方で、先ほどちょっとお話をしました特例法の場合には、被保険者の保険料控除が認められれば、社会保険庁が事業主に対して、保険料の納付勧奨や場合によっては氏名の公表を行うということから、勢い慎重な判断もせざるを得ないのが実情でございます。さらに、厚生年金事案の場合、一人の申立人についての判断が同僚等の年金記録に影響を及ぼすケースもございまして、この点も考慮し、より慎重な判断が迫られております。

 このように、関連資料や周辺事情が乏しい中にあって、慎重な判断が求められる中で、社会保険労務士として、これまでの顧問先の事業所及び社会保険事務所における厚生年金の手続の状況等を踏まえて、事業主による保険料控除や保険料納付等の認定を行っておりますが、その判断は非常に難しく、苦慮しているところでございます。

 そこで、今後の対応でございますが、年金記録問題は、被保険者の年金受給額に直接影響を与える極めて重要な問題でもあり、誠心誠意その解決に第三者委員会委員として全力を尽くしていきたいと考えております。

 また、全国社会保険労務士会連合会の常任理事の立場からいえば、年金記録問題の解決促進のために、会員の社会保険労務士に対して、社会保険事務所における相談対応への要請やら、地方第三者委員会の委員あるいは調査員への就任要請に積極的に協力しており、また、この春からは、第三者委員会の業務等について相談対応にも協力しており、今後におきましても、全国社会保険労務士会連合会として、地方第三者委員会の委員、調査員の増員等への対応を含め、可能な限り協力をしていきたいと考えております。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 本日は、お忙しい中、参考人の皆様には委員会に御出席いただきまして、今意見陳述をいただきましたこと、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 限られた十五分という時間内での御質問をさせていただきますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。

 さて、この問題につきましては、一年ほど前から消えた五千万件というような名前がつき、今日に至るまで、いろいろと関係者の皆様方の協力のもと、少しずつではありますが解決の方向に向かっていると認識をしております。また、昨年の六月から、総務省において、国民の立場に立って対応し、国民の正当な権利の実現のために、何といっても国民の信頼を回復するためにこの年金記録確認の第三者委員会が設けられましたことは、私から申し上げるまでもございません。

 先ほど梶谷委員長からもお話がありましたように、申し立てられた件数は現在五万四千件、そしてその後委員会にかけられた件数は三万九千、そして処理済み件数は九千五百件と聞いております。また、記録が訂正された数は四千三百人と聞いておるところでございます。

 さて、この第三者委員会では現在どのような形で取り組んでいらっしゃるのか、意見陳述でもございましたが、さらに踏み込んでお伺いしたいと思います。

 まず、梶谷参考人に二点お伺いいたします。

 先ほど判断基準について踏み込んだお話がございましたが、改めて、申し立ての内容が社会通念に照らし明らかに不合理ではなく、一応確からしいという判断基準が設けられている。証明ではなく確からしい、疎明という、これは法律用語かと思いますが、その辺についてもう一度御説明を願いたいと思います。

 今、一年間委員会で取り組まれた中では判断基準があいまいではないかというような批判があるということも聞いております。まず、証明ではなく確からしい、疎明という部分について御説明いただくとともに、改めて、今回のこの証明について、申立人に証明を負わせずに行政側に立証責任を負わせるべきではないかというような意見も出ている。行政側の責任にそもそも起因する問題でもありますので、その証明責任という部分も踏み込んで御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

梶谷参考人 先ほど冒頭の意見でも申し上げましたけれども、証明、疎明という、これは法律用語なので、特に疎明についてはわかりにくいかとも思いますけれども、証明とは何かというと、裁判で一般的に言われていることでございますけれども、先ほどよりももう少し詳しく定義をいたしますと、通常人が合理的な疑いを差し挟まない程度に事実の存否について裁判官が確信をすること、こういうふうになっております。その心証に向かっていろいろな証拠書類を出していくわけですね。ところが、仮差し押さえとか仮処分の場合には短期間に判断をしなければならないというような面もありまして、疎明、一応確からしいということでよろしいことになっておるわけであります。

 先ほども申しましたように、その疎明の考え方を応用したわけでありますけれども、それにつけ加えたのが、著しく不合理ではないということを入れました。これは、御本人のおっしゃることをできるだけそしゃくして考える。しかし、それにはどうしても不合理な点があるというようなものもないわけではありません。例えばそのときには支払いができないはず、例えば時効でもって支払いができないと制度上なっている、あるいは、特例納付というのはある期間だけ認められているわけですが、そのときに自分は何十万払いましたというようなことがあるとすれば、それはちょっと必ずしも合理的と言えるだろうかというようなこともございまして、反面そういうこともつけ加えて、それから積極的に一応確からしい、これを総合判断するということでございます。

 総合判断というのも若干あいまいではないか、こういうふうにおっしゃられる向きもあるんですけれども、これも裁判所での判断では通常言われていること、自由心証主義のもとにおいて、弁論の全趣旨でもって判断をする、総合判断ということでありまして、これは確かにわかりにくい、抽象的だと言われればそうですけれども、具体的な事件というものはそれぞれ違うわけでありますので、その違ったものを抽象的に総合的に判断して一つの基準を立てているということが裁判例の実例でございます。したがいまして、全体を覆うような一つの基準を立てるとすればやはり若干抽象的にならざるを得ない。裁判所の実例でもそういうことであると思います。

 それから、先ほど挙証責任の問題をおっしゃられました。

 私ども、基準を立てるときに、その挙証責任を国に負わすべきではないかということも当然頭の中によぎった、また検討もしたわけであります。

 しかしながら、もし挙証責任を国に負わせるということになるとすると、支払っていないという立証をするわけでありますので、これは非常に困難であります。しかも、恐らくは、国が、支払っていないあるいは受け取っていないということを立証するためには、それは社会保険庁の記録で払っているか払っていないかという、それが大きな要素になるんだろうと思うんですが、それを使えないという状況だろうと思います。

 そうだとすると、挙証責任を国に負わせるということになると、ほとんどの場合には認めることになると思います。そういたしますと、いろいろ考えたんですけれども、いわゆる本当に払っていない、あるいはうそをついているのもいるかもしれませんが、思い込みで自分は払ったはずだというような方、すべて、ほとんどの場合は認めるということになると思います。

 年金制度の信頼を回復するためにはそれでもいいんだという考え方もあり得るだろうと思います。しかし、そのときには、本来払っていない人たちに対してそれを給付するということになるわけですから、誠実に支払って、しかも記録がある人というその方たちの保険料から支払うという結果になるわけであります。

 そこら辺の調和を考えますと、やはり私は、委員会において一応確からしいという積極的な心証というものがある程度必要ではないか、支払ったというのであれば、確かに難しいけれども、何らかの痕跡がある、何らかの資料がある、資料がなくても周辺事情を十分活用して広く認めるということは可能ではないか、このような観点から、挙証責任を国に負わせるという考え方はとらなかったわけでございます。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に、小澤参考人にお伺いいたします。

 先ほどの意見の中で、昨年末に議員立法で厚生年金の保険の特例法が成立したと。私も実は厚生労働委員会にも所属しておりまして、その議論の中に加わっていた一人でもございます。

 先ほどの具体的な事例のように、事業者による被保険者の控除が認められるかどうか、あるいは事業者と被保険者の退職日に保険の喪失というケース、今実際実務でいろいろな場面場面に取り組んでいらっしゃるかと思いますが、今後、どのような形で事業主に協力を求めたり、あるいはこの特例法についてもう少し幅広い見直しなり、どういう形が制度的な部分でも必要になってくるのか、現場の声をお聞かせいただきたいと思います。

小澤参考人 特例法をつくっていただきまして非常にやりやすくなったわけですけれども、このほとんどが、例えば転勤に伴って、先ほどもちょっとお話ししたんですが、転勤日が、例えば辞令が二十日に出た、そうすると、翌月赴任すると、その二十日の日に喪失をして翌月二日とか三日に加入するというようなことで、加入月は被保険者、喪失月は被保険者でないという形からして、一カ月空白が出てきてしまう、このケースが非常に多いわけでございます。そのほか、出向絡みの問題もございますし、それから遡及して日付が変わってしまうというようなケースもございます。

 そういうふうな中で、今、この特例法を運用するに当たりまして各種いろいろ事案が出てまいりますけれども、そういったミス処理というんでしょうか、そういったものは会社によってある程度同じような過ちをしているケースが多々ございます。

 そんな意味で、今後の運用としましては、同一事業所で多数の従業員、あるいは既にOBになっていらっしゃる方もありますが、そういった方が一人一人この第三者委員会に特例法を求めて申請するのではなく、会社が一本化する形で、我が社の場合こういうふうな形で残念ながらちょっと転勤のときの処理をミスってしまったと一括申請をするというか、このような形のものを何かもう一つ制度の中にプラスしていただければ非常に件数もはけるようになるのではないか、このように考えます。

井澤委員 ありがとうございました。

 時間も限られておりますので、最後に、梶谷参考人に再度お伺いいたします。

 先ほども意見陳述の中に、審査における迅速化、公正、適正な判断を今後どのようにバランスよく行っていくかというのが大きな課題になるというお話でした。最近、新聞を拝見しておりますと、何か地方委員会の視察に出向かれていろいろと現場の声、第三者委員会、各地域の声を聞いていらっしゃるとも伺っております。地域によっては判断が異なる判定が出たり、あるいは審査、スピードにばらつきがあったり、質の改善なりスピード、あるいは命題であるバランスよく解決の糸口を見つけていくというような非常に難しい部分があるかと思います。

 今、地方を回られて、どんな課題がまた各地域地域で出てきているのか、そして今後どういう形で第三者委員会をまとめていかなければならないか、その総合的なお考えなり、先ほどの意見陳述でお話しし切れなかった部分等がありましたらお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

梶谷参考人 今お話がありましたように、私も何回も現地に参りまして、各ブロックの委員長の皆さんといろいろお話をいたしました。

 先ほど申しましたように、中央委員会というのは地方委員会の上部団体ではなくて、これはあくまでも役割が違うわけでございます。したがって、中央委員会でもってこうしてくれということはもちろん申し上げますが、基本的にはお互いにいろいろな問題点を持ち寄って、そして解決の共通性といいますか共通認識を持とうではないかということで、一緒になって議論をしたりしておるわけでございます。

 おっしゃるように、今、各地において処理率といいますか判断の数が随分違ってきておる。やり方も若干違っている。なるべく平準化しなければならないということで努力をしておるわけでございますが、やはり地域性の問題等があります。また、単に数字だけでははかり切れない、あるところでは一カ月二カ月しか支払っていないという事例が少ないとかいうようなこともございますし、それから審議の仕方というようなことも関係してくるわけでございます。

 私どもとしては、いろいろな意見を聞きながら、全体としてこういう問題点があるから、それを整理いたしまして各委員会にお示しして、それでこういうことだから皆さん平準化するように努力をしていただきたいというようなことを申し上げておるわけでございます。

 私は、基本的には各地域の委員会というものは我々と共通認識を持っているというふうに確信をしております。そのために何回も会議をしております。そういったことではだんだん平準化してくるものであると私は期待をしておるところでございます。

井澤委員 ありがとうございました。

 これからも国民の立場に立ち、国民の正当な権利回復のために御尽力いただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。そして、本日は、梶谷第三者委員会委員長、そして小澤委員もお出ましをいただきまして、本当にありがとうございます。そして、非常に難しいお仕事をお引き受けいただき日々御奮闘されておられるということに、心より感謝を申し上げる次第でございます。

 まず、私は配付資料を配付させていただいているんですけれども、この一ページ目でございますが、総務省に第三者委員会の公開、非公開はどうやって決めるんですかと聞きましたら、こういう文書をいただきました。「年金記録確認第三者委員会の公開・非公開については、各委員会で個別に判断することになっており、委員会が公開するとの判断を行った場合、公開されることになる。」ということで、事務方から聞きましたのは、梶谷委員長が初めのたたき台のときに非公開にするという御判断をしたから非公開なんだという説明をいただきましたけれども、ぜひ梶谷委員長、公開をするという御判断を委員会とともにしていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

梶谷参考人 公開の問題に関しましては、私ども頭を悩ましている一つでございます。

 何分にも具体的案件に関しましては、これはかなり個人のプライバシーに直接関係するような事案が多いわけでございます。

 例えば、先ほど厚生年金の例が出ましたけれども、厚生年金の場合には、今までの申し立ての中では、一つの会社にずっと継続しているというので記録が問題になっているという例は少ないのではないか、むしろ何回も職場をかえているというような方が多いわけでございます。そういった、職場を転々とすると言うとオーバーですけれども、何回もかわっているというようなこと。

 それから、例えば特例納付等に関しまして言えば、そのときにこうこうこういう理由によってお金が入ったのでそれで払ったというようなこととか、それから、御両親が支払っていた、家族にも払っていたというような家庭的な事情とか、そういったプライバシー的なものがかなりあるわけでございます。そういった意味で、そのプライバシーということをどうしても考えなければならないのではないか。

 そして、公開ということになりますと、どなたでもということに当然なりますね。その場合に、私どもは守秘義務というものが当然あるわけでございますが、そういうことのない方たちが傍聴する公開というものが果たして妥当であろうかということになりますと、若干逡巡せざるを得ない面があることは御理解いただきたいと思います。

 ただ、国会議員の皆様方が国政調査という観点からこういうものについて傍聴したいということになれば、それはプライバシーに配慮しつつ、もちろんすべてお認めするということかどうかは地方委員会にお任せしなければいけませんけれども、これから検討させていただきたいというふうに思います。

長妻委員 失礼ながら、残念な答弁なんですけれども。この配付資料の四ページ目でございますが、社会保険審査会というのがございます。これは年金の受給等に異議がある方がここで申し立てをして審査をするところでございますけれども、ぜひ梶谷委員長も一度傍聴に行っていただければと思うのでございますが、私も傍聴に行ってまいりました。

 ここは、私が行ったときには、御高齢の御婦人が御自身の障害年金について切々と経緯と中身を、当然プライバシーの話も出るわけでございまして、それを言われ、委員の先生が質問をされるということがだれでも傍聴できるということになっております。当然その議事録の公表というのはプライバシーに配慮するということになっておりますけれども、そういうことによって非常に過程が透明化が高まっていくということと、多分、梶谷委員長の御心配というのは、一つ、この九ページ目でございますけれども、これは私も見て、ああ、こういうことがあるんだと思いました。非常に皆さん御苦労されておられるということであります。

 総務省のこの第三者委員会がつくった資料ですけれども、行政対象暴力のおそれがある事案ということで、中央委員会で二件、地方委員会で九十一件、九十三件のそういうおそれが出ているということで、こういうことが公開することで逆にふえるのではないかという御懸念もあるかもしれませんが、これは一概に、公開をするとこういうことがふえるとは本当に言えるのかどうか。

 あるいは、公開をするといろいろな判断の基準がわかるので、例えば悪意を持った方が、ああ、こういう説明をすれば認められるんだというふうに知恵をつけて、それによって自分が払ったということにしてあっせんを受けてしまう、多分、こういうお考えもあるかもしれませんが、これは比較考量だと思います。

 社会保険審査会も公表したことによって重大な悪影響が出たとは聞いておりませんし、比較考量したときに、国民の皆様方に一定程度、どういう議論が行われて、どういう判断が下ったのかということをお示しするのと、公表、公開することによって、当然一定のルールを決めた上での公表でございますけれども、それによるデメリットも発生するかもしれませんが、メリット、デメリットを勘案して、私は、当然、一定のルールを決めて公表するべきであるというふうに考えております。

 そして、今あっせんされた事案は、ある程度、粗いんですが、ほとんどわかりませんけれども、書面で簡単な説明を我々にいただく、国民の皆さんも見ることができますが、非あっせん、つまり却下されたものは、どうして却下されたのか、どういう案件だったのか、そこが全く詳細も明らかになっていないということで、非常に疑心暗鬼になって、そして相談に来られた、第三者委員会で申し立て、話された方から私どもも直接お話を聞くと、今世間で、皆様方第三者委員会の公式見解と実際の中身がちょっと違うというようなこともあり、非常に疑心暗鬼になっている。

 そうであれば、一定のルールを決めて傍聴を認めて、非あっせんの部分も詳細の情報を公開する。そして、全国、今地方の第三者委員会が中央の判断ともちょっとずれている、あるいは地方でも、同じ状態なのに、ある地域は短期の納付は認めるけれども、こっちの地域だと認められないという、かなり判断がまちまち、差が出てきております。それを解決するためにも、そういう措置をしていただきたいと思うんですが、ぜひ踏み込んだ発言を、国会議員だけ傍聴を認めるというのも何か変な話であるというふうに考えておりますので、いかがでございましょうか。

梶谷参考人 長妻先生がおっしゃる御趣旨はよくわかります。

 ただ、あえて申し上げますならば、先ほど社会保険審査会の例をお出しになりました。ここでは公開しているではないか、こういうことでありますが、これは審理自体、いわば手続ですね、裁判所でいえば、法廷自体を公開するということであろうかと思います。

 この四十二条に、「審査会の合議は、公開しない。」というふうに書いてあります。私どもの第三者委員会は、実は、この手続といわゆる合議というものが一体となっているところが多いわけです。一緒になってやっている。

 それは、なぜそういうことかというと、社会保険審査会や裁判所は対審構造になっております。原告、被告というか、申立人と社会保険庁というような形で対審構造になっていますから、そこは公開のところで主張等についてはいろいろ闘わすということがあるわけでありますけれども、第三者委員会はそういうことではない。御本人の申し立てを聞いて、また事務局が相当な時間をかけて調査したその結果を委員に説明をしながら、委員がいろいろ質問したり、それから委員の意見を言いながら、その場でもって結論を出していくというような仕組みになっておるわけです。

 ですから、もし社会保険審査会と同じようにするということになるとすれば、手続面と合議的なものを分けなければならないというようなことになると、これはまた時間が相当かかるという点もございます。

 ただ、私どもは、何も秘密にやりたいという気持ちはさらさらございません。プライバシーとかそういうことに配慮せざるを得ないということからそういうふうにしているわけでございますので、先ほど申しましたように、どの辺まで公開というか、全面的公開かどうかも含めまして、これから検討させていただきたいというふうに思います。

長妻委員 先ほど梶谷委員長は、プライバシーがあるから公開しないようなことを言われたので、そういうふうに申し上げたんですけれども、社会保険審査会もプライバシーの部分の申し立ての部分は公開している。そうであれば、合議でそこで決めることも含めて公表してもいいのではないのか。

 中立性を損なうおそれがある、事務方に聞きますとそういうふうに言われるわけです。どういう意味だと聞きますと、もし傍聴を認めるとすれば、悪意を持った人が無言の圧力で、ちょっと怖い人たちが傍聴席に座ってにらみをきかすと委員の先生方が萎縮をしてしまうというようなことも言われているんですけれども、私は、これもいろいろな技術的な面で解決、一定のルールを決めれば、そういうことが起こらないこともできるのではないか。

 今の理由で一律に非公開にするというのは、余りにも国益に対する損失が発生するのではないか。これだけ大変な、大がかりな案件でありますので、むしろ公開していろいろな多くの人の知恵を入れて、あるいはそれを社会保険事務所の人間も見ることができるわけでありますから、オールジャパンの知恵を入れるようなことをぜひ考えていただきたい。

 この四ページ目も、社会保険審査会の第三十七条には、「審理は、公開しなければならない。但し、」ということでただし書きがあります。「当事者の申立があつたときは、公開しない」。つまり、自分は見られたくないから公開しないでくれというときは公開しないことができる、こういう規定も丁寧に入っているわけであります。

 もう一点を言えば、五ページ目でございますけれども、原口筆頭理事の公開の質問に増田国務大臣が、「私どもの中で検討させていただきたい、こういうふうに考えております。」という御答弁もしていただいて、そして私、事務方に聞いてちょっと驚いたのは、では、増田大臣が答弁した公開の検討はどういうふうに進めているんですかと言ったらば、梶谷委員長とは相談しないで、まず独自に事務局案をつくる、今その作業をしていますと言うんですね。

 ですから、私は、それはおかしな話で、いろいろな責任は委員会に押しつけるけれども、公開するしないという非常に重要なことは先生には御相談はしないで、まず事務局で今内部で検討している。こういう、委員会のメンバーに相談しないで事務局が動いているというのには非常に不信感を持ちますので、私も事務局に、梶谷委員長と密に連絡をとって、相談して決めるように強く申し入れておりますので、委員長の方からも、重大なことなので、委員の先生と密に連絡をとりながらやれと。

 結局、総務省の姿勢というのは、公開をすると、国民の皆様からいろいろな意見とかクレームとかそういうことが来て面倒だと言わんばかりの姿勢が私は目につきますので、そういう面倒だから公開しないということは、これはもう絶対あってはならないと思います。

 そして、もう一点でございますけれども、この七ページ目でございますが、第三者委員会非あっせん、つまりあなたのは認めませんというものが三千八百七十三件ございましたが、その中で、ヒアリングがないまま非あっせんにするというのが三千三百二十七件、八五%もある。

 そのヒアリングがない内訳を見ると、ヒアリングさせてくださいと本人に言ったけれども、その御本人が嫌だと拒絶したというのが五八%。これはある程度仕方がないのだと思います。

 しかし、御本人は希望したにもかかわらず四一・七%がヒアリングは不要ということでヒアリングできなかった。これは事務方に確認をしますと、非あっせんが出る直前にその御本人に連絡をして、非あっせんになりそうだけれども、あなたはお出ましをいただいて第三者委員会でヒアリングを、申し立てを述べていただけますか、御希望しますかしませんかというのを全員一律に聞くと。しかし、聞いた上で不要と判断すると却下するというのは、非常に、本人にとっては希望を聞かれたら行けるものだと思ったものが、四一・七%却下される。

 そして、この八ページ目でございますけれども、そもそも、行政評価局長の関さんという方がことしの四月二十二日の答弁で、「年金記録の訂正が必要でないという判断をいたしますときには、御本人にそういうことになりそうであるということをお知らせして、御本人から特にお述べになりたいことがあるかどうかということの確認をしながら最終判断をしておる」ということを言っておりまして、必ず聞くようなことを言っているんですが、現実は違うということで、ぜひこの増員も含めて委員長から総務省に御指導をいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

梶谷参考人 ヒアリングの件につきましては、私も当初、各ブロックを回りました、あるいは全国委員長会議等で、特に却下事例に関しましてはできるだけヒアリングをしてほしい、それが御本人の納得のために必要であるということは、率直に言って申し上げたことがございます。

 ただ、ブロックを回ってみますと、一つだけではなかったんですけれども、ヒアリングを必ずやらなければならないということになるとすると、それは非常に時間がかかるんですね。お一人呼ぶと大体四十分ぐらいかかる。時間がかかるから聞かないということでは決してありませんけれども、そうすると判断に非常に時間がかかってしまうというところが一つあります。

 必ずしも聞かなくてもいい場合があるではないか、そういう場合には一律に聞かなければならないというような原則を立てられるのはいかがかというお話もございました。いろいろ聞いてみると、例えばお母さんが支払っていて、そして自分はそれには全く関与していない、自分が若いころで全然そのころの状況はわからないということが明確なような場合だとか、あるいは厚生年金において、会社が消滅しているというような状況があって、それをお聞きしてももう結論は変わらないんだというような事例が多々ある。そういうときには必ずしもヒアリングをしなくてもいいのではないかというような御意見が多々あったわけでございます。

 そういうものも踏まえまして、ヒアリングをするかどうかというのはその委員会にゆだねるということにいたしたわけでございます。

 ただ、御心配のように、私も若干心配しておりますが、やはり国民に対する説得、納得、説得じゃありません、納得のためには、できるだけヒアリングをする方向で考えるべきではないかという気持ちは変わりません。ただ、それをすると非常に時間がかかるということ、しかも結論は余り変わらないというようなケースがあるということを御理解していただきたいと思います。

 それから、先ほどちょっと言い忘れたんですが、委員の御質問の中で、却下事例について内容がわからないというようなお話がございました。あっせん事例、却下事例ともに、私どもは裁判所の裁判書と同じように結論と理由を、ほとんど一枚ないし二枚でございますけれども、簡潔に書いたものは公表しておりますので、なぜこの事案は認められなかったということは、それをごらんいただければわかるようになっておるところでございます。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、そういういろいろな御事情というのはあると思いますが、それも一定の公開をすれば、ああ、やはりそれはそうだなということが全国民の皆さんの腹に落ちるようなことになりますので、ぜひ公開というのを前向きに検討していただき、あと、我々野党もこの問題は真摯に取り組みますので、法案の部分で、この法案が不備だからこうだということがございましたらぜひ御意見もいただきたいということをお願い申し上げまして、質問といたします。ぜひ公開の御検討、よろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 お二方の参考人、本当にきょうはありがとうございます。

 今の同僚委員の議論を聞いておりましても、本当に昨年の未統合記録問題以降、多くの国民がさまざまな思いを持って年金制度に目を向けておられる。その中で、何とか自分の記録を訂正したい、あるいは確認したいという方々が、半分感情をお持ちになって第三者委員会に向かっておられるわけでありまして、きょう梶谷委員長から悪戦苦闘という言葉をお述べいただきましたが、まさにそうだろうなと。本当に皆さん方、第三者委員会、地方の七百五十三名ですか、従事しておられる第三者委員の皆さんも含めて、国民の信頼を回復するための作業、御尽力に対して、まずもって深甚の敬意を表したいというふうに思います。本当に御苦労さまでございます。

 最初に伺いたいのは、きょう改めて委員長から疎明というような大事なお話もいただいて、お取り組みいただいている作業の困難性を改めて感じた次第でありますが、わかりやすい話を最初に教えてください。

 現場、中央はともかく現場の委員会は、恐らく一チーム四名から五名ぐらいでおやりになっていると思うんですが、調査員がいろいろ調べたデータをベースに、お示しになった判断基準に基づいて最終的に判断をされるわけでありますが、その最終の判断場面というのは、その四名の方が全員合意ということなんでしょうか。間違っても多数決じゃないんだろうなと私思っているんですが、最後の判断の部分、独立した第三者委員会のそのチームの判断の場面をちょっと我々に教えていただきたいなと思います。

梶谷参考人 私は、地方委員会の審議の状況というのは、一回ある県に赴きまして傍聴させていただきました。また、中央委員会において、具体的に先例となるような事案について審議しておりますので、そこでも傍聴あるいは参加をいたしたわけでございますけれども、多数決という例は今まで私は聞いておりません。

 やはりいろいろ議論をして、いろいろな意見がございます。そのときに、ある方がどうも納得いかないということであるとすると、もう少し資料を収集して調べようではないかというようなことをいろいろやられているように思います。そうした結果、そのときに若干時間はかかりますけれども、最終的には全員の合意でやっておることがほとんどであるというふうに認識しております。

 ただ、率直に言いまして、先ほども、各地域において若干ばらつきがあるのではないか、時間的な問題等についてもあるのではないかというようなお話もありましたけれども、その中の一つで、やはりとことん事実を追おうではないかというようなところと、必ずしもそうでない、ある程度のところでとめるというところがあり得るだろうと思います。それは結論の、結果に作用するかどうか、これは具体的なものとしてわかりませんけれども、私がよく言っているのは、余り事実を追い過ぎますと、これはそもそも判断をすべき証拠というものがない事案なので、かえって迷路に入ってしまう。いろいろな可能性を言ってみると、消極的にも考えられるし積極的にも考えられるということで、迷路になってしまう。だから、ある程度の調査でとどめて、そして結論を出すということがいいのではないかということは、常日ごろ私は言っておるわけでございます。

 そして、そのところで却下といいますか認められないという結果が成ったとしても、それで裁判のようにもう一事不再理だということではなくて、新しい事実が出たらばいつでも言ってきてください、そのときにはまた審理いたしますというようなことを申し上げておるわけでございまして、その辺の繁閑というものが地域によって若干あるようなところもあるのではないかというような感じも実はしておるわけでございまして、御質問の答えになったかどうかわかりませんが、とりあえず以上でございます。

桝屋委員 ありがとうございます。率直な状況をお述べいただいて、よくわかりました。

 先ほど、認めようとすればするほど時間がかかると。あるいは、今お話しになったように、調査をすればするほど、そしてその結果、期待にこたえられればいいわけでありますが、申し立てをされる方々のお立場、感情ということを考えるときに、本当に悩ましいなと感じるわけであります。

 そこで、私は、昨年以来、一定の規範といいましょうか、判断の流れはできたのではないかなと。今委員長がおっしゃったことは極めて大事な話でありまして、ちょっと長妻委員の御指摘もありましたが、全国的に見ると作業が余りにも区々とし過ぎている、相当の差が出ているという感じもいたしますので、調整作業も念頭に置いていただきたいなと思うわけであります。

 そこで、時間もありませんので、もう一点、小澤参考人が言われた厚生年金の問題ですね。それで特例措置をしたということでありますが、先ほど井澤委員の議論でもありましたが、なお特例措置でも救われない、救われないといいましょうか、確認できない、あるいは訂正できないということがあるのかなという心配をしております。

 先ほどは月末退職の事例、翌月資格喪失という事例で一月あいてしまうというようなケース、これは会社を挙げてというような御提言もいただきましたけれども、例えば、年度末、一月、二月、三月は試験的に様子を見る、本人も資格は要らないというようなケースもあったりして、四月から正式にというような事例が、そうすると三カ月がどうなるのと。あるいは、さっきの退職も、一月も、その一月が重大な影響を与えるケースもあるだろうと思っておりますし、あるいは、もっと率直に聞きたいと思いますが、いわゆる社会保険事務所の納付率を上げるという結果こうなったのではないかと思われるようなケースもあるんだろうなと私は思っておりまして、そういう意味では、第三者委員会の作業をする中で、特例措置以上にもう一度やはり検討しなきゃならぬことがあるのかどうか、率直な意見を小澤参考人からお聞きしたいと思います。

小澤参考人 いろいろ難しい問題はあるんですけれども、今御指摘いただきました会社の体質、それから従業員の方のお気持ち、年金の将来の重要性といった点が、必ずしも共通認識というか、重要に考えていない向きも一部はございまして、今御指摘のように、私は会社に入ったけれども社会保険には入りたくないということを主張される個人の従業員の方もいらっしゃいます。

 それからまた、会社としても、試用期間というのが大体多くの会社は三カ月くらい置いているんですが、試用期間は本当にどうなるかわからないから、一応この期間は様子を見ようというような形でやっている中小企業もございます。しかし、それは法律違反でありまして、社会保険労務士としては、入社日から加入させなくてはなりませんということを指導しているわけですが、必ずしも全部、社労士が関与しているわけではございませんし、そういうこぼれた部分というか、これはあることも事実でございます。

 そういった点が、この受給という、年金の期間を計算するときに、ある方は、いや、私は昭和何年の四月一日から就職しました、そして、いたにもかかわらず、何で一、二カ月とか半年くらい抜けているんだとかというような、そういう申請をしてくる方もいます。その辺はやはり何らかの形で、それは理由はよくわかりません、本人が入りたくないと言ったのかもしれないし、会社の都合であったのかもわからないし、あるいは、そのほか何かの特殊な事情があったのかもわかりませんが、一応そういう点で抜けてしまっている事実。

 それを、では、どういうふうに救済するかというと、多分、保険料は納付されていない。たまたま給与明細や何かを本当に大事にとっていただいている方も相当数いらっしゃるんですね。そうすると、そういう方は何月からきちっと社会保険料を引いていますという裏づけのデータを出していただきますので、これは割と素直に認めやすいわけですね。

 あと、パートタイマーの問題もございまして、要するに、通常の労働者の四分の三に満たない就労をされる方は社会保険の適用から外していいというか、外れるという、入りたくても入れないというか、そういうような事情になっていたりして、実はその境目の方たちが、ある人は入り、ある人は抜けている。そうすると、これはいろいろ調べていきますと、職種変更が何かのときに、パートタイマーから正社員になったのか、あるいは正社員からパートに変わったのか、そういうふうな経過が、いろいろ審議を尽くしていく中で、それを疑うような、そういうことをよく見きわめないといけないような事案というのがよくございます。

 そうすると、その辺の実態を調べるとなると、本当に過去のことをいろいろな角度でやらなくてはいけませんので、何というか、情況証拠というか関係書類というか、雇用保険の方の裏づけから確認したり、あるいは健康保険でそういう病院にかかったような記憶がありますかというようなことを確認したり、とにかく何か手がかりを見つけながらやっていくということで、これは特例法の部分とやはりちょっと違ったところで、特効薬はないのかもしれませんけれども、何らかの判断基準ができればいいなとは思いますが、私にはちょっとわかりません。

 以上でございます。

桝屋委員 本当に悪戦苦闘の、お悩みの状況をおっしゃっていただいて、まあ、私の質問が悪かったかもしれません。

 最後に、時間もありませんので、委員長にもう一度確認をいたしますが、五万件の処理、一年間でやると役所は言っているわけでありますが、この一年間で全国百六十八チーム、できるというふうにお考えなのかどうかお答えをいただきたいのと、それから、今いろいろおっしゃったけれども、ここまで作業していただいて、厚生労働省ではなくて第三者委員会として、我が国の年金制度に対して、今回の問題を二度と起こさないという意味からも総括をされる予定があるのかどうか。ぜひ、社会保険庁の問題も含めて私は総括をしていただきたいと期待をしておりますが、いかがでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

梶谷参考人 ことしの三月末までに申し立てられた方に関しましては、おおむね一年を目途として終了する、こういうふうにしておるわけではございます。必ずできるかと言われましても、これは努力をするということしか言えないわけでございます。

 先ほど来いろいろ御要望もございました例えばヒアリングの問題だとか、その他いろいろなものを、それをきちっとやると、全部やるというようなことになりますと、とてもできるものではございません。やはり迅速にするということを一方においては頭に置きながら、さらに適正にという、これをどのようなバランスで行うかということを私どもは本当に苦慮をしているところでございます。すべてヒアリングというのは、それはもう理屈としてはよくわかる、理解をするところでございますが、それで果たして先ほどのような迅速にできるかどうかというようなことも悩みながらやっておるわけでございます。努力目標として、全力を尽くすということを申し上げさせていただきたいと思います。

 それから、私どもの第三者委員会の経験によって、これからの年金の問題について何らかの意見を出すかということでございます。

 私どもは一件一件を誠実に判断をするというのがこれは一つの役割でございます。そして、私はよく申し上げているんですけれども、これは過去の社会保険庁のいわばミスとでもいいましょうか、そういったものを補うために一生懸命やっているとかいうのではなくて、やはり、年金制度の根幹をなす、まさに誠実に支払った方がちゃんとそれが報われるといいますか、記録がきちっと残って回復するということ、これの正当な権利を実現するということによって年金制度の信頼を回復する。その信頼のもとでなければ、これから皆様方で御議論されるであろう、あるべき年金とはどういう形がいいかということの議論ができないであろうというようなことで、我々は決して後ろ向きのことをやっているのではなくて、まさにこれから皆様方、国会議員の先生方が中心になって、あるべき年金制度を御検討するための一つのベースである、その意味では積極的な行為なんだというふうなことを申し上げておるわけでございます。

 そういった過程におきまして、問題点をもし御指摘する必要があるとすれば、それは御意見を申し上げる機会は持ちたいというふうに思っております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 終わります。

渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、参考人の方から貴重な御意見を伺いました。何よりも、行政に対する国民の信頼を回復するための取り組み、御尽力に心から敬意を表するものであります。

 この年金問題についての国民の不信を解消する上では、皆さんと御一緒に取り組みを進めていきたいと思っております。その点で、第三者委員会の取り組みについて何点かお伺いをさせていただきます。

 最初に、梶谷参考人にお伺いをいたします。

 この間、梶谷参考人は全国の地方の委員会にも足を運んで実情をお聞きになる、こういうことに取り組んできたというふうにお聞きをしております。そういった中で、地方ごとのばらつきもあるということをお聞きしているわけですけれども、回ってこられまして、具体的にどのようなばらつきがあるとお感じなのか。そういう点で、何らか国として対応が必要なこともあれば、国に対する要望ということでも、この機会にお聞かせいただければと思っておりますが、よろしくお願いいたします。

梶谷参考人 全国を回りまして、先ほど来お答えしたことではありますけれども、調査内容についてかなり詳しくするところと、必ずしもそうでないところ、それで、委員から指摘されてさらに追加で資料収集をするというようなこと、いろいろなケースがあるんだろうと思います。そういうものが積もり積もって、若干の処理率等の違いとかいうものがあろうかと思います。

 それから、結論がちょっと違うのではないか、同じケースでありながら結論が違うのではないかというような御指摘もございますが、私は必ずしもそうではないと思っているんです。やはり具体的な一つ一つの事情というものがみんな違うわけですね。例えば、例に挙げられました、二、三カ月支払いがないという事案であっても、背景事情がずっと違う。例えば、三カ月だけ払わなかった、ところがその後ずっとすべて払っているというようなケースと、時々ぽつぽつと支払いがないというようなケースだとかというふうなことで、一つ一つ見ると非常に違うということがございます。

 だから、それをどのように、中央委員会としては、各地域の方たちにできるだけ標準化、平準化するかということはなかなか難しいところがあるわけでございます。そこが非常に苦労しておるわけで、だからこそ我々は各地へ行って共通の問題点をいろいろ議論して、そういう中で各地方委員会が独自にお考えいただくということになっておるわけでございます。

 そういった意味で、具体的にどのようなことをするかというのは非常に難しいのでありますが、できるだけ会合を多く重ねまして、共通の認識を持って、問題点が那辺にあるか、あるところは非常に迅速にやっている、あるところはちょっと遅いというようなことを、どこに問題点があるのかというのを、自分のところだけではわかりませんので、皆さんと議論をしながら、問題点を認識しつつ進んでいくということが必要ではなかろうか、このように思っているわけでございます。

塩川委員 都道府県別の受け付け件数と委員の数にかなりアンバランスがあるのではないかということ、これは事務室の方からの資料もいただいて、都道府県別の受け付けの件数の資料がないということで、新聞報道でしか私も把握のしようがないんですけれども、委員数で割ってみますと、一番少ないところと多いところでは三倍以上の開きが出てきているわけですね。そういった点でも、体制の強化ということが求められていると思います。

 さらに五十チームふやすとかという話がありますけれども、その際でも、予定されている一年間でほぼこの五万件をやろうと思いますと、一チームで大体三百件ぐらい扱わなくちゃいかぬ。その数で割り戻しますと、例えば大阪などでは委員の数を二倍以上にふやさなくちゃいけないんじゃないかとか、出てくるわけですね。

 そういう点で、現状の体制で本当にいけるのかなという懸念を覚えるわけですが、その体制の強化の点についてはどのようにお考えでしょうか。

梶谷参考人 私の立場とすれば、多々ますます弁ずということで、多ければ多いほどいいというふうに思っておるわけでございます。ただ、いろいろな要素から、簡単にふやすというわけにはいかないということも承知しております。

 というのは、やはり、事務職員の方をふやすといっても、だれでもいいというわけには当然いかないわけですね。相当な経験と能力がなければいけないというようなこともございますので、その人材確保、かなり総務省の皆さん方は努力をされておるというふうに聞いております。

 ただ、おっしゃるように、余りばらつきがあってはいけないし、それから、やはりできるだけ迅速にやるということは私どもの至上命題であると思います。そういった意味で、できるだけ多くの方たちを集めて、そしてこの年金記録の回復に努めるということをいま一層早めていかなければならないというふうに思っております。

 そういった意味では、まさにおっしゃったように、もう少しふやした方がいいのではないかという御意見に対しては、全面的に私としては同感でございます。

塩川委員 委員で、チームで審査をする、その作業そのものも、より前に進めていかなければいけないわけです。その点、前さばきでの事務局、事務方の作業というのは当然必要なわけで、その強化もこの間されてきているわけですけれども、一部の指摘では、もちろんそれぞれ事務局の方にも専門の方もいらっしゃるわけですが、国から出向で来られるような方も一定数いらっしゃる。その出向が、かなり短期間でころころ入れかわっているんじゃないのかということなども指摘があるんですけれども、そういう実情というのはどうなんでしょうか。

 その点でも、委員の数をふやすと同時に、前さばきの事務局体制のあり方の問題について何かお感じの点があれば、お聞かせいただけますか。

梶谷参考人 まことに申しわけありません、今御指摘の、出向の方が短い期間でかわっていくという事実は、私は把握しておりません。まだ一年しかたっておらないわけでございまして、また、当初よりも倍増しているというような状況の中で、そういう事例は私のところには達しておらないわけでございます。

 やはり、ある程度経験というものも必要でございますので、余りかわるというのは望ましくないことは事実であろうというふうに思っております。

塩川委員 次に、小澤参考人に伺います。

 委員の方がそれぞれの専門性を生かして、国民、訴えの皆さんの要望をしっかり受けとめて対応されておられると思うわけですけれども、中には必要以上に記憶の正確さを求めるような委員もいるんだというような報道の指摘などもございます。その辺について、特に地方の委員会などでの委員の方の取り組みの姿勢、その点でお感じのこと、あるいは、こういう改善があったらよいのではないかというお考えがありましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

小澤参考人 いろいろ内容を審議するときには、やはり重要視するのは、勤務実態であるとか人事記録、在籍証明、失業保険者証だとか、あるいは源泉徴収票、こんなようなものを、あれば求めます。

 それから、保険料控除については、やはりその控除されていた何らかの記録、それから、そこに出てくる保険料額の妥当性、極端な話ですけれども、給与明細を出していただいたんですが、その給与明細のところに、社会保険料と書いて、割と小さな数字が入っていたんですね。そうすると、これは分析してみると、当時の雇用保険料の金額と全く一致する。そんなことで、本人は社会保険に入ったつもりなんですが、それは雇用保険であったとか、そんなこともあったりします。

 それから、短時間労働者の勤務形態が、先ほどもちょっとお話ししましたように、いろいろ変わるケースもある。そんなことから、何らかの同僚の方の証言とか、履歴書だとか、勤続の感謝状とか表彰状とかというようなものがあったりしまして、本人が申請している内容を裏づける何らかのものがあったらなるべく出してください、そうすると判断が非常にしやすいですという形はとっていますが、これが出ないとだめですよという形にはなってございません。

 限界事例というか、もうほとんどそういう証拠的なものがないというような中で、いろいろ同僚からの証言を集めたり上司の証言を得ますと、間違いなくその時期にいたなと。そして、そこの会社自体が、我が社は入ってきた人間は全員社会保険に入れていたというような証言をいただいたりして、この場合には、裏づけの資料というのはほとんどないような状況でこれを認めるというような方向で考えたりしております。

 そんな意味で、絶対これを出さなくちゃだめだというような形のものはないんじゃないかなと思いますが、地方の状況で、具体的にどんなケースがあったかはちょっと把握しておりません。

塩川委員 続けて小澤参考人に伺います。

 厚生年金の場合、標準報酬月額の記録が改ざんをされていた、年金が減っている事例というのがあって、この点、第三者委員会としても取りまとめをされたというふうにお聞きしているんですが、こういった、一部の報道などでは、大体七〇年代と九〇年代の不況の時期に集中しているんじゃないかとか、かつては全部抹消するという形から、一部引き下げる、減額をするという形で、なかなか巧妙で実態が被保険者にわからないというようなことなども紹介されていました。

 こういう事例というのは、これからの相談の案件としてふえていくとお考えか。その点について、何らか対策なり、第三者委員会としてお考えのことがありましたら、御紹介いただけないでしょうか。

小澤参考人 標準報酬を変更するというのは、法的にいいますと、年一回の算定基礎届という、お給料が変わって来年以降こうなりますよというのが一つと、それから、途中で固定的賃金が変更になると、月額変更届という、過去三カ月の賃金の上昇によって標準報酬を変えるというパターンがございます。このパターン以外に標準報酬を変えなくちゃいけない理由というのは余り制度的にはないわけで、ただ、会社の方が、景気が余りよくなくて、そして一部経営者の報酬は、役員会議の、取締役会の議事録で、こういうふうな形で変更にするよ、ダウンするよというようなことは、議事録を添付することによって減額をするというケースがございます。

 そのほか、第三者委員会に今回ってきているケースとしては、倒産等何か、全喪という言い方をしますけれども、すべての会社の社員がやめてしまうというか、事業所として適用事業所を廃止してしまうというときに、何らかの形で少し遡及して標準報酬を変えたりしているようなケースは間々目にしますけれども、これはいろいろな事情があってそうされたんだろうなということで、私どもとしては、そのときの状況をなるべく把握しながら、ポイントは、本人たちが給料を幾ら引かれていたのか、そのまま多分、不景気があって会社を閉鎖するぞといっても、本人たちからは保険料は従来どおり取っていたということが推察されるケースが非常に多いものですから、それはそのまま認めるような方向で進めております。

塩川委員 最後に、梶谷参考人に伺います。

 先ほど長妻委員も指摘をされ、過日の委員会で原口委員もこの問題を指摘しましたヒアリングのお話ですけれども、非あっせん事案のうち、ヒアリングが行われていないケースがかなりの数に上る。私も、もともとの対応の基本方針でも、国民の立場に立って対応するということがあるものですから、やはり実情についてきちんとまずは聞いてもらいたいというのが訴えた方のお気持ちでもあるでしょうし、この第三者委員会に国民が期待するところでもあるのかなと思います。

 先ほどのお話でも、非常に時間がかかる、結果として結論が変わらないという場合もあるんだと。それはそういう事情もあるのかもしれませんけれども、やはりその趣旨を酌み取るという点で、きちんとヒアリングをするような機会というのを設けていただきたい。そういう点で、体制上の問題ということであれば、その体制の強化ということを第三者委員会のお立場から政府に対しても要請をするということで対応することが必要なのではないかと率直に感じるんですが、お考えのほどをお聞かせください。

梶谷参考人 先ほどもお答えを申し上げたつもりでございますが、なるべくヒアリングをするということは、本人の納得という点からも重要なことであるということは十分認識をしておるところでございます。

 体制を強化すればそれは可能ではないかというお話でございます。それらを十分、御意見を考慮しながらこれから対応をさせていただきたいというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 本日は、貴重な時間を割いて本委員会においでいただきましたことに、心から感謝申し上げます。

 時間も限られておりますので早速入りますが、まず、梶谷参考人にお伺いいたします。

 年金記録確認第三者委員会が記録確認並びにあっせん案をつくる際に、申立人の申し立てに対してどのような態度で臨んでおられるか、まずその点を確認いたします。

梶谷参考人 冒頭に申し上げましたけれども、役所的な硬直的な対応、姿勢ではなくて、十分に御本人の申し立てというものを理解し、しんしゃくし、そしてその上で柔軟な判断をするということが基本でございます。これは単に委員だけではなくて、当然、最初の申し立てのときには社会保険事務所、それから第三者委員会事務局、こういうことになるわけでございますが、その職員の皆さん方にも、そのようなことで、余りしゃくし定規的な対応をするべきではないということは常日ごろ申し上げておるところでございます。

重野委員 梶谷参考人におかれましては、日弁連の元会長であられました。釈迦に説法かもしれませんけれども、刑事裁判でも疑わしきは被告人の利益という原則があると聞いておるんですが、今回の第三者委員会でも同じように、疑わしきは申立人の利益に、そういう立場というものもとってしかるべきではないかというふうに思うんですが、その点についていかがお考えでしょうか。

梶谷参考人 ストレートに今の原則が適用されるかどうかというのは、これはいろいろ問題があろうかと思いますが、基本的にはそのような姿勢で、御本人の申し立てが筋道が通っているかどうか、資料、反対的な資料がどの程度あるだろうか、有利な資料がどの程度あるかということを勘案しながら、できるだけ御本人の立場というものを酌み上げながら判断をしておるつもりでございます。

 そして、その結論の理由を公表しておりますが、それをごらんいただければおわかりだと思いますけれども、決して一つだけのもので結論を出すということはほとんどしておりません。いろいろな要素、できるだけ有利なところ、あるいは、これは支払ったとおっしゃるけれども、それは支払えない時期であった、あるいは支払えない役所であったというような、いろいろな要素を勘案して、その中で、できるだけ有利な点をしんしゃくしながら判断をしておるというつもりでございます。

重野委員 今の参考人の意見をそのまま私も受けとめて、そういう姿勢で今後ともやっていただきたい、要望しておきたいと思います。

 次に、群馬県で起こった事象について、第三者委員会への社会保険事務所からの圧力があったというふうな報道がなされております。こうした事実がほかにもあったのかどうか。これは群馬県だけの問題だったのか、いや、同じようなことがほかの県でもあったということを把握されておるかどうか、お聞きいたします。

梶谷参考人 群馬県の問題に関しましては、私、報告を受けまして、実は非常に驚いたわけであります。また、憤りも感じたわけでございます。

 そのケースは、委員の所属するお仕事のいわば監督官庁の方が何らかの圧力と感じられるような行動をしたというようなことでございます。私は、この第三者委員会の委員というのは、それぞれ学識経験を持って、またいろいろな社会的実績も積んだ方がほとんどであるということで、そのような圧力によって結論が左右されるということはあり得ないというふうに思っておるわけでございます。事実、それはないと確信をしておるわけでございます。

 群馬以外にあったということを把握しているかどうかということでございますが、そういった意味で、私は、事務局からそのような事例があったということは全く聞いておりません。

重野委員 今後とも、こういうふうなことが起こることのないように、きちっと襟を正していただきたいと思います。

 次に、都道府県によって、審査のスピードあるいは基準のばらつき、こういうようなものが見られるようであります。まず、ばらつきがあるとの認識を持っているかどうか。もし持っておられるといたしますと、それをどう改善していくのか、そういう方策についてお聞きいたします。

梶谷参考人 まず、ばらつきの問題は、結論を出すまでにどのぐらい時間がかかるかというばらつき、それから処理率、これは同じことになるかもしれませんが、そのばらつきの問題と判断の問題があろうかと思います。

 処理率の問題に関しましては、これは確かに、統計的に数字を並べますと、あるところは非常に少ないし、あるところは非常に多いというようなこと、それはなぜそうなのかということも我々はある程度調査をしております。やはり、地域性の問題とか、それから事案の複雑さ等が地域によって若干偏っているというようなものもあるかと思います。それから、委員あるいは事務職員が、先ほども申し上げたことですが、事実をできるだけ追っていこうということで、これは大変努力をされておるわけでございます。そのことについて異論があるわけではございませんけれども、余り追い過ぎても時間がかかり過ぎるというような問題もあろうかと思います。

 私が傍聴に行きましたところでは、ある年代の方に関して、同じ年代の方たち、ある町の多数の人、十名以上の人たちを調べて、そして同じような例があるのかないのかというようなことをとことん調べたというようなことがございました。そこまで、もちろんそれはもう本当に一生懸命になって、使命感に燃えて調査をしておるわけでございますが、やはり余りやり過ぎるとこれは時間が非常にかかるということで、先ほど申し上げましたように、ある程度のところでもって判断をする。そのかわり、新たな資料が出たならば、さらに申請をしていただく、申し立てをしていただくということは十分あり得るということで、そこら辺の調査の内容が若干違うところがあるのではないか。もちろん、調査能力という点も若干それに加えなければならないかもしれません。

 いずれにしても、私どもとしては、各地方委員会に、そういう処理率が少ないところにはできるだけ迅速にしていただきたいということをお願いしているところでございます。

重野委員 調べてみますと、処理率でトップの山形県と、それから最下位の愛知県では七倍強の開きがあるんですね。これはやはり、記録漏れを申し立てた人たちの間で、そういう状況に対する不公平感というのが強まってくるのは当然であって、これはやはり十分に考慮しなければならぬことだと思います。そこら辺のところを十分注意喚起して、今後の手続、作業を進めていただきたい。

 次に、脱退手当金について梶谷参考人にお伺いいたします。

 脱退手当金未払いの申し立て件数、これは現在、どのくらいになっているんでしょうか。そのうち処理件数は何件で、その処理したうち何件が記録訂正につながっていったのか、お聞かせください。

梶谷参考人 平成二十年四月四日現在で千六百六十八件申し立てがあったと聞いております。そのうち、これまで十一件について記録の訂正が必要との判断をしております。不要であると判断したのが三件でございます。まだ数が上がっておりません。

 これは従来厚生年金部会でやっていたわけでございますけれども、他の厚生年金、国民年金の判断と違って大変難しい問題がございまして、なかなか処理し切れないというところがございました。ことしの二月に独立の脱退手当金部会をつくりまして、検討を早めておるということでございます。これからその結論を出す数もどんどん上がってくるであろうというふうに思っております。

重野委員 脱退手当金をもらっていないという証明、つまり、ないことの証明は一般的に非常に困難であるというふうに言われているんです。しかも何年何十年も前の話であって、その点について十分に配慮し、慎重に対処していただきたいと思います。

 次に、小澤参考人にお伺いいたしますが、総務省は今後一年間でおよそ四万五千件の処理を見込んでいる、この見込みを達成するために、現在一チーム週当たり平均四件の処理スピードを五、六件に引き上げることが必要になるんですね、これを実現するためには。この見込みどおりの処理が可能だと考えておられるかどうか、お聞きいたします。

小澤参考人 大体五、六件くらいというのは、今までの経験からしまして可能だと思います。

重野委員 では、そのことと、これはちょっと私もよくわからないんですが、実はこの年金が、五千九十五万件調査しなければならない件数があるんだと。そのうち解明されておるのが三千七十万件、未解明が二千二十五万件、こういうふうに言われているんです。その三千七十万件のうち、年金番号が結びつく可能性があるものが千百七十二万件、死亡判明などではっきりしているのが千四百八十一万件、統合済みが四百十七万件、こういうような数字が出ております。そのうち、年金に結びつく可能性があるというふうに、可能性があるということは、これはいわゆるもらう資格のある人が申請しなければ実現しない仕組みになっておりますね、これが千百七十二万件という。こういう数字と、今言われました、四万五千件の処理を見込んでいる、つまり、実際わからないという数が、単位が違うんですよね。

 それで、大体何年かかったら、今私が言いましたこの五千九十五万件、そのうち未解明二千二十五万件、解明三千七十万件、こんな数字を言いましたけれども、それらに対する返事ができるような状態ができるんでしょうか。その点についてお聞かせください。

小澤参考人 私ども委員としましては、週一回第三者委員会を開催しまして、そこで上がってきた事案を処理するという、そのときに五件ないし六件くらいを処理していくのは可能だと思います。ただ、全体的なことになりますと、ちょっと私の判断ではわかりかねます。

重野委員 以上で終わります。

渡辺委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、両参考人に一言御礼を申し上げます。

 参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十三分散会


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