衆議院

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第10号 平成21年3月25日(水曜日)

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平成二十一年三月二十五日(水曜日)

    午前十時六分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 秋葉 賢也君 理事 実川 幸夫君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 林田  彪君

   理事 森山  裕君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 谷口 隆義君

      今井  宏君    遠藤 宣彦君

      小川 友一君    川崎 二郎君

      坂本 哲志君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    薗浦健太郎君

      田中 良生君    谷  公一君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      葉梨 康弘君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    平口  洋君

      福井  照君    古屋 圭司君

      松本 文明君    渡部  篤君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      小平 忠正君    寺田  学君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      和田 隆志君    伊藤  渉君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   総務大臣政務官      坂本 哲志君

   総務大臣政務官      鈴木 淳司君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            山川 鉄郎君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   戸塚  誠君

   政府参考人

   (消防庁長官)      岡本  保君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         小丸 成洋君

   参考人

   (日本放送協会監査委員会委員)          井原 理代君

   参考人

   (日本放送協会会長)   福地 茂雄君

   参考人

   (日本放送協会副会長)  今井 義典君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 金田  新君

   参考人

   (日本放送協会理事)   日向 英実君

   参考人

   (日本放送協会理事)   溝口 明秀君

   参考人

   (日本放送協会理事)   八幡 恒二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   永井 研二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   大西 典良君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  田嶋  要君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 隆志君     田嶋  要君

    ―――――――――――――

三月十九日

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

同月十八日

 定額給付金を撤回し、雇用創出対策の充実を求めることに関する請願(小沢鋭仁君紹介)(第九八三号)

 同(奥村展三君紹介)(第九八四号)

 同(川端達夫君紹介)(第九八五号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第九八六号)

 同(田島一成君紹介)(第九八七号)

 同(高山智司君紹介)(第九八八号)

 同(細川律夫君紹介)(第九八九号)

 同(松本大輔君紹介)(第九九〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

 特殊法人の組織等に関する予備的調査についての報告


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報流通行政局長山川鉄郎君、政策統括官戸塚誠君、消防庁長官岡本保君及び法務省刑事局長大野恒太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。鳩山総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鳩山国務大臣 日本放送協会の平成二十一年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入が六千六百九十九億円、事業支出が六千七百二十八億円となっており、事業収支における不足二十九億円につきましては、財政安定のための繰越金の一部をもって充てることとしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入が九百十七億円、資本支出が八百八十八億円となっております。この資本支出において、地上デジタル放送設備の整備など建設費八百二億円を計上しております。

 次に、事業計画につきましては、多様で質の高いコンテンツの提供、受信料の公平負担の徹底、円滑な完全デジタル化に向けた取り組み等が盛り込まれております。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 これに付する総務大臣の意見といたしましては、これらの収支予算等について着実に遂行すべきものと認めた上で、収支予算等の実施に当たって、

1 組織一体となって改革の実現に全力で取り組むこと

2 未収対策業務の強化等の各種施策を推進し、受信料の公平負担の徹底に向けて全力で取り組むこと

3 平成二十三年七月のデジタル放送への完全移行に向けた対応に万全を期すため、中継局整備等を可能な限り前倒しして取り組むとともに、デジタル化により電波が届かなくなる地域への対策等の受信環境の整備に関して、公共放送としての役割を十二分に果たすこと

などの点に特に配慮すべきであるとしております。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長福地茂雄君。

福地参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成二十一年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして御説明申し上げます。

 平成二十一年度は、三カ年経営計画の初年度として、放送をめぐる環境が激変する本格的なデジタル時代に向け、諸計画を達成するための取り組みを確実に進める重要な年度であると考えております。

 事業運営の基本となります放送においては、放送の自主自律を堅持し、正確で公平公正な放送に努め、信頼できる情報や多様で質の高いコンテンツを積極的に提供してまいります。

 また、日本や地球規模の課題に取り組む番組や地域放送の充実等に力を注ぐとともに、国際放送による海外への情報発信の強化に努めてまいります。

 あわせて、組織の改革に全力を傾注し、視聴者からの信頼を高めるとともに、構造改革を推し進め、取材、制作の体制を強化し、効果的かつ効率的な業務運営を行ってまいります。

 協会の主たる財源であります受信料につきましては、公平負担に向けた取り組みを強化し、公共放送を支える受信料制度への理解を促進するとともに、一層効率的な契約収納活動を推進してまいります。

 円滑な完全デジタル化に向けて、デジタルテレビジョン放送の普及に努めるとともに、本格的なデジタル時代の新たなサービスの開発、充実を図ってまいります。

 次に、建設計画におきましては、平成二十三年の地上デジタルテレビジョン放送への完全移行に向け、放送設備の整備などを計画的に実施いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千六百九十九億五千万円、国内放送費などの支出六千七百二十八億六千万円を計上しており、事業収支における不足二十九億円につきましては、繰越金の一部をもって充てることとしております。

 また、資本収支につきましては、支出において建設費など総額八百八十八億六千万円を計上し、収入には、それに必要な財源及び事業収支の不足を補てんするための財源として、前期繰越金、減価償却資金など総額九百十七億六千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、平成二十一年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会の改革に向けたこれらの施策を一つ一つ誠実かつ着実に実行し、視聴者の期待にこたえていく所存でございます。

 委員各位の御理解と御支援をお願いし、あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願いを申し上げます。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉賢也君。

秋葉委員 おはようございます。自由民主党の秋葉賢也です。

 ただいま、平成二十一年度の予算あるいは事業計画の御説明をいただいたわけでございますけれども、ことしは福地会長が御就任されて二年目ということになるわけであります。池田芳蔵元会長以来二十年ぶりの民間出身の会長ということで、国民の期待も大変高い中でのお仕事ぶりをいただいてきたと思います。

 就任後には記者らによるインサイダー取引の問題が発生したり、その後も、出張費の不正な着服や窃盗など、いまだ職員の不祥事が続いていることは大変残念なことだと思っております。

 その意味でも、NHKにとってこの平成二十一年度は、既にまとめてこられました三カ年の経営計画の初年度の年に当たるわけでありまして、激変するデジタル化時代を迎えた環境の中で、公共放送としての信頼をしっかりと回復して、視聴者そして国民の期待にこたえていくことが必要なわけであります。今後とも、そのガバナンスあるいはコンプライアンスというものをさらに一層強化していく必要があると思いますけれども、福地会長及び小丸経営委員長それぞれに、その御決意を冒頭伺っておきたいと存じます。

福地参考人 昨年の一月に会長に就任しまして以来、私の会長としての最大のミッションは、相次ぐ不祥事から失いました視聴者の皆さんの信頼を回復することが第一と考えております。そのための組織風土の改革が重要と考えまして、一年間そういうことに取り組んでまいりましたし、これからも取り組んでいく所存でございます。

 昨年発覚いたしましたインサイダー問題につきましては、会長の諮問機関であります第三者委員会を設置いたしまして、その第三者委員会から十項目にわたる再発防止策の提言を受けました。一年間それを真摯に実行してまいっておりますし、現在も続けております。

 この四月からスタートいたします新しい三カ年計画につきましても、やはり視聴者の信頼を取り戻すことが第一と考えまして、第一番目に「視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます。」ということを明記しておりますし、そういった心がけでその実行をお約束しております。信頼される公共放送NHKであるために、開かれたNHKに向けた経営改革をさらに進めてまいります。

 それと同時に、最大の問題は、職員にコンプライアンス意識を根づかせることだと。コンプライアンスの問題につきましては、もう制度上の問題はいろいろ整備をされておりますが、そういった形は整っておりますけれども、それを実行するという組織風土、心の部分がまだまだできておりません。それが会長としての私の大きな務めであろうというふうに考えております。

 そのほか、ジャーナリストを育てるための採用や研修、活力ある組織づくりのための組織とか人事制度の改革などを着実に進めてまいりました。視聴者の皆様の期待にしっかりとこたえてまいりたい、さように思っております。

 また、組織としてのさまざまなリスク要因を芽の段階で摘みまして、未然に防止をするために、昨年、総合リスク管理室というのをつくりました。職場の総点検とか意識改革に努めておりますけれども、さらに取り組みを強化いたしまして、信頼される組織づくりに努めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

小丸参考人 皆さん、おはようございます。経営委員長の小丸でございます。

 平成十六年の不祥事発覚以降さまざまな対策をとってきたにもかかわらず、不祥事が起きましたことはまことに遺憾でもあり、残念でたまりません。申しわけなく思っております。

 今回の三カ年計画には、コンプライアンスの施策として、公共放送として信頼される組織となるべく、縦割りの弊害等を打破する組織風土の改革を盛り込みました。経営委員会は、この計画に盛り込んだ組織、人事制度の改革、公正な評価、処遇に向けた制度の改革、人材供給の強化、役職員のコミュニケーションの強化などを早期に実現し、制度改革と意識改革の両面で実効が上がるよう、その進捗状況をきめ細かく監督してまいりたいと思います。

 今後も、経営委員会は執行部とともに視聴者の信頼回復に向け全力で取り組んでまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。

秋葉委員 今、お二人からそれぞれ御決意、あるいはこれからの重点的な取り組みの御説明をちょうだいいたしました。おととし十二月の放送法の改正で、経営委員会の機能強化あるいは権限強化ということが図られた中でございますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 その中で、特に、新しい第三者的な委員会として監査委員会の設置が義務づけられまして、ことしはその監査報告の初めてのものがなされるんだろうと思います。我々国民にはなかなか監査委員会の動きというのも十分見えないところがありますけれども、そろそろ出されるであろう監査報告について、時間がないので簡単に、どんな報告になるのか、活動内容とあわせて伺いたいと存じます。

井原参考人 ただいま御質問をちょうだいいたしましたNHKの監査委員会は、放送法の改正により昨年四月に設置されて一年という新しい委員会でございます。

 監査委員会は、現在、経営委員の中から任命された三名の監査委員で構成し、役員の業務の執行を監督する、監査する権限を持っております。

 その職責を果たすべく、行動としては、昨年四月からこれまで三十一回の監査委員会を開催し、また、執行部へのヒアリングや業務執行状況の調査を行うのを初め、地域の放送局の局長や関連団体の社長からのヒアリングなどを行っております。あわせて、内部監査室や会計監査人から監査状況の報告を受け、意見を述べております。これにより、内部統制システムを活用したモニタリングができますとともに、会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保する体制にしているところでございます。

 こうした活動は、随時経営委員会に報告し、ホームページにも掲載をしておりまして、以上のような活動に基づき監査報告書を出したいというふうに思っております。

 以上でございます。

秋葉委員 初めてとなる取り組みですけれども、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、放送法の改正のもう一方の重要な柱は、何といっても、これから国際放送の充実強化を図っていくということにあったんだろうと思います。

 これを踏まえて、ことしの二月からは、新しく国際放送としてNHKワールドTVというものがスタートいたしました。初めて二十四時間ですべて英語で放送するという、画期的な取り組みだと私は思います。英語のニュースを設けたほか、すべて英語で、国内、アジア、世界に伝える英語番組も新設されたと伺っておりますが、実は、先々週、私もアフガニスタンのカブールを訪問する機会がありまして、初めてこのニュースを拝見いたしました。BBCやCNNにも劣らないような、非常に洗練されたつくりだなというふうな印象を受けたところでございます。

 ただ、この番組表の構成を見ておりますと、全体の半分以上はニュースや解説が占めております。週七十一時間と伺っておりますが、一方で、日本の実情を紹介するインフォメーション番組は全体の三分の一、週四十三時間となっております。

 ニュース番組が国際放送の柱になっているということでございますけれども、この番組構成の割合はともかく、私自身の要望といいますか、考え方を申し上げますと、例えばNHKの解説委員が日本でやっております「時論公論」のような番組がございます、今のタイムリーな話題、問題点を非常に的確に、コンパクトにまとめて国民にお伝えすることによって大変好評を得ておりますが、極端に言えば、こういった良質な番組を英訳してもっと伝えていくということも必要だと思います。

 また、「Your Japanese Kitchen」という日本料理を紹介する番組がございますけれども、世界各地にいろいろ仕事で行くことが多いわけですが、これが日本料理かと曲解されているような日本料理も多く散見されるようになっておりますので、きちんとした情報を伝えていくということには大変意味があるんだろうと思います。

 先般、同僚議員がドバイなどを訪れた際に、お土産にスイカなどを持っていったら、ああいう甘いおいしいスイカはドバイがあれだけの物流拠点でも入ってきていないということで大変好評で、輸出の拡大にもつながったということも聞いているわけでありますけれども、日本を紹介する番組というのは、単に観光振興の面だけではなくて、やはりこのスイカのように貿易の活性化や日本への投資の拡大ということにもつながるような、そうした戦略的な番組コンテンツというものをもっとプロデュースしていく必要があるんだろうと思います。

 その意味で、国益というものをしっかり踏まえた国際放送のさらなる充実について具体的にどのように考えておるのか。時間がございませんので、できるだけ簡潔に、要を得てお答えいただければ幸いでございます。

今井参考人 NHKでは、二月からNHKワールドTVをスタートさせました。この二十四時間放送では、国際政治、ビジネス展開あるいは投資判断にかかわるような、いわゆる世界のオピニオンリーダーに向けてニュース、情報を伝えるとともに、日本の情報にこれまで触れる機会のなかった一般の方々への情報提供ということも目指しております。また、アジアからの情報も極めて重視して、NHKのアジアにおける情報網を使って放送を出しているところであります。

 ニュースにつきましては、東京からのマーケット情報、さらに、今年度からは海外のマーケットからの最新情報も伝える体制を整えてまいる所存であります。一時間の放送枠の冒頭三十分はニュースでありますが、後半の三十分は番組で情報を伝えるという形をとっておりまして、この中には、世界に通用する日本の中小企業のユニークな技術を取り上げる「J―TECH」という番組を初め、デザインやファッション、アニメなど、日本が得意とする分野を掘り下げた番組を充実して伝えるようにしております。

 それから、御指摘の討論番組につきましては、今後、新しい形の討論番組を開発すべく準備を進めているところであります。また、国内で放送している「NHKスペシャル」あるいは「クローズアップ現代」につきましては、テーマに沿ったものについて英語化をいたしまして、随時放送しております。

 NHKとしては、特に信頼される放送ということを国際社会に確立することを目指して、今後、一層努力してまいりたいと思います。

秋葉委員 ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。

 国際放送の充実には、一方で、やはり世界じゅうの多くの人に見ていただくということが大変重要になってまいります。その意味で、今NHKが受信可能なのは八十カ国、およそ一億一千万世帯だと伺っておりますが、計画では、この視聴可能世帯を五年後には一億五千万世帯にまでふやすことにしているわけでございますけれども、今後どのように具体的に取り組んでいくのか。私は、邦人向けの従来の放送ももちろん重要ですけれども、これからはやはり外国人に対してしっかりと日本の正確な情報を伝えていく、そしてその受信範囲を広めていくということが大事だと思っております。簡単に御答弁いただきたいと思います。

今井参考人 先生御指摘のとおり、一般世帯への受信対応を強化してまいりたいということで、世界の国々のケーブルテレビあるいは衛星放送事業者に働きかけをいたしまして、個々の世帯で、家庭で放送が受信できるように環境整備に努めているところであります。

 御指摘のとおり、今月末、今年度末までに一億一千九十万世帯に届きます。今後四年間に一億五千万世帯を目指しておりますけれども、その方法といたしましては、衛星、ケーブル、インターネットブロードバンド系のIPTV、それから地上デジタル放送、あらゆる手段を使って、できるだけ多くの方に届けるべく努力をしてまいります。

 また、一億五千万世帯を達成した後も、引き続き、NHKワールドTVの受信環境整備に努めてまいる所存であります。

秋葉委員 さらなる充実強化をお願いしたいと思いますが、やはりこの国際放送の充実には大変莫大な資金がかかるのも事実でございまして、国際放送の予算は、十九年度がテレビ、ラジオ合わせて百五十二億円でございましたけれども、平成二十一年度は二百十三億円までふえております。

 このうち、国ではずっとラジオを中心に支援してまいりましたけれども、初めてテレビの支援も始めて、二十四億円から、ことしは三十五億円にまで、今までで一番多い予算を交付しているわけでございまして、総務省の取り組みも高く評価できるわけであります。

 やはりここ数年間がこのデジタル化の中での勝負の年だと思いますので、一層、国際放送の予算強化、交付金の増額も必要かと思われますが、きょうは大臣からもその御決意を一言で伺っておきたいと思います。

鳩山国務大臣 現在もNHKワールドTVのニュース制作費等に国費を投入しているわけでございますが、やはり重要なことは、いい番組をつくること、秋葉委員のおっしゃるとおり。それを世界に向けて発信するわけですが、受信環境の整備というか、向こうで受信してもらわなければいけませんから、そういった意味で、各種対外的な交渉には政府を挙げて応援していかなければならないだろう、そういうふうに思っております。

 そしてまた、こういうワールドTVのようなものができたんだということの宣伝は、NHK御自身もなさるでしょうが、国としてやらなければいけないだろう、そう思います。それから、各国でどういう反響があって、どういう要望があるか、それに従って番組を変えていけばいいわけですから、そういう情報収集等、これはどういう手はずになるかわかりませんが、外務省等にも協力してもらえればいい。

 そういういろいろな形での国費の使い道があると考えております。

秋葉委員 ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。大変深く認識をしていただいているので、心強く思っております。

 NHKは公共放送である以上、視覚障害者の皆さんや聴覚障害者の皆さんのための配慮も大変重要なテーマの一つでございます。

 伺うところによりますと、昭和六十年から聴覚障害者のために字幕放送を開始して以来、順次その比率を拡大してまいりました。平成十八年には、当時の郵政省が作成いたしました行政指針であります、字幕放送が困難な番組を除いて午前七時から深夜零時までの時間帯をすべて字幕化するという目標を、一年前倒しで一〇〇%での達成が実現したと伺いました。ただ、依然として字幕化率は総合テレビで四二%、教育テレビでは全体の二八%にとどまっているのが現状、実態でございます。

 総務省としても、さらに、平成二十九年度までに、複数人が同時に会話を行う場合以外の生番組に字幕を付与することを求める新たな指針を策定しているところでございます。これに対して、NHKの字幕付与は、二十一年度の総合テレビの計画値で、指針の目標に対して残念ながら五六%にとどまっております。やはりさらなる拡充が必要だと思います。

 一方で、聴覚障害者のための解説放送は、平成二年度からドラマを中心に開始されまして、二十一年度には四十六の番組で実施されるまでに拡大をしてきたことは大変高く評価できます。ただ、これも、総務省の行政指針の目標に比べますと、デジタルの総合テレビで八%にとどまっているのが現状でございます。

 字幕放送や解説放送の拡充に向けて、NHKは、どのような計画で、これからさらにどのように充実させていこうとしているのか。

 宮城県では昨年の夏に大きな地震災害がございました。こうした災害のときの緊急警報の放送でありますとか地震放送とかというのも、充実が図られてはきていますが、まだまだ目の不自由な方、耳の不自由な方々にとっては、的確にその情報が伝わるかというと必ずしも十分ではございません。こうした災害対策とあわせて伺っておきたいと存じます。

赤松委員長 福地会長、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

福地参考人 お説のとおり、まず、聴覚障害者のための字幕放送は、地上テレビの総合テレビの収録済み番組については平成十八年度で一〇〇%完了しておりますが、まだ生放送については今努力をしているというところでございます。それから、視覚障害者のための解説放送は、平成二年度からドラマ番組を中心に順次拡大はしてきているということでございます。

 端的に申し上げまして、字幕放送の充実のためには、自動システムの開発とか専門性を持った人材の確保、育成、こういった課題がまだたくさん残っております。しかし、この指針の目標達成に向けて、字幕放送、解説放送ともに取り組みを着実に進めてまいりたいと思っております。

 それから、御指摘のございました障害者のための地震速報の取り組みでございますが、視覚障害者がテレビで解説放送を聞いている際に地震放送などが出たケースを想定しておこたえする緊急警報放送は、津波警報が発表された場合などに放送する、また震度六弱以上の地震が発生した場合はすべての放送波で臨時ニュースを伝える、いずれも解説放送を聞いている最中も直ちに通常番組を中断してお伝えするので、視覚障害者にも的確に情報が伝わるのではないかと考えております。

 その他、こういった障害者の方への緊急警報速報については、工夫をして取り組んでおります。

 以上でございます。

秋葉委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、土井亨君。

土井(亨)委員 自由民主党の土井亨でございます。

 ただいま、前段で秋葉委員からいろいろお話がございました。不祥事が続いて、その信頼回復のためにこれまで頑張ってこられた、そういうものに対しては大変敬意を表しております。

 しかしながら、私自身は、基本的にNHKに対する視聴者、日本国民の皆さんの信頼というのは大きいものがあるのだろう、大きいものがあるがゆえにやはり厳しい目も当然あるわけでありますから、そういう中で、約一万六千人の職員をまとめていく、一つのベクトルを持ってしっかりと公共放送としての役割を担っていくということを考えますと、これは大変なことだなというふうに思っております。

 そういう中で、昨年来、経営委員会と執行部の、対立とまではいきませんが、意見の相違等々、思いの相違というものが露呈をしたというのも事実ではなかろうか。そういうものがあって、昨年十月に議決された、今回審議をいたしております三カ年計画、これの中に、一〇%の還元というような形もございましたし、三年かけて還元の具体的な方法をしっかりと考えていくという方針も打ち出されているようでありますが、十四日の議決、その次の日の朝刊では、これは報道によればですので私自身確かではありませんが、当時の古森委員長は、この一〇%還元というのはすなわち受信料の値下げだと明言をいたしているという記事も掲載されておりました。

 結局、執行部の玉虫色的な一〇%還元という意味合いと、当時の古森委員長初め経営委員会が議決をした還元というものに二つの解釈があるとすれば、これは私は甚だ残念なことだなというふうに思っておりますので、ここで改めて会長と新委員長に、昨年来の議決を通した中での、一〇%還元、この還元というものの認識、とらえ方をお聞かせいただければと思います。

福地参考人 私どもが作成いたしました三カ年計画書には受信料収入の一〇%還元というふうに書いておりますけれども、これは経営委員会からの修正動議に基づく文言をそのまま記載したわけでございまして、我々執行部といたしましては、一〇%の還元は受信料一〇%の値下げだというふうに、私どもは理解をしております。

 それから、新しい受信料体系につきましては、二十四年度から実施をするわけでございますけれども、二十一年度から取り組んで二十三年度中に、恐らく受信態様にも大きな変化が予測されます、そういったものを読み取りながら受信料体系を考えていきたい、かように考えております。

小丸参考人 NHKは受信料収入によって運営されており、効率的な経営が行われなければなりません。そのためにも明確な目標が必要であると考え、三カ年計画に平成二十四年度以降の受信料一〇%還元を明記いたしました。

 来年度からの三カ年計画の中では、地上デジタル放送への完全移行という命題があり、還元は難しいということがありますが、この三カ年計画をきちんとした形で実行すれば、平成二十四年度以降の一〇%還元は可能であると考えております。

 具体的な還元の方法につきましては今後総合的に検討していきますが、幅広く視聴者の皆様にお返しするという意味からすれば、値下げが主であると考えております。

土井(亨)委員 会長も委員長も、基本的には一〇%還元とは受信料の値下げだ、そういうふうな認識でおられるということだと思います。

 ただし、先ほど申しましたとおり新聞報道ですから余り、どこまで信憑性があるかというのはあるのでありますが、いろいろな新聞報道で、まるで経営委員会の修正議決の一〇%還元という考え方と執行部の考え方が一致をしていない、だからこそ還元という玉虫色のような形で決着をしたというような報道もなされている。これは視聴者の皆さんや国民の皆さんには大変申しわけないことだなというふうに私は感じております。

 大臣、一般論で結構でございますので、この一〇%還元、これはまさしく受信料の値下げだというふうにとらえられているのか、また、いろいろな具体的な方法、間接的な還元もそれはあるなというふうなお考えなのか、その辺の大臣の御認識、解釈というものをぜひお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 執行部と経営委員会の方で非常に緊張感のあるやりとりが昨年行われておりましたことは、世の中はもめていると受け取ったかもしれませんけれども、私は、緊張関係のある、よい議論が進んでいったな、こういうふうに思っております。

 その結果、一〇%還元という形で決着をしたわけでございまして、還元というのでしょうから、国民・視聴者に何らかの利益がもたらされるということと理解いたしております。

 答弁書とちょっと違うことを言いますけれども、私は、一〇%還元というのは、今会長から、あるいは経営委員長からもお話がありましたように、還元という言葉を使われますと、受信料の値下げというふうに受け取るのが常識だろう。それは、例えば全国各地で何かNHK祭りをやって、あめ配ったり風船配ったりするとかということもあるかもしれませんけれども、一般的に言えば、一〇%還元というのは一〇%の料金の引き下げのことを意味すると思います。

土井(亨)委員 ありがとうございます。

 私も、還元というと、とらえ方とすると、受信料の値下げというふうに解釈されるのが普通だろうと思います。

 大臣は今、経営委員会と執行部、緊張感があっていいというような御認識でありますが、緊張感はいいのでありますが、それが対立とか確執とか、そういうふうなとらえ方をされるということは、まさしくこれはNHKにとっても不幸なことでありますし、国民・視聴者の皆さんにとっても不幸なことでありますので、ぜひ、建設的な議論、そしてまた前向きな議論、それによって国民・視聴者の皆さんの期待にこたえていただきたいと思います。

 しかしながら、今の経済状況を考えますと、一〇%還元というと、およそ六百六十億ぐらいでしょうか、六百億ぐらいでしょうか、これは大変なことだな、いろいろな改革を進めていく中でも、これを生み出すということは本当に大変だというふうに思っております。まして、三カ年の計画を見せていただいても、ことしと来年は赤字になるというふうな計画。最終年度は黒字に転換するというふうな計画ではありますが、しかし、やはりこういう時代でありますから、経済状況も含めて考えますと、大変なことだなと私は思っております。

 ここで、できなかったらどうのこうのという後ろ向きの議論はしたくないわけでありますので、ぜひ、この一〇%還元、何としてもやるんだという御決意を会長にお伺いさせていただきたいというふうに思いますし、経営委員長には、経営委員会が修正議決までしてこの一〇%還元という文言を明記したわけですので、経営委員会としてどういうバックアップをとっていくのか、そういうものも含めてお伺いをしたいと思います。

福地参考人 確かに御指摘のとおり、百年に一度と言われるようなこういった経済情勢の中で、この一〇%の値下げというのはかなりハードな目標であることは十分承知をしております。

 執行部と経営委員会の意見が対立いたしましたのは、一〇%そのものが悪いのではなくて、三カ年計画であるのに四年目の数値計画を約束しないでもいいんじゃないですかということでございました。しかし、これは放送法に基づく民主主義のルールで修正動議がありました以上、そこで多数決で決定いたしました以上、それには潔く従ってまいります。

 その中で、修正動議によって一〇%値下げということは決まりましたけれども、そのために新しい施策をつけ加えたわけではございません。私どもは、執行部がつくりました三カ年計画をきっちりとやっていけば、二年間にわたって若干の赤字補てんはしないといけませんけれども、一〇%の値下げというのは可能だということは認識をしております。そういったことでありますので、まだスタート台に立っておりませんが、四月からスタートいたします新しい三カ年計画については、全職員挙げて達成に邁進してまいります。

 以上でございます。

小丸参考人 三カ年計画は、執行部と何度も議論を重ねました。私も平成十六年六月から経営委員を務めさせていただいていますけれども、これだけ燃えた会議はなかったと思います。それだけ熱意を持ってやってきたということを御認識していただきたいと思います。

 最終的に経営委員会として適切と判断して議決をしたものであります。会長も、決まったことはしっかりと実行していくということを明言されております。経営委員会としては、執行部と協力しまして、計画遂行に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

 確かに、厳しい経済環境、現状の足元はございます。ございますけれども、今は計画達成に向けていろいろと取り組むことが最大のミッションだと思っております。現時点では、一〇%還元ができない場合を想定するのではなく、これに向けてどうやっていくかということが大切かと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

土井(亨)委員 ぜひ、国民・視聴者の皆さん方の期待を裏切らないような形で取り進めていただきたいというふうに思います。

 NHKの計画の要約版を拝見いたしますと、経営方針がございます。私、前に、信頼回復のためにはやはり組織がしっかりとしなきゃいけない、その組織がしっかりする場合には、職員の皆さんの意識改革が第一番目に来なければならないのではないかという質問をさせていただいたことがございます。

 今回の方針七に、改めて「構造改革」という文言が入っております。「効率的な体制で」ということでありますが、この構造改革という文言が入ったということは、会長自身でNHKのどういう構造を、まあ悪いという点ですが、変えていこうとしているのか、その辺の趣旨といいますか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。

福地参考人 執行部がこの計画の中で述べております構造改革には幾つかございますが、最大は、やはり職員の意識改革であると思います。

 それは、かねてから、NHKには限りませんけれども、特にNHKの場合には縦軸の組織が強過ぎる。私は、縦軸の組織というのは仕事をしていく上で大切なことだと思っておりますが、縦軸の組織に閉じこもって横のコミュニケーションをしないというところが悪いわけですから、そこのところに横風を入れるということが最大だと思います。

 そういった見地から、就任早々いたしましたのが、まずはトップからということで、理事の個室を廃止いたしまして大部屋に入ってもらいまして、まずは理事の間で横のコミュニケーションをよくしようというところからスタートいたしました。

 いろいろな取り組みをやってきておりまして、最近は、番組を制作する中でも、この番組制作チームとこの番組制作チームが一緒になってやろうというような番組、そういった動きも出てきましたので、私は、そういった制度が実際に職員の仕事の中に生きてきつつあるなということを実感しております。

 そういった問題から、もう一つは放送の構造改革でございますが、これは後にもいろいろな御意見の中で出てまいるかと思いますが、今、視聴者というのは多様化して高度化してきている。そういった視聴者の多様化、高度化に我々がおくれていてはNHKが取り残されてしまう。私は二十一世紀のマンモスになってはだめだということを言っておりますが、そういったために、放送面で多様化、高度化についていく。

 それからもう一つは、御指摘の中にもございましたが、地域の活性化ということに取り組んでいきたい。地域放送局が地域の力になるようなお手伝いをしたいということが一つでございます。

 それからもう一つは、関連団体がそれぞれの動きをするんじゃなくて、NHKグループ一体となって、グループとしての最大効率化をねらっていきたい。

 そういった一連の動きを構造改革と。構造改革については、人を減らす、金を減らすということよりも、必要な部分に人と金という経営資源をシフトするという考え方にのっとって進めてまいります。

 以上です。

土井(亨)委員 時間もなくなってまいりました。

 今、会長からお話しいただきました。ただ、私自身、聞くところによるとというお話をさせていただければ、やはり職員間の中での内在的な、今までのNHKの体質というのがまだぬぐい切れていないのではないかというふうに思っております。

 今、会長からいみじくも、地域に貢献をしたい、そういう体制をつくるというお話をいただきましたが、やはり私は、渋谷、NHK本局よりも、地方局の皆さんの頑張りというのがまさしくNHKを支えているのだろうと思います。

 そういうことを考えますときに、東京に行ける職員は優秀な職員だ、いつまでも地方にしかいられない職員はだめな職員だというような風潮があるやにも聞き及んでおりますので、そういう意味では、ぜひ、職員の皆さん方が渋谷でも地方でも、本当に自分たちが精いっぱい頑張れるんだ、頑張って仕事をしていくんだという社風といいますか、そういうふうな社内の風土というものをしっかりと確立していただきたいものだ、私はそういうふうに思っておりますので、その点はよろしくお願いをさせていただきたいと思います。

 時間もありませんので、最後に大臣にお伺いをさせていただきたいと思っております。

 今日まで、前段で申しましたとおり、大臣は緊張感があっていいことだというふうにとらえられましたけれども、経営委員会と執行部、またNHKの内在的な問題を踏まえて、やはりもう一度ここで原点に返らなければならない。

 それは、公共放送の本来の姿、役割というものをもう一度共通認識をとりながら、まさに国民・視聴者の皆さん方にすばらしい番組また情報を提供していただかなければならないというふうに思っておりますので、もう何度も大臣は過去に御発言いただいているかもわかりませんが、改めて、大臣として、公共放送に対する期待、役割、あるべき姿、そういうものをどういうふうに考えられているか、お話を賜りたいと存じます。

鳩山国務大臣 公共放送であるということは大変なことでございまして、民放ではない、公共放送であって、それが放送法で位置づけられているという重みは十分に認識をしていただかなければならないわけでございます。あまねく日本全国における放送をする、豊かでよい放送番組を提供する、国際放送をやる、こういう意味では、民間放送とは異なる社会的使命、あるいは民間放送よりもはるかに重い社会的使命を担うことが期待されているわけでございますから、その放送法の趣旨を踏まえて、高い公共性と社会的責任を自覚していただきたいと思うわけでございます。

 ただ、公共放送だ、我々は強いんだというおごりの中から生まれたような不祥事もあっただろうと思いますから、そういった意味では、道義的な部分とか、あるいは倫理観とか、そうしたものもNHKの中で醸成されていくような空気をつくっていただきたいと思っております。

土井(亨)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、今後のNHKがまさに国民のため、視聴者のためのNHKでありますようにお願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、橋本岳君。

橋本委員 おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。

 きょうは、小丸経営委員長、福地会長、よろしくお願いいたします。

 見回してみますと、民主党さんの席にお一人しか座っておられないのがちょっと寂しいなと思うところでございます。まあいろいろありましたが、お忙しいんでしょう。

 それはともかくとして、きょうはNHK予算について、NHKの約束評価ということをされている、このことについて御質問させていただきたいと思っております。

 この活動は平成十七年に始まりまして、四年目の終盤というところになっています。大変地道な活動なんですけれども、私は、とてもいい、すばらしいことだと高く評価をしているんです。というのは、公共放送ですから民放と違って、視聴率をとるんだとか、広告の売り上げを上げるんだとか、そういうようなことを目指して放送局を運営されると困るわけでありまして、ややもすると、目標がなくなってしまいますと、悪いことが起きなければいいんだとかいう後ろ向きな、役所的と言うと総務省さんに怒られるかもしれませんが、そういう発想になってしまうし、なお悪くなれば、不祥事が起こっても隠ぺいすればいいんだとか、そういうことになってしまう危険があります。これが始まったころにはそういうこともたくさんあったわけでございます。

 そうならないために始められたんだと思います。要するに、自分で、公共放送はどうあるべきかということを考えて、それを約束という形で示し、客観的で、外部からの批判にもたえるような形での評価を行って、それを公にする、そしてさらにそれを経営に生かしていくという、いわゆるPDCAのサイクルを担保する大変重要な取り組みでございます。

 私も、平成十八年、十九年、同じときに質問をして、取り上げさせていただいたわけでございますけれども、四年間、まだ今年度の分の報告は出ておりませんから、三年分の報告書を拝見させていただきました。大変充実をしている、中身の濃いものでございます。以前、私も調査報告書を書くのが仕事でありました。その目から見ましても、とても手間暇をかけたすばらしい仕事だなと思って感心をしておる次第でございまして、これは、評価委員の方初めかかわった方に、高い評価をしている人がいたとぜひお伝えをいただければと思うんですが、本当にいいことだと思っています。

 そこで、小丸委員長、福地会長それぞれに、これまでの約束評価の取り組みについて、御所感を伺いたいと思います。

福地参考人 昨年の一月二十五日に前橋本会長から会長職を譲り受けましたときに、橋本会長から、約束評価委員会はどうしますかということがありまして、当時は二年たっておりまして、私はぜひ継続をしていきたいということで取り組んでまいりました。

 御承知のとおり、二十年まででございます。したがって、ことしの三月までの約束評価を、六月に活動報告を、それで一応三カ年の、ワンラウンドの行動、活動が終わるわけですが、今までとこれからと違いますのは、今までは約束評価を通じて視聴者の皆様にNHKの行動をお約束していた。二十一年度からは、新しい九方針から成る経営計画ができました。この進捗状況を、四半期ごとに経営委員会を通じて情報を開示していきますが、これがお客様との約束にかわってくるということであって、私自身も、これまでの約束評価というものを非常に重要視しておりますし、これからもこの心を形を変えて生かしていきたい、そういうふうに思っております。

小丸参考人 NHK約束評価につきましては、これまで、経営委員会といたしましても、直接約束評価委員の皆様と、いろいろと報告を伺うとともに意見交換を行ってまいりました。

 NHKの活動が視聴者に対していかなる成果を上げられるかといったアウトカムの視点に立った評価は、非常に有意義なものであり、改革のための重要な指標が示されているものと認識をしております。経営委員会としても、この評価を真摯に受けとめて、これからの業務に対してしっかりと監督をしていきたいところでございます。

 また、経営委員会では、毎年度の執行部の目標管理と業績評価を行っており、業績評価を行う際に約束評価の結果を反映させていただいているところでございます。

 以上でございます。

橋本委員 ありがとうございました。

 既に今後ということでお話もいただいた、まず、これまでについて高く評価をされている、あるいは真摯に受けとめようとされているというお話があり、そして、これからについて、三カ年の計画の方で九つの方針ということを示されて、それを約束という形でこれまでやっていたものにかえて取り組んでいくのだというお話が福地会長からございました。

 重ねて、確認でお伺いをしたいのですけれども、これまで何年度の約束、かん年度の約束として出していたものが、三カ年の経営計画、それからことしの事業計画において九つの方針として示されているわけですが、それがこれまでの約束にかわるものとしてとらえておられる。同時に、それは、これまで同様にそれぞれの目標がきちんと達成されたかどうかを、これまでの約束評価だったら外部のアンケートですとかヒアリングですとかいろいろな方法でチェックをされているわけですけれども、同様に評価をするようなお考えでこれからも取り扱っていかれるおつもりか、教えてください。

福地参考人 二十一年度以降は、これまでの約束評価にかえまして、視聴者視点によるNHK評価委員会というものを設置したいというふうにまず考えております。

 この委員会の目的は二つありまして、一つは、NHKの事業運営は視聴者の期待にこたえているか、NHKはその役割を果たしているかなど、視聴者意向の定量的、定性的分析などを踏まえながら、成果を重視して評価することであります。それから、アウトカム、成果の指標としては、平成十九年度からNHK全体の約束にも掲げております信頼性、必要性、社会貢献、効率性・効果性などを考えております。

 二つ目は、NHKの現状分析にとどまらず、メディア環境、時代の変化を見据えながら、公共メディアとしてのNHKの価値向上のための提言を行うことであります。

 この視聴者視点によるNHKの評価委員会、評価ということですが、我々執行部の執行状況の評価は経営委員会がやります。しかし、視聴者視点によるNHKの評価委員会というのは会長の諮問機関として私が設置をいたします。私ども、経営委員会というのは社内の人間でございますが、社外の第三者、視聴者の意見としてのものを総合的に取り入れて執行に取り組んでいきたいという視点から設置したものでございます。

橋本委員 位置づけについてお話があったわけでありますけれども、今後についても、要するに、そういうこれまでやってきた第三者的な評価というものをもって、事業計画に書いてある九つの方針、これらをチェックしていかれるということでいいですね。

 では、うなずいていただきましたので、そういうことで受けとめさせていただきます。

 ということは、これまで事業計画、経営計画というものと約束評価というもの、連動していなかったわけじゃないと思いますが、別々にサイクルが動いてきたのを、ここで一つにわかりやすくすっきりとまとめたということで、進化を遂げたというふうに理解をさせていただく、これは大変すばらしいことだと思います。実は、そういうことをしたらどうですかという提言をしようと思って質問を用意したら、今度からそうしますということだったので、大変私としてもよかったなと思っているんですけれども、ぜひ今後とも活用いただきたいと思う。

 同時に、ではどういう目標を立てるのか、どういう方針をつくるのか、それは経営者の方の判断ということになってまいります。

 改めて、平成二十年度の、今の約束というものと、事業計画及び経営計画に書いてある九つの方針、多少の移動がございます。それは、経営者の判断ということで責任を負っておられるわけですけれども、なぜそういう移動をされたのかという説明はされるべきかと思うわけです。

 ですから、ここでまとめてお伺いをしたいのですが、まず、平成二十年度の約束にあって来年度以降にないもの、それは、次代を担う若い世代に親しまれるNHKを目指すという項目。それから今度は、経営計画の方で新しく追加されたものが三項目、日本の課題、地球規模の課題に向き合う、方針の四、地域を元気にするための拠点となる、方針九、環境経営云々。これらについて、どのような考えで外され、あるいは追加をされたのか、簡潔で構いませんので教えてください。

福地参考人 三カ年の経営計画は、すべては視聴者の皆様にとってということを原点といたしまして、経営二目標、接触者率八〇%でありますとか、受信料七八%、三年で七五%、そういった経営二目標と経営九方針を掲げております。さっき申し上げたように、これをすべて視聴者の皆様への約束というふうに位置づけております。

 その約束を実現するために、本部の各部局と全国の放送局、これが平成二十一年度に重点的に取り組む目標を明確に掲げまして、PDCAのサイクルを回してまいります。

 若い世代に親しまれるNHKを目指すことは、引き続き大変重要なことと思っています。約束三の、若い世代に親しまれるNHKというのが、実は約束評価にあって今度のはございませんが、大変重要な課題だと思っております。

 ただ、経営計画の方針二で、若者の視聴機会をふやすため若い世代に向けたコンテンツを積極的に開発すること、あるいは、放送評価調査における評価の改善を目指して、特に親しみを五〇%以上に向上させる、こういったことを目標として掲げております。また、二十一年度の番組の編成計画でも、総合テレビにおきまして、深夜の時間帯に若い世代に向けた新番組を編成し、若い世代から共感を得る番組を充実させる、教育テレビでは、インターネットと連動して若者たちが声を発信できるような番組を新設するなど、若者向け番組ゾーンを拡充いたします。衛星放送におきましても、大学生に向けた国際情報番組やアニメ番組などを新設いたします。

 こうしたコンテンツの開発でございますとか制作に当たりましては、視聴者視点を踏まえまして、PDCAのサイクルを強化して、視聴者の声を的確に反映してまいりたい、かように思っております。(橋本委員「追加されたものについては」と呼ぶ)

 失礼いたしました。御質問のありましたこの方針二では、日本の課題、地球規模の課題に向かって正面から向き合いますといたしまして、報道、ジャーナリズムの充実強化、高品質でインパクトのあるコンテンツの提供、幅広い視聴者に向けての公共放送ならではの番組を届けることなどを挙げております。

 方針二の目標といたしましては、平成十九年度の約束評価におきまして期待度九四%、実現度八五%でございました緊急災害報道への期待度、実現度を高い水準で維持すること、あるいは、放送評価調査における五つの指標、信頼、満足、親しみ、独自性、社会貢献の評価の改善を目指すことということにいたしております。

橋本委員 残りの方針は、あと四、九もあるんですけれども、済みません、時間の限りもございますので、これからこういうことを大事にされていきたいんだというふうにおっしゃるだろうと思うので、省略ということにさせていただきます。

 いずれにしても、以上については、要するに、目標を掲げてそれをきちんと実行に移してチェックをするということであります。それがきちんと回るように改善をされていくということでありますけれども、では、そこでかぎになっているのが、この活動自体がどのぐらい皆さんに認識をされているのかということだと思うわけです。

 少し前になりますけれども、例えば平成十八年度の約束評価の報告書の中で、職員の方の約束の認知状況が平成十七年度から十八年度にかけて落ちているというようなこともございます。ただし、これはもう二年ぐらい前の話ですから、現時点ではどうなっているかちょっとわかりませんけれども、いずれにしても、そういう状況だと、経営だとか現場の活動に生かされていかなければ意味がないわけで、そのためには当然認識してもらわなければいけない。

 それから、今のNHKが持っている大きな課題、番組に対しては、もちろんいろいろ評価はございますけれども、一定の品質はやはりあるんだろうと思うわけですが、不祥事なども過去あったということで、経営に対する信頼というものが大きく問われている状況にあると思う中で、こういう取り組みをしているということ自体、私はもっとPRをしてアピールするべきことだと思うんです。

 そこで、今後、新たな形に生まれ変わるこのPDCAのサイクルについて、どのようにPRですとかアピールをNHKの社内外にしていくのか、お聞かせください。

福地参考人 約束評価は実施後四年を迎えるわけですが、御承知のとおり、余り知られておりません。

 これまで、約束の公表につきましては、毎月定例の記者会見がございますが、その記者会見では、約束の評価報告書の公表につきまして記者ブリーフィングをやりましたり、経営広報番組、「三つのたまご」なんかがそうでございますが、ああいった番組での紹介でありますとか、NHKオンラインでの全文公開とか、あるいは、委員を初め国民の代表であります国会議員の先生方全員に配付をする、また、今年度は、地域放送局で開催されました視聴者会議の場でも担当者が概要を説明するなど、さまざまな周知活動は行ってまいりました。しかし、まだまだ不十分でございます。

 新たに設ける視聴者視点によるNHK評価委員会の活動につきましては、さらに認知度を高めるために、あまねく広報するだけでなくて、特に関心の高い層に積極的に働きかけてアピールしていく等、いろいろな工夫は凝らしていきたい。視聴者の視点に立ったNHKの評価委員会でございますから、そうじゃないと意味がないというふうに考えております。

 以上でございます。

橋本委員 ぜひ、これからもしっかりPRも含めて取り組んでいただきたいと思いますし、そして、それが最終的にはよい番組づくりになり、皆さんから信頼を得られて、公共放送の目的を果たすということにつながることが大事なことですから、引き続き、経営委員長、会長それぞれに、この評価のプロセスというものを重く受けとめていただきまして、今後取り組んでいただけるようにお願いを申し上げます。

 以上で終わります。

赤松委員長 次に、平口洋君。

平口委員 自由民主党の平口洋でございます。

 きょうは、日本放送協会、NHKの関係の質問をさせていただきます。感謝をいたしております。

 NHKというと、もう日本人では知らない者がいない。歴史も、最初に放送されたのがラジオですけれども、大正十四年に最初のラジオ放送が始まって、それから、昭和二十五年に放送法の制定とともに今の特殊法人としての業容を整えられたということでございまして、その歴史たるや八十四年、八十五年ということであります。途中、第二次世界大戦はあったんですけれども、我々日本人の歴史、日本の歴史とともに歩んでこられ、また発展してこられたというふうに認識しております。

 いろいろなすばらしい放送、報道、あるいは番組を提供していただきましたし、昨日も、私も七時のニュースを見たんですけれども、アメリカ合衆国からのワールド・ベースボール・クラシックのニュースが、非常に的確に、また映像も鮮明で、すばらしい番組だったと思います。本当にここまで来られるのにいろいろな方々の御努力があったと思いますので、それをまず感謝申し上げ、また敬意を表したい、このように思います。

 ただ、最初の秋葉委員の質問、指摘にもありましたように、ここ五、六年のNHKに関するいろいろな不祥事というのはちょっと看過できない面があるかなというふうに思います。去年も出ましたし、またかというふうな感じを持ったのは私一人ではないというふうに思います。

 いろいろと工夫をされたということで、冒頭、会長の方からNHK側の取り組みについてはお伺いをしましたので、もう会長はようございますので、総務大臣にお伺いをしたいんですが、業務報告書の意見にも触れておられますけれども、このコンプライアンスの維持というんですか、NHKのこの不祥事というものに対して、それが結果的には受信料の収入が大幅にダウンするというふうな事態も招いておりますが、ここらを踏まえて総務大臣の御所見をまずお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 郵政の問題のときにしばしば申し上げましたけれども、例えば、日本の歴史の中で郵政というものが築き上げてきた国民の信頼、あるいはそこには文明と言っていいようなものがあったのではないかということをよく申し上げてきたんですが、それと同じように、やはりNHKは特別の信頼というものを得てきているんだ、それは日本で唯一の公共放送としての信頼なんだろう、こう思うわけであります。

 だからこそ、そういう中で不祥事が続発をするというようなことは大変重大な問題でございまして、今後のコンプライアンスの確立にどう取り組むかということがNHKにとって最大の課題だろうと思いますし、今なお職員による不祥事が時々起きているということは、まことに残念なことであって、許してはならないことなんだろう、こう考えております。

 福地会長が述べられておりますように、NHKにおいては、これまで以上に信頼回復に向けて徹底して取り組もうということでございますので、ぜひとも、先ほども御答弁申し上げましたが、全職員の高い倫理意識の確立に努めていただきたいものと期待をいたしております。

平口委員 公共放送は国民との間の信頼関係のもとで成り立つというふうなお話でございます。そのような観点からの総務大臣の御意見をぜひともNHKの方も尊重をしていただきたい、このように思います。

 それとの関連でございますが、放送法の第五十四条。

 私もしょっちゅう放送法を読んでいるわけじゃないんですけれども、改めて放送法全体を見てみました。五十四条には、NHKの役員については職務に関して賄賂を収受したときは三年以内の懲役というふうな極めて厳しい罰則があるんですけれども、これは公務員全般にこういったような規定がありまして、贈収賄の規定だけじゃなくて、いろいろな公務員独自の規定がある。例えば、国家公務員であれば、国家公務員法の中で、九十九条で信用失墜行為の禁止、あるいは百条は守秘義務、百一条は職務専念義務、こういったようなことがうたわれていて、公務員全体の資質をきちっと確保するようにできているんですけれども、この役員だけ贈収賄の規定が適用されるということであれば、逆に言うと、職員の方はいいのかというふうな議論もなくはないと思います。

 この辺について総務省の方のお考えを聞きたいと思います。

山川政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども公務員につきましては、刑法上収賄罪が規定されております。NHKの役員につきましても、その高い公共性にかんがみまして、その職務の公正性あるいは一般社会からの信頼を確保する観点から、同様の罰則が規定されております。

 この規定を、先生御指摘のように、役員のみならず一般の職員にまで拡大することにつきましては、刑事罰の適用対象を拡大するということにもなりますので、極めて慎重な検討が必要と考えております。

 なお、NHKにおきましては、職員就業規則におきまして、例えば業務に関して他人の贈与を受ける場合には上司の許可が必要ということになっておりまして、これに違反した場合には、懲戒処分の対象となっていると伺っております。

平口委員 今の放送法の贈収賄の規定については、例えて言っただけのことでございまして、必ずしもいろいろな服務を法律で決めればいいということでもないと思われますけれども、やはり高いモラルが要求される職場だと思いますので、その辺を心得て、今後とも御指導をいただきたいと経営陣の方にはよくお願いをしたい、このように思います。

 次に、受信料のことについてお伺いをいたします。

 NHKの受信料の問題は、過去こういう場でもいろいろと取り上げてこられた経緯があるんですけれども、放送法の三十二条一項で、受信機、つまりラジオやテレビですけれども、それを購入して設置した者は、強制的にNHK、日本放送協会の方と契約を結んだことになるというふうにうたわれておりまして、第二項では、免除の合理的な理由がある者以外は、受信料の支払いの義務を免除できないというふうなことがうたわれているわけであります。半ば強制的に行うことになっておりますが、予算的にもこの受信料で九五%以上を賄うことになっております。

 こういったような受信料に支えられているという現状を見れば、視聴者や国民の期待にこたえる放送内容が求められるというふうに思いますが、この果たすべき役割というものをどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。

福地参考人 NHKは、これまでも税金で支えられるわけでもない、企業からのスポンサーによる広告収入で支えられるわけでもない、あまねく視聴者が平等に負担される受信料によって支えられている。そういった公共放送としての立場を踏まえまして、あまねく全国で放送が受信できる、これが最大のミッションだと思います、受信できるように最大の努力をしてまいりました。

 そして一方、内容といたしましては、放送の自主自律を貫く、そして社会の健全な発展と人々の生活や文化の向上に放送を通じて寄与する、そういった役割を放送法にのっとり追求してまいりました。

 また、緊急報道によりまして、災害や事件、事故が起きたときに不可欠な情報を迅速かつ的確に伝えること、あるいは教育、教養、報道、娯楽の分野で調和のとれた質の高い番組を放送するということは、公共放送としての大切な役割であると思っております。また、地域文化の向上に貢献する地域放送でありますとか、日本の情報を世界に発信する国際放送、あるいは放送や放送技術の発展に資する調査研究ということは、公共放送ならではの役割と考えております。

 また、デジタル化が進み、放送と通信が融合する時代になりましても、公共放送の基本的な役割は変わらない。むしろこうした時代だからこそ、信頼できる確かな情報でありますとか、あるいはすぐれた品質の番組をいつでも、どこでも、だれにでも、分け隔てなく提供し、希薄になりがちな人と人との連帯感を高めるきずなとなるように努力していくことが重要であると考えております。

 以上でございます。

平口委員 ありがとうございました。

 この受信料ですけれども、平成二十一年度の予算では六千四百九十億円というかなり大きな額でございます。一方で、受信料を免除される方々もいらっしゃるわけでありまして、二十年度末で全額免除の場合は百四十七万件余り、二十一年度末では二百七万件余りということになっております。金額的にも、二十年度末の場合は二百四十六億、二十一年度末は三百五億というふうになっておりまして、急にふえているような数字になっておりますが、このふえた理由についてお答えいただきたいと思います。

大西参考人 お答え申し上げます。

 平成二十一年度の免除対象は、全額免除が二百七万件、半額免除が四十四万件、合計で二百五十一万件を見込んでおります。平成二十年度は、平成二十年十月に障害者の方の免除適用の拡大をしたことなどから、免除対象が大きくふえているということでございます。

 以上でございます。

平口委員 一方で免除しなきゃいけない人もいて、一方では徴収しなきゃいけないという面もあって、なかなか難しい局面だと思いますが、ぜひとも本来納めるべき人にはきちっと納めていただくというふうにしていただきたいと思います。

 そこで、受信料の収納率七一%というふうに実績ではなっておりますが、経営計画では、三年後に七五%、五年後に七八%というふうに上げられるようにはなっておりますけれども、実際にこのようにできるものかどうか、お答えをいただきたいと思います。

大西参考人 お答え申し上げます。

 受信料の公平負担を徹底していくことは、経営の最大の課題であるというふうに認識しております。

 支払い率の向上に向けては、訪問集金の廃止に伴う地域スタッフの業務転換による契約、未収対策を強化していく、未契約者への民事手続の実施、あるいは未収者への支払い督促の拡大、それから事業所割引などを活用した事業所の対策の強化、公的移転情報、住民票の除票のことでありますけれども、これを活用した移動の捕捉、不動産会社あるいは引っ越し会社などの外部委託の運用の強化、それから受信確認メッセージの活用、受信申し出の促進など、多様な施策を展開してまいりたいというふうに考えております。

平口委員 受信料が余り不払いが出ると、やはり視聴者の方で不公平感を持つことになると思いますから、納めなきゃいけない人はきちっと納めていただくというふうに努力をしていただきたいと思います。

 次に、地上アナログテレビ放送、それからデジタルへの移行についてちょっとお伺いしたいんですが、平成十三年七月二十五日の告示で十年後にデジタル化するということを表明されておりまして、これを受けて、総理の施政方針演説なんかでも、国策としてきちっとデジタル化を平成二十三年、二〇一一年七月までに完成させるということになっております。

 十年というと長いようで短いものですから、ちょっと拙速の感があるかなというふうな感を持ちますけれども、完全デジタル化のためにNHKの方としては全体でどのぐらいの予算を見積もられ、現時点ではそれがどのぐらい終了しておって、また残事業はどのぐらいあるのかどうか、そこらについてお伺いしたいと思います。

永井参考人 お答えいたします。

 NHKは、地上デジタル放送への移行のための経費として、これまで、それからこれから、建設費、設備投資ですね、それと事業費、合わせて総額五千億を超える経費を支出するということを予定しております。

 それで、今までどのぐらい支出をしたのかということでありますが、これまで完全移行に向けて、送信設備、送出設備、それと制作設備もハイビジョン化するというようなことに取り組んでまいりました。二十年度末までの建設費と事業費、合わせて三千三十億を支出するという見込みでおります。

 送信設備で申しますと、全体で七百八十五カ所の送信所を建設してまいりまして、これまでに全世帯でいうと九七%をカバーするということになっております。今後のところが、これが少し数を多くやらなきゃいけないので、残り千四百局ほどまだ建設を進めなきゃいけないということになります。今後のところ、二〇一一年の三年間では、関連経費として合わせて一千八百億ほどさらに支出を予定しているところであります。

平口委員 まだある程度の事業が残っているということで、これを現在の受信料の体系の中でこなすのも結構大変だろうと思いますが、御努力をお願いしたいと思います。

 また、これに関連して地デジの方の問題としては、受信者、視聴者の方も用意をしなくちゃいけないわけで、特に経済的弱者の方々をどうするかとか、あるいは難視聴の地域についてはどういうふうにするかとか、いろいろ難しい問題があろうかと思いますが、ぜひともこの辺をよく克服して、二〇一一年にきちんとNHK側も視聴者側も準備ができるように、NHKの方も総務省の方もお願いしたいと思います。

 最後に、時間が参りましたので、大臣にお伺いしたいんですが、日本放送協会は日本の中でも非常に重要なメディアを担っておられまして、報道の自由というのは表現の自由の中で最も重要な部分でありますし、また、一方で公共放送ということで、受信料もいただいていることですから、ある程度の監督を加えていかなくちゃいけないと思われるんですけれども、この辺を踏まえて、今後の総務大臣の方のお取り組みのお考えをちょっとでも御説明いただければというふうに思います。

鳩山国務大臣 基本的には、放送法に書いてあるとおりにしていきたい。つまり、言論報道機関である放送事業者として、NHKも自主自律が基本だと思います。放送番組編集の自由等の独立性も保障しなければならないわけでございます。

 しかしながら、やはり受信料を財源とする公共放送、しかも、あまねく全国においてよい番組を提供するという高い公共性が求められておりますので、専らそういう観点で公共放送としての自覚を持って社会的責任を果たしてもらいたい、そしてできる限りいい番組をつくってもらいたい、そう願っております。

平口委員 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 きょうは、まず初めに、今回の改正放送法で何点か論点があったわけです、その論点のうちの一つが、ガバナンス、コンプライアンスについてどう考えるのかということがあったわけでございます。先ほどから鳩山大臣もおっしゃっておられるように、NHKの公共放送としての立場というのは非常に重要でございます。しかし、職員の不祥事であるとか、組織の監視が十分でなかったというようなところもあったんだろうと思います。そこで、経営委員会と執行部の関係についてお伺いをさせていただきたいと思うわけでございます。

 この経営委員会というのは、NHKの経営方針、業務の運営に関する重要事項を決定する最高意思決定機関であり、視聴者の代表として執行部の業務について監視、監督する役割である、こういうようなことでございます。

 それで、平たく言うと、これはやはり執行部と経営委員会との間の緊張感が非常に重要なんだろうと思うんです。この緊張感というのはなかなか言葉で言いあらわせなくて、いろいろなところで、組織であればこのガバナンスについて悩んでおるところでございます。

 先ほど聞いておりますと、福地会長はNHKに来られたときに縦軸の組織が強過ぎると感じたというようなことをおっしゃったわけでありますけれども、このような観点で、今回のこの改正放送法の結果、今実施されておるNHK内の組織について、経営委員会と執行部との間の距離感といいますか、これはどのような感覚をお持ちなのかということを大臣と小丸経営委員長にお伺いをいたしたいと思います。

鳩山国務大臣 昨年四月に施行された放送法改正で、経営委員会と執行部の関係について整理された。要するに、経営委員会は経営の意思決定である、執行部の方は業務の執行である、そういう関係が明確になったものと思っております。

 今回の二十一、二十二、二十三年の三年間の経営計画について、私も報道で知ったことがほとんどでございますけれども、さまざまな議論が行われたことは、私は、経営委員会があるべき姿を示した一つだろうというふうに思います。いわゆる癒着とかずぶずぶとかべったりとか一体だという関係は、私は、経営委員会と執行部の正しい関係ではない、こう思っております。

 したがって、今後とも、いわゆる争うとか闘うというのは困るわけで、適度な緊張感のもとでNHKの経営改革の実現、もちろん、地デジの問題もありますし、公共放送としての使命の問題もありますが、それぞれの役割を果たされていく中でそうした目的が達成されていくことを願っております。

小丸参考人 NHKの経営方針その他重要事項を決定するとともに、役員の業務執行の監督を行う権限と役割を持つ経営委員会と、NHKの業務執行という役割を持つ執行部は、公共放送の発展のため、緊張感を持ちつつ互いに連携協力し、それぞれの職責を十全に果たしております。

 平成二十一年度からの三カ年計画の実行に当たっても、経営委員会として、監督に資するため、適宜、重要と思われる項目について執行部から説明を聴取するなどの勉強会を開いております。

 今後は、これに加え、執行部から提出される四半期業務報告などを分析して計画の進捗を確認するなど、経営委員会と執行部が協力しながら計画目標の達成に向けて取り組んでいくことにしております。

谷口(隆)委員 それで、次にお伺いをいたしたいのは、今、経営委員会の中に、先ほど井原委員が来られて答弁されていましたが、監査委員会というのがありますね。この監査委員会というのは業務監査をやられるんだろうと思うんです。それで、外部監査も入っておられるようでございますので、会計監査と業務監査という立場でやっていらっしゃるんだろうと思いますが、経営委員会の内部に監査委員会が設けられているということで、この監査委員会の独立性といいますか、このあたりの問題はないのかどうかということをお伺いいたしたいと思います、小丸委員長に。

小丸参考人 お答えします。

 監査委員は経営委員の中から任命されていますが、組織上は経営委員会と監査委員会は独立したものとなっています。また、それぞれの業務を補佐するために、それぞれの事務局が置かれております。その上で、経営委員会は監査委員会を含めた役員の職務の執行の監督を、監査委員会は経営委員会を含めた役員の職務の執行の監査を行うことになっております。

 実際の業務遂行に当たっても、放送法の趣旨にのっとり、それぞれがみずからの役割をきちんと果たしており、独立性には問題はないと思います。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 組織的に申しますと、経営委員会のメンバーの経営委員の方が監査を担当されているということでございますので、このあたりの運用が非常に重要だと思います。しっかりとそのあたりの区分けといいますか、やっていただければというように思う次第でございます。

 それと、この経営委員会におきましては、昨年の十二月に、三名が任期満了で、国会同意人事で、新たな人選をされたものを出したら、これが否決をされた。それで、その後、出したメンバーが同意されて、三月には着任されたと聞いております。ところが、この二カ月間ほどは欠員のまま経営委員会が運営されておったというようなことを聞いておるわけでありますが、この間のガバナンス機能、欠員状況の中でのガバナンス機能が十分発揮されたのかどうか。これは今後も起こり得る問題でございますので、そのことをお伺いいたしたいと思います。

小丸参考人 三名の方が欠員となっていた間は経営委員九人ではありましたが、経営委員会としての役割に支障が生じないように特に留意をし、平成二十一年度予算、事業計画の議決など、みずからの権限を適正に行使してまいりました。しかし、一方で、常勤の経営委員が皆無になったこと、人数が少なくなったことにより意見の多様性が狭まったことなど、若干の問題はあったのではないかと考えております。

 三月には十二名の体制となりましたので、新年度からの三カ年計画の遂行に向け、さらにガバナンス機能を発揮していきたいと考えております。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 今、若干の問題があったかもわからないということでした。やはり、国会同意人事でございますので、否決されることもその前提に置いておかなければならない。その際にどういうような十分なガバナンス機能を発揮していくのかということは大変重要な問題でございますので、また私どもも考えたいと思いますが、NHKにおかれましても、そのことを考えていただければというように思います。

 それと、従来から私が一つの問題意識として持っておりましたNHKのグループ全体の配当政策というものがございます。NHKの本体があって、それで今現在では、子会社、関係会社、関連公益法人というのが三十二社あるようでございますが、NHKの本体の方が今財政的に大変厳しいわけですね、デジタル化にも対応していかなければなりませんから。周りの子会社のグループのところを見せていただきますと、かなり剰余金がありまして、いいところばかりなんですね。ですから、NHK本体に対する配当をもっとしてもらったらどうかということを従来から申し上げております。

 それで、最近の状況を見ますと、利益剰余金、これは一般的には配当可能なところでありますけれども、十八年度で七百四十四億円、十九年度が七百六十七億円、こういうような状況でございます。それで、二十年度の六月には、過去最大規模でありますけれども、配当されていらっしゃるわけです。最近、NHKも大変精力的にこのことを認識していただきまして、七十三億円の配当を実施したと。このうち、NHK本体には五十三億円の配当が行われたと聞いております。これは私は大変評価をするところでございます。

 先ほど申し上げましたように、二〇一一年の七月二十四日の完全デジタル化を目指しておりますから、そのためにも、NHKにも頑張っていただかなければなりませんので、そういうことは大変評価するところでありますが、一方で、NHK本体というか、当局は子会社の配当可能原資というのは大体四十億円程度だと見ていらっしゃるようでございますが、この四十億円という根拠が明らかではありませんので、会長の方からこのことについて教えていただきたいと思います。

福地参考人 平成二十年度に総額七十三億円を配当いたしました残りの子会社の利益剰余金は、六百八十九億円でございます。御承知のように、利益剰余金には、テキストや書籍などの在庫、あるいは中継車などの資材、機材、それから入居しておりますビルなどの資産、日常の支払いに必要な現金など、事業運営をしていく上で必要不可欠な資本が含まれております。これを差し引いた、配当や新規事業への投資に充てることのできる処分可能な利益剰余金としては、およそ八十億円というふうに見込んでおります。

 それで、処分可能な八十億円のうち、今後のグループ再編あるいは統合のための会社の株式の買い取りでございますとか、あるいはデジタル化などの新規事業に必要な資金として約四十億円程度は今必要であるというふうに見込んでおります。

 したがって、配当に充てられる原資としては差し引き四十億円程度というふうに試算をいたしております。

谷口(隆)委員 それでは、十八年度と十九年度を私がいただいた資料で比較してみますと、十九年に、利益剰余金の中で事業維持積立金という、これは目的積立金なんでしょうね、こういう積立金を積んでいらっしゃるわけです。子会社二十社トータルで五百十六億円事業維持積立金が計上された結果、利益剰余金が百九十三億円ということになって、前年の七百億円余りから比べると五百億円ほど、要するに配当する原資を圧縮したみたいな形に見えるわけですね。このことについてはどうですか。

福地参考人 NHKの子会社は、いずれもそうでございますけれども、一般的に資本金が小さくて、繰越利益剰余金のすべてを配当に充てると、実際に事業が立ち行かなくなることも想定されます。このために、安定的な事業運営をしていく上で必要不可欠な固定資産でありますとか運転資金等を切り出しまして、資本金に準ずる位置づけとして事業維持積立金を設定いたしまして、これによりまして配当や新規事業に投資可能な利益剰余金とは区分をいたしております。

 この事業維持積立金は、厳密には目的を持った積立金とは性格を異にしておりますが、会社を維持運営していく上で必要不可欠な内部留保というふうに位置づけております。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 私が見たところによると、もう少し配当に回せるところがあるんだろうと思うんですね。そこを一度検討していただきまして、本体も大変要るようなときでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それで、先ほどから出ております、二〇一一年七月二十四日完全デジタル化を目指して、政府も、またNHKも民放連も関係団体も非常に精力的に進めておるところでございます。それでNHKさんにお伺いをいたしたいわけでありますが、NHKも国の取り組みに協力するとともに、デジタル化改修を行う自主共聴に対して、安定的、継続的な設備整備、維持に必要な経費の一部を助成する制度を設けたと。この自主共聴というのは、地域住民が自主的に設置した共同受信施設のことですね。本来、自主共聴のデジタル化対応までNHKが助成する必要がないという意見もある。しかし一方で、放送法第九条であまねく全国で受信ができるようにと、あまねく規定といいますが、こういう規定もあってNHKの助成を期待しているところもある。

 こういう状況の中で、今回、二十一年度の予算案は赤字になりましたね。この赤字になった大きな原因は、これはやはりデジタル化対応ということが大きな原因だ、こういうことでありますが、NHKに対して、中継局整備、また共同受診施設のデジタル化対応、条件不利地域に対する取り組み、このようなことについてお伺いをいたしたいと思います。

福地参考人 御指摘のとおり、NHKは、公共放送としてあまねく義務を果たすために、デジタル中継局の整備でございますとか、あるいはNHK共聴のデジタル改修を今進めております。さらに、自主共聴につきましても、デジタル放送の普及を効率的かつ短期的に推進するために助成を行うことにしたものでございます。

 今後も、辺地などにおいて、地元の自治体や民放と提携しながら、連携しながら、八月までに全国地上デジタル放送推進協議会で難視聴解消に向けた今後の対処方針であります地デジ難視地区対策計画を策定することになっておりまして、NHKはこの方針にのっとって対応していきたいと考えております。

谷口(隆)委員 自公の与党においても、何としても二〇一一年七月までにやり遂げなきゃいけないということで、NHKの受信料免除世帯を中心にして、生活困窮者の皆さんにはチューナー、アンテナ等をつけさせていただくという方針を決めたところでございます。

 それで、もう三年を切りましたので、いよいよ、いろいろな実務的な問題も表面的になってきておるわけでございます。NHKも大変御努力をしてやっていただいておるわけでございますが、先ほどの自主共聴施設等々の問題も、助成金を出されるということでございますので、周辺の状況をよく見きわめて頑張っていただければということを申し上げまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

赤松委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。午前中最後ということで、よろしくお願いをしたいと思います。

 まず、NHKにお伺いをいたします。

 本当に今の世の中は、テレビ、こういったものの報道の影響を非常に大きく受けると思います。マスコミの報道が世論をつくり上げていくといった印象を持つ一人でございます。

 そうした中で、民放でしたけれども、報道番組の誤報の問題でトップが引責辞任をするということも起こりました。こういったことも踏まえて、NHK、民放とも放送事業者はいよいよ公平、正確な報道を求められることは論をまたないわけでございますが、NHKにお伺いをいたします、我が国唯一の公共放送事業者として公平、正確な報道を実現するためにどのような取り組みを行われているか、まず御答弁をお願いしたいと思います。

福地参考人 NHKは、迅速で正確、公平、公正な報道を行うことが公共放送としての重大な使命であると認識をいたしております。

 報道人としての研さんでございますけれども、NHKは放送法や番組基準を遵守するとともに、日々の取材、放送の判断の基準となります新放送ガイドラインをNHKの放送に携わる者すべてに配付いたしまして、放送倫理の向上を図っております。そして、このガイドラインを参照しながら、実例を挙げた職員研修を繰り返し行っております。

 若い職員につきましては、地域局で日常的に上司、先輩の指導を受けながらOJTを行っております。こうしたことによってジャーナリズム精神を養い、育てております。また、こういったものは採用時点からも大事でございます。新しい職員を採用するときに、ジャーナリストとしての適格性というものをこれから先極めて重視していきたい、かように考えております。

伊藤(渉)委員 今の風潮は、これも私の印象ですけれども、視聴率というものを意識するとどうしてもエキセントリックな報道になりがちじゃないかな。そういう意味では、決して派手さはなくても正確に事実関係を報道していく、このNHKの公共放送の使命というのを十分自覚していただいて、引き続きの取り組みをお願いしたいと思います。

 今月の初めに、平成二十年度の第二次補正予算が成立をしました。昨年末以来さまざま報道されてきたわけですけれども、定額給付金のことばかりがクローズアップされましたけれども、今ここに来ていろいろ取り上げられている高速道路料金の大幅な引き下げ、あるいは介護報酬の引き上げ、地方自治体による雇用機会の創出、中期的な視点から極めて重要な少子化対策の一環としての妊産婦健診の無料化、このための交付税の措置等々、総額で約二十七兆円規模の大規模な予算措置が行われました。目下の厳しい雇用の状況、景気の状況を打開すべく全力を傾注しているわけですけれども、引き続き、今、平成二十一年度予算においても総額一兆円規模の減税を初め、あらゆる対策を講じて、この国の厳しい景気、経済の状況を改善していこうと取り組んでいるところでございます。

 一方で、こうした情報はなかなか広く国民の皆様の知るところとならず、これもあくまで印象ですけれども、昨年末以来、今回の定額給付金に関する予算関連法案の成立まではまさにこのことばかりがクローズアップされてきたような印象を持ちます。なおかつ、成立するまでは非常に厳しい御意見、成立した後はどちらかというと喜びの声。本当に、それが世論なのかもしれませんけれども、いずれもちょっと偏っているんじゃないかなという印象を私自身は持ちました。

 その根底には、政治家そのものに対する信頼の失墜、こういうことがあろうと思います。ですから、私どもが身を律していくのは当然です。また、行政に対しても、大切な税金の扱いをさまざま決めさせていただいている以上、より一層の信頼を獲得していく努力をしていくことは論をまたないわけです。また、同じように、NHKにおかれても、お客様の受信料によって事業運営を支えていただいているわけですから、同様な姿勢で業務に取り組んでいただく、これももちろんだと思います。

 その上で、放送法第三条の二第一項には「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」と、非常にすばらしい条文がございます。ぜひともこの法律の趣旨を体現していくことを強くNHKに申し上げまして、その御決意をお伺いしたいと思います。

福地参考人 NHKは、放送法の規定を踏まえまして国内番組基準を定めております。この中で、御指摘のとおり「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う。」ことといたしております。さらに、この番組基準をもとにいたしました日々の放送の指針でありますNHK新放送ガイドラインでも、意見が対立する問題を扱う場合、できるだけ多角的に論点を明らかにし、さまざまな主張を紹介することによって視聴者に判断の材料を提供する姿勢を明らかにいたしております。

 NHKは、今後とも、こうした番組基準やガイドラインに沿いまして、番組として、放送全体として、公平性を確保することに努めていく所存でございます。

伊藤(渉)委員 ぜひとも今御答弁にありましたとおりの報道を心がけていただきたいと思います。

 次に、地デジの完全移行について、これまでも再三御質問させていただいておりますけれども、また改めてお伺いをいたします。

 これまで出ているとおり、二〇一一年の七月二十四日の完全移行に向けて今取り組んでいるわけでございます。いよいよ残すところあと二年半というところに来て、乗り越えていかなければならない課題も明確になってきておりますし、ここからが完全移行に向けていろいろな意味で一番きつい時期になってくるだろうと思います。

 そういう中にあって、地デジにする一般の利用者の方のメリット、これがなかなか実はわかりづらかったりするところがありまして、完全移行に向けては、本当に利用される方にとって地デジの移行はこういうメリットがあるということをよく知っていただくことが重要だと思います。そういう意味で、放送事業者から見て、視聴者にとっての地デジのメリットは何か、将来の展望も含めてNHKの方から御答弁をお願いしたいと思います。

永井参考人 お答えいたします。

 地上デジタルテレビ放送のメリット、国民・視聴者にもたらすものは何かということでございますが、大きく分けて、国民・視聴者にとって直接的な恩恵をこうむるのは、やはり高画質、そして付加価値の高いサービスが提供できるということだと思います。また、間接的に言えば、電波の有効利用ができて、ほかの目的にさらに利用できる。それと、産業の活性化、経済効果などがあると思います。

 もう少し詳しく申し上げますと、まず第一番目の高画質で付加価値の高いサービスというところでいえば、デジタル化によってハイビジョンという高画質のものが見られる、また、音声でいえば五・一サラウンドというような臨場感にあふれた音声のサービスが実現できます。また、ニュースや天気予報などという必要な情報も、文字または写真、画面等で見られるデータ放送というものも提供できます。また、番組表をテレビでごらんになれる、またはそれを利用して録画がすぐできるというような便利な機能もあるというふうに考えております。

 それと、何といっても、携帯、移動体向けのワンセグサービス、これは地上デジタルになって初めてできました。今や、ワンセグの受信機は、出荷台数が昨年末で五千万台を超えているといいます。そういうようなサービスができるようになった。

 電波の有効利用のところでいえば、地上テレビをデジタル化することによって、今まで使っていたチャンネル数を少ないチャンネルで放送できるということになりますので、二〇一一年以降は、あいたところをほかの目的、例えば新たなサービスであるとか、安心、安全のための警察であるとか消防への無線の方へ予定されているようですが、そういうメリットがあるというふうに考えております。

 世界的にもデジタルが潮流になっております。もう既に四十カ国を超える。世界でデジタル化を導入しているというのが現状であります。家電といった産業を初めとして、さまざまな産業を活性化させる契機にもなるというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 今答弁の中でありました、電波の有効利用ということも非常に重要だと思います。これから高齢化はますます進んでいく中で、この有効利用の中で医療あるいは介護といった分野にも資するところがあれば、ぜひ取り組んでいくべきだというふうに申し上げておきたいと思います。

 この地デジの完全移行の中で、電波をあまねく届けるために、特に都市部では、これまで大臣にも再三御質問させていただいております受信障害対策施設、あるいは集合住宅の共聴施設の改善、こういうことに取り組んでいかなければなりません。ちなみに、受信障害対策施設は約五万施設で六百五十万世帯、集合住宅の共聴施設が約五十二万施設で七百七十万世帯、全世帯約四千九百六十万の三割に相当をする。この方々にどう地デジをお届けしていくか、非常に重要な問題だと思います。

 その中で、これも再三大臣にも申し上げてきたとおり、基本的なスタンスということで、あくまで民民の問題だというふうに総務省はおっしゃっておられるわけですけれども、ここも毎回同じことを申し上げて大変恐縮ですけれども、完全移行をするには、民民の問題だなどと言っていては、とてもおぼつかないんじゃないかということを私は申し上げてきました。

 そうしたこともあって、平成二十一年度の新予算には、まだ成立はしておりませんけれども、国費としてこの受信障害対策施設の調査、改修費約五十四億円を盛り込んでいただいております。一層総務省はこの問題について前のめりになって取り組んでいただきたいと思いますので、改めて大臣の御決意を伺いたいと思います。

 あわせて、これはNHKにお伺いしたいんですけれども、この調査という問題。実は、受信障害対策施設もそうですし、共聴施設もそうなんですけれども、実際に一戸一戸全部調査をすると非常に大変な問題で、これも以前から申し上げているとおり、まず全国的にある程度の目安を総務省として皆さんに御提示していくべきだ。その目安をどうやってつくるのかということが実は問題になってきております。この具体的な全国的な受信状況を把握する方法の一つとして技術的に御提案があれば、この点はNHKの方から御答弁をいただきたいと思います。

 まず大臣の方からよろしくお願いいたします。

鳩山国務大臣 伊藤先生再三御指摘いただいている問題ですが、例えば辺地で共聴施設をつくらなければならない、ビル陰等の受信障害が起きる、こういうところできちんと共聴施設をつくらなければならない。また、集合住宅、大変な数があるわけで、そこにアンテナもかえなければならない場合も多いんだろう、こう思うわけであります。

 これは各事案ごとに異なっておりますから、民対民でいろいろ合意をしていただければありがたいとは思っております。しかしながら、これは国策でございますから、アナログ停波、デジタル化というのは国で決めた一種の国策だと思っておりますから、精いっぱいの努力を政府も行い、NHKにも協力をいただいて、民放にも協力してもらって、オール・ジャパンで、再来年の七月二十四日を迎えなければならない、こう思うわけでございます。

 今回、予算の中で、デジサポを、これは五十カ所以上にしたわけですが、デジサポで頑張ってもらう、そのためのお金を八十億円組んでおります。先生御指摘あったように、いわゆるビル陰等の受信障害対策共聴施設の調査、改修は五十四億円。

 こういうことで精いっぱいやっておりますが、問題は、五万あるというビル陰というか、いわゆる受信障害対策共聴施設が、これは基本的に全部把握するにはどうしたらいいかということを真剣に考えなくちゃいけない、こういうふうに考えております。

永井参考人 地上デジタル放送を受けられるか受けられないかというのを簡便にはかる方法はないのかということであります。

 確かに、今まで、これまでやっている方法でいいますと、車をとめて、アンテナを上げて、そこで本当に受けられるかどうかというのを測定するということをやっていましたので、たくさんの箇所をとろうとすると、大変な労力、時間がかかったというところであります。

 そこで、我々、どうにか簡単にできる方法はないかということを今検討しておりまして、実はちょっと試してみたんですが、車に高性能のチューナーと複数のアンテナを載せまして道路をだあっと走らせて、自動的に、詳しいデータではないんですが、割合に簡便に、どこで受けられるか受けられないかというのを明確にしようというようなものを開発しております。このシステムを活用することによって、御指摘のビル陰などの受信障害対策共聴の地域を初めとして、必要な場所において、大まかに受信ができるかどうかというのを測定するということが可能になるというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今のような技術開発も非常に大きい話で、そういった取り組みによって、大まかな受信状況が把握できるだけでも、個別の調査もその進捗がはるかに早くなると思いますので、そういったものの利活用も考えながら進めていただきたいと思います。

 時間の関係で最後にさせていただきたいと思いますけれども、先ほど大臣からもありました、きょうお伺いしようと思っておりましたけれども、現場での最前線の基地、これは支援センター、デジサポということになりますので、今御答弁をいただいたとおり、この強化にもぜひ全力で取り組んでいただきたいと思います。

 特に、これは地元愛知の話ですけれども、東京も同じようなことが発生をする可能性があるんじゃないかと私は思っておりますけれども、電波の送信点が変わります。愛知の場合は、名古屋市内のテレビ塔から瀬戸市内の瀬戸タワーへと移動をします。これは東京都も、私は詳しく場所を承知していないんですが、タワーの位置が変わると承知をしています。その結果、今までとは異なる新たな受信障害が発生をしてしまう可能性があります。

 これも再三申し上げているので改めて詳しい御説明は避けますけれども、今まではある方向から電波が流れていて、そこに建物が建ったので、それが原因者になってビル陰による受信障害が出ていますが、今度は電波を送ってくる送信点が変わって、同じ建物に違う方向から電波が当たるので、違う方向に受信障害が出てしまう可能性があります。

 これは、先ほど地デジ自体が国策というふうに大臣からおっしゃっていただきました。まさに、この電波の送信点が変わって障害が出てしまうという話は、紛れもなく国策として発生する、地デジ化が原因となって発生する障害でございますので、その解決にはより一層力を入れていかなければならないと私は思っております。

 この点、最後に改めて大臣に現状の御認識と今後の取り組みをお伺いして、質問を終わりたいと思います。

鳩山国務大臣 私は、伊藤先生と違ってこういう方面の知識が豊富なわけではありませんので、なぜアナログを停波してデジタルに移すときに名古屋市内のテレビ塔からはデジタル波を出せないのか、なぜ瀬戸タワーが必要なのかと聞きましたら、それは無理なんですと。デジタル化する以上は、今の名古屋のテレビ塔からデジタル波を出して全部がうまく見られるというふうにはできない、だから瀬戸タワーが必要だと。今度、スカイツリーというのもできるんだろうと思いますが、スカイツリーの場合はどうなのかと言ったら、非常に高いから、愛知県で起きる問題よりは比較的問題が少ないのではないかと。高いところから……。何となくわかるような気がする。

 この先生御指摘の問題は非常に深刻で、だから、名古屋のタワーではだめだから瀬戸タワーに変わった。そうすると、当然、ビル陰の陰が、太陽がぐるっと回れば影が変わるように、陰が変わる。新しくできた陰でまた受信障害をどうやって防ぐかということは、民対民の問題だから国は知らぬよとは言えない。国策でやる結果、新たな受信障害が生まれるわけでございますから、先ほどもいろいろ申し上げましたが、NHKにも協力してもらうか、いろいろあろうと思いますが、とにかく総務省としては全力でやらなければならない、お金もかかることと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

赤松委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十一分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょう、NHK予算についての質疑に先立って、小丸経営委員長に、新しい委員長への御就任を心からお祝い申し上げ、NHKの公共放送としての役割をしっかりと果たすべく経営委員会を引っ張っていただきますように心からお願いを申し上げ、冒頭、経営委員長就任に当たっての抱負を委員長から伺いたいと思います。

小丸参考人 昨年十二月二十二日に委員長に選任され、はや三カ月が過ぎました。平成十六年六月に経営委員に任命され四年半の経験を生かし、NHKに貢献できればと思いお引き受けをいたしましたが、今さらながら、その重責を痛感いたしております。

 放送をめぐる環境が大きく変化する中、公正公平であることや放送の自主自律、不偏不党を堅持しつつ、NHKだからできる質の高い、信頼できる放送をあまねく日本全国に提供するという、公共放送としてのNHKの社会的使命を引き続き果たしていけるように、NHKの改革と発展に微力ながら尽くしていきたいと考えております。

 また、改革の力を緩めることなく、ガバナンスの強化、そしてコンプライアンスの徹底により視聴者の皆様の信頼を回復することが非常に重要だと思っております。

 加えて、来月から、NHK三カ年計画の初年度を迎えるわけですが、私たち経営委員会としても、監督責任という重要な役割を担っております。経営計画の達成に向けて、NHK執行部とともに一丸となって取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

原口委員 小丸委員長は民間の御出身で、まさにお客様本位という経営を続けてこられた方でございます。視聴者、国民本位の公共放送樹立に向けた御努力を改めてお願い申し上げたいと思います。

 さて、完全デジタル化まで二年余りとなりました。先ほども議論がありましたが、地デジの世帯普及率はまだ四九%台。大臣、これは、一遍に古いブラウン管型のテレビが出てくると、これだけでも相当ないわゆる環境に対する負荷が生まれます。また、今はできるだけ買い控えて、後になれば買おう、こういったこともあります。経済対策、景気面から見ても、さまざまなデジタル受像機あるいはデジタルテレビを早急に普及させていくということはとても大事です。私たちは、民主党の中で新たなデジタル化に向けた方策を今練って、きのうの部門会議で中間報告を了承したところであります。

 そこで、会長、それから大臣に伺いますが、地デジの普及率が今五〇パー以下ということで、ある試算によると、完全デジタル化直前に九五ぐらいまでいっているとすると、極端な言い方ですけれども、あと五%はもう公費で全部負担して普及させた方が早いという試算もあります。また、九五にもしいっていないとすると、そこではデジタル化を一時中断して、アメリカのように延ばすという選択肢もあります。しかし、延ばしてしまえば、これは放送事業者に対して大変大きな負荷を与えて、結果、サービスの低下を招くわけで、その辺をどのように考えるか、党派を超えて議論をするときに来ているんじゃないかと思うんですが、鳩山大臣の基本的な認識を伺います。

鳩山国務大臣 先ほども申し上げておりましたように、これは国策としてやっているわけですから、何が何でもなし遂げなければならないわけで、延期するつもりは全くありませんし、再来年七月二十四日というものを定めて、これに向かって全力で、オール・ジャパンで努力をして、NHKにも民放にも協力を仰いで、政府として全力を尽くすということで何とかなし遂げたい、こう思っておりますが、以前に、仮に延期せざるを得ないような事態が起きたらどうすると。ということは、放送局により多くの電波使用料を払わせるわけですから、そういうことは国が責任を持つぐらいの覚悟でなければいかぬということを申し上げたことがございます。

 そういう意味で、放送事業者、メーカー、家電販売店、工事事業者、地方公共団体が、すべての世帯がデジタル放送を受信できるように今計画を立てて取り組んでいるところでございます。確かに、北京オリンピックのときにもっとふえるだろうと思っていたら、それがちょっと当てが外れて、テレビの台数は目標を上回っているんですが、世帯普及率が、本来六割近くあるべきものが一〇%近く減で、現在、一月で四九・一%。これは今回の政府予算案にもきめ細かく働きかけ等に取り組むことを入れたわけでございますが、二〇一一年七月二十四日、全力を尽くせば完全普及は十分に達成できるというふうに考えております。

 ですから、国策である以上、決めた以上、延期ということは全く考えないで突っ走っていきたい、こう思っております。

原口委員 延期がもたらす影響を考えると、その選択は正しいと思います。私は、この委員会でも議員同士でフリーにディスカッションしてよりよい案をつくっていく、こういうことも大事だと思いますので、提案をしておきます。

 また、あいたデジタル波の電波帯域、ここを何に使うかということもとても大事なことでございますので、また日を改めてその部分については議論をしていきたいと思います。

 先ほど、経営計画に盛り込んだ一〇%還元の問題についても議論がございました。一〇%還元というのは、まさに受信料の値下げであるということをお二人のリーダーがお話しになりました。

 とすると、一〇%の値下げというのは一体いつから、これは三年計画で出されていますから、それが終わった後、国民は今の受信料の一〇%の下げを享受することができる、こういう理解で会長はよろしいでしょうか。

福地参考人 御指摘のとおりでございまして、昨年の十月に、三カ年経営計画策定に対し、私ども執行部側といたしましては、この三年間は地デジの投資がありまして、受信料引き下げは無理だと判断をいたしました。しかし、今のこの三カ年計画を着実に実行していきますと、四年目には何らかの形の受信料の引き下げは可能だという判断はいたしております。

 しかし、経営委員会の方からは、四年目に一〇%の受信料の還元というものを明記すべきだというふうな指摘がございました。私どもは、三カ年計画だから三カ年間はお約束をいたしますけれども、四年目のことを、しかも数値計画として織り込むことについてはいかがなものかということで、反対の立場をとっておりました。しかし、これは放送法に基づく修正動議でございますので、私どもは潔く従っていきます。

 ただ、三カ年計画をかっちりやっていきますと、四年目には一〇%の受信料の引き下げは計算上可能でございます。四年目と五年目につきましては、やはり若干繰越金を使用することが必要ですけれども、その次、五年目にはもう繰越金も回復いたしますので、可能でございます。

 ただ、受信料引き下げのあり方について、どういうふうな受信料体系にするかということにつきましては、二十一年度から二十三年度の間に考えまして二十四年度から実施をしていく、そういうふうに考えております。

原口委員 会長、ありがとうございます。

 今の数字が執行部の中で積み上げられた現実的な数字ではないということは、今のことでわかりました。ただ、それを言っていてもせんがありませんので、取材や制作の質を落とさない、質をさらに高める中で厳しい条件をクリアしていく、これが求められているんだ。私たちは、三年後に受信料一〇%の値下げを実質皆さんがお約束してくださったということをここで確認しておきたいと思います。

 そこで、通信と放送の融合が進む中で、今のような受信料体系あるいは受信料という課金の仕方そのものが本当に合理的なのか。人はいろいろなところへ毎日移動します。私も佐賀と東京を往復しますが、そのところどころで課金をされる。本当にそれが現実的なことなのか。その辺のしっかりとした見直しが必要となっていると思いますが、御認識を会長に伺いたいと思います。

福地参考人 この三年間、あるいは二年かわかりませんが、この近々の間に、視聴者のテレビを見る態様が大きく変わってくると思います。今御指摘のようなことも入ってくると思います。そういったものを見きわめながら、四年後の一〇%の引き下げについては、単なる一律の引き下げじゃなくて、そういったことも考え合わせながら内容を考え、検討していきたいと思っております。

原口委員 ここも、国民の中の公共放送に対するしっかりとした信頼をつなぎとめるためにも、国民的な議論がぜひ必要であるということを申し上げておきます。

 また、先日私は鹿児島に伺いました。ちょうど「篤姫」のロケ地の横をかすっていったんですが、やはり大河ドラマの持つ力、制作の持つ力、みずからのふるさとの歴史に対する理解、そういったものが地域をあれほど盛り上げるんだなというふうに思いました。

 一方で、インサイダー問題等、去年も最終報告の前に私たちは予算を審議しなきゃいけないという状況でございました。コンプライアンスをきっちりして、そして国民の負託にこたえていただきたいというふうに思います。

 最終報告書の概要と対応についてきょう伺う余裕はなくなりましたが、私たちは、一昨年、放送法、特に放送の自由、報道の自由を守る立場から放送法の修正ということをこの委員会でやらせていただいて、そして今、その修正放送法がスタートしているという状況でございます。

 ちょっときょう法務副大臣にも来ていただいていますので。

 私は、いわゆる検察が国策捜査をしたりするなんて思っていませんし、するなんというのを信じたくもありません。しかし一方で、捜査当局でしか知り得なかった情報がメディアを通して流布される、これについては大変な危機感を持っています。

 法務副大臣に伺います。いわゆる検察リークということはあり得ないと考えていますが、この認識は正しいか。そして、あったとすれば、これは国家公務員法の秘密漏えいの罪に当たるのではないか。また、裁判員制度がいよいよスタートしていますが、一方的な行政機関の一つである検察がみずから得た情報を大きなメディアを通して流布するということになれば、裁判員はその一方的な情報をうのみにしてしまって、その判断にも大きな影響を与えることから、法務省はこういうリークはあり得ないし、絶対にないという立場をとっていると思いますが、裁判員制度にかかわる影響についてもあわせてお答えをください。

佐藤副大臣 ただいま御指摘がございましたけれども、まず第一に、検察リークの問題でございます。

 社会の耳目を引く事案等につきましては、報道機関の各社が関係各方面に広くかつ深く独自の取材活動を行っているものと思われますが、検察当局におきましては、従来から捜査上の秘密の保持については格別の配慮を払ってきたものと承知しておりまして、捜査情報や捜査方法を外部に漏らすようなことはあり得ないものと確信いたしております。

 それから、検察リークと国家公務員法との関係ではないかと思いますが、仮定の質問に対するお答えは差し控えさせていただきますけれども、検察当局におきましては、従来から捜査上の秘密の保持について格別の配慮を払ってきたものと承知いたしておりまして、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすようなことはあり得ないものと確信いたしております。

 それから、裁判員制度の問題の御指摘がございました。

 御指摘は、万が一検察による一方的なリークがあったら、世論が形成されまして裁判員の心証が左右されるという御指摘でございますが、検察当局におきましては、従来から捜査上の秘密の保持については格別の配慮を払ってきたものと承知いたしておりまして、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすようなことはあり得ないものと確信しており、御指摘の懸念は当たらないものと考えております。

原口委員 答弁の間にも失笑が出るぐらい、これが本当に事実でないかというのは、鳩山大臣、検証しなきゃいけないんですよ。それは、私たち、今、多く検察リークと思われるものをもととした放送がされている、関係者あるいは捜査関係者という言葉が躍っている、これをどう考えるか。私は、こういう形は大変な問題であるというふうに考えています。

 つまり、今、副大臣はあり得ないとおっしゃいました。あり得ないとするのであれば、今流布されている情報は、捜査当局しか知り得ない情報を勝手に推測して、そして公共の電波によって、あるいは公器である新聞によって流しているということになるのか。そのことをどのように考えればいいか、鳩山大臣の御所見を伺いたいと思います。

鳩山国務大臣 今の原口委員の御質問に関して、放送法第三条の二第一項などということはもう十分おわかりでしょうから、むしろ、この間まで一年間法務大臣をやっていた者として申し上げるならば、国策捜査などというものがあり得るわけはありません。

 法務大臣というのは、もちろん指揮権の発動は私はしませんでしたし、発動例は今まで一回しかない。法務大臣というものが検察と全く連絡がない状況にある。法務大臣というのはいかに検察に対しては何の影響力もない、ゼロであるという、切れた存在であるかということを体験した一年間であったわけでございます。ですから、私は、検察というものは法と正義に基づいてやっていただいていると信じております。

 つまり、そういうみずからの経験から申し上げれば、やはり検察は独立をしている、検察官もそれぞれ独立をしている、法と正義に基づいてきちんとやってくれているはずでありますから、もしそういう中で国家公務員法上問題になるような、秘密を漏らすようなことがあれば、これは非常に大きな問題だ、こういう認識です。

原口委員 今、元法務大臣としての御所見でありましたが、とすると、漏らすはずのない捜査情報をもとに、先日、日本テレビですか、ある番組で、あれは間違った証言をもとに報道して、そして社長が責任をとっておやめになるということが起こりました。つまり、放送は真実を放送しなければいけない、そして人権に配慮して放送しなければいけない。今おっしゃったことと現実に起きていることが違っているんじゃないか。

 私は、先ほどNHKの会長にも、一連の報道について、私たちは放送のいわゆる編集権に踏み込むということは絶対にあってはならないと思います、しかし、違法なことを、違法な放送あるいは人権を侵害するような報道について、これを見逃すことはできません。今精査をして、場合によってはBPOにも申し出をしなければいけないのではないかというふうに考えておりますので、ぜひ、公正公平、そして人権を保障する、そういう放送についての御決意を会長に伺って、質問を終えたいと思います。

福地参考人 私は、報道担当、これは渋谷のセンター内だけではなくて各放送局もそうでございますが、編集権の自律というのは、公平公正、不偏不党、そういった義務で担保されなければならない、そうじゃないと編集権という権利を行使するのはおかしいということをかねがね申しております。この姿勢は今でも変わりません。

原口委員 終わります。

赤松委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問いたします。持ち時間が二十分でありますので、先を急ぐ質問となるかもしれません。よろしくお願いいたしたいと思います。

 まず最初に、NHKの三カ年計画などの基本方針についてお尋ねいたしたいと思います。

 その中での受信料収入であります。

 会長は、受信契約による支払い率について、平成二十一年度では七二・二%、二十三年度七五・五%、三カ年計画終了後の二十五年度七八・〇%を目指すとしておりますが、その根拠は一体何でしょうか。

福地参考人 お答えを申し上げます。

 支払い率を向上させ、受信料支払いの公平負担を徹底していくということは、受信料制度を堅持していくために全組織を挙げて取り組んでいく重要な経営課題であります。したがって、今度の中期計画の中でも、経営二目標の一つに挙げたわけでございます。

 そのため、組織風土改革に全力を傾注し、視聴者の信頼を高めるとともに、緊急災害報道など安全、安心を守る報道の強化、多様で質の高い番組の充実を図り、視聴者の皆様の役に立つ公共放送の役割を果たしていく。これによって、もう一つの経営目標であります接触者率も高まっていく。接触者率が高まるということは、受信料の支払い率の増加とも、両方、相関関係にあるというふうに思っております。

 また、営業活動におきましては、昨年の十月から訪問集金の制度がなくなりました。しかし一方で、従来、訪問集金に充てておりましたパワーを未契約者、未収者の対策に振り向けましたり、民事手続を全国に広げましたり、あるいは事業所割引を活用いたしました事業所対策の強化、こういったさまざまな施策を展開してまいります。

 このように、NHKの全部門が総力を挙げて、受信料の支払い数を五年間で三百五十五万件増加させることによりまして、支払い率二十一年度七二%、二十三年度で七五%、二十五年度七八%、これを目指してまいります。

黄川田委員 先ほど原口委員さんからもお話ありましたけれども、通信と放送の融合が進んでおります。若い方々は新聞、テレビから離れ、そしてまた携帯やパソコンのネットで必要な情報を得るというふうになってきております。

 過去二十年ぐらい前でありましたら契約、支払い率は伸びを予想されるのでありますけれども、これからNHKは、今まで考えられないような新機軸か何かを展開しなければ、とてもその数字に持っていくのは大変だと思うわけでありますけれども、重ねてお伺いいたします。

福地参考人 NHKが今度の三カ年計画でつくっております3―Screensに象徴されますように、テレビもひっくるめて、映像を見る態様というのは極めて多様化してくると思います。しかし、いずれも自宅にテレビを持ちながら、PCで見るとかワンセグで見るとかいうような形になってくると思います。

 これが、例えば近い将来、家にテレビを持たずにPCだけ、あるいは携帯だけというのがあるかどうかわかりませんが、そういう事態になってくるとなりますと今の受信料体系のあり方も変えてこないといけないというふうに思っておりますが、今のところは、自宅のテレビプラスPCというふうに理解しておりますから、テレビからPCに移りましても、我々としたら、コンテンツの制作能力を、まさにプラットホームに合った適切なものにつくっておれば、それに対応することができるのではないかというふうに考えております。

黄川田委員 NHKでは、去る二十一日に、日本のこれからのテレビのあり方ということで、討論会ですか、視聴者のアンケートも持ち寄ってやられたわけであります。

 この中でも、やはりテレビ離れといいますか、そういうものがさまざま議論されたようでありますけれども、今井副会長さんがそのとき出ておりましたね。そして、テレビは多様化になるだろうけれども、テレビのまた新たな重要性といいますか、やはりテレビとして立派な番組をつくるということはさまざまな意義があることだというふうなことを話していると思うわけでありますけれども、この点について会長はどう思いますか。

福地参考人 若者のテレビ離れということがこのごろ本当にささやかれるようになってきまして、先般の私どもの放送もそうでございますけれども、私は、しかし、若者のテレビ離れはあっても、若者の映像離れというのはない。

 そのためには、先ほど申し上げましたように、コンテンツを高めていかないといけない。それから映像の面も、視聴者の質的な満足感が高まってまいりますから、今、ハイビジョン放送でございますけれども、ハイビジョン放送を例えばもっとふやしていくとか、スーパーハイビジョンの研究も進めております。3Dテレビの研究も進めております。それから、人間に優しいテレビ、そういったことも研究を進めております。

 そういった質的に高いものを、これから先もっともっとNHKも技術的にも研さんをしながら、視聴者がテレビ離れを起こさないような活動を続けていくことが必要かと考えております。

黄川田委員 ぜひとも若者が興味を抱くような、それから、なおかつ高齢者も興味を抱くようなコンテンツをしっかりとつくっていただきたいと思います。

 それでは次に、たびたび議論になっておりますけれども、平成二十四年ですか、受信料を一〇%還元するということであります。

 さまざま聞いておりますけれども、この未曾有の経済危機の中で来年どうなるか、再来年どうなるか、いろいろありますけれども、目標は高く持つということは大事でしょうし、また、国民・視聴者からすれば、経営委員会も執行部もNHK一体だということでとらまえておりますので、その部分、確認の意味で、目標一〇%、受信料の引き下げまでもという話になりますけれども、もう一度その取り組み方を確認させていただきます。

福地参考人 確かに、計画をつくっておりました段階では考えられないような今の経済状況の変化でございます。

 こういったことを予想して書いたわけじゃございませんが、この三カ年計画の表紙に、「本計画は、社会・経済情勢の変化等に応じ見直します。」と書いてあります。これはまだスタート段階にも立っていないときに、こういったことじゃなくて、例えば東南海大地震とか首都圏直下型地震とかいった我々の手に負えないものがあるときは別でございますけれども、私は、営業に求めておりますのは、三年間やっているうちにアゲンストもある、フォローの風もあるだろう、だから一々風を気にしていたら計画はできない、計画というものはチャレンジしてもぎ取るものだと。もっとも、意識だけではできませんけれども、この中期計画に書いてあります施策を確実に実行するということで実施をしていければ。

 それから、接触者率八〇%と支払い率三年後七五%、特に支払い率の問題は、私は営業だけの課題と考えておりません。これはNHK全職員が担うべき目標だというふうに認識しております。そのためには、例えば放送部門には、今御指摘のございました質のいい放送、高齢者がもっと見たくなる、若者も見たくなる、そういった放送内容の質を上げることもやはり一方で大事だ、そういうふうに考えております。

黄川田委員 次に、放送のデジタル化移行問題についてお尋ねいたしたいと思います。

 地デジ対策は、送信者であるテレビ局から受信者である国民への対策に柱が移りつつあるわけでありますけれども、この地デジの設備投資、これはNHK、民放で総額約一兆五千億円であります。民放の経営も厳しく、そしてまたNHKは十三年ぶりの赤字予算となっております。

 そこで、民放各社、特に地方局の経営状況が厳しい中にあって、二〇一一年七月の完全デジタル化には円滑に移行できるのか。そしてまた、私は岩手の出身でありますので、東北地方の民放各社の経営状況は一体今現在どうなっているのか。そしてまた、全国の地方局と対比した場合にどういう状況か。これは総務省にお尋ねいたします。

山川政府参考人 御指摘のとおり、地方局の経営環境は非常に厳しいものがございます。平成二十年度の中間決算におきまして、先生の東北地方の民放を見ますと、二十二社中十三社が経常赤字になっています。割合にしますと五九%の会社が経常赤字ということでございます。これを全国ベースで見ますと、全国の地方局は百十二社中五十一社が経常赤字、これは四六%でございますので、全国ベースでも非常に厳しい数字にはなっておりますけれども、東北の民放はこれを上回っているという状況かと思います。

 その要因といたしましては、地上デジタル放送への投資負担ということもございますけれども、現下の経済状況悪化による民放の広告料収入の減少による影響が極めて大きいというふうに認識しております。

 こうした中でも、民放の各社は、中継局の整備など地上デジタル放送に係る投資は非常に大きなものがございますが、予定どおり進めていくというふうに私ども伺っております。また、経営上の理由によりまして、例えばみずから建設することが困難な中継局等もございますので、そうしたものにつきましては、国といたしましても支援を行ってまいっているところでございます。

黄川田委員 お話のとおり、全国の地方局は大変な状況にある、そしてまた、現下の経済情勢がまだまだ厳しい、広告収入が入ってこないということだと思います。

 しかしながら、地方の文化、歴史を育ててきた地方局でありますので、ぜひとも総務省には後押しをお願いいたしますし、それから、アナログの中継局は三十年から五十年かけて整備をしてきたわけでありますけれども、デジタルの中継局は十年で設置しなければならない、こういう環境の違いもあると思いますので、さらなる支援をよろしくお願い申し上げます。

 残り五分でありますので、最後に、NHKの災害報道についてお尋ねいたしたいと思います。

 私の選挙区で、昨年六月の十四日、岩手・宮城内陸地震が発生いたしました。地元の祭畤大橋の落下は全国に映像として流れたわけであります。テレビはまさに災害時に必要な情報伝達手段である、こう思っております。

 また一方、宮城県沖地震でありますけれども、これまでこれは二十五年から四十年という比較的短い間隔で周期的に発生しておりまして、これまた近い将来発生することが予想されております。最近の文部科学省の地震調査研究推進本部の長期評価によれば、一月一日から十年以内の発生確率は七〇%程度、三十年以内では九九%とされ、全国の評価対象の地震の中では最も高い発生確率となっております。そしてまた、三陸沿岸は津波の心配が大きいわけであります。

 そこで、地デジ放送による地域情報サービス、特に災害情報の迅速な情報提供であります。データ放送の特徴を生かして、地震等の災害情報を文字情報として、ライフラインの状況、あるいはまた避難場所の明示など、的確な情報が提供されると期待されるわけであります。

 現在、NHKは地デジ放送で地域の災害情報の提供に関してどのような構想を描いているのか、それから、従来アナログ放送で災害情報を提供したわけでありますけれども、これとの違いなんかをお尋ねいたします。

日向参考人 お答えします。

 御指摘のように、データ放送はアナログと違って、例えば全国放送をしているときにでも、データ放送のサービスは、各地域の局で作成したというか提供した情報をいつでも見ることができるという非常に大きな特徴を持っております。したがって、今でも、例えば避難所の情報とか急患を受け入れる病院のリストとか、そういう生活情報、それからいわゆる災害情報については、各局独自のサービスを行っているところです。

 これからのことにつきまして言いますと、一つは、各自治体がさまざまな災害情報を持っております。それをデータ放送で提供できるような形式にそれぞれ協議をして決めまして、自動的に自治体が持っている災害情報をデータ放送の画面なり、そういうものに反映させるという仕組みを今広げているところです。

 それからもう一つ、ワンセグ放送というのがございます。これは携帯で見るものでございますけれども、携帯端末は今、それこそラジオなどに比べてはるかに、一人一人の方がいつも持っている端末でございます。それを、ワンセグ放送を見ていないときでもそういう速報それから緊急情報があった場合に自動的にテレビが映るような、そういう仕組みを今研究しております。

 以上です。

黄川田委員 災害は忘れずに必ずやってまいります。そういう中で、テレビはアナログからデジタルへスムーズに移行しなければならない、こう思っております。

 岩手は丸ごと中山間地でありまして、完全デジタル化に向けて鋭意努力しておるわけなんでありますけれども、どうも北海道、東北、特に岩手は、ちょっとだと思うのでありますけれども、何%か残るような気がするわけですね。そうすると、衛星放送で対応、その後、逐次また整備していくというような形になるかもしれませんが、衛星放送だと東京の災害情報という形になって、やはり地元の情報、これが一番大事なわけでありますので、そういうことがないように、NHK、総務省には今後とも着実な取り組みをよろしくお願い申し上げます。

 以上で終わります。ありがとうございます。

赤松委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田です。

 二十分の時間を使いまして、衛星放送の受動受信について質問したいと思います。

 ことしで三年連続同じことを取り上げるということで、しつこいんですが、正直、きのうNHKの方から説明を受けましたが、全く解決するおつもりがないんじゃないかなと思えるほどの態度に私は見受けられました。

 一番最初、三年前にいわば問題提起をして、当時の菅大臣が問題意識を持っていただいて、総務省の中でも検討していただきました。昨年質疑をしたときには、大西理事が、二十年度中にこの問題に対しての検討をしっかりと進めますという御答弁がありまして、きのうレクを受ける中でその検討結果が出てくると思いきや、いい解決方法がなかったので、今後ともこの問題は、問題としてはある程度認めるけれども、仕方がない問題なんです、逆に、寺田さん、何か解決策があるんですかということまで開き直られました。

 この受動受信の問題、余りメジャーじゃないかもしれませんが、今まさしく質問がありましたけれども、地デジの進展によって、今、薄型テレビが主ですけれども、地デジに対応したテレビの中にはほぼ確実に衛星のチューナーが入っています。そして、集合住宅に入ると、地デジ対応とともに、まさしくアンテナの方もBSが映る、衛星放送が映るアンテナを共有電波として持っています。ですので、地デジの対応のためにテレビを買いかえたら、衛星が映ってしまうんです。

 そうしたら、NHK側は、放送法にのっとって衛星契約、毎月九百円以上払えというふうに言ってしまう。みずからがその受信環境を求めなくとも、地デジのために対応したら、衛星放送を余分に払わなきゃいけないという状態が続いている。

 そして、今のこの受動受信の問題点を、NHKの受信料の徴収の方々が悪用されているケースがたくさんあるというふうな報告を私は受けています。ちょっといろいろお話ししますけれども、押し売りないしは詐欺です。

 押し売りのケースの一つですけれども、まず、テレビのリモコンを持ってきてくださいと言うんです、がちゃっとあけて。それで、テレビのリモコンがあると、ああ、ここにBSのボタンがありますね、あなた、映りますよ、払ってくださいということを言うそうです。ある程度お気持ちの強い方は、何だそんなことと言って断られる方もいるんでしょうけれども、いろいろ寄せられる話によると、物すごく高圧的に言われて、いや、町内会も全部払っているんだ、このマンション全体が払っているんだということを言われて、結局のところ契約してしまうというケースが、インターネット上でも私のところでも、たくさん議論されていますし、御報告を受けました。

 実際、受動受信という形で、地デジのテレビに買いかえられて、アンテナ自体が共有電波でBSが映る環境になってしまった人は、まさしくこの受動受信の問題として払う払わないという話がありますけれども、そもそも映らないような環境にあるにもかかわらず、NHK側が、今この建物は衛星が映るような環境にアンテナ的にはなっているから払ってくれという話もあるんです。

 まさしく最近の話ですけれども、二〇〇九年、ある方ですけれども、いきなり来て、おたくのテレビは薄型ですか、ブラウン管形式ですかと言うそうです。リモコンスイッチが一から十五までありますよね、皆さん、見た見ていないという押し問答になりますので、ボタンのある方は皆さんBSの契約をしていただくことになりますと。実際、この家の方はどうかといえば、BSを見ておりませんし、現に砂あらし状態で映りませんということを言ったら、NHKのその徴収員の方がかなり威圧的に、おたく様の地域は共同アンテナで、今はとめているので映らないようにしているが、映るようになってしまうので、見る見ないにかかわらず支払いをしなければならないというふうに言ってきて、かなり押し問答をしたあげく、帰り際に玄関先に置いてある置物をけって帰っていった、怖いと。一生懸命断ったからいいんでしょうけれども、やはり、この映らないにもかかわらず受信契約をさせるケースは多発していまして、詐欺ですよね。

 引っ越しをしたらBS受信設備のあるマンションだった、ただ、テレビが旧型で、リモコンにはBSボタンがない。そうしたら、集金人が来まして、ここはBS受信ができるマンションですと。御本人としては、うちは見られないと思うんですけれどもと返答して、一たんはわかったと言って帰ってくれたそうです。ただ、半年たって別の集金人が来て、以前にも別の者が来たと思いますが、契約変更の確認がとれていません、何度も来る、これからも来ますよという口ぶりから、払わなければならないと思ってサインをしてしまった。実際のところ、どのボタンを押してもBSは当然映りません。詐欺ですよ、こんなのは。

 一番ひどいのは、具体的に名前もつけられて寄せられているんですけれども、あるところにNHKの方がいらっしゃって、BS放送を契約してくださいと言ってきた。ただ、訪ねてきたところは当時不在だったみたいで、同じビルの上にある別世帯の、その方のお母さんのところに行って、お母さんを呼びつけて、下の階のおたくの娘さん世帯のBS契約をしてほしいと。七十八歳のお母さんだったそうですけれども、建物にアンテナがあるから衛星契約に変更しなければならないんです、娘さんの現在の契約が間違っているので正しく直しましょうと話して、それで結局、名義人でもないにもかかわらず代理で判こを押させて、その後、契約者本人への確認も一切ない。もちろん、契約者の住居には衛星放送を受信する機器はない。このことを激しくNHKに抗議したそうなんですけれども、まず、別世帯だとは思わなかった、同一世帯と判断して代筆してもらった契約だから有効なんだ、七十八歳の老人でも衛星設備が何であるか十分な理解ができているはずだから契約は有効だ、そういうことまで言っているわけですよ。

 今後ますます、地デジの話が、時を追うごとにみんな買いかえよう、買いかえようという中で、BS放送をみずから見られる環境にしようと思わなくとも、勝手にBS放送が見られる環境はふえていくわけですよ。この問題を整理しない限り、押し売りなのか詐欺なのか、そういうことが横行することになるわけです。

 今お話ししたのは、すべてここ一年、そしてことしの問題です。きのう部長に御説明いただきましたけれども、そんなことありますか、あるのならどこの局でやっているところでしょうか、教えてください、私どもが調査したときにはそういうのは一切ありませんでしたと言っているわけですよ。けれども、現にこういうようなことがインターネットの中で、困っていると寄せられているわけですね。

 この受動受信の問題、三年目になりましたけれども、いいかげん解決していただきたいというふうに思います。解決できないのであれば、BS放送に関して、私はそういうようなつもりはないという方には受信料を払っていただかなくてもいいように、問題解決するまでは当然するべきだと思うんです。現場では、ある意味、押し売り、詐欺が横行しています。大臣、この問題にどう対処されますか。

鳩山国務大臣 今の、押し売りとか詐欺、実際には映らないのに取るなどというのは、もう言語道断でございますから、NHKも内部調査をよくして、きちんとやってほしいとは思いますね。

 この受動受信の問題は、大変難しい問題がやはりあるんだろうとは思います。それは、うちの総務課長もさっき申しておりましたけれども、どこかから引っ越してきて公務員住宅に入ったら、受信料が九百四十五円高くなった、この公務員の住宅は全部BSが入るようになっているからといって、大してBSを見もしないのに取られるようになったと、総務課長ですら不満を言うわけですから、なかなか深刻な問題なんだろう。

 私個人でいえば、私はテレビは余り見ないんですよ、基本的に。大体テレビを見る時間というのは、一日十分とか十五分しか見ない、まずBSを見ることはないです。ただ、うちのテレビは映ります。映りますから払わなければなりません。それはいいです。しかし、全く見たくない、見ようと思っていないところに、とにかく映ってしまうから払わなくちゃいけないというのが今の仕組みですよね。

 だから、やはり根本的に考え直して、料金体系を工夫するとか、NHKさんも早く結論を出した方がいいと思いますね。

寺田(学)委員 大臣も御存じと思いますけれども、見る見ないの話じゃなくて、自分がその映像を受信できる環境にしたかしないかで、いわゆる受信料を払う義務が生まれるか、契約する義務が生まれるかどうかになるんです。だから、見ていないとかどうこうというのは、それは公共放送ですので全く別の問題です。

 まさしく、NHKホームページとしても付加的料金と言っている、この付加的なサービスに関して押し売りがなされている。そして、地デジの進行によってある種誤解が生まれ、理解不足がある中で、御高齢の方及び気の弱い方が詐欺のような形で衛星料金を取られている。今後ますます増加しますよ、これは。

 二十年度中にこの問題に対して検討を行うと理事はお話しされていましたけれども、長々と説明はいいですけれども、どのような結論に至ったのか、御答弁ください。

大西参考人 先ほど寺田委員の、営業活動に対しての指摘でありますけれども、昨年、リモコンを見せろというような活動をやっているのではないかという御質問がありました。

 早速、各局に問い合わせてみましたけれども、親切丁寧に営業活動をやるということが当然でございますけれども、いきなりリモコンを持ってきて契約を迫るというような活動はなかったということであります。衛星放送の受信方法の説明としてあったかというふうに思いますけれども、具体的な事例を御指摘いただきましたので、さらに、営業を担当している委託契約収納員あるいはその営業の現場に訪問マナーの講習は徹底をさせていきたいと思いますし、引き続き指導を徹底させていきたいというふうに思います。

 それから、昨年、二十年度中に検討するとお答えしましたけれども、御指摘のあった意図しない衛星放送の受信、いわゆる受動受信の場合の受信契約の取り扱いについては、NHKとしては真摯に検討をしてまいりました。衛星放送を地上波と一本化する、衛星放送をスクランブルにする、あるいは、先ほど委員の御指摘のありました、転居によって、環境の変化によって衛星契約が対象になったということを窓口でどのようにするのかということをさまざま検討してまいりましたけれども、不正受信、あるいはそういう有効な担保がなかなかとれないということであります。

 二十一年度からの三カ年計画を策定する中で、受信料の値下げも含めて、衛星放送受信体系のあり方について議論を行ってまいりました。さらに、地上と衛星の一本化は困難だとしても、御負担をいただくということについては御理解いただきたいというふうに思います。

寺田(学)委員 総務委員を五年やっていまして、NHKには基本的には理解ある方だと思っていました、自分自身でも自覚はしていました。公共放送は必要だと思っています。ただ、今の御答弁を含め、きのうのレクの部長さんのお話を含め、公共放送は必要ですが、NHK自体に対しては非常に疑念を持っています。

 今お話あったとおり、NHKが調査をしたら、リモコンを見せろというのはなかったと言っているわけですよ。実際に見せろと言われた人はいっぱいあるんですよ。これがNHKの調査の実態だろうし、自分たちに対する考え方、わきの甘さだと思います。わきの甘さというか、認識の甘さだと思います。

 今、このテレビの放送が恐らく四時とか三時とか、そういう非常に、深夜というのか早朝というのかわからないけれども、ごらんになられている方の中で、そうだそうだ、私もそういうことをされたという方は必ずいると思います。2ちゃんねるの中でもこれは実況されているそうです。私も時々見ましたけれども、その2ちゃんねるの中でも、受動受信の問題で、変な契約をさせられたという方はいっぱいいると思います。

 本当にNHK自体がこんな、リモコン見せろとか、詐欺のようなことをしていないと言うのであれば、今、テレビをごらんの皆様も、2ちゃんねるの中で書き込みをされている方々も、こんな事例があるんだということを国民的に問題視してしっかりNHKにぶつけない限り、わかってくれないんじゃないかなというふうに思います。

 検討をされたという話をしましたけれども、実態調査とかもされたんですか。実際にNHKの衛星放送を受信契約されている方の中で、自分自身の意思とは関係なく契約をしてしまっているとか、そういう形になっている方がどれぐらいいるかどうかということを含めた上で恐らく検討はされていると思いますけれども、実態調査とかされているんでしょうか。いかがですか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 昨年、寺田委員の御指摘をいただきまして、全国の営業現場、約五千人近くの委託契約収納員がいるわけでありますけれども、具体的にそういう営業活動をしているかということを、全国に指示をいたしまして、七十六拠点全国の営業現場がありますけれども、個別にそこから事情聴取をしたところによると、そういうような営業活動はしていないという報告が上がっております。

 以上でございます。

寺田(学)委員 では、これはどうですか。NHKの衛星放送を契約している方全員に対して、自分自身で能動的にBSが受信できる環境にした、ないしは勝手に受動受信という形でそういう環境になってしまった、そういう調査をされたらどうですか。理事、いかがですか、されないですか。

大西参考人 NHKでは、放送を受信できる設備がありましたら、受信契約をお届けいただくということになっております。なかなかお届けがいただけないということで、NHKが個別に御訪問申し上げて受信契約をお願いしているということでございますので、先ほど、もう一回実態調査をしたらどうかという話があったんですけれども、する考えはございません。

 以上でございます。

寺田(学)委員 大臣、詐欺が行われているんですよ。映らないのに、映るでしょう、あなたの家にアンテナあるじゃないか、ここ、ケーブルテレビ入っているじゃないかと。自分のテレビはどこを見たってBS放送が映らないのに、あなた映るでしょうと。気の弱い人はサインしているんです。詐欺ですよ、こんなの。もう脅迫に近いですよね。それで、実態調査をしてみたらどうだと言うと、そんなことするつもりはありませんとNHKは言うんです。

 大臣、これは私はちゃんと実態を解明するべきだと思いますよ。もちろん対応策を正式に決めるまでは時間がかかるのは仕方がないですけれども、まず実態がどうであるかを調べて、それまでの暫定的な措置として考える、そして最終的な結論を迎える、こういうことをしない限り、詐欺のような形で集めたお金の予算なんて認められるわけないじゃないですか。

 大臣、実態調査を総務省としても検討されてはいかがですか。

鳩山国務大臣 NHKが日本で唯一の公共放送である、社会的責任は民放に比べてもはるかに重いというようなことは先ほど申し上げてまいりました。ただ、例えば収賄になるのは、みなし公務員というのでしょうか、役員だけというような話も先ほどございました。

 NHKが公共放送として社会的な大きな責任を負っているという意味は、放送内容がよりすばらしいものでなければならないことというのも当然でございます。国際的に放送をして海外へ流していく、そういう責務を負っているということも大事です。ですが、それ以外にも、インサイダー取引ではないが、NHKのすべての職員が、やはり公共放送ゆえに、他の民間、一般よりは、より以上の倫理観というか規律というか、そういうものは求められると思うわけですね。

 そういう中で、NHKからやってまいりましたといって、仮に詐欺があるとか押しつけがあるということであれば、これは単なる民間からやってきた話とは違って、より重い責任があるだろう、私はそういうふうに思うわけですから、調査ができるかできないかはまたよく検討しますが、NHKにはより高い倫理観とか規律とか、そういうものは求めたい。できる限りこうした情報についてまじめに、真摯に対応すべきだと私は思います。

寺田(学)委員 三点、具体的に提案しますけれども、実態調査、BS契約をしている方々に受動受信があるかどうかのアンケート、調査をしてください。その一点と、リモコンを見せろということはどのようなことがあってもしない。そしてもう一点、恐らく徴収の現場は、報酬体系みたいなのは出来高制になっていると思いますけれども、衛星に関しては出来高制をやめる。この三つぐらいを結論が出るまではするべきだと私は思います。

 この三点に対して、いかがですか。

大西参考人 今の寺田委員の三点でございますけれども、受動受信であるかどうか、契約をする意思があるかどうかということではなくて、衛星放送が映るという状態であれば、現在の受信規約、放送法の中では、契約を求めるということでございます。

 それから二点目は、先生のおっしゃるとおり、リモコンをいきなり見せろという営業活動については、再度徹底をさせていただきたいというふうに思います。先ほど委員のおっしゃっているように、自分が衛星を受信しているかどうかということがなかなかわからないという場合、衛星放送が映る受信機かどうかということについて親切丁寧な御説明を申し上げるということでございます。リモコンをいきなり見せろという営業活動は、先生の御指摘のとおり、再度調査をして、そのような活動はやめさせたい。やめさせたいというか、現状の調査の中ではそういう営業はやっていない。具体的な御事例がありましたので、対応していきたいというふうに思います。

 それから、委託契約収納員のインセンティブといいますか、地上と全く同じような中で手数料というのが決まっておりますので、過度に衛星のインセンティブをつけるというようなことはございませんので、御報告を申し上げたいと思います。

 以上でございます。

寺田(学)委員 時間になりましたので終わりますけれども、NHKのこの問題に対する真摯な対応というのは、きのうの部長のお話も今の答弁も含め、そして総務大臣の指導力も含めて、非常に薄いものだというのがわかりました。こういうNHK予算というのは認められないんじゃないかなということだけ最後に一言言って、終わりたいと思います。

赤松委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 それにしても昨日のWBCの日本チームのすばらしい優勝、これを国民の皆さんと喜びたいと思います。日本野球はアメリカ野球を超えたんですよね。総務大臣、今後、超えるべきものは、やはり政治の世界じゃないですか。日本の政治も、やはりアメリカの政治を乗り越えて、日本人のよさ、日本のよさを生かしたすばらしい国づくりをしていかなきゃならないと思うんです。これは与野党それぞれ、与党の皆さんも我々野党も、日本の政治がアメリカの政治を超えられるように、しっかりと努力をしていかなくちゃならない、そう私は思っております。

 そこで、大臣、先日、郵政民営化のアメリカ側との十八回の交渉の米国側の名前を公表していただきまして、ありがとうございました。御礼を申し上げます。

 そこで、委員長にお諮りをしたいと思いますが、ぜひ、大臣が公表された郵政民営化の資料を理事会に諮って、すべての委員の皆さんにお配りをいただきたい、そう思っております。

 それでは、NHKの平成二十一年度予算に関する質疑に入らせていただきます。

 まず、地上デジタル放送についてでございますが、一つ目は地上デジタル放送の進捗状況でございます。

 先ほど来から質問がございましたので、私は重複を避けますけれども、二〇一一年、平成二十三年の七月二十四日をもって地上アナログ放送が停波されて、地上デジタル放送に完全に切りかえるというのが国の計画ですけれども、御案内のとおり、放送の送信側、NHK、民放も含めて準備状況はかなり進んでいる。しかし、受信側、国民の皆さん、視聴者の皆さんは、世帯の普及率でまだ五〇%に達していないというような状況の中で、何が一番重要かということを考えてみますと、これは質問通告しておりませんでしたが、いろいろ考えてみると、五千円を切るような安いチューナー、切りかえ用のチューナーを開発するということが国民の皆さんにとっては一番いいことだと思うんですが、いかがですか。総務省、お答えを願いたいと思います。

山川政府参考人 御指摘のとおり、簡易なチューナーにつきましては、国民の皆様方の負担も少ないものでございますし、現在御利用いただいているアナログテレビもそのまま使えるというメリットもございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、現在、市場価格でまだ八千円、九千円しておるわけでございますが、このチューナーが、各社の御努力によりまして今後下がってくるものと期待しております。ぜひ早い時点で五千円程度の価格になってくることを期待したいと思います。

福田(昭)委員 期待するだけじゃなくて、ぜひそういう指導をしてください。

 一斉に買いかえすると、大量の廃棄物が出て、こんなの決していいことではありませんので、廃棄物が出ないような対策をするのが一番だと思いますので……(鳩山国務大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)大臣、答弁ですか、短くお願いします。

鳩山国務大臣 私、詳しくはないんですけれども、実は、日本方式のデジタル、これを海外にできるだけ売り込むというか使ってもらおうということで、この間フィリピンの方々にもお会いをしたときに、答弁書にチューナーは三十ドル以下で十分いけると言ってやってくださいと言うので、私、そういうふうに申し上げているんです。チューナーは三十ドル以下でいけますからとフィリピンの方を説得したわけですから、そういう答弁書をつくった彼らはそれなりのもくろみを持っていると思います。

福田(昭)委員 大臣の決意も伺うことができて、総務省の方、ぜひそういう準備をやってください。

 それで、二つ目はNHKの取り組みについてでございますが、こちらの方は会長にお伺いしたいと思います。

 今回、NHKは、国の補助制度の申請手続を代行したり、あるいは独自の自主共聴組合などへの助成制度をつくったり、熱心に取り組もうとしているわけでございますが、NHKがどんな取り組みをしようとしているのか、ぜひ視聴者の皆さん、国民の皆さんにわかるように簡潔に説明してください。

福地参考人 地上放送のデジタル化に向けては、デジタル中継局の建設等を着実に進めておりまして、この三月末、二十年度末で九七%の世帯をカバーする予定になっております。

 また、二十一年度からは、現在、自主共聴で受信されている方々へのお手伝いとして、新たに経費助成などの施策を追加することによりまして、デジタル放送の普及促進に努めているところでございます。

 なお、この助成制度は、デジタルが難視聴となり新たに自主共聴を設置する場合についても対象とすることといたしております。

 以上でございます。

福田(昭)委員 ぜひNHKの皆さんには、お骨折りだと思いますけれども、視聴者の皆さん、国民の皆さんが、地上アナログ放送が停波されたときにテレビが見られなくなる家庭が出ないように、世帯が出ないように努力をしていただきたいと思っています。あとの質問がありますので、この辺はあと省略をして、先に進みたいと思います。

 次に、三カ年の収支計画、今度新しく立てた経営計画において、受信料の増収見込みがあったり、あるいは歳出削減などもしながら今後の受信料体系の見直しをする、三年後には、平成二十四年度には受信料収入の約一〇%を視聴者の皆さんに還元する、国民の皆様に還元するという目標を立てておりますが、その達成に向けての会長の御決意だけ伺っておきたいと思います。

福地参考人 大変な経済状況でありますけれども、私どもはこの計画を一年かかってつくりました。確かに一〇%の受信料引き下げというのは大きなことでございますけれども、三カ年計画をきっちりとやり遂げればこれは可能だということでございます。

 私どもは、三カ年計画をやり切るという覚悟で、全役職員、邁進してまいります。

福田(昭)委員 それでは、これからは少し厳しい質問になります。

 次に、公共放送の使命の遂行について、会長、または大臣にお伺いすることもございます。

 一つ目は、放送の自主自律と不偏不党を貫くことについてであります。

 経営計画の二番目の目標として、「公共放送の使命の遂行」がありまして、これを読ませていただきますと、「さまざまなメディアに情報があふれる時代だからこそ、公平・公正であること、放送の自主・自律と不偏不党を貫くこと、健全な民主主義の発達に資することなど、公共放送として大切にしてきた理念や使命は、一層重要性を増すと考えます。」「私たちは、相次ぐ不祥事への反省を踏まえ、信頼回復に全力をあげます。高い志と倫理観をもつ公共放送の担い手のプロフェッショナルを育てる改革に取り組み、ジャーナリズムの役割を全うします。」と書いてございますけれども、これを実現するための会長の覚悟のほどをお伺いしたいと思います。

福地参考人 現在、テレビ、ラジオ含めまして、NHKには八つの波がございます。私は、この八つの波を全部検証するわけにはいきませんから、したがって、私が放送総局に求めるのは、おっしゃるとおりの不偏不党、公平公正をどう貫くかということを口を酸っぱくして言うことでございます。

 まずは、もうすぐ四月一日ですが、去年の新入社員にも話をしました。ことしの四月一日も新入社員に話します。

 それから、いろいろな会議、特に放送総局の会議に出ましたときにはほとんどこの話をしています。この放送局の事業運営、これはちょうどNHKの職員のマニュアルみたいなものですが、その最初のページに私が書いております。この中でも、私たちNHKの主張は放送法に基づく編集権の自律によって保障されている、しかし一方で、編集権の自律は不偏不党の主張によって担保されるべきであることを忘れてはなりませんというふうに私も訴えております。こういったことを、折に触れ、時に触れて、私は職員にしております。

 それからまた、現場に出向いていって、つい三週間ぐらい前は、そういった会議に出向いて、解説委員会にも出向きまして、二十七、八人の解説委員が会議しているところに行きまして、昨年も行きましたけれども、どういうふうにして解説委員の話が不偏不党を貫いているかということをこの目で検証いたしております。

 以上です。

福田(昭)委員 会長は努力されているという話ですけれども、この経営計画の最初に、「公表にあたって」ということで、会長が「「かたち」に「こころ」をこめて」ということで書いてございます。「計画という「かたち」を作ることで終わってはいけません。計画を作ることは、始まりにすぎないのです。「かたち」に「こころ」をこめること、職員一人ひとりが信念をもって、視聴者のみなさまにお約束したこの計画を確実に実行していくことが肝心です。」ということで、形に心を込めるということが大事だと言っておりますが、これは私もまさにそのとおりだと思っています。

 実は、これは東京の浅草の隣の田原町の仏壇屋さんの宣伝文句なんですが、すばらしい言葉があるんです。地下鉄を乗る方、銀座線を乗られる方はごらんになることがあるかもしれませんが、弥勒菩薩像のところに「心はかたちを求め かたちは心をすゝめる」と書いてあるんです。すばらしい言葉でして、まさにこのことが私も大事だと思うんですが、本当にNHKの現場でそうなっているかどうかというのをこれからちょっと確認させていただきます。

 二つ目は、そうした意味で、日本テレビの今回のバンキシャの裏金報道についてであります。

 日本テレビは、報道局長を更迭して、社長も引責辞任をいたしました。そして、NHKも出資をしている放送倫理・番組向上機構、いわゆるBPOの放送倫理検証委員会は、特別調査チームを設けて実態調査を行うということになりました。

 日本テレビは、その実態調査を受けて、検証番組をつくると表明をいたしておりますけれども、会長、どう思われますか。

福地参考人 私は、報道については迅速で正確であるべきだ、特にNHKの公共放送としての使命は迅速で正確だということを口を酸っぱくして説いております。

福田(昭)委員 民放の日本テレビが、自分のところの大きな過ちに対して検証番組をつくると言っているんですよね。そのことに対して、会長が、ああ、すばらしいことですねという言葉が出ないのは何だか非常に不思議ですね。

 その次、三つ目ですけれども、NHKの従軍慰安婦問題を扱った教育テレビの番組改編訴訟についてであります。

 この問題について、会長は、二〇〇八年、平成二十年の朝日新聞の「NHK 公共放送のゆくえ」の取材に応じて、最高裁で編集権の自律を重視する主張が認められたので、検証番組をつくるということは考えていない、こう述べておられますが、今もそれに変わりがないですか、お伺いをいたします。

福地参考人 結論から申し上げますと、変わりはございません。

福田(昭)委員 そうすると、会長の、形に心を添えるという話とちょっと矛盾してくるような気がするんです。

 この朝日新聞の特集の中で、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校のエリス・クラウス教授が、実は、NHKのニュース、政治とメディアの関係を検証し、「NHK VS 日本政治」というのを出版しているそうであります。その中で、クラウス教授はこういうふうに言っています。

 従軍慰安婦問題を扱った教育テレビの番組改編について、NHKが政治家に事前に説明したことを異例と感じたが、政治家の介入があったかどうかはわからないと言う。ただ、NHK幹部が自民党の有力政治家と番組について事前に話し合ったことが根本的な問題であり、独立したジャーナリズムとは言えないと指摘をしています。

 イギリスのBBCの場合、大臣が放送中止を要求することができる。政治の介入過程が視聴者にわかるBBCに比べ、NHKに対する政治的圧力はひそかに行われる。財源や制度面では、世界の公共放送でNHKが国家から最も自立しているが、実際には政治からの影響を受けていたと指摘をしている。

 長年、NHKのニュースをずっと見続けてきたアメリカの大学の教授がこう指摘しているんですが、どう思われますか。

日向参考人 お答えします。

 私は、その本の中身を詳しく存じ上げていないので、それについて直接お答えできないかもしれないんですけれども、基本的に、例えば今度の戦時性暴力の番組についても、放送された内容、結果について先ほどから申し上げているような不偏不党、多角的かどうか、正確であるかどうかということについて重大な疑義があるということであれば、検証する必要があると思いますけれども、その結果について、今申し上げているような番組基準やそういうものに対して重大な違反があるかないかということは非常に大きなかぎであって、それがない中で、編集の過程その他どのようにして番組がつくられているかということについて、一般的にそのことをつまびらかにするということは……。もちろん、不偏不党、それから公平であるか、公正であるかということが編集の自主自律の担保だと思います。ただ、そういう編集の自主自律を守る意味でも、そこの部分について、つまり、番組そのものが番組基準に対する違反とかそういうものがない中でつまびらかにするということは、基本的に慎重であるべきだというふうに思っております。

 それから、もう一つ、これもお答えになるかどうかわかりませんけれども、番組をつくったり、それから番組を放送した後で、視聴者の反響もありますし、さまざまなところからさまざまな要望とか御意見はいただいております。それを我々のある種の一つの価値判断の中で判断をしていくわけで、例えば視聴者からの御意見があったからといって、それに合わせて番組をつくったというようなことは、我々としてはそういう考え方には立っていないということでございます。

福田(昭)委員 少なくとも裁判になったんだから、これは重大事件なんですよ。したがって、それを検証してみるということは非常に大切なことであって、まさに放送として謙虚さがないんじゃないですか。

 その次に行きます。次の四つ目は、西松建設の政治献金事件の報道についてであります。

 先ほど我が党の原口筆頭の方からも質問がありましたけれども、今回の報道については、NHKを初め各マスコミの報道が、会社関係者によるととか、関係者によるとという報道が非常に目立つんですね。これは非常にあやふやな報道なんですね。

 NHKだけに絞りますけれども、会長、先日、三月十日のニュースもそうですし、けさのニュースもそうですが、取材源から流れるニュースについてちゃんと裏はとっているんですか。お伺いいたします。

日向参考人 先ほどから申しておりますように、取材に関しては必ず裏づけをとるというのは基本でございます。

福田(昭)委員 理事さん、それはちょっとおかしいんじゃないですか。

 今回の報道によると、大久保秘書が認めていないにもかかわらず、認めたというような報道をしたんですよね。ということは、少なくとも検察官から供述調書を見せていただかない限りは確認できませんよ。どうですか。

日向参考人 大変申しわけありません。個別のものについては、具体的などういうプロセスで、それからどういう取材源で確認をしたかということは、大変申しわけありませんが、御容赦いただきたいと思います。

福田(昭)委員 NHKとしてのコンプライアンスが全くないということじゃないですか。(発言する者あり)何を言っているか。裏をとるのは当たり前の話で、裏までしゃべれと言っていないんだよ。ちゃんと供述調書を見せてもらったのかどうかと言っているんだ。そうじゃないと裏はとれないだろう。(発言する者あり)何を言っているか、黙りなさい。

赤松委員長 議場でやりとりをしないでください。

日向参考人 申しわけありません。個別のことについては、大変申しわけありませんが、報道倫理の問題もあって申し上げられません。

福田(昭)委員 NHKの体質がよくわかりました。こんなことではとてもとても……。

 今回の事件については、二つの意味で大変大きな問題があるんですよね。

 それは、それこそロッキード事件のときにちょうど東京地検の特捜部長であった、今中央大法科大学院の宗像先生も、「捜査で疑問なのは、西松建設は二つの政治団体を通して小沢氏側の団体に献金しているが、ほかの政治家側にも同じことをやっており、小沢氏側だけの問題ではないこと。ほかの政治家の政治団体の関係者すべてを調べたうえでないと結論は出せないはずだ。」と言っています。「小沢氏については、一般論で言えば、今回の献金の仕組みを知っていて、秘書に受けなさいと指示していれば共犯にもなるが、政治家は普通、そこまで把握していないだろう。今後の展開は大久保容疑者の再逮捕の有無が鍵になる。」元東京地検特捜部長の宗像先生がこう指摘をいたしております。これが一つ。

 それから、コロンビア大学のカーティス教授も、ちゃんと検察の説明責任を果たさなくちゃだめだという指摘をいたしております。

 そうしたことを考えると、今回なぜ総選挙を直前にしてこのようなことをしたのかということについて、検察がしっかり説明責任を果たさなくちゃならないわけでありますが、そうした中で検察は政治的な意図は持っていないと今まで答えておりましたが、しかし、きょうの東京新聞を見ると、政治的意図があったんじゃないかと疑われる記事があるんです。

 きょうの東京新聞ですが、東京地検の会見で、今回違法とされた政治献金総額は三千五百万円、日本歯科医師連盟などかつての政治資金規正法違反事件と比べて立件のハードルは下がったが、「佐久間部長は、「ダミー団体から献金を受け取った形が悪質で、国民の政治的判断を欺いてきたことを重視した」と述べた。」と書いてあるんです。

 この記事がもし本当だとしたら、完全に検察が政治に介入したということじゃないですか。この東京新聞がもし本当だとしたら、これは検察が見事に政治に介入したということですよ。きょうの東京新聞ですから、後でごらんください。

 本当に、そういった意味で、こうした過ちを犯さないように、会長、ぜひNHKとして従軍慰安婦問題の検証番組もつくり、それから今回の西松事件についても検証番組をつくる、そのためにまずはBPOに調査を依頼する、それぐらいのことをやってみてください。いかがですか。

福地参考人 私どもも、BPOの見識については尊重いたしております。

福田(昭)委員 尊重するだけで頼まないの。いかがですか。

日向参考人 BPOに関しましては、今、放送倫理検証委員会の方で戦時性暴力を扱った番組について審議中でございます。私どもは質問を受けておりますので、誠実に回答しているという状態でございます。

福田(昭)委員 わかりました。

 先ほどのカリフォルニア大学のエリス・クラウス教授が指摘しております。最後にこう書いております。「NHKが与党の影響力から自由になる可能性があるとしたら、政権交代のときだろう」と述べています。まさにNHKの体質がよくわかりました。

 残念ながら、以上で私の質問を終わります。もう少し真実に忠実であってほしいなと思っております。以上です。

赤松委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。

 NHK予算について質疑をさせていただきますが、その前に、今の福田委員の質問、小沢代表の放映の問題、NHKは公正公平な公共放送という位置づけの中でより慎重に対応をしていただきたい、そのことを冒頭お願いさせていただきますが、会長、所感がございましたらお答えください。

福地参考人 冒頭申し上げましたとおり、公平で公正、不偏不党を私どもは今も貫いておるつもりでございますし、これからも貫いてまいります。

森本委員 それでは、番組の制作と不祥事について質問をさせていただきます。

 NHKの番組の制作については、一定の評価をさせていただいているところでございます。特に、私見ではありますが、大河ドラマは、人の道と申しますか、生き方を教えていただくことが多いと思っています。

 これは、私がこうして今の年齢になったからというようなこともあろうかと思いますが、具体的には、昨年の「篤姫」の、母お幸が姫として嫁ぐ娘に諭した、「一方を聞いてさたするな、虚心に耳を傾けよ」などの文言や、「天地人」、先般ありましたが、母お藤の兼続に対してのもみじのお話がありました。

 少し紹介しますと、どうしてもみじはあのように美しいか知っていますか、木は厳しい冬を乗り越えるために力を蓄えねばなりません、もみじが散るはその身がわり、みずからの命を幹に託して散っていくのです、そして、もみじの燃え上がるような色は、我が命より大切なものを守るための決意の色等々があったわけであります。

 私自身は、この言葉を聞かせていただいて、今の日本に欠けつつある精神をこのドラマは教えてくれているように思ったわけであります。

 総務大臣は、BS、NHK、ほとんどテレビを見ないというようなお話なんですが、私自身、BS放送をとっておるのは、十時からの再放送でこれを見るためにとっておるような、そんなBSの使用でお金も払っていると言っても過言ではないかなというような思いをさせていただいております。

 大臣がよくおっしゃられるこのもみじの話でも、私は、こうしたことによって森の再生が永久に続いていくのでありましょうし、後から続く若い人たちのためにこうした環境というものが非常にこれから大事だというような、そうしたことも人間の道とともに教えていただいておるような気がするわけであります。

 ただ、この四十五分間のドラマが六千万円費用を要しておるということ。そして、対照的に、ちょっと紹介させていただきますと、「NHKスペシャル」が四十九分で約四千万、そして「つばさ」が十五分で、これは細かくいきますと九百八十万。そうしたデータをいただいておるわけでありますが、この金額を聞くと非常に複雑な、判断に苦しむような、そんな思いでもあります。

 これはさておきまして、通告はしてありませんが、こうした経費、例えば大河ドラマは何に一番金額を要するのかということがもしわかりましたら、きょうは放送を見られる方にお教えいただけたらと。これは後で結構でございますので。

 一方、私は、こうしたすばらしい制作に比べて、NHKの職員の皆さんの不祥事は信じられない思いがするわけであります。ここに第二次コンプライアンス委員会の提言がございますが、なぜこうした人の道から大きく外れた不祥事が発生をするのか。組織風土に原因があるのか。これは、冒頭、目標に書かれておりますが、総務大臣とNHKの福地会長の方からお伺いさせていただくとともに、特に会長には、信頼回復へ向けて、きょうもいろいろな委員の質問でお話がありましたが、決意を述べていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

鳩山国務大臣 私はテレビを余り見ないということを申し上げました。ただ、それは実は、家に帰って寝るまでの間に何かしたいと思っておりまして、その日のテレビ番組を見るのではなくて、先生のお好きな大河ドラマ等をビデオやDVDで用意しておいて、大体それを見ておるんです。

 だから、実際にその時間帯のドラマ等を見ることは全くないし、ニュースも余り見ないのですが、大河ドラマは大好きなので、これも大体総集編で見るのです。本当は、総集編ではなくて全部のものがないかなと。要するに、全部で四十何時間になるんでしょうか。先ほどNHKの子会社からの配当金の話が出ましたけれども、私はNHKエンタープライズには百万ぐらい払っているんじゃないか、DVDやビデオを買うものですから。そういった意味では、「NHKスペシャル」等は全部そろえているんです。これはすばらしい番組が多いですよ。

 だから、森本先生おっしゃるのはわかるのです。あれだけすばらしい、例えば「地球大紀行」とか「いのち」とか、ああいうスペシャルをつくれたところが、何で不祥事が起きるんだろうかと。本当にこの矛盾にはびっくりしてしまいます。

 どちらかといえば、仕事をするときの使命感は日本唯一の公共放送だというのですごいのかもしれませんが、それが場合によってはおごりになって、おれたちは特別な存在だというおごりの中から出てきたような不祥事もあったのかなというふうに思います。

    〔委員長退席、森山(裕)委員長代理着席〕

福地参考人 NHKでは、平成十六年の不祥事以来、公共放送としての信頼確保のために組織を挙げて取り組んできております。

 不祥事の発生につきましては、過去の記録を見ましても、その都度検証を行い、経理手続を厳格化したり、再発防止の策をいろいろと努めてきておりました。

 一方で、組織の構造でありますとか風土の改革も進めておりまして、私自身も進めました。既にコンプライアンスの専門部署を設置いたしまして四年余りになりますが、平成十九年からは内部統制の構築に取り組みました。二十一年度からの中期経営計画では、コンプライアンスを重視いたしまして、組織風土改革を一番の課題として取り上げ、全力で取り組んでまいります。

 インサイダー問題につきましては、報道に携わる者の株取引を原則禁止する規程などを制定いたしましたし、報道情報システムの運用のさらなる厳格化など、再発防止のための仕組みづくりが完了いたしております。

 昨年一月、会長に就任しましたけれども、視聴者の皆様からの信頼の回復が会長としての私に課せられた最大のミッションと考えて、全力で取り組んでおります。そのために、平成二十一年度からの経営計画の中でも、経営方針において組織風土改革を掲げ、全力で取り組むことを視聴者にお約束をいたしました。コンプライアンスの意識を根づかせ、ジャーナリストを育てるための採用や研修、活力ある組織づくりのための組織人事制度改革など、私が先頭に立って、信頼される組織になるための取り組みを今後とも続けてまいります。

森本委員 ありがとうございました。

 大臣のDVDに百万円というのは、私の事務所経費にいただきたいぐらいの思いを率直に感じました。

 それはさておきまして、会長、コンプライアンスの委員会の提言というものは非常に厳しいというふうに私は認識しています。例えば形骸化しつつあるコンプライアンス施策や形式的な研修を見直せということ、今までのような研修では個々の職員の心にしみ込んでいかないのではないかというような、そんな思いは私自身も感じますし、コンプライアンス委員会の指摘もそうしたことになっておりますし、長きにわたって培われたこうした組織風土が一朝一夕に変わるものではないという指摘もありますし、ここはかなり厳しい痛みが伴う改革をしなければならないだろうというようなかなり突っ込んだ提言をされております。

 このあたりは非常に会長のイニシアチブというものが重要なポイントになってこようかと思いますので、決意だけで結構でございますので、お聞かせいただきたいと思います。

福地参考人 一つは、こういったコンプライアンスの問題は、私がどれだけ辛抱強く職員に訴えていくかということが一つございます。制度や仕組みだけつくりましても、なかなかそれはできません。

 もう一つは、不幸にしてコンプライアンスを犯した職員については、庶務規程の定める中で最高の罰をする、それが一つのあれだと思っています。

 過去数人でございますけれども、これは弁護士とも相談をしまして、庶務規程の中で最高に厳しい処罰をした、そういったことの繰り返しの中ではないかと考えております。

森本委員 そして、大河ドラマについてもう一件お伺いをさせていただきます。

 私の選挙区の一部に三重県津市というのがございます。全国で一番短い市の名前なんですが、昨年から藤堂高虎公の入府四百年の記念事業が開催されておりまして、この二十二日にフィナーレイベントが盛大に行われたところでございます。そこで市長が、始めは終わりなんだ、今からがまた頑張らないかぬというような、そういう言葉だったと思うんです、ごあいさつされましたし、その中で大河ドラマの実現が悲願だというイベントのグループの方もございました。

 そこでお聞きをするわけでありますが、大河ドラマはどのような経過を踏んで決定に至っていくのか、またその基準がどのようになっているのか、お伺いをいたします。

福地参考人 大河ドラマと朝ドラにつきましては、今、各地の行政を初め、市民、県民の皆様は大変熱心でございまして、まさに悲願だらけの感じがいたしておりますが、私どもNHKで、大河ドラマというのは、視聴者のニーズや時代の動きを酌み取りながら、長期的視野に立って企画検討委員会の議論を経て、制作局で企画を決めているということでございます。

 企画を決める際に強く留意しておりますことは、一年にわたって、あれは約五十回でございますから、視聴者の興味を引きつけ続けることができる、波乱に満ちた生涯を送った主人公が存在すること、主人公の生き方を通じて現代の視聴者にも時代に即したメッセージを伝えることができること、平安、鎌倉、戦国、江戸など、できるだけ時代的な偏りがないようにすること、それから、読者に人気のある、魅力的な原作があるかどうかというのもかなり大きなウエートになっております。

 そういったことがございますが、今後も幅広い視聴者の皆さんから共感をいただき、支持していただけるような大河ドラマを開発、制作していきたいと思っております。

森本委員 ありがとうございました。

 また、きょうの質問も少し頭の中へ入れておいていただければ大変ありがたい、そのように申し上げて、ここのところは終わらせていただきます。

 ただ、大河ドラマは、最近は主人公よりもむしろ陰の部分の方々が登用されておるように思います。こうしたことは、私自身、若い方々が例えばトイレを一生懸命磨いておられたり、歌舞伎町で朝早くからごみを拾われておる、こういうすばらしい若い方々を見て感激をいたしますし、やはり、陰といいますか、そうした目立たないところをクローズアップしていただけるというようなことは私はとても大事だなというふうに思っております。大いに期待をいたしておりますので、どうぞ今後も頑張っていただきますことをお願い申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 赤字予算と設備投資の問題でございます。

 最近では初めてNHKの赤字予算、これはデジタル化を含めた設備投資が原因ということはきょうも皆さんの質問でよくわかっております。次年度を含め二年間で赤字を解消するという見込みになっておりますが、それは大丈夫でございますか。それとまた、なぜ繰越金で収支差金とか債務償還、建設費を賄ったのかということ。赤字は赤字でオープンにしていけばいいのではないかという単純な疑問を私自身は持っておりますので、そのことについてお答えください。

福地参考人 三カ年計画策定の過程におきまして、二十一年度につきましては、受信料収入の確保と経費の圧縮に努めました結果、地上デジタル追加経費百億円を計上する前の段階におきましては、一般的な事業収支でございますけれども、これは六十九億円の黒字を確保することになっておりました。

 しかし、デジタル中継局の整備でありますとか、デジタル化に向けた調査などが進むにつれまして、デジタル電波が受信できなくなる地域への新たな難視聴対策でございますとか、混信対策などが必要であることがわかってまいりました。このために百億円の追加経費を計上することになりましたので、この結果、事業収支で二十九億円の赤字となったものであります。

 三カ年経営計画では、明二十二年度も同様に地上デジタル追加経費によりまして事業収支の赤字を見込んでおりますが、厳しい経済環境ではございますけれども、二十三年度には黒字化できるように受信料の支払い率の向上でありますとか、あるいは効率的な経営などに全力で取り組んでまいります。

 NHKの繰越金の問題でございますけれども、経費の削減や受信料の公平負担の徹底などによって生み出されたものでございまして、視聴者からお預かりしてある大切な財源であるというふうに考えております。したがって、二十一年度はどうしても財源の手当てが必要な経費に繰越金を使わせていただく。具体的には、地上デジタル追加経費による事業収支の赤字が二十九億円、金融機関からの借入金の返済等に二十五億円、地上放送の完全デジタル化のための建設費八百二億円のうち減価償却などで賄い切れない四十二億円、以上の九十七億円の繰越金を使用することになっております。

 あまねく日本全国において放送が受信できるように完全デジタル化を進めることは、NHKに課せられた大切な使命でございます。今回の赤字は、放送の完全デジタル化への取り組みを強化するために、あらゆる経費を見直した上の判断であるということを御理解いただきたいと思います。

森本委員 予算のテクニック上の問題はいいといたしまして、赤字は赤字でも、素直にこれだけの金額を赤字にしておいても、私は差し支えはなかったのではないかなという疑問でございます。これは中身は突っ込んでいますと時間がございませんので、次に移らせていただきます。

 共同受信施設をしっかりやっていただく。これは過疎地の過疎地、まあ、過疎地の過疎地というのはおかしいんですけれども、非常に電波に恵まれない地域になろうかと思うんですが、ここをしっかりやっていただくということは大変ありがたい。そうしますと、これは二十二年で完成すると考えてよろしいのでございますね。

永井参考人 お尋ねの件に関しましては、我々は、いわゆる辺地共聴を、NHK共聴と自主共聴と二種類ありますが、NHK共聴は二〇一〇年末までにやっていこう、同じように辺地共聴についても助成金等々を出して、今あるものについては二〇一〇年までにやっていこうということであります。ただし、その後、やはり新しく自主的な共聴で手当てをしたいというところが出る可能性がありますので、したがって、この対応については、助成金については平成二十八年まで続けるということにしているということであります。

森本委員 ありがとうございます。

 次に、デジタル化とケーブルテレビの関係でございます。

 市町村や民間のケーブルテレビは、設備投資をすればアナログ受信が可能なのか、そのほかにもアナログを見ることができる方法があるのか、お教えいただけますか。

永井参考人 CATVについてはデジタル化をかなりのところで進めていただいていますので、視聴者がデジタルテレビを買えば、それで見られるという状況であります。ただし、アナログテレビが終わって、アナログテレビが残れば、普通の一般家庭と同じように見られなくなるということになります。

 御指摘のところで、CATVの一番頭のところで、デジタルを受信して、それをアナログに変換するということは技術的には可能であります。ただし、そういう方式をすると、デジタルの放送画面というのは横長になっていますから、アナログテレビで見ようとすると、上下に黒い帯が出る。それから、ハイビジョンの画像はもちろん見られませんし、データ放送と言われているようなものは見られないということになります。それと、ケーブルテレビジョンのところによっては、チャンネル数がまだ少ないところには、そういう変換した別のチャンネルを送らなきゃいけないという問題も出てこようかというふうに思います。

 いずれにせよ、我々はこういうのをデジ・アナ変換と呼んでいるんですが、そういうことをやり出すと、結局は課題の先送りということ、それからもう一つは、アナログテレビが使えるんだというところからデジタルテレビの買い控えになるおそれがあるということでありますので、我々としては慎重な検討が必要だと考えております。

森本委員 そこのところは、もったいないという思いと交差いたしますので、あえて質問をさせていただいたわけでございます。これはいい方法がないのかな、そんな思いも同時にしております。

 それでは、時間の関係もございますので、最後の質問になろうかと思いますが、受信料収入一〇%還元、この話もきょうは出てまいりました。

 特に、私は、先般、NHKの番組で、たしかテレビ離れのドキュメントのような、新聞、テレビ、インターネットでしたか、そうした番組を見せていただいておって、かなりテレビ離れが進んでおるなと。受信料支払いが三年で七五・五、五年で七八%という目標を設定されておりますが、今、寺田委員の質問にあったように、私は、その目標達成のためにかなり無理をされるとか、そういう思いの中でこの受信料の一〇%還元が果たして可能なのかという問題意識について最後にお伺いをさせていただいて、終わらせていただきます。

福地参考人 御指摘のように、インターネットなどが視聴者の皆様にとって身近なメディアになります中で、NHKは、放送を軸としつつ、インターネットや携帯端末などにも、さすがにNHKだと言っていただけるような信頼できる情報やNHKならではの豊かで多様なコンテンツをお届けすることで接触者率を高めてまいります。「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」を目指すということは、つまり接触者率を高めるということは、受信料の支払い率の向上にもつながるものでございまして、この受信料の支払い率の問題と接触者率を経営の重要な二目標に設定したわけでございます。

 一方で、営業活動におきましては、訪問集金の廃止に伴いまして、そちらに用意しておりましたパワーを未契約者、未収者の対策に振り向けていきましたり、あるいは民事手続の活用、あるいは事業所割引を活用した事業所対策の強化など、さまざまな施策を展開してこの支払い率の目標を達成していきたい、そういうふうな覚悟をいたしております。

森本委員 ありがとうございました。

 今、黄川田委員の質問の中で、人間に優しいテレビということを会長はおっしゃられました。どうぞ、信頼を高めて、そして地域が元気を取り戻していけるような番組づくりを期待して、きょうの質問を終わります。

 ありがとうございました。

森山(裕)委員長代理 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 お手元に今資料が配られるかというふうに思いますけれども、ことしの一月一日のNHKで流されましたニュースを題材にして、幾つか議論をさせていただきたいと思います。

 お手元の資料を、配られましたら、ちょっとごらんいただきたいんですけれども、一月一日にNHKでこういうニュースが流されました。「会計検査院は、ことしから、国が自治体に配分している総額十六兆円に上る「地方交付税」について、本格的な検査に乗り出すことがわかりました。」、途中を省略いたしますけれども、「地方交付税は、本来、地方が集めるべき税金を国が代わりに集めて配分するもので、補助金と違って使いみちが制限されず、検査の対象にはなりにくいものでした。しかし、自治体によっては、ずさんな使い方がされているという指摘もあることから、四月に専門のセクションを新設し、検査に乗り出すことにしたものです。」「会計検査院は、使いみちなどを詳しく調べることにしています。」、こういうニュースが流れたわけであります。

 このニュースが流れて、元旦ではありましたけれども、私のもとに全国の自治体の皆さんからメールなどが入りまして、いや、逢坂さん、これは大変なことだな、交付税の使い道まで会計検査で調べるなんというのは、NHKのニュースだし、これは本当なのかというような問い合わせが随分入ったわけです。

 その後、私が会計検査院に確認をいたしました。このニュースに関して会計検査院は取材を受けましたかというような話を聞かせていただきましたら、会計検査院から、今回の報道に先立ちNHKの取材がありましたということであるんですけれども、本院が説明した内容と一部合致しない部分がありますという回答をいただきました。

 まず一つは、四月に専門のセクションを新設とされている点だけれども、専門のセクションを新設する予定はありませんという会計検査院の回答です。それからもう一方、NHKの取材に対して、使い道などを詳しく調べると説明した事実はないということを会計検査院は言っているんですね。

 実は、自治体関係者にしてみれば、これは極めて当たり前のことでありまして、セクションをつくるかどうかという話は別なんですけれども、地方交付税の使い道を会計検査院が詳しく調べるということは、地方交付税法の趣旨に沿うと、全くおかしなことというふうに言わざるを得ないんですね。

 地方交付税法第三条二項には、「国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」というふうに規定されているわけです。すなわち、地方交付税というのは、一般の補助金と違って、渡されてしまったものはどう使おうと、それは基本的に自治体の自主性や自律性によってやるということなわけですね。そういう点からしますと、今回の報道は、自治体の関係者がこれを聞いた途端に驚くのは、これは無理からぬことなわけであります。

 もちろん、地方交付税をどう配分するかとか、その配分基準が正しいかとか、その基準に沿って正しく配分されているかということは会計検査院の検査の対象になるというのは当然のことだと思うんですけれども、使い道まで会計検査院が詳しく調べるというのは、これは本当におかしいというふうに、地方交付税をちょっと知っている者だったらぴんと気がつくような内容なわけであります。

 元旦にこういうニュースが流れて、一部、会計検査院のお伝えした内容とも違うこと、事実誤認と思われるようなことも含まれると同時に、法の趣旨に照らしても何かおかしいというような報道がされるわけですね。

 そこでNHKにお伺いしたいんですけれども、こういうようなことがあって、私は、報道に当たる記者といいましょうか、報道に当たる皆さんのトレーニング、能力の向上、そういうのをどういうふうにしてやっているのか。これは自治に関する報道をするからには、交付税とは何ぞやぐらい知らないでこういう報道をしてはまずいというふうに思うわけですね。

 まず、研修やらスキルアップということで、どういうことに心がけて具体的にやっておられるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

日向参考人 研修体制についてですけれども、基本的には、入局してから一年目、二年目、三年目、それから四年目と、組織的に研修を行っております。その中で、先ほど来申し上げておりますような正確さ、それから、一つの情報をうのみにするのではなくて裏づけをちゃんととるとか、そういう基本を、現場、職場の中、それからいわゆる講座、そういうものでやっております。

 それから、もちろん、日々の取材、それからニュースの送出に関しては、出稿する記者だけではなくて、それを管理、監督するデスクとかその上司とか、複数の人間がその情報についての正確性、公正性をチェックしながら日々のニュースを出しているということでございます。

逢坂委員 今のお話からしますと、記者としての、報道を担う者としての能力を高めるという研修を特に力を入れてやっているというふうには聞こえなかったわけであります。一般的な研修のように聞こえたわけですね。要するに、ちゃんと報道の裏をとるとか、そういうふうに聞こえたんですけれども。

 私は、これは実はNHKに限らず、最近のマスコミの記者さんの話などを聞いておりますと、やはり日々の仕事に追われている、そして常に新しいことが降ってくるわけでありまして、日常的に走りながらやっているというのが現実ではないかというふうに感ぜられるわけです。

 しかし、特に、先ほどの私が出した例も、NHKで流れたんだからこれは本当かいというような意識を国民が持つというのも事実だと思うのですね。だから、一般的な放送に携わる人の研修以外に、報道に携わる者のスキルをもっと高めるための研修というのは要るのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

日向参考人 御指摘のとおり、今、社会が物すごく複雑になっておりまして、いろいろな知識を要求されるわけですね。したがって、今年度から報道局の中にも特別のチームをつくって、日々の取材に追われることなく、継続的にさまざまなテーマについて情報を蓄積しながら、それをもとにして日々のニュースが解釈できるような専門性を高めたチームをつくっていこうということで、ことしから始めております。

逢坂委員 そこで、この一月一日の報道を例にとってまたお伺いしたいのですけれども、先ほどいろいろなレベルでチェックをしているというようなことがございましたけれども、報道された内容の事後検証みたいなことはやられているのでしょうか。

日向参考人 もちろん、行っております。御指摘のニュースについても、十分な取材、それから裏づけをしたということを確認しているというふうに聞いております。

逢坂委員 十分な取材、裏づけをしたというふうに聞いているということでありますけれども、残念ながら、どうも会計検査院の話を聞くと、そうでもないということでありますし、もう一つは、内容そのものが法の趣旨に照らすと適切だったというふうにはなかなか言い切れないのではないかという部分もありますので、ぜひこういう報道がされないように、大変大きな問題について裁判になるとかならないとかという問題もあるようでございますけれども、私は神は細部に宿ると思っていまして、こういう報道のわきの甘さというのが、実は全体的に何か報道に対する質を落としているのではないかと思うのですけれども、会長、いかがですか。

    〔森山(裕)委員長代理退席、委員長着席〕

福地参考人 先ほども申し上げましたけれども、報道につきましては迅速で正確ということについて、特に私は、現場で現物を現実にという、現場主義といいますか三現主義といいますか、取材についてもそうだというふうに考えております。そういった中から正確性を担保していかせたいと思います。

 それから、先ほど御指摘のありました事後のチェックでございますけれども、考査室というのがございまして、私は考査室の存在というのを非常に重視しておりまして、番組のようなものは事前にできますけれども、ニュースのようなものは事前にできない。毎日毎日もなかなかできない。しかし、少なくとも一週間なら一週間の期限を定めて、不偏不党が貫かれているかどうか、そういったものを担保しろということを指示いたしております。

 以上です。

逢坂委員 報道には正確を期すと。そして、内容も、ちょっと見ただけで、ちょっと聞いただけで、これはおかしいと思うような報道は流さないようにぜひ御留意いただきたいなというふうに思います。

 そこで、次の質問に移りたいと思うんです。

 先ほども若干話が出ておりましたけれども、先般、実は民間放送連盟の皆さんからお話を伺う機会がございまして、その話によりますと、今、日本の地上波百九十四社のうち、二〇〇八年度の中間決算によれば、九十二社が赤字になっているということなんですね。しかも、お手元に資料を用意させていただきました、折れ線グラフの資料があろうかと思います。折れ線グラフの資料を見ていただければ、二〇〇四年度から二〇〇八年度の中間決算まで、下向きになっている点線がローカル局の経営状況でございます、どんどん収益状況が悪くなっている。それから、四角い白いドットがございまして、それを実線で結んでいるのが東京と大阪と名古屋にあるいわゆるキー局と言われるようなところの収益、経営状況でございますけれども、経常利益の前年比伸び率もどんどん下がっているということであります。

 民間放送事業者は、今、相当厳しい状況に追い込まれている。そしてまた、これは二〇〇八年度の中間決算でありますけれども、今後、さらにこの状況はプラスではなくてマイナスの方へ進むのではないかというふうに言われているわけですね。一方、会長、NHKの場合は、いろいろ受信料の高い低いはあるでしょうけれども、安定的な財源といいましょうか、ある一定程度は持っているわけですね。

 こういう状況の中で、民間放送事業者は、収益が減ってくると、放送内容も変えざるを得ないといいましょうか、あるいは余りコストをかけられないというようなことになっていく、場合によっては質が劣化をするということだって懸念されるわけですよね。こういう状況の中にあって、NHKというのはどういう役割を果たさなきゃいけないかというふうにお考えでしょうか。

福地参考人 私は、会長就任のときに、もう一年前ですが、番組の質を落とすようなコストカットはしませんということをまず最初に宣言しました。しかし、さりとてNHKが番組の制作に何ぼ使ってもいいということにはなりませんし、第一、今度の中期計画の、来年の予算もそうでございますが、赤字予算でございます。フルデジタル化の投資が多くて赤字予算です。

 しかし、赤字予算の中におきましても、キャップシーリングをいたしまして、ふやすことはできませんけれども、放送の制作に係る番組の質や報道の質を落とすカットはしない、そのためにはほかからシフトしないといけませんが、そういった資金のシフトをしまして番組の質を担保したい、予算上もそういうふうになっておりまして、私の気持ちもそういうところでございます。

 NHKでしかとか、NHKだからとか、そういった番組づくりをこれからも心がけていきたいと思っております。

逢坂委員 もう一点会長にお伺いしたいのですけれども、今お示ししたように、キー局の営業状況に比べてローカルの方は非常に悪いということになりますと、地方の放送局の独自性というのがどんどん失われる可能性があるわけですね。自分のところで放送番組をつくるよりも、キー局のものをそのまま流していた方がよいのではないかという傾向にもしかすると民放がなるおそれがあるわけですね。

 それで逆に、今、日本の国内で言われていますのは、外需頼みの経済から、内需だ、内発型の産業を育てなきゃいけない、あるいは地域がしっかりしなければ実は国家全体の力もないというようなことも指摘されるようになってきているわけですね。そういう観点から考えてみますと、NHKこそが地域発信型の、いわゆるローカルを重視した放送にもっと力を注ぐべきではないかと思うのですけれども、会長、いかがでしょうか。

福地参考人 今おっしゃられているような、地域の力になるということは、全国に五十三放送局を持っておりますNHKがなすべき大切な仕事だろうと思っております。そういった中で、ことしの九つの方針の中の一つに地域の力というのを入れております。これは何も放送だけに限りませんけれども、私は、地域と中心がインタラクティブなコミュニケーションの関係にないとやはりうまくいかない。そういった中で、NHKの場合にも、地域の力になるということを中心にしております。

 いろいろあります。地域の力というのは、では人と物と金といった経営資源はどうなのか。全般に人が減る中で、この計画の中で地域のジャーナリストを中心に五十名ふやしてまいります。それから、企画、総務部門に地域は二十名ふやしてまいります。金額は、そこまで大きくはございませんけれども、億単位の金をふやしてまいります。

 そういった経営資源の問題と同時に、もう一つは、地域が一番力づくのは、地域でつくった番組、報道を全国に流してやるということですよね。地域の制作者たち、記者たちは、自分たちが地域でつくったものを地域で流してもおりますけれども、昨年もそうでございましたけれども、そういう枠を随分ふやしてまいりました。地域のいい番組が全国に流れますと、そこの放送局、山口もございましたし、岡山もございましたし、北九州もございましたけれども、直接私は局長に電話して、おれも東京で見たよ、非常によかったよと。非常に励みになるというふうに思っておりますが、そういったことをこれからも心がけていって、今地域の放送局は時間を長くすることは求めておりません、地域の質をよくして、それを全国に流してもらうということの方を喜んでおるようですが、そういったことに心がけてまいりたいと思っております。

 以上です。

逢坂委員 ぜひ、福地会長、そういう方向で頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、総務大臣にお伺いしたいんですけれども、今の民放のような経営状況の中で、総務大臣としては、NHKがどんな役割を果たすべきだというふうに思われますか。民放の経営状況がどんどん悪くなりそうな気配、現に今なっている。そういう中で、NHKというのはどんな役割を果たすべきだというふうにお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 確かに、民放の状況が非常に厳しくて、百二十七社中五十五社、四三%が経常赤字だという報告を受けております。民放はそういう中でも地上デジタル放送への投資負担があるわけですから、余計厳しくなっておりますし、現下の経済状況で広告収入激減ということだろうと思います。

 したがって、民放各社が中継局整備などをしていく場合、地デジの問題は国策でございますから、過疎地等の条件不利地域において中継局建設などは国も支援をしようということでやっております。ただ、民放が、だから地デジ関連で一兆円を超す投資を迫られるということなんだろうと思いますから、地デジと民放ということでいえば、これは大変な努力をしてもらっているから、国も国策として決めた以上はお手伝いをしなければならないと思っております。

 いわば民放は栄枯盛衰がある。NHKはその点は安定しているというか、唯一の公共放送で、受信料を財源にしているだけに安定感があるわけですから、だからこそ公共放送としての責任は重く、倫理的にもより高いものが求められて、あるいは不偏不党という点、放送法三条の件も民放以上に強く求められているというふうに私は解釈をしておるわけでございます。

 もともと受信料によって成り立っている、会社ではありませんが、いわば特殊法人。これは、郵便局会社、郵便事業会社も特殊会社で、やはりこれも国民のさまざまなお金で成り立っているという部分がある。だから、そういう公共のものには公共の役割があるということで、NHKはより厳しくみずからを律してもらいたい。また逆に言うと、公共というか、国民共有の財産をバルク売りするようなやつらは許さぬ、こういうことでございます。

逢坂委員 御丁寧に答弁いただきまして、ありがとうございます。

 それで、大臣、実は地デジについて随分国民にも広がってきたかなというふうに私は思っているんですが、広がってきたというのは、実際の普及率がどうかということは別にして、地デジというものに変わるんだねということはわかってきたように思うんですが、今ここに来て、国民の間からこんな声が出ているんです。逢坂さん、何で地デジにしなきゃいけないの、何でこれはテレビを買いかえなきゃいけないの、地デジは黙って映るんじゃないのというようなことがあって、国民の皆さんは、地デジに変える意味、理由、なぜ国がこれを推進しているんだというのが実は余りよくわかっていないというか、今になって疑問を持ち始めている。

 だから、それは広がってきたということの裏返しでもあるとは思うんですが、大臣、この点、もっと私はPRをする必要があると思うんですが、この点をお伺いして、終わりにしたいと思います。

鳩山国務大臣 私のように、こうしたものに決して得意でない人間が総務大臣になりますと、このPR不足というのは決定的だということがよくわかります。

 例えば、きのう、私は見たんです、あのイチローのセンター前の二点タイムリーを。見事に映ったんです。ちょうど国会から役所に戻る間のテレビで見たわけです。私のふだん乗っている私自身の車のテレビというのは、大体、ピッチャーがいつも三人いて、バッターが三人いる、三カ所に球が飛んでいく。これがアナログとデジタルの違いなんですね。

 こういうことをもっともっと宣伝する。あるいは電波が三分の一節約される話もある。データ放送とかいろいろあります、一つの番組で二つ見られるとか。地デジの宣伝は、これはまだ全く足りないと思います。一生懸命やります。

逢坂委員 終わります。

赤松委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 福地会長におかれましては、一年二カ月、大変な御苦心、困難もおありだったかと思いますが、外目に拝見しておりましても、大変安定感のある御発言、御答弁、そして経営手腕、何か内部の信望も非常に厚いように、外目ですけれども感じております。まずは心から敬意を申し上げたいと思います。

 福地会長の我が党内の勉強会における御発言の中で、視聴率にとらわれない番組づくりをやりたいんだと。これは本当に期待をしたい問題提起でございますので、主にこの点を議論いたしたいと思うわけですが、ちょっとその前に、二、三各論でお尋ねをしておきます。

 小丸経営委員長におかれましても、御就任からわずかに三カ月、これも大変困難なお務めかと思いますが、これは残念なことかどうかわかりませんが、確認だけさせてください。

 経営委員長の御出身であります福山通運の山陰地方の関連会社が、収納業務を請け負われてその業務に当たっておられる、この事実関係と、それから、そのことに対する御自身なりの是非の御判断をまず冒頭いただきたいと思います。

小丸参考人 私は、みずからが経営委員という立場にあることは深く認識をしており、その職責を利用しての、特別な利益を図るというようなことは断じてございません。

 御指摘のありました委託契約は、NHKが郵便事業会社との契約を廃止し、かわって山間部や遠隔地での契約収納業務を引き受ける業者がいなかったため、この地域に配送ネットワークを持つ福山通運に対しNHKから要請があったものであり、受信料の公平負担のお手伝いをしたという意味合いも含めてお引き受けをした次第でございます。

 したがいまして、私が経営委員を務めていたことが契約に影響したことは全くございません。この件につきましては、私が委員長に選任された際、経営委員会に報告し、問題ないとの見解をいただいております。

 以上でございます。

小川(淳)委員 全部で五百六十件の徴収業務に百六十万円ということですが、たしかNHKさんの受信料というのは一カ月当たり千三百円前後ですか、これを収納するのに、平均しますと一件当たり三千円の費用がかかるというのは、事実関係は間違いございませんか。また、その点に対する評価はいかがですか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 福山通運の業務を委託している地域は山間部であり、訪問すべきお宅が点在しているなど、収納業務に時間と手間が大変かかる地域となっています。また、委託している業務も、口座振替やクレジットカードの継続振替に応じていただけない契約者からの集金や、払い込みをお送りしたにもかかわらず、期日までに払い込みをいただけない契約者からの集金となっております。こうした地域、業務の困難性や他の委託業者との比較も踏まえれば、コスト的には十分見合っているというふうに考えております。

 以上でございます。

小川(淳)委員 物事のおっしゃり方もあると思うんですが、千三百円の受信料、一件あたり徴収に三千円かかっている。それはいろいろ地域的な事情もあるでしょう。

 福地会長には、もう一年三カ月のお勤めですから重々御承知かと思いますが、現在、NHKに対する国民・視聴者の信頼度は約五割、受信料の収納率は約七割。昨年この質疑の機会をいただいたときにも指摘をいたしました。イギリスのBBCは、信頼度が七割、収納率が九割であります。非常に高い志を持ってこれからも改善に努めていただかないといけないわけですが、既に会計検査院からの指摘もあったと思います、全部でグループ会社が三十二法人、千四百件の委託業務のうち、千二百件は随意契約等々の数字もございます。

 経営委員長、ここは改めて御見識をいただきたいんですが、運送関係でのお勤めから、新しい分野、しかも大変公共性の高い分野へ御就任された。その一点をもって、その事実をもって、今般、例えばこの総務委員会の関係でいえば、かんぽ施設の売却問題、あらゆる適正なプロセスをたどった結果オリックスが想定されましたというのが最初の御説明でありました。こういうことが議論になること自体を非常に抑制的に、謙抑の観点から、さまざまな取引関係、立ち居振る舞いを今後お願いしなければならないと思いますが、その点についての御見識だけいただいて、この点は終えたいと思います。

小丸参考人 まず、いろいろな立場におきまして、冒頭先生の方からおっしゃいました収納業務につきましても、公平公正で、私どもの方の業務の一環としてそれをやっているのでありまして、そのあたりのところを御認識していただきたいと思います。

 それから、経営委員会のガバナンスといいますか、執行部に対しては監督をもっと厳しくしていかなきゃいけないというふうに今後とも思いますので、そのあたりのところを、一生懸命業務に精通していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小川(淳)委員 今おっしゃったとおりです。経営委員会は執行部を監督される立場におありですから、なおさらのこと。なおさらのこと、御自身の関連会社を含めて、さまざまなことには慎重な上にも慎重な御配慮をいただきたいと思います。

 それからもう一点、少し気になる、昨年も議論させていただきました、NHKの雇用形態に関してでありますが、福地会長、現在世の中で派遣労働等に対する、これは本当に私は政治サイド、雇用市場の組み立て方そのものに関する責任が重大だと思っておるわけでありますが、NHKが盛んに人員削減をPRしておられること、これはこれで結構だと思います。いただいた受信料をできるだけ効率的に番組制作に専念をして反映していく、これはこれで結構だと思います。

 そこで、五年前一万二千人近かった職員は、二十年度の見込みで一万八百人、千人以上の削減。これは計画どおり順調に進めておられるということでしょう。そして、来年度からさらに四百人程度の要員削減、純減で百人という計画もございます。一方、有期雇用が千七百名、派遣労働が一千名、全部で二千七、八百前後。

 福地会長、昨年こういう御答弁をいただきました。ここ数年、派遣労働等の非正規雇用については、一定規模、二千八百人前後で大体推移をしているので、現在のところ、要員の削減が非正規の増加にそのままつながっているというふうには見ておりませんという御答弁をいただきました。これは、現在も同じ認識でよろしいですか。

福地参考人 お答えから申し上げますと、昨年と同じお答えでございまして、非正規雇用の職員を今大幅に減らすことは全く考えておりません。いずれも大変いい仕事をしていただいております。それから、正規雇用についても、十六年の不祥事以降、受信料が大幅に減りました。そういった関係で、人員削減も三年間で千二百名ということをいたしまして、もう今ほぼ限界に近づいております。

 そういったことで、正規、非正規を問わず、当分の間はそう大きな人員の削減は私はないというふうに考えております。

小川(淳)委員 福地会長の、大体非正規雇用が二千八百人前後でそんなに大きく推移していないという御答弁、これは、ここまでは確かにそのとおりです。しかし、よくよく中身を見ますと、有期雇用契約は、五年前一千九百名、現在一千七百名、雇用期間が限定された職員数は確かに二百人ぐらい減っているんですね。

 一方、派遣労働、これは今世の中で最大の問題になっています。派遣労働は、同じ五年前七百名前後から、現在一千名を超えている。これは、同じ非正規雇用というくくりの中で見ても、さらに不安定な方へ移行しているんじゃないですか。いかがですか。

福地参考人 これは人数から割り出したものでなくて、仕事の内容から結果的にそういうふうになったというふうに判断をしております。

小川(淳)委員 ここはやはり財界の御出身であるだけに、経営委員長もそうです、会長もそうです、一概にこれを悪いとは私は言えないと思います。むしろ、この雇用市場の組み立てを成長期のままほったらかしている政治の責任が重大だと思います。しかし、NHKという公共放送体ですから、その体質、体の成り立ちそのものが、やはり弱い立場にあられる方々にしわ寄せをしたり、あるいは同じ労働をしているはずなのに非常に賃金が低められていたりということであってはならないと思いますので、この点は引き続き、ぜひ経営陣としても御留意をいただきたいと思います。改めてことしも指摘をしておきたいと思います。

 さて、現在、平成十六年の不祥事以降、途中インサイダー取引等もございました、引き続き、NHKは信頼回復に向けた途上にあるというふうに理解をしたいと思います。

 そこで、NHKの約束評価報告書、昨年の五月に発表されたものを拝見いたしました。約束評価委員会というのはどういう組織で、NHKの事業に対してどんな役割を果たそうとしているのか、改めてちょっとそこを確認させてください。

金田参考人 約束評価委員会は、平成十七年度から、会長の諮問機関としてスタートしました。今年度までのめどでありまして、基本的には、執行部が事業計画に基づきましてお約束をした上で、その約束の達成状況を外部の客観的な目で評価いただく、そういう諮問機関でございます。

 十九年度の評価が最近のものでございまして、二十年度の評価が六月に出る予定でございます。その時点で新たに、先ほど御説明をしました、視聴者視点によるNHK評価委員会に改組する、そういう計画になっております。

小川(淳)委員 拝見しますと、さまざまな角度から、いろいろと指標を整理しておられます。

 これは資料をお配りすべきだったんですが、まことに申しわけありません、ちょっと口頭で御説明しますが、幾つかのNHKに対する評価指標を、約束委員会が五点満点で評価しています。一方、一般視聴者の方々の調査結果をわざわざ併記して、同じく五点満点で評価されている。

 一番目、放送の信頼性に関して、一般視聴者の方々は五点満点の三・二ポイント、評価委員会は三・八、割高な評価になっています。経営に対する信頼性、一般は二・四、評価委員会は二・八。必要性に関しては、一般が三・二に対して評価委員会は三・九。社会貢献は、三・二に対して評価委員会は四・一。効率性に関しては、二・七に対して三・一。これはいずれも内部に甘いんじゃありませんか。いかがですか。

金田参考人 今御指摘の数字は、十九年度の評価報告書に載っている数値かというふうに思います。

 御説明のように、信頼性、必要性、社会貢献、効率性・効果性につきまして、四項目、九ポイントにつきまして評価をいただいていまして、五が十分達成している、一が全く達成していない、この評価でございます。その数字が、視聴者にお聞きした数字と委員会の評価が違っているという御指摘でございます。そのとおり、違っております。

 まず、視聴者にお伺いしたのは、そういうことで十分達成しているとお考えかどうか、それでお問い合わせをして平均を出したもの、こういうことでございます。

 それで、NHKの評価委員会の方は、放送サービスやイベント、受信料の公平負担など視聴者から見えやすい部分については視聴者の調査というのは有効であろう、内部統制の仕組みとか効率的な事業運営など経営に関する部分の評価については、視聴者調査等の定量分析だけでは実態把握は難しいということで、約束の項目、これは全部で細目が二十三項目ございます、それを評価委員会の方で評価されまして、その評価結果を、先ほどの信頼性、必要性の四項目、九ポイントと相関の分析をした上で、それを四項目、九ポイントに評価し直している作業をされています。つくり方が違いますので、その結果、評価レベル、数字のレベルは違っております。

 しかし、その結果、先ほどの中でも、放送の信頼性、あるいは必要性(役に立つ)、社会貢献(質の高さ)(影響力)(先見性)、これらは視聴者の評価も委員会の評価も相対的には高いところに位置しております。一方、経営の信頼性、必要性(親しまれる)(接触の度合い)、この辺が低く、また効率と効果性も相対的には低い評価になっています。

 ということで、このたび計画しました三カ年計画では、特に、この低い経営の信頼性とか、必要性(親しまれる)(接触の度合い)、効率と効果性、こういうところに重点を置いた経営計画を策定しているというところでございます。

 以上でございます。

小川(淳)委員 こういうものは、わざわざ外部の先生にお願いしてやっているわけでしょうから、全体の信頼性を高めるためにも、むしろ一般より厳しい評価をするぐらい、中をごらんになったからこそあっていいと思いますよ。数字の調整という御説明は、後づけでは可能でしょうが、むしろ報告書全体の信頼にかかわると思います。

 その点を指摘した上で、福地会長、おもしろい考え方だと思いました。このバリュー・フォー・マネーですか、ヨーロッパで公共サービスの費用と便益をはかる観点から発達した概念だと思います。

 それによりますと、NHKに対して受信料をこれぐらい払ってもいいなと思う方々の平均値が千八百十四円、実際の受信料が総合テレビですと千三百円余りですから、五百円ぐらい視聴者が払ってもいいと思う金額が多いわけですね。これは真に受けていいんですかね、さっきみたいな話からすると。また、こんな計算もされています。事業の支出額が六千億、一人当たり千八百円払うとおっしゃっているということは、それに契約数を掛けますと一兆円近い、だからNHKは費用対効果が一・五倍だ、一・六倍だという説明がありますよ。

 これは、概念の立て方としては私は否定しません。しかし、さっき申し上げました、そもそも徴収率、収納率は七割ですからね。それは払いたくても払えない人もいるでしょう。いろいろな思いがそこは複合していると思いますが、これは、やはりせっかくこういう報告書をつくられるのなら、一人当たり千八百円、これに契約者数を掛けますと一兆円だというような甘い評価をあえて公表されるというのは、十分注意が必要だと思います。

 会長、ごめんなさい、もう時間が切れました。この点と、それから、どうやって視聴率にとらわれない番組づくりをするか。これは私、財界におられたから余計に思うんですが、アサヒビール、会長が以前おられた会社は、果たして、収益を伸ばすことと経費を小さくすること、この二次元的な物の考え方から、どうやって社会貢献とか公共性とか公益性とかいうものを入れていくのか。これは二十一世紀的な課題だと私は思います、去年の秋以降特に。

 そこで、先ほど来、過剰な報道等についても議論になっていますが、これもやはり視聴率に引っ張られている結果が多分に影響していると思います。こういう、もちろん視聴者の側からの満足度と、それから視聴率にとらわれない番組づくりをするとすれば、具体的にどうすればいいのか。これは会長の一般的な御見解をいただくにとどまると思いますが、最後にそれをいただいて終えたいと思います。

福地参考人 実は、今年度の上期、ゴールデンタイムでNHKが、NHKができて初めてだそうなんですが、視聴率ナンバーワンになりました。私は、放送関係だけじゃなくて、広報も、いろいろな部門をひっくるめまして幹部を集めまして、なぜとれたかというのは、視聴率をねらわなかったからとれた、そのとおり申しました。

 前職の場合でもそうですけれども、ビール四社ありまして、四社、シェアを低くてもいいと思っているところは一人もありません。みんなやはりシェアが上がりたいと思っています。同じように、我々放送業界の中でも、視聴率を上げたいと思っております。

 しかし、視聴率を上げるということが先に来てしまいますと、相手が何をしているかということが気になってしまって、まず自分が本当にお客様に対して、お客様が求めている番組をつくっているのかどうか、それがおざなりになります。まずはやはり足元を見てきっちりとした番組をつくるべきだ。

 例えば、紅白歌合戦で四二%になりました。なぜか。「歌の力 ひとの絆」という、歌に力を入れたからだ、いろいろな応援団とかなんとかじゃなくて、歌に力を入れたからよかったんだ。オリンピック放送も、オリンピックのスポーツ報道に力を入れたからよかったんだ。まずそういった、お客様が何を求めているかを中心に見てほしい、その結果だということであります。

 以上であります。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。NHK予算案について質問をいたします。

 最初に、小丸経営委員長にお尋ねをいたします。

 小丸経営委員長が社長を務めます福山通運の子会社、山陰福山通運が、山口、鳥取、島根、兵庫県の一部地域でNHK受信料の契約収納業務を受託していたという件についてであります。

 放送法を見ますと、経営委員の内閣総理大臣の任命に当たって、放送法が国会の両議院の同意を必要とすると規定をしておりますのは、経営委員会が全国民的な了解と支持のもとにあるべきとの考えだと思います。直接の利害関係者である国民の意思を経営委員の選任に反映させることが必要であることから、両議院の同意を必要としておるわけです。

 そこで、お尋ねいたしますが、国民の代表たるべき経営委員が、国民である受信者と直接の利害関係を生ずる受信料契約や受信料収納を行う業務に携わることは不適切ではないかと考えますが、お考えをお聞かせください。

小丸参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました委託契約は、先ほども御説明を申し上げましたが、NHKが郵便事業会社との契約を廃止し、かわって山間部や遠隔地での契約収納業務を引き受ける業者がいなかったため、この地域に配送ネットワークを持つグループ会社でございます、子会社でございますけれども、山陰福山通運に対しましてNHKから要請があったものであり、私が経営委員であることは関係なく結ばれたものであります。したがって、この契約により私の経営委員としての活動が何らかの影響を受けるということはございません。

 以上でございます。

塩川委員 放送法の趣旨に立ち返ってお考えいただきたいと思うんですが、経営委員が受信者と直接の経済的利害関係のある立場に身を置くというのが適切かどうかという問題であります。

 今回の二十一年度の予算、事業計画及び資金計画議決に当たっての経営委員会の意見というのが出されております、これは小丸経営委員長のもとで出された意見でありますけれども。その中には、外部委託の一層の活用により、契約総数目標の上積みを図ると求めておるわけであります。ですから、小丸経営委員長が経営をされるその会社に受信料の契約収納業務を委託している、そして経営委員会の立場で外部委託の一層の活用を図れ、契約総数目標の上積みを図れと求めている。これは極めて密接な関係があると言わざるを得ません。

 みずから経営する企業の受信料契約業務の受託を拡大することにもつながる意見を経営委員長の立場でNHK執行部に要請するということは、適切だと言えるんでしょうか。改めてお尋ねいたします。

小丸参考人 お答えを申し上げます。

 まず、放送法上では問題がないと認識をしております。

 福山通運グループは運送会社なので、あらゆる企業や個人の方々までもお客様としております。大きな企業であれば、何らかの形でお取引をしているというふうに私は判断をしております。したがいまして、NHKとの取引は、福山通運グループといたしましても、売り上げに対しては〇・〇四%でございまして、特別な利害関係には当たらないと考えております。

塩川委員 金額の多寡の問題ではございません。みずから経営する会社の業績にかかわるような、NHK受信料の契約収納業務の拡大にも結びつく意見を経営委員会のお立場で出されている、この点について適切だと言えるのか。もう一度お答えいただけますか。

小丸参考人 本件は、山陰の特殊な地域でございまして、委託をされる業者の方がいなかったという過程もございます。先ほども大西理事の方からの説明があったとおりでございまして、そういった場面でありましたので、当社がやむを得ず、受信料の公平負担という立場から、私どもが業務委託をしたわけでございます。

塩川委員 そうしますと、経営委員会として、NHKが大変だからみずからの企業が対応するようにしたというふうに受け取れますけれども、いかがですか。

小丸参考人 何度も申しますけれども、大変山間部でございますし、過疎地でもあるということで、私ども非常に西日本のネットワークは強うございます、そういった形でもって私どもの方に依頼が来たというふうに私は思っております。ですから、私が経営委員とかなんとかということではなしに、営業の一環として現地のレベルでは考えて実行したものだと思います。

塩川委員 改めて、特定利害からの独立が求められる経営委員の立場として慎重であるべきだということを申し上げておくものであります。

 次に、経営計画に基づく受信料契約目標に関連してお尋ねをいたします。

 二〇〇八年七月八日の経営委員会に出されました資料で、「次期経営計画について」というのがございます。受信料収入の推移と見通しに関して、ここでは、「リスク要素(アナログ停波による契約廃止・変更)」というふうに記載されている資料が出されておりました。

 その中では、アナログが停波をします二十三年度に、見込みとして、契約総数がマイナス八十三万件、衛星契約がマイナス百五十一万件、計マイナス百九十五億円の減収ということが記載をされておるわけですけれども、経営計画においては、このようなアナログ停波に伴う支払い率低下のリスクというのは織り込まれているんでしょうか。お尋ねします。

福地参考人 結論から申しますと、含まれておりません。

 経営委員会に提出いたしました資料は、経営計画をつくります過程でリスク要素を想定しておくことが重要であるというふうに認識して作成したものでございます。

 経営計画では、アナログ停波に伴うリスクが顕在化しないように平成二十三年の完全デジタル化を円滑になし遂げる施策を盛り込んでおります。こうしたリスクが現実のものとならないように、経営計画に掲げました施策に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

塩川委員 この参考資料の中では、総務省の地上デジタル放送に関する浸透度調査で、アナログ放送終了後も購入予定はないと回答した二・八%、この部分がデジタル受信をしない場合に、地上四十八万、衛星三十五万件が契約廃止と想定する、これ以外にも若干記載がありますけれども、このように想定されることというのが掲げられて、リスクとして取り上げられているわけですけれども、その内容について、実際には経営計画の契約目標については反映はされていないというお話でございました。

 こういう指摘、このリスク要素というのは、受信機の普及がおくれている現状では当然起こり得る事態でありますけれども、アナログ停波に伴う支払い率低下のリスクが経営計画に反映されていないということは極めて疑問がございます。

 それを踏まえて、衛星契約の年間の増加数が、二十年度については四十五万件となっておりますけれども、二十一、二十二、二十三年度は六十万件と大幅増です。つまり、アナログの停波を予定しております二十三年度、今言ったリスク要素もある、それにもかかわらず今年度よりも多い六十万件ということが目標として設定されているわけです。

 改めてお尋ねしますが、アナログ停波のマイナスの影響を考慮していない契約目標には、無理が出るんじゃないでしょうか。

福地参考人 受信料をお支払いいただいております方が、お支払いいただけない方に対する不公平感が大きいということは認識しております。公共放送の経営を預かる者といたしまして、公平負担の徹底を極めて重い課題として受けとめております。

 経営計画では、支払い率を、三年後の平成二十三年度末に七五%、五年後の二十五年度末に七八%に向上させることを掲げております。このために、五年間の契約総数の増加で二百四十万件、未収削減で百十五万件、合わせて三百五十五万件の支払い者の増加を計画しております。

 御指摘のように、決して楽な計画でないと思っておりますが、訪問集金の廃止に伴う地域スタッフの業務転換によります契約、未収対策の強化等の営業改革施策に全力で取り組みますとともに、経営二目標のもう一つの柱であります接触者率の向上を図ることによりまして受信料をお支払いいただける方々をふやしていくなど、NHKの全組織を挙げて取り組んでまいります。

塩川委員 アナログ停波のリスク要素を組み込まないで契約目標を立てるということがそもそも妥当なのかということが問われていると思うんですが、そこはどうですか。

福地参考人 この受信料のリスクについては、いろいろ検討いたしました。検討いたしましたけれども、経営計画に織り込まないでも我々は大丈夫だという判断のもとに、計画に記載いたしました。

塩川委員 実際には、受信機の購入世帯数が見込みよりも大きくおくれている中では、かえってリスクが大きくなっているのではないかと私は率直に思っております。その点でも、今後の対応方を注視していきたいと思っております。

 一方で契約総数はふやしていきましょうということで、他方でその契約収納にかける営業経費率は下げようということになっておるわけです。経営計画では、地域スタッフを三年で一千人程度削減、四千四百人にする、このように掲げてあります。営業経費も大幅に減少させながら、受信料収入は大きく伸ばす計画となっています。これでは、結果として、支払い率向上のために現場で無理な契約収納にならないかという懸念が浮かぶわけでございます。

 経営計画では契約収納業務の外部委託化を進めるとしておりますが、既に、現状でも、一部ではありますが、契約収納業務の外部法人への委託が行われてまいりました。この間、受信料契約をめぐってこのような委託業者によるトラブルも発生をしております。

 そこで、お尋ねしますが、NHKも報道しておりますクルーガー社のトラブル事例について御紹介をいただきたい。クルーガー社というのはどのような会社なのかということもあわせて御説明をお願いいたします。

大西参考人 御質問にお答えします。

 平成十八年六月に、契約収納業務を委託している株式会社クルーガーの元社員が、十四件の受信契約に関する個人情報を持ち出した上で、三人のお客様から約五万円を詐取するという事件がありました。

 NHKは、株式会社クルーガーに対して、管理監督を改めて徹底するよう指導するとともに、取引停止一週間の処分を行いました。被害者には、会社側から謝罪を行うとともに、弁済を完了しております。

 以上でございます。

塩川委員 この不正を行いました元社員というのは、そもそもこのクルーガー社に在籍中に不正行為も行っていたと承知しておりますが、その点を確認させていただきたいのと、クルーガー社というのはそもそもNHKとはどういう関係にある会社なのかについて改めて質問いたします。

大西参考人 お答え申し上げます。

 二件が在籍中、一件が在籍を終わった後ということでございます。

 クルーガー社については、契約の取り次ぎ、支払い再開等の業務を業務委託している会社でございます。

 以上でございます。

塩川委員 クルーガー社に在籍中に不正行為を行っていた。クルーガー社のコンプライアンスが問われているわけです。

 この社員は主にマンションなどの集合住宅を対象に衛星放送の契約の取り次ぎを担当していたと報道もされております。クルーガー社はNHKから受信料の契約収納業務の委託を受けているわけですが、実際には随意契約ということで承知をしております。契約目標を達成しようというときに、現場の営業職員あるいは地域スタッフでは足りないというときに、特別チームとして投入して、営業目標を達成するということを掲げた部隊だというふうに聞いております。これが視聴者との信頼を損なったわけです。

 そのクルーガー社について聞いたお話を一つ紹介いたしますが、ある地域でのことですけれども、平成十九年五月中旬ごろに、クルーガー社の男性二名が、仮にAさん、このAさん宅へ訪問し、NHKですと名乗り、一名が上がらせてもらうと部屋に入り、息子夫婦所持のカラーテレビを見つけて衛星契約をするように勧められた。Aさんは、それは息子たちのテレビで、現在首都圏に転勤して今いないんだ、Aさん本人は自分の部屋のカラーテレビで契約をしているそうですけれども、息子のテレビは見ていないし接続してもいないので今のままで十分ですと言ったけれども、しつこく契約変更を迫ってきて困った。手持ちのお金がないと言ったら、銀行まで一緒に行ってやるからそれで払ってくれと言われたので大変困った。これがクルーガー社の社員が行ったことだ。このようなお話をお聞きしております。

 NHKでは、受信契約の際に、手持ちのお金がないと言われると、銀行まで連れていって支払いを求めるということをやっているんですか。

大西参考人 銀行まで行って受信料を支払うというような指導はいたしておりません。委員御指摘の事実は把握しておりませんので、事実を調べたいというふうに思います。

塩川委員 では、もう一点。

 これはクルーガー社ということではございませんけれども、関連して、契約収納業務についてもう一点確認もし、調査もお願いしたいんですが、神戸の事例であります。神戸で、三月三日に放送受信契約が行われた件についてお尋ねをします。

 今まで契約をしていなかった世帯で、テレビが故障して映らない状況にあった。そこに契約を求めて職員の人が来た。三月中には購入する予定なんだということを言ったわけですけれども、そのテレビ購入を待たずに新規契約を取り結んだという話であります。つまり、受信機が設置をされていないにもかかわらず受信契約を取り結んでいた。

 受信機が設置をされていないのに受信契約を取り結ぶということはできるんですか。

大西参考人 放送法に書いてありますように、受信機を設置したという事実、した者は受信契約をしなければならないということでありますので、受信設備をしていないのに契約をするということはあり得ないことだというふうに思っております。

塩川委員 普通、そういう場合においては、購入した時点ではがきを送ってもらって、そのはがきを持って契約に行くという手続をNHK内部ではとっているということですけれども、それも行わずに、テレビ購入予定だから契約はしてくれと迫るようなことが行われていた。このことについて、事実関係を確認していただけますか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 事実関係を確認したいというふうに思っております。

塩川委員 経営計画では、契約収納業務の公開競争入札等で外部委託化を進め、地域スタッフ体制を改革すると言っております。

 地域スタッフの方が担っていたような仕事を民間法人に切りかえていくということも行われるわけですけれども、そういった法人委託の中でさまざまなトラブルが生まれているというのが現状であります。支払い率の向上の目標や営業経費率の削減目標がひとり歩きして、視聴者との信頼を損なったり、地域スタッフなど関係者にしわ寄せすることのないように、必要な見直しを行うべきであります。

 最後に、会長に一言。

 契約目標にこういった無理があれば、視聴者との信頼関係を損なうことになりかねない。こういうことはきっぱりとやめさせるということについての御決意を伺いたいと思います。

福地参考人 公平負担を徹底するために、支払い率三年後七五%、五年後七八%という目標を設定しております。この目標はNHKの全部門が総力を挙げて取り組んでまいります。

 公共放送NHKにとりまして、視聴者との信頼関係が何よりも重要でございますし、目標の達成に向けた契約収納活動を行うに当たっても、御指摘のようなことがございましたが、これが変わってはならないと思います。

 引き続き、視聴者とのトラブルを起こすことのないように、各種の法令遵守をすることはもちろんでございますし、それから、受信料制度の意義について誠心誠意お話をして理解をちょうだいする、丁寧な視聴者対応を行うということが大事だと思います。そういった指導を要請してまいりたいと思います。

塩川委員 終わります。

赤松委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 きょうはNHKの審査でありますけれども、実は私の選挙区で、先般、今は野焼きのシーズンでありまして、あちこちで野焼きがされていると思うんですが、湯布院という温泉の有名なところですが、その湯布院町の一画に塚原という集落がありまして、そこは観光地であると同時に畜産が盛んなところで、畜産が盛んであるということは牛のえさを確保しなきゃならぬ。したがって、採草地を持っているわけです。いい草をとるためには、やはり野焼きをして新しい草を生えさせて、それを刈って牛に食べさせる。それで、先般、その野焼きをやったんですが、なぜそうなったのかということについては今原因究明されていますけれども、不幸にして、その野焼き作業の中で四名の方が火に巻き込まれて亡くなられた。

 問題は、今田舎に行きますと、高齢化という問題は、もうどこも共通項ですね。この野焼きで亡くなった方々は、八十歳を最高齢に、七十五歳、七十二歳、七十歳と、言うならば高齢者でありました。これについてはだれに責任があるのかということになると、異常乾燥注意報が出ているときに野焼きをした、それが悪いというふうに一義的には言われているんですが、雨が降る日に野焼きをする人はいないので、やはり野焼きのいいタイミングというのはそこに長く住んでおられる皆さんが一番詳しいわけですよね。そういう判断でやって、不幸なことが起こったわけです。

 私は、農村地域における高齢化の進行というのは本当に深刻だと思います。そういう方々がそういう地域の基盤を守るという、野焼きをするというのも一つの作業なんですが、こういうことが、やはり年をとると運動神経も鈍ってきますし、山はフラットなところじゃないんですから、こんな斜面を焼くわけですから、そこで行動半径が狭まってくるしというふうなものも重なって、私は、今後、こういうふうなことがあちこちで起こってはいけないんですが、起こる可能性はあると思うんです。

 したがって、そういう認識を持って、野焼きというものに対してどういう対処、あるいはどういう構えを行政として持つかという点について、放送法とは関係ないんですが、そういう事態が起こりましたので、最初にそれだけ聞いておきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、野焼きに係る災害が先週大分で残念なことに起こりました。これまでこういうものに対応いたす者は、主に関係者の方の自主的な対応をお願いしてまいったわけでございますけれども、御指摘のような災害の死者をなくすことは非常に重要なことだろうと思っております。

 そういう意味で、いわばそういう自主的な関係者だけではなくて、その関係機関と連携を図りながら、消防機関としても地域の実情に応じて所要の態勢を図っていくことが大切だというふうに考えております。

 例えば、こういうような火災の類型といたしまして、一つは林野火災に似たものが考えられますが、これにつきましては、毎年、全国山火事予防運動を通じまして、出火防止の啓発、あるいは消防機関と森林所有者との連携による訓練、資機材の整備といったようなことを行っております。また、それ以外のものにつきましても、各市町村の火災予防条例で、火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為については届け出を求めておりますので、大規模な野焼きでありますとか、気象条件に注意を要するようなそういう紛らわしい行為といったことが行われるような場合には、関係者と必要な連携を図る。そういう意味で、必要に応じて消防機関や消防団といったものも一定の準備に取り組むということが必要だろうというふうに考えております。

 今御指摘のように、それぞれの農村等の地域では、高齢者の方々や、そういうことに対応し切れない場合も考えられると思いますので、こういう点も十分踏まえて態勢をとるように、各消防機関、私ども各地のブロック会議等もございますので、そういうところで具体的なお話や全国消防長会等でも議論をしながら、そういう対策を進めてまいりたいというふうに考えております。

重野委員 今後、消防行政の中で、こういうふうな問題について意を用いて対策を講じていただきたい。

 次に、NHK予算に入ります。

 まず、ことしの予算は赤字予算を組んでおります。最近三十年間で、五回赤字予算を組んでおります。八三年の赤字は衛星放送開始のための放送衛星の打ち上げだとか、八八年、八九年については、やはり同じように衛星放送関係である。九五年、九六年は阪神・淡路大震災、こういう原因があっていわゆる赤字予算になったんだろうと思います。

 今回のこの赤字予算を編成した理由は、デジタル化による難視聴対策のためだというふうに聞いておるのでありますが、そこで、デジタル化に伴う難視聴対策の具体的な内容について聞いておきたい。

 一つは建設費に計上されております設備投資三百七十四億円、もう一つはその他の事業運営費に計上されている追加経費百億円がこれに当たるのだろうと思いますが、それぞれどういう性格のものなのか、お答えいただきたい。

永井参考人 お答えいたします。

 まず、建設費の三百七十四億円でございますが、これは地上放送のデジタル化におきまして、全国あまねくということで、デジタルの中継局を整備することを中心に設備整備を進めていくというような経費であります。

 追加の事業費百億というのは、デジタル中継局の整備や完全デジタル化へ向けて整備を進めて調査を進めてきたところ、デジタル電波が受信できなくなる新たな地域への新たな難視聴対策や混信対策等が必要であるということがわかってきました。ということで、この新たな難視聴対策や混信対策、それから、なかなか進まない自主共聴施設への支援、これもNHKのデジタルが届かないところを中心に自主共聴施設への支援というものをやろうと。三つ目として、アナログ放送終了に向けた対策や周知の経費に追加の百億円というのを二十一年度は見込んでおります。

重野委員 三百七十四億円は地上デジタル放送を送信するための施設、今度の百億円は受信するための施設への補助、こういうふうに大約分けられるわけですね。

 そこで、この受信設備のためにNHKが大規模に補助を出すということが過去にあったのかどうなのか、その点についてお聞かせください。

永井参考人 過去にこういう受信設備等々の整備にNHKから出費をしたことがあるかということでありますが、以前には自主的に皆さんがテレビを見るためにやられたということでありますので、そういう例はなかったというふうに記憶しております。

 今回の場合は、基本的には、あまねくを完成するために、NHKの電波が届いていないというところを、デジタル化を進めるために必要な対策をやるという観点から支出をしているということであります。

重野委員 あまねくという文字は、郵政の議論をするときにもあまねくということがよく出ましたし、このあまねくというのはつい最近出た話じゃなくて、これは放送法ができて以来、このあまねくはあったんじゃないですか。今までやられなくて今度やるというふうになった、その転換点、何がそうさせたんですか。

永井参考人 以前からNHKはあまねくということで、テレビジョン放送、そしてラジオの放送の場合は中波放送もしくはFM放送であまねくを実現するということで、基本的には送信所の整備を進めてまいりました。その中で、テレビの方は、送信所を進めると同時に、辺地地域については、NHK共聴という形で辺地共聴を整備するということをやってきました。

 一方で、自主的にそういう辺地のところで自分たちで見たいからというので共聴設備をつくられる方が、テレビの普及が進むにつれて出てきたということであります。その時点では、NHKが支援するとかそういうことなしに、自主的に皆さんがつくられたということであります。

重野委員 また後のところで触れなければなりませんが、次に、総務大臣、赤字予算に対する総務省の見解を聞きたい。

 国会に出されましたNHK予算に対する総務大臣の意見、私は何遍も読み返したんですが、その中で今回の赤字予算についての言及がなぜかありません。これはどういうことなのかということです。

 これは例外的といえば例外的ですね、赤字予算というのは。過去の赤字予算の場合、例えば、八三年度の場合は協会の財政は厳しいとか、八八年度も格段に厳しい状況だとか、八九年度も同様な意見。九五年度、九六年度は、阪神大震災という大変な状況を踏まえながら、九六年度についてもやはり厳しい財政の状況と。そういう文字があるんですね。

 ところが、今回はそうした指摘がなされていない。これは一体なぜだろうというふうに私は思うんですが、そこの点はどうなんですか。

鳩山国務大臣 過去、何年かに一度赤字予算を組んでおるわけで、それなりにいろいろな理由があったんだろうと思いますが、今回は二十九億円という赤字で比較的金額が小さかったこと。それも、約七十億ぐらいの黒字であったけれども、円滑な完全デジタル化を進めるために百億円追加計上したために二十九億円の赤字になったということでございますから、いわばデジタル頑張るということを評価し、そのために若干の赤字になってしまうわけでありますが、これは約一千億円ある繰越金の一部を充てて対応するということでございますので、NHKの業務運営上、これが特段支障を生じるものではない、こういう理解をしたわけでございます。

 しかも、次期経営計画において、受信料収入を増加させていくということ、あるいは業務の効率化ということが書いてありまして、ですから、デジタル化の問題がありますので、二十二年度も若干の赤字になるかもしれませんが、二十三年度からは黒字化する計画が明らかになっておりますので、今回、二十九億という軽微な赤字になったことはあえて問題にしない、むしろデジタル頑張ってください、こういうような意味を込めて意見の中には含めなかったところでございます。

重野委員 先ほどの答弁でも、今までこういうふうな形で赤字予算を組むけれども、今のような事情で大規模に補助を出すということはなかったんだという話がありましたね。それを今度出すわけだから、それがNHKの財政に大きな影響を及ぼしてこういう予算を計上したと。

 原因は明らかなんですね。原因は明らかなんです。これは、ある意味では、このデジタル化というのは国策だという言葉がよく出ますように、この国策に対応しなければならないというNHKが、その分の負担をかぶっているということだ、結果的に。今後、こういうふうな形でいくのではないかという懸念を私は持つわけです。今後の予算を見ても、来年、再来年、例えば二百九十億だとか二百七十億というのが予定されているわけですけれども、デジタル化という国策を全うするためにNHKの経営がそういう意味では著しく圧迫されている。

 そこのところは、政府としてどういうふうな受けとめと認識を持つのか、これは決して小さな問題ではない、NHKにとってみれば大きな問題だというふうに思うんですが、大臣、どうなんですか。

鳩山国務大臣 これは、オール・ジャパンで政府も力を尽くして再来年の七月二十四日を迎えたい、アナログ停波という日にすべての家庭でデジタルテレビが見られるようにしようということでやっておりますから、これは大変な国策としての大事業であって、NHKにとっても大きな仕事であって、大きな負担もまたかけていくことになるかと思っております。

 この四月一日から財政健全化法が施行されて、実質赤字比率とか連結実質赤字比率とか将来負担比率とかということで、この場合は割合に応じてイエローカードだ、レッドカードだということになるわけでございます。特に将来負担比率などというのは、将来的にストックとして残ってくる債務等を計算するわけでありましょう。

 そういうふうに考えた場合、この二十九億円は一千億という繰越金で十分手当てできるということでございますから、それこそ将来負担比率はプラスなんでございましょうから、そんなふうな意味で、デジタル化というのが大きな問題であって、そのデジタル化のために百億円を追加計上しておりますし、設備投資も三百何十億かやっておりますから、これは大事業でございますが、しかしながら、二十九億という赤字については、無視するわけではありませんが、軽微なもので簡単に埋まるものという観点で、私は意見の中にあえて述べなかったということでございます。

重野委員 先ほどもだれか触れましたけれども、不祥事があって視聴料ががあっと落ちた、それでずうっと頑張って、新年度の予算では本当にそこまでとれるのかなというぐらいに積極的な予算を組んでおるんです。そういう中で、二十二年、二十三年と、二百九十、二百七十というふうなことが見込まれているんですが、国策を担うNHKのそういう置かれている財政事情に対して、国はどういう受けとめをして、どうするのかということが次に出ないと、これは全部背負い込んで、国策を遂行するためにNHKが背負う荷物は大変重いものになっていく、私はそういう懸念を持つので大臣に重ねて質問をしているわけです。

 そこの点について、もう一度言っていただきたい。それで私も終わりますから。

赤松委員長 大臣、もう時間が来ていますので、短くお願いいたします。

鳩山国務大臣 これは国策でございますから、NHKにも相当のことをやっていただくわけですが、国が精いっぱい背負うということだろうと思います。

重野委員 終わります。

赤松委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 皆さん、お疲れだと思いますけれども、最後の質問ですから、もうしばらく御辛抱いただきたいと思います。

 先ほど来、NHKの政治的中立ということについていろいろ御議論がございましたが、そのことは私がかねてから強く指摘をしていることでありまして、過去の委員会においても、私は、イギリスのBBCと比較しながらNHKのあるべき姿について問いかけをしてまいりました。

 イギリスの国民・視聴者からBBCという放送会社は極めて信頼され、愛されているように思います。そのゆえんというのは、良質の番組をつくっているということが一つ、もう一つは政治的な中立性をしっかり守っている、特に政権との距離をいつも正確に間合いをはかって保っている、そういうことにあると思います。

 前にも指摘をいたしましたけれども、特定の政党とどうとかという話ではなくて、かつてサッチャー政権のときにフォークランド戦争が行われましたが、そのときに厳しくそれを批判いたしまして、サッチャー政権と対立関係があって、国際波の停波をされるというような事態にまで発展をしたことがある。その政権との緊張関係があの当時もあった。

 最近では、労働党政権、ブレア政権ですけれども、イラクへの軍事介入に反対をして、厳しい対立関係があった。最終的に経営委員長がやめましたけれども、それは、政治的な圧力に屈してやめたのではなくて、報道の中身に至らぬところがあった。対立をするような事柄については、その相反する意見の両方を取材して、両方を公平に取り上げるという、しかもその取材をしたメモを内部で残すという内部規律があった、それに反したから経営委員長は責任をとってやめた。決して政治的権力に屈してやめたわけではない。さすがはBBCだという、かえってそのことによってイギリスの国民の評価も高まったし、国際的な評価も私は高まったんだと思います。

 NHKも、御承知のとおり、戦前、民間法人としてスタートしたわけですけれども、軍部が台頭してくるに従ってだんだんそれに引っ張られていって、そして大本営発表をそのまま報道をするというような失敗を犯した。そのことの反省から新しいNHKというものが公共放送としてスタートをしたわけでございますから、やはりあくまでも政治的な中立、そして、特に政権、政党との間に一定の距離を保つという、その関係というのは極めて私は大事なんだろうと思います。

 そのことについて、先ほど福地会長も不偏不党、公正公平ということを繰り返しておっしゃっておられますけれども、改めて福地会長と、そして、まさに経営委員会というのは視聴者の代表ですね、視聴者の立場、意見というものを踏まえてNHKの経営はいかにあるべきかということをしっかりとされる立場だと思いますので、会長と経営委員長それぞれからお考えを承りたいと思います。

福地参考人 NHKは、不偏不党を掲げます放送法に基づきまして、国内番組基準を策定しております。その中でも、「全国民の基盤に立つ公共放送の機関として、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保」することを明記してございます。

 私は、このNHKの自主自律、不偏不党、それから公平公正、こういった原則こそが視聴者に信頼されるNHKの生命線だというふうに考えております。NHKは、これまでもそうだったと思いますが、これからもそうした姿勢を堅持してまいりたいと思っております。

小丸参考人 放送の不偏不党、自主自律は、先生の御指摘のとおりでございます。NHKのまさに生命線であると肝に銘じております。

 個別の番組編成に関しては会長以下執行部が行うものでありますが、経営委員会は番組基準及び放送番組の編成に関する基本計画について議決をする権限と責任を有しております。執行部と経営委員会は、それぞれの役割において公平公正な放送を堅持していくべきものと認識しております。

亀井(久)委員 その姿勢でしっかりやっていただきたいと思います。

 それとの関連なんですが、メディアの方々とお話をいたしますと、常に出てくることは、自分たちは知る権利にこたえる公益性というものを持っているんだということを言われます。それはそのとおりだろうと思うし、政治権力、公権力、政治が決してメディアの分野に立ち入るべきではないということはそのとおりだと思いますけれども、一方において、NHKは公共放送ですけれども、民間のテレビ放送にしても、あるいは新聞にしても雑誌にしても、これはまさにコマーシャリズムの中で収益事業をやっているわけでございますから、どうしても激しい競争、収益をいかに求めるかということになると、その公益性、公共性というものがなおざりにされる、そういうことがしばしばある。

 ですから、先般も、御承知のとおり、ある民放の社長が誤った報道をやったことによって責任をとってやめられたということで、これはまさに自主的にやめられたということですから、私はその自律性という点では大変結構だというように思います。

 私は、自民党に長くおりましたけれども、自民党におりましたときに、例のBRO、BRC、放送と人権等権利に関する委員会機構をつくる際に深くかかわった一人でございますし、また、それにさらに番組向上という機能も加えてBROを格上げしてBPOにした。

 そのことには私は直接責任者として携わったわけでございますから、経緯は十分に承知をいたしておりますけれども、やはり報道機関というのは何よりも自主規制というものが一番大事で、そのことができなければ、国民から、誤った報道とか偏向報道とかをされれば必ずけしからぬという声が出てくるでしょうし、何らかの規制をするべきだという声も出てくる。そういう声が出てくるということは、報道機関の方がまさに墓穴を掘ることなのであって、そういうことに陥らないためにも自主的にきちんと規制をしておくということが何よりも必要だと思うんです。

 BPOも、今はまだ苦情処理機関のようになっておりまして、各放送会社や何かが十分にこたえられなかった難しい案件を持ち込むということですけれども、もっとBPOを充実して、財政的にももっと大きなものにして、そして常時各放送会社の番組をちゃんとチェックして、BPOみずからが、苦情を持ち込まれたからじゃなくて、BPOみずからがこういう番組は行き過ぎじゃないかとか誤っていないかとかそういうことで自主的な勧告を出される。そこまで高めていけば、放送業界はよくやっているじゃないかということになってくるし、それが今度は新聞や雑誌にもいい影響を与えてくると思うので、BPOというのは極めて大事なものだというように私は思っておりますので、民放とNHKが一緒につくっておられる機関でございますから、BPOに対するお考えというものを改めて会長に伺いたいと思います。

福地参考人 視聴者の皆様が放送に対して期待する一方で、放送倫理にかかわる問題が後を絶ちません、不信感も増大しているのではないかと懸念をしております。そうした中で、視聴者と放送局との間を結ぶ自主的な第三者機関としてBPOの存在意義はますます大きくなっていくと考えております。

 平成十九年にはBPOの中に放送倫理検証委員会が新たに発足をいたしまして、放送の倫理に関する問題を積極的に取り上げ、取材、制作や報道、放送のあり方についてさまざまな判断を示しております。こうしたことが放送事業者の放送倫理の向上ともつながっているというふうに認識をいたしております。NHKといたしましても、BPOの活動に大きな期待を持っております。

亀井(久)委員 次に、大臣に少し伺いたいと思います。

 以前、橋本元会長のとき、また菅総務大臣のころに、受信料の義務化と受信料の引き下げということでかなり綱引きのような関係が一時あったと思いますけれども、私自身は、受信料の義務化というのは必ずしも賛成じゃないんです。

 これは、義務化されていないのに、罰則がないにもかかわらず、七割の人たちがきちんと受信料を払っているという、そこが日本の社会の世界に誇るべきよさだと私は思うんですよ。

 それを義務化することによって何が生まれてくるかというと、あのときもそういう議論がありましたけれども、何か国の関与が極めて強くなる、国営放送の道に進むんじゃないかなんという意見も出ましたけれども、そういう懸念が出てくることと、それから、不祥事が繰り返されたことによって国民のNHKに対する信頼感というのが損なわれてきた。ですから、受信料収入ががたんと落ちた、これは大変だ、NHKもしっかりしなくちゃということで内部規律をしっかりさせるようなこともされたわけで、そういう緊張感がNHKに生まれてくる一つのきっかけになっていると私は思うんです。

 それが、受信料収入が上下するという、そのことがNHKに、良質の番組をつくらなくちゃいけないとか、不祥事を絶対起こしちゃいけないとか、そういう緊張感をまたつくることにもなってくると思うので、私は義務化ということはいかがなものかというように思いますけれども、大臣はそこらはどのようにお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 本来、国民年金もそうなんでしょうけれども、NHKの受信料も、全員が払っていただければ、あるいはその収納率が九十何%もあればそれが理想なんだろう、こういうふうに思っておりますが、今の亀井先生のお話はなかなか含蓄に富んだ、すぐれた御意見の一つだなというふうには今受け取ったわけでございます。

 結局、仮に受信料の支払い義務化ということを考えるとすれば、それは、当然、受信料の引き下げ、あるいはNHKが経営改善しているんだということとセットで考えるべきものであって、今はその両方とも条件がそろっていないわけですから、現在支払い義務化ということをやれば、国民の理解というのはなかなか得られないのではないかというふうに思っております。

 まずはNHK御自身が、受信料は本来公平な負担というのが当たり前のことなんですけれども、公平負担の徹底に向けてできる限りの取り組みをしていただきたいな、こういうふうに思っております。

 契約の義務があるわけですね。契約の義務と支払いの義務というのは、これは法律家に聞くとなかなか微妙な関係にあるようでございまして、契約の義務があるということは、裁判をやれば支払いの義務が生じるものだという解釈もあるようですが、今のようなところでおさまっているというのも、今のような考え方で、支払いの義務じゃなくて契約の義務で押さえておいて、NHKも体質をますます健全にする、信頼を集める、そして受信料収納率が高まっていく、結果として受信料を下げることができるという形になることを心から期待いたしております。

亀井(久)委員 わかりました。

 それから、経営委員会と経営側との関係なんですが、これはNHKの会長さんがどなたなのか、また経営委員長さんがどなたなのかという、個人のお人柄とかそういうことによってもかなり変化があるのかもしれませんけれども、やはり経営委員会と経営側というのは一つの緊張関係というものは当然なくてはいけない。だから、経営の中身にまで深く経営委員会が入ることは差し控えるべきでしょうけれども、先ほど申しましたように、視聴者の代表という立場からNHKのあるべき姿というものをきちっと示していただくということが大きな役割だと思います。

 私は、かねてから経営委員会の機能をもっと強化しろということをずっと言い続けてまいりました。専従のスタッフもふやしていただくということ。それと同時に、小丸委員長がどうのこうのということじゃないんですけれども、やはり経営委員長というのは専任で当たられるべき大きな責任のあるお仕事じゃないかというように私は思っておりますので、その辺はむしろ鳩山大臣のお考えを承りたいと思います。

鳩山国務大臣 三人ほど欠員が生じておった関係があって、現在常勤の経営委員がおられないわけですけれども、間もなく四月一日から常勤がお一人できますし、私は、今のようなやり方で、小丸委員長が常勤でなくてはならないという必然性は感じません。

亀井(久)委員 時間がなくなってしまいましたので、最後の質問です。

 福地会長が示された経営の九つの方針というのがあります。この中で構造改革を進めていこうということが方針の七番目にございまして、その中にNHKと子会社等との取引の改革を進めていく、こういうこともあるんですが、今、NHKのコールセンターというのがございますが、そのコールセンターをもっと機能強化したいというお考えがあるやに承っております。

 これは、視聴者の意見を何らかの形でもっと経営に反映していきたいというお考えではないかと思うんですが、コールセンターというのがどうも中身がよくわからなくて、何か視聴者コールセンターと営業コールセンターとあって、それぞれに子会社が委託されて業務をやっているというような状況ですけれども、この子会社の整理合理化ということと関連して、コールセンターというものにどういう役割を果たさせようとしておられるのか、何をなすべきと思われているのか、そのことについての会長のお考えを承って、終わりたいと思います。

福地参考人 これまで視聴者のお声を聞くにはいろいろなことがございまして、電話では、おっしゃいますとおりコールセンター。これは、一つは視聴者サービス局の方のコールセンターと、さっきいろいろ御指摘ございましたけれども、主として営業上の電話で入ってくるコールセンターと、二通りございました。

 しかし、お客様の声に二通りあるわけではございません。これはやはり一元化した方がいいということで、一元化を進めてまいりたいと思います。一元化するにつきましては、この放送協会の中でも、なかなかすぐれたシステムを持ったコールセンターを持った放送会社もございます。いろいろなものを勉強しながら、今、この一元化を進めることにしております。

 いずれにいたしましても、NHKは、現在、私の方針もそうでございますけれども、視聴者目線とか視聴者重視ということを心がけております。そういったことで、私は、まずは、お客様満足、視聴者満足ということは、視聴者からの耳に痛い言葉を聞くこと、聞き上手が視聴者満足の原点だと思っております。

 したがって、私はコールセンターのことを非常に重視しておりまして、実は、NHKの会長に就任が決まりまして、就任前でございましたが、川崎の溝の口のコールセンターを、日曜日でございますが訪ねて、私はアサヒビールの相談役だけれども、もうすぐNHKの会長になるんだけれども、頑張ってくださいと言って、一番最初にのぞきましたのが上野の営業センターと川崎のコールセンター、これは就任前に訪問いたしましたけれども、これから先もそういう姿勢は貫いていきたいと思っております。

 以上でございます。

亀井(久)委員 終わります。

赤松委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

赤松委員長 この際、御報告いたします。

 昨年十一月二十日、本委員会から調査局長に命じました特殊法人の組織等に関する予備的調査につきまして、去る十九日、その報告書が提出されましたので、御報告いたします。

 なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十三分散会


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