衆議院

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第15号 平成21年4月17日(金曜日)

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平成二十一年四月十七日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 秋葉 賢也君 理事 実川 幸夫君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 林田  彪君

   理事 森山  裕君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 谷口 隆義君

      飯島 夕雁君    今井  宏君

      小川 友一君    川崎 二郎君

      坂本 哲志君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    田中 良生君

      谷  公一君    土屋 正忠君

      寺田  稔君    土井  亨君

      長島 忠美君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    平口  洋君

      福井  照君    古屋 圭司君

      松本 文明君    矢野 隆司君

      渡部  篤君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    小平 忠正君

      田嶋  要君    寺田  学君

      福田 昭夫君    松野 頼久君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   総務大臣政務官      坂本 哲志君

   総務大臣政務官      鈴木 淳司君

   衆議院委員部長      山本 直和君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  久元 喜造君

   政府参考人

   (消防庁長官)      岡本  保君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 榮畑  潤君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長) 西川 善文君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  今井  宏君     寺田  稔君

  遠藤 宣彦君     飯島 夕雁君

  薗浦健太郎君     矢野 隆司君

  谷  公一君     長島 忠美君

  土屋 正忠君     西本 勝子君

  小平 忠正君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     遠藤 宣彦君

  寺田  稔君     今井  宏君

  長島 忠美君     谷  公一君

  西本 勝子君     土屋 正忠君

  矢野 隆司君     薗浦健太郎君

  松野 頼久君     小平 忠正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長久元喜造君、消防庁長官岡本保君及び厚生労働省大臣官房審議官榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、大変重要な法案だと思っております。消防法の改正法ということで、そもそもこの法律案の端緒になったことは、一昨年、平成十九年八月、奈良県内で、未受診妊婦が奈良県と大阪府の計九病院に受け入れを断られ、約三時間後に大阪府高槻市内の病院に搬送中に死産となった事案がきっかけで、今回、この救急患者のたらい回しが国民各般の関心を集め、社会問題化したということがこの法案の一つのきっかけだということでございます。その後もこのような事案は後を絶たず、国民の不信感はますます高まっておるというような状況がございます。

 今回のこの法案、改正法は、傷病者の搬送及び受け入れの迅速かつ適切な実施を図るため、都道府県が傷病者の搬送及び受け入れの実施基準を定めるとともに、実施基準に関する協議会を設置しようとするものであるというようなことでございます。

 今申し上げた状況の中で、先日、東京消防庁へ行ってまいりました。東京消防庁でいろいろなお話をお伺いし、救急体制の現場のコントロールの中心のところを見てまいったわけでありますが、現場は大変一生懸命やっていただいておるわけでございます。

 しかし、このような問題が起こっている。このようなたらい回し、一般的にたらい回しと言われておりますが、この救急患者のたらい回し事件は断じて起こすわけにいかない。何とか対応していかなければならない。国民は非常に関心を持っておるところでございます。この救急体制、また受け入れ医療機関、このようなところは日々一生懸命やっていただいておるわけでありますが、この体制に問題があるならば早急に解決をしていかなければならない、このように思う次第でございます。

 それで、今回の法改正が、このような救急患者のたらい回し、今起こっておるような現状を解決できるような方向にあるのかという観点で質問をさせていただきたいと思っておるわけでございます。

 まず初めに、平成二十年度中の救急搬送における医療機関の受け入れ状況等実態調査の結果というのが、これは平成二十一年三月十九日の日付で出ておるわけでございます。これを見ますと、二十年度中の救急自動車での総搬送人員は四百六十六万人いらっしゃったというようなことでございます。

 この中で、救急搬送における照会回数、問い合わせをして四回以上で受け入れられた、四回以上となったケースが、いろいろなケースがありますけれども、一つは、重症以上傷病者の場合は一万四千七百三十二件ということで全体の三・六%。それで、照会回数の最大照会回数を見ますと、四十九回なんですね。これは東京で起こっておりますが、四十九回。また、最長現場滞在時間が二百四分、これは千葉です。このような状況がある。

 また、産科・周産期傷病者の場合は、七百四十九件、四・六%です。最大照会回数が二十六回、最長百三十四分、こういうようなことでございます。

 小児の場合は、照会回数が四回以上にわたった場合が九千百四十六件、全体の二・八%ある。最大の場合は照会回数三十回、これは東京でございます。最長の現場滞在時間が百一分、これは埼玉でありますが、このような状況になっておるということでございます。

 このような受け入れに至らなかった理由がこの調査結果の中に記載されておりますが、これを見ますと、例えば重症以上の傷病者の場合は、手術中だったとか患者対応中だったというのが二一%、ベッドが満床だったというのが二〇・〇%、処置困難であったということが二二・三%、専門外であるということで断られたのが一一・九%、医師が不在であったということが四・一%、初診でかかりつけ医でないということで〇・三%断られている、理由不明が二〇・四%、このような状況になっておるわけでございます。

 先ほど申し上げましたように選定困難事案、要するに照会をしてなかなか受け入れができなかったというのは、首都圏もしくは近畿圏という大都市部に多く見られるというような状況がございます。病院数が多くて、医師の数が多い、このような大都会でむしろ断られている、受診を拒否されているというようなことが多いということでございます。

 もちろん、このようなことは地方においては、むしろ地方の病院なら他の搬送先がないということで断られない可能性が多いと一般的には言われておるわけでございますが、例えば空きベッド情報がすぐにわかるというような状況になれば、救急患者のたらい回しが少なくなるというようなことが言われておりますが、実態とこのようなことについてどうお考えになっているかということを消防庁にお伺いいたしたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘いただきましたように、円滑な救急搬送を確保するためには、医療機関の受け入れ可能情報を迅速に入手するということがまことに重要なことだというふうに考えております。そういう意味で、空きベッドの情報というのは一番重要な情報であろうというふうに考えております。

 現在、消防本部で救急医療情報システム等も利用しておられますけれども、それを利用されていないところはどういう理由かというようなことをお伺いいたしますと、そういう空きベッド情報がリアルタイムではないとか、その情報の信憑性が低いといったようなことも御指摘をいただいております。

 こんなことを踏まえまして、今御指摘のように、この空きベッド情報を的確にリアルタイムでできるだけ入れることによって選定困難事案といったものは減らしていけるのではないかというふうに私どもも考えておりまして、今回の消防法改正の中でも、都道府県が策定いたします実施基準におきましては、「傷病者の受入れを行う医療機関の確保に資する事項」ということを定めることにしておりますが、その中で、救急医療情報システムの入力の迅速化といったことにつきましても、ぜひ消防機関の立場から医療機関にいろいろな改善を申し入れるといったようないわば議論のやりとりを通じて、少しでもリアルタイムの情報を入れることによって選定困難事案を減らせるというふうにこの運用がいきますように私どもも取り組んでまいりたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 先ほども受け入れに至らなかった理由が何点かあったわけですが、その中で、理由不明その他というのが二〇%程度あるわけでございます。これは大体どういうような状況なのか、教えていただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今、委員御指摘いただきましたように、先ほど挙げていただきました専門外でありますとか医師不在以外の理由として、理由不明その他として二〇%ほどの理由を挙げておられる例がございます。これにつきましては、例えば受け入れ照会で、要するに医療機関側から応答がなかったといったようなもの、それから、複数の医療機関に同時に受け入れ照会を行って、他の医療機関に決まってしまったというようなものなどが含まれているというふうに考えておりますし、また、そういう御意見がございます。

 また、この調査と同時に、昨年の十二月に東京消防庁管内で医療機関の受け入れに関する詳細調査を実施いたしましたが、その際に、今委員御指摘の理由不明その他というような区分に該当するような例として挙げられておりますのは、傷病者側の事案としての急性のアルコール中毒でいらっしゃるとか、過去に受け入れることによっていろいろな問題があったというような傷病者の事案について、受け入れ照会回数あるいは現場滞在時間ともに全体平均を上回るというようなことも調査の結果として出ておりまして、そういうものが選定困難事案となりやすいという傾向が見られております。

 今後とも、これらの要因、できるだけいろいろな要素についての調査分析を行いまして、その対策を検討して、少しでも受け入れ選定困難といったものがなくなるように図ってまいりたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 この受け入れ選定困難事案をなくしていかなければなりません、今、長官がおっしゃったとおりでございます。

 しかし、この理由の中に入っておらないものがあるわけでございます。これは、病院であるとか医師が訴訟リスクを恐れて、非常に治療困難な患者の受け入れをやらないというようなことが従来から言われておりまして、このような訴訟リスクはますます現在高まっておるわけでございます。例えばこのようなことで受け入れ拒否が行われているといったような場合、どのような解決の方法があるのか、きょうは厚生労働省からおいでいただいておりますので、お伺いをいたしたいと思います。

榮畑政府参考人 医療機関における搬入拒否の原因の一つとして、訴訟リスクに対する懸念があるというふうにかねてから指摘されておるところでございます。

 これに対応するため、厚生労働省といたしましては、医療死亡事故の原因究明や再発防止を図る仕組みをつくる必要があると考えており、昨年、医療安全調査委員会の第三次試案及び大綱案を公表し、検討を重ねておるところでございます。

 また、医師一人当たりにしますと、訴訟件数が最大の産科につきましては、脳性麻痺となったお子さん及びその家族の方の経済的負担を補償し、事故原因を分析し、将来の同種事故の再発を防ぐということを考え、紛争の防止、早期解決及び産科医療の質の向上を図るために、産科医療の補償の仕組みをことし一月からスタートしたところでございます。

 今後とも、こういうような取り組みを重ねて、医療リスクの軽減、また、それに対するさまざまな取り組みを進めてまいりたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 この訴訟リスクというのは非常に深刻な問題であります。これが根底にあるならば、なかなか体制を整えても受け入れが円滑に行われないというようなことがございますので、これは早急に厚生労働省所管で対応をしていただきたいと思う次第でございます。

 次に、これは平成二十年十月に東京都立墨東病院でやはりこのようなたらい回し事件があったわけでございますが、八病院に受け入れを断られて、妊婦が出産後亡くなられたという事案がありました。

 この八病院の断った理由は、一つは医師が不足しておるということと、もう一つは新生児特定集中治療室、NICUが不足しておった、このようなことが原因だと言われておるわけでございますが、医師が不足しておるとかNICUが不足しておるという理由であるならば、早急にこれに対応できるような問題ではないのではないかと思うわけでありますが、厚生労働省、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。

榮畑政府参考人 昨年十月の東京都における今御指摘の事案につきましては、NICUの不足や産科医の不足が原因の一つというふうに考えられておるところでございます。

 その中で、特にNICUにつきましては、これまでもその整備を進めてきたところでございますが、近年、低出生体重児の増加等によって足りなくなっているというような御指摘もいただいております。また、産科などの診療科につきましては、医師不足が深刻な課題となっておるというふうに認識をしておるところでございます。

 このため、平成二十一年度から大学医学部定員を過去最大の八千四百八十六名としたところでございますが、厚生労働省といたしましても、平成二十一年度から、NICUの設置を指定要件とします総合周産期母子医療センターの運営に対する支援を拡充したところでございますし、NICUを有する地域周産期母子医療センターへの運営費の支援、地域で出産を支えていただいている産科医等々の方に対する手当や休日、夜間の救急医療を担う勤務医の手当に対する支援、さらには臨床研修修了後の後期の研修で産科を選択するお医者さんの手当に対する支援等、新しい政策を積極的に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、このような対策を進めていって、周産期医療の充実というのをさらに進めていかなければならないと思っておるところでございます。

谷口(隆)委員 病院の勤務医の労働条件は大変過酷でございます。そのような過酷な状況の中で、病院経営は大変厳しい状況にあるというわけでございますが、このような入院費用が不当に安過ぎるだとか病院の経営が非常に困難であるといったようなことが一つ原因に挙げられておるわけでございますが、診療報酬の抜本的な改定の必要があるのではないかというのがまず第一点でございます。

 もう一つは、救急告示病院の補助金が、受け入れ件数によって配分されておらないということもあるようでございます。救急告示病院になりながら件数が非常に少ないといったような病院も、多く受けておる病院も、補助金に変わりはないというようなことも問題なのではないかということがございます。

 これについてお伺いをいたしたいと思います。

榮畑政府参考人 地域に必要な医療を確保する等の観点から、今御指摘の入院医療を適切に診療報酬上評価していくことは大変重要なことだと考えております。

 このために、平成二十年度の診療報酬改定におきまして、地域の急性期医療を担う医療機関の入院医療の引き上げとか、事務作業を補助する職員の配置等を行ったところに対する評価の新設、さらには勤務医負担軽減計画が計画されている場合の評価の新設等を行って、その評価の充実を図ったところでございますが、今後とも、次期診療報酬改定におきましても、関係者の御意見を十分お伺いしながら、さらに適切な対応を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

 それとともに、救急告示病院に対する財政支援、補助金のことでございますが、これまで救急告示病院のうち重篤な患者を二十四時間体制で受け入れています救命救急センターにつきましては、平成二十一年度予算におきまして補助事業を大幅に拡充したところでございますが、その仕組みといたしまして、重症患者の受け入れ実績等を反映した仕組みとしておるところでございます。

 ただ、一方、救急告示病院のうち、二次救急医療機関に対する補助事業につきましては、平成十七年度に地方自治体に一般財源化されておりまして、厚労省が直接その配分を取り決めることはなかなかできないところでございますが、平成二十年七月の厚生労働省内の救急医療の今後のあり方に関する検討会でも、救急患者の受け入れ実績に応じた支援を行うべきということをちょうだいしておるところでございまして、今後、市町村に対しまして、輪番制に対する財政支援につきましても、救急患者の受け入れ実績等が反映できるような仕組みがとれないか、検討していただけないか、よく御相談していきたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 大臣、一言だけ、今回のこの法案でたらい回しが解決できるかどうかということだけおっしゃっていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 たらい回しというような残念な現象を限りなくゼロに近づけるためにこの消防法の改正をお願いしているわけでございまして、実際に、もう既に答弁ではあったかと思いますが、平成九年と十九年の十年間を比較いたしますと、救急隊が現場に到着してから病院に収容するまでの時間が約六分半ぐらい長くなっているということは、それは搬送先がなかなか決まらないということに一つの大きな原因がある、それをなくすためにこの法案を提出したわけでございます。

 ただ、きょうも、先生も今厚労省に対して質問されておられますように、消防という分野だけでは解決できない、医療全体の問題というのがあることは率直に認めなくちゃいけないわけだし、それは救急医療を担う医師の不足が問題ではあるし、あるいはいろいろな勤務条件、勤務環境が厳しいという問題はあるわけです。

 それから、これは国民のいろいろな意識の高まりがあって、救急搬送人員が十年間で五割ふえているという実態もございます。また、これは私の分野では全くありませんが、医療訴訟に対する医師側の危惧の問題とか、解決をしなくちゃならない問題は幾つかほかにあると思いますが、それらと政策が組み合わさっていく中でたらい回しがゼロに近づくことを願っております。

谷口(隆)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

赤松委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問いたします。

 まず、消防法の一部改正の質疑に入る前に、地域の安全と消防団活動についてお尋ねいたします。

 昭和二十三年の三月七日に消防組織法が施行されまして、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生してから、昨年で六十周年であります。とりわけ消防団は地域における消防防災体制の中核として、そしてまた地域住民の安心、安全の確保のために果たす役割は、地域の高齢化とともにますます大きくなってきている、こう思っております。

 しかしながら、全国の消防団員数でありますけれども、統計をとり始めた一九五二年には二百九万人を数えましたが、それ以降減少の一途をたどり、九〇年に百万人を割り込み、現在は九十万人を割り込む、こういうことであります。この団員の不足は、何も都市部ではなく、地方でも深刻であります。そしてまた、かつては自営業の方々ということだったんですが、もう七割はサラリーマンの方々が支えているということであります。

 そこで、常備消防の方も役割は大事なんでありますけれども、この非常備消防、消防団は、単に火災とか、あるいはまた水害などの防災活動にかかわらず、やはり地域の中で密着した活動をしっかりやっておるわけであります。

 そこで、大臣は常々地域の振興は大事だとお話しされておりますので、地域を支えるこの消防団の役割をどのように考えておるか、お聞きいたしますし、そしてまた、団員減少傾向にあるわけなんでありますけれども、これを活性化させるための方策、何かあったらお尋ねいたします。

鳩山国務大臣 消防団という、奉仕の精神というのかボランティア精神というのか、年間わずか三万六千五百円という報酬で非常勤の特別職の地方公務員をやっていただいている、これは善意に支えられたものだと思います。本当に消防団の方は偉いなと率直に思います。みずからの危険を顧みず、あるいはみずからの身体に危険が及ぶかもしれないにもかかわらず、懸命に消防や防災の活動に従事しておられる。消防団がなければ我が国の消防というものはあり得ないとさえ私は思うわけでございます。

 それは、私は選挙区がえをした人間でございますから、かつて東京のど真ん中、現在は福岡でございます。東京のど真ん中ではそれほど多くないことかもしれませんが、福岡に地元を求めてから、実は、火災があって、近いなと思って飛んでいく、そうすると、消防署の方がはるかにおくれて、消防団の方の方がはるかに先に着いて懸命に命がけで消火活動をやっておられる姿は、これは本当に後光が差すような思いで見詰めさせていただいているわけでございます。そういった意味では、みずからの地域はみずからで守るという消防や防災のまさに中核的な組織が消防団だ、こういうふうに考えております。

 また、恐らく消防団の方々は非常に頼りになる方が多いわけでありますから、教育的な効果というのも相当あるのではないか。それは、模範的な行動を示すだけではなくて、消防団のお兄さん、おじさんを頼って子供たちが健全に育つという意味もあると考えております。

 しかしながら、残念ながら委員御指摘のように、二百万を超しておったものが、現在は八十九万人ということでございまして、今、百万人まで増加させるために全国的な入団促進キャンペーンを展開いたしております。また、女性消防団の充実強化という政策もとっております。また、平成十七年ごろぐらいから、特定の活動のみに参加する機能別団員、例えば予防広報専門というような方々にも御活躍をいただいております。また、消防団員の七割が現在はサラリーマンであるということから、入団促進に協力している企業を称賛する消防団協力事業所表示制度というものを導入いたしております。

 それから、平成二十年度二次補正予算及び平成二十一年度当初予算において、消防団の資機材の整備や必要な経費を確保するために、二次補正では五億七千万円、二十一年度当初予算では一億五千万という予算を確保いたしておりますが、何かすごく金額が少ないものですから、これからさらに充実しなければいけないと思います。

 また、平成二十一年度地方財政措置として、消防団の地域活動費を新設するなど、地方財政措置が八・七%増ということでございまして、これはいわゆる標準的な自治体、大体人口十万ぐらいのところで、地財措置をとっておりますのが九千万から九千八百万にふえた、こういうようなことでございまして、ほとんど報酬もなしに活躍しておられる皆様方が、これからますます人数もふえて、活躍いただけるような環境整備に全力を尽くします。

黄川田委員 いろいろお話をいただきました。

 私も地方に住んでおりますので、昔であれば長男坊はみんな消防団員だという形の社会的な枠組みがつくられたところもあったのでありますけれども、最近は本当にサラリーマン化ということで、大臣のお話のとおり、消防団の協力事業所の認定制度、そういうものでもって何とかサラリーマンの方々にもということで、実は消防庁の認定制度で事業所の第一号が私の隣町の大手のセメント工場さんが認定されまして、随時それもふえておりますし、それから機能別消防団員制度、高齢化社会とはいってもまだまだ六十過ぎても元気な方がおりますので、団員のOBの方々を活用するとか、ぜひとも消防庁の方でも、団員の数を合わせるだけじゃなくて、それぞれが役割分担で地域を支えるというような仕組みもつくっていただきたい、こう思っております。

 次に、常備消防の関係であります。

 常備消防の広域化ということで、平成十八年に法が改正されまして、順次県の計画であるとか進んでいると思うのでありますけれども、この進捗状況、あるいはまた市町村消防の広域化が具体的に進展した状況なんかをお尋ねいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘ございましたような消防の広域化につきまして、現在、四十一の都道府県で具体的な計画をつくって進めていただいておりますが、これらの計画が全部完成をいたしますと、七百二十六本部が二百二十六というふうになる見込みでございます。

 これらの広域化推進計画に基づきまして、対象とされている市町村においては順次協議が進められておりまして、既に、これに基づきまして、本年の四月一日、三団体が広域化をされているという状況でございます。

 ただ、この広域化に当たりましては、各消防本部、各市町村長さんにいろいろな御懸念もあるわけでございますので、これらの御懸念に丁寧に対応できるようあるいは具体的な助言を行うということで、消防の広域化に関しますセミナーでございますとか、それぞれ体験されてこられた具体的な体験者の方々の推進アドバイザーの派遣など、できるだけきめ細かく、いろいろなケースに応じて具体的な御相談をいただいて、私どももそれにきめ細かく対応するというような形でこの消防の広域化といったものが着実に進むように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 市町村合併の新法も今年度で終わるわけでありまして、合併が先行して、その後を消防の広域化、これは後を追うというような形だと思いますけれども、お話しのとおり、非常備消防、地域密着型の消防団と広域の常備消防との関係、これがしっかりとした連携、つながるように、不安を残さないように広域化を進めていただきたいと思っております。

 それでは、本題の消防法の改正についてお尋ねいたしたいと思います。

 去る二月九日に、消防審議会が消防機関と医療機関の連携のあり方に関する答申をまとめました。その中には、消防と医療の連携体制を強化するために医療提供体制の整備は都道府県が主体的な役割を担うことが重要である、こう書いてあるわけであります。救急搬送・受け入れの実施に関するルールの策定及びその際のメディカルコントロール協議会等の組織の設置、この二点を強調していると思っております。

 私も、東京消防庁の取り組み、現場を視察させていただきました。本当にすばらしい活動でありまして、これが各地域の手本になればなと思っておるわけでありますけれども、私の地元の県の担当者に聞きますと、県の救急搬送は、救急救命センターの行き先はほぼ決まっているということであります。大都市は、いわゆる患者のたらい回し問題があるかもしれないけれども、逆に選べる病院がたくさんあり、うらやましいなというふうな話も聞くわけであります。

 そこで、財政状況が厳しくて、医師不足によるベッド数の削減、あるいはまた公立病院の統廃合など疲弊し切った地域医療と、たらい回しとかいろいろな問題がありますけれども大都市との大きな医療格差はあるわけであります、これをどのように認識しておりますかということと、それから、この地域医療に救急救命がしっかりと行き渡るようにこの先どんな方針で支えていくか、この二点についてお尋ねいたしたいと思います。大臣、お願いします。

鳩山国務大臣 医師不足によって、先生のお地元でも無床化したところがあるように承っておりますが、ベッド数が削減するとか公立病院の統廃合の問題などがあって地域医療が疲弊しているのではないかということでございます。

 医師不足の深刻化とか地方財政の悪化ということの影響を受けて、各地の公立病院、とりわけ地方の公立病院では医療提供体制の維持が極めて困難な状況となっているということを認識いたしておりまして、とりわけ医師確保対策は政府全体の大きな問題でございまして、関係省庁と協力して進めていかなければなりません。

 医学部の定員をふやすというような話は、これはいわば今やって何年かかるかという話でございまして、私はかつて文部省、文部科学省関係の役職を随分やりまして、医師が不足だといって臨時増募する、今度はふえ過ぎたから減らす、それを繰り返してきた見通しの悪さというものは、正直言ってあると思いますが、これからは医師の数をふやしていかなければならないだろうと思いますし、まあ、ふやすだけでなくて、地域で、地方で勤務していただける方を養成する、あるいは勤務条件や環境を改善するなどの対策はやっていかなくちゃならない。総務省というよりは、これは厚労省の分野が多いかと思います。

 問題は、過疎地、産科、小児科、救急部門などの医療はいわゆる採算ベースに乗りにくい、そうしたところは公立病院でやっていただかなければならない。公立病院は、嫌な言い方かもしれませんが、もうかるとかもうからないということはある程度度外視して頑張っていただかねばならないという使命を帯びておる病院でありましょうから、その公立病院に対する地方交付税措置は、二十一年度は七百億円ふやして三千六百億円規模の財政支援ということといたしました。

 また、過疎地でその公立病院しかない、小規模であってもこれは地域の唯一の医療機関だというような場合には、特別交付税でこれは措置をするのが普通なんですが、この特別交付税の措置単価を一・八倍にした、一ベッド当たり六十八万円を百二十万円にしたというようなことで財政支援をしなければならないだろうと思います。

 平成二十年十二月二十六日に発足した地域医療の機能強化に関する関係閣僚会議は、官房長官主宰で、私、文部科学大臣、厚生労働大臣などが構成員で、この関係省庁間の連携を強化していこう、こういうふうに考えております。

 余計なことかもしれませんが、初めてこの閣僚会議が設置された昨年の十二月二十六日というのは、私はこの会議へもちろん出て、発言はいたしましたが、朝、うちから総理官邸に行く間にメモが入って、オリックス不動産に決まったという日だったものですから、何だこれは絶対おかしいぞと思っておったので、その記念日じゃないんですけれども、非常に記憶に残っている日でございまして、その日は怒り心頭に発したまま総理官邸に行って、あの医療の重要な会議へ出たのをはっきり記憶いたしております。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 地域医療の確保につきましていろいろな対応をしていく、政府全体として、今大臣からお話がございましたような関係閣僚会議等を中心に、その確保の対策が講ぜられたわけでございます。

 また一方で、現状の医療資源の中で、それぞれの地域の実情に応じた消防と医療の連携が、傷病者の方が傷病を発症して、御自分の場所からいわば適切な医療を受けられるまで、これが切れ目なく続けられることをどうやって確保するかということが非常に重要な課題だというふうに認識をいたしたわけでございます。

 そのような観点から、今回お願いをいたしております実施基準の作成、そのような広域的なものを調整する、あるいは、そういうものを調整できるのは現在医療計画を策定している都道府県知事等の権限にお願いするのが適当ではないかというようなことも考えながら、医師会あるいは厚生労働省と連携を図りながら今回この法律改正をお願いしているということでございます。

黄川田委員 救急搬送、救急医療の関係で、消防法の一部改正をすればそれで済むということではなくて、受け入れ医療機関の選定困難や救急搬送の長時間化が発生するというのは、やはり医師等の不足と財政措置の不十分さに根本の課題があると思っておりますので、その改善を強く要望しておきたいと思います。

 それからもう一つ、今回の消防と医療の連携を進める法改正の趣旨の一つに、救急搬送・受け入れに関する協議会の設置があるわけでありますけれども、救急搬送が都府県の区域を越えて他都府県の医療機関に行われることは珍しくないわけであります。私は岩手でありますけれども、岩手の県南と宮城県北、その中核病院ということでどちらが近いかとか、それぞれ動きがあるわけでありますけれども、都府県を越えた広域連携について今改正では明確な規定がないようであります。

 そこで、広域連携の何らかのルールづくりが行われないと、たらい回しの問題等、本質的な解決にならないと考えますが、この点についてお尋ねいたします。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、救急搬送の場合、都道府県の区域を越えた救急搬送というものが現状でも相当数行われているわけでございます。したがいまして、地域の医療体制の実情といったものを踏まえますと、関係都道府県間での調整といったものがこの実施基準を策定していく際では必要になると存じております。

 現在でも、各ブロック間の中で周産期の医療に関しますいろいろな調整検討会といったような形でいろいろな調整も行われておりますけれども、今回の実施基準の作成に当たりましては、この実態を踏まえて近隣の都道府県との調整が円滑にできますように、まさにそれはそれぞれの県が策定されます医療計画とも連携をしてまいります。

 そういう意味で、私ども消防庁といたしましても、厚生労働省と連携をして、区域を越えた救急搬送、医療機関の受け入れが円滑に行われますよう各種の支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 残り時間が少なくなってまいりましたので、ちょっと飛びまして、救急救命士の関係でお尋ねいたしたいと思います。

 現在救急救命士が行えるのは、血圧や心音の検査、酸素マスク装着や人工呼吸など、基本的な応急処置に限られておるわけでありますけれども、厚労省は業務の拡大ということで動きがあるようであります。

 そこで、病院搬送前に患者に施せる処置をふやすことで救命率の向上が期待されると思いますが、救命士の判断力や技術の向上が伴わないと、これまた医療事故につながりかねないと危惧されるところもあります。

 そこで、業務拡大の基本指針であるとか、研修体制の整備、実施時の医師と救命士の連携のあり方、この三点についてお尋ねいたしたいと思います。

榮畑政府参考人 救急救命士の業務範囲の拡大につきましては、これまでも現場のニーズとか関係者の御意見等もちょうだいしながら、その処置を救急救命士が現場で行うことが直ちに患者を救急医療機関に搬送してお医者さん等が処置を行うよりも救命率等が高くなることが考えられるか、さらには、その処置の難易度と実施体制等を勘案して、救急救命士でもその処置を安全に行うことができるか、また、救急救命士が行う場合にはどのような教育内容とかお医者さんによる指示体制、業務の手順等が必要か等の観点から、専門家の方々によって検討を行い、救急救命士がその処置を行うことが適当とされたときに業務範囲を拡大してきたところでございます。

 また、救急救命士の研修につきましては、救急救命士による救急救命処置の質の向上を図る視点から大変重要なことであると考えておりまして、地域のメディカルコントロール協議会の協力のもとに、拡大された業務に関する現任の救急救命士の方の再研修等を行うようにお願いしておるところでありますし、また一般的に、救急救命士の養成課程において実習を受け入れていただいている医療機関への支援等も行っておるところでございます。

 お医者さんと救急救命士がうまく連携していくことにつきましては、大変大事なことだろうと思っておりまして、救急救命士がお医者さんの指示のもとに救急救命処置を行うこととされておるところでございます。このような救急救命士の行う処置の質を向上させて、救急患者の救命率の向上なり後遺症の軽減等を図るためには、お医者さんの指示、指導体制の充実なり救急救命士の行った処置に対する事後検証の充実等を行っていく必要がございまして、地域のメディカルコントロール協議会等も活用しながら、引き続き消防庁とともに地域の医療機関と消防機関の連携を進めて、救急救命士の業務の質の向上というのを進めてまいりたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

黄川田委員 残り時間が五分となりましたので、最後に、住宅用火災警報器の設置の義務化の進捗状況についてお尋ねいたしたいと思います。

 平成十五年以降、住宅火災による死亡者は五年連続で千人を超えておりまして、かつてない高水準であります。そしてまた、近年の高齢化の進展に伴いまして、死亡者の約六割が六十五歳以上の高齢者、そして死亡原因の約六割は逃げおくれによると聞いております。

 そこで、既存住宅の火災警報器の設置については、各市町村が平成十九年から二十三年までの間で条例で定める日より適用するとされておりますけれども、全国の市町村の設置の義務化状況、実際の取りつけ状況、また、それらで全国的な傾向、偏りなんかがあればあわせて消防庁にお尋ねいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 住宅用火災警報器の設置義務化につきましては、新築住宅は十八年の六月からスタートいたしました。既存住宅は、今委員御指摘のような形で、市町村条例で順次進んでおります。現在のところ約二五%の世帯で義務化されておりますが、それ以外の市町村につきましては、二十三年六月までに全国で義務化という条例が制定されております。

 普及状況でございますが、各地域におきます調査結果をもとに推計いたしますと、本年三月の時点で全国の普及率は約四六%というふうに推計をいたしております。昨年の六月が約三六%というふうに推計いたしましたので、この間に約一〇%ほど普及をしたという状況でございますが、少しでもこの普及を進めることが緊急の課題であるというふうに考えております。

 全国的な傾向を申し上げますと、全体としても設置義務化を各市町村がやっておりますけれども、東日本の方が西日本の方に比べて時期が早いという傾向がございます。その結果であるかもしれませんが、普及率も、先ほど申しました全国約四六%という状況でございますが、東日本で約四九%、西日本では約四〇%というような状況でございます。

黄川田委員 総務省の関係で、国民は地デジということで対応しなきゃいけない。これもまだ五割までいっていない。それから、火災警報器の方も今お話しのとおり五割までいっていない。地デジの関係は二〇一一年の七月二十四日、火災警報器の方は二〇一一年の六月一日までに義務化ということで、消防庁は地デジに負けないように。

 もちろん、これは個人の負担ということで、自助、共助、公助でいえば、自助の部分で、さまざまあるのでありますけれども、義務化されたところでは寝室とか階段が義務化でありますけれども、そのほか台所、あるいはまたその他の居室も含めて地域によっては条例で上乗せしているところがあるかもしれませんが、その辺はどういう状況になっていますか。

岡本政府参考人 市町村の条例によります設置義務のいわゆる上乗せの状況でございますが、寝室、寝室の階段という基本の法令の対象に加えて、台所を設置を義務づけているといったものが、大都市、特に政令指定市を中心に全国のおおむね三分の一の世帯がこの上乗せをやっているという状況にございます。

 これに加えまして居間でございますとか、いわゆる台所、寝室以外の居室にも義務づけているというのは、一部の地域と申しますか、東京都が基本的にはこの義務づけを行っているという状況でございます。

黄川田委員 この普及なのでありますけれども、大臣から先ほど答弁があったとおり、男性の消防団員はなかなかふえにくいのでありますけれども、女性消防協力隊の部分では着実にふえているということであります。やはり家庭を預かる女性の方々の部分できちっと理解されると、普及は高まるようであります。私の隣町は、女性消防協力隊が一生懸命頑張って、八割近くにまで普及されておりますので、そういう面も含めてぜひとも消防庁には頑張っていただきたいと思います。

 以上であります。

赤松委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、消防法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 まず初めに、実施基準の遵守義務についてお伺いをいたします。

 救急搬送において、消防機関と医療機関の役割は車の両輪と言われておる関係でございます。しかしながら、今回の改正案は、消防機関に対しては実施基準の遵守義務を課す一方、医療機関には努力義務にとどめられております。この理由についてお聞かせをいただきたい。消防法で義務づけするということは適当ではないのか、そのことを含めて答弁をよろしくお願いします。

鳩山国務大臣 森本先生御存じのように、傷病者の搬送及び受け入れに関する実施基準は都道府県が策定をいたしまして、これは協議会の議論を経て策定されるものでありますから、この実施基準はいわば法律に基づいたルールと言うことができるわけでございます。ですから、消防機関も医療機関も定められた実施基準というルールに基づいて搬送や受け入れを行っていただくべきでありますし、そのように努力をしてもらわなければいけません。

 ただ、それをどういうふうな遵守義務にするかということに関しては、消防機関は公的機関でありますから、当然定められたルールに従うよう求めることができますので、いわば消防機関は遵守義務を負う。ただ、医療機関については、病院のかなりの部分が私立でございまして、救急告示病院全体でも六八%が私立である。救急医療に携わる医師や病床の不足などにより、やむを得ず受け入れ不能ということは、これは望ましくはないですが、やむを得ず受け入れ不能ということは場合によってはあり得るわけです。そういういわば私人である病院に対して遵守義務まで課すことは現実的ではないということで、尊重義務あるいは努力義務という形になっておりまして、公的な消防機関と若干の差があるのはやむを得ないものと思います。

森本委員 今後、医療機関において遵守義務を定めるというようなことはなかなか想定がしがたいという答弁だと思うんですが、なかなか難しい問題でありますが、そうなると、消防機関からの搬入に対して受け入れ側が努力義務に終わるということは、これからも非常に問題が出る可能性もある。

 そう考えますと、そうした実施基準の遵守をどのように担保していくかということは、非常に難しい問題ではありますが、そこのところはどのようにお考えか、あえてお伺いをいたします。

鳩山国務大臣 私立の病院でありますので、遵守義務という形にはなかなかできないと現在思っております。

 ただ、先生御指摘のように、もちろん努力する義務、尊重する義務というのはあるわけですが、どうやって担保するかということでございます。

 これは実施基準を定めるときに、医療機関も当然参画して協議会をつくって、その協議会で協議をし、合意されるものでありますから、基本的には、医療機関が参画をした実施基準になりますので、医療機関の方々は従っていただけるものと考えております。

 実際には、実施基準に基づく傷病者の搬送とか受け入れがこれから始まっていく中で、常に連絡調整を行い、定期的にその状況をチェックして検証する仕組みの中で実施基準が守られるように取り組みがなされていくと期待しております。

森本委員 大臣、これは後でまた議論をさせていただきますが、医療体制の整備に尽きるというふうに考えております。そこのところは、どのような体制、そして問題点を解決していくかということにかかると思いますので、これはもう少し後でまた議論をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 それでは、この三十五条の五について、その中の第六号についてお伺いをいたします。

 「前二号に掲げるもののほか、傷病者の受入れに関する消防機関と医療機関との間の合意を形成するための基準その他傷病者の受入れを行う医療機関の確保に資する事項」とあるわけであります。

 この内容の意味、意図するところでありますが、法律案に出てくる段階で総務省消防庁が出された消防法の一部を改正する法律案の概要では、「搬送先医療機関が速やかに決定しない場合において、傷病者を受け入れる医療機関を確保するために、消防機関と医療機関との間で合意を形成するための基準」と書かれてあったわけです。この第六号の内容には、搬送先が決まらない場合に備え、最終的に受け入れを当番制で確保しておくとの意味が含まれていると思うわけであります。

 この点について大都市部と地方では大きな差があるというふうに思います。大都市部では、きょうは谷口委員も受け入れ困難とか訴訟の問題とかいろいろありました、最終受け入れ医療機関がたくさんあるわけですが、例えば外来患者等の処置中などにより隣の救急センターがとれるのではないかというようなことで受け入れを断ってしまう場合も考えられますが、地方の救命センターは二次救急も三次救急もすべて扱っているところがありますので、自分のところが受け入れなければ行くところがないという意識は非常に強いわけです。

 救命センターが最終的な受け入れ先となってしまう。その結果、県内には救命センターの数も少ない状況から、恒常的なベッド満床等によって重症患者の受け入れが困難になってしまうという現実が出てくると思うんですが、この点については都道府県の実施基準策定の大きな問題になるということが懸念されるわけですが、このことについてお答えください。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、三十五条の五第二項第六号は、それまでの号までのルールによっては医療機関が決まらない場合に、最終的に傷病者を受け入れる医療機関を確保するために、今委員御指摘いただきましたように、例えばとりあえずどこかの救急医療センターに行くというルールをそれぞれの地域の実情に応じて決めるのか、あるいは医療機関の選定といったものを、例えば専門のコーディネーターといったものを両者合意のもとに定めて、その判断、指示に従うというようなやり方でありますとか、それぞれは、その地域のまさに医療資源と今までの例えば隣県等全体におきます状況を勘案しながら、消防機関と医療機関で、それをまた都道府県が調整して決めていただくということになろうかと存じます。

 場合によっては、今委員御指摘のように、救急医療センターが地方の場合には、とりあえずはまずそこで一度受けるというような実態が現にございますから、先ほど来御紹介させていただいておりますような実態調査の中でも、大都市部に比べて地域では選定困難事案といったものが極めて少ないというような実情につながっているのではないかというふうに推測いたしておりますが、そのようなものにつきましても、現在の救急医療センターの中でとりあえずそれを受ける、また同時にこの救急医療センターの医療体制についてその状況を踏まえながらどのような対応をしていくかということとあわせながら、その状況に応じて実施基準といったものも適時見直していくということになろうかと存じます。

森本委員 それでは、続いてもう一つ、三十五条の八についても見解をお伺いしておきます。

 「都道府県は、実施基準に関する協議並びに」という文言、条文がございます、「協議会を組織する」ということでございますが、この協議会について。

 現在の消防機関が行う救急活動において、救急救命士や救急隊員が行う救急救命処置等について医学的観点から救急活動の質を保証する役割としてメディカルコントロール体制ができ、これに関連したメディカルコントロール協議会は、現在、地区単位で全国二百八十七に設置されておると聞いております。県単位では全都道府県に設置されておるわけであります。

 このメディカルコントロール協議会の構成員は、消防機関、医療機関、行政関係者、学識経験者等となっております。協議会の協議事項には、救急救命士に対する指示体制、救急隊員に対する指導助言体制の調整、救急業務の実施に必要な業務の各種のプロトコールの策定。これは見事な東京消防庁の例も見せていただきまして、これが全国に多く公開されていくと大変役に立つなというような感じが私は率直にいたしました。それで、傷病者受け入れに係る連絡体制の調整と救急搬送体制及び救急医療体制に係る調整も協議事項とされています。

 今回の法律案第三十五条の八にある協議会と既に組織されているメディカルコントロール協議会との関係をどのように考えられるのか、また、法律案の中にメディカルコントロール協議会を取り入れて法制化するとの考え方はおありなのか、そこについて御見解をお聞かせください。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、現在、都道府県や地域ごとにメディカルコントロール協議会が設置をされておられまして、主に医学的観点からの救急活動の質、先ほど御紹介ございましたような、東京のようないわゆるプロトコールの策定などのいろいろな実績を上げておられるというところでございます。

 今回の改正法に伴いまして消防機関と医療機関の協議会を設置することによって、実施基準の策定、あるいは実質的な担保、チェックといったものを図ろうとしているわけでございますが、既存のメディカルコントロール協議会を活用してこの法律に定めました実施基準に関します各種の協議を行うことは非常に効率的なことだというふうに考えておりますので、既存のメディカルコントロール協議会を活用した中で、これを今回の改正法に基づきます協議会と位置づけることによって、その協議会が都道府県の実施基準の策定のための法上の協議会ということになるケースもあろうかと思いますし、そうではなく、新たに協議会をつくられる場合もあろうかと思いますが、現在いろいろ伺っている段階では、現在の既存の協議会を活用して新しい体制につなげていきたいというふうに伺っているところでございます。

森本委員 これは別々のものとして考えずに、連携といいますか、中へ入れるといいますか、そうした格好でうまくコーディネートしていくというような、そういった感じでよろしいんですね。

 それでは、救急医療体制の確保についてお伺いをいたします。

 改正案は、受け入れ医療機関選定困難事案や救急搬送長時間化事案の増大に対し、両者の連携を図り、搬送・受け入れルールを明確にすることにより、その解決を図ろうとされておるわけであります。

 救急医療にかかわる医師や施設、設備が不足しているという、救急医療をめぐる構造的な問題があるという指摘があります。これは、今も大臣の答弁の中で、解決しなければならない課題があるというようなことを大臣も答弁されておりますが、審議会の答申もそのことを認めておられるわけであります。そこのところの問題意識をどのように持っておられるのか。中長期的な目標も持っておられるとしたら、ここのところは簡単で結構でございますので、少し御意見を伺います。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、いわば傷病者に係ります救急医療といったものを大成していくためには、適切な搬送、適切な選定、そしてそこに適切な医療といったものを施すことによって、救急医療といったものが全体としてまさにサービスが完結するということであろうと思います。

 そのために、現在の医療体制のもとだけでは足りない絶対的な量を、どうやってそれを補っていくか、あるいはふやしていくのか。それから、先ほど来御指摘ございますような訴訟リスクといったような問題等、いわゆる社会的な、全体として別の次元から解決すべき問題といったようなものが総合的にあるわけでございますが、今回の法律でお願いをいたしましたのは、そういう全体的な体制は、政府全体として地域医療をどうやって確保していくか、その救急の医療体制をどうやって確保するかという課題を全体として解決していくというベクトルの中で、現在の医療体制、先ほど御紹介ございましたようなそれぞれの地域の医療の実情の中で、最善のものとしてどのような救急搬送と医療の供給といったものが行われることによって、現在最大限できる、毎日発生している救急の需要にどうやってこたえていくかというものを的確に確保するということだろうと思います。

 当然ながら、委員御指摘のように、そのことによってよりよい地域医療、地域救急医療の確保といったものが、例えば量的に補われていけば、それに伴った実施基準の見直し、改正といったものをぜひ順次行っていきたい、また行っていくべきものだというふうに考えております。

森本委員 それで少し私の方から申し上げますが、私の地元は三つの大きな病院がうまく運営をされている、うまくというよりも、かなり厳しい環境の中で努力をされていると言った方が適切かと思いますが。

 公立病院の経営悪化と医師不足、これはいろいろなところでお話があるわけでありますが、そうしたことは私の地元でも言えるわけでありまして、利用患者の増大で本来の救急業務の役割であった重症患者への対応が困難になった。そこで、一次、二次を重症として、救急の役割を分担した。そこで、住民の方々、市民の方々は、いろいろな問題もありましたが、そこのところをうまく、最近では十九年四月から仕分けられて、今努力をされております。それで大きな問題も起こっておらないということは、私自身も感謝をいたしておるわけであります。

 ただ、ここでこの三病院に対して、二億二千万円の人件費に対して、市から約五千万円の補助金が出されておるという現実。そして、救急患者だけとは申し上げませんが、未収金が最近病院経営に非常に大きくのしかかっておるという事実。こうした問題は、私は非常に大きな問題だというふうに思っています。

 今、地方では特別交付金というようなことで手当てをしていくんだというお話も、大臣から答弁でお聞きをさせていただきました。しかし、その中で、このような現実、例えば中心になっておられる民間の病院では、この二〇〇九年の三月末で約四千万円の未収金。その病院は、松阪以外の病院もありますが、そうしたものを含めると一億円は下らないだろうというような見解でございました。

 ですから、厚生労働省からいただいておる資料では、十九年十二月の診療分だけで、未収と挙げられておるお金だけでも、全体で十億ですね。そうすると、これは通算をしていくと、この金額はかなり莫大なものになろうかと思うんです。

 その資料は、きょうは無理でしょうから、もしございましたら、また後で資料の提供を。

 この現実を見たときに、完全に病院の経営に影響が、特に開業医さんよりも病院の方の経営が苦しくなっておるという事実。そして、この新聞で見せていただくと、厚生労働省から出されたこの負担軽減についてというアンケートから見る医師の皆さんの大変な勤務状況。私は、このことを中心に抜本的に考えていただかないと、この問題はなかなか解決しにくいという現実を感じます。

 そのことについて、御意見をお伺いいたしますが、いかがですか。

榮畑政府参考人 治療費を患者さんが払っていただけない事態が続けば、確かに医療機関の健全な経営が困難となって、地域医療を維持できなくなるおそれもございますことから、医療機関の未収金対策を進めることは重要な課題であると考えております。

 このため、厚生労働省におきまして、平成十九年から関係者の方にお集まりいただいて、未収金問題の解決に向けた方策等について御議論いただいて、昨年の七月に報告書を取りまとめていただいたところでございます。

 この報告書におきましては、まず未収金発生を事前に防ぐための対策、そしてまた発生後の対策として、低所得者の国民健康保険の方々の一部負担金を減免するような仕組みを運用改善できないか、さらに、治療費を支払わない患者さんに関係する医療機関とか国民健康保険、生活保護の連携をきちんと強化できないか、さらに、保険者が医療機関のお求めによって患者から一部負担金を徴収する保険者徴収の運用改善ができないかなどが提言されておりまして、厚労省といたしましても、これらの提言を踏まえて必要な対策を進めていきたいと考えております。

 具体的には、平成二十一年度予算におきまして、この未収金対策に創意工夫を凝らしていただいて、先駆的な取り組みをしていただいている医療機関に対しまして財政支援するような事業も新たに創設したところでございます。そういうふうなことを通じまして、医療機関の未収金対策というものをさらに進めてまいりたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

森本委員 ありがとうございました。

 財政支援も視野に入れて検討していくということで間違いございませんね。

 それでもう一つ、この未収に対して、すばらしい車に乗って、かなり給料もとられて、それでこうした未収を平気でやられる方に対しては、私は強い罰則をつくってもいいんじゃないかという思いをするわけですが、そこのところの協議はされておらないんでしょうか。

榮畑政府参考人 悪質な治療費の未払い者に対する罰則の創設につきましては、実は現行の法体系の中でも、治療費を払わない人が医療機関を受診した当初から支払いの意思がないようなケースなどにつきましては、その事案の態様によっては詐欺罪に問われ得るようなこともあろうかと思っております。

 したがいまして、まずその事案の態様等々を踏まえながら、現行の法体系の中でできることを考えていくことが先決ではないかと思っておるところでございます。

 以上でございます。

森本委員 私は、最近、よくむちゃを言う方がそのまま通っていくというような現実、そして、まじめにやられておる方に非常に御迷惑をかけていくというような、そういう社会であってはいかぬというような思いをさせていただいております。そういうところについては何らかの対応をしていかなければならないだろう、そのことも検討していただくように求めて、時間も参っておりますので、次に進めさせていただきます。

 救急搬送業務については、谷口委員からも御指摘がありました。詳しくは申しませんが、救急出場件数が大体一・五倍になっているのに対して、搬送救急隊員は一・〇八倍。ここに救急隊員がかなり大変な労働になっておるんじゃないかなという思い。そして、この対応について、救急業務に対して先般少し分科会でもお話をさせていただいた部分がありますが、搬送のときの有料化についてはどのようにお考えか、どのような検討がされておるのかおらないのか、そのことについてお伺いします。

岡本政府参考人 救急出動件数がこの十年間で約五割増加をしているという状況があります中で、救急の出動に対応したいわゆる適正利用というところで有料化の議論が常にあることは承知をいたしております。そういう意味で、その適正利用をいかに進めるかというところの一つの論点として有料化の議論がある、また、それがいろいろなところで議論されていることは承知をいたしております。

 私どもの現在の考え方といたしましては、直ちに有料化ということよりは、できるだけ市民の皆様方に救急の適正な使い方をわかっていただきますとともに、しかし、現実問題としてひとり暮らしのお年寄りの方々が多くおられ、また、若いお母さんたちが子供さんたちに何らかの変化があったときの不安というものは現実でございますから、そういうことに対応して、これが本当に救急を呼ぶべきものなのか、あるいは一日置いて次の日に近くの病院や診療所へ行けば済むものか、そういうことに対応していくことによって、本当に必要な救急といったものが、ある意味では分けていかれるのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、二十一年度の当初予算で、東京消防庁でもごらんいただいたと思いますが、救急相談センターの事業といったものを全額国費の事業で三カ所ほど全国でモデル的に実施をいたしまして、その事案におきますいろいろな実績あるいは問題といったものを各消防本部に御紹介することによって適正な利用につなげていければというふうに現在考えているところでございます。

森本委員 私は、社会的に弱い立場の方もありますし、これを強制的に有料化という問題についてはいかがなものかというように思っています。

 ただ、私も息子が救急で運ばれて、本当に命を救われました。そのときにはせめて救急隊員の皆様にお礼をさせていただきたいと思っても、お礼ができないわけですよね。そういう方々、例えばうちの孫息子が熱が出て、驚いて子供たちが救急車を頼んでしまう。それで行って、治療を受けて、それほど大したことなかったし、悪いなという思いを、ある種、基準があれば何らかの形にしていただきたい。

 私は、結構皆さんにそうした話をさせていただいておると、やはりあれは悪いよな、救われたことに感謝の気持ちは何かで差し上げたいよなという、そういう温かい人がたくさんお見えになると思うんです。ですから、そういう方の好意というものは何らかの形でいただいてもいいんじゃないかな。その思いの中で質問をあえてさせていただいたわけであります。

 耐震偽造の問題もありました。それは、一部の方のために善良な建築関係の方々が非常に苦しい経営に陥った場合があります。今の罰則の問題もそうですが、本当にまじめにやられる方々が、土木事業もそうですが、一部の悪い方のためにまじめな方々の好意が全面的に社会に出てこないという、今、時代が少しゆがんでしまっていくんじゃないかという思いがあるわけでありますので、あえてそうしたことを申し上げました。

 もし大臣から答弁があれば、最初の点について。

 その前にもう一点。

 これは、実施基準は県がつくりますから。例えば、今、市が違うと、道路整備なんかも一生懸命やらないわけですよね。例えば私の町と、選挙区が一緒になりましたから隣の町の道路をつないでやれば、そこが半分の時間で搬送できる。しかし、今までそういう発想がなかったわけです。一時間かかったのが、三十分で松阪の病院へ搬送できる。そうしたことは総務省ももう少し国土交通省にお話をしていただいて、積極的にそうしたところをつないでいくという作業もぜひお願いしたい。

 最後に大臣の御見解を。このことは結構でございますので、有料化の問題とか人の心の問題で大臣からお答えをいただければ幸いでございます。

鳩山国務大臣 森本先生がおっしゃっている話というのは、非常に常識にかなったお話ではあると思うのです。

 私も、何年か前に孫が引きつけを起こして、びっくりしまして、夜中でしたが、救急車に来ていただいたわけです。引きつけでしたから大したことはなかったのでございますけれども、家族としては青くなります。来ていただいて、運んでいただいた。やはり悪いなと思って、何かお礼をしないとおかしいなと思いました。その思う気持ちは非常に常識的であり、市町村消防ですから、市町村がそういう善意の寄附を受けるということは問題はないと思うわけでございます。

 ただ、問題は、救急搬送していただいた、救急車に来てもらったお礼というか、寄附をするというようなことが何となく定着してしまったら、救急車を呼ぶとお礼か寄附をしなくちゃならぬのかなというので救急要請の萎縮ということが起きるおそれもなきにしもあらずと思っております。

 したがって、有料化ということは全く考えておりませんが、善意は受け取ってもいいんですが、これが妙に定着しても困るという複雑な心境でございます。

森本委員 大臣の御見解はごもっともなことと思っておりますので、きょうはこれで質問は終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 消防法について質問いたします。

 最初に、もう一カ月前になりますか、十人の方が亡くなられた群馬県渋川市の高齢者の入所施設「たまゆら」での火災事故について、関連して質問をいたします。

 直後に現地にも行きまして、渋川市の関係の方ですとか御近所の方、県の方にも行ってお話を伺ってまいりました。介護を必要とするような方、認知症の方などもいらっしゃる、自力で避難することが困難な方が入所している施設だったわけですが、そこにヘルパーで入っていたような方などのお話でも、入所者がふえると理事長が一つの部屋をベニヤで仕切って二つにして入所者を入れるとか、そんなことも行われていた、火災になったらどうなるのかという心配の声はあったという話などもございました。

 施設の設置者、運営者の責任が問われるのは当然ですけれども、同時に、所得が少ない、所得がない、そして介護を必要とする高齢者が入所できるような施設そのものが足りないということが大問題であり、この点でも、医療介護施設を削減して受け入れ施設の不足の原因をつくってきた政府の責任が厳しく問われるということをまず指摘しておくものです。

 その上で、消防設備の問題もございます。

 四月の政令改正で、自力避難が困難な入所者がいる施設はスプリンクラーや火災報知機などの設置基準が強化をされましたが、地元の消防の方も、年末にも行って状況を見ているわけですけれども、「たまゆら」について対象になるかどうかというのもその時点では明確でなかったということもございました。

 いずれにせよ、事業者側にしてみても、資力に乏しい事業者も多いわけですし、なかなかこういう整備が困難な場合もあります。また、小規模な施設では義務づけのないような場合もございます。

 そこで、この防火安全対策、火災報知機などの義務づけのないような小規模な社会福祉施設などに対して、例えば火災報知機などを設置するような、防火設備設置の支援策をぜひ具体化すべきではないかと思いますが、お尋ねいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、ことし三月の老人ホーム「たまゆら」の火災などのように、小規模の社会福祉施設の中には法律上の設置義務がないようなもの等もあるわけでございますが、このような老人ホームに自力避難が困難であるような方々もまた就寝をされるということになるわけでございますので、火災発生後直ちに、私どもは全国の消防機関に、いわば自力避難の困難な方がおられるかどうかなど、それぞれの老人ホームの実態に合わせた防火管理をどのようにするか、火災予防対策を徹底するようにという通知をいたして、また、一斉点検を現在行っていただいているところでございます。

 また、その中で、万が一火災が発生した場合に、自力避難困難なお年寄りを初めとする方々を連れて逃げられる人員を確保する、これはある意味ではソフトのやり方でございますが、それと同時に、逆に、火災報知設備をつける、いわばハードの対応をすることによってできるだけ早く避難ができるようにするという、いわばソフトとハードの両方の施策の掛け算によって火災予防というのは守られるというふうに考えております。私どもとしましては、小規模な社会福祉施設における防火指導を、今申し上げましたような一斉の視察といったことを加えて、徹底していくということをやりたいと思っております。

 また、その中でハードの対応として、火災警報器、例えば、先ほども述べましたが、現在、住宅用の火災警報器の中では、いわゆる単独でやるようなものよりやや値段は高くなりますけれども、一つの箇所で火災が発生した場合にはこれが直ちに個別の自動火災報知機ごとに連動していくというようなシステムもございます。

 また、このようなものを小規模な社会福祉施設等に設置していただくことによりまして全館に火災を早く報知するというようなこともできますので、現在、政府として検討いたします経済危機対策の中におきまして、防火指導の一環として、小規模な社会福祉施設に対しまして火災報知の設備を支援するといったスキームも検討している最中でございます。

塩川委員 住宅用火災警報器、それが連動して各部屋で、一つで探知した場合には全部屋でという仕組み。その対象となるような社会福祉施設というのは、全国でどのぐらいあるものなんでしょうか。

岡本政府参考人 対象の数を詳細、正確に把握できているという状況ではございませんが、いわゆる小規模な老人ホーム等を想定します際に、私どもとして、現在、予算的には約一万五千程度を対象として考えております。

塩川委員 大臣に伺いますが、こういった資力に乏しいような小規模な施設においても今言った措置というのはぜひやっていただきたいと思いますし、同時に、多数が入所をされるような施設も当然ございます、これは当然義務づけのかかるような施設ですけれども。そういった施設についても、スプリンクラーをつけるにしてもかなりお金もかかりますし、事業者の努力を求めながらも、そこにプラスアルファの支援というのもぜひ具体化を検討いただきたい。

 その点について、例えば厚生労働省との協議ですとかの具体化などもぜひ図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 この種のことについて私が詳しい知識を持っているわけではありませんけれども、事は人命にかかわることであり、しかも、小規模、大規模にかかわらず、老人ホームのように逃げおくれの起きやすいようなところは、いわゆる先手必勝というのか、先手先手で、それは支援とか義務づけとかいろいろあろうと思いますが、先手先手で行くことが大事ではないかな。私はそういうふうに思いまして、厚労省等も当然消防庁と相談をしてもらって、先手を打つという気持ちでやってもらいたいと思います。

塩川委員 よろしくお願いいたします。

 法案に関してですけれども、今回のスキームでは、都道府県に、消防車の搬送・受け入れの実施基準についての協議及び実施基準に基づく傷病者の搬送・受け入れの実施に係る連絡調整を行う協議会の設置を求めております。

 医療については、医療法に基づき都道府県の責務がございますが、消防に関しては、都道府県にかかる義務というのはほとんどありません。また、都道府県単位をカバーする消防組織というのは東京消防庁以外にはないわけで、つまりは、市町村単位の消防組合、自治体消防と医療機関との連携強化というのが重要であり、課題だということだと思います。

 法案では、実施基準を定める区域として、都道府県の区域と同時に、医療を提供する体制の状況を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに実施基準を定めることも可能としています。

 そこで、お尋ねします。この実施基準の策定区域が、二段階といいますか、二つに類型化されている理由というのは何なのでしょうか。

岡本政府参考人 実施基準につきましては、都道府県の全域または医療を提供する体制の状況を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに定めることもできるというふうにいたしております。

 実施基準につきましては、例えば消防機関が医療機関に対して傷病者の状況を伝達する基準といったものは、いわば伝達の確認の手段でございますから、県全域で統一して定めることが適当であると思いますが、搬送先の候補となる医療機関のリストなど、医療体制の状況が県内の地域でかなりばらつきがあるといったような地域がある場合には、その地域ごとに定めることが適当である場合もございますので、都道府県がそれぞれの地域の実情に応じて弾力的に地域設定を行えるように、そういうことを考えてやっているものでございます。

塩川委員 そうしますと、地域ごとにばらつきもある、そういう点で、地域ごとに実施基準をつくることの方が有効な場合があるということでありますので、その際に、その地域ごとでの実施基準を定めるための協議の場が必要なんじゃないかと思うんです。

 今回の法のスキームでは都道府県単位での協議会ですけれども、今言った地域ごとの協議機関というのはどのように考えておられるのかをお尋ねします。

岡本政府参考人 地域ごとの基準を議論をする場合は、その一つの典型的な例として考えられますのは、その地域の医療協議会に、例えば県内のA地区ならA地区に関します分科会といいますか、名前はちょっと別といたしまして、そういうものを担当するいわば協議会の内部の組織というものをつくった上で、それぞれにつきまして、その内部の議論を経た上で、最終的な実施基準の決定としては、その県全体の協議会で決定をしていただくといったようなプロセスを経ることによって、必要に応じた区分ごとの実施基準も策定できるというふうに考えております。

塩川委員 実施基準策定に当たって、地域ごとで自治体消防と医療機関が連携もしているわけですけれども、そういった市町村消防の意見をどのように都道府県の段階で反映していくのか。そういう仕組みとして、今言った分科会の話なんかもあるんでしょうけれども、その他、市町村消防の意見をどのように実施基準策定に反映をしていくのか。その点についての内容をお答えいただけますか。

鳩山国務大臣 塩川委員の問題意識は、私は正しいと思います。

 それは、医療行政については都道府県が単位であるということで、実施基準も都道府県が定めることになっておりますけれども、消防は自治体消防、市町村消防でございますから、そこのところは、市町村消防のそれぞれの地域の特徴もありましょう、それらの意見が反映された実施基準にならなければいけない、こう考えるわけでございます。

 今長官から分科会というような表現もあって、そういう方式もあろうかなと思いますが、基本的に言えば、実施基準を策定するときに協議会の協議がある。その協議会は消防機関と医療機関で構成されるわけでありましょうから、そのときに、少なくとも県内のすべての市町村消防の意見を聞くとか、そういう細かな配慮というのは私は絶対に必要ではないかな。

 救急搬送という意味では、当然、市町村の区域を越えて出ていくことは幾らでもある。もちろん、場合によっては県境も越えるわけですけれども、何といったって組織としては市町村消防ですから、この意見が反映されないで実施基準が定められたら、それは実効性を失うと思いますから、問題意識としては正しいし、きちんと市町村消防の意見が反映されるようなやり方を指導していきたいと存じます。

塩川委員 今、県域を越えての救急搬送の話もございました。

 そこで、私も埼玉県の所沢市なものですから、実際、所沢の消防にお話を伺っても、一割二割、都内に搬送する場合というのが当然出てくるわけです。周産期医療などにつきましても、重篤の場合などについては埼玉県内だけではカバーし切れないというのが実態でもあります。埼玉県内で医療を充実していくというところでこの取り組みが求められるのは当然ですけれども、命にかかわるものという点でも、現時点に立った、都県境を越えるような、そういう連携というのも極めて重要であります。

 埼玉と東京もずっと東西に接しているのが長いものですから、東の方と西の方ではまた状況も違いますし、また、首都圏全体でもそういった都県境を越えてのいろいろなやりとりというのは多いわけですね。ですから、首都圏全体で、関係の都県の消防と医療整備関係の部局と、あと国の方が集まって、国が音頭をとってそういった協議の場をつくって必要な調整、連携強化を図っていく。そういう取り組みで、ぜひ厚労大臣とあわせて総務大臣の方が音頭をとっていただけないかと思いますが、大臣、その点はいかがでしょうか。

鳩山国務大臣 当然、都道府県の県境を越えて搬送され、収容されるケースは多いようでございますから、きちんと各都道府県が連携をとって、その連携を踏まえた上で各都道府県が実施基準を定めていただければありがたい。

 理屈で言えばそうなるんですが、しかし、やはり都道府県をまたぐケースでございますから、それは国が調整役として乗り出す必要が当然あるだろうと私は思いますので、実際に搬送を行ったりする、あるいは医療を提供するのはもちろん基本的に国の役割ではないわけですが、総務省、厚生労働省は、県境をまたぐケースについていろいろ実態を把握したり、あるいは呼びかけるという役割は担うべきものと存じます。

塩川委員 わかりました。

 今回のこういった救急搬送についての消防と医療機関の連携というのも、この間の奈良の事例ですとか、あるいは墨東病院の事例などが当然念頭にあり、救急患者のたらい回しをなくすということが基本でございます。そういう点でも消防と医療の連携強化は重要ですが、根本的には救急医療機関の疲弊という現状があるわけで、医師がもう確保できない、どんどんやめていくという実態があるわけです。

 私は、率直に、この現状というのは、この間の政府の医師抑制政策、医療費抑制政策というのが根本の要因としてある。医師の不足をつくり出してきた、救急患者のたらい回しを生み出す原因としての政府の医師抑制政策、医療費抑制政策、その点についての責任の認識をぜひ大臣に伺いたいと思いますし、それを踏まえた対応策をどうお考えなのかをお聞かせいただけますか。

鳩山国務大臣 医師や医療の需要がどの程度かというのを予測するのは難しいことだったのかどうかと私は思うんですよ。

 というのは、私が文部政務次官になったときに、医師不足だといって臨時増募の枠をどんどん与えていったんです。それから七年か八年たって私が文部大臣をやったときは、それをまた全部もとへ戻していきました。このままでは医師がふえ過ぎるという議論が真っ盛りだったわけで、くるくるくるくる転換してきた。

 私は、その辺は、もちろん社会の変化を見通すというのは非常に難しいことだし、我が国が高齢社会へ突入していくことももっと把握しておくべきだったということであろうと思いますが、今までの日本国政府の見通しの悪さというのはいろいろあったんだろう。医師を養成するから過疎地域の公立病院も何とかするよといったって、当たり前に言えば、最低でも七年だか八年だか、十年ぐらいかからなければ医師というのはふえていかないわけでございますから、過去の見通しの悪さというのは大きく響いていると思います。

 それから、やはり優しい政治というのが本来自民党は得意だったんだと思う、政府も得意だったと思うんですが、どうもこの数年はばかに効率化ということに力点が置かれて、そうした中で、もう医療費も頭から抑えてしまえというようなことがあって、それがさまざまな影響をもたらしていることは間違いがない、こう思っております。また、診療報酬の問題も、これは事人命を助ける作業なわけですから、これからまた見直しをしていかなくちゃならないだろう。たらい回しと言われることの原因にそうした事柄が含まれているのは事実でございますから、そうした問題はどんどん政策転換していかなければならない、こういうふうに思っております。

 とりわけ、総務省的な発言をいたしますと、先ほどから出ておりますように、今まさに話題の救急とか産科、婦人科、小児科、僻地医療など、要するにもうかるかもうからないかということでいえば私立の病院は余り出ていきたがらないようなところは、公立病院や公的病院に役割を担ってもらわなければなりませんので、ことし三千六百億ほどの財政措置をいたしましたけれども、そうした医療機関への支援というのははるかに拡充していかなければならないだろう、そう考えております。

塩川委員 医師抑制の閣議決定までした、そのころから、これは問題だという批判もあって、OECDの水準で見ても医師が少ないじゃないかという議論も当然あったということは改めて指摘をしなければいけないと思いますし、この間の医療費抑制も、効率化というだけではなくて、もともと毎年二千二百億円社会保障予算を削るという骨太方針という枠組みで政府として進めたわけですから、これは名実ともに撤回もするし、この間削った一兆六千二百億をもとに戻して社会保障の充実に充てる、こういう政策の転換というのを強く求めて、質問を終わります。

赤松委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 消防法に関連しまして、幾つか質問させていただきます。

 まず、よく耳にしますけれども、病院が受け入れを断ったという話、たらい回しという話がたくさんあるわけですが、その点についてお聞きいたします。

 受け入れに至らなかった理由の上位に、手術中であるとか患者対応をしているとか、あるいは処置が困難である、こういうものがあるんですけれども、同時に、いや、うちは専門外であります、こういうふうな形で断られるという点で見ましたら、これは〇七年度のデータですが、産科・周産期傷病者で一三・五%、小児傷病者で二五・二%。このパーセンテージは重症以上傷病者の一〇・四%よりも高い数字となっているんですね。これは私はおかしいなという問題意識を持つんですが、〇八年の傾向を見ても同じ傾向です。

 この専門外という回答が重症以上の傷病者より産科・周産期傷病者や小児傷病者の方で高くなっているというのは私はなかなか理解できないんですが、どういう理由でそのようになっているというふうに分析しておられるか、まずこの点をお聞きいたします。

榮畑政府参考人 産科医とか小児科医さんにつきましては、対象の患者さんが限られておるということで、その診療科特有の技術や知識が強く求められる一方で、またその数自体も一般の内科医とか外科医の方に比べて少ないという現状にございます。このため、すべての救急医療機関が夜間、休日に産科医とか小児科医さんを確保して妊婦や小児患者を受け入れることは事実上困難でございまして、産科医や小児科医さんのいない救急医療機関では専門外との理由で受け入れができない場合もあるというふうに思っております。

 ただ、そうは申しましても、今回の消防法改正によりまして、都道府県が地域における救急患者の搬送・受け入れルールを策定することとなりますから、例えば、妊婦や小児患者に対応する救急医療機関をあらかじめ定めておくことによりまして、妊婦とか小児患者の搬送・受け入れがより円滑にできるようになるというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

重野委員 救急医療、救急患者という概念の中で、今言ったようなケースが出てくるわけです。

 そこで、救急医療情報システム、これについて聞いておきたいんですが、全国の消防本部が行ったアンケート調査によりますと、システムをほとんど利用していない、あるいは全く利用していないという回答が実に五三%にも及ぶわけですね。何のためにこのシステムをつくったのかということを私は考えるんですが、この結果を受けとめて、消防庁はどういう感想を持ち、これが改善のためにどうしようと考えておられるか、この点についてお聞きします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 救急医療情報システムの利用状況といたしましては、私どもが行った調査では、システムを利用されていない理由として、基本的には、リアルタイムの情報がないといったような理由を挙げておられるところがかなり多いというのが今委員御指摘のような実態につながっているというふうに考えております。

 今回の消防法改正によりまして都道府県が策定いたす実施基準におきましては、傷病者の受け入れを行う医療機関の確保に関する事項といったものを定めることといたしておりますので、救急医療情報システムの入力の迅速化、できるだけリアルタイムで入れていただく、またそういうことを当然改善することを医療機関側に消防機関側からは強く求めるということになります。

 また、それを一般的に求めるということだけでなくて、これを運用していく中で常にその入力の状況といったものを検証していくことによりまして、例えば入力の状況が著しくおくれるような医療機関があります場合には、そのことを協議会の場において指摘しながら改善を求めるといったような具体的な改善を進めながら、この救急医療情報システムの利用促進が図られますように厚生労働省とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

重野委員 今の問題に関連して、各消防本部が利用しない理由という資料があるんですが、それを見ますと、まず、入力されているものがリアルタイムの情報ではない、あるいは情報の信憑性がない、これはそういうものに対する不信ですね、非常に高い。二七・四%はそういうシステムの根幹にかかわる部分への不信感なんです。また、独自に情報収集しているという回答も一三・二%でありまして、これは利用しない理由の三番目になっています。これも、システムが信頼できて利用可能であれば、独自の情報収集をする必要はないはずなんです。さらに四番目の理由として、医療機関が限られている、これが一〇・八%。これもやはりシステムの不十分性のあらわれではないか、私はこのように思うんです。

 こういう状況に対して、厚労省としてこの結果をどのように受けとめて、今後どのようにしようというふうに考えておられるか伺います。

榮畑政府参考人 救急医療情報システムにつきましては、医療機関において、更新していくやり方につきましてはさまざまではございますが、一般的には、救命救急センター等の担当のお医者さんとか看護師さんなどがその日の当直体制とか空き状況とか手術室の稼働状況等を勘案して搬入の可否情報の更新を行っていただいているというふうに承知しております。

 一方、この救急医療情報システムにつきましては、多忙な医療機関による情報の更新頻度が少ない等の御指摘もございます。先ほどの御指摘のように、消防本部からは、リアルタイムの情報ではないというようなことで、相当使われていないというような声もちょうだいしております。

 厚生労働省といたしましても、このような御指摘に対応するために、できる限りリアルタイムに近い医療機関の搬入可否情報が更新できるように、平成二十年度の診療報酬改定や平成二十年度の第一次補正予算から、救急医療情報システムの入力等を行う医師事務作業補助者というのを配置できないかということで、そのための財政支援を行っておるところでございます。

 また、経済産業省と協力いたしまして、IT技術を活用して、例えばタッチパネルのような簡易な入力システムが開発できないか、それから、各医療機関による入力に加えて、救急医療情報センターが積極的に情報収集して自分で入力するようなこともできないか、さらには、救急隊の搬送完了情報というのをその医療情報システムに取り込めないか、そういうようなことを進めていきたいと思っておりまして、このような実証研究事業を二十一年度に進めようと思っております。

 この結果も踏まえまして、都道府県が地域の実情に応じて救急医療情報システムの改善を行うことができるように、さまざまな形で支援してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

鳩山国務大臣 今の重野先生のお話を聞いていまして、もちろんこれから、この法律を成立させていただいて、この救急医療情報システムを大いに、きちんと使えるようにしてやっていこうということだと思いますが、私の持っている資料を見ても、リアルタイムの情報でない、情報が信憑性がないと。

 では、何で救急医療情報システムという名前なんですか。私は、それでこれから新しくやり直すから頑張ると。それは頑張ってもらわなくちゃいけない。頑張ってもらわなくちゃいけないけれども、救急医療情報システムなんて名前をつけて、これは補助金出したんですか、わかりませんけれども、少し恥ずかしいという思いを持って反省すべきですよ。おかしいもの、こんな名前がついていて。それがあればできるわけですからね。私はそう思いますよ。

重野委員 今の大臣のお話のとおりで、そうならば現実はもっとよき方向に転ぶはずなんですね。それが通じていないというところに問題がある。指摘をしておきたいと思います。

 医療機関はこのときどうなっているのかということを調べてみますと、今回の改正案では、消防機関は実施基準を遵守する、それから医療機関の方は基準を尊重する、こういう非常に抽象的な言葉で終わっております。私は、もっと具体的にこうするというふうなものが出てこないといけないんじゃないかと思うんです。

 救急医療は消防機関と医療機関が車の両輪なんですね。これがうまいぐあいに転ばないと、まさしく画竜点睛を欠く、こういうことになるわけで、私は、その辺について厚労省と消防庁で日常不断にどういうやりとりがなされているのか、いささか疑問を持たなければならぬなというふうに思うんですが、その点について、厚労省それから消防庁、答えてください。

岡本政府参考人 今の御質問に対してでございますが、今回、この実施基準は、消防機関と医療機関が、協議会という場におけるさまざまな議論を通じて、それぞれが持っておりますそれぞれのデータ、例えば医療情報の不正確さでありますとか、あるいは医療機関側から時々耳にいたします、消防機関のいろいろな状況の伝達方法に対するいわば不正確さ、不明確さといったものをこういうふうに改めろとか、そういうお互いの情報、お互いに対して求める点を率直に意見交換し合い、それをお互いに補い合って、従来の診療科目別ということよりも、その症状、程度に応じながらさらにきめ細かく実施基準をつくっていくことによって選定困難事案を少しでも減らしていこうということが、今回のこの法律をお願いいたしているゆえんでございます。

 そういう意味で、お互いの議論を通じた中でこの実施基準をつくっていただくわけでございますので、基本的には医療機関、消防機関、そしてこれをコーディネートしていく都道府県がつくるものでございますから、法律に基づいた実施基準として、消防、医療、両方ともこれをきちんと守っていく、努力していくということは法律上当然のことであるわけでございます。

 ただ、これに法律上の遵守義務といったものをどこまで課すかということにつきましては、先ほど大臣からお答えがございましたように、消防と医療機関の性格の違い、それから医療機関における医療の実態等を踏まえて、そこまでの遵守義務を課すということは適当ではないということでございます。

 また、この法律のいろいろな議論をします際にも、私どもと厚生労働省それから医師会といった間でいろいろな議論をさせていただきまして、こういう案になっているわけでございますが、委員御指摘ございましたように、私どもと厚生労働省、それから現場におきます消防機関と医療機関、この連携をきちんと図っていくことによりまして、救急が、搬送、医療といったものが一体として行われて、真ん中に球がぽろっと落ちないように、そういうふうにきちんと努めてまいりたいと考えております。

榮畑政府参考人 ただいま消防庁長官からも御答弁がございましたけれども、傷病者の搬送・受け入れの実施基準につきましては、救急医療に携わる医療機関とか地域の医師会等も参画する協議会で協議し、いわば救急関係者と医療関係者が協議、合意した上で策定されることになると考えております。また、この実施基準に基づいて救急患者の搬送・受け入れが進められていくことになります。

 この実施基準の策定なり施行に際しましては、当然のことながら、医療機関、救急機関が相談しながら、連携しながら進めていかなければならないところだろうと思っておりますし、今回のこの消防法の改正の作業につきましても、私ども厚生労働省と総務省消防庁で連携しながら、ともにさまざまな形で協議して進めてきたところでございます。

 今後とも、この法律がもし成立いたしましたら、実施基準をつくるに際しましての指針等もございますが、そういうようなものにつきましても、当然のことながら、総務省消防庁さんとよく御相談させていただきながら、両省連携した形で進めていきたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

重野委員 そこら辺は、総務省、厚労省、消防庁、連携を密にして、しっかり議論してもらいたいと思います。

 時間もありませんが、一つ。

 救急出動件数、これは十年前に比べまして一・五二倍になっている。ところが、救急隊の数は一・〇八倍ということであります。だけれども、現場は本当に頑張っておりまして、この状況の中にもかかわらず、現場到着までの時間は十年間で一分も延びていないんですね。だから、限られた戦力の中で本当に現場は頑張っているということの証左だろうと思います。

 だが、このままではやはり現場の消耗は避けられないと思うんです。現場の消耗は、即救急隊員のお世話になるその人にとっても非常に危険なことなんですね。健全な形の中で、事故に遭った方々を搬送する、応急手当てをする、そういう好ましい姿を考えたときに、現状の定員が慢性的に不足をしているという状況については問題あり、このように思いますが、消防庁、どうされますか。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、この十年間で、救急出場件数が約五割増加をしている中で、救急隊は約八%の増加になっております。

 これらの増加率に対応するために、できるだけ早く現場に到着するという意味での、一一九番通報の位置情報の把握が可能になりますようなツールの開発あるいは普及でありますとか、特に件数が増加しておりますのは、大都市部を中心に大きくふえております、七割を超えるぐらいのふえでございますので、そういう現場におきましては、ポンプ車と救急車が連携をして出動するといったような、既往の資源を効率的に活用することで対応をしてきております。

 しかし、そういう面だけで対応し切れるものではございませんので、救急隊の負担を少しでも軽減する、また、職員をふやすという観点から、二十一年度の普通交付税の消防費におきましても、消防職員数について、救急体制強化の観点も含めて拡充を図る、また、全体として単位費用の増額を図るというような対策を講じますとともに、高規格の救急自動車の整備といったような救急の対応能力の高度化、強化も講じてまいる所存でございますので、これらも含めまして、今後とも救急体制の強化に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

重野委員 今話がありましたけれども、消防職員の数は、大都市の消防署ほど充足率はいいんですね。政令市あるいは東京消防庁の例をとってみますと、充足率九四・六%。ところが、五万人未満のところは六三・六%。このように、やはり総括的には地方の消防署の充足率が非常に悪い。これはやはり問題だと私は思うんです。ですから、そういう問題意識を持ってしっかり定員確保の努力をやってもらいたい、このことを要請しておきます。

 時間が来ましたから、そのほか通告をしておりましたけれども、それについてはまた次の機会に譲るとして、以上で終わります。

赤松委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 消防法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、森山裕君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・大地・無所属の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。森山裕君。

森山(裕)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    消防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。

 一、大都市圏を中心に救急搬送が広域的に行われている現状にかんがみ、都道府県が策定する実施基準が都道府県の区域を越えた広域的な連携に十分配慮した実効的なものとなるよう、必要に応じ、情報の提供、助言その他の援助を通じ、都道府県間の調整を図ること。

 二、受入医療機関選定困難事案や救急搬送長時間化事案が発生する根本には、救急医療に携わる医師等の不足と財政措置の不十分さという問題があることを銘記し、早急に、その改善に取り組むこと。

 三、救急搬送体制が必ずしも救急出場件数の増加に対応したものとなっていないことを踏まえ、救急業務に係る財政措置の充実に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

赤松委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山総務大臣。

鳩山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

 また、この質疑を通じて、総務省も消防庁も厚労省も、先生方のいろいろな御意見を踏まえていい勉強をしたと思いますから、それらも踏まえて、より一層充実した仕事ができるように頑張っていきたいと思います。

    ―――――――――――――

赤松委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

赤松委員長 次に、行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長西川善文君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 何度も当委員会でこのような質問をさせていただきますこと、まことにありがとうございます。

 きょうは、手短に、先日からこの委員会で質問させていただいております、当委員会における参考人に対する日本郵政の内容証明郵便送付の件について議論をしたいと思います。

 まず、きょうは西川社長にお出ましをいただいているんですけれども、西川社長はこの件を御存じだったんでしょうか。

西川参考人 お答え申し上げます。

 書面を出すことにつきましては報告を受けておりましたが、国会等との関係等、それ以上の説明は聞いておりませんでした。

松野(頼)委員 社長、私どもは、立法府として、委員会の中での議論、言論というのはやはり守らなければいけないと思っております。

 私たち議員は、この国会の中の発言は憲法によって何ら責任は問われないということで、よほどひどい誹謗中傷であれば、これは委員長の権限として委員会の中でおさめるというのが決まりでございます。ですから、参考人に関しても、私どもは、委員会に来ていただいた参考人はなるべく自由な立場で発言できる環境を整えなければいけないというふうに思います。

 ただ、先ほどの私たち議員と同じように、余りにもひどい誹謗中傷等々は、これは委員長の権限において国会の中でおさめるということがルールだというふうに私たちは思っておりまして、それが、外部から、内容証明郵便等々、また法的な制裁をするということは行き過ぎではないかと私は思っております。ですから、今回日本郵政が行いました町田参考人に対するかかる行為は、私は非常に行き過ぎな行為ではないかというふうに思っております。

 まず、当委員会に対して、西川社長、どのような処置をとられるのかということをお答えいただけないでしょうか。

西川参考人 お答え申し上げます。

 当委員会の御了解を得ずに行ったことで、当委員会に大変御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、深くおわびを申し上げたいと存じます。

松野(頼)委員 あと、先ほども申し上げましたように、私たちは、立法府、言論の府において言論を守らなければいけない。また、今後、参考人の方がこうして委員会で何か間違った発言とか行き過ぎた発言、また当事者に対して非常に不愉快な発言等々をした場合にこのようなことを、内容証明等を送られるのではないかということで萎縮をされては非常に困るんですね。

 ですから、参考人であります町田さんに対しても何らかの形を示していただきたいというふうに思うんですけれども、社長の立場から町田さんに対してどのようにするのか、お答えをいただければありがたいと思います。

西川参考人 お答え申し上げます。

 町田氏には近日中に手紙できちんとおわびを申し上げたいと考えております。手続等の問題があったため、当委員会におわびをいたしますとともに、町田氏にも先生がおっしゃるようにきちんとおわびをさせていただくということでございます。

松野(頼)委員 民営化されたとはいえ、いまだに日本郵政というのは国民の税金が入り、そして国が一〇〇%の株主である特殊会社であります。以前から、かんぽの宿、またその前の郵政の、簡保の遊休施設等の売却でも当委員会で何度もやらせていただいているんですけれども、やはり民営化されたとはいえ特殊会社であるということをぜひ自覚していただきたいと私は思っております。今回のこのやり方も特殊会社としては行き過ぎだということを一言申し添えさせていただきます。

 最後に、これも議事録に残しておきたいので、きょうは議会事務局の方から来ていただいております。

 今までに参考人の意見陳述に対してこのようなことがあったのかなかったのかということを、答弁していただきたいというふうに思います。

山本参事 お答えいたします。

 先生お尋ねの、参考人が委員会において行った発言または意見陳述に際して配付した資料について、関係者から参考人に対して訂正、謝罪を求め、要求に従わないときは法的措置をとる旨通知したというような事例があるかということでございますけれども、事務局として把握している限り、過去にそうした事例は見当たらないところでございます。

松野(頼)委員 こういうことでありますので、ぜひそこはしっかりと、かかる行為に対して反省をしていただきたいということを一言申し上げまして、あとの処置に対しては委員長を初め各党理事にお任せをして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

赤松委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 地方自治及び地方税財政に関する件の調査に関し、直轄事業負担金問題について、来る二十一日火曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十一日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十四分散会


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