衆議院

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第16号 平成22年5月13日(木曜日)

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平成二十二年五月十三日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 近藤 昭一君

   理事 稲見 哲男君 理事 奥田  建君

   理事 黄川田 徹君 理事 古賀 敬章君

   理事 福田 昭夫君 理事 石田 真敏君

   理事 大野 功統君 理事 西  博義君

      小川 淳也君    小原  舞君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      奥野総一郎君    川越 孝洋君

      川村秀三郎君    小室 寿明君

      小山 展弘君    斉木 武志君

      階   猛君    高井 崇志君

      中後  淳君    寺田  学君

      永江 孝子君    野木  実君

      野田 国義君    藤田 憲彦君

      皆吉 稲生君    山崎 摩耶君

      湯原 俊二君    吉川 政重君

      若泉 征三君    鷲尾英一郎君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      小里 泰弘君    佐藤  勉君

      菅  義偉君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    森山  裕君

      山口 俊一君    大口 善徳君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣         原口 一博君

   総務副大臣        内藤 正光君

   総務大臣政務官      小川 淳也君

   総務大臣政務官      階   猛君

   総務大臣政務官      長谷川憲正君

   政府参考人

   (総務省情報通信国際戦略局長)          利根川 一君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            山川 鉄郎君

   総務委員会専門員     大和田幸一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     吉川 政重君

  逢坂 誠二君     川越 孝洋君

  階   猛君     山崎 摩耶君

  渡辺  周君     鷲尾英一郎君

  佐藤  勉君     小里 泰弘君

  稲津  久君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     川村秀三郎君

  山崎 摩耶君     階   猛君

  吉川 政重君     小川 淳也君

  鷲尾英一郎君     小山 展弘君

  小里 泰弘君     佐藤  勉君

  大口 善徳君     稲津  久君

同日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     逢坂 誠二君

  小山 展弘君     斉木 武志君

同日

 辞任         補欠選任

  斉木 武志君     渡辺  周君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)

 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)


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     ――――◇―――――

近藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案及び高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信国際戦略局長利根川一君及び情報流通行政局長山川鉄郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

近藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

近藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎摩耶君。

山崎(摩)委員 おはようございます。民主党の山崎摩耶でございます。

 本日は、委員会を差しかえてこのような質問の機会をお与えいただき、大変感謝しております。

 きょうは放送法改正について質問させていただきたいと思いますが、本論に入ります前に、一つ皆様にお尋ねしたいと思います。

 ことしの二月二十八日、日曜日ですが、東京マラソンが、ランナー三万五千人の参加とボランティア一万人で実施されました。四年目ということで、年々このマラソンは盛大になっているんですが、さて、この二月二十八日、この日は世界的にどのような事態が発生していたか、皆様は御記憶でございましょうか。(発言する者あり)はい、二〇一〇年チリ地震ということでございます。

 二月二十七日の午前三時三十四分にチリ沖で発生した地震が、マグニチュード八・八、一九六〇年以来の大変大きな地震でございましたし、世界でも五番目の規模の地震でございました。

 日本の気象庁の津波対応は、朝の九時三十分に会見を開き、かつての宮城などでの大津波を予想して警戒態勢をしいておりました。原口大臣も、政府の対策本部で奮闘しておられましたね。

 当日、各テレビのキー局では、九時三十三分の警報発表時間に緊急警報放送に切りかえたり、津波が到着する予想時刻の昼前後には、当初の番組を中断したり休止して、特別番組として対応しておりました。しかし、主要キー局の中には、この東京マラソンの中継を優先的に放送していた局や、バンクーバーのフィギュアのエキシビションなどを放送していた局もあったというふうに聞いております。このマラソン番組を放映しておりましたキー局の北海道の系列局では、太平洋沿岸の津波被害を警戒いたしまして、十二時から十五時まで独自の判断で地震報道に変更して、地域の住民の要望に沿った対応がなされておりました。

 さて、ここで原口大臣にお伺いしたいのは、災害時等の緊急、緊迫した状況のときに、放送、報道はどうあるべきなのかという点でございます。良識ある地方局が、独自の判断で、住民に適正な情報の放送を提供することは極めて重要だというふうに思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

原口国務大臣 山崎議員にお答えいたします。

 山崎議員は、一貫して医療、介護の先頭に立ってこられて、私もちょうど当時は未来工学研究所というところにおりましたけれども、ホームケア・サポート・システム、家にいながらにして介護が受けられる、そうすると、寝たきりの人でもそれが改善していく、寝たきりの度合いが減っていく、座った人は立てるようになる。介護は極めて大事でございまして、その先頭に立ってくださっている議員にまず敬意を表し、今の御質問にお答えをいたします。

 私も、あの日、総務省消防庁の危機管理センターにずっと詰めていました。そこでありがたかったのは、ローカル局が独自にさまざまな現場を、ヘリを飛ばしたりして、その映像をしっかりと危機管理センターに送ってくださったことであります。

 もちろん、キー局も、別の枠をつくって随時適切な情報を流していましたけれども、そういう地域地域の、まさに国民の安全、命を守るという立場に立ったきめ細やかな情報発信が、多くの国民に対して、そして私は直接北海道知事にも、四道県の知事にも電話を差し上げましたけれども、その映像や情報がどれだけ役に立ったかわからないというふうに思っておりまして、この場をかりてお礼を申し上げたいと思います。

山崎(摩)委員 大臣、ありがとうございます。

 大変御造詣の深い大臣でいらっしゃいますので、いろいろ御地元の状況も御理解いただいているかと思います。

 さて、今回の放送法改正の中には、マスメディア集中排除原則の基本の法定化が盛り込まれております。

 このマス排原則は、そもそも特定の巨大なマスメディアが他の弱いメディアを、資本の論理で放送を独占できない、勝手に支配することを禁じた原則でございます。つまり、各メディアの多元性、多様性、地域性、この三原則を担保することを目的としたものでありますし、それは、これまでのマスメディアが犯してきた誤りに対する反省から生まれてきたと言ってもよろしいかというふうに思います。その意味で、この法定化は非常に重要なことだと思っております。

 しかし一方では、出資につきまして、これまでの上限二〇%を三分の一まで容認しておる。このような緩和によってもこの三原則は担保されるというふうにお考えか、この点、大臣にお伺いしたいと思います。

原口国務大臣 委員がおっしゃるように、言論の多様性、表現の多様性、そして自由を守るというのは極めて大事であります。報道の自由、表現の自由、そして、まさにメディアがみずからをだれからも支配されない、これは民主主義の基本でもございます。そこで、多元性、多様性、地域性、今委員がおっしゃった三つの原則に沿って、マスメディア集中排除原則をこの法案では法定化しています。

 その一方で、今、民放テレビの経営状況を見ますと、平成二十年度決算で、百二十七社中六十社が単年度赤字でございまして、現行の規律よりも緩和することも可能になるよう、出資による支配の基準について、十分の一以上三分の一未満という枠組みを法案で規定しておりますけれども、これはまさに、先ほど前段委員がおっしゃったように、地域の放送局というのは文化の発信の拠点であり、そして安心、安全の拠点なんですね。その拠点が、この二十年間経済成長しない、そしてリーマン・ショック以来のさまざまな経済不況の中でなくなってはならないということで、マスメディア集中排除原則の法定化をする一方で、放送メディアの経営環境の変化に柔軟に対応できるように定めたものでございまして、このことでもって集中排除原則がいささかも揺らぐことがあってはならない、このように考えております。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 しかし、仮に経営困難なローカル局の救済という名目がありましても、資本ですとか経営にかかわる人材を送り込むことで、結果として永続的な支配関係になってしまう、そうしますと、マスメディア集中排除原則の趣旨が踏みにじられるのではないかというような若干の不安もございます。それによって、ローカル局の独自性ですとか独立性が担保されないのではないかという心配を私などはしておるんですが、そのあたりはいかがでございましょうか。

原口国務大臣 今おっしゃったような懸念がないように、私たちは、一方で、地域の創富力、つまり中央の資本から遠ければ遠いほど、それから中央の資本から囲い込みができなければできていないほど経営が不安定であるということはあってはならない、北海道も。ですから、この総務委員会でも、私たちは一方で地方交付税を一・一兆円ふやさせていただきましたし、地域の創富力ということで、みずからの地域をみずからがしっかりとはぐくむことができるようにということで、その措置をしているわけです。

 また、今委員が御指摘の、マスメディア集中排除原則の人的関係に着目した基準を定めるに当たっては、地域の拠点を失うことにならないよう、厳しい経営環境にあるローカル局の経営に配慮しながら、マスメディア集中排除原則の目的である多元性、多様性、地域性の確保への影響をよく見定めて、今後もローカル局がその独自性あるいは独立性を損なうことがないように、今委員がおっしゃるようにしていくことが極めて肝要であるというふうに思いますし、私たちも、法律をつくったからそれで終わりだと思ってはいません。現実どうなっているかということも国民の皆さんからの御意見をしっかり伺いながら、この法を一日も早く制定していただいて、そして言論のとりでが守られるように、今ICTフォーラムでも議論をしていますけれども、さらに議論を深めてまいりたい、このように考えているところでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 また、この法律は附則で、マス排については法の施行後三年以内に、いわゆるクロスメディア所有規制のあり方も含め検討するとされております。

 大臣はクロスメディアの規制に強い意欲を燃やしておられるというふうに伺っておりますが、そのお考えの中には、ローカルメディアを大事にしなければならないということも同じような趣旨として含まれているものというふうに考えてよろしいのでしょうか。

原口国務大臣 全くそのとおりでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 今回の放送法改正は、大変画期的な法案でありますので、一日も早くこのことを通す、これが大変重要だというふうに認識しておりまして、努力したいと思いますが、私の地元などのローカル局の中には、今申し上げましたように、この改正によりまして資本が大きい中央のキー局による支配関係がなお一層強まり、経営面でも、放送文化や理念の面からも、ローカル局の主体性が損なわれるのではないかといった危惧が寄せられていることも事実でございます。本日は、そういった地元の声を大臣にお届けしたいということで質問の時間をちょうだいいたしました。

 また、大臣は、今の地方のこともございましたが、地域主権を率先推進してこられた大臣でございますので、この法改正の理念をただいまのように確認させていただきましたこと、それから中央から地方への健全な関係の維持、そしてローカル局への励ましをいただいたという思いでございます。

 その意味では、真に地域の主体性を発揮していくためにも、住民に密着した地域の放送文化を高めていく役割、ローカル局の存在というものをしっかり今後も守っていただきたいということを強く要望いたしますが、最後に、再び大臣の御決意、お考えをお聞かせいただければ幸いでございます。

原口国務大臣 地域のローカル局は、先ほどから申し上げておりますように、まさにだれもがマイクを握れる。

 これまで、コミュニケーションにおける国民の権利というのは一体何なんだろうかということをずっと議論してきました。すべての人が公平公正に、安全な環境の中で、さまざまな情報を選択できる権利、つまり受け手としての権利もあります。それだけではなくて、やはり発信できる権利、みずからの地域の情報をみずからが集め、そして、それを地域の中で共有する。

 このことによって地域に対する誇りも、今、ミニFM、もういろいろなところでスタートしていますが、この間、ある離島の友人と話をしましたら、それまで離島にあるものというのは全部コンプレックスだったと、私たちからするとちょっと信じられない言葉ですけれども、全否定をしてきたと。しかし、そこで地域の放送局が生まれることによって、ああ、こんなにすばらしいものがあるんだ、こんなに私たちは誇るものがあるんだ、こんなすばらしい歴史や文化を先人たちが、いろいろなハンディキャップはあるけれども、ガソリンが高かったりとか、そういったことがあるんだけれども、それをはねのけてこれだけ頑張ってきてくれたんだ、私たち子供たちのために頑張ってきてくれたんだということを知ることによって、地域を愛し、そして歴史や文化が本当にわかるようになったと。

 私は、地域のローカル放送局が持つ役割というのは本当に多面的で、まさに拠点だというふうに考えておりまして、今山崎議員がおっしゃるように、地域の放送文化を高めていく、あるいは先ほど、一番最初におっしゃった安心、安全のところというのは、やはり地形とか、あるいは水の動きとか、過去の災害とかもわかっていないとできませんね。まさに命を守り、安心、安全を守る、そういう拠点でもあるというふうに考えております。

 私たちは、今度、市民公益税制といって、公益税制も変えたいと考えているわけです。北海道にもコンサドーレ札幌、市民がつくったサッカーチームがありますね。まさに市民が盛り上げていく。だれかの、中央や一部の人たちの支配を受けるんじゃなくて、みずからが盛り上げていく、地域の拠点としてのローカル局の発展を私たちもしっかりと支えてまいりたい。

 その決意を申し上げて、本当にいい御質問をいただいたことへの感謝にかえたいと思います。ありがとうございます。

山崎(摩)委員 大臣、どうもありがとうございました。

 その意味では、地域主権、それから地域のICTや放送メディアというのは、やはりある種、ライフラインにも通じるものがあるわけでございますので、今回の放送法改正の一日も早い成立を祈念したいと思います。

 このたび質問の機会を与えてくださいました委員長を初め委員の皆様にお礼を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

近藤委員長 次に、中後淳君。

中後委員 おはようございます。民主党の中後淳です。

 本日は、質問の機会を与えていただいたことにまず感謝を申し上げます。

 時間が短いこともありますので、早速質問に入りますが、きょうは地デジの関係について質問させていただきます。

 地デジは、来年の七月二十四日、アナログ停波、デジタル完全移行ということで、あと四百三十七日残されているということですが、今の現状でいいますと、中継局等の整備で、カバー率でいいますと、昨年の十二月末現在で九七・六%、二十二年度末で九八%になるだろうというお話がされていました。

 しかし一方、新たな難視等の問題が出ていることは皆さん周知のことだと思います。新たな難視を含めて、デジタル難視と言われている世帯が三十五万世帯ほど出るだろうという予測のもとに、いろいろな調査が行われているわけですが、昨年八月の調査では新たな難視が八万二千世帯、それがことしの一月の調査では十三万世帯と、五万世帯ほどこの何カ月間かの間に、新しい調査を行ったことでふえている。そして、まだまだこれはふえていくことが予想されている中で、一番最初の二十年七月には十九万世帯ほどあるのではないかと言われたところに近づいていくんだろうと思われます。

 今までテレビが見られていた人たちがテレビが見られなくなってしまうということ、これは本当に大変大きな問題だということで、国策として政府が一生懸命取り組んでいるところは私たちも理解しているところでありますが、私は二〇〇〇年のころ、森内閣のe―Japanのころにも感じたことなんですが、当時、三千万世帯に高速ブロードバンドを普及して、またそのうちの一千万世帯を超高速インターネットに接続するなんという話があって、それが平成十五年のころ、私は当時市議会議員だったわけですが、目標を達成したと言われたころに、我が家はまだISDNぐらいしかなくて、私の住んでいるところがすごく取り残された感じがいたしました。

 私の住んでいるところは房総半島、内房の、対岸は横浜。田舎ではありますけれども、周辺に小学校、中学校、高校と、学校などもたくさんありますし、本当にそんな取り残されるような地域になってしまったのかなということを思いながら、当時、市議会で質問をしていた経緯があります。

 ただ、今回テレビということですので、インターネットや携帯電話とは違う。新しいインフラがどんどん出ていくというのではなくて、今まで生活の一部として、生活必需家電として、完全にもう日々の生活の中から切り離せないテレビが見られなくなるということについては、残りの二%、ここにどうやって対応していくかということが非常に大きな問題になるはずなんです。そして、これが一%になればまたもっと難しい問題、残りの一%をクリアするには、さらにさらに対応が難しくなるような状況になってくる。

 一〇〇%にしなければならないと私は思っておりますけれども、そこについて、残り二%を何としても一〇〇%に近づけるんだという、この難視を解消するための意気込み、来年七月までに何としてもやり遂げるんだということを、まず大臣にお伺いしたいと思います。

原口国務大臣 中後委員にお答えします。

 まさにおっしゃるとおり、これは前政権から進めていることとはいえ、国策として進めてきたわけです。

 新政権もそれを引き継いで、二〇一一年の七月に照準を集めて進めているわけですけれども、そのためにも、国の支援策を活用し、新たな中継局を整備する、共聴施設を新設する、高性能アンテナ等への取りかえ、ケーブルテレビへの加入、これを入れてもまだやはり、例えば中後議員のところは谷合い、非常に谷のところもあって、そこに行くと電波が届かない。それをどうするか。

 今申し上げた二〇一一年七月以降の対策となるものについては、暫定的な衛星による対策、五年間の暫定対策として、東京のキー局を放送して視聴者の負担をゼロにします。まさに、今まで見られたものが見られなくなるということはあってはならないということで、今、デジサポや多くの国民の皆さん、全体的な運動を起こしてくださっています。その運動と相まってやっているところでございます。

 また一方で、光の道構想というのも出させていただいています。先ほど三千万世帯のお話がありましたけれども、まさに絵にかいたもちで終わっているわけです。私たちはそれを絶対に絵にかいたもちにさせない。しっかりとした、国民が共同のインフラを享受できる環境をつくってまいりたいと思いますので、またさまざまなアドバイス、御指導をよろしくお願いいたします。

中後委員 ありがとうございます。

 全体的な意気込みで、いろいろなメニューを出されているわけですが、具体的な事例でお話をさせていただいた方がいいのかなと思います。

 難視については、ビル陰等についても大変取り上げられているところですけれども、電波が実際に届かない、物理的に届かなくなってしまう地域は、ケーブルテレビも、インターネット、ブロードバンドもない地域だったりします。携帯電話が届かないような、そういう場所が結構まだまだ残っているということで、いろいろな地域を調べたんですが、全国でいうと、今、栃木県が一番難視になる地域が多いということで、一万七千九百九十世帯、地図も見せていただいているんですが、県の半分が電波が届かない地域になっているような状況です。

 私は千葉、房総出身ということで、千葉のことを取り上げて、自分の地元でいろいろと聞き取りをしたことを含めてお話しさせていただきますが、きょうお配りした千葉のこの「地デジ中継局とエリアのめやす」で、房総半島の下半分、南半分、白く抜けているところは電波が届かないだろうというところです。

 千葉の場合は、内房側はほとんど東京タワー、将来的にはスカイツリーからの電波に頼ることになると思うんですが、やはり地形的なところもありまして、といっても、千葉の場合は一番高い山が四百メーターちょっとで、スカイツリーよりも低い。恐らく、日本で一番低い県だと思います、四百メーターの山が一番高いという地形ですので。それでもこういう状況になるということをよく認識していただきたいです。四百メーターということは、この白いところも満遍なく人が住んでいる、人が本当に普通に生活をしている場所になっているところがほとんどであります。

 そういう中で、この地域は、先ほども言いましたとおり、ケーブルテレビの敷設なんということはまだまだ全然計画もされていない。インターネットも、まだブロードバンド環境も来ていない、そういう地域が非常に多くあります。東京タワーからの、首都圏からの整備が終わって、あと、先は自分たちでやってくださいと言われるような地域だったりするわけです。

 私が住んでいるのは富津と書いてある黒丸のところでありまして、ちょうど、東京タワーから来る電波が届くか届かないかの瀬戸際のところになるわけですが、そういう地域で生活している中で、この白地になっているところの方々にいろいろと聞き取りをしてみますと、まだ中継局そのものをこれから建設するんだという地域においては、それが建った後、電波が来るかどうかというのが初めてわかるような状況になります。電波が来なかったら、そこから初めて共聴施設の計画を立てて、組合をつくってというプロセスに入っていくわけですが、これが今年度末ごろに建った場合には、七月までではとてもじゃないけれども、共聴施設までたどり着かないだろうということを地元の皆さんは大変心配されております。

 また、高性能アンテナを待てないということで、高性能のアンテナを自分の力で建てて、設備をしてしまっている方も現実にいらっしゃいます。大変な費用をかけてやるわけですが、すべての皆さんに同じことをやってくださいといっても、とてもじゃないけれども、費用負担が間に合わないような方がいらっしゃいます。どうしても地デジが見たいという、ある意味、趣味の延長線上でお金をかけてやっている方はいるわけですけれども、そうでもしない限りはテレビが見られなくなってしまう。

 スケジュール感等も含めて、本当に間に合わなくなるのではないかと思っておるわけですが、先ほど、衛星の暫定措置などもありました。そういうことも含めて、スケジュール的に何とか間に合わせるために、どういう予算づけ等をこれから、今の二十二年度予算で追いつかない場合ですとか、または七月までにスケジュール的にどうしても間に合わない場合は、そういう方々は衛星セーフティーネットの方に組み入れていただけるのかとか、そういうことをいつ判断いただけるのかということについて、今の政府の見解を伺います。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、大臣がおっしゃったように、デジタルの特性ゆえに新たな難視が多数存在することが判明をしております。これは当初想定し得なかったものだったんですが、それに対処するためには、やはり何といっても抜本的な解決策は、中継局をきめ細かに建てること以外にございません。すなわち、それに伴って電波が必要なんですが、特に千葉だとか埼玉、そういった地域においては電波が逼迫をしております。ですから、来年の七月のアナログ停波によってあいた電波を使って中継局を整備しなければいけない。すなわち、言葉をかえるならば、新たな難視については来年の七月以降でないと手をつけられないというのが実情でございます。

 そこで、先ほどおっしゃったように、五年間の暫定措置として、衛星によってその間放送を見ていただく。しかし、その五年間何もせずというわけではなくて、徹底的に中継局の整備をしていただく。そのために、国としてもありとあらゆる支援策を講じていこうと考えているわけでございます。そしてさらに、今、放送法の改正とともに議論をしていただいております高テレ法は、財政的な支援を引き続きしたいということで、その衛星措置と同じ期間、五年間延長させていただくというものでございます。

 そして、もう一つ御質問がございましたが、スケジュール感でもって、来年の七月までに間に合わないようなところについては衛星による暫定措置の対象になり得るかということですが、そのような理解で結構でございます。

 以上です。

中後委員 その点については、地元の説明などでもまだ徹底されていないようなところがありまして、衛星はここは対象にならないんだよと説明をされているなんていうお話も聞いたりしますので、ぜひ徹底して、間に合わないような場所については衛星セーフティーネットの対象になるんだということを表明していただきたいと思います。

 それと、衛星の暫定措置に移った場合の問題というのもいろいろとあると思います。地方に行けば、やはり地方局を見たいという方がたくさんいる中で、衛星セーフティーネットは首都圏キー局を流すということですので、首都圏キー局を地域の方々が見ることで本当にテレビとしての、今まで見てきた、文化的なところも当然そうですし、または天気予報、あと災害情報、そういったことを考えると、やはり中継局を整備するという方向をしっかりしなきゃいけない。

 今、電波のあきがないということがお話にありました。千葉などでも、中継局を新しくつくろうと思っても、来年の七月以降、アナログ停波した後でないと中継局をしっかりと計画することができないようなお話もありますので、そういったことも含めて考えていただきたいと思うんですが、今言いました首都圏キー局しか地方に流れないという問題について、しっかりと対応していただきたい。地方では、これから先、しっかりと地方局が見られるようになるんですよということをアナウンスしていただきたいという点が一点。

 逆に、地デジになると、県単位で放送区域が決まってくるようなお話を聞いています。例えば静岡などでは、東京タワーからの電波を受けてテレビを見ていた方が、地デジになると地方局のテレビしか見られない状況になるということが言われています。逆のパターンですね。今まで首都圏のテレビ局を見ていた方なんだけれども、今度からは急に地方局にならなきゃいけない。

 その暫定措置的な意味合いで、ケーブルテレビで再送信を考えているところもあるということなんですが、県単位での区域割り放送になることで、ケーブルテレビ等で区域外再送信について、なかなか協議が進まないところもあるなんていうことも聞いています。これも、受信者が今まで見ていたものが見られなくなるという一例だと思うわけですが、ぜひ、この協議等についての政府の見解、後押しをしていただけるようなことも含めて、今まで見られていた地方局が見られなくなるというパターンと、今まで見られていた首都圏の局が見られなくなる、両面からお答えいただければと思います。

内藤副大臣 二問、御質問いただきました。続けて私からお答えをさせていただきたいと思います。

 まず衛星の暫定措置は、残念ながら、全国の方々には東京の放送を見ていただくということになります。そうなると、東京のCM、東京の情報、東京の災害情報を見ていただかなければならない。そこで、できるだけそのことを対象の地域の方々、住民に理解を求めなければいけないということで、説明会を開催したり、あるいはパンフレットを作成するなど、まずは理解を求めていく。そしてまた、この五年間の臨時措置の間に徹底的に、中継設備を早期に敷設できるよう、国としても事業者と協力しながら取り組んでいきたいというふうに考えております。

 そしてまた、二問目でございます区域外再送信の件について簡単にお答えさせていただきます。

 私どもとしては、住民が、デジタル移行後も、みずからの生活に必要な地域情報を取得できるという受信者の利益を適切に保護するということが極めて重要だというふうに考えております。そして、大臣裁定制度の活用も含めて、当事者に対する適切な助言を行いながら、迅速かつ適切に問題解決を促してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

中後委員 ありがとうございました。

 ぜひ、受信者のことをしっかりと考えて、地デジの完全移行がスムーズにいくようにお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

近藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 きょうは短い時間ではありますが、まず大臣にお尋ねいたします。

 私は、きょうは、電波監理審議会でいろいろな審議がされておりますけれども、その内容を中心にして質問したいと思います。

 まず、今回の改正で、電監審の権限強化と読める条文が第百八十条に入れられていると私は理解いたしました。非常に唐突な感じを受けました。十分な議論、意見聴取が行われたんだろうかという点についても疑問を感じております。

 まず、さきの本会議で、電監審について、権限が個別具体的な放送番組を調査審議することにつながらないかという質問に対して、原口大臣は、個別の放送番組に介入をさせる意図は全くないと答弁をされております。私も、電監審が、例えばコンテンツ規制になるようなことがあってはならない、表現の自由、報道の自由を規制するものになってはならないと考えております。

 改めてお尋ねいたしますけれども、電監審が放送番組に介入することはないということを確認したいと思うんですが、いかがでしょうか。

原口国務大臣 重野委員は、野党時代、私と一緒に放送法の修正案も取りまとめていただきましたが、まさにそこでの趣旨は、放送、報道、表現の自由の確保でありました。

 その観点から、私たちは、今改正においては電監審に、放送事業者に資料の提出を求めたり直接説明を求めたりする権限を一切与えておりませんで、個別の放送番組に介入させる意図も全くございません。

 六十年ぶりの改正ということで、放送関連四法を統合します。ですから、実定法を一つにするのにばらばらであってはならないということで、四法の統合を行うに当たって、法改正に関する審議機構を電監審に一元化するわけでございますが、これにより、電波を用いた放送のみならず、有線による放送を含めた放送行政全般に係る幅広い知見が電監審に蓄積されることになります。

 電監審のこうした知見を放送行政に対するチェック機能として活用し、放送行政ですね、つまり、放送の主体ではなくて放送行政のあり方について大所高所から総務大臣に建議をしていただくものでございまして、御理解を賜ればありがたいというふうに思います。

重野委員 電監審の役割として、今大臣が答弁されました、いわゆる放送行政のあり方をチェックするものだ、このように理解をいたしました。

 そこで、今大臣の申されましたこと、具体的にどういうことを想定されておられるか、それも聞いておきたいと思います。

原口国務大臣 これは、今の立場だと私が建議をいただくわけですから、私がこんな内容をとあらかじめ想定して、こんなふうにしてくださいと言っているわけではないということをまず前提に申し上げると、すなわち、これはあくまで電監審の発意によるものなので、建議を受ける側の総務大臣があらかじめ想定する性質のものではないと考えますけれども、例えば、放送行政の一層の透明性の向上に関すること、放送の一層の普及に関すること、こういうことなどが考えられると、想定をしていると言っていいのか、ちょっと答え方が難しいところは御理解をいただきたいんですが、まさに、今まで恣意的にいろいろなものに介入してきたんじゃないか、逆に、放送、報道、表現の自由を総務省というものが担保できてきたのか、そういったことを御議論されるんではないかと私どもは考えております。

重野委員 もっと具体的に言うと、電監審に対して総務大臣が、例えばこういうことについて審議してもらいたいという提案をされるのか、いや、電監審自身でいろいろな問題意識を持って、それについてこうあるべしということをするのか。どうなんでしょうか。

原口国務大臣 答申というのもありますね。建議は、総務大臣から諮問を受けた場合の答申とは異なり、あくまで電監審の発意によるものだというふうに御理解をいただければと思います。

重野委員 わかりました。

 この間、大臣は、個別の放送番組に介入させる意図は全くない、むしろ逆だ、このようにも申されております。

 そこで、もっと詰めるんですが、放送行政のチェックという名目で、それが結果的に番組への介入となり得るケースも想定できるんですね。ここでは、いかなる場合においてもそういうことはないんだというふうに理解をしてよろしいか。

原口国務大臣 全くそのとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、条文でも、調査審議及び建議の対象を第五十三条の十二の二第一項各号に掲げる重要事項に限定しています。また、資料の提出や説明等の要求の対象についても関係行政機関の長に限定をしているところでございまして、個別の番組内容が調査審議及び建議の対象となるものではございません。また、電監審には、放送事業者に対して資料の提出や説明を求める権限もございません。

 なお、この電監審の建議及び資料の提出等の要求の規定によって総務大臣の権限が新たに追加するものでもございませんで、今委員がおっしゃるように、放送事業者の業務に関し総務大臣が資料の提出を求めることができる範囲は法令で厳格に定められておりまして、その範囲を超えて資料の提出等を要求するよう、電監審が総務大臣に求めることもできません。極めて限定的に……。

 私たちは今、言論のとりでをつくろうとしているわけです。その中で六十年ぶりに、通信と放送が融合する中で、さらに表現の自由、報道の自由、そして放送の自由、こういったものをしっかり確保するための法改正であるというふうに御理解をいただければありがたいと思います。

重野委員 しつこいようですけれども、これはやはり重要な点でありますので、具体的な事例でお尋ねいたします。

 二〇〇七年に関西テレビが制作いたしました「発掘!あるある大事典2」という番組の中で、データ捏造が大きな問題になりました。今回の改正案のもとで同様の事件が発生した場合、電監審は何もそのことについては行わない、電監審でそのことについて議論することはない、このように理解をしていいんでしょうか。

原口国務大臣 電監審が個別の番組内容に介入を行うことは一切ありませんし、あってはならないと考えております。

重野委員 わかりました。

 次は、一般放送についてお尋ねいたします。

 報道、表現の自由というのは民主主義の根幹で、どんなことがあっても守らなければならない原理原則。同時に、放送の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚もこれまた重要だ。そのための組織として、放送倫理・番組向上機構、BPOがございます。ここが、公正中立で行政や権力から介入を受けず、高い権威を持って問題に対応していくべきだと考える。

 そこで、現行法では放送の定義を、「公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信」というふうに定義しています。一方、今回の改正で「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」と、「無線通信の送信」が「電気通信の送信」に変わっていますが、その理由をお聞きしたい。

 また、インターネット、今もうすごい普及ですが、インターネットはこの中に含まれるのかどうなのか、これについてお聞かせください。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 今回の改正に伴い、四つの放送関連法が一本化されるわけでございます。そして、それぞれの放送関係の法律で、放送というものの定義が異なってきたわけでございます。放送法で言うところの放送、有線テレビジョン放送法で言うところの有線放送、そしてまた電気通信役務利用放送法で言うところの電気通信役務利用放送というものがあったわけでございます。これを一本化するということで、新たな定義として、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」ということにさせていただいた次第でございます。

 そして、二つ目の質問で、インターネットはこの中に含まれるのか否かということでございますが、インターネットのウエブサイト等は、公衆によって直接受信されることを目的とする送信ではございませんので、この法律で言うところの放送とは違います。

 以上でございます。

重野委員 そこで、規制のあり方について聞いておきたいんですが、これまで定義されてきた放送、つまり無線通信と他のメディアの最大の違い、規制をかける理由は電波の有限性にあるはずだ、このように理解をしています。電波については、今述べたとおり有限性という問題もあり、必要最小限の規制は私は必要になるんだろうと思いますが、通信の秘密、表現の自由などの観点から考えると、これは規制をかけるべきでない、こういうふうに思うんです。

 そこで、大臣、この規制のあり方についてどのように考えておられるかお聞きします。

原口国務大臣 極めて大事な御指摘だと思います。

 委員御指摘のとおり、無線通信の送信については、これまで、電波の公平かつ能率的な利用の確保、表現の自由、通信の秘密といった観点から必要最小限の規律が行われてまいりました。この点は改正法においても何ら変わることなく、規律は今後も必要最小限のものというふうにしてまいる所存でございます。

重野委員 それでは最後に、基幹放送における認定について聞いておきますが、今回の改正案の九十三条一項五号に、認定のために、「放送の普及及び健全な発達のために適切であること。」という文言が入っております。

 この「放送の普及及び健全な発達のために適切であること。」という意味は、どういう意味なんでしょうか。今後、番組内容に踏み込んで判断していくということを言っているんでしょうか。いかがでしょうか。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 決して個別具体的な番組内容を判断するものではないということをまず申し上げさせていただき、具体的には、一定の放送対象地域における放送系の数の目標等を基幹放送普及計画で規定すべきこととされておりますが、基幹放送の業務の認定に当たっても、こうした基幹放送普及計画に沿ったものとなっているかどうかを審査させていただくということでございます。

 以上でございます。

重野委員 以上で終わりますが、いわゆる表現の自由だとか報道の自由だとか、そういうものは最も大事な基本である、その原点に立脚をして、今後、放送を含む電波監理、そういうものにも携わっていただきたいし、我々も心していきたいと思います。

 以上で終わります。

近藤委員長 次に、小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 本日は、総務委員会におきまして、質問の機会を賜りましてまことにありがとうございます。

 まず、本題に入ります前に、口蹄疫の関係について、二、三お伺いし、また御要望を申し上げたいと思います。

 去る四月二十日、宮崎県におきまして、家畜伝染病たる口蹄疫が確認をされました。日に日に感染が拡大をいたしまして、昨日の時点で発生事例が七十六例、対象となる牛が六千二百七十二頭、豚で七万二千五百二十八頭、計七万八千八百頭を数えまして、家畜伝染病としては空前の被害となっているところであります。

 感染した牛や豚を食べても人体には影響はありませんが、非常に伝播力が強い、感染力が強いものでありまして、そのために一つの農場で一頭でも確認をされますと全頭を処分しないといけないということでございまして、この殺処分、埋却、消毒等の防疫措置を今行っているところでございます。

 急激に大量発生をしているために、防疫措置のための人員や埋却用の土地の確保も追いつかず、現地はまさに今、阿鼻叫喚、心身ともに限界の極致に達しているところでございます。発生地域からの蔓延防止のために、宮崎県はもちろん、鹿児島県、熊本県、そして各市町村に至るまで発生地と結ぶルートに消毒ポイントを設けまして、各畜産農家に消毒薬を配って対応していただく、また、症状の確認等に当たっております。二十四時間体制でまさに蔓延防止に努めているところであります。

 宮崎県では、四月二十八日に、これらの殺処分や消毒ポイントの運営費など三十三億円の補正予算を措置したところでありまして、また、鹿児島県、熊本県のそれぞれの自治体においても費用が発生しつつあります。鹿児島でも、とりあえず六億六千万円の補正予算を措置したところであります。

 こういった中におきまして、家畜伝染病予防法による全額国費負担となるものもありますが、埋却に要する人件費や掘削機械、あるいは運送車両の賃借料、防護服、防護マスク、動力噴霧機の購入または賃借料、ブルーシートのような防疫用資材など、自治体が二分の一を負担しないとならないものもたくさんあるのであります。また、市町村やJA等が消毒薬を前もって措置する、国の対応が来る前に前もって措置してきた、そういった自主的な防疫に要した費用もたくさんあります。さらに、畜産農家の経営資金、生活支援資金に対する利子助成など、県が単独で措置する対策もあるというふうに伺っております。

 これらの県や市町村が負担する口蹄疫対策につきましては、特別交付税による措置を行うべきは当然であります。どのような費用についてこの措置が行えるか、どのように考えておられるか、大臣の見解をお伺いします。

原口国務大臣 まず冒頭、宮崎県で発生した口蹄疫について、農家の方々を初め、関係者の皆様に心からのお見舞いを申し上げるとともに、きのう、宮崎県の東国原知事ともお話をさせていただきましたけれども、先頭に立ってこの感染拡大の防疫措置に努めておられる皆様初め、多くの皆様にお礼を申し上げたいと思います。

 その上で、殺処分をした家畜の損失補償の問題を初め、今委員がおっしゃったように、これは心の問題、あるいは経営再建の問題、それから、この間、同じ鹿児島の森山先生からもお話をいただいて、周辺の地域、畜産を営んでいるほかの地域にも深刻な影響あるいはさまざまな懸念が広がっております。そういう中で、特別交付税について、これまでの対応を上回る措置の要望を受けました。

 口蹄疫対策としては、例えば口蹄疫にかかった牛が発生をした、その処分には今交付金が五分の四入るんですね、あと残り五分の一をどうするかというと、これは共済であったりするわけです。そして、そこが農家負担という形になっているわけです。では、五分の一を農家が負担できるかというと、とてもそんな状態ではない。ですから、五分の一については、例えば県がやってくださったものは、今までの例で言うとその二分の一を特交措置しているわけです。

 では、本当にこの二分の一の特交措置でいいのか。過去の鳥インフルエンザやBSEといったようなところはそうだけれども、今回の場合は、むしろパンデミックに近い危機管理の措置まで考える必要があるんじゃないか、そこについての理屈づけは今までとは違うんじゃないかということで、私が今指示をして、その論理立て、現行法でやれることはすべてやりなさい、現行法でやれないことについても検討を深めなさいと、農水省と具体的な対応策についての調整を指示したところでございます。

 今おっしゃったように、周りの、私の佐賀県もそうですし、小里委員の鹿児島県もそうだと思います、畜産で多くの皆さんが生計を立てておられます。そして、宮崎県の農家の中には、きょうはあの町のあの農家だった、あしたは自分になるかわからないという中で、子育てをしている母牛を、そのまま子牛と一緒に処分をしなきゃいけないということで大変な心理的な負荷というか、これも、さっき阿鼻叫喚というお話をされましたけれども、もう限界まで達しているというふうに思います。

 また、獣医師についても、今多くの獣医師の方々に御協力をいただいていますけれども、ペーパーの獣医師さんもかなりおられて、現実に殺処分というものもまだまだ厳しい状況でございまして、この特交の中で、今までやってきた範囲はもとより、それを超えた部分はどんなものがあるかということも、各県、各関係者と相談をしながら、柔軟に対応できるように指示をしてまいりたいと思いますので、また必要な情報を御指導、御支援賜れば幸いでございます。

小里委員 今大臣がおっしゃいましたように、例えば、殺処分をした牛、豚等につきましては、五分の四は助成金が出る、残り五分の一については共済でもってというのが従来の制度でありました。それで、共済に入っている人もいるし、いない人もいる、共済も十分な人もいるし、そうでない人もいる。そこを国が特交でというような、先日の農水での答弁でもありました。

 しかしながら、そのままでは共済の意味がなくなってくる。また、大臣おっしゃったように、農家負担の問題をどう考えるか、掛金の問題をどう考えるか、そういったことが出てまいりますので、すべてひっくるめて、しっかりと国で見ていただけるようにお願いしたいと思います。

 それと、言うまでもなく、特交というのは後でほかの経費と合わせて総額として来ます、どんぶり勘定として来ます。したがって、どの分が今回の対策のためであるのか、そこら辺がわからなくなるわけでありまして、そこもしっかり明示をして、これは口蹄疫のためにこれだけ国が対応したんだよというところをお示ししていただきたい、そんなふうにお願いをしたいと思います。

 いずれにしましても、甚大な被害が発生をしている宮崎県はもちろん、鹿児島県や熊本県でも、郷土の畜産を守り、国民の食料を守ろうと必死に今侵入防止対策を打っているところであります。費用の心配をすることのないように、徹底した対策を各自治体、関係者が打てるように、そしてまた、経営再建のための支援、生活再建のための支援においても、万全の対応をもって、自治体、また関係者をお支えいただくようにお願いをしたいと思います。

 続きまして、政府の一連の対応についてでございます。

 十年前の口蹄疫発生時におきましては、早期の十分な予算措置を初め、政府・自民党と自治体との連携による迅速な対応によりまして、例えば、宮崎県におきましては、発生三例、対象牛三十五頭の段階で封じ込めに成功したわけであります。この経験を踏まえて、私どもは、今回、発生と同時に農林部会を招集いたしました。情報収集とともに意見を取りまとめまして、政府に対策を要請し、衆議院農林水産委員会でも何度も取り上げてまいりました。国に対する要請は、正式には三回、非公式には六、七回を数えると思います。そういった中で、政府の初動態勢のおくれも指摘を申し上げながら、ノウハウを提供し、対策の徹底を訴えてまいったわけであります。

 四月二十七日には、東国原宮崎県知事が自民党へお越しになりまして、自民党のノウハウをさらに発揮して支援をいただきたいとの要請がありました。これを受けまして、翌二十八日に、谷垣総裁・口蹄疫対策本部長を先頭にして宮崎県へ赴きまして、県や関係市町村、JA、生産者団体とお会いをいたしまして、情報交換、意見交換を行ったのであります。三十日には、総理官邸及び農水省に四十二項目にわたる対策を要請し、また要請を繰り返してきたわけであります。

 こうした中にも被害は日に日に拡大をして、例えば宮崎県での意見交換会では、何をしていいかわからない状況が続いている、あるいは、十年前と比べて国の対応が遅い、政府の対応が手ぬるい、今の国の対応では再起できない、そういった声が相次ぎました。初動態勢のおくれは否めないのであります。

 さらに、四月三十日の農水省への陳情の際に、対応した舟山政務官は、宮崎県の対応がおくれたと、宮崎県に責任を転嫁されました。これはあってはならないことでありまして、まさに親が子に責任を転嫁するような話であります。

 また、二十九日、山田副大臣がやっと宮崎へ赴かれたわけでありますが、滞在時間は一時間であったというふうに伺っております。

 赤松農水大臣に至りましては、この間一度も宮崎入りをせずに、陣頭指揮をとらないどころか、何と、四月三十日から五月八日まで、我々の制止を振り切って、メキシコ、キューバ、コロンビアへ外遊に行かれたわけであります。

 宮崎、鹿児島県は、日本の畜産の一位、二位を争う畜産県であります。日本の畜産の一大危機であります。そして、国家の食料安保の根幹にかかわるこの緊急事態に、何という危機感のなさ、危機管理能力のなさでありましょうか。

 大臣、内閣の一員として、この一連の経緯、事態をどのようにとらえておられるか、お伺いしたいと思います。

原口国務大臣 農水省の対応についてのお尋ねでございます。

 総務大臣がそれをどこまで答えるかということでございますけれども、四月二十日、第一例目が出たときに、第一回口蹄疫防疫対策本部を設置しています。即、我が党の議員からもお話がございまして、私の方からは、先ほど小里委員がおっしゃったように、各自治体が後顧の憂いなく、財政的にさまざまに厳しいですね、三位一体改革で委員の鹿児島も私の佐賀も非常に財政的に逼迫しています、ですから、ちゃんとお金は支援されるんだろうかというようなことを心配しないでいいように、総務省としてもしっかり下支えするようにという指示をしたところでございまして、防疫専門家をその日に宮崎県に派遣をし、牛、豚等の疾病小委員会、そして、消費者団体等への正確な情報の提供ということを四月二十日に行っています。

 前回、十年前の口蹄疫が発生したときも、原因がよくわかっていないんですね。そして、ガイドラインさえなかった。平成十六年につくられたガイドラインに基づいて今回防疫対策をしていますが、宮崎県が初動がおくれたというふうには私は考えていませんし、東国原知事初め多くの皆さんが御努力をされているということについて、ねぎらいの言葉と感謝を重ねて申し上げたところでございます。

 四月二十二日、口蹄疫の対策本部幹事会を開いていますし、私は、対応については検証され、あるいは委員がおっしゃるような批判を真摯に受けとめながらも、まずはこれをもうこれ以上拡大させないことが大事だと思います。

 これは、知事のお言葉やさまざまな専門家の言葉から推察すると、非常に感染力の強いもので、十六年当時のガイドラインで万全を期していただいていますけれども、それで本当に済むんだろうかというような不安の声も聞こえてきております。今やるべきことは農家の再建対策。

 それから、出荷がおくれたことに対して、さまざまな不利益なことも入っています。日々経営をされているわけでございまして、私も友人にたくさんの畜産農家がいますけれども、お金が入ってこなければ即経営が厳しくなる状況でございますので、総務省としては、先ほど委員がお話しになりました特交措置。これは、幾つも今メニューがございます。委員がおっしゃったように、地方自治体については、これこれこれだけの額がありますよと。それから、逆に言うと、これは委員にも御協力をいただきたいんですが、新潟の地震のときは、法律をつくって、それを遡及させました。激甚災害のときにはこういった手法も含めて、今ある法律の範囲の中でできないものも私にはあるように感じます。ですから、地元の皆さんには、こういうことも与党も野党も力を合わせてやっているから、どうぞ、本当に日々つらいだろうけれども、少し安心の下支えのところもあるんですよということを実感していただくことが一番大事なのではないかというふうに考えています。

 これで最後にしますけれども、そこで大事なことは、風評被害というのもやはり気をつけなきゃいけません。しかし、正確な情報を国民一人一人の皆さんに認識をしていただいて、そして、必要な支援をしっかりと届けていくということで頑張ってまいりたいと思いますので、御指導、御支援をよろしくお願いいたします。

小里委員 赤松大臣が外遊に旅立った四月三十日の時点で、口蹄疫発生事例は十二例、処分対象は四千三百頭でありました。外遊中の九日間に、新たに二十三例、四万五百二十三頭が発生をされ、対象となったわけであります。陣頭指揮をとるべき担当大臣が日本を離れている間に、これだけの被害拡大を見た事実。この事実は極めて重いと思います。

 大臣がこれは災害だとおっしゃいましたように、まさに大災害であります。私も、阪神・淡路大震災に際しまして、担当大臣秘書官として経験をいたしました。また、平成十八年の鹿児島県北部の豪雨災害に際しましても、地元の代議士として経験をいたしました。そのときの経験として、とにかく、こういった災害時、大災害時には、国のリーダー、指揮官が現場にまず赴くことであります。そして、時として、往々にして、そういう場合は教科書もない、マニュアルもないわけでありまして、予算はおれに任せろ、制度は任せろ、そういったしっかりした国のアナウンスがまずある、指揮者からのメッセージが発せられて、初めて現場が動ける、自治体は思い切った対応に当たれるのであります。

 どういう補償があるか、どういう国の対応があるかわからないから現場では混乱が広がってしまって、動かしてはいけない豚や牛を動かしてしまう、あるいは動いちゃいけない人があっちこっち動いてしまう、そういったこともあり得るわけであります。実際、あったのであります。何より現場や人心の安定のためにも、まず国の指揮官が現地に行くべきであった。これは、極めて重い指摘であるということを申し上げておきたいと思います。

 そういった政府の危機管理能力の欠如、対応の不備は否めません。そのために被害が際限なく広がりつつある。それだけに自治体の費用を国がしっかりと見る、畜産農家の補償や経営、また生活再建支援のための資金を国がしっかり見ていく、これは当然のことであろうと思います。

 ちなみに申し上げておきますと、自衛隊の派遣にしましても、事が大げさになっちゃいけない、現地に動揺が広がっちゃいけないということで、ずっと見送ってこられた。そして、現場の意見を受けて、我々が要請して、やっと先日、連休中でしたね、自衛隊が派遣をされました。最小限度の規模であります。あるいは、一般車両への消毒作業にしましても、ずっと見送ってこられた。これも我々が指摘をして、マットを敷いて消毒液をしみ込ませて、そこを通過させる、この手法によって始まったのがきのうであると伺っております。

 情報不足により、現地では要らぬ混乱がずっと続いてきた。殺処分もまだ三分の一も行われていないんじゃないか、そんなふうに認識をしております。とにかく、結果がすべてでありまして、東国原知事が谷垣総裁に対しておっしゃった、ぜひ自民党のノウハウをかしてほしい、その言葉の裏には、十年前のあの対応があれば今ごろは終結宣言ができていたはずである、そんな気持ちがにじみ出ていたわけであります。

 これ以上申し上げません。今は対策に全力を挙げるべきときであります。しっかりとそのために、きょうもあしたも農林水産委員会が開かれますが、そこで対策を要請してまいりたい。そして、事がおさまってから、大臣がおっしゃったように、この一連の経緯をしっかり検証して、今後の教訓として生かしていきたい、あわせて政府の責任を求めてまいりたい、そんなふうに思うところでございます。

 では、次のテーマに移らせていただきます。

 地方にテレビ局を開設する際に、当該テレビ局の株主構成において、いわゆるマスメディア集中排除原則というものがありますが、これはいかなる内容か、大臣にお伺いいたします。

原口国務大臣 マスメディア集中排除原則というのは、一つの資本によって、まさに地方の系列を含めそれが一色になってはならない、支配関係が強固になってはならないということで、一定の株の保有を規制している、これがこの内容でございます。

小里委員 つまり、在京の地上波の放送事業者が地方にネット局を開局する際に、そのキー局が株主になる場合はもちろんでありますが、放送事業者であるか否かを問わず、個人、法人を問わず、特定の者が当該キー局の発行済み株式総数の二割を超えてこれを所有してはならないということでございます。

 放送法は、放送が健全な民主主義の発達に資すること、放送が最大限普及をされまして、その効用をもたらすことを目的としております。そのために、集中排除原則を掲げて、放送することができる機会をできるだけ多くの者に対してこれを確保していこう、そして放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにしていこう、そういう原則でございます。

 そこでお伺いしたいと思いますが、自分で金は出すけれども名義は第三者の名義にする、いわゆる名義株の事例が見受けられます。そういった場合には、集中排除原則とのかかわりにおきましては、形式的な名義によるのか、あるいは実質的な株主がだれなのかということによるのか、大臣、お答えください。

山川政府参考人 お尋ねの点でございますが、総務省といたしましては、免許、再免許の申請の際に、株式所有者の名義にかかわらず、ある一定の者が自己の計算により議決権を有する割合を合算して計算するように無線局の免許手続規則により様式を定め、申請をするよう指導してきております。

 ただ、この取り扱いは、平成十年における一斉再免許時から行っております。

小里委員 平成十六年十一月十九日、総務省情報通信政策局長名で、第三者名義による株式の保有状況等に関する自主的な点検の要請についてという通達が全国の総合通信局長にあてて出されております。

 これは、第三者名義による株式の保有を通じて、マスメディア集中排除原則に定める出資制限の上限を超えて放送局に出資するならば、放送事業及び放送行政に対する国民の信頼を損ないかねないとの認識から、放送事業者に自主点検と報告を求めたものであります。つまり、実質的な名義、株主がどうかということが本来の趣旨であるということの証左であります。

 そこでお伺いをしたいと思いますが、第三者名義で株式を保有することで出資制限の上限を超えて放送局に出資をしていたことが判明した場合、放送局免許の審査基準との関係ではどうなるのか、お伺いをいたします。

山川政府参考人 今先生が御指摘になりましたような平成十六年の私どもの指導もございまして、平成十年以降は、実質的にその株がだれによって所有されているかということはしっかり見ております。

 私どもは五年ごとに一斉再免許を行っておりますが、そうした中では、このマスメディア集中排除原則に関する違反というものは、現在ございません。当然、この出資の上限を超えまして、一の者がある特定の放送局の株式を所有していた場合は、再免許の手続の際にチェックをされるということになります。

小里委員 通達がいつだったとか規則がいつだったかということじゃなくて、本来、放送事業がどうあるべきか、その原点に返ってしっかりこの問題は精査をしていかないといけない。その前提に立って、引き続きお伺いをしてまいりたいと思います。

 テレビ局は、電波法の定めによりまして、五年に一度免許更新が必要であります。今おっしゃったように、五年に一度ということでありますが、その審査の際、集中排除原則が履行されていないと免許が自動失効することになる、そういうふうに認識をしております。

 岩手めんこいテレビというものがございますが、具体的にお伺いをしてまいります。

 平成三年、民主党小沢幹事長の地元、岩手県にフジテレビをキー局とする岩手めんこいテレビが開設をされました。現在、県内の視聴率トップの会社であります。

 お手元の資料をごらんいただきたいと思います。胆江日日新聞、小沢幹事長の地元、水沢の新聞でございます。岩手めんこいテレビ開設前の平成元年の記述でありますが、当時、自民党の幹事長だった小沢代議士がフジテレビの日枝社長と会談をして、めんこいテレビの本社を水沢に置くことがほぼ決まったことを記述したものであります。

 岩手県における第三局の開設において、他の在京のテレビ局との争いに勝ってフジテレビ系列の岩手めんこいテレビが開局をされたわけであります。その際、小沢代議士の強い政治力があったことは周知の事実であります。

 さらに資料をごらんいただきたいと思います。これは、岩手めんこいテレビの平成八年度の株主総会の営業報告書の一部であります。ここに、平成八年三月三十一日現在の株式の状況として、大株主の一覧が出ております。

 公表されている資料を見ると個人株主は出ておりませんが、この入手した資料を見ますと、たくさんの個人株主が掲載をされております。この入手したとおりの株主構成だとすると、ちょっと不思議なことに気づくのであります。

 まず、キー局であるフジテレビが株主になっておりませんし、その関連会社の名前もありません。さらに、たくさんの個人株主がいるわけであります。プライバシーの問題がありますので、氏名は伏せてあります。この方々について調べたところ、ほとんどの方が、実は小沢幹事長の後援会長であったり、そうそうたる小沢幹事長の有力後援者であるということが判明をいたしました。一人一千五百株、額面五万円で買ったとして、一人当たり七千五百万円を出資したことになります。

 ところが、先般の月刊文芸春秋によりますと、これらの個人株主が架空株主であるということでありました。

 そこで、私たちは、事実確認のために岩手に赴きまして、くだんの個人株主数名にお会いをして話を伺ったのであります。驚いたことに、彼らの話によりますと、株主になったことはない、テレビ局ができるときに小沢事務所から株主にならないかと誘われたが、金額が大き過ぎて断った。あるいは、株式引き受けの申込書にサインをしたり、印鑑をついたことはない。あるいは、株主総会招集通知はもちろん、めんこいテレビ側から何の連絡も通知も受けていないというような答えでありました。

 さらに、文芸春秋の記事や小沢氏の元秘書に直接聞いた話によりますと、いわゆる小沢系の個人株主十名のほとんどが実際には株式を購入せず、架空株主である疑いが濃厚であります。株式数にして十名で一万五千株、発行済み株式数の実に三〇%に当たるのであります。

 まず、他人の名義を勝手に使って株式申込書を作成した有印私文書偽造、これは刑法百五十九条の定めによりまして、懲役三月以上、五年以下となっておりますが、この有印私文書偽造の疑いが生じてまいります。また、めんこいテレビが公表してきた株主や出資比率が事実と異なり、実質的株主のありようによっては集中排除原則にもとる疑いが出てくるわけであります。

 私どもは、この平成八年度の営業報告書の会社の概況一覧をめんこいテレビ側にお示しをして、その真偽について回答を求めましたが、めんこいテレビ側からは回答を差し控えたいということでありまして、否定をされなかったのであります。

 もしそんなことが本当にあったとすれば、本来は免許されないのに、事実を偽って免許を取得し、更新をしてきたことになりかねないわけであります。放送局設立時の手続に大きな瑕疵があったことになり、何より放送の公平性、放送事業及び放送行政に対する国民の信頼を大きく損ないかねないことになるということであります。

 これは、単なるうわさのたぐいではなくて、関係者の証言がある大きな疑惑となっております。事実を解明する責任が総務省及び当該テレビ局にあると考えますが、大臣、いかがでありましょうか。大臣、お答えをいただきたいと思います。

原口国務大臣 岩手めんこいテレビの現在の株主構成、総務省が公表している一〇%以上の議決権を有する株主は、フジ・メディア・ホールディングス一九・九八%、岩手めんこいテレビ社員持株会一六・二八%と存じ上げています。公開情報によれば、他の主要株主については、産経新聞、読売新聞、朝日新聞、岩手銀行、みずほ銀行等でございます。

 開設時の株主構成については、同じく公開情報によれば、産経新聞、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、鹿島建設、岩手銀行等で、総務省においては当時の資料が廃棄されており、文書保存期間は五年でございまして、確認ができないところでございます。

 いずれにしても、放送法に沿った適切な運用がされることを私たちは求めて、そして、それが望まれていると考えております。

小里委員 今の株主構成がどうということじゃなくて、従来の株主構成において、公表されてきた株主構成と営業報告書における株主構成が相違をしておるんですね、そこの点が今問題になっておるわけでありまして、実際の株主はどうだったかというところをしっかりと調べる必要があると思うのであります。

 引き続きお伺いしてまいります。

 まず、くだんの個人株主の方々に聞いたところでは、株主総会招集通知は届いていなかったということであります。招集通知の欠缺は、株主総会の手続及び株主総会決議上の瑕疵があったということになりまして、総会決議の取り消しや無効にもなりかねない話であります。株主総会決議取り消しの訴えの提訴期間は、決議から三カ月でありますから、もはや提訴することはできません。しかしながら、そのような行為が繰り返されてきたとすれば、これは放送行政上重大な問題とすべきである、そのように考えるところであります。

 実質株主はだれかということになります。くだんの個人株主、地元マスコミによりますと、小沢氏が岩手における第三局の設立をめぐる在京テレビ局の争奪戦に絶大な影響力を行使し、めんこいテレビの株主構成に至るまで小沢幹事長及び小沢事務所が大きな関与をしてきた、大きな影響力を行使してきた、これはまさに地元では周知の事実となっているところであります。

 さらに、平成七年、めんこいテレビの会長人事で、放送業界にとっては全くの門外漢でありましたところの元県議会議員、実は、小沢後援会水沢連合会長であった人物が会長に就任をいたしました。事情をよく知る小沢幹事長の元秘書に直接確認をいたしましたが、小沢幹事長がこの人物を新会長にするように会社に要望をした、その際に、一たん拒否されましたが、小沢幹事長は、めんこいテレビの三〇%以上の株主たるおれの言うことに盾突くのかと激怒したということであります。すなわち、元秘書の証言によれば、小沢幹事長自身が三〇%以上の株主であることを認識していたということになります。また、小沢系株主十人分と思われる株券のような証書や印鑑が小沢氏に渡ったということも元秘書の証言として出ているところであります。

 もしこの話が本当であれば、小沢幹事長が実質株主であることになります。そして、七億五千万円もの代金を一体どのように調達をしたのか、何のためにそういう偽装名義を使ったのか、どの時点で幾らで譲渡をしたのかという疑問がわいてくるのであります。

 小沢幹事長については、先般の土地購入をめぐる疑惑が思い出されます。折から、先日、この事件について検察審査会の判断が下されました。直接的証拠、情況証拠を述べた上で、小沢氏の供述は極めて不合理、不自然で信用できないと判断をされました。そして、執拗な偽装工作を指摘し、市民目線からは許しがたいと断罪をされ、起訴相当との議決がなされたわけであります。

 この土地購入原資の四億円について、小沢氏は説明を二転三転させました。当初は、記者会見まで開いて、こつこつ集めた献金であるとしておりましたが、その後、これは銀行からの借り入れ金となりまして、さらに、個人資産を銀行口座からおろし、平成元年ごろから金庫に入れていたものなどと説明をされたのであります。

 実は、この土地購入の原資と時期的にダブるのがめんこいテレビ株の購入代金であります。七億五千万円と目される資金の出所について、小沢氏はどのようにこれを説明されるんでしょうか。何のために偽装工作をしたのか。そして、いつ、どのようにこの株式を処分したのか。このような疑惑に対して、まず小沢幹事長自身が説明責任を果たすべきと考えますが、閣僚の一員として総務大臣の見解を求めたいと思います。

原口国務大臣 個別の案件について私がお答えできる立場にございません。

 先ほどお話しになった、一九八九年、めんこいテレビがスタートするとき、自民党の幹事長、自民党の代議士であった小沢さんというようなお話でございますが、その当時のことを私がコメントする立場にもございませんし、今、ましてや、検察審査会やさまざまなところの司法の場でお話をされていることについて、閣僚として予断を与えるようなことを申し上げる立場にもございません。

小里委員 想定したような御答弁であります。

 小沢氏については、土地売買に係る疑惑のみならず、公共工事の受注に関して小沢事務所が天の声を発していると公判で検察が指摘をしているようなゼネコン疑惑があります。また、巨額の政党交付金の不正取得問題など、小沢氏については政治と金にまつわる疑惑が絶えないのであります。いわゆる土地転がし、ゼネコン転がし、政党転がしに続き、電波に係る今回の疑惑であります。

 総務省としても、めんこいテレビに係る株主の実態と変遷、特に、株式がだれからだれに渡り、どのように処分されたか、徹底調査する必要があると思いますが、重ねてお伺いをいたします。

原口国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、既に五年の期間を過ぎておりまして、今委員がおっしゃっている一九八九年、今からいうと何年前ですかね、もう二十年を超えた前について私たちが調査することもできませんし、今お話がございました、その資料そのものがないということを御理解いただければと思います。

小里委員 株主構成がどのように変遷をしてきたか、どの時点までどのような構成であったか、それによっては時効の対象にならない、現実に裁かれるべき可能性もあるのであります。何より社会に大きな影響を与える公共の電波として厳に公平性が確保されるべき放送事業が、特定政治家に偏って立ち上がった。会長人事がゆがめられ、架空の株主構成により、会社の誕生基盤、存立基盤そのものが揺らぎかねない問題であります。何より放送行政への信頼が失墜しかねない大きな問題であるということを重ねて申し上げたいと思います。

 先般、私は、岩手めんこいテレビにお伺いをいたしまして、社長と専務から事情をお聞きいたしました。株主であることを否定している個人株主がいるということは報道で知っているが、テレビ局としては個人株主から事情を聞く予定はないということでありました。また、同伴した弁護士団とともに、さらに詳しく事情を聞き出そうといたしました。しかしながら、社長も専務も岩手めんこいテレビ開局時採用の第一期生でありまして、昔の話はわからない、今の大臣と同じような答弁でございました。

 先ほどの地元新聞の記事にもあったように、小沢幹事長とフジテレビ幹部との話し合いでめんこいテレビ開局の話が進んだ、そういった経緯もあります。開局の経緯については、小沢幹事長ないしはフジテレビの日枝会長に確認をするほかないと思います。また、現在、小沢系個人株主は、大臣がおっしゃったように大株主の一覧には出ておりません。名義上の架空株主であったとすれば、実質株主が株式を処分したと考えられるわけであります。入手した営業報告書における大株主の記載と公刊されている日本民間放送年鑑の主要株主の記載も、必ずしも一致をしているわけではありません。入手資料の検証をする必要もあろうかと思います。

 そこで、大きなこの疑念、疑惑を解明するために、この際、株主の変遷がわかる、めんこいテレビ開設時から現在までの営業報告書の提出、フジテレビの日枝会長並びに小沢幹事長の参考人招致を求めたいと思いますが、委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。

近藤委員長 理事会にて協議をさせていただきたいと思います。

小里委員 続きまして、めんこいテレビの財務についてお伺いをいたします。

 総会資料の計算書類などを拝見いたしますと、多少奇妙なことがうかがえます。最近、不況で税引き前利益が赤字で法人税を払えないという企業が多いのでありますが、岩手めんこいテレビは、税引き前利益が赤字にもかかわらず、多額の法人税を長年納め続けております。法人税率も異常な高さであります。実効税率が、平成二十年三月期で一二七%、平成十九年三月期で六一・六六%、平成十八年三月期で七〇・六五%と、通常の企業の数字が四〇・七%であるということを考えますと、異常な高さになっております。

 どうして赤字なのに多額の法人税を納めなければならないのでありましょうか。その原因としては、法人税法で損金算入が認められない、課税される費用支出があるということが考えられるわけであります。

 第六期の販売費及び一般管理費の明細によりますと、無償の利益供与が含まれますと記載をされております。税法上は、無償の利益供与は、事業に無関係のものに対して対価性のない支出、例えば寄附金が該当するということになります。つまり、会社の事業と関係のない多額の無償の利益供与が行われていることが考えられるのであります。一体何のために、赤字にもかかわらず多額の税金を払ってまで放送事業と関係のない利益供与をしなければならないのか、ますます疑問が広がっていくわけであります。

 こういった観点からも、放送事業の所管官庁として、疑惑を解明し、放送事業及び放送行政への国民の信頼確保に努めていかなければならないと考えますが、大臣、いかがでありますか。

原口国務大臣 放送は、表現、あるいは報道、そしてさまざまな、先ほどからお話がありますけれども、安心、安全、文化の拠点ということでございます。放送が、しっかりとした法と正義に基づいて放送局が運営をされる、このことを期待するものであります。

小里委員 名義株主の存在、そして名義株の処分とあわせまして、このような不可解な財務処理が疑われる岩手めんこいテレビであります。集中排除原則に関連する放送行政上の問題として調査する必要があると私どもは考えております。

 岩手めんこいテレビの開局時から現在までの株主総会に提出をされました決算、財務に関する決算書などの提出を求めたいと思います。委員長、お取り計らいをお願いいたします。

近藤委員長 理事会にて協議をさせていただきます。

小里委員 続きまして、第三のテーマに入ってまいります。

 労働組合の資金上の問題でございます。

 民主党小林千代美参議院議員の選挙や政治資金に関連しまして、公選法違反、政治資金規正法違反の罪で北海道教職員組合幹部及び自治労幹部が相次いで逮捕されたのは、御案内のとおりであります。これは、民主党における票と金と人を労組に依存する、労組丸抱えの実態が象徴的に露呈をしたものであるととらえることができます。

 そもそも労組マネーについては、資金がどのように調達をされ、どのように使われているのか、不透明な実態が従来指摘をされてまいりました。

 また、現職教員や地方公務員が公然と選挙運動や政治活動に駆り出されている状況は、まさに目に余るものがあります。憲法で保障されてきた表現の自由、政治活動の自由、あるいは団結権などは尊重されるべきである、このことは当然のことと考えますが、違法行為を行い、民主政治の原点ともいうべき選挙をゆがめ、政策をゆがめる行為は断じて許されるものではないと考えます。

 以上の観点から、政治とのかかわりにおけるあるべき地方公務員像について、まずは大臣の見解をお伺いいたします。

原口国務大臣 地方公務員は、もちろん、憲法に保障されたさまざまな権限を持っているわけでございます。その上で、政治的な中立性、公平性、公正性、そして業務に対する忠実性、こういったものが求められる、このように考えております。

小里委員 各論についてお伺いをしたいと思います。

 北海道教職員組合による政治資金規正法違反事件によりまして、労組マネーに係る経理の不透明な実態というものが浮き彫りになってまいりました。例えば、自治労の決算書を見ますと、収入についてはどこの組合からどれだけ集めたか、かなり詳細に出ております。しかしながら、支出の部分、すなわち、資金がどのように使われたかということについては、ほとんど説明が見当たらないのであります。

 地方公務員法におきまして、職員団体の登録制度が設けられております。登録を行う際は、民間の労組と同様に規約の整備が必要でありますが、経理に関しましては、経費及び会計に関する規定を定めれば足るということでありまして、労働組合法で規定されているような公認会計士による監査や公表手続の記載は求められておりません。

 そもそも、労働組合には会計基準と呼ばれるようなものがありません。労働組合会計基準というものはありますが、公認会計士協会がガイドライン的に作成をしたものでありまして、法的な強制力はありません。上場企業の企業会計みたいに第三者が見ることもなく、役所が監査に来ることもありません。

 小林千代美参議院議員をめぐる事件で見ますように、このような不透明な経理による労組マネーが政治家側に渡っても、政治資金収支報告書に記載されることはないのであります。

 現在、日本における労働組合数は二万八千、組合員数は一千万人。組合員が一万人以上いる組合四十三の組合費を平均で見ますと、組合員一人当たり月額五千円、年間六万円程度を納めていると言われますが、全体としては相当な金額になっていくのであります。

 また、現在の鳩山内閣における労組組織内候補たる大臣は、七人となっております。これを含めまして、多くの民主党議員が労組から巨額の資金提供を受けております。

 例えば、大臣で見ますと、赤松農林水産大臣の政党支部や資金管理団体には、全日通労働組合や全日本運輸産業労働組合連合会を初め、労働組合側から、二〇〇二年以降、合計で一億一千八百万円に及ぶ寄附がなされております。直嶋経済産業大臣側には、二〇〇三年以降、トヨタ関係の労組を初め、自動車関係の労組側から、合計二億八千六百万円余りもの資金提供が行われております。これは、パーティー券収入は含んでおりません。平野官房長官側には、二〇〇三年以降、松下労組を初めとする労組側から合計二億一千七百万円余りの寄附がなされているなど、原口総務大臣も含めまして十四人の閣僚が労組側から資金提供を受けております。

 今や労働組合の社会的、政治的影響力ははかり知れないものがありまして、日教組にしても自治労にしても、政治活動にかかわる以上は社会的責任を免れることはできないと考えます。政治献金やパーティー券の購入は、私的な資金移動ではなくて、組織で集めた多額の資金を特定の政党や政治家に寄附するということであれば、一般国民に対して説明責任があり、金の流れを国民に開示すべきであると考えます。

 特に、労組が政権と深いかかわりを持つようになった現在、労組の経理の透明性の向上が求められると思いますが、大臣、いかがでありましょうか。

原口国務大臣 政治資金の透明性、そして公正性、これは国会の中でもずっと議論があることでございまして、いわゆる政治をお金によってゆがめることがあってはならないということで、累次改正が行われてきたところでございます。

 また一方で、労働組合も含めてさまざまな政治団体をつくり、政治活動の自由ということを保障されておるわけでございまして、その中で、政治資金規正法にもございますように、いやしくもこの規正法がさまざまな献金というものを萎縮させるような形になってはならない。政治資金規正法という規正のその正の字が、いわゆる規制改革という場合の規制ではなくて、公平、公正、そして透明にして政治を正しい方向へ、政治資金の流れを正しく導くという、その字にあらわれているとおり、象徴されているとおりのことであると考えております。

小里委員 先ほど小林千代美議員につきまして参議院と言い間違えましたが、衆議院でありました。おわびをして訂正申し上げたいと思います。

 大臣の答弁を受けて、さらにお伺いをしたいと思います。

 労働組合は、組合員の労働条件の維持改善を目的としながらも、それを達成するために政治とのかかわりを強化し、政治集団と言われるまでになっている状況があります。民主党は労働組合を使って選挙を行い、労働組合は民主党政権を使って自己の利益の確保に努めるという構図ができ上がっております。

 昨年九月、鳩山政権が発足をし、最初に官邸に招いたのが連合の高木会長でありました。鳩山総理は、政権与党になり連合の要求も実現できることが多くなった……(発言する者あり)

近藤委員長 お静かにお願いします。

小里委員 政策実現に向けて一緒にやっていきましょうと語りかけたといいます。

 そして、官邸と連合側との定期的な会談や協議を開催することを合意し、さらに、連合の元事務局長が行政刷新会議のメンバーになったり、高木会長が国家公安委員に任命されるなど、その関係を深めているのであります。

 また、申し上げたとおり、鳩山政権における組織内候補が閣僚として今行政をつかさどっている実態、民主党議員に巨額の資金がさまざまな角度から提供されている実態があります。

 これまで民主党は、いわゆる族議員について厳しい批判を展開してまいりました。今民主党は、人も金も票も労働組合に依存をして、労組が……(発言する者あり)

近藤委員長 お静かにお願いします。

小里委員 政策に強い影響力を行使するという状況が明白になってまいっております。

 労働組合がどの政党を支持しようが自由であります。ただ、かつて企業ぐるみ選挙が批判をされ、政党と企業との人や金の関係が幾たびかの法改正で整理をされてきましたように、今度は民主党と労働組合との人、金、票の関係がきちんと整理されないといけないと考えるところでありまして、大臣、改めて見解をお伺いします。

原口国務大臣 小里委員にお答えをいたしますが、いわゆる政労協議というものは、旧政権時代にも行われてきたことでございます。つまり、雇用を保障する、労働者の団結権、そしてさまざまな争議権、あるいは団体交渉権、こういったものを保障するというのは、何も民主党だけの責務ではなくて、すべての政治家の責務であるということで、自民党政権下でも行われてきたことでございまして、冒頭、総選挙で政権交代をした後に総理が労働者の代表である方々と定期的に協議をしていきましょうというお話をされたのは、極めて真っ当なことだというふうに思っています。

 そして、私たちは、労働者を、まさに労働者の団体を、昔の族議員のような考え方、あるいは族の圧力団体のような考え方を本当にしていいのだろうかというふうに考えています。逆に、正規と非正規、そして官と公と民とで分断をされていた労働者の分断を連帯させて、一人一人の働く人たちの権利を保障していくというのは、すべての政治家に課せられた使命であるというふうに考えています。

 その上で、今委員が御指摘のように、不透明であるとか、あるいは公正さを疑われるようなことはどの団体に対してもあってはならないので、それぞれの政党がしっかりと矜持を持って、しっかりとした説明責任を果たされることを期待するものでございますが、政府としては、引き続き働く人たちの意見をしっかりと聞きながら、国民の雇用、そして労働の安心といったものについて保障すべく努力を重ねてまいりたい、このように考えています。

小里委員 労働組合と政権とのかかわり、それから、選挙とのかかわり、資金面における協力の体制のあり方、これが度を超えて今大変な状況になってきている。特に、政策の決定におきまして、その影響力の行使においては従来とは次元の違う状況になってきている。それを前提に置いた労働組合への対応の仕方が必要であるのではないか、そんなふうに思います。(発言する者あり)

 具体的にということでございましたので、引き続き質問をしてまいりたいと思います。

 民主党は、企業・団体献金禁止の理由として、企業献金は見返りを求めるものだと言ってこられました。ならば、労働組合の民主党に対する人、金、票の支援は見返りを求めてはいないんでしょうか。民主党は、企業・団体献金の禁止を掲げる前に、労働組合の経理の透明性の確保のみならず、組合員の職務専念義務に違反をする、ながら条例の問題、やみ専従の問題、あるいは公務員が法律に違反をして政治活動や選挙運動に奔走する問題等に厳しくメスを入れるべきである、そんなふうに考えるところであります。

 産経新聞によりますと、NTT労組の政治団体であるアピール21が、内藤総務副大臣ら組織内議員側に対して、無償配布用のビラの買い取り費用として、過去三年間に総額九千四百万円を資料費として支出をしていたということでありました。私どもの調査でも、これは確認をいたしました。ビラ一枚当たり数円と目される、これは我々の常識でありますが、そういった作成費用に対して、これを一枚百円で購入をしている。例えば、内藤副大臣側には計五百三十万円が提供されております。購入後は、これがまた会員に配布されたということでございます。実質的な寄附行為でありまして、政治献金の上限規制の適用がない、いわゆる脱法行為であります。

 ところが、この資料費の問題についても、民主党が唱える企業・団体献金の禁止には触れられていないのであります。この資料費の問題をどう受けとめられるか、対処されるか、総務大臣の見解をお伺いします。

内藤副大臣 まず、私からお答えをさせていただきます。

 委員の質問は、過日、産経新聞等スポーツ紙に報道されたものですが、ここに脱法行為だとか無償ビラというふうに書かれておりますが、そういうふうに書いたその根拠を私はいずれかの機会に求めていきたいと思っております。

 事実を申し述べさせていただきたいと思います。

 数円とおっしゃいましたが、実は私はカラー刷りでやっておりまして、一部当たり数十円のコストがかかっているわけでございます。そういった報告誌について政治団体から機関紙購入代としていただいているもので、そのやりとりは政治資金規正法にのっとって収支報告書に毎年明示をさせていただいているものでございます。何ら違法でもなければ、無償ビラの百円での配布ということでもございません。

 例えば、具体的に申し上げるならば、十九年度、確かに八十万円購入代金としていただきましたが、実は印刷代等で二百万円近くかかっているわけでございます。ですから、無償ビラを何かあたかもお金をいただくために渡したというのはいかがなものかというふうに思います。

 以上でございます。

小里委員 副大臣は数十円とおっしゃいました。数十円としましても、実際の購入費との開きはあるのでありまして、その差額は寄附金に当たるのだろうと思います。

 それと、副大臣に限らず、収支報告書の一覧を見ますと、ずらっと民主党議員に対する金額が並んでおりまして、そのすべての方々が数十円で作成されたわけではなくて、中にはもっと安く作成されたところもありましょう。

 いずれにしましても、その一つ一つをせんさくするわけではありませんけれども、まさに実際の購入費百円と作成費との間には大きな開きがある。その差額は寄附金に当たるということは、これは常識的に考えまして、世間のとらえ方であろうと思います。

 そういったことは、にわかに今の法規制のもとでは違法行為ではないかもしれない。しかしながら、まさに上限規制を超えて実態として巧妙に資金提供がなされている。このことに対して、やはり立法府としてしっかり対応をしていく必要がある、そのように私は考えます。この問題はさらに中身を精査しながらお伺いをしてまいりたい、そんなふうに思うところでございます。

 このような民主党を支持する労働組合団体の脱法献金や不透明な資金提供に民主党が目をつぶるとすれば、民主党が唱える政治資金改革は説得力を失っていくということを申し上げておきたいと思います。

 残り時間がないようであります。最後の質問に入りたいと思います。

 地方公務員は、地方公務員法第三十六条によりまして、政治的行為に対し制限がかけられております。しかしながら、例えば市町村役場の係長などの職員として日ごろ地域住民への対応に当たっている職員が、特定の候補者のビラを持って各戸を回っている、あるいは組織的に電話作戦を展開する、あるいはまた選挙事務所や後援会の事務所に堂々と陣取って運動の指揮をとっているという実態が紛れもなくあるのであります。また、特定候補の集会に参加した組合員に組合活動の名目で手当が支給されている、そういった実態もあるところであります。こういった地方公務員による政治活動は、行政の政治的中立性を損ない、行政への住民の信頼を失墜せしめることになりかねないのであります。

 国家公務員につきましては、禁止行為が人事院規則によりまして具体的に細かく規定をされております。違反行為に対しましては、刑事罰も科せられるということになっております。しかしながら、地方公務員につきましては、禁止行為についての具体的記述が不十分でありまして、刑事罰の規定もありません。

 まずは、違反に対する抑止効果を高めるために、禁止行為についての具体的規定を定めて、地方公務員法における罰則の規定を定めるべきであると考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

原口国務大臣 地方公務員の政治的行為の制限については、地方公務員法に禁止行為を規定しております。その違反については、懲戒処分をもって足りるとの考え方から罰則を付さないこととされております。

 公務員の政治的行為の制限については、先ほどもお答えをさせていただきましたけれども、基本的人権にかかわる問題として、これまでこの国会、立法府でも、あるいは司法府でもさまざまな御議論があったものであり、これは慎重に考えるべき問題である、このように考えています。

小里委員 申し上げましたように、地方公務員法における規定はあるものの、具体的な記述に欠けまして、特に、日ごろの政治活動、後援会活動への関与については、ほとんど具体的記述がないのであります。また、実態としてさまざまの違法行為、脱法行為が行われておりまして、抑止力を高めるためには、しっかりとこの議論を深めていかないといけない、そのことを重ねて申し上げておきたいと思います。

 さらに、きょうはチェックオフの問題を初め、幅広くいわゆる労組マネーの問題につきまして議論を申し上げたいという気持ちでありましたが、時間でありますので、また後日の機会をお願い申し上げまして、質問を終えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

近藤委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 きょうは、総務委員会で質問させていただく機会を与えていただきましてありがとうございます。

 それでは、放送法改正についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、この放送法改正等については、例えば毎日新聞では「電監審の機能強化」、そして「NHK会長に議決権」、「表現の自由に懸念」、こういう記事が出ております。これは五月十日の毎日新聞であります。また、五月十二日には朝日新聞に、「番組内容まで介入の恐れ?」、「審議会強化を盛る」等々の見出しが出ております。

 そこで、今回の一つの論点といたしまして、電波監理審議会が従前の、総務大臣の諮問に答えるという受動的な対応にとどまらず、改正法第五十三条の十二の二に規定する、要するに自発的に調査審議を行う、そして総務大臣に建議をすることができる、こういう権限を持たせた。そして、その重要事項というものに、特に「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」を初め、最大限の普及、あるいは「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」、こういう内容になっているわけでございます。

 私、これを見ましたときに、大臣も消費者問題を非常に頑張っておられたわけでありますが、昨年ですか、消費者特で、消費者委員会というのができました。これは消費者庁及び消費者委員会設置法で、あれでも消費者委員会が重要事項について調査審議できる、そして建議をすることができるとなっているわけです。そして、今回さらに、「資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」ということで、資料提出要求等の権限がこの放送法には書かれているわけでありますが、同じように、消費者委員会の方もそういう権限を持たせている。非常によく似ているわけです。

 ただ、消費者委員会の方は内閣府にあって、職権の独立性ということも七条に規定されているということでありまして、これは総務大臣の任命によるもので、国会の同意人事ではありますけれども、独立性について劣るものにこれだけの権限を与えていいのか、大変疑問に思うわけでございます。

 しかも、放送事業者に対する十分な事前の説明もなかった。そして、昨年八月に情報通信審議会が答申をしているわけでありますが、情報通信審議会でも全く議論されていない、答申にも入っていない。こういうものが三月五日の閣議決定で突然出てきたということは、大臣は放送行政に対する透明化ということも強くおっしゃっていますが、この法改正については透明化が全然果たされていない、こういうふうに思っています。

 電監審についての本改正に至った経緯をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕

原口国務大臣 大口委員にお答えいたします。

 大口委員とは、今お話しをいただいたように、消費者基本法の起草に一緒にかかわらせていただきました。あのときは消費者保護法というものを、消費者は保護の対象ではなくて権利の主体であるということで、消費者が持つ権利を、世界消費者機構の八つの権利に倣って書き込んで、そして中央、地方、政府あるいは事業者がどのようにその責務を保障していくかという法律に、大口委員が先頭に立ってつくってくださいました。

 まさに、今私たちは、放送・通信における国民の権利というのは一体何なのか。そして「検証戦争責任」という場の話をいたしましたけれども、戦争に向かうときに権力が、まさにみずからがいいように情報やさまざまな放送、表現の自由を侵害し、それを従わせてきた、そのことにかんがみて、私たちは言論のとりでということをフォーラムで議論をしているところでございます。

 今般の改正で、放送関連四法の統合を行うとともに、放送関係の法施行に関する審議機能を一本にしますので、これにより、電波を用いた放送のみならず、有線による放送を含めた放送行政全般に係る幅広い知見が電監審に蓄積されることとなります。先ほど消費者行政のお話をされましたけれども、まさに電監審のこうした知見を放送行政に対するチェック機能、行政に対するですね、先ほども重野先生にお答えをいたしましたけれども、これは放送事業者に対するチェック機能ではなくて、放送行政、私に建議をしていただく、今の立場であれば。放送行政のあり方について、大所高所から総務大臣に建議することができるとするものでございまして、これまでの長い間の議論を踏まえたものであるというふうに御理解をいただければ幸いでございます。

大口委員 重野委員からもそこは質問があったわけであります。具体的にはどういうことなのかということに対しては、放送行政の透明性、一層の普及、それから総務省の恣意的な介入のチェック、こういうことを大臣は挙げておられるわけですね。

 ただ、例えばこの五十三条の十二の二の二号には、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項」、これもあるわけですね。この「放送の不偏不党」あるいは「真実及び自律を保障する」ということに関しては、具体的にはどういうことを考えられているんでしょうか。

原口国務大臣 現行法でも、放送の不偏不党の大切さについてうたっておりますけれども、私たちが政権交代をし、あるいは、この中にもたくさんいらっしゃいますけれども、放送法あるいは電波法の改正、これもこちらにいらっしゃる皆様と一緒に、すべての党でやらせていただきました。

 「あるある大事典」の話を重野先生もなさいましたけれども、何か問題が起こると、まず政治が出てきて、そしてその内容に介入をし、放送局やさまざまな編集の現場を萎縮させる、あるいはそのことをもって、自分たちに有利な放送が少ないのではないか、あるいは不利な放送が多過ぎるんじゃないか、そういったことが公然と目に見える形でやられるんだったら、それは、何てことをするんだということで国民のチェックができますけれども、しかし、それが目に見えない圧力でもってやられることが決してあってはならないわけです。

 前に大口委員と、自由で本当に一人一人の人間の尊厳が保障される、そういう社会をつくろうじゃないかというふうにお話をしておったところでございますが、まさにその観点からも、民主主義の基本を守るための条文であるというふうに考えていただければ幸いだと思います。

大口委員 もう一つ危惧されることは、これは現行法五十三条の八、改正法の百七十五条で、総務大臣は、法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、放送事業者等に対しその業務に関し資料の提出を求めることができる、こういうふうになっているわけでございます。

 例えば、総務大臣が、発議による電監審からの要求に応じる形で放送事業者に資料の提出を求めるということは十分あり得ることでございます。それから、例えば電監審が発議によって、事実に反するようなことについては再発防止策等をつくらなきゃいけないというようなことを、あるいは、そういう電監審を利用する形で放送番組に介入することを正当化することになるのではないか。

 諮問機関であれば、明確に大臣が電監審に諮問をするということで、大臣の意思は明確になるわけでありますが、電監審の発議、そういう形になってきますと、結局、大臣の意図というのは隠れてしまいますね。それが電監審の機能強化によって介入の隠れみのになる、こういうふうにマスコミでも報道されているわけです。

 そのことについて、やはりまだ電監審発議によって建議をやるということ自体は早過ぎるんじゃないか。まずは今の諮問機関という形にして、権限強化については十分議論をすべきではないか。そうしないと総務大臣の意図が、これは原口総務大臣だけじゃなくて、大臣はかわっていくわけですから、永遠に原口大臣がやられるわけじゃないので、だれが大臣になっても電監審が隠れみのにならないようにしなきゃいけないですね。そういう点では、もっと十分にこれは議論すべきじゃないか、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。

    〔黄川田委員長代理退席、委員長着席〕

原口国務大臣 大口委員に御懸念の所在を明確におっしゃっていただいて、本当にありがとうございます。

 私たちは全くそのようなことを考えていませんで、電監審による調査審議や建議は、あくまで放送行政のあり方について総務大臣に意見を述べるものであって、電監審が個別の内容に介入を行うことは一切ないということ、まずこれをちょっと押さえていただきたい。

 その上で、条文でも、調査審議及び建議の対象を第五十三条の十二の二第一項各号に掲げる重要事項に限定していますから、資料の提出や説明等の要求の対象についてもまた関係行政機関の長に限定していまして、個別の番組内容が調査審議及び建議の対象となるものでもございませんし、電監審には放送事業者に対して資料の提出や説明を求める権限もございません。

 また、この電監審の建議及び資料の提出等の要求規定によって総務大臣の権限が新たに追加されるものでもございませんし、放送事業者の業務に関し総務大臣が資料の提出を求めることができる範囲は、今おっしゃった隠れみのということですけれども、法令で厳格に定められており、その範囲を超えて、電監審がこんなことを総務大臣に建議をされたからといって、それをもって何か新たに、電監審を通して、あるいはその範囲を超えて資料の提出等を放送事業者に求めることは一切ございません。

 逆に、ぜひ御理解いただきたいのは、法に定めることによって、私は最初、この長に選んでいただいたときに、巨大なむき出しの権力が、まさに統治機構がそのままさまざまな電波行政をやっている、放送行政をやっていることに幾重にもクッションを置くべきである、ファイアウオールを置くべきだということをずっと申し上げてきたわけで、隠れみのどころか、逆に言うと、行政機関の長をしっかりとコントロールする、建議するためのものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。

大口委員 大臣は、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラムを立ち上げられて、今五回ですか、議論をされています。そして、言論の自由を守るとりでについて真剣な議論がなされていて、BPOのことでありますとか、あるいは独立の行政機関みたいなものがアメリカ等ありますが、そういうことについてもいろいろ議論がされている。恐らく、言論の自由を守るとりでを真剣にこのフォーラムで議論されているわけであります。

 過日、日弁連の人権擁護委員会第五部会の部会長さんの日隅弁護士ともお会いしました。非常にびっくりしていたですね。というのは、本来、電監審の権限の問題も、これは言論の自由を守るとりでのテーマではないか、ここで十二月までにある程度の方向性を出す、政策の方向性を提案する、こういうことになっているので、やはりこのフォーラムでしっかり議論すべきじゃないかと。それをしっかり議論もしないで、突然この法律がのってしまっているということで、このフォーラムで説明者として日隅弁護士が説明されたようでありますけれども、非常に唐突感を感じると。

 大臣が今、電監審の今回の改正は、言論の自由を守るとりでに関連するのだということをおっしゃったのであれば、やはりフォーラムでしっかり議論を私はすべきであると。三月一日、大臣がこのフォーラムに出席されたときには、クロスオーナーシップのあり方について言及しただけなんですね。三月五日にはこの改正法の閣議決定がなされているわけです。その三月五日の閣議決定の直前ですから。この言論の自由のとりでに深くかかわる電監審のことについて何も説明をされていない。私は、これは何のために大臣はここに出席されたのかな、御自分の関心のことだけしゃべればいいのかな、こう思ったわけでございます。

 この疑念についてどうお答えになりますか。

原口国務大臣 一緒に法案をつくってきた大口先生ですから、例えば消費者委員会をつくるときに、あれはどうしようか、三条委員会にするのか八条委員会にするのか、どういう独立性を保つのか、そういう議論もいたしましたね。それから、国、地方でオーバーラップして、消費者の権利をどのように保障するためにチェック機関を持つべきかという議論もしてきたわけです。まさにそれと同じ発想をしているというふうに考えていただきたいと思います。

 クロスメディア所有規制といったものについて、当時、大変多くの方々からも御意見をいただいておりましたので、その場で、本法案の附則に規定されているフォーラムについて説明を行いました。本法案に関する包括的な説明等を行ったわけではございません。

 この改正は、法施行に関する審議機能が一元化されて、電波を用いた放送のみならず、有線による放送を含めた放送行政全般にかかわる幅広い知見が蓄積されることとなる電監審に、放送行政のあり方に関して大所高所から建議する機能を担わせるものでございまして、フォーラムの議論との、まさに言論のとりでをどこにつくろうか、どのようにつくろうかといったことを、私たちが今フォーラムで幅広い観点から自由闊達に御議論いただいているものをこれが制約するものではございません。当然ながら、電監審について議論をすることをフォーラムの中で排除するものでもございません。

 ただ、今回、六十年ぶりの法改正ということで、機能を一つにしますから、実体法を一つにするものをばらばらにそれぞれ持っていてはならないということで今回の改正になっているので、ちょっと電監審の機能強化という言葉そのものが、条文で規定している厳格的な運用に比べて走り過ぎている、少し過剰に御心配をかけているところがあるとしたら、丁寧に丁寧にそこを解きほぐしていきたいと思いますので、御指導をよろしくお願いいたします。

大口委員 これは突然、三月五日閣議決定されたことなんですよ。それ以前にいろいろな場で大臣が発信され、いろいろ議論がされているならば、この問題についての懸念というのは少しは解消されたかもしれません。私は、なかなかこれは、この条文自体問題があると思います。こういう電監審の機能強化のことについて、全く審議会でも、またフォーラムでも、どこでも説明されていないということが非常に大きな不信感を与えているものであるな、私はそう思います。

 ですから、こういうことについて、やはり放送事業者とか有識者の方々と参考人質疑という形でこの委員会でしっかり議論していただいて、そして本当にこの立法事実、必要なのかどうか議論をすべきである、こういうように私は思っておる次第でございます。

 その次に、NHKの経営委員会の構成についてお伺いしたいと思います。

 本改正案では、NHKの業務執行機関の長たる会長が、経営委員会十二名、これは国会同意人事ですね、そして常勤一名のメンバーが加わっているわけでございます。そういう改正である。

 NHK会長は、昭和三十四年の放送法改正までは、国会の同意の上で任命される経営委員八名とともに経営委員会のメンバーの一人であったわけですが、昭和三十四年の法改正で会長が経営委員会から除外される、こういうことになったわけです。この理由についてお伺いしたいと思います。

原口国務大臣 電監審について、後で内藤副大臣からちょっと答えさせていただきたいと思います。(大口委員「時間がないものですから」と呼ぶ)ない……。

 三十四年については、いわゆる協会の業務執行機関の長たる会長が経営委員会の意思決定について議決権を持っているということが、会長に強力な権限を与えていることとなり、経営委員会と会長の権限の均衡を失するおそれがあったためでございます。

 ただ、現在は、昭和三十四年当時と異なり、平成十九年の放送法改正により、経営委員会の執行部に対する監督権限が強化されています。会長が経営委員会に入っても権限の均衡は失しない、そのように考えています。

大口委員 平成十九年に経営委員会が強化された。それは、それまでは弱かったから強化したわけですよね。ところが、今度はまた弱めるというようなことで、平成十九年で改正して今二十二年、三年たってまたそれを変えていくということが果たして本当にいいのか。

 そして、会長は、経営委員会の要求があったときは経営委員会に出席し、経営委員会が求めた事項についての説明をすることになっておりますし、また、会長は経営委員会に出席して意見を述べることもできる、こういうことでございます。また、業務を執行するということでは非常に大きな権限を会長が持っておられる。そういうことを考えますと、本当にこれを変える立法事実があるのか、やはりそこはしっかりと丁寧に議論をしていくべきではないか、そういうふうに私は考えるわけでございます。

 それで、これは、三月五日本改正案の閣議決定がなされた後、三月九日の経営委員会の議事録に、ある経営委員から、経営委員会活性化の方向性があることを認めつつも、NHKの統治構造の変更、経営委員会のあり方の変更をもたらす内容でありながら、NHK及び経営委員会の実情を十分に調査されたのか疑問であり、また、執行権において会長の権限が突出しているという看過できない点を手当てすることなく構成員とすることは、会長のさらなる権限強化につながり、NHKのガバナンス上必ずしも適当とは思われない、こういう発言もあるわけでございます。

 経営委員会は、この三月五日の閣議決定の前に何ら意見を聞かれていませんし、議論もされていないわけでございます。本当に立法事実について十分な調査をしたのか、私は疑問に思うわけでございます。この点について大臣にお伺いしたいと思います。

原口国務大臣 それぞれの委員がどう御発言されたかという個別について、私が反論することではないと考えています。

 ただ、委員御案内のとおり、衆議院の総務委員会でも参議院の総務委員会でも、この経営委員会のあり方について、あるいはNHKのガバナンスについてはさんざん議論をされてきたわけです。例えば、経営委員会とNHKの執行部との関係がかなり敵対的というか、いびつな形となっているというような議論がされている。あるいは、これはこの間、参議院の総務委員会でもございましたけれども、本当にCOOじゃないか、CEOになっていない、そのことで、これだけ大きな組織のガバナンスをきかすことができるのか。

 あるいは、現経営委員長も会見の場で、これから先、課題は多いので、経営判断のスピード化が求められる、会長が経営委員会に加われば、これまで以上に議論の回数も時間もふえ、十分に検討する機会が得られるようになるので非常に好ましい。あらかじめ経営委員の皆様にもさまざまな御議論をいただいて、そして何年もかけてここへ来ているということも、委員は経過を御存じのことだと思います。

 そして今の会長も、私のところにも何回も、NHKというのはこれまで幾つも不祥事を起こしてきました、インサイダーやさまざまな問題、こういったガバナンスの強化ということについても、経営委員会と会長が、しっかりと両輪の輪のようにガバナンスをきかし合うという形が望ましいということでここに至ったことを御理解いただきたいと思います。

大口委員 いずれにしましても、これは情報通信審議会で何ら議論も一切しておりませんし、答申にもなかった、こういうものが突然ここに入ってきたという唐突感というのを非常に私は感じるわけでございます。やはりもっと適正な手続、そして経営委員会の方々にもちゃんと理解してもらえる、そういうことが必要なんじゃないか。

 イギリスの公共放送のBBCにおいては、BBC経営委員会と同執行部という体制を見直して、統治システムが、BBCトラストと執行役員会によるツーボード型に変更されています。そういうことで、ワンボード化ということに対しての方向性なんでしょうけれども、いろいろ国によっては状況も違うわけであります。ですから、これはしっかり議論をして、皆さんによく理解していただいて検討すべきではないかな、こういうふうに思うわけです。

 そういう点では、NHKの会長ですとか経営委員の方々から、この委員会へ参考人として来ていただいて、しっかり立法事実を確認していく必要がある、私はそういうふうに思うわけでございます。やはり会長さんからもいろいろお伺いをしたいし、また経営委員からもいろいろお伺いをしたい、こういうふうに思っております。

 もう時間もなくなってきました。

 この改正法の第百八十二条に、「この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、総務省令で定める。」こういうことですね。この法律を実施するために必要な事項は、全部総務省令で定めていいとなっているんですね。各条文にも、総務省令によるという形で結構きめ細かく書いてあるわけでございますので、二重に、百八十二条によってまさしく白紙委任するかのような、そういう解釈がされるような総務省令への委任というのはおかしいんじゃないか、民主党さんが野党であれば、これは真っ先に文句をおっしゃるところではないかなと私は思うわけでございます。

 放送法というのは言論、報道の自由にかかわる法律でありますから、やはりこれは包括的に総務省令への委任ということではなくて、必要であれば、各条文条文に総務省令への委任というのを書き込まれればいい、私はそう思うんですが、いかがでございましょうか。

原口国務大臣 民主党であれば、野党だったら反対しているだろうと。これはそういう総務省令じゃないんです。四つの法律を一つにまとめていますから、電気通信役務利用放送法の中に細かい条項があって、事実関係をどうするかという話がある。あるいは有線テレビジョン放送法、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律、これも総務省令へ、それこそ皆様がおつくりいただいた法案が総務省令への委任手続を書いているわけです。それを一つにまとめるから、こっちへ持ってくるための条項でありまして、総務省令に白紙委任するものではないということも、ぜひ、大口委員には、私がそんなことをする人間ではない、もともと、むしろ厳しく厳しくやってきたということも御存じのとおりでございますので、御理解をいただきたいと思います。

大口委員 原口大臣のお人柄についてはよくわかっておりますが、ただ、大臣はかわるわけですね。ですから、やはり属人的なそういう発言はいかがかな、むしろ、だれが大臣になってもこれは濫用されない、こういうことが大事ではないかな、私はこういうふうに思っているところでございます。

 そういう点で、各メディアからも心配の声が上がっていますし、日弁連からも心配の声が上がっております。私が疑念、また非常に心配しているところにつきまして、これは報道の自由に関する大事な法律でございますので、この委員会でさらに明確になるよう、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

近藤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 放送法に関連して質問をいたします。

 事前にお願いしていた項目、順番を若干変えまして、最初に、民主党の政策集、インデックス二〇〇九にあります通信・放送委員会の設置に関連してお尋ねしたいと思います。

 このインデックスでは、通信・放送委員会の設置について、「通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い独立行政委員会として通信・放送委員会を設置し、通信・放送行政を移します。これにより、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入を排除します。」このように掲げられております。当然の内容だと考えます。

 この内容について質問いたしますが、まず最初に、ここで掲げています通信・放送委員会設置の目的は何かといえば、うたわれておりますように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消する」、ここにあると思うんですが、この立場に変わりはないか、この点についてまずお聞かせください。

原口国務大臣 塩川委員とも放送法の修正案をつくらせていただきましたが、日本版FCCの設置は、まさにインデックスにあるとおり、「放送に対する国の恣意的な介入を排除」するなどの目的で掲げられたものでございます。

 ただちょっと、FCCと言うと、アメリカにFCCというのがありますから、そこの強大な権力と間違えられるという懸念もあって、今は私はそのFCCと混同されないように、日本版FCCという言葉は避けて、言論の自由を守るとりでという言葉を使っていますけれども、今委員がおっしゃることに変わりはございません。

塩川委員 「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消する」という立場を確認いたしました。

 そうであれば、大臣を長とする独任制の行政機関、日本でいえば総務省が放送事業者を監督するということを改めることになると思うんですが、それでよろしいでしょうか。

原口国務大臣 今、まさにそれが私たち民主党の立場ですけれども、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム、昨年の十二月からお願いをいたしまして、言論の自由を守るとりでを初めとする国民の権利保障等のあり方について、ヒアリングを行って、幅広い観点から検討を行っていただいているところです。

 そこで、今までのICT政策に欠けていたものは、国民のコミュニケーションにおける権利の保障、先ほども大口委員にお話をしましたけれども、安全な環境の中で国民が情報を選択できる権利だというふうに思っておりまして、そこに先ほどお話しのような国家権力の介入とか、あるいは政党性の強いバイアスなんというのがかかってはならない、このように考えています。

塩川委員 今のお話をお聞きしますと、放送でいえば、総務省から放送局への監督権限を切り離した独立行政委員会を設置するというのは民主党の立場ではあるけれども、今後どうするかについては幅広い観点から検討していくということですね。確認で。

原口国務大臣 日本版FCCといってインデックスに掲げたものは、できるだけ独立性の高いものを目指しているわけでございまして、その方向といったことに含めて、これは言論や表現や報道の自由にかかわるものでございますから、幅広い立場、民主党の立場だけではなくて幅広い立場から御議論をいただいているということで御理解ください。

塩川委員 そうしますと、インデックスでうたっています通信・放送委員会、ですから括弧の中の話はもう私の方も言いません。この通信・放送委員会というのは、例えば大臣のブログでおっしゃっておられる「権力からの介入を防ぐための「放送・報道の自由」の砦」、あるいはフォーラムでも「ICT分野における報道・表現の自由を守る「砦」」と言っている、このとりでというものと、インデックス二〇〇九で言う通信・放送委員会というのは同じものなのか違うものなのか、その点、お答えいただけますか。

原口国務大臣 同じものであります。

 ただ、表現がFCCという言葉になっていましたから、これは逆に、今の放送や表現の自由にかかわる人からいうと、総務省があってもう一個、二重の規制機関になるのではないかというようなおそれも表明されまして、私たちは、そういうものではない、逆に言うと、言論の自由を守るために行政を監視するものであるということを申し上げているところでございます。

塩川委員 いや、そこが、おっしゃっておられるところがよくわからないんですけれども。

 世界の流れを見ましても、例えばOECD三十カ国の中で、電波、放送行政に関する独立の規制機関を設けるというのが流れとなっているわけで、二十六カ国ぐらいに上るでしょうか。そういう点では、日本でいえば、独任制の行政機関である、政治家が大臣となっているような総務省が放送行政を所管する、放送局に対する監督権限を持っている、こういうあり方は改めなくちゃいかぬ、つまり、総務省から放送局への監督権限を切り離して独立した行政委員会を設けるんだということと私は受けとめているわけですけれども、今のお話ですと、総務省の放送局への監督権限はそのままで、しかし、その総務省に対しての監視機関をつくるというふうに受けとめられるんですが、この関係の相違について御説明いただけますか。

原口国務大臣 なるほど、何でわからないと言われたかがわかりました。

 つまり、例えばアメリカのFCCを見てみると、FCCの委員というのは共和、民主の比率によって変わっているんですね。この間もワシントンでお話をしてきました。そういうコミッション制がいいのか、それとも、もっと言うと、その中間的に、今ある総務省の権限について、最終のゴールはコミッション制なんだけれども、そこに行く中途に、総務行政を総括し、そして大臣が持っている権限、今おっしゃった属人的な権限についてさまざまなチェック機関を持つのがいいのか、幾つかの道筋があるんだと思います。

 そういったことをICTのタスクフォーラムでも御議論いただいているというふうに御認識をいただいて、私が先回りしてこっちがいい、あっちがいいと言う、今その状況にないということも、ぜひ御理解をいただければと思います。

塩川委員 関係者の意見を広く聞きながら制度設計ということは当然のことだと思います。

 そうしますと、要は、総選挙で掲げた公約の一環でありますから、例えばこの四年間、つまり次の任期の総選挙の、この四年の間でやるとかやらないとか、いつどのような形で行うのか、その辺についての工程表みたいなものはお持ちなんでしょうか。

原口国務大臣 まず骨格が出てまいりますので、その骨格を見た上で、私は一年ぐらい御議論いただいて慎重に、それから、これは憲法の学者の方々や、いわゆる言論、報道、基本的な人権を保障するという方々の意見を広く集めたいと思っていまして、いささかも拙速にここを進める気はありません。インデックスということですから、私たちからいうと四年間でこれをやりますということですけれども、その方向を示せれば、まず第一段階ができたのかなと思います。その上で工程表という形になってくるのかなと思います。

 現段階は、まずは広く、表現、放送、報道の自由にかかわることについて、それに携わる皆様も含めて御意見をいただいているところでございます。

塩川委員 そういう点では、広く意見を聞き、また慎重に進めていくということは当然のことであります。同時に、この方向性ということにつきましては、なぜ、この検討ということを含めて法案として盛り込まなかったのか。

 例えば、今回の放送法でも附則の部分で、マスメディア集中排除原則のあり方について、クロスメディア所有規制のあり方を含めて「検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」と盛り込んでいるわけですね。これもインデックスに入っている中身であるわけです。

 であるならば、通信・放送委員会の設置についても、検討するということを盛り込んでいてしかるべきだと思うんですが、それを外している理由は、何か特段にお考えのところがおありなんですか。

原口国務大臣 これは要するに組織形態全体の話ですから、先ほど三条委員会、八条委員会、どういう独立性。今委員がおっしゃっているのは、まさにそのクロスオーナーシップとかマス排原則というのは、表現、報道の自由、多様性、多元性、地域性を保障する、これはもう、それをノーという話はないことですね。

 ただ、組織のあり方については、やはりそれぞれの主体について、まだこっちがいい、あっちがいいというのは出ていないんですよ。ですから、そこで意図的に外したのではなくて、むしろ万機公論を巻き起こして、そしてその中で決めていくことだということで、今回は、逆にそれを入れている方が私はちょっと厳しいんじゃないかなというふうに考えています。

 意図的に外したものではございません。

塩川委員 こう言いますのも、今回の放送法の場合に、先ほどの質疑にもありました、電波監理審議会における建議を初めとした機能強化の話があるわけであります。つまり、現状というのが、今やりとりをしましたように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾」の中にあるという点では認識が一致をしているということであったわけですから、そういったときに、今回の電波監理審議会の機能強化についての懸念の声というのもやはり無視できないと率直に思っております。

 電波監理審議会については、毎日新聞や朝日新聞でも取り上げておりますし、民放の社長、経営者の立場からの発言もあるわけであります。電監審の機能強化が国の介入の隠れみのになるのではないかとか、番組内容まで介入のおそれという記事を載せているわけであります。

 そういう中でも、具体例として、二〇〇六年、菅総務大臣が北朝鮮による拉致問題を短波ラジオ国際放送で重点的に扱うようNHKに命じる際、電波監理審議会に諮問した。即日、適当との答申が出され、菅大臣は命令に踏み切った。具体的な内容を盛り込んだ初めての命令だった。そういう点でも、電波監理審議会が総務省の権限行使の別働隊としての役割を果たすことになるのではないのかという問題があるわけです。

 今言ったように、実際に放送局の監督権限を総務省が持っているときにこういうことが行われるわけで、ここで質問しようと思っていますのは、冒頭確認しましたように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾」の中にある現行制度のもとで、総務省に置かれている電波監理審議会の機能強化を図ることは、国による放送事業者への監督体制の強化につながるものではありませんか。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 委員御指摘の御懸念は、全く当たらないと思います。

 さきに大口委員が、大臣がかわっても放送行政がゆがめられることがないようにという御指摘をいただきましたが、まさにそれにこたえるのがこの電監審による建議だと思っております。

 というのは、今の現状では、これが問題なのか、いや、問題じゃないのかを決めるのが、実は放送行政を所管する総務省の長である総務大臣なんです。他方、我々は電監審にそれをゆだねようと。

 電監審というのは御案内のように、国会同意人事によって決められた、つまり第三者なんです。第三者の観点で放送行政を、その高い識見に基づき問題提起をしていただこう、こういう仕組みに変えたのが今回の法改正だと御理解をいただきたいと思います。

 以上です。

塩川委員 かつて、通信・放送委員会の設置についての法案が総務委員会に出されました。その場の議論の中でも、民主党の議員から、電波監理審議会というのは非常に貧弱なんだという指摘があって、何かといえば、電波監理審議会の事務局がどこかといえば総務省じゃないか、そういう意味ではお手盛りのものにならざるを得ないでしょうと。そういう意味では、第三者といっても事務局が総務省丸抱えの電波監理審議会が、総務省から独立した組織と言えるのかということそのものが問われているということを言わざるを得ません。

 この問題では、総務省から放送の規制機能を切り離して独立の規制機関をつくらない限り、こういう電波監理審議会の機能強化というのは、やはり国の放送への介入を強めるものになるんじゃないのかという懸念は消えないわけです。

 実際の法改正の中身を見ましても、現行であれば、これまでの電監審の仕事の多くのものというのは、項目は多岐にわたりますけれども、それぞれ個別の事案について列挙しているものであります。それが今回の改正では、放送法の目的規定をそのまま調査審議、建議できる事項としているわけで、いわば丸ごとできるという趣旨になっているわけで、隠れみのとか、あるいは別働隊とかいう懸念が消えないということを言わざるを得ない。

 そういう点でも、この百八十条の規定は削除すべきだ。そのことを指摘をして、時間が参りましたので、終わります。

近藤委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、放送法に関して幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。今回、この放送法が六十年ぶりに大幅改正をされる、この基本的な考え方については私も賛同できる部分があります。レイヤーごとの法律をまとめ上げるという作業がこれからようやく緒につくわけでありまして、大変大きな前進を見たという部分があることは認識をした上で、質問をしていきたいと思っております。

 まず、第二条の放送の定義についてです。

 現行の放送法においては、放送について、「公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信」ということになっています。今度改正される放送法では、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。」こういうことになっていて、「無線通信」というところが「電気通信」ということに改められています。電気通信事業法を見ると、電気通信というのは、有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響または影像を送り、伝え、または受けることをいい、他人の電気通信設備を用いて行われるものも含む、こういうふうに書かれている。

 この電気通信事業法における電気通信というのは、インターネット等々の通信を含んでいるということはもちろん明白なわけですけれども、放送法で、今申し上げたように、「無線通信の送信」というところを「電気通信の送信」ということに文言を置きかえたことによって、さまざまな解釈の混乱が生じている状況にあります。すなわち、今回の放送法では、公然性のあるすべての通信、いわゆるブログ、ツイッターを初めとするネットコンテンツすべてを放送と定義づけているかのように一部に読み取られてしまっています。

 かつてというか、今までの情報通信法の制定に向けた議論で、または放送と通信の融合法制に向けた議論の中で、オープンメディアコンテンツという考え方がありました。このオープンメディアコンテンツというのは、ウエブやブログなど不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信と定義をされている。このオープンメディアコンテンツが、あたかも今回の放送法改正によって放送の定義に繰り込まれてしまう、こういうふうな混乱が一部に広がっております。

 例えば、今、ユーストリームとかユーチューブ、またニコニコ動画、ニコニコ生放送、こういう形で、パソコンを通じて、インターネットを通じて放送類似のサービスを行う事業がかなり出てきている、そういうものがあるわけですけれども、まさにブログ、ツイッターを初めとして、ユーストリームやニコニコ動画、こういうものが放送として定義づけられて、これがまさに放送法における総務省のコンテンツ規律にひっかかっていく、こういうふうに思われている部分があります。

 また、百七十四条の一項で、総務省は、放送事業者がこの法律または法律に基づく命令もしくは処分に違反したときは、三カ月以内の期間内で放送の業務の停止を命ずることができる、この条文がさらにこれにくっついてとらえられまして、要は、ニコニコ動画で何かを流した、これが今までの放送事業に対するコンテンツの規律にひっかかる、非常に問題のあるものを流したということになると、あなた、やめなさいといって、はっきり言えば総務省が強制的にこういうコンテンツ配信の停止を行うことができる、こういうふうに一部にとらえられた向きがあります。

 今、この連休中ぐらいにツイッターなんかで放送法百七十四条一項問題というようなことで大変沸騰した議論なんですけれども、こうしたインターネットを通じた放送類似のサービスが総務省の一存によって放送に組み込まれて、サービス提供が停止に追い込まれる、こういうふうな見方が出てきておりますけれども、これに対する見解をお願いしたいと思います。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 多くのネットユーザーがこの点に大変御懸念を持っているかと思いますので、この際、明確にお答えをさせていただきます。

 まず、御案内のように、今回の法改正は、四つの放送関連の法案を一本化させていただきました。それに伴って、放送の定義を「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」とさせていただいたわけでございます。

 そこで、御懸念のインターネット上の動画サイトはどうかといったら、これは明確に申し上げさせていただくならば、公衆によって直接受信されることを目的とする送信ではございません。もっと明確に申し上げさせていただければ、例えばユーチューブだとかニコニコ動画を思い出していただければわかりますように、その画面を開いたからその動画が見られるというものではなくて、こちら側がしっかりとボタンを押して求めなければなりません。そういった意味で、インターネット上の動画サイトは、特定の者に対して、その求めに応じて送信されるものであって、公衆によって直接受信されるものではない。すなわち、今回の放送法の対象にはならないということをしっかりと明言させていただきたいと思います。

 以上です。

原口国務大臣 私も、柿澤委員がおっしゃるような、ツイッター上に、アメリカにいたんですけれども、何てことするんだというのが広がっていったので、何のことを言っているんだろうと思ったら、これなんですね。

 ニコニコ動画を規制する気も全くありませんし、ただ、放送と通信が限りなく融合してきて、IPTVやいろいろなものがあって、放送はやはり公平性、そして通信はその秘密、これが異なるベクトルであるものが、科学技術の発展によって限りなく似てきているということも事実でございますので、私たちが法律を改正するときには、今、内藤副大臣がお答えをさせていただきましたが、明確な線引き、そして不要な御不安を与えることがないように、そのようなことにも配慮をしていきたい、そのように考えています。

柿澤委員 今、原口大臣から、明確な線引き、そして無用な不安を与えることがないようにということをおっしゃられましたけれども、まさにその明確な線引きがはっきりしないことによって無用な不安が与えられてしまっているというのが、この放送法の条文の書きぶりなのではないかというふうに懸念をいたします。

 これは別に、ちゃんと物事がわかっていない人が騒いでいるだけではなくて、それこそ、お名前を言って恐縮ですけれども、民主党の藤末参議院議員、このネットの問題については第一人者みたいな方ですけれども、その藤末さんがツイッターで原口大臣に対して、この放送法百七十四条の問題は大変な問題になっています、今からでも遅くないからこれはやめた方がいいみたいなことをメッセージとして送られたりとか、そういうことがあったやに聞いております。

 こういう意味で、第二条の放送の定義を、「公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信」というのを「電気通信の送信」ということで引っ張ってきたことがもたらすいろいろな混乱が生じてしまっていると思います。また、放送の定義そのものに関して言えば、著作権法上の放送の定義は、この放送法上の放送の定義とちょっと違っていたりするわけです。

 一体、放送というのがどういうものを指していて、その外延はどこまでなのかということについて、ちゃんとした定義が行われていない。こうしたことがもたらす問題なんだというふうに思いますけれども、こうした点について、条文上の配慮がやはり必要になってくるのではないかというふうに思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。

原口国務大臣 柿澤先生がレイヤーごとの整理というお話をされましたけれども、まさに、日進月歩の技術に法律が追いついていない。藤末さんが私にそういうメッセージを送ってくれたというのは、たくさんのストリームの中から見切れていないので本当かどうかわかりませんけれども、いつもボクシングをやっているので、そこでも言ってくれたらよかったなと思いますけれども。

 おっしゃるように、どこかで、今回は明確なんです、さっきのインターネット動画みたいなものは入りません。だけれども、限りなく同じでしょうというときが来るかもわからない。そこに向けて、ICTのタスクフォースでもきっちりとした御議論をいただきたいと思います。

 いずれにせよ、委員がそのような御不安をここで代弁してくださったことで、私たちは明確にそうじゃないということを言う機会をいただいて、本当にありがとうございます。

柿澤委員 お礼を言われてしまいましたが、問題は、条文を解釈してそう読み取れる余地があるということなんだというふうに思います。

 電波監理審議会のことについても先ほど来お話が出ていますけれども、今回、「電波監理審議会は、次に掲げる重要事項に関し、自ら調査審議し、必要と認められる事項を総務大臣に建議することができる。」として、挙げられている三つというのは、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障することに関する重要事項」「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項」「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることに関する重要事項」、あえて全文読みましたけれども、要は、この一、二、三というのは、放送法第一条に書いてある放送法の目的そのものなわけです。

 ということは、この電波監理審議会は、放送法一条の目的がカバーしているすべての重要事項について、みずから調査審議し、建議することができると読み取れるわけであります。この条文を見て、電波監理審議会が個別の番組や放送事項に関して調査審議を行わないんだという先ほどの答弁のような趣旨は、読み取ることができないと思います。

 しかも、電波監理審議会はあくまでも総務省の附属機関であるわけで、総務省のもとにある電波監理審議会が、仮に、例えば次の大臣のもとで個別の番組の内容等について調査審議の名目で取り上げていくというようなことになれば、結局、原口大臣が御懸念をしたような状況が次の大臣のもとで行われるようなことになってしまう可能性があるのではないですか。

 原口大臣は、かねてから言論の自由を守るとりでが必要だと言っていて、この点について特段意を用いる発言をされているということは、よく認識をしています。そして、だれが権力につこうが決して侵されることのない自由ということをおっしゃられています。そうであるとすれば、まさにこの条文の書きぶりは問題になってくるのではないかと思いますけれども、この点についても条文上の配慮が必要だというふうに思いますが、御見解を伺います。

原口国務大臣 条文上の配慮ということで、貴重な御提案をいただきました。

 先ほどから何回も答弁していますけれども、電監審による建議は、あくまで放送行政のあり方について総務大臣に意見を述べるものでございまして、先ほど塩川委員がお話しになった、現在の状況をコミッショナー的な第三者委員会に出すにしても、だれが大臣になろうが、現在総務省にそういう権限があることは事実なんです。

 ですから、その総務大臣に対してしっかりとした建議ができるということでございまして、電監審が番組内容に関し介入を行うことは一切ないし、法の趣旨というのは、やはり国会でこうやって御議論いただく中でしっかりとお伝えをする、このことも大事なことであると考えています。

柿澤委員 放送行政のあり方に関して言うことなんだ、個別の番組等々について介入をすることはないんだということを何度も何度も明確に答弁されていますし、そのこと自体は私は理解をしています。しかし、放送行政のあり方について、放送法一条の目的に書いてある、その三つの重要事項について調査審議をし、建議をすることができるとなれば、本当に何でもできてしまうというふうに思うんです。

 ある意味では、原口大臣の指し示している方向性は、まさに言論の自由を守るとりでとして、総務省の中にとりで的なものをつくる、こういう趣旨であるということは理解をしたいというふうに思いますけれども、結果として、そういうとりでをつくることによって、将来的に独立性の高い第三者機関がこの機能を担っていくことになるとしても、総務大臣、総務省が中に抱える機関として、かなり強い権限を持って放送行政全般に介入をしていくことができる機関が立ち上がるということについては、やはり一定の懸念を持たなければいけないというふうに思います。

 そして、明文化された法律によって政府の機構は成り立ち、行政運営が行われているわけですから、明文化された法律によって、ここの部分について原口大臣がおっしゃるような歯どめを明記していくべきではないかと思いますが、最後にその見解をお伺いしたいと思います。

近藤委員長 質問時間が終わっておりますので、簡潔にお願いします。

原口国務大臣 今、放送法一条の趣旨を読み上げられましたけれども、その放送法一条があっても実質的に介入をされたと言われているような事案について、私たちは野党時代もそれを追及してきたわけです。ですから、現実、オペレートする中で言論の自由をしっかりと保障できる仕組みのためにつくったんだということを御理解いただきたい、このように思います。

柿澤委員 きょうは御答弁でお礼までいただいてしまいましたので、この辺で終わりとさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

近藤委員長 次回は、来る十八日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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