衆議院

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第18号 平成22年5月20日(木曜日)

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平成二十二年五月二十日(木曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 近藤 昭一君

   理事 稲見 哲男君 理事 奥田  建君

   理事 黄川田 徹君 理事 古賀 敬章君

   理事 福田 昭夫君 理事 石田 真敏君

   理事 大野 功統君 理事 西  博義君

      磯谷香代子君    小川 淳也君

      小原  舞君    大泉ひろこ君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      奥野総一郎君    金子 健一君

      京野 公子君    小室 寿明君

      高井 崇志君    中後  淳君

      永江 孝子君    野木  実君

      野田 国義君    花咲 宏基君

      藤田 憲彦君    皆吉 稲生君

      山崎  誠君    湯原 俊二君

      若泉 征三君    渡辺  周君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      佐藤  勉君    菅  義偉君

      橘 慶一郎君    谷  公一君

      徳田  毅君    山口 俊一君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣         原口 一博君

   総務副大臣        渡辺  周君

   総務副大臣        内藤 正光君

   総務大臣政務官      小川 淳也君

   総務大臣政務官      長谷川憲正君

   政府参考人

   (総務省情報通信国際戦略局長)          利根川 一君

   総務委員会専門員     大和田幸一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     大泉ひろこ君

  中後  淳君     金子 健一君

  寺田  学君     京野 公子君

  藤田 憲彦君     山崎  誠君

  森山  裕君     徳田  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  大泉ひろこ君     磯谷香代子君

  金子 健一君     中後  淳君

  京野 公子君     寺田  学君

  山崎  誠君     花咲 宏基君

  徳田  毅君     森山  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     逢坂 誠二君

  花咲 宏基君     藤田 憲彦君

    ―――――――――――――

五月二十日

 戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法案(総務委員長提出、参法第九号)(予)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)

 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)


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     ――――◇―――――

近藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案及び高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、放送法等の一部を改正する法律案に対し、石田真敏君外二名から、自由民主党・無所属の会提案による修正案及び西博義君から、公明党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者より順次趣旨の説明を求めます。石田真敏君。

    ―――――――――――――

 放送法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石田(真)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その提出の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 今回提出された放送法等の一部を改正する法律案には、これまでの通信・放送の総合的な法体系に関する審議の俎上に一度も上げられていない項目が突然追加されております。国民に何も知らされないまま、重要な法改正が行われるのを看過することはできません。

 修正の第一は、日本放送協会の経営委員会の構成等や、経営委員、会長等の欠格事由の改正を行わず、現行どおりとするものであります。

 昭和三十四年以前は会長が経営委員会のメンバーでありましたが、法改正により除外されました。その理由は、協会の業務執行機関の長たる会長が経営委員会の意思決定について議決権を有するということは、会長に強大な権限を与えることになり、経営委員会と会長の権限の均衡を失する可能性があるからというものであります。

 今回の通信・放送の総合的な法体系に関する一連の審議においては、NHKの経営形態に関する事項は検討対象となっておらず、具体的に議論された形跡もありません。このようなNHKの統治機構に関する重大な改正が唐突に行われるようでは、NHKのガバナンス上も適切ではありません。

 経営委員、会長等の欠格事由の見直しにつきましても、NHKとの間で不公正な関係が生じることのないようにするためという理由を超えて選ばなければならないような緊急性が見出せず、現在の法の趣旨が尊重されるべきと考え、改正を行わないことといたしております。

 第二に、電波監理審議会に関する改正についてであります。

 政府案では、電波監理審議会が「自ら調査審議し、必要と認められる事項を総務大臣に建議することができる。」としています。政府の審議会である電波監理審議会が独自に調査審議し、建議するという仕組みがなぜ必要なのかについて、これまで具体的に議論された経緯はありません。また、調査審議等の規定が不明確であり、電波監理審議会の権能強化がメディア規制につながりかねない懸念が生じます。これらの理由により、当改正項目の削除を提案いたします。

 第三に、広範な課題を含むクロスメディア所有規制のあり方を今後検討すると附則にありますが、広範な課題を含むだけに、慎重に時間をかけて、国民にわかりやすい形で検討していくべきものです。にもかかわらず、政府案は、唐突につけ加えられた感が否めません。

 附則は、本則との関係において、関連性、妥当性、合理性がなくてはなりません。中途半端な形で法案に盛り込むことは、必要以上の混乱と疑心暗鬼を招くことになり、この検討条項の削除を提案いたします。

 以上で修正案の説明とさせていただきますが、何とぞ、十分に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。

近藤委員長 次に、西博義君。

    ―――――――――――――

 放送法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西委員 公明党の西博義でございます。

 ただいま議題となりました修正案につきまして、その提出の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 修正の第一は、日本放送協会の経営委員会の構成等に関するものであります。

 意思決定機関である経営委員会と、業務執行機関である会長の権限の均衡を失する可能性があるとして構成員から除かれた経緯がありますが、日本放送協会のガバナンスの確立がまだ十分でありません。また、会長に付与される議決権が及ぶ事項について、みずからに関連する事項が含まれており、経営委員会の議決について公正さが確保できるのかどうか疑問が生じます。したがって、経営委員会の構成員に会長を加える改正は行わないものとすることとしております。

 第二に、「会長は、経営委員会の要求があつたときは、経営委員会に出席し、経営委員会が求めた事項について説明をしなければならない。」旨の規定、「会長は、経営委員会に出席し、意見を述べることができる。」旨の規定を削る改正は行わず、現行どおりとするものです。

 第三は、電波監理審議会の建議に関するものであります。

 調査審議及び建議の対象となる重要事項の規定が極めてあいまいであり、これでは、放送内容への不当な介入を防ぐため、放送行政を監視するという改正の趣旨が明確な規定になっておりません。また、放送行政への監視役をゆだねるというものの、そもそも電波監理審議会は独立性が担保されておらず、その役割を託す機関としては問題があります。放送による表現の自由を確保する観点から、この改正を行わないものとします。

 第四に、総務省令への委任に関する規定について、この法律を実施するために必要な事項を総務省令で定める規定を加える改正は行わないものとします。

 以上が、放送法等の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨及び内容であります。

 委員の皆様の御賛同をお願いして、趣旨の説明を終わります。

近藤委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

近藤委員長 この際、お諮りいたします。

 両案及び両修正案審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信国際戦略局長利根川一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

近藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

近藤委員長 これより両案及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田憲彦君。

藤田(憲)委員 民主党の藤田憲彦でございます。

 私は、内閣提出、放送法の改正案について質問したいと思います。

 時間が限られておりますが、一言申し上げたいのは、私がサラリーマンをしていたとき、具体的にはソニーでサラリーマンをしていたときには、ソニーという会社は放送機材を各放送事業者に納入しておりますし、実は、ちょうど私が最初に入った部門が法務部という、いわゆる法律の契約の専門部門でありましたが、そのときにスカイパーフェクTVの会社設立という案件を、新人の新入社員として末席で経験してきたことを思い返します。

 そういう意味におきましては、ここ十年、二十年の放送を取り巻く環境というものは大変な移り変わりがあるわけでありまして、その意味で、今回の放送法の改正というものは非常に時宜にかなったものであると考えます。しかし一方で、今回、放送法の改正案に関しては、野党からも法案が提出されておるとおり、さまざまな論点があるということも承知しております。

 そこで、これまで、るるいろいろな質問がありましたので、多少突っ込んだところを私から質問申し上げたいというふうに思います。

 今回、野党の提出者の中にも、NHK、日本放送協会の経営委員会に会長が加わることに関しての論点があるわけでありますが、日本放送協会が、放送の変わり行く中において、権限を強化するということで会長が経営委員会のメンバーになるということには私は基本的に賛成であります。しかしながら一方で、会社のガバナンス、いわゆる統治機構との類推で考えますと、やはり経営委員会のメンバーがどういう過程で選ばれているかということもまた考えることが必要であろうと思います。

 というのは、会社であれば、代表取締役であれ取締役であれ、これらすべてが株主から株主総会によって選出されるということが基本的には会社のガバナンスになっているわけですが、今回、日本放送協会の経営委員会においては、経営委員会の通常の委員においては国会同意人事で、国会から内閣総理大臣の任命に基づいて選任を受ける。しかしながら、今回の放送法の改正においては、会長に関しては経営委員会の中で選ばれる。具体的には、今の形でありますと、会長は本経営委員会の出席委員の九人以上の賛成をもって任命されるという形になっております。したがって、論点といたしましては、経営強化の方針には賛成をするのですが、経営委員会を構成するメンバーの中で、会長だけが選出方法が異なるということが一つ論点になっていると理解します。

 その上で、経営委員会において、会長がこの経営委員会の出席委員九人の中から選出されるということでありますと、一つ起こり得る懸念は、経営を強化するという観点では賛成なんですけれども、ここで会長も経営委員会に入るということであると、基本的には会長が経営委員会の中から選ばれる、その会長が議決権を持つ、その議決権を持って経営委員会にくみするということであれば、基本的には、会長は経営委員会の多数派によって選ばれるということがいわゆるガバナンス上理解されるわけでありまして、そうしますと、多数派を一人ふやすということを導いてしまうのではないか。

 それはすなわち、経営委員会を構成している多数派がもう一人の多数を、議決権一人の、会長という職を加えるということになってしまい、健全な放送行政、それから日本放送協会の経営のあり方でいうと、いわゆる多数派を利するというようなことになってしまうのではないかという懸念がありますが、この点について内藤副大臣にお伺いしたいと思います。

内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 まず冒頭、皆様方にお伝えをさせていただきたいのは、今、参議院の総務委員会が三十分ばかり延びております。しばらくの間ではございますが、私で対応させていただきたいと思います。どうぞ御容赦いただきたいと思います。

 さて、御質問の点でございます。

 今回のように、会長を議決権が制約されながら経営委員会のメンバーに加える目的は、何度も大臣もおっしゃっておりますように、実際の業務執行に責任を持つ会長が経営委員会に加わることによって、両者が、経営サイド、そしてまた計画サイド、監督サイドが真摯に議論をして、本当に国民目線の経営方針を打ち立てていってもらう、そこにあるわけでございます。

 そういった観点で、今回、経営委員会というものをしっかりと強固なものにするわけでございますが、もう藤田委員も御存じのように、国会同意人事で選ばれる十二名の委員の方々は、高い識見、高い見識に基づいて議論をされますので、決してそういった多数派だとかいったものではなくて、本当に問題を是々非々でしっかりと議論してきていただいておりますし、これからも変わることなく、そういった観点でしっかりと議論を続けていっていただけるものと思っております。

 ですから、その心配は当たらないのではないかと私は思っております。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、経営委員会の個々のメンバーが国会の同意人事によって選ばれる、それはすなわち、国民の代表である国会議員の集まりの国会で選ばれるということでありますから、当然、高い見識を有しているということが求められるわけでありますし、これは当然のことながら日本放送協会の会長も、経営委員会の中から選ばれるとしても、それは、実質的な思いとしては、ある意味国民に選ばれているぐらいの意識を持って、高い見識を持ってこの日本放送協会の会長職を務めていただきたいというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。

内藤副大臣 私も同感でございまして、これまでの会長を見てみますと、いずれの会長も皆、そういった高い見識に基づいて、いろいろと現場を預かっていただいているものと思っております。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 その上で、日本放送協会に関してもう一つ質問したいと思うことがあります。

 今回、放送法の改正によって、「放送」の定義が、「無線通信の送信」から「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信」へと変更されることになりました。この放送法の「放送」の定義の変更は、私は極めて意義が大きいというふうに思います。

 そうしますと、日本放送協会の会長の権限強化ということがこの放送法の改正において実現すると同時に、この放送の概念が、ある部分拡張するということが現実のものとなるわけです。そうしますと、いわゆる権限が強化された新しい日本放送協会の会長のもとで、この「放送」の定義の変更によって、日本放送協会の事業内容が、「無線通信の送信」から「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信」へと変わることによって、この事業内容も拡張され得るのかどうかについてお伺いいたします。

内藤副大臣 今回の法改正によって、放送関連四法が一本化されるわけでございます。それに伴い、「放送」の定義が、これまでの無線というものから有線にまで広がってくる、それによってNHKの業務範囲が拡大するのではないかという御指摘だと思います。

 ちょっと簡単に説明をさせていただきますと、第二節「業務」という項目があります。

 現行法で国内放送と言っているものを改正案ではどうしているかといいますと、国内基幹放送と言っております。基幹放送というのは、専ら放送に使われる電波を使った放送ということでございます。ということでいうならば、中波放送、超短波放送並びにテレビジョン放送、これらの業務に関して業務拡大ということはございません。

 ただ、この「業務」という項目の中で、二点だけ留意する必要があります。一つは、「放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行う」というものが一つ。二つ目として、「邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送」というものがございます。ここは基幹放送と言っているのではなくて、ただ単に放送とだけしか言っておりません。したがって、この点に関しては、今までの無線のみならず、有線を使った放送も含まれることになります。

 以上です。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 そういった意味で、事業内容の拡張自体については行われないということでありますけれども、今般、この総務委員会の中の議論でもありましたとおり、いわゆる災害時の情報の伝達等々を合わせますと、放送の持つ意義の大きさというものは今非常に重要になっているというふうに思いますので、新しい放送法の定義の中で、日本放送協会が、いわゆる国民の求めるニーズのある放送をより高い密度で行っていただきたいという希望を申し上げます。

 もう一つ、日本放送協会から、今度は別の論点についてお伺いしたいと思うんです。

 今般、放送法の改正に逆に盛り込まれなかった点について、これまで質疑がなかったと思いますので、いわゆるホワイトスペースというものについて、これは、既に免許を与えられた放送の中でまだ利活用されていないもの、ここに関しては今後の検討課題ということで本法案の改正には盛り込まれていないというふうに認識をしているんですが、今後のこの活用の方向性はどうかという点について副大臣にお伺いいたします。

内藤副大臣 委員御指摘の案件は、いわゆるホワイトスペースと呼ばれるものだろうと思います。

 ホワイトスペースというのはどういうものかといえば、今、全国一律で、デジタルテレビジョン放送については一チャンネル当たり六メガヘルツなんですが、十三チャンネルから五十二チャンネルまで全国に配分をされているんです。ところが、各都道府県で使っているチャンネルが違うわけですね。東京ですと、たしか二十チャンネルから二十八チャンネルしか使っていない、それ以外は使っていないところでございます。それを使われないままにしておくのはちょっともったいないじゃないか、もっと広く有効活用しようじゃないかということで、今議論を始めているところでございます。

 ただ、ホワイトスペースについては、先ほども言いましたように、使い方が地域それぞれによって違う。例えば十五チャンネルが東京であいていたとしても、お隣の神奈川で使っていたら、それは神奈川では使えない。つまり、全国では使うことができないけれども、その地域に特化して使えるというのがホワイトスペースなわけでございます。

 そこで、私も電波の有効利用という観点から問題意識を持っており、そして、昨年の十二月に中央大学の土居先生に座長をお願いして、検討を進めているところでございます。

 その目的は何なのかというと、まずは地域の情報発信の強化、あるいはまた通信にも使えますから、新たなビジネスを開拓してもらおうとか、デジタルサイネージだとか、あるいはまた、例えばスタジアムだとか商店街だとか、そういった地域の特化した使い方があるわけです。本当に観光案内とかができるわけです。そしてまた、テレビの周波数帯を使っているから、皆様方がお持ちのワンセグ、携帯電話についているワンセグでそれが受信できるわけです。

 いろいろな利活用をこれから進めていきたいと思っておりますが、今、七月にある一定のまとめを出すべく議論を進めていただいております。そして、本来でしたら来年の七月から始めるべきところを一年前倒しをして、ことしの七月から、特区ということで、実証実験を行うという観点でこれを始めさせていただく予定でございます。

 以上です。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 まさに、放送の電波の資源は有限でありますから、こういった限られた資源を有効に活用していくということも大事ですし、また、それにおいてスピードを上げて取り組まれているということに関しては大いに賛同を示すものでありまして、こういった情報については、また我々にお知らせをいただきたいというふうに思います。

 さて、今般、放送法の改正でさまざまな議論があるわけですが、まとめの質疑をするわけではないんですけれども、放送の概念の拡張に関連して、私から一言申し上げたいことがあります。

 実は今、民主党の広報委員会では、ユーストリームとツイッターを連動させました生放送の広報番組を行っておりまして、これを「スタジオ民主なう」というふうに言っております。これは、毎週火曜日と木曜日の夜七時から一時間の生放送で、いわゆる党の広報として、既存の放送メディアを通さない形で番組を放送しております。

 それで、実は、今原口大臣は来ておられませんが、番組宣伝をするわけではありませんが、きょうの七時に原口大臣が急遽出演をされることが決まりまして、私がその司会をすることになっております。若干今から緊張しているわけでありますけれども、大臣を直接呼んでこういった党の広報の番組として意見を述べてもらうということは、これまでの放送の概念では考えられなかった、ある意味、拡張概念が今現実のものとなっているわけでありますし、こういった党の広報番組を実際に放映するためにかかるコストというものは、デジタルビデオカメラが二台程度と編集用のパソコンが一台あればできてしまうという代物であります。

 そういたしますと、これまで放送法の中でとらえられていた基幹放送及び一般放送というものは大きな一つの装置産業であったわけでありますが、これからは一人一人が、ごく微量な、この装置だけで送信できる、情報を発信できる、しかもこれが、ツイッターというミニブログを連携させれば双方向で情報ができる、こういった拡張概念があるわけです。

 そうしますと、今回、放送の定義まで踏み込んだ改正を行うということでありますけれども、逆に、今後の放送がどういった形で生き残っていくか。まさに、ここは、こういったメディアがこれからふえてくると放送事業者も生き残りをかけていかなければいけないし、そのためにはコンテンツの中身できちんと勝負してほしい、それを放送事業者に求めたいというふうに私は思います。

 さまざまなメディアがありますけれども、その中で、やはり既存の放送事業者はコンテンツの情報の信頼性ということで競争を闘っていかなければいけないと思います。そういう意味では、今のマスコミの報道のあり方についても、やはり情報の正確性を期待して、特にやらせですとか、そういったことがないような形にしていかないと、逆に、これからの放送の概念の拡張の中では生き残るのが難しいというふうに私個人としては思っているのですが、最後に内藤副大臣の御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

内藤副大臣 委員御指摘のように、今、技術の進展によって、本当に安価に放送類似のサービスが次から次へと誕生してきているわけでございます。既存の放送局に加えて、インターネット放送、ツイッターも、大変影響力があるメディアとなってきているわけでございます。

 そういった中、既存の放送事業者の生き残りは、やはり何といってもたくさんの情報収集、記者という世界に張りめぐらせた情報収集のツールを使って、本当に的確な、正しい情報提供を我々にしていただける、我々国民の立場からも、ここの情報ならば安心だと思わせてくれる、そういう信頼感を築き上げることが既存の放送メディアの一つの目指すべき方向性ではないかと、私は個人的には思っております。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。全く私も同感であります。

 以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

近藤委員長 次に、永江孝子君。

永江委員 民主党の永江孝子でございます。

 本会議に続いて、貴重な質問の時間をちょうだいいたしましたことを感謝申し上げます。ローカル放送局で働いていた者として、きょうは、政府提出の法律案について質問させていただきたいと思います。

 きょうは、質問の前に、私が過去取材したある話を皆様にお聞きいただきたいと思っております。これは、愛媛にいる、いたと言った方が正確ですね、愛媛にいた花咲かじいちゃんの話です。

 その花咲かじいちゃんは、本名は高岡正明さんとおっしゃるんですが、惜しまれながら九十二歳で亡くなられました。亡くなるまで桜の苗木を全国各地に、日本だけじゃございません、世界じゅうに五万本も贈り続けられました。これは全く無償の行為でございます。それで花咲かじいちゃんと呼ばれているんですが、何でこの高岡さんが桜の苗木を贈り続けたか。物すごい熱意を込めて贈られました。

 私が高岡さんに初めてお会いしたのはもう二十年も前のことなんですが、そのときも、今度ゴルバさんに贈ろうと思うてなとお話しされていました。ゴルバさんというのは、ゴルバチョフ元ソビエト連邦大統領でございます。世界の要人が日本に来るとなりますと、とにかく桜の苗木を持って会いに行って、無理からにと言うとちょっと語弊はあるかもしれませんけれども、プレゼントをしてしまうんです。

 どんな熱意があったかといいますと、戦争中、この高岡さんは青年学校の教師をしておられました。たくさんの自分の教え子を戦地に送り出されました。そのときに、桜の花の咲いている木の下で別れのうたげを開いて、お国のために尽くしてこい、そして、またこの桜の花のもとに帰ってこいと励まして送り出されたそうです。でも、二度と帰ることのなかった若者、教え子たちは大勢いました。それで高岡さんは本当にざんきの念にたえず、何とかしたい、送り出した者の責任として何をしたらいいだろうかと考えたときに、その別れのうたげのときに咲いていた桜の花を思い出して、桜のあの美しい花を見て争いをしようという気になる者はまず世界じゅうにそうはおるまい、だったら、この桜の花を平和のシンボルとして世界じゅうに贈り続けようというふうに思われたんだそうです。

 そして、世界十カ国を超えているんですけれども、インドネシアですとか、ベトナム、メキシコ、チュニジアと贈り続けまして、今は、中国の西安市で一千本、リトアニアで千二百本、またローマのバチカン市国でも花咲かじいさんの桜並木というのが生まれております。

 この話はローカル放送局から全国発信をされまして、桜の花を見ると、平和のとうとさ、平和のありがたさを感じるようになりましたという声も全国から愛媛の方にちょうだいもいたしました。ことしも、これから夏に向かって、八月の六日ですとか、九日、十五日を迎えるに当たりまして、全国の放送局が各地におられる高岡さんのような花咲かじいさんを探し歩いてお話をお聞きして、平和を願うその思いと足取りを取材、放送されるものと思っております。

 私がなぜこの話をさせていただいたかといいますと、各地の放送に携わっている皆さんが国民の皆さんの知る権利に奉仕するという決意のもとに頑張っているのは、いろいろな思いがあるとは思いますけれども、一番はやはりこの平和を守るためなんです。二度と間違いを犯さないように、放送に携わる者は、自主自律ということを確保していただいたからには、みずからにも厳しい目を向けながら、それぞれの土地で、それぞれの役割を果たしているということを改めて申し上げたいと思ったからでございます。

 この放送法の改正審議の中でも、原口大臣は、言論の自由のとりでを守るんだと、何度もその決意を述べておられます。その言論の自由、表現の自由を守るという確固とした姿勢を支えているのは、原口大臣の平和への強い思いだというのを伺ったこともございます。

 さきの代表質問で、私、今焦点となっております電波監理審議会の権限について質問をさせていただきましたが、いきなり、その力が個別の番組内容に及ぶんですかということをお聞きしてしまいまして、そもそもの出発点をお伺いしていなかったなと思いまして、きょうは改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 本来は原口大臣にお尋ねをせぬといかぬとは思うんですが、大臣と思いや考えを共有していらっしゃる内藤副大臣にお伺いをさせていただきます。

 そもそもの電監審の権限の改正の意図、それから電波監理審議会に期待される役割をお聞かせください。

内藤副大臣 本当に、大変本質的な質問をいただきましてありがとうございます。また、高岡さんに関する話を伺いまして、ありがとうございます。私も愛媛に来月かそこら行く予定がございますが、ぜひともまたゆっくりお話をお伺いできればと思っております。

 まず、今回の電監審の建議に関する改正の意図はどこにあるのかということをお話しさせていただきたいと思います。

 これは先ほども申し上げましたように、今回の改正案で放送関連四法案を一本化する、それによって、電監審は、これまで無線の放送だけを審議していたものが新たに有線の放送も審議することとなった。つまり、放送行政全般を議論すること、審議すること、そういった機能が電監審に持たれるようになるわけでございます。そういった意味で、放送行政に関する知見がそこに集積をされる。そういった意味で、その高い経験、高い見識に基づいて放送行政について建議をしていただこう、これが意図でございます。そして、目指すところは、大臣が常々申し上げておりますように、やはり報道の自由を守るためには、表現の自由を守るためにはということで行き着いたのが今回の電監審に関する改正事項でございます。

 これも前回申し上げたとおりではございますが、今の体制はどうなっているかというと、実は、放送事業者を監督する立場の総務大臣が、ここは問題じゃないかというふうに言うわけです。逆に言うと、総務大臣が、いや、これは問題じゃないと言うと、これは問題としては議論されないということになってしまうんです。ところが、電監審は、御存じのように、国会同意人事で選ばれるいわゆる第三者機関なんです。そうした第三者の立場から、高い見識、高い識見に基づいて、今の放送行政のあり方に対する問題点があればそれを総務大臣に建議していただきたい、それが我々の思いであり、原口総務大臣の強い思いであるということを申し上げさせていただきたいと思います。

永江委員 ありがとうございます。

 百八十条、この条文をよく読みますと、「必要と認められる事項を総務大臣に建議することができる。」、あるいは「関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」とはっきり書かれておりまして、ベクトルは放送行政に向かっております。

 これは行政に対して物を言うところなんだということは本当にはっきりしているんですが、今回、皆さんの御懸念、電波監理審議会がみずから建議できることを隠れみのに使って放送番組に介入するんじゃないか、こういう不安を抱かれる向きがあるというのは、過去の放送行政で電監審の答申という形をかりて放送に介入をしてきた例があるからで、この懸念、不安には、どうか丁寧な御説明をいただければと思っております。

 まず、今回の改正で、電波監理審議会は放送事業者に資料提出を求めることはできますでしょうか。

内藤副大臣 答えを簡単に申し述べさせていただくならば、できません。

 そして、もう一つだけ皆様方に申し上げさせていただきたいのは、そもそも放送法第三条でこのようなくだりがあります、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と明確に定めております。つまり、放送番組に干渉し、規律するような建議を電監審がすることはできないということは、この第三条をもって明確になっているかと思います。

 そしてまた、建議も、あくまで名あて人は放送行政を所管している総務大臣であります。資料の提出等を求める相手も、機関の長でありまして、決して放送事業者ではありません。それは許されません。

 また、そもそも、今回、総務大臣の番組に関する権限が何か増強されているのかといったら、全く増強されてはおりません。そのことを改めて申し述べさせていただきたいと思います。

永江委員 それでは、電波監理審議会が、総務大臣に対して、放送事業者に資料提出を求めるように建議することはできますか。

内藤副大臣 それはできます。ただ、繰り返しになりますが、念のために申し上げさせていただくならば、あくまで電監審には放送事業者に対して直接資料の提出や説明等を求める権限は付与されてはおりません。

永江委員 そうすると、総務大臣が放送事業者に提出を求められる、これは電監審の建議を受けてそれはできるというお答えでしたので、その建議を受けて総務大臣が放送事業者に資料提出を求めることができる資料の範囲も法律で定められているというふうに伺ってもおります。この範囲というのを教えていただけますでしょうか。

内藤副大臣 総務大臣が求めることができる、その資料の範囲は政令で限定列挙をされております。

 具体的には、放送法施行令の第七条に、NHKの場合と民放の場合とに分けて列挙をされております。例えば、NHKに対してはこのように列挙をされております。「業務の実施状況」、そして括弧でただし書きが書かれておりますが、ただし「(放送番組の内容に関する事項を除く。)」こういったぐあいに限定列挙をされております。それを超えては総務大臣といえども資料提出を求めることはできない仕組みになっております。

永江委員 わかりました。

 これまでの審議の中でも、原口大臣もおっしゃっておりましたように、電監審の機能強化という言葉そのものが、これだけ条文でしっかりと厳格な運用が規定されているのに比べて走り過ぎているのではないかというふうにもおっしゃっておりまして、私もそうだなというふうに感じるところではあるんですが、ある方は、個別の番組そのものを対象にしないということを明記したらどうだろうというお声もございまして、これはやはり、よく大臣もおっしゃられておりましたけれども、丁寧に丁寧にそういう御懸念というのは解きほぐしていかなければならないのではないかと思っております。

 これから放送事業者や心配なさっている皆さんのこういった不安を取り除くためにどんな御対応、どんな努力をなさるのか、お聞かせいただければと思います。

内藤副大臣 この法改正の趣旨が、そのような心配、個別番組への介入にあることではないということは、もう御理解いただけたかと思います。しかし、そういった心配を抱かれる皆様方に、本当にしっかりとこの説明を丁寧にやっていく必要があります。

 まずその第一歩として、この開かれた国会審議の場で、我々が、大臣、副大臣、そして政務官がしっかりとそのことを明言しながら説明をしていく。さらには、放送事業者だとかそういった関係者の皆様方にも懇切丁寧な説明を、誤解を解くような丁寧な説明をしていくことが必要だと思いますので、私たちは、この法案が成立した暁にはしっかりと、今でもやっておりますが、そういう意図は全くありませんよ、あくまで第三者による放送行政のあり方をちゃんとチェックしてもらう、そういう観点での改正ですよということをしっかりと説明してまいりたいと思っております。

 以上です。

原口国務大臣 永江委員にお答えいたします。

 この放送法の三条、これをぜひ多くの国民の皆さんに御認識いただきたいと思います。放送法第三条は、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」これは物すごく重い条文なんです。これを越えたことはできないんです。

 これがなければ、先ほどお話があったようなこともあるかもわからない。しかし、どの大臣になろうが、どういう政権になろうが、この三条というのはこの条文の中でしっかりと輝いておるわけでございまして、建議が私総務大臣にできるという内容であるということも改めて御確認をいただきたいと思います。

永江委員 ありがとうございます。

 原口大臣は、常々、政治というのはスピード感が大事だというふうにもおっしゃっておられます。私もそのとおりだと思っております。

 といいますのは、地方の危機、これはもう総務委員の皆さんが共通認識として思われていることだと思いますが、その地方の危機というのは地方局の危機でもございます。長年の地域経済の地盤沈下、その中でのデジタル化への多大な投資もありまして、地方局の制作環境というのは悪化の一途をたどっております。人員削減、制作費のカット、自社制作枠の減少。このまま地方局が縮み続けますと、放送の多様性、多元性というのは、本当に失われてしまいます。

 ですから、日に日に進む通信と放送の融合、この現実に法整備が追いついて、新たなビジネスチャンスを生み出せるような環境整備、それから、ローカル局の経営基盤を安定させて、地域の文化、地域の放送が支えられるように丁寧かつスピーディーな御対応をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

近藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 最初に政府の方に質問をし、後で自民、公明の方に質問させていただきます。

 まず、マスメディア集中排除原則に関連して質問をいたします。

 世界的な経済危機の中で、在京キー局に代表される大手民放においても、不況の波をかぶり、軒並み減益だ、まさに経営環境の厳しさを物語っている。今、各社の状況が連日新聞に載っておりますけれども、概してマスコミの状況はそういうことだと思います。

 今回の法改正では、マスメディア集中排除原則に法定基準が設けられます。それは、その要件が緩和されて、地方局の救済的な要素もあるやに聞いております。これがキー局の地方局支配をいよいよ強めていくのではないかという声も、一方においては聞かれます。

 ただ、既に以前からキー局の地方局支配は進んでいる、地方局においては支援を受けないと経営だけでなく番組を出すこともままならない、こういう状況にあるのだということも聞いております。キー局が配給する番組を流す契約、あるいは地方局がキー局から番組の配給を受けて放送する、そのことが結果的に自主番組を制作することができないということにつながっていく、そういうことも聞いておりますけれども、まず、全体に占める地方局の自主番組制作比率がどうなっているのか、これを聞いておきたい。

内藤副大臣 ローカル番組の比率について、平成二十年の一斉再免許時の資料がございます。それが最新のデータでございますが、お伝えをさせていただきます。

 まず、民放テレビなんですが、百二十七社の平均でいいますと、何と一四%でございます。次に、民放のFM社は、五十三社の平均が四三・七%。そして、民放のAM社は、四十七社の平均値が四八・四%となっております。

 以上です。

重野委員 今、具体的に数字が報告をされました。

 副大臣、それに対してどういうふうな評価というのか、感想というのか、それをまず聞かせていただけますか。

原口国務大臣 地域が抱えるさまざまな情報を独自に編集し、発信していく、極めて重要でございますが、今内藤副大臣からお話をしましたように、百二十七社の平均が一四・〇、この数字はやはりちょっと衝撃の数字かなというふうに考えております。また、それも、さまざまな現在の地方の疲弊や地域のローカル局が置かれた厳しいところをあらわしているのではないか、このように考えております。

重野委員 まさに、今、格差という問題がよく語られるわけですけれども、大都市と地方を比較しますと、自治体の力も、財政力等々を見て、明らかに格差が広がっておる現実がある。

 今、民放局のテレビで一四%という数字は、本当に私も聞いて驚いたんですね。地方の時代とか、言葉ではきれいごとが並んでいるけれども、実態論としては自治体間格差。そして、こういう放送を通して、人間はひとしく、国民はどこにいようとも、今何が起こっているのかということを共通に受け取る権利があると思うんですね。その権利そのものが、こういう条件によって制約されているということにつながっていくと思うんですね。

 そこで、こういう状況に対して、総務省、総務大臣、今後どういうふうな方向を目指していこうとするのか、その決意も聞かせていただければありがたい。

原口国務大臣 重野先生の御指摘は、極めて重要だと思います。

 まさに、みずから情報を発信し、みずからの地域の情報を流通させ、そして、その地域がそういう情報を共有することによって、みずからの地域に誇りを持ち、社会に参加をし、民主主義をはぐくむ、極めて重要です。しかし、それが格差という形でこういう状況になっているということは、極めて深刻だと思います。

 私たちは、緑の分権改革、地域主権改革で地域に回るお金そのものを、それを創富力と言っていますが、これをふやそうと考えています。また、今回の法案の措置で、これは一時的な措置でございますが、資本を増強して、さまざまな地域のローカル局の体力を回復してもらおう、こういうことを考えておるわけでございます。

 さらに言えば、IPTV等、これからはやはりコンテンツを持っている人間がしっかりと制作や編集や報道といったものを支え続けられる仕組みをつくっていきたいと思います。そのためには、新たな、私は光の道構想というのを出させていただいていますが、そこで二次利用、三次利用、四次利用、いや、もっと言うと世界に展開できる、そういう地域のローカル局になれるように、総務省としても全力で支えていく所存でございます。

重野委員 民放とNHKというふうに分けられると思うんですが、NHKの、私は大分ですが、大分放送局なんかは、私がテレビチャンネルをつけておっても、大分の状況が電波に乗って、ブラウン管を通して県民の目に触れる、そういうのを比較的かなり意識的にやっているように受け取れるんですね。だから、私は、NHKの役割というのは、今の民放の実態を裏返し、やはりその分、日本放送協会がやらなきゃならぬ責任と任務は大きい、そういう意識を持って総務省としても対処していってもらいたい、そのことを要請しておきたいと思います。

 次に、地方の放送局に対する大臣の考え方をお聞かせいただきたいんです。

 今後、当委員会では、地域主権改革法という法律、これは総務省にとっては大変重要な法律と認識されていますが、その審議も行われると思いますが、地域住民がみずからの判断と責任において地域の諸問題に取り組むことができるようにするための地域主権改革法であると認識しておりまして、重ねて重要な法案だという意識を持っているわけです。

 そこで、地域住民が地域の諸問題に取り組む際に、やはりメディアの果たす役割というのは大きい。今も申し上げましたように、地方局の制作する地域に密着したニュースや報道というのは、本当に重要な役割を果たすというふうに私は思います。しかし、今言いましたように、地方局の、ローカル局の経営状況、あるいは番組制作の力というのは、明らかに劣化していると言わなければなりません。

 そこで重ねて要請するんですが、総務大臣として、そういう現状に照らして、今のマスコミ、放送業界においては、政府は地方分権、地域主権ということを盛んに言っているけれども、そのテレビ、放送の現場においては、それとは違った方向に結果としてずっと流れているという現実を認めざるを得ないと思うんですね。そういう認識を持って所管をする大臣としてどうするかということを重ねて申し上げたい。

 そういう、今日メディアが置かれている現状をとらえる認識というのは僕らと変わらないと思うんですけれども、問題は、どういう具体的な施策を展開しながらその率を、地方局の主体力というか、本当に地方局らしい、そして、地方局を見る皆さんの期待にこたえる放送をより多く放送できるようにするために、民放に対しどういう方向で臨んでいくのかということもお聞かせいただければありがたい。

原口国務大臣 地域のまさに拠点であり、情報を共有し、人々の社会への参加を促す、そして民主主義をしっかりと強固なものにする、地域のローカル局が持つ役割はなお一層大きくなっていきます。

 私は、二十数年前ですが、委員の御地元で、あのときは一村一品運動というのを大分でスタートされました。桃、クリ植えてハワイへ行こうという、あれは大山町でございますか、まさに地域おこしの中心を行政と市民と地域のメディアが一体となってやっていく。そのことによって、地域の放送局は多くが広告収入で成り立っています、その広告収入のもととなる地域おこし、村おこしといったものが起きていたというのを、まさに重野委員の御地元の大分で私は実感をいたしました。

 これから総務省がやるべきことはそういうことなんだろうと思います。まさに、直接私たちがローカル局を支援したり、ああしてください、こうしてくださいと、そこには限界があります。しかし、そこの重要性をさらに強固にするために、光の道を敷いたり、あるいは、先ほど申し上げましたけれども、コンテンツを制作し海外へ展開する、もしくは地域そのものが持つ創富力を地域主権改革で……。

 今回、各省からいろいろなものが上がってきましたけれども、義務づけ、枠づけもはるかに撤廃ができてきました。独自の財源、権限も大きくなってきました。自分のところに権限が来れば、何を地域の住民が考えるかというと、自分たちの地域の合意形成、自分たちが地域のことは地域で決めるという決断のもととなる情報が極めて大事になってきます。そういう意味からも、私たちはローカル局を支援することができるのではないか、このように考えている次第でございます。

重野委員 もう一つ聞きたいことがありますが、限られた時間でありますから、各党に質問するのを準備していますので、それをやって、その後時間があればもう一つ聞いておきたいことがあります。残しておきます。

 まず、自民党の修正案に対してお伺いいたします。

 今回の修正案で、改正案であります百八十条の電監審の建議部分を削除するとされておりますが、なぜ削除しようとするのか、その理由をお聞かせください。

石田(真)委員 重野先生にお答えをさせていただきたいと思います。

 先ほどの提案理由説明でも申し上げたわけですけれども、政府案の法案を見せていただきますと、規定されているのが放送法の第一条の目的ですね。重要事項が三つ並んでおります。そして、その後に電監審がいろいろとその重要事項についてみずから調査審議し云々ということになってくるわけでありまして、これは書き方としては非常にいろいろな読み方ができるんじゃないかな、そういうような思いがするわけでありまして、政府の一審議会である電監審が独自にそういうことを本当にやっていく必要性について、先ほども申し上げましたけれども、十分な議論がなされた上でこういうことが法文化されているのかということが一つ疑問でございます。

 さらには、先ほども申し上げましたように、読み方によって非常にいろいろなことができるということで、そのことが、この権能強化によってメディア規制が起こってくるのではないか、そういう懸念が各方面からも提起されているわけでありまして、この際、これを削除するべきであるというのが我々の考え方でございます。

重野委員 質問をするためにいろいろ準備したときに、かつて、自民党が与党の時代に、たびたびコンテンツの規制、逆な意味でコンテンツの規制ということについて言及してきているという経過がございました、読んでみますと。

 そうすると、今の説明に照らしてこれを見ると、そうした、かつてのコンテンツ規制という言葉に象徴されるようなそういう政策というか考えというものは、今はもう自民党はお持ちでないというふうに理解をしていいのかどうか。

石田(真)委員 お答えをいたします。

 そういうことではないんですね。今回のこの法文が余りにも唐突であって、おまけに、今申し上げたように範囲が不確定過ぎるということについて我々は疑義を申しておるということでございます。

重野委員 時間も余りありませんが、次に、クロスメディア所有規制という点について、附則十四条一項の削除を求めております。いわゆるクロスメディア規制に関する検討条項の削除を求める理由は一体どういうことなんでしょうか。

石田(真)委員 重野委員にお答えをさせていただきます。

 このクロスメディア所有規制についてということで附則の十四条で規定されているわけですが、これは我が党の坂本議員も、随分、本会議でもこの委員会の場でも質疑をさせていただきました。坂本議員の問題意識は、一つは、附則と本則との関係ということを考えれば、附則でこの問題を規定することは少し違うのではないかと。あるいは、中途半端ということで必要以上の混乱とか疑心暗鬼を招くのではないかという懸念を表明されたわけであります。

 そしてまた、同時に、今大臣もおっしゃられていましたけれども、大変メディアの状況が変わってきていますね。まだまだこれからメディアというものがいろいろ変わっていく。その中で、旧来の新聞とテレビの役割が突出していた時代の考えのもとで、このクロスメディアというものを考えていくことがどうなのかなということになってくれば、やはり新たに、もうちょっと幅広くいろいろなことを、国民のわかりやすい形でいろいろな意見を聞いて議論していく。そういう中で、基本的に、将来的に改正をして本則にも入れていくという立場でないと、今、中途半端な形で、ただ単に規制の強化をイメージするような形だけではよくないのではないかというのが我々の考え方であります。

重野委員 それでは、公明党の修正案に関しても聞いておきますが、同じように、改正案百八十条の電監審の建議部分を削除するということを公明党も申しておりますが、公明党としてなぜかという問いにどのようにお答えでしょうか。

西委員 お答え申し上げます。

 重野委員、前回の質問でも、この件に関して大変熱心な御質問をされておりまして、そのことについては私どもも同じ感覚を持っております。この間も、この電監審の権限強化が非常に唐突な感じがする、こういうふうに委員はおっしゃられておりましたが、私どもも同じ気持ちでおります。

 一つ目は、やはり検討がまだまだ十分とは言えず、政策決定プロセスも不透明であるということがまず一点目の理由でございます。その証拠に、今総務省は、放送・通信の分野における表現の自由を確保するための制度、いわゆる今後のICT分野における国民の権利保障のあり方を考えるフォーラムを開催されております。この法案が提出された後も熱心な議論が展開されている、こういうふうにお伺いしておりますが、みずから設置した会議での議論もまだ十分結論を出さないままに改正を行う理由が理解できない、こういうことが一点でございます。

 次に、この建議の対象となる重要事項を、御存じのように目的事項をそのまま持ってきましたために、この対象や範囲が極めてあいまいになっているということでございます。政府から、改正の趣旨は放送内容への不当な介入を防ぐため放送行政を監視することであると再三大臣からお話をちょうだいしておりますが、条文を読む限りは、そのことに限定されているとはなかなか読めないというふうに私どもは思っておりまして、まだまだ放送内容に介入する可能性のある内容では認められない、これが二点でございます。

 三つ目は、放送行政の監視役をこの電監審にゆだねる、こういうふうになっておりますが、そもそも電監審そのものが独立性が十分担保されていないのではないか、こういう問題意識を持っておりまして、そういう役割を果たす機関としては不十分である、こういうことでございます。

 よって、この改正を行わないように削除をさせていただきたい、こういうことでございます。

重野委員 ありがとうございました。

 あと、情報の寡占化の問題についても用意しておったんですが、時間が来ましたので、以上で私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

近藤委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 与えられた時間は三十分で多くはありません。また、いつもどおり簡潔な答弁をよろしくお願いしたいと思います。

 原口大臣、先ほど本会議におられましたか。衆議院本会議、おられませんでしたか。ああ、残念ですね。

 本会議が終わって一時間ですけれども、大変私も頭にきたというか、こういう方が我が国の農林水産行政の責任者だということを情けなく思いました。四月以降の対応の反省もなく、少なくとも結果責任でも認めてくれるのかなと思えば、それも何もなし。御迷惑をかけているという陳謝でもあるのかなと思えば、陳謝もない。

 農林水産行政のプロであれば、平成九年、今から十三年前、台湾で三百八十万頭の殺焼処分が行われ、台湾のそういう豚の仕事がみんな壊滅したということ。また、九年前の英国では七百万頭が殺焼処分をされ、総選挙が一月延びたんですよ。それほど怖い病気だ。あるいはその後、二〇〇二年、韓国では十六万頭、殺焼処分をした。そうしたら、ゴールデンウイークに外遊なんということは考えられまい。

 そういうことについて、私は、内閣の一員として原口大臣の所見をお尋ねしたかったわけでございますけれども、いろいろな公務で、おられないということであればいたし方ございません。一つだけ確認させていただきたいと思います。

 我が党も、私もメンバーの一員ですけれども、議員立法で早急に、この口蹄疫の緊急特別措置法案を検討しています。ぜひ与野党間でまとめて、そこには、国の支援はもちろん相当ありますけれども、自治体への支援も相当手厚く、過去の例とか特別交付税で十分措置するとか、そんなレベルではだめです。しっかりとした支援を、これは宮崎だけではなくて、今やもう宮崎、九州の問題ではなくて、我が国の畜産業界が今後ともしっかりやっていけるかどうかの瀬戸際なんですから、これからまた、自民党というよりも立法府と政府側とのやりとりでかなり厳しい局面もあるかもわかりませんが、地方財政措置をしっかりととっていただきたいと思います。

 まず、その点についての原口大臣の所見といいますか、思いをお尋ねしたいと思います。

原口国務大臣 谷委員にお答えいたします。

 ちょうど本会議のときに、同時刻に、参議院の総務委員会で答弁を行っておりまして、委員がおっしゃる答弁については聞いておりませんが、委員が今御指摘のように、これは危機管理フェーズだというふうに思います。

 私は、四月二十日、すぐ政務三役、そして総務省に対して、自治体がみずからの財政状況を勘案して対策がおくれるようなことがあってはならない、万全の措置を考えてほしいと。それからもう一つは、今委員がおっしゃった新たな法律についても、今の現行法の中でやれるもの、例えば特交だって、今は二分の一なんですね。五分の四が……(谷委員「いや、もう現行法では全然だめですよ」と呼ぶ)だから、現行法でできるところはマックスでやってください、やりましょうと。

 そして、現行法で届かないところもやはりたくさんあるわけです。今委員がおっしゃったように、イギリスでは六百万頭、そして公費だけで一兆円を超えるお金が、これは金目だけじゃないんです、地域の経済や、あるいは食の安心や、そこに住まう子供たちの生活、そういったことさえ大きな危機が訪れてくるわけでございますので。

 今、立法措置について言及をいただきまして、ありがとうございます。総務省としても、できることはすべてやるという決意でやっていきたいと思いますので、御協力、御指導をお願い申し上げます。

谷委員 ちょうどこの時間に、我が党の法案の骨子が記者発表される予定というふうに聞いていますので、また各党と鋭意精力的に協議を進めて、文字どおりスピーディーに、素早く調整を進めてまいりたいと思いますので、またよろしくお願いします。

 放送法の件でございます。

 論点を三点に絞って、いろいろお尋ねしたいと思います。NHKの問題、電波監理審議会の問題、そしてクロスメディア所有規制の三点に絞ってお尋ねしたいと思います。

 政府案では、NHK会長を経営委員会のメンバーに加える。いろいろやりとりがありました。どうもそのやりとりの中に、私も耳で聞いて、また改めて本会議なりこの委員会の議事録を読むんですけれども、どうももうひとつよくわからない。意思の疎通を一層図るとか、あるいは大臣は議論を踏まえた改正と言われますけれども、私もずっと総務委員でした。総務委員の議論がそういうところに収れんされているかというと、そうでもないですよ、大臣。

 もう一つ、そういうガバナンスの議論がなされたということは事実です。しかし、こういう方式がベストだという方向の意見が多数であったということでもないと私は受けとめています。識者の方でも、新聞とかいろいろなメディアで、なぜ現時点で会長の経営委員会への参加が必要だと判断できるのか理解に苦しむとか、そもそも、会長の執行権限が現在でも大き過ぎる、巨大過ぎる、そのこと自体の見直しが先だという意見もございます。

 ちなみに、私は、イギリスのBBC、大臣もよく御存じでしょうけれども、NHKのモデルとは言いませんけれども、一つの参考にはなると思うんですね。

 イギリスのBBCはどういう体制をとっているかというと、トラスト、日本でいう経営委員会は政府から任命されます。正確に言えば、女王が任命する。十二名です。そして、NHKの会長に当たる執行役員会、BBCの会長は、トラスト、日本でいう経営委員会が任命する。BBCの会長は、もちろんトラストの委員ではありません。

 そういうことからすると、それでもなおNHKの会長を経営委員にしなければならない理由、今までの答弁のあれであれば結構ですけれども、具体的に何が差し支えあるのか、どうしてもよくわからない。お答え願います。

内藤副大臣 まず、私からお答えをさせていただきます。

 英国の状況と日本の状況は、形式的には似ているようなんですが、その内実はかなり違うものがございます。

 トラストというのが日本でいうところの経営委員会、そして、その下に執行部が両国ともあるわけではございますが、例えば、日本は予算の承認をやっているのはまさに国会なんですが、実は、英国ではまさにBBCトラストが、経営委員会そのものが予算の承認を行っております。そしてまた、新サービスの認可は、日本では当然総務大臣がやっているわけでございますが、英国ではそれもBBCトラストがやっております。

 逆に、日本の経営委員会でやっているような経営の基本方針の決定だとか、予算、事業計画及び資金計画の決定は、英国ではどこがやっているかというと、まさにNHKに相当するBBC執行部がやっているわけでございます。

 つまり、このように中身が違うので、英国でそうだからといって、日本もそうあるべきだということにはならないかと思っております。

 以上でございます。

谷委員 内藤副大臣、例示として挙げただけで、そう丁寧に、何も英国がそうだから、それは違うといって、何か論点が違いますよ。これは緊急性がよくわからないんですよ。こうしなければ何が差し支えあるんですか。

 自民党の修正案を出されている方のような現行どおりということであれば、原口大臣、具体的にどんなことが差し支えありますか。それを教えていただきたいということです。幾つかは例示です。

原口国務大臣 失礼いたしました。内藤副大臣、大変知見が多くありまして、それをお話しいたしました。

 それで、よくNHK会長あるいは経営委員長からもこの間ずっと私たち言われてきたのは、COOなんだと。つまり、COOというのは何かというと、最高経営責任者が定めた経営方針や戦略に沿って、企業の日常業務を執行する責任者にすぎない。CEO、つまりチーフ・エグゼクティブ・オフィサー、企業意思の決定権を持つ最高の役職者ではないんだと。果たして、これで公共放送としてのガバナンスといったことを確保できるだろうか。

 現行法は、極論すれば、執行部の意見を全く聞かないまま、経営委員会が経営方針の決定等を行うことも可能な制度になっているわけです。すなわち、経営委員会の要求があったときは、会長は経営委員会に出席し、説明しなければならない旨の規定が第二十二条の二の四項や、会長は、経営委員会に出席し、意見を述べることができる旨の規定はございます。しかし、会長が経営委員会に常時出席できることはどこにも担保されていないわけです。

 昭和三十四年、ちょうど私が生まれた年ですけれども、この年に会長を経営委員会のメンバーから外した。それは、やはり余りにも言論機関としての強大な権限があってはならない。だけれども、これも、ともに改正法を通させていただきましたけれども、十九年の放送法改正によって監督権限強化がなされているわけであります。

 これだけ時代が早く動いていて、そして迅速かつ的確な経営が要求される公共放送のトップが、どのような権能を持ち、そしてどのような立場にあるのか、そして責任を持つのかというのは極めて大事だというふうに思います。ですから、私たちはこの場において御提案をしたわけでございまして、経営方針の決定等が、実際的に業務執行の観点から見てもしっかりと行われる、このことを意図したものでございます。

谷委員 議論がややというかかみ合いません。具体的に教えてほしいというあれでしたけれども、どうも答弁が出てきません。

 答弁が出てこないということは、理屈の上であるべき姿を原口大臣の方、政務三役の方で考えられて、まあそれで行こうということで、どうしてもみんなが納得する、識者なり関係の方々の多くが納得する、説得力のある理屈はいま一つないように思います。

 それに対して、そういうことであれば、現行の規定でいいのではないかという修正案の提出者のお考えかと思いますけれども、そういうことでしょうか。簡単で結構ですからお願いします。

橘(慶)委員 谷委員にお答えいたします。

 おおむね委員の御指摘のとおりのことを思っておるわけでございまして、昭和三十四年の法改正における、会長が経営委員会のメンバーでなくなった理由については、今ほど原口大臣もお話しになったように、会長に強大な権限を与えることになるということでは、経営委員会と会長の権限の均衡を失する可能性がある、こういうことであったわけであります。

 その後も、NHKの長い長い歴史の中でいろいろなことがあったと思いますけれども、やはり歴代会長さんの中には強力な権限あるいは人事権を行使されて、協会の運営の中で批判なきにしもあらずという場面がなかったかといえば、この五十年の歴史の中ではあるわけであります。

 そこで、今回、抜本的な大改正ということに、政府で大変御苦労されて準備をされてきたわけでありますが、この中でNHKの経営形態にかかわる事項は検討対象となっておらず、特に、会長さんを経営委員会のメンバーに戻すということの是非について、今、谷委員のお話にございましたようないろいろな議論、あるいはメリット、デメリット、そういったことも議論の俎上に上がったことがないわけであります。したがいまして、NHKの統治機構はいかにあるべきかということについては、歴史のいろいろな流れの中で、ここで唐突に行うということは、ガバナンス上、余り適切ではないと考えるわけであります。

 あわせて、きょうの藤田委員の質疑にもございましたが、この改正でNHK会長を経営委員会のメンバーにいたしますと、今度は会長さんだけ国会同意人事でない、経営委員と会長の選任手続に整合性がないという見方も出てくるわけであります。

 そういったことを踏まえながら、平成十九年の改正のときに今日の改正案のような手当てがなされなかったということも含めて、もう少しここについてはいろいろな議論をする、そういうことがまず必要ではないかという意味において、今回、規定としては削除してはいかがか、このように提案をするわけでございます。

 よろしくお願いします。

谷委員 ありがとうございました。私も全く賛成でございます。

 論点を移します。

 電波監理審議会です。建議に関する規定、先ほど重野先生からも質問がありました。数多くの懸念、不安、反対がございます。私のところにもいろいろファクスが届いたりしておりますし、メディアにもいろいろ載ります。また、与党の委員の方々にもそうではないかと思います。

 こういう規定をなぜ設けなければならないのか。これを新設しないと何が差し支えあるのか。また、今、電波監理審議会委員、原島会長以下の委員の方々、私がよく知っている方はおられませんけれども、こういう方々にぜひ建議をしていただきたいという立派な識見をお持ちの方なのかどうかも私はよくわかりませんけれども、それにしても、なぜ無理に、新たに建議に関する規定をつくられようとしているのか。

 今までも何度もやりとりがありましたから、具体的な話で原口大臣にお尋ねします。

 三年前、平成十九年の三月に、大臣よく御存じのように、関西テレビの「発掘!あるある大事典」事案というのがございましたね、私の地元の方でございますけれども、納豆のダイエットでしたか、みそ汁のダイエットで何か虚偽の報道をしたということで。

 では、この法改正をしてこういうことも、仮に私が電波監理審議会の委員であれば、合議制で、あれは言論の自由の根幹にかかわることだ、しっかり調査しようとできるんですか。法律の上でできる、できない、そこをお答えください。

原口国務大臣 個別の問題あるいは個別の番組内容に介入するということはできませんし、個別のことを調査するということもできません。番組の編集やさまざまな問題については、あくまでBPO、自主規制でもってやっていただくというのが私たちの放送行政のたてつけであります。

 それを、逆に、当時の与党が随分踏み込んでその番組に、さっき、コンテンツ規制についてはどうしたんだと重野先生から御質問がありましたけれども、逆に、そういったことに踏み込もうとする懸念があったから、私たちは共同修正で、放送法の修正をかち取ったわけでございます。

 今でもそのことは変わりませんし、先ほど放送法第三条を申し上げましたけれども、だれとても、個別の番組内容について踏み込むことはできません。

谷委員 個別の番組内容について踏み込むことができないという法的な根拠を、条文も含めて、大臣、教えてください。

原口国務大臣 それは放送法の第三条です。これはとても重いです。これが基本なんです。

 もちろん、一条、二条に理念規定がございます。ただ、放送法第三条は「放送番組編集の自由」というものでございまして、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」

 これほど多くの自由をしっかりと担保している条文、これをもとに谷委員が、もし私がこの三条について先ほどのコンテンツ規制のようなものを入れているのであれば、今おっしゃっている個別の番組、関西の方のテレビ局の「発掘!あるある大事典」の問題だったと認識をしていますけれども、そういった問題については入れないというのは、この条文が根拠になっています。

谷委員 放送法三条が根拠だと大臣は答弁されました。

 それならば、なぜ、こんなにみんなが大きな懸念、不安を訴えるんですか。しかも、専門家は、いやいや、そんなことはないよと、事情のよくわからない一般の方々が非常に不安に思っているというならまだしも、不安視をしているのはみんな専門の方ばかりでしょう、テレビ関係者あるいは識者、社長から、現場の方から。

 これはなぜなのですか。放送法をよく読んでいないから、勉強不足だからこういう懸念を持つようになっている、法律をしっかり読めば懸念は払拭される、そう大臣はお考えですか。

原口国務大臣 絵をかいて御説明してもいいかもわかりませんけれども、ロジカルに言って、総務大臣に対して建議をする電監審が、個別のどの条文で、何をやると考えておられるのか。逆にそれが、具体的にこうこうこういう場合があるのではないかというお話をいただけるのであれば反論のしようがありますが、専門の方々がこれは危険だと思っているということだけでは何が危険なのか。

 それで、いろいろ聞いてみると、電監審をもとに、総務省がこれを隠れみのにして大臣に建議をさせ、そして個別の番組内容に踏み込んでくるのではないか、表現の自由を侵すのではないかという話が中にはありますけれども、今申し上げたように、第三条によって明記されているわけです。しかも、BPO、自主規制というものをずっと私たちは守り続けてきた。

 谷委員、私は、BPO、その前身のBROができるときに、当時は逓信委員会というものでしたけれども、その当時はもっとひどかったですよ。国がもっといろいろなものに介入すべきじゃないかという意見の方が、今ここでおっしゃるような議論よりはるかに多かった。それを私たちはBPO、絶対にこれは自主規制だとやってきたわけでございます。

 逆に、識者の方々が、電監審の権限強化という抽象的なことでいえば、それは大丈夫かという不安が出るのは当たり前だと思いますが、では、具体的にどのような事案を指されているのか。例えば、自民党政権時代、自公政権時代に命令放送というものがありました。ああいうものを意図されておられるのか。総務大臣が電監審に、たしかあのときは諮問をしたんです。そして、その日のうちに命令放送というものが行われるようになった。

 しかし、そのようなことは、今回の改正云々の話とは全く別の話でございまして、ロジカルに、何が起きると考えておられるかということをおっしゃっていただければ、私たちはそれをふさぐ道を考えていきたい、このように考えます。

谷委員 どうも具体例を出したら、いや、こんなのは放送法三条で、やらないと。それもどうかと思いますけれども、そこは少し見解の違いもあるかもわかりません。人によっては、この法改正によって、電波監理審議会の委員になれば十分できる、何ができないんだという解釈をする人もあり得ると思います、その委員の中に。

 ですから、審議が進めば進むほど不安とか懸念が高まっているというのは、それでも無理をしてここまで新たな建議の条項を入れなければならない緊急性というのは、今までの議論で、私が聞いている限り説明がありませんでした。どうしてもこれを入れなければ、こういう点で不都合ができるという説明がない。それこそ具体的にない、大臣。

 そういう議論も踏まえて、自民党修正案提出者の方は建議に関する規定を削除してはどうかという判断に達したかと思いますけれども、それで間違いございませんか。

石田(真)委員 谷委員にお答えをさせていただきます。

 私ども、今回、大きく分けて三点、細かく分けて四点の修正案を提案させていただきましたけれども、このすべてに共通することは何かといいますと、事前に、幅広く慎重な議論がなされたように見えないということなんですね。やはりそのことが一番大きな問題だというふうに思っております。六十年ぶりの法改正ということであれば、国民にわかりやすい形で十分に議論をしていただいた上で、それで法改正をぜひしていただきたいなというふうに思ったわけであります。

 今御指摘の電監審に関する問題につきまして、先ほど重野委員にも少しお答えをさせていただきましたけれども、書いておられることが非常に大きな話でありまして、読みようによったら、どういう形にでも読んでいけるのではないか。そのあたりが、この権能強化によってメディア規制が行われるのではないかという懸念を生んでいるということであります。

 ですから、それだけに、より一層きちっとした議論をした上で、もう一度提出をいただくというのが正しい道ではないかと私は思っております。

谷委員 時間が迫ってまいりました。

 三点目の論点、クロスメディア所有規制であります。

 附則でこの規定を設けた。これは三年以内ということであります。三年以内に、必要があると認めるときは所要の措置を講ずる。しかし、三年以内のその条項とは別にまた、五年以内のことも、附則十四条に「検討」ということがある。

 この五年以内の一般的な検討規定ではまずいのですか。具体的に、なぜ三年でなければならないのか。副大臣、具体的にお願いしますよ。解説はいいですから、端的に。考え方ですよ。

内藤副大臣 具体的にお答えをさせていただきます。

 まず、一般的には五年で見直しというのはなぜかというと、御存じのように、免許の期間が五年です。

 それで、なぜこれが三年かというと、クロスメディア所有というのは、今の既存のメディアだけを論ずるのではなくて、新たな技術の発展によって放送類似メディアがどんどん出てきた、だから早急に議論をしなきゃいけない。

 御案内のように、迷惑メール法案の見直しも三年以内です。そしてまた、二年前でしたでしょうか、議員立法で出てまいりました、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律、この見直しも三年なんです。つまり、ネットに関する法律案は大体三年を見直しの時期としているものでございます。ですから、早急にこの問題は議論をして解決を図らなきゃいけない、そういう思いを込めて三年とさせていただいたものと理解をしていただきたいと思います。

谷委員 急速に変わるというのは、何も電波なり通信関係ばかりじゃないんですよ。きょうも黄川田先生、奥田先生がおられますけれども、この国会で、我々、議員立法で全会一致で成立させていただいた過疎法でも三年なんですよ。だから、今のあれでは、一般的には五年だけれども、こういうクロスメディアの方は変化が激しいから三年というあれでございましたけれども、何かもう一つよくわからない。逆に言えば、みんな三年なら三年で一つの考え方だと思いますよ、五年なんと言わずにですね。

内藤副大臣 解説といって、先ほど先生に切って捨てられてしまったんですが、もともと免許の期間が五年ですので、その五年の間にころころころころ見直しをするというのは果たして妥当なのか、免許の期間と合わせた見直しがやはりまず前提としてあるべきではないかと思っております。

谷委員 ありがとうございました。

 大臣、冒頭の話に戻りますけれども、口蹄疫、よろしくお願いします。

 以上です。

近藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは、特に電波監理審議会の建議を中心に質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほど野党のいわゆる修正案も出まして、順次質問させていただきたいと思います。多少重複する点があると思うんですが、この審議の中身を深めていきたいという見地から、重複も御容赦いただきたいというふうに思います。

 まず、公明党の提案者にお聞きをいたします。

 政府提出案の電監審の建議に関する規定、私は慎重に議論をすべきというふうに考えておりますが、公明党の修正案でこの規定を削除した理由についてお伺いさせていただきます。

西委員 御質問ありがとうございます。

 今回の電監審の建議につきましては、詳細はもう十分御存じのことと思いますが、「建議及び資料の提出等の要求」ということでこの条を新設いたしまして、三つのいわゆる目的条項、目的に関する三つをそのままここに入れております。私どもがやはり一番問題だなと思うのは、二つ目と三つ目でございまして、こういうふうに書かれております。「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項」、これが二つ目です。三つ目が、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることに関する重要事項」。この重要事項二つを特に私どもは重視しております。

 その理由は、この内容、範囲、こういう建議の内容が非常にあいまいな表現にしかなっていないこと。それから、そのことに関して、再三、政府の方からは、この改正の趣旨は放送業者ではなくて放送行政について監視するという意味の説明をいただいております。また、放送法の第三条が根拠なんだということもいただいておりますが、この条文を読む限り、そういう詳細な規定はされていないということでございますので、こういう放送に関して内容に立ち入る可能性がある条項については削除すべきだ、これが大きな内容でございます。

 さらに、先ほども若干申し上げましたが、今回のこの内容については、政府の情報通信審議会でも全く審議された形跡がありません。検討が十分だとは言えないということで、この政策決定プロセスについても、やはり拙速は避けるべきだ、十分な議論を尽くした上で上げてくるべきだというのが二点目でございます。

 三点目につきましては、これは放送行政を監視するという立場でずっと議論が続いていますけれども、電監審そのものが、そういう意味では独立性が十分担保されていない位置づけになっていることから、この内容を託す機関としては疑問がある。

 この三点でございます。

 この点を踏まえて、放送による表現の自由を確保する観点から、この改正は行わないということで削除をするよう要求したいと思っているところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、自民党の提案者にお聞きをさせていただきます。

 クロスメディア所有規制についてさまざまな議論があるというふうに承知をしておりまして、先ほども御質問がありました、ほとんど同じ質問になりますけれども、附則での規定ではいかがなものかという先ほどの御答弁がございました。

 そこで改めて伺いますけれども、政府案のクロスメディア所有規制に関する事項の削除、その理由について伺います。

石田(真)委員 稲津議員にお答えをさせていただきます。

 先ほど来答弁させていただいたことと重複するかと思いますけれども、基本的に、我々が修正させていただいている項目は、先ほど申し上げましたが、すべて事前に幅広く十分に議論されていないということが一番の問題だというふうに思っています。これがすべての修正案についての共通項にあります。ですから、六十年ぶりの改正で国民生活に大変重大な影響を及ぼす可能性があるわけですから、まずきちっとした議論をしていただいて、その中でやはり法律としてやっていただきたいなということであります。

 それで、このクロスメディアの問題につきまして、先ほども政府側からもお話がございましたけれども、今までの新聞とかテレビとかそういうような旧来型のメディアだけでない、いろいろなものが入ってきているわけですね。そうしますと、そういう中で、クロスオーナーシップも含め、一体これからどうなっていくのかというのがなかなかわかりにくいわけです。

 それだけに、私は、メディアの将来とか、そういうことも考えて、やはりもっと基本的な議論を積み重ねていかないと。先ほどもお話がありましたけれども、改正したけれどもまた改正したというわけにはいかないわけですから、そういうことをきちっとやっていかないと、これはメディアの活動に対することだけでなしに、私は、日本のメディア産業全体にもマイナスといいますか、混乱を引き起こすのではないかな、そういうことも思うわけであります。

 やはりきちっと幅広く議論を一からやる、その結果を法律に盛り込むという姿勢が大事であって、いたずらにと言ったら失礼ですけれども、中途半端な形で、この法律の附則に書き込むというのはいろいろな混乱なり疑心暗鬼を呼び起こすのではないか、そういうふうに私は思っているところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、原口大臣に順次お伺いをさせていただきたいと思います。

 まず一点目。

 総務省は、ICT分野におきまして、言論の自由を守るとりでを初めとする国民の権利保障などのあり方を検討することを目的としたICT権利保障フォーラムを昨年十二月に立ち上げまして、もう既に五回会合を重ねられている、このように承知をしております。

 一方で、民主党の政策集インデックス二〇〇九に、日本版FCCの設置ということで、若干読ませてもらいますけれども、「通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い独立行政委員会として通信・放送委員会」、いわゆる日本版FCC「を設置し、通信・放送行政を移します。これにより、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入を排除します。」このようにあります。

 私は、恐らくこの民主党の政策を具現化するためにフォーラムがスタートしたのではないかな、このようにも認識してしまうんですけれども、この点についてはどうでしょうか。

原口国務大臣 今回、私が大きな力を入れてフォーラムを立ち上げて、皆様に御議論していただいているのは、日本版FCCという、もちろん、マニフェストの中にある、いろいろな、言論の自由、多様性、そして表現の自由を保障するということと全く別物ではございません。その延長線上にあると考えていただいていいと思いますけれども、しかし、もっと積極的な意味をここには込めています。

 と申しますのも、「検証 戦争責任」という四年前の読売新聞のプロジェクトで、私たちは当時の戦争に向かう時代の日本を検証しました。そのときに一番何が大きかったかというと、格差をもとにファッショ勢力がどんどん広がっていって、この国会でも言論がまさに封じ込められていった、そして一色になっていった。そして、声を出すべき人たちが平和の声は出せずに、亡国の戦争へ突入していった。これがその当時の私たちの総括でありました。

 翻って、現在どうなるか。さっき重野先生がお話しになりましたけれども、大変な格差が広がっています。私たちは、前回の選挙のときも、自民党さんや公明党さんと私たち野党とが、あるいはほかの共産党さんと戦ったというよりも、むしろその外側で、もうこんな国会なんか要らないんだ、そんな民主主義なんか要らないんだ、とにかく有無を言わせず何とかしろ、こういう勢力が広がっていったんじゃないかというふうに考えておりまして、まさに、さっきクロスオーナーシップの話を聞いていると、クロスオーナーシップを規制しようなんという話を本当に国会は真剣にやってきたんでしょうか。

 新たなメディアもありますけれども、新聞と放送とが持ち合いをして一色になったときに危険だということで、イギリスでも多くの国々でもクロスオーナーシップ規制というのは極めて厳格になっています。そういったものを今つくっておかなければ、ポイント・オブ・ノー・リターンというか、もう後ろに引き返せない民主主義の危機が起きるのではないかという危機感から立ち上げたところでございます。

稲津委員 そうしますと、まさに大臣の今の御答弁にあるように、言うならば、言論の自由をしっかり守っていく、それから国家機関の恣意的な介入を防いでいかなければならないという、そこがベースにあるということはよく理解できました。

 その上で少しお伺いしたいんですけれども、先ほど谷委員の方からも御指摘がありましたけれども、各界からさまざまな声をいただいております、それを一つ二つお聞きいただきたいと思います。

 私はどうしても不思議でならないんです、今回のこの放送法改正案の五十三条の十二の二、電波監理審議会の権限強化についてなんですけれども。十七日の月曜日、日本弁護士連合会から会長声明をファクスでいただきました。恐らく、衆参それぞれの議員の皆さんのところにも届いているんじゃないかなと思っていますが。

 この中にこう書かれているんです。「電監審は政府からの独立性が担保されていないうえ、その委員が総務大臣によって任命されることから、電監審が、総務省を効果的にチェックすることができる監督機関として機能していないと考えられ、総務省が電監審を隠れ蓑として正面から主張できない政策を審議会の建議という形で推し進めることが強く懸念される。」、そういうことで今回の改正案からはこれは削除すべきだ、こういうお訴えがございました。

 大臣はこの御意見をどのように受けとめるのか、お聞かせいただきたいと思います。

原口国務大臣 この日弁連の会長の声明では、隠れみの論ですよね。では、電監審の委員は、先ほど申し上げましたけれども、放送法三条を超えた建議ができるのかというと、全くできないわけです。

 今回の改正は、電監審が、大臣の諮問を受けずとも、総務大臣に対して電監審みずからが意見を述べることができるようになるだけのものなんです。放送事業者に対する規律を追加するものでもありませんし、総務大臣の番組に関する権限がふえるものでもありません。電監審が何か大臣に建議をして、放送法第三条を超えるものを大臣にやらせようと思ったって、それはできないんです。そのことを考えると、どういう隠れみのか、その具体的なものをお示しいただかなければ、まさにトートロジーに陥ってしまって議論にならないと思います。

 ただ、言論の自由やさまざまな人権といったものを保障する、そういう解が御心配であるということであれば、もっともっと丁寧に、しっかりとこの法の趣旨を、建議の相手は総務大臣であるということ、そしてそれは諮問を受けずともできる、そこだけだということを丁寧に御説明申し上げたい、このように考えています。

稲津委員 もう一つの声をちょっと御紹介させていただきたいと思います。

 これはICT権利保障フォーラムの構成員の立教大学の服部教授の五月十七日の毎日新聞のコメントの話です。

 教授は、今申し上げましたように構成員の一人で、何と言っているかというと、もう御存じだと思いますのであえて詳細は紹介しませんけれども、原口大臣は、民主党が政権をとった以上、前の政権がやっていたことはリセットして一から考え直すというのが大前提というふうに言い切っていらっしゃった、今回の「放送法改正案こそリセットして出し直すべきだ。」こういう痛烈な批判がございました。

 ここには、今ずっと議論されていますけれども、やはり十分な議論をしていない、あるいは意見を受けていないんじゃないか、こういうことが指摘されていると私は思うんです。こういった方々の御意見を十二分に聞くべきと思うんですけれども、今回のこの教授の、まさにある意味では身内の中から出ている御意見ですから、どのように受けとめていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

原口国務大臣 稲津委員、服部教授はある意味では身内とおっしゃいましたけれども、このICTフォーラムは多様な方々の中から集まっていただいていて、特定の政党や特定の考え方に凝り固まったというよりかは、さまざまな権利保障、憲法学者がおられたり、この服部先生のようなメディア論の権威がおられたりするわけで、その中のお一人の御意見であるというふうに受けとめています。

 この記事に書いてございますように、郷原先生と服部先生と三人でそれぞれ別々に話をしたものを対談形式でまとめたことはございます。いずれにせよ、お一人お一人のさまざまな御意見をしっかりと受けとめて、懸念を払拭すべく運用に努めてまいりたい、このように考えています。

稲津委員 これは前にもどなたかが御質問されたと思うんですけれども、まさに、ICT権利保障フォーラムでしっかり議論をされて、その御意見も十分承ってからあるいは結論が出てから、こういった放送法の改正案なんかにその考えを反映させていく必要が非常にあるんじゃないか。これは以前も質問にありましたので、あえてお聞きしません。

 三点目。

 またこれは御意見ですけれども、民放連の皆様からも公明党としてもヒアリングをさせていただきました。全般的には、これまでさまざまな場面で意見のすり合わせができたことによって、法改正はおおむね評価をする話もございました。しかし、この電監審の権限強化については、検討事項になくて、ある意味では寝耳に水という話で、急に決められた、そういう感をお持ちでございます。閣議決定後に総務省から説明を受けたということでございますけれども、それでも番組内容への介入につながらないかという懸念は払拭できないという御意見でございました。私は、余りにもこれは説明不足じゃないかと思いますよ。

 そこで再度聞かせていただきますけれども、こういった方々の理解を得ることがあって初めて法案提出、審議となると思うんですけれども、いかがですか。

原口国務大臣 言論のとりでの議論は、よく塩川委員にここでお答えしていますけれども、むき出しの権力が、報道、言論、そして表現の自由のまさにその拠点を管理したり、あるいは生殺与奪の権利を持つことについてもっと別の形態がないだろうかということで、ある意味長いスパンでもって考えていくものでございまして、今回の放送法の改正案は、これまで、本来だったら、六十年ぶりということですけれども、とうの昔に本当はやっていかなきゃいけなかったことでございます。

 また、電監審については、さっき申し上げたことの繰り返しになりますけれども、諮問を受けずとも、総務大臣に対して電監審が意見を述べることができるということを規定しただけでございまして、確かに、放送事業者の皆様からいろいろな御意見をいただきながら、あるいは各界、各言論の皆様からいただいた御意見をもとにやっておりますけれども、さらにこの放送法の説明に努めて、御理解をいただけるように環境醸成をしてまいりたい、このように考えています。

稲津委員 時間ですので終わりますけれども、参考人の皆さんからの意見もお聞きしてこの質疑を行うと聞いておりますので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 最後に、これは一言申し上げたいと思うんですけれども、大臣は、電監審の建議の問題で、要するに、これは行政に対してのチェック機構だという話もされました。だから、言論の自由とかそういうところに触れていくような話じゃないんだというお話もあったと思います。ある意味では、そこは私を信じてくださいというふうにも私は受けとめたんですけれども、しかし、この前、話がありました、原口大臣のときだったらいいのかもしれないけれども、別な大臣になってまた別な解釈をされたり、こんなことになったらたまったものではないわけですね。

 ですから、私を信じてほしいという、どこかで聞いたせりふですけれども、そうじゃなくて、ここはしっかり御議論させていただいて、十分意見を聞くとともに、十分な議論を尽くしていかなければ大変なことになると私は思っていまして、その懸念を強く主張させていただきまして、質問を終わります。

近藤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、NHKの経営委員会に会長が加わるという件について質問をいたします。

 改正案の十五条では、「経営委員会は、委員十二人及び会長をもつて組織する。」とされております。これは、今回の六十年ぶりの大改正に当たりまして、通信・放送の総合的な法体系に関する研究会を初めとしていろいろ議論があったわけですが、今回のこの件について議論した形跡が見られない、そういう点でも非常に唐突な改正でございます。

 ですから、最初に伺いますけれども、なぜ今回これを盛り込んだのか、NHK会長を経営委員会の構成メンバーにするとした理由は何なのかについてお答えください。

原口国務大臣 この間、幾度もガバナンスについての御議論がございました。先ほどお答えしましたけれども、現行法では、極論すれば、執行部の意見を全く聞かないまま経営委員会が経営方針の決定等を行うことも可能な制度となっています。

 国際化、情報化、そしてさまざまな多様化が進む中で、NHKの会長に求められる能力や責任というのはますます大きくなっています。その中で、例えば、あなたはCOOですけれどもどうぞ来てくださいということで世界的な人材が本当に来るでしょうか。しっかりとしたCEOという形で、私たちは、NHKが公共放送としてガバナンスを保ち、ガバナンスをしっかり強固にし、コンプライアンスをしっかりと担保する、これが国会の中でも御議論されてきたことではないでしょうか。

 その観点から、今回、会長は経営委員会に出席し、意見を述べる旨の規定はございますけれども、会長が経営委員会に常時出席できることが保障されているものではございませんで、実際的な業務執行の観点から見ても、適切かつ迅速にNHKの公共的な役割がしっかり発揮されることを企図するということで、ここに条文を入れたものでございます。

塩川委員 この間、さまざまなガバナンスの議論があった、会長の言うことを聞かなくても意思決定ができる仕組み、この点を改めるんだという趣旨ということで受けとめました。

 もともと、そのガバナンスの議論ということで、当委員会でも原口大臣が答弁をされた中に、国会審議においてもこういうことが随分議論されたんだ、そういう例示として経営委員会と執行部との関係が敵対的、いびつとなっていると、こういう現状を正す上でも経営委員会の一員としてNHK会長が加わることが必要なんだというお話だったわけです。

 では、具体的に、国会で議論になった、この経営委員会と執行部のいびつな関係は、どういうことをきっかけに起こったのかということです。なぜ、いびつな、敵対的な関係となってしまったのか。それはどこにあったわけですか。

原口国務大臣 それは国会の中で御議論されていたことで、私が、いびつで、敵対的な関係がどうこうと言ったことではないというのは前の答弁でしっかりと述べております。

 それは、経営委員会と、これは国会同意人事でございます、会長という形が、一定の緊張関係を持って切磋琢磨するというのは極めて大事なことであるというふうに思います。

 その上で、なぜそのようになったか、総務大臣の立場から、具体的な、どの事案に対して、何をもってそのように言うか、その原因まで答えるだけの知見を持ち合わせておりません。

塩川委員 この経営委員会と執行部との関係が敵対的、いびつとなっているということについて委員会での議論があった、そういうことを例示されて、大臣は、ガバナンスの議論があった、そういう点で今回の改正になっているというお話をされているわけです。

 なぜ敵対的、いびつな関係となったのか、国会審議で問題となった点が何かといえば、例の古森経営委員長時代の一〇%の受信料還元問題のときで、執行部の経営計画案を経営委員会が修正議決した、その事例を前提として問題となったということになっているわけですね。そのとき、これはもう原口大臣も当時のことはよく御承知だと思いますけれども、安倍内閣の肝いりで経営委員長含みで経営委員に任命されたとも言われた古森氏が、当時の菅大臣が受信料値下げを主張したことも受けて、監視機関としての経営委員会の役割を踏み越えてごり押しした結果生まれた、いびつな、敵対的な関係だったわけであります。

 ですから、私は、こういった経営委員会と執行部との敵対的、いびつな関係を生み出したのは、当時の安倍内閣の政治的意向を反映した特異な経営人事そのものだった、ここが問われたんだと思うんですけれども、その点、大臣の認識はいかがですか。

原口国務大臣 塩川委員にぜひ御理解いただきたいんですが、この総務大臣の立場でない、前は、ちょうど今大野筆頭が座っておられるところに座っていたときに一緒に御議論をしていたときは、もっと自由な立場で言えたわけですけれども、総務大臣が、さまざまな認可だ何だというものを持っているその総務大臣が、安倍内閣のときの云々ということまで言うのは控えなければいけないというふうに私は思います。

 また、これは、そのときにそういう御議論を国会でされていて、そして、NHKのガバナンス問題あるいは機構の問題についてさまざまな方が御提案をなさいましたねと。全然議論がなかった、突然としてNHKの会長の権能や責任問題について出てきたという御議論がございましたから、そうではございません、ここにもこれだけ議事録を持っていますけれども、たくさんの御議論があったということの例示だというふうに理解をいただければありがたいと思います。

塩川委員 いや、ガバナンスの問題が問われたというのは、まさに古森経営委員長のときのやり方の話でありまして、まさにそこが焦点なんですよ。こういう点でいえば、公共放送であるNHKの経営委員会には、政府に対する独立性、自主性というのが保障されなければならないわけです。

 ですから、内藤副大臣も、野党時代に質疑の中でおっしゃっておられたのが、「経営委員の任命を通じて政府のNHKへの影響力が増大する懸念」があるんだ、これは当然の指摘であったわけで、まさに経営委員の任命に当たって、政府の自制こそ求められていたにもかかわらず、かつての自公政権のもとで、経営委員の人事に当たって特定の意図を持ち込むようなやり方というのがいびつな関係をつくったわけですから、今回改める上でも行うべきなのは、政府によるNHKへの介入ということを見直すことであって、経営委員会の仕組みをいじることではないと言わざるを得ません。

 その上でお尋ねしたいのが、そもそも経営委員会は、視聴者・国民の代表としてNHKの業務の執行を監督する立場にあります。ですから、本来、NHK執行部を監督する立場にある経営委員会において、監督される側のNHKの会長が構成員となって議決権を持つということは、この経営委員会の監督、監視機能を弱めることになるのではないのか。この点についてお答えいただけますか。

内藤副大臣 決して経営委員会の監督、監視機能を弱めるものではないと思います。

 なぜかといえば、NHK会長も確かに経営委員会の一員として加わるわけでございますが、ただ、NHK執行部のことに関する議案に関しての議決権は与えてはおりません。そしてまた、やはり執行部を預かる会長と経営委員との真摯な緊張感ある議論、これを経てこそ適切な経営方針を打ち出すことができるものと考えております。

塩川委員 相互に緊張感を保つべきということであれば、組織的にもきちんと区分をする、そういうことで経営委員会とNHK執行部の緊張感が保たれるんだということこそやるべきことであって、この監督と執行を混在とか一体化させるというのは、本来の趣旨から外れると言わざるを得ません。

 そもそも、経営委員会というのが合議制の議決機関であって、合議体として英知を結集する意思決定機関となっているわけであります。そういう点では、非常勤中心の経営委員会の中に常勤のNHK会長が出席をし、議決権を持つということは、合議体としての経営委員会の意思決定をゆがめるものともなりかねない、こういう懸念もあるんだということを強く訴えておくものであります。

 会長を構成員として経営委員会の意思決定の権限を持たせるというのが、会長に強力な権限を与えることにもなり、経営委員会の形骸化と執行部中心主義、弊害が生まれ拡大することになる、こういう重大な疑念が晴れないということを申し上げて、もし一言ありましたら。

近藤委員長 原口総務大臣、簡潔にお願いします。

原口国務大臣 組織のガバナンスとして、合議体である監督機関に監督される者が含まれることは決して特別じゃありません。委員のロジックでいうと、例えば、委員会設置会社というのは成り立ちませんね。日本銀行もそうです。あるいは日本中央競馬会といったものもそうでありまして、私たちは、ガバナンスをしっかりときかすためにやっているわけでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

近藤委員長 内藤総務副大臣、簡潔に。

内藤副大臣 はい、簡潔に。

 そもそも合議体とはどういうものかといえば、いろいろな立場、いろいろな考え方の人が集まって議論をして、正しい方向を導くというものでございます。その中に現場を預かる執行部の責任者が加わるのは、私は当然だと思っております。

塩川委員 NHKは、そもそも国民・視聴者の代表として経営委員会が置かれているわけですから、そういう監視、監督機能に監視される人間が加わるのはおかしい。委員会設置会社のような営利企業とは違いますし、JRAにしてみても、これはそもそもJRA法の中に、監督する権限が農水大臣にあるとはっきりうたわれているんですよ。こういう点でもNHKというのは根本的に違うということを申し上げ、こういうことについての見直しが必要だということを申し上げて、終わります。

    ―――――――――――――

近藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案及び両修正案審査のため、明二十一日金曜日午前九時、参考人として日本放送協会経営委員会委員長小丸成洋君、日本放送協会会長福地茂雄君、社団法人日本民間放送連盟会長広瀬道貞君、日本弁護士連合会人権擁護委員会第五部会部会長日隅一雄君及びメディア評論家山本博史君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

近藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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