衆議院

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第2号 平成22年10月26日(火曜日)

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平成二十二年十月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 稲見 哲男君 理事 小川 淳也君

   理事 黄川田 徹君 理事 階   猛君

   理事 福田 昭夫君 理事 大野 功統君

   理事 坂本 哲志君 理事 西  博義君

      石井  章君    石田 芳弘君

      内山  晃君    大谷  啓君

      大西 孝典君    逢坂 誠二君

      奥野総一郎君    小室 寿明君

      後藤 祐一君    鈴木 克昌君

      高井 崇志君    中後  淳君

      永江 孝子君    平岡 秀夫君

      藤田 憲彦君    松崎 公昭君

      山岡 達丸君    和嶋 未希君

      渡辺  周君    赤澤 亮正君

      石田 真敏君    川崎 二郎君

      佐藤  勉君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    森山  裕君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣         片山 善博君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   総務副大臣        平岡 秀夫君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   総務大臣政務官      内山  晃君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   総務大臣政務官      森田  高君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      江利川 毅君

   総務委員会専門員     白井  誠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件

 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件(人事院勧告)


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田昭夫君。

福田(昭)委員 おはようございます。民主党の福田昭夫でございます。

 片山大臣初め副大臣、大臣政務官の方々、御就任おめでとうございます。御活躍を心から期待いたしております。

 さて、余り時間がありませんので早速質問に入りたいと思いますが、まず、郵政改革事業についてでございます。

 このことについては意見だけ述べさせていただきたいと思っていますが、私は、今回の郵政改革見直しにつきましては、公益性と地域性を基本理念として見直したものでありまして、できるだけ早い法案の成立を期待いたしているところでございます。

 この公益性につきましては、欧米人にはできない新しい資本主義をつくろう、公益資本主義という考え方が今出てきております。私は、まさにマネー資本主義、そうしたものをやはり是正して、あの八十年前の大恐慌と同じような市場の暴走によって、今回のリーマン・ショックに始まる経済危機、世界同時危機を生み出したわけでありますけれども、そうしたものを是正するような新しい資本市場をやはり日本が率先して進めて、日本郵政株式会社などはそのモデル会社としてやっていく、それが非常に大切だというふうに思っているところでございますので、政府の皆さんにおかれましても、公益資本主義という新しい考え方をぜひよく研究していただければありがたいなと思っているところでございます。

 さて、次に、行政改革の推進についてであります。

 一つ目、最初でありますが、最初に確認をしておきたいのは、日本の公務員は先進諸国の中で比べて本当に数が多いのか少ないのか、まずこの基本的認識を共有して、国家公務員制度の改革あるいは地方公務員の制度の改革をすべきだ、私はこう考えておりますけれども、公務員数の国際比較について、片山大臣の基本的な認識をお伺いいたしたいと思います。

片山国務大臣 国際的に比較してみて日本の公務員の数が多いのか少ないのかということですが、これは統計上は、今から申し上げますけれども、出てきますが、私は、後でお話ししますが、一概には言えないのではないかという考えを持っております。

 まず、統計的ですけれども、国家公務員の数は、我が国では人口千人当たり四・六人ということになっておりまして、例えばフランスが三十四・四、イギリスが十一・五、アメリカが十・九、ドイツが五・六ということですから、ドイツなどとは比較的近いですけれども、他の国に比べると日本の国家公務員は非常に少ないということが言えると思います。

 なお、地方公務員は、我が国は、先ほどの千人当たりでいいますと二十七人、フランスが七十四・二人、イギリスが四十六・七人、アメリカが七十五・〇、ドイツが四十四・〇ということですから、地方公務員の数も少ないということだと思います。

 ただ、どこまでを行政がカバーしているのかというのは国柄によって違いますので、一概には言えないと思います。日本の場合だったら民間でやっていることを外国では国がやっている、自治体がやっているということもあるかもしれません。

 例えば、具体的に言いますと、税でいいますと、日本の場合には、国税の源泉徴収でありますとか地方税の特別徴収というのは民間の企業の皆さんにやっていただいているわけで、税の賦課徴収の一部を民間の皆さんが担っているわけで、その分は恐らく公務員の方の数が減る方向に働いているんだろうと思います。

 そんなことを一々やっていきますと、もっと詳細な比較ができるのかもしれませんけれども、なかなかそれは困難であります。とりあえずは、簡単に、単に公務員の数だけ比較すると、日本は他の国に比べるとかなり少ないということだと思います。

福田(昭)委員 難しいことは確かだと思いますけれども、ここに、総務省が比較した資料がございます。人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較でありますけれども、この中には、中央政府の職員、政府の企業職員、地方政府の職員、軍人、国防職員、ほぼすべて多分網羅していると思いますけれども、この資料によりますと、千人当たり、フランスは八十八・八人、アメリカが七十八・二人、イギリスが七十七・八人、ドイツが五十四・六人、日本は三十二・〇人であります。

 こうした比較した数字を見ると、極端に日本の公務員数は少ない、こういう数字が出ておりますので、大臣、ここはもう少し精査をしていただいて、本当に多いのか少ないのかというのは共通に認識をして、国家公務員制度あるいは地方公務員の改革に当たるべきだ、こう考えておりますので、ぜひこれからさらに精査をしてほしいなと思っております。

 次に、国家公務員の総人件費の削減と、ことしの給与勧告についてお伺いをいたします。

 今回の給与改定については、十二月一日というボーナスの支払い日の期日、基準日もありますので、人事院勧告どおりにいち早く決定をして、国会の皆さんの審議をいただいて決定して、国家公務員の二割削減の問題については、来年度の予算編成の過程の中でしっかり時間をかけて検討してやるべきだ、私はそのように考えておりますが、大臣の考えをお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 ことしの人事院勧告の取り扱いにつきましては、かねてお話をしておりますけれども、勧告自体はやはり基本的に尊重しなければいけない。これは国家公務員の労働基本権の制約の代償としての仕組みでありますから、基本的に尊重しなければいけないということだと思います。

 ただ、現下の財政事情などを勘案しますと、単にそれだけでいいのかという別途の要請もありますので、これをどこで折り合わせるか、バランスをとるかということで、今、これまでこの一月間、私、入閣しましてから関係大臣等と検討を鋭意進めてきているところであります。

 まだ成案を得て発表するまでには至っておりませんけれども、できるだけ早くこの人勧の処理については結論を出したい、方針を出したいと思っております。

福田(昭)委員 時間的な問題もあると思うんですね。ですから、この臨時国会の運営の状況というのを考えますと、やはり今回の給与改定は、しっかりとまず勧告どおりに決めておいて、その上でしっかりとやっていくということが大切だと思いますし、さらには、深掘りをするという話がございますけれども、それを検討する際には、ぜひとも国家公務員の労働組合であります官公労の皆さんと十分協議をしてほしいと思っております。

 官公労の皆さんとも私は話をする機会がございますけれども、彼らも、そんなむちゃを言うつもりはありません、そう言っております。それは、御案内のとおり、ことしの予算を見れば、税収よりも借金の方が多い、こういう一般会計の予算ですから、そんなことを彼らも十分承知しているはずでございますから、ただ一方的にこうだよとやられては困るということでございますので、そこは十分にやはり協議をして進めていただければというふうに思っております。

 次に、天下りの全面禁止と公務員の定数管理についてであります。

 私は、これから質問をする地域主権の改革もございますけれども、地域主権改革と国家公務員制度改革と天下りの全面禁止、これは三点セットだと思っていまして、これを同時に進めていかないと実現性が乏しいのかな、このように考えております。

 そこで、この地域主権改革も国家公務員制度改革も天下りの全面禁止も、十年かけてしっかり工程表をつくって制度設計をしてやっていく、私はそうした必要があると思っております。

 それはなぜかと申し上げれば、国家公務員の採用は、天下りを前提として大量に採用しているんですね。途中でどんどんどんどん卒業させて天下りをさせていく、そういう採用の仕組みになっておりますから、採用の段階から絞り込んでいって、そして十年たったら、十一年目には最終的には天下りが全部なくなった、そういうような定数管理をしていかないとちょっと難しいと思うんですね。

 したがって、国家公務員の天下りの全面禁止と定数管理というものをしっかり十年間かけた制度設計をして、同時に、後で質問させていただきますが、地域主権改革とあわせてやっていくというような制度設計が必要だ、こう考えておりますけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 天下りの問題でありますとか国家公務員制度改革でありますとか、関連して定数の問題とかについての御質問がありました。

 天下りを禁止するというのはもう既に民主党政権になってやっておられまして、私は実は大臣になりまして、かつて自治省という役所にいて、今度違った立場でこの役所にまた入ったわけですけれども、随分変わったなという印象を受けております。

 といいますのは、当然、天下りというのは制度化されておりましたから公然とやっていたわけですけれども、これが本当になくなりました。役所が肩たたきをしてどこかにあっせんするというのはなくなりました。それのみならず、やはり職員の意識も随分変わってきました。自分たちの問題として天下り先を考えるということが、かなりこの一年で薄くなったと思っております。これは、政権交代による方針の変更による大きな成果だと私は思っております。

 ただ、問題がやはりないわけではありませんで、従来、今福田議員がおっしゃったように、天下りを前提にしてある程度の数をそろえて採用していた、定年を待たずしてかなりの人がやめていったということで、省内のピラミッド形の組織の中のバランスが保たれていたわけでありますけれども、早期退職と天下りが禁止になりましたので、結局、ちょっと表現は悪いですけれども、水膨れみたいになっているわけです。

 これをどうするのかということでありまして、例えば、整理退職を一挙にやるということになりますとこれは解決しますけれども、それは恐らく現実的でないと思います。そうしますと、ある程度の時間をかけて、なだらかに平準化を待つ、そういう姿勢と態度はやはり必要なんだろうと私は思います。

 もう既に去年から原口大臣のもとで採用人数を減らしておりますので、これが何年かたちますと仕上がりの姿になる。そこまではやはりある程度の期間をかけて、暫定的な措置が要るのではないか。もちろん、それは天下りをしていいということではありませんけれども、いろいろな、例えば独立行政法人への現役出向とかもありますけれども、そういう便法とか苦肉の策とか、そういうものはあってもいいのではないか、私はこういうふうに受けとめているのであります。

 ということで、結論から言いますと、福田議員がおっしゃったように、十年がいいかどうかわかりませんけれども、ある程度の期間を見て平準化、正常化を目指していく、そういう考え方は私も全く同感であります。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 私も、目標は十年ですけれども、始まったら七年で終わってもいいんですね、基本的には。それは、我が政権、人を大切にする、命を大切にすると言っている、そういう政権でありますから、国家公務員といえども人ですから、やはり生首を切るというのは私は絶対いけないというふうに思うんですね。

 したがって、決めることはハードであっても、やることはソフトランディングをして実現していくということが大事だというふうに思っておりまして、それが血の通った行政じゃないかなというふうに実は考えているわけであります。それは、公務員に対してだけじゃなくて、国民に対してもそういう、決めることはハードであっても、やることはソフトランディングをしていくというのが私は大事なポイントかな、こういうふうに思っているところでございます。

 さて、次に、地域主権改革の推進についてでありますけれども、一つ目は、住民自治の強化策についてであります。

 大臣や総務省は、地方税も直接請求の対象にするとか、あるいは地方議会の会期の撤廃を検討するとか報道されておりますけれども、ぜひ大臣にあわせてお願いをしたいと思っておりますのは、平成二十一年六月十六日、これは前政権時代でありますけれども、地方制度調査会の答申に、住民訴訟と議会の議決による権利放棄について、やはり見直しをすべきだ、地方自治法の改正が必要だ、そういう答申が実は出ております。

 それは、御案内のとおり、最近、住民訴訟によって裁判が起こされて、判決が出る前に議会が権利の放棄をしてしまったり、あるいは裁判が終わった後、判決が出た後でも権利の放棄をしてしまうという、全く住民の意思を無視するような議会の行動といいますか、そういうものが実はたくさん出ております。こうしたことに対して、私の地元の栃木県のさくら市でも今同じようなことがあって、市民の皆さんが運動をしているというような状況がございます。

 こうしたことについて大臣はどう思われるか、御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 実は、先ほど引用されました地方制度調査会の答申ですけれども、その地方制度調査会は、私、委員としてかかわりまして、副会長をしておりましたので、答申をした側であります。

 そのときの議論も踏まえて少し考え方をお話し申し上げますと、今福田議員がおっしゃったお地元のさくら市、旧氏家町だと思いますけれども、ここで起きた住民訴訟の事件、それからもう一つは神戸市でも似たような訴訟がありまして、それぞれ、さくら市の場合は東京高裁、神戸市の場合は大阪高等裁判所で判決が出ております。

 それを見ますと、いずれも、表現はちょっと違いますけれども、例えば、議会があらかじめ損害賠償の請求を放棄するというようなことは、例えば住民が地方自治法で与えられている権利、すなわち自治体の財務を正すという納税者としての権利を議会があらかじめ放棄するということは、納税者の権利を台なしにすることになるのではないかという問題点の指摘があります。

 それから、判決が出た後で自治体が被告に対して持っている債権を放棄するということは、それは司法が決めたことを放棄するわけですから、三権分立の理念に反するのではないか、こういう判決が出ておりまして、いずれも傾聴に値する判決だろうと私は思います。

 ただ、これは最高裁で今係争中でありますので、これから最高裁判所がどういう判断を下されるのかということがこれから検討する際の一つの大きな要素だろうと思います。

 そんなことも見ながら、これからこの制度をどういうふうにしていくのかということを検討していいのではないか、今は私はそう思っております。

福田(昭)委員 それでは、時間がなくなってきましたので、最後の質問で、地域主権改革、本題でございます。

 先ほどもちょっと申し上げましたが、地域主権改革と国家公務員制度改革と天下り全面禁止、やはりこれは三点セットでやる必要があると思っているんですね。その意味は、例えば地方支分部局の国家公務員を地方がどういう形で受け入れるかとか、あるいは国家公務員をどういう形で受け皿をつくって受け入れていくか、やはりそういうことをしっかり考えながらやっていかないと、今皆さん、大臣初め一生懸命頑張っておりますけれども、例の個別補助金の一括交付金化についても各省庁の回答はわずか三件だったというようなこととか、地方支分部局の原則廃止についてもほとんどいい回答が来ない、こういう状況になっておりますので、ぜひここは、国と地方の役割分担をしっかり決めて、地域主権が進んでいったのなら国の行政組織はこういう形になるんだ、ですから国の省庁再編もこういう形になるんだ、そして地方に権限と財源と、そして人も実はこういうふうに移行するんだというビジョンを描いた上で、国家公務員のしっかりとした受け皿の一つにもなるような仕組みもつくってやっていく必要がある、こう考えているんですね。

 そこで、やはり都道府県の合併とか、あるいは都道府県と政令指定都市、これはもう同格にしていいと私は思っているんですね。したがって、都道府県と政令指定都市の連合制度、広域行政制度、かつて市町村が広域行政組合とか広域行政連合というのをやっておりましたけれども、今度は都道府県、大都市版の連合制度をつくって、それが地方支分部局などの国家公務員の一つの受け皿になっていく、そういうことが必要ではないかと考えております。

 それで、たまたま関東知事会がこの十月の二十日ございまして、関東知事会では、その受け皿として、自治体にまたがる分野に共同で取り組む広域連合を視野に入れた広域連携のための協議会を設置することを決めたという報道がございます。国の出先機関の廃止縮小に伴う権限や人員の受け皿づくりをやるんだということで、関東地方知事会でもこのような動きがあるようでございますので、ぜひ、都道府県合併が容易にできる、あるいは都道府県、大都市連合が容易にできる、そういう制度整備をして地域主権を進めていくための受け皿づくりをしていく必要がある、そのように考えておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 御指摘の点は非常に重要なポイントだと思います。

 今、補助金の改革と地方出先機関の改革を進めつつありますけれども、例えば補助金の改革は、必ずしもそういう広域的なことは直接考えなくてもいい分野が多いんだろうと思います。といいますのは、今でも補助金というのは各県単位、各自治体単位で出ておりますから、どの事業をどこでやるかという選択を国から自治体へ移すということですから、現行の四十七都道府県の体制でもそれは可能だろうと思います。

 ただ、出先機関の問題になりますと、広域的な仕事が多いですから、これをそのまま今の四十七のユニットのところに当てはめるというのは、なかなか難しい面も場合によっては出てくる。もちろん、今の体制でも受け皿として十分というものもあります。私も知事をやっておりまして、今の出先機関がやっていることで引き受けてもいいというのは随分あります。ただ、やはり一県では引き受けられないというものもあります。そういうものをどうするかというときに、例えばおっしゃったような都道府県の合併でありますとか、それからもっと現実的なのは広域連携で、その中の一つの類型としては広域連合というのがあります。そういうものが一つの受け皿としては有力な組織になるのだろうと思っております。

 今おっしゃったように、関東の知事会は、つい先日、受け皿というのを念頭に置きながらこれから協議を進めていこうということが報道されておりましたし、それから、しばらく前には、九州の方でも七県がこれから協議をしていこうというふうなことが報道されておりまして、幾つかのところでそういう動きが出ておりますので、おっしゃるように、国の今の出先機関改革とその受け皿づくりとがこれから連携していくということが重要になりますし、また、より具体性を帯びてくるんじゃないかと思っております。

福田(昭)委員 それでは、時間が終了しましたので、これで終了させていただきます。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

原口委員長 次に、大野功統君。

大野委員 おはようございます。自由民主党の大野功統でございます。

 きょうは、片山総務大臣にせんだっての所信表明に対する御質問を申し上げたいと思うのでありますけれども、その前に、ぜひとも新しく総務大臣に御就任なさいました大臣に、基本的な政治姿勢、このことをお尋ねしたい。

 なぜそういうことを申し上げるか。それは、言うまでもありません、前国会での総務委員会における審議のあり方を考えてください。例えば郵政改革法案にしても放送法案にしても、いずれも審議の途中でいきなり審議を打ち切って、そして強行採決。修正協議をせっかく始めている放送法でありますけれども、修正協議をいきなり打ち切って強行採決。そして、これを参議院に送付して、参議院へ行ったら、今度は参議院で全く何にも審議しないで廃案にしておいて、再び同じような法案をこの衆議院の総務委員会に持ってきているわけであります。これは衆議院の総務委員会を何と心得ていらっしゃるんでしょうか。非常にばかにされたような感じで私はここに立っているわけでございます。

 まず、政治というのは信頼、信が一番大切であります。信なくば立たず、孔子の言葉でありますけれども、どうぞひとつ、信というものをどうお考えになっているか。信が出てくる根本は、やはり意思決定プロセスを透明化していく、意思決定プロセスをきちっと守って、民主主義というのはまず議論しなきゃいけない、少数意見を考慮して、配慮して議論しなきゃいけない、そして十分議論した上で採決をしていく、これは民主主義の常道であります。

 そういう意味で、片山総務大臣自身が、これは「世界」という雑誌のことしの八月号、田中秀征さんとの対談でおっしゃっているわけでありますけれども、ちょっと長くなりますが引用させてください。

 税制調査会を政府と民主党とが一体化させて、政府・与党一体化で税制を論じることにした。議事録もきちっと公開している。ところが、その議事録を見ると、突然、次の会で、それまでの議論とは関係なく、全く違った結論になっているものがあるということですね。関係者に聞いてみると、それは小沢さんから政務三役に電話が入って結論が変わったという。それならそういう政治だと言えばいいんですよと片山大臣はおっしゃっているんですよ。北朝鮮式民主主義ですというふうにきちっと言えばいいんじゃないかとおっしゃっているんですね。これはもう全く北朝鮮。北朝鮮は朝鮮民主主義人民共和国と民主主義を標榜しておりますけれども独裁国家です、民主党も実は北朝鮮と似たような民主主義なんですと言えばわかりやすいと。きちっとポイントをついておられますね。すばらしい発言だと思いますよ。公開プロセスだと言っておいて、実はそれとは別のところにデシジョンメーカーがいるというのはまさに二重権力と。

 これはやみですよ。だれかがどこからか、天から声が降ってきてそれに従うなんというのは、これは民主主義の原則に反するわけであります。

 そういう意味で、意思決定プロセス、これをどういうふうに考えるのか。まさに大臣自身おっしゃっているように、前国会での総務委員会の決議等々をかんがみますと、何をやっているんだろうか、何のために何をやっているのか、だれの力が働いているのか、こういう点が本当に疑わしくて、これで民主主義なんだろうか、民主主義の帽子をかぶった独裁主義じゃないかと私には受け取れるのでありますが、大臣、所見を述べてください。

片山国務大臣 前国会のこの総務委員会の運営のあり方などにつきましては、私は部外者でありましたので、現場にもおりませんでしたし、また報道等を通じても承知しておりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 今引用されました雑誌の対談につきましては、私は大臣になるまで政治学を専攻する研究者の端くれにおりましたので、私なりに関心を持っている事柄について研究を進めておりました。その一つが税制調査会での議論と結果でありまして、それを丹念にフォローしていきましたら、そこに述べておるような私の考え方に至ったということであります。

 私は知事をやっておりましたし、政治学も専攻しておりましたけれども、民主主義というのはどうやって実現されるのかということになりますと、それは、公開の場での議論、それから議論を通じた説得、それらを通じた合意形成というのが民主主義を支える一つのツールといいますか、基盤だろうと思います。ディスカス・アンド・パースエードというのが民主主義にとっては欠かせない、そういうプロセスだろうと思っております。

大野委員 前回の国会のあり方はよく理解していないがというお言葉でございますけれども、私が申し上げましたとおり、前回は衆議院で強行採決をしておいて参議院へ送付して、もし強行採決をしなきゃいけないほど国民のためにこの法案が必要であるとすれば、参議院へ持っていって、参議院で八日か九日間、一週間ぐらい空白期間があるんですよ。それは、鳩山内閣から菅内閣へかわった、それだけのことでありますけれども、その間に八日も九日も空白を置いておいて、何にもしないで、審議をしないで廃案になっている。これは何をしたいのかが明快じゃないですよ、政治として。まず意思決定プロセスが透明じゃない上に、何をしたいかという政治の責任もない。この問題をどう考えますか。

片山国務大臣 それは、与野党の間でどういう事情があったのか、どういう考え方があったのかというのは私にはわかりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

大野委員 私が言っている問題は仮定の問題でもいいです。衆議院でぜひともこの法案を通したい、だから強行採決をやったというふうに言うかもしれません。そうしたら、参議院へ持っていっても、遊んでいないで、それを審議して、少なくとも通そうという努力はしなきゃいけないんじゃないでしょうか。そういう基本的な政治姿勢について大臣の考えを聞いているんです。

片山国務大臣 一般論で言うとといいますか、ほかの条件が何もなければおっしゃるとおりだろうと思いますけれども、その間にどういう事情があったのかということは、当事者でありませんでしたので、そこのところはよくわかりません。

大野委員 こんにゃく問答が続きますのでこれでやめまして、次に、委員長にちょっとお尋ねしたい。

 李下に冠を正さずという言葉があります。李下に冠を正しますと、何だかあの男はスモモを盗むんじゃないかと疑われる、こういうことを言っているんだと思います。問題は、要するに、あのとき強行採決をした、その法案の提案者が、今ここで委員長としてしっかりとそこに座っておられるわけでありますが、そうすると、総務大臣が総務委員会の委員長になってはいけない、こういうことを言っているわけじゃないですよ。その委員長が大いにプロモートして、絶対、強行でも通してもらいたい、こういうような姿勢の大臣が委員長へ座ってきて、同じ大臣、今申し上げたような経緯でぐるぐるっと一遍、何かルーピーで回ってきたんですけれども、この回ってきた法案の審査の公平公正を最も旨とすべき委員長席にどっしりとお座りになっている。

 私は、原口委員長というのは李下に冠を仮に正してもスモモは絶対に盗まない男だと信じておりますけれども、委員長、どうぞひとつその点をここで明快に、委員長として、公平公正に審議をして、そして強行採決などは絶対しないということを言明してくださいますようお願いします。

原口委員長 先日の就任あいさつでも、「特に公正かつ公平円満な委員会運営を図ってまいりたい」と述べたところでございます。与野党各党の協議を踏まえ運営していきたいと考えますし、国会は激しい論戦の場でございますが、あわせて、よりよき解決方法、それを探る場でもございます。

 郵政の法案についても、私は当初、大臣として、特別委員会を開いていただいて、そして慎重でしっかりとした御審議をいただきたいというお願いをしておりました。

 先ほど述べたとおり、大野筆頭がお話しのとおり、公平公正な運営に努めてまいりたいと考えますので、御協力をお願い申し上げます。

大野委員 どうぞ、公平公正なる運営で、強行採決は絶対にしない、十分に審議を尽くす、このことを守っていただきたいと思います。

 これから所信表明に対する質問に入らせてもらいますけれども、まず、大臣の御発言の一丁目一番地は地域主権関係の法案となっているようであります。

 私は、前の国会で原口大臣にも同じような質問をさせていただいたのでありますが、やはり地域主権という言葉自体が、非常におぞましい、意味のはっきりしない言葉である。

 これはもう言うまでもありませんけれども、主権というのは、要するに、国にあるのか国民にあるのか、どっちかですよ。地域に主権があるとすれば、これは大臣、どうですか。四十七都道府県全部地域主権を持つとすれば、日本国に四十七の独立国家が成立する。分裂国家になってしまうんですね。そういう意味で、言葉の使い方というのは本当に大事だ。

 よく言われるのでありますが、礼記に、小人は水におぼれ、君子は口におぼれ、大人は民におぼれる、こう書いてあるんです。どうぞ、政治家というのは絶対口におぼれちゃいけない、口におぼれて甘い言葉をささやいてどうのこうのというのは政治は絶対しちゃいけない、意味のある言葉を使っていかなきゃいけない、こう思うのであります。

 同時に、表現の問題もさることながら、片山大臣は先ほどの「世界」という雑誌の対談で、地域主権についてこういうことをおっしゃっています。長くなりますが、引用させてください。

 地域主権改革三法が今回は成立しませんでしたが、冷静に見たら本当にお粗末な法案ですと。本当にお粗末な法案です、こうおっしゃっているんですね。さすが大臣は観察眼が鋭いな。私はこれを見て、本当に大臣を尊敬しますよ。自治体に対する義務づけ、枠づけをやめますというふれ込みですけれども、これで国民生活の何が変わるかと国会議員の皆さんに聞いても何にも答えがない、こう言っているんです。お役人の手のひらで踊らされている代物ですと。それから、郵政改革法案についても触れておられて、これは飛ばしますが、私は今回それらの法案が成立しなかったことを実は評価しているんですと。いいお言葉ですね。

 評価されている大臣が再び同じものを出してきている、この点をまずお伺いします。どうしてですか。成立しなかったのを評価しているんですよ。

片山国務大臣 私は、実は前の国会の参議院の総務委員会でも参考人として意見を申し上げたんですが、それと同じようなことを「世界」の対談でも話をしたわけであります。今御指摘のその点については、義務づけ、枠づけを見直すということで、これは方向としては正しいということは私も申し上げているんですが、国会で申し上げたのは、中身がシャビーではないかということを申し上げたんですね。

 私から見ますと、地方自治に長いこと携わってきた者から見ますと、義務づけ、枠づけの見直しということになりますと、もっと本質的なものがあるという認識をしておりまして、それが盛り込まれていない、そういうことを申し上げたわけです。

 では、本質的なものは何かというと、幾つかありますが、例えば地方債の発行に対する関与などは、私は、義務づけ、枠づけの代表的なものだと思うんです。私から見ますと、全く取り外してしまうということは議論になるところだと私も思いますが、やはりかなり自由化していい分野だと思うんですね。こういうものが欠けているんではないかという指摘をしたわけであります。

 私は、今日、総務大臣になりまして、地方債への関与はだれがやっているかというと、実は総務大臣がやっているわけでありまして、ぜひ自分の手でこの改革はやりたいと思うし、大方の皆さんの御賛同を得られればやれることでありますので。

 実は、随分状況は変わりました。シャビーだと私が批判していたものに対して、これから、次の段階、次のステップでは本丸のところにも改革のチャンスが出てくるわけでありまして、そういうものを総合化すれば、今回の法案というのは、私なりに整理すれば、大きな改革の第一歩として位置づけることができるんではないか、こう考えております。

大野委員 まさに内容として、方向性は私はいいと思っておりますけれども、大きな大改革の第一歩としてこれは中途段階である、大臣はこういう認識であると理解していいですね。

片山国務大臣 第一ステップだと思っております。これで完結するということになりますと評価はかなり低くなりますけれども、次なるものが順次出ていくという、出ていかせたいと私は思っておりますので、第一歩だと思っております。

大野委員 それでは、言葉遣い、今、方向性についてお伺いしましたが、今度は言葉遣いについてお伺いしたいのであります。

 地域主権、主権という言葉ですね。これを使いますと、まず第一にお尋ねしたいのは、例えば県知事さんが、この道は県民しか通らせない、特に自衛隊なんか通らせないぞ、こういうことを言い出したら一体どうしますか。

片山国務大臣 それは、国法に反することでありますから違法行為ということになりまして、恐らく、当初から無効でありますし、何らかのトラブルがあって裁判になれば無効という判決が出ることになると思います。

大野委員 地域主権といいながら、地域主権というのは、それが地域主権になっていないと思います。だけれども、わかりました。地域主権というのは甘い言葉であるというのがわかりました。

 それでは、今、法律に違反するからとおっしゃいました。まさにそのとおりです。憲法の地方自治のところに、すべて地方自治というのは法律に従って、法律の定めるところによりと書いてあるんですね。

 では、ある程度、大臣はどっちを考えていらっしゃいますか。憲法を改正するんですか、それとも憲法のもとでこの地域主権というおぞましい言葉を使っていくつもりですか。

片山国務大臣 このことによって憲法を改正しようということは毛頭私も考えておりませんし、どなたも考えておられないのではないかと思います。

 そうではなくて、これは法案の中に定義づけをしていたと思いますが、地域主権という言葉を裸で使うのではなくて、地域主権改革という六文字で言葉を設定して、それに対する定義づけをしてあると思うんですね、法案の中で。

 その定義づけを見ますと、特段、憲法に抵触するとかそんなことではなくて、地域のことは地域で決める、地域の判断と責任において決めることなんですよ、そういうことができやすいようにする改革なんですよということを書いていると思いますので、その点では、私は定義づけについては何ら問題がないと思っております。

大野委員 そうすると、中央集権か地方分権か、地方分権を進めようということを地域主権という言葉でおっしゃっているというふうにしか理解できません。

 ですから、まさに口におぼれちゃいけない、言葉におぼれちゃいけない。信用という字は、にんべんに言葉と書きますよ。人の言葉で信用させる。では、信の字は、これからはもう、大臣のおっしゃることを聞いていますと、信用の信という字は今度から、信頼する、トラストするんじゃなくて、うそと読まざるを得なくなりますよ。そういうふうな言葉の使い方を正確にしてもらわないと、本当に政治家の信頼がなくなってくる。

 第一に、先ほど意思決定プロセスということを問題にさせてもらいました。次に、今問題にしているのは言葉なんですよ。言葉だけで政治をやっていくというのは、ひとつ、どうぞやめていただきたい。憲法を改正しないと、そんな地域主権なんか出てきません。地域主権というのは、たびたび申し上げて恐縮ですが、国にあるのか国民にあるのか。

 世界各国はどういう方向でいっているかというと、やはり、中央集権でいくのかな、それとも地方分権をどの程度進めていくのかな、こういう議論をやっているわけでありまして、地域主権なんという議論をやっている国は全然ありません。このことは十分御存じでありましょうが、御注意申し上げたいと思います。

 それで、あとは、地域主権といった場合、国の責任がどこまで出てくるのかなという問題です。

 一体、国として、社会保障とか教育とかこういうシビルミニマムの問題があるんですけれども、そのシビルミニマムについてどの程度責任を持っている言葉なのか。地域主権といって地方に目を向けさせておるんですが、実は国としては、国が絶対果たさなきゃいけない防衛とか外交とかそういう問題を除いても、社会保障とかあるいは教育とかそういうものは残るわけですね。その辺はどう考えていらっしゃいますか。

片山国務大臣 外交とか防衛とか、恐らく司法もそうだと思いますし、金融とか通信とかそういうものは、私は中央政府の専権事項だろうと思います。

 専ら内政に関する分野で、現在、国と自治体とが共同してといいますか、悪く言えばもたれ合ったような形でやっているもの、これは整理する余地が大きいだろうと思います。

 その際に、恐らくは、一つ一つの事務について、これは国がどこまで責任を持つべきなのか、判断権を保持すべきなのかということを吟味することが必要だろうと思いますので、一概に今の段階でどうだと言うことは困難だろうと思います。

 例えば、義務教育というのがありまして、今これは非常に複雑な仕組みになっております。六・三制でありますとか、そういう根幹的なこと以外にも、例えば教科の指導の内容でありますとか教員の定数でありますとか、そういうことを全部国が決めているのであります。

 それはそれとして、今度は、教員はではだれが人事権を持っているかというと、都道府県の教育委員会が人事権を持っているわけです。その給料は県が払っているわけです。仕事をする場所は市町村立の小学校、中学校であります。その市町村立の小中学校を経営しているのは、市町村の教育委員会であります。こんなふうになっておりまして、やはり何か整理する必要があるんじゃないかと私なんかは思います。

 そのときに、ではどうするかといったときに、例えば六・三制だとか、義務教育の根幹の部分は国が決める、これは私はそうすべきだと思っております。ただ、校舎を建てかえるとかどうかなんというのは、今は補助金が出たら建てかえることができる、出なかったら先送りするとか、こういうのは変えなきゃいけないのではないか。

 そのほかにもいろいろありますけれども、そういうふうに一つ一つを丹念に整理していって、自治体が判断するものと、国家に、中央政府に残すものとを分けていくということだろうと思います。

 地域主権と言ったから何が何でも全部地域に移るんだ、そういうことではありません。まして、議員がおっしゃったような意味での主権ということをここであらわそうとしたのではないと思います。であるがゆえに、地域主権改革という六文字をわざわざ設定して定義づけをしているんだろうと私は思います。

大野委員 今大臣がおっしゃった、地方と国の関係を明快にしていく、これは物すごく大事なことで、後で時間があったら議論をしたいと思いますけれども、それをやらないから行政がやたらに複雑になる。同じ事業をやって、国の負担と地方の負担、裏負担がなきゃやらないぞとか、こういう世界は徹底的に改めていかなきゃいけない、私はそのように思っていますが、いずれにしても、地域主権、なぜこのようなおぞましい言葉を使っていくのか。私は、この地域主権という言葉は直ちにやめてもらいたいと思います。それを申し上げて、次の問題に移ります。

 次は、大臣の所信の中で、国のあり方を大きく転換、議会のあり方、直接請求検討の問題に触れておられます。

 これを聞きまして、大臣がどの程度間接民主主義から直接民主主義へ進めていこうとされているのか。諮問型、参考型住民投票を考えておられるのか、それとも拘束型、決定型住民投票を考えていらっしゃるのか。例えば拘束型とか決定型になると憲法に違反しないのかどうか、こういう問題がやはり出てくるんですね。そういう大まかな方向性をまず示していただきたいと思います。

片山国務大臣 私は、今のこういう社会の中でどういう仕組みで政治を行っていくかということになりますと、基本はやはり間接民主制をとらざるを得ないと思います。よく理念型としてスイスの民会でありますとかアメリカのタウンミーティングと言われますけれども、日本では、ごく小さな村はそれはあり得るんでしょうけれども、大半のところは無理だろうと思いますから、日常的、平時には間接民主制をとるということになると思います。それが首長と議会との二元代表制で、特に地方の場合には議会の方に最終的な意思決定権があるというこの現行の仕組み、これは尊重すべきだろうと思います。

 ただ、これは少し言いにくい面もあるんですけれども、現在の地方議会制度がうまく円滑に全国津々浦々で運用されていて、間接民主制というのは選んだ人と選ばれた人との間に強い信頼関係があるということがやはり基本でありますから、その信頼関係が本当に十全にあるかどうかといいますと、非常に失礼ながら、必ずしもそうでもないという個人的認識を私は持っております。

 さすれば、これをどうやればいいのかということでありますけれども、一つは、間接民主制を担う議会のやはりそれなりの改革が必要だろうと思います。その改革の理念というのは、住民の皆さんから信頼を得られる議会になる、そのためにはどういう改革が必要かということが検討課題だろうと思います。

 それからもう一つは、ふだんは間接民主制でいいんですけれども、やはり時と場合によっては間接民主制を補完する意味で住民の皆さんが直接意思表明をするという、これはあってもいいのではないか。これは実は現在でもありまして、直接民主制とか、最近では合併をするかしないかを住民投票で決めるなんてこともありましたけれども、そういうことは私はもっとあってもいいのではないか。そのことが間接民主制を担う議会に対する一種の刺激剤といいますか、活気を呼び込むことになるのではないか、こんなことを思っております。

 その際に、直接民主制による補完というのにどんなことがあるかといいますと、直接請求をもう少し改善するとか、それから、御指摘のありました住民投票というものを活用するということがあるんだろうと思います。その住民投票に拘束性を持たせるのかどうか。私は、一定の場合には拘束性を持たせるということが有効だろうと思いますけれども、これは、検討を始めたところでございますので、諮問型のもあるのか、それとも拘束型をどういうふうに活用するのかということをこれから広く検討してまいりたいと思っております。

大野委員 今聞いていまして、二つ問題点があると申しますのは、一つは、首長にしても議会にしても、それぞれ住民に選ばれた方々です。それについて信頼関係がない場合があるとおっしゃっている。これはどういう意味なのか。住民が選んでも信頼できないよというふうにとられると大変なことであります。今おっしゃった意味はどういう意味でおっしゃったのか。

 それからもう一つは、一定の場合には拘束型があっていいんじゃないかとおっしゃったんですが、一定の場合というのはどういうことを今想定されていらっしゃいますか。

片山国務大臣 これは私、先ほどちょっと言葉を注意して選んで申し上げたと思うんですけれども、大変失礼なことを、言いにくいことを申し上げると言ったのはそういう意味なんです。

 私は、三年半前に鳥取県の知事を任期が来ましたのでやめまして、今回大臣に就任させていただくまでの約三年半の間、大学で研究をしたり教鞭をとっておりました傍ら、全国いろいろなところに参りました。そこで多くの住民の皆さんに接する機会がありました。それは、例えば一般の住民の皆さんのケースもありますし、それから地方議員の皆さんもありますし、経済界とか女性団体とか、いろいろな機会があったんです。

 そこで私なりにいろいろリサーチをしまして、皆さん方は議会に対する信頼度はどうかということの意見交換などをやりましたけれども、私の受けた印象は、必ずしも十分な信頼感がないなということを、これは私の印象であります。

 例えば、どういうことかといいますと、地方分権、今は地域主権ということで、言葉の問題がありますけれども、当時、地方分権に賛成ですかと言うと、ほとんどの人が賛成であります。反対する人はごくわずかであります、その質問に対しては。ところが、地方分権改革とか地域主権改革の中身で、例えば権限移譲というものを例にとりますと、判断権が中央政府の専ら官僚の皆さんから自治体にかわるということ。では、自治体にかわって、自治体のだれが最終決定をするんですかということで、議会になります。その仕組みを説明すると、途端に多くの皆さんの目が曇ってくるんです。それなら地方分権に対する考え方をちょっと変えなきゃいけないということをあからさまに言われる方も多かったんですね。

 私はそんな経験があるものですから、やはり議会改革というものを行うことによって、今よりも選んだ人と選ばれた人との間の信頼関係が強くなるような、そういうことが必要ではないかと自分なりに思ったわけであります。それが一つです。

 それから、住民投票で拘束を持たせるのは、一定の場合というのはどんなケースかといいますと、これはこれから議論と検討でその方針を考えていきたいと思いますけれども、例えば外国の例なんかを見ますと、アメリカなんかを見ますと、大きな借金をして後世に負担を背負わせる場合、その場合に、間接民主制の枠組みの中だけで決めるのではなくて、直接、いずれ今後十年間にわたって借金の返済をしなければいけない納税者、住民の皆さんの賛否を問うなんというのはやはりポピュラーにあるようであります。

 あと、例えば考えられるものとしては、今、議会というものは、議員の定数でありますが、処遇なんかを議会が条例で決めることになっております。そうすると、自給自足型といいますか、どうしてもお手盛り感というのが住民から見たらあるわけでありまして、そういうケースについては、一定の場合、その中のごく一部については住民投票で賛否を問うということがあってもいいのではないかというような意見もあると思います。

大野委員 ありがとうございます。

 大変細やかに説明していただいてありがとうございますが、時間が、私の質問したいことが質問できなくなりますので、どうぞポイントでお答えいただければ大変ありがたいと思います。

 次に、基礎自治体への権限移譲、ここもいっぱい質問したいんですが、一つだけお尋ねしたい。

 先ほどからお話を聞いていまして、どうしても国に残る仕事もあるんだと。そうすると、国の出先機関がどうしても必要じゃないか、こういうケースも出てくるかもしれません。その辺についてどうお考えになっているか。

片山国務大臣 それは当然あると思います。原則廃止というのはそういうことでありまして、原則的には廃止だけれども、当然、国に事務が残れば、それを執行する必要な機関はあるだろうと思います。

大野委員 次に、一括交付金についてお尋ねしたいと思います。

 これまでのひもつき補助金というやり方、これはもう全く、族議員ができるし、何だか、官と政と何とかとが癒着してという構図を生みやすい構造になっていて、一括交付金というのは非常にすばらしい方向性、これは私はいいと思うのでありますが、二つ問題があると思います。一つは、一括交付金の額をどうやって決めるんだ、それこそ公平公正なる基準ができるのか、こういう問題であります。そこはどう考えますか。

片山国務大臣 それは非常に重要なポイントです。額を決めるときに例えば官僚の恣意性が働くとか、そういうことがあってはならない、客観的な基準を決めるということが一つです。

 ただ、数年間はやはりある程度の暫定期間で、現在、複数年度で事業を行っているようなものもありますから、そういうことも勘案しながら、一定程度の暫定期間は必要だろうと思います。

大野委員 私が聞いているのは、どうやったら客観的な基準がつくれるんですかということをお尋ねしているんです。客観的基準をつくります、これは当たり前の話なんです。どうやってつくるんだということを聞いているんです。

片山国務大臣 それは今検討しておりますけれども、今回、二十三年度から一括交付金化の対象にしたいと考えておりますのはハード事業でありますので、そのハード事業にふさわしい基準をつくるということで、例えば人口とか面積というのは常に出てくる話でありますけれども、そのほかに、事業の態様によって、河川でありますとか道路でありますとか、それから高齢化の問題でありますとか、そんなことを幾つかの指標でもって組み合わせて、できるだけ多くの皆さんがなるほどなと思う基準をつくるということしかないと思います。

大野委員 大変難しい仕事だと思いますし、私は、一括交付金化というのは途中段階の問題、これは二番目の問題ですけれども、途中段階で、最終目標値は、やはり自主財源をどうやって確保していくか、税制の大改革をやらなきゃいかぬと思っていますが、自主財源ということについてはどうお考えですか。

片山国務大臣 これは今、内閣の中で議論を始めたところなんですけれども、一括交付金化というのは最終目標ではないんではないかと私は思っております。あくまでも過渡期ではないかと思っております。

 最終的に、客観化された基準でもって配分されるようになった段階から次のステップを考えると、例えば議員がおっしゃったような、税制改正に結びつけて税源移譲ということになるかもしれませんし、場合によっては地方交付税と合体させるということがあるかもしれませんけれども、いずれにしても、これが最終目的ではないんではないかと私は考えております。

大野委員 税源移譲をした場合、例えば所得税を地方税にした場合、結局、私は香川県ですけれども、香川県で働く人がいなければ、香川県の所得税は上がらないんですよ。だからこそ、今、地方を発展させる、地方でインフラが不足していればインフラ整備をしていく、こういうものが重要になってくる。

 その辺は、コンクリートから人へなんという、これも耳ざわりのいいスローガンを使っていますけれども、本当にコンクリートが人を育てるために必要なんだ、雇用をつくるために必要なんだ、私は、今、日本の国ということを考えれば、地方の発展こそ日本の再生の道だ、こういうふうに考えていますが、インフラ整備とあわせて御所見をちょうだいしたいと思います。

片山国務大臣 私は、地方で仕事をしておりましたときの実感から言いますと、コンクリートも人も、やはり重要なものをやっていくということだと思います。

 ただ、例えば地方財政に限って言いますと、これまでの地方財政の仕組みというのは明らかにコンクリート偏重であります。コンクリートがしやすいような財政システムになっておりました。それをコンクリートも人もイーブンな状態にしていくという、これがこれからの改革の一つの眼目だろうと思います。

大野委員 次に、行政改革という問題について、大臣は「無駄のないスリムな行政」、こういうふうにおっしゃっています。

 私は、行政改革、スリムな行政なんだとおっしゃる場合に、やはり一番大事なのは規制改革、規制緩和だと思っています。規制があるから役人が必要なんですね。行政を複雑にするから役人の数が必要なんですよ。ところが、規制緩和という言葉は一つもない。私は、これは非常に大臣の所信としては残念に思っています。

 ということを申し上げた上で、質問させていただきます。

 官僚制度、人件費を改革するんだということをおっしゃっているんですが、これは先ほど福田先生からも御質問がありましたけれども、私の質問は、要するに人間をカットするんですか、月給をカットするんですか、まずその辺を教えてください。

片山国務大臣 人間をカットするのか、給料をカットするのか。

 総人件費の問題というのは、単価掛ける総量でありますから、これの組み合わせになります。ですから、今問題になっているのが単価の問題で、人勧をどうするのかということです。あと、無駄を省いて職員の数を減らすとか、地方に移譲するとかというのが総量の問題でありますから、両方の組み合わせだと思います。

大野委員 そこはまたあいまいに、両方カットするとおっしゃるわけですか。

 人数の問題からいいますと、福田先生がまさに指摘されましたように、日本の役人の数は多くありません。少ない方であります。それから、給与というのは、人事院勧告できちっと決められている、勧告がある、したがって、やり方は別として、一応公正に見ていると言わざるを得ない。それを改革していく、カットしていくというのは、深掘りしていくということは、大臣の頭の中では、人事院なぞは要らない、こういう頭でしょうか。

片山国務大臣 そうではありません。今、現に国家公務員の労働基本権は制約されていますから、そもそも憲法で労働基本権を保障しているところが制約されている、それならば代償措置が要るだろうということで、それが人事院でありますから、当然必要だと思います。

 ただ、それはそれとして、今の現下の厳しい財政事情で、今までどおりでいいのかという疑問も国民の中にもあるわけでありまして、これをどういうふうに折り合わせていくのかということが一番今悩みの種ということであります。

大野委員 一番大事なのは、日本のそういう官僚機構をどう構築していくか、こういう問題だと思います。

 経済発展が目覚ましく進んできた時代には、行政も政治もみんな国益ということを考え、国全体のパイのことを考え、大きくしていくということを考えてきた。ところが、パイが大きくならないとなると、パイの分け合いになっちゃうんですよ。だから、みんな、この仕事は我が省の仕事だ、こう取り合いが始まって、行政を複雑にして無駄ができてきている。そういう問題意識を持ちながら、一体行政に何を期待しているのか、こういうことをきちっと考えていかないと、日本の行政というのはむちゃくちゃになる可能性があるんです。

 これはもちろん見た目には、人数を減らす、あるいは月給を減らす、ああ、いいな、片山大臣やっているな、こう見えるんですが、長期的に見たら、日本の官僚機構に、行政機構にいかなる仕事をやらせるのか、政治主導とは一体何なんですか、こういう問題が出てくると思いますね。

 大臣は、先ほどの「世界」での対話の中で、政治主導についても発言されております。「日本はいま「官意」があまりにもドミナントになり過ぎた国ですよ。官僚たちの思惑とか、利害が政策形成や行政の執行過程にもぐり込んでしまって、身体中、ガン細胞だらけ」になっている、こんなことをおっしゃっていますよね。

 だけれども、行政というのをうまく機能させないと、国というのはうまくやっていけないんですよ。そこを改革すること、どういう行政を目指していくのか、そのことをきちっと念頭に置いて、その上で行政改革をやっていかないと、やたらに見た目で、おお、人数切ってやるよ、月給切ってやるよ、こんな改革だけじゃだめなんですよ。中身、行政のあり方をどう考えていくか、大臣、これをしっかりとこれからやり遂げていく、これが政治家の責任だと思います。

 もう時間が来ましたので、抽象的な御回答は必要ございません。何かあればどうぞ。

片山国務大臣 おっしゃっていることは、私も全く同感であります。

 単に人間を減らすとか給料を削ればいいという問題ではなくて、人間を減らすにはやはり仕事を減らさなきゃいけないと思います。その仕事は、何を減らすかというと不要な仕事でありますが、その際に、私はミッションということを職員にも今総務省の中で言っているんですけれども、だれのために、何の目的でこの仕事はありますか。ミッションを間違えているものはやはり削らなきゃいけない。

 官意という話をさっき引用していただきましたが、これは全く私はそのとおりと思っています。官意が余りにもドミナントになり過ぎている。例えば、経済界というのは官ではいけないと思うんですけれども、全国の商工会議所なんかを見ますと、その中枢には必ず役人のOBの人がいるわけです。そういう人を通じてまとめられた意見が中央政府に経済界の意見として上がってくるとすれば、これは私は大いに道を誤るんではないかとかねがね思っておりまして、そんなこともありまして、本来のミッションに立ち戻るように官僚の皆さん方に意識改革をしてもらいたいと思っております。

大野委員 一言だけ、最後に、どうして官僚がそういうところへ天下るのか。これはやはり規制があるからです。規制があるために、官僚を抱え込んでおけばいろいろな情報が入ってくる。だから、規制緩和をやれば天下りなんかなくなっていくんですよね。そういう意味で、御努力をいただきたい。

 ありがとうございました。終わります。

原口委員長 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 私は、昭和五十年、西暦でいえば一九七五年ですけれども、熊本日日新聞社というところに入社をいたしました。一年間日本語の勉強をさせられまして、校閲部というところでありますが、そして五十一年、熊本県庁の方に県政担当として配属をされました。駆け出しの記者でありますので、何十あるいは百幾つある各課をそれぞれ、毎日毎日うろうろ駆けずり回っておりました。

 その中に地方課というのがありました。各市町村に対する指導やあるいは通知を出すところであります。そこに、やせて小柄で、非常におしゃべりであるけれども的確に仕事をする人がおりまして、それが当時の片山善博さんでございました。ですから、四十九年に入省されて、三カ月間の研修を経て、最初に赴任したところが熊本県の地方課ということであったと思います。

 当時一緒にやっていた同僚の方々に片山評というのを聞いてみました。何人かに聞いてみましたけれども、攻撃すべきような材料は何も見当たりませんでした。いいことばかりみんな言ってくれます。仕事をするときの集中力がすごい、遊びもするけれども仕事もすると。マージャンがとにかく強かったそうですね。県庁で勝った人はいないということで、多分、背広を何着かつくられたということで、あと一年すれば車も買えたんじゃないかというようなことを言っておりました。宴会のときは、アグネス・チャンの「ひなげしの花」が好きでよく歌っておられたということもお伺いをいたしました。

 それから、鳥取県知事に出られるときも、熊本県庁でカンパを募りましたら予想以上に多くの方が賛同して、そして大臣の方に県庁の方から電話をしたら、余りもらうわけにはいかない、一定額にしてくれというようなことで、必要最小限度のカンパ金を渡したという非常に麗しい話も伝わってまいりました。

 ただ、私は一つだけ、余りいい印象を持っていないことがありまして、十一月ぐらいに大臣は転勤になったと思っております。そして、記者クラブの方に転勤のあいさつに来られました。私たちは地方紙でありますので、地方紙、地方テレビ局も記者クラブに陣取っているわけですけれども、私たちのところは素通りをして、そして、いずれ霞が関で一緒に仕事をするであろうNHKの記者とか、あるいはその他の全国紙とか、そういうところに丁寧にごあいさつをされておられました。まあ、中央からのキャリア官僚というのはこの程度なんだろうなというような思いを持っておりました。

 それから知事になられて、あるいは各地方でそれぞれ仕事をされて、まさに地方の旗手として、反自治省、自治省を批判する、あるいは東京を批判する、あるいはさまざまな現政治体制あるいは官僚体制を批判するということで地方の旗手ということになりました。やはり本物の地方派、あるいは地域派になられているというふうに思っております。それを期待して質問をさせていただきたいと思っております。

 まず大臣の就任に当たってでありますが、総理から、あるいはいろいろな形で就任の要請があったと思いますが、その要請に対しまして二つ返事でオーケーをされましたか。それとも、自分がこれまで知事としてやってきたこと、あるいは地方行政をやってきたこと、それに対して自分はこうやりたいというような条件をつけて就任するという返事をされましたか。そのことをまず一点聞きます。

 それから二点目。大臣の書いた寄稿文、あるいはいろいろな書物、そしてシンポジウム、講演、いろいろ読ませていただきました。前政権だけではなくて、現政権に対しても非常に辛らつな言葉で批判をし、思い切った改革を主張されております。賛同できる点が多いんです。本当に、なるほどなというふうに思います。しかし、それは、大臣がやはり総理大臣にならないとできないことと総務大臣でできることと幾つかあります。

 そういう面では、今度は内閣の一員になられたわけであります。そして、菅総理から連立与党の考え方を重視してほしいと言われ、それに異論はないというふうに大臣は答えられたと新聞報道がありました。また、いろいろな個人的な思いはあるだろうけれども、それは封印せざるを得ないというようなことも記事で読みました。

 しかし、この内閣というのは有言実行内閣というのを掲げております。それは内閣としての政策ということだけではなくて、その内閣を構成する大臣一人一人がこれまでやってきたこと、あるいはこれまで発言してきたこと、その信念に基づいて、やはりこの内閣を通して国を大きく変える、あるいは国の事業をなし遂げる、そういう意味での有言実行内閣であるとも思っております。

 封印する、あるいは異論はない、こういうことに終始すれば、大臣はこれまで鳥取県知事としていろいろな発言もされてきた、これがまさに無に帰してしまいます。あるいは大学で学生を相手にさまざまな講義をされてこられた、行政論、政治論を含めていろいろなことを言ってこられたと思いますが、このことも、封印したままであるならば学生は片山教授に幻滅を感じるであろうというふうに思います。

 少なくとも根幹となるもの、あるいは大臣が自治の哲学ということで本当に持っているもの、そのことについては何としてでも大臣就任時にやり遂げていただきたい。その覚悟がどのくらいあるのか、それも含めてお伺いいたします。

片山国務大臣 坂本議員にお答えをいたします。

 最初に、私が総務大臣を拝命する際に何か条件でもつけたのかということでありますが、経緯を申しますと、菅総理から電話をいただきまして、総務大臣をやってもらいたい、あなたのこれまでの経験、知見を生かして総務大臣をやっていただきたいということで、私は、それは電話でもありましたので、わかりましたというお話を申し上げました。

 組閣の日に総理と直接お会いをしたときに、総理から幾つか御指示がありました。その中の一部に、政権のこれまでの方針にはやはり従ってもらいたいということもありました。それはそうでありまして、従わないというので大臣になることはありませんので、わかりましたということ。

 ただ、その際に、これは条件ということでは毛頭ありませんけれども、私の気持ちや考え方を総理にお伝えをしました。それは何かといいますと、地方自治の分野でいいますと、これまで総務省が進めてきた地方自治改革というのは、地方自治は講学上、団体自治と住民自治という二つがありますけれども、どちらかというと団体自治の強化の方に重きが置かれていた。それは、国に対して自治体の権限とか自由度を高めるということであります。

 地方自治の車の両輪としてありますもう一つの大きな要素は、住民自治の強化でありまして、団体の中、自治体の中で住民の意思がより強く反映する、よりスムーズに反映する、こちらの手だての方もやっていかないと車の両輪はうまく回らないと私は思っておりますので、こちらの方をぜひやらせていただきたいという話を申し上げましたら、それは大いにやってくださいということでありました。したがって、条件ということではありませんけれども、私の気持ちは酌んでいただいたと思っております。

 それは二つ目の御質問とも関連するのでありますけれども、新しくメンバーに加わるということはリレーのバトンを受け継ぐようなものでありますから、バトンをもらって、要らないと言って捨ててしまったらこれはリレーになりませんからきちっと受け取って、その中で、これから自分自身が走る中で、自分の思いをその仕事の中に込めていくということだろうと私は思います。

 これは大臣になったときもそうでありますし、これまで、知事を前任の知事から引き継いだときもそうでありますし、何よりも役人のときに何回もかわりましたけれども、すべてそういう仕組みであります。自分がこのポストについたとき、自分のやれる範囲というのがありますから、その中で最大限、自分の抱いていた理想とか理念とか考え方を盛り込んでいく、そのために私は全力を尽くしたいと思っております。

 今どういう状態かといいますと、閣僚の一人になりまして、昨日も実は総理のところで勉強会があったんですけれども、そのときも憶することなく私の考え方を申し上げました、これは自分の分野に必ずしもとどまらないんですけれども。もちろん、全部思いどおりにいくわけではありませんけれども、閣僚の皆さん方にある程度の理解と共感を得られるということだろうと思いますので、これからもその努力を続けていきたいと思っております。

坂本委員 ぜひ、バトンを受け継いだ後、しっかりそのバトンが片山大臣のバトンになるように、全力で改革に邁進していただきたいというふうに思います。非常に強い覚悟がなければ、なかなかできるようなことではないと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 続きまして、いわゆる小沢問題についての考え方をお伺いいたします。

 資金管理団体陸山会の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で、検察審査会の決議で強制起訴が決まりました小沢一郎前民主党幹事長に対して、私たちは証人喚問を主張いたしております。国会の場で正々堂々と説明責任を果たすとともに、政治家として政治的道義的責任を果たすというのが我々自民党の主張であります。

 大臣はかねてより、政治資金の透明化、あるいは政治家、官僚の説明責任というのを強く訴えてこられました。その中で、証人喚問に対してどう考えておられるのか、また政倫審での説明責任だけでもいいと思っておられるのか、そのことをお伺いいたしたいと思います。それが一点であります。

 それと、菅総理は、国会が決めることであるので、国会が決めたならばそれに従うという、私たちからいえば非常に、以前の野党の時代の菅さんとは考えられないような消極姿勢をとっておられます。そのことについてどう思われますか。

 そして三点目、日曜日に北海道五区の衆議院補欠選挙がございました。自民党の町村候補が当選をいたしました。あの北海道で三万票以上を超す大差でありました。この住民の判断、一番重きを置いた住民の方々の判断基準というのは何だと思われますか。三点お答えください。

    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

片山国務大臣 証人喚問などについて御質問がありましたけれども、総理もお答えになっておりますように、証人喚問というのは国会でお決めになることだと私も思います。同感であります。

 それから北海道の補欠選挙の結果については、結果はあのとおりで私も承知しておりますけれども、具体的に、北海道の有権者の皆さんがどういうふうに考えられて、どういう投票行動をされたかというのは、これは私にはわかりかねます。

坂本委員 これまでの答弁とはまた違って、非常に歯切れの悪い答弁であるというふうに思いますね。

 住民自治とか住民の主権とか言っておられる、住民がどう考えておられるか、どう決断するかというのが専門、それを一生懸命今まで訴えてこられた片山大臣でありますので、選挙で有権者がどういうものを根拠にやったかぐらいは大体自分で察しもつかれるでしょうし、もし大臣でなかったら、言うべきことあるいは書くべきことがいっぱいあると思いますけれども、もう一度答弁をお願いします。

片山国務大臣 私も、大学で政治学を専攻しておりまして、選挙の動態分析とか有権者の意識調査というのはまんざら無縁なわけではないんですけれども、そんなに単純なものではありません。

 例えば、候補者の人柄とか魅力とかそういうものも大きく影響しますし、それから中央政界の動向というのも多分あるでありましょうし、その他、地域事情もあります。例えば北海道の経済問題だとかいろいろなことがありまして、それらが複合的に絡み合っているんだろうと思います。

 研究する場合には、非常に緻密な調査をするのであります。余り直観とかでこうだという結論づけはしないということだと思います。

坂本委員 今度の選挙は普通の通常選挙と違いまして、現職の、あるいは前職の辞任に伴うところの補欠選挙であります。いわば住民投票なんです、今度のものは。何が住民投票の争点だったかといいますと、やはり政治と金なんですよ。

 政治と金の問題、これについては政治家でない一行政官といえども、やはり自治大臣という立場で、しっかりその意味するところは御理解いただきたいし、意味するところをしっかりつかんでいただきたいというふうに思っております。

 その次の質問に移ります。

 先ほど、バトンを受けてできる限りのことをやっていきたい、できることがある、できないことがある、そういうふうなことをおっしゃいました。私も先ほど、片山総理大臣だったらいろいろなことをやれるでしょうけれども、片山総務大臣で、やれることはやはり限られていると思います。その中で、やれることを二つ、大臣が常日ごろおっしゃっていることの中から、この二つは大臣の任期期間中に必ずやれるということを質問いたしたいと思いますので、それに対しての答えをお願いいたしたいと思います。

 一つは消防庁長官の政治任用でございます。

 大臣は、雑誌のインタビューあるいはシンポジウムの中で、消防庁長官は代々素人がついている、地方財政や地方税をやっていた人が、事務次官になれなくて気の毒だから、せめて消防庁長官につかせようと最後のポストとしてやっている、消防の制帽をかぶっている姿も似合わない、ぎこちない、消防行政に卓抜した知識と経験を有する人材を政治任用でつかせるべきである、例えば東京消防庁を初めとする消防のプロに切りかえるべきだと言っておられます。

 これなどは、早速、次の消防庁長官の任用から政治任用が私は可能であると思います。これだけ明快に言い切られているわけですので、消防の専門家に切りかえられるんでしょうね。それを一つお伺いいたします。

 それからもう一つは、事務次官の廃止論であります。

 これも、先ほど大野先生が言われました雑誌「世界」を初め、随所で事務次官廃止ということを主張しておられます。こういうことです。事務次官を最高のポストと思うとみんながそれを目標にする、忠誠心を持つ事務次官は今度はOBに忠誠心を持つ、だから忠誠心の所在がおかしくなっている、局長を目指せばいい、専門分野でトップになればいい、役所のトップになりたかったら政治家になって大臣を目指せばいいというようなことを、これはことしの八月号でありますけれども、言っておられます。

 早速、総務大臣になられましたので、隗より始めよでございます。総務省から始められたらどうでしょうか。現在、事務次官は、同級生で同期入省の岡本事務次官であります。総務省だけを次官廃止というわけにはまいりませんので、事務次官の席を空席にして、そして岡本次官を政治任用で副大臣にする。副大臣は国家行政組織法で定数二というふうに総務省の場合決まっておりますので、この二を三にさえすればいいわけです。現在の官房副長官が事務方から一人来ている、事務担当の官房副長官がいるというのと全く一緒であります。

 そういうことで、まずこの二点、実施しようと思ったらいつでも、どういう形ででも実現できると思いますけれども、大臣、いかがですか。

片山国務大臣 省内の人事に御助言いただきましてありがとうございます。

 今御紹介いただきました、私がかつて書いたもの、発表したものについての基本的な考え方は私は変わっておりません。消防庁がということを例で書いていますけれども、現場で体を張って国民の生命、身体さらには財産までも守るような職場というのは、やはりそれなりの経験というのは必要だろうと私は思います。そういう意味で、消防庁に限らず、これまでの各省庁の人事について点検を加えるということは必要なことだろうと私は思っております。

 それから次官についても、私には私なりの持論があります。ただ、これは総務省だけの問題ではありませんで、政府全体の問題でありますから、先ほど申しましたように、私の考え方も折を見て閣僚の皆さん方にお話を申し上げたいということであります。

 個別の具体の人事につきましては、事前に軽々にお話しすることではありませんので、それは、時期が来ましたら私の責任において決めさせていただきたいと思います。

坂本委員 やはりこれだけ明快に言ったことは、少しは大臣としてやるべき姿勢を示さなければ、最初からつまずいてしまいますよ。

 確かに、個別の問題あるいは総務省内部の問題かもしれませんけれども、大臣が言っていた消防庁長官の政治任用にいたしましても、あるいは事務次官廃止にいたしましても、これはやはり行政機構を変える、そして政治そのものを変えていくという大きな哲学の中の一環だと思います。ですから、それを省の問題とか個別の人事の問題というふうに矮小化してしまうところは、今までせっかく大胆な発言をしてきていたのに、もう何か役人そのものに戻っているような気がいたしますね。

 ぜひこれから、これまでのあのけれんみのない発言を私たちも期待しておりますので、やるやらない、言ったことは、そしてできることはしっかりやっていく、そういうふうにぜひ国民の皆さんにメッセージとしてお伝えいただきたいと思います。

 もう一回お願いします。

片山国務大臣 先ほどお話ししましたように、私の考え方は変わっておりません。ですから、役所に来たから急に役人風になったということではありません。

 ただ、人事というのは非常に微妙な問題でありまして、人を動かす問題でありますから、それを事前に軽々に、だれをどうするとか、そういうことを申し上げることではないということを申し上げているわけです。

坂本委員 考え方が変わっていないということでありますので、それは、次期消防庁長官も必ず政治任用でだれかがつくであろう、あるいは総務省の事務次官についても、次の人事については非常に大きく変わっていくだろうというふうに受けとめましたので、ぜひ実現をしていただきたいと思います。

 同時に、私も総務政務官のときに、例えば統計局あたりはもっともっと国家的にきめ細かな局にすべきである。国家ぐるみでフランスあるいはその他もやっているわけですから、統計庁、外局でもいいんだ。そして、その中に統計の学者さんを持ってきて本当にきめ細かな統計をすれば、これからの世界の中で国家間競争を生き抜いていけるというようなことを主張しておりましたので、総務省が中心となってやるべきこういった新たな行政改革や新たな政治任用、これは積極的に進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、先ほど大野先生からもありました地域主権の問題を、ダブる面もあるかもしれませんけれども、質問させていただきます。

 私は、これまで数限りなく言われてきました地域主権というこの言葉、用語について言いますならば、地域というのは一つの形態、形式です。自治体であったり、集落であったり、あるいは都道府県であったり、いろいろその形を変えていきます。しかし、地域そのものの言葉というのは動かないものです、動と静でいえば静であるものでありますので、自治会、町内会、集落、あるいは町村、そして都道府県、それぞれの形態があると思っております。

 主権というのは動くものです、生き物です。主権が国民であったり、国王であったり、あるいは天皇であったり、その時代あるいはその国によっていろいろとその主権を違えます。動と静でいえば、これは動の部分であります。

 ですから、全く言葉の意味が違う、あるいはよって成り立つべき言葉が違う地域というのと主権というものを結びつけて、いわゆる木と竹を結び合わせて地域主権という、何か当たりさわりのない、あるいは耳当たりのいい、そういう言葉にしたこと、このこと自体がまず私は間違いであるというふうに思います。

 地域というものを大切にするならば、これは地域の自立です。主権というものを片山流に大切にするならば、これは住民主権です。ですから、住民主権と言うのか、あるいは地域自立と言うのか、この二つのどっちかであれば私は納得しますけれども、この地域主権という言葉をそのまま使っていく、それで、法律用語として不適正だから、不適切だから、それに改革という二文字をつけて、六文字で地域主権改革ということにして法律として提案する、このことは、まさに民主党が言うところの一丁目一番地の地域の問題、このことに最初からつまずいているということであるわけです。

 今継続審議になっていますけれども、これをこのままやれば、本当に住民は誤解をしてしまいます。本来の民主主義というのがこの地域主権改革関連三法案ということだけで消えてしまうんです。スタートで間違っているんです。最初の踏み出しから間違っているんです。ですから、ここを変えなければ日本の民主主義は大変なことになると私は思いますけれども、みずからの考えも含めてお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 地域という言葉を持ち出したときに、それは地域の自立ということに結びつくんじゃないかとか、それから、主権というのであれば住民主権というのがふさわしいのではないかというのは、それぞれ単独でとらえれば全く私も違和感はありません。そういう文脈とは違ったところで地域主権というのは出てきたんだろうと思います。

 思い起こしますと、道州制の議論は、今は民主党政権では、道州制については検討を射程に入れていくという段階になっておりますけれども、かつて道州制を議論しておりましたときに、有力な案として地域主権型道州制という議論があったのであります。今でもあります。これは、今国会議員になられた方が主としてその言葉を使われていたことは御承知のことと思います。

 その意味は、これは私がつくったわけではありませんから、そんたくしますと、道州制のタイプには別途、中央集権型道州制というのもあり得るわけであります。国家を中心に考えて、地方を整理してコストを安くするというような意味であります。そうではなくて、そもそも、地域にやはりもともとの本体があって、そこに戻すといいますか、そういう地域中心に考えていく道州制というタイプがあっていいんじゃないかというのが地域主権型道州制で、そのあたりから地域主権という言葉がポピュラーになってきたんだろうと思います。

 ですから、国家主権に対して地域主権とか、住民主権に対して地域主権とかという意味ではないと私は思っております。そうじゃなくて、中央集権的な物のやり方ではなくて、そのアンチテーゼとして、地域の方を重視するという意味で地域主権型ということが出たんだろうと思います。まあ、その程度にと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、私はそういうふうに理解をしているところであります。

 いわば従来型の中央集権的な視座から見た、権限を地方に分けてやる、分配してやるという視点ではなくて、もともと地域の方に、住民のところに重きがあるんだから、そこに権限があるのは当たり前なんじゃないかという草の根型の発想、それを象徴的にあらわす意味で、地域主権と多分命名したんだろうと思います。

坂本委員 アンチテーゼとして出てきただけの言葉を、そして、中央から地方に分配するんだということに対する言葉というだけでそれを法律用語として盛り込むというのは、これは大変なことになると思います。

 私は、地域主権というのは一番最初に、立教大学の教授でありました斎藤精一郎先生あたりが、地域主権、七つの戦略ということで最初は使われたんだと思いますが、学界とか雑誌とかいうことで、アンチテーゼとして使う分には構いません。しかし、やはり法律です。法律は国民を縛ります。

 では、国民をどういう形で縛るか。大臣がいつも言っている地域で縛るならば、地域の代表で縛っていくわけでしょう。それは、地域の首長が贈収賄で捕まろうとしている、あるいは捕まった、あるいは有罪を受けた、そういう方を、代表として地方六団体ですべて協議の場をするのであるならばそれはそれでいいけれども、本来の主権というのは、本来の住民自治というのはそういうものでないはずだということを言っていらっしゃいますので、これはぜひ考えていただきたいというふうに思います。

 綸言汗のごとしといいます。一たん引退すると言いました鳩山前総理が、うじうじと未練たらしく、また出るなんというようなことを言っておられます。菅総理も、本会議で突然TPPというものを言われ出しまして、そして国民の大きな反対に今遭っております。一回発言した言葉を、これから、菅総理はどうやって今後それを形づくられていくのか、私たちは注目をしているところであります。

 片山大臣も、これまで数限りなくさまざまな言葉、さまざまなメッセージを発してこられました。これは一回出た汗であります。その汗をやはりしっかりした形にしていただきたい、その覚悟を持って、ぜひ就任期間中、全力で改革に取り組んでいただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

福田(昭)委員長代理 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 片山大臣並びに関係の副大臣、大臣政務官の皆さん、御就任おめでとうございます。頑張っていただきたいと思います。

 私も、初めに大野先生がおっしゃられましたけれども、前通常国会の最終盤、本当に慎重審議をすべきはずであったこの委員会がああいう形で終わったことに対して、大変不満に思っております。

 幸か不幸か、今委員長さんが交代しておられまして、委員長にも申し上げたかったんですが、本来の総務委員会のあり方に立ち返って、やはり慎重かつ中立公正な議論をぜひとも委員長にはしていただきたいと思いますし、与党の皆さん方の、特に理事会構成メンバーの皆さんのお気持ちも、そういうことで御協力をいただきたいと思います。そういう意味で、また再びほぼ同じ法案を取り扱うわけですから、同じことがあってはいけない、私は初めからそのことについて御注意を申し上げておきたいと思います。

 初めに、きょうは特に地方議会のことについて、大臣を中心に御質問申し上げたいと思います。

 その前に、地方自治体と申しましても、私は和歌山なんですが、小さな村もございます。また、一国に匹敵するような、東京都というような巨大な自治体もございます。そういう多様性を含んだ議論でないといけないんだ、こういうふうに思うわけです。当然、そうなりますと地方議会の役割についても、地方自治体の権限、仕事によって大きく変わってくる。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいんですが、議論の前提となる地方の姿についてお伺いをしておきたいと思います。

 その前に、片山総務大臣は、先ほども種々皆さんから御指摘がありましたように、民主党のマニフェストに書いてある方向で地域主権改革に取り組むという基本的な御姿勢なのかどうかをお伺いしておきたいと思います。

    〔福田(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 基本的には、民主党のマニフェストに書いてありましたことが今の政権の重要な政策課題になっておりますから、今の政権が掲げている重要政策課題を忠実にやっていくということも、マニフェストに重きを置いてやっていくということも、そんなに変わらないだろうと思います。

 一つだけつけ加えますと、実は、マニフェストには書いていなかったけれども、昨年の総選挙の前に民主党がつくられた政策集インデックス二〇〇九というのがありまして、私は、これも重要な一つの政策課題をまとめたものだと思いますので、その中に書いてあることも私のこれから進めていこうとする政策の選択に入れていく必要があるだろうと思っております。それは、例えば、先ほど来お話をしました住民自治の確立ということでありまして、その中に今おっしゃった議会の問題でありますとか住民投票制度の問題だとか、そういうことが盛り込まれているものですから、そんなことも参考にしながら政策を考えていくということであります。

西委員 今指摘されましたインデックス二〇〇九、それから今回の民主党のマニフェスト二〇一〇の問題です。ここで示された地域主権の姿というのは、大きく言いますと、人口三十万人程度の基礎自治体が重要なかぎを握っているのではないかというふうに思っております。ここに現在の政令指定都市と同等レベルの事務の権限を移譲する、これが基本的な構想ではないかというふうに拝聴いたしました。

 人口三十万といえば、現在のちょうど中核市レベルの人口のところですね、この自治体に政令指定都市並みの権限を移譲する。大体、大ざっぱに見てそういう認識かなというふうに思います。この権限を移譲するために、現在の自治体のままでは体制が不十分だと私は思っているんですが、そのことについてお伺いをしたいということと、財源移譲のほかに、基礎自治体側に、これはこのままではやっていけない、こういうことになると、例えば職員を増強するとかさまざまなことを考えないと、今の政令都市並みのレベルの仕事を移譲するというのはなかなか難しいのではないかと私は思っているんですが、その大ざっぱな姿をお話しいただきたいと思います。

片山国務大臣 先ほどちょっと私、説明不足だったかもしれませんが、人口三十万に全部粒ぞろいにしてしまうということは念頭にありません。それは、必ずしも民主党のマニフェストにもそうは書いていないと思いますので、例えばということで例示をされているんだろうと思います。

 今の政権は、自治体の体制のあり方については基礎的自治体を最重視する、それを補完する意味で、例えば広域連携でありますとか広域自治体の役割が登場するということで、何も大ぐくりに、また改めて合併を促進するということは今の政策課題にはないだろうと私は思っておりまして、自分自身もそれでいい、それでいいといいますのは、そういう合併を強力に進めるということはすべきでない、する必要はないと私自身は思っております。

西委員 私が申し上げたかったのは、そういうレベルを基本にして、もちろん三十万以上のところもありますし、それ以下のところもあります。それを動かせということではなくて、三十万レベルのところに政令指定都市並みの機能を付与する、こういうことが基本的な、中心的な、もちろんそれ以下の施策もあるんです、以上の施策もあるんですが、そういうことを基準にいたしますと、三十万レベルの中核市の自治体の姿というのは、これはどういうふうになるんでしょうか。

 例えば、職員はこれじゃ足りません、そういうことになるのか、もっともっと財源についても足りませんということになるのか、そういうことは全く考えていないんだ、機能だけを、権限だけを付与するということなのか、こういうところの考え方をお聞きしたいと思っております。

片山国務大臣 それは、その権限の配分に応じまして、例えば財政制度が変わってくる、それから地方税の仕組みも変わってくるということだろうと思います。権限だけ渡して勝手にやれということには当然ならないわけでありまして、それを支える体制が必要でありますから、そのための税財源の仕組みというものもおのずからそれに連動することになるだろうと思います。

西委員 一方、民主党のマニフェストによると、小規模な基礎自治体が対応し切れない事務事業、先ほどちょっとおっしゃられましたが、これについては、近隣の基礎的自治体が共同で担うという仕組みをつくるか、もしくは都道府県が担うということがマニフェストに書かれております。一方で、都道府県から基礎自治体への権限の移譲により、都道府県の役割は、産業振興、災害対応、河川、基礎的自治体間の調整、こういうものを中心にやっていくというのが民主党のお考えのようであります。

 私の出身である和歌山県は、今、三十の市町村がありますけれども、基礎自治体の要件に該当するのは中核市の和歌山市だけです。その次のレベルはと申しますと田辺市で、人口は八万五千人。以下二十八市町村は、それよりも小さな市町村がたくさんございます。片山大臣が知事をされておった鳥取県でも、十九市町村で、一番大きい自治体で二十万人、特例市の鳥取市だけしか大きな人口を抱えておられない、こういう現実の姿があります。

 それで、新たな合併をそういうふうに促進するとかいうことは特に考えていらっしゃらない。現実の自治体をどう運営していくかということがこれからの大きな焦点になるんだと思うんですが、このような和歌山県、鳥取県のような県では、現実には基礎自治体への権限移譲が十分にでき得ないのではないか。したがって、マニフェストが描くような、身近な自治体で実情に合ったサービスを決められるという地域主権の姿が十分行き渡らないおそれがあるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。

 これから、そういう小さなレベルの自治体というものと、民主党が描くような三十万規模の基礎的自治体と称するものとの違い、これをどういうふうにして、特に地方に多いわけですが、ここの自治というものを充実していくかという考え方についてお伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 先ほども申しましたけれども、私も加わりました今の政権が、三十万人の自治体というものを基礎自治体と位置づけて全部これにしようとか、それから、三十万人の自治体が持つであろう権限を今の他の自治体にも権限移譲していこうという考え方ではないということは御理解いただきたいと思うんです。

 私は、自治体というのは多様であってしかるべきだと思います。三十万人のところは三十万人の自治体にふさわしい権限を持てばいいと思いますし、小さいところはそれなりの権限を持てばいいと思うんです。それを全国一律に、市町村には全部、これだけは分権するんだというようなやり方は間違いだと思います。押しつけられた分権というのはかえって住民満足度を下げることになると思います。ですから、それぞれの自治体の規模とか、力量と言うと失礼になるかもしれませんけれども、そういうものに応じて権限を分配していくということだと思います。

 では、小さい自治体はどうするのかということですが、これは、先ほどちょっと私も触れましたし議員もお触れになられましたけれども、例えば広域連携によって市町村が連携をとるということで事務を受けていくということもあると思いますし、それから、何よりも都道府県の最大の役割というのは補完行政でありまして、市町村ができないことは都道府県がやるというのが、現行の地方自治法でもそれが基本なわけであります。ですから、これまで以上に都道府県の役割というものにも光を当てていくことが必要だろうと思います。

 現実に、現在の市町村でもかなり無理があるなという仕事はあると私は認識しております。ですから、そういうものは積極的に都道府県が、奪い取ることはだめですけれども、市町村から要請を受けて都道府県が引き受けるということがあってもいいと私は思っておりまして、そういうふうに柔軟に、多様な地方自治制度というものをとらえていくということが必要だと思います。

西委員 現実には、それぞれの小さな自治体は自分たちが負うべき仕事を取捨選択して、ほとんど外して、最低限やるべきことをやっているんだろう。もちろん、その間には県の方でこれでよかろうということで引き受けている部分もあるのかもしれませんが、その都道府県と自治体との間にまだ十分な連携がとれていない、これはおれがやる、これはお任せするというようなことはまだまだ十分にできていないというのが現状なんじゃないかと思います。

 また、それぞれの自治体間の連携はまだまだそこまで、合併という形で初めて一つの広域的な考え方というのが生まれましたけれども、やれやれということで、これから自分たちが小さな規模で生きていく、これから先のことについてはもっと工夫が必要なのではないかと思いますし、何よりもサイズが、県よりも大きな政令都市がありますし、市よりも大きな町がありますし、そういう市町村というレベルで考えていくとまた矛盾が起こる、ずらっといろいろなレベルの市町村が存在するということから見ましても、この考え方を少し整理していただく、役割、権限等についても整理をしていただく必要があるんじゃないか、こう思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それから、先ほどからたびたび出てまいりました大臣のお考えで、「地方自治体の運営に住民の意思がより反映できるよう、住民自治の強化に向けた議会のあり方や直接請求、住民投票のあり方等について検討」する、こういうふうに大臣がおっしゃられました。先ほどから聞いていて、議会というものを軽視するというわけではなくて、新しい方向として、住民自治ということも一つのあり方をきちっと位置づけていきたいという意向のようですので、その部分はよくわかりました。

 住民投票については、投票の対象事項、発案権者、資格の範囲、それから投票の選択肢をどうするかとか、表決の方法とか、結果の取り扱いなどさまざまな設計が要るわけですが、この制度化については、投票結果に関して法的拘束力を持たせようと考えているのかどうかお伺いをしておきたいと思います。

片山国務大臣 これは先ほどもお答えしましたけれども、これからの検討の成り行き次第だと思いますが、私は、一定の場合、また一定と言いますけれども、物によって拘束力を持たすことがあっていいと思っております。

 現在の住民投票というのは、さっき言いましたけれども、幾つか法定されたものもあります。広い意味での住民投票といいますと、例えば最近名古屋で話題になりました議会の解散、リコールですけれども、投票であります。あれなどは法的拘束力があるわけですね。もし有権者の一定割合以上の署名を集めれば住民投票を行う、その投票によって解散が決まるということですから、拘束力があるわけですね。ですから、そういう先例もあるわけです。

 それから現実に、実は法定外といいましょうか、地方自治法にはないけれども、幾つかの自治体が自治基本条例というようなものを独自に定めまして、その中に住民投票制度を織り込んでいるものがあります。これをつぶさに見てみますと幾つかのタイプがありまして、法的拘束力を持たせる、それはいろいろ条文上の工夫があるんですけれども、事実上、法的拘束力を持たせるものもありますし、それからそうでないものもあるのが現状であります。そういうことも念頭に入れながら、関係の委員会もありますので、そこで学者、有識者の皆さんからも意見を聞きながら、これから検討してまいりたいと思っております。

西委員 今のお話ですと、国としてこの項目については拘束力を持たせるというふうに確定するのか、それよりも、法的拘束力を持たせてもいいというふうな自由度を地方に与えるのか、その辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。

片山国務大臣 それは、おっしゃるようなことは選択肢だろうと思うんですが、後者の部分、すなわち、国が法的にあれこれ書かなくても、自治体の方で独自に拘束力を持たせているケースがもう既にありますので、それは現行でもできるわけです、やろうと思えば。

 今回、国で考えるとすればむしろ、非常に重要な問題については、自治体の為政者の判断にかかわらず一定の場合には住民投票に付して、それに拘束力を持たせるということを制度設計すれば意味があるのかなと思っております。

西委員 よくわかりました。

 では、次に行きます。

 住民投票は、住民の声を直接反映できる、こういうメリットがございます。一方で表決の仕方に関しては、例えば過半数、五〇%以上を用いた場合、残りの四九%の反対の声は打ち消されるという問題を、もちろん表決の仕方にもよるんでしょうが、はらんでおります。つまり、住民投票といえども、過半数ということからすると、やはりそこに残りの人たちの存在というのはあるわけですが、現行の地方自治は間接民主制を原則として、それを補完する形で直接民主制の方法、つまり住民投票ということが採用されているというふうに思います。

 民主主義政治においては一対一の対話を徹底してやる、こういうことを通じて人々の意見を集約し、合意形成を図らなければいけない。議会もその一つだと思うんですが、そんな意味では、真に住民投票を生かすためにもまず議会を活性化する、このことが私は必要不可欠ではないかというふうに考えております。この基本的な枠組みについてどう考えているのかお伺いをしたいと思います。

 大臣が直接請求や住民投票という直接民主制の方法を挙げられる意味は、私は、直接民主制の方法を強化して、そして、その力でもって一方の地方議会の改革、意識改革等にも取り組みたい、そういうお考えも、意図も含まれているのかな、こう推察するんですが、その辺についてお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 地方自治を運営する場合に、やはり私は、基本は間接民主制だと思います。日常、平時においては議会で物事を決めていくということだろうと思います。

 ただ、もともとの原点に返りますと、国民主権でありますから、これは地方自治の分野でも、住民の方にもともとの権限はある、それを便宜上、今の仕組みの中で議会に預けているということだろうと思います。したがって、特定の場合、一定の場合には、住民の方に大政奉還というか部分的にお返しをするということがあってもいいのではないかというのが基本的な考え方であります。

 住民投票と議会と、どういう長所があって、どういう短所があるのかというのはいろいろな研究があるのでありますけれども、私は、住民投票について一つの欠点といいますのは熟議ができないということであります。最近、熟議の政治というのがよく取り上げられますけれども、やはり多様な意見を闘い合わせて、その中から、なるほどなといって合意を形成していくというプロセスが民主主義にとっては非常に重要だと思うんですけれども、住民投票の場合にはなかなかそれができなくて、賛否を問うということになりますからマルかバツかということで、余り多用すべきではないと思います。

 ただ、本当に重要な問題で、住民が直接タッチしたいということは私はあると思います。私も一人の住民として、余り大きな借金をするときはやはり住民、納税者の意見を聞くべきだと私なんかは思います。それからもう一つは、最近、議会と首長との対立が非常に顕著になってきて、さあどっちがどうするかといったときに、では最終的には主権者に聞いてみましょうというようなことがあってもいいのではないか。いろいろな意味で住民投票の有用性については感じているところであります。

 それから、もう一つ言われた、住民投票でも持ち出せば議会がしゃんとするのではないかというのは、これは副次的な効果としてあり得るだろうと思いますが、余り正面から言うことではないのかなと思っております。

西委員 地方分権、地域主権が今後進んでいくということは、これは当然のこととして、地方自治体が自分自身で決めていくことがどんどん多くなっていく、このことは間違いありません。そういう意味では、条例をつくったりという立法機能の強化というのも当然これから重要になってくると思いますし、議会の方でもそういう意識を持っていただかなければいけない、これは当然のことであります。また、地方分権によって執行機関の権限も一方ではふえますので、その監視機能についても議会の方も充実していく必要がある、こう思います。

 ところが、地方議会については、立法機能と行政への監視、評価機能がまだ十分に育っていないというかまだ機能していないという、先ほども大臣、若干そのことにも触れられましたけれども、そういう批判がございます。地方議会の中にはそうした批判を真摯に受けとめて、みずから改革に取り組んでいこうという意欲のある議会も最近は登場してまいりました。

 しかし、地方議会は頑張って自分たちでやっていこうと思っても、予算の修正、議決事件などで制度的にさまざまな制約をまだ受けているということ、また、条例をつくろうと思っても立法に対してスタッフが十分でなくて、議会事務局なんかも、なかなか調査それから法制ということについては十分な対応ができない、こんな状況にあるということも事実でございます。

 こうした地方議会に関する制約、それから不十分な体制についてどのような認識をお持ちか。そして、議決事件の拡大を図る地方自治法の改正案が示されておりますが、さらに、地方議会を活性化させる観点から地方自治法などを見直すお考えがあるかどうか。こういうふうに御質問しようと思っていたんですが、たまたま、これはきのうの読売新聞の夕刊ですね、「地方議会の会期 撤廃検討」、こういうお話も、これは総務省という主語ですが、会期撤廃に向けた検討に入る、議会の自由度を高めるとともに住民参加をさらに促す、活性化を図るということが出ておりました。このことについても、もし何かコメントがあったらお願いをいたしたいと思います。

片山国務大臣 議会についていろいろ当事者の皆さんから、私も、現行の制度とか運用について、改正とか改善について伺うことが多いんです。ただ、私が鳥取県で八年間知事をやりまして議会といろいろなやりとりをした経験からいいますと、議会は現行制度の中でもやれることがいっぱいありますから、もっと努力をしていただきたいというのが率直なところであります。

 それはなぜかといいますと、例えば、さっきも議員がおっしゃいましたけれども、予算の修正権が制約されているということなんですが、必ずしもそんなことはありません。予算の提案権は長にある、これは一つの割り切りだろうと思います。でも修正権は議会にあります。減額修正、私なんか何回もやられたことがあります。増額修正は一定の制約があって、予算の提案権を侵さない範囲というのがありますから、財源をちゃんと明示しなければ増額修正してはいけない、これが多分制約だろうと思うんですけれども、それは当たり前だろうと思うんですね。それを除けば、議会は予算の決定権者でありますから、予算の修正はできます。

 この間もある方が来られて、予算の修正ができないのを何とかしてくれと言われて、そんなことだれに聞きましたと言ったら、事務局の人に聞いたと。だまされているんですね。そういうことがあってはいけないと思います。

 それから、条例をつくろうと思っても事務局にスタッフがいないではないか、これは多くの議会で現実であります。私が鳥取県で知事をやっておりましたときに、議員の皆さんがこういう条例をつくれと言われるものですから、条例をつくるのは皆さんの仕事じゃないですかと言い返しましたら、だって我々のところには法制執務にたけた人がいないと。こういうことがあったものですから、早速、県職員の中で一番法制執務にたけた職員をトレードしました。そうしたら、どんどん議員立法が出てくるようになりました。私は、議会が主導権をとってそういうことはされたらいいと思うんです。

 それから、鳥取県議会のことを申しますと、議会事務局を強化しなきゃいけない、その際に、知事部局から人をもらうのであれば知事に従属したことになるから、それはまかりならぬということで、実は当時の議長が参議院にかけ合いまして、参議院の事務局から優秀な職員をスカウトしてきました。非常に立派だと私は思いました。そんなことをやれば、今の議会の現行の制度の中でも相当力をつけることができます。

 ただ、幾つかありまして、例えば専決処分というのは最近鹿児島県の方で話題になりましたけれども、やはりこれは少し整理をする必要があるだろうと思います。

 それから会期制というのがありまして、これは国会もありますけれども、地方団体の場合は定例会を年に四回以上ということになっていますけれども、これらも非常に、会期がありますと、例えばサラリーマンの方は議員には事実上なれないわけであります。その間、一週間なら一週間みっちり出なきゃいけませんから。これが北欧型になりますと、夜やる、夕方やる、会期はないんです。そうなりますといろいろな人が出やすくなるという意味で、議会の活性化にも役に立つだろうということで、そういう検討になっているんです。

 そういう法律制度を変えなきゃいけないことは、これから鋭意検討して、随時法律改正に持ち込んでいきたいと思いますけれども、さっき言いましたように、やれることは幾らでもある、それをまだ使っていないというのが私の認識でありますので、どうか地方議会の皆さんには頑張っていただきたいと思っております。

西委員 次のテーマが地デジその他あるんですが、これだけお願いしましょうか。ちょっと地方議会のことから離れます。地デジのことについてお願いをしたいと思います。

 地上デジタル放送対策に関して補正予算が出ましたが、家電エコポイントの延長、それから低所得世帯への支援拡充などが盛り込まれようとしております。

 まず家電エコポイントについては、年末から来年三月三十一日というところで再延長されましたが、ことしの十二月からはポイントが半分、それから対象も五つ星というふうに限定されております。これも買いかえのみということで限定されております。

 家電エコポイントは地上デジタル放送移行の来年七月まで延長すべきではないか、私はこう思っておりますが、いかがでしょうか。お答えください。

平岡副大臣 お答えいたします。

 家電エコポイント事業については、委員御案内のとおり、環境対策あるいは景気対策というものがまず根底にありまして、地上デジタル対応テレビの普及ということも目指しているわけですけれども、あくまでも環境対策、景気対策というものに基盤があるということであります。

 他方で、財政制約がある中で、国費で下支えをしていくという政策をどの時点で終了させるかというのはかなり総合的な判断を要する事項であるということで、今回は来年の三月三十一日までというふうにさせていただいたわけです。

 委員が御指摘ありましたように、デジタル対応テレビについては、デジタルへの完全移行が来年の七月までということであるわけですけれども、我々としてはできるだけ早くデジタル対応をしていただくことが必要だというふうに思っています。というのも、例えば、チューナーを入手して映してみたらアンテナ工事がやはり必要だったということで、その時点からアンテナ工事をするということになると間に合わないというようなこともありますものですから、我々としてはできるだけ早くデジタル対応をしていただきたいという気持ちがこもっています。

 そういう意味で、我々としても、三月三十一日の終了というところでデジタル対応はしっかりやっていきたいし、ほかのデジタル家電の景気対策あるいは環境対策というものもその時点で終わるということなので、あえてデジタル対応テレビについて七月まで延期するということにはしなかったということでございます。

西委員 これは、私は、国民の考え方を必ずしもベースに置いていない。政府の思いは、それはわからないではありません。早く切り上げて、そこからまた細かなことをやっていこうというのですけれども、国民の皆さんの思いはやはり七月に切りかわるということですから、そこはもう少し考える必要があるのではないか。三月が終わって果たしてどうなるかということを考えたときに、やはり七月までまた何らかの対応をしなければいけない事態が来るのではないかというふうに思います。

 もう一つ、時間がありませんので質問になりませんが、低所得者への対応にしても、チューナーだけ郵送する、後は聞きたければ電話で聞いてこい、アンテナは欲しければ自分で買ってこい、こういうことに今なろうとしておりますが、私は、全く低所得者の皆さんの立場に立った対応ではない。このことについては、また時を改めて御質問も申し上げたいと思っております。

 以上で終わります。

原口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 冒頭に一言申し上げたいのが、この総務委員会の運営の問題であります。

 この一年間の総務委員会というのは異常な事態でございました。昨年の臨時国会でも、冒頭のこの大臣所信の質疑の場そのものがなかった。強行採決も行われた。ことしの通常国会においても、放送法と郵政改革法案が連続して強行採決が行われた。こういう異常な運営は決して行わないということを委員長並びに与党の皆さんに改めて申し上げるものであります。

 あわせて、委員長の職におかれましては、総務大臣から委員長につかれたわけであります。そのような人事はあり得ることだと思いますけれども、総務大臣が提出された法案をそのまま委員長の職で担当する、そういう法案が合計七本もあるわけですね。こういった前例というのは私は承知をしておりません。そういう点でも、みずから出した法案を委員会で審議をする、その職に当たる委員長として、また委員長自身がおっしゃった公正、公平円満な運営ということについて、ぜひとも留意していただいての対応を改めてお願いをするものであります。

 早速質問させていただきます。

 きょう私がお聞きしたいのは、いわゆる通達行政という言葉に象徴されるような地方に対する国の方針の押しつけ、この是正を求めるという立場から質問をいたします。

 片山大臣は、国会の場や、あるいは政府のさまざまな審議機関などにおいても発言をされておられます。そういう中で、例えば二〇〇七年九月十八日の地方分権改革推進委員会におけるヒアリングで、以下のように述べておられます。

 第一次分権改革での最大のポイントは機関委任事務の廃止。しかし、現実はどうか。通達行政だらけである。何も変わっていない。助言というが、中身は通達。この分野で一番行儀が悪いのは総務省。本来、率先してモデルを示すべきであるのに、一番悪いモデルを示していると述べておられます。

 そこでまず、前置きといいますか、お聞きしたいのが、国が一律に地方を縛る仕組みとなっていたいわゆる通達行政というのは、総務省に限らず、国としてきっぱりと断ち切るべきだと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

片山国務大臣 通達行政はきっぱり断ち切るべきだ、こうおっしゃいましたが、そのとおりなんですが、通達行政はもう終わっているんです、法制的には。

 二〇〇〇年から地方分権改革推進一括法が施行されまして、それ以前は、さっきおっしゃった機関委任事務というのが厳としてありましたので、機関委任事務というのは、釈迦に説法ですけれども、国と自治体との間、自治体の長との間に上下関係がありましたから、まるで上司と部下との間柄のように通達があり得ました、拘束力もありました。それが、国と地方自治体とは対等の立場になったのが二〇〇〇年の四月からでありまして、この時点で上下関係はなくなりましたので、基本的には、法律には縛られる、国法には従わなきゃいけないけれども、紙切れでありますとか電話でありますとか、そういうものには拘束されないということになりましたから、その時点で通達行政は終わっております。

 ところが、従来と似たような文書が流れてくるというのが現実でありましたので、先ほど、私が分権推進委員会で申し上げましたようなことになっているわけであります。ただ、これはもともとが無効でありますので、受け取り手の方に実は主眼がありまして、私などは、受け取り手として必要なものはアドバイスとして受け入れましたけれども、そうでないものは無視したり反論したりしておりました。専ら受け手の方の対応が重要ではないかと思います。

塩川委員 受け取り手の対応が重要なのはもちろんそのとおりですけれども、しかし、そもそも総務省の方がいわゆる通達行政と言われるような、従来と似たような形での文書を出してくる、それが結果として金科玉条のように扱われるという事態にもつながっているという点では、まず総務省の方の自制が求められているわけです。

 その関係で申し上げたいのが、地方税の使い道に国が口を出すようなことをやっていた。その例として運輸事業振興助成交付金のことをお話しして、質問したいと思います。

 二〇一〇年四月一日付で、総務副大臣から各都道府県知事あての「運輸事業振興助成交付金について」という通知が出されているわけですけれども、それに関して片山大臣が、当時、週刊ダイヤモンドで紹介をしておられます。

 その週刊ダイヤモンドの記事を読み上げますと、「内容を要約すれば、各都道府県に入ってくる軽油引取税の税収の一定割合の額を、運輸事業振興助成交付金という名の下に各都道府県にあるトラック協会などに交付せよというものである。」「そもそも都道府県が徴収する軽油引取税の税収の一部を誰それに交付せよなどと、総務省が指示あるいは要請することなどもってのほかである。地方税である軽油引取税の税収を何に使うかは、各都道府県が決めることであって、総務省が決めることではない。」このように述べているわけです。

 ですから、国は、このような助言という形で自治体に対して地方税の使い道を指示するようなことは決してやってはいけないことだ。しかし現に行われている。このことについてはどのように受けとめておられますか。

片山国務大臣 この通知といいますか、お手紙が出ていることは事実でありまして、これをどういうふうにとらまえるかということでありますけれども、さっき申しましたように、通達行政というのはそもそももうなくなっておりますので、指示だとか拘束だとかということはありません。ですから、法的に整理をすれば助言ということになるんだろうと思います。助言でありますから、受け取った方がそれをなるほどと思って従うか、それとも無視するか、それはもう勝手であります。

 実は、これは昭和五十年代からこの仕組みがありまして、それがそのまま続いているんだろうと思いますけれども、二〇〇〇年の四月という先ほど申しました時期を境に、それまでは一定の有効性はあったと思います。ところが、それ以後は拘束力はありませんので、自治体の方の自由な判断によればいいということであります。現に、私が知事をやっておりましたときにそういう通知が来ましたけれども、それとは違った予算編成をやりました。それで何の問題もありませんでした。

 ですから、もっと自治体の皆さんが、助言は助言として、どういうふうに自分で自主的に処理するかということを考えていただければと思います。

塩川委員 これは週刊ダイヤモンドの記事を紹介しましたけれども、同趣旨のことは五月十八日の行政刷新会議の場でも述べておられます。

 片山氏は、国は通達で自治体に対して金の使い道を指示することはやってはいけないんですと言っているんです。そういう指示を出すような文書を出しているというわけですよ。ですから、こういう文書は撤回をするということでよろしいんですよね。

片山国務大臣 私が大臣になりましたので、自今、そういう紛らわしいものは出すつもりはありません。

 過去出したものはどうかといいますと、これは法的に整理すれば、さっきから申し上げておりますように助言でありましたから、助言というのは、ちょっと例が悪いですけれども、ネクタイの趣味が悪いですよとかそのたぐいの話ですから、それを、過去言ったものを撤回するということは理論的にはあり得ないんだろうと思います。

塩川委員 いや、現状で交付金の扱いについては、地方税の一定割合について数値を掛けてその額を交付してくださいよという要請になっているわけですよ。そういうことそのものは、もう今後やらないということでよろしいわけですか。

片山国務大臣 私は、助言というのはこれからもあると思います。純粋な助言というのはあると思いますけれども、拘束力を持つかのごとき錯覚に落ち込むような、そういうものはやるつもりはありません、私自身については。

 過去のものについては、これは助言というふうに整理するしかありませんので、助言の撤回というのはないんだろうと思います。助言は、聞くか聞かないかは自由でありますから。

塩川委員 この行政刷新会議のやりとりというのは、もともと片山さんがこういう発言をして、それを受けて、当時原口大臣も答えているわけですよ。

 もともと、こういう通知というのはやるべきじゃないということを、一貫してこれまでも片山さん自身もおっしゃっておられたわけですよね。ですから、それを受けて原口大臣の方も、この五月十八日の行政刷新会議の場で、新政権においても結局はこういう通知が出てしまった、「これは党からの要請で、私が消したのが復活したんです。あのときに片山議員に言われて、もともとこういうものを全部なくしなさいと、通達、党の方が官邸やいろんなところに持ち込んで、これだけは激変緩和で残せということで出ておるわけでございます。」こんな言いわけといいますか、説明をしておられるわけですよね。

 それは、片山さんがそのように、こういうことはやってはいけないんだと言ったことに対して、原口大臣が、いや、党の事情で出すことになってしまったんですという説明をしているわけですよ。こういうことについて、過去の話ではなくて、やはりやってはいけないことをやってしまったという事情についてきちんと検証する必要があるんじゃないですか。ですから、片山大臣がこの行政刷新会議の場で、「党から言われてもやっていいことといけないことがあるんです。」というふうに言って、「通達で自治体に対して金の使い道を指示するということはやってはいけないんです。」と繰り返して言っているわけですから、こういう立場で検証したらどうですか。このような経緯について国民の前に明らかにすべきだ。

 いわゆる通達行政の実態も精査をして必要な是正を行う、みずからの言明に沿ってやっていただきたいんですが、いかがですか。

片山国務大臣 自治体を拘束するようなことはやってはいけません。拘束するのは法律だけであります。ですから、そもそも、拘束をするという意思で仮に出したとしてもそれは無効になるわけです。

 ですから、今出されているものは、そうではないというふうに観念するしかないのであります。ならば、どういうふうな整理になるかというと、それは技術的な助言ということになるわけです。そうすると、それには拘束力もありません、従う義務もない。自治体の方で判断をされるということであります。そこから導き出されるのは、そういう過去の助言について撤回するとかということは多分なじまないだろうと思います。

 ただ、二〇〇〇年以来、どんな通知が助言として出ているのかというのは、私もそれは関心があります。ですから、今度私の新しい職責として、悉皆調査というのはちょっとなじみませんけれども、折に触れて各省がどんなものを出しているのかということを点検して、紛らわしいものについては注意を与えていくということはしたいと思います。思いますが、しょせん、どんなものが出ても法律に書いてないものは助言ですから、そういうふうに自治体には、ぜひこの際、割り切っていただきたいと思います。

塩川委員 ですから、そういう通知を出すぐらい、それこそ助言でやるべき話であって、今言ったように、地方税の使い道について国が口を挟むようなやり方はおかしい、それはまさにそのとおりであって、そういう立場で総点検を、国のいわゆる技術的助言、通知類について、総務省に限らずしっかりやってもらう。今お話ししたように、必要な検証などはぜひやっていただきたいと思っております。

 その上で、このような国の方針を地方に押しつけるやり方というのが、地方行革の押しつけという形でもあらわれているわけです。

 冒頭紹介した二〇〇七年九月十八日の地方分権改革推進委員会でのヒアリングでは、片山さんは、通達行政で一番行儀が悪いのは総務省、本来、率先してモデルを示すべきであるのに、一番悪いモデルを示している、一番の悪例は集中改革プランの作成通知、こういうふうに述べて、総務省が悪い例を出しているというふうに具体的に言っているわけですから、そういう立場で総務省の必要な是正をやっていただきたいと思っているわけです。

 その上で、では、なぜ集中改革プランが一番の悪例かということについては、大臣は、一律主義、画一的、このようにして地方団体に施策を押しつけると大変大きな弊害を生むということをこのときにも述べておられたわけですね。それは当然の指摘だと思います。

 その関係で、地方行革の押しつけの事例として、技能労務職員の削減問題を私は取り上げたいんです。

 今、技能労務職員、清掃職員や学校用務員や学校給食員を初めとして、十五万人の方がいらっしゃいます。それぞれの業務で公務の特殊性を踏まえた仕事に当たられておるわけですけれども、行革の新方針や行革推進法、骨太二〇〇六などを踏まえて行われた二十一年度地方財政の運営についてという事務次官通知に、定員管理関係の記述があります。

 その中では、骨太二〇〇六を踏まえたような定員純減を求めるというのとあわせて、新地方行革指針に基づき、「事務・事業全般にわたり総点検を実施するなど、民間委託等を推進されたい。なお、技能労務職の採用に当たっては、真に正規職員でなければ対応できないものであるか等について十分検討されたい。」と、この事務次官名での文書に書かれています。幾つもの職種がある中で、技能労務職員だけを具体的に例示をして、正規採用について十分検討しろということを求めているわけです。

 そこでお尋ねしたいのが、全国の自治体に対し、いわば画一的に技能労務職員の正規職員採用についてはよく考えろ、こんなことを言うのはおかしいんだと思うんですが、いかがですか。

片山国務大臣 そのときに、その文書を発出した人がそういう助言をしたんだろうと思います。それには、その人が感じている自治体の人事管理の実態というものがあったんだろうと思います。あくまでもこれも助言でありますから、拘束力はないと思います。

 ちなみに、私はそういう助言に従ったわけでは決してありませんけれども、自分で知事をやっておりまして、やはりいろいろ気がつくことがありました。

 その一つは、技能労務職員の給与というものが、県庁職員の中で比較をするとそんなに高いとは思いませんけれども、同種の民間企業の従業者に比べると非常に高い、それから国家公務員の同一職種の人に比べても相当高いという認識がありまして、これは議会でも相当議論になりまして、二十数%の単価の削減をやりました。労働協約が結べない状態が数年間続きましたけれども、そういうことをやりました。

 それから定数も減らしました。それは国に言われたからでは毛頭なくて、鳥取県の実情を見て、ふさわしい人数よりも多かったものですから、やはりそれなりに減らしました。

 行革というのはそういうふうに、私がやったことが一番いいと申し上げるつもりはありませんけれども、国からやいやい言われてやることではなくて、自分のところで仕事の量とか、それから給与でいえば、民間とかその他の同種の人と比べてどうかということを自主的に考えてやるべきことで、国が一律にやれというものではないと思います。

塩川委員 一律にやれと言うべきものではないということなんですが、この技能労務職員については一律の、正規採用の抑制についてよく考えろという画一的な対応をしているわけですから。

 では、改めて聞きますが、この技能労務職員の正規採用については国が物を言う話ではなくて、各自治体の判断で行うのは当然のことだと思いますけれども、いかがですか。

片山国務大臣 職員の採用でありますから、これは自治事務の最たるものであります。自治体がみずからの判断で決めることであります。

 ただ、国としてずっと自治体を鳥瞰図的に見た場合に、どうもこれは非常に無駄が多いとか、傾向としてこの分野に無駄が多いというようなことがあった場合には、それについて何らかの助言をするということはこれからもあるだろうと思いますけれども、しかし、何度も言いますけれども、それはあくまでも助言でありまして、あくまでも、それを受け取った自治体側は主体的、自主的に考えればいいということであります。

塩川委員 この技能労務職員の扱いの問題について、総務省からある県に対して、技能労務職員である自動車運転手や用務員は淘汰されていく職だ、ここまで言っているという話を聞いているわけですよ。これは技術的助言という形で行われているんですけれども、これは余りにも行き過ぎなんじゃないのか。

 こういう実態について、どのように受けとめておられますか。

片山国務大臣 どういうやりとりがあったのかわかりませんし、真偽のほどはよくわかりませんけれども、あくまでも、その必要性に応じてそれぞれの自治体が判断すべきものでありまして、淘汰されるべきものとか、雇うべきものでないということを言うことはないと思います。

塩川委員 いや、実態はそうなっているわけですから。こういった技能労務職員は淘汰されていく職などということを自治体に押しつけるべきじゃない。こういった地方行革の押しつけの実態についても、きちんと調査して是正をすべきだと思います。

 こういう技能労務職員の正規採用の抑制というのは民間委託の推進と一体で行われているわけですよね。これは行革推進法で枠がはまっている。行革推進法の五十五条で、地方公務員の人員等の削減について掲げられているわけですけれども、その中に民間委託の推進もあるわけです。人員の削減について言えば、これは二十二年の四月一日までで、一応時限措置で区切りがありますけれども、民間委託の推進という五十五条の四項というのは今も生きているわけですよ。これとセットになって、結果として技能労務職員の正規採用抑制とか、淘汰されていく職とか、こういうことを総務省の方が言っているわけですから、こういったあり方そのものを大もとから是正することが必要だ。

 私は、行革推進法そのものも廃止が必要だと思いますし、こういった押しつけを決してやらないということについて、改めてこのことを強く求めたいと思うんですが、一言、大臣に伺いたいと思います。

片山国務大臣 私の経験からいいますと、技能労務職員を民間委託に出せ、これは総務省も言っていたと思いますし、各自治体でもそういう方針をとったところが多いんです。

 それはなぜか。なぜ、技能労務職員だけをそういうふうに目くじらを立てて民間委託とか採用抑制をやれと言ったか、そういう動きがあったかといいますと、さっき私が率直に申し上げましたけれども、国家公務員の同種の職種に比べて、鳥取県の技能労務職員の給与が非常に高かったです。地域の民間企業の同種の職種、従業員に比べても高かったです。そこが例えばリーズナブルな賃金体系になりますと、何も民間委託に出す必要はないんです。それが、いろいろな事情で給与の単価を下げられない。それならば安い民間の方へ出してしまおう、こういうことになってしまうんですね。鳥取県の場合には単価を二三%か四%下げまして、したがって民間委託に出さなくても、リーズナブルな給与体系でもって職員として勤めてもらえるということにしたわけです。今はどうしているかわかりませんけれども、私が知事をしていたときはそういうことなんです。

 ですから、それは管理者の側の問題だけではなくて、やはり労働者側といいますか、組合の皆さんも考えるべきところがあると私は率直に思います。

塩川委員 給与体系の問題については、技能労務職員の特殊性や地域の実態を踏まえて決定されるべきものだ、一律のものではない。あわせて、この間、実際の民間委託というのが、現場では偽装請負などの違法行為にもつながっているわけですから、そういった違法行為をまかり通らせるような民間委託の推進をやってきたことそのものの総括が必要だということも申し上げなければなりません。

 地域主権改革は、地方行革押しつけの自公政権の地方分権改革を継承しているものだと言わざるを得ない。地方行革押しつけの大もとにある構造改革路線こそ転換すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

原口委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野であります。

 質問に入る前に、先ほど来もお話がありましたが、今回の鹿児島県奄美地方での集中豪雨災害で亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。と同時に、被害に遭われたすべての方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 これに関連して、災害に係る特別交付税の繰り上げ交付、速やかに繰り上げ交付をすべきではないか、このように思うんですが、まずこの点について大臣の見解を伺います。

片山国務大臣 これはもう報道でも、それから報告も受けておりますけれども、さらによく報告を受けて適切な対応をしたいと思います。

重野委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、まず、大臣が所信でも強調されました、地域主権改革を引き続き推し進めていくということであります。

 現在、自治体は二元代表制をとっている。現状では首長の方が圧倒的に強いと言わざるを得ない。鹿児島県阿久根市の問題あるいは名古屋市の問題でも、首長が独走して議会がそれに有効に歯どめをかけられない、こういう現状にあるわけです。

 大臣は記者会見などで、阿久根市の市長が行った専決処分について、違法であるとの認識を持っている、こういうことを述べておられます。二元代表制という観点から見た場合、現在の地方自治法で定められている議会と首長の関係が果たして適切なものなのかどうなのか、この点について、まず大臣の考えをお聞きいたします。

片山国務大臣 我が国の地方自治法は二元代表制を採用しておりまして、私は、その仕組み、制度自体はかなりいいものだろうと思っております。私も、その中で八年間、一方の当事者として行政をやってまいりまして、その二元代表制の仕組みに大きな違和感とか、そんなことを感じたことはありません。もちろん修正すべき点とか改善すべき点は多々ありますけれども、致命的な欠陥はないと思います。

 ただ、昨今の幾つかの自治体を見てみますと、どうもその二元代表制の趣旨というものを必ずしもよく理解しないで、乱暴な運用がなされている面があると思います。こういうのをどうするのかというのは、直ちに制度改正ということではないと私は思いますけれども、よく当事者の皆さんは二元代表制の意味をわきまえていただきたいと思いますし、それから、何よりも住民の皆さんがそのことをよく熟知していただく、そういうことが必要なのかなという印象を最近持っております。

重野委員 今大臣が指摘をしました阿久根の問題にも、それから名古屋の問題でも、看過できない内容を包含しているという認識では一致するんだろうと思います。

 今、テーマになります地域主権改革、この中で大幅な権限の移譲が予定されている。地域の住民がみずから考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負う、大臣のこういう発言がございますけれども、この言葉は私はまさに正論だというふうに理解をいたします。

 ただ、一方でさまざまな危惧も持つわけですね。例えば、特に福祉の規制が緩められる、国が定める最低基準が緩められると、結果的に、私は、福祉が後退してしまうのではないかという感じがします。やすきに流れて縛りが緩む、そういう結果になるのではないか。

 一つの例えでありますが、地方自治は民主主義の学校だという有名な言葉がございます。阿久根市や名古屋市の議会と首長の対立は、民主主義の学校というには余りにもお粗末と言うほかはない、私はそのように断言するわけですね。地域住民がみずから考えて主体的に行動するための制度の確立が必要なんだ、首長が独走し、それをとめる手だてがないままに、その行動と選択に住民は責任を負わなければならぬと言われてもこれは非常に難しいんではないかというふうに考えるんですが、大臣のそのあたりの認識についてお聞かせください。

片山国務大臣 首長の暴走をとめる、その手だては何かということなんですけれども、例えば阿久根市の場合ですと、議会を開かないというような暴挙に出たわけです。議会を開かない民主制というのは、私はあり得ないと思います。ところが、そこを閉じてしまったということです。それをどうするかということですが、いろいろやり方は本当はあったと思います。

 今、確かに招集権は市長にしかありません。ですから、議会が正式に議会をみずから招集するということはできないんですけれども、しかし、本来議会を招集しなければいけない長が何にもしない、サボタージュしているわけですから、そうなれば、その違法状態に対して緊急避難的に議会が自主的に集まるということは、私はこれはあり得るんだろうと思います。

 もちろん、それは正式な招集ではないということになって、そこで、その議会で決められたことの効力が問われることになりますけれども、そもそも開くべき市長が開かないということの違法性と、それから招集権のない議会がみずから招集したということの合法でない状態と、どちらがより重大な違法かといったら、明らかに前者だと私は思います。そこで、議会の自主招集なども違法性が阻却される可能性が裁判では高いと私なんか思っているものですから、ちょっと失礼ですけれども、対抗手段として議会の皆さんがもっと知恵を使われたらいいのではないか。

 というのは、地方自治法というのは、森羅万象あらゆることに対応すべく事細かく書くことは不可能であります。どうしても法の欠缺といいますか、法の不備といいますか、そのはざまというのは出てきますから、そこはやはりそれぞれお互いの努力とか知恵とか工夫とか、バトルになるかもしれませんけれども、そういう努力が必要なんではないかと思います。

 あとは、住民の皆さんも、市長のそういう違法行為に対しては対抗手段はあります。現に市長のリコールということを発議されて署名も集められたわけでありますから、そういう意味では、私は、住民の皆さんに押しつけるのはおかしいじゃないかと議員は言われましたけれども、阿久根の場合には住民の皆さんが率先してそういう違法状態を正すような行動をとられているということはよく認識しておく必要があるだろうと思います。

重野委員 はい、わかりました。

 そこで、質問の趣旨をちょっとかえまして、原口前大臣のもとで、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム、通称ICTフォーラムがスタートしたんですね。これに対する大臣の考え、それから現在このフォーラムでどういう程度の検討がされているのかということ、そしてこの答申を受けて大臣は今後どのように対応されていくつもりなのかという点についてお伺いいたします。

片山国務大臣 御指摘のフォーラムは、まさに原口前大臣のもとに始められたわけでありまして、ICT分野における国民の権利保障などのあり方について御議論いただくということで、去年の十二月からこの議論が始まっております。

 非常に多様な専門家とか識者に集まっていただいておりまして、その中で自由闊達に幅広く議論をいただいておりまして、近く取りまとめの段階になると伺っておりますので、その取りまとめを受けて、それをどういうふうにこれからの行政に反映させていくかということはよく検討してまいりたいと思います。

重野委員 私が主張したいのは、放送法という大きな法律、前国会からこの委員会でもけんけんがくがく議論をされた、いろいろな経過がある重要な法律であります。この法律の改正については、今言うこういうフォーラムが検討されている、そういうものに対する答申が当然出てくるんだろうと思うんですが、その答申を受けてからじっくり議論してもいいのではないかというふうに私は思うんです。それが一つ。

 それからもう一つは、この放送法に対する大臣の構えであります。前国会の経緯があるということは大臣も、当時は当事者ではなかったんですが、その後、経過は十分承知をしていると思うのでありますが、そういう経過があり、私は、やはりこの法案はこの委員会でしっかり議論をしてもらう、そういう構えを大臣は持つべきではないのか。そういう議論を尽くした中で結論を出していくんだ、そういうこの法案に対する大臣の構えというものを私は強く求めておきたいと思うんですが、この点について大臣の考えをお聞かせください。

片山国務大臣 一つは、このICTの権利保障フォーラムの結論といいますか方針を受けてから放送法の改正をやったらいいんではないかという御趣旨でありますが、どういう報告が出てくるかによりますけれども、報告の内容によっては放送法などの改正に結びつくものもあるかもしれません。

 ただ、今回出しておりますのは、これは御承知のことと思いますけれども、それとは関係のない、とりあえず急ぐものが幾つかありまして、放送の参入に係る制度の整理統合、弾力化でありますとか、通信・放送両用無線局の制度の整備でありますとか、そういうものがありまして、これらについては早く御審議をいただいて結論を得たいということであります。

 その際に、今議員がおっしゃいましたように、よく議論していただきたい。これは当然であります。これは議論していただくために国会に出しているわけでありますから、その議論によってこの法案の決着といいますか行方も決まると思いますので、当然、所管大臣としてはそれに従いたいと思います。

重野委員 最後に、KDDI国際オペレータ通話廃止問題。

 これは、私はずっと原口大臣にもお願いをし、大臣もしっかり受けとめて頑張ってくれたという点については、原口前大臣に私は敬意を表したいと思うんですが、残念ながら、KDDIはこの十月で廃止をするということになっております。

 そこで、私たちはここに働く皆さんといろいろな交渉の橋渡し役を務めているのでありますが、なかなか話がうまく進んでいない、意見が食い違っているんですね。

 ただ、私は、やはりこのことによって、相手国での番号調べあるいは言語援助、こういうふうなものが著しく制約されているというふうに聞いている。これは利用者にはね返ってくる問題ですから、そこ辺はどのように受けとめて、どういう対策を講じようとしているのかということが一つ。

 それから、国際通話の保障のために国の補助をもっとやるべきじゃないかという提案をした。これについては、下支えができるという立場において検討をさせてもらいたい、これが私と原口大臣とのやりとりでございました。そこ辺についてはどういうふうに検討されているのか。

 その二点、お伺いします。

片山国務大臣 これは、私が大臣に就任してからも一部、関係の方からお話を伺いました。伺いましたが、例えば外国オペレータへの言語援助などでありますけれども、著しいサービス低下を招くことはない。もし非常に著しいサービス低下を招くようなことがありましたら所管官庁として何か物を申し上げるということもありますけれども、今のところそういうことはないというふうに伺っております。

 それから、先ほどの下支えということについても、原口前大臣との間にやりとりがあったということでありますけれども、現時点で、私の認識としては、とりあえず国としてサービスの維持、継続について下支えをする必要性が今あるとは考えておりません。

重野委員 今の点については、極めて私は不満な回答である。今後いろいろな場でこの問題については要請してまいりますので、よろしく対応のほどお願いいたします。

 以上で終わります。

原口委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 片山大臣、また政務三役の皆さん、御就任まことにおめでとうございます。総務行政、特に地方自治等々に大変高い見識を持つ片山大臣の就任は、ある意味では大変喜ばしいことだというふうに思っております。

 また、私たちの目から見ると、この一年間、現政権、民主党中心のこの政権は、例えば公務員制度の改革一つをとってみても、いわば間違った方針を推し進めてきたというふうに認識をしております。こういうこれまでの方針を大きく転換していくためには、同じ政権内で責任を共有してきた立場の方が就任をしていてはなかなか否定ができない、そういうことになると思いますので、今回、ある意味政権の外側から、知事を経験した立場で片山大臣が就任をされたということで、これからの民主党政権の施策が根本的に変わっていくことを期待したいというふうに思っております。

 まず、公務員の天下り、裏下りの問題について少し触れたいというふうに思います。

 この間、国家公務員法の改正案の審議などを通常国会で行ってきて、さまざまな事実が明らかになってまいりました。とりわけ、政権交代をしてからもう今や十三カ月になりますが、ことし八月の時点で、現政権になってから既に千五百九十人もの人に退職勧奨を行って、そしてこの退職勧奨を拒否した人がたった二人だ、こういう事実が明らかにされております。

 今まで、政権内の政務三役の皆さんも例えば国会で答弁をされて、天下りがなくなれば、肩たたきを行って、退職勧奨に応じて退職をしていくという人は極めて限定的になるはずだ、こういう話をしてこられたはずなんですが、結果として、天下りは根絶をしたと言いながら、千五百九十人もの人に肩たたきを行って、ほとんどの人が、ほぼ一〇〇%応じて退職をされておられる。これは、結果的には水面下でさまざまな天下りのあっせんに相当する行為があったのではないかということを常識的に考えると推認せざるを得ない、私たちの立場から見ればそのように思っているわけです。

 先日の予算委員会で片山大臣もこの点を問われまして、何らかの以心伝心、問わず語りはあったのではないか、こういう御答弁をされておられました。この点は私たちも率直に評価をしたいというふうに思いますけれども、これまでの政府の答弁としては、例えば国家公務員法の改正案の審議における総務大臣政務官の階委員の御答弁で、「いろいろ役所の慣行で、声をかける、肩をたたく際に、この人だったら応じてくれるかなというところをまず大体見た上で声をかける。また、声をかけられる人も、自分の先輩とかを見ながら、そろそろ自分も声がかかりそうだということは何となくわかるんだそうです。そういう中で退職勧奨というのが行われるので、必然的に断る人は少なくなる、」こういうことをおっしゃられていて、要するに、事実上、水面下の天下りあっせん、こうしたことについてはなかった、なかった中で千五百九十人中千五百八十八人が勧奨退職に応じている、こういう御答弁を繰り返されてきたんですけれども、この考え方を片山大臣は引き継がれるのかどうか、ぜひまずお伺いをしたいというふうに思うんです。

片山国務大臣 新政権になってから勧奨退職に応じた人が千五百数十人ということで、これを私もちょっと調べてみましたら、過去に比べるとかなり減っています。やはり天下りをさせないということで、新しい政権でそういう方針が出ましたので、勧奨退職、肩たたきの数は相当減っている。しかも、千五百人の中で実は七百人近くは社保庁の廃止に伴う退職でありまして、これを引くと千人未満になるわけです。なおかつ、これも、私も調べてみましたら、地方の出先機関の例えば女性の職員などで、定年まで働かなくて、もうやめるという人も結構おられるんです。

 ですから、改めて調べてみましたら、昔に比べると本当の意味の肩たたきというのは随分減っているなというのは言えると思います。

 では、しからば、さりとてそういう人たちが全部政府の天下り禁止の方針にそぐっているかどうか、これは常に私は点検しなければいけないと思うんです。表面的な天下りはやめている、これは確かであります。あと、別のルートで何か天下りらしきものがあるのではないかというのは、これは今のところないということになっていますからそうだと思いますけれども、でも、ありはしないかという懸念を持って常に当たっておかなければいけないと私は思うのであります。そういう意味で、必要な調査などもこれからやっていきたいと思います。

柿澤委員 点検はやっていかなければいけない、こういうお話でありました。

 結果的に、片山大臣も予算委員会の御答弁でお話しになられたとおり、問わず語りはあったのかもしれないと。なかったということにはなっているけれども、しかし、こうしたことがないのかどうかしっかりと不断の監視をしていかなければいけない、こういう御答弁をいただいたんだと思います。

 そうであるとすると、国家公務員の再就職規制に関する違反行為についての調査、勧告権限を有する国家公務員法上の機関として再就職等監視委員会いうものがあるわけです。ここの権限を行使して、例えばいわゆる裏下りが疑われるケースについて、しっかりと調査を行い、必要ならば勧告を行う、こうした体制が整っていなければいけないというふうに思うんですけれども、鳩山内閣発足以降、この間、この再就職等監視委員会については立ち上がっていない状況、また今回国会に提出された同意人事案にも再就職等監視委員会の委員長及び委員の人事案は含まれていない、こういう状況になってしまっているわけです。

 なぜこの再就職等監視委員会を立ち上げないままこれだけの期間放置をしているのか、お尋ねをしたいと思います。

片山国務大臣 これは私の直接の所管ではございませんので、ここでの答弁は控えさせていただきたいと思います。

柿澤委員 きょうは内閣府の大臣政務官もお見えになられていると思いますので、では内閣府の見解をお伺いします。

園田大臣政務官 柿澤委員にお答えを申し上げます。

 再就職等の規制の適正な運営のためには、委員御指摘のとおり、規制違反行為や脱法的行為、これについて監視する中立公正な第三者機関というものを立ち上げる必要があるということは、私どももしっかりと認識をさせていただいています。

 そのために、さきの通常国会で提出をさせていただいておりました国家公務員法等の一部を改正する法律案、この中で、現行の国公法の再就職等監視委員会は廃止をさせていただいて、新たに、監視機能を強化した再就職等監視・適正化委員会、これを立ち上げて設置したいということで提案させていただいておりました。残念ながら、審議未了で、この法案につきましては廃案という形になってしまったわけでございますので、私どもとしては、引き続きこの法案を次期通常国会に提出するということを考えているところでございます。そこにおいて、先般の法案と同様に、監視機能を強化したこの第三者機関というものを立ち上げてまいりたいというふうに考えております。

柿澤委員 通常国会に法案を出すということなので今立ち上げなくてもいいんだというのは、私は余り理由にならないというふうに思います。また、私たちの立場からすれば、この国家公務員法の改正案自体も、私たちも議員立法を提出したいというふうに思っているんですが、この臨時国会でやはり一日でも早く議論を行うべきだということを呼びかけてきた立場でもあります。こうした中で、これまでずっと長期間、法的には位置づけられているものが立ち上がっていないという状況が続いている。いわばこれは、違法状態が続いていると言っても過言ではないと思います。

 前通常国会でも、階総務大臣政務官は、またお名前を引き合いに出してしまいましたが、この再就職等監視委員会について、委員長及び委員を任命しないで実質的に委員会を設置しない状態が長期間続けば違法状態になるかと思います、こういうふうに答弁をされておられます。

 国家公務員法を所管するのは総務大臣でありますので、こういう形で長期間にわたってこの再就職等監視委員会が立ち上がらないまま放置されている、この状態についてどのように認識をしておられるのか、これだけはお伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 内閣全体でそういうことを方針として決められておりますので、私は途中から入って、私自身がどうしろこうしろと言う立場には私はないと思っております。

柿澤委員 最初の答弁でいみじくもおっしゃられたとおり、国家公務員の勧奨退職、その後の再就職に関して、いわゆる水面下のあっせんや裏下りと推認されるような状況があったのかなかったのかということについて、片山大臣は、相当減っているというデータを踏まえた印象論を語っていただいたわけですけれども、しかし、明確な責任を持った答えは、残念ながら、この状況では出てくることができないんだと思うんです。

 やはりこういう公的な機関を立ち上げて、そこにおいてしっかりとした調査権限を有した形での調査を行うということがなければ、結果として、あったのかなかったのかわからないグレーゾーンの状況が続くことになってしまう。こうした状態を一刻も早く解消し、実態を徹底究明してオープンにする、これは、片山大臣の日ごろからおっしゃられている透明性と説明責任、こういう考えにも合致をすることだと思っております。

 そういう意味で、私は途中から総務大臣になったので、こういうことではなくて、まさに国家公務員法という法律に規定をされたれっきとした、もう既に立ち上がっていなければならない機関なわけですから、片山大臣も、ぜひここのところ、問題意識を持って取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 時間もなくなってきてしまったんですけれども、地域主権改革について一点だけお伺いをいたします。

 もともと片山大臣は、さまざまな論文などを拝見しているところによると、現政権の進む地域主権改革は総務省主導の改革であるということで、非常に批判的な立場をとってこられたというふうに思います。

 とりわけ、原口前総務大臣がお出しになられた原口プランの内容についても、これは週刊ダイヤモンドのインタビューですけれども、総務省官僚がつくった自民党時代の麻生プラン、鳩山プランなど歴代の総務大臣のプランの延長線上でできたもので、基本的に中身は同じだ、政権がかわっても同じ流儀で、本質は何も変わっていない、総務省の権限に手をつけないで、他省庁の関与を排除するような部分ばかりを先行して地域主権改革として行っている、こういうことをおっしゃられています。

 こうした考え方に立っておられるはずの片山大臣でありますけれども、地域主権戦略会議の進め方については、この出されたペーパーを見ると、基本的に、これまでいわば批判をしてきた総務省主導の改革における優先事項に優先的に取り組む、そうした工程表になっているわけです。こうしたことで果たして本当にいいのかというふうに思うんです。

 片山大臣は、このような優先順位で地域主権改革に取り組んでいくことが正しい方向だと思っているのか、あるいは新任の大臣なので当面やむを得ないと思ってこういうふうにしているのか、お伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 同時並行で今やっております、やりつつあります。

 同時並行という意味は、私が就任する前の方針として、地域主権改革というのは、まず、地域主権改革三法案を国会で成立させていただきたいということ、それから、いろいろ大綱の中に書いてありますけれども、要するに、先ほど来も言いましたけれども、団体自治を強化する。団体の権限とか自治体の権限とか、自治体の自由度を高くする、そういうものが中心であります。それが従来からの方針でありますので、それは踏襲して進めていく。

 プラス、私が大臣になりましてから、住民自治の改革というのはひとつ急がなければいけないということで、これは地方自治法の改正。先ほど来出ました議会の改革でありますとか、補完的な意味での住民投票などの住民の直接参政権を高めるということ、それとあわせて、さっきおっしゃいました総務省の持っている関与、これは団体自治の改革、団体自治の強化ということになるんですけれども、総務省が持っている、例えば地方債の関与などについて改革をするということ、これを今もう既に省内で始めておりまして、従来のものだけを進めていくということではなくて、同時並行的にやっているということであります。

柿澤委員 そうだとすると、同時並行の、片山大臣がみずからのリーダーシップで進めようとされている部分についても、包括的にワンパッケージにした、片山プランといいますか、地域主権改革の片山大臣なりの工程表というものが明らかにされなければいけないというふうに思いますが、最後に、そうしたものをいずれかの時期に明らかにして、全体像を示しながら進めていくというお考えがあるかどうか、お尋ねを申し上げたいと思います。

片山国務大臣 後段の部分といいますか、私が大臣になって、同時並行的に進めるべくつけ加えたものについては、方向は決まっているんですけれども、具体的にどういうものを取り上げていくか、その優先順位などを今模索中でありまして、それが大体整った段階で、当面の進むべき、やるべき全体像というのを示せると思います。

 ただ、そのときに片山プランとつけるかどうかはちょっとわかりません、片山プランというのはもう何年も前につけられた方がおられますので。そういう名前にするかどうかは別でありますけれども、何らかの全体像はお示ししたいと思います。

柿澤委員 何らかの全体像は示したいということですので、片山善博プランがいずれ公になることを期待したいというふうに思います。

 時間も参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

原口委員長 この際、御報告いたします。

 去る八月十日、人事院より国会に国家公務員法第二十三条の規定に基づく国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申し出があり、議長より本委員会に参考送付されましたので、御報告いたします。

     ――――◇―――――

原口委員長 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、特に人事院勧告について調査を進めます。

 去る八月十日の一般職の職員の給与等についての報告、給与の改定についての勧告及び公務員人事管理についての報告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。人事院総裁江利川毅君。

江利川政府特別補佐人 人事院は、八月十日、国会と内閣に対しまして、公務員の給与等に関する報告及び勧告を行い、あわせて公務員人事管理に関する報告を行いました。また、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申し出を行いました。

 このたび、その内容について御説明申し上げる機会を与えていただき、厚く御礼申し上げます。以下、その概要を御説明いたします。

 本年も、昨年に引き続き、月例給及び特別給について、以下のように引き下げ改定を勧告いたしました。

 月例給については、例年と同様に、行政事務を行う公務員と、企業規模五十人以上の民間企業で事務・技術等の業務を行う従業員の四月時点の給与を精確に調査し、比較いたしました。その結果、厳しい民間給与の状況を反映し、公務員給与が民間給与を七百五十七円、〇・一九%上回っていることが判明しました。この結果を踏まえて、国家公務員法第二十八条の情勢適応の原則に基づき、民間給与との較差を解消するため、月例給の引き下げ改定を行うこととしました。

 その際、公務員給与を民間と比較すると、若年層では公務が民間を下回っている一方で、特に五十歳代後半層の官民の給与差が大きくなっている傾向にあることを踏まえ、五十五歳を超える職員の給与について、本府省課長級から課長補佐級に相当する職員の俸給及び俸給の特別調整額の支給額を一・五%減ずる措置を講ずることとしました。また、公務員給与が民間を下回っている三十歳代にまで影響を及ぼさないよう、四十歳代以上を念頭に置いて俸給表を平均〇・一%引き下げることとしました。なお、人材確保の必要がある医師に適用される俸給表については、引き下げ改定を行わないこととしました。また、指定職俸給表については、平均〇・二%引き下げることとしました。

 特別給についても、例年と同様の方法により民間企業における昨年冬と本年夏の賞与の支給割合を調査し、これとの比較を行いました結果、特に昨年冬の民間賞与が大幅に減少したことにより、公務が民間を上回っておりましたので、支給月数を〇・二月分引き下げることとし、本年度につきましては、十二月期の特別給から差し引くこととしました。

 実施時期につきましては、公布の日の属する月の翌月の初日としておりますが、本年四月から改正法施行までのマイナス較差相当分は、十二月期の期末手当で解消するよう調整を行うこととしております。

 以上の措置により、職員の平均年間給与は、約九万四千円、一・五%の引き下げとなります。

 また、平成十八年度から給与構造改革を実施していますが、当初予定していた施策は、本年度ですべて導入されることとなります。この改革では、地域間給与配分の見直しや年功的な給与上昇の抑制などを実現するため、俸給表水準の平均約四・八%、最大約七%の引き下げを、個々の職員について経過措置を設けながら行う一方で、地域手当を新設して、その支給割合を段階的に引き上げる等の施策を講じてきました。

 その効果の検証の一環として、昨年に引き続き、四月時点における地域別の公務と民間の給与較差を算出しましたところ、地域別較差は、昨年よりもさらに縮小して、約二・〇ポイントとなり、改革前の約四・八ポイントと比べると二・八ポイント程度縮小してきております。今後、俸給引き下げに伴う経過措置額がさらに解消することに伴い地域別較差は縮小していくと見込まれますが、地域間の給与配分について、最終的な検証を行う必要があると考えております。

 なお、給与構造改革では、経過措置を設けながら制度改正を行うに当たって必要な原資を確保するため、四年間にわたり全職員の昇給を毎年一号俸抑制しましたが、先ほど申し上げたように、当初予定していた施策は本年度ですべて導入されることとなりますので、本年度中に解消する経過措置分については、これまで昇給を抑制されていた若年・中堅層に対する一号俸分の昇給回復措置に充てることとしております。

 次に、公務員の高齢期の雇用問題について御説明申し上げます。

 国家公務員制度改革基本法は、雇用と年金の接続の重要性に留意して、定年を六十五歳に引き上げることについて検討することと規定しています。人事院としては、来るべき本格的な高齢社会において公務能率を確保しながら職員の能力を十分活用していくためには、年金支給開始年齢の引き上げに合わせて、平成二十五年度から、定年を段階的に六十五歳まで延長することが適当と考え、今般、定年延長に向けた制度見直しの骨格をお示ししました。

 その骨格においては、一定範囲の管理職を対象とした役職定年制を導入すること、定年前の短時間勤務制度を導入すること、また、定年延長に伴う給与制度の見直しについては、職務と職責に応じた給与を支給することを基本としつつ、民間における再雇用制度を中心とした六十歳代前半の給与等の実情等を踏まえ、具体的な給与水準及び給与体系を設定すること等を報告しております。

 人事院としては、この骨格に基づき、関係各方面と幅広く意見交換を重ねながらさらに検討を進め、定年延長について本年中を目途に成案を得て具体的な立法措置のための意見の申し出を行う所存です。

 続きまして、公務員人事管理に関する報告について御説明申し上げます。

 今回の報告におきましては、国家公務員制度改革基本法に掲げられた諸課題のうち、公務員の労働基本権について論点整理を行うとともに、人事院が取り組むべき課題についての取り組み状況について報告しております。

 公務員制度は、公務員が国民全体の奉仕者として適切に行政施策を推進していくための基盤であり、社会経済情勢の変化に対応し、不断に改革に取り組むことが求められております。このためには、基本法に掲げられた諸課題について検討を進め、改革を実現していくことが重要であると認識しております。

 基本法に掲げられた課題の中でも、とりわけ公務員の労働基本権のあり方は、現行公務員制度の根幹にかかわる問題であり、見直しの内容によっては国民生活に大きな影響を与える可能性がありますので、基本権制約の見直しに当たってはその目的を明確にするとともに、基本法第十二条にあるように、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益、費用を含む全体像を国民に提示し、広く議論を尽くし、その理解のもと、結論を得る必要があります。

 検討に当たっては、内閣と国家公務員との関係について、両者が一体となって国民に対し行政執行の責務を負うとともに、他方で双方が一定の制約のもとで労使関係に立つという二つの側面を有していること、給与決定に当たり利潤の分配などの内在的制約が存在しないことといった公務特有の基本的枠組みを十分踏まえる必要があります。

 この議論に資するよう、自律的労使関係について四つのパターンを示すとともに、国会による法律や予算を通じた民主的統制という憲法上の要請と自律的労使関係制度との間の整合性をどのように図るのかなどの制度的論点や、労使交渉の体制整備などの実施上の論点といった詰めるべき具体的な論点を整理しました。

 このほか、採用試験の基本的な見直し等、基本法に定める課題のうち本院が取り組むべき課題や、その他、非常勤職員制度の改善など公務員人事管理に関する課題について報告しております。

 続きまして、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申し出について御説明申し上げます。

 今般、非常勤職員について、日々任用が更新されるという日々雇用の仕組みを廃止し、一定の任期を定めて任用される期間業務職員の制度を設けることとしました。また、民間における期間を定めて雇用される者については、一定の要件のもとで、育児休業等をすることができることとされています。

 このような状況を踏まえて、仕事と育児の両立を図る観点から、非常勤職員について育児休業等をすることができるようにすることが適当と認め、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正について意見を申し出たものであります。

 以上、本年の報告及び勧告並びに意見の申し出の概要を御説明申し上げました。

 委員長初め、総務委員会の委員の皆様におかれましては、人事院の勧告制度の意義や役割に御理解を賜り、この勧告及び意見の申し出を速やかに実施してくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

原口委員長 以上で人事院からの説明は終わりました。

 次回は、来る二十八日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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