衆議院

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第2号 平成23年2月22日(火曜日)

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平成二十三年二月二十二日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 稲見 哲男君 理事 小川 淳也君

   理事 黄川田 徹君 理事 古賀 敬章君

   理事 福田 昭夫君 理事 大野 功統君

   理事 坂本 哲志君 理事 西  博義君

      石井  章君    石津 政雄君

      磯谷香代子君    内山  晃君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      逢坂 誠二君    奥野総一郎君

      笠原多見子君    小林 正枝君

      後藤 祐一君   斎藤やすのり君

      阪口 直人君    瑞慶覧長敏君

      鈴木 克昌君    高井 崇志君

      中後  淳君    中屋 大介君

      永江 孝子君    浜本  宏君

      平岡 秀夫君    藤田 憲彦君

      松崎 公昭君    皆吉 稲生君

      湯原 俊二君    赤澤 亮正君

      石田 真敏君    加藤 紘一君

      川崎 二郎君    佐藤  勉君

      橘 慶一郎君    森山  裕君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣         片山 善博君

   内閣府副大臣       平野 達男君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   総務副大臣        平岡 秀夫君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   総務大臣政務官      内山  晃君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   総務大臣政務官      森田  高君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長職務代行者)    安田 喜憲君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員(監査委員))    井原 理代君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          中城 吉郎君

   総務委員会専門員     白井  誠君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     小林 正枝君

  小室 寿明君     磯谷香代子君

  湯原 俊二君     斎藤やすのり君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     阪口 直人君

  小林 正枝君     笠原多見子君

  斎藤やすのり君    湯原 俊二君

同日

 辞任         補欠選任

  阪口 直人君     瑞慶覧長敏君

同日

 辞任         補欠選任

  瑞慶覧長敏君     中屋 大介君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     浜本  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  浜本  宏君     小室 寿明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 地方自治及び地方税財政に関する件(平成二十三年度地方財政計画)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本放送協会経営委員会委員長職務代行者安田喜憲君、日本放送協会経営委員会委員(監査委員)井原理代君及び日本郵政株式会社専務執行役中城吉郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀敬章君。

古賀(敬)委員 民主党の古賀敬章でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 片山大臣、御就任をされまして、まことにおめでとうございます。

 大臣は、旧自治官僚として、中央から全国の地方自治に携わってこられたわけでございますが、また、鳥取県知事として、地方から我が国の地方自治施策をいわば受け身として経験されたわけでございます。言うならば、数少ない両者を経験された大臣ということで、国民がまた注視をし、そして、その期待たるもの、まことに大なるものがある、このように思っております。そういった意味で、どうぞ、お国のため、そしてまた国民のために、思う存分お仕事に精励されますことをまずもってお願いをいたす次第でございます。

 さて、持ち時間が十五分でございますので早速質問に入らせていただきますが、まず最初に、地上デジタル化についての御質問をさせていただきます。

 ことし七月の二十四日、完全デジタル化へ移行されるわけでございますが、政府がこの地上放送のデジタル化を発表しましたのが平成十年の十月、そしてその五年後には三大都市圏で放送が実際に開始をされたわけでございます。そして、ことし完全実施ということになるわけでございますが、長い年月をかけましてここまでようやくこぎつけた関係者の皆さんのこれまでの御努力に、本当に心から敬意を表したいというふうに思っております。

 徒然草の一節に、植木職人の教訓がございます。仕事は残り少なくなったときに本当に要注意であるという教訓でございますけれども、まさに、現在、あと五カ月、今、要注意の時期に入っているのではないかなというふうに思っておるところでございます。

 そこで、お尋ねでございますけれども、現時点でどのくらいの割合の世帯が既に準備を終えているのか、そしてまた、その率に地域差がかなりあるというふうに聞いておりますが、それをお示しいただきたいと思っております。

片山国務大臣 地上デジタル放送への移行というのが、まだまだ随分時間があると私も以前から思っておりましたけれども、もうこの段階になりますと、あと半年を切るということになりました。私ども、省を挙げて、最後の追い込みに今専念をしているところであります。

 お尋ねのことでありますけれども、最近の調査といいましても昨年九月のデータしかまだないのでありますけれども、それによりますと、受信機の普及状況につきましては、地上デジタルテレビ放送対応受信機の世帯普及率は九〇・三%、全国平均でありますけれども、となっております。また、アンテナの設置など受信環境の整備に関しては、昨年十二月末時点で、九五%以上の世帯で本年七月までに対応が完了する計画となっておりまして、残る世帯についても取り組みを今進めているところであります。

 地域差について御指摘がありまして、やはり現状ではございます。調査によって、世帯普及率の一番高いところは、新潟県などは九五・一%ということでありますけれども、沖縄県では、同じ時点での調査で七八・九%ということであります。

 この沖縄についても、県の方でも随分努力をしていただいておりまして、私どもと協力して努力をしていただいております。例えば、県が独自の受信機購入補助をしていただいたり、離島におきます受信機の注文販売とか受信相談など、それから一斉ソフトテストや周知特番等を組んでいただいたりしております。

 これからも、これは沖縄に限りませんけれども、低いところと特によく連携をとりながら、格差が解消されるようにしたいと思います。

 いずれにしても、先ほど徒然草のお話も引き合いに出されましたけれども、確かに、はしごをおりるときに、上の方にいるときには注意をしないで、地上からあと数段になったときに注意をしろ、声をかけるというのが、たしか徒然草だったと思いますけれども、最後、手抜きをしないように、慢心しないように、改めて関係部局にもよく注意をし、私自身もこれに全力で取り組んでいきたいと思います。

古賀(敬)委員 地域格差が一〇%以上あるということでございますけれども、想像するに、離島だとか僻地の範囲が広いところ、恐らくそういったところが原因の一つだろうというふうに考えられるんです。そういったところこそ、防災上の観点から大変重要な、カバーしなきゃならぬ地域であるというふうに思っておりますので、なお一層の御努力をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 次は、高齢者の皆さんへの対応でございます。

 私の地元でも、高齢者の中には、まだデジタル化されるということすら知らない方もおいでになる。そしてまた、知っておっても、今までどおりテレビを見られさえすればそれでいいんだ、何もややこしいことに変えなくていいというようなお考えで、今までどおりテレビがアナログで見られるんだというふうに勘違いされている方も大勢いるわけでありまして、高齢者対策としてどういった方策をとられておるのか、お答えをお願いいたします。

平岡副大臣 お答えいたします。

 我々としても、これから努力しなければいけない大きな課題というのは、やはり高齢者の方々に対する対応だというふうに考えております。

 その視点に立って現状を申し上げますと、高齢者世帯の普及率については、昨年の九月末時点で九〇・四%ということで、先ほど大臣が答弁いたしました全国平均と余り変わらない状況にあるということではございますけれども、高齢者の方々については、よく事情がわかっておられない方、あるいは、どうして対応していったらいいかわからない方々が多くおられるというふうにも考えておりますので、平成二十一年度から、全国で相談会等を開催するということをしておりますし、御自宅を訪問して、地デジを受信するための具体的な方法についての助言も実施させていただいているということでございます。

 これからも、しっかりと対応していきたいというふうに思っております。

古賀(敬)委員 高齢者に関して、これは要望でございますけれども、いわゆる地デジ詐欺というような案件も起きているやに聞いております。高齢者であるがゆえに被害者となるということのないように、ぜひこの対策も徹底してやっていただければというふうに要望させていただきます。

 次に、今回のデジタル化に伴いまして、財政基盤と申しますか経営基盤の弱い地方ローカル局は、設備投資やら周辺機材の整備でかなり多額の投資をしておるやに聞いております。政府として、デジタル化が経営の悪化に即つながるとは思いませんが、そういった状況が出てくる可能性があると想像ができますので、そういった経営が悪化したローカル局に対して何か方策を、またその可能性があるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

平岡副大臣 お答えいたします。

 放送事業者、特にローカル局にとって、デジタル化のための投資というものが経営環境を厳しくする要因であるということについては、私たちもそういう要素があるというふうにこれまでも考えておりまして、実は、昨年の臨時国会で成立させていただきました高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律というもので、番組制作設備については税制上の優遇措置を引き続き講じることが可能となったという環境があります。これに基づいて、現在提出させていただいております地方税法の一部を改正する法律案の中に、具体的な税制上の優遇措置を講じさせていただいているという面がございます。

 さらに、ローカル局につきましては、この税制優遇措置に加えまして、平成二十三年度予算案にも盛り込んでおります中継局整備への補助金なども活用いただきたいというふうに考えております。

 こうした措置は、平成二十三年度以前、平成十九年度以降も、いろいろな形でのローカル局へ対する、設備投資に対する支援というものを行っておりますけれども、二十三年度予算においてもそういう措置を講じさせていただいております。

古賀(敬)委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、あとわずかということでございます。いわゆる現時点においてのサイレント層、全く物を申さぬ方々が、七月の二十四日、完全実施をされた時点で恐らく大きな声を上げてくるんだろう、それが一気に集中をする、短期間に集中するという予測がつくわけでございまして、それに対する万全の対応を準備されますことをお願い申し上げる次第でございます。

 次に、消防団について若干のお尋ねをさせていただきます。

 消防団の根拠は消防組織法の中に規定をされておるわけでありますけれども、昭和二十六年の議員立法によりまして消防組織法が改正をされ、それまでは任意設置だったのが、地方自治体に設置が義務づけられたということでございます。それゆえに、自治体の費用で消防団を運営していくという形になったわけでございます。

 それ以降も国からの補助金等はあったようでございますけれども、今は全くその補助金もなくなった。地方財政が大変厳しくなる中、消防団に対するいわゆる処遇が以前よりもかなり厳しくなってきた現状があるようでございます。

 現在、全国に消防団の数が二千三百八十団、そしてまた団員数が八十九万人というふうに言われておりますけれども、少子高齢化、そしてまた就業構造の変化等により、この団員数の減少に歯どめがかからないという状況も、地方にとっては頭の痛い問題でございます。

 そこで、国として、この消防団員の減数どめ、そしてまた増加に向かってどういった施策を今までやってこられたのか、そしてまた今後どのようにしていくのか、お聞かせをいただきます。

片山国務大臣 御指摘のとおり、消防団の重要性について、私も、体験上も含めて認識をしているところであります。

 現在は、地域の防災でありますとか消防でありますとかは、基本的には常備消防によって賄うということになっておりますけれども、例えば大規模な地震のように面的な広がりを持つ災害が生じた場合には、常備消防だけでは到底対応し切れません。私もそういう経験があります。そのときに大きな役割を果たすのが地域の力で、その中心が消防団だと思います。

 近年、就業構造でありますとか地域社会の変化に伴いまして消防団の数が減っている、なかなかなり手が少ないということ、これは非常に大きな心配の種であります。地域としても、自治体としても苦労されておりますけれども、政府といたしましても、例えば地域に日中おられるであろう女性に着目して女性の団員をふやすことでありますとか、それから勤務先での事業所の理解を深めて消防団への参加を促すとか、そんなことを今やっております。それなりの効果はあるだろうと思います。

 ただ、御指摘のように、報酬がやはり年々、行政改革、財政改革の中で下げられているという実態がありまして、これは私も少し低過ぎるのではないかという認識を持っております。ぜひ、それぞれの自治体でいま一度、消防団員に対する報酬、処遇を見直していただきたいと思っておりまして、また、それに対応した地方財政措置も、総務省としても考えていきたいと考えているところであります。

古賀(敬)委員 大変力強いお答えをいただきまして、ありがとうございます。

 各自治体に任せるということが基本でございますので、自治体は自治体なりに努力をしていかなきゃならないのは当然のことでございますが、消防団の運営交付金で、市町村でばらばらの対応が見られるものですから、全国で消防団に対する訴訟が、消防操法大会の賛助金の問題だとか飲食費の問題だとか、そういった部分で現に起きております。

 消防団員にとりましては、何で一生懸命やっているのに裁判を起こされなきゃならぬかと。そしてまた、団長さんに至っては、住民とまた団員の間に挟まって、だれが消防団長なんかやるものか、やりたくない、そういった雰囲気も醸し出されるような現状があるものですから、もちろん今、国として基準を決めておられるのは承知をいたしておりますけれども、その全国の差がばらばらになって、それを何かもっとうまく団員が働きやすい環境をつくるために国としての指導なりをやっていただければ、現場としてはありがたいのではないかなというふうに思っております。その御意向があるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

片山国務大臣 実態をよく把握いたしまして、できる限り消防団の団員の皆さん方が仕事がしやすいように、また消防団に多くの若い方が入りやすいような環境を整える、そのための対応を考えてみたいと思います。

古賀(敬)委員 ありがとうございます。以上で終わります。

原口委員長 次に、石田真敏君。

石田(真)委員 自由民主党の石田真敏でございます。

 片山大臣に質問をさせていただきたいと思うんですが、実は去年、就任された直後に大臣所信でお伺いしたいなと思っておったんですが、委員会がうまくいかないでその機会を逃しまして、きょうにずれ込んだわけです。そのときの通告も既にしておったんですが、それも含めてきょうは質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 民主党と自民党、私は、これは基本的なところで随分違うと思います。この一年半の政権運営を見ておりまして、そういう感じがいたします。

 それで、政権交代の後、いろいろ矢継ぎ早に方針とか施策を出されましたけれども、どうも我々は違和感を覚えてきたわけでありまして、そのことについて、実は、自民党の中に真の政治主導検証・検討でしたか、PTをつくりまして、私、事務局長をさせていただきましたけれども、報告書も出させていただきました。

 そういうことに基づいて、まず初めに、政治主導とかそういうことについて何点か御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、菅総理、「大臣」という新書の本を出されましたね。政権交代後にも増補版を出されたんですけれども、その中で、日本の憲法に三権分立の規定はないと書いておられるんですね。それから、政権党は、立法府と行政府との両方を国民から託されたことになるというふうに言っておられる。これは三権分立がないということに関連するんだと思います。

 それからまた、参議院の内閣委員会で我が党の議員の質問に答えて、議会制民主主義は期限を区切ったあるレベルの独裁を認めることだ、こういう発言をされておられます。

 これは菅総理の本質に根差していると思いますが、片山大臣、菅総理のこういう考え方を御存じの上で大臣就任をされたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

片山国務大臣 私も、菅総理が以前に書かれました「大臣」、昨年ですか、増補版が出ましたけれども、その増補でない、原著の方を読みました。あと、増補版は増補のところだけ読みましたけれども、総理が今おっしゃったような考え方をお持ちであることは、私もよく存じております。

 これについてどうかということでありますが、確かに、私も総理の考え方に賛同する部分があります。

 といいますのは、我が国の国会は、国民が選ぶ、国権の最高機関であります。その国権の最高機関が内閣総理大臣を指名するわけでありまして、そうなりますと、国会、特に衆議院で多数党を占めた政治勢力が内閣をも構成するわけでありますから、その間に基本的な対立というのは、あり得ないとまでは言いませんけれども、普通はないわけであります。そうしますと、まさに政府・与党が一体となる可能性が強いと思います。

 そういう意味でいいますと、国民の信託を得て多数を託された政党、政治勢力が、国会はもとより内閣をもコントロールするということでありますから、その託された機関の、独裁という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、大きな影響力を持つということだろうと思います。

 我が国では、三権分立ということを私どもも子供のときからずっと教わってきているわけでありますけれども、そのときの三権分立というのは、一つは、アメリカとかそういうところの政治制度を前提にした一つの理念、そういうものが色濃く反映しているんだろうと思いますし、もう一つは、これは私の考えでありますけれども、戦前の天皇主権の時代には、政府というのは、政党から超越した存在として、官僚集団で形成されてきたわけであります。その考えといいますか残滓といいますか、そういうものがやはり戦後も残ったんだろうと思います、考え方としては。したがって、政党とは別の、何か一つの確固とした政府があるんだ、そういうふうな考え方がないわけではなかったと思います。そういうことを前提にした三権分立というのは、私は説かれていたことがあるんだろうと思います。

 しかし、政府というのはそもそも内閣でありまして、その内閣は多数党が形成するわけでありますから、そういう戦前の天皇主権の時代の官僚を中心にした政府、三権のうちの一つを構成する政府というのは、今の国民主権の日本国憲法のもとでは私はあり得ないんだろうと思っております。

石田(真)委員 片山大臣がそういうお考えというのはちょっと違和感がありましたけれども。

 それでは、ちょっとこれは質問通告はしていませんけれども、行政の中立公平性と、今の政権与党がそういうものを一体的に運営していくということについての関係はどういうふうになりますか。

片山国務大臣 それは、多数党が政府を形成します。そこでいろいろなルールというものをつくるわけです。これはもちろん国会がルールをつくるわけですけれども、政府・与党一体の中で政策を立案して、それに必要な法案というものを政府・与党で考えて、それを国会で決めるわけであります。

 その決まったことをきちっと忠実に実行するのが政府でありまして、政府は、そのルールを執行するプロセスにおいては極めて厳正な中立性が要求されるということだと私は思います。

石田(真)委員 この菅総理の考え方というのは、所信表明でも菅総理は言われましたけれども、松下圭一先生、大学の教授ですけれども、この方に非常に傾倒されていて、ここの中に書かれている国会内閣制、そういうものを基本にされていると私は思います。

 資料をお配りしていますけれども、この上の図が松下圭一さんの「政治・行政の考え方」という岩波新書に出ているんですが、一番下の出典、菅総理の「大臣」増補版にもこの図がそのまま引用されているんですね。わかりやすいので、皆さんにお配りしました。

 松下先生は、左側、今現在の三権分立に基づく国家の統治といいますか、機構をこういうふうにあらわしておられる。これを国家主権型ということで、矢印が上から下に向いているんですね。ところが、そうではなくて、松下教授は、国民主権型、右なんだと。矢印は上に向かっていきまして、国会があり、国会が内閣、裁判所が横に出てくるんですね。こういう形を言っておられるわけなんです。

 私は、いろいろ調べていく中で、例えばイギリス。イギリスのことを菅総理も見に行かれて参考にされたようですけれども、例えば村松岐夫学習院大学教授、この方が編さんされた本の中に出ているのは、イギリスでは、政治と行政は、その本質的役割、立場を異にするものとして、上下関係ではなく対等の協働関係にあると書いておられるんですね。私は、これがいわゆる三権分立的な発想だというふうに思います。

 ところが、今の、この一年半の民主党の政治主導というものを見てきますと、いわゆる政治が上に乗っかって、行政に対して、例えば政務三役会議にも入れないとか、政務三役で決まったことは無条件に実行しろとか、そういう協働関係というような形をつくり切れなかったところに今の民主党の低迷の原因があるのではないかな、そういうふうに思うわけでありますけれども、大臣はこの一年半の民主党の政治主導についてどのように評価されているか、お聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 先に、せっかく資料をいただきましたので、これについて少しコメントさせていただきますと、松下さんのこの考え方、右側の図というのは、私もさほど違和感はありません。こういうことだろうなと思います。むしろ、左側について、現状はこうだというところに私は違和感があります。むしろ、現状も右側になっているはずなんですね。ただ、上下関係が、いつも国民が下に来てしまっているのは私たちの思い込みだろうと思う、本来は、国民主権でありますから、国民が上に来るような図を書くべきだろうと思うのでありますけれども。現在が、現行憲法のもとで左側で運営されているというのは、いささか認識が違うのではないかと私は思います。

 政治主導でありますけれども、今議員がおっしゃった政治主導の考え方を伺っていて、私もさほど違和感はありません。一番言えますのは、国家を運営するのはだれかといいますと、それは、官僚の皆さんではなくて、国民から選ばれた国権の最高機関である国会、そこから形づくられました内閣、今私もその一員でありますけれども、その内閣が政府の主役であります。決して官僚の皆さんが主役ではありません。

 ただ、国民の代表で構成される内閣、それからそのもとで仕事をする官僚の皆さんは、決して二項対立的な対立軸ではない、まして排除すべきものでは決してないと思います。国民から信託をされた、国民の代表である皆さん方の意思に従って官僚の皆さんは中立的に仕事をする、こういう役割だろうと思います。

 政権交代があった後、自民党政権が長く続いて、その中で、ある意味では官僚機構もその自民党内閣の中にいわば組み込まれていたようなことがありましたので、そこをはがすと言うと変ですけれども、中立に戻すという作業を新政権がされるときにいささか行き過ぎのような面がひょっとしたらあったのではないかと、私も外から見て思っておりました。

 最近そういう面も徐々に解消されて、先般も、政務三役会議には次官なり幹部官僚をぜひ加えるようにという、そういう内閣の方針も出ましたので、徐々に是正されてきたのではないかと考えております。

石田(真)委員 大臣は政治主導をどう考えるかと次に御質問しようと思ったら、答えていただいたのでそれでいいんですが、実は、我々はPTでいろいろ議論する中で、三権分立が憲法の規定にないというのはどういうことだということで、憲法学者の方にお話をお伺いさせていただきました。

 三権分立を規定した憲法なんというのは、世界じゅうにないんだそうです。章ごとに行政、立法、そういうふうになっている、それが三権分立の意味なんだということであります。三権分立というのは当然のことであって、憲法というのは自由と民主に由来する。三権分立というのは、つまり自由なんだ。つまり、権力の抑制という意味で自由なんだと。それからもう一つ、国民主権なんだと。それは政権の正統性という意味なんだ、それが民主なんだということを言われました。

 そういう意味からいうと、民主党というのはまさしく、三権分立、権力の抑制がない政党なんだなと改めて感じたわけで、自民党というのは、その両方を持っているから、権力の均衡も考えるし民意の正統性も考える政党だなと、改めて、そのお話を聞かせていただいて感心したんです。

 政治主導については、少し民主党の方でも、先ほど御紹介のあったように、政務三役会議に事務次官とか官房長が入ってよろしい、そういうような話になってきたようですけれども、ぜひ一日も早く、政権交代する方がいいと思いますけれども、一日も早くまともな政治主導をやっていただきたいなというふうに思います。

 それに関連してなんですけれども、地域主権です。

 菅総理は、この松下圭一さんの「「松下理論を現実の政治の場で実践する」ことが、私の基本スタンスだった。」、このように本の中で述べておられるんですね。それから、仙谷前官房長官も松下理論の信奉者と言われています。

 そういうことで、松下さんの本、幾つも出しておられますけれども、一九九五年の著書、この中にこういう言葉があります。国家主権の崩壊はもう常識となっています、今日、自治体は、国際機構と同じく、政府として自立してきた、ここから政府は自治体、国、国際機構に三分化します、このように述べておられるんですね。

 それで、松下さんの一貫しているのは、先ほどの図でもそうですけれども、国民主権はあるけれども、国家主権は否定をされているんです。私は、今憲法学者の話を言いましたけれども、憲法学者からというか、憲法的には、主権というのは二つあるというふうに思います。一つは、国家の主権ですね。それからもう一つは、国家における主権ですね。国家の主権というのは、対外的に国家主権。国家における主権は、国民主権とかいろいろあると思いますけれども、正統性に基づく主権だ、そのように思うわけです。

 そういう中で、その松下さんのお話、私は勉強不足かわかりませんが、著書を読ませていただく範囲では国家主権というのを否定されておられる、そのようになってくるわけでありまして、それを信奉されている民主党政権ということになってくると、従来からずっと議論に出ていますけれども、地域に主権があるという発想があるのではないか、そういうふうに思われる節がこういうことを並べてきますとあるわけですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 今御指摘になられました松下さんの本の中に、国家主権というのは消失するというか溶解してしまうということは、私は、現在の世界を見てみたときに妥当的ではないと思います。

 ただ、日本国憲法ができましたときに、我が国は、平和主義を標榜し、そして戦力は持たないという規定を置いて、交戦権も認めない、そういう規定もあわせて置いて、国の安全というのは諸国民の公正と信義に託すんだ、そういう思想を持って憲法ができましたので、それの延長としてそういう発想は出てくる可能性はあるだろうと思いますけれども、現在の世界情勢を見たときに、日本を初めとする国家というものの存在を決して無視することはできない。むしろ、国家の役割、意義というのは、最近見てみますと、年々大きくなっているのではないかと思います。

 そういう意味では、議員がおっしゃったような主権というもので、一つの、対内的な権力の正統性を示すための国民主権という、これは当然でありますし、もう一つの、対外的に国家が主権を持っている、その主権の発動としてそれぞれの国の安全を守り国民を守るということ、これは重要だろうと私は思います。

 それと関連して地域主権というものについての言及がありましたが、私は、松下理論なるものに基づいて、国家主権というものは消失してしまうんだから、だから日本の中はそれぞれの地域主権でいいんだという考えに基づいて民主党の地域主権というものがマニフェストに書かれたわけではないと思います。

 以前も議員とやりとりした記憶がありますけれども、むしろ、中央集権とか中央主権ということに対して、もっと地域の自主性とか、地域のことは地域が決めるという、その基本原則に立って地域主権という用語を使われた。

 これは、あえて申しますと、自民党時代にずっと地方分権という言葉を使ってきて、それと少し趣を変えた言葉が必要だということももちろんあったでありましょうし、もう一つは、そもそも分権ということではなくて、もともと、地域のことは地域が決めるんだ、そういう思想が本来あるべきだ、そういう意味合いで地域主権という言葉を造語されたのではないか、私は当時外におりまして、そういう印象を持っておりました。

石田(真)委員 それであればいいんですけれども、やはり、先ほど申し上げたような話をずっと並べてきますと、どうもそういうのが底流にあるんじゃないかなと思うんですね。

 もう一つ、前にも原口委員長に大臣のころお聞きしたんですが、民主党は余り国民という言葉を使わないんですね。市民という言葉を使うんですよ。市民という言葉が物すごく多用されますね。

 今、例えば松下圭一さんも市民自治と言いますけれども、地方自治というのは、団体自治と住民自治ですね。こういう中で、市民自治という、市民という言葉を使われる。あるいは、地球市民と言われるんですね。鳩山前総理も使われたと思いますが、仙谷前官房長官のホームページを見たら、地球市民と出てくるんですよ。どうも国家観というのがちょっと希薄なのではないかなというふうに思うわけです。今回も、市民公益税制ですよね、NPO法人の寄附税制。市民公益税制。

 大臣、この市民というものの一連の使われ方について、どのように思われますか。

片山国務大臣 市民というのは、地方自治の分野での実定法には多分ないと思います。あるとすれば、市町村というのがあって、その市の住民のことを市民と呼ぶというのは、これは多分常識的だろうと思います。

 この市民という言葉がよく使われるのでありますが、私もこんな経験があるんです。知事をやっておりましたときに、私も市民という言葉をちょくちょく使っておりましたら、ある集会で参加者から質問がありまして、私は何とか町の住民なんですけれども、市民といったときに町民は入らないんでしょうかと言われて、なるほどそういうとらまえ方もあるのかと思ったんです。

 市民という言葉をどういう文脈で使っているかといいますと、これは、例えば英語で言うシチズンとかフランス語のシトワイヤンとか、多分そういうものの訳語として使っている嫌いがあるんだろうと思います。

 それはどういうことかといいますと、歴史的な経緯を言うと、人権の主体である、人権を持つ、人としての権利を持つ主体としての市民ということ、これはフランス革命以来の用語ではありますけれども、そういう考え方が色濃く反映しているんだろうと私は思います。これを我が国の実定法に置きかえて言えば、これは住民ということになります。ですから、住民ということを使ってもいいんだろうと思います。まあ、言葉を使う方の感性の問題かもしれません。

 それから、このたび、市民公益税制、こう言っていますが、これは先ほど来申しました市民ということの定義ともちろん関係はありますけれども、ここはむしろ、私は、従来の寄附税制といいますものは、どちらかというとやはり官に偏った、官に偏重した趣が強かったと思います。国とか国に関係のあるところに寄附した場合には非常に優遇がある。その他の、民間の公益的活動をしているところに寄附をしても、それは非常に厳格で、限定されていた。

 そうではなくて、もうお役所を介さないで、それこそ市民といいますか、民間から民間に必要な財源が流通して、そこで国民、住民にとって必要な公共的なサービスが充足される、こういうことを期待するのが新しい公益税制だろうと思うんです。そのときに、国家とか地方公共団体を介さないで、国民同士、市民同士、住民同士の間で必要な浄財がやりとりされる、そういうことを期待しているという意味であえて市民とつけたのではないか、これは私の推測でありますけれども、そんなふうにとらえております。

石田(真)委員 実定法にないと言われましたね。まさしくそうなんですよ。非常にあいまいな使われ方をずうっとしていって、そしてそれが、それこそ市民権を得てしまうわけですよ。ここが問題ではないか。地域主権もそうですよ。実にあいまいなままに、しまいに、それが中心にいっちゃうんじゃないか、そういうような感じが私はするんです。

 さきの委員会で、坂本委員の質問に対して大臣は、先ほども答弁されましたけれども、余り深い意味はないんじゃないかということを答弁されていますけれども、私はその辺を非常に危惧する。

 もう一つつけ加えますと、菅総理は著書で何と言っているかというと、政権交代をした後の著書ですよ、「原理が変わる」と書いているんですよ。「国のかたちを変えるための本格的な制度改革は、すべてこれからの仕事だ。」と書いておられるんですよ。そういうふうに書いていて、地域主権とか、今申し上げた、国民という言葉ではなしに市民とか、それで松下圭一さんのスタンスを政治の場で実現するのが私の使命だみたいなことを言っておられるわけでしょう。これを本当にそんなに軽くとらえていいんですかという話になってくるわけなんですよ。

 もし大臣が、今言われるように、そんなに深くないと言うんだったら、この際、地域主権という言葉は法案から一切消していただきたいと思いますが、どうですか。

片山国務大臣 国の原理を変えるということを言われたとすれば、私は、憲法を変えようとかそういうことでは毛頭ないと思うんです。むしろ、現行の日本国憲法にできるだけ沿ったような、そういう運用の仕組みにシフトさせていきたいということではないかと私は思いますし、私自身も実はそう思っているんです。

 といいますのは、我が国は、戦後、新しい国づくりとして出発をしたわけでありますけれども、なかなか原理どおりにいっていない面が多々あります。それが、私に関連の深い地方自治の分野でもあります。

 地方自治法は、昭和二十二年に日本国憲法と同日に施行された法律でありまして、日本国憲法が基本原理としております民主主義を草の根から実現させる、そういう役割を担っていると思うんです。そのために、憲法では地方自治の本旨というものを書きました。

 国家が必要以上な介入をしてはいけない、住民で形成される自治体の自由な意思というものをできるだけ尊重しなければいけないというのが地方自治の本旨でありますけれども、必ずしもそれが全うされていない分野が幾つもあります。私もそれは県の知事を経験しておりまして痛感したところでありまして、そういうものを変えていこう。これは具体的な実定法の改正はもちろん必要になりますけれども、それ以外の運用の面もあります。そういうものを変えていこうということが、先ほど引用されたような表現になったのではないかと私は思います。

 地域主権というのは大した意味はないんだと以前申し上げたつもりはないんです。そうではなくて、経緯を私も外から見ておりましたら、地域主権型道州制というものがありました、提唱されている方は今国会議員になられておられますけれども。それに対して、そうではなくて、中央の視点で国家というものをもっと整理しなきゃいけない行政整理型の道州制論というのももちろんありました。これを称して中央集権型道州制と言い、それに対して、違いを際立たせるために地域主権型道州制と言われたのではないかと私はそんたくしているんです。

 そういうものがあって、それが論じられているときに地域主権という言葉が一つ造語としてできて、ただし、民主党のマニフェストからは道州制はなくなっていたというか、もとからなかったのかもしれませんけれども、道州制というものは盛り込まれなかったので、地域主権という言葉がむしろ象徴として残されたのではないかというのが私の解釈でありまして、そういう意味合いだと理解しているということを申し上げたわけで、大した意味がないということを申し上げたわけではありません。

 では、この地域主権という新しい造語を実定法のレベルでどうするかというのは、まさに、法案の審議過程でこれをどうするかということは、国会、国民の代表である皆さん方でお決めいただいたら結構なことだと私は思います。

 ただし、意味合いだけは失っていただきたくないと私は思います。

 それはどういうことかというと、これは昨年の一月二十九日に鳩山前総理が施政方針演説の中でおっしゃったんですけれども、地域のことは、その地域に住む住民の皆さんが責任を持って決めることなんです、これが地域主権の意味なんですということをおっしゃられて、私は当時外にいて、地方自治法の教科書に引用してもいいような非常に的確な表現だと思って伺っておりまして、その意味合いは非常に大切なことだと思います。

 それをどうあらわすかというのは、実定法を審議するときに、どういう用語にすると一番国民にわかりやすいか、そごが生じないかということを御審議いただければいいと思います。

石田(真)委員 これ以外にも、原口大臣のときに検討されている地方自治法の改正に当たって、地方政府基本法なんですね。これは地方自治基本法じゃないんですよ。こういうことがいろいろな場面に民主党政権の場合はあるということを指摘しておきたいというふうに思います。

 地域主権をもうちょっと詳しくしたかったんですが、大臣が非常に詳しく答弁していただいておりますので、時間がありません。また次の、地域主権の議論のときにさせていただくとして、次の質問をちょっとさせていただきたいと思います。

 今話題の大阪都、中京都、この構想がありますが、先日、愛知県で選挙がありましたね、トリプル選挙。この中で、私は、大きく分けて三つぐらい問題を投げかけられたのではないかなというふうに思います。その辺についてお聞きしたいのです。

 まず一点目は、市民税減税と議員報酬半減という、これは見方によったら非常にポピュリズムといいますか、例えば議会と対立構造を明確にして選挙を行うというようなことで、見ている方はおもしろいんですけれども、非常に危うい一面もあるわけです。

 大臣は、この市民税減税と議員報酬半減、こういうことが選挙の争点になることについて、どのように思われますか。

片山国務大臣 一般論として申しますと、争点になることは大いにあり得ることだと思います。

 ただ、政治家がこれを争点として取り上げる場合には、誤解のないような取り上げ方をされるべきだと思います。二項対立的に、善か悪か、マルかバツかというとらえ方ではなくて、そのことによって何がもたらされるのか、もっと言えば、それより前に、現状何が問題で、それに対する対策として、課題解決の手段として減税なりがあるのか、そういう問題設定をされるべきだと思います。

 といいますのは、減税をすることですべてが解決するかというと、決してそんなことはありません。例えば、私が知事をしておりましたときにも感じましたけれども、もっといろいろやりたい仕事はありました。だけれども、財政の制約がありましたから、ここで我慢しておこうということでありました。そうすると、ひょっとしたら増税の方がかなっているかもしれない、だけれどもそれは難しい、そういう折り合いをつけておりました。ですから、減税をすることによって何が変わるのかということを具体的にやはり示されるべきだと思います。

 議員報酬にしても、じゃ、その報酬を減らしたことによって人材が得られるかどうか、そういう観点からの点検も必要だろうと思いますので、ぜひ、争点として取り上げられることは大いに結構だと思いますけれども、具体的に、冷静な市民の選択ができるような、また市民と使いましたけれども、有権者の選択ができるような、そういう問題設定をされるべきだと思います。

石田(真)委員 名古屋市民ですから、市民で結構ですけれどもね。

 市民税減税、これは地方交付税の算定にいろいろ影響が出るんですか、簡単にお答えください。

片山国務大臣 標準税率よりも独自に減税をされた場合に、交付税の算定には影響はありません。

石田(真)委員 また、議員報酬の半減、阿久根で出ましたね。そんな問題が統一地方選挙で結構問題になるんじゃないかなと思うんですが、議員報酬のあり方というのを、先ほどちょっと答弁いただきましたけれども、大臣のお考えを簡潔にお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 これは、制度上もそうですし、それから理念から申しましても、市民がというか、住民が決められることだと思います。

 自治体の態様に応じて、大きな自治体で、専業でなければできないような自治体もあるでしょうし、そうでない小規模の自治体もあるでしょうから、それぞれの地域の実態に応じて、住民の皆さんが納得できる、そういう水準で決められるべきだと思います。

石田(真)委員 住民の皆さんが納得できるということですけれども、今、報酬審議会とかいろいろありますね。そういうもので決められたものが議員報酬なり首長の報酬になっていると思うんですが、今回はそういうことが否定されるということにつながっていくと思うんです。そのあたりはどうでしょうか。

片山国務大臣 報酬審議会で原案をつくって、それを議会にかけるということが一般的にやられているんですけれども、私の経験からいって、必ずしもそれが理想的とは思いません。理想的な運用をすれば理想的になるでしょうけれども、どちらかというと、従来の経緯を見ますと、上げたいときに、自分から言い出しにくいので、報酬審議会で案を出してもらう、そういうやり方をしているところが多かったのではないか、それだと余り意味がないのではないか、そういう印象を持っております。

石田(真)委員 そうすると、先ほど大臣が言われた住民の理解を得られるというのは、どういう方策があると思いますか。

片山国務大臣 例えば、これはその是非についていろいろ異論、反論があると思いますけれども、議会の議員の皆さんの処遇というのを議員の皆さん自身が決める、今そういう仕組みになっているわけです。これに対して有権者の皆さんがある種の違和感を持っているということがあるんだろうと思います。自分のことを自分で決めている、お手盛りではないか、こういう批判がないわけではありません。

 これをもし払拭しようということでありますと、例えば議員の報酬とか、それから地方議会の議員のその自治体における定数について決めたり変えたりするときには、その案件に限って住民投票をしようというようなことも理念的には考えられるだろうと思います。

石田(真)委員 次、二点目ですけれども、今回の問題が投げかけたのは、やはり二元代表制のあり方ということになるんだろうと思うんですね。

 阿久根の場合は、前の市長さんが専決処分を随分乱発されたりということが問題になりました。そして、もう一方では、今度は地域政党をつくって、それで多数派を形成しようというような形があったわけで、これは二元代表制ということを考えたときに非常に大きな問題をはらんでいるというふうに思うんですけれども、大臣は、現在の二元代表制あるいは今回の一連の中でこの問題についてどのようにお考えであるか、お聞かせください。

片山国務大臣 今回の阿久根とか名古屋市を見ておりまして、いろいろな問題が提起されておりますけれども、底流には現在の二元代表制の、その自治体における実情といいますか、ありように対する一つの批判というものがあるんだろうと思います。それは否定できないだろうと思います。

 私の理解する二元代表制というのは、首長と議会がそれぞれ住民から選ばれる、それが、チェックをしたり、あるときには対立をしたりしながら、抑制し合って合意を形成していくという、ルールは議会がつくって、そのルールを忠実に執行機関が執行する、こういうのが建前であります。

 ところが、一部といいますか、もっと多いかもしれませんが、議会の方がほとんど首長さんによって籠絡されていると言うと表現が悪いですけれども、非常に和気あいあいとなってしまって、ほとんどチェックをしないというような実態がないわけではありません。一方では、やたら対立をして何でも反対、そういうところも聞くところであります。

 そういうことに対して、もう議会なんか要らないんじゃないか、議会不要論というのがやはり一部出ていることは確かであります。私は、それに対しては絶対容認しない立場でありまして、民主主義というのは、首長が住民から選ばれない民主主義はあり得ても、議会が選ばれない民主主義はないと思っております。これがグローバルスタンダードでありまして、私もそう思っておりますけれども、だから議会不要論にはくみしないのでありますけれども、現状の議会に対する問題指摘というのは、やはり謙虚に受けとめる必要があるだろうと思います。

 それに対して、もう議会をやめてしまえというのが阿久根だったと思いますし、議会を変えてしまえというのが名古屋であったと思うんですけれども、いずれも、私は、私の個人的な考え方でありますと、もっと違ったやり方があったんだろうと考えているところです。

石田(真)委員 違った考え方をぜひお聞かせいただきたいところですが。

片山国務大臣 私も八年間首長をやりまして、議会と対立をしたり協力をしていただいたりしながらやってきました。私の場合も、自分の考えていることをさっとやってくれるということは決してありませんでした。八年間本当に、押したり引いたり、譲歩したり妥協したり、いろいろなことをしながら、それでも八年たちますと、自分のやりたかったことはかなりの程度できました。これが私の実体験であります。

 一年や二年で、自分の言うことを聞いてくれなかったからもうだめだといって相手側を否定してしまうというのは、私は、民主主義の本来の基本原理には反するんだろうと思います。

 民主主義というのは、共存が基本原理です。相手を抹殺してしまうというのは、日本でいうと戦国時代みたいなものでありまして、頭をかち割って物事を解決しましょうということで、これは幾ら何でもむごいですし、不経済でありますから、頭をかち割るんじゃなくて、頭数を数えて物事を決めていきましょうというのが民主主義でありますから、頭数を数える以上は、共存で、お互い相手の存在を認めなきゃいけないということであります。決して全否定をしてはいけない。その中で、お互いに譲歩したり妥協したり、その過程では、ディスカス、対話と、パースエード、説得ということが繰り広げられて、そこで合意が形成されて、合意が形成されたものについては従うという、これが私の考えている基本的な考え方です。

 これを申しますと、あなたがそんなことを言うのは小さい県だからできたことで、一種の理想論だ、こう言って批判されている首長さんもいないわけではないんですけれども、私はやはり理想論と原理というものは大切にすべきだろうと思っております。

石田(真)委員 三点目は、問題になったのは中京都構想だと思いますね。これは大阪都構想というのもありましたし、新潟州構想というのもありました。こういうことについて、時間が余りないので端的にお聞かせいただきたいんですが、こういう話が出てくる根本、それはどういうことなんだろうというふうに思われますか。

片山国務大臣 幾つかあると思いますが、一つは、大都市における行政体制というのが広範囲にわたって二重行政になっているのではないか、その不合理があるのではないかという指摘はあると思います。政令指定都市というのは非常に権能も強くて、府県との間で区域もかなり共有しておりまして、そこで二重行政があるのではないか、もっと一体的に、一元的にできないか、そういう問題意識があるんだろうと思います。

 ただ、これはよくよく考えなきゃいけませんのは、東京都が一つのモデルになっているんですけれども、東京都は昭和十八年に東京都になりました。それ以前は東京府と東京市が、二十三区内は東京市がありました。これも、当時の課題としては二重行政を解消したいということで東京都になったんですけれども、その当時の課題というのは、戦争をやっておりましたので、戦時体制でありますので、戦争遂行のための効率的な地方行政、帝都における、首都における効率的な行政を遂行したいということでありまして、そういう経緯でできたということはよく認識しておかなければいけないと思います。

石田(真)委員 指定都市と都道府県との問題というのは、大阪あるいは愛知、そういうところにとどまらないわけですね。神奈川県もありますし、ほかにもあるわけです。

 そういう意味でいうと、指定都市の本当のあり方というのをこの際本当に議論して、どういう形がいいのかという答えを出していかないといけないのではないかなと私は思いますけれども、大臣、総務省としてそういうことについて検討するつもりがあるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 先ほど言いました二重行政、今は戦時体制ではありませんが、今日的な意味での二重行政をどうやって解決していくかという問題があります。

 それからもう一つは、これは名古屋や大阪に限りませんけれども、大都市は二百万、三百万という非常に大きな人口を抱えていて、そこに首長さんが一人で、議会が一つで数十人の議員で構成されていて、それで民意をちゃんと反映できますか、住民自治が本当に全うできますかという問題提起もあります。

 それらを含めて、大都市の行政体制のあり方というのは検討を早くしなければいけないと私もかねがね思っておりましたので、できるだけ早く何らかの場でこの問題について検討を開始したいと考えております。

石田(真)委員 ありがとうございます。

 大阪都構想にしたって中京都にしたって新潟州にしたって、これは中身が全部違うんですね。ですから、こういうことが全国的に広がっていきますと、それはそれでまた大変な混乱にもなってくると思いますので、ひとつ、指定都市のあり方について十分に、早急に議論していただきたいというふうに思います。

 それでは、もう残された時間はあと十五分ほどしかないので、国家公務員人件費二割削減についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これはあと二年でやるということでありまして、二割削減というと大体一兆一千億円。ところが、二十三年度予算を見ましても、わずか三%、一千五百九十億円の減ということで、これはあと二年で大変だなというふうに思います。

 そうすると、先日、菅総理は三つのことを言われました。一つは国の出先機関の地方移管、効率化、それから二つ目は各種手当や退職金、定員見直し、三つ目は労使交渉での給与改定と言われたんですね。この国の出先機関の地方移管、これは予算のつけかえですから、私はカウントすべきでないというふうに思います。国から財源も渡さないのに地方が職員さんをとってくれるはずがありませんから、これはカウントすべきではないと思いますが、この二年間でおおむねどういう見通しを持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 実は、今そのための作業をやっているところでありまして、この通常国会に国家公務員の給与法の改正案を出したいと思っておりますが、その中で給与水準の引き下げというものを行いたいと考えております。もちろんこれには職員の皆さんの理解をぜひ得たいと思っておりまして、労働組合の皆さんとの内々の話し合いも今始めているところであります。

 それを含めて、その他退職手当の見直しでありますとか、各種手当の見直しとか、それから定員の見直しとか、そういうものを含めて、できるだけ全体像が明らかになるように法案提出のときにはお示しをしたいと考えているところであります。

 御指摘の地方移管というのは、そのまま移管をして、それに対する財源を交付金なりなんなりで右から左に移せば多分スリム化に資することはないと思いますが、決してそうではなくて、地方に移管することによって、私がよく言うのでありますけれども、例えば国道の管理と県道の管理が、今は直轄の事務所と県の土木事務所でやっておりますけれども、地域において一体的に管理できるようになればある程度のスリム化は可能でありまして、そのスリム化ができる部分については、ここに申します二割削減の中に当然カウントしていいのではないかと思っております。

 そういうことも含めた全体像をできる限り明らかにしたいと考えているところです。

石田(真)委員 今、見直しというお話がありました。巷間、公務員というと、人数が多いとか給与が高い、こう国民の皆さんはよく言われるんですね。前にもここで議論がありましたけれども、まず国家公務員、地方公務員もそうですけれども、国際比較なんかをすると余り高くないんですね。

 大臣は、比較が難しいという答弁をされていましたけれども、国民はなぜ公務員が多いというふうに意識されていると思われますか。

片山国務大臣 国民の皆さんがどうお考えになっているかというのは私もよくわかりかねるところはありますけれども、恐らく、数が多いという印象を持っておられるということもさることながら、むしろ、例えば昨今のように、民間企業では非常に非正規社員が多くなった、処遇も非常に下がってきた、そういうときに隣近所の公務員の皆さんを見ると非常に安定していてうらやましい、そういうふうな素朴な疑問とか、こんなこともあるんだろうと思います。

 公務員の数が多い少ないというのは、統計はないわけではありませんけれども、私は、本当に比較するのは難しいと実は思っております。

 例えば、私も経験がありますけれども、町内会の仕事なんというのは非公務員でやっているわけです。町内会長さん初め役員の皆さんが献身的にやっているわけで、こういうのは本来、行政の延長でありますから、行政機関が公務員の手でやってもおかしくない分野かもしれません。そういうものを行政がやろうとすれば、当然公務員もふえます。そうじゃなくて、今のようにボランティアとか民間の方でやっていれば役所はスリム化できているわけで、そういう各国の国情の違いなんかも丹念に仕分けをした上で比較をすれば別なんですけれども、なかなかそれは難しいのではないかと思います。

石田(真)委員 私は、この疑問はなかなか解消できないと思うんですね。そういう意味で、国も地方ももう一度定数の再検討というのをきちっとやってみたらどうか。それは仕事見合いの人数ですから。そういうことを一度全体的にやってみないと、いつまでも、どんな形にしろ、公務員は多いとか、漠然とした感覚での議論ばかりが横行するんじゃないかなというふうに思います。それはぜひお願いしたいなと思います。

 時間がないので、先に行きます。

 先ほどもお話にありました公務員の処遇、これも、人勧制度があって大体給与がなされたりしていますが、給与、それから退職手当、さらには年金、こういうものを含めて、大臣は、今の公務員の処遇の現状についてどういうふうに評価されていますか。

片山国務大臣 これは国家公務員のケースでいいますと、人事院が、決められたルールにのっとって各年調査をして、必要があれば勧告をして今日に至っているわけで、この官民較差というものを基本に置いた公務員の処遇というのは、私はそれなりの合理性がやはり高いと思っております。

 ただ、国民の皆さんから見ますと、国民の皆さんは非常に多様でありまして、大企業の重役サラリーマンもおられれば、さっき申しました、企業で非正規の処遇を受けている方も大勢おられるわけで、大企業の方から見ると、恐らく、同じような年配で同じような仕事をしている国家公務員を見ると、多分低いなと思う方が多いんだろうと思います。しかし一方で、非正規の方から見ますと、非常に恵まれていてうらやましいなという感情が出るのは、私はやむを得ないところだろうと思います。

 そういうことで、一概に、今の公務員の処遇というものをどうこうと言うことはできないと思いますけれども、先ほど申しましたように、一定のルールをつくって、そのルールにのっとって調査をした結果の今の現状でありますから、もしそれが妥当していないということであると、ルールを変えるという、そこから作業を始めなければいけないのではないか、そこにコンセンサスを見つける作業から始めなければいけないんではないかと思います。

石田(真)委員 私も今大臣が言われたとおりだと思うんですね。

 それで、先ほど、給与をさらに下げることで今労働組合と話をしていると言いましたけれども、人勧が出たら、それはルール外ですよね。だから、そのあたりについては、大臣として、矛盾はないんでしょうかね。

片山国務大臣 これはもう申すまでもなく、公務員の給与というのは、国であれば、人事院の勧告に応じてその処遇を変えていくということであります。これは、公務員が労働基本権を基本的に制約されているということの代償措置として定められていることであります。

 一方で、今、総人件費二割削減ということ、これが政権の至上命題として私が担当大臣として担っておりますけれども、これは先般の十一月の閣議決定のときにも決められたんですけれども、極めて異例の措置として行うという、異例のことだということで、現下の財政状況等にかんがみて行うということで、確かに公務員の労働法制それから処遇の決められ方のルールからは反しますけれども、これは現下においてはやむを得ない措置だろうと認識をしております。

石田(真)委員 ちょっと論理明快ではないなというふうに思いますが、それは頑張っていただいたらいいと思います。

 先ほどもちょっと触れていただいたんですけれども、私は、人事院勧告というのがあって、それで、労使協定、労使交渉で給与改定すると菅総理も言われているんですが、給与改定、先ほど言われたように、人事院勧告制度の基準、ルールを変えればこのことは達成できるんじゃないかと思います。しかし、あえて労使交渉による給与改定と言われる。

 そのあたりについて、人事院勧告制度の改定、運用で何とかなるのではないかと思いますが、大臣はどのように思われますか。

片山国務大臣 これは、おっしゃったような選択肢もないわけではありません。ただ、公務員も労働者でありまして、労働者には労働基本権が備わるというのが基本原則でありまして、憲法にも労働基本権というものはしたためられているわけであります。

 今日までは公務員は労働基本権を制約するということでやってきましたけれども、労働基本権をできるだけ回復すべきではないか、そういう意見があって、民主党政権ではそれを実現させようということ、その延長線上に今の議論はあるんだろうと思います。

石田(真)委員 そうすると、現実的に、給与改定を行うということについて、別に人事院勧告制度でも構わないということですか。

片山国務大臣 給与改定のことだけ考えるとそういう選択肢もないわけではないと思いますが、先ほど言いましたように、そもそも労働基本権というものを、完全であるかどうかはともかくとして、できるだけ基本原理に復させようということ、これが今回の出発点だろうと思います。

 それから、敷衍をいたしますと、今の人事院勧告制度でありますと、民間の給与との比較になりまして、国家とか自治体の経営状況といいますか、財政状況というものがストレートには反映しない仕組みになっております。

 これが労使交渉になりますと、民間企業でありますと、それぞれの企業の経営状況というものがおのずから交渉にも反映されるわけで、それが公務員の労使関係にも、恐らくは財政状況というものは何らかの形で交渉過程に反映されるのではないかと思います。

石田(真)委員 この人事院勧告制度は最高裁でも認められているわけですね。それをあえて変えようというのは、先ほどから申し上げている民主党の本質に根差しているんだろうな、私はそのように思います。

 もう時間が参りましたので、最後にちょっと申し上げたいと思うのは、民主党の皆さんが言われているのは、労使交渉で給与を削減する、そのためにやるんだという言い方をすごく表へ出されているわけですよ。しかし、民間の場合は、市場経済で、もうかったとかもうかっていないとか、そういうことが非常にわかりやすいわけですけれども、そしてまた、労使ともに、自分たちの乗っている船を沈没させるわけにいかないから、何とか協力してやろう、それがずっとこの何十年の間に成熟してきたと私は思いますよ。だから、ストというのは随分なくなってきましたけれども。

 だれに聞いても、公務員の場合は非常に難しいんじゃないか、そのように私は聞きますし、私自身も、非常に難しい交渉になるのではないかな。そんなに簡単に人件費が削減できるのか。新聞なんかのインタビュー記事を見ていましても、そんなのは応じられないみたいなことも出ているわけですが、それをあえてやっていく。もしできなかったらどうするんですかと聞きたいぐらいですが、それは先の話として、大臣はそのことについてどういうふうにお考えですか。

片山国務大臣 労使交渉を通じて給与云々というお話がありましたけれども、労働基本権の回復というのは、給与費を下げるための手段として考えるべきではありません。そもそも労働基本権というのは労働者の権利でありますから、労働者のためにあるわけで、それが何か、使用者のためにあって、使用者が給与を削減するためのツールだというふうにもし考えているとすれば、それは明らかに誤解だと思います。

 ただ、労使交渉を通じて処遇を決める、給与水準を決めるということになりますと、民間企業でも実際行われていることでありますし、それから、私が先ほどちょっと触れましたけれども、企業なら企業、それから組織なら組織の経営状況や財務状況というものがおのずから反映される可能性があるということが一つありますし、それからもう一つは、給与の話のときにあわせて定数だとか、そういう問題についても労働側の理解が得られる可能性がないわけではない。

 もちろんこれは管理運営事項に属することではありますけれども、そういう交渉を通じて、労使の間で、組織の将来についての見通しなりイメージなりの共有ができる可能性もある。そういう可能性がある。そういうことを通じて、やはりある程度の効果が生じることは期待できるのではないかと私は思っております。

石田(真)委員 もう時間が来ましたので終わりますが、最後に一言だけ。

 これは先ほど言いましたけれども、菅総理は三つを挙げて、そして公務員の二割削減をやると言ったんです。その一番最後、三つ目は労使交渉での給与改定ですよ。つまり、削減するということを言っているんですよ。だから、大臣が言われたとおりだと私は思いますけれども、菅総理はそんなことを考えていないということだけ申し上げておきます。

原口委員長 片山大臣、もう質疑時間が終わります。

片山国務大臣 恐らく、私が申し上げたようなロジックの結果出てきたものがそこに計算されるだろうということを言われているんだろうと思います。

石田(真)委員 終わります。

原口委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 一時間の質問時間をいただきまして、ちょっとお昼にかかるわけでありますが、委員の皆様方には御協力をいただきながら、きょうは、過日の大臣所信のお話につきまして、三項目にわたり御質問をさせていただきたい、このように思います。

 冒頭は万葉集で始めたいと思いますが、片山大臣とお話をするならこの歌しかないという、やはり鳥取県因幡の歌しかないでしょう。季節はちょっとずれましたけれども、ことしは大雪でしたのでこの歌でよろしいか、このように思います。

 巻二十、四千五百十六番、万葉集最後の歌でありまして、天平宝字三年、七五九年の正月一日に、因幡の国庁で国司大伴家持が、昔の鳥取県知事であった大伴家持が詠まれた歌であります。

  新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)

 どうもありがとうございました。(拍手)

 実は、この歌一首だけ因幡の国では詠んでおられるわけですけれども、ちょうど現代の因幡の国司もされた片山大臣であります。そのときの御経験も踏まえながら、きょうは、先ほど石田先生とはかなり理論的なといいますか、かなり大所高所の御議論をいただいてきたわけですが、そのことも今聞かせていただいたので、それも少し踏まえさせていただきながらも、今度は、木を見て森を見ずの逆の、木の方から少し森を考えてみるということでおつき合いいただきたいと思います。

 臨時財政対策債の話。交付税法の審議はこれからあるわけですが、これは地方共通の、そして、かなりの首長さんも最近心配されている問題であります。パネルも用意してまいりました。資料も用意してまいりましたので、それをごらんいただきながら質問させていただきたいと思います。

 せんだって、予算委員会の参考人でも、千葉県の野田市長さん、自分の実情は本当は言いたくないんだと言いながらも、野田市としての状況のお話があったんですが、これを全国、全体にしたパネルを持ってまいりました。地方の借入金残高。国が六百八十兆、地方が二百兆で云々とよく言われる、地方が二百兆、二百兆と言われる借入金の残高の推移であります。

 皆様方には白黒で申しわけないんですが、実は、この借入金の中が四つのパートに分かれております。一番下が、いわゆる自治体のいろいろな事業をしていく普通会計での、一般会計での、起債による地方債の残高であります。真ん中、だんだんふえてきております、これが臨時財政対策債であります。その上の、三十兆くらいで推移している、これが地方交付税特会の借入金であります、今度提案されている予算では千億削るわけですけれども。そして、上に乗っかっておりますのが、地方の公営企業、病院とか水道とか下水道とか、こういったものに係る地方の借入金ということであります。

 申し上げたいことは、ここ数年、二百兆ぐらいで何とかずっと抑え込んできております。なぜ抑え込んでいけるかというと、別に交付税特会の方が最近変わっているわけじゃなくて、要は、地方の方での一番下の部分、いわゆる地方債、自分たちの起債の部分、それから上の部分、公営企業の企業債の残高、ここが落ちてきているので抑え込んでいる。ただ、その分を結局食っているのが、皆さんのところでは白っぽくなっていますけれども、私のところは黄色くなっています臨時財政対策債、赤字地方債とも言われますが、ここがどんどんどんどん増殖をしてきているわけです。

 もちろん、最初は小さく生まれたわけですね。三兆円ぐらいから生まれて、でも、気がついたらだんだんふえて、この二十一年度決算額では二十五兆円の残高になっております。総務省さんの方から実はデータが出ておりまして、これが二十二年度では三十兆、二十三年度では三十五兆ぐらいになるというふうにたしかデータで出していただいていたと思うんですけれども、今かちっと決まっているデータだけを見ましても、二十一年度末の発行残高は二十五兆円。

 そして、これが地方の財政計画、地方の財政フレームにだんだん影響を与えつつあります。二十二年度の地方自治体の基準財政需要額の三・三%、これはまだ小さいですが、地方財政計画における公債費、これは要は地方の借金の元利償還額、この中に占める割合が一二・五%と、ウエートは確実に膨らんできております。

 よく財務省さんの方でやる、国で建設国債、赤字国債というふうにやるときにもこんな図面がよく出ますけれども、青と赤で出ていますかね。今、国は赤い方ががんがんがんがん膨らんでいるわけですが、それは、一年一年は大したことない、大したことないで来ているんですが、この問題、これの縮減ということがやはり大事じゃないかと思っております。大臣所信の中でも、ことしは臨時財政対策債を大幅に縮減した、こういう表現が出てくるのは私は大変うれしいことだと思いますけれども、このことが喫緊の課題になりつつあるのではないかということについての御認識をまず伺います。

片山国務大臣 この問題に対する私の認識は議員と全く一緒であります。

 従来は、これは交付税特別会計で財源不足を借り入れて、自治体には現ナマの交付税で配っていたわけでありますけれども、平成十何年だったでしょうか、仕組みを変えまして、自治体の方でとりあえず借金をしておいて後で交付税を補てんする、そういうやり方に切りかえたわけです。自来、だんだんだんだんこれがふえてきているわけで、要すれば、これは将来の交付税を先食いしているわけでありますから、決して健全な財政運営ではありません。ですから、これをできるだけ減らす、本来の交付税の制度の姿に戻すということが基本でありまして、私も県で知事をやっておりましたときから、この問題については強い問題意識を持っておりました。

 このたびは、いろいろな要素があったんですけれども、とりあえず一・五兆円を前年度よりは削減することができまして、大きなと言っていいかどうかわかりませんけれども、一歩を踏み出したと思いますので、ぜひ、これからもこれを減らす努力を続けたいと思います。

橘(慶)委員 もちろん、リーマン・ショック後の景気の落ち込みとかいろいろな問題があったことは理解するんですが、やはり今おっしゃったように、国と地方の関係では問題をはらんでいるわけであります。

 六兆一千六百億円まで一兆五千億円の削減をされたわけですが、ここで一つ、この問題を少し考えてみる上で、やはり何とかこの黄色いところを余りふやしていきたくない、できれば何とかゆっくり減らしていきたいなと。もしそうだとすれば、もちろん毎年償還額もありますので、多少は発行できるということにもなるんですが、例えば、この黄色い部分の残高をふやさないためには、今の状況だとどれくらいまでの発行にとどめなきゃいけないかというのが一問であります。

 そしてまたもう一つ、せめて地方の借入金全体をふやしていかない、これも大事なことでありますけれども、しかし、では、その場合にはどれくらいまでの発行が可能なのか。この辺はちょっと技術的な計算をしていただかなきゃいけないんですが、その計算結果をここでお示しいただきたいと思います。

鈴木(克)副大臣 ただいまの件について私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。

 今議員おっしゃったように、毎年の発行額をいわゆる元金償還額以下に抑えていくということが、理屈の上ではそういうことなんですが、現状、今どうなっているかということだけちょっと申し上げていきたいと思います。

 平成二十三年度において、臨時財政対策債の元金償還額については一・四兆円、地方債全体の元金償還額については十二・二兆円と見込んでおります。ともに、今後の発行額次第では大幅に増加していく可能性というか、おそれがあるわけであります。そこで、臨時財政対策債、地方債全体の残高がふえないようにするには、今申し上げましたように、毎年度の発行額をこれらの元金償還額以下に抑えていくことが大事であるということであります。

 なお、平成二十三年度の地方債全体の残高、普通会計負担分ということでありますけれども、これは、臨時財政対策債の縮減や普通会計負担分の公営企業債の減少等により四百億円減少し、百六十六兆八千八百億円となる見込みでございます。

 いずれにしましても、今後とも、地方税収にあわせて交付税総額の安定的な確保を行いつつ、地方財政収支の改善を図り、臨時財政対策債をできる限り抑制するなどにより、地方債の残高の縮減を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 この黄色い部分をふやさないためには、一・四兆円におさめなきゃいけないという現状だということ。

 ただ、地方債全体でとらえまして、今おっしゃったとおりで、実は、ことし減額にいくとなると六兆でもいいじゃないということになっちゃうんですけれども、それは結局、今までほど地方単独事業をやらなくなった。それから、次の質問でも申し上げますが、かなり地方が集中改革プラン等で取り組んで、言ってみれば身を削ってきた。地方で行政を運営するためにかかるコストを削って、言ってみれば、骨身を削って頑張っているから全体の総額もおさまっている。だけれども、それに国が甘えてしまうと、これまたいけない。国が大変だから地方の方で頼むねということでは困るというのは、これは財政運営戦略でもそういうことは書いてあると思うんですが、ぜひここは頑張っていただいて、六兆一千億と言わず、もっともっと一兆四千億の方へ近づけていただきたい、こんな思いを持っております。

 そしてまた一兆四千億については、実は、確かに交付税措置はもう既にされ始めているわけですね。元利償還額について交付税措置しているんですが、考えてみたら、一兆四千億返したって六兆一千億また借りるわけですから、交付税措置しているように見えるけれども、何のことはない、一兆四千億借りかえているというふうにも見えるわけですよ。だから、そんなことを考えても、ぜひここは、毎年毎年がっちりした地方財政の運営を強力に進めていただきたいと思います。

 そこで一つ、地方では集中改革プランが二十一年度で終わっているわけですが、これによりまして、先ほどから人件費の削減の話題もありましたけれども、合併等もあったものですから、職員削減目標もかなり上回って達成しているはずであります。そういう達成状況なども含めて、総務省としてのこの五年間の地方の取り組みに対する総括的な評価をここで伺います。

片山国務大臣 いわゆる集中改革プランというのは、平成十七年度から向こう五年間、その時点から向こう五年間ということで実施したわけであります。

 これをどう評価するかということでありますが、まず、目標と結果を比べてみますと、当初の目標が五年間で六・四%の職員の純減ということを掲げていたのに対し、五年間の実績では七・五%減っているということで、これだけとってみますと効果を上げた、実績を上げたということだろうと思いますが、私は平成十七年当時、知事をやっておりまして、これに対してはいささか懐疑的でありました。

 なぜかといいますと、これは、定員も含めた自治体の行政改革というのは自治体で取り組むべき問題であって、これを国が一律に、一片の通達で自治体に対して事実上強いることはできないはずでありましたので、これに対しては懐疑的でありました。したがって、鳥取県は独自に行政改革は進める、しかし、この集中改革プランなるものはつくらないということで、つくりませんでした。つくらなかったのは、四十七都道府県では鳥取県と、市町村では、私の把握しているところでは千葉県の我孫子市でありました。

 言えばいろいろ問題点はあるんです。地方自治に対する関与、これが法律ではなくて、一片の事務次官の通達で関与することの違法性などいろいろ挙げられるんですけれども、実態を申しますと、例えば鳥取県では一時期、定数を少しふやしたこともあるんです。それはなぜかといいますと、今もそうなんですが、当時もそうだったんですが、不況でなかなか職がない、特に鳥取県などは職がないところなものですから、そうなると、そういうときに公務員の給与を減らして、職員全体の五%カットをしましたけれども、その浮いたお金で必要なところにむしろ雇用をつくろうではないかというので、学校現場の三十人学級をやったりしたわけです。そうしますと、トータルコストは減っていたとしても人数はふえる、そういうことがあるわけで、この集中改革プランをしゃくし定規に適用しますと、そういう応用問題ができなくなってしまう、自主性を阻害するという問題がありました。

 それからもう一つは、これは評価とも関係するんだと思いますけれども、この集中改革プランというのは正規の職員の定数を減らせということでありましたので、だったら非正規に変えればいいんでしょうということで、非正規化を非常に加速したという面がないわけではありません。これがひいては官製ワーキングプアをつくったということになっているんだろうと私は思いまして、それに対する着眼といいますか、反省は必要だろうと思います。

 そんなことも、ちょっと余計なことも申しましたけれども、個人的な感想も含めた評価であります。

橘(慶)委員 大臣が現場にいらっしゃったときの、現場としてのお考えだと思います。

 ただ、また一面、そういうことを含めてでも、結果的にはこういう形で七・五%にわたる職員数の削減がなされた。特に、合併が進んだ市町村だけで見ますと九・九%ですよ。そしてまた、その間、人事院勧告によります給与の、特に地方では地域手当等の関係の見直しもありました。

 先ほどの二割削減という話からすれば、言ってみれば、職員数で一割、そしてまた給与も下げた。そうすると、実質二割とは言いませんけれども、かなりのところまでやった。そういうことを考えたとき、それは一応結果として出ているとすれば、やはり今度は国家公務員の方をどうしていくかということについて頑張らなきゃいけないし、また一面、そういったことで一つの結果が出ているわけですから、これに対して、臨時財政対策債等の縮減によって、やはり地方が自分たちで骨身を削った果実についてはしっかりととらまえていただきたい、このように思うわけであります。

 それでは、きょうは、行政改革ということと行政評価ということについて時間の許す限り質問をさせていただきたいと思います。

 行政管理局と行政評価局、私が勤めていたころからいえば、行政管理庁の行政管理局と行政監察局ということまでさかのぼるわけですけれども、せっかくこうやって二つの局がいろいろ頑張っておられるんですが、ここについても、きょう内閣府からも副大臣、政務官に来ていただいていますが、かなり入れ子の関係になっていまして、そして、今まで積み重ねてきたことをどうするかということについては、ちょっと不透明な状況になっているという部分を感じております。

 ぜひ、それぞれの組織を、機能をしっかり生かされながら、そして先ほどの理論的な議論の中にもありましたが、やはり行政はある意味で中立性が必要、継続性も必要、法律に基づく行政ということも必要であります。そういった大きな観点もとらまえながら、順次、行政改革の方から質問を始めさせていただきたいと思います。

 大臣所信で、行政改革については、タイトルとしては国家公務員の総人件費二割削減等の行政改革の推進、このようにタイトルをつけられました。実は、いささか違和感はありました。なぜなら、二割削減のためだけの行政改革というのは、何かこの行政改革というものを二割削減だけの手段に使うということではちょっと違うんじゃないかな、こんなことを思いました。

 それはそれとして、前政権まで、いや、今も続いているんですが、行政改革推進本部というのがございまして、これは五年間の設置になっているわけです。法律に基づく設置で、ことしの六月まであるわけですけれども、ここで逐年逐年「行政改革の実施状況」というものを取りまとめておられました。これは皆さんには配っていないんですが、これはたまたま緑の紙に印刷したから緑色をしていますが、本当は白いのですけれども、こういう形で、ぱっと見れば、一年間何をしたか、次に何をするかみんなわかるというものを、行政改革推進本部でいつも三月三十一日ですか、年度末に、二十一年の三月三十一日までおつくりになっていました。

 行政管理局は行政管理局で、予算のセットアップと、年度末ということで、こういう減量・効率化方針という形でしていくことをわかりやすくまとめて公表されておりました。

 要は、行政改革推進本部の取り組み、国の行政改革の取り組みということについては、こういう形での情報公開がなされてきたわけであります。これが一昨年度末以来、発表されていないわけですが、これは法律に基づく仕事であります。この行政改革の進行管理がどうなっているのか、総務大臣と園田政務官、それぞれお答えいただきます。

園田大臣政務官 行政改革推進本部については、私の方から、担当でございますのでお答えをさせていただきたいと存じます。

 委員御指摘のとおり、平成十二年の十二月に行革大綱が閣議決定されまして、前政権下でございますけれども、その閣議決定に基づいてこの行革推進本部というものが設置をされ、また、十八年には推進法が公布されまして、それに基づく推進本部が設置をされ、委員御指摘のとおり、十三年から毎年毎年、毎年度末にはフォローアップが確実に実施をされていたというふうに私も伺わせていただいておるところでございます。

 二十年度まで、毎年、行革推進本部において取りまとめを行ってきたところでございますけれども、その規定された各事項については実質的におおむね措置されたというふうに受け取っておりまして、それ以降の取りまとめはしていないところでございます。

 行政改革については、各分野において着実に実施をされておりまして、例えば、特別会計改革につきましては、三十一特別会計を十七に縮減であるとか、あるいは公務員制度改革については、能力、実績に基づく人事管理を行うであるとか、それはもう既に、各省庁においてホームページでも公表されているというふうに承知をいたしておるところでございますので、そういった実施状況については適時取りまとめをして公表されているというふうに私は理解をさせていただいております。

片山国務大臣 私の所信表明のときに、行政改革というものが余り強調されていなかったのではないか、むしろ二割削減の方ばかりが強調されていたのではないかとおっしゃられたことについては、そういう印象をお与えしたかもしれません。二割削減というのが、私が特に総理から指示を受けた事柄でありますし、いわば現状においてはトピカルな重要課題でありますので、そこを強調したという面は否めなかったと思います。

 しかし、一般の行政改革というものを決してないがしろにしているつもりはありません。私は、自分の過去の経験からしましても、日常的な行政改革というのは非常に重要だと思っております。もちろん、総務省の行政管理局などは定数の管理をやっておりまして、それが結果的に二割削減に資するということは当然あるとは思いますけれども、さればとて、二割削減のしもべとなって働くというものではありません。やはり日常的に常に無駄を省き、必要なところに人員なり組織なりを充てていく、こういうことは重要だろうと思っておりますので、平時においても、日常においてもこれはやっているところであります。

 あわせて、私は今、総務省で総務大臣になってから手がけておりますのは、情報公開というものが行政改革にとっては非常に重要な武器になりますので、多くの人から見られるということが結果的に無駄を省いたり、冗費、余剰人員を削減するということになりますので、情報公開を徹底するということが非常に重要だろうと思っております。

 今、政府全体で情報公開法の改正作業などもやっておりますけれども、今の仕組みの中でもできることをやっていこうということで、例えば、総務省では従来、総じて情報公開請求に対する決裁が事務レベルで完結していたんですけれども、今、省内の規程を改正しまして、基本的には政務三役、大臣まで見るということにしました。このことがどういう意味があるのかを説明すれば長いんですけれども、私が知事を経験したことからいいますと、そのことは非常に大きな効果を持つと私は確信しておりますので、総務省で今それを実践し始めたところであります。

 できれば、こういうことが総務省で、多分うまくいくと思いますけれども、これを各省に広めれば、政府全体としても随分、情報公開というツールを通じて、行政改革が日常的に進むことになるのではないかと思っております。

橘(慶)委員 それぞれ、言われていることは理解するんですよね。逐次進んでいます、各省で取りまとめています、園田さんはそうおっしゃいました。それから大臣の方からは、情報公開が大事だとおっしゃいました。

 であれば、これは継続性の原則だと思うんですよね。これをつくったからといって何か変わる、政策的というよりは、むしろちゃんと行政の仕事として、中立性ということもおっしゃいましたが、やっていけばいいだけのことなんですよ。なぜできないのかなという感じがいたします。

 お二人に順番に聞いていても仕方がないので、きょうは大臣所信ですから、どうですか、大臣、行政管理局でこういうものを、やはり毎年きちっと法律に基づいてつくられたらいいんじゃないですか。いかがですか。

片山国務大臣 御趣旨、御指摘を踏まえてよく検討して、政府部内でも相談したいと思います。

橘(慶)委員 そう言っていただければ、一つは前進かと思います。

 そこで、もう一つ、園田さんの方にも宿題をきょうは残していかなきゃいけないと思っています。

 行政改革推進本部、ことしの六月二十二日ですか、五年間の設置期限をめでたく終了されて幕を閉じるということであります。

 さきに原口大臣のときにも、地方分権改革推進本部一つが終わるときにも、四次勧告、一定のまとめをされて次につないでいかれました。幾ら政権がかわったといっても、法律は法律、国会から内閣に対して課せられたそういうものでございます。ここでやはり、六月に向けての何らかの、最後のきちっとした取りまとめをされるということの決意をお伺いします。

園田大臣政務官 ありがとうございます。

 先ほども御答弁をさせていただきましたけれども、平成二十年度末までには実質的におおむねこのことが措置されてきたというふうに承知いたしておるところでございますので、そういったところでは適宜公表をさせていただいているということでございます。

 また、私どもの政権におきましては、行政刷新会議というところを設置させていただきまして、国の行政全般のあり方に関して刷新をするという取り組み、不断に見直していくんだという姿勢を示させていただいているところでございますので、そういった面では、その中において行われていくものであるというふうに承知をいたしております。

 また、したがって、行政改革推進本部としての特段の活動は今現在行っていないということでございますので、そういった点では、ここにおける取りまとめというのは現段階ではちょっと考えておりません。

橘(慶)委員 そういうお答えをされるとどうしても、余りきょうは山を登りたくないのですが、ちょっと山を登りますね。

 行政改革推進本部として特段の活動はしていないと今おっしゃいました。しかし、法律に基づいて設置された組織が特段の活動をしていないというのはどういう意味ですか。お話しください。では、そこの職員はどうなっているんですか。

園田大臣政務官 推進本部は、委員御承知のとおり、法律に基づいて設置をされているということで、閣僚の本部がその仕事をするという形になっております。

 ところが、今般、私どもは行政刷新会議において、政権交代後はそこにおいて行政改革を行っていくという形をとらせていただいて、また、しかしながら、行政改革そのものの行政刷新会議からのさまざまな案件について、推進室を通じて、各省庁にその取り組みをしっかりとチェック、フォローアップをしていくという形をとらせていただいているということでございます。したがって、行政刷新会議としての活動はしっかりと行わせていただいております。

 また後ほど御質問があろうかと存じますけれども、事務事業の、独法も含めての見直しなんかもこちらの方でやらせていただいているということでございますので、推進本部としての活動を行っているということではないということでございます。

橘(慶)委員 ちょっとやはり解せないんですね。なぜそういうことを言うかというと、もちろん政治主導、それはいろいろ、いいですよ。しかし、もし推進本部が今の内閣としてふさわしくないなら、推進本部を廃止すればいいわけですよ、そういう法律案を出して意思を表明されればいい。去年の内閣府設置法にそういうものはないですよ。行政刷新会議をつくるとき、経済財政諮問会議はなくす、そういう案では出ていましたよ。だけれども、行政改革推進本部はあるわけですから、あるものは、やはりちゃんと仕事をしてもらわないと困るというのが普通じゃないですか。

 先ほどからちょっと内閣と国会の話もありましたけれども、大臣、どう思いますか。大臣、ぜひこれは閣議の中で、やはりそれはおかしいと。それは法律に基づいたもの、ただ六月にまとめをすればいいじゃないですかと私は言っているんですよ。そんなにひどい仕事じゃないですよ。

 きょうはいろいろな書類を持ってきました。行政評価局でこんなにいっぱい、いろいろな書類をつくっておられますよ。いろいろな仕事をしていますよ。だったら、本部を最後に閉じるときに、起承転結、きちっと結を上げて、また次の行政刷新会議につないでいけばいいんじゃないですか。私の言っていることはおかしいですか。大臣、お願いします。

片山国務大臣 いや、おかしいとは思いません。よく政府の中で検討したいと思います。

 推進本部がこれから何をするかというのは、それはそれでまた一つの検討事項でありまして、その過程で、例えば、推進本部としてはその仕事はしないけれども、別のところでするということは大いにあり得ることだろうと思います。例えばそれが行政刷新会議かもしれませんし、場合によっては総務省の行政管理局かもしれませんけれども、政府全体としてどうこれを受けとめて、どうするかというのは政府の中で検討したいと思います。

橘(慶)委員 それじゃ、またもとに戻っていきたいと思います。

 行政改革推進本部の職員の方々、今、みんな併任がかかっているんですよ、みんな行政刷新会議の職員という併任がかかっているんです。名刺に両方刷ってあります。そんなことさせないでもいいのに、もうちょっと何かその辺、こうしたいならこうしたいということをきちっとされればいいのにと思いますけれども、それはそれくらいにします。

 国家公務員の純減について、平成十八年六月三十日閣議決定に基づきまして、国の行政機関の定員、十七年度末三十三万二千三十四人の五%、一万八千九百三十六人以上の純減目標の期限が二十二年度末に到来いたします。もうすぐですね。達成見通しについてお伺いいたします。

片山国務大臣 結論から申しますと、達成できる見込みとなっております。

 ただ、当初の計画を立てたときと民主党政権になってからで、独立行政法人にするしないというところが少し変わっておりますので、そういう変更要素があったということを織り込んだ上で、本来の目標を立てたときの見込みは達成されるものと思います。

橘(慶)委員 実は、この純減についてという中では、全体の一万八千人の数字がありまして、これについて重点事項別、それぞれの行政の分野別の、言ってみれば詳細な目標数字というのが公表されて、定められております。それぞれの達成状況について、今の起承転結と一緒です。二十三年度当初には、この閣議決定に基づくこのことがこうなったというのは、先ほどの情報公開の話もございます、それぞれの項目別にこうでしたというのを公表すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 先ほど申しましたように、二十二年度末に、今御指摘になった各事項とも達成する見込みでありますので、年度末に実績値が確定し次第、お示しをしたいと考えております。

橘(慶)委員 続いて、この純減というのがこれで終わるわけですが、二十三年度からは言ってみれば、この計画が終わって新しいフェーズに入っていく。今、人件費二割削減云々ということもありますが、人件費を削減する方法は、大臣もよくおっしゃるように給与掛ける職員数、ですから定員の純減ということがなければ、なかなか給与だけにかぶせるというのは気の毒な話だと思います。

 二十三年度以降の定員純減計画の作成はあるのか、このことについてお伺いいたします。

片山国務大臣 先ほど申し上げましたように、今、非常にトピカルといいますか現下の課題として、総人件費二割削減という目標に向かっていろいろな検討なり作業をしておりまして、その中で、定数の問題というのが大きな要素として出てまいります。

 それで、総人件費二割削減については、この通常国会に給与法の改正案を出す際に、できるだけ全貌が明らかになるような資料もお出ししたいと思っているところでありますけれども、そういう作業過程を通じて、定数についても検討経過がだんだん明らかになってきますので、そういうことも見ながら、定員純減の取り組み方針についてもできるだけ具体化をしていきたいと考えております。

橘(慶)委員 ここで問題点として指摘しておきたいのは、行政の継続性ということで、二十三年度からは言ってみれば、海図なき航海に入っていくということがある意味でわかるわけです。そうであれば、普通であれば二十二年度中にそういったことを考えていけばいい、そして、プランをつくっておいて、そういうものに基づいて仕事を進めていけばいい。それを進めていくのが私は行政管理局の仕事だと思うんですよ。

 私は、行政改革推進本部のような形のものが、行政刷新会議も含めて、必ずしもそういう形がいいのかどうかわからないところがあります。行政管理局という一つの組織があって、そこに職員もちゃんと配置されているわけだから、そこをある意味でプレーアップ、ショーアップするのも大臣としてのお務めじゃないかと思います。

 行政改革推進本部はどうしても六月にはなくなる。しかし大臣もおっしゃったとおり、行政改革は不断の取り組み、別に人件費二割削減だけではなくて、永久の課題というのが常識であります。この本部廃止後の行政改革の推進体制、行政管理局の活用も含めて、大臣から決意をお伺いいたします。

片山国務大臣 もともとを言いますと、国家行政組織の中では、この種の仕事を担当するのは、旧行政管理庁の流れをくむ今の総務省の行政管理局だろうと思います。それのみならず、実際に行政がその目的どおりに効率的に行われているかどうかをチェックするのが行政評価局だろうと思いまして、これがいわば古典的といいますか、本来の部局だろうと思います。

 外から見ていたときの私の感想を申しますと、いささか日常の中に埋没をしていた嫌いがあったのではないか、そういうところにもってきて、政権交代を機に、行政刷新会議なりがさっそうと登場した、少し本来の担当部局が肩身の狭いような思いがあったのではないかと私も感じるところがありまして、一緒になってちゃんと協働の実を上げるように、協力をしながらやっていこうねということで、就任以来、ハッパをかけております。その延長線上で、これからは自分たちが担うというぐらいの気概を持ってやろう、こういうことも言っておりまして、私自身もそういうつもりで、別に権限をとりたいとかそんなつもりは毛頭ありませんけれども、いろいろな担い手としての案はもちろんありますけれども、総務省も一つの有力な担い手の候補として、これから政府内で相談なり検討なりをしていきたいと思います。

橘(慶)委員 時には基本に帰れ、バック・ツー・ベーシックということで、ぜひそういうことで、また元気を出してお願いしたいなと思うわけです。

 そこで、今いみじくも連携、行政刷新会議と行政管理局、総務省さん側と、評価局も含めて連携は必要だと思いますが、今、事業仕分けという形でいろいろなことを指摘されております。

 言ってみれば、これを私なりに理解すると健康診断みたいなもので、健康診断して、いろいろ聴診器を当てていろいろなところを調べた。こういう問題があります、こういうことがあります、ここまでは来た。では、治療方針を定めなきゃいけない。もちろん幾つか所見は出ているんですが、本当は、これでこういう治療をしましょうとか、こういうふうにもっと元気になってください、あるいは健康管理にこうしなさいということであれば、もう少しそういうものが見えてくる、要するに、切り刻むだけではなくて、つくり上げていくという仕事をだれかがしていかなきゃいけない。

 それは行政刷新会議でされるのか、総務省さんがされるか私はわかりませんが、切るのはいいです、切るのは確かに目立つし、それは非常に脚光を浴びるわけですが、それでは物事は終わらないんですね。切られて痛い痛いと言っている人をそのままにしておいてはいけないので、さあ、そこをどうするんですかというフォローアップとか進行管理、そろそろ組み立てに入っていかなきゃいけない時期だと思います。そこのお話を園田政務官からお願いします。

園田大臣政務官 委員御指摘のとおり、さまざまな指摘をさせていただくと同時に、それがしっかりと次のステップにつながっていくということは大変重要なことであると私どもも考えております。

 これまで三回事業仕分けを行ってまいりましたけれども、この手法につきましては、国民に今まで見えなかった予算編成過程をしっかりと明らかにしていこうということ、そしてまた、独立行政法人などの政府関連法人の事業内容の検証という形もあわせて行いながら、行政の透明性であるとか、大幅な無駄の削減というものを実現してきたところでございます。

 行政刷新の推進をしていくということに対しましては、事業仕分けの成果を行政に関する制度やあるいは仕組みの改革につなげていく、委員御指摘のとおりであろうというふうに思っておりまして、こういった仕組みというものが大変重要であろうというふうに考えておるところでございます。

 具体的には、まず独立行政法人につきましては、昨年の四月の事業仕分けの評価結果等を踏まえまして、全独立行政法人の事務事業の見直しを行ってまいりました。昨年の十二月に閣議決定をさせていただいたところでございまして、さらに、個別の法人の組織のあり方や現行の独立行政法人の制度についても、これまた抜本的に見直していくということをさせていただくことになっております。

 それから、特別会計につきましては、昨年の十月の特別会計仕分けの評価結果等を踏まえまして、現在、財務大臣が中心となりまして特別会計制度の見直しが行われているものでございます。行政刷新会議としても、その検討状況をしっかりと検証してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、昨年から、各府省みずからが概算要求前に、事業仕分けの手法も用いて所管事業の予算の支出先や使途を点検して、その結果を概算要求等に反映する取り組み、いわば国丸ごと仕分け、行政事業レビューというふうに呼んでおりますけれども、これを開始したところでございます。これは事業仕分けの定常化であるとか内生化ともいうべき取り組みでございまして、昨年は試行的に行っていたわけでございますけれども、ことしから本格実施に向けた検討を今進めているところでございます。

 今後とも、委員御指摘のとおり、事業仕分け等も踏まえて、しっかりと不断の見直しというものにつなげてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

橘(慶)委員 要するに、一つの物事の取り組みの姿勢なり方針としてはそれで十分理解しているんです。ただ、それを本当に着実に、成果あるものにしていけるかどうかというところを私は非常に心配しております。

 園田さん、何か頭の中で、あるいはそういう話としてはできるんですよ。でも、それをあなたのスタッフ、みんな一人一人が頑張ってやりこなしていかなきゃいけないんですよ。やりこなしていることにとって、そのことが意味のあることにならなきゃいけないんですよ。片山大臣じゃありませんけれども、何せ、あなたの給料を今から下げますとこれから言うわけでしょう。そういうときですから、やはり仕事を価値のあるものにしていかなきゃいけない。

 一言だけ言っておきます。

 私は、部屋にレクに来る方に毎回毎回尋ねているんです、後ろにいらっしゃる方に。あなたたち、給料をカットされるという話を聞いていますかと毎回聞いています。まだだれも聞いたという人はいません。ということは、何の覚悟もまだできていません、職員の方々。これは大臣、質問じゃないので申し上げておきますが、本当にそれでいいのかなと。どうして下げなきゃいけないのか、何のために下げるのか、そして、給料は下がるんだよということは、皆さん、後ろに座っている方々お一人お一人の問題ですよ。それはぜひ、どこかでみんなが考えていかなきゃいけない、一人一人の権利ですから。それはちょっと、質問しない指摘事項にしておきますけれども。

 ただ、園田さんが今おっしゃったとおりなんですが、例えば今の独法で、政策評価・独立行政法人評価委員会、評価局さんがある程度仕切ってやっていただいているわけですが、そこでこうやって評価年報をつくり、二十一年度における実績の評価の結果等についての意見を出し、そして、二十二年度に中期目標期間が終了する事業の改廃に関する勧告の方向性について勧告と、いろいろな作業をされております。確かに、行政刷新会議の方でも、独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針というのをつくられました。こんなにたくさん出ています。こんなにたくさんの仕事をしてもらっています。だけれども、本当にこれがうまく有機的に結合しているのか、そして何がなされていくのか、そこについてのお考え、現状認識、これは大臣によろしくお願いいたします。

片山国務大臣 直接のお答えになるかどうかわかりませんけれども、私も大臣に就任しましてから、特に蓮舫大臣との間で、双方が趣旨、目的は似たようなことをやっていることが多いものですから、よく連携をとりましょうということで、いろいろな場面で相談をしております。

 例えば、評価局が出しましたかなり詳細な資料などをお届けしましたら、大臣が克明に全部読んでいただいて、これは非常に参考になりますというので、自分のところの仕事に反映をさせますというようなことも実は現実にありました。

 それから、逆も私は必要だと思いまして、行政刷新会議でいろいろな指摘が、事務事業でありますとか組織でありますとか、それから独法でありますとか公益法人なんかにありますと、それはやはりきちっと受けとめて、それを単発の指摘だけに終わらせないで内在化する必要があると思うんです。

 それは、例えば組織などでありますと総務省の所管になるだろうと思いますし、それから事務事業の指摘でありますと、財務省が予算査定のときにそれをきちっと受けとめて、それを単なるマルかバツかではなくて、いいあんばいにと言うと語弊があるかもしれませんけれども、適切に査定に反映させるというような仕組みが必要だろうと私は思います。それは、ぜひ政府全体として、そういう問題を御指摘も含めて受けとめて、共有をしたいと思っております。

橘(慶)委員 独法については、もう一度時間をとってしっかりやらせていただきたいと思うんですが、ここに事務・事業見直しの方針、これは結局、従前の独立行政法人整理合理化計画というものを凍結し、その中に書いてあることを進めてもいいということになっているんですが、それはそれとして、こういう形でまとめられました。

 それこそ大臣ではありませんけれども、私も全部見せていただいたんです。非常に詳細にいろいろなことが書いてあって、非常に細かいんですけれども、また逆に言うと、これでどうなるのというのが余りよくわからない。というのは何かといいますと、もちろん何億円、何億円という、基金とか、そういう出てきたお金を戻すというのもあるんですよ。だけれども、例えば法人を整理するとか、そういうもう少し大きい観点からすると、国際万博協会にしても海上災害防止センターにしても、余りはっきりしたことは書いてないんです。

 これは非常に心配していまして、本当に改革が進んでいるのか、それとも、個別にこの事業はどうだとかこれはどうだといいながら、もっと大きい意味で、本当に予算の削減とか行政の合理化になるという取り組みになっていっているのか、非常に心配をしております。ミクロに見過ぎてマクロのところが見えていない、あるいはマクロの取りまとめができていない、ここは非常に問題意識を持っております。

 この辺についての進行管理も、今度また詳細に一度お伺いしたいんですが、きょうはとりあえず、まず総論だけお伺いしておきます。

園田大臣政務官 ありがとうございます。

 委員と全く問題意識は共有をさせていただいておりまして、私どももこれまで、前政権下も踏まえて、独立行政法人の見直しというものは行ってきたわけでございます。しかしながら、当初のころは、ただ単に一つ一つのミクロの部分で、その部分の事業がどうなんだ、あるいはそこに係る予算がどうなんだというような形での指摘事項であったというふうに思っております。したがって、ここでひとつ、全事務事業をまず見直すということが第一段階という形であろうかなというふうに思っております。

 そして、それをもって独立行政法人のあり方全体をしっかりともう一度点検をさせていただく中で、次の第二段目の、内容も含めての個別の法人の組織のあり方であるとか、あるいは現行の独立行政法人制度そのものの抜本的な見直しというものにつながっていくものではないかというふうに思っておりますので、ぜひとも、またさらなる御指摘をいただければと思っております。

橘(慶)委員 要は、見取り図はいいんですけれども、この見取り図でやっていくのは大変かなと。アナログ、デジタルという言い方もおかしいですが、もう少しアナログ的に物事をやってもいいのかなと、実はきょうの全体を通じて僕は思っていることなんです。

 評価局についてもそういう思いがあって、網羅的にやるということとか、悉皆、すべてにさわってしまおうというよりは、もう少し大どころをつかんでばしっと入っていくというふうなこともあっていいんじゃないかな、こんな思いを持っています。これが本当はきょう一番申し上げたいことなんですが、そこに入る前にもう一問だけ。ちょっとあと飛ばしますけれども。

 内閣府の問題、内閣の問題、この間、予算委員会でも、片山大臣とおおむね、内閣府は組織が非常に複雑怪奇になっているということについては御一緒の認識を持っていただいたと思います。

 ここでは端的にお伺いします。定員査定されているわけですから、内閣官房の肥大化は逐次進んでいると思います。平成十二年の、言ってみれば省庁改革の発足したときは三百七十七人から始まりまして、平成二十一年度定員七百三十七人。現状はどうなのか教えてください。

片山国務大臣 二十三年度の定員の張りつけ、査定を前提にしますと、内閣官房の平成二十三年度末の定員は八百二十三人になります。これは、二十二年度末に比較して十九人の増員ということであります。

 それから、内閣府、これは金融庁それから消費者庁などの外局を除いた内閣府の本府でありますけれども、これの二十三年度末定員は、二十二年度末と比較して十九人の減員で、二千三百四十二人になる予定であります。

橘(慶)委員 内閣府としては減るんですけれども、問題は、やはり日本国政府というんですか、私は時々、自分がそうだったから、日本国市役所とお呼びするんですが、日本国市役所の言ってみれば市長公室である内閣官房、ここがかなめなんですね。

 しかし、そこに大変優秀な方はいっぱいいらっしゃるんですけれども、一人一人は優秀なんですよ。でも、大臣、考えてください。一人と一人の人が二人になると、仕事をするとき二人で話をしなきゃいけないでしょう。三人になると、三人で話をしなきゃいけないんです。意思疎通しなきゃいけないんです、一人一人が独立ではないから。そうすると、七百人いるのが八百人になると、その中でそれだけ話をしなきゃいけなくなるんですよ。私、そのことが一番心配なんですよ。

 一人一人は一騎当千のすばらしい人材かもしれない。でも、優秀な人が八百人集まれば、七百人の人よりも仕事ができるというものでは私はないような気がするんです。もっとシンプルな、もっと機動的な、そして園田さん、例えばもし行政改革推進本部は要らないというなら早くやめちゃえばいいんですよ。だって、そういう方針なんだから。そして、すっきりしたものを提案されて、新しい組織をつくるのであれば、これとこれは外すとか、これは総務省さん引き取ってくれ、これは文科省さん引き取ってくれと外して、さっぱりした内閣府をつくらないとあなたも大変だと思いますよ。きょう公務員庁の新聞記事が出ていましたが、これもやらなきゃいけない。きょうは橘に呼ばれて答えなきゃいけない。そうじゃない、おれは公務員改革だけやらせてくれと、はっきり御主張された方が私はいいと思います。

 それはそれとして、行政評価の方に入らせていただきたいと思います。

 行政監察局が行政評価局になりました。ここで私が心配していることが今言ったことなんです。片山大臣、思い出してください。大臣が若いころ、私も駆け出しのころ、法案というのはタイプで打っていましたよね。タイピストというのがいて、タイプで物を打ちましたよね。それから、物を印刷するときは必ず、原稿を書いて筆耕してもらって、それを原稿チェックしましたよね、そこは合っている違っていると。そういうときだと、物事をやはりコンパクトにしていただかないとこなせないわけですよ、何でもかんでも。

 ところが、今はワープロ文化になりました。何でもコピー、コピーで、ぼんぼんぼんと写せるんですよ。きょうはいろいろなものを持ってきて、中には非常に読みごたえのある書類もあるんですが、きょう持ってきた中では、例えば、行政評価局、政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告、このあたりにきますと、各省庁ごとに指摘している事項があって、それがみんな、言ってみれば同じ総論で書いてあったりするんですよ。各論は少しだけ違うんですけれども、冬休みに一生懸命読んだら、本当に四、五ページに一行二行しか違わないというような報告書もあるんですよ。

 私、これは非常に心配しています。それを一番心配しながら、もっと言うと、監察か評価という原点にも立ち返るわけですが、監察というのはなかなか怖いシステムでした。こういう行政分野で、例えば、原口大臣のときでいえば橋。橋が老朽化しているから大変だというのは今の評価でやりますけれども、そういう個別のところで、ぴしっとピンポイントでいろいろなことを調べていくというのはなかなかいいんです。後から質問する法科大学院のところもそれで、問題意識を持って評価されるのはいい。だけれども、網羅的に何でもかんでも評価するということに力を注ぎ過ぎると、結局、大きな問題点を指摘することができなくなるんじゃないか。

 これは、ある意味で同じ時間、ある時期、この地域で過ごしたということも踏まえて、行政監察のような鋭い切り込みということについてのお考えをお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 どうしても、各省並びでみんな平等にやろうということになると、勢い網羅的になってしまって、そうすると、作業量が膨大でありますから、表面的というか、上辺だけさわるということになりかねない、それはそのとおりだろうと思います。したがって、ここはと思うところをピンポイントで、きちっと個別のケースとしてとらまえて評価なり監察をしていく、そういう態度、方針は私も必要だろうと思います。

 その際に、恐らくは、何でおれのところだけがとか、不公平ではないかとか、必ずそういうことが出てくるのでありますけれども、そういうことを抑えるのも政治主導だろうと思いますので、おっしゃったようなことも踏まえて、これからの一つの方針にしたいと思います。

 もちろん、現在でもそれはやっていないわけではありませんで、必要に応じてやっておりますけれども、それよりも、恐らく全般をさわるということの方が多いという御印象があるのではないかと思いますけれども、よく心がけたいと思います。

橘(慶)委員 ことしから新しいシステムとして、各省庁の政策遂行のあり方につきましては、新たに政策達成目標明示制度、こういうのを試行的に導入するということが出ていたと思うのですが、これの具体的な進め方を、これは平野副大臣になるのですか、お願いいたします。

平野副大臣 御質問にございました政策達成目標明示制度の導入でございますけれども、目標設定と成果の検証、いわゆるPDCAサイクルというふうに言っておりますけれども、そのPDCAサイクルを強化するという観点から、一昨年の秋でございますけれども、政策達成目標明示制度の試行的な導入を構想した、やってみようかということで構想したということです。

 その後、事業仕分けにおきまして、既存の政策評価制度について抜本的な機能強化を行うとされたことや、行政刷新会議におきまして行政事業レビューが開始される等、PDCAサイクルの強化に向けたさまざまな新たな動きが出てきたということがございます。

 こうした動きを踏まえまして、政府全体として、一つには事務の重複を避ける、あるいは過度な事務負担にならないようにする、そしてPDCAサイクルを簡潔に、そして効果あるようにするにはどうすればいいか、こういった観点から検討を進めるべく、政策達成目標明示制度の取り扱いも含めて、関連する諸制度の整理、強化について再検討するということで、現在、関係府省と議論を行っている、そういう段階でございます。

橘(慶)委員 進め方を議論中ということでありまして、ぜひ、きょういろいろお話ししているとおり、まさに今、事務の重複を避けるというお話もありましたが、事務がふえて成果がそれに比べて少ないのであれば、それは逆に意味のないことというくらいの、そこはそういう物差しでよく検討していただいて、実施していただきたいと思います。

 網羅的なということでいうと、事前評価の義務づけの問題です。ちょっと一つ質問を飛ばします。

 今まで、研究開発、公共事業、ODAそして規制、四類型について事前評価の義務づけの対象になっていたわけですが、今年度から、法人税関係の租税特別措置等の新設、拡充、延長に係る政策、税の方も事前評価の対象にしましょうということで、十月二十一日に、二百十九件の政策評価の点検結果が発表されております。

 その結果が、六件は「主要な項目で分析・説明が実施されていない」。六件は、ちょっとこれは悪いよということ。二百十三件が「分析・説明の内容が不十分」という結果だったわけです。言ってみれば、それもちょっと落第っぽいねということなんですが。

 そうすると、二百十九が、六の不合格と二百十三の落第っぽいねとなったんですが、全部だめというのも何か、それも評価としてどうなのかなという感じはするんです。初年度ということもあるのかもしれませんが、そこの思いをちょっと聞かせていただきたいと思います。

片山国務大臣 私も、大臣になりまして初めて、租税特別措置の評価を総務省がやっているということで、非常に新鮮な印象を受けたのであります。本来は租税当局、国税でありますと財務省、地方税でありますと総務省がそれぞれやっていたわけでありまして、恐らくは、そういう従来のやり方では効果検証がうまくいっていない、そういう指摘があったんだろうと思います。ですから、それはそれで、今の仕組みで私はいいと思います。

 これについての結果を聞きますと、今御指摘にありましたように、すべてについて不適ということで、実は、その中には総務省の所管しております特例もあったということで、ですから総務省も含めて、租税特別措置を設ける以上、これが効果を発揮するように改善なり工夫なりを施す必要があるだろうと、自分自身のことも含めて考えているところであります。

橘(慶)委員 やはり本当は、評価していくなら、これはいいですよ、これはちょっと問題ですよ、そういうふうに最後は分かれていくような評価になっていくことを祈りながら、皆さんにもうちょっと御辛抱いただいて、最後の部分の質問をさせてください。

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等による法曹の養成に関する政策評価ということで、これから取り組まれるものであります。質問は三つ用意しましたが、二つに絞ってお伺いさせてください。

 一つは、この分野の何を私は心配しているかというと、弁護士試験を目指してみた、そして法科大学院に行けば、大体の方は弁護士になれるというようなことでつくられた制度だったわけですが、なかなかそうはならない現実、いわゆる法科大学院は出たけれどということが起こり始めている。これを何とかしていかなきゃいけないということで、もちろん所管の法務省、文科省さんもプロジェクトチーム等をつくってやるわけですが、総務省としてもこの政策評価をされるということで、実施に期待するわけですけれども、総務省としての取り組み及びこの両省との連携の仕方について、内山政務官、方針をお伺いします。

内山大臣政務官 お答えいたします。

 総務省では、本年一月二十四日から、法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価に着手したところでございます。現在、法務省、文部科学省等から関係資料の収集、ヒアリングを行っているところでございます。

 評価に当たっては、昨年十二月の法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究報告を踏まえ、政策所管府省とは異なる第三者的な立場から、評価専門機関として、全国調査網を活用して収集した実証データをもとに、政策の総合性を確保するための評価を行うことが重要と認識をしております。

 また現在、法務省、文部科学省等において、法曹の養成のあり方を検討するための新たな体制の構築が検討されていると承知をしておりまして、フォーラムにおける検討にも資するよう、できるだけ早期に成果を出してまいりたいと思います。

橘(慶)委員 最後です。

 この問題の大事なところは若者だと私は思うんですよ。そこで志を立てて、でも三回落第したら、それでもう受けられない。だけれども、そのころにはもう三十ぐらいになっていて、では今からどうしようか、自分の人生、どうしようかと。昔の司法試験だって、ある程度自己責任の原則で、頑張る人は頑張ってね、そういうことだったですが、今回は多少、そこは少しアドバタイジングというんですか、法科大学院で勉強すれば何とかなりますという、公認会計士も今、同じ問題が出てきているんです。

 ここでやはり大事なことは、この若者の実態把握、どういう人たちが今どうなっていて、どんな悩みがあるか、ここを早く把握しなきゃいけないと思うんですよ。多分まだだと思うんですが、現状をお答えいただいて、これに早急に取り組むというところの姿勢をお願いします。

内山大臣政務官 御指摘いただきました三振制のことでございますけれども、昨年十二月の法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究報告書を踏まえて、関係府省等における新司法試験不合格者対策等の実施状況について評価を行うこととしております。現在、不合格者の進路等の実態を把握しているところでございます。

 なお、法務省等の調査によれば、司法試験を三回不合格者になった資格喪失者は、平成二十二年試験終了時点において千七百三十二人でございます。

橘(慶)委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、大臣所信を受けて、臨財債、あとは行政管理局、行政評価局ということで話をさせていただきました。

 どうか大臣、大臣にはいいスタッフがいっぱいいらっしゃるので、ぜひ、活力と個性に満ちあふれた管理局、評価局づくりをよろしくお願いして、質問を終わらせていただきます。

内山大臣政務官 端数を間違えました。千七百三十七人でございます。

 申しわけありません。

橘(慶)委員 ということで、大臣、今度は予算委員会の分科会でまたお会いしたいと思います。よろしくお願いします。

原口委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十六分開議

原口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 午前中のお二人の自民党の議員に引き続いて質問をさせていただきます。

 今それぞれの地方の現場あるいは政治の現場で何が起きているかということを中心に、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 今の政界、混乱のきわみであります。国民の皆さん方からは、国会は何をしているんだというような意見が数多く地元に帰れば聞かれます。第一の原因は、政界の混乱というよりも、民主党の内紛であります。そして、国外からも、日本の統治システムに対します冷笑がうかがえるようであります。今後どうなるかわからないような状態にさせてしまった政権与党の責任は非常に大きいものがあると私は思っております。

 幾つか分析してみますと、一つは、やはり実現不可能なマニフェストをつくったこと。財源のしっかりした裏づけもなくて、国民におもねる形でマニフェストをつくったこと。二つ目は、鳩山前総理大臣の余りにも国民とかけ離れた政治感覚。それは、金銭的にもそうでありますし、庶民の心という意味でも相当の乖離があるというふうに思います。三つ目は、小沢一郎さんという人物の存在の問題であります。当然、政治と金の問題。これは、鳩山前総理も一緒でありますけれども、この方について回り、そして国民から多くの疑惑が抱かれ、そして係争になっております。そして四つ目は、菅直人という総理大臣の人間的な問題と私は思います。

 この四つの要素がいろいろな形で絡み合いながら、それぞれが我田引水的にいろいろな形で理論づけして、そしてお互いの内部対立をしている、あるいはいろいろな抗争にまで発展しているというのが実情であろうかと思っております。

 菅政権の中で、片山大臣は唯一の民間登用の大臣であります。今の民主党、そしてこの政権の混乱を民間の大臣の一人としてどう見ておられますか、お伺いいたします。

片山国務大臣 政権の混乱をどう見ているかというお尋ねでありましたが、私なりに、今の政治状況を見ておりまして、感ずるところがないわけではありません。

 それは、例えば、国会が二院制であって、衆参の構成がねじれているといいますか、勢力図が異なるということも一つあるかもしれませんし、それから、御指摘にもありましたけれども、政治と金の問題というのも多分あるんだろうと思います。ほかにもいろいろあるだろうと思いますが、私は、政治史を論ずるつもりもありませんけれども、我が国の政治の歴史を見てみますと、一つ時代状況というのもあるのかなと最近考えております。

 ちょうど一九三〇年代に、政友会と民政党とが選挙で交互に勢力を競ってきたということがありました。当時は今と総理大臣の任命の仕方は違いますけれども、いずれにしても、三〇年代に入りますと、互いの政党が互いに政権党を激しく攻撃する、けなし合うということがありまして、その結果、両党とも国民の信を失っていくという時代がございました。結論から言いますと、そのときには政党政治は終えんを迎えたわけであります。

 私は、だからどうだというわけではありませんけれども、いろいろなことがありますけれども、国家国民のために何をすべきかというのを当時も考えるべきであったし、そのためには両党が、互いにけなし合うだけではなくて、共通点を見つけて、必要な施策をお互いに譲歩したり妥協したりしながら構築していくということが本当は必要だったんだろうと思いますけれども、それが当時はなかったということでありまして、政党政治の信頼を回復するということが今日でも政治の世界での大きな課題ではないかと思っております。

坂本委員 衆参のねじれというのは、これは混乱の要因ではなくて、やはり熟議のチャンスであるわけです。なぜそれがつぶれてしまっているのか、そのことはやはり考えなければいけないと思っております。

 そして、今、政治史の中の一面を取り上げられて、相手政党をけなす、誹謗する、こういったことが結果的には政党政治を終えんに陥らせているというような例をとられましたが、私は、十八年前の平成五年の細川政権のときの状況に酷似しているというふうに思います。

 あのときは、七党一会派の連立の政権でございました。図式は今も全然変わっていないと私は思います。七党一会派が民主党ホールディングスになっただけというふうに思っております。そういう中で、どういう政治が行われているか。それぞれが言いたいことを言うというようなことで、お互いに政党をけなし合うということよりも、やはりそのホールディングスの中で分解が始まっているということではないのかなというふうに思っております。

 実はその当時、私はさきがけの県議会議員でありました。園田代議士を中心に、同志の方々と県議会でもその会派をつくっておりました。私たちは、当時の日本新党とさきがけがいずれ合体するだろう、そして自民党にかわる新たな保守勢力をつくり上げ、日本の正常な二大政党時代をつくるというような意気に燃えていた時代でございます。

 しかし、思わぬことに、思わぬ形で政権が転がり込んでまいりました。新生党の小沢さんが七党一会派をまとめて、そして細川総理にしたということであります。そういう中で、思わぬ形で政権が、しかも早く転がり込んできたことが間違いの原因の一つであると私は今も思っております。

 もっと地方に根差して、そして熟議をして、あるいは思想や理念の土台をしっかりと整えながら、そして着実に政党としての形を整えていく、これが本来でありますけれども、やはり政権という魅力は怖いもので、そのことでいろいろな思惑がまた表面化してきた。そして、そこに政党の意思あるいは政治家の欲望というものが渦巻いて、結果的には、さきがけもそして日本新党も消えざるを得なかった。新党ブームというのが、一過性のものといいますか、短期的なものになってしまったということであると私は思っております。

 しかし、歴史は繰り返して、今と同じような状態であると私は思いますけれども、その中で一つ違うのは、やはり地方からの反乱が起きている、地方のさまざまな動きが起きているということであります。先ほど石田議員も質問されましたけれども、首長連合あるいは地域政党、あるいはさまざまな維新の会と言われるもの、こういったものがいろいろな形で、国政に不満を持つ形で出てきております。愛知、名古屋の問題もそうでありました。

 特に、愛知、名古屋の問題については、大臣はその状況を、はやり病、あるいは邪道であるというような言い方で表現されました。はやり病である、邪道である、そのようにお考えでありますか、お伺いいたします。それと、このように地方でのさまざまな動きが出てきていることに対して、総務大臣としてどう思われますか。

片山国務大臣 最近の愛知県とか名古屋市とか、そのほかにもありますけれども、一連の動きといいますか現象を見ておりまして、これも私として感ずるところはあります。

 一つの特徴は、大変これは申し上げにくいことで、失礼なことになるかもしれませんけれども、既存の政党に対する不信といいますか信頼度の低下というのはやはり否めないものがあると思います。その地域においてです。

 私も、今般の愛知県の選挙などに際しまして現地に伺ったこともあるんでありますけれども、そのことをやはり肌身で感じた次第であります。何やら、既存の政党から離れることが非常に評価されるというような、そういう面がなきにしもあらずということでありました。

 しかし、それだけではなくて、やはり名古屋には名古屋の特殊事情といいますか、名古屋固有の問題があったと私は思います。それは、名古屋市議会の問題、その市議会と市長との対立の問題というのがあったわけでありまして、これは、全国に普遍的な問題とか現象では必ずしもないと思います。そういう問題が背景にあったと思います。

 私が記者会見などで申し上げたことについての言及がありました。

 都構想ということが問題提起をされておりまして、名古屋でも中京都構想というのが提起されているわけです。それから、最近では新潟で新潟州構想というのが提起されておりますが、これらについて、続々と出てきたことをどう思うかという質問がありまして、それについて私が申し上げたのは、はやり病とは申しませんが、そうは申しませんが、影響されていろいろ出てきているという面は否めないのではないか、ただ私の認識違いかもしれませんがということで、そういうお断りをした上で、いわゆる都構想についての私の見解を申し上げたわけであります。ですから、はやり病と断定したわけではありません。

 ただ、大阪から始まって、何らかの影響を受けて、陸続ととは言えないかもしれませんが、幾つか出てきた面があるのではないかということを申し上げたわけで、そういう認識を示したわけであります。

 それから、邪道と申しましたのは、名古屋市長が、まだ任期途中であるにもかかわらず、みずから市長をやめて、職を辞して、だけれどももう一回市長選挙に出る、補欠選挙に出るということで、これはいろいろなお考え方もあるんだろうと思います。議会のリコールの請求の投票と県知事選挙と一緒にやるとかという思惑はあったんでしょうけれども、私は、四年の任期を託された首長が途中でやめるのであれば、もう次に出るべきではないと自分では考えております。

 いずれ、任期が来ればまた選挙があって、そこでみずからに対する有権者の信頼の度合いはわかるわけでありますから、そんなに、途中でやめてまで自分の信認度を探るということは、私は、これはやるべきではない、むしろ税金の無駄遣いではないかということで邪道と申し上げたわけでありまして、この点について、今も考え方は変わっておりません。

坂本委員 私は、やはり今の名古屋あるいは愛知の動きは、本当の地域のためのものではないと思います。はやり病あるいは邪道と言われましたけれども、その考えについては私も同感であります。

 本来、地域政党にしても地域の道筋をしっかり示すことにしても、やはりもっと地道なものであるべきです。みんなが生活に根差しているわけですので、そういった地道な中で、都構想にいたしましても州構想にいたしましても、あるいは広域連合にいたしましても、将来的にどういうふうにするかということをしっかりとそれぞれの首長あるいは議会が考えて打ち出すべきもの、これ以外は、やはりとっぴな、人気取りのための構想と言っても私は過言ではないというふうに思います。

 そういう中で、一番まともな形で、九州が、昨年、九州広域行政機構構想というものを打ち出しました。これは、九州七県のそれぞれの知事さんあるいは議長さん、こういった方々がしっかりと手をつないで、そして署名をして、そして意思を統一したものであります。七県が、九州にあります国の出先機関、八府省十五系統と言われておりますけれども、その事務、権限、人員あるいは財源、こういったものを広域行政機構に丸ごと取り入れましょうということであります。

 どこがどう違うか。身分は、今まで国家公務員だったものが、九州広域行政機構、知事会ではいわゆる九州府と言っていますけれども、この機構の職員になるわけです。国家公務員でもない、あるいは県の職員でもないというようなものになります。

 あとは何が違うかといいますと、そこで働いている人たちが霞が関の方を向いているのか九州の方を向いているのか、この違いであります。

 九州地方整備局あるいは厚生局などがありますけれども、そのままで局長さんたちはいろいろな仕事をしていただく。しかし、身分としては、九州府、九州広域行政機構の職員である。そして、やはり地元をしっかりと見詰めて、その中で仕事をしていただきたい。

 ただ、全体の運営は、七県の知事と国の地方支分部局、出先でつくります知事連合会議が運営する。その知事連合会議の中で働いてもらうということでありますので、当然視線は、霞が関ではなくて、知事の方に、あるいは九州各県の方に、あるいは九州全体の方に向いていくと思います。

 この方式でいけば、法改正の必要がないんです。もちろん政省令については改正していかなければならないかもしれませんけれども、身分的には九州府への出向ということで済みます。

 そして、このことを国が認めること、大臣が認めること、そして先行的に出発すること、これがやはり大事であると思っております。大臣が認めさえすれば、憲法改正や法改正や、あるいはさまざまな全国を一にした仕組みということではなくて、まず九州の中で、その九州広域行政機構の中で事が始まるわけであります。

 先ほど、あれは石田議員の質問だったと思いますが、権限が移行することによって、国道と県道、こういったものの管理が効果的になればそれはやはり非常にいいことであるというような趣旨の答弁をされました。

 そういうことを勘案いたしますと、これから近い時期にこの九州広域行政機構に対して大臣が何らかの対応をする、何らかのゴーサインを出す、このことが、今私たちにできる、国の機構の地方への移譲という大きく振りかぶったものでなくて、できるところからやっていける唯一の道であると思いますけれども、いかがですか。

片山国務大臣 九州行政機構の構想は、私も大変高く評価しております。以前から伺っておりますが、改めて、先日も、広瀬大分県知事、九州知事会長から話を伺いまして、非常に真摯で意欲的な構想であるという認識を持ちました。

 一方、国の方は、菅政権の一つの重要政策として地域主権改革があり、その中で、国の地方出先機関の事務、権限の移管ということが政策テーマになっておりまして、昨年の十二月にこれらに関するアクション・プランをつくりました。

 その中で、この九州に関係することを言いますと、ブロック単位で受け皿が整ったところについては、順次、丸ごと出先機関を移管していきたいということでありまして、したがって、九州広域行政機構が整備されれば、それに対応して、地域の要望に応じて国の出先機関を移管していくという方針はもう既に固めているところであります。

 先ほど坂本議員は、総務大臣が決めさえすればうまくいくとおっしゃいましたが、必ずしもそうでもありません。

 それは、一つは、例えば九州行政機構という構想を伺っていますと、今の地方自治法の広域連合の枠組みではとらまえられないような要素があります。これはやはり何らかの法改正が必要だろうと思います。

 それから、例えば地方整備局なり農政局なり経産局なりを移すということになりますと、国の行政機関としてはなくなるわけでありまして、そうなりますと、やはり国家行政組織に関する何らかの法的な手当ては必要になるんだろうと思います。そういうことの整理をこれからする必要があります。

 ということで、早速、先般、このアクション・プランを推進するための組織として、私が座長になりまして、アクション・プラン推進委員会というものを設けておりまして、そこで、先ほど言いました広瀬九州知事会長を初めとして、大阪府の知事でありますとか京都府の知事とか沖縄県知事の皆さん方から直接話を伺ったということで、既に九州についても協議を開始しているところであります。

 できるだけ早く受け皿の整備と国の方の必要な手はずを整えるということが、これからの課題だろうと思います。

坂本委員 これは関西の広域連合よりももう一つ進化をした形であるし、私は、このことが将来どういう形になるかわかりません。道州制に発展するかもわかりませんし、またほかの行政形態になるかもわかりませんが、しかし、まず始めることが大事であると思っております。

 幸い、宮崎県知事が退任されまして、九州は非常に実務的な知事になりました。しっかりした行政が行われていくと思っております。九州は九州の方で、七県の知事が歩調を合わせて、あるいは議会が歩調を合わせて受け皿づくりや組織の整備をしてまいりますので、同じように並行して国の方もその手はずを整えていただきたい。あるいは、総務省が窓口になって定期的に九州との会合をする、こういう場も必要であると思いますけれども、いかがでしょうか。

片山国務大臣 これは政府の事務の所掌でいいますと内閣府になっておりまして、内閣府の地域主権改革担当大臣として私はこの任に当たっているわけであります。

 したがって、先ほど申しました地域主権戦略会議のもとにできましたアクション・プラン推進委員会で、これから九州とも詰めた話をしていくということになります。もちろん、当然必要があると思いますので、総務省という立場としても九州の関係者の皆さんとは御相談申し上げていくことになると思いますけれども、窓口は内閣府ということでございます。

坂本委員 窓口は内閣府でも担当は片山大臣でありますので、人が地域を動かしますので、組織が動かすわけじゃないですから、大臣の方でしっかりリーダーシップをとっていただきたいと思っております。

 続きまして、TPPの問題についてお伺いをいたします。

 昨年十月一日の臨時国会の所信表明演説で、菅総理は突然、TPPへの参加という問題を提起されました。いかに突然で、TPPが何たるかを国民のほとんどが知らなかったかということは、翌日の新聞各紙がTPPのことについては何も書いていないんです。それだけ、新聞記者も、TPPについての予備知識なり、やはり知識がなかったということであります。いかに唐突であったかというのがその証拠であると思っております。

 その後、国論は二分していますけれども、TPPの内容が徐々に判明するにつれて、私は反対論やあるいは慎重論が広がってきていると思っております。

 また、六月、あるいは仮に参加するとして、アメリカの議会の同意を得る、時間的にも非常に無理であります。

 私は、地方に住む一人として、このTPPには反対をしております。即時撤回を求める会というものを自民党の中で結成しておりますけれども、その一員でもあります。

 農業を中心とした第一次産業がまず疲弊していくことは明らかであります。農林業を含めて、第一次産業の活力なくして地方は成り立ちません。戸別所得補償云々ということも聞きますけれども、そういうものでカバーできるようなものではありません。それから、建設、土木も、外国企業が多く入札に参加し、受注しやすくなります。当然、地元業者には圧迫感として感じるわけでありまして、この一次産業あるいは建設関連産業、こういったものがなくなれば、地方の存在そのものがなくなってしまいます。

 企業誘致が進み雇用がふえるかというと、そうでもありません。国内から国外への企業の流れ、これはそう簡単にとめられるものではありません。賃金の安い外国人労働者がふえ、地方の高校、大学を出た若者の雇用の機会が奪われるという方が正しいと私は思います。

 医療、介護、福祉の分野はどうか。混合診療が進んでいくでありましょう。一部の医療技術は進歩するかもしれません。しかし、それは都市部の一部の病院だけであります。国民皆保険は徐々に崩れ、地方の医療機関が閉鎖に追い込まれることも十分考えられます。医療格差、医療難民、こういったものが地方から出てくるということは明らかであります。介護、福祉も、外国人労働者がふえます。雇用は頭打ちになるというふうに感じます。そして、営利目的の福祉施設がふえ、高額な入所費用か利用料金が設定され、所得の低い人はそういった福祉施設あるいは介護施設に入れないというような状況になります。

 幼保の一体化にも拍車がかかりまして、教育、保育、さらに人材育成などにおいても、どうしてもやはり所得によって振り分けられてくるというようなことになります。

 最低限の保障あるいはシビルミニマム、こういったものが保てないという状況が十分考えられますし、我々の先輩たちがつくり上げてきた地域社会のきずなあるいはつながり、こういったものも崩れていくと思います。

 つまり、TPPというのは、地方にとっていいことは一つもないと私は思います。

 地方が活力を持たなければいけない、地方が再生しなければならない、そのさなかにあってTPPに参加するということ、それは逆方向であろうと思います。地方を所管する総務大臣として、私は反対もしくは慎重論を閣内でも唱えるべきであると思いますけれども、いかがですか。

    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

片山国務大臣 TPPへの我が国の参加の是非については、御承知のとおり、現在検討中でありまして、政府の方針としては、六月をめどに参加の是非を決めたいということで、現在はその情報収集に努めているということであります。

 したがって、今は、本当に情報収集をよくして、そしてその中から、得られた情報に基づいて、我が国の国益にこれがプラスなのか、それともそうでないのかという見きわめをする、そういう時期だろうと思います。

 その上で、地方にとって全然いいことがないのではないかということをるるおっしゃられまして、私も、典型的な地方の県の知事をやっておりました当時のことを思い浮かべて、なるほどなということも感じながらお聞きしていたわけでありますけれども、私は、必ずしも地方にとって何もいいことがないということではないと思います。

 例えば、私が属しておりました県でありましても、農業を主要産業の一つとする県でありましたから、このTPPによって、あるいは農業に対して大きな影響を受ける可能性があるということは確かに言えるんだろうと思います。しかし一方では、県民の就業構造から見ますと、例えば輸出産業に関連するところで働いている人もかなりおられます、電気機械産業というのが鳥取県でも盛んでありますので。そういう面からしますと、必ずしも農業だけが、一次産業だけがその地域の利害を代弁するものではないではないかという印象も、認識も私は持っております。

 そういうことを含めて、ぜひ地方でも、単一の利害だけを代弁するのではなくて、地域全体をにらんで、その地域の地域益といいますか、それにどう関連してくるのかということを見きわめていただければと思うのであります。

 最近の各県の議会などの決議だとかそういうのを見てみますと、苦慮されている経緯がよくわかります。絶対反対というところもないではないんでしょうけれども、慎重に対応されたいというところがかなりあるのは、そういう苦慮の跡がうかがえるのではないかなと思っております。

 ぜひ、多方面の点検を加えられて、そういう声を地方から中央に寄せていただく、それを踏まえて、地方を担当する総務省としても、閣内でもって、そういう意見を踏まえた対応をしていきたいと考えております。

坂本委員 総務大臣らしくない御答弁だと思います。それは対立の問題云々で私は言っているわけではありません。

 やはり大臣もいろいろと情報を集められていると思います。その情報の中で、それは地方全体として、長期にわたった場合にどういうマイナス効果があるというのは、おおよそ見えてきていると思っております。輸出産業にしても、TPPに入ったから輸出がふえるというものではありません。これはデータとして出ておりますし、トラック等の一部は、非常に高い関税で仕切られて、輸出が促進されるかもしれませんけれども、半導体あるいはその他のものについては今と余り変わらないんです。それは、プラスマイナスでいえば、地方にとってはマイナスの方がはるかに大きい。長期に見た場合にもはるかに大きい。過疎地で見た場合にも、あるいは中小商店街で見た場合にもはるかに大きい。これまでの構造改革でさまざまな疲弊の波が地方に押し寄せたのと一緒であります。

 そこはもう一度やはり考えていただきたい。そして、大臣としての所見をもう一回いただきたいと思います。

片山国務大臣 ですから、今、坂本議員がおっしゃったようなことも含めた意見が地方から本来は出てくるはずだと思います。まだ正式に各県からこの問題について、断片的な御意見を伺ったりすることはありますけれども、正式にどうだというのは、さっき言いました議会の決議などを除いては余り私も耳にしておりませんので、これから、六月ではちょっと遅いかもしれませんけれども、できるだけ早く各県から、各地方からそういう意見を伺いたいと思っております。

坂本委員 要するに、国も地方も情報がないんですよ。今、どういう形でTPPのそれぞれ多国間交渉が行われるか、あるいは二十四のワーキンググループで何が行われているか、外務省にしても、ほとんどその情報を入手しておりません。こういう情報がない中で参加するのかしないのかを決めるということ自体が非常に無理があるなというふうに私は思っておりますので、ぜひそこは、今後、事あるにつけて慎重にしていただきたい。発言につきましても、やはり地方の立場を十分考えた発言をしていただきたいと思っております。

 続きまして、NHKの会長選任の問題についてお伺いをいたします。

 福地会長の後の松本会長に至るまでの選任の過程は、マスコミあるいは週刊誌、さまざまな形で報道されてまいりました。政界の混乱同様、混乱のきわみでありました。

 そこで、事実確認だけさせていただきます。

 NHKの会長選任は、昨年十一月二十四日から始まった。そして、慶応大学の前塾長でございます安西祐一郎塾長を、選考手続に従い、優先順位第一位として打診を始めた。御本人より了解を得て、ことしに入り、経営委員との面談が行われた。その後、支持に必要な十二人のうちの九人の賛同が得られず、その状況を御本人に説明した。安西氏は、一月十一日、記者会見をし、就任拒否を表明され、会長人事は白紙に戻った。会長就任に当たって、安西氏が、交際費の使用、そして副会長を連れていく、また都内に部屋を用意する、この三条件がNHK関係者に広まり、一部の経営委員が難色を示した。これは新聞記事からであります。

 安西氏は、その三条件を、根も葉もないこと、事実無根のいろいろな中傷が広がり憤っている、風評を判断基準にするのではなく、経営委員として責任を持って決めていただきたいと、選考過程とNHKの経営委員をインタビューの中で強く批判されております。

 その後、JR東海副会長の松本正之氏を全会一致で議決、選任いたしましたが、経営委員会の小丸委員長が、混乱の責任をとって経営委員を辞任されました。

 事実経過にこれで間違いありませんか。

安田参考人 安田でございます。

 ただいまの坂本先生からの混乱した会長選任の経緯について、事実確認を御報告いたしたいと思います。

 まず、私たちは十一月二十四日から会長の選任を始めましたが、その際に、二段階の選抜方式というのを採用させていただきました。委員から推薦されました候補に優先順位をつけまして、優先順位一位の方から候補になっていただけるかどうかという打診を行うということでございます。これが第一段階。そして、候補の方に応諾をいただきましたら、それについて審議し議決するという、この第二段階を行いました。それは先生がおっしゃったとおりでございます。

 それで、十二月二十一日の指名委員会で、安西先生につきまして、その段階では任命に必要な九票は集まっていなかったんですけれども、第一候補と決めまして、打診をいたしました。その結果、二十七日に応諾をいただいたところでございます。

 ところが、その後、さまざまな情報が流れましたので、一月五日に、安西氏と経営委員との面談の機会を持ちました。しかし、任命に必要な九人以上の支持が難しい状況になりましたので、議決予定日の前日の一月十日に、安西氏からの御要請がございましたので、こうした状況をお伝えして、先生の御判断にゆだねた次第でございます。

 以上が安西氏の選出に関する経緯でございますが、安西先生に対しましては、大変失礼なことになりまして、多大の御迷惑をおかけいたしました。国民、視聴者の皆様に対しましても、この混乱で御心配をおかけいたしましたことをまず心からおわび申し上げたいと思います。

坂本委員 私は、いろいろな問題が新聞で報道されるたびに、NHK職員の方に、町内会長選びよりもこれはお粗末だということを言ったんです。

 今、先生は安西先生を傷つけたというふうに言われましたけれども、安西先生だけじゃないんです。多くの人がやはり困惑し、傷ついて、そして何よりも、NHKの信頼そのものが失われたんです。だれを傷つけたかというような問題ではない。それはそのまま、やはり経営委員一人一人が反省が足りないからだ、そういう言葉が出るのは反省が足りないからだというふうに私は思っております。

 そして、やはり経営委員の未熟さ、そして責任感のなさ、こういったものが混乱を引き起こした。まさに、今の民主党政権と似たようなところがあります。

 民主党は、自公政権末期に、国会での経営委員の同意人事などで、いろいろな理由をつけて不同意といたしました。銀行の社長に対しましては、NHKの指定銀行であるので、指定銀行は複数あるわけですけれども、指導監督が行われるか疑問ということで不同意といたしました。再任のお二人に対しましては、経営委員としての姿勢や功績不足で不適格と、本人にとっては本当に悔しい、なぜこういう判断をされなければならないんだろうかという思いが出るような理屈で不同意とされました。

 現在の経営委員十一人のうち六人は民主党政権になって選任された人たちであり、そのうちの五人は昨年の六月二十日に誕生いたしております。民主党がさまざまな理屈をつけて経営委員の選任に不同意をしたことから考えますと、今回の混乱、NHKの経営委員が国民の皆さんから受けた不信感、国民の皆さんたちに持たせた不満感、こういったものを考えるときに、一たん経営委員すべてが辞任すべきではないかと思いますが、いかがですか。

安田参考人 経営委員一人一人が責任の重さを改めて確認いたしまして、信頼される経営委員になるよう今後努力をしてまいりたいと思っております。

 経営委員は、公共の福祉に関して公正な判断ができ、広い経験と知識を持たれた方、そして教育、文化、技術、産業など多分野にわたって全国各地から選ばれた方でございますので、私は、そうしたすばらしい要件を十分に備えた方であると認識いたしております。

 小丸委員長が辞任をされましたことによって、私どもは一つのけじめがついたというふうに考えております。残された私どもは、なぜこういった問題が起こったのか、どうすれば今後こういった問題が二度と引き起こされないのか、そして、どうすれば国民の信頼を回復できるような新しい経営委員をつくっていけるのかについて、真摯に、全身全霊をかけて今後取り組んでいきたいと思っております。

坂本委員 去る二月九日、自民党本部で総務部会が行われました。このNHK会長の選考過程の中で、安田委員長職務代行が、服務準則に違反するようなことがあったと言われたことに、多くの自民党の国会議員から意見が出たところであります。

 服務準則は第五条で、「経営委員会委員は、日本放送協会の名誉や信用を損なうような行為をしてはならない。」と信用失墜行為の禁止をうたい、第六条では、「職務上知ることのできた機密(個人情報を含む)を漏らしてはならない。」と機密保持をうたっております。今回の混乱で、まさに信用を失墜させ、そして個人情報を漏らした者がいるということであります。放送法二十条では、「内閣総理大臣は、」「委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。」というふうに記されております。

 この条文や服務準則の規定をそのまま適用するなら、今回は、信用を失墜させている、機密保持が守られていない、放送法二十条が適用されても私はおかしくないというふうに思います。自民党の総務部会でもそこが集中的に論議をされたことは、もう御承知のとおりであります。

 そのとき、井原理代経営委員が、経営委員会の中に監査委員会がある、私は監査委員も務めておりまして、昨日、そういう懸念があるということで、調査をしたいと経営委員会に申し出た、アンケート調査なのでどこまで正確に把握できるかは率直に言ってわからないが、調査はしなければならないと考えている、可能な限りやる努力はしたいと申し上げたいというふうに言われました。

 今どこまで調査が行われておりますか、そして今の時点で何がわかりましたか、そしていつごろ最終的な報告書が出ますか、お答えください。

井原参考人 ただいまのお尋ねでございますけれども、本調査は、放送法に基づきます監査委員会の調査でございますけれども、調査の客観性を高めるために、補助者として弁護士の方々に加わっていただいております。

 調査目的といたしましては、ただいまも問題を御指摘いただきましたような、情報管理の不備の検証と改善のあり方についてでございます。

 調査方法といたしましては、関連情報をもとにした基礎調査や聞き取り調査を行っている最中でございます。

 したがいまして、現時点で調査結果につきましては最終取りまとめには至っておりませんけれども、結果につきましては、できるだけ早くということで、本月中、二月中にまとめまして、放送法に従いまして、経営委員会に報告をするということになってございます。

 したがいまして、公表は経営委員会として対応するということになりますが、ホームページや委員会終了後のブリーフィング等で、可能な限り、視聴者の方、国民の皆様にも説明をさせていただくというつもりでございます。

 以上でございます。

坂本委員 二月中に取りまとめて、そして経営委員会としてということですが、今、経営委員会は委員長もいらっしゃいません。それは職務代行でできるわけですね、手続的には。

安田参考人 代行で短期間はできると思っております。しかし、私、何分にも未熟でございまして、こういった任にいつまでたえられるか、自信もございません。

 小丸前委員長が辞任されたわけですけれども、同時に経営委員も辞任されましたので、現在十一名でございます。ですから、できるだけ早く、経営委員十二人が全員そろった段階で委員長を選出したいと考えておりますので、一日も早い経営委員の補充をお願いしたいと思います。

坂本委員 私たちはこの後、平成二十三年度のNHKの予算案の審議をしなくてはなりません。しかし、この問題が一応の決着を見なければ予算審議入りはできないということをこの場で言っておきたいと思っております。

 そして、そもそも経営委員は、今、安田職務代行が言われましたように、経営に関する基本方針や日本放送協会の業務の適正化を確保するために必要な体制を整備することが役割であります。番組審査会とは違いますし、放送の内容に深く立ち入ることはできません。受信料といういわば準税金的なものを国民の皆さんたちのためにいかに公平に、いかに効率的に使うかということをやはり審議するのが、決めるのが経営委員であります。

 であるのに、民主党になって、漫画家の方がその中に入られたり、あるいは小説家の方が入られたりということで、何かしら、経営とはまた違った視点で経営委員の方々がそこで選任されているような気がしてなりません。しかも、非常勤でありながら、年間の報酬は五百六万円であります。この五百六万円が高いか安いか、それは国民の皆様方にお伺いしなければならないことでありますが、そのことについて、安田職務代行、どう考えられますか。

 それから、今言われました経営委員長の後継はいつごろ決められるか。これは補充人事がなくてはなりませんので、総務大臣の方に、いつごろ決められるのか、お伺いいたしたい。

 それから、同時に、委員長不在ということは、福地前会長が言われた道半ばのNHK改革に影響するのではないかというふうに思いますし、松本新会長にとっても好ましいものではないと思っております。その辺の考え方について、職務代行にお伺いをいたします。

安田参考人 現在十一名の経営委員がいらっしゃいますが、これらの方は、公共の福祉に関して公正な判断ができ、広い経験と知識を持たれた方であると私は確信をいたしております。しかも、全国各地から選ばれておられます。

 経営委員の活動と申しますのは、本部の役員や地域の放送局長との打ち合わせ、あるいは委員相互の打ち合わせ、経営委員会の資料の検討など、多岐にわたっております。地方からお越しになりますと、丸一日、時には一日半つぶれます。

 こういったことから考えまして、これらの業務に対する報酬といたしましては、私は妥当な額ではないかと考えております。

片山国務大臣 経営委員の補充の件でありますけれども、小丸委員長が委員長及び委員自体を辞任されましたので、今、欠員が生じております。これにつきましては、できるだけ早く補充案を固めて、国会に提案をさせていただきたいと考えております。

坂本委員 私は、自民党時代の経営委員の選び方がよかったとは思いません。郵政族と総務省が水面下でさまざまな調整をして、そして経営委員の候補者を選出するというようなこと、そういったものに戻ってもいけないと思っております。しかし、だからといって、目新しさや、経営委員と少し毛色が違ったような人を、国民受けするような形でいろいろな人脈の中で選んでくる、これもまた大きな問題があると私は思っております。そのことが今回の混乱にも拍車をかけてきたというふうに私は思っております。

 国民がNHKに持った不信感、あるいは社会的な信用失墜、これは大変なものがあると思っておりますので、これから、二十三年度の審議をするまでに全力でその信用回復に努めていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

福田(昭)委員長代理 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 大臣の所信に対して、順次伺ってまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず最初の質問ですけれども、国家公務員の二割人件費削減のことについて伺っていきたいと思います。

 民主党マニフェストで掲げた総人件費二割削減、年次目標であります平成二十五年度までに本当に実現できるのか、この点をまず幾つか伺っていきたいと思うんですけれども、二割削減の柱につきましては、まず一つ目、地方分権推進に伴う地方移管、それから二つ目が、国家公務員の手当、退職金等の水準の見直し、そして三番目、公務員制度改革後の労使交渉を通じた給与改定等のさまざまな手法によるはずでございますけれども、私は、少なくとも、この三つのうち二つは破綻をしているのではないだろうか、このようにも思っているところでございます。

 まず、その第一番目ですけれども、国の出先機関の地方移管について。

 午前中の質疑の中で、石田委員からもさまざまな御指摘がありましたけれども、昨年末に閣議決定された地域主権戦略会議のアクション・プランでは、平成二十四年の通常国会に法案提出、準備期間を経て二十六年度中に事務、権限移譲と。四年間でやるという、約束の二十五年には間に合わないのではないか、こういうことなんです。

 片山大臣は予算委員会で、みんなの党の江田議員への答弁で、出先機関改革は二つの要素があって、一つは、地方整備局や農政局のブロック単位の機関をどうするかということ、これは準備が整った地方から順次移管をする、これは新たな法律が必要なので二十六年にならざるを得ない、個々の事務ないし場合によっては機関の移譲、これは順次やっていくんだ、このように答弁をなされておられます。

 それで、ここがちょっとよくわからないんですけれども、すなわち、「出先機関の原則廃止に向けて」というこのアクション・プランには、平成二十六年に事務、権限の移譲が行われることを目指す、このように書いております。すなわち、前倒しをしてやるといったことは書いていないわけでございまして、マニフェストとの整合性がないのではないか、こうなってくるわけでございます。

 この出先機関の見直しを二十六年度にやるとしたら、それでも二十五年度までに二割削減が実行できるのかどうかということ。出先機関の見直しは人件費削減の柱ではなかったのか、私はこのことをあえて見解をお伺いさせていただきたいと思います。

片山国務大臣 マニフェストにあります二割削減については、さっき議員がおっしゃったような幾つかの要素があります。

 その中の一つの大きな要素は給与水準の見直しでありまして、これについては先ほどもお話をしましたとおり、今通常国会に給与法の改正案を出したいというのがございます。それとは別に、地方分権といいますか、地域主権改革の一環として、国の出先機関を地方に移管すること、それから、出先機関が担っております事務、権限を移管することによって、そこでスリム化を図る、こういうことも要素として入っているわけです。

 そのことについて、二十六年度以降の移管になっているからマニフェストとは整合性がとれないのではないか、こういう御趣旨だと思いますが、アクション・プランを見ていただきますと、そこは二つの要素に分かれておりまして、二十六年度と書いておりますのは、広域ブロック機関の丸ごと移管のスケジュールであります。

 それとは別の、例えば今の四十七の都道府県を前提にした事務の移管、権限の移管、それに伴って必要な人員の移管もあるとすれば、それは、実は順次、二十六年を待たずともできるということになっておりまして、その作業はできるだけ早く開始することにしております。それでどれぐらいの人数が出るかということは、そんなにたくさんはその分野では出ないと思いますけれども、あり得ることであります。

 二十六年度中と書いておりますのは広域ブロック単位でありまして、これはやはりある程度時間がかかります。といいますのは、例えば九州の地方整備局の丸ごと移管になりますと、三千数百人の職員が移管するわけです。それから、農政局でも千数百人になります。それで、さっき坂本議員とのやりとりでもありましたように、受け皿については法的な手当てが必要になります。それをやるために、やはりある程度の準備期間が必要です、国と該当の地域との相互のやりとりもありますので。それを順次やっていくと、スケジュールでいいますと、国会との関係なんかを考えますと、実際に人が動いていくのが二十六年度にならざるを得ないということであります。

 これは私はやむを得ないことだと思います。余り粗っぽく、何も準備をしないまま、受け皿のことも考えないで、えいやで出すわけにはいかないです。生身の人間が相当数動くわけでありますから、ちゃんとした体制なり手続なり、整えたり踏んだりしなければいけないんだろうと思います。

 巷間、何か、マニフェストを先送りするために二十六年度と書いたのではないかというようなことを批判する向きもありましたが、全くそれは見当外れでありまして、地方機関を丸ごと移管するということを真剣に考えますと、やはりそういうスケジュールにならざるを得ないということであります。

 そうなると、民主党が政権をとってから四年内に目標の二割削減に達するのか、そういう疑問が恐らくわくことになるだろうと思います。そこは、私が担当大臣になってこの問題に真剣に取り組んだ結果としての、マニフェストの一つの応用だろうと思うんですけれども、二十五年中にめどをつけるということ、これを一つの私なりの、担当大臣としての目標にしております。

 めどをつけるというのは、実際の人間が広域ブロック単位が移管されることによって動くのは二十六年度以降になります。だけれども、それは、二十四年の通常国会で法律が通りますと、二十五年中に早速移管作業を、準備作業を始めることになりますので、その段階で第一陣としての移管される人数なんかは出てきます。そうしますと、それによって、都道府県の機関との間で統合することによってどれほどスリム化されるのかというのはおおよそめどがつきます。

 そういうことを二十五年中にできれば、ちょっと延びることにはなりますけれども、実際に削減は多少延びることになりますけれども、マニフェストから大きく違背することにはならないんだろうという整理を私自身はしております。

    〔福田(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

稲津委員 そこで本当にできるのかどうかということは、私は甚だ疑問だと思うんですよ。

 それはさておいて、アクション・プランについての御説明をいただきました。マニフェストには明確に「二十五年度に実現」と書かれてあります。私は今、まずそのことを前提にお伺いしたわけでございますけれども、大臣はめどというお話をなされました。これは後でもう一回お聞かせいただきたいと思うんです。

 それでは一方の、第三の柱、労使交渉を通じた給与改定です。

 報道によると、政府が提出を予定している国家公務員制度改革関連法案には、人事院勧告を廃止し、給与など労働条件について、労使で交渉し協約を結ぶいわゆる労働協約締結権を付与する一方、集団で業務を停止する争議権、いわゆるストライキ権の国家公務員への付与を当面見送るというふうに報道にありました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、これは何回か、いろいろな方もお伺いしていますけれども、あえてお聞かせいただきたいと思います。人事院が担ってきた中立公正性はどのように担保するのか。それから、そもそも、労働協約締結権を付与して本当に給与を下げることが可能だとお考えなのか。公務員に労働協約締結権を認めているイギリス、ドイツ両国でも、一九八〇年以降、労使交渉で給与が下がったという話は、私は実際には聞いておりません。見解をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 先ほどもこれは御答弁申し上げたと思いますが、労働基本権を付与するといいますか回復させる、公務員労働者に対して労働基本権を回復させるということは、決して、給与を下げんがための手段として付与しようというものではないと私は思います。そういうことは考えていないんだと思います。あくまでも、労働基本権付与ないし回復の問題というのは、本来労働者として持っているべき権利というものを公務員労働者にも復活させるかどうか、そういう文脈の中で論じられるべき問題だろうと思います。

 ただ、その結果として、例えば政府なら政府、自治体なら自治体の経営状況といいますか財務状況、財政状況というものが、労働協約によって労働条件が決まる、そういう環境の中では反映する可能性があり得る。今の人事院の仕組みの中では、これは官民比較を淡々とやりますので、経営状況とか財政状況というのは必ずしも入らないわけでありまして、新しく仕組みが変われば入る可能性がある、そういう過程を通じて、場合によって給与水準が変動する可能性がある、そういうことだろうと思います。

 そうなれば、その結果がこの二割削減の中の一つの要素として入り得る、そういう整理を私はしております。

稲津委員 今の御答弁を聞いていますと、ますます、この柱の三番目というのはなかなか、給与を下げる要素としては大きな要素にならないのかなということを感じてくるわけでございますね。

 ちょっと話がかわりますけれども、大臣は、大臣所信で、「現在の人事院勧告制度のもとでは極めて異例の措置」とはなるが、きょうは午前中の質疑の中でもその異例というお言葉を使われました、「職員団体とも話し合いを行いつつ、給与の引き下げを内容とする法案の検討を進め、」その法案を今国会に提出するとおっしゃった。

 これは、労使交渉に基づいた給与改定を目指す政策とは矛盾しないのかどうかという話なんです。現状は、労働協約締結権を付与する国家公務員制度改革法は成立はしていません。成立していないから、特例で引き下げの法案を出すということなのか。今後、労働協約締結権が仮に付与された場合、こういった引き下げ法案は必要があるのかないのか。この見解をぜひ聞かせていただきたいと思います。

片山国務大臣 これは、引用されました昨年の十一月一日の閣議決定の中にかなり明確に書いてあると私は考えております。

 どう書いてあるかといいますと、「国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る。」これが労働基本権回復、付与の基本方針であります。「なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する。」これが、私が異例のことではありますがとお断りをした上で、今通常国会に法案を提出したいと考えている内容であります。

稲津委員 現在の人事院勧告制度のもとで給与改定が行われている中で、極めて異例の措置で引き下げ法案を出すというのであれば、現状の人勧制度も、これから目指す労働協約の締結権を付与した上での給与改定も一体どういう位置づけになるのか、なぜ国家公務員制度改革法成立後ではないのか、ここのところが私はよく理解できなかったので、この問題については昨年の臨時国会でもお聞きをいたしました。

 どうしてもこの理解ができない、そういう意味で今聞かせていただいたんですけれども、いずれにしても、平成二十五年度までに二割削減ができるのかできないのか、出先機関の見直しを先送りした時点で、既にこのマニフェストは破綻をしている、私はこのように思うわけでございます。

 マニフェストどおり達成できないのであれば、これは断念したということを本来は示すべきではないか。大臣は先ほど、めどという話もされましたけれども、国民の皆さんにとっても非常にわかりにくい説明になってしまう。所信でも大臣は、「平成二十五年度までにめどをつけるべく、」関係閣僚と連携して着実に取り組んでいくと言っていますけれども、これは、マニフェストで二十五年度までと明確に書いていることを考えてみると、やはりトーンダウンをしていると言わざるを得ないわけでございます。その意味で、きょうはあえてこのことについて少し聞かせていただきました。

 次に移ります。地方自治法の改正について。

 政府は今国会に、地方議会制度の改革を含む地方自治法の一部改正案の提出を予定されている。詳しくは法案の審議のときにと思っていますけれども、きょうは、まず、政府で提出する予定の法案の改正の概要について一点だけお伺いしたいと思います。

 先週十七日に、全国知事会がこの改正案に、十分な検討や説明がなされていないとして反対する方針を決めたという報道がございました。地方行政にかかわる部分の変更を国が一方的に決めるのはおかしいことだ、このように思うわけですけれども、地方の側の意見はしっかり聞いたのかどうか、ここのところの経緯についてお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 先に、特にこだわるわけではありませんが、出先機関の改革を二十六年度以降に先送りしたとはぜひおっしゃらないでいただきたいということを、先ほど私、懇切に申し上げたつもりなんです。決して、何か他意とか意図があって広域ブロック単位を移管するのが二十六年度以降とやったわけではなくて、今から本当にきちっと真剣に詰めていっても、二十六年度にしかならざるを得ないんです。二十五年度に移管するなんてとても、公務員を移すということを真剣に考えたら無理であります。ですから、そこは決してそういうふうに受け取らないでいただきたいということであります。

 その上で御質問いただいたことにお答えを申し上げますけれども、今般の地方自治法の改正というのはいろいろな要素があります。

 例えば、首長と議会との関係が随所でぎくしゃくしている。二元代表制のひずみとまでは申しませんけれども、ある種、想定外のことが九州の阿久根市で起こったりしたこともあって、やはりいま一度整理をしなければいけないということが一つ要素としてあります。首長と議会との関係を整理するということ。

 その中に、例えば議会を招集しないなどというとんでもない首長さんが出てきたものですから、こんなことはもう、はなから想定していないわけです。ところが、首長が招集しなかったら議会が開かれないなんということになるものですから、もし首長が議会を招集しない場合には、しようがないので、それこそ便法と言うとまた変かもしれませんけれども、かわりの手続で議会が議会主導で開けるようにする、そういうものを設けたり、それから、専決処分というものが地方自治体には、首長が議会の議決にかわって処分をするということが、国会とは違って、あります。これなんかも想定外のことで濫用されたわけです。こんなのは普通の首長はしないんですけれども、そういうことが実際に起こったものですから、やはりここも整理しなきゃいけない、そんなこともあります。

 そうしますと、例えば、知事会もそうですけれども、首長さん方にしてみれば、おれたちはまともに普通のことをやっているのに、何か特異な人が出てきたからといって、全般的に首長の権限を弱める、逆に言うと議会の権限を強めるようなことはおかしいんじゃないかというような意見もあります。

 ごもっともな意見なんですけれども、実際にそういう変なことが出てきますと、やはりきちっと対応を法的にはしておくべきではないかということを私どもは考えておりまして、その辺でも対立はあります。意見の相違はあります。逆に、そういう問題については議会側は、議長会側は評価していただいているということでありまして、地方団体側も実はまだら模様なのであります。

 それからもう一つの論点としては、地方自治には団体自治の側面と住民自治の側面がありまして、団体自治というのは、国とは違った、地方自治体が独自に物事を決定し得るという、国からの独立性の強化ということであります。従来はそればかりやってきたんです、権限移譲とか財源の移譲とか関与の廃止とか。ところが、地方自治のもう一つの車の両輪は住民自治の強化でありまして、住民の皆さん方の意向がいかに自治体財政、自治体行政に反映するか、ここを強化しなければいけないわけでありまして、これを盛り込もうとしています。それが、直接請求の内容を充実させるとか、それから、ごく一部でありますけれども、住民投票制度を選択的に導入したらどうかというような内容であります。

 これは、私のように地方自治の分野に長らく携わった者からすれば当然のことだと思うんですけれども、自治体関係者、特に首長さん方からすれば、余計なことをしてほしくない、ちゃんと私たちは住民の意向を酌んできちっとやっています、だからそんな余計な住民の政治参画機会なんかはあえて設けてもらう必要はないと、そうまではおっしゃいませんけれども、本音はそういう方も結構おられます。そういう意見の対立もあります。

 そこで、では、自治体側から異論、反論が出ているのをどうするかということでありますけれども、そもそもこの地方自治法というのはだれのためにあるかといいますと、決して首長さん方のためにあるわけではなくて、住民の皆さんのために本来あるはずであります。住民の皆さんにとってどういう、ずれのない、無駄のない効率的な自治体行政が営めるか、そのための枠組みの法律であります。

 その自治法を改正しようというときに、場合によっては現在の首長さん方にとって煙たい改正もないわけではありません。今回もそういうものが入っております。でも、だからといって、首長さん方の意見だけを全部聞いて、わかりました、首長さんの嫌がることはしませんというと、住民の政治参画機会の拡大などの門が閉ざされてしまうということでありまして、当然、首長さん方の意見も伺いました、議論もしました。最後、折り合えない面もあるということは、ぜひ国会の議員の皆さん方にも御理解をいただきたいと思っております。

稲津委員 そこで、首長さん、もう一方の議会の方のお話を少しさせていただきたいと思うんです。

 私どもも、二元代表制、そして地方議会のあり方に着目しまして、昨年から、地方の議員の代表者の方々に集まっていただきまして、いわゆる地方議会の改革、あり方について何度か協議をさせていただいてまいりました。そこで重ねた議論の結果として、先般、一月に、我が党が目指す地方議会の改革への提言ということで発表させていただきました。時間の関係上、昨今起きているさまざまな首長さんとの問題も含めて、大要五点にわたって簡潔に申し上げます。

 例えば、議会権能の強化。いわゆるチェック機能だけではなくて立法機能も強化していこうということで、議会の招集権、先ほどお話がありましたけれども、これを議長にも付与していこう。それから決算委員会の常設化とか、議会事務局の地方議会に対するサポートのあり方とか強化。

 それから、いわゆる議会の情報公開に努めていこうということで、見える化を進めていこう。

 それから、住民参加の推進を図っていこうということで、公聴会や参考人制度もフルに活用していこう。

 また、言われているところの議員の定数、報酬の適正化、ただこれは、昨今は定数削減とかいうことがどうしてもテーマになってしまいますけれども、いわゆる引き下げも含めた適正化ですけれども。それと同時に、それぞれの議会や地域によって状況は違いますので、ここのところについても、例えば公務員側の一定の役職に準拠とか、さまざまな見方がありますので、そういうことも検討していこう。

 その一番最初の大事なものとして、いわゆる議会基本条例、これはもうあちこちでできていますけれども、それを進めていこうということで提言をつくりました。

 全国議長会の御意見も反映をさせていただいたんですけれども、もう一つ大事なことは、これが基本的に非常に大事な問題だと思うんですけれども、全国議長会からは、議会の招集権、それから意見書の誠実回答義務づけ、そしてもう一つ、いわゆる地方議員の責務を法律上明らかにすべきだ、こういうことも提言されました。

 大臣にぜひ一点だけ、この全国議長会からの要請事項の中の、地方議員の責務の法律上の位置づけ、ここをどのようにお考えかお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 公明党のめざす地方議会改革への提言を私も拝見しましたけれども、ほとんど違和感はありません。大変失礼な言い方ですけれども、ほとんど違和感はありません。

 今回の地方自治法の改正案の中にも、この中からかなりそれを取り入れて盛り込んだつもりであります。例えば、原則として通年化するとか、議会の招集権を議長にも付与ということには必ずしもなっておりませんけれども、首長が招集しないときにどうやってそれを補完するかという意味では趣旨は同じだろうと思いますし、専決処分の抑制というのも入れております。実は、そういうところに知事会は難色を示している。そういう意見の対立が実はあるわけであります、これは余分なことかもしれませんけれども。

 議員の責務を法律上明確にすべきだという御意見を私も伺っております。さらには、もっと敷衍して、議員の身分といいますか、ポジションをもっとちゃんと位置づけてくれということを伺っております。それはそういう方法もあるのかもしれませんが、私は別に、それをあえて法律で書かなくてもちゃんと、地方議会の議員の皆さんの位置づけとか役割とか権能というのは自律的に確立できると思っております。

 というのは、例えば議会の処理すべき議決事件などは、自治法の九十六条によりますと、みずから追加できるわけです。それから、議員さんがどういう仕事ぶりをするか、今はたまたま定例会は年四回でありまして、あとは何をしているんですかなんということが時々批判が出ますけれども、例えば通年化をしますと、おのずからその勤務形態といいますか、職務従事形態は変わってきますから、そうしますと、住民、有権者の皆さんの見る目も変わってきます。

 ちなみに、議会の議員の皆さん方の中には、さっき言ったように、自分たちの身分をちゃんと明確化してくれということがあるんですけれども、私は知事をやっておりましたけれども、知事だってそんなことは法律上明確にしていないんです。知事はどんな仕事をしますかというのは書いてあります。知事は給与をもらえますというのは書いていますけれども、知事はどういう存在でどうだこうだというのは実は余り書いてないんです。そういう意味では同じことなんですね。

 ですから、日ごろの働きぶりと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、どういう仕事ぶりをしているかによって、おのずから議会の議員の皆さん方の位置づけというのは住民の間で固まってくるのではないかと思っております。立法を否定するわけでは決してありませんけれども、そう考えております。

稲津委員 我が党の中間報告等について目を通していただきまして、どうもありがとうございました。

 ただ、今、後段の方のお話ですけれども、実際に全国議長会、それから多くの議員の皆さんからは、地方議員の身分のあり方とか、ここはやはり相当意見が出ています。ですから、今大臣の御説明は大臣のお考えで、それはそれでそうかもしれませんけれども、先ほど知事会の皆さんの意見を聞いたのかというお話をさせていただきましたが、やはり地方議員の現場の声としては厳然とそういうことがあるということをぜひお受けとめいただいて、これは、これからまたさまざまな場面で御議論をさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 さて、次に、平成二十三年度の地方財政計画について数点お伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、臨時財政対策債についてなんですけれども、平成二十三年度の地方財政計画では十四兆を超える巨額の財源不足。交付税制度本来のあり方は、交付税率の引き上げで対処すべきではないか、これは、片山大臣御自身が知事時代、臨財債の発行については否定的、そして交付税を、変更を主張された、このように承知しておりますけれども、午前中の橘議員の質疑の中でもさまざまお話がございました。

 財政状況が厳しいというのは当然ですけれども、これは一つお伺いしたいんですけれども、大臣が主張してきた交付税の税率の引き上げの実現について、私は将来の世代にツケを回すようなやり方は改めるべきではないかと、正直にそのように思っております。大臣の見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

片山国務大臣 地方財政対策という言葉は私は余り好きじゃないんですけれども、要するに、地方財政措置を講じる場合に、今のように地方自治体側の財源不足額を臨時財政対策債というような、将来の交付税の先食いのような形でとりあえずしのぐというやり方は決して好ましいことではないと私は思います。その年度その年度の地方交付税でもって、いわば現ナマでもって処理すべき、これが本則であります。

 しかし、現下の国の財政状況を見ますと、とてもそれが実現できないような財政状況でありまして、それはやはり何らかの形で国側と地方側が折り合わなければいけないというのが現状だろうと思います。

 仮に、現時点において臨財債などをなくすということにしますと、それから特例の加算などもなくすということにしますと、二十三年度でいいますと、いわゆる交付税率、すなわち国税五税に対する一定税率ということでいいますと、六〇%台の後半になるわけです。これはやはり現実的ではないと思います。私もかつて国税の税務署長をやっておりましたけれども、自分たちが取る、取ると言うと変ですけれども、納めていただく主要税目である所得税とか法人税のうち七割近いものが自治体の方に移っていって、手元に残るのは三割強というのでは、多分、精が出ないんだろうと思います。

 やはり、この問題の解決は、税制の抜本改革といいますか、基本的な税体系の仕組みなどを考えるときに、あわせて地方財政の問題も考えてしかるべき問題だと思っております。

稲津委員 もう一つ地方財源の確保ということでお伺いしたいんですけれども、昨年の六月に閣議決定されました財政運営戦略におきまして、平成二十三年度以降の地方の一般財源の総額が平成二十二年度の水準を下回らない、このようにされました。

 これで地方は一安心だなと思っていたんですけれども、二十三年度の地財計画を見ますと、義務的な支出である社会保障関係費の自然増一兆円を含めて一般財源がほぼ前年度並みとなっている。地方の実質的な手取りはむしろ減っているじゃないか、こういう声も寄せられております。今後も社会保障関係費が自然増をしていくことを考えますと、その分を加算すべきじゃないか、こういう声もあるんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

片山国務大臣 基本的には、今議員がおっしゃったようなことでいいと私は思います。

 一般財源総額を二十二年度並みで向こう三年間続けるということは、必ずしも、細目については書いていないんですけれども、基本的には、例えば社会保障関係費の地方負担分が増大すれば、その分は当然ふやすことでカウントする、逆に、給与関係経費などがいろいろな事情によって落ちれば、その分は減算項目としてカウントする。それらを加減して、加えたり減らしたりして結果が出てくる。

 したがって、二十二年度の一般財源総額について、自治体側の要素の何が変わっても結果の金額だけを踏襲するということでは決してないと私は思います。要素ごとのリーズナブルな変動についてはそれを織り込んで、それで総体として一般財源総額を二十二年度水準並みに確保していくということだろうと思いまして、来年度の地方財政計画もそういう方針で策定しているつもりであります。

稲津委員 時間が大分迫ってまいりましたので、予定していた質問を少し変更させていただいて、もう一つ、子ども手当についてお伺いしたいと思います。

 これもマニフェストに反して、二十三年度も地方負担が残ったままであるということ。多くの自治体が地方負担を拒否する声明、中には訴訟も辞さないという声も出ています。

 昨年六月閣議決定されました財政運営戦略にあります、「国は、地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」こうありまして、このことに逆行するのではないかということです。

 本会議で、総理は、これまで地方自治体としっかり話し合ってきたと答弁をいたしました。本当にそうなのかということなんです。どの程度地方の声を聞いたのか。きちんと聞いていれば地方負担を拒否するような自治体は出てこないではないか、これは率直にそのように思うんですけれども、まずこの点を一つお伺いさせていただきたいと思います。

片山国務大臣 私も大臣に就任しまして、この問題について、一昨年からどういう経緯があったのか、やりとりがあったのかということを私なりに点検してみました。

 結論としては、二十三年度の仕組み、それから二十二年度の仕組みも、地方に新たな負担を求めることになるとか、地方財政法の該当の条項に違反するということは決してないと私は思います。自分がこの分野でいろいろな知見を得てきた経験からいいましても、決して地方に不当な、理不尽なことを強いていることはないと私は考えております。

 ただ、点検をしてみますと、ある種の誤解を生じるとか、行き違いを生み出すような経緯はあったかもしれません。その一つが、二十二年度の仕組みを論ずる際に、必ずしも地方側と密な意見交換をしていなかったということ、これはそのとおりだろうと思います。

 二十三年度に向けて、これは昨年の作業でありますけれども、細川厚生労働大臣を中心にしまして、知事会長でありますとか、全国市長会長などとかなり議論をされております、協議もされております。私とか玄葉国家戦略相も加わって、地方六団体の代表の皆さんとこの問題をめぐって議論をし意見交換をしたこともありますから、それが本当に十分過ぎるほどやったかと言われると、これはいろいろな評価があると思いますが、少なくとも、二十二年度の仕組みを考えたときに比べるとかなり改善されたと思います。さらに、二十四年度以降のことを考える場合にはなお一層、もっと早くから地方団体側と意見交換をしたいと思っております。これが一つです。

 それからもう一つは、全額国庫ということ、これは決してマニフェストには書いてないんですけれども、途中経過で、当時の政権の幹部の方が全額国庫ということを言われた経緯があります。マスコミを通じて言われたこともあったというふうに私も見ました。この全額国庫というのがいかなる意味なのかということ、この定義の問題が必ずしも共有されていなかったのではないかと思います。

 児童手当のものを全部取っ払って、すべて一階建てにして、全部国庫にするんだ、児童手当でそれまで地方負担があったものは全部とってください、地方で自由にしてくださいという意味では決してなかったと私は思うんです。思うんですけれども、そういうふうに受け取られた方がひょっとしたらいたかもしれない。

 一方では、全額国庫というのは、新たに追加的に子ども手当としてふえた分について地方負担を求めないということ、こういう考え方からすると、全額国庫というのは、二十二年度分、二十三年度分のシステム設計においても守られているわけであります。

 そういう、一つの全額国庫という言葉の定義をめぐって、必ずしもその意味合いを共有していなかった、そういう面はあったと思います。

 いずれにしても、各省間の協議、それから政府と自治体側との協議は、これまでの反省も含めまして、二十四年度以降のシステム設計をする場合にはよく注意をしなければいけないと私も考えております。

稲津委員 全額国費ということを、では、これは見解が違うということですか。なぜ自治体の各首長さんがこれだけ、違うじゃないかという声が出ているかという問題ですよ。これは根本的なことですので、またしっかり議論させていただきたいと思います。

 最後に一つ言わせていただきます。

 大臣、例えば年少扶養控除の廃止、地方固有の財源である地方税の増収分、これを子ども手当に全額国費で充てていく、これは極めておかしな話じゃないですか。だから、こういうごくごく基本的なところが、この子ども手当のマニフェストの破綻でもう見えてきている。

 私は、今大臣の最後の御答弁を聞いていて、これは国民の皆さんや地方の方々にとって、首長さん、議会にとっても理解できるようなお話じゃないと思います。そのことを強く申し上げまして質問を終わらせていただきますけれども、別な機会に、ぜひまたさせていただきたいと思います。

片山国務大臣 年少扶養控除を廃止するということを二十二年度税制改正でやったわけでありますけれども、これは経緯から考えても、当時の国会の議論でもそうだったと思いますけれども、控除から手当へという一連の流れの中で、国税と地方税の改革をやったんだと思います。決して地方財政を豊かにしようということでやったのではないと私は思います。

 そうしますと、控除から手当への思想の中で改正をした部分は、これは子ども手当に直接充てるかどうかはともかくとして、やはり何らかの形で一連の子供政策の中に充てられるべきではないかというのはリーズナブルな考え方だろうと私は思うんです。

福田(昭)委員長代理 大臣、簡潔にお願いします。

片山国務大臣 一部には、子ども手当に直接充てろという意見の方もおられます、政府の中には。しかし、私はそれは違うと思います。直接充てるべきではないと思います。

 しかし、何らかの形で回り回って、国庫との間の何らかの財源の調整というのは必要で、そのことが間接的にせよ、子供政策に政府として充てるということは、これはあっても決しておかしいことではないと私は思っております。

福田(昭)委員長代理 次の機会にやってください。もう五分以上過ぎていますから、次の機会にひとつお願いをいたします。

稲津委員 わかりました。

 では、これで終わりますけれども、この子ども手当の今のお話については、私はこれから重大な議論になると思いますよ。そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

福田(昭)委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、この間、報道もされております、日本郵政、郵便事業会社におけます非正規社員、期間雇用社員のリストラ方針について質問をいたします。

 郵政をめぐっては、この間、議論が行われてまいりました。亀井前郵政改革担当大臣は、非正規の正社員化を日本郵政に求めてまいりました。亀井前大臣は、自公政権時代、小泉改革と称して、人間を道具扱いにして、安く使ってコストを下げていって利益を得ようとする経営が日本を蔓延しました、今大企業では三分の一程度が非正規社員ですが、日本郵政では半分を超えているという実態があります、人間を大事にする雇用の見本となる雇用形態をつくれと齋藤社長に厳命していますと述べておりました。

 そこで、片山大臣に改めてお尋ねいたしますが、この日本郵政における非正規の正社員化の意義、どのように受けとめておられるのかをお答えください。

片山国務大臣 これは日本郵政だけの問題ではなくて、私は、いろいろな組織とか企業全体に言えることだと思いますけれども、やはり労働者の皆さんが安心して安定した環境の中で仕事ができるということは、私生活の安定の面でも重要ですし、それから職場においてきちっとした仕事ができるという面でも大変重要なことだと思っております。

 いろいろな事情があって、今、企業は、必ずしもその理想どおりにはいっていない現状が横行しておりますけれども、できる限り、私は、労働者の労働条件というもの、雇用条件というものは、安定した環境をつくることが必要だろうと思っております。

塩川委員 今大臣からお答えがありましたように、労働者が安心して安定した環境で暮らす、またきちっとした仕事をする上でも、安定した雇用環境が重要だというお話でございました。

 日本郵政は、非正規社員が正社員並みの仕事をすることによって成り立ってきた会社であります。だから、非正規の正社員化を目指そうというのが現政権の方針だったはずです。それなのに、今、郵便の職場では、人間を道具扱いにするようなことが行われている。

 JPエクスプレス、JPEXの統合をきっかけとした赤字の拡大を口実に、期間雇用社員を中心にしたリストラが計画をされています。期間雇用社員の方から不安の声が上がっております。勤務時間の削減や配置がえ、賃下げ、さらには契約更新してもらえないのではないかという声です。この先どうなるのか、せっかく開かれた正社員化の道も閉ざされるのではないか、こういう不安の声の中に期間雇用社員が置かれております。

 そこで、郵便事業会社にお尋ねをいたします。

 総務省の報告徴求に対する郵便事業会社の報告、さきの一月二十八日の報告の中で、今後の取り組みとして、人件費削減方針を掲げております。具体的にどのように取り組むことを考えているのかを明らかにしていただきたい。

中城参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の平成二十二年度についての一月二十八日に総務省に提出した報告書にも記載してございますように、中間決算ベースで、人件費が事業計画を百四十四億円上回るということになりました。

 このため、会社経営上は、他の経費とともに、人件費の適正な使用を行っていく必要があるという考えから、一月二十八日の総務省への報告書に記載のとおり、業務量に応じた要員の適正配置に取り組んでいるところでございます。

 要員の適正配置に当たっては、期間雇用社員に絞って人件費削減計画を作成しているものではございませんで、業務量を考慮して必要な労働力を投入するようにしていくよう、本社としましては支社、支店を指導しているところでございます。

塩川委員 職場においては期間雇用社員の方すべてを視野に入れた対応が行われている、このことを、それぞれ期間雇用社員の方々を通じての話として伺っています。

 ある職場では、期間雇用社員に、勤務時間の短縮に関する意向確認調査の提出を求めております。そこには、勤務時間の短縮に応じていただいても必ずしも雇用契約を更新できるとは限りませんと、いわばおどしのような文言も書かれております。いわば利益にならなければほうり出す、まさに人間を道具扱いにするものと言わざるを得ません。

 日本郵政での仕事が家計を支える主たる収入となっている期間雇用社員の方は七割にも及びます。実際、この非正規の方の六割以上の方が年収二百万円以下、そういう中でも主たる収入となっている。非常に大きな役割を果たしているこの期間雇用社員の所得を削る、あるいはその機会そのものも失わせるということは、あってはならない。期間雇用社員数千人規模の雇いどめとか、勤務時間を削減して結果として兵糧攻めで退職に追い込むようなやり方は、決して許すことができないと申し上げたい。

 郵便事業会社に伺いますが、非正規とはいえ、繰り返し雇用されてきた期間雇用社員の方々は、経験豊富で、基幹的な業務を担ってこられたわけであります。郵便事業会社は六割が非正規で、グループの中でも高くなっています。こういう非正規に依拠してきたのが郵便事業会社です。人員削減をすれば職場の混乱を拡大するだけじゃありませんか。この点についてお答えいただきたい。

中城参考人 お答え申し上げます。

 現在、要員の適正配置を行うために、いろいろ各支社、各支店において、自支店の業務量を勘案して適正な労働力がどのような程度であるかというふうに考えていただいております。御指摘のように、期間雇用社員に絞って何か人件費を減らす計画を策定しているということではございません。

塩川委員 実際には、職場において行われているわけですよ。そういうことをここできちっとお答えにならないということ自身が極めて重大ではありませんか。

 私たちは、今の郵政の職場において非正規、期間雇用社員が本当に中心的な役割を果たしている、それなしには郵便会社が成り立たないという状況にある中で、こういった方々の声をしっかりと保障することが重要だ、郵便事業会社として雇用継続を希望する期間雇用社員を解雇するようなことはあってはならない、このように考えますが、郵便事業会社としての対応をしっかりとお答えいただきたい。

中城参考人 お答え申し上げます。

 郵便事業会社の仕事の中には年間の業務の繁閑差があり、あるいは波動性が存在するためにこうした期間雇用社員の方を活用しているわけでございますけれども、この中で、波動性がある中で必要な労働力を見きわめて非正規社員による労働力の調整を実施しているところでございまして、こうした弊社が行う業務の性質上、こうしたことは例年行っているということでございます。

 ただし、雇いどめの検討ということに当たりましては、雇用期間が長い社員に配慮するなどの対応を行うこととしております。

塩川委員 繁閑があるから期間雇用社員だと言っても、そうではない。年間を通じて基幹的な業務を担ってきたのが期間雇用社員というのは、職場の現実であります。そんなことさえ知らないとは言わせない。

 ですから、余剰人員ということも先ほど言いましたけれども、職場における労働者の方の調査でも、実際、超過勤務について、ほとんど毎日あるという回答が四割以上の方から出される。さらには、八三%の方が、サービス残業が行われているという回答もあります。また、分担上の仕事において区域として欠員がいるとか、こういう状況が起きている、ほとんど毎日起きている、こういう声も二割近くにも及んでいるわけであります。

 このように、超過勤務、サービス残業、欠員もある、こういった職場の業務そのものを見直せば、余剰人員などということは言えないということを言わざるを得ません。期間雇用社員を解雇する理由にはならないということを申し上げたい。

 あわせて、この大きなリストラ方針の背景としてJPエクスプレスをめぐる赤字の問題がありますけれども、労働者の責任ではない、その点についてただしていくものです。

 片山大臣にお尋ねをしますが、総務省の報告徴求に対する郵便会社の報告を見ると、郵便事業の上半期営業損益の見込みは六百四十三億円の営業赤字、それが九百二十八億円へと拡大をしました。その主要な要因は何なのか。また、六百四十三億円の赤字が、通期では百六十三億円に縮小するという計画だったものが、縮小するどころか、一千五十億円に拡大するとなっている。その主な要因は何なのか、どのように指摘をしているのかについてお答えをいただきたいと思います。

平岡副大臣 お答えいたします。

 総務省から昨年十一月十五日に報告徴求を郵便事業会社に対して出しましたけれども、その報告におきましては、平成二十二年度中間決算における当初計画との悪化額二百八十五億円の内訳といたしましては、JPエクスプレス社との事業統合にかかわるものが二百四十四億円でありまして、約八割強を占めております。通期見通しに関しましても、当初計画との悪化額約八百八十億円のうち、JPエクスプレス社との事業統合に関するものが七百九十一億円でありまして、九割弱を占めているところでございます。

 以上申し上げましたように、郵便事業株式会社の赤字が拡大した主要因というのは、JPエクスプレス社との事業統合によるものと認識をしているところでございます。

塩川委員 JPエクスプレス事業統合に伴っての赤字だということであります。

 今引用もしていただいた郵便事業会社の報告では、JPエクスプレス事業統合に伴う赤字の要因として、一つは、統合の準備作業の中で詳細検討した結果膨らんだ赤字という部分と、もう一つ、送達遅延に伴う混乱、実際の七月のお中元をめぐるような混乱によって生まれた赤字という二点を指摘しています。郵便事業会社の報告では、事業統合直後に発生した送達遅延に伴う混乱に起因して生じた営業損益の悪化額百六十二億円と報告をされています。

 ですから、赤字の主因の一つはJPエクスプレスとの事業統合に伴う混乱であり、その混乱の原因は、現場段階の事前の準備不足及び突発的な事故に対する計画の不十分さとされています。要するに、混乱するということが結果として赤字の大きな要因となった。そういう混乱は予想されなかったのかということが問われているわけであります。

 総務省は、郵便事業会社への宅配統合事業では、二〇一〇年の三月に、同年七月一日の統合をあっさりと認可しているわけですが、総務省は本当に大丈夫だと判断していたんですか。片山大臣、混乱は起こらない、起こらないだろうという立場でこれを認可したということですね。

平岡副大臣 ゆうパックと日通ペリカン便の宅配便事業の統合につきましては、郵便事業株式会社と日通株式会社の出資する新会社の設立、事業の統合とそのスケジュールを平成二十年度の事業計画の中で認可をしたわけでありますけれども、その時点では事業統合による収支見通しは提出されておりませんで、宅配便統合の実施年度とされました平成二十一年度の事業計画の申請の際に初めて収支見通しが提出されていたわけであります。

 この収支見通しに対しましても、総務省としては、楽観的に過ぎるとの懸念があったということでございましたので、当該事業計画の修正を求めたところでございます。この結果として、最終的には、郵便事業株式会社は、子会社方式による事業統合を断念いたしまして、より経営の健全性の高い案として、郵便事業株式会社によるペリカン便事業を吸収する案を採用したというような経緯になっているところでございます。

 平成二十二年度中間決算において大幅な赤字となったことを踏まえれば、当初の平成二十年度事業計画の認可の際に、郵便事業株式会社に対して収支見通し等の具体的な計画の提出を求め、厳格な審査を行っていれば、結果としてはこのような事態を未然に防止する可能性もあったのではないかと考えてはおりますけれども、これはあくまでも結果論ということでございまして、我々としては、引き続き、郵便事業株式会社が適切に事業運営を行うよう所要の監督を行ってまいりたいと考えておるところでございます。

塩川委員 このペリカン事業については、JPエクスプレスのスタートのときにペリカンの方から切り出されたわけですよ。その際には、郵便事業会社からも当然社員が出向で入っているんですよ。だから、ペリカンがどんな事業内容を行っていたのかというのは当然把握していてしかるべき話ですよね。実際あけてみたら、ペリカン独自の顧客との契約内容があって、いろいろな附帯サービスをたくさんつけていたとか、あるいは顧客ごとのダンピングまがいのような単価設定などが行われていた。そんなことは当然わかっていていいはずなんですよ。そういうことについて総務省が把握もせずに、オーケーよと認可を出したということが問われているんじゃないですか。その点、いかがですか。

平岡副大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、当初の計画が楽観的過ぎるということの懸念を当時の総務省も持っておりまして、その点については事業計画の修正を求めたということでございます。その後の具体的な事態の進展の中でこういう事態が生じたということについては、我々も、もっと厳格な審査を当時行っていればという気持ちはありますけれども、あくまでも今から考えてみれば結果論ということでございますので、引き続き、郵便事業株式会社が適切に事業運営を行うように所要の監督を行ってまいりたいというふうに考えます。

塩川委員 楽観的な計画について総務省として問題だと思っていたというのであれば、実態を把握すればまさに楽観的とは言えないような深刻な事例というのが、ペリカンの顧客との契約方針で浮き彫りなってきたはずであります。そういう点でも、総務省の責任は免れない。

 加えて、郵便事業会社ですけれども、鍋倉社長は、七月の統合前に、二〇一〇年六月のときに総務省に対して、七月一日の統合は問題ないと報告をしていたというふうに聞くんですけれども、これは事実ですか。

中城参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のこと自体が事実かどうかということはちょっと確認できませんけれども、統合前には、七月一日の統合の準備はできているというふうな判断があったと考えております。

塩川委員 昨年七月における事業統合ですけれども、ペリカン便由来のターミナルで作業を行うようになるということで、実際には、労働安全衛生法に基づくと、運輸関係の職場において統廃合が行われる場合に、新たな職場で勤務することになりますから、その勤務場所において、労働者の安全を確保するために事前にリスクアセスメントを行うということが法律上の努力義務になっているわけです。この努力義務というのを郵便会社は去年の七月の前に果たしていたんですか。

中城参考人 ターミナルにつきまして、安全監督の準備というところですべてのところはできていなかったというふうには思っておりますけれども、できる限りのことはしていたというふうに考えております。

塩川委員 いやいや、一つもできていないという報告を聞いていますよ。

 いずれにせよ、今のように、やっていない職場があったわけでしょう。本来やるべき安全対策もやらなかった。これでどうして準備が万全だったと言えるんですか。この点でも、郵便事業会社の経営責任、赤字を拡大した混乱の責任というのは免れないということを言わざるを得ません。

 ですから、鍋倉社長が、当時、従業員のふなれが原因だ、こんなことを言ったのは全く許されない。これは撤回したんでしょうか。

    〔福田(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

中城参考人 統合につきまして、最初の記者会見でそのような発言があったということは承知しておりますけれども、その後の発言では、準備が十分でなかったというような発言をされたというふうに記憶しております。

塩川委員 労働者の責任なんかじゃないんですよ。経営陣の責任、また、それを追認した総務省の責任というのが問われている。

 七月の混乱というのは、一時的な経費増にとどまるのじゃなくて、十二月に向けて万全の態勢をとるために予定外の経費もかさむことになる、つまり、万全な統合を行うためには計画した以上の経費が必要だったということも示しております。

 それと同時に、報告が認めています、事業統合に向けた準備作業を進める中で詳細な検討を行った結果生じた収益の減少及び費用の増加による営業損益の悪化額八十二億円というのがあります。つまり、宅配事業統合の収支計画自体にそもそも問題があったんじゃないのか。詳細検討してみたら、実際、膨らんでしまった。だとしたら、もともとの事業統合の計画方針そのものに欠陥があったということを言わざるを得ないわけであります。

 そもそも、赤字なペリカンをJPエクスプレスに抱えれば赤字となる可能性が高いということは、当時の鳩山総務大臣の認可に当たっての指摘にもあったわけであります。

 そこで、改めて、総務省、大臣にお尋ねしますが、去年の七月一日で事業統合オーケーよという昨年三月の認可において、七月一日という期日の問題だけではなくて、その際に宅配事業の統合そのものも認可をしていたわけですから、宅配事業の統合それ自体がそもそも問題があったんじゃないのか、こういう認識をお持ちではありませんか。

片山国務大臣 そもそもは、これは自公政権のときに宅配事業の統合の方針というのが打ち出されたわけでありまして、そのころのことを私も省内で聞いてみますと、当時は、やはりもう郵政の自主性に任せて、方針として余り細かいことを言わないというような、そういう雰囲気と言うと変ですけれども、そういうこともあったようであります。

 そのことがどうかと言われますと、それは当時にさかのぼればいろいろあったんだろうと思いますけれども、経緯としては、やはりそういう民営化された会社の自主性に任せるという大方針が当時の政権のもとにあったということ、これはよく御認識をいただいておかなければいけないと思います。

塩川委員 郵便のユニバーサルサービスも影響を受けるんじゃないのかという懸念も含めて、やはりこのJPエクスプレスをつくるという経緯そのものが問題があったと言わざるを得ません。

 昨年五月の日本郵政ガバナンス検証委員会の提言があります。ここでは、「ゆうパック事業とペリカン便事業は共に赤字と見積もられていた」「したがって、そのような両事業を統合して黒字化させるのは容易ではないことは明らかで、そのこともあって郵便事業会社の北村会長、團社長が統合に慎重だった」、このような記述があります。

 郵便事業会社にあっては、日本郵政の依頼による国内証券会社に飽き足らず、関係コンサルタント会社をフィナンシャルアドバイザリーとするなどして関係作業を進めた結果、JPエクスプレスの赤字というのが拡大するというふうに見込まれていたことから、当時の北村会長、團社長は、直ちに本件事業統合を行うことは困難との結論に達し、設立後のJPエクスプレスにおいては、当面、事業統合は行わず、郵便事業会社並びに日通から貨物の集配を委託する程度にとどめ、その後、段階的に業務提携を拡大していき、事業統合のメリット実現が見込まれた場合には同統合を行うとの案をまとめ、同月十日ごろ、西川社長に同案を進言をしたとあります。

 その際の西川社長の判断の問題はあります。しかし、その前提として、郵便事業会社とすれば、もともと、この事業統合が赤字とならざるを得なかった、こういう認識を持っていたわけですね。だとすれば、当時から、郵便事業会社として事業統合は困難だったということを承知していた、そういうことになりますね。郵便会社、お答えください。

中城参考人 その検証委員会の報告書というものは、私ども郵便事業会社が資料を出しておりますが、それ以外に、郵便事業会社の人間のヒアリングに基づいて出されたものというふうに理解しております。

塩川委員 ですから、日本郵政、郵便事業会社の関係者のヒアリングでつくったものであります。

 二〇〇九年の八月には、西川日本郵政社長や郵便会社の北村会長、團社長など経営陣が退任をし、新たな体制となりました、皆さん。前の経営陣が、問題だ、困難だと言っていた。しかし、西川体制のもとでそこに突っ込んでしまった。

 でも、見直す機会があったわけであります。前の経営陣が退任をしたわけですから、新たな経営陣が、新たな方針に基づいて、JPエクスプレスの事業統合について見直す機会があったわけです。郵便事業会社として、関係者のヒアリングで事業統合が困難だと言っていたわけですから、そこに立ち戻ってこの事業統合を見直すことができたのじゃありませんか。見直すことができたのに行わなかったという、赤字を生み出した責任が現経営陣にあるのは明らかじゃありませんか。お答えください。

中城参考人 この赤字の主要因というのは、昨年七月の宅配便事業統合後のゆうパックの収支が大幅に悪化したということがございますけれども、御指摘のように、宅配便事業統合というのは、これまでの過去の経緯を踏まえてやられたものでありまして、その与えられた条件のもとで最善と思われる計画を策定して私どもは実施してきたわけでありますが、結果としてこのような赤字を出したということについては、真摯に受けとめているところでございます。

塩川委員 いや、結果として赤字を生み出した責任じゃないんですよ。わかり切ったことについて突っ込んでいった責任なんですよ。それこそ明らかにすべきじゃありませんか。

 その点でも、日本郵便事業会社の赤字の責任というのは極めて重大だと言わざるを得ません。この点でも、労働者に対して解雇をするような、雇用調整を行うようなことは許されないということを言わざるを得ない。

 あわせて、総務省自身も、こういう計画に認可をしてきたという経緯があるわけであります。北村会長、團社長の時代に懸念したものに実際には統合というレールを敷いたのが総務省だったわけですから、赤字の原因というのは、事業統合が困難だとわかっていた日本郵政と郵便会社の経営陣が生み出したのと、それを追認してゴーサインを出した総務省にもあるわけであります。

 そういう点では、昨年のガバナンス検証委員会の提言というのは昨年五月までですから、それ以降の対応を含めて、総務省の責任をしっかりと明らかにする、そういう検証こそ行うべきじゃありませんか。

片山国務大臣 必要があればやりますけれども、先ほど申しましたように、これは、郵政の民営化の後、民営化された会社の自主性をできる限り尊重するという当時の政権の基本方針のもとに総務省として対応したものであります。ですから、そのときにもう大筋が決まっていたと言っても過言ではないと思います。しかも、そのときに、伺ってみますと、事業計画の大まかなことはあったにせよ、収支の見通しなどについては当時なかったということでありまして、そういう過去の来歴というものもよく認識をしていただいておく必要があるだろうと思います。

塩川委員 前の政権と言いますけれども、政権交代したわけですよね。ですから、二〇〇九年の八月、九月以降については、新たな政権のもとでの対応であります。日本郵政あるいは郵便事業会社の経営陣も交代をしたわけですから、新たに出直すということは可能だったわけであります。

 ですから、総務省の責任がどうかということについて検証する必要がある。この点については、昨年、原口総務大臣も二月二十六日の記者会見で、記者から、そもそもなぜJPエクスプレスに対する出資金を去年の春の段階で総務省が一部認可したのかという疑問があると問われて、まさに今おっしゃったことが、私からも、意思決定の責任の所在ということも含めて、わからないので総括してくださいということを申し上げていると。

 この趣旨でいえば、総務省の責任をどうするのかということが総務省の宿題になっているということになります。そういう点でも、当時の総務省の責任の解明というのが求められている。この点で、現状は極めて不十分だということを言わざるを得ません。

 ユニバーサルサービスである郵便事業と労働者にしわ寄せをするようなやり方は許されない。そういう点でも、赤字の責任の一端を持つ総務省として、最後に片山大臣に伺いますが、期間雇用社員の雇用をしっかりと確保する、こういう立場で郵便のユニバーサルサービスも保障していく、日本郵政、郵便会社に対する指導監督を行ってもらいたい、この点についてお答えをいただきたいと思います。

片山国務大臣 これは冒頭申し上げましたように、雇用という観点からいいますと、できるだけ正規の身分の雇用を守っていくということが基本的な考え方だろうと思います。それが雇用を守るということの一つの意味だろうと思います。

 一方では、しかし、いろいろな企業の業況によりまして、その理想論だけでは企業自体が守れなくなってしまうという、企業の持続可能性が危うくなってしまうという側面もないわけではありません。そういう両方の理念とか現状とかをないまぜて企業が責任を持って対応されるべき問題だろうと思います。

塩川委員 日本郵政全体で大きな内部留保もある、それも含めて、職場に必要な人は配置をするという点での、余剰人員などではない期間雇用社員の雇用をしっかりと確保することを改めて求めて、質問を終わります。

原口委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 質問の機会を得ましたので、数点質問をいたします。

 まず最初に、指定管理者制度の運用について質問します。

 年末に、自治行政局長名で「指定管理者制度の運用について」という通知が出されています。この通知について既に大臣は年明けの記者会見で説明されていますが、改めて、この通知にどういう意味が込められているのか、その点を明らかに願いたい。

片山国務大臣 指定管理者制度は、地方自治法の改正によりまして平成十五年に設けられたものであります。自来、数年をけみしてまいりまして、いろいろな課題やら問題点が摘出されておりましたので、それらを一度整理して、当事者である自治体に通知をし御連絡を申し上げるということは、これは実務的にも必要性がありました。

 もう一つは、私が昨年の九月に総務大臣を拝命いたしまして、かねてこの指定管理者制度について私なりに考え方もあったものですから、それも織り込んだ上で、昨年の暮れに通知を、整理して出したものであります。

 特に後者の方でいいますと、私は、この指定管理者制度をずっと自分でも実践してきて、かつ眺めておりまして、少し趣旨とは違ったところで強調され過ぎているなという印象がありました。

 それは、本来、この指定管理者制度といいますのは、公の施設をいかに質の高いサービスを提供する場とするか、そのための手段として指定管理者制度というものを活用してもいいということでできたはずなんですけれども、それよりもむしろ、いかにコストを下げるかという、人件費を中心にしてコストを下げることによって財政に寄与しようという、そちらの方に重点が置かれ過ぎているのではないか。

 その結果として、正規雇用であった者が、指定管理者制度の活用を通じて、結果としては非正規雇用でワーキングプアを生んでしまう、そういうことになっているのではないかという印象を持っていたものですから、この制度は決してそういうコストカットのための、それを目的とした制度ではなくて、あくまでも公の施設のサービスの水準を高める、質の向上を図るということなんですよということ、これをぜひ改めて認識していただきたいということと、決してこれは、この制度を全部、何が何でも、是が非でも活用しなきゃいけないんだということではなくて、必要に応じて自治体が主体的、自主的に、活用するかどうかも含めて検討すればいいんですということ、この二つを私としてはメッセージとして伝えたかったということであります。

重野委員 片山大臣の説明を額面どおりに受け取れば、全く私に異論はないわけです。

 しかし、明らかに現場においてはこの指定管理者制度という制度を曲解して、悪乗りをして、その仕事の質を現場においておとしめたというところが、私が知る限りにおいても、あちこちあるわけですね。それに気がついてというか、そういうことで、平成二十二年にこの通知が出されたと思うんです。

 その通知の中を読んでみましても、「留意すべき点も明らかになってきた」、「これまでの通知に加え、」ということは、これを出す以前においてもそういう指導というか通知というか、そういう行為がなされていたということなんですね。なされていたにもかかわらず、平成二十二年十二月二十八日に、今言うところのこういう通知を出さなきゃならなかったということは、私は、この問題、極めて重要な問題をはらんでいるというふうに思います。

 言うならば、この十二月二十八日が最初ではなくて、それ以前に既に総務省からそういうたぐいの指導がなされていたにもかかわらず、十二月二十八日にこういうことをしなきゃならなかった、その部分というのは、私はやはり大きな問題をはらんでいるんじゃないかというふうに思うんです。そこ辺の認識について、大臣はどのように考えておりますか。

片山国務大臣 私が大臣に就任する前の、総務省のこの問題についての対応というのは、私も外から見ておりました、総務省から伝えられるメッセージを受け取る側にも八年間おりましたけれども。

 この指定管理者制度ができたときに、私は、かなり大きな改革といいますか、自治体の公の施設の管理形態に多様性ができるなというプラスの評価もしました。そうしていたんですが、明らかに、先ほど私が申し上げました住民サービスを向上するための手段ですよというメッセージよりは、これを通じてコストダウンが図れますよというメッセージの方が強かったように、これは印象としてでありますけれども、受けておりました。それは、物事の半面といいますか一面だけを特に強調したことだな、行き過ぎだなと私は思っておりました。

 それに加えて、先ほど来話題になりました例の集中改革プランというものが平成十七年度から導入されまして、その段階では明らかに、集中改革プランを通じて正規職員の定数を減らす、そのためのツールとして、アウトソース、なかんずく指定管理者制度が活用できるよ、そういう流れになっていったんだろうと思います。

 ですから、指定管理者制度を単にコストカットの手段で使え、使えと、そういうことはあからさまにはありませんでしたけれども、集中改革プランなんかと相まって、結果としてはコストカットの有力なツールとして自治体において使われてきたということだと思います。これを議員のおっしゃるように曲解というのか誤解というのかはわかりませんけれども、勘違いなどは明らかにあったのではないかと私は思っております。

重野委員 今、大臣の方から集中改革プランという言葉が出ました。二番目にその点について聞こうと思ったんですが、先ほども触れました年明けの大臣の記者会見で、指定管理者の問題に触れた後、大臣は、私の読み方からすれば、この集中改革プランについてはやはり否定的な意見であった、私はそのように受けとめております。

 大臣は知事時代から、このプランについては反対を表明されていた、このように私は受けとめておりますが、大臣の述べた、集中改革プランにとらわれることなく、自治体では、業務と職員とのバランスはみずから考えてこれから定数管理をという考え方は私も賛成です。そういう考え方がいいと思います。

 そこで、大臣が見て、この改革プランなるものが各自治体にどのような負の影響、マイナス影響を与えたと考えておられるか明らかにしていただきたいと思います。

片山国務大臣 幾つかあると思います。

 一つは、このことによって、先ほど来申し上げておりますとおり、結果として官製ワーキングプアを生み出してしまった。こればかりでは、集中改革プランだけではありませんけれども、集中改革プランの影響もあって、官製ワーキングプア、すなわち非正規雇用を多く生み出してしまったということは、これは否めないと私は思います。

 それから、私が問題だと思っておりましたのは、そもそも、二〇〇〇年の四月以来、地方分権改革を進めるための推進一括法が施行されまして、自来、わかりやすく言えば、国と自治体とは対等の立場になったわけであります。もちろん、国法には当然、自治体も国民と同様に従わなければいけませんけれども、それ以外の面では対等になったわけです。したがって、法律上の関与は当然あり得ますけれども、それ以外の、従来あった行政指導でありますとか、特に通達によって自治体を規制するなどということは、あってはならないことになったわけであります。

 これが平然として、次官通達という一片の通達によって、自治体の行政体制のあり方を事実上拘束してしまうというようなことがあってはならないと私は思うんですけれども、国の方はそういうものを平然と出しておられたし、それから、受け手の方もこれを何の問題意識も持たないで受けてしまっていたというのは、私は大きな問題だと思います。

 権利というのは、権利の上に眠る者は保護されないといいますけれども、権利が侵害されるときには、きちっとやはりそのことを言わなければいけない。そのことを言わないで、甘んじてほとんどの団体がこれを受けてしまったというのは、地方自治の面からいうと、私は非常に重大な問題をはらんでいたと思っております。

重野委員 私、今の片山大臣の答弁を高く評価いたします。

 私もずっと総務委員会に所属をしていましたけれども、総務大臣の答弁として、今のような脈絡での答弁というのは、私の経験からしても初めて、そういう意味では非常に新鮮に聞こえました。それをどう具体化していくかということは今後にかかってくるんだろうと思うんですが、そういう思想、発想というのはとても大事な部分ではないかという点において、私は評価をしたいと思います。

 そこで、それに関連をいたしまして、今言うところの、大臣の口からもワーキングプアという言葉が出たんですが、私も自治体に勤務をした経験者であります。実際にどういう種類の人が勤めているかというのを私もそばで見てきたわけですけれども、もちろん今、私の地元の県庁でも、非常勤職員の数というのは全職員の三分の一ぐらいいるんじゃないかと言われるぐらいたくさんいるわけですね。臨時職員であるとか、呼び名はいろいろありますよ、パートであるとか。しかし、総じて言うと非常勤職員だと思うんですね。

 さきの臨時国会で、育児休業に関して私が質問をしたんです。それに対して大臣は、「法律の対象から外れていても、必要があれば実態に応じて自治体でもって措置することができる、」こういう答弁をされました。公務における非常勤、非正規雇用の待遇改善あるいは処遇の均衡の上で、私は非常に重要な考え方だと思うんです。あわせて、大臣は、「実態に応じて、もし必要があれば条例の中で自治体で独自に育児休業の措置のようなものをつくることができる」とも言われました。

 そこで、各自治体でその後、大臣の言う措置に向けた動きがあるのかないのか、それをお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 これは、さきの臨時国会で国の方の一定の措置をしましたけれども、その趣旨を自治体に周知といいますか、助言なども含めた周知をしているところでありまして、これを受けて各自治体がどういう対応をされるのかということについては、現状ではまだ把握をしておりません。

 それぞれの自治体の二月から三月にかけて行われます議会を経て、その段階でどういう措置状況になっているのかということを改めて調査してみたいと思います。

重野委員 ぜひ調査を行うことを要望しておきます。

 同じ非正規の問題でありますが、これはやはり社会問題としてクローズアップされているという認識を持っています。先ほども出ましたように、官製ワーキングプア、そういう汚名を返上する、自治体で働く臨時、非常勤職員の処遇の向上が必要になっていることは言うまでもありません。

 民間での非正規問題の中心的な課題の一つが、働きに見合った処遇への改善。この点については、やはり雇う側の思想の問題になってくると思うんですが、同じように、自治体においても働きに見合った処遇への改善をするということはとても重要なことではないかというふうに思うんですが、この点について大臣はどのように考えておられますか。

片山国務大臣 私もすべての自治体の現状を把握しているわけではありませんけれども、私なりに見聞きしたようなことからしますと、本来ならば正規職員なりで処理すべき仕事にも、便宜上、非正規の職員を充てているというケースは随分あると思います。

 それは本来の姿であるべきでありますけれども、例えば、先ほど来申し上げました、何らかの計画的なやり方によって定数を減らさなければいけないとか、予算上の定数が確保できないとか、いろいろな事情があるんでしょうけれども、そういう本来とは違った職員配置というものをしているケースがあると思います。そういうところで問題が生じているんだろうと思います。

 本当に非常勤で賄うのにふさわしい職であれば、それは非常勤職員がやっていいと思うんですけれども、本来ならば正規職員を充てるべき分野に、便宜上、非正規を充てているというようなことはできるだけ解消すべきだろうと私は思います。

 同一労働同一賃金という言葉がありますが、仮にその原則が全うされていれば、どんな雇用形態でも大きな問題は生じないと思いますけれども、現状のように、必ずしも同一労働同一賃金という原則が守られていない社会慣行からしますと、ぜひ、仕事に見合った処遇、賃金体系というものが必要だろうと思います。

重野委員 驚くべきことに、臨時職員の賃金なんかは、現場においては物件費の中から捻出して雇っておる、そういう現実なんですね。これは人扱いしていないということですよ。そこに立派な若い婦女子が物件費で使われるなんというのはやはり許されないですね。世間に範を示す、地方においては県庁であり、市町村役場です。そういうところがそういう現実であるということ。これは非常に貧相な話なんですね。

 これはいろいろな意味で金にかかってくるんですが、総務省も、今、菅政権は雇用、雇用、雇用と言っています。雇用というのはどんな雇い方でもいいんだ、雇うという実績を残せばいいんだというんじゃないですね、その質が当然問われているわけですから。

 そういう御時世ですから、この際、総務省も各自治体に対して、やはり自治体の労働力の質を上げる、そういう立場に立って、そして安心して働ける、そういう職場なんだと。何、役場に出よってそのくらいの給与かよと言われることというのは、僕は褒められた話じゃないと思うんですね。だから、そういうところは総務省も、今後の指導の中で、心してそのことは徹底していただきたい。そのことを強く求めておきたいと思います。

 次に、減税構想について。

 これは、ある自治体の首長さんが自治体の減税というのを売りにしている、そういう向きがあるんです。今、そのことがある意味ではもてはやされている感があるんですね、週刊誌とかなんとかを読むと。

 大臣は、減税するなら借金を返せ、こういう内容のことを記者会見などでも述べられております。確かにそういう指摘もあると思いますが、住民生活と最も密接な関係を持つ自治体での減税というのは大きな問題があるのではないか、私はこのように指摘をしなければなりません。公共サービス、とりわけ福祉水準の低下が減税とセットになるようなことが行われれば、これは大問題です。

 こういう発言を繰り返す方がおられるし、それをもてはやすような風潮が一部にあるという点について、大臣としてどのように受けとめて感じているか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 減税というものを政策課題として取り上げるということは、これはあり得ることだと私も思います。思いますが、よほど冷静に考えた方がいいと思うんです。

 といいますのは、減税をするというのは、確かに納税者にとっては非常にありがたいことなんですけれども、そのことによって財政のバランスを再構築しなきゃいけませんので、では、何を減らすんですかということに当然なります。その際に、そもそも無駄があるから、それを減らせばいいんだということでありましたら答えは簡単でありまして、それは減税してもしなくても無駄は減らさなきゃいけないので、減税するから減らす、減税しないなら減らさない、無駄を残しておくという選択肢はおかしいわけであります。

 そうすると、当然、無駄でないもの、必要なものをどこかで削減するということになって、では、どこを削減するんですかということ、ここが一番問われるわけであります。それが、例えば弱者の皆さんのための福祉の政策を削減するということでありましたら、これは一体どういうことになるかというと、減税というのは大体所得の多い人に効き目が多い政策でありますから、そこに恩恵が施されて、弱者の皆さんに対する施策が減るということになる。それは、弱者の皆さんにとっては決して好ましい政策選択ではないわけです。

 一例を申し上げましたけれども、減税というのは、単に税金が下がるからいい、いいということではなくて、やはりどういう効果が財政に及ぼされるのかということを冷静に考えなければいけないと私は思います。

 そもそも自治体の財政というのは、これはよく誤解があるんですけれども、出るをはかって入るを制すというのが本来の基本原則であります。出る、歳出は何と何と何を共同でやらなきゃいけないのかということを決めて、それに必要な必要最小限の財源を税という形で負担分任により皆さんからちょうだいするということでありますから、そもそも、減税をしますということじゃなくて、何と何を減らします、結果として減税になります、そういう問題設定が本来あるべきなんですけれども、ちょっと逆転をしていると私は思うんです。

 であるからといって、減税の提案が悪だと言うつもりは毛頭ありませんけれども、やはり、より冷静で論理的な分析が必要だろうと思います。

重野委員 その点については、我々も非常に冷静な目線で見ていく必要があるだろう。やはり扇情的な形で自治体行政が図られるということは非常に危ういなというふうな思いが私はありますから、これは、今大臣が申しましたように、束ねる総務大臣でありますから、そこ辺はきちっと指導というのはおかしいんですが、発信をして、関心を高めていただきたい、このように思います。

 時間も来ましたが、最後に、総務省のホームページについて尋ねます。

 ホームページでは掲載期間について原則三年としていますが、三年という理由、なぜ三年にしたのかということが一つと、それから、総務省の予算、決算も掲載期間が三年となっています。ところが、例えば財務省のホームページではずっとさかのぼって、昭和二十二年からこれを見ることができる、そういう現実も一方にあります。

 ICT利用の促進を掲げる総務省が三年間しかないというのはちょっとお粗末ではないかというふうに思うんですが、ホームページへの掲載期間を延ばすという点についてどのように考えておりますか。三年とした理由と、延ばすという考えはないか伺います。

片山国務大臣 これは、保存をしますサーバーの容量の問題もありますので、どこかで期限をつけなきゃいけないという現実的な要請もあります。

 それが三年かどうかというのはともかくとしまして、三年としておりますのは、平成十六年に、行政情報の電子的提供に関する基本的考え方の指針なるものをつくっておりまして、原則として、特段の別途の定めがない限りは三年とするということになっておりまして、これに従っているということであります。

 一方、三年を超えてもそれはアクセスできる環境が必要なのではないかという声もありまして、先ほど言いましたようなサーバーの容量との兼ね合いもありますけれども、できるだけ、何らかの形でそういう情報へのアクセスが可能なことはできないのかということを検討してみたいと思います。

重野委員 そういう国民の要望があるということをしっかり受けとめて、前向きに検討していただきたい、このことを申しまして、質問を終わります。

原口委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 出先機関改革の話を先日の予算委員会の一般質疑で行おうと思ったんですが、時間がなくなってしまいまして割愛をさせていただきました。改めて、きょうの大臣所信で御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 昨年十二月二十八日に公表されたアクション・プランは、出先機関の原則廃止といいながら、原則廃止に全然なっていないのではないかというふうにも言われております。しかも、基本的に、一二年の通常国会に法案を提出して、準備期間を経て一四年度中に実施と、実施時期を先送りした。先送りじゃないという話を後で答弁になるんでしょうけれども、そもそものやる気も疑われている、そういう状況だと思います。

 民主党のマニフェストを読むと、地方分権推進に伴う地方移管、国家公務員の手当、退職金などの水準、定員の見直しなどにより総人件費を二割削減します、こういうことが書いてあって、国家公務員人件費削減の手段として、まず地方移管ということが書かれているわけですね。

 出先機関の原則廃止というのは、まさにそのイの一番ということになるんだと思うんですけれども、今、国家公務員は大体三十万人、そのうち三分の二の二十万人が地方出先機関等で働いておられます。このアクション・プランでは「二十六年度中に事務・権限の移譲」というふうに書いてあるんですけれども、それに伴って、実際に何人の職員が移管できるというふうに考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。

片山国務大臣 先を見越して、先送りではないと答えるに違いないとおっしゃいましたけれども、そのとおりであります。

 ちょっと考えてみていただきたいんですけれども、数千人の職員、もっと進めば数万人になる可能性があるわけですけれども、そういう職員を右から左にほいと来年移しますということは、これはとてもできる話じゃないんです。受け皿としてきちっとした、そういう職員の任命権者に足りる体制ができているかどうか。しかも、そこの職員の任命権だけじゃなくて、そこで巨額の金を使って公共事業その他の事業をやるわけでありまして、その実施体制、それからチェック、そういうものがちゃんとできていますか、そこの意思決定はどうやってやりますか、こういうことをやはりきちっと押さえてからでないと、受ける側も大変ですし、送り出す側も、国としても、最後は国会で決めますけれども、果たして国会でそういういいかげんなことが通るとは私は思いません。

 ですから、これを本当に担当大臣として真剣に進めようと思いましたら、やはりきちっとした受け皿の問題、それから送り出す側として安心のできる準備をしなきゃいけないということで、これをやろうと思いますと、国会のスケジュールもありまして、二十六年度以降にならざるを得ないのであります。

 先送り先送りと言われますけれども、問うてみたいんです、ではいつからできるんですか、二十五年度からできると思いますかと。私は、決して開き直るわけじゃありませんけれども、本当に問いかけをしてみたいというつもりであります。先送りと言われるのは、心外とまでは申しませんけれども、大変残念であります。そのことが一つであります。

 やる気がないと言われましたけれども、そんなことはありません。昨年の十二月にアクション・プランをまとめまして、さっきも言いましたけれども、その中には二つ要素があって、今の四十七の都道府県の体制であっても、移管できるものは順次、事務、権限を移管していきましょう、それを推進するための装置、仕掛けも設けました。

 それから、広域ブロック単位で丸ごと移管するものは、さっき言いましたように、これは準備が要るので、実際に移管するのは二十六年度からになりますけれども、そのための準備を始めようということで、先般、ついこの間ですけれども、沖縄を含む三圏域の知事さん方から具体的な構想も伺って、もう協議を始めているところでありまして、やる気がなかったらそんなことをするわけがありません。実際にそういうところと具体的なやりとりを公開の中でやっているわけでありまして、その辺も御理解をいただければと思います。

 その上で、御質問がありました、一体何人の職員が移管できるのかということは、これは現時点ではまだわかりません。

 さっき言いましたように、一県単位ででも、もしくは数県単位ででも受けられるという現行の四十七都道府県体制を前提にした事務、権限の移管というのは、これから、どこの直轄河川とか、どこの直轄道路を移管してくれという話が来るわけでありまして、それを順次進める過程で、だんだんとそれが積み重なってくるということになります。

 広域ブロック単位は、さっきも言いましたけれども、例えば九州広域行政機構というものが円滑に、スムーズに移管作業というものが進んだとしますと、例えば地方整備局ですと、国交省の出先機関ですけれども、これで三千数百人、農水省の出先の地方農政局でありますと千数百人、経産局でありますと数百人、こういうオーダーで移ることになるわけであります。

 したがって、準備が整い次第、順次ということでありますから、今、具体的に何人ということは申し上げられません。

柿澤委員 大変丁寧に御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 今お聞きをしたところによると、これから具体的な交渉といいますか、いろいろな話し合いを地方との間で進めていく。それで、この地方出先機関は国から地方に、広域連合になるのか広域行政組織、あるいは県に移管するものもあるかもしれない、こういうことで決まっていくんだ。一つ一つが積み重なって最終的な姿ができていくということであります。

 そうすると、現時点で、最終的な絵姿として、例えば何人の国家公務員の地方移管が行われる、こういう具体的な数字ベースの見通しを出す予定はない、こういうことでよろしいですか。

片山国務大臣 現時点ではそれを出すことはできないということでありまして、これが順次地方との具体的な協議が進んできますと、その時点で何人、またそれから期間が経過すると何人になりますというふうに、だんだんとこれが膨らんでくる、そういうことになると思います。

柿澤委員 言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そうすると、具体的な事例が積み重なって、結果としてこうなりましたよということになるわけですので、ある種、そこで移管される人数等々については、結果論の積み重ねということで出てくる数字になるわけですよね。

 そうすると、民主党のマニフェストで、国家公務員総人件費の二割削減のイの一番に地方移管ということが書いてあることとの整合性がなくなってくるのではないかというふうに思うんです。具体的な目標を立てて、そしてここからここまでの間にこれだけの人員を移管しますよ、こういう目標数値を立てないで、ここと交渉したらこのぐらいいきました、こういうことを積み重ねていくということでは、二割削減という目標そのものを達成するとかしないとかいう問題ではなくなってきてしまうのではないかと思います。

 そういう意味で、私は、具体的なプランを立てて、そして目標数字を掲げて、それに向けて進んでいくというのがあるべき姿ではないかというふうに思います。かつて、地方分権推進委員会の猪瀬試案では、地方移管二万三千百人、スリム化で一万一千五百人、こういう試算を出していたわけです。

 改めてお伺いしますけれども、こういう目標は定めない、定めないまま個別交渉を重ねていって、結果として二割削減というものが達成できる、こういうふうに片山大臣はお考えになっているんでしょうか。

片山国務大臣 全体的な絵姿としては、八府省何機関だったでしょうか、ちょっと今正確には思い出せませんけれども、もう全体の絵姿はあるわけです。

 それを推進するときに、柿澤議員がおっしゃるように、最初に何人をいつまでというやり方もありますよ。ありますが、私どもはそういうやり方ではなくて、まず受け皿の自治体の方が、どういう機関とか、どういう事務、権限を自分たちで担いたいとおっしゃるかということを重視したいと思っているんです。

 先ほど来もありましたけれども、地域主権改革の発想というのは、地域のことは地域が決めるということが原則でありまして、国が自己都合によって押しつけるという行政整理型の地域主権改革ではなくて、あくまでも地域が地域経営のために、自分たちが今持っている権限のほかに、国が持っている権限のどういうものを寄せ集めればよりふさわしい行政ができるかというところの方に重きを置いているわけであります。ですから、到達点は同じとしても、手法といいますか、通っていく道が違うということだろうと思います。

 先般の党首討論を私は伺っていまして、急がば回れという言葉を知っていますかと言われた方がおられましたけれども、まさに急がば回れということも、今回の地域主権改革、地方出先機関改革には必要だろうと私は思います。無理やり押しつけて、町村合併が全部そうだったとは申しませんけれども、そういうことよりは、多少時間がかかっても、地域、地元の機運がみなぎってきて、それで主体的、自主的に国から受け取っていただけるという、そっちの方が、恐らく最終的には早く目標を達することができるのではないかというのが私の考え方であります。

柿澤委員 さらに言うと、今回のアクション・プランでは原則廃止ということを言っているわけですけれども、事務、権限及び職員の地方移管については書いてありますが、出先機関の廃止ということについては必ずしも明記されていない。廃止による、例えば全体のボリュームのスリム化みたいなことに関する視点は、このアクション・プランからはどうもすっぽり抜け落ちちゃっているのではないかというふうに思います。

 先ほど申し上げたように、かつての地方分権推進委員会の試案では、スリム化ということで一万一千五百人ということが明記をされていたわけですけれども、今回は、結果として、地方移管ということで事務、権限、人員を地方に移譲する。これは人件費の、ある意味では国から地方へのつけかえみたいな話であって、廃止による全体のスリム化というものがどう進められていくのかというのは見えてこないというふうに思います。これは、出先機関改革の出発点の一つが、そもそも二重行政を解消しよう、こういうことであったことから考えると、いささかおかしな話ではないかというふうに思います。

 廃止、そして人員の全体としてのスリム化、こうしたことについてのお考えを片山大臣にお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 出先機関の問題は、何が一番大切なのかということを考えますと、国の行政整理という考え方もないわけではないと私は思いますが、一番は、やはり地域主権改革の文脈の中で、地域が、より適切な事務を効率的に執行するにはどうすればいいかというその文脈の中で、国の事務や機関を移管したらいいのではないかということだと思うんです。

 ですから、政府の中でも、地域主権改革の所掌の中でこの出先機関改革は位置づけられているわけで、私が担当大臣になっているわけです。行政整理ということでは必ずしもないわけです、結果として国の行政整理になることは確かではありますけれども。それが一つであります。

 それから、さっき言ったように、急がば回れの手法で、機の熟したところ、地域の熟度の増したところから順次移管していきますということでありますから、最初から全部国が計画をつくって、全部なくすなり移管するんですよということを押しつけるのではなくて、順次引き取っていただくということですから、そういう手法をとろう、急がば回れ方式をとろうとしたときに、廃止というのは多分言葉として、表現としてはちょっとなじまないんだろうと思います。これはむしろ表現の問題だろうと私は思います。

 もっと言いますと、急がば回れ方式で言いますと、最後まで受け取らないというところもあるかもしれません。最後まで、あるブロック、地域は、国でやってもらった方がいいんだと。実は今でもあるんです。国でやっておいてもらった方がいいんだというところもあるんです。一方では、早くくれというところもあるんですね。結果として、うちは要らないというところがあったときに、さあ、それをどうするのかというのは問題として残るわけです。そのときも国の都合で全部押しつけるんですよということをやるかどうかというのは、これはちょっと今の段階ではまだ考えておりません。

 そんなこともあるものですから、もう全部廃止という言葉が表現としてなじむかどうかというのは、私も実はためらいがあるところでありまして、決して後退とか、何かうやむやにするとかということで表現を変えたということではありません。

柿澤委員 そうであるならば、国の出先機関の原則廃止という言葉遣いは今すぐおやめになられた方がいい、こういうふうに思います。

 ハローワークのことについてお伺いをいたします。

 議論の経過を見ていますと、一度は職業紹介や雇用保険給付等の窓口事務を地方移管する案がまとまりかけたというふうにも言われていたんですけれども、結果として、三年程度、国と地方が一体運営、こういうことに後退をしました。連合や労働組合出身の議員が地方移管に強く反対した、こういうことも報じられております。

 これだけを見ると、官公労に言われて地方移管を後退させたのか、こういうふうにも思えます。いやいや、そうではないよ、国と地方の一体運営をやって、三年後には地方移管できるようになるかもしれないよ、こういうことであるかもしれませんが、これについては、片山大臣は昨年の十二月の段階で、全面移管は自信がない、こういうふうにもおっしゃっております。

 すると、このハローワークの地方移管というのはもうやらない、こういうことでしょうか。

片山国務大臣 ハローワークは、知事会等からは移管を受けたいという一つの重要な要素になっておりました。

 これについて、具体的にこれをどうするかということを関係省それから自治体側ともるる協議、相談をしたのでありますけれども、最後まで懸念として残りましたのは、一つは、全国的なネットワークシステムをどうやって維持するのかということであります。今は厚生労働省が出先を通じて一元的に管理しておりますから全国的なネットワークは形成されておりますが、これが各都道府県単位に分解されたときに有機的なネットワークシステムが構築できるかどうかというところに、できるという意見もあるんですけれども、それが果たして本当にできるだろうかという懸念もありまして、そこのところの決着がつかなかったということが一つあります。

 私がこの問題で一番自信がないと申し上げましたのは、職業紹介というのはいろいろな他の分野と結びついているんですけれども、一番重要なのは雇用保険であります。この雇用保険と職業紹介というものを全く切り離してしまう、雇用保険は国の方に残して職業紹介だけを地方に移管するということは、これは私は難しいだろうと思います。

 従来、地方事務官制だったときには、今のハローワーク、すなわち職業紹介の機能と雇用保険の機能とは、実はいずれも都道府県に属していたんです。これを地方事務官制度という、いささか特異な制度で国が統括をしていたということがあるのであります。

 したがって、そういう仕組みにまた戻すのであれば、地方事務官制度というようなものを復活してということはあり得るんですけれども、そうではない形で、今の国と都道府県との関係を、原則を維持したままで職業紹介は地方に、雇用保険は国にというのは、いろいろな意味で不都合が生じてきます。いや、自分たちも雇用保険の窓口はやるよと言われるんですけれども、では、その結果の財政負担はどうするんですかということになりますと、いや、それは国だという話になるわけです。それではモラルハザードを起こす可能性がないわけではない。

 私も真剣に考えました。これは一部言われておりますような、組合の皆さん、関係の深い議員の皆さんから圧力をかけられたんだろう、こう言われる方もおられます。そんな圧力は全く皆無であったと言うつもりはありませんけれども、私は自分なりに、いろいろな方と意見交換をして、私の良心でもって今回の取り扱いは判断したものであります。

 これを二、三年程度やってみる。やってみるというのは、県と厚生労働省とが協力しながらいろいろなことをやってみて、それでうまくいけばいいわけです。どっちが所管しようと、これは該当の国民の皆さんにとって質の高いサービスが提供できれば一番いいわけでありまして、それができるかどうか。それができないといったときに、では次のステップで移すということも視野に入れて、今、いささか妥協的と言われるかもしれませんけれども、そういう形態をしばらくとってみようということにしたわけであります。

柿澤委員 今お話が出ました、例えば労働保険の雇用勘定、こうしたことをどうしていくかということについて、最後に一つだけ、資料をちょっとお配りしましたのでごらんをいただきたいと思います。

 国の出先機関と特別会計の道州移管に関する試論というPHP総合研究所のペーパーなんですが、これを見ると、出先機関の事務というのは特別会計で担う事務が大変多いんですね。二〇〇七年時点で数えると、二十八の特別会計のうち十四が出先機関と関連をしている。特別会計には、権限、財源、人間、いわゆる三ゲンが張りついている、そして資産と負債がセットで張りついているわけです。

 道州制の導入を前提に、国の特別会計の事務事業を一つ一つ、国が引き続き官営で行うべきもの、廃止するもの、民間委託できるもの、道州移管が可能で官営、民間委託、こういうふうに仕分けをしていったのが今お配りをしている表であります。

 仕分けの上で道州移管が可能な事務事業を、人、物、金、セットで道州に移管をすると、結果的に、出先機関を中心に、特会職員八万人のうち六万人を移管できる、こういう結果が出てまいりました。これに関して、雇用保険に関する事務は基本的には地方でできるだろう、道州制の導入を前提に、こういう仕分けもされているところです。

 特別会計の資産、負債をセットで移管するという形でやると、移管後の道州の資産は五十一兆円、負債は十七兆円ということになって、形の上ではストックベースで資産超過になるんですね。

 こういうことをやっていく上でも、広域行政機構という、法的な位置づけあるいは権限のある意味であいまいなものではなくて、広域行政政府である道州をしっかりとつくる。地域主権型道州制、まさに霞が関を解体して、その事務、権限を移譲していく。こういう姿を将来のビジョンとして改めて掲げる必要があるというふうに思いますが、片山大臣の見解をお聞かせください。

片山国務大臣 道州制も視野にないわけではありません。当然、日本の国柄の将来の図として、道州制というものも構想されてしかるべきだと思いますが、現時点で道州制というものを具体的に進めるという段階ではないと私は思っております。

 といいますのは、自治体が抱える問題というのはいろいろありまして、一つは、例えば、市町村合併のときにこれは指摘されたことですけれども、基礎的自治体としての区域が小さ過ぎるんではないか、もっと大規模にして、受け皿として大きくすべきじゃないかという問題が指摘されまして、それがかなりクローズアップされましたが、本当はもう一つ、質がちゃんと高いですかという指摘もあるのであります。それが最近、地方議会などをめぐって出ている問題であります。

 これは、都道府県にも同じことが実はあるんです。区域が小さいんではないですかと。今の区域というのは明治二十三年にできた区域を基本としておりますから、そのときと社会経済情勢や交通や通信が変わった現在、違うんじゃないですかというのは当然あります。もっと区域が広くあってしかるべきではないですかというのはありますけれども、しからば、質は本当に万全ですかという問いかけもあるんです、都道府県であっても。今の質があえて悪いとは申しませんけれども、質を今のままにして、単に区域だけ大きくすることで問題が解決できますかという問題指摘があって、私は、その問題指摘はかなり当たっていると思うんです。

 ですから、物事を両面進めていかなきゃいけないので、町村合併のときには規模の問題ばかりを言って質の問題を置き去りにしましたから、本当はここで、都道府県も市町村もあわせて質の問題、透明性だとか、民意との接点だとか、住民の皆さんからの信頼度とか、そういう自治体の質の問題にもっと焦点を当てる時期ではないかと私は思っております。

柿澤委員 国が目標とする姿を持たずに地方の自発的な意思に任せる、こういうやり方でやっていくと、結果として、出先機関の地方移管というのは遅々として進まない、しかも、地方の側がいいとこ取りをしていく、こういうことになってしまうと思います。

 だからこそ、私たちは、道州制の基本法をつくって、そして霞が関の解体を中央政府から仕掛けていく必要がある、そして、一定のプログラムに基づいてこうした地方への事務、権限、財源の移譲というものを進めていく必要がある、こういうことを申し上げているわけです。

 このことについては、また議論を重ねてまいりたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

原口委員長 この際、五分間休憩いたします。

    午後四時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時十九分開議

原口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 地方自治及び地方税財政に関する件について調査を進めます。

 この際、平成二十三年度地方財政計画について説明を聴取いたします。片山総務大臣。

片山国務大臣 平成二十三年度地方財政計画の概要について御説明を申し上げます。

 本計画の策定に際しては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、国の取り組みと基調を合わせつつ、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映するとともに、地域の活性化、雇用、子育て施策等に取り組むために必要な経費を増額計上しております。その上で、財政運営戦略に基づき、交付団体初め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成二十二年度の水準を下回らないよう確保することを基本としております。

 あわせて、地方財政の健全化を図る観点から、交付税特別会計借入金について、償還計画を新たに作成した上で、着実な償還を行うこととしております。

 引き続き生じます財源不足につきましては、適切な補てん措置を講じることとし、地方財政の運営に支障が生じないようにしております。

 以上の方針のもとに、平成二十三年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出総額の規模は、八十二兆五千五十四億円となっております。

 以上が、平成二十三年度地方財政計画の概要であります。

原口委員長 以上で説明は終わりました。

     ――――◇―――――

原口委員長 次に、内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する法律案

 地方交付税法等の一部を改正する法律案

 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

片山国務大臣 地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、地方税法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税における扶養控除の見直し、寄附金税額控除の対象の見直し及び適用下限額の引き下げ、更正の請求期間の延長等の納税環境の整備並びに個人住民税等の脱税犯に係る懲役刑の上限の引き上げ等の罰則の見直しを行うとともに、税負担軽減措置等の整理合理化等を行う必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 その一は、個人住民税の改正であります。個人住民税につきましては、成年扶養控除の対象者を成年扶養親族のうち、年齢六十五歳以上七十歳未満の者、学生、障害者、要介護認定等を受けている者等や合計所得金額が五百万円未満の納税義務者の成年扶養親族とするほか、退職所得に係る一〇%税額控除を廃止することとしております。また、寄附金税額控除の適用対象に、認定特定非営利活動法人以外の特定非営利活動法人への寄附金のうち、都道府県または市区町村が条例で定めるものを追加するとともに、寄附金税額控除の適用下限額を二千円に引き下げることとしております。

 その二は、納税環境の整備であります。納税者が更正の請求を行うことができる期間を五年に、課税庁が更正及び決定を行うことができる期間を五年に、それぞれ延長することとしております。また、脱税犯及び秩序犯に係る懲役刑の上限の引き上げ等の罰則の見直しを行うこととしております。

 その他、税負担軽減措置等の大幅な整理合理化等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等にかんがみ、地方交付税の総額の特例措置を講ずるとともに、各種の制度改正等に伴って必要となる行政経費の財源を措置するため、地方交付税の単位費用を改正する等の必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、平成二十三年度分の地方交付税の総額につきましては、地方交付税の法定率分に、地方の財源不足の状況を踏まえて行う等の加算額一兆八千百五十億円、法定加算額及び臨時財政対策のための特例加算額を加え、交付税特別会計借入金償還額及び同特別会計における借入金利子支払い額を控除した額十七兆三千七百三十四億円とすることとしております。

 次に、交付税特別会計借入金を平成二十三年度から平成六十二年度までの各年度において償還することとするとともに、平成二十四年度から平成三十八年度までの間における国の一般会計から同特別会計への繰り入れに関する特例等を改正することとしております。

 さらに、平成二十三年度から平成二十五年度までの間における措置として雇用対策・地域資源活用推進費を設けるほか、平成二十三年度分の普通交付税の算定に用いる単位費用を改正することとしております。

 また、地方交付税の算定方法の見直しの一環として、地方交付税総額における特別交付税の割合を、現在の六%から、平成二十三年度においては五%に、平成二十四年度以降においては四%に順次改め、普通交付税に移行するとともに、大規模災害等の発生時における交付額の決定等の特例を設けることとしております。

 あわせて、平成二十三年度から平成二十五年度までの間に限り、地方財政法第五条の規定により起こす地方債のほか、適正な財政運営を行うにつき必要とされる財源に充てるため、地方債を起こすことができるとする旨の特例を設けることとしております。

 そのほか、平成二十三年度における子ども手当の支給等に伴い地方特例交付金制度を改正することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 次に、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律は、公害の防止に関する施策の推進を図るため、地方公共団体が行う公害防止対策事業に係る経費に対する国の負担または補助の割合の特例その他国の財政上の特別措置を講ずることを目的として昭和四十六年五月に制定されたものでありますが、本年三月三十一日限りでその効力を失うこととなっております。

 政府としましては、公害の防止のための事業を推進してきたところでありますが、関係地域の実情等にかんがみ、平成二十三年度以降も引き続き公害防止対策事業の促進を図るために国の財政上の特別措置を継続する必要があると考えております。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の適用期限を十年間延長し、平成三十三年三月三十一日までとするとともに、廃棄物処理施設の設置の事業等について、法律の対象事業から除くこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

原口委員長 これにて各案についての趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十七分散会


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