衆議院

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第17号 平成26年4月22日(火曜日)

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平成二十六年四月二十二日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 高木 陽介君

   理事 石田 真敏君 理事 土屋 正忠君

   理事 橋本  岳君 理事 福井  照君

   理事 山口 泰明君 理事 原口 一博君

   理事 三宅  博君 理事 桝屋 敬悟君

      青山 周平君    井上 貴博君

      伊藤 忠彦君    今枝宗一郎君

      上杉 光弘君    小田原 潔君

      大西 英男君    門山 宏哲君

      木内  均君    小林 史明君

      清水 誠一君    瀬戸 隆一君

      田所 嘉徳君    中村 裕之君

      長坂 康正君    根本 幸典君

      松本 文明君    宮澤 博行君

      山口 俊一君    湯川 一行君

      奥野総一郎君    黄川田 徹君

      近藤 昭一君    福田 昭夫君

      上西小百合君    新原 秀人君

      杉田 水脈君    中田  宏君

      馬場 伸幸君    三木 圭恵君

      百瀬 智之君    濱村  進君

      佐藤 正夫君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   総務副大臣

   兼内閣府副大臣      関口 昌一君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    伊藤 忠彦君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   政府参考人

   (内閣府地方分権改革推進室次長)         末宗 徹郎君

   政府参考人

   (内閣府地方分権改革推進室次長)         新井  豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        関  博之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  門山 泰明君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  佐藤 文俊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤原  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       石田  寿君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局農村政策部長)       佐藤 速水君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           田村  計君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           橋本 公博君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         森  昌文君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局公共交通政策部長)     藤井 直樹君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     宮澤 博行君

  長坂 康正君     根本 幸典君

  西銘恒三郎君     青山 周平君

  上西小百合君     三木 圭恵君

  馬場 伸幸君     杉田 水脈君

  渡辺 喜美君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     西銘恒三郎君

  根本 幸典君     長坂 康正君

  宮澤 博行君     小田原 潔君

  杉田 水脈君     馬場 伸幸君

  三木 圭恵君     上西小百合君

  佐藤 正夫君     渡辺 喜美君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     木内  均君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 行政不服審査法案(内閣提出第七〇号)

 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七一号)

 行政手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六六号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案及び地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府地方分権改革推進室次長末宗徹郎君、地方分権改革推進室次長新井豊君、総務省大臣官房地域力創造審議官関博之君、自治行政局長門山泰明君、自治財政局長佐藤文俊君、文部科学省大臣官房審議官藤原誠君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君、大臣官房審議官神田裕二君、農林水産省大臣官房政策評価審議官石田寿君、農村振興局農村政策部長佐藤速水君、国土交通省大臣官房審議官田村計君、大臣官房審議官橋本公博君、大臣官房技術審議官森昌文君及び総合政策局公共交通政策部長藤井直樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田徹君。

黄川田(徹)委員 民主党の黄川田徹であります。

 きょうは、地方議会改革を主として、通告に従い、順次質問していきたいと思います。

 まず、民主党政権においても、地域主権改革、地方分権改革、これを最重要課題として取り組んでまいりました。この地方分権の歩みは、途切れることなく、そして今後も着実に進めていかなきゃならない、私もそう思っております。そしてまた、その成果でありますけれども、これがやはり住民にしっかりと実感されなければならない、こう思っております。団体自治、住民自治の充実がさらに必要とされるわけであります。

 そこで、地方自治は、執行機関としての長と、それから議事機関としての議会を設置する、いわゆる二元代表制を採用しておるわけでありますけれども、この地方自治の二元代表制において議会の果たすべき役割をどのように捉えておるか、大臣の見解をお尋ねいたします。

新藤国務大臣 日本国憲法第九十三条におきまして、地方公共団体に議事機関としての議会を設置すること、そして、長と議会の議員は住民が直接選挙することとされておりまして、まさに今委員が御指摘された二元代表と言われるように、地方議会は、地方公共団体の行財政運営を担う上で、長とともに車の両輪だ、このように私も位置づけております。

 そして、議会が議事機関といたしまして、条例の制定、改廃、そして予算の決定、地方税の賦課徴収などの団体意思の決定機能や執行機関の監視機能を有している、このようなことであります。一方、長は執行機関として、予算編成や財産管理などの事務の管理、執行権を有しまして、地方公共団体を統括して、代表する者と位置づけられているわけであります。

 その上で、議会と長がそれぞれの役割を果たして、そして健全な緊張関係の中から地方自治の適切な運営を実現すること、これが期待されているところであります。

 今後、私たちの国は、少子高齢化、人口減少社会を迎えまして、ますます、それぞれの地域において工夫がなされる必要がある。まさに、みずからが治める自分たちの地域というものを考えていく上で、長そして議会が機能を有効に発揮することがその地域の発展につながっていくものと私は考えております。

黄川田(徹)委員 国にあっては、どうも最近は総理の力、権限が強くなって、党であるとかあるいはまた国会の力がちょっと弱くなっておるのではないかという気がしております。やはり、権力は持ったときから腐敗するという言われ方をしますので、適度な緊張感を持ってしっかりとかかわっていかなきゃならない、こう思っております。

 一方、地方の議会でありますけれども、これも、長の側に権限が、かなり大きなものを持っておるのではないかとか、あるいはまた、議会の条例立案能力という部分では、どうしても執行部にお願いをしなきゃいけないという面が間々あったりとか、あるいはまた、議決の関係も、単なる追認に陥ることがこれまた間々あるのではないか、こういう声もあるわけでありまして、しっかりと、長と議会の関係、いい意味での牽制といいますか、そういうものがうまく機能すればいいと思っております。

 地方自治の、分権の進展、地域主権の進展で自治体の自己決定権が拡大しているわけでありまして、そこで、これまでの地方分権について、取り組み方といいますか、そもそも、平成五年の衆参両院による地方分権の推進に関する決議、それ以降、たゆまずに分権の取り組みが積み重ねられてきたと思っておりますけれども、それでもって二十年が経過したという現実であります。

 そこで、まず、地方分権を総括しまして、今回の第四次一括法案はこの大きな流れの中でどのように位置づけられているのか、これから聞いていきたいと思います。

新藤国務大臣 まさに、地方分権を進めるための国会決議から二十年の節目を迎えたというところであります。

 まず、第一次地方分権改革においては、国と地方の関係の見直しを行いました。それは、上下主従の関係から対等、協力関係にしよう、そういうことであります。そして、地方分権改革の理念を構築するとともに、機関委任事務の廃止、また、国の関与に係る基本ルールの確立などが行われて、地方分権のスタートと言えるのではないかと思いますけれども、地方の自主性、自立性が高まったということであります。そして、続く第二次の地方分権改革というのは、それらのものを着実に実行するための期間であった、このように思います。

 第一次から始まって第四次の見直しまでございますけれども、それぞれ七割を超える中で見直しを実施してまいりました。これによりまして、地方自治の自主性というものはさらに実効性を持って高まったのではないか、私はこのように思うわけであります。

 今回、第四次一括法を出させていただいておりますけれども、これは、地方分権改革推進委員会報告の中で残された課題につきまして、特に、国から地方への事務、権限の移譲、こういったものに取り組ませていただきまして、我々が今整理できるものについてはテーブルにのせて、着実な実施を見込むように段取りをいたしました。まだ協議が調わないものにつきましては、引き続き一つ一つ丁寧に対応してまいりたいと思っておりますが、それにあわせて、一区切りをつけたこの段階において、さらなる、次なる新しい展開を私たちはしていかなくてはいけない、このように今考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 さらに具体的に、ちょっと事務方の方にお尋ねいたしたいと思っております。

 御案内のとおり、地方自治には団体自治と住民自治の二つの要素がありますが、これまで地方分権においては、団体自治の充実に関する改革、そしてまた住民自治の拡充に資する改革として、それぞれ具体的にどういう取り組みがあったか、改めてお尋ねいたしたいと思います。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 まず、団体自治の拡充に資する改革でございますけれども、これにつきましては、先ほど大臣からも御答弁ございましたが、第一次分権改革で、国と地方の関係を上下主従から対等、協力の関係に変えまして、分権の理念を構築し、その一環で、機関委任事務制度の廃止、国の関与に係る基本ルールの確立が行われたところでございます。

 第二次分権改革では、大きく三つ、義務づけ・枠づけの見直し、基礎自治体への権限移譲、国から地方への事務、権限の移譲などについて、多くの具体的改革を実現したところでございます。

 具体的に申し上げますと、まず一点目の義務づけ・枠づけの見直しにつきましては、見直すべきとされた千三百十六条項のうち、七四%に当たる九百七十五条項の見直し、二点目の基礎自治体への権限移譲につきましても、見直すべきとされた百五項目のうち、六九%に当たる七十二項目を見直したところでございます。

 また、三点目の国から地方への事務、権限の移譲につきましては、三十次地方制度調査会答申で示された都道府県から指定都市への権限移譲とあわせまして、昨年の十二月に見直し方針を閣議決定し、現在、第四次一括法案として御審議をいただいているところでございます。

 次に、住民自治の拡充に資する改革でございますけれども、これまで、地方自治法の改正によりまして、通年会期の選択制の導入など、地方議会の自由度を高めるための制度改正、あるいは地域住民の意見を行政に反映するための地域自治区の創設などの改革が行われました。また、直接請求制度につきましては、解散、解職の請求に必要な署名数要件の緩和などの改正を行ったところでございます。

黄川田(徹)委員 今お答えいただきました最後の方で、直接請求制度要件の緩和ですか、住民の政治参画の機会を拡大するといいますか、そういう面もあるのでありますけれども、どちらかというと団体自治に力点が置かれてきたのではないか、こう思うところもあるわけであります。いずれ、住民の代表機関である議会の活性化が一番大事だ、こう思っております。

 そこで、さらに具体的にお尋ねいたしますけれども、地方分権一括法以降、地方議会制度についても、議会の権限や自由度の拡大に資する制度改正が行われてきた、こう思っておりますが、具体的にその中身、概要をお尋ねいたします。

門山政府参考人 お答えいたします。

 平成十一年の地方分権一括法以降の地方議会制度に関する主な制度改正でございますが、平成十一年、地方分権一括法におきまして、機関委任事務の廃止に伴いまして条例制定権を拡大するという改正、さらに、議員定数の法定定数制の廃止がございました。平成十六年の改正では、定例会の招集回数を自由化したという改正、平成十八年の改正では、議長及び議員への臨時会の招集請求権を与えるという改正、平成二十三年でございますけれども、議決事件の範囲の拡大、それから議員定数の法定上限の撤廃、平成二十四年の改正では、通年会期制の導入ですとか議長への臨時会招集権の付与などが行われてきたところでございます。

黄川田(徹)委員 いろいろお話しいただきましたけれども、この地方議会制度改革については民主党政権下でも行われたわけでありますが、平成二十四年の地方自治法改正について、地方議会に関するものはどのようなものがあったか、あわせて概要を伺いたいと思います。

門山政府参考人 平成二十四年の地方自治法改正でございますが、この改正におきましては、地方公共団体の議会及び長によります適切な権限の行使を確保するとともに、住民自治のさらなる充実を図るために、議会の招集、それから会期、議会と長との関係などにつきまして所要の改正を行ったものでございます。

 具体的に申し上げますと、地方議会の会期につきましては、条例により通年の会期とすることができることとしたことがございます。

 それから、議長等の臨時会の招集請求という制度ができているわけでございますが、それに対して長が招集しないときには、議長が臨時会を招集することができるということにいたしました。

 また、議会におきます委員会の委員の選任方法ですとか委員としての在任期間などにつきまして、それまで法律で定めておりました事項を条例に委任したことがございます。

 また、条例、予算に限定されておりました一般再議の対象を全ての議決事件に拡大したといったようなことが改正の主な内容でございます。

黄川田(徹)委員 平成二十三年の民主党政権下では、法定受託事務を議決事件の対象にするなど、一つ一つ改革はされてきていると思っております。

 そこで、地方議会の通年会期の実際の活用状況でありますけれども、今どのようになっておるか、お尋ねいたします。

門山政府参考人 通年会期の地方議会におきます導入の状況でございますが、改正法が施行されましたのは二十四年九月でございます。それで、二十六年一月時点の調査でございますけれども、地方自治法第百二条の二第一項によります通年会期制を導入している団体の数は、都道府県で一団体、市区町村で十三団体ございました。

 また、地方自治法百二条第二項の規定によりまして、要するに定例会を一回とすることで通年会期を実施しているという団体の数は、都道府県が二団体、市区町村で三十四団体であると承知いたしております。

黄川田(徹)委員 法改正によって、それぞれ自治体で取り入れたり、あるいはまた取り入れた結果、なかなかなじまないところもあるということで戻されたところもあるやに聞いておりますけれども、地方議会の自由度が高まったということは大事なことだ、こう思っております。

 そこで、地方議会もこれまでの地域主権、分権改革の中でいろいろな取り組みをしていると思うわけでありますけれども、地方議会の活性化のための取り組み、これはどういう広がりがあるのか、その実態をお尋ねいたしたいと思います。

門山政府参考人 全国の地方議会におきましては、活性化に向けた取り組みはいろいろございますが、背景といたしましては、住民に身近な行政の果たす役割が大きくなる中で、地域住民の多様な意見が行政運営に反映されるようにするために、議会機能のさらなる充実強化を求める、こういう声があるということかと存じます。

 そのような中で、各地方議会においての取り組みでございますが、例えば、議会の活動理念ですとか審議の活性化、住民参加などといった事項を規定した条例を制定するといったケース、あるいは、土曜日ですとか日曜日、休日あるいは平日の夜間に議会を開催するといった開催の方式、それから、住民との意見交換を行います議会報告会といったものを開催しているといったようなケース、さらに、情報を広く公開して関心を高めるという意味から、インターネットなどを活用いたしまして審議状況を中継しているというようなケース、それから、執行機関への質疑だけではなく、議員間の討議、こういったものを踏まえた合意形成を目指すということで、議員間討議を積極的に活用しているといったような事例がございまして、いずれも住民の方々の信頼確保や議会の審議の充実等を目的とした取り組みということかと存じます。

黄川田(徹)委員 次に、議会の権限の中でも、やはり基本的な権限は議会の議決権でありますけれども、この議決権に関しては、先ほど来お話しのとおり、地方自治法第九十六条第二項に基づき、自治体は、同条第一項で決定された事項のほか、条例により議決すべき事件を追加して規定できる、こういうふうな改正になって、今動いているわけでありますけれども、全国の自治体の、条例により追加された議決事件というものはどのようなものがあるか、これも改めてお尋ねいたします。

門山政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年四月時点の調査でございますけれども、地方自治法九十六条第二項の規定に基づきまして、条例によりまして追加された議決事件の例といたしましては、例えば、都道府県議会におきましては、行政全般に係ります基本的な計画の策定について議決事件とするといったようなもの、それから、法人に対する出資がございますけれども、法人に対する出資の割合が四分の一以上になる場合には、その出資について議会の議決を必要としているといったような例がございます。

 それから、市区町村議会の場合でございますけれども、これも都道府県と同様に、行政全般に係ります基本的な計画の策定を議決事件としているものがありますほか、名誉市民、名誉町民あるいは市政功労者の表彰といったものの決定を議決事件としているもの、それから、市民憲章ですとか都市宣言、こういったものの制定を議決事件としているものなどがございます。

黄川田(徹)委員 法改正によって、さまざま、議決事件を条例に盛り込んでおるところがある、こう思っております。いずれ、議会は、監視機関だけではなくて、やはり団体の意思を決定する、こういう機能もしっかり担うものでありますので、分権改革によって、地方議会もそれぞれ元気で頑張っているなというところがあると思っております。

 また一方、今回の地方自治法改正案においての関係なのでありますけれども、自治体の広域連携を柔軟に進めるために連携協約制度の創設が盛り込まれておるわけでありますが、この連携協約においては地域の基本的な方向性が定められることを考えますと、この締結に当たって、議会の役割が重要ではないかと私は思っておるわけであります。

 この連携協約に基づく広域連携において議会の果たす役割、これはどう捉えておるのか、お尋ねいたします。

門山政府参考人 お答えいたします。

 今後、持続可能な行政サービスの提供体制を構築していきますためには、自治体間の広域連携が安定的かつ継続的に行われる必要があるというふうに認識いたしております。

 このため、今回の地方自治法改正案におきましては連携協約の制度を設けたいということでございますが、連携協約の締結、変更、廃止を行おうとする際には、団体としての意思を確定させるために、議会の議決を経るということを規定いたしております。

 また、この連携協約を具体化するために事務の委託などの共同処理の手法を用いるわけでありますが、その規約を定める際にも議会の議決を経ることとなります。

 議会におきましては、こういった地方公共団体の広域連携に関します住民の方々のニーズですとか、連携協約を締結した後にニーズが変化する、そういったようなことにつきまして幅広い議論が行われることが期待されているものと考えております。

黄川田(徹)委員 これまで事務方から、地域主権、地方分権の流れについて具体的に答弁いただきましたけれども、大臣に、今後のさらなる地方分権をどのように進めていこうと考えておるのか、特に、議会改革ということでこれまで聞いてまいりましたので、また地方議会改革をこれからどのように展開していくのか、大臣の見解、所見をお尋ねいたします。

新藤国務大臣 私は、地方分権改革推進担当大臣を拝命しまして、この二十年の節目を迎えて、まず、これまでの残っているものを全てテーブルに上げて、徹底して実現方を探ってみよう、こういうことを事務方に指示をいたしました。

 あわせて、分権有識者会議というものを別途設けまして、有識の先生方と、私も、政務また次官初め各幹部も入って、みんなで議論したんです。それを今後の地方分権改革の総括と展望ということで取りまとめをさせていただきました。その中で、私どもが何をコンセプトにするかということで、ビジョンでございますけれども、個性を生かし自立した地方をつくる、これが分権改革のビジョンである、このように位置づけました。

 まず第一に、今後、新たなステージ、次なる展開に当たりまして、まずは、これまでの改革の理念を引き継いで着実に実行していく、今までの、まだ積み残しのもの、未解決のものについては引き続き一つ一つ取り組んでいくということを確認したわけであります。

 その上で、今後はさらに、地方自治の分権の進展に必要なのは住民の発意、それからそれぞれの地域の多様性を取り入れた改革ができないかということを我々は取りまとめをいたしました。その中で、委員が御指摘いただきました、地方議会の政策提案機能を強めていくということであります。行政の監視機能に加えて、やはりこれは、立法権はありませんが、条例制定はできるわけですね。ですから、そういう議員の政策提言能力を高めていく必要があるだろうと思います。

 それぞれの地域のやりたいこと、それから、それぞれの地域が持っているポテンシャル、こういったものを生かせて分権が進められるような、そういう多様性を認めていこうではないか、取り入れられるようにしようではないか、こういうことを考えたわけであります。

 その具体的な制度が、まず分権改革の御提案を地方からいただくわけでありますが、これは、団体を通して、意見が集約されたものが上がってまいります。これに加えて、提案募集方式という、それぞれの自治体が、自分たちだったらこういうことができるんだが、そういう提案も募集をする、こういう方式を取り入れることにいたしました。

 それから、この分権改革が仮に実現したとして、それを受け入れて対応したい自治体と、いや、それは今私たちでは、まだそこは今までどおりでよい、こういうそれぞれの多様性がございます。ですから、この分権改革を実際に実行するに当たっては、手挙げ方式というようなものを入れようではないか、これが私たちの提案であります。

 加えて、議会の機能を強化するとともに、住民も地方自治の参加者である、こういうことで、住民自体の、さらに、真の住民自治の確立という意味で、意識を醸成していこうではないかというようなことを考えました。

 ですから、それに伴って、今回初めてでありますけれども、分権改革のシンポジウムというものも六月に予定をさせていただいております。

 それから、ツイッターであるとかフェイスブックだとか、そういうSNSを通じて、それぞれの自治体がやっていることをもっと直接的にそれぞれの地域の皆さんや他の地域の皆さんにお届けできるような、そういう広報機能も強化しよう、このようなことをまとめて、それをこれから実行しようというふうに考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 これからの取り組みとして、大臣も、住民の発意と地域の多様性ということで、さまざま地域から提案していただこうという取り組みになるんでしょう。

 また一方、これまで、我々も政権を担いましたし、そういう中で、国の特定地方行政機関の事務等の移譲、あるいはまた国の出先機関の事務、権限のブロック単位での移譲など、さまざま大きな課題、検討が残っておると思っておりますので、新しい政権として、やりたい方向はそれでいいのでありますけれども、まだ残っているものがあるというところは肝に銘じていただきたい、こう思っております。

 それでは次に、東日本大震災の教訓と課題への対応についてお尋ねいたしたいと思っております。

 第三十次地方制度調査会において、大震災を踏まえた基礎自治体の担うべき役割や行政体制のあり方などについてどのような議論がなされて、そしてまたどのような提言があったか、まずお尋ねいたしたいと思います。

新藤国務大臣 第三十次の地制調におきましては、基礎自治体同士の水平的な支援を法令で位置づけることの必要性、さらには、災害時においては役場機能がいかに重要であるか、こういった議論がなされたところであります。

 こうした議論を踏まえまして、市町村間の広域連携を一層促進していくためには、現行の地方自治法に定める事務の共同処理方式に加えまして、自治体間における連携協約、こういったものを可能とする仕組みを構築したということであります。

 そういった答申を受けて、我々がこの仕組みを今回新たに御提案させていただいているわけでありまして、この連携協約というのは、地方公共団体が地域の実情に応じて自由に内容を協議して、必要な政策面での連携、協議をできる、こういうことでありまして、災害対応面におきましても、地方公共団体にとって使い勝手のよいものにできるのではないか、このように期待をしております。

黄川田(徹)委員 大災害があると、被災地の自治体だけでは手も足も出ないところがある。そういう中で、広域連携、それは県の中だけではなくて、本当に全国レベルでのいろいろな連携も必要だということだと思っております。

 震災から三年がたちまして、四年目が始まっているという状況であります。地震、津波災害の岩手、宮城にあっても、まだまだ、応急仮設住宅であるとか、あるいはまたみなし仮設住宅に住んでいる方々が大勢おられます。

 とりわけ、福島の方々は、原発事故の影響もありまして、帰りたくても帰れないとか、さまざま課題が顕在化していまして、そしてまた、双葉郡の自治体といいますか、町から離れなきゃいけないということで、役場機能が本当に十分に機能しておるのか、あるいはまた被災者の方々のさまざまな要望に十分応えられているのか等々、大変心配なところがあるわけであります。

 調査会の中でも、福島の関係なのでありますけれども、住所地と避難先の市町村の二重の住民登録制の制度設計について、これは必要なのかどうかとか、どんな議論がされて、そして総務省としてどういう認識であるか、まずお尋ねいたします。

門山政府参考人 住所地と避難先市町村のいわゆる二重の住民票の制度設計に関しますお尋ねでございますが、まず、基本となりますのは、住所につきましては、民法におきまして、各人の生活の本拠をいうとされておりまして、地方自治法、住民基本台帳法もこれを基本としているわけでございます。

 そして、具体的な住所の認定につきましては、客観的な居住の事実を基礎とし、これに居住者の主観的居住意思を総合して市町村長が決定するということで、たくさん判例も積み重ねられてきたという事柄でございます。

 そして、具体的な、避難されている方々の住所の認定の問題につきましては、やはりこれもさまざまな事例に即した判断によるべきでありまして、必ずしも一律に取り扱うことはできないという面があるのは確かかと存じます。一人の方が二つの住民票を持つという意味での二重の住民票ということにつきましては、一つは、選挙権、被選挙権を二重に持つといったようなことができるのか、やはりそれは適当ではないのではないか、それから、納税の義務につきましても、住民票の所在地と避難先、二重課税の問題が生じることがないのかどうかといったような問題が大きな問題としてございますことから、制度化は大変難しいというふうに考えております。

黄川田(徹)委員 二重の住民登録制は制度化は難しいと。しかしながら、意に反して、例えば家族も別れて暮らさなきゃいけないであるとか、自分の生まれ育ったところの市町村に戻りたくても戻れないとか、いろいろな環境にあるということは事実であります。

 そしてまた、総務省としても、発災直後から被災地の、例えば津波被害に遭ったところなんというのは土地の価値がないですから、固定資産税の減免であるとか、あるいはまた、発災直後に仕事もつけないという方々は大勢おったし、例えば国民健康保険であれば免税であるとか、さまざまな施策をとってきたし、総務省だけではなくて、政府の各省が連携してさまざまな対応をとってきたのであります。

 先ほど言ったとおり、津波、地震に関する、宮城、岩手に関しては、復興が遅いとは言われておるけれども、時間が解決してくれるところは確かにあります。ただ、福島にとって、時間が解決しているかどうかというのは、なかなか厳しいところがあるような気もいたします。そしてまた、双葉郡の自治体の中でも、それぞれ問題を抱えるところが違うところもございます。

 そういう中で、例えば仮設住宅の中の自治会なんかもあるのでありますけれども、一人、二人と抜けていって自治会の機能がなかなか作用しなくなってきたとか、それから、将来にわたってそれぞれ被災者も決断していかなきゃいけない等々があるわけなのでありますけれども、やはり、四年目となると、特に福島の方々は、心の問題といいますか気持ちの問題といいますか、そういうところのさまざま課題が出てくると思うわけであります。

 それでもって、これは新藤大臣が答えることなのか、さまざま、総務省の範囲内でということになるかもしれませんが、やはり総務省としてもいろいろなたてつけで、特に自立した市町村をしっかりと支えていかなきゃいけないという立場もありますので、被災者の持続的な支援といいますか、そういう部分でどんな考え方をしているか、ちょっと答弁も大変でしょうけれども、新藤さんの素直な気持ちといいますか、お尋ねいたしたいと思います。

新藤国務大臣 まず、みずからのふるさとに戻れるのか、また戻るのか、そこを判断しなければいけない、そういう状況が迫られていることについては、本当に心が痛むことであります。ですから、これは、心の葛藤がある中で、国としてもやはり方針というものをきちんと打ち立てていく必要があると思います。

 その際に、住民の皆さんの御意見やお気持ちを十二分にそんたくした中で、しかし、これは国として決めなければいけないこと、皆さんの、国民の代表として決めなければいけないことが、決断が迫られるときがあるんだろう、このように思いますから、私どもは、被災地に寄り添うという気持ちを自分の中でできるだけ持って、そしてその中で将来を見据えた判断をしていくべきだ、このように思います。

 我々総務省とすれば、事務的な行政サービスにつきましては、きちんと持続的に原発の避難者がサービスを受けられるような、そういう工夫は既にしているわけでありまして、原発避難者特例法による事務処理の特例によりまして、避難先においての行政サービスは可能となっております。

 また、特例対象となる避難住民が民間との契約の際に避難場所についての証明を求められる際には、避難元市町村による届出避難場所証明書の交付の仕組み、こういったものも構築をさせていただいているわけであります。

 それから、避難先の市町村が義務として実施する事務に要する経費につきましては特別交付税で措置をする、このようにさせていただいております。

 さらに、二十八年度以降の被災地における普通交付税の算定のあり方、これは今、人口が激減している状態であります。しかし、それは、平成二十七年国勢調査の結果の判明を受けまして、その時点における被災自治体の行政運営の状況を踏まえて、どのような配慮ができるか、具体的な検討を行おう、このように思っているわけでありまして、現行の行政体制の中で、住民サービスの提供に支障が生じないように工夫をしながら、そして、復興庁や、さらには政府全体で、被災地、原発被害の問題について取り組んでまいりたい、このように考えております。

黄川田(徹)委員 今大臣が後段でお話しのとおり、来年は国勢調査の年となります。そのままの数字を当てはめたら、これは大変なことになりますし、特に、大熊町とか双葉町とか大変なところがあるという中で、住民それから町議会も、心配のないようにしっかり支えるということを進めていただければと思っております。

 残り時間がなくなってまいりましたので、最後、一問、認可地縁団体についてお尋ねいたしたいと思います。

 認可地縁団体の関係は、私のおやじも町内会の会長をしておりまして、昭和の時代でありますけれども、これを登記しなきゃいけないということで、個人での登記になっちゃって、会長がかわると個人個人が登記するという、そんな形になっておりましたけれども、平成三年に認可地縁団体制度が設立されたと思っております。それでもって、法人格を取得して、登記名義人になれるということだと思っております。

 今般、認可地縁団体の関係で、また改めて改正に至ったわけでありますけれども、その経緯についてお尋ねいたします。

 そしてまた、その前段として、認可地縁団体の総数及び所在する市町村の数、これもあわせてお尋ねいたしたいと思います。

門山政府参考人 お答えいたします。

 まず、認可地縁団体の数でありますけれども、平成二十五年三月末日時点で、全国に四万四千八団体存在しております。また、認可地縁団体が所在しております市区町村の数でございますが、平成二十五年四月一日時点で千四百四十五市区町村でございまして、全国の市区町村の約八三%に認可地縁団体が存在するということでございます。

 認可地縁団体制度は、お話ございましたように、平成三年の自治法改正によってできたものでございますけれども、認可地縁団体が所有します不動産につきましては、過去に多数の構成員などの名義で登記されていたり、登記名義人、その相続人の所在がわからないなど、認可地縁団体の登記手続に支障を来している事例があるということで、昨年二月でございますが、総務省の行政評価局から、地縁団体名義への所有権移転登記手続の改善促進のあっせんを受けたところでございます。

 今般の地方自治法改正案におきましては、一定の要件を満たした認可地縁団体の所有する不動産につきまして、市町村長は、一定の手続を経て証明書を発行することによりまして、認可地縁団体が単独で登記手続を行うことができるということで、特例措置を設けるに至ったものでございます。

黄川田(徹)委員 お話しのとおり、自治会とか町内会は、災害対応、発災直後のいろいろな活動で力を発揮しますので、こういう改正はすごくいい改正だと思っておりますので、悩んでいた自治体が喜ぶような改正だと思います。

 以上で終わります。

高木委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 地方分権を促進し、地方自治体の自治能力を高め、住民の幸せを追求していくことは、大切なことだと思っております。いわゆる地方分権一括法が平成十二年の四月一日に施行になってから、大きく前進をしてきたと考えております。しかしながら、その地方分権の成果が生かされ、住民の方々が地方分権のメリットを実感しているのかと考えると、甚だ心配な点もあります。

 きょうは、それらを踏まえて、具体例を挙げながら地方自治のあり方を議論してまいりたいと思いますので、新藤総務大臣初め、政府関係者におかれましては、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず、人口規模に応じた地方自治制度の再構築についてであります。

 資料の一をごらんいただきたいと思いますが、総務省にまとめていただいた、平成の大合併後の人口区分別の市町村数であります。平成二十六年四月五日現在で千七百十八の市町村となりましたが、この人口区分別市町村数を見て、大臣は何を感じられますか。また、どんなことを考えられますか。御所見をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは私がたびたび言及させていただいておりますけれども、現在、千七百十八市町村でありますが、人口五万人以下の市町村が全体の七割を占めるということであります。そして、残りの三割の市区町村に人口の八割が集中している、こういう状況がございます。

 さらに、六年後の二〇二〇年の東京オリンピック開催年において、我が国の人口は約三百万人減少する。それから、さらに十年後の二〇三〇年には一千万人が減少する。よく、二〇五〇年に何千万になるとかと言いますが、少し先の話に聞こえますね。でも、六年後で三百万、それから、二〇三〇年に一千万の人がいなくなるということ。それは結局、人口の少ない地域により大きな影響が出ることになります。

 そして、国交省の調査によりますと、このままいけば、二〇五〇年までに、現在人が居住している地域の約二割が無居住化する。したがって、自治体の形成ができない、こういうことになるわけでありまして、私どもは、地域を活性化する、それは、全国津々浦々にそれぞれの自主性、自立性を持った自治体を存続させていただくこと、これは、国力の維持、それから国土の均衡ある発展においてとても重要なことだ、このように考えているわけであります。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 私はこの表を見て感ずることは、今大臣もおっしゃいましたけれども、小規模市町村の自治能力を今後どうやって高めていくかということ、あるいは維持していくかということを考えていく必要があるというのが一つであります。

 それから、これは五十万人以上になっていますけれども、指定都市制度について今回の自治法の改正があるわけですけれども、指定都市にこれから権限移譲が進められていくわけでありますが、権限移譲が進められていった場合には都道府県と同格の資格を与えていくということを検討すべきじゃないか、実はそんなことを私はこの表から考えているわけであります。

 そこで、次の質問の方に行きたいと思っておりますけれども、二つ目は、指定都市制度の見直しについてであります。

 今回の改正は、都市内分権による住民自治の強化を図るために区の役割を拡充すること、二重行政の解消を図るために指定都市都道府県調整会議を設置するとありますけれども、私は、それはそれなりに評価できる制度だと考えております。しかしながら、実際にどういう効果が出るのかわからないところもありますので、政府の見直しの考え方についてお聞かせをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 今委員が御指摘いただきましたように、この指定都市制度の見直しの効果は大きく二つであると思っております。

 それは、都道府県と指定都市の二重行政の問題の解消を図るという点におきまして、今回、指定都市と都道府県が事務処理について必要な協議の場を行うという、調整会議が設けられました。これまでも必然に応じて調整は行われた、このように思いますが、今般の第四次分権一括法によりまして都道府県から指定都市への権限移譲が明確に進むわけでありますから、そういったものについての調整機能をしっかりと明示する、これが大きなポイントだと思います。

 もう一つは、指定都市内の住民自治の拡充という意味におきまして、総合区制度を設けて、議会の同意を得て選任される特別職の総合区長が、その区域の独自のまちづくりだとか、そういったものの計画をつくれるようにする、より住民サービスが身近なところで行われる、こういうことが指定都市内において工夫されることになったということであります。

福田(昭)委員 そういった意味では、今回の総合区を設ける仕組みとか都道府県との調整会議を設ける、これは私は本当に一歩前進だというふうに思っております。

 そうした中で、私は、これを決めた上での話でありますけれども、その上で、横浜市を考えれば人口三百六十万、また、鳥取県や島根県を考えるとその何分の一、こういうことでございますから、そういったことを考えれば、今後はやはり、例えばでありますが、指定都市と都道府県との同格化を進めていくということが非常に重要なポイントになってくるのではないか。

 ヨーロッパや諸外国の例を見ても、大都市は、あるいは中国でいえば、北京とか上海市は浙江省とか雲南省とかそういう省と同格として運営がされている、ヨーロッパに行っても同じような状況があるということを考えると、将来、同格に位置づけて二重行政を解消していくということにつなげていく必要があるんじゃないか、そのように考えておりますが、将来の方向としていかがか、お伺いします。

新藤国務大臣 いわゆる特別市制度ということで、これは仮称でありますけれども、都道府県から独立した存在とした指定都市をつくってはいかがか、こういう議論があることは私も承知をしております。そして、二重行政の解消という意味におきましては意義がある、このように思っております。

 一方で、しかし、もう少し広い圏域の中における市の役割というものがあると思います。市内だけで完全に分離独立することに加えて、それだけ力の強い市が周辺に及ぼす影響によって、さらにもう少し広い圏域の発展というものが確保されていく、こういったものもあると思いますし、連携というものがあってしかるべきだと思います。

 特に、徴税、賦課徴収の地方税の取り扱いをどのようにしていくのか、それから、警察事務を分割した場合に、果たして、県と独立した特別市、そういった中で完全にそのように分けて大丈夫なのかとか、こういう議論があると思います。

 ですから、これはさまざま議論があってしかるべきだと思いますが、二重行政を解消していくという意味において、そもそも都道府県と政令市というのはかなり同じ機能を持っているわけでありますから、現実的な、そういった不都合のないようによく調整をしながら、将来を見据えた検討が必要ではないか、このように考えております。

福田(昭)委員 本当に大臣がおっしゃるとおり、財源の問題とかあるいは警察の問題とか、解決すべき課題はあるかと思います。しかし、そういうものをこれから調整してやっていく必要があるんじゃないかなと思っております。

 三つ目でありますが、新たな広域連携制度の創設についてであります。

 先ほど大臣からも御紹介がありましたけれども、国土交通省の新たな国土のグランドデザイン、骨子では、二〇五〇年には人口は九千七百万人、約六割の地域で人口が半減以下に、半分以下に、そのうち三分の一の地域は人が住まなくなる、どの国も経験したことのない約四割の高齢化率になると予測をいたしております。これが当たらないようにしなくちゃならないんだと思いますが、今の予測ではこのような予測がされております。

 市町村合併が進んでこれ以上の合併がなかなか望めないという中で、自治能力を高めるための方策として新たな広域連携制度は私も有効だと思いますけれども、その狙いはどこにあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 私は、日本の全国津々浦々に、生活がきちんと維持できる、暮らしが成り立つというためには、より一層の地方分権改革の推進と、それから地域の活性化策を、千七百自治体あるならば千七百通りのものをつくって、それぞれが、その地域の住民の発意によって、また意気込みによって事業が可能となるような、そういう仕組みが必要だと思っているんです。

 その際に、隣村や隣町ではあっても同じ地域であるとするならば、それは連携したってよいではないか。従来、事務を一緒にやろうとすると、一部事務組合をつくるか、もしくは合併をして一体となる。しかし、そうではなくて、それぞれの自治体が存在しながら、必要な事務や必要な内容についての連携を協約という形で結んで、そして、より柔軟に運営ができるようにしたらよいではないか、このように思ったわけであります。

 さらに、今回の連携協約は自治体同士の協約であります。これに加えて、住民の皆さんの、住民団体による、そういう自分たちの地域を考える会があってもいいというふうに思っているんです。

 私、昨年、ヨーロッパに参りまして、ドイツのシティーリージョンというものをつぶさに見てまいりました。議会は議会で存在いたしますが、別途、住民代表のいろいろな分野の人たちが参加をして、自分たちの地域を考える、または提言をする、そういう仕組みができているんですね。それらの提言もそれぞれの議会に提案がされて、議決を経て実施されていく、こういう、よりふくそうした、住民の意思を受け入れた自治というものをおやりになっているところもございます。

 今回のことは、日本型の新たなシティーリージョンの考え方を、私が調査した結果を踏まえて、こういう柔軟な連携ができるようにしていこうじゃないか。フルセットの、やるかやらないかできちっと決めるのではなくて、必要なものを必要に応じて、しかも地域は県をまたがったっていいんだ、それから飛び地だっていいんだ、そういう中で、できるものは柔軟にやっていくこと、それが地域の活性化と分権の確立につながるのではないか、私はこのように思っているわけでございます。

福田(昭)委員 大臣の言われることはそのとおりだと思いますが、問題は、こういう仕組みができて、これを市町村がちゃんと生かしてくれるかどうかということで、首長間の意見の対立、こういうものもありまして、なかなか進まないのが現場には実はたくさんあるということで、私もたくさんそういうことを経験してまいりましたけれども、仕組みとしては、私は評価できる仕組みだというふうに思っております。

 次に、地方分権改革の推進についてであります。

 一つ目は、これまでの分権改革における土地利用計画の実施状況についてお伺いをしたいと思います。

 まちづくりの基礎となる都市計画制度と、農地、農振制度の分権改革が進みましたが、それらが実際に市町村でどのように実施されたのかについて、特に、都市計画制度の中の用途地域の見直し、あるいは農地、農業振興地域整備計画の見直しなどについて、実際にここの町はすばらしくやったというようなことがあったら、ぜひ国土交通省と農水省からお聞かせいただければありがたいと思います。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 事例ということでございましたので、最近ということで、平成二十四年以降の事例の中から典型的なものを二つほど御紹介させていただきたいと思います。

 一つは、栃木県宇都宮市におきまして、土地区画整理事業に合わせまして、住宅地の環境を保全しつつ沿道利便施設の立地を計画的に図るために、用途地域を変更しています。具体的には、第一種住居地域、第一種中高層住居専用地域から第二種中高層住居専用地域、第二種住居地域ということで、住居系の若干の緩和をした変更事例が一つでございます。

 もう一つは、秋田県の能代市におきまして、中心市街地の再生と居住環境の維持を図るためということで、第二種住居地域を近隣商業地域、商業地域を第二種住居地域というふうな形で、機能の入れかえ、再編を行っているものがございます。

 このように、地域の実情に応じた用途地域の変更の事例として御紹介させていただきます。

 以上でございます。

佐藤(速)政府参考人 お答えいたします。

 市町村が策定、変更いたします農振計画でございますけれども、これは平成十二年に、従来、団体委任事務でしたけれども、自治事務になっております。また、平成二十三年には、農振計画のうち農用地利用計画以外の事項につきましては、市町村が都道府県知事に協議をし同意を得るというような事務を廃止したところでございます。

 これを受けまして、農振計画でございますが、おおむね五年ごとに農地の面積、農業就業人口の規模等について調査をして、その結果による見直しを定期的に、おおむね五年ごとに行っておりますが、そのほかにも随時の見直しとして、地域の経済活動あるいは生活環境の整備に伴う見直しが市町村の状況に応じて実施されているところでございます。

 被災した三県を除く四十四都道府県の最近の随時の見直しの状況を見てみますと、農振計画は全国に約千九百ほどございますが、平成二十二年には約六割に当たる一千百五十八計画、二十三年にも五八%に当たる一千百二十四、二十四年度には六五%に当たります一千二百十二計画という随時の見直しが行われておりまして、市町村におきまして柔軟に見直しがなされてきているというふうに認識をしております。

 事例でございますが、例えば千葉県の四街道市では、既存の物流施設が隣接する道路の渋滞を引き起こして周辺へ悪影響を及ぼしていたというようなことから、農業振興地域整備計画を変更いたしまして、農用地区域からの除外の後、農地転用許可を受けまして物流施設を整備したという事例がございます。

 また、岐阜県の大垣市におきましては、工業用地の造成ということで、約五ヘクタールにわたる工業用地の造成を市町村の随時見直しの過程で行ったという事例がございます。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 今回、特に、平成の大合併、あるいは人口減少、さらには耕作放棄地の増大、そんな環境の変化というのを考えれば、やはりまちづくりの骨格をつくり直す必要があるんじゃないかと考えております。今回、国土交通省では、都市の再生と地域交通を確保するというような法律を出しておりますけれども、まさにこの法律を生かすためにも、こうした市町村に移譲された権限をいかに活用するかというのが非常に大切になってくるかと思っております。

 そうしたことについて、ぜひ、国土交通省、農水省、そして分権改革推進室として、市町村に対しての指導、あるいは普及宣伝と言っていいのか知りませんが、それをさらに一層進めてほしいと思っておりますが、その点はいかがですか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 今、土地利用関係で、国土交通省、農林水産省からもお話がございましたけれども、私どもも、いろいろな改革の成果を活用した取り組みについて地方団体にも調査をいたし、すぐれた取り組みについては、その普及宣伝という形で、取りまとめをし、公表するなどの取り組みをしているところでございます。

 今後も、関係省庁と連携をとりまして、こういった取り組みを進めてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 私の地元でも実感できるような改革がなかなか進められていないし、また、住民の方々も、地方分権が進んでよかった、よかったという感想はなかなか聞かれないので、ぜひ、せっかくの改革が生かされるようにさらに取り組んでほしいというふうに思っています。

 二つ目は、第四次の事務、権限の移譲等に関する見直しについてであります。

 今回、国から地方公共団体への移譲が四十八項目、そして都道府県から政令指定都市へは二十九事項、それぞれ移譲されることになりましたり、また、事務、権限の移譲以外の見直しも行うというようなことも定められているわけでありますが、これらで、各省庁との調整あるいは都道府県、市町村との調整で特に苦労された点がありましたら、ぜひお答えください。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 各省や地方との間で調整に苦労した事項についてのお尋ねでございますが、多数あるわけでございますけれども、その中でも、国から地方あるいは県から指定都市の移譲について、それぞれ大きな課題があった事項を例示させていただきたいと存じます。

 まず、国から地方への事務、権限の移譲についてでございますが、直轄道路、河川に係る権限移譲でありますけれども、これにつきましては、平成二十年に地方分権改革推進委員会の勧告がなされて以降、財源措置のあり方を中心に調整がつかず、進んでいなかったところでございますが、昨年九月に、全閣僚から成ります地方分権改革推進本部において、具体的な検討と調整を進める旨を明確にしたところでございます。これを受けて、国土交通省を初め関係府省で連携をして、地方団体とも丁寧に調整を重ねた結果、昨年の見直し方針において基本的な考え方を整理し、移譲に向けた具体的な道筋をつけて、現在、個別協議が再開されているところでございます。

 また、都道府県から指定都市への移譲の方でございますけれども、これにつきましては、昨年の六月に地方制度調査会の答申が取りまとめられたということでありますので、全般にわたりまして半年にも満たない短期間の間で調整をすることになったところでございます。

 特に県費負担教職員制度の見直しについてでございまして、これについては、県費負担教職員の給与費等が巨額に及びますことから、かねてからその財源問題が大きな課題となっていたところでございます。総務省、文部科学省を初め関係府省、それから関係する道府県、指定都市の間で精力的な調整がなされた結果、財源問題が合意に至り、進むこととなったものでございます。

福田(昭)委員 特に、直轄道路、河川の移譲、さらに県費負担教職員の政令都市への移譲、これは本当に苦労されたんじゃないかと思いますけれども、大変御苦労さまでした。これからもぜひ頑張っていただきたいと思います。

 次に、三つ目は、国の出先機関の事務、権限のブロック単位での移譲についてであります。

 民主党政権時代の平成二十四年十一月十五日に、国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律案及び「国の出先機関の事務・権限のブロック単位での移譲について」、閣議決定をされておりますけれども、今回の四次の改革には出ておりません。その取り扱いがどうなっているのか、大臣の御所見を求めます。

新藤国務大臣 これは、これまでの課題として残っているものであります。一方で、今議員がお触れになりました前政権における法案の閣議決定でありますが、解散する前日でございまして、閣議決定はいたしましたが国会提出には至っていない、こういう状態であります。

 かつ、そこにつきましては、これは何度も申し上げてちょっと私も気が引けるのでありますが、しかし、全国市長会からは、こういった国と地方の役割分担のあり方や大規模災害発生時の危機管理体制等について丁寧な議論が必要であるにもかかわらず、衆議院が解散されるという慌ただしいときに法律案の閣議決定を行ったことは、基礎自治体を重視した地域主権改革の推進を標榜する政府の姿勢に反するものであり、まことに遺憾、このような御意見を頂戴しています。それは、同様に、町村会からも意見が表明されております。一方で、全国知事会や九州知事会、そして関西広域連合からは、推進すべし、こういう立場の御意見もあります。

 ですから、まだ国民の中にさまざまな意見があって、これは引き続き議論が必要である、したがって、今般の一括の中には入れておりませんが、これは議題として今後も検討していかなくてはいけないことだ、このように考えております。

福田(昭)委員 ぜひ、今後、国と地方の協議の場がせっかくできておりますので、そこで協議をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、四つ目は、先ほどうちの方の黄川田委員も触れましたけれども、地方分権を進めても、地方自治体の監査機能あるいは地方議会のチェックが弱いと、こんなひどい行政をやっているのということが実は間々見られるようになっているんですね。ですから、地方議会及び監査機関の機能の強化が、地方分権を進める一方では必要だと考えておりますが、大臣の御所見をお願いします。

新藤国務大臣 まさに御指摘のとおりでありまして、地方分権改革の進展に対応いたしましては、住民の代表である地方議会において、調査権の拡大、議会の監視権や自由度の拡大に資する制度改正が行われてきました。あわせて、議会とともに、これは監査制度についても充実強化が必要だということで漸次行われてきたわけであります。平成九年の外部監査制度の導入を初めといたしまして、さまざまな工夫がなされてまいりました。

 これは、住民の地方行政に対する信頼度を向上させる意味において充実強化は今後も必要なことだ、このように考えております。このチェック機能がより一層有効に働くように取り組みを進めてまいりたい、このように考えております。

福田(昭)委員 それでは、具体例を通して、えっ、こんな行政が行われているのというのを紹介しながら、後で農水省また大臣から感想を求めたいと思います。

 先ほど、用途地域の見直しでは宇都宮市がよくやっているという事例で挙げていただきましたけれども、私どもの県都宇都宮市ではびっくりするような行政運営が行われております。その一つが、予定価格の事前公表というものなんです。

 これは、予定価格の事前公表をして、最低制限価格はその掛ける〇・七だということを公表いたしておりますので、一般競争入札をやりますと、三十社が全て最低制限価格で入れてくる、落札者は電子入札で決める、こういう入札をやっている。千円高くても千円低くても失格。最低制限価格で抽せん。本当にこれは公正公平な入札なの、業者の積算能力は高まるの、こういうのをやっております。

 しかし、このことに対して、実は、総務大臣と国土交通大臣両名の名前で、予定価格の事前公表については弊害があれば是正するように、こういう通知が行っておりますが、分権の時代なので昔の通達のような強制力がないんです。ですから、残念ながら、そういう通知を出しても、すぐ是正されることがありません。これが一つです。

 それから二つ目は、今、宇都宮市で、路面電車、今風に言うとLRTと言っておりますが、ライトレールトランジットの導入をしようということで計画をいたしております。何百億かかるかよくわからない、五百億かかるんじゃないかとかと言われていますが、そのことについて多くの市民が実は反対をしております。ぜひ住民投票にかけろということで住民請求がございました。しかし、それを、残念ながら議会は否決しました。

 しかし、宇都宮の市長は、みずから宇都宮市の自治基本条例というものを制定しています。その自治基本条例の中では、第十四条、「執行機関は、主要な政策等を策定するに当たっては、広く市民の意見を求め、その意見を踏まえて政策等の決定をしなければならない。」第十五条、「市は、市政に係る特に重要な事項について、直接に住民の意思を確認する必要があると認めるときは、事案ごとに別に条例で定めるところにより住民投票を実施し、その結果を尊重しなければならない。」みずからこういう条例をつくっておきながら、住民からの請求があっても、それを議会に依頼して否決してしまう、こういう行政が行われています。

 本当にこの五十万都市に自治能力があるのということをやっているわけでありますが、その三番目が、これから申し上げる株式会社エコシティ宇都宮の国庫補助金返還問題であります。総務委員会でも一度取り上げておりますけれども、バイオマス環づくり交付金の返還問題についてであります。

 これは御案内のとおり、地方分権の流れに沿って、農水省は、地方の創意工夫で、地方が主体的、自主的に取り組んでもらおうということで始めた試みでありましたけれども、しかし、残念ながら、これでどうも不正が行われているのではないかというような疑いがあるわけであります。

 そこで、一つ目は、バイオマス環づくり交付金事業の実施状況について、今までに事業を実施した市町村の数、交付金を返還した市町村の数、さらに、間接補助事業の返還義務者は誰なのか、そして、交付金返還にかかわる問題で知事と市町村長で裁判をやっている事例はどれなのか、ぜひ簡潔にお答えください。

石田政府参考人 お答えいたします。

 バイオマスの環づくり交付金、これは平成十七と十八年度の二カ年交付をされ、交付金総額百三十七億円、全国で三十八事業で実施をいたしました。

 このうち交付金の返還に至った事例でございますが、エコシティ宇都宮を含めまして三事業ございます。一事業は、福島県の発電の事故による警戒区域内となり、事業を中止せざるを得なかったものでございます。もう一事業は、機能を強化することに伴う、既存施設を処分したものでございます。三事業の返還総額は、二億八千三百万円でございます。

 また、間接補助事業である本交付金におきまして、補助関係が国と県、それから県と市、市と事業者のそれぞれの間で成立をしてございまして、事業中止等によります補助金の返還の義務は、一般論として申し上げれば、それぞれの間の補助関係を定める根拠に基づきまして、国に対しては県、県に対しては市、市に対しては事業者に生じることになります。

 最後の、全ての事例を調査することは困難でございますが、エコシティ宇都宮に関する事案のような交付金の返還に係る係争案件は、本件以外は承知してございません。

福田(昭)委員 この事業で知事が自分の管轄下にある市町村長と裁判をしている例は、実はこれしかないわけであります。

 農水省の考え方からいえば、県は国に対して、市は県に対して、事業者は市に対して返還する義務があるわけであります。しかし、そうした考え方があるにもかかわらず、今、栃木県知事と宇都宮市長が裁判に入って既に一年十カ月がたちました。しかも、この裁判には、一日約二万七千円強の延滞金、利子がつく。こういう不毛な裁判をやっているということで、さまざま調査をしてまいりましたけれども、いろいろなことがわかってまいりました。

 時間がなくなってきましたのでまとめて申し上げて、最後に感想をお聞きしたいと思っています。

 この事業の中で、まず一つとして、虚偽の税務申告が行われました。

 このエコシティ宇都宮は、プラントを施工した業者から、あなたの施工が悪いということで、別の業者にかえる、韓国の業者にかえるということで話し合いがまとまりまして、施工業者から補償金を約三億二千万いただきました。しかし、そのいただいた三億二千万のうち、確定申告で税務署に申告したのは四千七百万余りで、約二億七千万は申告から除外をしてしまいました。これは明らかに法人税法違反でありますが、残念ながら、昨年、平成二十五年の八月に時効が成立をいたしております。

 そして、さらに、韓国から機械を輸入するということになれば、税関に輸入納税申告書の提出が必要であります。しかし、この申告書については、宇都宮市がその申告書を手に入れておりませんので、本当に改修するための機械が届いたかどうかも宇都宮市は確認をいたしておりません。

 しかも、今回、海外に、韓国に送金するに当たっては、機械を買った会社だけじゃなくて、会社と、代理人と思っていましたらそれは本部長という役職についていたようでありますが、本部長と、二カ所に送金をいたしております。普通の物品売買契約で二カ所にお金を送金するということはあり得ない話でありますけれども、二カ所に送金をしております。

 そして、さらに、二度の財産処分申請を行っております。

 一度目は、施工業者からいただいた三億二千万を使って施設を改修するんだということで、農水省、県、市から、改修目的の財産処分申請をして、許可をもらっています、承認をもらっています。そして、国庫補助事業上の財産処分申請をして改修工事に着工したんですけれども、着工してもすぐ、貸し付けた金融機関から競売を申し立てられて、解体工事のみで、新たな設備工事はやらずにストップしてしまいました。これが一回目の改修目的の財産処分申請であります。

 二回目は、目的外使用の財産処分申請をしまして、これは、既に他人に財産が渡ってしまったものですから、目的外使用で申請をいたしまして、そのお金を一部、国から免除されて、県が既に約二億円を農水省に返還しています。しかし、宇都宮市長が県に返したくないということで拒否しているので、実は裁判になっているということでございます。

 こうしたことについて宇都宮市長に問い合わせましたところ、宇都宮市長はこういう返事なんですね。民間事業者間の企業活動に関するものであり、補助事業の実施状況を確認する上で市が関与できる立場にありませんというんです。

 宇都宮市の大事業ですよ。頼んでおいて、いただいた補償金が幾らだかというのも聞いておいて、それでそのお金がどう使われるかを監視していなかったら、本当に生ごみから堆肥をつくる施設ができないじゃありませんか。こんな全く当事者能力のない行政を実はやっているということであります。

 私も、宇都宮市の職員に行政能力がないとは思っておりません。基本的に、やはりこれは何らかの圧力が加わって、こんなことをやっているんだというふうにしか考えられません。そうしたことが起きているわけであります。

 そこで、間接補助事業者等の責任についてお聞きしたいと思います。

 まさにこうしたことについて、被害者と被害総額について申し上げますと、株式会社エコシティ宇都宮の株主は、出資金五千万と先ほどの補償金約三億二千万、合わせて三億七千万の被害を受けております。また、公金も、国、県または宇都宮市の税金が約二億六千万損失をしております。また、民間資金、銀行三行分でありますが、競売で回収した分を除けば約七億五千四百万の被害が生じております。合わせると十三億円を超える被害額が生じている。

 そこで、最後に、市行政の不作為でございますが、市行政が、何度も差し押さえをするチャンスがあったのに、訴えもせずに、実は差し押さえをしなかった、こういう行政の不作為を大臣としてどう思われるか、こんなことで地方分権を進めていって本当に大丈夫なのかということが考えられるわけでありますが、感想をいただければと思います。

新藤国務大臣 このエコシティ宇都宮の事案につきましては、私の直接の所管ではございません。また、係争中の案であるならばなおさらのこと、私どもからコメントは控えたい、このように思っておりますが、一般論として、こうした地方の発意による事業を国の補助事業として認定するに当たりましては、目的達成の観点から、事業の継続性そして採算性を厳しくチェックする必要があるというふうに思っておりますし、民間事業によるリスクというものも十分に勘案した中で適切な対応が求められているのではないか、このように考えております。

高木委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、短くお願いします。

石田政府参考人 この案件は、食品廃棄物を活用した堆肥化の事業で、事業中止となりましたので、当初計画のとおりの補助事業の目的が達成されなかったことは大変遺憾なことだというふうに考えてございます。

 ただ、裁判になり、先生御指摘の点につきましては、これは二十五年の十一月十九日の農水委員会でも林農林水産大臣から御答弁させていただいたとおりでございますが、現在まさに係争中でありますことから、コメントは差し控えたいということでございます。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

高木委員長 次に、百瀬智之君。

百瀬委員 日本維新の会の、長野県の百瀬智之です。

 本日は、先ほど来よりお話に出ております連携協約を中心に議論を進めていきたいなと思っているわけであります。

 まず冒頭に、今回、特例市と中核市を統合するというお話があります。中核市の人口の要件を二十万人ということでありますけれども、ここの狙い、及び、もう一つ、地方中枢拠点都市ないしは定住自立圏というお話もあるわけでありますけれども、こことの相違点といいますか整合性、このあたりをひとつお聞かせいただけますか。

門山政府参考人 中核市と特例市の統合の意義、それから、地方中枢拠点都市との相違点についてというお尋ねでございます。

 まず、今回、中核市と特例市の統合を図ろうとしているわけでございますが、その意義は、地域の中心的な都市として地域を支える役割を担います、人口規模が二十万人以上の市に対しまして、現在も一定の事務、権限移譲が行われているわけでございますけれども、より一層、事務、権限の移譲を行うということによりまして、住民の方々に身近なところで、住民ニーズにより即した、迅速な行政サービスを提供することができるようにするということが制度の改正の意義でございます。

 一方、お尋ねがございました地方中枢拠点都市という文言は、今回の法案には出てまいっておりませんが、構想として考えております内容は、地方圏におきまして相当の規模と中核性を備えます圏域の中心的な都市が、近隣の市町村と連携して、地方の、いわば踏ん張る拠点と言っておりますけれども、こういったものを形成していただいて、人々の暮らしを支え、経済を牽引していくということを進めようとするものでございます。

 この場合の中心都市でございますが、具体的に想定しておりますのは、政令指定都市と、それから、今回の地方自治法の改正によりまして人口二十万人以上ということに要件緩和を予定いたしております新しい中核市、そのうち、昼夜間人口比率が一を超えているところ、ここを、地方圏におきます規模と中核性を備える圏域の中心都市として、地方中枢拠点都市という捉え方で進めていきたいということでございます。

 お触れになりました定住自立圏構想におきましても、中心市という概念を用いておりますが、これも法律に掲げられたものではございませんけれども、地方中枢拠点都市と基本的には同じように、地域の中心性を持った都市が、近隣市町村と連携して暮らしを支える拠点となっていくという考え方でございます。

百瀬委員 現在の特例市、これから中核市に移行するというところが出てくるわけでありますけれども、それに対しては、都道府県ないしは現在事務を行っているところからの人材交流等、人材支援の必要性が出てくると思いますけれども、そのスムーズな移行ができるように対応策を国としてはどのようにお考えでしょうか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 特例市からが多くなると思いますけれども、特例市から中核市へ移行するに当たりましては、事務がふえるわけでございます。この中核市移行に伴います、仕事の増加に伴います経費の増加につきましては、地方交付税の算定に用います基準財政需要額に算入する形で、地方交付税に適切に措置していくということになるわけでございます。

 また、人材の面の御心配というのも、現に特例市の皆様からもいただいておりますが、人材面の対応につきましても、総務省といたしまして、円滑な移行が進みますように、先行事例の情報提供、こういったことが中心になろうかと思いますが、例えば、既に中核市になり保健所を持つようになったところは、都道府県からの職員の派遣の制度を活用いたしましたり、あるいは、市の方から都道府県に長期の研修で人を派遣するといったようなことなどを通じまして、円滑な人材面の対策をとろうとしている動きがございます。こういった先行事例の情報提供を初めといたしまして、必要な助言というのをしていきたいと考えております。

百瀬委員 承知いたしました。

 続けて、地方中枢拠点都市あるいは定住自立圏、その周辺部の自立策について、話を具体例を交えて進めていきたいわけであります。

 我が長野県は、北海道に次いで、全国で二番目に多い市町村の自治体を抱えているわけであります。平成の大合併というものは、当然、長野県内でもありましたけれども、長野県内は、一般的には、北部は割と市町村合併が進んだけれども、まだまだ南部の方は進まなかったなという声が多くございます。

 その南部に飯田下伊那地域という地域がありまして、この地域は、飯田市及び周辺十三町村で構成されて、総務省が推進する定住自立圏構想において、特に医療分野において、全国初の協定を平成二十一年に結んだということであります。

 この地域も、御多分に漏れず、少子高齢化、特に高齢化が全国平均を上回って進んでいるほかに、医療分野においては医師数が全国平均あるいは県平均を下回る、こういった状況の中で、医療をめぐる環境というものは良好ではありませんでした。そういったこともありまして、市町村や保健所、または医師会というところが率先して、地域医療を守るために組織をつくって、地域医療に関するさまざまな取り組みを行ってきたわけであります。

 当地域においては、民間病院は、補助金を活用して施設整備や診療情報の電子化を図ったり、また、情報連携の基盤を構築したということであります。そして、これらの検討には圏域内の主要病院全てが参加して検討が行われて、事業のバックアップはその中心となる飯田市が行った、こういう事例であります。

 私は、これは、定住自立圏構想、今まで進められてきていると思いますけれども、成功している例ではないのかなというふうに思っております。

 今回、連携協約というものを定めて、自治体間の柔軟な連携を可能にする仕組みを制度化したわけでありますけれども、先週も、そしてきょうも話に出ておりましたけれども、事務分担だけではなくて、政策面での役割分担についても内容に自由に盛り込んでいこうということでありますから、例えばこの飯田下伊那の事例においては、医療をテーマにしてまとまっていこうというお話でありましたけれども、こういう話を全国各地でふやしていこう、こういう発想でよろしいのでしょうか。この事例の評価とともに、御教示いただければと思います。お願いいたします。

門山政府参考人 お答えいたします。

 言及されました飯田下伊那診療情報連携システム事業の取り組みでございますけれども、御紹介ございましたように、飯田市と近隣十三町村で構成されます飯田下伊那地域でございますが、定住自立圏ということでは、南信州定住自立圏ということで事業を進めていただいております。ここで行われております診療情報連携システム事業によりまして、主要病院の患者情報を地域内の各医療機関で参照可能とするという先進的なシステムを構築しておられまして、これで医療機関相互の連携を進めているというふうに承知いたしております。まさに定住自立圏の先進的な事例かと存じます。

 今回、地方自治法を改正いたしまして、新たな広域連携の仕組みとして創設しようとしております連携協約でございますが、これは、地方公共団体が地域の実情に応じまして自由に内容を協議して、言及されました政策面での役割分担、こういったことなどを定めようとするものでございます。

 今後、医療分野などにおきましても、この連携協約を活用することによりまして、例えば、現在、飯田下伊那地域で実施しております医療連携の取り組みをモデルとして、ほかが見習って実施するというようなこともありましょうし、具体のこの地域におきましても、この取り組みについて、より継続的、安定的に実施するために連携協約を使うといったようなことも選択できるようになるというふうに考えております。

百瀬委員 そこで、ちょっとお尋ねしたいわけでありますけれども、もしかしたら、ちょっとやぼな質問かもわからないんですけれども、この定住自立圏構想が進んでいく中で、例えば、医療だけではなくて、あるいは教育とか介護、福祉というようなところでも連携がその地域で深まっていったときに、もしかしたら、もうこれは既に合併するようなレベルには達しているのではないかというような事例もこれから出てくるかもわからないですね。

 私は、当然、国主導で合併してくださいというのは反対でありますけれども、それだけでは、やはり地域の人が、これはもう合併した方がいい状態なのかなというのが基準としてわからない、こういうような事例も幾つかあるかもわかりません。こういった、もう合併するような水準に来ていますよというような、何か一つ基準を示すようなメルクマールを設けてもいいのではないかなと思っておりますけれども、このあたり、どうでしょう。

新藤国務大臣 これはひとえに、みずからの、その地域の判断によるものでなければいけないんです。

 ですから、その地域の住民の皆さん、そして議会や関係の方々が話し合って、合併しようということであれば、おやりになればいいと思いますし、合併を、いつでもそれは手続として、今でもきちんと動いておりますから、そういったことはできます。

 どういう形にせよ、私は多様性と申し上げましたけれども、地域の皆さんが、そして自治体がみずから選択をして、よりよい方向性を選択できるようにしよう、このようなことでありますから、これは住民の意識によるものだ、こういうことであります。

百瀬委員 本日も、二〇二〇年には三百万人、あるいは二〇三〇年には一千万人、日本から人口が減少するというお話も出ております。

 地方中枢拠点都市でありますけれども、こういったところに財政措置等を講じられる反面、地方中枢拠点都市への集中、あるいは周辺部の市町村の地方中枢拠点都市への依存体質、こういったものが促進されることによって、周辺部の衰退といいますか、そういったものが進むのではないかな、こういう指摘があるのもまた確かであります。

 私も、全国各地で本当に全ての農村が活性化すればいいなと思っているのはもちろんでありますけれども、やはりこういう国の現状を踏まえると、どうしてもその村だけではやっていけない、こういった村が出てくるのも仕方のないことなのかなというふうに思っております。

 そういった意味で、今、日本には限界集落というものが幾つかありますし、また廃村事例もあるというふうにお聞きしております。その現状と、これからそういったものがどれだけふえてくるのか、こういったところをもし把握されていれば教えていただきたいと思っております。

 ヨーロッパの方では、人口がふえていくときは山村を開拓して人が住むところをつくっていたけれども、人口が減少するに伴って、そういうところをまた自然に戻していくというような事例もあるようであります。また、そういった施策も考えていくべきなのかなというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。

関政府参考人 お答えいたします。

 今、限界集落などの現状と、それから今後の見込みのような御質問をいただきました。

 私ども、ちょっと古くなりますが、平成二十二年の十一月に国土交通省さんと合同で集落の調査をいたしましたところ、十八年から二十二年までの四年間で、全国で九十三の集落が消滅をしたという調査も出ておりまして、その時点からも、今日まで、いずれ消滅するのではないかという危惧を持っている集落の存在も私ども承っております。

 そういう中で、こういう集落は、さらに働き口が減ったり、あるいは耕作放棄地がふえたり、鳥獣被害がふえたりなど、さまざまな課題が加わっております。空き家対策、公共交通の対策など、いろいろな対策が求められていることも現状でございますので、私ども、この集落対策ということをまず第一にしっかりやっていきたいということでございます。

 過疎債のソフト分を活用したり、また、新藤大臣のもとで二十四年補正から設けました、集落の自立のための交付金がございます。大変要望が多うございますが、こういうものを活用していただいて、集落を維持、活性化する取り組みを進めていただく、まずこれが第一段階であります。

 また、働く場ということでありますけれども、今、イノベーションサイクル、元気創造プランにおきまして、地域の資源を活用して雇用の場を確保するという取り組みも進めておりますが、実は、この採択事業の中にかなり過疎関係市町村での取り組みが含まれております。

 こういうものもきちんと支援をしていくということで、まず集落、あるいはその集落を含めた市町村がしっかりと活性化していただくことが大事でありますが、それを超えて、先ほどからお話がございますように、やはりネットワークを活用した集落の活性化ということもございますので、集落自身が努力していただくこととあわせて、集落間のネットワーク、これが広くは市町村あるいは市町村間の連携ということにつながっていきますので、こういうあたりも充実していただいて、集落の維持、活性化に努めてまいりたいと考えております。

百瀬委員 地方分権をこれから進めていくという中で、都市の行財政基盤を強くしていこう、そして相応の権限、責任を持たせるということは重要であります。

 大臣も御指摘いただいたとおり、平成の大合併によって各自治体の面積も二倍程度になったということでありますけれども、これから基礎自治体の姿も広域化するし、また、先ほどの飯田下伊那の例もありました。こうやって広域の連携というものをつくっていく中で、先ほど、中核市の人口要件二十万人ということでありましたけれども、この飯田市も、人口要件こそ中核市の要件を満たしていないんですけれども、広域をカバーするし、人口要件以外の面積要件とか、ほかに中核を担うに当たっての要素を考えていくことも必要なのかなというふうに思っておりますけれども、いかがですか。

関政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話ございましたように、飯田市の例で例えますと、飯田市は人口が約十万五千人と承っております。

 私ども、定住自立圏構想は、おおむね人口が五万人程度以上の市を中心的な市、そこが周りの近隣の市町村とともに連携してネットワーク化を図って、さまざまな分野で協力して、圏域としての自立、あるいは圏域としての生活機能の維持を高めていくということで取り組んできておりまして、私どもも、まさにこの飯田市は先進的な取り組み、先ほど医療のお話がございましたが、それ以外にも、公共交通ですとか産業振興ですとかいろいろな形で連携を今進めておりますので、こういうものも一つの大きな事例として紹介させていただきながら、やはり集約とネットワークという考え方、これを人口がやや小規模な、地方中枢拠点都市の圏域に至らない地域におきましても、このような仕組みを使いまして圏域全体の振興を図ってまいりたいと考えております。

百瀬委員 ぜひ柔軟な対応をこれからもお願いしたいと思うわけであります。

 さて、平成の大合併ということで、先週より総括をいただいているわけであります。職員の数も一八・二%減、地方議員四八・五%減というお話を先週いただいて、私も、平成の大合併、成功か失敗かと言われれば、成功だと思いますし、必ずこれから成果が出るなというふうに思っております。

 しかし一方で、合併による主な課題としてよく挙げられる、周辺部の旧市町村の活力が喪失しているのではないか、あるいは住民サービスが低下しているのではないかといった部分があるのは事実だと思っております。

 こういった部分、私は、これからはICT等々、現代の先進技術を駆使することによって、人と人をつなぐといいますか、こういう課題の克服は可能ではないかなというふうに思っております。

 そこで、医療面のICT利活用について議論を進めていきたいわけでありますが、きょうは厚生労働省の方々にもおいでいただいているので、一言いただきたいと思います。

 医療に関して、地域医療連携というものは、この少子高齢化社会において重要なキーワードになっておりますけれども、今、患者の側に立ってみれば、必ずしもICTがそこまで進んでいるとは思えないなというのが率直な現状ではないでしょうか。

 二〇〇一年に、政府は、IT戦略本部を組織化して、e―Japan戦略というものを打ち出しております。その中で、医療、介護については、在宅患者の緊急時対応を含め、ネットワークを通じて安全に情報交換ができ、遠隔地であっても質の高い医療、介護サービスを受けることができる、こういうことを目指しておりました。そして、二〇〇六年度までに全国の四百床以上の病院及び全診療所の六割以上に電子カルテシステムの普及を図ること、これが目標に掲げられていたわけでありますけれども、平成二十四年現在では、それに三割にも届かない状態だということであります。

 地域医療のICTにおいて、これまで政府戦略の中でどのような反省があったのでしょうか。電子カルテについては、ここの病院は三洋製ですとか、こちらはパナソニックだから連携ができないとか、こういったような事例も幾つか聞いておるわけでありますけれども、そういった反省をこれからの政策にどのように反映されているか、一言いただけますか。

神田政府参考人 医療連携におけるICTの活用についてのお尋ねでございます。

 地域において医療、介護の連携を進めていくために医療情報連携ネットワークの普及をこれまで進めてきております。

 これまで抱えている問題ということで申しますと、今御指摘ございましたように、ネットワークごとにシステム構造が異なることによって、患者が移動した場合に必要となるほかのネットワークとの情報共有が効果的、効率的に進まないといった相互運用性の問題でございますとか、あと、補助金などでネットワークを構築しても、運営費の捻出が困難であるなどによって長期継続できないといった費用面を含みます持続可能性の問題。さらには、各ネットワークにおきまして、主に基幹病院から情報提供が行われまして、病院、診療所間での双方向の情報連携が進んでいないという双方向性の問題などの課題を抱えているものというふうに認識をいたしております。

百瀬委員 大臣からも一言いただきたいわけでありますけれども、今、総務省の方では、スマートプラチナ社会の実現というものを進めているというふうに承知しております。健康を長く維持して自立的に暮らす、また、生きがいを持って働き、社会参加する、新産業創出とグローバル展開、こういったものが目標として掲げられて、こういう取り組みの中で、当然、ICTを使って医療または介護等々を核としたまちづくり、これがこれから出てくるのかなというふうにも思っております。

 先日、ウィンドウズXPのところで、行政の電子化を徹底的にやるぞというお話を大臣からいただきました。ICTを誰もが使えるように、そして、共通の基盤でシステムをつくり上げて、それは市町村を超えて使うこともできるが、管理は、さまざまに自分たちで工夫して行う。私は、このお言葉、大変よかったなと思っておりますし、また、これは医療の分野にも応用できる話ではないかなというふうに思っております。

 ウエブによる電子カルテを超えて、クラウドによるプラットホームを構築して、オンディマンド、リアルタイムで運用できるようにする。その先には、日本で構築した医療技術あるいはシステムといったもので産業競争力をつけて、外需に打って出る。

 今、病院に行くと、病院をかえるごとに、そのたびに治療歴というものを、患者の方からそれを書かされたりと言ってもいいと思うんですけれども、書いたり、また、処方箋等を出してもらうと、きょうはお薬手帳は持ってきましたかというようなことを言われて、忘れましたと言うと、また忘れたんですかというようなことを言われるわけであります。

 情報が一元化できる医療クラウドによって、国民が誕生したときから、病歴、治療履歴、カルテ等の情報を、セキュリティーの確保はもちろんですけれども、こういったところに配慮した上で関係機関が共有する、そういった医療環境を築くことで、私は、住民サービスというものは飛躍的に向上するのではないかなと思っていますし、今はもうそれは夢物語ではないなというふうに思っております。

 そして、それによって、現在の医療等システムの三割以上の無駄が省け、年間十兆円の医療費削減も不可能ではないというふうに言っている人もいます。このあたりを含めて、大臣から一言いただけますか。

新藤国務大臣 まさに今委員がお話しされたようなことをどのように実現していくか、それが、日本がこれから財政を健全化するとともに国民の行政サービスを向上できる、そのきっかけになるというふうに思っているんです。

 もとより、社会保障関係費用が一般会計の中で最も予算が費やされている部分であって、かつ、そこは自然にふえていってしまう、そういう分野でもあります。これは、高齢化が進むにつれて、当然国民に必要な医療は提供しなくてはならない、このように思うわけであります。ですから、無駄を排することと、効率よく高度化をしていかなくてはいけないということだと思います。その意味において、医療、介護分野におけるICTの実現というのは、極めてというよりも、死活的重要な問題だと思います。

 現状の課題については厚労省からお話がありました。それは、厚労省が認めているとおりの課題があるんです。でも、それは、そもそもその前は個別のシステムもなかったんですから。ですから、私は、これは発展、進化するためのプロセスだと思わなければいけないと思います。

 これからやるべきは、国民の健康と医療体制は国が守ります、これを覚悟を決めて、そして増大する社会保障費に対応しつつ、では国家として運営していくためには何が必要かというのをきちんと説明すべきだと思うんですね。それには、患者さん、国民の合意が必要です。プライバシーは守りますが、でも、共有のデータをネットワーク化させることによって治療の高度化が図られるとともに、それから医療費の軽減が図られていくんだということをきちんと説明しなくてはいけないと思うんです。やるべきことはもうわかっているんです。

 メディカル・メガバンク計画、これは既に始まっています。東北でまずはやってみようということで我々は実施をいたしました。過日、石巻の診療所に私は参りまして、メディカル・メガバンクを活用している診療所、そして日赤病院との連携が図られているのを目の前で見てきました。とても有効だと思います。

 要するに、仮設の診療所に来る人が、高度専門病院で受ける治療と同じ診察を受けられるんです。それは、診療データも共有しているし、薬のデータも共有しているし、そして、ネットでつながった映像によって直接患者と医師が双方で話をして、となると、その患者さんは、そもそも時間をかけて、そして交通費をかけて、それから自分のいろいろなほかの用をとめて病院に行かなくても診療が受けられるんですね。その分をお金で換算したらどのぐらいの効果が出るかと思いますね。

 これはすばらしいことなんですが、実は、それは、メディカル・メガバンクに加盟する会費を払った病院しかやらないんですよ。それから、患者の同意がなければその仕組みは動かさないんですよ。ですので、これをまずは実験的にやっていますけれども、全国に広げるんですよ、だから、それに向けて皆さんが共有できるような、そういう標準のフォーマットをつくりましょう、これに参加してくださいということを、国民的合意を得なければ、私たちの行政の電子化、医療における電子化というのはできないということなんです。

 この医療と福祉、そして介護というのはシームレスにつながっていきます。きのう、私は、ちょうど和光市に行ってまいりました。和光市は介護の予防活動をとても強化していて、一人一人の介護のケアを充実させました。結果として、介護の認定率が下がり、介護保険料が全県下で最低レベルになるんです。そして、適切な介護をしながら、そこから卒業できる人がふえている。それもすばらしい仕組みがあるんですけれども、それは和光の仕組みなんです。いいですねと言って、ほかの町で同じ仕組みを別のシステムでつくっていったとすれば、これはいずれ千七百通りの別々の仕組みができちゃうんですよ。

 だから、一刻も早く医療と介護も含めて標準化しようではないか。そのためには何を標準化しなくてはいけないんだ。介護のケアプラン、それから訪問介護計画です、それから通所介護計画です、それから一人一人の患者の生活様式のチェックリストです、こういうものは最低限標準化しなければだめです。国がもし指示をしてくれるならば我々はそれに一緒に乗れるけれども、今のまま自治に任せていたならば、これは横並びでもって一緒に共有することはなかなか難しい。こういう、もう目の前の現実なんです。

 きょうは、これから、夕方、財政諮問会議がありまして、私はそのことを申し上げようと思っています。それから、厚労大臣とも直接話をしています。厚生労働大臣は、これを政府CIOに、我が国のICT化を進めるために、この分野はぜひ共通化をしようじゃないかということを検討してくれと。いろいろな人たちが問題意識を持って、これを現実のものとしてやっていこうと。

 あえて言うならば、ちょっと時間をいただいて恐縮なんですが、こういう大きな新しい医療のシステム、介護システムを取り入れようという流れと、一方で、そのことを全然意識せずに、また新たに普通の病院をつくろうとしている人たちがいるわけですよ。これから病院をつくるのに五十億、七十億かかりますよ。そういう病院をつくろうとしているのに、全く、地域との連携だとか介護との連携とか、そういうのをほとんど意識しないで、単純に病院だけを建てかえようとしている、そういう計画がある。

 これを何としても見直していただかないと、新しい医療計画は、これからつくる病院にこそ新しいものを入れなきゃならないし、既存の病院もそういうシステムに参加できるような、そういう国民の合意と政府の覚悟があってICT化というのは実現できるのでありまして、私どもは、これを安倍内閣は本気でやるんだ、どこまで導入できるかやってみようじゃないかということに挑戦をしている、こういうことでございます。

百瀬委員 ありがとうございます。

 毎回、ICTに関しては、一聞けば十いただいて、本当に貴重な御意見をいただいて、ありがたいなというふうに思っております。

 また後ほど、もし時間があれば、ICT、別の角度からお聞きしたいことがあるわけですが、ここからは、道州制について、思いを改めてお聞きしたいなというふうに思っております。

 よく引き合いに出されるかもわからないですけれども、道州制、先日も若干議論となっておりました。例えば、デンマークという国がございます。人口は北海道とほぼ同じ約五百五十万人で、国土は北海道の約半分の国、気候も北海道と似通っている。デンマークは、食料自給率が三〇〇%程度、また、エネルギー自給率は一〇〇%を優に超えていて、国家としては二・四兆円の黒字の国で、そして、一人当たりの貿易額は日本の約三倍。大企業も、首都ではなく、起業した地方都市に工場や事業所を持ち、健全な経済運営がなされている、こういうことでございます。

 日本も、やはり、北海道なり九州なり、各地でこういったスケールメリットを持ってもらって、その総合体として日本がこれから飛躍していくというふうに考える方が私はいいのではないかなというふうに思っております。

 今回、この道州制について、正面からお聞きすることはないわけでありますけれども、本日取り上げております連携協約、これは、地域間の連携を強化するという意味で大変興味深いと考えております。

 まず、ちょっと確認させていただきたいのでありますが、先ほどもう出ていたかもわかりませんけれども、今回の連携協約、県境を超えた市町村との協約も可能か、あるいは都道府県間の協約というものも可能かを聞きたいわけでありますけれども、いかがですか。

門山政府参考人 今回創設しようとしております連携協約につきましては、御指摘がありました、都道府県同士の間、あるいは市町村同士の間、市町村と都道府県の間、それから、もちろん市町村が都道府県をまたがる場合もございます、県境を超えた市町村との間といったような、どういった場合にも使えるということで、まさに地域の実情に応じて柔軟に使える仕組みということで設計しているものでございます。

百瀬委員 そのようになっていてよかったなと思っております。

 今現在も、日本各地で、あらゆる分野で非常に結びつきの強い地域は県境を超えて幾つもあるというふうに思っております。本日、医療ということでいえば、長野県と、お隣に山梨県という県があるわけでありますけれども、私は、とりわけ八ケ岳の周辺でいわば医療特区のようなものができるのではないかなというふうに考えることもございます。

 本日、佐久市の木内先生がいらっしゃいますけれども、先日、二月ですね、先生の方から、佐久の方はたくさんの病院があるというお話をいただきました。佐久市内の病院は、テレビ番組のプロジェクトXで題材とされた病院もあるし、また、信州のドクターヘリが常駐している病院、高度専門医療と地域の密着医療を担っている、医療が進んでいる地域ということであります。

 佐久市の方から少し南下してまいりますと、恐らく大臣も行かれたんだと思いますけれども、川上村あるいは南牧村という比較的山梨に近いところがありまして、そこは、お聞きしたところ、割と佐久よりは山梨県の方が近いので、北杜市の方まで足を延ばして医療機関にかかるという人が数多くいるということであります。

 逆に、山梨の方でも、また別の方面ですね、小淵沢というところがありまして、ここの人たちは、山梨よりは逆に長野県の方が足を運びやすいということで、茅野市あるいは諏訪市というところまで長野県内の病院に通う人たちが少なからずいます。

 そして、もうちょっと北の方に行きますと松本市というところがありまして、長野県、御存じのとおり、全国で一番の長寿県でありますけれども、この松本市も、とりもなおさず、健康寿命延伸都市ということを掲げて、市民の医療増進あるいは医療産業の集積ということに取り組んでおります。ことしは「神様のカルテ2」という映画が放映されましたけれども、この映画の舞台にもなってございます。

 八ケ岳の周辺で、こういった医療の地域、地域を超えた枠組みをつくっていくことは私は二つの意味で大切ではないかなというふうに思っております。

 一つには、事医療、健康ということでいえば、最近は医療ツーリズムあるいは健康観光という言葉がありますけれども、こういった県境を超えて、地域の技術あるいは資源を利用することで新たなジャンルを切り開くことができるのではないか。今の連携協約の中で、例えば、旅行業者が入って海外の日本に対する潜在的な需要を掘り起こすことも可能であって、また、それを医療機関が受け入れられる体制づくりをすることができるのではないかと思っておりますし、二つ目には、先ほど来より道州制という話をしましたけれども、道州制の受け皿にもなってくるのではないかなというふうに思っております。

 県境というものが我々の住む日本の潜在性をマイナスに作用するものになってはいけないわけでありまして、そういった意味で、今回の連携協約、新しい可能性を生み出すものだというふうに認識しておりますけれども、このあたり、一言でも結構ですので何かいただければと思います。

新藤国務大臣 今回のことは、地方自治の進展そして多様性と住民発意、こういったものを取り込んだものにしようと。要するに、一番大事なことは成功事例をつくることなんですね。今、国の方が、何かこれをしてくださいといって一律制度を出したところで、できるかどうか、また、やりたいかどうか、さまざまです。ですから、大事なことは、成功事例を示し、あの町であんなことができるなら我々もやろうじゃないか、こういうことで、何かをやろうと思ったときに、いろいろな多様な制度を採用できるようにしようということで我々は用意をしているところであります。

 ちなみに、介護が充実した町は親を引き寄せる。介護しなければいけない親を自分の住んでいる地域に越してきてもらって、ここならばちゃんと親の面倒を見られる、それは住民がふえることになるんです。定住化を促すことになります。

 ですから、何か一つの特徴を持つことによってその地域が自立を図れる要素というのは出てくるわけなんでありまして、ぜひ、やる気が皆さんに出るような、そういう事例を我々は紹介していき、かつ、ぜひともそれぞれの自治体で工夫をして積極的にこういった制度を活用してもらいたい、このように考えているわけでございます。

百瀬委員 ありがとうございます。

 ちょっと尻切れトンボになってしまって恐縮なんですが、最後に、国交省の方に来ていただいておりますので、お聞きしたいと思っております。

 地方自治、事地方のまちづくり、そして林業という観点からすると、まだまだいろいろな法律上の障壁があって、それは例えばCLTの活用があるというふうに認識しております。クロス・ラミネーテッド・ティンバー、直交積層材と訳されたりするようでありますけれども、現在では、ヨーロッパ各地でさまざまな建築物に使われており、また、カナダやアメリカでも規格づくりが行われるなど、CLTの利用は近年、各国でかなり伸びているというふうに承知しております。

 片や日本では、一般的に木材は耐火性や防災性といった観点から、高層建築物にはこの活用が認められてこなかったわけでありますけれども、CLTの建築材としてのメリット、寸法安定性の高さ、厚みのある製品であることから、高い断熱、遮音、耐火性を持つこと、また、持続可能な木材資源を利用していることによる環境性能の高さ、こういったことが挙げられるということであります。

 このCLTの活用についても、地方の林業を活性化していくという意味では大変重要だというふうに理解しておりますけれども、現在の研究の進捗ぐあい及び法整備の進捗等々、今後の見通しを一言いただけますか。

高木委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、短くお願いいたします。

橋本政府参考人 お答え申し上げます。

 CLTは、御指摘のとおり、今後注目すべき新素材であると認識をしております。

 私どもでは、平成二十五年度から三カ年かけまして、地震や火災に対する安全性に関する実験あるいは技術的検討を行っております。

 この成果を踏まえまして、平成二十八年度早期に、CLTに係る建築基準法に基づく基準を策定することとしております。

 この基準を策定することによって、関係省庁とも連携を図りながら、CLTの活用、普及に努めてまいる所存でございます。

百瀬委員 以上で終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、杉田水脈君。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。きょうはよろしくお願いいたします。

 地方自治法の一部を改正する法律案ということで、まずは、指定都市制度の見直しについて御質問させていただきたいと思います。

 指定都市には区が設置されているんですけれども、この区の役割を拡充していくというのが今回の改正案の中の目玉でもあるとは思うんですけれども、区の役割をどのように拡充していくかということについては、分掌事務を条例で定めるところでありますというふうな形で私どもは説明を受けております。どういった事務、権限が区の方におりていくのか、役割が拡充されていくのかを想定していらっしゃるのかというのをお聞きしたいんです。

 きょうは、ちょっと皆さんの方に資料をお配りさせていただきまして、資料の順番が前後してしまうんですけれども、まず一つ、これは名古屋市の機構図というのを皆さんのお手元に配らせていただいております。これをくるっとひっくり返していただきますと、太字で囲んであるところ、これが今のところの区役所の役割ということになっておるんです。

 皆さん想像していただきますと、区役所というのは、大体が、市民の窓口の係だとか、住民票をとったりとか印鑑登録したりとかする係、あとは福祉事務所、そういったところがあるというのが、想定していただける今の区役所の現状であると思います。皆さんも、なかなか市役所に行くのは遠いから、区役所で用事が済めばいいかなといったような意味合いで区役所があると市民の方が思っていらっしゃるところが多いのではないかと思うんです。

 ここに一体どういった機能を拡充させていくのか。例えば、土木的なこととか建築的なこととかもここに入れていけるのか。もっともっと、ほかのところに関して言えば、福祉だけではなくて、環境であるとかそういったところも拡充させていけるのか。どういったイメージをこの総合区というものに描いていらっしゃるのかというのを最初にお尋ねしたいと思います。

新藤国務大臣 今回の地方自治法の改正案におきまして、政策や企画の立案を含めて、住民に身近なところで住民に身近な行政を包括的に行えるように、こういうことで、議会の同意を得て選任される特別職の総合区長を置く、それが選択できる総合区制度というものを創設しているわけであります。

 この総合区長は、例えば、区民会議を開催して、区民の意見を反映させた形での総合区のまちづくり計画をつくるですとか、計画に基づいて、地域のお祭り、イベントの開催などの独自の事業を実施する、こういうこともできます。それから、市民利用施設の維持管理や地縁団体の認可など、そういった身近な行政を行うことができるということになっているわけであります。

 一方で、市長の事務に隷属するものは、その区においても、総合区でできるものとするには条例にしなければならない。そういう定めのないものについては、今申し上げましたような、まちづくりですとかイベントだとか、そういったものは総合区で、自分たちでできるようになる、こういうことであります。

 それから、土木、建築、消防、それは一つ一つの権限が違いますから、例えば、教育については総合区長に委任することができます。教育委員会の権限に属する事務については総合区長に委任することができますが、消防長は法の執行機関ではありませんから、この事務は総合区長に委任することができないですとか、それぞれ事務分担は決めるということでございます。

杉田委員 今現在も、区の方に福祉事務所があって、そこで例えば障害福祉だとか高齢福祉とか児童福祉なんかを担っている場合が多いんですけれども、その場合、そこで働いている人たちがどこにいろいろ指示を仰いでするのかというと、区長ではなくて、本省の、福祉局であったりとか、そういうふうなところの人たちの指示によって区役所で働いていらっしゃる方がいるというところなんです。

 これが、区役所にどれだけ権限が移譲されて、拡充していって、区長が総合区の特別職になりますから、その人のところに権限がおりてくるのかというところがポイントになってくるのではないかとは思うんです。

 やはり権限と財源というのはセットでおりてこないとなかなかきちっと機能してこないのではないかと私は思うんですが、予算権限というものは、予算の編成権ですね、これは総合区長の方にどのような形でおりていくというようなことを想定されているのか、これをお尋ねしたいと思います。

門山政府参考人 まず、現在の行政区の現状でございますけれども、現在の区におきます予算編成の方法といいますのは、指定都市それぞれ、かなり違っております。

 一般的には、区の自主的な事業、いわゆる自主事業について、区長裁量で予算要求できるという運用を行っているところもありますけれども、結局、本庁の各部局に関係する事業予算については、区の担当課のラインで、言ってみますと、縦割りの、直接、本庁担当部局との間で相談しながら予算要求をするといったような形で調整しているのが多いというのが現状かと存じます。

 それに対しまして、今度、総合区を設置した場合には、予算としては、市一体、一つの経営体でございますから一体でございますけれども、総合区長には、法律上、総合区に係ります予算について市長に対する意見具申権が認められるということになりますことから、その総合区が執行する予算でありますと、各部局に関係いたします事業予算についても総合区長が意見を述べることができる、その結果、意見を反映していくことができるだろうということでございます。

 例えば、従来は本庁の各部局主導で編成されてきた事業予算につきましても、住民に身近な総合区長が、住民の皆様のニーズをしんしゃくして、総合区にとって必要な予算についてはふやし、不必要な予算は減額するといったような調整をするための意見を市長に出せるということで、より地域の実情に合った予算編成ができるということになろうかと考えております。

杉田委員 実情に合った予算編成ということだったんですけれども、ちょっと一歩踏み込んで質問させていただきたいんです。

 それぞれの区がそれぞれ予算編成権を持ったときに、横の、例えば、あそこの区よりもうちの区の方がたくさん人口が住んでいるからこちらの方がもっと欲しいんだとかというようなことの調整というのは、それは区長同士で、特別職同士ですので、区長同士でやるような形を想定しているのか、やはりそれはもう一段上のところの、市長のところで直轄で調整することを想定していらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。

門山政府参考人 お答えいたします。

 総合区を設置いたしました場合も、政令指定都市の予算としては一本の予算でございますので、予算編成権は市長さんが持っているということでございます、歳入と歳出、両方一体で予算でございますので。それに対しまして、総合区長さんが法律上持つ権限といいますのは、総合区に係ります予算について意見を申し出ることができる、こういう権限でございます。権限整理的にはこういうことかと存じます。

 ただ、実態としては、総合区長さんが何人かできれば、総合区長さん同士のお話し合いですとか、あるいは行政区長さんとのお話し合い、こういったことが事実上行われることはあろうかと存じますが、制度の仕切りといたしましては、市長に対する意見具申権までということでございます。

杉田委員 意見具申権までということなので、そのあたりももうちょっと、やはりそこの区に権限だけではなくて財源を戻して、いろいろな部署にかかわるところもそこの区長の権限でもっと自由にできる予算の使い方というのができるようになれば、もっと進んでいくと思うんです。

 それをするに当たって、私、きょう、皆さんのお手元にもう一つ資料を用意させていただいているんですけれども、一例としまして、神戸市と京都市の区別の人口です。これは、それぞれ総合区にしてまいりますときに、ぱっと見ていただいて、余りにも人口にばらつきがあるということを皆さん、お気づきになられるかと思います。例えば京都市なんかでは、一番多い伏見区の人口は二十八万二千人ということで、特例市ぐらいの大きさがあるんですけれども、一番少ないところの東山区は、三万九千人しか人口がいない、約四万人ぐらいしか人口がいないということです。

 京都選出の先生なんかのお話をお聞きしますと、そこから選出されている市会議員の数なんかも、十何人いる区もあれば、たった二人しかいないような区もある、そのようなばらつきがあるんですが、この区がこのまま総合区になって、それでいろいろな権限がおりてきて、特別職の区長さんが出ていくとすると、余りにもばらつきがあり過ぎる。

 それで、それぞれの、一つの区が、私はそれだけの権限は全部できます、違う区は、私はここまで権限がおりてくると、とてもじゃないですけれどもできませんというようなことがあってくるんじゃないかなというふうに想定もされるんですけれども、この人口規模のばらつき、それと今回の総合区というのをどのように考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。

門山政府参考人 御指摘にありましたように、まず、現在の政令指定都市におきます行政区でございますが、規模が三万人台から三十万人台までということで、非常に大きなばらつきがあるというのは事実でございます。

 では、実際、総合区を導入するときにどうするかということについては、それぞれの議論ではあるわけですが、例えば、この総合区を導入するときに、幾つかの区を合わせて合区などをして区の規模を大きくして、そこを総合区にするといったような判断をされるところも場合によってはあろうかと思います。

 それはそれぞれの御判断かと思いますが、全体に、総合区となったときに、人口規模が小さい総合区ができたとき、それはどうなんだろうかというお尋ねかと存じますが、人口規模が小さいことで行政サービスにほかと格差が出てしまうということを御心配される場合には、総合区にしないという判断もあろうかと思いますし、人口規模は小さいけれども、地域が抱える課題への対応という観点から、むしろ総合区にして総合区長に課題に取り組んでもらうという判断、これもあろうかと存じます。

 総合区の制度は条例によることにしておりまして、指定都市の一部の区域に設置するという形もありますし、全域に設置することもございますし、また設置しない、いずれも選択可能になっておりますので、それらを踏まえまして、それぞれの指定都市の実情に応じた形での導入という御議論をいただければと存じます。

杉田委員 非常に選択の幅をふやしていただいておりまして、それぞれがどのような形を選択するかというのが現場で決められるというところを私は非常に好ましいと思うんですけれども、そういった中でも、やはり住民の皆さんに対しての説明、例えば、隣のところは総合区になってという形なんですが、うちの区はなっていない、なぜなんだろうとかというようなところの説明なんかもきちっとあわせてできるような広報にも力を入れていただきたいということを要望させていただきたいと思います。

 では、続きまして、中核市制度と特例市制度の統合について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、市役所の職員を十八年間しておりまして、その中で、阪神・淡路大震災なんかも経験をしておるんですけれども、その当時、私の勤めております市は一般市でありましたので、震災復興をするときも、いろいろ県に聞くと、国に聞きますと、まず一番最初に言われるんですね。それで待って、国がこう言っていますと言われておりてくるので、そういうのが非常に時間の無駄なので、それだったら、直接国とお話をさせていただけたらどんなにスピードが速いだろうと。

 それを尻目に、隣の神戸市さんは、指定都市でもありますから、どんどん県を飛び越えて国と直接話ができて、自分たちでいろいろなことがどんどん進んでいく。

 我々も、陳情とかに行くときなんかも、その他の一般市でまとまって、県に引率をしていただいて国の方に陳情に行くといった、そういうありさまだったので、中核市というのがどんどんふえて、国に直接交渉ができるようになるというのは非常に望ましいと私は思います。

 私が勤めていた市も、途中で一般市から中核市になりました。その事務なんかの、移転していく、どのように権限がおりてきて、そこを調整しながら中核市になっていくというような、その前と後というのも私も全部体験をいたしましたので、この中核市制度というのは非常に望ましいと思いますし、今度、特例市がこれに統合されて、また同じようにしていけるというようなことは非常に望ましいことだと思って、期待をしていきたいなと思っておるんです。

 これも皆さんの方には資料をつけさせていただいているんですが、たまたまインターネットで出したら、わかりやすいのが、沖縄市が中核市に移行したときの事務、権限についてというのをインターネット上で公表していたので、きょうは資料に持ってきたんです。

 例えば、八ページと書いてあるところの下の欄なんですが、事業費の変更はないが財源内訳が変更となる事業というのがあって、ちょっと四角囲みをしています。

 私がまさしく中核市になるときにしていたのが児童福祉で、放課後児童健全育成事業というのを担当していたんですが、この補助金が、中核市になる前は、国が三分の一、それから県が三分の一、市が三分の一という形で予算配分がなされていました。これが、中核市になるに伴いまして、国が三分の一、残りの三分の二を中核市が担うというような、予算の割合が変わってきたわけなんですね。

 それでは、中核市になった市は予算の負担がふえるばかりでしんどいだけじゃないかと思われるかもしれませんが、もう一枚の紙の一番下のところに書いてあります、これらの一般財源の影響額は地方交付税算出のもととなる基準財政需要額で措置をされますということで、市の方は、ここの部分で措置をされて交付税として入ってくるので、余り痛いことはないんですね。

 私は、それよりは、たとえ三分の二になったとしても、県を飛び越えて国と話ができるというのはどんなにいいことなんだというふうにすごく思いましたので、実感もいたしましたので、すごくよかったなというふうに思うんです。

 こういう形で、中核市になった基礎自治体の方は予算措置がなされているんですが、その分、多分、県の方からは減らされておると思いますし、いろいろな形できちっと予算の組み替えがなされていると思うんですが、全体を見まして、地方財政に与える影響というのはどうなっているのか。

 例えば、一般市だった市が中核市になる、今回は、特例市だった市が中核市になっていくわけです。それまでの分担が変わって、単につけかえだけで、地方財政というのは全然しぼんでいかないのか。それとも、これをすることによって地方財政全体に何らかのメリットがあるのか。そのあたりをお尋ねしたいと思います。

門山政府参考人 中核市に移行した場合の財政上のメリットについてのお尋ねでございます。

 中核市への移行に伴いまして移譲される事務、権限の執行のために必要な財源、これに対します地方交付税措置につきましては、基本的には、事務、権限がなくなります都道府県から減額されまして、中核市の方には増額されるというのが基本でございますから、地方交付税全体では中立ということになります。

 なお、そもそも中核市制度は、移譲された事務、権限と、一般市として担っていた関連する事務、権限を一括してみずから処理することによって、都道府県が行う以上に、住民に身近なところで迅速な行政サービスが提供できることが期待されるというものでございますので、費用対効果という面でのメリットはあるかと存じます。

杉田委員 例えば、中核市になったら、保健所の業務がおりてきますというのがありました。そうすると、今まで県がやっていた保健所の業務が市におりてくるので、それも建物ごと、人ごとおりてきたので、そのあたりは県からまさしく移譲するだけだと思うんですけれども、そういう建物ごと、人ごとおりてくるような事業はわかりやすいんですが、単に権限がおりてくる場合、やはりそれまでその事務とかを担っていた県の人たちというのがいると思うんですね。その部分が市におりてくる。

 たちまち人を減らすことがなかなか今の制度ではできない、難しいというふうに思うんですけれども、やはり、このように制度が変わっていくことによって、また権限をおろしていくことによって、地方財政の方にもメリットというのがあるような、財政面からも、これだけ縮めていけるんだというようなことを、しっかりその視点を持って、今後もこの権限移譲というのを進めていっていただけたらというふうに思います。

 そこで、私が以前から疑問に思っておりますのが、議会の方なんですね。

 例えば、神戸市が政令指定市としてありまして、兵庫県があるんですが、兵庫県議会の議席の中に、神戸市選出の議員さんの議席が何議席か、一定議席あります。これは、ほかのところでも一緒だと思うんですけれども、どういう役割を果たしているのか。

 一般市民の立場で考えても、例えば、神戸市は、自分の市のことは自分でできるわけなんですよ。何かあったときは、県を飛び越えて国と直接きちっと話をして、神戸市にお金を引っ張ってくることも、権限を引っ張ってくることもできるわけなんですね。兵庫県とは何ら関係がなくて、ふだんの行政の中でもぶちっと切れているので、先ほども言ったように、ほかの一般市の人たちは、県といろいろ交渉しながら、県からお金をもらってきて、ここの道路を直すとか県道をどうというようなことが出てくるかもしれないんですけれども、例えば、政令市の議員さんの場合は、そこに対する存在意義というのがあるのかどうか。

 それから、今度は中核市も同じような形ですよね。中核市になって権限を持てば、そこの市のことはそこの市でやっていけるわけですし、国との交渉も直接できるようになってくる中で、県を通して国とするのと、県を飛ばして国とするのとでは全然違うわけなんです。そこに、その中核市選出の議員さんとかが議会で一体どのような存在意義があるのかということをお尋ねしたいと思います。

新藤国務大臣 これは、議員というのは、自分の町の、いわば自分のところだけ考えればいいというふうには考えていないと思います、委員は。ですから、まさに、役所が縦割りがだめなのと同じように、議員においても、縦割りというか、自己中心的な意識だけではだめなわけであります。

 もちろん、権限が行使できるのはその地域であります。でも、例えば都道府県議員というのは、今例に出された神戸なら、神戸市の選出であって、神戸市の自治事務そのものは市として直接できるようになっていても、でもそれは、では、県全体の発展にどのように資するのか。それから、神戸市の選出の議員であっても、兵庫県全般の産業政策であるとか県民福祉であるとか、いろいろなものについて意見やアイデアを出すべきだと思いますね。交通行政や航空行政だとか、そういったものを考える中で、自分の神戸市にあるものを使えるものは、自分のところにあるよと言うし、全体をよくするためには、この地域にあるものをうまく連携したらどうかとか、まさにそういう、それぞれの都道府県議会には都道府県議会の広域的な役割があり、基礎的な自治体のサポートをする役割があるわけですから、そこは議員の自覚だと思います。

 そこが自分でわからない、私はここのところだけやればいいというふうに思っている議員は余りいないと私は思いますけれども、あえて問われれば、そういう全体の調整と自分の区域を超えたところでの総合的な政策を考えていただくのが都道府県議員の役割ではないかと思います。

杉田委員 新藤大臣がおっしゃるとおりだと思うんですよ。例えば指定市の選出の方でも、県全体を見渡して、県の発展のためにどう寄与するかというようなことの意識を持ってしていただいている方だったら私はいいと思うんですけれども、やはり、例えば現場の県議会とかを見たときの議論がそうなっているかどうかというと、なかなか、今インターネットなんかで中継されている県議会とかを見て、これは形骸化してしまっているんじゃないかというふうな疑念を抱く市民の方が多いというのも事実なんですね。

 ですから、一般市にしてみれば、やはり県議会で存在感があって、そこできちっとしていくというのが自分の市に返ってきますから、いま一度、本当に、政令市、私も必要だと思います、大臣がおっしゃるとおり。でも、かなりの数が、これは人口で割り振られていますから、やはり政令市から行く人の人口というのは多いわけなんですよ。一般市から選出される議員さんの人口というのは少なくなってきてしまう。それぞれがそういうふうなところから、まずは、見直しとかがもうそろそろ必要な時期に来ているんじゃないかな。これほど大都市制度が変わってきているわけですから、そのあたりを見直していく一つのいい機会に捉えていただいて、もっと地域の議会の今の現状というのを見ていただいて考えていただけたらというふうに思います。

 そこで、今回、指定都市都道府県調整会議というのを設置するということになっているんですけれども、これは私、議会そのものというのを考えたときに、先ほど大臣がおっしゃったような形で、県全体のことに関して政令市の人たちも出てきてしっかりと議論をする場で議会があるのであれば、この調整会議的な役割というのは議会が担えるのではないかというふうに思うんですね。

 そのあたり、やはり議会ではこれはできなくて、きちっとした、外部に新しく調整会議というのをつくっていかなければならないその必要性というものについて、お尋ねしたいと思います。

門山政府参考人 指定都市都道府県調整会議についてのお尋ねでございます。

 この指定都市都道府県調整会議をつくろうといたします趣旨は、指定都市と都道府県の二重行政の問題を解消するために必要な協議を行うということにあるわけでございますが、やはり基本的には、それぞれ首長さんがあり、議会があるわけでございますから、それぞれにおきまして、行政が二重にならないように、最小の経費で最大の効果を上げられるようにということを団体の中で十分お話し合いになられて方針を決めていくというのが基本でございますし、また、都道府県と政令指定都市の関係におきましても、それぞれ、直接いろいろな形で現在もお話し合いがされていると思いますし、そういう形での調整が行われるわけでございます。しかし、そういうことが実際できていないケースもあるということで、公式にこういった調整が行える場というものの必要性が地方制度調査会答申において指摘されまして、そのために、今回、それを踏まえまして、制度として指定都市都道府県調整会議というものを設けようとしたわけでございます。

杉田委員 多分、この調整会議の中には、首長さんが入って調整をされるというようなことが大きなポイントとしてあると思いますので、その中でやはり、先ほども答弁の中にありましたように、議会というものにどのような形でかかわっていただくのかということもきちんと考えて、調整会議がぜひ実質的に効果がある会議となりますように、私の方も期待していきたいと思います。

 先日も私、この総務委員会の方に出席させていただいて皆さんの議論を聞かせていただいておったんですけれども、今回、例えば、先ほどの特例市が今度中核市になって中核市がふえていくという中で、地域の中でそこの中核市なんかがリーダーシップを発揮して、どんどんどんどん他の地域、周りの小さな都市とかを牽引していってというようなことが期待される、そういった旨の答弁がそちらの総務省側の方からあったように記憶をしておるんです。

 ちょっと私、これまた皆さんの方に資料をお配りしているんですけれども、これは近畿圏のところでの資料なんですが、青い斜線の部分が政令指定市なんですね。それで、オレンジの部分が中核市なんです。今度、もし特例市と中核市が統合されたら中核市になる、今現在特例市の部分が緑の斜線の部分なんですね。

 このように、中核市をふやしていっても、集中してしまうばかりで、答弁の中にありましたように、それこそ名前のとおり、中核的にその市があって、その周りに割と人口規模のちっちゃな市があって、そこの中核市がそれを牽引して、その周りの地域の発展とか、今後の未来についてのリーダーシップをとっていくというような意味で中核市というのがあるのが私も理想だと思うんですけれども、この図を見ていただいたらおわかりのように、結局は、政令市も中核市も特例市も同じところに集中してしまっていて、小さな自治体があるところの中核になってくれるような場所に存在していないんですね。

 これについて、この部分、どのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせ願いたいと思います。

新藤国務大臣 確かに、関西圏、特に大阪市、神戸、京都、こういう周辺に、今委員がるる指摘していただいたようなものがございます。だから、そういうところは逆に、それだけの強い都市が集まっているんですから、さらにその圏域を、広いエリアで特性を発揮して、これはもう日本経済を引っ張っていただく、そういう活動をしてもらえばいいというふうに思います。

 今回の中枢都市圏の設定というのは、全国でそれぞれ地域を活性化していただく際に、吸引力の強い、そういう強い都市がもし形成されているならば、それを中心として、周辺の皆さんと、周辺市町村と連携をとりながら、役割分担しながら圏域としての活性化を図っていこう、こういう選択肢もあるし、中枢都市圏でなくても、では、自治体同士が、村同士が合わさって、役割分担をしながら自分たちの地域の特性を生かしていこうとか、これは連携協約でできるわけですね。

 別々の制度ではないんです。その地域を、自分たちの地域をどうやって元気にさせていくかという選択の手段として幾つか用意されている、こういうふうに御理解いただければ、集中しているところは集中しているところなりの効果を発揮していただくことは当然の期待であります。

杉田委員 集中してしまうのは仕方がないので、そこはそこで、それを強みにというような御答弁だったと思うんですけれども、やはり、集中していない、そういう中核市も近くにない、政令市からも遠く離れているというような地域については、そこにおいても連携協約という新しい考え方が今回出てきていると思うんです。

 既に、定住自立圏の構想についての、地方の過疎化とかをどうするかというようなところがあったと思うんですけれども、これが一部の地方では割と形骸化してしまっている。やはり自分たちの市のことで精いっぱいで、ほかのところについてのリーダーシップを発揮しようというようなところがなかなか出てこないというような意見とか、そういう声を聞いておるんです。

 今回新たに連携協約というような形ができてくるんですけれども、これは結局、私、その自治体のやる気次第だったりとかすると思うんですよ。例えば、地方の県とか、どうしてもそこの県庁所在地が、ちっちゃい規模でも中心にならないといけない。そこがやはり中心の市まで引っ張っていって、リーダーシップを発揮して、県なりほかの全部の地域とかの発展を考えていこうというときに、そこの自治体にやる気があるかないかによって、こういう制度をきちっと利用して盛り上げていこうと思うか思わないかによっての差になってくる。どうしても、今形骸化しているものが、今度新しい制度を入れたからといって、やはりやる気がない自治体はやる気のない自治体のままなんじゃないかなということが危惧されるんです。

 そのあたり、今度新しく連携協約というのが出てくると、そうじゃないんだよ、今までと違って、こういう形で発展していくんだよという点があれば、お聞かせ願いたいと思います。

新藤国務大臣 これはまさに、やる気のない自治体は何も変化がないと思います。ですから、そういったものが、やる気のある自治体、もしくは成功事例を皆さんが知るようになると、やる気のない自治体にやる気のない住民がいるとは限りませんね。ですから、私たちは、この成功事例をまずきちんとつくって、それを広く皆さんに知っていただこうと。

 その中で、やる気がないというのは、私は、そういう自治体があるとは思っておりません。そうではなくて、なかなか事業効果を上げられない、そういう自治体がもしあるならば、ほかの町ではこんなことをやっているじゃないか、うちの首長、町長さん、市長さんは何をやっているんだ、うちの町の議員は何をやっているんだという住民が必ずいらっしゃると思います。もしくは、ここは我々がやらなきゃいけないという議員が必ずいるはずです。そういうものの好循環をつくり出していかなくてはいけない、こういうことだと思います。

杉田委員 まさしく大臣がおっしゃるとおりで、やる気のない自治体さんがいても、そこの住民の方がやる気がないわけではないという。私も、今回この質問をつくるに当たりましては、若手の地方議員の方のやる気がある方、どんどん議会を変えていきたい、住民のために変えていきたい、だからこの地域を何としても活性化させたいんだという方からいろいろ御意見なんかも伺って、きょうの質問を立てさせていただいています。

 その中で、やはり自治体のやる気次第じゃないですかというような言葉が出てきたという経緯になるんですけれども、そのやる気のある議員さんなんかは、まず、こういう形で制度が変わるということをあらかじめキャッチしておりまして、もう地方議会の中で質問されたそうなんです。うちの自治体は手を挙げますか、この連携協約制度が今度実施されたら手を挙げる予定はありますかというようなことで質問したそうなんです。そうしたら、その議会の中では、もう既に手を挙げる用意がありますというようなことで答弁が返ってきたということをお聞きしているんです。

 差し支えない程度で構わないので、もう既に、この連携協約の制度ができればうちの自治体はぜひやりたいといって手を挙げている自治体が大体どのくらいあるのか、把握している範囲で構いませんので、教えていただけますでしょうか。

門山政府参考人 現在、連携協約を活用した新たな広域連携につきまして、全国の地方公共団体から問い合わせをいただいております。また、問い合わせ、私どもが把握しておりますのは事務的に御相談があったケースだけでございますけれども、団体名は控えさせていただきますが、私どもに直接具体的な御相談があったところでも二十団体ほどございました。そのほか、新聞報道等でも、検討しているといったようなニュースも見かけます。

 お問い合わせの内容ですけれども、例えば、地方中枢拠点都市を形成するのに関連いたしまして、近隣市町村と連携に向けた協議の進め方、定住自立圏ではどうやっているんだとか、あるいは圏域の課題、ニーズについてどうやって把握しているのか、あるいは、産学金官と申しますけれども、そういった自治体以外の関係者を巻き込んでいるところの事例はどうなのかとか、もちろん浅い深いはございますけれども、いろいろな形でお問い合わせをいただいております。

杉田委員 ありがとうございます。

 まさしく、先ほど新藤大臣が百瀬委員に対する答弁の中で、やはりいい事例というのが出てくれば、それの中でどんどん、うちもそれを取り入れたいとかというようなところが出てくる。そういう相乗効果でボトムアップをしていって、地域から活性化をしていくということを私は非常に大事だと思っておりますので、手を挙げている自治体さん、自治体に限らず、団体が二十団体以上あるということを聞いて、やはり、そういうところでまた、民間なんかも巻き込んで、いい取り組みがあれば、それをどんどんどんどんクローズアップしていただいて、もっといろいろな市とかいろいろな地方とかもこれに取り組みやすいような形をとっていっていただければと思います。

 ついでにお尋ねしたいんですけれども、総務省さんの方で、逆に、ここの地域がこれをやってくれたらすごいモデルケースになるのになとかと思っているようなところは、どこかありますでしょうか。

門山政府参考人 まだお問い合わせをいただいている段階でございまして、中にはもう既にかなり具体的なプランまでお持ちのところもあるんですけれども、私ども、今年度、モデルの構築のための調査も実施したいと考えておりますので、その選定作業などを通じまして、当初、取りかかってモデル構築に参加していただく団体というのは絞っていきたいと考えておりますが、できるだけたくさんの団体に取り組んでいただきたいというのが気持ちでございます。

杉田委員 ありがとうございました。

 この後、オープンガバメントの必要性について質問をさせていただきたいというふうに通告をしておりましたが、ちょっと時間も短くなってしまって、中途半端になってしまいそうなので、またの機会にここの部分はさせていただきたいと思います。

 新藤大臣も、朝早くから靖国神社に参拝いただきましたので、少し早く終わって、お昼休みを長くとっていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

高木委員長 午後二時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時六分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上貴博君。

井上(貴)委員 自由民主党の井上貴博でございます。

 このたび、初めて安倍総理に直接質問させていただく機会を与えていただきまして、心から感謝申し上げます。

 それでは、与えられた時間は五分でございますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 地方自治法の一部を改正する法律案の中の指定都市都道府県調整会議について質問させていただきます。

 私は、県議会を三期務めました。地方議会経験者として、この地方自治法改正に盛り込まれた知事、市長、そして恐らく地方議会の代表も加わって協議する会議である指定都市都道府県調整会議設置を最初見たとき、これは意見がまとまらず形骸化してしまうのではないかという懸念を持ちました。

 というのは、国は議院内閣制ですが、地方は二元代表制です。首長と議会が対立している場合もありますし、知事と市長が対立している場合もあります。そんな中で、意見の調整はとても難しいケースが出てくる。今お配りした資料にあるように、首長とその支持政党、また議会の勢力図が複雑に絡み合う状況が、地方の状況としてあります。

 私も、政令指定都市出身の県会議員として、市と県の間に立って意見調整に何度も当たってきて、その難しさを身をもって感じておりました。そのため、知事、市長、議会の代表者が一堂に会してオープンかつ公式な場で意見交換をしても、果たして本当に腹を割って話せるか、意見調整ができるかと思ったからであります。

 しかし、今回、改めて県と政令市の連絡会議の実施状況を調べてみました。すると、県と市の連携が余りにも不十分な実態が浮かび上がってきました。

 二枚目の資料にあるように、福岡県と福岡市の例でいえば、平成十二年から数えて六回しか開催されておらず、最近の開催は、約四年前の平成二十二年二月十九日でありました。福岡市長と福岡市選出の県会議員で構成する、意見交換をする福友会も、平成十八年六月二十二日を最後に開催されておりません。

 知事と市長のトップ対談が不足していては、国民の負託に十分応えることはできません。首長同士が正式に会議を持つことで、また、会議の代表も入ることで、二重行政の解消はもとより、地方行政をグロスで考え、大きな方向性を話し合えるようになると思います。

 福岡市と北九州市、二つの政令市を抱える福岡県は、よく国民からこう言われます、ゴジラに出てくるキングギドラと。体は一つだけれども頭は三つある。国民からすると、どちらの方向に進んでいいかわからないときがあるとよく言われたものであります。どんな状況、そしてどんな事情があろうとも、定期的に会議を開いて話し合うことは、地方自治を大きく前進させ、国民の負託になるというふうに思います。

 先般、福岡市が指定をしていただきました国家戦略特区、本当にありがとうございました。国民の、また国家の負託に応えられるように一生懸命取り組んでまいります。ですが、数年前にこの指定都市都道府県調整会議が設置されていれば、同じく特区に立候補していました福岡県と北九州市そして福岡市の三者が手をとり合い、よりすばらしいプロジェクトを福岡全体で提案できたかもしれません。この地方自治法改正で県と政令市の連携強化を強固にすることが私は絶対不可欠だというふうに改めて、このことを調べてみて思いました。

 ここで改めて総理から、この指定都市都道府県調整会議を設置する意義そして狙いをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。

 指定都市は、第三十次地方制度調査会の答申において指摘されたとおり、その人口規模が大きいこと等から、都道府県との間で二重行政の問題が特に生じやすいものと考えております。

 この二重行政の解消に向けて、政治家である市長と知事が向き合い、直接議論することは大変重要であります。今回の地方自治法改正案では、この両者が必ず構成員となって政策を調整していく場として指定都市都道府県調整会議を置くことといたしました。

 これによって、二重行政の解消、効率的、効果的な行政体制の整備が進むものと考えております。

高木委員長 井上君、申し合わせの時間が参りましたので。

井上(貴)委員 はい。ありがとうございました。

 これで終わります。

高木委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、地方自治法について、特に条件不利地域の産業振興について、安倍総理にお伺いをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 このたびの法改正は、背景といたしまして、人口減少社会に対して対応していくという大きな目的があるわけでございますけれども、条件不利地域、この存続のために、広域連携をすることで行政サービスを補い合ったり、インフラの維持で連携をし合ったり、あるいは地域振興の取り組みを補い合うということであると思います。

 今、地方におきましては、仕事がなくて働けないので都市部に働きに出るということがよく聞かれるわけでございますけれども、これはとりわけ今に始まったことではないと思うんです。従来からもずっと農村部ではそういったことがあって、農家の家の息子なのに都市部に働きに出るということがよくよく起こって、ずっと積み重ねられてきたという状況があったかというふうに思います。

 それを解決するための一つの施策としまして、総務省では地域おこし協力隊という取り組みも行われておりましたけれども、その隊員には、都市部から地方に住民票を移して、住環境と働く場、この二つをしっかりと提供して、定住化につながっているというふうにお伺いしております。

 この大事なポイントは、生活できる住環境と働く場所を提供していくということであるというふうに思うわけです。

 特に若年層、これは雇用統計でいえば十五歳から三十四歳までの方を指すわけでありますけれども、こうした方々に対してIターンとかで都市部から地方に労働力の移動を促進しているわけでありますけれども、移住しやすい住環境を提供していく、この形を伴えば、非常に若年層が移住しやすいという声を伺っております。

 この住環境においては、空き家や古民家を活用していくというやり方もありますけれども、経済的負担が少なくて移住できることが非常に大事であるというふうに思います。

 次に考えなければいけないのは、働く場であるかと思います。

 筆頭に挙げられるのは農林水産業であるというふうに思っております。この条件不利地域におきましては非常に重要な産業になるかと思いますし、政府としても成長戦略の大きな柱の一つとして取り組みをなされているところでありますけれども、これは広域連携をしてもしなくてもできる取り組みなのかもしれません。

 この上で、広域連携をすることによって産業の振興がどのように行われていくのか、総理がイメージされていらっしゃる具体的な例とモデル、こういったところを御提示願えますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回の改正により、地方公共団体が連携して事務を処理する際に、新たな組織を立ち上げることなく、簡素で効率的な相互協力を継続的、安定的に進めていくため、連携協約の制度を創設することとしております。

 この連携協約を活用して産業を振興する例を挙げるとすれば、例えば、都市の圏域内に、相互に関連する製造業などの企業を集積するとともに、地域の大学や研究機関、金融機関など、圏域内の資源、企業、人材をフル活用して、これらが相互に知的な協力関係をつくっていくことによって、産業クラスターの形成や新たなイノベーションを実現し、新規創業を促進することなどが考えられると思います。

 安倍政権といたしましても、濱村委員がおっしゃったように、地域の意欲を生かして活性化をさらに進めていきたい、このように考えております。

濱村委員 ありがとうございました。

 終わります。

高木委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょうは、安倍総理に、地方自治法改正、それから地方自治改革、私たちが言うところの地域主権改革で、これだけは押さえておきたいということを数点に限って伺いたいと思いますので、総理、よろしくお願いいたします。

 まず、地方自治の本旨についてであります。

 憲法九十二条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」これが書いてあるだけなんですね。地方自治の本旨というのは、これ以上は書いてありません。

 安倍政権が考える地方自治の本旨とは、何を指して地方自治の本旨といって、それでこの法案を提案されているのか、総理に基本認識をまず伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 憲法が保障する地方自治の本旨とは、地方自治体が地方の行政を自主的に処理するという団体自治と、地方自治体の運営は住民の意思と責任に基づいて行うという住民自治を意味するものと解されております。

原口委員 私たちも、その基本的な考え方で改革を進めてきました。地域のことは地域で、そして主権者である国民が主体的に地域をつくっていく、それを地域主権改革というふうに名前をつけてきたわけであります。

 そこで、ただ単に、地方自治の改革というのは行政機構の改革ではなくて、これは政治の民主化の一環である、私はこのように考えておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 おっしゃるとおりでございます。

原口委員 さて、具体的な幾つかの項目について伺いたいと思いますが、これは私が県議会議員のころでした。こういう事案がありました。二十億円の補助金がついていました。そこで、水路をつくるという補助金でした。私は、当時、御党の青年局長でした。二十億円のこの予算を通すか通さないかということを随分悩みました。というのは、実はその地域に必要なものは、本当は水路ではなかった。もっと言うと、教育施設であったり、福祉の充実でした。しかし、二十億円の補助金がつけば、国が半分、それから地方、県と市で半分ずつ出して、そのお金が地方を回ります。ですから、補助金がついたのであれば、それを反対して否決するよりも、賛成して地域を回した方がいいというふうに判断して、私はそのときの議案に賛成しました。

 しかし、もしこの補助金が、補助金という省庁の枠を超えて地域で自主的に判断できるお金であったら、私たちが創設した省庁を超えた一括交付金です、そうであったら、もっと有効に使えたのにというのが私の原点でありました。

 本会議でも伺いましたけれども、省庁を超えた、今の補助金にかわる仕組みを積極的におつくりになる、そういうおつもりはないのか、そのことをこの間も総理と議論してきました。私たちの一括交付金の理念は継承するんだと言われていますが、まだ姿は見えてきません。沖縄の一括交付金はそのまま残りました。省庁を超えた補助金にかわる仕組みをおつくりになるお気持ちがあるのかどうか、総理に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先般もお答えをさせていただきましたように、委員が総務大臣時代に基本的な原型をつくられた、いわゆる一括交付金でございますが、考え方としては確かに、私たちが進んでいくべき方向を示しておられた、このように思うわけでございますが、再三答弁をさせていただいておりますが、地域自主戦略交付金については、地方から、窓口の一元化や手続の簡素化などの課題が指摘されていたことなどから、平成二十五年に廃止をいたしまして、各省庁の交付金等に移行したところであります。

 その際、地方六団体からの意見も聞きまして、これまで事業別に細分化されていた整備計画を、より大きな政策目的にまとめるなど、運用改善を行ったところであります。

 今後も、地方の意見を踏まえた不断の検討を行い、真に地方にとって効果が高く、使い勝手のよい施策の仕組みをつくっていくために検討を進めていきたい、このように思っております。

原口委員 私は、その答弁が一年前であれば、これは理念を前に進めていただけるんだというので、前回の、ちょうど一年前の予算委員会のときは総理に期待しました。しかし、まだ姿はあらわれていません。省庁を超えたものについては、まだできていません。ぜひ、リーダーシップを発揮していただきたい。

 そして、きょう、お手元に一枚の紙をお配りいたしました。これは、平成二十二年の六月二十二日に、私が担当のときに地域主権戦略大綱というものをまとめました。この中で、政府の文書としては、道州制というものが入った恐らく初めての閣議決定文書ではないかと思われます。

 今後の取り組みとして、こういうふうに書いています。「国としては、市町村や都道府県相互の自発的な連携や広域連合等の具体的な取組を前提として、地域主権改革を推進する中で、こうした連携等の形成に対する支援の在り方を検討していく。」

 つまり、これは、総務大臣がこの委員会でも何回もお答えをされていますけれども、個性を生かし、自立した地方をつくる、そして、分権改革を受け入れて対応したい自治体と、また、そうでない自治体があるけれども、手挙げ方式で、地域が意思決定をしたら、そこに積極的に国は支援をしていく。これはまさに、私たちのときにも、関西広域連合であるとか、北海道道州特区であるとか、九州広域機構、これは党派を超えて、道州制の受け皿をつくろうと。私たちは基礎自治体主義ですけれども、地域が選択をするのであれば、この閣議決定した文書のように積極的に支援していこうというふうに考えているわけです。

 このことは、安倍内閣でも同じ考え方だと思ってよろしいでしょうか。

新藤国務大臣 これは私の方が担当大臣をさせていただいておりますから、お答えをしたいと思います。

 基本的な方向性は、私が総理から道州制の担当大臣を拝命した、そこに、もう安倍内閣の基本スタンスがあると思います。前内閣においては、この道州制担当大臣は置かれなかったわけであります。

 そして、地方分権改革を進めていく上で、国と地方、双方にとって、統治機能の強化とともに、地域住民のサービス向上を図る、そしてまた、自治体の自立を図る、その意味での道州制を推進していこう、これは私たちの大きな柱であります。

 個別具体のさまざまな検討を加えながら、しっかりとした自治の確立に向けて我々も取り組んでまいりたい、このように考えておるわけであります。

原口委員 新藤総務大臣とは本当に毎週お話をしていますから、結構です。総理からその決意を伺うためにきょうは総理質疑をしているわけですから、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 この道州制については、国のあり方を根底から見直す大きな改革になるわけでありまして、その際には、国がやらなければならないことは何か、そして身近な行政である基礎自治体がやるべきことは何か、そして州がやることは何かということを根底からしっかりと議論することが求められているわけでございまして、自民党としても、与党としても、また政府としても、しっかりとこの道州制について取り組んでいきたい、そのために担当大臣を総務大臣として新藤義孝大臣を指定したところでございます。

原口委員 もうその担当大臣を置いたのは随分前じゃないですか。

 だから、私が言いたいのは、もう手を挙げて、そして具体的な国の出先機関の機能を自分たちに移してくれと、これは、維新の会の皆さんやあるいはみんなの党の皆さん、ほかの党の皆さんとも共同で国会に法案を出させていただきたいと思いますが、出先機関の機能を、もう手を挙げているところ、自分たちがやるんだ、自分たちの責任において、国の機能だけれども地域でやれることはやるんだと言っているところには積極的に移管していくべきではありませんか。

 もう新藤大臣、手を挙げないでください。新藤大臣、これは質問権の、時間が限られていますから。総理に基本的なところを伺いたい。

新藤国務大臣 これは、私どもとすれば検討は続けているわけであります。

 推進してほしい、また希望がある自治体とともに、一方で、市長会そして町村会からは、極めて慎重に、また、このような法案を閣議決定することすら遺憾である、こういう状態があるわけでありますから、しっかりとした議論を加えながら、しかし、分権を進めていく上においての検討は今でも進めておるということでございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま新藤大臣からお答えをいたしましたように、基本的には身近な行政は分権を行っていくということは当然のことでございますが、他方、地方自治でありますから、地方団体の声にも耳を傾ける必要があるという中において、議論を進めているところでございます。

原口委員 総理、御自身が指名された総務大臣ですから、総務大臣が答弁した枠の中で答弁しなきゃいけないのかもわかりませんが、私は、日本全体で、私たちが閣議決定したものを進めてくださいと言っているんじゃないんですよ。もう現実に広域連合、関西広域連合でも九州広域機構でも、それこそ自民党の推薦の知事さんや議長さんたちも大変な苦労をされながらまとめてきて、地域でそれでやるんだというところには、さまざまな権限とともに機能を移す検討をされたらどうですかということを言っているんです。

 十一月十五日、解散の直前に閣議決定したことをそのままやってくださいと言っているんじゃないんです。手挙げ方式で、やる気のあるところには、どうぞ検討を、国としてそこを応援しましょうということを申し上げているんですが、総理、もう一回御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 御質問の、民主党政権下において閣議決定をされました、国の出先機関を広域連合に移譲する法案についてのお尋ねであれば、市町村から大規模災害発生時の危機管理体制などに関して慎重な意見が表明されているところから、慎重な検討が必要というふうに認識をしております。

 出先機関の改革を含め、国と地方の役割の見直しは、先ほど申し上げたところでありますが、地方からの声をよく聞きながら進めることが重要であると考えております。

 安倍政権では、地方からの声を踏まえて、地方がその能力を十分発揮できるように、国の出先機関から地方への個別の事務、権限の移譲等を進めるための第四次一括法案を提出し、御審議をいただいているところでありまして、今後とも地方の声も伺いながら、個別の事務、権限の移譲等を着実に進めていく所存でございます。

原口委員 ちょっと物足りませんね。

 というのは何かというと、私たちも正直、見直しをやっているんです。くしの歯作戦をして、そして緊急対応、日本版FEMAなるものをつくって、国の出先機関で大事なものはやはり残していかなきゃいけない。しかし、もうその議論の次の段階へ私たちも入らなきゃいけないと思って、質問をしているわけです。またこれは総務委員会でも議論を深めていきたいと思いますが、総理、もう一歩前に進みましょうよ。地域が決定をし、手挙げをしているところについては、積極的な支援の検討を私は求めます。

 この法案の、維新さんが修正案で盛り込もうとされている案がございます。この後出てきます。まだ総理はごらんになっていないと思いますが、総合区長の公選制についても総理の認識を伺っておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 区長公選制については、第三十次地方制度調査会において、行財政改革の観点や、一つの地方自治体の中に公選の市長の部下として複数の公選の職がいることが不適当ではないかとの議論がありまして、引き続き検討すべきとされており、地方の声を伺いながら、さらに丁寧に議論する必要があると考えております。

原口委員 最後の質問にいたしますが、やはり今、限界集落があり、中央から遠ければ遠いほど厳しいという状況の中を、私たちは変えなきゃいけないと思っています。こういう限られた日本の国土の中で、人が住めないところが生まれたり、あるいは公共サービスの格差が生まれるというのは、これはあってはならない。

 そのためには、私たちは、地域の富を生み出す力、緑の分権改革というものをやってきました。地域からエネルギーや富を奪っているもの、それを変えていくことが真の地方自治の改革になると思いますが、最後に総理の御所見を伺って、質問を終えたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地方の活性化は、安倍内閣にとって最重要のテーマでございます。国民が全国で安心して快適な暮らしを営んでいけるように、元気な地方をつくっていくことが極めて重要と考えております。

 政府としては、地域の資源や資金を活用して雇用を生み出し、地域の経済を元気にしていくため、地域の元気創造プランの推進をすることなどによって景気回復の実感を全国津々浦々に広げていきたいと考えております。

原口委員 終わります。

高木委員長 次に、中田宏君。

中田委員 きょうは、日本維新の会が、既に朝の理事会で、地方自治法改正案についての修正案を出させていただきました。これは後ほど趣旨説明をさせていただきますし、また、これについても総理にお伺いをしたいというふうに思っております。

 短い時間の中でありますから、幾つかぱんぱんと御質問を申し上げていきたいと思いますが、地方自治のこの話に入る前に、ちょっと総理、一つ、御見解をお伺いしたい案件が出てまいりました。

 十九日のことでありますけれども、中国において、上海海事法院が、我が国の商船三井所有の大型船舶の差し押さえという挙に出ました。これは、実に日中関係の信頼を損ねるというふうに言わざるを得ません。一九七二年の日中共同声明の精神を踏みにじるものだというふうに言わざるを得ませんし、菅官房長官も昨日、このように声明を出していますけれども、全くもってそのとおりだというふうに思います。

 安倍総理が、ある意味悪口の類いで言われているような歴史の修正主義者でないということは、私は本当に心からそう思っておりますし、ぜひ、毅然と対応すべく、そうしたこれからの日中関係についても私は心から期待をしているわけであります。

 オバマ大統領も、あす来日をします。そういう中においてこういう挙に出る中国に対して、我が国は、いわば中国という国がある意味では特異な国だ、こういう特殊な国だということを、アメリカのオバマ大統領ともぜひ胸襟を開いて話して、そして今後の日米関係を深める。また、中国に対して、そうした対応を日米でとっていく。また、世界としても、そういう特異な国であるということをわかってもらう必要があると思いますが、これについて、まず、これだけお聞きをしておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 大切なことは、法の遵守、法の精神をしっかりとたっとんでいくことだろうと思います。

 四月十九日、株式会社商船三井は、上海海事法院から、中国浙江省の港に停泊中の同社の船舶を差し押さえる旨の通告を受けたと承知をしております。

 商船三井は、同社の前身企業の行為に関して中国国内で民事訴訟を提起されており、今回の差し押さえも、この民事訴訟について中国国内で出されている判決と関連しているというふうに承知をしております。

 商船三井は原告との間で示談の可能性を探っていたと聞いておりますが、そうした中で同社の船舶が突然差し押さえの通告を受けたことは、日本政府としても遺憾であります。

 政府としては、外交ルートを通じて、商船三井の船舶が突然差し押さえられたことに対する遺憾の意を中国側に伝達し、中国側が適切な対応をとるよう強く求めてきております。本日も引き続き、商船三井と連絡をとり合いつつ、対応を検討していく考えであります。

中田委員 この件に関してはもう最後にしますけれども、ぜひ、オバマ大統領とも、こうした中国のやり方、また中国の価値観、そのおかしさということについては日米間で共有した認識を持てるように首脳会談に臨んでもらいたいというふうに思いますが、その点、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 明日、オバマ大統領が日本を訪問されます、来日されますが、首脳会談を通じて、アジア太平洋地域の平和と安定、繁栄に日米同盟がしっかりと指導的な役割を示していくということを内外に示していきたい、このように思うわけでございます。

 それと同時に、法とルールをしっかりと守っていくことの重要性についても認識を一致させていきたい、このように考えております。

中田委員 ぜひ、日米間の首脳でこうしたやり方に対して共有した認識を持ってもらいたいと思いますし、その点、安倍総理に期待をいたしておりますし、日米関係全般の前進を図るべく、充実した首脳会談になるように、心から我々も総理にお願い、また期待をしたいというふうに思います。

 さて、地方自治に関することを総理にお伺いしていきたいと思います。

 まず、今回、我々は修正案を提出したわけでありますけれども、この修正案の内容については、いわば、今回の政府案が総合区というものを新たに政令市の中につくるのに対して、この総合区の区長を公選で選べるという選択もできるようにしようというのが私たちの案の中身ということになっております。

 といいますのは、政令市というのは、全国の市町村というくくりの中においては本当にわずかな数でしかありません。そして、その実態というものがなかなか知られていないということもあると思うんですね。どうしても市町村というくくりの中で政令市もカウントをされてしまいます。

 全国市長会というのは、いわば地方三団体の中に入りますね。この地方三団体というのは、全国の都道府県知事会、市長会、それから町村長会、これは地方三団体ですね。ところが、政令市長はこの中に入らないわけです。いわば特例的に昭和三十年代に設けられたものが、明確なる法的な位置づけのないままに、政令市という巨大な市のくくりというものがそのまま今に至っている、こういうふうに言った方が実は早いわけです。ですから、今申し上げたように、地方三団体の中にも政令市というのは入っていないわけであります。

 そういう意味では、私も政令市の市長をやってきましたけれども、さまざま陳情しても、実は政令市長会というのは、そうしたオフィシャルな権限といいますか、オフィシャルな正当性というものがないままに政府に対して要望している、こういう状態にもあるわけです。そういう意味では、政令市の実態というものが余りわかっていないような現状というものが私は地制調にもあるように思えてなりません。政令市の抜本改革、このことを考えたときに、我々のこの修正案というものも、ぜひ総理にも我々は認識をしていただきたいというふうに思っているわけであります。

 まず、政令市の抜本改革、このことについて、今まで手がつかないままここまで来ていることに対して、総理、いかが御見解をお持ちでございますか。

安倍内閣総理大臣 政令指定都市につきましては、指定都市が、都道府県に包括される基礎自治体ではあるものの、その人口規模等が都道府県並みであることから、効率的で効果的な行政と市民福祉の向上を図るため、都道府県の事務、権限の移譲を特例として認めるものであり、合理的な制度であると認識をしております。

 他方で、この制度についてはさまざまな課題が指摘されているのも事実でありまして、今回の改正により、二重行政の解消が図られるとともに、区の役割が強化されるなど、住民自治が拡充されることとなるわけでありまして、今後とも、地方公共団体の運営が円滑になされるよう取り組んでいく考えであります。

中田委員 全国の都道府県の人口ランキングでいうと、第十番目、ベストテンに入るのが静岡県なんです。静岡県の人口は三百七十万人なんです。実は、三百七十万人と同じ政令市がある。それはどこかというと、私が市長を務めた横浜市なんです。三百七十万人の静岡と横浜市は同じ人口を抱えているわけであります。

 例えばの話でいうと、その静岡県にはどれだけの教育委員会があるかというと、三十五あります。先般、実は予算委員会でも申し上げましたけれども、山口県の人口は百四十二万人ですから、今申し上げた静岡や横浜よりもぐっと少ない、大阪よりも少ないということになるわけですが、この山口県にある教育委員会の数は二十なんですね。山口に二十ある、静岡に三十五ある、ところが、横浜市三百七十万人の教育委員会は一つしかないんです。

 これは、各学校をきめ細かく見なさい、こう言っても無理なんですね。当然ですけれども……(発言する者あり)方面別につくれと誰か今やじをしましたけれども、それは私のアイデアで、私がつくったんですよ。最初、文科省は大反対したんですよ。ありがとうございます、いい説明機会をいただいてうれしいですけれども、私のアイデアでつくったんです。そうしたら、当時の文科大臣は、いや、それはだめだと。そして、文科省はだめだと言ったんですが、最終的には、我々がそれを実力行使でつくった結果、今追認をしてくれるようになったんですね。

 いわば、政令市はこうやって自分たちで能動的に動かなきゃだめだという教訓もあって、これまで大阪都構想というものも実は私たち日本維新の会では言ってきたわけであります。

 さて、その中において、二重行政をどう排除していくかということが重要だと私たちは考えています。

 ただ、大阪も、二百六十万人以上の人口がいる中で、基礎自治体の長としての一人の大阪市長では余りにも見切れない。それはそうです、小学校の名前を言われたって、正直言ってわからないですよ、橋下市長は。私だって、小学校の名前を言われたら、それはあるのはどこですか、こう聞かなきゃいけないんですね。

 そういう政令市の現状を考えたときに、基礎自治体の長というものをまずつくっていくためには、総合区、その区長というものを公選で選んでいくということについて、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 区長公選制については、第三十次地方制度調査会において、行財政改革の観点や、一つの地方自治体の中に公選の市長の部下として複数の公選の職がいることが不適当ではないかとの議論もあるわけでございます。

 例えば山口県であれば、今例として挙げられましたが、山口県は、知事がいて、その下には市長あるいは町長、村長等がいるわけでございますが、東京都においては、都知事がおり、そして区長と市長がいるということになるわけでございます。大阪の場合は、府知事がいて、そして市長がいて、その市長の下にさらに区長がいるということに、今の制度のままもしそこに移行していったらそういうことにもなるわけでございます。引き続き検討すべきこととされているわけでございまして、地方の声を伺いながら、さらに丁寧に議論する必要があるというふうに考えているところでございます。

中田委員 公選市長のもとに公選区長がいるということについて、私たちも、この修正案を出すに当たってはかなり議論を深めました。二重行政あるいは三重行政、こういう言い方というものがすぐに思い浮かぶわけで、私たちの議論の中でも、実は一番最初に出てきたのはそれなんです。

 しかし、このことについては、我々は非常にクリアに整理ができました。二重行政にせよ三重行政にせよ、問題なのは、同じ業務をそれぞれの行政体あるいは権限者がやることなんですね。そうではなくて、私たちが主張しているこの公選制というのは、公選区長、総合区長は総合区長としての権限をやる、そのことについては大阪市の条例において明確に定めて、二重行政が発生しないようにした上でやる話なんですね。

 これは、私たちが二重行政と十把一からげに言うときに陥りやすい議論に対してぜひ議論を深めたいところでありまして、要は、どんなに行政体を仮にシンプルに分けたとしても、今、国と地方が同じような権限を持っている、あるいは、結果としては国がイエスと言わない限りは地方が自主的に決められないというのでは、どんなにシンプルにしたって二重行政のままになってしまうわけです。

 そういう意味では、私は、道州制もまたこれは必要な議論だと思っていますけれども、この道州制というものの一番肝要なところは、単に自治体を広域化するとか合同するということではなくて、それぞれの地方自治の原則というものは道州の中で決めるということだと思うんですね。すなわち、例えば九州、例えば北海道、そこは、地方自治の原則というものはそれぞれが決めていくということが重要なのであって、国は国のやるべきことに専念する、地方のルールはそれぞれの道州が決めるということが道州制のみそだというふうに私は思います。

 このことも含めて、総理に、道州制についての御見解、覚悟というものをぜひお述べいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 道州制の導入につきましては、地域経済の活性化や行政の効率化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革であります。

 確かに、今、中田委員が御指摘になったように、国が本来やるべきことは何か、例えば、外交とか安全保障とか、そういう限られたものにしっかりと特定していく中において、身近な行政を地方に分権していくという基本的な考え方があるわけでございます。

 現在、与党において、道州制に関する基本法案の早期制定を目指し、地方団体との意見交換を重ねているところでございまして、精力的な議論が行われているというふうに承知をしております。

 この議論が集約されていくプロセスの中で、法案が国会に提出されることとなる、このように考えておりまして、今後、政府としても、連携を深め、取り組んでいきたいと考えております。

中田委員 終わります。

高木委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫です。

 道州制については、質問しようと思ったらもう全部出ちゃいましてあれなんですが、かぶるところがありましたら、お許し願いたいと思います。

 最初に道州制をお聞きしようと思っておりました。四月十日の日に本会議で質問させていただきましたので、その際に、総理に道州制について質問しましたら、今後、政府として、与党と連携を深め、取り組んでまいりますということでありましたので、もう一度、この取り組んでまいりますというところを、総理のお考えをお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 道州制については、第一次安倍内閣において開催された道州制ビジョン懇談会等における議論の積み重ねを経た上で、現在、与党において、道州制に関する基本法案を検討しているところであります。

 道州制の導入は、先ほど申し上げましたように、国のあり方を根底から見直す大きな改革であることから、今後の検討に当たっては、道州制の具体的な姿を明らかにしつつ、国民的な議論を行う必要があります。

 そのため、与党で検討中の基本法案には、政府に道州制国民会議を設置することなどが盛り込まれているところでございまして、今後、政府としても、基本法案の動向を踏まえながら、与党と連携を深め、取り組んでいく考えであります。

佐藤(正)委員 選挙の公約でも、この道州制については自民党は大きく訴えておられましたので、私も期待をしたいと思っています。

 そこで、大阪都構想、大都市地域特別区設置法は、各党の皆さんの賛成で議員立法で成立をした法律だと承知をしております。

 総理、せんだって、関西の某テレビ番組で、大阪都構想についてマルかバツかというような御質問があった。ちょっときのう見せていただきました。皆さんのお手元に資料をお配りしていると思いますが、これを見ますと、基本的にマルということでありました。

 そこで、総理、基本的にマルというのは、どういうふうに理解したらよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この番組は、残念ながら、東京、関東地域では放映されていない番組でございますが、この番組に出演した際に、基本的に、この大阪都構想について、考え方、理念について我々は応援をしているというお話をさせていただいたわけであります。

 大阪都構想を実現するための大都市地域特別区設置法は、今回の地方自治法改正案とは手法は異なるものの、指定都市と都道府県との間の二重行政の解消や住民自治の拡充という目的は共通しているものであり、ともに重要なものと認識をしております。いわば、今まで長く続いてきた制度を変えるというのは大変なエネルギーを要するものでありますが、その方向性については、しっかりと強い意思を持って進んでいっているということについて敬意を表したところでございます。

 いずれも大都市制度改革の選択肢を地方に示すものであり、その選択は、地域の実情に応じ、それぞれの地域が判断すべきものと考えているところでございます。

佐藤(正)委員 この大阪都構想というのは、実は政令市を分割してやるということで、先ほど中田さんが言われた横浜の方は、また違う考え方を持っていましたね。横浜は県になりたいというような話で、大都市構想、ちょっとまた違うんですけれども、そういう意味では、今回の、政令市を分割して公選制で区長を選んでいく、これはまさに、実は将来の道州制を見据えた一里塚だと私は思っています。それはなぜか。中核都市を基準にした基礎自治体をつくっていく。

 さらには、今回の修正案については、私はちょっと疑義を持っております。公選で選ばれた市長がいて、そして区長がまた選挙で選ばれて、そうすると、その区長を解任するときには市長が議会に諮って、議会の同意を得て、それから選挙管理委員会に、今回その区長さんを解任するかどうかの選挙をまたやる。どうも何かすとんと落ちないところがあると私は思っています。それよりも何よりも、今大阪でやろうとしている方がすっきりしているんだろうと思いました。

 私は政令市の県議をやっておりましたけれども、総理、実は、政令市の区長さんというのは、選挙でも何にも選ばれないから、区民から見ると、誰がなって、いつやめたのか、さっぱりわからないんですよ。というのは、市の役所のポジションが人事異動で二年ぐらいでかわっていくんです。そういう人ですから、区民は全くわからない。だったら、そこに権限と財源を与えて、政令市を分割していって選挙で選ぶというのは、私は理にかなっていると思います。

 それで、総理、先ほど、この大阪都構想の理念を基本的にマルだと。これは、基本的には道州制を見据えた改革なんですよね、橋下市長がやろうとしているのは。これを基本として、いわゆる最終ゴールは関西州をつくるんだというような目的を持ってこれに立ち向かっていらっしゃるんですが、総理はどのように思いますか。

安倍内閣総理大臣 大阪においては、大阪府と大阪市、いわば二重行政においては、ある種、しょうけつをきわめていたところがございまして、その中において、この二重行政の中で無駄遣いが多いではないかという市民、県民の強い要望の中から今大きな変化が起こっているんだろうというふうに認識をしているわけでございます。その意味におきまして、大阪府、そして大阪市の二重行政を今後しっかりと排除していきながら、新しい地方行政の姿をつくっていくということについて、評価をさせていただいたところでございます。

 一方、また道州制につきましては、これは日本全体において、国と地方のやるべきことの整理等も行いながら、抜本的に国のあり方を考えていくものである、このように考えているところでございます。

佐藤(正)委員 総理、確かにそのとおりで、国がやるべきことと地方がやるべきことを明確にしていこうというのが、そして道州制というのは、基本的に、合併をする、基礎自治体をつくっていくのではなくて、これからの日本の戦略として、世界で都市間競争をやる、その都市間競争をやるためにも、この道州制というのは生きてくるんだろうと私は思っております。

 それから、二重行政ですけれども、実は、政令市と県の二重行政というのは、今まで起こってきたのは、県と政令市で張り合いっこをやって、例えば女性センターをつくるよといったら、県がつくったのなら市もつくるよ、そういった二重行政がほとんどなんです。

 それはなぜそうなるかというと、政令市というもの自体が財源を持っていますから。そして、その一番わかりやすい例は、都道府県とか政令市になると、いろいろないわゆる外郭団体をいっぱい持っているんですよ。その外郭団体の中身を見たら、大体同じようなことをやっているんです。実は、制度というよりも、そういうところに本来の二重行政があります。

 となれば、二重行政をつくった、でき上がったのは、いわゆる国が都道府県に政令市という仕組みをつくった、このことにも起因が実はあるんだろうと私は思います。政令市をつくることによって人口とお金がそこに集まる、そうすると、今までの都道府県に対して政令市が張り合うんですよ、実際に。だから、政令市についても、私は、やはりいま一度見直して、政令市の分割をしていく、そして、もっと身近なところで行政ができる。先ほど中田さんが言われたように、確かに、二百万人、三百万人になったら見えないですよね。これはもう実態としてそうだと思っております。

 ぜひ、道州制も含めて、総理には、この大阪都構想も含めて、政令市と都道府県の関係についてこれからも前向きに検討していただくことをお願いしまして、質問を終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 地方自治法改正案について、総理に質問をいたします。

 地方自治制度を考える上で、平成の大合併の総括が不可欠であります。本会議での私の質問に、総理は、平成の大合併について、市町村の規模が拡大したことにより、行財政基盤の強化が図られるという効果が認められる一方で、住民の声が届きにくくなったとの課題も指摘をされていると答弁をされました。

 そこで、総理にお尋ねしたいんですが、私は、あの平成の大合併というのは、結果として、住民の福祉の後退につながった、特に小規模団体の住民にとっては大変デメリットが大きかった、こういうものだったと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この平成の大合併については、いわば、少子高齢化が進んでいる中において、我々、行政の規模、そして行政のコストを考えていく上において、合理化を図っていくことも住民の要望に応えていくことにつながっていく、こういう考え方もあるわけでございます。その中におきまして、平成の大合併を行っていく上において、いわば行政改革という視点も捉えながら、将来の住民負担を減らしていくという観点も持ちながら、他方、地域の皆さんにとっての住民サービスがなるべく低下をしないようにという観点もしっかりと据えつつ、この大合併を行ったわけでございます。

 この平成の大合併については、市町村の規模が拡大したことによって、行財政基盤の強化が図られたという効果はある一方で、住民の声が届きにくくなったという声がある、こう指摘があるということを我々も認識しているところでございます。

 今後、合併をした市町村が一体感を醸成するような努力を続け、名実ともに一つの自治体となっていくことによって、市町村合併の効果がさらにあらわれていくものと考えているところでございます。

塩川委員 合併することで住民の要望にも応えることになる、一方でサービスがなるべく低下しないようにということですが、住民の声が届かないというデメリットもあるというお話がありましたが、全国町村会が、平成の合併をめぐる実態と評価という調査報告書を出しております。その中で、財政支出の削減の問題については、財政論としては確かに支出は減った側面があるが、これをメリットとしてそのまま捉えてよいのか甚だ疑問だとして、実際には、財政支出を節約しただけであって、地域の特性に合った行政を行うことで生じる効率性や従来のサービス水準などを犠牲にしながら財政支出を縮小しただけではないか、地域の特性に合った行政効率化や住民サービスを犠牲にした財政支出削減は合併のメリットとは言えないという声を紹介し、一方で、合併によるマイナス効果については、行政と住民相互の連帯の弱まり、財政計画との乖離、財政規律の低下、周辺部となった農村部の衰退、過大な面積を持つ市町の五点を指摘し、現場からは、議員や職員の削減で合理化は進んだが、行政に守られているという安心感が大きく後退をした、本庁舎がある地区から遠い周辺部が衰退をした、日常生活圏を超えた広域合併で、周辺部に行政の目が行き届かなくなったという声が上がっている。これが、全国町村会の調査報告の中身であり、まさに地方の、特に小規模団体の実態をあらわしているわけであります。

 そういったときに、さらなる市町村合併につながりかねない懸念が示されているのが、道州制の問題であります。

 この点で、全国町村会は、「繰り返し道州制が、新たな集権体制を生み出し、大都市圏への集中を招き、地域間格差は一層拡大し、市町村合併が事実上強制されることなど問題点が少なくないことを指摘し、懸念を表明してきた」、こういう意見表明も行っているわけであります。

 総理にお尋ねしますが、全国町村会は、この道州制推進基本法案の国会提出と道州制の導入に断固反対という意見を述べておりますが、こういう意見こそ受けとめるべきではありませんか。

安倍内閣総理大臣 道州制の導入は、国のあり方を根底から見直す大きな改革でありまして、その検討に当たっては、当事者である地方団体の声も聞きながら、国民的な議論を深めていく必要があると考えております。

 現在、与党において、道州制に関する基本法案について、基礎自治体のあり方も含め、地方団体とも丁寧に意見交換を重ねるなど、精力的な議論を行っているわけであります。

 こうした議論の中におきまして、さらに合併が強引に進められていくのではないかという議論があるわけでございますが、我が党の中におきまして議論しておりますのは、そういうことではなくて、国の権限、どういう権限を国は持つべきか、あるいは身近な行政とは何なのかという基本的な議論を深めながら、国がやるべきことを国がやっていき、そして道州という存在、さらには基礎自治体、こういう中においてそれぞれ適切な権限と責任と役割を持っていくべきではないかという議論がなされているところではないか、このように思います。

塩川委員 自民党の道州制推進基本法案の骨子案というのが示されているということですが、その中で、道州と基礎自治体の二層制ということがあって、基礎自治体についての理念などの定めが入っております。そこでは、基礎自治体は、都道府県及び市町村の権限をおおむねあわせ持ち、住民に直接かかわる事務についてみずから考え、かつ、みずから実践することができる主体とすることとあります。

 そうなりますと、都道府県の権限も受けとめることができるような市町村を想定しているということで、これでは、小規模団体ではそもそも無理じゃないのか、道州制というのがさらなる市町村合併を推進するものとならざるを得ないのではないのか、こういう声が上がるのは当然ではないでしょうか。こういう声にはどうお答えになりますか。

安倍内閣総理大臣 まさに今議論を進めているところでありますし、そもそも、この我々の法案を通した中におきまして、この国民会議の中において、今委員が御指摘になったような点も含めて、さまざまな課題について議論が深められていくのではないか、このように考えております。

塩川委員 まさにその点が問われているわけで、国民の議論という点でも、まさに全国町村会のような全国の小規模団体の中で、合併しないでも大いに頑張っているという団体が多数あるわけであります。そういった団体が、こういう道州制で、上からやるような改革によって、結果として市町村の独立性が損なわれるような、結果として住民自治が損なわれ、住民福祉の後退になりかねない事態が懸念されるという声こそ、しっかりと耳を傾けるべきであります。

 改めて、こういう道州制の導入そのものはやめるべきじゃないのか。この間、自民党が選挙政策で掲げている、こういう公約だからこそ、現場から厳しい危惧の声、懸念の声が上がっているわけですから。

 道州制の導入は、市町村合併にもつながり、住民自治の後退にもつながりかねない、こういう点に応えて、道州制の導入をやめる、このことこそ応えるべきではないのか、改めてお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 道州制につきましては、我が党におきまして、これはJ―ファイルにおいてお示しをしていることというふうに承知をしておりますが、我々、先ほど申し上げましたように、まさに国の、あるいは地方の行政のあり方を定める大改革でございますから、しっかりと議論を行っていく考えでありまして、政府としても、与党と連携をしながら、また、地方自治体の声にもしっかりと耳を傾けながら議論を深めていきたい、こう思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、道州制を進めていく中において、地域の希望に反して、上から強制的に合併を行っていくという考えは毛頭ないということは申し上げておきたい、このように思います。

塩川委員 結果として、権限移譲によってその受け皿づくりというのが強要されてきたというのがこの間のやり方であるわけで、こういったやり方そのものが大問題だ。道州制というのが、結果として、国家制度の大改変と同時に、地方分権などではなくて地方自治の変質につながる、そういう大問題だということを指摘し、この撤回を強く求めて、質問を終わります。

高木委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 質疑を続行いたします。佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 先ほどに続きまして質問をさせていただきます。みんなの党の佐藤正夫です。

 続けてやらせていただきますので、よろしくお願いします。

 総理にもいろいろお尋ねをさせていただきましたが、第三十次地方制度調査会において、指定都市に移譲されていない主な事務として七十三事務がありますが、この七十三事務を選定した根拠は何でしょうか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 第三十次地方制度調査会の答申におきましては、都道府県から指定都市にまだ移譲されていない主な事務として、七十三の事務を別表という形で提示いたしております。

 これは、既に地方分権改革推進委員会の第一次勧告によりまして都道府県から指定都市などへの移譲対象とされたのにもかかわらず、移譲されていない事務、こういう事務がございます。この事務を中心に、類似の性格を有する事務などといたしまして、都市計画、農地等の土地利用の分野ですとか、それから福祉、医療、教育などの対人サービスの分野におきまして指定都市に移譲されていない事務を、これは全般にわたりまして検討を行いました結果、合わせて七十三の事務がこれに当たるということで選定されたというふうに承知いたしております。

佐藤(正)委員 であるならば、また、第三十次地方制度調査会答申で移譲することを基本とすべきとされたのが六十四項目、そのうち、閣議決定に盛り込まれたものが四十一項目に減ったわけですね。さらに、実際に指定都市へ移譲するものが二十九項目になったということについては、どのような御見解なんでしょうか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 見直し方針につきましては、御指摘のとおり、六十四事項中四十一事項を掲載しているところでございますけれども、見直しに至らなかった差し引き二十三事項といたしましては、例えば、地すべり等防止法に基づく地すべり防止区域の管理事務などのように、国民の安全、安心に密接にかかわるもので、地すべり対策の実施箇所の周辺を含めて、指定都市の区域を超えて広域に影響が及ぶおそれがあり、専門性の高い技術が必要なものということで、地方側も最終的に移譲が困難であると判断したものでございます。

 いずれにしましても、見直し対象外にしたものについては、各府省と地方との間で調整を行った結果、最終的に関係者が了解をしているということになっております。

 また、四十一事項のうち、検討の結果、指定都市に移譲するものが二十九事項でございまして、現行法で対応可能なものが八事項ございます。

 そうすると残り四事項ございますけれども、これについては、例えば農地転用の許可基準の見直しですとか、パスポートについては事務処理特例制度をもっと活用できる、そういった形での整理をいたしております。

佐藤(正)委員 そしてまた、ダブるかもしれませんけれども、各府省で移譲を認めたにもかかわらず、都道府県と指定都市の間で調整がつかなかった、そして移譲が実現しなかった事項がどの程度あるのか、お伺いをしたいと思います。

末宗政府参考人 御指摘の、各府省が移譲を認めたものであって、都道府県と指定都市との調整がつかなかった事項というものはございません。

佐藤(正)委員 であるならば、都道府県と政令指定都市の間で調整がついたものの、各府省が移譲を認めなかった事項もないんですか、ありますか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 都道府県と指定都市の多数が移譲に賛成をしていたけれども、各府省との調整がつかなかった事項としましては二つございます。

 具体的には、急傾斜地崩壊に係ります危険区域の指定ですとか、あるいはダイオキシンの土壌汚染対策地域の指定といった項目でございますけれども、これについては、やはり所管省の方から、例えばダイオキシンの土壌汚染であれば、指定都市の区域を超えて広域に及ぶというようなおそれがあることですとか、土砂災害ですと高度な技術が必要だということで、最終的にも、地方側と調整をして、この二つは調整がつかなかったものだという整理でございます。

佐藤(正)委員 都道府県と政令市が話し合いをして、これはやれるよと言ったけれども、やれなかったのが二つあると。今の御答弁でいきますと、財政的なものと広域的な関係がある、なかなか難しいということなんですかね。

 それで、都道府県と政令市の方は、その方針に対して何か意見はありませんでしたか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたけれども、所管省が、指定都市の区域を超えて危険が及び得るとかいうような話については、地方団体にもその主張をお伝えしまして、内閣府も入って調整をした上で、今回においては、移譲についてはやむを得ない、移譲しないということで決着をつけたということでございます。

佐藤(正)委員 だから、大事なところは、今回においてはということで、まだこれは検討事項に、今後の検討には入るんですか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 今回の見直し方針に盛り込まれなかったものにつきましても、やはり一定の、各府省と地方との間で調整を行って、相互に納得した結果でございますので、一応の整理がついたものだと認識をいたしております。

佐藤(正)委員 では、今の二つは、もう完全に整理がついて、各都道府県、政令市も理解を示したというふうに考えていいんですかね。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、そのような理解でいるところでございます。

 ただ、その後において、例えば状況の変化がございまして、地方側の事務処理体制が変わってきているとか、いろいろな変化があれば、また、それを踏まえて地方からも御提案が出てくるとか、あるいは各省庁の対応が変わってくるようであれば、その検討は必要になってくる場合もあり得ると考えております。

佐藤(正)委員 わかりました。今現在は、今答弁があったように考えていらっしゃるということで理解をしたいと思います。

 次に、平成二十年五月の地方分権推進委員会の第一次勧告で、いわゆる県費の教職員の給与等についてですけれども、これまでずっと、私も政令市出身の県会議員でしたから、もう本当に長いこと、県と政令市でその給与の関係、人事権はもらったけれども給与は県が払う、これはどうもおかしいよということで随分議論をしてまいりました。

 先ほど井上貴博さんが、同じ福岡県でありまして、同僚で県議をやっておりましたのでよくわかるんですけれども、私は北九州、彼は福岡市なんです。北九州は、県議会議員と、それから政令市の市長を含めて勉強会を毎年やるんですよ。市の方からの県に対する要望書というのを毎年いただいて、今言った教職員のが毎年入っていたんです、ずっと。県の方でも、これは人事も行っているのに、給与だけ県が持っているというのは、どう考えてもおかしいんじゃないかということを随分言ってまいりました。今回、国の方の御努力によってこういう結果が出たということは、私は評価をしたいと思いますし、当たり前だと実は思います。

 しかし、先ほど申し上げた答申の中では、中核市もそれに含むべきではないかという答申が出ていたわけですが、今回中核市は入っておりません。その辺について御見解をお聞かせ願いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、昨年四月に、中央教育審議会に対しまして、今後の地方教育行政のあり方について諮問を行いました。そこでは、県費負担教職員の人事権及び給与負担のあり方について、今お尋ねのとおり御審議をいただいていたところでございます。

 その議論の中では、都道府県に人事権があることによって、教職員を育成すべき市町村の当事者意識が薄らぐという意見、あるいは、人事権を移譲して市町村で教職員を採用することによって、責任と権限を一致させるべきであるなどの意見がございました。

 他方、離島、中山間地域では、管理職の不足など広域人事が必要となる状況がありまして、町村単独で人事を行うことは困難ではないかという意見や、小規模の自治体で採用試験の業務を行うことは難しいのではないかといった意見もございました。

 こうした議論を踏まえまして、昨年の十二月の中央教育審議会答申におきましては、引き続き、小規模市町村を含む一定規模の区域や、都道府県において人事交流の調整を行うようにする仕組みを構築することを前提とした上で、小規模市町村等の理解を得て、中核市を初めとする市町村に人事権を移譲することを検討するというふうにした次第でございます。

 また、給与負担につきましては、今回の第四次分権一括法案におきまして、まずは、既に人事権を持っている指定都市への給与負担の移譲を行おうとしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、中核市への人事権、給与負担の移譲につきましては、一定規模の区域での人事交流の調整を行うようにする仕組みを含めまして、小規模市町村等の理解を求めながら、今後とも引き続き検討していきたいというふうに考えております。

佐藤(正)委員 今言われた広域的な問題、それから加配教員とかありますよね。これは今でも県が、加配教員、政令市でもやっていますよね。離島だとかそういうところは、県の方が加配教員は配置するとかいうことだと思うんですけれども、今のお話でいきますと、どれぐらいのめどで結論を出そうと考えていらっしゃるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 中核市への教職員の人事権、給与負担の移譲の問題につきましては、まずは、今回の法案でその人事権と給与負担の双方を担うことになる指定都市の状況をきちんと踏まえながら、その状況を見ながら今後検討を行っていきたいというふうに考えております。

佐藤(正)委員 ただ単に財源を移すのではなくて、税の方で今回は改革をされました。私はそれは本当に評価できると思います。そういう意味では、政令市と都道府県の場合は、一体となって、いわゆる財源問題も含めた議論がされて、結論が出たということ。やはり一番問題だったのは財源だったと思います。

 そこで、今回の自治法でも、やはり中核市を中心としてしっかりやっていけるように、ただ単に市町村の合併ではなくて、その中核市を中心として、いろいろな、お互いに協定を結んでやろうというふうにかなり前に進んだ、いろいろな要望を受けられる、いろいろな事情の中でできるというふうに今度はなっているんですね。

 そうすると、文科省においても、そういう実態は今後変わっていくんですよ。ですから、政令市の場合に、お金が行ったから結果を見ましょうといったって、もう結果はわかっていますよ。人事権とお金が来た方がいいに決まっているわけですから。中核市についても、これぐらいまでにどうする、こうするという、ある程度の今後のスケジュールみたいなものはないんですか。どういう場面、どういう場所で、どういうところで議論をして、そして国民にわかりやすく打ち出すとか、そういったものは考えていらっしゃらないですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 中核市につきましては、平成十一年の制度改革によりまして、教員の研修を実施する権限を既に付与しているところでございます。

 ただ、この教員研修の実態につきましては、中核市もさまざまな状況がございまして、きちんきちんと実施できているところと、まだまだ十分実施できていない部分がある自治体、かなり多様な実態にあるという状況でございます。

 そのような状況の中で、現時点で人事権を移すということにつきましては、今回、なかなか難しいのではないかという判断をさせていただいたわけでございます。

 当面、私どもといたしましては、中核市の教員研修など、実際の体制の問題をきちんと見ながら、今後の検討課題というふうに現在受けとめております。

佐藤(正)委員 ちょっとよくわからなかったんですけれども、明確なものはまだ示すことはできないということなんでしょうか。

 今だらだらと言われたんですけれども、私が聞いたのは、スケジュール感と、どういうところでそういう議論をされるんでしょうかという質問をさせていただいたんです。それには、答えがちょっと違っていたような気がしますけれども、もう一度お願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点において、実際の検討スケジュールを私どもはまだ持っておりません。また、仮に検討するとすれば、まずは中央教育審議会において審議をしていくというふうに考えております。

佐藤(正)委員 要するに、今の段階では具体的にはまだなっていないということがわかりました。ぜひ、具体的に進めていただくことを強く要望させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 今回の事務や権限の移譲で一番多かったのが、例えば理容師さん、美容師さんたちの養成所というんですか、そういうところが今まで厚生労働大臣が権限を持っていたのが都道府県になる、こういった免許にかかわるものがかなりたくさんあります。それで、それに関係する、当然、自治体は受けなきゃならない、それから、いろいろな諸団体もありますけれども、そういうところから何らか、いや、それは困るよというような声はありませんでしたか。

高島政府参考人 今回の権限移譲につきましては、看護師など各種資格者の養成施設等の指定、それから監督等の事務、権限を国から都道府県に移譲することにしております。

 これは、趣旨としては、身近な都道府県において養成施設の指定とかカリキュラム等の変更、承認等の事務が行われ、事業者の利便性も向上する、こういう観点が期待されるために行うものでございますが、基本的に、これらの移譲に当たりましては、自治体側からの要望というのを踏まえまして移譲を決定したところでございます。

佐藤(正)委員 自治体の方から要望があって全部やっていただいたと。となると、実は、栄養士と管理栄養士について自治体側は要望しているんですね、都道府県でいいじゃないかと。しかし、今回はそうではなかった。栄養士は認めるけれども、管理栄養士は違いますよと。

 今おっしゃったのは、そういった免許等に対するものについては、地方から声が上がったものは認めましたよというお答えでしたが、今私が申し上げた栄養士と管理栄養士についてはどんなようになっていますか。

高島政府参考人 お答えいたします。

 栄養士と管理栄養士の二つの資格がございますけれども、まず管理栄養士でございます。

 管理栄養士につきましては、これは基本的に文部科学省と共管という形になっております。

 今回の権限移譲につきまして、いろいろな施設を都道府県に移譲したわけでございますが、基本的に、文科省の指定する施設、学校が多いんですけれども、文科省の指定する施設につきましては、今回権限移譲の対象になっておりません。これは基本的には、大学の設置認可とあわせて一体として処理することが適当だという文科省の御判断のもとに、基本的には文科省関係については移譲されておりません。

 そういった中で、管理栄養士の施設につきましては、基本的に文科省と共管の施設になっておりますので、今回は移譲の対象にしておりません。

 管理栄養士の施設につきましては、自治体の方からも移譲の要請はございませんでした。

 それからもう一つの栄養士の方でございますけれども、栄養士につきましては、移譲の要請というのがリストに上がったこともございますが、これは基本的には、栄養士の養成施設とそれから管理栄養士の養成施設、これを一体として考えていく必要があるということで、今回、移譲の対象からは外れたところでございます。

 最終的な決定につきましては、十二月の閣議決定で、栄養士の養成施設の指定及び監督の都道府県への移譲につきましては、今後の管理栄養士養成施設と栄養士養成施設の配置状況を踏まえ、検討を進める、こういうことでまとめたところでございます。

佐藤(正)委員 管理栄養士については、都道府県の方から要望はなかったということですか。もう一度お尋ねをしたい。

高島政府参考人 養成の指定につきまして、以前、全体を取りまとめて検討した際に、栄養士につきましては都道府県からの要望はございましたけれども、管理栄養士につきましては、検討の対象として、都道府県からの要望というものは把握しておりません。

佐藤(正)委員 把握していないというのは、ないということなんですか。もう一度。なかったということですか。

高島政府参考人 自治体からの希望はございませんでした。

佐藤(正)委員 それについては、ちょっとまた今後調べたいとは思いますけれども、この調査課がつくってくれた資料によれば、実は、都道府県の方からも要望があったというふうになっているんですね。それが全くなかったということになっているのはどういうことかなと思いますが。

 これはなぜかというと、栄養士も管理栄養士も、いわゆる学校の施設で同じように受けているわけですよ。それを、栄養士は都道府県でいいですよ、管理栄養士は国でいいですよ、そうすると、一つの大学の中に二つまざってくるから、そういうのは困りますよねというのが都道府県の方から声が上がっていると思いますけれども、上がっていないんですか。

高島政府参考人 お答えします。

 先ほども申し上げましたけれども、管理栄養士につきましては、自治体からの要請というものはございません。

 ただ、今回ありましたのは栄養士の養成施設なんですが、これは今委員がまさにおっしゃいましたように、管理栄養士につきましては国、栄養士につきましては自治体という形で分けてしまうよりは、一体として指定を管理していくことが適当ということで、今回、栄養士につきましては対象から外したということでございます。

 今この管理栄養士の施設についてどうなっているかといいますと、これは全国的に、まだ十一の県で指定さえも行われたことのない、養成施設がない地域がございます。国としては、できるだけこの管理栄養士養成施設を指定していきたいという考えのもとに、栄養士の施設整備と、それから管理栄養士の施設整備を一体的に考えていきたい、こういうふうに考えております。

佐藤(正)委員 だから、二つに分かれたらややこしいよねという話なんですよ、本当のことを言ったら。そこを指摘されているわけですよ、実際は。でしょう。現実はそうですよね。だから、それについては今後検討するというようなことをおっしゃっているんじゃないんですか。

高島政府参考人 一体として考えていかなくてはいけないということで、今回、種々検討した結果、国として一体的に管理していこうということで今回の結論を得たところでございます。

佐藤(正)委員 わかりました。今の状況でいくと、これは譲れないというふうな、はっきり言ったらそういう答えだったわけです。きのう、レクの間でいろいろ打ち合わせをしたときにはちょっと違ったお話でしたので、どうなのかなと思って質問したら、きょうは全く違う答弁だったのでびっくりしましたけれども、今後またちょっと調べさせていただきたいと思います。

 次に、分権改革をずっとやってこられて、国民がゆとりと豊かさを実感できる社会の実現に資する、地方分権改革はそういう大きな目的があるんだということでありますが、総務大臣、今までやってこられて、これに対してどういうふうな評価をされていますでしょうか。

新藤国務大臣 地方分権の目的というのは、国民がゆとりと豊かさを実感できる、また、そういう社会を実現するためには、個性を生かし、自立した地方をつくる、自治体の自立性と、それから独自性を確保してあげる、これが重要だと思っているわけであります。

 その意味において、きめ細かく、より身近に住民のニーズを捉まえて、自治体がさまざまな権限を行使できるようにしよう、こういうことをやってきたわけでございます。

 例えば、未熟児の訪問指導等が市町村に移譲されることによりまして、乳幼児健診のほか、母子保健サービスとの一体的な事務処理、また窓口の一体化、これはこれまで違ったわけでありますが、今回の一次から二次にわたる分権改革の中で可能になりました。

 さらには、市町村の都市計画に係る県の関与の縮減、さらには都道府県から市町村への都市計画権限の移譲、こういったことによって、より地域の実情に沿った、そして地域の要望を踏まえた都市計画というものができるようになってきた。これも実は、今や当たり前のようにお感じになりますが、分権改革の成果であります。

 さらには、雪が降る時期に、子供の遊び場が少ない、こういう市民の声を受けて、独自の取り組みとして、基幹公園内に全天候型の広場と子育て支援施設を一体化した施設整備をした。これは、御案内のように、公園内には屋根をかけられる面積というのは決まっておりますとか、そういうものがそれぞれ自治体の取り組みによって権限移譲がなされてやってきた。

 結果として、そういう地区にお住まいの住民の声が生かされて満足度が上がれば、豊かさを実感できる、こういうことになってきたのではないか。

 二十年にわたってやっておりますから、今私たちの目の前で、身の回りで当たり前に起きていることは、一つ一つひもといていくと、分権改革の軌跡の中で実現していったものもたくさんあるのではないか、このように考えております。

佐藤(正)委員 そこで、大臣、今後のビジョンをお尋ねしたい、大臣のビジョンを聞かせていただきたいと思います。

新藤国務大臣 私は、この二十年によって、分権改革推進委員会で提言されたものは全てテーブルにのせました。特に、今回の第四次一括法で、初めて国から自治体への権限移譲がなされたんです。今までは、県から基礎自治体へとか、県から政令市へ、こういう分野だけだったんです。そして、国からの自治体への移譲というのは、提言されておりましたけれども、なかなか実現いたしませんでした。ですから、それらを全てテーブルにのせて、私どもとすれば、今実現できるものは全てお出ししたわけであります。

 そして、積み残しのものについては、整理をしつつ、一つ一つできるものについては取り組んでいく、この方針のもとで、さらに、今後の地方分権を進める上で、先ほども申しましたような、少子高齢化それから過疎化が進むとともに都市問題が増大していく、これを解決するためには、住民の発意とそれから地域の多様性、こういったものを認めようではないか。

 今後も、各団体から規制緩和の御要望が出てまいります。それは、団体として全国組織が取りまとめをして上がってきたものもございます。でも、それはかなりの平均値でないと要望できないわけですね。したがって、この地域ではどうしても欲しいが全国的に普遍性がないというものについては、これは提案募集方式という形でそれぞれの団体のものも受けとめようではないか。もちろんそれが認められるかどうかは、これは協議が必要です。

 それから、同じく権限を移譲するにしても、受け皿があって、やる気があって、それを受け入れたいという自治体が、そこに実現可能なような手挙げ方式というようなもの、これも今回入れさせていただきました。既に有償旅客の、社会福祉に使う、いわゆる福祉タクシーと言われているものですけれども、これは手挙げ方式の先駆けで、我々がまず一つやってみたことであります。

 そのようにして、千七百十八の市町村がございますから、そこにそれぞれの、千七百十八通りのものが可能となるような地域の活性化計画を考えていただく中で、地域がやりやすい、また、求めている権限については地域にきちんと使っていただけるようにしようではないか。こういう中から、もう一回繰り返し申しますけれども、個性を生かし、自立した地方をつくる、そこに定住があり、過疎の解決があり、都市問題の解決がある、私はそのように思っているわけであります。

佐藤(正)委員 大臣、今言われたことで、質問通告にないんですけれども、例えば都市の活性化をやる。コンパクトシティーとかいろいろありますよね。僕は、まさにこれからのまちづくり、それから地方が元気になるのには、今大臣が言われたように、その土地土地によって事情が全部違う、だけれども、規制は基本的には一斉にかけられている、ここにメスを入れて、ここに立ち上がる市町村がこれからは光が当たると。私も同感です。

 ですから、この間、経済産業委員会ですか、茂木大臣にも、私は、そういうまちづくりをやるところをバックアップできませんかという御質問をしたんです。そうしたら、言われたのは、これまでみたいに、まちづくりをやるときに、補助金ありきでやっているまちづくりは基本的には余りうまくいかないんですね。それはなぜかというと、補助金は、十分の十の補助金というのは余りないですから。そうすると、補助金欲しさにやっているというのも実はメニュー的にはあるんですよ。そうしたら、それはやっているときはいいんですけれども、終わった後で、それが逆に負担になって、町の負担に変わっていく。

 それよりも何よりも、まずこの規制を変えられれば、うちの町はもっと全国的にも違った特色のある町で人を引きつけられるんじゃないかな、こういうことを経済産業委員会で質問を差し上げたんですけれども、大臣はどのように。

新藤国務大臣 まさに、私たちが総務省としてテーマにしているのはそこなんであります。

 それは、総務省だけのまちづくり政策ではなくて、経産省においても、環境省においても、農水省においても、国土交通省においても、さまざまなまちづくりの制度がございます。これらを地域の活性化のプラットホームとして全政府が共有して、そこに各省が、実務担当者が入って、どこの町でどんな事業が行われているか、これをお互いに情報交換しながら集中的にできないか、また複合的にできないか、こういう調整を始めようというのが今般の安倍内閣の新機軸であります。今までやったことはございません。今年度から始めました。

 この課長たちの実務の会議のその上に、局長級の、方針を確認し合う会議があり、最終的に、彼らの作業をきちんと責任を持って実行させるための閣僚会議がある、こういう体制の中でまちづくりに横串を刺そうということです。

 それから、大切なことは、持続可能性のある事業でなければなりません。

 例えば、私たちが始めた地域の元気創造事業、これは既に三十五億円の交付金を出しましたが、それに対して同じ額を地域の金融機関から融資を受けられる事業であることを条件に交付するんです。ですから、金融機関から目ききを受けて、融資が受けられない事業には交付しないというのを原則にしてあります。結果として、三十五億の交付金に対して、四十四億の金融機関からの融資があります。これで投資効果は倍です。

 これらの事業が、大体、十年タームで考えて、年間で三億から五億円ぐらいの法人税の納税をしながら金融機関にお金を返していくことになります。この納税、三億から五億で国に税金が入ってくるということは、十年間で私どもが投下した、投資した資金は回収してくる。それをまた次の事業につなげていこう。私はこれをラウンドテーブルと呼んでいるわけでありますが、こういった仕事も始まっています。

 少し考え方を変えて、あくまでこれは地域の自立のために、だから、過疎地にあっても持続可能な事業があるんです。そういったものを進めていきながら、分権を確立して、それぞれの町が自分たちの力で自立できるような、そういう地域づくりをやっていきたい、私はそう考えております。

佐藤(正)委員 実は、総務省の方からその辺を、レクを、質問とは別にお聞きしたんですね。そうやって手を挙げてくれるのが九州の方にも何件かあったというお話を聞きました。

 ある意味では、夢がある、今までにないやり方だなと思って、私の町でもできないかなと。例えば、よくイノシシの問題とか、大変被害が起きているけれども、逆にそれを地元の何かいいものに使えないかな。そこに今言ったものを入れて、金融機関と一緒になってやって特産品をつくる、また、そこでレストランをやるとか、そういうのを少し私も考えたところなんですね。実は、イノシシの問題は井上貴博さんが一番詳しかったんですけれども、県議会の中で。

 そういったおもしろい、楽しい話を僕も聞かせていただきました。

 ぜひ、大臣、そういうものはもっと大きくPRを、表にどんどん出していただく。情報をぽっと聞いただけでは、なかなかわからない部分があると思います。ぜひ総務省を挙げて、いい結果が出て今取り組んでいるとかいうのを、PR、拡散をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

新藤国務大臣 例えば、今のイノシシではありませんが、対馬では、島おこし協働隊というのがありまして、我々の総務省の制度ですが、それで出かけていった人たちが、対馬のヤマネコを保護しようと。しかし、残念ながら、自然の淘汰の中でなくなってしまう。そういったものの皮の有効活用のためにデザイナーが入っていったり、それから、古民家を活用して、そこに観光客を誘致しようとか、それから、自然のヤマネコが生存できるような環境づくりをやりながら、それをまちづくりとしてやっていこうと全国の仲間が集まりつつあるとか、こういう話もございます。

 徳島県では、阿波尾鶏プロジェクトというのがありまして、これは、農地の休耕地に、今度はそこで徳島のお米をつくって、その米を飼料にして鳥を飼います、鳥のふんを化学的に処理をして肥料にして、こういうサイクルを回そうと。これはたしか、徳島、阿波銀行か何かから、四千万ぐらいの事業に五千万ぐらいの融資を受けている。

 どんどんそういう成功事例がふえているんです。私は、それをホームページだとかSNSで発信するとともに、そういった成功事例のための発表会をやってみようじゃないかと。自治体の皆さんが出てきて、自分たちはこうやって頑張ったんだと。これも励みになるし、それを聞いて刺激を受けて、我々だってできるんじゃないか、こういう人たちがどんどんふえてくれることを期待しておりますし、そういう音頭をとって段取りをするのが総務省の仕事だ、このように考えております。

佐藤(正)委員 時間が来ましたので終わりますが、ぜひ音頭をとってもらって。そういう話を聞くと、夢があって楽しいですよね。我が町でも何かできないかなと、そこでまた新たなアイデアが出る。それから、今、意外と若い人たちはいろいろなアイデアを持っていまして、しかし、それでもやはりお金がないというのが現実です。そういう意味でも、今の制度を上手に使える、成功事例をどんどん総務省が引っ張っていって出していただきたい、このことを期待して、質問を終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 引き続き、地方自治法改正案について質問いたします。

 最初に、調整会議のことについてお尋ねをいたします。

 今回の地方自治法の改正案は、第三十次の地制調答申を踏まえて提出をされました。

 お尋ねしますが、この指定都市都道府県調整会議を設置する目的は二重行政の解消というふうに承知しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 指定都市都道府県調整会議でございますが、これは、指定都市と都道府県の事務処理について必要な協議を行う場として設けるものでありまして、まさに御指摘のとおり、指定都市と都道府県の二重行政の解消を図るということを目的としているものでございます。

塩川委員 二重行政の解消を図ることを目的にしているということです。

 そこで、今回の法改正に基づく調整会議のスキームについてお尋ねをいたします。

 調整会議というのは、必ず設置されるということになるんでしょうか。

門山政府参考人 調整会議の設置でございますが、本改正案により設置することとされております指定都市都道府県調整会議は、この法律が施行されますと、いわば自動的に設置されるということになるものでございまして、具体的な開催の回数ですとか開催の頻度など、会議の運営に関して必要な事項は、これは地域の実情に応じて調整会議自身が定める、こういうスキームでございます。

 なお、現在も、指定都市と都道府県が協議を行うためにいろいろな会議を設置している場合がございます。そういう場合につきましても、その会議が、この改正案によって設けられる調整会議と同様の性質を持つということでありますれば、これを調整会議として位置づけるということも可能と考えております。

塩川委員 二重行政解消を図るという目的であれば、現行の会議においてもそれを調整会議とみなすということで、要は、今回の法改正で調整会議というのはもうあるものというふうになるということであります。

 そうしますと、調整会議について、要するに、指定都市の市長と都道府県の知事、その一方から要求があれば、他方が嫌だと言っても開くということになるわけでしょうか。

門山政府参考人 余り嫌だと言うことはないんだろうとは思いますが、仕組みといたしましては、一方から要求があったときには開かなければならない、そういう仕組みになっております。

塩川委員 一方から要求があれば必ず調整会議を開かなければならないということです。

 法案では、両者の一方から、協議を調えるため必要があると認めるときは、総務大臣に対し、協議を調えるため必要な勧告を行うことを求めることができるとあります。

 ですから、両者の協議が調わない場合には、結論を出すという方向で、両者の一方から総務大臣に勧告を出してもらうよう求めることができる。これが仕組みだと思いますけれども、確認したいと思います。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

門山政府参考人 指定都市の市長さんあるいは知事さんから、それぞれ議会の議決を経てでございますが、交渉が行き詰まったというようなケースにおきまして、総務大臣の勧告を求めるということがございました場合には、調整委員というもの、別途第三者の機関を任命いたしまして、総務大臣から勧告を行うことができる、こういうスキームになっております。

塩川委員 総務大臣は勧告を行うことができるという規定も含めてお答えいただきました。

 そこで言う勧告についてなんですけれども、この調整会議において総務大臣が行う勧告というのは、機関委任事務の廃止とともに国の権力的関与として地方自治法に導入された、地方自治法の二百四十五条一号のイ「助言又は勧告」、この勧告に該当するということでよろしいんでしょうか。

門山政府参考人 御指摘のとおりでございまして、自治法に規定されております関与の一形態としての勧告でございますが、ちなみに、これはいわゆる非権力的関与と分類されるものでございます。

塩川委員 このような勧告というのは、過去に例があるんでしょうか。

門山政府参考人 具体的な勧告として行っているものというのは、ちょっと直ちに思い浮かびません。承知しておりません。

塩川委員 大臣にお尋ねいたします。

 要するに、指定都市の市長と知事の一方が、二重行政解消が必要だということで言い出せば、他方が嫌だと言っても調整会議を開くことになりますし、そこで協議がまとまらなければ、議会の同意を経てという手続がありますけれども、総務大臣に勧告を求めることができる、総務大臣は勧告を行うことができる、こういう仕組みということになるわけですけれども、これは、イメージとすると、現在大阪で行われております大阪府市統合本部会議、こういうものの仕組みをいわばバージョンアップして国も関与して行うような、こういうスキームと捉えていいんでしょうか。

新藤国務大臣 大阪で行われているものだけではなくて、その他の地域でも、必要に応じてそういった調整のための会議というのは行われていると思います。先ほどどなたかの御質問にありましたけれども、市長と知事が何回会ったかという御質問が出ましたが、それ以前に、担当部局でのいろいろな調整が行われているわけであります。

 今般は、特に、この一括法の中で権限移譲が明確に、しかもたくさんのものが移ることが決まります、この法案が成立すれば。それに基づいて、当然、それらについては県から政令市への移行が予測されておりますから、それらの調整を行うために会議を設けよう、そして二重行政の解消のためにそういった調整会議を役立ててもらおう、これが目的であります。

塩川委員 調整会議において二重行政の解消を図るということですけれども、その解消すべき二重行政とはいかなるものなのかということであります。

 調整会議で協議を行う、解消すべき二重行政の対象というのはどういうものが想定されるのか、このことについて御説明いただけますか。

新藤国務大臣 これは、二重行政というものがそもそもあっていいわけがないわけでございまして、地方自治法においては、事務は重複しないようにする、こういう規定があるわけでありますね。

 そうした中で、例えば、よく起きるのは、指定都市と都道府県間の二重行政といいますと、多くは任意事務であります。箱物を、県立何とか会館と市立何とか会館と、県庁所在地でもあり政令市でもあればそういったものができてしまったり、中小企業政策であるとか金融の政策、さらには地球温暖化対策ですとか、そういったものが二重になっている、こういうようなものもございます。

 一方で、四次一括法によって、今回、権限移譲がなされるわけでありますから、その中での二重行政というのが仮に発生するとするならば、これは調整しなきゃいけない、こういうことでございまして、いずれにしても、これは前向きに、双方が積極的に連携に取り組む、こういう前提で調整会議を運営していただきたい、このように期待をしております。

塩川委員 任意事務、箱物中心にというお話があって、いわば法定事務の方は事務、権限の移譲という形で行っていくということで、任意事務を中心にこの調整会議において調整を図っていく趣旨ということであります。

 そこで、この任意事務を中心とした事務ですけれども、これは具体的にはどんなものが対象となっているのか、そこについて少し御説明いただけますか。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

門山政府参考人 お答えいたします。

 今大臣から御答弁あったものの具体的な例ということかと存じますが、例えば、都道府県と指定都市が同一の公共施設等を整備して重複している例として挙げられますものは、指定都市と都道府県がそれぞれ図書館ですとか美術館、体育館などの公共施設を指定都市のエリアに設置するといったようなケース、それから、箱物ではございませんけれども、施策の類似のものを実施する形としましては、指定都市と都道府県がともに同様に中小企業支援のための助成金を支出するといったようなケース、それから、例えば、指定都市と都道府県が同様の目的であります地球温暖化対策、同じような事業を実施するといったようなことが例として論じられたところでございます。

塩川委員 今もお答えいただきましたが、それに加えて、地制調の会合における資料で、具体的に都道府県と基礎自治体の二重行政の解消のための例示があります。そういうところでは、ハード重複型とソフト重複型ということで示されて、ハード重複型の具体例としては、公営住宅や図書館、博物館、体育館、プールの整備が挙げられ、ソフト重複型の具体例としては、中小企業支援、商店街支援、地球温暖化対策、環境教育、男女共同参画が挙げられております。これはそのとおりですね。

新藤国務大臣 そういったこともございます。そして、例えば、今言っていただきましたが、重複型については、もう何度も申し上げておりますから、重ねません。あわせて、分担型としては、例えば、都道府県と指定都市で新型インフルエンザに対応する判断が異なって、効果的な封じ込めの対策ができない事態が、おそれがある、そういったものを調整しなくてはならない。それから、ゲリラ豪雨対策として、指定都市が下水道整備を行ったが、下水道を接続する県管理の河川の整備が終わっていないですとか、こういったものを分担しつつ、そこに事務処理の調整の必要が出てくる、こういった問題について取り組まなければいけない、このように考えております。

塩川委員 具体例のお話がありました。

 必要な調整もあるでしょうけれども、そもそも、今回の調整会議で行う、二重行政の解消を図るという目的の規定というのは、自治法の二条の該当部分を引用しての話になっています。大臣も先ほどもちょっと御説明になりましたけれども、二条六項に競合回避の原則もあり、また十四項に能率の原則がある、こういう立場で、それがいわば二重行政の解消を図るという趣旨だと思うんですが、その点についてだけ確認をお願いします。

門山政府参考人 まさに今御指摘をいただいたとおりでございまして、地方自治法第二条第六項には、「都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当つては、相互に競合しないようにしなければならない。」という規定がございますし、同じく二条第十四項におきましては、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」という規定がございます。

 こういった規定の趣旨に基づきまして、二重行政の解消を図っていこうというものでございます。

塩川委員 能率的な行政を図るという趣旨だと思いますけれども、例えば、こういった二重行政と言われているようなものであっても、実際には、都道府県の県民にとって、あるいは指定都市の市民にとって、それぞれ必要なものというのはあり得るわけで、それを何か、二つあるから一つにしましょうという話ではないわけであります。例えば、公営住宅にとってみても、都道府県営住宅の役割もあり、また市営住宅の役割もあるわけで、単純にそれを合わせて減らせばいいという話ではないということであるわけです。

 私は、そういう点では、今回の二重行政解消を図るという調整会議の目的の規定が、二条六項と十四項を引用しているという形で規定をされているということが、結果として、こういう二重行政解消を口実にして、削減ありきの方向での調整を行うことになりはしないのか、そもそもの住民福祉の増進を図るという自治体の役割を後退させるものになりはしないのか、こういう懸念というのを持つわけですけれども、この点はいかがでしょうか。

新藤国務大臣 これこそは、まさに、選挙で選ばれた首長がそれぞれ双方を調整するわけであります。住民ニーズやまた住民の願いを無視するような形で政策、また整理の決定がなされるとは私は思っておりませんし、そういった意味で、これは積極的に、前向きな、よりよい方向に向けての調整が行われる、私はそのように承知をしております。

塩川委員 選挙で選んだとしても、白紙委任を市民や県民はしているわけではないわけで、そういう点でも、しかるべく物を言うということは当然の基本であります。

 そういったときに、そもそも地方自治法というのは、第一条において、目的の一つとして、「民主的にして能率的な行政の確保を図る」と書かれているわけです。ですから、民主的と能率的、これはなかなか二律背反的な面がありますけれども、やはり両方追求をするんだという趣旨があるわけです。

 ですから、その点で、能率的という以上は、民主的という点がどうなっているのかということがまさに問われる、背中合わせの関係として問われてくるという問題で、今回の調整会議の規定においては、その目的としてまさに能率的の側面しか掲げられていないということが、要は、結果として、自治体が住民の意思に基づき、その責任において民主的に運営されなければならないのに、能率の原則の方だけを取り出して具体化を図るということが、住民不在、住民軽視の、行政サービスの後退をもたらすことになりはしないのか、こういう懸念となるわけですけれども、この点についてはいかがですか。

新藤国務大臣 まさか委員は、だからこういう会議は設けなくていいんだというふうにおっしゃっているのではないと思います。そうではなくて、今御心配のような、そういう住民ニーズがありながら、そのサービスが低下することがあってはならない、こういうことを御質問なのだと思います。

 それは、そこの地域の住民の願いであり、また、住民の皆さんの福祉の向上を願う、これは議会、また首長の願いでもあります。そして、白紙委任をしたわけではないといいながら、その首長の決定というものは常に市民にさらされているわけであります。

 そうした民主的な運営の中で、また民主主義のルールの中で、私は、こういったものが健全なチェックを受けて、そしてよりよい結果が出るもの、このように確信をしております。

塩川委員 「民主的にして能率的な行政の確保を図る」、一方だけ取り出して行うような調整会議のそういう規定ぶりというのが、私は、やはり民主的という側面を欠落することにつながりかねないということを率直に危惧として申し上げておくものであります。

 次に、広域連携の関係について質問いたします。

 地制調答申等に基づく新たな広域連携の仕組みについていろいろとこの間取り上げられております。大臣が提案されたような仕組みも含めて挙げられているわけですが、そういう点では、地方中枢拠点都市圏があり、条件不利地域の市町村と都道府県との連携があり、三大都市圏の市町村間の連携、そして、この間、五年来行っています定住自立圏ということであります。そういう支援スキームとして、連携協約、事務の代替執行というのが今回図られようとしております。

 そこで、地制調答申でも挙げられております集約とネットワーク化なんですけれども、この集約とネットワーク化というのはいかなるものなのかについて、簡単に御説明をいただけますか。

門山政府参考人 お尋ねにございました、連携協約の考え方のベースとなっております集約とネットワーク化ということでございますが、これは、平成二十年五月に定住自立圏構想研究会において提唱されまして、今回の第三十次地方制度調査会の答申におきましても示されている考え方でございまして、これからの人口減少、少子高齢社会におきまして住民生活に必要なさまざまな都市機能、これを圏域の基礎自治体が役割分担するとともに、圏域全体のために活用するということを意味しております。

 より具体的に申し上げますと、圏域の中心となる都市、ここの都市機能の集積を有効に活用するという観点から、中心となる都市は、近隣の地域の住民の分も含めまして、圏域全体の暮らしに必要な都市機能を集約的に整備する。それとともに、近隣の市町村の地域に確保すべき機能がございます、生活機能ですとか農林水産業、あるいは豊かな自然環境等、こういったものを近隣市町村の区域に確保し、その間で連携、交流していく。こういう考え方だと承知いたしております。

塩川委員 そこで、地制調答申では、三大都市圏の市町村における集約とネットワーク化について、水平的役割分担の取り組みを促進するための方策を講じるべきと書かれております。

 これは、具体化というのはされているんでしょうか。

門山政府参考人 三大都市圏の地域につきましては、地方制度調査会の答申においても書き分けておりまして、三大都市圏の場合は、地方圏と違いまして、どこが中心でどこが周辺地域というように、なかなかそういう捉え方がしにくいという面があり、現実に余り連携が進んでいない面があるということがございます。

 そういうことで、水平的な連携あるいは双務的な連携というものは、これからの時代、やはり三大都市圏エリアにおいても必要だろうという考え方におきまして、それをより安定的に続けられるようにするということで、連携協約という仕組みを使えるようにしようということでございます。

 現在、もう既に、水平的、双務的な連携というのは実際されているところももちろんたくさんあるわけでございますけれども、そういったものが継続的、安定的にできるような仕組みをプラスしようというのが、今回の制度改正の考え方でございます。

塩川委員 それから、小規模な市町村などで処理が困難な事務が生じた場合について、地制調答申では、都道府県による補完も考えられるとあります。

 そこでお尋ねしたいのが、現時点で、小規模な市町村などで処理が困難な事務というのは生じているんでしょうか。

門山政府参考人 小規模な市町村で、よく、処理が困難といいますか、処理するのに困っている事務として聞きますのは、例えば、福祉の分野などにおきまして、あるいは道路などの公共施設の維持管理などにおきまして、専門性を要する分野というのがございます。そういった分野につきまして、人材を確保してきちっとした行政を行っていく上でなかなか難しい面があるといったようなことは、よく具体的にお伺いすることはございます。

塩川委員 要するに、いろいろ専門性を有する業務というのはなかなか大変だということもあるでしょうけれども、それを現行のスキームでできないのかということなんですけれども、それはどうですか。

門山政府参考人 現行のスキームにおきましても、小規模な市町村独自でそういったものを努力してやっておられるところももちろんあると思いますし、近隣の町村あるいは近隣の都市と連携してそういったものに対処しているというケースももちろんあるわけでございますが、今回の地方制度調査会答申では、それに加えまして、例えば、小規模な町村の中でも、近隣地域に都市が存在しないですとか、あるいは山間地域にあるといったような形で都市との広域連携の仕組みがなかなか使いにくいところ、こういったところについては、都道府県に補完的な役割を果たしていただく、こういうことも選択肢としてあるだろうということで、都道府県の補完の役割というものが使えるような制度を考えるべきだという答申がされたわけでございます。

塩川委員 地制調の答申も踏まえて、総務省において、基礎自治体による行政サービス提供に関する研究会報告書がまとめられています。

 そこで、フルセットの行政からの脱却という言葉が取り上げられていますけれども、このフルセットの行政からの脱却というのはいかなるものなのかについて御説明をいただけますか。

門山政府参考人 フルセットの行政からの脱却という言葉遣いにつきましては、第三十次の地方制度調査会答申を踏まえまして総務省内に設置いたしました研究会でございます、具体的には、基礎自治体による行政サービス提供に関する研究会というところの報告書において言及されたものでございます。

 その意味するところは、人口減少社会にあっても、地域を活性化して経済を持続可能なものとして、要するに、国民が安心して生活できるようにしていくためには、単独の市町村で、基礎自治体に求められているあらゆる公共施設ですとかあらゆるサービスを全部そろえていくということ、これがそこで言っているフルセットの行政ということでございますけれども、そういうことというのは非常に困難になっている、ほとんど無理になってきているということから、そういう考え方から離れるという意味で脱却という言葉を使っております。

 そういう考え方から離れて、施設ですとか事務の性格、あるいは地域の現状に応じまして市町村間で施設を共有する、あるいは共用するといったようなことも含めて連携していく、こういう考え方が大事だということを指摘されたものというふうに考えております。

塩川委員 公共施設、サービス、一連の業務を担うフルセットという考え方から離れる、そういう趣旨として広域連携を進める、そういう考え方としてフルセットの行政からの脱却ということを使っているということです。

 この報告書を少し引用しますと、「市町村が単独であらゆる公共施設等を揃えるといった「フルセットの行政」から脱却し、市町村間や市町村・都道府県間における新たな広域連携を推進することで、市町村が基礎自治体としての役割を持続可能な形で果たしていけるようにすることが必要である。」

 「三大都市圏の市町村が単独であらゆる公共施設を更新し、フルセットで揃えるのは難しいことから、市町村間で連携して、維持・整備する公共施設を適切に分担・集約化し適正配置を進めるという、市町村の区域を越えた公共施設の総合的かつ計画的な管理が有効である。」

 「各府省で取り組んでいる施策の中で、新たな広域連携の推進に資するものについては、関係府省が連携して集中的に支援措置を講じていく必要がある。例えば、「地方中枢拠点都市圏」を共通のプラットフォームとし、圏域で取り組む事業については、関係府省で実施している国庫補助事業において優先採択を行うべき」、こういうことが記されています。

 特に、最後のところでは、関係府省の連携で新たな広域連携を進めるようなところについては、ぜひ国庫補助事業を優先採択すべきだということが取りまとめとして書かれているわけですけれども、こういった支援措置の具体化というのは行われているんでしょうか。

新藤国務大臣 その一面を、性格を有しているのが、私どもが設けました地域活性化プラットホームであります。これは、こういった広域連携を考える中で、地制調のこういう御提言がありました。私たちはまた、地域活性化という観点からさまざまな施策を持っています。いろいろなところでこういったものを応用していけるのではないか。今委員の御指摘の部分は、まさにこのプラットホームにおいてやるべし、このように我々が目的にしているところでございます。

塩川委員 モデルケースの募集も行って、これから選定も行う。そういう点では、パッケージで具体的な支援を行っていこうということですから、各府省の一連のメニューを挙げながら、それを具体化していこうじゃないかということです。

 そこで、大臣にお尋ねしたいのが、昨年の三月二十六日の第七回経済財政諮問会議です。そこで、地方分権改革などの議論も行われて、民間議員の方が提案をされておられます。高橋進氏が民間議員を代表して提案をされた中に、コンパクトシティーという発想と定住自立圏構想をさらに融合していくような取り組みが地域でできると活性化につながるのではないかと指摘をし、その後、発言をされた新藤大臣は、今すばらしい提案をいただいたというふうに述べておられます。

 しかし、コンパクトシティーというのは、都市機能の周辺部での撤退と中心部への再編集約で、一つの自治体で行っている事業ですから、それを連携を伴う定住自立圏構想と融合するというのは、周辺自治体におけるインフラの撤退であり、さらなる市町村の合併にもつながるような、こういうような融合の取り組みになりはしないのか、それは、すばらしい提案というふうにいかないんじゃないかと思うんですが。

新藤国務大臣 私が申し上げましたのは、コンパクトシティーというのは、これは中心市街地活性化におけるコンセプトです。ですから、まずは、その市町村の中心市街地を活性化させる。それは、コンパクト化して利便性を高めるとともに、そこにさまざまな集積ができるでしょう、そういう拠点機能を持った地域をつくることと、そういったものを組み合わせた、もっと大きな定住自立圏という、コンパクトシティーと別途あるコンパクトシティー、こういったものを連携させながら、その間の市町村についてはさらに独自性を発揮していただく。トータルとしてそこの圏域が、魅力が上がり、そしてそこの活性化が促されるんではないか、こういうふうに思っているわけなんであります。

 ですから、何か一つの枠に入れようということではなくて、さまざまなものをメニューとしてそろえながら、自治体の住民の発意と多様性をきちんと確保することによって、私は、地域を活性化できるのではないか、こういう考えの中で、高橋先生がお話しされたことは私の考えと非常に合致している、こういう思いで申し上げたわけでございます。

塩川委員 コンパクトシティーというのは、もともと、人口増加の時代において、一つの都市において、中心部に住んでいる方々が郊外に移転をする、あるいは中心部にあった公共施設が郊外に移転をする。それが、人口減少時代において、それを改めて郊外にインフラ整備ということでは効率性の問題もあるだろうということで、中心部の機能を高めることによって、いわば行政サービスの提供そのものを図っていこうという趣旨であるわけです。

 それを定住自立圏構想と融合という形で重ねてしまうと、結局は、郊外というのは、では、周辺自治体の話ですかという話になるわけですよ。そんなことであっては当然ならないわけです。

 でも、誤解を招くようなこういう指摘であるわけですから、そこについてはきちんと言っていただかないと。

新藤国務大臣 誤解を招くのではなくて、誤解されては困るわけでございまして、コンパクトシティーは、そもそもが、あれは商店街の高度化、そして大規模店舗が郊外に出店することによって、町の中が抜かれていってシャッター街ができる、そして経済の成長が低成長になったときに、その分散された町がその中で収拾できなくなってしまう、これを解決するためのものであります。

 もう一回言いますけれども、コンパクトシティーというのは幾つもつくれるんです。定住自立圏の中に一カ所のコンパクトシティーではないんです。それから、コンパクトシティーのエリアと定住自立圏のエリアは全く違うもの、定住自立圏の方がはるかに広いものを考えていただいた方がいいと思います。

 ですから、その大きな定住自立圏というエリアの中に幾つかの拠点をつくるという意味において、コンパクトシティーの手法は有効ですよ。そして、その拠点となるコンパクトシティーとコンパクトシティーをつなぐ間の郊外部については、それぞれの魅力づけを高めるとともに、連結性をよくする道路ですとか鉄道ですとか、そういったもののサービスをしなければならないでしょう。また、その間の医療サービスとか福祉サービスは、そういったものを連携しながら、合理的な、そして皆さんに行き届いたサービスができるようになるのではないでしょうか。

 ですから、定住自立圏の構想の中の要素の一つとして、コンパクトシティーの構想も生かしましょう、このように私は申し上げているのでございます。

塩川委員 それは、大臣のコンパクトシティーの理解というのが不十分だと言わざるを得ません。

 コンパクトシティーというのは、大型店の郊外規制と中心部の融合の策だけじゃないんですよ。その面も、もちろんありますよ。しかし、もともと、中心部にいた人が郊外に住む、中心部にあった公共施設が郊外に展開をする。これが、人口増加時代から転換をしているような今で、そのままでいいのかということから生まれてきている考え方ですから。

 こういう商業施設の集積、集約化を図るという側面と同時に、公共施設やさらには住居機能も含めて、中心部の必要な機能を確保していこうじゃないかということがそもそもの出発点であるわけで、多面的な話であるわけですから、そこはやはりきちっと分けていただかないと。

 だから、そういう点では、郊外における公共施設の展開だとか住宅についても、それを中心部に持ってこようというのが、この融合という名のもとで、定住自立圏構想と重なるかのような、こういう物言いをすばらしい発想と言うのは、これはやはり改めていただくべきだと思います。

新藤国務大臣 同じようなことを考えているんだと思うんですが、委員の方が、それは理解がどれだけされているのか、お互いの見解が違うところだと思いますね。

 そもそもは、あれは中心市街地活性化法の改正と都市計画法の改正で始まりました。ですから、中心市街地の方は、商店街の郊外流出に対して、どのように中心市街地を維持するかということであります。それから、都市計画は、まさに委員が言ったように、郊外にどんどんと伸長していった都市が、経済が低成長になった時点でこれを維持できなくなっている、このことを解決させなければいけない。両方の側面があるんです。これが法律の、たしかあれは平成十五年か十六年ぐらいの改正だったと思いますけれども、そういうときに始まったことです。今委員がおっしゃっているのは、その後の事象を捉まえて、それに後追いで説明をされているように私は感じるわけなのであります。

 いずれにいたしましても、これがどちらがいいということではありません。定住自立圏の中に必ずコンパクトシティーの中心市街地があるかどうかもわかりません。でも、いろいろなツールとしてメニューをそろえて、いろいろなものを融合させることで新しいまちづくりができるのではないかというのは、そういうケースがあってもいいと思いますし、そういう観点から、新しいまちづくり、地域活性化ができることは我々は大いに期待できるのではないか、こういうことで思っているわけであります。

塩川委員 大臣が説明されているコンパクトシティーの理解というのは、まちづくり三法の話に限られているんですよ。もともと大店法があって、商業調整を行ってきた。それが、アメリカの要求もあって廃止をされることによって、まちづくり三法ができました。

 これは、今後は、商業集積については商業調整という形ではなくてゾーニングでやりましょうね、都市計画法でやりましょうね、中心部のにぎわいについては中心市街地活性化法を行い、大型店の出店そのものについては環境への影響への配慮などという形で大店立地法で行うという三法で行う仕組みなわけですよ。それはあくまでも商業施設についての仕組みなんです。

 でも、コンパクトシティーは、それを当然含みながら、公共施設や居住空間や、このことも含めて行うという話であるわけで……(新藤国務大臣「それは、その次の話ですよ」と呼ぶ)いやいや、コンパクトシティーそのものはそういうものですよ。そういうもので今使われているわけですから、それは、定住自立圏構想と重ねるようなことがあれば、当然、誤解が生まれるのは当たり前だということを重ねて申し上げておくものです。

 残りの時間が余りありませんけれども、では、連携協約について何問かお尋ねして、きょうは終わりにしたいと思います。

 連携協約については、連携協約を締結する自治体の組み合わせというのは多様だと思います。都道府県同士、あるいは市町村同士、都道府県と市町村、これはいろいろあり得ると思うんですけれども、その辺について説明をいただけますか。

門山政府参考人 連携協約の仕組みは、できるだけ柔軟な、広域的な連携ができるようにという考え方でございまして、連携の主体といたしましては、都道府県同士ということもございますし、市町村同士ということもございますし、市町村と都道府県ということもございます。また、近接した自治体同士というケースもございますし、離れた自治体というケースもある。いろいろな局面に柔軟に使っていただける仕組みということで設計しているものでございます。

塩川委員 この二百五十二条の二第五項に、「公益上必要がある場合においては、都道府県が締結するものについては総務大臣、その他のものについては都道府県知事は、関係のある普通地方公共団体に対し、連携協約を締結すべきことを勧告することができる。」とありますが、この公益上必要がある場合とは、どのような場合を想定しているんでしょうか。

門山政府参考人 改正法案の二百五十二条の二第五項に規定いたしております、公益上必要がある場合というのは、例えば条件不利地域の市町村におきまして、近隣の市町村との広域連携という手法によることが困難である、そうであるにもかかわらず、都道府県との連携がうまくいかないといったようなことで連携協約が締結されていないということが起きて、それが住民の方々にとって看過できないような不利益が生じている場合、こういったような場合が考えられるということでございます。

 より具体的に申しますと、例えばでございますけれども、将来、人口減少が急激に進んだというようなことによりまして、単独の自治体では、日常的な医療ですとか教育といった住民生活に不可欠なサービス、こういったものが維持できなくなるような状態が生じたような場合が想定されるものかと思っております。

 ただ、具体的に勧告を行う必要があるかどうかにつきましては、個別の事案に応じまして、総務大臣または都道府県知事がその時点で判断するということになろうかと存じます。

 ちなみに、この勧告でございますが、現在ございます、事務の共同処理の制度であります事務の委託ですとか、機関の共同設置、あるいは協議会の設置につきましても、同様に勧告の規定というのがございます。

塩川委員 時間が参りましたので、きょうはここまで。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、地方自治法の一部を改正する法律案に対し、三宅博君外二名から、日本維新の会提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。三宅博君。

    ―――――――――――――

 地方自治法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三宅委員 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本維新の会を代表いたしまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、本修正案の趣旨について御説明申し上げます。

 今回の改正案につきましては、中核市制度と特例市制度の統合、地方公共団体が相互に連携する際の基本的な方針等を定める連携協約制度の創設など、地方分権を推進する我が党の方針と基本的に合致しており、評価できるものであると考えております。しかしながら、その内容については、極めて不十分であると断ぜざるを得ません。

 指定都市の区長については、本来であれば区長公選制を導入し、公選区長に対しては最大限の権限移譲を行い、完全な人事権や予算編成権等を認めると同時に、そのチェック機能としての議会を設置すべきであると考えます。

 今回の改正により、区の役割の拡充を図るというのであれば、地域の事務を総合的に責任を持って担うためにも、地域の声に耳を傾け、それぞれの地域の実情に応じたサービスの充実を図るためにも、総合区長の民主的正当性が不可欠であると考えます。住民がみずからの意思で総合区長を選び、みずからの意思で解任することを選択できる仕組みが最低限必要であり、それに伴い、総合区長に対して、区において選出された、地域や住民に密着した議員による民主的統制を働かせる必要があると考えます。

 本案は、以上の方針に基づき、政府提出の地方自治法改正案に対して修正を求めるものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、指定都市は、条例で、総合区長を選挙人が投票により選挙することとすることができるとし、この場合において、当該指定都市は、全ての総合区長について選挙することとしなければならないとしております。

 第二に、指定都市の市長は、選挙された総合区長について、議会の同意を得て、当該総合区の選挙管理委員会に対し、その解職の請求をすることができることとし、当該請求があったときは、選挙管理委員会は、これを選挙人の投票に付するものとし、当該請求に係る解職の投票において過半数の同意があったときは、当該総合区長はその職を失うこととしております。

 第三に、総合区長を選挙することとしている指定都市の議会は、条例で、区常任委員会、すなわち、常任委員会であって各総合区に係る事務がその部門に属するものをそれぞれ置くものとすることとし、区常任委員会の委員は、当該総合区の区域を選挙区とする議員のうちから、これを選任することとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十四日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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