衆議院

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第18号 平成26年4月24日(木曜日)

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平成二十六年四月二十四日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 高木 陽介君

   理事 石田 真敏君 理事 土屋 正忠君

   理事 橋本  岳君 理事 福井  照君

   理事 山口 泰明君 理事 原口 一博君

   理事 三宅  博君 理事 桝屋 敬悟君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      伊藤 忠彦君    今枝宗一郎君

      上杉 光弘君    大西 英男君

      門山 宏哲君    川崎 二郎君

      木内  均君    工藤 彰三君

      小林 史明君    清水 誠一君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      田所 嘉徳君    中谷  元君

      中村 裕之君    永山 文雄君

      長坂 康正君    福山  守君

      松本 文明君    三ッ林裕巳君

      務台 俊介君    山口 俊一君

      奥野総一郎君    黄川田 徹君

      近藤 昭一君    福田 昭夫君

      井上 英孝君    上西小百合君

      新原 秀人君    中田  宏君

      百瀬 智之君    濱村  進君

      佐藤 正夫君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   総務副大臣        上川 陽子君

   総務副大臣

   兼内閣府副大臣      関口 昌一君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    伊藤 忠彦君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)

   (内閣府地方分権改革推進室次長)         末宗 徹郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)

   (内閣府地方分権改革推進室次長)         新井  豊君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  門山 泰明君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         本東  信君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         森  昌文君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局公共交通政策部長)     藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       加藤 久喜君

   参考人

   (東京大学名誉教授)

   (地方公共団体情報システム機構理事長)      西尾  勝君

   参考人

   (全国知事会副会長)

   (埼玉県知事)      上田 清司君

   参考人

   (大阪市長)       橋下  徹君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     工藤 彰三君

  西銘恒三郎君     三ッ林裕巳君

  湯川 一行君     永山 文雄君

  馬場 伸幸君     井上 英孝君

  渡辺 喜美君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     瀬戸 隆一君

  永山 文雄君     助田 重義君

  三ッ林裕巳君     務台 俊介君

  井上 英孝君     馬場 伸幸君

  佐藤 正夫君     渡辺 喜美君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     湯川 一行君

  務台 俊介君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     穴見 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     西銘恒三郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六六号)

 行政不服審査法案(内閣提出第七〇号)

 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七一号)

 行政手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する三宅博君外二名提出の修正案並びに内閣提出、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 本日は、両案及び修正案審査のため、参考人として、東京大学名誉教授・地方公共団体情報システム機構理事長西尾勝君、全国知事会副会長・埼玉県知事上田清司君及び大阪市長橋下徹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から本日のテーマに沿った御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、西尾参考人、お願いいたします。

西尾参考人 西尾勝でございます。

 私は、平成六年以降現在に至るまでに設置されました累次の地方制度調査会の委員を務めてまいりました。また、第一次の地方分権改革では地方分権推進委員会委員を、そして第二次の地方分権改革では地方分権改革推進委員会委員長代理を務め、第一次、第二次の地方分権改革のいずれにも深くかかわってまいりました。

 まずは、第三十次地方制度調査会の審議経過と答申の骨子について申し述べます。

 私が会長を務めました第三十次地方制度調査会に対する総理からの諮問事項は三つありました。このうち、議会のあり方を初めとする住民自治のあり方につきましては、平成二十三年十二月に地方自治法改正案に関する意見を取りまとめました。これは平成二十四年の地方自治法改正に既に結実しております。

 平成二十四年一月以降は、我が国の社会経済、地域社会などの変容に対応した大都市制度のあり方及び東日本大震災を踏まえた基礎自治体の担うべき役割や行政体制のあり方という二つの諮問事項について調査審議を行いました。

 平成二十四年十二月には、大都市制度についての専門小委員会中間報告を取りまとめ、平成二十五年一月以降は、基礎自治体に関する議論等を行いました。平成二十五年六月、これらをまとめた、大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申を安倍総理に提出いたしました。

 今回の答申は、人口減少社会への対応が主要なテーマとなっております。今後の急速な人口減少、居住地域の点在化、単独世帯の増加といった社会情勢の変化に伴いまして、医療、介護、教育、交通、災害対応などなどの分野で基礎自治体の役割がふえるとともに、住民一人当たりのコストも増大していきます。

 このような中、人々の暮らしを支え、経済を牽引していく核となる都市やその圏域を戦略的に形成し、その上で全国の基礎自治体が人々の暮らしを支える対人サービスを持続可能に提供していく仕組みが必要だという認識に立ちまして、大都市制度の改革や基礎自治体の行政サービス提供体制等について答申をしたところでございます。

 大都市制度に関しましては、横浜市や指定都市市長会が提唱する特別自治市構想や、大阪府市を統合するいわゆる大阪都構想など、各方面からさまざまな提案がなされておりましたが、専門小委員会においては、それぞれの関係者からのヒアリングを行いました。

 いずれも、おおむね、指定都市と都道府県のいわゆる二重行政の解消、指定都市内部における住民自治の拡充という二つが主要な課題となっておりました。

 いわゆる二重行政の解消に向けましては、県費負担教職員の給与負担など、指定都市、道府県の多くが移譲に賛成している事務や、都道府県条例で移譲実績のある事務について、移譲を基本とし、同種の事務を処理する主体を極力一元化することが必要だとしております。

 このほか、指定都市と都道府県が同種の任意事務等を調整する協議会の設置、協議が調わない場合の何らかの裁定等の仕組みが必要だと指摘しております。

 人口規模が大きい指定都市におきまして、住民に身近な行政サービスについて、住民により近い単位で提供するいわゆる都市内分権につきましては、区の役割の拡充、区長に独自の人事、予算等に関する権限の付与、区長を市長が議会同意を得て選任する特別職にすることなどを選択可能にすべきだとしております。また、市議会内に、一または複数の行政区ごとの常任委員会を設置すべきだとしております。

 今回の法案では、区の事務を条例で定めることとするほか、総合区の制度の創設、指定都市都道府県調整会議の設置、指定都市都道府県勧告調整委員の制度等、おおむね答申に沿った内容が盛り込まれており、評価しているところでございます。

 区常任委員会の設置につきましては今回の法案には盛り込まれておりませんけれども、地制調における議論の過程では、区に議会を置くという案もありました。選挙に伴う追加的費用に対する懸念等も考慮いたしまして、現状において実現可能な案として、市議会内に、区選出市議会議員を構成員とし、一または複数の区を単位とする常任委員会を置く案を示したものでありまして、できれば法案に盛り込んでいただきたかったと私は考えております。

 今回、諸般の事情によりまして法案に盛り込まれなかったことにつきましては、やむを得なかったのかというふうに思われますけれども、人口規模の大きい指定都市において、区の行政に対し住民の声を適切に反映できるようにする上で、議会の役割は極めて重要であると思っております。

 この点につきましては、指定都市の議会関係者の理解が重要であります。現行法のもとでも、条例によりまして、区単位の常任委員会の設置は可能でありますので、各団体の賢明な御判断に期待しております。

 また、区長公選制につきましては、地制調におきましても、住民自治の拡充のために必要であるとする意見に対しまして、行政改革の観点から不適当なのではないかという意見や、公選により市長と別に選ばれた者を市長の補助機関である区長といたしますと、市長と区長の党派が異なることになる可能性もありますので、指定都市全体の都市経営を一体的に行うという観点から不適当ではないかとする意見などがありました。

 そこで、これらの意見を踏まえまして、答申におきましては、区長に独自の権限を持たせる場合には、区長について、市長が議会の同意を得て選任する特別職とすべきであるとし、区長を公選とすべきかどうかについては、引き続き検討する必要があるとしております。

 地制調における調査審議が進む中、これとは別途に、平成二十四年八月、国会におきまして、七会派の共同提案により、大都市地域における特別区の設置に関する法律が成立いたしました。このため、地制調では、同法において総務大臣との協議事項とされている事務分担、税源配分及び財政調整を中心に、同法に基づき特別区を設置する際に留意すべき点を整理したところでございます。

 答申では、道府県での特別区の設置によりまして国や他の地方自治体の財政に影響が生じないように特に留意すべきであること等を指摘しております。

 指定都市市長会から御提案のありました特別自治市構想につきましては、全ての都道府県、市町村の事務を処理することによる、いわゆる二重行政の完全解消、効率的な行政体制、政策選択の自由度向上に意義があるということは認めつつ、何らかの住民代表機能のある区の必要性、警察事務の分割による広域犯罪対応への懸念、全ての道府県、市町村税を賦課徴収することによる周辺自治体への影響といった諸点につきまして、さらに慎重な検討が必要だといたしました。以上を踏まえ、答申では、まずは、都道府県から指定都市への事務と税財源の移譲によりまして、実質的に、極力、特別市に近づけていくことといたしました。

 平成二十五年一月以降は、人口減少社会における基礎自治体の行政サービス提供体制について調査審議を行いました。

 市町村合併につきましては、行財政の効率化、広域的なまちづくり等の成果がある一方で、専門職員の不足であるとか行政区域の広域化等に伴うさまざまな問題点も存在するということが認識されました。

 そのような中、自主的な合併や、市町村間の広域連携、都道府県による補完など多様な手法の中で、各市町村が最もみずからに適したものをみずから選択できるようにする必要があるとしております。

 そこで、今回の答申では、人口減少社会への対応につきまして、大きく三大都市圏と地方圏と二つに分けまして、それぞれについて処方箋を示したところでございます。

 地方圏につきましては、指定都市、中核市、特例市のうち、地域の中枢的な役割を果たすべき都市、これを答申では地方中枢拠点都市と呼びましたが、この地方中枢拠点都市等を中心とした連携、それ以外の定住自立圏施策の対象地域では、定住自立圏の取り組みの一層の促進、地方中枢拠点都市等から相当距離があるなど、市町村間の広域連携が困難な場合は、地域の実情を十分踏まえた上で、都道府県による補完も選択肢の一つだとしております。

 一方、三大都市圏につきましては、面積は狭いけれども、規模、能力が一定以上ある郊外、サバーブの都市の間で、水平、相互補完的、双務的な役割分担を促進する必要があるとしております。これらの地域における合併につきましては、特に三大都市圏の市町村に対しまして、自主的な選択の尊重を前提とした上で、その成果や課題について十分な情報提供が必要だといたしました。

 答申では、これらの連携を一層進めていくために、自治体間の柔軟な連携の仕組みを制度化すべきだとしました。今回の法案に盛り込まれております連携協約は、これを法制化しようとするものだと評価しているところでございます。

 具体的には、事務分担だけでなく、政策面の連携も含めて、地域の実情に応じた連携が可能であること、組合や協議会のように別組織をつくらない、より簡素で効率的な相互協力が可能であること、議会の議決を経ることとされていて、紛争解決の手続も用意されていることで、安定的、継続的な連携が可能であることがポイントであるというふうに思っております。

 既存の定住自立圏構想は、中心市が周辺の市町村にかわって広域的なサービスを実施する上で中心市の財政負担をどう手当てするかという課題があります。

 今回、連携協約の制度が法制化されることで、より安定的、継続的な連携が可能となりますことから、適切な財政措置と組み合わせることで、地方中枢拠点都市圏の形成が進むことを期待しております。

 次に、地方分権改革と第四次分権一括法案について、私の所感を申し述べさせていただきます。

 平成五年の国会による地方分権推進決議から始まりました第一次の地方分権改革は、機関委任事務制度の全面廃止、行政的な関与の縮小、緩和とその定型化を中心に、自治体の自由度を拡充する改革を基調としたものでありましたが、多くの課題が将来に残されました。

 第一次分権改革におけるこの残された課題は、地方分権推進委員会の最終報告の最後の章におきまして、第一に地方税財源の充実確保、第二に法令等による義務づけ・枠づけの緩和、第三に事務、権限の移譲、第四に地方自治制度の再編成、第五番目に住民自治の拡充、第六番目に地方自治の本旨の具体化という六項目に整理されております。

 平成十八年に設置されました地方分権改革推進委員会、会長の名前をとって丹羽委員会と俗称されましたが、この委員会では、これらの残された課題に精力的に取り組みまして、義務づけ・枠づけの見直し、基礎自治体への権限移譲、国の出先機関の見直し、国と地方の協議の場の法制化、地方税財政の充実強化等、幅広い事項が勧告されました。

 地方分権改革推進委員会が特に力を入れました義務づけ・枠づけの見直し、基礎自治体への権限移譲につきましては、これまで一次から三次の分権一括法により着実に推進されてきたことは、高く評価したいと思っております。

 そして、国の出先機関の見直し及びこれに伴う国から地方への事務、権限の移譲等が現在まで引き続き残された課題となっておりましたが、現時点で、出先機関の統廃合に着手するようなことは決して得策ではないのではないか、今回、国から地方への事務、権限の移譲等について、第四次分権一括法案により着実に推進することは、現実的な対応だというふうに私は個人的に考えております。

 また、今回の第四次一括法案におきまして、第三十次地方制度調査会で示された都道府県から指定都市への事務、権限の移譲等についても迅速に法制化され、県費負担教職員の給与負担等に関する事務、権限の移譲のように、指定都市が長年求めてこられた課題の解決もその中に含まれているということは、極めて意義の深いことであると申せます。

 最後に、まとめとしまして、以下のことを申し上げさせていただきます。

 地方自治制度につきましてはさまざまな改革案が提案されておりますけれども、実現には問題点も多々あります。

 地制調では、現行の都道府県、市町村の二層制を前提にいたしまして、人口減少社会への現実的な対応策を示しました。これを受けて立案された今回の法案は、実現性の高いものというふうに評価しております。

 指定都市制度の改革は、昭和三十一年の指定都市制度創設以来の大きな制度改正でありまして、これを一歩前に進めることはまことに意義深いことだと思います。

 連携協約制度は、人口減少社会にあって、基礎自治体の行政サービスを持続可能なものにするために不可欠なツールであります。これが法制化されれば、市町村合併ではない新たな形を地域で選択できるようになります。

 今後は、単独であらゆる公共施設を維持し、全ての行政サービスを提供するといういわゆるフルセットの行政の考え方から脱却することが重要であります。集約とネットワーク化を進めるため、各自治体の意識改革が求められます。

 都市は、そこで生み出される富をその都市だけに使うのではなく、近隣の地域も含めて必要な行政サービスを提供していかなければなりません。それが都市の責任であり、核となる都市のリーダーシップに期待しております。あわせて、広域行政を担う都道府県が適切にその役割を果たすことが求められます。

 今後の地方分権改革に関しましては、これまでの地方分権改革の成果をフルに活用して、地方分権改革の成果を地域住民にまで還元するように努めることを強く望んでおります。

 地方分権改革は決してこれで終わりというわけではありませんで、これからも息の長い取り組みを続ける必要があることは言うまでもありませんが、当面は、従前から継続している課題に着実に取り組むことが重要であります。あわせて、地方公共団体側は、シンクタンク機能等を強化して、地方分権改革に関して、これまで以上に幅広く、積極的な提案を行っていかれることが極めて重要であると考えている次第であります。

 私からは以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

高木委員長 次に、上田参考人、お願いいたします。

上田参考人 上田清司でございます。

 まず、総務委員会の皆様には、地方自治進展に多大なる御支援をいただきましたこと、まことにありがとうございます。また、本日、このような機会をいただきましたことにも御礼を申し上げます。

 知事職十年八カ月の実務上の経験から主な論点を申し上げ、そしてまた、改革が進まない部分に関しては特区などを活用してやっていけばいいことの提案、また先行事例の紹介、さらに今後の地方分権改革の課題について、資料に沿って申し上げたいと思います。

 まず、指定都市都道府県調整会議の設置でありますが、大変ありがたく思っております。十五の関係でいえば、十三のところで調整会議的なものは既に設置されているところでございます。総務大臣がこうした問題について勧告される場合においても、こうしたそれぞれの都道府県と政令市が過去にやってきた調整会議などの内容についてそごを来さないような形の中での勧告をしていただければありがたいというふうに思っております。

 例えば、埼玉県の場合であれば、さいたま市が下水道の整備をします。ところが、河川の整備が十分進まない形でドッキングすれば、下水道の整備をしても河川の方に流し込むことが十分できない。あるいは、河川の整備をしていても、下水道の整備ができなければ、それを受けとめる出口の部分でうまくかまない、そういう事例がありますので、完成時期をきちっとセットでやっていこう、そういう仕組みなどを経験的にやっているところでもあります。

 新たなる広域的な連携の制度でありますが、これも大変ありがたいというふうに思います。従来の一部事務組合あるいは複合事務組合の範囲を超えて連携が可能になるような形がつくられることは、人口減少社会やあるいは効率的な行政をやる意味で大変大きなことだというふうに思っております。

 一般に、都道府県から市町村、どんどんどんどん分権化していくという流れがありますが、一方では、逆に、市町村から都道府県に押し上げてもいい部分もあるのではなかろうかというふうに思います。

 規模の小さいところで、例えば迷惑施設などをつくる話というのはほとんど困難であります。火葬場をつくりましょうとか、あるいは霊園をつくりましょうという話のときに、地域の住民の皆さんから反対を受けたときに、必要であっても、それはなかなか設置ができないという形になってしまいますが、経験的に、もしそれを都道府県に上げるとかという仕組みがあれば、そうしたことが可能になることもあり得るということで、今回の広域連携の制度については、大変現実的な方策として非常にいいものではないかというふうに思っております。

 埼玉県なんかの事例で申し上げれば、埼玉県の面積の三分の一を持っております秩父郡市というのがございます。パスポートセンターを埼玉県では各市にどんどん移譲しておるところですが、小さな町でパスポートセンターの事務を行うのは大変困難でありますので、真ん中にあります秩父市が隣近所の町のパスポートの交付を全部引き受けるというような、そういう連携も現実的にやっております。

 こうした連携の仕組みも制度の中できちっと位置づけていただければもっともっと進むのではないかというふうに思っておりますので、大変大賛成でございます。

 第四次一括法案でございますが、全体の評価として、地方分権改革を通じて権限移譲がまだまだ道半ばではありますが、今回かなりの数の事務を移譲していただきましたので、それはそれで大変ありがたいというふうに思っております。残された課題になっています国から地方の権限が大きく前進しているところでもございますけれども、まだまだ道半ばだというふうに思っております。

 また、この権限移譲で生じるいわゆる財政負担、この問題について、比較的小さな事務が多いもので、それを税源で移譲するというのが極めて困難ではないかというふうに思っております。基本的には、財源移譲の場合は、税なりできちっと移譲していただくのがありがたい話になっていますが、なかなか困難でありますので、この辺は、交付税でいうと、どこに入っているかがよくわからない部分がありますので、ぜひこうした部分に関しては、交付金という形の中で、実際かかる費用については市町村などに負担のかからぬように、きちっと事務を移譲していただければありがたいというふうに思っております。

 それから、都道府県から指定都市への権限移譲についても、長年にわたりまして懸案でありました県費負担の教員の給与負担と人事権のねじれが今回の改正で解消されるということで、大変ありがたく思うところでございます。また、教職員の定数や学級編制基準が移譲されるということですので、現場はいろいろな形でより柔軟に対応できるのではないかということで、大変すばらしい改正になったと思っております。

 今後とも、都道府県から政令指定都市への権限移譲は、広域自治体である都道府県と基礎自治体である指定都市との関係がそれぞれ成り立つような形での移譲をお願いしたいと考えております。

 いま一つお願いしたいことがございます。今回の権限移譲対象事務にとどまらずに、今後も、まだまだ権限移譲によって、より地方自治が進展できる部分が現場サイドからも出されておりますし、丹羽委員会以来の提言がまだ一〇〇%生かされているわけではありませんので、ぜひ、第一次安倍内閣でつくられました丹羽委員会の内容について、より多く実現できるようにお願いをしたいと思っております。

 改めて、地方分権改革の今後の課題について申し上げたいと思っております。

 丹羽委員会が四次にわたって勧告を行った出先機関の見直しなど、ほとんどまだ改革が進んでおりません。

 民主党政権になって、地域主権戦略会議の設置の中で、勧告を踏まえて、義務づけ・枠づけの見直し、国と地方との協議の場の法制化など、改革が大変推進されました。こうしたことについても、正しく評価できるのではないかと思います。

 地域主権戦略大綱におきまして、原則廃止という姿勢の中で出先機関の見直しが提案されたところであります。全国知事会でも、この原則廃止に従って、何が可能かということについてさまざまな提案をさせていただいたところでございますが、現在のところ、なかなか問題にされない状態になっております。

 全国知事会では、既に、関西広域連合、九州広域行政機構という形でモデルをつくって、全部よこせと言っているわけではございません。例えば、労働局、経済産業局、地方整備局の一部あるいは地方農政局の一部などをこうした関西広域連合や九州広域行政機構などに、一旦、実験的に特区的に移管して、実験して、それのうち、いいものであればどんどん制度としてつくっていく、もし課題があればそういう課題を整理していくという積極的な姿勢が必要ではないかと私は思っております。

 今回、ハローワーク特区という形で、埼玉県と佐賀県がハローワークの機能を一部移管して、特区として現在実施をしておるところでございます。埼玉県に十五のハローワークがあるんですが、そのうちの一つのハローワークを、現在、埼玉県が機能を果たすような形になっておるところでございます。

 このハローワーク特区の先行事例を若干御紹介したいと思います。

 平成二十四年の十月から三年間にわたって、先行事例としてこの特区が認められております。埼玉県では、この特区を活用して、ハローワーク特区、就業支援サテライトというものを、埼京線と武蔵野線が交差する武蔵浦和の駅前のビルの中に、まさしく駅前ハローワークという形でつくりました。そういう中で、若者や女性に使いやすいサービスを徹底してやる。

 なぜ地方自治体がハローワークをやらなきゃならないのかと申し上げると、御承知のとおり、現在、二十四年度レベルで、二人以上の世帯で金融資産の全くない世帯が三三%になっております。つまり、三世帯のうちの一つは金融資産がゼロだという状態であります。こういう状態でございますので、もし失業した場合、もうその瞬間から生活ができない。場合によっては、季節労働者というんでしょうか、期間労働者というんでしょうか、こういう方々は会社の寮から出されてしまいますので、住宅そのものがなくなる。

 したがいまして、ハローワークで職業の紹介をするだけではなくて、場合によっては、生活保護の紹介、受け付けをしなくちゃいけない。場合によっては、市営住宅あるいは県営住宅などの住宅のお世話をしなくちゃいけない。したがって、ワンストップでできるような仕掛けの方がいいわけであります。

 ハローワークであれば職業紹介のみですから、住宅がなければ、では、それは市に行ってください、県に行ってください、あるいはまた、生活保護の申請をするのであれば、どうぞ市に行ってくださいという形で、結果的に行ったり来たりする形になって、職業意欲すらもなくなってしまうという形になってしまいます。そういう意味で、県なりあるいは政令市などでこうしたハローワークを一括化して、ワンストップでサービスをするということが非常に意味のある形になっております。

 埼玉県の事例で申し上げれば、例えば一人親家庭、これは女性の場合ですが、経済的に余裕がなくて、育児と仕事の両立に不安のある女性が、まず生活相談コーナーで生活資金の貸し付けや、家賃補助などの制度だとか、教育補助の制度などを紹介してもらう、そしてその手続をする、その上で、職業紹介コーナーで実際に仕事を紹介していくという形をとれば、継続的に、自分の生活を崩さずに新たなる道を探すことができる、こういう形がとれております。

 こうしたことにおいて埼玉県では、二十四年度は五カ月しかありませんでしたので、一万人の利用者がございました。二十五年度は五万二千人が利用して、急激にハローワーク特区の存在が明らかになったところでございます。

 こうした形で、関西広域連合にしても、九州広域行政機構にしても、あるいはハローワーク特区にしても、必要なものを特区で少し先行事例をつくらせていただいて、そして、課題があれば、そうした課題を論点にこうした総務委員会でもんでいただいて、そして制度改正につなげていただければ大変ありがたいというふうに考えるところでございます。

 最後になりますが、地方分権改革の課題の中で非常に課題になっているのが中小企業支援などで、主に私たちの方にも課題がありました。県もよく、農林水産業の支援とか中小企業の支援という支援という言葉に流されておりました。例えば、責任を持って仕事をつくっていく、産業を起こしていくという気迫に欠けていた部分があったと思っております。市町村にそれを求めるわけにはいきませんが、政令市であるとかあるいは都道府県というのは、もっと積極的に産業を起こしていく、雇用をつくっていくという積極的な姿勢が必要ではないかということで、最近では私は、通商産業政策の地方分権化という言葉を使っております。

 そのためには、一定程度地方にも権限をおろしていただかなければならない部分があります。特に中小企業政策など、そうした部分については、極力ワンストップでできるような形でさまざまな論点を見直していきたいと思います。

 今ここで紹介すると少し時間がなくなってしまいますので、それは省略させていただきます。

 また、農地転用の許可権なども、御承知のとおり、四ヘクタール以上は農水大臣の許可、二ヘクタールから四ヘクタールが農水大臣との協議、知事の権限は二ヘクタール以下でございます。しかし、企業を誘致する場合、二ヘクタールなどというのは本当に小さな企業であります。例えばグリコなどが埼玉県に進出されたときには、十何ヘクタールの土地を用意しなければいけないという形でございました。

 そういう意味で、農業政策として、優良な農地を確保するという農水省の目標、理念というのには共鳴いたしますが、しかし、実際上においては、もう少し、もう少しどころか、地方にそうした農地転用についての権限も、まちづくり全体としての枠の中で考えていただきたいというふうに思うところでございます。

 もとより、例えば、農地を潰した場合には耕作放棄地をその分だけ全部耕作地に変えろというバーター方式でも私は構わないというふうに思っております。そういう努力も地方はすべきだと思っておりますので、逆に、優良農地を企業誘致などの適地に使う場合には、遊休農地あるいは耕作放棄地などを農地に変えていくというような、ペナルティーというんでしょうか、そうしたものも与えていいのではないかというふうに思うところでございます。

 また、地方の自由度の拡大のためには、従うべき基準の廃止。

 また、臨時財政対策債の縮減について、最後のページになりますが、ここだけカラーにさせていただいております。

 実は、就任当時、埼玉県が発行しております埼玉県の県債は二兆五千億を超えておりましたが、現在二兆一千億台になっております。県がコントロールする分に関しては約四千億近く私は減らしてきたつもりでいます。率にすれば、予算ベースでありますけれども、十一年で一四・八%でありますので、大体一年間に一・二%ぐらい毎年過去の借金を減らしてきていることになりますが、臨時財政対策債という名前の形で、交付税のかわりにおまえのところで借りておいてくれ、後で金は返すから、こういう制度の仕組みが出ておりますので、一般会計の県債残高そのものはどんどんふえていく。

 もしこの赤色の部分が現ナマで交付税で届いていれば私は非常に優秀な知事に見えるわけですが、そう見えないところがつらいところでございまして、実際は四千億近く減らしたという大変優秀な知事のはずなんですが、制度上、こういう困難があります。

 とりわけ、埼玉県はまだ六〇%ぐらいですが、神奈川県なんかは八三%、交付税のうちの八三%が臨時財政対策債で、かわりに借りておいてくれという世界になっておりますので、自分の責任でないところで借金がふえていくというようなこういう制度については早急に改めていただきたいことをお願い申し上げ、陳述にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 次に、橋下参考人、お願いいたします。

橋下参考人 大阪市長の橋下徹です。よろしくお願いします。

 僕は、今回の自治法改正について、都道府県と政令市の調整会議と、それから総合区についての規定、ここに絞って意見を述べさせていただきたいと思っております。

 まず第一に、いわゆる制度を改革する、今までのやり方を変えていくというその法律の意味なんですけれども、これは、行政マンは非常に優秀です。大阪府庁の職員も市役所の職員も優秀です。恐らく霞が関の職員も優秀なんでしょうけれども、ほっておいても仕事をやる、やってくれるという部分については、あえて法律なんかつくる必要はないと思うんですね。でも、行政の職員では動かせない、解決できないというところについて、まさに政治が、国会議員の皆さんが法律をつくって行政の改革を進めていく。ほっておいたら改革が進まないけれども、法律をつくって改革を進めていくというところに本来の法律の意味があると思います。

 ところが、今回のこの自治法改正案、特に都道府県の調整会議の規定と総合区の規定は、この法律がなくてもこんなことはできます。やろうと思ったらできるんです。それが今の大阪市の状況でありまして、大阪府、大阪市の府市統合本部という会議体、これがいわゆる調整会議の先行事例で、もう進めているんですが、こういうことをやろうと思ったらできますし、もうやっていますし、また、大阪市においては、区長を公募区長制にしまして、民間人を大量に導入し、そして、今の法律の範囲内で目いっぱいこの区長に権限と財源を与えております。

 ですから、今回の自治法改正で都道府県と政令市の調整会議と総合区という規定を置きましたけれども、申しわけないですけれども、こんな規定はなくても、やる気のある都道府県と政令市であればできるんです。

 ただ、一点、法律がなければできないこと、これが区長の公選制です。これは、法律がなければ、今の大阪府と大阪市がどれだけ頑張っても、この区長公選制というものを導入することができません。ですから、国会議員の皆さんにおかれましては、制度改革ということをやるにおいて、法律がなければ進まないことにあえて力点を置いて法律というものを考えていただきたいと思っております。その問題意識がまず一つ。

 もう一つは、政令市というものは非常に多種多様です。これは一くくりにできません。配付しております、お手元の資料の五ページのところに、政令市を分類した図表を載せております。これは北村亘さんの「政令指定都市」の文献から引用しました。政令市を分類するやり方はいろいろあります。これは、面積だったり人口集積、事業所集積、農地の面積割合、いろいろな分類の仕方があるんですが、このように座標軸を二つに整理しまして、中枢性と能力供給性、この言葉の意味は横に書いておりますが、このような形で座標軸で分類をしても、二十ある政令市は多種多様で、一くくりにはできません。

 ですから、僕からのお願いは、政令市、いわゆる役所のあり方について今いろいろ議論をしていただいておりますけれども、選択肢をできる限りふやしてほしい。論理的に、また、その法体系上絶対に無理だというようなものでない限りは、できる限り選択肢をふやしていただきたい。そして、その選択肢をふやすことが国会の役割ではないかと思っております。

 今、各政令市は、服のサイズの合わない子供のような状況でありまして、とにかく合っていないんですよ、その服のサイズが。大阪市も、窮屈でしようがない政令市の枠をはめられております。ですから、僕は、二十の政令市がある以上は、最低でも二十の選択肢、もっと言えば四十でも五十でも選択肢をふやしてもらって、そしてその中から各地方が最適なものを選ぶんだ、選択できるような状況にする、このような仕組みにしていただきたいなと思っております。

 くどくど言って申しわけないんですけれども、洋服屋でも、サイズが一つ二つしか並べていない洋服屋はすぐに潰れてしまいます。幾つもの多種多様な洋服を並べておく、そういう店がはやるわけでありまして、ぜひ、この政令市制度につきましては、今回の自治法改正で一定の前進は見られるかと思うんですけれども、さらに、区長公選制というところがまさに政令市改革の一番の重要なポイント、もっと言えば、区長公選制が導入されますと、後々には、大都市改革が全国に波及し、僕は、その先に、道州制につながっていくと考えております。

 道州制に賛同する国会議員の皆さんはさきの衆議院選挙で圧倒的多数、議席を得たと思うんですが、道州制なんというのは役所の再編、役所を一からつくり直すという話でありまして、今までの市町村の枠組み、都道府県の枠組みを前提としているような議論では道州制なんというものには結びつきません。

 区長公選制というものを全国の政令市全部に適用してくださいと言うつもりはありません。ただ、そういうものを望んでいる地域、大阪なんというのは特にそうなんですけれども、そうであれば、そこが選択できるような、選択肢を広げていただいて、区長公選制が採択、そういう規定ができますと、もちろんこれは大阪府議会、大阪市議会での議論、そして議決というものが必要になりますけれども、もしこの区長公選制というものが導入されますと、大阪の姿形は今までにないような姿になるものと確信をしております。

 以上、まず、ほっておいても改革が進むようなものについてあえて法律というものを規定する必要はない。今回の都道府県の調整会議、また総合区長という制度は、こんな法律はなくても、やる気のある都道府県と政令市であればこんなことはできます。そしてもう一つは、政令市の実情に合わせた選択肢というものを可能な限り探っていただきたいというのが、僕からの要望の主要な二点であります。

 そして、今回、政令市の改革において、よく言われている二重行政解消の話と、そして住民自治を充実させていくという話、大都市というものは住民自治が不足しているということを言われていますが、この二点のうち、僕は、住民自治を充足させていくという点に特に力点を置いて意見を述べさせていただきたいと思います。

 その前に、二重行政についてなんですけれども、都道府県の調整会議についての一番の欠点は、これは日本の法律、日本の統治機構の一番の欠点にも共通するんですが、結局、協議、会議というものを設けてそれで終わり。決定権をどこが持つんだというところが一番重要であるにもかかわらず、今回の自治法改正では、都道府県と政令市の調整会議において決定権は定められておりません。これは教育委員会制度でも今議論されているかと思いますけれども、結局、決定権とその責任の所在が不明という、これは日本の統治機構に共通する問題点だと思いますが、今回の都道府県と政令市の調整会議についても、この決定権の所在がはっきりしておりません。

 全国各地の都道府県と政令市にはさまざまな調整会議があります。これは、これまでの大阪府や大阪市にも調整連絡会議はたくさんありました。この調整連絡会議というものは、結局、協議をして、合意を得て進めていこうというものなんですが、冒頭言いましたとおり、ほっておいても、行政マンに任せておいても進むような案件は進んでいくんです。調整会議や連絡会議でこれは進んでいきます。ただ、その改革は、行政上できる範囲ということですから、本当に今の日本にとって必要な大胆な改革はできません。

 全国の調整会議、連絡会議、例えば信用保証協会で連携をしましょうとか、各公衆衛生研究所で連携をしましょう、こんな連携なんというのはどこでもやっています。ただ、今、大阪市で、大阪府でやっているものは、例えばこの間決定したのは、消防学校を統合させました。これは全国初です。大阪府の消防学校と大阪市の消防学校を一つにまとめました。これから五月の下旬に向けて正式に認可がおりますけれども、信用保証協会、これも、大阪府のものと大阪市のものを統合合併させました。これも全国初です。今、議会で、市議会の方でなかなか賛同を得られなくて、進んでいないものとして、例えば大阪府立大学と市立大学の統合。また、大阪府立病院、市立病院の統合、こういう問題も、今までの連絡調整会議ではもう絶対できないような話を今大阪府、大阪市は進めています。

 なぜこれが進んでいるかといえば、決定権、これをきちっと定めているからなんですね。松井知事と僕の間で協議をして、協議持ち越しにはしない、必ず決定をする。ただ、消防学校の統合も病院の統合も大学の統合も、これらの問題は、やろうと思えばどちらかの自治体が損をします。大阪府庁なのか、大阪市役所なのか、必ず損をどちらかがしますので、だから今まで行政マンでは解決できなかったんですね。それを僕と松井知事の間で、持ち越さないということで、全て決定ということをやっていますので、行政の案としては全て統合案はできています、ところが残念なことに、府議会、市議会で否決ということで進んでいない、そういう案件が多々あるんです。

 この都道府県と政令市の調整会議の問題点はここにあります。決定権がありませんので、結局、ほっておいてもできるようなこと、行政マンでできるようなことは進むんでしょうけれども、政治が決断をしてやらなければいけないことは、この調整会議では決まりません。仮に調整会議で決まったとしても、今度は、この調整会議で決まったことの拘束性について全く今回の自治法には規定がありません。いわゆる調整会議で決まったことがそれぞれの府県や政令市の議会をどの程度拘束するのか、ここについて全く規定がありませんから、今の大阪府と市の状況のようになるのではないか。いわゆる調整会議で決まったことも、それぞれの府議会、市議会で否決をされて、結局もとのもくあみということになってしまうのではないか。

 ですから、この都道府県と政令市の調整会議については、決定権を誰が持つのか、そしてそこで決定されたことがそれぞれの府議会、市議会をどう拘束するのか、ここをしっかり定めないと、結局この法律があってもなくても一緒だということになるのではないかと僕は懸念をしております。これが調整会議についての問題意識です。

 次に、住民自治の問題について意見をさせてもらいたいと思います。

 お手元の資料の十ページをごらんになっていただきたいんですが、僕は、大阪府知事を三年八カ月務めまして、その後、今、大阪市長を二年六月ほど務めております。大都市の知事と大都市の政令市長を同時期に務めているというそういう存在は、なかなか全国でもいないかと自負しております。そういう意味においては、大都市制度や府県の問題点は僕が一番よく知り尽くしていると自信を持っております。

 そこでの問題点は、この十ページに書いてあること、簡単に言えば、こういうことです。大阪市、人口二百六十七万人。都道府県での人口でいいますと、これは上から十二番目、広島県や京都府と同じような人口を大阪市は擁しております。その大阪市において公選の首長が何名いるかということなんですが、例えば広島県や京都府の場合には、この二百六十万人の人口を擁している自治体で、県知事とそれから市町村長、これだけの公選の首長がいます。広島県の場合には二十三人、京都府の場合には二十六人。ところが、大阪市の場合には、二百六十七万人の人口がいて、公選の首長が一人しかいません。僕だけです。

 正直に言いますけれども、大阪市長の仕事、全くもう回りません。例えて言うならば、大阪の二十四区というものは東京二十三区のうち大きな区の五区か六区分ぐらいですけれども、要は、東京都知事、舛添知事が、知事の仕事に加えて、東京の大きな区、特別区五つほど全部所管する、そんな状況だと想像していただきたいと思います。

 先ほどの五ページのその図表のように、政令市は多種多様でありまして、地下鉄を持っている政令市、持っていないところ、それから、大型の病院を持っているところ、持っていないところ、大学を持っているところ、持っていないところ、さまざまありますけれども、特に大阪市の場合には、中枢性というところが非常に高く、地下鉄も、これは阪急電鉄と同じぐらいの規模の地下鉄の事業体を一つ持っておりますし、港においては、京浜港と同じぐらいの、東京の港と同じぐらいの港、大阪港はありますし、都市開発についても、今、うめきた初めさまざまな都市開発、大規模な都市開発、ほかの政令市にないぐらいの都市開発、これも所管をしております。

 そういう状況の中に加えて、二十四区、いわゆる基礎自治体としてこの二十四区、それぞれ十万人以上の行政区を抱えているんですけれども、全国千七百ある市町村のうち大体八五%が十万人未満ですから、僕は二十四の市町村長の役割もしなければいけない、こういう状況であります。

 ですから、大都市において、特に大阪市においては、大都市経営の仕事とそれから基礎自治体の仕事をきちっと分けてもらって、二百六十万人の人口がいるのであれば、広島県や京都府と同じように、いわゆる大都市を所管する知事の役割とそれから市町村長の役割、基礎自治体の長である市町村長と同じような基礎自治体の長というものを複数やはり大阪市内に置かなければいけないというふうに僕は痛感しております。

 その事情は十一ページに書いておりますが、例えば大阪市、学校五百二十校を所管しております。とてもではありませんけれども、これは一つの教育委員会と一人の首長では対応できません。

 新しく国会の方でいじめ対策法が制定をされまして、首長に対する報告案件という、首長に対して報告できるというような規定ができました。最近になって、僕に対してどんどんいじめ案件の報告が上がってきますけれども、五百二十校の学校からこれから一件一件上がってきたときにどう対応するのか、非常に悩ましいところです。

 ですから、この五百二十校を抱えている大阪市長と、学校数が十校、二十校、もっと言えば五校、六校抱えている市長を同じように扱うというのは、これはもう大問題だと思っております。

 そして、知事のときには、学校は百六十四校、高校百六十四校だったんですけれども、市長になったら、小中学校に高校が加わって五百二十校になってしまいました。大阪市の管理道路も、見てください、大阪府のときには、知事のときには千五百二十九キロの府県道路だったのが、市長になった途端、三千八百五十三キロの管理道路になりました。これに対して、住民が、ここは穴があいているとか、ここをもうちょっと何とか広げてくれとか、一斉に来ます。これはとてもじゃありませんけれども市長として対応できませんので、結局区長に全部対応させているような状況なんですね。

 さらに、基礎自治体の長として仕事ができていない実情として一つ実例を挙げさせてもらいたいんですが、皆さん、西成のあいりん地区というところを御存じかと思います。高度成長時代のいわゆる労働者が今集まっている、いろいろ課題のある地域ではあるんですが、こちらの小学校、中学校の通学路に不法投棄のごみが山のようにたまっていたわけなんですね。それも、通学路のある特定箇所です。しかし、僕はそんなところを見切れておりません。

 そして、住民の皆さんは、区長に対して、何とかこのごみを撤去してほしい、せめて子供たちが通学するまでの間、七時半までに撤去してほしいということを、かれこれ二年も三年も区長に要望していました。しかし、区長には決定権がありませんから、この区長は、僕のいる本庁のところの局にお願いに行くわけですね。本当に市町村長や知事が霞が関に要望に行くのと同じような形で、区長が本庁に要望に行くわけです。

 そうすると、大阪市役所としましては、職員の出勤時間は八時からだから八時半からしか回収できないという、その回答でずっと二年三年終わっていました。ところが、この話が僕の耳に来まして、そんなのは解決しろよ、三十分ぐらい早めることはどうってことないだろうと。そうしますと、局の方が、いや、これは三十分早めると大阪市全体で超過勤務手当がこれぐらいかかりますと。いや、そんなもの、大阪市全体でやる必要はないんだから、この区域だけ例外的に七時半からやれと。いや、予算が幾らと。予算なんて、そんなもの、一人か二人、余っている職員の人件費を削れば何とかなるんだから進めろという話をしたら、そのまま進むことができたんです。今、七時半からごみの回収ができています。

 これがやはり公選首長のある意味役割でありまして、行政マンでできないことに関して指示を出す。これが公選の首長の役割だと思っていますが、大阪市内にはやはり公選の首長の数が著しく不足していますから、このような住民の皆さんの要望、特に行政の一律的なルールを変えるような決定というものが、大阪市内ではできない状況になっております。

 そして、大阪市の改革として、十二ページ、十三ページに記載しておりますが、大阪市の区長は公募区長にしまして、民間人も内部の行政マンも同じ土俵で審査をして区長にしております。そして、局長よりも上のポジションに位置づけまして、区長が扱える経費をそれまでの五十億から二百十九億までふやしております。

 恐らく、今回の自治法改正をやっても、ここまでの改革はほかの政令市はやらないと思うし、これ以上の改革をやろうと思うと、今度は区長公選制が必要になる。要するに、今の自治法改正がなくても、先ほども言いました都道府県と政令市の調整会議をしっかりつくって、府市統合本部できちっとつくって、二重行政の解消をやってきております。そして、区長に権限と財源を渡して、区長に裁量権を渡している。それは自治法改正がなくてもできております。

 そして、これを突破しようと思えば、さらにもう一段、区長に権限と財源を渡す。区長にいわゆる裁量権を渡そうと思えば、民主的な正当性が必要ですから、そうなれば公選というものが絶対に必要になるかと思っております。

 十四ページ。今の現行制度と自治法改正案、そしてさらにもう一つの選択肢、もう一つの洋服をつくってくださいというのがこの区長公選制なんです。

 いわゆる特別区設置法案、大阪都構想法案についてはもう制定していただきましたので、こうなると、公選区長制ということで洋服が一つふえます。これは自治法改正案と決定的に違います。区長と市長との関係、これが役割分担が明確化しますし、公選区長というものは実質的に執行機関になります。

 ところが、今の自治法改正案であれば、特別職といえども補助職的な位置づけですから、市長の部下ですね。ここは乗り越えなければいけない壁がありまして、自治法改正案の総合区の区長は特別職、これはあくまでも市長の部下ですけれども、公選にすることによって、この市長の部下という位置づけから一つ踏み出すことができると思っております。

 そして最後に、この区長公選制をやった場合に、いろいろ懸念されていることがありますが、一つは、三重構造になるのではないか、区長公選制にして、区長とそれから政令市の市長、そして大阪府知事、府県知事ですね、この三重構造になるのではないかということが言われています。

 僕は、これは、先ほども冒頭に言いましたけれども、都市の実情に合わせて洋服をつくっていただければいいというふうに思っておりまして、もし仮に大阪に、三重構造の方がふさわしいんだということであれば、三重構造をやらせていただきたい。僕は、大阪都構想というものが一番ベストだと思っていますけれども、議会でなかなかその賛同を得られません。そうであれば、この三重構造というところも模索していきたいと思っております。

 ただ、今の自治法改正での特別職という規定では、今の大阪市役所の状態から何一つ進みませんから、この大阪の状況を打破するためにも、もう一つの洋服を用意していただいて、公選区長という規定を用意していただければ、あとは府議会、市議会の議論でこの選択を模索していきたい。いわゆる三重構造になったとしても、きちっと知事と市長と区長の仕事の役割分担ができていれば、何ら問題がないと考えております。

 そのイメージ図が十七ページです。区長公選案になりますと、市長と知事の間で調整会議が設けられる、これが自治法の改正部分です。そして、市長がこの真ん中の部分、十七ページの右の図で真ん中の部分が市長の役割になります。そして、区長の役割がこの三層構造の一番下の役割になる。きちっと役割分担すれば、何ら問題ありません。

 そして、これは、西尾先生から先ほど御意見がありましたけれども、地制調での議論では、市長と区長が見解が対立した場合にどうなるんだということですけれども、でもそれは、仕事の役割分担があれば、別にそこで見解の対立があっても問題ありませんし、それは住民が選んだ区長ですから。そして、よほどの場合には、どうしてもこれは問題だということになれば、もう一度、住民投票に付した区長の解任ということも、そういう制度もつくれるんじゃないかと思っております。

 そして、それぞれの区にはそれぞれ区議会を置く必要もなく、政令市を残す以上は、もともと地制調の規定にありました常任委員会というものを必置義務にしまして、政令市の議員がそれぞれの区の常任委員会に入っていくというようなことで、十分これは統治ができるのではないかと思っています。

 そして、十八ページがこの仕組みの変わりようなんですけれども、自治法改正の案の前、いわゆる大阪市でいうところの公募区長制度の前は、住民は区長に対していろいろな意見を言います、先ほどのごみの不法投棄の問題もいろいろあります、区長に言いますが、区長は決定権はありませんので、本庁の方の各部局に相談をしに行く、そして各部局はまた市長と相談をする、これが今の政令市の状態です。

 これを、自治法改正案、いわゆる大阪市でいうところの公募区長制なんですけれども、自治法改正案になりますと、いわゆる総合区長が各部局と直接このように相談をするような仕組みになってきます。ここまでが自治法改正案です。

 さらにもう一つ、区長公選制を、服を用意していただくと、この下の区長公選制のような形で、住民は公選区長と一緒になって区政運営ができるということになります。

 以上、区長公選制ということで、そういう服の選択肢を、洋服のサイズを広げてほしい。

 そして、法人格がなくても区長公選制はできます。これは、参考資料二十二ページにあるとおり、ニューヨークやパリでは、それぞれの区に法人格はありませんが、区長公選制だったり、議院内閣制というものをやっておりますので、法人格がない区でも区長公選制はできる。

 そして、戦後、一時定められた特別市制度は、これは政令市ができて廃止になりましたが、区長公選制を規定されておりました。ということは、大都市において、行政区において区長公選制はできるということが、戦後間もなくの時期ですけれども、そういう一定の結論に至っておりますので、もう一度、特別市制度というものを復活させてもらって、区長公選制というものを復活させてもらって、後は地方の選択に委ねるというような制度の仕組みにしていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 自由民主党の土屋でございます。

 きょうは、地方自治に見識の深いお三方に参考人に来ていただきまして、まことにありがとうございます。

 私も、市の職員、市議会議員、市長と、四十八年にわたって地方自治の現場におりました。若いころから地方自治の水にどっぷりつかっておりますので、こういう観点から質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、西尾先生に質問させていただきます。

 先生は、地制調の会長を初め、数々の地方自治の制度改革について具体的に携わられ、提言され、今日の日本の地方自治制度をつくってきた方であろうと存じます。私も、若いときから、四十年にわたって御指導いただいており、その私が質問するのも気恥ずかしい気はいたしますが、この際、御質問させていただきます。

 持ち時間は十五分でございますので、一点しか質問できないんですが、先生に質問する内容は、今回の自治法改正のもととなった地制調の論議についてお尋ねしたいわけであります。

 今回、戦後初めてと言われるような制度改革が入りました。それは、広域連携協約と、それに基づく事務の代替執行制度が創設をされたことであります。従来、複数の地方公共団体が共同で事務処理を行う方式には、一部事務組合、全部事務組合、広域連合などあるわけでありますが、いずれも共同処理であり、特別地方公共団体に位置づけられて、普通地方公共団体と同様、代表者を置き、構成市町村から成る議会も設置をされております。

 今回の連携協約と事務の代替執行は、特別地方公共団体を設置することなく、連携する団体同士の議会の議決だけでできる柔軟性に富んだ制度だ、このように理解をいたしております。

 さらに、都道府県と市町村間でも事務の代替執行ができるのも、画期的なことであります。

 今まで、一つの行政目的を都道府県と市町村が並行して行っていた事例はあります。例えば、生活保護、福祉事務所を設置しない町村においては都道府県がやる、こういうことになっておりましたし、あるいは建築確認行政、保健所など、市町村の人口規模や能力に応じて、個別の法律で決まっていたわけであります。言ってみれば、法律に基づいて権限をすみ分けていたわけであります。

 しかし、今回は、個別法の制約なくして、双方の普通地方公共団体同士が、連携協約によって、全ての領域の事務について代替執行ができるわけであります。この考え方は、住民自治を大切にしながら、人口、職員数、自然状況や社会環境、町の歴史などを勘案し、少子高齢化、人口減少などの時代に備えて、自治体が、フルセットではなく、能力に応じ、できることを、優先順位をつけ、財政負担の適正化を図りながらやっていくという考え方ではなかろうかと存じます。

 確かに、人口二百人の東京都青ケ島村と人口三百七十万人の横浜市が同じでいいわけはないわけであります。今のところ同じ制度をとっておりますが、このまま続くとは思われないわけであります。

 そこで、これらの制度を新しく導入する際に、地方制度調査会ではどのような議論があったのか、また、具体的にどのような事務などを想定しながら、イメージして、専門家というお立場から議論されたのか、これについて御質問申し上げます。

西尾参考人 お答えさせていただきます。

 地方制度調査会では、議論の中心は、従来からある既存の広域連携制度の長短と比べて、新しく考えている柔軟な連携の方式というもの、協定とか協約というものを中心にして運営するということの違いということが議論の中心になりました。

 従来のものとして、一部事務組合あるいは広域連合といったような仕組み、この場合には、別組織をつくって共同で運営するということになりますし、そうではないものとして、事務の委託というのも従来からあり、これは他の団体に委託してやっていただくということになるわけですし、それから、機関の共同設置というものもありました。

 これらいずれも、地方自治法上にかなり細かな規定ができまして、やるとすると、がちっとでき上がってしまうわけですね。そうすると、一旦そこに所属したものが脱退する、一部事務組合、広域連合から脱退するというのも容易ではない。そして、そこに自分の、自治体の住民の意向とか自治体としての意見というものをうまく反映できるかというと、なかなかその反映も難しいというように、欠点をあげつらえば、いろいろとあったわけであります。

 そうではなくて、事務を完全に他者に預けてしまう、あるいは渡してしまうというのではなくて、もしうまくいかなかったら、いつでも自分はまた取り戻して、自分自身がやれるということ、そしてまた、協定、協約で必要な事項を十分議論して詰めていけば、かなり自治体としての意向がそこに反映して、他者にやっていただくとしても、自分たちの意見が反映されるというような方式があり得るのではないかということから、柔軟な連携ということで、協定、協約方式というものを考え出したわけであります。

 一番の論点は、柔軟な連携であれば、法制化になじまないのではないかという議論があったということであります。法律に規定してしまうと、どんどん細かくなっていくのではないか、そうすると、やはり動きにくい、使いにくいものになってしまいはしないかという議論がありました。

 したがって、法制化をする必要があるのであれば、最低限の法制化にとどめるべきである。つまり、今回のことでいえば、議会の議決を経た上でなければならないという決まり、そしてまた、万一紛争が生じたときに、その紛争の解決手段というものを設けておかなければならないといったようなこと、これらを法律で定めるということにしたわけであります。

 ただ、この連携協約の仕組みを実際に動かしていくためには、これに財政措置が伴わなければうまく動かないであろう。その財政措置というのは、主としては地方交付税の運用になっていくだろう。そのとき、連携協約を締結した自治体に対してそれなりの地方交付税上の措置をするとすれば、やはり法制化した、きちっとした制度が必要なのではないかということで、法制化はすべきだということになったんですが、その法制化をどこまで、余り細かくしないようにつくるかということが議論の焦点でございました。

 以上です。

土屋(正)委員 西尾先生に再質問させていただきます。

 今、事務の委託というような例も挙げられましたが、確かに、東京消防庁に対する東京都下各市の事務の委託一本化などはこれに当たるのではなかろうかと思います。

 また、住民意思の反映が難しいということにつきましては、これは全国どこでもそうだと思うんですが、後期高齢者医療制度を導入する際に、いわゆる広域連合の仕組みをつくりました。広域連合の仕組みをつくりますと、例えば、東京都の場合には六十二の区市町村が連合するわけでございますから、これは、どこの誰かわからないような方から通知が来る。極めて住民との距離が遠くなるということが言えるのではなかろうか、このように存じます。

 さて、さらに議論を深めたいわけでありますが、時間が厳しくなりましたので、一つだけ質問いたします。

 趣旨はよくわかりましたが、しかし、代替執行になじまない、自治体存立に関する事務があると思いますが、簡単に御所見を。

西尾参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 代替執行といっても限界があると思います。

 自治体の存立にかかわるというお言葉をお使いになりましたが、まさにそのとおりでありまして、例えて言えば、市町村の市町村長を選ぶとか、市町村議会の議員を選ぶというような、自分自身の地方選挙の選挙管理というような事務、これは、自治ですから、当該のところがやるべきことでありますし、それから課税権というものを渡してしまうといったら、自治の根幹にかかわることだというふうにも思います。そういった意味で、自治体としての存立にかかわることを他者に委ねることはできないだろう、すべきではないだろうというふうにまず思います。

 今度は、事務のことで考えますと、日本の場合には、明治以来、戸籍制度をとってまいりましたし、そして、戦後、また住民基本台帳制度をつくりやってきまして、これが住基ネットの基盤になっていますし、今度は番号制度の基盤になるわけであります。こうした住民の動向をきちんと把握するということ、これは基礎自治体の根幹的なものであり、また国政を支える基盤でもあるわけです。これらの事務、あるいはそれに印鑑登録証明も加わるかもしれませんが、そうしたような事務、これはずっと一貫して基礎自治体が担うべきことなのではないかというふうにも思います。

 それ以上の具体的なサービスになると、地域事情によってさまざま変わると思いますが、全部について同じだということは決して言えないだろうと思いますけれども、コミュニティーとして最低限維持するというとき、特に過疎町村の状況で考えれば、老人の介護の支援システムをきちんと構築するということ、これは過疎町村において物すごく基本的なことですし、逆に言えば、そういう町村こそ子供が育ってほしい、健全に次の世代を担う子供が育つということにみんなの関心が集中していると思いますので、幼稚園、保育所といった子育ての施設から義務教育といったようなことは、基礎自治体としてはなかなか放棄できないんじゃないか、こういうふうに思います。

土屋(正)委員 ありがとうございました。

 もっと論議を深めたいんですが、残念ながら時間がございませんので、橋下大阪市長にお尋ねをいたしたいと存じます。

 私がこれから申し上げることは、大阪都構想がいいとか悪いとかという是非について申し上げる立場ではございません。これは大阪府民、市民が決めることでございます。ただ、制度改革のあり方について、橋下市長が進めておられることについて、東京都の例を引いて質問させていただきたいと思います。

 東京都の原型は、明治二十二年に地方制度が創設される以前、それ以前に先行して、既に百三十年余りの歴史があるわけであります。

 府と市が合併して東京都政になったのは昭和十八年、一九四三年のことであり、都には任命制の長官が置かれ、区長も任命制でございました。戦時体制を強化するための非常の措置だと言われているわけであります。

 敗戦後の昭和二十一年九月には、東京都政改革があり、都長官、区長いずれも、GHQの方針に従って公選となったわけであります。

 翌年、地方自治法が施行されたんですが、区は特別区となり、知事、区長とも公選でありました。

 ところが、五年たった昭和二十七年八月には、地方自治法が改正になり、特別区は都の内部団体となり、区長公選が廃止となったわけであります。

 戦後の混乱を乗り切るためと、朝鮮戦争が昭和二十五年六月に始まったことの影響、同時に、区長が、公選にしたために、党派性を発揮し過ぎて、旧東京市内がばらばらな方向になりかねない、一体感に問題がある、こういう観点から、公選制が廃止された、このように考えております。

 サンフランシスコ平和条約が昭和二十七年四月に発効し、再び独立国となったわけでありますが、特別区の区長公選が復活するのは、廃止されてから二十二年後の昭和四十九年六月の改正になるわけであります。

 東京都と特別区の制度は、大東亜戦争、占領、朝鮮戦争、サンフランシスコ条約、独立など、未曽有の国家動乱の時期を経て、昭和十八年の発足から三十年余りの経過によって、現行制度が確立をしたわけであります。

 このことを参考にして申し上げたいわけでありますが、大阪都の構想の是非は大阪府民がお決めになることですが、大阪都構想に向かう橋下市長を見ると、少し急ぎ過ぎてはいませんか。地方自治制度のような日々国民生活に直結する基本的統治制度は、時が流れ、国民の理解が深まり、成熟して初めて成功するのではないでしょうか。

高木委員長 土屋委員、もう質疑の時間が過ぎておりますので、まとめて質疑してください。

土屋(正)委員 ということで、橋下市長の世の中に対する問題提起、発信力、率直な人を魅了するお人柄に、なぜ前のめりになるのか残念でたまらないわけでありますが、そこの点について御質問いたします。

高木委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔に。

橋下参考人 なぜ急ぎ過ぎなのかといいますと、今の大都市制度の改革がもう喫緊の課題だと思っています。都市間競争、これは世界の潮流ですから、オリンピックの招致も含めてですけれども、これは都市が強くならなきゃいけない。

 国会議員の皆さんで、今回、国家戦略特区を成立させてもらいましたが、実際のところは、東京圏、大阪圏、この都市圏が中心になって国家戦略特区を運営していきますが、大阪の問題点は、僕の配付した資料の六ページを見ていただきたいんですが、都市の構造の変化にあります。

 六ページのところ、これは、事業集積、人口集積に色をつけたんですけれども、今、大阪府域内全体に人口集積、事業所集積が広がっているにもかかわらず、大阪市というちっちゃい枠内で大都市経営をやるというのは、これはもう大都市の力を発揮できません。

 ですから、広域行政として、これは大阪の事情です、横浜とか神戸とかそういう政令市はまた別です。名古屋も別かもわかりません。府県と政令市の人口集積の状況というものは、色のつき方が、愛知県だと、愛知県の中に色のついているところが幾つか複数あります。しかし、大阪の場合には、全国で面積が二番目に小さい、この都市の中で人口集積が一つにまとまっているということであれば、広域行政を早く都市構造に合わせた形で一元化しなければいけない。そうしなければ、世界の都市間競争に打ちかてない。

 大阪は、オリンピックの招致で、大阪市で手を挙げました。しかし、大阪府は協力しなかった。そのことによって、世界で惨敗をしました。オリンピックの招致の力というものが大都市の力をあらわしているんじゃないでしょうか。

 それともう一つは、住民自治の観点ですけれども、やはり住民自治が不足をしています。少子高齢化時代を迎えまして、これから受益と負担というものを住民の皆さんにある意味突きつけながら、余分な補助金を削りながら、必要なサービスに回していく。このような医療、福祉、教育の基礎自治体行政をやらなければいけないところ、二百六十万人人口、いわゆる京都府や広島県と同じような規模で、受益と負担の関係を全部精査しながら住民に賛否を問うていくというのは不可能です。もう大阪、二百六十万人いますから、何か言えば反対者が必ずありますので、少なくとも五つぐらいの地区に分けて、それぞれの地域で受益と負担の関係を考えてもらう。これをやらなければ、少子高齢化時代は乗り切れないのではないかと思っています。

 都市の一体性という議論が必ず出てきますけれども、都市の一体性の議論は、仕事の役割分担をしっかりやれば問題ありません。この区長公選制をやっても、お手元の資料の十七ページのところなんですが、きちっと仕事の役割分担をやって、都市の一体性を確保しなければいけない仕事については引き続き政令市がやる。しかし、むしろ、基礎自治体の仕事、医療、福祉、教育については、これは一体性よりも多種多様性、そちらの方が重視されると思っています。きめ細やかな住民サービスを展開することの方がより重要でして、そうであれば、この十七ページの、まさに区長公選案、ひとつこの選択肢をふやしていただきたいというのは、区の仕事を中核市並みの事務、さらに言えば、今の東京二十三区の特別区以上の仕事にして、ここを多種多様化させていく。今の自治法改正だと、十七ページの左の図になります。むしろ、一体性ばかりが強調されて、多種多様性というものが非常に小さくなっている。

 これはもう選択をさせてもらって、この十七ページの図で、左の図でいくのか右の図でいくのか、これはそれぞれの都市で選択をさせてもらえればと思っております。

土屋(正)委員 いろいろ言いたいことはありますが……

高木委員長 土屋君、もう終わりましたので。

土屋(正)委員 ありがとうございました。

高木委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、参考人の方々から大変貴重な意見をお伺いすることができました。まず冒頭、お礼申し上げます。ありがとうございました。

 その上で、先ほど橋下参考人からもありましたが、大都市制度を改革していくのは喫緊の課題であるということは、ここにおられる総務委員会の委員の皆様も共有しておられる認識だと思うんですけれども、ただ、性急に議論をしてしまうと、地方が廃れてしまうということも起き得るわけでございます。そういう意味では、丁寧に議論をして、しっかりと粘り強く議論をしていく、こういう姿勢も必要であるのかなというふうに思っております。

 その上で、先ほど上田参考人からございましたが、埼玉県でのパスポートの交付事務において、広域連携における財源の負担のあり方についてお話がありました。微細な業務であるがために問題はなかったということをおっしゃっておりましたけれども、地方交付税でどのように対応するのかといった点をきちっとやってくださいということで御指摘をいただいたわけですけれども、こういった広域連携における財源の負担、ここについては地制調においてどのような議論があったのか、この点について、西尾参考人にお伺いできますでしょうか。

西尾参考人 お答えいたします。

 地制調においては、都道府県から政令指定都市への権限移譲に伴う税財源の移譲についてはいろいろ議論をいたしましたけれども、この広域連携に伴う財政負担をどういうふうにして調整するかというのは、それほど議論をいたしませんでした。そういう形で起こることは税源移譲までいくような規模ではないだろうなというふうに、みんな、何となく思っていたのではないかと。

 したがって、地方交付税措置になるのではないかというふうな前提で、委員の中に財政の専門家が余りいなかったということもあるかもしれませんけれども、そこの負担をどういうふうにしてやるべきかという議論は、事務当局に任せた方がいいんじゃないかと思っていたということです。

濱村委員 余り議論をされなかったということで、それはちょっと、これからも継続的に我々が議論していかなければいけない点かもしれませんし、広域連携をされる地公体において議論をされた上で、しっかりと総務省を中心として国でも議論をしていかなければいけないことかというふうに思います。

 この広域連携について引き続き質問をしたいんですけれども、先ほど西尾参考人から、代替執行には限界があるというようなお話がありました。国、総務省はどのようにかかわっていくべきなのかという点は、非常に私も大事な点なのかなというふうに思っておるんですけれども、地域の実情に応じて地公体が選択できる必要がある、これは皆さん、同じ思いを持っているかと思うんですね。

 ただ、法定受託事務とかは、もちろん国が関与しなければいけませんし、しっかりとそれを国が整理する。自治事務に関してどのように行っていくのか、こういう点も、地域だけに任せっ切りにせずに、総務省あるいは国がどこまで関与するべきなのか、この点についてしっかりと議論をする必要があるのではないかというふうに思っております。

 いずれにしても、地方においてさまざま連携していただく、広域連携していただくに当たっても、その事務自体が法律にかかわるという点もあるかと思います。こういった点は、総務省を中心として他省庁と連携していく必要があるということは以前も質問の中で指摘させていただいたんですけれども、この点についてどのような取り組みが必要であるか、御所見をお聞かせいただきたいんですが、これは西尾参考人と上田参考人にお願いいたします。

西尾参考人 自治体が担う事務は、大きく分けて法定受託事務と自治事務というふうになりますけれども、自治事務と一言で言っても、国の法令によって自治体に義務づけられている事務と、それから任意的な事務、やってもやらなくても結構です、御自由ですという任意的な事務とあります。これによって全く性質は違うと思います。

 広域連携、連携協約で行われることは、法定されたそういう義務的な事務について、連携協約で他の自治体に担っていただくという場合も生じましょうし、任意的な事務で、例えば公立の図書館ですけれども、図書館は、設置するかしないか、それぞれの自治体の自由です。設置しろと義務づけられているわけでは決してありません。つくる以上はこう従いなさいという図書館法はありますけれども、つくるかつくらないかは自治体の判断であります。そういう図書館について例えば広域連携が協約で決められるということだってあり得るわけですから、この連携協約は法定義務的な事務についても任意的な事務についても起こり得る、こう思っています。

 ただ、おっしゃいますように、法定された事務の場合には、それぞれ所管の省庁というのが国の側にはありますので、この連携協約をどういうふうにうまく動かすかというときには、国の関係省庁とも了解してもらわなければならないということがありましょうから、それは総務省と関係省庁との連携が極めて重要だと思っています。

上田参考人 先ほど、事務の部分もありましたので、それもちょっと加えてよろしいでしょうか。

 例えば、今回の四十三法律四十九事務の中で、看護師などの各種資格者の養成施設等の指定とか監督等が都道府県に移譲されます。こういうものは、微細な事務でありますが、人件費がかかることだけは間違いありません。

 こうしたものについて、いわゆる税で措置をとるというのは極めて困難だというふうに思っていますので、ところで、交付税かというと、どこまでそれが交付税措置をとられているかというのはわかりにくいので、こういうものについても、一定の意見を聞いた上で交付金措置などをとられれば、より権限移譲がこれからも進む。

 例えば、県と市町村との関係でいえば、年がら年じゅう市町村長さんと私どもは会ったりしておりますので、実は、権限移譲どうですかといって、やはり裏づけになる財源などのものがないと受けていただけません。したがって、県と市町村との関係では、事務の費用などを一定程度確保するようなことを要求されれば、必ずそのことについては協議して負担をするようにしております。

 それから、後段の意見ですが、もうほとんど西尾先生と同じ考えであります。

 広域連携については、例えば県と市町村あるいは市町村間の広域連携、それはそれぞれの事務の範囲内において、分野の範囲内において、基本的にはそこで決まることですが、そうした事務の費用負担等をどう分けていくかという課題について、時と場合によっては交付税措置とか交付金措置とかがございますので、所管の省庁と一定程度の協議をしていかなきゃならないことはもう当然のことだというふうに思っております。さほど大きな課題はないというふうに思っております。

濱村委員 ありがとうございます。

 さほど大きな課題はないということでありますが、恐らく、やるに従って、その都度その都度解決しなければいけない課題が出てくるかと思います。その課題にスピード感を持って対応できる体制づくりというのも総務省の中で必要なのかなというふうに思っておりますので、その点は総務省にしっかりとお願いしたいというふうに思っております。

 時間もあと五分ほどになってまいりました。

 最後、一つ、道州制についてお伺いしたいと思います。

 道州制なんですけれども、この道州制というものを議論する際に、いわゆる行政改革の話をしているのか、あるいは経済的な圏域の話をしているのか、この二つがどうもまざって話をされる場合があるというふうに思っております。

 この二つはしっかり分けた上で議論をしていく必要があると思っておりまして、本日は、どちらかというと行政改革の面でお話をしていただいたというふうに思っておりますが、これは、地域、地方経済と行政改革、地方の行政は非常に密接な関連性を持っておりますので、行政改革だけやってしまっても、地方の経済が衰退してしまうということも起きかねないというふうに考えております。そういった意味では、分けて考えなければいけないんだけれども、非常に密接な連携があるということで、重要な論点であるというふうに考えております。

 その意味におきまして、経済的な影響についてどのような影響があるのか。例えば、地方の新聞あるいは放送局、こういったところ、どういった影響が出てくるのか、あるいは、地方の金融機関、地方銀行あるいは信金さん、信組さん、どういう影響が出てくるのか、こういったところもしっかりと踏まえた上で、地方経済がどうなっていくのか、この点をどのようにお考えでいらっしゃるか。これは西尾参考人と橋下参考人にお伺いできますでしょうか。

西尾参考人 道州制については、私個人の意見は、慎重論者だと言っておりまして、積極的にどんどん推進したいという推進論者ではありませんし、道州制と名がつけば全部反対だという原理的な反対論者でもありません。ずっと努力してまいりました地方分権改革の流れをさらに進めるような道州制構想であれば、私は、賛成論に傾く可能性があります。

 ただ、これまで行われてきている道州制の論議においては、少し行政改革の手段であるという側面が強く強調され過ぎてはいないかという感じを私は持っておりまして、余り道州制構想を急ぐことは危険ではないかというふうに感じております。現時点ではそう思っております。

 仰せのように、経済圏ということで考えましても、この日本列島をどう区割りするのがいいのかというのは、大変難しい問題だと思います。経済圏という発想からいったとしても、大変難しいと思います。特に、日本列島のうちの本州の中核部分、つまり、いわゆる関東地方から関西地方に至る区域をどのように再編成するのかというのは大変に難題だと思っております。

 以上です。

橋下参考人 僕は、道州制はすぐにやらなければいけないというふうに思っています。

 それは、一つは、経済成長と地方の自立です。

 また、お手元の資料の六ページのところなんですが、僕の考え方は、都市の構造、それに合わせた役所の姿をつくるべきだというふうに思っていまして、大阪都構想は、大阪全体を見渡すと、大阪に人口集積や事業所集積、一〇%通勤圏とか、これも人の移動のことを見ると、大体大阪全体が一つの都市だということですから、ここに広域行政を設定してくださいというのが大阪都構想です。

 しかし、もう少し、この六ページの図で広げて見ると、実はこの人口集積、人の移動というものは、京都市や奈良、神戸のところまで広がっています。この関西全部を合わせますと、GDPにして、円ベースですけれども、韓国に次ぐ七十兆以上のGDPということにもなる。

 ということは、地方交付税を廃止すべきだ。僕はそういう論ですから、これぐらいの関西圏で、ある意味、自立を促していく。もちろん、日本全国の最低限のミニマムベースは国が保障するということにはなるんでしょうけれども、でも、そんなことをやって、地方交付税十六兆もお金を国が費やすのであれば、早くそれをゼロにしてしまうというぐらいの形で、新しい国の統治機構は考える。国が十六兆も地方にお金を渡すので、全部地方はこれを頼るわけですね。

 上田知事のお話で、大変申しわけないんですけれども、パスポートの話とか、あんなのは地方交付税の財源なんか要りません。あんなのは地方にやらせたらいいんです。大阪市も大阪府も、そんなのできます。

 だから、地方交付税の十六兆をそのままばさっと削って、そのかわり何の税源を地方に渡すのかという税源移譲とワンセットで考えていったときには、道州制というものをきちっとつくると、国の財政構造、統治機構が根本から変わってくるのではないかと僕は思います。

 ですから、経済圏、関西においては関西で一つでまとまりますので、そのほか、北は北海道から南は九州、沖縄含めて、一つ一つ、ある程度、経済圏、これはえいやで決めなきゃいけないですけれども、大体、ヨーロッパ、EUの一国当たりのGDP、幾ら、北陸とか中国地方とか、ここで自立できるのかということを物すごく言っても、皆、EUの一国並みのGDPを持っていますので、そこを自立させていくということが、僕は今の日本の財政構造から必要なのではないかと。

 社会保障のお金と地方交付税、ここの改革の中で、地方交付税は早くゼロに持っていって地方に責任を負わせる、その分、税源を渡して、当然地方間の税財政調整制度はつくらなきゃいけませんけれども、黙っていてもお金をもらえる時代、仕送りを受けるような中途半端な地方の状態というものを早く改める必要がある、そのための道州制だと思っています。

濱村委員 ありがとうございます。

 関西圏が韓国と同じぐらいのGDPを持つということは、私も認識しております。

 そういった意味では、福井県が関西に入るかどうかとか、そういう細かな区割りというところでは非常に議論が起きるというふうには思いますが、おっしゃったとおり、えいやでやる部分も必要かもしれません。

 ただ、今、日本経済が上向きに戻ろうとしている状況でございます。そういったタイミングの中で、道州制をどのタイミングで進めるべきなのか、これは非常に重要であるというふうに思っておりますので、慎重に検討していきながら、スピード感を持ちながらやってまいりたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

高木委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょうは、西尾先生、上田知事、橋下市長、本当にありがとうございます。大変有意義なお話をお伺いすることができました。また、お忙しい中、本当にありがとうございます。

 地域主権戦略大綱に象徴されるような地方自治の改革にも、この三名の皆様には大変なお力添えを賜りました。この場をかりてお礼を申し上げたいというふうに思います。

 改革はまだ道半ばでございまして、地方自治の改革は、これは何も自治体の改革だけではなくて、民主主義の基盤そのものをつくる改革だということを考えております。

 西尾先生がまとめられました第三十次の地制調の答申の背景には、我が国の人口動態の長期予測に対する大きな危機感があったというふうに考えています。世界史上類例のないテンポで減り続けて、単世帯、一世帯の比率が急増する。しかも、その多くが高齢世帯である。そうすると、これまでのような自治体のあり方では、基礎自治体がフルセットでサービスを提供することはできなくなるんだ。ですから、広域連携をする。

 西尾先生の論文によりますと、中心市は広域責任を自覚せよというお話がございます。新しい広域連携を模索するために今回の自治法の改正があるんだというふうに考えております。

 そこで、上田知事にお伺いをしたいんですが、こういう広域連携の仕組みをつくるときには、ともすれば忘れ去られがちなのが、財源、税源の話であります。きょうお話をいただきましたとおり、新たな広域連携のための制度をつくるに当たって、大切な税財源の議論というのは避けて通れないというふうに思います。

 そこで、あるべきこれからの地方自治を支える税財源の姿について御所見を伺えればというふうに思います。

上田参考人 まず、都道府県の立場でいえば、法人二税などを中心にして財源がありますので、好不景気の差というのが大きく響いております。

 埼玉県は上場企業が比較的少ないので、同じように、例えば神奈川では、二百四十社ほど上場企業があります。埼玉では八十社。したがって、景気がいいときには、一気に神奈川県では九百億ほど税収が伸びる。埼玉県はそのときは三百億。ただ、減り方も同じように減るので、なかなか財政調整が難しいという嫌いがあります。

 市町村においても、固定資産税を初め、比較的安定しているものでありますが、地方自治を推進する上で一番重要なのは、やはり安定的な財源だというふうに思っております。年によってぶれるというような形にならないようにすることが極めて大事じゃないかなというふうに思っております。

 そういう意味では、地方消費税などの枠組みをふやしていくというような考え方などが大きいのではないかというふうに思っております。

 もとより、先ほど橋下市長が言われましたように、四十七都道府県で、東京都以外は全部交付団体である。こういう異常な姿というのは、税源の対象というんでしょうか、税の体制そのものが異常だということの証左だというふうに私は思っておりますので、こうした、交付団体が四十七都道府県中四十六もあるというような、こういう異常さを異常と思っていただき、税源を一定程度地方に渡して、不交付団体になる地方自治体がふえるような仕組みをつくっていただきたいというふうに思います。

原口委員 私も反省を込めて申しますと、知事が配っていただいた最後のページ、これは臨財債です。三位一体改革で疲弊をした地域をできるだけ支えようというふうに考えまして、申しわけないですけれども、都道府県の方に臨財債、それから市町村の方には現ナマ、地方の固有の財源である交付税という形にしました。そのことは決していいことだと思っていません。今お話しのように、地域主権戦略大綱の中では、税財源もセットに改革を入れておりました。

 そこで、同じくこの資料の中で、ハローワークの話をしていただきました。佐賀と埼玉で今進めていただいていますけれども、佐賀の鳥栖市というところでは、生活保護の対策と一体となることによって、年間約一億円の生活保護費が減りました。そして、七割の雇用がそこで生まれてまいりました。やはりこういう機能を地域に移すこと、これが非常に大事だというふうに思いますが、知事の御所見を伺いたいと思います。

上田参考人 地方は、いわば就業の相談業務ができるんですが、職業紹介ができないことになっております。それが一番の欠点でありますが、ハローワーク特区においては、県において職業紹介もできる、つまり、ハローワークが持っています全国のネットをそのまま使えるという形で紹介業務もセットでできるということで、まさに生活支援と就業に至るまでのフルセットで、紹介あるいは相談、そしてまた支援の仕組みができることで、いわば雇用をより確実にしていく、そして、生活保護によりならないようにしていくという仕組みが私はできるものだと思っております。

 それが職業紹介のみであると、どうしても、生活支援ができないために、極端なことを言えば、仕事といえば、何でもいいといえば何でもあるんですね。だけれども、やはりえり好みをされますので、その間の生活支援だとかそうしたものをどうするかということについての視点がないと、なかなかそこはうまくいかないというふうに思っております。

 なお、加えて申し上げれば、この生活保護の問題について言えば、不正受給の問題と、生活保護費が高いんじゃないか、安いんじゃないか、こういう論点が多くなっておりますが、むしろ国会で議論していただきたいのは、まず、生活保護者の子供たちが、四分の一、二五%がまた生活保護になるという負の連鎖が続いているということをむしろ重要視していただきたいと思っております。

 埼玉県では、そういう負の連鎖が続かないようにということで、生活保護の子供たちを重点的に学習支援というようなことをやっております。特別養護老人ホームの食堂とか集会室とかを借りて、一定程度、塾の先生あるいは大学生などを集めて教えて、高校進学率を高めていく。つまり、生活保護の子供たちは、全国平均が九七%にもかかわらず、埼玉県では八六%でした。しかし、私どもが設置したこうした学習支援のところに通った子供たちは全員が、九七%まで上がりました。一一ポイント上がりました。

 そういうことなどにやはり注意をしていただかないと、額が高い低い、不正受給だというところにとらわれているうちに負の連鎖が続いているということなどについても、強い関心を持っていただきたいと思っております。

原口委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺うと、知事から教育についても御指導いただいたことを思い出します。

 あのとき、文科省が、経済的な理由で進学できない高校生は三パーだという数字を出していました。しかし、埼玉県の数字とは大きく違っていました。よくよく見てみると、一学年の進学だけを見ていて、三年間で見ると、その三倍あったわけです。それが、私たちが高校無償化の制度を考える大きなきっかけになりました。

 また、きょうは時間の都合でおっしゃられませんでしたけれども、通商産業政策の地方分権化についてもお話をいただきたい。

 埼玉県は、全国の中で、いわゆる中小企業の倒産が一番少なく、そして金融支援が一番充実しているというふうに伺っています。このことについて、国がワンセットで何でもかんでも一律にやる必要はない、そのことについての隘路を取っ払っていくのが私たち国会議員の役割だというふうに考えておりますが、知事のお考えを伺います。

上田参考人 倒産が一番少ないかどうかわかりませんが、金融支援については、伸び率的には一位だということで、自負をしているところであります。

 一番問題なのは、さまざまな制度の中で、県と経産局で窓口が分かれたりしております。そうしたものが統合できれば、一括的な支援ができるという形の中で、大変意義があるというふうに思っております。

 また、国は、例えば産総研、最大級の目きき機関であるわけでありますし、あるいはNEDO、最大級の助成機関である。しかし、そうしたものと比べれば、県の目きき力あるいはまた助成する支援額ははるかに小さいわけでありまして、中小零細企業を大きく飛躍させるための費用という点でも、何らかの形で、統合とは言いませんが、連携が強力にできるような仕組みをつくっておかないと、ばらばらに支援をしているという形になっております。

 例えば、埼玉県でもNEDOの支援を受けている企業があるわけですが、具体的に埼玉県としてはそれを知らなかったりします。後でわかったりします。今回、NEDOと産総研と埼玉県で三者の連携協定を結んで、そういうことのないようにしました。

 こういうことが意外に行われておりますので、それぞれやはり別個に仕事をしているというのが、効率の観点からも、また支援の観点からも、無駄も多く、なおかつ、ばらばらにやって支援の効果ができないということがありますので、極力そういうものを集約させるようなことをやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 当面は、今申し上げましたように、例えば、NEDOと産総研と埼玉県で三者協定を結んで、新しい事業を研究開発するときに一緒に支援をしていくとか、それを実用化するとき、あるいは商品の開発に至るまで、一貫してそれぞれの役割の中で果たしていくというようなことについて連携の仕組みをつくりましたけれども、せめてそういうことをやらないと、やはりばらばらにやっているというふうに思っています。

 多分に大阪市と大阪府の関係の中でもそういうことが行われていることに対する橋下構想の大きな意義があるのではないかというふうに私なんかは思うところであります。

原口委員 もう時間が短くなりまして、最後に、地域主権戦略大綱で、国と地方の協議の場を法制化した。それから、ぼったくりバーと橋下市長はおっしゃいましたけれども、直轄事業負担金については、一部ですけれども、変えることができた。あるいは、先ほど西尾先生がお話しいただいたように、義務づけ・枠づけの、ここのところも大きく、西尾先生初め皆様のお力で進みました。

 しかし、二重行政の解消といえば、やはり国の出先機関の原則廃止。もちろんここは、地方整備局のように危機管理機能を持ったところは丁寧にやるべきだと思います。全部が全部、機能移管をすればいいとは私も思いません。

 しかし、国の出先機関をこのままにして、そして関西広域連合やあるいは九州広域機構、上田知事もお話しいただきましたけれども、そういったところ、地域で決定して、あるいは道州を見据えて頑張っているところについては、やはり、最初からそこにふたをするんじゃなくて支援をすべきだ、あるいは、制度的なことについても、権限や財源の移譲についても日本に先駆けてやっていくべきだ、私はそう考えているわけですけれども、上田知事、橋下市長のお考えを伺って、西尾先生には根本的な議論をさせていただきたかったんですが、時間となりましたので、お二人に最後にお伺いして、質疑を終えたいと思います。

上田参考人 先ほども申し上げましたように、塞ぐのではなくて、できる部分をやらせていく。

 例えば、ハローワーク、もし佐賀と埼玉でうまくいけば、手を挙げたところにはやらせる。

 今、関西広域連合と九州広域行政機構が手を挙げておりますので、それも全部よこせと言っているわけではありませんので、一定の分野について移譲してくれと言っているわけですから、そういった部分について特区的に許可をする、そういう仕組みづくりを幾つもつくれれば、新しい地方自治が進むのではないかというふうに思っております。

橋下参考人 僕は、これから国の仕組みを考えるに当たって、国会議員の皆さんは、いかに地方に責任を負わせるか、今まではいかに地方を助けるかという視点だったんでしょうけれども、いかに地方に責任を負わせるかという視点で国の統治機構というものを考えていただきたいと思います。

 消費税についても、五%から八%に上げるためにどれだけ国会で政治エネルギーを消耗したか。次、八パーから一〇パーに上げるためにも、これまた物すごい政治エネルギーを消耗すると思いますが、そんなことに政治エネルギーを消耗するのではなくて、安全保障、外交、そして通貨政策も含めて、国がやらなければいけない事柄に政治エネルギーを集中していただきたい。

 ですから、僕は、消費税の税率についても、地方に責任を負わせて、所得税や法人税のような地方の偏在化の激しい税は国税として、それで所得再分配政策を行っていく。地方の偏在化の少ない安定的な税源については、消費税というものの税源を地方に渡して、あと何%上げるかは地方に任せるということで、国、地方で政治エネルギーを適切に分配できるような、そういう統治機構を目指さないと、僕の大阪市の問題意識と同じような問題が今国政でも起こっていると思います。

 大阪市で、僕が全部、何から何まで責任を負わなければいけない、そんな状況になっているから、大阪市というものは改革が進まずに、大都市経営がいかなかったわけです。ですから、できる限り区に責任を負わせるために、区長公選制の規定をお願いしております。

 出先機関のあり方も、これまで中央集権のもとで、大臣のもとで出先機関が動いていたものを、地方にできるものは地方に移していく、責任を移譲していく。原口委員がおっしゃられた、地方整備局のような危機管理を所管するような部局については慎重にやらなければいけない。しかし、これは、民主党政権時代に三年間かけて議論を積み重ねて、地方整備局も、権限をどこまで国に残して、どこからは関西広域連合等の地方に委ねるのか、徹底した議論を積み重ねて、そして地方整備局と環境事務所と経済産業局、この三つを今成立している関西広域連合の方にできるものは移していくというところまで決定し、そして閣議決定まで行われたというふうに僕は認識しております。

 これは、政権交代が起きても、閣議決定の効力というものは、行政の継続性のもと、僕は今の自民党政権でも生きていると思っていますから、法案もでき、これは関西広域連合の職員が一生懸命三年間かけて、本当に法案まで成立させ、法制局も通して閣議決定までできたんですから、これはぜひ、政権交代が起きたとしても、行政の継続性の観点から、この法案を自民党、公明党政権の中で成立させていただきたい。

 全国一律でやるような話ではなくて、関西広域連合でできる、そして、国と地方で徹底して議論を積み重ねた結果の出先機関改革の法案でありますから、これはぜひ国会で成立をさせていただいて、国の負担をできる限り軽くする。

 危機管理事象については国が前面に出る、これは賛成です。ですから、それ以外の部分は、ぜひ関西広域連合を信じて、出先機関の一部、近畿地方整備局、経済産業局、環境事務所は関西広域連合と完全にダブっています。今回の国家戦略特区や、地方経済戦略会議ですか、あの協議会とそれから関西広域連合がダブって、本当に何をやっているんだかわからないような地方の現場のもどかしさを早く国会議員の皆さんに解消していただきたい。

 ぜひ、民主党政権で閣議決定をした出先機関改革の法案を今の現政権で成立させていただきたいと思っております。

原口委員 これで質疑を終わりますが、西尾先生の論文にありますとおり、中心市は広域責任を自覚せよ、これが今回の法改正の大きな柱だと思います。

 今、お二人の参考人から答弁いただきました国の出先機関改革については、私たち、法案を提出して、多くの皆様の御賛同をいただいて、この国会で成立を見たい。このことをお誓い申し上げて、お礼にかえたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

高木委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 日本維新の会の井上英孝です。

 お三方の参考人の先生方、本当に本日はお忙しいところお越しをいただきまして、また、貴重な御意見を賜りましたことを、まずもって御礼申し上げる次第でございます。

 また、今回質問する機会を賜りまして、委員長初め理事そしてまた委員各位の先生方の御理解に深く感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、持ち時間が決められておりますので、早速質疑に入らせていただきます。

 まずは、今回、地方自治法の改正案では、今、橋下大阪市長が、大阪について、私も大阪市の選出の議員として、ほとんどしゃべられたんじゃないかなというふうに思っております。その中で、少し内容で確認をしておきたい点がありますので質疑をさせていただきます。

 今回の改正案では、補助機関と位置づけているものの、特別職にして、総合区長が権限が増すことになるはずだというふうに思いますが、やはり、その権限を一番近いところで監視すべき組織というのが要ると思うんですね。それは、現状ではやはり区の常任委員会じゃないかと思うんですけれども、その区の常任委員会が必置規定になっていないということについてどのように思われますか。橋下参考人、お聞かせいただけますでしょうか。

橋下参考人 地制調の報告の中では区の常任委員会は必置となっていたところが、さまざまな政令市の意見の中で、これが必置ではなくなった、義務ではなくなったというふうに聞いております。

 ただ、これは、僕が先ほど意見を述べさせてもらったとおり、現行の法の枠内でできることはあえて規定する必要はない、区の常任委員会というものは今の法律の中でもできますので。ですから、そこは地方の選択に委ねる。義務的に全部一律に必置義務を負わせるのではなくて、地方の選択に委ねるということもありなのかなというふうに思っています。

 ただ、大阪市の状況を見ると、各区で、しっかりした住民代表の議員と行政が議論をして、その細かな住民サービスに応えていくという行政が行われているとは到底思えません。

 特に大阪市の状況は、僕は、大阪府知事をやり、市長をやっておりますけれども、要は、区域分断政策のような状況で、大阪府知事は大阪市域外、大阪市長が大阪市内のまさに知事の仕事をやっている、知事と市長が同じような仕事をあの狭いエリアで二人がやり、府議会、市議会でも同じような議論を繰り返しやっているというような状況でして、住民自治をより充実させるためには、この大阪市政においては、広域行政よりも、より基礎自治体業務の方に力を入れるべく、僕は、行政区においてこの常任委員会というものを必置、いわゆる義務的に課すべきだというふうに思っています。

 ただ、全政令市に適用される法律のことを考えると、やはり、選択制というところが重要なのかなと。

 選択制ということを考えると、あえて地方自治法で、改正案で常任委員会を置くことができるということを言わなくても、今の現行制度の中でも置くことができますので、そこは、今回、必置義務でなくなっても仕方がないのかなというふうに思っています。

井上(英)委員 権限を持つことになると、それを監視すべき組織というのが必ず必要になってくるというのは、これはもう三権分立の常といいますか、そういう中で、特別職で一定権限を増すということになる以上は、我々も、それを義務的に監視をする組織というのがやはり必要じゃないか。

 ただ、本来は、それを議会という形で成立させるのが当然だとは思うんですけれども、そこが公選か公選じゃないか、要は、首長と言われる、今回で言う区長が総合区長で公選じゃなければ、議会まで成立する必要はないにしても、やはり、区の常任委員会というのを必置する必要性は非常にあるんじゃないかなと私自身は思っております。

 そしてまた、今回のこの法律の改正案、これも原則、半世紀ぶりに改正されるということで、改正されることについては、本会議場でも申し上げましたけれども、大いに評価をしておりますし、地方自治に関する大きな一歩の前進だというふうに思っております。

 この改正案で言われているのは、住民自治の充実、それをどんどん深化させていく、それと二重行政の解消というのを、指定都市制度の見直しにおいては、うたわれているんじゃないかと思います。

 やはり、住民自治の充実を深化させるためには、先ほどの資料十四ページに書かれている、我々が考える、予算編成権を区長に権限として持たせることが必然なんじゃないか。それが、全てにおいて、予算も含めて決められる、やれることが一番、住民自治の充実だというふうに我々は考えております。予算編成権を持たすのが必然であり、そうなると、今度は逆に、公選制にするのが当然だというふうに我々は思っておりますし、当然、公選制になると、先ほどの議論ではないですけれども、議会が必置というふうになってまいります。

 そういう意味で、我々は、区長公選制というのがやはり今回の肝として一番必要という趣旨の修正案を提出させていただいております。もちろん、この地方自治法の改正の中で、我々の言っている修正案というのも完全じゃないというふうに私自身も思っています。完全じゃないけれども、公選制を導入して住民自治を充実してやっていこうというのが大きな一歩だというふうには思っておりますので、今回修正案を出させていただいておるわけです。

 公選制にすることによって住民自治を充実させて、そしてまた、広域自治体と基礎自治体の役割分担というのを明確に分ける、それをかぶらないようにして明確に分けて二重行政を完全に解消していこうというふうに我々は思っています。

 先ほども申し上げた区議会などのガバナンスも含めて、しっかり機能するのはやはり都構想じゃないかというふうに我々は思っておりますけれども、橋下参考人の御意見をお伺いしたいのです。いかがでしょうか。

橋下参考人 今回、国会議員の皆さんにお願いしたいのは、選択肢をできる限りふやしてもらう、法論理的に、また憲法上の法体系のもとで絶対に不可能だということでない限りは、選択肢の可能性として地方にその機会を与えていただいて、地方がそれを選択できるという余地を広げてもらうということが、一番お願いをしたいところであります。

 そういう意味では、今回の自治法改正案は、選択肢が非常に少ない。改革の第一歩ではありますけれども、まだまだ選択肢が少ない。

 この公選区長というものは、やろうと思えばその導入が可能である。法論理的や憲法上の法体系からしても不可能ではない。

 それは、繰り返し言いますけれども、戦後間もなくの特別市制度においては区長公選制というものが定められて、そして、政令市制度ができてその特別市制度が廃止されたという経緯がありますけれども、一度いわゆる大都市において行政区の公選区長制というものが定められた経緯を考えますと、法体系的には何ら問題がない。

 今、法人格のない行政区に区長を置くことができるのかということも一つ論点にされていますけれども、これは、先ほども言いましたけれども、世界の大都市を見れば、論理必然性がない。

 先ほど委員から御指摘があった、区常任委員会の設置の話なんですが、まさにこれを義務規定にしていないということになると、結局、この自治法改正案が成立しても、大胆な改革は、政令市では進みません。

 これは、区の常任委員会を置かないところにはそんな権限と財源は渡せないよという話になり、結局、特別職、いわゆる副市長格の区長が誕生しても、そこにどういう権限と財源を渡すのかというのは条例で定めるような形になっていますので、恐らく、どの政令市も現状を変えるようなことはしないんではないか、僕はそう思っています。これは日経新聞なんかの報道にもあるとおり、政令市の方から大した動きが出ておりません。ですから、そうであれば、選択肢をふやしていく。

 やはり、十四ページの資料のように、今は、地方自治法改正案と、いわゆる大阪都構想、大都市における特別区設置法、この二つしかなく、地方自治法改正案は、総合区、また、区長は特別職にする、これだけの規定になっております。ですから、二つしか選択肢がありません。

 先ほどから、もうちょっとゆっくり議論したらどうだ、性急にし過ぎじゃないかと。これは大阪市議会でも府議会でも常に僕はこの六年間言われ続けてきたことなんですが、確かに焦っているところはありますけれども、そうであれば、議論できる環境を整えてもらいたいんですね。

 今の大阪市議会、大阪府議会の政治状況からすると、国から提示されている案がこの二つの洋服しか提案されていませんから、最後、住民投票で決するしかない、右か左かどっちだ、AかBかどっちかという話になっていますけれども、ぜひ、まさに十四ページの区長公選制案という真ん中を置いてもらうと、議論の余地が広がります。

 脱線すると委員長からとめられると思うんですが、個別的自衛権、集団的自衛権のあんな二者択一の議論じゃなくて、今、間の話になってきたからいろいろ議論が進むように、この自治法改正案といわゆる大阪都構想法案、この両極端の法案の間に、自治法改正案、いわゆる政令市を残した形で区長公選制をするんだと。

 大阪市議会、府議会で大阪都構想に反対する人たちというものは、政令市を残せという議論です。我々、大阪都構想を推進するグループは、そうはいっても、大阪市内の住民自治を充実させなきゃいけない。恐らく、国会議員の皆さん、いかに大阪市内で住民自治が不足しているかということはわからないと思うんですけれども、僕は市長だから十分わかっています。これをミックスするような形で、政令市というものは残りながら区長公選制を導入する、そういう選択肢が出てくると、僕は協議が進む余地が出てくるのではないか。

 ですから、性急に進めるなという御指摘をいただきましたけれども、そうであれば、これは、地方サイドの方でこういう法律はつくることができませんので、まさに国会の役割として、この大阪府、大阪市の極めて激しい政治的な対立になっているこの状況をおさめるというような役割を国会議員の皆さんにやっていただけるのであれば、この真ん中の案をつくってもらって、橋下、もうちょっとちゃんとしっかり議論しろということを言っていただければ、大阪の状況は少しでも変わるのではないかと思っております。

 十七ページ。繰り返し言いますけれども、地方自治法改正案、左の案、これが今の自治法改正案ですが、大阪においては、この特別職区長の仕事が余りにも少な過ぎます。これでは、住民自治の観点、これが全く不足しております。今までどおり、市役所の権限、大都市の一体性というところが強調されておりますが、こういう案でいく政令市もあるのかもわかりませんが、大阪の場合においては、特に大阪市においては、この十七ページの右の案、こちらをやはり目指すべきだというふうに思っておりますので、大阪の今の膠着している状況を変えていただくためにも、国会議員の皆さんで、これは、内閣法制局では区長公選制はだめだということを言っているみたいですけれども、最後は、政治判断で、まさに政治主導でそこを変えていただきたいなと思います。

 十八ページ。繰り返しになりますが、自治法改正、今回の案になるまでは、この公募区長前という、こういう本当に住民ニーズを把握できないような体制でありました。自治法改正になると、この公募区長後、大阪市における公募区長後、ここまでは改革は進みますが、大阪市は、もう既にやっております。そうであれば、次、我々は、僕は、特にこの一番下の段、いわゆる大阪都、ここまで大阪は目指そうということを言って、この三年、四年、議論してきているわけですから。

 ほかの政令市では、この新たな大都市制度、いわゆる大阪都、こんな議論がありませんので、今回の自治法改正案でもまあまあいいのかなという話でしょうけれども、大阪はもう既に、この新たな大都市制度、一番下のところまで議論が進んでいます。ですから、この一番下の大阪都なのか、それとも自治法改正案、公募区長後というところでとどめるのか。やはり、公選区長制という間をつくってもらえれば、僕は大阪の議論が進むのではないか。

 そして、公選区長になれば、権限と財源を渡すので、その分、区の常任委員会の必置義務、これは当然必要になってくると思っています。

井上(英)委員 市長、ありがとうございます。

 市会時代から、答弁をお願いするとどんどんどんどん長くなるのは市長の得意わざでありまして。

 時間が来たんですけれども、調整会議は、先ほど言われたみたいに決定権がない。そういう意味では議論だけだという議論がありました。でも、今現状でいうと、本当に都市のあるべき姿というのが大阪の方では議論さえもされていないということで、そういう面では各会派の皆様方にも御理解をいただいて、ぜひともそういう有意義な議論を交わすような機会というのをつくっていただけたらと思います。

 また、この改正案でいきますと二層、三層というような議論もありますけれども、二層、三層になっても、役割さえ明確に分担されて分かれておれば二重行政や三重行政というのが発生するわけではありませんので、ぜひとも、この改正案でも、我々としても、修正案を含めて、今後しっかりと議論を進めてまいりたいと思っておりますので、委員各位の皆様方におかれましては、我々の修正案に対して絶大な御支持を賜って、賛同いただきますようによろしくお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 参考人にちょっと申し上げたいと思うんですが、予定の時間がもう三十分も過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願い申し上げたいと思います。

 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫でございます。

 西尾先生、きょうはありがとうございます。上田知事、ありがとうございます。橋下市長、ありがとうございます。

 今までの御議論を聞かせていただきまして、議論の中から質問させていただきたいと思うんですが、まず西尾先生にお尋ねをしたいと思います。

 西尾先生は、県は広域だ、政令市は基礎自治体だと言われていますが、本当に政令市が基礎自治体と言えるんでしょうか。私は疑問を持ちますので、その点をもう一度お尋ねさせていただきたいと思います。

西尾参考人 地方自治法上、都道府県は広域的団体、そして市区町村は基礎的自治体、団体ということになっておりますので、その分類によれば、政令市は基礎的な団体だということであります。

佐藤(正)委員 だからこそ大阪都構想が生まれたんだと私は思います。

 私は北九州市という政令市ですけれども、橋下市長、実は、北九州でも七区あります。区民が区長を知らないんですよ。顔すらわからない。知っているのは、連合会長さんとか町会の会長さん、そういう方ぐらいなんですよ。区民のほとんどは知らない。知らないうちに、区長が二年ぐらいするとかわる。単純に言えば、役所のポジション回しですよ。ここはやはり変えるべきだと私は思います。

 よく言われるのが、私は政令市ですけれども、政令市から見ると、県は要らないと言うんですよ。こういう議論がよくあります。政令市の市議会から見ると、県議会議員なんか要らないよ、もう仕事がないだろうとよく言われます。

 しかし、よく考えてみると、政令市の区単位で、例えば二十万の区があるとする。先ほど橋下市長が資料で出されましたけれども、大阪市だけでどれぐらいの規模の人口規模を見ているのか。きょうは原口先生が先ほど質問されましたけれども、佐賀県は八十万ちょっとですよね。それでも県なんです。そういう人口規模を見ただけでも、少し疑問が出るのは当たり前だと思います。そういう意味では、区長の公選制というのは私は必要だと思います。やるべきだと思います。

 しかしながら、今回、修正案が出ましたけれども、ちょっと拙速過ぎるのかなというのも本音であります。

 そこで、修正案よりも、もう一度橋下市長にお尋ねをしたいのは、なぜ政令市を解体してやるのか、その点をもう一度聞かせていただきたいと思います。

橋下参考人 政令市は、僕は基礎自治体ではないというふうに思っています。ただ、これは、先ほどの僕の資料にありました各二十の政令市の中で、いろいろな政令市がありますので、基礎自治体の発展系の政令市もあれば、基礎自治体ではない政令市、特に以前から大都市と言われているところは、これはやはり基礎自治体ではないと思っています。もう仕事が全然、基礎自治体の仕事になっておりません。

 これは大阪府議会、市議会の議論でもそうなんですが、政令市、大阪市、市とつくものは基礎自治体だという、その確定的な前提条件で議論が始まるんですが、僕はそこを問い直すべきだ。要は、基礎自治体の仕事をするところが基礎自治体なわけで、今の都道府県、市町村制ができて、市町村イコール基礎自治体という時代ではもうない。中身をもう一回問い直して、本来基礎自治体の仕事をやるべきところが基礎自治体で、あるべき論を目指していくべきだと思っているんですね。

 その場合に、大阪市という状況を見れば二百六十万人、繰り返しになりますけれども、選挙で選ばれた長が、首長が住民の声をすくい上げること、これがもう無理です。

 例えば、人口三十万人の新宿区の区長は、住民からの手紙を全部目を通すらしいです。それから、日本維新の会の山田さんが杉並区長のときも、年間二千から三千通の手紙に全部目を通すと。しかし、僕のところには六万から七万のいろいろな声が来ます。これは、全部目を通すのはもう不可能なんですね。ですから、やはりこの大阪市内に、選挙で選ばれた首長、基礎自治体の仕事をマネジメントする首長を複数人置かなければいけない。

 その際に、なぜ政令市が不要なのかというと、これは大阪の特殊事情です。

 例えば愛知県や横浜なんかのところは、先ほども言いましたけれども、人口集積の箇所が幾つか複数ありますので、いわゆる都市を構成する部分に一定、政令市の枠をはめる、そういうやり方はあるかと思います。しかし、大阪の場合には、全国で二番目に小さい面積のところに、都市の集積というものは一つしかありませんので、そこに基礎自治体である新しい区、特別区を置き、そして政令市を残し、この政令市と大阪府庁、同じような仕事をする役所を二つ残しておく必然性、理由はないという思いで、そうであれば、特別区をつくった上で、残った政令市と大阪府庁、これを、連絡調整会議みたいな形で協議をするのではなくて、組織を統合してしまえばいいじゃないかということで、大阪の場合にはもう政令市は廃止だと言っておりますが、これは全政令市に適用される問題ではないというふうに思っておりまして、大阪の、ある意味特殊事情。

 同じような事情を抱えている府県と政令市のところでは都構想が適用されるかもわかりませんが、ちょっと僕は大阪以外の都市の状況というのはわかりません。ただ、大阪の事情から考えれば、特別区ということで基礎自治体の仕事を任せ、残った政令市と大阪府庁はもはや統合するしかないと思っています。

 ただ、府議会、市議会ではこれは反対になっていますので、ぜひこれは、政令市を残した上での区長公選制という形で議論の余地を何とか残していただきたいと思っております。

佐藤(正)委員 私は、全政令市に当てはまるところは、多分、大だと思います。ただ、いろいろ事情がありますので、それぞれいろいろお考えがあるんだろうと思いますが。今回の法案にしても、実は、政令市からこうやってほしいという声は上がっていないというのが現状です。ですから、法律的にはこういう選択肢があるよというのを出すので、これについては選んでいただければいいと思いますから、それはそれで結構だと思います。

 先ほど橋下市長が言われた、大阪市をいわゆる解体をして、そして経済圏も含めてやっていく。これから道州制を進める上においては、間違いなく都市間競争なんですよ。今までのように中央集権でやっているところは、みんな負けていますよ、世界で。だから、この大阪都構想、議員立法で法律をつくっていただいた。私はその当時いませんでしたけれども、皆さんが賛成をされたというふうにお聞きをしております。共産党は違ったんですかね。しかし、そういう内容のもの。その中に、実は最終ゴールは関西州とうたってある。

 そこで、せんだって安倍総理がこの総務委員会にお見えになったので、ちょっとこういうのをお尋ねしました。

 大阪のある番組で、大阪都構想については安倍総理はどういうお考えですかということに、基本的にマルですとそのテレビの放送で発言をされました。その点について安倍総理に私は尋ねたんですね。基本的にマルとは何なんですかという御質問をしたんですよ。そうしたら、総理は、この大阪都構想について、考え方、理念について我々は応援しているというお話をさせていただきましたと。まさにここが大事だと思うんですよ。これは、最終的には関西州なんですよね、この理念なんですよね。

 私は、ぜひ、そういう意味では、もっともっと過激にやっていいと思いますよ、実際。これは、ある意味では、これまでになかった仕組みをつくりかえるわけですから、物すごいエネルギーが要りますよ、必要だと思います、革命に近いことですから。ぜひ、もっともっとほえていただいて、やっていただきたい、このように思います。

 それから、今回の修正案は、先ほど申し上げたように、私が考えているには、確かに公選制を選べるメニューは必要なのかもしれませんが、まだ理解できないところが多々あります。それは、選挙で選ばれた区長が、結局、先ほど橋下市長が言ったように、これはもう余りにも見かねるといったときに、市長が議会に解任を認めてくれと。議会が認めて、それから、再度選挙、住民投票をするんですか。その辺をもう一度ちょっと説明していただけませんか。

橋下参考人 そこは、公選で選ばれた区長である以上は、原則はそこの区長の判断で完結すべきだと思っていますが、政令市という枠を残す以上は、市長と区長との関係を、一定、指揮監督関係は残しておかなければいけない。

 ただ、公選で選ばれた区長でありますので、通常の市長、副市長の関係とは違って、市長の人事権で解職とか解任ということはできずに、一定、議会の同意を得ながら、最後は住民投票でその解職というものをやっていく、いわゆるリコール制度、住民からのリコール制度に模した形で市長と公選区長の指揮監督関係をつくっていく、そういう修正案になっているかと思います。

佐藤(正)委員 そこが何か、すとんと落ちないんですね。

 やはり、せっかく選挙で選ばれた区長さんが、その上に市長さんがいらっしゃって、どうもこいつはけしからぬといったときに、議会が同意をしたときにもう一度選挙でやる、また選挙で選ばれてきたということがあり得ると想定できます。そうすると、そこで行政が本来のやるべき仕事が停滞する可能性が、私は否めない。そういう意味では、今回の修正案については、まだ勉強不足でありますけれども、ちょっと賛同しかねるということは、申しわけないですけれども、この場で申し上げておきます。(発言する者あり)謝る必要はないね、そういう意思ですから。

 それで、あともう一点、もう時間がありませんから、市長に申し上げたいのは、区民が見える基礎自治体にするには、私も政令市を解体すべきだと思います。そして、区民が見える形で、何をやっているのか、お金は何に使っているのか、自分たちの税金はどのように活用されているのか、これがやはり身近に見えて住民サービスができることが本当の基礎自治体だと私は思っています。そういう意味では、政令市をつくったことによって実は二重行政を増長したというふうに私は思っています。

 ですから、総務大臣にこの間お尋ねをしたんです。国が制度をつくった政令指定都市制度自体が実は二重行政を生んだのではないか、国にも責任があるという質問をさせていただきました。全く違う方向で答えが出ましたけれども、私はそのように考えております。

 最後に、今私が申し上げた点について橋下市長の考えを聞いて、質問を終わります。

橋下参考人 委員の御意見に僕は全く賛同といいますか、完全に一致しているところであります。

 市長と区長の関係についてはさらに精査が必要ですけれども、ただ、公選職である我々首長もリコール制度で解職になりますので。ただ、このリコール制度というのは、住民の一定の署名数からスタートします。ここを市長の請求に変えたというのが今回、維新の会の修正案だというふうに思っていますので、ここはいろいろ議論があると思います、市長と公選区長の関係を精査する必要があるという御指摘はそのとおりだと思っておりまして、大阪市としてもこれはしっかりと研究もしていきたいと思っております。

 あとは、やはり繰り返しになりますけれども、安倍総理がそのように理念や基本的な考え方を応援するということを言ってくださり、当時、一部の会派、一部の党を除いて、そのような大都市制度の改正は必要だろうということで、この大阪都構想の法案、賛同していただきました。

 ただ、その前提として、そうはいいつつも、大阪府議会、市議会の承認があっての話だよという留保があるというのが、恐らく今の国会議員の皆さんのお立場だと思うんですけれども、大阪府議会、市議会、非常に激しい政治的な対立状況になっているところもありますので、何とか議論を進めていくということにおいても、大都市制度を変えて、行く行くは統治機構を変えていくんだということにおいても、議論の余地をつくっていただけるのは国会議員の皆さんしかありません。

 繰り返しになりますが、法律がなくても、進めることは進みます。自治法改正の今の規定はなくても、ここまではやる気がある自治体はやりますけれども、区長公選制の規定の導入だけは、国会議員の皆さんの決断がなければ、これは自治体ではいかんともしようがありませんので、何とか議論の余地というものを政治主導で引っ張ってもらって、あとは府議会、市議会の議論で、おまえら決めろということを言っていただければ、しっかり大阪で議論をしながら最終のところまで持っていきたいと思いますので、ぜひ区長公選制の導入について御理解をいただければと思っています。

 ありがとうございました。

佐藤(正)委員 終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、参考人お三方の皆さん、大変お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。

 最初に、西尾参考人にお尋ねをいたします。

 冒頭のお話にもありましたように、地方分権改革やあるいは地制調の中心的なメンバーとして活躍をされてこられました。そのお立場で何点かお尋ねをしたいんです。

 一つは、今回の法改正案でも措置されようとしております新たな広域連携の仕組みのところです。

 これは、人口減少、少子高齢化社会における今後の基礎自治体の行政サービス提供体制、これの検討を具体化する中で出されてきているものでありますけれども、この連携協約制度やまた事務の代替執行制度、こういった新たな広域連携の仕組みというのは、この間行われてまいりました事務、権限の移譲があります、こういった事務、権限の移譲について、これをしっかりと受けとめる上での有効な手段の一つとして機能する、そういうものになり得る、このように受けとめておられるのか、この点についてまずお聞かせいただけないでしょうか。

西尾参考人 市町村合併を議論するときには分権の受け皿という議論がありましたけれども、広域連携を考えるに当たっては、さらなる事務、権限の受け皿としてそれを使うという発想ではありませんでした。最低、市町村が持たされている、義務づけられている仕事をこなしていくこと自身が容易なことではなくなるのではないか、むしろ、そちらの方の発想から出ている新しい連携の仕組みでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 そこで、市町村合併のお話が今出ました。平成の大合併、市町村合併についてのメリット、デメリットの議論があります。私は、この点については、やはり制度的な問題で、市町村の合併、現場でさまざまな問題が生じている、このように受けとめておりますけれども、西尾参考人として、この平成の大合併についての評価についてお聞かせいただけないでしょうか。

西尾参考人 平成の市町村合併に最初のゴーサインを出しましたのは、地方分権推進委員会の第二次勧告であります。政府は合併の促進に向けて積極的な方策を講ずるべきであるという勧告を第二次勧告の中に書きましたので、それを受けて、当時の地方制度調査会が具体的な推進方策を議論し、地方自治法の改正とか市町村合併特例法の改正というようなことが行われ、あの合併促進運動に至ったわけです。

 私は、その最初のゴーサインを出した委員会の委員の一名でありましたから、この問題については非常に責任を感じております。

 その後、地方分権推進委員会が終わってから、今度は地方制度調査会の委員として、これをどういうふうに収束するかという議論がまた起こりました。ここでも、どこで幕引きを図るべきかということに非常に苦労したというふうに思っております。

 責任は感じておりますので、どこかで幕を引かなければならないと思っておりました。十年くらいかかったわけですけれども、これは、明治の市町村合併や昭和の市町村合併よりも長期間かけております。これ以上頑張っても、そうはもう進まないのではないかということで、幕引きすべきだということを私は主張したりいたしました。

 この評価ですけれども、これは両面あると思います。率直なところ、合併による行財政の効率化といったような効果がはっきりと出てくるのにはかなりの年数が必要であります。したがって、今の時点で歴然たる効果が出ているというふうにはなかなか言えないと思います。

 その一方で、私が今まで理事長をしておりました後藤・安田記念東京都市研究所も、この平成の市町村合併の総合的研究というのをやりまして、うちの若い研究員たちが出した結論は、案外、合併をせずに孤立を選んだ市町村の方が、合併した市町村よりも財政効率化がむしろ進んでいるのではないかという結果が出ておりますが、合併せずに頑張るというのは相当な自己努力をしなければならないんですね。その自己努力をした市町村はもっと効率化が進んでいるというのは、今の時点での評価ではないかという感じがいたします。

 ですけれども、これから効果がどれだけ出てくるかという問題は、もうちょっと年数が要るんじゃないかと思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 関連してですけれども、都道府県の果たす役割の問題との関係で、事務、権限の移譲の問題です。

 この間、一括法でのさまざまな事務、権限の移譲もありましたし、今回の自治法におきましても、国から都道府県への権限移譲、さらに都道府県から市町村への権限移譲の問題も含まれておるわけですが、都道府県から市への移譲につながるような新中核市の創設などもあるわけです。

 一方で、現場のいろいろな話を聞きますと、例えば、社会福祉法人についての監督の事務などを一般市におろすといった際に、小規模な団体では、一方で社会福祉法人への支援や指導を行い、他方で監督を行う、これはなかなか大変だ、現場でそういった業務の切り分けも難しい、かえって、そういった一つのところで指導と監督が一緒になると、あってはなりませんけれども事業者との癒着にもなるんじゃないのかという懸念なども生まれてまいります。

 また、特例市をなくして新中核市にという方向というのは、保健所を権限移譲するということにもつながるわけですが、それはやはりちょっと受けられないという特例市の方などもたくさんいらっしゃるということを見たときに、私は、そういう意味では、事務の中では、権限の中では、広域の自治体としての都道府県が担うべき仕事というのはあるんじゃないのか。

 高度な専門性を発揮するような事務ですとか、あるいは広く薄くあるような業務であって、都道府県がやった方が効率的に行えるような事務というのもあるんじゃないのかとか、また、先ほども言ったように、事業者との関係で、支援や推進、一方で監督をしなくちゃいけない、こういう分離を図る上で、例えば監督権限、規制権限などを一方の広域自治体が持つ、こういうことも当然あり得るんじゃないのか。

 ですから、そういう点でも、一律の権限移譲ではなくて、こういう広域自治体が積極的に果たす役割があるのではないのか、都道府県の果たすべき役割があるのではないのかと思うんですが、この点についての西尾参考人のお考えをお聞かせください。

西尾参考人 お答えいたします。

 一般論として、都道府県が果たすべき役割というのは非常に大きくあるわけです、依然としてあるわけです。それは当然のことでありますけれども、この間、ここ十数年といいますか、二十年ぐらいですか、徐々に徐々に変わってきた大きなことは、市区町村に幾つもの段階が出てきたということなんだと思います。

 それ以前は、基礎的自治体である市町村というのは、基本的に同一に扱うという考えで制度はできていたと思います。市と町村との間の事務の分担の違いというのはごくわずかでありました。市になったならば福祉事務所を持つ、しかし、町村は持たずに都道府県にやってもらうということですし、原則として都市計画権限は、市になれば持ちますが、町村の方は持たないという違いぐらいしかなかったわけですね。それ以外は、ほとんど市と町村で所掌事務の範囲に違いはありませんでした。政令指定都市と都制度というのが唯一の例外であったわけです。あと、一般的な市町村は大差がないものとして存在していたわけです。

 ところが、その後、分権を進めていくという観点で中核市が生まれました。それからさらに特例市が生まれました。そして、その要件が徐々に徐々に緩和されていって、変わってきまして、現在では、政令市は、最初は六大市の問題だったんですけれども、これが二十に達しているというような大きな変化が起こりまして、基礎的自治体である市区町村に、政令市はこう、中核市はこう、二十三特別区はこう、一般の市はこう、そして町村というふうに差が出てきたわけです。

 最近の都道府県から市町村への権限移譲の場合には、政令市にはおろす、中核市にまでおろすというのと、市におろすというのと、市町村全部におろす、いろいろ段階分けがなされていまして、市の持つ範囲と町村の持つ範囲にだんだん差が出てきています。これは近年の大きな変化なんだと思います。

 しかし、それがどういう分類が一番適切かというのは、まさにそれにふさわしい能力を持っているかどうかという判断だと思います。

塩川委員 そういう中でも都道府県の果たす役割というのは当然出てくるだろうと思っております。

 お三方に、道州制に関連してお尋ねいたします。

 これは今、政府としても、道州制担当大臣を置き、道州制推進に取り組んでいる、自民党においてその作業を行っているという形になっておりますけれども、道州制の推進について、全国町村会は断固反対という立場であります。全国町村会は、道州制が、新たな集権体制を生み出し、大都市圏への集中を招き、地域間格差は一層拡大し、市町村合併が事実上強制されることなど問題点が少なくないことを指摘し、懸念を表明してきたと述べて、この道州制の導入に断固反対としております。

 道州制に対する全国町村会の立場、見解についてどのように受けとめておられるのか、三人の参考人の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

西尾参考人 私は、先ほども言いましたように、平成の市町村合併に深くかかわらざるを得なかった人間です。したがって、それをずるずると引きずらないで幕引きをするということを一生懸命主張した人間でございますので、今は、ようやくこの合併騒動から市町村が解放され、何とかしてこの体制をきちんとしたものに築こうということで一生懸命になっている時期だと思います。そのときに、その基盤を揺るがされるおそれを町村関係者は感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。そう思います。

上田参考人 地方六団体の枠組みの中で、私、たまたま道州制に関する知事会での取りまとめの責任者になっております。知事会的には、よい道州制は賛成、悪い道州制は反対、こんなふうになっております。

 町村会の考え方、私どもは、よい道州制になったときには町村会に対して説得をお願いするような形になっていく、そういう立場だと思っております。

橋下参考人 僕は、地方交付税制度がある限りは道州制は進まないと思います。

 といいますのは、それだけの努力、それだけの改革というものをやらなくても、役所組織というものは黙っていてもお金が入る組織ですから。民間であれば、お金が入ってこないとなれば、徹底した組織改革をやる、少々負担や犠牲が生じても、何とか生き残るために必死になって改革をやるということになるんでしょうけれども、地方交付税制度があり、市町村も、道州制までやらなくても、今のような意見を出して道州制に反対していても、何とかお金が入ってくるので何とかなる、そういう状況なんじゃないでしょうか。

 やはり僕は、今の国の財政構造を考えても、まだまだ地方の予算、これは大阪市も含めてですけれども、無駄が多過ぎます。これは委員とちょっと考え方が違うのかもわかりませんが、職員の人件費も高過ぎますよ。特に現業職ですよ。地方の現業職。

 行政職がやっているラスパイ比較で、僕はあのラスパイ比較もあんなのはまやかしだと思っていますけれども、あれは現状の組織を是とした形で民間組織に組みかえた場合にどうなるのかという、あんなのはまやかしで、今の地方行政組織、それがそもそも組織のあり方として間違っていますから、そこから是正しなきゃいけない。

 特に現業職については、これは国会議員の皆さんが恐らくルール化していないところが問題だと思うんですが、官民給与比較のメカニズムがありません。これは、大阪市で初めて今度、現業職、官民給与比較をやって、余りにも高過ぎる状況が明らかになって、今何とか下げようと思っていますけれども。

 こういう地方の改革というものを促すためにも、早く地方交付税制度みたいな甘えを断って、道州制を成立させて自立をさせる。そこには少々の負担とか犠牲もあるかもわからないけれども、国民がそれぞれ犠牲を少しずつ受けて、それでも国を立て直すというような、全国民のそういう意識改革がなければ国の財政構造は変わらないと思っていますので、早く道州制を成立させて、責任を負わせて、自立をさせて、少々の痛みや負担も国民に理解を求める、そういう取り組みが必要なんだと僕は思っています。

塩川委員 国による地方の人件費削減の方針というのは大きな地方のゆがみにもなっておりますし、たくさんの非正規の自治体職員がいるという事態も、放置をするということでは自治体サービスが提供できないということを申し上げ、ちょうど時間となりましたので、終わります。

高木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大変にありがとうございました。(拍手)

 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する三宅博君外二名提出の修正案並びに内閣提出、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官・内閣府地方分権改革推進室次長末宗徹郎君、内閣官房内閣審議官・内閣府地方分権改革推進室次長新井豊君、総務省自治行政局長門山泰明君、国土交通省大臣官房総括審議官本東信君、大臣官房技術審議官森昌文君、総合政策局公共交通政策部長藤井直樹君及び水管理・国土保全局次長加藤久喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野総一郎君。

奥野(総)委員 再び時間をいただきました。十分間でありますが、しっかり質問させていただきたいと思います。

 きょうの午前中の参考人質疑で、西尾先生の方から、今回の改正案は人口減少社会への現実的な対応策だという発言がありましたが、まさにそのとおりだと思います。ですから、今回の四次一括、そして地方自治法等の一部改正については、基本的には賛成。ただ、前回も申し上げましたが、積み残しの部分をしっかりやらなきゃいけない。さらにその先、道州も視野に入れて考えるべきではないかということで、最後、質問させていただきたいと思います。

 まず、総合区制度について伺いたいと思います。総合区制度について、具体的に今、手を挙げている、導入を検討しているという指定都市はあるんでしょうか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 総合区の導入につきまして意向調査をしているわけではございませんので、指定都市のつぶさな検討状況というのは把握いたしておりませんけれども、総合区の制度は、人口規模ですとか面積、沿革など、指定都市それぞれ多様でございますので、その多様性を踏まえて、それぞれの指定都市が地域の実情に応じて柔軟に導入することができる制度としているところでございます。

 そして、今回の地方自治法改正案、成立させていただきますと、それぞれの指定都市におきまして、区の事務所が分掌する事務を条例で定めることにもなりますので、総合区の導入の要否ということも含めまして、区のあり方について議会でも御論議いただけることになるのではないかというふうに期待しているところでございます。

奥野(総)委員 この間、日経新聞でしたか、記事を見ますと、総合区の導入に積極的な指定都市が少ないんじゃないか、こういうトーンの記事がございまして、むしろ特別自治市ですか、指定都市の市長会の方から要望が出ていますいわゆる特別市制度の方が希望が多いんじゃないか、こういう記事も出ておりましたし、きょうの橋下市長なんかの御発言を見ても、今のままの総合区制度ではなかなか導入できないんじゃないかというトーンもうかがえました。

 今回の改革により、先ほど西尾先生も政令市を実質的に特別市に近づけるというような発言もされておりましたけれども、区長公選制、あるいは、今回見送られました区ごとの常任委員会の設置まで認めなければ、やはりこの改革というのは実質的な意義がないんじゃないか、手を挙げる指定都市がないんじゃないかと思います。

 これは通告していませんが、大臣にちょっとコメントをお願いしたいんですが。

新藤国務大臣 今回、政令指定都市という、大きな人口と、そしてまた活力を有する地域の自治をさらに住民に近づけるための、こういう制度であります。ですから、私どもとすれば、メニューを取りそろえて、その中でそれぞれの指定都市がお考えになるであろうと。今こういう制度を用意いたしましたから、それを含めてこれから各自治体の中で御検討がなされていくものではないかというふうに思いますし、各市長からのいろいろなコメントももう既に折々出ておりますけれども、さまざまな検討がなされていく中で、いずれ形が出てくるのではないか、このように期待をしております。

奥野(総)委員 法律で改正することの意義自体はあると思いますが、実際には、橋下市長もおっしゃっていたし、千葉市なんかもそうなんですが、都市内分権はある程度今の現行制度でもやっている、予算の提案を実質的にやっていたり、そういうことは行われているので、余り今回目新しいことがないんじゃないか、こういうふうに言われていることをここで改めて申し述べておきます。

 それからもう一つ、時間が短いので先へ進めますが、連携協約が今回の目玉だということですね。連携協約は三つのタイプがあって、地方中枢拠点都市を中心に、集約とネットワーク化を図るための協約、それから条件不利地域で市町村のサービスの提供を都道府県が助けるというようなタイプ、それから大都市圏では公共施設の集約化というものに使える、各市ごとに、狭い面積のところに同じような公共施設がいっぱいあってもしようがないということで、これの集約化に役立つんじゃないかということが例の地制調の報告書にも書かれていました。

 これはこのとおりになれば本当にすばらしいと思うし、まさに有効な処方箋だと思うんですが、しかし、実際にこれが結ばれるのか。そのインセンティブ、中枢拠点都市になって周りの市町村を助けてやろうというインセンティブが働くのか。あるいは、県が助けてやろう、県はある程度やるのかもしれませんけれども、こういう協約締結にどのようにインセンティブを持たせるのか。そうしないと、絵に描いた餅になってしまいますから。

 私は、それは一つは財源だと思うんですね。先ほども参考人質疑の中でございましたけれども、やはり交付税措置を期待される向きもあるようですし、西尾先生も、適切な財政措置をやるんだ、こういうふうにおっしゃっておられました。一方でしかし、地方制度調査会の中では財源については余り突っ込んだ議論が行われなかったということもおっしゃっておられて、事務方にお任せするというふうな発言がありました。

 これは財政措置を具体的に考えておられるのか。あるいは、もう少し突っ込んで、今回、勧告などという制度もありますけれども、強制的に連携協約を結びなさいということもあるのか。どうやってこの連携協約制度というのを実質的に機能させていくのかということについて伺いたいと思います。

新藤国務大臣 これは、ぜひ私は柔軟な発想をしていただきたいと思っているんです。

 この連携協約制度自体をどのように進めていくかということなんでございますけれども、目的は地域の活性化ですよね。それから自治の確立です。だとするならば、今の市町村同士の事務をどのように連携するか、これが基本ですけれども、加えて、そういう連携ができるようになるならば、新しい仕事ができないんだろうか。みんなで考えて、地域活性化のための事業を起こしていただいたらどうかなと私は期待をしているんです。そのための地域活性化に関するプラットホームもつくりました。

 ですから、そういうふうに町を元気にさせるための事業と、それをお互いに分担するための広域連携、このように考えていただけると、またいろいろな展開が広まってくるのではないかと私は思います。

 まずは、着実に実施するために、今年度はモデル事業として幾つかの広域連携のモデルをつくってみようと思っておりますし、それらを踏まえて、二十七年度からは、本格的な地方交付税措置、こういったものも備えて全国展開を図ってまいりますが、制度としてはそういう設計なんですけれども、加えて、いろいろなその他のまちづくりの政策とあわせることによって、私は、柔軟な、そして多様な自治というものができるのではないか、このように期待をしているのでございます。

奥野(総)委員 これは絵に描いた餅に終わらないように、きちんとワークするようにぜひやっていただきたいんですが、気になるのは、定住自立圏構想というのがもともとあって、これもなかなかいい発案だったと思うんですが、今回の集約とネットワーク化、あるいは基礎的自治体間での業務の肩がわり的なものはこの定住圏構想の中でもできたはずなんですね。

 ところが、報告書なんかを見ると、やはりお金の問題があって、中心市は一市当たり年間四千万、近隣市町村は年間一千万を上限とする包括的財政措置をもっと拡充すべきだなんという報告書も、これは定住自立圏の今後のあり方に関する研究会で出ていますから、やはりこの辺がネックになったんじゃないかなと思うんですね。

 ですから、今回、新たにこういう仕組みを入れるわけですから、きちんとワークするように、お金も、財源もつけていかなきゃいけないということだと思います。

 時間もなくなってまいりましたけれども、先ほど、人口減少社会への現実的な処方箋だという西尾先生のお言葉もあり、今回の法案については我々としては賛成をするということでありますが、やはり、この間も申し上げましたけれども、積み残しもあるわけでありますね。大臣、これは一区切りだ、終わりではないとおっしゃっていた。

 先ほど上田知事からもありましたけれども、また、この場でも再三ありましたけれども、ハローワークの問題も引き続きやっていかなきゃいけないでしょうし、農地転用の問題、あるいは知事から出ていた、従うべき基準がまだいっぱい残っているんだという話もございました。これらについては引き続きやっていくということだと思いますが、手挙げ方式とかいろいろ言っていますが、その中でもしっかりとやっていただきたいと思います。

 それから、再三申し上げている大きな積み残しの分として、第二次勧告の中に残っている出先機関改革ですね。これは大きな積み残しとしてあります。また、財源の問題、これは財務省との関係もあってなかなか打ち出しにくい面もあるんでしょうけれども、ずっと言われてきた税源移譲の話とか交付税率の引き上げの話とか、このあたりをきちんとしない限りは、なかなかうまくいかないと思うんですね。交付税をふやすといったって限度があるでしょうし、やはりこの地方財政改革についてきちんと取り組んでいただきたいと思います。

 時間も来ましたけれども、出先機関については、先ほど参考人質疑にもありましたけれども、関西、九州広域圏等々、受け皿もあるわけですから、やろうと思えばすぐにもできる、物によってはすぐにもできるはずなんです。我々、法案を国会の方に出そうと思って、原口筆頭と今やっておりますけれども、ぜひ、審議をしていただいて、前に進めていただきたいと思います。それから、財政改革、やり残した改革として、地方財政の改革について、これもぜひ前に進めていただきたいというふうに思います。

 現実的な地方分権、これは余り現実的にやり過ぎても前に進まないと思うんですよ。ですから、ぜひ、出先機関改革、それから税源移譲等の財政改革、そして最後に道州制、これはやはり一気に進めていただきたいんですね。御党の報告書でも、現在の地方自治の仕組みでは分権改革の推進はほぼ限界に来ているということが……

高木委員長 奥野委員、申し合わせの時間が過ぎておりますので。

奥野(総)委員 済みません、最後。

 大臣、改革を前に進めるということで、地域主権改革をぜひ一緒にやっていただきたいんですが、最後に一言。

新藤国務大臣 人口減少社会の対策というのは、ひとえに、それぞれの地域をいかに自立させるか、そこで人が定住し、また、そこに人が逆に集まっていくような、そういう地域をつくっていかなくてはいけないということであります。そのために必要な改革はこれからも精いっぱい続けていきたい、このように考えております。

奥野(総)委員 以上、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

高木委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 限られた時間しかございませんので、十分に意を尽くした質問にならないかもわかりませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 まず初めに、一昨日、総理が出席されましたときに、自民党の井上委員がちょっと御説明されたんですけれども、福岡の件ですね。福岡知事と市長、これは過去四年間、公式に会っていないというふうなお話をされました。そのときに私、不規則発言で、大阪は毎日会っているよというふうなことをちょっとお話しさせていただいたんですけれども、本来、密接に連絡をとり合い、いろいろと、二重行政の解消であるとか、一致協力をして、県政の発展といいますか、そういったことを目標に意見の収れんをしていかなくてはならない関係にあるにもかかわらず、これが本当になされていない。

 これは、政令指定都市を抱える、ほとんどと言っていいんです、知事と指定都市の首長が仲が悪いんです、張り合うという部分があって。そういった今の現状と、それから、大阪は非常に密接に、意見を一致しながら、しょっちゅう会って調整をしている。この状態をごらんになって、大臣、どのような御感想を抱かれているか、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども。

新藤国務大臣 それぞれの、指定都市ともなれば、完全に個性が違うと思いますね。それはかなりの力を有した自治体であります。ですから、その実情に応じた対策がなされている。私は、今、人間関係ですとか、連絡の、意思の疎通が少ないというようなことは確認をしておりません。必要な事務というものはきちんと行われていると思います。

 二重行政の問題というのは、主に任意の行政事務において発生しているわけでありまして、今回は、法律に基づいてまた権限が移譲されますから、それらについての調整をするための会議を設定したということでございます。

 それから、大阪については、再三のいろいろな御下問がございます。これは、やはり大阪という都市の課題が非常に山積しているんだ、さまざまなものがあって、それはやはり住民の意思と、そしてまたそこで活動されている地方議員の皆さんがそういう問題意識を持って活発に活動されていることであって、我々とすれば、そういったものについてはぜひ意思を尊重してまいりたい、このように考えているわけであります。

三宅委員 今の現行制度は、どうも致命的な欠陥があるように思えて仕方がないんですね。これはやはり抜本的に変えていかない限り、こういった問題はこれからもずっと引き継がれていくんじゃないかなというふうに思います。

 そこで、やはり制度そのものを根底から変えていかなくてはならない。これをわかりやすい例えで言いますと、九号のサイズの服を着ている女性、その九号の服、十一号の人がその服を着よう、これは無理な話ですよね。言ってみれば、親より子の方が、今は身長も体重も体力も若さも、みんな大きくなっている。にもかかわらず、親が子供に対してずっと指導的な立場にあるということは、これはやはりちょっと無理な部分があるんじゃないかなと思うんですね。

 この指定都市制度が始まりました昭和三十一年と今、平成二十六年度、あらゆる部分に劇的な変化が起きているんですね。これは経済の面に関してもそう、それから人口もそうですね。当時はやはり右肩上がりで、爆発的な人口の増加が見られた。今は人口減少、あるいはまた非常に少子高齢化というふうな部分があって、もう間尺に合わなくなってきたというふうに思えて仕方がないんですね。

 してみると、今の制度をやはり根本的な部分で変えていかなくてはならないと思うんですけれども、そのあたり、大臣、もう一度ちょっと御感想をお聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 戦後六十九年、そして主権回復してから六十一年目になるということであります。人間でいえば還暦を超えるわけですね。ですから、社会のあり方、そしてこれから目指すべき国民生活、これはもう全てが変わっているわけです。それに合わせて、どのように、今委員がおっしゃったような身の丈に合わせた衣類を身につけるか、こういう改革が必要だと思います。

 ただ、一つだけ陥ってはならないのは、手段が目的化することだけは絶対に避けなければいけない。そして、今までの蓄積があって、その必然があって、その中から今があるわけでありますから、よいところを受け継ぎ、そして着実に、残すべきことは残し、変えるべきことは大胆に変える。それはびほう策ではなくて、根本から、総合的な、そういう改革がこの国には必要なんだろう。安倍内閣はそれに挑戦したい、このように思っているわけであります。

三宅委員 今の現行制度をやはり抜本的に変えていかなくてはならないというその思い、この部分は共有していると思うんですね。

 例を出したいんですけれども、神奈川県、うちの中田委員がもともと市長を務められておりました。神奈川県でいいますと、県の予算が三兆一千六百五十億。ところが、横浜市の予算が三兆五千百五十二億なんですね。ほかでもそうですよ。京都でもそうなんですね。府の予算が一兆二千六百二十五億。ところが、京都市の予算は一兆六千四百億というふうなことなんですよね。

 言ってみれば、指定都市制度というのは、県の中にまた県をつくったみたいな感じなんですね。この関係を根本的に整理しない限り、どうしてもぎくしゃくした部分が出てきて、いろいろなところに問題点が出てくると思うんですね。

 だから、二重行政、お互いが張り合ってしまうんですね。大阪でいいますと、今まで、府と市とずっと張り合う。京都もそうですね、府と市が張り合う。これを合わせてフシアワセとかいって語呂合わせをやっているんですけれども、確かにそんなような状態がずっと続いてきたんですよ。やはり予算一つとってもそうなんですね。だから、この指定都市制度そのものに、どうも大きな根本的な矛盾、欠陥があるというふうに思いますね。

 これの解消の方向性を、大臣は腹案みたいなものといいますか、やはり平素からずっとそういったことも考えていらっしゃると思うんですけれども、ある部分、方向性ですね、今のお立場もあっていろいろとお話しされにくい制約もあると思うんですけれども、差しさわりのない部分でちょっとお聞かせいただけたらと思います。

新藤国務大臣 まず、委員が市議会でどれだけそういった落ちを使って耳目を集めていたのかが容易に想像できるわけでありますけれども、これは私たちの共通の課題ですね。日本という国をこれからどうしていったらいいのか。そこの中で、それぞれの町に課題があるんです。逆に言えば、一つの町のやり方を全国に波及させようと思っても、これまた無理なんです。ですから、国家とは何ぞや、それから、地方自治というのをそれぞれの町でどのように確立させていくかということをやらなければいけない。

 私が今やるべきは、まずは、目の前の地域が疲弊していく中で、それにどのように歯どめをかけて、そして、逆に、過疎地であるからこそ元気になったような、そういう事業が打てないかということをやりながら、分権で、今の制度でできることは何かを追求していこうと。その上で、今度は税制や財源、そして権限、そういったものを総合的に整理し直した中で、新しい国の統治、そして地方自治のあり方というのが見えてくるのではないか。

 一つには、その解決策として、道州制を推進せよということの御下命を賜っているのもその一環だと思いますが、いずれにしても、それは、形ではなくて、どのようにこの国の国力を充実しながら国民の幸せを追求できるか、この形を探っていきたいと私は考えておるわけであります。

三宅委員 だから、大阪の場合は、橋下さんは、もう府と市とを統合してしまおうと。大阪都構想というのは、そういう部分ですね。単に二重行政の無駄というよりも、張り合ってお互いが足を引っ張り合うようなことだけはやめておこうというふうなことから、そういうふうな案が出てきました。なおかつ、その先に待ち受けているのはもう道州制しかないんだというふうな思いでやっていらっしゃるんですね。

 神奈川ですと、横浜もあれば川崎市もあって、相模原もある。政令指定都市が三つあるんですね。県があって、また県と同等のそういうふうな自治体が三つある。

 一つには、これはもう答弁は結構なんですけれども、多くの県庁所在地が政令指定都市の中にある。同じ位置にあるから余計張り合ってしまうんですね。だから、やはり、できればそういうところは統合するなり、あるいはまた県庁所在地をちょっと別の場所に移すとか、そういったこともいろいろと考えていかなくてはならないんじゃないかな。最終的には道州制の方に移行せざるを得ないというふうなことをお話し申し上げまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫でございます。

 新藤大臣、実は、質問の通告ではないんですけれども、こういうことが九州の方であったことをちょっと御披露したいと思うんです。

 例えば、水産高校が実習船を持つ、各県に水産高校があると、それぞれが実習船を持つとなると、大きな船で航海をしようと思ってもなかなかできないんですね。これは、福岡、長崎、それから山口が共同して船をつくって、そして航海する時期を変えてやれば十分にできるというようなことを、長年にわたってずっと懸案事項で、僕も間に入っていましたけれども、実は実現したことがあるんです。

 これも、一つは、二重行政とは言いませんけれども、より効果のあるやり方だった。なかなか難しかったです、それぞれがやはり自分のところの船はと言う。それを一つ越えていくと、もっと大きなものができて、投資額に比べれば結果が出るというようなことがあったことをちょっと御報告したいと思います。

 もう一つは、例えば福岡県でいきますと、上海に事務所を設ける。福岡市も設ける、福岡県も設ける、北九州市も設ける。要するに、一カ所でまとめれば、そして情報をたくさんとれば、共有をして、この町、どこに企業を持ってくればより発展をするのか。変な、小さなエリアで争うよりも、大きな目で見て企業誘致を進めようというようなことも福岡県でやったことがあります。そうすると、事務所を借りるのでも、それぞれが借りるよりも安くて、効果的に、人間も同じ目的で集まってくればより人材の情報が早くとれる。こんなこともあったことを御報告させていただきたいと思います。

 早速質問なんですけれども、今後の地方分権改革に当たって、新藤大臣が提案方式というふうに言われておりますが、提案方式をすれば恐らくたくさんいろいろな提案が集まってくると思いますが、それに対応する体制づくりはどのように考えていらっしゃいますか。

新藤国務大臣 これは、これから最終決定をして、皆さんに御報告しながら、各自治体にお願いをしよう、このように思っておりますが、まずは募集期間というものをしっかりとって、そして、今回の提案募集方式というのがどういうものなのかというのをよく説明しようというふうに思っています。

 それは、私のところに内閣府の事務局がありますから、この事務局がやります。そして、提案いただいたものにつきましては、事務局が整理をするとともに、それをチェックする有識者のチーム、ワーキングチームを設けます。事務方が整理して、各省といろいろな折衝に当たるんですけれども、その際にこのワーキングの有識者の皆さんも一緒に入ってもらおう、そういうふうに思っています。

 ですから、役所同士の、役人同士の話だけではなくて、専門家や、さらに別の見地からのそういった方を私のもとのワーキングとして設定して、まさに、民間も含めた、学識者も含めた、そういう検討チームをつくって、そこから深掘りをさせていこう、このように考えているんです。

 既に、今回、ハローワークの就職情報を全県、また、県から市町村でもとれるようになりました。これも手挙げなのでありますけれども、これも、ワーキングの皆さんと事務局とが合同で省庁と当たった結果の成果なんですね。

 ことし一年間の、これまでの成果を踏まえて、そういう審議体制といいますか推進体制をつくらせていただいて、これまでにない新しいステージをつくろう、このように思ってやらせていただいているわけであります。

佐藤(正)委員 早く立ち上げていただいて多くの提案を吸い上げていただいて、いいものはどんどん、当然、地方が望んでいることですから、ぜひやっていただければ、このように思います。

 今までだったら、地方分権改革推進協議会ですか、こういうものがありましたけれども、今後はこういう法定的なものは何か考えていらっしゃるんでしょうか。

新藤国務大臣 かつて法定のものがございました。地方分権改革推進委員会でございますね。これは、分権改革推進法に基づく設置がございましたが、実は三年の時限だったんです。これはもう役割は終わっているわけであります。私のもとの推進室体制というのは大臣決裁で、そして、その大もとの分権改革推進本部というのは閣議決定で、政府の方針として設けてございます。ですから、もう既に常設組織としてあるわけでありまして、これらをさらに推進のために活用させていただきたい、このように考えております。

佐藤(正)委員 これまで新藤大臣とやりとりをずっとやってまいりましたけれども、そういう意味では、大分前に進んでいるんだろうと思いますが、新藤大臣がいなくなったらどうなるのかなとちょっと心配をしておりますけれども、その辺は、せっかく種をまきましたので、しっかり花が咲くまでやっていただきたい、このように私は思っています。

 また、きょうの参考人の御意見を聞かせていただいても、いろいろ論はあるわけですけれども、今現在の仕組みでいくと、どうしてもやはり、人、物、お金というところがキーワードになっているんだろうと思います。それは、先ほども質問が出ましたけれども、小さな事務も、積み重ねれば当然、人が動きますからお金が要る、そういった財源措置、もう何度も聞かれたと思いますが、新藤大臣の中ではどのようにお考えですか。

新藤国務大臣 私は、率直に申しますと、先に条件を整えて、お金をよこしてくれ、それから、権限や財源があればできるんだというお考えもあると思いますが、実は、それがなくたって、アイデアがあれば、どんどん仕事というのは進められるんですね。

 私が思っているのは、まず成功事例をつくることである。それに基づいて必要な権限や財源は必ずついていくと思っています。そういう仕組みにしていかないと、不毛な、今の状態でどちらがふさわしいかとか、この金さえあればとか、逆に言えば、お金を引っ張ってくれば成功だというふうに思われてしまうと、そのお金が途絶えたときどうするんですかということになります。

 なので、私たちがやっているのは、持続可能性。国のお金を当てにするだけでなくて、地域のお金や民間の融資、そういったものも含めて総合的に調達をして、それが持続可能であって、しかも、借金は返せる状態。そして、仕事が継続すれば、そこに雇用が発生します。それから、地元産品の調達もそこに発生していきます。そういう形で地域経済の好循環をつくり、かつ、それをさらに広げたい場合に、この権限が必要だ、そして、ここまで実績があるんだからこの財源は我々が使うよ、こういうふうになっていけばいいのではないかなというのが個人的な見解でございます。

佐藤(正)委員 もうあと質問時間が二分ぐらいになりましたので、きょうの参考人質疑の中でちょっと感じたことを。

 橋下市長さんは、知事と市長が一体になっているからそこで決められるんだよという話をしていましたけれども、そういうところは本当にないんですよね、実は。ですから、今回の協議会、総務大臣がその間に入っていただける。

 確かに、問題なのは、首長さんと議会との関係が一番大きな問題になるんだろうと思います。

 私、この間、河川の問題をちょっとやりました。県から市に河川を移譲するときに、同一の政令市を走っていれば県から移譲する。なかなかうまくいかない理由は何かというと、議会なんですね。ここまで言っていいかどうかわかりませんが、議員なんですよ。

 要するに、首長さんたちはやってもいいよねと言っても、そこで選ばれた議員がなかなか、ある意味、議員の既得権益というところが実はあらわれてくるということで、随分私も苦労したことがありますが、今回、国の方でそういう協議会をつくっていただけるということになると、もう一押し前に進むんだろうと思って期待をしております。

 質問時間が来ましたので終わりますけれども、そういうことを述べさせていただいて、質問にかえさせていただきます。ありがとうございました。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 早速、最後の質問です。

 総務省にお尋ねしますが、第二十八次地制調答申、これは道州制を扱っております、及び、道州制ビジョン懇談会中間報告において、道州制のもとでの基礎自治体の位置づけがどうなっているのか、この点について説明をいただけますか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 政府におきましては、これまで第二十八次地方制度調査会、それから第一次安倍内閣において開催されました道州制ビジョン懇談会において道州制についての検討が行われてきておりました。

 お尋ねの基礎自治体の位置づけについてでございますけれども、まず、二十八次地方制度調査会答申の中におきましては、基礎自治体につきまして、住民に身近な行政について総合的に担うとされておりまして、また、道州制を導入する場合には、補完性の原理、近接性の原理に基づいて、国、広域自治体及び基礎自治体の間の役割分担を体系的に見直し、権限移譲を行うことが重要である旨の記述がなされております。

 次に、道州制ビジョン懇談会の中間報告の中におきましては、基礎自治体について、地域に密着した対人サービスなどの行政分野を総合的に担う基本単位と位置づけておりまして、具体的な役割として、例えば住民の安全、安心、消防、救急、社会福祉、保育所、幼稚園、生活廃棄物収集、処理、公害対策、保健所などの役割が挙げられているところでございます。

塩川委員 二十八次地制調、住民に身近な行政については基礎自治体が総合的に担う、この中では、現在都道府県が実施している事務は大幅に市町村に移譲、こういうことも書かれているわけであります。

 道州制ビジョン懇談会の中間報告でも、地域に密着した対人サービスなどの行政分野を総合的に担う基本単位、こういう中で一連の担うべき分野が書かれて、そういう中には、現行では中核市レベルが権限移譲を受けているような保健所なども含まれるという話であります。

 いずれにせよ、大幅な権限移譲の受け皿となるのが、道州制のもとでの基礎自治体ということです。

 続けて、内閣官房にお尋ねします。

 地方分権改革推進委員会の勧告において、道州制はどのように位置づけられておりますか。

末宗政府参考人 お答えいたします。

 地方分権改革推進委員会の勧告におきましては、道州制そのものの内容については論じられておりません。

 ただ、地方分権改革が、国の新たなガバナンスの姿、さらには将来の道州制のあり方にも結びつく重要な課題である、そういった分権改革の関連での記述が見られるところでございます。

塩川委員 一次勧告及び二次勧告で、将来の道州制のあり方にも結びつく重要な課題、将来の道州制の実現に向けて確かな道筋をつけるものとなると考えている、このように触れられております。

 一連の勧告では、一律の国の義務づけ・枠づけの見直し、条例委任化を進めることや、一律の事務、権限の移譲を推進してまいりました。この事務、権限の移譲といった地方分権改革は、このように道州制が射程に入っております。

 そこで大臣にお尋ねしますが、今回の地方自治法の改正案及び四次一括法案というのは、道州制とどのような関連があるのか、この点について御説明をいただけますか。

新藤国務大臣 道州制については、これは、国と地方のあり方を根本から見直す大きな改革であります。それは、国民的議論をもってさまざまな検討が進めていかれる、こういう状態になっております。

 一方で、今、道州制の議論が行われている間でも、この間でも我々は地方分権を進めていかなければならないし、それが地域の要望であります。したがって、現状の地方制度における分権、また権限の移譲、そういったものはどのようにできるかという観点から、今回の自治法の改正と四次一括法案というものができ上がっているわけであります。

 それらで分権が進んだ、その状態をもってして、その上で、さらなる統治機構の変換があるならばその設計がなされなければいけないという意味において、分権を突き進めていった結果と道州制の設計は必ずそこに連携が生まれてくる、このように私は考えております。

塩川委員 道州制というのは、統治機構の改革という点では、国家機構の改革と同時に地方自治制度の改革という点であります。そういう点では、それが、今回の法改正も、道州制との関係でいえばつながっていくものという指摘であります。

 今回の法案は、都道府県から市町村への権限移譲を進め、そのような権限移譲の受け皿としての新たな広域連携の仕組みも工夫をしているところでありますが、そうなりますと、今回の法改正が、道州制のもとの基礎自治体づくりと連動して市町村合併につながることはないのかという点が強く懸念をされるんですが、その点についてはいかがでしょうか。

新藤国務大臣 市町村合併をするか否かは、当事自治体間における判断がまずあると思われます。

 平成の大合併と言われた、国として、三千二百の自治体が千七百十八まで今来ておりますけれども、これは一定の期間を経過したところであります。

 ですから、今後、それが、広域連携を行っていくことが合併につながるかどうかは、ひとえにそれは自治体の判断にかかっているというふうに思っておりますし、道州制の移行と合併の問題はまた別途議論しなければいけないことじゃないか、このように考えております。

塩川委員 今回の法律によって、一連の権限移譲とそれを組み合わせた広域連携の仕組みというのが、市町村合併を強要するようなものになっては決してならないし、実際、しかし、道州制の導入という方向というのは、そういう点で、まさにそうならざるを得ないのではないかという強い危惧を持っているところで、国家リストラになるような道州制については、市町村に対する合併を強要するようなことにもなりかねないという強い全国町村会の反対の声もあるところであり、道州制の導入には強く反対を申し上げて、質問を終わります。

高木委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。

近藤(昭)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となっております地方自治法の一部を改正する法律案、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に賛成の立場から討論を行います。

 民主党は、特色と魅力にあふれた地域づくり、身の丈に合った行政を行えるようにするため、地域のことは地域で決められるようにする地域主権改革を大胆に推進してまいりました。しかしながら、安倍政権になってから、出先機関改革を初め進展が見られず、改革が遅滞しています。それどころか、一括交付金が廃止され、ひもつき補助金が復活するなど、改革の後退も随所に見られます。地方分権改革有識者会議の文書には、地方分権改革は一つの区切りを迎えると書かれていますが、これで改革を終わりにしてしまうことはあってはならないことを政府・与党にまず強く訴えたいと思います。

 その上で、両法案について申し述べます。

 地方自治法改正案は、民主党政権時代に地方制度調査会に諮問したことを受けての改正であり、指定都市下の区の役割の拡充、連携協約制度の創設など、大都市制度のあり方について見直しを行うものであり、地方自治の強化に一定程度資するものであります。

 第四次一括法案は、民主党政権が精力的に進めてきた国から地方、都道府県から基礎自治体への事務、権限の移譲を引き続き行うものであり、改革を一歩前進するものであります。

 以上のように、両法案は改革を多少なりとも前進させるものであり、民主党として賛成するということにいたします。

 改革を大胆かつ現実的に前に進められるのは民主党であるということを最後に国民の皆様にお訴えし、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)

高木委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 私は、日本維新の会を代表して、日本維新の会提出の修正案を含め、地方自治法の一部を改正する法律案に賛成し、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に賛成する立場から討論を行います。

 今回の改正案につきましては、中核市制度と特例市制度の統合、地方公共団体が相互に連携する際の基本的な方針などを定める連携協約制度の創設など、我が党の方針と基本的に合致しており、評価できるものであると考えております。

 しかしながら、指定都市制度に係る見直しの部分については、我が党としては、修正案を提出することにより、区長公選制を導入することを前提に、公選区長に対して人事権や予算編成権など最大限の権限移譲を行う一方で、そのチェック機能としての議会を設置すべきであると考えます。

 そこで、日本維新の会は、以下のような修正案を提案しています。

 第一に、指定都市は、総合区長公選制を選択することができることとしています。

 第二に、指定都市の市長は、議会の同意を得て、総合区長を解任するための区民による住民投票を請求することができ、区民の過半数の賛成を得れば、当該総合区長は職を失うこととしています。

 第三に、総合区長へのチェック機能としての区常任委員会を必置とし、その委員は当該総合区の区域を選挙区とする議員のうちから選任することとしています。

 政治主導で真のニア・イズ・ベターを実現するためには、区長公選制を選択できる仕組みが必要であり、そのためにも、私どもの修正案に御賛同を賜りますことをお願い申し上げます。

 なお、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案につきましても、国から地方公共団体への事務、権限の移譲と、都道府県から指定都市への事務、権限の移譲とを推進するための関係法律の整備を行うものであり、地方の自立を促進する我が党の方針と基本的に合致しており、賛成するものであります。

 以上をもって私の賛成討論といたします。どうもありがとうございました。(拍手)

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案並びに第四次一括法案に対する反対討論を行います。

 本法案は、一律の事務、権限移譲をさらに推進するものであります。

 第四次一括法案には、看護師、児童福祉司、保育士、食品衛生管理者、食品衛生監視員など各種資格者を養成する施設等への指定、監督業務を国から都道府県に移譲する内容が盛り込まれています。指定、監督に対する専門性や人的体制がなければ、国家資格者等の養成水準の維持が困難となる危惧は免れません。

 さらに、特例市を廃止し、人口要件を二十万以上に引き下げた新中核市を、権限移譲の新たな受け皿とすることも重大です。新中核市に必置とされる保健所について、全特例市を対象としたアンケートでは、積極的に設置を検討する市は全体の四分の一にとどまっています。人的、財政的な裏づけがないからです。新中核市となれば、現行特例市に移譲されていないその他の事務、権限も自動的に移譲されます。

 地方公務員人件費の削減を初めとする地方行革が推し進められる中、一律の権限移譲が自治体の一層の負担増と業務水準の低下を招き、結局、住民福祉の後退とならざるを得ません。

 この一律の事務、権限移譲を受けとめる仕組みとして、連携協約、事務の代替執行という新たな広域連携制度をつくろうとしている点も重大です。

 政府は、地方圏においては、新中核市と規模が一致する地方中枢拠点都市等を中心とした圏域連携、定住自立圏に取り組む圏域連携をつくり、三大都市圏においては、同規模、能力の都市間での水平的、双務的な連携をつくるとしています。また、市町村間の連携が困難な市町村については、都道府県による代替執行の仕組みをつくるものとなっています。

 また、本法案は、指定都市と都道府県の二重行政を解消するための調整会議の設置を法定化しています。調整会議は、競合回避の原則や最小コストの原則という能率性を目的にしています。これは、地方自治法第一条が、民主的にして能率的な行政の確保と要請する、この民主的という住民が主人公の観点を欠落させたものであり、公営住宅等の施設や中小企業支援、商店街振興という住民の暮らしや営業、福祉に密接にかかわる行政事務をリストラしていく道具となるものです。

 政府は、道州制の導入を目指しています。この間の一連の権限移譲やフルセットの行政からの脱却、集約とネットワーク化を掲げる新たな広域連携は、さらなる地方再編、道州制につながるものであり、看過することはできません。市町村合併につながり、地方自治を根本から覆す道州制には断固反対するものです。

 なお、維新提出の修正案については、地方自治のあり方に重大な問題を持ち込む地方自治法改正案を前提としたものであり、反対であります。

 以上を述べて、討論を終わります。

高木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより両案について順次採決に入ります。

 初めに、地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、三宅博君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、橋本岳君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。橋本岳君。

橋本(岳)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 大都市制度の改革については、更に住民自治の機能の強化が図られるよう、住民の意思の行政運営への的確な反映や住民が積極的に行政に参画しやすくする仕組みについて、総合区長の公選制など、統治機構の改革の在り方を含め、引き続き検討すること。

 二 指定都市の市長及び指定都市を包括する都道府県知事が、指定都市都道府県調整会議の構成員を選任するに当たっては、二重行政の解消が同会議の立法化の趣旨であるとともに、指定都市と都道府県それぞれの執行機関と議会が共に参画することが協議の実効性を高める上で重要であることを踏まえ、適正な運用が図られるよう、改正趣旨の周知徹底を図ること。

 三 中核市と特例市の統合については、現在の特例市が円滑に新たな中核市へ移行できるよう、事務移譲に伴う人的支援や財政措置について特段の配慮を行い、適切な事務処理体制が構築できるよう努めること。

 四 連携協約を締結する地方中枢拠点都市圏については、地方中枢拠点都市と近隣市町村双方の適切な役割分担の下、地方中枢拠点都市のみならず近隣市町村もその便益を享受できるよう、双方に対してその役割に応じた財政措置等について、特段の配慮を行うこと。

 五 事務の代替執行については、都道府県が小規模市町村と連携して補完する仕組みとして活用する場合は、市町村優先の原則や行政の簡素化・効率化という事務の共同処理の立法趣旨を踏まえ、適正な運用が図られるよう、改正趣旨の周知徹底を図ること。

 六 認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例については、本特例措置を適切かつ円滑に活用できるよう、改正趣旨の周知徹底を図るとともに、証明等の事務を行う市町村長の過度な負担とならないよう、助言その他の支援を行うなど、必要な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

高木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。新藤総務大臣。

新藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高木委員長 次に、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、山口泰明君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。黄川田徹君。

黄川田(徹)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 国から地方公共団体又は都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等に当たっては、これに伴って生ずる新たな財政需要を的確に把握し、確実な財源措置を講ずるとともに、住民の安心・安全を確保しつつ、移譲された事務・権限が円滑に執行できるよう、マニュアルの整備や技術的助言、研修の実施や職員の派遣など、地方公共団体に対する必要な支援を行うこと。また、事務・権限の移譲により影響を受けることとなる関係団体に対しても、改正内容の周知徹底を図るとともに、必要な情報提供を行うこと。

 二 移譲される事務の処理に関し、国又は都道府県が一定の関与を行う必要がある場合には、地方公共団体の自主性及び自立性に配慮し、当該関与を必要最小限のものとすること。また、関与の内容は、地方の意見を十分反映したものとすること。

 三 今回の事務・権限の移譲等に係る取組において検討対象とされた事務・権限のうち、移譲するに至らなかったものについては、地方からの要望の多い分野を中心に、地方分権改革有識者会議等において、引き続き移譲に向けた検討を進めること。また、住民に分かりやすい情報発信に努めるなど、これまでの三次にわたる改正の趣旨の周知徹底を改めて図るとともに、今後においても所期の成果を上げられるよう最大限努力すること。

 四 今後における改革の推進の手法として「提案募集方式」を導入するに当たっては、地方公共団体からの積極的な提案が行われるよう体制を整えるとともに、地方公共団体からの提案を尊重し、その実現に向けた取組を強力に推進すること。また、個々の地方公共団体の発意に応じた選択的な移譲を希望する提案等であっても、地方公共団体の間で制度が異なることにより住民に不利益が生じないよう留意しつつ、その実現に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

高木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、新藤国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。新藤国務大臣。

新藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

高木委員長 次に、内閣提出、行政不服審査法案、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び行政手続法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。新藤総務大臣。

    ―――――――――――――

 行政不服審査法案

 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

 行政手続法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新藤国務大臣 行政不服審査法案、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び行政手続法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、行政不服審査法案につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、行政庁の処分または不作為に対する不服申し立ての制度について、公正性及び利便性の向上等を図る観点から、その抜本的な見直しを行うものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、審理の公正性の向上を図るため、原処分に関与した者以外の者の中から審査庁が指名する審理員が審査請求の審理を行うこととするとともに、裁決に当たっては、原処分または裁決のいずれかの段階で他の第三者機関が関与する場合や審査請求人が希望しない場合等を除き、法律または行政に関してすぐれた識見を有する者で構成される行政不服審査会等に諮問することとしております。また、審査請求人等が証拠書類等の写しの交付を求めることができることとするなど、審理手続における審査請求人等の手続保障を拡充することとしております。

 第二に、国民の利便性の向上を図るため、不服申し立てをすることができる期間を現行の六十日から三カ月に延長することとしております。また、審査請求及び異議申し立てを審査請求に一元化するとともに、個別法における特別の定めにより、再調査の請求及び再審査請求の手続を設けることができることとしております。さらに、審査庁は、標準審理期間を定めるよう努めなければならないこととするとともに、審理を計画的に進める必要がある場合に事前に争点等を整理するための手続を設けるなど、審理の迅速化のための措置を講ずることとしております。

 次に、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、行政不服審査法の施行に伴い、三百六十一の関係法律について、審査請求及び異議申し立てを審査請求に一元化すること等に伴う規定の整備を行うとともに、国税、関税等について、審査請求の前段階で処分庁が簡易に処分を見直す手続である再調査の請求を、社会保険、労働保険等について、審査請求の後にさらに第三者機関等が審理を行う手続である再審査請求を設けることとしております。また、不服申し立てに対する裁決を経た後でなければ訴訟を提起することができないこととする、いわゆる不服申し立て前置について、不服申し立て件数が大量にあるもの等を除いて廃止するとともに、二段階の不服申し立てを経なければ訴訟を提起することができない仕組みは全て廃止するなど、所要の規定の整備等を行うこととしております。

 次に、行政手続法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、行政不服審査法の改正に合わせ、国民の救済手段を充実拡大させる観点から、不服申し立ての対象とならない処分前の手続や行政指導に関する手続について所要の規定の整備を行うものであり、法令に違反する事実の是正のための処分または行政指導を求めることができる、処分等の求めの手続や、法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方がその中止等を求めることができる、行政指導の中止等の求めの手続を新設することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

高木委員長 これにて各案についての趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る五月八日木曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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