衆議院

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第20号 平成26年5月13日(火曜日)

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平成二十六年五月十三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 高木 陽介君

   理事 石田 真敏君 理事 土屋 正忠君

   理事 橋本  岳君 理事 福井  照君

   理事 山口 泰明君 理事 原口 一博君

   理事 三宅  博君 理事 桝屋 敬悟君

      井上 貴博君    伊藤 忠彦君

      上杉 光弘君    大岡 敏孝君

      門  博文君    門山 宏哲君

      木内  均君    小林 史明君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      田畑 裕明君    辻  清人君

      中村 裕之君    長坂 康正君

      西銘恒三郎君    藤原  崇君

      松本 文明君    山口 俊一君

      山田 美樹君    奥野総一郎君

      黄川田 徹君    近藤 昭一君

      福田 昭夫君    上西小百合君

      新原 秀人君    中田  宏君

      馬場 伸幸君    百瀬 智之君

      濱村  進君    佐藤 正夫君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   議員           奥野総一郎君

   総務大臣政務官      伊藤 忠彦君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   参考人

   (成蹊大学法科大学院教授)            小早川光郎君

   参考人

   (税理士)        青木  丈君

   参考人

   (日本弁護士連合会行政訴訟センター委員長)    松倉 佳紀君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     山田 美樹君

  大西 英男君     門  博文君

  田所 嘉徳君     大岡 敏孝君

  湯川 一行君     末吉 光徳君

  渡辺 喜美君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     田畑 裕明君

  門  博文君     辻  清人君

  末吉 光徳君     助田 重義君

  山田 美樹君     藤原  崇君

  佐藤 正夫君     渡辺 喜美君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     湯川 一行君

  田畑 裕明君     田所 嘉徳君

  辻  清人君     大西 英男君

  藤原  崇君     今枝宗一郎君

    ―――――――――――――

五月十三日

 行政不服審査法案(原口一博君外四名提出、衆法第二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 行政不服審査法案(内閣提出第七〇号)

 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七一号)

 行政手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 行政不服審査法案(原口一博君外四名提出、衆法第二〇号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、行政不服審査法案、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び行政手続法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、成蹊大学法科大学院教授小早川光郎君、税理士青木丈君及び日本弁護士連合会行政訴訟センター委員長松倉佳紀君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、小早川参考人、お願いいたします。

小早川参考人 ただいま御紹介いただきました小早川でございます。

 時間が限られておりますが、最初に一言だけ、自己紹介をさせていただきます。

 私、大学でずっと行政法の研究、教育に携わっております。これまでも、行政手続法とか情報公開法とか、いろいろな行政関係の立法にも参画させていただきました。

 今回の行政不服審査法、行審法と略称させていただきますが、行審法関連三法案の立案に関しましては、平成十七年ごろから、主として総務省での検討にいろいろな形で参画をさせていただいております。

 以上が、私の、何であるかということであります。

 本日は、今回の法案に基本的に賛成の立場から、若干の意見を申し上げさせていただきます。

 このたびの行審法、三つに分かれますが、一つは、行審法そのものの全面改正による行政不服審査制度の抜本的改革ということであります。あと二つは、不服申し立て前置に関する見直し、もう一つは、行政手続法の一部改正ということですが、第一の点に主としてお話を絞らせていただきます。

 行審法の全面改正による不服審査制度の改革ということですが、私の印象、感じますところは、これは一つには、行政不服審査制度そのものについての画期的な改正の作業であるということですね。もう一つは、行政不服審査制度に限らず、もっと広く、行政一般に関する一般法制、基本法制の全体の中での、比較的地味ではありますけれども、重要な意義を持った改革であろうということであります。

 若干の敷衍をさせていただきます。

 この行政不服審査制度は、行政訴訟制度と対をなす、広い意味での行政争訟法制の二本柱の一つであります。いずれも、行政が関係者の権利利益を違法、不当に侵害することのないように適正に実施される、そのことを担保するために、これは行政訴訟も不服審査もどちらもそうですが、主として、行政の具体的な処分に関して、関係者の申し立てに基づいて審査を行う、そういう制度、仕組みであります。

 これは大変重要なものであるのですが、二つの中で目立つのは行政訴訟の方でありまして、裁判所が訴訟について審理、裁判をする、それによって行政をコントロールするというわけであります。これが特に近時ますます注目の度を集めているわけですが、それに比べますと、行政不服審査制度の方は余り目立たないものであります。制度そのものも、明治の訴願法の整備で形をなすわけですが、それ以来の制度の発展自体が、さほど目覚ましいとは言えないものがあります。

 概して言えば、裁判所の行政訴訟制度の方が注目され、大きな改革も経てきております。訴願法と同時に行政裁判法制が整備されましたが、御承知のとおり、戦後の新憲法に伴いまして大改革が行われ、そして二〇〇四年に行政事件訴訟法がさらに大きな改革を経るということになりましたが、不服審査の方は、いわばそれに引っ張られて少しずつ動いてきているといったような印象がございます。

 これが行政訴訟との関係ですが、他方、行政手続法との関係も問題であります。

 行政訴訟にしろ、不服審査にしろ、これは、行政と関係者との間での対立があらわになってきて、そこで動き出す手続であります。だから争訟制度なわけですが、その対立があらわになる前の段階で行政の手続を適正に行うというのが行政手続法の趣旨でありまして、そちらの方はずっとおくれましたけれども、一九九三年に行政手続法が制定されました。行審法の方は処分をめぐる争訟手続である、行手法の方は処分自体の事前の手続である、そういう役割分担になっています。したがって、両方、対をなすべきものなんですけれども、しかし、行手法が制定され、そちらの方は面目一新したのですが、行審法の方は古いまま、手つかずであった。

 いろいろな意味で、訴訟と比べても、それから行政手続法と比べても、行審法は古いままで、手続保障のレベルにおいても見劣りがするという状態になっておりまして、そういういろいろな意味で見直しが必至であったと言うことができます。引き金になったのは、結局のところ、先ほどの二〇〇四年の行訴法改正でありまして、このままほっておいてはあんまりだということなのでしょうが、ようやく改革の機運が盛り上がってきたということであります。

 行政訴訟に比べて目立たないというふうに申しましたけれども、実は、行政不服審査というのは大きなポテンシャルを秘めていると思います。裁判所は外から行政をチェックするわけですが、こちらの方は行政の中からのチェックであります。いわば行政の質を内部から向上させる、そういう役割を持つべき制度であります。

 行政が法に従って行われるべきは当然なんですが、その際、そのことを、関係者の側からの法的な主張を契機に、それに対して行政が敏感に反応するという形での行政のスタイルを今後さらに確立していかなければなりません。そのためには、これは行政訴訟ではその役割は十分果たせないわけでありまして、不服審査制度に期待されるところが大きいわけであります。

 時間の限りもございますので、今次改革の、改正案の中身ですが、一言で申しますと、不服審査における手続保障を充実させ、それを踏まえて、複数の手続の仕組みを整理統合し、制度を簡明、わかりやすいものにするということであると思います。

 手続保障ということですが、よく言われるのが、不服審査制度というのは、要するに、行政自身が審査をするわけで、これは同じ穴のムジナではないかという言い方であります。これは最近のことではありませんで、私、行政法の勉強を始めた約五十年にはなりませんが、五十年近く前に、初めて大学の講義で行政法を聞いたときに、既に先生がそういう言葉を使っておられました。同じ穴のムジナという表現であります。

 仕組みの問題として言えば、現行の一九六二年の行審法は、原則としては、処分庁への異議申し立てか処分庁の上級庁への審査請求か、この二つを大きな柱にしているわけですが、処分庁による審理、判断というのは、これはまさに、いわば同じムジナがやっているといってもいいのかもしれません。

 審査請求の方はまだましだという評価が当時からあったのですが、そして行審法も審査請求の方を優先しているわけですけれども、ただ、それにしても、具体的に案件を担当する職員のレベルで考えれば、やはりそれは非常に近い関係にあるわけでして、同じ穴のムジナと言われても仕方がない。

 ですから、処分庁自身か上級庁かという、その区別は、実は、実際には余り意味がない。それよりは、それぞれの組織の中で実際に誰が審理、判断を担当するのか、その具体的な仕組みに着目する必要があります。

 そこに着目をして、今回の法案のいわばポイントを一つだけ挙げれば、要するに審理員、審査会ですね、そういう仕組みを行政組織の中につくる。それをはっきりさせる。それによって、同じ穴のムジナによる審理、判断ということではないのだということをはっきりさせるということであります。

 そうなれば、これはもはや名目上の審査権限が処分庁自身なのか上級庁なのかということは問題にする必要はないわけでありまして、したがって、また、従来のやや複雑な手続の並立、併存という構造を整理統合して一元化するということも可能になる、そういうことであります。しかし、その原則をリジッドに貫くとなかなか大変ですので、そこは現実的な配慮も若干加えてある、そういう法案になっていると思います。その辺は既に先生方、よく御存じのところかと存じます。

 そのようなわけで、今回の行審法の全面改正というのは、日本の行政のあり方について非常に大きな意味を持っている、あるいは、この改革を実現して、今後その意味を大いに発揮させていくべきものというふうに考えております。

 時間が来てしまいましたので、不服申し立て前置の見直しの点、それから行政手続法への新たな規定の追加の点につきまして、それぞれ、大変重要な点ではありますけれども、私からの意見陳述は差し当たりはここまでにいたしまして、もし後ほど御質問があれば、そのときにいろいろお話をさせていただきたいと存じます。

 私の意見陳述は、以上でございます。(拍手)

高木委員長 次に、青木参考人、お願いいたします。

青木参考人 青木でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、もともと税理士なんですけれども、民主党政権のときに、平成二十一年の十一月から昨年二十五年の一月まで、三年二カ月間ですが、内閣府と総務省の方に民間登用という形で勤務させていただいておりまして、その間、この問題、行審法改正のためのチームの事務方として、運営ですとかあるいは法案作成の作業もさせていただいておりました。現在は、もう退職して税理士に戻っておりまして、税理士をやっているんですが、日本税理士会連合会の担当役員として、今回のこの改正に対する意見書、これの原案づくりのお手伝いなどもさせていただいております。

 というわけで、これから述べさせていただく意見は、基本的には私個人的な見解でございますが、税理士会の意見も適宜御紹介させていただきたいというふうに考えております。

 また、今回のこの改正法案、先ほどの小早川先生のお話にもありましたが、大変時間がかかっておりまして、平成二十年四月に国会提出されたものの、翌年夏の衆議院解散で廃案となりましたいわゆる二十年法案ですね、これをベースにして今回の改正法案ができているということですが、二十年法案からさらに追加事項、これはその後の民主党政権時代の検討の成果が生かされた重要な変更事項を含んでおりますので、この二十年法案からの変更されている事項についても特に言及したいというふうに考えております。

 それでは、お手元に資料を配付させていただいておりまして、一枚おめくりいただきますと、私は、今回の整備法の中の第九十九条、国税通則法の中の不服審査手続が全面的に変わるということですので、きょうは、国税不服申し立て制度の見直しについてお話をさせていただきたいと思います。

 ただ、もちろん、行政不服審査法の改正に伴って国税通則法は改正されます。国税通則法と行政不服審査法の中身は基本的には同じ内容ですので、よろしくお願いいたします。

 まず、一ページ目の、現行制度と改正後の制度の対比が出ておりますが、まず申し上げたいことは、申し立て期間の延長です。現行二カ月とされている申し立て期間が、三カ月以内に延長されるということでございます。

 税の実務にはどうしても繁忙期というのがございまして、三月十五日の確定申告ですとか、実はきょう現在もそうなんですが、三月決算法人の五月申告ですね、集中するわけです。そのようなときに処分がされてしまうと、ほとんど二カ月というのはあっという間に過ぎてしまいまして、その意味においては、一カ月延長していただいて三カ月とされるのは一歩前進というふうに言えるのかなというふうに考えております。

 ただ、昨日、民主党の方から提出されたいわゆる対案でしょうか、その中では、行政事件訴訟法上の出訴期間と合わせて六カ月という中身になっていたものと承知しております。これも、出訴期間と合わせるという考え方については、それはそれで政策判断として一つの考え方であろうなというふうに考えているところでございます。

 次に、真ん中の、現行制度で言うところの税務署長への異議申し立て、これについてお話しさせていただきたいと思います。

 現行法では、処分を受けて、まず、原則として、処分をした税務署長に対して異議申し立てをする。その決定に対してなお不服があるときは、国税不服審判所長に審査請求をする。その裁決に対してなお不服があるときにようやく裁判所に出訴できるということで、いわゆる二重前置主義ということが現行法は採用されております。

 これが、右側の改正後に行きますと、自由選択ということでございまして、二重前置のうちの一段階目の税務署長への不服申し立てについては、自由に選択できるようになる。直ちに国税不服審判所に審査請求をするということも可能になるということでございます。

 これは、例えば、事実関係の調査をもう一回してもらうような事象はない、事実関係については争いがなくて、何を争いたいかというと、法解釈、専ら法律の解釈について争いたいというときには、処分庁に不服を申し立ててもほとんど覆らないと思いますので、そういう場合には、直接国税不服審判所へ審査請求したり、あるいは、ここの点線の中に書いてありますが、審査請求をして三カ月たったら裁判所に行けます。ですから、審査請求や裁判を急ぐ納税者にとっても、税務署長への新しい再調査の請求を自由選択とされたことは非常に大きな意義があるものだろうというふうに考えています。

 そして、二重前置がなくなって自由選択になるというこの見直しについては、実は二十年法案のときにはなかったものでして、まさに民主党政権時代の検討の成果が生かされた、二十年法案からの重要な変更事項であろうということでございます。

 また、これは国税通則法だけでなくて、不服申し立て前置の全面的見直しということが今回大きな改革にされておりまして、その中の一つの考え方として、二重前置はもうなくそうということで、この国税通則法に代表されるような二重前置は全て解消されるということについても、大きな改革であろうというふうに考えています。

 ただ、済みません、再調査の請求という名称については、きょうは一点だけちょっと問題があるなというふうに考えているところでございまして、再調査の請求という名前ですと、税務調査をもう一回やってくださいという税務調査のやり直しを求めるような請求に、どうしてもある意味ネガティブなイメージがあるのではないかという懸念でございます。

 この再調査の請求という名称については、二十年法案と同じ名前だからよろしいということかもしれませんけれども、実は、二十年法案のときから現時点においては、二点、重要な事情変更がございます。

 まず、これは先ほど申し上げましたが、自由選択とされたことですね。二十年法案のときは、この名前のいかんにかかわらず、納税者は原則としてまず再調査の請求をしなきゃいけなかった。今回は自由選択になっているものですから、納税者は、選択によって、再調査の請求をしないで直接、審査請求できるわけですね。だとすると、やはり納税者に誤解を与えるような名称はよくないんじゃないかということでございます。

 もう一点は、平成二十三年に国税通則法の大きな改正がありまして、事前手続の方が既に抜本的に改正されているんですね。それで、国税通則法の中に税務調査に係る規定が整備されておりまして、その改正を受けて、資料の二ページに示しておりますが、これは国税庁のパンフレットから持ってきたものです、平成二十三年の通則法の改正を受けた現在の税務調査の流れですが、一番最後の右側に再調査、これは、(七)(八)(九)で一旦税務調査は終わるんですけれども、終わった後に、特別な事情、括弧内に、新たに得られた云々と書いてありますが、このような事情があるときは再度税務調査しますというようなことで、現在においては、国税の実務では、税務調査のやり直しを再調査と言っているわけですね。ということで、非常に紛らわしい。

 当然、再調査の請求というのは、事前の税務調査の手続とは違いまして、事後救済手続ですので、できれば誤解を招くことのないように、例えば、これは日税連の案なんですが、日税連としては、処分見直しの請求ということを御提案させていただいておりました。処分見直しの請求はいかがか。あるいは、民主党政権のときは、略式審査請求、略式という名称を使っていましたので、このような名称の方がよろしいんじゃないかなというのが、個人的あるいは税理士会の意見も御紹介しましたが、ということでございます。

 もちろん、名称変更できないということであれば、それはもう、あらかじめ、私のような税理士がついていない全ての納税者に対してきちんと、再調査の請求というのは権利救済手続なんだということが事前に周知徹底されるようなことをここでお願いしておきたいというふうに思います。

 次に、一ページに戻っていただきまして、中ほどの吹き出し、審査請求のところから出ている吹き出しをごらんいただきたいんですが、閲覧と謄写の件でございます。

 今回、審査請求における閲覧、謄写の手続というのは、非常に公正、透明な手続として、重要な手続がかなり大きく変わります。

 まず一点目は、現在、この閲覧の対象となる証拠書類というのは、処分庁が提出したもの、これが対象とされておりますが、改正後は、国税不服審判所の担当審判官がみずからの職権で収集した資料についてもこの閲覧の対象となるということ、これは極めて意義のあることでありまして、この担当審判官というのは、両当事者の主張を整理するということにとどまらず、みずから職権で質問し、検査することができるという権限がありますので、審判官が職権で収集した資料が閲覧の対象とされることは、非常に審理の透明性や公正性に資するものとして評価することができると思います。

 また、閲覧に加えて、謄写、コピーですね、これができることになるというのが今回の改正点でありまして、これも二十年法案にはなかった、民主党政権時代の検討の成果が生かされている、二十年法案からの変更点ということでございますが、これも実務家としては待ってましたという改正になります。

 審判所の実務では、特に税務の複雑怪奇な、数字のごちゃごちゃした資料を、今、見せてはくれるんですけれども、コピーができないので、何日もかけて書き写しているという現状ですので、それが、見せてくれたものをコピーあるいは印刷して渡してくれるということになりますと、非常にありがたい改正ということでございます。

 また、そのほかにも、最後のページに、ちょっとごちゃごちゃ、今回の改正事項を整理してみました。時間の関係で御説明できないわけですが、特にきょう申し上げたい二十年法案からの変更点についても斜めの字で記載してございますので、かなりいろいろなところが、もちろん、行政不服審査法全部改正に伴うものですから、相当いろいろなところが変わりますということを申し上げておきたい。特に、情報の提供とか処理状況の公表、これは行政不服審査法が国税にも適用される珍しいものですが、こういった新しいものも規定されるということで、評価に値するだろうというふうに考えております。

 先ほど少し申し上げましたが、国税通則法という法律は、平成二十三年の十二月に既に、半世紀ぶりの大改正がされております。その内容は、先ほど申し上げました税務調査の規定の整備や更正の請求期間の延長、あるいは理由付記を全ての処分にするといった処分に至る事前手続の整備でした。

 二十三年に先に事前手続の国税通則法の改正ができたことは、非常に結果的にはよかったと思いますけれども、あのときの議論で、じゃ、事後救済手続はどうするんだと言ったら、今回のこの行政不服審査法の改正とあわせてやるんだということで、ペンディングとされていたわけですね。それが今回ようやく実現するということで、民主党政権時代に国税通則法を全面的に見直すんだと言っていたものが、今回の改正でようやく貫徹することになるということで、期待しているわけでございます。

 ということで、今回のこの改正案に至るまで、二回政権交代をまたいでしまったということで、大変時間がかかっておりますけれども、それだけ時間がかかっただけあって、確実に二十年法案より進化しておりますので、基本的に評価に値する内容ということです。

 日税連も、二十年法案のときは幾つか問題点を指摘させていただいておりましたが、今回は全面的に賛成、早期改正実現を要望させていただいておりますので、先生方におかれましては、何とぞよろしくお願いしたいということでございます。

 時間が参りましたので、御清聴ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 次に、松倉参考人、お願いいたします。

松倉参考人 弁護士の松倉です。

 きょうは、参考人として、この場で意見を述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。

 それでは、早速、本題に入りたいと思います。

 私は、今回の行政不服審査法改正の関連法案につきましては、賛成の立場であります。

 まず最初に、日弁連の行政訴訟センターの主な活動を若干紹介したいんですけれども、平成十六年に行政事件訴訟法が改正をされました。このときに日弁連としましても、改正案の条文をつくり、改正をバックアップしたというふうな運動を行ってまいりました。

 その後、住民訴訟の国版である、いわゆる公金検査請求訴訟、別名、国民訴訟というものを提言しました。これにつきましては、幾つかの政党さんが、この前の衆議院選挙あるいは参議院選挙の中での政策の中にこれを盛り込んでいただきました。

 それから、今回の行政不服審査法の改正につきましては、平成十九年五月に改正案、条文もつくって、公表をしております。

 その中身を若干紹介しますと、特に今回の法案と違っている点に絞って紹介しますと、まず、審査請求期間は六カ月で、行政事件訴訟法と同じにしました。

 それから、審理方式は、不適法でない限り行政審査院に諮問する。行政審査院というのは、中央行政審査院と地方行政審査院の区別をつける。それから、その審理を担当するのは審理官。審理は単独と合議が両方あり得る。それで、審理官というのはどういう方かといいますと、これは行政法審判官という、試験を受けてそれに合格した有資格者だけに限定される。しかも、その身分については、裁判官並みの身分保障がされるというふうな仕組みにしております。

 実は、これの参考にしたのは、アメリカの行政内部の裁判所である行政審判官制度、いわゆるALJというものがあります。これは、私、日弁連でも二〇一一年に視察をしてまいりました。そこでさまざまなことを聞きまして、非常に独立した強い職権を持っていて、しかも七十年間の歴史があるというふうなことがわかりました。

 それから、答申の拘束力、これにつきましては認める、つまり、裁決庁はこの行政審査院の判断に拘束されるという仕組みにしました。これは、韓国の行政審判法にそういった規定があるので、それを準用したということであります。

 それから、執行停止原則。原則として、不服申し立てがなされた場合には行政処分等の執行は停止をする。そして、公共の利益に重大な影響が生ずるおそれがある場合には続行できる。現在の原則と例外を逆にしております。

 これが、私ども日弁連が考えた改正案であります。

 今回の改正案について日弁連はどういう見解を持っているかといいますと、私どもが考えた案は、確かに、世界水準のベストな案ではあります。しかしながら、五十年間も行政救済制度が改正されてこないという中で、旧態依然たる救済制度の中で国民が苦労しているという中では、今回の改正というのはベターな改正であるという中で、私どもとしては、やはり段階を踏んで、これをまず実現していく必要があるということから、今回の法案については賛成というふうになっております。

 今回の改正のコンセプト、改めて言うまでもないかもしれませんが、公正性の向上、それから、使いやすさの向上、それから救済手段の充実拡大というふうな三点が指摘されております。

 公正性の向上で私どもが注目しておりますのは、やはり、審理手続は処分に関与しない職員である審理員が担当する。さらに、裁決をするに当たっては、有識者から成る第三者機関の諮問を経る。審査請求人は、証拠書類等の閲覧、謄写ができ、口頭意見陳述で処分庁に質問をできる。

 それから、使いやすさの向上では、不服申し立て期間が六十日から三カ月に延長された。それから、不服申し立てが審査請求に原則一本化されて簡素化された。それから、不服申し立て前置が大幅に縮小、廃止された。

 それから、救済手段の充実拡大、これは、私どもも、いわゆる非申請型の義務づけ訴訟が行政事件訴訟法で規定されたということを受けて、行政不服審査法でも同じような義務づけということをやるべきではないかというふうな提案をしてきました。それが今回は、行政不服審査法ではなくて行政手続法の中に、国民が法令違反の事実を発見した場合に、行政に是正のための処分等を求めることを可能にする、それから、法律の要件に適合しない行政指導を受けた場合に、行政に再考を求める申し出が可能となる、こういった制度が設けられることになっております。

 私どもは、この中で一番問題であるのは、やはり公正性の確保が特に大事であるというふうに考えております。

 今回の改正で公正性が真に担保されるのか、同じ行政内の手続で一度行政が決定した処分を覆すことを期待できるのか、素朴な疑問があると思います。

 これは、行政不服審査制度の仕組みが、処分庁とその上級行政庁の中だけにとどまる、そこで完結するというのであれば、私は、むしろそういった疑念を持つ方が合理的であるというふうに考えます。

 今回の法案の行政不服審査の仕組みというのは、処分に関与しない上級行政庁の審理員が第一次判断を行う。それを受けて、原則として行政不服審査会の諮問で第二次判断を行う。しかも、その行政不服審査会は、処分庁とその上級行政庁の外にある、縦の系列から外にある総務省に設置される。この点が今回の改正の極めて大きな特徴であろうというふうに思っています。さらに、行政不服審査会というのは、第三者機関として構成される。

 問題は、新たなこの仕組みがどの程度構成として機能するのか。これは、恐らく皆さん、いろいろな意見があると思います。

 私は、単なる個人的な予測をするのではなくて、今これと類似して設けられている、総務省にある年金記録確認第三者委員会、この活動実績を見ることが参考になるというふうに考えております。私自身も、年金記録確認第三者委員会の中央委員会で第二国民年金部会長あるいは脱退手当金の部会長を務めていましたので、この仕組みについてはよく理解しているつもりです。

 この第三者委員会の組織構成と権限なんですけれども、仕組みは、旧行政管理庁、現総務省が行っている行政相談の一環として構成をされたんですね。行政相談というのは、国や地方公共団体などの業務に対する苦情などを受け付けて、公正で中立的な立場から必要に応じて関係行政機関にあっせんを行う制度である。あっせんですから、関係行政機関に対する拘束力はありません。受け入れるか否かは、その行政庁の任意であります。

 年金記録確認の場合には、安倍政権のもとで閣議決定がありました。そこで、総務大臣の年金記録確認に関するあっせん案について、社会保険庁はこれを尊重して記録の訂正を行う、こういった決定があったために、事実上の拘束力が生じたというわけです。

 第三者委員会というのは、中央委員会、地方委員会がありまして、そのメンバー構成は、弁護士、税理士、社会保険労務士、それから旧社保庁の職員OBなどで、最大時に全国で九百五十名の委員が確保されたわけです。その第三者委員会の判断が即、総務大臣がよほどおかしいと思わない限りは、総務大臣のあっせん案とみなすというふうな扱いになりました。

 その実績を見てみますと、平成二十五年の四月一日現在、発足から約五年余りですけれども、処理した件数が二十四万二千四百六十三件もあるんです。そのうち、もちろん取り下げが一万一千件もありますから、実質二十三万一千件ぐらいの処理がなされた。

 次に、あっせん率、つまり年金の記録がおかしいから直しなさいというふうな国民の意見を取り入れたあっせん率がどの程度あるのかといいますと、これは国民年金と厚生年金でばらつきがあります。国民年金は三七・五%、それから厚生年金は五三・九%、そしてあっせん率の平均が四七・八%になっています。現在の行政不服の中の認容率というんですか、住民あるいは国民側の要求を受け入れたというのは、恐らく十数%にすぎません。三倍程度の数字が上がっております。

 年金記録確認というのは、極めてずさんな仕組みだった、いろいろ制度が変わったとかいうことでありますけれども、そういった特殊性を考慮する必要はありますけれども、年金記録確認第三者委員会の仕組みとその実績には、私は注目すべきものがあるというふうに考えております。

 今回の法案で、行政不服審査会が、処分庁とその上級行政庁の系列ではなくて、その外に置かれる、しかも、行政相談という公正で中立な立場から行政機関にあっせんを手がけてきたその部門を擁する総務省に設置されたということの意義は、これは我々はよく見ておく必要があるというふうに考えております。

 その他いろいろありますけれども、時間の関係で、私の意見表明は以上にしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村裕之君。

中村(裕)委員 おはようございます。自由民主党の中村裕之でございます。

 参考人の先生方には、それぞれ御多用のところ当委員会に御出席をいただき、そして大変貴重な御意見を賜りましたことを私からも感謝申し上げる次第でございます。まことにありがとうございます。

 それでは、行政不服審査法関連三法案について、順次質問をしてまいりたいというふうに思います。

 この三法案の改正について、その肝になるところは、私なりには、やはり審理手続が公正であり、中立性を保てるというところをきちんと担保されるのかというところにあるのではないかというふうに考えております。

 そうした中で、小早川先生からは、同じ穴のムジナという従来の長年にわたる指摘があった、それを解消できてきているのではないかというお話もありましたし、松倉先生からは、総務省にきちんと組織を置いて、最終的に処分庁以外からも指摘をするということにしたことが評価できる、これは、同じ穴のムジナの部分を大分解消したということで、ベストではないかもしれないけれどもベターだというお話がございました。

 青木先生は、行政救済制度検討チームの事務局の委員をされていたというわけでありまして、本法案は、審理手続については、二十年法案の形をベースに、それをさらに公正性を高めたという内容になっていますけれども、青木先生が事務局に所属をされていた行政救済制度検討チームにおきましては、各省と分離して、独立した職権を行使する審理官を特定府省に一括して設置をして、そこで審理を行う、つまり、処分庁には審理をさせないという形の結論を出していらっしゃったというふうに私も受けとめているところであります。

 その審理手続について、私から見ると、行政救済制度検討チームがまとめた、各省庁と分離した審理官に独立した職権を行使させるという方が、同じ穴のムジナという点から見ると、よりすぐれているのではないかというふうに感じるわけでありますが、そうした中で、二十年法案の形をベースに落ちついたということについて、青木先生から、所見があればお伺いしたいと思います。

青木参考人 考えをお答えいたします。

 審理官か、あるいは今回の法案の審査会プラス審理員ですね。

 あのときの民主党政権、最終的に審理官ということになりましたが、もともとどういう趣旨だったかといいますと、審査会というのが屋上屋であるということで、審査会が要らないんじゃないかというのがもともとのきっかけであったんじゃないかなということで、審査会と審理員のハイブリッドという形で審理官という形になったわけですが、いわゆる軽装備。それに対して審査会は重装備ということで、どちらが正しいと。

 やはり公正らしさを目指しているという方向は同じなんですが、重装備を選ぶのか軽装備を選ぶのか、手段が違うということで、民主党としては軽装備でいっていたわけですけれども、今回の法案は重装備ということで出てきたものだなということで理解しております。

中村(裕)委員 ありがとうございます。

 重装備という形で、これも一つ、従来の審理手続からすると大きな前進を見たんだろうというふうに思いますので、こうした中で国民の皆様の権利や利益がしっかりと担保できる形でとっていければいいなというふうに私も思っているところであります。

 松倉先生は、私と同じで北海道出身というふうに聞いておりますが、質問できることを大変光栄に存じております。

 松倉先生は、行政不服審査法関連法案について、この三法案は、平成十六年の行政事件訴訟法の改正等を踏まえて見直しを行うものでありますけれども、松倉先生の著書の中で、改正行政事件訴訟法がもたらした意義とその限界というところに触れられているというふうに私も承知をしております。その意義と限界という視点から、本三法案についての、改正案について御意見があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。

松倉参考人 大変難しい質問でして、行政事件訴訟法の改正につきましては、実は、五年後見直しというふうな規定があって、それが一昨年だったんですね。

 日弁連としましては、当然、問題があると。特に、あのときには課題を四つぐらい積み残していますので、その課題についてやはり五年内に検討して、五年後見直しのときにその四つの検討課題についても改正をすべきであるというふうに思っていたんですが、残念ながら、法務省の方では、研究会を組織した結果、いろいろな五年間の判例を分析した結果、改正する必要はないのではないかというふうな結論になり、それから、積み残した課題四つについても検討がなされなかったという点で、非常に行政事件訴訟法の改正が完遂していないというふうな印象を持っております。

 それで、今回の行政不服審査法の改正につきましては、先ほど時間がなくて私はちょっと言いそびれたんですが、やはり行政事件訴訟法と同じように、五年後見直しを附則で設けるべきであるというふうな考えを私は持っております。

 なぜなら、新しい制度をつくった場合、それが当初の設計どおりに動いているかどうか、これはやはり実地に使ってみて検証をする必要があります。それをする必要があるので、やはり今回の改正についても五年後見直しはやるべきだというふうに思っております。

中村(裕)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございます。

 行政事件訴訟法、そして行政手続法の改正に続いて、少し時間がかかりましたけれども、本行政不服審査法関連三法案ということで、これが行われると、一応全体的に網羅された形になるのかなというふうに私は思っていますが、それぞれが新しい仕組みになった中で、やはり五年後見直しなどの規定というのが一定程度必要になるんだろうということは私たちも意識をしなければならないのかなというふうに感じるところであります。

 今回の行政不服審査法関連三法案につきましては、やはり、処分庁が審理に参加をし、そして、それをまた処分庁以外の、総務省に置かれる機関の方に諮問をするという形で公正性などを担保するということになるわけですけれども、一方で、不服申し立て前置についても、二重前置の解消ですとか、また前置自体の必要性の見直しについて、大きく前進をしたというふうに思っております。

 小早川先生、時間がなくてその点について触れられなかったようでありますので、ぜひ小早川先生からも、その点についてもお話を聞かせていただければと思います。

小早川参考人 不服申し立て前置の見直しについてということでございます。

 発言の機会をこうやって後から与えていただいて、ありがとうございます。

 この点は、実務的にも、それからまた学者といいますか、学問的にも、理論的にも、従来から大いに問題があるとされてきていたところでありました。

 御承知のとおり、昭和三十七年に行政事件訴訟法と行政不服審査法が制定されましたが、そのときには、原則としては、それ以前のいわゆる訴願前置主義は廃止する、いわゆる自由選択にするんだということで、行訴法の条文の上ではそうなっておりますが、ただ、個別の各行政分野の諸法律でもって非常にたくさんの不服申し立て前置の規定が置かれていたわけであります。

 それについては、いろいろ必要性の根拠なるものは言われていたわけなんですけれども、ただ、しょせん、やはり全体としては非常に無理があったのではないか。不服審査の方が訴訟よりも簡易迅速な救済が得られるから、それがいいんだということは言われます。しかし、そうであれば、それは、国民が訴訟よりも不服審査の方をみずからの判断で選択するということになるはずでありまして、それを強制する必要はないのではないか。やはり大きいのはそこですね。

 その基本的な考え方でもって、今回といいますか、これはなかなか、言われていながら手をつけるのは大変だったということで、実は二十年法案までの段階では、そこは問題にはなっていたんですけれども、取り上げられなかった。その後、これが幸いに取り上げられることになったということで、長年の懸案がかなりの部分、今回整理されることになったということであろうと思います。

 あとは、では、さっきのような理屈ではなくて、本当に不服申し立て前置が必要な例外的な事由というのは何なんだということを、今回の法案でもそこは、考え方は出ておりますけれども、これで一応お掃除ができたとしても、今後またいろいろな法律でそれがふえていくことのないように、原理原則をしっかりと把握した上で、今後の立法においても注意をしていただきたい。これは将来の話でございます。

 以上でございます。

中村(裕)委員 ありがとうございます。

 平成二十年に一度法案を提出して、それが残念ながら廃案になって、その後、検討委員会が設置されまして、民主党政権下でも随分と検討されて、ついに五十年以上の歳月をかけてこの三法案が、改正案が出されたということであります。

 本当に、国民の権利や利益をしっかり守っていくという民主主義の根幹にかかわる本法案の改正というのは、私はこの通常国会においても大きな意義のあることだというふうに思いますし、それぞれ三人の参考人の先生は賛成の立場から御意見をいただいたということでありますけれども、最後に、時間も短いですけれども、本法案にかける皆さんの期待ですとか、また評価について一言ずつお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

高木委員長 時間がもう参っておりますので、短くお願いいたします。

小早川参考人 それでは、ほんの一言だけ。

 先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、この新しい行審関連法案が実現して、行政の中で本当に、行政は法に従って国民の権利を尊重しながら行っていくのだ、そういう意識が中に根づくことを私は強く期待しております。

 以上でございます。

青木参考人 私も繰り返しになりますが、今回の改正法案は、現行法よりはもちろん、二十年法案よりも手続水準が向上している、今までの長い時間をかけただけの成果となっておりますので、施行まで二年ありますが、ぜひとも早く新しい制度が始まってほしいなということで、楽しみにしております。

松倉参考人 先ほども言いましたが、今回の改正は、処分庁とその上級行政庁の縦の枠をはみ出た審査が行われるという点で私は期待できると思っております。

 以上です。

中村(裕)委員 大変丁寧な答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今後とも、また御指導いただければと思います。ありがとうございます。

高木委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、参考人のお三方には大変忙しいところをお越しいただきまして、また、貴重な御意見をお伺いすることができました。大変にありがとうございました。

 まず、お三方の参考人の方々にそれぞれお伺いしたいんですけれども、この行政不服審査法については、制定以来五十三年もの間、ずっと改正されてこなかったわけでございますけれども、平成十八年に改正を検討し始めてから八年かかったわけでございます。

 そういう意味では、十八年に総務副大臣が主宰する行政不服審査制度検討会において検討が開始されまして、その後、二十年法案、先ほど来青木参考人からもございました、ここで提出をされましたけれども、民主党政権時代に、行政救済制度検討チームとして取りまとめられました。それからまた、今回の政府案として、行政不服審査法関連三法案が提出されるという流れになっているわけでございます。

 先ほど来あったとおりでございますが、小早川参考人からも先ほど、二重前置については十分触れられなかったというお話がありましたけれども、二重前置以外にもさまざま触れられなかった点もあるかと思います。限られた時間でありましたので、そういう意味では非常にコンパクトにまとめて意見の御開陳をいただいたかというふうに思いますけれども、先ほど触れることができなかった点について、そういう点も含めてどのように評価されていらっしゃるのか、お三方それぞれにお伺いできますでしょうか。

小早川参考人 時間の関係で先ほどは大筋だけを申し上げたつもりでございまして、それの枝葉の部分がございます。

 一つは、今回の法案が、まあ百点満点ということではないかなという気もちょっとはしておりますが、基本線は、先ほど申しました、手続保障を充実しながら、その上で複数の仕組みを整理統合、単純化していくということでありまして、基本線はできていると思いますが、実際にはなかなかそれですっきりとはいかなかったということで、そこの一つは、異議申し立てというのは審査請求にもう吸収するということでしたけれども、しかし、やはり行政の現実からして、場合によっては再調査の請求という手続を置かざるを得ないということで、そこは制度としてやや複雑なものが残った。

 それから、同様に、今度は審査請求の後、従来から再審査請求あるいは再々審査請求というような、まあ、再々というのは実例は余りなかったかと思いますけれども、再審査請求の仕組みというのがありまして、これが、救済の面からいっても、そこまで二段階、三段階重ねることが本当に意味があるのか、いろいろなコストがかかるだけではないかというような意見もありまして、そこも審査請求に一元化するという方針だったわけですけれども、やはり、実際にはいろいろな事情で再審査請求というものが残ることになりました。

 ですから、その辺は、私など部外者、局外者ですので、その制度、単純にきれいにまとめられるかと思ったらなかなかそうもいかなかったね、そういう感じはあります。

 ただ、だから減点になるのかということですが、そこは何も、制度の単純な美しさだけ追求して済むわけではありません。一つ一つの個別の分野での個別の事情をじっくり考えて、例外は認めていかざるを得ないというふうに思っております。

 それから、審査会ですが、これは大変期待が大きいのですけれども、これはやってみないと、どれだけ役割を発揮できるかということはわかりません。そこで、今回の法案では、比較的その辺は、審査会についての制度設計は、柔軟といいますか、動くようになっておりまして、例えば、どういう事件については諮問する、あるいはしない、その基準をどうするかということも少しオープンになっておりますし、それから、御案内のとおり、地方に全て審査会を置くということに対してはなかなか抵抗が強いので、そこはまた柔軟な対応ができるようになっております。

 その辺で、制度としてはやや柔軟さを持たせていますので、実際の運用でこれからどういうことができていくのか、それに応じてまた改善の余地はあるのかと思っております。

 まだありますけれども、私一人だけ長くしゃべってもなんですので、一応この程度にします。

青木参考人 私は、お配りしている紙の一番最後のページに細かくたくさん書いてある中の、二十年法案から変わっている、二十年法案から進化しているところを斜めの字で書いてありますので、そこをできれば、時間があればお話ししたかったので、その点ですね。

 まず、審査請求と自由選択の件はお話ししました。

 それから、情報の提供と処理状況の公表、これは、行審と書いてありますので、行政不服審査法の改正になりまして、二十年法案になかった、雑則の規定なので余り目立たないんですが、結構大事な、情報の提供というのは、申立人に対して、請求書の書き方ですとか、そういうケースであれば申し立てできますよというようなサジェスチョンのようなことを、行政庁が、処分を受けて不服を感じているような方々に対してそのような手当てをする努力義務規定ということで、これは行政不服審査法に書いてあることが国税にも適用されるということですので、ここに書いてあります。

 処理状況の公表につきましては、どういう裁決を出したとか、あるいは、出した裁決のうち、どのぐらいの割合が認容されていて、どのぐらいの割合が棄却されていてというような認容率とか、そういったものを公表することを義務づける努力義務規定になります。これも、情報の蓄積というのは非常に重要なことですので、今までもちろん運用ではされてきたわけでございますが、これが法律にきちんと規定されるということは意味があろうと思います。

 これも、もちろん、民主党政権のときの検討の成果が生かされているということになります。

 あと、下の方に、原処分庁を含む審理関係人が申し立て可能という斜めの字が二つありまして、審理のために質問、検査をしてくださいというのが、今まで申立人が申し立てることができたんですね。先ほど言いましたように、担当審判官がみずから職権で質問、検査することはもちろんできるわけですが、申立人が、質問、検査してくださいと申し立てることもできる。これは、今までは申立人の側だけだったんですが、原処分庁からもそれを申し立てることができる。閲覧、謄写についても、今までは、国民、申立人の方が請求ができるという形が、これは原処分庁もできる。

 これは一見、原処分庁の権限を上げる、手続を上げるので、いかがなものかという意見もあるかもしれませんが、そうではなくて、国税不服審判所と原処分庁が離れているんですよという独立性を明確にする意味では、このようにきちんと原処分庁も、今まで運用ではこういうことをしていたわけですから、運用でしていたことは、規定されていない中でやっているのではなくて、きちんと規定されてやることによってこの国税不服審判所の独立性が明確になるという意味では、意味のある改正であろうというふうに考えています。

 御説明させていただく時間をいただきまして、ありがとうございます。

松倉参考人 これは今回の改正とは直接関連はないかもしれないんですが、日弁連の方としましては、こういった不服審査の手続とか委員構成が各個別法でばらばらになっている、そういう中で、やはりこれからは、通則法としての行政不服審査法をつくって、そちらの方に統一化していくべきではないか、一つのモデルケースを通則法の中につくるべきではないかというふうな議論をいたしました。

 私も、宮城県の情報公開審査会の会長とか、あるいは国民健康保険審査会の会長なんかやりました。そこでは個別法、個別条例でもってやっていたわけですけれども、やはり、そういったものをきちんと統一化するために、個別法に任せるのではなくて、通則法の中できちんと統一的に処理をするというふうな将来的な方向性を考えるのは妥当ではないかなと思っております。

 それから、地方の審理員等の制度ですけれども、これは先ほど小早川先生が言われましたとおり、大変な問題があると思います。特に私は宮城県ですので、東日本大震災で福島県が町ごと移住しているというふうな地域もございます。そういう中で、やはりきちんとした対応をやっていく必要があるというふうに思っております。

濱村委員 大変に丁寧な御開陳をいただきまして、本当にありがとうございます。

 次に、青木参考人、松倉参考人に実務家としての御意見をお伺いしたいと思います。

 不服申し立て期間が六十日から三カ月になります。これに対して、六カ月がいいとかという意見もありますが、実務家としてどのようにお考えか、ちょっと端的にお答えいただければというふうに思います。

青木参考人 税の実務はルーチンで、基本的に申告期限から二カ月後、法人税であれば二カ月後、二カ月という数字が結構、まあ、確定申告については、年末までの所得について翌年の三月十五日までということになっていますが、先ほど申し上げましたように、どうしても繁忙期というのがありますので二カ月は厳しいという中で、三カ月にしていただけるのは実務的にはありがたいということであります。

 もちろん、六カ月、長ければ、納税者側の発想からすれば、四カ月でも五カ月でも、それはもちろん長い方がいいわけではありますが、現在の二カ月から比べれば、三カ月でも一歩前進というふうに考えております。

松倉参考人 私の意見も青木参考人と全く同じです。

 やはり、三カ月よりは六カ月の方がいい。行政事件訴訟法ですと、訴訟ですから弁護士がつく、したがって、弁護士との打ち合わせ等が必要であるということから、三カ月、六カ月の差があっていいんじゃないかというふうな指摘もありますけれども、行政不服審査の段階でも代理人がつく場合もありますし、それはやはり長ければ長いほどいいというのが私の率直な感想です。

濱村委員 ありがとうございます。

 最後に、行審制度自体は、行政の自己反省機能を発揮するということが非常に大事であるというふうに考えております。この点について、今後、法改正後、どのようになると見通されているか、御見解をお聞かせください。小早川参考人でお願いいたします。

小早川参考人 不服審査を通しての行政の自己反省ということは、まさにこの制度の本質的な部分でありますので、ぜひ、これを機会に、その面が健全に発展していくということを期待しております。

 そのためにはやはり、これが、形だけつくって、実際の運用はその形だけで流れていくということではいけないわけですので、何が大事かというと、いろいろ大事ですけれども、やはり人の問題が一番大きいのではないか。

 今までの日本の行政というのは、不思議なことなんですけれども、大学の法学部卒業者を大量に採用して、その人たちが中心なんですが、しかし、実際の仕事の中で、では法的な物の考え方がどこまで貫かれていたかというところになると、どうかなと。私自身も大学で行政法を教えてきましたので、自分でそんなことを言うのもなんですけれども、そういうところがあります。

 ですから、いろいろな能力が必要ですけれども、行政組織に法的な物の考え方をしっかり根づかせる、そういうことのできる人を十分配置するということが、まあ、公務員の増員ということになるといろいろ問題はあると思いますけれども、人事政策的にもそのようなことに配慮していただければと思う次第でございます。

濱村委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、ベターな法改正であるということが先ほど来出てきておりましたので、今後も継続的な運用の見直しあるいは法改正が必要かと思います。お三方の参考人におかれましては、これからも御指導いただけるよう心よりお願い申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田(徹)委員 民主党の黄川田徹であります。

 順次質問していきたいと思います。

 なお、自民、公明さんの委員と重複する質問があるかもしれません。確認の意味で質問をさせていただきたいと思います。

 不服申し立て制度でありますけれども、御案内のとおり、五十年以上大改正がなかったということで、今般は本当にいいものをつくっていかなきゃならないということは、与野党にかかわらず願いは同じだ、こう思っております。そしてまた、政権交代を経て、まあ、さらなる政権交代もありましたけれども、見直し、検討がされた部分もこれまた盛り込まれておるというところもあります。

 そこで、参考人の皆様方御三方には、賛成の立場からの意見陳述ということで、特に、小早川さんには、百点満点とすればそのとおり満点だという評価でありますけれども、しかしながら、満点の中でも足らざるところ、あるいはまた、この法改正の中での限界等があるということで、先ほども少しくお話しされたみたいでありますが、一点あるとすればどういうものがあるか、再度お願いいたします。

 それから、青木さん、松倉さんには、この法案、満点を百点満点として、何点を与えるということでしょうか。加えて、足らざるところ、先ほど、今回の改正の限界とか、松倉先生もお話しされていましたけれども、さらに一点ぐらい、確認の意味で、青木さん、松倉さんに足らざるところもお話しいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

小早川参考人 先ほどもちょっと、満点だとまで申してはおりませんが、満点じゃないかもしれないと言いながら、しかし、個別、それぞれの行政分野の特質に応じて例外もあり得るだろうということで、多少どっちつかずなことを申しました。

 私としまして、今御質問の趣旨に沿って、ここはやはりというのがあるとしますと、先ほど再審査請求の関係でいろいろ残ってしまったということを申しましたが、その中に、御承知かと存じますけれども、いわゆる裁定的関与の問題が含まれております。国民の権利救済という点からすればそこまでしなくてもということで、しかし、地方自治体の処分について、最後はどうしても国の行政機関で見直しの機会を確保したい、そのことが制度設計に反映して、ただ単に審査請求でなくて、国の機関への再審査請求というのをどうしても残すという形のものがございます。

 これは、私としましては、これは地方分権推進の関係の問題でもありますが、この機会に整理をしていただけないものかと思っていましたが、やはりそこは難しいということで、裁定的関与の取り扱いの問題というのは先送りになりまして、その間、それが一つありまして、一般法である行審法の中にも再審査請求に関する規定というのを残さざるを得ないということになった、そういう経緯かと私は理解しておりますので、そこは残念なことであった、今後の課題としてしっかり取り組んでいただきたい、こういうふうに考えております。

青木参考人 私は、このような手続法制の改正について、多分、百点満点というのは不可能じゃないかなというふうに考えています。手続水準、国民から見た水準もあれば行政側から見た水準もあるわけですし、先ほどの三カ月と六カ月の話も、三カ月がいいのか、もしかしたら四カ月の方がいいかもしれませんし、そういった点がありますので百点満点は難しいなと思いますが、ただ、先ほど申し上げましたように基本的に評価しているということで、八十点でしょうか、大学で、優、良、可の優は十分つく点数に当たるのではないかというふうに考えております。

 ということで、ただ、もしかしたら、三カ月じゃ足りないかもしれませんし、ほかにさまざまな問題が潜んでいるかもしれないということを考えれば、先ほど少しお話に出ました、行政事件訴訟法と同じように五年後見直し条項を入れていただいて、五年後に運用状況を確認して、そのときにまた制度改善を図るというのも一つの方法かなというふうに考えました。

松倉参考人 私は、小早川先生と違って大学の先生でございませんので、なかなか点数をつける習慣がございません。裁判では五一%で勝てます。証明の優越で勝てるものですから、なかなかその判断は難しいんですけれども、少なくとも、優、良、可でいえば優には入るというふうには考えております。

 それから、一点、この法案で、私の方でもう少し突っ込んでほしかったという点を指摘しますと、それは、行政不服審査会が裁決庁に対する拘束力を持つというふうな形、有識者から成る判断をするわけですから、それが裁決庁を拘束する、そういうところまで踏み込んでもらいたかったなというふうな感じがしております。

 以上でございます。

黄川田(徹)委員 時代が変わって、お上が国民にさまざまな制度設計をするというのではなくて、やはり国民の目線からしっかりと救済制度が確立されるということが一番大事だと思っておりますし、そしてまた、法律が施行された後、それがしっかりと運用されるというところも見ていかなきゃならない、こう思っておるわけであります。五十年以上の大改正でありますので、一歩前進というような話じゃなくて、やはり百歩も千歩もしっかりと前進していかなきゃならない、こう思っておるわけであります。

 それで、具体的にちょっとお話ししたいと思います。

 閣法における制度設計の中で、やはり審理員制度とそれから行政不服審査会、この部分なんでありますけれども、同じ穴のムジナといいますか、先ほど来何度もお話しになっていますけれども、審理員は各省庁の職員が担うとしておるわけですよね。この公正さが本当に担保されるのかという危惧、あるいはまた、この部分にしっかりと外部登用を基本にした独立性、専門性の高い制度設計が大事ではないのか、こう思うわけでありますけれども、お三方の御意見をいただきたいと思います。

小早川参考人 今回の法案に即して申しますと、審査会よりもまずは審理員のあたりに焦点を当てた御質問だと存じますが、確かにそこは大変微妙なところかと思います。

 私は、結論から申しますと、こういう形でとにかくやってみてはどうかと思っております。

 それは、繰り返しになりますけれども、行政そのものの意識改革ということが重要だと思いますので、外からチェックされるというだけですと、これは裁判所のチェックというのは現にあるわけであります。中の意識改革をどうやっていくかということが一つであり、それからまた、行政上の不服申し立ての処理に関しては、やはりそれぞれの法制度の考え方を的確に踏まえて処理をしていかなければならないということで、やはり今どきの大変複雑な行政ですと、そこに専門性の問題というのがどうしてもございます。

 そういう意味で、専門性と客観性、そして行政の自己反省機能の担い手というような要素を考えますと、審理員というのは、もちろん外部から適格性のある方をどんどん入れていくというのは望ましいことだと思いますが、原則それでいけというのはやや時期尚早ではないか。そしてまた、内部で公正な判断のできる行政官、行政職員をこれから育てていくべきではないかということも考えておりまして、その意味で、この法案の審理員の仕組みということでどうか。

 もちろん、下手をすれば、これは行政側の立場で物を見るということになってしまいますが、そこはもちろん監視が必要であります。

 今回の仕組みの中でいえば、審理員が、意見書をきちっと作成して提出する、それが裁決の際の基本になるという仕組みはできておりますので、その辺の審理員の審理を透明なものにし、また、ひょっとして審理員の意見と違う裁決をするというのであれば、なぜそうするのかということを裁決の理由としてはっきり書く。その辺で、外から見て、審理員による本当に公正な審理が行われ、それが裁決に反映されたのかどうかということをきちっとウオッチしていくということが仕組みとしても大事ですし、運用上、あるいは関係者の意識としても大事だろうと思っております。

青木参考人 外部登用のことにつきましては、実は国税不服審判所はかなり進んでおりまして、これも民主党政権のとき、平成二十二年の税制改正大綱で、審判官の外部の人間が少ないんじゃないか、まさに同じ穴のムジナという批判から問題が惹起されまして、平成二十三年の税制改正大綱で、三年かけて、事件を担当する審判官の半数を民間人にするという工程表もつくられました。実際、三年たちまして、現在、たしか五十人の民間出身の方が国税審判官をされておりまして、半分が民間人になったということで相当評価されているところでございます。

 やはり同じことが審理員にも必要なのかもしれませんが、そこは、審理員には審査会という完全な第三者機関、独立した第三者機関が諮問機関としてついているということでありますので、そのような中では、先ほどの私の言葉で言えば重装備の中では、審理員というところにまで外部を求めるのかといったら、もともと全てが外部の諮問機関があるということですので、そういった中では、処分庁の中の職員が審理をして、最終的な、それが適当な、妥当な判断であるのかということを外部の方が見るというようなことになっているんだろうなというふうに理解しております。

松倉参考人 先ほど、私の方では、現行のシステムにつきまして、処分庁の上級行政庁の審理員が第一次的判断を加える、それに総務省の不服審査会が第二次判断を加える、こういうふうな表現をしました。私は、現状の制度の延長線上でいくとすれば、むしろ処分庁の上級行政庁の方でこういった第一次判断をするという方がスムーズに資料収集等がいくのではないかというふうに判断をしております。

 それから、最初から外部登用、これも私は魅力的な案ではあると思います。しかし、そのためには、その審理員が自由に活動できるようなバックアップ体制、組織が必要だと思います。ですから、日弁連が提案しておりますような行政審査院というふうな機構をつくって、その機構が審理員の活動を支えていく、しかも身分保障するというふうな前提がなければ、これはなかなか機能しないのではないかというふうに思っております。

黄川田(徹)委員 時間が参りましたので、質問しようと思ったんですが、こちらから一言だけ。

 審理員と行政不服審査会がセットで出ているわけですよね。この審査会がどう機能するか、これが一番大事だと松倉先生も話をされております。

 たしか事件は二百件ほどでありますし、本当に常勤の委員が必要なのか、事務局体制が必要なのか、あるいはまた、放っておくと行政というのは大体肥大化していくものですから、年金のときの第三者委員会みたいな、そういうものに本当になるのかというのがやや心配なところがあるものですから、そういうところをちょっと質問したかったわけでありますが、時間でありますので、これで終わります。

高木委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 きょうは、お三方の先生方、朝からこうしていろいろな貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 最近特に、行政の高度化、複雑化、こういったものがより一層進む中で、この行政不服審査法の改正は非常に重要な意味を持つと思うんですけれども、まず初めに、今も俎上に上っておりました審理員の資格なんですけれども、審理員の客観性、中立性、公正性を担保するためにどういうふうにやっていかなくてはならないかということをちょっとお聞きしたいんですね。

 行政に精通した者とか、そういった者になりますと、もう勢い、その組織の内部の者ばかりになっていきますと、客観性とか中立性、公正性が十分に担保されないんじゃないかなというふうな懸念もされるわけなんですけれども、そのあたり、お三方の先生方からちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思います。

小早川参考人 審理員の公正、客観性を確保するという意味では、外部登用が一つの答えになるわけですね。ですから、そういう方向での制度設計というのは一つあり得ると思います。

 私は、先ほどの御質問にお答えして、今回の法案はそれを原則とすることはしなかったということで、それはそれで一つの方向だろうと思いますが、その際に大事なことは、やはり、今まさに御指摘ありますように、国の場合でいえば、各省に属する職員が審理員となって、どれだけ公正、客観的な処理が可能なのかということです。

 ですから、今回提案されている仕組みというのは、審理員の外部登用を原則にするのではなくて、しかし、その仕事の仕方をどうやってチェックしていくか。それが、先ほど申しましたプロセスの透明化、意見書に何を書くか、それが外から見えるということでもありますし、それから、先ほど私、言い忘れましたけれども、審査会の仕組みというのはやはりそこで大きく作用してくるだろうと思います。審理員としては、審査会でチェックされるということだけで、かなり大きな、逸脱からの抑制を担保するのに効き目はあるのではないか。

 私は情報公開審査会も経験しておりましたけれども、手前みそになりますけれども、やはりああいうふうに文句をつける仕組みがほかにあるということは、現場の各専門の行政分野の方々にとってもそれなりの効き目はあるのではないかというふうに思っております。

 審査会のことをつけ加えておきたいと思います。

青木参考人 改正案では、審理員の資格というか、処分にかかわった者ではないということで、処分にかかわった人の家族まで含めて、そこは除斥事由として規定されておりますので、処分庁の中で処分にかかわった者からは切り離されているということ、逆に言うとそれにすぎないわけで、ただ、そこまでの規定はあるということは、今までだって、処分をした人間が審理を担当するなんて、本当にそんなことはあったのかなと思いますが、法律できちんとそれがされたということでございます。

 では、審理員を外部登用にするのかという話、確かに、外部登用にすれば、一番中立的な、独立でいいのかもしれませんが、ただ、今回の法案では、審査会という完全に独立した諮問機関がついているということがあろうかと思います。

 ちなみに、民主党政権のときの検討の過程の審理官につきましては、これは必ずしも外部登用ということではなくて、ノーリターンルールといって、国税不服審判所も、税務署で処分をやっている人が国税審判官に人事異動で来て、その後、税務署の副署長ということで戻っていくというので、そういう人事ローテーションがいかがなものかという問題点も指摘されていたりしましたので、同じような発想で、ノーリターンということで、処分庁には戻らないというような人事をする。審理員をやった者は処分庁に戻らないというようなルールをつくるというのは、一つのやり方かなというふうに思います。

松倉参考人 審理員の公正性の確保につきましては、やはりその給源、供給源をどうするかという問題があると思います。私は、やはり一番いいのは、外部登用、特に任期つき公務員で弁護士とか税理士さんとかそういった専門職種を採用するというのがよろしいんじゃないかと思っております。特に、国税とか公正取引委員会ではそういった採用が数多くありますので、そういった方向で解決、対処してはどうかと思っております。

三宅委員 ありがとうございます。

 次に、情報開示の部分、この部分も非常にやはり重視しなくてはならないというふうに思うんです。これは日弁連の意見もそうだと思うんですけれども、行政不服審査の件数の情報公開、ここが十分されていないんです。集計した件数だけは公開されているけれども、ところが、中身については十分に公開されていない。それを参考にして行政不服の申し立てをしようにも、参考例が十分情報公開されていなかったら、する方も非常に頼りない思いをすると思うんですけれども、このあたり、特に弁護士の松倉先生にちょっとお聞かせいただきたいんです。

松倉参考人 今おっしゃる懸念は、確かにあると思います。

 同じ行政不服審査でも、種類によって違うんですね。例えば、情報公開審査会ですと、これは公開されています。これはプライバシーに余りかかわりがないんですね。ところが、生活保護とか国民健康保険とかになってきますと、本人の収入が問題になってくるんですね。ですから、これは非公開になるんだと思うんです。そういう場合には、例えば仮名にするとか、事案の類型にするとか、そういった工夫をして公開するということの努力も必要かと思います。

三宅委員 同じ意見なんですけれども、小早川先生、今の情報公開の部分、先ほどもちょっと言及されていらっしゃいましたので、ちょっと御意見をお聞かせいただけますか。

小早川参考人 大変重要な点だと思います。

 これまでの行政不服審査の実績がどれだけ開示されているかということは、私も、研究の都合もありまして、なかなか十分ではないなという感じは持っております。

 ただ、それは、話を聞きますと、この法律を所管している総務省等に必ずしも情報が集まってこないというところもあるようでありまして、御承知のとおり、結局、今のシステムは各行政機関それぞれが運用するということでありますので、それを全体集計して、一体どんな事件がどういうふうに処理されているのかを全体として見るという体制になかなかなっていなかったということがあると思います。

 そこは、ぜひこの機会に、今後は、もし総務省が所管し、それからまた不服審査会も総務省に置くということであれば、そこらあたりでしっかりとその裁決例、それからその審理における問題点というようなものを把握して、国民の目に見えるようにやっていっていただきたいというふうに思っております。

 これまでもデータベースづくりというのを若干はやっているのですけれども、今回の二十年法案とかその一連の検討作業の中でも必要だということで、そういうことは若干やってはおりましたけれども、まだまだ不十分である。おっしゃるとおりかと思います。

三宅委員 次に、情報開示の問題なんですけれども、特殊法人に対する情報公開なんかをどのようにお考えされているかどうかもお聞きしたいんです。

 特に、私が関心があるのはNHKですね。これは非常に大きな放送組織でございまして、金額も非常に巨大な予算を持っているんですけれども、情報公開がほとんどされていないし、この対象にやはりすべきじゃないかなというふうに思うんです。この点についても、小早川先生とそれから松倉先生、ちょっと具体的なあれになるんですけれども、お聞きさせていただきたいと思います。

小早川参考人 情報公開法そのものはきょうのテーマではないのかと思いますけれども、NHKはたしか、済みません、私の記憶違いでなければ、情報公開法の対象からは外れております。

 それは、独立行政法人等情報公開法制定の際に、かなりシビアなやりとりがあって、結局そこに落ちついたというふうに理解しておりますが、それがいいのかどうかというのは、私は、ちょっとここでは判断、お答えする能力がございません。

 行政不服審査との関係で申しますと、現行法は、今度の改正法案もそうですが、行政庁の処分というものに焦点を当てておりますので、NHKその他のいわゆる特殊法人なり独立行政法人等なりがどれだけこれにかかわってくるかというのは、結局、個別の作用法によって、行政処分をすることになっているかどうかということで決まってくるわけでございます。

 NHKの場合には余りないでしょうね。NHKに対する総務大臣の処分というようなものは、これは幾つかありますけれども。そういう意味で、NHKに関して言えば、不服審査の対象にひっかかってくる仕組みには余りなっていない、こういうふうに思います。

松倉参考人 今の質問は私の分野外でありまして、私もかつては自治体の情報公開には関与しましたけれども、国のには関与していませんので、よくわかりません。

 ですから、余り臆測で言うことはできませんので、御勘弁ください。

三宅委員 かなりイレギュラーな質問をさせていただきまして、申しわけないと思います。

 これはやはり情報開示の請求についての部分で、特に警察関係が、情報開示につきましては、開示請求とかその処分の不服を申し立てた場合に、捜査中の事案であるということでこれを拒絶する場合が多いんですけれども、この部分について、小早川先生、最後に御意見を聞かせていただきたいと思います。

 なぜこういうことを聞いたかと言いますと、北朝鮮による拉致事件で、警察に情報開示をしたりとか、あるいはまた、行政庁の方に処分の不服申し立てをしたりしているんですけれども、十分にそれが応えられていないんですな。門前払いを食らわされる場合が多いので、こういうことを聞かせていただきました。

 これをもって質問とします。

小早川参考人 先ほどの御質問について、十分突っ込んで捉えておりませんでした。

 情報公開法が適用される範囲で、開示請求に対する処分というのはあるわけで、その処分については、これは不服審査法の対象になるわけですね。

 今の挙げられた例で、警察が保有する情報についての情報公開請求、その不開示決定に対する不服申し立てという文脈で考えますと、結局はこれは、情報公開法なり、県警でいえば情報公開条例の適用でどこまでが不開示情報かということになるわけですが、警察関係の、特に公安関係情報についてその不開示事由の壁が厚いということは、感覚としては私も十分承知しております。

 一つ一つのケースについてはどうかということは、また別の話かと思います。

三宅委員 きょうは時間がありませんので、これで質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

高木委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫です。

 質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 今まで質問を聞いていまして、私と同じ視点で御質問をされたことがありますので、ダブるかもしれません。

 まず一番最初に、今、三宅委員が御質問したことなんですけれども、実は相談窓口ですよね。不服審査をするときに、税理士の先生だったら税理の部分は詳しいんでしょうけれども、一般の方はよくわからない。わからない中で不服審査を持っていくとしたときに、例えばこういう前例が、こういうものが対象になりましたよとかいうのがあればまだしも、今言われたようにまだ十分ではないということであれば、小早川先生は今回、この法案にかなり御尽力されたとお聞きしておりますけれども、そういう窓口の問題点についてはどのようにお考えでしょうか。

小早川参考人 窓口の整備で、また利用者に対する情報提供のシステムを整備するということは、これは大変重要なことであろうと思っております。

 今回の法案でも情報の提供の関係というのは入っているわけなんですが、これは御承知のとおり、行政手続法ができるときに、あれは事前手続ですけれども、そこでやはり情報提供ということが重視されまして、規定は入っていた。その流れで、今回も、そこが一応、一応といいますか、重視はされていると思います。

 ということで、これは実際の運用の問題になると思います。どんな窓口をというのは法律でそれほど書ける話ではありませんので、各お役所でどこまでできるかということは、これは運用の実態をこれからしっかり見ていく必要があるだろうと思います。

 先ほどの、過去の事例のデータベースをそういうところで使えないか、そういう発想は当然出てくると思いますが、そこは、先ほども申しましたけれども、恐らく総務省でどこまでできるのかということを頑張ってやっていただきたいなと思う次第です。

 それぞれのところで、それぞれの行政分野でも、もちろん事例集をまとめるということはやっていただきたいし、今も分野によってはあると思いますけれども、そこはやっていくべきだろう。裁判所も裁判例をホームページで出しているような御時世ですから、行政の側も当然そういうことは考えていくべきだろうと思っております。

佐藤(正)委員 例えば、不服審査に出すときに、その当事者が適格か適格でないかというような問題もあるわけですね。なかなかこれは難しいんだろうと思います。

 過去の事例をこうやって見ますと、例えば主婦連がジュース不当表示事件とかいうのを出したときに、いや、あなたは不適格ですよと。しかし、ジュースを飲むのは消費者であって、飲む人たちが、例えば果汁が入っていないのに入ったように見られるとか、これはおかしいでしょうというのは、まさに当然だと思います。

 しかし、これは裁判で結果が出て、不適格なんですよとなりましたけれども、公正取引委員会はその二年後に、主婦連が言ったことを表示するものをつくった。これを見ると、常識的に考えたらそうだなというのが当然だと思います。

 ということは、自分が適格なのかどうかということすらわからない方がたくさんいるんですね。こういうところも当然窓口のところでは精査するんでしょうが、基本的にそこで本当にできるんだろうかなという、ちょっと心配な点がある。

 そういった問題で、総務大臣にもちょっとお尋ねをしたんですけれども、窓口で精査する上においてはそこを強化すべきですよ、法律を実効あるものにするためにということも指摘をさせていただいたんです。

 さらには、例えばほかの事例で、宝塚市で、パチンコ店が建設をするよ、建築基準法と風営法ではいいんだけれども、住んでいる方からいろいろ苦情が出るので、これはとめましょうというような条例を市がつくったけれども、結果的に、パチンコ屋はできちゃった。だから、市は、罰則規定がないので、これはけしからぬと訴訟を起こしたら、最終的には最高裁では、それは法律上の争訟ではありません、こういう結果が出た。市ですらこうなんですよ、現実は。

 ですから、そういった窓口の部分では、徹底した改良点を見出さなきゃいけないと思っています。

 なぜこれを言うかというと、小早川先生がこれに随分かかわってこられたものですから、法律をつくるのであれば、当然、そういう問題点を網羅できるようなところもしっかりと、法律の中に書けなくても、対応できるように、今後、小早川先生はまたいろいろな審議会に出られるんでしょうから、御指導をぜひしていただかないと、何のための法律であるのかということが一番問題だと思います。

 それからもう一つは、先ほど来から、三カ月と六カ月、これもこの委員会で総務大臣にお尋ねした。そうすると、全国知事会等々にお聞きすると、いや、三カ月だと。それは、受ける側はそうなんだ、出す側は実は長い方がいい、だから六カ月がいいというふうに私は申し上げたんです。

 これは先ほどからいろいろ議論がありましたけれども、もう一度、お三方に一言ずつ、その件について御見解をお尋ねしたいと思います。

小早川参考人 前半の不服申し立てができる人の範囲、これは訴訟においても大問題で、行政事件訴訟法改正案のときにもさんざんそれで議論はあったんですけれども、ちょっと条文をつけ加えるということで、相変わらず、あとは解釈、運用に任されているということです。

 御指摘のように、申し立ては却下するけれども、言っていることはもっともなので行政に反映するということは、これは当然あってしかるべきことですが、手続として、どの範囲の国民に申し立て権を認めるかという法律論になりますと、やはりどこかで線を引かなければならないということです。

 これは、裁判官ですらいろいろ悩んでいるわけで、不服審査を担当する行政職員に、それを自分の頭で判断しろというのは現状ではなかなか難しいことかと思いますが、しかし、だんだんそういうふうになっていただきたい。行政の現場から、こういうものは適格性を認めていいんじゃないかという裁決が出てくる、それで全体が変わってくるというのが一番望ましい形ではあると思います。

 それで、後半の三カ月か六カ月かという点は、私自身は、どっちでなければいかぬということではないと思います。訴訟の方が六カ月になったので、少なくともその六カ月間はペンディングになるわけですから、行政上の不服申し立ても認めてもいいのではないかというふうに実は考えておりましたが、やはり行政の実務の側からすると、その間ペンディングでいるというのはなかなか事務処理上も難しい、負担が大きいということもあり、それから処分の種類によっては第三者がかかわってくることもありますので、行政の都合だけではなくて、第三者、国民、市民、住民の立場というのもあるかということで、そういうことで三カ月になったということですね。私も、そこは六カ月でもいいんじゃないかという気はややしておりましたけれども。

 以上でございます。

青木参考人 これは、期間の問題は、三カ月か六カ月かという問題よりも、出訴期間と合わせるか合わせないかという判断がまず一つあると思います。

 民主党政権のときは、不服申し立て前置の見直しというのを全面的にやっていたものですから、不服申し立てをするのか裁判をするのかというのは最後まで迷わなきゃいけないということで六カ月ということでしたが、今回の政府の案としては、出訴期間と必ずしも合わせなくても、さまざまな、法的に早期に安定しなきゃいけないとか、あとは手間、裁判にかかる準備と不服申し立てにかかる準備で少し違うんじゃないかという理由から、短くして三カ月になったというふうに理解しております。

松倉参考人 期間につきましては、三カ月よりは長い方の六カ月がいいというのは、利用する側からいえばそのとおりだと思います。

 それから、私が、自治体ですけれども、国民健康保険審査会なんかをやっていて、実際に主宰する側から見ても、三カ月から六カ月に延びて何か不都合があるのかとなると、余りそれは感じなかったという記憶です。

 ただ、言われているとおり、三面関係の処分なんかがあって、行政の方から許可を得た方が、半年たってからそこでとめられるというのはかなわぬというふうなことが言われていますけれども、私は、そういったケースはむしろ早目に、救済されたい方は仮処分か何かをとめるんじゃないかというふうな気がしますので、余りそこの差はないと思っております。

佐藤(正)委員 もう二点ぐらいあって、時間がなくなってきたんですけれども、例えば、申立人と参加人がついて、税理士さんだったら税理士さんがついていけばいいんですけれども、全くわからない、しかし、書類を書いてもらったり、ちょっと詳しい人がいる。そういう人たちが行ったときに、例えば口頭意見陳述をやるときに、私よりもわかっている方が参加人になってくれるんだけれども、その人たちからの意見が言えないということなんですね。ここはちょっと検討すべきだろうと思っております。

 これを質問したら、終わりますので。

 次に、先ほど民主党の方から出ました、委員会でも随分質問したんですけれども、例えば、実際に上がってくる件数というのは、総務省が今度やる分で二百ぐらいなんですね。しかも、その中から、本当に第三者委員会まで行くのかといったら、恐らく、もっと減ると思いますよ。その手前で減るんだろうと思います。そうすると、しかし、二百とはいえ、中身的に言うと、かなりいろいろな分野が入っている。それが第三者委員会で本当に公正に見られるのかということなんですよ。

 第三者委員会というのは、要するに外部の方ですよと言われていますが、審理員の専門委員が審査をしてきた案件が、そこの第三者委員会に行って、今回、三名の下に二人ずつついて、九名の仕組みになるんですね。本当にこんなに要るのかな。逆に言えば、その都度でも対応できるのではないかな。常駐して、常設で置く必要性が本当にあるのかな。これは少し疑問が残るところなんです。その辺は小早川先生にお尋ねをしたいと思います。

 実は、松倉先生にも、審理官制度についてもう少しお尋ねをしたかったところでありますが、もう持ち時間がなくなりましたので、小早川先生に、今私が申し上げた第三者委員会、確かに第三者ではあるけれども、本当に審理ができるのか。総務大臣、お役人さんにもお尋ねしたんですが、第三者委員会は基本的には手続論を見るぐらいしかできませんということを答弁でいただいていますよ。その辺について、小早川先生のお考えをお尋ねしたいと思います。

小早川参考人 審査会の役割につきましては、確かに、あらゆる行政分野に精通しているわけではありません。そこは、審理員の審理を踏まえて、それを次の段階でいわばレビューするという考えになるわけですね。そこを、手続問題だけを見るというのは、ちょっと言い方としては狭いかなと思います。

 審理員による審理の記録を見れば、これは、最高裁が下級審の事件記録を見て、この審理の仕方はおかしいねというふうに考えて破棄差し戻しするというのと似ているわけでして、手続ももちろんそうですけれども、そのほかに、審理の仕方が妙に偏っていないか、重要な証拠を軽んじていないかというようなことは、これは当該分野の専門家でなくても、ある程度の法律実務の経験のようなものがある人、例えばそういう人であれば、あるいはそうでなくても、十分、社会常識、社会経験のある方であればわかる部分が多いわけでして、審査会の役割というのは一つはそういうことであろうと思います。

 あと、常設の必要があるかということですが、これも私の狭い情報公開審査会の経験を踏まえて申しますと、やはり、常設かどうかで、各お役所に対してにらみがきくかというのは大分違ってくるのではないかという気がしております。

 以上でございます。

佐藤(正)委員 時間が来ました。

 恐らく、その辺は、小早川先生と私の論点は違うんだろうと思います。常設したからにらみがきくのではなくて、逆に常設することによってポジションができるというふうに私は思っていますので、そのところだけは指摘して、質問を終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 皆様には、大変貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 最初に、小早川参考人にお尋ねいたします。

 冒頭の意見陳述の中でも、不服申し立ての手続を審査請求に一元化することにつきまして、整理統合し、わかりやすいものにというお話がございました。その趣旨ということで、わからないではないんですけれども、しかし、実態は、個別法でいろいろな不服申し立てが設けられています、もちろん一般法としての行政不服審査法にも書かれていることでもありますけれども。その際に、個々の三百五十本の法律、総務省の方にお聞きしましたら、この異議申し立ての廃止をするといった場合に、実際に審査請求に一元化をするという法律が幾つかある。

 そういう中には、道路運送車両法ですとか、あるいは小売商業調整特別措置法などがあります。これらは、現行異議申し立ては、商調法の方は知事に対して行い、道路運送車両法については、これは地方のブロックの局長があるわけですけれども、支局が都道府県単位にありますから、都道府県単位でできる。それがなくなるとなると、みんな東京にやらなくちゃいけないという点でいうと、私は、その異議申し立てをする、不服申し立てをする方々にとってみれば、大きく利便性が後退することになりはしないかという懸念を持つわけであります。

 その点で、一元化と言われるんですけれども、そもそもの異議申し立てと審査請求をそのまま存置して、それを自由選択する、つまり、異議申し立てなしに審査請求に行くとか、そういう自由選択でもいいんじゃないのかなと思ったんですけれども、その点についてはどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

小早川参考人 その辺は、これまでの異議申し立てなり審査請求なりの実態がどうであったか、それはまた分野によっても違う、時期によっても違うと思いますので、一概には言えないことかと思いますが、今回の法案の基本的な考え方は、まず、残念なことですけれども、従来の行政不服審査というのは、その本来の趣旨に十分応えていなかった。国民の権利救済のためにも十分働いていなかったのではないか。その原因は、手続保障のレベルがやはり低い、それは特に審査請求よりも異議申し立ての方が問題だ。そういう発想で、だから、大事なのは、どれだけの仕組みが用意されていて、それをまた何回も使えるかどうか、重ねて使えるかという話よりは、十分な手続保障を備えた、しっかりした審査の手続というものを一つつくる、できるだけそれで問題に対処するという、そこが基本的な発想だと思います。

 その結果、おっしゃるような、国民にとっての利便性が損なわれるというようなことがあってはいけないのですが、そこは、今回の審査請求への一本化、一元化という場合にも、宛先は、国の機関であれば大臣ということになりますけれども、申し立て書の提出先は、何も霞が関まで来なくても、その省の出先機関があればそこで受けるというふうに、当然、それは制度上は可能だと思いますし、運用上もそういうふうになるのが自然ではないか。そして、その後のやりとりも、こういう時代ですから、申立人あるいは代理人が一々東京に何度も何度も来るというようなことにはならないで済むのではないか、また、そうあるべきであろうというふうに思っております。

塩川委員 小売商業調整特別措置法の場合には、県に権限がありますから、その都道府県の処分に対して異議ありというのが異議申し立ての制度ということもありまして、単に、ではそれを経産大臣に言えばよいということじゃないんじゃないのか。そういう点でも、不服申し立ての人の立場からいったときに、こういう審査請求への一元化というのは、本当にそれで現場の実態に即したものなんだろうかという懸念を覚えるところであります。

 関連して、松倉参考人にお尋ねします。

 審査請求への一元化に当たりまして、異議申し立てはなくします、かわりに、自由選択で再調査の請求を設けますということが幾つかあります。五本ぐらいあるそうですけれども。

 この中で、国税通則法などについては、異議申し立てと再調査の請求の中身自体はほとんど変わらないんだというのが、これは財務省の説明です。それ以外の法律、例えば、公害健康被害の補償等に関する法律、公健法ですね、公健法などにおいては、処分を行う都道府県に対して異議申し立てを行うのが、今度の再調査の請求にかわるわけですけれども、この一般法の行審法において、その手続において変更があるわけですよね。

 従来の異議申し立てにおいては、物件の提出要求ですとか参考人の陳述及び鑑定の要求、検証、関係人への質問を行うことができるわけですけれども、今度の再調査の請求ではこの規定が落ちているわけです。この点でいえば、国税通則法に合わせたというか、そういう感じなんだと思うんですけれども、これはやはり、権利救済の手続を保障する上では後退なんじゃないか。

 特に、公健法のように、公害患者の皆さんが多く裁判に訴えてこられた、そういう中で公健法もできて、でも、やはりその処分を行った県に異議申し立てをしたいということで行ってきたそういう異議申し立てが、実態として、今言ったような、内容が後退するということは、私は、これは納得いくものになるんだろうかと思うんですけれども、その辺について、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。

松倉参考人 再調査については、先ほど青木税理士から問題があると言いましたけれども、用語の問題があって、実は、日弁連も、再考の申し立てというふうなことで考えています。

 その名前でわかるとおり、これは異議申し立てというふうな厳格な審査ではなくて、例えば税務なんかで、完全に計算が間違っているではないか、この間違いを直したら結論が変わるでしょう、そういうふうな簡便な誤りを指摘して、そしてそこで提訴をする、こういうふうな仕組みとして残すわけです。

 ですから、従来の異議申し立てのようなある程度慎重な審理というのは審査請求に一本化する、しかし、そういうふうなものではなくて、本当に簡単なミステークで、直るものについては再考、再調査というふうに私は理解しております。

塩川委員 法曹関係者の方の、水俣の患者の皆さんなどについても、やはり多く県への異議申し立てを行っておられる。そういう点でも、県の処分に対して異議ありということが本来の異議申し立ての趣旨としてもあったわけで、当然、その先の審査請求を充実するということは、これはこれで重要なことではありますけれども、私は、単純に一元化という名のもとに、こういう形で異議申し立てのあり方の変更というのが、個別法の具体の差異を考えても、妥当なものかどうかということについては疑問を申し上げているところであります。

 次に、青木参考人にお尋ねいたします。

 冒頭のお話の中でも、今言った再調査の請求のことがございました。なるほどと思ったんですけれども、税務調査のやり直しを再調査というということになっていると。

 ということになれば、国税通則法で罰則つきの質問検査権があるとしたら、それが行使をされる。そうすると、いわば税務調査の流れの中の再調査と国民の権利救済としての異議ありという再調査の請求が用語として重なるということについて言うと、これは納税者にしてみると、不服申し立て、再調査の請求をちゅうちょすることになるんじゃないのかなという強い危惧を覚えるんですけれども、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

青木参考人 私も全く同感でございまして、もう既に現在、再調査という、二十年法案のときはなかった、その後に、自後に国税通則法の改正がありまして、それによって、再調査というのは税務調査、もう一度税務調査ですよという事前手続の用語として使われていますので、それが今度、事後救済手続で再調査の請求という言葉が入ると、もし本当にそれを入れるとしたら、今度、事前手続の方の再調査という言葉を別の言葉にかえなきゃいけなくなるかもしれませんし、同じ言葉であるとしたら、相当説明が難しいんじゃないかな。慎重に周知徹底していただきたいというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 小早川参考人に、不服申し立て前置の見直しについてお尋ねいたします。

 国民の権利としての裁判を受ける権利を保障するという点で、不服申し立ての前置、重要な課題だと考えております。

 そういう点で、もともと、行政事件訴訟法、行訴法が一九六二年にできて、そのときにもかなり前置の整理をしたんだと思うんですよね。何か整理法が出たということも聞いているものですから。そのときに整理をして、その時点で前置を認めたものが五十本ぐらいあったということで承知しているんですが、結局、その後ふえてきたわけですよね。百本近くになって、今回の見直しにもなったわけです。

 これは、行政事件訴訟法の八条で、やはり裁判を受けるのは妨げられないということで、前置というのは原則なしだよと。ただし書きがついているということで、個別法で対応しているわけですけれども、何でこの間ふえてきてしまったのか。行訴法で前置はだめだよと言っておきながら、実態は、五十が今百ぐらいにふえているという、その背景といいますか理由といいますか、その辺について、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

小早川参考人 行政関係の法律は数がたくさんございまして、その中で前置規定を持っているものが、今御指摘のように、結構ある。私もその数は正確に存じませんでしたが、その一つ一つについて、何でこうなったのかという、そこのフォローは私には到底できません。

 全体の仕組みとして言えば、昭和三十七年の立法の際に、おっしゃるとおり、行訴法八条の原則に対して例外は認める、だけれども、それは原則は原則なので、例外を認める要件、場合というのがたしか三つあるはずだという整理がそのときにされております。ただ、その三つの基準というのが、今から見ればやはりちょっと緩かったのかなと。

 特に、先ほど申しました、繰り返しになりますけれども、選択を認めたって、いい方、便利な方を使えばそれでいいんだから、片方を通行どめにするのは、これは余計なお世話だという部分がやはりどうしてもあったわけですね。だから、そこが今回整理されたんだと思います。

 今回は、その当時の三つの基準にかえて、たしか三つだったと思いますが、前置を認める基準というのをもう一度立て直して、それでしっかりコントロールしていこうということだと思います。

 お答えになっているかどうかわかりませんが、一般的には、各お役所は、何となく裁判所というのは煙たいもので、そこへ行く前に何とか、聞くべきものは聞いて、とにかく自分のところで処理してしまいたいというような気分があったということも、それはあるだろうと思っております。

塩川委員 質疑の中でも小早川参考人はお答えになっておられましたが、今後前置がふえていくことのないように、今後の立法で注意していただきたいというお話をされました。

 これをどう担保させるかというのがあると思うんですよね。つまり、これからつくる法律で前置をつけるようなことがないようにするためにどうするのかという点は、過去、一度、前置はなしよと言ったのが結局ふえ続けたわけですから、今回改めて整理をして、同じ五十ぐらいに絞った、中身は違いますけれども。今後ふえないようにするためにどうするのか。その辺で何かお知恵があればお聞かせいただいて、お願いしたいと思います。

小早川参考人 私は、法律学専攻でして、行政上の立法過程の実務については詳しくございません。

 ただ、一般論として言えば、閣法であれば内閣法制局の審査があるわけですし、その前に、前置規定を入れるというのであれば、その所管省と総務省との間での協議は行われるはずです。ですから、その辺で基準が明確で合理的なものがあれば、それをしっかり実行させていくということは難しくはないのかなという気はいたします。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

高木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大変にありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

高木委員長 次に、本日付託になりました原口一博君外四名提出、行政不服審査法案を議題といたします。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。奥野総一郎君。

    ―――――――――――――

 行政不服審査法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野(総)議員 ただいま議題となりました行政不服審査法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、行政庁の処分または不作為に対する不服申し立ての制度について、国民の権利救済を図る観点から、その抜本的な見直しを行うものです。

 以下、政府案との違いを中心に、その概要を申し上げます。

 第一に、権利救済の公正さを担保するため、審査請求の審理を行う者について、各省庁の職員ではなく、外部登用を基本とする、独立性、専門性の高い審理官を内閣府に置く制度を創設するものとしています。

 第二に、法定受託事務に係る処分及びその不作為について、請求者が請求先の市町村または都道府県の体制等を踏まえつつ、都道府県または国に対して審査請求することが選択できることを明確化すること等により、権利救済の機会を担保しています。

 第三に、審査請求を却下する場合において、当該審査請求に係る処分に係る事務の処理について、その是正または改善のための措置を講ずることが必要であると思料するときは、審査庁は、関係機関等にその旨の意見を述べることができることとしています。

 第四に、権利救済の実質的拡大を図る観点から、審査請求期間について、行政事件訴訟法上の出訴期間と同様の六カ月に延長することとしています。

 第五に、審理手続の一層の透明化のため、国税不服審判所等における審理中に作成された審理関係人または参考人の陳述の内容が記載された文書を当事者の閲覧、謄写に供するための規定等について検討を行うべき旨の規定を設けることとしています。

 第六に、関係法律の整備等については、別に法律で定めることとしています。

 以上が、本法案の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

高木委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 内閣委員会において審査中の内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案、独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び第百八十三回国会、松本剛明君外三名提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案の各案について、内閣委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上決定いたします。

 次回は、来る十五日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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