衆議院

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第4号 平成13年2月27日(火曜日)

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平成十三年二月二十七日(火曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 佐藤 剛男君

   理事 根本  匠君 理事 林田  彪君

   理事 五十嵐文彦君 理事 海江田万里君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大木  浩君    大野 松茂君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      七条  明君    砂田 圭佑君

      竹下  亘君    中野  清君

      中村正三郎君    萩山 教嚴君

      増原 義剛君    村田 吉隆君

      山本 明彦君    山本 幸三君

      渡辺 喜美君    江崎洋一郎君

      岡田 克也君    河村たかし君

      小泉 俊明君    手塚 仁雄君

      中川 正春君    長妻  昭君

      日野 市朗君    松本 剛明君

      谷口 隆義君    若松 謙維君

      中塚 一宏君    大森  猛君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    植田 至紀君

      大島 令子君

    …………………………………

   議員           河村たかし君

   議員           吉井 英勝君

   議員           植田 至紀君

   財務大臣         宮澤 喜一君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村井  仁君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   財務大臣政務官      大野 松茂君

   財務大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  池田  実君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    尾原 榮夫君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君

   参考人

   (日本銀行総裁)     速水  優君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  原口 一博君     手塚 仁雄君

  佐々木憲昭君     大森  猛君

  阿部 知子君     大島 令子君

同日

 辞任         補欠選任

  手塚 仁雄君     原口 一博君

  大森  猛君     佐々木憲昭君

  大島 令子君     阿部 知子君

    ―――――――――――――

二月二十七日

 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(岡田克也君外七名提出、衆法第二号)

同月二十三日

 高齢者の生活安定を高めるための税制上の措置等に関する請願(石井郁子君紹介)(第一七七号)

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七八号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一七九号)

 同(児玉健次君紹介)(第一八〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八三号)

 同(中林よし子君紹介)(第一八四号)

 同(春名直章君紹介)(第一八五号)

 同(不破哲三君紹介)(第一八六号)

 同(松本善明君紹介)(第一八七号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第一八八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八九号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二五七号)

 同(児玉健次君紹介)(第二五八号)

 同(中林よし子君紹介)(第二五九号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二八九号)

 同(大森猛君紹介)(第二九〇号)

 同(児玉健次君紹介)(第二九一号)

 同(中林よし子君紹介)(第二九二号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二九三号)

 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一九〇号)

 所得税の基礎控除引き上げ、課税最低限度額の抜本的改正に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三七号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三八号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二三九号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二四〇号)

 同(大森猛君紹介)(第二四一号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二四二号)

 同(児玉健次君紹介)(第二四三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二四四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二四五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二四七号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二四八号)

 同(中林よし子君紹介)(第二四九号)

 同(春名直章君紹介)(第二五〇号)

 同(不破哲三君紹介)(第二五一号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二五二号)

 同(松本善明君紹介)(第二五三号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二五四号)

 同(山口富男君紹介)(第二五五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第一号)

 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(岡田克也君外七名提出、衆法第二号)

 財政及び金融に関する件




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として国税庁課税部長村上喜堂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。民主党の中川正春でございます。

 不正常ながら予算委員会が続きまして、それに答弁に立たれた皆さんも、あるいはまた攻めている野党の方も、もっと言えば国民自体が、もううんざりしてきているんじゃないかということであります。総理の問題、あるいは村上さんの問題、あるいは額賀さんの問題。天下国家をどうするかということ、これに本来は今の時代しっかりと議論の焦点を当てていかなければならないところが、国会自体がこのような形で本当の意味での正常化がなされていかないということ、これに大きく憂いを感じております。

 その上に立って、きょうは本来の議論に戻して、天下国家といいますか、今非常に風雲急を告げております金融の問題、それから財政の問題、日本の経済のあり方、この基本問題についてお尋ねをしていきたいというふうに思います。

 株価が一万三千円をこのままでいくと割るんじゃないかというふうな懸念があちこちでささやかれ、先般は、これまでムーディーズと比べると非常に保守的に日本を支えておってくれたS&Pが日本の国債の格付を下げるということがあり、そして、G7では日本に対する懸念というのがさまざまに標榜をされということでありました。

 その上に立って、先般からいよいよ、日本のアキレス腱とも言われる不良債権について、これ以上先送りといいますか、塩漬けのままでそのままにしておくということができないという基本認識にやっと立たれたんだというふうに私は思うのですが、そういうことだったんだろうと思うのです。その上に立って直接償却をしていくということを表明されたわけでありますが、柳澤大臣、この中身について、もう表明された部分は結構でありますから、もう少し詳細に、具体的に、どんな手法をもってどういう範囲のものを、その前に、今どういう認識をされながら、その上に立って何をしようとしていくのかということ、これを改めて説明願いたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 不良債権問題、一九九八年に私がこの仕事を最初に仰せつかったとき以来大きな問題であるわけでございますけれども、私、一年二カ月ぶりに、昨年十二月にまた同じようなお仕事を拝命したわけですけれども、そのときには、実は、不良債権のいわゆる残高が減っていないということで、これはいろいろな理由がありますけれども、ああ減っていないなという感じをまず持ちました。

 そういうことをちょっと感想を申し上げましたら、非常に世の中に変な、間違った印象を与えたようで、では日本の不良債権問題は解決されていないのか、そういう反応が出てしまいまして、私は、それをことしになってすぐ打ち消すように努めました。

 それは、日本の不良債権問題というのは、きっちり引き当てが行われておる、あるいは担保をとって総じて保全をされておる、むしろ不良債権が表に開示されているということも大事な点であるというようなことを申し上げまして、不良債権の残高が横ばい状態であるということは、決して日本の金融機関の健全性にかつてのような問題があるのではないということで、このところずっと言い募って、国民の皆さんにわかってもらいたいということで申し上げたわけでございます。

 しかし、その後、いろいろ考えまして、何でこういうことを、世間がそこまでわかってくれた上でいろいろ日本の不良債権処理について言うだろうかということを考えたときに、やはり銀行の収益力にそれが大きな足かせになるという側面がある。これはもう言うまでもないわけでして、例えばリスク管理債権というのは、もちろんリスクマネジメントローンという言い方もありますが、また逆の言い方だとノンパフォーミングローンとも言いまして、要するに、利息が約定どおり入らないローン、そういう概念でもあるということで、その名称そのものにこれは余り収益力のない債権だということが明らかになっております。

 そこで、もっと金融機関が収益力をつけ、そしてある程度のリスクを吸収したような金融仲介機能というものを発揮していくためには、やはりノンパフォーミングローンを圧縮するということがどうしても避けられないというふうに考えるに至りまして、私は、このノンパフォーミングローン、要するに不良債権の残高をオフバランス化するということが我々が取り組むべき課題であるというふうに認識するに至りまして、私の考えを申し上げるとともに、そのことのためにこれから努めていきたいということを最近申している次第でございます。

中川(正)委員 私も大枠では賛成なんですが、今のタイミングと、それから、本来はこれは当然、今までそれを放置してきたということ自体が間違いであって、もっと早くにこの部分についてしっかりと手をつけていかなければならなかったということだと思います。

 そこで、もう一つ事実関係をはっきりさせておきたいのですが、今金融庁としては不良債権、これは申告といいますか、それぞれが開示している額は三十二兆円弱ということだと思うのです。きのうの金融庁長官の森さんの発言だったと思うのですが、九三年四月から二〇〇〇年九月まで、トータルで償却してきたのが六十八兆円、そのうち八割の五十四兆円が直接償却、それで現在、先ほど言いました三十二兆円弱の不良債権が残っている。これが基本認識でいいのかどうか、まずそこを確認していきたいと思います。

柳澤国務大臣 その認識で誤りはありません。

中川(正)委員 私は、今この不良債権の問題というのは、二つ三つ、その切り口といいますか観点があるのだろうと思います。

 一つは、さっき基本認識を示されましたが、金融庁の認識と、一般のエコノミスト、投資銀行、それから世界の見る目、これに非常に大きな乖離があるということですね。それで、過去から、バブルが崩壊してからこれはずっとあったのですが、現実問題としてどちらが正しかったかというと、いつも金融庁を含め銀行団の過小評価があって、ふたをあけてみたら何倍にもそれが膨らんで、その膨らみから察するところ、どうもこれは、いろいろな外部から手だてをしながら評価をしていくその大きな額、これの方が正しいのじゃないかという懸念、これが実際に現実のものになっているということですね。そこに不信感があって、日本の金融機関に信頼性が取り戻せないということだと思うのです。今回も、例えばメリルリンチなんかは百二十兆円の不良債権残高がありますよということを指摘しているのですね。これは三十二兆円と非常に大きな差がありますね。これが一つ。

 それからもう一つは、この中身。その根拠は何かというと、詳細に見ていくと、この間、長銀あたりが整理をしていく過程の中で、適債権、不適債権の中身、これが週刊誌に漏れて議論があったことがありました。ここでも取り上げられましたね。そのときの評価を見ていますと、どうも現実には銀行の自己評価というのは甘いのじゃないか。甘いというよりも、非常にゆがめられたものになっているのじゃないか。それを適として承認をしていく金融庁のあり方というのも、それぞれ関係者に対して不信を招く最大のこれはもとになっているのじゃないかということ。こんなことが次々と実感としてあらわれてくるわけであります。

 だから、私も、今回の話はただ三十二兆円を対象にした話じゃなくて、これはもっと大きな額、百二十兆円になるのか、あるいは中には二百兆円ぐらいに実はこの十年間に逆に膨らんできているのですよ、そういう評価もありますが、それの方がどうもこれは正しいのじゃないかという感じがするのですが、そこのところの認識はどうですか、大臣。

柳澤国務大臣 私ども、先ほど、不良債権をはかる物差しの一つであるリスク管理債権の残高を先生が御言及になられましたので、それを受けて、同様の概念での数字を申し上げたわけであります。

 私どもが発表している不良債権の物差しというのは、法律上は二つなんですけれども三つほどありまして、もう一つは金融再生法開示債権というものでございますが、これも先ほどのリスク管理債権の残高とほどほど、大体等額でございます。それからもう一つは、金融機関が引き当ての前提として行っております分類、これを自己査定分類というふうに申させていただきまして、発表いたしておりますけれども、これは六十四兆円でございます。

 六十四兆円というのは、先生御案内のように分類債権というのは、金融機関から見まして、金融機関の主観の判断で、これは少し貸出先に、金利も元本も約定どおり払われているけれども、やはり業況から見て少し問題がありはしないかというようなことを認識した途端に、これは要注意債権ということで分類をするわけでございますが、そうしたものを全部ひっくるめても六十四兆円。そのうち、外形的な、もう既に利払いの遅延が三カ月以上起こるとかというようなもので、実は要管理債権になるものというのが、六十四兆円のうちの三十二兆円ぐらいというふうにお考えいただいていいと思います。たまたま偶然ですけれども、ほぼ半分ということになっているわけでございます。

 つまり、外形的には何にも問題がないけれども、金融機関の判断として、これは要注意の債権先だというふうに言っているものがあと三十二兆円ある。こういうことで、これらについて六十四兆円であるということで、これも現在のところは公表させていただいておるということでございます。

 そういうようなことでございまして、メリルリンチでしょうか、どこやらが百二十兆円といったようなことについては、いろいろ言われるのは、民間会社でございますのでそれはまあ御随意というふうに言わざるを得ないわけですけれども、私どもは、この六十四兆円というのは目いっぱい、金融機関の側から判断して注意を要する債権の金額ということで公表している不良債権の金額と言って間違いない、このように思います。

 それでは、破綻をしたとき大きくなるのは何かということで、随分昔から何倍になったというようなことを申してきたわけですが、私は、これは前回のときにもこの問題に少し取り組まないといけないということを申したのですが、当時としては、やはり日本の金融機関の引き当てというものに対する考え方、これが、むしろ税が引っ張っていった。貸倒引当金というのは、お互いちょっと長く国会議員を務めている人間、あるいはその前のいろいろなお仕事でこれに関係した人間はみんな知っておりますけれども、むしろ税の、課税所得を操作する、あるいは縮減していく、そういう手段だ。だから、これはすべからく薄くした方がいいのだ。何回も我々は、貸倒引当金の繰入率の引き下げ、残高の引き下げというようなことで取り組んできたわけです。そういう結果、現実に破綻というようなことになったときに、積んであった引当金というのはまことに少額のものであったというようなことを招いてしまったということが一つある。

 それからもう一つは、やはりメーンバンクシステムというのも背景にあるのではないか。メーンバンクシステムというのは、少々相手がふぐあいになっても、責任を持ってある程度は貸し込んでいく。こういうようなことも、今言った現実に破綻になったときに、損失が積み立てられてきた引当金に比べて随分大きくなる、こういうようなことの原因ではないか。

 こういうように考えて、そのようなことも申させていただきましたが、だから現在の不良債権についても同様の状況にあるはずだというのは、私は、そのような指摘は全く当を得ていない、こういうことを思っておりますし、そういう認識でございます。

中川(正)委員 要は、現実のマーケットがどうかということだと思うのですよね。現実のマーケットは、残念なことに、これは本当に残念なことなんですが、さっきの金融庁の話を前提に動いているのではなくて、それぞれが分析をしたもっとシビアな大きな額を前提にしながら動いているということ、ここが私は問題なんだろうというふうに思うのです。そういう点で、金融庁のこれまでの姿勢というのがまずは一つ問われるということを指摘しておきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、さっき引当金のお話が出ましたが、最近償却のペースが非常に落ちてきたということが前提にあるので、いよいよやりましょうよというプッシュをしていただいたともとれるのですが、それと同時に、この中身の分析。

 いろいろなエコノミストが出しているのですけれども、どうもいわゆる未引き当て、引当金が十分でない部分、これが、さっきの金融庁がつかんでいる六十四兆円あるいは三十二兆円、このレベルを前提ということじゃなくて、百二十兆円以上のレベルを前提にしていくと、これは自己資本が足りませんよ、これから引き当て分に対して順番に実質的な償却をしていく過程の中で自己資本は確実に足りなくなってきますよという、前提といいますか、予想が当然出るわけです。六十四兆円に対する引き当てと百二十兆円に対する引き当て、これが大きな差として出てくる。具体的には、いろいろなところで指摘がされていますが、あと三十兆円、四十兆円、この分が自己資本が足りませんよ、こういう指摘が非常に現実的なものになっているように私は思うのです。これが一つ。

 それからもう一つは、直接償却をしていく過程で、手法が三つ四つありますよね。お互い話し合いをしながら債権を放棄していくという、いわゆるプライベートの部分での債権放棄、それから会社更生法を前提にして、法的処理という意味で債権を消していくという処理、それからもう一つは売却なんだろうというふうに思うのですね。この処理の仕方によっては、国民が受け取る感情が相当違うだろうと思うのです。

 よく私たちも地元で話を聞きますのは、これまでのやり方の中で、特に借金をチャラにしようじゃないかという、お互い同士が話し合いをして、プライベートの中で債権放棄をしていくことについては、一つは、銀行というのは大きな会社に対しては、あるいは政治的に大切な産業、いわゆるひもつきといいますか、利権構造ができ上がっている産業に対しては借金をチャラにするけれども、我々苦しんでいる中小企業にそれをやってくれるか、こういう批判が一つ出ます。

 さらに悪いのは、それに対して、例えば間接的にも直接的にもその銀行に対して公的資金が出ていった場合には、その公的資金をもとにしてあそこの借金をチャラにしたんじゃないか、こんなことはけしからぬ、こんな税金の使い方はしてはならない、そういう国民感情、これは当然出てきていいんだろうというふうに思うのです。これに対してどのような整理をされていこうとしているのか。

 もっと言いかえれば、私の前提では、これは直接償却といいましても必ず公的資金が前提になるんだろうと思うのです、規模からいって。もし、公的資金はこれから直接償却を促していくのに一銭も前提になっていませんよと金融サイドで言い切れる、今の政府で言い切れるということであれば、ここで言い切ってください。しかし、公的資金が前提になるということであれば、先ほどの議論を踏まえて、具体的に国民にどういう説明をしていこうとしているのか。その中身についてここで一度整理してはっきりと説明をしていただく必要があるだろうというふうに思います。改めてよろしくお願いします。

柳澤国務大臣 先生いろいろなことを言及されましたけれども、まず、開示不良債権の残高について金融庁の発表しているところは過小ではないかと。

 このことについては、先ほど私、申し上げましたように、ちょっと問題がある、ちらっと問題があると考えたところまで要注意債権として入れたものでも六十四兆円であるということで、これは具体の、いろいろ巷間、これは少しいわゆる危ない会社じゃないかというようなものについては、私どもの認識している限りはほとんどこの要注意の中には少なくとも入っているということでございまして、それ以上に、あと五十兆以上もそういう企業にかかわる債権があるということは、私ども、どう考えてもなかなかついていけない議論だなということでございまして、その点はちょっと申させていただきたい、このように思います。

 それから、オフバランス化にはいろいろな手法があって、今先生お触れになられたとおり、今大体四種類というか五種類ぐらいあろうかと思います。

 一つは、債権の売却というか流動化でして、これは証券化を含めてあるわけでございます。それからもう一つは、私的なというか、後で申し上げますけれども、いろいろな条件のもとでの債権放棄というのがございます。それからもう一つは、相手が法的な手続に入ったことによって、金融機関としてそれに応じた債権の償却をしなきゃならないというのが三つ目のカテゴリー。四つ目に、これは特殊、日本的なのかもしれませんけれども、相手がもうほとんど返済不能だというような事態に陥ったときには、担保を除いて自分たちの貸借対照表からその金額を消してしまうという、いわゆる部分償却、こういうものがあるわけでございます。

 その中で、債権放棄についてはいろいろなことが言われておるぞというようなことがございました。

 一つは、債権放棄について、中小企業の皆さんにそういうことは適用されないので不公平だというようなお話があるということでございましたけれども、これについては、債権放棄というのは無条件で行われているわけではなくて、厳しい再建計画あるいはいろいろなところでの責任の追及等々、そういった条件があったときに行われているということについて、我々ももうちょっと努力しなきゃいけないと思うのですけれども、国民の皆さんにしっかりした認識を持ってもらうようにしなきゃならない、このように思います。

 それともう一つは、この償却を進めるときに公的資金が必要になるじゃないかというお話でございますけれども、私どもといたしましては、十分な引き当て、保全が行われているものをオフバランス化する。もちろん、そこにはオフバランス化に伴って若干の処分損の増加というものがあろうと思いますけれども、これが激増してさらに資本注入が公的資金によって必要になるというような事態を想定するというふうな状況は、率直に言って考えておりません。処分損の増嵩というのは、その債権の現実に引き当てているものとの関係で、それぞれ限定的なものであろうというふうに考えている次第です。

中川(正)委員 公的資金は前提にしていないということですね。これはひとつ確認をしておきたいというふうに思います。見方によれば、その程度の償却なのかという見方もできるでしょうし、もう一方では、金融庁、認識が甘いよ、そんなことではマーケットがやはり反応しないよと。今本当にちまたで持っている危機感というのはそんなものじゃないんですよね。強制的に資本注入してでもこの不良債権というのはすっきりしてしまわなければ日本は危ないんだという、それぐらいの認識なんですが、それと今の大臣の御答弁というのはまるっきり違う、危機感がない、そんなふうに改めて思います。そこのところをまずは指摘をさせていただいて、きょうのところはとどめておきたいというふうに思います。

 次に、財投改革、それから財投機関債あるいは財投債の問題と財政再建、これについてお尋ねをしていきたいというふうに思います。

 先ほども申し上げたように、S&Pが国債の格付を下げたわけでありますが、私、一つ今の財政議論の中に抜け落ちているところがあると思うのですね。それは、中期展望で非常に厳しい数字が出されまして、ことしも何とか国債で回していくという予算が出された。それに対して、少なくともプライマリーバランスをいつの時点で、どういう形でとるかということが、はっきりした形が政府から出てこなければうそじゃないかというようなものが、恐らく国民の気持ちの中にも、あるいはマーケットの気持ちの中にもあるのだろうというふうに思うのですね。まず、それがなかなかはっきりしたものが出てこないということですね。

 これについて、大臣に、あちこちでちょっとその懸念もお話をされておるようでございますが、今の政府としてここのところを具体的にどういうスケジュールで持っていこうとしておられるのか、改めてお尋ねをしたいと思います。

宮澤国務大臣 既に申し上げたことと重複する部分があるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思っております。

 今の財政というものが到底このまま放置することはできない状況にありますことは、もう委員が一番よく御承知のとおりでございます。

 それで、財政再建という問題でございますが、一番わかりやすい一つの問題は、ともかく経済がマイナス成長を続けておったのでは財政再建というものは非常に難しい。まずサイクルで、たとえ低くてもプラス成長の軌道に入ったということでなければ、自身の歳入見積もりができないという問題がございました。現に、政府が提出いたしました予算の歳入見積もりは、年度の終わりには歳入欠陥になって終わったということがここ何年かございますが、初めて平成十二年度で、今終わろうとしている年度でございますが、少しプラスが出た、それも法人筋になるわけでございますが。こういうことでないと財政再建というものはなかなか本格的に考えられないと思っておりましたが、幾らかそういうことが出てまいりました。

 そこで、一応国税収入がどのくらいという見通しが立てられるといったような状況におきまして、次には財政再建そのものに入らなければなりませんが、もうこれも御存じのように、財政のきょうの状況は、税制の問題でもありますし、中央、地方の問題でもありますし、なかんずく社会保障の問題であるわけでございますから、財政再建に取りかかれば、必ずそういう問題についての答えを出さなければ再建策というものは可能でないことは明らかだとかねて考えておりまして、したがいまして、財政再建に取りかかるためには、そういう幾つかの問題を解決しなければ、財政だけがいい格好になるということはあり得ないことであると思っておりました。

 たまたま政府に経済財政諮問会議ができましたので、先般から、財政再建を頭に置いて、関係した、ただいま申し上げましたような問題を含んだ形でシミュレーションをする必要がある、そのためのマクロモデルをつくる必要があるだろうということを私から申しまして、幸いにして旧経済企画庁にはモデルについてのノウハウがございますし、また、新しく新鋭を所長として迎えたということもありまして、マクロモデルをつくってもらうということでほぼ決定をいたしまして、専門家も、どのぐらい時間がかかるかということをきちんとは言い得ない状況ですが、半年ぐらいで使用にたえるモデルができるのではないかというようなことを今聞いておりまして、そういたしますと、そういうものの上でシミュレーションをすることになろうと思います。

 それをいたしますと、含まれている問題が今のような問題でございますので、シミュレーションをやっていくということは簡単に鉛筆をなめるわけにはいかないということでございますので、二十一世紀のこれから、多分十年とか十五年の間の我が国の経済社会にある幾つかの問題をその場で片づけなければ意味のある財政再建の答えは出ないという状況に、いわば決断をそこへ、国民的な選択を、言葉は悪うございますが、そういうところへ持っていこう。一種の追い込まれた立場になるということも言えるかもしれませんが、しかし、そのぐらいにいたしませんと、今申しましたような幾つかの問題は、おのおの都合のいい答えを出してじんぜんと日を送るわけにはいかない状況でございますので、ただいまそういうふうな道筋を考えております。

 非常に厳しい決断をしなければならないということになるかと存じますけれども、抜本的にはそれ以外の方法はないというふうに今思っております。

中川(正)委員 さっきのような話では、なかなか参議院選挙はできないですよね、これは。国民にとって具体的に、私の党もそうです、民主党もそうですが、私たちもはっきりとしたその辺の道筋を示して、そして自民党の方からもそれを示す、それによって国民に選択をしていただく。あるいは心の準備、あるいは気持ちの持ち方、ここでひとつこの国、原点に戻ってやっていこう、そういう気持ちをしっかりと起こさせるというのが政治のリーダーシップなんだろうというふうに思うのです。だから、ぜひそっちの方でもこの中身を具体的にまとめてくださいということをまず前提として申し上げたいと思います。

 それから、さらに、先ほど金融関連の不良債権の処理のお話をしましたが、これは過去三年間、特に国債の発行が伸びていますね。その中身というのは、やはり金融に対する手当てだったと思うのです。私は、この先もやはりその前提が入るのだろう、これが一つ。

 それからもう一つは、財投債の改革というのを今のタイミングでやっていますね。これを見ていると、ことしは国債の新規発行額というのが二十八兆三千億、前年よりも四兆二千億減りましたね。それから借りかえ、これはふえているのですが、五十九兆六千億、これが六兆四千億で、あと交付税関連のものでやりくりしたので、差し引きしても去年よりは減っています、こういう説明ですね。

 ところが、もう一方で国債そのものはどうなっているのかというと、それに財投改革の中から回ってきた財投債、これが十兆四千九百七十四億、この分が市中へ向いて出されるということですね。トータルでいくと、国債自体は去年よりも十二兆六千三百三十二億という増加なんですよ。これは、一般向けのことしの財政計画を説明する中には完全に欠落しているところなんです。国債の量はやはりふえるのですよ。このタイミングでふやしていいのかどうかということです。

 本来は特殊法人というのは、こうした形の債券、新たにつくった、名前だけつくって中身は同じなわけですが、こんな建前の中で整理をしていくのじゃなくて、厳しく、財投機関債、これでやっていきなさいよ、これ一本でいいのじゃないか。それを時間をかけてやるというのだったらそれなりに理解はできる。もっと言えば、この財投機関債も、国の保証なしで、それこそ民営化に近い形になりますが、自分のところで、マーケットが評価をできる事業であればそれでいいじゃないか、マーケットが評価できなかったらその事業は中止だ、それぐらいのめり張りをつけながらこの特殊法人の整理をしていくということが我々の中では前提だったのです。

 それが、こういう形で財投債が発行されるということになりました。これは要因としてはますます危ないのだろうというふうに思うのですが、どう整理をされていくのですか。

宮澤国務大臣 前国会で当委員会でいろいろ御議論をいただきました問題でございますが、ああいう制度の改正から、財投制度というものを根本的に改めなければならなくなった、そういう局面の中で財投改革をせざるを得なかったということでございます。

 それは、しかしメリットとして考えれば、今までいわば余り苦労をしないで金を集めて仕事をすることができた財投機関というものが、真剣にならなければならない、市場から撤退しなければならないかもしれないよといったような状況ができつつある。そのことは悪いことだと決して思っておりませんが、結果といたしまして、財投機関債が二十機関、一兆円ほどできたということでございます。

 国会の御議論の中でも、なかなか難しいだろう、市場の承認を得ることができるか、受け入れられるかという御議論がしきりにございまして、私ども楽観はいたしておりませんでした。楽観はいたしておりませんでしたし、財投機関も一生懸命やったことは確かなようではございますけれども、その程度のものでございました。

 恐らく、これが初めでございますから、来年はもう少しぐらいはいけるかもしれないと思っておりますが、他方で、今中川委員の言われましたように、自分で金が集められないくらいならやめたらいいだろうと、もう少しで言いたいところでございますが、みんな法律がちゃんとついております。そして、おのおのがそれなりのレーゾンデートルを持っておる。国会でもとことんにはそうお考えになるものが多いものでございますから、やめたらいいだろうということはなかなか簡単に申せないというのが現実でございます。

 その中で、ともかく一兆円余りは自分でつくった。それで、どうもこれ以上できません、財投をお願いというときに、ちゃんとやったかねといろいろ、それはいろいろやることはできるようにはなりましたのですけれども、そういうようなことで、今度は国債の方に移りますが、財投債十兆が市中に出るだろう、そういう市中の状況であることはおっしゃいますとおりでございます。

 ですから、国債の消化ということはそれだけ難しくなっておるわけでございますが、したがって、発行の仕方、期間の問題にいたしましても、いろいろに工夫を余計しなければならなくなっておることはもうおっしゃいますとおりで、そこは決して気を緩めるわけにはまいりません。

 たまたま、全くたまたまと申し上げるべきだと思いますが、こういう非常に低い金利の時代で、しかも民間の資金需要が極端にないということから、株式も低迷したこともあって、比較的国債は順調に消化されておって、しかもクーポンレートは最近は一・四までございましたから、さしずめのところは何とかいっておるということでございます。

 しかし、民間の経済活動が希望どおりもっと盛んになれば、国債発行を圧迫するということはもう当然のことでございますから、そこは極めて注意深い行政をやっていかなければならない。十分に心配しながら慎重にしなければならない状況であることは、御指摘のとおりでございます。

中川(正)委員 最後に一つだけ指摘をしておきたいと思います。

 今、民間の金融機関というのは、よく言われているように、貸出総額は縮んできている。ということは、リスクを回避し始めている。それに対して、何を買っているかといったら、国債を買っているということですね。これは改めて説明するまでもない。その傾向がずっと続いているわけです。

 それに対して、特殊法人を整理するかわりに国が肩がわりをして国債という形で、これまでは市中を通さずに財投はそのまま回っていたわけですが、それの民間資金を吸収する部分だけわざわざ国の方が国債という形で保証をつけて、それでマーケットへ出すわけですよ。これは、結果どういうことが起こるかといったら、ますます民間の金がここへ向いて吸収をされるという結果に終わるだけのことなんです。

 私は、これは現状からいって、それぞれの部門がいろいろな形で一生懸命になっているうちに、財投改革も何とかつじつまを合わさなければいけない、形だけはつくらないといけない、こんな形で恐らくここへ上がってきたのだろうと思うのですが、それを大所高所からマクロ経済の中でコントロールするのが大臣の仕事だというふうに思うのです。それを、ここは難しいからこんなものでしょうね、こう言ってしまったら、本当に本来の意味での政治のリーダーシップにはならないということなんです。

 そこのところを改めて指摘をさせていただいて、私は、このタイミングで財投債をこんな形で発行し続ける、そしてまた、来年はこれよりふえるだろうと思うのですが、これは間違いだというふうに指摘をしておきたいと思います。

 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 まず、KSDの会員募集を信用金庫中心にしていたというような問題で、処分がまだ出ないということがありますので、二、三お尋ねをさせていただければと思います。

 まず、このインフォルモ、こういう雑誌がございます。この雑誌は、ある意味では東海地区の信用金庫の実質的な広報誌というか、お客様に信金の行員が営業に出たときにサービスとしてこういう雑誌を渡していく、こういう雑誌があります。これは、東海地区の信用金庫管内四十七信金、静岡県が十五信金、岐阜県が八信金、愛知県が十七信金、三重県が七信金、にこれが送られて、その後、各信用金庫から取引先事業所に配布していく、こういうような雑誌であります。これは、年間四回、季刊ということで発行されておりまして、一回の発刊が十五万部。

 それで、何が問題かといいますと、この中に毎号にこのKSDの入会の申込書が入っている。そして、その下には、同じつづりの中に口座振替依頼書が入っている。これを切り取って封筒のような形にしてKSDに送ると、これが即入会になる。これを信金の方が持ち歩いて、かなり、一般的な入会のツールとして使っていた。これは、平成六年度から昨年の秋までずっと毎号KSDの入会申込書がこの雑誌の中に入って、大量に信金に配布されて入会のツールとして使われていた、こういうようなことがあるわけですが、今、調査を金融庁されていると思うんですが、このことは御存じでありましたか。

村井副大臣 委員御案内のとおり、現在、私ども、KSDにかかわる金融機関につきまして、これは全国の銀行、信用金庫、信用組合、合わせて八百ほどでございますが、銀行法第二十四条に基づく資料徴求をやっていることは御案内のとおりでございますけれども、いろいろ調査をしているところでございまして、まだちょっとまとまっておりません。私自身、ただいま御指摘の資料については存じません。

長妻委員 調査、調査と言われていますけれども、かなり信金にヒアリングするというか、銀行法に基づいての調査でありますから限界はあるのかもしれませんけれども、もうちょっと、いろいろな情報が金融庁にも寄せられていると思いますが、それを無視するのでなくて、きちんと調査をしていただきたいと思います。

 実際、私の関係者も昭和の六十三年十月にS信用金庫の外交の方から、この保険、KSDの共済に御協力いただくことで、親密になって、融資などもスムーズにいきますというような語り口で入会申込書をその方の事業所に行員の方が持ってこられて、その事業所内でサインをして、その行員の方が自分のかばんに入れられて信金に帰って申し込みが完了したというようなこともありますわけですから、そういうことが枚挙にいとまがないわけです。ある意味では、弱い立場の中小企業の皆様に多少融資というような文言をちらつかせて、実際に入会を迫っているケースもあるわけでありますので、きちんと対応をしていただきたい。

 そして、今おっしゃられましたけれども、一月十九日付で、金融庁がすべての金融機関に対して銀行法の二十四条一項に基づいてKSDの会費収納にかかわる実態調査というのを今されている。それは締め切りが二月二日でありまして、もう既にそちらの方に資料が集まっているというふうに聞いておりますけれども、じゃ、実際にその処分を出すのはいつなのか。もうこれ、この問題が出てから、昨年からかなり時間がたっておりますけれども、非常に腰が重い印象がありますけれども、具体的にいつまでに白黒をはっきりさせるのかを教えていただきたいと思います。

村井副大臣 ただいま御指摘のとおりに、私ども報告徴求の手続をしているわけでございますが、もう少し正確に申しますと、二月二日に各地方の財務局で集めまして、私どもそれを受け取るわけでございますが、これは、さらにいろいろ調べておりますと、いろいろな問題点、問題点といいましょうか、私どもとしても明らかにしなければならない問題が出てまいります。これにつきまして照会を改めていたす、ヒアリングをするというようなことを現在進めておりますということでございまして、申しわけございませんが、今の段階で直ちにどのようなタイミングでどういう措置を打つということを予断して申し上げることはちょっと難しいかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、法に基づきまして、違法の事実がありましたらそれはきちんと厳正に処理をするという態度は、これはかねがね申し上げているとおりでございまして、何ら変わるものではございません。

 ただ、いずれにいたしましても、これだけ社会的に非常に大きな波紋を呼んでいる問題でございますから、これらの信用組合あるいは信用金庫等々の業務の内容で違法なことがございましたら、これはきちんとやる、これは私ども明確に申し上げておきたいと存じます。

長妻委員 いつも、お役所というか、そういう対応、そういうようなお答えをすると、期限がわからない、いつまでやられるかわからない、精査して調査する、いろいろ疑問の点をまた問い合わせるからいつ結論が出るのかわからない、こういうような答弁が、このケースだけではありませんけれども、多過ぎるのではないか。

 柳澤大臣にお伺いしますけれども、実際に二月二日に集まって、これだけいろいろな情報があるわけでありますから、いつまでに白と黒をはっきりさせるのか、そのめどを、例えば半年後なのか、一カ月後なのか、あるいは一年後なのか、そこら辺を、やはり国会でありますから、民間企業であれば、当然、調査したら期限を区切って、そして結論を出す、これは当たり前の話です。調査したけれどもいつ結論出るかわかりません、こんなのは国会でしか通用しないわけですから、柳澤大臣、そのある程度のめどを今ここで明言していただきたいと思います。

柳澤国務大臣 金融機関のKSDに係る関与について処分をするということを想定して、もちろんすべてではありませんが想定して、法律に基づく報告の徴求を今行っているわけであります。

 ということは、調査の内容が、大体この辺かというようなことで法令に基づいて処分をするということにはならないわけです。この前のように、任意の調査で、大体実態はどんなものかといって調査をしたものについては、あのように割に手早く、三年間の概数はこうこうこうですと発表することが可能でした。しかし今度は、ある意味で処分が前提になる報告の徴求をしているわけです。(長妻委員「十分わかります」と呼ぶ)わかるでしょう。それはわかっていただけると。そうであれば、きちっとした調査をしなければいけない。

 したがって、書面で来た点のかくかくしかじかなところについては口頭でさらに補足を求めなければならない、こういうこともあるようです。それから、やはり八百以上の機関を調査しているということでございますから、今事務当局が時間がかかると言えば、私はやはりそれを理解する、そういうことになります。

 そういうことで、私は、しかし、こういったものというのは、やはり国民世論の納得ということも行政の大きく目標としなければならないところだということを考えますと、半年後とかということは言いたくない、むしろもっと早目にやらなければいけない、このように考えておりますが、今村井副大臣が答弁いたしましたように、今ここで、一カ月先です、あるいは二カ月先です、私は二カ月先ぐらいのことは言いたいなと思う気持ちも半ばありますけれども、村井副大臣がなかなかそうはいかないのだという御答弁を先になされているところを見ますと、なかなか難しいのだろうなと思って聞いておった次第です。

長妻委員 やはり大臣のリーダーシップというのがございますので、今のお話だと二カ月ぐらい、遅くとも半年はかからないというふうに理解いたしましたけれども、ぜひ厳正に措置をしていただきたいと思います。

 そして、それに関連でもう一点ですが、信用金庫を監督する大蔵省の関東財務局が平成五年に、今から八年前に、実は信用金庫の協会に、こういう抱き合わせみたいな形でKSDの入会代行的なことをやるのは業法の違反になるのじゃないか、ちょっとやめた方がいいのじゃないかという指導をされているやに聞いているのですが、それは事実でしょうか。

村井副大臣 何分にも以前のことでございますので、私どもとしましても、できるだけその実態を把握すべく調べたところでございますので、必ずしも全部確認できているわけじゃございませんが、平成五年当時のことでございますが、大蔵省銀行局が信用金庫の業務に関しまして、KSDの口座振替依頼書の書式の中に信用金庫法の趣旨に照らして不適切な部分があったために、御指摘のように、これを改めるように指導した、こういうことを承知しております。

 例えば、口座振替書の書類の中の顧客が信用金庫に提出する書類で、KSDの加入者の役職区分ですとか、それから生年月日、既往症、既存障害の有無など、口座振替業務と直接関係ないことが入っていたということのようでございます。同時に、その際に、信用金庫がKSD会員の募集行為を行っているような誤解が生じないように指導を行いまして、その後も必要に応じて各財務局を通じ同様な指導を行ってきた、その点は承知しております。

長妻委員 ちょっと質問に的確にお答えいただきたいのですが、業法違反、他業禁止にちょっと触れるのじゃないか、そういうような指導ではないのですか。今おっしゃられたのは、単に書式だけを変えてほしいという指導というふうに聞きましたが、どちらが正しいのでしょうか。

村井副大臣 当時の状況につきましてはどうしても確認できない部分があるので、まことに申しわけない、明快なお答えにならないのでございますが、KSDの口座振替業務に関しまして、当時の金融監督当局は、信用金庫がKSD会員の募集行為を行っているかのような誤解を招くようなことがないように指導を行った。そして、その後も必要に応じて各財務局において同様な指導を行ったということでございまして、その当時に、今委員御指摘のような違法性の認識があったのかどうか、この点につきましては、大変恐縮でございますが、私ども、当時の当局の認識という点につきましては何とも判断をいたしかねるということでございます。

長妻委員 いろいろお伺いしますと、今おっしゃられたように、書式が、KSDの入会申込書と振替依頼書が一体となっているというところを切り離してほしいというような指導だったというようなことがあったようでありますけれども、だとすると、逆に信金側の受けとめ方としては、では、その書類さえきちんとすれば、今までどおりKSDの申し込みを、かばんに書類を入れて申し込みで行員の方が歩いてもいい、ある意味でお墨つきを大蔵省からもらったというふうに考える信用金庫があるわけでありますから、ある意味で、これはうがった見方かもしれませんけれども、信金の処分が、あるいは銀行の処分がなかなか出ない、これは、平成五年に大蔵省が逆にお墨つき的な形で信金の方に話された、そういうような見方も出てくるわけであります。

 それで、例えばこういうことを言うのは、いろいろな情況証拠を申し上げますと、大蔵省からKSDに天下った土居さん、この方は理事でありましたけれども、ことし一月、急遽KSDの常任相談役になられましたけれども、かつては大蔵の官房の審議官だった。あるいは田中さん、北海道財務局長であられた方でありますけれども、KSDの元理事に天下られている。朝日新聞の取材に対して大蔵OBの土居さんは、KSDに在籍しているときに、今も在籍しておりますけれども「現地から、KSDの良さを分かってもらうために来てくれと言われたら、助けに行くのが私の仕事だ」。つまり、現地というのは金融機関のことです、金融機関から、KSDのよさをわかってもらうために来てくれと言われたら、助けに行くのが私の仕事だ、こういうことを大蔵省OBである土居さんが言われているわけであります。

 それと、例えば東北銀行の加藤頭取、当時ですけれども、九九年五月ごろに、この方も大蔵省のOBの方でありますけれどもみちのく銀行の増田当時の頭取に、KSDの話を聞いてくれませんかというようなことを言って、その後そのみちのく銀行は、翌年にはKSDの会員拡大の全店キャンペーンをして、四カ月で約三千人集めた。そのみちのく銀行は、KSDから直接その前にも接触を受けておりましたけれども、みちのく銀行がなかなか重い腰を上げなかったので、増田さんに東北銀行の大蔵OBの方が口をきいて、その後KSDの会員募集をみちのく銀行が始めた、こういうようなこともあるわけであります。

 それと、これはよく出ているリストでありますが、KSDのお歳暮発送先リストというので、これは九一年のお歳暮のリストでありますけれども、ほとんど全部が労働省のお歳暮リストなんですが、その中に、労働省以外では大蔵省だけが役所では入っている。大蔵省の事務次官初め銀行局長も入っています。官房長も入っています。秘書課長、保険部長、検査部長、入っているわけです。ある意味で、平成五年に書式だけの指導をしたという話でありますけれども、大蔵省はその時期に、違法性の認識というか、本当は業法違反の疑いが濃厚なんじゃないかと例えば思われていて、しかしいろいろなOBの受け入れとかお歳暮、あるいは大蔵省のOBがKSDの会員募集を銀行に働きかけていたとか、こういうことがあるわけで、金融機関でKSDの会員募集を大蔵省も一体となって推進していた。

 もし、平成五年にそういうことがわかっていれば、何でもうちょっと踏み込んだ指導を、一切誤解を受けることはもうやめなさいというような厳しい指導をされなかったのか。そして、その後もほとんど同じ書式で会員募集が続いているわけでありますから、なぜその後も警告を出さなかったのか。平成五年に一回警告を出されて、その後何にもなかったわけでありますから、逆に、もしそういうことであれば、平成五年当時の、見過ごしたという意味で大蔵省の責任というのが、金融機関だけではなくて大蔵省の内部での責任問題というのも浮上してくると思うのですが、いかがでございましょうか。

村井副大臣 金融監督当局としての当時の大蔵省の役割というのは現在金融庁が引き継いでいるという立場でございますから、その観点からお答えを申し上げさせていただきたいと存じます。

 ただいま委員御指摘のような御懸念も含めまして、先ほど冒頭から御説明申し上げております各金融機関からの事情聴取といいましょうか、まず銀行法二十四条に基づく報告徴求、そしてそれに基づきますさまざまの事情聴取、補足の事情の調査、こういったところも十分踏まえまして、私どもといたしましては、さらに実態究明に取り組みまして、不適切な業務運営があったという場合には、これはその内容に応じまして法に基づいてきちんと処理をする、こういうお答えを申し上げるしか方法はないと思うわけでございます。

 くどうございますけれども、要するに法令に違反するかどうかということが一番のポイントだろうと思うわけでございまして、その当時においてどのような認識を持っておったかということは、これはその当時の行政のあり方でございますから、それよりも、私どもは、現在私どもが報告を得た限りにおいて判断して、一体どういう法令にさわるところがあったのかなかったのか、そこのところをきちんと詰めたい、そういう対応でいきたいと思っております。

長妻委員 ちょっと質問の回答になっていないのですけれども、柳澤大臣にお伺いしますが、大蔵省の中で、信金あるいは金融機関のKSDの募集、これの業法違反の疑いがかなりあるのじゃないかと大蔵省が平成五年当時から認識をしていて、そういうような厳しい指導をしなかったということがもし明らかになった場合は、きちんと処分をされるおつもりかどうか、一言お答え願います。

柳澤国務大臣 ちょっと質問の趣旨がわからなかったのですが、今長妻先生がおっしゃったことは、当該の大蔵省の職員を何か処断する、こういうことの考えがあるかというお尋ねでございましょうか。(長妻委員「そうです」と呼ぶ)これは、何というか、国家公務員法になるのか、ちょっと私、今にわかの御質問で、大変恐縮なんですけれども、いずれにせよ、そうしたことに当たるかどうかでございますが、それは、その関連の法律でどうなるか、なかなかちょっとにわかに答える用意がないのでございますけれども。大変恐縮です。

長妻委員 それでは、質問をちょっとかえますけれども、そういうことがあったかどうか、大蔵省の方が抱き合わせの入会というか他業違反の疑いがあると認識していて指導が例えば甘くなった、こういうことがあったかどうかという調査をされるというおつもりはないですか。

村井副大臣 先ほど、ただいまの平成五年当時の指導の経緯につきまして私申し上げましたように、当時のことでございまして、私どもも調べましたけれども、先ほどお答え申し上げたような概要しか把握できなかったというのが状況でございます。

 その当時にどういう法律解釈についての認識があったかどうかというあたりのところは、残念ながら、文書等もございませんで、明確になっていないというところでございます。その限りで再び申し上げますと、私ども、その当時の大蔵省を引き継ぎまして金融監督行政をやっている立場から、現在といいましょうか、最近時において行われたKSDそれから全国八百の金融機関のとりましたさまざまの対応につきまして、法令違反の事実があればきちんと対応する、その際に、もしもそれにかかわる公務員が、これはあり得ることかどうかよくわかりませんが、何らかのことがありました場合に、それをどうするかというのは、これまた別途の法律上の対応になろうか、このように思うわけでございまして、直接それが結びつくものとは考えておりません。

長妻委員 この問題、ちょっと時間もないので、最後一言、柳澤大臣に。そういうことがあったかどうかの調査を省内でするおつもりはありませんか。

柳澤国務大臣 担当者がある処分を行ったあるいは注意喚起をしたというときのその担当者の認識というか意識、これは我々としては残っている書類で判断する以外にない、このように考えているわけでございます。

 ただ、事実問題として、ちょっと補足なんですけれども、平成五年の今先生御指摘の注意喚起、指導といったようなものの後で、同様の注意喚起、指導あるいは連絡といったようなものは、先生御指摘のものは関東財務局だと承知をしておるわけですが、平成七年には北海道財務局、東北財務局、それから平成八年に北海道財務局管内の網走信金に対して同様の指導を行っておりまして、いわばその機会に同時に同財務局管内の信用金庫に対しても注意の喚起を行っているというようなことで、この関係の指導というのは一貫して、多分、問題化する都度あるいはどこからか御注意をいただく都度対応しているということでございます。

長妻委員 ぜひ、その当時の処分の、大蔵省の中の調査もしていただきたいということをお願いしまして、次の質問に移ります。

 また森総理のゴルフ会員権の譲渡問題について、私にメールがある支援者の方から参りました。これを読み上げますと、

  森首相のゴルフ会員権の無償提供について、税務当局の公式見解をとってください。彼は税法上問題はないと言っています。もし税務当局も同じ見解であれば、私たちもこれを利用して大いに節税対策ができるのではないでしょうか、もちろん合法的に。

  よろしくお願いします。

というメールが来ております。

 今確定申告の時期でありますが、私も地元を回っておりますとこういうような声が聞こえてまいりまして、多分、皆さんが認識されている以上に一般の国民の方は不公平感をこの問題について持たれていると思いますけれども、一般的に、マスコミで問題になったりあるいは告発があったりした場合、国税は調査をするということがあるやに聞いておりますけれども、この森総理のケースは国税は調査をするおつもりがありましょうか、ないのでしょうか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 一般論で申し上げたいと思いますが、今の前段のくだりでございますが、他人の名義で不動産、株式等の資産の取得がなされた場合または名義変更がなされた場合には、これらの行為は原則としてその名義人に対する贈与として取り扱っており、贈与者が法人の場合には、その名義人が所得税の一時所得の課税対象となります。しかしながら、資産の取得の経緯、その後の管理の状況等から贈与の事実がないことが確認できる場合には、一時所得の課税は行われません。

 なお、個別のお尋ねがございましたが、調査するかどうかも含めまして、個別の問題については答弁を差し控えさせていただきます。

長妻委員 国家公務員の守秘義務ということでしょうけれども、これだけ大きい問題になっていまして、別に森総理の契約内容とか実際の細かい話を公表してほしいと言っているのではなくて、このケースに対して国税は調査をするのかしないのかとそれだけを聞いているのですが、それが公務員の守秘義務に当たるということで今御答弁を多分されないのだと思いますが、それはおかしいと思うのですね。きちんと、どういうおつもりか、一国の総理ですから、これだけ、確定申告の時期に逆に税務当局もお困りになると思いますよ。きちんと調査するかしないかはっきりとお示しになった方が国民の皆さんから信頼が増すと思うのですが、再度答弁、同じ答弁をされるのでしょうかね。委員長、きちんと答えるように指示をしていただきたいとも思うのですが、再度お願いします。

村上政府参考人 繰り返しになって大変恐縮でございますが、個別の事柄につきまして、守秘義務が課せられている関係上、具体的に答弁することができませんので、御理解いただきたいと思います。

長妻委員 守秘義務というのも拡大解釈されているのですよ。本当に守秘義務を拡大解釈したら、国会議員に何にも資料の説明もできなくなっちゃいますから、政策の説明も何から何まで。

 このケースは、さっき言ったように、国民の皆さんが本当にお怒りになっているケースでありますから、調査するかしないか、それだけ、これ、委員長、何とか答えるように助言していただけないでしょうかね、調査するかしないか。

山口委員長 守秘義務というふうな面からして、調べるかどうかということを言うだけでそこら辺に抵触するということもあるんじゃないですかね。

長妻委員 それは何か判決であるのですか。調査するかしないかが守秘義務違反だという判例か何かあるのですか。

村上政府参考人 突然の御質問でございますので、判例があるかどうかは確認いたしておりませんが、調査するかどうかも含めて、それは守秘義務に抵触すると思っております。

長妻委員 これはそういうようなお答えをされていると、今確定申告の時期で、実際いろいろな方と我々は話しているわけですから、怒りはすごいですよ、本当に。守秘義務、守秘義務と言ったら、国会で何にも議論ができないじゃないですか。調査したかしないかぐらい何で答えられないのですか。財務大臣、最高責任者としてお答え願えないでしょうか。

宮澤国務大臣 私が何かを指揮するつもりはございませんが、今の答弁は正しいと思います。

長妻委員 本当にらちが明きませんが、委員長、再度答弁するようには助言いただけないでしょうか。

山口委員長 税務調査をするかどうかということを公にするというのは、これはどうなんですかね。(長妻委員「いや、それは幾らでも例はありますよ」と呼ぶ)では、この人を今から税務調査しますよということを、総理じゃなくて、だれでもですよ、一般論としても。

長妻委員 だから、今申し上げているのは、一国の総理でありますから、ある意味では公人中の公人でありますから、おとがめ何にもなし、こういうようなグレーでも調査も何にもしない、それでいいのでしょうか。では、国会は何のためにあるのですか。

山口委員長 質問を続けてください。

長妻委員 何度聞いても御返事が同じなようでありますけれども、いずれにしても、宮澤大臣、再度御答弁いただきたいと思うのですが、こういうようなかなり一般の方、確定申告をまじめにされようという方が不満に思っているケースに関して、最高の公人であるというようなことでありますから、普通のケースとは違うという前提で、一言最後にお答えいただきたい。

宮澤国務大臣 先ほど申し上げたとおりであります。

長妻委員 こういうケースはぜひ、調査するかしないかぐらいはお示しにならないと、国民の皆さんも税の不公平感というのがかなり募ってきて、納税意欲というのも減退する可能性はあるというふうに思います。ぜひ今後は、調査するかしないか程度はきちんと公表していただきたいと思います。

 それでは、質問の観点を変えてもう一問だけ申し上げますと、例えば、一般論としてということで、二月十六日の衆議院の本会議で宮澤財務大臣が、名義変更がなされた場合には、これらの行為は原則としてその名義人に対する贈与として取り扱われるというようなことを、原則としてと言われておりますけれども、では、一般論でお伺いします。

 仮に、私がゴルフ会員権を、ある会社が四千万円で取得したものを、名義が私の名義になった。しかし、その会社と私で契約を交わして、所有者はその会社である、私、長妻には名義だけを貸しているんだ、こういう契約書を結んだ。このケースは贈与になるのですか、ならないのでしょうか。

村上政府参考人 お答えいたしますが、今のは極めて個別のケースをお尋ねでございますので、やはり一般論で答えさせていただきたいと思いますが、そのゴルフ会員権の取得の経緯であるとか取得後の管理の状況、その他さまざまな客観的事実を総合的に勘案してその判定を行うことにいたしております。

長妻委員 質問の角度を変えますけれども、では、仮に今みたいなケースで贈与にならない場合は、具体的にどういう場合は贈与にならないのか。当然、これは一般論の話ですから、そういうふうにおっしゃられたら、それが当てはまれば絶対に贈与にはならないということにはなりません。それは当たり前であります。一般論としてもうちょっと具体的に、では、今私が申し上げたようなケースで、こういうことがあればこれは贈与としては見られないよ、名義は私でも、こういう場合であれば贈与としては見られないよというのを、具体的なケースを一個か二個か挙げていただければ。

村上政府参考人 お答えいたします。

 個々のケースは、いろいろ個々の事実関係に即して判断せざるを得ないと思いますが、一般論として申し上げれば、名義人と所有者が異なる事例としまして、例えばゴルフ会員権の名義変更が行われた場合でありましても、その法人がゴルフ会員権を取得するに当たって法人会員制度がない、そういった理由から個人名義で入会し、その法人の資産として計上している場合などが考えられるかと思います。

長妻委員 今のお話は、会社が購入をして、例えば社員の名義になるとか社長の名義になるという事例を今一個挙げられましたけれども、ですから、このケースはその例とはほど遠いわけですよ。全然違うわけです。

 私、国税の方を呼んで何度も聞きました。では実際、どういう例外的に贈与と見られないケースがあるのですかと。今のようなお話だけなんですよ。いや、ほかはちょっと思いつきませんと。思いつかないんだったらこれは贈与になる、限りなくクロに近いんじゃないか。そういうことを国民の皆様も思われて、ちょうど今確定申告の時期でありますから、私のところにもこういうメールが来たわけであります。ですから、調査するかしないかぐらい言わないと、ああ、総理がこういうことをやれば野放しなんだ、そういう不公平な国なんだ、こういうような意識が蔓延してしまうんじゃないでしょうか。

 今言われた事例、例は一つだけ言われましたけれども、それは今回のケースとはほど遠いということを申し上げて、お願いとしては、きちんと税務調査をして、総理に修正申告なりなんなりをきちんとしていただいて、一国の総理だろうが普通の人だろうが公平に国税は扱うんだということをきちんとお示しいただかないといかぬと思いますけれども、宮澤大臣、一言だけ、今の議論の感想を。

宮澤国務大臣 先ほどお答えしたことで、同じでございます。

長妻委員 本当に誠実にこういう問題に対しては対処をぜひしていただきたいというのを重ねて申し上げます。

 時間も残り少なくなりましたので、最後の質問に移らせていただきたいと思いますが、先ほども同僚議員からも質問がありましたけれども、銀行の不良債権問題であります。

 これは、今の金融庁が出している数字がすべて正しければ、確かに、マスコミが言っているような金融恐慌再来、パニック、こういうことはないでしょう。ただ、私が非常に懸念をいたしますのは、今金融庁が出している数字、間接償却の引き当てが大幅に不足している。金融庁が出している数字は、引き当ては十分にやられているというふうに出しておりますけれども、かなり大幅に不足しているんじゃないかと私はちょっと考えております。

 例えば、わかしお銀行の事例を申し上げますと、このわかしお銀行は、ことし三月末をめどに整理回収機構などに簿価で四百八十億円の不良債権を売却して最終処理しようと考えていた。その四百八十億円、これは貸し倒れ引当金が五十億円、そして三百八十億円は不動産担保の三百八十億円、計四百三十億円で保全をしている、だから全額回収不能になっても帳簿の上での追加損失は五十億円程度だ、こういうことで引き当てをして債権を保全していたわけです。

 ところが、実際の処理では、この三百八十億円の担保、三百八十億円と見積もっていた担保が三十億円、一割も満たない評価になってしまった。そして、その損失は、当初は五十億円程度だと思っていたけれども、これが四百億円ぐらいに拡大する見込みになっている。

 どういうことかといいますと、今引き当てがいろいろされておりますけれども、不動産価格を、時価評価の七割とかいろいろ検査マニュアルありますけれども、かなり高目に見積もって、そしてその差額を引き当てを充てている。ですから、直接償却、柳澤さんが言われるような最終処理をしたときに、実際の予想と全然担保が、価格が低い、その差額がいきなり金融機関にどんと損失となって襲いかかってくる、こういうような懸念があるのですが、柳澤大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 金融庁が公表している不良債権、こういうふうに言いますけれども、公表は、銀行が行っている開示を集計しまして行っているというふうに正確に言えば申させていただきたい、このように思います。

 ただし、我々の方の検査が行われた直後の、あるいは検査の結果に基づいて行われた開示であれば、ほぼ金融庁の検査済みの情報開示だ、こう言っていいかと思いますけれども、私どもとしては、最近における銀行の状況を見ますと、検査でもって大幅な引き当て不足を指摘しなければならないようなケースはかつてのようではないというふうに考えておりますので、基本的に、今の各銀行が開示しているものを集計した私どもの開示というものについては、私が今説明したような条件のもとでは御信頼していただきたい、このように申し上げます。

 今ちょっと、わかしお銀行の例を挙げられたわけですが、これは現実には、単に静かにしていて破綻をして、その破綻後の処理で明らかになった損失と引当金との差ではなくて、この銀行が、破綻の割と直前になりまして、いろいろな処理を行ったようです。債権の流動化であるとか、そういうような処理を行ったようで、そこからの損失も一緒にひっくるめて、そこで破綻後の損失というものが計算されたというような特殊な事情があるようでございまして、これをもって、一般的に我々の、銀行あるいは金融機関の引き当て不足の証明というか一つの証拠だと言うのは、ちょっと当を得ていないということのようでございます。

長妻委員 柳澤大臣のお話ですが、そうではないと思うのですね。ある銀行の専務さんなんかにもお話を聞くと、毎年四月一日になるたびに不良債権として設定されている担保不動産の価値が下がって、また引き当ての積み増しをしなければいかぬ、毎年毎年年中行事だ、こういうことを言われている銀行の方もおりまして、その担保の価格、七割とか、もうちょっと厳し目に見積もった方がいいんじゃないでしょうか。権利関係等々もありますから、直接償却するときに、実際にそんな価格で売れるはずがないと思いますので、そこら辺の問題。

 あるいは引き当てが、アメリカの、例えば邦銀の子会社の引き当てが不足しているということも実際に事例としてありますし、あるいは分類に関しても、再建計画が、十年ぐらいで再建できるというような諸々の条件がありましょうけれども、そういう形だと、本来は第三分類以下のものが第二分類に繰り上がることができるとか、いろいろな抜け道がありますから、今政府が基礎としているデータというのは本当に精査をさせた方がいいと私は思います。ある外資系の証券会社などは、日本の金融機関にはなお四十兆から五十兆円の未引き当ての潜在損失があるのではないか、こういうことを海外の証券会社からも見られているわけでありますから。

 柳澤大臣に最後にお聞きしますけれども、柳澤大臣は、株価が昨年九月から二割下がっても自己資本比率は〇・六パーくらいだから微動だにしない、ことし九月に時価評価を導入しても全然大丈夫だと胸を張っておられますけれども、仮に、私が申し上げるように、不良債権の引き当て等の見積もりが甘くてかなりの潜在損失がある、そして銀行が債務超過というか、かなり危機的な状況になる。仮に、今の金融庁が見積もっておられる引き当て、十分だということが全然十分ではなかった場合、柳澤大臣、きちんと責任をとられますか。

柳澤国務大臣 先ほど私、何というか、破綻をしたときの損失が引当金で見積もられたときの損失に比べて増大するという理由に、昔の引当金に対する行政と申しますか、広く政治といいましょうか、そういうものの態度、これも一つあった。それからもう一つは、日本の金融機関の融資において従来とられてきたいわゆるメーンバンクシステムというのもその乖離をもたらす一つの背景にあったということを申し上げましたが、一番肝心なのは、これは申すまでもないことで申さなかったわけでありますけれども、ゴーイングコンサーンの価値と清算価値とはもう全く違うということでございます。

 先ほどちょっと、担保の処分について、違うじゃないかというようなお言葉がありましたので、私はこの点についてもやはり改めて申し上げておかなきゃいけないというふうに思ったのでございますけれども、これはもう本当に、ゴーイングコンサーンとしての価値と清算価値とはかなり乖離がある、だからゴーイングコンサーンである間も清算価値で引き当てろ、これはちょっとやはり、会計原則にもないことでございまして、ちょっと私ども、せっかくの御主張ですが従えない、こういうことであります。

 今先生のお話の中に、外国の人はもっと四十兆も五十兆も引き当てが必要な債権があるはずだというようなことをおっしゃられるというわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、要注意債権ということ、銀行側の見るところこれはやはりちょっと注意しなきゃいけないというようなものについても含めましていわゆる分類をしておりますが、そのトータルは、会計的にも客観的にも既に利払いの遅延だとかというようなものがあらわれているということをもってリスク管理債権としているものとほぼ同額のそういう要注意債権を認識しているということで、我々の、金融機関のこれら債権の健全性に関する判断がそれほどまでずさんだというような立場に私は立つことを欲しませんし、立つべきではない、このように考えているわけであります。

 したがいまして、今先生が御指摘になられましたように、カタストロフィーを想像して、おまえさん、そのときに引き当て不足が起こったら責任をとれというような御議論だとしたら、その前提に私は立ちませんので、そのことについては、私は非常に大きな責任を負っておるし、その責任は事態によっては明確にしなきゃいけないということを知りつつも、日本の金融システムについてカタストロフィーを前提にした御議論には私は応ずることはできません。

長妻委員 時間がないので質問をやめますけれども、海外も、あるいは日本の国内でも金融不安の話が消えないのは、やはり政府の今の見積もり、不良債権等あるいは償却等の見積もりが、前提が違っているんじゃないか、こういう懸念が払拭できないからあるわけで、私もその考えに同意しておりますけれども、今柳澤大臣、そこまで胸を張ったわけでありますから、三月あるいは九月期、ことしですね、想定していないことが起こったら、きちんと謝罪して責任をとっていただきたい、これを最後申し添えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

佐藤(剛)委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私はきょう両大臣に伺いたいと思うのですが、最初に、宮澤財務大臣は予算委員会などで歳入面での消費税増税の議論もしてきておられますが、一方、歳出の面では、政府の方はこの間、問題になっておりました機密費の削減はしないと言っているわけですが、これは歳入歳出両面で国民にとって納得できる話ではないというふうに思います。

 きょうは最初に機密費の問題から伺いたいのですが、宮澤財務大臣、鈴木内閣の時代には官房長官を務められたわけですが、これは少し古くて八〇年七月から八二年十一月ということになりますが、その後、官房長官経験者からいろいろなお話が証言その他で、あるいはインタビューに答えてとか、明らかにされております。

 武村元官房長官は八億円使ったと明言されたり、また別な方は一カ月に大体一億使ったりとか、野坂浩賢元官房長官は、その中で最も多い使い道はせんべつであった、国会議員が海外視察に出かけるときに渡した、若い議員には三十万円ぐらい、委員長になると百万円ほどになる、せんべつを受け取る人は与野党を問わない、日本共産党だけは呼んでも取りに来なかったと言っているわけですが、あなたも官房長官時代に、国会議員に直接、あるいは秘書官なり参事官の手を通じてせんべつを渡されたことがあるかどうか、これを最初に伺っておきたいと思います。

宮澤国務大臣 私は、機密費については何も申し上げないのがルールだと思っておりますので、申し上げません。

吉井委員 そうすると、九〇年代に入ってから総理大臣も務められたわけですが、総理の時代にも、総理が直接、あるいは官房長官が直接せんべつを渡したことがあるのかどうか。これも私、今、流儀は流儀として、重ねて伺っておきたいと思います。

宮澤国務大臣 お答えを控えさせていただきます。

吉井委員 じゃ、せんべつを渡したことはない、こっちの方は明言されますか。

宮澤国務大臣 答弁を控えさせていただきます。

吉井委員 答弁を控えるということで、せんべつを渡したことはないと明言できないわけですから、これはせんべつを渡したということを認めたことになると思います。

 塩川正十郎元官房長官は、機密費について、野党対策に使っていることは事実です、現ナマでやるのと、それからまあ要するに一席設けて、一席の代をこちらが負担するとか、これはサンデープロジェクトで明らかにされたわけですが、あるいはまた先日の読売のインタビューに答えて、国会対策に使うことは、国会議員の勉強会とか懇親会の応援という形でという云々で、大体百万円ぐらい出すということも言っておられますし、大平内閣時代の副官房長官を務めた加藤紘一氏は、その副官房長官の後、八〇年代の前半ですが、毎日のインタビューで、国会対策や派閥対策に使う部分もあるがねとさらりと言ったということです。野坂官房長官は、与野党の国会対策委員会幹部に渡したことがある、法案通過だったか、難しい政局を乗り切ろうとしていた、一回当たり計五百万円ぐらいということも言っておられます。

 せんべつについて今伺ったのですが、私は、宮澤大臣が総理の時代あるいは官房長官の時代、国会対策のために機密費から金を渡したということはおありかどうか、これも伺っておきたいと思います。

宮澤国務大臣 機密費につきましては、一切答弁を申し上げません。

佐藤(剛)委員長代理 吉井英勝君、宮澤大臣の先ほど来の御答弁の趣旨を御理解の上、御質問の続きをお願いします。

吉井委員 これは一切お答えにならないということなんですが、私は、やはりこの問題はきっちり、みずから機密費を使ったなら使ったと、そこを明らかにしていただくことが、これは歳出の面に今まさにかかわっているとともに、それを歳入の面からも私は見てもおきたいと思いますから、もう少しこれは伺っておきたいと思います。

 浜田幸一さんという副国対を務められた方が書いていらっしゃる本の中で、九三年三月のテレ朝の「ザ・スクープ」で、鈴木善幸内閣、宮澤さんがちょうど官房長官時代の自民党国会対策委員長を務めた田村元さんが語ったことを紹介し、そしてみずからの経験も語っておられますが、田村さんは、「何人かの野党の方に個人に渡した。中には催促する者もいた。国会の中で、すれちがいざまに渡すこともあった。委員長室があいているときには、そこで渡すこともあった。僕のときは百万円単位だった」と。「幹事長―国対委員長のラインが、ある意味では、党三役を上まわる権力の中枢となった。国対委員長はそうした折衝を一手に引き受け、幹事長はそのために、国会対策費を国対委員長に渡す。その国対費の中から、社会党などの野党にお金が渡った(共産党は除く)。また、国対費の一部は内閣官房調査費の中からも流れていた。」というのが浜田氏が本の中で書いていらっしゃることです。

 この田村元さんという方は、ちょうど宮澤大臣が官房長官時代に国会対策で機密費を使ったということをテレビでも明らかにされているわけですが、宮澤財務大臣、国会対策で機密費を使ったことはないということをはっきりやはり明言されるのか、あるいは使ったことがあるというふうにおっしゃるのか。当時の関係の方は言っておられるんですが、改めて伺っておきたいと思います。

宮澤国務大臣 お答えいたしません。

佐藤(剛)委員長代理 吉井英勝君にお願いいたします。先ほど来の御質問について宮澤財務大臣が明確に立場をお答えになっているわけですから、それについて引き続きずっと議論をされるんでしょうか。特に、例えば浜田先生のお話が出ましたが、浜田さんはここにいるわけではございませんし、伝聞に基づきましてこの委員会の進行というのはいかがかと思いますが。

吉井委員 私は、今の委員長の委員会運営、おかしいと思いますよ。

佐藤(剛)委員長代理 それでは、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

山口委員長 速記を起こしてください。

 吉井委員。

吉井委員 私は、委員長代理を務められた方があの発言というのは、委員会審議そのものの否定につながると思いますよ。委員というのは発言の自由があり、そして、あらゆる角度から国政上の問題、歳入歳出について検討、究明していくのは当然のことなんです。それに対して、こういう質問はやめろとか、とんでもない話ですから、私は、厳しくまず反省を求めておきたいというふうに思います。

 それからまた、浜田氏についてどういう評価をされるのかは、これは御自由です。私自身は、浜田氏の著書を、著書の中でみずから浜田氏が公表もされて、そして、国会対策の一部は内閣官房調査費の中からも流れていたとこれは浜田氏が言っておられるので、私は、彼がだれかから聞いた伝聞のことを言っているのじゃないんです。ですから、そういう形で、何か委員の自由な討論、自由な発言というものに対して、私は、それを規制するなんというようなことはとんでもない委員会運営だということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 私が質問して、それに対して大臣が答弁を拒否されるなりなんなり、それは大臣は大臣のお考えに基づいてされることです。しかし、大臣が答弁を拒否されようとも、答弁をしたくなるように私はきちんと重ねてやっていくわけですから、それに対して規制するなんということは本当に許しがたいことだということを申し上げておきたいと思います。

 次に、しかし、いずれにしても、せんべつにしろあるいは国会対策ということにしろ機密費が渡されてきたということは、さまざまな、これは大臣経験者の方、官房長官経験者の方などから語られていることですから、いわばこれは半ば公知の事実となっていることですよ。

 そこで、次に、私は国税庁に聞いておきたいんですが、一般市民が百万円のせんべつをもらうと、これは税法上は、法人からせんべつをもらったら一時所得、個人からもらうと贈与として課税の対象になると思うんですが、これはどうですか。

村上政府参考人 一般的なせんべつのお尋ねでございますから一般的にお答えしたいと思いますが、個人が法人からせんべつ等の金員を受けた場合には、その贈与を受けた金員は一般的に一時所得として課税の対象になります。ただ、特別控除が五十万円ございますので、五十万円以下であれば課税関係は生じないということであります。

 また、個人間の場合は贈与税の対象になるかと思いますが、基礎控除、これは六十万ございますので、それ以下であれば課税の対象にはなりません。また、個人間の贈与の場合、社会通念上といいますか、相当と認められる場合は、とりたてて課税対象としないという取り扱いもいたしております。

吉井委員 では次に、国会議員が官房機密費からせんべつとして、例えば百万円とかあるいはもっと多くの額をもらった場合、その金は税法上は一時所得なのか贈与ということになるのか、これを伺いたいと思います。

村上政府参考人 ただいま個別の御質問ですので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

吉井委員 私、これは個別の問題じゃないと思います。例えば、AさんならAさんという議員がこの官房機密費からせんべつとして仮に百万円もらった、この百万円の金は一時所得なのかどうなのかということであれば、Aさんに関してはこれはおっしゃるように個別の問題かもしれません。しかし、そうじゃないんです。一般的に言って、これは税法上一時所得なのか、贈与じゃなくて多分一時所得なんでしょうが、これはどうなんですかという、極めて単純なことを聞いているんです。

村上政府参考人 お答えしたいと思いますが、ちょっと報償費と離れて一般的なお話をさせていただきますが、贈与者が法人であれば、それは一時所得になるということであります。

吉井委員 一時所得ということです。国の方は法人という扱いですから、一時所得なんですよね。

 機密費からせんべつとして受け取った議員の中で、せんべつが一時所得として税務申告されている例があるか。私は、AさんBさん、個々のことを聞いているんじゃないです。一般的に、せんべつが一時所得として税務申告されている例があるのかどうか、これまた単純なことを伺っておきたいと思います。

村上政府参考人 個別の問題はお答えは差し控えさせていただいておりますが、一般的にこの報償費と全く離れてお答えしているわけでありますが、せんべつもいろいろ性格はあると思いますが、もちろんそういうケースもあろうかと思います。申告されているケースもあろうかと思います。

吉井委員 だから、せんべつを離れてということではあるにしても、せんべつについて逃げられたのは、せんべつの場合は税務申告されている例がないということなんでしょう。もともと領収書その他何にもなしの金ですから。

 私は、やはり国民の感覚からずれていると思うんですよ。例えば、会社から給料の一部として、賞与としてボーナスをもらうと、これは課税の対象になって、このボーナスがせんべつという名目であれば非課税になるなんというようなことは、一般国民の場合はないわけです。これが、税法上は一時所得でありながら申告もされない。調べていないし、結局調べてもみないわけですよ。

 先ほどもありましたが、今確定申告の時期です。一般庶民であれば、大体、税務署から根掘り葉掘り聞かれて調べられ、すぐ反面調査が入って、取引先まで税務署が行って、それ以後は、下請企業であれば親企業からの取引がキャンセルされていったりとか、大変な事態が多いのです。それから、取引銀行まですぐ走っていくというのが税務調査の実態ですよ。国会議員だったら、百万円のせんべつであれあるいは一千万円なら一千万円の国会対策の意味での金であれ、申告もなければもらった議員への税務調査もない。聞いてみても答えられない。私は、こういうことでは国民的な理解はとてもじゃないが得られる話にならないと思いますよ。

 例えば一般国民の場合、伺っておきたいのですが、一時所得であれば、そこから五十万円引いたものの半分の金額を総合課税するわけですね。この一般の国民の方が国会議員の歳費並みの収入のある人であれば、その一時所得に対して税率三〇%の所得課税になろうかと思うのです。

 そこで、二つのケースで伺います。百万円の一時所得なら課税額は幾らになるのか、一千万円の一時所得としてみれば、このケースであれば幾らになるのか、伺います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 今のお尋ねの仮定は、十一年分で計算させていただきますが、給与の収入金額が二千万円を超える、要するに年末調整において確定申告が必要なケースであります。ただ、所得控除がいろいろ人によって違いますので、一応三百万円と仮定をいたしました。それで計算をいたしますと、一時所得の収入が百万円の場合、所得税は七万五千円になります。一時所得の収入が一千万円の場合は、所得税は百四十九万九千円となります。

吉井委員 そこで、この二つのケースで、申告されていなかったということで過少申告加算税の場合はどうなるか。あるいは、非常に意図的に隠しておったとか、悪意が認められて重加算税になる場合は幾らになるのか。この二つのケースについてそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 仮定は同じ仮定でございますが、まず最初の百万円のケース、過少申告加算税は七千円になります。仮装、隠ぺいということですが、その場合は過少申告加算税にかえて重加算税がかかりますが、それは二万五千円になります。同じく、一千万円のケースですが、過少申告加算税は十四万九千円、重加算税は五十二万二千円となります。

吉井委員 通常、こういう場合一時所得なんですが、贈与であった場合、百万円、一千万円の二つのケースでそれぞれ贈与税であれば幾らか、そしてその場合は、無申告加算税額は幾らになり重加算税ならば税額は幾らになるのか。これは百万と一千万の例でお聞かせいただきたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 当初、贈与の申告がないという前提で数字を申し上げますが、百万円の贈与であれば贈与税は四万円、一千万円の贈与であれば贈与税は二百八十三万円となります。

吉井委員 今お答えをいただいたのですが、無申告加算税の六千円、それは抜けているのですか。

村上政府参考人 大変失礼いたしました。

 無申告加算税、今、申告が当初ないケースでありますから、無申告加算税、百万円の場合は六千円、重加算税の場合は無申告加算税にかえて一万六千円の重加算税がかかります。一千万円の場合は、無申告加算税が四十二万五千円、重加算税の場合は無申告加算税にかえて百十三万二千円の重加算税がかかります。

吉井委員 ですから、機密費からせんべつとして受け取った国会議員であれば、百万円もらっても課税逃れで、言ってみれば七万五千円の脱税をしていることになります。機密費から国会対策として一千万円もらった人の場合であれば、百四十九万九千円の脱税ということになるわけです。

 これは、一般国民なら今の例の場合どうなるか。今お話ありました所得税法百二十一条で、三年以内の分について過少申告課税がかかってきたりすると、百万円の場合で本税と合わせて十万円、一千万円の場合であれば二百一万一千円。贈与と扱って課税した場合は、百万円の場合であれば五万六千円、一千万円の場合で三百九十六万二千円ですか、いずれにしても、これは非常に大きな課税漏れということになってくると思うのです。今お聞かせいただいたのをぱっと計算したらそうなるのですが、これはそういうことでいいのでしょうか。

村上政府参考人 そのとおりであります。

吉井委員 それで、私、内閣官房報償費約十六億円ですが、そのうち幾らが国会対策という名目、あるいはせんべつという名目で使われたかはわかりませんが、仮に半分がそういう形で使われたとすると、全部を、仮に百万円のせんべつであったとして計算する場合、一千万円の国会対策などの名目で出された金であったとした場合、百万円の場合で六千万円、一千万円の国会対策の金であったとすると一億一千九百九十二万円。それを今からでも脱税として過少申告加算すれば、大体両方の間とすると、これは六千五百六十万円から一億三千百四十八万円までの間で税が国に入ってくることになります。重加算税なら八千万円から一億六千百六十八万円の間で入ってくることになります。いずれにしても、これは計算上の話だけでありますが。

 そこで、宮澤大臣に改めて伺いたいのですが、こういうせんべつとか国会対策という名目の一時所得は、これは税務申告を求め、過少申告加算税を徴収するとか、こういうことをやはりきちんとするべきものではないかと思いますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 仮定の問題ですから、お答えいたしません。

吉井委員 私は、過少申告加算税などを、税務申告を求めて、本税とそういうものをやはりきちっと取るという、これは当たり前のことだと思うのですね。一時所得を得ながら、国会議員であれば、そして機密の名に隠れて脱税が公然とまかり通る。国の方はその脱税を是正することも求めない。そういうことをやっていったら、私は税というものについてとてもじゃないが国民の信頼は得られないと思うのです。一般国民なら、今の例で脱税が問題になってきて、過少申告加算税なり、あるいは仮装とみなされたら重加算税が取られる。国会議員が官房機密費からせんべつや国会対策の名による一時所得を得ても脱税にならない。こういうことで、そうしたらこれは大臣もお答えいただける範囲だと思うのですが、大臣、これで国民の納得は得られると思いますか。

宮澤国務大臣 仮想のお話でございますので、お答えいたしません。

吉井委員 私は、今のは仮想の話じゃなくて、はっきり申し上げておりますのは、一般国民なら、これは本当に脱税だということで税務署がすっ飛んできて、そして本税はもとより重加算税を取られたりして、そういう問題なんですよ。

 私は、二月二十五日付の毎日新聞の「みんなの広場」という、読者の方のところに出たのをここで紹介しておきたいと思います。

  パートで働いて丸十年になります。年末に配偶者控除を受けられるよう、収入が百三万円以内かどうか確認しながら働いています。

  配偶者特別控除の関係でしょうが、以前、夫の会社に私の収入見積額を九十万円と書き、実際には九十九万円でした。その結果五千円を新たに課税され、さらに三年前にさかのぼって源泉徴収票の提出を求められました。

  実際に収入額が違っていたのだし、支払うのは国民の義務だとは思います。でもそんな重箱の隅をつつくようにして、底辺で働く人間から徴収した税金から、官房機密費と称して、想像もつかないほどの多額を、公的立場を利用して使っていることが、本当に信じられません。

  国会議員のみなさん、自分の私利私欲に走らず、国民のことを考えて下さい。

こういう投書がありまして、私は本当に国民の思いというものをよく受けとめることができました。こうした国民の声にこたえて、私は機密費を削減するべきだと思いますが、これも大臣に伺っておきたいと思います。

宮澤国務大臣 最後のお尋ねは予算の機密費を削減すべきかというお尋ねでございますが、そういう考えはございません。

吉井委員 この機密費の問題については、機密費の名において国会議員が百万円のせんべつなり、あるいは国会対策ということで一千万円の金をもらったとすると、これは税逃れが行われている、言ってみれば機密費というのは国家が率先して脱税の勧めをやっているのと同じだと思います。

 野党四党は今、共同して、機密費について削減する予算の組み替え案を国会に提出いたしておりますが、私たちは、こういう異常な予算というものはやはり正していくべきだ。今大臣は削減する気はないとおっしゃったが、私は、それでは今国民が税というものに対して抱いている感覚と極端にかけ離れ過ぎていて、とてもじゃないが、税についての公平、公正を幾ら口にしたって、国民の信頼は得られない。そのことを申し上げて、時間が大分たってまいりましたので、柳澤大臣に伺いたいと思います。

 柳澤大臣は、二十日の閣議後の記者会見で、銀行の不良債権の最終処理を促進する施策を三月末までにまとめる方針を正式表明されました。ここでは不良債権の直接償却を促すことが考えられているようなんですが、不良債権処理を進めるためならばこの三月期決算での銀行の赤字決算を容認するとの方針も、これは森金融庁長官が表明されております。そうなると、当然自己資本比率は低下することになります。論者によっては十五兆円の資本注入が必要という方もいるわけです。

 そこで伺いますが、今金融庁が進めようとしている不良債権の最終処理策の中で、公的資金の注入ということもあり得るというお考えなのか、公的資金の注入は一切しないと断言をされるのか、柳澤大臣の方に伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 私ども、不良債権の残高をかなり高いレベルで長期にわたってバランスシート上に残しておるということについては、引き当てさえ行っておれば、健全性の問題については昔のような問題があるとは認識しておりません。しかし、収益力であるとかあるいは貸出先に対する融資態度であるとかということを通じまして、日本経済全体に対して決していい影響をもたらしていない、このように認識をいたしておるわけでございます。そこから、この不良債権の残高を縮減し、具体的にはオフバランス化していくということを考えて、そういう考え方を打ち出させていただいているわけです。

 具体的に、一体どのような手法に重点を置くか。これは、先ほど申したように、四つないしは五つの方法があるわけでございますけれども、それらの方法の中で、例えば、もう全部相手を倒産させてしまって清算をしてしまうというようなことをいたしますと、これは、先ほど来申しているように、ゴーイングコンサーンの価値と清算価値とでは、まるでそこの乖離は大きくなるわけでございますので、要するに、処分損のレベルもかなり多額に上るだろう、このように考えるわけですけれども、私どもが考えていることは、実はそういったことを主たる形として追求していこうというようなことでは全くございません。

 そういうようなことから考えますと、結論を急がせていただきますけれども、処分損というものはかなり発生をいたしましても、それは限定的なものにとどまるだろう。その影響というものは、あるいは単年度の当年度利益というものをマイナスにさせるようなことはあるかもしれませんけれども、その可能性までは否定するわけではありませんけれども、自己資本比率を大幅に低下させて、八%を切るようなこと、だから、さあ大変だ、また公的資金による資本増強をしなければならないというようなところにまで至るとは、想定をいたしていないわけでございます。

吉井委員 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、想定をしていないというお話だったのですが、想定ということと、公的資金の注入は一切しない、そういう考え方をきちんと示しておくということとは、ちょっとそこには間に距離がありますから、そこについての質問をいたしておりますので、その考えを伺って、質問を終わるようにしたいと思います。

柳澤国務大臣 想定していないというのが私の答えでございます。しないとかするとかということは、細かい手続論を言いますと、資本注入も相手の申請に基づいて行うというようなこともあるわけでございまして、想定をしていないということで御理解を賜りたいと思います。

吉井委員 時間が参りましたので、質問を終わります。

山口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 財務大臣と金融担当大臣の所信に対する質疑ということでございますので、財政政策と金融行政の基本的なスタンスについて質問をさせていただきたいと思います。

 お手元にこういうグラフを一枚お配りしてありますので、ごらんください。これは、実質GDPが黒で書いてあって、あと、その主な構成項目が書いてある非常に単純なグラフでございます。実質GDPのスケールは左側にとってあります。それから、設備投資、公共投資、純輸出のスケールは右側の長いの、それから消費だけはちょっと違うスケールでとってありますが。

 なぜこんなグラフを持ち出したかといいますと、九一年度から二〇〇〇年度まで、一口に失われた十年間と言いますが、このグラフの実質GDP、黒いところを見ていただきますと直ちにわかりますように、前半の九一年度から九六年度までの六年間というのは右肩上がりになっております。不況のときも、成長しながらの不況、グロースリセッションでありますし、回復局面に入りますと、九五年度は二・五%、九六年度は三・四%と、かなりの成長をしているわけですね。ところが、九七年度以降を見ていただきますと、成長はストップしてしまっている。マイナス成長の後緩やかな回復ですから、大勢としては横ばいであります。GDPのレベルも、九六年度のピークまでまだ戻っていない。かなり形が違うわけですね。

 それで、宮澤財務大臣にお伺いしたいのですが、前半と後半のパターンの違いの原因は何だろう。特に、御担当の財政政策との絡みで、何か前半と後半に違いがあったろうかということをお尋ねしたいのであります。

 そうしますと、財政政策、税制面、歳入面の政策もあるのですが、一応、歳出面の公共投資が実質でここに書かれております。これは皆様御存じだったでしょうか、GDPも一応右肩上がりになっているこの前半の公共投資というのは、はっきりとふえてきているのですね。はっきりとふえてきております。九一年度から九六年度まで、これは年率に直して二十兆円ぐらい、三十兆円規模から五十兆円規模に大変な増加をしております。

 そして、その結果、ずっと下がってきた設備投資、要するに、この間の二十兆円の公共投資の増加というのは、赤線で書いてあるやはり二十兆円規模の民間設備投資の落ち込みを相殺していたんですね。俗説では、公共投資の拡大がきかないなんて言っていますが、とんでもない話で、これなかりせば大変なことになっていたと思います。設備投資の落ち込み二十兆円を公共投資が一生懸命相殺した。二十兆円、二十兆円で相殺した。大きな役割を果たしておる。そうこうするうちに、とうとう民間設備投資も底を打って拡大に転じたところで、九六年度の三・四%成長という非常に立派な姿になったわけですね。ところが、その後の公共事業というのは、これはわずかに低下しています。十兆円ちょっと低下しております。

 宮澤大臣、公共投資だけでは判断できませんが、しかし、これは財政政策のスタンスをはかる重要な指標であります。この指標で判断する限り、失われた十年間の前半の六年間と後半の四年間では財政政策のスタンスが変わってしまっているじゃないですか。それが、実質GDPが一応右肩上がりになっていたところから全く成長できなくなってしまった後半、この大きな原因ではないかという疑いがあります。

 大体、平均成長率をとってみても、前半は一・七%、後半はたったの〇・六%です。こういうことを財政政策が引き起こしたという自覚を財務大臣はお持ちでしょうか。

宮澤国務大臣 まだ十分に年月がたっておりませんので、余り深いことを申し上げることができませんけれども、九七年あたりは、いわばそれまでの、この黒い線の成長がかなり高かったこともありまして、ここで財政を再建すべきであろうといったような政策が一般的に合意されて、そして公共投資もございますし、消費税の問題もございましたし、社会保障の問題もございました。

 そういうことで、結果としては、平成九年の秋になりまして、ちょうど東南アジアの問題もございますけれども、国内的に非常な金融不安になった、こういうことであったのではないだろうか。そういう、いっとき景気の立ち直りが見られましたので財政再建等々に力を入れようとした、そのときに、いろいろなことがと申しますか、状況が変わってきた、こういうことではなかったかと記憶をいたします。

鈴木(淑)委員 私は、この失われた九〇年代のうち、特に後半を問題にしたいのでありますが、後半ほとんど成長がとまってしまった、これについて財政政策はギルティーである、有罪であると思っております。

 二つ根拠があります。そのうちの一つを今宮澤大臣はお答えになりました。それは九七年度の超デフレ予算であります。せっかく回復が始まったところに七兆円の増税、それから二兆円の医療保険の自己負担の増加、合計九兆円の国民の負担の増加。あわせて、このグラフでわかりますように、公共事業をカットします。三兆円ぐらいカットしてきた。十二兆円のデフレインパクトを持った予算を執行したということであります。

 今の宮澤大臣もそうですし、よく政府の説明に出てきますが、それが原因だと言いたくないためか、不幸にしてそのとき金融危機が発生したとか、アジアの通貨危機が発生したとか人のせいにしますが、金融危機はこの超デフレ予算を執行して景気の回復をぶち壊した結果であります。アジアの通貨危機はそんな、三・四%成長の日本経済をたちまちマイナス成長にするほどのインパクトなんかは持っておりません。現に、下を見ていただきますと、純輸出はこの時期ふえているのですからね。

 そういうわけで、一つ罪があるのはこのときの政策の大失敗でありますが、それは過去のことでありますから、私はもう一つのことを宮澤大臣に質問をしたいのであります。それは、宮澤大臣、この公共投資のグラフを見て、九六年度をピークにしてじりじり、上がったり下がったりしている時期がありますが、右肩下がり、少しずつ公共投資が水準を下げて景気の足を引っ張っているのだ、トレンドとしてですよ、こういう自覚はお持ちですか。

 なぜかといいますと、前半、九六年度までは――覚えていらっしゃると思いますが、がたがたっと不況になった。まず九二年の八月には十・七兆円規模の対策が打たれている。二年後の九四年二月には十五・二五兆円、これは当時史上最大規模と言われた対策を打ち、このときは減税もやったのですね。特別減税をやりました。続いて次の年、さらにこれでもかとばかり十四・二二兆円の対策を打っているのですね。ぽんぽんぽんと大きな対策を三回打って、公共事業はこういうふうに上がってきたのだ。

 しかし、その後、何もしないどころか超デフレ予算を組んでおっぽり出した。その結果、マイナス成長となり、公共事業もこういうふうに落ちてきた。そして、ついに参議院選挙で国民の審判が下りました後、政権交代、そして小渕内閣。私どもも、九八年の終わりには自自合意で連立を組もうということになりました。そのときに、九八年十一月、久方ぶりに二十三・九兆円の対策を打ったのですね。それでまた公共事業が一時上がったけれども、その後、現在にかけて、ふらふらしながらこれはまた下がってきているのです。

 この先、私は、間違いなくこのグラフは下がると思いますよ。なぜなら、大体、補正予算と次の年の当初予算で見ていけばわかると思うのですが、九八年のときの二十三・九兆円対策は真水十兆円と言われていました。当初予算の規模というのはほとんど変わっていないですからね。そうすると、対策の規模を見ればわかる。九八年度は真水で十兆円と言われた、九九年度は対策費で十八兆円だけれども、これも真水で、ほとんど同じだったろうな、九兆円ぐらいかな、一兆円くらい下がったかなという程度ですから、大勢横ばい。ところが、昨年の対策十一兆円と称している。これはがくっと規模が小さくなっていますから、昨年の真水、私が信頼しているエコノミストの推計では五兆円だろうと言っていますが、これはその直前までの十兆円、九兆円に比べてがくっと半減しているのですね。それとことしの当初予算と合わせたものがこれから出てきますから、この公共投資というのはまたさらに下がっていくだろうなと私は思います。こういうことをして大丈夫なのでしょうかね、日本経済は。大丈夫なのでしょうか。

 私は公共事業の規模だけを実は問題にしているのではないのですよ。わかりやすいから規模で言っているので、中身も問題です。効率の悪い、地方ばらまきと俗に言われますが、そんなものよりもっと大都市圏の防災とか環境とか交通に投資した方がよっぽど効果が高いとか、そういう議論があります。それは非常に大事なことだと思いますが。

 それから単価が高過ぎるではないか、もっと単価を下げていけば、同じ名目予算を組んだって実質はふえるとか、そういういろいろな議論はありますよ。ただ、そういう議論、大事ですがさておいて、実質のGDPの規模で見たって下がっているではないですか。これはどういうわけでこういう財政スタンスをおとりになっているのですか。

宮澤国務大臣 一九九八年のところで、公共投資を伸ばしているわけです。これは一種の本格的な不況対策の始まりということでございますが、それがもう足かけ三年でございますか。一つは、やはりこれもおっしゃいましたが、地方財政というものが、国と、あるいはそれ以上に疲弊をしているという問題があると思いますが、同時に、公共投資そのものの、乗数効果という言葉は余り正確でないかもしれませんが、そういうものがどうもいっときほどではないというふうに広く信じられるに至った。そのことにも関係があるのではないだろうか。

 政府としては、公共投資予備費というようなものを今御審議中の予算にも、今回は三千億でございますが、念のために組んでおりますけれども、九兆円という公共投資そのものの効果に、やはりずっと連続やってまいりました結果として、疑問が多少持たれるようになっておる、そういうことが一つあるのではないかと思います。

鈴木(淑)委員 今大臣がおっしゃったことは、少し見当違いではないでしょうか。

 というのは、私が言っているのは、公共事業の規模そのものが下がっているのですよと言っているのです。大臣はその、乗数効果といいますか、経済効果と易しい言葉で言ってもいいけれども需要誘発効果が、乗数が下がっているという話ですね。だけれども、乗数が下がっているからもう公共投資は小さくしてしまっていいのだという論理ですか。そんな理屈でマクロ経済政策をやられたらたまったものではない。

 もしそうだとすれば、乗数が下がっているからやめてしまうのではなくて、もう少し乗数の高い、効率の高い公共事業を探しましょう。大都市圏にはたくさんあるはずです。あるいは、そんなに下がってしまっているのだったら、今度は減税とか、あるいは社会保険料をずるずる上げていますが、こんなことをしてはまずいかなとか、いろいろ考えてくれなきゃ困る。乗数効果が下がっているらしいからやめましたなんという論理であるとすれば、私は、これはもう財政当局、マクロ政策の担当者としての責任放棄だなというふうに思います。

 私が言っているのは、規模で見たってこんなに下がってしまっている。そして、失われた十年間の後半が特に深刻だということに対して、財政政策は全然前向きに対応していない、それどころか足を引っ張っているということを言っているのであります。

 時間の制約がありますから、柳澤大臣への質問に切りかえさせていただきますが、このグラフを見て金融行政がどうかかわったかという問いかけをするのは、ちょっと直接的には関係ないのでお答えしにくいのではないかと思いますので、ちょっと違う角度から申し上げます。

 この前半の九一年度から九六年度までの、曲がりなりにも回復してきた、それもだんだん加速してきた、よかったねと言っているころの金融行政は、実は九六年度の初めに住専処理をしただけで、それでもう不良債権は峠を越えたなんてのんきなことを言っていたわけですね。それで、九七年の秋から九八年にかけて不良債権問題が火を噴く、そこから真剣に取り組み始めたわけですね。そうしたら、実体経済はこういう姿になってしまっているということなんですが、柳澤大臣は、このグラフと御自分が責任を負っておられる金融行政との関係で、どういうことを考えられますか。不良債権処理をやっている間は、後半のこの停滞みたいなのはしようがないのだというふうにお考えですか。それとも、何かほかのお考えがございますか。

柳澤国務大臣 私も、個人的にいろいろなエピソード的な思い出を持つわけでございますけれども、とにかく、正式には、識者のある方ですが、九〇年二月にバブルは崩壊したと。現実には、九一年が株でしたか、九二年が土地、これが急激に値下がりをした時期であった、こう思うわけでございますが、その当時、私のところにダウニングテンの官房長が訪ねてきました。それで、日本の金融機関は大丈夫かと。私は、正直言ってちょっと思わぬ質問というか、バブルの崩壊の金融機関への影響というのを世界はそう見ているかということを逆に知らされたわけです。

 当時、既に自民党の中にも政調会で金融機関の資産が非常に傷んでいるという自覚はありまして、そのことを、いろいろ銀行の当事者を呼びましてヒアリングもしておりました。しかし、そのときには、今から考えますと随分のんきだったと言わざるを得ないと思うのですけれども、何と言ったかといいますと、土地の値下がりはこれは深刻です、今後ともこれが改善をするというようなことは考えられない、しかし、我々金融機関にしてみますと、かなり株は当時ももう一万四千円ぐらいまで下がっておりました、ちょっと記憶は定かでありませんが、大体一年に千円、自民党の政策よろしきを得て株価を上げてくれるならば、我々はこの地価の下落に伴う損失を何とか補いをつけていくことができますので、銀行のバランスシートにそんな深刻な御懸念をお持ちになっていただくには当たりません、こういうような感じのお話でございました。

 私もそれを半ば信じていたようなことがありまして、先生がおっしゃる九六年の住専の処理が問題になるあたりまでは、その衝に立たなかったということもありまして、うかうかとその問題についてはそうした認識で日を過ごしていたということでございます。

 しかし、私、住専問題の処理の座長をやりまして、農林関係の資金も出ております住宅金融専門会社の傷みぐあいということに全く驚きまして、そのときには御承知の対応をしたわけでございますけれども、このあたりから、率直に言って、私自身この問題にこれはもう並々ならない取り組みが必要だという認識を持つに至ったというのが、先生のこの時系列の表を見ての、私の感想というか、思い出であります。

鈴木(淑)委員 ありがとうございました。

 さっき言った九七年の超デフレ予算を審議した後、あるいはそれを審議しているときの通常国会でもそうだったのですが、私は、時の総理である橋本さんに対して、こういうことを申し上げたのです。あのときは金融ビッグバンの関係の法案が同時に出てきた。それに対して私は、橋本さん、これは順序が違うんじゃないですかと。

 要するに、不良債権の処理の問題、自己資本の充実の問題、それから金融ビッグバンに備えての効率の問題、この三つの処理の仕方というのは、アメリカでは最初に不良債権処理をやったのですよ。その結果、自己資本が傷んじゃった後、自己資本の充実をやって、最後に景気回復とともに効率も上がってきたのに、橋本さんは三つ一遍におやりになろうとしている。これは無理な話だ。不良債権を処理すれば、自己資本が欠けるのは当たり前だ。そこに、公的資本を注入して効率をよくしろなんて言われたら、分母が拡大して効率をよくしろと言われるわけですから、そうしたら貸し渋りになるに決まっている。資産内容の効率を上げていく以外にこの三つを追求する手はないじゃありませんか。順番にいかないと、一遍に三つ追っかけたら大変ですよということを申し上げたのであります。

 このことは、この当時に、九七年の暮れに出した私の「ビッグバンのジレンマ」という本にはっきり書いてありますが、そのことが、柳澤大臣が直面しておられる今の日本の金融の問題にもそのまままだ尾を引いているように思います。

 といいますのは、不良債権の処理が、大分進んできたけれどもまだ相当残っている。これを、しっかり処理しろ。引き当てにしろ、間接償却にしろ直接償却にしろ、しっかりやればこれは収益は悪くなります。去年の三月決算のときは、経常利益を不良債権処理で全部吹っ飛ばしても、幸いにして有価証券の評価益なんかあったから、配当するぐらいの収益を上げられた。この三月期は、大臣御存じのとおり、えらいことですね。しっかり償却したらもうけはゼロになってしまう。評価の方は損が出ている金融機関が多い。

 そこで、柳澤大臣、最近、公的資本注入を受けた銀行は、金融健全化法のもとで効率を上げろ、こういう指導を受けていますが、それが計画どおりにならなくても、きちっと償却をして、長い目で見てよくなりそうだったら、ちょっとここは手かげんといっては何ですが、甘く見てもいいようなニュアンスのことを言っておられる。私は、これをとがめ立てするつもりはないのですよ。もともと三つを一遍にやろうというのはむちゃなのですね。不良債権処理を進めなさい、だけど収益はよくしなさい、自己資本も一定の比率を維持しなさい。この三つは順番にやらなきゃ解決できない。それを、一遍に今強いているから、待てよ、不良債権処理が一番最初にやらなければならない問題なんだから、それを優先させるとすれば、収益の立て直しのところはちょっと後振れしてもいいよと言わなきゃだめかな、もしそういうお考えで言っておられるとすれば、これは大臣の御判断の方が正しいと私は思います。三つのことを一遍に要求しているのです、今の法体系は、あるいはずっとこの金融行政は。あれはむちゃですね。ですから、そこのところを本音でどうお考えかということ。

 それからもう一つ、直接償却と間接償却。申すまでもないことですが、基本的には私ども自由党は思い切って手術が必要だと言っているということは、直接償却できるところはやっちゃって、きれいにしちゃってから立ち直るようにしろと言っているわけですが、しかし、そうは言ったって、影響するところ大きい。特に、今みたいに、財政政策がしっかり景気を支えてくれないでずるずる景気が落ちてきているときに直接償却をじゃんじゃんやったら、さらに景気がおかしくなりますから、そこの手かげんは非常に難しいというふうには思いますが、これも大臣、私は、方向性としては、いつまでも間接償却で引当金を積んでずるずるいくよりも、思い切って切開手術しちゃえというのが立ち直りを早める本当の構造改革だなというふうに思っております。

 以上、二点について、確認でございますが、大臣の真意をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 まず、不良債権処理を的確にやっていく、しかも、通常の間接処理よりも直接処理をした方が、どうしても処分損の拡大ということが程度はともかくとして伴いがちだ、こういうことでございますが、それをやってもらおうということになった場合に、当年度の利益、当期利益に非常に負担になって、銀行によっては赤字決算というようなことを余儀なくされるようなことがあり、それは即、健全化計画との関係で問題が生ずるのではないか、こういうお話でございます。

 確かにそのとおりでございまして、ただ、私どもの経営健全化計画というのも、数字を挙げて当期利益の推移もきちっと開示して、それを国民の監視のもとに置いているという意味でパブリックプレッシャーをかけてその実現を迫っているわけでございますけれども、しかし、これを、例えば三割下振れしたときにはすぐ経営改善計画だというふうに一応制度としてはなっているのですが、そこに本当に何か実質的に将来の収益体質の強化であるとかということを行ったためにそういう結果を招来しているということであれば、これはすぐ経営健全化計画の提出を求めるというようなことには実はなっておりません。

 そういう意味合いで、私どもに若干裁量の余地をいただいているわけでございますが、私どもとしては、そこをしっかり見させていただいて、すぐ短絡的にいろいろ金融機関に物申すということについては、これはその金融機関がやっていらっしゃることをよく見させていただくということが大前提ですけれども、短絡的に考えることは慎まなければならない、このように考えております。

 それから、不良債権の処理に当たって、今言ったようなオフバランス化というものを進めて、貸出先にこれはある意味でリストラを求めるという側面を当然持つわけでございますけれども、そのあたりのことについては、昨今の景況からいっていかがか、こういう見地からのお話と思います。

 これについては、私先ほど来申しておりますが、我々が考えている直接償却というか、私はオフバランス化と言いたいのでございますけれども、これには、当該債権の売却、それから再建計画を出してもらった上での債権放棄、それから相手が倒産をしてしまった等の場合の司法当局からする償却、それからさらには、我々の、国での特有の仕方かもしれませんけれども、担保債権はともかくとして、貸出先の状況からいってこの回収が難しいなというようなものについては、直接に部分的に償却してしまうという方法があります。

 それらのことの中で、一体我々が重点を置くべきなのは何なのかといえば、これはやはり、再建計画を出させ、もっと言えば、本当に、ある事業体、企業のバイアブルな事業の部分と、そうでない、これはどう見ても見込みがない部分とを切り離しまして、そして見込みのない部分については清算してもらうけれども、ますます収益を上げてもらわなきゃならない部分についてはむしろ貸し増しをしていく、そういうことで収益を上げてもらって、それが日本経済全体の成長に結びつく、そういうようなことを我々は考えているわけでございます。

 そういうことを主として考えたときに、もちろん抽象論では非常に、したがって、こんな収益が上がっていないようなところには余りたくさんの資源はないはずだ、人間も雇われていないはずだということで、こういうことをやってもすぐえらい雇用の問題が起こるということではないと、私はここで答弁としては言うことできると思うのですが、事実はなかなか難しい面もあろうと思います。

 いずれにしても、そのあたりのことをよく考えて、タイミング等もはかりながら、我々は金融機関に働きかけていきたい、こういうふうに考えて、先生の御指摘の点は十分念頭に置いて取り組んでいきたい、このように考えております。

鈴木(淑)委員 ぜひ、今おっしゃったように目配りをしながら、原則としては不良債権処理最優先、そしてそれの後に収益の回復、自己資本充実を見ていく。不良債権処理が一時的に景気に対してデフレインパクトをどうしても加えますが、これはやはり基本的には宮澤大臣の方の御担当であって、財政面からもう少し責任を持って景気を支えていただきたい。

 恐らく大臣は、こんなに赤字が大きくなっちゃっているのに何を言っているんだと内心お思いかもしれませんが、財政の赤字をファイナンスするための国債は、今日本の市場では値上がりをしている。長期金利は下がっているんです。財政赤字が大きい大きい、それは大きいですよ。長い目で見たらこれは絶対削減しなきゃいけないが、今マーケットは、この財政赤字のコストを安く見ているんですよ。金利が下がっている、値上がりしている。長期金利一・四、また一段と下がっちゃったということは、この程度の財政赤字をマーケットがちゃんと許容している。そういうときに手を打たないでどうするんですかというのが私の見方でございます。

 時間でございますので、これで終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 最初に、KSD問題に関連いたしまして、柳澤金融大臣にお伺いいたします。

 既に午前中の長妻委員が、この件に関しましては幾つか質問もしてございますので、私の方から、確認的な事項を合わせて数点、行わせていただきます。

 まず、これまで報告されましたアンケート調査によりますれば、KSD関連の振替口座窓口に一番深く関連しておられますのは、信用金庫並びに信用組合。五百七機関中、信用金庫が二百二十九、信用組合百八十四。また、行ったとされるキャンペーンも、信用金庫百五十九、信用組合八十五。預金受入額につきましても、信用金庫百二十八億ということで、大変に断トツの金額とはなっておると思うのです。

 そこで、柳澤大臣にお伺いいたしますが、KSD関連の口座受け入れ窓口に信用組合並びに信用金庫が現実に多数なっておられるということの背景分析についてどのようにお考えでしょうか。まず第一点、お願いいたします。

村井副大臣 大変恐縮でございますが、私からお答えさせていただきます。

 私は、やはりこのKSDというのが、中小企業の傷害保険でございますとかそういうような事業をやっていたというようなこともございまして、それで地域に密着した典型的な中小金融機関である信用金庫あるいは信用組合、こういうところを通ずる中小企業との接触を求められた、そのようなことがあったのではないかと思っております。

阿部委員 では、ただいまのお答えは柳澤大臣も同じと拝聴してよろしゅうございますでしょうか、確認をお願いいたします。

柳澤国務大臣 村井副大臣のおっしゃったとおりだと思います。

阿部委員 では、多少細かなことを伺いますので、これはイエス・オア・ノーで、副大臣でも大臣でもどちらでも結構です、お答えくださいませ。

 口座振替手数料が新規増員一名につき三千円というふうに、このKSDの口座の場合報告されておりますが、これは、いわゆるこういうことの振替手数料として相場でございましょうか。イエス・オア・ノーでお願いいたします。

村井副大臣 大変恐縮でございますが、私どもは昨年十一月下旬以後、委員御案内のとおり、一通りの比較的簡単な調査を行いまして、その結果につきましては委員のお手元にも差し上げてあると存じますが、それ以後、いろいろこのKSDをめぐる問題が出てまいりましたので、私ども、銀行法二十四条に基づきます報告徴収など調査を行っている段階でございます。

 ただいま相場であるかどうかというような意味でのお尋ねがございましたが、そのあたりのそういう意味での問題意識で、現在、私手元にお答えする材料を持っておりませんし、また、率直に申しまして、一体何が行われていたのかということ自体も、もう少し詰めて私ども調査を続けて、報告徴収を行い、さらに、午前中もお答えしたところでございますけれども、追加的な資料をとるとかあるいはヒアリングを行うとかいうようなことをしている段階でございますので、ちょっと今の点につきましては、恐縮でございますが、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

阿部委員 質疑の内容は極めて簡単なことですので、複雑に、遠回しにおっしゃらないで、例えば、相場であるかどうか、そうした疑問をお持ちかどうか。何でも金額ですから、これの口座振替手数料が三千円、高いかな、安いかな、これが庶民の感覚でございます。今のお答えでは、まずそうした視点をお持ちになって調査なさっているのかどうかも定かではございませんでしたので、後ほどあわせてそれは伺わせていただきます。

 同じような質問ですので、これも一言でお願いいたします。

 保有維持協力金といたしまして、会員数三万人以上のところには約一千万円がKSD側から支払われたというふうに調査でも報告を受けております。はたまた、このようなことは他の団体と金融機関の間で起こり得ることでしょうか、あるいは起こったことがあることでしょうか。この点についても、一言で結構です、よろしくお願いします。

村井副大臣 現在私ども、KSDの問題につきまして、先ほど来申し上げております報告徴収あるいはそれに関連するヒアリング等をやっておる段階でございまして、他にそのようなことがあるかどうかについてつまびらかにお答えを申し上げる材料を持っておりません。

阿部委員 他と比較しなければ、異様なことが起こったか、異常なことであるのかどうか、判断すらできませんでしょう。やはり金融庁と申しますのは、金融機関のフェアでオープンな運営ということを方向づけるものですから、認識をきちんとお持ちいただいて、調査、アンケートに当たっていただきたいと思います。

 四点目、お願いいたします。

 第一次のアンケートに続いて、現在、第二次の詳しい調査を行っておられるということですが、その調査の骨子。何事にも調査いたしますには軸がございますが、このことについても、できますれば三行ほどでお願いいたします。

村井副大臣 ちょっと細かくなりますので、恐縮でございます。

 実態調査の内容として、報告徴収をいたしておりますのは、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団の会費収納に係る各金融機関の口座振替業務の推進について、例えば、口座振替業務の推進状況、それから推進に当たっての機関決定の状況、それから口座振替業務の推進方法、それから担当者の顧客に対する説明事項、どういうものを説明したか、あるいは教育研修の内容、それからKSDという団体に対する認識等々をいろいろ尋ねているところでございます。

阿部委員 諸般の調査の結果、ぜひとも明らかにしていただきたいのは、先ほど私が伺いました、例えば三千円の手数料一つ、あるいは協力保持金としての一千万円という額のKSD側からの信用組合、信用金庫への支払い等々が、他の機関でもあるいは他の団体とも日常的に起こっているような事態なのかどうかでございます。この一点について、調査結果の折に明確にお答えいただきますように。

 引き続いて、柳澤金融大臣にお伺いいたします。

 先ほどの副大臣のお答えで、信用金庫並びに信用組合は中小企業等々との貸し出し窓口になっているということから、このKSD問題でも振替の窓口になったのではないかという御指摘でございましたが、今後我が国において、健全な中小企業や次代を担う新規産業等への貸し出しを担うべく、金融機関のあり方、再編が問題になろうかと思います。この点に関して、今般のKSDの事件を現実に起こったこととして認識した上で、金融行政上はどういう御指導をなさいますでしょうか。大臣にお願いいたします。

村井副大臣 申しわけございません。大臣からもお答えを申し上げるかも存じませんが、私からまずちょっと申し上げたいと存じますのは、委員御指摘の他との比較云々の問題でございます。

 私どもはやはり、銀行法がきちんと守られておるかどうか、金融機関として行うべきことをきちんと行っていたかどうか、もう少し申し上げれば、銀行法上いわゆる他業禁止と呼ばれるものに該当するかどうかという点が一番の問題点でございまして、それに関連していろいろな問題が出てくると思うわけでございます。委員の御指摘は御指摘として十分に私ども受けとめまして勉強はさせていただきますが、その点を調査せよという御指摘につきましては、これはちょっとこの場でお預かりさせていただきまして、なお持ち帰らせていただきたいと存じます。

 それから、中小企業金融における信用金庫、信用組合の役割、これは地域に非常に密着した形でございまして、私どもとしても今後も非常に大切な存在だと思っております。御案内のとおり、信用組合につきましては都道府県の所管でございましたのを金融庁が所管するということにいたした経過もございまして、それ以来、私どもとしては、鋭意その実態の把握に努力をし、検査も重点的に実行して今日に及んでいるものでございまして、その体力を強めまして、できるだけ地域の経済を支える機関としてしっかりやっていっていただくようにしたいと思っております。

阿部委員 もちろん、今おっしゃられた銀行法の十二条に違反しないものか、他業種の兼務をしていたか否か、その点については明確にお答えいただくことは言うまでもございませんが、やはり不明朗なあるいは破格な金額であったりする場合は、それ自身健全な運営とは言えませんので、ぜひとも視点の中にお加えいただきたいと思います。

 あわせて、私は金融大臣にお答えを求めておりますので、次は必ず金融大臣にお願いいたします。

 金融大臣の所信表明を拝読いたしますと、金融問題全般に関しまして、ある意味でまあまあ円滑に運営されていくようになったというふうな概略が読み取れますが、では、果たして日本の銀行というものが、世界の銀行、いわゆる一流行に比べまして持っております脆弱性、例えばですが、昨年の七月に金融財政事情研究会で速水日銀総裁が指摘されておられます中に、日本の銀行の自己資本率のある意味での修飾、どういうことかと申しますと、公金等々が自己資本比率に算入されていたり、株式の含み益というものも自己資本比率になっており、本来の銀行の資本としての、脆弱な基盤がまだ残されているのではないかという御指摘をここに見るものです。

 その点に関しまして、やはり金融行政、とりわけ日本のアジアにおける役割は重要と思っておりますが、今、柳澤金融大臣が新たな省庁の出発に当たりまして、日本の銀行資本のあり方、あるいは脆弱性を抱えたものであるか否か、またそうであれば改善点はどのようなものであるかについて、大臣、お答えいただきます。

柳澤国務大臣 私の所信の中における内容についての御質問であるわけですが、確かに日本の金融機関、もともと過少資本、これも、過少資本といっても株式の含み益をティア2というところに入れるわけですけれども、そういうようなことはありましたのですが、特に不良債権の処理に当たって、これまで営々として積み立ててきたいわゆる剰余金というものをかなり食いつぶすということを通じまして、自己資本比率の低下というものが起こってしまいました。

 そこで、急遽ティア1の中に入れるべき資本をいわば国が引き受ける形で資本の増強を行ったわけでございますけれども、率直に言って、これについては民間の金融機関としては全く異例のことでありまして、諸外国からも、一応国も覚悟をして資本として入れてある以上、これは資本としての力を持つんだとは見つつも、しかし、あれは結局は国としては返還を期待しているお金だというような意味で、資本としていまいち脆弱性を否定できない、こういうような見方をされるわけでございます。

 そういうようなこともこれあり、やはり資本をふやしていくというのは一体どうしたらいいかといえば、基本的には収益力を上げて、収益を上げていくことなのでございます。そういうような意味で、私どもは、もうちょっと収益力の強い金融機関を早く実現しなければいけない。それにはどうしたらいいかというようなことの一環で、今回、不良債権の処理の仕方についてひとつもう少し工夫をしたらどうか、それには国として何がお手伝いできるかというようなことで、今対策をいろいろ考えている、こういう次第でございます。

阿部委員 国民の抱く金融への不安もまだまだ根拠のないものとしないと私は思っております。あわせて、今の金融大臣の御答弁を受けまして、やはり信頼ということと切り離せない金融業務でございますから、ぜひとも健全運営に努めていただきたいと思います。

 引き続きまして、持ち時間が少ないものですから、宮澤大蔵大臣の所信表明についてお伺いをいたします。

 先ほど自由党の鈴木委員がお配りいただきましたこのグラフに合わせて私も御質問させていただきます。ごめんなさい、流用です。

 まず、宮澤大蔵大臣の所信の中にも、景気は緩やかな回復であるが雇用情勢と個人消費の伸びがいまいちであるというふうな御指摘がございますが、やはり国民的実感といたしまして、景気が回復していると言われましてもリストラが横行いたしまして、消費マインドもむしろ冷え切っているというふうな事態。この鈴木理事のグラフを拝見いたしましても、民間設備投資というところをもってしてもまだ上がってきていないかなというふうに読めますし、下の水色の公共投資も、先ほどの御指摘のように下を向いたまま。

 このグラフのどこから、公需から民需への移行ということを読み取ればよろしゅうございましょうか。公需から民需への移行とは、何を指して宮澤大蔵大臣の所信の中でお述べいただきましたでしょうか。

宮澤国務大臣 それでは、グラフを拝借しましてお答えを申し上げますが、私が民需と申しましたのは民間設備投資、上の方の赤い線、それから民間消費支出、一番下の方の紫色の破線、スケールは右の方の兆円の方でございますけれども、その二つでございます。

 それで、私は、昨年の今ごろでございますけれども、大体、平成十二年の秋ごろにはかなりのバトンタッチができるんではないかとひそかに考えておりました。実際には、民間設備投資はかなり早くから動意が見えまして、この線を余り感心しないとおっしゃっていますけれども、私は、いや結構、今としてはよく民間設備投資は回復してきている、民間の利益率もかなり上がってきている。強いて言えば、大企業がいい、製造業がいい、小企業が悪い、非製造が悪いといったようなことはございますけれども、一まとめにして民間設備投資は期待に沿ってくれているわけですが、民間消費支出が一向に、ごらんになりますように横ばいになったままでございます。ごらんになりますように、これが三百兆ございますのですから、これの動向によりまして景気というものは大変に変わるわけでございますが、設備投資は期待を満たしてくれていますが、消費支出は全く期待を満たしていないということでございます。

 それがなぜかということがやはり問題なので、普通、不況を脱出しますときは、まず企業が元気になって、家計が元気になって、そういう順序ですが、一向にこれが家計に響いてきていない。後にならないとわかりませんが、私はどうも、アメリカでいわゆるIT革命というものがあったときに、労働側はレイオフでそういうのをやってしまっている。我が国はそういうことがございませんから、雇用の今までの伝統、終身雇用であるとか年功序列であるとか、そういったようなものがかなりいろいろ今変わりつつあって、そのことが結局、家計あるいは家庭に不安を与えている、どうもそうではないんだろうか。

 しかし、それはいつまでもそうであるはずはありませんで、ある時間の経過の中で落ちついてくるはずなのですが、有効求人倍率は少しずつよくなっていますけれども、失業率はよくなっているわけではないといったように、私も、もうそろそろ、そろそろと思っておりますのですが、その点がやはり一番問題だというふうに考えております。

阿部委員 赤い線の方のグラフをどう読むかは、私が申しましたように、企業等々がリストラでスリム化されて収益を上げるという形態は、必ずしも、逆な意味で個人消費が落ち込んでまいりますから、いいパターンとは思えません。

 そして、大蔵大臣御指摘のように、個人消費がいかようにも伸び悩んでいる。これはだれが見ても悪い値と思いますが、私は、そのことの背景は、いわゆるこの間の社会保障政策における手詰まり。年金問題、医療問題等々、今、ある意味で購買力を持つはずの高齢者層が、社会保障政策の先行き不透明並びに削減の中で購買意欲を発揮できないという点も非常に大きいと思います。

 私自身が医療分野におりました経験から申しましても、やはり社会保障分野での充実は、一つには個人消費の回復、二つには、これは私の願いでもありますが、もっともっと雇用の場を社会保障分野に、医療、介護、福祉分野に置くことで雇用の改善等々、これらを早急に実現されれば、これは私の処方せんですが、ここの個人消費の部分の伸びは、大臣御希望のとおりの値になっていくやに存じます。なぜならば、日本は世界に類を見ない少子高齢化に急速なスピードで進んでおります。そのことに見合う社会や経済や税制の仕組みが余りにもおくれて今日あることが、どうしても動かないこの個人消費の落ち込みと大きく関連していると思います。

 そして、言いっ放しで申しわけございませんが、ぜひとも宮澤大蔵大臣に、五十数年にわたるいわゆる大蔵畑、財務畑でのお仕事を通じて一点、私はお教えいただきたいことがございます。

 この五十年間、日本は急速に社会の変容を来してまいりましたが、私が先ほど申しました意味の少子高齢化は初めて出会う現象でございます。またその一方で、いわゆる働き方の形態が大きく変わってまいりました。一つには高齢化、それから女性の進出、あるいは在日外国人労働者の問題。そして、わけても今一番問題なのは、若い層がいわゆるフリーターとして確実な税の納め手になれないような現状もあるかと思います。新しい時代に即した税制のあり方について、五十何年の御経験から、ぜひとも宮澤大蔵大臣のお考え、これはまだ法案にあらわれていないものでも結構でございます。私は、よほど仕組みを変えないと新しい時代には対応できないと思っておりますので、その点を一点お聞かせいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 前段でございますけれども、社会保障のシステムが不安定である、不安が多いということが現在の消費をディスカレッジしているとおっしゃいますことは、それはおっしゃるとおりだろうと私も考えています。

 それからもう一つ、いわゆる社会保障の分野、介護なんかはいい例かもしれませんが、ここに新しいジョブオポチュニティーがあるとおっしゃることも、事実そのとおりであって、現実にそういうところからの求人というのは非常に多いのでございますから、確かに、そういうところにも雇用というものを見つけていく、あるいはつくり上げていくということが大事と思います。

 それから、後半のお尋ねはちょっと、将来の税の話を申し上げますとどうもこのごろは禁物でございまして、何かすぐそういうことをやるのかなというようなことになりますので、用心をいたしております。

 ただ、今、しょっちゅう財政再建と呼ばれますが、財政再建という名の実は税制であり、中央、地方の関連であり、社会保障制度、それらのシミュレーションをやっていきますときに、やはり国民が給付と負担との選択をいたさなければならないことにどうしても迫られてまいります。そのときに、給付は余り要らないよ、負担をさせないでくれという選択なのか、いや、やはりそうはいかない、給付はある程度は必要だということか。いろいろなことを考えていきますと、今おっしゃいました税の問題というのがやはり私は出てくるのだろうと思っております。

 比較的安全な申し上げ方をすれば、私は、やはり今の所得税は課税最低限が高過ぎる、最初の税率は低くてもよろしゅうございますから、もう少したくさんの国民に所得税を負担してもらったらいいなということと、それから、やはり直間比率というものがもう少し間接税の方に動く方がいいのではないかという感じはいたしますが、これはしかし、これ以上のことを申し上げるのはどうもよろしくないので。

 そういったような問題意識でございます。

阿部委員 では、本当の最後に一つだけ。

 いわゆる地方と国の税の問題ですが、所得税、法人税、消費税等々で、地方と国の比率を見直すということについてのお考えを一言お願いいたします。

宮澤国務大臣 先ほどもちょっと申し上げかけましたが、いわゆる財政改革というものをマクロモデルをつくってやってまいりますときに、どうしても地方と中央との関係が出てまいりまして、しかし、それは恐らく財政ばかりでなく、行政、行財政の問題として出てこざるを得ないであろう。したがって、どれだけの仕事を地方に持ってもらうか、どれだけが国の仕事であるかということと関連をして、財源と申しますか、それをどのように分け合うかということになっていくのだろう。

 したがって、行政との関連がございますので一概に申し上げることはできませんが、行財政含めての再検討をしなければならない。今の地方財政も国と同じぐらい非常にもう困窮しておりますので、長くこのまま置くことはできないと思っております。

阿部委員 主に税制の問題を伺いましたが、やはりその根本には、国民の税に対する信頼ということがございます。その点で、午前中にも他の委員から御指摘ございましたが、森首相の四千万円のゴルフ権のただ移譲と申しますかただ借り等々は、国民の税への感覚を大きく損なうものですので、内閣執行部におられる宮澤大臣並びに柳澤大臣としても、厳重にそうしたことのないようにこの内閣の運営をお進めくださいますように。また、私どもといたしましても、実体経済がもっと本当の意味で安定し、女性たちが働きやすい社会の仕組みの中で、税制の問題を提案していきたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 以上で所信に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、内閣提出、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び本日付託になりました岡田克也君外七名提出、特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣宮澤喜一君。

    ―――――――――――――

 平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案

 法人税法等の一部を改正する法律案

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

宮澤国務大臣 ただいま議題となりました平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 平成十三年度予算につきましては、二十一世紀の新たな発展基盤を構築しつつ、我が国経済を自律的回復軌道に乗せるとの観点に立って編成したところであります。あわせて、厳しさを増している財政状況にかんがみ、財政の効率化と質的改善を図ることといたしました。

 こうした中で、公債発行額につきましては、一方で、金融破綻への備えのための国債償還費の手当てを行う必要がなくなったという減要因があり、他方で、地方財政対策において新たに特例地方債を発行し、あわせて交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入額を増額する等の制度改正を行うことに伴う増要因がありますが、このような状況のもと、可能な限りの縮減を図ることといたしました。

 これらの結果、平成十三年度の公債発行額は、前年度当初予算より四兆二千九百二十億円減額いたしましたが、なお、財政法の規定により発行する公債のほか、十九兆五千五百八十億円に上る多額の特例公債を発行せざるを得ない状況にあります。

 本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成十三年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定めるものであります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、平成十三年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとしております。

 第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債の発行額をできる限り縮減するため、平成十四年六月三十日まで特例公債の発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、平成十三年度所属の歳入とすること等としております。

 次に、法人税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 政府は、商法改正による会社分割制度の創設に伴い、合併、分割等の企業の組織再編成に係る税制の整備等を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、組織再編成により資産等を移転する法人について、企業グループ内の組織再編成や共同事業を行うための組織再編成の場合には、一定の要件のもとで移転資産の譲渡損益の課税を繰り延べる措置を講ずるとともに、組織再編成を行う法人の株式を保有する株主について、株主が分割承継法人等の株式のみの交付を受けた場合には、株式の譲渡損益の課税を繰り延べる措置等を講ずることとしております。

 第二に、引当金等の引き継ぎについて、組織再編成の形態に応じて所要の措置を講ずるなどの改正を行うとともに、会社分割に係る商業登記に対する登録免許税の税率を定めるなど関係税目につき必要な措置を講じ、あわせて国税通則法等の整備を図るなどの改正を行うこととしております。

 次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 政府は、最近の経済情勢等を踏まえ、住宅投資及び中小企業の設備投資の促進を図るとともに、社会経済情勢の変化に対応するなどの観点から所要の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、住宅投資及び中小企業の設備投資の促進を図るため、新たな住宅ローン減税の実施、中小企業投資促進税制の適用期限の延長等を行うこととしております。

 第二に、金融関係税制について、上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離選択課税を存続する経過措置の延長等を行うこととしております。

 第三に、社会経済情勢の変化に対応するため、認定特定非営利活動法人に対する寄附に係る特例及び贈与税の基礎控除の特例の創設、個人の土地等に係る長期譲渡所得に対する税率軽減の特例の延長等の土地税制の改正、合併、分割等の企業の組織再編成に対応するための各種特別措置の整備等を行うこととしております。

 その他、既存の特別措置の整理合理化を行うとともに、住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等、期限の到来する特別措置についてその適用期限を延長するなど、所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山口委員長 提出者河村たかし君。

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 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案

    〔本号(その二)に掲載〕

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河村(た)議員 河村たかしでございます。

 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案の提案理由説明でございます。

 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案につき、共同提案した民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合各党を代表しまして、提案理由説明をいたします。

 まず、租税特別措置法等の一部を改正する法律案にあります政府のNPO支援税制案は、とてもNPOの支援税制と言えるものではありません。それどころか、かえってNPOの自立性を害し、NPOを政府の支配下に置こうとするNPO政府下請強制税制であります。

 NPOの生命は、政府からの自立であります。政府の管理から離れ自立するところにその存在意義があるのです。政府案のように、いたずらに認定要件を厳しくし、零細なNPOや事業を行っている自立型のNPOのほとんどがその射程外になるような案は、NPOの本質をまるで理解せず、さらに悪いことには、これを従来の公益寄附金税制の中に閉じ込めようとする時代錯誤も甚だしい悪法と断じざるを得ません。

 市民の自由な公益的活動をサポートするというNPO支援税制の本質からは、公益寄附金を政府が特別に認めた特定公益増進法人に支出する場合のみ税制支援を認めるという現行税制の基本的枠組みを打破することが必要不可欠であります。

 我々の法案は、その基本的枠組みの変更であり、特増という密室的で税金のむだ遣いが多く指摘されているシステムを根本的に覆す法案であります。

 さらに、我々の法案では、寄附金控除などの金銭的な支援にとどまらず、ボランティア活動やホームステイなどの労務の提供についても税制控除を認めるなど、真にNPO活動を支援する内容となっております。

 これに対して、政府案は、特増の枠組みには何の変更も加えず、その実質はNPOに対して苦難を与えるものでしかありません。

 政府案は、要件のほとんどを政省令に落としているため、その詳細は与党税制大綱などでしかわかりませんが、一、NPO法人への事業課税の軽減がないこと、総収入に占める寄附金総額の割合が三分の一以上であること、複数の市区町村の者からの寄附を受けること、一者からの寄附金、助成金が寄附金総額の二%を超えた分は寄附金総額に算入しないこと、申請時に認証した所轄庁の法令、法令に基づく行政庁の処分または定款に違反する疑いがあると認められる相当の理由がない旨の証明を受けていることなどとしており、事業をしている自立型のNPOや零細なNPOが認定されにくい極めて制限的な条件であります。

 二番。政治、宗教活動を一切禁ずる点も憲法違反であり、全体主義国家の発想であります。公明党さんもしっかり考えていただきたい、石井さん、おみえになっておりますが、と思います、など、とてもNPOのための税制とは思えません。

 そもそも、一番に言いましたような認定基準は必要最小限なものにとどめ、NPOの評価については、細かな要件を法律や政省令で定めるのではなく、民間の評価機関にゆだね、民間で切磋琢磨させることがNPOの制度趣旨に合致します。

 我々は、二十一世紀の日本を、民が主役になり、さまざまな価値観を認め合って、多元主義、プルーラリズムのもと、生き生きと暮らしていく社会にしたいと考えています。そのためには、真のNPOの制度化こそが最も重要な改革の一つであると確信しています。

 繰り返しになりますが、NPOの本質は、財政学的には、教育、福祉、文化、社会活動などの準公共財をどういう仕組みで運営するかという議論と非常に密接にかかわっています。戦後復興の画一的国家運営の時代を超えて、多元的価値観による国家運営を目指すというのなら、教育、福祉、文化、社会活動などの分野もNPOと政府とで競い合い、そして時には助け合うという、ゴーイングコンサーンとして自立し生き続けるNPO制度を確立することこそが、二十一世紀の日本にとって一番必要なことなのではないでしょうか。

 以上のような立場から、政府案のような、公的資金の配分をすべて政府がとり行うとする考え方は、断固否定されなければなりません。我々は、公的資金の配分方式の民営化を旗印に、公益寄附金税制を抜本的に改正することにより、いわば税金の使い道を国民みずからが選択できる国家運営を目指します。それにより、お上と下々という社会体制、そして個人よりも組織を優先する国家体制を根源から変革し、国民みずからの意思とお金で公共的な活動をなし、コミュニティーを形成する日本をつくっていくのです。そのために、私どもは、絶えず社会の動向に目を配り、ブラッシュアップされた法案を提出し続ける不断の努力を惜しみません。

 この戦いは、まことに恐縮ではありますが、私河村たかしにとってもライフワークであり、私の生命が消えるまで決してとどまることはありません。また、それは必ず次の世代に引き継がれていくと強く確信しております。

 以上でございます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として財務省主税局長尾原榮夫君及び内閣府国民生活局長池田実君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田万里でございます。

 これから一時間半ほど質問をさせていただきますが、最初に政府について質問をいたしまして、特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案の提案者に対しては一番最後に質問をいたしますので、御了承いただきたいと思います。

 それでは、最初に政府に対する質疑でございますが、今年度、財政法の第四条第一項ただし書きによる国債の発行額が八兆七千六百億円、それから特例公債が十九兆五千五百八十億円、両方合計をしまして二十八兆三千百八十億円。これは、平成十三年度予算の公債依存度で三四・三%でございますから、これはもう大変大量の国債を新規に発行するということでございます。

 財務大臣は、私どもが聞くことができなかったわけでございますけれども当委員会における所信表明のところで、平成十三年度の公債発行額は前年度当初予算より四兆二千九百二十億円減額しました、それから公債依存度は四・一ポイント減少しておりますというようなことを述べられたようでございます。

 もちろん、その前段に、ことしは去年と比べまして大きな違いというのは、金融破綻への備えのための国債償還費の手当てが少なくなったということを挙げておりますが、私はやはり、今回国債費が、その意味では昨年度と比べまして減った一番大きな理由は、まさにここのところでありますし、それからもう一つ、強いて理由を挙げるとすれば、それは郵貯の大量の満期の償還金が出てまいりますので、これはことしと来年度限りでございますが、この満期償還金の利息からの税収が上がる。この二つの理由を除けば、私は、大変財政の事情、とりわけ公債に頼った財政の運用というものは非常に深刻なものがあるというような認識を持っておるわけでございますが、財務大臣の認識を改めてお示しいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 仰せのとおりでございます。

海江田委員 非常に端的なお答えでございますが、時間はまだたっぷりございますので、これからいろいろな議論をしていきたいと思います。

 これだけの国債の大量発行でございますが、先ほどの質疑の中でもお話がございましたけれども、長期金利は大体一・四%ぐらいのところで張りついているという状況があるわけでございます。この金利が上昇をしていかないということについて、例えばヨーロッパやアメリカなんかのエコノミストは、JGBの超低金利さは一種の経済の合理性を大幅に欠いたものになっているのじゃないだろうかというような指摘もあるわけでございますね。

 一体どうして、これだけ公債を大量発行しながら、金利が一・四%ぐらいのところで張りついているのか。その原因をどこに求めておられるのか、教えていただきたいと思います。

宮澤国務大臣 それは、すっかり御承知のとおりのことでございますが、こういう低い金利を日本銀行が設定しなければならないのには、やはりそういう事情があってのことでございますが、他方で民間の資金需要というものは、理由はいろいろありましょうとも強くない。加えまして、たまたま株式市場が低迷をいたしておることもありまして、一番最近発行いたしました十年物は、クーポンレートは一・四で発行しておりますが、したがいまして、喜んでいいことばかりとも申せないような事情から、そういうことで消化も比較的順調であるということでございます。

海江田委員 今大臣がおっしゃられた、喜んでいいことばかりでもないという問題意識は、実は私は大切だろうと思いまして、既にお読みになったと思いますが、二月二十四日の朝日新聞の社説も、これはちょうど国債の、例のS&Pが日本の長期国債を格下げいたしました、その直後の社説でございますけれども、その中で、「売れることこそ問題だ」というような見出しをつけているわけですね。

 これだけ、格下げもあった、それから金利も一・四%ですから、本来的にいえば、長期国債の投資というものからいえば、とてもじゃないけれども一・四%で、特に長期国債で十年とか長い期間になると、やはり将来の値下がりのリスクもあるわけでございますが、にもかかわらず売れているということについて、やはり問題だというような問題意識でこの社説が書いているわけでございます。

 先ほど大臣がおっしゃった、喜ばしいことばかりでないというその理由というものを、もう少しお聞かせをいただきたいと思います、具体的に。

宮澤国務大臣 それは、先ほども申し上げましたことの裏を申し上げればよろしいのだと思いますけれども、例えば、株式相場がもっと活況でございましたら、金はそっちの方に行くと考えるのが普通かと思います。今のように低迷しておりますと、恐らく、金は国債の方に自然に行くということになるのではないか。

 それからまた、こういう低い金利、これは日本銀行総裁が非常に御苦労していただいていることではございますけれども、民間の資金需要があればこんな低い金利でいいはずはないし、したがいまして国債の金利もこんなに低く出せる。国庫の負担としては軽くなりますが、そういうわけのものではないでございましょうし、やはり今の日銀の低金利というものが普通の状況で起こっておることではない、普通と違う状況で維持されているということからくるいろいろな異常な状況というものが説明になろうかと思います。

海江田委員 今、主に二つ、株式相場の問題とそれから民間の資金需要というお話がありました。これはまさしくそのとおりでありまして、この問題につきましては後でまた少し議論をしたいと思います。

 あと、一つは、例えば先ほど税収の増にもつながっています郵便貯金で満期金が出てきて、この郵便貯金の満期金の預けかえに、例えば郵便局が国債を、大変力を入れて募集をしている。それも大変売れ行きがいいといいますか、これは二年国債がやはり中心になりますから、そうなると、本来でしたら、こういう低金利のときでありますから、なるべく長期の国債を出しておいた方が財政の運営上からいけば当然いいわけでございますが、どうしてもやはり売れるところに出すということでいうと、二年物の国債が中心になってしまう。今回もかなり大量の、国債の発行の中身の計画を見てみますと二年物が多いわけでございます。その意味では、せっかく低金利であるにもかかわらず、それが二年物の国債中心になることによって、長期物が出せないというような問題も生んでまいります。

 それからもう片一方で、最近聞いておりますと、ペイオフの問題も絡んでおります。私どもはもちろん、ペイオフはきちっと予定どおりに実行しなさいという立場であります。そろそろこれから、本来でしたらこの四月一日からペイオフになっておるわけでございますが、それが延びてしまったということもありますが、ただ、もうそろそろ一年ですよということで、たくさんの資金を持っている、預金を持っている人たちが、とりあえず国債に逃げておこうか、これは銀行などから買っておるようでございますが、そんなようなケースもかなりある。それから銀行自体の、これは先ほどお話がありました民間の資金需要が大変低いということもあって、銀行自身が買っているということもあるわけでございますから。

 そういう意味で、総じて言いますと、これはまさに日本の構造問題といいますか、特に金融であります、それから経済の、あるいは財政の構造問題にやはり今国債が売れるということの原因がある。少しまとめた言い方でございますが、そういうような認識を持っておるわけでございますが、大臣はいかがでしょうか。

宮澤国務大臣 冒頭にも申し上げましたが、おっしゃるとおりだと思って伺っております。

海江田委員 ですから、当然のことながら、その意味では構造改革をやるという姿勢を示さなければいけないということが一つでございますが、もちろん、ただ姿勢を示すだけじゃなくて、その構造改革の一歩一歩歩み出しをしなければいけないと思うわけでございます。

 そこで、今度の予算、それからこの法律案でございますが、ここで大臣は財政の効率化と質的改善という言葉をお使いになっていますね。これはやはり、どうしても景気に軸足を置いて予算の編成をやったということから考えると、ぎりぎりこの財政の効率化と質的改善という表現になるのだろうと思いますが、私は、これをもう一歩進めていくと、やはりこれは財政の健全化ということが次のステップとしては当然出てくると思うわけでございますが、そういう理解でよろしゅうございますか。

宮澤国務大臣 御存じのような日本経済における公需から民需へのバトンタッチが、企業の方はよろしゅうございますけれども家計の方がうまくいっていない現状でございます。そのことは、この予算を編成いたしました十一月ごろにはかなり見通せる事態でございましたので、景気というものをもう余り顧慮せずに平らな予算を組んでは、ちょっとやはり問題があるなというふうに感じておりました。

 したがいまして、おっしゃいますように、一番端的な例は公共事業予備費三千億円でございますけれども、なかなか家計の消費が盛り上がってこないという事態を、やはり少し時間がかかると考えなければならないかと考えましたその限度におきまして、予算がそういう性格を持っておりますことはおっしゃるとおりでございますから、そういう懸念がなくなりましたときにはそういう問題も解消するだろうとおっしゃいましたのは、そのとおりでございます。

海江田委員 私どもは、今年度の予算が財政の効率化と質的改善を図るという目的あるいは意図のもとで編成されたとは全く思っていないわけでございます。

 これは、詳しくは予算委員会の議論の方でしっかりとした議論をやればいいわけでございますが、今大臣から公共事業の予備費の三千億のお話をいただきました。ただ、この公共事業予備費というものが、財政法上の規定からいって果たしていかがなものだろうかという議論もまたこれはあるところでありますし、それからもう片一方で、例えば同じ公共事業で整備新幹線なども、総理のおひざ元であります石川県にとにかく引っ張ってこようと、最近は我田引鉄などという言葉も出たくらいでございますが、果たして本当に公共事業が効率的に行われているかどうか、あるいは公共事業の財源であります公債が、まさに公債の発行が効率的に行われているかというところは大いに疑問のあるところであります。

 それは今もお話をしましたけれども、予算委員会の方で議論したいと思っておりますが、私はやはり、世界に対して日本が構造改革をやるんだぞ、財政構造改革をやるんだぞというようなことを示すためには、今のこの表現でありますと、財政の効率化と質的改善だけではいけませんで、もう一歩、歩を進めなければいけないのじゃないだろうか。そのときは、財政の健全化あるいは財政構造改革という名前になるのかもしれませんが。

 ただ、財政構造改革ということでいいますと、もう何年前になりますか、九七年あるいは九六年ぐらいから、例の財政構造改革法の問題がございました。あの財政構造改革法のときは、たしか一つの財政の健全化の目標というものを、EU基準と言えばいいのでしょうか、GDPに対しまして財政赤字を三%以内にするとか、あるいは債務の残高をGDPの六〇%におさめるとか、あれがやはり一つの目標になっていたと私は思うんですね。

 ところが、それからまさに三年、四年たちまして、この間にさらに債務が積み上がりまして、あるいは新規の国債の発行がふえまして、私は、これから財政健全化というものを考えるとき、今から三年前、四年前のあのEU基準というものが果たして適切なんだろうか、どうなんだろうか。むしろ、財政の健全化ということを言ってすぐに三年前、四年前のEU基準が頭に浮かんでくることによって、むしろそれは大変なデフレを引き起こすことになる。ですから、財政の健全化ということは言わないでおこうということになっているのじゃないだろうかというような考え方を私は持っておるのですね。

 私は、財政の健全化というのを、三年前、四年前のEU基準でない、端的に言えば、私の考え方では、今これから考える財政の健全化というのはプライマリーバランスの問題だろうという認識を持っておるのですが、この問題についてはいかがでしょうか。

宮澤国務大臣 財政構造改革をシミュレーションしながら、社会保障とか地方とか税制とか、いろいろ同一、サイマルテニアスに答えを求めるということになってまいると思いますが、その答えが出ましたときに、財政そのもののバランスの目標をどうするかというのは、当然、問題として出てまいるはずであります。その際、EC型というのはなかなか望んでも現実性の少ないことでございますから、プライマリーバランスなんというのも一つの目標として登場するかもしれませんし、あるいは、何年以内に赤字国債発行をこれぐらいにするといったようなことであるかもしれません。

 いずれにしても、社会保障諸施策等々を考えますと、その給付についての国民のかなり強い要望等々いろいろ、あるいは地方財政もそうでございますが、としますと、財政一本やりで緊縮を図るということは、シミュレーションの結果としましてでもなかなか難しいだろう、それでもかなりきついものにならざるを得ないと思っております。その目標をどこに置くかは、他の要素がどういうところにおさまるかともあわせまして、そのときに考えなければならないと思っております。

海江田委員 まだ時期尚早だと。あるいは、社会保障費の問題、これを税方式にするのか保険料方式をそのまま残すのか、あるいは社会保障の水準をどのくらいにするのかとか、もちろん議論すべき課題といいますか点は本当にたくさんあると思いますが、私は、財政の健全化というものは、例えば、先ほどお話をしました国債の格下げの問題などとも絡んできまして、どこかの段階で打ち出しをしなければいけないときだろうと思うのですね。それは、社会保障の問題に決着がつくまでとかそういう以前に、私は、かなり早い段階で来るのじゃないだろうか。

 せんだって、財務大臣が予算委員会で、たしか公明党の方の質問に対して、二年間ぐらいは、ことしと来年ぐらいは景気の方に軸足を置くけれども、そこから先は、まさに、私の言葉で言うところの財政の健全化というものも考えなければいけないのじゃないだろうか、猶予は二年ぐらいあるのじゃないだろうか、だけれども、そこから先は、そういうような、まさに財政の健全化の問題を考えなきゃいけないのじゃないだろうかというような発言もあったと思うのです。

 その場合、念頭に置かれておるのは、何らかの形で、まさにプライマリーバランスが私は一番わかりやすいと思うわけですが、目標値というものがなければ、これはどういう計画で、そういう一つ一つのステップが、一年目はこうやって、二年目はこうやってというようなものが決められないわけでございますから、そういう目標値にプライマリーバランスを置くということは、私は、無理のない妥当な考え方ではないだろうかということを考えているわけでございます。

 重ねての質問で恐縮でございますが、赤字国債の量をどうするこうするとかいう考え方もあります。ただ、私どもは、この赤字国債については、建設国債と赤字国債を一緒にして、同じ公債という形で、しかもその発行について特例公債と同じような扱いにしろというような主張もしておるところでございます。赤字国債をどうしろこうしろということよりも、むしろ全体で、とにかく公債の新規発行額を少なくとも公債費の中におさめるということを一つの目標にするということが、私は、そういう目標を掲げることが、世界に対する日本の財政の健全化の決意としても非常に大切ではないだろうかというふうに考えているわけでございます。

 重ねてのお尋ねで恐縮でございますが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 私、それも一つの可能性である、考え方であると思いながらお答えをしているわけですが、実は、私がいわゆるシミュレーションをいたします時点で心配をいたしますのは、まず、社会保障については、給付についての国民の要望が高いであろうということ。それから、国民負担でございますが、今三六、三七ぐらいの比較的穏やかなところにおりますけれども、普通になりましたら、なかなかそんなことでは済まずに、五〇を超えてはいけないという声があったりいろいろでございますけれども、三六とか七とかいう話ではなかなか済まない。しかし、それでも、どこまでもいける話ではない。地方財政も悪うございます、等々考えますと、シミュレーションの結果、財政緊縮と申しますか、財政の堅実化がどれだけプライオリティーを主張できるかというのは、何しろこれだけ悪うございますので一生懸命やってみてではございますが、プライマリーバランス、このぐらいのところまでいけるよといったような、そういうところまでいけるものなのか、もう少し時間がかかるものなのか。

 そこらのところが、今は財政改革といって皆さんも支援をしていただいておるわけですけれども、そういうシミュレーションのときのプライオリティーの置き方になりますと、どうしても財政は後回しになりやすい性格を持っておりますので、そういう状況の中で、どういうことが一番財政のためにいいのであろうかということはいろいろ考えあぐねるところでございます。

海江田委員 私は、社会保障の問題の場合も、やはり時間との闘いといいますか、時間をかなり強く意識しなければいけないのだろうかと思っておるわけです。

 例えば、二〇〇七年までは日本の国の人口がふえていくわけでございますが、二〇〇七年がピークになって、二〇〇七年から減っていくわけですね。そうしますと、まさに、貯蓄率でありますとか、そういうものもだんだん低くなってくるんじゃないだろうかということも言われております。しかも、その二〇〇七年という数字も、最初はたしか二〇二〇年ぐらいだとかあるいは二〇一一年ぐらいだとか、どんどんその数字が手前に繰り上がってきているわけで、二〇〇七年というのもたしか九七年ぐらいの数字をもとにした計算だろうと思いますので、その意味では、そんなに悠長なことは言っていられないわけです。まさに、二〇〇七年ぐらいに向けてどういうメッセージを日本の国が発するのかということ、これは、日本の国民だけじゃありませんで、世界の人たちも見ているというような認識を持っていただかなければいけないと思うわけでございます。

 この問題だけで余り時間を費やすわけにはいきませんが、ただ、私は、財政の健全化とかいうときに一つ考えなければいけないのは、宮澤大臣のお話なども聞いておりまして、とにかく今は景気回復が最優先だ、景気回復することによって税収の自然増もあるだろう、それが財政の健全化の一つの、かなり大きな要素になるだろうというようなお話もあるわけでございます。

 ただ、本当に景気回復によって税収がふえてくるということだけでいいのだろうか。特に日本の場合は、これは財政の中期展望にも出ておりますけれども、景気が回復してきて金利が上がれば公債の発行額あるいは国債費のところが膨らんでくるわけでございますから、そう簡単にやはり景気回復によって税収増を期待するわけにはいかないということで、そうなってくると、やはりどういうふうに考えましても、一つは、これは歳出の削減、それからもう一つは、大変耳に逆らう言葉ではありますけれどもやはり増税ということ。

 ただ、その増税を、この間大臣は予算委員会で消費税の増税というようなことをちょっと口にされまして、その後、また与党の別な政党の方からの発言で、増税は当分考えていないというような、消費税の税率上げは考えていないというような形で撤回をされましたけれども、例えばアメリカなんかは、やはりクリントンの税制改革のところで、とりわけ所得税を一たんフラットに戻したのをまた累進税率を高めまして、特に高額所得者のところから増税をした。景気がよくなって、消費税、ほかの税収が入ってくる、法人税なんか入ってきますけれども、税率をこの間ずっとフラットにしちゃっていますから、税率をフラットにすると、実は景気がよくなってもそんなに税収はふえないわけですね。

 だから、本当に景気がよくなって税収がふえるということになったら、やはりもう一回累進性を強めるとかそういうことも当然考えなきゃいけないわけで、私は、何でもかんでもとにかくすぐ消費税にというようなことを言うのは、恐らく宮澤大臣もあのときは消費税という言葉をお使いになったんだろうと思います、五%から七%みたいな言い方をされたんだろうと思いますけれども、消費税だけじゃありませんで、やはり所得税や法人税の累進構造、法人税の場合はやはり国際競争力がありますから、私は法人税よりも個人所得税だろうと思うんですが、やはりそういう累進構造を戻して、景気がよくなったときの税収の増に貢献できるような税制というものをこれからは考えておくべきではないだろうか、そういう考え方を持っておるんですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 先の問題でございますので、今お尋ねにすぐにお答えできる気持ちの用意がございませんですけれども、所得税でやはり一番私がこれはと思っておりますのは、課税最低限が高過ぎるということでございます。毎年毎年大きなベースアップが可能であったものですからだんだん上がっていきまして、これだけある程度生活水準の高い国民でありながら所得税を納めているという人が大変に少ない。もっと多くなれるはずだというその問題が、別の意味でも私はまず所得税で最初の問題ではないかな。海江田委員が言われましたことも一つの問題であろうかと思っておりますけれども。

海江田委員 今の課税最低限の問題につきましては、我が党でも課税最低限の問題に大きなウエートを置く方もいらっしゃるわけでございますが、ただ、その課税最低限の話を私なんかもいろいろなところでしますと必ず出てくるのは、国際比較でありますからやはり物価の問題なんかも考えてみなければいけないわけで、そもそも課税最低限というのはどういうところから出てきたのかといえば、これはやはり本当に、人が人として必要最低限な生活を維持していくものについては課税をしなくてもいいんじゃないだろうかとかそんなようなこともあって、やはり生活費、公共料金、そういうものが高いということも考えてみなければいけないよという声が必ずあるわけでございます。ですから、その辺のところを考えていただかなければいけない。

 ただ、片一方において、本当に勤労者のうちの実際に税金を納めておりますのが三割だとか四割だとか、これもまた一つ問題ですから、やはり片一方で、必要最低限の生活を送っていくための生活費が高いということも念頭に置かなければいけないというふうに思うわけでありますね。これは十分大臣はおわかりになっておると思いますが。

 少し税制に入っていきますが、今回、租特で住宅減税が一つの目玉になって盛り込まれております。この住宅減税につきましては、これまで十五年だったものが十年になったということもあって、ただ、実際、いろいろ買いかえだとかなんだとか見ていますと、十年から十一年ぐらいでやはり今までのところを新しいところに移っているようなケースもありますので、十五年を十年にしたのはけしからぬというようなことは私は余り考えていないんですが、ただ、一番基本的な問題というのは、むしろ今住宅ローンの問題で一番困っている人たちはどういう人たちかというと、これは、既に住宅ローンを借りて、そして買ったマンションなり戸建ての住宅に入って毎月毎月ローンを返している人たちですよね。特に、デフレ傾向といいますかあるいはデフレといいますか、デフレのやはり一番の問題というのは借金が減らないことにあるわけでございます。だから、この人たちの負担をどういう形で軽減していくのかということもやはりひとつ考えなければいけない。

 それから、これまでの住宅取得控除の考え方というのが、まさに経済が右肩上がりで、給料も当然のことながら右肩上がりで上がっていきますよ、あるいはボーナスもたくさんありますよ、それから、買ったマイホームというのはこれも買った瞬間からどんどん右肩上がりになっていきますよ、上がっていきますよ、ですから住宅を新規に買った人たちが一番困るのは買った当初だけですよと。

 それこそ、まだ給料もそんなに高くないでしょう。しかも、これから給料やボーナスは上がっていくんだけれども、まず給料が余り高くないでしょう。それから、買った家自体もまだ値上がりしません。だから、買った当初、昔は五年間でありますとか七年間でありますとか、それがだんだん延びて十五年になっちゃったわけですけれども、最初はまさに、一番初めはたしか三年ぐらいからスタートしたわけだと思いますけれども、税額控除で、買った当初苦しいだろうから、その買った当初何とか税金の面から支援をしようじゃないだろうか、こういう考え方があったことは事実でございますね。

 公庫の融資なんかも、ゆとりローンですか、全然ゆとりにならなかったという皮肉な結果もあるわけですけれども、十年ぐらいは金利を低くして、そこから金利が上がっていく、全部そういう形で右肩上がりでシステムが組まれていたわけですね、特に住宅減税のところは。ですから、この際ですから、もうそういうような形での右肩上がりがないという大きなパラダイムの変換といいますか、そういう考え方にのっとった制度をやはり考えなければいけないということ。

 それから、現実に今、どうしても個人の消費に結びついていかないということを言いますが、それはまさにローンを抱えちゃった人たちが、とてもじゃないけれども今お金を使う余裕がない。もちろん将来に対する不安もあるわけでございますけれども、現実的には、ボーナスも少なくなった、そのほとんどを住宅ローンで持っていかれてしまう、それから毎月の給料も住宅ローンで持っていかれてしまう、とてもじゃないけれどもそういう消費の余裕がないんだというような人たちもたくさんいるわけでございますから、やはり今本当に一番必要な住宅減税ということでいうと、それは、例えば金利分を所得控除、税額控除じゃなしにそういうふうに切りかえをすべきじゃないだろうかというふうに考えているわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

尾原政府参考人 ただいま、現在の住宅ローン利子の税額控除制度を所得控除にした方が景気対策上もよろしいのではないかという御指摘でございました。

 実は、この所得控除の問題、平成十一年度に現行の制度を議論します前、大いに審議を税制調査会においていただきました。

 その結果でございますが、一つは、所得税といいますのは最終的に消費や貯蓄に回される部分を含めました所得に対して課税するものでございまして、住宅ローンの利払い費というものはやはり生計費支出の一種であり、これを所得税の課税対象から外すことは所得税制上なじみがたいのではないかというような指摘がまず出されました。

 それから、その次の問題といたしまして、中堅所得者層以下などはどうしても限界税率が相対的に低くなってまいります。そうなってまいりますと、そういう者にとっての負担軽減効果が小さくなるという問題が逆に出てまいります。そういたしますと、中堅所得者層以下の住宅取得促進をどう考えるかという問題が出てくるわけでございます。

 それからまた、諸外国の状況でございますが、確かに住宅ローン利子の所得控除制度というのが導入されている国が諸外国でもございましたが、これは縮小されたり、廃止されたり、歳出措置に変更されてきているようでございます。やはり、所得税をどう考えるかということからの問題もあるようでございまして。したがいまして、所得控除に切りかえるというのはこういうような流れにも反しはしないかというふうに考えているところでございます。

海江田委員 これは全然反さないと私は思うわけでございます。アメリカの例なんかもそうですけれども。もちろん、あれはアメリカのレーガン税制で広がって、また少し戻したりとかいうことになりましたけれども。

 私は、やはり一つは、投資減税だという考え方を持つことも必要じゃないかなというふうに思うわけであります。投資減税ですからそこのいわゆる金利負担分を、もちろん家賃収入という形で上がってくるわけではありません、二軒目から持てば家賃収入という形で上がってくるわけでございますが。それ以外の場合でも、やはり人間に住宅というのは必要不可欠なものでありますし、もちろん買う場合でも借りる場合でも種々形態はあるわけでございますけれども、やはりそういう必要不可欠な資産を手に入れるというような考え方からいって、私はむしろ、投資を促進するというような意味合いを込めていって、自宅で、直接家賃は生まないけれども、だけれども金利分についての控除というものも考えられるのではないだろうかというふうに実は思っているわけであります。

 もちろんトータルしてどっちが得になるか損になるかというところも、これもいろいろなケースで計算が違ってくると思いますが、やはり金利の負担分があるときは当然のことながら控除を与える。それが何年になるか、二十年になるのか三十年になるのかわかりませんが、その二十年とか三十年の間にはやはりその本人の税率等もどんどん違っていくわけでございますから、余り簡単に、どういう前提条件を置いたかも明らかではありませんけれども、決してそちらの方が不利だというようなことにはならないんじゃないだろうか、私はそんな思いを持っているわけでございます。

 反論がありましたらどうぞ。

尾原政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、やはり所得税というのは、できる限り課税ベースを広く、消費や貯蓄に回される部分も含めて課税するというのがこの税の基本的な考え方になってくるのではないかと思います。住宅ローンの利払い費というものを所得控除ということになりますと、それでは家賃はどうなるかとか、食費、これも生計費そのものでございます。

 したがいまして、所得控除の問題といいますのは、所得税そのものをどう考えるかというところにどうしても触れてくるわけでございまして、なるべく景気対策に役立てるべしということかとは存じますけれども、どうしてもそこのところが踏み切れないところでございます。

海江田委員 この問題だけでこれ以上議論する時間はありませんが、もう一つ。

 今回のこの租特の中で、買いかえに際しての譲渡損失の繰越控除の制度がかなり充実をしましたよということで取り上げられているわけですが、私は、これはちょっと逆じゃないだろうかな、損失を繰越控除するんじゃなくて、この場合は繰り戻しをやって還付をした方がはるかに効果は大きいんじゃないだろうか。

 これはおわかりになるだろうと思いますけれども、まさに、住宅を買いかえる場合、前の家を買っていて、そして売ったところで損が出るというのは、これはその前の段階で、持っている間に損失が出てくるわけですよ。損失の発生というのが過去にさかのぼるわけです。そこでそれぞれに所得税なり税金を払っているわけですから。もちろん、住宅ローンの控除を受けて払っていない場合はこれは戻しようがありませんけれども、やはり所得税を払っている場合は、そこで払っていた所得税が、一たん損失が確定をしたところで三年なら三年、五年なら五年戻って還付を受けられるということになれば、そこである程度まとまったお金が出てくるわけです。

 今の買いかえの人たちが本当に身動きがとれなくなってしまっているのは、やはり、今まで買った家で、まだローンの残債がある、そのローンの残債にもちろん自分の手持ちの資金をつぎ込むわけですけれども、まだやはり足りないなんということがあるわけですよ。あるいは、そこで自分の持っているお金を全部つぎ込んじゃったらそこから先が不安になってしようがないとか、それから新しくローンを借りるときのいろいろな返済の条件だとかいう問題に大変な不安が出てくるわけですから、やはりそこで少なくとも、五十万でも百万でもいいけれども、これまでに納税をした分がそこで一たん返ってくるということになれば、むしろこの買いかえというものは進むんじゃないだろうかというふうに私は考えているわけです。ですから、繰り越しの控除じゃなくて繰り戻しの還付ができないのかということ。

 それからもう一つは、これは住宅ローン減税との関係でいうと併用になっているということですけれども、この併用ということでいうと、住宅ローンの控除も受けられますよ、それから損失の繰り越しの控除も受けられますよということになると、現実問題として、新たに購入したところで、住宅ローンの控除を受けてしまえば、まさにそこからは所得税がほとんど発生してこないわけですから、併用になってもほとんど意味がないんじゃないですかというような問題点もあると思うんですね。この点についていかがでしょうか。

尾原政府参考人 今回の税制改正におきまして、居住用財産の買いかえの場合の譲渡損失の繰越控除制度、これを三年間延長をお願いしているところでございます。これは、先生からお話ございましたように、まさに景気対策といたしまして、バブル期に住宅を購入した人が含み損を抱えている、なかなか買いかえに踏み切れない、ここの住みかえを支援すれば景気対策になるということでお願いしているわけでございますが、これは、まず所得税の暦年課税の例外としてこの景気対策を措置しているわけでございます。

 繰り戻し還付というのは、確かに一つの制度としてあり得るわけでございますが、実は所得税の体系の中での繰り戻し還付といいますのが、青色申告者の純損失について、しかも一年に限って認めているところでございます。これは、事業を営んでおります青色申告者でございますが、多額の損失を生ずる、あるいは廃業というようなことがございます。このような場合、繰越控除制度では税負担の調整ができないというような事情、つまり事業基盤そのものにかかわってくるだけに救済しようがないということで例外的に実は設けているわけでございます。

 やはり、この課税関係、多数の納税義務者の方について発生するわけでございますから、毎年なるべく早期に法律関係は安定する方が望ましいと考えられますし、また、所得税は暦年課税ということでもございます。したがいまして、ただいまの御質問のように、住宅の買いかえによる譲渡損失まで繰り戻し還付の例外措置を設けることはいかがかと考えているわけでございます。

 なお、先生から御指摘ございましたように、住宅ローンの減税制度は、この制度と同時に併用ができるというようなことにもなっているわけでございます。

海江田委員 今の後ろの方はちょっとわからない。併用ですけれども、当然のことながら、別に、所得税を納めなければ、住宅ローンの控除の方で減税を受けて所得税がゼロならば、それに上乗せにはなりませんわね。だから、実際は、これはやったって本当は意味ないんですよ、正直言って。

 与党の皆さん方もいろいろ工夫をされたんだろうと思います。だけれども、これが繰り戻し還付になれば、もう税金を既に納めているわけですから、もう確定しているわけです。しかも、さっき話したように、本来からいえば、ではどこで損失というものが発生をしたのかと言えば、毎年毎年、持っている間に発生をしたわけですよ。だから、そこのところで、過去に納め過ぎた、まさに納め過ぎをした税金を戻してくるということは、やはり当然のことであって、先ほど来おっしゃっていただきましたけれども、むしろ青色申告にはそういう例があるわけで、一年しか、限られているということは全くそのとおりでありますが、特例で設けたということであれば、やはり、わざわざ、実際に大きく、この居住用財産の買いかえの譲渡損失の繰越控除制度ということを言ってみても、本当に、それで併用だということになれば、実際これを使って利益を得る人はいないんですよ。それから、場合によっては失業するかもしれないし、どうなるかもわからないというような人たちにとって、本当にこれが、ああ、いい制度ができた、これで安心して買いかえができるというような気持ちになるかどうかと言えば、これはほとんどならないと言っていいと私は思うんです。

 本当に、実際にローンを借りている人だとか買いかえを考えている人なんかにとってみれば、こういう新しい制度ができましたよということを言ったときに、今、与党・政府が出しておりますこういう制度ですよ、ああ、それはいい制度だ、じゃ早速それでやろうということになるかというと、ほとんどなくて、むしろその逆でありまして、今私がお話をしたような、やはりこれまでにかなり損を抱えているから、その損の全部じゃないけれども、少なくとも五十万円ぐらいは戻ってくるよというような話の方が、よし、それならば引っ越しの費用が出るじゃないかとか、よし、それならば何か新しい家具でも買おうじゃないかとか、やはりそういうようなことになるんじゃないだろうかと私は思うんです。

 大臣、今のお話を聞いていてどうでしょうか。なかなか御答弁は難しいとは思いますが。

宮澤国務大臣 大変、何と申しますか、興味を持って伺っておりました。いろいろ考え方があるなと思って伺っておりました。

海江田委員 考え方があるなと言われると困るわけでございますが、まさに、やはり少し発想を転換しまして、本当に、ああ、政治というものが私たちの生活に気配りをしてくれているんだと。これは別に与党だけじゃなくて私どもの民主党にもいろいろな意見があるわけでございますが、きちっと政治がそういう目配りをしているんだ、それから、本当に自分たちのことに気を使っているんだということをやはり明らかにする必要があるんじゃないだろうか。そのためには、やはり、本当にいろいろな人々と接しております政治家がいろいろな提言をしていかなきゃいけないんじゃないだろうか。

 最近は、公務員の方も大分住宅ローンなんかも実際に御自分でお借りになっている人たちがいると思います。ただ、どちらかというと公務員の方々というのは官舎にお住まいになってしまいますから、そうすると、なかなか本当に、住宅ローンを抱えている人たちの悩みだとか苦しみだとか、そういうものがどうしてもわからなくなってしまいます。国会議員もそうでございますので、そういう点をやはりこれから改めていかなければいけないかなと思っております。

 もう一つ。これも少し細かな話でございますけれども、この住宅ローンの控除の制度も、例えば増改築についてもこれは当然のことながら利用ができる。いろいろな条件を満たせばできる、床面積が五十平米以上であるということなんですが。

 ただ、これからいわば高齢者がマンションなんかに住んでいるケースが多くなるわけでございます。昔、税務署の方にお尋ねをしたことがあるんですが、例えば今まで部屋が幾つかに分かれていたのをバリアフリーにする、もちろん金融機関からローンを借りてきてでありますけれども、それで、家族ももういなくなったから改築をする。マンションの場合なかなか増築というわけにはいきませんから、改築をする。改築でも、ここに書いてあるような条件を満たせば、当然減税が受けられるよということであります。

 だけれども、例えばマンションなんかの場合、じゃ改築の定義は何かということを聞いたら、改築というのはいわゆる主要構造物に手を入れなきゃだめですよということを言うわけですよ。そうすると、じゃ、マンションなんかで本当に主要構造物に手が入れられるのか。マンションの主要構造物に手を入れたらマンションがつぶれちゃうわけですから。そうすると、現実に、増築の場合は床面積がふえるからいいわけでございますけれども、改築で床面積がふえない場合ほとんど使われていないんじゃないだろうか、特に集合住宅の場合。

 集合住宅でもって改築のローンを借りてこの控除を受けたケースというのはあるんですか、これまでに。ちょっとお尋ねをします。

尾原政府参考人 住宅ローン減税制度の増改築の場合、一定の要件を設けさせておりますが、マンションについても例はあるというふうに承知しております。

海江田委員 どんな例がありますか、ちょっとできたら教えてもらいたいんですが。どんなケースで控除が受けられたか。

尾原政府参考人 増改築した場合の対象となる例でございますが、マンション等の区分所有建物について申し上げますと、その人が区分所有する部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕、模様がえの工事というように承知しております。また、いろいろあるわけでございますが、家屋のうち、あるいは居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕、模様がえ。

 この要件を設けておりますのは、実際、我々日常壁を塗りかえたりあるいは壁紙を張りかえたりすることはよくあるわけでございまして、このローン減税の対象となるものは、やはりある程度大きなものを税制としては対象にすべきではないかという考え方からこのようになっているわけでございます。

海江田委員 これはせっかくつくった制度でございますので、なるべく使い勝手がいいように、ぜひ各現場に、税務署にそういうような通知をしておいていただきたいと思うわけでございます。

 それから、これは今回の税制改正の中には盛り込まれませんでしたけれども、今、与党あるいは野党の中などでも、株価対策といいますか、まあ私どもは株価対策というストレートな言い方ではないわけですけれども、株式市場を何とかしなければいけないという考え方があるわけで、金庫株の問題などは主にこれは商法の改正で対応するということでございますが、一番株式市場の対策で人々がといいますか、これは一般の投資家だけじゃなくていろいろな業界の方々も望んでおりますのは、やはり税制についてなわけでございますね。

 この税制の中についても幾つか議論があるわけでございますが、例えば株式の譲渡益の課税でありますが、金融庁はこの譲渡益の課税について、昨年末ですか、たしか幾つか要望を出したと思うんですが、ちょっとそれを改めて教えてください。

柳澤国務大臣 ちょっと突然の御質問なので、どれだけ正確にお答えできるかおぼつかないわけでございますが、基本的に譲渡益課税については、一つは、申告分離を想定しまして、その分離課税の税率について配慮をしてくれないか、それから二つ目は、譲渡損が出たときの繰り越しを認めてくれないかというようなあたりが主要な要望事項でございました。

海江田委員 確かにそのとおりでありまして、今、現行二六%ですから、他の金融資産と比べて高いですからこれを二〇%にしろという話と、それから、おっしゃる譲渡損の繰り越しの話でございますが、どうでしょうか、これは党内でいろいろな議論があるわけでございますが、これは私の個人的な考え方ですが、株式の譲渡益については、どうせ思い切ったことをやるんならば、私は、例えば源泉分離を残して源泉分離の税率を一〇%にするとか、こういうことも一つ可能性というか、選択肢としてはあるんじゃないだろうかと思っているということです。

 いろいろな国の税制を見ますと、例えばドイツなんかでは、これは株式の譲渡益の課税、個人が小口で、しかも一年以上の長期にわたらなければいけないわけですけれども、一年以上保有をした株式の譲渡益は非課税ですよという制度になっておりますね。

 それで、我が国も、株式の譲渡益の課税の沿革という資料をいただいて、もう一回改めて見たのですが、戦前からずっと戦後、ほとんど非課税のときがありまして、平成元年度ですから一九八九年に入って、まさに消費税の導入のときに申告分離課税と源泉分離課税のどちらかを選択してくださいという制度が入ってきた。

 この資料にはありませんが、たしかマル優の廃止がこのころだったのではないかなというふうに私は覚えているのです。ちょっと一、二年ずれるかもしれませんが、片一方で貯蓄の方の優遇制度というものがなくなって、では、投資の方に余り偏ってもいけないということもあって恐らくこの制度が出てきたのだろうと思います。そこで、みなし利益が五%になって、それから平成八年度になって、みなし利益率が五%から五・二五になって、平成十一年度ですから一九九九年になって申告分離課税への一本化ということが決まって、だけれども、それが源泉分離を延ばしているという経緯があるわけでございます。

 どうなんですか。株式の譲渡益を課税にすべきだというような考え方と、それから、まさにこれは譲渡益の世界になるわけですけれども、何かドイツのなんかは、聞いてみますと、株の所得というのはそうしょっちゅう出るものではないからこれは一時所得の扱いではないだろうかというようなことも言われたりして、それから、余り一時的に派生したそういう所得に対しては税金をかけることはないよという考え方もあるというような、これは一つの考え方です。どういうところから、貴族の社会なんかでは、地代だとかなんとか毎月毎月、毎年毎年必ず入っていくので、そんなフロックの所得なんというのはそもそも課税すべきではないよと。

 さっき、機密費を受け取ったらどうなるのかとかいろいろな議論がありましたけれども、一時所得というもののとらえ方もかなりいろいろな見方があるわけです。だから、そういう従来の考え方からきて、何で譲渡所得というもので、譲渡益で、しかも株の譲渡益に税金がかかってきたのか。

 それから、従来の考え方とはまた別途に、先ほど来きょうの委員会でもずっと議論になっておりますのは、これは柳澤金融担当大臣なんかもるるお話がありましたけれども、今の日本の一番、特に金融機関なんかに不足しているのは、資本の部分だ。資本でも、本当はティア1の部分なわけでございます。

 それもさっきお話がありましたけれども、資本市場を育成していくということで考えたとき、果たして、これまでのような、片一方は不労所得だ、片一方は勤労所得だ、だから勤労所得と比べて不労所得に対して税金を高くするのは当たり前だというような議論をもう離れて、この資本市場をどうやって育成していくかということをやはり考えなければいけないのではないだろうか。そのときは、かなり大胆な発想があっていいのではないだろうかというふうに私は考えているんですけれども、この点についてはどうでしょうか、いかがでしょうか。

尾原政府参考人 ドイツの例がございました。

 ドイツは、確かに投機売買、一定のものについては総合課税にいたしますが、その他は非課税というふうになっていることは、そのとおりでございます。

 実は、所得税の所得をどう考えるかという議論がございまして、ヨーロッパ諸国は、制限的所得概念、つまり毎年毎年所得が出るようなものは所得税の対象にするが、一時的に入ってくるようなものは所得税の課税対象にしなくていいという考え方がございます。

 他方、アメリカ等では、いわば包括的所得概念、つまりキャピタルゲインが発生いたしますとその分経済力が増加するわけでございますから、他の所得と合わせて包括的に所得税の課税対象にすべきであるという考え方がございました。

 それで、この制限的所得概念、実はイギリス等でもとっておりましたが、戦後の流れとしては、所得税というのは包括的に考えるべきであろうということで、イギリスも総合課税になってきているわけでございます。

 日本の所得税体系でございますが、シャウプ税制によりまして、基本的には包括的な所得税制によるのが公平な税制であるということで参ったわけでございますが、御承知のように、市場の育成というような見地から、有価証券取引税はございましたけれども、株式については基本的に非課税という時代が長く続いてきたのはそのとおりでございます。

 しかし、税の公平をこれまで以上に考えていかなければなりませんし、所得税についても、どうやって公平中立な税制にしていくかということで、平成元年の抜本改正におきましてようやく、源泉選択分離課税ではございますが、原則課税の世界になってきたわけでございます。

 それから、有価証券取引税が廃止されたということもございまして、この申告分離の一本化ということで一度法定されましたが、現下の経済状況等を勘案いたしまして、まさに源泉選択分離課税が二年間存続する。これはまさに現下の経済状況、株式市場等をにらんだ措置というふうに考えているわけでございます。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 私どもは要望する側でございますので、要望する側の話として聞いていただいて結構ですが、一言申させていただきたい、こう思います。

 まず第一に、一つは資産性の所得について総合課税論というのがもう本当に、日本では圧倒的な勢いでこれまで大きな流れをつくってきたわけでございますが、あるいは、多分先生御案内だと思いますけれども、最近の租税理論の中での最適課税論をとる場合には、資産性所得については、むしろ分離課税というものが本来あるべき税制ではないか、こういうようなことも言われているということで、何でもかんでも、私どもは資産性所得のことを論ずるときに、すぐ納税者番号制とか言われまして、いつになったらできるかわからぬようなことにひっかけられて、資産性所得の課税論というものが一歩も二歩も動かない、こういう状況にあるわけでございまして、これは非常に日本の税制として、私は考えてもらわなければならぬ点である、このように一つ考えております。

 それから、第二番目はインカムとゲインのことでございます。やはり基本的に税、株式につきましても売ったり買ったりして非常に激しく、一年間短期で株を取引する人たちというのはゲインを求めて、現象的に一つ一つはゲインですけれども、一年間の総体の経済活動としては、そういう形でインカムを求めているというふうにみなすことができると思うのです。

 そういう意味で、私は、これについては課税をするということは、ほかの所得との対比で、例えば貯蓄の利子のようなものとの対比で課税をするということは十分あり得ることだと思います。

 しかし、これを長期、長期をどれぐらいの期間で見るかということは確かにこれから検討していただきたいわけですけれども、長期の株式保有、資本の保有で、たまたま何年に一回売ったというようなものについて、通常のインカムと同じようにそれをほかのインカムとの比較で論ずるのが本当にいいことなのか、正しい適切なことなのかということも、私は大変疑問に思っているわけでございます。

 そういうことが、最近のいろいろな各国の税制の動向であるとか、あるいは租税理論の動向だとかというようなものを踏まえて、私は、片方、日本の貧弱な資本の市場あるいは個人の株式保有の実態というものを見て、一体どういうふうな税制であるべきかということを、近々本当に研究をして、結論を出していかないと非常に大きなおくれをとるのではないか、このように考えます。

 一言申させていただきますと、私ども、株価対策としての税制などを論じないにもかかわらず、私、これはちょっと言っちゃいけないのかな、ちょっと要望側としてというまくら言葉を振りましたのでお許し賜りたいのですが、政府の税制調査会会長がすぐああいう、新聞で伝え聞いたところですけれども、問題にもならぬというような議論を展開される、全くもって私は、もう少しお考えを深めていただきたいという感じを持ちました。

海江田委員 その意味では、大変率直なお話を聞かせていただきましたけれども、今回、株式の税制について踏み込みをしますと、まさに予算で縛られている話ですから、そこの数字を動かさなきゃいけないとかいう話が出てきて、そこから、一番大事な、まさにみんながここのところに手をつけてくれよと言っているところに手をつけずに、しかもこの一番大事な時期ですから、本当はこういう委員会でももっと活発な、大蔵大臣の意見も私は聞きたいと思いますけれども、やはりそういう議論があって。それから、ここの問題は政治家が前に出なきゃだめです、お役人だけに任せておいたらさっきのような答弁になりますから。

 私は、資本を充実ということ、これが今の日本の経済構造の改革だとかそこにとって一番最重要の課題なんだということを決めたら、その中で議論をしなければいけない。予算でどうしてもその間は議論できないということなら、予算が終わってからでもいいですから、皆さん方は皆さん方の考えの案を出していただいて、私どもは私どもの考えの案を出すということで議論をしていく必要があるのじゃないだろうか、そういう姿勢を見せておく必要があるのじゃないだろうかと思うわけでございます。

 それから一つは、これは宮澤大蔵大臣に、せんだって、ああなるほどなと思ったのは、私たちはどうも、私たちというのは宮澤大蔵大臣ですけれども、二宮尊徳の教えをずっと聞いてきましたからというようなお話がありました。

 そういうのが一つの桎梏になって、日本の個人の金融資産というのはどうしても預貯金に過多に、五五%ぐらいになっておるということであります。株式は投資信託なんかを通してもせいぜい七%ぐらい。

 片一方でアメリカの、またこれは貯蓄の少な過ぎ、投資の過剰で、アメリカの場合、五五%ぐらいが直接間接を通して株式市場に入っている。だから、今みたいに株価が非常に高所恐怖症になってくると、ナーバスになって、いいときは、まさに資産効果ですから、それなりの消費なんかもふえますが、ちょっとでも危なくなってくると、逆資産効果で、みんな縮こまってしまうという状況がある。アメリカというのは、その意味では、私たちは余り、ここまでいったらちょっと行き過ぎじゃないだろうか、経済に対するぶれが大き過ぎる。

 その点を見てみると、ドイツの個人の金融資産の貯蓄の分散というのは非常に投資と貯蓄のバランスがとれていまして、一七、八%ぐらいですか、株式市場に回っているのは。

 私は、ぜひこのドイツぐらいのものを目途にしていって、その意味では、どうやってドイツぐらいのところまで誘導していくことができるのかということを、税制だとかあるいは四〇一kだとかいろいろな手だてを通じて、そういうところを一つの目標とするような考え方もあるのではないだろうかというふうに思うわけでございますが、これはいかがでしょうか。大蔵大臣。

宮澤国務大臣 殊に株式のキャピタルゲインの問題は、戦後ずっといろいろな変遷の経緯がありまして、私もいろいろな議論もしたこともあります。最近はいたしませんけれども、この議論をしますと、頭のいい人に説得されちゃうようなところがございます。しかし、いろいろお話を伺いますと、いろいろ昔から議論したことは思い出しておるわけです。

海江田委員 あともう一つ、実は、株式の市場の育成の問題とペイオフの問題は密接な関係があるというふうに私は考えておるわけですね。

 アメリカなんかに行きますと、まさに資産がどれくらいあるか、アメリカは一応一万ドルがペイオフの基準になっています。そうすると、例えば一万ドルを超える預金を持っていますと、一万ドルを超える部分というのはリスクマネーとしてカウントするわけですよ。全体でもって、この人が持っている資産のリスクはどのくらいかとか、一万ドルまでのところにはリスクがゼロですけれども一万ドルを超えるとリスクが入ってきて、そこで計算をやって、トータルでこの人のリスクマネーはこのくらいだというような数字を出すわけですよ。その意味では、我が国も、ペイオフが例えば一千万円なら一千万円というところで、そこから上はペイオフだよということになってくれば、そこから先はまさにリスクマネーなんですよ。

 同じリスクマネーならば、それならば、銀行の預金にしようか、それとも株式の投資信託にしようか、株式を直接買おうか、あるいは国債を買おうかというところで、まさに、そこでもって初めてえり好みというか選択が起きてくるわけですよ。今の日本みたいに、一億あろうが十億あろうがとにかく全部それはリスクマネーじゃないよ、銀行に置いておきさえすればリスクマネーじゃないよということになったら、これは本当に、リスクマネーとしての選択といいますか、そういうものが育ってこないわけですよ。

 だから私は、その意味においても、このペイオフというのは、一度延ばして、これからさらに延ばすなんというようなことはあってはならないと思うわけでございますが、これは柳澤大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 先生、先ほどの御発言に関連してなんですけれども、日本の株式と出資金の金融資産の中に占める保有割合というのは八・一%という状況です。株式だけでしたら、有名な数字ですが、六・四%ということです。他方、ドイツにおきましては、同じく株式と出資金では一六・八%ということでございまして、株式の比率は一二・七%というようなことになっております。投信を入れますとまたぐっと変わってくるわけでございますが、いずれにしてもそういう数字で、私どもがアメリカをいきなり倣うというよりも、やはりドイツあたりの堅実なお国柄の国を倣っていくということは、私は、我々の一つの指針たり得るものだ、このように考えます。

 ペイオフと株式保有の関係でございますけれども、私は、先生おっしゃるとおりで、全くの同感でございます。ただ、そのことを今の時点で言いますとどういうことになるかというと、そっちもペイオフになってリスクマネーなんだから、株式もリスクマネーだから、もう何にも税制上配慮する必要がないじゃないかという議論にいきがちなんですね。

 私は、確かに先生がおっしゃるように、一千万円の保険、付保されている預金高の上はリスクマネーなんですが、やはりリスクマネーぶりが随分違うということを強調したいわけです。そういうことを論ずるならば、リスキーぶりが全然違うということを前提にしてでないと、なかなか税制等についての適切な議論はできないのではないか、このように考えますが、議論の大筋としては先生がおっしゃるとおりだ、このように考えております。

海江田委員 それはまさにそのとおりでありまして、アメリカなんかでも当然掛けるリスク率が違うわけです。ただ、大きなところでいって、リスクマネーの中でどういうふうにそれぞれえり好みをしていくかという話だろうと思います。

 税制の話はこのくらいにしまして、これは宮澤大蔵大臣、あるいは、わざわざ速水総裁もお越しいただきましたけれども、せんだってのパレルモでのG7の話であります。

 去年の九月のプラハですか、あのときは声明の中で、日本経済に回復の兆しが見られるとはっきり書き込んであったわけですが、今回は、日本は景気の緩やかな回復が期待されるが、しかし物価の下落が続き、下振れリスクがあるというような表現に変わったということです。これはまさに、その意味では、回復は期待されるけれども現実になかなかそのようになっていないよ、むしろ下揺れのリスクがある、こういうふうな読み方でいいわけですね。財務大臣。

宮澤国務大臣 そういうふうにお読みいただいていいんだと思います。

海江田委員 問題はそこからその次のくだりでありまして、金融政策は、潤沢な流動性供給を引き続き確保し、金融部門を強化する努力を拡充すべきだということでありますが、これは日銀総裁にお尋ねをしましょうか。

 引き続き確保しということは、これまでも金融政策においては潤沢な流動性の供給をしてきた、特にこれはG7の直前に、九日ですか、公定歩合の引き下げとロンバート型の貸し出しを実施するということを決めたわけですから、これまでのそうした努力というものはそれなりに評価をされた、もっと頑張ってくれよ、この方向性をこれからも続けてくれよ、こういうような中身になったということですか。

速水参考人 お答えします。

 御指摘のように、金融政策は、潤沢な流動性を引き続き確保すべきであるという、今現にそうやっているんだということは認めてくれた上で、引き続きそうしなさいということを言っておるように思います。

 それから、金融セクターをさらに強化する努力が、これは拡充といいますけれどもエンハンスという言葉ですが、高めなさい、こういうことですね。この点につきましても、金融セクターについてはこれを強化すべくいろいろな手が打たれていくことになると思っております。

海江田委員 金融部門を強化する努力をさらに高めるべきだというくだりは、これは後でちょっと不良債権の償却のところとの絡みがありますのでお尋ねをしますが、今、日銀の金融政策につきましては、量的な緩和という問題が大変大きな問題になっていますね。あしたも政策委員会があると承っております。ただ、あしたの政策委員会は、これまで決めたロンバート型の貸し出しなんかの細則を決めるとか、何かそんなようなことだというふうにも承っておりますけれども。

 どうなんですか。量的な緩和をしろということを総裁はどういうふうに受けとめておられるのか。これは端的に言えば、一つは、今やはりデフレ傾向というのはあるわけですから、このデフレ傾向に対して、非常にストレートな物の言い方をすれば、いや、もう少しインフレにする努力をしなさいよというような考え方として受け取っているのか。それとも、やはりここはまさにそういうデフレのおそれがあるわけだから、それに対して今までは、公定歩合とロンバート型と短期国債の買いオペの積極化、それから全国手形オペの早期導入というような手を打ったけれども、そのほかに、例えば残されておりますのは長期国債の買い切りのオペでありますとか、それから短期金利の誘導目標をさらに下げるとか、あるいはゼロ金利の解除まで行くのかどうかわかりませんけれども何か新たな手を打てというふうに期待をしているのか、そこはどういうふうにお考えになっておられますか。

速水参考人 量的緩和という言葉は非常にあいまいな言葉でございまして、私どもとしては、コールレートの誘導目標をつくって、公定歩合を内外の歴史に例を見ないような超低金利にまで引き下げまして、大胆な金融緩和策を講じてきております。そういう意味では、量的に金融を十分緩和していると思いますし、今後もそうしていきたいと思っております。

 去る九日にいたしました公定歩合の引き下げ、それはやはりロンバート的な、向こうから、銀行の方から、困ったら、駆け込んできたら、担保さえ持っていれば、証券担保さえあれば〇・三五の金利で貸しますよという制度を新しくつくったわけでございます。そのディテールにつきましてはあした討議することになっておりますが、それと同時に、短期証券を買い切りで買っていこうということを積極的に始めたわけでございます。それなども非常に効果が、特に、〇・三五でいつでも貸すぞということは、それ以上金利は上がらないということでございますから、これは期末を控えた市場には非常に安心感を与えたということになると思っております。

 九日にやりましてまだ二週間ちょっとしかたっておりませんけれども、既に三カ月物の市場金利というのは、年末には〇・六ぐらいだったのが、今〇・四まで下がってきております。それから短期証券の買い入れも、二月になって、この間決定を見てから既に二回にわたって三千億円以上のものを買い切りで買っております。

 そういうふうにやっていきますれば、量的な金融緩和は十分目的が達成されるというふうに思っております。インフレターゲティングとか、あるいは長期国債を買い切りで買いなさいとかいうようなことまで含めた量的緩和というようなことをおっしゃる方もおられるわけですけれども、それらのことについて、私どもとしては、今やるべきでないというふうに考えております。それでお答えになっているかと思いますが。

海江田委員 本当はもう少し詰めたいのですが、ちょっと時間がありませんので。

 先ほどの、G7の共同声明の中の金融部門を強化する努力をさらに高めるべきだというところは、これは不良債権の処理を急げというふうに理解をしていいということで、うなずいておられるからそうですけれども、そこで出てきますのが、まさに間接償却から直接償却のところへ入ってきたよという話だろうと思います。

 先ほど柳澤金融担当大臣は、その場合、直接償却をやりますと、金融機関について言えばさらに資本が傷む可能性もありますし、それから資本が傷む前の段階として赤字のケースも出てくるだろうと。

 金融庁からいただいたこれまでの不良債権の各行別の処理を見てみますと、どうしても業務純益と、それから株の利益の範囲内でもうやっちゃっているんですよ、各行ごとに。それを足したものとこの処理、もちろんこれは間接の処理でありますけれども、そういうやり方ではもうだめだよと、もう本当に、まさにオフバランス、バランスシートから外へ出しなさいよという話だろうと思うのです。

 その場合に、さっき鈴木委員の質問に対して、例の健全化計画との絡みで、余り短絡的に健全化計画を云々しないよというような発言があったわけでございますが、私はこの考え方というのは非常に大事な考え方だろうと思うわけでございますが、ただ、一つは、そのことを理由に、あるいは実際には三割以下下落をしたって即業務改善ではないわけですからね、これは。だけれども、そういうふうに受け取られているような節もあるとか、あるいはそういうことをいいことに直接償却に後ろ向きな人たちもいる。それから、きょうはお見えになっていませんけれども、経済産業大臣ですか、いや、まだ間接償却でいいじゃないかとかいうようなこともあるということです。

 実は、間接償却なのか直接償却なのか、端的に言うと、今のまさに金融不安の中で何を一番優先させなければいけないかというときに、やはり不良債権の処理を優先させるんだということがまだまだ、例えば森内閣の中でも、閣内でもこれはきちっとした方向性になっていないという考え方を私は持っているのです。

 だから、そういう問題に対してどういうふうに臨まれるつもりなのか。私は、場合によってはこの考え方というのが、不良債権の償却を急ぐべきだ、しかももう直接償却するんだ、それが一つの考え方になったら、例えばこれからもし森さんがだれかにかわるよなんて、もしというかその可能性は非常に高いわけですけれども、やはりそういうときにもこういうような政策の上での旗幟といいますか旗印といいますか、やはりそういうものが必要なんじゃないだろうか。これは十分そういうような大きな問題点になりますので、私は、直接償却を急ぐということの決意のほど、それからその問題の重要さということを改めて柳澤金融担当大臣の方から、表明といいますか、お話しいただきたいと思うわけです。

柳澤国務大臣 私は問題の重要性は知っておりますし、そういう認識は十分持っているわけですけれども、余りこの問題を政治的に高く掲げて旗印にするというようなアプローチは最初から実はとらなかったわけであります。もっと技術論として、間接償却直接償却は別に財務面で大きな差が生まれるというふうには実は考えておりません。それ以上にむしろ、貸出先の成長あるいは金融機関の側の将来の収益、こういうものに非常に大きくかかわってくる問題ではないかというように考えましたものですから、実はかなり技術論的なアプローチをしたわけでございます。

 もちろん、閣議でも閣僚懇で発言をさせていただきまして、両大臣、国土交通大臣及び経済産業大臣とこういう話し合いができて、事務的ではありますけれども、よく三省で協議をしてこのスキームを進めていきますというようなことは全大臣に申し述べましたけれども、すべからくローギアと申しますか、そういうようなことでアプローチしていきたいというような形でございます。

 しかし、全体の地合いはどうかと言われれば、先生が御心配になっていただくようなものよりも私は楽観的でおります。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

海江田委員 あと、日銀総裁にもう一つだけ。

 今の不良債権の最終処理との絡みで、最近になりまして、やはりさらにデフレ圧力が増すんじゃないだろうか。それとの絡みで、まさにもう一段の金融緩和というような声も最近日銀の政策委員の中から出ているやに承っているんですが、この問題との絡みで、そういうさらに一段の金融緩和というものが必要なのかどうなのかということをお尋ねしたいと思います。

速水参考人 いずれにしましても、金融面でも構造改革をしていこうと。

 おっしゃる直接償却というのは本来の姿だと私は思っております。これは、バランスシートから落とさないとまたそこへ入ってきますから、なかなかそう口では言えても、実際問題としては非常にこれは難しいことだと思います。これを強引にやりますと、やはりいろいろな形でデフレ現象というか、あるいはデフレ圧力が高まってくる可能性は十分ある。私どももその点はよく注意していかなきゃいけないとは思いますが、そういうものを頭に入れながら、経済、物価の動きをよく見て、そういうものをうまくタイミングよく調節していくことが私どもの役割だと思っております。

 今ここですぐ金融をさらに緩めて何かをやれというふうには必ずしも考えておりませんが、そういう動きとかあるいは株価の動きとか、そういうものを見ながら間違いない金融政策をとってまいりたいというふうに思っております。

海江田委員 それでは、本当に最後になりましたけれども、河村提案者にお尋ねをします。

 河村提案者は、このNPOの税制の問題について大変これまでも努力をしてきたわけでございますが、いよいよこれから本格的な議論が始まるに当たって、こんなにこの制度はいいんだ、こちらの方がこれだけいいんだということを手短にお述べいただきたいと思います。

河村(た)議員 河村たかしでございます。きょうは自民党の方も見えますので、ぜひ訴えなければいかぬのですけれども、もともとこういうNPOという考え方は、どちらかというと自由主義の考え方なんですね。役所にすべて任せない、いろいろなものを。だから、どちらかというと自民党がもっと熱心にならないといかぬのですよ。私は国民総背番号でも言っておりますけれども、本当に情けない、今は。やはり自民党が本来の自由主義を取り戻してもらいたい。要するに、公的資金を全部お上に任せて、公的なものは全部お上がやるんだ、お金の面でですよ、これはいわゆる官尊民卑というか役人管理の典型的な姿なのですよ。

 それに対して我が方の出した法案は公共的なものも、わかるじゃないですか、今の補助金のひどさを。要するに、一たんお上に出した金というのは、もっとうまく公共的なものを、公共事業を、これはだめあれはだめ、そういうふうに分けるというやり方もありますけれども、それより、根本的にはお上に全部任せずに、小さな政府といっていいかどうかいろいろな提案者がおりますからあれですけれども、基本的に言うと、減税して補助金をカットして、その分を公益寄附金でみんなに出してもらう、それで政府は一歩下がってそれをアジャストしていく、こういう世界をつくらないと、際限ない増税国家になりますよ、自民党の皆さん。

 我が方の法案はそこに突っ込んだ法案でございまして、二十一世紀の日本は、これは今の状況のままの自民党にやらせておいたらとんでもない増税国家になります。この案を見ていただけばわかるように、我が方民主党、それからまあ自由党も基本的には考え方は同じなんです。それから社民党、それから共産党の皆さん、すべてをお上に任せない、そういう意味で民が主役といいますか、やはりお金の面でも全部民に渡るんじゃないですから、そういう社会制度を提言しているということで極めて根源的な提案になっておる、こういうふうに思います。

 以上でございます。

海江田委員 では、どうもありがとうございました。時間が来ましたので。

山口委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 財務金融委員会で宮澤財務大臣に質問の機会をいただけるということを非常にありがたく思っております。と申しますのも、宮澤財務大臣は御存じないかもしれませんが、私も中学、高校、大学の後輩に当たりまして、卒業年次は高校でいうと四十一回違うはずだというふうに思うのでありますが、ぜひよろしくお願いを申し上げたい、このように思います。

 さて、きょう私は、与えられた時間、今回の租税特別措置法の中で、NPO法人の支援の税制についてという部分に絞ってお聞きをさせていただきたい、このように思います。と申しますのも、今も提案者の河村議員からもお話がありましたが、これからの二十一世紀の日本の社会を考えたときに、このNPOというものをどうはぐくんでいくのかというのが大きなテーマだというふうに感じているからであります。

 政治は、国民の幸せを求めていかなくてはいけない、このように思うわけであります。私たちの生活を振り返ったときに、経済、いわば仕事、そして社会貢献、多くの人にとっては地域活動であったりするかと思いますが、そしてまた家庭、そういったいろいろな局面がある中で、戦後、いわゆる所得倍増という形で、まさに仕事、経済の面で大きく国民の幸せをふやすことに成功した。これはまさにそのとおりだろうというふうに思いますが、今、その先の国民の幸せというものを考えたときに、我々はどこに求めていくべきなのかということであろうというふうに思います。

 先日も、若い人に言われました。先輩方また政治家の方々は成熟社会、成熟社会とよくおっしゃるが、頭打ちということですか、我々次の世代に希望が持てないんですか、こういうお話をされました。いつの時代も可能性は無限にあると我々若い者は思っている、こう二十代の方に言われたわけであります。

 率直に申し上げて、経済の面で、所得がこれから五年、十年で、かつてあったように二倍、三倍、十倍になるという時代ではなかろうかというふうに思いますが、言うなれば、幸せ倍増というような形をつくっていかなくてはいけない。そのためには、社会貢献を含めて多くの人が多様な価値観の中でさまざまな自己実現のできるフィールドをふやしていかなきゃいけない。となれば、そういった場を提供するNPOの活躍しやすい制度をつくっていくことが求められているのではなかろうか、このように思います。

 この二十一世紀の中で、日本の社会の未来像の中で、このNPOというものをどのように大臣はお考えをいただいているのか。そして今回の税制、これは九八年のNPO法案の附帯決議で、たしか二年で税制を含めて見直しを行うということの流れの中で今回の提案という形になっているかというふうに思いますが、その意義について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 御尊父には大変御厄介になりまして、御活躍をお祈りいたします。

 主として民主国家の場合が多いと思いますけれども、政府が一定の役割を果たすということは当然のこととして受け取られておりますけれども、しかし政府でなくてもできることがたくさんあるのではないか、そういう分野を多くの人々がいろいろな意味で発見するようになりました。それは、もちろん個人だけの問題もございますけれども、公、個人でないことで利益を目的とせずに、市民として、個人であるいは団体をつくってやれることがたくさんあるんではないか。それが、片っ方では、いわゆる市場主義、資本主義社会の行き着いた、それに残された部門ということになるんであろうかと思いますけれども、そういう運動が、殊に民主主義国家、資本主義がかなり成熟した国家の中でだんだん発達し始めて、しかもそれが、こういう交通、通信の楽な時代でございますから、世界的な規模に発展し始めているというのが現実であると思います。

 率直に申しまして、ある早い段階では私ども、大変率直に申し上げるんですが、市場経済あるいは保守主義的な考えをしてきた者にとっては、このNPOというのは何となく一種のプロテストをする人々のグループではないかというふうに思ったりしたことが、正直言って一部にあったと思います。

 また、しかしそういう部分も今世界的に、ある意味でグローバリゼーションなんていうものに反対をする動きは、そういうことであるのかもしれません、そうでないかもしれません。しかし、そうではなくて、やはりこの人たちにはこの人たちの社会的な役割があるというふうにだんだん考えられてきた、だんだんそういう認識が深まってまいってきておるというのが今の姿だと思います。

 それで、私も、この税制の問題なんかがございましたときに、やはりこのNPOというのはこれからの波ではないか、これからの社会というものでだんだん大きな役割を果たすのではないだろうか。そうだとすれば、それを支援しようとする人たちに対して、一定の条件のもとであればそれについての税制のフェーバーをするということは、いわば将来を展望した政策として大事なことではないだろうかということを役所の諸君とはだんだん議論をいたしておりまして、国会でもいろいろそういうお声があって、このたび法案を提出することになったわけでございます。

 ただ、そこはまた、役所らしくとおっしゃることがあるかもしれませんけれども、そういう寄附金に対して減免税をするということは、いわば納税者の負担においてなされることでございますから、その目的は、何でもいいからというわけにはいかないだろう。また、その活動についても、一定の規律なり、あるいはそれこそアカウンタビリティーがあって、そして、いつでも国民に対して免税になっておるということの説明ができるものであってほしい。

 同時に、そのことは、実はNPOというのは本来政府の干渉を受けたくない人たちの団体であろうと思われますので、余りそれが行き過ぎますと、政府が何か免税ということを通じてコントロールするといったようなことになったんでは、これはまたNPOの精神にも反するだろうといったような、いろいろ多少矛盾した要素をはらみながら、このたびこの法案を提出いたしました。

 その気持ちの中には、本当にNPOがこの新しい免税制度をうまく使ってほしいという気持ちと、それがいろいろな意味で公のためになっていくということ、しかし、何かそれを理由として役所がいろいろな意味でコントロールをするというようなことは最小限にしなければならないといったような気持ちで、この法案を御提出いたしております。

松本(剛)委員 ありがとうございます。

 今お話を伺っておりましても、次の時代を担う一つの大きなセクターであるという認識については、大臣とお考えを共有させていただくことができるんではないかな、このように思ってお聞きをさせていただきました。

 先日の参議院の本会議での代表質問、石田議員の本会議での代表質問で総理のお答えの中でも、税の優遇措置という言葉がございました。ただいまも税のフェーバーというお話があったかというふうに思いますけれども、本来、公共とは何なのかといった議論に入ってくる部分があるのではなかろうか。人が集まって国をつくり、そこに政府がある。また一方で、人が集まって公のことをするという意味でのNPOがある。こういうことであった場合には、税の特典を与えるという形でこういった税制優遇というものの精神を考えるべきなのかどうかということが問われるのではなかろうか、このように思います。明らかになった、明示された基準のもとで、当然にそういった形の措置が受けられてしかるべきだという考え方からスタートをすると、おのずと中身が違ってくるんではなかろうかな、このように思うところであります。

 もし、大臣から何かございましたら。よろしければ先へ進ませていただきたいと思いますが、よろしいですか。

 法施行以来二年から三年ということになろうかというふうに思いますけれども、現在のNPOの状況、そしてまた今の税制の措置についての内閣府からの御所見を伺いたいと思います。

池田政府参考人 今もお話がございましたが、NPOは、行政でも営利企業でもない第三の主体として、国民の多様化したニーズに効果的かつ機動的にこたえるとともに、個々人の自己実現の意欲を生かすことのできる仕組みとして、今後ますます重要な役割を果たすことが期待されていると内閣府でも考えております。このため、ボランティア活動や文化活動などを行う非営利の団体に法人格を付与することなどを通じてその活動を促進することを目的として、平成十年十二月一日から特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が施行されました。

 その法に基づき受理した法人格の認証申請件数は、二月二十三日現在、都道府県分で三千七百九十三件、内閣府分で三百五十九件、合計四千百五十二件となっております。また、それに基づいて認証した分につきましては、同じく二月二十三日現在、都道府県分で三千百七十四件、内閣府分で二百九十六件、合計三千四百七十件となっておるところでございます。

松本(剛)委員 今お話を申し上げた部分、三千四百七十件というNPOが既に認証をされて活動を続けておるわけでありますが、今回の税制上の措置で、基本的にどのようなNPO法人を対象とするべきだとお考えのもとにこういった基準を策定されたのか、お伺いをしたいと思います。財務省の方へお願いをします。

尾原政府参考人 お答えいたします。

 NPO法人はまさに二十一世紀に向けて今後の我が国経済社会を構築していく上でますますその役割を果たしていくであろうという認識のもとに、もちろん立っているわけでございます。

 その場合、内閣府からの御要望もあったわけでございますが、NPO法人には財政基盤が大変脆弱な法人が多いということで、その活動に必要な資金を外部から受け入れやすくすることが大切ではないかという観点に立っているわけでございます。そういうことから、今回、寄附金あるいは相続税についての優遇措置を講ずることにしてございます。

 さて、この基準を決める場合の問題でございますが、公益法人につきましては、今、特定公益増進法人制度がございますが、これとNPO法人制度は基本から違っております。つまり、公の関与からなるべく自由を確保する必要があるということで、設立について申し上げますと、公益法人であればその法人の設立についての認可が必要でございますが、一定の要件を満たしていさえすれば、NPO法人として認証しなければならないということになっているわけでございます。

 他方、寄附金の優遇措置を講じます場合、大臣からお話がございましたように、公的サービスの財源となる租税の減免を伴う、こういう面からまいりますと、予算面で補助金を交付するのと同じような性質の面がある。そのためには、この優遇措置の対象となる法人でございますが、相当の公益性を有する事業を営む必要があるわけでございます。

 他方、先ほどのNPO法人制度、公の関与から自由であるということを申し上げましたが、このため、今三千四百でございますか、この活動内容を見ますと、高齢者への福祉サービスの無償提供というようなものから、会員相互だけでのコミュニケーションといいましょうか親睦を図るもの、さらには趣味、娯楽の活動を行う、中にはスキー場を営んだり、あるいは放送をやるというようなNPOもございます。そういう中で、どのようなものについて公益性を担保するかということでございますが、所管官庁というのが当然ございません。したがいまして、できるだけ明確で客観的な基準をつくって、それに該当するものについては公益性があるというふうに推認いたしましてこの制度を運用しなければならないというふうに考えたところでございます。

 もとより、その法人の運営、組織が特定の人で独占されているとかいうようなものであっては困りますし、また経理が適正でなければならないということも当然必要なことでございます。そのようなことから、基準を、一定のものについては広く公開をしていただく、あるいは寄附金の対象にするに当たっては、国民からのパブリックサポート、一定の数値での要件により対象を決めていく、あるいは活動範囲が広いというようなことを、できる限り明確で客観的な基準でサポートできればということから今回の体系ができているわけでございます。

松本(剛)委員 今もおっしゃっておられた中で、公の関与という言葉がありましたが、NPOもある意味では公であろうかというふうに思います。政府の関与と公という部分は、お分けをいただいてお話をしていただいた方がよいのではないかな。そして、この税制という制度、国会で決める制度というのは、ある意味では国民全体の、公のものであり、認可という形でいくのは政府の関与ということでありますから、そこは分けてお考えをいただかないとぐあいが悪い、話が一緒くたになってしまうのではないかな、このように思います。

 そもそも、この要綱を拝見させていただいても、認定されたNPOを政策的に支援する。言うなれば、政府がいいと言ったものを政策的に応援をしますよ、こういう表現になっているわけでありまして、そこの考え方そのものが、特定公益増進法人のお話も出ましたけれども、政府から見ていいというものに対しては特別に優遇をしましょう、こういう形になっている。NPO法は、さっきおっしゃいましたけれども、明確な基準のもとで認証しなければならないということ、そういうNPOに対しては、基本的にそこの考え方を実は改めていただいて税制の仕組みをつくっていただきたい、このように思うわけでありますが、今おっしゃった幾つかの具体的な認定の基準について御質問をさせていただきたい、このように思います。

 認定の要件については、今まさにおっしゃったように、明確性、透明性が必要であろうというふうに思いますが、何をどこまで政令、省令、もしくは物によっては通達ということもあるのかもしれません。どういう形で定めていかれるおつもりなのか、お聞きをしたいと思います。

尾原政府参考人 今回の措置の基本的な部分は法律で定めることとしておりますが、具体的な項目については、内容に応じ政令、省令で規定することを考えております。

 なお、通達はできる限り少なくしたい、こういうふうに思っております。つまり、今回のものが明確で客観的である必要があるということから、通達で決める事項はできるだけ少なくしたい、こう思っておるところでございます。

松本(剛)委員 それでは、認定の手続のことに関してでありますけれども、先ほどの、認証しなければならないというのと認定をするという、基本的な考えの違いに立つものがここにも見られるのではないかと思います。

 NPO法では、二カ月二カ月で事実上四カ月で結論を出す、認証しなければならないというふうになっているわけでありますけれども、今回の税法では、申請をしてからどういった形で手続をとられるのかというのが明確になっていないわけでありまして、この点について御質問させていただきたいと思います。

尾原政府参考人 今回の新しい措置でございますが、本年の十月一日から施行したいというふうに考えているわけでございます。

 ところで、今回の基準等におきましては、どれだけの期間で国税庁長官が認定しなければならないということは定めておりません。と申しますのは、既に要綱等で明らかにされている基準に合致しているのかどうかということを審査する、チェックする必要があるわけでございます。

 御承知のように、NPO法人、先ほど申し上げましたように多種多様でございます。したがいまして、私ども、もちろん事前にこの基準の周知、広報に相努めてまいりたいと思いますが、どれだけの時間があればチェックできるかというのは、個々によってケースが違ってくるだろうと思います。

 そういうことで、今回そういう規定は置いておりませんが、当然のことながら、国税庁が申請を受ければ、できる限り速やかに事実を把握し認定していくことは当然である、こういうふうに考えております。

松本(剛)委員 できる限り速やかに、こういうお話でありましたけれども、やはり一つの基準、めどというのをお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

尾原政府参考人 めどといいましょうか、基準を示させていただくわけでございますが、それぞれについての点検、事実確認をする、これは本当に個々によって違ってくるのだろうと思います。あるいは、ここのところの記述が足りないじゃないか、逆に補完をするようなものも出てまいりましょうし、したがいまして、私ども、申請が出てくれば迅速に審査事務が国税庁において行われると考えておりますけれども、あらかじめそれぞれの日数とかいうことを定めるのはどうしても適当でないのではないか、こういうふうに考えております。

松本(剛)委員 全くゼロからの認証ということでも四カ月ということで基準を置いたことにかんがみれば、当然、財務省さんの論理でいけば、税制の優遇というのはさらに特別だ、こういうことになるのかもしれませんけれども、三月ないし四月という一つの処理のめどというのを御指導、お示しをいただいてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

尾原政府参考人 やはりこの制度、新たな制度でございます。私ども、発展し定着していくことを願っているわけでございます。したがいまして、法令の基準に合っているかどうかという確認はきちんとさせていただきまして、それがまさに今後の発展につながる面もあるのだろうと思います。期間はあらかじめ示しておりませんけれども、できるだけ速やかにこの事務を行うというのは当たり前といいましょうか、もちろんのことというふうに考えているところでございます。

松本(剛)委員 立法機能を預かる国会としては、やはり、明確な基準であると同時に、手続にどのぐらいの時間を要するのかということについてもきちんと定めるべきではないかというふうに思うわけでありますが、ここでこれ以上お話をしても話は前へ行かないと思います。

 ぜひ、今申し上げたような三カ月、四カ月といったものをめどに御処理を速やかにお進めいただきたいということを御要望申し上げて、次のテーマに移っていきたい、このように思います。

 今、たくさんの基準について幾つか例示をいただいたわけでありますけれども、こういった基準に対して何らかの実態調査をされたのでありましょうか。それに対してどのぐらい適格になるかという見通しをお立てになったのかどうか。

 これはどこを指していただいたらよろしいでしょうか。内閣府さんにお聞きをした方がよろしいんでしょうか。そうしたら、それぞれから御回答をいただけますか。

尾原政府参考人 今回の新しい制度を講ずる場合に一番悩みましたのが、実態がなかなかわからないということでございました。それで、内閣府におきまして、九月時点でアンケート調査を実施されたわけでございます。私ども、そのアンケート調査に基づきまして、どのような要件が適当であるか、内閣府とも御相談をさせていただきまして、今回の改正というふうになったわけでございます。

 それで、どのようなアンケートであったかは内閣府の方からお話をいただくということにいたしまして、私の方からは、どのくらいのNPO法人が認定されることになるのかというお尋ねがございましたので、それについて申し上げますと、残念ながら、今回の基準で具体的にどれだけの法人が要件を満たすかどうか、アンケート調査に応じていただいた数が少ないというようなこともございます。それからまた、要件を満たす法人のうち、現実にどの程度申請をなさるのか、これも残念ながら十月一日以降になってみないとわからないわけでございます。

 いずれにいたしましても、今回、新しい制度を設けることとしておりますので、できるだけ多くのNPO法人の方に積極的に活用していただきたいということを期待しているわけでございます。

松本(剛)委員 内閣府の方から、その調査をされたということであれば、お話をいただける部分があればお願いをしたいと思います。

池田政府参考人 お答えを申し上げます。

 御承知のとおり、NPO法人、この制度、発足してまだそうたっていないところで、なかなか実態把握が進んでおりません。

 ただ、今回の税制改正要望をするに当たって、できる限り努力したいということで、当庁より、シーズ、市民活動を支える制度をつくる会に、一昨年末までに認証を受けた千百七十六法人に対して昨年の九月二十日時点で実態調査のアンケートを依頼しましたところ、なかなか御回答するのが大変のようで、三百四十六法人から回答が寄せられた。財務状況とか税務状況とか、そういったものを中心に取りまとめたものでございます。

松本(剛)委員 今の調査で、ある程度、どのぐらいが適格になるかということは出ていないわけでありますか。

池田政府参考人 基準を検討していく段階での参考にするという形で、ぴったりこの基準に合うような形での調査になっておりません。したがって、それによってどの程度になるかというのはちょっとわかりません。また、先ほどもお話がありましたとおり、どの程度の法人が申請をしてくるのかということも、まだ今のところわかりません。

 ただ、いずれにしろ、私どもとしましては、認定基準、先ほどからお話ししているように、具体的で明確な基準になっております。そこのところはできるだけ多くの特定非営利活動法人が積極的に本制度を活用して、明示した数字をクリアすれば大丈夫なわけですから、活用していただくということを期待しているところでございます。

松本(剛)委員 それでは、どのぐらいが認定をされる要件の対象になっているかわからないというお話でありますが、税制改正ということでありますので、税制の減収の見込みというのをお立てになっておられるのかどうか。私が拝見をさせていただいた財務省のパンフレット等で見る限りは、具体的な数字が出ていなかったようでありますが、立てておられないとすれば、そういったケースもあり得るのかどうか。お聞きいたしたいと思います。

尾原政府参考人 先生から今御指摘ございましたように、今回のNPOの税制改正に関しましての減収は立てておりません。これはなぜかと申しますと、先ほども申し上げましたように、どれぐらいの法人がまさにこの措置の適用を申請してくるか、どれだけ認定されるのか、また、寄附を出される方がどのぐらい出されるのか非常に推計のしにくいものでございまして、今回、そういうことで改正増減収には立ててないものでございます。

 なお、同様に今回の改正で立ててないものを申し上げますと、例えば、会社分割、合併等の企業組織再編成に係る税制の整備の関係、あるいは商品先物取引、今回総合課税から申告分離一本化ということにしてございますが、その関連についてはいずれも不明の要素がございまして、増減収には立ててないところでございます。

松本(剛)委員 おおよその、けたというのでしょうか、そういったものも、かなり大きな金額であれば当然予算全体にもかかわってくる話になってこようかというふうに思うわけであります。

 今回のNPO法については、私どもがずっと拝見をさせていただく限り、かなり厳しい要件であるということであれば、ほぼゼロに等しいという見積もりなのかな、こういうふうにも読める部分があるわけであります。

 今年度は十月一日からということにしても、税収の見積もりということでも初年度、平年度という形でお示しをいただいているものもあるわけでありまして、おおむねどのぐらいの規模のものを想定されているのかということはお答えをいただけないでしょうか。

尾原政府参考人 先ほども申し上げましたように、これから認定が始まるわけでございまして、また、寄附を出される方がどのぐらい出されるかということもございまして、なかなか減収額については見込みがたいということで、今回、税収計算には見込んでいないところでございます。

 なお、法人について、平成十一年分で寄附金全体の金額がございますが、指定寄附金、特増、一般の寄附金、合わせまして全体、法人についていうと約五千億円弱というところが寄附金の総支出金額になっております。

松本(剛)委員 後ほどお聞きをする部分に入るかと思いますが、民主党を中心に提出をさせていただいた法案では、二十億という数字がたしか出ていたというふうに記憶をしております。今の中で財務省さんとしてどのぐらいの見積もりを立てておられるのか。我が党が友党の皆さんと提出をさせていただいている法案とどのぐらい違うのかというのをぜひ一度お見積もりをいただきたい、このようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 それで、今おっしゃった個々の認定の要件についてお伺いをしたいところがたくさんあるわけでありますが、幾つかに絞ってお聞きをさせていただきたいと思います。

 まず初めに、宗教、政治活動を行わない、このようになっております。NPO法の認証の基準でも、宗教、政治活動については触れておるわけでありますが、主として行わないというのと行わない、つまり一切行わないというのには大きな隔たりがあるのではなかろうかというふうに思います。

 ぜひ大臣に、政治活動といったものをどのようにお考えいただいているか、お聞きをさせていただきたいと思います。

村上副大臣 お答え申し上げます。

 特定非営利活動法人は、NPO法上、宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでなければ、これらの活動を行うことは可能であります。

 税制上の特例措置については、宗教活動や政治活動を行うことにより特定の立場に偏ることは適当でないことから、宗教活動及び政治活動を一切行っていないことを要件としております。この場合の宗教活動、政治活動については、NPO法上、第二条第二項第二号に規定している活動とすることとしている。具体的には、宗教活動とは、「宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」としております。政治活動とは、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」、「特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。」としております。

 以上であります。

松本(剛)委員 確認をさせていただきたいと思いますが、例えばNPOの法人がこの税制について私どもに対して、ぜひこういった認定基準は変えていただきたい、このように御要請をいただいたとすれば、これは政治活動に当たるのでしょうか、当たらないのでしょうか。

尾原政府参考人 ただいま副大臣から、政治活動の定義についてお話がございました。その反射といたしまして、政策提言のようなものはこれに該当しないというふうに考えております。

松本(剛)委員 政策提言というお言葉がありましたけれども、そういったものと特定の主義を進めるといったこと、この辺はどなたがどのように認定をされるのか、その基準はどこにあるのか、お教えをいただきたいと思います。

尾原政府参考人 まさに今回の税制の特例措置では、NPO法の二条二項二号に規定する活動をしてはいけないというふうに規定する予定でございます。それで、その認定は国税庁が行うことになってまいります。

 それで、NPOの寄附金税制はどうあるべきだというのは政策提言でございましょうから、そのような御主張をなさること自体、これに反するということではないというふうに理解しております。

松本(剛)委員 長官の御判断ということになるようでありますが、しかし、先ほどお話がありましたように、特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案ということで提案をさせていただいた河村議員の当初のお話、提案理由をお聞きいただいたら、これは政策というよりは主義に近いということもお感じいただけたのではないかというふうに思います。また、法案を読む限り、おっしゃっていた、政策提言はこれに当たらないとか、こういったことはここには出てきていないわけでございまして、これ以上の細かい基準というのをどこかに明示をされる御予定はございますか。

尾原政府参考人 今のNPO法に書いてあることを引くことにしてございまして、それを私どもの方でさらに解説をつけ加えるということは考えておりません。

松本(剛)委員 今、幾つか例を挙げてお聞きをしたわけでありますが、逆に申し上げれば、一つ一つお聞きをしない限りわからないということであれば、明確な基準とは言えないのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

尾原政府参考人 現在のNPO法の認証に当たっても、主たる事業がこのようなものに該当しないかどうかという判断を所轄庁がやっているわけでございまして、そのようなことから考えましても、国税庁において、そのような事業に当たるのかどうかということについては、関係方面とも、この法令を持っているところにも聞かなければいかぬのだと思いますけれども、判断ができるものと考えております。

松本(剛)委員 内閣府にお聞きをさせていただきたいと思いますが、この認証に当たって、どんな形で政治活動、宗教活動を御判断されているのか。主たると一切という部分には大きな違いがあろうかというふうに思いますけれども、お教えをいただけたらと思います。

 また、今回のこの税制優遇は、内閣府の要望で、財務省がこれを受けておつくりになった、こういうことでありますが、当初の内閣府の御要望で、政治活動、宗教活動を一切行わないということを基準として御要望されたのかどうかもお答えをいただきたいと思います。

池田政府参考人 NPO法の運用につきましては、できるだけ所轄庁が裁量を働かさないということでございまして、宗教、政治活動を主として行わないかどうかにつきましては、申請法人から確認書を出していただいている、それによって認証確認をしているということであります。

 それから、基準につきましてですが、私ども旧経済企画庁が昨年八月に税制改正要望を行ったわけでございますが、そのときの適格性の認定基準というものは、NPO法人に対して税制上の優遇措置を設けるについては、国民の納税の義務を免除するものである以上、相当の公益性を有するNPO法人を適切に選んで行う必要がある、ただし、今後NPO法人の実態を踏まえてさらに検討していくこととすると。それで、掲げています柱が、相当の公益性の担保。そのうち、活動・事業内容の公益性に着目した一定の基準、それから、収入面に着目して一般からの支持度合いをはかる基準。それからもう一つの大きな柱が、適切な業務運営。特定の個人、法人その他の団体の利益を目的として事業を行うことを排除する効果を持つ要件を満たしているか判断する、こういうことであります。

 その後、最初に設定しました認定基準が、まさに実態を踏まえて、さらに具体的な検討がそれぞれの分野で行われていったということだろうと思います。そして、その結果、先ほど御答弁がございましたとおり、その趣旨を踏まえて税による支援を受ける場合には、宗教活動や政治活動を行うことにより特定の立場に偏ることは適当ではないことから、宗教活動及び政治活動も一切行ってはならないとなったと理解しております。

松本(剛)委員 確認でありますけれども、そうしましたら、当初は政治活動、宗教活動を一切行わないという基準が特にあったわけではない、検討していく中で出てきたということの理解でよろしいのかどうかということが一点。

 もう一つは、認証に当たってはNPO法人から確認書をとっておる、基本的にはそれをもって確認にかえている、こういう理解でよろしいのでしょうか。

池田政府参考人 後段のところは、そういう運用を行っております。

 それから前段のところは、先ほどから申しましたとおり、相当の公益性の担保、それから適切な業務運営、それについてちょっと幾つか書いてあるわけですが、それがプリンシプルであるということで、ではそれを具体的にどうしていくのかという過程でいろいろな検討があって、先ほどの基準になったものと理解しております。

松本(剛)委員 財務省にお伺いをしたいと思いますが、認証に当たっては確認書をとるという形で政治、宗教活動について確認をしているということでありましたが、財務省の方でも、一切そういったことを行っていないという確認書をもって手続をお進めになるお考えかどうか、お聞きをしたいと思います。

尾原政府参考人 具体的にどうするかという点につきましては、この法律がお認めいただけましたら国税庁において検討がなされるものというふうに考えております。

 なお、今回、情報公開ということを非常に大切にしておりますのも、実は国税だけに、一般の方の御批判とでもいいましょうか、御支持とでもいいましょうか、そういうことが非常に大切であるということで公開を他方お願いしているところでございます。

松本(剛)委員 ぜひ、NPO法に準じてということで基準を設けられたということでありますから、手続についてもNPO法の精神をぜひ生かしていただいてお進めをいただきたい、このように思います。

 それではもう一つ、基準についてお伺いをしたいと思います。

 いわゆるパブリック・サポート・テストと言われている部分でありますが、基準の内容については私も承知をしておるつもりですので、改めての御説明は、申し上げるまでもないと思いますが御割愛をいただいて、要点だけ御回答を、時間も限られておりますので、お願いしたいと思います。

 一点は事業収入。これは事業によって自立をするということがNPOの大きなポイントではなかろうかというふうに理解をしておりますが、今回のこのパブリック・サポート・テストであれば、事業収入をふやしていけばふやしていくほどまさに不適格に近づいてくる、場合によっては不適格になってしまう、こういうことになるわけであります。先ほど調査をある程度されたということでありますが、現在の調査の結果で、このパブリック・サポート・テストでどのぐらいのものが落ちるのか把握されているのかどうか、そしてまた、どこからこういった基準が来たのかといった部分についてお聞きをしたいと思います。

池田政府参考人 まず、どこからこういうものが出てきたかという御指摘でございますが、先ほど申し述べましたとおり、昨年八月に税制要望、私ども旧企画庁が要望を出したわけですが、それは、昨年の六月に国民生活審議会総合企画部会というところで中間報告を提出しておりますが、私どものこの税制要望は、それに基づいて要望しているわけです。

 その中で、先ほどお話ししました相当の公益性の担保の一つの柱として、「収入面等に着目して一般からの支持度合いを測る基準」ということが載っております。基準が明確で恣意性が働きにくいと言われている米国のパブリック……(松本(剛)委員「内容はわかっていますから」と呼ぶ)はい。それらを参考に日本の社会に合致した一般からの支持度合いをはかる基準を作成し、客観的に判断する、こういうものでありまして、これが採用されたということだろうと思っております。

 先ほどの調査の結果でどうなるのかということなんですが、これは先ほど申しましたとおり、基準とぴったりの調査になっておりませんので、ある程度大胆な前提を置いて試算をせざるを得ないわけですが、それによりますと、大ざっぱな試算をすれば、全体の五割近くがこの基準に適合するものとなっております。

松本(剛)委員 五割近くがこのパブリック・サポート・テストを今回の基準でクリアするという理解でよろしいのですね。

 これについては、事業収入がふえればふえるほどという部分についてはどのようにお考えなのか。現在五割がクリアということのようでありますけれども、これから将来に向けて、むしろ事業による自立というのを促すべきであるとすれば、この制度の立て方は逆行するんではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

尾原政府参考人 ただいまのお尋ねは、事業収入が分母に入っているので、事業収入がふえるとこのパブリック・サポート・テストの現行基準はいかがかというお話かと思います。私どもの考え方は、事業活動全体の規模が大きくなれば、当然寄附金もさらに集めやすくなるし、また集めていただきたい、こういうふうに考えておりまして、事業の収入が分母に算入されているから基準を満たしにくくなるというふうには考えていないのでございます。

松本(剛)委員 これは逆に委員会の諸先生方にもお願いを申し上げたいと思います。我々も政治活動という公益にかかわる活動を目指していく中で、活動に必要な資金をいろいろな形で調達をしておるんだろうというふうに思いますが、事業という形で調達する方もあれば、寄附という形もあろうかというふうに思うわけでありまして、事業を展開する、寄附を集めるということがNPOの本業ではないわけでありますから、公益に係る事業をするというのが本業であるわけでありますから、やはり事業による自立というのを促進するような形をぜひ御検討いただきたい。この形というのは逆行しているのではないかということを御認識いただきたいと思います。特にコメントがなければ先へ進まさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 認定の要件については申し上げたいことがたくさんあるのですが、時間も限られてまいりました。

 複数の市町村、つまり単一の市町村の中に限られた活動範囲、もしくは寄附を受ける範囲、受益範囲というのでは認定の対象としない、こういう基準が入っているわけでありますけれども、この要件については、内閣府さんの方で、当初の要望の中のどこからこれが具体化されて出てきたのかというのをお教えいただきたいと思います。

 また、恐れ入ります、調査の結果があれば、これによって不適格となるものがどのぐらいあるのかというのを把握していれば、それもあわせて御回答いただきたいと思います。

池田政府参考人 先ほどお答えしましたとおり、当初の要望は、相当な公益性を担保する枠組み、それから適正な業務運営ということでございまして、その基準を、具体的に要件を決めていく検討の過程の中で、広く公的サービスの財源となる国税を減免するものである以上、認定NPO法人の活動は広く一般の利益を増進させるものである必要性があり、この観点から、認定NPO法人の活動として局地的な利益に限定されるものはふさわしいとは言えず、一定の広がりを有することが必要とされたと理解しております。

 なお、この要件は、一市区町村内の活動、それから寄附金及び受益者のいずれかが八割を超えていないこととしていることでございます。

 それで、調査ではどうかというお話でございますが、私どもの先ほどの調査によりますと、一市町村内以外で活動する法人が約七割、逆に言うと、一市町村内だけで活動しているのが三割ということであります。もちろん、その一市町村内以外で活動するといった場合、どの程度活動しているか、そういう問題があるかとは思いますが、一応そういう数字が出ております。

 また、市町村内の居住者から寄附を受けた法人のうち、総寄附金額に占める市町村内寄附金の平均の割合、これもちょっと計算できるわけですが、それは七八・三%ということで、八割を切っている状況であります。

松本(剛)委員 例えば、優遇を受ける社会福祉法人であるとかそういったものも、一市町村内に活動範囲が限られているといったものも十分にあるわけでありますが、その辺との横並びの関係をどのようにお考えになってこういった要件をお出しになったのか。

 そしてまた、これは先ほど我田引鉄の話がありましたが、私の選挙区だけの話をしようとは思っておりませんが、私の選挙区にも四十七万から八万の姫路市という市があるわけであります。ちなみに鳥取県が、鳥取選出の先生がおられたら申しわけないのですが、六十一万でありまして、特定公益増進法人も県単位で認証されているものもあることを思えば、六十一万ではよくて四十七万ではだめだ、こういった基準もかなり理由が、また理念が見えない基準だろうというふうに思うわけでありますが、あえて財務省さん、最終的にはこの基準を設けられるわけでありまして、どういった根拠、理念からこれを置かれたのかというのをお教えいただきたいと思います。

尾原政府参考人 今回の複数の市町村の考え方でございますが、国税で支援するということになりますと、国税ということから、活動や受益についてある程度の広範性が必要でございます。他方、このNPO法人でございますが、地域に根差した活動を行う法人が多いという実態にもございます。国税としての性格、それからNPO法人の実態、両様勘案いたしまして、ただいまの複数市町村の基準を定めているものでございます。

 なお、人口のお話とかいろいろございましたけれども、これを認定いたすためには、客観的に簡便に行う必要がございます。そういう面からも、最小単位の市区町村の区域を基準とするのが適当であろう、こういうふうに考えております。

松本(剛)委員 そもそもこういった基準を設けること自身に無理があるから、そういう矛盾が出てくるのではなかろうかということをぜひ申し上げておきたいというふうに思います。

 残された時間も大変わずかになってまいりましたが、今お話を伺っていく中でも、当初の御要望、正式に出ている御要望は私も拝見をさせていただきましたが、その中からずっと御議論の中で認定基準が積み上がってきた、こういうお話でありますが、大変これはハードルの高い認定基準ではないかというふうに実は私は認識をしております。

 これは、先ほど三百四十六の調査をされたということですので、その十分の一にもならないんですが、皆さんも御存じの、さわやか福祉財団というところが自分の周りの法人に聞いたデータがここにあるわけでありますが、これによれば、福祉でありますから内容が特化している部分というのがあろうかというふうに思いますが、先ほどの市区町村の基準は六割がアウト、パブリック・サポート・テストに至っては九五%がアウトというアンケート結果があるわけであります。

 先ほど、パブリック・サポート・テストについては五割近くが恐らくクリアするであろう、大ざっぱな計算であるけれどもという前提がございました。また市区町村については、落ちるのは三割である、こういうお話であったわけでありますが、私どもがこちらで聞いた限りでは、逆に九五%が落ちる、六割が落ちるといったような基準が設定をされているように感じられるわけであります。

 そこで、この税制、NPOを支援しようという目的で設定をされたわけでありまして、当然に、五割通っていくのか、また七割が基準をクリアするのかということと、九五%がアウト、六割がアウトというのでは根幹から変わってこようかというふうに思います。このNPO支援の目的ということにかんがみて、今後の運用の結果によって、今お話をしていただいたような五割、七割という一つの数字が出てきていましたが、そういったものを目安に、認定の要件を満たすものがどのぐらい出てくるか、こういった実情を見て速やかに、場合によっては見直すということをお考えになるかどうか。これはぜひ大臣にお聞きをさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 行政をやってみまして、法律が本来所期しておりますところと差が出ましたようなときは、当然柔軟に考える必要があると思います。

松本(剛)委員 ありがとうございました。

 残された時間がわずかでありますけれども、今、政府案について私からぜひ取り上げておきたい課題について御質問をさせていただいたわけであります。

 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案、御提出をいただいている提案者の河村議員の方から、今私が御指摘申し上げた課題を含めて、御提案をいただいた法案の特色、理念についてお話しをいただきたいというふうに思います。よろしくお願いをします。

河村(た)議員 基本的にどこが違うかということなんですが、聞いておってわかるように、要するに補助金と同じだ、そういう話がありましたね。だから、税金をいただいて、全部自分たちが分配する、そういう大原則があるわけです。だから、税金という公共的なお金を分配するのは官でなくてはならないという原則、官尊民卑ですね。時代錯誤も甚だしい。こんなことをやっておるからだめなんですよ。補助金がどれだけいかぬかなんて、わかっているじゃないですか、今回の埼玉県の何とか大学というのでも。

 私どもの違いは、そうじゃなくて公的資金も、全部じゃないですよ、一部自分たちの、民の力で分配をすることができる、官は官でそれをちゃんとアジャストしてくれ、そこが根本的に違う。

 公的資金を全部国家が取り締まろうという法律の仕組みは、いわゆる所得税法、法人税法にありますけれども、まず寄附金というのが、もともとは損金算入はだめだという原則があるんですね。その次に、条文で、いろいろありますけれども、その中の一番シンボルとしては、いわゆる公益の増進に著しく寄与すると主務官庁が認めた団体についてお金を出したものは損金算入してもいいよという、いわゆる特定公益増進法人です。これは、皆さん簡単に特増、特増と言いますが、実はその前に特定というのがついておりまして、お上が特定したところに出すときだけいいんですよと。この原則を曲げずにつくったのが与党ということでございます。

 だから、全然だめなのです、こんなのは。かえってだめです。悪法のきわみ、これは。どんどんそういうふうに、健全なというか自立的なというか、いいNPOが取り入れられていってしまいます。お金がないですから、補助金はみんなありがたいから、みんなそこへ行っちゃうんですよ。だけれども、そこは驚くべき、麻薬みたいなもので、役所の、おれたちの都合のいいことだけやるよということになるわけです。

 だけれども、我が共同提案した方は、その特増の法人を、それともう一つ、もしくはというかアンドというか、もう一つの方法でも公的資金が分配できるよと。基本形を変えておる法律だということが根本的に違うということですので、党で法律の賛否を決めることになっておりますけれども、そういう時代も早くやめて、私、前自民党で、新進党へ行った人で賛成しておった人をかなり知っておるんですけれども、もうこれは自由に投票したら勝てますよ、絶対にこちらの方が。時代が変わっておることをみんな知っておるんですよ。だから、そういう気持ちでぜひ皆さんも、役所の言うとおりにならぬように、そんな国をつくっていきたい、そんなふうに思っております。

 以上でございます。

松本(剛)委員 ありがとうございました。

 私の持ち時間は終了したようでございます。宮澤大臣、村上副大臣、ありがとうございました。所期の目的を果たさなければ、柔軟に御対応をいただくということでございます。一年一年きちっと見守っていきたいと思いますので、よろしくお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 株価が大変に低迷いたしておりまして、きょうは一万三千五十九円で引けたということです。低迷しているというのは、二〇〇〇年度の前半、企業収益が大変な勢いで回復をしていたということも考えますと、すごい低いレベルだろうなというふうにお思いの方が多いと思いますし、実際与党の中でも、企業収益が改善しているのに株価が低迷しているというのは、やはり需給関係に問題があるのではないかということで、そういった需給関係の株価対策というのをお考えになっている方もいらっしゃるように聞いております。

 需給関係自体を改善するということを否定はしないんですけれども、ただ案の中には筋のいいものも悪いものもあるとは思いますが、やはり株価が低迷しているというのは、日本経済あるいは日本の財政が持っている潜在的なリスクに対する懸念というのがあるのではないかなというふうに思います。潜在的なリスクというのが、不良債権問題であったり、あるいは財政赤字の問題であったりするんだろう。つまり、潜在的というのは、今そうでなくても将来的には大変なことになってしまうという意味で、そういった懸念が株価にもあらわれているのかな、こういうふうに思っているわけです。

 まず、柳澤大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、この不良債権問題に関しまして、直接償却というお話をされておられます。不良債権の問題、かなり前から、もうかれこれ十年近くになるんでしょうか。例えば住専処理法案とか、その後に金融三法という法律もありましたし、特定合併をするための預金保険法の改正とか金融機能安定化法とか、再生法、健全化法、いろいろございまして、そういったいろいろな経緯の中で、直接償却ということを、今そういった考え方をお出しになられた。なぜ今なのかということについて、柳澤大臣から御説明をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 不良債権の処理の問題というのは、先生御指摘のとおり、非常に長い、平成八年の年度末から実は始まったというふうに観念していいと思います。それ以来、不良債権の処理に頑張ってきておりますし、特に中間段階で、そのために過少資本に陥った銀行に対して公的な資金を資本として入れるというようなことまでして、不良債権の処理を進めてきたわけでございます。

 その進め方として、日本の場合、間接処理もあるしということをよく言いますが、先ほどどなたかが冒頭で確認をされましたように、間接処理をやった後、直接処理にする、直接処理にかかるというようなこともかなりの程度行われてまいりました。

 しかし、いずれにせよ、そのような処理に当たってまいりまして、その結果、日本の不良債権というのは、残高は横ばいという状況ですけれども、金融機関の健全性という観点からすれば安定した状況が実現しておる、こういうふうに言っていいかと思うのです。

 そういう中で、私どもは今度、直接償却というものに力を入れた方がいいのではないかということで呼びかけをしているわけでございますが、その背景は、やはり金融機関の収益力というものにございます。やはり収益力が十分回復していないというようなことがありまして、それは一体どうしてかといいますと、たびたび申して恐縮ですけれども、まさにノンパフォーミングのローンを抱えているということがあるのではないか、こういうように思いまして、これをもっとパフォーマンスのいいローンにするには、結局、一たんうみを出して、そして貸付先というものも収益が上がる体質の企業にしていくということがもう不可欠であろう、こういうように考えるわけでございます。

 ひいては、私、金融の側から見ているだけの立場の者でございますけれども、日本経済全体の活力が一体どうしてこう長きにわたって低迷しているのかということを考えたときに、我々の担当している金融機関が不良債権を長期にわたって持っているということが、いわば責任というか、その原因になっているとしたら、やはりこれは我々として真剣に取り組まなければならない課題だ、こういうように考えまして、一つには収益力を回復したい、それから第二番目に、ひょっとして大きなマイナスの作用をしているかもしれない不良債権という問題を解決して、日本経済の活力の回復に資したい、貢献したい、こういうような考え方から、こういう考え方を打ち出させていただいたという次第です。

中塚委員 本当に大変結構なことだと思っておりまして、そういう意味では、直接償却というのは遅きに失しているのかなというふうなことも考えております。

 その遅きに失しているのかなというのは、実は、もう既に答弁があったかもしれないのですが、やはりこの直接償却というのをおやりなさいというときに、早期健全化法なんかとセットでやるべきではなかったのかなというふうに思っておりまして、健全化法自体がもう間もなくなくなってしまうという中で、今直接償却ということが、それがなぜ今なのかなというふうに思う理由の一つなんですけれども、その点についてはいかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 私は、たまたまですけれども、このポストにつかせていただいたのも二度目ということで、今先生御指摘の資本注入というのは、私の一度目のこの立場での仕事でもございました。

 そういう意味で、あえてその当時の実感を申し上げますと、とにかく日本の金融機関が過少資本と見られ、そして世界の金融市場の中で大きく信認を揺るがせていた時期でございました。他方、私どもに先行する、例の金融機能安定化法のもとでのいわゆる佐々波委員会での資本注入というものが終わった後でございまして、そういう中で私ども、改めての資本注入をするということが当時の仕事であったわけでございます。

 確かに、欲を言えば、先生の御指摘も当たっていないと言うつもりはございませんけれども、本当にあのとき私どもが最も念頭に置いたのは、変な話でございますけれども、いかに潤沢な資本を受け入れさせるかということが眼目でございました。

 もちろんいろいろ法律から求められるところの要件というものはあったわけでございますけれども、しかし、それを申し上げるのが、ちょっと誤解を招くと大変困るわけでございますけれども、もう精いっぱいというところでございまして、それ以上に、あれをやれ、これをやれというようなことを言った場合には、当時一番大事であった日本の金融機関に対する国際金融市場での信認を確保するためには、どうしても潤沢な資本金を、言葉がなかなか難しいのでございますけれども、受け入れさせるかということが最大の眼目でございましたので、なかなか先生が言うような段取りにはならなかったというのも、すべてではありませんけれども、大きな背景としてあったということをぜひ御理解賜りたいと思います。

中塚委員 そういった御事情がおありだったということなんですけれども、それでも健全化法ができてもう二年なんですか、たしか十年の秋にできた法律だと思います。たしか自民党の方の議員提案だったのでしょうか、それを共同修正してつくったという覚えがありまして、そのときは、やはり資産なんかはちゃんと時価で評価をした上で、その上で過少資本になったら資本を注入してあげればいいのじゃないかというようなことが修正過程の議論の中でありましたので、そういう意味で、直接償却というのもそのときにセットでやるべきではなかったのかなというふうに思っているわけです。

 それで、直接償却というのをどんどんと奨励されていくということなんですが、これも住専のときにちょっと物の本で読んだので、その後ずっと追いかけていないので正確かどうかは別なんですけれども、アメリカには無税の間接償却というのはないそうです。直接償却をこれから奨励されるということなんですが、そのインセンティブというのですか、直接償却をどんどんとしてもらうためのインセンティブということで、何か税制上お考えになっているようなことがおありかどうか、あるいはこれから税務当局と御相談をされるようなお考えがあるのかどうかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 先生のお話の過程でちょっとお触れになられた点でございますが、実は、十一年三月期が我々が資本注入をした年の年度末ということになりますが、このときには多額の不良債権の処理が行われているわけですけれども、そのときには大変大きな金額でのいわゆる直接償却も同時に行われているということをちょっと御参考までに申し上げておきたい、このように思います。

 いずれにせよ、そういうことをやったにもかかわらず、まだ不良債権の残高がなかなか減らないということの中で、今回のような呼びかけをするに至ったわけですけれども、これはやはり、それがなかなかうまくいっていないにはうまくいっていない理由が実はあるわけでございます。

 そのことについて、今、広く関係の金融機関からヒアリングをしているという過程でございまして、もちろんその中には、これは事務当局の正式の報告ではありませんけれども、税の執行、それから税制両面にわたる、税制との絡みを訴える向きもあるようでございます。しかし、まだそのヒアリングも途中でございますので、これをまとめたときに、どういったこの絡みでの税制あるいは税の執行に対する要望が出てくるかというのは、ちょっと私、今申し上げる段階に至っていないということでございます。

中塚委員 いずれにしても、せっかく直接償却ということを推進していくということですので、できるだけ早くお願いをしたいなというふうに思っておりまして、その点、どうぞよろしくお願いをいたします。

 先ほど申し上げました日本経済の潜在的なリスクという意味で、やはり財政赤字という問題があるのだろうと思います。来年度の予算で、確かに公債発行額というのが昨年に比べてちょっとは下がっているという話ではあるのですけれども、すごく注目しなければいけない点なのかなと思うのが、地方交付税の特別会計に一般会計から繰り入れをすることとしております。

 宮澤財務大臣にお聞きをしたいのですが、去年はたしか交付税特会が借入金という形でお金を借りていたと思います。それで、何か海外の新聞なんかにも結構大きく取り上げられていたように記憶しておりますが、どうして今年度の予算についてはこの方式をとらないで来年度から実施をされることにしたのか、その辺の経緯をちょっとお聞かせをいただけますでしょうか。

宮澤国務大臣 確かに、おっしゃるような経緯がございまして、従来、財源不足のてん補を借り入れでやっておった。国もそうでございますし、地方もそうであったわけでございます。

 これは、いわゆる財政の透明化から申しますと、こういう借り入れというのは実は余り感心いたしません。それはわかっておりましたのですが、従来、とにかくそういうことをやっておって、殊に地方としては、公共団体が自分のところの債券発行というものを喜ばない、嫌がる。これは当然だろうと思うのでございますが、自分の借金ではあるのだけれども、何となく、特会の方の借金だという方が気が楽でございます。しかし、そういうことを実際続けていると、いずれあるとき、財政再建をしなきゃならないときに、これは一種の、隠れとは言わないものの、何か不明な借金だということはやはりよくないと思いまして、自治省当局は大分自治体を説得してくれて、苦労をされたようでございます。

 私の方はまた、ごく手短だけの都合で申せば、特会で借りておけば、そのために国債を出すという問題はなかったわけですが、やはり地方がそういう決心をしてくれた以上、我々もちゃんと国債を出そうと。それで、これは明らかに自分の借金でございますということを両方で言い合うことにいたしまして、これは、ある意味で財政の透明化と申しますか、そういうことを試みたということでございます。

中塚委員 そういう意味では、交付税特会自体が、財源が税ではなくて借金になっているような状況でありました。今もそのような状況でございますので、地方自治体の自覚を促すとか、そういったことでは確かに効果はあると思います。

 ただ、そこで、ちょっと今回、来年度の予算について、景気、財政構造改革に配慮をしたということになっているわけです。地方に自立を促すというのは非常に結構なことなのですが、そうあらねばならないと思いますけれども、地方から見れば、交付税措置をしてもらえると思っていたものが、急に赤字地方債を出しなさいというふうに言われてしまっているわけですね。地方債自体は、元利償還は交付税措置をされるということになっておりますが、ただ、先のことが決まっていないということがあって、その償還についてもまた赤字地方債を出しなさい、そういうことを言われかねないのではないかというふうな懸念を抱いてもしようがないのかなと思います。

 そういうことでは、地方自治体が単独事業、公共事業というのを行わなくなるということが十分予想されるのではないかと思っていまして、そういう意味で、積極予算とはいいながら、実は地方向けには逆になってしまうということになりかねないのではないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。

宮澤国務大臣 発行いたしました地方債の元利償還金相当額は、基準財政需要に算入をいたしますということは御存じのとおりでございますから、それは地方ももちろん御存じでございます。

 ただ、おっしゃいますように、今まで何となく、だれの借金でもないといいますか、余り明確でない形でできた借金が、今度はあなたのところの借用証文ですよといえば、それは地方としては決して歓迎はなさっていなかったようでございます。それは自治省の方々がかなり一生懸命説得をされて、将来の財政再建、財政の透明化ということは、ここはやはり決心をしてもらわないと困る、国もそうするつもりだからということでやられましたので、その間の経緯には中塚委員の言われるような問題があったように存じております。

中塚委員 本当に、自治体に自立を促すというのは結構なのですが、要は、積極予算ではなくなるのかなというふうに思っているわけです。

 地方財政というのが、それこそ将来にわたってどういうふうになっていくかわからないということで、まずやはり地方財政、地財計画ありき、地方がどのようにお金を使うかということがあって、それで歳出というのを保障するような形になってしまっているということが、国として将来の歳出増の要因になっているというふうに思うのですけれども、そういった点について、この地方財政全体の見直しということにつきまして、財務大臣、御意見ございますでしょうか。

宮澤国務大臣 おっしゃいますように、地方財政も国と同じぐらい極度の貧窮状態でございまして、私、予算を何度かここで編成しておりますけれども、いつも一番の問題の一つは地方財政でございまして、自治大臣と事前に折衝をさせていただいて、何とかかんとか危ない橋渡りのようなことでやってまいっております。

 こういうことは長くは続けられないなということは、自治大臣もお考えであるし私も考えておりまして、それで、財政再建というお話が出るたびに、もうその際にこそ、この中央、地方の行政、財政の再編成をしなければならないと深く思っておりますので、将来行われるシミュレーションにも、どうしてもそれは入れておかなければならない。おっしゃいますように、全く継ぎはぎだらけのことをいたしておりまして、とてもこういう状態は長く放置することはできない現実でございます。

中塚委員 地方財政について、団塊の世代と言われる人が大量に退職をしていく、あるいは、高度成長時代につくったような社会資本がどんどん老朽化をしていくというようなことがあって、ストック循環ですが、特に公務員の大量退職というのは今から七、八年後に迫ってくるというふうに言われておりまして、その退職金の積み立てというのも随分不足しているようでございますので、そういった改革というのもどんどんと急いでいかなきゃいけないんだろうというふうに思うわけです。

 やはり、そういうことになりますと、国が元利償還を面倒を見るようなことなしに地方自治体がちゃんと資金調達ができるというような仕組みをつくっていかなきゃならないというふうに私どもとしては思っております。財政の出動要因ということで、地方財政だけじゃなくて、社会保障等もありますし、そういうのはもう今事欠かないわけです。今大臣がおっしゃったとおりだと思います。

 六百六十六兆円の長期債務を全部返せというふうな話ではないと思うんですが、ただ、やはり問題は、今の財政の仕組みでずっとこのままお金をやりくりしていくということはもう不可能になっているんだろうということだと思います。短期的に見ても、郵貯の集中満期が過ぎれば税収も落ちるわけですし、あと、財投債というのも出されることになっています。

 そういった意味では、民間のアナリストのある試算なんですけれども、平成二十五年には借換債だけで百四十兆円、財投債なんかも入れればもう単年度で二百兆円ぐらいの国債を発行しなきゃならなくなる、そういった試算もあるぐらいでございまして、債務残高というよりも財政赤字、単年度の赤字というのをどう減らしていくかということがやはり一番大きな問題になっていくんだろうというふうに思っているわけであります。

 それで、次に、税制の話を伺いたいというふうに思います。

 法人税法等とかあるいは租税特別措置とかそういった法律が出ておりまして、今その審議をしているわけですが、多くの方の関心というのは、やはりこれから先一体どうなるのということなんだろうと思うんですね。

 それで、今、所得課税について言えば、恒久的減税というのをしております。恒久というのは、恐らく以前やっていた特別減税の特別に対する恒久だと思いますし、的というのは、抜本改革までそれが続くという意味で恒久的ということなのかな。ただ、恒久的減税ということ自体、やはりこれは期限つきのものなんだなというイメージをすごく強く与えているように思いまして、そういう意味では、やはり、これから先の税制というのがどうなっていくのかということについて、しばらく伺っていきたいと思います。

 それで、大臣は、財政再建というのは税の増収が見込めるようになってからということをたびたび答弁されているわけですが、税制の抜本改革についてはいかがでしょうか。

宮澤国務大臣 税の抜本改革は、財政再建をいたしますときに、国税、それから地方と中央の行財政の関係、社会保障等とあわせまして、その際に抜本的な改正をしなければならないというふうに考えております。

 今、法人税はやや国際並みになりました。所得税も、最高税率を下げたりもいたしておりますが、願わくは課税最低限をもう少し下げなきゃいけないなという思いはございます。相続税は最高税率を実は改めなければならない時期がと思いますが、それは、みんなそれらが抜本改正の中で行われることになるのではないか。

 つまり、シミュレーションをいたしました場合に、社会保障の給付との関係で、あるいはその他の関係をあわせまして、国民負担はどこまでお願いできるかということの中で、保険料負担と税負担とがおのおの、両者から成るわけですが、仮にそのトータルがどのぐらいまで許されるものだろうか。そういう枠の中で税制改正をどうするかということが決められていくような、そういう手順になるかと思います。

中塚委員 今の御答弁ですと、やはり税収増が見込まれる状況というか、経済が回復して軌道に乗り出したときにということでよろしいんでしょうか、抜本的税制改革ということについても。

宮澤国務大臣 それで、そういう抜本税制改正の着手時期でございますが、以前から申し上げておったのは、毎年度の国税収入が、見積もりをいたしましても結局年度末にはそれだけ取れないで減額補てんをしておったような状況から、ようやく脱却できそうな形になってまいりました。そうしますと、財政改革といっても、自分のところの税はまず幾ら取れるのか、それすら言えないようでは事になりませんが、だんだんそういうことが言えるように近くなってまいりましたので、けさほども申し上げましたが、片っ方でそのマクロモデルをつくってシミュレーションの準備を始めたい。したがいまして、そのときに税制の問題がやはり同時に取り上げられる、こういうことと思っております。

中塚委員 特に所得課税なんですけれども、抜本改革について課税最低限をと話が先ほどから出ております。消費税については、税制の将来像を余りコメントすると怒られたというような話もちょっと午前中にお聞きをいたしました。

 ただ、やはり今のままのやり方を続けていけば、今のままの社会保障の給付水準を維持して、今のままの公共投資を維持していけば、特に社会保障なんかどんどんと高齢化が進めば給付総額が膨れていくのはもう当たり前の話なので、消費税にしても、上げるとか上げないじゃなくて、上がっていくんだろうというふうに思います。ですから、消費税が上がる、上げるということについて、とりたてて批判をするつもりはありませんし、ただ、その上げるタイミングというのはもちろんあると思いますので、その抜本的な税制改革のことについてお聞きをしているわけです。

 所得課税の抜本改革なんですが、課税最低限のお話がございました。あと、税収という面なんですけれども、国民負担率という言葉が出ておりますが、所得課税の抜本改革について、そのときの税収なんですけれども、大体今と同程度の税収になるような改正をお考えになっているのか、それとも恒久的減税以前の税収と同じぐらいの税収レベルの改正をお考えになっているのか。その辺は今お考えはありますでしょうか。

宮澤国務大臣 その点を私が注意深く申し上げなきゃならないわけでございまして、国民の選択をお願いするのは、社会保障の給付がこのぐらいであった場合に負担はこのぐらいでございます、高福祉、中福祉、低福祉、いろいろございましょうから、その中で国民に選択をしていただくしかない、こういうことでお願いをいたしたいと思っております。それに先んじて税だけが飛び出しますと、それはとても世の中の議論にたえませんので、社会保障の負担、こういう給付をお望みならば負担はどうしてもこうなります、そういうふうな形として国民の選択をお願いしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。

中塚委員 私どもといたしましては、社会保障の話は消費税でということを以前からずっと主張しておりまして、その話に入る前に、所得税のお話なのですけれども、特に所得課税というのが基幹税目である、それより以前に税というのが国の根幹にかかわるということでございますので、できるだけわかりやすい制度であるということが重要なのだろうなと思っております。

 また、納めている人と納めていない人というのが余りにもアンバランスな形になってしまうというのは本当に不公平なことでありますし、ある意味、社会への参加料としてすべての人が納税をする仕組み、そして、できれば自分で納税をする仕組み、それぐらい簡単な制度にしていった方がいいのだろう、そういう仕組みを確立するべきだろうというふうに考えておるところです。

 そのためにも、課税最低限のお話がございましたが、わかりやすい制度にするために、控除を原則的に廃止をして、そのときに税率も引き下げる、また税率構造も三つぐらいに簡素化をして、そういったわかりやすい制度にして、たとえ少額でも国民の皆さんが納税をしていただける、そういった制度をつくっていくべきではないかというふうに考えております。

 たしか昼過ぎの答弁でしたか、たとえ最低税率を引き下げてもみんなが納税をしてくれるのが理想だというふうな趣旨を大臣はおっしゃったと思うのですが、こういった考えについてはいかがでございましょうか。

村上副大臣 中塚委員の御質問にお答えします。

 個人所得課税は、個人の所得に担税力を見出して税負担を求める基幹税であります。各種の人的控除を適用することによって、世帯構成等といった納税者のさまざまな事情を配慮した適正な税負担を求めることが適当であると考えます。ゆえに、各種控除を原則廃止することについては、このような個人所得税の税負担調整機能を損なうという問題があると我々は考えます。

 また、税率構造については、税制全体の所得再分配機能を維持していく必要があることを考えれば、今以上の累進緩和は適当ではない、現行の税率構造は基本的に維持すべきと我々は考えます。

 いずれにしましても、個人所得課税のあり方については、社会経済の構造変化を踏まえて、公平、中立、簡素の観点から、国民的な議論の中で検討されるべきことであるというふうに考えております。

 以上であります。

中塚委員 世帯構成に応じた負担能力、以前からずっとお話しになっていることなので、以前からもお聞きをしていることです。

 ただ、宮澤大臣、午前中、税率が低くてもいいから皆さんが納めてくれるような制度が理想だというお話をされたということ、これは、いずれにしても課税最低限を下げるということは、控除を、原則廃止とまではいかなくても、圧縮をするということをお考えになっているということではないのでしょうか。

宮澤国務大臣 今、将来の税制のことを私はなるべく申し上げない方がいいと思っておるわけでございますので、一般論で申しましたら、恐らく今おっしゃるようなことになっていくかと思います。

中塚委員 例えば、パートさんの所得課税の話なんかでもそうなのですけれども、六十五万円と三十八万円で百三万円の壁ですか、それを超えてしまうと本人も課税されるし、あとだんなさんの方にも課税がされてしまうというようなことがあります。

 人的控除を縮小する、あるいは廃止するということで、そういった問題についても解決をしていけるのではないかなというふうに思っておりますし、やはり何よりも一人一人の方がちゃんと税金を納めていただく、そういった制度を確立していく必要があるのではないかというふうに思っております。

 課税最低限が高過ぎるというふうに先ほど来おっしゃっておりますが、ただ、それをでは引き下げるかというと、結局どのレベルまで引き下げるのという話がまた当然出てくるわけでございます。将来の税制について言うことはよくないというふうにおっしゃいますが、ここはやはりある程度の道筋をつけるということが、社会保障経費の増大やら、あるいは財政赤字の増大やら、そういったことに対する国民の皆さんの不安や懸念を払拭することにつながっていくのではないかなというふうに思うのですね。控除を廃止した場合でも、それを手当に置きかえるということで十分その負担の調整というのは可能ではないかというふうに思うのですが、大臣、いかがでございましょうか。

宮澤国務大臣 先ほど村上副大臣が言われましたことは非常に大事な点でございまして、将来抜本改正でどういうことが議論されるかは今から正確にはわからないわけでございますが、私ども、控除というのはいろいろな控除がございますが、やはり本人の担税力、あるいは家族構成、いろいろなことが現実に、税負担はどのぐらいが適当であるかということに関係をいたしますから、やはりいろいろな控除、それなりの意味を持っておるというふうに考えております。

 ですから、控除を手当に振りかえられないかというお尋ねは、恐らく例えば児童手当のようなものをお考えになっていらっしゃるかもしれませんが、それはやはり、扶養控除にしても、あるいは家族のいろいろな年齢による控除にしましても、それと児童手当とが、この問題は外国でもまさに児童手当を歳入の形でやるところと歳出の形でやるところとがございますから、国によってそういう国があることは承知しておりますけれども、どうもわが国の伝統的な考え方から申しますと、みんな児童手当に取りかえてしまえというようなことは、そういうふうな主張をしていらっしゃる政党もおありになりますので、恐らくそういう御意見が出てきて、抜本改正のときにいろいろに御議論になることだとは思っております。

 そのことを今からあれこれ申すのではございませんが、今、私どもでいいましたら、やはり控除というものをやめてしまうということは、ちょっと私どもがずっと考えてきたことになじまない、あるいは日本の社会のあり方になじまないのじゃないかということを、さっき副大臣がお答えをされたわけでございます。

中塚委員 考え方の違いというのはいろいろあるのだろうと思うのですが、ただ、いずれにしても、考え方は違っても、将来に向けての望ましい税制のあり方というのは、やはりアウトラインを示しておいた方が、逆に国民の皆さんの不安とか懸念を払拭することにつながるのではないかというふうに思っていることは再度申し上げたいと思います。

 そして、次に消費税の話なのですけれども、有識者懇談会ですか、やはり社会保険制度というのを大切にしていくというような結果が出たというふうに聞いておるのですけれども、大臣は、この答申なのでしょうか、それについてのお考えというのはいかがでございましょうか。社会保障において社会保険制度を維持していくということについて。

宮澤国務大臣 これも政党によりましていろいろな御主張がございますが、先般、この問題につきましての有識者懇談会が、かなり精力的に検討され、意見というものを出された。その考え方は、実は私どもの考え方に非常に近いものでございまして、やはり基本的には保険というものを中心に考えていくべきではないかということでございました。それは、私どももただいまそう考えております。

中塚委員 現状でも、保険制度といっても、保険料だけでずっと社会保障制度が行われているわけではないわけですね。それで、例えば基礎年金なんかについては国庫負担率上げということが言われておりまして、三分の一から二分の一にする、何か十年ほどかけて段階的に上げていくというふうな話もあるように聞いております。

 ただ、国庫負担というときには、消費税もあるし、法人税もあるし、所得税もあるしということだと思いまして、実際のところは、保険料と税がミックスになっているということだと思うのです。そういった、税と保険料がミックスになっているという現状におきまして、消費税の幅を上げていくということについては、宮澤大臣はお考えはいかがですか。

宮澤国務大臣 これは、せんだって私が犯しました過ちを犯してはならないと思っていまして、今、先々消費税の引き上げ等々を考えているわけではございませんので、お答えを不用意にいたしますと誤解を招くことでございますが、先ほど申しました有識者会議は、やはり基本的には、生活困難のリスクに対する事前の備えをみんな共同でやる、それで制度への貢献に応じて給付が行われるという社会保険方式が主としていいのではないかという、それが私どもそのとおりと思っている意見でございますけれども、もちろん、ある部分は国が税金という形で負担をする、そういう形もあり得るわけでございましょうと思いますが、考え方としてはやはり保険方式がいいのではないか、こう思っております。

中塚委員 保険方式がいいという話からお入りになられたのですが、保険は残したままで、そのミックス方式はどうなのかなというふうなお尋ねをしたわけです。

 消費税を上げるということになると、いろいろな御意見がある、抵抗があるというのは確かに承知をいたしておりますけれども、事社会保障に限っていえば、給付水準を今のレベルに固定して、そしてこのまま高齢化が進展をしていけば、確かに消費税を目的税にすれば消費税は上がりますけれども、現行のままでも保険料だって上がっていくというのは事実ですし、あと、それを賄うための国庫負担だって、三分の一のままでも、その中身である所得税や法人税や、あるいは赤字国債というのをどんどんと発行しなければならない。法人税、所得税も上がるし、赤字国債も発行しなければならないというのは事実だと思うのですけれども、大臣、いかがでございましょう。

宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたシミュレーションをしていきますと、社会保障各般の問題はどうするかという答えの答案を迫られることになります。その段階におきまして、ただいまのような御議論がいろいろに行われ、またそれとの関連において税のあり方も同時に行われて、そしていろいろなものがサイマルテニアスに選択されて、決定されるという形になっていかなければならないというふうに思っておるわけです。

中塚委員 今、恒久的減税というのをやっておりまして、それで大多数の中堅所得者層の方というのは、税金よりも保険料の方を多く負担されているのが現状だと思うのですね。実際、国民負担率というときには、税だけではなくて社会保険料の負担というのもカウントをするわけですし、それに加えて財政赤字をカウントする場合もありますし、そうなると、今もう四五%ぐらいまで行っているのでしょうか。

 そういった意味では、税と保険料の関係、所得を賦課標準とする保険料にするのか、あるいは消費を課税標準とする消費税を主な財源に充てていくのか。給付額については、それはこれから、それこそ先ほど大臣がおっしゃったように、どの程度の給付レベルにするのかということとの兼ね合いですから、決して、消費税を社会保障の主な財源にするからといって上がるという議論ではないはずだと思うのですね。逆に、負担と給付の関係を明確にするということの方が大切で、そういった意味でも、消費税を導入することで、そういう給付と負担の関係について国民的な議論が行われやすい状況をつくるべきではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。

宮澤国務大臣 しばらく前に、昨年でございましたか、厚生委員会に御主張なさいましたことを読ませていただいておりますので、委員の御主張の御論拠は存じ上げております。こういう御意見もあちこちにあるということも承知いたしております。

中塚委員 余り、何というのか、何も言葉じりをとらえてどうのこうのという話ではなくて、本当に政策の問題として、これからどんどんふえていく財政支出をどういうふうにして解決するのかということでお話をさせていただいております。

 何か、新聞報道によりますと、年金の国庫負担率を上げるときに、二〇〇二年から十年かけて国庫負担率を上げていくというふうなお話があって、そのときに公的年金等控除を所得に応じて圧縮するとか、そういった記事が出ております。控除を圧縮するというのは、先ほど申し上げたとおりで、それはそれで構わない、結構なことだと思うのですけれども、そういった控除の圧縮をするということであれば、やはり私どもとしては、社会保障の主な財源に消費税を充てるべきなのではないかと思っているということをお伝えしておきたいと思います。

 それでは、時間が大分残り少なくなってまいりましたので、NPOの税制について、提案者の河村委員にお尋ねをしたいと思います。

 先ほどの提案理由説明をお聞きいたしまして、大変感銘を受けました。感銘を受けたというのは、全く考え方は同じです。それこそ、戦後、あるいは明治維新以来かもしれませんが、やはりこの国というのは、官が民からお金を吸い上げて、税金やら郵便貯金という形でお金を吸い上げて、そしてそのお金を官が決めていく、公共投資であるとかあるいは財政投融資であるとか。そしてその使い道というのは、国民の皆さんの御意見とは関係なく使っていく。そういった経済運営をしてきたことは、もう事実だろうと思うのですね。

 そのこととあわせまして、やはり護送船団行政というのですか、あらかじめ保護育成するべき産業を決めた上で、規制社会、管理社会の中にあってそういった護送船団行政という手法をとってきた。こういうふうな経済社会運営のあり方が今本質的に行き詰まりを迎えているというのが、まさに構造改革が迫られている理由だと思いますし、このお金の回り道というのでしょうか、やはり民間の皆さんにたくさんお金が残るようにしていかなければいけないし、規制はどんどん撤廃、緩和をしていかなきゃいけないのだろうというふうに思っております。そういう意味で、先ほどの提案理由説明はもう全く同感です。

 ただ、一カ所だけちょっとお伺いをしたいところがございます。この国では、公というのはすべて官なわけですね。だから、その公というのを官でない部分に任せればいいじゃないかという発想は本当によくわかるわけですけれども、ただ、ではその税制を優遇する云々というときに、どうして第三者機関というのが出てくるのか。そのあたりにつきまして、この法案をおつくりになられたときの経緯も含めて御説明をいただけますでしょうか。

河村(た)議員 お答えをいたします。

 なかなかこれは悩ましいところでございまして、かなり議論がありまして、正直言って三つほど意見がありました。

 一つは、まあまあそういうところは国税でいいではないかということですね。法律の基本的なフレームを、特増をぶっ壊す方向の法律をつくればそれでいいではないかという議論。それからもう一つは、これは私がずっと前から本当は言っておったのですが、今でも特増法人というのは結構都道府県でやっているのですね。だから、知事がやれば、実際それはそれでわかりやすいではないか。知事には選挙がありますし、議会もあるということで。かつての新進党の案はそうなっておりました。それと、もう一つあったのは、やはり官からの支配を非常に嫌うという思想の方もお見えになりまして、日本では第三者機関というのは実際はなかなかうまくいっていないのですけれども、やはりこれを出して、官から距離のあるところで判断をしていこう。

 こういう提案があって、大体三者均衡しておったのですが、わずか一票差ほどで第三者機関のところが勝ったということ。それだけと言ってはなんですけれども、そういうことでございますので、余りそこに重きを置かれるよりも、第三者機関だといいましても、実際は、イギリスのチャリティーコミッションというのが実際はかなり役所がやっていることになっていまして、余りうまくいっていないということも事実でございます。

 ですから、それもこれですけれども、一緒にやらぬと政権とれませんから、早う、自民党でないけれども与党をぶっ壊して、その辺のところはまた一緒に相談しがてら、この法案は今度はみずからの手で成立させて、新しい、要するにすべて、もう大蔵省もええかげんにしておいてもらわなあかんよ。全部公的資金をおれたちが取り仕切るというのを。大蔵省は勝手に何やけど、自民党をだましてはいかぬ。やはりそういうものを民の力に任せていく、公共的なものも。そういう時代を一緒につくっていきたい。そういう意味でぜひ賛成を賜りたい、そんなふうに思っております。よろしくお願いします。

中塚委員 今のお話はよくわかったのですが、一票差ということのようですけれども、ただ、やはりどうしても私どもとしては第三者機関というのにこだわりまして、例えば、もうなくなってしまいましたが、金融再生委員会というのもありました。日本は議院内閣制の国なので、第一義的には、やはり政府と与党は一体化をして、そして与党は行政の責任者であるという形が一番望ましいのだろうというふうに思っております。ですから、第三者機関とか、あるいは行政委員会のようなものが果たして我が国になじむのだろうかという疑問を私どもはずっと持っております。そこのところが唯一ひっかかっているところでございまして、これは、ともすればすごく無責任な体制になってしまうのではないかなというふうな危惧をぬぐえません。

 先ほど政権をとろうというお話がありましたが、それこそ、政権をとれば河村先生みずからがNPOを認定されればいいことだと思いますので、私は、そういう意味で、やはり第三者機関というのはちょっといただけないなというふうに思っておるのですが、いかがでございましょう。

河村(た)議員 確かにそうでございまして、基礎的なところだけをやって、あとは多くの場合、外国でもそうですけれども、民間の評価機関に任せていく。その民間の評価機関そのものがNPOで誕生することになります、この私どもの法案が通れば。だから、いろいろな要件を、与党案はぐじゃらぐじゃらとわけのわからぬ、とろくさいのをようけつけておりますけれども、そういうのは民間に任せて、例えば、役所の審査は通ったけれども民間の評価機関からこれは全然あかんぞということで、そういうところは寄附が集まらなくなる、みんなでそういうふうな社会をぜひつくっていきたい、それを主眼に置きましょう。

 そんなことで、ぜひ一緒にやれますように、鈴木さんもお仲間でございますので、お願いしたいと思います。

 以上でございます。

中塚委員 民間の評価機関に任せるということであれば、ぜひそういった形にしていただければ首も縦に振りやすくなるなというふうに思っておりますが、今から修正をするということはもう無理なんでございましょうか。いかがでしょうか。

河村(た)議員 党で出すことになっておりまして、これがええかどうか、世の中はわかりませんけれども、もう早くこういう党議拘束で党の国会サラリーマンみたいなことはやめさせてほしいのですけれども、一応党の機関決定をしておりますので、まあまあそこは余り、とりあえず一番大事なところの、私もこれに強く賛成したのは、やはり特増のシステムと並び立つものでつくった。本当は特増をぶっ壊す、この条文を廃止するといいのだけれども、現実的には既得権が発生していて非常に苦しい。だから、新しいシステムでこの特増をなくしていく。

 ぜひこちらのプラス志向で、なかなかやはり、全部まとめてやりますと、個人で法案を出しますとこういうことは起こらぬのですけれども、どうしても一応のコンセンサスをみんなでとろうということになりますので、ぜひその辺は、本質はそっちにありますので、御了解いただきたい、そういうことでございます。

中塚委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。

山口委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀でございます。

 NPOにかかわりましては、私も共同提案者でございまして、河村先生に御質問できないことはあれなんですが、思いは今おっしゃられたような思いで、私もそういう思いでおりますが、三十分いただいておりまして、また一日一時間ということでございますので、今回三法、できればきょうは特例公債法にかかわって、あと税法にかかわる二法の入り口のところあたりまでできればと思っております。

 まず、この特例公債法にかかわってでございますけれども、昨年末の財政制度審議会の平成十三年度予算の編成及び今後の財政運営に関する建議によりますと、「我が国経済・財政の現状と今後の財政運営」に関して、財政赤字の累増は財政の硬直化を招来し、活力ある社会の実現の大きな足かせが懸念されるということで、財政運営について、現下の債務残高や財政収支のバランスから見て、我が国財政はもはやさらなる出動の余地はなくなってきていると既に警告を発しているわけです。

 そして、その上で、「平成十三年度の予算編成及び財政運営に当たっての考え方」の中で、この審議会は、従来から機会あるごとに、公債発行額の抑制、公債依存度の引き下げというのを強く訴えてきた、十三年度予算においても公債発行額を可能な限り抑制するよう努めるべきであるということをもう既に見解としては示しているわけですが、実際のところ、予算案を見てみますと、景気対策であれば何でもありというふうな、結局、来年度予算もそういうことになっていると言わざるを得ない。この間、ずっとそういうことで史上最大規模の対策が繰り返されてきた結果、債務残高が我が国の経済規模も上回るようになってしまった。これはもう厳然たる事実でございます。

 私自身は、景気対策の重要性というものは十分認識しているつもりで、むしろ積極的に景気対策をやるべきだというのが私の立場ですが、財政再建と景気対策のそういう意味では両立も可能だと思っています。ただ、事ここに至って、六百六十六兆もの借金を抱えるという中で、本来、そういうふうには考えたとしても、実際ほんまに返せるのかいなというのは、ほとんど不可能だろうというのが実態だろうと思います。

 そういう意味で、この六百六十六兆円、実際、かつて一九九四年のイタリアの場合を見ると、対GDP比での借金一二四%というのがこれまでイタリアの最高記録だったわけですが、対GDP比で日本の六百六十六兆というのはそれを超える一三〇パー近くなるわけです。もはや財政は持続不可能な限界点に来ているんじゃないかと思うのですが、まず、その基本的な問題についての財務大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

宮澤国務大臣 基本認識におきまして、ただいま委員の言われたとおりに考えております。

植田委員 基本認識はそうなんですが、事実認識は見てのとおりですからそうだと思うのですけれども、例えば、昨年、大蔵原案のポイントというのが配られますけれども、その中に、二〇〇一年度の予算については、個々の事業の徹底した見直しとか、省庁間、事業間の融合化や連携を促進とか、財政の効率化、質的改善の推進とかいろいろと書いてあるのですけれども、実際出てきたものは、従来型の、従来型の公共投資優先、公共事業依存の景気対策型予算になっているために債務が累積しているんじゃないかと思うのです。そろそろこれは、いわゆる財政再建、改革路線への転換というものがもう焦眉の課題だろうと思うのですが、その点についてはいかがでございますでしょうか。

宮澤国務大臣 御審議をいただいております予算を点検していただきますとおわかりいただけることでございますけれども、いわゆる我々が、新生のための四つのプロジェクト、IT、環境、高齢化あるいは都市再開発等々、これはこの四つで一般公共九兆円余りの四〇%ぐらいになっております。したがいまして、かなりいろいろな問題が実は集約されてきておるということを申し上げることができると思いますし、他方で、再評価制度等々もいたしました。

 したがいまして、公共事業というものは、やはり実態は、毎年毎年違ったことをしているわけじゃございませんから、長期的な仕事をずっとしている部分が一番根っこにございます。これはそう簡単に動かすわけにいきませんで、動く部分は、いわゆる今申しましたような新しい命題に関する部分でございますから、それらが四〇%を占めておるというのは、かなり実は見直し等々が行われているという結果だと思っております。

植田委員 今おっしゃるお話伺った、かなり工夫は凝らされたんだろうというふうには思いますよ。ただ、今借金を返さないかぬ、返さないかぬけれども今回もまた借金をするわけですが、もう返しようがないという状況まで来ているじゃないですか。

 今の大臣のお話でしたら、景気回復ができれば大丈夫だというふうにも聞こえてしまうのですけれども、実際、例えば財務省の資料で財政の中期展望というのがありますが、二%成長というのが実現できたとしても、日本のGDPが約五百兆ですから、二%の経済成長があったとしても年間大体十兆円GDPがふえることになるわけですね。仮に租税の負担率が、社会保障負担を除いた場合に大体二五から三〇パーになると、大体年間にふえる税収が二兆五千億から三兆円ということになると、仮に大体七百兆円ぐらいの赤字を返そうと思ったら、これは二百年ぐらいかかるということになると思うのですよ、大ざっぱな計算をすれば。要するに二百年以上かかる実態。これはもう返しようがないということです。

 また、実際、では行革やりましょう、歳出削減しましょうといっても、七百兆近い借金があるわけですから、十年で仮にやろうと思ったら、一年当たり七十兆弱になるわけですね。実際国家予算が八十兆円規模ですから、ほとんど財政赤字の削減に充てないかぬ。こんなこともとてもじゃないけれどもできない。では増税しましょうかといっても、大体人口一億二千万で、六百万の借金を抱えているような勘定になるわけですから、お年寄りから子供まで入れれば大体一人頭一千万近くなる。増税をやるにしたって、国民の理解は得られない。

 要するに、どう考えても財政赤字は返済できへん地点にもう我々はいるよということをまず事実認識として持たなきゃならないなと思うのですけれども、まず、ではそのために、その事実認識と、では具体的に、これを次の世代に先送りをしないという観点から、我々現役世代で知恵を出し合わないかぬ、その知恵についても財務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 借金が増大していることを私もどなたよりも心配をしておるつもりでございますけれども、同時に、今現に私どもは十年の国債をクーポンレート一・二で出しまして、それは順調に消化されておるということでございます。信用がある。

 そのことの意味は、日本の国債というのはいつでも信用できるということであって、それが全部いつか返されるとかなんとかいう、どんな企業でも、企業が借金をみんな返すというようなことは普通ないことでございますから、したがって、我々の公債が信用されておるということが私は大事なことなんだと思っております。

 もとより、国債がふえることを私は心配していること人後に落ちませんけれども、大事なことは、その国債が現に世界的な信用を受けておるということだと思います。

植田委員 信用されているから、借金はしても全部返さなくてもいいということでございますね、言ってみれば。現に国債、日本の信用がありますから、お返ししなくても、全部一遍に返すということはそもそも考えていないということでございますか。そういうことでいいんでしょうか。これは一応お伺いした点についての御確認だけですので。

宮澤国務大臣 償還期が来れば借りかえられるとか、そういうことを含んでおります。

植田委員 ただ、今おっしゃったところにも話が含まれていると思うのですけれども、いずれにしても、この巨額な財政赤字というのは返済不可能という処方せんしかもう書きようがないわけですね。全部返さなくても、その都度その都度、信用が日本がありますから結構ですということなのかもしれませんが。

 ただ、まずはそういう意味では赤字国債を出さないという政策があるわけですけれども、ただ、赤字国債を減らすかわりにでは建設国債だったらいいのかというのは、昨年も一度質問したことがあるんですけれども、少なくとも、対象範囲の見直しが進んだら、赤字国債が削減されて建設国債が多用されることになってしまうわけですから、それはむしろ、建設国債でも赤字国債でも借金は借金ですから、総体として債務を削減するということにはならない。やはりそうなると、財政硬直化を依然として改善することにもならない。

 ならば、やはり財政の健全化について、順調に進んでいるという事実認識じゃなくて、現に破綻している状況にあるんじゃないかという見地に立って知恵を絞る必要が私としてはあるんじゃないだろうかと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

宮澤国務大臣 やがて財政再建に進まなければなりませんし、それに至ります間でも、例えば御審議中の予算におきましても、十三年度の公債発行はわずかですが減額をしておるといったような努力は私ども一生懸命やっておるわけでございます。

植田委員 努力はされているんだろうと思うのですが、最近、私、「財政崩壊を食い止める」という本を読みまして、神野直彦さんと金子勝さんの、何か結構国会の本屋でも売れているそうですが、結構おもしろいなと思ったのが、債務管理型国家ということでこの神野さん、金子さんは表現されているんです。その言い方が適切かどうかというのはそれぞれ議論のあるところなんですが、これ以上財政赤字をふやさないがすぐに借金は返さへん、要するに返せないわけですから。ただし財政赤字はもうふやしませんよ、そして、残っている借金を何とか、ある種のモラトリアムというか債務凍結に近いような状態をつくり出して、返済期間を限定しないで長期間で財政赤字を解消していこうという発想でこの本を書かれておるのです。

 確かに、財政赤字を急激に削れば失業等々が増大する、そういう危険性もあると思いますし、では、赤字を膨張されれば、どんどんデットトラップのリスクが拡大していくわけです。だから、言ってみれば、債務を管理した財政運営を行っていこう、そういう考え方に立っていまして、私なんかも非常に首肯できる見解だと思っておもしろく読ませていただいたのです。

 ただ、そのモラトリアムの間に大胆に分権改革をやって、例えば公共事業の改革、年金、社会保障等々の総合的な財政改革をその間にやる、そういう発想なのですけれども、これは結構私はそういう選択肢ぐらいしか、いろいろなことをやりましょうと言ってもここまで借金が、六百六十六兆になってしまうと、七百兆近くなるというところまで行ったら、それを解消する財政再建といってもこれはもう政策としての選択肢はそんなに少ないと思うのです。その意味では、非常に傾聴に値する見解かなと私なんかは思うのですけれども、大臣の御見解もお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 その本を読んでおりませんのでお答えができませんが、ただ、モラトリアム云々ということを言われましたけれども、私どもは、国の借金は期限が来れば必ずお返しをいたします。その間、金利もちゃんと払っておりますということがございますから、今日我が国の国債は市場でこれだけの信用があるというそのことは大事なことである。もとより、大きな借金はだんだん減らしていかなければならないことは、おっしゃるとおりでございます。

植田委員 私は、景気対策と財政再建というのは車の両輪だと思っているのですが、まず、初歩的な、端的な質問で、この間、明らかに乗数効果が落ちている。巨額な公共投資、また減税しても、それが景気刺激効果としては余り効果をもたらさないというのは現実問題あろうかと思うのですけれども、この原因というものはどの辺に起因するのかということでお考えなのでしょうか。(宮澤国務大臣「どの原因ですか」と呼ぶ)そもそも公共投資や減税をやっても、景気刺激策としての効果が今までほどというか、かつてほどあれできないということです。

宮澤国務大臣 足かけ三年そういうことをやってまいりまして、昨年の秋あたりには民需にバトンタッチができるかと思っていましたが、企業活動は予想どおりカムバックしてくれましてこれは文句がないのでございますけれども、それが家計の消費につながらない。

 普通、不況回復時には、企業が盛んになり家計が豊かになって、とこういくのですが、それがそういっておりませんことがなぜかというのが、まだ十分時間がたちませんとわからないのかもしれませんが、私は、アメリカはレイオフで事を片づけましたが、我が国の場合には、やはり雇用慣行というものがここで大きく変わっていく、そういう難しい経済社会の変化が起こっている、多少時間がかかる、こういうことなのであろうかと思っています。したがいまして、減税をした、公共事業をやった効果がないではないかというふうには考えておりません。

植田委員 公共投資なり減税なりというのが、適切な時期に、適切な規模で、どこにどうしているかということが、僕はもっと問われていいのではないかな。

 例えば、この間さんざん、だれしもがそういうふうに共通認識を持っているのですが、私のシンプルな頭で考えても、要するに、個人消費が伸びないから景気は回復しないわけですよね。個人消費が伸びない原因はといえば、だれしもが言うのは、例えば雇用の不安や老後の不安、言ってみれば社会保障の制度に対する不信感等々がやはり財布のひもをかたくしているとだれしもがそう言うわけです。だから、個人消費が伸びない原因を探し出せば、雇用不安や社会保障、老後への不安というものを解消するための施策をやれば、単純に言えばそこをきっちりやれば個人消費につながるというのは、実に単純にそうできると思うのです。

 にもかかわらず、そこのところがどうもなされていないのではないですかということを私は非常に思うわけなのですよね。現実に、例えば年金は解約されている。私はもう今三十五歳ですから、三十七歳未満の男性というのは年金は六十五歳からしかもらえません。将来、非常に不安です。私が、来年あたり選挙があって滑ったら、あと三十年まずどうして生活するかということから考えなければいけません。

 そういう意味では、例えば、年金であるとか医療であるとか介護であるとか、そうした問題についての公共投資というものが果たして適切に、的確にぶち込まれているのかというと、どうも私としては、確かに今冒頭、続いている事業もありますから、そんな中でいろいろな新味を出しているとおっしゃいましたけれども、それこそもう大胆なそうした部分への、社会保障への投資とかいうものを考えるべきだと思うのです。

 今までは金食い虫だと言われてきたかもしれませんけれども、例えばそうした社会保障とか雇用に対して公共投資をいろいろな形でするということの経済効果というものが、十分考えられるのではないかと私は素朴に思うのですけれども、その点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

宮澤国務大臣 社会保障等々の措置が十分でないということが不安の要因の一つであるということは、私はおっしゃるとおりだと思っております。しかし、もっと直接には、恐らくアメリカならばレイオフをしたところを、日本は年功序列であるとか終身雇用とか言っておりました。それがこうやって変わっていく。その目先のことが、いわゆるリストラの結果が従来の不況回復のときと違いまして、今度は、確かに社会のそういう雇用のあり方が変わっていくということについての、いわばそれにアジャストするための時間であるのではないかと私は思っております。

 したがって、おっしゃいますように、どうやってそれに対応したらいいのかということが一番政策としては大事なところで、ミスマッチをなくすとか、そういう雇用政策上考えられることはいろいろいたしておりますけれども、社会保障全体の政策が突然にここで急に改まるということは無理でございますから、それはやはり財政改革との関係できちんとしていくということにならざるを得ないのか。

 したがって、当面としては、どうやって家計がもう少し収入を使ってくれるか、そういう問題に対応する方策としては一番何がいいかということを日夜考えておるということでございます。

植田委員 ですから、家計にプッシュするように、暮らしに根差した、生活の基盤に根差した投資をやるのが一番適切なのではないかと私は常々申し上げているのです。

 だって、景気を回復させるというのは、言ってみれば国内の総生産を今まで以上に大きくすることですよね。国内総生産、言ってみれば投資と消費で成り立っているわけですから、消費に直接プッシュすることはできないわけですから、では投資の部分でどういうふうに手当てするかということになれば、やはりそこは適切な公共投資の占める位置というのは私は依然として大きいと思います。その適切なことができなかったということに、やはり私は問題があったと思うのです。

 では、なぜそれができなかったかというのは、やはり私は、これは少なくとも日本の政治風土といいますか、政治的既得権益に切り込む本格的な制度改革がなされぬ限りは、適切なそうした政策の展開というのはできないのと違うのではないだろうか。言ってみれば、ありていに言えば、利益誘導型の政治がはびこってきたわけですね。公共事業をばらまくことによって赤字が膨張してきたわけですよね。結局、そういうことになってしまっている。

 言ってみれば、実際、適切な経済政策をやろうとしても、さあ予算の時期になったら、国民の税金たる国家予算がなぜかあっちこっちでついばまれてしまう。特定の個人や企業、団体の利益にそのお金がどこかに消えてしまう、そういう構造というのがあったのではないかと思うのです。

 言ってみれば、自分たちの周りの仲間内に経済的利益をばらまいて、言ってみれば同調を強制する。これも「財政崩壊を食い止める」の中ではこの論者が同調主義社会というふうに、まさにそれに当たっていると思うのですけれども、族議員が公共事業をむしばんで結果として財政赤字を拡大する、そういうある種の同調主義社会、もっと言うと無責任の体系とでもいいましょうか、そういう日本の政治構造が、ある種の適切な政策というものの展開を阻んできたように私は思えてならないのですけれども、その点についての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 先ほど四つの新生政策に公共投資の四割が集中してありますということを申し上げましたように、今おっしゃいましたような雑誌や本に時々ありますが、そういうことも一切ないとは申しませんけれども、どうも私はそんなことばかりある日本ではないのではないだろうか。そういうことは反省しなければなりませんが、そういうことがあって一向に公共投資が役に立たぬのだというのは、そういう雑誌なり本なりがございますが、少し短絡しているのではないかと私は思うのでございますが。

植田委員 むしろ、宮澤財務大臣が頭の中で描いておられるような政策をちゃんとやれば、もっと適切な経済効果が上がったんだ、景気効果が上がったんだ、それを、どうも今の政治風土がむしばんでいるんじゃないかというふうに私なんかは実は思ったものですから聞いたわけなんです。この辺については、またいろいろな場でお伺いしたいと思います。

 税制二法の改正案にかかわって、また中身については個々伺うわけですが、きょうは時間がございませんので税収の確保等にかかわってお伺いしたい。直接的に言いますと、国税、税務署の職員の確保及び税務環境の変化に対応する機構の充実にかかわってということで、二点ばかりお伺いしたいのです。

 現実に二〇〇一年度の予算案においても、国税庁の定員は当然ながら減っているわけで、百九十八名の純減になっているわけです。これは行革ということで公務員の定員が削減されているわけですけれども、やはり単に一律に減らすだけでなくて、社会環境の変化に伴って事務量がふえているところには必要な人員を確保していくということは必要なんじゃないかな。

 特に税務職員のことでいけば、実質、大変なんですよね。しかも、国税の滞納残高が二兆八千億ぐらいある、そしてまた消費税の滞納額も六千三百億円もある、こういう問題があるわけです。また税務調査の割合も、法人税でいくと五%台という低調になっていまして、こんな大変な状況の中で国税職員が今の陣容で幾ら頑張っても、まじめに納税しておる者とちょっとごまかしている者との間に不公平が生まれていく。そして、これがいけばいくほど、やはり税に対する国民の不信、不満というものを増大させることになるわけです。

 実際、毎年、ことしは財務金融委員会になりましたけれども、法改正のときに附帯決議でも、国税職員の処遇改善と定員の確保については常に決議もされていますし、今後、国税職員については、適正な、また公平な課税の実現という国民的な期待にこたえるために、やはりきちっと定員の確保に配慮すべきじゃないかと思うのですけれども、その点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 国税職員につきまして非常に御理解のある御指摘をいただきまして、感謝をいたします。

 確かに納税者の数はふえておりますし、何しろ取引の増大というのはもう昔とは問題にならないような量でございますし、それが国際的に広がっておりますから、コンピューターを使って大いにやっておりますものの、どうしても人員が足りないということはおっしゃいますとおりでございます。一生懸命、その都度大臣も努力をしておるつもりであるのでございますけれども、結果としては、大きな人員削減計画が進行しておりますので、結局今回も純減百九十八人になったわけで、済まないことだと思っております。

 いろいろ御指摘くださいまして、御激励をいただきまして、ありがとうございます。

植田委員 もう一点、やはり税務環境を取り巻く環境が、特に国際化、機械化、高度情報化ということで、かなり大きく変わってきているわけですね。そして特に、海外取引というのがふえておる、増加している。だから逆に、大企業の所得隠しのうち、大体四割が海外取引に絡むものだということも昨年のデータで出ているというふうに聞いています。

 こういう問題がまずありますし、また、パソコン、インターネットが普及していることで電子商取引がふえている。そうなると、三年前、九八年からはそういう帳簿書類の電子データの保存も認められていますから、税務調査の手法にもそうした情報化への対応が求められているということで、既にいろいろな知恵を働かせて努力なさっていることは承知しております。

 ですから、例えば国際税務専門官とか情報技術専門官等の、そういう専門職のポストも設置されて対応されてきたことは理解しているんですけれども、まだやはり全体的な数が不足しているんじゃないか。税務執行水準というものを維持するためにも、また適時に適切な執行をやるためにも、これらのポストについても十分な人員確保を行っておかぬとあかんのと違うかと思うのですが、この点についてもお答えいただけませんでしょうか。

宮澤国務大臣 ただいま御指摘のようなことが起こっておりますので、平成十三年度におきましても、情報技術専門官、国際税務専門官などの専門職ポストを新設、増設することがこの予算案に盛り込まれております。

 高度情報化、国際化等は、今後ともやむことなく進展すると考えざるを得ませんので、国税局機構の整備について、関係各方面の御理解が得られるように一層の努力をしてまいりたいと思っております。

植田委員 特に国税の関係については、やはり人が圧倒的に足らへんというのは現場におれば明らかなんですね。

 例えば、今恐らく検討されるであろう外形標準課税、これもされたら、一番困るのはやはり国税局の職員やと思います。実際、払えぬところから税金を取りに行かないかぬわけですから、これはもう滞納が消費税の六千億の比じゃないということも指摘されていますので、その辺のところも踏まえながら、少なくとも税に対する信頼をしっかり確保する観点から、国税の職員の確保ということを真摯にこれからも検討していただきたい、御遠慮なく御検討していただければと思っております。

 以上で終わります。

山口委員長 次回は、明二十八日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十六分散会




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