衆議院

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第10号 平成13年5月16日(水曜日)

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平成十三年五月十六日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 五十嵐文彦君 理事 海江田万里君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    七条  明君

      砂田 圭佑君    竹下  亘君

      中野  清君    中村正三郎君

      林田  彪君    牧野 隆守君

      増原 義剛君    山本 明彦君

      山本 幸三君    渡辺 喜美君

      江崎洋一郎君    岡田 克也君

      小泉 俊明君    中川 正春君

      長妻  昭君    原口 一博君

      日野 市朗君    前田 雄吉君

      松本 剛明君    谷口 隆義君

      若松 謙維君    中塚 一宏君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   財務副大臣        若林 正俊君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   津田 廣喜君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  村田 吉隆君     高橋 一郎君

五月一日

 辞任         補欠選任

  萩山 教嚴君     河村 建夫君

同月七日

 辞任         補欠選任

  大木  浩君     奥山 茂彦君

  林田  彪君     佐田玄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  佐田玄一郎君     林田  彪君

同月八日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     牧野 隆守君

  高橋 一郎君     竹本 直一君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  河村たかし君     前田 雄吉君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 雄吉君     河村たかし君

同日

 理事林田彪君同月七日委員辞任につき、その補欠として奥山茂彦君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月十二日

 税理士法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)(参議院送付)

同月五日

 消費税の増税反対、消費税率三%への減税に関する請願(山口富男君紹介)(第一〇七〇号)

 同(大森猛君紹介)(第一一五九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一六〇号)

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(春名直章君紹介)(第一〇七一号)

 同(児玉健次君紹介)(第一一五六号)

 同(不破哲三君紹介)(第一一五七号)

 同(松本善明君紹介)(第一一五八号)

同月十三日

 消費税の大増税中止、課税最低限の引き下げ反対に関する請願(山口富男君紹介)(第一一八九号)

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二五一号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一二五二号)

 同(大幡基夫君紹介)(第一二五三号)

 同(大森猛君紹介)(第一二五四号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一二五五号)

 同(児玉健次君紹介)(第一二五六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二五七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二五八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二五九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二六〇号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第一二六一号)

 同(中林よし子君紹介)(第一二六二号)

 同(春名直章君紹介)(第一二六三号)

 同(不破哲三君紹介)(第一二六四号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一二六五号)

 同(松本善明君紹介)(第一二六六号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第一二六七号)

 同(山口富男君紹介)(第一二六八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二六九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三一三号)

 同(大森猛君紹介)(第一三一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三一五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三一六号)

 同(春名直章君紹介)(第一三一七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三一八号)

 消費税の減税に関する請願(児玉健次君紹介)(第一三〇九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三一〇号)

 同(中林よし子君紹介)(第一三一一号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一三一二号)

 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(石井郁子君紹介)(第一三一九号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一三二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三二一号)

 同(中林よし子君紹介)(第一三二二号)

 同(春名直章君紹介)(第一三二三号)

 同(山元勉君紹介)(第一三二四号)

 消費税の増税反対、消費税率三%への減税に関する請願(松本善明君紹介)(第一三二五号)

同月二十日

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第一三五一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四四三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一四四四号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一四四五号)

 同(大幡基夫君紹介)(第一四四六号)

 同(大森猛君紹介)(第一四四七号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一四四八号)

 同(児玉健次君紹介)(第一四四九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四五〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四五一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四五二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四五三号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第一四五四号)

 同(中林よし子君紹介)(第一四五五号)

 同(春名直章君紹介)(第一四五六号)

 同(不破哲三君紹介)(第一四五七号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一四五八号)

 同(松本善明君紹介)(第一四五九号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第一四六〇号)

 同(山口富男君紹介)(第一四六一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四六二号)

 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第一三五二号)

 同(川内博史君紹介)(第一三八五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四六三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一四六四号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一四六五号)

 同(大幡基夫君紹介)(第一四六六号)

 同(大森猛君紹介)(第一四六七号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一四六八号)

 同(児玉健次君紹介)(第一四六九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四七〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四七一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四七二号)

 特定非営利活動法人への寄附金に対する税控除に関する請願(川内博史君紹介)(第一三八四号)

 勤労者の税制改正要求実現に関する請願(山元勉君紹介)(第一四一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、奥山茂彦君を理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、塩川財務大臣、柳澤金融担当大臣、村上財務副大臣、若林財務副大臣、村田内閣府副大臣、中野財務大臣政務官及び林田財務大臣政務官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。財務大臣塩川正十郎君。

塩川国務大臣 このたび、財務大臣を拝命いたしました塩川正十郎でございます。

 我が国経済の再生に向け、構造的諸問題が山積している中、財政政策等の運営の任に当たることとなり、その責務の重大さを痛感しております。

 本日は、当委員会において一言ごあいさつ申し上げ、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 まず、経済運営の基本方針について申し上げます。

 我が国経済の回復がおくれている背景には、バランスシート調整や国民の将来への不安感などがあり、本格的な景気回復のためには、我が国の構造問題への取り組みが不可欠と考えております。

 こうした認識のもと、政府としては、まずは先般策定された緊急経済対策の着実な実行に努め、さらに、構造改革なくして景気回復なしとの考えのもとに、経済、財政の構造改革を断行してまいります。

 また、政府としては、経済情勢を踏まえ、平成十三年度予算の円滑かつ着実な執行に努め、景気の自律的回復に向けて万全を期すこととしております。この観点から、公共事業等については、年度を通じ、景気の下支え効果が切れ目なくあらわれるよう、機動的な施行を図ることといたしております。

 次に、財政構造改革と平成十四年度予算編成について申し述べます。

 財政構造改革は必ず実行しなければならない課題であります。まずは、財政健全化の第一歩として、平成十四年度予算における国債発行額を三十兆円以下に抑制することを目標とし、また、歳出の徹底した見直しに努めてまいります。その後、我が国財政を持続可能なものとするため、例えば、過去の借入金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的な財政再建に全力を傾けて取り組んでまいります。

 このため、社会保障、社会資本整備、国、地方の役割分担といった、我が国経済社会全体の構造改革の道筋を検討する必要があると考えております。私としては、今後の経済財政諮問会議での調査審議、政府・与党社会保障改革協議会での検討等に積極的に参画するとともに、予算編成において、簡素で効率的な政府の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

 税制については、緊急経済対策を受けて、個人投資家の市場参加を促進する観点から、長期保有株式の少額譲渡益非課税制度の創設に係る法律案を今国会に提出すべく準備を進めておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 また、経済社会の構造変化等に対応した二十一世紀初頭における望ましい税制の構築が求められております。税制調査会において、まずは、当面の課題である金融・証券税制や連結納税制度について、幅広い観点から御審議いただくこととしております。

 次に、世界経済の健全な発展への貢献について申し述べます。

 先般の七カ国蔵相・中央銀行総裁会議などの国際会議においては、世界経済の幅広い問題について意見交換を行いました。各国が健全なマクロ政策、構造改革等を実施していくべきであること等、多くの点で共通の認識を持つに至りました。

 また、アジアにおける金融協力を強化する枠組みであるチェンマイ・イニシアチブについては、我が国と韓国、マレーシア、タイとの間で、それぞれ二国間協議が実質的な合意に至るなど、具体化が進んでおります。

 関税政策については、WTOにおける新ラウンドの早期立ち上げのため引き続き努力していくとともに、あわせて二国間の自由貿易協定にも取り組むこととし、現在、シンガポールとの間で協定交渉を進めております。

 セーフガードの問題については、WTOのルール等にのっとり、自由貿易の維持強化に努めるという我が国の立場も踏まえ、関係省と共同して、透明かつ公平、厳正に対処していく所存であります。

 以上、財政政策等に関する私の所信の一端を申し述べました。今後とも政策運営に万全を期してまいる所存でございます。

 なお、既に国会に提出しております税理士法の一部を改正する法律案及び国有財産法第十三条第一項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件について、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

 山口委員長を初め、委員各位の何とぞ御指導と御協力をお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 金融担当大臣柳澤伯夫君。

柳澤国務大臣 先般発足した新内閣で金融担当大臣に再任されました柳澤でございます。引き続きよろしくお願い申し上げます。

 本日は、発言の機会をいただきましたので、現下の金融行政について一言申し述べさせていただきたいと存じます。

 我が国の金融システムは、一時期と比較して、かなりの程度安定を取り戻した中で推移しております。しかし、アメリカ経済の減速に伴って景気がさらに弱含んでいる中で、金融機関に対するさまざまな影響が取りざたされている状況にあります。

 こうした中、我が国金融機関に対する預金者や市場からの信頼を揺るぎないものとするためには、金融機関が不良債権を間接処理するにとどまらず、これをできる限り最終処理し、金融機関の収益力を増強し、同時に貸出先企業の不稼働部分を整理すること等により、産業の再生、ひいては経済全体の再活性化につなげることが重要であると考えております。

 このため、先般取りまとめられました緊急経済対策において、金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的解決を図るという観点から、例えば、主要行に対し、新規に破綻懸念先以下となった債権については三営業年度以内、既に破綻懸念先以下となっている債権については二営業年度以内に最終処理すること等を原則とするほか、私的整理における再建計画の策定等に係る調整手続として、いわゆるガイドラインを策定することなどとしております。金融庁としましても、本施策の迅速かつ着実な実施を推進してまいります。

 また、緊急経済対策では、我が国の金融システムの構造改革を推進し、その安定性への信頼を高めていく観点から、銀行の株式保有制限のあり方に関する制度整備を行うこととし、こうした施策に伴う銀行の株式放出が短期的には株式市場の需給と価格形成に影響し、株価水準によっては金融システムの安定性や経済全般に好ましくない影響を与える可能性もあることから、一時的なものとして、株式買い取りスキームを創設することとしております。本件については、金融システムの安定化と市場メカニズムとの調和を念頭に具体策を講じてまいります。

 次に、既に本国会に提出させていただきました銀行法等の一部を改正する法律案のほかに、緊急経済対策に関連する法案として証券決済システム改革に関して二件の法律案を提出すべく準備を進めております。

 証券市場の構造改革を進めることにより、産業に円滑な資金供給を可能とすることは、我が国経済にとって喫緊の課題となっております。こうした中で、本法律案は、証券取引のグローバル化のもとで我が国証券市場の国際競争力を確保するため、CP、コマーシャルペーパーについて、ペーパーレス化とその振替制度の創設等を行うものであり、緊急経済対策において所要の法整備を図るとされているところでございます。詳しい内容につきましては今後改めて御説明させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 最後に、金融庁は、市場規律と自己責任原則を軸とした明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を遂行してまいりました。今後とも、この方針を堅持するとともに、我が国金融システムの安定と活性化に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございますので、当委員会の委員長及び委員の皆様におかれましては、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 財務副大臣村上誠一郎君。

村上副大臣 おはようございます。

 このたび小泉新内閣で図らずも財務副大臣を再任させていただきました村上誠一郎であります。

 私は、財政と経済と教育の立て直しが一日おくれればおくれるほど次の世代が痛むだけだと考えております。どうしても、財政再建と経済の構造改革と不良債権を、まさに一石三鳥でありませんが、同時並行的に決断を持って行わなければならない、そのように考えております。そのためには、どうしても委員各位、皆様方の御指導と御鞭撻と御協力がなければ私はできないと考えております。

 私どもは、若林副大臣、両大臣政務官ともども、微力でありますが、塩川新財務大臣を一生懸命支えていくつもりでございますので、何とぞ皆様方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 財務副大臣若林正俊君。

若林副大臣 財務副大臣に再任されました若林正俊でございます。

 私といたしましても、この重責を果たすべく全力を傾ける所存でございます。大臣の御指示を仰ぎつつ、村上副大臣と協力をいたしまして、その職務の遂行を図ってまいりますので、どうかよろしく御指導、御支援のほどをお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 内閣府副大臣村田吉隆君。

村田副大臣 このたび内閣府副大臣を拝命いたしまして、金融関係事項を担当させていただくことになりました村田吉隆でございます。

 柳澤大臣を補佐いたしまして、金融システムの安定化、そして活性化のために最善を尽くす覚悟でございますので、委員各位の御支援、御協力を心からよろしくお願いいたします。(拍手)

山口委員長 財務大臣政務官中野清君。

中野大臣政務官 このたび財務大臣政務官を拝命いたしました中野清でございます。

 今日さまざまな課題が山積しております中におきまして、塩川大臣、村上、若林両副大臣を補佐しつつ、林田大臣政務官とともに職務の遂行に全力を傾注してまいる所存でございます。委員の先生方の御指導をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

山口委員長 財務大臣政務官林田彪君。

林田大臣政務官 このたび財務大臣政務官を拝命いたしました林田彪でございます。

 山口委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願いいたします。(拍手)

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長津田廣喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。

渡辺(喜)委員 自民党の渡辺喜美でございます。

 新内閣の大臣、副大臣、政務官の皆様方におかれましては、まことに御苦労さまでございます。この内閣は大変人気の高い内閣なものですから、一〇〇マイナス森内閣イコール小泉内閣、こういうことでございますので、大臣、副大臣の皆さんも気が抜けないということだろうと思います。

 そこで、当面のいろいろな課題の中でも、資産デフレによってもたらされた過剰債務、不良債権問題というのは、これはもう一種の非常時モードで対応しなければいけないことなのですね。

 イメージ的にちょっと整理をしてみますと、非常時モードレベルワンの対応策というのはどういうのがあるかというと、例えば赤字国債の再発行とか間接償却の推進、公的資金、例えば優先株とか預金者保護のお金、こういったものの導入、それから金融再生委員会とか再建型の倒産法制なんというのも、こういうレベルワン対応の施策なのでしょうね。

 恐らく今はレベルツーくらいですよ。ですからその対応策としては、先ほど柳澤大臣が御指摘になられたような、金融再生だけではなくて産業の方も再生をしていかなければいけない、直接償却も促進をする、また、日本銀行は量的緩和政策をやる。

 そしてこのレベルツーの中で欠けているのが、新旧分離の再生策をやろうとすれば、旧勘定から新勘定への移行をやって民間債務をカットする、こういうことをやろうとするならば、やはり産業再生委員会が必要だ、こういうことを私などは主張しているわけでございます。

 これが、手をこまねいてほうっておくと、レベルスリーに行ってしまうのですね。

 このレベルスリーの段階の対応策というのはかなり過激なものですよ。例えば一九三〇年代のアメリカでやったようなバンクホリデーとか、あるいは終戦直後、我が国でやったような預金封鎖とか新円切りかえとか、そういうことにならざるを得ないのですね。

 ですから、そこに行く前に、例えば非常時対応としてペイオフをやるとか、あるいはRCCを平成復興銀行化するとか、あるいは新円切りかえとしデノミをやるとか、そういったレベル二・五くらいの対応があり得るわけでございます。

 そしていよいよレベルフォーという段階になりますと、これは何でもありの世界でありますから、日本銀行の資金を使った土地、株大量買い取り。私が三年前にバイアグラ大作戦と称して発表した施策でございますが、例えば塩川ボンドなどを発行して、公共事業の土地を十年分くらい買い集めてしまうとか。永久国債ですよ。あるいは株式保有機構、いわゆる持ち合い株式の保有機構をつくって、もうこれは全量買い取り、強制買い取り、簿価買い取り、そして議決権を行使するという国家社会主義モードですね。こういうのは恐らくレベルフォーの世界です。

 したがって、レベルツーの段階でやるべきこととレベルフォーの段階のことを混同してはいけないのですね。どうも緊急経済対策にはそういったあたりの整合性がちょっと欠けていたのではないかと私などは思うのでございます。柳澤大臣におかれましては、我々と同じ発想をお持ちだと実は理解をしておったのでございますが、何か最近は、株式保有機構も積極派に転じられたのかな、などと思われる御発言があって、きょうはそのことは時間がないのでお聞きをいたしませんけれども、ひとつ誤りなき緊急対応をやっていただきたいと思うのでございます。

 そこで、きょうは時間がございませんので、五つの質問項目、これはまとめて聞かせていただきます。何とか村上副大臣までたどり着けるように行きたいと思いますが、とにかくこの過剰債務のカットというのは、柳澤大臣御指摘のようにこれは徳政令じゃないんですね。したがって、正しいカットをしなければいけない。民事再生法とか特定調停制度というのは、これは、言ってみれば中小企業向けにつくったものですよ、本質的には。したがって、今の経営者がそのままやっていいよと言ってみたり、あるいは、これはプロラタでカットするわけですから、なかなか大企業にはちょっと適用しがたい。そして、裁判所には業界再編までやる能力もないんですね。したがって、正しい債権放棄、過剰債務のカットをやろうとすれば、大企業の場合はまず減資ということが必要になってくるわけですよ。

 日本の株価は、持ち合い制度のもとで、本当に、これは事実上債務超過ではないかとおぼしきところも三けたの株価がついてみたりとか、相当いいかげんな株価形成が行われているわけでございます。そういうときに、債権者と株主とどっちが優先し、劣後するのか、こういう原理原則をきちんと考えなければいけないんですね。中には、株主さんは全然泣かないで、債権者の方が先に泣いちゃうなんというとんでもない債権放棄が行われているわけであって、これはやはりきちんと、一度死んでよみがえるという形で減資をやる、そして、経営責任、メーンバンクの貸し手責任、業界再編、こういう基準が正しい債権放棄なのでございます。

 したがって、そういうことを民間任せにやるといっても、これはなかなか難しいんですね。つまり、銀行や問題企業に、言ってみればがんの患者さんみたいな立場ですよ、その人たちに、メスは自分で握って自分の腹を切りなさいと言ったって、これはなかなか難しい話なのであって、やはり国立がんセンターみたいなものをつくって、産業再生委員会をつくって、そこに半ば強制的に入院してもらって、きちんと外科手術をやるということが正しいやり方、処方せんなのではないかと思うんですね。

 強制というと、憲法二十九条とか憲法二十二条の問題が出てきて難しいと官僚の皆さんたちはおっしゃるかもしれませんが、我々は政治家でありますから、腹をくくってこの問題に取り組む必要があるのではないかということでございますが、柳澤大臣、最近、ガイドラインの方で経団連に逃げられちゃったりして、ちょっと御苦労されておられるようでございますが、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 渡辺喜美委員から、経済の危機的な状況、それぞれのフェーズごとに対応もかくかくしかじか、だんだんグレードアップされていくんだというようなことで、非常に、全体の構図と申しますかピクチャーを包括的に今御発言を通じて描いていただいた、こういうようにお聞きをいたしました。

 私、そういう全体の構図を考えながら、今我々の経済がどういうフェーズにあるのかということについて的確な認識を持って、それに対する対処策というものを講じていかなければいけない、こういう思いはひとしお強くいたしたわけでございます。

 そういうことで、かねて渡辺委員御主張の、もう産業再生ということを国の機関を通じてやるべき段階ではないか、こういう御主張を繰り返されておられるわけでございますけれども、私も今回、不良債権の処理に当たって、銀行がひとりひっそりと評価をして見込まれる損失について引き当てをしておく、こういうような銀行内部にとどまる処理だけでは、やはり我々の今置かれている経済の状況に対する対応として適切ではないのではないか、こういうように考えるに至りまして、ことしの初めからいわゆる、これは呼称が正しいかどうかはともかく、こうしようということでございますので私もそれに従いますが、最終処理をするということを呼びかけさせていただいてきたわけでございます。

 ただ、渡辺先生との違いというのは、これを国家の機関でもって、金融再生委員会もどきのものでしょうか、産業再生委員会というようなものを一つ構築してやるべきだというようなところにまでは、ちょっと私の認識というか考え方が及んでいないわけでございまして、通産省あたりにいろいろ聞いてみましても、なかなか、そこまでの問題について責任を持って本当に適切な判断ができる機関になり得るだろうかということについては、かなりの疑問符がついておるという状況でございます。

 そういうようなことで、今のところ、今のところというか、私どもとしては、現段階に対する対処策といたしましては、今のような民民のものに対して私どもがいろいろな、オブザーバーその他、あるいは後見人等々の形で公の部門がかかわっていくということでもって渡辺先生と同じ目的を実現したい、このように考えているというのが現況でございます。

渡辺(喜)委員 柳澤大臣お一人で孤軍奮闘されていても、なかなか先に進まない代物だと思うのですね。やはりこういう問題は、小泉総理が決断をして指示を出していただきませんと先に進まない、そういう代物ではなかろうかと思うのです。ぜひ、小泉総理の御意見番であられる塩川大臣におかれましては、小泉総理に進言をしていただきたいと思うのでございます。今私が述べたことは、この「反資産デフレの政治経済学」という本に書いてございますので、ぜひその旨総理にお伝えをいただければと思います。

 そこで、こういったことを積極的にやっていくには大変なデフレ圧力がかかってくるわけですね。財政の方は、先ほど大臣がおっしゃられたように、もうかなり限界に近づいている。聞きますと、ムーディーズが近々ワンノッチさらに引き下げるのではないか、そういううわさもあるんですね。そうしますと、日本の国債がシングルAになってしまうんですよ。これは非常にやばい話でございまして、三十兆円までに新規の発行額は抑制するという総理御自身の公約と同時に、またマーケットからそういう圧力がかかってくると、もう財政の方はがんじがらめになってしまうわけでございます。

 そうしますと、一体どうやってデフレの中で反デフレ政策をとるかというと、それはもう日本銀行の量的緩和政策をさらに進めていかなければいけない。私はこれをリフレーション政策と呼んでいるのでございますが、こういった考え方に速水総裁は抵抗をしてこられたわけでございます。

 その速水総裁がこの間おやめになるとかいう話だったんですけれども、何か塩川大臣がそれを慰留されてしまったとお聞きしておりまして、非常にもったいない話なのではないかと思うんですね。せっかく総裁御自身がおやめになると言っているのに慰留をされてしまったわけでございまして、そういたしますと、本当に速水総裁にリフレーション政策をやっていただけるんだろうか、そういう疑問がつきまとうんですね。ですから、これはまあ、慰留してしまった以上は、毎週一回ぐらいは朝飯を一緒に食べて、よく説得をしていただきたいと思うんですよ。

 量的緩和をさらに進めていけば、当然、為替に影響が真っ先に恐らく出てくるだろうと思うんですね。したがって、村上副大臣がハワイでAMF構想をぶち上げられたわけでございますが、こういったアジアの危機対応ということも早急に進めていかなければいけないことになるわけでございます。そのあたり、お考えがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。

塩川国務大臣 渡辺さんの、東洋経済新報社ですか本が出ておりました、私も読ませていただきまして、終始一貫して資産デフレのことを展開しておられるのはよく承知いたしております。

 ところで、いろいろ経済界等当たってみたり、あるいはまた政党間の意見を聞いてまいりますと、なかなかいろいろな意見がございますので、先ほどおっしゃいましたような、企業がセンターをつくったらどうだということについて直ちに踏み切れないようなところもあろうと思いますけれども、しかし、何といたしましても、そういうデフレを抑制して、予防して、積極財政に持っていく、経済対策に持っていく必要はあろうと思っております。

 ついては、日銀のあり方についてでございますけれども、これはもう御承知のように、日銀法が改正されまして、独立を堅持していかなければなりませんので、私たちは人事についても、これに介入することはいたしたくございません。

 が、しかし、慰留したかというお話でございますけれども、これはたまたま、私が就任いたしまして直後にワシントンでのG7の会合がございました。その飛行機の中で一緒になりまして、よもやまの話、世間話をしておったことは事実でございます。

 そのときに、私も九年前に胃を切って腸を切ってという大手術をいたしましたので、健康状態はどうですかというようなお話が出まして、至極、病抜けしたような状態で元気ですという話。総裁はどうですかと言うと、まあ私も元気でやっておりますという話でございまして、血圧のこと等もお話がございましたけれども、しかし、見たら、顔色はいいし元気でございましたので、お互いに元気だったら頑張っていきましょうというような話をしただけのことでございまして、辞任の話なんて私は全く知りません。そんなうわさも何にも聞いていなかった、そういうことでございます。

 まあ、速水総裁も元気だし、金融政策にとって意欲的なこともいろいろとお話ししておられました。公定歩合を引き下げたこと、ロンバート方式を導入して金融の資金の安定を図ったということは話しておられましたので、元気であれば、やっていただいたら結構だなということを思っておる次第であります。

山口委員長 村上副大臣、時間ですので、簡潔にお答えをお願いいたします。

村上副大臣 渡辺委員のアジア通貨基金、AMF構想についてお答え申し上げます。

 AMF構想については、御承知のように、九七年七月のアジア危機のときに、徳なき資本の浮遊と申しますか、金もうけのためには一国の経済をつぶしても構わないというような大変なことで、タイ初めいろいろな国が被害を受けたわけであります。そういうような危機の際の短期的な流動性支援を目指したものでして、そういう通貨の安定の観点から、アジア各国が中期的に考えていくアイデアの一つであるというふうに私どもは考えております。

 ただ、今、現実の問題としては、この間出席させていただきましたASEANプラス日中韓の財務大臣会議の中で、メンバー同士の二国間スワップの取り決めについてネットワークを構築するという御存じのチェンマイ・イニシアチブについて、それぞれの各国間の協議を詰めておりまして、域内の金融協力のための取り組みが行われております。

 そういうチェンマイ・イニシアチブのような一つ一つの問題を詰めながら、結局、今、タイ、韓国、マレーシアの間で実質的な取り決めができたわけですけれども、あと中国だとかフィリピンだとか引き続き続けるわけでございますから、そういう域内協力の実績を積み重ねていくことが当面の課題で重要である、そういうものを積み上げながらAMF構想につなげていきたい、そのように考えております。

 以上であります。

渡辺(喜)委員 ありがとうございました。

山口委員長 石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 きょうは、持ち時間十五分で、時間をオーバーしないようにと厳しく言われておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最近の議論で、景気回復と構造改革とそして財政再建、この三つがどうもうまく整理されずに議論をされているのではないか、こういう印象が強くございまして、きょうは、私なりの見解を申し上げて、後ほど両大臣の御見解を伺いたい、このように思っています。

 まず、小渕内閣、森内閣で議論がございましたのは、景気回復と財政再建とどちらを優先すべきか、こういう議論であったというふうに思っております。まず、景気回復と構造改革自体とを対立、対比させた議論ではなかったというのが、私のまず第一点目の主張でございます。景気回復と構造改革自体とを対立、対比させるというのが議論を混乱させる、こういうふうに思っております。

 その上で、財政再建も構造改革の一つではございますけれども、現在、最も緊急性を有する構造改革というのは、御承知のとおり、不良債権の最終処理である。これは緊急経済対策の柱でございます。

 そして、この不良債権の最終処理を進めてまいりますと、当然のことながら、企業倒産の増加やあるいは失業者の増大という大変なデフレ圧力がかかってくるということでございますので、私は、不良債権の最終処理という構造改革を円滑に進めるためにも、雇用対策の充実を初めとするマクロ面での配慮、マクロ面での対策というのは欠かせない、こういうふうに思っております。したがって、不良債権の最終処理にめどがついてから本格的な財政再建に取りかかるべきである、こういうふうに思っております。

 一方、じゃ、財政再建、この間、何もやらないのかということではございません。

 総理の所信にもございます、また新たな三党連立合意にもうたわれておりますように、十四年度は第一歩として国債発行額を三十兆円以内に抑える、それと同時に、財政構造改革に本格的に取り組むために、やはり中長期的な計画をきちんと立てるということが重要でございます。行政改革あるいは国、地方の役割の分担あるいは公共事業をどうするのか、社会保障をどうしていくんだ、こういう社会経済全般にわたる計画をきちんと立てた上で本格的な財政再建に取りかかる、こういうことかと存じます。

 また、歳出の削減をしっかりやっていくわけでありますけれども、従来、歳出の削減というと、ともすれば一律の歳出削減、こういうことになりがちでございましたが、やはりこの際、きちんと歳出の中身を総ざらいして、めり張りのついた歳出構造の見直しを行う、その上で本格的な歳出削減に取りかかるべきである、こういうふうに思っております。

 政府の従来のスタンスは、まず、景気を民需中心の自律的な回復軌道に乗せた上で財政再建に取りかかる、こういうことでございまして、その際の財政再建というのはどういうものかという議論はつまびらかにはしておりませんでしたけれども、私はやはり、計画的、持続的な歳出削減を伴う本格的な財政再建、こういう意味であったかと思います。そういうことであるならば、景気回復の後に本格的な財政再建に取り組むという方針は変わらないのではないか、こういうふうに私は思っております。

 あえて従来から政策スタンスが異なった点を申し上げれば、従来は、景気回復策として公共事業の追加や減税などの需要創出策に重点を置いてきた、ところが、新しい政権では、景気回復策として不良債権の最終処理や競争力の強化などの構造改革をより重視している、これが政策スタンスの違いではないかな、こういうふうに考えております。

 整理して申し上げますと、私の言いたいことは、不良債権の最終処理などの構造改革により景気回復を図る、この間、中長期的な計画を立てた上で本格的な財政再建に取り組む、こういうことではないかというふうに思っております。

 この私の見解に対しまして、両大臣からぜひ御見解を承りたいと思います。

塩川国務大臣 今御意見のございました景気回復と財政構造の改革、これは場合によったら相反することではないだろうか。したがって、とりあえず景気回復を優先させて、その後財政構造の改革に取り組むべきだ。小渕内閣は二兎を追う者は一兎を得ずということを申されました。しかし、小渕総理がおっしゃった中でも、その意味は、まず最初に一兎、つまり景気回復を追おう、そしてその後財政構造に踏み切る、こういう意味で言っておられると私は理解しております。

 ところで、現在の財政状況を見ました場合に、これ以上政府が国債を発行して財政の赤字を継続していくということはもう不可能な状況になってきた、けれども、一方から見ると、財政支出の中で、歳出の中で見直していってこれを有効利用すれば、景気回復に十分に役立っていく方法もあるではないか、そういう認識もとられてまいりました。

 したがいまして、景気回復を図るということは当面の重要課題であることは間違いございませんが、同時に財政構造の見直しもしていって改善をしていったらどうだろうということで、実は総理も言っておりますように、二兎を一つのものと見てやっていこう、こういうことを言っておる。しかし、あくまでも私たちとしては、政府としては、景気回復をやはり優先させるべきものであるという認識については変わりがないということでございまして、御理解をひとついただきたいと思っております。

 不良債権の処理につきましては、金融担当大臣から御答弁いたします。

柳澤国務大臣 森内閣から小泉内閣にかわって、政策の重点というか、そういうものがどう変わったかということの整理をしてみろ、こういうお話かと思います。今塩川財務大臣がおっしゃられたとおりだと私も思うわけでございます。景気の回復という言葉ではなくて、やはり日本経済の再活性化ということだろうと思うのです。

 日本経済の再活性化というものを考えた場合に、従来型のマクロの需要追加型の政策というものがとかく重視されてきたのが何だかんだ言ってもこれまでの政策運営だったと思うのですけれども、今度の小泉内閣は、それに対して、経済の再活性化を構造改革をもってやろうということだろうと思うのです。

 財政についても、今塩川財務大臣のお話にございましたように、財政の歳出の配分を変えることによってより経済の再活性化に役立つようなことをしていこうということで、単純な需要追加という考え方ではなくて、財政資源をミクロ的に最も適切な配分をすることによって経済の再活性化に役立てようということでございます。

 私の担当させていただいておる金融機関の持つ不良債権の処理というのは初めからミクロの構造政策であったわけでございまして、これもまた、これをしっかりやることによって日本経済の再活性化に役立つ、こういうことでございまして、その手段をさらに進めているというのが現況だということを考えているわけでございます。

石井(啓)委員 ありがとうございます。両大臣の答弁によって大分整理をされてきたというふうに思っております。

 続きまして、それでは、来年度の国債発行を三十兆円に抑えるという総理の所信表明演説で、これが財政再建の第一歩というふうに位置づけられていたわけでありますけれども、この意味合いをどういうふうにとらえておくのかということで、これもまた私なりの見解を申し上げたいと思っております。

 私は、財政再建ということは、やはり中長期的にきちんと計画的にやっていくということが重要であって、来年三十兆円に抑えておいて、じゃ、財政再建が成功したということにはならない、それはもうあくまでも第一歩であって、その後どういうふうに進めていくかということが重要である、こういうふうに思っております。

 そういたしますと、来年三十兆ということにはどういう意味合いがあるのか。私は、三十兆という数字自体に意味があるというよりも、これは、新政権が本当に財政再建に今後本格的に取り組むという強い決意を政治的に表明したものであり、また、今歳出の配分の見直しというお話もございましたが、三十兆に抑えるということをてこにして財政の質的な構造改革に取り組んでいく、こういう意味合いであろう、私はこういうふうに考えておりますが、財務大臣の御見解を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 確かに、おっしゃるように、一つのめどでございまして、御承知のように、財政の数年将来にわたる見通しをいたしました中期展望がございますが、あれによりますと、野方図に国債が伸びていく状況が判明しております。

 したがって、このままいきますと、もう経済全体の構造も変えなければならぬような状況になりますので、この際に一つの歯どめをつけて、その歯どめのめどとして三十兆円ということをしたのでございます。したがいまして、平成十三年度だけをとって見ました場合に若干の余裕はあるということでございますけれども、十四年度、十五年度に厳しい発行状況になりますので、とりあえず、今後は三十兆をめどに抑えて、そしてむしろ、現在行われておる予算の中身を変えていって有効利用を図り、それによって景気の下支えを十分にやっていこう、こういうことでございます。

 もう一つは、予算の執行のスピードもございますので、そういう点を十分考えて、遺漏のないようにいたしたいと思っております。

石井(啓)委員 それでは、時間があと三分ということでありますので最後の質問になろうかと思いますが、証券税制の改革について最後にお伺いいたしたいのです。

 緊急経済対策に盛り込まれました証券税制の改革のうち、一年以上の長期保有株式にかかる少額譲渡益の非課税制度は創設されることになりましたが、その他の株式譲渡益課税の抜本的な見直しにつきましては、引き続き協議の上早急に結論を得るということになったわけであります。十三年度の税制改正で申告分離課税の一本化する時期というのは二年間延長ということになったわけですが、私は、この二年間延長というのを前倒しして実施することも含めて、この一本化にあわせて早急に株式譲渡益課税の抜本的な見直しを検討し実施すべきである、こういうふうに思っております。

 大臣の見解を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 私たちもそのように希望いたしております。二年後にはどうしても申告税制一本にしたいということを強く世間に訴え、また、国会においても言明しておるところでございます。しかし、とはいえ、当面の証券対策、個人の所有をふやすという意味において、そういうインセンティブを与える意味におきまして、今回は、少額売買益の百万円控除制を設けて、一応、申告制もこういうことをやれば有利ですよという方向を示してそちらへ誘導しようという一つの導きにしたということでございまして、おっしゃるように、将来は申告制一本にすべきであるということは、私たちの考えも同様であります。

石井(啓)委員 では、時間が参りましたので、以上で終わります。

山口委員長 松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 まずは、新しい内閣が成立して、塩川大臣の御就任、また柳澤大臣の御再任をお祝い申し上げたいと思います。

 時間が限られていますので、早速中身に入れさせていただきたいと思います。

 構造改革を進めていかれるということの中で、内容、政策的な話もたくさんあるわけでありますが、私も、また民主党も、情報公開と政策評価というのがこれからの構造改革の大変大きなポイントであろうというふうに思います。

 折しも、ことしの省庁再編で政策評価が始まり、また四月一日から情報公開が始まったということでありますが、特に情報公開については、一月たってこの経過を見てみますと、新聞にも発表されておりましたけれども、残念ながら、公開の請求に対して、開示、不開示ということでいきますと、大変不開示の割合が大きい。また、これは一遍に来たという部分もあろうかと思いますけれども、開示延期の扱いも大変大きいということでありますが、ぜひ、これから政治の信頼を取り戻すためにはやはり公開を進めていただきたい。

 また、政策評価については、緒についたところであろうと思います。財務省からも大変立派な政策評価計画をいただいたわけでありますが、これについてもきちんとお進めをいただくことが信頼回復につながると思いますが、簡単に両大臣の御所見、決意を伺いたいと思います。

村上副大臣 財務省について、今松本委員からの御質問のように、行政の透明性を向上させて国民の信頼を高めるために、情報公開また政策評価に積極的に今取り組んでおります。

 情報公開については、国民に対してより開かれた行政の実現を図るために、本省及び地方支局、部局の情報公開窓口を設置して、情報公開法による開示請求に適切に対応しているところであります。

 積極的な広報の拡充と政策評価については、三月三十日に十三年度政策評価実施計画を策定、公表しております。納税者としての国民の視点に立つこと等を内容とする財務省の使命のもとに、財務省の行政分野すべてについて四十八の政策の目標を定めて実績評価を行って、特に重要な政策と施策について総合評価を計画的に行うこととしております。

村田副大臣 四月一日から情報公開法が施行されましたのですが、金融庁におきましては、五月十五日までに、金融再生委員会の議事録、資料とか、あるいは個別金融機関に関する検査結果関係文書に対する開示請求等がございまして、中央省庁の中で一番多い千四百二十一件の開示請求を受けております。

 これらについては、現在順次手続を進めておりますけれども、これまでの経緯を申し上げますと、五月十五日までのところ、三百六十四件について開示決定等を行った、千三十三件について開示決定等の期限の延長を行っている、こういうことでございまして、まだ約七割程度について期限の延長を行っている、こういうことでございます。

 私どもとしては、法律の趣旨に従いまして、できるだけ速やかに開示ができるものは開示をしたいという考え方でございますが、当庁の場合、一時期に非常にたくさんの請求が集まりまして、物理的に処理が進まない状況になっている、こういうことと、それから、個別金融機関に関する資料等そういうものについては、その事柄の性質上、資料の性質上、その処理に非常に慎重を期さなきゃいけないというものもありまして、手続にかなりの時間がかかっているということでございますが、今後とも、そういった事態ではございますけれども、できるだけ速やかに開示の手続を進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

松本(剛)委員 内容についてはよくわかりましたけれども、ぜひ公開の意義、評価の意義について両大臣から一言ずつちょうだいしたいと思います。

塩川国務大臣 もちろん将来においても努力することは間違いございません。

柳澤国務大臣 公開の意義は、これはもう私も、積極的にしなきゃいけない、こういうことでございますが、私どものような執行官庁、特に個別金融機関あるいは個別企業というようなものがどうしても仕事の上に大変大きく絡んでくるという場合には、大変そこのところの、適切な非開示というものを伴いながら、できるだけ開示していきたいということとの間で、若干今度は時間という要素がかかってくるということがありまして、その点については、大変恐縮ですが、当面、スタートをしたこの時点ではお許しを、御寛恕を賜りたい、御理解を賜りたいと思っております。

 政策評価については、これはなかなか、今後、試行錯誤の中でやっていくということかなというのが私の率直な現段階での印象です。

松本(剛)委員 公開、透明性が信頼を回復するという意義についてはお認めをいただけたもの、このように解釈をします。

 大変敬愛する塩川大臣にお聞きをしなければいけないのは残念でありますが、報償費の使途というのが、やはり大きく今国民からは信頼を損ねているのではないかと思います。

 昨日の予算委員会でもお話がありましたし、ビデオをごらんになってからということでありますが、昨日のニュース等でもかなり取り上げられておりましたので、ごらんになったのではないかというふうに思います。

 過去と決別をすると宣言をされました小泉内閣でございますから、ぜひ過去と決別をしていただいて、ここらですっきりしていただいて、はっきりさせていただく。これは、大臣、内閣のみならず、野党対策といったような言葉も出てきたようでありますから、政治全体の信頼にかかわることだというふうに思いますが、大臣からお言葉があれば伺いたいと思います。

塩川国務大臣 この件につきましては、私もいろいろ思い違いもございますので、一度まとめて、二十八日ですか予算委員会がまたあるようでございますが、その際に明確に申し上げたいと思っております。

松本(剛)委員 この件について、予算委員会だけでなく、機会があればやはり早く公開をしていただくべきだというふうに考えるわけでありますけれども、この件を今この場で続けましても、限られた時間であろうかというふうにも思いますので、先へ進めさせていただきたいと思います。

 財政の課題についてお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 国債の発行を三十兆円を目標とするということで小泉総理がおっしゃられたわけでありますけれども、大変歯どめのない形で国債を発行するというのはよくない、歯どめをかけようということは、私どもも全く意見は一緒であります。そして、歯どめをかけるには、やはり法律で定めて縛るということが一番いいことであろうというふうに思いますし、国権の最高機関の国会で法律できちっと三十兆円という枠をはめるということは、重要なことであろうと思います。

 私ども民主党は、既に法律を提出しているわけでありますが、内閣の方からは賛成できるという言葉をちょうだいしていないようでありますが、いかがでしょうか、大臣。

塩川国務大臣 私どもとしては、法律をもって縛るということの必要はないと思うておりまして、あえて法律に踏み切らないわけであります。

 と申しますのは、やはり三十兆円ということは、一つのめどとしてこれを堅持する、そういう構造をつくっていくことが大事であろうと思っております。しかも、余り縛りつけてしまいますと、内部調整の上におきましても、それでは余裕ができたときにどうするんだということもございますし、あるいは、足らないときにもう無理やりに緊縮財政へ持っていくのか、こういう議論も起こってこようかと思っておりますので、その点は、三十兆円をめどにして、それにおさまっていく組み方をするという現実的な方法をとるということでございます。

 それともう一つ、これは一、二年この状態を継続いたしまして、その後で実は、現在、経済財政諮問会議等において議論されておりますところの、今後におきますところの骨太な対策というものをどうするかということの協議がまとまってくると思っております。それとあわせ、またいろいろな経済の動向、つまり、経済成長と景気動向等を見ました上で、いろいろとまた将来の展望は別途考えていきたい。

 したがって、平成十四年、十五年、直近におきます国債の発行というものは一応三十兆円におさめて、それを実現していきたい、こういう考えでございます。

松本(剛)委員 法律で縛る必要がないということでありますし、今のお話からすると、やむを得ない場合は三十兆円を超えることもある、こういう理解でよろしいのでしょうか。

塩川国務大臣 財政の動き、あるいはまたこれは経済、特に日本の経済というのは世界経済の中に動いておりますので、予見しがたいこともたくさんございます。しかし、私たちは、先ほど来申しておりますように、三十兆円は堅持するということを言っておりますので、これは確実に実行してまいります。

松本(剛)委員 水かけ論のような感じもするが、堅持されるのであれば法律に御賛成をいただけたらというふうに思います。また、上限を定めればそこまでの残りをどうするかというお話ですが、総理も言われているように、これは第一段階で、さらにきちっと切り込んでいくというお話をされているわけでありますから、ぜひ法律を御審議いただいて成立をさせていただくのが、国民にも最もわかりやすい形でその意欲が見えるのではないかと思いますが、もう一言いただきたいと思います。

塩川国務大臣 おっしゃるように、将来におきますところの計画等につきましては、いずれ、先ほど言いました経済財政諮問会議の答申を受け、それに基づいて政府部内調整をいたした上で、確実なものとして発表いたしたいと思っております。

松本(剛)委員 結局、法律の成立には賛成をしかねるということであれば、やはり三十兆を超えるところも残しておきたいというふうに私どもには聞こえてならないわけであります。歳出圧力が常に強いということはもう既によくわかっている話であります。総理も、まさに構造改革をして、二兎を追うからこそというお話があったのではないかというふうに思いますので、ぜひこれは、法律に御賛成をいただく、審議をして御賛成をいただくということで大臣からもお話しをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 民主党の方でそういう法案を出されたということは認識しております。が、私たちは先ほど申しておりますように、政府の方針として、とりあえず、これを堅持するという方針で、法律によらないでやる。しかし、民主党の方で、そういうかたい決意を持って国債を抑制すべきであるという御趣旨、これは私たちに対する非常に貴重な御意見だと思って、尊重いたしたいと思っております。

松本(剛)委員 時間が限られておる中でもったいないわけでありますが、今お話がありましたように、どうしても法律で縛るということに御賛成をいただけないということであれば、どうも歳出圧力の余力を残しているように感じられてならないわけでありますし、せっかくの三十兆を目標にされるということが、結局そういうことかということにもなりかねないのではないかと思います。代表質問の御答弁でも、法律が出たら検討すると総理がおっしゃったように記憶しておりますので、ぜひ御検討を始めていただいて、御回答いただきたい、このように思います。

 いつまでたってもなかなか前へ行きませんので、こちらの方でテーマを先へ行かせていただきたいというふうに思います。

 三十兆円に関連して、今の大臣の所信表明でも十四年度、十五年度ということであったようでありますが、総理の代表答弁の流れを聞いておりましても、また一部の報道でも、本年度も事実上三十兆円を目標にすると理解してもよいように解釈をしている報道もあったわけでありますが、本年度についてはいかがお考えか。

 先ほど村上副大臣もおっしゃったように、一日おくれることはそれだけ後にツケを残すというような御表現もあったかというふうに思います。当然、三十兆円からさらに前へ進むということであれば、本年度から目標にしていただきたいと思いますし、また本年度目標にしていただくということであれば、多額の国債発行を含む補正予算についても当然その縛りを受けることになろうかというふうに思いますが、御見解を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 まず私たちは、補正予算は現在のところは考えておりません。現在、予算の執行状態を、確実に定着するように配分を急ぎ、配当は終わっておりますので、その執行状態を急がすということに重点を置いております。

 本年度、国債の発行の余裕はございます。これは事実でございますけれども、これは、我々としては、あえてこれを使って新しい対策をしようということではなくして、もし必要あるとするならば、現在の予算の配当の中の含みを見て有効利用を図っていく、こういうことは考えてみたいと思ったりしております。

松本(剛)委員 今年度は、ではこれ以上国債を発行しないというふうに私どもも理解してよろしいでしょうか。

塩川国務大臣 極力発行しないで、予算配当の中で済ませていきたいと思っております。

松本(剛)委員 極力という言葉が上につくところが大変残念であります。ここを一つずつ、きちっとやはり決めたことを実行していかないと、改革というのはまさに前へ進まないのではないか。その場その場の状況でということで結局繰り返してきたのがこの十年ではないかなというふうに思いますので、ぜひ、極力という言葉を除いていただいて、前向きにお取り組みをいただきたいと思います。

 また、国債の発行三十兆円という目標、そして第二段階へというような総理そして大臣の所信があったわけでありますが、私、そしてまた民主党としても、予算について、一般会計だけでなくて特別会計や政府関係機関予算というものもきちっと含めた形で、全体で見ていくべきではないかな、こういうふうに考えております。

 財投改革ということで、財投機関債、財投債、政府保証債という形で調達をされるという形になっております。総理の御答弁の中でも、財投機関債を基本とし、その後、それぞれの機関の事業の評価をしながら財投債、政保債といったものを考える、こういう御答弁があるわけであります。

 基本のスタンスは大変すばらしいわけでありますが、本年度の予算の実態を見ましても、財投機関債は一兆一千五十八億、政府保証債が二兆九千六百十三億、これは外債を除いた数字ですが、それに比べて財投債は、四十三兆八千九百七十四億ということであります。基本、そしてその形、表現は大変すばらしいわけでありますが、実態は結局、財投債の大量発行という形で、従来と変わらないという形になるのではないかと思いますが、この点についていかがお考えか、御所見を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 当面の数字はそのように出ておりますけれども、私たちの方で、四十三兆円という財投債の方はできるだけ抑制していきたいという方針であることは事実でございます。そして、機関債の方にもっと重点を置いて発行せしめていこうということでございますが、とりあえず、制度が新しく発足したところでもございますし、また一般市場においてなじみの薄いことでもありますので、この方針を私たちは推進していって、実績を見ながら、将来において変更させていきたいと思っております。

松本(剛)委員 今も三十兆円の国債の目標について御議論をさせていただいたわけでありますが、当然その三十兆円だけではなくて、財投債も含むこういった政府関係の資金調達についても、やはりそういった目標を立てていただかないと、事実上のしり抜けになってしまうのではないかというふうに考えるわけであります。

 今お話ししたのとはまた別に、それぞれの政府関係機関が縁故債という形で、市中発行、マーケット発行ではなくて私募という形になろうかというふうに思いますが、こういった形でも資金調達をしておられるわけであります。

 俗に、二〇〇一年度末には国、地方の借金は六百六十六兆というふうに言われているわけでありますが、この六百六十六兆の中には政府関係機関の借金は含まれていないはずでありますが、それでよろしいでしょうか。

塩川国務大臣 六百六十六兆の中には含まれておりません。

松本(剛)委員 含まれていないということでありますが、やはりこういった政府関係機関の借金も、ひいては国の借金、国民の借金ということになろうかと思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

塩川国務大臣 一概にそう申し上げることはできないと思っております。

 そもそも、こういう特殊法人でやっておりますのは、国民に対するいわば経済力を中心としたサービスの提供でございますので、それ自体が、いわば収支償うように仕組むべきものであるという、その原則は堅持していきたいと思っております。しかし一方におきまして、行政サービスの一面を使命としておりますので、ある場合には、政府はこれに対して助成もし、補給もするという必要はございましょうけれども、特殊法人の関係は、政府の行政とは違った関連において、経済性を優先して処理していく方針であります。

松本(剛)委員 特殊法人の借金については必ずそういう御回答をいただくわけであります。

 私も兵庫県の出身、大臣も大阪府でございますから身近にお感じになっていただいていると思いますが、本州四国連絡橋公団というのは、先般の国土交通省の情報開示でも、二兆円以上の税金をつぎ込まなくてはいけないということが試算で判明をしているわけであります。

 結局、民間の企業のように、破綻を来した場合に別の形で処理ができるわけではなくて、特殊法人の場合は、やはり国が最終的に責任を持たざるを得ないということを考えれば、これは国民のツケに必ず回ってくるということになると思うわけであります。

 その点で、六百六十六兆という形で国、地方の債務の見通しをお立ていただいていることは大変評価を申し上げたいと思いますが、あわせて財投機関の借金も全体像を明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 本四公団につきましては、建設当時のフィージビリティーから見まして、相当予想が外れたということは事実でございました。しかし、このこと自体は、あの橋につきましては、地元の要望というのは非常に強烈なものがございましたし、松本さん自身のところにも目の前に一つございますが、あの建設につきましても、やはり国土の均衡ある発展という国の政策も十分加味してやったものでございます。

 その意味において、橋の三本の建設そのものは、やはり必要性の十分あったもので完成したものだと思っておりますが、予測が外れた、それに対する以後の措置というものについて、一つは経営努力というものを当然やらなきゃなりませんし、また、当該地域の経済情勢の発展、社会的な発展というものを通じて、橋の利用を高めていくということももちろんやって、地域対策というのをやっていかなきゃなりません。

 しかし、現在の見通しとして出てまいりました赤字をこのまま放置しておきますならば、雪だるま式にその赤字が悪化していきまして、取り返しのつかないような財政状況になってもいけないということで、早期手当てといたしまして当面の措置を講じたということが実情でございます。

松本(剛)委員 二兆四千五百億円という試算は、早期手当てというよりはもう末期症状ではないかというふうに思いますし、まさに大臣が今おっしゃった、私の出身の地域はちょうど明石海峡大橋と岡山の橋の真ん中でありまして、どちらかというと、真ん中で落ち込みかけているのではないかというのを何とかしなきゃいけないと思っておるわけでありますが、そういったことは別にして、まさに地域の要望が強いということを今おっしゃいました。これこそが歳出圧力そのものではなかろうかというふうに思います。

 そういったものをどこかで歯どめをかけるために法律をつくる、また、財投機関の借金についても明らかにしていただいて、歯どめの目標をつくるということが何よりも重要だというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 これは、やはり経済行為すべてが優先する政治ということで考えるならば、おっしゃるようなことも私必要だろうと思いますが、日本の現在の政治等の中で、あるいはまた社会構造の中で、先ほど申しましたような均衡ある発展、そういう要望があるところにはやはり日の目を当てていくということも重大なことだ。といって、おっしゃるように、これを無制限にやっていくということは、これは許される問題ではありません。

 したがいまして、これからの問題として、もっとフィージビリティーをしっかりとしたものにするということと、それから、その施設あるいは工作が、どのように国民経済全体に対して、一地域だけじゃなくして国民経済全体に対してどのような効果があるかという観点からも考えていかなきゃならぬ。これは将来の問題として、当然そうしなければ、おっしゃるように湯水になってしまって歯どめがきかなくなってしまうと思いますので、その点は十分注意していきたいと思います。

松本(剛)委員 今おっしゃったことは、お伺いをさせていただいて大変私どもも思わず納得をしてしまうわけでありますが、これまでも、ずっとそういった論理の中でどんどんどんどん歳出圧力が強まってきた結果が今日に至っているのではなかろうかと思います。

 そこに三十兆円という歯どめをかけようという小泉総理の発想は、私どもも高く評価をしているわけでありまして、その歯どめが、やはり動かないようにきちっとかけていくことが大事だということであります。

 そしてまた同時に、今もお話しさせていただいたように、三十兆円という一般会計の表に出ている部分だけではなくて、こういった財投機関についてもきちっとやっていただきたいということも、あわせてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 私ども民主党でも、特殊法人について、すべての特殊法人の業務を全部お伺いをしていこうということで、今ずっとヒアリングをやっております。毎日、五時間六時間も缶詰になりながらお聞きをする日が何日かあるわけでありますけれども、特殊法人の改革についても、四月に論点整理を説明いただいて、六月には、これから先どういうふうに扱っていくのかというのをお出しいただけるというふうに私どもも伺っております。

 それにあわせて、特殊法人の中で役員がやはり中央の官庁、いわゆる天下りという形でおりてきておられるということについてもお聞きをしているわけであります。ずっと私も数えたんですが、一つ一つ挙げていくと大変な数があるわけでありまして、その中でも特に財務省は、財務省御所管の法人以外のところにもたくさんOBを輩出されておられるわけであります。

 今申し上げたように、やはり特殊法人が存在をしている、そして、その中がどうしてもわかりにくくなっているということを考えて、まさに改革にお取り組みをいただこうというのが今の骨子であろうかというふうに思いますが、日本は長幼の序を大切にする国でありまして、私も大切にしたいと思っておるんですが、となれば、先輩がいるところにどんどん切り込んでいくということは大変難しいということもあろうかというふうに思います。

 そういう意味でも、財務省の御出身の方は、皆さん大変優秀な方であろうというふうに思います。それぞれ職をお探しいただく、働いていただくことには私どもも何ら異存があるわけではありませんが、毎年毎年決まった形で枠が決まっている。これは総理も、たしか、権限、予算を背景とした押しつけ型の天下りはよくないということを答弁でおっしゃっておられたと思いますが、まさにずっと枠が決まっている。財務省の枠はどこどこに一人二人ということは、権限、予算を背景にした枠以外の何物でもないというふうに思うわけであります。

 改革の先頭を財務省が切っていただくことが、何よりも早い改革の実現になろうと思います。率先して、これから財務省からは、もうそういった天下りはやめるということを大臣からお決めをいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 松本さんのおっしゃるのと私も全く同じような考えでございます。

 私も民間人でございますから、民間人から見ると、そういう天下りということが現に行われておることに対しまして、これはやはり改正しなきゃならぬと思っております。しかし、先ほどおっしゃった中で、人材をうまく使っていくという一面もあるということも、これも必要なことだと思いますし、といって、これを特権化させてしまっておる、そこが今問題だと思っております。そのことについて、現在、政府の中に行政改革推進本部等を設けまして、石原大臣を特命にいたしまして、鋭意その改善に努めております。

 私は、この際に、やはり思い切った、政府を取り巻きますところの外郭団体というものの中で、その社会的ニーズ、また政治的ニーズが終わった、あるいは希薄になってきたという法人については積極的に整理していくべきだ、こういう考えでございまして、それと同時に、天下りにつきましてもある程度の歯どめをかけなければいかぬ。これは行政改革の答申として期待しておるところでございまして、それが出ましたら、その趣旨に沿ってきちっとやってまいります。

松本(剛)委員 時間も終わりになってきたようでありますが、ぜひ大臣の思われたことをそのまま実行していただきたい、このように思います。

 大臣御自身も、就任の御会見のときも、良識に従ってといったようなことをおっしゃったように記憶をしておりますので、先ほど申しました国債の歯どめ、財投機関の借金を明らかにしていただくこと、天下りへの対応、おっしゃったことをぜひ実現していただきたい。そして、それはまさに国会の場で実現をできると私も思っておりますので、政府が堅持をするというだけでなくて、国会の力を使っていただいて前へ進めていただきたい、このように思います。

 時間がなくなりましたが、最後に一つ。

 内閣のパフォーマンスというのは、マーケットが評価をする時代が来たように考えておりますが、外国為替相場について、一時円安の流れのように見えたわけでありますが、最近は、きょうも九時、百二十三円ということだったようであります。

 就任早々G7に行かれた塩川大臣、今の為替相場をどう評価されているか、コメントをいただけたらと思います。

塩川国務大臣 私は、しばしば申し上げておるのでございますけれども、為替相場とか株価の問題というもの、相場の問題は、市場にやはり任すべきであると思っておりまして、これが原則でございます。

 しかしながら、株価にいたしましても、あるいは為替レートにいたしましても、これが極端に上下するということになれば、まずそこの原因を矯めていかなければならぬということと同時に、当面のそういう激変をセーブする手を打たなければならぬことは当然でございますけれども、絶えず神経質的に相場に介入するという方針はとるべきではない、こう思うております。

 現在の円レートの問題でございますが、私はこれは妥当なものとして認めておるものでございまして、これに対します私たちの作動ということは考えておりません。

松本(剛)委員 連日の質疑でお疲れのところをお時間をいただきまして、ありがとうございました。

 円レートについては現在妥当というお話でありましたけれども、購買力平価から乖離をしているといったようなこと、これからまた日本が改革をしなければいけないといったようなこと、また、通貨主権を考えれば、株式相場とは別に、通貨については諸外国のトップも相当いろいろな形でコメントを発しているということを考えれば、マーケットだから任せる、また現在のは妥当ということで簡単にお決めをいただくのではなく、デフレ圧力等も考えて、これから我が国の国民生活のために為替相場をどういう形で持っていくのがいいのか、ぜひ御検討いただいて前へ進めていただきたいと思います。

 時間が終わりましたので、これをもちまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。塩川大臣、柳澤大臣、よろしくお願いいたします。時間もありませんので、端的に、そして大臣のみの御答弁とさせていただければありがたいと思っております。

 道路特定財源の件で、塩川大臣に質問させていただきます。

 これは一般財源化をすると非常にいいお話をいただいておりますけれども、それぞれ揮発油税とか石油ガス税とか、特定財源となっておりますので、法改正が必要となっておりますが、法改正もきちんとするのかどうか、するのであればいつまでにするのか、そういうお考えをお聞かせ願います。

塩川国務大臣 私は特定財源を廃止するとかいうことは絶対言っておりません。特定財源の使途についてもっと対象を拡大して、現在求められておる経済的、社会的ニーズに適合したもの、そしてしかもこの特定財源が制定されましたときの趣旨、これをわきまえて改善をしていきたいということでございまして、何も特定財源を根本から廃止してしまうという考えを私は言っておるものではございません。

長妻委員 ちょっとがっかりするのでありますが、月曜日の予算委員会で、我が党の菅幹事長の質問に小泉総理は、聖域なき構造改革ですから道路特定財源も見直しの方向で検討したいと。

 これは当然法改正も含めてやらないと、ちょっとした小幅の、私が聞いておりますのは、自動車重量税という六千億円強の収入は多少さじかげんで国の方で道路以外にも使えると聞いておりますけれども、一番メーンの揮発油税が二兆八千億以上あるわけですから、これは法律改正しないと、一般財源というか、塩川大臣は昨日も環境対策費として使いたい等のいいお話もいただいているのですが、それが十分に果たせないと思うのですが、法改正はしないということなんですか。そうすると、全然、塩川大臣が言われている目的が達成できないんじゃないでしょうか。

塩川国務大臣 私はとりあえず、道路財源の制定の趣旨と先ほど申しましたが、それにのっとって、ニーズの高いところに対象を広げていけるのではないか、それはぜひやっていきたいと思っております。そして、時期を見まして、必要があれば、法改正、当然必要になってこようと思っておりますが、今直ちに特定財源を廃止して全部一般財源に組み入れてしまう、そういうことはちょっと、現在のところは考えておらない。まず特定財源の使途を広げていくということから始めていきたいということです。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

長妻委員 使途を広げるのであれば、今までもいろいろな、歩道橋も含めた周辺のところに使途は広がっているわけで、我々の解釈では、この道路特定財源の改革というのは小泉総理大臣の聖域なき構造改革の本丸である、そういうふうに認識しています。試金石です。

 それを、法改正は必要があればして、今は考えていないというのは、羊頭狗肉というかこれは全然、一般財源、きのうは扇大臣も前向きに検討されているというお話で、あるいは財務省の武藤事務次官も五月十四日の会見で、抜本的に検討するということになれば法改正も必要になってくる可能性が高いというようなことを言われているわけですから、小泉総理のあの威勢のいい改革の話が大臣の方に来るとトーンダウンしてしまうというのは、納得ができないのであります。

 これは、例えば来年、再来年、例えば来年の国会なのか、そのぐらいに法律、改正案を提出する、そういうお考えは、一、二年の間にはないのですか。

塩川国務大臣 私は、当面、この十三年度における概算要求対策というものを言っておるのでございまして、先ほども申しておりましたように、必要があれば当然法改正が必要になってくるということでございますが、とりあえずは使途を広げて有効利用を図っていく、そのうちに将来の計画を変えまして、一般財源に入れるか、あるいは特定財源の用途をさらに法律改正によって拡大していくか、いろいろな問題があろうと思いますけれども、これは将来の問題として検討したいということでございまして、当面は使途を拡大する、必要があれば法律の改正をする、こういう考えです。

長妻委員 十三年度はということは、来年、十四年度は法改正も含めてやっていくのか。ちょうど来年、十四年度の末で道路の長期計画、五カ年計画が終わります。非常にいい機会だと思いますので、例えば来年あるいは平成十五年度当初から法改正をした財源でやっていく、そういうような決意はあるということを一言、御答弁いただきたいと思います。

塩川国務大臣 私が言っている将来においてというのは、まさにそういうチャンスのときでございまして、現在の五カ年計画の中においては用途の拡大で対処し、五カ年計画を新しい計画にするときには根本的な見直しをし、必要ならば法改正もしていこう、こういうことです。

長妻委員 最後にもう一回御答弁を願いたいのです。

 二〇〇三年度から、新しい五カ年計画というか道路の長期計画が始まると思うのですけれども、では、その計画の際にはもう法改正をした形で、揮発油税等の特定財源というのはやめる、必要があればとおっしゃられましたけれども、そういう御決意は持たれているということで、御答弁を再度……。

塩川国務大臣 特定財源といいましても、その用途はいろいろな道路とかあるいはまた施設に使われておりますので、それを全部廃止してしまうということはできませんしいたしますから、法改正いたしましても、現在継続してきているいろいろな対象事業というものはやはりそれなりに必要であろう、しかし、それが独占的、特典的な、特権のあった財源としては、これは私は法改正の中で決めていきたいと思っております。

長妻委員 前向きな発言ということで、いろいろな抵抗があるでしょうけれども、小泉内閣の試金石というべきものでありますので、今発言された長期計画、二〇〇三年度からは法改正をしてきちんと対応するというお話がありましたので、ぜひ厳守いただきたいと思います。

 次の質問でございますが、柳澤金融担当大臣に質問させていただきます。

 天下り禁止は私の公約でもございまして、かつて大蔵省は平成八年に、民間金融機関への、役員に対する天下り自粛措置というのを発表されて、お役所の中での地位によって二年から五年ありますけれども、退職後その期間はついちゃいけないという自粛措置がありますが、思い切ってこれは、金融庁にお勤めになられた本省の課長以上の方は金融機関にはもう就職はしない、何年というんじゃなくてそういうやはり発想が必要だと思うんですが、ぜひ御決意を、刷新する小泉内閣の閣僚である御決意を。

柳澤国務大臣 結論的に言うと、先生と正反対の結論を私、持っています。というのは、もし金融の今の仕事に通暁するとしたら、これは物すごい人材なんですよね。今、日本の金融界においてそういう人材があり余っているというか、よそに活用できるほど豊かであるかといったら、私は正反対だと思うんです。今の日本の金融の、金融機関の行政の実務もしかり、また、実際の金融機関におけるビジネスの処理にしてもしかりなんですけれども、私は非常に不満なんですよ、正直言って。ですから、もっともっと双方がその技術を錬磨し、また開発をして、できるだけ多くの人に身につけてもらいたいというふうに思っています。

 そういうときに、例えば金融の行政に当たっていた人間が、どうしても自分たちのガバナンスのためにその技術を我々の自行の中に受け入れたいというような、人材の能力に着目したいわば人事の交流、交流というと行ったり来たりという話になるんですが、そういうことというのは私はあり得ると思います。我が方も民間の人たちが欲しいし、そういう実は気持ちを持っていますので、事金融の、だからといって、いわゆる天下りですよ、いわゆる天下りなんというのは断固あってはならない、仕事もしないのに給料だけもらっているような。しかし、表面的に人が移動して、官から民に移ったから天下りというような考え方では、今金融が直面しているビジネス及び金融のスーパーバイザー、ビジョンというか、そういう監督というのは、私はとても賄い切れないというふうに思っています。

長妻委員 大蔵省は平成八年の六月十九日にそういう天下り禁止に関する自粛措置を発表されておりますので、これはもう五年ぐらい前ですから、金融庁としても、近々でもいいですから、何らかの考えを、先ほど単なる天下りはだめだというお話がありましたから、そういう自粛措置というか禁止措置の何かきちっとしたものをぜひ発表していただきたいと思うんですが、禁止の方向で、それは見解が違うかもしれませんけれども、その発表をぜひきちんと、単なるというか、どういう天下りか知りませんけれども、利権型天下りと言われる意味だと思いますが、そういう形は禁止するというような何か発表をぜひしていただきたいと思いますけれども、一言。

柳澤国務大臣 非常に難しいと思いますね。何というかヘッドハンティング的に、私は、これからの金融界と例えば我が役所の問題に限ってみても、ヘッドハントを我が金融庁のスタッフがされちゃうということは十分あり得ると思うんです。ですから、それをうまく書き分けられるかどうかということだろうと思うんですね。いわゆるこれまであった、いわば顔だとかコネクションだとか、そういうようなものを飯の種にするというか給料の裏づけにするというようなことは、もうこれをやるゆとりは恐らくないだろうと思うんです、金融機関の側にも。

 ですから、御趣旨はよくわかるんですけれども、ただ、私が言う今の金融行政機関の人材のレベルというか、量的なレベルのことを言っているんですが、そういうことが特殊な事情として働いているということも、先生のような専門家でございますので、ぜひ御理解賜りたいと思います。

長妻委員 そういう措置をぜひ研究していただいて、ぜひ発表していただくことを切に望みます。

 次に、塩川大臣にお伺いしますが、塩川大臣はかつては官房長官もされておられて、今、機密費等の話がいろいろ取りざたされておりますが、読売新聞のことしの二月二十三日の朝刊に、塩川大臣の官房長官時代を振り返ったインタビュー記事が載っております。

 大体、官房機密費は一カ月どのくらい使ったのか。塩川大臣は、当時大臣でありませんね、塩川さんは、月割りにしたら一億円ぐらいだったのではないかと。国会対策に使うことはありますかという記者の質問に塩川さんは、国会議員の勉強会とか懇親会の応援という形で、与党に預けて間接的に使うことはあるが、直接には使っていない、そういう場合は百万円ぐらい出す、こういうお話をされておられるわけであります。

 今、財務大臣という税金を厳しくチェックするお立場に立たれておられますが、こういうインタビューで答えておられますけれども、国会議員の勉強会とか懇親会の応援という形で、与党に金を預けて、そして与党からいろいろそういうところに渡っていくということは、これは民主主義の原則として、やはり国会議員の行動というのは論戦とかいろいろな形で、透明性で、何であの議員はこれを反対したのか、賛成したのか、いや、国会でこういう意識があるから反対した、賛成した、そういうことで国民の皆様方は政治を判断されるんですが、それが全く国民が見えない形で、お金が渡っていたからその議員が行動をちょっと変えたとか、そういうことが仮にでもあれば、それは全然、民主主義として国民の皆様方を裏切ることになると思うんです。

 こういうことが、生き証人といったら失礼ですが体験されているわけですから、小泉内閣では二度とこういう国会対策に官房機密費は使わない、そういうようなことを総理にぜひ進言していただけないでしょうか。

塩川国務大臣 今はそんなことはもう全然やっておりませんし、私が官房長官のときに、ちょっと思い違いもございましたけれども、しかし、議員の勉強されるとき、あるいはそういう講師を呼んで勉強されるようなとき、そういうところのお世話をしたということが今そういう記事になっておることでございまして、現在はそういうことは全く行われておりません。

 また、私も官房長官をやっていましたときはごくわずかな期間で、しかし、そのときには外交問題等が山積しておりましたときでもございましたので、私は余り詳しいことは覚えておりません。したがって、その記事にこだわることなくひとつしていただきたい。

 そして、今おっしゃっている趣旨について、小泉総理にはしっかりと言いまして、そういうことのないようなことはきちっといたしたい。

 現在やっておりませんから、もうそれは心配ないと思います。

長妻委員 現在はやっていないというのも本当なのかどうかというのもありますけれども、今言われた議員の勉強会の何かお世話として官房機密費が当時は使われていたということは、このインタビューの答えも含めて、それは当時では事実だったわけでありましょうか。

塩川国務大臣 その当時以前にはそういうこともあったということであります。しかし、その具体的なことについては全く忘れてしまっておりますから、わかりません。

長妻委員 今の御答弁は、お認めになったというか、その当時はそういうようなことがあったということをお認めになったと思うんですが、今はこんなことないだろうというような推定のような形で今言われたように私は受けとめましたけれども、福田官房長官に再度ぜひ申し入れをしていただいて、こういう今言われたような国会対策ということにはもう官房機密費は使うのをやめようというような、今使っていないということでありましょうけれども、念のために、もう一度福田官房長官にぜひ塩川さんから申し入れをしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 今はやっておりませんから。おっしゃることは、こういう質問があったということはちゃんと伝えておきます。

長妻委員 テレビでももっと踏み込んだことを言われていたり、あるいは産経新聞のインタビューでも、本当にこの当時は塩川さんが一番正直に話された元官房長官ということだったのでしょうが、いろいろなお話をされておりますので、ぜひその教訓を得て、この内閣では一切こういう不透明な形でのお金の支出はないというふうに明言されましたので、これはあった場合は本当に責任をとっていただきたいということを申し添えておきます。

 次に柳澤金融担当大臣に質問させていただきますが、債権放棄の問題で、ゼネコン等に過去銀行が債権放棄を、資本注入行も含めてしましたけれども、債権放棄、一回しましたが、二度目の債権放棄というのは金融庁として認められますか。

柳澤国務大臣 非常に返答に窮するわけでございます。

 これまでも資本注入行の債権放棄に当たっては私どもが考え方として広く公表し、また当然金融界にも示している条件というのでしょうか、一つの考え方というものが示されております。それは回収の極大化等、経済合理性がまずなければいけないということ。それからもう一つは、それぞれの地域の経済にとって影響がある企業である場合にそれは許容されるだろうというようなこと。それから最後に、経営の責任が明確化されること。こういう三つの考え方を示しておるわけですけれども、基本的にそういう条件が、あるいは考え方が満足される場合に債権放棄が行われているということが我々の認識でございます。

 ところが、行われた債権放棄が所期の効果を上げているか、つまりそこでつくられた再建計画というものが本当に世の中の信頼を得ているかということが、株価等で推しはかる場合にはなかなかそう言い切れない面があるのではないか。もちろん、その背景には現在の経済状況というものがあると思うのですが、そういうようなことがございます。

 そこで、今度新しい枠組みをつくって、もう少し再編というようなことを加味した再建計画というものをつくって、さあ、もっとそれを、その企業を含めて再建していくという場合にどう考えるのだということに、二回目の債権放棄が必要になるというときにどう考えるかということが結局改めての問題になるのだろうと思うのです。

 私どもとして、それが望ましいとか、そうあってもいいだろうとは言えないのですが、本当にゼロで、今後そういうような再建計画のつくり直しというようなものが必要とされた場合にそれができ得るかということ。あるいは私がここで、それはもう絶対あってはならないことだと言った場合に、そういう、もう一度、さらにレベルの上がった再建計画をつくるということに対して非常にディスインセンティブというか、そういうことになるとしたらちょっと私の本意でないものですから、やや窮するということでございます。

長妻委員 私は、原則としては二度目の債権放棄、これを認めては金融庁の存在意義というのが問われてくると思うので、認めてはいけないと思うのですよね。

 それで、二度目の債権放棄をするということは、最初の再建計画というのがこれはずさんだったという見方が大半になるということでしょうし、銀行は株主から代表訴訟を起こされる可能性だってあるわけであります。ただ、今の債権放棄をされたゼネコン、額面の五十円ぐらいを株価がさまよっているところもありますので、二度目の債権放棄というのもこれはあり得ない話ではありませんから、ぜひ金融庁として、今のお話だと何にも決まっていないということでありましょうから、基本的に二度目の債権放棄を認めるべきでないと私は思うのですね。

 柳澤さんが言われたように、認める場合というのは、具体的にどういうケースは認めるのですか、二度目。

柳澤国務大臣 将来のことですから、これはなかなか、私はそういうケースを実際に頭に思い浮かべて言っているかといえば、そうではありません。

 そうではないのですけれども、今先生が例に挙げた業種について債権放棄が行われたということについて、もうちょっとこれは業界として見直そうよというようなことの中で、新しい再建計画がつくられるということもあり得ないことはないだろうと思うのですね。特に建設省御当局が出しているような、再編をしようというような、ああいう御方針からすると、そのもとでそういうことが起こらないとは私は言い切れないと思うのですね。そういう場合のことを想定して、全くここで、あってならないこと、許さないとか、そういうことを言い切るのは、そういう芽を摘んでしまうことになりはしないかということを申しているわけでございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

長妻委員 私の立場は、原則的に二度目の債権放棄はしてはいけないと思うのですが、そうであれば、二度目をする場合は、こういうケースであれば、当然一度目の場合と全然、条件というか、違ってくると思うのですよね。かなり厳し目にいろいろな問題をやらないといけないと思うのですが、そういう対案をぜひ金融庁として出していただきたい、そしてこの場で議論をぜひしていただきたいということを、うなずいておられますのでお願いをいたします。

 そして、時間もないので最後に塩川大臣に。

 先ほどの三十兆円の問題でありますが、平成十四年度は国債発行が三十三兆八千億円くらいが見込まれているということでありますが、これはちょっと再度の質問ですが、必ず三十兆に抑えるということは間違いない、政治生命をかけて間違いないということでございますか。

塩川国務大臣 これは一私個人の問題ではなくて内閣全体として、三十兆におさめる、これは内閣の約束でございますので、実施いたします。

長妻委員 そうであれば、今、政治生命をかけてという質問に言い切られましたので、ぜひ、内閣全体の問題でありますが、やはり中心になって引き締めるのは、塩川大臣が最後、体を張ってとめていただくというような御決意だと聞きました。できれば、我が党が提出をしております議員立法で、三十兆円以下に抑えるという法案もあるわけでありますから、ぜひ真剣に御検討をいただきたいということをお願い申し上げます。

 そして柳澤大臣に、情報開示の点でお伺いします。

 私はかねてより、前回の当委員会でも担保の評価額というのが非常に甘いのではないかという、いろいろな、福岡銀行とかわかしお銀行の例を出して懸念を表明いたしましたけれども、そうであれば、例えば担保の処分額、実際に処分した金額というのが、例えば大手十五行でも結構ですけれども、一年間に、例えば不動産担保を実際処分した金額というのは年間幾らというのは、これは集めれば数字は出ると思います。そして、その担保が、さかのぼってみて金融機関の最終処分見込み額は幾らだったのかということも、調べればわかると思います。そうすると、最終処分見込み額と実際に売り払った不動産担保の金額との差がそんなになければ、これはマーケットはある意味で安心すると思いますね、その点は。

 ただ、それが今全く情報がないわけで、私がいろいろなデータを見ると、実際、処分するときに、金融マニュアルでは最終処分見込み額と言っていながら、がくんと半額とか、ひどいところは一割、二割とかそういう形でしか売れなくなってしまって、予期せぬ引き当てというか損が出ちゃうということが非常にマーケットが懸念することだと思うんですが、私が申し上げたアイデアの情報開示をぜひ御検討いただけないでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもも、特に私、最近つくづく感ずるんですが、私どもの引き当てによる不良債権の処理というものが、私どもが期待するような世の中からの評価を受けていないんではないか、こういうことが実はありまして、どうしたらこれを改善することができるのかということを実はいろいろ考えているわけでございます。

 いろいろ、前の委員会で岡田委員からは債務者区分のことについて御提案があったし、先般来、先生からは、今の不動産担保の問題についてそういうような問題が提起をされております。私どもの、私が今申しているわけですが、君たち、どうしたらもうちょっと評価を改善することができるかということを今宿題にしていますので、全体として、トータルの問題として検討をさせていただきたいと思います。

長妻委員 最後に一問だけ。

 これは申し入れでもあるのですが、先ほどの質問にありましたけれども、情報公開法に基づく開示請求の処理状況という一覧があって、金融庁は、これは四月二日の分だけでございますけれども、成績が本庁分で一番悪い。私の計算に基づいたランキングをちょっとつくっているんですが、これは金融庁にも昨日お渡ししましたけれども、実際に開示、不開示を決定した件数を分母にして、そのうちに開示をした件数を見ると、基本的に、開示率というのが一一%で、これは私が計算した式に基づいたものですが、ほかの中央官庁に比べて一番低い開示率となっております。

 確かに議事録等いろいろ御苦労あると思いますけれども、この一番低いという汚名を挽回するべく、ぜひ事務方に厳しく指示をしていただきたいという申し入れでございますけれども、一言だけ御答弁いただいて、これで私、質問を終わります。

柳澤国務大臣 そういたします。そういたしておるんです。いたしておるんですけれども、じゃ言いわけは控えます。ぜひ努めます。

長妻委員 どうもありがとうございました。

山口委員長 鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 塩川大臣、このたびは財務大臣御就任、まことにおめでとうございます。また、柳澤大臣には、引き続き再任で、まことに御苦労さまでございます。お二方とも、大変難しい時期でございますので、どうぞお体に気をつけながら、日本のために全力を挙げて頑張っていただきたいというふうに思います。

 まず、塩川大臣に御質問申し上げます。

 私の塩川先生の思い出というのは、私は政界へ出てくる前に野村総合研究所の理事長をしておりました。そのころはしばしば私はあちこちで講演をしておりましたが、私の講演会に塩川先生は何回かいらっしゃったのを記憶しております。私は、自由民主党の代議士さん、それも自由民主党の幹部級の方が私のような、当時はエコノミストですから、エコノミストの話を聞きにいらっしゃる、これは率直に言って非常に珍しいことでしたから、よく覚えております。

 塩川さんという方は、大変人の話をよくお聞きになる、聞く耳をお持ちだな、研究熱心なお方なんだな、こういうふうに思いました。今もその尊敬の念は変わりません。ぜひとも、人の話をよくお聞きになり、研究されて、この難しい時期の財務大臣の職責を全うしていただきたいというふうに思います。

 塩川大臣がそういうお方だというのは、塩川大臣の本音ベースではそういうお方なんだというふうに私は認識しているのでございますが、昨日のあの予算委員会で、例のテレビ朝日の番組で機密費について発言されたことを聞かれたときに、忘れちゃったとおっしゃったのを聞いて、やはり本音と建前を上手に使い分けられる、やはり自民党の政治家なんだなという印象も持ちました。それにつけても、ですから、どうぞそういう建前を出さないで、塩川さんの本音を私は本当に尊敬申し上げておりますから、本音ベースで質疑をさせていただきたいと思います。

 第一問なんですが、塩川大臣、ワシントンにG7で行っていらっしゃった、四月三十日の日本経済新聞でございますが、ごらんになっていないかもしれないんですが、G7直後の記者会見で塩川大臣が次のように発言したという報道がなされております。読みますと、「昨秋から年末にかけて急激な景気下落があったが、最近、底を打った感じがする。春から六月ごろにかけて持ち直し、回復していくと思う」こういうかぎ括弧で引用されております。だもんですから、見出しも「日本景気「底打った感じ」 塩川財務相」と書いてあります。

 こういうことをおっしゃったのは事実でしょうか。また、今でも大体こういう御見解をお持ちでしょうか。

塩川国務大臣 私は、その当時は余り深く情勢分析もしておりませんでした。けれども、私は、感じとして、体験的に見まして、三月、四月ごろは、要するに、悪いことは悪かったけれども、これがやはり春になれば回復してくれるであろうという期待を持っておりました。したがって、それを率直に申し上げたようなことなんですけれども。

 しかし、現在の状況はどうかといいましたら、先日の月例報告でも「さらに弱含み」と言われております。これに対しましては私は非常に心配もしております。けれども、何とか景気はこの先よくなってもらいたい。

 私が申し上げたのは、六月ごろになれば、二番底を打って、そこから上昇していくであろうという予測をしておったことは申し上げたとおりでございますが、どうも、狂って違ってくるかもわからぬという感じも今持っております。

 その原因の一つとして、アメリカの経済がもう少しよくなる、スピードが遅いような感じがしておりまして、そのことが日本に影響してくるんではないかなという感じを持っておることと、もう一つは、IT産業、情報機器産業が予定されているよりも成長のスピードが遅いような感じがしております。

 そういうことで、世界経済全体がちょっと弱含みになってきたので、これは日本の経済もそのあおりを受けるのかなという心配を持っております。しかし、何としてもこの辺で底を打って、上昇の気流に乗せてもらいたい、またそうすべきである。そのためには、いろいろな手段を講じられるならば、やっていきたい。むしろ鈴木先生から教えてくれたら、私はそれは十分参考にして考えていきますしいたしますから、そういうことは全部知恵を出し合ってやっていただきたいと思います。

鈴木(淑)委員 大変率直なお答えをいただきまして、ありがとうございました。

 弱含みという月例報告は先月で、今月のは、それに何か「さらに」とかいうのがついているのですね。恐らく来月はもっと、今度は景気後退的なニュアンスになりはせぬかと思うぐらい、情勢は悪いと私は思っております。

 大臣は、事務方から鉱工業生産の動向についてお聞きになっていらっしゃいますか。もし何でしたら私今ここで申し上げますが、鉱工業生産、実績は三月まで出ているわけですね。一―三月の前期比というのは十―十二月期ですね、何とマイナスの三・七%。三・七%一四半期でどんと下がるのは、年率はその四倍でございますから、大変な数字になります。一四%そこらになるんですね。大きくどんと下がりました。しかも、これは七四半期ぶりのマイナスなんですね。逆に言えば、七四半期回復してきたものが、二年弱回復してきたものが、一―三にどんと落ちたわけです。

 それで、塩川大臣の御期待のように六月ごろから上がればいいのですが、四月と五月については予測指数が出ておりますが、これが二カ月連続して両方とも〇・八%なんだ。とんとんと落ちる格好になっています。ですから、グラフを書きますと、相当急激に今突っ込んできております。前年比を見ると、もう二月から前年の水準を下回っているんですね。このままとんとんといきますと、五月の予測指数というのが何と前年の水準を三・七%も下回るのです。

 ですから、何とか曲がりなりにもこの景気を引っ張っていたものが設備投資と輸出でしたから、その影響を受けて、鉱工業生産は七四半期上がってきたのが、今言ったように、どんどんだっと落ちてきているんですね。

 これが今度は雇用面にはっきりと響き始めているということを大臣御存じですか。雇用面に響き始めている。そういう報告は事務方からお受けになっていらっしゃいませんでしょうか。

塩川国務大臣 鉱工業生産が落ち込んでいるということは聞いております。これは雇用に影響していることも聞いております。

 しかし、深い内容につきましては、私は余り報告を受けておらない状態です。

鈴木(淑)委員 それでは御参考までに申し上げますけれども、失業率は、三月は二月と同じ、横ばいで四・七だと言われているのですが、それは四捨五入するから四・七で横ばいなので、小数点以下二けたまで見ますと、二月は四・六八、三月は四・七二でございまして、はっきり失業率で悪化のトレンドが出ております。

 それから、求人数が急激に落ちてきたものですから、求人倍率のところはもうはっきり悪くなっているわけですね。限界的な労働需給のところがはっきり悪くなっている。新規求人倍率というのは去年の十一月がピークで、三月まで四カ月連続して悪化しております。それから、有効求人倍率は、去年の十二月がピークで、これまた三月まで三カ月連続して悪化しております。こうなりますと、当然のことながら個人所得にマイナスの影響が出てまいりまして、ただでさえ強くならない個人消費に悪影響が及んでまいりますので、私は、足元の事態はかなり深刻だというふうに考えております。

 そういたしますと、さっきの所信をお伺いしていて、事務方の用意したものを、まあいいかと思ってお読みになったかもしれませんが、こう書いてあるのですね。「平成十三年度予算の円滑かつ着実な執行に努め、景気の自律的回復に向けて万全を期す」と書いてある。つまり、今足元が、景気がどんどんどんと崩れてきている、それを平成十三年度予算の執行だけで回復に持っていけるというニュアンスなんですが、塩川大臣は御心配じゃありませんか、大丈夫ですか、ここに書いてあるとおりになるでしょうか。

塩川国務大臣 もちろん、予算の早期執行、着実な実施ということだけで景気の現在の弱含みというものを回復していくということは難しいかもわかりません。しかし、政府としてできる努力というものは、そういうことがまず優先されるということでございますので、それをあえて申し上げたような次第でございます。

 私は、この際に、ひとつ日本の産業界も、確かに私が予想しておった、鈴木先生はどう見ておられるかお聞きしたいのでございますが、情報機器産業、IT関係、これが世界的に思うようにいっていなかったということがどうも残念でならぬのですが、そうであるとするならば、これをもう少し推進していく方法、せっかく光ファイバーといっても、これの利用が薄いというようなこと、これをもっと活用する方向に、そういうふうに予算以外の問題として、経済政策の一環としてそういうことをやっていきたい、いかなきゃならぬと思いますし、そのためには、やはり経済界の協力を本当に要請すべきときではないかと思うておる次第です。

鈴木(淑)委員 今おっしゃったポイントは非常に大事なことだと思います。規制の緩和等のねらいは、やはり発展産業、なかんずくIT関係の事業機会の拡大だと思いますから、おっしゃるとおりだと思うのですが、ただ、申すまでもないことなんですが、経済が失われた十年間と言うほど停滞しているこの原因を考えるときに、ぜひ大臣、短期、中期、長期のこの三つをはっきり頭に置いて考えていただきたいのでございます。

 短期というのは、言うまでもなく、景気循環的な、公共投資をふやせば上がるよみたいな話ですね。中期は、柳澤大臣が御担当のところであって、バブルの崩壊以降、日本の企業、金融機関、そして住宅ローンを組んだ個人も含めて、バランスシートが傷んじゃった、債務はそのままで資産側がきゅっと縮んで債務超過になった。これが治っていないために、企業なんかもうけが出ても前向きの投資に回さないで、不良債権の処理とか、あるいは値下がりした資産の損切り売りとか、あるいは借り入れ過ぎているものの借り入れの返済とか、そういう後ろ向きの方に金を使っている。

 とにかくバランスシートが傷んでいる間は、景気が少し上がって企業収益が回復してきても、これが雇用、賃金に回って消費をふやすという好循環が起きないで、後ろ向きの、借金返済とか不良債権処理とかに使われちゃうという、この中期のところに一つブレーキがかかっているという問題。

 それから、あと長期のところがいわゆる構造改革でございますね。この構造改革は、今、塩川大臣がおっしゃったように、いかにして民間のビジネスチャンスをふやしてやるか、あるいは地方自治体に自立的な活動の領域をふやしてやるか、これが結局、規制の撤廃、緩和であり、地方分権であり、目指すのは元気な民間、小さな効率的な政府を目指す、これがまさに構造改革の基本のところだと思うのですが、この短期、中期、長期の関係を常にしっかり頭に置いていないと、議論は混乱するし、有効な手は打てないと思うのです。

 小泉内閣がしきりと強調しておられるのは、短期の手を打って回復してきても、中期と長期が片づいていないと、これが邪魔になって持続的な回復にならないねというところを強調しております。それはそのとおりでございます。

 だけれども、ではといって、短期をほうり出して、中期と長期を一生懸命やったら回復するかといったら、とりあえずは悪化してしまうわけですからね。そうしてこの三者のバランスが物すごく大事なのですね。

 今私が最初に申し上げたのは、短期の話をしてみたわけです、短期的に足元はどんどん悪くなっていますよと。それに対してどうしますかとお聞きすると、小泉内閣から返ってくる返事は、今の大臣の御返答も含めて、中期の話や長期の話をするわけですね。中期や長期はおっしゃるとおりだ。私どもも協力して一緒に改革しますよ。あるいは一緒に不良債権処理を促進しますよ。だけれども、短期の問題として足元が崩れているじゃないか。これはもう少したちますと、失業率が五%台に乗ってくる、消費者マインドも一段と冷える。事実、マインドだけじゃなくて個人所得も、夏に向けてボーナスがふえるどころの話じゃなくなってきます。

 しかし、政策としては、補正予算はもう当然この国会に出てきません。緊急経済対策は、来週の終わりごろ出てきますが、あの中身はマクロ経済政策、つまり短期の政策は入っていないのですね、中期と長期だけの話になります。それで大丈夫なのかという話なのです。

 私はやはり、短期、中期、長期の対策はバランスがとれていないと経済は回復しないと思っていますので、決して中期の不良債権処理や長期の構造改革を軽視するのではない、非常に重視しておりますが、だからといって短期を忘れていると、全体としてはえらいことになってくるというふうに思います。

 ですから、塩川財務大臣におかれましては、本当に聞く耳をお持ちの方でいらっしゃいますので、本音ベースのところで御心配であれば、中期や長期の話とすりかえないで、本音ベースではやはり短期もつけないと危ないのだよということを考えて対応されないといけないというふうに思います。

 私ども自由党は、かねてよりこの十三年度予算そのものを批判していました。まず、公共事業の中身を見ても、相変わらず効率の悪いところへ行っているじゃないかと。もっと効率の高い、緊急性の高い大都市圏の投資があるじゃないかというようなこととか、それから、消費に直結するようなところにもっと金を出していかなきゃだめじゃないか、さらに、我々は減税まで主張しております。

 とにかく消費に直結するところを何とか財政で支えながら中期と長期を片づけていかないと、さっき言いましたように、幾ら短期的に回復させたって借金返済やなんかで好循環の輪が切れてしまうのですから、それで消費に行かないのですから、これはやはりしばらく消費を支える財政政策が要るのですね。それが入っていない。ですから、ちょっとぐらい十三年度予算の執行を急いでみても、私は、夏に向かって景気は危ないなというふうに思っております。どうぞ油断しないで、よくごらんいただきたいと思います。

 御意見ございましたら……。

塩川国務大臣 構造改革なき経済の回復ということから、そういうことのみを見ましたら、おっしゃるように中長期的な表現になってきておると思います。

 そこで、それでは当面どうするのかということなのでございますが、当面の方法として緊急経済対策の方針を打ち出しまして、あれを着実にやっていこうと。あの中に書いてありますように、御承知のように、証券の活性化であるとか不良債権の整理を通じて金融にまず力をつけていくという方針をとるということ、それと同時に、また税制の改正等も置いて、少しは消費者のひもも緩めてほしいという要望をしておるわけでございまして、それよりも次に私たちが重点を置いておりますのは、都市対策本部というものを設置いたしました。これは、早急に会議を開きまして、基本方針をもう出す、両三日中に出す予定でございますが、これをてこにいたしまして、都市改造と同時に、そこに新しい内需を喚起していきたい、こういう計画であります。

 そういうようなことを総合的にしていくと同時に、何といたしましても、予算が完全消費されておるかどうかということは、非常に私たち懸念を持つところなのです。

 といいますのは、過去五年の間に百数兆円の補正予算を組みまして景気対策をしておりましたが、その予算の使い方が確実に景気回復に結びついておったかどうかということの反省も必要だろう。ましてや、昨年度並びに昨年度の補正をいたしました予算というものが、どのように的確に経済に、景気回復に反映しておるかという、そこの検証を至急にやっていきたい、そして、そういう方面に対しまして十三年度予算の振り向けをしていきたい、当面の対策、緊急経済対策と同時に、そういうものもあわせた部内の中の有効利用ということをあわせてやっていきたい、そういう努力をしてまいります。

鈴木(淑)委員 緊急経済対策につきましては、打ち出されてからまたここの委員会あるいは予算委員会でゆっくり質疑をさせていただきたいというふうに思っておりますが、今の御努力、それではだめだとは申しません。そういう御努力は何がしかの効果があると思いますが、ツーリトル・ツーレートにならないようにお考えをいただきたい。

 消費に多少は配慮すると言うけれども、伺っているところでは、緊急経済対策の株式譲渡益課税の話なんというのはほんのちっぽけな話ですね、あんなもの、たったの百万円か何かの話でしょう。あんなものが個人消費に響くものですか。やるなら株式譲渡益課税、配当課税、全体を利子課税とバランスをとる形でどんと公平化するといったようなことをやれば、それは株価にも響くかもしれないし、消費者マインドにも響くかもしれませんがね。あんな程度じゃツーリトル、そして、もたもたしていたらツーレート。今おっしゃったのがそろってくるのがことしの秋口だとすれば、そのときの足元はひどいことになっているだろうと心配をしております。

 次に、柳澤大臣。大臣とはいろいろな機会に御議論させていただいております。今の証券税制についても、前にも御議論させていただきましたし、今度緊急経済対策が出てきたらまたいろいろとディベートさせていただきたいと思いますが、きょうは不良債権処理について一つだけ、もう時間もだんだん迫ってきますから、お伺いしたいのであります。

 それは、きょうの所信の表明の中にも、それから総理の本会議場でのあれにもありましたが、不良債権を早期に処理するのだ、新規に破綻懸念先以下となった債権については三営業年度以内、既に破綻懸念先以下となっている債権については二営業年度以内、二年ないし三年と言われているわけですね。これ、算術的にというか数字的にどういうイメージをお持ちなのでしょうか。

 例えば、新規の方はわかりませんよね、これからの景気次第だから。既に去年の九月時点で公表になっておられる破綻懸念先以下というのは二十四兆円でしょう。二十三・九兆円ですが、四捨五入で二十四兆円。それに対して個別引当金を積んであるのは約八兆円だと言われていますね。もし違っていたら御訂正いただきたいと思います。

 そうすると、差し引き十六兆円。この十六兆円を二年以内にどうやって処理するのだろうということです。しかも、公的資金は投入しないと総理ははっきりおっしゃってしまっていますから、また事実あれに公的資金を投入するといったら、国債発行は三十兆円を突破してしまうかもしれませんからね。そういう縛りが他方にかかっている。それで、業務純益というのはせいぜい三兆円でしょう。

 そうしますと、二年であと十六兆円の処理をどうやってやる、どういうイメージでこういう発言をしておられるのか、数字の裏づけを持ったお答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 我々、不良債権の処理については、おおむね今先生がおっしゃったスキームでもって、今までの間接処理から直接処理というか、そういうことに進んでいきたい、こう考えているわけでございます。

 その場合に、私どもが今文書で明確にしておりますのは、大手行に対してまず考えたい、こういうふうに考えているわけでございます。では、それ以外の地方の銀行、地域銀行についてはどうなのかと言われますと、これは、大手行の融資先によっては多くの地銀、第二地銀が協調融資の関係にあるというふうに考えておりまして、そういう格好で、大手行に関連する部分について行われるだろう、最終処理に進んでいくだろう、こういうように考えているわけでございます。

 それは今現在いかほどであるかという計数的な整理を実はしておりませんで、大手行だけについて今ちょっと数字、手元にあるのを申しますと、大手行については、十二年九月末の時点で破綻懸念先以下の債権というのは、大体十三兆円というか、十二・七兆円でございます。そして、これに対して担保、保証あるいは引き当てというものはほぼ八七%行われておりますので、十一兆円が行われておるということでございますので、数字的に申しますと、新しい損失が、仮にあとの部分が丸損になったとしてもそんなにすごいマグニチュードでないというのが、私たちが持っているイメージでございます。

鈴木(淑)委員 よくわかりました。大手行についてだけであれば、今大臣がおっしゃったように、二年以内にめどをつけるということは決して不可能ではないというふうに思います。

 ですから、それをやはりおっしゃるべきですね。外人なんて、それをわかっていないのじゃないですか。本当に日本の不良債権は二、三年以内に処理できちゃうのだと思っている可能性がありますよ。そうではなくて、コアのところの大手行についてなんだと。そうすれば、大臣が言われたようにその影響が、地銀以下になっていい影響が及ぶだろう。だけれども、地銀以下は二、三年で処理なんてとてもできません。さっき申し上げた私の数字からいって、マクロ的に見たらこれはちょっと難しいということだと思いますので、これは、もし外国の人たちが誤解しておりますと、どこか途中で、また日本はごまかしたとかいう話になったらいけない。その点は大丈夫でしょうかね。

柳澤国務大臣 私たちの文書ではもう明確にしてございますので、そこは疑問の余地がないと思います。むしろ外国の人たちの評価でも、そういうものかというような、そういう理解のもとでの反応もいただいておりますので、そんな、そこに大きな理解のずれがあるというふうには、私自身は今思っておりません。

 ただ、私たちが大手行を目指してやるということは、実は、これはある行政の仕組みのもとに行われるものでございまして、またそれは同時に制約の要因でもあるわけです。ですから、私どもとしては、例の資本注入行に対するフォローアップの一環で、実態のディスクローズだとか、そういうようなものをしていこうということとリンクしているわけでございますので、そういう形にしてあるわけでございますが、私どものこれまでの経験から申しますと、大手行を中心としていいことをやった場合には、やはり地域銀行といえども、自分らのレピュテーションとかそういうようなことからいって、この点は真に良貨の方が悪貨を駆逐していく、そういうベクトルが働くという面がこれまでにもありました。例えば八%の自己資本比率とかというものについては、まさにそういうことが実現されたわけですけれども、そういうこともございますので、ここをどういうふうに表現するかという問題はあろうと思いますけれども、私どもの気持ちの中では、率直に言って、そういった効果というか、そういう面を期待いたしております。

鈴木(淑)委員 確かに、柳澤大臣は主要行と断るのですね。それは大手行のことだというのは確かだと思いますが、どうぞこれからは、財務大臣ももちろんおわかりだと思いますが、特に小泉総理の御発言のときに、何となく全部二、三年で片づいちゃうような勢いでわあっとおっしゃいますが、あれが裏切られているような感じになりますと、さっきも言いましたように外国の人のショックは大きい。

 御承知のように、今株価が何とか戻ったのは、外人のいわば改革買い、不良債権処理買いなんですね。これが逃げますと、またどんと来ます。特に心配なのはやはり、最初に言いましたように、足元の景気が崩れていくと思います。そこへ持ってきて、いや実はあの政策は羊頭狗肉だったなんてどこかの外国の大新聞でも書こうものなら、本当に金が逃げて株が再び、今既に少し弱いから心配ですが、再び下がるようなことになりますと、景気後退に追い打ちがかかりますので、ぜひどうぞこの辺の、二、三年で片づけるという御発言を総理や何かなさるときも、今言ったところを御注意いただきたいと思います。

 柳澤大臣おっしゃるように、確かに大手行をやればそれでおしまいじゃないですよね。力のある地銀はついていきます。そこで差がぐっと出てくると思いますけれども、それは私はおっしゃるとおりだと思いますよ。ですから、大手行だけじゃだめだとは言わないのですが、大手行だけなんだよ、ただそれのいい効果が及ぶんだよというような言い方を注意深くなされますように、特に外国に向かってそうされるのがいいというふうに思います。

 それでは、時間になりましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、塩川大臣の基本姿勢についてお聞きをしたいと思います。

 小泉内閣は大変高い支持率でありまして、びっくりするような感じであります。それは、これまでの自民党政治を何とか変えてもらいたい、そういう期待だと思います。改革に対する期待、これがあるのだと思うのですね。そこで、塩川大臣にお聞きしたいのですが、問題は何をやるかということだと思います。国民の圧倒的多数の声に正面からこたえる、これが政治の基本的なあり方だというふうに思いますけれども、まずその点についての御見解をお伺いしたいと思います。

塩川国務大臣 それは、もちろん政治家である者はすべてそうであろうと思うのですが、国民の声といいましょうか、国民が何を考え、何を要望しておられるかということ、そして、国民に不安を与えないようにするのにはどうするか、これはもう政治の要諦でございますので、小泉内閣に限らず、歴代内閣は全部その姿勢でやってまいりました。

 しかし、その場合に、いろいろ方法があったり、あるいは現実的な対応等が違っておりましたので、評価は分かれてくると思うのでございますけれども、小泉総理自身は、現在の国民の要望にこたえるということのためには、今までやってまいりましたいろいろな習慣、諸制度というものをできるだけ積極的に変えていきたい、変えるものは変えていきたいと。そのためのいわば先達となっていきたい、そういう気持ちで現在政治に取り組んでおるということでございます。

佐々木(憲)委員 では、具体的な政策対応に入る前提として、塩川大臣の景気に対する基本認識についてまずお聞きをしたいと思います。

 先ほども、鈴木議員との議論もお聞きをしておりました。昨年は、ちょうど今ごろは、政府は盛んに、景気は回復過程にある、自律的回復の過程にあると言っていたわけであります。しかし、現状はどうかといいますと、私は、昨年の末から急速に景気の後退局面に入りつつあるんじゃないか、そういう印象を持っております。

 塩川大臣は、景気の現状を、現時点を、上向いていく方向にあるのか、それとも下降局面にあるのか、これはどのようにとらえておられますか。

塩川国務大臣 私は、ずっと景気は回復基調にあるように思うておりましたし、また、そうあってほしいと思うておりました。しかし、最近の、一番端的に表現されておりますのはナスダックの相場の動きでございますね。あれを見ておりまして、その実態は何かということを追求してみましたところが、今の日本の経済、世界経済全体でございます、アメリカもそうでございますけれども、一番景気回復に期待をかけておったIT産業、情報機器産業、こういう分野が少し停滞ぎみになってきた。このことがいろいろな経済の指標に影響してきておるということを私知りまして、少しその点で、景気の今の状態に対してちょっと警戒しなきゃならぬな、そういう気持ちを持っております。

 ですから、去年の秋以降の状態に比べまして、少し経済、景気に心配の要素が出てきたということは事実でございます。

佐々木(憲)委員 月例経済報告を見ましても、ことしの二月には、「景気の改善は、そのテンポがより緩やかになっている。」三月になりますと、「景気の改善に、足踏みが見られる。」こう指摘して、「日本経済は緩やかなデフレにある。」と初めてその現状をデフレと認定されたわけですね。四月になりますと、「景気は、弱含んでいる。」こう下方修正をしまして、先週金曜日、五月の月例経済報告では、「景気は、さらに弱含んでいる。」と、「さらに」とつけ加えられた。つまり、四カ月連続下方修正というのが現状であります。

 そこで、なぜこういう状況になったのか。先ほど、情報関連、IT関連の産業に陰りが見えるというお話がありましたが、産業の面からいうとそういう面があると思いますけれども、しかし、もっと経済を全体として見た場合、生産、所得、あるいは消費、こういう全体として見て、どの点に大きな問題があるというふうにお感じでしょうか。

塩川国務大臣 まず基本的には、やはり私は、鉱工業生産が下方修正されてきておる、つまり減速しておるということが大きい原因だと思うのでございますが、もう一つ重大な私は関心を持っておりますのは、流通関係に見ますところの価格破壊ですね。これによるところの経済の変動といいましょうか、これが企業マインドに非常に大きく悲観的な影響を与えてきておる、これを私は非常に心配をいたしております。

 そういうものが複合してきたこと、そして金融情勢も、今新しい設備投資が動いてきておりませんので、少し金融状況も停滞ぎみかな、そういうすべての要件が絡んでまいりまして、何となく弱含みだという状況が出てきておると思っております。

佐々木(憲)委員 何となく漠然とした感じでありますが、政府が四月六日に出された緊急経済対策の「第一章 基本的考え方」、この前文のところで、景気の現状についてこういうふうに見ております。

 生産・企業収益が回復し、民間設備投資も持ち直しを示すようなった。

これは去年までの話であります。

  企業部門のこのような復調は、本来ならば家計部門の回復をもたらし、自律的景気回復に向けた好循環の端緒となるはずであった。しかし、企業部門の復調にもかかわらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は見られていない。

つまり、昨年まで、企業部門を中心に自律的回復の動きはあったけれども、しかし家計部門の改善が伴わなかった。ことしに入って、企業部門全体としても、それが足を引っ張るようになった。そのために、最近になって企業収益あるいは設備投資にも陰りが見えるようになった。

 つまり、個人消費の回復が見られないということが最近の景気後退の大変大きな要因になっているのではないかと思いますが、そのようには思われませんか。

塩川国務大臣 おっしゃる影響も、多少私は考慮すべきだと思っております。

佐々木(憲)委員 考慮というよりも、例えばGDPに占める個人消費は五六%であります。過半数を占めているわけです。これに対して、設備投資は一五%、公共投資は七%でございます。ですから、どこから見てもこの個人消費が決定的であります。これが少しでも上向くか、それとも後退するか、これが経済全体にとっては大変大きな影響を与えるということだと思うんですね。

 そこで、個人消費を景気後退にとっての一つの大きな要因というふうにお認めになりましたけれども、それでは、個人消費が落ち込んでいる、なかなか回復しない、その理由、これはどのように考えておられますか。

塩川国務大臣 佐々木さんから言わせれば、失業がふえたということだろうと思います。私もそれは認めます。当然、失業がふえたことは影響しておると思うんです。しかし、一面から見まして、成長率、消費傾向を見ました場合に、物価の多少とも下落というものがやはり私は、数字の面から見ました場合、名目数字から見た場合、数字から見た場合、影響があるのではないかなと思っております。

佐々木(憲)委員 名目成長率と実質成長率との関係でいうとそういう問題もあると思いますけれども、しかし、私、昨年の十一月にこの大蔵委員会で宮澤前財務大臣に同じような質問をさせていただいたのですが、そのときに宮澤財務大臣は、このように答弁をされました。

 一つは、やはり将来に対する国民あるいは消費者の不安。それは、社会保障を初めとする将来に対する国の政策が信頼できるほどきちっと立てられていない、またそれを追求すると、どうも負担はやや重くなるのではないかというふうに思われる等々から、そういう将来についての不安というのが一番大きいのではないかとおっしゃる方が多うございます。

  それから、もっと短期的には、こういうリストラの状況でございますから、雇用関係あるいは給与が目先よくなっていく、上がっていくという期待はなかなか持てない、これも事実であろうと思います。

このように述べまして、個人消費が停滞しているその原因について、このように指摘をされています。

 先ほど、雇用失業の問題を大臣が御指摘になりました。大変大きな要因だというふうに思いますが、もう一つの、こういう社会保障の問題なども大変大きな不安材料になっているというふうに思いますけれども、その点についてはどんな感じを持っておられますか。

塩川国務大臣 幸いにいたしまして、年金制度が日本では確実にその効果を発揮しておりまして、年金の将来に対しまして、若い人たちは長い経過年数を経た将来に対する不安というものがございましょうけれども、一般国民は年金に対する信頼はやはり確実なものを持っておりますので、この点における社会保障政策は私は心配ないと思うのでございますけれども、医療の増嵩、それに対します薬価あるいは一部負担というものにとりましたこと、これは若干、国民一般から見ましたら不安材料になるかもわからぬと思っております。

 しかしながら、これとても、医療の制度、現在の保障制度を確立しておくことに対しまして、一般的に見ました場合に医療に対する不安はないのでございますけれども、将来、やはり財政上の理由から若干自己負担がふえるのではないかという不安が一般市民の中に漂うておるということが、これが一つの不安材料と言えるとは私は思っております。

佐々木(憲)委員 年金の問題もかなり不安材料になってきているわけでございますが、それはまた後で触れたいと思います。

 それで、日銀が定期的に生活意識に関するアンケート調査というのを行っておりまして、五月九日に第十二回目の調査結果が発表されております。

 それで、お手元に資料が配付されていると思いますが、それをごらんになっていただきたいのですけれども、この調査では、一年前と比べてあなたまたは家族の収入はどうなったか、こういう質問がございます。これに対して、減ったという方が大変多いわけであります。ふえたという方の三倍から七倍。傾向としては減った方が非常にふえてきている。これはまさに企業のリストラの影響というのが大変あると思いますね。

 それから、一年後のあなたの収入はどうなっていると思うかという問いに対して、減ると思うと答えた人は、ふえると思うと答えた人の三倍から五倍あるわけですね。それを見ていただければ明確だと思います。

 それから、今度は支出の面ではどうか。この三つ目であります。減らしている、こう答えている方が、ふやしていると答えた方の六倍から七倍あるわけです。全体として、支出を減らしている、その比率というのは非常に高いわけですね。ですからこの点が、現実の収入の落ち込みがあると同時に、支出の面でもさまざまな、例えば税負担ですとかあるいは社会保障の保険料の負担ですとか、そういう問題も加わって、貯蓄率も高くなる、そういう中で支出をどんどん抑えていっている。そうせざるを得ない、そういう不安感があるということですね。この統計はそういうことを示していると思うのです。

 それで、支出を減らしている理由は何ですかというのが四番目の問いであります。支出を減らしている理由としてそこに幾つか書いてありますが、例えば、将来の仕事や収入に不安がある、これを見ますと、例えば昨年からことしにかけて六〇・四%から六三・八にふえておりますし、今後は年金や社会保険の給付が少なくなるのではないかとの不安がある、これが五二・五から五八%にふえております。もっと以前からとりますと、そのふえ方は大変大きいわけであります。それから、リストラの不安もありますし、その次には、将来増税や社会保障負担の引き上げが行われるのではないかとの不安がある、三六・七から三七・九。

 このように、つまり直接政府の政策にかかわる部分で不安というのがあるということでございます。リストラの不安、あるいは年金、社会保障の将来不安が広がっている、これがこのように結果として出ているわけでございます。

 先ほど、塩川大臣の所信表明の中で、景気回復のおくれ、その要因として「国民の将来への不安感などがあり、」というふうにおっしゃいました。つまり、将来不安ということのその中身は、この日銀の生活意識の調査の中に非常にはっきりあらわれているのではないか、その内容がここに出ているのではないかと思いますが、この点について塩川大臣はどのようにお考えでしょうか。

塩川国務大臣 この表を見まして私も思うのでございますが、この傾向は、十年前もほぼ大体同じようだったと私は思っております。そんなに変わっておらないように思うのです。

 ただ、確かに、高度経済成長華やかなりし四十年ごろ、その当時から見ますと、それは大分変化はあるように思いますけれども、やはり国民の皆さん方は将来に不安を持っておるということは、これは常時私は関心を持って考えなければならぬ問題であると思っておりまして、それは、いつの時代でも生活の不安を除去するということは政治の目的でございますから、私は、所信表明の中で申し上げましたように、これからの日本の経済並びに財政を運営するについて、やはり第一は国民の不安なからしめんように心得ていく、そういう方面に財政ニーズを見出して政策を打っていくという意味において申し上げたことでございます。

佐々木(憲)委員 十年前と変わらないとおっしゃいましたが、傾向的にはこの不安というのは非常にふえているというのが、この統計そのものを見てもはっきり出ているわけであります。

 不安のないようにしていくのが政治だとおっしゃいましたが、従来、この数年間を見ましても、特に九七年の九兆円負担増以来、医療にしても年金にしても国民負担がふえ、あるいは年金の支給年齢を繰り延べるというような措置がとられて、本当に大丈夫なんだろうかということで、現実の収入があっても、その収入自体も減っていますが、その上に今度は一生懸命貯蓄せざるを得ない。そういう状況になっているのが現在の消費低迷の大変大きな要素になっているのではないかというふうに私は思うわけであります。

 実際、総務庁の家計調査によりますと、全世帯の実質消費支出というのは、平成五年、九三年以来連続八年間マイナスであります。九二年をベースにしますと約七%落ち込んでいるわけですね。消費者物価も、先ほど物価の問題をおっしゃいましたが、三年連続マイナスであります。つまり、消費が低迷し、それに伴って物価が下落をするという事態が生まれる。そうなりますと、当然企業の収益が減ってくる。そうしますとリストラせざるを得ない。リストラによって失業者がふえる、雇用不安が広がる、当然そこからまた消費が冷えるという事態になって、まさに悪循環、デフレのスパイラルという状況が生まれてくる、そういう危険性が今まさにあるわけであります。

 ですから、こういう状況で例えば不良債権の最終処理をやる、こうなると、失業、倒産が生まれるというのはもうお認めになっていますけれども、デフレスパイラルのこういう危機的な事態に直面しているときに、それを加速するということになるんじゃないか。そういうおそれというのを、塩川大臣自身お感じになりませんでしょうか。

塩川国務大臣 私は、佐々木さんのおっしゃるデフレスパイラルにはなっていないと思っております。しかし、景気と消費の悪循環のようなものが行われておるということは、私も肌に感じております。

 しかし、世界全体、また日本の経済を見ましても、景気の動向というものが大きく変わってまいりました。右肩上がりがずっと三十数年、四十年続いてまいりましたところから、今度は右肩下がりの傾向になった。これは何も日本だけの状況ではございませんで、世界経済全体がそうでございます。

 その中にはいろいろな変化があったと思うておりまして、その変化は、技術革新によって随分変わってきた。ですから、日本の経済も、重厚長大型産業から情報機器産業、いわゆる小さい製品といいましょうか軽い産業の方に変わってきて、ソフトウエアに重点を置いてきておる、そういう経済構造の変化がございます。

 今まさにそういう中途にあるところでございますから、中小企業対策一つにいたしましても、的確な措置がなかなかとりにくいというのは、経済の仕組み全体が変わってきておることに原因が来ておると思うのであります。

 したがって、家計を一つ見ましても、最近の家計の中で一般的に言えますことは、従来は、食料に重点を置いた家計の重圧というものがございましたけれども、現在では、家計の大きい比重を占めていきますのは、まあ特殊かもしれませんけれども、一般的に申しまして教育関係、教養関係、そしてレクリエーション関係というものが非常に大きい消費支出の部分を占めております。そして、食料とか衣料とかいう生活の基本的な支出というものは安定した状態で推移してきておると思う。

 現在、不景気になってきております状況は、そういう生活環境の中の一定の基本的なものに対する不安というよりも、将来の産業構造の転換に伴って、どうなっていくのであろうかという自分の生活自体に対する不安というものが非常に大きい。それを何とかして新しく希望を持ってもらうようにするためには、これからの経済のあり方、社会の進展というものを明確なビジョンで示していかなければならないだろう。こういう努力は必要だろうと思っております。

佐々木(憲)委員 構造転換が起こっていると言いましたけれども、実際に、今各分野で大変な弱肉強食の事態というのが、規制緩和あるいは市場開放のもとで起こっておりまして、中小企業を中心に企業数は非常に激減しているわけであります。大企業の方は、合併、リストラ、人減らし、雇用の削減を行っております。全体として雇用不安が起こり、将来不安が大変広がっているというのが実態であります。

 それから、食料、衣料というふうにおっしゃいましたが、家計調査報告をぜひ見ていただきたいのです。この分野がこの十年間ずっと下がってきているのです。つまり、ここを切り縮めざるを得ないという事態に次第に入りつつある。そういうことも、安定しているとおっしゃいましたが、ぜひ数字を見ていただきたい。これは違うと思います。

 そこで問題は、どうすれば消費支出をふやすことができるか。これが問題だと思うのですけれども、日銀の調査では、お手元にあります一番最後の表ですが、雇用や収入の不安の解消、あるいは消費税率の引き下げ、年金改革、財政赤字などに対する指針を示し国民負担の将来像を明確化する、この三つがはっきりすれば支出をふやしたい、こういうふうに回答されているわけですね。この点については、先ほど、国民の声にこたえる、それが政治だ、不安を与えない、これが政治の基本だ、こうおっしゃいました。では、この要望に前向きにこたえるということが必要だと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

塩川国務大臣 それは、何も特定の分野だけではなくして、今の生活の安定ということにつきましては、あらゆる分野から措置を図っていかなければならぬと思うことは当然であります。

佐々木(憲)委員 それでは、例えば財政の問題について、財務省の主計局次長が見えていると思うのですが、財政制度審議会が行いました財政についての意識調査アンケートというのがあると思うのですが、国の予算のうち、生活になくてはならないと思うものは何ですか、役に立っていないと思うものは何ですか、こういう問いがありますね。それぞれ多い順に二つ挙げていただきたいと思います。

津田政府参考人 財政制度等審議会が行いましたアンケートの結果でございますが、これは財務省のホームページに質問を掲載して、回答者がみずからアクセスをするという形で実施されております。千二百三十件の回答がございまして、内訳としては、男性が八五%、女性が一五%でございますとか、あるいはお住まいの場所では、東京都、神奈川県、大阪府といったこの三県が上位で、この三つで五割とか、そういうことになっております。

 それで、今御質問の点でございますが、まず質問の一として、国の予算、歳出のうち、あなたの生活になくてはならない、あるいは役に立っていると思うものは何かという問いに対しまして、回答は、社会保障関係費が一番多くて六〇%、次が文教及び科学振興費一八%となっております。それから質問の二として、国の予算、歳出のうち、あなたが生活する上で余り役に立っていないと思うものはという質問に対しまして、一番多い回答は公共事業関係費四三%、防衛関係費二四%などとなっております。

佐々木(憲)委員 もう時間がなくなりましたけれども、塩川大臣、最後に、このほかにも大変注目すべき結果が出ておりますが、国民の声にこたえる、これが改革、小泉内閣だ、こうおっしゃいました。予算の配分についても見直しを行うのだ、こういうお話をされました。まさに国民の声が求めているのは、社会保障はきちっとやってほしい、将来不安を解消してほしい、その上で、公共事業については、これは抑制してほしい、削減してほしい、こういうふうに言っているわけであります。これにこたえるというのが、当然内閣としてやるべき仕事ではないでしょうか。その点についての御見解を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 これは佐々木さんの質問に答えるよりも、既に総理は、所信表明演説の中でもそれを言っておりますので、その趣旨を生かして、実行してまいります。

佐々木(憲)委員 抜本的に社会保障、年金、医療、介護、こういう分野の予算をふやし、むだな公共事業を中心に削減をきちっとやっていく、そのことが大事だと思います。

 質問時間が終了しましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 委員各位、そしてとりわけ塩川新財務大臣、柳澤大臣には長時間の御討議、御苦労さまでございます。おなかもすいてまいりましたが、私の予定時間で三十分やらせていただきますと、一時近くになりますので、時間厳守ではまいりますが、いま少しの集中をどうかよろしくお願い申し上げます。

 私ども社会民主党はいつも質問時間が最後でございますが、今般新大臣の御就任に当たって、我が党の基本的な現在の雇用経済情勢の認識と、そしてまた内閣がお出しになっている緊急経済対策も含めての処方せんについて若干の疑義を挟みたいと思っております。

 まず、塩川大臣の所信表明の中にございます経済運営の基本方針の項目中、我が国の経済の回復がおくれている背景には、バランスシートの調整や国民の将来への不安感という一項目がございまして、先ほど来、佐々木憲昭委員、あるいはその前段で鈴木委員もお触れになりまして、それに対して塩川新大臣の御答弁もございました。

 私ども社会民主党、とりわけこの国民の将来への不安感ということの大きな要因、これは、前宮澤財務大臣もお触れなさいましたし、今塩川新大臣も多少言及なさいましたが、雇用、いわゆる働く場の問題が大きく影を落としていると思います。

 いつも他の政党の方が御用意くださった資料を盗用して申しわけございませんが、きょうも佐々木委員が御提示になりましたいろいろな分析データの、日銀のアンケート調査によります中におきましても、支出を減らしているのはなぜですかという項目中、将来の仕事や収入に不安があるというのが六三・八%。小泉内閣の支持率には及びませんが、六割強の方が将来のいわゆる収入とか仕事に不安を感じる社会というのは、これは実は塩川大臣がおっしゃった、十年前と余り変わっていないのではないかということとは、やはり大きく位相を異にする時代だと思います。

 特に、働くということに関しまして、私は実は小児科の医者でございまして、思春期の子供たちの診療を専門にしてございましたが、今、真っ当に働くということの価値観をなかなか子供たちが実感しにくい時代になっております。その中で、身の回りでも非常に凶悪な犯罪、突発的な殺傷事件等々がふえておりまして、私は、こうした社会不安の根本要因の中にも、働くということ、これは汗水流して働く、あるいは余りに投機的な傾向に向かわずに真っ当に働くということについての国のモデル像が非常に希薄になっているやに思います。

 ですから、実は今般の緊急経済対策の大もとは、緊急経済対策に伴う失業の増大に対しての手当て的な雇用対策ではなくて、いま一度我が国がこの日本という国を支えるための働き方、すなわち雇用の場でございますが、このことに焦点を当て直していただきたいと思っております。

 先ほど塩川大臣の御答弁の中で、IT関連産業にいま少しいろいろな意味で雇用もシフトできまいかということで思っておるが、これがなかなか、全般的には思ったほどには進展していないというふうな御指摘もございましたが、私の目から見ますれば、今高齢社会が大変進んでおります。塩川現大臣や宮澤前大臣のようなお元気な御高齢の方ばかりではなく、やはり高齢社会、疾病をいろいろあわせ持つというのが常でございます。となりますと、医療、介護、福祉分野というのは実は潜在的な大きな雇用の創出の場、特に日本におきまして医療、介護、福祉分野の人手は、欧米に比べましても四分の一程度の人手薄の中で実施されております。

 私がこういうふうに、小児科の医者から政治を変えたいと思いましたのも、もっと医療、介護、福祉分野に人の手、雇用の創出を行わなければ、医療、介護、福祉が安心して行えないというこの一点でございますので、これは塩川新大臣へのお願いでございますが、医療、介護、福祉分野というところの人材の育成、そして特に人手不足の看護婦さんの雇用の状態等々、いま一度、直接の担当相ではございませんが、政府の中でも新たな視点をお持ちいただければと思います。私は、それが実は、先ほど鈴木委員が短期、中期、長期とお分けになりましたいろいろな経済対策の中でも、短期的にも、中期的にも、長期的にも一つの解を出すものと思っております。

 では、御質問に移らせていただきます。

 塩川大臣の今般の所信表明演説の中でも、中長期的なものが不良債権処理あるいは構造改革であるとするならば、短期的に行えるもので有効なものは何であるのかという観点からお伺いいたします。

 既に十四日でしたか、小泉新総裁が特定財源の見直し、特にこれは塩川財務大臣が当初御発言でございましたが、我が党の谷本議員の参議院本会議での質問に答えまして、道路特定財源の使途の見直しに言及なさいました。そして本日の委員会で、既に私以外の方も御質問でございましたが、この道路特定財源の見直しに関しまして、小泉新総裁は、いわゆる一般会計の中に、一般財源化の方向をもって見直すというふうに受け取れる御発言を十四日になさっております。そして本日の塩川財務大臣の御発言では、いやいや、そこまでは言っていないよ、ちょっと見直してみて、いろいろな幅広い道路公共事業という中で考えたいのだというふうな向きに受け取りました。

 果たしてここで、総理の御意向と塩川新大臣の御意向に差はございますでしょうか。一点目、お願いいたします。

塩川国務大臣 私と総理の言っているのは全く相違ございません、同一でございます。表現がちょっと違ってきたということと、言葉の重点の置き方が違うということでございますけれども、趣旨は全く同じでございます。

 私も、いずれは特定財源の根本的な見直しをしなければならぬと思っておりますが、しかし、さしずめ、十四年度対策というのはもうすぐ目の前に来ておるのでございますから、それには法改正というものはなかなか間に合わぬだろう。そうであるとするならば、特定財源の設定された趣旨を生かして、その財源をもっと有効に使う方法はないだろうか。そのためには、現在使っておる既定の支出をもっと幅を広げて適用させていってニーズにこたえていったらどうだろう、こういうことを申し上げております。

阿部委員 明確な御答弁、ありがとうございます。いずれは、来年度以降と思いますが、一般財源化に向けて御尽力いただけるというふうに拝聴いたしました。

 同じ特定財源の中でいま一つ御検討をいただきたい財源がございます。いわゆる電源開発促進に関する財源、財源的に申しませば電源開発促進税でございます。これは今の道路関連の予算ほど、兆の単位ではございませんが、四千億内外の税金の使途でございます。

 これは今、目下の段階では電源開発促進対策特別会計に組み入れられまして、電源開発の立地、それから多様なエネルギー、例えば今の自然エネルギーを利用するような方向での目的の多様化の両方向に使われておりますが、この電源開発特別会計のうち、特に立地に関しますものは、原子力発電の立地について、住民合意が得られない、あるいは見直しの機運が高まっている中で、毎年一千億の予算の余りと申しますか計上した予算の使い残りがございます。

 ぜひとも、この電源開発事業につきまして、特定財源でもございますし、道路特定財源と同じような見直しの御検討をいただきたく、塩川大臣のお考えを伺わせていただきます。

塩川国務大臣 この税制が制定されましたのは二十年ほど前でございまして、私もこの促進に関係した一人でございます。

 あの当時、阿部さんはまだ小さかったから御存じないだろうと思うのですが、日本の電力が高度経済成長に物すごく不足してきた。何としても新電源を求めなければならぬ。ところが、やはり環境問題もございますし住民の反対も相当ございましたので、その解消のためには、発電所をつくるところの方々にインセンティブを何か与えようというのがこの発想の原点でございました。これが功を奏しまして、特に原子力発電所が急速に進んで、それが現在の日本のエネルギーを支えておるということも事実でございます。でございますから、政策目的としては十分に達成してまいりました。

 現在、そういう対象市町村になりますところは地方交付税で調整しておりますので、決して全部が全部、電源開発が地域のエゴになっておるということは言えませんけれども、しかし、その地域開発、均衡ある国土の発展という趣旨からいっても、これは一定の役割はしておりますので、現在も続行していくべきであろうと思っております。

 しかしながら、仰せのように見直していくことが、すべて一応見直す必要があるということでございますので、私たちも検討はしてまいりたいと思うております。

阿部委員 時代をどう認識するかでございますが、確かに、塩川大臣がおっしゃられたように二十年前に発足し、ある程度私は歴史的役割を終えている政策であると思います。

 ちなみに、問題になりました核燃料サイクル機構の、いわゆる使途以外の、事業費として充てられたものを職員給与に流用しておりました会計も、この電源開発特別会計と連動しておると思いますし、私自身も、核燃、昔の動燃ですね、見学に行ってまいりましたけれども、国民の税金をそういう使途に用いられたということは非常に問題が多いと思いますから、そういう観点からも、ぜひとも見直しをお願いいたします。

 あと一点、大きな問題ですので、塩川大臣にお願いいたします。

 いわゆる赤字国債あるいは建設国債と、今二分されているような公債、国債の発行に関してでございます。建設国債が、後世に、子孫にいろいろな財産を残すということで別途建てにされておりますが、小泉新内閣にありましては、一般の国債とそれから建設国債の垣根というものをもう一度考えてみるお考えはおありや否か。総論で結構でございます。

塩川国務大臣 これは、年々歳々、常時検討されておる問題でございますから、当然検討されると思うのでございますが、原則はやはり変更することはないと思っております。

阿部委員 検討されて、変更されることのない原則とおっしゃる原則の部分を、一言だけでお教えくださいませ。原則は変更しない、しかし検討するとおっしゃいましたが、原則の部分についてお願いいたします。

塩川国務大臣 あなたが質問の中でおっしゃっていましたですね。建設国債は、将来の財産として残るべきものであって、国民がすべて平等に使えるもの、そして一方、特定公債は、その当時当時の財政ニーズに応じて発行するものである。そういうことを踏まえまして、その原則は変えないということでございます。

阿部委員 先ほどの佐々木憲昭委員からの御質問の中にもございましたけれども、国民が一番見直しを要求しております分野、いわゆる公共事業。子孫に残るといって、ダムをこれ以上つくったりすることも意味がないかもしれない。いろいろな時代状況が違ってまいりました。黒四ダムが開発された当時と、今現在国民が環境に寄せる思い、あるいはこれ以上国土を汚してよいのかという思いもございます。そこは深く受けとめられまして、塩川大臣の方でも適宜御検討をお願いいたします。

 引き続いて、柳澤金融大臣にお願いいたします。

 実は、私はきょうこの一点を質問通告してございませんが、本日の委員会に出席いたしまして、ぜひとも柳澤金融大臣に御確認しなくてはならないと思いました点がございますので、大変恐縮ですが、総論的なことでもございますし、資料、データを要することでもございませんので、御答弁をお願いいたします。

 私の柳澤金融大臣への御質問の第一点目は、先ほどの民主党の長妻委員との論議の中で問題になりましたところでございます。いわゆる金融庁からの銀行への天下り、あるいは銀行関連金融機関への天下りということを質疑されましたときに、柳澤金融大臣の御答弁を承りますと、何だかよい天下りと悪い天下り、問題の天下りと問題のない天下りがあるやにお答えを拝聴いたしました。

 私は、これは各公務員経験者、特に専門性を要求するような金融、財務等々の経験が国民に還元されなくてどうするものかというお気持ちを理解した上で、しかしながら、この金融大臣の御答弁には、特に透明性を要求される金融業務ということに関しまして、やはり大きな問題があろうかと思います。

 他の関連省庁、例えば厚生省の分野で、国民の健康増進育成に非常に能力をお持ちの方が関連福祉施設に天下られるのも、やはりいろいろな人脈、既得権がついてまいりますので、どうしても人脈は切れません。人が人を知っているということは切れません。そこで起こってくるさまざまな問題も、プラス面以上にマイナスの方が大きいということで、あるいはまた、多大な退職金等々で二、三年で移っていかれるということもあって、国民的にはやはりおかしいという意識が強い分野でございます。

 ちなみに、柳澤金融大臣も御承知おきでしょうが、この間、いわゆる取りつぶしになった銀行のうち、国民銀行、幸福銀行、東京相和銀行等々は、これは金融庁関連からの人事的な交流がなかった(天下りがなかった)の銀行でございます。そうなりますと、それは金融庁等々の持っていたノウハウを持っていないところがつぶれてしまったというふうに言える向きもあるやもしれませんが、やはり金融庁というところが、銀行という民間と一線を画してやっていかれるある意味の覚悟、そしてそれはもっと言えば、金融庁がやっている業務が銀行というものと独立して、きちんとフェアな、公正な役割として担い切られるために大変重要と思います。

 どういうことかと申しますと、今銀行間でも、各企業の持っております不良債権で、A銀行が査定する場合とB銀行が査定する場合と違う。本来は、金融庁等々が公平、公正な立場から、この不良債権の多寡についてもあるいは企業評価についても、ある程度スタンダードが誘導できるような方式が今国民にとってはわかりやすい、求められる方策と思いますが、とりあえずでございますが、今、銀行、金融行政は信頼と透明性こそキーワードでございますから、先ほどのいい天下り、悪い天下りについては、いま一度お考えおきいただきますことを期待しながら、御答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 阿部先生は、多分厚生行政に非常に通じていらっしゃるのだろうと思うのです。私どもの金融行政は、厚生行政と比較してというわけじゃないのですけれども、極めて透明性高く、それからまた独立性というか、そういうものがございます。そういうものを今目指して一生懸命努力をしているということでございます。

 他方、天下りというふうなことをおっしゃったのですが、金融監督と金融機関とが天下るということになるのかならないのか、これも非常に、私は恐らくかなり競争的な関係もあるのじゃないかと思うのです。

 例えば一つ例を挙げますと、では、ノウハウがないので、金融庁の課長さんを民間から調達してきたとします。そのときに、ある一定年限が終わって民間に戻っていくことを、阿部先生、どのように御評価なさるでしょうか。先ほど長妻先生のお話は、課長以上はということで言われました。私、そこまでは踏み込んでお話ししませんでしたけれども、もう我々の、今行政改革を進めていますけれども、審議官クラスも民間からの調達ということが考えられるような、そういう任期制の職員でやろうじゃないか、そういう動きなんです。

 ですから、その配置された人間のもとにおける行政と民間との独立性はどうであるか、透明性はどうであるか、むしろそこが問題でありまして、それぞれが専門知識を持った人間が行政にも参加してもらいたいし、また、場合によっては民間にも戻っていろいろな仕事をしてもらうということも十分あり得ますし、それからまた、我々のところで育った人間でも、私は途中から民間に入ってどうしても仕事をしたいというような人たち、それは金融の分野では本当に多いのだろう、多くなっていくだろう、こういうように私は思うのでございます。

 そういうことで、これからの金融界というものを考えたときに、また、金融機関が今立たされている財務状況等の厳しさを考えるときに、私はきのうの予算委員会の質問でも答えたのですけれども、何にもそのノウハウを持っていない、金融の専門知識を持っていない、法律の専門知識を持っていない、会計の専門知識を持っていないような人間が、役所のキャリアだけで顧問だとか何とか雇われて、大した貢献もしないのに高給をはんでいるとしたら、そんなものは断固許さないと私答弁しました。そういうことなんです。

 ですから、そういうきちっとした専門知識を持っている人がいろいろなところで働く、このことを否定するわけにはまいらないということなのでございます。

阿部委員 先ほどの御答弁もそのようでしたから、趣旨と申しますか、お気持ちは理解いたしますが、しかし、やはりそこには一定のルールというものが必要だというのが長妻委員の指摘でもあったと思います。経験ということを重んじれば、当然、何度も申しますが、経験があるからその知識を流用と言うと変ですが、活用いたしましょうとなってまいります。

 特に私が申し上げたいのは、今国民が一番、金融行政に対して、あるいは日本の銀行は本当に大丈夫なの。例えばですが、銀行のいろいろな、貸し渋りも問題ですし、あるいはいろいろ、運営が危なくなった、経営が危なくなった銀行の責任について、きちんとした責任をとる体制がなかなか国民には見えてこないという中ですから、金融庁から銀行へ行った職員の、情報開示でしょうか、国民にわかりやすい形で、そしてどういうルールで行われているかということを明示していただきたい。これは、実は柳澤大臣のもとでないと私はできないことと思っております。公明公正に、ぜひとも先見性を持ってお願いいたします。

 もう一点、柳澤金融大臣にお願いいたします。これも、私は金融行政全くの素人で、庶民の立場から受けている感覚でございますが、いわゆるペイオフ問題でございます。

 二〇〇二年度になりますでしょうか、一般の小口の預貯金者のペイオフ、そして二〇〇三年度に大口預貯金のペイオフという問題。柳澤金融大臣、何度も、これ以上ペイオフ延期はないよということでおっしゃってございますけれども、今、先ほど来の銀行の不良債権処理問題一つを考えましても、時期といたしまして、一つは、大きく言えば不況下でございます。それから金融不安というものも解消されていない。それから、大臣はどうお思いでしょうか、ここはわかりませんが、銀行に対する国民的信頼もまだ私はきちんと回復していないと思います。昔は銀行はかたい商売と言われておりましたが、今や銀行は預けると危ないという国民の感覚で、みんな今、売れるものは金庫とかめでございます、お金をためるための。

 このような体制下で、不良債権の処理の行く末をきちんと見定めてからのペイオフでも重々遅くはございませんと私は庶民感覚で思いますし、もう一つ言えば、小口の預貯金者にとって一千万というところでのペイオフというのは、非常に銀行に預けたくなくなる額でございます。例えば、通常三千万、五千万等とペイオフの上限を引き上げるお考えはありや否や、あるいは期限についてはどのようにお考えか、お教えくださいませ。

柳澤国務大臣 小口とおっしゃられて挙げられた金額が、やはりちょっと小口じゃないんじゃないかという感じも私はしているんですけれども、ペイオフというのは、延期する気持ちはないかと言われれば全くありません。それからまた、最低保障額と言われましたけれども、最低保障額は、これを引き上げるという理由を我々見出しません、正直言って。

 そういうことで、これからは、金融機関への預金というものについても、預金者の方も十分いろいろのことを考えながらやっていただくということでなければならない、こう思っております。

 それから、金融機関の健全性については、もちろん、金融監督の行政というのはすごい責任を負っております。私は今、ペイオフ時代の金融監督行政の責任と、ペイオフが凍結されている時代の金融監督の行政の責任は多分違うんじゃないかというくらいのことを申し上げて、金融監督の責任ということも大事だというふうに思っているんですが、他方、金融機関の例えば株主の責任、株主はしっかり自分の経営を見ているのかというようなことも大事だというように思っておりまして、まず内部の人たちがしっかり経営をすること、これが望ましいし、それからまた、我々も金融監督の立場で頑張らなきゃいけないし、預金者の人たちにも頑張っていただきたい。

 こういう、いわば市場の力というものを動かすことによって、私どもの金融機関はより発展するし、また預金者の預金の保護もレベルが高くなっていくし、それから経済の発展にも貢献する、こういうことだと私どもは考えて、この方針を続けていくつもりでございます。

阿部委員 金融庁の果たす役割の現下における重要性を私も自覚しますゆえに、今の御質問をいたしました。そして、大口か小口かという表現が適切でなかったとすれば、普通、今の御高齢者の預貯金額は二千万とも言われております。それは国が出したデータです。そこの部分を直撃するからということで、あえて伺いました。

 それからもう一点、株式の取引についてのお話がございましたが、今般の不良債権処理の中で、もう一方の土地問題でございます。

 日本は、バブルの発生が土地、土地バブルでございました。このことに関しまして、今般の金融大臣の出された不良債権対策というものは、私は、株式に対してということに比して、土地が不良債権の現実としてある場合の対策が極めて甘いと。逆に言えば、土地は、もう一度市場に丸裸でほうり出されて、価格下落の果てしない繰り返しに、今度は逆バブルになりかねない不安を持っております。

 きょう時間はございませんが、さらにまた緊急経済対策等々のところでお伺いいたしますが、政府の土地対策についても、私どもは、スウェーデンにございます整理回収機構が、土地を一たんそこに買い上げて処理してまいりました経緯をぜひとも日本でも御検討いただきたいと思いまして、申し述べて、私の発言とさせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次回は、来る二十三日水曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十八分散会




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