衆議院

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第18号 平成13年6月26日(火曜日)

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平成十三年六月二十六日(火曜日)

    午前十時七分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 五十嵐文彦君 理事 海江田万里君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    七条  明君

      砂田 圭佑君    竹下  亘君

      竹本 直一君    中野  清君

      中村正三郎君    林田  彪君

      牧野 隆守君    増原 義剛君

      山本 明彦君    山本 幸三君

      渡辺 喜美君    上田 清司君

      江崎洋一郎君    岡田 克也君

      河村たかし君    小泉 俊明君

      中川 正春君    長妻  昭君

      原口 一博君    日野 市朗君

      松本 剛明君    谷口 隆義君

      若松 謙維君    中塚 一宏君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   経済産業大臣政務官    西川太一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   小林 勇造君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  乾  文男君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            田口 義明君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    西川 和人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 小池 信行君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議

   官)           吉武 民樹君

   参考人

   (財団法人抵当証券保管機

   構理事長)        門田  實君

   参考人

   (年金資金運用基金理事長

   )            森  仁美君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十六日

 辞任         補欠選任

  河村たかし君     上田 清司君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 清司君     河村たかし君

    ―――――――――――――

六月十五日

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

同月十八日

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げ、医療の完全非課税(ゼロ税率)に関する請願(児玉健次君紹介)(第二八二五号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二八二六号)

 同(中林よし子君紹介)(第二八二七号)

 同(春名直章君紹介)(第二八二八号)

 同(松本善明君紹介)(第二八二九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二九三六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九三七号)

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(今川正美君紹介)(第二八三〇号)

 同(大島敦君紹介)(第二八三一号)

 同(大島令子君紹介)(第二八三二号)

 同(後藤斎君紹介)(第二八八五号)

 同(中川昭一君紹介)(第二八八六号)

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(小沢和秋君紹介)(第二八三三号)

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二八八一号)

 同(不破哲三君紹介)(第二八八二号)

 同(山口富男君紹介)(第二八八三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二八八四号)

同月二十日

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(中西績介君紹介)(第二九九六号)

 同(山内惠子君紹介)(第三〇五九号)

 同(生方幸夫君紹介)(第三一〇二号)

 納税者権利保護規定の法制化に関する請願(鈴木淑夫君紹介)(第三〇五八号)

 同(江田康幸君紹介)(第三一〇一号)

 中小自営業の家族従業者等のための所得税法改正等に関する請願(赤松広隆君紹介)(第三一〇三号)

同月二十一日

 納税者権利保護規定の法制化に関する請願(赤松広隆君紹介)(第三三〇〇号)

 同(日野市朗君紹介)(第三五九七号)

 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三〇一号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三三〇二号)

 同(児玉健次君紹介)(第三三〇三号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三〇四号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第三三〇五号)

 同(中林よし子君紹介)(第三三〇六号)

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(上田清司君紹介)(第三三〇七号)

 同(谷川和穗君紹介)(第三四八四号)

 同(中川智子君紹介)(第三四八五号)

 同(日野市朗君紹介)(第三五九八号)

 同(山口わか子君紹介)(第三五九九号)

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三〇八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三三〇九号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三三一〇号)

 同(大幡基夫君紹介)(第三三一一号)

 同(大森猛君紹介)(第三三一二号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三三一三号)

 同(児玉健次君紹介)(第三三一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三一五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三一六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三一八号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第三三一九号)

 同(中林よし子君紹介)(第三三二〇号)

 同(春名直章君紹介)(第三三二一号)

 同(不破哲三君紹介)(第三三二二号)

 同(藤木洋子君紹介)(第三三二三号)

 同(松本善明君紹介)(第三三二四号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第三三二五号)

 同(山口富男君紹介)(第三三二六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三二七号)

 同(大森猛君紹介)(第三四八六号)

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げ、医療の完全非課税(ゼロ税率)に関する請願(志位和夫君紹介)(第三三二八号)

同月二十二日

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(粟屋敏信君紹介)(第三六八三号)

 同(金子哲夫君紹介)(第三六八四号)

 同(辻元清美君紹介)(第三六八五号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七七〇号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三七七一号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三七七二号)

 同(日森文尋君紹介)(第三七七三号)

同月二十五日

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(木島日出夫君紹介)(第三九四二号)

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(大木浩君紹介)(第四〇四〇号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第四〇四一号)

 同(山内功君紹介)(第四〇四二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四一〇〇号)

 同(原陽子君紹介)(第四一〇一号)

 同(山口壯君紹介)(第四一〇二号)

 地震保険の損害査定基準の見直しに関する請願(金子一義君紹介)(第四一四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、銀行法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣柳澤伯夫君。

    ―――――――――――――

 銀行法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 昨今、金融業以外の事業会社による銀行業への参入の動きが本格化してきていること等、銀行業、保険業その他の金融業等を取り巻く社会経済情勢は著しく変化してきております。

 このような状況のもと、銀行等の株主に関する制度の整備を行うとともに、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を行うことにより、銀行等の健全かつ適切な経営を確保し、その信認の向上を図りつつ、我が国金融の活性化を図るため、この法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、銀行等の経営の健全性確保の観点から、銀行等の発行済み株式の五%を超える株式の所有者については、その株式所有に関して届け出ることとするとともに、原則二〇%以上の株式の所有者については、銀行経営等に対する実質的な影響力に着目して主要株主と位置づけ、株式所有の目的や財務面の健全性等に基づいて、あらかじめ認可を受けることとしております。これらの株主に関しては、特に必要な場合における報告等の徴求や立入検査等、適切な監督の仕組みを設けることとしており、また、五〇%を超える株式を所有する主要株主に対し、特に必要があると認めるときは、銀行等の経営の健全性確保のための措置を求め得ることとしております。

 第二に、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を図るため、銀行の営業所の設置等について、認可制を原則届け出制に改めるとともに、銀行、保険会社及び協同組織金融機関について、子会社における従属業務と金融関連業務の兼営を認めるなど、所要の制度整備を行うこととしております。

 以上が、銀行法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として財団法人抵当証券保管機構理事長門田實君及び年金資金運用基金理事長森仁美君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として金融庁総務企画局長乾文男君、金融庁総務企画局参事官田口義明君、金融庁検査局長西川和人君、内閣府政策統括官小林勇造君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務省大臣官房審議官小池信行君及び厚生労働省大臣官房審議官吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 まず、議題になりました銀行法等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 今回の法律案の重要な中身は、いわゆる異業種の銀行業参入に当たっての新たな規制を考えるということでございますけれども、異業種の銀行業参入に当たっては、参入してくる事業会社の機関銀行化することをやはり防止しなければいけないということがございますし、また、事業親会社の財務状態が悪くなった場合にそれが銀行の経営に影響が及ばないような、そういうリスク遮断、この二つがこの法律の重要な点であろう、私はこのように考えております。

 本改正案ではそういったことへの対応として、主要株主になろうとする者の認可制度、あるいは主要株主を不利益取引の規制対象に加える、こういった措置をとられているわけでありますけれども、こういった措置で十分であるかどうか、この点について御説明をいただきたいと存じます。

 また、改正案の中身で、特に必要な場合の主要株主への報告徴求、立入検査ということが盛り込まれておりますけれども、この特に必要な場合というのは具体的にどのような場合を想定されているのか、この点についてもあわせて確認をさせていただきたいと存じます。

乾政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生御指摘なさいましたように、異業種の銀行業参入に当たってのルールでございますけれども、今までは異業種からの参入というものもなかなかなかったわけでございますけれども、最近のIT化を初めとする技術革新、情報化の推進によりまして、そうした動きが出てきているということでございます。

 私ども当局といたしましては、そうした異業種からの参入ということは、銀行業界を活性化するとともに、顧客に優良な金融サービスを提供するという観点から、基本的に歓迎すべきことと考えております。ただ、それがいわゆる先生御指摘なさいました機関銀行化というふうなことに使われた場合には、これは銀行業は預金を預かり決済システムを担っているという観点から問題である、そういう問題意識に立ちまして、今回の法改正をお願いしているわけでございます。

 これまでも、これまでの銀行法では、新規に銀行を設立する場合にはその免許審査を通じて規定があったわけでございますけれども、既存の銀行を買収しようとする場合にはそうしたルールがなかったことから、今回、先ほど来申し上げております問題意識に立って、必要なルール整備を行おうとするものでございます。

 その際、機関銀行化の弊害を防止する観点から、第一に、主要株主を、銀行に不利益を与えるような取引を禁止するいわゆるアームズ・レングス・ルールの対象としております。第二に、主要株主の適格性を確保いたします見地から、参入に当たって株式所有の目的、経営方針それから社会的信用等に基づいて厳正に審査を行うことといたしております。また、株主となった後、継続的に報告徴求や検査等の監督を行うこととしておりまして、これらの制度の的確な運用を通じまして、銀行の健全かつ適切な運営を確保してまいりたいと思っているわけでございます。

 第二にお尋ねの、それでは主要株主への報告徴求、検査の場合の特に必要な場合というのはどのような場合を考えているのかということでございます。

 主要株主に対する権限の行使につきましては、これは金融審議会の中でも議論されましたけれども、主要株主の経営に過度の影響を及ぼすようないわば当局の権限の乱用が行われないように留意することが必要であるという考え方に立つ必要もございますし、他方で、先ほど来申しております子銀行の健全性の確保ということの要請があるわけでございます。

 そうしたことから、主要株主への報告徴求、検査につきましては、特に必要がある場合に限り必要な限度において行うこととされたわけでございますけれども、この点につきましては、具体的には、金融審の報告に述べられておりますように、株主が子銀行等に対しまして不当な影響力の行使を行うことなどにより子銀行等の経営の健全性が損なわれるおそれがある場合等に限って検査、報告を行うとの考え方が示されているわけでございまして、そうした考え方に立って適切に運営をしてまいりたいと思っているわけでございます。

石井(啓)委員 わかりました。

 続きまして、本日金融審議会が開催をされるというふうに承知しておりますが、その中で保険の基本問題に関する報告が出される、このように伺っております。この中で、破綻前の生命保険会社の予定利率変更に関しまして報告がなされるというふうに伺っております。きょうも新聞で報道されておりますけれども。

 これは、そもそも柳澤大臣の前任の相沢大臣がこの件について非常に積極的でいらっしゃって、相沢大臣の問題提起を契機として検討がなされたというふうに承知をしているわけでありますけれども、柳澤大臣御自身は生保の破綻前の予定利率の変更についてはどういうふうなお考えでいらっしゃるのか、この際、御所見をお伺いいたしたいと存じます。

柳澤国務大臣 従前の高金利の時代におきまして、保険契約を当然保険会社はとったわけでございます。当然、その当時の金利情勢を背景とした予定利率を前提にしまして、保険契約におきましてはそうしたものを盛り込んだところの契約ということになっているわけでございますが、それが昨今の超低金利という時代になりますと、予定利率、つまり保険契約者から預かった保険料を運用する場合の利率が到底契約に盛り込んだものに達しない、そこで逆ざやが起きるということになるわけでございます。この問題の所在というのは、金利情勢の変化を前提にしてみれば、言ってみれば当然のことだというふうに考えられるわけでございます。

 それでは、これを一体どうするかということでございますが、低金利時代の続く期間というものを想定して、通常の景気循環のときのように、一年半くらいで不況の時期は脱せられるよというような状況であればいざ知らず、なかなか構造的な側面もあってそうはならないということの中で、この逆ざや問題を大変心配される向きがあるということは、これもまた当然だと思うわけでございます。

 しかし他面、一つには、保険契約というものの本質、つまり、そういったこと全部ひっくるめて危険を、リスクを背負ってくれるのが本来の保険会社の使命ではないかという根本論もあります。また、今度は現実の問題として、保険契約者にとってみますと、予定利率の引き下げが近々行われるよというようなことの風説が流れますと、自分の保険に対して、その風説に基づいて、それでは早く解約しておこうかしらというような行動に出られることが多い。こういうことも実はございまして、その間の調整をいかに図っていくかということで非常に微妙かつなかなか困難な問題というのが私の認識でありました。

 もちろん、保険の予定利率の変更というのは破綻をした後は認められているわけでございますけれども、では、破綻をしてからではなくて、その前にもっと傷の浅いところで、保険契約集団というか、そういうものが共通の意思で、いわば共同体の自治の一環として、今このまま突き進んでいったらあの氷山に当たってしまうよ、ちょっと方向を変えればもうちょっとスムーズな航行もできるじゃないかというようなことで、そこで調整する。総意を代表するような形でそういう意思決定をされるというようなことがもしあるとすれば、そういうことだったら、非常にいい方法が見つかれば、それはそれで十分存在価値があるんじゃないかというようなことを考えているというのが私のこの問題に対する基本的な考え方と言わせていただければ申し上げたい、このように思うわけでございます。

石井(啓)委員 今審議会の中でもいろいろ賛否両論の御議論があったというふうに報じられております。これからきょうの報告を受けて当局でいろいろ御検討されると思いますけれども、今大臣がおっしゃったような非常に難しい問題もやはりあると思います。

 私は、まず前提として、予定利率を変更する会社のみならず、この際、逆ざやのみならず、いわゆる費差益、費差損益、死差損益を含めて、生保の経営状況の正確な情報公開というのがやはり大前提ではないかというふうに思っております。その上で、実際に制度をつくってうまくこれが機能するのかどうか。大臣おっしゃるように、予定利率が変更するかもしれなくなると、解約が相次いで結局破綻に追い込まれるのではないか。制度をつくって本当にうまく機能するかどうかという非常に難しい問題もございますし、やはり何よりも保険契約者にとってメリットがあるという制度であることが大前提であるというふうに思いますので、そういった点、ぜひ知恵を働かせていただいてよく御検討をいただきたいと存じます。

 続いて、経済財政諮問会議の基本方針について何点かお尋ねをいたします。

 竹中大臣が「日本経済の再生シナリオについて」ということで、大臣の談話ということで、基本方針の発表とあわせて公にされておりますけれども、その中で、今後二、三年は日本経済の集中調整期間であるということで、「平均して〇ないし一%程度の低い経済成長となることを甘受しなければならない」こういう位置づけをされております。同時に、「国民の生活水準が継続的に低下するような事態を回避しつつも」そういう前提を設けられているわけでありますけれども、これは具体的にどういう事態を避けようというふうにお考えになっているのか。特に、経済成長においてマイナス成長ということを許容されるのかどうか。この点について確認をさせていただきたいと存じます。

松下副大臣 経済財政諮問会議の基本方針が出されました。その中で、我が国の経済の姿として、中期的には我が国の経済が持つ潜在力が開花して、花が開いて、民需主導の経済成長が実現していくというふうに述べているわけです。しかしながら、不良債権の最終処理に要する二、三年は、おっしゃるとおりに低成長を甘受しなければならないというふうになっております。

 そういう状況の中にあっても、竹中大臣が申し上げたように、国民の生活水準が継続的に低下するような事態は政府の責任として避けねばならない、こう言っております。今後、二ないし三年を日本経済の集中調整期間と位置づけておりまして、短期的には低い経済成長を甘受しなければならないとしておりますけれども、この間においても明示的にマイナス成長がまとまった期間続くということは避けねばならないというふうにしております。

 構造改革なくして景気回復なしと申し上げてきたとおりでありまして、真の景気回復のためには、この基本的な考え方に沿って、まず不良債権問題を先送りすることなく二、三年以内に解決することを目指す、そして前向きな経済、財政の構造改革に取り組むことが必要であるというふうに考えているわけであります。これによって我が国経済の再生が図られて、先ほど申しましたように、中期的には民需主導の経済成長が実現されるというふうに考えているわけでございます。

石井(啓)委員 今の御説明の中で、マイナス成長がまとまった期間続くことは避けるという御説明でありました。恐らく、これは、一四半期マイナス成長になることはあるかもしれないけれども、それが継続することは避けるという意味でおっしゃっていると思うんですが、そのまとまった期間というのはどの程度の期間なのか。例えば二四半期なのか三四半期なのか、あるいは年間でのマイナス成長を避けるという意味なのか。この点についてもう少し御説明いただきたいと思います。

松下副大臣 一年間という一つのトータル、ある期間の中でやはりきっちりと経済成長が確保されていくということが必要だというふうに考えているわけでございます。

石井(啓)委員 わかりました。そうすると年間でのマイナス成長は避ける、こういう御趣旨だということがよくわかりました。

 それでは、ちょっと時間がなくなってきましたので少しはしょりますけれども、同じく基本方針の中で、「景気の状態によっては、セーフティーネットに万全を期するなど、柔軟かつ大胆な政策運営を行う」そういう一文がございますけれども、これは今のお話だと、恐らく年間でマイナス成長になりそうな状態なのかなというふうに思いますが、どういう景気状態になったときにどういう政策運営を行うというふうに想定をされているのか、具体的な内容について御説明いただきたいと存じます。

小林政府参考人 構造改革を進めていく過程での経済の先行きを正確に見通すことは非常に困難だということが前提となりますが、先ほど松下副大臣からお答えしたとおり、国民生活水準が継続的に低下するような事態は避けていく、そして、いずれにせよ、政府としてはその時々の経済情勢に合わせて必要な政策を講じていくというのが方針でございます。例えば、新市場だとか新産業の育成による雇用創出、あるいは労働市場の構造改革、さらには雇用面でのセーフティーネットの一層の整備だとか、あるいは中小企業の経営環境を整備するための金融面への対応や経営革新への支援など、構造改革に伴う痛みを最小限とするためのいろいろな施策をとっていくということが重要なんじゃないかというふうに考えております。

石井(啓)委員 それは当然のことだと思うのですね。構造改革に伴う痛み、それを和らげる政策というのは、景気の状態云々によらずそれは必要なことだと思うのだけれども、景気の状態によっては、柔軟かつ大胆な政策運営を行うと書いていますから、それはどういうことを意味しているのか、この点についてもう一度お聞きしたいと思います。

小林政府参考人 今回の基本方針では構造改革なくして景気回復なしという基本的な考え方をとっておりまして、単年度の経済成長の率だけに着目するよりも、本年が中期的な経済成長の中でどのように位置づけられているかという点を踏まえて経済運営を行うことが必要であると考えております。まさに構造改革なくして景気回復なしとの考え方のもとに経済財政の構造改革を断行して、これにより、我が国の潜在的な経済成長力を発揮させていこうという方針をとっておるところでございます。

石井(啓)委員 ちょっと今、先ほどの答弁と違うおっしゃり方、それは単年度の経済成長にかかわらずということをおっしゃったけれども、要するに、ゼロないし一%の低い経済成長は甘受する、だけれども、年間でマイナス成長にはならないようにする、こういうことですよね。だから、やはりマイナス成長にならないような政策運営は行わなければいけないんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

小林政府参考人 まさにそういう経済政策をとっていきたいというふうに考えております。

石井(啓)委員 ちょっと財務大臣にお伺いいたします。構造改革、調整に伴って低い成長をやはり甘受しなければならない、ただし、やはり年間でのマイナス成長は避けていこうということが基本的な運営というふうに確認をいたしましたが、その上で、足元の十三年度の経済成長もこれはかなり低い、ゼロないし一%の中でも低い方になりそうだ、要するにゼロに近い状況になりそうだと竹中大臣の談話には位置づけられております。現下ではゼロに近い状況ということでありますけれども、ただ、今後の情勢によっては、これはもっと低い、景気を下向きにさせる状況にも考えられる。十三年度のマイナス成長ということも、やはり私は今後の情勢によってはあり得るというふうに思っておりまして、そういった場合は、やはり追加の景気対策は必要になってくるだろう。

 私は財政出動をまずやれというふうには申し上げませんけれども、その前に、この四月の緊急経済対策でまだやり残した部分がありますから、そういった部分をやはりやらなければいけないと思います。例えば証券税制の改正あるいは土地の流動化の対策、まだまだやり残している部分がありますから、そういった部分をきちんとやるということもあると思いますけれども、私は、場合によっては補正予算も含む景気対策は必要になってくるのではないか、こういうふうにも思います。財務大臣のお考えはいかがでございましょうか。

塩川国務大臣 仰せのとおり、私はこの下期に向けまして景気の状況は非常に厳しいものがあると思っております。しかし、先ほども答弁の中にございましたように、年間を通じてマイナスにするということは絶対避けたいという不退転の決意を持って臨んでおりまして、そのためにはいろいろな施策を考えていかなければならぬと思っておりますけれども、だからといって、今すぐに、それではその追加補正をやることによってそれをカバーする、そういう考えは今持っておりませんで、とりあえず今は、予算の執行を前倒しでどんどんと押し込んでいくということと、それから、規制の緩和を通じて経済活動を刺激していくということに重点を置いてやっていきたいと思っております。

石井(啓)委員 財務大臣が今の時点で補正予算について明言できないことはよくわかりますので、そうだと思いますけれども、この九月上旬には四―六のGDPの速報値も出てまいりますし、やはり秋にはそこら辺の課題がもっと浮上してまいると思いますので、改めてそこら辺は今後御検討をいただきたいと存じます。

 そこで、来年度予算、十四年度予算になりますけれども、国債発行を三十兆円に抑えるという目標の中で、今の中期財政見通しでは歳入増を図らないとすると三兆三千億円以上の歳出削減が必要になってくるわけでございます。ただ、この中期財政見通しは名目成長率を二%と想定しておりますので、ゼロないし一%の低い経済成長となりますと、やはり税収も下がってくる。歳出の方の国債費も若干下がるでしょうから、プラスマイナスでどうなるかはまだ私もよくわかりませんけれども、いずれにしろ、大幅な歳出削減をするということがこの現下の経済情勢及び今後の厳しい見通しを踏まえて果たして適切なのかどうか、このことについて私は疑問を持っておりまして、財務大臣の御所見を伺いたいと存じます。

村上副大臣 石井委員の御質問にお答えしたいと思います。

 私自身は、今までの経済政策、財政政策をどういうふうに考えるか、いろいろ御意見があると思うのですが、例えば体で、がん細胞のような不良債権、この病巣を摘出しないで、確かに経済的な下支えであったという意味で、総需要を喚起するという意味で、カンフル的な財政支出を私はやはりずっと続けてきたんじゃないかなという気がするわけです。やはり私は、今こそ、今回はそういうがん細胞のような不良債権の病巣を摘出しつつ、日本の財政の構造改革という体質改善も一緒にやっていく。

 ただ確かに、がん細胞を摘出するための体力を維持するためにある程度の栄養を入れなければいけないことはあると思うのです。ただ基本的には、やはり不良債権の処理をして信用収縮と資産デフレをとめ、そして財政再建において非ケインズ効果があらわれないようにして、国民の将来の不安を払拭して、きちっと財政を立て直すことによって、将来が明るいんだ、そういうことをしていく。

 それからやはり基本は、欧米の企業に比べて生産性や効率性が対等にきちっとやっていけるという経済の構造改革を同時にやっていく、これをやはり不退転の覚悟でやるということが今こそ我々が一番重要なことじゃないか、そういうふうに考えております。

 私は、イギリスのサッチャー首相が評価されたのは、そういうときには多少の痛みが伴うことはあったと思います、ただ、それを決然として十数年間やり続けたというところにやはりサッチャーさんの評価があるのではないか、そのように考えております。

石井(啓)委員 体質改善をする、構造改革をするということは全く賛成でございまして、その点については異論はございません。

 ただ、以前のこの委員会でも私申し上げましたとおり、国債発行三十兆円ということにどういう意味があるのか。これは、そのことをてこにして歳出の中身を見直していく、あるいはさまざまな社会保障の効率化、あるいは公共事業の見直し、地方交付税の見直しといった財政にかかわる制度的な見直しを行っていく、歳出の配分の見直しと制度的な見直しを行っていく、このことにやはり私は最大の意義があると思うのです。

 そういう意味では、まず財政の質的な改善をやっていくための手段としてこの国債発行三十兆円というのがある、こういうふうに私は位置づけておりますけれども、これは手段でございますから、そのことをあくまでも何かこれは絶対守らなければいけない目的だということで固執するのは、私はいかがなものかなというふうな思いがございまして、絶対三十兆円でなければならないかどうかということについては、経済的な意味は少ないんだろう、こういうふうに私は思っております。

 そこで、国債発行を三十兆円に抑えるということで、これまで歳出削減のことが随分表に出てきたのですけれども、私は、増税はしないまでも、歳入増というのはもっと政府がいろいろ努力する余地がたくさんあると思うのです。それは、政府資産を売却していくということでありますけれども、NTT株の売却であったり、最近ちょっと出ておりますけれども、特殊法人が持っているようないろいろな債権を証券化して、これをキャッシュ化するというようなこともあるでしょうし、あるいは、電波の公開入札みたいなことも基本方針の中にはうたわれておりますし、そういった政府のみずからの資産売却の努力による歳入増というのをやはりまずしっかりやるべきではないか。こういうふうに考えておりますが、財務大臣の御所見を伺いたいと思います。

塩川国務大臣 仰せのように、歳入面の検討は大事でございますが、しかし、その歳入の骨格となるものも、税の増収を図るということは努力いたしますけれども、税制を変えて増税をしていくということは、この一、二年、私たちは考えておりません。したがって、政府が持っております多様な財政機能をフルに回転いたしまして、処置をとっていきたいと思っております。

 なお、先ほどのお話の中に、三十兆円は手段であって目的にしたらいかぬ、こういうお話でございましたけれども、やはりこれは、手段と目的を一致した行動をとることによって効果が出てくると思いますので、あえて申し上げさせていただきたいと存じます。

石井(啓)委員 私もそれを目標として削減の努力をすることを否定しているわけではございません。ただ、最終的にそれに固執するのは、いろいろな景気、経済状態を考えて柔軟に対応するべきではないかということを指摘して、質問を終わらせていただきます。

山口委員長 原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博でございます。

 銀行法の改正について、数点にわたり御質問申し上げたいと思います。

 まず第一に、経済財政諮問会議の最終案、これは一体いつ閣議決定されるのか。そして問いの二は、これは一体何を拘束するのか、果たして予算編成そのものも拘束するのか。そして問いの三でございますが、竹中担当大臣はマニフェストだということをおっしゃっている。マニフェストということは、つまりこれは小泉政権の選挙公約だととっていいのか。

 この三点にわたって、財務大臣の基本的なお考えを問いたいと思います。

塩川国務大臣 まず、この経済諮問会議でございますけれども、これは、設置法の中にも書いてございますように、総理大臣に対しまして、経済、財政の基本的な問題を調査検討し、これを適切に答申するということになっております。それを受けまして、予算編成について、国の予算等についての基本的な指針を明示するということになっております。したがいまして、諮問会議というのはあくまでも諮問会議でございまして、いろいろな案件を調査検討し、総理大臣に意見を具申する。

 したがいまして、今回できました骨太の方針というものは、小泉内閣の経済並びに政治、一般行政の基本的な指針であると受け取っていただいて結構だと思っております。これに基づきまして、もちろん予算の肉づけもしていかなければなりませんし、行政の一般もこれに従いました執行をしていかなければならぬということでございます。

 それじゃ、予算との関係はどうなるのかということでございますが、この骨太の方針が出ましたことによりまして、各省にこれが的確に、その趣旨が鮮明に浸透していかなければなりませんので、この方針を、きょう二十六日夕方、閣議決定いたしまして、その決定に基づき、総理大臣から各省に対し、この趣旨を徹底するようにという指示がございます。

 それを受けまして、各省で概算要求への準備をすると思うておるのでございますが、それは今これから始まることでございまして、まだなかなか時間も要することだと思っておりますが、そういう手法を得まして、八月の十日ごろをめどにいたしまして閣議の了解をとりたいと思っております。

 閣議の了解をとりますのは、やはりいろいろな折衝がございましたものを取りまとめ、その概要を取りまとめたものを財務省から閣議了解の原案として提出し、それに基づいて決定いたしますが、その間に、でき得れば数回、諮問会議においてその内容等を十分に検討していただいて、その上で閣議了解をするという段取りになる、こういうことでございます。

原口委員 私は、やはりこれは、今財務大臣がお話しになったように、概算要求の基準のさまざまなものを一つの方針として縛るものだ、拘束するものだというふうに思います。

 委員長のお許しをいただいて、ペーパー、資料を配らせていただいておりますが、六をごらんになってください。

 実は、大きな国政選挙がもう目の前に来ておりますが、自民党を中心とする政権のこの三年、これでどうなったかということを、名目GDPから重要犯罪にわたるまで記させていただきました。GDP、九・八兆円減。名目GDP成長率、マイナス一・六ポイント。勤労者の世帯実収入、マイナス三万四千二百六十円。国と地方の長期債務、もう百五十三兆円増。完全失業者、これは少な目に見積もっているのだと思いますが、九十万人。失業率一・三ポイント、企業倒産一四・〇%、自己破産九五・三%増。自殺者三五・五%増。重要犯罪、これも五割増し、四七・八%増。こういう形になっております。

 私たちは、選挙というのはやはり業績を見なければいけない。そして今、小泉内閣がやろうとしている政策、総理は本会議場で私に、競争だけするのじゃなくて協力してくれとおっしゃいました。本当に改革の方向がよければ、それはそうかもわからないけれども、今、経済財政諮問会議で出てきたこの方向が、果たしてこのような日本の状況を救うものなのだろうか。むしろ逆じゃないだろうか。

 私ごとで恐縮ですが、二十年前に、中曽根内閣のブレーンに育てられました。そのときに、まさにあのときの改革が不十分だったから、抵抗勢力をすべて排除してこの改革を進めれば、その先には光があるんだとおっしゃっているような気がしてなりません。あの改革が中途でとんざした、いや、一定の成果を上げたかもわからないけれども、さまざまなこの失われた十年、二十年というものを生んだのは、その改革の中身が、非常に競争政策に近かった。そして、不沈空母発言に代表されるように、日本をアメリカの、同盟国の五十一番目の州、そういう競争の中にほうり込むということでございました。

 私は、競争政策だけが前面に出て、垂直的な自由主義だけが前面に出て日本社会が立て直るとは思わない。むしろ、協力政策や競争政策をきっちりやっていくこと、変えないところ、守るところをはっきり示すこと、このことが重要だということを御指摘申し上げ、銀行法の改正について数点にわたってお尋ねをしたいと思います。

 一と二に一応論点を整理してまいりました。そこで金融担当大臣にお尋ねをするのですが、今回、銀行法の改正をつぶさに見ていると、やはりこの銀行等の主要株主に関するルール整備について、きっちり明確にする必要がある。

 この政策的な意義は、銀行業への新規参入ルールの透明化、金融市場の活性化、そして銀行機能を悪用することを意図する不適格な者を的確に、適正に排除する、そして銀行業への信認、ひいては金融システムの安定性の向上をするということにこの改正の目的があるんだというふうに思いますが、果たしてこの案でいいんだろうか。チェックの対象となる株主の範囲は、平成十二年の十二月二十一日において金融審第一部会報告というのが出されましたが、その部会の報告に比べてもやや甘くなっているんじゃないか。主要株主の位置づけがこのような状況で本当にいいのか、まずお尋ねをしたいというふうに思います。

乾政府参考人 主要株主の位置づけが金融審の部会報告より甘くなっているのではないかという点についてお答えいたします。

 部会報告では、五%超の保有株主が実質的影響力ありと判断される場合には、主要株主として認可の対象となるとしておりますけれども、この部会報告の中で、続きまして、企業会計の実質影響力基準による株主、原則といたしまして二〇%でございますけれども、例外的に一五%以上の場合があるわけでございますが、この企業会計の実質影響力基準に基づきまして、そうした実質影響力基準に該当する株主になろうとする者については、銀行の経営に関する実質的な影響力に着目して、主要株主と位置づけ、株式取得に関し認可制とするべきであるというふうにされておりまして、私ども、この金融審の部会報告の考え方を法制化したものというふうに考えているところでございます。

原口委員 部会報告では、五%超の保有株主が実質影響力ありと判断される場合は、主要株主として認可の対象となるとしています。また、一五%以上についても、人的関係、融資等の取引関係を通じて重要な影響を与えるものについては主要株主としているわけです。私は、ここをきっちり詰めておかないといけないと思いますね。今のようなお答えではないと思う。

 次に、判断基準、審査ルールの明確化について。主要株主の適格性の判断基準というのは審査ルールに、あるいは判断基準というのを事前に明確にしておくべきだ。

 ここにバーゼルのコアプリンシプルを出していますが、一九九七年、日銀の仮訳で恐縮ですが、原則の三、「免許付与当局は、免許付与の基準を設定し、一定の基準に満たない企業の申請を却下する権限を有していなければならない。免許付与のプロセスでは、最低限、銀行の株主構造、取締役及び上級管理職、業務計画及び内部管理、資本基盤を含めた財務状況の見積もりに対する評価を行わなければならない。提案されている所有者あるいは親会社が外国銀行である場合は、母国監督当局の事前の同意が得られているべきである。」ということを書いてありますが、この銀行法の改正、もちろん主要株主、外国の企業もなり得るんですか。あるいはこの外国銀行の規定について、本改正案にはどこにございますでしょうか。――ペーパーまで出して質問通告しているんだから。

乾政府参考人 お答えいたします。

 主要株主のルールは、個人であるか法人であるかあるいは海外の株主であるか等を問わず、これはルールの対象になるわけでございます。海外の場合でございますけれども、現実には、海外に主要株主が存在いたします場合に、我が国の当局が公権力の行使を及ぼすことは困難でございますけれども、一方で、バーゼルのルールの中に、金融機関を監督する母国の当局と存在する当局とは密接に意見交換をしなければならない、必要な情報を相互に提供しなければならないという規定がございまして、そうした規定に基づきまして、密接な情報交換のもとに適切な監督を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

原口委員 委員長、お願いをしたいんですが、これはペーパーでわざわざ出しているんですよ。こんなに時間かかって、しかも質問に答えていないじゃないですか。この規定の中にありますか。ないんですよ。

 原則四、これは今おっしゃったバーゼルのコアプリンシプルの原則四、「銀行監督当局は、現存の銀行に対する主要な所有権や支配力を他の主体に移譲させる提案を点検し、棄却する権限を持っていなければならない。」これに当たる条項はどれですか。それから、ちょっと私の資料で、下の括弧の機関のカンの字が間違っていますが、やはり機関銀行化の危険をどう排除するか。そして、子会社に対する親会社の責任を明確にしてしっかりとした信頼をかち取る、このことが大事だと思います。二点、バーゼルのコアプリンシプルの四に当たる条項はどこにあるのか、機関銀行化の危険をどう排除するか。子会社に対する親会社の責任というのは明確にされていないんじゃないか。例えば、英国ではコンフォートレターという制度があって、一定の株主に対してはあらかじめ支援の意思確認をしています。こういったものについてどのように検討されたのか。なぜ定期報告を求めないのか。

 後で私は、先日やりました大和都市管財の事件について、これは一つのケースだと思いますので、今の三点にわたってお答えください。

村田副大臣 それでは、二点目の方からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 原口委員がおっしゃった弊害防止措置でございますけれども、今回の銀行法の改正法案で、機関銀行化の弊害を防止しよう、こういうことで、主要株主を、銀行に不利益を与えるような取引を禁止するルール、いわゆるアームズ・レングス・ルールの対象といたしました。そのほかに、主要株主の適格性を確保する見地から、参入に当たりまして株式所有の目的や経営方針、社会的信用等に基づいて厳正に審査して、そしてまた継続的に報告徴収や検査等の監督を行う、こうしたいろいろな制度の的確な運用を通じまして銀行の健全かつ適切な運営が確保される、こういうことを求めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

 それから、そのほかに、金融審議会の報告でも、主要株主に対して信用供与等についての量的規制の問題についても、追加的な措置として講ずべきではないか、こういうふうな指摘がございまして、これにつきましては、政令の改正を行いまして大口信用供与等規制に関するいろいろな条件を定めていきたい、こういうふうに考えておりまして、あわせて万全の措置を講じていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

 それから、主要株主についてでございますけれども、これは三番目の問いだと思いますが、銀行が悪化したとき、主要株主にどういった支援を求めるのか、責任はどうなのか、こういうことでございます。

 支援を求めるときに、一つは株主有限責任の問題と、それからセーフティーネットをどう確保していくか、このぶつかり合う問題があるわけでございますけれども、銀行経営が悪化したときに主要株主に求められる措置につきましては、主要株主と銀行の関係等の状況に応じまして、銀行の経営改善のために適正と判断されるものが求められるということでございます。

 銀行が破綻すれば、セーフティーネットの存在により預金者全体の負担や公的な負担に結びつき得るものでありまして、こうした銀行業の公共性にかんがみまして、一定の場合に主要株主に対して銀行経営健全化のための措置を求め得ることとすることは株主有限責任の考え方と矛盾するものではない、こういうふうに考えておりまして、五〇%を超える株式を有する株主の場合には、銀行経営が悪化した場合において、特に必要があると認められるときは、銀行の健全性を確保するための改善計画の提出を求めることができるということを法定したわけでございます。

原口委員 本当に限られた時間でございますから、厳しい審査を経ることなく参入してきた人たちが、まさに子会社である銀行を利用して、経営を悪化させても親会社の経営責任がとられない。

 過去、私も事例を調べました。昭和の初めごろ、さまざまな工業と銀行業が癒着をして、どれほど多くの信用不安が起こったか。そういったものは別に何百年も前の話じゃないんですね。しかも、新たな金融システムを入れて、破綻の場合には公的な資金を入れる、国民の御負担をお願いするという中で、果たして今のようなお答えでいいのだろうか。

 私は、先ほどの量的規制については銀行法の政令において入れるというふうにおっしゃいましたが、これから検討なのかもわかりませんが、きっちり提示をすべきだと思います。中身がどうなっているのかということをきっちり見た上で、では、それだったら大丈夫ですねということは言えるかもわからないけれども、そういう審査のルールについてはこれから政令の中に書き込みますよということでは、とても納得はいかぬということを申し上げて、大和都市管財事件についてのさまざまな問題を議論したいと思います。

 私は、こういう銀行法の改正をするに当たっては、検査や透明なルール、そして、こういう金融機関の中身を知っているのは当局しかないのですから、もっと公平で公正で信頼の置ける検査というのが必要じゃないか。日本版SECということを民主党は提案をしていますが、本会議ではそういったものは特段必要ないというお答えだったということを踏まえて、大和管財事件について質問をしたいと思います。

 まず、警察庁にお尋ねをします。事実の確認でございます。

 大阪府警生活安全部は、平成十三年四月十六日に大阪市の抵当証券会社大和都市管財など五十六カ所に家宅捜索に踏み切ったとされていますが、容疑は何でしょうか。

黒澤政府参考人 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律、私ども出資法と言っておりますが、この二条に規定されております預かり金の禁止違反、これで捜索を実施いたしているところでございます。業として預かり金をするにつき、他の法律に特別の定めある場合を除くほか、何人も業として預かり金をしてはならない、この容疑でございます。

原口委員 その捜査の対象たるや、五十六カ所、しかも、県も一つの大阪府だけじゃなくて九県に及んだというふうに存じ上げています。しかも、顧客は延べ累計三万七千六百件、二万二千人、販売総額は一千億円と見られています。豊田商事事件をしのぐ戦後最大級の事態である、そのように認識しています。

 しかも、抵当証券の満期を迎えた顧客の償還を逃れるために、買いかえ用として新たな金融商品を開発し、さも元本が保証されるようなセールストークで業務を拡大している疑いも指摘をされていますが、当局はどのように認知されているのか。

 そして、これらが組織的詐欺的行為によるものである疑いが強いという指摘もございますが、どのように把握しておられるのか。大和都市管財が詐欺的集金機関と化し、関連グループ各社の資金繰りにお年寄りや女性やさまざまな人たちの年金のお金を預かって、そこに費やしたんじゃないか、何ら利益を生み出す運用でなかったという疑いも濃厚になってきたというふうにされていますが、事実関係を問いたいと思います。

黒澤政府参考人 委員御指摘のようないろいろなことが報道され、また言われておることは承知をいたしておるところでございますが、私ども、現在大阪府警におきまして全容解明に向けまして捜査中の事案でございまして、具体的な状況等につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、四月の十六日に、先ほど申し上げました出資法で捜索を実施いたしておるわけでございますが、その際の事実の概要を申し上げますと、被疑法人株式会社ゼネラルファイナンスパートナーは、不動産賃貸企業等への投資等を営むものであるが、同社元代表取締役らは、共謀の上、法定の除外事由がないのに、同法人の業務に関し、平成十二年一月ごろから平成十三年三月ごろまでの間、前後三十五回にわたり、大和都市管財株式会社の従業員らをして、シュアー・ファンドという商品ができましたので抵当証券から乗りかえてみませんか、年利八%から一〇%を予定しています、抵当証券や預金と同じもので、元本は保証しますなどと申し向け、大和都市管財株式会社の販売に係る抵当証券購入顧客十四名に、同抵当証券を解約の上、精算させるなどし、同シュアー・ファンドの購入代金を銀行口座に振り込ませるなどの方法により、大和都市管財株式会社の抵当証券客で不特定かつ多数の相手方から、現金一億七千二百九十万円を、GFPシュアー・ファンドの販売名下に、預託期間五年、一年ごとに年二回八%ないし約一〇%の配当金を支払うとともに満期時には元本を返還することを約して受け入れ、もって業として預かり金をしたものである、かような捜索の事実になっておるところでございます。

 それから、組織的詐欺行為ではないかということでございますけれども、これにつきましても、現在全容解明に向けて捜査中でございますので答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますならば、会社全体による詐欺というためには、組織の主宰者が意思決定し、組織の指揮命令系統に基づいてその組織の構成員が行動し、詐欺が行われたということを立証する必要があると考えておるところでございます。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

原口委員 今お話しになったゼネラルファイナンスパートナー、資料三をごらんになってください。これは、弁護団の皆さんとお話をして、余りにも大きな深刻な被害なので、「大和都市管財をめぐる法律関係図と展望」ということで、私が何を議論しているか、一目で皆さんにわかっていただくためにお示しするものでございます。

 ゼネラルファイナンスパートナーというのは、大和都市管財の下側にあるものでございます。そして、平成六年と平成九年に近畿財務局は入っている。そして、平成九年十月三十一日には、先般村田副大臣とも議論をしましたが、業務改善命令を出している。

 そこで、業務改善命令を出したときに、抵当証券の発行特約融資を行っている六社、この六社はどこですか、金融当局にお尋ねをしたいと思います。わかっているはずです。

田口政府参考人 お答えいたします。

 大和都市管財の融資先でございます関連六社でございますが、抵当証券業規制法の監督対象にはなっておりませんで、また、その多くは現在民事再生手続の開始を申し立てているところでございます。したがいまして、その名称等の公表は差し控えさせていただいております。

原口委員 その名称、もう管理人のホームページにも出ているんですよ。それは、ここにあるベストライフ通商、ナイス函館カントリークラブ、美祢カントリークラブ、ナイス・ミドル・スポーツ、リステム、こういったものだというふうに思います。

 私は不思議でたまらないのは、これは関連会社でしょう。関連会社にいわゆる抵当権を設定して、お金を貸しておいて、そしてそれを小口化していろいろな人たちに抵当証券として売っていく。タコがタコの足を食べているというお話をしましたが、もうこの平成九年の時点で、経営状況が極めて厳しい。こう言っていますよ。「貴社の抵当証券特約付融資に係る審査体制が不備」、審査体制が不備と言っているんですよ。また、「貴社の融資先である関連会社」、関連会社と認めているんです。これは弁護士さんたちがつくったこの資料のこの六社です。「いずれも経営状況が極めて悪く、かつ貴社が自主的に作成した貴社の融資先である関連会社を含めた貴社の経営健全化計画は大幅未達となっている」、結果的には経営が困難になるだろう、平成九年にちゃんと言っているじゃないですか。あれから四年たっている。

 今警察庁の生活安全局長が御答弁になりましたように、抵当証券を借りかえて別の商品を売って、大きな被害も出ているんです。なぜここでこういう命令になるんですか。教えてください。

田口政府参考人 お答えいたします。

 近畿財務局におきましては、平成九年六月に、大和都市管財に対しまして検査を実施いたしまして、御指摘の関連会社六社を含みます経営状況の実態把握を行ったところでございます。

 これによりまして、融資先でございます関連会社の経営状況が悪化いたしておりまして、将来的には当社の経営が困難となる可能性を確認いたしましたことから、抵当証券購入者の利益を害する事実があると認めまして、平成九年十月に業務改善命令を発出したところでございます。

 その後、当該命令に基づきまして、大和都市管財より経営健全化計画を提出させますとともに、毎年五月の末に、関連会社六社の経営状況も踏まえました当該年度の実績、それから、その後の見直し計画を提出させることによりまして、経営改善状況の実態把握に努めますとともに、この計画の確実な実施を強く指導してきたところでございます。

 しかしながら、昨年十月から近畿財務局が実施いたしました検査等におきまして、当社については抵当証券業規制法に規定されております登録の更新に必要な財産的基礎を有していないというふうに認められましたことから、去る四月十六日に登録の更新を拒否したわけでございます。

原口委員 私は、金融当局がこういう検査をして、しかも今の御答弁では、毎年報告を出すように、命令書の中にも書いてありますよね。平成十年から十三年度までの各年度ごとの計画について、今お読みになったとおり、各年度の五月末までに経営健全化計画を出せ、出してくださいということを言われている。毎年毎年チェックしているじゃないですか。この間の委員会の質疑では、村田副大臣は、三年ごと検査していますからというお話でした。検査は三年ごとかもわからないけれども、間に毎回毎回報告書を出してもらっているんですよ。

 そこで、今度は、この四月の十六日に近畿財務局は会社整理通告をしているわけですが、この検査結果を見ると、自己資本が六億二千万ぐらいのところで、もう実際どれぐらい債務超過の状態ですか。実質的な延滞状態にある関係会社に対する債権、あるいは、そういったところは引当金も計上していないために、もっともっと財政的な基盤が欠損していたんじゃないでしょうか。平成十二年の十月十一日に検査をして、そして財産的基礎について調べていると思います。要特別損失の計上額、幾らでしたか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 近畿財務局におきましては、今おっしゃられましたとおり、昨年十月十二日に立入検査を開始いたしまして、本年の四月九日に検査結果の通知を行っております。その中での大和都市管財についての財産的基礎の状況といたしましては、自己資本額が六億二千八百万円に対しまして、要特別損失計上額といたしまして五十一億二千五百万円、また、要追加償却、引き当て額といたしまして五億二千万円ということで、差し引き五十億一千七百万円の債務超過になるという認定をいたしております。

 なお、先ほど先生も言及がございましたけれども、関係会社に対する債権に対する引当金を計上いたしておりませんので、その分も含めますと、一般に公正妥当と認められる会計処理を、その関係会社に対する債権に対しても引き当て処理を行いますとすれば、当社の財務内容はさらに大幅に悪化することが見込まれるというふうに考えたところでございます。

原口委員 柳澤大臣、引当金も手当てをしていなかった。これは今わかった話じゃないと思うんですよ。毎年しっかりと検査を、この平成九年に入って、そして命令書を出して、毎年その裏づけになる書類も添えて出してくださいという命令をしているわけですから、金融当局はそのことを知っていなきゃおかしい。明らかにこの平成九年の時点で、このままじゃ危ない、このままじゃ多くの被害が出るかもわからないという認識はあったはずなんです。それがなぜ今のような答弁になるのか、私の知識ではあるいは理解ではとてもそういう答えになってくるのがわからない。大臣にお答えをいただきたい。

柳澤国務大臣 平成九年の検査に基づきまして業務改善命令を発出して、その実績をフォローしていった、こういうことなのでございますが、それが未達であるという状態が継続するわけでございます。

 その際に、行政当局として、非常に危ない、こういう事態では危ないということであったんだろうと思うんですけれども、とにかく、自主的な改善努力というものにまとうというようなこともあって、その都度、それでは、ここまではこう来てしまったんだけれども、ここからまた立ち直るための再度の改善計画、構想を改めたところの改善計画を提出して、そして、それが実現された暁には何とか健全化できるのではないか、こういう考え方で、次々と改定の計画を提出せしめて、その努力にまったというのが行政の実態であったというように、ただいまの検査局長等の答弁を聞きながら感じております。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、根本委員長代理着席〕

原口委員 私は、人ごとみたいな答弁はもう要らないのですね。

 この関連会社は、例えばその中の一つを見ると、ここの社長が、ナイス・ミドル・スポーツについては、昭和六十二年に設立して、御本人が取締役になられているのですよ。それから、ナイス函館カントリークラブについても、八八年にナイス函館カントリークラブを買収されて、即八十億円の抵当証券を販売なさっている。一体なんですよ。これは関連会社でしょう。違いますか。こういうことを検査で許しておいて、さっき銀行法で質問をしたときには、いや、ちゃんと法整備していますから大丈夫ですと。そんなことがあり得ますか。三十五億円しかもうとれないのじゃないかということを言っているわけです、一千百十億の負債に対して。

 今のようなお答えであれば、例えばこのベストライフ通商、これは管理人のホームページにも同じものがありますから、私がここで勝手に間違った情報を出しているのではございません、負債百九十四億円の民事再生。ナイス函館カントリーは二百二十八億円の民事再生。美祢カントリーゴルフクラブは百八十億。ナイス・ミドル・スポーツは六百六十億。リステム、これは産廃業なのか、三十五億です。どうやって返せますか、これ。今のような検査が見過ごされているということは、とても私たちには信じられない。

 大阪府警の調べでは、大和都市管財グループは九四年から債務超過に陥りながら新たな金融商品を続々と開発、顧客に売りつけていた、そういうふうに報じられていますが、警察庁、事実はいかがでしょうか。

 そして、なぜこれほどまでに被害が拡大をしたのか。金融当局が毅然とした、しっかりとしたことをやっていれば、こんなことは起こっちゃならないし、起こるわけはないのですよ。関連のグループからお金を借りさせておいて、そこに抵当権を設定して、そしてそれを売れるんだったら、こんな楽なことはない。その中身は知っているんですよ、金融庁は。

 きょう、当時の近畿財務局長に来てくださいというお願いをした。外務委員会では鈴木宗男先生が、元の欧亜局長、東郷さんをお呼びになった。やはり、その時点、その時点の官の決断、責任というものもきっちり問うていかなきゃいかぬと思う。まだこれは救済のスキームについては一言も触れていないのじゃないですか。この二万何千人の人たちをどうするのですか。

 私は、きょうは抵当証券保管機構の理事長にもお見えいただいておりますが、抵当証券保管機構も、立入検査する権限を法律によって与えられているのじゃないですか。あるいは、法務省にもお見えいただいていますが、不動産鑑定士の鑑定によって、抵当証券業務の監督を十分にやるという義務が法務省にもあるのじゃないですか。その辺は皆さん、どう思われていますか。責任と、自分たちの業務が適切に進んだか、胸を張って言えますか。まだ、この救済スキームについては、だれも何も言わないじゃないですか。人ごとじゃないのですよ。銀行で同じことが起こったらどうしますか。もっと被害はひどい。この一千百億という被害もすごいですよ。

 今、抵当証券保管機構の理事長は責任をどうとられますか。柳澤金融担当大臣はどう救済スキームを組み立てられますか。そして法務省は、不動産鑑定士が登記する、一般の人たちは、法務省登記所のしっかりとした裏打ちもある、安全だと思っているのですよ。どのように責任を感じていらっしゃるのか、三者にお尋ねをしたいと思います。

門田参考人 抵当証券保管機構の門田でございます。

 ただいま先生からお話がございました大和都市管財の件に関連しまして、大変事柄が複雑であり、あるいは大阪地方裁判所から会社整理開始決定、管理命令が出されるという非常に異例の形の問題になっております。

 お尋ねの件の抵当証券を預かって保管証を出すという部分の話でございますが、これは、抵当証券原券というものが抵当証券業の規制等に関する法律の定めに従いまして、所定の手続を経ますと、私どもとしてはこれを必ず保管する。これは、法の趣旨は、抵当証券の二重発行あるいは空売り、そういうものを防ぐためにできたものでございます。それから、そうやって受け入れました原券に対して保管証の発行をやっていく。これはもう事務的に粛々とやっていく、こういう話でございます。(発言する者あり)

原口委員 検査の権限を与えられているでしょうが。いや、もう結構です。あなたには責任感がない。

 柳澤大臣、どうぞ。

柳澤国務大臣 私に対する御質問に対するお答えとしては、これは会社整理管財人が再建計画をつくり、しかるべきところにしかるべき配当をする、資産の処分をして配当をするということに尽きるのですけれども、それはそれであれなんですが、この問題というのは、抵当証券自体の問題と、この会社が取り扱っていた抵当証券以外の、かなり抵当証券に似通ったような商品を自分で勝手につくって売っているという問題とが私はあるように思っております。

 抵当証券自体の問題として果たしてどうなのかといえば、これは抵当証券業規制法という法律の問題になってくるわけでございますけれども、それ以外の抵当証券まがいのものについての話ということになると、先ほど警察庁の方からすぐお答えがあったように、出資法の違反ということで、業法違反ではなくて、ストレートにその違反事案というものは警察の監視あるいは捜索の対象になるということでございまして、そこは金融当局が抵当証券業規制法に基づいて何らかのことをするということとはちょっと別の話、別の筋の話になるということでございます。

原口委員 検査と全体スキームについて答えていない。救済スキームについて質問をしていますから。

根本委員長代理 質問者、法務省でしょう。――法務省小池審議官。

小池政府参考人 抵当証券の交付の申請が登記所にありました場合には、いわゆる担保の十分性を証する書面を提出しなければならないというふうになっております。登記官は、いわゆる形式的審査権、書面審査でございますが、これに基づきまして、当該抵当権の目的物の価値が債権の弁済に見合うものかどうかということを審査いたします。その審査の結果、担保の十分性がないということを判断すれば、その申請を却下することになっております。

 先生御指摘の、万が一、登記所の方の判断を誤りまして、担保価値が十分でないものにつきまして抵当証券を発行いたしました場合に、その結果、第三者、抵当権の所持人が損害をこうむった場合には、最終的には国家賠償の問題になるというふうに承知しております。

原口委員 質問に答えてください。保管機構の理事長、検査し、そして弁済する業務を与えられているでしょう。

根本委員長代理 原口君、質問時間も過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

原口委員 それと柳澤大臣、救済のスキームをどうするのかお答えになりませんでしたので、ぜひ、これだけの人たちが被害を受けて、そして検査は十分だったのか、そしてこの被害を受けた人たちに対する救済をどうするのか、お答えをいただきたいと思います。

根本委員長代理 田口参事官、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

田口政府参考人 お答えいたします。

 購入者の保護をどうするかという御質問でございますが、一般的に申し上げまして、抵当証券業者の経営が破綻いたしました場合には、抵当証券の購入者は、原債務者に対する債権と抵当権を引き続き有しておりまして、原債務者からの回収を行うことになりますが、こうした場合におきまして、原債務者からの元利金の取り立てや競売による回収につきましては、抵当証券保管機構が弁済受領業務を行うわけでございます。これを代行できるということになっているわけです。

 大和都市管財につきましては、現在、大阪地裁から会社整理の開始決定、それに管理命令が出されておりまして、それと同時に、関連会社の多くも民事再生手続の申し立てによりまして保全管理命令が発出されている、そういう状況でございます。

 そこで、これにどう対応していくかということになるわけでございますが、現在、当社の管理人におきましては、グループ各社の現況把握、それからグループ全体の資産の保全に努めているところでございまして、これを受けまして今後購入者への対応が検討されていくというふうに承知しております。

 今回のケースにおきましては、これまでの抵当証券会社の破綻の場合と異なりまして、抵当証券保管機構が今後弁済受領業務等を進めていく上で、大和都市管財の管理人の会社整理の進捗状況を見守りながら進めていく必要がございまして、現在、その両者の間で緊密な連絡をとっているというところでございます。

門田参考人 私の方からも簡潔にお答えいたします。

 一つは、立入検査権、そういうものはございません。

 それから二番目、私どもの保管機構は二つの役割をやっております。一つは、抵当証券原券を受け入れて保管して、そして保管証を発行するということ。もう一つは、こういう破綻等がありましたときに、抵当証券の購入者にかわって弁済受領の業務を果たすということですね。今回は、この大和都市管財の場合は、その弁済受領業務を行わなくちゃいけない、こういう問題がございます。

 既にそれは開始しておるわけでありますが、ただ、この場合は、先ほど来先生からお話ありますように、いろいろな商品が出ています。抵当証券以外の、それに似せた、しかし公的なチェックのない、法的な権利の非常に薄い、そういったものが大量に出ています。それも種類がまたいろいろございます。

 そんなことで、私どもとしては、管理人との連携を密にしながら、救済には難しい条件下ですが最善の道をとっていかなくちゃいけない、こういうふうに思っております。

柳澤国務大臣 どういうことを救済という言葉に含ませていらっしゃるのかよくわかりませんけれども、一つには、先ほど法務省の担当官が話したように、抵当証券の発行そのものに何か違法あるいは場合によって不当というようなことがあれば、それは国家賠償の問題になります、こういうことを言っていますね。

 それ以外に、金融の現象として何か救済のスキームがあるかといえば、これはもう、預金については金融再生法あるいは預金保険法であるわけですけれども、抵当証券に投資された方には、これはないということで従来から処理が行われてきているということでございます。

原口委員 終わります。

根本委員長代理 江崎洋一郎君。

江崎委員 民主党の江崎洋一郎でございます。

 最近、一般事業会社が子会社といたしまして銀行を設立する動きが見られます。このような新しいタイプの銀行というものが国民への金融サービスの向上につながることを期待しますとともに、金融界、はっきり言いまして古い体質にあります。この体質の古さを、むしろこういった新規参入者に新しい経営のあり方あるいは技術というものをどんどん持ち込んでもらって、銀行界全体が再生するというか活力あふれるような一つの業界にまたなっていくことを私自身は望んでいるわけでございます。

 新しい銀行というものが参入してくるに当たっては、やはり間口というのは広げていく必要があるのではないか。法律や規制は、事業会社が銀行業に新たに参入するに当たっては妨げにならないというルールは大切だとは思っております。しかしそのまま、間口を広げたままでは当然後々問題も出てくるでしょうから、そういった意味で、今後、一たん銀行法見直しということではあるんでしょうけれども、またさらに続けてどんどん法律を柔軟に変えていくという視点も大切ではないかというふうに考えておる次第でございます。

 過去の銀行界におけるいろいろな事件を調べたわけでございますが、九二年にBCCI事件というものが起きました。これは、親会社が悪質な事業を賄うための財布がわりに銀行というものをつくりまして、預金者に多大な損失を与えたという事実がございましたし、また、金融システム全体というものを混乱に陥れたということがございました。そういった過去の事例から考えても、こういったことを未然に防いでいく、新しく銀行業に参入してくる人たちについては最低限のやはりふるいにかけていく必要があるんではないかと考えております。

 このような考え方に立ちまして今回の銀行法の改正案を見ますと、幾つかの問題や課題というものがあるように思われます。

 まず、そもそも、銀行法改正に当たってなんですが、事業会社が銀行業に参入するということをきっかけにしまして、そもそも論というのがどこまで議論されたのかなということについて私は懸念を一つしております。

 やはり、日本にとっての銀行業のあり方、将来像、あるいはその位置づけですね。例えば、今までの基本的な考え方で言えば、金融というものは産業界への資金を提供する補完機能という位置づけではなかったかなと考えております。しかし、新しい発想としては、金融そのものを、やはりお金をつくり出すという意味において産業としてとらえるような視点も重要ではなかったかというふうに思います。これらの基本理念というものをきちっと整理した上で、今回銀行法の改正というものが本来は着手されるべきではなかったかな、その哲学が何となくこの銀行法改正では伝わってこないなというのが私の実感でもございます。

 いろいろございますが、少し細かい点も含めて一つずつ質問させていただきたいと思っております。

 まず、先ほど原口委員からもございましたが、主要株主の点についてお伺いしたいと思います。

 金融審議会の最終報告書を読みますと、銀行の株式の五%超保有の株主が実質影響力ありと判断される場合には、主要株主として認可の対象となると書かれております。金融審議会では、チェックの対象となる親会社の範囲をなるべく広くしておいて、その上で実質的な影響力があるかないかを吟味してから銀行の親会社であるかどうかを判断しようとしていたんではないか、そういうふうにうかがえる報告書になっております。

 一方、改正案では、この主要株主というのは、銀行の株式の二〇%以上ないしそれと同等の影響力を持つ者で一五%以上を保有する者となっておりまして、金融審議会の最終報告よりもチェックの対象となる親会社の範囲が狭くなっているということでございます。

 先ほど、企業会計基準に基づくとの乾局長からの答えではございましたけれども、しかし例えば、ドイツやフランスまたイギリスを見ましても、銀行の株式の一〇%以上を保有する者を主要株主として監督の対象としているわけでございます。そういった意味では、日本の今回の改正案は明らかに広いわけでございます。

 また、日本の企業というのは、株式を持ち合う割合に大きな差がつかないように、あらかじめ株主の間で持ち株の比率を調整したりしているということが事実あると思います。したがって、結果、表面上は五%程度しか株を持っていないんだけれども、しかし実際には、筆頭株主として相当な影響力を持っている会社もあるというふうに思います。

 このような状況から考えますと、本来、金融審議会が主要株主と定めていた五%、これをむしろ狭くしてしまったというのは、どういう考えに基づいてこういう判断になってきたのか、少し根幹の部分を大臣からお話を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 まず第一に、江崎先生の方から、理念は何だったんだ、こういうお話があったわけですけれども、実は、今度、この事業会社等の銀行業への参入というのは、この法律でもって創設的にしつらえられたものではないわけでございまして、今回の改正がなくても、既に、オリックスの例等で御案内のとおり、銀行業への参入ということが可能であったわけでございます。

 今回の改正というのは、いわば、そういう実態を踏まえまして、それをより透明それからまた公正、こういうようなものにしていくにはどういう手当てが必要なんだという、現実に生じている事実の上に立ってそれをより明確なものにしていこう、こういうようなことがいきさつ的にございますので、ちょっと江崎先生の御質問には、そういういきさつを指摘させていただくことによって御理解を賜りたい点だな、このように考えるわけでございます。

 金融審議会の答申と御提出させていただいておる法案との相違でございますけれども、若干の相違があるわけでございますが、基本の考え方といいますものは、結局、参入のためのハードルをきつ目にしておくのがいいのか、もう既にそういうものが存在しているということからすれば、本当に、金融界を活性化する、あるいは利用者に対する金融サービスの向上を図るということで、より新しいアイデアあるいは競争といったものを導くために必要最小、最小限というのはちょっと語弊がありますけれども、必要な限度でそのハードルをつくっておくのがいいのか、そういう選択であったということで御理解を賜れればと思います。

    〔根本委員長代理退席、委員長着席〕

江崎委員 今、ハードルが低くということではございましたが、後段、質問させていただきますが、ハードルが低いなりに、今度はチェック機能をやはり厳しくしていく必要があるんではないかなと私は考えておる次第でございます。

 そこで、この改正案の中身についてお話を進めさせていただきますけれども、主要株主と認定された親会社に対して、報告書の提出を求めたり、面談や立入検査を行うことができるということになっております。新しく事業会社が参入してきた場合、例えば具体的にどのような点をチェックすることを考えておられるのか、大方針を伺いたいんですが。

 例えば、コンビニの店内に店舗を出している銀行の経営状態ということにつきましては、親会社であるコンビニの客の入りぐあいとか経営状態というものにも踏み込んで、主要株主ということで見ていかなきゃいけない。この親会社そのものの経営について、どのような面をチェックしていくことが有効だというふうにお考えになっておられるんでしょうか。今までの金融庁の検査というのは銀行に対する検査でありましたけれども、今度は主要株主である親会社、事業法人に対しても検査をしなきゃいけないということになるわけですが、その点について伺いたいと思います。

乾政府参考人 主要株主の認可を行うに当たりまして必要な審査を行うわけでございますけれども、まず第一に、主要株主が銀行に不利益を与えるような取引をしないようにということから、いわばアームズ・レングス・ルールの対象にしているわけでございますけれども、具体的な認可申請が出てまいりました場合に、その主要株主が銀行をどのような目的で所有しようとしているのかということの審査を行います。

 それからまた、どのような経営方針で、例えばそこで集まった預金をどういうふうに活用するか、よもや先ほど来出ております自己の会社のために使うようなことはないであろうかということから、そういう審査を行うことになると思います。

 また、その主要株主の社会的信用等に基づいて不適格なところがないかどうかということを審査することになろうかと思います。

 今具体的におっしゃいましたコンビニということになりました場合には、仮にコンビニに何らかの施設を置くとした場合に、それが本来の銀行の健全性を阻害するようなおそれがないか等、そこの点は、まさに銀行業の健全性の観点から、実態に即して厳正な審査を行うことになるであろうと考えております。

江崎委員 今までに経験のない検査をされるんでしょうし、また主要株主とのコミュニケーションというのもこれは密にとっていかないと、なかなか本来の、本体の経営状態とまた銀行の経営状態というものはわからないと思うんですね。ですから、そういった意味で、新たな手法を用いる等々、実践的な検査をお願いしたいと思います。

 それでは、この改正案の中で立入検査という項目がございます。

 この法律の中に、「特に必要があると認められるときにこの立入検査を行う」というふうにあります。この、特に必要があるときとは、具体的にどのようなときを指しておられるのか、伺いたいと思います。

 金融機関の経営が悪くなってから親会社の検査に入っても、実際には手おくれになっているということが多いんじゃないかと思うんですね。そういった意味では、親会社に問題が見つかったらできるだけ早いタイミングで検査に入っていく必要があると思います。しかし、往々にして、問題が噴出したときには親会社も非協力的になるということも十分にあり得ると思います。そういう点を考えますと、有無を言わさず立入検査ができる事前の基準というようなものを設けておく必要もあろうかと思いますが、その点について伺いたいと思います。

乾政府参考人 この親会社、主要株主に対する検査監督の規定を導入するに当たりましては、金融審議会におきましても、これがその親会社に対する当局の不当な干渉あるいは権限の乱用になってはならないということを考えるとともに、他方、言うまでもなく子銀行の健全性の確保という、この二つの要請をどのように調和させるかということが非常に時間を割いて議論された点でございます。そうしたことから、今ごらんいただいております条文のように、親会社に対しまして、特に必要があると認める場合に限り必要な限度において行うことが適当であるとされたわけでございます。

 具体的な対応につきましては、あくまでも個々のケースに依存いたしますので、なかなか一般的に申し上げることは困難でありますけれども、例えば審議会の報告では、株主が子銀行等に対して不当な影響力行使を行うことなどにより子銀行等の経営の健全性が損なわれるおそれがある場合等については、特別な報告徴求や検査を実施することが適当であるとされているところでございます。

江崎委員 この法律の言葉自体ややあいまいな部分もありますので、できれば明確な運用基準を設け運用していくことがむしろ透明性につながるのではないかと思いますので、ぜひともお願いをしたいと思っております。

 次の質問に移らせていただきますが、最近では、海外の投資ファンドが日本の破綻した金融機関を買収して再建するというケースが散見されるわけでございます。海外からの投資資金の流入によって日本の金融システムの資本基盤が強化されるという意味においては歓迎すべきことではあると思いますが、しかし、今度は、海外にいる株主に対して適切な監督を行っていくという面で見ると大変難しいことではないかと思います。

 例えば、銀行の株式を買い占めて主要株主になった海外の投資家が実は悪質な動機を持っていて、その銀行を使ってマネーロンダリングなどの犯罪の道具にしてしまうといった極端なケースも、考えようと思えば今回の法律で当てはまってしまうと思うんですね。私が銀行に勤務しておりましたときにも、先ほど触れましたが、外銀が起こしましたBCCI事件というのが起きました。この事件によって、日本にも支店がございましたので、日本の預金者に多大な迷惑をかけた、損害を受けたという事実があるわけでございます。

 来月開催されるサミットにおきましても、マネーロンダリングが主要テーマ、主要議題の一つと言われておりますが、このような悪質なものを見破って、主要株主となることを阻止したり、問題が発生する前にきちっとチェックする、そういうことが可能なのかどうか。特に今は世界のあちらこちらにつくられたペーパーカンパニーやダミー会社というものがあるわけで、これを幾つも挟んで、結果正体がばれないようにして日本に上陸してくるということも十分に考えられるわけでございます。

 そういった意味での有効なチェックの手段があるのか、また、こういった面で海外の監督当局との協力体制というのがもう既にでき上がっているのか、その辺について伺いたいと思います。

乾政府参考人 主要株主が海外に存在する場合でございますけれども、これは、銀行法の検査権限は海外に存在する者にも及ぶと解されるわけでございますが、実際問題は、今先生御指摘になりましたように、検査の実施につきまして、これは他国における公権力の行使となりますので、相手国の同意を得た上で行う必要があることは事実でございます。

 そこで、私ども日本の監督当局といたしましては、どういうことを考えこれまでやってきているかと申しますと、まず、何と申しましても、銀行自体は日本国内にあるわけでございますから、銀行を通じて本国の、現在でございますと本店の状況、あるいはこれからでございますと親会社の状況を聴取することが可能でございますし、何よりも、国内にある銀行の健全性をウオッチしていく中で、問題があれば必要な措置を講じていくことが適当だろうと思っております。

 そこで、仮にそうした問題点が把握されました場合には、先生御指摘になりましたように、海外の監督当局との連携協力ということが非常に重要になってくるわけでございますけれども、この点に関しましては、当庁といたしましては、例えばバーゼル銀行監督委員会の諸原則等を踏まえまして、従前より海外当局との密接な連携を図ってきたところでございます。

 先ほどもお答えいたしましたように、海外に店を持っている場合に、海外の当局とそれから母国の当局とが密接なコンタクトをしなければならないということがバーゼルでルール化されておりまして、そうした考え方にのっとって現在までやっているところでございますけれども、今後、こうした異業種からの参入ということで、そうした異業種の主要株主が海外にあります場合にも今後ともそうした考え方に立ちまして、海外当局とのさらなる連携協力体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

江崎委員 問題は海外にある金融機関ということだけではありません。今回は、事業会社も参入できるし、特に投資ファンドという実態が非常につかみにくい存在も検査の対象になるということであります。

 そういった意味で、次に検査体制についてお伺いしたいと思いますが、手元の資料によりますと、十三年度末で、金融庁の検査官は全体で三百六十名おられるということでございます。このうち、都銀八行に対する担当は四十四名、長信銀三行また信託二十二行などの担当は十四名、外銀七十九行、外国系信託銀行十行などの担当は五十一名、また地銀六十四行、第二地銀五十六行の担当は五十八名という状況にあると聞いております。また、信金が三百七十一機関、信組二百八十機関などの協同組織金融機関を担当する地方財務局の検査官は総勢五百七十一名だと聞いております。さらに、保険会社八十四社それから証券会社二百九十三社も含めて、検査官の数と金融機関の数を単純に比較しますと、一社当たり検査官の数は〇・七名という数字になりました。

 これではとても効果的な検査はできないのではないかと心配するわけでございます。さらに、今後新たな銀行がどんどん参入してくるという可能性も否定し得ないわけであって、そのときに検査官の不足というものがますます深刻になってしまうのではないかと思います。

 日本の金融システムに対する世界的な信頼を取り戻すという意味で、金融庁はもっと検査官を増員していく必要があるのではないかと私は考えておるのですが、適正人員と今後の計画について、ぜひ大臣から決意というか方針をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 金融が参入規制から行為規制の方に行政の軸足が移動しているに伴いまして、行為規範に違反することというのはよくよく見ていかなければならないということは先生御指摘のとおりでございます。

 そういう中で、事後的チェック体制の行政への転換ということで、私ども、検査官につきましてもかつてに比べますとかなり充実をしてきておりますけれども、十分であるかといえば、今先生御指摘のような状況にあると言わざるを得ません。特に、これからまた来年四月からペイオフが始まるということを考えますと、私ども銀行監督の行政に課せられる課題というか責任というのは非常に重要でございまして、さらに一層こうした金融機関の健全性のチェックには手間をかけていかなければいけないということでございます。

 そういうことで、私ども増員ということに一生懸命取り組んでおりまして、それなりに行革の中にありましても御配慮を関係の当局からいただいておるわけでございますけれども、なお一層これを充実していかなければならないということを切迫感を持って実は考えております。ただ、今先生御指摘の目標はどうかということについては、金融界全体が非常に今先生御指摘のように動いているところでございますので、私どもとして今そうした計画を明確な形で持っているという状況にはございません。

江崎委員 やはり健全な市場を育てるという意味では、また門戸を今回の改正法案のような形で開くということであればなおさらのこと、検査体制なり市場を監視していくというところが一番重要なことと思うんですね、世界の信頼を取り戻すという意味においても。ぜひとも、いろいろ公務員の削減の問題等とかあるんでしょうけれども、必要なところには重点配備をしていくというのがむしろ筋ではないかと思いますので、一日も早く体制整備を急がれることをお願いしたいと思っております。

 それで、今度は検査官の中身と申しますか、質の問題についてちょっとお伺いをしたいわけでございます。

 現状、いろいろな金融の経験者を含め中途採用をされている、さらには検査官の能力を高めるということも実施されているのではないかとは思いますが、例えば、検査官を金融機関に実際に研修に行かせて実務経験を養うということも今の状況で必要なのではないかなと考えます。

 ちょっとこれは実務内容とは離れますが、私が勤務した興銀におきましては、当時、大蔵省の国金局の為替課の担当者が、市場感覚になれるという意味でトレーニングに来られるということも実務としてやっておられました。検査官という立場であると、現場と遮断しなければいかぬとかいろいろルールはあるのでしょうけれども、一たん休職をするとか一時退職をするとかいう形で民間で勉強してまた戻ってくるというようなことで、やはり実務家を育てないとなかなかいい検査ができないのではないかというふうに心配しております。

 欧米では民間の銀行員が中途採用で検査官になるというのはむしろ当たり前であって、例えばイギリスでは、検査官を民間金融機関で研修させることに非常に熱心だとも聞いております。そういった意味で、公務員だから民間には行かせないのだ、検査官だから遮断するのだというかたい考えじゃなく、柔軟な運用をぜひともしていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 次に、この銀行法の改正の中身とは若干視点はずれますが、関係するところでちょっとお伺いしたいのです。

 今銀行では、事務処理あるいは機械処理を外部会社に委託するところがふえております。特にこれからふえていくかもしれないコンビニ銀行やインターネット銀行の店舗では、無人店舗や架空店舗ということになると思います。そういった意味で、事務処理や機械処理というのは外部のコンピューター会社などに委託していくというような会社もふえていくと考えます。既に今の銀行も子会社形式ではこの委託というものをどんどん進めておると思うのですが、このようなケースで、仮に外部の委託会社の管理が悪くて事務ミスが発生したり、あるいはシステムダウンが起こったという場合には、銀行のサービスがストップしてしまって顧客に多大な迷惑や損失を発生させる可能性があるわけでございます。

 今回の改正案では、事務のことやシステムの外部委託先に対する規制というのは全く盛り込まれていないわけですが、こうした先に対するチェックというのはどのように考えておられるのか。また、顧客情報が外部委託会社のコンピューターの中に保管されているわけであります。そういった意味では、個人情報保護の観点からこれを適切に管理していく必要もあると思うのですが、そのチェックについてはどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

村田副大臣 まず、インターネット銀行等でございますが、そうしたコンピューターのシステムの管理等のアウトソーシングがふえるかもしれない、そういうときのシステムダウンに対する危機管理体制はどうなっているのか、こういうことでございます。

 昨年、「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応」ということで、運用上の指針を発表いたしました。これに基づきまして、システムのセキュリティーのレベルが十分な水準に達しているかどうか、あるいは、システムの安全管理体制あるいは障害発生時の危機管理体制等が適切に講じられているかどうか等につきまして免許審査時に確認いたしまして、免許後の監督におきましてその履行状況について引き続きチェックするということにしているわけであります。

 既に営業を開始しているインターネット専業二行につきましては、このような観点から、免許を付与する時点あるいはその後も確認を行っている、こういうわけでございます。具体的な確認方法でございますが、当該銀行に監査法人等の外部機関のシステム監査報告書と評価書類を提出させる、こういうことで確認をしているということでございます。

 それから、親子間での個人情報の問題、これを相互に利用することについてどうするか、こういうことでございます。

 運用上の指針が発表されておりますが、免許審査において確認すべき事項といたしまして、「具体的には、顧客情報の相互利用を行う場合には、最低限、事前に、利用する業者の範囲、利用目的、利用方法等を明確にした上で、顧客本人の明示的な同意を得ることを必要とする運用体制となっているかどうかを確認する」こういうふうに運用上の指針で定められておりまして、顧客情報の相互利用についてそのような規定になっているわけでございます。親事業者間の顧客情報を子銀行が利用する場合においても、今申しましたように、事前に顧客の明示的な同意が得られていることが確認できるような体制の整備を子銀行に対して求めている、こういうことでございます。

江崎委員 この垣根を低くし間口を広げるという法律の改正案でもありますので、本体だけじゃなく、アウトソーシングの部分ですとか顧客情報の管理、こういったところにも丁寧に目配りをしてぜひ運用を図っていただきたいと思います。

 それで、時間もありませんので最後の質問になりますが、先ほど検査体制の充実ということについてお話をさせていただいたわけでございますが、問題のある銀行の立て直しが不幸にしてうまくいかない場合なのでございますが、この場合の備えというものも重要ではないかと思います。改正案では、需給調整や店舗規制が廃止ということでございます。そういった意味では、銀行の競争が促されるという意味では大変結構なことだと思うのですけれども、ただその分競争に負けて破綻する銀行が出てくる可能性もあるわけでございます。

 一方で、コンピューターシステムの高度化によって金融取引自体のスピードもますます速くなっていると思います。例えば、新たに出てきそうなインターネットバンキングなどでも、夜中でも自宅のパソコンで簡単に預金の引き落とし、移しかえもできるようになるわけですね。

 そういった意味で、今後市場の混乱を避けたり預金者を保護していくという点から、常日ごろからの万全の体制を整えていく必要があると思うのです。いざ銀行が破綻したときに迅速に処理することができるような体制整備、預金保険機構や日銀とどう協力するのか、そういった意味での預金者保護の観点からどういう体制をお考えなのか、最後に方針を大臣から伺いたいと思います。

山口委員長 時間が経過しておりますので、簡潔に。

 村田副大臣。

村田副大臣 ただいまの御質問ですが、金融機関が破綻した場合の預金者保護のための制度につきましては、預金保険法等の改正におきまして、十三年四月以降の恒久的な制度といたしまして、例えば営業の一部譲渡の場合の資金援助、資金援助の一環としての受け皿に対する資本増強の追加、あるいはブリッジバンク制度の導入等々、これまで金融再生法あるいは健全化法等の中で時限的に定められていたものについて預金保険法等を改正いたしまして恒久化する措置を講じたわけであります。

 また、システミックリスクが生じた場合においては、内閣総理大臣を議長とする金融危機対応会議の議を経て例外的措置を講ずることにいたしまして、今先生がおっしゃったような銀行法改正、預金保険法等の枠組みのもとで、厳正な検査監督を通じて、より強固な金融システムを構築して預金者保護を図っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

江崎委員 以上で質問を終わらせていただきますが、最後に一つだけ御提案を申し上げたいのです。

 今回の法改正では、銀行の親会社と保険会社の親会社についての主要株主ということで規定が定められたわけでございますが、今の証券会社のあり方についても将来的に何らかの議論はしていく必要があるのではないかと御提案を申し上げまして、私の質問を以上で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 上田清司君。

上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。

 厚生労働省の方にも来ていただいています。理事懇の中で後に少し回すということがありますので、先に厚生労働省側から聞きたいと思います。

 それでは、まず事実関係だけ私の方から確認をいたします。

 国民の年金、国民年金と厚生年金、合わせて百四十四兆。ことしの四月一日から自主運用という形で、年金福祉事業団を改組して年金資金運用基金という新しい、看板だけが変わったのか中身が変わるのかわかりませんが、どちらにしても、こちらで貴重な国民の掛金を使っているという事実がありますので、この点について。

 この十四年間を確認しますが、単年度ずつ黒字、赤字を確認しますと、黒字が六回、赤字が八回、六勝八敗。年金特会に納付したのは、九二年度に百三十三億一回こっきり。そして、毎年、受託した金融機関に運用手数料の支払いが大体四百億ぐらい。それも含めて、年金福祉事業団が運用するためのコスト、職員の給与等々を含めて一千億。大体こんな程度かなと。

 この点について、副大臣、間違いありませんね、認識。副大臣で大丈夫ですよ、細かい話をしているわけじゃないから。

桝屋副大臣 済みません、座った途端にお尋ねをいただいたものですから。

 今委員おっしゃった認識は、そのとおりかなと思っております。

上田(清)委員 財政金融委員会の皆様方にも聞いていただきたいので。

 果たして、自主運用がいいのかどうかという議論も含めて考えなければならない。場合によっては、財務省理財局にもう一回取り上げる、こういうことだって考えなければならない事態になるんじゃないかというふうに私は認識しておりますので、あえて、細かいというか概略だけまた復習させていただいております。

 そこで、十四年間の最後の決算が、三月期は終わっているのですけれども、まだ正式な形で終わっていない、このようなお話でございますから、それでは二月のトピックでいいから出せということで、出していただきました。つまり、過去十四年間のレベルを、十三年度の二月のトピックで見ますと、総合収益額がマイナスで一兆八千億、累積利差損益が、時価ベースでマイナス二兆円、簿価ベースで約一兆八千億、私、こういう数字をきちんと厚生労働省の方からいただいております。

 この事実関係、というよりも、三月期においても大体このような数字になるんでしょうねということだけ、私、確認したいのですけれども、お願いします。

吉武政府参考人 今先生お尋ねのありました、二月末におきます概数値につきましては、先生がおっしゃったとおりでございます。それで、三月末で決算になりますので、今最終に精査をいたしておりますが、三月で申し上げますと、若干株価が上がっております。債券で申し上げますと、利子が若干下がっております。それから、為替も少し改善をいたしておりますので、今申し上げた数値から、三月末ですと、若干改善されるのではないかというふうに見ておりますが、これにつきましては、精査をいたしまして、きちんと公表いたしたいというふうに思っております。

 以上でございます。

上田(清)委員 実のところ、数字はもう出ているんでしょう。ただ、全体としての報告書をつくるのに手間がかかっているというふうに私は判断しております。

 では、概数で、どのくらいの幅があるのか、それだけ教えてください。一〇%ぐらいふえるかもしれないとか、そういう意味です。

吉武政府参考人 今申し上げました、総合収益額、一兆八千億マイナスでございますが、これに対しまして、約一割程度改善がされるのではないかというふうに見ております。

上田(清)委員 一割程度改善されるということであれば、一兆六千億なりあるいは一兆六千五百億なり、最終的に総合収益額がマイナスになるのだと。つまり、年金を積み立てている国民から見れば、年金福祉事業団ができて、受取額をふやしていただける、これが前提で年金福祉事業団というのは存在しているわけでありますが、十四年間の星取り表は負け越し、納付金を特会に入れたのは一回こっきり、毎年一千億からのランニングコストがかかっていること、そして最終的な十四年間の総合収益額がマイナスの一兆六千五百億ぐらいになるだろうと。

 しかも、そういう実態ですが、少なくとも、この年福をつくって運用するという話のときに、国会でどういう答弁を当時の年金局長がされたかというと、預託金利を下回るような、いわゆる利益が生じない、あるいは預託金利よりも割り込むような事態になることはまずないものと考えております、こういう答弁をされておられるのですが、違う格好になってしまった。この責任はだれがとるのでしょうか、副大臣。

桝屋副大臣 この前から委員はずっと、私ども厚生労働委員会でも厳しい御指摘をいただいているわけであります。特に、最近の経済状況の中で、十一年度に大幅に価格が上昇した後、一転して十二年度には大きく下落したということがありまして、短期的に見れば価格変動するということがあるわけでありまして、先ほど、以前の局長答弁の話も出されました。これが下がるようなことがあればどうするんだということでありますが、これも厚生労働委員会でも既に議論いたしました。

 したがいまして、これからの、まさに今後の長期的な運営の中で私どもは考えていかなければならぬ。これから新しい運用の体制になるわけでありますが、その中で、私どもの大臣といたしましては、まさに高齢者、老後の大事な年金でありますから、資産運用に過ちがないようにしっかりと取り組んでいきたい、こういうことを申し上げたわけでありまして、それこそが責任をとる道であろうというふうに考えているところでございます。

上田(清)委員 実は、また新しい年金資金運用基金のために、昨年の十二月二十二日に、年金積立金の運用の基本方針に関する検討会という、こうした資料をつくって、今の責任のとり方についても、とらないというようなことを書いてありますね。やはり立派ですね、そういうところは。給料とかそういうのはしっかり取るけれども、責任はとらないというようなことが書いてあります。

 「運用結果である運用利回りが期待リターンを下回り、積立金額が計画値を下回るという事態も生じ得る。」と、資産運用に関しては。「このような場合であっても、「運用の基本方針」の決定及び運用管理が適切に行われ、実際に的確な運用が図られているのであれば、結果に関する責任を問うのは適当ではない。」こんなことを言っておられます。

 しかし、私が厚生委員会で指摘したように、ポートフォリオには、実はあなた方が、受託した金融機関が四%ぐらいの利回りで推移している、どこで切っても、三年で切っても五年で切っても。にもかかわらず、そういうところに引き続きたくさん運用させ、実際八%ぐらいの利回りをやっていた外資系の企業には二十分の一ぐらいしか受託させない。そういう完全な瑕疵があるじゃないですか。こういうときも責任をとらないというような考え方なんですか、副大臣。過去にさかのぼって検査して、責任をとらせてくださいよ。まず、そのことをちょっと聞きたいと思います。

桝屋副大臣 この前も委員から、私どもの委員会で責任をとってやめろという厳しい御指摘をいただいたところでありまして、同じような御指摘をいただいているわけであります。

 今後の体制については、やはり長期的な視点で見ていくということが大事だと私は思っております。確かに委員御指摘のように、先ほど言いましたように、ここしばらくの状況はまことに厳しい状況があるわけでありますけれども、であるがゆえに、長期的な視点に立って、年金の運用を確実に行うために、新たに投資専門委員制度を設けるなど努力をしているわけでありまして、責任をどうするかということは、もちろん最終責任は厚生労働大臣が負っているわけでありますから、そこはしっかり大臣の責任において確かな運営をするということが大事だろうと思います。

 過去のものについて責任をどうするんだ、こういうお尋ねがありましたが、それは、もう先ほど申し上げましたように、新しい運用の中で責任をとっていくべきだろう、このように私は思っているところでございます。

上田(清)委員 それはよくわかるんですけれども、一回、過去の年度ごとで切って調査してくださいよ。まだやっていないでしょう、桝屋副大臣。

 私は、あなたに出したかどうか覚えておりませんけれども、私が調査したものを出していますよ。明らかに、調子の悪い、運用利回りが悪い機関に過重に受託させ、そして利回りのいいところに受託させないというような恣意的なことをやっておるとしか思えない。あなたたちが本当にもうけようと思うんだったら、そんなことはできない。そんなことをやっているんですから、これはちゃんと、森理事長、あなたは責任をとってやめなくちゃいけないからこういうところに来てはいけないんだけれども、私が呼んでいるんだからしようがない。

 だけれども、本当は、その分ちゃんと調査して、明らかに国会に報告してくださいよ、間違えましたと。なぜそうして間違えたのか、どういう経過で間違ったのか、そのことを明らかにしない限り、また百四十四兆がパアだよ。明らかにするかどうかだけ確認してくださいよ。

吉武政府参考人 受託運用機関の問題について、ちょっと経過だけ御説明を申し上げたいと思いますが……

上田(清)委員 もうそんなの要らない、知っているんだから。短くぱっと言いなさい。

吉武政府参考人 ですから、年金資金の資金運用が始まりました最初の時期につきましては、御案内のとおり、規制緩和の問題がございまして、基本的に年金資金の運用については信託銀行と生命保険会社に限られたというところがございます。その後、逐次規制が緩和をされまして、例えば投資顧問が参入するというような形で来ておりまして、年金福祉事業団といたしましては、全体の定量評価それから定性評価に基づいて資金配分を行っていくということで来ております。

 それから、ことしの四月からは、運用の基本方針、運用管理方針の中で、今先生から御質問ございましたような運用受託機関の選定、評価についてのルールをさらに明確化いたしまして、厳正な資金配分を行っていきたいということを実施いたしております。

上田(清)委員 だから、ちゃんとした答弁しないでしょう、桝屋副大臣。私が言っているのは、過去のことを、私が資料を出して順位が全然違うということを明らかにしたんだから、国内の信託銀行よりも海外に本社を持つところの方がはるかに運用がいいのに二十分の一ぐらいの運用しかさせていないんだから、もうかるわけがないじゃない。もうからないところばかりに預けているんだから。だから、そういうことを今までやっていて、これからまじめにやりますなんて言っても信用できないから、きちっと国会に報告を出してください、なぜそうなったのか。それを言っているんですよ。

桝屋副大臣 厳しい御指摘をいただいております。私も、恐らく委員の御指摘は、副大臣として、桝屋、まずはおまえ自身がしっかり勉強しろという御指摘かと思います。

 と申しますのは、私は、年金の運用については、運用委託をしております機関ごとに十分ディスクローズはされているというふうに理解をしてまいりました。ただ、その状況が私の頭の中でどう整理されているかということは、御指摘はこれは踏まえて、改めて過去のことも整理をして、まさに今から新しい運用が始まるわけでありますから、そこは委員御指摘のとおり、深く反省をして取り組まなきゃならぬという御指摘かと思いますので、しっかり過去のデータも改めて私自身もう一回整理をしたいというふうに思っております。大臣にもしっかりきょうの御指摘は伝えたいと思います。

上田(清)委員 調査は約束しなかったんですけれども、また出しても構いませんよ、私が以前に調査したものを改めて。そういうことで言うんだったら皆さんにまた見てもらいましょう。

 それで、なぜ私がこのことを言っているかというと、今まで二十七兆、百四十四兆の二五%を運用されていた、その結果がああいう結果だ。今度は百四十四兆、過渡的な形の中では全部じゃないですけれども、七年後に全部百四十四兆になっちゃう。私はこれはちょっと間違いじゃないかと思っているんですよ。例えば、今度は四・五の利回りを確保することを前提に、それぞれ、債券だ、それから国債だという形で運用するんですが、一応国内株式で一二%程度やるということですけれども、この間、年金局長は、三十年、五十年の単位で見れば間違いなく利回りはいいんだ、間違いなくいいんだというような答弁をされていた。

 そこで、その後に私たまたま、そうじゃないという資料を見つけた。お手元にあるかと思いますが、「日本の株式市場 失われた十年」、四枚の紙のうちの一つですけれども、これは国際証券の水野和夫さんがまとめたものなんですよ。「二〇〇〇年十二月末から二〇〇一年三月末にかけて三十年移動平均を下回る」、日本の株式市場においてこういう事態が起こっているということ、このことを御存じの上で三十年は大丈夫ですよというようなことを言っておられたのかどうか。

 これは森理事長の方がいいのかもしれませんね、御存じですか、こういう事実を。

森参考人 エコノミストとして大変高名な方であることはよく承知しておりますが、その視点について、まだ私自身十分勉強をいたしておりません。今御指摘がございましたので、早速勉強したいと思います。

上田(清)委員 これは大変重要なことですので、財務大臣もぜひ理解していただきたいんですが、これが事実だとすると、年金運用に関しては株式の運用ができないということなんです。短期で利ざやを稼ぐしかないという話になってくるんですよ。もう長期はだめだという話なんですよ。こういう事態になっているということ。

 それから、いろいろな考え方もおありかもしれませんが、少しおもしろい資料で、実は二十一世紀はデフレの時代だというようなことを同じように水野和夫先生が言っておられるんです。過去、我々は百年インフレの時代に生きておりますから、デフレを解消して緩やかなインフレに戻すべきだというのが何となく公式的な見解、ニュートラルに最小限度しよう、そういう思いがありますが、歴史的にはデフレの時代の方が長く、そしてインフレがこの百年だった。

 特に、産業革命とそれから市場が広がったグローバリゼーションのいわば原型みたいなのが二百年前に一回起こっていること、そして今、IT革命と言われるものとグローバリゼーションを考えると第二次産業革命だというふうに考えていくと、あるいはあながちこうした方向も見方として誤っているとは言いがたい。そういう可能性も持っているということを考えれば、国民の年金、百四十四兆円の運用の仕方について改めて問い直さなくちゃいけないし、あるいは本当に自主運用でいいのかどうかということも含めて、私は重大な関心を持っていただきたい、こんなふうに思っております。

 今すぐこれは結論が出るものではないと思いますが、少なくとも先日の厚生労働委員会で、三十年の単位で見れば間違いなく上がっていますなんというのは、それは過去の話でありまして、全然通用しない。十年ですらもう通用しなくなっているんですね。だから、三十年の話というのはむしろ危ないぞという認識に切りかえてもらわないと、これは大変なことになってしまうということを私は違う観点から指摘させていただきます。

 このことについて、今すぐ議論するつもりはありませんが、桝屋副大臣、省内でプロジェクトチームをつくって研究された方がいいというふうに思いますし、また財務省の方でもこのことについてきちっとやはり考えていただきたい。運用はここだけがやっているわけじゃありません。いろいろなところでやっております。簡保でもやっていますし、いろいろなところで運用をやっておりますから、これは財政金融全体に責任を持つ大蔵大臣として、ぜひ、株式の状況が変化しているということについて研究していただきたいということを、御答弁いただきたいと思います。

塩川国務大臣 上田さんのおっしゃったことを私もずっと聞いていまして、まさに十分研究しておられることで、それは正鵠を得ておると思っております。そういう状態でありますから、小泉内閣で今度徹底的に調べてもらったのです。大体、行政専門でやっている人に大きい金を預けてうまくできるものかといったら、これは私は、専門違いのところに渡しておるようなことになる、そう思うのですよ。ですから、これは一回徹底的に調べる必要があるだろうと思っておりまして、その一環としてお答えにしたいと思います。

上田(清)委員 久々に我が意を得たりの答弁をいただきました。

 それでは、内閣府の村田副大臣にお伺いします。

 先般の諮問会議の基本方針を、最小限度、責任ある野党の立場から検討させていただいております。予算委員会で十二時間ぐらいとってやるのが筋だと思いますが、その時間がまだ確定しておりませんので、幾つかの点だけちょっと確認をさせてください。非常に意欲的に進めておられることは評価いたします。

 これは、三十一ページの中期的経済財政の展望というところの文言を少し読み上げさせていただきます。「不良債権問題については、今後二〜三年にわたり、不良債権の最終処理が進められることから、関連分野における企業整理や離職者の問題が生じ、少なくとも短期的にはそのデフレ圧力が不良債権処理のプラス効果を上回る可能性が高いと考えられる。」

 非常に明快に述べておられますが、不良債権処理をする、企業整理が行われる、デフレ圧力につながる、不良債権のプラス効果をそのデフレ圧力が上回る可能性がある。そうしますと、不良債権を二年、三年で片づけるという議論がかみ合わなくなってくる可能性があるのですが、この辺はどんなふうに整理されているのか、お伺いしたいと思います。

村田副大臣 不良債権を整理いたしまして、経済の資源を非生産部門から効率の高い部門に動かしていくというのは、今の小泉内閣の最重点の政策でございます。

 そういう意味で、骨太の方針の中でもうたわれているように、そうした不良債権の整理をやっていく中で、当面は高い成長は望めない。そういう時期を経て、今後将来にわたって、構造改革ができた暁には、適正な成長率、三%程度の成長率を期待し得るもの、こういう絵をかきまして、実施したい、こういうことでございます。

上田(清)委員 うまいといえばうまいのですが、全然答えていないというのでしょうか、困るのですね。

 私が申し上げたのは、もうわかっていらっしゃるので言うまでもありませんから、ではちょっと違うところから言います、同じことの繰り返しをされるでしょうから。

 それでは、デフレ圧力というのはどのくらいGDPデフレーターなんかで計算されているのですか。お役人でもいいですよ、細かい話はわからないと言うのだったら。だって、諮問会議で出したのでしょう、これだけのことを。バックはいないのですか。――では、いいです。すぐ数値は何かないらしいですから、いいです。

 それでは、企業整理による失業者、離職者というのはどのくらい考えていらっしゃるのですか。

小林政府参考人 この基本方針を先般経済財政諮問会議で御決定いただいたその日の竹中大臣の談話によりますと、離職者が十万人から二十万人程度というふうに御説明しております。

上田(清)委員 そういうときだけ竹中大臣に振ってはだめだ。そういう数字を明らかにするのが皆さんの仕事じゃないですか。だから、竹中大臣によるとじゃなくて、内閣府としてどう見ているかということを確認しているのですよ、私は。

小林政府参考人 この数字の根拠となっている研究でございますが、実は内閣府の政策統括官のもとに、西村清彦先生をお呼びしまして、不良債権の処理にかかわるさまざまな影響に関しての研究をしていただきまして、その研究成果をもとに竹中大臣がそういう数字をお話しされたということでございまして、この研究報告自体につきましては、今週末くらいに公表させていただこうという予定になっております。

上田(清)委員 村田副大臣、本当に財政にお詳しいことで、私も敬意を表しているところであります、また村上副大臣も。

 先ほど同僚の原口議員から塩川大臣に質問したように、予算の策定も政府の諮問会議の拘束を受ける仕組みになっているというふうに私もお聞きしました。ということであれば、どういう中身なのか。細かい数字はともかく、もう少し具体的な根拠というのを政府部内ですり合わせられてもおかしくはないんじゃないですか。

 例えば、二、三年で不良債権を片づけていく中で、デフレーターがGDPでどのくらい影響を与えていくのか。その圧力によって、どの程度景気が下がっていくのか。あるいは、場合によっては、不良債権の処理が二、三年で本当に済むのかどうか。そういうことも含めて、政府内でもう少し議論をされていた方がいいんじゃないでしょうか。今、ちょっとぽんぽんぽんと四つ聞いたら、ほとんどきちっとした答えが出ない。

 柳澤金融大臣、お休みだったら申しわけありません、目をつぶって深く考えておられたというふうに理解しておりますが、柳澤大臣も、この二、三年で不良債権の処理をしなきゃならないという基本的な考え方には同調されておられますが、しかし、どの程度この諮問会議で、その部分がデフレ圧力になるよ、だからプラス効果以上にマイナスが出る可能性もあります、このようにきちっと記述されています、基本方針の中に。その辺なんか、どうお考えになっているのか。見識の高い大臣からお話を承りたいと思います。

柳澤国務大臣 私は、具体的にその骨太の方針の中に、成長率であるとかあるいはデフレーターであるとかということが明確にはうたわれていないという理解をいたしております。それを補ったのが、先ほど小林政策統括官の言われた竹中大臣の談話、こういう位置づけになっていると思っております。

 私は、かねてこの問題が俎上に上がる都度に申しておるわけでございますけれども、金融の現象というのは、すぐれて実質の話ではなくて名目の話である。そこで、勢い私は、特に名目値において成長率というかそういうものに関心があるわけで、それは実質でしか考えていないから実質で言うんだといえば、それはそれで我々はこれを受け入れざるを得ないのですけれども、いずれにせよ、私が申しているのは、名目の成長率がマイナスであるというようなところでは、これは企業活動も活発に行われるとは期待し得ないわけで、そうだとすると、不良債権の処理についても、新規発生というものが業況の不振という形でどんどん生じてきてしまうということが大変懸念される。

 そこで、私はそのことをもう明確に申しておくのでありますが、私の所掌のことから申させていただければ、つまり、名目の成長率がマイナスになるというようなそういう政策態度でなく、ぜひ政策運営に当たってもらいたい、これは私の立場、所掌から要望しておきますということを発言しているわけでございまして、具体のこの記述ではいろいろのことがあるでしょうけれども、まだそこのところは定量的な計数としては出ていないということで理解しておりまして、そういう前提で、私の話もそれなりに考慮に入れられた経済運営が今後志されている、このように理解しているわけでございます。

上田(清)委員 ありがとうございます。

 私も確たる知恵があるわけじゃありませんが、今大臣がおっしゃったような懸念を抱いております。新規に発生する不良債権によって経済運営があるいは困難になるんじゃないかというふうな懸念を持っておりますので、この辺なんか、どういうつじつま合わせを今後政府内でされるのか、あと残り十五分、午後一時からまた議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 上田君の残余の質疑につきましては再開後に行います。

 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、上田清司君の休憩前の残余の質疑を許します。上田清司君。

上田(清)委員 幾つか経済財政諮問会議の中身についてお聞きしたんですが、十分な具体的なお話が聞けませんでした。

 一方で、不良化した、あるいは時代にそぐわなくなった企業を淘汰させながら新しい企業をきちっと起こしていく、こういう仕組みがある意味では語られているというふうに私は理解しておりますが、開業率などを比較した資料をお持ちしております。

 例えば、アメリカとの関係でいけば、この十年来の開業と廃業がどうなっているのか。こういうのを日本と比較していくと、アメリカなどは、開業率が九七年度で一四・三%、廃業率が一二・〇。そこにいきますと日本は、廃業率が、正確にちょっとわかりづらいところがありますが九九年度で五・九で、開業率が四・一という大変低い数値で終わっております。

 こういう新しい業を起こすような仕組み、多分このことを、新しい雇用で五百三十万の雇用創出、こういうことを言っておられるのかなと私は理解しておりますが、内閣府において、この五百三十万人の雇用創出、そしてこれまでの極めて低い開業率等も含めた施策をどのように考えておられるのか。このことについて具体的な内容があれば、お聞きしたいと思います。

小林政府参考人 まず、五百三十万人の方からお答えさせていただきます。

 今回の基本方針の中で、新たにサービス業を中心に五百三十万人の雇用増が期待されるという文章が入っておりますが、この基本方針におきまして、まず、経済財政諮問会議に設置されました、サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会、これを諮問会議の下部機構として設置をいたしまして、ここでいろいろ検討していただいたものを今回の報告の中に反映させたということでございます。

 緊急報告では、我が国経済活性化のためには、生活の向上と経済活性化にとって有用な経済成長可能性の高い分野を中心に、まず一つとしまして、規制改革、それから官民の情報公開、それから事後規制型行政への転換、それから子育てとか高齢者ケア分野等における公設民営の推進等々の民間活力を発揮させるシステムをつくっていこうというのが第一点でございます。

 それから第二点が、今後の成長サービス分野への労働力の再配分が円滑に行われるようにするための雇用構造の転換を進めるシステム改革が必要だと。例えば、一つは、就職情報の提供だとか能力開発、紹介システムの充実とか、働く人々の自己啓発の支援だとか、あるいは多様な就業形態を柔軟に選択できるような制度面での対応、例えば派遣だとか有期雇用だとか裁量労働だとか、そういうものが含まれます。

 さらには、女性の就業意欲を阻害しないような諸制度を見直すということで、税制だとか社会保険等が女性が働くということを前提にするようなシステムに変えていこうとか、あるいは雇用における性差別を禁止していこうとか、そういうことをいろいろ制度あるいは規制の改革を行って、分野ごとにいろいろ試算しまして五百三十万人という数字をつくっております。

 それからもう一点の、起業、創業の件でございますが、これは、今回の基本方針の中に七つの改革プログラムというのがございまして、そのうちの二つ目にチャレンジャー支援プログラム、個人だとか企業の潜在能力が発揮できるようにいろいろしていこうという中で、例えば、起業、創業の重要性を踏まえて税制を含めた諸制度のあり方を検討するというプログラムを入れているところでございます。

 以上でございます。

上田(清)委員 委員長も首をかしげておられましたけれども、五百三十万という具体的な話、いろいろだあっと言われましたけれども、どこでどうなっているのかよくわからない。それはあるんですか、ないんですか。

小林政府参考人 先ほどの雇用拡大の専門調査会の試算によりますと、九つの分野になっておりまして、例えば一つ目が、個人向け、家庭向けサービスということで、現在五百十五万人でございますが、五年後にはこれが七百十万人に期待されるということで、ここで百九十五万人。

 それから二番目が、社会人向け教育サービスということで、現在二十五万人が五年後には四十五万人ということで、ここで二十万人。

 それから三番目が、企業・団体向けサービス、ここでネットで九十万人の増。

 それから四番目が、住宅関連サービスということで、ネットで五十五万人。

 さらには、子育てサービスということで三十五万人。

 それから六番目が、高齢者ケアサービスで約五十万人。

 七番目が、医療サービスで約五十五万人。

 八番目が、リーガルサービスで約二十万人。

 さらに九番目が、環境サービスということで十万人でございます。

 いずれもこれはサービス分野ということでございます。

上田(清)委員 村田副大臣、実は、日本の産業構造を非製造業と製造業、二つに分けた場合、この十年、製造業は実は非常に生産性を上げてきている、逆に非製造業はほとんど上げていない。この乖離をどう埋めるかというのが、ある意味では経済政策の一つのかなめ、あるいは雇用創出のかなめだと思うんですが、今の話の部分で、じゃサービス産業である非製造業関連分野をどんなふうにしたら本当に上がるのかという答えは出ていないような、分野別にこれだけふえますと言うんですが、それの支援策というのはどういう形になっているのか、私はちょっと理解ができませんでした。

 非製造業部門をどれだけ効率を上げるかという具体的な数字のものは、ちょっとたまたまこの中の資料に、私の提示した資料には入れておりませんが、もう賢明な副大臣でございますからわかっておられると思いますが、まさに製造業は生産性を上げてきているんですね。負けない。

 しかし、非製造業がまるっきり、まさに今言われたサービス業で雇用を五百三十万ふやすという、これも意味はよくわかるんですが、この十年来なかなかその部分がうまく進まなかったわけですね。そういう部分に関して、どういう理解でそんなふうになるのか、にわかに信じがたい。

 しかし、このことを、今すぐはちょっと資料不足みたいな気がいたしますので、ぜひ資料を提供していただきたいというふうに思います。その上でいずれまた質問させていただきたいと思いますが、ただ、副大臣の見解として、なぜこの非製造部門が生産性を上げ切れないのか、この点だけはちょっとお伺いしたいと思います。

村田副大臣 私の所掌外でございますので、私の私見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 非製造業部門、サービス業につきましては、やはり人件費の占める分野が相対的に高い分野でございますから、我が国が非常に賃金が高くなっていく過程でもって非常にコストがかさむ、そういう分野であったということは言えるかと思います。

 ただ、この分野においても、IT革命の今後の進展によりまして、いろいろな意味で効率化できるという部門、分野が出てくると思いますので、今後は、新しい雇用の機会を増大する分野として私ども大いに期待しているところであります。

 そういう意味で、同時にこの非製造業分野での効率化が図られて、我々が低コストのそうしたサービスを受けられるような社会になるべきだ、こういうふうに考えておるわけです。

上田(清)委員 そこで、先ほどの柳澤大臣の認識とも関連してくるところでありますけれども、実は、今申し上げました製造部門が比較的、日本の経済成長を曲がりなりにも引っ張ってきた部分でありますが、直近の数字で、鉱工業生産の予測実現率が調査開始以来最悪の水準になっておりますね。あるいはIT関連でありますところの電気機械工業、これも予測実現率が九〇%という状態が直近の四カ月も続いているということでありますから、こういうことも含めていくと、景気の状況というのは急速に悪化しつつある、こういう認識でよろしいんでしょうか。それとも違う認識があるんでしょうか。

 柳澤金融大臣にちょっと、不良債権処理の問題もありますので、できれば見識の高い御議論を聞きたいんですが。

柳澤国務大臣 確かに、戦後、日本は製造業中心で、しかもその製造業の資本装備というか、そういうものが非常に高度化する中で、生産性も高く、またそれが原動力になって経済の成長を引っ張ってきたということが総括して言えるんだろうと思うんです。

 しかし、先進国経済と言ってしまうと語弊があるんだろうと思うんですけれども、例えばアメリカをとってみた場合に、国民総生産というんでしょうか、そういう中に占めるサービス業というのは、もう破格にウエートを増しているわけでございます。

 そういうようなことで、ある一国の経済が一定の成熟度を実現してしまった後においてそれ以上にボリュームを伸ばしていこうというときには、サービス業というものの伸びに期待せざるを得ないというか、そういうことによってボリュームの伸びが期待できるというようなことがいろいろ各方面で言われているというふうに私認識をしているわけでございます。

 そういう中で、日本の今の産業構造を見ますと、サービス業がアメリカほどのウエートになっていないということが見てとれますので、そういうようなところから、今後はサービス業の伸びに大いに期待しようじゃないか、こういうような考え方になるのはある意味で自然だろうと思います。

 もちろん、その反面で、日本の強みはむしろ製造業にあるんだから、製造業を今言ったようなプロセスの中でないがしろにするというか、軽視するというようなことはゆめあってはならないということが常に警鐘として鳴らされておりますけれども、しかし、そういう前提でやはり日本はサービス業の伸びというかウエートというものをここ急速に伸ばしていく必要があるということが、おおむね識者が一致しているところであろうと私は認識をしておるわけでございます。

 そういう中で今回、経済財政諮問会議のプロジェクトチームが、サービス業ということだけで限って見まして、今小林政策統括官からお話があったような数字が出されておるわけですけれども、あれは非常に、私もその場に居合わせたんですけれども、お金は要らないと。お金は要らなくて何が必要かといえば、ひとえに知恵である。それから政府の、こちらの方向に行くんだという、一種のデクラレーションというかそういうものである。それから、それに伴う必要な規制緩和というものが実行されたときには、国民の皆さんが、やはりそこに確かに需要があるんだということで、そういうサービスの比重の増大というものが期待できるということを言っておるのでありまして、私は、一つかねてからの日本の経済の課題というものにこたえるものになっているんではないか、このように見ておるというわけでございます。

上田(清)委員 大臣が長かったんで、もうほとんど時間がなくなりました。もう一つ聞きたかったんですが、それはやむを得ないと思いますが、私の方からちょっと気になるところだけ申し上げておきます。

 消費性向が急激に落ちていることですね。それから、失業の不安の統計が、一九七〇年以降最大数値がまた出てきております。失業におびえている方々が一番多くなってきているというこの率ですね。それで、鉱工業生産が非常に急速に悪くなってきている。この経済の数値、ここ二、三カ月で非常に急速に落ち込んできているということが一つであります。

 そういう中で、聖域なき改革、痛みを伴う改革、その痛みを受ける人たちはだれなのかということのセーフティーネットについて、ほとんどこの基本方針の中には触れていない。例えば、失業した人たちの失業保険を、場合によっては給付期間を長くするとか、もちろん、長くなればその時点に応じて少し減らしていくとかそういうことも考えなくちゃいけませんが、そういうことに全然触れていない。痛みを感じる人たちが一体だれなのか、その部分をきちっと把握しないでやっていったら、九七年、九八年の橋本構造改革の二の舞以上の形になる可能性が高いんではないかということで、改めてこの基本方針の再検討を要望したいと思います。要望してもなかなか聞かないかもしれませんが。

 さっきの調査の部分だけは資料を出してください。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山口委員長 中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。上田委員に引き続いて質問をしていきたいと思います。

 先ほどから、経済財政諮問会議の答申について議論が出ておりました。やはり議論すればするほど、これはもう少し総括的に、全体として論点をはっきりすべきだということを改めて思います。

 その上に立って私も、先ほどから、この底に流れるサッチャリズムみたいなものがあるという議論が出ていましたけれども、これは競争原理だと思うんですね。それを基調にしながら日本の再生をしていこうという、その議論の延長線上でいきますと、私は三つの条件が確実に抜けていると思うんですよ、この計画の中に。

 それは、まず一つは、今の経済の状況を見ていると、もう平常時を通り越していきそうな形の、非常に深刻な予感といいますか、流れというのが出てきている。先ほど上田委員からそういう指摘がありました。国民が本当に安心感といいますか、これでいくんだという腹を決めようと思ったら、その危機管理のシナリオだというふうに思うんですよ。何か起こったときに、どういうふうな腹の決め方をしていくから日本の政府に任せてほしい、こういう危機管理というものがこの計画の中には確実に欠如をしているというふうに一つは思います。

 それからもう一つは、競争原理ということ。これについては、規制緩和を含めて私たちも主張してきたことでありますし、当然そうしたことをできるだけ早く、かつ、のろのろやっているんじゃなくて短時間に仕上げてしまうということ、これだと思うんですが、しかし、その大前提として、この競争が公正に行われなければならないということだと思うんですよ。

 公正の原理というのがないと、これはどんなことになるかというと、先ほどの、先ほどのというよりもこれから議論をさせていただきたいと思うんですが、この銀行法の中でも問題が出ているように、本当に一部のいわゆる権力構造の中で曲げられた競争、それと同時に不正というものがその中に入り込んでくると、国民はついてこないということだと思うんです。それが今一番問われておることでありまして、これに対するしっかりとした施策が出てきていないということ、これが、恐らくこの政策自体がどこかで行き詰まってくるだろうということの一番最大の問題だというふうに思います。

 それから三番目は、先ほど議論が出ましたが、セーフティーネット、一番弱いところにしわ寄せが行くということに対して、どういうふうに対応していくかということ。これが弱い。具体的な話が先ほどの積み重ねの中で出てきていないということ。

 この三つが私は最大の論点になっていくのだろうというふうに思っておりまして、こんなことの中身を、これからこの委員会の後の予定がないわけですが、この委員会でも、特に予算委員会を開いてこれを議論するということ、その機会を国民に対してやはり開示をしていく、その中で、選挙でそれを国民に選んでもらう、そういうことだと思うんですが、どうでしょうか。

村上副大臣 中川委員の御質問にお答えします。

 危機管理の問題、それから公正原理における競争の原理、それからセーフティーネット、それぞれ本当に重要な課題だと思うんです。

 ただ、私は、先週、土日にかけて北海道のタウンミーティングに行ってきました。北海道のタウンミーティングに行って、ある企業の社長さんが言っていたのは、それぞれの、国に対して要求したりすることも重要であるけれども、しかし各企業は、各個人個人の構造改革も重要じゃないか、自分たちのそれぞれにおけるバージョンアップを図ることが大事じゃないかということをおっしゃっていたのが非常に印象的でありました。

 私は、まさにそこが、はっきり申せば今まで官に対する甘えというか、すべて国がやってくれるのだと。国も地方も、最終的には国がやってくれているのだというその根本を、やはり違うのだ、確かに財政再建においては国が先導的な役割をやっているけれども、不良債権の処理にしても各企業の経済の構造改革にしても、やはり主体は民であるということを今回認識し、御協力いただくのが本来のあり方じゃないか、そのように考えております。

中川(正)委員 だから議論をしていきましょうと、一言、一番最後に言わなきゃいけなかったのです。

 だから、委員長、改めて要望させていただきたいと思うんですが、この問題について、ぜひこの委員会でもやっていただきたい。それから、議運の方で予算委員会開くべしということを、この委員会の意思としてひとつ持っていっていただくというふうなこと、このことも含めてお願いを申し上げたいと思います。

山口委員長 また機会があったら理事会で協議いたします。

中川(正)委員 機会があったらというのは何ですか。(発言する者あり)まあ、そんなことだというふうに思っております。

 続いて、丸谷政務官がちょっと早目に退室をされるということでありますので、私は女性に優しいものですから、ちょっと順番を変えて、こちらの方から質問をさせていただきたいと思います。

 セーフガードあるいはWTO、FTA、今貿易の問題ということでありますが、まず、改めてお聞きをしたいのですけれども、セーフガードの発動についてなんですが、これは中国と今折衝が始まっておると思うんですが、現時点でどのレベルの話をしておられるのかということですね。それから、これは二百日の暫定ですが、その後どういうふうになっていくのかということ。それから、この後、まだほかに出てきている、いわゆる申請というのは出てくる可能性のあるものがあるわけですが、トータルにこれをどういうふうに判断をしていくのか。

 これは外務省だけじゃなくて、農林省あるいは経済産業省、それぞれあると思うんですが、それぞれの立場で手短に答えてください。

丸谷大臣政務官 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘をいただきました、我が国が中国の三品目にセーフガードを発動したことに対しましての中国からの対抗措置の件についての御質問だというふうにお伺いをしておりますが、現在、事務レベルにおきましてこの措置に対して厳重な抗議をさせていただいております。今後は、中国側の輸入特別関税措置の撤回を引き続き強く求めていくとともに、ネギ等三品目に関しますセーフガード措置について、関係省庁とともに密接に連携協力しながら、今後とも、中国側との話し合いを通じ、双方にとって受け入れ可能な解決法というのを今一生懸命探しているところでございます。

 また、今後申請される項目につきましては、幾つかございます。今調査しているところでございますけれども、まだ申し上げる段階にないというふうに御理解をしていただければと思います。

西川大臣政務官 ただいま丸谷大臣政務官からお答えしたことに重なる部分がございますけれども、中国政府が発表しました今回の日本製自動車等の品目に対する特別関税賦課の措置、これは、WTO協議のセーフガードにつきましては、第八条、暫定措置につきましては、対抗措置を暫定措置の間はとってはならない、こういうこともございますし、それから、日中貿易協定の第一条には最恵国待遇の決まりもあって、そういうようなこともございますので私どもとしては、これは正当化し得ないものである、まことに遺憾であるということで、ただいま丸谷さんからもお答えがありましたとおり、中国政府に対して本件の撤回を求めて協議に入ろうと思っております。

村上副大臣 中川委員の御質問にお答えします。

 今、中国との交渉日程については、まだ未確定であります。ただ、確定措置の発動については、輸入増加により国内産業に甚大なる損害を与えたかどうか、直近の状況も踏まえた実態のさらなる把握、それから生産者、消費者等の利害関係者の意見を聞いて検討すること、そして三番目は、国内産業の構造調整方策の検討を行い、これらを総合的に勘案して、要件の充足及び発動の可否を判断することにしておりまして、今後ともこうした検討を進めてまいりたい、そういうふうに考えております。

中川(正)委員 なかなか今の段階ではっきりした方向性が出ていないということが共通した答弁なんだと思うんですね。

 これは関税ということになるわけですが、これだけそれぞれ各省庁入り組んでいて、問題が出てくるごとにその省庁の基本的なベースが変わってくる、そういう対応を今日本の政府はやっているのですよね。

 ところが、よくよく考えてみると、これは個別事象的に対応するというマターじゃなくて、WTOのあり方を含めて、今ブッシュ政権にかわってから特にそれが顕著なんですが、WTOだけで歩むんじゃなくて二国間貿易なり、あるいはブロック化した形でのフリートレードをやっていこう、そういうもう一つの戦略というのが当然出てきているという問題意識がこれあり、そしてそれに対して、これはいわゆる商品といいますかグッズの貿易、交易だけじゃなくて資本の動きを見ていると、例えば国内のいわゆる資本投下に対して海外からどれだけ貢献しているかという比率なんかを見ていると、アメリカとかヨーロッパというのはもう既に三〇%以上が海外からの投資で新しいものが始まっているという現状に対して、日本はまだその部分が一〇%もいっていないんだというふうなもう一方の話があって、ということになると、それなりのこうしたものに対する日本としてのしっかりした戦略というものがここで打ち立てられないことには、場当たり的にその都度その都度国内も海外もがんがん騒ぐだけで、出てきたものは何もないというふうなことがこれからも続いていくんじゃないかというふうに思うのですね。

 その上に立って、これは塩川大臣、これを戦略的につくり上げていくキャビネットの中の機能というのは、今どこが担っているんですか。これは関税だから共管で、財務省もその一つ、中心にかんでいるんだと思うのですが、どうもしかし、さっきから話を聞いていると、それが中心でもない、そんな戦略的な話も出てきていないということになりますしね。外務省というのはまた、どっちかというと相手の立場で一生懸命話をしてくるだけで、それがまとまってこないということだろうと思います。どう思われますか。

塩川国務大臣 日本の経済がグローバリゼーションになりまして、やはり国際化して統一化していかなきゃならぬときでございますので、これを政府の行政的な手でセーブしていくということも難しいだろうと思いますし、といって、やはり経済界自体が、日本の将来の産業構造との間である程度自覚を持った行動をとってもらいたいと思ったりするのが我々の欲望なんでございます。

 ちょうどこれを歴史を顧みましたら、十九世紀から二十世紀に移行していくときに、イギリスにおきまして植民地がどっとふえたものですから、イギリスの産業界の資本家はずっと海外へ出ていって、それらの逆輸入で英国が非常に困った事態になったときがございまして、そのときにちょうど今のセーフガードのような措置を英国が講じたことがございましたが、そのときにやはり国民的世論として起こってまいりました最大の対策は、海外と国内との経済の均衡をとるということだったと思うのです。

 今、私たちが見ておりますと、特に私は大阪でございますけれども、中小企業者がそういう海外からの逆輸入に非常に悩まされておりまして、それがための基盤が非常に脆弱になってきております。といって、その根本は、中小企業者が海外へ出ていって、そしてつくった基盤が事態になっておる、そういう矛盾をはらんでおりますので、この統制につきましては、私たちはなかなか難しいことだと思いますけれども、要するに産業界の自覚にまつ以外にないだろうと思っております。

中川(正)委員 いや、産業界というんじゃないと思うのですね。これはやはり政府の中の、あるいは国会も含めて私たちの議論だというふうに思います。

 さっきの海外へ向いての生産拠点の移転の話にしても、かつてはアメリカやヨーロッパから過剰な日本の輸出を責められて、それで、消費者のところへ向いて、消費地へ向いて生産拠点をつくっていく、そのために奨励したのですね。奨励した関税システムというのがまだ残っているのですよ。原料を持っていって生産するということで、残っているのですね。それに対して、東南アジアあるいは中国へ向いて生産拠点をつくって、今、飽和状態に近くなっているとも言われていますが、この構造というのはまた別で、安い労働力と、生産コストを下げるためにそこでつくって日本へ逆輸入してくるというプロセスです。これは一昔前の話と今の構造と違うのですよ。それに対してシステムがうまくリンクしていない。

 あるいは、特殊法人が問題になっていますけれども、そうした特殊法人を使った形での貿易振興策でも、しっかりスイッチができていないというふうなこと、こんなことが片方にあるわけです。それは、やはり総合戦略がないということだと思うのですね。

 そういう意味で、これは恐らく個々に話をしていったって、為替の問題も含めて、いわゆる円安という手法も含めて、全部話をしていたって恐らくまとまっていかない話になるのじゃないかというふうな気がしまして、そのことを改めて指摘したかったということなんです。

 そのことを踏まえて、どうなんですか、FTA、これはシンガポールと今度締結をするということになりました。あと韓国、メキシコと出ているようですが、このFTAに対して日本としてはどうしていくのか、どういう戦略を持っているのか。これはどなたが答えたらいいのか私はわからないけれども、お願いをしたいと思います。

西川大臣政務官 できるだけ御質問に沿うようにお答えしたいと思います。

 グローバル化が進んだ現在、ビルトインアジェンダに代表されるように、各国は、自国の企業とか国民がグローバルな市場で競争力を発揮できるように、自国の特性を生かすことに躍起になっているわけであります。

 こういう国際ルールづくりにしのぎを削っている状況の中で、我が国企業、国民が国際競争力が発揮できるようにいたしますために、我が国といたしましても、国際経済の動向や国内経済の状況を踏まえながら、幅広く政策分野を視野に入れて、我が国の長所が十分に発揮できるような戦略的な通商政策を、ただいま御指摘のような多角的貿易体制、これを維持強化していくことが必要でございまして、これは先生御指摘のとおり、ひとりWTOにかかわるだけでなく、自由貿易地域をつくっていくということでいろいろと世界じゅうにそうした動きがあるわけでございますので、利害の共通する国や地域との間で機動的な取り組みを、可能な限り二国間やまたはそれ以上の地域の広がりを戦略的に組み合わせていくという多層的な通商政策を展開していく、こういうことだろうと思っております。

中川(正)委員 失礼ですが、それは戦略とは言わないのですね、そのレベルでは。両方うまくやっていきましょうというだけの話だと思うのです。

 だから、FTAを使って日本が何を目指していくのかというのをはっきりさせる。例えば、アジアに対してブロック化を意識しながら、ヨーロッパやアメリカに対抗していくのかとか、そんな話が出てこないと、あっちもこっちもうまくやっていきましょう、国内は農業生産の問題があるんだから、それについてはぼやかしていきましょうというふうなことでは、本当にこの国、取り残されていくんじゃないかというふうに思うのです。

 そのことを改めて指摘しておきたいと思いますが、これはこれからまた折に触れてそれぞれ委員会でやっていきたいと思うのですが、ここで本当に指摘しておきたいのは、まずその戦略塔をつくってくださいよ、政府の中でも戦略塔を。これはこのままばらばらでは、どうにもならないというふうに思います。

 それでは、次のテーマに移らせていただきます。ありがとうございました。

 銀行法についてまず先にやっていきたいと思うのですが、これはトータルで一点だけです、質問したいのは。

 これは、いろいろな議論がこれまで積み重ねられてきたということであればいいのですけれども、どうもここに至る経過というのは、実際の動きがあって、民間からどんどんそういう話が実質的に動き出してきて、どうにもならなくなって整理をしようじゃないかということ、これが一つ根底にあったということだと思うんですが、私は、それだけに肝心なところの議論が、まだ詰めていない。

 それは、端的に言えば、日本の金融監督システムというのがヨーロッパ型でいくのか、アメリカ型でいくのか。ヨーロッパというのは、改めて専門の皆さん方に説明するまでもなく、民間参入やりますよということだと思うんですね。ところがアメリカは、一たんやったことをやめていますね。これはやめたなりの理由があるんだろうというふうに思うんですね。

 そこのところは、どういうこれまでの議論の積み重ねの中で、日本の場合は正式に民間事業参入を認めていこうという経過になったのか。アメリカがやめた理由というものに対して、どういう論理構成をしてこれをやろうとするのかというところ、ここをお尋ねしたいというふうに思うんです。

村田副大臣 アメリカはやめたとおっしゃっておられますけれども、アメリカは銀商分離ということが一つあります。そういう中で銀行の健全性の確保とか、経済力の過度の集中、そういうものに対して防止をする、こういう観点が取り上げられている、こういうふうに思います。そうはいっても、アメリカも例外はあるようでございます。

 一方、日本の方でございますけれども、日本は、禁止されていたわけじゃなくて、将来の金融業のあり方を考えたときに、異業種から銀行業への参入が実際あるわけでございますけれども、そうした異業種からの参入によって顧客に対してすぐれた金融サービスを提供する、こういうことも国民経済的には大変すばらしいことだろうと思うし、また金融界の活性化にもつながることであろう、こういうことでありますから、基本的に歓迎すべきことであろうかというふうに考えられるわけであります。

 ただ、問題になるのは、異業種からの参入にかかわりませず、主要な株主が異動する場合において、その適格性確保のためのルールについては日本の今の法制では手当てされていないということから、こういう現状を踏まえまして、銀行経営等の健全性確保の観点から、新規に免許を取得して銀行業に参入してくるケース、それからまた、既存の銀行等の株を取得して経営に関与する、そういう株主についても適切なチェックの仕組みを考えよう、こういうことであります。

 そういう意味で、日本では、銀行業に対する刺激を与えるという意味で歓迎されるべきことでありますけれども、一方において、金融という大事なシステムの健全性を確保するという観点、これもあわせて守らなければいけないというふうに考えた次第でございます。

中川(正)委員 この法案そのものの構成が、まさに言われたとおり、親企業といいますかいわゆる民間事業者の資格と、それから経営の健全性、そういうものを確保しながら、銀行業務のリスクというのをそこでしっかり確保していこう、こういう観点というのはよく見えるんですよ。

 ところがもう一方で、アメリカの議論というのは、これはボルカーさんやあるいはグリーンスパンさんそのものも、いわゆる一般事業者が銀行に対して参入をしてくるということに対しては、反対だということをそれぞれの委員会で表明していますが、その奥にあることは、パブリックということだと思うんですね。パブリック、いわゆる公的性格があるということ。

 それからもう一つは、いわゆる公正な取引がそれで確保できるのかどうか。法律ではいろいろ枠組みは決められる、しかし実際の運用の中でそれが確保できるのかどうかということに対して疑問がある。だから、一度その片隅だけでも穴をあければ、それからもう本当にすごい勢いでこの流れというのがとまらなくなってしまう。ラクダの首の例とかなんとかよく言われますがね。そういうような議論を経た上でアメリカはこれをとめたということだと思うんですね。

 それを当てはめて、日本の今の監督官庁の実績、実際のパフォーマンスと、それからそれを運用していく中でその体制を見ていると、これまでの議論でも明らかになってきたように、これはさっぱり信用されていない、体制そのものも整っていない、こういうことだと思うんです。そこのところをはっきりと説明しないと、なし崩しに流れをつくっているだけで、あるいはそれはサービスというのは向上するかもしれないけれども、サービスだけじゃなくて、その後ろにある、本来我々が痛い目に遭ってきたリスクということから考えると、答えになっていないというふうに思うんですね。

 そこのところをこれは大臣から、聞いていただいていましたか、大丈夫ですか、大臣から改めて、そこの分野をどうしていくか。我々は、日本版の独立した検査機関をつくるべきだ、もっともっと中に入り込んでやるべきだということを具体的に提案もし、陣容そのものも、今のような陣容でやるんじゃなくて、チェックシステムというのはこうですよというような提案までさせていただいていますが、そんなことも含めて、法律の形じゃなくて、実際の運用の中の話を一度総括していただきたいというふうに思うんです。

柳澤国務大臣 今委員の方から、アメリカと日本の今度の道行きに関しまして、アメリカのことをよく研究してみたのかという問題提起が一つ冒頭ございました。これは今、ボルカーもグリーンスパンも反対なんだぞという御注意をいただいたんですが、私も、あの二人を思い浮かべますと、多分中川委員のおっしゃっているとおりだろう、こう思います。

 私のわずかな経験でも、率直に言って、アメリカは、金融界の活力という点については、満足というか、むしろそれに圧倒されているような、そういう状況に今あるんだろうと思います。むしろアメリカが心配しているのは、活力があり過ぎていろいろ将来問題を起こしはしまいかというようなことで、勢い行政の姿勢というのは防御的、保守的になっているというように私はちょっと感じているんです。

 ところが、我が国はどうかというと、我が国の金融界というのは、活力が余り過ぎてこれをどう制御するかなどということとはおよそかけ離れていまして、もっと活力を持って収益力を上げる銀行にしなきゃいけない、国民に対して金融サービスを十分に提供しなきゃいけないというようなことで、むしろそれをもっと積極化する、促進するというようなことを今姿勢としてとっているというふうに総括できようかと思うんです。今回の措置も、ある意味でそういったような考え方のしからしむるところ、こういうふうな形をとっているというふうにも思います。

 ところで、そうやった場合に、ある意味でいうと非常にリスクを冒しているわけでございまして、そのリスクというものについての備えは十分か、こういう問題提起を今いただいたわけでありまして、その点、私ども、本当にある意味で先生御指摘のとおりだと言わざるを得ないと思います。

 もちろん、金融検査の量の問題それから質の問題、これは双方ともにとても十分というような状況にありませんので、これから我々は、量の問題については関係当局の理解を得ながら、また質の問題については大いに研修なり民間との交流なり、先ほど原口委員も指摘されましたけれども、そういうようなことでもって我々の力量を錬磨していくということが強く望まれていると私は認識しております。そういう認識に立って、これから私ども、とにかく一歩でも二歩でも前進するように努力をしてまいりたい、このように考えています。

中川(正)委員 そこのところは、精神論で終わるんじゃなくて、この法案が最後まで行く前にぜひ具体的に出していただきたいというふうに思うんですよ。そういう前提がないと、先ほどからもいろいろ具体的な話が出ていましたが、これまで以上にリスクは高くなるし、繰り返すんだろうというふうに思うんですね。そこのところを改めて。

柳澤国務大臣 いろいろ頭の中にはないわけではないんですけれども、それを政府の施策として議会において明らかにするほどまで熟度というか、そういうものを持ったものが提出できるかどうか。努力はいたしてみます。

中川(正)委員 これは一番最初の話に戻るんですが、この問題だけに限ったことじゃなくて、共通したところがあるんですよね。政策としてお題目は出るんですが、その中身の実効性というのがこれまで担保できなかった。日本の行政システムそのものがそうした形でパフォーマンスが問われている、こういうことでありますので、この問題だけじゃなくて、それぞれの分野で公正な、いわゆるルール行政と皆さんみずからの口からよく言われていますが、このルール行政を具体化するという前提がないと、これは必ず途中で行き詰まるということを指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、先般、少しこの委員会でも取り上げさせていただいたんですが、財政問題について進めていきたいというふうに思います。

 これは先般の議論のまた続きなんですが、地方財政から入っていきたいと思うんですけれども、地方財政が非常に不透明で怪しい状況になってきているというわけですね。その中で、先般も取り上げさせていただいた例えば三セクの問題、あるいは土地開発公社、住宅供給公社等々含めた公社の問題などの実態なんですが、これだけ民間でいろいろな資料が出ている割には、正式に政府のサイドからこういう状況ですというのがまだ出ていないんですね。

 これについて、総務省、来ていると思うんですが、その実態の方からまず説明をいただきたいと思うんです。

遠藤(和)副大臣 第三セクターに対する御質問でございますが、直近の総務省の調査、二五%以上出資法人によりますと、出資につきましては、地方団体の第三セクターに対する出資金の総額は一兆七千八百四十一億円です。それから、損失補償につきましては、地方団体が損失補償を行っている第三セクターは、六千七百九十四法人中七・七%に当たる五百二十法人でございまして、損失補償限度額は二兆六千三百十四億円です。

中川(正)委員 これは形の上のデータということだと思うんですね。これの実態がどうなっているのか。どれぐらい債務超過に陥っている三セクがあって、具体的に地方自治体が関与しながら話し合いの中に入り込んでいる実態というのは、どのようにとらえておられますか。

遠藤(和)副大臣 第三セクターが破綻した場合の地方団体の負担ですけれども、これは法的には原則として出資の範囲内の負担、損失補償契約に基づく負担等に限られるものでございます。

 損失補償につきましてはただいま申し上げたとおりでございますが、地方団体が損失補償を行っている第三セクターの数は、六千七百九十四法人中七・七%に当たる五百二十法人と余り多くはありません。この点について言えば、第三セクターの破綻が直接地方団体の財政運営に影響するようなケースは少ないと考えております。

中川(正)委員 いや、少ないということはないでしょう。二兆六千三百十四億、これが、損失補償をしていて、補償しなければならない。これが破綻、いわゆる問題がある第三セクターというのをどの程度つかんでいるかということだと思うんですが、さっきの話では、ほとんど問題ないという意味なんですか。

遠藤(和)副大臣 損失補償につきましては、第三セクターの破綻によって金融機関等に損失が生じた場合に限って負担が生ずるものでございまして、二兆六千億円と申し上げましたが、その限度額はそのまま実行されるものではございません。

中川(正)委員 だから、実態はどれぐらいなんですかというふうに聞いているわけですよ。

遠藤(和)副大臣 具体的に金融機関等に損失が生じた場合ということは、まだ生じておりません。

中川(正)委員 いや、損失が生じていないということはないでしょう。もう破綻処理に入りながらあちこちの自治体で話し合いがあって、それで社会問題化しているんですよ。それはどういう認識なんですか。

遠藤(和)副大臣 ですから、地方公共団体にどんな影響があるのかということでございまして、第三セクター自体の破綻ということと地方公共団体の破綻とは全く性格を異にしております。総務省として所管しておりますことは、地方自治体をどうするかということでございまして、破綻が行われないように地方公共団体で自助努力をしております。

 もし仮に地方自治体が破綻をするということになりましたら、これは法律でもって、地方財政再建促進特別措置法に基づきまして、その地方団体に財政再建団体になっていただきまして、国の管理のもとにきちっと再建をしていただくということでございますが、その例は、第三セクターが原因になってこうした財政再建団体になるというところは、今のところないということを申し上げているのでございます。

中川(正)委員 いや、実際に赤池町がそうでしょう。これは唯一なんですかね、まだ。そういう破綻処理じゃないけれども具体的に財政再建団体として指定されているのは。もう始まっているんですよ。

 もういいです。私がお願いしておきたいのは、これは総務省の方で、実際、それぞれの第三セクターの十分な調査をしていないんですよ。それは、さっきの話で、地方自治体とは関係ないからというような話が出たけれども、そうじゃない。これは補償しているんですから。そうすると、補償した先までつかんで、財政状況どうなっているんだというのは、そんなものは論外ですよ、さっきの答弁というのは。

遠藤(和)副大臣 論外の御質問ですからきちっとお答えさせていただきますが……(発言する者あり)まあ、静かにしてください。

 今、財政再建団体になっているのがあるだろうという話でございますけれども、赤池町の例がありましたけれども、これは第三セクターとは全く関係のない話でございます。第三セクターが原因になって財政再建団体になる、こういう団体は一つもございません。

 それから、第三セクターを管理しているところは、監督しているところは総務省ではございません。私どもは、第三セクターに出資をしている地方公共団体に限って、あるいは損失補償をしている地方公共団体に限って、その地方公共団体をきちっと監督するという立場で見ているわけでございまして、第三セクターそのものの経営破綻を総務省が監督しているものではございません。

中川(正)委員 いや、質問をすりかえている。もうこれ以上は議論しても仕方ないけれども、監督するとかせぬとかというような話じゃないんですよ。そうじゃない。地方自治体がこれから健全に財政を維持していく、あるいは再建をしていく上に、この第三セクターという問題が、これは無視して通れないでしょう。それで、実際にそれぞれ破綻が起きている。そして、補償もしている、出資もしている。この分が、それぞれ地方自治体に対して負債としてこれからかかってくるわけですから、その把握をしっかりとして、その上で対策を立てなければいけないでしょう、こう言っているのに、その監督とか何とかというのは、そんなすりかえの答弁はだめですよ。ちゃんと政治家としての判断をしてください、官僚じゃないんだから、ということを指摘しておきたいと思います。

 そういう上に立って、これはなかなかはっきりした数字が出てこないんです。出てこないけれども、財務省のサイドとして地方を考える場合に、このことは本当にしっかりと把握をしていくということが前提だと思うんですよね。これは財務省としてどういう見解をお持ちですか。

塩川国務大臣 この第三セクター並びに一部事務組合でやっております地方自治体をめぐるこういう財政問題は、抜本的に改正しなきゃならぬ時期がいずれ来るだろうと思うております。目下、当分私たちの一番関心を持っておりますのは、一部事務組合は健全に経営してほしいと思っておりまして、そのことの精査をこれから始めようとしております。

 それから、引き続きまして土地開発公社等、地方自治体の発展の基盤をつくるためにずっと土地を買収いたしましたものがございまして、それが、私の個人的な記憶でございますけれども、平成十一年度で地方開発公社等が持っております土地の簿価が大体八兆七、八千億円ではないかなと思うておりますが、それが取得価格と比べまして相当低下しておることも事実でございますので、この処理がやはり緊急の問題になってくると思っております。

 続いては、第三セクターの問題でございますが、この第三セクターは、直ちに財務省自体がこれに関与をするということももちろんできませんしいたしますので、まずはとりあえず総務省におきまして第三セクターの種分をしていただいて、行政上、住民の生活上必要なものの第三セクターは、これは健全に維持していく方法を考えなきゃなりませんし、そして同時に、経済的あるいは事業的に考えられた第三セクターにつきましては、これは財務省と総務省双方協議して、やはり早く解決しなければ、このことが地方自治体の財政に非常に大きい負担となっておることは事実でございまして、それがために、各段階におきます、地方自治体が一般財源をもってそれを補給しておる、この財政的負担というものを一刻も早く軽くしていくために、双方で協議して解消していく方法をとらざるを得ないと思っております。

中川(正)委員 前回これを議論したときに、柳澤大臣の方から、地方自治体はキャッシュフローがちゃんとあるから、いわゆる元があるから大丈夫なんだ、こういう認識の中で、例の地方債のリスクウエートを議論したときに、そういう根拠づけの中で大丈夫だ、こういう話だったと思うんですね。ところが、会社経営と一緒で、もう一つ、バランスシートがあれば、いわゆるストックの部分と合わせてキャッシュフローを議論したときに、これはあながち大丈夫だとも言っておれないところなんだろうというふうに思うんですね。これは国の運営も同じようなことで、だからバランスシートを一度つくりなさいよということだと思うんです。

 さっきの第三セクターなり、あるいはそれぞれ関連法人、土地開発公社中心に周辺部分、これに対して地方自治体が既にコミットして不良債権化している部分、これを早急に表に出す、その上で、先ほど塩川大臣のお話のように対策を考えるというプロセスは大切なんだろうと思うんですが、もう一方で、それを出していくときに、やはりリスクの問題が出てくると思うんですね。それが、逆に言えば地方自治体が健全な財政運営をしていくときに、自分の自治体自体のリスクというのを勘案しながら借金をするということですから、地方債にやはりつながってくるんだろうというふうに思うんですね。

 過去はともかくとして、過去は、一たん国と同じような形で見ていこう、こういうことでこれまでやってきたわけですが、事ここに至っては、ここをやはりはっきりしていかないとやっていけない。日本の国債自体が今度は危なくなるというようなところまで来ているように私は認識をしているんです。そこのところ、もう一度お尋ねをしたいんですが、過去の問題はともかくとして、これからの話としてどう認識されていますか。

柳澤国務大臣 地方自治体というものを、法的にもあるいは財政的にも、これからどう位置づけていくかということにかかっていると私は存じます。

 現在のように、財政的にほとんど自治省が家父長的に全部面倒を見て、しりをぬぐってくれるというシステムのもとでは、これはもうリスクウエートはゼロというふうに言って何も不思議はないと私は思っていますけれども、これから、もし、そういうシステムではなくて、完全に独立の一つのエンティティーというか、そういう団体として自己責任でもってやっていくんだということになれば、これに対する貸付金なり、あるいはそれが発行する債券を引き受けるということに伴っては、それ相応のリスクがあるというふうに考えざるを得ないというふうに思います。

 ですから、すべからく地方公共団体の法的、財政的な位置づけをどうするかということにかかっているし、場合によっては、今私が申したような、大きな転換をして位置づけを変えるということになれば、それは金融機関の側も今までとは随分違った対応になる。リスクはもちろん存在するということですけれども、リスクが存在すれば、地方債への応募にしてもあるいは貸し付けにしても随分違ったものにならざるを得ないだろう、このように考えます。

中川(正)委員 その議論に沿って申し上げると、今回の経済財政諮問会議で出てきた地方分権論あるいは財政移譲論等々のその根底にあるのは、それぞれがパートナーとしてやっていきましょうということだと思うんですよね。それをきっかけにしながら具体的な議論が始まってくるという解釈でいいわけですか。

柳澤国務大臣 その方向での話ではあるということは私もそのように理解しますけれども、さて、具体的にそれがどうなるかということは、まだ見えていないんではないか、このように考えています。

中川(正)委員 もう少し話が見えないんですけれども、その具体的なというのは、具体的には何をいうんですか。

柳澤国務大臣 要するに、税源の移譲というものが言われているわけですが、それがどういうふうなことになるのか。特に私は、財政調整というものは少なくとも必要になるんでしょうけれども、財源保障というようなことは一体どうなるか、こういうようなことが全然見えていない。

 それから、地方債について申しても、地方債の後年度負担とその交付税、交付税という言葉を使うかどうかはともかくとして、財政調整あるいは財源保障との関係はどうなるのかというようなことがまだ全く見えていない、私はそのように理解をしております。

中川(正)委員 最後に、総括的にお尋ねをしたいんですが、これは冒頭私が今回の諮問会議の中での欠けている部分として指摘をしたところなんですけれども、いわゆる危機管理。

 これは不良債権の議論をするときにいつも出てくる話なんですが、いわゆる十二・六兆円をベースにして政策を立てるのか、それとも六十三兆円なり百二十兆円なりというのをベースにして政策を立てるのかということだと思うんです。今のところは、十二・六兆円をベースに直接償却をやっていく、それの年限はああだこうだという話ですよね。これだけではどうもマーケットも満足しないし、それぞれ国民も、九月期を迎えて不安でしようがないという心理状態があるわけですよね。

 それだけに、逆に、日本の政治の進め方というか行政の進め方というのは、これはあらゆる分野でそうなんですが、万が一のことに対しては触れないでおこう、これに触れると本当に万が一になっちゃうんじゃないか、そういうおそれがあるよというのが大臣の気持ちの中からいつも出てくる。だから、我々に、あんまり極端なことを言うな、極端なことを言うな、こういう話なんだというふうに思うんですよね。

 ところが、それがために、これはもう原子力行政あるいは国家の危機管理等々あらゆる分野でその発想があるものですから、いざとなってそれが起こったときに、何もできていない、だれがどうするかもわかっていない、こういうことなんですよ。普通は、本当に我々に説明責任というか説明能力があって信頼性がある、そういう前提であれば、これはやはり、もしかのときにはこうなりますよという大きな危機管理政策というのがあって初めて国家も動くし、国民も安心するんだ、これが正論だというふうに思うんです。

 その上に立って、もう国民の心理というのは、そういうものも欲しいなと。その上に立った形で総理大臣はどうするのか、公的資金はどうするのか、それがどれぐらいの規模で用意がされるのか。あるいは、それの前提として、公的資金を使う場合にはフェアでなければならない。そのフェアということ、公正ということはどこで担保されるのかというふうなことを見始めているということだと思うんですよ。

 そこについて、改めて、大丈夫ですよと、ちょっとしっかりと危機管理の認識というのを説明していただきたいと思うんです。

柳澤国務大臣 確かに、私どもは、どの性格の危機に対しても、これをあらかじめ大っぴらに論ずるというのを避けたいという気持ちが正直言ってあろうと思います。これは、多分私は、やはり特に答えが見つからないことについて、あらかじめこういう危機が来ると言うことを避けたいという気持ちが強い。それは、答えがあれば、こういう答えですからこういうカタストロフィーがあってもかくかくで処理できますよということで、割とこれは言えるわけでございます。

 それはともかくとして、今、中川委員御質問の金融の危機に対しては、これは答えが用意されております。これはもう国会というか議会の御協力を得て、預金保険法の改正のもとで金融危機対応勘定というものが置かれ、また、金融危機対応会議というものが設置されておりまして、これはもう先般の金融再生法及び早期健全化法の中身がほとんど動員できるという仕掛け、仕組みでございます。したがって、そんなことはあってはならないことなんですけれども、万が一金融危機というようなものが起こった場合でも、内閣総理大臣のもとでその対応が、措置が決定できますし、そしてその結果については国会に報告をするということになっておりまして、その面では公正性も、緊急事態という限定のもとではこれを担保するという仕組みだと言っていいと思うんですが、そういう仕組みもできておるということでございますので、国民の皆さんにはその点では安心いただけるんではないか、このように考えております。

中川(正)委員 最後に指摘をしておきますが、さっきの緊急事態に対して本当に知りたいのは、システミックリスクの定義なんですよ。いつからそれが始まるんだ。例えば、長期金利、もう一つ上がるんじゃないかどうなんだ、そういう話だとか、あるいは九月の決算期、本当に各銀行はいけるのか、株価がどうなるのか、こういう思惑というのはあるわけですよ。それに対して、枠組みだけを話するんじゃなくて、本当の意味での危機対応というのが何なのかということ、これがわかっていないということ、ここを指摘させていただきたいというふうに思うんです。

 またもう一つは、本当にそれがやれるのかな、どうかな。これだけいわゆる公正さということが欠けている、その中身が今あちこちで指摘されていますが、そういうことが行われている中で、本当に公的資金が使えるのかな、そういう問題点ももう一つあるんだというふうに思うんです。

 そのことを指摘させていただきながら、私の質問を終わります。以上です。

山口委員長 中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 財政の健全化のお話をずっとこの委員会でもさせてきていただいておりまして、来年度の国債の発行額を三十兆円以内に抑えていくということの中で、地方に行くお金を一兆円削る、また国のお金で二兆円を削減するというふうなことを財務大臣がおっしゃっておりまして、私もずっとその中身について聞かせていただいてきたわけです。

 その中で、特に地方へ行くお金の話を六月の五日に財務金融委員会の方でさせていただきまして、地方財政計画が八十九兆円、約九十兆円ぐらいあるので、一%削って約一兆円、そうすることによって、交付税、国庫支出金、合わせて一兆円を削減したいというふうに塩川財務大臣がおっしゃっておられまして、私は、地方財政計画全体を一%削減しても、すぐにそれが交付税や国庫支出金には一兆円という形でははね返らないのではないかという問題意識を持って質問をさせていただいたわけです。

 それで、そのときの答弁の中で、塩川大臣の御発言をもう一度ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、地方交付税と国庫支出金というのが「半分以上ちょっとある」というお答えだったと思うんですが、それはいかがですか。実際はそんなにはたくさんはないはずだと思うんですが。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

塩川国務大臣 地財計画の財源構成の中で、平成十三年度ですけれども、地方交付税と地方特例交付金でございますね、この合計いたしましたら、二十一兆二千億円ですね、これが国から地方への歳出の総額の三八・四%になっております。

中塚委員 というわけで、「半分以上ちょっとある」ということではなくて、半分以下であるということなんですけれども、これは御答弁の方、訂正されるということでよろしいんでしょうか。

塩川国務大臣 何か私、ちょっとすれ違いの議論が提示されておるような感じがしてならぬのですけれども、一兆円の問題は、私は、交付税で一兆円削るということは申しておりません。申しておりませんので、一兆円というものは例えの話でございまして、地方財政計画では八十九兆円ございますが、そのうち一兆円相当ということは、一%相当を節減してくれぬかということを申しておるんです。

 その八十九兆円のうち、割ってみました、私は地方財政専門じゃございませんが、わかりませんけれども、公債費ですね、市の公債費とかやむを得ざる人件費とかいうようなものも見ますと、これは四〇%ぐらいじゃないかと思うんですね、あるいは四五%かもしれません。そうすると、あと五〇%、五五%相当額というか、四十五、六兆円でございましょうか、それが一般歳出の行政費とかになると思うのでございますね、そう思うんです。そうしますと、一兆円節約するということになってまいりますと、五十数兆円のうちから一兆円ということになると、やはり二%程度になるかな、腰だめでいいましたら、そういうぐあいになってくるのでありまして、国の方も二%節約しろということになりましたら、公債費等、それから地方交付税とかいうのを除きましたら、やはり一般歳出から三%近くのものを節約しなきゃならぬだろう、そういう腰だめのことですが、一例を言いまして、地方財政は一%ぐらい節約してくれたらどうだろうと言ったのでございまして、交付税から一兆円ということではございませんので。

中塚委員 いや、私も別にそういうことは言っていないんですけれどもね。答弁がすれ違っているのか、答弁がすりかわっているのか、ちょっとそこはよくわからないんですけれども、私だってそんなことは言っていないですよ。交付税を一兆円減らすという話をされているとは私も思っていません。

 そうじゃなくて、地方財政計画全体を一%落とすというお話をされたのではないんですか。地方財政計画の全体のスケールが一%落ちることによって交付税が一兆円減るということをおっしゃっているのではないんですかというお尋ねなんですけれども。

塩川国務大臣 いや、それは違いますね。それは違います。私が言っているのは、一兆円を節約してほしいということが前提です。一兆円ということになれば、例えば地方財政計画の中の一%相当額じゃないかということです。

中塚委員 ちょっともう一度お願いできますか、済みません。

塩川国務大臣 一%というよりも、私は、地方財政全体で一兆円節約してほしいと。それは人件費だろうが何でも構わないんです、地方交付税、何でも構わない、一兆円節約してくれと。一兆円というけれども、大きい金額だけれども、地方財政計画は全部で八十九兆円あるんですから、いわばその一%ちょっとということじゃないですかという表現を言っています。

中塚委員 それはいいんですけれどもね。だから、地方財政計画の八十九ある、約九十あるから一%で九千億で、約一兆円ですよね。地方財政計画を一%減らすことによって、それで国から地方に行くお金というのが一兆円削減されるわけではないんじゃないですかということをお尋ねしているんですが、その話の中で、交付税と国庫支出金というものが地方財政に占める割合の議論になったわけですよね。そこはいかがですか。

塩川国務大臣 一兆円節約してくれる中で、それはどういう形でやってくれるのかわかりませんけれども、一兆円相当やってくれるとなれば、それに対する国の対応も違ってまいりましょうし、もちろん、その中の地方交付税も削減の中の一部に入ってくることは事実でございますから、総合的に見て一兆円ということを私はいたしたいと思っております。

 けれども、それはあくまでも一つの表現のことでございまして、表現をもってそれを目標にされたんじゃ、ちょっと話がしにくいことになってきますね。

中塚委員 話がしにくいことを聞いているわけですから、それは話がしにくくて当たり前だろうと思うんですけれども。

 いずれにしろ、この前の御答弁であった、「半分以上ちょっとある」というのは、これは訂正をされるわけですね。

塩川国務大臣 今、半分と、何の半分ですか。どういう意味なんですか。ちょっとわかりにくいんですが。

中塚委員 これは、だから六月五日の大臣の御発言ですよ。「地財計画の中で地方交付税と国庫支出金というのが大体これで半分以上ちょっとある、五五%ぐらいある」というお話だったんですけれども。

塩川国務大臣 そうですね、地方交付税と国庫支出金とを合わせると大体五五%となっていますね。

中塚委員 交付税と国庫支出金を合わせて五五%ということでよろしいんですか。

塩川国務大臣 私の考えているのと横から、役所のペーパーとはちょっと違うんですが、ややこしいてかなわぬね。ちょっと整理してから。ちょっと、役所がこう言えと言うし。

佐藤(剛)委員長代理 質問と答弁ときちんと合わせるような形でお進め願います。

中塚委員 向こうに言ってください、向こうに、通告してあるんだから。向こうに向かって言ってください。

佐藤(剛)委員長代理 両方に言っている、両方に。

 ちょっとお待ちください。

塩川国務大臣 質問の趣旨はよくわかりました。

 私がこの前言ったのは、地方財政計画の中で地方交付税と国庫支出金と国庫負担金と合わせたら五五%ぐらいあるんですね、こう言ったんですね。それに対しまして、今精査しますと、地方交付税と地方特例交付金、国庫支出金全部合わせると三八・四%、四〇%だということなんですね。そうすると、一五%ちょっとサバ読み過ぎて言うとった。

中塚委員 さっきからそういうことをお話をしておったんですけれども。

 だから、要は、大臣が前おっしゃったときには五五だったんですけれども、それでも、要は一兆を地方財政で削減したって交付金と国庫支出金が一兆減ることにはならないでしょうというお話をしたので、そのウエートがもっと下がればますますその開きというのは大きくなるはずでしょうというお話をしておったわけですね。

塩川国務大臣 そうしたら、結局こういうことですね。

 二%ぐらい節約してほしいと言っておったんですね、私。一兆円ということは、地方財政は半分だから。そうすると、三八%は約四〇%だから二・五%ですか、二・五%ぐらい節約してくれたらええ、こういう計算になりますね。だから、〇・五%の違いですね。

中塚委員 実は、きょうはこの話をしようと思っていたんじゃないんですが、けれども、それは違うと思いますよ。

 地方交付税で足りない分を今借金で借り入れなんかをしていますよね。だから、その分で倍にきいてくるというのはそのとおりですよね。ただ、だけれども、それ以外の部分でも、たとえそれがなかったとしても、地方財政のスケールが一兆円落ちることによって国から行くお金が一兆円を落ちるわけではないんでしょうという話をしていたわけです。

塩川国務大臣 そうじゃないでしょう。三八%ですから、そこから、さっきより言っています二・五%節約してくれたら一兆円になりますね。ですから、要するに、三八%を交付しておるやつを、これを減額してくれば、一兆相当のものを減額してくればいいわけでございますから。

中塚委員 だから、三八%になっているもののウエートを下げるということは、地方財政は一兆円下がるんではなくて、もっとへこませなきゃいけないんですねという話をしているんですね。

 もうこの話は結構です。そこで数字の話を御訂正になられたということなら、それはそれで結構です。

 せっかく銀行法なので、ちょっと銀行法もお伺いをさせていただきますが、今度の銀行法の改正ということで、異業種参入とか、あと新しいビジネスモデルというふうなお話がありまして、その中で法律見ていますと、取締役の適格性ということが書いてあるわけですね。取締役の適格性ということで、「取締役は、銀行の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者でなければならない」こととするということなんですけれども、要は、この十分な社会的信用とか知識及び経験ということの基準というのは一体どういうものなんでしょうか。柳澤大臣、いかがですか。

村田副大臣 今回の銀行法の改正によりまして、七条の二に、主要株主の条件、適格性の要件とともに、取締役の適格性についての規定が加えられたわけであります。

 法律案では、銀行の取締役について、「銀行の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者でなければならない」というふうに、今先生のおっしゃったような規定が書いてございます。これは銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために極めて重要な規定であると考えておりまして、銀行がむしろこの規定の趣旨を踏まえましてみずから適切に対応していくべきである、こういうふうに考えております。

 具体的には、今申しましたように、銀行が自覚を持って取締役の適格性の確保に努めるべし、こういうことでございます。

中塚委員 いや、だからそれは何か当たり前のことが書いてあるような気がしているんですけれども、そうしたら、何でこういうのを入れなきゃいけないのかということと、もし不適格な人が取締役だったらどういうふうになるんですか。

村田副大臣 これは後から答えますが、例えば不適切な、この条件に合わないような取締役が居座る、こういうことになった場合には、私どもの判断は、銀行の業務の適切な運営が阻害される、こういう観点、おそれがあるということから、銀行法二十六条に基づきまして監督命令が発せられる、こういう形につながっていくのではないかというふうに考えております。

 だから、そういう意味で、私どもも重大な関心を持って対処するということであります。

中塚委員 取締役の適格性ということについてどういうふうにモニタリングをしていくのかということと、その適格かどうかということの基準についてはどのようにお考えですか。

村田副大臣 取締役については、重ねて申しますが、第一義的には銀行が自主的に判断するということでございますが、私ども、改めて申しますが、監督を通じましてウオッチをする、それで、適切な運営がなされているかどうかというのは、銀行の業務運営の結果にあらわれてくるわけでございますから、そういう意味で、私どもはそうした観点から取締役の適格性についても引き続きモニターできる、こういうふうに考えております。

中塚委員 何かいまいちよくわからないんですけれども、では、例えば主要株主ということになったときに、主要株主ということで認可されたら、株式所有の目的とか財務面の健全性等ということをも勘案をされていくということですよね、今度の法律によると。その場合の主要株主には、いわゆる投資組合というのは入るんですか。

村田副大臣 投資組合であっても、主要株主のルールというのは、個人か、それから法人であるとを問うておりませんので、株主の銀行への支配に着目して整備される、こういうことでございますので、投資組合であっても主要株主の対象に含まれる、こういうふうに解釈しております。

中塚委員 今御答弁の中にあったのかもしれませんが、では、投資組合の認可をするときに当たって、株式所有の目的とか財務面の健全性ということになったときに、その投資組合に対して出資をしている個人等にもこれは及ぶというふうに考えてよろしいんですか。

村田副大臣 投資組合の中にありまして、その場合でも、その代表者の運営のもとに一体として行動している、こういうことになれば、株主としてルールの対象となるべき者、こういうふうに解釈されると思います。

中塚委員 その一体としてというのは、その保有の率にはかかわりなくということでよろしいんですか。

村田副大臣 したがいまして、やはり二〇%という保有の率、これが、個人個人、投資をしている方々の、それの合計が二〇%になったということに着目して判断されるということだと思います。

中塚委員 それで、例えば、破綻金融機関の引受先が海外の投資組合だったりする例というのがどんどん出てきているわけですよね。そうなると、海外の投資組合とか海外の投資法人であっても同じようにこの法律は適用されるということなんですか。

村田副大臣 個人であっても法人であっても、投資組合という形態をとっても、その投資組合がトータルとして、今申しました主要株主のルールの率を超えるということになれば対象となるということであります。

 外国のことでございますけれども、外国にある個人であっても法人であっても、このケースにおきまして対象となるということであります。ただ、外国にある主要株主等については、やはり実効上、検査等が非常に難しいということはあるかというふうに思います。

中塚委員 今の御答弁と関係するのかどうかあれなんですが、外国人、外国法人に対するこの法律適用の特例というのがこの法律の中にありますよね。この特例の中身というのは具体的にはどういうことなんですか。

村田副大臣 外国のケースですが、例えば、五十二条の十五で、主要株主の適格性に関する例えば条件を満たさなくなったような場合において保有株式の処分を命ずるような規定がございますが、そういう場合において、今申しましたように、現実問題として、外国にあるがゆえに時間的な制約等々がありまして、外国にある個人あるいは法人のケースにおいては、そうした実際の中身は日本にある法人あるいは個人と同じなんでございますがしかし特例を設けざるを得ないようなケースは、地理的に遠くにあるということから生じるケースの特例だ、こういうことでございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

中塚委員 地理的な特例というのは、それは一体どういうことですか。ちょっと済みません。

村田副大臣 要するに、そういうことは余りケースとしては多くないかもしれませんが、日本にあるケースと外国にあるケースと、いろいろな意味で、例えば株式を処分するというケースであっても何らかの猶予が、国内、内国法人あるいは個人よりも余計にかかるのでないかと想定される場合等が考えられるのではないかというふうに思います。

中塚委員 特例というのは政令か何かでお決めになるんでしたよね、たしか、これから。そういうことなんだろうと思うんですけれども、結局、裁量の余地というのか、すごくあいまいな部分が多いなというふうに思っておりまして、そこのところについてはまた施行後でも、また一般質疑等あればお伺いをしていきたいというふうに思います。

 それで、次に、時間も余りないんですが、不良債権のお話をちょっと伺わせていただこうというふうに思っております。

 柳澤大臣、最終処理ということで以前この委員会でお伺いをしたときに、直接償却、最終処理をするといっても、引き当て自体はもうちゃんとなされている部分が多いから追加処理の損失というのは発生しない、だから公的資本注入を再度行うというようなことは要らないんだというふうな御答弁があったと思うんですけれども、それはそのとおりでよろしいですよね。

柳澤国務大臣 私、従来ずっと言わせていただいておるんですけれども、現在の日本の金融機関、特に、今回最終処理を政府の呼びかけに応じてしていただくということが、その立場になっている主要十六行の金融機関でございますが、この金融機関におきましては、もう不良債権の認識というか、レコグニション、査定ですね、これと、それに見合う引き当てというものが十分適切に行われておるというふうに見ております。したがって、最終処理に行きましても、そこに新たに発生するいわば追加損失というものは限定的なものにとどまろう、このように考えておりまして、この追加処理を行うがゆえにBIS基準の自己資本比率というものが、その水準との関係で危殆に瀕するようなことは全く考えていない、こういうことでございます。

中塚委員 それで、四月の六日の経済対策閣僚会議の緊急経済対策の中に、「要注意先債権等の健全債権化」「不良債権の新規発生の防止のための体制整備を求める」という言葉が入っておるわけですね。今、柳澤大臣がおっしゃったことが事実だとして、引き当て済みのものは大丈夫なんだ、直接償却、最終処理したって財務内容が悪化したりするようなことはないんだよという話が事実だとして、では、今後、不良債権を発生させないための方策ということもまた課題になってくるんだろうと思うんですけれども、この緊急経済対策の中に書いてある、健全債権化とか新規発生の防止というのは具体的にはどういうことなんですか。

柳澤国務大臣 健全債権化にせよ不良債権の新規発生の防止というところは、大体同じような意味になるというふうに考えてよろしいかと思います。もちろん、要注意先債権のまんまにずっといるということと不良債権の新規発生というものとは確かに違いますが、まあ大体同じような意味にとらえていただいてよろしいかと思います。

 それは、結局、貸出先との関係でございますが、貸出先に対して早く手を打って、例えばこの不稼働部分があなたのところの採算というか財務状況を悪くしているんだったら、それを早く処分しちゃったらどうですかというようなアドバイス、そういうようなこと。経営あるいは財務の処理についてのアドバイスをすることによって、いたずらにそこに固執することによって最終的にはみんなが、その企業全体が非常に苦境に立つというようなことを避けるように指導していく、あるいは話し合いをしていく、そういうことが想定されていると申させていただきます。体制の整備と書かれているようなところは、そういうようなことの行動を起こすためのモニタリングを常にしておいてもらいたい、そういうことを意味しているというふうに御理解賜りたいと思います。

中塚委員 アドバイスと言うけれども、何か随分つらいアドバイスのような感じがするんですけれどもね。一―三の景気なんか見てもマイナスになっておるわけなんで、新規発生を防止するための体制整備といったって、やはり不良債権は新規の発生でふえているんではないだろうかというふうに思います。

 経済財政諮問会議の骨太の答申というときの議事の概要の中で、柳澤大臣は数字を挙げて、二〇〇〇年は幾ら、二〇〇一年は新規の分が幾らというふうなお話をされておられますね、議事録を拝見しておると。ただ、こういうふうに景気がどんどん悪化をしている局面ということになると、そのことだけで、今の体制整備を求めるというようなことだけで新規不良債権の発生というものを防いでいくというのはかなり難しいんじゃないんだろうかというふうに思うわけです。

 そもそも、この骨太の方針にしても、これからどうするというようなことは書いてあっても、過去の、なぜこうなってしまったかということはほとんど触れられていないわけですね。失われた十年という言葉がありますけれども、改革というのは、歴代内閣は全部改革と言っているわけですが、この骨太の方針だってその方向、改革の方向で出されたんだと思うんですけれども、過去、何でこうなっちゃったのかという分析というのは今度の答申の中ではほとんどないですね。

 そこで、お伺いをするんですけれども、前の財務金融委員会で塩川財務大臣にも伺いましたが、財政の健全化もおやりになる、来年度の国債発行を三十兆円以内に抑えるということですね。私は、平成九年の橋本総理の中の財政構造改革ということがやはりちょっとダブってくるわけです。当時も、不良債権の処理は峠を越えたという話だったわけですね。住専を処理して、金融三法をつくって、もうこれで不良債権の処理というのは峠を越えたんだという話だったわけです。

 今小泉内閣が財政健全化にチャレンジするときに、当時よりも足元の景気というのはすごく悪くなっているわけですね。そういった中で財政の健全化をおやりになっていくということなんですが、果たして、足元の景気との関係もあり、日本の不良債権の問題というのはそれほど楽観的なものなんでしょうか。いかがでしょうか。

山口委員長 予定時間が終了していますので、簡潔にお願いします。柳澤大臣。

柳澤国務大臣 不良債権の問題が峠を越した、あるいは不良債権問題は処理を終えましたということは、いつでも私、申しますけれども、当時、一番問題になっていた、要するに不良債権を表に出してこれに必要、適切な引き当てをするということが目標だった、不良債権処理という言葉で目指していたのはそういう状態ということであれば、当時言ったことと今日の状態というのは全く一致していると私は申させていただきます。

 今不良債権の処理というのは、最終処理をしようということであって、不良債権の残高をもっと貸借対照表から除いて低くしよう、こういうことなのでございます。そこで、結局問題は、不良債権の処理というか、不良債権問題の解決と言いかえてもいいんですが、それは一体どういう状況なんだろうかということなのでございます。

 そういう意味もあって、今回私どもは指標を出しまして、二つの面からそのことを追っかけていきましょうよということを提案させていただいているということでございます。一つは全貸し出しに対する不良債権の比率でありますし、それだけだと引当金をネットアウトしてあるとかないとかという議論になって、国際比較も容易でもないというようなこともあって、それではかつての、いわば引当金を税法上何%にしたらいいかというときによくあった話ですけれども、要するに不良債権の処理損に対する残高との関係、こういう二つの、ここに指標を置いて、その両方を総合して不良債権問題の状況を的確に把握していこう、こういうことを呼びかけさせていただいたわけでございます。

中塚委員 新規発生のことをお伺いしたんですが、また改めます。終わります。

山口委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 初めに、銀行法等改正案の内容についてお聞きをしたいと思います。

 この法案は、一般事業会社から銀行業への参入の条件を整え、これを促進しようとするものであります。しかしそれは、事業会社が資金調達の手段として自分の子会社である銀行を悪用する機関銀行化の危険を持っております。法案にはこのような弊害を防止する十分な規制があるのかどうか、この点で私は幾つか疑問を持たざるを得ないのであります。

 まず、法案では参入規制の対象が大変狭い範囲に限定されておりまして、認可が求められ監督の対象となるのは、原則として株式の二〇%以上を保有する主要株主に限定されております。五%から二〇%までの株式を保有する者に対しては単に届け出義務を課しているにすぎません。

 そこで、柳澤大臣にお伺いをいたします。

 昨年十二月の金融審議会第一部会報告では、五%を超える株式を保有すれば「銀行経営に相応の影響力を及ぼし得る」と指摘をしていました。五%を超える株式を保有すれば銀行経営に相応の影響を及ぼすことができるのに、なぜそれを届け出だけで済ますことにしたのか、その理由についてお伺いしたいと思います。

乾政府参考人 お答えをいたします。

 異業種からの参入に当たりまして、主要株主を規制する場合に、金融審議会で議論をいたしました主なポイントはその主要株主の持っている株式の割合でございますけれども、この株式の割合とそれに対する規制とがバランスのとれたものでなければならないということでございまして、ごくわずかあるいは一定程度持っているからといってそれとバランスのとれた規制を導入することは、異業種の参入によって金融界を活性化し、また顧客に優良なサービスを提供するという趣旨に反するということで、どのようにそこのところのバランスをとるかが議論されたわけでございます。

 そうしたことから、今回の提案しております法案の中では、この金融審の考え方に基づきまして、銀行に影響を及ぼし得るというのは、これは、現在企業会計で採用されております実質影響力基準という考え方がございます。これは既に銀行法の幾つかの条項の中にも取り入れられている規定でございますけれども、この実質影響力基準、すなわち、法人のみならず個人を含む単体またはグループで二〇%以上の株式を保有する者、また人的な関係等が一定の場合ある場合には一五%以上でも実質的な影響力があるということでもって、企業会計の場合に一定の開示とかそういうものは義務づけられているわけでございますけれども、そうした実質的な影響力基準に該当する場合には銀行の経営に影響があるということで、これを認可制とすることとしたところでございます。

 そこで、それでは、実質的な影響力を判断するのが、ある日突然監督当局が判断をするというわけにはまいりませんで、実質的な影響力でございますから、グループでございますから、仮に一人の株主が、一社の株主が八%であったといたしましても、その会社の子会社等全部合わせたら二〇%ないし一五%を超えている場合もあるわけでございます。そうしたことから、単体で五%を超えた場合には、超えた段階から、監督当局として一定のウオッチといいますかモニタリングをしていこうという考え方に立ちまして、いわば証券の大量保有報告書等とのバランスを考えまして、単体で五%を超えた場合には届け出をしていただくということにしたものでございます。

 確かに金融審の答申には、五%を超えた場合には「相応の影響力を及ぼし得る」と書かれているわけでございますけれども、そのことはまさに、五%の段階からモニタリングを始めましょう、そして実質的な影響力を及ぼしそうになった段階では認可といたしましょう、そういう考え方に基づくものでございます。

佐々木(憲)委員 モニタリングで済むのかどうかという問題があるわけです。実質的な影響力を及ぼすわけでありますから、それに対して実質的な規制がなければならないわけであります。銀行経営の健全性をいかに確保するかというときに、一般的な企業会計原則を持ち出すだけでは私は不十分だと思うんです。だから、金融審も、「日本の銀行の株主構造を前提とすると」五%の保有であっても「相当な影響力がある場合が考えられる」これはワーキンググループの報告でそう言っておるわけですね。

 ですから、銀行の株主構成、金融という性格を考えれば、これはやはり独自の規制が求められるわけでありますが、それはモニタリングで済ませてしまって、きちっとした、内容のあるものがない。まさに私は、バランスと言いますが、バランスが欠けていると言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、具体的な実態についてお聞きをしたい。

 まず第一は、我が国の銀行で株式の五%を超える株式を保有している株主のある銀行は何行あるか。二つ目は、全体として、五%超二〇%未満の株式を保有している株主の数は幾らか、その株主のいる銀行の数は幾らか。三つ目は、二〇%以上の株を保有している株主の数は幾らか、その株主のいる銀行の数は幾らか。お答えいただきたい。

乾政府参考人 五%超所有の株主が存在する銀行数は四十一行でございます。また、五%超所有の株主の数は七十四株主でございます。

 それから次に、五%超二〇%未満所有の株主しか存在しない銀行数は二十九行でございまして、五%超二〇%未満所有の株主の数は六十二株主でございます。

 それから、二〇%以上でございますけれども、二〇%以上所有の株主が存在する銀行数は十二行でございまして、同じく二〇%以上所有の株主数は十二株主でございます。

佐々木(憲)委員 二〇%以上の株主が存在する銀行というのは、現時点でわずか十二行であります。全国の銀行数は百三十七行でありますから、全体の八・八%の銀行にすぎないわけですね。しかし、五%から二〇%の株主がいる銀行というのは、二〇%以上の株主のいる銀行の二・四倍、全体の株主数で言いますと五・二倍もあるわけです。ですから、五%から二〇%の部分というのは圧倒的多数なんですね。

 法案によりますと、二〇%以上の株式を保有する場合には内閣総理大臣の許可が必要で、適格性の審査を受けなければならないとなっております。例えば、所有の目的、財務内容などに照らして、銀行業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがないか、十分な社会的信用を有する者であるかどうか、これらの審査を経て初めて銀行の株主となることができる、これは二〇%以上の場合ですね。

 しかし、五%から二〇%の株主に対しては、この部分が圧倒的多数なわけですけれども、こういうチェックはなされないわけですね。五%を超える株式を保有すれば、銀行経営に相応の影響力を及ぼし得るわけです。そしてまた、その数は圧倒的多数なわけです。

 そうすると、不適格な事業者が銀行経営に乗り出そうとすると、単に届けるだけで安易に参入できる、銀行経営に影響力を持つことができる。法案ではこういう事態を防止できないのではありませんか。

村田副大臣 先ほどの委員御指摘の、昨年十二月の金融審議会の第一部会報告では、繰り返しますが、単に五%超保有の株主に対する報告徴求でございますが、実質的影響力の有無の確認等の目的に限定した書面によるチェックにとどめまして、立入検査は書面のみではどうしても実質的影響力の有無を認定することが困難な場合などに限って行い得ることとすることが望ましいというふうにされています。

 これを受けまして今回提案の改正法案では、五%超所有の株主に対しまして、重要な届け出事項に虚偽の記載があったり必要な記載が欠けている疑いがある場合に、報告徴求、検査を行うことができることとしているわけでございまして、こうしたことを通じましてチェックができる、こういうふうに考えております。

佐々木(憲)委員 それは認可後の話でありまして、参入する場合のチェックがきちっとなされないということに対しての答弁ではないと思うんですね。つまり、不適格な事業者が参入する場合、五%から二〇%の株式保有の場合には適切な規制措置をとることができない、このことは否定されなかったわけです。

 では、今の御答弁との関連で言いますと、参入した後の話ですね、五%から二〇%の株主に対しては、監督権限ですが、大変これは弱いと思います。

 金融庁は、二〇%以上の主要株主に対しては、特に必要と認められるとき、その必要の限度においてという限定つきだけれども、報告徴求権、立入検査権、これは二〇%以上の場合には持っているわけですね。しかし、圧倒的部分を占める五%から二〇%の株主に対しては、株式所有届出書などの書類、ここに虚偽の記載があるかどうか、重要な事実の記載が欠けている疑いがある、そういう場合に限定されているわけであります。つまり、書類に不備があるかどうか、それだけなんですね。

 したがって、二〇%未満の親会社の場合に、その影響力を行使しまして、つまり子会社である銀行に対して不適切な取引を行っても金融庁は親会社を直接監督することはできない、こういうことになるんじゃありませんか。

乾政府参考人 最初にお答えいたしましたように、五%と二〇%の間におきまして、これが、今回のルール整備が不当な参入抑制にならないように、他方で銀行の健全性を確保する観点から、どのようなバランスのもとにルールを整備するかということが議論になりまして、そうした観点から、実質的な影響力がある場合には認可としようとしたものでございます。

 したがいまして、五%から二〇%の間、一五%の場合もございますけれども、その場合には、主要株主が実質的な影響力を持ち得るかどうかということをチェックするためでございまして、そのための報告、検査はございますけれども、いわばその届け出の内容に、重要な届け出事項に虚偽の記載があったりした場合には、当然、報告徴求、検査を行うことができることとしているところでございます。

佐々木(憲)委員 実質的な影響力があるのは、五%から二〇%でも実質的影響力があり得るということを金融審は述べているわけでありまして、その部分について書面審査だけで済ませてしまう、不当な取引の直接監督というのは、親会社に対してはできないわけですね。要するに、監視をする程度、こういうことであります。

 こういう点は、諸外国と比べても極めて甘いものでありまして、例えばヨーロッパの場合、事業会社の銀行業への参入を認めておりますが、ECの第二次銀行指令で、一〇%以上の株主にはその適格性について当局の審査を受ける必要があると規定しております。このことについては、金融審報告でも、欧州主要国では一〇%以上の場合に許可等を要するという例が多い、こう書かれているわけですね。つまり、イギリス、ドイツ、スイスは一〇%以上なんです。フランスはこれに加えて五%以上で審査を受けることになっている。

 このような事例を当然知っていながら、法案ではヨーロッパ並みの基準を設けなかった。柳澤大臣、この点、これは意識的にハードルを下げた、ヨーロッパのことを当然御承知だと思うんですが、それと比べても低いところにハードルを下げて参入を可能な形にした、これが実際のところではないんでしょうか。

村田副大臣 お答えをさせていただきます。

 繰り返しますけれども、今回の主要株主に対するルール整備でございますけれども、銀行の経営に影響を及ぼし得る者が不当に影響力を行使することがあるとすれば、それをどのように防止するか、こういうのが問題意識でございまして、累次指摘されておりますように、金融審議会第一部会報告におきまして、企業会計の実質影響力基準を踏まえて、銀行の経営に対する実質的な影響力に着目して、原則二〇%以上の株主を主要株主と位置づけまして認可制の対象として、五%以上の株主を届け出の対象にするということが適当であるとされたということでございます。

佐々木(憲)委員 全然質問とかみ合わないですね。一番最初の私の質問の答弁と同じ答弁を今繰り返しても、全然答弁になってないですよ。

 だから、つまり、大臣、もう一回お聞きしますが、ヨーロッパと比べて日本の場合には低い水準になっているわけです。つまり、参入がしやすい形になっているわけですね。それは意識的にそうしたわけでしょう。通常の国際的水準よりも低く見たということだと思うんですね。そういうことなんじゃないんですか。

柳澤国務大臣 実質影響力のレベルをどうやって捕まえるかということであるわけですが、それは、今回の我が法案では、企業会計基準に合わせて二〇%とした、こういうことでございます。

 しかし、他方で、五%以上持っている場合には実質的に影響力を持ち得ることがある、こういうことの指摘もありましたので、ここのところは届け出制にしまして、そしてそれを判定できる資料を徴求して判定できるようにした、こういうことでございます。そして、その五%以上の届け出を受けて、それが、いろいろ各方面の検討をして、これは実質的に影響力があるということになれば、それはそれで対応していく、こういうことになっているわけです。

 例えば、いろいろグループを組んで、それらで二〇%をオーバーするというようなことになれば、これはもうほとんどノー文句で私どもとしてはこれに対処していく、こういうことでございまして、要するに、実質的に影響力を持つということと、二〇%持っていたら欠格になるような人を、どうやって防ぐかということは、そういうことでもって私どもは可能だと判断した、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 私は、それでは可能にはならない、不可能だと思うんですね。というのは、実質的影響力を持ち得るというのは、五%以上でも持ち得るわけであります。これは金融審でも言っているわけですね。その場合に、届け出るだけで済むという形になりますから、届け出をすれば参入が可能になる。しかも、参入した後、この親会社に対する監督権限は、立入検査権もない、それから資料の徴求権もないわけです。

 したがって、そういう意味で、五%から二〇%までの部分というのは大変規制が甘い、つまりヨーロッパと比べても明らかに日本の場合には甘いわけですね。私は、どのような状況であろうと銀行経営の健全性と公共性を確保するということは、これはもう第一義的に追求しなければならない社会的な義務だと思うんですね。しかし、実際に政府がやろうとしていることは逆でありまして、事業会社の銀行業に参入する意欲を阻害しない、これがすべてに優先されております。したがって、事業会社の利益のために公共性、つまり金融機関としての健全性、これがなおざりにされていると言わざるを得ないと思います。

 この法案にはいろいろな問題がありますが、二〇%以上の株主に対する規制も私は不十分だと思います。しかし、きょうは時間の関係で、その議論はこの次の委員会に譲りたいと思います。

 そこで次に、時間がありませんので、塩川財務大臣にせっかく来ていただいておりますからお聞きをしたいんですが、私は当委員会で大臣の機密費をめぐる発言を何回か取り上げました。しかし、これは単に興味本位で取り上げたわけではなくて、発言の内容が大変重大だからでございます。大臣に就任する以前の発言では、一つは、外務省から機密費の上納があったということを認めたこと。二つ目は、内閣機密費を野党対策に使ったという証言をされた。これは大変重大な発言で、私はこれは正直で大変勇気ある発言だと思うんですね。

 ところが、大臣に就任されますと、国会の答弁では忘れたと言われる。六月十八日の参議院の決算委員会でこういうふうに答弁されているんですね。中身はちょっと触れることは勘弁していただきたい、三十年たったらちゃんと申し上げますからと。三十年というのは、大臣のお年からいいますと百十歳になるわけですね。これは全くいいかげんな答弁だと思うんですが、要するに知っていても言わないということだと思うんです。そういうことなんですか。

塩川国務大臣 三十年というのは文書の秘密保持の年限でございまして、私はそのつもりで、これは秘密文書としての年限の間は言えないという意味で言ったことであります。

佐々木(憲)委員 文書になってないものでしょう。野党対策に使った、あるいは上納があるというのは文書になっているんですか。その文書を三十年後に公表する、こういう意味ですね。

塩川国務大臣 文書というのは、要するに、文書になっておろうが秘に属することは言えないということだと思います。

佐々木(憲)委員 要するに、知っているけれども今は言わない、こういう意味ですね。私は、こういう姿勢というのは非常に重大だと思うんですよ。

 あなたは、五月二十八日に放映されたインタビューで、大臣になったら本当のことを言わぬことにしとんねん、こういうふうにお答えになりました。私がこれを取り上げたら、今度は、インタビューを受けていないという答弁をされましたね。あなたはこう言っているんですよ。インタビューではございません。私の書斎でした。したがって、着物を着ておりました。そこへお客さんが立て込んでおりまして、お客さんが帰りました後、二人、女の方とカメラの方とどこどこと入ってまいりまして、撮らせてくれということで、それでございますから、インタビューとかなんとかではございません。こう答弁しているわけですね。

 その日のニュースステーションを見ますと、早速これを取り上げまして、反論しています。私が反論したんじゃないんです、ニュースステーションの久米宏さんがこうおっしゃっているんですね。後ろに流れている映像はインタビューを行った当日のものなんですが、非常にリラックスされている様子です。担当した女性ディレクターによりますと、きちんと取材依頼を出してオーケーをもらって、一日取材をした、インタビューも二回に分けて三十分ほど行ったということですと。これは答弁と違うんじゃありませんか。

 塩川財務大臣は、取材依頼を受けてオーケーを出し、一日取材を受けた、インタビューも二回に分けて三十分受けた。これが事実じゃありませんか。いかがでしょうか。

塩川国務大臣 私、一々それ記録をとっておりませんからね。ですから、それは何と言ったら……。来たことは来ました。それは私も知っていますからね。申し込みなんて、私、見たことありませんよ。

佐々木(憲)委員 これは久米宏さんの証言ですが、担当した女性ディレクターによると、きちんと取材依頼を出したんです。つまり、大臣になってからですから、当然、大臣の日程を調整されている秘書官の方あるいはその担当の方がそれを受けて、大臣と相談されて、ああ、結構ですよということで一日取材を受けたはずです。その記録を、私は、昨日質問通告で、このことについてお聞きをしますので記録を調べていただきたいというふうに申し上げました。それ、調べてお答えいただけますか。

塩川国務大臣 何かそういう、前はそうおっしゃっていましたね、ちゃんとした手続をしてというのは。それは私、その書面も、手続、どんな書面か知りませんが、手続なんて、そんなこと知りませんよ。ただ、秘書に何でこれ来たんだと私は聞いたら、いや、朝早く来られて、何か書いたものをちょっと見せて、名刺出されて、取材させてくれと言った。いや、取材は困るぞ、お客さんこんなに待っているじゃないかと。たくさんお客さんが待っていたんですよ。それで……(佐々木(憲)委員「それは違うよ」と呼ぶ)いや、あなたが知らぬと言うたかて、わしが当事者ですがな。

 それで、そういうインタビューの手続なんて、そんなことしていませんよ。だけれども、私、一たんお客さんが来て、私は、二階なんですよ、書斎は、おりていったらだかだかだかと上がってきて、それで、済みません、それじゃちょっと写させてください、部屋の中を写させてくださいと言うて、それこそ座り込んで、お客さん待っとるんだから、ちょっと早いところかかってくれ、こう言ったんですよ。そんなインタビューですよ。

佐々木(憲)委員 ニュースステーションの映像はしっかりと映っております。それは、塩川財務大臣がいすにゆったり座って、明るい窓辺でゆったりとした様子でインタビューにお答えになっているんです。ですから、自宅ではないんです、これは事務所なんです。事務所です。(塩川国務大臣「書斎ですから、私の」と呼ぶ)いや、ですから、取材を受けて、インタビューを受けていることは事実なんで、そのことは確認をすればすぐわかるわけです。

 私は、きのう、このことについて、この事実を確認しますということで、調べておいてくださいというふうに質問で通告をしました。それをはぐらかして、覚えていないとかそんなこともないとか。事実を調べればすぐわかるわけですから、日程表を調べていただけますか。

塩川国務大臣 だから、来たことは来たと言うんです、私は。それがどかどかと上がってきたということでございまして、私は、こういう人たち、インタビューをいたしますからどうぞ応じてくれますかというそんな話はなかったということなんですよ。

 秘書と、朝早く来ていたらしいんですよ。私は事務所に大抵行っていますが、日曜日でしたから、家に、大阪へ帰りましたらお客さんいっぱい来ていますからね。大体八時ごろ来ていますよ。ですから、八時ごろって、その時分にはもう秘書も来ておりましたから、その時分に来たんじゃないでしょうか。私は、二、三のお客さんに会って、お客さんが帰った後、何かだかだかだかと二人上がってきて、こんな棒を持って上がってきたんですよね。それで、すぐにカメラ見ていましたよ。私は、あれ、何だというふうに聞いたら、いや、こうこうですと言うて、女の子が何か名刺を出しましたよね。だから、それは、おい、そんな困るぞとわし言っていたんですけれどもね。それで、いろいろ、二、三問答していましたよ。

 ですから、リラックスしていたと言えばリラックスしていたと思いますけれども、お客さんとお客さんの切れ間のときですからね。私はそんな中身の細かいことまでは覚えておりませんね。

佐々木(憲)委員 都合の悪いことはすっかり忘れて、関係のないことだけはよく覚えておられるようでありまして、実際にこういうふうに塩川さんはおっしゃっているんですよ。「国民の感覚で、ぼくは、あれは政府の一員になったんでもういっさい言えません。役職についたらそういうものに対する責任感が、別の責任がある、発言にはね。そういうことと交じっていっさい言わんことにしとんねん。」

 ですから、こういうことをはっきりおっしゃっているわけです。つまり、自分が知っているその事実を、大臣になる前は本当のことは言うけれども、大臣になった後は一切言わない。しかも、事実関係についてもいいかげんな答弁で、これは逃げ回る。久米さんがきちっと提起をしているにもかかわらず、調べようともしない。そういう姿勢は、私はもう絶対に許せないと思います。

 塩川さんは、みずから体験をされみずから実行された、このことについてお話をされているわけですから、この事実関係についてははっきりと真実を語っていただきたい、このことを最後に申し上げまして、時間が参りましたので終わります。

山口委員長 植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 最後、時間が少のうございますのできょうは、きょうだけで銀行法の審議が終わるわけじゃないでしょうから、簡単な話をぽんぽんと幾つかお伺いしたいと思うんですが、その前に、経済財政運営等にかかわりまして、幾つか、これもそんな難しい話ではございません。まず、財務大臣の方にお伺いしたいと思います。

 先日、経済財政諮問会議の基本方針が出たわけでございますけれども、それについての見解は我々社民党としても明らかにしておるところですが、これの最後の方の章のところに「平成十四年度予算」という項目があったかと思います。そこでは、「重点的に資源配分」とか、「経済の活力・国民の厚生などに寄与していない予算、経済社会情勢の変化に伴い重要性の低下した予算などについては、思い切って縮減する」というふうに書いておるわけです。

 この点については、私どももそれが具体的になされれば非常に評価できるわけですが、ただ、どう縮減するかというところの処方せんは必ずしも示されていないと思うわけです。

 それで、常々、この間話題になっております道路特定財源をどうするかというのは、ここの話ともリンクしてくるだろうと思うわけですが、せんだっても、六月二十一日の扇国土交通大臣、臨時議員というふうにここでは呼ぶらしいですが、そこの提出資料の中でも、この特定財源にかかわっては、「受益者負担の原則に基づき自動車利用者が利用に応じて道路の整備費を負担する制度であり」云々ということで、「転用・一般財源化することは道路整備のため創設・拡充され本則税率の二倍強の暫定税率が設定されている趣旨にもそぐわないことにかんがみ」というような文言も見られるわけでございます。

 ですから、国土交通省、またゼネコンの抵抗も非常に激しいのかなと推察、この行間から読み取ってしまうわけです。また、一部政府の中では、これをいわゆる都市の基盤整備等々の財源にというような話もあるように聞いておるわけですけれども、もしそうなったら、要するに、地方の重点配分を都市に重点配分するということで、言ってみれば都市特定財源になってしまうんやったら話は一緒やないかというふうにも思ったりするわけです。

 この点について、いずれにしても、私たちの国民生活に寄与する予算たり得るかということからすれば、公共事業の配分比率、特に今のこの道路優先予算に思い切って切り込んでいく必要はあろうかと思いますし、また、こうした今までの政策を改めまして、特に教育、福祉、IT、エコロジー等々のところへの重点配分、予算の編成替えというものを行っていく必要があろうかということについて、まず御決意をお伺いしたいと思います。

塩川国務大臣 おっしゃるように、特定財源の使途につきましては、平成十四年度は使途の拡張をして予算に利用いたしたいと思っておることは事実でございまして、その場合に、ただ、先ほどおっしゃいました都市と地方というものを対立的に考えるべきではないと思っておりまして、私たちから言わすと、むしろ都市的機能と地方的投資、そういうふうな概念で見てみたいと思っております。

 ですから、都市というのは東京都というものがすぐイメージがわいてきますが、特定地方財源を削って東京都で使うのだ、そういうイメージは払拭していただきたいと思います。都市といいましても、例えば松江も都市でございますし、金沢もいわば都市でございますし、そういう都市に、その町としての機能を回復するような施設には使いたい、こう思うております。したがって、今のところ道路財源であることは事実でございますから、道路に関係して、そしてその道路からの、交通からくるところのいろいろな障害を除去する施設等に拡大して使いたい、こういうことであります。

植田委員 田舎に住んでいる者としては、そういうお話を伺いますと、ちょっとほっとするわけでございます。要は、大阪の東大阪市も、私の住んでいる大和高田市も、人口はかなり差がありますけれども、山を越えた向こうでも、私のところも都市だということで理解をしたいと思います。(発言する者あり)いやいや、簡単な話でございます。

 もう一つ、これも何遍かしつこう聞いている話なのですが、これは総理も、一番早い、五月の十日のときもこういうふうにおっしゃっているのですよね。歳出の見直しを行わないまま安易に増税には頼らないと。ただこれは、逆に言うと、歳出の見直しが行われれば増税も行うのでしょうかというふうに、逆に行間から読み取れるわけですが。再三、今の経済状況、また国民の生活の状況の中で、財務大臣は、増税はせえへん、今はしんどいからできへんということをおっしゃっておられたと思うのですが、改めて、小泉政権のもとで増税、例えば特に消費税率の再アップなんということはないのでしょうねということを確認させていただきたい。

 もう一点、時間がありませんから、二つお伺いします。

 もう一つは、仮に増税が必要な事態が生じた場合でも、やはりさまざまな、ここは意見が分かれるところかもしれませんけれども、やはり私たちからすれば、いろいろな大企業の優遇税制、資産家の優遇税制、お医者さんの優遇税制、宗教団体の優遇税制、こうした不公平税制をまず是正するということ、そしてまた、むだな公共事業や、防衛関係費であるとか、原子力の開発費や、そうした補助金、引当金等々を抑制すれば支出を大幅に抑制することは十分可能だというふうに思っておりますので、その二点について御所見をお伺いできますでしょうか。

塩川国務大臣 十四年度、年度改正の税制改正におきましては、特別措置法は改正いたしまして、特に企業関係等に属するところの特別措置で既に行政的使命が終わったところは廃止をしていく予定でございます。一方、一般国民の所得並びに消費に関する、生活に密着してくる重要な税制につきましては、絶対増税いたしません。

 そして、十四年度、十五年度は専ら歳出の削減によって財源を捻出するという考えでございまして、そのためには何としてもむだを排するということが一番根本でございますので、それぞれの事業ごとに組んでおりますところの行政経費の単価をまず見直していく、そして行政の経費の使い方についても見直していくということをやっていきたいと思っておりますし、したがって、これからの補助金、負担金等につきましても、いずれの部門に対する補助金であろうが負担金であろうが、厳しくこれを、効用を考えて査定していく、そういうことによって財源を捻出したい、こういう考えであります。

植田委員 もちろん未来永劫増税がないとは言えないわけですけれども、とりあえず平成十五年度までは大丈夫だと、要するに、さまざまなむだを抑制して歳出の削減をするというふうに理解をしておきます。

 続いて、これも簡単に金融担当大臣の方に、不良債権処理にかかわって幾つかお伺いしたいのですが、六月十一日に開催されました経済財政諮問会議の第十回会議で、金融担当大臣の方が、主要十六行の不良債権の推移では、要注意先債権、破綻懸念先債権は順調に減っているが、問題は管理債権、今度のいわゆる最終処理の対象とは考えていないが、場合によっては破綻懸念先債権になるという、世間で言う予備軍が若干ふえている、こういう認識を示しておられます。

 この若干ふえているのがどうなのかというと、これはまた意見があるところですが、少なくとも、金融担当大臣の方が、問題は管理債権だということについて言及されたことについて私は注目しているわけです。

 といいますのは、東京三菱銀行が決算発表時に公表した査定見直しによる不良債権の大幅な増額というのが、他のライバル行を初め金融界にかなり大きな衝撃を与えているわけです。そういうことを考えますと、他行でも要注意先から要管理または破綻懸念先に転落するような案件が急速に拡大していくということは、やはり素人目に見ても想像できるだろうと思うのです。

 そういう意味で、いわゆる要注意先まで含めた約百五十兆と言われる問題債権というのが非常にこれから脅威になるのじゃないか。特にこの東京三菱のいわば衝撃、ショックというものは、その金額というのは膨大だという事実をやはりさらけ出したのじゃないかというふうに理解するわけなのですけれども、まずこの点について金融担当大臣の御所見をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 主要十六行ベースでの話でございますけれども、平成十三年三月期、つまり平成十二年度の決算が発表になり、それを集計することができた段階でその会議がありまして、不良債権の状況について概略を報告させていただいたものでございます。

 その際に私が申し上げたのは、要注意債権まで含んだところでも順調に、総残高としては減少しているし、しかもその中でも、破産更生等債権と危険債権、そういう、これは再生法に基づく分類でございますので言葉がちょっと親しまれていないかもしれませんが、破綻懸念先と破綻先と概略同じというふうにお聞き取りいただいて結構かと思うのですが、そういうものもかなり順調に減っている、しかし、その中で要管理債権が前年度に比し増加しているということを指摘いたしたわけでございます。数字的に申しますと、平成十一年度末、つまり十二年三月末では四・六兆円だったものが六・四兆円、一・七兆円の増加ということになった、こういうことでございます。

 そういう事実は事実として報告したわけですが、これは、今先生御指摘になった一行が、特にこの中で、私の記憶では一・三兆円ぐらい増大していますので、ほとんどその銀行のあれが影響したということとも言えるわけでございますけれども、要管理先がふえているということでございます。

 ただ、この要管理先がふえているということが非常に重大であるかのごとく取りざたをする向きもありましたが、私どもとしては必ずしもそうは思っていなくて、それは、この当該の一行の要管理先の中身についてまで言及するのは適当でないかとも思いますが、仮にそういうようなことがほかの銀行にあったとして、同じ要管理先のシェアというものを、ほかの銀行でも同じシェアになるという仮定を置いてざらっと計算しても、それほど、これはBIS規制上の自己資本勘定への影響という尺度で見ましても、ほとんどネグリジブルな影響だということが判明しています。そういう仮定を置いてもそうなんだ。その仮定が正しいかどうかもちょっと我々は申すわけにはいかないのですが、余りにもそのことを誇大にとらえる向きがありましたので、仮にそういうことを全部、あなた方の推測を全部受け入れて計算してもその程度の影響しかないものだということは申させていただいておる次第です。

植田委員 そこで、この経済財政諮問会議で幾つか議論があったというのは、私は報道でしか見ておりませんので、その点についてお伺いしたいのですけれども、特に、この基本方針決定にあわせて、いわゆる経済の成長見通しというのが示されたわけですけれども、二十五日の日経なんかを見ますと、竹中経済財政担当大臣が、今後二、三年で平均では零から一%程度の低い実質経済成長になるということで、これまでの政府見通しが一・七%だったわけで、かなり、ほとんどゼロ成長に近い水準を示したということが日経には書いています。その試算結果に異議を唱えたのが柳澤金融担当相だと。

 これにかなり御不満を示されたということなんですけれども、記者会見でも「「どこから出てきた数字なのか、いぶかしげだ」と語り」云々とありますので、竹中大臣のこうした問題提起には、柳澤金融担当大臣としては、ここで、報道であるように不満を示されたということについてはほんまやったのでしょうか。まずそのことだけ事実確認させてください。

柳澤国務大臣 そもそも、ゼロないし一%という表現は、直接私は聞いておりません。聞いておりませんが、そういうことはあり得ることかと思います。それで、ゼロないし一%という言い方を竹中大臣がされましたのですが、まず基本的に私としては、私の仕事、つまり不良債権の新規発生を抑制しつつ、既往の不良債権について最終処理を施すという仕事、この仕事がうまくいくためには、環境としては名目成長率が高い方がやりいい、少なくともマイナスになるというようなことでは非常に厳しい状況になる。そういう一般論を申して、これはもう、私は関係の会議がある都度、ほとんどそのことについては私の立場を明らかにしているわけでございます。

 第二に、このゼロから一%というのも、竹中大臣はいろいろなことをお考えでこういうふうにおっしゃったのでしょうけれども、私としてはこういう言い方はちょっと予想外だったなという感じをそのときの新聞記者会見で述べたということです。

植田委員 もちろん金融担当の大臣のお立場としては、経済成長率の問題というのは、これはもう不良債権処理を直接なさっておられる立場からすれば非常に敏感だということは非常にわかるわけなんですが、事はやはり大きな問題でして、やはり成長率の見通しいかんで、実際、不良債権処理に伴うさまざまなマイナスの問題にかかわるセーフティーネットの張り方が変わってくると思うのですね。やはり、実際に失業が出る、倒産が出るということに対して、成長率との見合いですから、そこはやはり違ってくると思うので、そういうこともありますから、私は非常にそこはこだわるのです。

 もう一つ、この基本方針の取りまとめの論議の過程でも、これは同じく二十三日の読売で出ておったのですが、不良債権の現状把握は十分なのかとか、銀行の不良債権処理を促す環境整備が必要だ等々の意見が交錯して、不良債権処理策についての考え方が対立し、調整が最後までもつれ込んだというふうな記事があるわけですけれども、これもほんまの話なんでしょうか。事実関係のまず確認だけです。

柳澤国務大臣 それは、私は今新聞は大体フォローしていますけれども、記憶にもないし、事実の上でもなかったことでございます。

植田委員 これに似た事実があって、恐らく新聞記者の方が早合点してこういうふうに書いたのでしょうという御認識ということで、私もちょっとそこまで事実関係を確認していませんから、ほんまやと言われたらほんまと聞くしかないし、違うと言われれば、そうですかというしかないわけなんです。

 ただ、いずれにしても、誤解は誤解にしても、私も、もともと経済なんて勉強しなかったのですが、最近、しゃあない、エコノミストなんというのを毎週買って読むようにしておるのですが、例えば六月二十六日の記事なんかでも、「永田町、霞が関「不良債権」勢力図」なんという、こんな表までありまして、私もこういう図を見せられると非常にわかりやすいのですが、「慎重派 公的資金再々注入に消極的」ということで、柳澤金融大臣の写真があります。そして、真ん中に小泉総理が、まだわからへんという意味でしょうか、はてなのマークがあって写真があって、一番左側に「強硬派 公的資金再々注入も辞さず」と竹中平蔵経済財政担当大臣の写真がございまして、そのほか、「かつての“政策新人類”」と言われておられた国会議員とかも強硬派の中に入っておるわけです。小泉さんの顔は心なしか竹中大臣の方を向いたような絵づくりにはなっておるのですが、ただ、やはりこれは、今はまだ笑いで済むかもしれませんけれども、もっとぎりぎり議論をしていったら、ここはやはり閣内不一致だというふうに言われるような状況で、誤解されるような状況で果たしていいのかという、やはり危惧は持ちます。

 その意味で、これまで、もうここも再三お伺いしてきたわけですけれども、いずれにしても、最終的に決断されるのでしょうけれども、確かに、この間も何度かお伺いしたかもしれませんが、金融担当大臣がおっしゃいますように、破綻懸念先以下に分類されている企業だけ対象にするのであれば公的資金の再注入は必要ないというのはそのとおりだと思うのですけれども、少なくとも市場の声とすれば、それでは日本の銀行は再生できへんのと違うかというのが、やはりかなり多数派になってきているのと違うかなと私は思っているわけなんですが、その点について御見解をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 恐らく、先生が大変なお勉強をなさって目に触れられている雑誌のたぐいというのは、非常に多くいわゆる証券会社系のアナリストの皆さんの分析というのが基本になっているのだろうと思います。このアナリストたちの分析については、私も随分前は、もうこんなもの、何というか、一つ世の中に出ている石ころみたいなものだぐらいな感じでおりましたのですが、最近になって結構いろいろ、まじめに議論の中に入れてくる方もいらっしゃるものですから、私もかなり念入りに、特にこの議場で引用された分については念入りにトレースをしてみました。

 感想を余り言って人をおとしめることを私は好みませんので申しませんけれども、かなり、ちょっと何とも形容しがたい質だな、こういうふうに思っていまして、手法等は非常に勉強になるところもあるのです、参考になるところもあるのですが、そういうものだろうというふうに敬意を表しながらちょっと横へ置いている、こういうのが私の立場でございます。

 資本注入が云々というのをどういうふうに考えるかということなんですが、我々のシステムでは、従来からそうなんですけれども、国民の税金を一企業の資本金に、税金になりかねない公的資金を一企業の資本金に入れるというのは、全くこれは異例のこと、異常なことだろうというふうに思います。

 それは、要するに金融システムの危機という中で行われたことでありまして、一行がつぶれそうだ、資本が少なくなったというときに、そういうものを救済するために入れるなどということは全く私の頭の中にはないのでございまして、そういうのは自己努力で、とにかく自分が信認を得られるか、自分がこれから再生していくことについて世の中でお金を出してくれる人がいるのかということで、もう死に物狂いの努力をする。それで、それをだれも見向きもしてくれる人がいなくて、そしてその努力が無に帰すれば、それはもうそれで、それこそが市場退場ということなんですね。だれも、市場が見向きしてくれないということは、市場から退出すべきだということを意味しているにすぎないと私は思っているのです。

 ですから、それと違って、非常に慈悲深い方々がいて、金融機関はつぶれちゃいけないから、そのときは資本を注入しなきゃいけないのだというお立場に立てば、結論はおのずから別のものになるだろうと私は思っています。

植田委員 もうちょっと時間がありませんので、エコノミストを読むよりも、議事録を取り寄せて柳澤大臣のやつをきちっと読んだ方が勉強になるということかもしれません。もうちょっと話したかったのですが、時間がほんまないので、あと最後一点だけ聞いて終わりたいのです。ほんまはもうちょっとぎょうさん質問を用意しておったのですが、余り今回ダブらなかったので、ぎょうさん余ってしまいました。銀行法の入り口の話だけ聞いて終わりにしたいと思うのです。

 私も、銀行法を勉強するに当たって、二十年前の銀行法のときの質疑を取り寄せたのですが、結局、質疑は読みこなせずに、本会議の各党の代表質問だけ、きのうの晩ちょっと読んでおったのですけれども、私どもの前身の社会党の議員の方のを扱えればよかったのですが、余りおもしろくなかったので、私もちょっとこの方の事績は承知しないのですが、民社党に竹本孫一という方がいらっしゃったようでございます。質問の中身もさることながら、非常に格調の高い議事録を起こされておられまして、私など何ぼ本会議をやってもなかなかこんな名文はようつくらんな、非常に漢文の素養のある方なのかななんかも思っておったのですが、それは余談です。

 当時、この民社党の竹本孫一という方を初め、我が社会党、前身の社会党も公明党もそれぞれ、資金の適正配分に寄与しであるとか、社会的に期待される方向への資金配分、また集積した資金を社会公共性のために配分する等と、表現の違いはあるわけですけれども、それぞれ資金の配分機能にかかわって銀行の公共性というものを強調して、それについては、当時の鈴木総理、渡辺大蔵大臣初め、資金調達面だけでのうて、資金運用面でも適切な配慮が求められるという点で認識が共通していた。ここは当時の野党も政府も認識は非常に一致しておったわけです。

 そこで、まとめて三つだけ聞いて、その答弁を聞いて終わりますが、一つは、改めてですけれども、そこで、銀行法一条の説く公共性の意味を何と考えるのかという点。

 もう一つ、当時の、二十年前、当然さまざまな、二八年にできて八一年に改正されたわけですけれども、銀行の公共性という文言がそのとき入ったわけですが、その公共性という観点から、当時具体的にどんな要因が働いたとお考えなのか。

 そして、特にこういう文言をほうり込んだということは、やはり一番大切な資金運用面における公共性という点で当時の銀行業界の側に自覚が乏しかった、そういう側面があったのではないかというふうに私は推察しておるのですが、その点について、三点お伺いいたしまして、終わります。以降は次、後編ということで、次回に回したいと思います。

山口委員長 予定の時間が終了しておりますので、大臣、簡潔にお願いします。柳澤大臣。

柳澤国務大臣 竹本孫一先生は、私と同じ選挙区で戦ったこともある大先輩の立派な先生でございまして、公約に銀行法の改正という文言を入れる、おおよそ、ちょっと考えられないぐらい、普通の公約にはないようなことを項目としてうたわれる、そういうすばらしい方でございました。これは私も尊敬しておった方でございます。

 公共性が入ったのはどういうことかということでございますけれども、ちょっと急な御質問で、いきさつ的な意味でということなんですが、十分なお答えができないかとも思いますが、当時は、全般に企業の社会的責任ということが言われておった時代だったかと思うのです。そういうことの中で、銀行については、ちゃんとしかるべき資金需要のあるところに資金を仲介して疎通させることが銀行の使命だ、こういうようなことが恐らく公共性ということでうたわれたのだろう、このように思います。

 三つ目、ちょっと飛ばさせていただきましてお答えをさせていただきますが、バブル時に公共性を欠いたのかということについては、これは、結果においてはそういう側面、恐らく一番問題なのは、信用秩序というかそういう、みずからの信用を傷つけてしまったというようなことが結果したという意味で公共性を欠いた行動だということが、今から考えると言えるかとも思います。

 現在の公共性については、第一条にあります信用秩序の維持だとか、あるいは金融の仲介機能であるとか、あるいは預金者の保護であるとかというようなこと、そういう具体的な事実が先にあって、それらを全部ひっくるめる概念として公共性という言葉が総括的な言葉として使われているというふうに私どもは解しております。

植田委員 もうすぐ終わります。

 私は、八〇年代、その改正当時、銀行の公共性ということで、後で、ではバブルのときどうなったのだということも聞くつもりだったのですが、きょうはそれははしょったわけで、そこまで通告してあったので全部まとめてお答えいただいたということなんでしょう。

 ということで、あとの残りはまた引き続き次回に譲ります。前編はこれで終わります。

山口委員長 次回は、来る二十九日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十九分散会




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