衆議院

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第2号 平成13年10月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成十三年十月十七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 海江田万里君 理事 中川 正春君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    左藤  章君

      七条  明君    砂田 圭佑君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      中野  清君    中村正三郎君

      林田  彪君    牧野 隆守君

      増原 義剛君    山本 明彦君

      山本 幸三君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    生方 幸夫君

      江崎洋一郎君    河村たかし君

      小泉 俊明君    佐藤 観樹君

      末松 義規君    永田 寿康君

      長妻  昭君    上田  勇君

      谷口 隆義君    若松 謙維君

      中塚 一宏君    佐々木憲昭君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    漆間  巌君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    田村 義雄君

   政府参考人

   (国税庁次長)      福田  進君

   財務金融委員会専門員   白須 光美君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十七日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     左藤  章君

  若松 謙維君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     竹本 直一君

  上田  勇君     若松 謙維君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第六〇号)

 財政及び金融に関する件




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 おはようございます。日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 九月十一日のアメリカで発生した同時多発テロ、これに対する十月八日のアメリカの武力行使、こういう緊迫した事態が、ニューヨーク株式市場での株価の大幅下落、ドル安、こういう事態をもたらしております。今後の日本経済に少なくない影響が出てくると予想されるわけでありますが、まず塩川財務大臣にお聞きをしたいと思います。

 この多発テロと米軍のアフガンへの攻撃によって、今後、世界と日本の経済にどのような影響があらわれると見ておられますか。また、実質一・七%と見込んでおられました今年度の政府経済見通しはどの程度落ち込むというふうに予想されていますか。まずこの点をお聞きしたいと思います。

塩川国務大臣 まず、現在の、テロ事件に対しますテロ防止対策の世界、国際的な連帯に行うところの行動でございますけれども、これに対する影響は、まだ定かにはわかりません。しかし、やはり社会、経済には一定の影響があることは事実でございますし、まず特定の産業界においての影響も出てきております。

 しかし、全体として見ました場合に、これは戦争というような一面も持ってはおりましょうけれども、より以上に、そういうテロ行為を行うところのいわゆる集団と申しましょうか政権と申しましょうか、そういうようなものを未然に防止するために壊滅させていこうということが主眼でございますので、そういう点から見まして、戦争的な一面を持っておりますけれども、反面、むしろ国際外交の問題が主体となってきておるように思っておりますので、今直ちに戦争的な経済の影響というものに重点を置いた考え方をすべきではないと思っております。

 けれども、この事件によりまして経済界全体が受けましたダメージは大きいものがございますので、そういうことから、不測の事態が起こらないように、十分緊張感を持って事態の推移を見守っていって、適時適切な対策を講じるということの用意をしておかなけりゃいかぬと思っております。

佐々木(憲)委員 政府経済見通しが一・七でありましたけれども、これはかなり、この事件が起きる以前から極めて深刻な状況が生まれていると思いますが、今年度の見通しはどのようにお考えでしょうか。

塩川国務大臣 見通しにつきましても、私はまだ十分に承知いたしておりませんけれども、しばらくの間、私は低成長が続いていくだろうと思っております。その意味において、現時点に立ちまして、直ちに景気が回復するあるいは活況を呈するということは期待は薄いのではないか。しかしながら、これもそんなに長期にわたるものではないと思っております。

佐々木(憲)委員 竹中経済財政担当大臣は、昨日、政府見通しは一・七だけれどもマイナス一・〇に下方修正するというふうに記者会見でおっしゃったそうです。大体そういう考えでおられますか。

塩川国務大臣 それは経済財政諮問会議にかかっているわけではございませんで、竹中大臣としては学者的な、いわゆる対象から見てそのように言っておられるんだと私は思っておりまして、それは研究をされた結果の発言であろうと思って聞いております。

佐々木(憲)委員 アメリカでは、テロ事件以後、個人消費が非常に萎縮して落ち込んでいるということで、大変大きな問題になっております。

 日本でも、GDPの約六割を占めるのが個人消費であります。これがどうなるかというのは、今後の日本経済の動向を左右する非常に重要なかぎになると私は思うわけですが、総務省が五日に発表しました全世帯家計調査によりますと、八月は前年比で一・一%の減少であります。連続五カ月前年水準を割り込んでいる、こういう状況であります。これは八月の数字ですけれども、問題は九月以後ですね、これがどうなるかということであります。

 大臣の基本認識をお聞きしたいのですけれども、今後の日本経済における個人消費の役割、これは私は大変重要だと思うのですけれども、この家計消費というのが経済にとってどんな位置づけというふうに認識されておられるのか、この点をお聞きしたいと思います。

塩川国務大臣 私は、最近の消費者物価指数であるとかいろいろな数字が言われておりますけれども、これらの数字が本当に実体社会を正確に反映しているかどうか、いわゆる統計そのもののファクターから十分検討する時期に来ておるのではないかなと。私は、間違っているとは言っておりませんが、しかし、検討する必要があるんだろうと思っております。

 それは何かといったら、従来の消費者物価指数というのは、余りにも生活の物質面における統計を中心にいたしておりましたけれども、現在で消費者動向を見ますと、消費者はむしろハードの支出よりもソフトの支出が非常に多くなっていることは事実でございます。それは佐々木さんも御存じだと思うのです。そういうようなものはどのように消費者統計に出ておるかということにつきまして、私は、若干これは研究してもらう必要があるのではないか。

 したがいまして、消費が落ち込んでおることは事実でございます。それは物質的な消費は落ち込んでおりますけれども、一方において、ハード的な面における消費は、新しい開発が行われたりなんかしまして、それなりに活況を呈する面もある。全体として消費者といいますか国民がいわゆる生活あるいは家計上に使っておる支出というものは、そんなに私は変動しておるものじゃないと思っております。

佐々木(憲)委員 統計指数をより正確にするというのは重要だと思うのですね。

 ただ、今おっしゃったように、現在の統計が不正確であるとすれば、私は、より大事なことは、生活の実感にどれだけその統計が合っているのかという角度から見直すということが大事だと思うのですね。そういう点からいいますと、どうもこの統計は実感に合わない、むしろ生活実態の方がより深刻だ、こういう声をよく聞くわけであります。

 ですから、景気のウオッチャー調査ですとかいろいろな工夫をされているようですけれども、しかし、大臣の言うように、現実は楽だけれども統計が厳しくあらわれるというのでは私はない、これは逆ではないかというふうに思いますので、その統計の検討も、より正確にやっていただければというふうに思うのです。

 そこで、個人消費の重要性については大臣もお認めになっていると思うんですけれども、アメリカはこの個人消費の落ち込みに対して大変大幅な減税を行うということが発表されておりまして、それは金額にして総額約六百億ドル、日本円で七兆二千億円の減税ということですね。

 塩川大臣にお聞きしたいんですけれども、個人消費の落ち込みに対して、アメリカではこういう措置をこれからとろうとしておりますが、日本の場合も大変深刻な事態にありますが、これに対して何らかの対応を考える必要があるというふうにお考えなのか、それとも、これはもう特に対応するということも必要がない、こう考えておられるのか。その点について、政策の基本的な方向性についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩川国務大臣 これは正確じゃございませんでしょうけれども、私が最近アメリカの方からもらいました指数によりますと、確かに九月の落ち込みは、対前月二・四%消費は落ちておるという報告がございますが、その中に括弧して、この主たる要因は自動車関係の販売の不振によるということが書いてございまして、したがって、一般消費は落ち込んではおるけれども、そんなには落ち込んでおらないだろうと思っております。

 私らの方で、日本におきましても、消費は、衣食住の面に関しまして、私はやはりこれからの消費の重点を置いていくべきは住じゃないかなと思っております。食と衣は大体において消費者の水準はまあ以前よりは低下しておらない、むしろよくなっておるようには思いますけれども、住宅の改良に対する要求は相当ございますので、住宅関係に関する消費をもう少し高めていく必要があると思っております。

佐々木(憲)委員 食と衣が低下していないというふうに、この問題を議論しておりますといつも塩川大臣はそのようにおっしゃるんですけれども、私は衣も食も今大変落ち込んでおるというふうに考えておりまして、それは、正確ではないとおっしゃるけれども、政府の統計では前と比べてかなり落ち込んでいることはこれは事実でございます。住宅も落ち込んでいる。

 そういう状態の中で、これはもうしようがないんだというふうな考えでどうも今おられるような感じなんですけれども、果たしてそれでいいのかどうか。塩川大臣は、個人消費の重要性は認めておられると思うんですね。これがどんどん落ち込んでいるという状況の中で、これに対して、今の御答弁ですと、まあ政府としては特に改めて何か対応するようなこともない、大体そういう考えなんでしょうか。

塩川国務大臣 いや、何も対策が必要ないとは思っておりません。

 しかしですよ、佐々木さん、最近、衣料品にしても、特に食料品なんて、物すごい価格破壊が起こっておるんじゃないでしょうか。今まで一万円ぐらいかかっておったレストランのいわゆるフルコースが、五千円、七千円という程度に下がってきております。ですから、実質的な消費というものはそれほど落ち込んでおらないんだけれども、価格が非常に低下してきた、廉価してきたことが、消費全体と見ました場合に、消費が落ち込んでおるような私は数字になってきておると思っております。衣料品につきましてもそうでございまして、もう以前に比べまして、十年前の衣料品の平均価格と現在と比べましたら、かなり低下しておる。これはやはり経済界の努力もあったんでございましょうけれども、流通システムだとかいろいろな面の改革、機構改革が行われた結果、こういうことをもたらしたと思っております。

 ですから、消費量と消費に使っておる価格の総額というものとは、ちょっと私は最近違うんではないかと思っております。その意味において、私は、現在の統計をもう少しいろいろな面から、ファクターを再検討してもらいたいなと思っておるんです。

佐々木(憲)委員 今、統計の話ばかりされますけれども、需要が落ち込んでいるために物が売れない、売れないから価格が低下する、これはデフレ的現象ですよね。しかもアジアからどんどん低価格が入ってくる、そういう関係で起こっているわけでありまして、これが生活にプラスになっているということでは私はないと思うんですね。これはそこばかり議論してもしようがないんですけれども。要するに、私が質問をした点について大臣は、個人消費が落ち込んでいてもそれに対して正面から何か取り組むというような姿勢はどうも見られないわけであります。

 そこで、もう一度全体の経済に戻して考えてみますと、経済が成長率がかなり低下してくる、マイナスになる、当然、そうしますと税収も落ち込んでまいります。財政に与える影響というのは大変深刻だと思うんですね。そこで、今年度の税収、これは当初予算では五十兆七千二百七十億円と見込んでおられましたが、かなり低下すると思うんですが、この辺はどのように数字の上で見通しておられますか。

塩川国務大臣 先日、当局者の方から聞きましたら、大体、年間通じまして一兆一千億円ぐらいの減収になるであろうという報告を受けております。

佐々木(憲)委員 一兆一千億円の減収というのは大変深刻だと思うんです。

 そこで、もう一つは、今度、歳出の面でありますが、昨日、米軍支援のための法案が特別委員会で採決をされました。これは、アメリカの報復戦争に後方支援という名で自衛隊が参加する、我々はこれは憲法違反の法案だと思いますけれども、反対でありますが、この法案が仮に実施されていくとなった場合、これに伴ってどのような財政上の負担が生じるかというのが私の知りたい点であります。

 このテロ対策法、あるいはアメリカ戦争支援法と言ってもいいと思うんですが、今までできなかったことをいろいろやろうということであります。一番典型的なのは、武器弾薬の輸送であり、かつその支援の範囲が地理的には無限定であるという答弁でありました。かなり大規模な支援ということになるのではないか。法案によりますと、補給、輸送、修理、整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務、その他いろいろありますけれども、この中身を見るだけでも、かなり広範囲の財政負担が伴うだろうというのが想定されるわけであります。

 そこで、今年度予算との関連でまずお聞きをしたい。今年度予算では当然、想定外のことが今起こったわけであります。法律もつくって想定外のことをやろうとしているわけであります。そうすると、最初にこの予算は組まれていないわけですから、その費用を一体どこから出すのか。この点、まずお聞きしたいと思います。

村上副大臣 佐々木委員の御質問にお答えします。

 まず、このテロ対策関連法案に基づいて、我が国の支援については、御高承のように、米国等の意向なども踏まえて、どのような協力支援活動をするかというのは今随時検討が進められているんですけれども、現時点においては、同法案に基づく支援内容がどのように行われるのか、また、追加的経費が発生するのか、またしないのか、それについても非常に不確定な状況にあります。

 それから、今後、具体的な支援内容でもって既定予算で対応し切れない追加的な措置が生じる場合には必要な財政措置を考えているんですが、今の御質問で、具体的な財源措置として、年度内の追加的措置については、補正予算への計上あるいは予備費用による対応が考えられるということが言えると思います。

佐々木(憲)委員 じゃ、もうちょっと具体的にお聞きしたいんですけれども、十月六日に航空機C130輸送機六機が愛知の小牧基地からパキスタンに飛んだわけですね。三泊四日かけて行った。このための費用、具体的には幾らかかりましたでしょうか。

村上副大臣 このC130の六機がパキスタンに派遣された費用なんですが、大体、航空機の修理費が一億二千七百万、それから地上支援等の経費が七千百万円で、大体約二億円と聞いております。

佐々木(憲)委員 これだけのことをやるだけでも二億円がかかるわけであります。

 過去も、例えばカンボジアへの派遣、これで平成四年で七十五億円、平成五年二十九億円。それからモザンビークへの派遣の経費も平成五年で十億円、平成六年七億円。ルワンダ、平成六年五十七億円。過去の事例を見ましても、非常に限定的ではありましたけれども、それでもこれだけの金額がかかっているわけでございます。

 そうしますと、これは補正予算で措置をしたいというふうなお考えですけれども、では補正予算はいつごろ提出されるんでしょうか、塩川大臣。

塩川国務大臣 補正予算の提出の時期でございますけれども、やっと税収見積もりが大体確定しまして、今精査いたしておりますのがもう近く決まると思っております。そういたしますと、いろいろな査定がこれから行われてくることでもございますので、十一月の十日前後ではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 それで、その規模ですね。これは、今も村上副大臣がおっしゃいましたが、この米軍支援というものも含めて考えておられるのか、それとも、それはまた別途考えておられるのか。新聞報道によりますと、一次補正で景気対策などをやり、二次補正でこの米軍支援の問題をやるというようなことも言われておりますが、その辺はどういう区分けになるんでしょうか。

塩川国務大臣 それは、特定の経済界を代表する新聞がそんなことを書いておりますけれども、他の新聞はそういうことは冷静に扱っておりまして書いておりませんが、一次補正、二次補正というものは、風聞であることは事実でございますけれども、政府の方針としてはそれはとっておりません。

 あくまでも、近く、十一月の上旬、あるいは中旬になるかもわかりません、私は大体十日前後と思うておりますが、提出できると思います補正予算、これが本物の政府の補正予算でございまして、風聞による補正予算はどこから出るかは私は承知しておりません。

佐々木(憲)委員 そうしますと、竹中経済財政担当大臣が一次、二次と考えているというふうにおっしゃいましたが、これは違うわけですね。

塩川国務大臣 どういう意味か、私は全然わかりません。しかし、政府はそうであるということだけ申し上げておきたいと思います。

佐々木(憲)委員 竹中大臣は政府じゃないわけですね。

 それで、今、米軍支援の問題も補正で措置するという答弁、村上副大臣がおっしゃいましたね。これは、それではどのくらいの規模になるのか。どの程度を想定しておられますか。

村上副大臣 お答えいたします。

 先ほどお答え申し上げましたように、現時点では米国から後方支援にかかわる要請についてはまだ把握しておりませんし、また、今申し上げたように、追加的経費が発生するのか、しないのか、まだまだ不確定な状況でありまして、そこら辺は今後の状況を見ながら考えていきたい、そのように考えております。

佐々木(憲)委員 十日までにこれは出すわけですから、どの程度というのはある程度想定はつくと思うんですが、どうも今はまだ不確定だとおっしゃる。

 それでは、アメリカの側は、日本に後方支援という形でやってもらいたいというような話がアメリカから伝わってくる。日本の政府としては、小泉総理も、最大限やるんだ、できることは何でもやる、こうおっしゃっているわけです。

 そうしますと、要請された支援の内容、これはどの規模になるかわかりませんけれども、しかし日本政府の立場としては、この要請に対して、何かこの辺までは、もうこれ以上はできないよ、予算も大変な事態だから、財政も大変な事態だからこれ以上はできないよ、こういう考えはあるんでしょうか。それとも、要請されたらできるだけ、上限なしに対応したいというふうに考えておられるのか。その辺の考え方はどうですか。

村上副大臣 それは当然、先生御高承のように、憲法の範囲内でもありますし、それからもう一つは、今回のアフガンの戦いは湾岸戦争とちょっと戦い方も違うでしょうし、そこら辺をまだまだ、初めてのコンバットですから、だれもが想像つかない点が多々あるわけで、現時点でそこまではだれも把握できていない、私はそう考えております。

佐々木(憲)委員 金額について、今の御答弁ですと、特に上限を設けて何かやろうとしているわけではないということだと思うんですね。

 そうすると、アメリカ側はこの軍事作戦はかなり長期になるということを言っているわけですね。当然、日本も長期にわたる後方支援、財政負担というのが要請される。そうなると、今のただでさえ大変な赤字財政が大変圧迫されてくると思うんですけれども、そうなっていくと、問題は、その負担がほかの費用に回されて、後方支援関係がふやされるけれども、ほかのところが圧迫されるという可能性が非常に出てくると思うんです。

 そこで、塩川大臣にお聞きしたいんですが、三十兆円の国債の枠、この点について、先週の金曜日、当委員会で御答弁になったのをお聞きしますと、三十兆円は原則です、これはもうやめるわけにはいかないんだというふうにおっしゃいました。新聞報道によりますと、小泉総理は、今緊急事態だから、三十兆という枠、この点についてこだわらないという話も伝わっておりますが、大臣はどのようなお考えなんでしょうか。

塩川国務大臣 私は、小泉内閣として閣議で決定いたしました国債発行の枠を三十兆円内に抑えて、それで予算を編成していくという基本方針には変わりません。

 小泉総理自身も、非常事態が起こった場合ということでございますが、現に非常事態が現在起こってきておりません。将来はわかりません。けれども、今のところ、そんな状況ではない。私が冒頭佐々木さんの質問で申しましたように、現在のアフガンに対しますアメリカがとっております作戦は、一面、戦争のようではございますけれども、実態を見ますと、グローバルな外交交渉が主体であるということでございますので、しかも、いや、事実そうなんですよ。だから、戦争じゃないですよ。向こうでやっているのは事件でありましょうけれども。

 しかし、そういう点から見て、我々に何の経済的な要請はまだ出てきておりません。ですから、そういうようなものが具体的に出てきた段階において考えるべきであって、我が国は主体性を持っておるんですから、日本のいわゆる方針、政府の方針によって予算を組めばいいのであって、アメリカがどうだろうから第二補正だ何だという、そんなことを今の時点で考える必要はない。我々日本人として考えておりますから、御承知いただきたい。

佐々木(憲)委員 まあしかし今の御答弁を聞いていますと、アメリカが爆撃していることさえどこか忘れ去ったような話で、現実に軍事作戦を組み、毎日爆撃が行われているんですよ。それで、一般市民が巻き添えを食って、大変な死傷者が出ている。そういう事態について全く認識がないという感じがいたします。

 いずれにしても、そういうことに対して日本が後方支援するという法律を今与党の側は強行しようとしているわけであります。そのための財政措置もとろうというわけでしょう。そうすると、赤字財政が非常に深刻だ、その中で三十兆の枠は守るんだ、そうすると、どこからお金は出るんですか。結局は、国民の生活に関連するところ、こういうところが圧迫されていくじゃありませんか。

 では最後に具体的に伺いますが、厚生省が医療改革の試案を出しましたが、財務省は十月五日に「医療制度改革の論点」というものを出されましたね。この「医療制度改革の論点」というのは、厚生省の案と比べて、財政的な面でいいますと、財政の負担、つまり公費負担、国庫負担について、より国が医療に対してかかわりを薄くしていく、手を引いていく、こういう形になっているんじゃありませんか。厚生省の側は、これも国民負担をどんどんふやすなんというのは我々から言わせればけしからぬわけだけれども、それでもまだ生ぬるいということで出されたんじゃないでしょうか。その基本的な比較、内容について、大臣からお考えを聞かせていただきたいと思います。

塩川国務大臣 私は、佐々木さんとは大分考え方が違いますね。私は、だからちょっと私たちの考え方をちゃんと教授しておきますから、覚えておいてください。

 財政の基本は、入ってくる、入るをはかって出るを制すというのがやはり財政の基本なんです。そうでしょう。これはわかりますでしょう。ところが、従来は、景気対策だといって出る方ばかりはかって、そして入る方をどうするこうするということを考えて、それが国債発行六百六十六兆円というところまで来てしまった。だから、そこで財政をこの際健全化しなきゃならぬ。これはおわかりでしょう。そうするならば、入るをはかって出るを制すという原則に返るべきであるということであります。これが一つ。

 それからもう一つ、厚生省に対しては、「論点」でございます。論点を出すということは、まさに査定するところの交渉じゃありませんか。何も意味がなくて、ただ削ればいいというのが査定じゃございません。私たちは、こういうところが問題があるから検討しようというので論点を出したのであって、意見を出したんじゃありません。

佐々木(憲)委員 時間ですからこれで終わりますが、今おっしゃった点は、いろいろ我々、異論があります。

 六百六十兆の借金をつくったのは、今までのあなた方の政権がやってきたわけでありまして、それがどんなに財政を深刻な事態にさせてきたかという反省が、まずない。

 それからもう一つは、それをどういう形で解消しようとしているか。我々は、むだな公共事業を削れということを言っております。しかし、まともな公共事業を削る案なんか出てきていないじゃありませんか。

 もう一つ問題は、それをどこに向けているかというと、医療、社会保障、生活、こういう分野の切り込みを、これは査定とかなんとか言っていますけれども、ばっさばっさと削ろうという姿勢が見え見えであります。

 我々は、その中身を問題にしているのです。本当のむだを削って、国民の暮らし、国民の命、ここにかかわるところはしっかりと確保し、そして財政の再建の方向を見通していこうと。だから、今回のように青天井で、アフガン攻撃をがんがんやっているアメリカを補正予算を使ってどんどん支援して、財政破綻に拍車をかけるようなやり方は反対だ、このことを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

山口委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 先ほどの約三十分の佐々木憲昭先生と塩川財務大臣の応酬を拝聴しながら、やはり塩川財務大臣にあっては、日本経済の現状に対する認識が庶民とはもしやしてかけ離れておられるのかなと思いながら拝聴いたしました。

 と申しますのも、もちろん昨日のテロ対策特別措置法ですかにおける与党の皆さんの賛成ということも、国民的視点で見れば、やはりちっともよくなっていない経済状況、暮らしの問題、そして先ほどの佐々木先生のお話にありました医療問題、本当にサラリーマンも三割自己負担、あるいは御高齢者も窓口負担がふえるという中で、何となく、やはりこの国というのは何を大事にしているんだろうなと国民の全部が感じている中にあって、先ほど来の大臣のお話は、やはり非常に実感から薄い、ちまたの庶民の声とは薄いなと拝聴しながら、私は、もう佐々木先生の繰り返しになる点は避けて、一点だけお伺い申し上げます。

 税収が五十兆から約一兆減となっておりますが、この間、新たにまた狂牛病問題というのが発生しております。先ほど、塩川財務大臣は、日本のこれからの消費の面では、衣食というものはほとんど足りて、あと住の問題が、住宅の問題が主であろうし、そこに消費の芽を見るというふうな、短絡的に申しませばお話であったと思いますが、実は食という問題、食の安全、食べるものの安全、一日三回食べておりますから、幾ら坂口厚生労働大臣が牛肉をわしわし食べてくださっても、やはり国民の不安、食卓への不安というのは非常に大きい。そして、今、多くの酪農家あるいは骨肉粉の処理業者、たくさん倒産もいたしております。

 この中で、この狂牛病問題が日本の財政に与える影響ということについて、現段階で塩川財務大臣の御見識を、もちろんこれはだれも予測の域を出ないわけですが、しかしながら私はやはり、日々のことですので、大変に多岐にわたると思っております。そして、現在でも既に一兆の税収減という中で、この食卓の問題、食べることの問題、安全性を失うことが経済に与える打撃についてどのようにお考えか、御見識をお伺いいたします。

塩川国務大臣 狂牛病問題は確かに深刻な問題であることは私たちも承知しておりまして、それでございますから、連日報道されておりますように、農林省と厚生省がこれの検出、検査に全力を挙げておりますし、また、出荷等につきましての措置も適切にやっておることでございまして、この措置は急がなきゃならぬし、また徹底しなきゃならぬと思っております。

 その間、やはり食肉に対する影響は避けられないと思っておりますけれども、しかし、今おっしゃるように、狂牛病からくるところの、日本経済が転覆してしまうというふうなことにはならない。日本経済はまだまだしっかりしておりますから、狂牛病で日本の経済が転覆するとは私は思っておりません。けれども、食生活上深刻であるということは私たち承知いたしておりますので、全力を挙げてこの対策を講じたいと思います。

阿部委員 先ほど、財政の出るを制して入るをはかるでしょうか、塩川財務大臣はおっしゃいましたが、その際にも、やはり税収減に対する認識は甘く、歳出の増大については、先ほど佐々木先生も御質問でしたが、例えばテロ対策の支援に一体幾らの予算が計上されなければならないのか、その歳出部分については、ある一面非常に甘い認識をお持ちのように拝聴します。そして、逆に、国民にとっての命の綱である医療については、先ほど来、出るを制するということで、極めて歳出の削減という方に重きを置いてございますから、やはりもう一度政治の中心というものを、安心とか生命とか、最も人間の根幹とするものに置いての御認識を組み立て直していただきたく、これは私からの要望でございます。

 引き続いて、柳澤金融大臣にお伺いいたします。

 今のような経済状況、塩川財務大臣によれば、今は苦しいけれども決して心配したものではないよ、簡単に申しませばそのような御認識であろうかと思いますが、金融関係の問題、特に九月期大手銀行の赤字決算ということも言われておりますし、現時点での柳澤金融大臣の財政並びに金融情勢についての見通し、御見識をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 日本経済につきましては、当初、私も九月の初めの週にアメリカに一週間ばかり行って、アメリカの経済の状況、またイギリスにもちょっと立ち寄りましたので、そのときにも、EUの経済、あるいはヨーロッパからアメリカ経済をどう見ているかなどについて、若干の意見の交換をしてきたのですけれども、そのときには割と皆さん強気で、年後半には明るい兆しが見えてきて、来年には三%ぐらいの成長が見込まれる、アメリカ経済ですけれども三%の成長が見込まれる。三%といえば、五%になんなんとするような成長を記録していたそれ以前に比べてややペースダウンという感じはするけれども、あれだけの巨大な経済が三%伸びていくというのは、やはりすごい力なんだ、こういうような認識を各所で示されてまいりました。

 それが一転して、今度のあの同時多発テロによって大変な大きな影響を受けておって、これらの見通しのいわば修正を余儀なくされているという状況は、これは否定すべくもない、このように思います。

 こうした中で、日本経済を見ますと、日本経済は、アメリカに半年ぐらいおくれてうまく反転上昇のきっかけをつかめるかというようなことで期待があったのですが、それが、ややアメリカ経済の反転がおくれるということに従って日本経済もまた低迷が長引くというような状況にあるというふうなことであろう、こう思うわけでございます。

 私ども、金融行政の面から申しますと、目下最大の問題が不良債権の処理ということであることは言うまでもないわけですが、これにどのような影響を与えるか。一般論として言えば、これは決してプラスの影響というか、仕事をする上でのカンファタブルな環境とは言いがたいということは、もうこれは私がここで指摘すべくもないのですけれども、それではどのくらいの影響が出るかということについては、まだ私ども確たる見通しを持つというふうには至っておりません。

 ただ、一つ言えることは、せんだって我々は、不良債権の問題の正常化というものを、不良債権比率であるとかあるいは不良債権の処理に要する損失の比率などを一つのメルクマールにしまして、推計のモデルを発表させていただいております。その推計のモデルの前提になったのは、かなり厳しい不良債権の発生についての見通しでございましたので、今回のそうした経済環境の逆境というかそういうものが、今言った不良債権処理の、不良債権の発生の見込みの範囲におさまるのかどうかということが私どもにとってはさしずめ問題で、今のところは、その範囲におさまるかおさまらないかというあたりを見守っていきたいというのが私どもの基本的な考え方だと申し上げてよろしいかと思います。

阿部委員 お話の前半の、九月期まではかなりヨーロッパ並びにアメリカの経済見通しも明るいものであったがという御指摘ですが、実は、このテロ事件の発生以前からアメリカの実体経済と申しますものにも既に陰りが見えておりましたでしょうし、全体に、希望的な観測をすることは人間大事だとは思いますが、しかしながら反面、やはり最悪の事態あるいは憂うべき事態の発生ということも考慮していかなければいけない。その場合に、後半の柳澤金融大臣のおっしゃった、不良債権比率が果たして見通しどおりの範囲内で済むのか、それを上回るのかも、もちろん慎重に見ていかなければならないということでもあるのでしょうが、しかしながら、現実に出てくる諸政策と申しますのは、できるだけ状況はよい方に判断して、あとは成り行きに任せるというふうに見受けられてなりません。

 そうしたやり方というか、そうした政府の取り組み方の中で、実はこの間、来週にも議員立法で出るのやもしれませんが、いわゆるRCCによるいろいろな不良債権の時価による買い取りという案が浮上しているように思いますが、このことに関しまして、これが果たして問題の先送り以外の何らの解決を生まないのではないかという不安もございます。

 時価で買い取った場合に生じた二次的な損失は、国民の税金で補てんする形でしか補い得ませんし、現在の、先ほどの不良債権比率はやってみなければわからないという、端的に言えばお答えだったと思いますが、万が一この時価による買い取り等々の中で、仮説には答えられないとすれば申しわけないですが、生じることも考えなければいけませんので、損益が生じた場合に二次補てんをするということも考えなければいけないと思いますが、そうした状況についての柳澤金融大臣の御見識を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 先般、私ども政府側でも発表いたしました改革先行プログラムの中におきまして、RCCが不良債権の買い取りをする場合の価格について、その決定方式を弾力化したいということ、それから、もともと先般議員立法でこの五十三条買い取りが延期されているわけですが、その期限である十五年度末までの間に、その弾力化された価格でもって買い取りというものを集中的に実施したいというような意向をここで明示させていただいたわけでございます。

 そして、政府側といたしましては、弾力化というのには若干幅がありまして、私どもとしては、今非常に保守的な買い取りをしておりますものですから、これを法律が読めるぎりぎりぐらいまで弾力化したらどういうことになるのかなというようなことを想定してこの文章も書いたのでございますけれども、党は、その後におきまして、いや、そういうことではなくて、あのときにいろいろ国会での論議があって、この法律の規定だけじゃなくて、答弁なんかも一ついわば法規的な効果、機能を果たしている。そういうことをひとつやはり修正をする、つまり法改正を伴った修正をした上でこの弾力化を図るということが適当ではないか、こういう考え方が強く出てまいっておるようでございます。

 そうして、そういう中で、一部に言われたような簿価での買い取り、これはもうもってのほかであるということになって、現在は時価ということを中心に論議が進んでいるというふうに私ども受けとめさせていただいているわけでございますけれども、今、阿部委員の御質問というのは、一つは、RCCに持っていってまたRCCで長い期間かかるというようなことだったら、単なる問題の先送りじゃないか、当事者がかわるだけじゃないかというようなこと、これが第一点であったかと思います。

 しかし、この点については、やはり不良債権の処理というのは、銀行のところからどこかほかに持っていけばそれで済むという問題ではなくて、やはりきちっとした最終的な処理が行われるということが必要だということは、これはもうRCCもよく承知をいたしておって、RCCの機能、能力を十分に使って早期の解決を図るということがやはり同時に裏打ちされなければならない、このように考えておりまして、その点について何かややあいまいにするというような考え方はないのではないか、このように考えております。

 それから第二番目の、二次損失が出たときにどうするんだということでございますけれども、この点については、確かに超保守主義の今までの買い取りに比べれば、時価ということになりますと、私は、二次損失の発生する可能性という、可能性だけからいえばそれは高まるということを否定すべくもないと思うのですけれども、しかし、現実にそういうものが出てくるかというと、このあたりのことは、その衝に当たる、その仕事に当たるRCCもかなり神経質というか敏感になっておりまして、できるだけトータルにおいて二次損失を出さないように処理していこうというような気持ちであるというふうに確信しておりまして、そんなに大きな心配をそこにしなければならないという状況にはない、このように我々は見ておるわけでございます。

阿部委員 心配をしなくてもいいような状況をもちろんだれしも望むわけでございますが、私の御質問は、最悪の事態が生じた場合に、二次損失補てんは税金に頼らざるを得ない。その場合に、監督省庁としての金融庁の責任のとり方まで含めて、それはもう最悪の事態かもしれませんが、御認識がおありや否やということをお伺いしたいです。

 もちろん、物事はよい方に見通していけばいいですが、株価の低迷、それから焦げついた土地の問題、いろいろ、やはりまだ日本の経済は決して安定期には到達しておらないと思います。

 その中で、時価による買い取りというのは、今までの金融再生法による買い取り等々に比べればやはりかなり損益が出ることもあり得ることだと思いますので、二次損失が生じた場合の監督省庁としての金融庁の責任のとり方について、一応覚悟のほどを伺っておきたいと思います。

柳澤国務大臣 これはもう行政をやる以上、いかなる行政であろうとも、責任というものを回避したのでは正しい行政というものは期待すべくもないわけでありまして、我々は、どのような行政についても常に最大限努力をし、責任を全うしたいということで取り組ませていただいております。

 この二次損失の問題については、まず一義的に、どういう仕組みになっているかということをお話し申し上げますと、RCCというのは預金保険機構の子会社なわけでございます。預金保険機構の上に我々がその監督官庁として乗っかっているということでございまして、RCC自体も二次損失については敏感である。その上の預金保険機構は、これはまさに、もし二次損失が起これば、自分自身がその政府保証の履行を求めるという意味で政府にその話を持ってこなきゃいけないという立場になっていますから、さらに敏感である。そして我々は、監督官庁として常に行政の責任を感じつつ仕事をさせていただいておるということでございますので、責任ということについては二重三重の責任体制がしかれているということが仕組みの上でございます。

 その上に、さらに重ねて申し上げるのですけれども、第一線のRCCについても、二次損失については非常に敏感な感覚でもって仕事をしてくださるというふうに期待をしているということでお答えにさせていただきたい、このように思います。

阿部委員 現在の政治において国民が一番不満と不安に思いますのは、いわゆる政治責任の問題。これは各省庁、例えば狂牛病問題での農水省の対応あるいは薬害エイズでの厚生省の対応、いろいろ国民が一番不安に思う点は、その責任のありかと責任のとり方であると思います。

 そして、金融行政においては、やはり銀行の経営責任、このことを経営責任者が明確にとるということがこれまで国民に見えなかったということが、かえって金融に対しての国民の不信を買っているように思います。

 そして、現在、RCCの機能強化によって不良債権処理を高めていこうとする方針の一方で、例えばIMF等は、公的資金の注入をもってしてもより迅速に不良債権処理を進めるべきではないかという提言もされているように見聞いたしますが、こうした公的資金の注入によるより迅速な不良債権処理のあり方について、柳澤金融大臣はどうお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 公的資金による資本注入ということは、先生も御案内のように、一九九七年の金融危機のときから始められまして、あのときは金融機能安定化法でございますか、そういうものがスタートでございます。

 その後、より本格的に金融機能早期健全化法ということで、さらにそれが本格的なものになりました。それが今、ことしの三月三十一日で一応閉じられておりまして、バトンが預金保険法の百二条でしたか、における金融危機対応というものに引き継がれていることは、先生御案内のとおりでございます。

 それで、そこにおける要件というものはどういうものかといいますと、安定化法はちょっとおくにしましても、金融機能早期健全化法と預金保険機構の危機対応、金融危機対応の要件というものは、私はほぼ同じものだというふうに思っております。もし早期健全化法が残っていれば、金融危機であろうとなかろうと、どこかの金融機関の資本金が不足になったら、ほいほい安直に入れられるかというと、私はそういうものではないだろうと思うのです。要件をきちっと審査して、その要件に当てはまらなければそういうことはできないということであろうと思うのです。

 もし、その要件に当たれば、今度の預金保険法の要件にも当たっているはずなんで、預金保険法を発動するかどうかということが問題になるというふうに考えているわけでございまして、したがって、我々としては、その要件に合致するような状況が生まれれば、ちゅうちょなくこの条項を発動して必要な措置をとる。つまり、具体的に言えば、資本の増強も必要なら必要ということでやる、こういうことを何回も申し上げているわけでございます。

 どうも世の中の話というのはそうではなくて、どこかある銀行の、金融危機なんか何も起こっていないのに、どこかある銀行の資本が不足になったから、では資本注入しますかというような感じの問題の立て方をしているように感じられる面もなきにしもあらずというのが、私、個人的かもしれませんが、受けとめ方でございますけれども、そういうことはいまだかつてやったことはない、日本でも、そういうふうに私は思っているわけです。

 やはり金融機関といえども民間企業でございます。もちろん、公共性が高いものですから、その公共性の面、つまり、金融システムというものが安定していなければいけないという公共性の面が非常に動揺するということで初めてそういう公的資金による資本注入というものが正当化されるというのがまあ真っ当な解釈なんだろうと私は思っていまして、そういう公共性の側面からする要請がない限りは、一般の民間企業と同じように、資本が不足したら、自分でどこかで増強のための努力をまず一義的にそれは当然すべきだというふうに私は思っておるわけでございます。

 まあ今先生が挙げたような国際機関も、あれは町にそういう声が多いようだよということを伝えているという、自分たちの意見ではなくて町にそういうことを言う人が多いよということで、町の意見であれば、我々も町の意見は直接でもわかるわけで、別にIMFというような立派な機関から教えてもらわなくても、我々も目もあれば耳もあるということで、聞いておりますということでございます。

阿部委員 町の声を外国から指摘されるというのも非常に問題が多いかと思いますが、その町の声をお聞きの上で、今度はちょっと塩川財務大臣にお伺いいたします。

 塩川財務大臣も随所において、必要な場合には公的資金の注入を考えるという御発言がございますが、それは、ただいま柳澤金融大臣のおっしゃった預金保険法の百二条、首相が金融危機対応会議を開いて、預金保険法の百二条に基づく公的資金の注入のことをお考えなのか。あるいはまた、小渕内閣時の金融再生法等々で、別途な法を用意して公的資金の注入ということもお考えであるのか。その辺、政府内の見解はいろいろあろうかと思いますが、確認のため、塩川財務大臣はどのようなお考えであるのか、お教えください。

塩川国務大臣 私の発言があるいは誤解を生んだのかもわかりません。私は、そうは言っていないのです。

 どうしても必要な場合、起こった場合、金融庁からの要請があれば考えざるを得ないということを言っておるので、私のところは財務省でございますので、銀行との直接の関係は所管外になってきております。けれども、重要な行政上の関係がございますので、もし金融庁の方で必要がありとおっしゃるならば、我々としては公的資金の注入は必要ないという立場をとっておりません。

 でございますから、もしあるとするならば、それは緊急やむを得ない場合であったら、やはりそれに応じてもいいんじゃないかという趣旨を言ったのであって、私の方から主導的にそういう金融に公的資金を注入することを言った覚えは私はございませんで、そういうことでございます。

阿部委員 この不良債権処理問題は、世界の金融市場からの早期な解決を求める声が強いと同時に、我が国の経済においてもやはり非常に重要な点であると思うのです。

 現在、預金保険法の百二条で、一応十五兆の枠ということで、もちろんこれを緊急会議を開いて発動することもできるわけですが、IMFを初めとして民間のエコノミストの間にも、果たしてその額で不良債権処理が本当に速やかに進むのであろうか、逆に言えば、さらに大きな規模で一挙的な解決を図ることも考えた方がよいのではないかという指摘もあるやに思います。

 これは、不良債権処理の額の見通しとも関係いたしますが、そういう背景を踏まえてのIMF等の提言もあろうかと思いますので、柳澤金融大臣として、現時点で不良債権処理、果たして預金保険法からの、百二条からの利用も含めた公的資金の現在の枠内で解決し得るものとお考えなのか否か。この件に関してはこれで終わりますので、最後にお願いします。

柳澤国務大臣 今先生御指摘のように、百二条の金融危機対応勘定というのが預金保険機構の勘定の中にございまして、そこに政府保証枠というものが十五兆円与えられているわけであります。

 言いかえますと、預金保険機構としては、もし必要となった場合、今年度でございますけれども、十五兆円の限りで政府保証をもらった上で資金の調達ができる。それは、市中から借りる場合も、預保債みたいなものを出す場合も含めて、どういうインストルメントというか商品を用いてであれ、それには政府保証が十五兆円つくということで資金調達ができて、そのお金でもって資本の注入なり、あるいはその他の、百二条が掲げてあるような業務ができるということになっているわけでございます。

 私ども、今の自己資本の状況、これは先ほどお尋ねになったのかもしれませんが、ことしの九月末の例えば大手行の決算の状況、これはむしろ、不良債権の処理損というものもさることながら、何といっても株価が、昨年度末、十三年三月末が一万二千九百九十九円だったわけですが、それがことしの九月末は九千七百七十四円というように、非常に下がったわけでございます。

 もちろん、その日一日の株価でもってそれを時価として解決するというところばかりではありませんで、一カ月先の平均をとるところもありますので一概には言えないですが、概して言うと、やはり年度末というか、中間、期末の株価というのは非常に大きな負担になっております。

 そのために、減損会計をしなきゃならないところ等も出まして、これが非常に大きな作用を及ぼして自己資本比率についてもかなり低落を余儀なくされるんじゃないかということですが、それでも、一〇%台がおおむね各行で維持できるんじゃないかというふうな見込みを持っているわけでございまして、この段階で何かすぐ資本注入が必要だというようなことには、どういう見方に立つにしてもならないのではないんだろうかというふうに現時点では思っているということでございます。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

阿部委員 では、本当に最後に一点お願いいたします。

 いわゆるペイオフの件ですが、先回もお伺いいたしましたが、金融情勢についての御認識が多少私どもと異なるのかもしれませんが、日本商工会議所の山口会頭の今回の御発言で、ペイオフ、この金融状況から見れば延期すべきではないかという御提言もあるかと思いますが、ペイオフの解禁の延期について、現段階で柳澤金融大臣の御見解を伺います。これは毎回聞いておりますので。

村田副大臣 ペイオフの解禁の再延期はないか、こういう御質問でございます。

 ペイオフの停止自体でございますけれども、個別の銀行の問題というんじゃなくて金融のシステミックリスクの懸念がある、こういうときに停止された、こういうことでございまして、そういう状況に今ないというのがただいまの大臣の御答弁でありました。

 昨年延期いたしましたのは、都道府県所管から国の所管に移されました共同組織の金融機関が、検査を受けた後に資本の充実等の必要な措置をとる時間を確保したい、こういう意味で延期をしたわけでございまして、そういう意味では、今大臣が御答弁されましたように、自己資本の状態も一〇%ある、全体的なシステミックリスクにつながる懸念はない状況のもとでは延期する考えはない、こういうことでございます。

阿部委員 日本の金融がさらに国民的信頼と世界からの信頼を得ますように、御助力いただきますように。

 終わります。

佐藤(剛)委員長代理 次に、鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 おはようございます。自由党の鈴木淑夫でございます。

 塩川大臣と柳澤大臣に対して、一般質疑をさせていただきたいと思います。

 御承知のように、日本の景気後退は次第に深刻になっておりまして、四―六にマイナス成長になった後に、今度の米国の同時多発テロ、これに伴う世界同時不況の荒波が押し寄せてまいりますので、この先、来年にかけて大変なことになっていくと思うのですが、当面のこの不況現象というのは、御承知のようにまだ小泉政権の構造改革は実施に移されていませんから、改革の痛みというよりも、率直に申し上げて昨年来の自公保政権の政策の結果、私は、構造改革先送り、マクロ経済政策の欠如という無為無策の結果だと言いたいんですが、そういうことで景気後退が起きているというふうに思います。

 それで、この状況の上にいよいよ構造改革が補正予算の実施で始まるわけでありますが、総理もよくおっしゃるように、そして大臣お二方、皆さんおっしゃるように、構造改革には痛みを伴うというわけですが、初めに塩川大臣と柳澤大臣、それぞれにお伺いいたします。構造改革の痛みという場合に、具体的に何を頭に置いておられますか。

塩川国務大臣 構造改革は、それぞれの経済のシステム、あるいはまた経済の体制といいましょうか、あるいは仕組み、そういうようなもののやり方を変えるのでございますから、従来から、その仕組みあるいは体制の中で恩恵を受けておったものが不利になるということは当然でございますが、それを、不利になることがいわば国民の側から見ましたら痛みということになると思っております。しかしながら、改革をすることによって、国民全体から見ましたらプラスになるということを私たちは信じて、構造改革に取り組んでおるということでございます。

柳澤国務大臣 基本的に塩川大臣がおっしゃったことと同じ考え方を持っております。

鈴木(淑)委員 両大臣の御見解はまさに私が考えておることとも同じでございまして、構造を変えていくわけですから、これまで既得権益に守られている部門は規制撤廃その他で寒風にさらされる、こちらはどちらかといえば衰退部門になる。だけれども、規制撤廃で新しいチャンスに恵まれた発展部門側が発展していく。そういう形で構造が変わっていく。そして最終的には、資源の配分も所得再分配も今までよりは合理的になる結果、私は成長率は上がっていくんだというふうに思っております。

 しかし、目先は、衰退側から出た失業者などがうまく発展側に吸収されない摩擦的失業みたいなことも起こりますから、ちょっと不況現象といいますか、景気に対してはマイナスのインパクトの方が一時的に先に出てくるということだというのは、もう塩川大臣がおっしゃり、柳澤大臣が自分もそう思うとおっしゃったとおりだと思うんですね。

 そうだといたしますと、御所管の中で、この痛みがやはり出てくると思うんですね。財政赤字の拡大というのは痛みの一種じゃありませんか。不良債権の増加というのは痛みの一種じゃありませんか。これは、ずっとそうなるなんて私は言いませんよ、一時的な痛み。だってそうでしょう。構造が変わる過程で摩擦的な失業やなんかあるからちょっと景気が落ちるわけですから。そうすれば、税収が落ちて財政赤字が拡大するのは当たり前じゃないでしょうか。あるいは、そういう不況現象で、特にこっち側、衰退する側が寒風にさらされてあっぷあっぷするんですから、新たな不良債権が発生するのは当然でしょう。

 両大臣にお伺いします。塩川大臣、財政赤字拡大というのも痛みじゃないですか。あるいは、新たな不良債権の発生というのも構造改革に伴う痛みじゃありませんか。

塩川国務大臣 財政の緊縮をやっていくということは、確かに痛みは一面において出てくると思っております。

 しかしながら、鈴木先生にはもうそんな原則を申し上げる必要もないと思うんですが、財政の中には基本的な考えとして、やはり入るをはかって出るを制するという精神が中心となって財政構造が組まれていくべきであると思います。場合によって違うことはあります。それは緊急対策のときには、支出をはかってそれに収入を合わせていく努力も必要であろうと思いますけれども、現在においては、私は、むしろ構造改革を進めるということは、すなわち、入るをはかってそれに合わせた財政を組まざるを得ない状態になっておると思っております。

 そうであるとするならば、痛みは確かに出てまいります。その痛みの出てくるところに対して必要な措置を講じていくことによって中和を図っていくということをせざるを得ないと思っております。

柳澤国務大臣 不良債権の発生というものが構造政策を推進する場合の痛みではないかということについては、私もそのとおりだ、こういうふうに思います。思うんですが、現状がどうかということで申しますと、私は、今の不良債権というのは、構造転換がかなり進んでおって、そこからもうかなりの部分が不良債権化している状況だというふうに思います。

 もちろん、例えば産業の空洞化というのは我々が望ましいと思って進める構造政策ではないと思うんですけれども、そういうところで、例えば製造業からさらに空洞化が進んで不良債権が出てくるというような面も今後予想されないわけじゃないんですが、例えばリゾートであるとか、あるいは不動産価格をめちゃくちゃ高く買い上げて地域のマンションをつくったとかというようなところが、構造転換をさせられてもっと簿価を下げろというような形になっている。そういう構造変化による不良債権の発生というのは、もう既に顕在化している。

 だから、これから新規発生ももちろんありましょうけれども、それはむしろ、我々の方から見ますと、かなり循環的な面が出てくるのではないかな。構造的な面というのは、かなり不良債権に関してはもう顕在化したんではないかなというふうに見ているわけであります。

 またさらに御教示を賜ればと思います。

鈴木(淑)委員 まず塩川大臣に申し上げますが、入るをはかって出るを制するんだ、この原則を堅持していくんだといたしますと、構造改革を実施したときに、その痛みで税収は落ちてきますね、一時的ですが。そうしたら、この入るを見て、これは大変だといって出るも税収が落ちたと同じように抑えるとしますと、これは財政面からも痛みをさらに強める、景気後退をさらに強めるということになりますね。

 別の角度からいえば、景気が悪くなって税収が落ちるということは、このままほっておけばビルトインスタビライザーで景気を支えるんですが、入るをはかって出るを制しちゃったらそのビルトインスタビライザーを消しちゃうんですから、ですから、これはますます痛みを拡大して、景気後退を強めることになりますが、そういう御方針ですか。

塩川国務大臣 私は、財政の問題そのものが経済を絶対的に支配するものとは思っておりません。財政と経済との相関関係は非常にきついものは承知しておりますけれども、財政の支出あるいは抑制というものと経済界との関係は、非常にシリアスではありますけれども、だからそれによって経済界が決定的な影響を受けるとは私は思っておりません。

 むしろ、現在の時点においては、税収が落ち込んでおるということは、経済情勢が悪いから落ち込んでおるのであって、それに対しまして、将来負担になるというものの国債を発行してそれを埋めるよりも、むしろ、そうであるとするならば、現在の財政支出の中身をこの際もう一度検討し直して、本当に必要なものを、あるいはまたぜい肉となっておるもの等を選別していって、できるだけ歳入に合わせたような支出を組んでいくべきである。それでもなお、おっしゃるように、どうしてもセーフティーネットとかいう面において行わなければならないものはあります。そういうふうなものに対しましては、十分な手当てをしなければならぬということであります。

 現に、日本の財政を見ました場合に、財政規模が、今年度、十三年度は約八十兆でございます。八十兆でございますけれども、八十兆のうち三十兆近く、二十八兆幾らというものを国債によって賄っておるということは、もう財政の基本的な考えからいって相当無理をしておる予算になっておるということは、これは鈴木先生も承知していただけると思うんです。

 そうでございますから、この際、財政の基本を尊重して、もう一度、歳入の中において財政支出の面を合理的に検討するということをやはりやらざるを得ない状況にあるということで御了解いただきたいと思っております。

鈴木(淑)委員 歳出の中身を相当点検して、むだな歳出を切っていく、そして構造改革を促進するような歳出をふやす、これはもう当然です。大臣おっしゃるとおりです。

 仮にそれで、今の来年度についての御方針のように、五兆円むだをカットした、それで構造改革促進の二兆円をふやす、プラスマイナス三兆円歳出削減、こうしたとします。はっと歳入側を見たら、景気後退が厳しくなって一兆円税収が落ちている。そのときに、入るをはかって出るを制するんだったら、ああそうか、じゃもっとこっちを落とすんだという話になるんですよ。

 私は、歳出の中身を入れかえていけということについてはもう大賛成ですよ。そのことと、マクロ経済政策としてのこのバランスの問題はまた別なんですよ。十分歳出の構造を変え中身を点検した上で三兆円削減と思っていたら、歳入はさらに一兆円減っちゃった。そうしたらどうするんですか、四兆円削減にしちゃうんですか。そういうことをやっていれば、どんどん痛みをふやして足を引っ張りますぞということを言っているのであります。

 そして、もうお答えいただかなくていいですが、それとの関係で柳澤大臣に申し上げますが、確かに、バブル崩壊に伴う不良債権の処理、それから九〇年代前半の停滞期に発生した不良債権の処理はかなり進んできていると思います。特に大手行についてはそうだと思いますね。しかし、私の見るところ、ことしはもう間違いなくマイナス一%前後のマイナス成長、来年も、プラス成長にはならないと思います。マイナス差が縮むことはあっても、二年マイナス成長だろうと思います。そういう中では、当然新たな不良債権が出てくると思うんですね。

 ところが、不良債権早期処理だ、二、三年でやる、大手行は二、三年だ、その他も入れて例えば二〇〇七年度までにめどをつけちゃうんだという、不良債権早期処理という政策を構造改革の中でかなり優先度の高いものとして挙げておりますと、やはり不良債権、ふえてくるものを早期処理しようというんですから、何か手を打たなきゃいけない。

 それで、一つは、言うまでもなく不良債権の買い上げの問題、整理回収機構による買い上げでオフバランス化を促進するという政策がありますね。それからもう一つは、その結果、不良債権早期処理しろ、実質的にも処理しろといったら自己資本比率が下がっちゃったというと、じゃ公的資本をもう一回入れるのかなという話もあるでしょう。

 しかし、これは両方とも財政資金が要るんですよね。両方とも財政資金が要りますね。そのとき塩川さんが、だめだ、税収が落ちておる、入るをはかって出るを制するんだから、むしろ不良債権処理に使う財政資金は減らしこそすれ、ふやすなんてとんでもない話だと、言い出しそうですよ、今のお話だと。そうすると、非常に金融大臣はお困りになる。

 つまり、塩川大臣、私はわかりやすく言っているんですが、ずばり言いますと、改革の痛み、それからその前からの景気後退で税収が落ちて財政赤字が拡大している。それから、不良債権がふえてきている。そのときにどっちを優先しますかということです。不良債権早期処理を優先するんだったら、財政赤字は拡大せざるを得ないでしょう。逆に、がっちりキャップ三十兆円で、もうどんなに税収が落ちても出る方を制しちゃうから三十兆円のキャップはびた一文譲らぬと言っていたら、不良債権早期処理はできませんよ。どっちが最優先なんですか。逆に言えば、両立しませんよ、お二方の大臣が構造改革の中でねらっていることは。

 その場合は、柳澤大臣、どうされますか。塩川さんに対して、さあキャップの例外をつくれ、不良債権早期処理は小泉改革の目玉だ、こっちが優先度が高いとおっしゃいますか。それとも、塩川さんの、いやいや三十兆円のキャップが小泉改革の最優先課題だ、おまえの方が引っ込めと言いますか。

 柳澤大臣、どうされますか。不良債権早期処理するんだったら、今のように入るをはかって出るを制されちゃったら、たまったものじゃないですよ。いかがでしょう。

柳澤国務大臣 テンポの速い鈴木委員からのお話でございますけれども、まず第一に、私どもとしては、公的資金による資本注入というものについて私が非常に否定的なことを言いますと、それはそれでまた深読みをする人が出てきまして、ああ、柳澤が公的資金による資本注入にしないというのは、不良債権の認識を甘目にして、できるだけ不良債権を出さないようにする算段だろうと。世の中というのはどこにいろいろな見方の人がいるか、私ももう本当に見るのに疲れるぐらいいろいろなことを言う方が多いわけですが、私は、そういうことは絶対に申しておらないんですね。

 ちょっと申し上げますが、私は、あの大蔵省の金融行政の分割のときに、金融検査庁の独立が今の日本の金融行政の信頼を回復するためには一番必要だということを最も強く主張した者でございます。そのぐらい実は、金融検査と監督との、監督の意向を酌んだ金融検査がなされているんじゃないかとかというような疑いというか、そういう目というものが従来からあったわけですね。

 だから私は、金融検査の信頼性を獲得するためにはそこを独立させた方がいいというぐらいに、いうぐらいじゃない、言った経緯もあるわけですけれども、ところが、いろいろないきさつのもとで私の主張が通らずに、検査と監督は一緒だからといって一緒にされちゃって、案の定、このごろにおいては監督の意向が検査に反映しているんじゃないかと。

 もう実に、私に言わせたら、私の立場からいったら、もう言わぬこっちゃないじゃないかというのが、私、当事者でありながら、まあ中村委員と私、行革で同じ意見でやっていたものでありまして、私に言わせれば、本当に今の私どもの行政に差し向けられている一種の疑いというのは、本当に、だからそういう意味で、私がそこで責め立てられるというのはどういう運命のめぐり合わせだろうと思わずにはいられないような状況なんですね。

 しかし、いずれにしても、我々はそういうことをされたんですが、検査の独立性、検査は検査の理屈でもってきちっと検査してもらうということは絶対確保しなきゃいけないということを、私は自分の役所の中で申し上げているんです。ですから、資本注入が必要だという段階ではありませんよということは、決して検査がいいかげんだから、いいかげんというか検査を甘くしていることとの関係で言っているのでは絶対ないということを私はまずわかってもらいたいんですね。

 それで、厳しい検査、これは検査マニュアル、基準に基づく検査が行われている前提で、それでその結果として自己資本の状況を見ているわけですが、先ほど言ったように、これだけ株が下がったにもかかわらず、減損会計だとか時価会計だとかというのが、厳しい会計基準が入れられたんですが、まあ何とか大手行については一〇%台を維持しているという、まだ集計途中ですから確言はできないんですが、そういう状況にある。

 こういうことでございまして、今その段階で、さあ公共の利益としての金融システムの動揺があるから資本注入しなきゃならないということは、まずないんだということを、鈴木委員にもぜひ、もう大権威者でございますので、私の味方に一人でも加わっていただきたい、こういう意味でお願い申し上げる。

 それからもう一つは、それでは、仮にそうなったときに塩川大臣におまえは言っていけるのかということでございますが、これは私は、実は今、阿部委員にも先にお話し申し上げたとおり、預金保険機構の資金調達について、預金保険機構が資本注入をする主体になるわけですが、その預金保険機構の資金というものは、今既に今年度の予算総則においても十五兆円の保証枠がうたわれております。ですから、預金保険機構としては、いつでも外部からの借り入れなりあるいは債券の形なりにして政府保証つきの借り入れができる、資金調達ができるということになっておりまして、それを活用すればいいというだけの話と言っては恐縮ですが、そういうことでございますので、直接三十兆円との絡みは、多分、私は財政の方はまだつまびらかでないんですが、関係が出てこないというふうに解しておるわけでございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(淑)委員 柳澤大臣、私は、柳澤大臣が検査の独立性が非常に大事だと言っておられたことをよく承知しております。そして、現在もそれを主張しておられるのは、私、賛成でございまして、同じ金融庁の中にいても、あそこにはっきりしたファイアウオールみたいなものをたてなきゃいけないという信念をお持ちだということも承知しています。だから私は、柳澤大臣が、不良債権早期処理という監督行政の方が難しくならないように検査を甘くしろなんて言っているとは全然思っていませんから、そこは御安心をいただきたい。

 ただ、私が言っていますポイントは、これも時間があとたったの七分ですからお答えいただかなくてもいいんですが、私は実は、大手行といえども自己資本比率が実勢でそんなに高いと思っていません。ましてや、ほかは相当危ないなと思っています。これはこの場でお答えいただかなくてもいいんですが、いわゆる税効果というものがありますでしょう、税効果を調整する。それから既に入れた公的資本を抜いてみる。そうしますと、自己資本比率はかなり低いですよ、大手行といえども。

 ですから、私、全然楽観していません。ここでまた不良債権がふえてきて、それでも二、三年で処理させたら、大手行といえども実勢の自己資本比率はかなり、四%すれすれ、あるいはそれ以下というのが出ちゃうかもしれないというぐらい私は危機感を持っているということだけ申し上げておきます。

 それで、塩川大臣、私は尊敬する塩川大臣をこの場でお困りになるような立場に追い込もうと思って言っているんじゃないのです。建設的なことを申し上げたいんですね。ただ、その大前提として、税収の落ち込みによる財政赤字の拡大も、それから不良債権の新規発生も、実は構造改革の痛みの一種なんですよということをまず大前提として申し上げているんですね。

 だけれども、その痛みに耐えろというような、そういう単純なことを言っているのではなくて、三十兆円のキャップの政治的な役割というのは僕はそれなりに評価しておりますよ。あの三十兆円というキャップを置いたから、思い切って五兆円切れとか、かなりの荒療治ができるわけですね、むだを排除していく上で。だから、そういう意味で、あそこはそのままにしておいていいと思いますが、私は三十兆円のキャップの外枠として、こんなに税収が予想していたよりもおっこっちゃったんだ、それに伴う赤字拡大分はこの三十兆円の外枠というような柔軟な考え方をおとりなさいというのが一つです。

 それからもう一つは、米国の同時多発テロに伴う世界同時不況の影響とか、あるいは、既に第二次の補正予算ですか、それで手当てされると思いますが、この先、戦争が拡大していったときの日本の国際貢献の費用であるとか、それから三番目に、柳澤大臣のところの、不良債権処理に伴ってお金が必要になってくると僕は見ているのですね。僕はそう見ています。資本が足りなくなってくると思います、不良債権早期処理を本気になってやれば。ふえてくる不良債権を早期処理するんですから、これは相当なことです。そういうのは三十兆円の外枠にしたらどうですか。

 理屈は通りますよ。そういうふうにして、三十兆円はしっかり守る。これをてこにして行政改革を進める、むだな歳出は切る、この姿勢は絶対揺るがさない。ここを堅持して、しかし柔軟に対応するといったら、今みたいに、ビルトインスタビライザー効果としての税収減のところはしようがない。その分、慌ててまたこっちを切っちゃうなんて、そんなむちゃなことはしない。これはしようがない、許容する。それから、国際貢献の費用もしようがない、これは外枠。それから、不良債権早期処理というのは、小泉改革にとってどうしても最優先させなきゃいけない課題だし、みんなもそう言っておる。国民もそう言っておる、海外もそういう目で見ている。だから、これにかかる費用はしようがない、予想外に費用がかかるのはしようがない。

 それぐらいの柔軟性をお持ちいただきたいというのが、きょう私が塩川大臣にお送りしたいメッセージのポイントなんですよ。お二方の目標が矛盾しているよといって、つっついて喜ぼうと思っているんじゃないんです。そういう柔軟な対応をされないと小泉改革そのものががたがたしますということを御指摘申し上げているんですね。

 塩川大臣、いかがですか。

塩川国務大臣 非常に貴重なサジェスチョン、ありがとうございました。

 その中で、私は、第二、第三のサジェスチョンに対しましては、これはもう非常に有効なことと思って検討させていただいて、私も非常に賛成いたしております。

 しかし、不良債権の整備は、財政資金、つまり税金をつぎ込むということについては、相当慎重にやらなければ、これはなかなか国民が理解しないと思っております。したがいまして、いろいろな他の財源を充てて、それによって二次ロスが起こらぬようにしてもらわないかぬ。もし起こった場合に、財政出動の規模をできるだけ少なくするような方法を講じてやっていきたい。

 ですから、二番目の、国際テロに基づくところの拡大、これはどの程度になるかわかりません。これもお聞きいたしましたが、そのとおりだと思っております。二番、三番についてはサジェスチョンと。

 一番目の、赤字が多くなってきたら、税収が少なくなってきたら特別に国債発行してでも穴埋めしろという、このお考えについては、これはちょっと私たちも、現在持っております方針と、つまり私は、二兆、三兆の減収はあっても、ここはしのいでいくんだというむしろマインドの方に非常に重点を置いておる。そういう関係がございますので、この一番目のサジェスチョンについては、お聞きいたしておきまして、十分に検討いたします。

 私は、何も、そんなものだめだというのじゃございません。どんな事態が起こるかわかりませんので、程度の問題がございますけれども、少々の税収の赤字は、自分らの食いしばったことによって改善をしていく一つの足がかりにしたいという、この気持ちを持っておりますので。二番、三番目は、私、おっしゃるとおり検討いたします。

鈴木(淑)委員 今の塩川大臣のお立場では、第一の点、つまり税収の落ち込みはビルトインスタビライザー効果として許容しろというのを、この場で、なるほどいい考えだなんて言っちゃうと大変なことになりますから、後でよく考えて、時来たりなば、なるべく早い方がいいですが、ぜひそういう発想に切りかえていただきたいと思います。

 四番目のことをちょっとつけ加えます。それは資産売却です。これは前に塩川大臣に、この場でも、それ以外のときにも申し上げました。国債発行をしないで、構造改革を促進しながら資金調達する方法は、資産売却ですね。大した額ではないかもしれないが、しかし特殊法人の民営化がうまく進めば、かなりの額になるかもしれない。これは、財政赤字発行によらない資金調達になります。これも四番目の問題として柔軟にお考えいただきたいというふうに思います。

 柳澤大臣に最後のあれですが、最近、民間でこういうブラックユーモアというか、漫画みたいな話があるんですね。小泉改革は、郵貯を民営化したが民間銀行を国営化しちゃったと。それは、民間はやはり民間銀行の資本不足をすごく心配しているということでございます。御参考までに。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山口委員長 第百五十一回国会、内閣提出、銀行法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、第百五十一回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 銀行法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長田村義雄君、国税庁次長福田進君、金融庁総務企画局長原口恒和君及び警察庁警備局長漆間巌君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 初めは、銀行法にまつわりまして金融全般にかかわることをちょっとお伺いしまして、その後は、二年来から私がずっと問題にしております国税庁とそのあっせん税理士ないし税理士会、税のフェアネスのことについて、これは前回、前々回ですかね、前国会で調査をいただくというふうになっておりましたから、理事の御了解をいただきまして質問したいと思います。

 まず、ちょっと金融全般にかかわることですが、先ほどの国連から出ました例のテロ資金の口座の調査の件ですね。これについて、今どういう状況になっておるかということを、金融庁、財務省それから警察の方にもお伺いしたい、こう思います。大臣はやりはせぬの、大臣じゃないの、答弁は。

村上副大臣 いや、私がやらせていただきます。やはり同世代でお互いに頑張りましょう。さっきは年配の方同士でしたから。

 タリバーンの関係者等に対しては、御高承のように、九月二十二日に百六十五個人、団体を対象に資産凍結等の措置を講じたほか、十月十二日にアルカイーダ等の二十三個人、団体を追加し、資産凍結等の措置を講じたところであります。

 そのタリバーンの関係者等の口座の有無については、現在、金融機関等が口座の照合、本人確認等の作業を行っているところであり、そうした作業の結果については、金融機関等から報告を受け公表することにしたい、そのように考えております。

村田副大臣 それでは、マネーロンダリング対策について御説明を申し上げたいと思います。

 組織的犯罪処罰法におきまして、金融機関等が収受した資金が犯罪収益である疑いがある場合におきまして、金融庁長官への届け出を義務づけているわけであります。

 他方、国連安保理決議では、タリバーンが薬物犯罪で収益を得ていると指摘されておりますので、これに着目しまして、九月二十七日及び十月十二日付で、タリバーン関係者等に関する取引について、犯罪収益の疑いのある取引として届け出を行うように金融機関等に要請を行ったところであります。

 九月二十七日付の要請文書を発した後、現在までに複数の金融機関等から相当数の届け出を受けております。疑わしい取引に関する届け出情報については、捜査に資すると認めるときは捜査機関等へ提供することとされておりまして、金融庁としては、迅速かつ的確に対応しているというふうに考えております。

 届け出されたものには、単にリストと氏名が一致あるいは類似しているというものもございまして、犯罪捜査に密接にかかわるものでありますので、詳細については申し上げられないということでございます。

河村(た)委員 警察、お願いします。

 仕組みじゃないよ、調査の状況だけでいい。仕組みなんて言ってもらったってしようがない。

漆間政府参考人 ただいま議員から御質問のありました、金融庁から当庁の方に情報提供のあるものにつきましては、先月末から昨日までの間に相当数受けております。これにつきましては、関係の都道府県警察が現在捜査中であります。

河村(た)委員 金融庁は調査しているところということですか。財務省が複数、相当数ということですけれども、どのぐらいですかね。どっちに聞いた方がいいですか。では、金融庁に聞こうか。

 どのくらいヒットしておるんですか。たしか百八十八件でしたよね、これ、二回にわたってリストアップされたのは。形式的にヒットしておる数。

村田副大臣 疑わしい取引に関する届け出情報でございますが、捜査に資すると考えられるときには捜査当局に資料を提供する、こういうことになっておりまして、該当届け出件数の公表については、捜査当局と調整する必要がありまして、お答えすることは、現在、今のところでは控えさせていただきたいと思っております。

河村(た)委員 財務省は、複数、相当数と言っておるけれども、えらい村田さん冷たいじゃないの、それ。どうなっておるんですかね、これ。

 まあいいや。では、財務省、村上さん。複数、相当数というのは非常にちょっとわかりにくいですが、どんなものですか、具体的に。――いや、村田さん、知らぬ言うんでしょう、知らぬ言うたってしようがない。

村上副大臣 だから、先ほどお答えしましたように、タリバーン関係者等の口座の有無については、現在、金融機関等が口座の照合、本人の確認等の作業を行っているところであり、そうした作業の結果について金融機関等から報告を受け公表することにしたい、そういうふうに考えております。

河村(た)委員 何でこういうことを言っておるかというと、えらい日本は、軍隊ではありませんが自衛隊を出す方については、何か国会の承認もなしというとんでもないことをやっておきながら、こういうお金ということについては、やはり、私は御承知のように背番号も大反対しておりますし、自民党のどの方よりも自由主義経済を愛する人間でございますけれども、だから、そういう余り非常に取り締まりが強い管理型の経済というのは当然望みませんが、しかし一定の、こういうふうに出ましたら、少なくともどのくらいがヒットしておるということは言って、社会に大きく関心を呼び起こすと。

 だから、当然のことながら、当たり前ですけれども、いろいろなことがあったときに、軍隊で行くのもありますけれども、兵糧を断つというのは当たり前の話じゃないですか、それ。そっちを何もやらずにしておいて、何か軍隊の方だけしておるのはおかしいですよ、これ。

 警察の方は幾つぐらい今やっておるんですか、数は。――数ぐらい言ったらどうだというの。

漆間政府参考人 ただいま御質問の件でございますが、金融庁から当庁に情報提供のある場合には、捜査に資するという前提がついておりまして、私としては、捜査に密接に関連するものでございますので、答弁を控えさせていただきます。

河村(た)委員 いや、警察やっておるわけですか、今現に調査、調査というか捜査を。

漆間政府参考人 これは、関係の都道府県警察が捜査をやっております。警察庁は、捜査の権限はございません。

河村(た)委員 いや、私は、はっきり聞きますと、えらい一日変わると答弁がころっと変わるという、これは悩ましいんですけれども、私はこれは全部通告してありまして、大体一けたではない、二十前後であると、ヒットしたのはですよ。ただ、これは同姓同名とかありますからね。

 だから、今言われたように、複数、相当数ということは間違いないね、答弁されましたから。その内容だけれども、二十前後ときのう言っておったんですよ、大体。それでいいじゃないですか。一日たったらころっと変わるんですかね、これ。村上さん。

村上副大臣 正直申し上げて、同姓同名のものがかなりおりまして、その照合に手間取っております。

 ただ、今御指摘のように、アズ・スーン・アズ・ポシブルで、可及的速やかに公表したいと思っていますので、もうしばらくちょっとお時間いただきたい、そういうふうに思っております。

河村(た)委員 まあ、しかし、やはりこのくらいのことは、百八十八公表されているんですからね、やはり幾つぐらいは、今言ったことを言えばいいでしょう、当然同姓同名やいろいろなことがある、住所も確認せないかぬということがありますけれども、そのくらいは言わないかぬですよ、それ。

 金融庁は一番、しょっちゅうやっておるわけでしょう、この間の組対法で。最低でも一けたじゃないでしょう。それは私聞きましたよ、きのう。どうですか、村田さん。

村田副大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、複数、相当数ある、こういうことでございます。

河村(た)委員 だから、結局何か自衛隊だけ出したいような気になるんですよ、雰囲気が。やはり、こういうことからきちっとやっていくぐらいいいじゃないですか、別に名前を出すんじゃないから、ということ。

 それから、どこまでやるんですか。問題は、口座を調べて、例えば十万、二十万あった、生活費でということになった場合、その前ですよね、結局。昔、大きいお金の流れがあったとかないとか、その辺はどうなるんですか、これは。金融庁、行こうか。

村田副大臣 私どもとしては、資料に基づいて、調査できるものはすべてさかのぼっても調べたい、こういうふうに考えております。

河村(た)委員 わかりました。この辺のところはまあこのくらいで。

 次に、これは主に財務省さんになる、国税庁になると思いますけれども、六月でしたかね、六月の国会におきまして、例の国税庁、税務署の中で、私は何で言っておるかというと、私は実は小さい会社をやっておりまして、やっておるというか、今こういう仕事をやっておりますので、うちのおふくろが社長をやっております。

 僕みたいなのがもっと国会にようけおると、私が総理大臣にでもなるとようなると思いますけれども、やはり企業が税金を払うというのは、個人もそうですけれども、今大変なんですよ、言っておきますけれども。これは、それこそ血税でございまして、こういう納税者が全然おらぬ、今、私、国会に。これは、本当にこれが最悪の結果だと思いますね。いわゆるタックスペイヤーがおらぬじゃないですか、全然この国会に。自分の給料のじゃないですよ、苦労してお金を、お得意さんから頭を下げて自分の給料を集めてくる苦労した人はおらぬ。ほとんどタックスイーターの専業でございまして、そういう中で、やはり苦労して税金を、中小企業の方や、まあ大企業もそうですが、売り上げを上げて納税している。

 こういうところからすると、税務署の職員さんが、当然ながらこれはほとんどは立派な方だと思いますが、二年前に退職して、それで、何か数によりますと、東京国税局だけでも――資料配ってもらえますか、配ってありますか、お手元にあると思いますが、これはこの六月に出した資料でしたかね、国税局からもらったものですけれども。東京国税局だけでも、平成十二年九十六人、平成十一年九十三人、一人当たり十三・五件のあっせんを受けて年間一千万以上の収入を得られておるということは、本当に許しがたい、これは。こんなことをやるなら、堂々と二年間勤めて六十までやったらどうなんですか、これは。民間企業に給料を肩がわりさせておるということじゃないの、これは。

 一応、答弁はわかっておりますけれども、答えていただけますか、これ、何でこんな変なことをやっておるかを。答弁、わかっておりますけれども。

福田政府参考人 簡潔にお答えさせていただきます。

 私ども、税理士資格を有する職員につきましては、退職後、顧問先をあっせんすることは、民間のニーズに対する的確な対応、退職後の生活設計に関する職員の不安の解消、非行防止等の観点から必要であると考えております。

 なお、退職職員に対する税理士顧問先のあっせんに当たっては、従来から、納税者等から批判や疑惑を招かないように、税理士法、国家公務員法等に当然違反することのないよう適正に実施する、あるいは、企業ニーズを的確に把握いたしますとともに相手方の申し出等に応じ節度と秩序を持って実施する、あるいは、職員が個人的にあっせんするなど逸脱した行為を行うことのないよう厳正な指導に努める、こういった措置をとっておりまして、いやしくも、先生おっしゃいますように、公権力を背景とした押しつけとなることのないよう配意しているところでございますが、今後さらにこのような点を指示、徹底してまいりたいと考えております。

河村(た)委員 今言われたのはみんな、そうでないということの反対のことを言ったわけです、全部、残念ながら。

 ニーズは何なんだ、ニーズは何なんだと。これはちょっと事前にまた調査要求していきますけれども、悪いですけれども、ニーズ、ニーズと言われるなら、これは、こういうあっせん先、この間調査いただきましたね。例えば平成十年でいきますと、七十人の方が十三件ですから九百件ぐらいですか、こういうところは税理士さんは何人お抱えになっておるかということ。こんなものは簡単に調べられると思いますよ、簡単に。こういう、私はプライバシー論者ですから、当然お名前は結構でございますが、ニーズがあるというなら、そこに、その会社に何人税理士がいるかということだ、問題は。本当に働いているかどうかということだ、要するに。

 これは当然、いいですね委員長、命じてくださいよ、資料出してくれいと。余りびっくりされると困るんだけれども。じゃ、みずから出してくださいよ。

福田政府参考人 あくまでも、さっき申し上げましたように、企業にお願いをしてやっているわけでございまして、人事の担当者、限られた担当者が相手様にお聞きしてやっている、これが去年の夏の調査でございました。

 今回改めて先生からお話でございますので、どこまでできるかわかりませんけれども、お時間をゆっくりいただければ、相手様に参ってお話を聞くということ、ある程度はできるかと思います。完璧かどうかは別にいたしまして、対応はさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 じゃ、その点お願いしますね。次の国会までで結構でございますが、税理士さんがこうやってあっせんされた先に何人いるか、その会社にということでございます。まあ手を挙げぬでもいいです、確認しましたから。何ですか、また。何が言いたいんですか。

福田政府参考人 先生さっきお話ございましたように、前回の委員会で先生の方から、平成十年から十二年にかけて顧問先のあっせん件数が増加しているのはどういうものなのかということについては、まさに今精査中でありまして、具体的件数は差し控えさせていただきたいと思います。

 きょう新たに今度は宿題が出たわけですので、それにつきましては、これはまた新たに、もう一度また同じところへ行って、また別のところになるかわかりませんけれども、そこへ行って新たな作業をお願いするということでございますので、これは相当お時間をいただかないと限られた人数ではなかなか対応できないということでございますので、その二つはちょっと区別をお願いいたします。

河村(た)委員 私から、ここですが、国税庁の五万数千人の皆さんにもお願いしておきますけれども、何か質問しますと人事課が大変だばかり言いますので、ぜひ協力していただいて、人事課だけじゃなくて、これはやはり、私どもの知っておる、特に商売をやっておる人が聞くと怒っておりますよ、みんな本当に、これは。

 だから、税への信頼というのがいわゆる国家のファウンデーションでございますので、英語で言うと何か格好いいですけれども、国家の基礎でございますので、ぜひ皆さん力を合わせて、そんな時間のかかることはないですよ、九百社ぐらいやるのは、千社やるのは。だから、やっていただきたいということをお願いしておきます。

 それから、前回調査をお願いしたところで、新規に顧問先を勧誘されるということをどうやって本当に、ニーズがあるというなら、ニーズはどうやって伝わるのか。別にテレビでコマーシャルをやっておるわけではない。新聞、電柱に張ってあるわけではない。どうやってやるのか、具体的に、電話がかかってくるのか、そこをお調べいただきたいと言いましたら、前回の大武さんが、調べますといって答弁をいただいておりますので、御回答お願いします。

福田政府参考人 繰り返しになりますが、前回の先生からのお求めの資料につきましては今精査中でございますので、具体的な件数は、先ほど申し上げましたように差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、新規のあっせん顧問先の具体的件数はその中の一つでございますので件数は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、途中の中間段階で私が聞いておりますところでは、一つには、企業から直接国税局の人事担当者に要請のあるもの、それからOBの税理士を介して要請のあるもの、税務署の窓口を通して要請のあるものなどがございます。これらは、電話により要請されるものもあれば、直接国税局あるいは税務署を訪問して要請される場合もございます。

 具体的な要請内容といたしましては、法人税、源泉所得税に詳しい方はいないだろうかといったこと、あるいは税務、経営に関する相談のできる方はいないだろうか、そういったこと。関連子会社の税務を見てもらえる方はいないだろうか、こういったもの。あるいは税務実務の経験者を求められるものということでございまして、いずれにしても、企業からのこういった要請につきましては、国税局の人事課に集約されまして、人事課において一元的にあっせんをしているところでございます。

河村(た)委員 何か驚きですけれども、企業からの要請がまずあるんですか、全部。これは千社ですけれどもね、千社。

福田政府参考人 お答えいたしますが、新規あっせん顧問先の具体的な件数につきましては、さっき申し上げましたように、具体的件数が何件かというのは、今ここでは答弁は差し控えさせていただきたいと思います。これは後日まとめてお出ししたいと思いますが、ただ申し上げられることは、先生おっしゃいますように、そんな大きな数ではございません。新規のあっせん先というのは……

河村(た)委員 継続、継続というか、人間はかわりますからね。

 新規という意味がちょっとわかりませんけれども、二年ということに一応なっていますので、ある会社が引き受けておった、その場合に、その方は一応そこで切れるわけですね、二年で。だから、それでもその会社がまた新たな人を受け入れますので、それも含めてですよ。それも含めて、その次もう一回やってもらうというときにどういうふうになっているんですかね。それから、全く新規のと二つありますわね。どうやってニーズというのは……(発言する者あり)いやいや、そうですよ。それは税理士というのは、いろいろな経営のことも知っていますから。だから、それが本当に会社側からぜひお願いしますと言うんですか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 まさに、今お話がございましたように、新規というのは、言葉のとおり、新たにその会社に税理士さんを迎え入れる、会社からいいますと迎え入れる、そういうケースでございまして、河村先生おっしゃいました、今までおられた方と交代というのは、今申し上げた御説明の中には入っておりません。

河村(た)委員 そこも入れてですよ。そこも入れて、どうやって、もう一回国税のOBの方を私どもに来ていただきたいというニーズはどう伝えられるんですか。宣伝はどうしておるんですか。そう簡単じゃないですよ、世の中お金をもらうのは。国税庁だから自動的に入ってくるんじゃないの。

福田政府参考人 前回の御質問の趣旨につきましては、先ほどから繰り返し述べさせていただいておりますように、新規の顧問あっせん先はどうやって開拓をするのかということでございましたので、それにつきましてはやっております。

 今先生お話のございました、交代するときにどういうふうにしてやるのかということでございますけれども、それについては、まさにさっきの後の方のお話と重なるかもわかりませんけれども、新たにまたそのところへ行ってお話をお聞きするということになりますので、これも相当お時間がかかるかと思いますので、ぜひ御理解のほどをよろしくお願いいたします。

河村(た)委員 それもやってくださいよ。

 本当の新規のが、企業から人事担当者に、それからOBの税理士を通じて、それから税務署の窓口に見えるんですか、これは。本当ですかね。どうも私、常識から考えられませんね、これは。恐ろしいことですね。

 皆さん企業の方が税務署の窓口に来て、どなたかOBの方はお見えになりませんかと言って頭を下げて、頭を下げるかどうか知りませんけれども、頼むんですか。これはどのくらいの比率があって、どうなんですか、教えてくださいよ、本当に。普通、会社でいえば、どうやって自分のところの商品を売っているかなんというのは、こんなのは当然パンフレットなりに出ていますからわかりますわな、どうやって売り上げをふやしていくかというのは。

 これはなぜ言っているかといったら、税務署というのは権限を持っているからなんですよ、要は。それと、私はやはり自由主義経済を大事にしたいから、そういう役所というものが、税金で運営しておるところがどんどこどんどこそういう自由主義の企業人のところに侵食していってしまうということを避けたいからこれを言っているんだよ。自民党が賛成してもらわないかぬな、本当はこれは。

 本当に民間人が頭を下げに来るの、税務署に。もう一回ちょっと聞きましょう。

福田政府参考人 具体的な件数は、したがいまして何件かということは、後日まとまりましたらお出しいたします。ただ、数はそんなに多くないということで今申し上げているわけでございまして、定量的なことは申し上げられませんので、そこで切ればいいかわかりませんけれども、ピックアップした段階では、定性的なことを申し上げたのが今のようなことでございます。件数は、数はそんなに多くはございません。

河村(た)委員 そうしたら、もうちょっとしっかり次に向けて聞きましょうか。

 継続ではないんだけれども、顧問先というか、企業が継続しておる場合ですね。指定官職の方はかわられるという場合のときと、それから全く新規のときと二つありますね、要するに。それぞれについて、悪いですけれども、ちゃんと出してくださいよ。抽象的じゃなしに、こういう人がありますよと。それでは本当に税務署を訪ねてこられたのが何件あってとか、これはやはり大いに参考になりますね。電話が本当にかかってくるんだろうか、大いに参考になります。

 なぜかといったら、どうして言っているかといったら、普通の税理士さんは自分の顧問先をとるために頭を下げて回っているんですよ、悪いけれども。みんないろいろなコネ、コネというか知り合いを訪ねて、どうですか、どうですかと。そういう一つの方法と税務署さんのOBのと、もしむちゃくちゃ違っておったら、これは自由主義経済を愛する者は一言言わないかぬですよ、当然。そうでしょう。それはあなたのところは特権を持っているんだからはっきりさせなければいかぬです。

福田政府参考人 繰り返しのお答えになりますが、二つおっしゃいましたうちの一つにつきましては、これは今精査中でございますので、まとまりましたら資料は御提出させていただきます。後の方のものにつきましては、改めてもう一度調査をし直さなければなりませんので、これはお時間がかかりますので、こちらについてはお時間を下さいということを申し上げているわけでございます。

河村(た)委員 お時間というのはどのくらいですかね。次の国会でやらせていただきますよ、これは。冒頭からですよ。

福田政府参考人 前回の御質問について、去年の夏場にお話がございまして、東京国税局で申し上げますと、担当の職員が夏から、夏休みを返上して秋口にかけてやっているわけで……(発言する者あり)これはうそではございません。事実でございます。事実でございます。返上した人もおりました。

山口委員長 質問者に答弁してください。

福田政府参考人 いずれにいたしましても、人数がかかりますので、時間がかかりますので、そこのところは御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 忙しいという話は、悪いけれども、本当にみんな忙しいんだ、人生。税務署が自分のところの税務の公正さを疑われるというか、こういうときの、この程度の、東京国税局だけで言っているのよ、私。日本じゅうじゃないのよ。

 夏休み返上したと言われたから、悪いけれども、出勤簿を出してください、申しわけない。名前を伏せていただいていいです。

福田政府参考人 お答えいたします。

 私自身、ちょっとプライベートな話で恐縮でございますが、東京国税局に去年一年おりまして、土日に出勤いたしまして、そのときに働いていたのは知っておりますので、土日したということ、それをやっていたというのは私は見ておりましたのでそういうことを申し上げたのでございますので、御理解をいただきたいと思います。

河村(た)委員 では、自信があるなら、私も本当に、これは議事録を読まれて国税局の人が気を悪くしたらいかぬのだけれども、みんな努力しているから、手伝ってやればいいじゃないですか。人事は人事だと言っておらずに、みんなでぱっとやればいい。

 とにかく、出勤簿を出してください、これは要求してください。委員長。

福田政府参考人 人の数が少ないということで申し上げさせていただきまして、不適切な表現であればおわびさせていただきます。

山口委員長 該当する方の出勤簿は出せるかどうかの答弁。では、福田次長。

福田政府参考人 出勤の扱いをしてやっていたかどうかは、正直言って私自信がございません。ただ、出ていて作業していたのを見たのは事実でございますので、申し上げました。

 ただ、それで、返上した云々という表現につきましてはおわび申し上げます。(発言する者あり)返上という言葉が不適切であったということでおわび申し上げます。

河村(た)委員 こういう大げさなことは本当にやめてください。役人だけが苦労しているという発想は本当にやめないかん。私は、税金で食っているんです。私はいつもそれは思っているんですよ。自分の給料、ここでしゃべっておる時間も税金でやっているんだと。みんな、ラーメン屋のおやじやなんかの朝から晩まで働いておるお金でやっておるんだという気持ちはひとときも忘れたことはありませんよ、私は。だから、何か公務員だけ、夏休み返上して、まあ謝られたから、わかるけれども。

 では、とにかく次の国会までに全部そろえてくださいよ。

福田政府参考人 資料は、調査をさせていただきますけれども、どれぐらいの時間がかかるのかにつきましては、私自信がございませんので、次の国会までということは、大変申しわけございませんけれども、ここで確約はできませんことを御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

河村(た)委員 今の中川理事と同じ意見でございます。悪いけれども、このくらいのことをやりますと言ったらどうですか。ええかげんにしといてくださいよ。自民党も要求してくださいよ。税金には党派は関係ないですよ、別に、こんなの。

 では、委員長、言ってください。委員長から命じてくださいよ、次の国会に出してくれと。だって、東京国税局だけですよ、これは。

山口委員長 極力急ぐようにということで、答弁を、福田次長。

福田政府参考人 極力努力いたしまして、次の国会中にはお出ししたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

河村(た)委員 いや、ちょっと、話は聞けませんけれども、それは納得できませんよ。そんな、今年度内、国会中にとか、情けないわ、本当に。それは専門の人たちが何人おるの。国会議員というのは何をやっておるんですか、じゃこれ、こんなことの資料が得られなくて。

 これは、なぜこんなことを言っているかというと、役所に対しては民間人は何も言えないんですよ。国会議員こそが、給料をもらって、税金で言う仕事なんだよ。それが、こんなことが調査できずに、ぐちゃぐちゃ言ったら、ばかにされたというか、ええかげんにしてくれなあかん、本当に。やったらどうだ、本当に。ええかげんにしておけというんだよ。冒頭に出せというの、一カ月か二カ月で。(発言する者あり)そうですよ。信じられぬよ。怒るよ民間人は、こんなことを聞いたら。怒らないかぬ。

福田政府参考人 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、できる限り努力をさせていただきますので、御理解をいただきたいと思います。

山口委員長 河村たかし君。

 質問してください、委員長が指名していますから。

河村(た)委員 では、委員長、出しなさいと言ってくださいよ、委員長なんだから、あなた。あなたが一番偉いんだから。

山口委員長 申し上げますけれども、物理的な問題もいろいろあろうと思うんで、極力急ぐようにというふうなことを先ほど申し上げましたので、委員会というか、私の方としても注視しておりますので、ともかく急いで出すように、調査をするようにということでございます。

河村(た)委員 では、そんなところにしておきます。

 しかし、情けないな、本当に。普通の会社の人が聞いたら怒りますよ。みんな夜を徹してやりますよ、どこだって、夜を徹して。そういうことですよ、みんな助け合って、国税庁、人事課だけじゃないですよ、それは。そういうことですよ、そんなの。

 それから、こんなことはよもやないと思いますが、不肖河村たかしさんに、余り国税職員のあっせん問題をいろいろやってくれるなというようなことをおっしゃられたことはないでしょうね、財務大臣、よもや。ありませんわね、こんなことは。ちょっと何か言ってくださいよ。

塩川国務大臣 ありません。

河村(た)委員 ありませんということで、結構でございます。こんなことは、当然ない、当たり前のことなんで、もしあったら大変ですよということですね。

 もう一回、再度、ありませんともう一回言ってみてください。

塩川国務大臣 ありません。

河村(た)委員 そうしたら、お手元にあります次の課題に移ります。

 皆さんのところにお配りいたしました二枚目の資料に、「納税者(あなた)の権利は守られていますか」という書類が皆さんのところへ行っておりますので、ぜひごらんになってください。これは、「税務行政手続の確立を目指して 国税通則法の整備充実を」ということで、こういう書類が、実はこれは幻のパンフレットになった書類でございます。

 中は、非常にいいことが書いてあります。下に、東京税理士会と書いて、右側がちょっと抜けておりますけれども、一応の手続を経たということで、東京税理士会ということになったようでございますが、これで、こういうものを、税理士会さんというのは、長い間、建議書というんですか、主張されておりまして、私もまた、民主党のかなり多くの方の厚い御理解を得て、前回、法律に出しました。いわゆる日本版納税者権利憲章というやつでございます。

 イギリスなんかに行きますと、シチズンズチャーターといって、英語で言うと何となく格好ええんですが、サッチャーさんが、市民がお客さんだよという、それの納税者版がタックスペイヤーズチャーターというんです。そういうのはみんなあるんです、各国に、自由主義経済国においては。自民党さんも同じですよ、これ。自民党がこういうことをやらないかぬのよ、役人は嫌うけれども、ということです。それで、こういうものを準備しておったんだけれども、なぜかこれが没になったということを伺っております。

 ちなみに、私は、税理士会に頼まれてしゃべっておるのでは一切ありません。だれに頼まれて言っておるのでも全くありません、これは。自分の信念でやっております。いろいろこういうことを言うと、敵が多うなるといかぬのですが、味方もふえるかどうかわかりませんが、自由主義経済を守るということで、納税者はお客様ということで、そういうシステムを整えていかないかぬということでやっております。

 こういうすばらしいパンフレットが没になったということでございまして、その過程において、おたくに何か税理士監理官とかいう物すごい御職業の方があるようでございますが、端的に、この方の職務の内容と、その方が何かこれについておっしゃられたことがあるのではないかということについてお伺いしたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 国税当局は、税理士業務の適正な運営の確保を図ることが任務とされております。その任務を達成するために、税理士制度の運営に関する事務を所掌することとされております。

 各国税局における税理士監理官につきましては、このような税理士制度の運営に関する事務を統括しておりまして、具体的には、いわゆるにせ税理士の取り締まりに関する事務、税理士の懲戒に関する事務、税理士会の指導監督に関する事務などの統括を行っているところでございます。

 なお、税理士監理官は、税理士会の適正な運営が確保できるように、税理士会から会務の報告を受けたり、税理士会に対して必要な指導等を行っているところでございます。

 二つ目の御質問でございますが、東京国税局では、今申し上げましたような見地から、必要に応じて東京税理士会から報告を徴しておりまして、お尋ねのパンフレットの作成につきましても、局の窓口であるお尋ねの税理士監理官が東京税理士会の窓口から経過報告を受けているところでございます。その際、東京税理士会としてパンフレットを作成する場合には、東京税理士会の会則に規定された手続を経る必要があるのではないかとの指摘を行っているところでございます。

 なお、その後、お尋ねのパンフレットの作成につきましては、東京税理士会の内部で協議した結果、取りやめになったというふうに聞いております。

河村(た)委員 いや、それがどうも、申しわけないけれども、違うようなんですよね。まあ、時間もございませんから、一つ書類がありまして、今のを確認しますと、監理官が税理士会の方に、会則に規定された手続を必要とするのではないか、こう言われたわけですね。それで、そちら側で検討したところ、提出というか、出すに至らなかった、こういうわけですね、結局。

 それで、これが最近あれしたんですが、「東京税理士界」という、第三種郵便をとっております機関紙というのか、新聞があります。この中に三カ所出てくるんですが、これは外に出ておるものですからちょっと読みますと、名前は省きますと、

 副会長より、以下の説明があった。前回の理事会でパンフレット「納税者の権利は守られていますか・税務行政手続の確立を目指して・国税通則法の整備充実を」の作成・配布を報告したが、これについては、

これからですが、

 東京国税局に支部長会・理事会の議事報告を行ったところ、このパンフレットは公益団体である東京税理士会の発行する内容としてそぐわないのではないかとの意見があり、再度正副会長会・常務理事会で協議し、発行取り止めを決議した。

これが一つの文章です。

 それからもう一つは、また副会長の名前が出てまいりまして、

 前回の支部長会で報告したパンフレット「納税者の権利は守られていますか」については東京国税局への会務報告の際、同局から、公益法人である本会が意見書や要望書ではなく行政批判とも言えるようなパンフレットを作成して、納税者に配布するべきではないのではないかとの意見があり、常務理事会で審議した結果配布を取りやめることになったとの説明があった。

こういうふうに出ておるんですよ。

 これは全く違うじゃないですか。全然違うじゃないですか。どちらが本当ですか、これ。ちょっと、緊急ですが、理事、これを配っていただいたらいかぬですか、皆さんに。これをちょっと。これはどうですか、全く違うじゃないですか。

福田政府参考人 先ほども御説明いたしましたように、国税当局は、税理士業務の適正な運営の確保を図ることを任務としており、任務を達成するために税理士制度の運営に関する事務を所掌しているわけでございまして、本件に関しても、このような職責に基づいて税理士制度の適正な運営を確保するとの観点から、税理士会に対して必要な指摘を行ったものと認識しております。(発言する者あり)

河村(た)委員 伊藤さん、それは本当に公式に出ているものだから、公文書ではないけれども、税理士会の。(発言する者あり)いやいや、だから、悪いけれども、今次長が言われたのは、会則に規定された手続を必要とするのではないかと税理士監理官が言われたと。だから、それは全然違いますよ。そういう行政批判に当たるようなことをすべきでないと言っているのよ、そこで。それ、皆さんに配ってくださいよ、伊藤さん、理事、理事。(発言する者あり)いや、今、食い違いがわかったからですよ。

福田政府参考人 税理士会の会則に規定された手続を経る必要があるのではないかとの指摘を行ったのはそのとおりでございまして、必要な指摘として行ったわけでございます。

河村(た)委員 何て、もう一回言ってください。ちょっと聞こえにくかった。(発言する者あり)

山口委員長 質問者以外は御静粛に。

福田政府参考人 東京税理士会の会則に規定された手続を経る必要があるのではないかという必要な指摘を行ったことでございます。

河村(た)委員 いや、これは違いますよ、悪いですけれども。違いますよ。

 それと、実は、もう一つ違うの。これはどういうことかというと、税理士会で、平成十一年に税務審議部というところでこのパンフが作成をされて、それから常務理事会でオーケーが出て、それから理事会に報告した後ですよ。だから、すべて手続が終わった後ですよ、これ。すべて手続が終わって、まあ、何か聞きますと、昔は陪席していたと。まだ日税連ではそうらしいんですが、今はそういうことで、全部を御報告に行く、こういうふうになりましたからということで。そこで言われたということですよ。

 だからダブルに、悪いけれどもこれはうそなんだ、悪いけれども。あなた個人には別にあれはないけれども、違うんですよ。私、きのう、おとついも行って、当時の監理官にこのてんまつを聞いてくれとはっきり言ってありますから、皆さん。これは突然の質問じゃないですよ。聞かれたんでしょう、本人に。

福田政府参考人 私自身が本人から直接聞いたわけではございません。

河村(た)委員 どうしますか、これ、こんなの。まるっきりうそで、これは実は大変なことですよ、悪いけれども。税理士さんが長年かかって、まあ、私たちもそうだけれども、僕もこれはライフワークで、納税者の権利というものはお客さんだということでやらなあかんと言っておったものを、何か監理官が行政批判に当たるからやめろと言ってやめさせちゃうのよ。うそを言って答弁するな、それと。どうするんだ、国会としては、これ。どうするんだよ、一体。こんなもの続けられませんよ、こんなふうで。

福田政府参考人 このパンフレットの作成、配布については、会則によれば、理事会の承認事項であるはずのものであり、その承認を受けずに実施することは会則に反する旨を指摘したというふうに報告を聞いております。

河村(た)委員 いや、それもうそだな。理事会には報告された。なぜかというと、毎年の税制改正の意見書の範囲内の文書であるということで、常務理事会でもオーケーで報告でいいということですべての手続を終えて、いわゆる監理官に申し出た。まずそこが違うし、それと今の文書、全然違うじゃないか、言っておる内容が。行政批判に当たるからやめろと言っているじゃないか。うそかどっちかはっきりしてくださいよ。それは言ったか言わないのか、どっちだ。

福田政府参考人 私が報告を受けているのは、先ほどお答えしたとおりでございます。

河村(た)委員 こうなったら、悪いけれども、答弁者の資格ないですよ。本人呼んでもらおう。ちょっと理事、協議してください。本人。こんなことだったらどうするんですか、これは。ちょっと理事、だから本人呼んだらどうですか、参考人で。重要な問題ですよ、こういうことは。こういうことを議員はやってあげにゃいかぬのだよ。普通の税理士さんたちは言えないんだよ、税務署に、国税に。だから、議員、おれはその使命を持って言っているんだよ、これは。呼んでくださいよ、監理官を。

福田政府参考人 報告を受けたのは先ほど御答弁したとおりでございますが、事実関係を調べまして改めてお答えさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(発言する者あり)

山口委員長 質問者以外、静かにしてください。

 河村たかし君。

河村(た)委員 だから、おたくの上下関係というか報告関係、信用できないことでしょう、今の状況では。

 どうしますか、時間。これはちょっと、どうしますか。僕は参考人に呼ぶことを要求しておきます、参考人に。(発言する者あり)では、ちょっとやってください、理事会。

山口委員長 調べて報告をするということでありますので、その件につきましてはまた理事会で協議しますが、質問を続行してください。(発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

山口委員長 速記を起こしてください。

 福田次長。

福田政府参考人 河村先生から事前にこのお話をお聞きいたしまして、私、報告を受けましたけれども、今の御指摘で不十分であったというのを反省いたしまして、次回までにきっちりと調べまして、改めて中身についての御報告をさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 私は、本当に残念ながら、これは二日にわたってちゃんと、突然じゃないですよ、本当に言いました。本人に聞いてほしいと言ってのこの話ですから、悪いけれども、不信感を持っておりますし、うそを二人で相談したのじゃないかと思わざるを得ない、これは、悪いけれども。きちっと聞いてあるから。だから、私は、参考人で呼んでほしいというふうに思っております。(発言する者あり)それは監理官ですよ。

 それでは、今のところで、今の御答弁のように、事実関係をきちっと調べて、次の委員会までにきちっと文書でもって詳細に報告してください。(発言する者あり)いや、それは文書の方がいいですよ。それはいいですよ、そのぐらいは。委員長、いいですね、それで。

山口委員長 文書。文書、必要ですか。

河村(た)委員 それは文書の方がいいじゃないですか。

山口委員長 どうですか、次長。福田次長、答弁。

 調査の結果の報告につきましては、またちょっと理事会で相談させてください。相談いたします。

河村(た)委員 では、そういうことでございますが、次の問題、一つ。

 いわゆる高額納税者というのがございます。これは、三月十五日で一千万円以上の方が載るということになっておりますが、どうも、聞くところによりますと、三月十五日以前は、例えば八百万なら八百万、例えばですよ、というふうに申告をしておいて、後で修正して千五百万にして、名前を載ることだけは逃れるということが非常に多い、非常に多いとは言いませんけれども、間々あるということを聞いております。

 特に国税のOBの方であると聞いておりますので、こんな不名誉なことは当然許されないことだと思いますので、国税、調べてくださいね、これは。限定された範囲でもいいですから、こういうことがないかどうか。いいですね。どうですか。

福田政府参考人 これも先ほどのと同じような答弁をしてまことに恐縮でございますけれども、一人一人当たって事実関係を確認するわけでございますので、膨大な事務量になろうかと思いますし、相手方にお願いしてということでございますので、率直に申し上げてなかなか困難ではないかと思っております。

河村(た)委員 何を言っているんですか。国税のOBの方で税理士になられた方の申告が、その方だけでいいんですよ、その方だけで。その方だけの、例えば国税局だったら九十何人の方じゃないですか、これは。それで、何年かちょっとさかのぼっていただいたって、わかるじゃないですか。

 その方の名前はいいですよ、当然。その方の申告が、そういうことがないかどうか調べてくれと言って、できないの、これは。ないとはっきりここで言った方がいいんじゃないの、冗談じゃありませんといって。

福田政府参考人 まことに申しわけございませんけれども、個々の方の納税者がお出しになったかどうかということでございますので、それについて人事の担当者がお聞きをして、出されたか出されていないかというのをお伺いするというのが調査の方法になろうかと思いますので、この点、御理解をお願いいたします。

河村(た)委員 何を言っておるのかわからぬけれども、これもちょっと承服しかねますね。そんなこと、簡単に調べればいいじゃないの、自分のところの。そんなことありませんと堂々と言ったら、クリアになるじゃないですか。毎年、九十人でしょう、その方が申告で修正申告をして、いわゆる高額納税者になるのを逃れているかどうか、どうですか、調べさせたら。これは、海江田さん、このぐらい当然やってもらってもいいでしょう、こんなの。できないというのは、これは聞けませんよ、本当にこれは。

 どうですか、委員長。こんなの、名前を出せと言っているんじゃないよ、簡単にできますよ、これは。

 いや、時間がないので、もう一問だけ短くちょっとやりますので。

 これは本当にばかにされた気持ちになるよ、悪いけれども。こんなこと、ぱっぱっと調べて、ありませんよですぐ終わりですから。これは理事会で協議してくださいね、これは本当に。これは党派とかそういうのは関係ないですよ、こういうのは、悪いけれども。

 それから、もう一つ。いわゆる国有財産を財務省が持っているときに、文化的な価値がある場合に、比較的日本というのは、ただ新しいのをつくるだけで、どんどん壊していくという非常に情けない状況なわけです。特に私の地元の旭丘高校という、立派な建物があったんですけれども、これも、とんでもない、わけのわからぬうその情報で、建物が壊れるといって壊しちゃいました。文化庁がいいと言ったにもかかわらずですよ、使ってくれと言ったにもかかわらず。

 だから、財務省が持っている建物について、文化的な価値があると判断したときに、やはり特に、余り自民党、自民党と言ったらあかんけれども、保守だと言っておる人たち、こういうのを壊さぬようにまずやってほしい。だから、そのこと一つ、そういうことを大事にしてやるという御答弁と、それから、文京区に一つの外務省の研修所というのがあります。これも立派な建物ですから、こういうのも壊さないように、ひとつそういう意味で御答弁いただきたい、ということです。

山口委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔に。

村上副大臣 河村委員の御質問にお答えします。

 委員のおっしゃっているのは、私の家から約一キロ以内にあるものでして、外務省の昔、研修所だった、こう思います。今現に、前、司法研修所であった台東区にありました旧岩崎家の住宅緑地については、司法研修所が移転したときに残ったわけですけれども、文化的価値があるということで、今保存しております。

 今、河村委員の御指摘された土地は、私ごとで恐縮ですが、私の父が若いときに、外国へ行くときにあそこで研修をしたという思い出もあることもさりながら、河村委員がおっしゃるようにすばらしいものであると思うので、前向きに検討していきたい、そのように考えております。(河村(た)委員「一般論もひとつ言ってください」と呼ぶ)一般論としても、やはりそういう日本文化のイメージが残せるような建物は極力、財政の許す範囲で残していきたい、そのように考えております。

河村(た)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。

 通告順に従いまして、銀行法の一部改正について御質問させていただきますが、きょうは内閣府の副大臣にもおいでいただいておりますので、ちょっと質問の順番を変えまして、関連の方から先にさせていただきます。

 茨城県の取手というのは、私は常磐線で通っているわけでございますが、木曜日、金曜日、月曜日と続けて飛び込み自殺で、六時間近く電車が朝六時ぐらいからとまってしまった、今大変な状況になっているわけでありますが、小泉総理そしてまた塩川大臣就任以来、今度の十月二十六日でちょうど六カ月になります。その間の、まず、景気の今までの六カ月間の推移と、特に今現在の経済の現状につきまして、塩川大臣、どのような御認識をお持ちかを聞かせていただきたいと思います。

塩川国務大臣 長期間にわたります株価や地価の下落が、我が国経済の不況の原因となっているとの御指摘や考え方がございます。

 我が国の経済は、九〇年代に入りまして長期にわたる低迷を余儀なくされたところでありますが、その理由としては、バブル崩壊に伴うところの株価や地価の下落により家計や企業の財務体質が悪化しておりまして、家計が消費態度を慎重化させたり、企業が設備投資を抑制していった、こうしたことから不況体制になってきたと認識いたしております。

 このような情勢下にありまして、これまでの間接金融の金融構造だとか、不動産市場の低迷等、こういう資産市場が抱えております構造問題を解決することは、我が国の経済界にとって一番大事なことだと思っておりまして、その点について、先般、中間的にまとめられました改革先行プログラムの中に、間接金融から直接金融へシフトするための財政的な、あるいは税制的な措置を講じる。その中の考え方といたしましては、透明性、公平性の高い証券市場を育成するということを主題に、これからの政策を実行していくということでございます。

 一方、不動産市場の構造につきましては、不動産の証券化等を推進したり、あるいは不動産を利用する立場からにおける税制改正等に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

 消費者物価等についてでございますけれども、国内卸売物価につきましては継続的に下落しておって、これは私たちも非常に危惧を持っておるところでございます。さらに、こうした状況を踏まえて、消費者物価もそれに連動して下がってきておりますことは、私たちも大きい関心を持っておることでございまして、日銀におきましても、機動的な量的金融緩和を通じまして、物価政策を効果的に実施していただきたいと思っておりますが、その効果はまだ十分に上がってきておらないので、さらに一層金融政策等を通じてその努力を続けていきたい、こう思っております。

小泉(俊)委員 これから聞く質問の方にまでちょっとお答えいただいたみたいでございますが、非常に大臣の御認識も景気の現状が厳しい、大変な状況に今、日本国の、この国の経済状況があるということは、今の御答弁の中からもわかったわけでございますが、国民の今切なる思いというものは、景気を何とかしてほしい、まさに私はこの一点にある、そして、小泉総理が今非常に支持率が高いのも、小泉さんに景気回復を何とかしてほしい、この期待のあらわれが今の高い支持率にあらわれているのだと思うわけでありますが、大臣、こういった国民の切なる期待というか、景気を回復、どうしてもしてほしい、そういう期待は感じられますか、現実に。そういうのをひしひしと感じられておりますか。

村上副大臣 まさにおっしゃるとおりで、そういうふうに我々も感じております。

 ただ、委員、御理解いただきたいのは、先ほど鈴木委員の質問にもお答えしたかったのですけれども、なぜ構造改革が必要かというと、私は三つあると思うんですね。

 一つは、やはり、不良債権を処理することによって金融を正常化することによって、間接金融中心を直接金融にする。それから二番目は、結局、景気対策と不良債権の処理のためにここ数年で思い切り財政出動をしたために、非常に財政の将来について国民が不安を持つ。総じて起こった非ケインズ効果をやはりとめていかなきゃいけない。それからもう一つ、一番重要な三つ目の構造改革は、経済のメーンエンジンである各企業の生産性、効率性を高めてやはり競争力を取り戻す。この三つを同時並行的にやらなければ、本当の意味の継続、持続的な経済の発展が望めないということだと思うんですね。

 ただ、先ほど来お話があるように、私どもとしては、景気回復を優先させながら、景気に配慮しつつ、しかし景気を自律回復の軌道に乗せることが一番重要だと考えているわけです。ただ、さっきから申し上げているように、財政再建については我々のメーンの仕事でありますが、本来、不良債権の処理や経済の構造改革の主体は、本当は民間であるわけです。それに対して、我々は、ある程度補助的というか、環境整備が主たる仕事でありますが、万々が一のときにはそういうクラッシュが起こらないようにするというのが我々の責務だと考えているわけです。

 そのために、先ほど来申し上げているように、私は、これはいろいろな要因があるんですけれども、一番大きなものは、やはり経済のボーダーレス化、グローバル化だったと思うんですね。それは何かというと、物、金、人、犯罪が国境を越えて動き出した。特に中国、ロシアを中心とする十億以上の人たちが資本主義経済に労働力として参入してきた。これが、御承知のように、ユニクロ化や、ネギ、シイタケのセーフガードや、またタオルのセーフガードといろいろな問題が起こっているわけですね。だから、そういう外的要因、内的要因、あらゆるものを一つ一つきちっと同時並行的に、つらいけれどもやっていく以外ないんですね。

 先ほど鈴木委員が、痛みを伴うのはどういうことかというと、はっきり言うと、我々政治家は、国民の皆様方に痛みを感じさせないように、思い切り財政出動することによって緩和措置をやってきたというのが本当のところじゃないかな。ただ、もうそれについてはやはり限界が来ているんだから、そこら辺について、国民に、本当の意味での経済成長を取り戻すために御理解いただく。

 だから、体で言えば、例えば私のように太っている人間が、やはり体質改善をしなきゃいけない。だけれども、糖尿病的な体質を持っている人が、疲れたからといってカンフル注射的な財政出動をしても、糖尿病的体質は直らないわけです。それからもう一つは、不良債権に象徴されるような、がん細胞も放置していると全身に蔓延する、それを切除しなきゃいけない。しかし、さっき申し上げたように、フルマラソンやアイアンレースができるような、完走できるような体力もつくっていかないと、まさに二律背反というか、三律背反的な難しい治療だと思うんですね。しかし、それはやはりアクセルやブレーキを巧みに踏み分けながら、非常に細心の注意を払いながら治療していかなければいけないのと同じだと思うんですね。

 だけれども、そこは、今言ったように、我々が一生懸命やる範囲と、今まで国に全部おんぶにだっこしていたことも、やはり民間が主体であるということもある程度はっきり言う時期に来ているんじゃないかな、そういうふうに私は考えております。

小泉(俊)委員 今の御答弁の中で、非常に景気自体の認識は厳しいが、自律回復も図りつつ、景気の回復を図っていくんだということを御答弁されたわけですね。

 実は、これは九月二十六日に、ここに財務省の政策目標の一部見直しについてという文書が、二十七日の所信表明の前の日に来まして、これを見ていただくと、総合目標の一番最初ですね、これは。「財務省の使命と政策の目標」、特に「十三年度を含め中長期的に取り組むべき目標」のイの一番が、実は、「我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ」というかつての文章をこれは削除しまして、「持続可能な財政バランスを実現するために本格的財政再建に取り組む」という、副大臣、今自律的回復軌道に乗せるというのが目的だとおっしゃったんですが、実は、ここの文章では、自律的回復を切ってしまったんですね。また、総合目標の六でも「景気を自律的回復軌道に乗せる」と書いてあったのを、これをわざわざ切ってあります。また、総合目標の八では、税制面では、租税特別措置法等の徹底的な見直しを行う、いわゆる実質増税になるわけですけれども、これは先ほどの御答弁と違うんじゃないかと思うのです。

 財務省は、森内閣のときまでは、確かに先生おっしゃっていたように、自律的回復を図りつつ財政の健全化を図っていくというのを明らかに目標に書いてあったわけですね。ところが、九月二十六日のこの文書の時点で景気回復を切ってしまって、財政均衡論を目的にしたように、明確にこの文書が出ているわけですが、この点についてはいかがでございますか。

村上副大臣 その文書をちょっと私は見ていないのでよくわからないのですが、ただ、私の言いたいところは、要するに、今までは景気が悪い悪いといったときに、公共事業を中心としたカンフル注射的な財政出動を思い切りしたわけですね。

 しかし、やはりいろいろ検討してみると、建設、土木等の、生産性が、国際競争力が低いところでどんどんやったところで、正直言って、雇用のミスマッチやそういうものはやはり改善できないんじゃないか。ただ、本質的には、やはり各企業が構造調整やそういうものを直して体質改善をして、効率性、生産性を高めて、はっきり申し上げると、こういうところで答弁するのはあれですけれども、トヨタ、ソニー以外は欧米に比べて生産性が六三%しかないというのですね。それでは幾ら株価が上がれ、上がれといったって、私は無理だと思うのですね。

 だから、そういう本質的に体質を改善して体力をつけていくということを同時にやりながら、財政の今問題点である問題については、はっきり国民の皆さん方に財政の現状とその問題について、今まではケインズ効果ということで財政出動を思い切り出動して、総需要を起こすことによって何とか景気を浮揚させようとしたけれども、それはそろそろ限界が来ているんじゃないかということを、やはり率直に言うべきときに来たんじゃないかなと。

 確かに、景気の下支えになりますよ。だから、先ほど鈴木委員に御質問したかったんですけれども、それならば、新たに財政出動をするんだったら、どういうところにしたらいいのかということを、やはりこの際みんなが知恵と力を出し合う必要があるんじゃないかな、私はそういうふうに考えています。

小泉(俊)委員 これは実は、財務省の政策目標の一部見直しと書いてありますが、目的自体を明確に変えたんですよ。自律的回復を切ってしまった、削除して、これはぜひ見てください、これを大臣とか副大臣とかが見ていないということは問題ですよ。

 では、財務省が、何しろ、この方針でこれから予算編成しますという財政均衡論に明らかにかじを切り直した。逆に言うと、橋本内閣における財政構造改革法、これは一年で失敗しましたね。これと同じようなことを事実上、もし大臣が知らなければ、財務省の役人がこれをやろうとしているわけですか。これは、ですから……(発言する者あり)でも、これを見て答弁していただかないと、明らかにこれが明確に文書に出ているわけですよ、二十六日に。

 これを見ますと、明らかに景気回復ではなくて、小泉内閣は所信表明とかそういうのを受けて財政均衡論にかじを切り直したということを、これは明確に書いているんですよ。この文書が出ている以上、答弁が若干違うと思うのですが、これはでも大臣、副大臣、これを知らないというのはちょっと問題じゃないですか。

村上副大臣 私が申し上げたいのは、小泉総理が構造改革なくして景気回復なし、構造改革なくして成長なしということをどのように考えるかということを今申し上げました。

 ただ、これははっきりわかっていただきたいのは、今までは、終戦直後からずっと右上がりの、人口がふえる、経済規模が拡大する、税収がふえる、だから行政サービスをどんどんふやすというモードから、これからは、残念ながらやはり人口が減っていく、ある程度経済規模が縮小してくる、税収が減るという、モードが変わってくるわけですね。

 それについて、やはり本当の意味での景気対策というのはそれぞれの、各企業が持っている潜在成長率や可能性を引き出さない限り、本当の意味での景気回復にならないということを申し上げたまでであります。

小泉(俊)委員 次に移りますが、これはバブル崩壊して十一年目ですか、小泉総理も就任して六カ月たったわけですね。現実を、数字を全部見ますと、よくなるどころか着実にこれは悪くなっているのですよ。

 私は、この最大の原因は、先ほどから、先に実は質問を先取りして財務大臣にお答えいただいているんですが、やはりこの根本の問題はどこにあるかというと、過去の日銀や大蔵省の局長クラスをしていた方の文章をいろいろ読みますと、やはり政策担当者も全員が、ここまで地価が下げ続けるというのは予想が全くできなかった、それを謝るような文章まで出しているわけですね。

 ですから、例えば平成四年から十年連続で地価公示価格が下落しています。ことしもこれは下落でしょう。株価も八九年六百六兆円あった時価がことしで三百兆円減っているわけですね。やはり幾ら不良債権、柳澤大臣は二、三年内に不良債権の最終処理をされると言われているんですが、どうしてもこれは土地と株の資産デフレをとめない限り、私はこれは不良債権の処理とか、先生おっしゃっている確かに民間企業の、意見は同じなんですが、短期、中期、長期という政策の立て方の中で、やはり、この原因が私は土地と株の資産デフレにあったということを明確に認識しないとまずいのではないか。そんな中で、これを実は本会議場で明確に述べた方が竹中大臣で、資産デフレの認識が甘かったと明確に本会議で初めて大臣としては述べられたわけでございます。

 そこで、きょうは内閣府の副大臣もおいでなんで、内閣府のこの点に関する現在の、大臣は本会議でそう述べられましたが、資産デフレに関するこの御認識、どのような御認識をお持ちか、それをお伺いさせていただけますか。

山口委員長 時間が来ていますので簡潔に。

松下副大臣 副大臣でございます。

 御指摘のように、四月から六月にかけてのGDPも成長率がマイナスということでございますし、失業率も最高水準で推移しているということでございます。十月の月例でも「引き続き悪化している」という状況ですので、これはやはり深刻な状況だ、こう認識をしております。

 この景気の悪化の原因でございますけれども、アメリカ経済の減速、これに端を発してこれは世界規模に広がっていったということはもう御承知のとおりでありますし、御指摘のバブル崩壊後の資産デフレ、一千三百兆を超える株と土地が収縮してしまったということは大変深刻だというふうに受けとめますし、それをやはり背景とした不良債権の構造問題、ここをきちっと解決していくことが、我が国の経済は潜在成長力を持っておりますので、そこをきちっと整理して処理していくことが大事だという認識は持っております。

小泉(俊)委員 内閣府が今度の省庁再編ですべての省庁に横断的に戦略的な立場を担うということでございますので、どうかこの資産デフレ対策を、どうしても、ここの委員会ですと財政、金融、国土交通ですと、まあそれぞれいろいろな省庁がいろいろな権限を分散して持っていますので、一本化してぜひとも内閣府に頑張っていただきたいと思います。

 また、塩川大臣は、先ほどちょっと先に答えられてしまったんですが、やはり私はこの資産デフレに関して財務大臣がどういう御認識かをぜひともお聞かせいただきたいと思います。

塩川国務大臣 資産デフレに対しましては、私たちもぜひこの状態から脱却したいと思っております。

 確かに、株あるいは土地というもの、不動産というものは、経済の一番基本的なものでございますし、これが健全化することは一番望ましいことでございますけれども、今は早急に打つ手はないというところで、それはやはり経済構造全体の改革の中から自律的な力をつけていかざるを得ないと思っておりますので、構造改善を優先しながら、同時に景気対策、経済の実勢に合った適時適切な弱者救済的な措置を講じて構造改善を進めていきたい、こう思っております。

小泉(俊)委員 柳澤大臣、金融担当大臣としまして、この資産デフレについてどのような御認識でございましょうか。

柳澤国務大臣 統計の上で、これは日本銀行がたしか出している統計ですけれども、国民の資産の価格をそれぞれストックベースで出しているわけです。それをバブルの絶頂期、一九九〇年とか九一年ごろのものと比べると、まあ、私ちょっと二、三年前の統計だったと思うんですが、土地で六百五十兆円、それから株でやはり四百五十兆円、合計千百兆円ぐらい、今またさらにそれが低下していますから、全体として恐らく千四百兆円と言ってどなたか先ほど御質問の中で触れましたけれども、そういう資産の低下というものが起こっているということでございます。

 これはどういうふうな現象としてとらえるかということなんですけれども、当座見るところは、やはりそれだけ逆資産効果でいろいろなフローの経済量に大きな影響を与えるということは、これはもう間違いがないことであろうというふうに思いまして、そのことが現在の日本経済の低迷に大きな影響を及ぼしているということであろうと思います。

 それと、加えまして、私としては、やはり一九八〇年のあのプラザ合意による円高政策、このために一度きっかけをつかんだ日本の製造業の空洞化というものがさらに低賃金を求めてどんどんまたさらに加速しているというようなことも、今日の日本経済の運営に重大な問題を提起しているんじゃないか。このことは、私はまだ計数的にどのぐらいの影響を持つ話なのかというのをはっきり把握しておりませんけれども、こういうようなことが同時に起こっているということが大変な日本経済に対する困難を招来しているというふうに思っているわけでございます。

小泉(俊)委員 事務局の方が十二時までだということで、一たん中断してやらせていただきます。

山口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小泉俊明君。

小泉(俊)委員 済みません、午前中に引き続き質問させていただきます。

 先ほど、塩川大臣、そして柳澤大臣から大変丁寧なお答えをいただきました。その中で、塩川大臣が、資産デフレはとめようがないというお言葉を言われました。ただ、今、先ほど一番最初に私が申し上げましたように、毎日かなり飛び込み自殺とか、三年連続三万三千人自殺しています。また倒産も、御存じのように千五百件をずっとここオーバーしている。やはり、長期的なことをやりながらも、できることであれば精いっぱいこれはやっていかなければならない、これが政治家の責務であると私は思います。

 その中で、私は、まだまだ実はいろいろなやり方で少しでもこの資産デフレをとめる余地があるのではないかと思っております。

 一番最初に、まず土地の価格の下落の防止なんですが、御存じのように、地価の下落をとめなければ担保価値が下落しますので、不良債権はどんどんふえていまして、柳澤大臣、一生懸命不良債権をなくそうとしておりますが、逆にいつまでたってもイタチごっこになってしまう。また、今非常に個人消費が落ち込んでいる理由の一つに、バブル期に約百万から二百万と言われる方たちが住宅を買って、この世帯が資産価格の減少によってローンの重圧に大変苦しんでいる。この人たちは今、子供たちをちょうど高校とか大学に行かせる方たちで、一番お金がかかるときで、この世帯が非常に今個人消費の足を引っ張っているということだと思います。

 その中で、土地の下落を防止する一つの方法といたしましては、私は何といいましても、まず、できる限り不動産に対する需要を喚起して、需要と供給のバランスで価格は決まりますので、取引の流通化を促進することである。その中の一つとして、かつて一回俎上に上りましたが、いつの間にやら立ち消えになってしまいましたが、私はまず、余裕資金を持っている、個人資産一千四百兆円という中で高齢の方ではかなり持っています。この人たちにどうやってお金を使っていただくか。その中で、郊外にセカンドハウスを持つような場合に、私は、大胆な優遇税制をまず認めていくのが一つの方法だと思います。

 これは御存じのように、住宅を建てますと、家電とか家具とか、全部個人消費の拡大にも結びつきますので、かつて新聞等で一たん出たんですが、それがどういうわけか立ち消えになっておりますけれども、お金を持っている世代に、お金を使いたい、そんなインセンティブを与えるということがやはり一つだと思います。

 この点につきまして、財務大臣、いかがお考えでございましょうか。

村上副大臣 小泉委員の御質問にお答えします。

 大体委員と認識は一致しているんですけれども、まず一番最初に、問題の原因は、金融並びにゼネコンが、土地神話というのがあったわけですね、土地は絶対下がらない、そういうことでああいう無謀な投資をやって、今日の現状にもなった。

 それにもう一つ問題点は、やはり私は、本当の実需の問題が根底にあるんじゃないかな。というのは、一つはやはり少子高齢化ですね。委員御承知のように、これから一人っ子同士が結婚すれば、どっちかの親御さんの土地や建物が余ってしまう。

 それから、問題は、一番重要なのは、やはり産業の空洞化じゃないかなと思うんですね。結局、産業の空洞化によって、今まで重厚長大で思いっ切り広い土地だとか設備投資の土地が要ったんですけれども、軽小短薄になれば当然そのような土地もなくなる。

 それから、先ほど申し上げたように、経済のボーダーレス化、グローバル化によって、私の地元でいえばタオルのように、海外に生産基地を移転していくということがあると思います。

 私は、先ほど来申し上げているように、本当の土地政策の一番の要諦は、やはり土地の実需をどうやってふやすかということだと思うんですね。そういう面で、まずお答えしたいのは、例えば今、これは先ほど委員が内閣府の方に御質問されたように、本当は、では産業の空洞化対策は何をすべきかというのは、やはり一つは高コスト体質をどうするかということですね。賃金を含めて、それからもう一つは電気代だとか電話代だとか物流コストだとか、そういうものをきちっとすることによって、まだ生産基地を日本に置いておいても大丈夫だということを総合的に立てていくのがやはり一番近道かなと思っています。

 それで、それを前提に委員の御質問にお答えしたいんですけれども、委員が、住宅ローン減税の対象にセカンドハウスの取得費を加えるべきじゃないかとおっしゃるんですが、お気持ちはよくわかるんですね。しかし、やはり住宅ローンということ自体も、今六千億もやっていまして、かなり異例というか特例のような感じでやっているわけですね。その上にセカンドハウスについても住宅ローンの減税の対象にするということは、特例の趣旨からは残念ながらやはり逸脱しちゃうんじゃないかな。

 はっきり申し上げて、本当に今、株価もそうなんですが、税のインセンティブで株価を上げたり土地の需要を喚起するというのは、例えば先ほど来申し上げていますように登録免許税も、正直言って、土地の価格がこれだけ下がっていても、五〇%より下がっていても、たかだか一%の登録免許税の負担を軽減しても、そういう面ではインセンティブになるのかどうかというのは、私の考えとしては、なかなかそこまでインセンティブにはなり得ないんじゃないかなというふうな気がしております。

小泉(俊)委員 基本的認識は一緒なんですね。私も、実は前回、為替の問題、空洞化の問題をやらせていただきましたが、今のGDPを見ましても、六割の個人消費がもうだめだ、一五%を占める設備投資もこれはだめだ、公共投資九%、これもだめだ。では、今現実に何が引っ張っているのか。これを見ますと、やはり五・五%の住宅投資なんですね。住宅投資の中で、やはりすそ野が広いですから、新築を買えば、当然先ほど申し上げた家電から家具から全部入るわけですね。

 ですから、中長期的に見れば確かにいいんですが、そうかといって、やはり本当の意味での、短期的な手当てをしながら両輪で走っていかなければ、今のこの景気の失速、これは目を覆うばかりです。本当に、私は電車で通っていますけれども、毎日自殺者が飛び込んでいますから。ですから、この委員会にいるとそういう実感がわかないんですけれども、やはり現場で、外へ出て現実に経営者とか、そういう話を聞きますと、何が何でもやはり何らかの対策、できることであればやらなければいけない、そういう思いで今申し上げたわけであります。

 引き続きまして、このためにはやはり不動産に対する需要をどうしても、空洞化も私は本当はやりたいんですが、今回は不動産の、資産デフレということに限ってやらせていただいておりますけれども、このときに、やはり私は、長期的に見れば問題はありますけれども今短期的に、やはり不動産の需要喚起に役立っているのは住宅金融公庫なんですね。現実にこの中でどのくらいの方が本当に住宅金融公庫にお金を借りに行ったり、ないしは民間の金融機関に住宅ローンを借りに行った方がいらっしゃるかわかりませんが、現実に非常に借りやすいんですよね。

 それで、現在、住宅金融公庫の持っている役割について、まずどのように考えていらっしゃるのか。特に、今度の特殊法人の改革の中でいろいろ出ておりますが、きょう国土交通大臣政務官の田中さん、おいでになられていると思いますので、御答弁をよろしくお願いいたします。

田中大臣政務官 御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 住宅金融公庫は、戦後建設された住宅の約三割を公庫融資による住宅が占めるなど、確かに国民の住宅取得支援に大変な貢献をしてきたという現実がございます。平成九年以降、五回の景気対策においても確かに重要な役割を務めてまいりました。

 しかしながら、小泉内閣の推進する聖域なき構造改革を進めるため、公庫を含めたすべての特殊法人については、民間でできることは民間にゆだねるという基本原則がございまして、改革を推進する必要があると総理から国土交通大臣に民営化に向けた検討の指示があった住宅金融公庫について、去る九月二十一日、国土交通省としての改革案を総理に報告したところでございます。

 公庫の改革は、中堅勤労者のマイホーム取得の夢の実現に対する支援や公庫の利用者の不安を解消するとの視点を踏まえて推進する必要があると認識をしておりますし、今後、御指導のような民間住宅ローンの融資選別の問題などについての議論を十分深めつつ、総理に報告した改革案の具体化を図ってまいる所存でございます。

小泉(俊)委員 中長期的には私も特殊法人の改革には大賛成でありますので、その勉強もさせていただいておりますが、今の景気のこの現状をどのくらい厳しく認識しているか、正確に認識しているかによって、やはり優先順位をつけてやるべきだと私は思っております。

 その中で、先ほど申し上げましたが、これだけ今個人消費から何から冷え込んでいるときに、今マンションの需要が非常に高くてよく売れていますね。今の日本経済に占める住宅の役割というのはまだまだ私はでかいと思うんですね。

 その中で、住宅金融公庫を改革していく中におきましても、私は、ぜひとも需要喚起の一つとして、前も一回ちょっとお尋ねしたことがあるんですが、やはり若年層が今夢がないわけですよ、夢も希望も。ですから、若者でも将来結婚したときに家が持てるように、二十代ぐらいのときから土地だけでも事前に手当てさせてあげる。そういうことによって、今、さっきお話ししましたように中間層がもうお金がないんですよね。ですから、高齢層と、あとは二十代、三十代前半の若い方たちに、どうしてもここに資金を手当てしてあげることによって需要の喚起を促していくことが私は一つの方法であると思っております。

 これは、民間の金融機関も実は土地だけの融資は極めてちょっと厳しいんですね。住宅金融公庫、御存じのようにこれは住宅だけですよね、住宅金融公庫ですから。この際、住宅金融公庫を民営化に向かって大きく変えるんであれば、ここは本当に百歩譲って、この景気対策の住宅の占める重要性を考えるときに、私は、土地住宅金融公庫という形でもとりながら、これは緊急避難的なんですよ、もちろん中長期的にはこれは改革しなきゃいけないんですが、そんなこと言っている状況じゃないんですよね、世の中は。

 ですから、もう一度お尋ねいたしますが、私はそういう改革の過程の中で、ある程度時限を限っても結構ですから、何らかの公的資金で若年層に土地だけでも購入させてあげられるような手当てをとれないかということをお尋ね申し上げます。

田中大臣政務官 お答えをいたします。

 委員も御承知のとおり、住宅金融公庫の融資は、住宅の建設や住宅購入の促進を目的として制度ができておるわけでございます。法律もそのようになっておるわけでございます。

 確かに、住宅の建設と同時期の土地取得に限定せず、住宅建設時以前一定期間内に取得した土地についても融資の対象にしておるわけでございます。特に、平成十二年度から十四年度までの住宅建設資金借り入れに伴う土地取得については、その取得時期についての要件を、二年前までに取得した土地から三年前までに取得した土地に緩和する措置を講じているところでございまして、とにかくそういう面でも配慮をさせていただいております。

 公的資金を活用して、良質な住宅供給の促進を目的に実施される政策金融の対象として住宅建設を伴わない土地購入融資を加えるということについては、今の時点では、この法律の建前からして、制度の建前からして慎重にならざるを得ない、こういう点がございます。

小泉(俊)委員 その辺、いろいろ確かに無理なのは重々承知でありながら、先生もよく御存じのように大変厳しい状況です。資産デフレをとめずに本当にやっていったら、私は、奈落まで日本経済は落ちるんじゃないか。制度の趣旨とか全部わかっていまして、その中でやむにやまれず、どうしても需要を喚起するのに何があるか、そういう知恵をぜひとも出していただけますよう、またよろしくお願い申し上げます。

 あと、実は国内の年間の中古住宅の流通量が、先日日本経済新聞に出ていましたが、アメリカの何と三十分の一なんですよね。十五万戸しかない。アメリカは一年間に、十五万戸掛ける三十ですから、それだけ実は流通しているわけですね。何でこんなに違いがあるのか。

 これは、住宅ローンの破産とかあった場合に、今東京都内で五千万のものが二千万ぐらいになって、結構取得しやすい価格になっているのですね。しかし、これは動かないのですね。なぜかといいますと、いろいろ問題はあるのですが、実は東京都内とか神奈川、千葉、埼玉もそうですね、私の茨城はちょっと違いますけれども、まだまだ地価が高いのですね。それで、土地が極めて小さくて、容積が極めて小さいものですから、ぎりぎりに建てていまして、実際はかなりの部分が、新築住宅におきましては容積を幾らかオーバーしているのですね。これが実は中古市場に出回ったときに、ではこれを買いたいからといいまして住宅金融公庫と民間の金融機関に行きますと、お金は出ません。容積がわずか一、二%オーバーしているだけで、五千万のものが二千万のものになって借りようと思うと、借りられないのですね。結局、現金を全額二千万持っていないと買えないというのが現実なのですね。

 ですから、これも、私は今のこの緊急避難的な状況におきまして、容積率をわずか数%オーバーしているようなものについては、ぜひとも民間の金融機関、本当は住宅金融公庫もお願いできればいいのですが、特に柳澤大臣、民間の金融機関のローン、かつては通っていたのです。実は今、金融庁の指導を理由に貸さないというのが、民間の金融機関がそういうふうに答えるのですね。ですから、牛の角を矯めて牛を殺しちゃうようなことをちょっとやめていただいて、幾らかでも中古の市場を動かしていく。そういったお金が実は一番キーだと思います。この点について、柳澤大臣にちょっと御答弁をお願い申し上げます。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

田中大臣政務官 私の方の所管でございますので、お答えを申し上げたいと存じます。

 確かに、住宅金融公庫もそうでありますし、こういう制度に基づいて融資する場合は、容積率をオーバーしているとか、法令違反をしているものについては、やはり融資の対象にならないのですね。

 ただ、建築時の都市計画には適合していたけれども、その後変化が起こって今の時点では適合していない、これは実は融資の対象になっているのですよ。それから、あえて申し上げておかなきゃいけないと思うのですが、私どもも国土交通省として、民間の金融機関が中古住宅へ融資を行う場合に、容積率オーバーなどの法令に違反している住宅については融資をしないよう指導しているというようなことはございません。

 以上でございます。

小泉(俊)委員 柳澤大臣、民間の金融機関につきまして、先ほど申し上げましたように、金融庁の指導が厳しくて、かつては実は融資していたのですね。実は、最近非常に金融庁がクローズアップされてくるようになりましてから、どうも民間の金融機関が中古のそういう少しオーバーしているものにも融資をしない。都市銀、大体しませんね。地銀でするのも関東では一社ぐらいですね。

 こういった状況が実は微妙に影を落としていますので、そういった意味で、民間の金融機関のそういう融資姿勢について柳澤大臣、どういうお考えでございましょうか。

柳澤国務大臣 突然の御質問なので、私も、実態等について調べた上でのお答えというわけにはまいりませんが、いわゆる住宅金融に対してもっと民間の金融機関は積極的であるべきじゃないかという話の一環として、それなりの努力はして、まだ十分な成果が上がっていないということかと思うんです。

 しかしながら、その場合に、いろいろな書類をいただいて審査をするわけでございますけれども、やはり法令違反の建築物ということになりますと、これはなかなか流通そのものが難しくなる。一回はどこかうまく話をまとめても、その次の段階でまた同じような問題が浮かび上がってくるというようなこと、これは容易に想像されるわけでございまして、そういう場合に、そこで成立した売買価格というものを基礎として融資をするということが本当に健全な金融機関のやるべきことなのかということが、恐らく、いろいろな今先生御指摘のような問題につながってきているのではないか、このように思います。

 金融庁の立場として、それを目をつぶって頑張れというわけにはなかなかまいらないというのが私どもの立場ではないか、このように存じます。

小泉(俊)委員 非常にお話はよくわかります。ただ、要は、後でまた質問しようと思っていたんですが、容積率というのは、実は昭和三十年代の法律なんですよね。要するに、建築技術が今全然違うんですね。家をごらんになっていただければわかりますけれども、昭和三十年に建てたものと今平成十三年に建てたものとは全く別物なんですね。一〇〇%違います。

 ですから、そういうあれがあるのであれば政府は、私が申し上げているのは、現状の認識を厳しくきちっとして、それで、少しでもできる可能性があるのであれば、もし金融庁の方で融資ができないのであれば容積率緩和すればいいわけですから、そういった何らかの知恵を一生懸命出し絞るということをぜひともやっていただきたいんですよね。それを、木で鼻をくくったようにできませんと言ったら、みんな、年間三万三千人、ことしもまた死にますよ。これは大変な状況です。

 小泉内閣ができまして一番最初に私が御質問させていただいたときに、先生方に、要するに、町を歩いたことありますかとか、お買い物されたことありますかとか私が聞いたのは、何のためにしたかというと、そういう現場を、どのくらいの状況なのかということをしっかり見ていただきたいんですよ。現場の厳しさをわかっていれば、知恵を出そうという気持ちが出てくるんですよ。何でアメリカと日本で三十倍も中古住宅の流通が違うのかとか、こういうところに全然メスを入れずにそのまま放置しているということは、これは私は重大な責任があると思っています。

 それで、さっきのお答えのように、もう流通化の、資産デフレの対策はありませんというのは、これは明らかに間違っています。もっとやはり努力すべきだと思います。そういった意味で今こういった質問もさせていただいたわけであります。

 ちょっとまた戻りますが、塩川大臣とか柳澤大臣、これは実際に不動産の売買契約というのをした御経験ありますか。

塩川国務大臣 経験ございます。

小泉(俊)委員 いつごろでございましょうか。

塩川国務大臣 私もちょいちょいと家を建てたり壊したり自分でやっていますから、五、六回やっております。

小泉(俊)委員 では、柳澤大臣は。

柳澤国務大臣 私は、これまでに三回引っ越しましたでしょうか。したがって、不動産の売買契約はやったことございます。

小泉(俊)委員 安心いたしましたが、これは実は、何でなかなか土地の流通化の促進がうまくいかないかというと、これは実務がわからないと、買ったことがないとわからないんですね。要するに、契約書に印紙を張りますね、登録免許税かかりますね、消費税かかりますね、火災保険かかりますね、団体信用生命かかります、仲介手数料かかります。諸経費が大体、五千万の物件で七%近くかかるんですね。実は、皆さんこのお金を捻出するのが結構大変なんですね。

 先ほど村上副大臣が、登録免許税一%でという話がありましたが、やはり私は、こういう火事場の状態の中で、少しでも真剣に不動産の流通化を促進しようという気持ちがあるのであれば、仮に例えば、後で証券の税制の方を行きますと、証券税制というのは大体四千億ですよね。登録免許税、幾らあるかというのは私も調べておりませんが、それを下げることによって出てくる需要とそれ全体の経済効果を考えた場合に、プラスマイナスで大きいものであれば、私はこれはやはり努力すべきだと思うんですね。特に登録免許税、そして、消費税の話を言うと古いという話があるんですが、実は、この五%の住宅の消費税を払うために、皆さん苦労してなかなか払えないんです。

 ですから、プラスマイナス面をしっかりお考えいただいて、やはり最善の努力をしていただきたい。これはお願いでございます。

 また、もう一つ、これは田中副大臣になると思いますけれども、毎年不動産の取引がふえてくるんですけれども、一月か何かに公示価格が新聞で一面にでかでか発表されるわけですね。毎年これは七%近く落ちているんですね。そうすると、買いがふえていても、需要がふえてきましても、ああ、七%も落ちているんだったらば買うのをやめようということで、非常に市場が冷え込むというのは不動産業者の皆さんおっしゃっているんですね。

 では、この地価公示価格というのは何かというと、これは御案内のように、異常に地価が高騰したときに、これを食いとめるために公示価格を基準に国土法の価格を決めたわけですよね。

 ところが、これはもう前提条件自体が崩れちゃっているんですね。これだけ地価が下落し続けるときに、地価の高騰を抑制するための公示価格を現実にそのままにしておく。確かに、これを基準に固定資産税評価額とか路線価の相続税評価額を決めているんですが、個人消費を伸ばすというのは、買う方の心理をちゃんと知らなきゃだめなんですね。ですから、そういった制度をずっと野放しにしておいて、毎年毎年、回復しそうになるとまた落ちるんですよ。ですから、制度趣旨からいっても余り合理性がなかったり、そういったものは、もう廃止をしていくことができないのか。

 特に、公示価格というのは売買価格をあらわすと今言われていますけれども、これはうそですよね。もうそんな公示価格で取引している土地なんかないわけですよ。路線価以下というのが大体今常識的になっていますので、そうすると、何の意味もほとんどなくて、弊害の方が大きいんじゃないか。

 ですから、何度も言いますが、今の極めて厳しい状況をちゃんと認識して、今までの制度からそういうものをきちっともう一度見直す、マイナスに作用しているものはきちっと、いつまでもそんな法律置いておかないで、そういった努力を積み重ねていかなければならないと思うわけでありますが、この点につきまして、大臣、いかがでございましょうか。

田中大臣政務官 この点も私どもの所管でございますので、私より御答弁をさせていただきたいと思います。

 委員も御承知のとおりだと思いますが、一月一日に調査をしておりますのは、国土交通省の土地鑑定委員会がやっておるわけでございますし、七月一日を毎年基準にして都道府県の地価調査というのもやっております。私は国土交通省の立場でございますので、一月一日の方についてお話をしたいと思います。

 この役割というものが非常に重要な役割でございまして、全国の標準地の三万一千地点の一月一日の正常な価格を判定し、公示するということになっているんです。特に、一般の土地の取引価格に対する指標、あるいは公共用地の取得価格を定める場合の基準、相続税評価や固定資産税評価の目安、不動産鑑定評価における価格の基準、こういうような実は社会的に非常に重要な役割を果たしておりまして、これを今、即制度を廃止する、こういうような立場になかなか立てないという状況にございます。

小泉(俊)委員 もちろんそれはわかって聞いていますので。ただ、そもそもの制度趣旨が妥当性を失っているものに関しては、いろいろそういう法律があると思うのですね。そういうものをやはりきちっと洗って、努力していただかなければいけないと思います。

 また、先ほども申し上げましたが、流通性を高めて地価の下落を食いとめるということは、やはり有用性とか利用度を高める必要がありますね。そのためにやはり必要なのが、容積率をある程度、全部じゃないのですけれどもある程度緩和をしていく。これがあるために、たしか昭和三十年代にできた法律だと思うのですが、それをそのまま、建築技術が進展した今の世の中でもずっと置いておくというのは、私はいかなものかと。

 その辺に関しまして、先ほどから聞いておりますように、わかって聞いておりますので、それでもあえて知恵をやはり絞らなければいけないというのが、今本当の経済の厳しさをわかっている政治家のとるべき立場だと思いますので、省のお立場もあるでしょうけれども、御本人の政治家としての見識をぜひともお伺いさせていただきたいと思います。

田中大臣政務官 お答えをいたします。

 容積率の緩和、利用度を高める努力、こういうことは非常に重要な政策だと認識しております。私も実は、御存じかもしれませんが都市部の川崎の議員でございまして、本当に、今委員がおっしゃるように、もっと工夫すべきじゃないかと思っております。それからまた、今土地の価格についても、確かに下がっておりますけれども、都心の非常に利用度の高い用地等は、下げどまっているところ、場合によっては上がっているところもあるわけですね。

 ですから、委員のおっしゃっていることを十分受けとめて、今後、役所の中でも努力をしてまいりたい、このように思います。

小泉(俊)委員 よろしくお願いいたします。

 次に、資産デフレの中で土地と、やはり株なんですね。

 大和総研の試算によりまして、つい最近出た新聞ですが、日経平均が一万円割れした十二日の段階で、大手十五行は五兆二千億円の含み損を抱えていると。こういう状態がもし続くようであれば、幾ら不良債権を処理したってイタチごっこで、これは絶対いつまでたっても終わらないと思うのですね。

 実は私が当選した六月から、ずっとこの委員会に出ていると、かなり株価の問題をもんでいるわけですね。一年たって何が出てきたかなと思ったら、百万円の特別控除と金庫株だったのですね。こんな程度で、今のこの奈落の底に落ちんとする、一万円を割って、なおかつテロ事件で大変な状態ですよね。こんな対策ではなくて、今非常に日本経済がいわゆる収縮し始めているのですね。どんどんブラックホールに吸い込まれるように収縮しているわけですよね。これを食いとめるためには、やはりある程度、これから法案で出てくるのですけれども、リスクをとって投資する個人投資家にはやはり思い切って譲渡税を非課税にするぐらいの、そのくらいのことをしないと、なかなか本当の意味での、確かに、景気が悪い中でもやはり一生懸命株価を何とか支えていこう、個人投資家にも投資してほしい、そういうインセンティブが出てこないと私は思いますね。

 特に、これはドイツがもう個人の非課税をやっていまして、ドイツはあと、来年の四月からですか、法人に関しても非課税にしてくる。ここに実はいただいた資料で株式市場の国際比較というのがあるのですけれども、九六年、東京とドイツを比べてみると約二倍近いのですね。世界で第二のGDPを持っている日本と三分の一のロンドン、そして半分のドイツを比べてみましても、市場規模が、下手したら三倍とか五倍も、最近ちょっと詰まってきましたけれども。やはりこういった努力を今、要するにお金が二十四時間、どこでも行ける時代で、どこの国も非常にこれに努力しているわけですよ。

 ですからそういった意味で、柳澤大臣、そのくらいの何か画期的というか、確かにエポックメーキングになるくらいの、そういうことをしていかないと、なかなか厳しいのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 今委員は、株価水準との関係で証券税制、特に株式の譲渡益に対する課税等について工夫をすべきではないか、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、私どもは今回、証券市場の構造改革の一環として税制改正要望を塩川大臣の方に提出させていただいている立場なのですけれども、これは必ずしも現在の株価をどうこうしようというようなことではなくて、やはり日本の金融というのが間接金融にもう偏り過ぎておる、こういう考え方で、もうちょっと直接金融のマーケットに投資家も入ってもらいたいし、また資金の調達もそこからくみ上げるということを盛んにしてもらいたい、こういう一種の金融市場の構造改革の一環としてそういうことを考えているわけです。

 その中には、もちろん、何といってもリスクの最終的な担い手というのは個々の個人ということが言われるわけでございまして、私どももそのとおりだと考えておりまして、個人投資家というものがもうちょっと株のマーケットに入ってきていただきたい。それには、税制だけではありません、もちろんほかに、証券市場というのは非常に、少しごまかしが多いのではないかとか不公平が多いのではないか、こういうことを言われておりますので、そういったことのないような市場にしなければいけないというのが、これが基本なのですけれども、加えて、今申したような税制面での優遇というものも考えられないか、こういう観点で、今回も税制要望をさせていただいておるわけでございます。

 塩川大臣が後でどうおっしゃられるか、ちょっと定かならぬところもありますけれども、私どもとしては、今回臨時国会にいずれ提出されるものと、それからもう一回、年度改正で取り上げていただくものと、二つ合わせわざで、本当の意味で中長期的な意味で個人投資家に市場に参加していただく誘因になるような、猫の目みたいに毎年変えてしまうというのではなくて、中長期的にそういうことが実現されるような、そういう税制をぜひ実現いたしたい、また財政当局の御協力、御理解もいただきたい、このように考えておるわけでございます。

 具体の問題はちょっと時間がかかりますので申し上げませんが、考え方としては以上でございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

小泉(俊)委員 塩川大臣、いかがでございましょうか。

塩川国務大臣 私は最近よく申しておることでございますけれども、日本人の財産観というもの、財産に対する観念と申しますか、これを変えていかなければいけないのではないか。いつまでたちましても田んぼとか田地を大事にして、これが唯一の財産のように言っております。今でもそうでございまして、財産の基準を見るというのは、あいつ、土地をどれだけ持っているんやとか、田地どれだけあるねんということが嫁入りの条件なんかで考えられておることがいまだに残っております。

 また、一番悪いのは金融機関でございまして、金融機関は土地をまず質物みたいに思って、土地の値打ちで金を貸しておる、企業に貸しているんじゃない、こういうことがございますので、この観念を変えない限り、日本の、先ほど来おっしゃっています、土地だとか株だとかいう、そういう財産の正常化というものはあり得ないと私は思っておるのです。

 そこで、些事をおいて、ここで意識転換するためには、まず有価証券というものをもっと財産の中心に置いてもらうようにしなければならぬということでございまして、そのために私は今回の税制改正でも、株を買ってくれたら優遇しますという制度を導入したのです。

 私は、今後においても、株式に限らず有価証券でございますね、有価証券を持っておる人、それがある程度財産として持ってくれた人、その方が亡くなった場合、相続人はそれによって相当な財産の継承の価値を見出してもらうように、相続税に際してそういう有価証券等を優遇するという措置を講じていきたいと思っております。

 今、土地にいたしまして相続する場合は十分な優遇措置を受けておるのですが、これが行き過ぎてしまっておるもので、だから土地にしがみついてしまって、いつまでたっても土地との因果関係というもの、先祖伝来まで話を上っての経済構造になってまいりますので、私はそういう観点を変えていきたいと思っております。それがやはり直接金融への根本的な対策ではないか、こう思うております。

小泉(俊)委員 まず、柳澤大臣なんですが、私は、株価に対する認識がちょっと甘いのじゃないかなと。民間の企業経営者と話していますと、本当は一万四千円を割った時点でもうどうしようもないのだ、死に体だとはっきりみんな言っているわけですね。今、一万円を割って、今度のテロでどうなるか。

 そういう税制を、価格とリンクしないとか、ドイツは明らかに、ここに出ていますけれども改正の目的というのは、国際競争力の改善とか国内外からの投資の促進なんですよね。世界じゅうを今お金が駆けめぐるわけですから、ドイツに投資すれば、百億利益を上げたら百億そのまま利益が入る、日本に投資したら二六パー、二十六億持っていかれるとか、そういうふうに国内的な事情だけで済むような時代じゃありません。

 ですから、私は毎回申し上げておりますが、金融立国というのを日本の一つの国是に掲げるべきだと思います。技術立国とかいろいろあるのですが、その視点を欠いていろいろな税制とかそういうものをいじっても国際競争に勝てませんので、ぜひともその辺の国際競争に負けないような、特に今は、アメリカがああいう状態ですし、イギリスも参戦しておりますし、フランスも参戦している、どこの市場も非常に厳しい状態なんですね。こういったときこそ、日本の市場でそれを引き受けるぐらいの意気込みと制度改正をしなければ、日本が本来世界に果たすことというのができないと思います。

 ですから、もっと現状の認識を厳しく持っていただいて、企業経営者とぜひとももっとお話ししていただいて、その辺のずれが、毎回聞いていて思うのですが、やはり現実をもっと見ていただきたい。

 実はまだ大分ありまして、本来の銀行法の方に入る前に時間が参りましたのであれですが、あと、塩川大臣、先ほどおっしゃっていただいていましたように、ぜひともそういった方向で、それも画期的なことをしなければ日本人というのは動かないと思います。徐々にやっていくのではなくて、あるエポックメーキングな、今度の事件とか、ある程度のときにかじを切らないと、いつまでたっても健全な市場ができないと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 では、終わります。

山口委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻でございます。

 銀行法について質問をさせていただきます。

 この銀行法の改正で、取締役に適格性を求める、こういう条項が新設されたということでございますけれども、これは、取締役は銀行の経営管理を的確、公正、効率的に遂行する知識と経験を持ち、かつ十分な社会的信用を有する者でなければならない、こういう非常に条件、適格性の要件をつけて、不十分であれば退任を促していく、こういうような措置があります。

 こういう今申し上げたような適格性にかなった銀行の経営者というのは余りいないような気もするのでございますが、非常にその意味では厳しい条項のようにも読めるのですが、実際にこの適格性はだれが判断をして、もうちょっと具体的にどういう適格性で、その適格に合わない場合は具体的にどうやって銀行取締役の退任を促していくのか、これをちょっと簡潔に柳澤大臣の方から御答弁願えればと思います。

村田副大臣 今度新しく銀行の取締役について今先生が言われたような規定を設ける、こういうことにしているわけであります。

 これは、他業種から今回金融業、銀行業に入ってくる、こういうことを認めるということに先立ちまして、銀行の取締役についてそのような条件を課したい、こういうことで新たな規定を七条の二ということで起こしたわけであります。

 そういう意味で、新たに、あるいは既存の銀行の取締役も対象となりますが、今言ったような銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な規定でありますので、そうした観点から金融庁が判断してまいりたい、こういうふうに考えております。

長妻委員 次に、小泉総理大臣がさきの予算委員会、十月四日に衆議院で予算委員会がありましたけれども、この銀行法改正にも当然銀行の健全性というのは絡んでくるわけでございますが、それに関して、我が党の仙谷委員とこういうやりとりがありました。

 仙谷委員が、「何でアメリカにこんなしつこく不良債権の処理をせいとかなんとかということを言われ続けなきゃならぬのですか。」これはブッシュ大統領に言われたということでございますが、小泉総理は、「仙谷委員の御指摘、もっともな点、多いと思うんですよ。信用されていないんですよ。」「何でこんなに信用されていないのかと、もっと信用されるような体制をとれということを今口やかましく言っているところなんです。」これは小泉総理の話ですね。それで、これはマイカルの件に言及された小泉さんの答弁でありますけれども、「要注意債権が、大丈夫だと言っていたのが破綻する、これは何なんだと。」「問題は信頼。」こういうことを小泉総理が言われている。非常に率直に言われていると思います。

 そして、仙谷委員が、だれがだれに信用されていないんですか、総理と聞きましたところ、小泉総理は、「市場がどうも、今のやり方で本当に不良債権処理が二、三年以内に最終処理されるんだろうかという点に疑念を抱いているんですね。」こういう答弁があったわけです。

 その後、仙谷委員が、「日米のマーケットあるいはヨーロッパのマーケットから、市場から、日本の金融機関と当局が、つまり日本でいえば金融庁が信用されていない、こういうふうに具体的に言えば正しいですか」こういうふうに総理に聞いているわけですね。小泉総理大臣は、「信用されていないというよりも、より正確に言えば、疑念を持たれているというのかな、はっきり言うと。」こういうふうに言っているわけです。

 これは、総理大臣でさえ、最後通牒といいますか、私が今までここで質問したとき、外資のアナリストとか市場とか評論家とかいう話をして、柳澤大臣は、いや、それはいろいろな見方がありますと言われましたけれども、もう内閣総理大臣がこういう見方に来ている。私はこれは重大なことだと思っています。もう金融庁が、総理大臣も、信用されていないというよりも疑念を持たれていると。「はっきり言うと」とつけ加えているのですね。

 こういうような状態では、私は、柳澤大臣自身が今の職にとどまるということが、日本の経済あるいは世界の経済にとっていかがなものかと本当に思っているのです。

 柳澤大臣は、私は個人的に別に何の恨みもございませんけれども、過去いろいろな経緯の中で金融行政に携わられてきた。柳澤大臣のようなずっと携わられてきた方というのは、逆にお気の毒な面もあると思うのです。すぱっと過去の政策を百八十度変えて、何か果断に決断するということがお立場的にできにくい、逆にお気の毒という面も私は本当にあると思っているのです。その意味で、ここまで総理が言っているのであれば、私は、すぱっと進退を御自身で考えていただいて、今の金融担当大臣を一時引かれて、辞職されて、そして大所高所から指導していただく、こういうようなことが日本の不良債権問題にとって重要じゃないか。

 私は、当選前から、この問題で国会に出ようということで選挙運動して、そして議席を得たわけですけれども、その意味でずっと続いているんです。私は十年前からこの問題に携わっていますけれども、なかなか解決できない。最後、総理大臣がこういう発言をしている。過去、歴史でありますか、皆さん。国会議員で私よりずっと長い方おられますけれども、総理大臣が、疑念を持たれている、はっきり言うとと。自分の役所、内閣の管轄、掌握しているはずのお役所に対してこういうことを総理大臣が言うというのは、私は前代未聞だと思います。その意味では、ぜひ柳澤大臣の進退問題というのを本当に御検討、御決断いただきたいと思うんです。

 そして、塩川大臣に、経済財政諮問会議の主要メンバーだということでもありますので、疑念を持たれている、信用されていないというのはどこがどう信用されていないのか、塩川大臣の御感想、この総理の発言に対する御感想というのをちょっとお聞かせいただければと思います。

塩川国務大臣 小泉総理が疑惑を持つというのは、何も金融庁の行政に対して、あるいは金融庁自身の能力に対して、あるいは金融庁がとっております態度に対して疑惑を感じている、そう言っているんじゃございませんで、それは字面を見ていただいたらわかると思うんですが、今金融の正常化、不良債権を整理しようとしておるのに、不良債権を担当しておる、いわば、つまり抱えておる銀行に対して不信を持っている、そういうことでございまして、それに対する疑惑を持っているということでございますので、ですから、不良債権の処理に対する疑惑を持っているということでございます。金融庁に対して疑惑を持っているということじゃございません。

長妻委員 これは仙谷委員がはっきりと、「つまり日本でいえば金融庁が信用されていない、こういうふうに具体的に言えば正しいですか」こういう発言をして、「信用されていないというよりも、より正確に言えば、疑念を持たれているというのかな、はっきり言うと。」というふうに答弁されていまして、当然この前段では、銀行全体が不信の目で見られているという発言もありますよ、ちゃんと。だから、その後仙谷委員は金融庁という問題にも言及しているわけで、今のお話は、銀行が疑念を持たれているということは、その銀行を指導するところはどこなんでしょう。金融庁ですからね。その意味でいっても、これはある意味で金融庁の話でありますから。

 私は塩川大臣にお聞きしたいのは、こういう余り対決みたいな話じゃなくて、この不良債権問題は本当に解決しないと私大変なことになると思うんです。テロ、日本が貢献するのは、いろいろ後方支援もありますけれども、不良債権処理というのが、今緊急の世の中で日本ができる、世界が喜ぶ一番大きな貢献だと思うんですね。その意味で、今のこういう総理の認識も含めて、塩川大臣、不良債権問題が進まない原因というのはどういうところにあるのかということと、さっきのお話で、金融庁のことも入っていますから、金融庁が疑念を持たれているというのは一体何でなんだろう、このことについてちょっと御答弁いただけますか。

塩川国務大臣 なかなか鋭い質問ですね。私はそれはおっしゃるのはよくわかるんですが、これはちょうど、長妻さん、こういうことを考えていただいたらどうでしょうか、政府とそれから特殊法人の関係だと。この関係を、これを類推したものとして見た場合に、銀行と不良債権を出しておる企業との関係、私はまさにそんな関係だと思うんです。

 ですから、銀行が切ろうにも切れない、切ったら銀行の中に責任者を出さなきゃならぬ、そういう人的関係がごろごろに、がんじがらめに絡んでおるということが一つと、それからもう一つは、資金がいろいろと絡んでいますね。つまり、日本の金融はプロジェクト金融じゃなくてトータル金融になっています。これが二番目。三番目は、一つの企業に対しましていろいろな金融機関がやっています。例えばある大手のスーパーなんて、百何行と取り引きしておりますね。そうしますと、メーンバンクというのはもうメーンバンクではなくして、ただシェアが多いというだけのことであって、メーンバンクとしての支配力とマネジメントの力は全くないじゃないか。そうしますと、だれがこれを整理していくのかというときの求心力がなくなってしまっておる。そこらが絡み合って、私は不良債権の整理がなかなか進みにくいのではないか、そう思っておるんです。

 ですから、そういう実態にメスを入れて、それならば何かで基準をつくってやっていくとかいう方法を考えなければならないのではないかと思うんですけれども、そこの金融の難しさというものは理解、まだ私たちは、解放していくのをどうするかということになってくると思います。

長妻委員 金融庁が疑念の目で見られているというのはどうですか。金融庁が疑念の目で見られるという総理の発言については。

塩川国務大臣 私は、総理は金融庁自体を指して、先ほども言いましたように、けしからぬ、疑念とか、そう思っていないんで、要するに、不良債権を抱えておる銀行、金融機関、これに対して言ったのが、言葉のはずみといいましょうか、何かそういうところでお答えが出たと思っておりまして、決して、総理が金融庁そのものの疑惑とかあるいは不信感を持っておるというものじゃございませんで、しかし、一朝にしてなかなか疑惑を解くほどに簡単に不良債権処理の問題が進まないということは事実でございますので、これは何とかもっといろいろな、多様的な手段をもってこれを解決するためにやっていかなきゃならぬと思っております。

 もし、こういうことをやったらどうだということが長妻さんに御意見ございましたら、私たちにもひとつサジェスチョンとして与えていただいたら結構だと思います。

長妻委員 意見は最後に申し上げますけれども、今ちょっと塩川大臣の御発言を聞いて大変がっかりいたしました。言葉のはずみで総理、一国の総理大臣が、金融庁が疑念を持たれているというのを言葉のはずみで言っちゃって、あれはちょっと違うというのも私はそれは解せませんし、銀行が疑惑、疑念の目で見られているということは、その銀行を指導する我々、皆さん、政府ですから、金融庁がその責任があるわけでありますから、当然そういうふうに理解をいただかないと困るわけで、発言はちゃんと金融庁ということで総理はしています。

 そして、先ほど、私は塩川財務大臣、大変重大な発言をされたと思うんですが、政府と特殊法人の関係だと。金融庁と銀行の関係は、政府と特殊法人のような関係で、人が絡み合っていて何かすぱっとやることができない、こういう御発言は癒着ということでは大変重大な問題だと思います。そして、メーンバンクがあって、そこに何百社と連なっているから、銀行をある程度不良債権処理をするといろいろな問題が生じると。こういう意識が、経済財政諮問会議の主要メンバーのお一人である財務大臣が意識されているということは、大変これは問題があるというふうにこれも思います。

 そこで、柳澤大臣に今のお話をお伺いするのでございますが、総理が言われた、信用されていないんですよ、疑念を持たれているのかな、はっきり言うとというところでございますけれども、これはどう思われますか。

塩川国務大臣 長妻さん、それは大変な話の飛躍でございまして、私は、政府とそれから特殊法人との関係というものが、それが何も、悪だと言っても――悪いこともあります。ですから、絡みがあるから、確かに癒着といえば癒着かもわかりません、あるけれども、それが全部悪いんだというんじゃないんです。そういう関係……(発言する者あり)やかましい。聞いていてください。やかましい。今答えているんですからね。あなたに答えておるのと違うから。

 だから、私は、そういういわゆる非常に密接な関係があるから、だから私たちは今、特殊法人の整理をしようとしておるんでしょう。そこらをどう感じておられるんですか。特殊法人、公益法人を私たちがこれを改革しようとしておるんじゃないですか。そこにやはり努力をしておるということを認めていただかなきゃいかぬ。

長妻委員 特殊法人の……(発言する者あり)

塩川国務大臣 いや、努力しなかったらどうするんですか。努力があって初めて成るんでしょう。

長妻委員 私の質問にちょっと答えてください。

山口委員長 静粛に願います。質問者以外の発言は慎んでください。

長妻委員 今私は柳澤大臣に質問いたしましたので、その件を。

柳澤国務大臣 今委員が御引用になられた総理の御発言については、私どもは、あそこの話の展開からいって、やはり総理が後でよりブレークダウンしたように、市場が、金融機関あるいは金融行政、特に不良債権問題についてのハンドリングの仕方について、何というか疑念を持っている、あるいは信頼していない、こういうことをおっしゃったんだろう、こう思います。

 私どももいろいろ市場の見方も子細に見ておりますけれども、もちろん認めてくれている市場の声もあるわけです。しかし、どちらかというといろいろ不満を述べている市場の声が多いということも事実で、私どももそういうふうに受けとめているわけでして、そのことを総理がおっしゃったというふうに受けとめているわけでございます。

長妻委員 ですから、質問に答えていただきたいんですが、それについてどういうふうに責任者としてお感じになられているのか。

柳澤国務大臣 これは、私どもの市場に対する説明責任というか、そういうものも不足をしているんじゃないかというような考え方もあり得ると思います。

 これについては私ども、従来は、例えばアナリストの皆さんに対して、ある意味で独自の立場で物を言っている人たちについて、あえてそれについて我が方の立場をこちらから出かけていったりあるいはお招きしてお話しするというようなことは、率直に言って余り努力をしておりませんでしたけれども、それについて我々も、やはりそういうことではいけないんじゃないかということで、アナリストの人たちを呼んで、そうして、実はこうなんです、こうなんですということを説明したりする努力もしたわけであります。

 そのときに、現実にその場に居合わせた我が方の担当官によると、ああ、そういうことをやっているんですかと。つまり、アナリストの分析というのは当然、金融行政というのはもともとミクロ的なものですけれども、その情報というのはこれは開示はできないわけでございまして、そういうことから、勢いマクロ的な分析にならざるを得ないわけですね。しかし、彼らは、ミクロ的なそういう処理について、どういう考え方でそういう処理をしているかということについてもそれなりに関心があるわけでして、ああ、そういうことをやっていらっしゃるんですかというようなことを言われていたということがあります。

 ですから、我々も市場の理解をもっと得るようにしなければいけないし、また、市場がそれでもなおこうであるべきじゃないかというようなことについてはもっと耳を傾けようということで、今度の特別検査だとかあるいは要注意先の行内区分、行内格付における、こういった市場のシグナルをどうやってそこに織り込めるのかといったようなことの検討を求めているのは、まさにそうした観点から出ている我々の努力だということを御理解賜りたいと思います。

長妻委員 この話は私もこの委員会で何度も柳澤担当大臣からいただいた話で、結局、疑念なり信用されていないのは、説明をうまくしていないから、説明が徹底されていないからそういうような状態になっているんだというお話ですけれども、そうじゃなくて、説明というよりは、もうこれだけ期間があるわけですから、やり方が間違っている、だからこういう疑念が発生し信用されていない、私はそういうふうに思います。

 その意味で、柳澤大臣の今のお話とは全然私は意見は異にして、実態の見方も、総理でさえ、あるいは市場も含めて、説明が足りないからこういう反応をしているんじゃないというふうに私は思っております。ですから、そういう認識をぜひ変えていただきたい。

 それで、今お話がありましたけれども、その特別検査というのを十月に前倒しにして主要行に入るということであります。そして、竹中大臣が、この特別検査を経済財政諮問会議で綿密に事後点検して、うまくいかないならさらなる改革を求める、こういう発言をしております、九月の二十九日に。これは、金融庁としては特別検査を、経済財政諮問会議に結果をきちんとつまびらかにして、こういう判断を仰ぐ、こういうことでございますね。

柳澤国務大臣 市場と金融行政当局あるいは金融機関、特に金融行政当局との関係については、私が言ったのは、説明だけの問題ではなくて、説明の努力もしている。それと同時に、市場の声というものについて、我々はどちらかというと、銀行というのはもともと情報産業なんだから、こっちの方がもっとよく知っているんだよ、少なくともミクロ的にはこちらの方がよく知っているんだよというような立場でこれまでずっと行政を展開してきたと総じて言えると思うんですね。それを今回、我々は、ある大きな小売の会社が倒れたということで、いろいろ見てみますと、やはりこれは金融行政、特に、なかんずく検査行政と市場の発しているシグナルとの間に余りにもタイムラグがあり過ぎるということを物すごく反省させられまして、それが、我々の今度出した特別検査なり、あるいは要注意先の行内格付における市場シグナルの取り入れなりというところにきたということで、ただ説明責任だけじゃなくて、そういう努力もしているということですので、その点、まず御理解いただきたい。

 それから、その後、この金融特別検査につきまして竹中大臣がどのようにおっしゃったかということを、私、まだちょっと御本人からも、また、何というかその真意を、新聞で何か読んだ気持ちもしますけれども、正式にお聞きいたしておりませんので、閣内のことでもありますので、ちょっとここでコメントをするということはやはり適切でないと思います。

長妻委員 今の柳澤大臣のお話が本当だとすると、森長官をちょっと処分してもらわないと困りますね。

 といいますのは、竹中大臣が九月二十九日にこういう今申し上げたようなお話をした、そうしたらば、その話を受けて森長官が十月一日に、竹中大臣の特別検査を経済財政諮問会議で点検するということは無理があるという発言をされて、こういう特別検査の結果を経済財政諮問会議で点検するということは無理があるということで拒絶されているわけです。そうすると、大臣は知らないでそういう話を森長官は、知らない間に断っているような発言を、無理があるという発言をしている。柳澤大臣に報告もなくこういう発言をしているとすれば、まさにおかしな話であるというふうに私は申し上げているわけであります。

 これは本当にわかっていただきたいんですが、別に何か自民党、政府と我々は対決してこういう話をしているんじゃなくて、本当に不良債権問題を解決しないと大変なことになるんですよ。そういうふうに本当に思っておりまして、その意味で私は、この特別検査をするということが決定したわけですね、要注意の中でも、今ちょっとおっしゃられましたけれども個別的引き当てを考えながらやるということです、市場のシグナルを見ながら。そういう意味であれば、やはり特別検査の結果を、塩川大臣、経済財政諮問会議に、別に私は全部にオープンにしろなんて言っていないですよ。マスコミも含めて世間に全部検査をオープンにしなさいなんて一切言っていません。経済財政諮問会議のメンバーのみが見るような形で、特別検査の結果を全部そこで明らかにして、平場で議論する、これは絶対重要だと思うんですが、主要メンバーのお一人である塩川大臣、どうですか。

塩川国務大臣 私は、それはもうおっしゃることはもっともだと思っております。

 私も実は、時期はまだ何も考えておりませんが、補正予算の編成が終わり、これが大体閣議で決まる時分を見まして、経済財政諮問会議にこの案件を一度相談する、会議のテーマに取り上げてもらいたい。この問題ということは、不良債権整理のこれからの進め方という問題について、私はそれをテーマにしてもらいたいと思っております。

 金融庁がいろいろやっておりますスケジュールは私たちも知っておりますので、その特別検査等と相並行するような格好で、諮問会議の意見というものもある程度それに並行させて結論を出してもらいたい、こう思うておりまして、私も一生懸命、おっしゃるように、この不良債権問題というのも世界各国が注視しておる問題でございますから、一刻も早くやっていきたい。

 そのためにも、私は、あえて言うんですけれども、これを抱えております銀行の倫理観あるいは銀行の熱意というもの、これがやはり最終的な決め手になってくると思っておりますので、そこらに対する措置もあわせて経済財政諮問会議で検討の一つのテーマに取り上げたいと思っております。

長妻委員 今の発言は本当に評価いたします。もっともだということ。

 もう一回確認したいのですが、金融庁が特別検査をする、この検査を経済財政諮問会議で綿密に事後点検する、こういうことがもっともだ、こうやるべきだ、こういうお話でよろしいですね。

塩川国務大臣 私が言っていますのは、特別検査は金融庁がやっている、これはよくわかっていただけますね。やっておることでございますから、それとは並行した関係で、何も特別検査の結果どうのとかそういうのじゃなくて、わかっていましたよね、財政経済諮問会議でこの不良債権の問題をどう考えるかということについて一回議論をしていきたいということを言っておるのでございますから。

長妻委員 今、後ろからどなたかが紙で何かありましたようですけれども、さっきとちょっと違うと思うのですね、今の御答弁は。

 金融庁がやる特別検査の内容を、その検査の結果を経済財政諮問会議で、そのメンバーのみですよ、メンバーのみに限って皆さんに結果を見てもらって、そして話し合う、こういうことはやるべきだというふうに竹中大臣が九月二十九日に発言されているんですが、それに関してはどう思われますか。

塩川国務大臣 竹中大臣の発言は、私はそれは直接聞いたものではございませんから、まだそれに対するお答えはできません。

 しかし、私が先ほど言っておりますのは、特別検査が行われるんだ、それとは別に、別ということは何も関係しているということじゃございませんが、そういう時期、時期と言った方がわかりやすい、その時期に経済諮問会議においても不良債権の整理についての方針を一回相談してみたい、こういうことを私は言っておるわけです。

長妻委員 そうすると、特別検査の検査結果は、これは今までも経済財政諮問会議で不良債権問題が話し合われているんですけれども、そのときの大きな問題は、情報の共有化といいますか、本当の銀行の中身の話が経済財政諮問会議のメンバーの皆さんになかなか伝わっていないんじゃないかという懸念がありまして、その意味で今申し上げたようなことを言っているわけです。特別検査の結果を経済財政諮問会議で見ることは、これは別に、何か弊害があるというか、やはり見て議論するというのは当たり前の話だと思うんですが、そういうことなんですよ、言っていますのは。

塩川国務大臣 当然そういうことでございます。

 これは、企業秘密に属することは公表できませんでしょうが、ある程度、検査結果の方向としてこうであるということはどうせ公表されるであろうと思いますし、それはそういうようなものを我々メンバーとして心得て諮問会議で検討をするということは当然であります。

長妻委員 そこで、柳澤大臣にお伺いするんですけれども、正式には竹中大臣から聞かれていないということでございますが、常識的に、今、もう内閣の経済財政諮問会議というところに不良債権の問題の話が移り、世界的なところに日本の不良債権問題が移っているわけでありますので、この特別検査を今月からする、間に合えば中間期決算にも反映できるかもしれないというようなことですから、その特別検査の結果を全部、経済財政諮問会議の方々のみのところ、外に公表するんではなくて、形で報告して議論をするということをぜひ御決断いただきたいんですが、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 金融検査の結果というのは、これは恐らく行政の中でも非常に秘匿度の高いものだというふうに私は思います。

 それはどうしてかというと、恐らく金融機関というものの信頼度がそこで評価されるということでして、もちろん行政の一つの角度からの評価が行われているということでして、これをそうした外部の人に見せるというか開示をしているという国は、恐らく私、寡聞ですけれども、多分ないだろう、こう思います。(長妻委員「外に出さない、経済財政諮問会議だけ」と呼ぶ)ええ。それでも、要するにほかの国家機関に開示するということは多分皆無だろうと思います。まだ私、これ、そういうことを確かめたわけじゃありませんから、今そういう御質問をいただいてとっさにお答えしているわけですけれども、多分そのくらいの秘匿度の高いものだと思います。

 ただ、今度の特別検査というものは、ちょっとそれと違うんですよね。ということで、これを一体どういうものとして扱うのが適切かという問題はあり得ると思うんです。あり得ると思うんですが、今ここで委員の御質問に対して、私はそういうことができると思いますとかできないと思いますというのをお答えするには、ちょっと私の方の、大変恐縮ですが、準備不足だということをお許し、御了解願いたいと思います。

長妻委員 ちょっとおかしな話で、私も別にマスコミなり世間に公表しろということではなくて、この特別検査の結果は全部、柳澤担当大臣御自身は当然ごらんになられるわけでございますよね。御自身も見ることはできないようになっているんですか、この特別検査の結果すべてを。

柳澤国務大臣 私は、要するに検査全般です、この特別検査じゃなくて検査全般については、結果しか見ない、途中を見ないということで今やっているわけです。

 だから、特別検査についてどういうアプローチが必要か適切かということは、ちょっともう少し検討してみないと何とも言えないんじゃないかというのが、私のここの場でのとりあえずのお答えということでございます。

長妻委員 結果だけでいいんですよ。私も別に、何か途中経過を全部ということではなくて、例えばメンバーを絞りますと、その特別検査の結果を塩川財務大臣と小泉総理に、内容をすべて報告していくというようなことは別に、それは当然のことだと思いますが、その点だけ一点、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 まあ検査の結果という場合に委員がどういうことをイメージされているか、私のイメージとちょっとずれていると話がうまく通じていないわけですが、我々は、検査の結果でもなかなか難しいんではないかということを、今ちょっと私、お話ししながら頭でイメージしたんですが、例えば、A社ならA社がこれまでは要注意でした、それが今度は破綻懸念先に下がりましたと。破綻懸念先に仮に下がったとしても、あるいは実質破綻先に下がったとしても、その会社は生きているわけです、生きているわけですね。そういうことを、ある会社はこういうふうな検査結果でこういう債務者区分になりましたということを、やはり言えないんではないかと。

 それは(長妻委員「総理にも」と呼ぶ)いや、それは総理との間はどうなるかということですけれども、それは総理は行政の最高責任者ですから、私に対してどういう命令権があるか、それを子細に見れば、総理にはそういうことは事実上言われるかもしれませんが、あるA社がこれは実はこういうふうに区分されましたということを複数の人たちに申し上げるということ、これは、金融の行政あるいは金融監督の御経験のあられる方も中にいらっしゃるわけですけれども、なかなかこれは難しい問題ではないかと存じます。

長妻委員 ちょっとおかしな話でありまして、特別検査がある程度ちゃんとなされると、その結果というのは多分かなり驚くべき数字も上がってくるというふうに私は感じておりまして、それを何で総理に、総理大臣ですから、あるいは塩川財務大臣に別に結果を、今ぱっと一言御答弁で、わかったという御答弁だと思ったんですが、何かそれはどうなのかということで、これもちょっと、何でその情報を共有しないのかということが大変疑念があります。

 別に第三者じゃなくて総理大臣と財務大臣ですから、ちょっと今の物言いは、まあ私が言うのも変でございますけれども、総理からしてみるとおかしいと思いますよ、それは。政府の中でも今の発言は、何で自分のところだけ情報をタコつぼみたいに囲っちゃっているんだと。冒頭私が申し上げましたように、柳澤大臣がいろいろ過去経緯があられてなかなか果断に決断できないというような話も、話というか発想もまた持たざるを得なくなっちゃうわけですから。

 それでもう一点、時間もないのでちょっと話を進めますと、もう一つ不良債権の絡みで、実質債務超過企業には追加融資をしない、こういう措置をどう思われますか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 これは、実質債務超過企業という場合もいろいろなケースがあるわけです。一年度だけ、まさにいわば一時的に債務超過になったというような企業もありますし、言葉がいいかどうかはあれですけれども、もう見通し得る売り上げとか収益を考える限りにおいては、なかなかこれはもう債務超過の状態から抜けられないというような展望のもとに置かれた企業もございますので、その後者の場合に、もしそれを知っていて融資をすると、やはりなかなか、刑事責任等の追及の局面に立たされるということを当該の経営者というのは心配せざるを得ないんではないかと私は思いますし、それから、現に私は、そういうことを心配して実際できないんだよという話も、それは別にかみしもを着た会話ではないんですけれども、そういう話も聞いたことはございます。

長妻委員 今の発言は、今発言された内容を銀行が守ると、私は、かなりの部分、不良債権問題は進むと思いますね。今までとちょっと、銀行の実態と今違う発言なんですけれども。

 といいますのは、今実質債務超過の企業でも、まあ確かにそうですよ、実質債務超過でもちゃんと金が回っている企業もあります。それは、今言われた一年ぐらいの間で、ただ増資すればいいわけですから、そういう企業はあります。

 それは別として、今言われた、一年ぐらいでというんじゃなくて見込みがなかなかというようなところに、実質債務超過企業に追加融資をしない、こういう発想を、今言われましたけれども本当に銀行に厳しく言っていただければ、かなりのところがそれに該当して、追加融資、今していますから、今言われたところに対して。例えばマイカルもそうだと思いますよ。破綻懸念先に陥るべき企業であっても、特例として、基本的には五年ないし十年の経営計画、再建計画があれば要注意になるという金融マニュアルの特例条項がありますね。だから、その意味では、実質債務超過企業に対しては、一年とか、そういうちょっとキャッシュフローのあれでなっている企業は別にして、もう追加融資はしちゃいけない、こういうことでよろしいんですね。

柳澤国務大臣 私がしていけないと言っているんではないんです。経営者の人たちがしていけないということを言っていらっしゃいますよと、それから、私が経営者の立場をそんたくするに当たっても、なかなかそれは刑事責任の追及の場面に直面するかもしれないからできかねるということでありましょうということを申し上げたわけでございます。

 それからなお、今、別にどうのこうの言うわけじゃないですけれども、実質債務超過の場合にはもう破綻懸念先でございまして、要注意先というのは、一時的なものでない限りもう破綻懸念先でありまして、要注意先にとどまるということはないというふうに考えております。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

長妻委員 もう一点話を進めますと、私は不良債権問題、どういうふうに処理するのが一番いいのかといいますと、特別検査をやる。これはもうやるということで、十月に主要行に入るわけですが、これは本当に厳しく特別検査をやっていただいて、要注意に入っている企業も個別的引き当てをきちんとしていただいて、査定もきちんと見て、自己査定の期間中にタイムリーに改善できるようにして、格付なり株価も見て、引き当てをきちんと厳しく指導をしていく。

 ところが、そうなると、これはいろいろな見方があるんですが、私もその意見ですけれども、おおむね過少資本になる、その銀行が。私も主要行がなるというふうに実は考えておりまして、その見方はかなり多くの見方だと思います。

 柳澤大臣はそうじゃないということのお立場だと思いますけれども、その意味で、基本的に、今銀行のマインドとしては、本当にまじめに特別検査を受けて、個別的引き当てをして、資産査定をまじめにやっちゃうと、過少資本になっちゃって大変なことになる、だからBIS規制を、例えば八%をクリアできる範囲内で、その中で処理をしよう、こういうマインドが銀行にあるわけです。ですから、私は、本当に銀行にやってもらうには、無理なことを背中を押してやれといってもできないわけですから、柳澤大臣が嫌う言葉ですけれども、公的資金という、これはわかりますよ、十五兆の金融危機に対応というのはありますけれども、そうじゃなくて個別的な銀行の過少資本に対して公的資金をある程度措置する。

 私、公的資金じゃなくてもいいと思うんですよ、例えば日銀のファイナンスでもいいですよ。過少資本になって、例えば自己資本がマイナスになってもその銀行がやっていけるような形で、公的措置をあらかじめ宣言をするというような形にして、銀行が安心してといったら言葉は語弊がありますけれども、安心して、自己資本がほとんどぐわっとなくなっても不良債権処理ができるような措置をまずきちんととった上でこういう特別検査を厳しくやらないと、結局は、できる範囲内でしか銀行は自己査定を出してこないということになると思うんですが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 要するに、本当に、そういう疑いを持たれるというのは銀行も不徳だと思うし、検査当局も力不足だと言わざるを得ないと思うんですね。

 私が指揮をしているのは、金融検査の当局は金融検査マニュアルに従って思う存分やりなさいということなんです。そんな、監督の立場で、自己資本が足りなくなったときどうやって補充しようかとかなんとかというのは、検査局の問題ではないわけでございます。したがって、思う存分やりなさいと、かねてからそういうことをずっと言ってきたわけです。

 ただ、今度、我々が検査の一つの補完として、補完といっても手続的補完なんですけれども、余りにもタイムラグがあるから特別検査をやりますよというようなことを言った、あるいは引き当てについて、ベストプラクティスと言っていいと思うんですが、ベストプラクティスを導入しますよと言ったわけですけれども、そういうことはありますが、基本的には検査マニュアルのとおりやれということに尽きます。

 その結果、もし自己資本不足が起こったとした場合にどうしたらいいか。長妻委員にお尋ねしますけれども、この前の、一九九九年三月末の資本注入というのは、あれは金融システム危機に際しての注入でございます。要するに、公的資金でもって資本注入するということが、国民みんなが、そうだな、民間企業だけれども資本が少なくなったら入れてやらなきゃならないなというのは、かなりそこに公共性があるということでなきゃ認められないことだろうと私は思っているんです。

 ですから、まず自己努力をしろ、資本が少なくなったら増資を頼むのは当たり前ではないですかというような立場が私の立場でありまして、さらに、その先をあえてここで言わせていただくと、さっき鈴木委員が言ったように、郵貯が民営化され、それから民間銀行が国有化される、こういう奇怪な制度を、ほかの企業はみんな民営化の企業なんですね、その中に銀行だけが全部国家管理をされた銀行ということで日本の資本主義社会が成り立つということは、一体、これは学識豊かな専門家に聞かなきゃわかりませんけれども、そんな資本主義ってあるんだろうか。それで、しかも返済期間が十年、二十年とあると、十年、二十年、国有化銀行のもとで資本主義経済を日本経済が運営していくということは、一体どういうことなんだろうかということをちょっと疑問に思うわけでございます。

長妻委員 柳澤担当大臣のきょうの御答弁で、私の前のどなたかに対する御答弁で、金融危機に対応するための措置、改正預金保険法に基づいて十五兆円の枠を活用した資本注入が可能ですね、現在は。この金融危機の定義なんですね。そうなるとこの金融危機の定義になってくるんですが、これが非常に柔軟になったようなイメージをさっきの御答弁で私はちょっと受けたんです、私の前のどなたかの委員のときに。私が言っているのは金融危機の定義なんですね、ある意味では。私、さっき個別銀行と申し上げましたけれども、では個別銀行が何行そうなったら金融危機なのか、こういう定義はないですね。

 だから、ある意味では金融危機という概念を、今までのように柳澤大臣がいろいろなところで、それは否定していないでしょうけれども言い方として、公的資金はだめだ、こう言うんじゃなくて、金融危機の場合はあるわけですから、その金融危機ということをもうちょっと個別的に概念を説明していただいて、例えば私がまさに今申し上げたこと、特別検査をばちっと厳しく十月にして、それで過少資本になっちゃう、まじめに銀行がやったら。そうしたときに、その銀行が一行じゃない、それも主要行の中で何行か来ている、こういう雰囲気になったときには、ちゃんと金融危機の概念で、公的な資金をこういう措置でやる場合もあるよと。どうですか。

柳澤国務大臣 そこが長妻委員、私の立場、長妻委員も私の立場になればそう簡単にはそこのところは言えないんです。というのは、私がそこでそういうことに、まあちょっと語弊があるかもしれないですが、イージーに、そうでございますみたいなことを言ったら、途端に思惑を生むんです。

 ですから、私は、条件が満たされればそれをやるにやぶさかでありません、ちゅうちょしません、しかし、その条件がないのにそういうことをやるなどということは私は言わない、これが私として言える当然のことだというふうに思います。

 それはそういうものなんです。私はそう思っているんです。私が、危ない銀行があるとか、自己資本比率八%を割るところがどうも出そう、そんなことを言えた話では、いや、そんなことはありません。まず、ありません。もうそれしか言えないんですよ。

長妻委員 私、今の柳澤大臣の御答弁は、半歩前進だと思っているんです、前進だと思っているんですよ。といいますのは、表現が変わっていますよ。

 今までは、金融危機はない、過少資本になるところはないと。今のお話は、当然お立場はありますから、それはわかりますよ。ないというんじゃなくて、それはあるかどうかわからないけれども、では、わからないけれどもというのも言いません、何しろ立場的にそれは言うことができないというお話ですね、今の御答弁は。ですから、その意味では、今の御答弁で市場はある程度なるほどと思ったのかもしれません。

 それで、もう一歩話を進めますと、九月十日、小泉総理が宮澤元総理を訪問いたしたということ、これは新聞記事です。宮澤総理を訪問して小泉総理が、これは括弧書きで、新聞社が書いた括弧ですけれども、公的資金注入に反対する、ここからはかぎ括弧になっていますが、「柳沢さんの言うことも分かるが、新しい展望で考えた方がいいんじゃないですか」と宮澤総理が小泉さんに言った、小泉総理は、「柳沢さんには、私から言おうと思います」と答えたという新聞記事があります。言おうと思うというのは、公的資金をちょっと柔軟に考えた方がいいんじゃないのという記事です。

 そしてもう一つ、柳澤担当大臣が資本再注入が不要と言えば、大手銀行幹部のコメントで、特別検査は資本再注入が必要になるほどの厳格さにはならない、こういうふうにやはり書いている。書いているというか、大手幹部が言っているのを新聞が書いているわけですね。私もそれは、大手幹部じゃなくても銀行の方から直接、何人かの方からこういう雰囲気も聞いています。

 ですから、ある意味では、銀行に対するメッセージといたしましては、こういうことがありますから特別検査は本当に厳しくする、ただ、本当にまじめにやっていてそれで金融危機、この定義もありますけれども、金融危機が起こったら、それは当然この改正預金保険法に基づいて、これはやりますよと。断固たる措置で金融庁は金融危機を起こしませんと宣言していただきたい。

柳澤国務大臣 我々は、法のもとの行政、法に基づく行政をやっているわけでありまして、法の命ずるところに従って、やらなければならないことはきっちりやる、こういうことを申し上げます。

長妻委員 それと、冒頭私がちょっと申し上げましたことで、必ず、私もここで質問をして柳澤大臣がお答えになって、ある程度金融庁は、これまでも何度か対応措置を出されてきましたけれども、そのたびに結局は不十分で、ここまで不良債権の問題というのが長引いておりますので、ですから、冒頭にちょっと私が申し上げたように、総理も、信用されていないとか、疑念を持たれているというのをはっきりと言われているわけでございまして、その意味では、柳澤大臣、日本のためにも世界の経済のためにも、御自身もずっと携わられて本当に実績は上げたと思いますから、ここでこの際、後進に道を譲っていただきたい、私はそれをお願い申し上げますが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 長妻委員というような見識のお高い、またすぐれた政治家からそういう言葉をいただくというのは、私として大変残念であります。

 私は、昨年十二月の四日に就任して、一月から二月にかけて不良債権の最終処理が必要だということで申し上げてきまして、決算期としてはこの九月中間決算を過ごしたという段階でございます。世の中は、非常に不良債権問題についてある種のイリテーションというかそういうものを感ずるというのは、私はそれは当然だと思うのでございますけれども、もう一つ、ちょっとあえて言わせていただきますと、銀行が処理するというのは決算期ごとだ、こういうことでありまして、正式の決算は来年の三月期ということが、私が号令をかけてそれが有効になって以来のことでございます。途中で何かやるということもできないわけじゃありませんが、それは非常に不幸な例ということでして、企業の破綻とかそういうようなことになるわけであります。

 何というか、これから私も、長妻委員からの辞令も大事ですけれども、やはり私が任命されたのは小泉総理でございますので、小泉総理の御指示に従って、時期が与えられればその時期、私は目いっぱい、一生懸命仕事をさせていただく、こういうつもりでございます。

長妻委員 今のに関連するのですが、その意味では本当にぜひ意気込みを見せていただきたいと思うのです。これは私が言っているのじゃなくて、国民の皆さんもそう思っていると思います。

 その意味で、特別検査、今月から主要行に入りますけれども、それは中間期決算に反映させるという形でやっていただきたいと思うのですが、どうですか。

柳澤国務大臣 お気持ちを承りました。

 ちょっと今、十月からということを始めているわけですが、これはある意味で準備を兼ねた話ということでもありまして、できるだけ先生が代弁された国民の皆さんの意識というものを体して、一生懸命やってみたい、このように思います。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

長妻委員 本当に今の御答弁も、私は緊急性を、危機感を感じられていないと思いますので、最後に本当に柳澤大臣の辞任を要求いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 私、午前中に一般質疑をさせていただきましたので、今回は、この銀行法の一部改正法案に即して、柳澤大臣と質疑を交わさせていただきたいと思います。塩川大臣は暫時お休みをいただきたいと思います。

 柳澤大臣もそうだと思うのですが、私は若いころから金融自由化論者でございました。日本の金融というのは、大きな貯蓄をバックにして、国際競争力も本来強いはずである。しかし、いろいろな規制に守られて、いわゆる護送船団行政でやってきたわけですが、その規制が、歴史的な推移の中で次々と風穴があいて壊れていくわけですね。

 昔よく言われたことですが、日本の金融界を守っていた規制というのは、まず第一は金利規制ですね。みんな同じ値段で同じ商品を売りなさいという金利規制。それから、業態別垣根ですね。銀行、証券とか長短金融とか信託分離とか、そういう垣根。最後に、非国際化の障壁みたいな、為替管理で海外からのそういう規制をぶち破る動きをシャットアウトしたわけですが、為替相場が変動相場制に移行したことに伴って、為替管理がだんだんなくなっていく。金の動きが自由になると、必然的に非国際化の障壁が壊れてくる。

 そうすると、当時よく二つのコクサイ化と言ったものですが、そういうインターナショナルの方の国際化が壊れて、資金移動が自由になる。と同時に、大量の国債発行が始まったものですから、規制金利の時代のようなことをやっていたのでは国債が売れない。したがって、やはり国債は市場の金利を尊重して出さなきゃいけないということで、二つのコクサイ化で金利規制に風穴があいたわけですね。

 金利規制に風穴があくと、最後のとりでだった垣根、業態間垣根にも風穴があいてきた。なぜかというと、大量に出てきたこの国債、今までの垣根規制だと、証券会社以外扱ってはいかぬよ、こう言っていたわけですが、それでは大量の証券を処理できない。いわゆる金融の証券化が進行し始めて、銀行自身も証券化の波に乗っていかなきゃ商売にならない、また国債も大量に売れない、あるいは流通市場がうまく発達しないというので、初めて垣根規制に風穴があいたのは、御記憶のとおり昭和五十六年の銀行法の全面改正で、銀行にディーリング、国債ディーリングを認めたのですね。これで銀、証に穴があいた。私は、これが垣根を取っ払うという意味の金融自由化の第一歩であったと思います。当時、私も日本銀行におりまして、これはもう大変な勢いで自由化が動き出すというふうに思っておりました。

 その後、二度目の大きな垣根規制の緩和は、これは平成四年ですが、子会社方式で乗り入れていいよ、銀行、証券、信託の間で。これが二度目の大きな垣根の規制。

 その次が、ついこの間の、平成十年の持ち株会社、純粋持ち株会社を金融に認めてやる、だから持ち株会社方式でいろいろな業態を営んでいいよというところまで踏み込んでいった。これでほとんど金融業の中の垣根は取り払われたと思うのですね。まだ若干残っていますが、まあ原則的に取り払われた。

 そこで、いよいよここへ出てきた銀行法の改正というのは、金融業の中じゃなくて、金融業の外の、ほかの業種から金融業に参入してくることについてどうしようか。諸外国はそれを認めているじゃないか、日本はいつまでもそれをシャットアウトしていてはだめだと。ヨーカ堂銀行とかソニー銀行とか、そういう金融業以外の企業が参入したいよと手を挙げ始めた。そこでこの改正案が出てきたわけでございますので、私は、若いころからの主張の延長線上で、当然この銀行法の改正は前向きにとらえたいという気持ちでおります。

 ところが、形の上で見ますと、この銀行法の改正は新たな規制を入れてくる。例の、主要株主は許可制だ、それから五%以上の大株主は届け出制だよといって、新しい規制が入ってくるわけですね。しかし、私は、その新しい規制を導入することがこの銀行法改正のねらいではなくて、今ずっと長く述べさせていただきましたが、大きな金融自由化の流れの中で、いよいよ他業態から金融業に入るという、この垣根も規制緩和していこうというのがこの法律のねらいであって、それに伴う弊害を阻止するために新しい規制を入れているんだ、基本は、前向きに自由化を進める、規制緩和を進めるんだ、こういうことだと思うんですが、念のためにその点についての認識をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 今鈴木委員の歴史的な流れのお話を聞きながら、私も、一々その場で自分がどういう立場に立ったかということを思い出しながらお話を聞いておりました。

 お答えの方が先でございますので当然お答え申し上げますが、基本的に認識は同じです。同じですけれども、ただ一点、それをどうこう言っているわけじゃないんですが一点、鈴木委員御案内と思いますけれども、バーゼルのコアプリンシプルの議論がほとんど同時に起こっていまして、だからこの法律案というのは、他業種の参入等の自由化というものをもちろん大きな太い柱にしているわけですけれども、同時に、たまたま論議が生じておったバーゼルのコアプリンシプルの議論も横目でにらみながら、こういうように固めてきたということを指摘できるかと思います。

鈴木(淑)委員 おっしゃるとおりでございまして、バーゼルの銀行監督委員会のコアプリンシプルをにらんでの法的な構成、これはよろしいと思うんですね。アームズ・レングス・プリンシプルで一定の距離を保てとか、その他、ソース・オブ・ストレングス・ドクトリンとか、いろいろありますね。これがみんな入っているところはいいと思います。

 ただ、私が言いたかったのは、そういうのは、新たに規制を強化しようよというんじゃなくて、自由化するためにこういう新たな規制を設けないといけないねという考えでできていると思うんです。それは認識は同じだと思いますが。

 それで、新しく入ってくるのが、五%を超える株主に対しての届け出制、二〇%を超える株主に対しての許可制なんですが、まず、五%を超える株主の届け出制なんですけれども、これは何のために届けさせるんですか。銀行株式所有届出書というのを出してもらうのですね。そして、そこに虚偽がないか、誤解を招くようなことがないかとチェックする、何かあれば立入検査もするというんですが、具体的にどういうことを頭に置いてこれは考えているのですか。どういううそをつかれたら困ると思っているのですか。どういう誤解が出てきやしないかと心配しているのですか。

 これは、どうぞ、事務方でいいです。

原口政府参考人 五%以上というのは、現行を見ますと五%を超える株主というのは極めて限られている状況でございますので、こういう株主がそれなりの影響力をやはり持つことはあり得ると思いますので、そういうことの有無をチェックする、そういう観点。もちろん基本的には二〇%以上を主要株主と定めておるわけですけれども、諸外国ではそれより低い率で主要株主を把握しているようなこともございますので、影響力の有無をチェックするという観点で、そういう基本的なところを補完するというような意味で、また、届け出でございますから、それほど過重な負担ということではないと思いますので、そういうことを総合勘案して、五%以上の義務づけを課したということに理解しております。

鈴木(淑)委員 揚げ足をとるつもりはありませんが、五%以上の株主というのはそんなにまれな例でもないのですよ。地銀の場合は結構、地元の大株主、五%超というのはいますよ。そんなにまれな例ではない、それは一つ指摘しておきます。だから、結構ケースがあるのですよ。

 それで、僕の質問は、届け出させてあなた方は一体何を見ようとしているのですか。影響力を発揮しちゃ困るみたいなことを言ったけれども、株主だから株主権を行使するのは当たり前ですね。だから、何を見ようとしているのかなということなんですよ。

 それで、二〇%の主要株主になっていない人に対しても、あなた方が、届け出制というものを利用して、何だかんだと裁量的な口を出すとよくないと僕は思っているのです。

 今、諸外国では届け出制で、いわば主要株主に相当する者は、日本は二〇と決めたけれども、もっと低いのはある。一〇%ぐらいのがありますね。一五%も二〇%もあれば、一〇%もある。それはわかるが、だから五%のところに念のために予備的に届け出制を置いておいたというのだと、何か僕は心配なんです。その五%の届け出た株主について、立入検査もできるなんて恐ろしいことが書いてあるからね、これは。何をするつもりなんですか。

 本来届け出制で、届けてもらった後、条文を見ると、虚偽があったら困るとか、誤解を招くのがあったらいけないとか、いよいよとなったら立入検査をするなんと書いてあるけれども、何が頭にあるのか、正直に答えてくださいよ。何を心配しているのですか。

原口政府参考人 おっしゃるように、届け出という対象として、正常といいますか、善良な株主について何か規制を加えようということを想定しているわけではございませんが、これはまた諸外国の例等も参考にしながら検討した過程では、五%ぐらいから届け出をしている国も英仏等ございますし、それから、やはり二〇%なり、別途実質的な影響力を持っている場合の一五%条項等を実質的に担保するときに、そういうところに虚偽の報告がないかとか、そういう疑いがある場合に限って立入検査をするということでございますので、その運用については非常に厳格に考えております。

鈴木(淑)委員 柳澤大臣、お聞きのようなことでございますので、五%超の株主について、届け出に、実は二〇%なのに一五と届け出てきたというような虚偽があったらこれはいかぬということですが、そうでなければ、この届け出制はあくまで届け出制であって、おどかすような、余り持ち株比率が高いのはいけませんよみたいな行政指導はしないようにしていただきたいというふうに思います。最初に言いましたように、結構地銀ではありますよ、五%超の大株主は。

 それから次に、二〇%の主要株主。これは認可制というのはもっともだと思うのですね。これだけの影響力を持っているのは認可制。バーゼルのコアプリンシプルでも当然そうです。ですから、これはいいんですけれども、どうも条文を読むと抽象的な感じ。財務面の健全性とか、株式所有の目的、社会的信用とか、いろいろなものに基づいて判断するよと書いてあるのですが、割と抽象的ですよ。そうしますと、これはうっかりすると裁量行政の最たるものになりはせぬかということなんですね。

 もう釈迦に説法ですが、今の大きな行政のあり方の変化というのは、今までのように裁量で、事後的にいい、悪い、こうやることはだめよ、そうでなくて事前にルールを明示して、このルールに合っていればいいんだから、合っている限り自由にやれと言っておいて、ルール違反は後からチェックしていく、これが新しい行政のあり方だと思うのですね。そうしますと、この二〇%の認可制についても、こんな抽象的な文言で裁量で判断されちゃたまったものじゃないので、やはりルールをできるだけ明示するということが大切だと思うのですね。

 それは、だから法改正しろとは僕は言いません。これはどうしても省令になるでしょう。だけれども、その際にルールを事前に明示しますということをこの席で大臣にお約束いただきたいのですね。そうじゃないと、この抽象的な条文の文言のまま、いいよといって通しちゃうのは、国会としては心配、私は心配ですね。裁量行政に逆戻りしちゃって、本当に金融庁の役人さんが大変な権力を持っちゃうおそれがあるんです。

 これは省政令でやるんでしょうが、このルールを明示するというお考えをお持ちかどうか。

柳澤国務大臣 まず第一に、主要株主についての問題というのは、一番気をつけなきゃならないのは機関銀行化の問題で、それがまさに目的ということであろうし、また経営方針ということであろうと思うんですけれども、その点。それから第二点は、言うまでもないことですが、株主の財務の健全性がなければお話にならない、これはもうわかります。それから第三番目は、反社会的な存在でないこと。これもわかるわけでございますが、これを、では、もちろん省令、この場合には内閣府令ということになるわけですが、そこで詳細を決めるわけですけれども、今先生の御指摘の趣旨を踏まえて、本当に事前のルールとしてできるだけ過不足のないものをつくってまいるということはここで申し上げられる、このように思います。

鈴木(淑)委員 おっしゃるように、他業態からの参入を認めた場合に一番恐ろしいことは、昭和初期の金融恐慌のときに弊害が大きく出た機関銀行化ですね。大企業が自分の財布がわりに銀行を使っちゃったら大変だ。そこをチェックするために、この二〇%ルールといいますか、主要株主の許可制を持ってくる、これは私も大賛成なんです。だから、それは大賛成ですが、問題は、さっき言いましたように、これは自由化を進めるための法改正ですから。ところが、やってみたら裁量行政で、殺生与奪の権を行政が持っちゃってやっているというんじゃ、これはもう自由化逆行もいいところですね。

 ですから、できるだけわかりやすいルールを、内閣府令になるんですか、明示するということと、それから、一種の説明責任になると思うんですが、なぜあなたは許可されなかったのか、なぜあなたは許可されたのかということの透明性の維持が大事だと思うんですね。何でおれのところはアウトであいつはセーフだったんだという感じになってきたら、これは非常に不明朗な、不公平な行政の執行になっちゃいます。

 ぜひとも、そこの透明性維持、説明責任、これとルールということをよくよく考えて、この新しい法の執行に当たっていただきたい。それを附帯決議にも入れさせていただきたいと思っておりますが、そこを十分お気をつけいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 ルールに基づく行政という場合に、ルールを当てはめて、それで青いシグナルが出るのか、赤いシグナルが出るのか、こうなるわけですけれども、やはりその場合に、しっかりした説明責任を果たすことによって透明性を図っていく、確保していくということは、こうした行政の必須の条件だ、このように考えております。

鈴木(淑)委員 同じようなことが五〇%超の場合にもあると思うんですね。

 ソース・オブ・ストレングス・ドクトリンで、五〇%超については、経営がおかしくなったときはおまえの責任で直せよ、そういう義務を負わせていく。この考え方はもちろんバーゼルで出ているし、日本に取り込んで当然いいことだと思っていますが、これを余り強く運用しますと、つまり、新しくでき上がった銀行が本当にがたがたになったら、これはソース・オブ・ストレングス・ドクトリンで、おまえ何とかせい、こうやらなきゃいけませんが、非常に早い段階から、金融庁がああだこうだと指図がましくソース・オブ・ドクトリンのところ、五〇%超の株主に口を出しますと、これは嫌になっちゃいますよ。

 そうしたら、もう銀行業への参入をすると今までのおれの業態と違って手とり足とり実にうるさいね、そんなもの商売にならぬ、これはやめたということになりますと、せっかくここの垣根をぐっと下げたのに自由化の実が上がらないと思うのですね。その辺の手かげんも、余り裁量でいいかげんにやられても困るのですが、どういうふうに考えていらっしゃいますか、大臣。

原口政府参考人 この点については、金融審議会等でも御議論をいただきまして、今御説明ありましたように、主要株主のように五〇%超の株を所有する株主というものは、単独で支配力を持っているという点にも着目して、銀行の健全性を確保するための改善計画の提出を求めることができることを規定しているわけでございます。

 具体的には、例えば、主要株主の影響力の行使によって銀行が不健全な融資を実施しているような場合に、そのような指示とかあるいは管理方針を改善していただく、あるいは主要株主の経営資源を活用して銀行の顧客基盤の拡充を図るというような、主要株主と銀行との関係等の状況、あるいはその時々の銀行自身の経営状況等を総合的に判断しながら、その時点で適切に判断されるということを求めていくことになると思います。

 ただ、おっしゃいますように、銀行経営が悪化した場合におきましては、まず銀行自身に経営の改善を求め、また銀行自身がその努力をしていただくというのが前提であります。原則でありますので、そういうことも十分念頭に置きながら、運用を図っていくべきものと考えております。

鈴木(淑)委員 柳澤大臣、今お立ちにならなかったのですが、事ほどさように、この新しい法律の運用に当たっては、うっかりすると裁量行政に戻る危険性があるということだと僕は思っておりますので、どうぞ大臣は、この改正銀行法の執行に当たって、二〇%の許可制のところでも、あるいは五%の届け出制についても、うっかりしたら余計な口を入れることになりかねませんからね。五%のところ、二〇%の認可制、そして五〇%のソース・オブ・ドクトリンの話のところも、十分に透明で公正な事前ルールを明示した行政でいくということにお気をつけいただきたいと思いますし、そのような伝統を金融庁の中に確立して、後の大臣にちゃんと引き継いでいっていただきたい。これを根拠に金融行政が逆戻りしたんではたまらぬ、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それから最後に、この法改正にはもう一つ、もっとナイーブな規制撤廃がありまして、私はこんなもの、店舗行政なんてまだ残っていたのかと思いました。これは遅きに失したとはいえ、これはもちろん届け出制でいいなと思いますし、それから、信託業務の兼営を本体の方でやらせるのも結構だと思います。従属業務と金融関連業務の併営を許すというのも結構だと思いますが、最後に柳澤大臣にお伺いいたしますが、こういう、まだこんなの残っていたのというような感じがここにありますが、この後、大きな金融自由化として大臣は何を考えておられますか。まだ、やはり垣根は完全に自由化したとは言えない、諸外国に比べてもう少しやらなきゃいけないみたいなところもあると思うのですね。いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 碩学の鈴木委員を前にして、ある意味でお恥ずかしいのですけれども、私は、そういう書類とかなんとかではなくて、やはりさっきの業態の垣根ということをもう一歩進めるのかなというふうに実は考えております。ほかに技術的にいろいろ、信託銀行に一任勘定を許してやったらどうかとかそういうのもあって、それもそれなりに私はこれから大きな力になってくれる自由化だと思いますが、やはり業態で、どうも保険などが特に私のあれにありますけれども、そういうことかなと考えております。

 いずれにせよ、ちょっと先生には大変恐縮なんですけれども、私は、二十一世紀の金融のあり方というので、アメリカにせよイギリスにせよ、ある研究者に委嘱してそのビジョンづくりというのをやっているわけです。もちろんそれは、すべてをコンプリヘンシブにしたもので必ずしもないケースもありますけれども、ここへ来まして、これだけ金融が大きな変貌を遂げている中で、毎日日常の業務をこなしていくときにも、やはりビジョンがあるとないとではこれは全然判断の方向が変わってくるということも考えられるわけでございます。

 私も、かねてからそういう問題意識を持っておって、そういうことを事務方に投げておったんですが、最近になりましてようやくこれが発足をいたしましたものですから、それらの委員の先生方のお知恵も拝借しながら、これからの自由化の目指すべき方向と、それから具体の一歩一歩とるべきステップ、これについて考えていきたい、こんなふうに思っております。

鈴木(淑)委員 そういう将来展望づくり、大変結構だと思います。代議士なんかやってなきゃ私も入れてちょうだいと言いたいところですが。

 それで、私二つだけ、もうお気づきのことだと思いますが念のため申し上げますと、やはり自由化が一番おくれているのは保険業ですね。これは最後までちょっと護送船団的にやっていたものですから。ただ、最後まで護送船団的にやっていた裏目が出て、今経営がひどく悪化しちゃっているので、うっかりとんとんと自由化をするわけにもいかない。動揺が起きるおそれがあります。非常に扱いにくいとは思いますが、とにかく保険業のところは一番おくれておる、これは時来たりなば自由化していかなきゃいけないんだということ、これが一つの柱だと思います。

 もう一つは、私、直間金融のうちの直接金融、市場の方をもう少し発達させるために、どこの規制を緩和すべきなんだろうかという観点が欲しいと思うんです。具体的には余り申しませんが、例えば投資ファンドをいろいろ工夫してやろうとすると結構ひっかかるようですね。いろいろな種類の投資ファンドをつくってみようと思うといろいろひっかかる。それは税制の問題も、塩川大臣いらっしゃいましたが、ちょっとありますんですが、そこがもう一つ非常に大事なところだと思います。もっと市場における金融を発達させるために、どこの規制がひっかかっているんだろうと。

 よく支援者の人なんかで金融関係の人が言うんですが、何か工夫してやろうと思うとひっかかると言うんですね。そういう投資ファンド的なものは、あちこちへひっかかっちゃう。ですから僕は今度その辺を全部箇条書きにしてこいと言ってありますが、それがもう一つのポイントかなと思っております。

 御参考までに申し上げまして、時間でございますので質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 銀行法の審議ということで、どんどんと金融機関が仕事のできる分野が広がったり、あといろいろ新規参入の方なんかが来られて頑張ってもらうということも大変に結構なことなんだろうというふうに思っていますが、そのことと関連して、やはり今一番問題になっている、要は今の問題の方も、今の不良債権の問題ですね、そういったことも大変大事だろうというふうに思っていますので、そのことを中心にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 柳澤大臣は、間もなく一年ですかね、大臣におなりになって。それで、直接償却、最終処理ということをお話しになられたわけですけれども、現在のところまでの進捗状況ということについて、どのようになっているか、御説明いただけますでしょうか。

村田副大臣 それでは、数字のことなので私の方から御説明申し上げさせていただきたいと思います。

 十二年三月末と比べまして十三年三月末におきましては、主要行の不良債権の状況でございますけれども、要管理債権が一年前と比べまして一・七兆円ふえております。破綻懸念先以下の債権につきましては、オフバランス化の進捗等によりまして二・二兆円減少する、そういう形になっております。この破綻懸念先以下の残高の減少でございますけれども、オフバランス化が六・九兆円済みまして、その一方で新規発生が四・七兆円、差し引き二・二兆円の減、こういう形になっているわけでございます。

中塚委員 というわけで、差し引きで二・二兆円の減ということなんですけれども、その間におとりになった施策というか、そういったことについてもお伺いしたいなと思うんです。

 最近の話だと、改革工程表ということがあるんだろうと思います。この改革工程表で、分野名、不良債権処理ということが書いてございまして、「以下の施策を緊急に講ずることにより、不良債権処理を強化するとともに」云々かんぬんと書いてありまして、「他の分野における構造改革を推進することにより」ということも書いてありますが、「遅くとも集中調整期間が終了する三年後には不良債権問題の正常化を図る」ということが書いてあるわけですね。

 それで、大臣もどこかで御答弁されていたのかもわからない、総理もおっしゃっていたと思うんですが、不良債権問題が正常化するといっても、なかなかなくなるということはあり得ないんだろう、それは私自身も思っております。何兆あるとかいうのも、この十年間ほどいろいろな数字が言われてきているわけなんですけれども、柳澤大臣自身のお考えとして、三年後にはこの不良債権問題の正常化を図るというのは、具体的にはどういうこと、どういう状態になったらその不良債権問題が正常化するというふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

柳澤国務大臣 私が不良債権の問題に取り組まさせていただいて以来、最初は特に引き当て不足ということが強烈に言われまして、現実に、それまで大蔵省の金融検査というのは引き当ての方を全く見ない検査であった、資産の分類だけをして引き当てはもう公認会計士、監査法人任せだ、そういう時代があったわけでございます。それが、早期是正措置が入って両サイドを見なきゃいけないということになったのが、まあ金融検査改革と言っていいかと思うんですが、そういうもので引き当てというものをしっかりやるようになって、自己資本不足というものが起こって資本注入が行われた、こういうことでございました。

 そういうことでありましたけれども、不良債権の最終的な解決というのは、やはりオフバランスしないとだめなんだよというようなことが非常に声としてありまして、そこで私、再度就任させていただいてから一、二カ月たったところで、最終処理をしていこうということを申し上げたんです。

 具体的には、要管理以上のものについてはむしろいい方に持っていく、健全化の方向に持っていくということですし、それから、破綻懸念先以下のものについては、いろいろな形の整理を進める。整理の中にはもちろん再建的な整理も含むわけですけれども、そういうことでオフバランス化を図っていくということを考えて提唱いたしたわけですが、それでは、そういうことをやった先は一体どういうものなんだと。

 当然それはビジョンとして我々、ビジョンというのは大げさかもしれませんが、やはり目標として出さなければいけないということで、若干プレゼンテーションがまずかった点もあって誤解を呼んでしまったんですが、我々としては、それをモデル推計、全く推計なんですけれども、とにかくそれを出しまして、そして、二〇〇四年ですから平成の十六年度になるでしょうか、そのときには、不良債権比率、つまり全与信に占める不良債権の比率というものを算定することができるわけですけれども、それを三%台から四%というようなところに持っていく、それがまあ正常化と言えるものではないか。

 これは、なかなか正常化、例えば現在のアメリカですと一%ちょっとというような非常に、最近またちょっと上がり出しましたのであれかもしれませんけれども、二になっているのかもしれませんが、そういうようなことがあるわけですけれども、格付機関なんかの中には、四%台になれば一応正常化、平常状態と言えるのじゃないかというようなことも言われておることを念頭に、三%台から四%というものが実現できれば、それで一応正常化が図れたということが言えるのではないか。こんなことを頭に置いて、正常化という言葉を使わせていただいているわけであります。

中塚委員 そういうことで、今の、要管理債権はいい方向にというお話ですよね。この改革工程表の中で、破綻懸念先以下も、再建可能な企業については極力再生の方向で取り組むということが書いてあります。

 後からちょっと重点的に伺おうと思うんですけれども、RCCで今度不良債権を買い取るというふうなお話があるようで、与党の方でも詰められているというふうに聞いていますけれども、その買い取りの話になったときに、買い取りの基準のことにも関係をするわけですが、要管理、破綻懸念先、余りそういった分類とはかかわらずにRCCが買える仕組みが望ましいというふうにお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 今の告示でございますけれども、今現在の告示では、これは破綻懸念先以下の債権を買うということが、原則としてそうだということがうたわれております。この点については、いろいろ諸論がありますけれども、私どもとしては、基本的に変更する必要はないのではないか、このように考えているわけでございます。

中塚委員 オフバランスというときに、オフバランスというと大分やわらかい表現になりましたけれども、直接償却とか最終処理という言葉がすごい世間に悪い印象を与えているような面というのは、私すごくあると思っているんですね。

 実際、いろいろな有権者の方とお話ししても、不良債権処理をしたらもうとんでもないことになるという方は大変多いのも事実なんですが、私自身は、住専の問題のころからずっと思っていたんですけれども、やはり直接償却しなきゃ不良債権問題というのは絶対解決しないというふうに思っています。

 いろいろな方の実務的なお話も聞きましたが、間接償却だと、やはり債権が劣化すれば追加の引き当てもしなきゃいけなくなるし、直接償却をすることによって債権自体が流動化をして、新しいビジネスなんかも起こってくるんだというお話を聞いたことがあるんですけれども、そういう意味では、オフバランスといっても、例えば借り手を法的に整理するとかそういったことだけじゃなくて、債権の売却ということも十分にあり得るはずだと思うんですね。そのことの確認が一つ。

 もう一つは、やはりそういう不良債権、不良という言葉はもう要らない、売っちゃえば別に不良かどうかというのは関係なくて、その債権自体の価値で取引が、トレードが行われるんでしょうから、要は単に債権の取引ということだと思うんですけれども、そういった債権取引の市場の整備ということ、それについて御所見はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 率直に申し上げますと、不良債権の売買市場というものは、デューデリジェンサーというような人たち、これは売買するのじゃなくて、この債権は一体幾らの価値があるかというような人たち、それからサービサー、あるいはひょっとするとブローカーも入るかもしれないし、というような人たちが構成していくんだろう、こう思うんですけれども、率直に言って、ちょっと日本ではこれがなかなか厚いものになりがたいようなことも実はございます。

 それは一体どういうところに理由があるかといえば、私は、先ほど塩川大臣もちょっと日本の債権の特色としてお触れになられた、要するに案件ベースの債権じゃないんですね。もうその法人丸ごとの債権だというようなことがありまして、なかなか債権が売買されない。

 案件ごとの債権で、例えばこのマンション一棟、賃貸マンション一棟というものが債権と見合っているという場合には、ここで入居者が払ってくれる家賃、マイナス管理費や何か引くわけですが、これがまさにキャッシュフローなんですね。そうすると、これは不良債権に仮になったとしても、例えば簿価を一遍に何割かに下げると、このキャッシュフローが利回りとしては非常に高利回りになって、非常にプロフィッタブルなプロジェクトになるというようなことですから、そういうような債権がたくさんあれば、これはもう債権市場というようなものも非常に活況というか、厚みのあるものになるんだろうと思うんですけれども、なかなかそういうようなものがないということがございます。

 ほとんど原野みたいなものが、将来ゴルフ場になるだろうとかというようなことで、それが担保になって片っ方債権があるとか、プロジェクトファイナンスであってもキャッシュフローを生まないような、そういうものが背景にあるというようなことですと、これはもうほとんど無価値というか、極端に言うとキャッシュフローベースでいえばそういうことになりまして、なかなか日本の場合難しいわけでございますけれども、やはりこれではいけないわけでございまして、いろいろな形で我々はこの市場の厚みというか育成を図っていかなきゃいけない、こういうように考えております。

 今回、RCCに、いわゆるコレクション、回収だけじゃなくて、少し債権の流動化市場のプレーヤーとしても登場してもらいたいというようなことで、信託であるとかあるいはファンド、企業再建ファンドをつくるだとか、あるいは時価で買って適当にまた時価で売却するとか、そういういろいろな活動を多角化してもらうというようなことを考えましたのも、一つ流動化市場というか、そういうものの育成にとっても資するのではないか、そういう助けにもなるのではないか、こんなことを考えたわけでございますが、なお今後、これについては努力をしていかないといけない、このように考えております。

中塚委員 今おっしゃったように、もうほとんどの債権が、何か個人保証していたり、土地建物全部が担保に入っていたりして、なかなか流動化しにくくなっているという特徴があると思うんですね。

 そこで、私的整理に関するガイドラインというのをおつくりになって公表されたということなんですけれども、もちろん、借りたものを返すのは当たり前の世界ですから、そういった責任問題をうやむやにするようなことはよくないし、あと、債権放棄云々ということになってくると税収の問題等にもかかわってくることだろうというふうに思うんです。ただ、それこそ集中調整期間の三年後までに不良債権問題の正常化を図るという話になったときに、ちょっとこの私的整理に関するガイドラインというのは、この程度でいいのかなというふうにも思うのですが、柳澤大臣はいかがですか。

柳澤国務大臣 委員おっしゃった、この程度でいいのかなということが、どっちの方向を向いての御感想かちょっとはかりかねて、ちょっと答弁に困るんですが、率直なことを申し上げまして、私ども、これはいろいろな評価もあったんですけれども、ロンドンでできたと言われているINSOLという、インソルベンシーの権威者、そういうような人たちが、各国の破産法というものを念頭に入れて、少なくともこういう原則でいくべきじゃないかというミニマムの原則をつくったのがINSOLルールということのようですけれども、この作成される過程も、やはり民間の人たちの知恵というか、そういうものがINSOLの原則に結実しているということを我々、知らされたわけでございます。そういうこともあって、非常に微妙だと。

 それで、日本の場合には破産法があって、だからINSOL以上に、INSOLの八原則プラスアルファも我々のガイドラインでは盛り込めるというようなことも念頭にありまして、それには、やはりそういったことに通暁している経済界の人たちあるいは法律家の人たち、さらには金融機関の人たち、こういうような人たちが微妙な利害関係を調整したルールをつくるのであるから、我々はオブザーバーとして参加させていただくということにとどめようということでやらせていただいたわけで、大変な御努力の結果、ああいう形で取りまとめられたわけです。この評価を私どもの立場から何か申し上げるというのは、これはやはりはばかられるわけでございまして、我々としては、やはり御努力に対して大変敬意を表しているというのが率直なところでございます。

 中身的に言っても、やはり今まで、必ずしも別に私的整理が債権放棄を伴うということではなくて、もっと金融機関として、期限を延長するとかいろいろな手法があるわけですから、したがって、別に債権放棄を絶対必要的に具有しなきゃならぬ、こういうふうなことではないんですけれども、そういうケースが容易に考えられるわけです。

 そうすると、かつての債権放棄はもういろいろな問題がありました。そういう問題、かつて任意に行われた債権放棄についてのいろいろな批判というものを念頭に置いて今度のものがつくられたという意味では、私は、やはり一歩も二歩も大きな前進だったというふうに考えているわけです。

中塚委員 それで、次にRCCのお話を伺いたいんですけれども、RCCで不良債権を買い取るということについて、この工程表の中でも価格決定方式を弾力化ということが書いてあって、たびたびいろいろなところで取り上げられる話題ではあるわけですね。

 弾力化をするということになりますと、これは塩川財務大臣に伺いたいんですけれども、あらかじめロスを織り込んじゃうような話になってしまうわけですね。弾力化というと、要は、実勢価格より安く買うのが弾力化とは言わないんでしょうから、ちょっと高目に買うという話になると、あらかじめロスを織り込むような話になると思うんですけれども、これは財政サイドのお立場で考えて、弾力的な価格決定方式ということについてはどういうふうにお考えでしょうか。

村上副大臣 中塚委員の御質問にお答えします。

 先月取りまとめられた改革先行プログラムにおいては、不良債権問題の早期解決に資する見地から、預金保険機構、RCCは、不良債権の買い取りについて価格決定方式を弾力化するということになっています。

 この価格決定方式の弾力化については、現在与党で法改正も視野に入れた具体的な検討がなされていると我々としても承知しております。したがって、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいんですが、価格決定方式の弾力化が二次ロスによる国民負担に直結するものではないと理解しております。

中塚委員 弾力化が直結するものではないというのは、要は、それはちょっと高目に買っても、最後、RCCの資産が全部売っ払われたときに黒字になっていれば、それはもちろん財政負担がふえるというわけではないですよね。政府保証なりなんなりのお金でお買いになるのかどうかあれですが、勘定を最後に締めたときに黒字になっていれば、逆にそれはもうかる話ですから、それは当然のことだし、直結するということにはならないというふうには思いますけれども。

 それでは、ちょっとそこで伺いたいんですが、柳澤金融担当大臣にお伺いしますが、共同債権買取機構、これについてはどういう評価をされておられますでしょうか。

柳澤国務大臣 共同債権買取機構は、御案内のように完全に民間ベースで設立されたものでございます。もう最近店じまいをしまして、あとは残務整理というか、そういうことになるというように承知をしているわけでございます。

 その収支じりのことが中塚委員は御関心なんじゃないか、こう思いますけれども、いろいろ難しい問題を、まだ結論が出ないわけですね、結論が出ないんですけれども、難しい問題を包蔵しているというのかもしれないなと思って見ているんですけれども。

中塚委員 難しい問題を抱えているというか何というか。私の手元の資料だと、元本で十五兆円の不良債権を五兆八千億で買っているらしいですね、その共同債権買取機構というのは。それで、実際に回収できたのは一兆二千億円程度のようです。

 それで、今度RCCが債権を買い取って、それこそもっと多様な手段でその債権というのを売っていかれるようなことになるのかもしれませんけれども、そういった意味で、この手の仕組みですごくもうかってしようがないという話というのは余り聞いたことがないんですよね。

 そういったこともあって、今村上副大臣がお答えになりましたけれども、共同債権買取機構自体は価格算定委員会ですか、何かそういったのがあって、そこが決めた値段で買い取っていたということですね。それを、今度弾力化して買い取るという話になったときに、こういった実例を考えても、やはりそれは財政サイドから何か御意見があってもいいんではないかというふうに思うんですが、塩川財務大臣、いかがですか。

村上副大臣 御質問でございますけれども、やはり今の段階では、御承知のように話し合いの最中でありまして、検討中、行われているところでありまして、確たることを軽々には言えませんので、御了解いただきたいと思います。

中塚委員 また法案が出れば審議があるんでしょうから、そのときにはまたちょっといろいろとお伺いをしたいなというふうに思います。

 けれども、実際問題としてやはり余りうまいこといっていないようなんですね。では、これがうまく働くようにするにはどうすればいいかという話になってきますと、やはり景気の問題なんかとすごく密接にかかわってくるんだろうというふうに思うんです。実際、景気がよくなれば不良債権自体の額も減ることになるんでしょう。もう一つは、債権の流動化というのも、やはり景気がよくならないと、債権が流動化して不良債権のマーケットが活況を呈するということもなかなかあり得ないんだろうなというふうに思うわけですけれども、景気との関連で、やはり景気回復ということが大きな問題になってくるんじゃないかと思うんですが、塩川財務大臣、いかがでしょう。

塩川国務大臣 これは財政出動で景気を回復するということはなかなか難しいことでございますので、一つは、やはり構造改善をして、規制緩和で民間の経済活動に刺激を与えていくということが一つ。それからもう一つは、私はやはり税制も大事だろうと思っておりまして、税制改革でとり得るものがあれば積極的に考えていきたいと思っております。

中塚委員 何も財政出動だけが景気対策ではありませんので、私は財政だけで景気を下支えし続けろと言うつもりもありません。ただ、かといって財政赤字を削減するということだけにとらわれるのはかえってよくないんじゃないかというお話をしているだけです。

 それで、あと、この工程表の中に書いてあることで、要は引き当ては厳格に行いなさいよということは、もうこれは工程表だけじゃなくて、柳澤大臣がずっと言われていることですよね。引き当てはちゃんと厳格にせにゃいかぬというお話をされているわけですが、そのことと、不良債権を買い取るときの価格決定を弾力化するというのは全く逆方向を向いているんじゃないのかなというふうな気がするんですけれども、いかがでしょう。

柳澤国務大臣 引き当てを厳格化するということですが、これは今度のRCCの問題に限って言いますと、要するに破綻懸念先以下なんですね。破綻懸念先の例えば引き当てというのはどういうふうになっているかというと、まず第一に、優良担保、例えば国債とか、そういう優良担保を差し引きますね。それから今度は一般担保、例えば土地なんかですけれども、これは一番近時点の評価額、これは大体このごろは、私ども聞くところでは鑑定人の鑑定で、公示価格なんかではちょっとだめだというようなことがあるようですけれども、それをやりまして、掛け目を七割掛けて、そしてそれも引きますね。それで、あと残りのものの七割引き当てる。見当ですけれども、そういう引き当てのことですね。そういうことになっていますので、何と申しますか、非常に信用部分というものは少ないわけでございます。

 それを一体どういうような価格でやるかということになるわけですけれども、これは別に引き当ての状況等、いわゆる実質簿価とよく言われるわけですけれども、形式的な簿価から今言った、控除した優良担保の部分、一般担保の部分、それから引き当ての部分を引いた残りでやるのが実質簿価で買い取るということですけれども、別にそういうことを言っているわけではございません。実質簿価が時価ではありません。そういうことで、これは無関係に、極端に言うとそういう引き当ての状況とかなんとかとは関係なく価格が決まるということですから、とりあえず引き当ての政策の問題とは余り関係がないんではないかと私は思うのでございます。

中塚委員 時間がないので終わりますが、またちょっと法案が出たときに、その件については伺わせてください。

山口委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 銀行法について、さきの国会で、我が党の佐々木憲昭議員が、参入規制の対象が極めて狭い範囲に限定されている問題を取り上げました。改正案では、認可制となり監督対象となる銀行主要株主を原則二〇%以上保有の株主に限定する一方で、圧倒的多数で経営に相応の影響力を及ぼし得る五%から二〇%までの株主を単なる届け出制にしていること、これは金融審の報告からも後退して、一〇%というハードルのヨーロッパと比べても明らかに甘いという問題、銀行経営の健全性と公共性を確保することが第一義的なのに、これは事業会社等の銀行業への参入意欲を阻害しないという、その姿勢をすべてに最優先させている結果じゃないか、こういうことでの質疑を行ってまいりました。

 きょうは、前回に続いての質問を続けていきたいと思います。

 本改正案の目的の一つは、一般事業会社から銀行業への参入、異業種参入の条件を整えこれを促進しようとするものでありますが、その際最大の問題というのは、不健全な親事業会社が銀行を財布がわりに使う機関銀行化の危険をいかに防止する規制策がとられるかという、この問題だと思うんです。機関銀行化など、異業種参入によって起こり得る弊害を防止するために、認可後の主要株主である親事業会社に対してどういう監督ができるかということ、ここにかかっております。

 ですから、その点で、改正案は、特に必要があると認められるときは、その必要の限度において、報告徴求や立入検査ができるなどとかなり腰の引けた規定ですが、これでこの弊害防止ができるのか、この点について柳澤大臣に伺いたいと思います。

原口政府参考人 おっしゃるように、御指摘のように、主要株主に対する監督として、報告徴求、検査、これを特に必要が認められるときに限定してやっておりますが、これは一方で、やはりその権限の行使、態様によりましては、主要株主の経営に過度の影響を及ぼすというおそれもございますし、そういった意味で当局の権限の乱用が行われないように留意する必要もあるという観点、それと、本来の目的であります銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するというその両者を勘案してと申しますか、それを調整する規定として、やはりなかなか個別具体の例というのをあらかじめ定めることも困難な場合がございますが、必要な限度において、特に必要がある場合に限りという規定を設けさせていただいたわけでございまして、まさに法の趣旨に沿ってこれを適切に運用していきたいというふうに考えております。

吉井委員 どういう規定を設けたという話に先立って、私が大臣に伺ったのは、この規定で弊害防止ができるのかという問題を伺っているんです。

柳澤国務大臣 弾があちらからこちらから飛んできて大変なんでございますけれども、これはどうしてそういうことになるかというと、結局、自由化ということと健全性の確保ということとのバランスを一体どこでとるかという問題なわけでございます。

 ですから、吉井委員のような方からいえば、健全性が最も大事で自由化なんてそんなことはもう考えることはないんだといえば、これはどんどんきつ目にして、五%認可制にしたらどうかというような御議論になるんだろうと思うんですよね。だけれども、今度は自由化をして異業種からの参入を健全性を損なわないところで実現していこうということからすれば、そんな余分なくちばしを入れるようなことで、せっかく銀行業に参入しようという人たちの意欲をそいでしまうのは一体どういうわけだ、こういう議論になるわけでございまして、したがって、この健全性と参入の自由化というもののバランスを一体どこでとるかということに尽きるわけです。

 それで、我々が二〇%という基準を置いたのは、これは企業会計基準の中で実質支配基準というのがありまして、それが原則は二〇%、人的な関係や何かでさらに実質支配の力をもっと認められる場合には一五%、これをそのままこの法案の中に取り込んできたということでございまして、日本の法制としてはこういうことでバランスがとれているということを言わせていただいてよろしいんではないかと私は考えております。

吉井委員 バランスの上でこういう法律にしたということなんですが、私が聞いているのは弊害防止はできるのかということですから、それで弊害を防止できるなら自信を持ってできるとお答えをいただいたらいいところなんです。

 五三年に発足した国民相互銀行ですね、八九年に普通銀行、国民銀行に転換したわけですが、七七年から故小佐野賢治氏の国際興業グループの中に入っておりますが、この国際興業グループが株式の八割を保有していたんですね。九八年十二月末時点の預金が五千百五十六億円だったんですが、その少し前の九八年九月末で約五百億円の債務超過になっており、九九年春に当時の金融再生委員会が破綻処理に入っていった。

 国際興業の機関銀行としてバブル期に不動産融資に走り、多額の不良債権を抱え機関銀行化の弊害を防止できなかったという問題があったと思うんですが、どういう問題であったのか、まず報告をいただきたいと思います。

原口政府参考人 お答えいたします。

 国民銀行につきましては、一連の財務内容等にかかる報道により預金引き出しが急増し、資金繰りが悪化した結果、平成十一年四月に破綻申し入れをしたものと承知しております。

 なお、同行の場合、今のこの法律で言う主要株主に該当する大株主グループがございましたが、同行は同グループに対する過度の信用供与によって破綻したというものではないというふうに承知しております。

吉井委員 報道もあり、紹介されておりますからそれはよく御存じの上での今お話だと思うのですが、この故小佐野賢治氏の紹介などでカミパレスグループの福一産業に融資を始めていったりなどして、このグループへの直接融資九十五億円、迂回融資百三十億円、これらが回収不能になっていったということなどは、国際興業グループの関係者の力のある人たちの影響のもとにそういう問題を随分重ねていっているわけですから、それはオーナーの意向によって、オーナーのかかわりのあるところへというのは、実質的にはこれは機関銀行化の弊害の問題と同じ問題を持っているわけですよね。だから、私は、それは直接国際興業への融資がどうだったかこうだったというだけにとどまらないで、そのことをきちんと把握しなきゃいけないというふうに思うわけです。

 ですから、機関銀行ないしは機関銀行に類する状況に陥っていくこの弊害というものが実際発生して、そして国際興業グループが株式の八割を保有していた国民銀行の破綻ということになったわけですが、やはりこういうところからの教訓というものは、「特に必要があると認めるとき」「必要の限度において」報告徴求や立入検査はできるというぐらいでは、やはり弊害防止ができないという、明確な運用基準なしには実効性というものは甚だ疑わしくなってくる。だから、透明性を確保するためにも、明確な運用基準というものをきちんと示していくことが必要だと思うのですが、まずそれを示されたいと思います。

原口政府参考人 御指摘のように、主要株主に対する報告、検査、そういうものをどういうふうに運用していくかということについては、できる限りその方向を明示するということは必要だと思います。

 例えば、金融審の答申におきましても、株主が子会社等に対して不当な影響力行使を行うことなどにより、子銀行等の経営の健全性が損なわれるおそれがある場合等というのが例示をされておりますが、一方で、先ほど大臣からもお答えしましたように、過度の規制というものがまたこの法律の趣旨あるいは目的とするところを阻害してはいけないという御指摘もありまして、やはりそういうものは必要に応じて限定的に運用すべきであろうという考えも示されているところであります。

 また、こういう過度の与信集中ということが信用リスク上大きな問題を生ずるということは、これまでも大口信用供与等の規制あるいはモニタリング等を通じて監督上注視しているところでございますけれども、今回、法改正で主要株主という概念が導入されたことに関連いたしまして、主要株主に対する大口信用供与等の規制についても、御指摘のような機関銀行化防止といった観点から、これについては政令を改正して、さらに厳格化を図るという方向で検討を進めているところでございます。

吉井委員 その問題は次に聞きますけれども。

 しかし、明確な運用基準を要するに示すということを私は聞いたら、それはしないんですよね。金融審の報告では、これは必要なときに特別報告を求めるだけでなくて、定期的報告を求めることも必要だと指摘していますね。法案ではこれは織り込まれていないのですね。

原口政府参考人 法律上は「報告」という言葉で規定をしておりますが、その中には、金融審で指摘をされております定期的な報告という概念も読み込んだ上での規定というふうに承知をしております。

吉井委員 読み込んだというのは、あなたは読み込んでおっても、法律を読んだ人間は読み込んであることが読み込めないのだから、そういうむちゃを言ってはだめなわけで、やはり法案のどこにどう明示するか、だからそこを法律というものはきちっと示すことが必要なので、それでは国会に出してくる前提がそもそも整っていないじゃないかということを私は言わなきゃいけないと思うのです。

 今おっしゃりかけたから、大口融資規制の問題ですが、機関銀行化などの弊害を防止するためには、主要株主と子銀行との取引に対して実効性のある規制が不可欠だというふうに思います。

 改正案では、機関銀行化を防止する手段として、現行規定にある大口信用供与等規制と、アームズ・レングス・ルールを適用するということにとどめて、新たな規制の網をかけようとはしていません。

 子銀行と親会社との関係というのは、通常の貸し手、借り手の関係とは本質的に異なるわけですね。子の親に対する貸し出しというのは、一般の貸出先に対する信用供与以上に安易に行われるというおそれがあります。例えば親の方の意向であっちにちょっと融資したれやと言われたら、さっき国民銀行で紹介したような問題を起こしたり、いろいろあるわけです。ですから、その場合、銀行経営に与えるリスクはより高くなってくる、だから、一般の貸し出しに対するより当然強い規制が必要だと思うんですよ。特に、親会社の経営が悪化した場合に、子銀行の親会社に対する貸し出しに対して強い制限を加えなければならないと思うんですね。

 この観点から、金融審報告でも、主要株主に対する信用供与等について適正な量的規制を設定するなどの追加的措置について検討することが適当であるとしていますね。どのように具体化していますか。

原口政府参考人 御指摘のように、金融審の報告におきましても、銀行に対して主要株主が不当な影響力を行使することのないよう、いわゆるアームズ・レングス・ルールを基本としながら、さらに加えて、現在あります大口信用供与等の規制についても、主要株主については、適正な量的規制を設けるなどの追加的な措置について検討するよう求められているところでございまして、我々も今現在この政令を改正する方向で検討を進めているところでございますが、具体的に今、一般の与信、授信サイドの制限として、単体の場合の二五%、グループの場合の四〇%、この数字をどうするかということについては、なお引き続きちょっと検討の時間をいただきたいというふうに思っております。

吉井委員 私は、現行法以上のものかどうかということで自己資本の何パーセントぐらいかをお聞きしようと思ったら、聞く前に、その数字は今検討中で待ってくれという話なんですが、本当に実効性のあるものにするにはどのように具体化するか、その数字の面からもどうきちっとしたものにしていくかということを、本当はやはり国会審議のときには示すということが必要だと思うんですよ。何かふわあっとしたもので、とにかく議論してくださいよ、それはちょっとないんじゃないかと私は思いますね。

 ヨーロッパでは、親子間取引に対しても大口融資規制を適用する。その規制は我が国より厳しいのですが、アメリカでは、関連会社向け融資に特別の限度額規制を設けていますし、また各国とも、アームズ・レングス規制の適用だけでなくて、親会社の経営悪化時には、親会社向け融資制限の規定、子会社のリングフェンスを置いているわけですね。ですから、やはりこの子会社のリングフェンスというものなどについてきちんと日本でも明示をしていくべきではありませんか。

原口政府参考人 繰り返しになりますが、この措置、異業種の参入に対してどういう規制を設けるかという検討に際しましては、やはりその参入を促進していく観点と、それに伴う弊害をどう防止していくかという観点から、さまざまな議論が金融審等を中心に行われたわけでございますが、一つの今のお答えとしては、五〇%を超える、いわば単独で支配をするという主要株主については、別途いろいろな改善措置を求める等の規定を設けて、これによって、いろいろな弊害をまた別の観点から防止をするという措置も設けているということで御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 ヨーロッパの方でやっているぐらいのことをやはりきちんと示していくということが必要だというふうに思います。

 逆に、銀行経営が悪化した場合に、主要株主は子会社たる銀行を支援するのが当然だというふうに思うんですが、しかし、改正案の方では、主要株主一般に子会社支援を義務づけるのではなくて、今もありました五〇%以上保有の主要株主に限り、特に必要があると認めるときには、その必要の限度において、その銀行の経営健全化に関する改善計画の提出を求めることができるという規定にとどまっていますね。

 これは、銀行経営が悪化した、こういうものに対して主要株主がきちんと支援するということについて、この規定が改善計画の提出だけということですからほとんど何もないに等しいんですが、これはなぜですか。

原口政府参考人 法律でもって強く義務づけといいますか求めることとする対象は五〇%、これは単独で実質的な支配を持っているということを勘案したものでございますが、一方、五〇%以下の株主につきましては、これは単独で銀行の支配力を有していることではないという観点、あるいは、参入の意欲といいますか、そういうものを過度に阻害してはならないというような観点で法律上の規定は設けてございませんが、銀行の業務の健全かつ適正な運用を確保する観点から、例えば当局が経営の改善計画の提出を求めたような場合に、主要株主が主体的に銀行の資本増強を含む計画を策定するというような事態は十分想定し得るというふうに考えております。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

吉井委員 金融審報告でも、五〇%以下の株主に対してであっても、子銀行の経営悪化の場合に何らかの協力を求めるとしていたのではありませんか。だから、やはり何らかの協力を求めるということに依拠した、法律上こういうことをというのを、これを入れて全然おかしくないと思うんですが、ここはどうなんですか。

原口政府参考人 具体的なケースによると思いますけれども、法律で義務づけをする、どういう場合であってもそういうことに応じなければならないというケースというのは、やはり五〇%以上ということで限定をする方が適当だというふうな判断をしたところでございます。

 あとは、個々の主要株主が、これはそれなりの影響力を有しているわけでございますので、個々の経営の状況とかその状態に応じて相応の協力を行っていくというケースは十分考えられるというふうに思っております。

吉井委員 私は、法律規定なしにはなかなか子銀行支援ということになっていかないと思いますよ。外国においても、例えばイギリス、フランスなどは、コンフォートレターという手法で、一定の株主に対してあらかじめ支援の意思の確認を求めているということを考えると、改正案は、この点でもやはり極めて問題は多いと思います。

 これでは、厳しい審査を受けることなく参入してきた事業会社が子会社を利用するだけ利用して銀行経営を悪化させても、親事業会社の経営責任は追及されないということになってくるし、安易に預保に預かり、お任せということにして親会社は責任を放棄する。やはりそういう問題が起こらないように、それを防ぐ措置というものは、これはさっき大臣は、自由化の流れと、もう一つ、そういう危険性の問題ですね、何かバランスをとってみたいなお話ですが、現実にこの間のさまざまな問題を考えたとき、やはりそういう問題を防ぐ措置というものはきちっと法律上もつくっておくということは、それはやるべきであるというふうに私は思います。

 次に、不良債権の処理にかかわって伺っておきたいと思うんです。

 これはマスコミでも紹介されましたが、日新舗道建設株式会社というのが、メーンバンクであり経理担当の取締役で事業副本部長という位の役員まで派遣していた富士銀行から一億円の融資を拒否されて、計画的倒産に追い込まれるという事態が発生しました。

 富士銀行が、日新舗道に役員まで送りながら、その企業の経営に責任を持たないで、自己の債権の回収だけを考えて企業を倒産させ、本来、企業に入るべき工事代金をその企業に振り込ませないように富士銀行出身の経理担当役員が日新舗道の実印を悪用して、通知文書をつくってこっそり官公庁など取引先に送りつけて自分の方の銀行に振り込ませる。そういうことを実行したりとか、そして、結果として、それは企業が取引先から信用を失墜させられるという行為であったと思います。

 大臣、こうした不良債権処理の名による、この今現場で起こっている実態というものを把握していらっしゃるかどうか、私はこれを最初に伺いたいと思います。

村田副大臣 今、具体的にお話がございましたけれども、金融機関につきましては、各債務者の財務状況等を総合的に判断をいたしまして、ケース・バイ・ケースの融資対応をしているものと考えられまして、個々の融資対応については、基本的には各金融機関の自主的な経営判断によって行われているものと考えております。

吉井委員 日新舗道建設と富士銀行の関係というもの、マスコミにも出ましたから、私もいろいろマスコミに出た分、その他調べてみました。

 例えば三年前の九八年十二月、日新舗道が運転資金確保のために、役員を送り込んできているメーンバンクの富士銀行に融資の申し入れをすると、富士銀行側は、日新舗道の第三債務者に対して持っている約六十億円の請負工事代金債権の債権譲渡をやりなさい、その旨を登記することでそれを融資の担保にしましょうと。実際、債権譲渡と登記が行われる。つまり、担保契約はでき上がって、それが登記されて、それで九八年、九九年、二〇〇〇年と、運転資金のことですから短期間に借りては返すという形ですね、そういう運転資金融資は継続的に実行されてきているんですね。

 この登記を担保とする融資の借入残高はことしゼロになっていたわけですが、富士銀行の方は、ゼロになったからといって上記債権譲渡登記の抹消手続というのはやっていなかったわけです。だから、登記上はちゃんと抹消されていませんから、債権譲渡、そしてそれは担保契約を結んだ分、ちゃんと残っているわけですね。それをことし七月に、この会社が上記登記されている債権譲渡を担保とする、担保が入っているわけですから、一億円の運転資金の融資を依頼したわけですが、拒否されてしまった。

 そうすると、この分を担保として登記されているのを抜いてもらって、別の銀行で同様の契約を結んで担保設定すれば別の銀行からも借りられるんですが、その抹消手続には応じない。つまり、登記はされたまま。だから、実際には工事したら当然金が入ってくるわけですが、その代金等は富士銀行に押さえられたまま。だから、それを担保にしてほかから借りるということはできない、そういう状況に追い込まれたわけですよね。

 実は、私もいろいろ伺ったりしていたのですが、営業利益はきちんとこの会社は出していて、バブル期の借金も、働いている皆さんの賃金カットなどの努力で支払ってきていて、そして倒産しなくてもよい、そういう会社だったのですが、銀行の方の都合で、債権回収のために結局倒産に追い込まれている。大体、百件以上の工事のうち半数は官公庁の工事で、常に手持ち工事が百億円分ぐらい動いていた会社ですから、この不況の中で見れば、私も建設業界にそんな詳しいわけじゃありませんが、大体、手持ち工事が百億ぐらい動いておればそこそこ健全に動いている企業なんですが、結局、富士銀行の方から、わずか一億の運転資金の融資であっても拒否されて、これで民事再生法の手続に追い込まれていく、こういう事態に遭ったわけです。

 大臣、私、これは昨日事前に、こういう問題をお聞きしますからということで事務方の方に申し上げておきましたが、大体これぐらいの経過というものは承知していらっしゃるでしょうか。

村田副大臣 先ほど御答弁申し上げましたけれども、民間金融機関の個々の融資対応につきましては、基本的には各金融機関の自主的な経営判断に基づくということでありまして、そのようにお答えをさせていただきました。

 しかしながら、法令や債務者との契約に違反して回収を行う等の悪質なケースを除けば、監督当局が介入して融資の打ち切りとか一括返済の強要など一定の行為を行えないように指導することは難しいことを御了解いただきたいというふうに思います。

吉井委員 ことし一月以来、柳澤大臣は不良債権の早期処理、最終処理ということでずっと言ってこられたのですが、富士銀行のこうした、自己の債権の回収だけに走って、いわば偽計的な手法を用いて、中堅企業を倒産に追い込んでいったり下請が連鎖倒産に追い込まれるというふうな、こういうやり方というものを、当たり前のことだ、これは仕方がないことだと見るのか。それとも、幾ら不良債権処理だといっても、銀行がモラルを持って社会的責任を果たしていくというのは当然の前提として、その中での取り組みだというふうに考えていくかということは、これは当局としての基本的な哲学といいますか、物の考え方として非常に大事なところだと私は思うんです。

 柳澤大臣の、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 我々、不良債権のオフバランス化ということを一つの施策として打ち出させていただいておりまして、金融機関はその方向での努力をしているわけですけれども、これはもう今の個別の事案と関係なく、一般論としてしか申し上げられませんけれども、やはり偽計を用いてとかモラルに反したことをやるということは適切でない。もちろん、適切な、また経済的に合理的な行動を通じて我々の施策の目的を達成してもらいたいというのが当局としての考え方でございます。

 ただ、もう一つ、あえて敷衍して申しますと、仮に見込みがないというような企業がある場合には、これをある意味で温情だけで生き延びさせろというのは、これはちょっと、今の金融機関自体の健全性が云々されている時期には、そこまでのことを金融機関に求めるというのは少し過大な要求ではないか、こういうように言わざるを得ないと思います。

吉井委員 ですから、大臣、最後におっしゃったところなんですが、営業利益をきちんと出していて、常々、大体、これは建設省の方のランキングでもそこそこの企業でもあって、常時百億ぐらいの仕事を転がしているところです。ですから、大臣のおっしゃった、全然、ほとんどつぶれている、見込みないというところの話じゃないわけなんです。それどころか、きちんとやっていたところなんです。

 この日新舗道建設の社員約四百名ぐらいの方と取引業者千二百社、債権額百億円ぐらいになりますが、そこに働く人々の労働債権とか下請会社の債権も無視して、とにかく、工事代金が日新舗道に入るときには、先に官公庁に言って、富士銀行の方に入れなさいというふうに策を弄して、これは後でいろいろ問題になりましたけれども、自分のところの債権回収だけ走る。では、役員を送り込んだ、企業の役員として入った人は、出身はどうであれ、その企業に入ったら企業人としての本来責任があるんですよね。それを果たさずに、偽計的なことをやったり。

 私は、こういうことで、幾ら不良債権処理といっても、大銀行の債権回収だけが最優先されて、下請の連鎖倒産はどうなろうが、失業が拡大しようが、こんなことをやっておったら社会や経済の崩壊や破綻につながってしまいますから、こういうことについては大臣が、不良債権処理と言っているときに、何をやってもいいということじゃないんだ、きちっとしたモラルと社会的責任を果たさなきゃだめなんだということをやはり私もう一遍、これはもう声を大にしてでも言ってもらわないといかぬと思うんですが、大臣、どうですか。

柳澤国務大臣 前段申し上げたことに尽きると思います。

吉井委員 私は、今度の日新舗道建設と富士銀行の問題などについても、個別具体の案件について、これをどう対応するかというのは、私も裁判官でも何でもありませんから、銀行には銀行の言い分があるなら、私もちゃんと聞く耳は持っております。

 ただ、いずれにしても、ですから、大臣も関心を持っていただいて、大銀行に、社会的役割や責任を自覚して、労働者であるとか下請企業も含めて、激痛を与えるような身勝手をやっちゃなりませんよ、身勝手な部分があれば、その是正はきちんと図る、こういうことを大臣としてやっていただきたい、このことを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。

 実は今、御承知のように、IT分野がかなり深刻な不況、しかも、効率性のいい産業分野がどんどん海外へ移転していくということで、これは、日本経済が回復しても、開発輸入で入ってきたんじゃ日本の国内生産の回復につながらないという問題とか、それから、これはまた、世界的に景気回復となっても、日本の企業の海外工場からの輸出は伸びても国内の生産回復にはつながらない問題とか、さまざまな問題を今抱えているわけですよね。

 私もこの間ずっとそういう調査をしてまいりましたが、ごく最近も、大阪やあるいは山形などで、IT、電機の大手の企業をお訪ねしたり、あるいはその下請の方たちとお会いして状況を伺ったりしてまいりましたが、例えば、NECや富士通などの比較的大きな下請事業者の方でこういう訴えがありました。

 そこそこきちんと事業をやっていらっしゃる、いわば、これまでは本当に、地域の中堅どころ、山形県でいいますと中堅どころというところだったんですが、特別保証枠で金を借りたんだが、不況が深刻になったので今までのペースで返すのはなかなか大変になってきておる、それで、銀行と返済猶予あるいは月々の返済額の軽減など条件変更を話し合って実現すると、そうすると、金融監督庁の方の金融マニュアルによって不良債権に分類されるということになってきて、新規融資が受けられないだけでなく、債権回収でどんどん言われて困っているんだと。

 本来は、保証協会の保証つき融資なんですから、銀行は最悪の場合でもきちんと全額代位弁済を受けることになりますし、困らないですね。それを、大臣の担当の省のところからの指導で、銀行が不良債権に分類して運転資金も融通しなくなって、もうこのままでは倒産に追い込まれていってしまう、実際、仲間内には倒産したところも出ているということで、大変切実な訴えもありました。

 私は、検査マニュアルをつくって、そして検査したり指導したりされるにしても、ここまでいくと、日本経済や地域経済の上からも是正すべきところもやはりあるわけで、経営者がなまくらで、何か、ばくちか何か別なものに使っているから、そんなものをつぶす、それは論外として、やはり、そういうところを倒産に追い込んだときに、一体日本経済をこれからどう回復させていくのかというときに、これは本当に激痛となってしまうと大変な問題を残します。

 そういう点では、こういう融資の問題については、実際に現場から出ているのは返済猶予と月々の返済額の軽減など、直接にはそれぞれの金融機関との話し合いにしても、それをやったら条件変更だからということでばちんとやるという、また、それをやりなさいと言われると、金融機関は金融機関でやらざるを得ないということもあって、そこはやはり是正すべきところは是正していく、こういうことが必要だと思うんですが、大臣、これはどうですか。

柳澤国務大臣 今のお話、特別保証融資の返済期限の延長等があった場合の取り扱いの問題でございますけれども、これにつきましては、今度の改革先行プログラムにおきましても特に触れさせていただいた点でございます。

 この特別保証の方が返済期限の延長ということを是認したという前提のもとでの返済条件の変更については、一律債務者区分を変えるということはしないような取り扱いにするということでございまして、こういうことを徹底させていくことによって、今委員の御指摘のような事態は避けたい、こういうように考えております。

 もちろん、ノー文句でもって自動的に、画一的にそういうことにするというわけにはちょっといかないわけで、当然チェックはさせていただきますが、基本的に、そういう条件変更をした場合に、条件変更だから、これは通常は条件緩和債権ということで要管理債権に区分されるわけですが、そういう区分を行わないということで方針を打ち出したところでございます。

 ただ、委員がおっしゃられた、それで運転資金がとまるというのはちょっとオーバーでして、要管理債権になったから追い貸しができない、特に運転資金の供与ができないということ、これは制度的にもないというのが普通で、融資判断の問題は別として、制度的にそういうふうになっているというわけではないだろう、このように思います。

吉井委員 要するに、債務者区分の変更その他について、現場の方に徹底をしていただきたいというふうに思います。実際に、現場で、もう本当に三十年、四十年とやってこられた経営者の方が、そういうみずから今直面している問題を訴えておられることでもありますので、それはぜひ徹底をしていただきたいというふうに思います。

 それから、次に、ビッグバン政策のもとで営利本位の銀行の支店政策がとられてきて、徹底した効率化が進められてきているわけですが、この五年間で都市銀行の支店、出張所がどうなってきたのかというのを昨日もデータをいただきまして見せていただきますと、九六年三月の三千七百三十二店が、ことし三月で二千九百二十八店へと、五年間で八百四店舗の減、二一・五%の減少なんですね。つまり、認可制の現在でさえ二割減っている。極端な場合には、地域に銀行がなくなったり地域サービスの低下が起こっているということでの苦情も出ています。

 私、地域金融機関の重要な役割というのは、これはだれも否定できないと思うのですよ。地域を金融機関の営業マンの方が回って、それで中小企業経営者の方の技術能力を見たり、機械設備の状況を見たり、開発意欲とか誠実さとかそういうのを把握して、物的担保がなくても経営者を見て総合的に判断して融資してきたという、ここが地域金融機関の果たしてきた大きな役割でもありますし、大手銀行になりますと、信金、信組のようにきめ細かくといかなくても、出張所、営業店がそこに営業マンを抱えてやってきたわけですよね。逆に言えば、そこがまた、それがあるから目ききの力を持っておったわけです。

 ところが、支店設置の認可制によって、これまで銀行監督当局にとってもこれは監督上重要な手段でもあったと思うのです。つまり、それ自身が地域経済の貢献を果たさせる手段であると同時に、支店設置や移動の機会をとらえて認可の条件として地域経済の貢献度を問い、改善させていくこともできるという一面がありました。アメリカの地域再投資法は、まさにこうした手法を利用して銀行に地域への貢献を果たさせようとしていると思うのですが、認可制の廃止ということになりますと、地域金融機関の役割重視ということから逆行するのではないかと思いますが、この点について伺いたいと思います。

村田副大臣 営業所、出張所の改廃について措置しろ、こういう御指摘だったというふうに思いますが、たびたび私のお答えは、銀行、金融機関の自主的判断によるものであるというお答えで大変恐縮でございますが、これまた、金融機関において、どこの地域にどういうサービスを提供して、どういう営業所、出張所を置いたらいいかというのは、やはり金融機関の自主的な経営判断であろうか、こういうふうに思います。

 ただ、地域における金融サービスに対するニーズは本当に大事なことでございますから、金融機関においても、そうした地域のニーズにどうこたえていくのか、それにその出張所とか営業所が必要であるかということは真剣に考えていっていただけるだろうと考えておるわけであります。

吉井委員 金融機関がグローバルに金融投機などの世界で効率よく稼ぐか、それとも、金融機関のこれまでからの公共性ですね、地域の血液として地域経済や産業を支え発展させるという点でどういう役割を果たすかという、私はこの根幹にもかかわってくる問題だと思っているのです。ですから、今の村田さんのお話のように、割り切って済ますということではやはりうまくないわけで、地域金融機関の役割をどれほど金融機関そのものが自覚して臨んでいくかということについては、そこはきちんと言うべきことを言って臨んでもらわなければいかぬというふうに私は思います。

 次に、直接金融と社債発行にかかわる問題について質問したいと思います。

 今回の問題になりましたマイカル債のデフォルトは、我が国企業の発行する公募債では過去最大規模の債務不履行、そして第二に、大半は機関投資家向けの販売なんですが、個人向け普通社債及びFA債のデフォルトということで、この個人向けの普通社債、FA債のデフォルトという点では、これは本邦初めてのことではないかと思うのですが、最初にこのことを伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 マイカルが民事再生手続を開始いたしましたけれども、このマイカルにつきましては、本年九月十八日現在で社債発行残高は三千二百億円、うち、社債管理会社を定めて個人投資家向けに販売された社債は九百億円というふうに聞いております。

吉井委員 個人向けの社債のデフォルトは、本邦初めてですね。

柳澤国務大臣 そのように認識しています。

吉井委員 それで、これは健全な証券市場の育成という点では重大な影響をもたらす問題だと思うのですが、マイカルの九百億の個人向け普通社債は、過去の公募債の破綻例から見て、このままいくと元利金の大半は返済されないという公算が非常に大きいと思うのですね。幾ら政府が個人投資家を中心とした証券市場の活性化、間接金融から直接金融へと言っても、要するに、情報を知らされず、証券会社の販売戦略に乗って社債を買わされて、企業の破綻でその社債が紙くずになったときに、そこで自己責任原則の世界だよと言われても、これだけでは国民はだまされたと同じことになるわけですから、何らかの措置をしない限り、個人投資家というのはますます証券市場、直接金融から離れていくことになるのではないかと思うのですね。この点、大臣、どうですか。

柳澤国務大臣 非常に遺憾な事態だということは言うまでもないと思うのですけれども、それがためにやはりルールが定められておりまして、特にこの件ということでなく一般論で申しますと、証券取引法によりまして目論見書、つまりプロスペクタスの交付が義務づけられておりまして、投資者に対して適切な説明が行われているということが必要になるというのでございます。

 したがって、本件に戻りますが、こういったことのルールに反した行為があったとは承知をいたしておりません。

 個人投資家の市場参加というものが強く期待されている中でこういう事案が生じたということは私としても大変遺憾でございますけれども、私も実は、大昔ですけれども、ボンドイシューというのをやったことがありますけれども、プロスペクタスは、ですからもう一語一句、弁護士さんと銀行当局、それからイシュアーの間で詰めていくということで、その状況の真剣さというか、そういうものを私自身、その当時、本当に感心させられたわけです。だから、そういうことを中心としてやるのですよということが定着していくことを強く期待したい、こう思っています。

吉井委員 社債を買われる方が柳澤大臣のように非常に専門的知識も豊富の、そういう方であれば余り心配ないことなのかもしれないと思うのですが、先日、我が党に、マイカル社債問題について証券会社の心ある方からメールが寄せられまして、「マイカルの倒産により、初めて、個人の社債購入者が犠牲になりそうです。大手証券会社のノルマ営業の犠牲になり、知識の乏しい年金生活者等の方が犠牲になるんです。何らかの救済をしていただくようお願いいたします。社債の購入者は、株の投資家とはタイプが違い、安全志向の人が多いんです。証券マンや証券レディの方にノルマが達成できないと泣きつかれ、元本保証ならということで、購入した心の優しい高齢者のことを思うと、気の毒でなりません」と。

 実際、購入される方、いろいろな方がおられますから、全部がそれは知識の乏しい年金生活者ばかりだとか、私、そういうことを決めつけて言っているわけではありませんけれども、しかし、証券マンで、本当に心痛めておられるのですよ。

 そういう点では、格付会社の方になりますと、これは民間のことですし、国の方にその評価について責任を求める法的根拠はないかもしれませんが、ただ、その評価に基づいて販売活動を展開した証券会社については指導監督する立場にあるわけですし、引受会社として、流通市場で既発債の利回りが上昇していた段階で個人投資家に大量の新発債を売った証券会社の営業姿勢というのは、やはり問題が問われてくるんじゃないか。

 個人向け社債の引受会社である例えば野村証券では、できる限り引き受け審査は行ったとしているわけですが、しかし、昨年十月の発行分について言えば、既にマイカルの不安説は頻繁に報道されておりましたし、機関投資家の間では、マイカル債はトリプルBとは言えない格付で取引されていたと言われるのに、当時から現在に至るまで、トリプルBの社債が安全で利回りも比較的よいという売り文句で個人向けに大量に発行をされてきた。ですから、第二、第三のマイカル社債のような問題が出てくることが懸念される。これは、こういう分野の関係した業界誌その他も心配もすれば指摘もしております。

 やはりこういう点では、この引受会社の営業姿勢というものは問題なかったというふうにお考えなのか、それとも、問題は問題として、やはり考えなきゃならぬというふうに考えておられるのか、ここを伺いたいと思います。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、現時点で、我々は、本件社債の発行等につきまして法令違反の行為があったとは認識しておりません。

 しかし、いずれにせよ、我々金融庁といたしましては、法令違反行為が把握された場合には厳正に対処する、これは当然のことだと考えております。

吉井委員 法令違反になるかならないか、そういうところだけで考えていますと、実際に証券マンの方のメールを御紹介しましたけれども、本当にそういう分野の知識が必ずしも豊富でない年金生活の方とかそういう方たちの中で、心優しいから、ノルマに追われて大変ですね、おっちゃん買うてと言われて買うたら、後はもう何だ、紙くずになったと。そういう人たちの問題というのは、法令違反じゃないから知らないよということだけでは、それでいったら本当に、幾ら間接金融から直接金融の流れだとおっしゃったって、そうは簡単にいく話じゃないということを私はやはり考えておかなきゃいけないと思うんです。

 商法第二百九十七条で社債管理会社の設置が義務づけられているわけですが、投資家の資産を保全すべき社債管理会社の役割も今度問われていると思うんですね。

 今回のマイカルの場合は、第一勧銀など主要な取引銀行七行は、マイカルの社債管理会社を兼ねている。日本では、メーンバンクが投資家の権利を守る社債管理会社につくケースが一般的ですが、大株主と大口債権者を兼ねるメーンバンクというのは利益相反に陥る可能性が強いわけですし、破綻に備えて担保を確保して、破綻時にはそれを回収する銀行と、投資家のために回収原資となる資産を保全すべき社債管理会社の利害というのは、もう真っ向から反するわけですよ。そのために、個人向け普通社債の調達金の一部が銀行への借入金の返済に回っていったということが今度も指摘されておりますが、プロと個人の情報格差を利用して、プロが融資を回収して個人にツケ回した形だという指摘もあります。

 ですから、私は、こういうふうな問題については、やはり社債管理会社のあり方ということについてもきちんと検討を深めていく必要があると思いますし、社債管理会社の責任を規定した商法第三百十一条の二の第二項を逃れるために、マイカルの子会社を使った損害賠償責任逃れの担保回収なんかも指摘されておりますから、私は、これは、検討もすれば、こういう子会社を使っての担保回収の問題などをきちっと調査される必要があると思うんですが、調査はされますか。

柳澤国務大臣 先生御指摘のとおり、商法二百九十七条の三で、社債管理会社には公平誠実義務が課せられておりまして、また、一定の行為、例えば繰り上げ弁済等については、三百十一条の二でもって損害賠償責任を負うという規定がなされております。

 我々が今認識している限りで申しますと、このメーン行は、繰り上げ弁済といったような行為を行っていずに、実は社債が発行されて以降にも融資額をふやしているというふうに聞いておりまして、今先生の御指摘のような状況があるとは認識しておりません。御指摘を承っておきます。

吉井委員 まず私は調査を求めましたので、調査は調査できちっとやってもらいたいと思います。

 マイカル債のデフォルトは、社債市場のさまざまな欠陥を浮き彫りにしたと思うんですよ。発行企業、投資家、証券会社、銀行などの市場関係者に社債市場の仕組みの点検が迫られているときだと思いますし、法律、ルールの不備や倫理の欠如というものも物語っておりますので、私は、政府として本格的な検討を開始すべきだと。そして、言われているような子会社を使ってというのは、その調査自身、きのうこういうことを聞きますと言うて、ぱっと調べましてすぐわかりました、そんな簡単な話じゃないですからね。それはきちっとやはり調査をしてもらう必要があると思います。

 そして、社債投資家の権利は全く顧みられていないというのが今の実態なんです。破綻企業は、一般債権者に対し説明の義務を負うわけですね。社債権者への義務はないんですよ。社債権者は情報遮断状態にあって、弁済率を予測する情報もなく、不利な条件に置かれているというのは現実の姿ですから、社債投資家の権利救済をどうするのか。この点について、今お考えになっていらっしゃることがあったら聞かせていただきたいし、今後それを含めて深く研究、検討をされるなら、それで結構です。最後にそれを伺って、終わりにしたいと思います。

柳澤国務大臣 今回のことに契機をとらえまして、社債、特に個人投資家向けの社債市場について、どのような問題があるのかということは検討しなければならない課題だ、このように認識しています。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。

山口委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 法案にかかわって、何点かお伺いいたしたいと思います。

 今回の改正自体につきましては、私どもといたしましても、時宜にかなっているものであるということで、そういうスタンスで、恐らくこの後の採決もそういう立場で臨むことになろうかと思います。

 当然、異業種の銀行業への新規参入というのは時代の流れでございますから、特に異業種の新規参入が、金融産業全体としての活性化、特に顧客の利便性の向上ということで、やはり歓迎したいというふうには思います。ただし、ではその新規参入を受け入れる体制がどれだけ整備されているのかという点については幾ばくか不安がないわけでもないということで、幾つかお伺いしたいわけです。

 例えば、それは先ほど来議論もあったかと思いますけれども、いわゆる機関銀行化への対応、独立性の確保であるとか監督権の付与にかかわる問題等々あるだろうと思いますし、また、いわゆる無店舗経営であるとか非対面での取引形態というものが出てくるわけですので、顧客の個人情報の保護という観点、その点についても配慮が必要になってくるのではないか、そういうふうに思います。

 当然、喫緊の課題でございますから、今回、そういう意味での銀行法の改正が必要なわけですけれども、それと同時に、昨年八月の、いわゆる新規参入に係る運用上の指針等々ももう一度見直していく必要があると思いますし、そういう意味で、こうした、今後、改正されて以降の法の運用状況を見ながら、抜本的な銀行法の見直しということも展望していかなければならないのじゃないかな、そういう問題意識もささやかに持ちながら、お伺いをしていきたいと思います。

 まず、大きな一点目といたしまして、いわゆる機関銀行化の防止とリスクの遮断ということでお伺いしたいわけです。

 当然、この点は重要な課題でありますが、事業会社に銀行の所有を認めるときに最大限配慮すべきは、少なくとも子銀行が親会社、事業会社、関連会社の機関銀行と化してはならぬ、また、それらの利益の、その財布に利用されることがないようにということで、経営の独立性というものがどれだけ保障されているのか、確保されているのかということだろうと思います。

 ただ、この点について、昨年八月の「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応」ということで、これが運用上の指針と呼ばれるものですけれども、確かにここの中で「子銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点」という項目が設けられておるわけですが、何せ「留意すべき事項」ということになっておりまして、少々具体性に欠ける点があるのではないかと思うわけですが、まずその点からお伺いしたいと思います。

村田副大臣 今、委員の方から、運用上の指針、ガイドラインに、銀行の独立性、子銀行の経営の独立性の確保については特に留意する必要がある、こういうことが書いてあるけれども、法律ではどういうふうに担保されているのかという質問だと私は理解をしておりますが、その運用のガイドライン、十二年の八月にできたわけでございますが、当時、ジャパンネット銀行が参入する、そういう事態のもとに、まずこの指針がつくられまして、その後、金融審議会の第一部会でもこうした問題についての意見が出され、そうした二つの手続といいますかステップを踏んで、今度の銀行法の改正になっているわけでございます。

 当然、機関銀行化を避けなければいけない、すなわち、銀行経営の独立性が他業種、異業種の主要株主の事業経営から影響されることがあってはならないということでありますが、法律上は、七条に取締役の兼任規定というのがございまして、当然、新たな銀行、あるいは既存の銀行を含めまして、その事業会社、親会社からの影響を受けないということを審査の対象とする、こういうことであります。

 一方において、先ほどからのお答えにありますように、これを具体的に定めるとなりますと、さまざまな業界との結びつきがある参入でございますので、それをがちがちに縛るということはなかなか難しいところがあろうか、こういうふうに思います。

 いずれにしましても、公共的性格を持ちます銀行の健全性が損なわれないように、ガイドラインの適切な運用に尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。

植田委員 もちろん、子銀行の役員が事業会社等の役職員を兼任することについては、この七条の規定は当然厳格に運用されるということだろうと思いますが、ただ、親事業会社が子銀行を実質的に支配するケースというのは、必ずしも兼職だけではなくて、例えばもとの役職員を派遣するであるとか事業親会社等の多数の職員が実際出向するということは、容易に推察できるわけです。

 そういう意味で、例えば役職員の一定比率が事業親会社などの関係者以外の者とするとかそういう、今がちがちに縛るといかがかというような趣旨の御答弁もありましたけれども、やはりここは具体的な事例による規定というものが必要なんじゃないのかというふうに思うわけです。

 そこがやはり、今までの七条の枠組みだけではなくて、異業種による銀行業参入ということも踏まえながら、銀行の持っている公共性というものをどう担保するのかということであれば、そうした具体的な事例によって規定するということが、必ずしもがちがちに事業の遂行を縛るということにはならないと思うわけなんですが、その点についてはいかがでしょうか。

原口政府参考人 銀行法七条の取締役の兼業規定の定めを超えて、さらに何らかの制限を設けることはできないかという御指摘かと思いますが、銀行法七条そのものが、お話にありましたように、商法の一般的な規定に基づきます、いわゆる役員の善管義務でございますとかそういういろいろな義務に加重する格好で、銀行の状況、いろいろな特殊性にかんがみて、そういう制限を設けておるわけでございます。

 また、さらに加えまして、先ほど出ました異業種参入に係る運用上の指針におきましても、銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点から、「子銀行の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか。例えば、子銀行の役員が事業親会社等の役員又は職員を兼任すること等により、子銀行の経営の独立が損なわれていないか。」といったことを免許審査において確認すべき事項としておりますので、こういう事項を適切に運用することによって、御指摘のような、実質的に独立性が損なわれていないかということはチェックをしていけるというふうに考えております。

植田委員 今、御答弁で、運用上の指針を御紹介いただきましたけれども、冒頭私が申し上げましたのは、その留意事項ですと少々具体性に欠けるのではありませんかという趣旨であったわけです。

 といいますのは、他の、例えばアメリカでの認可条件などを見ますと、例えば、子銀行の取締役や管理職の少なくとも四〇%は親会社や関連会社のオフィサーや従業員あるいは当局が独立性を欠くと判断する人物でないということを条件にしているわけです。まさにそこの部分で、ちょうど今おっしゃったところが対照されると思いますけれども、繰り返しになりますが、ここでは、「例えば、子銀行の役員が事業親会社等の役員又は職員を兼任すること等により、子銀行の経営の独立性が損なわれていないか。」ということでとどまっておったら、要するに、具体的な判断をするときに、適切に運用するといいましても不安が残るのではないかということを申し上げたわけなんです。

 その意味で、やはりまだこの運用上の指針、特に今後、それはまた後でもお伺いしますけれども、昨年八月、要するに、今回改正案が実際に通れば、それ以前の条文に沿った運用上の指針でありますから、今後、改正に伴って、これも検討を加えていただきたいわけですけれども、少なくとも留意点としているというところがやや弱いんじゃないですかということを申し上げたわけなんですが、いかがでしょうか。

村田副大臣 ガイドラインの方にもう少し具体的に書け、こういう再三の御指摘でございますけれども、私どもは、主要株主と銀行が相乗効果を持って発展していく新しいビジネスモデルが金融業に入ってくる、そういう効果も一方において期待をしているわけでありまして、銀行経営の健全性という観点と、それから新しい時代、金融の自由化の時代にどうその自由化を図っていくか、そういう二つの要請を同時に満たしたい、こういうことであります。

 銀行業への参入の仕方につきましては、多種多様なものが予想されるわけでありまして、独立性の確保ということを強く考えて、ガイドラインでもって類型化を行ってがちがちに書いていくということは避けて、個別事例ごとに銀行の経営の健全性の確保が図られているかどうかということを見ていきたい、こういうふうに考えております。

植田委員 私も、冒頭申し上げましたように、今回の改正自体は時宜にかなったものだと基本的には考えておりますということを前提に質問させていただいているわけですが、私自身としては、実際、これからさまざまな異業種参入がしやすい条件というものは当然整備されてしかるべきだろうと思いますけれども、当然ながら、今答弁者おっしゃったように、健全性との兼ね合いというものは考えなきゃならない。その健全性の部分について、いささか不安の余地これありということで質問させていただいておるわけでございまして、いや、御心配に及ばずと言われて、ああそうですかというわけにもちょっといかないわけなんです。

 というのは、本来私個人としては、実際、この機会ですから、独立性の意味というものを具体的に明確にしておく必要があるのじゃないかというふうに考えています。というのは、事業親会社と子銀行の関係というのが、それぞれの事業展開の中で、それぞれ微妙な変化はあると思うわけなんです。そういう意味で、例えばその際の利用者保護の観点や、また今まさにおっしゃった銀行の経営の健全性の確保、そういう観点からしても、事業親会社等のリスクを子銀行に及ぼす、そういう影響は遮断しておく必要があるのではなかろうかというのが私の思うところなんです。

 そうすると、まず子銀行の独立性というものを具体的に明確にしておくことが一つまずやらなきゃならないのかなと思うのです。その上で、事業親会社と子銀行との関係というものをどこまで許容するかというのは、やはり限定しておかなければいけないのじゃないかと思います。そして、実際そう限定するならば、子銀行にそれを担保させる内部管理制度等も必要になるだろうと思いますし、また、その独立性というものが継続的に確保されるという点からすれば、やはりその事実を常に監督者の方が把握できる方策を講じておくということも必要なんじゃないか。これもがちがちした話なのかもしれませんけれども、それぐらいのことは一応まず入り口としてやっていただいても、そんなにがちがちした話でもないのじゃないかなと思うのですが、いかがでございましょうか。

村田副大臣 再三の御指摘でございますけれども、参入してくる形態あるいは主要株主の状況、そういうものを個別に事例を把握いたしまして、法律の定めに従いまして、一番大事なのは銀行経営の健全性を確保するということでございますから、必要な場合には報告を徴求して監督行政を行っていきたい、こういうふうに思っているわけであります。

植田委員 ですから、独立性というものの意味合い、私はそれを明確にしてほしいと思っているわけですけれども、今答弁いただいたわけですが、では、その子銀行の独立性というものを担保するというのは具体的にどういう方策でそれが担保され得るのか、その辺は御教示いただけますでしょうか。

村田副大臣 子銀行の独立性につきましては、主要株主に対しまして報告徴求を求める、あるいは、場合によっては必要な範囲内において検査に入るということ、それから、子銀行の方につきましては、今申しましたように、報告徴求もいたしまして、経営の実態あるいは主要株主との関係等について逐次状況把握に努めていく、こういうことであります。

植田委員 主要株主との関係についてはまた後で聞きますが、その前に、特に異業種を母体として参入する銀行が従来の銀行と同様に銀行としての信用を維持していくためには、また独立性というものを確保していくためには、やはり子銀行と事業親会社等との経営が分離されていなけりゃならぬのかなと思うのです。

 これは、具体的に言うと、例えば営業所の分離であるとか営業資産の分離、従業員の分離、営業資金の分離、顧客情報の分離、そしてまた顧客情報の保護等々について、実は私はこれは結構個別具体的にきめ細かな監督等が必要だと考えるのですけれども、これらの事項の監督等々についてはどんな御見解をお持ちでしょうか。

村田副大臣 銀行経営でございますけれども、先ほど挙げましたように、いろいろな形の参入の形態があるわけでございますので、銀行経営に対します関与のあり方については、独立性の確保ということだけの観点で類型化を行うことではなくて、いろいろな要素を総合的に勘案いたしまして、個別事例ごとに銀行の経営の健全性の確保が図られているかどうかを判断していくことが適当だ、こういうふうに考えているわけであります。

植田委員 総合的に判断されるとおっしゃるのですが、今私は非常に素朴なことしか聞いていないつもりなんです。難しいことを聞いていないのです。だから、今言ったように、例えば営業所はどうするのですか、例えば営業資産はどうするのですか、その個別事例について個々どういうふうにお考えなんですかということをお伺いしただけなんであって、演繹法的に、総合的にとおっしゃるよりは、その個々の事例について、ではこれから具体的に監督をするのかしないのか、要するに個々の事例について注視するのかしないのかということも含めて、では、こういう個別事例はおいておいて、とりあえず全部ひっくるめて見ますよという今は御答弁だったということなんでしょうか。

村田副大臣 新規参入の銀行が幾つか、四つばかりありますけれども、そういう事例を見ていましても、例えば営業の形態もさまざまでありますので、個々具体的に、こういう営業所はこういうふうにしなければいけないとか、なかなかそういう指針を出すということは難しかろう。あくまでやはり個々具体的な事例をもって、そういった状況を見て判断するということにならざるを得ない、こういうふうに考えております。

植田委員 お話しされた意味はよく理解しますが、そういう話でくるんでおくと、やはりその都度その都度の裁量になってしまうのじゃないかと思うわけですが、どうなんですか。

村田副大臣 すなわち、親事業会社、例えば主要株主、その事業と銀行の新しい経営のやり方が相乗効果を持ってやっていかなきゃいけない、こういうことでありますので、余り縛っていきますと、類型化してしまいますと、新しい銀行の経営のやり方というものも類型化してしまうことにつながるんじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、あくまで個々具体的なケースによって、守るべきは銀行の健全性が確保される、こういうことをもって対処すべきだ、こういうふうに考えます。

植田委員 ここでそんなに時間をとるつもりはなかったんですけれども、何か難しい話ですね。別に、基本的なルールは必要でしょうという話をしているだけなんですよね、私が申し上げているのは。まさに、何度も今副大臣おっしゃいますけれども、子会社と事業親会社等との関係があって、そしてそこでの子銀行の銀行の独立性と、そして健全な業務が遂行され得るためにやはり基本的なルールが必要でしょう、その基準がやはりなければならないのと違うんですかという話をしているだけなんですよ。

 個々の事例に即して判断するということになれば、結局は恣意的な判断をすることになるわけで、必要最小限のルールで、今例えば個別の事例を挙げさせていただいただけであって、例えば営業所の分離や営業資産の分離やそんな話が、では、子銀行と事業親会社等との関係で必要以上に、例えば子銀行が銀行として業務を展開していく、健全に業務を遂行していく上で、こういうことについてきちっときめ細かく見ておくというのがそんなに困難なことなんでしょうか。どうなんでしょうか。

村田副大臣 繰り返しで申しわけありませんが、先ほど政府参考人からも申し上げましたけれども、運用上の指針、先ほど御披露させていただきましたけれども、子会社の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか、例えば、子銀行の役員が事業親会社等の役員または職員を兼任すること等により子会社の経営の独立性が損なわれていないかを免許審査において確認すべき事項としておりまして、こういう形でもって、これをメルクマールとして個々具体的に審査をさせていただきたい、こういうふうに考えております。

植田委員 余りしつこいようですけれども、それはよく承知しておるんですが、だから例示したように、例えば兼任四〇パーを超えたらだめですよとか、そういうガイドラインが必要じゃないかということを私は申し上げたわけです。

 そこで、私ちょっと今の話で非常に不安になったんですが、仮に独立性を明確にして経営の完全な分離というものが実現されていたとしても、確かに企業グループの中に銀行が入れば、実態としてはやはり親事業会社の経営戦略の中に規定されてしまうという局面は当然想定されると思います。そういう意味では、実質的にその中での機関銀行化になってしまうことは、やはり容易にこれも想像できると思います。

 ですから、それを極力回避する、そういう措置が必要だと思うわけですけれども、今、先ほどの主要株主の話で、その主要株主に対してチェック機能を果たすように、法案でいうと五十二条の十二で銀行の主要株主に対する立入検査というところがあるということなんだろうと思うわけですが、ただ、私自身は、先ほど来もちょっと議論もありましたけれども、では、その主要株主とは何なんですかということがやはり問われなければならないと思います。

 というのは、ありていに言うと、何で二〇パー以上なんだということに疑問が私はあるわけなんですが、まずお伺いいたしますけれども、この主要株主を原則二〇%以上の株式を所有する株主等ということで定義された、まずその理由をお伺いいたしたいと思います。

原口政府参考人 今回の主要株主に関するルール整備あるいはその定義につきましては、銀行の経営に影響を及ぼし得る者が不当に影響力を行使することがあるとすればそれをどのように防止するかという問題意識に基づきまして、金融審議会において議論をいただきました。その結果、企業会計基準における実質影響力基準というものを踏まえまして、銀行の経営に対する実質的な影響力に着目して原則二〇%以上の株主を主要株主と位置づけ、認可制の対象とすることが適当とされたところでございまして、本法律案における主要株主のルール整備につきましてもこの提言に基づいて設けたものでございまして、銀行の健全性確保の観点から適切なものと考えております。

植田委員 ちなみに、二〇%以上ということになると、企業会計原則でもそうだと言われてしまえばそうなんですが、とはいえ、私企業の中でも当然法律にちゃんと書いてあるように、銀行の公共性というところにかんがみた場合、二〇%以上ということでいいのかどうなのかという疑問が素朴にあるわけです。

 というのは、邦銀の主な株主の状況、調査室の資料を見ましても、二〇%を超える株主なんてそんなのほとんどおらへんわけですわね。やはり五%ぐらいで切っていいんじゃないか。まあ五%でも届け出せぬといかぬとさっきおっしゃっていましたけれども、五%を超える株主まで見れば相当ひっかかってくると思うんですが、それぐらいしないことには、少なくとも、先ほどから申し上げております、手だてとして果たして有効性を持ち得るのかどうなのかと思うわけです。

 というのは、少なくとも、異業種の銀行の参入を認めている他の国でも、例えばイギリスやドイツでは一〇%以上の出資者ということになっております。ですから、実際、二〇%以上と日本でやるにしても、邦銀の株主状況を見れば数えるほどなんで、少なくとも効果に欠けるんじゃないか。だから、五%とは言わないまでも、イギリス、ドイツ並みぐらいの水準で考えてもいいんじゃないかなと私は思いますし、いっそのこと、それともう一つ、子銀行の事業親会社に対する融資は御法度にしたって私は構わないと思うんですが、その点についてはいかがでございますか。

原口政府参考人 二〇%につきましては、先ほどの繰り返しになるかと思いますが、我が国におきましては、今までの企業会計基準等も踏まえると二〇%を一つの目安とするというのが一番コンセンサスを得やすいラインではないかというふうに考えております。また、別途これを補強する意味で、別の質疑でも申し上げましたように、主要株主以外の株主についても、五%以上の株主については届け出義務を課すということによってその影響力のチェックをやるということで、その補完をする仕組みを整えたところでございます。

 また、主要株主に対する融資を禁止してはどうかというお話でございますが、もちろん機関銀行化の弊害を防止するということは重要なことでございますので、本法案におきましても、主要株主に、銀行に不利益を与えるような取引を禁止するルール、いわゆるアームズ・レングス・ルールの対象としておりますし、そういうことで銀行と主要株主との間の、当該銀行の通常の条件に照らして当該銀行に不利益を与える取引等を禁止しているわけでございます。

 また、これも先ほどから出ておりますが、昨年八月に策定いたしました運用上の指針におきましても、事業親会社等の業況が悪化した場合には、通常の融資条件であっても当該事業親会社等に対して追加融資等を行わないことを内容とするリスクの遮断策の策定を求めているところでございまして、これらにより親会社の経営悪化のリスクが子会社といいますか子銀行に波及しないように措置をしているところでございます。

 ただ、市場状況に基づく融資を一律に禁止するということについては、銀行に対する過剰な規制ではないかというふうに考えております。

植田委員 二〇%で、要するに効果が上がるという根拠についてはどうなんですか。

 要するに、さっきは、五%届け出について何でそんなものまで届けさすんだという話があったと思いましたが、逆に私は、そのときの答弁を聞いていたら、五%以上はそれなりの影響力を持っているとおっしゃっていたと思うのです。だから、それなりの影響力を持っているからやはり主要な株主なんじゃないかと、これも非常に素朴に思うわけです。二〇%で大いに、今おっしゃった規定で、二〇%以上に網をかければ十分それでオーケーだというのがどういう見込みによるんでしょうか。

原口政府参考人 それなりの影響という答弁を申しましたが、五%のケース、二〇%のケース、法律上五〇%、おのおのやはり影響力というのは段階があると思います。

 五%につきましては、確かに、現在ある銀行等の場合、五%超ぐらいが一つの目安としてとらえられると思いますが、一方で、異業種から新規参入してくる場合は、かなり、五〇%超を超えるような大きな株主がいるケースが多いわけでございまして、また、それによって、その五%の株主と五〇を超える株主では、同じ大株主といっても影響力、あるいは影響力の行使の直接的な度合いというのは相当違ってまいりますので、それぞれに対応していろいろな段階的な措置を設ける。

 先ほど副大臣からも申し上げましたように、例えば五%超の株主に対しても、余りにもきつい規制といいますか、そういうものをかけるというのは、いろいろな参入意欲ですとか今後のいろいろな自由化の流れに逆行するのではないか、そういう要素も勘案してこういう仕組みにさせていただいた次第でございます。

植田委員 ですから、そんなきつい規制ではないと思うんですよね。まずいことが起こればそこまで網がかかるという話だと思うのです。

 時間がありませんので、次の質問に移らせていただきます。

 もう一つは、顧客の個人情報の保護にかかわって幾つかお伺いしたいんですが、これも運用上の指針では、顧客情報の相互利用を事業親会社と子銀行との間で行う場合には、「最低限、事前に、利用する業者の範囲、利用目的、利用方法等を明確にした上で、顧客本人の明示的な同意を得ることを必要とする運用体制となっているかどうかを確認する」とあります。

 これもさっきの質問と同じことなんですが、これで後はそれぞれのケースごとにやりますということになれば、やはりこれは裁量行政になってしまうだろう、もっと具体的なガイドラインを提示すべきなんじゃないかというふうに思うわけです。やはり相互間の活用をどの段階、どのレベルで抑制するのかということを含めて、具体的な基準を明示するということがそんなに縛りをかけるというふうには思わないわけですが、いかがでしょうか。

村田副大臣 異業種ガイドラインで顧客情報の相互利用を行う場合についての運用体制の確認ということが今指摘をされましたのですが、その運用体制の具体的な中身につきましては、顧客本人の明示的な同意が得られていると挙証できるものであれば、各申請者の実情等に応じた体制とすることで私どもは問題ないというふうに考えております。

 そもそも、さきの通常国会で個人情報の保護に関する法律案というのが提出されておりまして、それが成立した場合には、一般法として、その規制に服する、金融取引においてもその規制に服するということになるわけでありますが、金融取引の個別のあり方をどうするかということについては、なお引き続き金融審議会で議論がなされているということを承知しております。

植田委員 ですから、個々の具体的な基準を設けましょうよというのも特別突拍子もない話ではなくて、顧客情報の遮断については、これも欧米ではやはり厳しい制限を課しているという実例が実際あるわけですよね。

 もちろん日本と海外の法体系はそれぞれ違うでしょうから一概には言えないだろうと思いますが、例えばフランス、スイスでは、何か実際、日本語訳したらどういうふうに訳するのかよく承知していないですが、銀行機密法なるものがあるようで、子会社から親会社への情報提供そのものを制限しているというようなことがありましたし、イギリスの場合は、今ちょっと審議中の私ども反対している法案について触れられましたけれども、イギリスでは、一般の個人情報保護法で対処をされているようです。

 そういうことがあるわけですから、やはり引き続き審議はされると思いますけれども、現在、少なくともこの個人情報保護法は審議中でございます。ただ、審議中である限りにおいては、個人情報保護ということは、今その法案の審議をしているわけではございませんからその賛否について云々するわけではございませんが、少なくとも現段階においては、個人情報の保護は他の法律ではまだ確立されていない現状にあるわけですから、やはりその中で、当面、何らかの保護措置というものを先行的に考えることは可能ではないんでしょうか。

村田副大臣 まずもって、前通常国会で提案された法案の御審議の促進方をお願いしたいというのと同時に、今先生がおっしゃったように、金融機関の垣根がとれて、そしてさらには異業種が参入してくる、こういう状況になっておりますので、金融審議会でもそういう新たな事態に対応いたしまして、個人情報の保護というのは大変重要なことでございますので、早急に審議を進めていただきたいと私どもも考えております。

植田委員 では、その点で一点だけもう一つ伺うんですが、運用上の指針では、親事業会社が子銀行の顧客の個人情報を入手する場合は触れていますけれども、子銀行が親事業会社や関連会社の有する個人情報を入手するケースというのはちょっと触れていなかったように思うんですが、その辺のところも、当然、鋭意検討されるということで御理解させていただいてよろしゅうございますでしょうか。

村田副大臣 子銀行からのケースと親会社のケース、それは同じでございますので、双方において議論がされる。一般法の個人情報の保護法がございますので、それでカバーされる、こういうふうに考えております。

植田委員 一般法の個人情報が成立すればそれでカバーをすると。これはここで議論することではございませんので、あえて細かく言及いたしません。

 もう一つ今のところにかかわりまして、これは当然のことだろうと思いますのであえて聞かなくてもいいのかもしれませんが、異業種参入銀行に対する今後の改正銀行法といいましょうかその銀行法の支配の実効性にかかわってですけれども、やはり当然ながら、免許の付与後、例えば、今話をしました顧客の個人情報の保護や、非対面取引等に伴う顧客保護の履行等に不適切な状況が出てくる場合も間々あるかもしれません。

 そういうときに、銀行法の二十六条に基づくいわゆる業務改善命令をちゃんと発するんだよ、そういうこともするんだよということも、こっちの運用上の指針にもきちんと明記しておいてもかまへんのやないかと思うわけです。当然、異業種であろうが何であろうが、すべての条文が過不足なく全部かかってくるわけですから、そのこともこっちにちゃんと書き込んでおいてもいいと思うんですけれども、どうなんでしょうか。

村田副大臣 委員の御心配のとおり、個人情報の保護に関しまして、銀行に不適切な業務運営がなされたようなケースにおいては、銀行の業務の健全かつ適切な運営の確保の観点から、銀行法第二十六条の業務改善命令が発せられるということはあり得るということであります。

植田委員 わかりました。

 次に、もう三点目ですけれども、特に非対面取引を専門に行う銀行の場合の顧客保護にかかわって何点かお伺いしたいんですが、当然、非対面取引ですから、本人確認であるとか安全面など、対面取引のいわゆる今の銀行というか現行の銀行に比べて、特に配慮しなければならない問題はやはり出てくるだろうと思います。

 というのは、例えば、本人確認というものが確実に行えるかどうかという問題。これは、マネロン等による不正の防止策というのが大丈夫かという懸念が生じてくるわけですけれども、この点についても、非対面取引において本人確認を確実に行うための、これもやはり具体的な方法をちゃんと明示しておいた方がいいと思いますし、また、その本人確認義務の履行体制についてもここはやはり厳格な対応が必要じゃないかと思うわけです。

 何か縛れ縛れという話ばかりで恐縮なんですけれども、必要だと思うから聞いておりまして、それぐらいはいいんじゃないでしょうか。

村田副大臣 非対面取引を専門に行う銀行のケースでございますが、無店舗営業でありましても、本人確認が適切に対応し得るための体制が整備されているかどうかということは、免許審査において確認されるということになっております。

 ただ、この本人確認義務というのは、有店舗銀行の場合においても法制化されているわけではございませんで、この無店舗経営の場合においても、口座開設の場合には、インターネットだけでいいとか郵送だけでいいとかいうんではなくて、ほかの店舗と同じように、本人確認義務を書類によりましてきちんと確認する義務がある。

 そういう体制が整っているかということは、審査のチェック、そのときにチェックするということになっているわけです。

植田委員 あと、これもちょっとささやかな話なんですけれども、安全面ということでいうと、特に非対面専門に取引する銀行の場合、当然、システムダウンなんかあると致命的なアクシデントになりますから、即営業停止ということにもなるだろうと思うわけです。これは、それぞれの対策はそれぞれの銀行において、サービス面ということですから、それぞれの銀行がそれぞれの実情を踏まえて当然対応する話だろうと思いますけれども、これも、監督当局において具体的にどんな防止策をとるのか、また対応策を講じるのか、これもちょっとした、これも縛りじゃないですが、こういうふうにやりなさいよというガイドラインがあってもいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

村田副大臣 システムダウン等に対します危機管理体制の構築というのは、特に非対面取引を専門に行う銀行におきましては、これはもう銀行を経営していく上でも死活問題であるわけでありますけれども、この件につきましても、異業種ガイドラインに基づきまして、システムのセキュリティーのレベルが十分な水準に達しているかどうかを免許審査時に確認をいたしまして、免許後の監督においてもその履行状況についてチェックをすることにしております。

 既に営業を開始している非対面取引専業銀行が四行ございますが、こうした観点に基づきまして、当該銀行に監査法人等の外部機関のシステム監査報告書と評価書類を提出させることによって確認を行う、こういうことになっております。

 さらに、各銀行では、災害時のバックアップシステムを設置しておりまして、また、システムダウン時に適切な障害発生告知や顧客対応が図られるよう、いわゆるコンティンジェンシープランも作成しているということであります。

 金融庁といたしまして、システムダウンの発生が防止されるように日常的に指導を行うとともに、万が一システムダウンが発生した際には、今申しましたコンティンジェンシープランに基づきまして、障害の迅速な復旧と適切な顧客対応が図られるように指導していきたい、こういうふうに考えております。

植田委員 もう一点、ささやかなことですが、提供情報の確認ということなんですけれども、これもいろいろと考慮せぬといかぬと思うんです。

 例えば、コンビニ銀行なんかの場合は、コンビニの一角に恐らくぴゅんとATMを設置することになるだろうと思うんですけれども、そうなると、設置場所によっては約款等の情報が利用者に対してどれだけ理解されるかどうかというのが懸念されるような場合もあるかと思うんですが、その辺の情報提供の方策についても検討するのは必要なんじゃないかと思うんです。その点も、申しわけないですが、お願いできますか。

村田副大臣 やはりその点につきましても、免許審査の際に、法令に基づきます顧客への説明義務の履行体制についてチェックする、こういうことになっております。

 具体的には、銀行により情報提供のやり方は違いがありますけれども、ホームページの上で、あるいは本店窓口での掲示を行うとともに、顧客からの希望に応じて約款等を郵送する等、顧客に対しての説明義務が十分に果たされているかどうか、こういうものをチェックしているということであります。

植田委員 あと二点ばかりお伺いしたい点がございます。できれば担当大臣の方から最後の二問については御教示または御答弁いただきたいわけです。

 今回の銀行法の改正の議論からは、ずれる話だと思いますし、また、これから申し上げることの私自身の賛否云々の話ではないわけですが、もしの話には答えられないということになるかもしれませんが、これからの金融行政にとって留意しなければならない点、これは郵貯の存在、これはやはりかなり大きな話だろうと思うんです。今まさに郵政民営化の議論の真っ最中なわけですが、そのことについてのよしあしについてここで論じようというわけではございません。

 というのは、現実としてこれが実現するとなると、確かに郵政公社の管轄で銀行とは異なる位置づけにはなるわけですけれども、これも考えようによっては立派な異業種の参入じゃないかと思うんです。そのことをまず踏まえた上で、特に、貸出業務は行わないにしても決済機能を持った、既に巨大銀行としてやはり郵貯を評価する必要があろうかと思います。

 その場合、例えばソニー銀行とかそういうものとは比較にならない影響力というのを持ってくるでしょう。というのは、約二百五十兆もの資金を抱えておるわけですので、そういう意味でやはり金融界に与える影響が大きいわけですし、そのことについての金融庁としてのやはり基本的な認識をはっきりさせておいていただきたいなという意味で、確かに郵貯が事業会社ではないにしても、立派な異業種参入とまず認識すべきだという点、そして、そうである以上、金融市場のルールというものをどう遵守させるのか。その意味では、郵貯の健全性というものを確保していくために、あくまでもそれは金融行政の所管官庁として、検査監督をどういう形でしていくのかということは検討されてしかるべきじゃないかと思います。その点、非常に重要だと思います。

 もちろん、もしもの話かもしれませんし、そのこと自体、賛否を私は今論じようとしているわけじゃなくて、そうなった場合、当然ながら、今私が申し上げたような認識、例えばその検査監督のあり方というものも当然金融庁の枠組みの中で考えなきゃならないというふうに思いますので、その点についての担当大臣の現段階でのお考え、御所見をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 郵便局が郵政事業庁になり、その後また郵政公社になっていくわけでございますけれども、これが金融庁の業務とのかかわりでどうなるかということについては、やはり基本的に金融庁というのは民間の金融機関の健全性、銀行法がそのためにあるわけですけれども、保険にしても証券にしても、そういった基本的な視点からの業務をやっているということでございます。

 郵政公社になった場合に一体どういう業務体制その他になるのか。あるいは、国家による預金に対する保証というようなものが現在のように一〇〇%機能するというようなことになった場合には、ちょっと私どものこの銀行法を基本とする観点とはやはり違ってこざるを得ないんだろうと思います。

 いずれにせよ、業務の体制あるいは預金に対する保護の体制というようなものがどういうふうになってくるかということで金融庁の業務とのかかわり合いが決まってくるというふうに現段階では考えています。

植田委員 小泉総理がおっしゃるような形での改革になれば、当然金融庁がかんでくる話になりますよね。そういう意味で私は、むしろその点については、特に金融庁のそうした監督検査機能というものが基本的に強化されるべきだし、そういう役割を果たしていただきたいという思いで、もしそういう事態になった場合は積極的にやはり物を言うていくべきだろう、遠慮すべきではないだろうというふうに思います。

 かつて私の大先輩であります伊藤茂元衆議院議員が、この金融庁をつくるに当たりかなりいろいろと作業にかかわりました。やはりそういう思いを私ども引き継いでいきたいと思いますので、そうした生みの親の思いも受けとめていただいて、積極的にそれは物を言っていただきたいなと思っています。

 最後、もう一点だけ、これはもうざくっとした話でございます。

 私、個人的には、今回の法案については時宜を得たものだということを前提に質問させていただいてまいりましたけれども、細かいところで、具体的な基準をもうちょっとと言ったら、どうもそういうがちがちした縛りはどうのこうのというお話でございました。やはり不安が残ります。

 といいますのは、やはりドッグイヤーと言われるぐらいの社会の変化の中で、今とりあえず喫緊の課題として今回こういう形で処理されるということは、私は基本的にオーケーなんですけれども、あした、あさって起こってくる課題についてもやはり対応していかなきゃならないなと。まして、異業種の銀行参入というのは今論じられている話。我々が予想しないような事態というものも当然出てくるでしょうし、じゃ、去年の八月のこの指針で全部事足れるということでもないかと思います。

 そういう意味で、今回を契機にして銀行業が将来より活性化していく、そして一方での公共性、健全性というものをしっかり確保していくという観点からすれば、引き続き審議会で議論されることになるかと思いますけれども、八一年以来の抜本的な銀行法の改正も展望した議論というものがされてしかるべきじゃないかというふうに思います。といいますのは、そこでお伺いしたいのは、僕らが今イメージしているような銀行のイメージと違うやはり銀行の未来像というものを描きながらの議論になると思うんです。

 そこで、最後、御教示いただきたいのは、今担当大臣が思い描いておられる、この異業種参入を契機にして新たな銀行の近未来像というか将来像、その辺のところを最後にお聞かせいただければと思います。

柳澤国務大臣 大変高い見地からの御質問で、そういう御質問に対して十分答えられるとは毛頭思っておりませんけれども、私も、日本の個人金融資産千四百兆というようなものはやはり日本として大事にしなきゃならない資源だというとらえ方も可能ではないか、こういうように思っているわけです。

 そういうことの中で、今先生がお触れになられた郵貯の民営化というようなものが仮に行われたらそれこそ大問題で、これを今の民間金融のシステムの中にどういうふうに取り込んでいくかということも非常に大きな課題でございます。

 かたがた、他方、金融につきましては、やはりグローバリゼーション、それから情報技術あるいは金融自体の技術というようなものが大きく展開しているというようなこともありまして、先ほどある委員との問答でもお話になりましたけれども、業態というようなものがこれまでどおりの姿で維持できるものなりや否やというようなこともありまして、いずれにせよ、この金融のビジョンというものを我々は早く、一応のめどをつかむという意味でも明らかにしておく必要がある、こういうふうに考えております。

 アメリカ、イギリスでは既にそうした専門家による検討も行われ、そしてリポートも出ておるというようなことを考えますと、これは非常に喫緊の課題だとも思うわけでございまして、そうした見地から、最近私どもの役所の中に、私的な懇談会ですけれども、ビジョンの検討会を設置させていただきました。そこでこれから十分専門の先生方の御意見もいただきながら、また我々が、第一線と申しますか、行政の分野でいろいろ日ごろ感じている問題意識、こういうようなものも織りまぜながら、早く、また中間的な取りまとめに向けて一生懸命やっていきたい、こういうように思っておりまして、いずれまたそういったことの段階になりますれば先生方にも御披露申し上げ、また御検討もいただきたい、このように考えておる次第でございます。

 私自身の考え方をここで明らかにしろということですが、荷が重うございますので、以上の御報告をいたしまして答弁にかえさせていただきます。

植田委員 もう少し聞きたかったんですが、とりあえずきょう用意いたしました質問は以上でございますので、終わります。

山口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、本案に対し、佐藤剛男君外一名から、自由民主党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。佐藤剛男君。

    ―――――――――――――

 銀行法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤(剛)委員 銀行法等の一部を改正する法律案に対する修正案についての趣旨を説明させていただきます。提出者を代表いたしまして、御説明申し上げます。

 案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただきます。

 その趣旨を申し上げます。

 原案におきまして、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の一部改正等の規定について、その施行期日を「平成十三年十月一日」と定めておりますが、既にその期日が経過しておりますので、これを「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日」に改めるものであります。

 以上が、修正案の趣旨であります。

 何とぞ修正案に御賛同くださいますようお願い申し上げます。

 以上でございます。

山口委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました銀行法等の一部を改正する法律案並びに同修正案に対し、反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、本法案がその条件を整え、促進しようとする一般事業会社の銀行業への参入、異業種参入の問題です。これには多くの弊害が伴うことが必至です。

 まず、一般事業会社が子銀行を財布がわりに使う、つまり機関銀行化の危険性です。また、銀行は、その業務の社会的役割と公共性から、当局の監督下に置かれ、預金保険等の公的支援の対象とされているのであり、その業務範囲は当然限定されていなければなりません。しかるに、一般事業会社との兼営を認めることは、一般事業経営のリスクを銀行業務に持ち込み、銀行経営が不安定になります。そして、顧客情報の相互利用など、個人の信用情報の乱用や顧客無視の販売などの弊害も予想されます。

 しかるに、本法案は、質疑で明らかになったように、参入規制の対象を原則として株式の二〇%以上を保有する主要株主に限定して許可制としているのみで、五%以上の株主は届け出制になっています。これはヨーロッパと比べても低い水準で、銀行経営の健全性と公共性を軽視するものと言わざるを得ません。さらに、認可後における銀行の主要株主に対する監督規制についても極めて不十分であり、到底これらの弊害を防止できるものとは考えられません。これは、事業会社等の銀行業への参入意欲を阻害しないという姿勢をすべてに優先させた結果にほかなりません。

 第二に、本法案が、銀行の業務規制を緩和し、支店設置の改廃自由化を図ろうとしていることです。

 規制のかかっている現在でさえ、支店、出張所は激減しており、規制を取り払い、一層営利本位の店舗配置を許すなら、借り手中小企業や預金者等利用者に多大の不便さや不利益を与えることは必至です。また、信託業務の兼営を認めるなど銀行の業務範囲の拡大により不動産信託などに参入すれば、不動産業務にもかかわることが可能となり、銀行経営の不安定さを一層拡大するばかりであります。

 以上で、日本共産党を代表しての私の反対討論を終わります。(拍手)

山口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、銀行法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、佐藤剛男君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中川正春君。

中川(正)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    銀行法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 金融機関に対する国民の目は極めて厳しい。その根底には、バブル期にみられた不動産融資、金融商品をめぐる営業姿勢、中小企業等に対するいわゆる貸し渋り問題、金融機関経営者の経営姿勢等に対する批判がある。いうまでもなく、金融機関には極めて高い経営モラルが求められており、金融機関は改めてこの点を自覚する必要がある。従って、政府は、このような趣旨を十分に踏まえつつ、金融機関に対して厳正な監督を行うこと。

 一 いわゆる「機関銀行化」を防止するため、特段の注意を払うこと。

 一 「主要株主」の認可にあたっては、当局の裁量によることなく、事前に判定のルールを明示し、十分な透明性を確保すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣柳澤伯夫君。

柳澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

山口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十六分散会




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