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第4号 平成14年2月27日(水曜日)

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平成十四年二月二十七日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小西  理君    佐藤  勉君
      七条  明君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      中本 太衛君    林田  彪君
      増原 義剛君    松島みどり君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      小泉 俊明君    小林 憲司君
      佐藤 観樹君    中川 正春君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      上田  勇君    藤島 正之君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   小平 信因君
   政府参考人
   (内閣府経済社会総合研究
   所国民経済計算部長)   小田 克起君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   政府参考人
   (総務省統計局長)    大戸 隆信君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    寺澤 辰麿君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    溝口善兵衛君
   政府参考人
   (国税庁徴収部長)    余田 幹男君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     中本 太衛君
  小泉 龍司君     小西  理君
  渡辺 喜美君     佐藤  勉君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     小泉 龍司君
  佐藤  勉君     渡辺 喜美君
  中本 太衛君     松島みどり君
同日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     岩倉 博文君
    ―――――――――――――
二月十九日
 平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)
 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
同月二十二日
 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)
同月十四日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(中野寛成君紹介)(第一五五号)
 同(藤村修君紹介)(第一五六号)
 同(中村哲治君紹介)(第一七四号)
 同(辻元清美君紹介)(第一八七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二七〇号)
 同(土肥隆一君紹介)(第二八七号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一八五号)
 同(中林よし子君紹介)(第一八六号)
 相続税法の緊急改正に関する請願(西村眞悟君紹介)(第二八六号)
同月二十六日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(上田清司君紹介)(第三一九号)
 同(平野博文君紹介)(第三二〇号)
 同(原口一博君紹介)(第三三四号)
 同(肥田美代子君紹介)(第三三五号)
 同(大谷信盛君紹介)(第四五五号)
 消費税の増税反対、消費税率三%への減税に関する請願(吉井英勝君紹介)(第三五〇号)
 消費税増税反対等に関する請願(大森猛君紹介)(第三五一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三五二号)
 所得税の基礎控除引き上げ、課税最低限度額の抜本的改正に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五三号)
 同(石井郁子君紹介)(第三五四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三五五号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三五六号)
 同(大森猛君紹介)(第三五七号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三五八号)
 同(児玉健次君紹介)(第三五九号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三六〇号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三六一号)
 同(志位和夫君紹介)(第三六二号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三六三号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三六四号)
 同(中林よし子君紹介)(第三六五号)
 同(春名直章君紹介)(第三六六号)
 同(不破哲三君紹介)(第三六七号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三六八号)
 同(松本善明君紹介)(第三六九号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三七〇号)
 同(山口富男君紹介)(第三七一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三七二号)
 同(植田至紀君紹介)(第四一四号)
 同(川田悦子君紹介)(第四一五号)
 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(吉井英勝君紹介)(第三七三号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三七四号)
 消費税の福祉目的税化反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四二五号)
 相続税法の改正に関する請願(小泉龍司君紹介)(第四二六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)
 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君、財務省国際局長溝口善兵衛君、金融庁検査局長五味廣文君、金融庁監督局長高木祥吉君、内閣府政策統括官小平信因君、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長小田克起君、総務省統計局長大戸隆信君及び厚生労働省年金局長辻哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江崎洋一郎君。
江崎委員 おはようございます。民主党の江崎洋一郎でございます。
 本日は、夕方には経済財政諮問会議も予定されているということで伺っております。新聞報道等によりますと、公的資金の資本注入に関しましては、従来の政府見解から枠組みをはみ出さない、いわゆる一歩踏み出さないという状況がまだ続いているようではございますが、本日、一時間にわたりまして、公的資金の資本注入、公的資本の注入につきまして審議をさせていただきたいというふうに考えております。
 まず最初に、柳澤金融担当大臣にお伺いしたいんですが、公的資本の注入を受けた主要行の債務者区分につきまして、適切性についてお伺いをしたいと思っております。
 倒産した企業がこのところ大分ふえているわけでございますが、倒産一年前の債務者区分のうち、正常先債権または要注意先債権であったものは何割あったのか。過去に銀行から経営健全化計画等が提出されているとは思いますが、これらを見渡す中で何割あったのかということについてお尋ね申し上げたいと思います。
村田副大臣 お答えをいたします。
 資本増強行が提出いたします経営健全化計画の履行状況報告書でございますが、今の報告でございますが、各行が、債務者区分あるいは行内格付におきましても、あるいは倒産の定義とか、金額のベースにおきましても定義が非常にまちまちでございまして、それを正確に集計するということは大変困難でございますけれども、あえてこの割合がどれくらいかということを定義の違いを無視したという形で集計いたしてみますと、十三年三月期に倒産した企業のうち、一期前に正常先あるいは要注意先であったものの割合は、金額ベースでおおむね六割ということでございます。
江崎委員 柳澤大臣、以上の、六割ということでよろしいんでしょうか。件数からいっても大体同じという見解でよろしいですか。
村田副大臣 今、金額ベースでおおむね六割というふうに申しましたが、件数ベースでいきますと七四%でございまして、これが多いか少ないかという今大臣に対する御質問でございますけれども、そもそも正常先、要注意先のシェアが非常に大きいわけでございまして、その中から下に落ちてくるという件数あるいは金額が、それだけを見ますと大変大きくなる、そういう理解を私どもいたしております。
江崎委員 今、金額ベースで六割、件数においても七〇%を超えるという大変大きな比率であるわけでございます。本来倒産を予期するという区分ではない正常先あるいは要注意先から、むしろ破綻懸念先以下におっこってしまったという企業が事実上多いというのは、一体何を意味しているのかということにつきまして、お伺いをしたいと思います。
 また、あわせて、銀行が翌期の不良債権処理額をどの程度事前に予想していたのかという観点から考えますと、いわゆる貸倒引当金でございますが、当期の個別貸倒引当金と前期の一般貸倒引当金の差を見てみますと、ここ十年近くは、個別貸倒引当金が一般貸倒引当金を大幅に上回る状態が続いております。これはもう倍どころの騒ぎではございません。これは、銀行自身の自己査定あるいは金融庁さんの検査そのものが、処理すべき不良債権が十分把握できてないのかということを示しているのではないかと私は見ておりますが、いかがでございましょう。
 言いかえれば、この一年、二年であればともかく、過去十年間にわたって一般貸倒引当金より個別貸倒引当金が大幅に上回るという異常な事態が続いているわけでございますが、引き当てが甘いという批判を浴びせられてもこれは仕方がないのではないかと考えますが、柳澤大臣、どのようにお考えでございましょうか。
柳澤国務大臣 まず、先ほどの村田副大臣が答弁した資料ですが、これは健全化計画の実績報告の中に私どもが入れさせた計表でございます。必ずしもあれは健全化法から出てくるものではなくて、そういうことを時系列的に発表させることによって自分の銀行の査定というものに対して常に見直すというような契機を与えたい、それをまたパブリックプレッシャーのもとにおきたいということでございます。私どもとしては、今、村田副大臣が言ったように、かなりそれぞれの銀行で行内のそういったリスク管理のシステムが違いますので、それをそのまま出しているということがありまして、これを集計するということについては若干問題がなきにしもあらずだと思うんですけれども、我々としてはそのことよりも、ある銀行の時系列的な改善というか、そういったことをこれによって督励していきたい、こういう数字でございます。
 それはそれとして、また新たに江崎委員の方からは、一般貸し引きと個別貸し引きが、個別貸し引きの方が多くなってきたぞよ、こういうお話がございました。これは、正直申しましていろいろな要因が、これは因数分解の問題としてもあるわけですけれども、今の状況を前提にして一般貸し引きが低いんではないかということは、これはちょっと当たらないんではないかというふうに思います。
 それは、一つには、何と申しますか、個別貸し引きの方は、ある意味でもう清算に近いというような、清算価値からの貸し引きというものが出てきます。それに対して一般貸し引きの方は、これは文字どおり、個別対応ではなくて一つの固まりとしてとらえて、それに対してどのくらいの確率による損失を見ておけばいいか、こういうことでございますので、そういう意味合いで、あくまでも今もし江崎委員のおっしゃるとおりでしたら、確率が高まる。確率が高まれば、当然それは貸し引きに響いて、予想損失率に響きますから、むしろ高まっていくというのは、これはもうある意味で必然的なことでございますので、そういうものを待っても十分間に合うということになります。
 それから、もう一点指摘しておきたいのは、今言ったようなかなりの確率で、確率というかシェアでもって倒産が起こったけれども、それはいずれも確率で積まれた一般貸し引きの処理可能の範囲内であったということがもう一つあります。
 それからもう一つ、最近の問題として、そうはいいながら、一般貸し引きの率がふえる傾向もあり得ると思っています。それは、例の、貸し出し条件緩和債権の定義がきつくなった。そのことによって要管理に大変たくさんの債権が分類されるようになった。それに応じて、要管理の一般貸し引きというのは少なくとも要注意、正常先よりは高いですから、そこの部分が大きくなれば当然趨勢としてもそういったことが全体の中に明らかになってくるだろう、こんなふうに考えておる次第であります。
江崎委員 今大臣がおっしゃる、個別貸し引きは当然高くて、また一般貸し引きにつきましては仕組みとして低くおさまるものだということにつきましては十分理解はできるんですが、冒頭村田副大臣からございました過去の健全化計画で発表されている数値につきましても、債務者区分が各行まちまちであるから一律にその統計は反映されないということでもあります。しかし、しかしですよ、正常先、要注意先が約七割倒産をしているという事実から考えると、一般貸し引きがもっと水準として高くてもおかしくない状態ではないかというふうに思えるわけでございます。
 いろいろ銀行の作業等を聞いておりますと、これはこれこれこういう事情で特別な事態になったから倒産をしたとか、倒産件数が多いものにつきまして、差し引くというと変な言い方ですが、異常値であるという統計に基づいて処理をしているとも聞いております。その結果、一般貸し引きが割合として小さくおさまっている。また、制度としてもこれ以上変える必要はないという考え方に基づいて、もちろん会計の考え方もあるでしょうからそれはまた別の観点からはありますが、それにしてもちょっと低い水準であり過ぎないかなと心配をしているわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。
柳澤国務大臣 統計学の専門家ではないものですから、私も十分な知識をもってお答えするというわけではないんですが、異常値控除というのは、一般に統計処理の場合に起こり得ることだというふうに聞いているんですが、ただ最近は、私ども、この異常値控除をするなということを言っているんです。
 それは、どうしてするということを避けるべきかというと、結局、行内の区分を細分化する、例えば、何というか、A業種ならA業種ということをやると、A業種で一つ大きな倒産が起こったというのを、全部で見ているとその倒産は異常だったねということなんだけれども、その業種で細かく見ると、ほかのところからもそういうことが起きがちだということがわかってくる。そうすると、それは異常値でも何でもないじゃないか、こういうとらえ方が見方によって出てくるわけでございます。
 そういうふうに、我々は異常値をできるだけ出すなと。出すなというのは、統計的に根拠があっても出すなと言っているんじゃなくて、行内の格付というものをきっちりやることによって、それが異常値というふうに認識されないということになるんじゃないかというようなことを実は進めているわけでございまして、江崎委員、どのぐらいの時点のお話か、あるいは現役のバンカーであったころの御経験か、よくわかりませんけれども、最近は異常値控除というのは、全くないとは私もそこまで報告を受けておりませんけれども、基本として異常値控除を余りやってはならない、こういうことで、できるだけ実績が予想損失に反映するようにということで指導しているわけでございます。
江崎委員 やはりこういった統計につきまして、一つの仕組みとしての一般貸し引きの仕組みもあるわけでございますので、こういった異常値を控除していくということについては、ぜひとも大臣、未然に防いでいただきたいというふうに思っております。
 次に、金融検査マニュアルにおける担保評価という問題につきましてお伺いしたいんですが、一応マニュアル上では不動産鑑定価格や最低競売価格で行ってよいということになっておりますが、いずれも実際に売れる価格とはかなり異なると言われているわけでございます。したがって、担保評価の面でも、銀行の自己査定や金融庁検査は処理すべき不良債権を十分把握できていないと考えられますが、いかがお考えでございましょうか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 この担保、いろいろな担保がありますが、恐らく土地担保というのが典型的な事例だと思って、それを念頭に御質問もあったかと思うんですけれども、この担保評価についても、私どもはできるだけこれを実態に近づけるようにという努力をいたしております。
 昔はどちらかというと公的な価格、そういうようなものに掛け目をかけて評価するというような方式をとっておりましたのですが、最近は、できる限り個別に不動産鑑定士の鑑定を得るようにということを進めておりまして、各行とも、これはやはり経費がかかるものですから、非常に中小の金融機関の場合にはなかなか困難がありますが、特に大手行においては、この評価については不動産鑑定士の評価によるようにということで進めております。
 これは余り、何というか、議論に反論したという意味でお聞きいただかないようにお願いしながら発言するんですが、最近の実績は、実際の処分額が担保評価額を上回っているというような集計の結果も出ておりまして、私どもとしては、かなり不動産鑑定士中心の評価というものが望ましい方向に進んでいるかな、こんな認識を持っている次第です。
江崎委員 適切な担保評価をしていただいて、適切なマニュアルにのっとって、かたいかたい検査をしていただくというのが重要かと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、きょう資料をお手元にお配りしているわけでございますが、マイカルの株価を通じたお話をちょっとさせていただきたいと思うんですが、以上数点質問をさせていただきましたけれども、倒産したマイカルというのは、正常先ないし要注意先に区分されていたと言われております。このマイカルに対する銀行の自己査定や金融庁検査に、今まで申し上げた点というのは端的にあらわれていたように感じます。
 マイカルが倒産する前の同社の株価、社債の流通利回りや格付会社によります格付の推移を見ますと、銀行や金融庁よりも市場の方がはるかに早い段階からマイカルの倒産を予知していたかに思われます。
 こうした点を踏まえて、金融庁でも、昨年後半以降、いわゆる特別検査の中で、株価や格付の情報を大口債務者の債務者区分や引き当てに適切に反映させようとしておられるとは思うのですが、果たしてこの特別検査では、こうした市場情報をどのような方法で債務者区分の判定に利用しているのか、その方法論につきまして具体的に教えていただきたいと思います。
 ちょっとこのグラフを簡単に説明させていただきますと、株価は、時系列的に右側にどんどん落下していっているわけでございますね。同時に、格付もどんどん下がっているという実態があるわけでございます。
 しかし、銀行は、株価の反映ということをきちっと入れていれば、この時系列に従って、恐らく債務者区分を移動していかなきゃいかぬ。正常先に入っていたのか、要注意先に入っていたのか、個々の銀行の対応にもよると思いますが、株価が下がるに従ってどんどん移行していくような作業もあり得たのではないかと思うのですが、果たして特別検査の中で、市場のメッセージというものをきちんと反映させていくような方法が新たにこの銀行指導に導入されているのか、その点につきましてお伺いしたいと思います。
村田副大臣 どのように反映させているかということでございますが、特別検査、今行っているわけでございますけれども、市場の評価に著しい変化が生じている等の債務者に着目いたしまして、当該債務者の状況を金融機関による自己査定が確定する前に適時に検証することによりまして、債務者に対する金融機関の査定と市場の評価とのタイムラグを解消するために、三月まで継続的に実施しているものでございます。最終的には、適正な債務者区分及び引き当てを三月期決算において確保する、こういうことでございます。
 もちろん、検査マニュアルに書いてはございますように、債務者区分の判定に当たりましては、そういう市場の評価ということだけではなくて、債務者の実体的な財務の内容とか資金繰り、収益力等により返済能力を検討するとともに、収益性の見通しや改善計画等の妥当性を総合的に勘案して判断することとしていることは言うまでもないところでございます。
江崎委員 このマイカルの状況にかんがみるに、財務内容等々は当然のこととはいえ、市場がいち早くメッセージを伝えてきている、こういうことにつきましても、迅速な処理の中で、銀行に、どうなっているんだというようなお尋ね等々をすべきではないかというふうに考えますが、具体的方法ということにつきましては、とりわけ今は何も手段をお持ちでないということでしょうか。
村田副大臣 今お答えいたしましたように、私、一般論でお答えいたしましたけれども、そうした外部の評価というものを決算の直前までに自己査定、自己評価に反映させていくという、そこを突き詰めていく、そういうことだと考えております。
江崎委員 市場の判断というのが万能とは決して言えないと思いますが、しかし、こういった部分も十分勘案しながら、検査のあり方というのをぜひ考えていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 さて、次の質問に移らせていただきますが、構造改革が進む中で、痛みが当然伴うということではございます。その調整過程の中で、これから、正常先や要注意先から残念ながら破綻懸念以下に転落する企業というのは当面後を絶たない可能性が高いというふうに思います。先ほど一問目で申し上げましたように、構造改革が始まる前ですら、倒産企業の七割が元正常先ないし要注意先であった点を踏まえますと、今後、少なくとも二、三年の間には、新規に破綻懸念以下になる企業が金融庁の試算以上にふえてしまうのではないかというふうに考えますが、大臣、いかがお考えでございましょうか。
柳澤国務大臣 破綻懸念先以下についてオフバランス化というものを二年、三年のペースで進めるという場合に、それは、既にある既存の残高だけではなくて、当然新規発生というものもその処理の対象に入ってくるということでございます。ここ非常に短い間の、始まってから二期たちましたでしょうか、というような実績ですと、実は新規発生はそれなりにちょっと少なく、破綻懸念先に落ちている部分については少ないというのが実績でございまして、これはもういろいろなところで発表しておりますので、江崎先生もごらんになっていただいているんじゃないか、こういうように思います。
 将来の見通しとしてどうかということについては、なかなかはかりかねる面もありますけれども、シミュレーションによりますと、私、今御質問、ちょっとあれで、今すぐ出てこないので恐縮ですが、記憶をちょっとたどって物を言わせていただいて大変恐縮ですが、それによりますと、そんなには、二、三年の、つまり集中期間の後において、正常化するというものをひっくり返すような状況には実はなっていないというふうにとらえているわけであります。
江崎委員 私と少しお考えも違うようには思いますが、今まで債務者区分というのが適切なところに必ずしも置かれていなかったことが今問題になっているのではないかな、正常先ないし要注意先の中に、多くの可能性を秘めた破綻懸念先以下に転落するところが多いのではないかという心配があるわけでございます。そういった点につきまして、予測がなかなか難しいということではなく、むしろ、経済危機に今直面している現状の中では、金融庁の試算というのはさらにもっと厳しいものである必要があるのではないかなというふうに感じております。これからの試算に関しましても、さらに十分な、現状の環境を反映させたような形で作業をしていただきたいというふうに考えております。
 次に、予防的引き当てという、私の視点からいいますと、今後まだまだ破綻懸念先以下に転落する企業がふえるのではないかという観点から少し御質問させていただきたいと思います。
 大臣は、従来より、予防的引き当ては現行の会計ルールではできないという御答弁を再三繰り返されておられるわけでございます。一方で、前回の公的資本注入の際、大臣は、金融再生委員会委員長として、要管理先債権の担保アンカバー分の一五%ですとか、破綻懸念先債権の担保アンカバー分の七〇%という、当時の通念では考えられないような高率の目安を設定されたわけでございます。今回も、今後の構造改革の痛みに備えて、政策的な観点から、こうした予防的引き当てというものも踏み切る必要があるのではないかと考えますが、大臣、いかがでございましょうか。
柳澤国務大臣 先ほどの江崎委員の、厳格な査定をして破綻懸念先に厳しく区分されるべきだというお話について、我々も、心構えとしてはそういうふうに持っておりまして、またいずれ、例えば特別検査、そういった姿勢というものは別に特別検査だけについて我々持っているわけじゃありませんけれども、例えばそうしたものの公表も予定しておりますので、そういうようなことから、我々のそういう姿勢というものを酌み取っていただけるようになるんじゃないか、このように思っております。
 それからもう一つ、予防的引き当てという問題でございますけれども、ここが割と難しいところでありまして、いつかも、あるいはほかの委員会だったかもしれませんが申し上げましたように、つい最近、昨年の初めごろですか、バーゼルの監督委員会の場か、あるいはその周辺の場でも随分議論があったというふうに私聞いているところでございます。
 それは、今の会計の原則というのは、引き当てというものを、基本的に将来の損失だとか費用を見積もるということは、これは逆に、債権者にとってはいいわけですけれども株主にとってはマイナスになるという、株主と債権者のせめぎ合いのところでございまして、そういう意味でどうあるべきかというのは大変基本的な問題なんですが、例えば、経済趨勢などというようなことがあってそれが不況に向かっているというようなときには、そういう過去の実績を将来に投影するだけじゃなくて、それにプラスアルファした、何と申しますか、フォワードルッキングの予防的な引き当てというものをなすべきじゃないかという議論も一部にあったやに記するわけです。
 しかし、それについて大勢としては、やはりそういう根拠がはっきりしない引き当てというものはおかしいんではないか、株主の利益に反するんではないか、こういうようなことで、結局は現状維持というものが、明示的にというわけじゃないんですが、そういうようなことで話がおさまったというようなこともございます。
 非常にそこは、今の議論、ちょっと御紹介したように微妙な問題でありますけれども、我々としては、やはり今の会計原則というのは、そういうように株主の利益にも配意して、はっきりした根拠を持ったものに限るというところに行くべきだ、このように思っております。
 それに対して、私が九九年三月の公的資本の増強のときにそういうことを申し上げたんですが、当時、私としては、資本を入れる際の、公的資本を入れた後、自己資本比率幾らになったというようなことを当然計算してそれを念頭に入れるわけでございますが、そのときの計算としては、そういう引き当てをしたらということでやってもらいたいということを申したわけでございます。
 結果は、いろいろにそれは実際の面では受けとめられまして、実際かなりそれに近づいた引き当てをいろいろ工夫して根拠ありとしてやってくれたところもあるし、必ずしもそういう受けとめ方でなかったところもある、区々でございましたけれども、趣旨としてはそういうことで私、提唱させていただいたというのが事実でございます。
江崎委員 もちろん予防的引き当てには株主の意向というものもございます。株主は大事なんでございますが、しかし大臣が今、有事といいますか、危機的状況には特別な考えもある、しかし現在は危機的状況にはないという認識かなということで、非常にちょっと心配になる御回答かなと思ったものですから。むしろ今は危機的状況にあるわけでございますので、そういった意味での新たな一歩を踏み出した対応策というのも十分考えられるんではないかと思いますので、十分な御検討をいただきたいというふうに考えるわけでございます。
 また、その債務者区分につきまして一言申し上げたいんですが、やはり今、正常先、要注意先に、銀行側の都合と申しますか、事情によりましてそこに置かざるを得ないという取引先も多々あるかと思います。やはり破綻懸念先という区分に置くことによって相手方へのダメージもあるでしょうし、取引のしがらみでなかなかそういう場に置けないということもあろうかと思いますので、現状の債務者区分という区分で、果たして銀行側が納得し得るような引き当てを積めるような仕組みになっているのかどうか。要管理先というまた別ポジションをかつてつくられたという経緯もあるわけですが、それにしても、なお柔軟な区分になっているのかどうかというのは、もう一度チェックし直す時期に来ているんではないかと思いますので、御検討をお願い申し上げたいと思います。
 続きまして、次の質問に移らせていただきますが、今、銀行、大企業につきましては特別検査を行っているわけでございます。しかし一方で、地銀以下の金融機関については一般検査ということで、特別検査より内容も異なり、また頻度も低い通常の検査を行っているという現状にあるわけでございます。
 しかし、中小企業の中には大手企業の関連先、下請先が多いこと、また、地銀以下におきましても大手企業に対する貸し出しというのは決して少なくないわけでございます。これはもちろん、俗に言ういわゆるぶら下がり融資のようなもので、おつき合いで大手企業にも参入しているというようなこともケースとしてあるわけでございます。
 そうした点を考えますと、地銀以下につきましても、特別検査なのか、あるいは一般検査とは少し異なる、今の不良債権の実態を把握する意味での検査をきちっと行って、やはり経営状況をきちんと把握すべきではないかというふうに考えるわけでございます。
 これは何も貸し渋りや、あるいはさらに悪い貸しはがしにつながるような行為につながるような検査ということでは当然困るわけでございますが、しかしながら、きちっと経営状況を今把握しておく。過去、一般検査に三年前に入ったからということで今安心して見ていいかどうかというのは、非常に疑問に感じるわけでございます。
 そういった意味で、どのような御見解をお持ちか、教えていただきたいと思います。
村田副大臣 特別検査を地方銀行までに、あるいは特別検査ではなくともしっかりした検査を地域銀行に対してもやるべきではないかという御主張だったというふうに思います。
 特別検査でございますけれども、これは今の限られた検査体制の中でやっていくわけでございまして、そうした意味からいいますと、株価とか外部格付が大幅に変動したというような事実、そういうことに着目してやるものでございまして、今の検査の体制の中で、大口貸出先等、これに着目いたしまして選んでやっている、こういう状況でございます。したがいまして、特別検査に当たりましては、そうした大口貸出先、大口債務者に対します情報をたくさん持っている主要行に限って実施している、こういうことであります。
 したがいまして、この特別検査の結果、こうした主要行におきまして法的あるいは私的整理が行われ、あるいはRCCに対する債権売却なんかが行われました結果、その結果が地方銀行等にも影響を及ぼしていくということはあり得ると思いますし、また、地方銀行の検査におきましてもオフサイトモニタリングをやったり、あるいは検査の密度を変えたりいたしまして、地方銀行におきましても財務内容の健全性を検査を通じて確保していくということに努めているわけでございます。
江崎委員 なかなか今、人員、限られた検査体制の中でというお言葉もございましたが、既に金融庁の検査体制というのは大分人員も拡充しつつあるわけでございます。しかしながら、まだまだ諸外国と比べると人員不足というところもあろうかと思います。私も、当委員会で再三人員増強をしたらいかがでしょうかというお話を申し上げているわけでございますが、さらに人員強化をされて、幅広い金融機関に検査、実態経営調査というのが入れるような体制を一日も早く確立されるのが、最も市場が望んでいることではないかと思います。
 しかし、私も、地銀以下への特別検査、ないしはもう少し頻度の高い検査を行うべきかということをさらに主張申し上げたいと思っておりますのは、ペイオフ解禁前に問題金融機関は処理するという方針を金融庁は立てられておるわけでございます。しかしながら、地銀以下への特別検査、ないしはそれに準じた検査は行わないよということでございますので、これは事実と矛盾しているのではないかというふうに考えるわけでございます。
 一般検査がそんなに本当に頻度が低くても、経営環境が毎年毎年激変する中で安心していられるのかどうか、この矛盾につきまして、大臣に御見解を伺いたいと思います。
村田副大臣 ペイオフの実施を四月一日に控えまして、地域金融機関に対しましても、そうした銀行が、預金者から預金を預かる、そういう信頼に足る財務内容を有しているということはまことに重要なことでございまして、特別検査の対象にはなっていないわけでございますけれども、先ほど御答弁申しましたように、オフサイトモニタリングをしたり、あるいは検査の頻度を変えたり、検査の内容について充実を図ったりなんかをいたしまして、的確な検査あるいは監督を通じまして、各金融機関の健全性の確保に努めている、こういうことでございます。
 地域銀行に対しましては、これまでのところ、平成十年度検査事務年度におきまして、資産内容の健全性を検証するための集中検査を終了しておりますし、それから、十二年一月から開始しました、金融検査マニュアルに基づくリスク管理体制、それから法令等遵守状況を総合的に検証いたします一体的検査につきましても、地域銀行百二十行中の九十三行について既に実施しているところでございます。
 さらに、信用リスクを重視した検査マニュアルに基づきます二巡目の検査も順次開始しているところでございまして、いずれにいたしましても、ペイオフ実施を控えまして、各地域金融機関を含めました金融機関の経営の健全化、預金者の信認確保に一層努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
江崎委員 私が心配しておりますのは、やはり、地銀以下の金融機関も引き当て不足のままほっていかれているのではないかという心配があるわけでございます。中小企業の経営というのは、大手企業以上に、今、厳しい現状にあるわけでございます。
 これが、先ほど申し上げましたように、貸しはがしにつながるような検査では困るわけでございますが、しかし、日本の金融市場全体が今非常に信頼を失っている中で、大手行は特別検査がある、しかし地銀以下は大丈夫なんだということが本当に言えるのかどうか。その引き当ても含めて、きちっと市場に対するメッセージというのが金融庁から堂々と出せるような体制を考えていただきたいというふうに考えているわけでございます。
 そして、次に関連でございますが、預金者は株価を見て預金をより安全な銀行へシフトしているようにも思えます。都銀や地域の金融機関におきましては、預金の流出が続いている先もあると聞いております。こういった預金者の動き、預金の動きを風評リスクという言葉一言で片づけてしまうのは不適当ではないかと考えておりますが、柳澤大臣、いかがお考えでございましょうか。
村田副大臣 ペイオフ凍結解除を控えまして、委員御質問の預金のシフトという事態が起こっているかということにつきまして、一般的に数字を見て把握いたしますと、そうした動きというものは起こっていない、そういう認識であろうかというふうに思います。
 いずれにしましても、ペイオフを控えておりますので、預金シフトの動向につきましては引き続き注意深く見てまいりたいというふうに考えております。
 預金シフトの原因でございますけれども、株価が変化するということだけではなくて、各金融機関の預金獲得の政策ということもありましょうし、それから、預金者自体が、預金自体もリスクフリーの商品ではなくなりましたので、そういう意味ではほかの商品へ動くということ、こういうことも全般的に考えていかなければいけないのではないかというふうに考えております。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
江崎委員 今、副大臣、必ずしも預金の流出というのが起こっていないという御認識でございましたが、やはり世の中一般では起きているという認識の方が一般的だと思うんですね。
 統計上は、確かに、定期性から流動性預金へ流れるとか、銀行間によっての移り変わりということで、押しなべて見れば状況は変わっていないんだよということは言えるのかもしれませんが、現実にはやはり特定の金融機関を対象に預金流出というのが起きているわけでございます。
 そして先ほどの、なぜ検査が、不十分ではないんですかという心配につきまして申し上げますと、やはり預金者の方も金融庁から、きちっと検査をした結果、太鼓判を押して大丈夫だというような、そういう状況を望んでおられるんだと思うんですよ。そういった具体的メッセージがないことによって、預金者も不安に駆られ、結果として、風評ということで、預金の流出というのが起きているのではないかと感じるわけでございます。
 そういった意味で、柳澤大臣にもう一度、風評リスクということで片づけていないよというきちっとしたメッセージを教えていただきたいと思います。
柳澤国務大臣 我々は、まず第一にペイオフについては、ペイオフについての知識、正しい知識、これをまず持っていただきたい。それによって、例えば、先ほど村田副大臣が言ったように分散化というような、そういうようなことで合理的な預金の移動をするということは、これは健全なことだ、何も問題にするに当たらないというふうに思って、まず正しい知識を持っていただく、こういうふうに考えております。
 それから、その他については、何といっても当該銀行のディスクロ誌というのがやはり大事でございまして、このごろは銀行自身も、預金者に自分たちの銀行のありようというものをより理解してもらった上で信頼をしてもらい、さらに預金もしっかり置いてもらう、あるいは入れていただく、こういうようなことで、懸命にそうした努力を払っている。そういうものが預金者にどういう評価をもらうかでやはりそこに優劣が起こってくるのも、これもまたある意味で私は健全なことだというふうに思うわけでございます。
 問題は、今も江崎委員がおっしゃられたように、風評というか風説、別に経済週刊誌のことを批判するとかという気持ちはないんでございますけれども、そういうようなところで、あるいは経済誌のみならず普通の週刊誌というようなもので、何かこう、何というんでしょうか、そういった不安心理をあおるような記事があって、それでそういうものを真に受けてやってしまうというようなことは、私は余り健全でないというふうに正直言って思って、もうちょっと、それはきっかけになることはいいと思うんです。自分の預けている銀行について、こういう記事があったけれども本当に大丈夫ですかというようなことで、いろいろまた調べをしたり、あるいはディスクロ誌をもう一回詳細に見てみるというようなことは、私はあっていいことだと思いますけれども、それだけで心理的に不安心理に駆られて動いてしまうというのは、やはりちょっと控えていただきたいなというのが我々の考えているところでございます。
江崎委員 何も悪者探しを早くしてくださいということを申し上げたいわけではございませんで、きちっとした検査を実施して、ペイオフ解禁に向けて、問題金融機関というのはもうきちっと処理もされたし、その他の金融機関はみんな安心だぞというような金融庁のメッセージがきちっと預金者の皆さんに伝わっていくことが今大事ではないかというふうに思いますので、その点は十分踏まえてよろしくお願い申し上げたいと思います。
 関連して、ペイオフの議論を続けさせていただきますが、資料をお配りしました今度は右側の、三つの各国のグラフの方でございます。これは各国のペイオフ解禁時の経済環境を示したグラフでございます。グラフの斜線部分というのは、実質的な全債務保護、預金者から見ると全額預金保護を示すわけでございますが、銀行側から見た全債務保護が発動されていた時期がこのシャドーになっている部分、影になっている部分でございます。この一番が米国で、北欧三カ国、韓国ということでの事例でございますが、いずれの国を見ましても、経済環境を見ますと、各国とも景気がリバウンドした時期にペイオフの解禁というのを実施しているわけでございます。
 加えて、ちょっとこの資料にはございませんが、大口預金のウエートというものを日米で比較した資料が手元にございます。この比較を見ますと、米国の解禁時で見ますと、大口預金一千万円以上の比率というのは、全預金に対して、アメリカの場合は九一年の解禁時には二〇%しかなかったんですね。しかし、日本はいまだ約六〇%と非常に高い状況にあるわけでございます、大口預金比率でございます。これは、日本の場合は二〇〇一年三月末でございます、アメリカは九一年十二月末でございますが。
 このように、日本は他国のような恵まれた環境の中でペイオフを解禁するのではなくて、むしろ厳しい環境の中でペイオフを断行しようと考えておられるということでございますが、柳澤大臣、この辺はいかがお考えでございましょうか。
柳澤国務大臣 結論を申しますと、私どもは、一つ、やはりペイオフの解禁が異常ではなくて、預金の全額保護がまさに異例の措置であったというふうに思っておりまして、それがそもそもは五年間の時限的な措置であった、その期限がエクスパイアしたときに、本来、整々と解禁してよかったということなんですが、それを、信用組合の所管がえというような特殊な事情がございましたので一年延期した、こういうことでございます。したがって、この延長期間もエクスパイアいたしますので、それをやらせていただきたい、こういうことであるわけです。
 今、非常にタイミングの点が言われたわけでございますけれども、私どもとしては、今の日本の金融機関というのは、ただいまずっと江崎委員のお話にありましたように、よく検査監督をして、本当に健全な金融機関という形でペイオフを迎えてほしいというお話があったわけですが、我々はそれと同じ指示を先般総理からもいただいておりまして、それをいただいたから今すぐこれから何をやると、そこの点で申すわけじゃありませんけれども、私どもとしては、先ほど副大臣の方から話がありましたように、まず基本的に、金融検査マニュアルが制定された後、悉皆的な、しかも一体的な、検査マニュアルというのは信用リスクだけじゃなくて、いろいろな、例えばコンプライアンスだとかそういったようなことについても検査をするということが書いてありますので、そういう一体的な検査をしました。その後で、もうちょっと手間をかけないで、信用リスクだけに注力した、そういう検査もしておるわけでございますが、これは適切に対象を選んでやらせていただいておるということで、限られた時間と限られたマンパワーの中で、何とか所期の目的を達したいというふうに考えておるわけでございます。
 最後につけ加えれば、やはりここまで構造改革というものを進めてくる中で、例えばペイオフにしましても、やはり構造改革という面では明らかにこれと軌を一にするものであって、それをまた延ばしてしまうというのは、構造改革というものに逆行するベクトルを与えることになるという観点も、もちろん念頭にございます。
江崎委員 私も、何もペイオフ解禁をしないでくれということを申し上げたいわけではございません。むしろ、ペイオフを解禁する以上、現状の信頼を失った金融市場、これに信頼性を持たせるような環境づくりが何よりも大切であり、先ほど申しました経済環境というのもあるわけでございますが、これは時期の問題、時期というかサイクルの問題。しかしながら、銀行の経営状況の把握また不良債権の処理という問題は、現実的に今、日本政府が直面して、対応していかなければいけない喫緊の課題だと思っております。
 そういった意味で、環境をいかに整えるかということが本当に重要な時期に来ておるわけでございますが、時間もそろそろ迫っておりますので結論部分に入らせていただきますが、やはり今問題となりますのは、本質的に不良債権を不良債権と認識しない認識不足でありますとか、そして、それによってもたらされます銀行側における引き当て不足、償却不足、さらにそうした不足が、ちゃんとした引き当て、償却によって穴埋めをしておけば資本不足にはならないはずなんですが、結果として資本不足に陥ってしまう可能性とか、こういったことが問題ではないかなというふうに感じているわけでございます。
 構造改革を断行するのであれば、その痛みに十分耐え得るだけの資本を今の段階で注入しておく必要があるのじゃないかというふうに私は感じるわけでございます。そうでなければ、やはり構造改革の途中で、この金融システムの中で不安が生じるおそれというものが、最も怖いことじゃないかなというふうに感じております。
 この構造改革の痛みのさなかにペイオフ解禁をするわけでございますし、今申し上げたように、そのような厳しい環境の中でペイオフ解禁を実施した国というのはどこにもないわけですよね。そういった意味でも、ペイオフ解禁に備えるということで、銀行に今思い切った予防的引き当てを積ませて、それによって生じる資本不足というものを公的資本の投入によってカバーする時期にもう来ているのではないかというふうに強く感じております。
 そして、ともすれば主要行だけを公的資本投入の対象と考えがちではありますが、総合的な議論で考えますと、対象を主要行に限定すべきという議論は出てこないはずであります。やはり広く地銀以下の金融機関につきましても構造改革の痛みに耐え得る予防的引き当て、危機の現状から考えると、先ほどの株主も大事でありますけれども、しかしこの危機に直面しているさなかにおきましては、予防的引き当てというものにつきましても、十分理解を株主の方にもしていただいて、こうした引き当ての原資、公的資本を投入するという決断の時期に来ているとは思いますが、金融大臣、いかがでございましょうか。
柳澤国務大臣 公的資本を投入することと構造改革の関係について、今、江崎委員、触れられたように受け取りました。これは本当に、何というか、一つの論点だ、こういうように思うわけでございます。
 私は、公的資金を安易に入れたら、少なくとも銀行の構造改革、ひいては貸出先の構造改革の推進力は弱まるというふうに思うんです。それは、能力の面では確かにそういうことをやってのけるだけの能力が増すかもしれませんが、人間は、能力があればそれをやるということじゃなくて、追い込まれてやることもあるわけです。あるいは、そういうもうせっぱ詰まった中で推進していくということもあるわけでございます。昨今の銀行の、いろいろな自分の体質についての見直し、あるいは利益を上げるために中小企業貸し出しに無担保の貸し出しをしようというような動き、ここまで踏み込んで自分たちの業務について構造的な改革をしようというのは、私は、能力がそういうものをもたらしているよりも、むしろ置かれている状況がそういう動きをもたらしているというふうに思うのでございます。
 したがって、そういうことがゆったりできるようなそういう条件を与えるときに本当に構造改革のドライブになるのか、ブレーキになるのか。これは非常に大きな見方の別れるところだと思うんですが、私は、ドライブにはならないというように思っているわけです。
 私は、だから、ではどういうときに公的資金を入れるかといったら、これは金融不安、あるいは金融危機というか、そういうものを未然に防ぐということ。このときには、ある意味で私は、安定をかち取るということ、これをもう第一義的にしなきゃいけないという状況だと思いますから、場合によっては構造改革にある程度ブレーキがかかったとしても、そんなこと言っていられないというときだろう、こう思っているわけです。
 私は、構造改革というものを進めるためには、もう本当に、大変恐縮な物の言い方かもしれませんが、銀行が追い込まれるということの方がドライブがかかるというように思っておるわけでございます。
 予防的引き当てについては、むしろ引き当てで自己資本を積まざるを得ないように持っていくというよりも、そういう意味の引き当てだったら、本来資本が受けとめるべきリスクだというふうに思いますので、そういうことは、予防的引き当てをしなくて資本を厚くするということがむしろ選択されるべきだ、このように考えます。
江崎委員 予防的引き当てに関しまして、ちょっと危機の認識の違いというものもあるんではないかというふうに思います。やはり今、金融危機に瀕している。銀行が資本不足に陥ることなく十分な引き当てが積めるような環境が続いているとすれば、私も時間的にはもちろん、なるべく公的資金を入れない方がいいと思います。しかし、今はもう待ったなし、公的資本を入れないと銀行の引き当て不足というものもままならない状況という認識にあるものですから、一日も早く御決断をいただきたいというふうに願っているわけでございます。
 昨日、村田副大臣ともちょっと雑談をさせていただきましたが、企業再生、ここにやはりかかってくる部分もあると思います。予防的引き当てを積んだ上で自行のもとで企業再生をさせていくという考え方もあろうと思いますし、また、不良債権を切り離して、RCCを通じて市場に売っ払って、市場にゆだねて企業再生を図っていくという考え方もあろうかと思います。
 今大事なのは、お金というのを血流に例えれば、お金が動いていかない、こういうことが問題であって、やはりこれからは、企業再生を中心に考えていくとすれば、何よりも不良債権を早く処理していかなければいけない。その原資がやはり公的資本注入につながるんではないかというふうに考える次第でございます。
坂本委員長 江崎委員、時間が来ておりますので、結論を急いでください。
江崎委員 最後に一点だけ、ちょっと御提言をさせていただきたいと思います。次の質問者に……
坂本委員長 時間が来ましたので。新しい質問には入らないことが申し合わせになっています。
江崎委員 質問ではなく提言だけ、意見だけ一つさせてください。
坂本委員長 急いで言ってください。
江崎委員 はい、わかりました。
 与党から先週、RCCに不良債権を実質簿価で買い取らせる案というものが提案されました。これは幾つかの理由で流れた、見送られたということではございます。しかし、金融機関が自主的に不良債権処理に取り組むような意欲を持たせるためには、金融機関が資本不足に陥らずに不良債権をどんどん処理していけるような枠組みを整備することが今重要じゃないかというふうに考えております。
 これにはなかなか妙案はないわけですが、RCCという公的な枠組みならではの工夫の余地はないだろうかというふうに今考えておるわけでございます。例えば、不良債権の売却によって発生した二次ロスを、一たんRCCに立てかえてもらう形で、これを長期に案分して、全額を金融機関の期間収益の範囲内で計画的に処理させることができないのだろうかという考えもあろうかと思います。これは、二次ロスを資本の食いつぶしととらえるのではなくて、長期のキャッシュフローの負担という形に置きかえる形で処理ができないものかという考えでございます。これはもう当然会計原則の問題などにいろいろ触れてくると思いますので、まだまだ工夫の余地はあろうかと思いますが、新しい一つの不良債権処理の考え方として、ひとつ御検討をいただけないかというふうに考える次第でございます。(発言する者あり)ありがとうございます。
 長時間にわたって大分オーバーをしましたが、以上で私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
坂本委員長 各委員に申し上げますが、質問時間はきちっとお守りいただきたく思います。
 次に、小泉俊明君。
小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。
 早速、質問通告に従いまして質問させていただきます。まず、日本経済の現状に対する基本的認識についてということでございます。
 政府・与党は、九年間で十四回もの景気対策をしてまいりましたが、いつまでたっても、よくなるどころか、ますます悪くなっているというのが現実であります。また、小泉内閣が発足いたしまして十カ月がたちましたが、構造改革という、格好はいいんでありますが、実体経済はどんどん悪化をし、すべての数字が悪化をしております。
 しかし、この委員会また予算委員会等での大臣の方々の答弁を聞いておりますと、どうも実態に対する危機感が極めて薄いんではないかという印象があります。国民の血の出るような実態とどうも感覚が大きくずれているのではないか。言うまでもなく政策論は、現状を認識しまして、原因を分析して対策を打つわけでありますから、現状の認識がやはり一番大切であります。
 それで、初めに経済の実態に関しまして基本的な事実から確認させていただきますが、まず一九九八年から二〇〇一年までのGDPの名目成長率は、それぞれどうなっておりますでしょうか。政府委員で結構でございますので、お願いいたします。
小田政府参考人 御説明いたします。
 名目GDPの前年度の伸び率の推移でございますが、九八年度がマイナス一・三%、九九年度がプラスの〇・二%、二〇〇〇年度がマイナス〇・三%でございます。ちなみに、二〇〇一年度、これは実績の見込みでございますけれども、マイナス二・四%程度となっております。
小泉(俊)委員 実質、GDP名目成長率が大体三年続けてマイナスに近い。
 続きまして、九九年からの消費者物価指数につきましては、九九年、二〇〇〇年、二〇〇一年でどのような推移になっておりますでしょうか。政府委員にお願いいたします。
大戸政府参考人 総務省が公表しております消費者物価指数の全国総合で見ますと、一九九九年が前年に比べて〇・三%の下落、二〇〇〇年が〇・七%の下落、二〇〇一年が同じく〇・七%の下落で、三年連続して下落しているところでございます。
小泉(俊)委員 続きまして、株式の時価総額についてお伺いしたいんですが、ピーク時の一九八九年の三万九千円から、現在一万円前後でございますが、これはどのくらいの時価総額が失われたのかを、政府委員で結構でございますので、御答弁をお願いいたします。
村田副大臣 お答えをいたします。
 日経平均株価が過去最高値をつけたのは平成元年十二月二十九日でございますが、昨日、二月二十六日ですが、それとの比較をいたしますと、東証第一部株式時価総額の減少額は約三百十二兆円でございます。
小泉(俊)委員 続きまして、小泉内閣発足以来、日経平均一万四千円から一万円前後まで落ちたわけでございますが、この間でどのくらいの時価総額が失われましたでしょうか。
村田副大臣 同様に、約百一兆円でございます。
小泉(俊)委員 続きまして、土地の資産額についてちょっと確認させていただきたいのですが、これも、ピーク時から今現在で大体幾らぐらいの土地資産額が失われましたでしょうか。政府委員で結構でございますけれども。
小田政府参考人 土地の資産額でございますけれども、私どもの推計では、九〇年の末に約二千五百五十五兆円でございました。それが、二〇〇〇年末には千五百三十五兆円程度となっておりまして、約九百二十兆円のマイナスになっております。
小泉(俊)委員 今、事実の数字を確認させていただいたのですが、名目GDPも大体四年連続マイナス、消費者物価も三年連続のマイナスですね。株も土地も十年連続で下落し続けている。これは明らかに、どう見ましてもデフレスパイラルの真っただ中にあるというふうに見るのが自然だと思うのでございますが、塩川大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 まさに資産デフレの真っ最中だ、私もそう思います。
小泉(俊)委員 資産デフレといいますか、政府のいろいろなあれを見ていますと、私は明らかにこれ、資産デフレ、デフレスパイラルに入っているにもかかわらず、なかなか今まで、この入り口にいるというような表現を使われているケースが多かったわけでございますが、塩川大臣、これはデフレスパイラルにもう入っているという認識でよろしいのでございますか。もう一度確認させていただけますでしょうか。
塩川国務大臣 竹中大臣は、物価についてはスパイラルになっていないということをはっきり言っておられまして、それはスパイラルの対象になっているものが違うと思っております。
 私は、現在、土地についてはスパイラル的な状況になっておると思いますが、株につきましてはスパイラルではない。確かにデフレではございますけれども、しかし、これは外国との要件とかいろいろございまして、あながち株自体の中でスパイラル現象が起こってきておるとは思っておらない。いろいろな要件で株価修正が急激に、かつ激烈に来ておる、こういうふうに認識しております。
小泉(俊)委員 塩川大臣の御認識と私はこれは非常に同じ認識なのでございますが、また柳澤大臣が、私、当選以来、一年八カ月前から御就任されていまして、塩川大臣がちょうど、小泉内閣が成立してから十カ月間大臣をされております。その間、一番最初の質問のときに私がお二人に実はさせていただきました質問が、やはり現状を、実態の現状をどの程度把握されているかということで私が御質問させていただきましたのが、実は年間自殺者の数の問題なのでございます。これはかなり代表質問初めいろいろな委員会で今言われていると思いますけれども、基本的な数字でございますので、通告ないですけれども、年間の自殺者は今、一年間でどのくらいの数かということを御認識されていますでしょうか。塩川大臣。
塩川国務大臣 三万人強だそうです。
小泉(俊)委員 今、実はこれ、かなりいろいろな委員会で皆さんが最近話していますし、毎年毎年新聞で大きく出ています。実は、平成十年から急激に一万人近くふえまして、それ以降、十年から四年連続三万人を超える今自殺者なんですね。ただ実数は、私の友人も実は何人か亡くなっているわけですが、事故死ということで、これは暗数がありますので、実際は十万人というのが言われているような現実もあるわけであります。
 小泉内閣が発足した後でも、実はこれも二万五千人も自殺者が出ているわけですね。私、この自殺者の内訳を調べてみましたところ、年代別に見ますと、六十歳代が実は三五%で一番多いわけですね。そのあと、働き盛りの三十代、四十代、五十代で何とこれ、五割を軽く超えている。一家の大黒柱の方たちが今かなりの人数が自殺しているわけですね。こうなりますと、路頭に結局その家族、奥さんや小さな子供たちが、大体一家族で、一人で大体三人から四人でありますので、数万人から十万人単位で今大変な状況にこれはなっているわけであります。
 こういった事実の数字を見まして、経済運営の責任者として、一体どんな御感想をお持ちかをお聞かせいただけますでしょうか。
塩川国務大臣 まことに痛ましいことでございまして、私どもも、自殺者がふえておるという事実は認識しております。
 しかし、その原因につきましてはいろいろあるということも聞いておりまして、特に高齢者におきましては、最近、非常に難病がふえてきておるという、このことの、それに伴うところの生活苦ということが相当深刻になってきておるところ等も聞いております。
 もちろん、おっしゃるように、経営上の問題等を苦悩にされた方、あるいは仕事の過労死からくる方々等も、これもふえておる一つの要因であろうと思っておりますけれども、その実態、詳細については私はきわめておりませんので御返答申しかねますけれども、いずれにいたしましても、こういう事態は本当に痛ましいことでございまして、何とか明るい社会をつくるための努力をあらゆる面から進めていかなきゃならぬだろう、こう思います。
小泉(俊)委員 同じく、柳澤大臣はいかがでございましょうか。金融の責任者といたしまして、やはりこの自殺者の数、そしてまた、それに伴う家族が今極めて悲惨な状況に置かれている現状につきまして、どうお考えでございましょうか。
柳澤国務大臣 本当に痛ましいことでございまして、こうした構造改革に伴うきしみというものを早く克服して、できるだけ短期間にこれを乗り越えて、また構造改革後の明るい経済社会というものを実現しなければならない、このように考えております。
小泉(俊)委員 また、企業倒産が大変ふえております。この数字も非常にいろいろな委員会並びに新聞で、でかでか出ておりますが、昨年一年間の企業倒産数はどのくらいだったかは御存じでございましょうか、大臣。大体の数で結構でございますが。
塩川国務大臣 平成十三年の十二月現在で、企業倒産件数は千五百三十二件、前月比二・六%増となっております。
小泉(俊)委員 今のは突然でございますが、ただこれ、一年間通じますと二万社なんですね。一月に大体千五百社から千七百社倒産していまして、実は昨年一年間では二万社倒産したわけであります。
 この企業倒産に伴う従業員の被害者数を調べましたところ、東京商工リサーチによりますと、二十二万六百八十人、これは実は調査の始まった一九七六年以来の、過去最高の倒産に伴う従業員の被害者数なんですね。
 結局、企業倒産に伴って二十二万人も失業いたしますと、先ほどもお話ししましたが、一家の大黒柱が突然失業するわけでありますので、実際、三人から四人家族がいるとしましても、六十万から八十万近い、毎年です、一年間、去年一年だけで八十万人ぐらいが倒産の被害を受けているということなんですね。
 実は、いろいろ調べましたところ、公立、私立の高校の中途退学者を調べたのですが、経済的理由による中途退学者がかなりふえてきたのですね。それも、県立高校で、ある県で進学率一番のような公立高の生徒ですら、今ぽつぽつと経済的理由で学校をやめざるを得ない。また、私の地元の小学校なのでございますが、小学校でも今給食費を払えない生徒が大体一クラスに三人から四人いるんですね。
 やはりこういった事実、この数字を前にして、先ほどもちょっとお伺いさせていただいたんですが、経済運営の最高責任者であります塩川大臣、柳澤大臣、どういった御感想をお持ちでございましょうか。
塩川国務大臣 もちろん私たちは、そういう社会的な暗い面の情報ということも十分に承知しております。でございますから、何としてもやはり景気をよくして生活の安定を図るということが最大の努力でございまして、そのためには、一つは企業の活性化のためのいろいろな構造的改革。つまり、私たちの目指しておりますのは構造改革というのを、サプライサイドからの構造改革を進めて、それによって企業の活性化を図ろうという考えでございまして、もう一方、需要側からの景気対策というのがございますが、それを併用してやっていくところに今いろいろと御批判を受けておるようなところがございます。
 けれども、いずれにしても、供給面、需要面、両方からの経済の活性化に懸命の努力をして、そういう痛ましい問題が起こらないように、少なくとも減少するような方向に努力を進めていきたいと思っております。
小泉(俊)委員 柳澤大臣、簡単で結構でございますので、いかがでございましょうか。
柳澤国務大臣 構造改革というのは、まさにそういうことを伴わなければならない改革であります。したがって、新しい雇用の場をつくる、新しい産業をそのために生み出す、こういうことが喫緊の課題である、このように認識しています。
小泉(俊)委員 実は一年半前にまた柳澤大臣に質問いたしましたし、ちょうど塩川大臣が就任された後もすぐ質問したんですが、これは実は失業者、大変ですよね。そのときもお尋ねしたんですが、塩川大臣は十カ月たちました。柳澤大臣は一年八カ月たちました。この間にハローワークに足を運んで中を見たことはございますか。塩川大臣と柳澤大臣、お願いいたします。
塩川国務大臣 私は、昨年の夏ごろに参りました。大変な混乱をしておる実情を見ておりました。
柳澤国務大臣 私は、先般お答えしたとき以降、ハローワークとはごぶさたをいたしております。
小泉(俊)委員 ぜひとも現場を大臣、忙しいのはわかります。ただやはり、霞が関と永田町の中で数字を見ているのと現実の実態を見るのではかなり違いますね。私は、実はここ三カ所ちょっと行ってまいりましたが、前に、一年半前、十カ月前にそれぞれお二人の大臣に質問させていただいたとき以上に今大変な状況ですね。ぜひとも見ていただきたいと思います。
 また、あのとき御質問させていただいたんですが、実は上野とか新宿の浮浪者というのは結構いまして、本当に昼間でも男一人だと歩くのが怖くなるような状況なんですよね。ところが今、東京駅の地下街の、丸の内の地下ですら、非常にきれいな格好をした浮浪者の方たちが大量に夜寝ているんですね。
 ですから、そういった現実もぜひとも、数字だけではなくて、足を運んでいただいて、実感として今の痛みをぜひともわかっていただきたいと思います。今話してきたのは、これはやはり現実をぜひとも見ないと、見ると聞くとは大違いですから、その観点から御質問させていただきました。
 今こういった大変厳しい状況の中で、政府も総合デフレ対策、また自民党、与党もデフレ対策特命委員会ですか、こういうのをやられているわけですね。ただ、昨日政府の総合デフレ対策が日経に載ったわけですけれども、見ましてびっくりしたのが、ほとんどこれは何かお経のお題目のようなもので、何ら具体策がない。国民が、あれを見て景気回復するという期待をする人というのは、私はほとんどいないんじゃないかと思うわけですね。これは、交通事故に国民が遭って、重傷を負っていまして血が出ているんですけれども、その前でお医者さんが健康一般の問題につきましてどうも講釈をしているような状況に極めて近いと。
 私、長々御質問させていただきましたのは、この出てきた対策の中身を見まして、やはり日本経済の現実の厳しさ、生きるか死ぬかというところに追い込まれている中小企業の経営者、そしてまた日本経済全体もこれはのるか反るかというぎりぎりのところまで来ているというのが私の実感なのでございますが、どうもこの対策を見ていると、本当にそういう感覚があるのかなというところに大変大きな疑問を持ったものですから、再度、先ほどからのようなことを質問させていただくわけであります。
 デフレ対策に移りますけれども、これは自民党のデフレ対策特命委員会が、物価の数値目標を定めて上昇させていくといういわゆるインフレターゲティングの導入を御提案されておりますね。先日予算委員会に私が出ていましたら、塩川財務大臣も、物価を上げていくことを目的にするというようなお言葉だったと思うんですけれども、これに言及をされておりましたけれども、この議論の是非につきまして、塩川大臣、どうお考えかをお答えいただけますでしょうか。
塩川国務大臣 物価の下落がやはりデフレの中心的な理由であろう、原因になってきておるだろうということを認識しております。したがって、物価の下落を何とかとめたい、こう思っておることは事実でございまして、そのための努力もいろいろとやっております。それは、一つは金融緩和ということもございましょうし、あるいは需要促進ということもございましょうし、いろいろやってまいりました。
 そこで、物価をどの辺のところに置くかということがやはり政策の一つの大きい基準になってまいりますので、私たちといたしましては、平成九年、一九九七年、八年というところ、その辺を一つの基準にして物価の上昇を図っていきたいと思っております。
 ところで、その間におきます物価の下落率をとりましたら、約二%近くなんですね。この部分を押し上げていくということになる。でございますから、私は、スパイラルになっておるとは思っておらないんです。これは、ある部分的に価格破壊運動が起こってまいりましたことと、輸入品で非常に安いものが輸入をされてきた、そういうものを総合して物価下落になってきたと思っております。
 けれども、この物価下落が恒常的に続いてまいりますと、いろいろな慢性病となって経済に悪い影響を及ぼしまして、私は、これは糖尿病にかかったような感じだなということを戒めて、これの予防策を講じておかなきゃいかぬ、こう考えて一生懸命努力しておるところであります。
小泉(俊)委員 いわゆるインフレターゲティング論に非常に前向きのお話だったと思うんですが、先ほど私がずっと御質問させていただきましたように、今、日本経済は大変な状況ですね。いまだに景気が引き続き悪くなっているというのが私の認識なんですが、その中で一般物価を上げていくということになれば、これはどうも、景気が悪くなっているにもかかわらず一般物価が、スタグフレーションになる可能性が極めて高くて、私は、基本的な経済の悪さというかその認識がちょっと違うんじゃないかなと思うんです。
 財務大臣、一般物価を上げますと、この中でいくとスタグフレーションになる危険性というのはないんですか。
塩川国務大臣 経済の現状についての認識は、皆さん方と我々、与党と野党との間でそんなに違わないと思います。
 ではこれの景気回復に対する対処方針というものが、それが自民党の中でもいろいろな議論がございまして、サプライサイドから改正していくべきだという意見と、それから、いや、何はともあれ需要喚起をしなきゃならぬと。野党の皆さん方においてもその意見が二つに分かれておると思っております。
 私たちは今、どちらかといったらウエートを、構造改革ということはすなわちサプライサイドの改革に重点を置こうということをしておりまして、それにはその転換を、需要サイドからサプライサイドへ転換していく、今その過渡期にあって、その部分が若干時間を要しておるというところでございまして、私は、構造改革をやはり地道に進めていくことによって所期の目的は必ず達成していく。その期間を経済財政諮問会議等においては一応二年間というふうにしておりまして、二年間集中したときに、デフレ解消、それから脱却する時期と見て努力しておるということでございます。
小泉(俊)委員 確かに意見は分かれるところなんでございますが、これは数値目標を例えば置くとしましても、一たんインフレに入った場合、具体的にコントロールすることというのは極めて難しいんじゃないかと私は思うのでございますが、もしそれをコントロールするのであれば、具体的にはどのような政策でコントロールするということを、インフレターゲティング論に入る以上はそこまで当然準備してやられていると思うんですけれども、その辺につきましてはいかがでございましょうか。
谷口副大臣 今まさに先生おっしゃったように、三年以上の消費者物価の下落が持続的に続いておるわけで、深刻な経済状況になっておるということでございます。
 それで、先ほど塩川大臣おっしゃったように、政府、日銀一体となって、この二年程度でデフレを回復していくということで、これを最重要項目といたしておるところでございますが、それで今おっしゃったことでございますが、一定水準以上のインフレになってしまうというようなことになりますと、これは大変またそういう意味での問題があるわけでございますので、政府といたしましては、インフレを起こさないというようなことで、まずは物価下落を阻止していくという観点で経済運営を行っていくことが適当だというように思っておるわけでございまして、今おっしゃったようなインフレターゲット論をとるというようなことについては、慎重な対応をいたしておるところでございます。
小泉(俊)委員 非常に微妙な問題だと思いますので。
 ただ、食品とか衣料品とか電化製品、一般物価が下がったことで国民は不満はないんですね、実は。これだけの不景気の中で、なぜ国民が暴動も起こさず普通に生活できるか。実は、物価が下落していますので、給料が下がっていましてもそれなりの生活ができるというところに私はあると思いますね。
 やはり今国民にとって問題なのは、これは個人消費が活性化しない最大の理由なんですけれども、何度も、いつも私、これは当選以来ずうっと言っているんですけれども、株と土地が、先ほども申し上げましたように二大資産が下がり続けている。持っている資産が目減りしているという、ここにやはり一番、私は、本当は国民の最大の不安があるんだと思うんですね。先ほどお話ししましたように、土地と株だけで一千二百兆円近く十年でなくなっていますし、小泉内閣発足以来でこれは百何兆円と言いましたですね。
 また、不良債権処理を柳澤大臣進めているわけでありますが、これは実際は土地の担保価値が下落し続けていますし、あと株の評価損がありますので、リスク管理債権、答えると時間がありませんのであれですが、不良債権も減るどころかふえていますよね。また、土地の担保価値が下落しているため、中小企業はほとんど、個人もそうです、ほとんど実質的には銀行からもお金を借りられない状況なんですね。いわば経済のバケツの底が抜けちゃっているようなのが今最大の原因であります。
 ですから、私は、デフレ対策というんであれば、やはり一般物価を上げるということではなくて土地と株の資産デフレ、これの下げどめを、底をつけるということに私はすべての政策を動員しないとまずいんじゃないかと思うんですが、その辺につきましては、財務大臣、いかがでございましょうか。
谷口副大臣 まさにおっしゃったように、今、資産デフレというような状況があるわけで、その資産デフレ対策をやったらどうか、それがデフレ対策になるのではないのかというような御質問だと思うわけでございます。
 おっしゃるように、株価、地価などの資産の下落は、逆資産効果であるとか、また、バランスシート調整等を通じて総需要を減退させる、それが経済に大きな影響を与えるというような大変深刻な面があるわけでございます。また一方、持続的に一般物価が下落するといったことも、実質金利の上昇による総需要抑制であるとか、また、実質債務負担の高まりなどを通じて我が国経済にまた深刻な影響を与える。
 ですから、そういう意味におきまして、デフレの対策は、いわば一般物価と資産デフレ、資産の観点また一般物価の観点、この両方あわせて対策を講じる必要がある、このように感じるところでございます。
小泉(俊)委員 時間がなくなってまいりましたが、一般物価と資産デフレ、両方やられるということでありますので、資産デフレ対策について特にお願いなんでございますが、国民の金融資産、一千四百兆円持っている、この国民金融資産をいかに現金から株と土地にシフトさせるか、これこそがやはり資産デフレの一番の対策で、それがまだ見えないわけですね。私は、これは午後からもやらせていただきますけれども、現金で保有するよりもやはり資産で保有する方が、これ、税制上優遇をしていかなければ、なかなか活性化しないんじゃないかと思うわけですね。
 その中で、一つ、もう時間がありませんので簡単にあれですが、日本経済の危機的現状から考えるとき、やはりどうも財務省の方針を見ていますと、どうやって税金を取るかということばかりに一生懸命なんですね。ところが、もう今国民が死にそうな状況ですから、そこから税金を搾り取ろうとすると実はみんな死んじゃうんですね。
 ですから、いかに税金を取るかという発想から、いかにして経済を税制によって活性化させて、しかる後に税収を上げていく、そういった観点に切りかえないと、日本の経済というのはやはり復活しないんじゃないかと思うんでございますが、この点につきましては、財務大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 平成十四年度税制改正におきましては、税制は中立を維持しまして、大きい増減がなかったことにいたしました。けれども、十五年度税制改正に向けては、その点を方針を若干修正いたしまして、おっしゃるように、経済の活性化に役立つように十分な対策を講じたい、配慮したいと思っております。
 けれども、税は、もう申すまでもございませんが、公平、中立ということが一番の基本でございますので、それがために国会というものを設けられたぐらい重要な、基本的な哲学でございますので、その点は十分配慮しながら、けれども、当面する経済政策に資する、活性化に資する税制改革に持っていきたいと思って、鋭意勉強中でございます。
坂本委員長 小泉君に申し上げます。質疑時間が終結しました。
小泉(俊)委員 午後もまたやらせていただきますが、今、経営者にお話ししますと、やはり税制を経済の活力の方にぜひとも向けてほしいと。ところが、国会に来ますとこれがごく少数派になりまして、外に行きますと九割方そういう話です。ぜひとも財務大臣、その方向でひとつ鋭意御努力いただけますよう、よろしくお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
坂本委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 今ほどもちょっとお話ありましたけれども、景気対策という観点から、供給サイドと需要サイドと両方あるわけですが、これはもちろん両方一緒に進めていかなければいかぬわけですけれども、私は、きょうは、需要サイドを喚起するための税制について議論させていただきたい、こう思います。
 まず、財政健全化との関係もあるわけでございますか、財政を健全化するには、当然、税収が上がる必要があるということですが、その際に、いろいろな、税制をいじって増税すればそれは簡単なことなんでしょうけれども、これは逆に景気を悪くする方向になるわけでありまして、そうすると、結局税収が落ちてくる。逆に、景気がよくなれば、いわば自然増収という形で税収が上がってくるわけでありまして、私はやはり、まず、財政を健全化するためには、自然増収を上げるように努力をし、それによって、景気がよくなることによって税収が上がって財政が健全化していく、こういう方向でいくべきだ、こう考えるわけですけれども、財務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
谷口副大臣 藤島委員のまさにおっしゃるとおりでございます。基本的な経済の体力をつけて、それが税収に反映するわけでございますので。
 御存じのとおり、本年一月から聖域なき税制論議をいたしておるわけでございまして、そこにおけるポイントは、一つは、歳入歳出のバランスを考える必要があるだろう。また、もう一つは、景気の活性化を考える必要があるだろう。また、もう一つは、税の公平、不公正というような観点も必要だろう。このようなポイントがあるわけでございますけれども、まさに今委員がおっしゃったような景気の活性化というのは、税収に直接結びつくわけでございますから、大変重要なことだというように認識をいたしております。
藤島委員 ところで、平成十三年度の、今年度の予算でございますけれども、予算編成当時見積もった税収に比べまして、現在はどれくらいになるというふうにお考えでしょうか。当初見積もっていたときに比べてかなり自然減収といいますか、税制はいじっていないのにもかかわらず、当時といいますから一年ちょっと前の十二月に予算編成したわけですけれども、そのころと現在では、当時考えていた以上に景気が悪くなっておって、いわば自然減収といったような意味でかなり税収が減ると見積もられますが、それを現段階でどのぐらいと見積もっておりましょうか。
谷口副大臣 十三年度税収についてのお尋ねでございますが、十三年度税収につきましては、第一次補正予算において、それまでの課税実績、大法人に対するヒアリング結果及び経済状況等を踏まえて、当初予算からマイナスの、一兆一千二十億円減額し、四十九兆六千二百五十億円と見込んだところでございます。これは、対前年比九七・九%でございます。
 現在判明いたしております直近の実績である十二月末税収でございますが、累計で前年比一〇〇・五%、十三年度補正予算後予算額に対する進捗割合は五六・六%となっておるところでございます。これは、補正予算の見積もりにおいて想定した税収動向の基調に沿ったものと考えておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、十三年度税収についてはまだ四割を超える収納が残されておる段階でございますので、今後の税収動向を十分注視していきたいというように考えております。
藤島委員 おっしゃるように、もう少し間があるわけでありますので、決算段階を見ないとわからないわけですが、少なくとも、当初に比べ、既にもう一兆円以上下がってきておるわけですね。
 これの処理としては、予算の節約でやるか、あるいは新たな国債を発行するか、あるいはほかに方法があるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
谷口副大臣 今申し上げた、途中の状況でございます。それで、今、例えば決算上不足が生じるといったような場合の御懸念をおっしゃったんだろうというふうに思うわけでございますが、これは、決算調整資金に関する法律というのがございまして、当該不足額を補てんするために、決算調整資金から当該年度の歳入に組み入れるということになるわけでございます。
 現在、この決算調整資金の残高がないわけでございますけれども、このような場合には、この法律に従って、不足額を国債整理基金から決算整理資金に繰り入れることができるというようになっておるわけでございます。その場合には、繰り入れた日の属する年度の翌年度までに繰入金相当額を一般会計から資金に繰り入れた上で、国債整理基金にまた繰り入れるということになっておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、決算上不足額が発生した場合でも国債の追加発行を行うということはないわけでございます。
藤島委員 要するに、究極的に言えば、国債発行で穴埋めするか、あるいは翌年度以降の歳出を切り詰めていくしかないわけでありまして、結局、自然減収になればその分先のものを先食いするような形にしか処理できない。
 何でこんなことを私申し上げているかといいますと、また平成十四年度予算も、税制をいじらないにもかかわらず税収は減ることが見込まれるわけですね。要するに、私は、最初に申し上げたように、景気を上げることがまず前提で、そうしないと国の予算も自然減収になりまして、だんだんじり貧になっていくということだろうと思うんですね。小さな政府という観点からは、それは構わないのかもわからないんですけれども、現在のような財政均衡、プライマリーバランスも考えながら今後の国家予算を考えていくに際しては、非常に重要な要素を持っている、こう考えるわけであります。
 ちなみに、平成十二年度の税収は五十兆七千億円、十三年度では四十九兆六千億円、十四年度では四十六兆八千億円とかなり減っているわけでございます。
 そこで、十四年度の予算についてでございますけれども、五兆円削減して二兆円新規の、都市再生とか新しい分野に回そう、こういうことですけれども、その差の三兆円というのは一体どうなっているんでしょうか。
塩川国務大臣 その五兆、二兆という考え方は、要するに、平成十二年度に展望いたしました中期展望の中で、国債発行額が、当然の増として見込まれるものが、平成十四年度で三兆三千億円見込まれるであろうと見ておった。その三兆三千億円をどうして減らすかということにつきまして、片っ方で五兆円減らして片っ方で二兆ふやして差額三兆円をそのふえるであろうと思われる分の削減に充当する。こういうことでございますので、五兆、三兆円は、要するに予算編成の中に見込んできた実数として見るべきであって、その部分そのものが、ふえて減らしたということじゃございません。見込みを減らすのに五兆、三兆という発想をした、こういうことでございます。
藤島委員 確かに、そこにワンクッション入ったような形になっているんですけれども、実体的に言えば、公共事業を一〇・七%削減し、ほかもかなり削減して五兆円を削減した。通常であれば五兆円新規に回せるわけですね。前年規模の予算でいけば、五兆円削減すれば新規にその分は新しい事業、あるいは需要創造の分野かもしれませんし、あるいは新しい、いろいろな新規事業に回せる。それが二兆円しか今回回っていない。すなわちその三兆円分は、結局ほかに回っていないわけですね。ですから、それは税収減にかかるものがほとんどになるわけですね。そこのところはどうなんですか。
塩川国務大臣 税収減とイコールでひっついている、結びついているというものではございませんで、一種のめり張りのことでございますので、結果として、先ほど申しましたように、通常の考え方でいくとするならば、中期展望のごとく三十三兆円の国債発行しなきゃならぬものを三十兆で抑えるということは、その分がめり張りの分、要するに五兆、二兆の差額で埋めた、こういうことでございます。
藤島委員 そこがちょっと違うんじゃないかと思うんですよ。
 三十三兆発行しなければならないのを三十兆でとめたとおっしゃいますけれども、十三年度も三十兆で十四年度も三十兆なわけですから、要するに、三十三兆まで発行しなければならないのはなぜかというと、税収が三兆円ほど減っているからだ、こういうことになるんじゃないですか。(塩川国務大臣「済みません、ああいう、ごちゃごちゃ言うから要点ずれていっちゃって、ちょっともう一回言ってください」と呼ぶ)
 では、もう一度申し上げますけれども、三十三兆円国債発行すべきところを三十兆円に抑えたんで、三兆円分が、差が出るわけですね。その分が、五兆円を切ったけれども二兆円しか新規の分に回せなかった、こういうことになるのですけれども、そう今おっしゃったと思うのですけれども、その三十三兆円というのはなぜなるかといえば、本来、十三年度も三十兆円の枠だったわけですね、国債の。それと十四年度同じ三十兆円にしてあるわけですから、その三十三兆、本来なら発行しなければならなかったというところが、既に税収減を約三兆円見込んでいるからだということになるのじゃないですか、こういう意味なんです。
塩川国務大臣 税の減収三兆円をあらかじめ見込んで五兆、二兆で差額をつけた、そういう発想ではございませんで、税収は結果として出てきたものであって、当初の減収の見込みというものは、三兆円の減収を見込んではおりませんでした。
藤島委員 どうも間に中期展望の三兆三千億の要調整額というのが出てきておるものですから、非常に複雑になっておりまして、結果的にはそういう、私が申し上げているような形になっているのだろう、こう思うわけです。
 ところで、そういうふうに、要するに税収が減になりますと、何としても、財政再建といっても非常に厳しい。要するに、最初に戻りまして、私は、やはり景気回復をするのが先決、そのためにはもちろん構造改革、規制緩和、これは大変重要だと思います。それは、先ほど来もう財務大臣もおっしゃっておるわけですが、それと並行して、私は、需要創造のための税制の問題が非常に大きな意味がある、こう思っておるわけです。
 そこで、サッチャー政権ができる前にも同じような、非常に閉塞状況に英国が陥っておったわけでありますし、またレーガン政権のときの一九八一年に、実は規制緩和と並んで税制の大改革をやっておるわけですけれども、ここではどんな改革があったか、大ざっぱでよろしいのですが、御説明いただけますか。
谷口副大臣 今藤島委員は、サッチャー減税のことを、レーガン減税のことを、レーガン減税でございますか。
 レーガン減税でございますが、二回にわたって行われておりまして、概要をお話しさせて……(藤島委員「ポイントだけでいいです」と呼ぶ)はい。
 一九八一年の改正と一九八六年の改正があるわけでございます。それで、一九八一年の改正におきましては五年間で約七千五百億ドルの減税、一九八六年の改正におきましては五年間で歳入中立というようなことになっておるわけでございます。
 八一年の改正におきましては、所得税率の引き下げが、一四%から七〇%の税率、十五段階でございましたが、これが一一%から五〇%に変えられた、税率の引き下げが行われたということでございます。八六年の改正におきましては、税率構造の簡素化が行われまして、一一%から五〇%の十四段階を一五%、二八%の二段階に行った、このような所得税の改正が行われておるわけでございます。
 法人税におきましては、租税特別措置の拡充等が行われております。八六年の法人税の改正におきましては、法人税の税率を四六%から三四%まで引き下げられておる。
 このようなレーガン減税の状況でございます。
藤島委員 こういう税制の改革によりまして、税制だけではないのですけれども、これによりまして、景気の回復があり、結果的に税収が上がってきた。
 要するに、増税による税収増じゃなくて、損して得とるといいますか、最初に減税ありき、それが結局経済の活性化につながり、そこで経済活動が活発化して企業収益が上がる、それに伴い個人の所得も上がる、結果的に税収が上がってきたということで、十年後ぐらいには、直後にはそんなに効果がない面もありましたけれども、その後どんどん財政が、プライマリーバランスが非常によくなりまして財政再建が成った。ついに、一九九七年ごろには、収支が逆になって、プラスになって、減税の方でもやろうかということにまたなってきたというようなことであります。
 イギリスにおいても似たようなことなんですけれども、今と決定的に違う点が実は一つあるわけでありまして、それは、現在まさに日本の場合は、我が国の場合はデフレそのものと言っていい状況ですけれども、当時、英国、米国とも非常なインフレだったわけですね。長期金利なども非常に高かったしインフレの中であったということで、必ずしも同じに扱うことはできない、こう思うのですけれども、私は、やはりこういうことで税制を大転換するというのが、限られた景気対策といいますか、財政均衡に将来持っていくための限られた政策の中の大きな一つだ、こう考えるわけですが、この点は財務大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 税制はまさに非常に重要な経済対策の手段であると思っておりますが、しかし、藤島さん自身よく経験しておられますように、日本の国内におきますところの一般の税に対する考え方は、減税要求がまず先行して、減税を既得権として絶対変えない、増税の方は、一応言ったとしましても、これは臨時措置であって直ちにもとへ戻されるということで、税の機動性に対する考え方というものは日本人の中では余り定着しておらないのですね。ですから、どうしても財務省としては、減税には慎重になり増税に対しては積極的になる、こういう習慣づけてしまったようなことがございまして、それは私はよくないと思っております。
 もっと増減税を機動的に運用することによって、経済への刺激と経済へのはね上がりを抑えていくという両面の作用を持つべきでありますけれども、どうも既得権化してしまうところに税の運用の難しさがございまして、そういうこと等考えますと、十五年度税制改正をするについて一番重点となりますのは、やはり時限的な対策としての景気刺激策を考えていかなきゃならない。
 ついては、それはあくまでも臨時的な、臨時急施を要する政策としての認識を持っていただくようにした。これを前提にして、来年、十五年度税制改正は思い切った経済対策に重点を置いたものにしたい、こう思っております。
藤島委員 確かに、税制につきまして、恐らく、いろいろなのが出てきておりますけれども、これは政治の圧力と、大蔵省から財務省になる過程でもそうですけれども、要するに、収支の均衡を非常に大蔵官僚が考え過ぎておって硬直的にならざるを得なかったという面が非常に大きかったのじゃないかなという感じはするのです。
 そこで、税制の抜本改革の問題につきまして少し議論してみたいと思うのですけれども、これは経団連の税制委員会というのが二月十九日に出した資料でございますが、「税制抜本改革のあり方について」。これを私見まして、まさに自分の意を得たりというような感じがしますので、最初の部分だけちょっと読んでみますと、「現行税制がいかに限界を露呈しているかを明示したい」「現行税制の欠陥は既に対症療法では治癒不能であり、各分野の既得権を含め既存の全ての制度を、一旦白紙に戻し、白地に新たな税体系を描くことを視野に入れた改革が必要である」こう言っておるのですが、この点について、財務大臣の感想というかお考えを伺いたいと思いますが。
塩川国務大臣 経団連の指摘は、これはやはり国民的な感覚でのいわば一応常識的な観点だと思っておりまして、この見方は私たちも尊重しなきゃならぬと思っておりますが、しかし、政策は継続が必要でございますので、その点、税制というものは、そうしょっちゅう変えていくということはいかがなものか。やはりそこに継続性というものを持っていかなきゃならぬ。
 したがいまして、私は、先ほど申しましたように、十五年度改正については、臨時急施的なものを視野に入れて、経済対策に重点を置いた税制の組み方を考えていくべきだという方針を持っておるところでございまして、経団連の御趣旨というものは、私は、これはやはり国民的な意見であろうと思って尊重はしたいと思っておりますが、これをどのように盛り込んでいくかということは、今後一層勉強した上で決めていきたいと思っております。
藤島委員 これから一つずつ御質問をしていきたいんですけれども、確かに、今財務大臣がおっしゃるように、税制というのはそうくるくる変えちゃいかぬもので、継続性は必要だろうと思うんですけれども、継続性という名のもとに、抜本的な考え方を変えるのではなくて、いろいろな例が出るんですけれども、いわば旅館を次々と需要に沿ってふやしていくというような形で、屋上屋もあり、しまいには自分の泊まったところから玄関までどうやって行ったらいいのか、要するに、本則のところまでどうやって戻っていったらいいのかわからなくなるぐらい、いろいろな、くっつけたような税制が多いわけですね。
 したがって、私は、まさにこの大変な時期に原点に戻って、いわゆるそういう既得権益的な、税制の例外規定みたいなものは一たん全廃する、それで、白地に本当に必要なものをもう一回積み上げていくというのが必要だろうと思うんですね。
 私、この間も、本会議で質問をしたときに、予算についても同じだと思うんですね。今までずっと積み上げてきた、それは継続性が必要なんですけれども、それが前提になって、そうすると、対前年度でこの事業に上乗せするのか少し削るのかというようなそういう手法、これは、大蔵省というか今財務省は、そういう手法が一番易しいわけですね。あと、易しいのは、一律一〇%カット、こういうやり方が一番易しいわけですね。
 本当はそうじゃないと思うんですね。やはり、いつの時期もそうだというわけじゃないんですが、こういう今のような時代は、一たん本当にゼロをベースにして考えていかないかぬ。それができなかったのは、やはり今までの政治と財政との癒着といいますか既得権益みたいなものがあったものですから、どこかを削ればそこが文句を言う。そうすると、結局そんなに削り切らないということになると、新たな分野もふやしようがないというようなことで、にっちもさっちもいかないまま、何か、ごまかしごまかしで毎年毎年の収支を何とかごまかしてきた、足りない分は国債で賄う、そんなやり方をやってきたところだろう、こう思うんですが、やはり本当にこの段階になりますと、そういうことは言っておれないんじゃないかという感じがするんです。
 実は、細かいいろいろな税金、税制のあり方について質問する予定だったんですけれども、時間なものですから、あすまた質問時間がありますので、あすに続けたいと思いまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
坂本委員長 藤島委員、御協力ありがとうございます。
 それでは、次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私は、地域経済にとって大事な地域金融機関の問題について、きょうは質問したいと思います。
 一月二十五日に、大阪の相互信金と千葉のふなしんが同日破綻しました。この信金、信組の破綻という問題、昨年の一月以来の一年間を見てみますと、小泉内閣が誕生するまでに破綻したのは五件ですね。小泉内閣が成立以降四十八件、合計五十三件破綻ということになっていると思うんですが、まず、この事実に間違いないか、ここのところから伺っておきたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 今の区分けで、数字を今すぐに、ちょっと持っていなかったものですから、十三年度に幾ら破綻したかということをちょっと申し上げたいと思いますけれども、信金で十二、信用組合で三十九、合わせて五十一という状況でございます。
吉井委員 ことしに入ってからの分を合わせますと五十三。しかし、例えば、地銀の一つなんかも、地域金融機関、実態としてそうですが、入れるともう少し変わってくるかと思いますが、いずれにしても、小泉内閣、不良債権最終処理、ペイオフ解禁ということを掲げて、やはり引当金を無理に、検査に入っては積み増しをさせて、そして債務超過に追い込んで破綻させていくとか、こういうことがずっとこの間あったわけです。
 そこで、これまでから、信金、信組の貸付先の中小企業の実態を全く知らないままに、機械的、一律に金融庁の検査マニュアルで、財務諸表を中心として貸付資産、債権の査定をして、そして機械的割り振りで、今言った引当金の積み増しを求め、債務超過に追い込んで破綻をさせる。こういうことが、やはり小泉内閣になってから本当に異常な形で進んできたというのが、今の、成立以前の五件と成立後の四十八件という、この数字の中にはっきり示されていると思うんです。
 そうしたら、そこで伺っておきたいんですが、この破綻が異常にふえた原因ですね、一体何でこんなに破綻がふえたのか。金融庁の職員がマニュアルを理解しないで無理やり当てはめて破綻させたということになってきて、金融庁の、検査に行った職員が悪いということになるのか、それとも、金融庁の金融検査マニュアルそのものが地域や中小企業の実態に合っていない、ここに問題があるのか。一体、この異常な破綻、どこに問題があると柳澤大臣は考えていらっしゃるのか、ここのところを大臣に伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 どのような金融機関であれ、その健全性を確保するということは、金融機関の存立あるいは業務の運営にとって最も基本的なことであるということは、ここで申すまでもないことでございます。
 金融庁の検査というのは、公益性及びそもそもその事業が免許の事業であるというようなことから、その公益性等を担保するために、検査というほかの事業では見られない、そういうことが行われておりまして、それによって一番の基本的な健全性を確保するという仕組みになっているわけでございます。
 そして、その検査というものが、ここのところ数年間、いろいろな形で変革を受けてまいっておりまして、最終的には検査マニュアルというものが十一年の七月に実施をされた、こういうことが事実としてございます。そういうものを持って各金融機関の検査に当たっているというのが現状でございまして、特に信用組合におかれましては、国へ所管がえがなされたということで、初めて、国が直接に、また全責任を持ってその検査に当たるということが行われたということでございます。
 そうして、その行われた善後措置というもの、つまり、過少資本に陥ったところについてはその改善措置を求めるわけでございまして、各経営者の皆さん、それぞれに努力をされているわけですけれども、一定時期が過ぎた後、そういう見通しが立たないというところから破綻の申し出が行われているということでございます。
 したがって、金融庁職員の能力が最近急に劣り始めたのかといえば、もちろん常に研修を怠ってはなりませんけれども、そういうこともありません。基準という点でどうかといえば、確かに、従前の体制に比べれば非常に基準が明確になってきているということは言えようと思いますが、それとても、従来と比べて、何というか、黒のものが白になるというようなことではなくて、従前のいろいろなところにあった規定、やや分散されていたようなところを体系的に整理するということが基本であったと私聞いておりますので、それが即そうした背景にあるとまではなかなか言いかねますが、とにかく、基準を持ってしっかりとした検査が行われ始めているということは事実としてあるというふうに考えられます。
吉井委員 衆参の財金の委員会で、うちの党は、これまでから随分、現場の検査の実態というのを御紹介もし、本当にひどいやり方だということも明らかにしてきました。昨日も予算委員会で塩川議員も質問しておりますが、しかし、予算委員会では、与党の議員の方からもひどいという声が出ていますよ。
 そこで、昨年一月以来、小泉内閣までは破綻したのが五件、小泉内閣以降四十八件が破綻に追い込まれた。どう見てもこの数字は異常なんですよね。そこで、この異常にふえた理由が、今の大臣のお話でははっきりしないんですよ。
 私たちは、これまでから言ってきましたように、それは本当に、金融検査マニュアルに基づいて機械的、一律にどんどんやっていかれるものだから、きっちり、借りたお金については返してはるんやけれども、そこの経営内容がこの不況の中で赤字になっておったら、これについては引当金をこれだけ積みなさいというふうなやり方で現場では実際にやられているんですよ。
 だから、それは、このマニュアルに問題があるのか。それとも、確かに、もう何度か大臣はマニュアルに中小企業向けの話もあると答えてはりますけれども、幾らそれを書いておっても、しかし根本は、都銀向けのマニュアルと、本来、相互扶助を中心とする協同組織としての信金、信組、そういうところ向けのマニュアルをつくるとしたら違うはずなんですが、同じものでやるものだから、ですから、職員の方が機械的、一律に結局はやっていくわけですよ。それでこういうふうになっているわけですから、ここにあるのはマニュアルの問題なのか、それとも職員の問題なのか。
 職員の話については昨日も御紹介しておりますが、本当に机をぼんぼんたたいたり、こんなの、もう信金でまともなところは最初からないんだというふうなことで臨んでいったりとかやっているというのは、これは職員の方の問題だと考えてはるのか、それとも、マニュアルに問題があるからこれだけ異常に破綻が急増したとお考えなのか。もう一遍、ここのところをきっちりと伺っておきたいです。
柳澤国務大臣 私どもといたしましては、マニュアルにおきましても、吉井委員の方からもお話しいただいたように、各所に、十一カ所とかなんとかという話もちょっと聞きましたが、私、子細に勘定をしたわけじゃありませんけれども、要所要所のところに、この規定を適用するときにはこういう配慮をしなさいということが記されているわけでございます。
 そして一方、職員の能力というものについては、非常にそこに注意を払っていまして、特にこういうお声が聞かれるようになってから、念には念を入れてということで研修の機会を非常に増加させていて、そういうマニュアルに記された中小金融機関への態度、あるいは金融機関の中小零細の貸出先に対する査定に当たってはこういうことを配慮しなさいということを非常に念入りに研修させておりまして、そういう意味では、私どもとして最大限の努力をいたしているということでございます。
吉井委員 今のお話を伺っていると、検査マニュアルはいいんだ、いろいろな中小企業の配慮もしているんだ、しかし問題は、検査に行った職員が悪いんだということにしか聞こえてこないんですよ。現実にどんどんどんどん破綻しているんですよ。
 しかし、普通は、検査に行かれる方が、こういう言い方をするとちょっと極論になりますけれども、地域金融の問題、中小企業問題でどんな素人の方でやったとしても、その金融検査マニュアルを使ったら、地域の実情をきちんと理解してやれるようなものでないと、かなりの研修を積んでもなおかつだめと。やはりそれは、検査マニュアルそのものが実態に合っていないということを、私は、はっきり大臣自身に考えてもらわにゃいかぬと思うんですよ。
 大体、国際金融の世界で活動する銀行の、バーゼルの基準を満たしているかどうかということを評価する、査定のための検査マニュアルというものと、本来地域経済を支えている中小企業向けのこの信金、信組向けの検査マニュアルというのは、根本的に内容が違っていて当たり前だと思うんですよ。
 だから、地域金融の方でいえば、地域の中小企業に金融の面できちんと貢献をしているところなのかとか、あるいは相互扶助の協同組織としての役割をきちんと果たしているのかとか、あるいはまた投機に走って組合員の利益に反するようなことをやっていないのかとか、地域の金融機関として、信金、信組としての健全性というものを見る指標というものは本来違ってきて当たり前だと思うのですね、別に国際的に金融投機でやるわけじゃないのですから。だから、都銀用のマニュアルと地域金融機関用のマニュアルの区別とか違いというものは当然あっていいはずだし、それがあれば検査に行く人も余り誤解することもなく、何度も何度も研修を積み重ねぬとできないということにはならないはずなのですね。
 ですから、そういう点で、金融庁の金融検査マニュアルを、やはり地域、中小企業向けのもの、本来の相互扶助の協同組織としてのものに見合ったマニュアルというものをきちんと考えていくということをやらないと、こういう今この一年間起こってきた問題は、これは解決できないと思うのですよね。ここのところを、大臣、やはり考えていかなきゃいけないのじゃないですか。
柳澤国務大臣 そもそも、こういう総合的、体系的な金融検査マニュアルというのを初めてつくったわけですけれども、その過程におきましては私どもとしても一方的に何か策定してそれを押しつけるというようなことが当然あってはならないわけでございまして、その過程で、したがってパブリックコメントというものにかけました。これは相当の期間、どういう方が見ていただいて御意見をおっしゃられようともそれはきちっと受けとめて、それに対しての見解を固めて、盛り込むべきは盛り込む、あるいは削除すべきは削除する、そういうような丁寧なプロセスを経てこの金融検査マニュアルというのはでき上がったわけでございます。
 ではでき上がったもの、でき上がる過程は我々も実際に適用の事例がないわけだからわからなかったけれども、それじゃ適用された後いろいろな問題が起こっているではないか、こういうことでありますれば、それは私、いつかも申し上げたように、よくよく検討して、マニュアルというのはもう何か一切これは動かさないというような話では当然ないわけなので、状況を見て、しかもそれが合理的なものであれば適当な機会に適切に修正する、こういうことになっていくのだろう、こういうように思います。
 思いますが、他方で、今の吉井委員のお話のところに感じられることで、ちょっと先走り、早とちりかもしれませんけれども、では、中小機関向けあるいは中小企業向けに固有のマニュアルというものがあって、いわばマニュアルというか検査の基準が二本立てになっているようなところがあるのかというと、私、まだ寡聞でございますけれども、そういうところもない、そういう国はないということでございまして、その意味するところは、資産の健全性の査定の基準というのは、やはり基本は同じであって、それを査定する視点というものを、ここに留意しろ、こういう視点も加えろということはあるかもしれませんけれども、最終のところはやはり同じ評価基準というものが適用されるということは同じであってしかるべきだというのが、今言ったような各国の状況にあらわれているのじゃないのかしらんというふうに思っているわけです。
吉井委員 国際金融の世界で活動する金融機関と、地域で本当に伝統産業や地場産業を含めて中小企業としてその地域経済を成り立たせていっているその地域の中小企業、そこに着目すれば、今のお話を聞いていますと、何か担保主義中心なのですね。担保物件だけじゃ話にならないのですよね。特に地域の中小企業の場合は、本当にガレージを借りて、しかし、なかなかの旋盤を置いて、腕のいい親方さんで、企画力も着想もいい、そういう方たちをどういうふうに評価してやっていくか、そこには、やはり地域の中小企業を金融面から本当に支えていくというその役割を果たしている金融機関なのかどうか。
 もともと、本当は、本来的には、そういう地域の中小企業の分野、信金、信組の活動している領域というのは、都銀が乗り込んでいってからおかしくなってきたのですが、本来はすみ分けというのがあったわけですよね。しかし、そのかわりに地域の役割を果たしてきたわけですから、やはりそこにはきちんと、全く違う評価の基準というものを設けておかないと、一律の評価基準でやったらうまくいかないのは当たり前なのですから。
 だから、大臣、もう一言でいいです、やはりそこは違いははっきりあるのだから、そこをきちんと認めた上で、違う体系というものを、全部をまとめ上げたものを考えればきれいなものかもしれないけれども、それは実際には現実に合わないということは当然出てくるわけですから、やはりそこはきちんと考えていかなきゃならないということが私は今一番問われているところだと思うのです。その点、一言だけもう一遍聞いておきます。
柳澤国務大臣 今先生がおっしゃられているものの中で、地域経済を支えてきたのだからそれは云々、こういうことは、ちょっと検査基準とか査定基準とは何かどこでどうつながるのかなという感じがして聞いておりました。
 他方、ちゃんとした技術力を持ってというようなことについては、私の周辺にも実はそういう人はたくさんおります。何というか、手先が器用という言葉があるけれどもそんなこと本当と思うかと言った私の知人の技術者もおりました。それは目が器用なのだと。おれは目が特別なのだ、だから真球に近いボールベアリングがつくれるのだというようなことで、その人の技術力というのは高く評価されて、その人は大変立派な企業を経営されましたが、代がかわって子供になったらだめになった。いろいろなことを知っていますが、そういうことであれば、それは現在のマニュアルにも入っている。
 だから、これはもう本当に建設的に考えたいと思っているのですけれども、どこがどう配慮される点で我々の方で今抜け落ちているのかというようなことについて、さらに御検討いただいて御指摘を賜れればと思います。
吉井委員 アメリカでは地域再投資法というのがありますね。やはりその地域の独自の役割に着目してその貢献をさせるということを、法的な仕組みをつくってやっているわけですよ。
 ですから、そこへ力を入れたら、国際金融の世界で活動するものと同じ物差しでいったらうまくいかないというのはだれが考えてもはっきりしているわけで、私は、そういう点で、やはり金融庁の金融検査マニュアルについて、そういうマニュアルのあり方、都銀用のマニュアルと中小企業、地域金融を中心とするものとのマニュアルというのはやはり区別をしたもの、違いのあるものを考えていかないと現実に合わない。それを一律にやってきたから、小泉内閣になってから四十八件も破綻させた。私はそこは、現場を見られたら、どんなに深刻な事態になっているかと。私は、本当に金融庁、金融担当大臣の責任が問われる問題だと思っているのです。
 引き続いて伺っておきますが、破綻信金の出資金の面でも大きな問題が出ております。
 私も、大阪で懇談したときに、相互信金と取引してきた中小企業の皆さんから深刻な話をたくさん聞きました。これまでは、信金の場合は信金中金の相互援助資金制度などで出資金は全額保護されていたんですね。昨年の四月一日から、出資金が、建前上は返還されないということになっていましたが、しかし、昨年末までは全額返還されてきました。ところが、金融庁マニュアルでばたばた破綻させたものですから大変になってきて、ですから、ことし一月から、おおむね一万円までの返還だけ、あとは出資金が戻らない、そういうことになっております。
 お話を伺っていると、ある方は、年金生活者で、借り入れすることなど全く必要としない方だったんですが、昨年の十二月二十五日に外交員が来て、定期積み立てしている預金をぜひ出資金に振りかえてほしい、その方が得だと言って、無理やり切りかえをさせられた。その一カ月後に、破綻で出資金が返ってこない、こうなったんですよ。だから、これはもうだまされた、年寄りから金を取り上げた犯罪ではないかという声、こういう声がちまたに満ちあふれていますよ。
 それで、実は一九九八年三月末には出資金の残高は、相互信金で見れば二十六億三千万円だったんです。九九年三月には四十億九千万円、〇〇年三月末では八十五億六千万円。ですから、二年間で出資金は三倍以上に膨れ上がっているんですよ。
 どうしてこうなったかといったら、結局、最近ぐんと上がってきたのは、金融庁の検査マニュアルで指導が入るわけですね。これで、自己資本比率を五%、四%じゃなくて五%とかもっと上げていきなさい、これを言われて、どんどん増資を図っていっているんですよ。町の皆さん方も、この地域金融機関をつぶしちゃならぬということで出資金協力したり、あるいは、全く知らないで出資金を出すという人もいるわけですよ。
 こういうふうになっているんですが、この問題については、これはやはり出資金がきちんと返されるようにしていくということを、金融庁としても、その仕組みというものをやはり考えていかなきゃいけないんじゃないですか。大臣、どうですか、これは。
柳澤国務大臣 出資金というのは、法律が国民の総意として決めていると言わせていただきたいんですけれども、これは債務超過になった場合に一番最初に負担をする、損失の穴埋めに使われるということは、これはもう大変原則的なことだというように私は考えるわけでございます。
 他方、今、知らずにして預金を出資金にかえられちゃった人もいるということについては、これは非常にそのプロセスに問題があるというふうに考えますが、これにつきましては、よくその出資の意味について説明をするように、他のもう少し大規模な、株式であるとかそういうようなものの発行のときには、これは目論見書というものを発行させて、その出資がどういう意味を持ち、かつ当該の企業が将来どういう展望を持っているか等々参考になることをディスクローズして、それを投資家にしっかり読んでもらって、その上で投資をするかしないかを判断してもらうということでございますが、この信金のような場合には、そこまで、目論見書というようなものまでは申しておらないわけですが、趣旨は同じでございますので、よく投資の意味、それから会社の展望というようなものについてはきちっと情報を与えるようにということで、そういう指導をしているというのが現状でございます。原則的なことだと思っております。
吉井委員 ハイリスク・ハイリターンの株式投資とは全然違うんです。
 ここに、出資金の申込書、東都中央信用金庫のものがありますけれども、何にもそんな説明ないですよ。出資金は破綻したときには返還されませんなんというようなことは書いていないですよ。定期預金と同じように保証されますからと言って、実際には、出資金を三倍にするというために、行員の方は物すごく走っているんですよ。これは株とは違うんだと言っているんですよ。
 実際に、地域の信金、信組などは相互扶助のための協同組織なんですから、これは、会員は業務エリア内に住居、居住、事業所を有する者とかきちんとした決まりがあって、そして、そういうことでみんなでつくっていこうということでやっているものなんですよ。別に事業をやっていない個人の方も出資しておられます。たくさんおられますよ。それは何にも投機的な意味ないですよ。しかし、地域の経済を支えようということでやってきているのに、これが今のあなたのように、これは仕方がないというお話になってしまいますと、ペイオフ解禁による預金流出と、それから、出資金解約の続出による信金破綻の懸念というのも出てきますよ、これだけ信頼を失われてしまったら。
 私は最後に大臣に伺っておきますが、金融庁として、金融担当大臣として、やはりこの問題については、出資金をどういう形で保護されるかという仕組みをきちんと考えていくということをやらなかったら、今の時期、信金、信組というのは、全国的に、本当に経営破綻の問題含めて深刻な事態を招いていくと私は思いますよ。考えますか。
柳澤国務大臣 余りおどろおどろしいことを言われますと、そうでなくてもみんなある意味で神経質になっているというか、関心が高まっているところですので、やはり、そこはぜひ、そういうように、余り言葉で驚かすようなことはなさらないでいただきたいということを当局者の立場からはお願いを申し上げる次第でございます。
 出資金にしろ預金にしろ、保護しろ保護しろということが言われるわけですが、それは確かに保護すればその当事者は非常にハッピーなことは、これはもう私もよくわかっております。ですけれども、それぞれの方々が、自分が許容できる範囲で、自己責任のもとでリスクをとっていくということ、これがなければ、もちろん、金融論のもう極端なところでは、全部保護しちゃって、全部税金で面倒見ればいいじゃないかという議論も時にすることもあるんですけれども、しかし、そういうことでは合理的な経済組織はつくれないということで、そういう方向から着実に離れていこうよということを考えているというのが構造改革というものだと私は考えております。
吉井委員 おどろおどろしいというのを、現場の声を聞かれたら、そのおどろおどろしい声、いっぱい満ちあふれています。本当に深刻な事態になっているということを大臣としてしっかり認識をしていただきたいと思うし、私は、この点では、資金の返還という問題については、これはきちんと金融庁として本当にその仕掛けを検討していかれないと、これは地域の中小企業と地域経済にとって無策だということを言われることになりますよ。私はそのことを指摘しておいて、また引き続いての機会に議論をするということにして、質問を終わりたいと思います。
坂本委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 冒頭、質問予告はしてございませんのですが、先ほどの民主党の小泉委員の御質問を聞きながら、塩川財務大臣が大変いい御答弁でございましたので、健康問題、とりわけ健康保険問題、今、サラリーマンの自己負担三割が政府・与党方針として決まったということで、来年四月の三割負担上げを明記するというお話に関連して、一つだけ、あえて質問をさせていただきます。
 先ほど小泉委員のお話の中にもございましたが、日本で三万人を超える自殺者数、そして、六十歳代の方が三五%、三十代から五十歳代で五〇%、大変に働き盛りの、それも男性の自殺者が多うございます。この現実に対して、せんだってアメリカのある学者が来日された折に、大変異常な事態である、これほど繁栄した国で三万を超す自殺者が、それも働き盛りに多いということに非常にショックを受けて、私にもお話をされましたけれども、先ほど塩川財務大臣のお話の中に、やはり非常にお心を痛めておられると。
 あわせて、先ほど大臣もおっしゃいましたが、六十歳代に難病の方が最近多く発生しておる。そしてまた、いわゆる糖尿病なども国民病になっておる。五、六人に一人は、この中にももしかしてお持ちの方おられますでしょうか、そうした方々は、実は早期受診、とにかく一刻も早く受診していただければ、例えば失明せずに済む、あるいは腎臓の透析などに至らずに済むということで、まず、窓口負担と申しますのはアクセスの第一歩でございます。これが三割負担になりますと、実は国民の負担増四千三百億と試算されております。
 私は、今の経済状況、いろいろかんがみましても、自殺者の数、そして医療へのアクセスがまず第一悪くなるということが、この国の体力を弱めるのではないか。もっと言えば、働く皆さん、私たちの極めて不幸な結果を生むのではないか、そのことをいつも案じて質問させていただいておりますので、塩川財務大臣として、内閣、与党のお一人として、この医療問題、さっき少しお話しいただけましたが、三割負担ということもかんがみて、どのようなお考えにあるのか。
 私は、一言で申せば、医療問題はお金を絞り込めばよいということではないのだと思います。必要なところに必要な手当て、特に初期の、早期の受診を推奨するような方向に持っていっておかないと、結局、最後がきつくなる。そして、今の小泉構造改革の三十兆枠と言われる中で、聖域なき歳出の見直しということで、むしろぎゅうぎゅう締める形にすることがかえって傷を深くするのではないかと案じておりますので、一言お考えをお教えいただければ、それも財務大臣は極めて人間的なお言葉でお答えくださいますので、政治家としての御見識をお聞かせくださいませ。
塩川国務大臣 それは、保険料も税金も安ければ安いほどいいわけでございます。それは私もその点には賛成でございますし、何も三割に引き上げたくないということでございます。しかし、昨年の八月の末でございましたか、概算要求のときに厚生労働省と交渉いたしましたときに、社会保障についての当然増というものが高齢化社会で当然起こってくる、自然増といいましょうか当然増といいましょうか、その分についての算定をいたしましたら、約一兆三千億円近くになるというお話でございましたので、その半分は気持ちよく私たち持とうということで、即決いたしたのであります。そして、そのあとの半分については、約七千億円近くについては、いろいろな諸制度、いろいろな行政との均衡をとって、それぞれの節約もしてもらいたい、こういうことで話し合いをいたしました。
 ですから、政府としては、福祉事業というよりも社会保障に対しては特段の配慮を当初からしたということはひとつ、だれも言ってくれませんけれども、これだけは認識しておいていただきたいと思うております。
 その上に立って、私たちは、この医療制度の抜本改正に今取り組んでおるわけでございますけれども、私の一番の主眼とするのは、この制度、いわゆる国民皆保険というこの制度をずっと持続していきたい、永久に持続していきたい、中身は非常に濃淡があるかもわかりませんけれども、この制度を持続したいということが一番の眼目なのでございます。
 それは、今これだけ不景気になって、皆さん非常に生活は苦しいだろう。悲惨な暗たんたる話が多い。けれども、国全体、国民全体は、何か一抹の安心を持って、きちっと生活をしておる。外国の人が来られましたら、日本は不景気だと言うけれども割と秩序正しく生活を維持しているじゃないかとおっしゃるのは、私は、やはりこの保険制度があって、皆さんが病気をした場合、何とか面倒を見てもらえるだろうということ、そして、少ないけれども年金というものがあって、おばあちゃん、おじいさんが小遣いぐらいはあるということ、この制度、この社会保障が今の社会にとって非常に有効に働いておるということを、これをやはり考えないかぬ。そうすると、この保険を維持するためには、少しはお互い譲り合いをしてもらいたい、それが小泉総理の口から出ました三方一両損ということになってきたのであります。
 そういうことがございますので、私たちは、この制度を維持したい、その一点から出たことで、これが永続的にどのような格好で負担を強制するかわかりませんけれども、とりあえず二割負担を三割に上げていただいて、御辛抱していただきたいということでございます。安くするのは、もう私たちも努力で、できることは何ぼでもしたいと思いますけれども、現在の財政状況では非常に難しいことも御理解いただいて、御協力をお願いしたいと思っております。
阿部委員 塩川財務大臣の長い政治家としての御経歴の中で、社会保障の大切さということ、特に日本の国民皆保険制度の堅持という観点から、三割負担ということを今回打ち出されたということで伺いましたけれども、何度も申し上げますように、今時局は、大変にサラリーマン御本人にとって、失業の不安あるいは収入減、さまざまに問題が多うございます。私は、とにかく健康さえ維持しておれば、本当にまた花の咲く日もあるというくらいに考える。国民の命は政治の基本でございます。ここで約四千億円の受診抑制が考えられるような政策、逆に四千三百億円の負担増が考えられるような政策というのはこの国の体力を落とすということをどの場でも申し上げましたが、このことをあえて今この時点でやらなくてはならない必要性は、私は、予算案総体の中を見ても、まだまだほかに打つ手があると思いますので、私の見解も申し述べさせていただきました。
 では、引き続いて、本来質問通告してございます質問に移らせていただきます。
 昨日の予算委員会の集中審議でも、公的資金の注入問題が、各、塩川財務大臣あるいは柳澤金融大臣、そして日銀の速水総裁からもお考えを聞かせていただきましたが、私は、こうしたお考えを聞く中でも、ある意味で、いつまでも入れるか入れないか論議ばかりしておって、国民が一番不安な点、不満な点、知りたい点についてはどなたも言及しておられないという認識を持つに至っております。
 二月十四日の日に、実は塩川財務大臣にこの件について私は予算委員会で同じ質問をいたしまして、そのとき塩川大臣のお答えが、公的資金の注入に関しては、三年前の金融再生法に基づく公的資金の注入とは効果もねらいも異なる、そして銀行に食い逃げされないようにする。効果もねらいも異なり、銀行に食い逃げされないようにする。私も、三番目の表現を余り繰り返したくはないのですが、でもまず、もし公的資金の注入をあり得る選択肢の一つと考えられるときに、効果、ねらいという点について、もう一度塩川財務大臣のお考えをお聞かせください。
塩川国務大臣 公的資金の注入というのは、これは法律によりまして、たしか預金保険法ですか、百何条かだったと思うておりますけれども記憶は定かでございませんが、どういうときにできるかといったら、金融秩序が破壊される危機に瀕したとき、こう私は認識しております。
 ですから、公的資金の注入ということはよく世間で言われますけれども、そういう事態に本当になっておるのかなっておらないのか、この認識は非常に大事な問題だと思いますし、下手にこれを、現状はそうだと言ったら、これは国民に大変な不安を与えることになる。
 実態はまだそういうところに至っていないということでございますから、私は、そのときの答弁でも、予算委員会の答弁でも、必要な状態になればということを申し上げておると思うておりまして、その場合には、さっきおっしゃるように、しっかりとした、食い逃げされぬように十分な検査をした上で、必要の状態をちゃんと見届けた上でやるべきだということを言っておるのでございまして、今、それをやらなきゃならぬ状態でも何でもない。
 そういう事態が起こってくる、それは何か。不良債権の処理の状況いかんによりまして起こってくるかもわからぬ。そのときには、先ほど言った注入の必要性がある。
 そして、今回、注入する場合は、三年前の金融機関の早期健全化というものとちょっと意味が違ってきて、不良債権の整理ということの方に重点を置いた処理になってくるから、検査の状態とか何かそういうところに十分な手当てをした上で実行すべきだということを言っておるのでございまして、十分に御理解していただきたいと思います。
阿部委員 国民が一番今知りたいと思っておりますのは、三年前の公的資金の注入、七兆五千億ですか、その際のお金がどのようにある意味では吸収されてしまったのだろうか、それを塩川財務大臣は、食い逃げと今もおっしゃいましたが、そういうお言葉で表現されたのかと存じますが、再度食い逃げ状態にならないために、何と何と何に注意なさると今お話しくださったのか、恐縮ですが、もう一度確認をさせてください。
塩川国務大臣 私は、積極的に自分から食い逃げと言ったんじゃなくて、質問者の方が食い逃げをしたやないかと言うから、いや、食い逃げと違うで、こういうことを言うたので食い逃げとなったんですけれども。
 結局、あの当時の注入というのは、私は、非常に大きい効果があって、それがために金融危機というものに本格的に取り組むようになったんです。これは、国会が発議されてあの法案を通されたということは、私は、国会は大変ないい仕事をされた、国民のために絶賛されてしかるべきだと思うほど、それほどいい結果になったと思うておりますが、しかし、それから、その数年たつ間に、いわば資産デフレが一層深刻になったことから、不良債権がふえてきた。いわゆる経済政策とかなんとかそれ以前の、いわば資産デフレがこういう事態をもたらしてきたということでございますので、今回、もし不良資産の整理を行うということになれば、金融の健全化とあわせた上で処理をしていかなきゃならないということを申し上げておるところであります。
阿部委員 これも本日の質問の中で出ておりましたが、今、やはりデフレの中でも資産デフレ、土地、株などなどはまだまだ改善しておらないという御認識も、先ほど塩川財務大臣御自身がおっしゃったことでもあります。
 そして、経済というものも、生き物でございますから、今大丈夫に見えても、あるいは、あすには何か起こるかもしれないという大きな動きの中で論じなきゃいけないことも存じておりますが、そうした場合に、恐らく、きょうの委員会全体通じて拝聴しておりましても、やはり事態に対しての診断が、見立てが大きく異なっておるのだろうというふうに私も印象を受けております。
 そして、いつもこれはお伺い申し上げますが、柳澤金融大臣、自己資本比率は十分あるし、風評被害、おどろおどろしいものに踊らずに、しっかり、大丈夫とおっしゃるのは常のことながらでございますが、でも、例えば、フジタ、三井、住友、この三建設業界の合併問題をとりましても、背景に三井住友銀行のメーンバンクとしての問題、それがまたダイエーという企業の再建を抱えておる問題等々、国民の目から見ましたらば、今一番デフレの、そしてバブル期にいろいろな問題を抱えておった建設業界、流通業界での問題が、銀行とリンクしながら、やはり相絡まって物事が進んでおると見える方が、私は、普通の国民の感覚であり、決して、おどろおどろしく、余分なものに、いないお化けに驚いているのではないと思います。
 そこで、しかしながら、あえて、柳澤大臣の、御見識も御経験もおありでしょうから、公的資金の注入は今ではないというお見立てになっておりますが、これも人間の体に例えますれば、例えば出血を既に来してから輸血をしても大量の血液が必要になります。出血の兆候、予兆的なもの、医学では血小板の減少と申しますが、減ったときに既に入れておけば未然にとめられるものもたくさんございます。
 今の段階、もちろん、預金保険法の百二条は、予防的な投入ということを、読み方によってはそうもとれるというふうな御見解もきのう拝聴いたしましたが、現状の認識の中で、再度、柳澤金融大臣にお伺いいたしますが、公的資金の投入もあり得るチョイスと考えた場合に、何と何をまずしておかなければならないか、チョイスの一つとしてで結構ですから考えた場合に、何と何をしておかなくてはならないか。
 私は、冒頭申しましたが、いつまでも投入するのかしないのかという論議をしておっても、実際にそのことが起こった場合に、少なくとも、国民が一番被害をこうむるのを少なく押しとどめるために、食い逃げが行われないようなために、何をしておく必要があるか、このことについても、まずもって模範解答を教えておいていただきたいと思います。お願いいたします。
柳澤国務大臣 ちょっと、阿部委員の御質問の方向性というのが、私、正確にとらえられたかどうかおぼつかないわけです。
 それは、ちょっと、手短に申しますと、金融の安定性というものが大事だということであれば、これは公的資金入れたらいいじゃないかという議論は簡単に成り立つと思います。特に、現在のように、本当は大問題なんですけれども、国民の負担になるかもしれないというものですけれども、それでも、もうほとんど野党の皆さんも、入れろ入れろの大合唱をしていただいているわけですから、非常に気は楽で、入れりゃいい、それで安定すればいいじゃないか、こうなるんです。
 では、なぜ、そこのところで、我々がそこはちょっとそうはいかないんですよと言うかといいますと、実は、お医者さんはどうおっしゃるか知りませんけれども、副作用というか、このお薬には大変な副作用が伴っているということが現実にあるわけです。
 今度入れたら、経営に対する国家の介入というのがもっと深まるでしょうということがあるわけですが、その前にまず、もう銀行の中でも、首を切られる上層部のちょっと下ぐらいからはかなりサラリーマンかたぎというか、職を失いさえしなければいいというような人たちもいることも事実で、そういう人たちは入れたらいいじゃないか、こう簡単に言うということもわかるんですね。それはもう本当に主体的にその企業をやるということじゃなくて、自分の職を失わなきゃいいというような安直な考え方をするわけですね。そういうような人たちも賛成ということですが、そういうところにあらわれているように、本当に今日本の金融機関がやらなきゃならない構造改革の痛みを伴う努力というものの緊張感、このドライビングフォースというのが一遍になえますね。
 そこで、じゃ、どうしてなえさせないようにするかといったら、公的な介入でもってなえさせないようにすればいいじゃないかというのが、そのおっしゃる方々の大体の言わんとするところですね。つまり、そこで国家の介入が起こるんです。では、国家の介入が本当に日本の金融機関を民間企業として成り立っていくように、例えば戦略的なビジネスモデルを立てる、国家の人たちができますか、そんなことが。できないんです。国家の介入でやれるのはせいぜいリストラで、それも全くストラテジックでないリストラで、もう一律月給は何ぼにしたらいいじゃないか、こういうような話になっちゃうんです。なりがちなんです。
 そういうようなことになって、日本の金融機関が本当に将来立派な金融機関として、国際場裏でなくても活躍するように、国民の経済の血液の供給を担うものになるか。私は悲観的なんです。私は、民の努力というものをぎりぎり追い詰めていってやった方が、それは実現の可能性は高いということを確信しているんです。ですから、私は、容易にここのところは動かすつもりはない。
 収益も同じなんです。収益も、阿部委員、これを入れたら収益力が衰えるんです、負担になるんです。配当しなくてもいいという説もあるけれども、配当せざるを得ないでしょう、国民に返さなきゃならないでしょう。収益力も衰えちゃうんです。そういうことなんで、私は頑張れるだけ頑張る。
 それじゃ、柳澤、絶対入れないのか、入れます。それは、そういうデメリットを補って余りあるような金融の不安定、動揺、これは、そんなデメリットがあるからできませんなんて言っていられないんです。だから、そのときには、今阿部委員が言われるように、阿部委員のような、名医のような見立てができるかどうかはあれですが、我々もベストを尽くして、入れなきゃならないんだったら入れなきゃならないタイミングというのをもう絶対に逃さない、しっかり見ている、こういう考え方なんです。ぜひ御理解賜りたいと思います。
阿部委員 私は柳澤大臣の経歴や御見識をある意味で信頼申し上げていますから、むしろお伺いしたかったのは、デメリットがあることは存じております。輸血とてデメリットがあります。非常に副作用の強いものである。しかしながら、人の生命の危機とかがあるときには入れなくてはいけない。また同時に、副作用をきちんと抑えておくべき打つ手もあると思います。
 私も金融に国家介入するのは最後の最後の最後の、ですから、RCCの、買い取り機構の折にも私は反対の見解を述べさせていただきました。しかしながら、日本が本当にこのままの経済状態、先ほど塩川財務大臣もおっしゃいましたが、非常に経済が空洞化した中で、本当に辛抱強く、粘り強く頑張らなきゃいけないときに下支えできるだろうかという状態に、金融の全体がうまく機能していない状態があるのではないかと思うゆえに、あえて劇薬である公的資金の注入もお考えくださり、なおかつそのときの副作用を最小限にするための手だてをお二方に私は伺ったつもりです。
 私、あと一問質問が残してございますので、恐縮ですが、この件についてはまた柳澤大臣にも重ねてお考えを伺っていくつもりですので、最後の質問に移らせていただきます。
 国内の銀行のことではなくて、国際協力銀行のことに関してでございます。
 いわゆるケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所の問題で、我が党の保坂展人が既に去年の六月六日の外務委員会とことしの二月二十一日の予算委員会でお尋ね申し上げたことですが、いわゆるこの水力発電所の円借款につきまして、第一期は九七年に六十九億三千三百万円の借款が既に供与決定されておりますが、引き続いて第二期についても、一九九九年の八月、実は鈴木宗男、その当時森内閣の官房副長官でいらしたでしょうか、ちょっと正確でなくて済みませんが、がケニアにいらしてモイ大統領と協議なさり、一九九九年の九月に事前通報という形で第二期工事分が決定されておりますが、この借款供与の額はお幾らでしょうか。
溝口政府参考人 お答え申し上げます。
 第一期分は九七年の一月に政府間で交換公文を結びまして供与をいたしておるわけでございますが、御指摘のように六十九億円でございます。
 第二期につきましては、九九年の九月に、これは事前通報と申しますが、これから交換公文を政府間で結んでいきますよ、その話し合いをしましょうという手続をとるわけでございますが、それを九月にいたしたということでございます。金額は百億円程度でございますが、それは交換公文を詰めるまでの間に最終的に詰めるものでございまして、そこで決定されたとかそういう性格のものではないということでございます。
阿部委員 その一九九九年の九月に一応概略百億円という形で決定されて、いまだに交換公文に至っていないところの事情は何でしょうか。
溝口政府参考人 このプロジェクトは、ケニアの国境にあります、ビクトリア湖という非常に巨大な湖がありますが、そこに幾つもの川が流れておりまして、その流水を利用して発電をしようというプロジェクトでございます。
 ケニア自身はアフリカの中ではかなり大きな国でございまして、人口三千万ぐらいでございまして、電力が恒常的に不足してしょっちゅう停電が起こるということで、九〇年代の初めぐらいから電力の開発ということがこの国の大きな課題であったわけでございます。
 そこで、ソンドゥ川という川の水を少しとめまして、その水を使って発電するわけでございますが、九七年に一期分、これは発電のための水を確保する取水池をつくるとか、その水を流す導水路をつくるというような工事でございます。それをまず一期でやろう。二期は、今度は発電の施設を入れるということになるわけでございます。
 それで、発電の施設を入れる分につきまして、九九年の九月ぐらいにこれからよく話をしましょうということをしたわけでございますが、御指摘のように交換公文に至っていないのは、その後、ケニアの方から日本のJBICに対する、円借款がかなりあるわけでございますが、その支払いの遅延が生じました。それで、支払いの遅延が生じますと、これはまた新たに貸しましても返ってくるものかどうかという心配があるわけでございますから、そういう遅延の状況、あるいは、広く言えば債務の返済状況をよく見なければいかぬという問題が出てきております。この問題は、まだ必ずしも確実に解消したということになっておりません。
 それからもう一つは、今度、一期工事が始まりまして、いろいろな工事が始まりますと、住民の移転なんかがありまして、それはさほど多くの数じゃございませんが、九百人ぐらいおられたそうでございますが、移転の補償料なんかについて十分じゃないのではないかというような声があったり、あるいは、水が十分確保できるのかというような問題ができまして、そういう、環境、社会問題をケニア側でちゃんと処理をしなきゃいかぬということになりまして、これは、現地の政府、それからNGOの方々、住民の方々等々が入りまして、委員会をつくりまして検討しているわけでございます。この検討も二年ぐらいかけてやっておりまして、かなり進展したと聞いておりますが、まだ十分でない。
 したがいまして、この二つの問題によりまして、正式に政府間で交換公文を結ぶという状況になっていないということでございます。
阿部委員 先ほど私は質疑の中で森内閣と申しましたが、小渕内閣でございました。
 この件につきましては、引き続き我が党の方で詰めさせていただきますが、やはり百億近いお金の使い方でございますから、もう既に三年以上経過をして、いろいろな問題が山積みしておる中で、予算の使い方でございますので、塩川財務大臣にあっても、ODA予算の見直しといったことも関連いたしますので、見識ある御対処をお願いいたします。
 終わらせていただきます。
坂本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 財務大臣の所信を聴取いたします。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 今後の財政政策等の基本的な考え方につきましては、先般の財政演説において所信を申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端として、今後取り組むべき課題等について申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
 第一の課題は、各般の構造改革の一環として財政構造改革に取り組むことであります。
 平成十四年度予算編成に当たっては、国債発行額三十兆円以下との目標を掲げ、五兆円を削減しつつ重点分野に二兆円を再配分するとの方針のもと、歳出の一層の効率化を進める一方、予算配分を少子高齢化への対応、科学技術、教育、ITの推進等の重点分野に大胆にシフトいたしました。また、特殊法人等への財政支出については、事務事業の抜本的見直しの結果等を反映し、一般会計、特別会計合わせて一兆一千億円を超える削減を実現しております。
 なお、経済情勢に対応して、平成十三年度第一次補正予算においては雇用対策等に重点を置き、第二次補正予算については経済効果の高い施策を緊急実施するべく編成したところであります。政府としては、これらの速やかな執行に努めるとともに、平成十四年度予算とあわせ切れ目なく対処していく所存であります。
 我が国の財政事情は極めて厳しい状況にあり、今後の財政運営に当たっては、先般閣議決定されました「構造改革と経済財政の中期展望」を踏まえ、歳出の質の改善や抑制等を推進するとともに、受益と負担の関係についても引き続き検討を行いつつ、プライマリーバランスの回復に向けて努力してまいります。
 第二の課題は、抜本的な税制改革に取り組むことであります。
 平成十四年度税制改正においては、連結納税制度を創設するとともに、中小企業関係税制として、同族会社の留保金課税の軽減及び取引相場のない株式等について相続税の軽減措置等を講じることとしております。
 また、老人等の少額貯蓄非課税制度を障害者等を対象とした制度に改組するほか、租税特別措置を大幅に見直すとともに、沖縄の経済振興のための税制上の措置等を講じることとしております。
 このため、先般、租税特別措置法等の一部を改正する法律案を提出したところであり、また、連結納税制度の創設等に係る法律案を五月上中旬に提出したいと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
 税制の改革は、政府が取り組んでいる構造改革の柱の一つとして極めて重要な意義を有するものであると考えております。
 ここ数年にわたり、恒久的減税の実施など、税制においても景気に最大限配慮してきました。その結果、我が国の租税負担率はG7諸国で最低の水準となっているなど、いわゆる税負担の空洞化ともいうべき状況が生じており、これについて議論することが必要であります。
 また、個人や企業の経済活動が多様化する中で、二十一世紀においては、経済活動に中立でゆがみのない、簡素でわかりやすい税制の構築が求められるとともに、少子高齢化、グローバル化、情報化などの構造変化にも的確に対応した税制の改革が必要となっております。
 今後、政府税制調査会において、経済財政諮問会議等と連携しつつ、あるべき税制の構築に向け、広く税制上の課題について取り組んでいただき、六月ごろを目途に基本的な方針を示していただきたいと考えております。
 その後、この基本的方針を踏まえ、まずは当面対応すべき課題について年内に取りまとめ、平成十五年度以降、実現してまいりたいと考えております。
 第三の課題は、世界経済の安定と発展に貢献することであります。
 経済のグローバル化が進む中で、自由で公正な国際経済社会の実現に向けて各国が協力して取り組んでいくことが重要であり、我が国としても、世界経済の安定と発展に向けて政策協調を進めてまいります。加えて、アジアにおける通貨、金融の安定に向け一層の貢献を行ってまいります。
 また、多角的貿易体制の維持強化のため、先般立ち上げが合意された新たな多角的貿易交渉に、我が国としても積極的に取り組んでまいります。あわせて、二国間の自由貿易協定にも取り組んでおり、先般、日本・シンガポール新時代経済連携協定の締結に至りました。
 平成十四年度関税改正においては、同協定締結に伴う所要の改正や塩の輸入自由化に伴う関税措置の導入等を行うこととしております。
 なお、昨年九月の同時多発テロ事件を受け、テロ資金対策のための国際的な取り組みが進められております。我が国としても、テロ対策の一環として、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案を今国会に提出することといたしております。
 次に、今国会に提出しております平成十四年度予算の大要について御説明いたします。
 まず、歳出面においては、一般歳出の規模は四十七兆五千四百七十二億円となり、前年度当初予算に対して二・三%の減少となっております。これに地方交付税交付金等及び国債費を加えた一般会計全体の予算規模は八十一兆二千三百億円、前年度当初予算に対しまして一・七%の減少となっております。
 次に、歳入面のうち租税等については、さきに申し述べました税制改正を織り込み四十六兆八千百六十億円を見込んでおります。また、その他収入については、外国為替資金特別会計からの繰り入れの増額等により、四兆四千百四十億円を見込んでおります。
 公債発行予定額は、前年度当初予算より一兆六千八百二十億円増額し、三十兆円となっております。特例公債の発行等については、先般、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案を提出したところであり、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 財政投融資計画については、財政投融資改革、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、対象事業の重点化を図るとともに、現下の社会経済情勢にかんがみ真に必要と考えられる資金需要には的確に対応することとしております。その規模は二十六兆七千九百二十億円となり、前年度当初計画に対しまして一七・七%の減少となっております。
 以上、財政政策等に関する私の所信の一端を申し述べました。
 なお、今後、御審議をお願いすることを予定しております財務省関係の法律案は、先ほど申し上げました租税特別措置法等の一部を改正する法律案等を含め、平成十四年度予算に関連するもの五件、その他五件、合計十件であります。また、現在検討中のものが一件ございます。今後、提出法律案の内容につきましては、逐次御説明することとなりますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
坂本委員長 次に、金融担当大臣の所信を聴取いたします。金融担当大臣柳澤伯夫君。
柳澤国務大臣 金融担当大臣の柳澤でございます。引き続きよろしくお願い申し上げます。本日は、現下の金融行政について一言申し述べさせていただきたいと存じます。
 まず、最近の金融情勢を見ますと、厳しさを増している雇用情勢を初めとして景気が悪化を続けている中、株価や景気動向を通じた我が国金融機関への影響が議論されている状況であります。
 こうした中、金融庁の任務であります我が国の金融機能の安定、預金者、投資者等の保護及び金融の円滑を図るため、昨年十月の改革先行プログラム等を踏まえ、引き続き、金融システム、証券市場の構造改革等の実行に積極的に取り組みます。特に、総理から指示のありました早急に取り組むべきデフレ対応策の一環として、不良債権処理の促進、金融システムの安定、市場対策等に全力を尽くしてまいります。
 まず第一に、不良債権処理への取り組みについては、今後二、三年以内に確実に不良債権を最終処理し、同時に他の分野における構造改革を推進することにより、集中調整期間が終了する平成十六年度には不良債権問題を正常化するよう引き続き全力を尽くしてまいります。
 このため、主要行に対し、通常の検査の抜本的強化に加え、特別検査を厳正かつ的確に実施するとともに、市場の評価に適時に対応した引き当てを確保します。また、特別検査の結果につきましては、適切な形で公表いたします。
 次に、昨年の臨時国会における金融再生法改正による整理回収機構の機能拡充を受け、同機構を活用した不良債権処理と企業再生に積極的に取り組みます。また、企業再建のためのファンドの設立を推進します。
 また、中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の円滑化を図るとともに、主要行の破綻懸念先以下債権のオフバランス化に当たっては、再生可能な企業につき極力再生の方向で取り組むよう、金融機関に要請しております。
 第二に、本年四月には、ペイオフ解禁という金融行政の新たな転換点を迎えます。金融庁としては、金融機関に対する検査監督等を通じ金融システムの安定の確保に万全を期するとともに、その円滑な実施のため、国民に対する広報活動にも引き続き鋭意努めてまいります。
 なお、金融庁としては、金融情勢について十分に注視しており、現時点において金融危機が生じるおそれがあるとは認識しておりませんが、今後、万一、金融危機のおそれがある場合には、法令に従い的確に対処する考えであります。
 第三に、国民が安心して証券市場に参加できるよう、透明性、公平性の高い証券市場を構築することが重要です。このため、昨年八月に発表した「証券市場の構造改革プログラム」等を踏まえ、引き続き、例えば最近公表した空売り規制の見直し等に示されるように、個人投資家の証券市場への信頼向上のためのインフラ整備、個人投資家にとって魅力ある投資信託の実現、投資家教育等を推進してまいります。
 最後に、本国会に提出を予定しております二件の法律案、すなわち証券決済システム改革に関する法律案及び金融機関等による本人確認等に関する法律案につきまして御説明させていただきます。
 前者は、社債、国債等について、その決済の迅速化、確実化を実現するための新たな振替決済制度の創設等を行うものです。後者は、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結等に伴い、金融機関等に対して本人確認及び取引記録保存を義務づける等、所要の措置を講ずるものであります。
 法律案の詳しい内容につきましては、今後、改めて御説明させていただきますが、当委員会の坂本委員長及び委員の皆様におかれましては、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
坂本委員長 以上で両大臣の所信表明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹下亘君。
竹下委員 自民党の竹下亘でございます。両大臣の所信に関連いたしまして、金融、財政全般にわたって質問させていただきます。
 まず、現下の状況でございますが、今夕、経済財政諮問会議が開催をされまして、先日小泉総理から要請のありました、緊急に取り組むべきデフレへの対応策につきまして、政府としての案が発表になるというふうに伺っております。そのデフレ、そしてこのデフレ下での構造改革といったことについてまず質問させていただきます。
 アメリカの場合あるいはイギリスの場合、レーガノミックスとかサッチャーさんの改革とか、いずれもインフレのもとでの改革でありまして、先日お見えになったブッシュ大統領も、アメリカは規制の撤廃と減税で景気回復をやったんだというような内容のことを小泉総理との会見の中でお話ししておられましたが、これは我が国の状況と違うなと。特に、一番違う点がやはり、デフレという状況の中でどうやって構造改革をやっていくか、そして、その先に財政改革というものをどう見据えていくかという問題ではないかなと思うような次第であります。
 ただ、デフレのもとでの財政改革ということになりますと、どうしても難しい問題がある。というのは、塩川大臣もそれから柳澤大臣もお話しになりましたように、不良債権の処理の問題というのは、どうしても一時的にはデフレを加速する要素を持った内容になるからでありまして、じゃどうやって、二つとも追っかけるのか、一つにするのかという中で、今我が国は、簡単に言いますと二兎を追うという形の、しかもかなり厳しく二兎を追うという形の政策を遂行しておると私は思っております。
 構造改革はなぜ必要か。確かに一時的に痛みは伴いますし、特にデフレの中では難しいことも多いわけでありますが、私は、意識の改革というのをどうしてもやらなければならない。戦後五十年、この日本という国は世界の奇跡と言われる高度成長をなし遂げて、今日の基礎を築いてきたわけであります。つまり、戦後の五十年間というのは、日本のシステム、政治も経済もあるいは官僚機構も、あるいは商習慣も、日本のシステムが世界の流れに一番合っていた、世界でいわば一番いいシステムであったからこそ、日本はほかのだれもなし遂げなかった人類の奇跡をなし遂げることができた。
 しかし、ここ十年、やはり変わってきた。あらゆるシステム、あらゆる制度というのは必ず疲弊をいたします。いわば金属疲労のようなものが出てきた。これを変える作業が実は大変である。何せ、世界の歴史の中で一番成功してきたシステムであるだけに、あのときはあれでうまくいったじゃないかという成功体験をみんなが体にしみ込んで持っているだけに、これを変えるのは大変だ。
 この意識の改革をどう進めていくかというのがまさにデフレのもとでの構造改革ではないかなと思うわけでありまして、ある意味で、強いリーダーシップ、あるいは痛みを伴うことも含めた国民的な合意がなければ、この構造改革は壁にぶち当たってしまう、あるいはとんざしてしまう危険性すら持っているんではないか。どんなに強い意志があっても、国民が、合意というか、痛みは我慢するぞ、こう心の準備をきちっとしていなければ、どんなにいい政策でもとんざをしてしまう可能性のある、難しい難しいかじ取りを今政府はやらざるを得ない状況にある。
 そこで、このデフレのもとでの構造改革、きょう夕方発表されるデフレ対策の中にもいろいろなことが盛られているとは思いますが、特にデフレのもとでという前提で、構造改革、どのような難しい点があると認識をされ、そしてどのような覚悟で臨もうとされているのかという点について、まず決意のほども含めましてお伺いをさせていただきたいと思います。
塩川国務大臣 戦後五十五年の間、ずっと経済の成長状況を見てまいりましたら、確かに竹下先生おっしゃるように、今までの経済体制、官主導で、要するに護送船団方式というのは、一定のレベルまで経済の発展を図り、生活水準を引き上げるのには必要な制度であり、有効であったと思っております。その根本の思想になりますのは、明治以来の富国強兵の思想が根底にあったと思っております。
 しかしながら、これが高度経済成長の行き着きましたところに、さらに世界が、いわば二大対立構造から解放されて恒久的な平和へ向かって希求するようになってきて、軍事産業のあり方というものが世界的に根本的に変わってまいりましたことと、それから、技術革新に結びつきまして経済の構造そのものが大きく変化せざるを得なくなりまして、我が国においては、重厚長大産業から一挙に情報産業へ転換しなきゃならぬ。そのときに、この十年近くの間見てまいりましたら、その転換の意識が私は痛烈にはなかったと思っておりまして、その転換の必要性をどの程度痛感したかということが、今日、このいわば構造切りかえのスピードにつながってきておると思っておりまして、これがやっと最近になりまして構造の改革というものを意識するようになって、それに積極的に官民ともに取り組んできておるように思っておるのであります。
 そのきっかけとなりましたのは、ビッグバンが叫ばれて十年になります。けれども、本当にビッグバンが何であるかということが意識されなかったところが、三年前に起こりました金融機関のいわば思わざる危機状態、これに対しまして、金融早期再生関係の法律が国会を中心として議論が出されるようになりましてから、それから金融機関の体質改善と不良資産というものが急に大きい経済問題であり政治問題、社会問題になってまいりました。ここに初めて時代の変化の意識が国民の間によみがえってきたのではないかと私は思っております。それだけ、失われた十年と言われるごとく、気づくのが遅かったように思っておりまして、そのことをどうして取り返すかということが今一番大事なところであろうと思っております。
 ところが、失われた十年とはいいますけれども、この間に、もし自民党政府が必死になって補正予算等を組み、需要の供給や需要を創出していくことの努力をしなかった場合、つまり景気刺激対策を莫大な国債を発行して支えていったからこそ、私は、経済の底割れがなかったと思っております。もしあれをやっておらなかったら、本当に底割れになってしまって、そのときには、無意識の中にどん底に突き落とされてしまうようなことになっていたかもわからぬ。そこを支えてきたのは、あの七、八年の間にわたりました、苦しい補正予算で支えてきた、この成果があったと思っております。
 しかし、それは、もう底割れがないということになってきたら、積極的に方向を転換しなきゃならぬと私は思っておるんです。それは何か。供給面における構造改革をしなきゃならぬ。それが今、小泉内閣になりまして言っておりますところの、構造改革なくして経済成長なし、そういうキャッチフレーズに結びついてきて表現しておりますようなことになってきたと思っております。
 でございますから、急激なことで構造改革は進みませんけれども、構造改革を進めていく指針というものは、やはり政治の責任として国民に明示しなければならぬのではないか。その努力は絶えず行っていかなきゃならぬ。といって、これの進めていくスピードいかんによっては、再び経済の中に混乱を起こすかもわからない。
 その混乱を起こさないためのセーフティーネットを絶えず張りながらやっていかなきゃならぬと思っておりますが、そのセーフティーネットの一つとして、切れ目なく需要を喚起していくための、いわば公共事業の継続であり福祉事業の拡大であるとかいうことをやっていくと同時に、雇用等におきますところのセーフティーネットをしっかりと張っていくことだと思っておりまして、その二つを現在追求しておるところでございます。どちらかというと、供給側からするところの構造改革に重点を置きつつ、未来を開いていこうという方に志向した努力をしておるということが現在我々努めておるところである、こう御認識いただければと思っております。
竹下委員 最近、ドラッガーが、日本のマスコミのインタビューに対しまして、失われた十年の後どうなんだ、苦しい十年になるんじゃないか、こういう趣旨の質問に対して、いや、爆発的に上昇する十年になるかもしれないよという答えをしているのを私、えらく興味を持って、えっと思いながら読んだことがございます。その苦しい十年を通り抜けて、これからの十年、あるいはまさに、本来ならば二十世紀の最後に私たちが二十一世紀の足固めをしなきゃならない時期を失ってしまった、ちょっとおくれたけれども、今まさに二十一世紀を過ごすための足固めをしっかりしなければならない時期になっているなということを感じると同時に、塩川大臣おっしゃいましたように、供給サイド、サプライサイドの政策、対応というものを相当しっかりやっていかなきゃいかぬなということも今改めて強く感じておるところであります。
 一つ別の見方といいますか、有名なマネタリストでありますフリードマン教授が、歴史の中で、一九三〇年代のあの大恐慌、あのときもデフレが進行して、日本の場合は昭和恐慌のときも大変な状況になったのですが、あのときと違うのは、マネーの供給量だと。この人はマネタリストですので、どうしてもマネーに重点を置いて物を見がちではありますが、マネーサプライが大きく下がったと。あのときと違うのは、今マネーの供給は相当しっかりいっているのだ、だから、そこが、マネーの安全装置があるからというようなことをフリードマン教授が言っておったのも読んだことがあるのです。
 ただ問題は、マクロ的にはそうであっても、先ほどからというよりも予算委員会の中でもたびたび議論になりますが、なかなかこれが国民の手に、あるいは中小企業の手に届かないところに問題がある。まさに金融不安というものが大きく影を落としておる状況であると思うわけであります。そして、この四月、ペイオフが実施されるということを目前にいたしまして、どうしてもしっかりと金融不安というのを取り除いておかなければならない。
 小泉総理も、先般の総理指示の中で、特別検査では、自己資本や体力を気にせず、金融機関の経営に大きな影響を持つ貸出先について、しっかり検査して処理するようにしてほしい。そして、特別検査は何らかの形で公表した方がよい。ペイオフ後は預金者が安心できる金融機関がそろうように、それまでにしっかりと検査監督しておいてほしいといったようなことを改めて指示なさっております。
 私は、この言葉の中、特に自己資本や体力を気にせずとあえて総理がおっしゃった中に、いわば国民が本能的に感じておる不安が含まれておるのではないかな。つまり、銀行が、金融機関が自己資本が傷つくことを恐れる余り、なかなか、不良債権を小出しにしてしまったのじゃないか、そういう不安が国民の中にあるのではないか。
 これまでの予算委員会とかこの財務委員会でのさまざまな議論を聞いておりますと、バブルの崩壊による不良債権の処理というのはかなり進んでいるのだ、しかし、新たなものが発生をしておって、トータルとしてはなかなか減らないのだという苦しい局面をお話しになっておるのを、それは頭の中ではわかる。しかし、国民が今感じておる不安というのは、本当にこれで十分かな、あるいは、今公表されておるような不良債権が本当にすべてなんだろうか、そういう不安があるのではないかと思います。
 そこで、柳澤大臣にお伺いをいたしますが、特にバブル崩壊後ここ数年、日本の金融機関はどれだけの不良債権をトータルとして処理してきたのか、そして、まだしなきゃならないのがどれぐらいあるのか。何回も大臣にお話をいただいておるところではございますが、もう一度改めてお話をしていただきたいと思う次第であります。
柳澤国務大臣 大きな視野からのお話がございまして、そういう視野からたまに、たまにというか、物を見ることも大事だ、こういうように思います。
 日本の金融機関の不良債権の問題が実際に非常に大きな関心の的になりまして、不良債権の金額を情報開示すべきだというようなことが始まったころと私記憶していますけれども、平成四年度、つまり平成五年三月期からそういう動きになったというつかみ方をしておるわけでございます。
 それから、一体不良債権というのをどれだけ処理してきたかということでございますけれども、これは、正確には処理損という形でつかまえられているわけです。つまり、処理損というのはどういうことかというと、引き当てか、債権放棄だとかそういうようなことで償却してしまう、オフバランス化してしまう。こういう処理をしますと、損が立つわけでございます。損益勘定上損が立つ、こういうことです。
 ちょっとここが非常に紛らわしいところで、本当は処理損、処理というのがオフバランス化、バランスから外すことが処理ということであると非常にわかりがいいと思うのですね。今までどれだけオフバランス化してきたか、今どれだけ残っているかということでストレートに結びつきますので、非常にわかりいいのですが、このオフバランス化をどうしてきたかということについては、実は統計がないのでございます。統計がない。何でないかというと、我々の本当の関心というのが処理損がどのぐらいあるかということに、昔からそうなっていたものですから、そういうことなんですね。
 そういうことで申しますと、処理損というのが、全国銀行ベースで七十五兆円、平成十三年九月期までで七十五兆円処理損が立っております。そこからいろいろな工夫をして、オフバランス化の累計というのを、これは推計です、ある一定の前提を置いて推計して出しますと、大体それが六十一兆と。実は、処理損よりもちょっと少ない、九割方でございますか、そんなことになるわけです。大体、オフバランス化というのを推計すると六十二兆ぐらいだろう。
 それだけのことの損を負いながら、六十一兆円のオフバランス化をしたわけですが、今それではどれだけ残っているかといいますと、三十五兆六千ですけれども、四捨五入しますと三十六兆、こういうことでございます。ですから、七十五兆の損をしながらオフバランス化に六十一兆してきた。今残っているのは三十六兆である、こういうのが現在の状況。
 こういうことで、これをどう見るかですけれども、七十六兆損をして出してきた、相当なものだということでございます。しかし、それをやってもまだ三十六兆残っている。まあ三十六兆の中、全部損にしなきゃ処理できないというわけじゃありません。この中には要管理債権などというような債権がかなり含まれていますから、全部損しなきゃ処理できないというわけではないということが一つと、まだそれでは要注意から落ちてくる、質が悪くなって不良債権になるのが出てくるじゃないかということもある程度は考えられる、こういう状況だということです。
竹下委員 七十五兆と、そして三十五兆六千億、まだ数字の上で残っておる。二、三年という集中期間にこれを何としても処理するのだということをおっしゃっておりますし、と同時に、今その一方で特別検査を実施していらっしゃる。大体、三月いっぱいまでに特別検査を行っていらっしゃるということでございます。
 そして、総理の指示の中で、検査結果は何らかの形で公表した方がよい、こう書かれておりますが、これは、ときには大変微妙な問題も含んでおりますだけに、どういう形で公表しようと今お考えになっておるのかという点を少しお話をいただけますでしょうか。
柳澤国務大臣 特別検査というものを始めたわけでございます。これはどういうことかといいますと、我々は新しい制度、金融庁という新しい役所の新しい銀行監督の仕組みのもとでは、金融検査というものは、常に金融機関がやった決算、それが正しく行われているかというのを見に行く、こういう仕組みなのでございます。
 ところが、実際にこの前起こったことというのを見ますと、決算の後に実は市場の評価が大幅に落ちまして、それがその企業に対する納入業者なんかに大きな不安を呼んで、もう今までの条件では納入できないということになって、倒れてしまうということが起こりました。それは結構、その前の決算のときにはそんなに悪い市場の評価じゃなかったものです。それにもかかわらず倒れてしまったんです。そういうようなケースがあるときに、検査に行って、その倒れていない、まあまあの市場評価を得てちゃんとやっていた決算を見に行ったって、何の意味があるんだろうかということにならざるを得ません。
 そこで、ちょっと新しい役所になっての新しい検査のシステムという原則をかなり補完をしなきゃいけないというようなことになりまして、検査というものを、検査に入ったとき、リアルタイムの市場の評価や債務者の状況を見る、こういうことにちょっと例外をつくったということをやったわけです。ですから、例外的な検査ですから、そんなにたくさんはできませんということで、ある程度条件を決めまして、その条件に該当するような企業を絞りまして、それでそういうものを見に行って、今検査をしているわけでございます。
 その結果を公表した方がいいよということを総理がおっしゃったわけですけれども、やはりそれは、検査というものが本当に有効に働いているんだよということを国民に納得してもらって、そこから検査に対する信頼というものも向上させる方がいいということで、特別検査の結果は一体どうだったんだというようなことで、その結果がわかるような資料を公表した方がいいだろう、こうなったわけです。
 そこで、長話で恐縮ですが、しかし、今竹下委員が言われたようにこれは微妙な問題なんですね。どこが検査の対象になったんだと。結局はよかった、検査したけれども大丈夫でしたよというのもたくさんあるわけですね。ところが、検査をされたというだけで、世の中の人は今神経が敏感になっていますから、あそこは危ないんだぞなんというような話になりかねない。それはやはり避けなきゃいけないということになりまして、我々としては、風評被害というんですが、そういう風評被害から免れたところで、特別検査の結果がなるほどこういうことだったかといって検査そのものに対する信頼が増すようなものになるように、そのあたりの両方が満足されるような形を考えて、これをことしの三月末決算が締まりましたらできるだけ早い機会に公表したい、こう考えているというわけです。
竹下委員 私どものところは地方の中小企業しかない地域でありますので、どうしても中小企業に対する資金繰りがなかなかうまくいかないというケースが、時には悲鳴のような形で私どものところにも聞こえてき、入ってくるわけでございますが、先ほどからこの委員会の議論でも出ておりましたが、金融マニュアルのあり方をめぐってさまざまな議論がございます。
 実は、党の方のデフレ対策を考えておる委員会でも、中小企業に対する金融マニュアル、別なものをつくったらどうだということを、あえて提言を自民党の方のデフレ対策の中に盛り込ませていただいておるところでございます。
 しかし一方で、金融界の皆さん方と話していると今度は逆に、貸しはがし、貸し渋りという悪い言葉が今流れておりますが、企業にそれほど貸したくない、あるいは資金を回収しなきゃならぬ、本当はそれほど強く言われていないけれども、いや実は金融庁がうるさくてうるさくてしようがないから引き揚げさせてもらうんだという、いわば言いわけに使われておる部分もあるんではないか。金融庁が全部正しいとは私は思いませんし、全部金融庁が悪いとも思わない、そういう二つの意味で、だけれども結果として金融庁は今悪者扱いになっておるのではないかなと思います。
 ですから、そういう中でどうやって金融庁というもの、あるいは検査という行動を国民の皆さん方に理解してもらうか。そして、理解してもらう中で、例えば金融庁の場合、急速に検査人員が膨れてきたという歴史がありますので、その検査をする人たちの教育の問題も含めてどうなっているか、検査の信頼性を確保するという観点からお答えを願いたいと思います。
柳澤国務大臣 ずっとこの委員会でも金融検査というものについて、片方は甘いじゃないか、片方からはまた辛過ぎるというか、厳し過ぎるじゃないかというようなことで、双方から御批判をいただいているわけで、私もその難しさというものを感じているんです。
 今のお話、中小企業に対して、自民党の側が検査マニュアルの中小企業版というものをつくるということをデフレ対策の中でうたっておるぞ、こういうお話でございますが、私どもの理解といたしましては、中小企業に対する検査、これは検査マニュアルにも、かねて申し上げているように、たくさん注意書きがあって、その特殊性に着目した検査をするようにということがうたってあるわけでございますけれども、そういうものを具体のケースに当てはめたものが次々出てくるわけでございます。こういうところはこの中小企業の特殊性として勘案して考えたぞというようなものが出てきますので、そういうものを、検査官のその場限りの判断ということじゃなくて、そういう判断の例というものを積み重ねていくということがまず大事じゃないか。それを検査官の共通の財産にして、似たようなケースに直面したときにそれが参考になるというようなものをひとつつくったらどうなんだろうか、こういうようなことだというふうに実は金融庁としては受けとめさせていただいております。
 もちろん、その中から、さらにそういう具体のケースの中から一つ原理が抽象できる、引き出すことができるということであれば、それはそれでまた一つの規範になるということでございますが、とりあえずは、まずこの中小企業の特殊性に着目した検査というものの具体例を積み重ねて、そしてそういうものをみんな共通のノウハウにしよう。それは場合によっては公表して、金融機関の皆さんにもそういうことを知っていてもらうというようなことにしよう、こういうことを考えているわけでございます。
 もちろん、金融庁の体制も非常に、これはもう一度にたくさんの事務をいただきましたので、これをきっちりこなすために若い人にも入っていただいて陣容を整えているんですけれども、研修というものが非常に大事だということで、今懸命に研修もしております。しかし、やはり若い人というのはなかなか抽象的な研修だけでは間に合わないところもあるかもしれませんので、そういうようなときに備えてそういう具体例というようなものを蓄積していきたい。こんなふうに考えて、そういうことを通じて検査に対する信頼をぜひ向上させていきたい、このように考えているわけでございます。
竹下委員 どうもありがとうございました。
坂本委員長 次に、古川元久君。
古川委員 民主党の古川元久でございます。
 質問に先立ちまして、きょうの夕方、経済財政諮問会議で政府のデフレ対策が決められるということになっていたと思うんですが、実際にはきのうの夜から、もう事実上、政府案はこういうふうだといって報道がされているわけでございます。
 これは、きょうの夕方決めるはずなのが、どうしてもうきのうの段階で出ちゃっているのか。そうしたら、きょう夕方、わざわざまた会議をやって決める必要があるのか。これは、何か一説によると、自民党の方が自民党案と間違えてマスコミに渡しちゃったなんというような話もあるみたいなんですけれども、この辺のところの事実関係というのはどうなんですか、どちらの大臣でも結構ですから、わかったら教えていただきたいんですが。
塩川国務大臣 デフレ対策の総合的なまとめといいましょうか、それは、きょうの夕方の経済財政諮問会議で方向づけをすることになっております。それは、前からのスケジュールがそうなっております。
 党の方の二枚のペーパー、古川さんが持っている二枚のものでしょう、党のものは。党の方のペーパーでそれがある程度公表されておりますのは、それは、役人が皆交流して、いろいろなことでレクチャーをやって走り回っていますから、そういうのを断片的につなぎ合わせてそういうようなペーパーになったんだろうと思っておりますが、我々はそのペーパーには関係しておりませんで、きょう改めて財政諮問会議でペーパーを書くことになっております。
古川委員 とは言われましても、もう事実上きのうの夜から、ニュース初めきょうの新聞も、みんな政府案と自民党案と比較しているわけですよ。そういう意味ではもう事実上決まっていると言ってもいいんじゃないかと思いますから、これから、そういうものが、政府案はそれなりに決まっているというベースで私は聞かせていただきますから、まだこれから夕方決めるんですというような形で、御答弁が逃げることのないようにしていただきたいということをまず最初に申し上げたいと思います。
 ちょっとそれに関連してなんですけれども、自民党から、きのうは党のデフレ対策が発表されたわけですね。先日は公明党もデフレ対策を発表されて、保守党も発表されているというふうに聞いていますが、デフレ対策というだけで、与党、政府で三つも四つもいろいろな案があるわけなんですね。
 一般的に見てみますと、政府案がある意味で一番範囲が限られていて、党のはそれぞれがかなりいろいろな形で、踏み出したといいますか、より踏み込んだような対策になっているというわけでありますけれども、これは一般の国民、あるいはそういうのをベースにして投資をしているようなマーケット関係者からすると、どれを信用していいのかと。
 新聞なんかのけさの書きぶりを見ていますと、政府として今のところはきょう決めるのでいくけれども、次の一手がある、それはこの後に出てくるんだろう、そういう含みがあるというような報道ぶりが大体されておるわけでありますけれども、その次の一手というのは、今こうやって各党から出ているような、政党の、与党の案をベースにしてそういう新たな一手が出てくるというふうに考えてよろしいんでしょうか。どうですか、両大臣。
塩川国務大臣 きょう、恐らく、デフレ対策は、いろいろな項目ごとで詳しくそれぞれの対策を明示していくであろうと思っておりますけれども、方針としては大体四つのことに集約されると私は思っております。
 一つは、不良債権問題とそれから特別検査との関係を明確にしていくということが一つございますことと、それから、株式市場といいましょうか、証券の活性化をどうして図っていくかということがあろうと思っております。それと、金融緩和、これは日銀との協力関係でございますが、そういうこと。そして、もう一つつけ加えて、さらに問題となっておりますのは、中小企業の金融をどうするかというようなこと。大分類して、そういうところに集約されてくると思っております。
 もちろん、デフレ対策でございますから、経済政策全般に関係しておることは当然でございます。しかし、あれもこれもと雑貨屋みたいにずっと並べてしまっても、なかなか焦点を国民に説明しにくいと思いますので、要点のまとめたところを総理がアピールしていくだろうと思っております。
柳澤国務大臣 このデフレ対策ですけれども、これは、平成十四年二月の十三日に、総理から経済閣僚と言われる閣僚が指示を受けたものでございます。それにこたえるものが経済対策ということでございますが、この御指示では、不良債権の処理の一層の促進、金融システムの安定、資本市場対策、中小企業への貸し渋り対策、加えて日本銀行の金融政策、こういうものが指示の課題でございますので、これらに沿った対策が出てくる、このように考えています。
古川委員 私が今聞いたのは、要は、きょう出てくる政府案はそれでいいです。ただ、今まさに塩川大臣が言われた雑貨屋みたいないろいろなもので、与党の中でいろいろ出ているわけですね。
 そういうものは、これから政府が次の一手を打つような、打つと言われているんですけれども、じゃその布石なのか。あるいは、そういうときに、今与党で言われているようなものも、これは検討の要素として入ってくるようなものと理解していいのかどうかということ。今回出ているので、政府としては、デフレ対策、この枠内でやっていくというのか。あるいは、これから、そのはみ出している、与党の言っている、そういうものまで進んでいく、そういう可能性というのはあるのか。その点について聞いているんです。簡単にお答えください。
柳澤国務大臣 まだ私、余りにもできてほやほやというか、できたばかりのものですので、ちょっと正直言って目を通しておりませんが、いずれにせよ、与党の合意に基づくそうしたものが出たときには、私どもとしてもよく勉強させていただかなきゃなりませんし、また、必要に応じて御相談もしていかなければならない、このように考えております。
古川委員 これはお二人の大臣に、大臣というお立場というよりも政治家としてちょっとお伺いしたいんですけれども、今のお話を聞いていると、要は、政府・与党というのは、柳澤大臣、これは予算委員会なんかで前に少しそういう話をされたのを私は記憶しているんですけれども、やはり一体となって、とにかく議院内閣制のもとでは、政府・与党の中で二つの意見があるとかあるいは何か権力主体があるのではなくて、やはり一元的に物事を決めて、そしてそれを実行していかないといけないというふうに思うわけなんです。今の状況というのは、政府案は政府案、自民党案は自民党案とか、与党案、あと公明党案とかあって、そういういろいろ出ているのが、政府・与党を見ているほかの、外の人間から見ると、一体どういう方向で進んでいくのか、非常にいろいろな混乱、疑念を招いていく、やはりそういう一因になっているんじゃないかと思うんですね。
 政府と与党という、いわば権力の二重構造と言ってもいいと思うんですけれども、これなんかは、今外務省と鈴木宗男議員との間で問題になっているような、こういう問題の背景にもやはりこういう二重構造があるんじゃないか。
 ですから、本来、政策というのは、ちゃんと外に打ち出されるときには与党・政府一体として、やはり一本で示されるべきだと思いますけれども、その点に関して、両大臣、別に大臣の立場というだけではなくて、個人の政治家としてどうお考えになっていらっしゃるか、御意見をお聞かせください。
塩川国務大臣 これは、やはり政府が決めたもの、もっと端的に言いますと、やはり日本の政治、政治というか行政ですけれども、行政は閣議で決まっております。そこへ至るまでに、政治的な検討というものが、各方面からのものが持ち込まれてくる。それを受けまして、結局、決定するのは政府が決定いたしますけれども、提案したり、あるいはまたそれに対する監視体制をとったりするのは政党がやっていく、そういう役割分担は今明確に出てきております。
 以前は、それがもっと複雑にかみ込んでおりました。けれども、昨年の、十二月をきっかけにして政府の体制が一月から変わってまいりまして、要するに、中央政府の組み方が、内閣府というのができまして、それによって、昨年から変わってまいりましたことを見まして、官邸の主導権というものが非常に強く確立いたしました。でございますから、経済政策、財政政策に関しましての基本的な方針というものは、全部、経済財政諮問会議で方針を決めて各省におろしていく、そういうスタイルになってきております。
柳澤国務大臣 古川委員がちょっと言及されました私の、政府と与党との関係というのは、あのケースの場合には、政府のとろうとしている施策を事前に審査をしてそれについて与党がチェックをしてしまう、場合によっては一部それを実現できなくするというか削ってしまう、こういうようなことについてどう考えるかというようなお話でありまして、今回の場合とはちょっとケースが違うように思っております。
 私は、今回のケースの場合には、政府の案は案として当然与党が認めてくださっているというふうに理解しておりますし、与党がそれとは別の案を出されているとすれば、また事実出しておられるわけですけれども、そういうものはある種のプラスアルファの提案というふうに考えておりまして、問題提起を政府側にしていただいている、これをどういうふうに受けとめて、どうやって処理していくかというのが政府側の課題になっている、このように考えております。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
古川委員 与党と政府の間だけでいろいろな議論が交わされることは私はいいと思うのですけれども、ただ、例えば今回の公明党の案でもまた自民党案でも入っています、株式市場の活性化対策として、年金資金の運用基金をもっとうまく活用して株式市場を活性化しようなんという話。これについては、与党の、ある閣内には入っていない、しかし政策に関しては責任を持っているような人が、一部のマーケット関係者の小さい集まりの中で、ちゃんと株価については年金資金を使って支えるから大丈夫だというような、そういう発言もされたというようなうわさも入ってきたりして、そういうもので株価が動いたりするというようなことが言われたりしています。
 ですから、やはり、本来年金資金がそんなふうに株式市場の活性化のために使われるようなことがいいとは私は思いませんけれども、ただ、そういうことを閣僚でもない人が言うことが信じられ、どこまで信じたのか、それはそういうことを信じる方が悪いというふうに言われるかもしれませんが、しかしそういうことがあり得るのじゃないかと思われるようなそういう政策決定の仕方をとっているところに、私は、与党と政府のあり方というものを考えていかなきゃいけないのじゃないかと思うわけなんであります。
 年金資金の運用の拡大、株式市場の活性化のためにということについてですが、こういうことが与党の政策としてはっきりと書かれているということについて、柳澤大臣はどのようにお考えになられますか。
柳澤国務大臣 年金にせよ、郵貯、簡保にせよ、相当の資金がそこに存在し、その運用というものを考えなければならないというのは当事者の課題であります。そういう中で、これはそれぞれの貯蓄をする人あるいは年金の将来の受給者、こういうような方々の利益というものを最も大事にして、その資産の運用に努めなければならないということであろうと思います。
 そういう中で、株式とかその他のいろいろな運用先とともに、それこそベストのポートフォリオインベストメントの中身を形づくっていくというのは当然でありまして、私は、その目的にかなった運用が行われるということが最も大事なことで、その方向に多分、多分というかその方向でなされるということが大事だと。
 何でこうごたごた言うかというと、当の私は運用者の関係では所管ではありませんので一般原則を申し述べた、こういうことでございます。
古川委員 運用者ではないわけですけれども、マーケットを監視しておられるその立場から見て、年金資金というものは、まさにマーケットの中では一番大きなマーケットプレーヤーと言っていいわけですから、その動きがこういうような形で株式市場活性化のための方策として使われるというようなことは、私はいかがなものかというふうに思うのです。その点については、柳澤大臣の今のお話をお伺いしていますと、こうやって書かれても別にそれは構わないというふうに思っておられるのか、それとも好ましくないと思っておられるのか。
 こうやって書かれると、それは必ずしも年金受給者の本当にためになるために利用されるといいますか、投資をされるという保証はないわけでありますよね。株式市場を活性化するという目的が前に来れば、それは必ずしも年金受給者にとってプラス、一番ベストではないという場合も想定できるのじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
柳澤国務大臣 大変恐縮ですが、私は、まだその与党の案というものをしっかりと目を通させていただいたわけではないわけでございます。今、古川委員が御指摘になられたことでそれを信じろということで、それを前提に話せということかもしれませんけれども、ちょっと今の段階で細かいコメントをするのは差し控えるべきじゃないかな、私はこういうように思います。
 いずれにせよ、ポートフォリオインベストメントとして株式が中に入るというのは当然想定されてしかるべきことでありまして、それが第一に考えるべきは、預金者、それから年金の将来の受給者、あるいは保険の将来の受取人、そういうような人の利益のために行われるということが第一の課題ですけれども、そういうことを考えながら、同時にその向きの、インベストメントの方向によっては活性化というところにつながることもあり得るわけでありまして、それについて何にも言うなというほどリジッドに考えるのかどうか、そのあたりはもうちょっと文章を見てよく検討させていただかないと明確なことは申し上げられない、このように思います。
古川委員 大臣、これは別に文章が問題じゃないのです。私は、こういうことで年金の運用資金を株価対策、活性化に用いるようなことというのが別に書かれていようと書かれていまいと、これは一般的に言ってやはり問題であるのじゃないか。やはり今大臣が言われたように、ポートフォリオの中に年金の運用資金として株式が入ること、私は何らそれを否定するものじゃありません。そのことと、これを株式市場の活性化のために利用しようというのがまず先に来るようなやり方というのは一般論としていかがなものかという質問を私はしておるわけでありまして、この当の文章を読んだらどうのこうのという話じゃないのです。今、そこのところは御理解をいただきたい。
 今のお話を聞いていると、どうもそこのところ、まだ大臣もはっきりと、どちらともとれるような発言をされておるわけでありますから、やはりそこは大臣が、年金資金がマーケットにとって株価を下支えするような、あるいは株価を下押しするような、そういう使われ方をしてもそれは構わないというようなメッセージをもしマーケットに与えますと、これは無用な疑念を招くことになりますし、逆にそういう思惑で投機をされるということがあれば、これは結果として年金受給者の利益を大変に損なうことになると思いますので、そこのところはやはりしっかりした明確なメッセージというものを出していただきたいというふうにお願いをしておきます。
 年金に絡みまして、先日私、予算委員会でちょっと質問をさせていただいたんですけれども、少しちょっと時間がなくなって確認ができなかった部分がありますので、もう一度確認をさせていただきたいと思うんです。
 三月十二日に、新年度の新たに運用される新規の年金資金、これは九兆円あるというふうに言われているんですけれども、その運用先の比率が公開されるということが報道されているわけなんですけれども、この公開内容について、先日の御答弁ですと、例えば株に幾らあるいは債券に幾ら、そういうフローで幾ら流すというわけじゃなくて、これが運用された結果として来年度のポートフォリオが、株式が何%、債券が何%になる、そのような形の最終的な結果としてのポートフォリオを公表するというような御答弁だったというふうに私は認識しておりますが、それでよろしいですか。
辻政府参考人 御指摘のとおりでございまして、十四年度末における総資産に対する株式その他の各資産の配分割合というものが公表される予定でございます。
古川委員 柳澤大臣、先日、私が質問したときにはいらっしゃらなかったので、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、マーケット関係者の中では、これは今年金局長が言われたような形じゃなくて、この九兆円が幾ら株に行くか、幾ら債券に行くか、そういうのが発表されるのじゃないかというふうに期待されていたんですね。それが株式市場に流れてきて、それが年度末、そして四月以降も株価を下支えするんじゃないかと。マーケット関係者の間では、ここ数年は六月にかけて株価が上がっていくのは、これは年金資金が買い上げていくからだ、これはもう常識化しているなんというような声さえもあるそうです。
 これは、マーケットを監視する立場にある者として、そういうマーケットの中にある話というものはぜひ知っておいていただきたいわけなんですけれども、そういう中でいいますと、今の話の中、もうちょっと話を少し変えますけれども、マーケット関係者の中には、来年の配分が、そのように十二日に、配分の量が示されるだけじゃなくて、実際にこれがもう今年度中に配分されて、来年度分といいますけれども、実はもう三月の間から既にそれは先に投資が始まるんじゃないかというようなことまでも言われているようなんですが、実際にはこれは、来年度の新規の運用資金は、いつ運用機関に渡されて、いつから実際にそういう株だとか債券だとかに投資が始まるのか、その点のところをお答えいただけますか。
辻政府参考人 年金資金の市場への投入の時期についてのお尋ねでございますが、まず基本的に、投入の基本方針、これは、特定の時期に偏ってリスクをいわば集中させないように、逆にそのリスクを分散して買っていく。あるいは、市場の価格形成をゆがめることがないようにということで、資金の投入及び回収をできるだけ分散化させるように努めるというのがこの基本方針でございます。十四年度は、このような考え方のもとで、御指摘のように、これはもう予算上決まっておりまして、総額で九兆円のニューマネーが市場に投入され、これが株式その他の各資産に、今申しましたような明らかにされるポートフォリオに基づきまして投入されるわけでございます。
 市場に不必要な影響を及ぼさないということから、ニューマネーを配分する具体的な時期についてはこれはあらかじめ申し上げられませんが、その具体的な配分方法といたしましては、今申しましたように、期間分散で投入するという方針はもう明確でございますので、四月に始まりまして、新年度分はこれは新年度にしか執行できません、四月に始まりまして、年度内を通じまして資金投入等の時期を細分化し、かつ、あらかじめ年金政策の観点から定められた年度末のポートフォリオに向けまして均等に配分していく、こういう形で投入する予定でございます。
古川委員 要は、今年度中に配分されてそれが渡るということはないということで確認させていただいてよろしいわけですね。
 そうなりますと、これは市場の中では、よく株価が締まりますと、きょうの株価は最後に年金資金が買い上げたとか、この年金資金、マーケットのビッグプレーヤーですから、やはりその動向についてはそういういろいろなうわさが流れているわけです。先ほど来から私、話に出しておりますように、今のようなきっちりしたやり方でやられているのであれば、マーケットが思っているような形で、株価を下支えするような形で年金資金が投入されたり、あるいは株価対策という形で年金資金を相場にかかわらず入れたりすることはないというふうに思われるわけであります。
 しかし、マーケットでは、どうもそれとは違うようないろいろな考え方があるようでありまして、やはりそういう疑念を起こさせないためにも、これは事後的で結構ですから、それこそ月次ごとぐらいで、先ほど公表されるのはポートフォリオの最後の姿だというふうに言われましたけれども、具体的にボリュームとして、別に銘柄とか何かを言う必要はありませんから、何月は株式にどれくらい、債券にどれくらいというような、やはりそういうものを事後的で結構ですから情報公開をしていくということが、年金資金の運用に対する年金受託者の信頼、そしてまたマーケット関係者が不要な疑念を抱かない意味でも大事だというふうに思いますが、いかがですか。
辻政府参考人 御指摘のとおり、大切な年金資金の運用に当たりまして、ディスクローズする、透明度を高めるということは本質的に必要だと考えております。
 私どもといたしまして、十三年度から年金資金運用基金で運用をいたしましたことにつきまして、従来のいわば事後的な公表の密度をさらに高めまして、新たに、年度ごとに公表しておりましたのを四半期ごとに運用実績の速報を発表するといった努力を始めております。
 したがいまして、資金投入につきましても、今申しました方針で行いますけれども、事前は今申しましたように難しゅうございますが、事後的には、これは資金の投入と回収の状況を何らかの形で公表する方針で検討してまいりたいと思います。
古川委員 柳澤大臣、今、年金局長から前向きなお話もあったわけですけれども、やはり金融庁としても、マーケットの中で、それこそ柳澤大臣は常に答弁の中で、風説の流布などで相場がいろいろと左右されるのは好ましくないという発言をされておられたかと思いますから、やはりこのビッグプレーヤーであります年金についての情報公開というのは、これは金融庁としても、しっかりと年金の資金を運用している方に、監督していくというか指導していくような形で、情報公開の徹底を求めていくべきだというふうに思いますけれども、金融庁としての立場から一言御発言をいただきたいと思います。
村田副大臣 今、担当の方から何らかの検討をするというお話がありました。
 もとより透明で公正な市場を形成していくということは、私どもの行政の主要な役割の一つでございます。しかしながら、資金調達元とか買い手の株式購入資金の情報公開ということでありますけれども、これについては、プライバシーもかかわりますし、それから、ひとえに公正な価格形成に必要不可欠な自由な取引を保障する上でどうか、そういう考察が必要でありまして、慎重に検討する必要がある、こういうふうに考えております。
古川委員 ちょっと今の副大臣の御答弁は全然、ちょっと私が言っていること、私が言ったことは、そんな別に何の株に幾ら投入したかということを言うんじゃなくて、株式にどれくらい投入したのか、債券にどれくらい投入したのか、それを月次ベースぐらいで後から事後的に公表すれば、特定のときに株価をつり上げるために極端に年金資金が入ったわけじゃないとか、そういうことがちゃんと後からわかるんじゃないか、そういう情報を公開する方向で検討したらどうかということを言ったわけであって、今の答弁は全くとんちんかんだと思いますけれども、いかがですか。
村田副大臣 いやいや、厚生労働省の方がそういうお答えをされました。私どもは、年金資金がどういう運用を具体的にやっているかということについてはお答えする立場にありませんけれども、その公正、透明な市場を形成するという観点から、できる限りの情報公開は必要だと考えておりますが、それについても、先ほど申しましたような条件がございますので、慎重な考慮が必要ではないかと申し上げたわけでございます。
古川委員 柳澤大臣、申しわけありませんけれども、年金局長がこれだけ前向きな答弁をしているのに、金融庁の方が何か情報公開に後ろ向きのような発言をしているように聞こえるんですが、いいことでしょう、年金局長が、そういう形でできる限り情報公開できるものは公開していきますということは。そうじゃないんですか、それは。
柳澤国務大臣 私は、各投資家が自分たちの関係先に対する情報公開として、どういう情報公開をしていけば関係者に満足される情報公開になるかというのを考えるのは、それは当然でありますが、わきから、それを応援してみたり、ちょっとやめておけとかいうようなことまでやるというのは、何か余分なことのように思ったんですけれども、まだ何かやらなきゃならぬのでしょうか。
古川委員 いや、私が聞いているのは、村田副大臣が非常に、逆に後ろ向きに足を引っ張るような言い方をされたから、そうじゃないんでしょうと。ちゃんとそこは、今心配されているようなこと、そんな厚生労働省が問題になるようなことをやらないでしょう。ちゃんとそこは配慮した上で、情報公開をする方向で前向きで考えたいというのだったら、それは金融庁としてもいいことだというふうに一言言ってもらえばいいと思うんですけれども、できないんですか、これは。
柳澤国務大臣 厚生省が自分の、今関係者の利益のために考えられて情報公開することについて、私どもとやかく言う筋合いは全くないと思います。どうぞおやりになっていただければいいと思います。
古川委員 そうやって一言副大臣が言ってくだされば、ただしなんていう話になるからこういうことに時間がかかっちゃうんですから、よくちゃんとやりとりを聞いて、書かれた答弁をそのまま読むんじゃなくて、ちゃんとやりとりを聞いた上で答えてください。
 次に、時間がどんどんなくなっていってしまいますから、質問に移りたいと思いますけれども、さて、今回のデフレ対策、見てみますと、きのうの夜のニュースなんかでは、政府の関係者の方々の発言を見ていると、結局、やはりデフレ対策、最後は日銀頼みなのかなという感じがしてくるわけですね。塩川財務大臣も、長期国債の買い入れ、今の月八千億から月一兆円に増加してもらいたい、これを日銀に要請するというふうに言われましたけれども、日銀総裁、これは、政府からの要請は受け入れるというふうに考えてよろしいんですか。
速水参考人 私どもの方では、あした決定会合が開かれますので、その席で各委員方とこれからの政策についてじっくりと議論いたしたいと思っております。今は何も申し上げられません。
古川委員 もう少し大きな声でおっしゃっていただきたいと思いますが、あした決めるから今は言えないというふうに言われるのであれば、では、仮にこの八千億を一兆円に増加したらそれで本当に、それは、やる、やらないはあした決められることとして結構です。では、そうしてもし仮に八千億から一兆に増加したら、それでこのデフレを阻止する効果というものは生まれてくるんですか、これは。
速水参考人 資金の方は潤沢に供給されておりますので、どれだけの効果があるかわかりませんけれども、長期国債の買い入れにつきましては、やはり二つのことを考えてみる必要があると思うんです。一つは、所要の資金供給を円滑に行うためにこれが必要であるかどうかということ、もう一つは、市場のパーセプションといいますか、どういうふうに市場がそれを受け取るか、これによって金利が上がったり下がったりすることがあり得ると思いますので、その点をよく考えてみる必要があると思っております。
古川委員 今確かに総裁がおっしゃったように、それこそ三十兆円枠をここまで守っているのは、守ろうと取り繕っているわけでありますけれども、それでも三十兆というのにこだわっているのは、まさにそこの金利の上昇というものをやはり警戒しなきゃいけない、その水域まで来ているからだと思いますから、これは本当に、やはりよほど効果があるということが確信できない限りは、これは、財務省から言われたからといっておいおいと引き受けるべきものではないんじゃないかというふうに思っておりますから、ぜひそこは、その効果を決める際には、実際にこういう効果がありますというものを、もしあした決めるのであれば、そういうものまでちゃんと発表していただきますようにお願いを申し上げて、もうちょっと日銀との絡みでお話を進めたいと思うんです。
 自民党のまとめたデフレ対策には、物価安定目標の導入というものがはっきりうたわれているわけであります。そのためには日銀法まで改正をするということも、日銀法の改正も視野に入れた、そういうかなり強い形で物価安定目標の導入というものが言われているわけなのでありますけれども、先ほどの私どもの同僚の議員からの質問で塩川財務大臣も、一九九七年レベルぐらいの物価を基準にしてそこまでの物価上昇を図るというようなことを言われたわけでありますけれども、塩川財務大臣は、やはりこの自民党が出した物価安定目標の導入に、これは賛成といいますか、そういう方向に進むべきだというふうに考えているというふうに理解してよろしいでしょうか。
塩川国務大臣 自民党の提唱されておる文言を私はまだ読んでいないんですけれども、そういうことはかねてからの議論がございましたし、私自身としては、平成九年ごろですか、その時分が一番物価が安定しておって、そこから下降気味になっておると思っておりますので、少なくとも平成九年ごろの物価水準に戻したら、ちょうど日本の名目成長率等もかなり皆さんに褒めていただけるような状況になるんじゃないかと思っております。
古川委員 それはみんな戻したらいいと思っているわけです。ただ、財務大臣が戻したらいいんじゃないかと言うだけでは、これは無責任ですよね。戻したらいいんじゃないかと思っているということは、これは、物価安定目標を導入するべきだというふうに考えているというふうに理解してよろしいんですか。
塩川国務大臣 そのとおりです。
古川委員 ただ、先ほど谷口副大臣、何か副大臣はちょっと違うことを言われましたよね。財務省としてはインフレターゲット論には慎重だというふうに、たしか先ほど私の耳が間違っていなければそのように答えたと思うんですが、今の大臣の答えは、それはそういうふうで、むしろ大臣の言われたことの方が財務省としても正しいというふうに考えてよろしいんですか。
谷口副大臣 塩川大臣がおっしゃったのは、まさに御本人、大臣おっしゃっているように、そういうような形に持っていきたい、展望というようにおっしゃっておるわけですが、基本的に、一般的にはインフレターゲットというのはそのようなことをいうのではなくて、例えば二%であるとか三%に持っていくんだ、そのためにはあらゆる手段を講じるんだということを一般的にインフレターゲットという。この意味合いからしますと、そのあたりは慎重に対応する必要がある、このように申し上げたわけでございます。
古川委員 そういう意味で、では、今財務大臣が言われたのは、あくまでも希望的観測として、なったらいいなというそういう、ただ単に、裏に何か具体的な、もちろん、物価安定目標というのは裏に具体的な政策がなければ絵にかいたもちになるわけです、その絵にかいたもちとして、いいんじゃないのというふうに言われたというふうに理解していいんですか。
塩川国務大臣 それは、なかなか論理の飛躍ですね。私はそこまでちょっと頭の回転が回りませんけれども。私は、単純に、一つのそういうところを、平成九年あたりの物価水準に戻ればいいな、そのためには努力していこうと。これは、私の政策態度としてとっておるところであります。
古川委員 ということは、今谷口副大臣が言われた、そのためにはあらゆる手段を尽くすという意味が裏にあるというふうに私は受け取りますけれども、となれば、この自民党の案に出たような、日銀法の改正ということも含めてこれは進んでいくのかなという感じに思うわけなんであります。
 さて、日銀総裁のお立場として、そういう方向に、当初はごく一部の自民党の議員の中で言われていた日銀法改正という話が、自民党のこのデフレ対策というところまでまとまってきたわけでありますけれども、今財務大臣も、ただ単に絵にかいたもちじゃないものにしていくということになると、ますますこれは、日銀法の改正も含めた、日銀に対して物価安定目標を導入しろというような、そういう圧力は強くなってくるんじゃないかと思いますが、これについてはどのように御感想を持っておられますか。
塩川国務大臣 私の発言で日銀法改正まで論評しておるということは、これはちょっと行き過ぎでございまして、私は、日銀法については、改正されましてからまだ日なお浅い、まだ、日銀が独立性を確保して、それが政府との関係でどのようにして日銀が政策運営されてきておるかということは、やはりもう少し観察をしなければ、日銀と政府との関係ということは断定できないと思っております。
 今のところ、日銀と政府との関係は、要するにあうんの呼吸があって、相互に協力関係をとってきておりまして、それで、一方から見ると、政府の言っていることというよりも、自民党の言っていることを聞かなかったら改正だよ、これはちょっと利益に走り過ぎておると思ったりもいたしますので、私自身としては、もう少し日銀と政府の関係を観察して考えるべき問題だと思っております。
速水参考人 物価安定目標というような言葉を使っていらっしゃるわけですけれども、現在、御承知のように金利はほぼゼロでございますし、資金も極めて潤沢に供給されております。いわゆるマネタリーベース、以前ハイパワードマネーと申しておりました日本銀行から出ていく資金は、一月で前年比二三%多い金が出ているんですね。二月は恐らくもっと多いと思います。そういう状況で、資金は潤沢に供給されておるにもかかわらず、物価の方は上昇していないということなんですね。
 このように、金融政策だけで金を幾ら出しても、それで物価が上がっていくものではないというふうに思いますし、インフレターゲティングを採用するということはよく言われるんですけれども、私は、可能でもないしまた適当でもないと考えております。
 なお、日本銀行では、既に去年の三月、CPIの、消費者物価の上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けるということをアナウンス、申しております。現在、思い切った金融緩和の枠組みを物価の上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで続けていくということでございまして、物価安定の確保に向けた確固たる、断固たる決意は既に表明しておりますし、それを守ってまいりたいというふうに思っております。
 総理が構造改革なくして成長なしとおっしゃっておられますが、全くそのとおりでござまして、物価についていえば、やはり成長なくして需要の増加も、物価の上昇も、デフレの解消もないというふうに言っていいかと思っております。
 また、日銀法につきましては、新しい日銀法は、独立性と透明性という二つのことを、筋をはっきりさせてくださいまして、世界に誇るべき中央銀行法だというふうに思っております。
古川委員 先ほどの塩川大臣のお話にあったように、私も、日銀法の改正まではそう簡単にはいかない、まだ一山も二山もあるのかなと思いますが、ただ、うわさの中では、あしたの金融政策決定会合で、今、日銀総裁が言われた、安定的にCPIがゼロ%以上になるまで今の金融緩和を続けるということの、このゼロ%を一%だとか二%、そういう数字に上げるというので、これで今の制度内での事実上の物価安定目標、それを引き上げると言ってもいいのかもしれませんが、そういうような話も、これは本当かうそかわかりませんが、漏れ聞いたりもするわけなんです。
 これも、あした決められる話ですから、今何も言えないと思いますけれども、今の状況でゼロ%でさえも達成できていないわけですから、もちろん、これは総裁、それを一%、二%にしたって、それは意味がないですね。そこだけ確認させていただきたいんです。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
速水参考人 私は、今先生のおっしゃったとおりだと思っております。
古川委員 そうなりますと、これは、世の中には非常にこの物価安定目標、インフレターゲティングに対する期待感というものは、どうしてこんなに上がっているのかわからないんですけれども、あるわけですね。しかし、今の議論を聞いていれば、実体的にこれをではどう設定するのか、そしてまたそれをどう実現するのか、その具体的な政策の方がやはり見えてこないわけでありまして、この辺などもやはり期待だけ先行して中身がないことになってしまうんじゃないか、そろそろこれは、そういう中での物価安定目標という議論も、もう少し先に、もうちょっとほかのことを考える段階に来ているんじゃないか、いつまでもこうやって書いていても、これは本当にデフレ対策にならないんじゃないか、そういうことを申し上げて、次の質問に行きたいと思います。
 自民党案の中には、まだ大臣見ていらっしゃらないと言われるかもしれませんけれども、きのうの中に、最後のところで「財政政策」という項目があって、いろいろなデフレの対策が上に書いてあって、「上記の諸施策の進捗状況等に応じ、財政措置や財政投融資の活用を検討する」ここの「財政措置」というのは、これは、党としては補正予算を求めているものだ、場合によっては補正予算もというふうに考えているというふうに、この財政措置というのは理解してよろしいですか。
塩川国務大臣 私は、この会議に参画しておりませんので、どういう趣旨で財政措置という言葉を使っているのか、ちょっと不明であります。
古川委員 不明でありますと言いますけれども、これは、大臣も知っている自民党がきのう発表したものですから、そこにこれは書いてあるわけですから、それで、この件に関しては、これはちゃんと私はきのうの質問通告でもしているわけですから、それを不明でありますという答えもないんじゃないですか。この財政措置というのは、やはり普通に読むと、これは補正も含めてというふうに党としては要望しているというふうに私には読めるんですけれども、そう読んじゃおかしいんですか。
塩川国務大臣 普通、財政措置とか財政対策とかいろいろなことをいえば、金出せという要求ですね。そういうことだとは思うんですけれども、そういう意味では、私は、一義的にそう言っておるんではないと思っておりますが、財政の効率的な運用ということも財政措置の一つだと思っております。そういうことと思いますから、非常にいろいろな意味を含めた、いわゆる財政措置だと思っております。
古川委員 今言われたことではわからないですね。
 でも、じゃ、その中には補正予算も入っているということですね、そうしたら。そういうことですよね。今のいろいろなことということは、当然そこも含まれているというふうに認識もしておられるということですね。それでいいですね。
塩川国務大臣 一般的に財政措置といえば、財政の効率化、それから財政コストの見直し、それから追加財政の措置、いろいろなものがあると思っておりますから、それはその意見を採用する側においての判断にあると思っております。
古川委員 今までの財務大臣と比べると、塩川財務大臣は非常に素直だなと私は思う。普通だと、こうやって予算審議をやっている間に補正予算の話だと、一切そういうものは考えておりませんというふうに、まず役所の側は、私も昔、書いた覚えがありますし、まずそうやって答弁されるものですが、非常にそういう意味では財務大臣、素直に御答弁いただいた。
 そういう意味では、今までの財務大臣よりもおっしゃることには信用が置けるというふうに思いますけれども、やはりこれだけ、これは財政措置も含めてということになると、かなりこれまでの小泉内閣のとってきた路線から外れていくという方向に行ってしまうんじゃないかなという感じもあるわけですから、この辺は、違うのだったら違うし、あるいは方向転換をされるというならされるんだし、その辺は、外から見ている者は、これは与党・政府でばらばらのことをやられていてはどっちを信じていいのかわかりませんから、やはりその辺はちゃんと与党と政府で、しっかりと意見を合わせていただきたいというふうに思います。
 時間がだんだん少なくなってしまいましたので、最後に少し、せっかく大臣が、ひょっとしたら見られたかもしれないし、事務方が読んで、要約か何かを用意したでしょうから、ちょっとこの「ライオンは眠れない」という本の話をさせていただきたいと思いますけれども、大臣はこの「ライオンは眠れない」という本は、読まれていないですね。「ライオンは眠れない」、これは今まで読んではいらっしゃらないですね。
塩川国務大臣 このごろ、こういう種類の本を読む時間がとてもございません。想定問答を読むのに精いっぱいですから、なかなかそういうところまで読む時間がございませんで、よかったら、一冊いただいたら読んでおきますけれども。
古川委員 そういう時間はないだろうと思いましたから、きのう事務方に、これを読んで、私もきのう買ってきのう読んだのですが、一時間もあれば読めますから、だから読んで、大体の概要をちゃんと書いて想定問答につけておくようにと言いましたから、その想定問答ぐらいは読んでもらっていないわけですかね。
 それぞれ簡単にだけ御説明しますと、要はこれは、「ライオンは眠れない」、ライオン王、これは小泉総理をどうも指し示しているようでありまして、その中にジャジャネコ大臣とかネズミ議員とかタカ長官、ハト代表とか、いろいろ出てくるのですね。残念ながら、ここにいらっしゃる両大臣は、そういうジャジャネコ大臣のように特定の人がわかるような感じでは示されていなくて、大臣のポストに馬、ウサギ、キジ、シカなどユニークな面々をたくさん指名した、今までネズミだけだったのがこういうのを指名したというふうに書いてあるので、ひょっとすると大臣は馬かウサギかわかりませんが、そういうところに当たるんじゃないかと思いますけれども、まあ、寓話です。
 これは去年の十一月に出ているものなんですけれども、この寓話、どういうことか簡単にだけ言いますと、非常に人気の高いライオン王が出て痛みを伴う改革をやる、ずっとそれをジャジャネコ大臣が支えていくということで、ちょっとここは、これからの「近未来の日本を予告している」、十一月の段階ではそうだったのですが、その後状況の、ここの本の中ではジャジャネコ大臣は最後までライオン王を支えることになっているのですけれども、実態の方はどうもそういうのとは違っていて、かつ、これは最後まで高支持率が続くことになっているのですが、小泉政権もそういう支持率はもう低下してしまっているという意味では、ちょっとこの本の信用性というものは、近未来を予告しているといいながら、もう既にその近未来が違ってきてしまっていますから、結果において余り信憑性がないというふうに言われるかもしれませんけれども、この中で最後に訪れる結末というのが、X計画というのが実行される。それによって何が実行されるか。預金封鎖とデノミと新円切りかえが同時に行われるようなことが、この本の中での結論として、ライオン王の改革のもとに行われるということになっているのですね。そこまで行かないと、この日本の状況はもう救いようがない。
 この本は、サミュエル・ライダーというイギリス人が書いたということになっているのですけれども、一説には財務省の役人が書いたという話もありまして、これは一九六三年生まれと書いてありますから、ひょっとすると、私が六五年生まれですから、私の前後の人が書いたものなのかもしれませんけれども、そんな話があるわけなんですね。
 荒唐無稽な話かなというふうに思ったりもしていたわけなんですけれども、どうも何か聞くところによると、財務省の方から、これが財務省の資料なのかどうかわかりませんが、預金封鎖と新円切りかえが昭和二十一年に行われたわけなんですけれども、その事例を財務省が研究しているといううわさがあって、今大臣の手元にもあると思いますけれども、「戦後処理と企業・金融機関の再建について」という、何となく私が見る限りでは、これは少し古いワープロか何かで打った、財務省の大蔵省時代の資料かなと思ったりもするのですけれども、そういうものが私のところで手に入ったのですけれども、この資料は財務省の資料ですか。その点、きのう、ちょっと確認するように聞いておいたのですけれども。
塩川国務大臣 これは私は、この資料、今の話も、今秘書から資料をもらって初めて見たのですけれども、これは、私がどうも財務省の局長会議で、私自身が復員してきて、昭和二十二年ですね、経験した話をしたのがもとじゃないですかね。どうもそんな感じがしますね。
 というのは、預金封鎖と新円切りかえなんというのは、こんなのは皆さん、あなた知らぬでしょう。恐らくそうでしょう。そういうことを私は話をして、不良債権の問題について、実はこういう時代があったよ、こういう考え方があったよということの話をしたのが、それがそうなったのじゃないですかね。こんな古い話を今ごろ出してみても、これが適用されるものじゃありませんが、しかし、歴史を振り返るということは、政治の上で非常に大変な有益なことでもあるので、こういうことを絶えず勉強しておると、やはり財務省になると鋭い勉強をしておるなという感じをいたしますが、よかったら担当者に説明させますから。
古川委員 これは、塩川大臣の指示でこういう研究をしたんじゃないかということから言っているのですけれども、今のを聞きますと、要は、昔話風にしゃべったらそれを事務方が気をきかせてまとめたという、そんな資料だというふうに認識してよろしいのですか、そうしたら。
塩川国務大臣 資料とかいうよりも、その当時のことをしっかりと勉強しようという、そういう、あの役所の職員は皆勉強意欲が強いですから、そういうことだと思いますね。私の大臣室の部屋にもそういう資料がありましたので、私、ちょっとぱらぱらとめくってみましたら、非常に詳しくそのいきさつが書いてございまして、非常に参考になったと私は思っております。
古川委員 平時であれば、そういうふうに非常に参考になったでもいいのですけれども、こういう本みたいなので、まさにそれと同じことがこれから起きるのじゃないかみたいなことを予告しているようなものがあって、それを財務省の人間が書いたんじゃないかというようなうわさまでされている。そういう状況の中で、ちょっと余りにも他人事のような大臣の答弁じゃないかと思うんですね。ここの、前の竹下先生の質問に対するお答えでも、この十年を振り返っての話を聞いても、何となく大臣は他人事のような感じで話をされておる。
 ここの本の最後にこんな言葉があるのです。
 「破壊」はやってくるかもしれない。でもそれを恐れることはない。むしろ、チャンスと考えよ。
 「痛み」も同じ。それは、けっしてムダにはならない。その向こうには復活が待っている。
 「明日は明日の風が吹く」これを口にして、リラックスすることも大事。究極のプラス思考。
 「あらゆるものはうつろいやすいものである。怠ることなく、精進しなさい」お釈迦さまの最後の言葉。
というのがあるのですけれども、何となく大臣のお話を聞いていると、達観しているというか、諦観しているというか、そんな感じが見えまして、そういうので日本国民全体が巻き込まれて、日本国民全体が、まあそんなXデーが来ても仕方がないみたいなふうに諦観しなくてはいけないような事態になっては困るわけでありますから、ぜひそこは大臣、やはり責任あるお立場におられるわけですから、いや、そんな言った覚え、それで勉強したんじゃないですかなというんじゃなくて、しっかり、どういう背景だったのか、それで、逆に、本当に、こういうことが起こらないような事態に向けて、今我々が直面している事態に向けて毅然とした態度でやるべき政策はとっていただきたいということを最後にお願いして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
坂本委員長 次に、小泉俊明君。
小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。
 午前中に引き続きまして、三十分間、引き続き質問させていただきます。
 日銀の速水総裁においでいただいておりますので、まず速水総裁の方にお尋ねしたいと思います。
 今古川議員の方からありましたが、自民党のデフレ対策特別委員会が、物価の数値目標を定めて上昇させていくという、いわゆるインフレターゲティング論の導入を提案された。この是非につきまして、午前中、財務大臣にお伺いしたのですが、このいわゆるインフレターゲティング論の理論の是非については、総裁はどのようにお考えでございましょうか。
速水参考人 インフレターゲットの議論につきましては、私ども、現在金利はほぼゼロでございますし、資金も極めて潤沢に出しておりますし、それにもかかわらず物価が上がっていないと先ほど申し上げた現状の中で、金融政策だけで物価を上げていこうというのは難しいと思っております。そういう状況のもとでインフレターゲティングを採用するということは可能でもありませんし、また適当でもないというふうに考えております。
小泉(俊)委員 実は午前中も、私も速水総裁と基本的には同じ考えでございまして、一般物価を上げていくというインフレターゲティング論、もしこれをやりますと、これだけ不景気の中でやった場合には、景気の悪化とインフレがダブルパンチで来るスタグフレーションの危険性が高いということと、一たんこれが上がり始めると、歯どめをきかす手段というのが具体的にはないんじゃないかということを、私はこれは妥当ではないということでお話を先ほどさせていただきました。
 その中で、やはり金融では、できることは逆に限られてきておりますので、私は、やはり今やるべきことは、一般物価を上げるのではなくて、日本経済最大の課題である、国民的課題である土地と株の資産デフレにいかに歯どめをかけていくか。バケツの底に穴があいたのをどうやって張るかということが一番大切だということを午前中お話しさせていただきまして、それに基本的には財務大臣もお答えいただいたわけでございますが、先ほど、午前中のちょっと引き続きなものですから引き続き質問させていただきますが、何しろこの資産デフレをとめる最大のポイントは、一千四百兆円あります国民金融資産をどうやって現金から資産に移動させるかということだと思います。
 その中で、幾つか具体的に、これは塩川大臣にお尋ねいたしますが、特に国民金融資産のうちの半分を占める高齢者に、前も御質問させていただきましたですが、相続税の評価を現金ではなくて株に投資した場合に大幅に下げるという方法はどうかというお話をしましたら、財務大臣の方から、そういう考え方もあるんではないかというお話をいただいたんですが、その点につきまして、再度御確認させていただけますでしょうか。財務大臣、お願いいたします。
塩川国務大臣 今の御質問の趣旨はこういうことですか、証券投資した場合はインセンティブを与えるということですね。そのとおりです。
小泉(俊)委員 また、株式の、何しろ株価の下落をとめるために株式の市場の活性化が必要だということは明らかなんでございますが、私はもう一度、午前中申し上げましたが、ここまで非常に危機的な状況に日本経済が追い込まれている段階では、ドイツ等で行われているようなキャピタルゲイン課税の非課税化、そこまでいかなくても、ある一定の、一千万円ぐらいまでのキャピタルゲイン課税を非課税にするような、そういった方策というのも一つの考え方ではないかと思うんでございますが、財務大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 なかなか、民主党の御意見としてはいい御意見。ひとつ、御意見があったということを、私は記憶しておきたいと思います。
小泉(俊)委員 経済財政諮問会議等でもよろしくお願いを申し上げます。
 また、株と土地でありますが、これは不良債権の処理等を一生懸命やっておりますが、最終的には担保にとっております不動産が流動化しない限り、いつまでたっても不良債権の負の連鎖からは解消されないということで、流通性を高めるために、これは、登録免許税、担当が実はこれは総務省になるかもわかりません、不動産取得税などの流通段階でかかる税金並びに固定資産税等の不動産保有にかかる税金、こういったものを思い切って軽減していって不動産の流動化を図るということが、どうしても私は資産デフレ対策として重要だと思いますが、この点につきましては、塩川大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 私は、不動産関係の税制は、やはり優先的な配慮をすべきだと思っております。
 ただし、不動産について、どこに焦点を置いてインセンティブを与えるか。つまり、所有することに、つまり保有ですね、保有しておれば有利になるような措置を講じるのか、あるいは移動するときに有利にするのか、あるいは譲渡した場合の有利を図っていくのか、譲渡益に焦点を置いてやるのかということは、どこに焦点を置くかということによっていろいろと不動産対策が変わってくると思います。そこをしっかりと議論してもらいたいと思っておるのです。
 最近の経済界の方々の考え方を見ますと、今まで事業をしようというと、土地を買って、所有して事業をしようとしておりました。それはなぜかといったら、担保がつかなければ金が借りられないということで、皆所有を主張してそこに努力をしておりましたが、最近は、むしろ借りてやろうということですね。それは、三十年の時限貸借もございますね、ああいうような制度を利用してやろうと。
 つまり、資本投下を節約していこうということがございまして、そういう点から見ても、私たち、工場地域を見ておりましたら、不動産の動き方が少ないように思うのです。そういうことであるとするならば、そういう面に対してのインセンティブを考えていかなきゃならぬだろうと思うし、いろいろな面での不動産の活用をどうするかということを研究して、積極的に対策を進めていきたいと思っております。
小泉(俊)委員 いずれにいたしましても、資産デフレに歯どめをかけていくということに関しましては、私は、先ほど申し上げましたが、税制の持つ意義が非常に大きい。ただ、これをやる際に、往々にしますと、例えば連結税のときに付加税とかペナルティーをつけるとか、ある一方で土地を下げどまりするという政策をとりながら、もう片方で全く反対の目的を持った税制をつくるようなことは極力避けていただけるようお願いを申し上げまして、その点について、塩川大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 それも検討する必要があるだろうと思います。
小泉(俊)委員 極力、二重性ではなくて、これは原則ですけれども、ぜひとも、常に目的は一本化して政策を推し進めていただけるようお願い申し上げます。
 それでは、通告に従いまして、新産業の創出についてお伺いさせていただきたいと思います。
 日本経済の重大な問題というのは、何よりも、今、産業の空洞化、それとともに産業の国際競争力が大幅に低下していることにあると思います。例えば昨年の経済産業省が出しました白書等を見ますと、日本の産業の中で国際的に優位にあるのは、実質上は自動車、特にトヨタとかホンダ等にかなり限られてきている。
 日本の国力の源泉は経済力しかないわけでありますから、今やるべきことは、高い付加価値と国際競争力を持ったハイテク産業を、物づくり、特に製造業をいかに国内に育てていくか、いわゆる経済の前向きのエンジンを国内にいかにつくるか、ここを国策として、ここにこそ早急に取り組んでいかなければならないと私は思います。
 特に、最近、いろいろな最先端の技術を持った中小企業の社長にお会いします。かなり世界的にも群を抜いた、世界最高水準の技術力を持った中小企業は、日本はまだまだたくさんあるわけですね。例えばホンダ、ソニーもナショナルも、最初は町工場でした。これを育てていくことこそが、日本再生の、やはりもう一方で一生懸命進めなければならない国策だと思うのでございますが、塩川大臣、この点につきましてはいかがでございましょうか。
塩川国務大臣 今まさに、第一次、第二次の補正におきましてもベンチャー企業に対する特別措置を講じておることは、その趣旨を生かしておることだと思っております。
小泉(俊)委員 実は、ベンチャー企業とか中小企業のいろいろな政府の優遇措置とか一応あるのですね、形としては。
 では、これが現実にどういうふうに機能しているかといいますと、現実には、世界的にも最高水準の技術を、特許を持った企業が、日本国内で例えば工場や研究所をつくる等の設備投資をしようとしても、実際にはほとんど融資が受けられないのです。ほとんどの会社が、資金を、優遇するシンガポールや台湾、インド、中国等に融資されてしまっているのがどうも実態なんですね。その結果、本来日本の国内で工場をつくっていれば国内の産業が育ったものが、実は、海外で出た結果、それで世界のシェアをとっているというケースもあるわけですね。こういう実態というのは御存じでございますか、塩川大臣。
塩川国務大臣 部分的に承知しております。
小泉(俊)委員 また具体例に入りますけれども、今のは一般論なんでございますが、先日も、実はあるハイテク産業の社長にお会いしまして、この会社は世界的にも大変な技術力を持った、また特許も世界特許を持っているわけであります。国内はもとより、海外の一流企業に技術を提供してきた中小企業なんですね。
 ところが、まさに今世紀の中でも新しい新製品をつくりまして、今度は国内で新製品をつくる製造工場と研究所をつくろうとして、まず民間のいわゆる大手の都市銀、全部回ったんだそうです。しかし、資金が全く借りられないのです。わずか十五億ぐらいなんですけれどもね。海外からは大変な引き合いがありまして、資金でも何でも用意するのでぜひとも来てほしいというのが、世界じゅうから、三カ国ぐらいから来ている、百億ぐらい用意すると。
 何で銀行の融資が受けられないのか、塩川大臣、何がネックになっていると思われますか。
塩川国務大臣 日本の銀行といいますか金融機関は、自分らで明治以来財閥をつくってきましたね。ですから、銀行が自分らの身内の者にはどんどん金を貸した。けれども、一般に貸す場合、特に中小企業に貸す場合は、担保主義ですね。ですから、担保は何だといったら、土地、不動産、これが中心でございますから、経営能力だとか技術力というのは余り評価できないのですね。つまり、銀行のそういう審査能力が非常に欠けておるということが、やはりベンチャー企業が育っていかない一つの原因であろうと思っております。ところが、欧米諸国におきましては、そういう金融機関の審査能力というのは、プロジェクト単位で審査をします。日本はどうしても担保主義で審査します。そこの違いが、今日、日本の金融が非常にいびつな形になってきておるということを私は痛感しておるものであります。
小泉(俊)委員 まさに塩川大臣おっしゃるように、まず有担保主義ですね。土地等の担保がない限り、どんなに特許を持っていましても、民間の金融機関の場合にはお金が出ない。また、大臣おっしゃるように、やはり新技術とか新事業の成長性を評価できる人材が日本の金融機関の中にない。ですから、先ほど申し上げましたように、場合によっては第二のソニー、ホンダ、トヨタになるような企業が、実は国内を捨てて海外に出ていってしまう。
 まさにこういった、非常に今前向きのエンジンをどうしてもつくらなければいけない、今は要するに後ろ向きの処理を不良債権でやってくるわけですけれども、前向きのエンジンをつくらない限り、日本の成長性はないわけですね。ところが現実にこれができない。その中で、新規産業を創出するために一番必要なものは何といいましてもお金なんですよ。
 現実に、今お話ししましたように、民間の金融機関が金融仲介機能を果たしていないわけですね。そんな中で、今小泉改革の一連の流れの中で、確かに私は特殊法人は原則的には全廃すべきだとは思うのですが、ただしかし、今現在、民間が金融仲介機能を果たしていない段階で、政府系の金融機関しか実はこの要請にこたえられる機関がないんですね。
 特に、今私がお話ししましたような案件に関しましては、政策投資銀行の果たす役割というのは大変大きいものがありますね。実は、実際に工場を立地する場合どうなるかといいますと、政策投資銀行が少しでもお金を出せば民間が乗ってくるんですね。ないしは政策融資が使えるわけですよ。
 そうしますと、現在の日本政策投資銀行、これは詳しく本当は今大臣にもお話を聞きたいんですが、必ずしも土地の担保だけではなくて、特許を担保に日本政策投資銀行が融資を認めてきた。何かそういうそうでございますが、こういった要件の一層の緩和をもっと図っていったり、政策投資銀行の新産業に対する融資機能の拡充をより推し進めなければ、今の日本の産業は、特にこれから二十一世紀をリードしていく産業は、本当にみんな空洞化してしまうと思うのでございますが、その点、日本政策投資銀行につきまして、御答弁をお願いします。
谷口副大臣 小泉委員がまさにおっしゃるとおりでございまして、ベンチャー企業はその成り立ちのときに資金が枯渇するといったことでうまくいかないという場合が多いわけでございます。その中で、今おっしゃった日本政策投資銀行におきましては、平成七年度から、物的担保の不足をしておるベンチャー企業に対して、特許権、プログラム著作権等の知的所有権の価値を活用した融資に積極的に取り組んでおるところでございます。
 また、今話が出ませんでしたが、国民生活金融公庫におきましても、物的担保の乏しい小規模企業に対し、安定的に資金を供給しその経営を維持、安定化する観点から、従来より、技術を含め、個々の企業の事業内容、保証人の保証能力等を総合的に検討し、できるだけ企業の長所を見出す姿勢で、基本的に無担保で融資を行っているというように存じておるところでございます。
 財務省といたしましては、今後、中小企業が厳しい資金環境に直面しておるという実態がございますので、これらの政策金融機関がその政策目的に沿ってそれぞれのノウハウを最大限活用し、民業補完をしつつ適当な対応、適切な対応を行えるよう図ってまいりたいというように考えております。
小泉(俊)委員 ベンチャー企業は立ち上げの段階でお金がかかるという話も確かなんですが、実は、今私が話をさせていただいている現実に融資が受けられない会社というのは、もう既にその段階をはるかに過ぎまして、製品をつくる瞬間まで行っているんですけれども、そこに融資が来ないという大変な状況になっております。
 大臣、経済財政諮問会議でもぜひともこういったのをお取り上げいただいて、何でも、くそもみそもつぶせばいいというものじゃないと思うのですね。今必要性のある、機能を十分に果たしているものに関しましては、民間が何しろもう完全に死んじゃっていますので、こういったときこそ必要な、例えば日本政策投資銀行等につきましてはぜひとも拡充の方向もひとつ視野に入れて進めていただきたいと思いますが、塩川大臣、いかがでございますか。
塩川国務大臣 機会を見て大いに主張しておきます。
小泉(俊)委員 また、次に移りますけれども、実は、いろいろ中小企業のハイテクの社長によくお目にかかるのでございますが、これはまた別の会社の社長が情報通信関係の新技術にチャレンジする子会社を設立し、上場まで目指す勢いであったんですね。この親会社自体は某都市銀行ともう十何年も取引関係にありましたが、昨年の八月、突然手形の書きかえに応じてもらえなくなった。それどころか、反対に、借入総額であります三億円近い借り入れの全額を一括返済を迫られた。これが、こんなことがもし行われて、常態として当たり前に行われているのであれば、よくある、どこでも行われているという話なんですけれども、これでは、本来倒れても仕方がない企業ではなくて、まさにこれから新規産業で二十一世紀、これは日本を引っ張っていくような会社までだめになってしまうという可能性が極めて高いわけですけれども、金融担当大臣、こういった実態に関しましての御認識とまた御感想をお聞かせいただけますでしょうか。
柳澤国務大臣 手形の書きかえに応じてくれない、これはその背景にはこういうことがあるんではないかという感じを持ってお聞きしました。
 それは、その企業の財務状況あるいは経営の状況、今お話しいただけませんでしたので、推測を交えてお話しするんですが、手形の書きかえに応じるときに、その企業に新規に貸し出すとしたら一体金利は幾らいただけばいいのかということを仮定の問題として考えて、そして、その書きかえの手形がその金利に行くということが正常先である、あるいは場合によってちょっと赤字になったときは要注意先であることの要件ということにされているわけです。
 それで、もしそうでなく、その状態の企業に新規に貸し出すときの金利よりも低い従来どおりの金利で貸すということになった場合には、これを条件変更、貸し出し条件変更というふうにみなしまして、要管理債権という債務者区分になる、こういう扱いが先年度というか、この前の期からそういうことが徹底し始めた、こういうことでございます。
 したがって、現場では恐らく、金融機関の方は、今言ったように、金利を上げてくださいよということになって、上げられないということになりますと、金融機関としては要管理債権としての引き当てをしなきゃいけない、コストが非常に高くなるというようなことになるわけでございます。そういうようなところから、それには応じられないよというような話になって、今言ったような事態になり得る。そういうことがその間の経緯ではないんだろうか、こういうふうに思うわけです。
 通常でしたら、手形という貸し付け、日本の場合には、相当長い期間の貸し付けも、手形の書きかえ書きかえでつないでいくという融資慣行がありまして、その都度書きかえはいいですよというようなことでずっと、これはべた貸しというらしいんですが、そういうことをやってきた。
 ところが、今言ったような検査の方針というか、あるいは債務者区分、あるいは引き当ての方針の明確化ということを通じて、その書きかえの時期での交渉がなかなか厳しいものになっている、こういうことが背景にあるのではないかというふうに思います。
 これは率直に言って、金利の引き上げに応じてもらって、融資が継続されるという方向に私としては進んでいっていただきたい、こう考えているというわけでございます。
小泉(俊)委員 今柳澤大臣からも御答弁いただきましたが、何しろこれは、先ほどから申し上げておりますが、新しい前向きのエンジンを経済につくるためには、当然これはかなりの期間とお金が必要でありますので、ぜひともそういったところにはきちっと金融が回るように、現実にお金が回るようにぜひとも金融の責任者としてよろしくお願いを申し上げます。
 あと、またこの新規産業の創出に関してなんですが、今日本の企業は非常に空洞化ということが言われておりまして、私も実はその関係で前も為替の問題もやらせていただいたんですが、実は、これは海外の多くの国は外国の企業を誘致するために大変な優遇措置を持っているんですね。
 これをちょっと調べてみたんですが、実は、送ってくれといったら、ファクスで送れないほどの量があるんです、これ。世界じゅうの国々が実は五十ページも、ジェトロの資料でございますが、このぐらいの優遇措置をやっているんですね。ところが、これは日本はこういう制度が極めて不十分であります。
 ですから、やはりこれから前向きのエンジンの企業をつくっていくというのであれば、やはり海外の企業だけではないんですが、海外が来やすいというのは当然国内の企業も活動がしやすくなりますので、そういう先端企業への税制や融資等に関して各種優遇措置をぜひともこれは検討を、これは財務大臣、また金融担当大臣、ないしは経済財政諮問会議になるかもわかりませんけれども、ぜひともこういった視点で。
 これではとても競争になりませんね。お金が出ない上に優遇措置が向こうの方がいいというのであれば、これは当然普通の経営感覚があれば、よほど日本のために、歴史的に日本のために尽くすという気持ちがない方は大体出ちゃいますので、ですからこの辺を、現場の実態を把握していただきながら、やはりきめ細かい対応をぜひともお願いしたいと思うんですが、塩川大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 かねてからの問題でございますので、よく十分に勉強して、できるだけ前広に取り組んでまいりたいと思います。
小泉(俊)委員 非常に前からの問題なんですが、今本当にぎりぎりのところまでもう来ちゃっていますので、実はこれからの世界企業というのはもう日進月歩でありまして、今このときにやらなければ実は負けちゃうんですね、ほかの国の競争に。ですから、一日も早くそういったところに現実のお金が回ったり、優遇措置が回るように、ぜひともよろしくお願いを申し上げます。
 次に移りますが、実は金融検査の実施方法に関してなんでございますが、二月二十四日付の新聞によりますれば、金融庁は金融機関に対する検査の際、中小零細企業向けの融資に対する判断を、単に収益だけではなくて、技術、成長性、経営者の資産等を総合的に判断するよう柔軟にするとのことですが、これが新聞でかなり大きく報道されております。この点につきまして委員会できちっとちょっと御説明をいただきたいんですが、これは柳澤金融担当大臣、よろしくお願い申し上げます。
柳澤国務大臣 中小企業につきましては、マニュアルにいろいろな計らいをするようにということが書いてございます。そのうちで、債務者区分のところに実は書かれているわけですけれども、中小零細企業等については、当該企業の財務状況だけではなくて、のみならずと書いてあります、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払い状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況、保証能力等を総合的に勘案して、当該企業の経営実態を踏まえて、債務者区分をするに当たっては、判断するものとする、こう書いてあるわけです。これをもうきちっとやるということを私が申し上げたということでございます。
 この中に、技術力、成長性というようなことが書いてありまして、単に財務状況だけで債務者区分をするのではなくて、そういう多角的な観点からよく債務者の実態を把握するように、こういうことを前提にしよう、こういうことでございます。
小泉(俊)委員 時間がなくなってまいりましたが、要するに、マニュアルの本来の趣旨を徹底した、運用の改善で対応することにしたということでこれはよろしいんでございますか。そうですね。
 そうしますと、これは大臣、今まで検査は逆に言うと硬直的であって、マニュアルの趣旨が行われていなかったということになると思うんです。これは、時間がありませんので手短にしますが、このマニュアルの本来の趣旨をきちっと徹底して運用しなかったために、実は今まで、先ほどから私何度も、午前中やってきました、倒産や自殺に追い込まれた方たちが実は多いんですよね。
 ですから、本来、いい方向に、マニュアルの趣旨を徹底するのはいいんですけれども、私はこれでいいと思うんですが、ただ、今まで、この結果、その趣旨が徹底されなかったために倒産したり自殺した人に対してどういう責任を、これは金融庁としてはお感じになられるか、またとるかというのを、最後に柳澤大臣、お聞かせいただけますでしょうか。
柳澤国務大臣 今委員が指摘されたような不幸な事態というのと検査マニュアルとの関係いかんということになりますと、そこには幾つかの、その論理を追っかけていきますと、こうであればそれは避けられた、こうであればそれは避けられたといういろいろなファクターもあろうかと思うんです。
 そういう中で、厳密な意味の責任論というものを論ずるというのはやはりちょっと無理があると私は思います。我々が心すべきことは、そうした不幸な事態を避けるということも念頭に置きつつ、現実に我々が直面する債務者の区分において、やはり検査マニュアル、これは衆知を集めたものでございますので、その趣旨を十分理解して、現実にそれを適切に運用していくこと、このことによって我々に課された責任を果たしていくということであろう、このように考えております。
小泉(俊)委員 午前中から申し上げておりますが、実はこういう金融庁で今やられているお仕事というのは、霞が関にいるとわかりませんけれども、現場サイドに行っては人の生き死にまで左右する大変大切な仕事でありますので、ぜひとも現場の実態をよく把握していただいて、二度とそんなことのないよう、大臣、ぜひとも御配慮いただけますようよろしくお願いしまして、質問を終わります。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 きょうはデフレ対策について伺いたいと思います。
 ブッシュ大統領との首脳会談でも、小泉総理は、デフレ対策とそのための不良債権最終処理を加速させるという誓約をしておりますが、政府は、先ほど来お話ありましたように、本日、経済財政諮問会議でデフレ対策を決めるということになっております。
 そこで、まず現状認識、これを伺っていきたいと思うんですが、ことしの二月十二日の経済財政諮問会議で、デフレ問題スタディ・グループが「デフレ問題についての論点整理」という報告を出していますね。
 この報告の「デフレの現状認識」の中で、注目すべきデフレの特徴の第一として、バブル崩壊後の長期的な景気低迷が需給ギャップを拡大させた、これがデフレの最大の要因と述べています。さらに、日銀が同日提出した資料にも、我が国の物価下落の背景として、景気の悪化による需要不足ということを書いております。
 幾つかの要因はあると思うんですが、需要の不足がデフレの最大の要因、大きな要因の一つであることは間違いないと思うんです。この点、最初に財務大臣の方にお考えを伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 ちょっとはっきり聞こえなかったんですが、声が小さくて。私に対する質問ですか。デフレ対策に対する、要因ということですか。(吉井委員「景気悪化の要因は需要不足だということを書いております」と呼ぶ)需要不足だということですね。需要不足は確かにあったと思っております。
坂本委員長 吉井委員、もっと大きく、マイクをうまく使って頼みます。
吉井委員 私の声、結構すっと入っているはずです。
 需要を喚起する政策というのは、しかし現実には具体的にないわけなんですね。ですから、需要不足がデフレの大きな原因だ、最大の要因だと言っておきながら、需要を喚起する方の政策がない、これではやはりデフレ対策ということにはなっていかないと思うんですが、この点についても塩川大臣の方に引き続いて伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 デフレ対策として需要喚起、これはもう当然必要であろうと思っておりますが、そこには、やはり、ただ単に政府がデフレ対策の需要喚起をするというだけではなくして、総合的に見て、民間経済においても需要の創出ということを努力してくれなきゃいかぬ。
 政府としては、需要喚起と同時に、それ以上に力を入れて対策をしておりますのは、構造改革によるところの供給側からのデフレ対策といいましょうか、需要喚起というか供給面からの対策に重点を置いておるということでございまして、そのためにはいろいろな、規制緩和あるいはまた特殊法人の改革等を通じて、供給サイドからの刺激を強大化していくということでやっておるところであります。
吉井委員 デフレの要因の大きな問題というのは需要不足だと言いながら、結局、需要対策の方、需要を喚起する政策というのが明確に出されていない。これじゃデフレ対策にはならないというふうに思うんです。
 そうした中で、政府は、不良債権最終処理をデフレ対策として、先日の首脳会談でも約束しているわけです。
 そこで、不良債権最終処理の問題について柳澤大臣の方に伺っておきたいと思うんですが、現実には、不良債権最終処理というのをずっとやってきて、倒産がふえてきました、失業もふえました、消費需要の落ち込みが進んでいるわけですが、なぜこれがデフレ対策になるのかという、ここのところを簡潔にひとつ伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 考え方としては、確かに、不良債権の最終処理をする場合、今御指摘になったようなことも起こりまして、その意味では雇用等にマイナスの影響を与えて、いわば全体としてデフレ的な効果を持つということ、我々もこれは否定していないわけですけれども、しかし、そういうことと同時に私どもが常に心がけてきたことは、企業の再生ができる部分については、できる限りその可能性を追求するようにという形での最終処理、こういうことを実は申し上げてまいりました。
 それに加えまして、不良債権の最終処理を行うことによって金融機関がリスクテークをする力が増してきて、それが金融仲介機能の回復に資する。そういう過程を通じて、今までなかなかお金が回らなかったところにまでお金が回るということによって、今の需給関係にも今度プラスの影響を与える、こういうことを考えているということでございます。
 ですから、総体としては、今言ったような企業再生及び金融仲介機能の回復、向上ということで、短期的なデフレ効果を補って余りあるデフレ対策としての意味を持つ、こういう考え方をしているということでございます。
吉井委員 雇用、所得等が伸びて需要が進まないことには物が売れないわけですから、生産活動が伸びていかない、設備投資が伸びていかない、資金需要が生まれてこないということになってきます。
 それで、昨年三月十六日に政府はデフレ宣言というのをしましたが、その三日後の三月十九日に森首相がブッシュ米大統領に不良債権処理を公約して、これを小泉内閣は引き継いで最終処理を進めてきたわけですが、その結果デフレが深まってきたというのは一つの事実として出ているわけですね。ですから、不良債権最終処理はデフレを加速してきた、この一年の事実の問題として、まずこのことを押さえた上で考えていくということが大事だと思うんですが、柳澤大臣、どうですか。
柳澤国務大臣 構造改革全般についてそういうことが言えるんだろうと思いますけれども、今私が申したような事象、つまり三つの事象についても、時系列的には、若干、即時的な効果としてはデフレの方が先に出てくる、そういうようなことの反映ではないか、このように考えております。
吉井委員 昨年の六月二十一日の骨太方針では、不良債権処理がデフレ圧力になるということを認めていましたね。今度、デフレ対策で不良債権最終処理ということが言われたときに、せんだって、二月十九日の全銀協会長の山本さんの記者会見ですが、不良債権の処理が進めばデフレが消えるというロジックは、銀行の実務家としてわかりにくい、総合デフレ政策のトップに不良債権処理の加速というものがあって、それをすればデフレがなくなるという議論に対しては、私のような実務家としてはちょっと違和感があると述べています。
 これまではデフレの圧力になると言っていた政策が、今度なぜデフレ対策になるのか。柳澤大臣、ちょっと説明がつかないんじゃないですか。
柳澤国務大臣 これは、私の先ほど来の説明で、その間の話というのは十分説明がついていると私としては考えております。
 また同時に、確かに、全銀協会長が言われるように、当面緊急に取り上げるべきデフレ対策ということで、そのトップに不良債権処理が出ているわけですけれども、その後、竹中大臣なぞの御発言を聞いておりますと、二次、三次という、これはデフレ対策としての第一弾というような位置づけでありますので、我々のプロジェクトが従来から進められてきた施策であるということもあってトップに出たわけですけれども、第二、第三というか、第二歩、第三歩というか、そういうような施策がいずれ明らかになって、総合的にデフレ対策としての効果を発揮することが期待されている、このように考えます。
吉井委員 不良債権最終処理を進める、倒産、失業、雇用、所得の落ち込み、需要の落ち込み、設備投資が進みませんから資金需要が落ち込んでくる。
 現実には、デフレがどんどん深まっていく中でどうなってきたかといえば、昨年三月末から昨年の九月末にかけて、二兆五千億円、担保処分をやってバランスシートから外したわけですね。しかし、実際には、不良債権が五千億円ふえて、三兆円新規発生をしてきているというふうに、やはり需要を喚起する政策をきちっととって、生産活動が伸びていくという展望が出てこないことには、リスクをとるといったってリスクのとりようがないわけですから、やはり、不良債権最終処理をすればデフレ対策になる、この考え方というものを改めていかないことには本当の意味でのデフレ対策というものは生まれてこない、私はこのことを指摘して、次に、RCCの機能強化の問題について伺っておきたいと思います。
 政府の対策には、RCCの機能強化も盛り込まれていくような報道等もありますが、このRCCの機能強化については、昨年来、何度も議論してきたわけです。私たちは、RCCが健全銀行から不良債権を買うこと自体、銀行救済だと考えておりますが、それはちょっとおいておいて、そこで、柳澤大臣自身も、RCCが不当に高い値段で不良債権を買うことについては、これは間接的な公的資金の注入になると答弁をされたし、隠れ補助金になるということなども何度も認めてきておられるわけですね。
 そこで伺いたいんですが、公的資金を通常の方法で注入するのと、RCCを経由して間接的に注入するのと、どちらが銀行にとって都合がいいかという問題が一つあると思うんです。
 これまでの例では、個別行が公的資金注入を受けるには、経営健全化計画によって、代表権のある役員の退任、役員賞与の抑制、停止など、ペナルティーが科されました。今後公的資金が注入されるとしても、経営陣の責任などはこれ以上厳しく問われていくことになると思うんです。他方、RCC経由で間接的な公的資金注入にすれば、こうした経営責任、ペナルティーは科せられないことになってくる。
 仮に、RCCが高い値段で不良債権を買って、事実上公的資金が注入されるということになった場合には、個別の公的資金注入よりも銀行経営陣にとってはメリットが大きいということが言えるんじゃないかと思うんですが、この点について、柳澤大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 すべて仮定に基づいて、大変壮大な仮定の論議をいただいたわけですけれども、そこまで仮定の論議をいただいたことについて当局者として何か申し上げるというのは、やはりちょっと不適切だろう、こういうように思います。
 私どもが考えていることは、今委員が想定しあるいは仮定したのとは違いまして、時価での買い取りをしてRCCをより活用しようということでありまして、RCCに大きな穴をあけて、いずれ、後日そこを公的資金で補てんしようというような発想には全く立っておりません。
吉井委員 柳澤大臣と参議院の方でもこの議論があったので、覚えておられると思いますが、単なる公的資金注入の場合は返済義務が前提となるわけですね。RCC経由の場合であれば、RCCの場合は返さなくてもいい資本が注入される、こういう意味合いを持ってくることは確かです。この点でも、RCCを通じた公的資金注入ということになると、直接の公的資金注入よりも銀行にとってメリットが大きいということになります。
 ですから、私は、このRCCの機能強化という考え方の中で、やはり時価というものから離れて、買い取りをどんどん進めるためにということで、そこをあいまいにしてしまったら、これは本当に公的資金の、まあ、間接的といいますか、迂回した形といいますか、そういう資本注入、資金注入ということになってきますから、私は、ここは、財務大臣の立場からすると、きちっと筋を通した考え方というものが大事だと思うんですが、もう一度伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、RCCが不良債権の整理で買い取る場合は、法律に基づいてやはり時価が相当だろうということを思っております。ただ、その時価につきまして、時価をどう見るかということにはいろいろと見方があるのではないかと。
 私は、RCCが時価と判定する場合、基準を鑑定に基づいてやっておるということを主張されておりますけれども、鑑定以外にさらにRCCの基準というものが適用されておるということを聞いたりしておるんですが、そうであるとするならば、そのRCCの基準というものは一体どの点において合法的であり合理的な基準にしておられるのかということ等も、やはり公開していく必要があるのではないかなと思っております。
 しかし、時価でということでございますから、時価の評価というものは厳しくやはり査定されるべきであって、これが、この基準が世間で納得されないものである場合は、それはやはりRCCの責任になってくると思っております。
吉井委員 これは昨年の議論でもやったことですが、もともとは二次ロスを出さないという買い取り価格、これがもともと当初の、まあ、私たちの考え方は、健全行からの買い取りというそのこと自体が銀行救済だと考えておりますが、それにしても、もともと、改正前の、二次ロスを出さない、つまり国民負担というものが生じてこないということが買い取り価格として必要だというふうに考えておりますが、ここはだんだん崩されてきて、そしてあいまいになってきております。ここがあいまいになってしまうと、これは本当に形を変えた公的資金の注入ということになってきますから、私はそれは進めるべきではないということを申し上げて、次に、日銀総裁に来ていただいておりますので伺っていきたいと思います。
 デフレ対策として日銀に一層資金供給を求めるという声がありますし、この点で、日銀の速水総裁は繰り返し、中央銀行がさらに資金を供給してもそれに呼応して需要が出てくるとは思わないということを言ってきておられます。マスコミでも、日銀幹部からは一年間かけて量的緩和には効果がないことを証明しただけだとのため息も漏れるという指摘も紹介されておりましたが、改めてこの問題について総裁のお考えを伺っておきたいと思います。
速水参考人 昨年一年を見ましても、金融の緩和というのは六回ぐらいやっております。現実に、先ほど申し上げましたように、私どもの方から出ていく金は、一月で前年比二三%増の資金が供給されておるわけです。それにもかかわらず経済は、成長して、伸びていかない、しかも物価は上がっていかないといったようなことが続いておるわけでございまして、これをどうやって物価を上げ、経済を正常化、成長させていくかということになりますと、やはり私は、今小泉内閣が動き始めております構造改革、これによって民間需要を活性化していくことが必要だ、民間需要を引き出していくことが必要だというふうに思っております。
 銀行の方も、先ほどおっしゃいましたように、不良貸し出しの対処、償却にほとんど全神経を傾けるような形で、新しい貸し出しを求めて新しい貸出先を開拓していくといったようなことをしておりません。しておりませんと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、努力はしておりますけれども、実績は上がっておりません。したがって、銀行貸し出しというのはマイナスになっているわけですね。これはやはり銀行が本来持っている信用仲介機能というものが機能していないということなんですね。
 これをつくり出していくためには、民間ベースで企業と消費者の需要をふやしていくということが必要なので、そのためにはまず、企業家の投資、そして家計の消費、そういうものに対する安心感を与えていくということが大切だと思います。そういう安心感が、コンフィデンスが出てきて初めて、前向きな需要というものが動いてくるんじゃないかと思います。
 それを引き出すためには、規制の緩和、撤廃とか、あるいは、官から民へ移せるものは移していくとか、それから税制を、そういった新しい消費や投資を優遇するような形での税制を考えてつくり出していっていただくといったようなことが、今ようやく動き始めているんじゃないかと思います。そういう効果が出始めてきたときに、私どもが今一生懸命量的緩和をし供出をしている資金が民間需要を持ち上げていく方向に動いていくんじゃないかということを期待しているわけでございます。
 それが現状でありまして、ここで十分資金が出ている上にさらにここで資金だけ出してもどれだけの効果があるかということは、議論のあるところでございますけれども、あしたも決定会合が開かれますのですが、どういうことをすれば今こういった構造改革を下支えしていくことになり得るかといったような、金融面の貢献を議論していくということになろうかと思っております。
吉井委員 それから、国債の買い入れの増額の話などもありますが、実際には、民間の銀行が貸しはがしに走ったりしているのが実態でもありますし、資金需要がないものですから、その分国債を買ったりする、銀行から日銀が国債を買い取ったりして資金を回そうとしても、それはなかなかそれだけじゃうまくいくことはないというのはこの一年間の経験ですが、日銀が国債を買い入れていくということは、これは国が自分で発行した債券を事実上自分で購入するという形になってくるわけで、私は、それ自身が、財政あるいは経済というものをゆがめていくという要因になると思うんですが、この点についても、総裁のお考えというものを伺っておきたいと思います。
速水参考人 国債を日銀が買うということは、確かに、国の債務を日銀が資金を供出して資産として持つということになるわけでございまして、限度があることは確かでございます。
 しかし、やはり当面赤字財政が続くということでございます以上、どこかで資金が調達されなければならないわけで、民間が今国債をかなり活発に買ってくれております。それに加えて、日本銀行も今、月八千億の国債の買いオペをいたしております。かつて二千億であり、四千億になり、六千億になり、今八千億までふえてきているわけですね。これは、銀行券の残高に届くまでこのペースで続けていこうというのが現在の私どもの政策なんですね。
 その間に、先ほどから申しておりますような民間需要がつくり出されて新しい需要が起こり出していけば、銀行の貸し出しもふえていくであろうし、税収入もふえていくであろうし、とにかく、構造改革が起こり、成長が起こって初めて物価も上がり、デフレはなくなっていくというふうに考えて、政策を進めていこうとしておるところでございます。
吉井委員 塩川財務大臣に伺っておきたいのですけれども、ですから、デフレ対策という点からすれば、金融の面での量的緩和、これをやってみてもデフレ対策の効果としてはない、期待できないということをやはりこれは認めなければならないと思うのですが、この点、塩川大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、デフレの対策として一番有効なのは政府が財政支出をしたらいいという、そういうものじゃないと思うのです。また、金融を緩和したらそれでもいいという、先ほど日銀総裁が言っていますが、それだけではいくものじゃないと思うのです。やはり民間が活力を出してくれることが最大の解決策でございまして、その意味においては、銀行も民間企業も元気を出して積極的に経済の活性化に取り組んでくれなければどうにもならぬと思います。
 そのために、やはり税制も変えるとかいろいろなのがあるでしょう。けれども、民間経済が、首切りだけのリストラだけで企業体質を変えようというようなことではなくて、やはり新規に事業を起こして活性化していく、自分らで活力も出していくという、経済界全体が力を出してくれなきゃ、方向に向かってくれなければいかぬと思うのです。そのために、我々も経済界が元気を出してくれるためにはあらゆる方法を講じていくということで、お互い協力体制をとっていくということが必要だと思っております。
吉井委員 結局、デフレ対策としては、もともと一番の原因が需要不足なんですから、需要を生み出していく。ただし、その需要というのは、政府需要ということで従来型の公共事業の積み増しというやり方ではなくて、これはやはり国民の懐、家計を温める、国民の方の個人消費を伸ばすという、その需要を伸ばす対策をとらないことには、結局、デフレ問題の根本解決にもならないし、不良債権の処理の問題にもつながっていかない、そのことをはっきりさせて取り組んでいくことが必要だというふうに私は考えるものであります。
 ですから、その点では、今大臣おっしゃったように、民間で頑張ってもらう中には、簡単にリストラに走るというふうなことで雇用喪失へどんどん進むのじゃなくて、雇用をしっかり守っていくこととか、社会保障をしっかりやって将来不安を解消する問題とか、それから消費税の減税などをこの機会に思い切って進めていくという、文字どおりGDPの六割を占めております個人消費が伸びる、そういう需要対策というものに力を入れていくべきだ、このことを申し上げまして、ちょうど時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
坂本委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 きのうも予算委員会で両大臣とはお話、議論をさせていただきました。引き続ききょう財務金融委員会ということになるわけですけれども、塩川財務大臣に所信表明について伺いたいのですが、財政構造改革ということが書いてありますね。
 財政構造改革、制度、仕組みを直すというのが構造改革なんだろうと思うのですね。ところが、来年度の予算、十四年度予算というのは、例えば効率化とかあるいは配分ということを書いてあるけれども、要は、一番大きな目玉というのは、この三つ目に書いてある財政の健全化。「構造改革と経済財政の中期展望」を踏まえ、歳出の質の改善や抑制等を推進するとともに、受益と負担の関係についても引き続き検討を行い、プライマリーバランスの回復に向けて努力してまいりますということなんですけれども、財政構造改革の目的というのは、やはり財政の健全化であるということなんでしょうか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
塩川国務大臣 もちろん、財政構造の改革ということは健全化と同一でございますし、それがすべてではございません。その主要な目的は、財政構造の改革であります。
中塚委員 財政の健全化が主要な目的であるということだとすれば、これはやはり財政構造改革ではなくて、財政健全化というふうにちゃんと言うべきではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょう。
塩川国務大臣 だから、私は申しておるように、財政の健全化がすべてではないと言っておるのはそこであります。
 構造改革ということは、行政コストの見直しもあれば、あるいは税制の改革もあるし、いろいろな面がございまして、もちろん、財政の健全化がやはり大きい目標であることは当然でございますけれども、そのことすべてが財政構造の改革ではないということを申し上げておるのです。
中塚委員 なぜそういうことをまず冒頭でお話しするかというと、構造改革というふうにずっとおっしゃってきたわけだけれども、財政赤字の削減、あと不良債権の処理、私は、やはりそのこと自体は当たり前な話で、構造改革ではないだろうというふうに思っているのですね。景気がよかろうが悪かろうが、財政赤字は減らさなきゃいかぬし、不良債権だって少ない方がいいに決まっているわけですね。
 そういった話の中で、やはり制度、仕組みを改めて、その結果として財政も健全化するし不良債権も減っていかなきゃいけないというふうになるのですけれども、そうではない中で数値目標が設定されて、国債発行三十兆円枠以内というふうなことがあって、結局それさえ達成をできていないわけです。三十兆円以内にはなっていますけれども、隠れ借金等をふやすことによって何とかつじつまを合わせているだけなわけですね。不良債権の処理にしたって、要は、不良債権自体はふえているような話になっているわけでありまして、そういうやって当たり前のことを構造改革というふうに言って、結局それもできていないということなんだろうというふうに思うのですね。
 その結果として、三十兆円、国債の発行枠等がありましたが、五十兆円程度しか税収がないのに三十兆円も借金をして、緊縮予算ではないというふうに総理初めおっしゃるが、前年度比で見てマイナスであることは事実であって、緊縮予算ではなくやはりデフレ予算であることは間違いないと思うのですね。
 そういうデフレ予算を組んでおきながら、今度デフレ対策をするということで、きょうの夕方、そのデフレ対策というものが発表されるというふうに聞いているのですけれども、その中で、不良債権処理ということが書いてあるわけですね、デフレ対策の中に。
 不良債権の処理をしなきゃいけないのは当たり前の話なんですが、デフレ圧力というものがあるわけですね。不良債権を処理していく過程の中で倒産が出たり失業が出たりする。デフレ圧力を伴うものであるならば、それにちゃんと下支えのようなものはしなければいけないんじゃないかというふうに考えておったわけですけれども、そういったことはなかった。その結果として、確かにデフレになっていて今デフレ対策をする。ところが、またそのデフレ対策の一つ目に不良債権処理があるというふうなことになっているんですけれども、まず柳澤大臣にお伺いをいたしますけれども、不良債権処理がデフレ対策になり得るのかどうか、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 これは、不良債権の処理、私は、具体的に言うと破綻懸念先以下の債権の直接あるいは最終的な処理ということをお互い不良債権の処理という言葉で申し上げることにいたしまして、何といっても、破綻懸念先に既になっているものでございます。したがって、これをどのように処理するか。もう本当の意味で清算的な破綻ということもあるでしょうし、やはり、破綻懸念先企業のいい部分と悪い部分を分けて、いい部分を生かすという処理もある、これはもうずっと一貫して言っていることでございます。
 そういうようなことでありますので、再生型の処理というものをできる限りやるようにという方針のもとであることを考えれば、やはり、破綻懸念先で塩漬けになっちゃって追加融資もできないという状況よりは、早くいい部分と悪い部分を分けて、いい部分についてまた新たな資金が入るようにした方が明らかにこれはいいというふうに考えるわけでございます。
 加えまして、今度は金融機関の側について言うと、そういう不良債権の処理を進めることによって金融仲介機能が回復をするということが期待されるというわけでございまして、この面では明らかにデフレの対策になる、こういうことを申し上げているわけでございます。
中塚委員 では、塩川大臣に同じ質問をお伺いしますけれども、不良債権処理そのこと自体がデフレ対策になるというふうにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 今、供給サイドで日本の企業が活発な経済活動、設備投資ができないということは、やはり金融に欠陥があるからだと思っております。この金融の欠陥はどこからきているかというと、不良債権を大量に抱え過ぎておって、金融機能が十分に作動できないからだと思います。
 であるとするならば、金融機能を作動さすために、やはり、不良債権の整理ということを、それをやらなきゃならぬ。ノーエ節からいいましても、これを次から次へと押していくと、結局日本の活性化の本元は不良債権の処理にあるということも一理があるということは言えると思います。
中塚委員 サプライサイドの方を変えるということですね。やはり、不採算なものを効率のいいところにいいように変えていくと。それは貸出先であっても金融機関であっても同じことなんだろうというふうに思いますが、そうやって効率を上げていくということになると、やはり不採算な部門は切り捨てるという話になってくるわけですね。不採算な部門を切り捨てるということが、まさにこれがデフレ圧力。それに対する受け皿というものが一方で必要なわけですけれども、そういったことがないわけですね。そういったものがない中で不良債権の処理をするということになると、やはりこれは、まさにデフレ圧力を伴うんだろうというふうに思うわけです。
 そして次に、デフレ対策という言葉自体が私は大変にインチキ臭いなというふうに思っているんですが、今まで経済対策とか景気対策というふうに言ってきたわけですね。ところがお金がない。お金がないから財政出動はできないと。別に需要政策は財政だけだというふうには私は思っておりませんが、ただ、国債発行枠等もあって、お金がないから経済対策とか景気対策とか言えないのでデフレ対策というふうに言わざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども、塩川大臣はいかがでしょうか。
塩川国務大臣 そうですね。デフレ対策というのは今流行語になっていますね。おっしゃるように、景気対策でもいいわけです。しかし、ワンポイントでねらうのは何かといったら、いわばデフレ現象が起こっておるのを防止するということだから、デフレ対策と言うのが一番中心をついているということなんでしょう。
中塚委員 ポイントをついているというふうにおっしゃるんですが、景気対策、経済対策と言わないでデフレ対策と言う分、逆に筋の悪いものが紛れ込むんではないのかというふうに思うわけですね。
 例えば、インフレターゲティングであるとか日本銀行の国債の直接引き受けであるとかそういったことが紛れ込むんではないかというふうに思うんですけれども、塩川財務大臣は、国債の日本銀行による直接引き受けであるとかインフレターゲティングということについてはどういう御意見をお持ちでしょうか。
塩川国務大臣 それは筋の問題じゃなくて、崇高なる経済政策ですね。
中塚委員 日本銀行の国債の直接引き受けとかインフレターゲティングが崇高な経済政策だということですか。
塩川国務大臣 それは、日銀としては、行い得る政策の一つであって、当然な行為の一つである。しかし、時代時代によってその行使の仕方にいろいろな濃淡もあり、動機も違ってくることもございましょうけれども、日銀が持っておる機能の一つであると思っております。
中塚委員 塩川財務大臣は、国債の日本銀行の買い切りを月八千億から一兆円に引き上げるように要請をするということをきのう記者会見でおっしゃったようですけれども、金融緩和というのは何のためにするというふうにお考えなんでしょうか。
塩川国務大臣 一つは流動性を高めるということです。
中塚委員 流動性を高めて、それでどういうふうに経済を動かしていくおつもりなんでしょうか。
塩川国務大臣 金融機関に十分に潤沢に流動資金が回ってくれば、それが投資の動機あるいは消費への投資ということに向いてくるということは当然考えられるということです。
中塚委員 金融緩和自体、デフレ対策の一環だというふうなお考えですか。
塩川国務大臣 先ほど言いました需要の喚起につながってくるということです。
中塚委員 需要の喚起につながってくるということなんですけれども、需要の喚起につながるということは、今までやっている金融緩和というのは需要が上がってこない、効果がないということなんでしょうか。
塩川国務大臣 私は、十分に効果が出てきておると思っております。
 一つは、昨年来の状況を見ておりまして、日銀の資金の供給によりまして、私は株価のより一層の下落を食いとめておると思っております。もしそういう潤沢な流動資金がなかりせば、私は十二月の段階で株価はもっと下がったのではないかと思うんですけれども、それをやはり防止していった効果というものもございますし、また、最近におきまして、年末資金の供給が十分であったことが、これが年末資金の不足をカバーしただけではなくして、流通経済に非常に大きい効果があったと思っております。
 また、近く三月期決算を迎えまして、流動資金に対する需要は相当強くなるのではないかと思いますので、その対策としても日銀の方に、要請というよりも私らの希望として申し上げたのでございまして、それは日銀も、政府、日銀協力体制にありますから、十分にその意向は酌んでくれて、それに相呼応したものをとってくれるであろうと思っております。
中塚委員 需要があったというお話なんですけれども、物価の下落を食いとめるというためには、金融緩和は有効な政策だというふうにお考えでしょうか。
中野(清)委員長代理 もう一度言ってください。
 大丈夫ですか。
塩川国務大臣 物価の下落をとめるためには流動資金は有効であるということですか。それは有効だと思います。
中塚委員 それでは、そういう形で日本銀行に対して、金融緩和ということを要請に、あるいは意見としておっしゃっているのかもしれませんが、それで需要をつくり出す効果があったというふうにお答えになりましたけれども、みずからの御所管である財政、あるいは財政でなくてもいいんですけれども、デフレ対策としての需要政策ということについてはお考えはどうですか。
塩川国務大臣 それはいろいろありますけれども、中塚さんの質問では、結局、もっと政府が金を出したらいいだろうということを含んでおるんだと思います。それは、必要があれば出すかもわかりませんけれども、現在の財政の状況から見まして、追加財政を今出すような時期ではないと思っております。ですから、政府によるところの需要の創出ということは当面、当面ですが、考えられない。むしろそれよりも、予算を早く成立させていただいて、どんどんとその予算を使えるようにしてもらうことが需要の創出に役立つし、経済の活性化に役立つと思うんです。できるだけ早く予算を通していただくようにお願いいたします。
中塚委員 デフレ対策を受けて、または追加策として、十四年度の補正予算案を編成するというお考えはないということですか。
塩川国務大臣 まだ本予算も通っていないんですよ。追加予算を何で議論する必要があるんでしょうか。まず本予算を、十四年度予算を早く通してくださいよ。そうでないと、経済の活性化、そういう議論をしても始まらぬと思うんですね。どうぞその点、よろしくお願いいたします。
中塚委員 前段はまさにそのとおり。十四年度の予算案の審議の途中で補正予算案なんてとんでもない話ですが、後段は、私はそうでないと思っていまして、こんな予算を通したって景気はよくならないだろう、需要の追加にはならないだろうというふうに思います。
 それで次に、先ほどちょっと私の前の吉井委員とお話しされていて、よく聞き取れなかったのでもう一度伺いますけれども、構造改革ということで、サプライサイドの改革の話をずっとされていますね。供給側の、サプライサイド側の構造改革というのは確かに必要だと思いますが、そのサプライサイドの構造改革だけでは景気がよくなるというふうには思えない。さっきもそういうお話をされていたと思うんですけれども、サプライサイドの構造改革に加えて、何が必要だというふうにお思いですか。
塩川国務大臣 それは、経済界全体が活力を出すことが一番大事であります。
中塚委員 その活力を出すということについての政府の、あるいは塩川財務大臣としての役割というか政策というのはどういうことなんでしょう。
塩川国務大臣 各企業が、やはり新しい時代に向かった技術開発を積極的にして、新しい製品をつくり出すなり、あるいはまた流通網をもっともっと合理化して高度化していくということの設備投資も必要だろうと思いますし、経済界全体がやはりそれに向かって作動してくれることが、私は、日本の景気対策にとって一番最大の問題点だと思っております。
中塚委員 そういうお話なんですが、そこに至る中での政府としての役割というか、まさに政策ということになると思うんですけれども、そこのところがやはり明確ではないわけですね。
 柳澤大臣に伺いますが、同様にサプライサイドの改革ということで、金融機関が不良債権を処理するということ、これは確かに重要なことだと思います。思いますけれども、処理をし終えたとしても、何で処理をすれば景気がよくなるのか。
 景気がよくなるというのは、資金がちゃんと回るようになるのかということになりますと、今現時点でも、これだけ金融緩和をしてマネーはどんどんとふえているわけですね。ふえても、要は銀行貸し出しというのは、もう全然横ばいか、あるいはもうちょっと下がっているぐらいになってしまっている。資金需要がないという声が一番多いわけなんですが、不良債権を処理する、し終えるということによって、本当に景気がよくなるのか、あるいは資金がちゃんと回るようになるのか。いかがでしょうか。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
柳澤国務大臣 今、不良債権を抱えながらの金融機関が十分仲介機能を果たし得ていない。そういう言い方をすると、何か定性的にというふうに、もう本質的にというふうに聞こえると必ずしも本意でないんですが、要するに貸し出しが伸びていない、こういう現象があるわけです。貸し出しが伸びていないのはなぜかということは、原因は一つだけではないと私は思っているわけです。つまり、貸す側にも借りる側にも事情があるというふうに思います。
 貸す側の理由としてありますのは、やはり金融機関としてのリスクテークが思い切ってとれない、そういうことで、かなり貸し出し態度が慎重になっている。これは率直に言って否めない面があると私は思います。借りる側について言えばどうかというと、やはりいろいろな投資機会もないこともあって、資金需要がないということでございます。我々が不良債権の処理をすることによって、ここはある程度解放されるじゃないかというのは、先ほどの貸す側の消極的な態度というか慎重な態度、そこを改善することが可能ではないか、こういうふうに考えているわけであります。
 すべてがこれは一挙に解決するというふうに必ずしも思っているわけではなくて、貸す側の状況は少なくとも改善される。借りる側の状況ということについては、投資というものがリスクを持つというようなことであればそこはフィットすると思うんですけれども、資金需要が、どうしても投資機会が見つからないということでなえているというところまで、我々の不良債権の処理が何か有効なプラスの効果を与えるかというと、それはそうではないだろう、こういうように私は思っておりますが、いずれにせよ、そういうプラスの一面があることは、これはもう御理解いただけるんじゃないかと思います。
中塚委員 やはり資金需要がなければ、幾ら不良債権がなくなったって貸し出しは伸びないんだろうというふうに思うんですね。
 そういう意味で、貸す方の問題を今大臣がいろいろおっしゃっている。では今度、借りる方の問題について、この平成十四年度予算案あるいは今やっている政府の施策というのは、これで十分であるというふうにお考えですか、柳澤大臣。
柳澤国務大臣 これは、私の所管外のことでありまして、所管外の問題についていろいろ申し上げるというのはちょっと差し控えたい、こういうように思います。
中塚委員 所管外の問題だというふうにおっしゃいましたけれども、その所管外の問題というのにもう少しコミットされないと、幾ら頑張っても不良債権も減らないし、不良債権がなくなったとしても景気はよくならないんではないのかなということを申し上げているわけです。
 合成の誤謬という言葉がありますが、確かに、一つずつおやりになっていることは決して悪いことではないですね。一つずつおやりになっていることは決して悪いことではないんですが、時たまというか、それがもうばらばらになっていたり、あるいは全くトレードオフの関係であったりするというふうなことがたくさんある。特にこの二、三カ月ぐらい、すごい迷走し始めているなというふうに思っております。
 構造改革なくして景気回復なしということですが、構造改革だけで景気がよくなるというふうにもちょっと思えないですね。確かにサプライサイドは直さなきゃいけないんですが、産業にしても金融にしてもそっちは直さなきゃいけないんですが、そのことだけで景気がよくなる、立ち直っていくとはやはり思えない。特に、不良債権の問題を議論するときに、処理をするというのは金融機関の会計上の問題である部分が多いんでしょうが、不良債権自体が減るということは、まさに産業再生あるいは景気ということと密接な関係があるわけですので、その辺は柳澤大臣も、所管外だなどとおっしゃらずに、積極的にもっとコミットをされないと、おのおの責任を押しつけ合っていては、何のために経済財政諮問会議があるんだと。まあ、メンバー外なんですね、それも。メンバー外でいらっしゃるわけですが、何のために経済財政諮問会議をつくったんだということにもなるだろうというふうに私は思います。
 次に、財政赤字の問題なんですが、三十兆円の枠の話がありました。けれども、一年、二年を三十兆円枠をかけても、私は、それで財政が健全化するとは思えない。プライマリーバランスを回復するのだってやはり長期的な展望というものが必要だし、何よりも、やはり将来の税収増というものがなければ財政の健全化というのはなし得ないわけですね。そういった税収がふえるというふうな政策というのも、この十四年度予算というのにもなかなかない。
 塩川大臣、以前、損して得とれということをおっしゃっていて、私もそのとおりだというふうに思いましたけれども、将来の税収がふえるような施策についていかがお考えでしょうか。
塩川国務大臣 十四年度税制改正は、税収の中立性を維持するためにいたしましたので、増減は、増税、減税は微量でございました。十五年度の税制改正には、まさに今中塚先生のおっしゃっているような、損して得とれ式の税制改正を心がけていきたいと思っております。
中塚委員 最後に、一つ柳澤担当大臣に伺います。
 きょう発表されるデフレ対策の裏対策として、問題企業十一社の支援ということ、そういったことがあるというふうな話を耳に挟んだんですが、事実かどうか、いかがでしょう。
柳澤国務大臣 私もさっき昼休みに初めて見まして、何というか、驚いたんです。全く私、関知しないことでございます。
中塚委員 あるのかないのか、どうでございましょう。関知しないということは、ない。そういうリストがあるのかないのか。
柳澤国務大臣 当然ないんです。
中塚委員 終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 まず、導入でございますので一般的なところから財務大臣にお伺いをしたいわけですけれども、経済情勢の現状についての認識あたりからまず入っていこうかなと思います。
 過去の日本経済を見ますと、バブルの崩壊までは、実際、第一次のオイルショックの起きた七三年以外は、大体、不況と言われていても成長率はプラスであったと思いますね。それが、ここのところ、九八年、九九年とマイナス、そしてまた二〇〇一年度もマイナス、そして二年度も恐らくマイナスだろう、そういうことが確実視されているというのは、これはまあ、事態が極めて異常な状況であるという認識はお互い事実認識として共有できるだろうと思うわけです。
 これはほかの委員会等でも同じような趣旨で何遍も私自身も聞いておることでございますけれども、改めて、今のそうした現状が、いかなる原因でこうした事態が引き起こされたのかという点。そして、仮に過去の、特に失われた十年と言われる、特に九〇年、バブル崩壊以降の政策に今日的な事態を招いた原因があるとするのであれば、どういうところに問題があったと現段階でお考えかということをまず財務大臣にお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 日本の経済情勢は、九〇年代ごろまでは、高度経済成長で、専ら重厚長大産業に設備投資をし、また、これがスケールメリットを追求して巨大な投資を続けてまいりましたが、九〇年代に入りましてから世界の経済状況は一変いたしました。それは軍需産業の変更からきたものであるということでございまして、それに対して日本の産業界の切りかえが、依然として重厚長大産業の上に乗っかった延長線に物を考えておった。その間、三、四年の間は在庫あるいは貯蓄の食いつぶしでやっていけましたけれども、一九九五年以降になって深刻ないわば行き詰まりが出てきたというところであろうと思っております。
 ですから、それ以降の二、三年というものは調整期であった。その調整期が過ぎまして、一九九八年ごろから本格的な不況の態勢に入ったということでございまして、それは何かといったら、すべて供給過剰、いかなる部面を見ましてもすべての分野で供給過剰がいわば不景気の根本原因にあったと思っております。設備にしても供給過剰、それから土地にしても株にしてもすべてが供給過剰、人間も供給過剰になっておった。そこが、これから調整して新しい分野に資源を振り向けていくということになっておる、そこが解決の道だと私は思います。
植田委員 今のお話をお伺いしておりますと、供給過剰であるということは私もそう思いますが、要は、戦後の日本経済が高度成長を果たしてきた、そのときの主要な産業があるわけですよね、製造業を含めて。そうした産業構造、日本における産業構造の転換がこの間あんばいよういかなかったということに要因がある、そういう御説明だと御理解させていただいて……(塩川国務大臣「そういうことです」と呼ぶ)ということですね。
 そこで、その産業構造の転換を図っていくために、今言われているところの小泉構造改革が課題として導き出された、そういう理解をさせていただいていいですね。そこもうなずいていただいたので結構です。
 ただ、塩川大臣はいろいろな方に答弁されていますので私の質問の答弁について一々御記憶されているとは思いませんが、先日予算委員会でお伺いをしたときに、小泉構造改革というものの本質を一言で、柱を一言で表現するならば、いわば供給構造の改革ですよねというふうに私お伺いしたときには、残念ながら塩川大臣にはうなずいていただけなかったわけですが、きょうの質疑、他の先生方の質疑等もお伺いしておりますと、いわゆる小泉構造改革と呼ばれる構造改革というものの構造というのは、少なくともその柱としては、供給側の改革に軸足を置いた、重点を置いた改革であると私は理解しながら聞いておったんですが、そういう理解でいいか。もし間違っているようであれば、その点について御教示いただければと思います。
塩川国務大臣 私は、そういうのを予算委員会で、供給サイドじゃないということを言ったですかね。私、ちょっと記憶にありませんが。(植田委員「いえ、違うんです。供給構造の改革ですよねと私が聞いたときにうなずいていただけなかったということです」と呼ぶ)ああ、そうですかね。それは、何かぼんやりしておって、聞いてなかったのかもしれません。
 私は、絶えず言っておりますけれども、今必要なのは、需要面の、需要からの喚起、需要喚起によるところの景気対策も必要である、これは否定しません、それも必要であるけれども、根本的には、供給サイドを改革しなければ真の経済成長は望めないということを申し上げておる。それは終始一貫言っておりまして、きょうもそれはお話ししたとおりでございますので、今の御質問に対して、私はそのようにお答えいたします。
植田委員 要は、供給側の、供給構造の改革であるという理解で、私は間違っていないということでございます。
 とすると今、ここの話、入り口の話なんで、三十分しかもろてへんので、ほかのこともしたいのでお答えできる範囲で若干まだお伺いしたいんですが、供給過剰にあるとおっしゃいましたね。それは、バブルのときにわんさかと設備投資して、それが崩壊してから結局お荷物になってしまったというようなこともあるでしょうけれども、供給過剰ということがあるとするんであれば、今の不況の一つの原因として指摘されている、日本の経済が競争力を失っている、競争力を失っているがゆえにやはり競争力を取り戻さなければならない、そのためには、競争力のない効率の悪い分野はできるだけ淘汰をして、競争力のある産業分野に転換をすることが日本経済の再生のかぎである、そういう見解もあるようですけれども、供給過剰ということであれば、少なくとも、日本の産業のいわば競争力であるとか生産力というもの自体が根源的に問題なのかどうなのかという点は、まず疑問を私は覚えるわけです。要するに、供給側は、幾らでも、過剰なぐらいの能力を持っているというふうにも考えられるんじゃないでしょうか。その点、財務大臣、どうお考えですか。
塩川国務大臣 今でも、各産業、各分野にわたりまして、相当な余剰施設を持っているんじゃないでしょうか。それが、企業にとりましては不良資産になってきますよね。銀行に対してもそれは非常に重荷になってきておる。その整理、つまり、過剰設備を整理していかないと、新しい事業に展開できないというのが各企業の悩みだろうと思っております。もちろん、重厚長大産業もそうでございますこと当然ですけれども、最近におきまして半導体関係の分野におきましても非常に過剰設備を持っておる、これがやはり一つの方向転換の足を引っ張っておる原因になっておると私は聞いておりまして、できるだけそういうものを各企業が早く整理をしてくれることだと思うのでありまして、それは、要するに企業の新しい分野への進出のプログラムとあわせてされていくものだと思っております。
植田委員 その過剰の設備部分についての整理は、恐らくそれぞれの企業が、今、苦心惨たんしながら一生懸命やっているところだと私も認識しております。
 そのことをまず押さえた上で、先ほどの質疑の中で、不良債権処理にかかわって、これも私の聞き間違いであればその点御教示して訂正していただければいいんですけれども、ありていに言えば、金融機関の側が不良債権を抱えているがゆえに資金提供ができない、そういう現状にあるというふうに塩川大臣はお考えでいらっしゃいますか。だから処理しなきゃならないという理屈になるというふうにお考えですか。それだけ、イエスかノーかで結構です。もし私の理解に間違いがあれば、指摘していただければ結構です。
塩川国務大臣 やはり休止施設を、これは借入金でやっておりますから、日本の企業は御存じのように製造業においておおむね設備投資というものを借入金、自己資本よりも借入金でやっておる場合が多い、それがやはり返済能力と関係してまいりますので、早くその過剰施設を償却していく必要があるだろうと思っております。この部分がやはり決算上から見ましたら損金として扱う、それが不良債権のもとになってくる、こういうように私は見ております。
植田委員 そして、それを金融機関が抱えているがゆえに、金融機関の側としては貸し出しの資金の供給能力が落ちとるというふうにお考えですか。
塩川国務大臣 もちろんそうです。ですから、企業と金融機関との間の金の循環のスピードが非常に遅い。経済が活性化しておるときには金のスピードが速く回る、金の循環が速いですけれども、今はその循環が非常に停滞しておる。その結果が金利が安いということにつながってきておる、こう思いますね。
植田委員 ですから、今きれいに御説明ありましたけれども、不良債権があるから、金融機関がそのことで、それが手かせ足かせになって資金の供給能力が落ちとるということが根源的な問題であるとするならば、ほんまやったら金利が上がってもいいと思うんですよね。要するに、わずかのパイにお金貸してくれと殺到するわけですから。でも、そもそもお金を企業側が借りに来ないわけですね。なぜかというのは、先ほど大臣が御説明なさったように、そもそも、過剰の設備をとにかく身ぎれいにしよう、お荷物をとにかく整理しよう、そして返せる借金は返そうということで手いっぱいですから、要するに、そこでいわゆる需要が冷え込んでおる。そこに一番根源的な問題が見い出せるんじゃないかと思うわけなんですよ。
 それをせんだって、ここにいらっしゃいませんからあれですけれども、今の不況の本質的な原因は、本質というのは二つも三つもないはずですから一つでしょう、それを私は、需要不足が本質的原因と違うんですかということを竹中経済財政担当大臣にお伺いしたら、それはまあ一〇〇%間違っていますなんておっしゃったわけですけれども、今の話をお伺いしていると、少なくとも、小泉構造改革は供給構造に軸足を置いた改革ですけれども、不況の本質的な原因は需要不足にありますよ、そういうふうにおっしゃるわけでしょうか。
塩川国務大臣 いや、そう御都合主義で解釈されては困りますね。それはそうじゃございませんで、先ほど来言っておりますように、景気回復のためには需要面からの、需要のさらに大きい造出が必要であるということは、これはもう私たちも言っておるんです。ですから、需要面からの対策も必要ですけれども、根本的には、やはり供給サイドが、新しい産業構造への転換をして、新しい業種転換をすると同時に、そこに新しく活路を見出して活動を開始してくれるということが、これが活性化への道であるということです。それをやらない限り、根本的な経済の回復はあり得ないということを言っておるんです。
 ですから、需要サイドを無視するなんて、そんなことは全然言っておりません。
植田委員 その辺が、せんだってお伺いしたときには、両方バランスよくなんという御答弁を私は記憶しておるわけですけれども、端的に言いますと、今、私、きょうは七度五分の熱で、ちょっと足元ふらふらしながら質問しているわけですが、風邪引いているわけです。風邪引いているときに、私、ユンケル飲んだり抗生剤を飲んだりしているわけです。そのことを、景気対策だ、需要政策だと思ってください。
 一方で、そもそも植田という者の体質を改善しなければならない、これが供給構造の改革です。例えば、植田というのは、風邪引きながらも酒も飲むし、たばこも吸っている、だからよくない、そういうことは改めなきゃならない。これは、ありていに言えば、公共事業の経済効果をなくしているような族議員のばっこに値する部分ですわ。
 ただし、塩川大臣のおっしゃっているのは、一方で抗生剤を飲むのも結構、ユンケルを飲むのも結構だけれども、それと同時に、体質改善のために行水もしなさいと言っているような話なんですよね。そうなったら、確かに体質改善をしなければならないけれども、体力が落ちているとき、経済がこれだけ落ちているときに、きれいにおっしゃれば産業構造の転換をしなければならないとか、供給構造の改革をしなければならないような部分もあるでしょうけれども、この時期にそれを構造改革と称してやることが時期としていいのかどうかということが、私は疑問なわけですよ。そうなると、今私が行水なんかしようものなら肺炎になっちゃいますわね。
 だから、自民党の有力な方がおっしゃっておられるように、構造改革というものは一たん凍結するぐらいの政策転換を行うべきである、そして速やかに需要政策に転換すべきであるということを私は考えております。そこで初めて今の不況の事実認識として議論の土俵ができるんじゃないかな、そこで初めてその議論ができるんじゃないかなと私は思っているわけです。
 べらべらとしゃべってしまいますとせき込みますので、これぐらいでおいておきまして、そこで、抗生剤を打っても効かなくなっている、効かなくなってくるというのがまさに金融緩和の話でございますので、きょうは日銀総裁、わざわざお越しいただきましたので、先ほどの質疑の中でも答弁されておられる中身ですのでダブりは避けていただいて結構でございますので、端的にお答えいただきたいわけです。
 総理は、小泉さん自身はデフレ対策について、政府と日銀は一体となって進めると述べておられるわけですが、少なくともこの間の日銀の動きを見る限りにおいて、また総裁のお話を、党であるとか、また政策決定会合等々のお話を伺う限り、いわゆるもう一段の金融緩和ということについては消極的だろうというふうに思えるわけですが、日銀の意向として、これから明日も一日、何か会議があるそうですけれども、もう一段の金融緩和の可否についてどうお考えか、この点だけ端的にお答えいただけますでしょうか。
速水参考人 先行きの具体的な政策運営についてコメントすることは差し控えさせていただきます。
 日本銀行は、デフレ阻止の断固たる決意を持って、世界の中央銀行の歴史にも見ない、例のないような思い切った金融緩和を続けてまいっております。日本銀行は、今後とも粘り強く潤沢な資金供給を続けて、金融市場の安定と緩和効果の浸透に努めていく所存でございます。同時に、こうした金融緩和が力強い効果を発揮するためにも、民間需要を活性化させていくことが不可欠であると思っております。
植田委員 ということは、今のお話でお伺いいたしますと、総裁は一段の金融緩和を進めていきたいという御意向であるというふうに理解していいのでしょうか。
速水参考人 これは、あしたの決定会合が終わってからお話しさせていただきます。
植田委員 いや、正味聞くとこういうふうにおっしゃられるわけですが、先ほどの総裁のお話をお伺いしておりますと、この間の金融緩和がどういう効果を及ぼしたか、どういう効果があったかについては極めて冷静に現状というものを御報告されていたと思うわけですけれども、その話だけを聞く限りにおいては、必ずしも一段の金融緩和については積極的には考えておられないのかなというふうに思って私は聞いていたわけです。
 その点について塩川財務大臣にお伺いをしたいわけですが、政府と日銀の、恐らくそれは最終的にはとりあえず縫い合わせながら一体ということになるのでしょうけれども、どうも微妙なところで一段の金融緩和の必要性について一体性を感じられないわけですけれども、財務省としてはその辺、どう御認識あそばされていらっしゃるのでしょうか。
塩川国務大臣 なかなか急所をついた質問で、恐れ入ります。
 政府と日銀との関係でございますけれども、御承知のように、近年改正されました日銀法によって、日銀は政策遂行についての独立性を維持しております。したがって、日銀の独立性ということは、我々もこれをやはり十分意識して尊重しなきゃならぬことは当然でございますが、とはいえ、日本銀行そのものが、やはり日本国経済の中における日本銀行であります。したがって、その時々の政府の経済政策というものが、これはやはり十分に認識し、承知し、それに協力をしていただく、そういう体制のもとにおいての日銀の独立であると私は思っております。
 けれども、その政策、つまり政府が持っておるいろいろな経済政策、物価政策、通貨政策の考え方、これを受けてどのように日銀が実行していくかということについて、日銀自身の運営並びに対策に講じるところの行動、言動というもの、これは、独立したものとして日銀の独自の判断で遂行していただいたらいいと思います。しかし、経済の政策あるいは国の志向しておるところの経済動向というものについては、これはやはり十分意識して政策決定してもらわなければいかぬ。こういうことで、日銀と政府との間の一体性、協力関係というものを維持していけばいいと思っております。
植田委員 ちょっと済みません、時間がないので先に進みます。
 公的資金の再注入の問題にかかわって二点ばかり金融担当大臣にお伺いをしたいわけですが、まず一点目、いわゆる特別検査の結果が公表されることになると、本当に厳しく行われたらどうなるのか。これは、世間、市場がやはり求めることが必定であることは言うまでもないわけですが、総理も、何らかの形で公表した方がいいという指示をされていると聞いておりますが、金融当局として、まず特別検査の結果について具体的に、どこまで、どのように公表しようと考えているのかということをお伺いしたいのです。
 というのは、公表する以上、その結果が市場から信用されるかどうか、その信頼度が問われるわけですし、また投資家等が判断できるような、財務状況がやはり明確にわかるものでなければならないのじゃないのかなと私は思っておるわけですが、現段階でどのような形で公表しようとお考えでしょうか、お願いいたします。
柳澤国務大臣 特別検査をさせていただいております。これは、自己査定が一月から三月まで行われておりますので、したがって私どもの特別検査も、それにいわば参加するような作業でございますので、これは三月いっぱいかかる、こういう認識でございます。その後、できるだけ早くに特別検査の結果を開示したい、こういうように考えておりますが、どのようにという様式の問題については、現在まだ結論を得ておりません。検討中でございます。
 なぜかと申しますと、これはもう言うまでもなく個別の債務者についての検査結果ということでございまして、個別の債務者に思わぬ風評被害というようなものが生じないように、慎重に対処、処理しなきゃいけないということがございますので、それらを勘案し、かつ、今先生御指摘のように、この検査の結果及びその他の通常検査についてもそうですが、信頼を回復、向上させるという方向で役立つようにいたしたい。この二つの要請を勘案しながら、適切な様式でもって発表いたしたいと考えているところでございます。
植田委員 そこは難しい問題でしょうから、なかなか結論が得られないということは理解できるわけですが、ではいつごろまでにと聞いたら、恐らく、可及的速やかに結論を出したいというお答えになるんでしょうか。そうだったら、もう一つ進みます。可及的速やかに結論を出すということでございますね。
 もう一つは、公的資金の再注入について、政府も柳澤大臣も、これは金融システムの破綻が明確になればちゅうちょなく注入するというふうに述べておられますよね。恐らくそのお考えには変わりはないだろうと思うわけですけれども、実際危機が生じてからでは遅い。危機については既に現出しつつあるという見方も強くなっているところでございます。
 そういう意味で、前回の公的資金投入時の総括の上に立って、同じことの繰り返しにならないようにするためには、やはり再注入のための前提条件をきちんとさせておく、その上で公的資金注入の準備に入るというのが筋ではないかと思います。というのは、一つは経営責任の追及、そして株主責任の明確化、厳格な返済、健全化計画等々といった、こうした前提条件をきちんとまずさせておくことが肝要かと思うわけです。
 実際、資金注入の時期を明らかにしなくても、そうした前提条件をはっきりさせておくこと自体は、市場に対するアナウンス効果は非常に高いと私は思うわけですが、その点について、金融担当大臣、御見解はいかがでしょうか。
柳澤国務大臣 現在、危機対応の措置をとる法的な根拠は、言うまでもなく預保法百二条でございますけれども、百二条には、もしこのような措置がとられる場合には、今先生がおっしゃられたように、経営責任の明確化、株主責任の明確化、それから経営の合理化でしたか、そういうようなことについて、それを条件として行うようにということが書かれておるわけでございます。しかし、この点は、実は私どもが前回資本注入させていただいた健全化法でも同じことが書かれておったわけでございまして、それが健全化法においてはより細かくブレークダウンされまして、資本の健全度の区分に応じてその三つの点の具体的な内容が決められていた、こういうことでございます。
 今回は、そういうふうに資本の区分に応じて具体的な内容が決められているというふうなきめ細かな規定がないわけでございますけれども、そういうようなことも勘案しながら、そのときに至ればしっかりした対応をしなければいけない、このように考えておりますが、いつも申し上げますように、今日ただいまそのようなことが必要な状況にあるとは認識いたしておりません。
植田委員 持ち時間終了いたしましたという紙が来たのですが、簡単に終わりますので、済みません、一点だけ。
 もう一つだけ金融担当大臣に、これだけお伺いして終わりたいんですが、ペイオフ解禁にかかわって、いわゆる収納金の問題についてです。自治体にとっては、この収納金の問題は、少なくとも自己責任の範囲をやはり超える問題だろうというふうに思いますから、この点は公的保護に向けて検討はしておく必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。るる、こういうケースだったらこうなるよというようなことは省きます、時間がありませんから。いずれにしても、そこは御理解いただいていると思いますので、その点だけ、一点だけお答えいただいて、終わりたいと思います。
村田副大臣 地方公共団体の財政制度にかかわることでございますけれども、収納金という定義でございますけれども、いずれにしましても、税金等が収納代理機関に集まっている、たまっているときのことを指して言うんだと思いますが、それにつきましても一般の公金と同じ扱いになるということでございまして、ペイオフが解禁になった場合には預保法の適用がある、こういうことでございます。それは、定期性あるいは流動性預金の種別に従って取り扱いを受ける、こういうことだと思います。
植田委員 終わります。
坂本委員長 以上で両大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
坂本委員長 次に、内閣提出、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣塩川正十郎君。
    ―――――――――――――
 平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案
 租税特別措置法等の一部を改正する法律案
 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案
    〔本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
塩川国務大臣 ただいま議題となりました平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 まず、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案につきまして、御説明申し上げます。
 平成十四年度予算は、改革断行予算として、五兆円を削減しつつ重点分野に二兆円を再配分するとの方針のもと、歳出の一層の効率化を進める一方、予算配分を少子高齢化への対応、科学技術、教育、ITの推進等の重点分野に大胆にシフトすることとともに、特殊法人等への財政支出について、事務事業の抜本的見直しの結果等を反映し、一般会計、特別会計合わせて、一兆一千億円を超える削減を実現しております。
 これらの歳出面における努力や歳入面における税外収入の確保などにより、国債発行額三十兆円以下との目標を守り、限られた財源をむだ遣いしない体質へ改善するとともに、将来の財政破綻を阻止するための第一歩を踏み出すことといたしました。
 本法律案は、以上申し上げましたように、当面の財政運営を適切に行うため、公債の発行の特例に関する措置等を定めるものであります。
 以下、その法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一に、平成十四年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることといたしております。
 第二に、平成十四年度において、外国為替資金特別会計から、外国為替資金特別会計法第十三条の規定による一般会計への繰り入れをするほか、千五百億円を限り、一般会計に繰り入れることができることとしております。
 第三に、日本中央競馬会は、平成十四事業年度において、既定の国庫納付金のほか、特別積立金のうち五十億円を平成十五年三月三十一日までに国庫に納付しなければならないこととしております。
 第四に、地方交付税法等の一部を改正する法律附則第三項の規定により一般会計に帰属した借入金のうち、平成十三年度の末日においてまだ償還されていないものについては、国債整理基金特別会計法第二条第四項の規定は適用しないこととし、これを定率組み入れの対象とすることにしております。
 次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 政府は、社会経済情勢の変化や厳しい財政事情を踏まえつつ、構造改革に資する等の観点から、中小企業関係税制及び金融・証券税制等につき所要の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
 以下、その法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一に、中小企業関係税制について、同族会社の留保金課税の特例の拡充、交際費の損金不算入制度に係る定額控除限度額の引き上げ等を行うこととしております。
 第二に、金融・証券税制について、老人等の少額貯蓄非課税制度を障害者等を対象とした制度に改組するほか、特定口座内の上場株式等の譲渡に係る申告不要の特例制度の創設等を行うこととしております。
 第三に、社会経済情勢の変化に対応するため、中高層耐火建築物等の所有権等の移転登記に係る登録免許税の税率の軽減措置、金融業務特別地区における認定法人に係る所得の特別控除制度の創設等沖縄の経済振興のための措置等を講ずることとしております。
 その他、製品輸入額が増加した場合の特別税額控除制度の廃止等既存の特別措置の整理合理化を行うとともに、特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度等期限の到来する特別措置についてその適用期限を延長する等所要の措置を講ずることとしております。
 次に、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応する等の見地から、関税率、関税の減免税制度等について所要の改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
 以下、その法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一は、関税率の改正であります。
 本年四月一日からの塩の輸入自由化に伴い関税措置を導入する等の改正を行うこととしております。
 第二は、関税の減免税制度等の改正であります。
 加工再輸入減税制度及び沖縄に関連する関税特例措置の拡充等の改正を行うこととしております。
 第三は、国際協定に基づく特別な緊急関税制度の導入であります。
 中国のWTO加入議定書に基づく対中国経過的セーフガード制度及び日本・シンガポール新時代経済連携協定に基づく対シンガポール二国間セーフガード制度について、国内法の整備を行うこととしております。
 第四は、暫定関税率等の適用期限の延長であります。
 平成十四年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率等について、その適用期限を延長することとしております。
 以上が、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君、財務省関税局長田村義雄君、財務省理財局長寺澤辰麿君及び国税庁徴収部長余田幹男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。
石井(啓)委員 本日は、大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。私の質問からようやく法律に関する質問でございますので、また気分を改めて、よろしく御答弁の方お願いを申し上げます。
 まず、特例公債法に関しまして、国債に関する質問を幾つか申し上げたいと思いますけれども、ムーディーズ、SアンドP、両方とも今、日本の国債の格付は先進七カ国中最低ランクということで、非常に不名誉な状態でございますし、また、ムーディーズではさらに引き下げの方向で見直しをする、こういうことでございまして、こういった状況に対して大臣としてはどういうふうにお考えなのか、まず確認をいたしたいと思います。
塩川国務大臣 現在、外国会社での格付が行われておりますけれども、これはいずれも勝手づけということでございまして、格付会社がこちらが依頼していないのに勝手に格付しているという状態でございます。
 しかし、これはある程度国際的にも通用されておるものでございますが、思うに、日本の国債が数年前は最高位に位置しておったものが、現在は非常に低いポジションに規定されております。私たちとしては、本当に残念でもあるし、なぜこんな格付が行われておるのかということに対して、疑惑を持っておるところも多分にございます。
 けれども、格付である以上は一応、民間の会社とはいえ発表されたものでございますが、しかしながら、よく考えてみますと、格付が変更されるたびに思うのですけれども、それに伴うところのファンダメンタルズが変わってきたのかといいましたら、ファンダメンタルズは全然、大した異動は行われないのに格付の差が出てきておるということ、この点が私たちにとりましてちょっと不可解なところがございます。
 とはいえ、今後の我々の心得としては、国債発行をするについてのいわば国としての政策を明確に諸外国に理解してもらうことが必要であるということと、国債の発行の仕方にもう少し、一段の工夫を講じて、スムーズに消化されるように心得るべきだと思っております。
 しかしながら、現在、国債の消化は非常に順調に行われておりますので、その面における心配は何らないのでございますが、それだけに、格付に対する関心というもの、我々は一層厳重にこれを観察し、今後の対策を心得ていくべきだと思っております。
石井(啓)委員 確かに勝手格付ではあるんですけれども、投資家はそれを参考にするわけでございますので無視ができないということで、日本の構造改革の進展がおくれていることで格付が引き下げられているということもあるようでございます。私は、やはり結果を出さなければいけない時期に来ている、構造改革にしろデフレ対策にしても、言葉だけでなく結果を示して格付会社の担当者にも十分納得していただく、そういうことが求められているというふうに思っております。
 ところで、最近、十年国債の金利が上昇傾向にございます。ちょっときょうの状況は把握していないんですが、昨日は一・五五%ということで、最近一・五%前後ということで、一時期から比べると上昇傾向にあるわけでございますが、これはどういった理由あるいは背景だというふうに御認識をされていますでしょうか。
谷口副大臣 石井委員が今おっしゃったように、最近若干の上昇傾向にあるわけでございます。昨年の下旬以降、若干の上昇傾向がございまして、一番高いときには一・五七%まで行ったように思っておるわけでございますけれども、このような国債金利は、国債の需給関係のみならず、景気または為替の動向、財政、金融政策等、複合的な要因によって変動するというものでございますが、市場では、一月から二月上旬にかけて、長期金利の上昇傾向は円安に伴う海外投資家による国債の売却等が背景になっている、このように言われておるわけでございます。
 国債市場の動向については、日ごろから注意深く見守り、国債市場の安定と国債の確実かつ円滑な消化に向かって万全の体制で臨んでおるところでございます。
石井(啓)委員 日本国債については、外国人投資家の保有比率が低いものですから、そういった影響がまだ少ない、外国人投資家の売りの影響は少ない状況かと存じますけれども、もう既に、この財務省の資料によっても、昨年十二月末現在で額面ベースでの国債の発行残高が約三百八十六兆円というふうに聞いておりますし、時価ベースですと四百兆円を超えている。
 これだけの大量の国債を抱える状況になりますと、これをいかにうまく管理していくかということが非常に重要な課題でございます。特に国債の急激な金利上昇を招かないように、裏返して言えば、国債の暴落を招かないような、そういうマネジメントが非常に重要になってくるかと存じますが、一般的に国債の金利が上昇するというふうに考えられるケースは、一つは、景気回復局面で企業が資金需要が出てくれば、銀行が企業に資金を貸し付ければ、今国債を買っていたのが企業の方に資金を回すようになれば、需給バランスが若干崩れて金利が上がるというケースがあります。ただ、これについては、景気回復に伴うわけでありますから当然税収の方もふえてくるでしょうし、財政の健全化にとってはこれはいい方向でありますから、金利もある程度上昇したとしても、それはある意味で理由のつく範囲内でおさまるだろう、そういうふうに考えられるわけであります。
 片や一方、我が国の財政の破綻が懸念される、こういうことで金利が上昇することになりますと、これは不景気下の金利の急上昇ということでありますから、これは大変な事態を招くわけでございまして、そうならないようにしっかりやらなければいけないわけであります。またあるいは、円に対する信認が低下するということで国債が売られるということもあるかもしれません。
 いろいろなケースが想定されますけれども、国債暴落を防ぐというマネジメントをきちんとやっていく、こういった観点から、今後、国債金利の急上昇、どういったケースが考えられて、どういう対策をおとりになろうとしているのか、お伺いいたしたいと存じます。
谷口副大臣 まさに今石井委員がおっしゃったような状況の中での金利の上昇というのが考えられるんだろう。
 国債の金利が上昇いたしますと、おっしゃるように、国債価格の暴落と申しますか、下落があるわけでございますから、そういうような事態にならないようにということで対応いたしておるところでございますが、いろいろなケースがございますが、例えば先ほどもおっしゃったような、国債の大量発行により需給バランスが大きく崩れる場合であるとか、またインフレ期待が高まる場合、このような場合に国債金利の上昇があるというような可能性があるというように言われております。
 これに対して、現在政府は財政構造改革に積極的に取り組むということで、財政の規律を確保し、国債の信認を維持するというようにいたしておるわけでございます。
 またもう一つは、国債の発行に当たっては、市場実勢を反映した発行条件の設定、また個人向け国債の導入等を通じた保有者層の多様化、市場との緊密な対話、このようなことを行って、国債市場の安定、国債の確実かつ円滑な消化に万全の体制を整えてまいりたい、このように考えております。
石井(啓)委員 その点についてはしっかり細心の気配り、対応をよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 続きまして、質問を変えまして税法に関して幾つかお尋ねいたします。
 今回の十四年度の税制改正の中で、まず同族会社の留保金課税につきまして、中小法人について五%軽減するということで、小さな一歩ではありますけれども、私ども主張している方向の一歩でございますので、一定の評価をするわけでございますが、私ども公明党といたしましては、まず同族会社の留保金課税そのものについて、これは当初導入されたねらいといいますのが、法人税率と所得税の最高税率の差が非常にあった。したがって、役員報酬として出すと所得税で捕捉されてしまうということから、内部留保していくという、ある意味で節税対応という意味があったと思いますけれども、現行では法人税率と所得税の最高税率との差が非常に縮まってきていますから、そういった意味での存在意義は薄れている、なくなっているのではないか、こういうふうに思っておりまして、同族会社も、大企業もございますけれども、特に中小企業の同族会社についてはこの留保金課税を撤廃すべきではないか、こういうふうに考えております。
 この点についていかがでございましょうか。
谷口副大臣 同族会社の留保金課税でございますが、昨年、石井委員と同じ意見で推進をいたしておったわけでございますが、まさにおっしゃるような留保金課税、まあ留保金課税と申しますのは、同族会社にあっては少数の株主が意思決定権を有しており、会社から支払われる配当に対する個人の累進所得課税を回避するために必要以上に会社に所得を留保することが予想されるということから、これに対応するために、税負担の公平確保の観点から設けられているということでございます。
 それで、現下の経済情勢のもとにおいて、設立後間もない中小企業、また、新規性のある事業を行うベンチャー企業については、一定の配慮を行う観点から、留保金課税を適用しない特例措置を講じておるところでございます。またさらに、平成十四年度税制改正におきましては、中小法人にかかわる留保金課税の税額を五%軽減するなどの措置を講ずることといたしておるところでございます。
 いずれにいたしましても、今般の税制改革論議、今やっておるところでございますが、法人税を含めた税制全体について、これからの税制のあり方を検討するということでございますので、予断なく、幅広い観点から検討を行う必要があると考えておるところでございます。
石井(啓)委員 よろしくお願い申し上げます。
 それから、引き続きまして中小企業の事業承継
税制でございます。
 これは累次にわたりまして事業用宅地の評価を軽減したということで、零細企業あるいは小企業にとってはほとんどそれで事業承継が困難なくできているという実態はあろうかと思いますけれども、例えば複数店舗を持っていらっしゃるような、あるいはもうちょっと規模の大きなところについては、依然としてやはり現在の相続税の体系では事業体を継続するについて支障が生じている、こういう事態もございます。あるいは、今経営されている方が、相続で持っていかれるのであってはということで、士気が鈍っているといいますか、やる気をそいでいる、そういう面も伺っております。
 実は私ども、党の独自の提案として、事業用資産について、相続開始後五年の事業承継があれば五〇%軽減するという提案をさせていただいているんですけれども、実はこれは九〇年代にドイツ、フランス、イギリス等で導入されている包括的な事業承継税制を参考にしてやらせていただいたんですが、我が国においてもこういった税制を導入する時期に来ているんではないか、こういうふうに考えておりますが、この点についていかがでございましょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま石井先生が申されたような御趣旨も踏まえて、十四年度税制改正でも、取引相場のない株式等については課税価格を一〇%減額するという特例措置を講じさせていただいているところであります。
 中小企業の事業承継につきましては、かねてから、政府税制調査会等におきまして、すべての財産を公平に課税するという基本原則というような議論があること、それからまた、これまでとられてきた中小企業の、今石井先生も言われたような事業承継に関する優遇措置との関係、そういったものを、関係などを踏まえながら、相続税全体のあり方として、一つには高齢化の進展に伴う資産を引き継ぐ年齢層が上昇しているという問題、あるいは事業承継と財産承継との関係、あるいは納付の実態といった種々の問題も考慮しながら、あるべき税制の構築に向けた取り組みの中で幅広く検討していくことが適当ではないかと考えているところでございます。
石井(啓)委員 幅広く、かつ前向きに検討をよろしくお願い申し上げます。
 それから、抜本的な税制改革の方の議論に移らせていただきますが、政府税調あるいは経済財政諮問会議でも議論が始まっているところでございますけれども、現下の状況を考えますと、経済活性化のための税制の議論をやはり私は急ぐべきではないか。
 私どもの党で出しましたデフレ対策の第一次提言の中でも、投資や消費を促す幾つか具体的な事例を、例えば贈与税の軽減ですとか、土地、不動産に係る流通課税ですとか、あるいは住宅ローン利子控除の創設ですとか、投資減税の拡充ですとか、そういったことを挙げさせていただいていますけれども、そういう経済活性化のための議論を急いでやるべきではないかというふうに思っておりますが、この点についていかがでございましょうか。
谷口副大臣 経済活性化という観点での税制改革をということでございますが、一月から政府税調の議論も始まっておりまして、一応六月ごろに、六月を目途にして基本的な方針を取りまとめ、年内までに対応し、十五年以降の税制改正で反映をしていくということで今進んでおるところでございます。
 それで、これは塩川大臣もおっしゃっておるわけでございますけれども、やはり三つのポイントがあるんだろう。一つは、歳出歳入のバランスという観点があるんだろう。もう一つは、経済の活性化というポイントがあるんだろうと思います。もう一つは、公平、不公平なのかという、この観点があるんだろう。このような三つの観点がこの議論の際には起こるんだろうというふうに思っておるわけでございます。
 そこで、今おっしゃったような経済の活性化という観点でやるべきだ、こういうことでございますけれども、一方で、今現在、税制の空洞化というようなことが言われておりまして、租税負担率がOECD三十カ国のうち二十九番目、またG7の中でも最低の租税負担率といったようなことがあるんだろうと思いますね。
 もう一つは、やはり景気の活性化にどのような税制が資するのかというようなことも当然あるわけでございまして、私も石井委員のおっしゃることはよく理解できるわけでございまして、聖域なき税制論議の中でそのような観点も論じなければならない、このように思っておるところでございます。
石井(啓)委員 本日の私の質問の時間、持ち時間は三十分なんですけれども、きょうは与野党双方から時間を短縮しろという強い要請がございますので、最後の質問にさせていただきます。
 経済活性化の税制について、私は、当面の税収中立にこだわらなくて、減税先行でいってもいいんじゃないか。中期的にはきちんと税収を確保するにしろ、当面は減税先行でもいいんじゃないかという考えを一つ持っています。
 二つ目には、十五年度の税制改正を、今十四年度の改正をやっていますので十五年度の改正の話をするのは早いんですけれども、十五年度の改正の議論を待つことなく、昨年も承継税制、年度途中にやりましたけれども、できるものはどんどん早くやっていくということでぜひお願いをいたしたいと思いますが、この二点、いかがでございましょう。
塩川国務大臣 二つの御質問ですが、できるだけ景気刺激のためになるような税制を志向していきたいと思っておりまして、おっしゃるように、私は、十五年度税制改正はそこに重点が置かれるんであろうと思うております。
 それから、年度中に税制改正をしたらというお話でございますが、これはなかなか作業が大変でございますし、また税はそう朝令暮改的なことの印象を受けてもいけませんので、しかし、緊急性を要するようなこともございますから、その点があれば、もちろん年度内といえども発効さすようにいたしたいと思って、極力勉強してまいりたいと思います。
石井(啓)委員 これで終わります。
坂本委員長 次に、山本明彦君。
山本(明)委員 自由民主党の山本明彦であります。
 後で財政諮問会議があるということで、石井委員にも大変早く今終わらせていただきました。財務大臣も今そわそわしておみえになりますので、まず大臣にお伺いをしたいというふうに思います。
 きょういろいろな議論をお聞きしておりまして、今いろいろな問題点がたくさんあるわけですけれども、その中で、やはり供給過剰という言葉がきょう何回か出てまいりました。今の小泉改革の大きな柱の一つは不良債権処理ということでありますけれども、この不良債権を処理するということは、供給過剰を少しでも早く解消するということで不良債権を処理していくということだというふうに思います。
 したがって、簡単に言いますと、少し病弱の人には早くリタイアをしていただいて、健康体の人に市場に残っていただきたい、そういった形ではないかな、そんな形がするわけでありますけれども、そんなことでよろしいでしょうか。――はい。
 ということは、やはり痛みを伴うわけでありますけれども、今の感じを見ておりますと、デフレスパイラルということで、何となく先が見えなくて、泥沼と言ってはいけませんけれども、どんどんどんどん沈んでいってしまうような、そんなイメージが今国民の中に広がっておるというふうに思います。そうした中で痛みを伴うこの構造改革をしていって、その先に何が見えるんだ、これが大切ではないか、そんなふうに思うわけであります。
 したがって、この閉塞感を少しでも早く脱却をして、これが例えば一カ月先とか二カ月先ということはもうあり得ないことはみんなわかっておりますので、ぜひ、いつごろには光明が見えるよ、いつごろには皆さん方に安心していただけるよ、そういった日時というんですかね、期日を示していただきますと、それまで何とか我慢すれば何とかなるんだ、こういったイメージが国民の皆さんにもわくと思いますので、今から経済財政諮問会議でいろいろなことが論議されると思いますけれども、ぜひその点をまず大臣にお願いをしておきたいと思いますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 率直に申し上げますと、私たちは集中調整期間というものを設けていまして、二年間でこのデフレ状態から脱却したいと思っております。
 したがって、諮問会議で設定いたしました「改革と展望」というところに、二〇〇三年度は〇・六の実質経済成長率を見込んでおるんです。ここを一つの大きいターゲットにしている。それじゃ二〇〇二年はどうするのかといったら、二〇〇二年はプラス・マイナス・ゼロでいくようにいたしたい。そうすると、十三年度はマイナス一%でございましたから、〇にして、それで〇・六%プラス、こういうぐあいにしておりますが、私は、それをあえて二〇〇三年にはプラス一%にしたいという希望を持っておるんです。
 それでは、それはただ願望かといいましたら、私は、最近の月例報告の中身を詳細に調べてみたりいたしましたが、日本の経済状況は、実は相当しっかりとしてきておるように思うんです。
 一つは、物価が下げてまいりましたけれども、特定のものの下げがきついものですから全体の物価の下げが出ておりますけれども、やはり生産関係などを見ましたら停滞してきておりまして、卸売物価も下げどまりがしてきたということが一つございます。
 それから、輸出は十二月から上向いてまいりましたし、最近の為替レートを見ていましたら、相当輸出にとってはいい条件が出てきておるように思っておりまして、輸出はかなり二〇〇二年で期待できるのではないかなと思っております。
 それから、各企業の関係者、特に今、経団連の人なんかに聞きますと、製造業において在庫調整が非常に進んできて、いわゆる過剰在庫はほとんどなくなってきたような状況だ、こういうことが言われております。
 ですから、景気はなお悪化は続けておると月例報告では言ったりしておりますけれども、個々の中を突っ込んで見ましたら、私は、やはりもう厳冬の時代は過ぎたんじゃないかなという感じがして、一日も早く一陽来復を待ちたいなという気持ちのところに来ておるということでございます。これは楽観的かもしれませんが、しかし、そういう元気を出して、この際、経済界が立ち向かってもらいたいと思うことが、ここが一番の大事なところだ、こう思っております。
山本(明)委員 多少明かりが見えてきそうということで、期待をしておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 ただ、今の不良債権を処理していく段階に当たっては、当然倒産もまだまだ出てくるというふうに思います。市場原理に任せて、倒産が出るところは出てください、そうしたことでリタイアしてくださいという格好だけ見ておりますと、これは葬儀屋さんとか坊さんの仕事だけになってしまいます。これではやはりだめでありまして、政策というのは、先ほどからも話が出ておりますけれども、やはりドクターの役目をしなければいかぬ、こういうことが政策だというふうに思います。
 これは政策とはちょっと違いますけれども、きょうもインターネットを見ておりましたら、ダイエーの再建のものが載っておりまして、大体、案がきょう発表されたと思いますけれども、五千二百億ぐらい、債権放棄の千七百億も含めて五千二百億ぐらいの金融支援があるということだそうであります。大変結構だとは思います。
 結構だと思いますけれども、これを中小企業から見ますと、中小企業も不良債権を出しましても、これは倒産しかないわけでありまして、民事再生法は別でありますが、原則倒産しかないわけでありまして、そうすると、債権放棄なんというのはまずしてくれません。やはりダイエーみたいなこれだけ大きなところでありますと、全国的に大変大きな影響があるということは言われておりますけれども、地元で見ますと、こんな一兆円、二兆円という話じゃなくて、二十億、三十億で倒産すればこれは大問題であります。
 そうしたことが現実でありますので、やはり中小企業の方にもしっかりと目を向けていただきたい。今言った、今までは銀行が助けてくれるという形で銀行にお願いしておったのが、今度は銀行を助けないといかぬ時代でありますから、これはやはり公の力で銀行を助けていただいて。小さい方から大きい方は助けられませんので。
 したがって、そういった意味で、先ほどからも話が出ておりました公的資金の注入でありますけれども、金融担当大臣は、口角泡を飛ばして、それは甘やかしちゃいかぬ、厳しくさせることが銀行を立ち直らせるもとだ、こういうことを言って帰っていかれました。これは、担当大臣としては当然の言葉かもわかりませんけれども、経済をずっと見ていかれます塩川大臣に、ぜひ、この点についてどういうふうにお考えか。
 お考えというよりも、私からお願いをしたいわけでありますけれども、銀行の体質が強くならないことには、なかなか融資まで回ってきません。今はもう、自分の体が心配だからとても融資できないよということが中小企業まで来ておるわけでありますので、そういったことで、やはり銀行の体質を強くするということは大変大事なときでありますので、公的資金の注入について、ぜひ塩川大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
塩川国務大臣 問題が公的資金の注入ということでございますけれども、実はきょう、その問題が一番の問題になると思います。
 きょう、これから経済諮問会議をやりまして、総理から出ております問題点は、簡単に言いますと、一つは、特別検査をやりましたね、あれをどう生かしていくかということと、それから不良債権処理のための資本の注入問題をどう考えていくかということ、これが一番の議題になっております。その次に問題は、株式の振興策をどうするかということであります。そして、同時に問題となりますのは、日銀の要請に対する、金融緩和の要請をしよう、これが一つの問題。四番目が、さっきおっしゃった中小企業の金融をどうするか、非常に深刻な状態になってきております。そういうものをあわせてするわけでございます。
 ついては、資本の注入でございますけれども、これは、今直ちにやるということは、預金保険法の法律の趣旨からいうてもかなり無理なところがある。直接注入とか、なかなかできにくい。ですから、ある程度不良債権の整理を強制させて、銀行が不良債権をみずから処理をしていく、その結果として起こってくる資本不足に対しては直ちに注入していくということをしようと。総理が言っておりますのは、いつでも注入できるように消防がホースを持ってじっと待っておる、ピストルを抜くのはまだだよ、こういう状態にして、注入の問題を不良債権の整理と結びつけていこう、こういう考えを持っています。
 それから、中小企業の金融につきましては、実態は、山本さんも御存じのように、私は地元で聞きまして、最近主要銀行の支店長がごろごろかわっちゃう。それから、それがかわったら、その次、貸し付け主任であるところの支店の次長、支店長代理、ころころかえちゃう。これは一番中小企業者にとって困ることなんです。つまり、中小企業は、銀行とは人間的、経営の中身を全部知ってくれている人とのつき合いで金融が行われております。それがきゅっとかわってしまいますから、マニュアルどおりとなりますので、これが最近、もう目に見えて貸しはがしの状態が起こってきている。私は、きょうはこの問題もやはり考えてもらうような、一つのテーマにして取り上げてもらえるようにしたいと思っております。
 以上です。
山本(明)委員 貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。
 株価が三百七十円、今上がっております。きのうは、きょうのデフレ対策の案を見て株が九十円ほど下がったそうでありますけれども、きょうは三百七十円ももう上がっておりますので、恐らくきょうの会議を期待しておる、こんな結果かな、こんな感じがしておりますので、ぜひいい案を出していただきたいな、そんなふうに思っておるところであります。
 それでは、大臣にお引き取りいただきましたので、法案の審議をお願いしたい、質問をお願いさせていただきたいと思います。
 十四年度の財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案でありますけれども、時間が余りありませんので簡単にさせていただきますが、小泉総理は、自民党総裁選挙、昨年の四月のときから、国債は三十兆円以下に抑える、こういう公約で始められました。まさかできるわけはないじゃないか、こんなふうに思って見ておりましたけれども、これを実行された。そういった意味で、今回三十兆円で抑えたということは大変評価される、こんなふうに思っておるところであります。
 そうした中で、今回の、外国為替資金特会からの一般会計への繰り入れとか、中央競馬会の国庫納付金の納付の特例、国債整理基金特会の適用の特例等が隠れ借金だと言ってみえる方もあるわけでありますけれども、この点についてどんなふうにお考えか、お伺いいたしたいと思います。
谷口副大臣 今、山本委員がおっしゃった件でございますが、おっしゃるような隠れ借金という定義が明確になってないわけでございまして、特例公債の発行に加えまして、十四年度特例公債法案に規定した措置は、いずれも一般会計が返済義務を伴う新たな借り入れを行うものではなく、隠れて借金をするとは言えないと考えておるわけでございます。
 また、今おっしゃったような国債発行額三十兆円以下というこの目標は、国債の発行が国債市場に悪影響を与えることを回避するということで、財政の規律、節度を確保するという意味において意義があったものと考えておるわけでございまして、本法案はまさにこのような趣旨に沿ったものであるというように考えております。
山本(明)委員 先ほど石井委員の方からも話がありましたけれども、国債の格下げが今行われておるところでありますので、やはり国債をしっかりと公約どおり三十兆円以下に抑えたということは、恐らく国際的な評価もこれで受ける、こんなふうに思いますので、そういった意味で評価をさせていただきたいということで、この質問を終わらせていただきたいというふうに思います。
 続きまして、租税特別措置法の改正について……(発言する者あり)この質問が終わりでありまして、五十六分までありますので、よろしくお願いいたします。
 租税特別措置法の一部改正について、今御意見がありましたので、できるだけ本当に簡単にさせていただきたいと思いますけれども、まず、今回の租特の性格というんですか、ねらいがどんなものかということをお伺いしたいというふうに思います。
谷口副大臣 租税特別措置法というのは従来からいろいろ議論になっておったわけでございますが、今回の租特法を含む平成十四年度税制改正においては、我が国の厳しい財政状況等を踏まえて、国債発行額三十兆円以下の目標のもと、基本的に全体として減収にならないような方針で臨むとともに、社会経済情勢の変化等を踏まえつつ、構造改革に資するという観点から所要の措置を講じたものでございます。
 こういうような基本的な考え方に基づきまして、今回の租特法の改正案においては、一つは、中小企業関係税制及び金融・証券税制に関する改正を行うということと、二つ目は、租税特別措置について、真に必要な措置を講ずる一方、課税の適正化の観点から思い切った整理合理化を図るということといたしておるわけでございます。
山本(明)委員 今回は、三十兆円という枠があって、なかなか租特もそんなに目玉がなかったというような話も聞いておりますけれども、今小泉総理が、聖域なき税制改革、こういって言ってみえるわけでありまして、今から税制について議論がされると思います。今のところ、いろいろ言われておりまして、所得税の課税最低限の引き下げだとか、消費税をどうするとか、上げるのか下げるのかはわかりませんけれども、いろいろ話があります、うわさはありますけれども、一体どんなものに取り組んでいこうとされておるのか。
 そして、今途中でありますけれども、年度途中でも実行を視野に入れておみえになるのか、そこら辺をお伺いしたいと思います。
谷口副大臣 本年は聖域なき税制論議をということで、政府税調も一月からスタートいたしておりまして、三月からは地方公聴会等も始める予定になっておるわけでございます。
 それで、今おっしゃったような課税最低限の問題等もいろいろ議論されるんだろうというように思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、今回の税制論議では三つのポイントがあるのであろうと。
 一つは歳出と歳入のバランスの観点でどのように行うのかということと、経済活性化の観点で、税制で経済対策を一体どの程度なし得るのかという観点、また公平、不公平というような観点での税制のあり方を議論するというようなことになるんだろうと思うわけでございます。
 ですから、幅広い議論を行い、先ほど申し上げました、経済の活性化と、一方で税の空洞化ということも念頭に入れて、我が国の十四年度末の長期債務が国、地方合わせまして六百九十三兆円というような状況の中でどのように考えるか、こういう大変幅広の議論が行われることになっておるわけでございます。
山本(明)委員 今お話がありましたけれども、税というのは公平、中立、簡素が原則でありますけれども、自民党の麻生政調会長は、今は活力、公正、簡素、これが必要だ、こういうふうに言ってみえるわけであります。ぜひ今回の税制改革が活力を生む税制になるように、よろしくお願いをしたいというふうに思います。
 次に、中小企業税制についてでありますけれども、先ほども石井議員の方の話がありましたが、中小企業の事業承継についてお伺いをしたいと思います。
 取引相場のない株式の件でありますけれども、今回、課税価格を一〇%減額というふうになりました。画期的なことだとは思います。とは思いますけれども、取引相場のない株というのは、大企業の場合は別でありますけれども、いわゆる普通の中小企業の株でありますと、まず買ってほしいと言っても買ってくれないわけであります。
 何でもそうでありますけれども、やはり需要と供給の関係で値段というのは決まってくるわけでありますけれども、だれも要らないものはただと一緒というのが、これが市場だというふうに思います。
 そうした意味で、ただというわけにもいきませんけれども、私はただでいいと思うんですが、この一〇%減額となった、一〇%の根拠をお示しいただきたいというふうに思います。
谷口副大臣 おっしゃるように、今般の改正におきまして、取引相場のない株式の課税価格を一〇%減額する措置を講じたわけでございます。
 この特例は、個人が相続等により取得した一定の取引相場のない株式等のうち、発行済み株式等の総数の三分の一以下に相当する部分について、三億円を限度として相続税の課税価格を一割減額する、このような観点で行われたものでございます。
山本(明)委員 ちょっとよく根拠はわかりませんでしたけれども、まあ難しい質問でありますから答えにくいというふうに思いますけれども。
 この株なんですけれども、いわゆる中小企業の自社株という言い方をしますが、相続税を払うときに、現金を払ったり不動産で払ったりしますけれども、それがなくなってきた場合に、何にもなくなったという場合はこの取引相場のない自社株でも物納ができるそうであります。
 そこで、自社株の物納の方法というのですか、方法と言うとおかしいんだけれども、どんなふうになっていくのか。私は、こんな株は売れないと思っていますから、もらっても国税庁困ると思うんですけれども、物納の流れ、株の流れですね、どんなふうに処分されておるのか、そこら辺をちょっとお知らせいただきたいと思います。
谷口副大臣 取引相場のない株式の物納が認められておるわけでございますが、要件がどのようになっておるのかというような御質問だと思いますが、相続税につきましては、金銭で一時にまたは延納により納付が困難な場合に、一定の相続財産による物納が認められておるわけでございます。物納に充てることのできる相続財産として株式も当然含まれておるわけでございます。
 取引相場のない株式の物納許可に当たっては、当該株式以外に物納を充てることができる相続財産がないと認められることに加えまして、当該株式が国において管理または処分することに不適当な財産ではないことが必要でございます。具体的には、当該株式の譲渡に関して定款に制限がないということ、また買い受け希望者がいる場合等売却できる見込みのあることの要件を満たせば、物納として受け入れることができるということでございます。
 なお、取引相場のない株式の物納許可の実績でございますが、平成十年度におきましては、三十六件、百九十九億円でございます。平成十一年度におきましては、三十件、五十億円。平成十二年度におきましては、二十三件、百三億円となっておるわけでございます。
山本(明)委員 まあ実績があるようでありますけれども、現実に、今の話を聞いておりますと、何とかなるのかなというお話なんですけれども、いろいろと聞いたり調べたりしてみますと、だれが買ってくれるかといいますと、買ってくれないわけでありまして、おまえ探してこい、自分で探してこい、買ってくれる人がおれば認めてやるよというのが実態のようであります。
 今の数字は、買ってくれる奇特な人がおって買ってくれたようでありますけれども、買ってくれなかった場合の実態はどうなっているか、お知らせいただきたいと思います。
余田政府参考人 物納に関しまして、ただいまお話がございましたように買い受け人がいないというケースもございます。そういう場合には、最終的に売却できる見込みがないというふうに考えられますので、お取り下げをいただくということで、その後、延納という仕組みがございまして、そちらを選択される方が多いように考えております。
山本(明)委員 その実績は。延納じゃなくて物納をされた場合の、買い手がなくて、そうすると競売か何かに出すと思うのですけれども、それで処分できたかどうかということです。買い手がなかった場合。
余田政府参考人 買い受け希望者がない場合には最終的に物納の許可をいたしませんので、したがって、申請された納税者の方は、お取り下げをされて、別の延納という手続を選択されるということになります。
山本(明)委員 買ってくれないということは、結局そこでおしまいということでありまして、延納の手続と言われましたけれども、延納をする財産があれば、自社株を処分する必要はないわけであります。延納ができないので、延納するということは担保を入れるわけですからね、国に担保を入れるわけであります。担保に入れる物件があれば、それを処分して、それを物納してもいいわけでありますから。そういった意味で、延納というのは、そんなに簡単にできない人が物納しておるということであります。
 したがって、それだけ中小企業の自社株というのは、まさに、価値がないというとおかしいのですけれども、実際的には市場性は全くない。今言った、引き取ってくれる人は、これはもう何らかの形で引き取ってくれると思いますけれども、一般的に持っていったらだめだということでありますので、そういった意味でいきますと、最初に言いましたように、買ってくれる人がいないということは、市場性の関係でいきますと価値がないわけであります。いわばゼロであります。
 しかし、ゼロというわけにもいきませんので、今回一〇%減額になったわけでありますけれども、計算ができませんけれども先ほどの一〇%も、根拠はあってないような根拠だと思いますから、やはりもっと、たしかフランスでは五〇%ぐらい減額だったというふうに思います。したがって、せめて半額ぐらいにするという格好にしないと事業承継はまず無理だろうというふうに思います。
 差し当たりそのときにできても、二代、三代と続いていきますと、どんどん土地も減っていきますし、担保物件も減っていってしまうわけでありますから、そのときに何とかなっても、途中で体力が弱まってしまって、結局は商売をやめざるを得なくなるというのが実態であります。
 そういった意味で、一〇%なんという中途半端じゃなくて、もっと半分ぐらいということを、今回は仕方ありませんけれども、ぜひこれからもまた御検討いただきたい、そんなふうに思いますので、これは要望としてとどめておきます。
 あと少ししかありません。関税の改正についてお尋ねをしたいというふうに思います。と思いましたけれども、ちょっと待ってください、一つだけ。
 関税の改正は塩の問題をお尋ねしようと思いましたけれども、塩業界、今までずっと専売公社で来ておって、ぬるま湯につかってきた塩業界でありますので、今から自由化の波にさらされまして大変でありますけれども、塩業界がいわゆる倒産というような格好のないように、ぜひ助成措置をよろしくお願いだけしておきます。
 最後に一つ、国際協定に基づく特別セーフガードについてお尋ねをしたいというふうに思います。
 今回、中国のWTO加盟に際して、中国産品に対する経過的セーフガードというのが、協定ができたわけであります。一般セーフガードと大分違いまして、十二年間の限定、経過措置でありますけれども、内容を見ますと、中国以外の国に有利ということは中国に不利な形でこの協定ができたようであります。これがもし日本対中国ですと、とてもこんなふうにはいかないと思いますけれども、非常にセーフガードが発動しやすい。内容は省略させていただきますけれども、発動しやすい状況になっておる、こんなふうに思っております。
 そこで、ちょっとお尋ねしたいのですけれども、この日本対中国の、中国品の輸入について、これからこの協定が成立いたしますとどのように我が国に影響するとお考えか。
 そして、発動しやすいわけでありますから、今まででも野菜関係とか繊維関係、大変な要望があったわけでありますけれども、非常に難しくて正式発動もできなかったということでありますけれども、こういったものが、協定ができますと恐らく各業界からいろいろな要望が出てくる、こんなふうに思うわけであります。
 一般のセーフガードのときよりも大分柔軟に、受け入れられやすいというふうになってくると思いますけれども、これは財務省、関税局として、今回のセーフガードについてどのようにお考えか、どう影響してくるか、お尋ねをしたいと思います。
谷口副大臣 おっしゃるように、今回、対中国経過的セーフガードが導入されたわけでございますけれども、一般セーフガードと異なって中国産品のみに対して発動できるものでございまして、要件の違い、また品目ごとの事情から、より発動しやすいと受けとめられる面があるわけでございます。
 御指摘のように、本制度の発動の要望が殺到するかどうかということはわからないわけでございますが、現時点で、本制度の対象として想定されておる品目はございません。
 なお、今後仮にさまざまな個別の品目について物資所管省から当方に本制度の調査開始要請が出た場合には、中国の加入議定書等に定められた国際ルール及び国内法令に基づき、関係各省とともに透明かつ公平、厳正に対処してまいる所存でございます。
山本(明)委員 終わります。
坂本委員長 次回は、明二十八日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十七分散会


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