衆議院

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第18号 平成14年5月22日(水曜日)

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平成十四年五月二十二日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    七条  明君
      砂田 圭佑君    竹下  亘君
      竹本 直一君    谷田 武彦君
      中村正三郎君    林田  彪君
      増原 義剛君    松島みどり君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      渡辺 喜美君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    上田  勇君
      遠藤 和良君    藤島 正之君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        尾辻 秀久君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   政府参考人
   (総務省自治税務局長)  瀧野 欣彌君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (住宅金融公庫理事)   井上  順君
   政府参考人
   (日本政策投資銀行理事) 乾  文男君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十二日
 辞任         補欠選任
  倉田 雅年君     谷田 武彦君
  山本 明彦君     松島みどり君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     倉田 雅年君
  松島みどり君     山本 明彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、法人税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君、国税庁課税部長村上喜堂君、金融庁監督局長高木祥吉君、総務省自治税務局長瀧野欣彌君、中小企業庁次長小脇一朗君、国土交通省都市・地域整備局長澤井英一君、住宅金融公庫理事井上順君及び日本政策投資銀行理事乾文男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、法人税法等の一部を改正する法律案、できるだけ法案に即して、疑問点等、逐一御質問していきたいと思います。
 まず、入り口からの話でございますけれども、私自身、個人的には、連結納税自体今やグローバルスタンダードになっているわけですし、イタリア、カナダではまだ導入されていないと伺っていますけれどもかなり浸透している、そういう意味で、日本においても連結納税の制度を導入することを前提とした政策論議を進めていくということについては、当然ながら必要であろうし、意義あるものだと考えております。
 それは前提になるわけですが、OECDの二十九カ国の中で、おおむね、取引相殺の本格連結型、赤字振りかえの簡易連結型、これが大体半々で採用されているということで、特にいわゆる本格連結と言われるものの代表的な例が、アメリカであるとかフランスであるとか、そういうところでございます。
 そういうことを聞いているわけですが、ただ、当初、もう五、六年前になりますけれども経団連が提案していたときは、税額合算、欠損振替のむしろ簡易連結方式というふうに理解した方がいいのかなと思うわけですが、今回、いわばアメリカ、フランス型ともいうべき本格連結型の制度を採用されたということについては、どういう問題意識、理由によるのかというところからお伺いをしたいと思います。
尾辻副大臣 昨日来、この連結納税制度の創設の目的につきましては、繰り返しお答え申し上げておるところでございます。
 その中で申し上げておりますように、今度のこの制度の導入によって、日本の企業に、大変今厳しい経済状況でもございますけれども、国際競争力を身につけてほしい、こういうこともございますので、今お話しのように、この際でございますから、本格的な連結納税制度、そういうものを導入した次第でございます。また同時に、国際的にも遜色のない制度を構築すべく努力をいたしたところでございます。
植田委員 入り口ですので、繰り返し御答弁いただいているところ申しわけなかったわけですが。
 もちろん、連結納税制度というものが、今おっしゃいましたように、我が国、日本の企業の競争力の維持強化という点で不可欠の制度だということで、特にこの間、経済界を中心に熱心に訴えられてきたという背景は十分理解しております。
 そこで、実はことしの三月に大和総研で、「連結納税制度の導入に伴う企業動向の調査結果」というものが発表されておりますので、何点か、この調査結果を整理させていただいて、御見解等々お伺いしたいわけでございます。
 これは、経済団体連合会の協力のもとに経団連の税制委員会構成企業を中心に百四十八社に質問用紙を送付して、それを回収、集計する形式でアンケートをとったということです。これによれば、連結納税制度を二〇〇二年度から適用するとはっきりと回答した企業は二社、全体の二・二%にとどまっている。また、未定だけれども適用の可能性が高いと言っているのが一七・二%、十六社。導入あるいは導入を前向きに検討と答えた企業が一九・四パー、十八社と、非常に寂しい数なわけでございます。
 これは、そもそもの発端といいますか、財界、経済界からの要請があったことを考えたときに、こうしたアンケートの結果というのは、非常に少ないなというのはこれは当然そういう御感想をお持ちだろうと思いますが、特に、導入を望む企業が多かったにもかかわらず、実際に導入が日程に上ったところでこんなふうに消極的な企業がふえてしまったというのは、わかり切ったことかもしれませんけれども、まずその理由をお聞かせ願えますか。
尾辻副大臣 御指摘のとおりに、大和総研初めとして民間の調査結果がこのところございます。いずれも、検討中の企業が多いという結果であったことは、私どもも承知をいたしております。
 そこで、今後でありますけれども、今検討中でございますから、それぞれグループ各社の収益の見通しなどを踏まえて、今後のまさに検討だろうというふうに考えます。したがいまして、今その理由が、私どもがこういうふうな理由でしょうというふうにお答えできるものではございませんので、御理解いただきたいと思います。
植田委員 まあ、そうなんでしょうけれども。
 そこで、特に仕組みと機能にかかわるところのお話もお伺いしたいわけですが、この調査結果ではっきりしているわけですよね、それは事実として恐らく御認識なんでしょうけれども。そこは、事実認識は私の方から聞いた方がいいんであれば申し上げますと、この調査結果では、連結納税を適用する予定はないと答えている企業のほとんど、六十六社、全体で八八パーになるわけですが、要はこれ、連結納税の仕組みに問題があると答えているわけですね。税負担増となるということです。そして、複数回答になるわけですが、ありていに言えば、連結付加税が上乗せされるということをはっきり言っているのが六十一社、あと、子会社欠損金を否認しているということが五十一社。この辺に対する不満が圧倒的に多いわけですよね、実際のデータは。これはもう見ておられるから十分御承知だろうと思いますけれども。
 それは企業の側からしてみれば、そもそも競争力を高めるために導入してくれというて要求してきたものが、さあ、ふたをあけたら、制度のメリットを言ってみれば削ってしまうような措置になっているじゃないかといったら、私が企業の側であれば、それはちょっと堪忍してやという話になるやろうというのは当然あるだろうと思います。
 結局そこで、こういう設問もあれなんですが、連結付加税が撤廃されれば連結納税を適用するか、こういう露骨な問いもこの大和総研の調査ではありますよね。そうしたら、これ適用が、そもそも二〇〇二年度から適用すると回答した企業は二社しかなかったのが、連結付加税が撤廃されたらやりまっせというのは七社になるわけですよね、これは御承知だと思いますけれども。また、ほかの要因とかかわりなしに付加税さえなければ一一・七%の会社が採用する、これはこれで虫のええ話といえば虫のええ話なんですけれども。
 結局、こういう調査結果からすれば、今回の制度設計の中で連結付加税があることが企業が二の足を踏んでいる最大の要因だということはデータの上では明らかですよね。その点どうですか。
尾辻副大臣 この制度を直ちに導入しないその理由の大きなものが付加税にあるということは、私もそのとおりだろうというふうに思います。
 今先生がお触れになっておりますアンケートでも、私自身もよくわからない部分は、導入しない理由が付加税にありますと答えている企業の数は、割合は先生が仰せのとおりなんです。ただ、じゃ付加税がなくなったら導入しますかと逆に聞くと、今の先生の設問の話でありますが、付加税を理由に導入しないと言っている企業が全部、じゃ導入しますと言うかというと、この数字は全然また違う数字が出ていると思います。細かな数字を今ここへ持っておりませんが、先日見たときに、その差がかなり大きいなと私も思ったのです。
 この理由は何なんだろうということもまた解明しなきゃなりませんし、おっしゃったように、この制度のその他の部分に対する御不満もまたいろいろおありなのかなと思ったりしますので、先ほど理由を直ちにお答えすることができませんと申し上げたところでありまして、今の御質問に対しても、その辺は検討しなきゃなりませんけれども、そして、お答えとして申し上げれば、大きな理由になっていることはそのとおりだと思いますけれども、それも一部のものであって全部ではない、こういう答えをさせていただきたいと存じます。
植田委員 私は連結付加税が唯一にして最大の障害だということじゃなしに、最初に御答弁なされなかったものですから、それはいろいろな御不満がおありだということを認識されているわけですから、それを列挙して答えていただけばよかったわけなんですよね。実際データを見れば、今おっしゃったことも私は十分承知しておりますが、同じ基礎データをもとに今やりとりしているわけですから。
 ただ、いずれにしても、この連結付加税というのは一つ大きな障害になっているという、事実認識としてはある。だから、ほかにもいろいろと不満を持たれている法案であるということも、いみじくもお認めになったということだろうと思うんです。
 そこでもう一つ。今は連結付加税の話でしたが、法人間の寄附金の取り扱いについてなんですけれども、これは理由はわかるんです。これが全額損金不算入となっていることの理由は、適正な課税を確保する、租税回避を防止するということは私は理屈として十分わかっております。
 ただ、ここで私自身、今回の法案については非常にニュートラルな立場でお伺いしていますので、こういう意見もあるけれどもどうかという聞き方になるわけですけれども、いずれにしても連結納税制度というのは、連結グループというのは一つの経済主体になるわけですから、そういう発想から出発している以上、グループ内の寄附金というのも、素朴に考えれば一つの経済主体の中における資金移動にすぎないという考え方も成り立つわけでございますよね。そうすると、実際、これを寄附金ととらえて全額損金不算入とする考え方は、ちょっとそれはおかしいのと違うかという意見が出てくることも決して奇異なことではないと思うわけです。
 例えば、この調査結果の中ではこういう意見が多かったように思うわけです。ほかにもあるだろうと思うんですが、一つ代表的な例を挙げれば、企業グループを一つの法人とみなして納税額を算出する制度が連結納税とされているにもかかわらず、グループ内での寄附金が損金算入されないのは制度として整合性がとれてへんのと違うかという意見は、調査結果で結構ありましたですよね。この意見についてはどんな感想をお持ちでしょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 今まさに先生が申されましたとおり、連結納税制度自体、連結グループを一体として課税する仕組みですから、その税額はグループ内の個別の法人の所得に実は今回は左右されないことになる。その意味では、課税上、グループ内の法人間の寄附を損金として認める必要性は低いというふうに思われるわけです。そもそも、黒字であれ赤字であれ、その所得を合算するという意味でございますから。
 また、現行の一般の寄附金制度というのがありますけれども、これは個々の寄附金の業務関連性を判定することが困難であるために一定の限度内で損金算入を認める制度でございまして、まさに先生も言われたとおり、租税回避行為に利用される懸念があります。
 こうした観点から、連結納税制度という制度におきまして、グループ法人間の寄附金についてはその全額をやはり損金不算入にするということ、もちろんそこから出る場合には別でございますが、グループはグループとして把握するという意味では損金不算入にさせていただいている、こういうことでございます。
植田委員 今、寄附金の取り扱いについてお伺いいたしました。
 今の御説明で、私はそこは十分だろうと思うわけですが、私自身、仮にこの制度の制度設計の中で、全額損金不算入がけしからぬというふうに考えているわけでも別に決してここはないわけなんです。ただ問題になるのは、むしろ、実際こういう制度設計をするのであれば、その前提でやっておく作業があるんじゃないかなということをちょっと疑問に思っているわけです。
 というのは、今回のこの連結納税法人制度を採用する場合と採用しない場合で、法人間の寄附についての取り扱いが異なってくるわけですよね。連結納税の制度の基本的な仕組みとすれば、当然、連結グループ内の法人間取引が時価により行うとされるわけですけれども、後で時価の話はまた簡単に聞きますけれども、へ理屈をこねるようですけれども、時価によらないグループ内の取引は時価との差額分がみなし寄附金ということで損金不算入になるおそれも、理屈上はあり得るだろうと思うわけです。
 そして、日本の場合、時価をどう見積もるかということ自体がまだあいまいな部分が残されていると思うわけなんです。というのは、アメリカの場合、移転価格税制というのが整備されていますので、いわゆる国内グループ間の取引についても公正価格での取引が義務づけられている。日本の場合は、国際間取引に係る税制は八六年に導入されているわけですけれども、国内関連者との取引価格についての制度がまだ存在していなかったと思いますよね。
 とすれば、やはり今回のこの寄附金の取り扱いにかかわって、仮にこの法案で書き込まれているようにするのであれば、その前提として移転価格税制の整備、特に、とりわけ国内関連者との取引価格に対する制度設計というものをやっておくことが先決なのではないのかなと私は思っているわけです。
 ですから、損金不算入自体けしからぬということではなしに、その前提となる制度がまだ日本においては未整備じゃないですかと。そのことをまず交通整理をするということをしておかないことには、さっき質問で取り上げましたような、損金不算入のことにかかわって整合性がとれてへんやないかとかいろいろな不満が出てくるということも、あながち唐突なことではないだろうと思うわけです。今の移転価格税制の整備にかかわってはいかがですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま植田先生が申されました移転価格税制というのは、海外の関連企業との間で取引をする場合に、国内所得が海外へ移転してしまう、言ってみれば日本に入ってくるべき税金が海外へ流れてしまう、それを防ぐために、独立企業間価格と呼んでいるわけですけれども、その価格で課税する制度でございます。
 その意味では、アメリカはむしろ国内でもこの移転価格税制的ないわば独立企業間価格のようなものを基準にしているというふうに言われておりますけれども、ただ、一方で日本の場合も、先生御存じのとおり、時価を基準にして、そこはいわゆる国内もその取引は見ているわけでございます。そこをどこまで厳格にやるかという、言ってみれば一つの運用の話も絡んでくる話だと思います。
 先生が言われましたように、移転価格税制を国内企業間の取引にも適用したらどうだという御意見は、一部の先生からあることはございますが、ただ、その場合にはかなり厳密な、いわば即応しなければならなくて、執行面においてもかなりの困難を伴う部分もあるだろうと思っております。
 ただ、先生が言われますとおり、今後とも、時価の基準というところは適正に、これは連結納税をとろうがとるまいが、やはりそこは適正に行われていくべきものだというふうに考えているところでございます。
植田委員 そうだと思うんですが、後でも伺いますが、だから実際、時価の明確化というものがやはり厳密に行われない限り、昨年も別の法案で質問しましたら、時価というのはそれこそ売り手と買い手が一致したところが時価でございますということになるわけでございます。
 そうした場合、では今度ちょっと話題を変えますけれども、実際、時価評価といった場合、法案の六十一条の十一の連結納税開始時の時価評価であるとか、法案の八十一条の十の連結法人間の取引の時価評価等があるわけですけれども、こうした状況からすれば、連結グループ各社で判断が難しい局面というのが出てくるだろうというのは推察できるわけです。その場合、やはり税務当局に対してもいろいろと、問い合わせなり照会なり相談があるということは想像できるわけです。
 まず、実際これでやられる場合、そうした連結法人からのさまざまなそういう問い合わせ、照会等に対して的確に対応できる相談体制の充実の措置というものをやはり講じておかないことには、要するに、時価というのをどう明確化していくのかというのは、最後に聞きますけれども、厳密な作業であるけれども随時やはりそれは個々の連結法人の事情に応じて、相談に対して応じなきゃならないわけですから、やはりその体制の整備というのが必要になってくるだろうと思います。
 特にそのところが気になりますのは、今回の連結納税制度、初めての試みでありますから、やはりそこは、税務執行に当たる税務職員もこのことについて十分な理解を持っておく必要があるという点では、相談体制の整備と、もう一つは国税職員の研修の充実ということもやっておかないことにはいかぬかなと思うんですが、その二点はいかがでございますでしょうか。
村上政府参考人 お答えいたします。
 時価評価に限らず、連結納税制度は法人税法全般にわたる大幅な改正となっておりますので、納税者等から事前に広範な相談が寄せられることが予想されるところであります。
 したがいまして、この法案が成立しました場合には、納税者等からの事前相談等に対応するための相談窓口を全国の国税局及び税務署に設置し、的確に対応したいと思っております。また、こうした事前相談に対応するために、職員研修も充実したいと思っております。
植田委員 いずれにしても、今、時価のところでぐるぐる回っているわけですが、ここにこだわるのは、そもそもの時価の定義があいまいであるということに尽きるだろうと思うわけです。仮に今のように税務職員による相談体制が整備されたとしても、また研修が充実されたとしても、そもそも、時価の定義があいまいな限り、問題が生じることはやはり避けられない局面があるんじゃないかということを想像するにはかたくないだろうと思うわけです。
 その意味で、先ほどもおっしゃったとは思いますが、少なくとも今回の連結納税制度で時価取引が書き込まれている以上、時価の定義にかかわって、それを明確にする、時価の定義の明確化というものが新たな課題として設定されているんだということは当然言えるだろうと思います。そういう理解でいいでしょうか。そして、その課題をではどう解決していくのか、どうやっていくのかということも含めて、展望を含めてお聞かせいただければ幸いです。
大武政府参考人 今御質問のございました時価でございますが、現在も、連結納税の有無にかかわらず、その意味では、企業間の取引は時価によって行われてきているわけで、適切に行われていると思っています。
 ただ、先生の御質問にありますように、今まではどちらかというと、一般寄附金枠というのがあるので、そこで一定の、言ってみますと、低廉譲渡があってもその中で吸収されるんじゃないかというような解釈があって、弾力的運用の部分があったというふうにお思いなのかもしれません。
 ただ、いずれにしましても、今後とも時価というのは、連結であるなしにかかわらず、適正に運用していく必要があると思っておりまして、その意味では、連結納税制度の創設に伴って御指摘のような問題が生じるか否かについては、制度導入後における我が国企業のグループ間の取引の実態等も踏まえまして、必要があればさらに検討していきたいというふうに思っているところでございます。
植田委員 さて、連結納税の適用法人にかかわってですけれども、連結の対象となる子会社の株式保有割合が一〇〇%になっているわけですが、これも私は、これがあかん、このことがあかんと言っているわけじゃなくて、一応参考までに聞いておきたいんですが、当然、子会社の繰越欠損金であるとか子会社資産の時価評価等々の問題がありますから、対象子会社の範囲は狭く設定する方がよいとお考えなのであれば、私もそれはそうだろうと思っています。
 ですから、そこで因縁をつけるわけではないんですが、ただ、アメリカ、フランス等、恐らく今回の制度設計で一番参考になったであろう制度を見ていますと、例えばフランスの場合、連結の範囲が九五パー、アメリカが八〇パー以上という、所得通算型を採用しているところでもそういう水準に置いているわけですし、また、我が国とは制度は異なるわけですが、イギリスでは七五パー以上というふうになっているわけなんです。それぞれの国情の違いもあるかとは思いますけれども、今回、子会社の株式保有の割合を一〇〇%としたということについての理由、考え方ということを参考までにお聞かせいただけますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほど尾辻副大臣がお答えになられましたように、連結納税制度そのものの意義が、一体性を持って経営され、実態に一つの法人と見ることができる企業ということを、グループ全体で見ていく、それを納税単位とするというところに、国際競争力といいますか、そういうところの意味があるということでございまして、その意味では、グループ全体を一つの課税単位として課税して、実態に即した適正な課税を実現していこう、こういうわけでございます。
 こういたしますと、連結納税制度の対象となるグループ法人の範囲というのは、経営が一つの法人に支配されるとともに、利益がその一つの法人に帰属するというような意味で完全に一体と認められる親会社及び保有割合一〇〇%の子会社から成る企業グループとするというのが適当ではないかと考えたわけでございます。
 また、先生の言われますとおり、確かに、アメリカなどには八〇%のところを対象とするというような例もございますけれども、その場合には、子会社のいわば少数株主が子会社の欠損金の繰越控除のメリットを享受できないといったような問題もございまして、もしそれを解消しようといたしますと、またさらに、この少数株主の利益を考慮した制度設計という意味で、より複雑な実は連結納税制度になってしまう。そういう意味でも、現時点では一〇〇%子会社を対象とするのが適当ではないか、こういうことでやらせていただいているところでございます。
植田委員 ありがとうございます。
 ここで幾つか、いわば今回の制度導入に伴う税収の減収に対応した措置のあり方にかかわってお伺いするわけですが、今回の制度導入に伴って減収額が約八千億見込まれているということで、税収の減収を抑えるための財源措置を講じるということで御説明いただいているわけですが、ここで一点伺いたいのは、当然その中で租税特別措置について見直しを考えておられるようですけれども、この租税特別措置については、見直すというてもその余地が限られているのが実態だと思います。
 その点、今の話の入り口のところで、具体的にどんなお考えなのかということをざくっとまず聞かせていただけますでしょうか。
尾辻副大臣 まず、基本的な考え方から申し上げたいと存じます。
 お話のとおりに、八千億という減収になります。そこで、これを増減ゼロにしたい、このようにいたしました。では、八千億をどこから負担してもらうのかということでありますけれども、それを、全体としては法人税の中で行う。そして、それをまた、一つは、この制度を導入したところに負担していただく分が一つ。先ほど来お触れになっております付加税などがそれであります。それからもう一つ、これは導入されていない会社も含めて、法人税全体で負担していただく分をもう一つ。この大きな仕組みの中で考えたところでございます。
植田委員 あと、他の財源措置の中で、ちょっとこだわって聞きたいところがあるんです。
 退職給与引当金の廃止にかかわってですけれども、これは、連結納税を採用した、選択した企業、そうでない企業、それぞれ適用されるわけですが、この退職給与引当金の利用割合というのは、中小企業、資本金一千万以上一億円未満の中小企業でも三〇%近く利用されているわけですね。しかも、実際に、いわば労働集約型の産業、例えば、ホテルとか百貨店とか、流通、サービス、そうした分野では、企業規模に比べて従業員が多いわけですから、負担は重くなるわけですから、当然、これは廃止の影響というのは決して小さいとは言えないだろうと思うわけです。しかも、この退職給与引当金制度自体がこの数年、四年前ですか、九八年の改正で累積限度額が期末要支給額の四〇パーから二〇パーに引き下げられていますし、要するに、現在、経過措置によって段階的な引き下げの過程に、最中にあるわけですね。
 にもかかわらず、今回、この八千億の減収への対応の措置として、なぜ一挙に廃止なんでしょうか。これは、与える影響は決して小さくはないということはお認めになっておられるでしょうから、なぜ今回一挙に廃止する必要があるのか、その見解についてお答えいただけますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生御存じのとおり、退職給与引当金制度は、中小企業も導入はしておりますけれども、やはり大企業を中心に利用されている。しかも、利用している企業と使用していない企業とのアンバランスが生じているということ。それからさらに、この退職給与引当金自体が、外部拠出じゃありませんで単に会計上の引当金でございますから、ある意味でいうと、最近施行されましたいわゆる確定拠出年金とか、あるいは確定給付年金の方が、労働者の受給権保全という意味でも寄与する制度であるということから、やはり法人税制改正の基本的な方向としては、こうした退職給与引当金制度などは見直していく、廃止していくというのが筋であって、そういう意味では、この連結納税制度導入に伴う税収減を補てんするために廃止をやらせていただこうと考えたものでございます。
 なお、この退職給与引当金の廃止に当たりましては、確かに先生の言われますとおり、企業によってなお大量にまだ積んでいるところもあるというようなことも考慮いたしまして、一挙というわけにはいきませんから、段階的に四年間で取り崩す。なお、中小企業に対しては、特に経営の影響を考えて十年間という期間で取り崩していく。その間には、むしろ制度設計としては、そういう確定拠出型年金なり給付型年金制度という外部拠出の方へ移っていっていただきたい。そういう趣旨も、制度として、仕組みの上ではあるということでございます。
植田委員 そもそもの、この退職給与引当金の問題点が指摘されておること、それはよくわかっていますし、そういうことがあるから段階的に引き下げてきたことも十分理解はしているわけです。ただし、前段で言ったみたいに、では影響がありませんとは言えないでしょうというところを私は申し上げているわけです。
 というのは、例えば、中小企業家同友会等も、当初は政策要望の中で連結納税の導入にも反対というお立場でありましたが、この退職給与引当金の廃止というものの甚大な影響について指摘をされておられることは十分御承知だろうと思うんです。そんな中で実際、もう一つは、その廃止という措置が、連結納税を選択した企業だけではなくて、しないところも適用されるわけですから、あるデータによれば、大体廃止だけで三千億ぐらいの企業の負担がふえるという指摘もあるわけでございます。
 ですから、今回、確かに中小企業に対する経営への影響の配慮というものは、やっていないとは言いません、それはやっているわけですけれども、ただ、企業が、会社が、事業所が退職金という制度を設けている限りにおいて、何らの形でやはり企業は必要な支払いに備えて積む必要性はあるわけです。そうなると、中小企業の立場からすれば、これは増税やないか、こういう意見があっても当然だろうと思いますね。これはどうですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 個々の企業にとっては、一定期間ではあるにしても、その退職給与引当金を取り崩していくというところで、そこに税金がかかってくるという意味では、確かに増税になるということかと思います。
 ただ、先ほど来申し上げますように、その意味でももっと早くに、一挙に、流れとしては退職給与制度というのはむしろ見直すべき制度だから、もっと短期間にこれを実施してはどうだという御意見もいろいろ御議論の中には出たわけですが、我々としては、むしろ決定の段階までの間に四年間、そして中小企業は十年間というタイムスパンで、一時的な負担増、増税というのを少しでも緩和したいという思いでやらせていただいているということでございます。
 そういう意味でも、逆に言えば付加税のようなものを連結納税を採用できた企業の方にもお願いせざるを得ない、そうしたバランスも考慮させていただいて、この財源措置をとらせていただいているということでございます。
植田委員 だから私も、中小企業等に対する影響に対して配慮はされているということは認めた上でお伺いをしているわけです。ですからここは、結局中小企業の側からすりゃ増税やないかと言われりゃ、そうですと答えざるを得ない部分ですね。
 そこで、もう一つちょっと理屈だけ言えば、実務として、中小企業、法人等の引当金を取り崩す、廃止ということは、当然従業員のための内部留保の引当金というのはなくなることになりますね。そうなると、例えば私がそこの従業員であれば、当然ながら、労働組合の側からすれば、要支給額の退職金支給の要求というものをやはり強くさせますね、ないわけですから。
 さあ、そうなったときに、では、従業員全員に退職金の要支給額の全額を支払うことができる、そんな中小企業があるなんということは到底思えないわけです。この事実認識はどうですか。
大武政府参考人 今御質問になられた件に関して言えば、先ほども申しましたように、やはり内部拠出、いわば内部で蓄えるような退職金というのは、ある意味では労働債権、労働者の受給権保全という意味では、資金繰りの中に消えてしまっておりますから、むしろ流れとしては外部拠出へその額を持っていくというのが筋であろう。そういう意味で、言ってみれば、多くの企業でもそうなってきているやに聞いておりますけれども、むしろ確定拠出年金制度あるいは給付年金制度という方向へ行くということを、いわば流れとしてはとらえているということでございます。
植田委員 そのことはわかって聞いているんです。だから、質問の冒頭、理屈だけ言わせてもらえばと言ったでしょう。
 だから、今言うた質問をストレートに聞いてもらったら、要するに、では、そのときに要支給額の全額を払えるような中小企業がありますか、どうですかという話だけを聞いているんですよ。そのお話はわかった上で聞いているわけだから、そこだけ答えてくれりゃいいんです。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 いわゆる退職給与引当金制度というのは、やはりある一定の契約に基づいてつくっている制度でございますから、これをこういう十年間という間に、言ってみれば、この契約の内容を変えていくということが裏側にはあるということだと思います。したがいまして、その間をチャラにするということでは多分なくて、言ってみれば少しずつそれを変える形で、その退職される方にはもう既に払わざるを得ませんでしょうから、そうでない方のはそちらへいわば財源を移すという形で、経過的に移していくということになるのかと存じております。
植田委員 要するに、支払うことができるんですね。それは契約を変えていくわけですから、ほかへ財源を求めましょうということで。
 だから、ここは、私はそんなんできるんかいなと思うんですが、あるという認識を前提にされているということですね。要するに、払えるということを前提にされている、そういう御理解だというふうに受けとめていいんですね。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 この退職給与引当金というのは、制度があるか否かにかかわらず、資金繰りが困窮してしまっているところでは、はっきり言えば何の財源もないわけですから、この制度切りかえの有無にかかわらず、払えないというのはもちろんあり得るだろうと思っています。
 ただ、これによってそれがいわば加速するかというと、こういう制度を移すことで、外部拠出で債権が確保できる仕組みに移していくことによって、植田先生の言われた、むしろそこを担保する意味でも、そちらへ移していくことが望まれているということなのではないのかなと思う次第であります。
植田委員 時間が過ぎてしまいますのでやめておきますけれども、だから最初に、理屈だけ言わしてもらったらと。だから、内輪話をすればレクのときも、実態はわかった上でそこは聞かしてもらいまっせということなんで、そういうことで私は聞いておったわけですよ。時間がありませんから先へ行きますけれども。
 さて、これは見解だけ聞かせていただければいいんですが、これは中小企業家の同友会が、仮に退職給与引当金を廃止するんやったら、応能負担原則を法人税に適用して累進税率を導入したらというような、そういうことをおっしゃっていたと思うんですけれども、要するに、中小企業の立場からすれば、法人税に累進税率を導入することでかかる中小企業への影響を防止できるんではないかというようなお考えだろうと思うんですが、こうした問題提起というのは、どんな見解をお持ちでしょうか。参考までにこれも教えていただけますか。
尾辻副大臣 もう既によく御案内のとおりでありますけれども、この中小法人に対する軽減税率、このところ、すなわち平成十年度、十一年度、大幅な引き下げを行ったところであります。これに対する政府税制調査会の答申が平成十二年に出ておりまして、何と言っておるかといいますと、法人税制は企業の規模、形態に対し中立的であることが望ましく法人税率は単一の比例税率が適当であること。二つ目に、税負担回避のための会社分割を招く懸念がある、あるいは中小企業に対して既に税制上さまざまな特例措置が講じられている、これは最初に申し上げたようなことであります。こうしたことなどを考慮すると、むしろ基本税率との格差を縮小する方向で検討していくことが適当である、このように言われておるわけでございます。
 したがいまして、今先生仰せのように、中小企業への配慮として累進税率を適用することは適当でないと私どもは考えております。
植田委員 ここで財務大臣に聞くことが幾つかあるんでよろしくお願いしたいわけですが、本来、連結納税制度というのは減税を目的とした税制でないことは言うまでもないわけで、企業の経営や組織形態に対する中立性の観点から導入される制度であろうと思います。ですから、連結付加税があるからないからというレベルでそもそも今回の制度が論じられるということ自体、もしそういうことが論じられる場面があるとするならば、それは私は実は余り感心をしないわけです。要するに、連結納税の制度自体についてはもうちょっと高尚な議論は必要だろう、私はそんな高尚な議論ができるわけじゃありませんが、必要だろうと思います。
 そこで、これは本会議でも取り上げられたと思うんですけれども、先月の話になりますが、四月の十一日の日経では、塩川財務大臣が経団連の会長との会談で、法案成立後の早期見直しを示唆するような発言を行ったということでございますけれども、これは事実なのかどうなのかということと、仮に事実だとするなら、どの段階でどういうことをお考えなのかということを、お答えできる範囲でまずお聞かせいただけますか。
塩川国務大臣 経済団体との話をしましたときに、そういう話題が出ましたことは事実でございます。しかし、その中で、若干きちっとしたお話をさせていただくと、私はそのときに、ぜひこれを実行したい、だから早期成立に協力していただきたいということをお願いいたしましたし、もし実行するとするならば、それは必ず国際的にもあるいはまた企業の再編成にも有効になるだろうと。ただし、付加税であるとかいろいろな条件があって、世上その点がいわゆるネガティブな条件になっておるというようなことを聞いておるけれども、経済界の方では、そういう場合はぜひひとつこの付加税の問題は考えてほしい、撤廃してほしい、そういう要求があったことも事実でございました。
 しかし、私はそのときに、ぜひひとつ早期実現した上で、その成り行きを見て、検討すべきものがあるとするならばやったらどうだろう、初めからこれを付加税を取り除いてくれとおっしゃれば、それはちょっと今のところは無理ですけれども、実行してみて、原因は何なのかということと実態はどうなのかということをできるだけ早く私どもで調査いたしますから、その結果に基づいて検討させてくれということを申しました。そのときに、経済界の方も、それは当然のことで、だからできるだけ早く導入するようにお互いに協力しようということになったわけであります。
植田委員 詳しくお伺いできましたが、要は、現行の政府が提出している法案の中で、今具体的におっしゃったように、連結付加税というのはどうも、ここはニュアンスとしてどうかわかりませんが、これは二の足を踏む大きな要素になっております、そして、これは何とかなりませんやろかという趣旨の話が経団連の側からあったことは事実である。しかし、塩川財務大臣は、まず今回のこの原案を成立させていただきたいということを強く言った上で、その法の運用状況を見ながら、もし問題があるならばそれはいろいろな原因も調査して、そしてそれはまた今後の課題として考えましょうという、非常に教科書的な話はきちっとされたということですが、要は、この種の話というのはいろいろ伝わりますから、例えば、大体おたくさんの言うことはようわかってますねん、まあとりあえずこれは通しておくんなはれや、通した後、またいろいろ相談しましょうやという話なんですが、そこのニュアンスがやはりややぶれると、大きな、個人情報保護法の修正の話みたいなことにもなりかねないと思います。
 今のお話が事実であるならば、うそや言うたかて、私、その中に入って聞いていないわけですから今の大臣のお話を信じるしかないわけですけれども、ただし、あくまでも財務大臣御自身としては、経団連を含めて、今回の法案に不備があるじゃないか、若干やはり我々としては乗れないところはあるという問題提起を受けとめつつも、今回の法案が現在考えられる法案として最大限、質の高い完璧なものだというふうに自信を持っておられるんですね。そこはもう一回、簡単な話ですから。自信を持って出されているんですね。
塩川国務大臣 その中で、経団連の方からの意見は、この連結納税を実際待望しておるところと、いや、これに関しては余り無関心だというところ、つまり対象の企業がないということもその意見の中に出ておりました。ですから、その点が、経団連の方でも正確にどれだけのものが希望してどうだということはわからないんだけれども、しかし、そういう付加税が障害になっているということのいわば発言はよく聞くので、そこらはひとつ考慮してみたらどうですかという意見でございましたので、経団連の方も、この法案が成立して、一回実施状況を見た上でいろいろな意見を言いたい、こういうところだろう。私は、その点で一致したと思っております。
植田委員 わかりました。そこはきちんと話をされたのであろうということで信用するしかありませんから、そういうことで受けとめておきます。
 いずれにしても、当初積極的であった人らが、さあ実際の導入になると及び腰になっている部分はある、その大きなポイントがこの付加税にあるということは事実認識として共有できると思うんですが、あともう一つ、ついでで聞くわけじゃないんですけれども、財務大臣にお答えいただきたいのは、二つあります。
 一つは、いわゆる外形標準課税等にもかかわってですが、担税力のある赤字法人への課税ということについて、今後、財務大臣、どんなふうにお考えなのかということと、あと、特に政府税調等々で、赤字法人への課税にかかわって現段階でもし議論が行われていることがあれば、教えていただきたい、御説明いただきたいと思うんですが、その点はどうでしょうか。
塩川国務大臣 赤字法人が最近非常にふえまして、全法人の中の七割近くが赤字法人だということを聞いておりまして、これはちょっと異常だなと思っております。しかし、全くそれでは赤字法人はなしでいけるかといったら、そうでもない状況でもあります。
 そこで、赤字法人の実態は一回よく調査をしてみる必要があるだろうと思っておりますが、一つは、最近におきまして、特に中小企業等においては、個人所得とそれから法人所得との間の均衡をとる、そういう税会計をやっているところもあるように聞いております。そういうようなところは、やはり法人は法人会計としての正当性を維持してもらいたい。その分とそれから所得税との関係というものは、やはり歴然とした判断でやってもらいたいと思っております。そうすると、赤字法人は相当減ってくるのではないかなという感じもするのでありまして、税務対策の上の経理処分というものを明確にしてもらいたいということ。
 それから、もし、それでもなお赤字法人対策をあえて講じなければならぬということになるとするならば、やはり均等割、応益性に基づいた均等割というものをもう少し法人全体が負担してもらうことを考えたらどうだろうか。
 法人であるからということで相当優遇しておるようなこともございますけれども、しかし、企業活動の主体は法人なんでございますから、そしてまた、いろいろな行政上の便益を与えておるのは、法人が活動しやすいように、経済活動がしやすいようにということの重点を置いた施策が非常に多いものでございますから、そうであるとするならば、法人の負担ももう少し均等割の面で負担してくれたらどうだ。そういう感じを私は持っております。
植田委員 大臣のお考えは非常によくわかりました。きょうはそのことについて審議する場ではありませんので、基本的なお考えを承って、それを受けとめて、また私なりにも勉強したいと思っております。
 あと、最後、時間がありませんので、幾つか予定していた質問もはしょりながら、数点だけお伺いして終わりたいと思うんですが、まず一つは、地方税の関係についてです。
 今回地方税について適用除外としたということは、今の地方税の制度的枠組みの中で当然なじまない、地方税というものを連結納税制度の中に入れ込むことをそもそも最初から念頭に置かないというか、出発点でそういうことは考えていないということは、この間、法案をいろいろと事前に勉強させていただいたところで十分承知しておるんですが、二点だけ、まとめてお伺いします。
 一つは、税制の基本である簡素という観点からすると、結局、今回こういう形になっている以上、税務検査が二重になってしまって、事務負荷の増大が危惧されるということはあるかと思います。その意味で、法人の納税事務に負担がかかるということがやはりあるのではないか。結局、国税は企業集団が課税単位、地方税は単体法人が課税単位となるわけですから、そうした法人の納税事務に負担がかかるんじゃないかということ。
 それで、これはまた今度徴収する側の、課税者たる自治体にとっても負担がかかるおそれはないのかということ。
 こうした事務処理上の問題と、もう一つ、地方税という雑誌の、雑誌というか、私も余りこんな雑誌、読まないのですが、今回やるのでちょっと引っ張ってきただけなんですが、去年の秋だったかな、総務省の担当課長の方が、実際に連結納税をそのまま仮に採用すると四千億円ぐらいの減収が出かねないという発言をなさっておられるのですよ。ということは、制度設計として地方税は除外してということなんだろうけれども、実際これで減収がどれぐらいになるんかとかいうことを積算されたのかな。もしやった場合どうなるのかなということを、それなりに検討されていたのかなというふうな疑問も生じるので、その点二点、お答えいただけますか。
瀧野政府参考人 地方税の関係についてお答えをいたします。
 地方税につきましては、今お触れになりましたように、連結納税制度を遮断するという基本的な方針に立っておるわけでございます。
 その場合の地方税の仕組みにつきましては、納税者なり課税庁、双方の事務負担も十分考慮に入れまして、基本的には、法人税の連結所得金額及び連結税額の計算過程におきまして、連結グループ内の各法人に配分される所得金額なり税額をもとにして、地方税の課税標準を算定する仕組みとしたいというように考えておるわけでございます。そういたしますと、法人税の計算過程において出てまいりますので、できる限り簡素な仕組みということになる。そのことを通じまして、納税者なりあるいは課税庁の方の事務負担というものも軽減されるのではないかというふうに考えております。
 もちろん、これまでに比べまして若干複雑になる面は否めないわけでございますけれども、制度の周知に努めまして、円滑な事務処理が行われるように努力してまいりたいというふうに考えております。
 それから、二点目といたしまして、減収額、仮に連結納税制度を導入した場合どういう影響が出るのかということでございます。
 現行の地方税体系のもとにおきましては、連結納税制度を採用していないわけでございますので、一定の制度を前提とした試算は行っていないというのが基本的な立場でございますが、仮に、現在の地方税の税率を、単純に法人税の減収をもとにして、それに計算を掛けまして、計算を粗いベースでいたしますと、現在、国税の方では四千億円程度の減収という数字が出ておりますので、それに対応する数字としては四千億という数字が出てくる、こういうことでございます。
植田委員 では、この制度の導入に伴う執行体制の整備ということで最後に一問お伺いして、それで大体時間が終わるようですから締めたいと思うのですけれども、いずれにしても、親会社を管轄している国税局、税務署と、子会社を管轄する国税局、税務署が異なる場合が通常だろうと思われるわけですが、連結子会社の法人税調査等というのは、当然、連結納税に係る納税地を所轄する国税局、税務署で、親会社の調査等とともに実施するということになるだろう。
 とするならば、税務行政の効率化から、税務調査を実施するに当たって、親会社を管轄する部署と子会社を管轄する部署との、申告内容の確認であるとか調査のための連絡体制というものをとらなきゃならなくなってきます。この辺は、一つ重要なポイントになると思います。
 ということになれば、例えば、調査するとき等を初めとして、通常の執務においても、親会社を管轄する部署、子会社を管轄する部署、これが常に緊密な連絡調整をとる、そういう機構というものが充実されなければならないことは、これは言うまでもないことですね。
 また、税務当局の側からすれば、実際の個別会社の調整事項の把握であるとか、例えば内部取引や子会社株式の帳簿価格等の継続的な管理、また連結所得、連結税額の計算、納税額の配分、各種税務関係の届け出書、申請書など、こうしたものを全体として体系的に管理をする必要がある。当然これは、今回の制度を導入すれば事務量が増大するわけでございます。
 そこで、最後、私も何度か、いつも聞いていることなんですけれども、常に適正、公正な課税の実現に向けて国税の職員の皆さん方が汗をかいて努力をされておられる。連結納税制度の導入というのは、もっと汗をかいてくれという話なんですから、それに見合った、やはり従前にも増した定員の確保、そしてまた機構の充実、機械化、IT化の促進というものが、今回の連結納税の制度の導入と当然セットで検討されるでしょうし、検討されておられると私は確信いたしますけれども、これについての御決意、また御見解をお伺いします。
村上政府参考人 ちょっとはしょって説明いたしますが、今御指摘のように、親会社を管理する局署と子会社を管理する局署は違ってくるというのが連結納税の一般的な姿だと思います。したがいまして、納税者管理に当たりましては、個々の法人ごとの管理に加えまして、グループ全体の管理を、これはシステム的に行うべく考えておるところであります。
 さらに、連結納税というのは、個々の会社の所得の変動が必ず連結所得全体に影響する、こういう仕組みになっておりますので、その間の連絡体制が必要になってまいります。したがって、単にシステム的な管理のみならず、指揮命令系統であるとか事務処理体制の統一性とか、そういったものを図るべく準備を考えておるところであります。
尾辻副大臣 お話しになりました事情は私どももよく認識をいたしておりますので、所要の執行体制の整備を図り、的確な執行に努める所存でございます。
植田委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
坂本委員長 次に、小林憲司君。
小林(憲)委員 民主党の小林憲司でございます。
 本日は、法人税法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
 まず、質問に入ります前に、きょうは税のお話でございますので、一つ財務大臣にお伺いしたい点がございまして、この大変な状況の中で、日本国民が一生懸命国のために働いて、自分たちの家庭のために働いて、そして国のためにも税金を納めておるわけですが、その税金がODAという形で海外に出されている。今、昨今起こりました中国での大使館の問題等あります。こういう場合に、ODAを直ちに私はやはり打ち切るべきではないか。これが一つのこの日本の政策であり、そのための、ずっと近隣諸国との関係を保つために、我々日本人が働いたお金を納めた税金で諸外国との関係をつくってきている。その諸外国との関係が余り良好ではない、またはそれに対しての意思がない、または意見がないという場合においては、これを直ちに打ち切るのが筋ではないかなと私は思うんです。
 財務大臣は、予算を決める采配権というか、ございます。どのようにこのODAの件、中国に対してとりあえずこのまましていくのか、また、中国が発展途上なのかどうなのかも含めまして、お考えをお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
塩川国務大臣 日中国交回復いたしまして三十周年を迎えるという、非常に意義ある年になってきております。その間、日本が中国の発展のために協力してきたことは、私は相当評価されていいのではないかと思っておりまして、また、現に中国がその成果を確実にあらわしてくれておるということも、我々、同様の喜びを持っているものです。
 つきましては、経済がこれほど発展してまいりまして、中国が経済的にはもうそろそろ先進国になってもらってもいいという感じで、特にWTOに加入されて以降の活躍というものは刮目して待つものがあるんじゃないかと思っております。そうであるとするならば、従来からの中国との取引に、やはり考え方も一つの整理をする時期に来ておる、私はそう思っております。
 今までは、中国の経済の発展、すなわち民生の向上、生活向上というところに重点を置いた援助というものと協力であったと思うんでございますが、これからは、中国全体、広いところでございますから、部分的になお人道的な問題として残っておる問題を向上発展さすための必要なもの、あるいは、特定の地域の人材養成であるとか、そういうことに局限した見方で、そういうところになおかつ中国が積極的に対応するための援助ということであるならば、我々も協力すべきであると思っておりますが、一般の経済発展のための対策としての協力ということは、この際、十分に反省し、協力したらいいんではないか、反省の上に立ってやったらいいんじゃないか。それは、やはり基本はお互いの経済協力という、お互いがメリットある経済の協力に重点を置いて考えたらいいのではないか、私はそういう考えを今持っております。
小林(憲)委員 ありがとうございました。日本にはツルの恩返しというお話があります。中国の人たちもその気持ちがあるといいなと思っておりますが、きょうは大変貴重な御意見をありがとうございました。
 私は、連結納税制度の導入は、企業の競争力回復のための努力にこたえるものとして位置づけられるべきものだ、そう考えております。したがって、連結納税制度は当然構造改革に資するものでなければならないと考えますが、どういう点で構造改革に資するのか御説明をお願いできますでしょうか、財務大臣。
塩川国務大臣 これはしばしばこの委員会におきまして尾辻副大臣から説明させていただいておるところでございますが、まずは、やはり経済がグローバリゼーションしてまいりました。それに対応するものとして、日本の国内制度も、独禁法の改正であるとかあるいは企業会計のあり方と、いろいろ変えてまいりましたし、以前におきましては、既に会計上の連結納税制度を認めるということになってきております。
 そうすると、この際に、本当に真に資本関係も取引関係も一〇〇%同じ子会社であるとするならば、これはグループ企業として見た方が、それぞれの企業が多様化の活動ができるということを保障することにもなるということもございますし、また、その方が実際の利益関係を把握するのに合理的ではないか、そういう考えで連結納税制度というところに踏み切ったということでございまして、そのことは、やはり経済社会の構造改革に大きく寄与してきておる、だから、改革なくして成長なしという小泉の方針にも一致してきておると私は思っております。
小林(憲)委員 我が国におきましては、まだアメリカと比較しまして新規企業の開業というものが少ないように思われます。停滞している我が国の経済の活性化のためには、さまざまな事業分野で新たな企業が次々と生まれるような土壌をつくっていくということが必要ではないか、そう思っております。
 そういう意味で、連結納税制度は、企業が新規投資を行うに際して当初発生すると予測される赤字を親会社の黒字と相殺することが可能という制度であり、企業の新規投資を促進する可能性がある制度だと考えられているわけでございますが、これは素直に評価してよい点だと私は思います。
 話は少し法案とはそれますが、新規投資をふやすためには、連結納税制度だけではなくて、ベンチャー支援のためにさまざまな政策努力をする余地がまだあると考えております。税制面でもベンチャー支援のために現在どのような制度が設けられているんでしょうか。御説明願います。
尾辻副大臣 ベンチャー企業を支援いたします税制上の特例措置というのは、大きく二つございます。一つは、企業そのものに対する特例であります。それからもう一つは、そのベンチャー企業に対して出資をする、投資をする人たちへの特例でございます。
 まず、その企業に対する特例でございますけれども、中小創造法の対象法人が取得する事業化設備に係る税額控除や、これは七%でございますが、特別償却三〇%、こういったような制度が一つございます。
 それから、もう一つ申し上げました投資する人たちへの特例でございますが、これは、そういうベンチャー企業ですからリスクも大きいわけでありますから、損が出た場合の特例と益が出た場合の特例とがございます。
 まず、損が出た場合の特例でございますけれども、個人投資家が特定中小会社の株式を取得し、上場等の日の前日までに譲渡等により損失が生じた場合に、翌年以降三年間、株式譲渡益から繰越控除を認める措置がございます。これは損が出た場合であります。それから、益が出た場合ですけれども、その投資した特定株式の売却益について、一定の要件のもとで、その税負担を通常の場合の四分の一に軽減する措置がございます。
 こうしたものでございます。
小林(憲)委員 ありがとうございます。
 このような支援措置については、その必要性を考慮した上で、さらによりよい措置となるよう検討を続けていただきたいと思っております。
 企業の活動を活性化させるためには、新規の会社をつくるだけではなくて、企業が子会社や分社化したり持ち株会社をつくったりといったさまざまな行動を自由にとることができるようにすべきであると私は考えております。
 こういった意味で、先ほど説明がございましたが、連結納税制度の意味合いは大変大きなものとなってくると思います。しかしながら、このような意義を持つ連結納税制度の創設に当たって、先ほど来この話がずっと出ておりますので、一例を私ももう一度お伺いしたいと思いますが、連結納税制度の利用が減少するような連結付加税が導入されております。これまで何度も御説明もありましたが、もう一度、整理するという点でよろしくお願いいたします。
尾辻副大臣 これは何回もお答えしておるとおりでございまして、この制度の導入により八千億の税収減が見込まれる。現下の大変厳しい財政事情でございますから、率直な表現をさせていただきますと、これを増減ゼロにしなきゃならない、こういう措置でございます。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
小林(憲)委員 今まで何度か、日本経済は立ち直る機会があったと思うんです。今回も、この連結納税制度、活用によっては非常に活性化を招くものだと思うんですが、例えば、前も公共投資の拡大ということがございました。悪循環に入っていた経済でありましたが、公共投資の拡大ということで日本の経済を刺激して、日本国内での資金の循環拡大を誘導しようということであったと思うんです。景気は拡大基調に転じて、消費もふえてということで、不良債権問題も徐々に解決していくだろうということでそういう処置をとられたんですが、確かに、一九九五年と一九九六年は、日本経済はわずかながらも好転を示したんです。
 でも、このときに日本政府は消費税の引き上げをやり、特別減税の打ち切りを実施し、そしてまた財政構造改革というものを実施した。せっかくいいふうになってきたものが、またそこで総花的に出る政策によって打ち消されていってしまう。
 ですから、前回私が質問させていただいたときに、パッケージで政策とその長期的なプランをというお話をさせていただいたと思うんですが、また今回、そういうことで逆のものが出てきて、それをどう処理するかという間に景気がまた立ち直るチャンスを一つ失ってはいけないと思いますので、何度も皆さんから質問されていることなのでこれ以上はこの話はしませんが、ぜひともそのことは、財務大臣もよく御存じだと思いますので、よろしくお願いします。
 厳しい財政状況とのことでもありますけれども、近年の経済の停滞や法人税率の引き下げ、法人税収もかなり低下していることだと思いますが、近年の法人税収の推移について、大体どれぐらいの推移で今動いているのかということを御説明願いたいと思いますので、大武主税局長、お願いします。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 法人税収の近年のピークというのは平成元年度でございまして、十九兆円という税収がございました。その後、景気の低迷等々ございまして、平成八年度は十四・五兆円という数字でございます。その後さらに実施されました法人税率の引き下げというようなことによりまして、一応今、十二年度においては十一兆七千億円と、ピークから見まして相当の下げとなっているということでございます。
小林(憲)委員 この下げ率というのは、主税局長は、予測といいましたらあれですが、大体見通しとしては今後どういうふうになっていくと思われるでしょうか、御意見をいただけますでしょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ちなみに、今、十二年度十一兆七千億ということで見込ませていただいておりまして、十三年度は補正予算で十一兆二千億ぐらいと見込んでおるわけです。
 ただ、現下の状況を見ますと、はっきり言いまして、三月決算法人が全く出ておりませんのでまだ明確なことは申し上げられませんけれども、ただ、企業収益見通しは、昨年秋の補正予算を組みましたころに比べましてもさらに相当悪化しているようでございまして、かなり厳しい状況にあるのではないだろうかと思っております。
 多分、これからの法人税収ということで申されれば、今、赤字法人が七割、しかも大法人においても五割近くが実は赤字法人になっているという状態でございますし、さらに、いわゆる移転価格税制等でいろいろ努力はしておりますけれども、国際的な課税のいわば漏れみたいなものもかなりこれから広がっていくということもございます。そういう点で見ますと、かなり厳しい状況が続いていくのではないか。
 かつ、法人に関して申せば、累積欠損がそれこそ非常に膨らんでおるものですから、単年度で少々黒字になっても、税を納めていただける状況になかなかなれないという事態もあるのかと存じております。
小林(憲)委員 今のお話、大変厳しい状況だということで、法人税による税収を確保するためには企業活動がとにかく活発になっていかなければいけないというのが基本だと思います。企業が収益を上げることがとにかく必要であるということだと思うのです。そのためにも、連結納税制度の活用によって民間企業が元気になることがぜひとも必要でないか、そういうふうに思います。
 連結納税制度の導入が減収をもたらすことも事実でしょうが、制度の活用という観点で重要でありますし、せっかく設けた連結納税制度の意義が失われることは、正直言って、大変もったいないと思っております。今後、付加税などの財源措置はどのようにあるべきだ、その辺はどのようにお考えでしょうか、財務大臣、お願いします。
尾辻副大臣 先ほど来お答え申し上げておるようなことで、付加税ということを措置いたしておるわけでございますけれども、これは当面二年間の措置でございまして、二年後におきまして、制度の実施状況や財政状況を踏まえ、そのあり方を見直すことといたしております。二年後の見直しといたしております。
小林(憲)委員 連結付加税については、連結納税制度が活用されるために早期見直しが必要であるというふうに私も考えております。
 次に、税の関係で、現在、経済財政諮問会議、政府税制調査会で、税制の根本についてどのようにあるべきかという議論が行われていると承知しておりますが、現在の議論の進展状況について、すべてというのはあれでしょうけれども、流れ的なことで御説明いただければと思います。
尾辻副大臣 あるべき税制の構築に関しましては六月をめどに基本的な方針を示すことといたしております。したがいまして、現在、政府税調や経済財政諮問会議において税制全般にわたる諸課題についての検討が進められておるところでございます。
 まず経済財政諮問会議におきましては、基本的な経済財政政策の観点から、受益と負担のあり方、国と地方の問題などを含めたあるべき税制の姿について大局的な議論が行われているところでございます。経済財政諮問会議はまず大局的に議論をしておる、こういうことでございます。
 そこで先般、四月十六日でございますけれども、塩川大臣からは、税制改革に関する議論の基本的枠組みを明確にするべく、いわゆる塩川三原則、こういうものを示しましたし、それから昨日は、けさの新聞でいろいろ報道されておりましたけれども、基本的な方針の取りまとめに向けてだんだん議論が集約されておりますので、民間四議員、民間議員が経済財政諮問会議の中に四人おられます、この四人の皆さんの考え方が示された、こういうところでございます。
 それから政府税調におきましては、これまで、日本経済と税制の役割や諸外国における税財政の動向、国際化、情報化と税制などの基本的な事項についての議論を経て、現在、所得税、法人税、資産税、消費税など具体的な税目のあり方、こちらは具体的な税目のあり方について一つずつ検討を進めておる、こういうところでございます。
 こうした議論が深められて六月の取りまとめになる、こういうふうなことでございます。
小林(憲)委員 大局的なものとそしてまた具体的なもの、今進められているということでございますが、税制のあり方を考える際に、現在の状況に対応した税制をどのようにするかという議論と中長期的にどうあるべきかという、両方の議論があると考えますが、短期的には、現在のデフレ状況を考えると、景気を刺激するような措置がまずは必要ではないかと考えられます。
 現在議論されている設備投資減税と試験研究費減税を実施するということについては、これについてはどのようにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 私は実施すべきだと思っておりますけれども、しかしいろいろな意見がございまして、それをやっても即効性がないと言う人もありますし、それからそれをやると財政上の負担はどのようになるかという検討をしなけりゃならぬ、いろいろな諸条件がございます。
 そこで、今経済財政諮問会議で進めておりますことは、もう何カ月にわたって議論してきたことでございますから、もう議論の段階ではなくして、総理から、この問題、個々の分野ごとに大体こういう方針でいこうではないか、どうだという提案がなされてしかるべき時期に来ているのではないかと思っております。
 おっしゃる経済刺激のための投資減税について、これは大いに検討する問題ではありますけれども、同時に財源の問題もある。ですから、そういう関連したものをどの程度でさばくかということはもう集約した議論にしなけりゃ、ノーエ節みたいな、ぐるぐる回っている議論ですから、なかなか集約がつきにくいようなのが現在の状況です。
小林(憲)委員 ありがとうございます。
 同様に、日本においては一番これが国民の皆さんの関心があるんじゃないかと思うんですけれども、住宅購入の際の贈与税の非課税枠の拡大といった議論も行われておるということですが、この点についても同様にお考えでしょうか。
塩川国務大臣 住宅問題を考えます場合に、例えば土地税制等につきましてはもう既に何遍となく改正をしてまいりまして、軽減してまいりまして、バブルの当時よりもうんと変わってきております。したがって、以前に比べましてむしろ軽減措置が有効に働いて、これ以上軽減する必要がないような状態にもなってきております。
 しかし、住宅を建てる、建設をするとき、その部分に対する控除問題をどうするかということ、これは若干経済刺激の面からいうて必要だろうと思っております。その点についての議論は集中しておりますので、住宅投資に対する減税措置ということも考えていく時期ではあろうと思っております。
小林(憲)委員 ありがとうございます。
 我が国の経済の現状と将来の展望を考えると、銀行の不良債権問題がこれだけ大きな問題となりながらも、銀行にお金が集まり過ぎているということが大きな問題なんではないでしょうか。
 日本経済の構造改革のためには、株式への投資などを通じて直接マーケット、いわゆる金融市場に資金が集まるようにした方がいいんではないかと私は考えております。
 このような観点から、株式譲渡益に対する課税については特に優遇する取り扱いがあるべきであると考えておりますが、去年、これは財務大臣も、こういう株の取引に対しては前向きにいろいろな優遇措置があるべきだということをおっしゃられていたと思うんですが、現在、このようなものに対してどのような制度が設けられているかということをぜひとも御説明をお願いします。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 証券税制につきましては、ただいま先生からお話もありましたように、昨年秋の臨時国会におきまして、貯蓄優遇から投資優遇へ金融のあり方の切りかえを行うという基本理念で、透明性、公平性の高い証券市場を構築していくという観点から、来年の一月から、株式譲渡益課税を申告分離課税へ一本化する、これにあわせまして、税負担やリスク負担の緩和を図るということから、申告分離課税の税率を、現行の二六%から二〇%に引き下げる。それからさらに譲渡損失の繰越控除制度というのを導入させていただくということでございます。
 それからさらに、個人投資家を証券市場へ参加していただくというのを促すために、一年超保有の上場株式の譲渡につきましては、時限的に、申告分離課税の税率を二〇%から一〇%に一段と引き下げ、かつ、百万円の特別控除制度を設けるというようなことをしております。
 このほか、緊急かつ異例の措置として、今年、十四年末まででございますが、それまでに購入した上場株式のうち、その購入額が一千万円までのものにつきましては、一定要件のもとで、十七年から十九年までの三年間、売られてもその譲渡益を非課税とするという措置も導入させていただいております。
 さらに、十四年度、先般成立させていただきました租税特別措置法の改正におきまして、申告分離課税への一本化に際して、個人投資家の申告事務負担の軽減に配慮するということから、証券会社に設定しました特定口座を通じて行われる株式の譲渡について、所得計算、申告不要の特例を設けさせていただいたということでございます。
小林(憲)委員 税制改革を考えるに当たって、直接金融市場により一層の充実を図るという観点を持って税制のあり方を考えていただきたいと思います。
 税制改革を考えるに際しまして、短期的な景気対策の議論だけでは不十分なことも確かでありますし、現在の財政状況の厳しさというのは半端なものではないということは、内外、御案内のとおりだと思います。我が国の国債がボツワナなどと同じシングルAだ、格下げされていくという見通しがマーケットで今共有されているということも確かであります。
 私個人としては、リスク判断の基準のそういうものは、容認というか、そういうものに対しては余り関係ないと私自身は思っておりますが、ただ、世界金融とか世界状況の中においては、やはりディスファクトといいますか、要するに、よくはないよということで、ただそれが何だというだけの話であって、これに対して、先日もランクづけの話で少々それは余り関係ないんだというお話をされましたが、はっきり言って、そんなことは日本の国会で論じるものでもないと私は思っております。ただ、ディスファクトの一つではある、世界の基準ではないけれどもそういうふうな見方もあるということは、しっかりと受けとめていかなければならない、そういうふうに感じております。
 このような状態を放置することができないことも確かでありますし、格下げは将来的な金利の上昇とか、現在の国債発行額、発行年限の短期化を考えると、金利負担の上昇、これは極めて大きなものとなる危険性があります。また、政府の年金制度や健康保険制度に対する信認も、これも揺らぎます。将来に対する不安が高まるということは、また個人消費の抑制につながりますし、このことが景気回復のネックとなる可能性も十分出てきます。
 日本の国債、そして日本政府に対する信認を維持するということにも、長期的には財政均衡に向かうという姿勢を示すことがまずは必要ではないかと考えております。税制改革においても、中長期的には財政面に対する配慮が必要であると考えておりますが、財務省としてはその辺はどのようにお考えでしょうか、お教えください。
塩川国務大臣 私は、国債の格付問題というものは非常に重要な問題だと認識しておるんです。それだけに、おっしゃるように、これは公然と国会等で議論すべき問題ではなくして、これは政府の責任がやはり一番の問題だと思っております。このことからくるところのいろいろな影響、先ほどおっしゃったようなことを考えておかなきゃならぬと思っております。
 ここで私は、格付の問題から、国民がやはり国債というものの認識をしっかりと持ってくれるんではないかと思っておるんです。今まで余りにも安易に、需要創出だとか財政出動をやれとかおっしゃっていました。確かに一時的にその措置は必要でございましたけれども、そういつまでも、そういう国債発行で現金化するということは、天から降ってくる金のように思うておる意識では、これは私は非常に危険だと。その意味において、国債と日本の経済との関係をしっかりと国民が考えていただく機会になると思って、その認識を私は期待しておるのでございます。
 とはいって、国債の格付の問題を安易に見過ごしていくというわけにいきませんので、これに対する私たちの対策も講じなきゃいかぬし、また、意見として言うべきことは意見として言ってみようということで、現在、そういうスタンスで臨んでおるところであります。
小林(憲)委員 これも目先のことではなくて、これからどんどんよくなっていかなければいけない日本経済でありますので、中長期的に財政面に配慮しつつ、短期的には経済の活性化を図るという二つの難しい命題を、解を出すことが今求められているんではないか、そういうふうに思います。難しい問題であることは皆さん御案内のとおりだと思いますが、ぜひともこの二つを両立させるためにも努力を払うということが必要ではないか、そう考えているわけであります。
 この点について、中長期的な財政面の配慮と、短期的な経済活性化を図るというこの二つの両立ということに対しまして、何か財務省の見解がございましたら、教えてください。
塩川国務大臣 これはつり合いというものが非常に難しいと思っております。確かに、財政が苦しいからといって緊縮一本だけでもいかぬと思っておりますし、といって、それを野方図に、借入金、借金とかあるいは資産の売却によって賄うということもかえって財政を悪化させて、将来に禍根を先送りして残すだけのことになってくると思います。
 でございますから、財政にまず節度をつける必要があるだろう。それは何かといったら、やはり予算の効率的な使用を心がけるべきだというので、私たちといたしましては、平成十四年度、まず十三年度からもう心得てやったわけでございますが、十四年度は特に重点志向の予算編成にかかりました。まず五兆円を削減するという思い切った措置を講じまして、そして、さらにその中から二兆円を新規の事業に移していく、差し引き三兆円を節約していくという措置を講じまして十四年度予算編成に臨んだところでございます。
 私は、このことは、財政の節度をとったということと、それから行政の効率化を図るためにとった措置である、そう認識しておりまして、この考え方は十五年度以降においても、これを基本として予算編成をすべきであると思っております。
 一方、やはり経済の活性化、刺激ということが必要でございますので、これは予算の使い方、それから規制の緩和、そしてまた同時に税制のインセンティブというようないろいろな点を複合した経済の活性化対策を講じなきゃいかぬので、一面だけに偏った効果期待ということは難しいんではないかと思っておりまして、六月にそういう総合的な対策を決定しようとして鋭意検討しておる最中であります。
小林(憲)委員 六月に税制改革の基本的な方針が示されていくということでありますが、その内容にぜひとも期待したいと思っております。
 とにかく、日本の国の経済のポテンシャルといいますか、実力というものは物すごいものが私はあると思っております。ただ、それが今発揮されていない。逆に、日本人がそれに対して信じていないというところもあります。これはまずは政府の責任であると思いますし、我々の責任であると思っておりますが、なぜか諸外国の方が日本のポテンシャルの怖さというものを知っているんではないかと思いますので、ぜひとも、税制改革によってそのポテンシャル、持っているものを引き出す、そしてまた立ち直るきっかけになっていくということを期待いたしておりますので、よろしくお願いいたします。
 その税のお話で、今特殊法人の問題でたくさんいろいろと問題にはなっておりますが、特殊法人であります日本政策投資銀行さんにぜひともお尋ねいたしたいのです。
 先ほど、銀行の不良債権問題がまだ大きな問題であると申し上げましたが、不良債権処理の一層の促進というのは今後も大きな政策課題であると考えます。現在問題となっている金融機関の不良債権処理について、これを円滑に進めていくに当たっては、貸し手側である金融機関側における処理と一体として、借り手側である産業サイドの再生も同時に進めていかなければならないと考えております。このような観点から、昨年度の緊急経済対策などで事業再生関連の施策が打ち出されているということでありますが、日本政策投資銀行さんにおいて事業再生への取り組みの現状をぜひとも教えてください。
乾政府参考人 ただいま先生お話がございましたように、日本政策投資銀行におきましては、昨年度、事業再生支援融資制度、いわゆるDIPファイナンスの融資制度を創設いたしまして、昨年四月の緊急経済対策でこの制度の積極的な活用がうたわれましたことを踏まえまして、制度の拡充、積極的な運用を行っております。
 また、昨年十月の改革先行プログラムを踏まえまして、不良債権の正常化を図るための施策の一環としまして、経営困難な企業に対して、過剰な債務を削減することなどによりまして再建を進め、金融再生と企業再生の一体的な解決を図るために、企業再建ファンドに対する出資などの事業を始めているところでございます。
 これらのこれまでの実績について、プレス発表等を行ったものの中から実例を挙げて申し上げますと、まず、DIPファイナンスにつきましては、新潟鉄工所等計十件の融資実績、融資承諾額の総額で二百二十三億円ございまして、経済社会的に意義のある事業の保全、再生、雇用の確保、これらの雇用効果を私どもで計算いたしますと一万八千人に上るわけでございますけれども、そうした雇用の確保等に寄与しているものと認識をしております。
 また、企業再建ファンドにつきましては、昨年十一月にスタートしたばかりでございますけれども、本年二月にマネジメント会社の日本みらいキャピタル、また私的整理ガイドラインに沿って再建を行う企業に投資を行うジャパン・リカバリー・ファンドへの出資を行いましたほか、東北地方の百貨店、ダックビブレというのがございますけれども、その再生ファンドへの出資を行うことを予定しております等、鋭意対応を行い、成果を出してきているものと認識しております。
 事業再生につきましては、先生御指摘のとおり、我が国経済の喫緊の課題であると認識しておりますので、本行といたしましても、積極的に対応してまいりたいと考えております。
小林(憲)委員 我が国の経済は、先日、政府の底入れ宣言がありましたが、現状は決して回復軌道に乗ったわけではないと思われております。
 今、乾理事がおっしゃられた、それを体して、民間の銀行ですと立ち直りをやっている間にそれがまた倒産したり、こうして二次災害、三次災害になっていくようなことになることもあります。ですが、政府の銀行として、ぜひとも、何とかそういう、不良債権になってしまった、また経営不振になってしまった大きな会社を立ち直らせていくというのも役割として大切なことだと私は思っております。
 そんな大変な中での作業だと思いますが、一日も早く金融機関の不良債権処理を行うべきは当然ですが、一方で、新規産業の育成などを通じた我が国経済の活性化を図る必要があると思っております。先ほどの事業再生以外の分野において、日本政策投資銀行は我が国経済の活性化に向けてどのように取り組んでいるのか、ほかに何かございましたらお教えください。
乾政府参考人 事業再生以外の分野におきましても経済活性化のために積極的に対応してまいりますことは、私ども政策投資銀行の重要な任務であると認識しているわけでございます。
 経済活性化のためには、例えば、御指摘の新規事業の育成ということが、これは将来の日本経済の発展のために重要であるわけでございますけれども、その新規事業の育成につきまして、政策投資銀行といたしまして、新技術開発に対する融資でございますとか、あるいはベンチャーファンドによるベンチャーの育成でございますとか、また大学における技術移転事務所、いわゆるTLOと申しますけれども、そうしたTLOの設立、運営支援を行ってきております。
 また、平成十四年度から、大学発ベンチャーに絞り込んだいわゆるインキュベーションファンドへの出資が認められましたので、これまでの本行の活動により蓄積しましたノウハウを活用しまして積極的に対応してまいりたいと考えております。
 また、新規事業以外にも、この経済社会の発展のためには地域経済の活性化への貢献が重要であるわけでございまして、そうしたことから私どもの銀行は地域経済の活性化を大きな柱として取り組んでおりますけれども、例えば私どもの銀行のプロジェクトファイナンスのノウハウを利用いたしましたPFI事業の推進など、積極的に対応しているところでございます。
 一例を申しますと、プレス発表をしておりますけれども、かずさクリーンシステムというのがございます。これは、千葉県下の四市から排出されます一般廃棄物を一カ所で焼却中間処理することによりまして、ガス溶融炉の導入によりまして万全なダイオキシン対策と徹底した再資源化によります総合的な環境の負荷の低減を図るものでございまして、地域経済の活性化また環境対策に支援するものと考えております。
 今申し上げました、こうした新規事業につきましても、それから地域経済の活性化につきましても、種々リスクがあるわけでございまして、そうしたリスクがありますことから、民間の金融機関だけでは必ずしも十分な資金の確保が期待されない場面があるわけでございます。そうした、政策的に重要でありますけれども資金の確保が十分にされない分野につきまして、私ども政策投資銀行といたしまして、これまでに蓄積いたしましたリスク軽減のためのノウハウあるいはいろいろな金融技術を持っておりますので、それらを活用いたしまして、おっしゃいました経済の活性化のために今後とも積極的に対応してまいりたいと考えております。
小林(憲)委員 乾理事から今お話をお伺いしまして、今大変な、国を挙げて何とか再生していかなければいけないというときに、やはり特殊法人の見直しという課題が出ておりますが、しっかりと、役に立つものは本当に特殊法人として頑張って日本のためにやっていただかなきゃいけない、そしてその役割も果たしていただきたいと思っておりますし、今お話を聞きましたら、本当に日本政策投資銀行でしかやっていけないのではないかという点もあると思いますので、どうかそのスリム化の対象とならないように頑張ってやっていただきたいと思っております。
 最後になりました。非常にトレンドな話ですが、昨日の為替ですけれども、円が上がったというよりもドルが落ちたかという感がありますが、一時百二十三円に行った。これは、日本の景気もよくなってきたようだぞという観測も入っているにしても、急激な動きであったと思うんです。きょうは日銀の方が見えないので、これは管轄外だとおっしゃるかもしれませんが、この日本の国というものは突然のこういう動きに対して非常に振り回されてきている。せっかく中で仕込んできている政策等、一発で外部から吹っ飛ばされてしまっている。為替、そしてまた先日もお話ありましたデリバティブ、国際金融、マネーマーケット、マネーゲーム、そういうものに対して需要と供給だけではない世界が今非常に広がっております。
 昨日もそういう意味合いで、ドルが落ちた。円が上がったのか。円が今なぜか投資家によって上げられている。その状況で、財務大臣、これはマーケットに与えるインパクトも大臣がおっしゃればあるかもしれませんが、そこを体して、これは容認していいレベルでしょうか、どうでしょうか、どうお考えでしょうか。最後の質問になります。お願いします。
塩川国務大臣 この問題は小林さんが専門でございますから、私から申すのもおかしいと思うんですが、私の認識といたしましては、為替は安定するのが一番大事だと思っておるんです。そして、市場原理に任すのがやはり対策として最高の方法だろうと思っております。しかし、この一週間前後、十日間ほど見てまいりましたら、何か意図的に急激に円が高くなってきておる。この状況は、ちょっと客観的に見ましても、何だ、異常じゃないかということは言えるのではないかと思っております。
 その認識に立って、私たち今じっと状況をにらんでおるというところでございまして、これ以上はちょっとコメントは差し控えたいと思います。
小林(憲)委員 まさしく大臣がおっしゃること、私も同感を感じております。
 とにかく、今意図的に経済が動かされる時代でございますので、この日本の国の状況を踏まえて、まだまだ十分我が国は立ち直っていく範疇にありますし、世界的に見てもそのポテンシャルは、日本人が自信を失っているだけで、ほかの、特にアジアの諸国の人たちは十分日本の実力をわかっております。ぜひとも、その実力が発揮できるような政策等をリーダーシップをとって実践していただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
 ありがとうございました。終わります。
中野(清)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
佐藤(観)委員 昨日、財政諮問会議が、いわば四人の意見とはいうものの、たたき台ということで出たわけであります。本委員会でもいろいろな角度からこの問題について議論がありましたし、また、これからこの問題自身は継続することでありますから、これからどういうふうにおのおのの分野で発展していくかわかりませんけれども、答申を、答申といいますかたたき台を受けて、大臣として、今まで何度かいろいろな角度での答弁ありますけれども、感想なり御意見がございましたらお願いいたします。
塩川国務大臣 税制改正問題につきましては、昨年の暮れのときから、予算編成のときから、税制改正は十五年度実施に向けて十四年度中に基本的な方針を決めるということでいたしました。したがって、平成十四年度は増減税なしにして、パラレルで、とにかく現状維持のままで税制を終結さすということにいたしまして現在に至っておるのでございます。
 したがって、本年一月から税制改正に取り組む、意見の集約を始めようということになったのでございますけれども、三月中は、十四年度予算が成立するまでの間は具体的な議論については自粛しておこう、そして専ら十四年度予算の早期成立を期そうということでございましたので、伏水流としてはございましたけれども、表面的に議論し出したのは、したがって四月以降になっておるわけでございます。
 四月以降になりまして、それじゃどういうところから着手したかということになりますと、税制問題の役割分担を明確にしておこうということでございまして、まず、政府税調と経済財政諮問会議とのあり方の問題、そして与党三党、与党の税制調査会担当者と政府税調との関係というような、各三つのグループがございますので、その関係の調整ということをいたしてまいりました。
 その概要を申し上げますと、まず、経済財政諮問会議においては、税の問題点の列記と、それから改正をする必要性の根本的な考え方、これを明示してもらうということでございまして、それを受けて、各項目ごとに具体的な対策を、主税局が中心となってこの具体案を書き、それを政府税調で審議していただいて、経済財政諮問会議においてこれを是正、承認するという手順を決めたのであります。
 同時に、それじゃ与党三党との協議をどうするかということでございますが、政府税調で原案が、一つの方向が決まれば、それを党並びに国民一般に対して説明するということの、そういう手順で、直接政府原案の参画には、直接的な関係はしていない、そのかわりに法案ができて国会で御審議いただく、こうなるわけでございますから、当然でございますが、そういう手順をまず決めました。
 そして、四月の中旬以降は、税のあるべき姿ということで、総理から、二十年、三十年後においてもたえ得るような税制改正をしてほしい、こういう要望がございまして、これをめぐりまして経済財政諮問会議の中で、そんな長期にわたる税制の樹立ということは非常に難しい、ですから、中長期的な税制改正に踏み切るべきでいいのではないかということでございましたが、総理はさらに、少なくとも、年数は言わないけれども、比較的長期にたえ得る改正をしてほしい、こういうことでございました。
 そこで、問題点は何かということでございましたので、私の方から問題点を提起いたしました。それは、税と公共負担でございますが、その関係、つまり、料金、保険料、この関係はどうあるべきなのか。今、国民の総負担を、公的負担を見ますと四六%になっておりますけれども、税負担は大体二二、三%から二四%ぐらいでございまして、あと一二、三%が料金、だから、要するに公共負担でございまして、そしてあとは国債によるところの潜在的負担、こうなっておりますので、そこでこの分担をどのようにするのかということが税のあり方の根本問題ではないかということで提起いたしました。
 二番目の問題といたしまして、それでは公平に国民が分担するのにはどのような税制構成、負担区分がどういうぐあいになったらいいのかということでございまして、ここで問題が、税の空洞化というのをどうするかという問題に焦点を絞ってきたのでございます。
 同時に、税はただ公正だけではいかぬ、中立も大事だけれども、税は経済の活性化に役立つものでなくてはいけないんではないかということがございまして、公正、中立、簡素という財務省の主張と、公正、活力、簡素という経済財政諮問会議との意見の調整に一、二回、この辺の調整にかかってきたということでございます。
 三番目の問題は、特定財源の問題について方向を定めてくれということでございまして、これは、道路財源とかいろいろ特別会計にございますが、要するに特定財源、これに対する考え方。
 それから四番目の問題といたしまして、国と地方との負担の区分というふうなことでございました。
 それから五番目は、税の簡素化という問題である。
 この五つの区分につきましての基本的な問題を提示いたしました。
 昨日行われました経済諮問会議におきましては、主として活力ある経済対策をつくるのにどうするのかという問題が中心でございましたのと、それと、それに並行いたしまして、総務省の方から、国と地方との税のあり方というものについて提案がなされたということでございまして、この国と地方の問題はまた別途の問題として考えなければ、この問題は余りにも対象の範囲が広過ぎるので別途に考えていこう。しかし、これはあくまでも、経済財政諮問会議で基本的な方針を出して、政府税調等において検討してもらうようにしよう、こういうことに一応はきのうはなった。
 そうしますと、きのう行いましたのは主として経済活性化への対策ということでございまして、そのためには、公共事業のあり方ということと住宅建設、あるいはまた産業特化によるところの投資減税等をどうするかというような基本問題について議論をしたということでございます。したがって、きのうはそういう経済活性化への入り口の議論でございまして、もう一度、三十日に、もっと中身を詰めた議論になるということでございます。
 ちょっと長うなりましたが、概要はそういうことでございます。
佐藤(観)委員 ちょっと大臣の中で、主税局が書きというところはどうも私は気に入らない。それがどこまでタッチしたかは別ですがね。
 それで、私は、どちらかというと活力派なんです、中立というような時代ではないと。きのうのたたき台というのですか、法人に対する課税については国際競争力を明確にするようにすべきだという文言が内容的にあるようですが、私は、そのことは非常に大切なことだと思って、きょうは主にそういう視点から、大臣にあるいは主税局長にお伺いしたいのであります。
 それで、大臣、失われた十年ということをこの委員会の中でもよく使うわけでありますけれども、私は、いろいろな角度からこの失われた十年というようなものは言いようがあるけれども、一つは、たびたびここでやってまいりました金融危機の問題ですね。これが発端かあるいは結果かは別にいたしまして、財政、国、地方の六百兆の借金の問題、あるいは約四百万人近い失業者の方々の問題、そういうところでいろいろ言っていますが、もう一つ忘れてきたのは、例えば土地が約半分の値段になったとかもっと下がったとかありますけれども、一番大事なことは、今言ったことも間違いではないけれども、次の世代、一体日本はどうやって生きていくんだろうか、どういう産業をもって日本はやっていくんだろうか。
 今、自動車と電機産業、こういうことでやっているが、後から触れますが、電機産業、ICなんかでもかなりアメリカ、韓国に追い抜かれちゃっているという情勢の中で、一体これからどういう産業戦略をもって日本というのはやっていくんだろうか。そのために活力はどうしたらいいのか、そのために税制というのはどういうふうにあるべきだというふうに考えていかないと、いわば税金、もちろん個人にも出してもらうわけでありますけれども、経済の活力を支えます法人が元気がなければ次の日本というのは成り立たなくなってしまうという大変危機感を持っているわけであります。
 そういう見解につきまして、きのうの経済財政諮問会議の中でもありましたし、最終的には大臣がまとめられましたけれども、まとめたというのか、最後のところの結語的に言われましたけれども、この失われた十年というのは、見方によっては、結局、日本の次の戦略産業というものを見出し得なかった。ぼさっと、大変な借金はしたけれども、それをほとんど公共事業、公共事業に回してしまって、公共事業というのは、百億出せばそれは百億移転するだけと思った方がいいのであって、まさに民間が自力で日本経済を支えるという基盤をつくるいわばお金、助成、つまり、直接的にお金を渡すわけではないけれども、税制がそれをリードしていく、イニシアを与えていく、インセンティブを持っていく、そういう視点というのはこの十年余りなかったのではないかと思いますが、いかがでございますか。
塩川国務大臣 私も自由民主党の党員といたしまして、佐藤先生の言うのも全く同感ですね。つまり、過去の成功例に酔うておって、その延長線で物事の展開を図ろうとして安易な考え方をしておって、要するに、時代が変わった、時代の認識というものが、本当は我々も意識が薄かったのではないかと思っております。
 その一番典型的なのが金融機関だと思うのでございまして、金融機関は、もう十五年も前、つまり一九八五、六年ごろからビッグバンだと口で言って講習会とか何かやっておりましたけれども、一向にその真意をつかまずして、そして時代の流れに刻々と流されてきて、今日、国会で金融二法を成立させたこと、あれが金融機関の決起を促し、転換を図っていった大きいきっかけになったと思っておりまして、あのときの国会の任務とリーダーシップはすばらしかったと私は今に思っておる次第です。
佐藤(観)委員 今、金融危機の問題は、確かに失われた十年の出発点かそれまでの結果の集積かどうかはわかりませんが、もう一つ、人間はどこかで働かなきゃいかぬわけで、その働き場、そして日本のこの十年間におくれてしまった国際競争力というものについて、これもまた怠ったことの一つの重要なことではないか。このことを今気がつき、かつ、さらに税制改正の中でやっていかないと、また失われた十年、合計二十年になってしまうという危機感を私は持っているんですが、その点はいかがでございますか。
塩川国務大臣 追加で説明するところを途中で切ってしまいまして、どうも済みません。
 まさに先生、そうでございまして、産業界の転換というもの、これは確かにおくれました。それは、やはり私は、現在振り返ってみますと、バブル崩壊後しばらく、古い実業家が企業を支配しておったことだと思っております。
 現に、半導体とかあるいはコンピューターというものが未来永劫に先端産業であると思うておった、そのことが非常に間違っておった。アメリカが軍事技術であったところのデジタルというものを世界に公開しましたときに、やはり日本は情報産業化体制へと産業を転換すべきであったのにこれをしなかった、この立ちおくれは、おくれてきたと思っておりますけれども、しかし、最近になりまして、三、四年前から、各企業がそれに気がつきまして、積極的にいわばデジタルあるいはIT産業化への体制をとりつつあるということは、私は、これからは十分な処置がとれていくのではないか。
 したがって、今必要なのは、国が、国政の中において、今後の産業はこっちへ向かっていきますよということをある程度産業分野について明示すべきだ。私は、それは先導的産業分野、こう言っておるのでございますが、それに対しまして、私自身としては、一つの試案として経済財政諮問会議が出しております。
 それは、一つはナノテクノロジーの分野、それからバイオテクノロジーの分野、IT並びにブロードウェーの……(発言する者あり)ああ、ブロードバンドの分野、昔懐かしい言葉が出てしまってどうも申しわけありません、ブロードバンド。それから環境改善、つまりリサイクル技術の分野、この四つの分野がこれからの先端技術として重点を置くべきではないかという提案はいたしております。
 経産省は、七つの分野の重点産業分野を提示しておりますが、そういうようなものを積極的に、ひとつ税制の改正とは並行して経済財政諮問会議で取り上げてくれるように期待しておるところであります。
佐藤(観)委員 余り細かいことを聞いておられないので残念ですが、やはりこの際、付加税の二%問題にどうしても触れていかなきゃいけない。
 今、塩川大臣が言われた方向性について、経産省は、医療の問題とか、今、薬というのも大変大きな業界になりつつ、製薬という問題やら、あるいはエネルギーの問題とか入れていますが、それはそれとして、今大臣が言われていることを、要するに、税の面でやはり誘導路をつくらにゃいかぬと思うんですね。それには、連結納税制度というのがプラスだ、これは企業の実態において分社化した方がよりこの分野に特化して黒字企業をつくることができる、こういう発想でこの連結納税制度というのを出してきたんだということでしょう。
 ついでに主税局長に聞いていきますけれども、連結納税制度に、簡単でいいですよ、こっちも勉強していますから簡単にでいいんですが、米仏型と英独型がありますよね。なぜアメリカ型を選んだのか。日米安保条約と関係ないと思うんですね、これは。要するに、これが一番、企業分割をして、おのおのグループ内から特化をして、今大臣が言われたような、これからの日本の産業をリードしていくものを特化してどんどんやっていくには、連結納税制度の中でもこのアメリカ型が一番適している、こういう判断に立ってこのアメリカ型を選択したということだというふうに私は理解しております。
 簡単に、アメリカ型を選択した積極的理由及びそれについて大臣はどう思っていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 連結納税制度の検討に当たっては、実はイギリス、ドイツ型のような形も含めて議論をさせていただいてまいりました。ただ、経済界の御要望が、やはりアメリカとのいわゆる経済交流というか、大変大きいということもございました。
 特にアメリカ型の場合には、実は今回お出ししているような形で、ある意味でいえば非常に複雑な税制になるという欠陥もわかっていたわけでございますが、やはりそこは企業グループを完全に一つの納税単位として課税していくということが、ある意味で、日米という両方の、各企業の経済的な環境を考えればそれが適当だろうということでそちらを導入させていただいたということでございます。
佐藤(観)委員 日米の経済関係だけではなくて、本当に税というのは細部までわからぬとわからぬに等しいようなところがありますけれども、英独型の場合あるいはフランス型の場合でも、どうも読んでいる限り、企業分割というよりも赤字を黒字で埋めるというふうに主眼が置かれていて、どうも、この企業は独立させて、グループ内であるけれども一〇〇%子会社にした方が研究やその他の体制がやりやすいという形はアメリカ型だと私は読んだんですが、違いますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生仰せのとおりの点もあるかと存じます。
 ただ、ドイツとかイギリスのようなところというのは、確かに結果として親子間の損益通算が実現するというところに一つのねらいがある。それに対して、企業全体を一つとしてとらえる、完全ないわば経営体として見ていくという点ではアメリカ型の方がより本格的であるということは事実だろうと思います。
佐藤(観)委員 今事務方からそういう御答弁をいただきましたが、そういう面で、大臣が考えているように四つの分野にしろ経産省が言っている七つにしろ、いずれにしろ、日本の戦略産業というものを育成していくためには分割が必要だ、分割がやりやすいようにしていこう、前の商法の改正もございましたが、していこうということで出されたということであります。だから、これを経済界も使ってもらわなきゃいかぬわけですよね。これ、二年間全然使わなければ、連結納税制度という制度を使わなければ、大臣が言われた戦略産業をつくっていこうという、先導していこうということは二年間おくれるわけですよ。第一、これは法律には二年間で二%をやめますとは書いていないわけだから。
 ここは大臣、先ほど大臣も言われましたけれども、欠損法人が平成二年のときには四八・四だったわけですが、平成七年から六〇%になって、平成十二年、一番新しいのは六八・四ですよね。だから、赤が七、黒が三ですよね。赤が七をいかに黒にしていくか。そのために連結納税制度というのをどういうふうに使っていって、赤の七を黒字の方にだんだんと持っていく、こういうことを考える、またやりやすくするのが連結納税制度なんじゃないですか。
 そうしましたら、人生の先輩に大変失礼だけれども、一度ここは、たかが一千億の話ですよ、これ。盛んに尾辻財務副大臣は八千億、八千億と言うけれども、これそのものの、制度上のものは全部使ったとしても一千億ですよね。この際には、損して得とれということを私は言いたいんですね。損して得とれ。これ、一千億。三十兆も借金している中で、一千億、この制度を入れることによって、さらに二%の付加税をかけて全然使われない。そして全体的な戦略産業は遅くなってくる。遅くなったら間に合わない。きのうもNHKを皆さん見られたと思いますけれども、システムLSIというので日本はまた新たな挑戦をしていますよね。新たな挑戦を半導体でしている。こういうことが二年おくれていくわけですよ。そういうことからいえば、戦略産業を育成していかなきゃいかぬという発想が、大臣と私が同じならば、損して得とれ。
 とにかく主税局というのは税金を取ることばかり考えている。それは職務上、そうでしょう。だけれども、芽が小さく生えたらすぐ刈り取るというのが主税局の癖ですよ、これ。芽をもう少し大きくなるように育てて、そしてそれを刈り取るという、そういう発想に立たなきゃいかぬ。
 だから、私は先ほど大臣が言われたから、言葉じりをとらえたようだけれども、主税局が下書きを書いてというのが気に入らないと言ったのは、そういう発想は主税局じゃとれないんですよ。やはりそれは政治家が、この際には目をつぶって、一千億は借金にしろ何にしろしまして、そしてこの連結納税制度というものは、もちろん例えば黒ばかりのところというのは使っても意味がないわけですから、黒ばかりのところは退職給与引当金をとられるだけの話ですから、積み立てを崩させられるような話で増税になるわけですからそのことは別にいたしましても、要するに、七割の赤をいかに三割の黒に持っていくか、そのための一つの手段として連結納税制度を入れようというわけですから、この際は、一千億の話ですから、損して得とれということがやれるのは政治家である財務大臣しかないわけですよ。ぜひその決断をすべきであるというふうに私は再度申し上げますが、いかがでございますか。
塩川国務大臣 まさに政治家の発想でございますが、実は佐藤先生の考え方に私も非常に興味を感じております。けれどもこれは今、私は大臣でなかったら同じことを言っているだろうと思う。そこがなかなか難しいところでございまして、それには、まずしかし、私らの言っている根拠もあるわけでございまして、それはなぜかといったら、さっきもおっしゃっているように、連結納税を採用する、賛成の方が半分と、いわばネガティブな方が半分となっております。けれども、選定して調査に行って聞き取りいたしました企業の全体を見ました場合、子会社に赤字を持っている企業が少ないということもあるんですね。
 つまり、子会社が赤字のままじゃ親会社が怒られるものだから、一生懸命黒字にしてきよる。そうすると、連結納税のシステムを採用する必要がない企業がたくさんあった。それが調査対象になっておりますから、そうすると、どうしてもそういう会社は連結納税に対してネガティブな返事をするということになってきている、その点も多少あると思っております。
 ですから、私は、佐藤さんがおっしゃるように、損して得とれの考え方、よくわかるものですから、まずとにかくやってみて、これは何の意味もないとか、制度として活用されておらないということになってくれば、その時点においてずっと考えたらいいだろう、こう思うんです。
 ただ、これが有効利用されているかどうかのその判定はできるだけ早くする必要がある。ぐずぐずしておったらだめで、そのためには、法律が公布され施行されましたら、直ちにそういう調査、世論の聞き取りというようなものを積極的に、本格的にやってみたいと思っておりまして、その結果を尊重したい。これでいいというんだったらこのままずっと二年でも五年でも続けたらいいし、こう思うておりますので、その点の御理解をひとつお願いいたしたいと思います。
佐藤(観)委員 ちょっと発言の中で、ポジティブと申しましょうか、その反対のネガティブ、つまり、できても、使うというのが出ているところは、もう御承知のように、使う可能性があるだろうなというのは二割ぐらいです、これは。ですから、考え方によっては、ほとんど使わないシステムの問題を当委員会で議論しているというのは何かばかばかしいような気もするんですけれども、この二%の付加税というのが非常に大きな阻害要因になっているわけであります。
 わかるんですよ。逆の立場で言えば、後からは増税がどんどん迫ってくる。最初はいわば減税に相当するようなものになる、後から増税が迫ってくる。これは、贈与税も相続税もあるいは所得税も、何もかも全部含めてなってくる。それはなかなか国民から見ると難しいだろうなと思う大臣の立場もわかるが、しかし、もっと大きな、国際競争力という戦略から考えると、一千億というのは、我が国財政からいったら、三十兆も借金している国からいえば、それをこの一千億に回す、そのぐらいのことはできるんじゃないか。そうしたら、どんどん使えばそれこそ企業が活性化するのであって、そういう手法をとるべきだというふうに私たちは考えているわけであります。どうせ、そのまま聞いても答えは一緒ですから、時間が経過をいたしますので。
 現法律では、これは海江田理事には何も言っていませんけれども、二%の付加税というのはとりあえず、とりあえずですよ、二年という法律になっていますね。一度それならやってみて、余りにも惨たんたる状況で使う人がおりゃせぬというときには、一年後にはこの付加税を撤廃するということも余地にありますか。
塩川国務大臣 実態調査いたしまして、そのような意向があれば敏感に対応したいと思っております。
佐藤(観)委員 次に、主税局長に聞きますが、企業グループ内の内部取引、いわゆる寄附の取り扱いの問題であります。
 簡単に確認ですからいいんですが、寄附、内部取引といっても、固定資産、あるいはノウハウなんかも含めてサービス、それと、今は知的財産権ということが非常に大きな要件ですよね。これらの寄附としての取り扱い、これは、従来いろいろなケースがあったと思いますけれども、従来の法人税を扱うときの扱いと同じと考えていいか。
 特に問題なのは、適正な時価という、それはそうでしょう、適正でない時価なんかを扱ってはいられないわけだけれども、余りケースがないような場合を扱っている、これはこれから多いんですね。例えば、DVなりあれなりという新しい分野がどんどんできていますから、適正な時価の事例というものが余りない分野もあるわけですね。
 そうしますと、申告した後、絶えず税務署と、これが適正か適正じゃないかということが、使おうかなと思っている人に聞いてみるとここのところが一番心配なんですね。絶えず絶えず、これが適正か適正じゃないか、適正な時価かということが絶えずごたごたするんじゃないかということを大変心配しておりますが、基本的には従来の扱いというふうに考えて、特別、特殊な例が出ればまたそれは相談、こういうふうな理解でよろしいですか。
大武政府参考人 ただいま先生御質問の中で述べられましたとおり、現行の法人税法におきましても、時価というのは取引価格、まさに時価を基準として取引は計算するということになっておりまして、連結納税制度のもとでも同様の取り扱いになるというふうに考えているところでございます。
佐藤(観)委員 それは、確かに活字にしてみればそのとおりでしょうけれども、要するに、私の言っているような取り扱いで、従来の延長線上だ、特別、連結納税制度を入れたから適正な時価というのが何か非常に厳しくなるというようなことではないということで確認してよろしいですね。
大武政府参考人 繰り返しになりますけれども、企業間グループの取引は、これまでも時価で適切に行われてきておりまして、連結納税制度を伴っても同じような取り扱いをする。
 ただ、御指摘のように、具体的に何か導入後にそうした取引で問題が出てくれば、それはその実態を踏まえましてさらに検討するということはやぶさかでないということでございます。
佐藤(観)委員 次に、会社分割の問題ですけれども、これは、いいケースで会社を分割する場合と、非常に負担になってしようがないので会社を分割しようという両方のケースがあり得ると思うんですね。
 それで、いい方の場合でも、その事業を引き継ぐわけですから、常務以上の役員とそれから従業員を八〇%以上連れていけという条件がついていると理解をしておるわけであります。事業を実質的に継続するためには、今までやっていた人々がある程度移る、ただ、そこには合理化をどういうふうにするかというようなことがあると思います。それが、八〇%以上の人を連れていかないと事業分割として認められない。したがって、そこに、土地が動いた場合には不動産取得税というものがかかってくる。適正な場合にはかかってこない。
 これが、今度、ちょっとその部分はその企業は事業を縮小しなきゃいかぬ、分割するんだけれども縮小しなきゃいかぬという場合には、八〇%も人を連れていったら、もう一回再建するのに足をとられちゃう。役員はわかります。役員はわかりますが、八〇%じゃなくても、縮小するために企業分割する場合、例えば七〇%の人を連れていった、その際には、今の皆さん方の理解では、これは企業分割として認めない。すると、不動産取得税というのが新しい会社の方にかかってくる。
 こういうふうになって、八〇%というのは、いわば新しい企業が発展していく場合はいいと思いますけれども、その企業が縮小して、グループの中だけれども新会社はもう少し小粒にしようというときには、この八〇%というのは、不動産取得税がかかるということによって、重荷になってできないということが出てくるわけですね、ケースとして。これは、分割しようかなと思っている方から見ると極めて使い勝手が悪い形になっているんですが、その点はいかがですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいまの先生の話の中にもありましたとおり、やはり企業再編を、通常の資産の売買取引とそれを区別しなければなりません。そういう意味では、支配の継続性を判定する要件として、従業員の八〇%以上を引き継ぐということを一つのメルクマールにさせていただいている。
 例えば、今先生が、七〇%以上というときは、先に従業員を整理されてから、それから企業分割されれば実は八〇%基準はクリアできるわけでして、そういう意味では、事前の整理、そして分割という手もあるのかと存じます。
佐藤(観)委員 それから、今度、法人税法の改正本体の中で、退職給与引当金を簡単に言えばなくすということにいたしました。
 これは、長い長い歴史があって、不公平税制と言っていた中で一番金額の多いものですね。私たちがかつて社会党の時代に、これは最高四〇%まで積み立てができる。当時、日立製作所が七万人おって、七万人のうちの四〇%ですから、二万八千人一挙にやめても退職金が払えるというような場合を、そんなに積み立てる必要があるのか。
 それから、きょうも主税局長答弁していましたけれども、私はふふふっと笑い出したんだけれども、本来これは労働者のものだから外部積み立てにしなさい、するべきであるということと、人数の規模に応じてこのパーセンテージは、つまり大きいものはもっと率を下げ、小さい中小企業、協同組合等は率を上げていいんじゃないかということを主張していたわけでありますが、きょう、いみじくも主税局長はこれは本来外部積み立てにすべきであるという話をしておられて、時代は変わったな、それはかつて社会党が言っていたことと同じことじゃないかと思ったのであります。
 もっともっとこれは、きょうのどなたかの質問にありましたように、中小企業の場合には若干積み立てを許してもいいんじゃないかと思いますけれども、いずれにしろ、その時期の損金に落ちるわけですから、時間がありませんからそのことだけ申し上げ、時代は大きく変わっているなということを、きょうはいみじくも外部積み立ての話等が出ましたので、申し上げておきます。
 それから、タックスヘーブンの問題でありますけれども、これはちょっと私、もとまで当たる時間がなかったものですから、主税局に宿題を出しておきますので、お願いをしたいのでありますけれども、シンガポールが法人税率を二四・五%に下げるということで、日本の現地子会社がタックスヘーブン税制の網にかかるということで、その差額分は日本で払わなきゃいかぬ。日本の実効税率が四〇・八七でありますから、シンガポールの差からいくと一六・三七ということで、約一七%差ができる。これを日本に、タックスヘーブン税制の中でその差額分を払わなきゃいかぬということになる。
 たまたまこれはシンガポールの例を挙げましたけれども、例えば香港、中国等に、我々の周辺でもどんどん進出をしていく、あるいは現地子会社というのがあるわけですね。そうしますと、相手国の税率と日本との差というものが非常に大きくなってきて、その結果どうなるかというと、本社そのものをそちらに移したらどうか。ただ、益金を日本に持ってこれるか持ってこれないかという問題がありますけれども。
 ですから、全部が全部調べ切らないで物を言っているのでありますが、いずれにしろ、こういうことは方向性としてはそっちに行くんだと思うんですね。しかし、これはどこの先進国でもお互いに、日本に税金あるいは先進国に税金が入らないことになるわけですから、非常に困った問題だと思うんですが、その辺はどういうふうになっていますか。
大武政府参考人 ただいま先生からお話がありましたとおり、日本の法人税率は基本的には先進国、いわゆるG7諸国を初めとした国々と公平をとって定めているということでございます。
 確かに、アジアの国の中には、そういうふうにかなり低い税で誘導しようというようなところがあることは事実ですし、あるいはそれ以外の国では、明らかにタックスヘーブン税制として、南米とかそういう国の中にはございます。それらにつきましては、まさにOECDの先進諸国において、そうした租税回避的な行為を抑えるべく協調して対処するという租税上のタックスヘーブン税制検討をまさに今続けているところでございます。
佐藤(観)委員 非常に大事なことなのでちょっと聞きますけれども、OECDの中での議論というのは、例えば中国なり、例えば香港なり、シンガポールなり、そういうところは先進国とある程度協調して、自分のところだけで、本社まで移して自分のところに全部税金を移させるというようなことでは世界経済自体が回っていかないじゃないか、やはりそのあたりをお互いに考えるべきではないかというような方向の議論になっているんでしょうか。
大武政府参考人 まさに御質問のとおり、そういう有害な税制を除去するための具体的指針をつくっていこうというようなことでございます。典型的には、金融で有名なダブリン特区という話がございます。
 これらなんかも、金融のように足の速い商品ですと、そこにいわば一つのセンターをつくって、そこで海外のお金を集めてということになりますと、これは明らかにそういう有害な税制ということなので、まさにダブリン特区なんかは、いわば協定上取りやめるというようなことになっていくということのようでございます。
佐藤(観)委員 これは、もう本当に、グローバルな意味で大事なことでありますから、今後ともいろいろと研究しておいていただきたいと思います。
 それから、日米の法人課税の率の問題なのでありますけれども、ちょっと私もここまでは自分で調べ切れなかったんですが、読んでびっくりしたのでありますが、これは半導体メーカーの話であります。
 日米の税引き前利益に国税と地方税を合わせたものでありますけれども、先ほど言いましたように、日本は半導体はかつては五つのうちの三つを持っていたわけでありますが、今や追われるよりも追い出されちゃっている格好。それを復活しようということで、システムLSIに、国、経産省、学者、業界、これを挙げて今懸命に取り組んでいるところでありますけれども、日本勢の大手五社の税負担が、二〇〇一年三月期で平均が五九・二。一方、アメリカのインテルが二〇〇〇年で三〇・四%ということで、約六〇%と三〇%の法人税負担という、正直言って本当かいなと思ったのであります。
 ただ、インテルのもとまでさかのぼるわけに、残念ながら行く時間もなかったものですからなのですが、ここに出ている数字というのは、これは某有力経済紙の数字でありますけれども、会計上の税金と、企業会計原則に基づいた税金と、それから税法上に基づいた税金という数字が約六〇%と三〇%という数字になっているということなんでしょうか。余りにも、もしこんなに本当に違っていたら、これは大変なことだと思ったものですから、特にインテルの場合には、アメリカだけでやっているわけじゃないものですから、世界的に広がっていますから、実際に調べるとなると大変難しいし、アメリカ個々のやつ、あるいは税金の申告書というものが日本のように出ているわけでないという話も聞いたものですから、そのあたりは真実はいかに。
大武政府参考人 その数字は我々も新聞で拝見もさせていただきましたし、それの議論も聞かせていただきました。今先生からお話がありましたように、それは幾つかの、ある意味で言うと誤解といいますか違いがございます。実効税率だけで見ますと、例えばアメリカでも州によって地方の法人税率が少し違いますから必ずしも同じというわけではありませんけれども、おおむね同じ水準になっているのかと思います。
 ただ、今言われた個別企業で違うというのは、まさに特定事業の実際の活動を会計でやりますと、例えば日本なんかでも、前年度に赤字がありますと黒字が出た場合でもそれを差し引きますね。ですから、分母と分子をとったときに、分母が会計上の収益と税務上の収益は実は違うということでございます。
 しかも、税率が低い、今先生が言われたとおり、インテルのように外国の活動が大きくなりますと、開発途上国のようなところで外税控除されちゃう。これは、アメリカも実は大問題として、このあたり、OECDでどうにかしたいと言っておるわけですが、そういうところを多く活動すると税負担水準が低くなるという問題もあります。
 それから、さらに今回、御議論になっているこの連結納税制度がアメリカは既に入っていて、黒字と赤字を全部合算する、国内所得ではありますけれども合算できるものですから、そのあたりの違いも多分あるんだろうと思います。
 いずれにしましても、いわゆる企業会計上の所得と税務会計上の所得を若干混同して事後的に数字を書いたものということかと存じます。
佐藤(観)委員 いずれにしましても、大事な問題ですので、ちょっとおたくの方でも追求して、よく調べていただきたいと存じます。大体、主税局長の言われた意味はわかりました。
 それから、先ほど大臣が言われましたように、日本の工業、私のところはたしか、愛知県ですけれども、工業出荷額第一位というのは十四年ぐらい続いているんじゃないか、自動車と工作機であります。しかし、自動車はいいけれども、工作機は今は余りよくない。
 今は失業の問題が大きいものですから、私、自分のところの、中部職業能力開発促進センターというところで、ここで研修なさって次の企業へ行くんですが、それがいつごろの機械を使っているんだろうかと思って調べてみたんです。
 そうすると、そこで研修する機械が、固有名詞は避けますけれども、リースあるいは耐用年限の問題でありますけれども、一番古いものが平成二年が二台、平成七年が二台、それから平成八年、平成十三年。こういう機械で研修して、もう平成二年じゃ、あなた、十二年前の機械で研修して、それで研修して次の会社に入っていくといったって、平成二年の機械では全然、もう一度企業内で再訓練をしないとできない。余りにもこれは、これはたまたま能力開発促進センターという研修するところでありますが、今、工作機械なんかがたしか十年ぐらいに、耐用年数、税法上の減価償却、なっているんじゃないか。
 だから、一番短いのが、パソコンがやっと四年になったかなと。しかし、パソコンを使っている人から言わすと、今四年も使っている人はいませんよというぐらいで、この意味で、耐用年数というか機械の償却の年数というのをもっと早めにゃいかぬ。これは直ちに法人税にはね返ってくる話でありますが、次の産業の戦略からいって、そんな十二年前の機械で研修して、そして人を送るといっても、これは使う方でも使いようがないというわけですよね。そういう意味で、もう一度、こういう時代が速い中でありますから、この減価償却の期間というものをもっと短くしていく必要があるんじゃないか。
 あるいは、あれもそうかもしれません、設備投資したものの減価償却もそうかもしれません。たしか昔、覚えているのは、病院が五十年だったかな、まあ病院という性格ですからあれですが。しかし、それにしたって、今新しい病院を見ると、本当にホテルじゃないかと思うようなきれいなものができているわけですよね。それはいいとしましても、病院とて随分建てかえがある。
 いずれにしましても、工作機械やコンピューターの入ったものというのは、減価償却の期間を短くしていかないと、もう時代にどんどん取り残されちゃうと思うのであります。一体、工作機械の耐用年数、税法上の期間がどうなっていて、そして、これはまあ大臣にも考えてもらわなきゃいかぬけれども、これまた法人税が減る話で、舌も出すのも嫌だというのが主税局長ですから、減価償却の年数を短くするというのはなかなか大変だと思いますが、しかし、先ほど言われた半導体の問題、サムスンという、三星と書きますけれども、これなんかは事実上国家と一緒になって今や世界第二位になっている。もう、そういう世界競争の中で国際競争力が大変おくれていく。
 その意味では、加速度的な償却というのをやって、さっき言ったでしょう、損をして得とれと。償却を早くすれば確かに法人税は少なくなるけれども、後でそれが、どんどんそのつくったものが売れて法人税が入ってくる、そういうことをとりなさいと。
 だから、主税局長ではなかなか答弁が難しいかなと思いますが、まあ一度、減価償却の期間を短くする話、どうですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま御質問のございました減価償却資産の法定耐用年数というのは、資産の物理的寿命だけではございませんで、その経済的陳腐化に加味して客観的に定められるということではありますけれども、技術的進歩による陳腐化の状況等も配意して、資産の使用実態調査などを行って、個別に実は見直しを進めてきているわけでございます。
 したがいまして、今御質問の工作機械等ですと、短いものは五年から、あるいはパソコンの四年とか、から十五年ぐらいのものが使用実態上、今言われたようなケースに残っているものですから、それらを踏まえて期間配分をするということでやらせていただいているわけですが、必要に応じまして、使用実態を踏まえて適正化を図っていきたいと思っているところでございます。
佐藤(観)委員 ちょっと答弁がよくわからなかったんですが、その残っているというのは、四年というのは何のことでしょうか。いずれにしろ、税法上減価償却の期間が決まっておって、それが残っているというのでしょうか。
 いずれにしろ、私が求めているのは、新規のものについて償却を早めて、新しいものをどんどん入れて、そしていい製品をつくって、赤を、赤字会社を黒にして、そして法人税を取りなさい、こういうことなのでありますが、ちょっと意味がよくわからなかった。
大武政府参考人 失礼いたしました。
 使用実態ということを申し上げたわけで、実態上、現地調査をいたしまして、何年のものが現に使われているかというのを出して、それでいわば耐用年数というのは決めているものですから、あと何年というような格好で、どれだけ残っているかというようなものを調べる。
 実際、今先生の御質問の中にあったように、十二年のが現に使われておりますと、それもなお使えるということになっちゃうものですから、結果としてそういう年数の平均値の中に入ってくるということになるのかと思います。
佐藤(観)委員 いずれにしろ、今私が挙げた例というのは、たまたま今失業している方を再訓練をしてやるところの話でありますので、今その私が申し上げた数字にこだわる話ではなくて、基本的に減価償却を早くすることによって、日本の産業を強くしていくということを求めているのであります。
 最後になりますけれども、きょうは、そういう意味で国際競争力、特に、塩川大臣が言うには、佐藤さんが言っているのは減税の話ばかりで、税金が減る話ばかりしているんじゃないかと言われるのを先に私が言っておきますが、この次の回のときにはどういうふうに、公平か公正かありますけれども、どの部分をもう少し取るべきかということを話をしますが、冒頭申しましたように、国際競争力に勝たなければ我が国はやっていけないわけでありますから、しかも、それは何も全部の産業ということを私は申しているんじゃなくて、経産省が言っている七つなり大臣が先ほど挙げられたような四つなり、どこか重点を置いて、いずれにしろ、日本の産業競争力、産業戦略というものをしゃんと税制の中でも今度の改正の中でやっていかないと、これは大変なことになる。
 あと二十年たつと、大臣は百になるかな。そのときには、あなた、全部資本は、本社は我々の周りの国に行っちゃって、全部その国の雇い主になるというようなことでは我々としてはいかぬのでありますから、ぜひひとつ大臣が指導性を発揮して、ちゃんと国際競争力にたえられる日本をつくるために税制の面で果たすべき役割というのはあるわけですから、そのことを期待して、一言最後にもらって終わります。
塩川国務大臣 私は、活力と中立というのは余り議論しても、まあ到着するところは同じだと思うんです。
 私は、先行して減税しても、そのかわりにちゃんとバランスをいつの時代か合わせてもらわないかぬ、そのことをやかましゅう言うておるんです。
 今まで食い逃げなんですね、皆。いいところだけ、減税だけ食い逃げしておくからこういうことになるんで、減税はしても、その減税はやはり活力に働くんですから、それはそれで有効な効果を生む。けれども、それを埋める措置は、やはり後年度において、きちっとセーフティーネットを張っておいてもらわぬといかぬので、その点は、期間のずれはあっても決着のバランスをとっておくべし、こう言うておる。先生のおっしゃる趣旨に沿って我々も主張しておりますので、どうぞ御安心いただきたいと思っております。
佐藤(観)委員 終わります。
坂本委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず最初に、不良債権の処理の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、かつて債権放棄をかなり各銀行がやった、しかし、本当の意味で、債権放棄を受けた会社が、きちっとした改革といいますか計画じゃなかったせいか、数年後にまた債権放棄をしなければいけない、こんな事態が結構起こっているようなんですけれども、どのように把握しておりますか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 最近の債権放棄の事例につきまして、昨日、実は、急遽いろいろ調べさせていただきました。とりあえず、子会社、関連会社を除きます一般事業法人について調べたわけでございますが、平成十二年度について十八件で七千九百億円、それから平成十三年度については十二件で四千七百億円の債権放棄を公表いたしております。これは公表でございますから、実施は後にずれることもございます。
 取り急ぎ、そのうち、過去に債権放棄をしたが再建できないで二度目の債権放棄の実施となったものがあるかどうか確認をいたしましたが、その中にはないというふうに聞いております。
藤島委員 最近ではありませんか。例えば大京はその例じゃないんですかね。かつて債権放棄をして、またそういう、債権放棄でなくてもいいんですが、何らかの銀行の負担が出てきているそういったケースですね。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 突然の御質問でございますのであれでございますが、最近よく言われておりますのは、例えば長谷川工務店につきまして、平成十一年に債権放棄が行われております。ことしに入って再建計画が公表されておりますが、その再建計画の中には債権放棄は入っていないというふうに聞いております。
藤島委員 必ずしも二回目が債権放棄でなくてもいいんですが、私が申し上げたいのは、一回目の再建計画が非常にずさんなために、結局、もう一回目は倒れてしまう、数年後倒れてしまうといったようなケースがあると思うんですけれども、要するに、最初の再建計画をつくるときに、貸し手の銀行が緩いんじゃないか、要するに、つぶれると銀行が困っちゃうものだから債権放棄でごまかして先延ばししている、そういったケースがあるんじゃないか、こう思うわけなんですね。
 要するに、こういう厳しい時期は、小泉総理ではないんですけれども、つぶれるところがつぶれるのはやむを得ないので、それを無理して延ばすと、再建計画がきちっとしていないまま延ばすと、結局そのツケが後になって回ってくる、こういう繰り返しをしていたのでは不良債権がどんどん新たに発生するもとになる、こういうふうに思うわけですが、大臣、いかがですか。
柳澤国務大臣 大ざっぱに、今、藤島委員がおっしゃったようなことが行い得るかというと、金融機関にせよあるいは対象の企業にせよ、とにかく株主もいるしそれから債権者もいる、そういう中でのいろいろな処置でありますから、特に最近では株主代表訴訟のリスクとかというようなことで、訴訟リスクというものを背負いながら経営者がそれぞれの経営判断でいろいろな決断をしていくということであります。
 したがって、一概に、部外の方々の中に、割と簡単に、こうした事態について、適当にやっているんじゃないかというような言い方をされる方もいらっしゃいますけれども、それは、そういう実は経営判断には訴訟のリスクというようなそういう重い負荷がかかった上での決定、慎重な決定ということについての認識がやや欠けていらっしゃるんじゃないかというふうに思います。
 そういうことは一方で申し上げつつも、それでは、平成十一年の三月末に資本注入した後、そのあたりをまたいで、割とある業種について債権放棄が行われたことがあるわけです。率直に言って、それらについて、今回の特別検査に絡んでとあえて申し上げますけれども、それと密接に関連があったとまで私申し上げるつもりは明確に否定しておきますけれども、そういうものに絡んで、もう一度その当時の決定の適切性、こういうものを見返すという動きがあったことは、今、先生が御指摘されている点なのではないか、こういうように思います。
 そういうときに、では、前の計画と今回の計画とは全く、前の計画はずさんで今度はしっかりやったかというようなことを言われると、それは先ほど来申し上げているように、やや私は当を欠く評価だと言わざるを得ないと思っております。両方とも、先ほど言った訴訟リスクを背負いながらの懸命なるあるいは慎重な経営判断であった、こういうことでありますが、やはり経済は生き物で、その後もずっとこうした低迷した経済客観情勢が続いておりますので、もう一度それを見直さないと、しっかりした、例えば金融機関の側からいけば、それが当初の予定というか評価どおりの債務者区分でいいのかということに疑問を呈される、こういうことが起こりまして、ではどうするかということで再び再建計画の見直しが行われ、必要な措置がとられたということでございます。
 しかし、その中では、今、監督局長が申し上げるとおり、またもう一回債権放棄を繰り返すというような措置が行われたものはないということだということで御理解を賜りたいと思います。
藤島委員 私は、要するに、債権放棄とかその他の手段で再建を図る際は、やはりこれまで以上に厳しくやっていく必要があるんだろうという点を申し上げたかったわけであります。
 次に、最近、政府は整理回収機構の不良債権の買い取り価格、これについて何か方針を変更するようなことを言っておるようなんですけれども、要するに、買い取り価格は時価になっているわけですね、その時価の解釈なんですけれども、これまでは一般の金融機関がといいますか、一般に買い取る価格の倍ぐらいだったということなんでしょうか、倍というか半額ぐらいですね、これまで。そういうことなんでしょうか。
柳澤国務大臣 RCCの各金融機関、特に健全金融機関からの買い取りというものは、金融再生法五十三条で規定がなされておりまして、その後の条項において買い取り価格のレベルはかくかくしかじかであるべしという規定がございました。
 それはそれでいいわけですけれども、この金融再生法という法律が議員立法で制定されたという経緯がありまして、そこで、当該の発案者の答弁というものも、法律の明示された条文と同じぐらいの重みがあるんではないかというようなこともございまして、今回、今回というか先国会でございましたか、また再び議員立法で、これは時価ですよということに改正がなされたということでございます。
 それによって買い取りがまた新たに始まったんですが、その買い取り価格と従前の改正前の買い取り価格を比較すると、たまたまですけれども一・九倍になっているというんですか、簿価に対する比率のレベルがそのくらいになっているというようなことがたまたまのこの具体例から算出された、こういうことでございまして、今後ともそのレベルで買いが進まれるとかというようなことでは全くありません。
 これは、ただ、そういう具体の例で、まだ改正後、その改正後の基準で買い取られたものというものも、そんなに期間が長くありませんからそんなに多くあるわけじゃないんですが、たまたま簿価に対する比率を比較するとそういう比率が出てきたということを言っているということでございます。
藤島委員 要するに、民間で売買するときは簿価の一割から二割ぐらいだけれども、RCCが買うのは一割を割っていたと。なかなか、制度はできたけれども思うように買い取りがいかない。それはそうですね、売る方はそんな安いところにあえて売りたくないわけですから。そこで、少し本当に活躍してもらおうということになれば、やはり一般の民間の買い取り価格並みに上げてやらないといかぬ、それは当然のことなんですけれどもね。
 ところで、これまでどれぐらいの額、買い取りが行われたんですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 今大臣からお話し申し上げましたように、再生法改正後、これは一月十一日から施行されておりますが、その後の買い取りは債権の元本ベースで二千二百六十七億円となっております。
藤島委員 二千億ですから、それなりの機能だと思うんですけれども、せっかくできたんであれば、やはり思い切って買ってやらないと、私いつも思うんですけれども、こういう手段が幾つもあって、それを少しずつ少しずつ出していると、余り成果が上がらないわけですね。やはり、あっとみんなが驚くぐらいな規模でわっとやるというと、結局、政府は本腰だというような印象を一般の経済界は受けるわけで、やはり経済は生き物ですから、そういう心理的な効果というのは非常に大きいと思うわけで、私は、今回もし本当にこういうふうに変えるとすれば、枠も十分持った上で短期間に大胆にやるという政策がやはり必要じゃないかなということを申し上げておきたい、こう思います。
 何も今度やることを悪いと言っているんじゃなくて、むしろ、もっと大胆に私はやるべきだ、こういうふうに申し上げたいわけであります。
 それからもう一つ、不良債権の問題ですけれども、債務の株式化の問題が出ているんですけれども、これは、実態はどのぐらいになっておりますか。この間の検査なんかでもかなりそういう問題が出たんじゃないかと思うんですけれども。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、デット・エクイティー・スワップと一言で言いましても、やり方がいろいろございます。細かい点は省略させていただきますが、後で見て、これがデット・エクイティー・スワップであったかどうかという認識が、必ずしも一義的に決まってこない面がございます。そういうことで、古いのを調べるのはなかなか問題ございますので、とりあえず認識がはっきりしております最近の状況についてヒアリングをいたしました。
 具体的には、ことしに入ってどうかということなんでございますが、ことしに入って再建計画を発表し、今後デット・エクイティー・スワップを実施する予定があるという企業数は、八社でございます。金額は四千八百億円弱というふうに聞いております。
藤島委員 これは、ある意味では隠れ不良債権みたいなものじゃないかという感じはするんですけれども、その辺は大臣はどういうふうに認識されていますか。
柳澤国務大臣 デット・エクイティー・スワップ、こういうふうに言うわけですが、債権を株式でもって返済するというんですか、その手続をどう表現するかというのはいろいろあるわけですけれども、基本的に、その新株なりあるいは、まあ新株ですね、大体において、それにはいろいろな株式の種類があるわけですけれども、それを買ってもらって、そしてそのかわり金を受け取ってその債権を返済してしまう、こういうことでデット・エクイティー・スワップが行われるわけです。
 そうすると、その結果はどうなっているかというと、銀行のバランスシートの上ではその債権が株式に資産の方で変わっているということで、これは何だ、債権放棄と同じじゃないか、株式にどれほどの価値があるか、これが藤島委員のおっしゃられるところだと思うんですけれども、それはやはりそうではないわけで、株式の価格、あるいは例えば上場されていない株式の場合にはその価値というものは厳格に算定されたものでなければならないとされておるわけです。上場の株式の場合はもっとはっきりしていまして、それはもう現在の時価でございますから、極端に言ったら、場合によってはその受け取った株を市場で売るということになったらすぐ現金になるわけでございます。というようなことで、それが無価値なものであるというようなことはありません。
 むしろ、再建計画というものをつくって、そうして債権放棄もするかもしれません、一部。それから、残った部分について、もう少し返済義務のある債権が少ない方がいいなと片方が、債務者の側が思う。それに対して、今度は、ここまで債権放棄して再建計画をしてやれば、本当に企業が再生して、これはもうまた再び元気になって株価も上がってくるだろう、そのときに、自分のところは債権放棄だけでそれを指をくわえて見ていなきゃならないか、これもまたつまらないなということもあり得るわけです。
 そういうことの中で、それじゃ、もう少しこの債権と株式をスワップしておいて、そうしたその企業の再生、発展というものにみずからも均てんしたい、その利益に均てんしたい、こういうことが考えられて、双方に非常に、微妙なバランスですけれども、バランスのとれた利益の配分あるいはリスクの配分ということがそこで成り立って合意される、こういうことの中でデット・エクイティー・スワップは行われるというふうに私は考えておるわけで、これは私が考えているだけではなくて、いろいろ学者の先生方あるいは投資家等もそういうものだとして受けとめているということでございます。
藤島委員 私は、債務の株式化、これがすべて悪いとは思っていないんですけれども。本来、債権の市場価格みたいなもので形成された形で株式に転換されておれば、それはそれで実態としていいのかもわかりませんけれども、その株式にかえるときに価格をどれぐらいにするかどうかの際に、やはり債権放棄に比べればかなり実態が甘い形で数字になっているんじゃないかなという気はするのですけれども、首を横に振っておられますけれども。
 要は、余り債権放棄が大きくなり過ぎるとぐあいが悪い、そこで株式化ということでお茶を濁す、形を変えるというふうにとられる部分があるんじゃないかな、こう思うからでありまして、余り推奨すべきことじゃないんじゃないかなと思うんですけれども。金額も、八社で最近だけで四千八百億で、大変額が大きいわけですけれども、私はそんなふうに実は思っております。
 それから、次に中小企業対策でございますけれども、五月の月例報告を見ますと、四月の月例に比べてかなりよくはなっているようですね。例えば設備投資、これは「大幅に減少している」が「減少している」とか、個人消費も「横ばい」が「一部に底固さもみられる」とか、生産は「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」あるいは業況判断も「下げ止まりの兆しがみられる」が「下げ止まりつつある」と。総合的に、先月は「底入れに向けた動きがみられる」というのが「底入れしている」というふうになっておるんですけれども、この底入れしているというのも何かよく意味は難しいような感じはするんですけれども、ここは、これは両大臣にお伺いしたいんですが、底入れというのはどういうふうに考えておられるのか。
柳澤国務大臣 私も月例経済報告を聞く閣僚会議のメンバーでございますので、引き続いて、私、御質問を聞いておりましたので、私からお答え申しますが、底入れというのは、それが底であるということですから、その下には底はないということでありまして、つまり、下げどまる、つまりどんどん下降していくということではなくて、そこから先は横ばいか上昇だという状態、こういうものを底打ちとか底入れとかというふうに言うんだという御説明もいただきました。
塩川国務大臣 底入れと言っていますが、表現では底固めとなっておりまして、底が固まってきたということを言っておりまして、それは景気回復の宣言という早とちりをされたら困るということで、そうではなくして、経済の諸元ですね、物価であるとか卸売、輸出、そういう項目が大体二月、三月と横ばいでずうっときておって、ある程度は、微増ではございますけれども、ふえておるということだから、ここで底が一応固まったんではないか、そういう見方でございます。でございますから、決してこれで安心して景気がよくなるということではなくて、一段のデフレ対策を講じなきゃだめだということは当然であろうと思います。
藤島委員 東京に住んでいまして大きな駅とかデパートなんか行くと余り不景気という感じは確かにしないのですけれども、私の郷里の新潟の柏崎なんかに行きますと非常に不景気なんですよ。東京でそんなに感じないのに、田舎の中小企業は非常に不景気なんですね。
 中小企業金融公庫が発表した一―三月の動向調査であります業況判断DI、これだとマイナス三二・八、非常に悪化しているんですよ。底入れどころかどんどんマイナスになっているんですね、中小企業については。その辺はどういうふうに考えておられますか。財務大臣にお伺いします。
塩川国務大臣 私は、やはり中小企業は相当苦しんでおられると思っておりまして、まだ不況状態が続いておる。その一番の原因は、やはり受注がないということなんですね。そうしますと、この受注を可能にしていくことは、サプライサイドの改革をしなきゃならぬのだろう、特に中小企業においてはそのように私は思っておるのです。
 そこで、なりわいとしてやっておられる産業の中で、職人的中小企業は割となにしておるのですけれども、一応マニュファクチャー的な中小企業で、いわゆる重厚長大産業の延長線上におけるそういう中小企業は非常に苦しんでおられますので、ここなんかの救済は、技術面においてあるいは資金面において、別途の方法がなければいけないと私は認識しております。
藤島委員 柳澤大臣、何かコメントがあればいただいて、それでもう結構でございます。
柳澤国務大臣 今の中小企業の業況は、私も決して楽だと言うつもりはありません。むしろ非常に厳しいというふうに思っています。
 私の方は金融の側面から見させていただいているんですけれども、貸し出しが非常に減っています。減っているその状況のもとで、資金需要というものが非常に弱いということでして、そういうことからすると、業況が相当悪いんだろうな、こういうことを推測したり、あるいは今委員が御指摘になられたような指標で、そういうことを計数として見ている、こういうことでございます。
藤島委員 では、柳澤大臣、結構です。ありがとうございました。
 この点について、中小企業庁の方は、どういう認識のもと、どういう施策を今行っているのか。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 中小企業の景況でございますけれども、御指摘のとおり、中小企業金融公庫の調査、先生の御指摘のとおりでございますが、私ども中小企業庁、そして中小企業総合事業団で実施をしております景況調査におきましても、業況判断DIでございますけれども、昨年中悪化が進みまして、昨年の十―十二月期、そして本年の一―三月期はマイナス五〇・〇、こういう厳しい水準が続いておりまして、中小企業の業況は極めて厳しいものがある、このように私ども認識をしているところでございます。
 こうした厳しい環境のもとで、私どもといたしましては、やる気と能力のあるそういう中小企業までが破綻に追い込まれるような事態を極力回避する、こういう考え方のもとに、セーフティーネットの整備に万全を期している、こういう状況でございます。
 具体的には、昨年度、第一次補正予算で約二千五百億円、そして本年度予算で約一千八百五十億円の中小企業対策費を計上いたしまして、セーフティーネット保証・貸付制度を拡充いたしましたし、また、昨年の末には、売掛金債権担保融資保証制度、これを創設いたしたところでございます。さらに、本年に入りましてからも、中小企業の業況あるいは資金繰りが一層厳しくなっている、こういう状況を踏まえまして、早急に取り組むべきデフレ対応策といたしまして、三月の半ばからこのセーフティーネット保証・貸付制度につきまして、要件緩和等によりまして、対象となります中小企業の範囲を大幅に拡充をいたしました。さらには、特別保証制度の返済条件変更の一層の弾力化等々の措置を実行しているところでございます。
 他方、こうした困難な経済環境のもとで新事業に挑戦をするそういう創業あるいは経営革新、これを強力に推し進める、後押しをするということも極めて重要な政策課題でございまして、新事業融資制度の創設といった資金調達あるいは創業塾あるいは経営革新講座等々の人材育成、さらには技術開発、事業化支援等々、多面的な支援を行っているところでございます。
 今後とも、こうした対策の実効をさらに上げるべく、最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。以上でございます。
藤島委員 今御説明があったとおりだろうと思うんですけれども、恐らく中小企業庁始まって以来ぐらいに厳しい状況じゃないかなと実は思いますので、全力を挙げてやっていただきたいと思いますし、これは本当に今まだ底に入っていないので、まだ下がっていっているような状態だろうと思うんですね。それが実感じゃないかと思うんですね。ぜひひとつその辺を踏まえた上で、政府挙げて、経済産業省だけじゃないわけでありますので、しかし、その全体の元締めみたいなことでありますので、ぜひひとつ頑張ってやっていただきたいと思います。
 それでは次に、法案について、二、三お伺いしたいと思います。
 今回採用の予定の会社は、一応二%上乗せということになった場合、どれぐらいの数の会社が採用するというふうに見込んでおりましょうか。これは主税局長で結構です。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 現時点では、大和総研のアンケートですとか読売新聞社のアンケートというのがございまして、それらでは母数が余り大きくないということもありますけれども、多くの企業はむしろ結論を出していないというのが実態かと思います。
 いずれにしても、本年九月末の承認申請期限までに、各企業において、具体的な連結納税制度の仕組み、あるいはグループ各社、大きいところでは二百数十社の子会社、孫会社を持っているということでございますから、それらの見通し等を踏まえて、選択するかどうかの最終的な判断が行われていくものということで、現時点ではわかりません。
 ただ、一点申し上げなければなりませんのは、減収額を見積もるに当たりまして、昨年夏にアンケート調査をいたしました。約三千百社で、子会社まで入れますと一万七千社というようなところのアンケートをもとにいたしますと、いわゆる黒字、黒字とか、それから全部赤字とかというところは、逆に言うとメリットが全くない。連結納税は、何も、所得を小さくすることが目的ではなくて企業の体質改善ですから、そういうところでも採用するところがあるかもしれませんけれども、一応、すべて課税所得が減少する、少しでも減少するというようなアンケート調査のところが実は調査法人の約四割ということでございまして、むしろ、もともと六割ぐらいはそういう意味では所得は変わらないということでございまして、それをもとに実は減収額も試算している実態があるということでございます。
藤島委員 それではお尋ねしますけれども、この制度を今採用しようという、今のこの時期というのはどういうことからなんですか。
大武政府参考人 昨年、いわゆる企業分割税制というのを、法律を通させていただきました、企業再編税制というんでしょうか。ある意味でいいますと、この連結納税制度自体は、分社化して、それを全体としていわば課税をするという、いろいろなやり方が国によってもありますけれども、先進国で取り入れられている国々、アメリカとか、いわゆる倣ってこの制度を導入したということでございます。
 ある意味でいうと、先ほど来議論にもございましたけれども、企業として所得を減らすというよりは、どちらかといえば分社することによって例えば地域に合った雇用形態、賃金形態にするとか、あるいは自分の本体でやると難しいので分社化してそこに新規事業をやらせる、その赤字を本体と一緒で黒字で消せるというようなメリットということですから、企業の再編、構造改革の一環としてこれを導入していくということでございまして、ある意味でいえば連結決算とは少し違う仕組みなんですけれども、導入させていただいている、そういう意味では中長期的な日本の産業構造の再編に役に立つ、そういう視点で導入させていただこうとお願いしているところでございます。
藤島委員 私は、この制度自体はいい制度なんだろうというふうに思うわけで、どうせ制度をつくるのなら、やはり多くの企業が採用するようにならないといかぬわけですね。ただ制度をつくって、はい、満足ですというようなものじゃないと思うんです。
 その際、問題は二%の上乗せなんですね。これがやはり問題だろうと思うんですね。これをやると、新聞とかその他の情報なんですけれども、これがあるために経済界では、このメリットを逆にデメリットに感じて、余り採用しないというコメントがかなり出てきているようなんですね。
 そこで、これは一回採用するともとに戻れない、こういう仕組みにするわけですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 まさにこの連結納税制度は、先ほどもお話ししましたとおり、企業グループを一体として課税する、実質的に一つの法人として見るわけですから、その離脱なり取りやめが自由に行えるということでは、恣意的な租税回避行為につながってしまうというおそれがあります。したがいまして、連結納税制度を選択した場合には継続して適用するということを原則として、その取りやめは、やむを得ない事情があるときに限らせていただいているということでございます。
 ただ、一つお断りしなければなりませんのは、あくまでも一〇〇%子会社を対象にしているものですから、例えば一%他の株主に移転しますと、自動的に実は連結から外れてしまうということはあるのかと思います。
藤島委員 そういうふうに一回採用したらそのままいくということで、その年その年によって今までのやり方を採用したりこの連結納税制度を採用したりする、そういうことはできないということなのでありますから、私は、数年ぐらいは少なくとも採用する方でメリットがないといかぬわけですから、なかなか採用したくないわけですから、二%上乗せすることによって余りメリットを感じないところも多くなるわけですから、少なくとも数年間は二%の上乗せはしないで、採用して、創業者利益じゃないのです、最初の数年だけは少なくともメリットを感じて、その後は上乗せがきいてくる、そういう方式が望ましいのではないかな、それであれば非常に採用する会社が多くなるのではないかな、こう実は素人ながら思うわけですけれども、大臣、その点はどんなものでしょうか。
尾辻副大臣 今のお話は、両方の見方があるだろうと思うんです。
 今お話しのような見方もあろうかと思いますが、私どもは逆に、その数年間を置くと、そのときになってみないと連結納税制度を採用した方がいいかどうかわからない、そうすると少なくともそこまで採用を見送ろう、そこになってみて判断しようというふうに思う企業の方が多いだろう、こういうふうに思っておりまして、したがって、今仰せのようなことをやりますと採用する企業がほとんどなくなるだろう、こういうふうに考えておるところでございます。
藤島委員 それは全く私は違うと思うんですよね。それであれば、もともと、二%上乗せしたらだれも採用しないということになるわけですよ。少なくとも二年間は、上乗せしないことによるメリットはあるわけですよね。ですから、今の話は全く成り立たない話だと思うんですよ。
 要するに、二年間だけは少なくとも採用してそのメリットを感じて、二年か三年でもいいんですけれども、その段階になったらもとへ戻せないからそのまま二%の分がきいてくるという方式ですから、今の話ですと、それがわからないからその間は採用しないということなんですけれども、わからないことはないんです。二年、三年は少なくとも二%の上乗せがないわけですからメリットはあるわけですよね。
 私は、これは、数字によると八千億ぐらい上乗せしないと実質減税になってしまう、だからどうしても中立にしたいということから二%という数字が出てきているわけですけれども、後で時間があれば減税先行論について議論したいと思うんですけれども、要するに、この分野も、五年なら五年後につじつまが合う、中立になればいいのであって、ここは、景気対策を含め、やはり減税先行的な意味で企業にメリットを与えて、それで採用させて、その後この上乗せ分は自動的にきいてくる、こういうふうな形が望ましい、こういうふうに考えているんですが、大臣はいかがですか。
塩川国務大臣 そういう見方もあると思いますが、しかし、いずれにしても、この付加税をつけたということは、やはりその当時、つまり昨年の秋の段階におきましては付加税の問題はもっと慎重に考えておったんですけれども、財源による歳入欠陥が余りにも大きくなるので埋め合わせの意味においてということでございますので、これはそういう深い選択の思想じゃなくて、少し税のバランスをとるという意味が多かった。
 したがいまして、この法律が施行されまして、早急に実態を調査し、経済界の意見を真摯に聞いて、それによるところの対策は相談していきたい、こう思っております。
藤島委員 昨日もあれですけれども、大臣はまずやってみてというようなことをおっしゃっているんですけれども、こういう税制は、まずやってみてというだけでは済まないような大きな意味を持っているというふうには思うんですけれども、いずれにしても、この上乗せについて非常に批判が多いし、もし結果的に、先ほど主税局長の答弁ありましたけれども、決めていないところが全部やらないということになったら、何のための改正かわからなくなるということを厳しく指摘しておきたいと思います。
 次に、ちょっと税金の使い道にかかわる公共事業の問題なんですけれども、かつて私は本会議で実は質問した問題ですけれども、景気対策のためも兼ねて公共事業をかなりまだやっているわけですけれども、本当に、計画をして初年度の投資をしてから完成まで二十年近くもかかってやっているという公共事業は結構あるわけなんですね。その例が私は環状六号線の例だろうと思うんですけれども、これについて、国土交通省、計画から今の状況を説明してください。
澤井政府参考人 ただいま御指摘の山手通りでございますが、全体としては、品川区から板橋区に至ります全長約二十キロメーターの環状道路であります。ただいま仰せのものにつきましては、そのうち渋谷区から豊島区の約八・八キロ、平成二年度から用地買収を始め、おおむね平成十年度以降、道路の築造工事に入っております。
 この道路の一つの特徴は、首都高速中央環状新宿線の整備にあわせて事業をやっているということでございまして、今後、平成十八年度に首都高速とあわせまして全線供用の予定で、現在事業を進めていると承知しております。
藤島委員 金額はどれぐらい、どういうふうに投資してきていますか。
澤井政府参考人 ただいま年度別の事業費が手元にございませんが、全体事業費といたしましては山手通り分で六千三百二十億円、うち用地補償費が五千六百八十億円、約九割でございます。工事、測量試験費が六百四十億円という金額であると承知しております。
藤島委員 全体事業費は六千億円、最終的には恐らくもっと大きくなるんだろうと思うんですが、そのうち用地補償費が五千六百八十億円。そうしますと、工事費は六百四十億円なんですね。十三年度まで見ますと、工事費はまだ二百四十億円ですよ。
 先ほど、大分工事をやっているようにおっしゃっていますけれども、実は、あそこを見ていただけばわかりますように――要するに買収はほとんど済んでいるわけですね、全体が。ただ、そこにさくをくくって、そのまま道路をふにゃふにゃ曲げてずっとあるわけですね。恐らく、民間であればそんなことしないと思うんですよね。例えば開通するまでは一部駐車場で貸すとか、いろいろ工夫をすると思うんですが、税金であるがゆえにそういう工夫も何にもやらない。結局、何にも使われないまま、本当に高価な道路沿いの土地を買収したままずっと寝せてあるわけですね。これが実態なんですよね。どなたが見ても、歴然としてわかる。
 私は、特に今、こういう景気対策で公共投資する、それ自体は、ですから必ずしも全部否定すべきじゃないと思っているんですけれども、二十年近くかかっているわけですよ。平成二年度にやりまして、十八年度に供用予定ですけれども、恐らくおくれるんだろうと思うんですけれども、二十年近くその成果が何も出ていない。要するに、六千数百億もかけていながら成果が何も出ていないんですよ。
 私は、あっちこっち全部いろいろ手がけて、本来集中的にやればそれこそ五年か七年でやれるものを、あっちこっちばらばら税金をばらまいてやっているがゆえに、みんな、急いでやることの結果に比べれば三倍も五倍も期間をかけて、その二次効果があらわれていないと。
 確かに、用地買収費で金が出ていくことが必ずしも景気対策にゼロというわけじゃないんですけれども、私が言いたいのは、やはり道路は早く開通して、その効果を国民、納税者に還元する、これが必要だろうと思うんですよ。
 例えば道路、山手通り、込むときはかなり、その八・八キロ抜けるに恐らく小一時間かかるんですよね。これを、トラックにしても、ずっとみんな乗っかって待っているわけですね、抜けるまで。ですから、十分ぐらいであれは抜ける距離ですけれども、一時間かかるわけですよ。
 そうすると、普通の人が八時間労働をするとすれば、一日片道だけそこを通るとしても、一時間といったら、その人の八分の一の要するに賃金分がかかるわけですね、余計に。あるいは、ガソリンも恐らく、停滞しているからかかりますよね。そうすると、その分が結局、トラックであれば全部積み荷に上乗せされている、高いものになる。そうすると、国際競争力にも絡んでくるわけですね。
 したがって、私は、せっかくやるのであれば、そういうところはともかく完成を急いで、二次効果を生むようなそういうものに今むしろ集中的にお金を投資すべきだというふうに思うんですが、財務大臣、どういうふうにお考えですか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
塩川国務大臣 大型の公共事業でそういう懐妊期間の長いのが随分ございますし、これは用地買収が原因であることはもう申すまでもございません。どうして急ぐかといえば、やはり住民の理解と協力が一番大事だと思いまして、そこをせかすということが必要だ。
 それと、私はかねてから思っておるんですが、こういうような道路の建設等について、PFIの方式を、民営にやらせてみたら案外素直に早くやるんじゃないかなと思うたりしておるんです。そのかわりに、民営が、PFIの事業体が地元と相当利害の調整をうまくやっていくのではないかと思うて、今後、新しい公共事業のあり方として考えるべきだと思っております。
澤井政府参考人 本件山手通りにつきまして、若干具体的な御説明を申し上げたいと思います。
 ただいま先生おっしゃいます、できるだけ重要なところに集中投資をして、効果をできるだけ早く出すべきであるということは、仰せのとおりだと私どもも思っております。
 そうした中で、先ほども少し申し上げましたけれども、この山手通り、首都高速のトンネル工事と一体でやっているというのが一つの特徴でありまして、通常の街路整備であれば、例えば交差点から交差点までという、それだけで投資効果を発揮できる短区間でやって、そこを先に供用するということはございます。ところが、首都高と一体でございますので、この場合、首都高の中央環状新宿線は、池袋線と渋谷線をつなぐ環状機能でございます。これをつながないと一体としての効果がないということで、結果、山手通りもそれとあわせて、全体、大きな区間、八・八キロ、九キロというのは大変街路事業の事業単位としては大きい区間になりますが、そういうところでやっている。
 また、技術的にも、下のトンネルを掘る、通気孔を上に出すとか、あるいはトンネルも、一部開削工事でやるとか、あるいは高速道路の出入路、地下から地上に至る部分、こういった部分がございますので、どうしても、そういったところはそういった工事が終わってから上の街路を整備するということになります。
 そういった中で、そういった下の首都高速道路の工事と関係ない約一キロの部分でございますが、これは先生まさに仰せの趣旨でございますけれども、一キロについては十八年度ではなくて十五年度に先に供用する。三区間に分けた合計が一キロでございます。そういった対応をしていますし、また、そこまでいかない場合にも、一部歩道状の空地として歩行者がそこににぎわえるような空間をつくったり、あるいは一部荷さばきスペース、これは道路の中でも停車している車による渋滞というのは大変大きいですから、荷さばきスペースとして活用できるところをするというような工夫もしております。
 いずれにいたしましても、私ども、今の御指摘の趣旨も踏まえまして、今後さらにそういう工夫もしていきたいというふうに考えております。
藤島委員 確かに今地下を、高速をやっているという事情はあるんですけれども、本気になって工夫すれば、まだまだ、さっきおっしゃったように、交差点から交差点だけでも、それこそ数百メートルあるいは一キロでも二キロでも大変な効果があるわけですよね。一カ所が詰まっているから全部詰まっているわけじゃなくて、交差点ごとに結構渋滞があるわけですから、ある交差点だけを先に通すというのも十分効果があるわけですよ。だから、そういう点を本気になって工夫すれば、単に地下を工事やっているそれとの連動だという、そんなものだけじゃないと私は思うんですよ。
 たまたま環状六号の話をしましたけれども、井の頭通りにしてもそうなんですけれども、この間、ある一部完成してきれいになりました。それはすばらしい道路ですけれども、あと、まだ詰まっているわけですね。ですから、ああいうところも、用地買収を強制執行するのならして急ぐべきだというふうに思うんです。渋滞していたらやはり公害の問題だって大変なんですよね、近所の人たちは。逆に、近所の人は、買収云々といいますけれども、むしろ早く通ってくれた方がいいわけですよ、渋滞しているとかえって公害なんですからね。
 だから、要するに第二次効果をどんどん生むような形で、工夫をどんどんしてやってほしいということを再度申し上げておきたいと思いますし、先ほど大臣の方からおっしゃった民活というか、民の利用というのも本当にこれから重要な視点だろうという感じは強く持っていますので、ぜひ、その辺も工夫の中に入れてやっていっていただきたいと思います。
 それから、次の質問ですけれども、税務署の対応についてちょっとお伺いしたいと思います。
 私はこの三月に申告納税をやったわけですけれども、つい先日になって実はこういうのが一枚来まして、七万五千円を払え、こういうやつなんですよ。何かわけがわからなくて、あたふたと家内に行かせたんですけれども、申告の書くのが間違っているというんですよ。
 私、これは自分で書いたんですけれども、一生懸命勉強して書いたつもりで間違っていないと自信を持っていたんですけれども。というのは、本を書いたその原稿料なんですね。それが、雑所得なんですけれども、ここの所得の内訳の欄で源泉徴収額、一割引かれているんですけれども、そこの欄ではなくて雑所得という欄が別にあるものですから、これは去年はなかったんです、こういう欄じゃなかったんですよ。去年のを見ながら書いたんですけれども、要するに非常にわかりづらいんですよ。
 家内が一回行ったら、こう言われた。そういえば、七万五千円という金額はそうなんですと。これは余計払えというんじゃないんですよ。払い足りなかったわけでもないし、返してくれるというんじゃなく、その書く欄が間違っていて合っていないだけなんですよね。それで、結局、呼びつけられて行ったら、判こを持っていっていないので、また翌日に判こを持ってこい、こういう話で、大変高飛車に言われてえらい憤慨をしておったわけですよ。
 それで、これは大臣にお伺いしますけれども、税金というのは絶対に取るという形なのか、納めてもらうという感覚なのか、ちょっと大臣の感覚をまずお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 国民から見たら、それは納めてもらっているというのが当然なんですよ。しかし、担当の役人はサラリーマンですから、しかも身分を保障されていますから、ぼろくそにお客さんに言うても首になるわけじゃなし、そうすると、やはりどうしても高飛車になりますね。ですから、私は税務署に行かないんです、かわりの者が行かな、腹立ってしまうから。
村上政府参考人 今御指摘の件につきましては、私も報告を受けております。
 個別の事案で先生のことですので、ちょっとここで御説明するわけにいかないんですが、更正の請求の件で、厳密に言いますと法律上は特段問題はないんですが、うちの職員の応接に確かに不適切なところがあったと思います。この場をかりまして、深くおわびを申し上げたいと思います。
 我々は、常日ごろから納税者の皆さん方に、親切丁寧な応接を心がけるように指導しているつもりでございますが、ただいまの御指摘を踏まえまして、さらに一層指導を強化したいと思っております。
 それから、申告書のお話が出ましたが、我々といたしましては、できるだけ皆さん方に書きやすい申告書ということで、三年かけて一応改正したつもりでございます。一応、四十年ぶりの全面改正であったわけでありますが、ただ、昨年と変わっておりますので、やはり昨年を見て書いておられる納税者が大変多いわけですね。その場合にちょっとお間違えになるケースもあろうかと思います。今の御指摘を踏まえまして、申告書というのは基本的に毎年若干変えておりますので、また、皆様方の御意見を踏まえまして、できるだけ書きやすい申告書。
 それから、手引というのをつくっておりますが、これも全面改正をしたのでありますが、アンケート調査等を見ましても、多くの納税者の方はその手引を見て書いておられます。ホームページで、「計算(シミュレート)コーナー」等々もあるのでありますが、そういった手引につきましても、よりよい方向で改善してまいりたいと思っております。大変失礼いたしました。
藤島委員 今御答弁があったとおりだと思うんですけれども、やはり、こういうのは素人が書くわけですから、素人でも本当にわかりやすいように、要するに、税務署が、国税庁が後処理に使いやすいようにという観点じゃなくて、書く人間が素人なので税理士が書くわけじゃないんですよね。書く人間がわかりやすいように、十分に手引なんかもわかりやすい素人向けにするとか、いろいろやはり工夫があっていいんだろうと思うので、その点の工夫を再度お願いしたいのと、やはり対応については、それは税金を払うのは国民の義務ですからそれ自体は何ということはないんですけれども、態度が非常に不快感を持つケースが多いんですよね、聞いてみますと。ですから、そこは十分に教育をしていただいて、なるべく気持ちよく納めるというか、そういう形に持っていっていただきたいと思います。
 ただ、それは悪いことをして脱税しようとする人もいるんですから、そこはまた別の問題でありまして、みんなが脱税するようなつもりで税務署が対応すると、いろいろまたトラブルになると思うので、ぜひ応対の改善を教育してやっていただきたいと思います。
 終わります。
中野(清)委員長代理 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 昨年の企業組織再編税制に引き続いて、企業の組織再編成を促進させ、我が国企業の国際競争力の維持強化と経済構造改革に資するためとして、一体的経営がなされ、実質的に一つの法人と見ることができる企業グループを一つの納税単位として課税する連結納税制度を我が国に創設するというのが、今回の主な内容になっているかと思いますが、そこで、きょうは、法案提出に至る背景と経緯というところから伺っていきたいと思います。
 経団連を中心とする財界は、この数年、経済のグローバル化のもとで、国際競争力の強化ということを理由にして、グループ経営重視の企業組織再編に沿った独禁法、商法、企業会計その他諸制度の見直しを強く求めて、法人税制も国際的に遜色のないものに整備していく必要性というのを要求し、働きかけておりましたが、政府もこれらにほとんど大体こたえてきた。これがこの間の流れではないかと思いますが、まず、この辺のところから伺っておきたいと思います。
尾辻副大臣 ただいまの御質問に対しましては、昨日来繰り返しお答えいたしてまいりましたので、繰り返しはもう申し上げません。今お述べになったとおり、こういうことをお答え申し上げたいと存じます。
吉井委員 それで、少し細かくも見ておきたいと思うんです。
 かなり、財界の方からの猛烈な働きかけといいますか、そういう中で、九七年に独禁法改正があって、企業再編の最大のてことなる純粋持ち株会社が五十年ぶりに解禁となりました。その後、企業組織再編に関する法制が次々と変えられて、九八年の三月に金融持ち株会社を解禁、九九年四月に改正証取法、企業会計原則による連結ベース開示制度の導入、それから、九九年十月に産業活力再生法、十月には改正商法による持ち株会社の設立を容易とする株式交換・移転制度を創設し、昨年四月、改正商法による企業分割制度、労働契約承継法施行など、本当に数多くの制度の改定が行われてまいりました。
 法人税制の面で見ますと、法人税率を、九八年、九九年両年度で、十分な課税ベースの見直しもない中で、改正前の三七・五%から三〇%へと一気に税負担の軽減が行われました。さらに、前述の制度改正に対する税制上の特例措置も例外なく措置されて、昨年度改正では、商法改正による企業分割制度を受けて、課税の繰り延べを中心とする包括的な企業組織再編税制を創設し、産業界の企業再編の後押しをうんと税制面からもやってきたということは昨年も議論したところです。
 財界にとって、連結グループ経営の基盤として残された最大の課題が連結納税制度の早期導入というふうに位置づけられておったと思うんですが、まずこの辺の考え方というものを伺っておきたいと思います。
大武政府参考人 これからの企業経営というのは、やはり、グローバル化の中で、世界の商法なり企業の原則というものにある程度準拠していかざるを得ないということが背景としてあるかと思います。そういう意味では、まさに十三年の十二月の税制調査会でも、今申し上げたような意味で、「わが国においても、二十一世紀のわが国経済のインフラとなる連結納税制度を構築することが適当である」ということで、御答申をいただいているということでございます。
吉井委員 さらにもう少し、くどい感じになりますが、後づけて伺っておきたいんですが、経団連を初めとする経済界は、早くから連結納税制度の導入を求めてきておりました。九五年、まあ、九四年ごろだったかと思いますが、衆議院にも規制緩和特別委員会をつくられたりとか、行革、規制緩和の議論が随分なされて、その中でも既にそういう議論はあったわけですが、九五年秋に各国の連結納税制度の研究会を立ち上げ、九六年三月に、導入の際の基本的な仕組みというのを経団連が提言を発表し、九五年十月十一日の経団連の税制改正に関する提言の中では、企業経営の効率化の観点から、近年、分社化、子会社化が進んでおり、こうした企業経営形態の多様化に応じた税制が求められる。既に先進諸国では連結納税制度が一般的となっており、税制の国際的整合性の観点からも、連結納税制度の導入を急ぐべきであると。
 九六年三月二十六日の経団連の連結納税制度導入に関する提言では、分社化か社内部門での経営かの選択は、本来中立であるべきで、事業形態によって税制上の不利益があってはならない。親子会社の経済的一体性を重視した税制として、連結納税制度を早期に導入すべきである。純粋持ち株会社が解禁されれば新たな企業経営形態の選択は可能となるが、この制度を有効に利用するためにも連結納税制度の導入が前提となると。
 ですから、持ち株会社解禁と一体のものとしてこれは随分議論されてきておったわけですが、その中でも、今お話あった、あわせて税制の国際的な整合性を図る観点から導入を急ぐべきである、財界筋の方は、大体九五年、九六年には、この立場から旧大蔵省に、政府の方に検討の要求は出されていたと思うんですが、この点はどうですか。
大武政府参考人 政府税制調査会におきましても、世界的な潮流であります企業分割、合併あるいは連結納税という検討を幅広く行わせていただいておりまして、実は平成八年の十一月に法人課税小委員会というのの報告書が出ておりまして、そこにおきましてもやはり連結納税というのが、
  我が国企業の活性化を図る観点から企業分割を促進するため、あるいは企業形態に対する税制の中立性を維持することをその理由として、連結納税制度の導入が必要であるとの意見がある。
  本小委員会においても、我が国企業は新たな事業を早急に構築するべく複合経営を推進しており、事業効率の向上のため分社化が必然的な企業行動になっていること、資金調達のグローバル化に伴い連結決算ベースの企業業績に関心が高まっていることなどから、連結納税制度の導入を検討すべきであるとの意見があった。
というようなことで検討を行い出したところでございます。
吉井委員 私、そのお答えを予定していまして、少し詳しく伺っておったんですが、九五年、九六年当時のこういう財界の要望に対して、実は九五年秋から、今のは九八年のお話をされたんだろうね、その前の九五年秋から九六年まで、もちろんそこで政府税調は課税ベース拡大を中心に検討しているわけですね。四十年ぶりの法人税制の抜本見直し作業を法人課税小委員会で進めているわけです。九六年十一月に最終報告を出しておりますが、この連結納税制度導入の是非についてのもちろん検討も行い、そのときは、「解決すべき問題点が多々存在する」、「前提条件となるべき考え方・実態の定着が未だみられていない」として、時期尚早、今後の研究課題として導入に消極的であったというふうに思うんですよ。
 これは、当時、九六年にある論文の中でも紹介されておりましたが、当時大蔵省主税局の皆さん方は、この連結納税制度導入については絶対反対という態度を示しているということが紹介されたり、当時の川北主税企画官の語っている話として紹介されているのは、経済界の主張は税金の負担が大きくなるので分社化がやりにくいということです。では、なぜ分社化するのか。彼らは何かというと背水の陣のようなベンチャーのイメージを持ち出しますが、親会社が丸抱えで出資してつくる子会社のどこがベンチャーでしょうか。しかも、お上はこれを税制面で優遇するだなんて、分社の多くは、人件費を下げてコストダウンを図るとか、天下りの受け皿をつくるためというのが実情でしょう。整合化が言われる米国の連結納税だって、本来の成り立ちは逆なんです。かつて資本金の小さな企業への税率はかなり軽減される制度があって、この恩恵を受けようとする大企業が片っ端から分社化を進めた。その行き過ぎを封じるための連結納税なんですねと。
 この九六年のころは、主税企画官などもきちんとそういうなかなか鋭い指摘をしておられたと思うんです。それがなぜ、その後この連結納税の、今回のようなものへ検討することになっていったのか、その辺が、どこがどう変わっていったのか、伺っておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 私が読みましたのは、先生の言っておられる一九九六年の法人小委員会の税制調査会の報告であります。その中でも、まさに今先生の言われたアメリカの連結納税制度の、言ってみれば、生まれは、先生が言われたとおり、どちらかといえば節税を防ぐというような意味があったということもその中には出ております。
 ただ、結論的に申せば、連結納税制度については、まだ、その意味では、ここで読みますと、
 今後、商法や企業会計の分野で連結決算制度等がどのように制度化され定着するか、企業経営の実態が連結納税制度に相応しいものとなるか、そうした変化を踏まえて国民がこの制度をどう認識するか、を注視していく必要がある。仮に同制度を導入する場合には、法人課税の法体系全般を、他税目への影響も含め根本的に再構築することが必要となる。さらには、租税回避行為防止が可能か、税収減にどう対処するかも課題となる。
これらを踏まえて、研究課題とすべきということになっておりまして、その後のいわば動きというのは、御承知のとおり、連結決算制度というのがまさに商法等で導入され、それが徐々に定着されたという背景がございまして、その意味では連結納税制度へ踏み切るということになっていったということかと存じます。
吉井委員 当時の、かなり消極的といいますか、問題をかなり多く指摘していたその観点から、やはり、変化が起こっていったのを少し後づけて見ていきますと、さきに述べたグループ経営重視の企業組織再編に沿った独禁法、商法、企業会計その他諸制度の見直しがあったこと。
 このターニングポイントになったというのは、九八年十月二十六日にサンフランシスコで日米包括経済協議投資作業部会が開かれて、ここでアメリカ側から出された対日直接投資環境の改善に関する提言、その冒頭に、日本政府は持ち株会社制度を合法化した、しかし、この制度には連結納税制度が伴っていないので余り利用されていない、米国政府は日本政府に、連結納税制度の早期導入と関連税制の早期検討を提言すると提言し、大体この時期を契機といいますか、そこを受けて財務省で、旧大蔵省で検討していった、それが検討への大きなターニングポイントになったのではないかと思いますが、この点はどうですか。
大武政府参考人 御指摘の点でございますが、税制調査会を事務局としてやっている我々といたしましては、そのようなことよりは日本の実態の変化というのがございまして、経営形態が次々とまさにそういうグループ経営化する中で、やはり税というのは中立でなければならないものですから、そういう意味では、経営自体がそういうグループ経営化する以上は、そうした中立的な税制、すなわち連結納税制度のようなものを検討していく必要があるということから、実は検討を累次やってきて、そして今日に至ったということかと存じます。
吉井委員 その後、アメリカ側のそういう包括協議の中での提言もありましたが、同時に、その後、小渕首相直轄の産業競争力会議、IT戦略会議などの財界と政府の審議会での発言をずっと見ていると、九九年春の、例えば第二回産業競争力会議での今井新日鉄会長、当時の経団連会長、環境整備の第一は、企業組織形態の多様化を進めるための法制、税制の整備で、具体的には、会社の分割や分社化を早急に進めることができるよう、商法や関連税制を整備することが必要だ。第二は、税制での国際的なイコールフッティングで、特に連結納税については、今後、持ち株会社やグループ経営のツールとして不可欠であり、二〇〇一年度の導入をお願いしたい。その後の第三回産業競争力会議での今井さんの発言でも、税制に関しては、連結納税制度の早期導入が最も重要だ。
 ですから、こういう内外の圧力といいますか働きかけによって、政府税調は、その二カ月後の九八年十二月の九九年度税制改正答申で、法人課税小委員会での連結納税制度導入の本格的な分析、検討を行うことを答申し、そして、産業競争力会議があった同年夏の九九年七月から法人課税小委員会での検討を再開。
 これが実際の流れといいますか経緯ではないかと思いますが、そして、昨年十月の政府税調総会で、法人課税小委員会最終報告「連結納税制度の基本的考え方」に至ったという。この間の流れというのは大体そういうふうになっていったのではないでしょうか。当初の消極的だった考え方の大蔵省がぐっと変わっていったというのは、大体、この九八年の秋のターニングポイント、その後の産業競争力会議、IT戦略会議などでの財界筋の要望を受けて、そして連結納税についての検討を進められて、これが昨年十月のものになっていったという、全体としての流れは大体こういうことなんじゃないですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま先生が言われた一九九八年の十二月の税調の答申の中も、なお、いわば両論みたいなものが出ておるわけです。ちょっと読ませていただきますと、
 連結納税を行うことができるようにするために措置しなければならない連結納税制度固有の問題のみならず、個々の法人を課税単位とする体系と企業集団を一つの課税単位とする体系との間の課税関係の整合性を
先ほど申した中立性でございますが、
 確保するための措置など広範な論点について、専門的・実務的な観点から、十分かつ慎重な検討を行うことが不可欠です。このような検討が十分に行われないまま制度を構築する場合には、様々な形で租税回避が行われるおそれがあります。
  さらに、仮に連結納税制度が導入されるとした場合には、企業集団内の取引が内部取引化され未実現のものとして取り扱われることや、法人の利益が他の法人の欠損金と相殺されることから、約六五%の法人が赤字法人であるというわが国の現状に照らせば、大きな税収減が生ずることは避けられないと考えます。
  連結納税制度については、以上のような論点を含め、法人課税の体系全般に及ぶ検討を行う必要があり、まずは、専門的・実務的な観点から、法人課税小委員会において本格的な分析・検討を行うことが適当
ということで、さらに検討を行っていく。
 しかし、いわばこの間には、先ほど申されましたように、商法なりそういうもので実態として連結決算が広がっていく、そういう中では、税だけが課税の中立性を損なって連結納税をつくらないということはできないということになり今日に至ったということかと存じます。先生の言われたような意味で、アメリカの云々のというのは、我々の、いわゆる、少なくとも政府税調の場では余り関係がないのではないかと考えているところでございます。
吉井委員 私が言いましたのは、ターニングポイントは、アメリカの提言あったんだけれども、その後、産業競争力会議その他での財界側からの要望を受けてということを言っています。アメリカだけの話をしているんじゃないんです。
 そして、昨年の十月の総会での最終報告に至ったわけですが、これについてどういう評価を示されているかということもこの部分では結論的に見ておきたいと思うんですが、やはり経団連の方は、今回の連結納税制度の導入について、「経済界の長年の働きかけが実を結び、ようやく」「来年四月から」、これは昨年の十二月の座談会で出ている文ですが、来年四月から、つまり、ことし四月から、「導入が現実のものとなったことは、画期的だ」「純粋持株会社の解禁をはじめとする連結グループ経営促進のための一連の環境整備の総仕上げ」と評価しているわけです。経済界の悲願であり、昭和六十年からの一連の税制抜本改革の到達点である、これは経団連本部の税制グループ長の御発言ですが、そういうふうに長年の悲願が達成された、これが財界の見方だということを見て、この部分は締めくくりにしておきたいと思います。
 次に、一方、ではこの純粋持ち株会社をてこにして、働く皆さんの犠牲のもとで企業再編リストラというのが随分加速されました。解禁された持ち株会社は、みずからの事業を行わないで子会社の株式を所有して支配することを専ら目的とする会社です。
 この総司令部たる企業形態の持ち株会社こそ、今日、国民あるいは労働者にとって重大な企業リストラを進めている最大の総司令部となっているわけであります。今日でも、持ち株会社化をてことし、軸とした各種事業部門の分社化、あるいは他企業グループの同一事業との合併による企業組織再編が進んでおりますが、それによって、例外なく労働者のリストラ、人減らしが起こっていることは、これは特に深刻になってきた中で、昨年の秋の予算委員会でも、当委員会でも、私たちはこれを取り上げてまいりました。
 企業が分社化や組織再編を行う最大のメリットというのは、法的な別会社になることによって、親会社とは別の独自の給与体系、人事体系を持てることにより、労働条件のドラスチックな切り下げと人減らしができるからではないかというこの問題について、実はかつて経団連の弓倉さんが、事業持ち株会社でも子会社は持てるが、純粋持ち株会社なら、子会社ごとの賃金や労働条件の格差、子会社の売却もやりやすくなると。子会社の売却もやりやすくなるから思い切ったリストラができると。結局、持ち株会社、分社化問題というのは、こういうリストラをどんどん進めるという面からのメリットを特に強調してきたわけです。
 そこで伺いますが、昨年の二月二十八日の当委員会においても私は質問しました。それは、産業活力再生法で、みずほフィナンシャルグループは三千人のリストラを進め、法人税法改正で一千百九億円の減税となるじゃないか、このことを試算した数字も示して伺いました。
 昨年のこの会社分割制度創設に伴う組織再編税制で、尾原政府参考人は、今回の措置によって初めてこの会社分割制度が動くんだ、会社分割制度が行われなければ広く行われないという答弁があり、宮澤大臣は、過ぎました一年でどういうことが起こったかというようなことが計算できるか、専門家に研究してもらいますという答弁がありました。
 一年たったわけですが、ですから、少なくとも、この銀行の五大グループに絞って、あらかじめ昨日も言っておきましたから伺いたいんですが、みずほとUFJと東京三菱、三井住友の四大グループに大和ホールディングス、この五つのグループについて見たときに、一体、この産業再生法で、リストラの面ではどれぐらいのリストラが今予定されており、そして、全体のことではなかなか計算は難しいようなお話でしたから、登録免許税の軽減免の分野だけに限って、一体幾ら、この法人税法改正によって、一年たってみて、税金が軽減免されたのか、これを伺いたいと思うんです。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 昨年の当委員会におけるやりとりにつきましては拝見させていただいておりますが、十三年度の税制改正におきましては、この企業分割税制による具体的な個別企業の試算に必要なデータというのは当方では入手できませんので、具体的な減税額については把握できない。したがって、お答えできないということは御了解いただきたいと思います。
 ただ、登録免許税につきましては、先般、衆議院の経済産業委員会におきまして、金融庁の方が、産業再生特別措置法に基づいて計画認定をした金融機関及び登録免許税の減税額というのを、御質問に答えまして、金融庁は、みずほフィナンシャルグループ百四十二億円、それから三菱東京フィナンシャル・グループ六十三億円、UFJグループ五十五億円、大和ホールディングス四十二億円という答弁があったと承知しております。
吉井委員 三井住友の三億七千万円がさらに入っていると思うんですが。
 それで、これらをざっと合わせただけでも、一万八千七百二十五人の人がリストラされ、それで、税の面では、今のお話、全部合わせても三百五億八千五百万円、登録免許税分だけでの軽減免が行われているんですね。ですから、税制中立だ何だとか言いながら、非常に大きな特典というものが与えられている。
 では、そのことを見れば、結局、特定の巨大企業グループに継続的な減税、大きな減税を行う。連結納税制度というのはやはり、減税を企図するものではないということを一方では言っておられるんだが、実際には大きな減税効果を生み出しているというのが、今のお話を伺っておっても、実態としてあると思うんですが、ただ、皆さんの立場としては、連結納税制度は減免を企図するものではないという立場なんですね。そのことだけは確認しておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほども御答弁させていただきましたように、連結納税制度というのは、そうした国際的な潮流、そして、しかもグループ経営という形の企業実態、そういうものを勘案して中立的な税制を構築するという観点から導入を図るというものでございます。
 結果として大きな減収を伴うわけですけれども、それは、やはり課税の実態、中立性をすれば、そういう税制を組んでいくということが必要なことなのではないかと思う次第です。
 なお、この連結納税制度は、先生が御質問のように、いわゆる大企業だけを対象としておりませんで、中小企業を親法人とする企業グループの連結納税制度を採用するというのも、実はかなり見られるのではないか。特に日本の場合には、オーナー型の経営というのはむしろ分社化でやっているケースがございますから、このあたり、我々の実態調査では十分把握できていないのですけれども、かなりそういう企業にも恩典のある制度なのではないだろうか。しかも、その場合には軽減税率が適用できるとか、そういうところもあるということでございます。
吉井委員 法律のことですから、建前上、それは差をつけないのは当たり前の話なんですよ。しかし、実態としては、巨大企業グループほど大きな減税の恩典を受けるということはこれまた事実です。
 では、そうおっしゃるのだったら、もう一遍確認しておきたいのですけれども、現実には、グループ内企業の所得を通算することにより、赤字子会社があるほど、これを採用する特定の巨大企業グループに大きな減税をもたらす、こういう効果が出てくることは事実だと思うのですが、この点はそうですね。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 現在、御存じのとおり、黒字法人の割合が大企業でも五割、それから中小企業では三割しかありません。結果として、実は、法人税のかなりは、いわば特定のというか、ある非常に少数の企業によって賄われているというのが実態でございます。そういう意味では、結果として、赤字法人と通算することによって減税額が、大きな、今法人税をたくさん払っている企業に大きく働くということは、それは事実だと存じます。
 ただ、今申し上げたように、中堅、中小企業におきましても、分社したところで赤字企業をたくさん持っている、そういうようなところは、結果としてかなりの節税になるんだろうということは言えるのかと存じます。
吉井委員 これは税調でも、この制度をとることにより、その結果、特定の納税者の税負担を軽減することになり、さらには全体として相当巨額の税収減になりかねない、これは九六年の法人課税小委員会の報告ですが、それから、連結納税制度は減税を企図するものではないと言うが、実際には、例えば、青山監査法人の出している、編んだものでも、「総解説 連結納税制度」の中でも書いてありますが、「連結納税制度の一番のメリットは、連結グループとして節税できることです」これは、ですから、巨大になればなるほど、巨大なグループとしてやればやるほど、大きな減税のメリットが出てくるということははっきりしていると思うのです。
 それで、今おっしゃっておられた、それでは、制度上は企業規模の大小にかかわりなく活用できる、これはそうなんですが、では、一体どれぐらいの規模の企業が適用しようとしているのか。これは、把握しておられたら伺っておきたいです。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 私どものアンケートも、ある意味では、三千百社、その下にある全部を合わせても一万七千社と申し上げましたが、現在の法人数は約二百六十万社、そういう意味では全体像がわかりません。したがって、我々のアンケートというのは、あくまでも大きな企業を中心にやらせていただきました。
 ただ、現実に、この問い合わせというような意味では、まだそれも統計はとっておりませんけれども、各税務署あたりにも問い合わせが結構来ているというふうに聞いておりまして、そういう意味では、この連結納税というのは、今一部に出ている大企業以外に関心を持っているところもあるということは事実かと存じます。
吉井委員 関心を持つというのと、実際に巨大な企業がグループとして大きな節税メリットなりあるいは減税の恩典を受けるということとは全然違う話だということを申し上げておいて、次に、この導入に伴う税収減に対する財源措置の問題について伺っておきたいと思います。中小企業の退職給与引当金廃止の影響の問題です。
 退職給与引当金の利用状況というのは、資本金階級別に見るとどういうふうになるのか。資本金の一億円未満、十億円以上、参考までに五億円未満ということでお聞かせをいただきたいというふうに思います。
村上政府参考人 お答えいたします。
 法人税の確定申告を行っております内国普通法人は二百七十五万九千社あるんですが、そのうち五万社を任意に抽出しまして全体を推計しまして、会社標本調査というのを発表いたしております。それでお答えさせていただきたいと思いますが、十二年分のデータでありますが、全体で、退職給与引当金の利用法人数は十万二千社です。したがって、二百七十五万九千社に対し四・〇%の利用率となっています。十二年分でありますが、事業年度末の残高が十一兆一千百五十億円になります。
 次に、それぞれ、一億円、十億円以上、五億円未満の法人についてのデータを申し上げたいと思います。
 一億円未満の法人は、一応八万五千社、利用割合は三・四%、事業年度末残高は一兆四千百二億円でございますから、全体の十一兆何がしに対する割合は一二・七%となっております。
 なお、資本金十億円以上、これは一応、利用法人数は四千社、事業年度末の残高が八兆一千五百十一億円、利用割合は六三・二%、全体の残高に占める割合は七三・三%となっております。
 なお、五億円未満、五億円未満というデータの中には一億円未満も含めて申し上げますが、五億円未満の利用法人数は九万七千社、年度末の残高は二兆五千三百六十五億円、利用割合は三・八%、年度末残高に対する割合は二二・八%となっております。
 これはいずれも推計でございますので、そのようにお含みいただきたいと思います。
吉井委員 一億円未満で見れば八一%ぐらい、八〇%以上ですね。それで、金額で一二・七%というお話ですが、年度によるでしょうが大体一〇%ぐらいのところと。資本金十億円以上ということになりますと六・一%ぐらいがこの対象で、年度によって六三・一%であったり、私がさきに伺ったのでは七六%ぐらいのところかと思うんですが、いずれにしても、金額的には大企業のシェアが高い。そして、制度の利用という面では中小企業が圧倒的に多い。
 特にこの点で、我が党は、大企業の内部留保を厚くするものとなっているということをこの間ずっと指摘してきましたが、金額的には大企業のシェアが高く、制度の利用面では中小企業の比率が高い、こういうことを見ることができますね。
村上政府参考人 お答えいたします。
 その残高に対する利用割合、十億円以上が大企業ということでありましたらば、全体の七〇なりは超えているわけですから、大企業の残高が大きいということですね。
 利用割合を何で見るかということでございますが、分母となる法人に対する利用割合であれば、もちろん大企業の方が多いわけですね。全体の数で、十億円以上は今四千社と申し上げましたが、五億円未満であれば九万五千社ですから、絶対数はもちろん小さいところが多いということだと思います。
吉井委員 ですから、今言ったように、金額的には大企業のシェアが高く、制度利用面では中小企業が圧倒的に多い、こういう形になっております。
 それで、この連結納税制度の導入のため減収となるのが平年度で七千九百八十億円ということですが、退職給与引当金の廃止により三千二百四十億円の財源を生み出そうとしています。だから、増収措置としてはこれは最も多い金額となっているんですね。ということは、大企業の減税による税収減を中小企業からの税収増によってカバーしようとしているということが言えると思うんです。
 増減税中立ということで今回取り組んでいるんだということですが、実はこの大企業と中小企業を対比するとこれは中立とは言えない。財務省の進めていることは、大企業の連結納税による減収分を大企業以外のどこの増税によって賄っても、とにかくそれは構わないんだという発想なのかどうか、ここのところを次に伺っておきたいんです。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 実は、平成十年度のときに退職給与引当金を取り崩すという計画を立てておりまして、中小企業につきましても、平成十五年度までの取り崩し額というのが事前に法律にございました。それを今後、実は十三年度ベースで要するに十分の一ずつ取り崩すことにしたものですから、むしろ十四年度に関しては、中小法人分は七十二億円の減税になっておるのでございます。それで、十五年度もその意味では減税で、むしろ十六、十七と、それは百五十億ぐらいの増税になるという姿になっているということでございます。
吉井委員 いや、七十二億の減税だ何だといったって、要するに、七千九百八十億円の減収となるものに対して退職給与引当金の廃止により三千二百四十億円の財源を生み出そうとしている。これは既に説明されているところですが、大企業の、連結納税での減税は主に大企業の分なんですが、その税収減を中小企業からの税収増によってカバーしようとしている、この姿形そのものはそのとおりでしょう。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 いわゆる大企業、中小企業というよりは、連結納税を採用できない企業には確かに増税になります。しかし、連結をとれるところには減税になるという姿でございます。
 なお、中小企業に関しては、この退職給与引当金が平成十年度改正で既に、今度の改正よりもっと大きく二年間は十四、十五と取り崩すことになっていたものですから、むしろ、十分の一ずつすることによって実はその取り崩しの率が若干落ちたということで、平年度ベース、七十億円の減税になっているということでございます。
吉井委員 ですから、七十億であれ八十億であれ、その減税の話は小さい話なんですよ。この七千九百八十億という大きな減税分、それに対して、税制中立、増減税中立ということを目指して税の増収措置をやはりとっているわけですよ。その部分では、今も見ました、例えば中小企業の退職給与引当金の廃止の影響問題などを見ても、そこでは、圧倒的に件数では中小企業の方が多いわけですが、しかし金額的には大企業のシェアが高い。ですから、シェアの高い中小企業の方からすればそれは増収ということになってくるということを言っているわけです。
 それで、七千九百八十億円もの減収になる以上、これは付加税率の二%オンというのは当然のことだと思うんですが、これはやはり全額、恩恵を受ける方が、一方では増減税中立というならば、それは主に大企業の方が連結納税でメリットがあるわけですから、大企業関連の税制の見直しによる増収によって、これで増減税が中立になる、そういう方向でないとおかしいと思うんですが、この点についての考え方を伺っておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 まさに今回の連結納税制度の創設というので、結果的に大変に苦しい状況でありましたのは、黙っていますと連結納税制度というのは、金額、いろいろ議論になりますけれども、一応八千億円ぐらいの減収になる、これはどんな措置をとってもそういうことでございます。
 しかし、十四年度予算ということでは、先ほども大臣が答弁に立たれましたように、増減税をほぼ中立にするということから、何らかの財源措置を講じざるを得ない。その中で、やはり法人税の中で少なくとも解決をつけざるを得ない。しかも、今先生から御質問がありましたように、連結納税制度をとられた企業と、とることができないというか、中小企業というわけじゃありませんけれども、要は子会社を持たないような企業にとっては一方的に、短期間ではあれ増税をせざるを得ない。そこで極力、連結納税を採用できるような大企業のいわば増税措置を考えたわけでございます。
 今の退職給与引当金も、先ほど申したように、十分割することによって当面はむしろ減税になるというようなことを考えましたし、旧特別修繕引当金というのは、これは鉄鋼企業だけですから中小企業はございませんし、そういう意味では、受取配当の益金不算入制度に若干の中小企業分がありますけれども、基本的には大企業にいわば増税を賄っていただきたいという思いで調整はさせていただいたわけです。
 しかし、これらの、連結納税を採用しない企業にも及ぶものと連結納税制度を採用したところの恩典ということを考えますと、二年間ぐらいの連結付加税はやはり他の企業とのバランス上必要ではないかという御議論の結果、このような形になっているということでございます。
吉井委員 いずれにしても、増減税中立というならば、それは減税の恩典のあるところから、税の増収によって増減税バランスとれるというのは、これは一つの理屈かと思うんです。しかし、減税の恩典はないんだけれどもただ増税の方で負担をかぶせられる、それが中小企業に及んでくる、こういうことについては、これはやはり根本的に制度、仕組みそのものについて、仮に連結納税制度、今回のものについて考える立場に立った人であってもそこは考えなきゃならぬところだということを申し上げて、それで次のテーマに移りたいと思います。
 次に、今ちょうど個人情報保護法の議論も内閣委員会を中心にやっているときですから、個人の信用情報の関係で伺っておきたいんですが、金融機関の個人情報の扱いの現状についてまず伺いたいと思うんです。
 住宅金融公庫が取扱金融機関、都市銀行に対して「住宅金融公庫債権の自らのローンへの借換えを勧誘する行為について」という文書を送りつけておられると思いますが、これをまず最初に参考人の方から伺っておきたいと思います。
井上政府参考人 お答えさせていただきます。
 昨今、公庫融資を御利用していただいているお客様の方から、公庫の業務取扱金融機関からローンの借りかえに関するダイレクトメールが送られてきたけれども、これは一体どういったことかというふうな苦情が幾つか寄せられております。
 一方、私どもと金融機関との間に結んでおります業務委託契約の中には秘密保持条項がありまして、この中で、受託金融機関は、いわゆる委託業務により知り得た個人の秘密をみずからの利益のために使用してはならないというふうなことをうたっております。
 そういったことから、私どもは、私どもの業務を取り扱っておりますすべての金融機関に対しまして、公庫の代理業務を通じて知り得た個人情報を本人の承諾なくして利用して、こういったローンの借りかえを勧誘するような行為は慎んでいただきたいというふうな意味で、文書で注意喚起をしたところでございます。
吉井委員 それで、今のお話ですが、要するに公庫の業務上知り得た公庫債務者の情報を債務者の同意なく借りかえのシミュレーション等に利用してダイレクトメールを送る、これを抗議して文書を送られたということですが、これはすべての都市銀行ですか、あるいは特定の銀行に対してなんですか。どういうところに発送されたかを伺っておきたいと思います。
井上政府参考人 公庫の業務を取り扱っている金融機関、約七百二十ございますが、これ、すべての金融機関に対してこういった文書を送ってございます。
吉井委員 その七百二十社のほとんどすべてがこういう問題を起こしていたわけですか。かなり特定のところに限られるわけですか。
井上政府参考人 こういった銀行、送った先がすべてそういった行為を行っているというわけではございませんけれども、幾つかの金融機関によってそういったことが行われるというふうなことは承知してございます。
吉井委員 業務委託契約第十五条の内容について聞かせてください。
井上政府参考人 業務委託契約第十五条を読ませていただきますと、「秘密保持義務」というのがございまして、受託金融機関は、「委託業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は乙の利益のために使用してはならない」つまり、公庫の業務を行うことによって知り得た、例えば残高だとかどれぐらい返しているとか、そういったたぐいのものを人に漏らしたり、あるいはそういったことを利用して、例えば先ほどシミュレーションとおっしゃいましたけれども、公庫の残高がこれだけです、これを銀行に対して借りかえればこれだけのメリットがございますみたいな、本来、他の人だったら知り得ないような情報も使った形での営業行為と申しますか、そういったことをするとこの条項にひっかかるというふうに考えております。
吉井委員 それで、私、驚いたんですが、この文書を発出されたのがことしの四月十二日でした。それが四月二十二日、十日後には、全然改められていない、そういう実態があります。
 これはとりあえずはある銀行ということに今のところはしておきますが、ある銀行が、「地区リテール営業部長殿、リテール業務責任者殿 一般通達」として、示達日が四月二十二日、十日後なんです。
 対象店は全営業店、対象部門はリテール部門、「住宅ローン肩がわりダイレクトメールの実施について」実施日は五月二日にしなさいということで、まさに今おっしゃった住宅ローン肩がわりダイレクトメールを実施しますということを全店に送っているんですね。「ダイレクトメールの発送対象先については」ということで、「住宅ローン肩がわりリストにリストアップされている人」。
 住宅ローン肩がわりリストというのは、まさに今おっしゃった住宅金融公庫の業務を受託している金融機関のことですから、お客さんのことですよね。それを全部肩がわりリストにリストアップして、そしてそのときに、なかなか内容も詳しく、「詳細手続」、営業店にて、住宅ローン肩がわりリストにダイレクトメールを発送する必要のない方が含まれていないかまずチェックしなさい、発送対象とする先については内容を十分吟味。これは読み上げたらどの銀行かすぐわかりますが、旧東海店は初めてのチェックとなるので厳重にチェック、つまり、三和ではこういうことは昔からやっておったから心配ないが、旧東海店は初めてやることになるから、厳重にチェックしてやりなさいと。
 こういうことは、あなたのところから文書を発送してもさっぱり改められないで、いわばもっと上手にやりなさいと。こういうことがやられておったんでは、公庫のお客さんの債務残高はどうなっているかとか、まさに信用情報、プライバシーにかかわる問題が、企業の利益のために使われるという、こういうひどいことになってくると思うんですが、さっきの七百二十社の中の問題になっているところそれぞれについて、どれぐらい詳しく住宅金融公庫として調べたり、あるいは具体的に抗議を申し入れられたり、そういうことをされたのか、この点を伺っておきたいと思います。
井上政府参考人 大変申しわけございませんが、すべての銀行について調査したというあれはございません。ただ、発覚したものにつきまして、例えば当該業務取り扱いを一定期間新規受理を停止するとか、あるいはその金融機関について業務取扱店を拡大することをやめるとか、あるいはそれを今後再発しないような防止策を提出していただくとか、そういったたぐいのことをやっていただけておりまして、具体的な名前はあれでございますけれども、こういった措置をとったのが、十二年度、三件ほどございます。
吉井委員 「ダイレクトメール発送後のフォローについて」とか、なかなか丁寧にちゃんと内部では指示しているんですよ。ダイレクトメールのリストから、営業店にて個別に電話による勧誘を行い、事前相談申し込みの誘導または相談会への来店誘導を実施しなさいとか、連絡がとれないお客様については本部へ休日に電話勧誘するような、そういう休日TM申請書というのをきちんと出させておいて、休日にこれをやりなさいとか、本部にて休日TMを行い、事前相談申し込みの誘導または相談会への誘導を実施するようにしなさいとか、本当にきめ細かいんですね。まさに十二日に抗議の文書を発送された、しかし、十日後にはこういう文書が全店に行き渡っておって、さっぱり是正されていないのが実態ですよ。
 そして、私もこれはなるほどとある意味では感心したんですが、住宅ローン肩がわりのリストの中で基準をきちんと示しているんですね。残高が六百万円以上のお客さんで、公庫の借りたときの利率が三・九%以上の人で年齢は六十歳以下、延滞のある先その他は要注意で臨みなさい、さらに、アパートローンについては、残高二千万円以上、金利が三%以上とかしているわけです。
 つまり、こういうふうなことになってくると、要するに住宅金融公庫に残るローンというのは、延滞先だとか、あるいは最近借りた金利の安いもの、銀行からすると、不良なものだけは住宅金融公庫に残しておいて、おいしいところは全部銀行が食い尽くすようにしましょうと。これは幾ら何でも、国の住宅政策としてもともととられてきたのが住宅金融公庫の出発時の一つの大事な柱であったと思うんですが、国の住宅政策の根幹もゆがめるし、個人の信用情報も食い物にしてしまって、個人情報保護どころか、全然ひどいことになっているんですね。
 こういう問題について、一片の文書で済むのかどうかということがあると思うんですが、今後どういうふうにされますか。
井上政府参考人 実は、こういったことに関しましては、平成七年とか平成十一年とか十二年とか、過去も今まで何回かやってきたわけでございますが、すべての内容を掌握し切れていなかったという嫌いはあろうかと思います。そういった意味合いでは、公庫にも全国十二支店ございますので、各支店の方を通じまして、各金融機関がどういうふうなことをやっているかというふうなことは、ユーザーの方からの情報を得たり、そういったことでいろいろ知りたいというか調査したいというふうに考えておりますし、現に、そういったことでやって、場合によっては先ほど申し上げましたような処置をとっているわけでございます。
 ただ、非常に難しいのは、先ほど申し上げましたように、公庫の残高をシミュレーションするというふうな形になれば明らかに公庫の情報を使ったということがわかるわけでございますが、例えば一千万借りたらうちではこうですよというふうな比較表を出して営業行為をされたのが、果たして公庫の情報をもろに使ったもので不適正な行為であるかということがちょっと判断しかねる場合もあろうかと存じます。
 ただ、これから、先生おっしゃったような趣旨を踏まえて、また支店を通じていろいろと調査して、より公庫を利用されている方の信頼を損なわないような形で業務執行してまいりたいというふうに考えております。
吉井委員 これは、やっている側も大変なことだと認識しておるわけですよ、だから、本リストはすべて重要顧客情報に該当するので厳正に管理する、それも明記されております、「その他」のところで。そして、保存期限をいつまでということもきちんと示して。
 ですから、私、これは柳澤大臣に伺っておきたいんですけれども、銀行の巨大合併、分社化とか、産業活力再生法などで認定して、リストラ、人減らしはどんどん政府の方は応援をしてきた。企業再編税制、連結納税制度などで軽減免も見てやっているんですよ、これは財務大臣の方で、去年もまた今度の改正もそうなんですが。
 しかし、ところが、その巨大銀行の方は、この間社長らにも来てもらいましたが、ATMを初めとする決済機能喪失の問題を引き起こしてみたりとか、そして今度は、守秘義務違反が問われてくる問題を三回もこの間出したと今お話ありましたね。繰り返し繰り返し、こういうことが起こっているんですよ。
 そして、まさに今個人の信用情報の取り扱いについては、この間、個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会なども、これは旧大蔵省時代からきちんと、旧通産省などと一緒に入って信用情報のあり方について検討もしてきて、それも、今問題になっている個人情報保護法の中に一部入っているんですね。あの法律では、私たちは、これはとてもじゃないが個人の信用情報等を保護する上でも非常に不十分なものだと思っています。もちろん、メディア規制という面でこれは全然だめだ、そこはもうだめだということを言っておりますが、本当に個人情報保護という面でも不十分ということはあるわけです。
 しかし、そういうふうな今のこのあり方に対して、これは金融担当大臣として、やはり今の都市銀行がこれぐらいひどいやり方で、いかにもうけのためとはいえ個人の信用情報をみずからの利益のために使うというふうなこんなあり方に対しては、やはり厳しく対処していくということがなかったら、どんな法律をつくってみたって、何しろ契約上の守秘義務違反を堂々とやっているわけですから、私はこれは大臣としてもきちんと対応を考えていただく必要があると思うんですが、どういうふうに対応されるかを伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 ちょっと私も、厳密に事務方を使って検討したわけではないのでややおぼつかない面もありますが、この問題は、恐らく個人の信用情報の問題ということよりも、やはり業務委託契約の遵守義務の問題だろうというふうに思うんです。
 それは、信用情報といっても、当該の機関も受託事務の一環として、金融機関としてその業務を行っており、それからまた、それに伴って、当然個人の金融情報を知り得る立場にあるわけですから、そのことが問題ということではなくて、やはり、そういうものをこの委託契約に違反する形で利用しているということが恐らく問題なのではないかというふうに思います。
 いずれにしても、私ども、今、当該の御指摘になった事実について把握しておりません、率直に言って。把握しておりませんので、御指摘になられた事実を事実として、私、ここで何か申し上げるということはないんですけれども、やはり金融機関たるもの、いろいろなほかの外部の方々と契約を結んで業務活動を行っているわけでありまして、その契約については信義誠実の原則にのっとってきちっとその契約を遵守するということが最も基本的な姿勢でなければならない、このように考えるところでございます。
吉井委員 時間が参りましたので、私、この問題については、これは内閣委員会の個人情報保護法の議論の中でもその分野からまたやっていきますけれども、しかし、金融機関というのは信用が大事なんですね。その信用が、人の個人情報という大事な信用の問題についても、本当に、いいかげんな扱い方であるとともに、金融機関自身がみずから信用を失っていくような、こんなやり方については、これは柳澤担当大臣としてやはり厳しい対処をしてもらいたい、このことを申し上げまして、本日の質問は終わりたいと思います。
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二分散会


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