衆議院

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第19号 平成14年5月29日(水曜日)

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平成十四年五月二十九日(水曜日)
    午前九時三十三分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    七条  明君
      砂田 圭佑君    竹下  亘君
      竹本 直一君    林田  彪君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      鎌田さゆり君    小泉 俊明君
      佐藤 観樹君    中川 正春君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  中村正三郎君     吉野 正芳君
  小林 憲司君     鎌田さゆり君
同日
 辞任         補欠選任
  吉野 正芳君     中村正三郎君
  鎌田さゆり君     小林 憲司君
    ―――――――――――――
五月二十三日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(中林よし子君紹介)(第三二四〇号)
 同(春名直章君紹介)(第三三六〇号)
 出資法の上限金利の引き下げ等に関する請願(鈴木淑夫君紹介)(第三二八五号)
 同(阿部知子君紹介)(第三三六一号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三六二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三三六三号)
同月二十九日
 消費税率引き上げ反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三四五〇号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三四五一号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(塩川鉄也君紹介)
 (第三五〇九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三五九二号)
 同(児玉健次君紹介)(第三五九三号)
 消費税の増税反対、消費税率三%への減税に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第三五一〇号)
 計理士に公認会計士資格付与に関する請願(石井一君紹介)(第三五九一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、法人税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、ただいま議題となりました本案に対し、海江田万里君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。海江田万里君。
    ―――――――――――――
 法人税法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
海江田委員 ただいま議題となりました法人税法等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由の説明をいたします。
 近年、企業グループの一体的経営の急速な進展や企業組織の柔軟な再編成を可能とするために、純粋持ち株会社の解禁、会社分割法制の整備、自社株保有の解禁、株式交換・移転制度の創設などの法整備が順次進められてきました。このような中にあって、企業組織形態の変更に関する税制の中立を確保する連結納税制度の導入は、企業組織再編成を促進し、急激な社会経済環境の変化への対応、我が国企業の国際競争力強化に資すると考えられます。
 この意味で、連結納税制度の導入は、私たち民主党が従来から主張してきたところであり、むしろ政府・与党の対応が遅きに失した感があるものの、当然の改正であると考えるところでございます。
 しかし、他方、同法案には、本当に政府は連結納税制度を導入する気があるのか疑念を抱かざるを得ないような点が幾つもあります。グループ内寄附金の控除を認めない、子会社の損失を翌期に繰り越せないなどは、制度乱用の防止策というより、税収確保のための小細工といった感があります。
 特に、連結付加税につきましては、制度そのものについても、二%という税率についても、単に歳入確保という以外に全く論理的説明がありません。大和総研や読売新聞が行ったアンケート調査によりますと、実際には、連結付加税の創設によって、導入企業が限定される可能性が非常に高くなっております。これでは、連結付加税があるがゆえに、我が国企業の国際競争力強化のテンポがおくれかねません。そればかりか、導入企業が数社のみとなれば、連結納税導入による減収規模は極めて小さくなって、課税ベース見直しによる増収が上回り、本法案は、いつの間にか数千億規模の大規模増税法案へと豹変する可能性があります。
 このため、民主党は、特に連結納税制度導入の趣旨と相反すること甚だしいこの連結付加税について、これを削除することが望ましいと考え、本修正案を提出することといたしました。
 次に、本修正案の内容の概要を御説明申し上げます。
 本修正案では、連結法人税額の計算に関し、二年間の措置として、平成十四年四月一日から平成十六年三月三十一日までの間に開始する連結事業年度について、連結所得の金額に対する税率に二%の税率を上乗せする旨の規定を、削除することとしております。
 以上が、ここに修正案を提出する理由及び概要であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
坂本委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。ただいま説明のございました民主党の修正案について、まず質問をさせていただきます。
 本修正案では、連結付加税の部分を削除するということになっておりますが、十四年度の当初予算では、この連結付加税分の予算、歳入として七百三十億円、十四年度予算で計上をされているわけでありますけれども、連結付加税を取りやめた場合、十四年度の歳入の補てんを実務的にはどうされるおつもりなのか、確認をいたしたいと思います。
海江田委員 石井委員にお答え申し上げます。
 本来でしたら、年度改正の議論のときに政府が、企業向け租税特別措置の抜本的な見直しでありますとか、それから歳出面での節減など、相応の努力をしていれば連結付加税創設は必要がなかったところでございます。
 特に民主党は、今国会におきまして予算の組み替え動議を要求しているところでございますが、これは、従来型の公共事業、特殊法人への補助金などのむだな歳出を見直すことによって二兆円余りの歳出削減を行う一方で、最悪の状況にある雇用の改善や、次世代を支える新たな産業育成などの分野の予算を約一・七兆円増額することを求めております。
 この組み替え要求の一環としまして、既に連結付加税削減による減収を見込んでおり、その補てんは、歳出の見直しによる歳出削減によって行うこととしているところでございます。
 しかし、既に予算が成立をしております。予算が成立をしております現時点におきましても、その減収分を見出すことは可能でございます。例えば、昨年度におきましては、各省庁に対しまして八月十日付の財務省通達によって、一般旅費の二〇%、それから物件費一五%の留保要請を行ったところ、一千六百億円の節約が可能となっておりまして、これが第一次補正予算の財源となったところでございます。
 以上のことを勘案しまして、歳出の見直しを通じて連結付加税上乗せの中止に伴う減収分を補うことこそが政府、民間それぞれの構造改革を進めることであり、同時に、それが可能であるということを御答弁申し上げたいと思います。
 以上でございます。
石井(啓)委員 先日の質問でも私、実は財務大臣に主張を申し上げたんですが、実務的に考えますと、今二年後にこの財源措置を見直すというふうになっておりますけれども、閣議決定されておりますけれども、それをなるべく前倒しをして、まず政府の原案で実施をしてみてその実情をなるべく早く把握した上でその財源措置を、二年後と言わず、なるべく早期に見直しをするということが現実的な対応ではないかというふうに私どもは思っておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。
海江田委員 もちろん二年後の見直しという規定もあるわけでございますが、私どもはやはり、まずスタートに当たりまして、一つでも多くの企業がこの制度に参加をしていただくということが肝要だと考えているわけでございまして、大臣はせんだっての答弁で、この付加税の部分は苦肉の策だというお話がございましたけれども、私どもに言わせれば羊頭狗肉の策である、このようにお答えせざるを得ない状況でございます。
石井(啓)委員 その辺は多少見解が違うところでありますけれども、私どもも、この付加税については、ある意味で企業再編を抑制するという意味合いもございますので、決して望ましいとは思っておりません。
 ただし、財源を補てんするという観点から、この連結納税を導入する企業のみならず、幅広い企業が財源補てん措置に協力するという意味合いがある中で、連結納税を導入する企業もやはりそれなりの負担をせざるを得ないんではないかということから、私どももやむを得ずこれは認めたわけでありますけれども、これを実施した状況を早期に把握して、財源措置は見直しをしていくことが実態的には望ましいんではないか、こういうふうに考えております。
 それでは、財務省の方にテーマを変えてお聞きをいたしますけれども、五月の二十一日ですか、経済財政諮問会議におきまして、平成の税制改革ということで、経済財政諮問会議の民間委員から税制改革の提案がなされているわけでございますけれども、これが基本的な方針である、これをもとにして、今後、政府税調あるいは与党税調等で検討していく、こういうふうに伺っておりますが、この経済財政諮問会議におきます基本方針について財務省としてはどのように評価をされているのか、伺いたいと思います。
塩川国務大臣 平成の税制改正とおっしゃられましたのは、やはりシャウプ勧告当時の税制に対しまして根本的に考え方を変えたいという思想がそこにあらわれておるんだろう、私はそう受けとめておりまして、また事実、そうでなければならぬと思うております。それが一つで、その点におきまして我々も考え方は同一でございます。
 もう一つは、財政諮問会議と政府税調との間で非常に意見の、何といいましょうか、あえて相違があるとするならば、それは、税の根本思想でございます公正、中立、簡素という思想の中の中立というのをどう解釈するかという、このとり方を中心にして議論がございましたが、しかし、諮問会議におきましても政府税調においても、結局は同じことをしておられるんだが、そこは時間の差なり、あるいは取りつき方の違いではなかろうかと私は思っております。
 私たちの考えております中立というのは、国対民間のバランスが絶えず中立であってほしい、こういう意味で言っておることでございますが、諮問会議等におきましては、とりあえず中立よりも活性化の方が優先すると。しかし、活性化のみで財政のバランスを崩してしまったらいかぬから、まずはとりあえず活性化に尽力をして、その活性化から上がってくるところのいわば成果をもって財政のバランスをとるべきである、こういうふうに言っておる、そこが若干違うところでございまして、私たちは、官対民のバランスを絶えずとっていきたいが、そこに時間的な経過をある程度含んでのバランスであってもいい、こういうことを主張しておる。
 そこらが若干違うところでございまして、その他におきましては大体、御意見は同じようなことだと私は認識しております。
石井(啓)委員 いずれにしましても、これは与党の中でも今後、税調等で議論をされるところでございますので、私どもも具体的な提言等をさせていただきたいと存じます。
 では、以上で質問を終わります。
坂本委員長 次に、生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方でございます。
 今議題になっている件でございますが、連結付加税についてですけれども、いろいろ問題点はるる指摘をされているわけで、これが障害となって、せっかく連結納税制をとっても導入する企業が少ないんではないかというふうに言われて、大臣も二年後をめどに見直しをするということなんですけれども、やる前からほとんどこういう問題点が指摘されているわけですから、二年後と言わずに、やはり当初から、もうこれ、たかだか数百億円程度の税収を上げるために、せっかくいい税制改正をしても役に立たないというんじゃ価値がないと思うんです。
 大臣、たびたびの質問であれなんですが、大臣の御決断で恐らく連結付加税というのをやめるということはできると思うので、決断をしていただけませんでしょうか。
塩川国務大臣 修正案が出てまいりましたら、やはり修正案と本案との比較をして決定していただくのがいいと思っておりまして、私たちは、原案につきまして、先ほども何遍も申しておりますように、とりあえず連結納税というインセンティブを与える、けれども、これによって多少の法人の間における、要するに、不公平とは申しませんけれども、政策上のことでございますのであえて不公正とは言いませんけれども、それによってある程度の特定の利益をとる法人も出てくる。その法人に対しまして、ある程度のいわゆる社会的寄与ということも考えてもらいたい、そういう思想からのことでございます。
 でございますから、連結納税制度によるところの企業の活性化をねらおうということは、修正案を出しておられる民主党の方々も我々も同じ考えでございますから、その連結納税制度を実施して、その上で、すぐにその検討に入りたい、検討した上のことでもって判断したい、こういうのが私たちの考え方でございます。
生方委員 私たちは私たちの修正案がいいと思っているので、ぜひともこれは外していただきたいということを要望すると同時に、実際に運用を始めて、この制度があるために、付加税があるために導入しないという企業が出てきた場合、速やかに判断をしていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移りたいと思いますので、提案者、修正案の方、こちらで結構でございます。
 それでは、金融担当大臣にお伺いをしたいと思います。
 先日、新聞で、ソフトバンクがあおぞら銀行の保有株を売却するかもしれないという新聞報道がなされました。私も当時、予算委員会でいろいろこの問題について論議をして、むしろリップルウッドの株が売られてしまうんではないか、それで大きな利益を上げるんじゃないかということで我々は批判したことがあったんですが、まさかソフトバンクが、株を取得してからまだ一年九カ月ぐらいしかたっていない時点で株売却という話が出てきたことにまた非常に驚いておるわけですけれども、まず柳澤大臣、これを最初聞いたとき、感想だけで結構ですが、どのような感想をお持ちになりましたですか。
柳澤国務大臣 これを聞いたときというか、まだ聞いてはいないんですけれども、報道ということで申しますと、報道はすぐ当該の企業で否定というか、そういうことをされているようですが、そういうことを抜きにして、報道そのものを見たときどう思ったかということを申し上げますと、何と申しますか、少し困るなというか、困るな、こういうことですね。
生方委員 リップルウッドを我々が批判したときは、あそこは投資会社なんだから、いずれ健全な会社にして売って利益を得るんだろうということをまず一番最初に懸念したわけですね。ソフトバンクの場合も、その後のネットバブルの崩壊等があって、グループ企業の経営が厳しいということもあって、借入金を何とか少しでも少なくしようという自社の経営判断から売ろうというようなことが新聞報道ではなされております。
 このとき我々一番懸念をするのは、大量の公的資金が導入をされ、不良債権をきれいにした形でいわば国営化から民営銀行に移したわけでございますから、恐らく今の時価評価でいえばかなり株価の評価というのは高くなっているのではないか。したがって、ソフトバンクが今売却をするとどのぐらいの利益が上がるんだろうかということで最初に私なんかは懸念材料としてあるんですが、金融庁としては、今仮にソフトバンクが株を売却したとすると、どのぐらいの利益が上がるというふうに御試算なさっていますでしょうか。
村田副大臣 お答えいたします。
 あおぞら銀行の株式でございますが、ソフトバンクは、旧日債銀の譲渡時におきまして総額四百九十三億円の出資を行いまして、普通株式のうち四八・八七%を所有している状況にありますけれども、あおぞら銀行の株式がまだ上場されておりませんので、委員の御質問にもかかわらず、現在の市場価値を私どもとしては把握することは困難であるというふうにお答えを申し上げたいと思います。
生方委員 これは、法的には、ソフトバンクが株を売るということを金融庁が阻止することができるわけではないわけですから、しようがないんですけれども、ただ、国民感情としては、今幾らで売ったら幾らぐらいもうかるのであろうかということは非常に気になるわけで、その数値を根拠にしながらある程度の指導というものをしなければいけないと思うので、やはりある程度、どのぐらい今だったら利益が上がるんだろうかということを金融庁としても把握しておく必要があると思うんですけれども、大臣、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 そういう面も必要かとも思いますけれども、私どもとしてはやはり、今委員も御指摘になられたとおり、二年たっていない前に、いろいろな審議を、特に再生委員会の委員等を煩わしていろいろな検討をした結果、このグループが最適の譲渡先である、そういうことを判断して、その中のいわば端役ではなくて主要な役割というかシェアを持っている方ですので、そのことをやはりよく踏まえていろいろなことを考えてもらうことが必要だというふうに私は思っているわけです。
 これは本当に、この制度は破綻した銀行を一たんきれいにして、そして再生をさせるということですので、非常に投資先としても有望な投資先だと私どもは思っているわけですね。そういう意味合いからいうと、私なども、なぜもっといろいろな人がいろいろな構想を持ってこの投資先のコンペに参加しないのかということが、逆に不思議なくらいであったというのが率直な感想です。
 ですから、ある程度それはリスクを感じたのかもしれませんが、いずれにせよ、私どもは、株の評価が上がるということはその後の経営がまずまずの成績であれば当然だと思っていまして、そのこと自体を私ども云々するということは、これからもずっと株の評価は上がるでしょうから、そのこと自体は我々からすると当然のことが起こっているとしか思えないんですが、ただ、そうであるだけに、やはり当初の枠組みというか、そういうものを尊重した上でいろいろ行動をとってもらいたいというのが、一般論として私どもが希望していることです。
生方委員 きのういろいろ聞いたんですけれども、どうも幾ら今もうかるかというのは出ないということなので、私もちょっと知り合いの証券会社の方に、きのうの夜ですけれども、急遽調べていただきまして、もちろん、上場している株ではございませんから確定した額というのが出るわけではないですけれども、一般的に、同業他社と比べて大体幾らぐらいになるのだろうかというのをちょっと試算してみました。あおぞら銀行の決算は何かきょうの午後発表されるということなので、見通しという数値をもとに計算してみました。これはほとんど、きょう発表される数値と余り変わらないだろうということでございますので、それほど大きな変化はないと思います。
 それによりますと、今、あおぞら銀行の総資産は約五兆八千三百億円、総負債が五兆三千七百億円。したがって、純資産は四千六百億円というふうになるわけですね。預金保険機構の最大の持ち株分というのは三三%ということになっておりますから、普通株は六六%ということになります。そのうち、先ほど申し上げましたように、ソフトバンクの持ち分は四八・八七%、約半分を持っておりますから、この前提で、現在持ち株を市場で売ったら幾らになるのかというのを計算してみました。
 実際に売却した場合は、もちろん買い手があるわけですし、いろいろなほかの要素が来ることは間違いございませんが、ごく一般的に大体これぐらいであるだろうというのを証券会社の方から聞いたところによると、いろいろな調べ方はあるんですが、普通、時価発行総額を計算する際には、現在の純資産掛ける何ぼというのがわかりやすいのではないかと。これは利益の何ぼという掛け方もあるんですけれども、赤字になっているところもあるので、純資産掛ける何ぼというのがいいんじゃないかということの御示唆をいただいた。
 同業他社ということになると、今、四大グループの銀行がございますが、そこではどういうふうになっているのかというと、昨日現在でいいますと、東京三菱銀行は純資産の一・三七倍、三井住友銀行が一・一八倍、それからみずほグループが〇・四二倍、UFJが〇・四二倍となっておりまして、平均では〇・八五倍というふうになるわけですね。そうしますと、これをあおぞら銀行に当てはめますと、株式の時価は、先ほども申し上げましたように、四千六百億円掛ける〇・八五、すなわち三千九百十億円程度になるのではないかというふうに考えていいんじゃないか。
 それで、ソフトバンクはこのうち約三分の一を持っているわけでございますから、仮に現在の時点ですべての持ち株を売却したとしますと、約千三百億円になるという計算になります。ソフトバンクの出資額は、先ほど申し上げましたように四百九十三億円ですから、たった一年九カ月で、あおぞら銀行をもし仮に売ったとすれば、八百億円ももうかることになるわけですね。
 この間、八百億円に見合うようなリスクをとっていたのかというと、御承知のように瑕疵担保条項がございまして、瑕疵担保条項は来年の九月まで有効なわけでございまして、仮に貸し出し資産が二割以上劣化した場合は全部国が買い取ってくれるという条項があるわけで、そういう有利な状況の中で、株を保有していただけで八百億円も利益を得るということが本当にいいのかどうか。
 これは後ほど申し上げますが、多額の公的資金が入っているわけですから、いわば国民の財産というような部分も、多少はそういう特徴もあるのではないかというふうに思うんですが、仮に売却をして、こんな八百億という利益が出るというふうにしたら、これをそのまま放置したら国民はとても納得がいかないと私は思うんですけれども、この数値を聞いて柳澤大臣、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 その数値はいろいろな前提を、生方委員もお認めになるように置かれておるわけでございますので、私ども、その数値自体について、それを踏まえてのコメントというわけではありません、そういうことはできかねるわけですけれども、いずれにせよ、私どもからするとかなり有利な投資先というのは、当初から、この制度の仕組みからいってそうなるということはわかっているわけでございます。なるがゆえに、もっと買い進んでくれるところがあっていいじゃないかということをいつも思うわけですが、なかなかそうなっていないということでございます。
 したがって、これはある程度予測がついていたことでございますので、そのこと自体がどうのこうのじゃなくて、やはりさっきから申し上げているように、そういうことも踏まえて、本当に銀行を中長期的にいいものにしてくれるのに力を発揮していただく、そういうことを我々は期待をしてそこに譲渡先として決定させていただいた、そういういきさつでして、そのことをよく踏まえていろいろ考えていただくことを強く望んでいる、こういうことです。
生方委員 この株式売買契約を見ますと、主要買い主は、日債銀に長期的な視野から投資を行いというふうになっておるわけで、この長期的というのは、この場合、ここの契約を結んだ時点ではどれぐらいだというふうに認識をなさっていたんですか。
柳澤国務大臣 契約の文言でございますので、そこに何かその解釈についての規定がなければ、一般通念で長期的と書かれていれば、長期的ということでしかないと。私がここで何か申し上げるということはちょっと議論を混乱させるんじゃないか、こういうふうに思いますので、長期的というのは長期的だと。契約の文言というのは、かなりこれは、いずれ何かが起こったときには弁護士さんとかそういうような方々がそれぞれ議論を闘わせる場でございますので、私としてここで申し上げることはちょっと差し控えたいと思います。
生方委員 ここに二〇〇〇年の九月に出されました「経営の健全化のための計画」というのがございまして、その中で、「ソフトバンク・グループの投資目的」というのが書いてございます。これをちょっと読み上げますと、「弊行を、収益力のある健全な銀行、日本の銀行業界において特長ある地位を占める新しい銀行、日本経済の活性化に貢献する銀行として再生するということが、ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険の中核三社が弊行を買収するにあたっての基本的な目標であります」ごく普通に考えれば、この目的を達成したときが長期的な目的ということになるわけですね。
 「中核三社以外の各々の株主も、長期的視野に立ったこのビジョンに賛同して投資しており、長期にわたって出資を継続し、弊行の再建に協力していく予定であります」というふうになっていて、これを読めば、一年九カ月で売買して金をもうけようというのはとてももちろん考えられないわけで、この投資目的というきちんとした文書の中で、ソフトバンクは当時いろいろな記者会見でも、あおぞら銀行をこういう銀行に仕立てたいんだ、ベンチャーキャピタル的なものにするとか、いろいろな特徴ある銀行に育てたいというような旨をいろいろ発表しておりましたね。ネットバンクとしても活躍させるんだみたいな話をして、ほとんどがまだ道半ばで、まだとてもそれが立ち上がって軌道に乗ったというところまでは行っていないわけです。
 仮に、まだ本当に売却するかどうかということはわかりませんけれども、売却する意向であるということはもう既に新聞や雑誌等で書かれているわけで、そうした場合、やはり道義的責任というのはあると思うので、法的にこれをやめさせるということは仮にできないとしても、これだけこういうことを言ってきたじゃないか、これに反するじゃないかという形で指導することはできないんでしょうか。
 先ほど数値を申し上げませんでしたが、あおぞら銀行に投入された公的資金は四兆八百億円、それから瑕疵担保条項に基づいて預保が買った不良債権が四百二十一億円、したがって四兆一千二百億円ものお金が注ぎ込まれているわけで、結局はソフトバンクが仮に八百億円もうけるということになれば、やはりこれは公的資金がこういうふうに入ったから、回り回ってソフトバンクに八百億円入る、国民のお金が入ってしまうというような解釈も成り立つわけです。私は、これはまだこういう計算をどこもマスコミがしてはいないわけで、国民がこれを知ればとても納得がいかないと思うんです。
 重ねてですが、この道義的責任はある、もし売るということになれば道義的な責任はあるというふうに大臣はお考えですか。
柳澤国務大臣 今委員が前段で言われたとおり、私どもも、旧日債銀、現在のあおぞら銀行は、再建計画の、再建の途上だという認識でございます。
 したがって、いずれにせよ、この譲り受けに際してソフトバンクグループが契約文言等でうたったことが完全に実現されているという認識はないわけでございまして、そういう何かいろいろなことをお考えになるにしても、これは生きた経済ですから考えられることもあると思うんですが、それはあくまでこの枠というか、いろいろ契約等あるいは計画等にあらわれた意図、精神、こういうものの枠内でやはり考えていただくことが極めて重要である、このように考えています。
生方委員 いや、重要であるというか、実際に今あおぞら銀行の株をソフトバンクが売るというような行動に出た場合、私はだから道義的な責任は大きいと思いますので、法的には仮にこれを差しとめることができないとしても、大臣として何かソフトバンクに指導なり要請なりというのをすることがあるんですか、どうですかということをお伺いしたいんですが。
柳澤国務大臣 これはあくまでも、私ども監督当局ではありますが、この面についていうと、ある種の当事者なんでございまして、監督の面でもいろいろ考えなきゃならぬことも出てくるかとも思うんですが、さしずめやはり当事者にとどまるべきだというふうに思っておりまして、この契約というものとの絡みで一体どう考えるべきかということを弁護士さん等と相談して、場合によってはやらなきゃならないかというようには思います。
 しかし、何と申しますか、基本的には、先ほど来言っているように、契約の精神を守っての話が大前提だということは私ども強く考えております。
生方委員 弁護士さんと相談してやらなければならないということは、訴訟を起こすことも辞さないというようなことというふうに解釈してよろしいんですか。
柳澤国務大臣 訴訟を起こすというようなことがこのケースの場合に、先ほど来申しているのはすべて一般論でございますが、そういうことが適切かどうかということには、ちょっと考えても問題が大きいと思いますけれども、いずれにせよ、私どもとしては、この制度の趣旨あるいはこの契約の枠組みでうたわれたところの精神が貫かれることが大事だということは申し上げなきゃならぬと思います。
生方委員 きょう発表されるあおぞら銀行の決算の数値だと黒字になるということでございまして、再建計画の中心をいわばソフトバンクグループが担ってきたわけですよね。仮にこのグループが今手を引いちゃうということになると、再建計画にも非常に大きな影響が出てくると思うんですけれども、その影響についてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
柳澤国務大臣 要するに、どんどん生方委員は議論が先の方に行っちゃっておりまして、議論をされる方としてはやむを得ないかと思うんですが、私どもは生方委員のところよりうんと後ろの方でいろいろなことを考えなきゃならぬなと思っていることでして、このケースについて今いよいよ俎上にのせているというわけではありませんので、ちょっとそこまでのことは考えてお答えする用意はありません。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
生方委員 通常の投資案件であれば、それなりのリスクがあって、リスクに見合ったリターンというのがあるというように考えられるわけですが、今回のケースはかなり特殊なケースであって、国有化されていた銀行を民間の異業種が特に買うということで、しかも瑕疵担保条項をつけると。これは、長銀のときの瑕疵担保条項がもう既に前に実施をされていて国民の大きな批判が起こってきた中で瑕疵担保をどうするのかというので、いや、つけるつけないとか買う買わないでいろいろごたごたがあったのを私も記憶しているんですけれども、やはり瑕疵担保条項というのをつけたことが結局は買い主側のモラルハザードを生んだんじゃないかというような気が私はしないでもないんですね。最初からリスクがない投資だったんだから、ちょこっとだって売ってもうければいいという考えがどこかに根差したのかもしれぬ。
 瑕疵担保条項そのものが極めて、あの場合ではいたし方なかったといえばいたし方なかったという解釈も成り立つことは成り立つんですけれども、そもそもそれはおかしな制度であるので、むしろやはりきちんと情報を公開して投資家にきちんと判断させるということをすれば、瑕疵担保条項のようなものをつけなくても済んだと思うんですね。
 だから、瑕疵担保条項をつけたという金融庁の判断の誤りが結果としてソフトバンクの売却をしようかということにつながったんじゃないかというふうに私は考えるんですけれども、いかがでございますかね。
柳澤国務大臣 生方委員の仰せのとおり、投資の案件としてはかなりリスクは限局化されていて、我々としてはかなり有利な投資案件だということでございます。そういうことは考えていたわけですけれども、しかし、それにしては今度は投資側が何でこんな憶病なのかということなんですね。特に、むしろ外国の方が非常に熱心で、国内の方が非常に消極的という感じは当時からあったわけです。
 そういう中で、コンペで決まっていることでございますので、このこと自体を、その競争で落札した人について、お前有利じゃないか、けしからぬじゃないかということは、やはりそこはちょっと、そう簡単に言うべきことであるとは私は考えないわけでございます。
 それから、瑕疵担保条項については、これはもうかねて申し上げておるとおり、民法の精神で、売買契約の場合にはつけるということが一般的な法理、公平の観点から必要ということになっていることでして、よく言われるんですが、もっと判定をきつくしてRCCに売る分をちゃんと除外すればよかったじゃないかという議論があったわけですが、もしそうなれば、三兆五千が四兆になったり、もっと大きくなったり、そのときに出るということでして、要するにどこでその損失が顕在化するかというのはある種時期の問題というふうに考えておりまして、何かそこに今回のこととのつながりがあるということは、ちょっと考えてはみたんですが、なかなか、そういう議論というのがどう成り立つのかというのは我々はちょっとわからないところでございます。
生方委員 あの当時の議論では、長銀の方はリップルウッドという外資が買った、したがって日債銀の方は国内資本に買ってもらいたいという大きな枠があったと思うんですね。仮に、今度ソフトバンクの株を買うというところにサーベラスというグループが名乗りを上げるとすると、サーベラスは今一二%ぐらい株を持っているわけですから、それに五〇%近い株が入れば当然筆頭株主になってしまって、長銀も日債銀も結局のところ外資に買われてしまったというようなことにもなりかねないんですけれども、この辺はどう考えますか。
柳澤国務大臣 心情は別ですよ、心情は別ですけれども、やはり日本が開かれた市場である、特に資本取引などについてはもう長いこと自由化をしている時代を経ているわけでして、私どもは、そういう意味でも内外の資本を差別すべきでないという基本的な立場でございまして、今生方委員が言われたように、前の案件、第一号案件が外資系だから第二号案件は本邦系でと言われるようなことをちょっとお聞き取りしたんですけれども、そういう前提で物を考えたのではない。それぞれのところで一番ベストのコンペティターを選ばせていただいたということでございます。
 いずれにせよ、生方委員がどんどんと、とっととっと先に行かれるものですから我々は議論についていけないわけですけれども、少しのろまかもしれませんが、我々はうんとまだ後ろの方で、もしそういうことが起こったとしたらどうするかということを、まだ考え始めているとも言えないわけですが、先ほど来申しているように、基本的枠組みがきちっと守られるということで考えてまいりたい、こう思っておるわけです。
生方委員 ソフトバンクグループには交渉優先権が与えられていたわけですからね。もともと外資に渡したくないというのはなかったといったって、それはあったのは事実でございまして、それが結果として二つとも、それは先に行っているといえば先に行っているといっても、あれだけ報道されて、ソフトバンクの孫社長も、会長ですか、否定をしていないわけですから。いろいろな分析を見ますと、やはりそれはソフトバンクの経営から見ても売るという方向に向かうんじゃないかというふうになるわけで、売っちゃってから何かやったってこれはしようがないわけで、売る前にやはりこの委員会でしっかりと議論をして、本当にそういうことが行われていいのかどうかと。
 これは普通の民間企業じゃなくて、四兆一千億も国民の血税が注ぎ込まれているお金で、注ぎ込まれたおかげで健全になったところをいわばかすめ取るような形で、リスクもなくて、たった一年九カ月間保有していただけで八百億円もいわばぬれ手にアワで稼ぐというようなことがあれば、これは極めてやはり私はけしからぬ話だと。最初からソフトバンクにそういう意図があったかどうかは別として、そんなことを許してしまっては国民の納税意識だって、何で税金払わないかぬのだ、ばかばかしい、一私企業にたった一年で八百億円ももうけさせるために我々は税金払っていたんかということになるんじゃないんですかね。
 だから、決して私は議論を急いでいるわけじゃなくて、実際これが新聞に出たのはもう一カ月も前の話でございますし、その後どういう話になっているのかはよくわかりません、だから、本当はきょうの委員会にソフトバンクにおいでいただいてお話を聞ければよかったんですけれども、いつ質問になるか私どもわからなかったのでお呼びするという形にはならなかったんですけれども、決して急ぎ過ぎている話だというふうには私は思わないので、やはりしっかりと議論をしておくべきだというふうに思っております。
 もう一点、視点を変えますが、異業種がいわば銀行に参入したわけですから、異業種による銀行参入等新たな形態の銀行というマニュアルの中に、「事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護の観点」という項目があるわけです。
 私が一番気にしたのは、ソフトバンクが株主であり、取締役も送り出している。その中で、一年九カ月間経営に携われば、いろいろな顧客情報、投資先の情報というものが当然入ってくるわけですね。それを、入ってきたままで株主でなくなって、株を売却し、取締役をおりたとしても、その情報はソフトバンクの中に残っているわけですね。その残った情報が変に活用されたりすれば、これは二重の意味で大きな損害になるのではないか。
 その「観点」の中に、事業親会社等と子銀行の関係においては両社のシナジー効果を図る観点から顧客情報を相互に活用することが予想されるというふうにあって、シナジー効果を図る観点から顧客情報を相互に活用するということですから、ソフトバンクの中にこの情報が入っているのは事実だというふうに思うわけですね。これの漏えいの防止というのを一体どういうふうにしていくのか、そのお考えを聞きたいと思います。
村田副大臣 委員が引用をされました「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応」、これは金融庁が平成十二年八月の三日に公表をしているわけであります。これを踏まえまして、旧日債銀とソフトバンク等の主要株主三社が、機関銀行化を回避する方策を策定しまして経営健全化計画にその旨を規定している、こういうことであります。
 この計画の中で、事業親会社グループ等との取引に対する特別監査委員会等によるチェック体制、厳格な与信管理や取引条件の監視の実施等のほかに、今御指摘なさいましたように、事業親会社等による情報の乱用を防止するために、あおぞら銀行の顧客の個人情報の保護について示されているわけであります。
 私どもといたしましても、経営健全化計画のフォローアップを通じまして、これは機関銀行化回避の方策が実際に機能しているのかどうかを厳格に見ていく、注視していくということのほかに、運用上の指針で定めます監督上の留意点を踏まえまして、その銀行の健全化確保の観点から適切な監督を行ってまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。
生方委員 これは、機関銀行化を防ぐという観点から主にこういうふうになっているわけですけれども、株主をやめてしまうというようなことがもちろん前提になってないわけですから、株主をやめてしまって取締役ももちろんなくなるわけですから、その場合の情報をどういうふうに管理するのかということの項目、私、読んだんですけれども、それは入ってないんですよね。
 ですから、融資先とすれば、この情報が変なところで変に活用されたらたまらないという思いがあると思うので、それは二重の意味で、八百億円も損しているだけで、その上に顧客情報まで活用されたらたまらぬということがあるんですが、そのしっかりとした防止についてはどのようにお考えになっていますか。
村田副大臣 今、私どもは適切な監督を行ってまいりたいというふうに申しましたが、あおぞら銀行では、守秘義務の観点から、役員等がそうした、ソフトバンクが株主として、あるいは派遣した役員を通じて取得したあおぞら銀行に関しますその情報等につきまして、あおぞら銀行の中の人事規則におきまして、在職中、退職後を問わず、当行及び取引先に係る内部情報の秘密保持に関する規則を定めている、そういうことでありまして、また出向者からも秘密保持の規則を遵守する旨の誓約書をとっている、こういうふうに聞いておりますので、こうしたことも含めまして、私ども、そういうことが起こらないというふうに考えておりますが、具体的にも、あおぞら銀行の内部の規則でそういうことが定められている、これが守られていくということを監督上見ていきたいというふうに考えておるわけであります。
生方委員 取締役になった方についてはそういう規定があるかもしれませんが、株主についてはないんじゃないですか。
村田副大臣 そもそも経営健全化計画の中で、あおぞら銀行の顧客の個人情報の保護という、そういう具体的な定めがございまして、その中で、そうした情報を相互に利用し合うことは当面予定しておりません、こういうことをその計画の規定の中に書いておりまして、今、お客様に関する個人情報を事業親会社等グループとの間で相互に利用することは当面予定しておりませんというそういう、それから、その後の……
生方委員 さっきおっしゃいました異業種による銀行参入等新たな形態の銀行というマニュアルの中で、「事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護の観点」という項目の中に書いてあるのは、事業親会社等と、事業親会社というのはソフトバンクでいいですよね、事業親会社等と子銀行の関係においては、両社のシナジー効果を図る観点から、顧客情報を相互に活用することが予想されると。だから、別に禁止しているわけじゃないんじゃないですか。相互に活用していいというふうに言っているんだから。
村田副大臣 その規定を受けて、具体的に経営健全化計画の中にある規定において、たった今私が申し上げたように、顧客の個人情報の保護に関する規定がございまして、あおぞら銀行自身が事業親会社等グループの間でお客様にかかわる情報等を利用することは考えておりませんと、こういう規定があるというふうに私がお答えしたわけであります。
生方委員 じゃ、その親会社が株主を外れた場合は、その規定はどういうふうに適用されるんですか。
村田副大臣 これも仮定の話でございますが、今そういうことは、この規定が親事業会社の間で守られるということが、私どもとしては、あおぞら銀行がそういう規定を設けているわけでございますから、あおぞら銀行としてそういう保護が貫徹されることを、しっかり実現するということが期待されているというふうに思うわけであります。
生方委員 何か納得はいかないですけれども。そこでまた得た情報が仮にほかで、ソフトバンクの事業展開に活用されるなんてことがあったらとんでもない話ですから、そこは厳しくチェックをこれからもしていただきたいと思います。
 それで、そのソフトバンクグループがどのようにこの株を取得したのかという当時の金融再生委員会の議事録というのを、これは朝日新聞が何か情報公開法に基づいて請求をしたらしいんですが、これは我々が請求しても同じものが出るということで、フィナンシャルアドバイザーのモルガン・スタンレーがどういうような評価をなさって、どうなってきたのかというのがここに盛り込まれてあるというので私もいただいたんですが、これを読みました。
 四十二ページあるんですけれども、これは朝日にも出ておりましたが、こうなっているわけですね。これは本当に、読んだんですけれども、こういう状態ですよ。これは、読んでも、肝心なところは全部抜けているんですね。こういう文書というのはちょっと珍しいんじゃないかと思いますよね。(発言する者あり)一ページ真っ黒なんですよ。一ページ真っ黒だし、あと肝心なところは全部真っ黒なんですね。だから、これを私は読みましたけれども、結局、どういう論議がなされて、何が問題で、どうしてソフトバンクになったのかというのは、これを読んだだけじゃ全然わからないんですね。
 こういうものを何か公開する意味があるんですか。これじゃ私は、私が読んでも少なくとも、何にも情報公開したということにならないと思いますが、こういう文書を公開するとは一体どういうことなんですか。
柳澤国務大臣 私は、この情報公開に当たって、金融再生委員会議事録をどういう方針で公開するかということを非常に早くに指示しました。これは全部個別の案件を審議している委員会ですから、非常にこれは公開の、差しさわりする部分が多いんですね。基本的にそういう性格のものです。一般論を議論しているんじゃないんです。個別の会社のことを議論する機関ですから、当然そういうことで墨塗りの部分が多いんですが、一時期、もう結局、ある回、全部消さなくちゃいけないじゃないかというような案もあったくらいなんですが、私は、それはまかりならない、それはだめだということを言いまして、それで、公表の期限を延長してもらって、これはもう非常にマンパワー的にも大変な作業だったわけですけれども、通常の仕事が終わってから、夜なべとして、ずっと細かく、秘すべきところ、それは情報公開法の基準に基づいて秘すべきところと、秘さざるべきところ、公開すべきところを分けていったという作業をあえてしてもらったわけです。
 そういうかなり丁寧な仕事を実はしておりますから、もしそういうような箇所があらわれたとしたら、それは恐らく、そこを消すと、今生方委員が指摘されたのよりももっと、ほとんど意味をなさない文書になってしまうというようなことになったためにそうしたことをしたんだろうと。私、その当時のいきさつからいうと、そんなふうに受け取らざるを得ないというふうに思っています。
 いずれにせよ、その金融再生委員会の議事録は、私の指導方針というのは、もうできるだけ明らかにしろということで一貫させてきたつもりでございます。
生方委員 できるだけ明らかにしてこれじゃ、私、これを読みましたよ、読んだんですけれども、意味がわからないんですよ。意味がわからない文書を公開してもしようがない。肝心の部分、全部ないんなら、むしろ公開しない方がいい。こんな、モルガン・スタンレーの言い分を全部削っちゃう理由がどこにあるんだ。フィナンシャルアドバイザーとしてお金を払ったわけでしょう、モルガン・スタンレーに。それを幾ら払ったのかと聞いても、それは幾ら払ったかも言えないと。では、そのアドバイスが適切であって、その支出が適切であったのかどうかというのは、これを見なきゃ我々は判断できないわけですよね。
 柳澤さんおっしゃいますけれども、だから、柳澤さんは全部知っているから消したところを見ても文章が通るのかもしれないですが、私、これを読みましたけれども、隔靴掻痒で、こんなものを読んでも全く時間のむだだった。何にもわからない文書を公開したら意味がないんだから、そんなのならむしろ公開しないで、公開しませんという理由を述べればいいんですけれども、こんな文書を公開して、これで公開しましたというのは、大臣、これをお読みになりましたか。見ましたか、この消された部分は。こんなものを見たって、これは日本語にも何にもなっていませんよ。何の意味もないですよ、こんなの。何で、何の意味もないものを出して、公開しましたなんてことを言うのか。それならば非公開ですと言った方がよっぽど私はすっきりすると思いますがね。いかがですか。
柳澤国務大臣 要するに、金融再生委員会での議論というのは、一般原則を立てるときの一般論の部分と、それを個別のケースに当てはめていくときの個別の議論、つまり個別のそれぞれの企業のいろいろなデータというようなものが常に話題になっていかざるを得ないセッション、こういうのがあるわけでございます。
 しかし、私の指導方針というか、これは再生委員会そのもので議論してもらった結果委員の同意も得たんですけれども、とにかく、もうできるだけ公開するという基本原則。ただし、情報公開法に照らしてこういうものは削除、公開の対象にしないというところについては、これは訴訟リスク等も負うわけですから、それはもう公開しない。この方針で、とにかくできる限り公開するということでやった結果がそういうことであるということを、私としては申し上げざるを得ないということでございます。
生方委員 個別の企業に迷惑がかかるというのは、それはわかりますよ。わかりますけれども、モルガン・スタンレーの言い分は全部消すというのがわかりませんね。何でモルガン・スタンレーの分析は全部消さなければいけなかったのか。個別の企業がもし出てきて、どこかだけこういう格好で出てくるならまだしも。これは多分個別の企業が出ているんでしょう、だから消したんでしょうけれども、そうじゃなくて全部を削っちゃうということは、それはだから柳澤さん今おっしゃるような何かの判断じゃないわけですよ。全部ここはもう消しちゃおうということで、できるだけ公開しようという意図は全く見えないわけですね。これは、だから大臣の意図が少なくとも事務方にはきっちりつながっていなかったというふうに思うのです。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
 もう一点、ちょっと伺いたいんですが、みずほの例のシステム事故がございましたよね。あれでみずほから金融庁に対して二回報告書が出ていますね。それで、私はその報告書を見せてほしいというふうに金融庁の方に言ったら、だめだと言うんですね。何でだめなんだと。
 私はここで、みずほの社長に、あの事故が起こった直後にお話を聞きました。その後で、みずほ銀行がどういう調査をしてどういう結果が出たのか、それでどういう措置をとったのかというのを、金融庁にどういう報告をしてきたのかというのを見て、金融庁がこの後いろいろな処分をするときにその処分が適切であったかどうかというのがわかると思うんですね。
 それで、どういう結果が出たんですかというのは、それは見せられないという形で、何回か見せる見せないというふうにやったんですけれども、きのういただいたのはこれなんですね。「みずほ銀行のシステム障害等(五月八日現在)」というのでこうあって、どういう障害が起こったのか、その「概要」があって、「原因」があって、「原因」の中に、外部接続コンピューターのプログラム不良というのとかシステムのふぐあいとか事務処理上のミスというのが出ているんですけれども、一番知りたいのは、何でプログラムのふぐあいが起きたのか。
 これは、言われておりますように、三行が合併したときのその三行がそれぞれ我を張り合ったとか、自分の持ち分がどうのとか、それぞれのコンピューター会社が違ったからとかというような点とか、事務処理上のミスがどうして起こったのか、それは点検作業がこうであって、そのマニュアルが違っていたとかなんとか、それを我々は知りたいんですけれども、それが一切書いていなくて、こんなのは新聞にもうとっくから出ている、指摘されていることだけが、二回の報告で、出てきた報告書でこれだけだとしたら、こんなふざけた話はないわけで、これだったら金融庁は、こんなものじゃだめだと突っぱね返さなきゃいかぬわけですよ。
 それで、何でこれを財政金融委員会の委員にも示せないのかと言っても、何の根拠も示してくれないんですね。どうしてこれを我々に示すことができないんですか。
柳澤国務大臣 一般に、銀行法上の、これは二十四条報告を徴しているわけですけれども、二十四条報告について、これを明らかにするというような慣例というのは、やはり私は適切でないというようにも思います。
 要は、それは理由とか原因とかを今回の件について明らかにしようとしていないということでは全くなくて、今検査をしておりますが、これについても、検査結果通知というものそのものを明らかにするということは将来のことも考えると私は適切でないという判断をさせていただいておりますが、実態については、いずれ私は何らかの形でこれは明らかにしたいということをかねて申し上げているわけです。
 生方委員の御指摘の点は、まさに私どもも、その前にある背景、事情というものこそが問題だということを考えておりまして、それは、今立入検査をして明らかにしたいと思って、考えている次第であります。
生方委員 だから、今来ている報告はこの程度のものなんですか。こんなものを二度にわたってもらって、納得しているわけですか。
柳澤国務大臣 報告は報告で、そこに要旨を恐らく摘記して委員にお渡ししたんじゃないか、こう思いますけれども。
 したがって、私どもは、やはりこれは立入検査の必要があると。その報告ががっちり書いてあったとしても私は、今回のことについては立入検査をしなきゃならぬ、こういうようにもう非常に早い段階で決断しておりましたが、そのことを今やっているという状況です。
生方委員 だから、我々にこれを示さないという理由はないですね。別に、こんなものであれば我々見たって何てことはないわけですから。これはお示ししていただけますか。
柳澤国務大臣 これは、一般的に二十四条報告を徴したものを、そのものを公開するというか、ここへ出せば公開ですね、そういうようなことは、私は適切でないと考えているということを、先ほど申し上げたとおりです。
生方委員 何で適切でないかわかりませんけれども。
 それは我々だって、みずほの場合は、ここでも指摘しましたように、三千万も口座があって、国民のほとんどが取引をしているというふうに言ってもいいような銀行のシステム障害だったわけですから、その原因についてみんなでやはり論議をして、またこういうことが起こっちゃいけないというためには、やはりできる限りの情報を公開して、そのみずほの調査が適切であったのかどうかというのは、金融庁さんだけの目で見るよりも、我々やはり素人が点検するということは大事なんですよ。
 プロが見逃しちゃうところを素人が点検することによって見つけることもあるわけで、むやみに別に隠す必要もないものを隠してつまらない指摘をされるよりも、別に隠さなくていいことは私は隠さないでオープンにするべきだというふうに思いますので、隠すような中身じゃないことを本当に隠しても意味がないんですよ。だって、この程度のもの、何にも秘密性がないわけじゃないですか。さっきおっしゃったように、どこかの企業に迷惑がかかるような問題でも何でもないわけでしょう。そういう体質がやはり私は問題だと思うんですね。
 だから、いや、だって隠す理由がないじゃないですか。積極的に、では私にきちんと、何で公開しちゃいけないのかという、防御というのじゃなくて、これこれこういう理由で公開しないんだというのを、もうちょっと説得力のある答弁で御説明いただけますか。
柳澤国務大臣 ですから、本件の、今御指摘の点に限って言うならば、障害が生じた原因というものについてはこれは議論の俎上にのせるということはかねてから申しているわけです。
 それで、問題は、二十四条報告というような行政手続上の一つの階梯を形づくる文書をそのまま公開するということになりますと、これは将来にいろいろなケースがあることをおもんぱかりますと、私として、そういうことについては、やはり公開をするということは適当でないと考えている、行政の責任者として適当でないと考えているということです。
 その理由、もう申しませんが、申し上げますか。これは、二十四条報告というのは相手に個別のいろいろな問題を聞くわけです、公式の文書として。そういうものが公開が前提になるといったら、本当のことがどれだけ聞けるかというようなところへはね返ってくるんです。我々は行政を的確に運用するためには、やはりこれはしっかりしたことを聞かなきゃならないという前提、そのことを確保するためには公開をするということは適切でないという判断を私がしているということです。
生方委員 この程度のものを別に。だって、これが概要なんでしょう。だから、もっと詳しく出ているならともかくとして、この程度のものに、そんなに大臣が言うほどのものじゃないと思うけれども……。
柳澤国務大臣 いや、そのことを言っているんじゃないんです。二十四条報告ということを公開することは適切でないと言っているんです。
生方委員 だから、二十四条報告だから適切でないのなら、全部を出せと私は言っているんじゃない。概要でも出してくれと言ったら、これしか出てこないんで、これじゃ幾ら何でも、こんな報告をもらって検査するんじゃ、その検査だってそれはちゃんとした信頼できるものにならないんじゃないですかということを私は指摘しているんであって、そんなに意気込むほどのことじゃないんですよ。私だって、こんなもの納得しませんよ。こんなもので、あなたもう一回出直してこいというぐらいな文書ですよ。知りませんけれどもね。
坂本委員長 時間が来ております。結論をお急ぎください。
生方委員 はい、わかりました。
 では、あとソフトバンクの件は、もし仮に本当になるというようなことがあれば、きちんとした措置というか、きちんとした処理をしていただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
柳澤国務大臣 今具体の案件ということになっているわけではないわけですけれども、もし仮にそういうことになった場合には、先ほど来申し上げているように、契約の趣旨というものがしっかり守られるように考えてまいりたい、こういうようにお答え申し上げます。
生方委員 ありがとうございました。
坂本委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 きょう法人税法の改正案について伺いますが、ちょっと順番を変えまして、まず、法人税法の改正案について、財務大臣と、あと修正案の提出者にお伺いをいたします。
 今までのこの委員会の議論の中でも触れてまいりましたが、連結納税制度自体、バブルのころの過剰債務、過剰雇用、過剰設備の除却なんかに非常に役に立つということで積極的に推進するべきであるというふうに考えておりましたし、また分社化等を促して日本経済の構造改革を行うということでも大変重要であるというふうに言ってきたわけです。
 ところが、連結付加税というようなものとか、あと、それもさることながら、それ以外に課税ベースも見直すというふうなことになっていて、そういう点から考えると、負担軽減ということには余りならないし、連結納税制度自体利用しないところは、ネットで増税になるようなところだって出てしまうということで、本来の趣旨から考えると、これではちょっと合格点ではないなというふうに思わざるを得ないわけなんです。
 塩川財務大臣に伺いますけれども、この課税ベースを広げるということで、残念ながら企業の負担がふえるということもあり得るということで、大臣御持論でありました損して得とれということが今回できなかったということになるわけですが、この時期にこの連結納税制度を、こういう課税ベースを広げる、あるいは付加税を導入するということで、どういう趣旨を達成しようとされているのか。そのことについてお伺いできますでしょうか。
谷口副大臣 中塚委員の御質問でございますが、今中塚委員御自身もおっしゃったように、我が国経済のベースにあります企業の事業再編を促進する、またひいては産業構造の改革を促進していくというような観点で、今回連結納税制度を導入しようということになったわけでございます。
 一方で、大変厳しい財政状況にあるわけでございまして、連結納税制度を導入するといったことによる税収減につきまして財政措置を講ずるといったことが必要だ、このような観点から、連結付加税、また退職給与引当金の廃止等のいわゆる課税ベースの拡大を行ったわけでございます。このような財源措置は、連結納税制度の導入に伴う減収に見合うという観点で行われたものでございます。
 中でも、退職給与引当金の廃止等の課税ベースの見直しというのは、法人税率の引き下げのみを実施いたしました平成十一年度改正以後残された課題に対応したものということと、また、実態的な意味を考えても、今企業社会においては、内部留保を行うということよりむしろ外部拠出を行う、例えば適格退職年金を採用するといったような企業がどんどんふえておるわけでございますので、退職給与引当金といったような内部留保をむしろ促進させるということが、従来から、引き下げられておるといいますか、廃止の方向にあったわけでございます。そういうことも含めまして、今回このような対応にしたわけでございます。
中塚委員 過去の税制改革を引きずって退職給与引当金制度を廃止するということなんですが、それならそれで、そのときにやっておいた方がいいんだろうなと思うわけですね。
 特に、付加税について修正案が提出をされまして、大変に時宜にかなったことだなというふうに思いますけれども、例えば、付加税の導入によって増収になるのは平年で千億ちょっと、初年度で七百三十億ということなんですが、大臣、千億、七百億ということなら、ぜひ、日ごろの御持論の行政単価を見直すということでこれぐらいの財源は出るんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 財源の捻出ということもいろいろ考慮すべきだろうと思いますけれども、私は、申し上げておりますのは、とりあえず一回実施してみて、これがどないなっているのかという実態を見た上で判断するという方針を一応固めたようなことでございますので、それはひとつ、そのとおり一回やらせていただきたい、こういうことをお願いするよりしようがないと思うんですね。
 それは、確かに、付加税をつけるときには、先ほども答弁申しましたように、生方さんに申し上げたと思うんですが、この適用を受けることによってやはり利益を受ける企業というのはあるわけでございますから、その受ける利益が他の受けない法人に対してどのように影響があるかということ等を考えてある程度考えたことでございますけれども、しかし、それがために角を矯めて牛を殺してしまうようなことになってはいけませんので。
 ですから、実施してみて、これが非常に意義が違ってきたということであるならばそこで考え方を変えたらいいと思うし、この状態でいいということならまた続けていったらいいと思っておりまして、できるだけ早くやりたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
中塚委員 そこで、修正案の提案者の海江田委員にお伺いしますが、ことしの、十四年度予算案の組み替え要求を野党四党でやったときに、実は、私、率先しまして、この付加税の削除というのを盛り込もうという話をしまして、それで、ただ、四党一致するということが大原則だったものですから、組み替えには入らなかったというふうな経緯もあるんです。
 今、財源のことを大臣にお伺いをいたしました。大臣は一度やってみてというふうにおっしゃるんですが、私は、どうせやるんだったら一回目からばしっと負担の軽減というものができるようになっていった方がいいだろうというふうに考えます。
 そこで、提案者の方にお伺いをいたしますけれども、この付加税を削除した場合に、やはり穴を埋めるということになるわけですが、その財源ということについて、私も、税制を論じるときに、やはり負担は軽減する方向で考えるべきだろうというふうに思うし、では、その負担の軽減をするときに、必ず財源はどうなるんだというふうな議論になるわけですし、これは与野党であっても、あるいは野党間であっても、常にそういう財源の話というのが出てくるわけですが、せっかくの機会ですので、この一千億あるいは七百億ということについての財源についてはどういう手当てをするべきというふうにお考えになっているのか、いかがでしょうか。
海江田委員 先ほど石井委員の質問にもお答えをいたしましたけれども、やはり基本的に歳出のカットでいくべきだというふうに考えております。
 それで、例えば今御指摘のありました初年度七百三十億円、この付加税の導入による税収増でございますが、それから平年度で一千三十億の税収増というのも、これもいろいろな仮定を置いている数字でございますから、私どもは必ずしもこの数字にとらわれなくてもいいというふうに考えておりますということは、まず真っ先にお話をしておきます。
 その上で、歳出のカットということで、しかも予算の編成の見直しの動議ということで先ほど委員からもお話ございましたけれども、現に平成十四年度の予算が執行過程にあるということも勘案しまして、先ほどもお答えをいたしましたけれども、これは塩川財務大臣自身が八月の時点で、一般旅費の二〇%、物件費の一五%の留保の要請を行ったところ、一千六百億の節約が可能になったという例もございますので。そのほか外交機密費でありますとかもろもろ、やはりこれは削るべきところは大いに削っていくということで財源は十分引き出せるんではないだろうかというふうに思っております。
 あと、なお、先ほど財務大臣は、角を矯めて牛を殺すことになってはいかぬというような話もございましたけれども、もう一つ、やはり仏つくって魂入れずという言葉もございまして、この付加税の問題が、各企業が連結納税の採用に当たっての一番の障害になっているということは、これは私どもも、民主党も、経団連などからの聞き取りをやりまして、そこのところに一番の問題があるというようなことがございましたので、私はやはり、この制度があることによってせっかくの連結納税の採用にためらいの企業があってはならぬと。
 私、実は、税制でいいますと、給与所得者の特定控除という制度がございまして、これはサラリーマンにも一定の経費を認めなければいけないという議論から出てきたところでございますが、あの制度自体は今もまだ残っているわけでございますが、毎年の利用者が本当にたった二人とか三人とか、そんなような例もあるわけでございます。
 やはり税制の場合は、せっかくそれを導入しましたら、本当により多くの企業に採用してもらう、そしてそのことが日本の企業の再生に資することにならなければいけないということでございますので、本当に仏つくって魂入れずにならないように、この付加税というのは、やはりこれは取りやめをすべきだ、削除をすべきだ、そのように考えているところでございます。
中塚委員 提案者の海江田先生、ありがとうございました。もう結構です。
 いずれにしても、結局、連結納税制度を導入する目的ということから考えたときに、付加税を入れるということになりますと、何かやはりよくわからないわけですね。連結納税制度を導入することによって目指すべき経済社会のあり方というのがあって、そのために減収になるんなら、その財源は何とか手当てをするというふうなことで考えなきゃいけなくて、財源が一定のもので、限られていて、その中で税制改革というのを考えるのであれば、結局、増減税一体という域を出ていかないわけですから、やはりちょっとこの部分については納得しかねるというか、賛成しかねるなというふうに思います。そのことをお話ししておきたいと思います。
 続いて、きょう、関連して、税制の話をいろいろと伺いたいというふうに思います。
 今、連結納税制度についてとりあえずやらせてというふうなお話がありましたけれども、ただ、今、経済財政諮問会議で税制の議論が始まっていまして、私は、本当は、去年の今ごろこの議論をしてもらって、ことしの年度がかわったときから新しい税制というのを執行できるような、そういうぐらいの改革のもっと前倒しというのをやらないといけないのだろう、そんなに日本に時間があるわけではないのじゃないかなというふうに思うわけなんです。
 今、税制の議論がいろいろ続いていることを伺っておりますけれども、特に所得税の話について伺いたいと思うんですが、かねてより私の持論あるいは我が自由党の持論といたしまして、所得税における人的控除ということについて整理をするべきだろうというふうに考えているんですね。
 簡素、公平、中立なのか活力なのかは別にして、簡素、公平という点でいくと、やはり今の所得税制というのは、控除も乱立していて非常にわかりにくい仕組みになっていると思いますし、また、控除ということがいろいろな政策目的を持って行われているのはわかるわけなんですけれども、例えば、扶養控除があるその一方で児童手当みたいなものもあるわけで、手当と控除という二つあるわけですね。
 政府税調の資料なんか見せてもらっても、手当と控除と二つある国というのはそんなになくて、やはりどちらかというのがほとんどだし、私自身は控除ではなくて手当でやるべきなんだろうというふうに思うんですね。その方が政策目的も明らかになりますし、手当であるならば、例えば所得制限をかけるとかミーンズテストするということで手当の歳出面を抑制するというやり方は可能だと思います。
 控除でやるということになりますと、低所得者には恩恵が及ばないような事態だって起こるわけなので、私は、控除は大胆に整理する、もう廃止する、すべて廃止するぐらいでも構わないというふうに思うんですね。そのかわりに、控除を廃止するということに加えて、やはりその場合ベースが広がるわけですから税率自体は下げるような、そういうふうな税制改革をするべきだというふうに考えているんですが、人的控除というものの改廃ということについてどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせをいただけますでしょうか。
塩川国務大臣 人的控除というのを私もちょっと今見まして、自分で申告書を書いたことがないものだから控除というのは余りわからないのですよね。ところが、ちょっと勉強しましたら、物すごい種類があるんですね。租税の簡素化という意味からいうても、やはり控除というものはもう少し簡素化できないだろうかなというのが、これは一つのテーマとして考えていきたいと私は思っております。
 といって、手当というものとの間で、これはちょっと性質が違ってくると思いますので、私たちが考えるのは、やはり控除の問題についてできるだけ簡素化していきたい。同時に、税は薄く、広く負担していただくという精神を控除の整理の中で考えていきたい、こう思っております。
 それから、もう一つ大事なことは、控除の問題を検討する際に、急激な変化を与えたら納税者にとっても非常に迷惑でもあるし、そのことはかえって税の執行上も非常に支障を来すと思いますので、緩やかな改正でやっていきたい、こう思っております。
中塚委員 急激な変化をもたらすのがいけないということなら、あるべき税制をつくった上で、今の税制と選択制ということでも構わないのだろうというふうに思いますが、いずれにしても、公平、簡素という視点に立てば、やはり今の人的控除というのは、大臣がおっしゃったとおりでたくさんあり過ぎてわけがわからないし、またこれが控除によって税額が抑えられるわけですが、そのこと自体の意味というのが余り納税者にとってわからないわけですね。これが手当になっていけば、逆にその政策的な意図というのもはっきりしていくのだろうというふうに思うし、納税者の意識というのも変わっていくのだろうというふうに思うわけで、そういう視点から人的控除の整理ということをお話をしているわけです。
 あともう一つ、人的控除ではありませんが、給与所得控除、サラリーマンなんかですね。給与所得控除ということについても、これもやはり見直すべきなんだろうというふうに思うわけですね。人的控除のことと加えて給与所得控除ということについては、その改革の方向性というかお考えがありましたらお聞かせいただけますでしょうか。
塩川国務大臣 給与所得控除を考える場合は、それじゃ自主申告制にするかどうかという問題とあわせて検討すべきだと思うんですね。給与所得控除というこの制度は、私はいいのじゃないかなと思います。というのは、やはり給与源泉徴収ですね、これは面倒くさくなくて私はいいのじゃないかと。
 自主申告といいますけれども、実際これをやってみたらなかなか大変だろうと思いますが、その点は文明が進んでいけばそれはもっと機械化されて、自主申告のがいいという時代が来るかもわかりません。けれども、そこまでまだ税になじんでいないという状況で、税は取られるという思想がまだ圧倒的に強い時代においては、やはり自主申告というのは本当に国家財政上からいうても有効な制度なのかどうかということも思うし、納税者の方から見ましても、こんなしち面倒くさいことということになりやせぬかなという、そんな懸念もいたしますので、給与所得控除、この制度はやはり、額はいずれにしても温存しておいたらいい、私はそう思います。
中塚委員 そのすばらしい制度、面倒くさくなくてすばらしい制度なのかもしれませんが、それはお国の方からいえば確かにそういう面もあると思うんですけれども、納税者の負担を軽減するという意味も確かにあるとは思いますが、ただ、そもそも議会政治というのは王様が勝手に税金をかけないようにできている。それが議会制の発祥でもあるので、納税者としての意識を持ってもらう。
 自分が、幾ら税金を納めるのかというところから始まって、この税金が何に使われているのか、そういうふうなところにもつながっていくはずですし、だから、そもそもは源泉徴収制度にしても、税制が複雑だから源泉徴収ということになっていくわけで、本当の意味で簡素で公平でということになっていけば、自己申告ということにするべきなんだろうというふうに思うわけです。
 それで、控除の廃止の話ばかりをしましたけれども、廃止すれば負担がふえるわけですね。特に、今いわゆる課税最低限以下の人は、今まで払っていなかったものが税金を払うようにもなるということなんですけれども、そういうふうになりますと、やはりこの税率の問題ということについても触れざるを得ないわけですね。さっき大臣がおっしゃったように、急激に変化するというのは私も全くそのとおりだと思っていまして、課税最低限以下の人は払わなくてもいいということであったのが、控除がなくなることによって、ゼロから、幾らかは払わなきゃいけないというふうなことになっていくわけです。
 そういうことを考えても、控除を廃止するという、あるいは圧縮なのかもしれませんが、そのときには税率、率自体もやはり見直すべきなんだろうというふうに思うわけです。広く薄くということで、広くが控除廃止で、薄くというと、今度、税率の部分にかかってきますので、そういう改革、控除というのを見直すということになれば、そのときにはやはり税率ということについても考えなきゃいけない。最高税率はどんどん下がってきてはいますけれども、私は、ベースが広がる、控除がなくなるということになれば、最低税率、今一〇%ですが、これについてやはり見直さざるを得ないのじゃないかなというふうに思うわけです。
 控除がなくなって、増収、税収増自体にはなっていくわけですけれども、そのときにやはり税率ということについて避けて通れなくて、特に最低税率の引き下げ、そのことについてはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 まだ私たちは税率の問題までは考えておりませんが、所得対象をどの程度まで広く薄くというそういう点においては考えておりますけれども、多様化を求める時代でございますからそれも検討の一つの材料になるかもわかりませんけれども、目下のところ、私たちは税率についてはまだこれを積極的に取り組んでおるというところではないと思っております。
中塚委員 時間が迫ってきましたので、最後に一つ伺います。
 国と地方の税源のことについても議論がされていまして、塩川大臣が提出された資料によると、国から地方に税源を移譲する、渡すということについては余り積極的な記述というのがないように思われるんですね。他方、一方で、住民税の均等割をふやせとか事業税を早く外形標準化しろということは書かれているわけなんですが、やはり、今の国税から地方税に税源として渡すという考え方はなくて、そうではなくて、地方は地方で増税をしなさい、地方で増税をすることによって税収的には国と地方の税源の割合、配分比というものが変わってくる、そういうふうなお考えということなんでしょうか。
塩川国務大臣 大体おっしゃるとおりの考えでございます。
 私は、移譲ということは、これはちょっと不適当だと思うんです。なぜかといいましたら、その税を国税として課税するのかあるいは地方税として課税するのかということは、税の本質論がやはりそこに問題として潜んでおりますから。では、国税で取ったものが、突然、今度はこれを地方で取ってくれぬかと。ちょっとこれは、何でやねんとなると思いますね。ですから、移譲ということについては、私はやはり慎重に税の本質を考えてやらなきゃいかぬと思うんです。
 ですから、移譲ではなくして、国税の方の減税をして、その分を地方税で増税してバランスをとれ、こういうことだったら一応わかるんですね。だから、そういう考え方を一応とるべきではないかなと思うんです。
 そうならば、大体、国の仕事、いわゆる行政責任というもの、私はこれをいわゆるナショナルミニマムと言っておるんですが、それと地方のシビルミニマムというものはどの程度のことがいいのかという行政の責任の根本をちょっと考え直さなきゃいかぬのじゃないかと。大きい政府、小さい政府と言っていますけれども、その根本を抜きにして口だけで言うているだけですから、ここはやはり考えるべきだと思うんですね。
 そうしますと、当然国と地方の役割分担ということが決まってくる、それに伴うところの財源というものをどうしようか、その財源が決まってくれば、それに対する税源をどうしようか、ここがやはり、一番根本を抜きにして枝葉末節のところばかりがちゃがちゃ議論しておるからなかなか解決しないと私は思うんですが、この際にぜひ根本問題についてひとつ討議をしていただきたい、こう思っております。
中塚委員 時間ですので、終わります。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 先日、質疑を行いましたときに、主税局長は私に対する答弁で次のようなことを述べられました。
 この連結納税制度というのは、いわゆる大企業だけを対象としておりませんで、中小企業を親法人とする企業グループの連結納税制度を採用するというのも、実はかなり見られるのではないか。特に日本の場合には、オーナー型経営というのは、むしろ分社化でやっているケースがございますから、このあたり、我々の実態調査では十分把握できていないのですけれども、かなりそういう企業にも恩典のある制度ではないだろうかという答弁がありました。また、しかも、その場合には軽減税率が適用できるとか、そういうところもあると。
 また、アンケートは大きな企業を中心に行った、ただ、現実に、この問い合わせというような意味では、まだそれも統計はとっておりませんが、各税務署にも問い合わせが結構来ているというふうに聞いておりまして、大企業以外にも関心を持っているところがあるということは事実かと思いますと。
 そのとき、大体、あなたの答弁を聞いていまして、何言うてはんかいなというふうに思うとったんですが、後から会議録を精査しまして、この主税局長の答弁をじっくり見てみると、なかなか見逃せない特徴が見られました。それは、我々の実態調査では十分把握できていないがと言っているんですね。また、統計はとっておりませんがと。実態がわからない、統計がないと言いながら、予測も交えた後、断定的な言い方をするというのがあなたの答弁手法の特徴の一つだなと思いました。
 だから、実態調査は実際やったのかやっていないのか、やったが十分把握できていないということなのか、ここのところどうなのかを最初に伺っておきたいと思うんです。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 アンケート調査は、先般も申し上げましたとおり、上場会社、店頭登録会社全社、その他主要企業ということで、一応回答法人三千百余でございまして、さらにその関連子会社合わせますが、一万七千余の対象にやらせていただきました。そして、答弁申し上げましたとおり、主要企業ということですから、上場、店頭登録という意味では中小企業はこの中には入っていないという意味で、実態はまだわからないと申し上げたわけです。
 ただ、他方で、今回の十四年度税制改正要望におきましては、具体的には日本商工会議所あるいは東京商工会議所、大阪商工会議所等からも、連結納税制度をぜひ入れてほしいという要望をいただいているところでございまして、そういう意味では、中小企業団体におきましてもいわばそういう声が上がってきているからこそこういう御要望になっているのではないか、そういう趣旨で申し上げたということでございます。
吉井委員 アンケート調査の話はされたんですが、要するに、実態調査は実際にやったのかやっていないのか、ここのところを端的に聞かせてください。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほども申し上げましたとおり、中小企業についての実態調査はやっておりません。
吉井委員 それをあっさり答えてもらったらいいですよ。実は、前回の例もありましたので、昨日うちの部屋からあなたのところへ電話を入れて聞きました。実際はやっていませんというお答えを事前に確認しておりますので、改めて聞かせてもらったわけです。
 そこで、中小企業が実際採用するのかどうか。だから、どこも調査はしていないと。実態調査を十分やって根拠ある数字が明らかになったわけでもないわけです。だから、もし何か根拠ある数字でもあって、それで中小企業が実際に採用するんだ、そういう根拠があるなら言っていただきたいし、それはそういうものはないのでこれから調査するんだということであれば、それはそれとしてのお答えになりますので、くどいようですがもう一遍聞いておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 実態調査はやっておりませんが、例えば先ほど申し上げた東京商工会議所からは出ておりますが、オーナー経営者が同一である並列型連結も含めるべきであるとか、そういうような御意見もいろいろ当時から出てきておりまして、連結対象に中小企業が含まれる場合、連結納税額算出においても軽減税率等を採用すべきである、こういうような要望も出てきた。そういうのを受けて今回の措置をやらせていただいているということであります。
 かつ、実際上、それじゃ調査をするかと申し上げますと、先ほど来大臣も答弁されましたとおり、本年九月末の承認申請期限というところでございまして、この承認申請期限におきまして、どういう実態であるかということを把握していくということになるのかと存じます。
吉井委員 中小企業の適用問題では、昨年十二月号の月刊ケイダンレンの税務実務専門家座談会で、中堅企業、中小企業関係者ではどのように受けとめられているのでしょうかという問いに対して、専門家である緑川正博公認会計士・税理士は、中堅クラスの企業の中には連結納税を現実の選択肢として考えているところもありますが、ほとんどの中小企業は、今のところ、それほどの関心を寄せていません、中小企業の場合、グループ経営といっても同族経営の形態であるケースが多いために、ほとんど採用できないところが多いからかもしれませんと述べておられました。
 専門家はこういうふうに言っているわけですが、財務省は、中小企業にどのように受けとめられていると考えておられるのか、重ねて伺っておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 実は、連結納税制度につきましては、まさに今御議論いただいていますように、残念ながら、まだ広報といいますか、十分な制度の浸透が伝わっていないのだろうと存じます。そういう意味では、我々、この連結納税制度をいち早く通していただいて、できるだけ、政省令そして通達という形で流布させていただきたい、皆さんに理解していただきたいと思っています。
 中小企業につきましては、そういう意味で、この制度自体が十分理解されていないところがありますために、関心がないという点はまだあるのかもしれません。ただ、現実問題からいいますと、いわゆる経営者の中には、当然のことながら、商工会議所にもそういう御意見がありましたとおり、この制度自体が、同族法人であっても、一〇〇%子会社であれば当然この制度に乗ってくるわけでございまして、関心を持っていらっしゃるという方がいることは事実でございます。
吉井委員 浸透が不十分だとかいろいろ言われても、結局、連結納税制度というのは、巨大企業グループを中心に大減税をもたらすということははっきりしているのですが、その結果、純粋持ち株会社化をてこにした企業再編リストラが一層加速される、そして、働く皆さんの犠牲を推し進めることも必至だと思うのです。
 中小企業のお話をされたけれども、ではこの際、実際に中小企業の皆さんはどういう心配をしておられるのかということについても、例えば、中小企業家同友会全国協議会の要望、主張などが各党に寄せられてきておりますから、私も持ってこられたものを見ましたが、純粋持ち株会社解禁や連結納税制度は、多様な形態による大企業の経済集中力を促進させて、過度集中、大企業による市場寡占を引き起こす危険性が高いという、この点の危惧もしておられるのですね。
 ですから、中小企業の皆さんからすると、制度が浸透していないというだけの話じゃなしに、やはりその一面では、そういう過度集中等に対する市場の寡占という危険性などについても、実際にそうなったときは中小企業は大きな打撃を受けるわけですから、その心配をしておられるのも一方ではあるということが、そういうこともあるのじゃないですか。そういう声は全然耳にしておられない、聞いておられないのですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 中小企業の方々からはもちろんそういう声があるということも当然存じ上げております。したがいまして、この導入に当たっては軽減税率を定めるとか、あるいは退職給与引当金制度の見直しに当たっては、先般も御質問いただきましたけれども、十年間という経過期間を置いてやるとか、そういう手当てはさせていただいているわけでございます。
 ただ、他方で、やはり連結納税制度というのは、大企業、中小企業にかかわらず、そうした多様な経営形態をとることによって、いわば組織を再編していく、あるいはまた新しい分野に乗り出していく、そういうようないわば活力を生み出す一つの制度として世界的に広がってきているグローバル化の中での制度でございますので、我々の税の面でそれに対応していく必要がある、課税の中立性を保つ意味がある、そういうことから検討させていただいてきたものだということでございます。
吉井委員 これ、持ち株会社化、分社化、企業組織再編ということの一方の面とともに、しかしさまざまな抱えている問題があって、ですから、一方では、独禁法改正ということで独禁法をかなり骨抜きにして進めてきたわけですが、しかし一方では、独占禁止のシステムをきちっとやらない限り、グローバル化だなんだと言っている間に大変なことになってしまう、こういう懸念が国際的にも随分指摘されている、そのことを申し上げておきたいと思います。
 次に、消費税の問題について伺いたいのです。
 政府税調は、六月中旬の公表を目指して、税制改革の基本方針の骨格を固め、消費税率引き上げは避けられないと明記するというふうに報じられましたが、昨日の日経を見ておりますと、「税制改革を巡って政府の経済財政諮問会議への批判が続出した。急先ぽうは、党税調の代表格である山中貞則最高顧問。諮問会議の民間議員がまとめた税制改革の中間整理に関して「相手にするな」と不快感をあらわにした。「大企業を優遇し、貧しい人や中小企業をいじめるような対策を打ち出して、次の選挙に勝てるのか」などの批判が噴出した」ということが日経新聞などで紹介されております。
 小泉首相は、私の政権では増税はやらないとこれまでから言ってきていますが、塩川財務大臣はどういうスタンスで考えておられるのか。諮問会議が二〇一〇年にプライマリーバランスをめどにしていることとの関係とか、二〇〇四年、基礎年金の二分の一を国庫負担化との関係について、この際、塩川財務大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 私の考え方はもう御存じいただいておると思うのでございますが、増税しないあるいは絶対減税やらない、そういう断定的なことは今まで私は申したことはございませんで、増税も必要ならばやらなきゃならぬし、あるいはまた、減税によって経済の活性化を図らなきゃならぬ、そこらは非常に柔軟に取り組んでいくべきだと思っております。小泉総理も、増税をあえて政策の――経済活性化のためには減税を使うべきではない、総合的に考えるべきだということを言っております。ですから、減税もやらない、増税もやらないという限定的なことは言っていないと思っております。
 そこで、本当に経済の活性化に役立つということであるならば減税も実施すべきであると思いますが、そのかわりに、減税だけを食い逃げされたら困るというのは、私はもうしょっちゅう言っていることでございまして、必ず、その分に見合う財政的な措置ができるように将来において確保しておこう、担保してもらいたい、こういうことを言っておるのでございまして、私は、その意味において、絶えず、増減税の中立性を維持していきたい、その思想には変わりはございません。
吉井委員 税率の問題などとともに、免税点の見直し問題なども議論されておりますが、政府税調の石会長は、現行三千万の三分の一、一千万ぐらいに引き下げたいと明言しています。これによって、現在、二〇〇〇年で三百六十万社、全事業者の六二%、この免税事業者のうち、どれぐらいが課税業者になるのか、また、免税事業者の売上高の総額は全事業者の売上高総額の二・五%にすぎないのですが、これは幾らになるのか、こういうのをきちんと資料をもって検討しておられるのかどうか、これを伺いたいと思います。
塩川国務大臣 石会長は、相当多方面の意見を聞き、また資料も持っておられることは間違いございません。
 私も、タウンミーティング、税に関するタウンミーティングですが、そこに出席いたしましたが、やはり、意見が多いのは、私たちが払った消費税は本当に納まっているんだろうか、そういう単純な質問が非常に多かった。そのことをさらに突っ込んでいろいろなコメンテーターの方から意見を出していきますと、結局、免税点の問題と、それから簡易課税制度の問題、そこにぶつかってくることが非常に多い問題でございました。
 その意味において、石会長は、この問題について一応検討すべきであるということをおっしゃったので、やはり石会長は実情をつかまえて認識して言っておられる、私はそう信じております。
吉井委員 これは、財務省の当局の側、資料をきちっと持っておられますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま大臣が申されましたとおり、税制調査会でタウンミーティングをしばしば行われた中で、大変、消費税に対する、特に免税点制度というものについての御批判があって、やはり、消費税全体の国民の信頼性とか、制度の透明性を向上させる観点から見直す必要があるということを強く言っておられるわけで、具体的に一千万とか幾らにするとかということを検討しているという状況ではまだございません。
 ただ、いずれにしても、具体的な改正に伴う影響というのはなお調査はいろいろしている最中でございまして、具体的にお示しできる状況ではございません。
吉井委員 ですから、実は当局の側には資料はまだないわけですよ。
 次に聞いておきますが、九三年答申には、三千万を妥当とする意見の中に、「売上規模の小さい事業者においては相対的に転嫁を行っている比率が低い」という指摘がありました。つまり、零細中小業者は消費税が転嫁できていないということを挙げているわけです。だから、一般的に見れば、消費税を取っておいて払っていないんじゃないかとか、何だという話があるんですが、しかし、通産省にしてもどこにしても、小売業者やサービス業者について調査をしてみると、なかなか転嫁できていない。転嫁できていないということは自腹を切るということになるんですが、実態調査についてはどのように進めておられるか。
 実際に、八九年四月の導入から九〇年四月まででどうなったか、三千万以下の事業者がどうなっているかということとか、通産省の九七年消費税率引き上げ後の調査などもいろいろあるようですが、現実にどれぐらいが転嫁できない事業者としてあるのか、資料を持っておられたら伺っておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいまの先生がお話しになられました転嫁の問題というのは、結局、物やサービスの価格というのが市場を通じて決定されるものでございますから、よく言われておりました益税とか損税というようなものがどう発生するかというのは、定量的に把握することは不可能だということは御理解を賜りたいと思います。
 いずれにしましても、先ほど来申してまいりましたように、現実に納税者の方、消費者の方が払った消費税というのが、それがどういう価格決定であるにせよ、少なくとも税務署の方に届けられていないのではないかというその疑念が生じているということでは事実でございますので、そういう意味でも、そうした事務の実態を踏まえながら今後検討させていただきたい、そういう趣旨でございます。
吉井委員 もう最後にしますが、実際には消費税を転嫁できない業者が、しかし、消費税を払えということになって、それで売掛金の差し押さえをやられたりとか、私も大阪で聞いたところでは、堺税務署の徴税第三部門が一番きつくてという話なんかも聞きましたが、倒産しても構わないんだ、とにかく金出せ、売掛金まで転嫁できていない分の消費税の納税だといって取り上げられたんじゃ商売は成り立たない、本当に悲鳴を上げるという事態が進んでおります。
 今回、巨大企業グループに対して連結納税制度を導入するための理屈として、一体経営という実態に即した適正な課税を実現するとしているんですが、中小企業の実態に即した適正な課税を行っていく、消費税の面でも実際に転嫁できないところについてはやはりそこまで、売掛金まで巻き上げるようなやり方で、本当にこれでいいのかということがあると思うんですが、私は、中小企業の実態に適した適正な課税こそ行うべきじゃないか、この点について、最後に塩川大臣のお考えを伺って、質問を終わるようにしたいと思います。
塩川国務大臣 吉井さん、この消費税の問題、転嫁できないとかいろいろございまして、それは私たちも実情よく知っておりますが、これを徹底的に調べるということはできないんですよ、実際は。そんなことはできるもんじゃございませんで、そういたしますと、やはり、資料を出せとおっしゃいますけれども、資料には、限定的なものしかできないということをこれはまず認識しておいてもらわないと、そんなもの、零細企業まで徹底的に消費税を絶対調べるなんてできませんよ。
 だから、そういう意味において、消費税の問題というものは、やはり一般大衆の感性に訴えていくということが割合多いと思うんです。ですから、問題が出ておるということの段階であって、これをどうするというところまで結論はつけていないんです。
 ですから、これから、しばしば納税者の、そしてまた実際に委託を受けている徴収者の方も、いろいろな実態を調べてみた上で、この問題についての勉強をし、結論を出していきたいと思っておりまして、暫定的に、消費税の免税点を、もう召し上げるんだ、そういうふうなことは今のところ決めておらない。しかし、そういう一般の国民の声が非常に高いということはこれは承知していただきたいと思います。
吉井委員 時間が参りましたので終わります。
坂本委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 先回の委員会で我が党の植田至紀委員が内閣提出の法案についてはかなり綿密に質疑をいたしましたので、今回は、本日提案されております民主党からの提案についてまず冒頭御質問をいたします。
 提案趣旨理由の中にもございますが、中ほど後段、連結納税制度の導入によって果たして税が減収するか増収するかについて、政府側の見通しと民主党各位の見通しの中には、場合によっては隔たり、現状認識の差があるやもしれないと思いますので、まず一点、その点をお伺いいたしますが、ここに書いてございますことは、連結納税制度を導入する企業が付加税等々で余り多くなければ、課税ベースに、三二%にしたことによって、むしろ税収が上がっていくこともあり得るというふうに民主党案では述べられておりますが、果たして試算等々はおやりになっておられますでしょうか、その点を一点民主党にお願いいたします。
古川委員 お答えいたします。
 ただいまの試算しているかどうかという話でございますけれども、なかなかこれを試算するのは難しいわけでございます。
 委員も御承知かと思いますが、経団連などの協力のもとで大和総研などが行ったアンケート調査や、あるいは読売新聞などが行った調査を見ておりますと、ほとんど、連結納税を採用するという企業が極めて少ない。本来であれば真っ先にこの制度の適用を行ってもおかしくないようなトヨタ自動車のような会社でさえも、この適用には消極的になっているということを考えますと、政府の試算をした、連結納税を適用してそれによって減収幅が起きるというそういう試算は、これは実際に適用する企業がこれだけ少ない、また適用を検討している企業もこれは極めて少ないという状況を見てみますと、やはり、これはかなり過度に減収額を見積もっていると言わざるを得ないのではないか、私どもはそう認識をしているわけであります。
 そういう観点から考えますと、他の増収措置と相まって、法人税収全体で見ますと、むしろ減収よりも増収の方が大きくなる、そういった意味で増税の効果というものを持つのではないか、私どもはそう考えております。
阿部委員 もし増税の効果の方が高ければ塩川財務大臣も少し安心はされるかと思いますが、実は、増であるか減であるかの予測は、実際には確かに立ちがたいところで論じているわけでございまして、むしろ、根本的にはこの連結納税制度そのものにかかわる趣旨、そして民主党案では付加税制度があるゆえに趣旨が損なわれるというふうな御意見を賜っておりますが、そこにとどめてよいのかどうかということで、二点目の質問をさせていただきます。
 今の御答弁の方も例示されました大和総研の資料から、私も同じ資料を引用させていただきますが、この大和総研における調査では、九十三社の回答がございまして、一応、連結付加税ということが問題であるとした企業は九十三社のうち確かに六十一社ございますのですけれども、しかしながら、逆に、この六十一社の中で、連結付加税が撤廃されれば今度は連結納税を適用しますかと聞きますと、イエスと答えたのは七社しかございませんのです。
 確かに、第一段階を見れば、連結納税の中で付加税があるゆえに導入しませんよというのが六十一ですが、ただ、その六十一の中で、さらに、撤廃してあなた導入しますかと言うと、今度は七社しかイエスと答えられない。ということは、この連結納税制度をめぐって、必ずしも付加税の問題のみに論を狭めていくということはいかがなものかとこのデータからは思うのですが、この点についての御所見をお聞かせください。
塩川国務大臣 私は、この調査を見まして、これはどういう趣旨でやったのか、読売新聞社の方並びに大和総研の方に十分勉強させてもらいたいと思っておりますが、大体、これ、会社を見ましたら、もうかっている会社ばかりですね。ですから連結納税しなくても子会社は立派に立っていくし、そしてまた、子会社が赤字を出しておったら親会社からでかい怒られて社長が務まりませんわな。
 ですから、そういうようなところを対象にばかりしたら、それは賛成だ、適用すると言うのは少ないかもしれないと思いますけれども、そうではなくして、これから私は異業種間における連結納税というのが非常に適用されていくんじゃないかと思うんですよ。そういう意味において、私は、独禁法改正に伴って連結納税制度というのは必要になってきたという趣旨はそういうところにもあったと思っております。
 ですから、企業が、真剣にこの制度をどう適用するかというのはまだ考えている段階だと思いまして、その意味において、この一つの資料で、今さっきのアンケートの資料は資料として拝見いたしますけれども、これによって我々は何を学ぶかということは、これからの問題だと思っております。
阿部委員 ありがとうございます。
 後でコメントさせていただきまして、同じ質問を民主党の方にもお願いいたします。
古川委員 確かに、委員御指摘のように、連結付加税が廃止されたからといって適用すると答えている会社は少ないわけでございますけれども、そもそもこの連結納税制度を導入する、これは、急激な社会経済環境への変化に対応して我が国企業の国際競争力強化に資するのが連結納税制度である、そういう制度を導入する、そういう趣旨から考えますと、なるたけ企業がこうした制度を活用して、特にこれは、この連結納税を採用するというのは節税効果を目指すというものが中心でありますので、そうした節税効果があるような形で企業がこの連結納税制度を利用していくような、そういう形にしていかなきゃいけない。
 そのやはり一番最初の、もちろん、今結果で、この連結付加税だけがすべての阻害をしている要因ではないけれども、まず最初に挙げられておりますのがこの連結付加税。連結付加税というものがかかっておりますと、その次にそもそも思考がいっていない。ですから、このアンケート調査の結果などから考えますと、この連結付加税があることによって、なかなか次の、もう少し正確に、この連結納税を導入することが本当にその企業にとってプラスなのかマイナスなのか、この付加税があることによってかなりこれは増税になる、連結納税を採用すると増税になってしまうような、そういう企業も出てきてしまうわけです。
 ですから、そこで、その連結付加税の有無によって増税という形に判断されてしまうと、それ以上ほかの、今回の法案に含まれているほかの問題にまでなかなか思いは及ばないわけでありまして、そういう意味では、まず一番入り口の段階で障害になっております連結付加税を、私ども修正案で提案させていただいておりますように撤廃をするということが、この連結納税についてより企業の関心を高め、そしてその採用を促進するために必要不可欠である、そういう観点から私どもこの連結付加税についての撤回というものを修正案で出させていただきました。
阿部委員 もちろん企業ですから、節税効果というのを願わない企業はないわけで、そこが入り口と考えるか、むしろ私は、税制の論議ですから、やっぱりこの税制が、日本の企業の、先ほど主税局の方もおっしゃいましたが、組織再編、持ち株会社化あるいは分社化という現在の形態にとっていかなる意味を持つのかというところから、この付加税制度があるとやはり本体をゆがめますので、その意味では取り外した方がよいとは思いますが、はたまた先ほど財務大臣もおっしゃいましたが、まだまだ私は企業の方の現状の調査と申しますか、それは吉井委員も御指摘の中小企業も含めまして、なかなか実態を法律をつくる側が把握し切れていない状況があると思います。
 そして、私は、国際競争力、グローバル化した経済の中で、もちろん日本が他の国に劣らない競争力をつけていくという意味で、特に、大企業中心にこういう制度がとられるということは、一つの選択方式であると思いますが、我が国のやはり産業の実態、多くの中小企業に支えられ、それから生産力というよりもむしろ技術力で生きていく日本のこれからを考えました場合に、この税制が中小企業も含めてどんな意味を持つのかということにおいて、いましばし論議が必要であろうとするのが我が党のスタンスでもあります。
 提案者の方にはありがとう存じます。引き続いて、次の質問に移らせていただきます。
 柳澤金融大臣にお伺いいたしますが、私がいつも三月危機ということでお伺いを申し上げておりましたが、先日発表されました大手十三行の不良債権残高は、一年前に比べまして四七%増の二十七兆円となってございまして、この中で破綻懸念先債権以下では十五・四兆円とこれも一年前に比べて三二%増になってございます。
 これは、日ごろ柳澤大臣がおっしゃる特別検査等によっても、新規発生がことしは六・六兆でしたか、例年より多い。昨年は三・〇であったと思いますが、多い不良債権になっておるというのは勘案した上で、しかしながら昨年八月金融庁が明らかにされました金融再生シナリオというものの中では、一応不良債権残高はこのような高い数値には予測されておらなかったように拝見いたします。
 この点につきまして、例えば二〇〇〇年度末の不良債権残高十八兆円が二〇〇一年度末、すなわちことしの末では漸減するとお見立てであったと私は読み取っておりますが、逆に二十七兆円という形で十八兆円から九兆円増になってございます。そうなりますと、昨年八月の金融再生シナリオそのものを、大臣としてお考え直しになるのか否や、その点一点お願いいたします。
柳澤国務大臣 今度の平成十三年度末の不良債権は、今阿部委員御指摘のように、増嵩をいたしました。我々の見通しにおきましては、漸減という言葉で全体を表現させていただいたんですが、オリジナル版で皆さんに御批判をいただいたのは多分横ばいという漢字だったと思うんですね、最初は。ところが、もうそこに物すごくまた批判をされまして、最後の年がちょっと下がっているものですから、では漸減ということでお願いしようかといって改めたような記憶もございます。
 しかし、そのときに私どもが考えていたのは、十三年度末はこれはちょっとふえるのではないか、こういう見通しでした。それはどうしてかというと、要管理債権についての基準を、明確化と申しますか厳しくする、見方によってはそういう表現をされた人もいるんですけれども、そういうようなことが反映する結果、要管理債権というのはかなりふえるであろう、こういうように当初から見通しておりました。
 もちろんそれからも、加えまして、破綻懸念先以下の増嵩については、今委員も御指摘のように、八月よりも後の、あれは十月段階でございますか、ある大手の小売の破綻というようなことで特別検査というものを導入いたしまして、リアルタイムでの評価をしようというふうに検査の態度を例外として改めさせていただきましたので、こういうようなことになったというふうに考えております。
 したがって、プロジェクションについてどう考えるかということですが、プロジェクションの計算は改めるということは当然でございますけれども、ただ、そのプロジェクションが目標としたところの、集中調整期間終了後において不良債権のメルクマールで見たときに問題の正常化をするというこの目標については、私ども改めないという方針で臨んでいるところでございます。
阿部委員 専門用語でプロジェクションの見直しと言われると何となくわからないかなと。でも、とにかく見立てはちょっと見誤ったかなということなのかなと拝聴いたしました。
 それでは、今後の見立て、ことし九月の中間期決算、あるいは来年三月の決算の不良債権残高はどのようにお考えか。そして、一言申し添えさせていただければ、私どもの政党といたしまして、この不良債権処理をとにかく急げというよりは、何せ経済そのものが活況を失っている中ですので、これは即々、例えば最終処理までしなさいという意味で問うているのではなくて、やはり見通し、それからどのような手順でやっていくかということについてのお考えを伺いたいということです。
柳澤国務大臣 九月期の見通し、それから来年三月期の見通しいかんということでございますけれども、これはもう少し数字の分析をさせていただく時間をいただかないと、いろいろな分析に基づいての見通しということになりますので、私どもの作業としてはちょっともうしばらく時間がかかるというところでございます。内部的な作業としてもそうだということを申させていただきます。
 ただ、そうでございますけれども、何と申しますか、四月の十二日に各主要行の決算発表がありまして、それを集計した数字を私どもの方で発表させていただきましたが、それと同時に、私ども新しい施策を三点打ち出させていただきました。そのうちの一点でございますが、不良債権のオフバランス化というものをさらにきっちりした形で進めるということを申させていただいておりまして、これは従来新規発生の分については三年ということでございますけれども、それをさらに一年度目に五割程度、それから二年度目には大宗をオフバランス化するということを申させていただいております。
 それからまた、特別検査で発生した破綻懸念先以下のものについては、これは即この年度で処理をするということでございます。そうしたことを実現するための最後のよりどころとしてRCCの強化ということもうたわせていただいておりまして、この点、阿部委員の党の方針とは少し違うかもしれませんが、そういうことで私どもとしては不良債権問題の正常化を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。
阿部委員 時間の関係で、私、ちょっと質問という形にはできませんのですが、実はこの不良債権問題が銀行の貸し出し態度に相変わらず影響しているという点を非常に強く、本来の金融の役割を果たしていないという点で懸念しております。特に、この間、中小企業の貸出金利を上げようという銀行サイドの姿勢があり、なおかつ、いわゆる大手企業においてはさまざまな資本投入がなされながら、なおかつ貸し出しについては銀行側もさほど強いことを言わない。
 きょう問題になりました中小企業と大手企業の関連で申しませば、やはり余りに不公平な銀行のあり方あるいは税制のあり方というのは、我が国の活力をゆがめるであろうということで私の見解を一言申し添えさせていただいて、あと、塩川大臣には、申しわけございません、時間がなくて御意見を承ることができずに失礼いたしました。ありがとうございます。
坂本委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、海江田万里君外二名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べ願いたいと存じます。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 この修正案につきましては、政府としては反対でございます。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の法人税法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 本改正案は、昨年の企業組織再編税制に引き続き、一層の企業の組織再編成を促進させるため、一体経営がなされ実質的に一つの法人と見ることができる企業集団を一つの納税単位として課税する連結納税制度を我が国に創設しようとするものです。
 本法案に反対する第一の理由は、連結納税制度が、持ち株会社をてことした大企業中心の企業再編リストラを本格的に加速させ、労働者に一層の犠牲を強いるからです。
 今回の連結納税制度の創設は、財界からの積年の要請にこたえ、企業の国際競争力の強化と経済構造改革を口実に、持ち株会社をてことした戦略的な企業合併や分割等による機動的な組織再編成を促すための税制上の障害を取り除く、一連の企業税制改革の総仕上げと位置づけられています。これが、既に進行中の大企業の企業再編リストラを本格的に加速させ、労働者に一層の犠牲を強いることは必至です。
 第二に、連結納税は、特定の巨大企業集団に継続的な大減税をもたらす、大企業優遇税制の拡大になるからです。
 連結納税制度について、政府は、減税を企図するものではなく、企業の経営形態に対する税制の中立性確保と、一体的経営という企業実態に即した適正な課税を実現するためと説明しています。しかし、現実に見る連結納税導入の最大の特徴は、所得の通算によって、赤字子会社があるほど、これを利用する巨大企業集団に継続的な大減税をもたらすことにあり、大企業優遇税制、不公平税制の拡大は明らかです。
 第三は、導入に伴う税収減の財源措置についてです。
 退職給与引当金廃止など課税ベースの見直しは、それ自体是正されるべきもので、今度の連結納税制度導入と引きかえに措置することは筋違いです。その上、連結納税の恩恵と全く無縁の中小企業に課税強化されています。また、連結付加税は二年間の限定課税にすぎず、中長期的には巨大企業集団に対する減税の仕組みだけを残すものとなっているからです。
 なお、民主党提出の修正案については、連結納税制度に対する見解が異なり、反対いたします。
 以上で、私の反対討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより採決に入ります。
 法人税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、海江田万里君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本幸三君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山本幸三君。
山本(幸)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    法人税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 急激な社会経済構造の変化に対応し、我が国産業の国際競争力を強化するためにも、連結納税制度の円滑な導入が必要である。従って、連結納税制度導入に伴う事務の複雑化にかんがみ、納税者に対する制度の周知及び運用における十分な配慮等に特段の努力を行うこと。
 一 歳入の根幹をなす税制に対する国民の理解と信頼、税負担の公平性を確保する観点から、連結付加税の見直しについては、企業の連結納税の適用状況及び法人税収の動向等財政事情を的確に踏まえ、検討を行うこと。
 一 本改正による連結納税制度の導入に伴う税務執行の事務量にかんがみ、今後とも国税職員の定員の確保・機構の充実・機械化の促進等に特段の努力を行うこと。
以上であります。
 何とぞ御賛成賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。
 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 ただいま決議のございました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三分散会


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