衆議院

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第24号 平成14年7月17日(水曜日)

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平成十四年七月十七日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    岡下 信子君
      金子 一義君    金子 恭之君
      倉田 雅年君    小西  理君
      七条  明君    砂田 圭佑君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      谷田 武彦君    中村正三郎君
      林田  彪君    増原 義剛君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      鎌田さゆり君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      津川 祥吾君    中川 正春君
      長妻  昭君    松野 頼久君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   議員           相沢 英之君
   議員           大原 一三君
   議員           金子 一義君
   議員           七条  明君
   議員           石井 啓一君
   議員           小池百合子君
   議員           古川 元久君
   議員           中塚 一宏君
   議員           吉井 英勝君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (金融庁証券取引等監視委
   員会事務局長)      新原 芳明君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十七日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     谷田 武彦君
  小泉 龍司君     岡下 信子君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  江崎洋一郎君     松野 頼久君
  永田 寿康君     鎌田さゆり君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     小泉 龍司君
  谷田 武彦君     小西  理君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  鎌田さゆり君     津川 祥吾君
  松野 頼久君     江崎洋一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     岩倉 博文君
  津川 祥吾君     永田 寿康君
    ―――――――――――――
七月十六日
 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(相沢英之君外五名提出、衆法第二五号)
同月十二日
 消費税率を三%に戻すことに関する請願(藤木洋子君紹介)(第六五九六号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(春名直章君紹介)(第六五九七号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六六五三号)
 消費税増税反対等に関する請願(木島日出夫君紹介)(第六六一九号)
 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(児玉健次君紹介)(第六六二〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(相沢英之君外五名提出、衆法第二五号)
 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(岡田克也君外八名提出、衆法第五号)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 相沢英之君外五名提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案及び岡田克也君外八名提出、特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。提出者相沢英之君。
    ―――――――――――――
 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
相沢議員 ただいま議題となりました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 昨年の臨時国会において成立いたしました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律において、銀行等に対して株式保有制限が導入されました。これに伴い銀行等は一定期間に相当程度の株式を処分することになりますが、株式市場に不測の混乱をもたらさないよう、同法に基づき、セーフティーネットとして銀行等保有株式取得機構が設立されました。
 ただし、銀行が株式保有制限に適合するため、事業法人株を放出する場合には、株式持ち合い関係を背景として、事業法人も銀行株を放出することが一般的です。この際、現行制度のもとでは、銀行が放出する事業法人株については、銀行等保有株式取得機構という受け皿があるのに対しまして、事業法人が放出する銀行株につきましては、受け皿が存在しない状態となっております。
 この法律案は、このような不均衡を解消し、株式持ち合い解消の動きにも対応できるようにするために、銀行等保有株式取得機構が事業法人の保有する銀行株も買い取れるようにするものであります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的に、銀行等による株式の処分が銀行等と銀行等以外の会社とが相互にその発行する株式を保有する関係を解消する場合における当該会社による当該銀行等の株式の処分の円滑を図ることを加えることとしております。
 第二に、銀行等保有株式取得機構が、特別株式買い取りを行った場合におきまして、当該特別株式買い取りの申し込みをした会員から、その申し込みと同時に当該会員が発行する株式の購入の請求があったときは、当該会員が発行する株式を、一定の範囲内で、当該特別株式買い取りに係る株式を発行する会社から買い取ることができるものとすることとしております。
 以上が、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
坂本委員長 次に、提出者古川元久君。
    ―――――――――――――
 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
古川議員 ただいま議案となりました特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案につき、共同提案いたしました民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合各党を代表しまして、その提案理由を説明いたします。
 そもそもNPOのレーゾンデートルは、政府からの自立であります。政府の管理から離れ自立するところにその存在意義があるのです。ところが、現行税制のように、いたずらに認定要件を厳しくし、零細なNPOや事業を行っている自立型のNPOのほとんどがその射程外になるような税制は、とてもNPOの支援税制と言えるものではありません。それどころか、かえってNPOの自立性を害し、NPOを政府の支配下に置こうとする、いわばNPO政府下請強制税制と言ってもいいくらいの代物であります。現行税制はNPOの本質を全く理解せず、さらに悪いことには、これを従来の公益寄附金税制の中に閉じ込めようとする時代錯誤も甚だしい制度となってしまっているのであります。
 市民の自由な公益的活動をサポートするというNPO支援税制の本来のあり方からすれば、公益寄附金を政府が特別に認めた特定公益増進法人に支出する場合のみ税制支援を認めるという現行税制の基本的枠組みを打破することが必要不可欠であります。
 私たちが今回提出いたしました法案は、その基本的枠組みを変更し、その認定から運営に至るまで、不透明性が指摘されております現行の特定公益増進法人、いわゆる特増のシステムそのものを根本的に覆す法案であります。さらに私どもの法案では、客観的な基準により多くのNPOが支援を受けることができる、真にNPO活動を支援する内容となっております。
 これに対して現行制度は、特増の枠組みには何の変更も加えず、その実質はNPOに対して苦難を与えるものでしかありません。現行制度は、事業をしている自立型のNPOや零細なNPOが認定されにくい極めて制限的な条件であり、NPOを単なる行政の下請機関としてしか認識していないのであります。これではNPOがただ働きのボランティアという発想そのものであり、我が国において、NPOが新たな公益を担う第三のセクターとして大きく育てようという意識はまるでないと言わざるを得ません。果たしてこうした発想から新しい日本の姿は見えてくるのでしょうか。
 私たちは、二十一世紀の日本を、国民一人一人が主役となり、さまざまな価値観を認め合う価値多元主義のもと、生き生きと暮らしていく社会にしたいと考えています。そのためには、NPOという公益を担う新たな主体をしっかりとこの社会に定着させることこそが最も重要な改革の一つであると確信しています。
 与党の皆さんも御案内のように、現在の制度で税制優遇措置を受けられたNPOは、現在までにたった六団体であります。七千五百十八ある団体の〇・〇八%、たった六団体です。しかも、当時の政府の答弁は、何と半分は可能性があると言っていたわけでありますから、この委員会答弁は何だったのでありましょうか。このような見込み違いの現行制度は即刻見直すべきであります。
 以上、今回この法案を提出した理由を御説明いたしました。
 何とぞ、御審議の上、御賛同いただきますようお願い申し上げます。
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長藤原隆君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長新原芳明君及び厚生労働省年金局長辻哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増原義剛君。
増原委員 自由民主党の増原でございます。
 まず最初に、与党提案の株式買い取り機構関係の法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 昨年の秋の臨時国会で、金融機関が持つ株式、これを売却していくに当たりまして、株式市場に不測の混乱を起こしてはいけないという形で株式買い取り機構というものが設立されたわけでありますが、既に施行されてから少したっております。
 そういう意味で、果たして市場に対して一体どの程度の影響を与えるのかということにつきまして、このたび、今度は、当該持ち合い関係にある事業法人が金融機関の株を売るというものを、これを株式買い取り機構で買い取ろうということをされようとしているわけでございますけれども、それぞれ、一体どの程度の市場に対するマグニチュードがあるのかということを知りたいと思います。
 そういう意味で、平成十三年度でありますけれども、主要行が売却した保有株式、私がいただいた資料では約五兆三千億円と言われておりますが、これの当該十三年度の株式市場全体の取引高に対する割合、さらにまた持ち合い保有する事業法人の株の売買高に占める割合は一体どの程度であるのかをお聞きしたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 主要行が公表しました十三年度の保有株式売却額は、御指摘のとおり、合わせて約五兆三千億円でございます。これは、同年度中の取引所売買代金、二百二十一兆円の約二・四%に相当する金額でございますし、また、金融機関を除きます事業法人株全体の売買高、百九十四兆円の二・七%に相当する金額でございます。
増原委員 わかりました。数%というような状況ですね。これが果たして株式市場に不測の事態を生じるような影響を与えるのかどうか、教えていただいた範囲で言いますと、銀行が持っている株式は相当売却されてきていますけれども、数%。今のペースでいけば、十分、要するに保有制限の分に間に合うんではないかという意見も私は一方であろうと思います。
 では、逆に今度は、事業法人が持ち合い保有する主要行の、十三行、もしそれが無理であれば金融機関全体でも結構ですけれども、十三年度に一体幾ら売却をしたのか。そして、それが当該年度の株式市場の主要行もしくは金融機関の株の売買の一体どの程度の割合を占めるのか、それがわかればお知らせいただきたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 事業法人が持ち合いで保有する銀行株の売却というのは、残念ながら直接的な資料を入手しておりません。
 他方、民間の調査機関の調査によりますと、事業法人が持ち合いで保有いたしておりますすべての銀行株の保有残高の減少額を、その調査機関の推計に基づいて当方で推計いたしますと、約二兆三千億円ということになってございます。これは、同年度中の銀行株の売買代金約十四兆円の一六%に相当すると考えております。
 以上でございます。
増原委員 今の数字ですけれども、なかなかそれを抽出するのが難しい面もあろうと思いますけれども、ある程度の株が既に日常的に売買されているわけでありますね。それを、なぜ事業法人からこの株式買い取り機構が買わなくてはいけないのか。ここらあたりについて、特に、今の法律は昨年の秋の臨時国会で成立したわけであります。それを半年余りで拡大修正する一部改正をされようとされている。これは一体どういう理由によるものなのか、その間にどういった事情変更があったのか、これを提出者の方からお聞きしたいと思います。
小池議員 今お尋ねの件でございますが、提案理由にありましたように、銀行等保有株式取得機構について、株式保有制限の導入に伴う銀行等による株式処分がまず円滑に進められるということが一点。そして、金融システムの安定性を確保するためということで、セーフティーネットとして設立をさせていただいたものであります。また、今回の事情変更云々ということでございますけれども、その意味で合理性は十分あると考えております。
 ただ、前回のときでございますけれども、その際には、株式保有制限に伴います直接的な影響としての銀行による株式処分のみが着目をされていたわけでございます。これに対しまして、今回、我々、与党三党でございますけれども、新たに、銀行によります株式処分に伴って事業法人より銀行株の処分も行われるという、まさに持ち合い解消の動きに着目を、加えて着目をいたしまして、株式取得機構のセーフティーネットとしての機能を拡充するということが適当であるというふうに判断をさせていただきました。
 今回の改正後、機構は株式保有制限の導入によって生じます事態に備えたセーフティーネットという大前提はずっと一貫をいたしておりまして、昨年の法律に加えてその機能を加えたというふうにお考えをいただければと思っております。
 以上でございます。
増原委員 どうもよく理解できませんですね、正直申し上げて。
 前回やりましたのは、金融機関が株式をたくさん持っている、これは特殊日本的なんですね。これを、株式市場の株価の浮き沈みによって金融機関の経営がいろいろ影響を受ける、これは好ましくない。そういうことでもって、平成十六年度までにティア1の、いわゆる狭義の自己資本比率の自己資本の範囲内でしか持ってはいけないという保有制限を課したわけですね。
 したがって、それは確かに金融機関によってはクリアしているところはあるかもしれませんけれども、そうでないところ、たくさん持っているところ、そういうところが、どっと短期間で大量に売り出すかもしれない。まさにそういうふうに法律に書いてあるわけですね。それが株式市場に悪影響を及ぼすおそれがあるというので、制限をするかわりにその代償措置として、激変緩和として株式買い取り機構というものを設けたわけですね。
 ところが、持ち合い関係、また後ほど、何が持ち合いかということにつきましてお聞きしますけれども、事業法人は株式保有制限なんてないわけですよ。幾ら持ったっていいわけですね、自社株については一定の制限がありますけれども。では、一体なぜそういうものに着目して、株式買い取り機構が事業法人からの分を買うのか。ここだと思いますね、私は。それがどうもすっきりしない。極めて間接的なんですね。しかも保有制限もかかっていない。そして、先ほどの政府参考人の意見によりますと、相当程度、既に日常的にマーケットで売買されている、そういうところだと思うんですね。そこらあたりがどうも釈然としないんですよ。
 だから、そういう意味で、次の質問に移りますけれども、今の法律と同じように、法律の目的ですね、保護法益は「銀行等の業務の健全な運営を確保する」、この点は変わっていないですね。どうでしょうか、提案者。
小池議員 その点での変更はございません。
増原委員 変更がないんであれば、では、その目的を達成するために、一体、このたび事業法人からの機構の銀行株の買い取りという行為、これは、仮にそれがなければどういうメカニズムをもって市場に悪影響を及ぼすことになり得るのか。今の保護法益ですけれども、言葉を変えて言えば、第五条の方に「株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずることがないようにする」ということと同義語だと思うんですね。それについて御説明いただきたい。
相沢議員 おっしゃるように、銀行が事業法人の株を売る場合も、それから事法が銀行株を売る場合も、もちろんその大部分は市場でもって行われるわけであります。それはこの法律をつくるときもそのことは当然前提として考えておりまして、この株式等の取得機構が挙げてそういう銀行の放出株を取得するという考えではなかったわけです。
 御案内のように、当時、昨年の三月末現在で、銀行が自己資本、ティア1ですね、ティア1をオーバーする分を十六年までに処置しなきゃならない、その金額がおよそ十一兆円であったわけですね。その中で、一体株式等取得機構でどの程度買うことになるんだろうか。これは本当に予測の問題でありますから、正確にはわからないんですけれども、まあせいぜい二兆円ぐらいかなというような推定はいたしておりました。
 ですから、もともと、銀行等が放出するところの事業法人株の一部を買う。ですから、そういう意味において、その役割はその程度、その程度というとあれですけれども、そういうことで考えておったわけですね。
 問題は、繰り返しになるかもしれませんけれども、銀行が持っている事業法人の株を放出するときに、事業法人も同時に銀行の株を放出する場合が多いというのは、まさに持ち合いになっているわけです。ですから、そのときに、銀行が放出する事業法人については、そういう言うなれば受け皿がある。ところが、事業法人が銀行株を売るときには、昨年の法律では、これに相当する受け皿というのはできてなかったわけなんですね。
 ですから、当時だってそんなことはわかっておったんじゃないか、なぜ一緒にやらなかったか、そういう御議論はあろうかと思いますが、昨年閣法で提出したときの段階では、まずもってそこの、銀行が放出する株についての受け皿をつくっておくということで法律がつくられたわけでありますけれども、その後の推移を見てみますと、やはり持ち合い解消を促進するというためには、その事法の持っている銀行株もこの機構で買えるようにする方がいいんじゃないか、セーフティーネットとしてはより役割が果たせるんじゃないか。そういうことで、今回この法律改正を提出することにしたわけであります。
増原委員 今相沢議員がおっしゃったことなんですが、お言葉を返すようですけれども、一体、株式市場の推移を見ましても、これを見てみますと、これはいただいた資料なんですが、昨年、平成十三年の一月ですか、これを一〇〇として、株式市場全体は大体二割ぐらいこの六月までに株価が落ちている。しかし、うち銀行株は四割落ちているということなんですね。
 事業法人が株式を持ち合い解消で売ろうとすれば、この四割がもっと落ちるのではないか、こういう懸念があるからおやりになるんですか。確かに開いてきているんですよ、特に昨年の秋以降、株式市場全体の動きと銀行株の動きが乖離をして、銀行株がより下げている。全体は二割ですね。銀行株は四割下げている。これは当該銀行の経営状況が悪いからじゃないんですか。それとも、事業法人が銀行株、銀行が売るものですから自分もでは銀行のを売るよという形で、持ち合い解消に出た結果こうなっているというふうな御認識なんでしょうか。
相沢議員 おっしゃるように、銀行株が値下がりをしている。特に一般の株価よりも下がっているということの原因としては、こういうような受け皿機関がなかったからそうなったんだという認識ではありません。それはやはり、銀行の経営に対する市場一般の評価というものが下がったということが当然その大きな原因でありますけれども、ただ、やはりその中の一部の原因としては、そういう受け皿機関がなかったということも当然考えられるんじゃなかろうかというふうには思っております。
増原委員 確かにそういう面もなきにしもあらずかもしれませんけれども、法案を出される以上は、やはりそこのあたり、きちっと説明する責任があると私は思うんですよ。それが一点。
 それから、では、機構の事業法人からの銀行株の買い取りというものがなければ、どういうメカニズムで、この法律に言っている保護法益、先ほど申し上げましたように、「銀行等の業務の健全な運営を確保する」という目的につながってくるんでしょうか。そのメカニズムを御説明いただきたい。そういう意味で先ほど御質問したわけです。それに対する御答弁がまだないのでありますけれども。
相沢議員 どうもそのメカニズムとおっしゃる意味がよくわからないんですけれども、先ほど申しましたように、やはり日本の場合には、特に銀行と事法との間においての株の持ち合いというのは相当これは著しい現象でありまして、特に、そういうことでありますだけに、銀行が事法の株を売る、あるいは事法が銀行の株を売るという場合には、普通、相当話し合いもする。要するに、持ち合い解消をするために話し合いもする、まさに持ち合いの解消という形をとっているわけなんです。
 ですから、繰り返しになりますけれども、銀行が事法の株を売るときには、当然と言ってもいいくらい事法も銀行の株を売るというようなメカニズムと言っちゃなんですけれども、そういうような姿になっていますから、その受け皿機関を考える場合には、やはり銀行の売る事法の株の一部をキャッチするというものだけじゃなくて、事法が売る銀行の株もキャッチするような仕組みを考えた方がベターじゃないかというふうにはお考えいただけませんでしょうか。
増原委員 今相沢議員が申されたことは私もわかります。わかりますが、ただ、私が申し上げたのは、もう一遍申し上げますと、保護法益として、今の第一条ですが、第五条の方でいえば、株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障を生ずるおそれがあるというところにどういう形で結びつくのかということを私は尋ねているわけであります。
 端的に言えば、銀行株がどんどん落ちているときに、それを事業法人が投げ売ってくるということはないと思うんですね。やはり、株式市場を見ながら少しずつ少しずつ出してくるんでしょう。それは損をしないようにやっていく、だと思いますね、できるだけ損をしないように。
 問題は、持ち合い解消をしていく事業法人、先ほど銀行との話し合いでと言われましたけれども、銀行株を売っていく段階で、それを不測の事態というのは何かというと、事業法人がどんと売りに出まして、持ち合い株を解消しますよというので売りに出て、それでマーケットにおける需給バランスが崩れて、銀行株の価格が、株価がどんと落ちる、株式市場でどんと落ちていく、百円を切るような株価がどんどん出てきちゃう、こうなったときが大変だ、こういうことなんじゃないですか。そうなってくれば当該金融機関に対する社会的信用がなくなる、取りつけ騒ぎが起きるかもしれない、そういう形でいくんじゃないんですか。
相沢議員 あなたのおっしゃるメカニズムというのは、意味がわかりました。
 それに対してのお答えとしては、結局、この受け皿機構も、御承知のとおり別に特別な価格で買うわけじゃないですね。これは売買や、銀行が事法の株を売るときに機構に対して申し出をするんですね。その翌日以降それの実際の売買が行われるわけですけれども、その売買の価格、機構からいうと買い取りの価格は、その日の市場の終わり値、または日中の取引の加重平均価格、それのいずれか低い価格でもって買うということになったんです。
 ただ、メリットは、一般の市場取引と違って、機構はとにかく資金は持っておりますから、たとえそれが十万株であろうと百万株であろうと、その値段で確実に引き取れるわけです。つまり、まさにあなたがおっしゃるように、どっと出た場合もその価格でもって引き取る、そういうメリットがある。このことは、株のある意味においての多量売りの暴落を防ぐという機能は果たせるんじゃないかというふうに思っています。
増原委員 大量の売りなんですが、先ほど来申し上げていますように、金融機関に対しては株式の保有制限をしたわけですね。処分をしなくてはいかぬわけです、一定期間までに。ところが、事業法人にはないんですね。それぞれの株式市場を見ながら適宜に売っていけばいいだけの話、そのときに、売るときに別に銀行の了解はとりませんよというだけの話なんではないんですか。ここで、先ほど申し上げているような、第一条で言う「銀行等の業務の健全な運営を確保する」とか、あるいは第五条で言う「株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずる」とか、そういうことは考えられないんではないかという気もしなくもないんですが、いかがでしょうか。
相沢議員 まさに持ち合い解消でありますから、銀行は銀行でもって売りますよ、事法は事法で関係なしに売りますよということにはならないんで、大部分、大体の場合においては話し合いをしてお互いに解消するということをやっているようです。したがいまして、今回も、事法の株を機構に売る場合には、当然銀行と話してやるということになっておるわけであります。
増原委員 時間の関係もありますので、次に進みます。
 内閣府令もしくは省令でもって、まさに今おっしゃった持ち合いの関係なんですが、「相互に株式を保有する関係」というものを省令で定めようというふうにされておりますね、今の御提案では。なぜこれは省令なんですか。なぜ政令でないのかということが第一点。
 じゃ、そこで、省令、府令で定めようとしている「相互に株式を保有する関係」、具体的には何でしょうか。どういう客観的基準があるんですか。具体的な基準。これについて御答弁いただきたいと思います。
石井(啓)議員 それでは、「相互に株式を保有する関係」について申し上げますと、これは、十三年三月末時点におきまして当該銀行と当該の事業法人が相互に株式を保有していたこととする予定でございます。なお、今回のスキームで、機構が事業法人から株式を買い取ることができるというその銀行の株は、その事業法人が十三年三月末において保有していた銀行株の株式数の範囲内にするという制限もかけているところでございます。
増原委員 今のは答弁になっていないと思いますよ。いいんですけれども、それは、限度額の話をされているんで。私は、当該というのはどういう基準で決めるんですかと聞いているんですよ。いいですか。「相互に株式を保有する関係」とはどういう関係なんですかと。
 ここで、株式買い取り機構が事業法人から買ってあげましょうというときに、ちょっと法案を読めば、金融機関が事業法人の株式を取得機構に売りたい、売るというときに、特別買い取りですか、そのときにあわせて、この事業法人の株を売りますのでまた当該事業法人から我が社の、銀行の株が売りに出るからひとつよろしくお願いしますというふうにやると書いてありますよね。ただそれだけなんですか。それが「相互に株式を保有する関係」、そのときにさよう認定するんですか。客観的な基準はないんですか。
石井(啓)議員 御質問の趣旨に正確にお答えできているかどうかよくわからないのですけれども。
 これは、今回のスキームで、事業法人が持っている銀行株を買い取るケースは、まず、銀行がその事業法人の株を機構に売るときに同時に請求をするわけですね。ですから、その事業法人というのは請求する段階で特定されるわけです。その事業法人が十三年三月末時点でその銀行の株を持っていたかどうかということで判断されるわけですね。お互いに持ち合っていたかどうかということではない。それがお答えになるのかなと思いますが、どうでしょうか。
増原委員 今おっしゃったことは法律に書いてあるのですね。書いてあるのです、法律に。
 私が申し上げているのは、内閣府令、それから省令ですかで定めようとされている「相互に株式を保有する関係」とは何かというのを、その省令なり府令で定めようとされているわけですよ。これは具体的にはどういうものを想定されているかということを私はお聞きしているのです。(発言する者あり)
坂本委員長 まあまあ、外野はお静かにして。答弁に影響を与えないようにしてください。
 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
坂本委員長 速記を始めてください。
 増原君。
増原委員 今調べていらっしゃるようですので、後ほどお答えいただくとしまして、続きまして、事業法人からの機構の株式の買い取りを特別株式の買い取りの二分の一以内、かつ六カ月以内というふうにされていますね。この理由はどういうことでしょうか。
石井(啓)議員 二分の一以内にいたしましたのは、今回のスキームでは、機構が事業法人から銀行株を買い取る場合には売却時拠出金を求めないというふうにしております。これは実際に、今は銀行から事業法人株を買うときにはこの売却時拠出金を求めるわけでありますけれども、事業法人の場合は、先ほど先生御指摘のとおり、期限を定めて銀行株を売却しなければならないという制限がかかっておるわけではありませんし、市場に売っても機構に売っても自由ということでありますから、売却時拠出金を求めるということにした場合はこのスキームが動かないということもございまして、事業法人から買い取る場合は売却時拠出金を求めないというふうにしたわけでありますけれども、その際、なるべくそれが将来の価格変動リスクで国民負担に極力つながらないような工夫をやはりすべきではないかという法案制定のときの議論がございました。
 それで、もう一つは、今現実に、全体的に見ますと、銀行が持っている事業法人株と、あるいはその事業法人が持っている銀行株、持ち合い株ですね、その全体の総量が大体十対四ぐらいの割合であるということも参考にいたしまして、二分の一にしようという議論にさせていただいたわけでございます。
 六カ月以内とする理由につきましては、事業法人が機構に銀行株を売却するかどうかという判断は、やはり決算期というのが一つ大きな区切りでございますので、決算期を必ず一回は、少なくとも一回は決算期を迎えられるようにしようという判断から、一応請求から六カ月以内、その間に一回は決算期を迎えて判断ができるようにしよう、こういうふうにしたわけでございます。
増原委員 府令、省令の件についてはいかがでしょうか。まさに「相互に株式を保有する関係」、これを定めようとされているわけでありますね。ごく機械的といいましょうか、そういうものを府令、省令で定めようとされているんでしょうか。私は、法律にあらあら書いてあると思うんですね、金融機関から申し出があったとか。
 それで、これは極めて主観的な意図なんですよ、この持ち合い関係というのは、そういう意味でいきますと。金融機関からの要請があった、相手の事業法人が持っている我が行の株を買ってくれというのであれば、これは極めて主観的だと思いますね。そうでないんであれば、そうでない何らかの基準があるんだろう。もしそうであるんだとすれば、それはもう法律に書いてあるわけですから、その府令や省令に書くものはごく形式的な話になるのか、その点がちょっと気にかかったものですから、御答弁お願いします。
相沢議員 ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったので、あれしたんですけれども……(発言する者あり)いやいや。
 結局、省令または府令で定めるのはどういうものかというその内容だろうと思うんですけれども、それは、機構が買い取ることができる株式は、これは説明でも申し上げたかと思うんですけれども、本来、銀行が十三年三月末時点において保有していた事業法人株の各銘柄ごとの株式数の範囲内だ。ですから、そこで一応適格対象を抑えているんですね。
 もう一つ、御質問にもあったかと思いますが、では、勝手にその事法が銀行株を売れるのかということについては、それはそうなっておりませんので、機構が銀行株を買うのは銀行が機構に請求した場合に限るということにしているんです。それは、もともと持ち合い解消ということが目的でありますし、事法が銀行の株を売る場合には銀行の了解を取りつけた上でやるということが通常でありますし、そして、当事者である銀行が望まない場合にまで機構が銀行株を取得するということがないようにした方がいいんじゃないかということなんです。
 でありますから、これは、事法が売却時拠出金を出していない、法案はそうなっていますけれども、八%を拠出するようになっていないということとも関連がありますので、要するに、事法が銀行株を売る場合には、銀行に申し出て、銀行が機構にそのことを言う、そういう一応の仕掛けになっておる、そういったようなことを府令または省令で書くというふうに考えております。
石井(啓)議員 今補足して御答弁申し上げますけれども、現行法で株式の買い取りの条件がございまして、現行法の第三十八条でございますけれども、特別株式買い取りは、証券取引所に上場されている株式またはこれに準ずるものとして政令で定める株式という、要するに、格付とその他内閣府令、財務省令で定める要件を満たしている場合というふうにされておりまして、その内閣府令、財務省令といいますのが、銀行が十三年三月末時点に保有していたということをここで決めているわけですね、その内閣府令、省令で。
 それの見合いで、今回、事業法人が売れる銀行株についても、この府令、省令で十三年三月末時点で保有していたという基準を決めているということでございますので。
増原委員 それでは、次の質問。野党も法案出されていますので、野党の方にもお聞きしておかなきゃいかぬと思いまして、一、二、御質問をさせていただきます。
 野党提案の法案ですね、NPO関係の。対象法人を設立後一事業年というふうに、二事業年を一事業年にしようとしていますが、こんなもので当該NPOの活動の実態、わかるんですか。
 それから、三分の一というのがありますよね。その分の分子、分母、いわゆる要件のところですが、政府等補助金を認定要件の分子、分母に算入する。何か政府から独立してやるべきだ云々と言っているのに、政府等補助金を認定要件に、分子、分母に入れる、これはどういうことか、まずそこをお聞きしたいと思います。
古川議員 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 先ほど私は趣旨説明のところで御説明をいたしましたように、今の現行の支援税制ですと、NPO団体自体は七千五百十八あるんですけれども、そのうち認定されたのはたった六団体、そもそも認定を申請した法人自体も十一団体しかない。それはなぜかといいますと、やはり、余り要件が厳しく、そもそも申請することさえもできないという状況にあるわけですね。
 私どもといたしましては、できるだけ多くのNPOにつきまして認定の申請をしてもらえるように、そして、認定の申請をしたら、その中からできるだけ多くが資格を得られて、もらえるような、そういう状況をやはりつくっていきたいというふうに考えております。
 そこで、認定NPOの資格につきましては、比較的低いハードルを設定いたしまして、普通のNPOが少し頑張ればこうした申請もできるし、その資格要件もクリアできるということを念頭に、要件を規定いたしました。
 そういった意味で、設立後一事業年度の法人としたことにつきましても、これはNPOだけじゃなくて、どんな普通の事業でもそうですけれども、やはり最初の立ち上げというのは一番大変なわけですね。ですから、何年もとにかくお金も集まってこないような状況で頑張れというのでは、これは安定軌道に乗る前につぶれてしまうということになりますから、まず、ここのところは一年というところで、一年実績のところで、そもそもこういう設立後で申請ができるような環境というものはつくってやるということがやはり必要じゃないかというふうに考えております。
 それからまた、今委員から御質問のございました、補助金を認定要件の分子、分母に算入しているというところがおかしいんじゃないかというお話ございましたけれども、NPOが非常に社会の中での中心的な主体で活躍をしておりますアメリカにおきますパブリック・サポート・テスト、それにおきましても、これは補助金は分子、分母ともに算入されております。
 そういった意味で、だからといって、アメリカでこれが役所の支配下にあるというようなわけではないわけでありまして、そもそも、補助金を渡せば、役所の方がそうした補助金を渡した団体に対して影響力を行使したりするというような、そういう今までの日本のあり方自体に私は問題があるのではないかと思いますから、そういった意味では、今までの補助金を交付するそういうあり方も含めて、今回のNPO、新しいこれからの市民社会を担っていくそういう主体に対して、そういうしっかりした新しい形をつくっていくということが大事じゃないかということで、今回のこういう条件を設定させていただきました。
増原委員 趣旨もわからなくはないんですね。やはりこれからは大いに行政改革をやってスリムな政府にしていくわけですから、NGO関係は本当に頑張っていただく必要があると思います。
 ただ、御承知のように、今の我が国の国家財政はある意味で破綻状況、私はそのように見ております。そうした中で、ある意味では、税制上、特典を与えるわけですから、やはりそれはしっかりしたものを持っていないといけない。NGO、NPO法人ですか、まだ発足して間がないわけですから、それは、七千あろうと八千あろうと、脆弱なところ、多いんだと思いますよ。それと税制上の特典を与えるかどうかというのはやはりきちっと峻別をしながら、ある意味では密接に絡むかもしれませんが、それは考えなくてはいけないのではないかと思っております。
 我々自由民主党の方も、党内で、公益法人問題も含めて、いろいろ法人論の議論をしております、中間法人、NPO法人含めて。その中で、税制がどう変わっていくべきかというのがあると思いますが、私は特に思いますのは、今の認定要件の中の分母に、特定非営利活動事業収入を差っ引くとなっておるわけですよ。NPOなんというのは、大体この特定非営利活動事業収入が主体を占めるに決まっているじゃないですか。こういうものをすっぽり抜いてやっていく、ちょっとそれはパフォーマンスが過ぎるのではないか。その点について、もし御意見があれば言ってください。
 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
古川議員 基本的な御趣旨のところで私どもと意見が一致しておるということは、大変心強いわけでございますけれども。
 今の御質問でございますけれども、特定非営利活動事業収入を分母に入れると、NPOによっては御指摘のようにこの収入が相対的にかなりの額になる場合があります。特に、活動が活発になればなるほど、そのNPOに対してそういう懸念が強くなりますから、そういう場合に、こういう条件をクリアできないとなってしまいますと、本当に活動の活発なNPOを排除してしまうということになりますので、あとは、認定した上で、もし問題があればそれは認定を取り消す、そこのところで、やはりきちんと出口で担保していく問題ではないか、そのように考えております。
増原委員 時間が参りました。
 もし、今古川議員のようなことをおっしゃるのであれば、三分の一というところをさわればいいんですよ、そこを。そこをさわればいいのであって、そこは固定しておいて、分子、分母で調整する、これは私は邪道であると思っております。
 その意見を申しまして、私の質問を終わります。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君及び国税庁課税部長村上喜堂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 次に、古川元久君。
古川委員 民主党の古川元久でございます。今度は質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、きょう議案になっております銀行等保有株式取得機構の機能拡充案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず政府の方にお伺いをいたしたいと思いますけれども、そもそも、今の現行法、これを国会に提案された時点で、この法案が、法律ができることによってどういう効果というものが起きてくるか、それをどのような効果を想定しておられたのか。それについて御説明いただけますか。
柳澤国務大臣 現行法の方でございますけれども、これは御案内のとおり、私ども、再来年の九月の時点で、各銀行の株式の保有の限度というものを、ティア1、自己資本の額と同額とするという規制をかけることをいたしたわけでございます。
 これは、現在のBISの規制であるとか、あるいは実態的に時価会計の導入ということで、株式の価格によって非常に銀行の健全性に振れが大きくなることを防止しよう、こういうようなことを考えてそうした措置をとったわけでございますが、これを円滑に実現するためには、やはりセーフティーネットとして買い入れ機構のような受け皿をつくっておくことが大事だと。それは、一時に多額の株を処分するということで、一時的にせよ株式の需給関係が乱れて、そこで、本来、通常だったらあり得なかったような株価が実現してしまう、これはやはり円滑なそうした措置の阻害要因になるのではないか、こういうことを考えまして、そういうことを防止するために、一時のいわば避難所、シェルターとしてこの取得機構を設置させていただいたということでございます。
 しからば、その後一年たったところでどのような効果、所期の効果が上がったかどうかということが御質問でございますけれども、こうしたことが起こるというのは、その必要性がどの程度生ずるかというのはその時々の株式相場にも影響するところであるということは、これは当初から予想されたところでございますけれども、セーフティーネットとしての機能というのはそれなりに果たしてきたというふうに評価をしているところでございます。
古川委員 今、大臣は、評価をしておられる、それなりに効果を果たしてきたというふうに認識をしておられるという御答弁であったわけでありますけれども、ということは、この前の法案を出して、この法律が成立して、目標としていました立法目的は今のところ達成をされているというふうに考えていると理解してよろしいですか。
柳澤国務大臣 銀行保有株の円滑な処理ということについて私どもは法の規定を置いたわけでございまして、そういう我々の法の趣旨、目的というのはそれなりに有効であった、こういうふうに考えているということでございます。
古川委員 それが今大臣の言われるように進んでいるのであれば、今回の改正というのは、こういうのは必要なんですか。
柳澤国務大臣 私が申し上げたのは、銀行の保有株の保有制限を念頭に置いたところの処分、これについては、それを円滑化するためにそれなりの効果を上げたと評価するということを申しているわけでございまして、我々の立法の目的あるいは趣旨というものはそこで実現しているということを申しているわけでございまして、そういうことのまた別の観点から、今度は事業会社の保有する銀行株についてどういうふうに考えるかというのは、これは一つ区切りを置いた別の話ということで、取り組んでよろしいのではないか。
 つまり、我々の方の法律というのは、銀行の株式の保有制限という、そういう措置から論理必然的にいわばそういうことが必要であろうというふうに考えたわけですけれども、同時に、経済の実態的な面、何でそんなに銀行が多額の株式を保有してしまったのかという経緯等にあらわれているところの経済的な実態、これに着目して、今回、党の方でいろいろとお考えいただいたことである、このように考えているところでございます。
古川委員 ということは、立法趣旨が違うというふうに認識してよろしいですね。
柳澤国務大臣 趣旨が違うと。我々の方は、銀行の株式の保有制限というところをスタートにしてロジカルに考えた。それに対して今回の議員の、党の皆さんがお考えいただいたのは、なぜそういう多額の銀行株が保有されるに至ったのか、もちろん、私ども、この法律を一年前に議論したときにもそのことは議論にもなりました。これは、立法過程でも議論になったし、御審議の過程でも議論になったところでございます。
 しかしながら、我々としては、あくまでも保有制限から系として出てくる命題、これにこたえようということであったわけですが、今回は、その経済的実態に着目して、そもそも、そういうような保有が行われるに至ったのは株式の持ち合いということからきているのではないか。そうしますと、株式の保有の相手方であるところの事業会社が持っている銀行株についても手当てをすれば、それはより円滑に処理されるところになるのではないかというようなお考えがあったのであろう、このように見させていただいているわけであります。
古川委員 ここは大事な話なので、大臣、もう一回確認させていただきたいんです。
 今、最後に、より円滑にというお話をされましたが、となると、もともとの立法趣旨があって、それをより補完する形で今回の新しい改正案が出てきた、ですから、ちょっと違うんだけれどもしかし今回の改正は、あくまで前回の法律をベースにして、それをより補完するといいますか、円滑に進める、そういう意味では、立法趣旨においても前の立法とも密接に関係をしている、そういうふうに認識してよろしいんですか。
柳澤国務大臣 古川委員、大変ロジカルにこの問題の構造をお示しいただいて、そういう理解でよろしいかという御確認の質疑であるわけでございます。
 もちろん、私どもも、先ほど来申し上げておるように、そもそもの我々の政府案のときにもそのことは立法過程で議論があったし、また審議の過程でも議論があったところでございますが、私ども、さしずめ今回はこういうことで保有制限に着目して、そういうことであれば、必ず必然的に起こる問題に対して処置をしようということを考えたのですという答弁をいたしてきたわけでございます。それに対して、今回はより経済的な実態に着目して措置をしよう、そういう御提案だというふうに私は理解しているということでございます。
古川委員 なかなかちょっと私も理解がしっかりできないのですが、実はここは非常に大事なことだと思っているのです。なぜかといいますと、もともと閣法で提案をした、提出をした法案を今度議員立法で改正をするということですから、そこにどういう関係があるのかというところについては、これはやはり国会として、委員会としてしっかりと確認をさせていただきたいと思っているんですね。
 ですから、今大臣がお話にありました、前回のときにも、前回の、現行の法律を議論した際にも今回のようなことも議論に上がった。しかしそれを、上がったけれども、そこについては法律の中では規定をしなかったわけですね。それは政府としての判断だった。そこはよろしいですね。その判断が、今回議員立法という形で入ってくることになった。そこについては、これは政府はどういうふうに判断をしているんですか、そうしたら。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 これはもういろいろ、議論のための議論と言ってはなんですけれども、要するに、我々としては、我々が措置した銀行の株式保有制限というものから導き出されるところのいろいろな事態に対して責任を持った処置をしておこう、こういうことにこの前はとどまったというか、そういうところで我々は立法させていただいたわけでございます。
 しかし、もともとそこの、保有がそれだけになった背景には持ち合いというものがあったということでございますから、今回そこにまた光を当てていただいて、党の方で大所高所からの御判断で今回の措置をとっていただいたということでありまして、政府として、こんな迷惑なことはされちゃ困るとかというようなことでは毛頭ないわけでありまして、やはり大所高所からの、経済的な実態に着目した適切な措置ということであろうかなというふうに見させていただいているというところでございます。
古川委員 大臣、そうおっしゃいますが、法律ができればこれを執行するのは政府の責任ですね。そうしたら、そういうことを前回のときにはあえて外したものを、それを今回議員立法で入れてくるということであれば、もしそういうことを言われるのであれば、執行されるわけですから、何か大所高所からというふうに飛んできて、でも言われたからというふうでは、これはもともと閣法でつくられて、しかも、その点に関しても政府内でも議論がされていて、検討されてあえて外したというものについて、もし本当に、ではこれが大所高所からおりてきてありがたいものでございますと言われるのであれば、本来これは閣法でちゃんと手当てすべきものなんじゃないですか。
柳澤国務大臣 これは何度も、もう既にここでも申し上げておるように、我々の議論というのは、株式の保有制限、ここからスタートがいたしたわけでございます。したがって、そこから当然導かれる現象に対して手当てをしておこう、こういうことにとどまったというのが事柄の実態でありまして、今回は、そのさらに現象の淵源に戻って、その実態に着目して措置をしていただいておる、このように解しているところでございます。
古川委員 では、ちょっと別の見方から少し議論を進めたいと思うのですが、実は、先日我が党に提出者の方何人か来ていただきまして、私どもの部門会議で御説明をいただきました。そこに座っておられる石井委員も来ていただいたんですけれども、何で今回こういう改正をやるんですかと聞きましたら、そもそも当初の法律に欠缺があったという御説明があったんですね。ですから、これは大臣は、そういう提出者の認識ということについてはどう思われますか。
 今の話を聞いていると、そもそも欠缺はないというふうに思うわけなんですが、しかし、提出者の方は、そもそも前の法律をつくったときにここの部分は法の欠缺になっていたというふうなお話があったわけなものですから、今の大臣のお話を聞いていると、私もよくこの関係はわからないのですけれども、そういう提出者の認識については、大臣はどう思われますか。
柳澤国務大臣 私どもは、先ほど来言っているように、株式の保有制限を措置するというところが政府のアクションなんです。したがって、そのアクションからいろいろ導かれる懸念のあった現象に対して手当てをしておこう、こういうことで、我々の法律の思想というかそういうことは一貫しておったわけです。(発言する者あり)不規則発言やめてください。
 ところが、今回は、そのことをより実態的に、経済実態的に、より趣旨が貫かれるように、付加的にそういうことをしておこうというお考えが出てきたということでございます。したがって、欠缺があったということは、我々の体系では欠缺はないし、それをより実態的な観点から今度追加的にこういう措置をしようということについて、我々は別にそれに異を立てようなどということは思っていないということは、もう全くここに矛盾も撞着もない円満な話だ、このように考えているということであります。
古川委員 別に異を立てる必要はないのかもしれませんが、では、これについて、いやこれは別にそれならそれで結構です、そういう認識なのかどうかという、これは実は大事なことなんです。
 なぜかといえば、執行するのは政府ですね。責任を持たれるのは大臣ですよ。ですから、大臣が政府の責任者として、この提案を我々野党が出しているんだったらそれはわかりますよ、与党が閣法でやろうと思えば別にやれる時間はあったわけですからね、昨年から、出してもう半年以上たっているわけですから。そういう中であえて議員立法にされたわけですね。
 普通であれば、これはよほど特殊な、超党派とかそういう場合じゃない限りは、原則的に言えば、閣法で出したものについては、改正をするのであればやはりそれを閣法でやるというのが今までの、私がそんな、大臣に言うのは釈迦に説法ですけれども、これまでずっとそういう法改正がやられてきたと思うのですね。
 逆に言えば、最初に議員立法でやりますと、ほとんどが、後、改正も議員立法でやるみたいなことが慣例として行われてきているわけなんですけれども、閣法でやったもので、政府が責任を持って最初もイニシアチブをとった、その中で考えてきたことも、そこの部分、最初の議論の中でこうしたことも考えに入れて、今大臣が言われたように、目的というのは、ここの、保有制限に向けてどう銀行の財務のところをきれいにしていくかといいますか、ちゃんとそこを整理していくかという、その目的に向けて入れたわけですね。それに対して今回は少し、経済実態という話がありますけれども、違う側面の部分がついてくる。
 ある意味でいえば、大臣が当初目指したこと以上の役割を、政府にそこは責任を持ってくれ、そういう与党の意図、意思とも見られるわけなんですけれども、そこの部分を受け入れるということは、これは政府としてもそこの部分に責任を持つということになるんじゃないかと思うのです。そうであれば、責任を持つのであれば、本来はこういうものは議員立法じゃなくて閣法として出すものじゃないか。それがあえて議員立法という形で出てきているものですから、閣法か議員立法なのかというここの関係について私は聞いているわけであります。
 実際に、法の欠缺があるというふうに、たしか私の質問に対してお答えいただいたと思う石井委員に、そこの部分、今の大臣の御答弁を聞いて、提出者の、今回なぜ閣法でなくて議員立法で改正するということにしたのか、今までのこの法律の成立経緯も含めて、そういう中で御認識を示していただきたいと思います。
石井(啓)議員 私は決して、閣法に欠缺があったと言った覚えはないのでございますけれども、実際に閣法を運用してみて足らざるところがあったといいますか、補った方がいいという面があったという意味で、今回、立法させていただいているわけであります。
 この改正法を閣法でやるか議員立法でやるか、これは議論があったわけでありますが、閣法でやってもいいんではないかということもありましたけれども、そもそもこの論議が、与党の中で改正の議論が始まったということもございますし、また、やはり通常国会で改正をしておきたいね、閣法になるとまた金融審議会等にかけなければいけない、時間がかかるということもございまして、議員立法でやろうか、こういうことになったわけでございます。
古川委員 大臣、今、時間の問題でこれは閣法じゃなくて議員立法になったというような答弁だったんですけれども、そういう認識でよろしいんですか。
柳澤国務大臣 御質問にお答えする前に、さきの古川委員の御発言について、ちょっとだけコメントさせていただきたいんです。
 私どもは法律の執行機関でございます。したがって、国会で成立した法律が、みずからの提案によって閣法として提出されて成立したものであろうと、議員の皆さん方の手によって提案されて成立した法律であろうと、誠心誠意その趣旨を実現すべく執行に責任を持たせていただいておるということでございまして、何か、議員立法の方には責任がないかのように取り組んでいるという趣旨の御発言があったように私はお聞き取りしたんですが、そういうことはありません。
 それから、いろいろな整理の仕方があるでしょうけれども、議員立法を政府提案で修正するということはかなりまれなことだと思いますけれども、政府提案の法律について議員立法で何らかの措置をするということは、私は皆無ではないんじゃないか。閣法であれば、修正は閣法でまた絶対行わなければならないというようなことではないというように私は思います。そういうような傾向があることは私は否定はしませんけれども、絶対ないというようなことはなかったんじゃないかな、こういうように私は思います。
 いずれにせよ、今石井委員のおっしゃられたことは、この閣法について、また少し視点をずらしたところでこれが必要だなというようなことで議員立法をしていただけるということについては、私どもは、それはそれとして、先ほど言ったように、成立させていただいた法律については誠心誠意その執行に当たるということに尽きるということでございます。
古川委員 私が、議員立法については冷たいんじゃないかと言われたのは、大臣も覚えていらっしゃると思いますけれども、我々が与党とも協力をして成立させた金融再生法のときに、その後、瑕疵担保責任がいろいろ今でも問題になっているわけでありますけれども、そのときに、たしかこれは国会の議論の中で、そもそもこれは法律的に、そういうところはちゃんと規定していなかったからだという御指摘もあったかのように思うんですね。
 もし、執行するとして不便でいろいろな問題があるのであれば、それは政府の責任として、執行側でちゃんとそういう部分は直すべき責務があると私は思うんですけれども、それは国会の方でそういうふうにお決めになったんですからというようなお話があったかのように私は記憶しておりますので、そういう面が、政府としてもしっかりと本当に責任を持てるのは、やはり閣法でやるというものについて責任感というのが強いんじゃないか、そういう趣旨で申し上げたわけでありまして、決して、別に政府がいいかげんだとかそういうわけで言っているわけではありませんから、その点は御理解をいただきたいと思います。
 あと私自身も、先ほど申し上げた中で、別に、閣法をすべて議員立法で変えてはいけないと言っているわけじゃなくて、もちろんそういう場合もあると思います。そこがさっき石井委員が言われたように、要は物理的な、時間的な問題で閣法じゃなくて議員立法になったということであれば、ずっと今までの議論してきた経緯からすっとわかるんですけれども、大臣のさっきのお話を聞いていると、それは物理的な問題とはちょっと違うというふうに聞こえるものですから、そこのところの整合性が与党と政府の間で違うような気がいたすんですけれども。そこのところを我々、委員会としてはちゃんと整理していただきたいなというふうに思うわけなんですね。
 その点について、今大臣からのお答えがなかったんですが、さっき石井委員が御答弁された、運用してみていろいろな問題が出てきたので、しかも、これを閣法でやるとなると時間的な余裕もないのでということで議員立法になったという点は、それでよろしいですか。
柳澤国務大臣 政府の与党でございます、政府にくみしていただいている党でございますから、これは、いろいろと御心配をいただいて、いろいろな適切な措置をとっていただくということは、我々はありがたくこれを受けとめさせていただいておる、こういうことでございます。
 ただ、この法律についての私の考え方、とらえ方はどうなんだという御質問であれば、私は、先ほど言ったように、我が閣法での法律というのはあくまで保有制限がスタートであったということでございます。しかし、今度の議員立法による手当てというのは、その制限されたところの保有そのものがなぜ起こったかということに着目をされて、あのときにも随分議論したものですから全く新しい視点というわけじゃなかったんですが、持ち合いの解消を円滑にするというところに着目をされて、つまり視点を、先ほど答弁がなかったというんですが、私は答弁したつもりで、私は、視点が若干ずれたところからこの法律をさらにいいものにしていこうというようなお考えのもとでの御提案、こういうように受けとめているということでございます。
古川委員 視点が若干ずれたというお話と、石井委員が言われた、とにかく物理的な時間の問題という、そこで質問をちょっと違う面からしてみたいと思うんです。
 提出者の方にお伺いしますが、では、その時間的な余裕が、とにかくこの通常国会中に通したいと言われるような、閣法でやっているには時間がないからということで今回議員立法で急がれた。そこまで急いで、今、現時点でどうしてそんなに急いでやらなければいけない理由があるんですか。
小池議員 なぜ今回急いで、現時点でというお話でございます。
 金融はそもそも生き物でございます。ある意味で、時間ということは一つの大きな要因であると同時に、先ほど来お話がありますように、株式持ち合い解消の動きでこの制度、機構をつくったということから、いろいろと具体的なものも出てきております。実際に持ち合い株式の割合も、ここに数字があるんですが、平成三年度の一七・八%から十二年度ですけれども一〇・一%というふうに、これは大変進んでいるような状況でございます。
 ですから、これまでは銀行が放出いたします事業法人株について銀行等保有株式取得機構が存在するのに対して、今回、事業法人が放出する銀行株について受け皿をつくるわけでございますから、こういった持ち合い株の解消ということをさらに促進させる動きにもなってくる。そういった全体の意味としてのスピード感ということにこたえるためには、この法案もスピード感を持ってやっていかなければならないということだと思っています。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
古川委員 ということは、こういう事態については、先ほど来からずっと話にあるように、今の現行法を制定するときにも議論があったということが言われているわけですね。では、その時点の要するに現状認識が甘かった、見方が甘かったということですか。そのときには、そういう上で、政府・与党、別に政府だけで決めたわけじゃなくて与党も含めて決められた。それで金融は生き物だというわけですけれども、その時点ではそういう判断ができなかった。
 さっき与党議員の質問の中にもありましたけれども、この半年の間にどういう事情変更があったんだということに対しての余り説得力のある御答弁はなかったように感じるわけでありますけれども、そういう意味では、最初の時点の認識において、そこの状況判断において、やはりそこは甘さがあったということと認識してよろしいですか。
小池議員 甘い辛いの問題ではございませんで、もちろん認識といたしまして、持ち合い株解消ということでございますから、AとBとが持ち合って初めて文字どおりの持ち合いになるわけで、しかしながら、銀行株ということについて、まずは株式取得機構の受け皿をつくっておくということから着実に進めた結果こうなったわけでございます。
古川委員 まずはということで、では、次はこういうことをやろうと最初から思っていたということですか。
小池議員 ここに参るまでにはいろいろな議論がございました。プロジェクトチーム、このメンバーなんですけれども、これまでもいろいろな議論を重ねてきた。そして、持ち合い解消はそもそも何かといったら、コーポレートガバナンスの問題であったり、産業構造全体の問題でもある。ですから、まずはということになるんですけれども、いろいろな議論の中で、そしてまた何を今すべきかというような総合的な判断から、最初に可決させていただき、今回の改正に至っているというふうに御理解いただきたいと思います。
古川委員 今のお話を伺いますと、では、まずはということで受け皿をつくった、次にここに来たということですよね。さっきの話もあわせれば、要するに時間的な余裕がない、一刻も早くということで議員立法にされたということであります。
 もう一回与党議員の質問の繰り返しになるようなんですけれども、では、ここの時点で、半年間で、しかも今の時点でこんなに急いでやらなきゃいけない、そういう提出者の考える金融状況の変化というものはどういうものが起きているんですか。
小池議員 それは極めて総合的な判断ということによるものでございますし、また、片方の受け皿があって片方にはないというような不均衡ということを解消すべきではないかという考えに至ったわけでございます。
古川委員 不均衡というのだと、さっきの大臣が言われた答弁とこれは矛盾してくると思うんですよね。大臣が言われたのは、最初の法案は、別にこれは不均衡があったとかそうじゃなくて、もともとそういう目的でつくったんだから今の法律はこうなっているんだと。今みたいに不均衡と言われると、さっきの石井委員のやはり法律に欠缺があったというのと同じことだと思うんですけれども。ここの答弁の矛盾はどういうふうに整合性があるんですか。やはり、不均衡があるということは、そもそもこの法律自身に、与党の方々が考えたのとは違う、そういう法律がもともとできていたということですか。
小池議員 先ほど来大臣もおっしゃっていると思うんですけれども、持ち合い株の解消ということ、その基本的な精神ということについては何ら変わってはいないわけでございまして、そして、どこに着目するかということの変化が生じただけでございます。
古川委員 これは大臣、最初から持ち合い株の解消みたいなものを考えてあれしたんですか。これはもともとは銀行の株式保有制限をかけることに伴って、そのためのセーフティーネットでしょう。これは別に持ち合い株解消が目的じゃないんでしょう。そうですよね。
柳澤国務大臣 私が閣法の政府案の答弁でも申し上げたんですけれども、銀行の保有の株がこれほどまでになった背景にはいろいろないきさつがありますよということは申し上げているんです。一つは、まず財閥の解体があった。それから、その次は資本の自由化があった。それから、エクイティーファイナンスの成功というか、盛んなる実行があった。こういうようなことを言っているわけですけれども、やはりその一番大きなところは、第二番目に言った資本の自由化に備えた安定株主対策、持ち合い株式の保有という形で、そこが非常に増嵩したということは、私、何回も答弁しております。
 ですから、そういうものが念頭にあった。あったけれども、私どもが現実に行ったことは何かといえば、これは政府が新しい措置として保有制限を課したというところなんですね。ですから、それに伴って導かれるような現象については、これは手当てをしておかなきゃいけないだろうということを私どもは申し上げて、それを実現していただいたということなんです。
 しかし、今度の場合は、そもそもそういう保有制限をかけたということではなくて、事柄の実態は、持ち合い株の解消なんだろうというようなところ、そこにスポットを当てて、それではよりそれを徹底した形で措置するとすれば何が行われるべきか、これを考えられて今度の御提案になったものだ、我々はそのように受けとめさせていただいておるということ、先ほど来申し上げたとおりでございます。
古川委員 そうしたら、どうして銀行と企業との持ち合いの場合だけこういう株式保有機構のような形をつくって、そこで処理しなきゃいけないんですか。別に持ち合いは銀行と事業会社だけじゃないですよね。それは一般の事業会社の間だって行われているわけであって、まずというので一番最初に銀行のだけをつくる。今回ので、では銀行と相手の事業会社。では、この次は、今度は一般の事業会社同士の持ち合い株もここの株式保有機構が引き受けていくような、そういうような拡張まで提出者は考えているんですか。
石井(啓)議員 一般の事業会社同士の持ち合いの解消というところまでは考えておりません。
 先ほど大臣が答弁されましたように、もともと現行法では、銀行に株の保有制限をかけて、その直接的な影響としてのセーフティーネットとしての保有取得機構をつくったということでございますけれども、今回の改正は、株保有制限をかけたことによる波及的な影響としまして、銀行が事業法人の株を放出すれば、持ち合いの解消という動きの中で事業法人の方が銀行の株も放出してくる。だから、これはやはりスタートは株保有制限というところにあるわけです。それを直接的な影響まで対応したのが現行法であり、さらに、波及的な影響である事業法人の銀行株の放出という持ち合い株の解消という動きにも対応させようというふうに考えたのが今回の改正案であるということでございます。
古川委員 それであれば、さっきの質問に戻るんですけれども、なぜ、では今の時点で、当初からそれはもう想定されていたそういう状況について、この議員立法という形でまでやらなきゃいけないんですかということなんですね。
 柳澤大臣は最初に、当初の立法の目的、それは今までのところで見れば順調に進んでいるという認識を示されたわけですよね、基本的に。そういう認識を示されているにもかかわらず、なぜこの時点で急に議員立法の形でこういうことをやらなきゃいけないんですか。この今の時点でやらなきゃいけないという理由を説明してください。
金子(一)議員 一つは、予想されていた銀行による事業法人の株式の売却が、十六年の九月でありますけれども、我々、実体マーケットを見ておりまして、案外、予想されていた以上と申し上げてもいいのかもしれませんけれども、速いスピードでそれが進行しつつある。それから、銀行が株式を市場に売却するというのは、そのときの市場市場によってではあると思いますけれども、今年度、十四年度の計画でも、ヒアリングでありますけれども、予想以上の売却を市場で行っていくというもう一つの可能性、計画も考えられている。
 そういうことを考えますと、もともとこの機構の意味としての一つの需給という、本来あるべきでないのかもしれませんけれども、需給の悪化による影響というものが市場に出てくる可能性があるということに着目をいたしまして、反対取引であります事業法人の持っている金融機関の市場売却についても同じような意味でとらまえまして、できるだけ市場を安定化させるというセーフティーネットとしての機能を果たしていくためにも、そういうペースのことを考えれば、今が望ましいというふうに我々考えたところであります。
古川委員 ということは、銀行株がどんどん市場に出ていって、市場で銀行株が下落する、要は、銀行株の下落を防ぐ、銀行株の市場での需給状況の悪化を防ぐために今回の改正をするというふうに理解してよろしいんですか。
金子(一)議員 この機構が銀行株を買い支えるという、まして特定の銀行の株を何か支えようという機能というのは、期待をしておりません。市場に売るのか機構に売るかというのは、これはもう全くの選択でありますから、当然であります。
 それから、先ほど与党から御質問がありましたけれども、昨年から銀行株が一般の市場よりも下がっているというのは、やはり何といいましても、あの不良債権処理の問題というのが影響してきたと我々認識をしておりますから、そういう意味では、私たち、銀行の株買い支えという意味でこの機能を提案しているわけではございません。
古川委員 意図はそうかもしれませんが、善意に解釈してですけれどもね、しかし、結果として見ますと、事業法人がここの保有機構に売り払える株は銀行株しかないわけですから、そういう意味では、本来であれば市場に出てくるはずの銀行株が、それだけ分、保有機構に行く分だけ減るということは、事実として起きるわけですよね。
 ということになると、要するに、市場の中に流通している銀行株の数が少なくなる。株数が少なくなれば、一株当たりの金額というものは、数が多いよりは上がるというのは、これはもう足し算、割り算の話で、当たり前のことだと思うんですけれども、そういうことは、事実としては起き得るんじゃないですか。
金子(一)議員 先ほど来同僚がお答えしておりますとおり、まさにこの機構というのは、全体の市場におけるセーフティーネットという位置づけをさせていただいておりますので、委員御指摘の部分が、短期的にはその効果として出てくると思っております。ただ、中長期的には、やはりこれは未来永劫持っているわけではありません。市場にどの時点でか放出されてくるわけでありますから、市場全体として、中長期的に考えていけば中立であるというふうに我々考えております。
 しかし、短期的なそういう乱高下といったようなものを、なるべく市場を安定化させたい。それから、先ほど来申し上げましたとおり十六年九月までに、銀行のいわば保有制限というものをできるだけ円滑に進めていきたいという意味での、短期的な下落もしくは乱高下というんでしょうか、というものに対するセーフティーネットという意味で、御指摘いただいたことはある意味出てくるかもしれませんけれども、またそれが一つのセーフティーネットとしての機能であると思っております。
古川委員 済みません。セーフティーネットの意味が、私、ちょっとわからなくなってきました。
 大臣が言われたのは、これは要は銀行の株式保有制限に伴って起きてくることに対してのセーフティーネットだというふうな御答弁だったと思うんですが、私どもそういう認識で、この株式保有機構というものを認識しておりましたけれども、今の金子委員の御答弁を聞きますと、これは、そもそも株式市場全体の需給バランスをとるといいますか、そこでの価格の乱高下を防ぐためのセーフティーネットであるかのように聞こえてきたんですけれども、そういう認識でよろしいんですか。
柳澤国務大臣 セーフティーネットとして私どもがかねてから御説明申し上げていることは、こういうことでございます。
 つまり、銀行の株式保有制限をかけた、したがって一定の期日までにこの規制に対してコンプライしなきゃいけない。したがって、自分が売りたくない時期にだって売っていかなきゃいけないというようなことが起こる。それで、一時的に需給が非常にゆがめられた形になる。そのゆがみを緩和したり排除したりする措置として、そういう意味のセーフティーネットとして、当初から我々のこの買い取りの仕組みというものは企画立案され、また法律として成立させていただいたということでございます。
古川委員 ゆがみを正していくというお話があったわけなんですけれども、先ほどの金子委員の御答弁にもあったように、結果として、さっき私が申し上げたように、理論的に、銀行株の価格の変動ですね、要は銀行の市場に流通する株式数が減るわけですから、本来であれば、保有制限の中で市場に出てくるような、持ち合い解消の中で売られるはずの銀行株が、保有機構に移されることによって出てこないわけですから、そういう意味では銀行株の株価が下落しないということは起き得る、そういう御答弁だったと思うんですけれども、それは、市場のマーケットの視点からいえば、やはりゆがみなんじゃないですか。本来は市場のマーケットの中で需給バランスが決められるものを、こういう形で銀行株だけ、特定業種ですよね。
 持ち合い解消というのは、何も銀行と事業法人の間だけで行われているわけじゃなくて、今やこれは日本経済全体の構造改革の中で進んでいるわけですよね。それによって苦しんでいるのは、何も銀行株を持っている、と持ち合いをやっているところだけじゃないわけですね。持ち合い解消によって、あらゆる業種がいろいろな意味の苦しみを味わっているわけですね。そういう中で、しかし、それはでも基本的には市場の中でゆがみを正していくというか、今までがゆがんでいたといえばゆがんでいたわけですから、それを正していく形でそういう持ち合い解消が行われているんですけれども、銀行株についてだけ、そういう特別な措置。
 もちろん、法律規制をかけたからというのはあるかもしれませんが、しかし、これも、大きな流れの中でいえば、あらゆる意味でそういう方向性に変わっていく一つの流れの中での今回の規制だったんじゃないかと思うんですけれども、そういう視点からいって、ここだけ取り上げて、銀行株についてだけ市場に流れる需給までも調整をしてやることというのが、本当にこれがマーケットにとっても好ましいことなのかどうか。
 多分その辺のところが、前回の、もともとの今の法律を制定する際に、当時は私、この委員会にいなかったので、詳しい議論は聞いておりませんのでわかりませんが、やはりそういうところもあって、ここの部分はあえて外されたんじゃないんですか。それがこういう形になったのは、やはりこれはゆがみをマーケットに生じさせてしまうというおそれを、おそれといいますか、そういうことが実際にやはり起きてしまうんじゃないですか。いかがですか。
金子(一)議員 古川議員御指摘になられた、銀行株だけ取り上げるということではなくて、我々が提案して、また御説明申し上げているのは、前回の閣法であります銀行が持っている事法の株とあわせて、持ち合いというカテゴリーの中における今回事業会社が持っている銀行株と、両方という意味で考えておりますものですから、この銀行株だけ抜き出してなぜということではないという御提案をさせていただいているということが一点。
 もう一つは、釈迦に説法で大変恐縮でありますけれども、当然でありますけれども、市場というものが、この買い支え機構によって人為的に買い支えですとか株価の維持操作がどの程度可能なのかといいましたらば、それはもう非常に弱いものである。あくまでも、銀行についていいましても、この機能がありましても、銀行に対しての将来的な収益機能もしくは収益将来性というものが市場で信認を失えば、もしくはその信頼を著しく欠いたような状況が出てくれば、それは当然でありますけれどもセーフティーネットといえども市場にスライドして、全体として銀行株というのは下がっていくわけでありますから、当然、本来、その企業もしくは業種の将来性に基づいてそれぞれ株価は大きく変動していくということ、これはもう我々の大前提であると思っております。
 したがいまして、古川先生がおっしゃることと私たちが申し上げていることと、基本的には乖離していないのだと思っております。
古川委員 そういうことであれば、もし株価が、保有機構が取得した株で、銀行株がどんどんと市場で下落していくようなことが起きた場合には、その損失は全部国民負担になるということですよね。そこはよろしいですよね。
柳澤国務大臣 全部はなりません。それはどうしてかというと、これは当初拠出金が最初に損失の引き当てに動員される。その次は、買い取り時の、売却時と逆から言いますが、売却時の拠出金。これは、銀行株を持っている事業会社は今度そうした拠出の義務を負っておりませんのでそちらの話ではないんですけれども、銀行側がこうした当初拠出金あるいは売却時拠出金を積んでおりまして、これは全体として株価の損を補てんするために動員されるという仕組みになっておりますので、この銀行株についても同様の措置が適用されるというふうに御理解をいただきたいと思います。
古川委員 しかし、銀行は、この当初拠出金はそうなんでしょうけれども、株を売る際に売却額の八%に当たる売却時拠出金を支払うことになっていますが、別に銀行は、自分の株を持っている事業会社がこの機構に売り払う自分のところの銀行株について、その売り払った額の八%を出す必要はないんですよね、今回の改正案では。
石井(啓)議員 それはないわけでありますけれども、要は、今回、特別買い取りの将来の損失のリスクというのは、銀行の当初拠出金と売却時拠出金で補い得るということですね。
 ですから、ということで、もう少し説明しますと――よろしいですか。
古川委員 今、重大なことを御発言されましたけれども、当初拠出金と売却時拠出金で、損失が出てもちゃんと補い得る、そういうデータはあるんですか。そういうことをちゃんと皆さん方は約束されるんですか。
石井(啓)議員 それは、私が補い得ると言いましたのは、要するに最初の御質問が、事業法人が売る銀行株の将来の損失のリスクは全部ひっかぶるんじゃないかという御質問だったものですから、それは、銀行が売る事業法人株のときは売却時拠出金をもらうわけですから、全体のそういう拠出金の中で将来の損失の備えをしておりますよということでございます。
古川委員 備えというのであれば、具体的にどれぐらいのものを見積もって、どれだけのそういうちゃんと備えをしているのか。ただ備えがありますと言われても、その中身が見えないと私どもはやはり信用できないわけでありますけれども、では、備えがあるというのであれば、こうこうこういうふうに見積もっていて、リスクもウエートとか見積もっていて、その上で、これだけのものがあるから、その中で大体備えはできているというふうに見ているという御説明はできますか。
相沢議員 世の中のことはなかなか思うようにいかぬものだろうと思っていますけれども、大体腰だめなんですね、こういう話は。ですから、最初に機構をつくるときに拠出金を集めなくちゃいかぬ、どのぐらいがいいだろうか、百億は要るだろうということでこれを募りまして、百七億ということになったわけですね。
 それから、売却時拠出金については、第一期の売却が、機構からいえば買い取りが千三百一億円になった。その八%で百四億になっていますね。ですから、今二百十一億円拠出金を持っているんです。
 それで、御承知のように、繰り返しになるかもしれませんけれども、もうかったときには、要するに拠出金の倍まではとにかく拠出者に返す、それ以上もうかったら政府がちょうだいする。損した場合には、その売却時拠出金をまず食っていって、それから次には当初の拠出金を食って、それでも足らなければ、これは保証しておりますから、政府の負担になる。
 さて、どうなるのかなということですけれども、まあ古川先生も、これから先のこと、株価をどういうふうにお考えなのか、あれなんですが、こういう状態がそういつまでも続くということはお考えじゃないんじゃないでしょうか。しかも、大体十年を考えておるのですね。ですから、もうかったときに売るということでありますから、そんなに大きく損失が出るというようなことはなかろうと。
 名前は申しませんが、某党に説明に行きましたときに、銀行出身の方が、相沢さん、この機構は絶対もうかりますぜ、こういうことをおっしゃいましたが、まあ世の中のことは先はわかりませんが、昭和三十九年、四十年に例の山一の問題がありましたときに、株式会社と取得組合と二つつくりましたね、御案内と思うんですが。あのときも、たしか私の記憶では二千四百億ほど買いました。当時のダウは千二百円前後だと思います、千百円か千二百円。当時、二千四百億買って、結局三千億を超す売却価額になって、相当な利益を出したんですね。
 ですから、今回も、こういうような株価でやるということを前提にして、そして今後の推移を考えますと、大体そういうふうな大きな損失が出るということは考えられませんが、とにかく今申し上げましたように、損益があった場合の一応の対処方針というのは決まっておるわけです。
古川委員 大先輩にこんなことを申し上げるのは恐縮なんですが、そういう認識でこれまで十年間来て、結局今の状況が起きているんじゃないですか。大体十年前にも、まあこれ以上は株価は落ちぬだろうなと言っていて、ずっと落ち続けているわけですね。
 さっきのお話、絶対これはもうかりますぜと。大体普通の商売なんかでもそうですけれども、絶対もうかりますからと手を出して、絶対もうかることというのは、そういうことを言う人がいたとすれば、それをうのみにしては、これは極めて問題が大きいんじゃないかと思うんですね。
 しかも、もし損失が出た場合には、最終的には国民負担になるわけです。これは、だから、最終的な損失を参加している人たちが自己責任でリスクをとるという話ならば、それは腰だめの数字というのでもいいかもしれません。しかし、最終的な負担は政府、政府ということは最終的には国民ですから、国民に回るということについて、しかも、これまでの十年の歩みというものを振り返れば、昭和四十年のころ、私は昭和四十年生まれですから、御案内のとおりと言われましたけれども、それは歴史としては私も聞いておりますが、その時点では認識をしておりませんけれども、あの時代にそうだったから、三十六年も七年もたった今も、これから十年も先を見ても同じようなことが起きるというふうに、状況になると考えるのは、それは十分にあり得るかもしれませんけれども、ないかもしれないわけですね。
 では、ない場合にどうするのか。やはりそこにちゃんと備えをしておくということが必要じゃないかというふうに思うわけでありまして、そういう意味では、腰だめの数字ということでは、これは私ども、それでもってまあ大丈夫ですよねなんということではとても踊れないわけであります。それに私は、そもそもそうやって、今相沢委員がおっしゃられたように、大体はこれは今の範囲内で何とかおさめられるんじゃないか、多分むしろもうかるんじゃないかというふうに考えていらっしゃるのであれば、なぜ今回、事業会社からの銀行株の買い取りに当たって、その株式総額を銀行からの買い取り額の二分の一というのに限定したのか。
 さっきもちょっと質問があったわけでありますけれども、そんなに確実にもうかりそうだ、まず大丈夫だというのであれば、別に二分の一にしなくて全部買い取ったらいいじゃないですか。むしろその方が、さっきも金子委員の言われたように、市場もゆがめないというのであれば、反射的なこととして、銀行と事業会社との持ち合い解消の中でこういう銀行株の市場への売却というものは出てくるわけでありますから、なぜ半分に限る必要があるのか。これだけ見ていると、要は、リスクが起こるかもしれない、そういう心配をしておられるから、実はこういう形で二分の一というのに限定したんじゃないんですか。
石井(啓)議員 確実にもうかるというのは私どもの意見ではございませんで、私どもがある党に御説明に行ったときに、その党の銀行の出身の方がおっしゃったということを御紹介したまででございまして、私ども提出者の意見では、総意ではございません。
 ということで、今古川議員がお話しされましたように、二分の一にいたしましたのは、事業法人から銀行株を買い取るときに売却時拠出金を求めないということから、これは現実にワークさせるためには求めないということにしたわけでございますけれども、そのための、将来損が出るリスクもあるわけでございますから、なるべくそのリスクを軽減させるという意味からも二分の一にしたということでございます。
古川委員 では、さっき腰だめというふうに言われましたから、これを聞いても数字は出てこないんでしょうけれども、二分の一、その範囲内だったら逆にリスクがあってもそのリスクは十分抑えられるというふうに認識したということですか。
石井(啓)議員 これは厳密にいろいろ試算をしたわけではないんですが、先ほども御説明いたしましたように、トータルで見ると、銀行が持っている事業法人株、事業法人が持っている銀行株、それぞれの持ち合い株式の割合が十対四である、そういうこともございまして二分の一という数字にさせていただいたところでございますけれども、これぐらいであれば、将来得するか損するか、はっきり申し上げられないところでございますけれども、銀行から当初拠出金、売却時拠出金も求めることもありまして、なるべく、国民負担につながらないであろうというふうに考えているところでございます。
古川委員 先ほどから申し上げているように最終的な負担は、いや、今提出者の皆さんが損したらちゃんと負担しますというふうに約束してくれるならいいですよ。でも、そうじゃなくて最終的には国民に負担を回す、もしリスクが発生すれば、損失が発生すればということなんですから、やはりそこについて、腰だめの数字とか、大体二分の一とか、そういう形で決めるというのは極めて私は問題があることだと思うんですね。
 ちょっと話を少し、では、その損失について別の見方からお伺いいたしますけれども、では、今回の改正によって、もし本当にそういう株価が下落して、損失が発生して国民負担となった場合、その責めはこれはだれが負うというふうに提出者及び政府は考えていらっしゃいますか。
相沢議員 これは今回の改正法で決めたものでないことは御案内のとおりで、当初の銀行等の持ち株を自己資本の範囲内に制限する、それを売る一部をこれに受け皿として吸収するという格好でスタートしたわけですけれども、そこの機構をつくるときにこのことについての議論は十分にしたわけだというふうに思っております。
 したがいまして、今のだれが負うかということについては、これは法律がそういうことで決まっているわけでありますから、それは結局最終的には政府が負うと。ただし、繰り返しになりますけれども、もうかったときも全部銀行に上げるんじゃないので、要するに、当初出した金額の程度のもうけにとどめておこう、こういうふうになっておるわけです。
柳澤国務大臣 制度ができましたときに、その運用に当たるということでございまして、国民負担も政府保証という形で政府が最終的に損失の補てんをするという仕組みになっておりまして、今回改正でもその点は変わっていないわけでございます。
古川委員 もともとの仕組み自体も我々は問題があるということで反対をしたわけなんですけれども、今回の改正によってリスクは今よりももっとふえたということは言えると思うんですね。
 そういう意味では、そのふえた分、そして、もしそのリスクが現実化した場合の責め、大臣はそうなった以上は政府がということであったんですけれども、そういう政府に本当にリスクを負わせるようなこと、最終的にはそうなるわけですから、政府といいますか最終的には我々国民全部が負わなければいけないわけですけれども、そういう重大な内容を含むものについて、だからこそ私は、これは大臣、最初から言っているのは、今回のようなこういう改正をやるのであれば、これはもともと閣法でやったものですから、閣法で責任を持ってやるべきじゃないんですかと言ったわけなんですけれども、今のお話を聞いていると、最終的には政府ということであるわけですから、そういう認識が提出者の皆さんにも私は欠けているんじゃないか、残念ながらそう言わざるを得ないと思うんです。
 最終的に負担する政府、そして結局そのしりをぬぐう国民。やはり、そういう国民に対する負担を最終的には強いるかもしれないということであれば、それだけの責任感を持って法案を提案していただかなきゃいけないわけでありまして、そういった意味でも今回の法案というのは私は極めて問題が大きいというふうに考えております。
 現実に、先ほど来からいろいろな議論をさせていただいているわけでありますけれども、今回の改正によって、では、そこまでいろいろ急がれてやられる、そこまで言われるからには、具体的に相当な効果というものを見込んでおられるんじゃないかと思うんですが、その点については提出者はどのように見込んでおられるんですか、これは。
石井(啓)議員 効果ということでございますけれども、まず、銀行の株保有制限でどれだけ市場に出てくるのか。市場にといいますか、銀行が株を放出するのかということでございますが、十四年三月末時点でティア1を超過しているのが七兆円でございます。これが十六年九月までに処分をする必要があるわけでございます。その影響として、事業法人が銀行株を売却することが考えられるわけでありますけれども、どの程度売却してくるかわかりませんが、先ほど申し上げましたように、大体トータルで四割ぐらいだということであれば、七兆円の四割ぐらいを事業法人が銀行株を放出することになるのかなと。
 そのうち、どの程度機構が買い取ることになるかどうかは私どもも明言できないところでありますけれども、基本的には、市場で売却できればそれは売却していただいて結構なわけでございまして、市場が非常に荒れているようなケースで、セーフティーネットとして使っていただく場合には使っていただいて結構ということでございますので、今申し上げました七兆円の四割がどれだけ機構に持ち込まれるかどうかは定かではございませんけれども、セーフティーネットとしての効果は相当程度あるのではないかというふうに思っております。
古川委員 今のお話だと、なぜ今そんなに急いでやらなきゃいけないのか、最初からの議論に戻るんですけれども、政府部内の手続を省略して議員立法でやらなきゃいけないのか、そういうものが見えてこないんですよね。
 しかも、今、市場が非常に荒れているようなときにはこの機構を使っていただければと。ということは、要するに、そういう状況のときには、本来、そういう市場の中であればその市場の中で価格がつくようなものに対して、一時的にかどうかもしれませんが、一時的といってもかなり長い年数になると思うんですけれども、ここに銀行株を緊急避難させてそういう状況にさらさせないということは、やはり銀行株の下支え、それを目的ということになっちゃうんじゃないですか。違いますか、これは。
石井(啓)議員 特定の銀行株を買い支えるためというものではございませんで、あくまでもセーフティーネットとしての機構の機能を充実させるということなわけですね。セーフティーネットということですから、なるべくこれは早く整備をしておいた方がいいにこしたことはないわけでございまして、そういった意味で早期の成立をお願いしているところであります。
古川委員 それであれば、もう何度も繰り返しになるんですけれども、一番最初にこの法律をつくるときに検討もされていたというわけでありますから、そこでやるべき話であったでありましょうし、そうでないにしても、今回のような形で議員立法でやるということについては、私は何ら合理的な理由というものは見出せないんじゃないかというふうに思います。
 こういう形で議員立法で提案するというのは、今回のこの機構の仕組み自体に対する問題点というのはいろいろ指摘されている、そういうことを政府も含め認識しておられるからまさにこういう形をとられた。だから、そういう意味では極めてこそくだと思いますし、政府も、そこは与党の方々が大所高所から考えていただいたというわけでありますけれども、最終的にはやはり責任を負うのは政府なんでありますから、そうであれば、政府も責任を持ってやはりこういう問題についてはきちんと取り組むべきだ、そして政府が責任を持ってちゃんとここでも答弁するべきだということを強く申し上げて、次のお話に行きたいと思います。
 厚生労働省、お待たせしました。
 株式市場との絡みで、今回のこの法案も、今の議論を私自身の理解の中でもう一回確認させていただきますと、不安定な株式市場、そこを安定化させようみたいな、そういうセーフティーネット機構、機能としてこれも位置づけようとしているような感が見られるわけでありますけれども、今の、現時点の市場においても、何度も繰り返し質問させていただいておりますけれども、PKOが行われているんじゃないか、その中で年金の資金が使われているんじゃないかということの疑念は、相変わらず、やはりいまだに聞こえてくるわけであります。
 ここについては、私も、春の段階から、そうした疑念がないというのであれば、ちゃんと一日も早く情報提供を運用当局としてすべきである、そういうことを主張させていただいて、厚生労働省の方からも前向きな御答弁をいただいているわけなんです。七月ぐらいにはと言われたんですけれども、七月も半ばになっているわけなんですが、まだ、そういう情報公開をされて市場からそういう疑念が消えたということは聞いておりません。
 今、年金の資金運用についてどのようになっているのか、そこについて御説明いただけますか。
辻政府参考人 年金資金の投入、回収の状況の公表についてでございますが、私ども、これまで御答弁させていただきましたとおり、七月中目途で公表ということで作業をいたしております。
 具体的には、昨日、年金資金運用についての担当をしていただいております社会保障審議会年金資金運用分科会におきまして、この公表の形をどのような形でするかということについて御審議をいただきました。具体的には、十三年度の年金資金運用基金の業務概況書というものをこれから公表することになっておりますが、その中にこの資金の投入と回収の状況を盛り込むということ、そして、数字は精査中でございますが、その様式をあらかじめ審査いただくということで御議論いただきました。
 具体的には、株式、債券といった各資産ごとに月次で、月ごとに配分額と回収額を記載することとしまして、さらには、一定のルールのもとで資金投入、回収が行われている、恣意的な資金投入が行われていないということがわかりますように、各月の月末時点での実際の資産構成割合、例えば株式が何%になっているか、債券が何%になっているか、この数値を明らかにしまして、その数値と十三年度末に達成することとしている資産構成割合の目標値との乖離状況を記載するという様式を示しております。これによりまして、十三年度末に達成することとされている移行ポートフォリオの目標値に向けて、しかも特定の資産、特定の時期に集中することなく、なだらかに資金が投入されている様子が確認いただける、こういった形で今検討をいただいております。
 その方針で、私ども、具体的には、それを盛り込んだ年金資金運用基金の業務概況書につきまして、精査中の数字を盛り込みまして、今月末に開催を予定しております次回の年金資金運用分科会の場でそれを御報告した上で公表させていただきたいと考えております。
古川委員 御努力には本当に感謝を申し上げますけれども、果たしてその情報で、今度公開される情報で、そうした、今市場にあるPKOに年金の資金が使われているんじゃないかという疑念が消えるかどうかというのは、まだ私は、これは情報が公開されてみないとわからないと思うんですね。
 そういう意味では、今回の情報公開されるものがこれでもうファイナルというわけじゃなくて、むしろ今回のは、今までが逆に言うと余り情報公開がされていなかったということでありますから、第一歩という位置づけにしていただかないといけないと思うんですね。
 今回は十三年度一括して公開をされるというみたいですけれども、これも一年に一回というあり方がいいのかどうか、そういうサイクルも含めて、十三年度ということはこの前の三月末までのが出るわけですね。そういう意味では、三月の部分は、もう七月、この三カ月、四カ月の間でまとめられたということでありますから、そういう意味ではもう少し、先ほど来からの話もあったんですけれども、市場というものは生き物で常に動いていくというものでありますから、そういう意味では、タイムリーな情報開示、情報公開というものが私はこれは極めて大事だというふうに思っています。
 そういう意味で、今回の情報開示には期待をしておりますけれども、それにとどまることなく、より情報開示、市場が無用な懸念を抱かないような形で情報開示を続けていただきますことを心からお願い申し上げまして、午前中の質疑は終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
坂本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。古川元久君。
古川委員 午前中に引き続きまして、三十分間、私から質問をさせていただきたいと思います。
 午前中は、今この委員会で審議をされております株式の買い取り機構のお話を質問させていただいたわけなんですけれども、相沢委員を初め提出者の方々、そしてまた政府も、株式市場、市場の安定というものには極めて心を砕いておられるわけなんですが、その絡みで、そういう政府や与党の考え方とはかなり、ちょっと外れるんじゃないかというような事案について、少し政府の見解を確認させていただいて、考え方をたださせていただきたいというふうに思っています。
 実は、これは新聞などにも載っていた話ですから御存じかと思いますが、昨年十一月にブリティッシュ・テレコムが会社分割をして、固定電話会社と携帯電話会社へ完全分割をしたということがありました。そのときに、日本には約三千五百人の株主がいたそうなんですけれども、今回の分割に従って、そのブリティッシュ・テレコム株を持っていた人たちに対して十億円程度の課税がされた、配当課税がされた、そういう報道があったわけであります。
 これは、ブリティッシュ・テレコム社自身もそういうことを言っているわけなんですけれども、このブリティッシュ・テレコムの企業分割の際に、ほかに株を上場している欧米においては、この分割によって株主には何らの価値の増加はないということであって、無税の取り扱いをされた。日本の株主だけが配当課税を課せられて、十億に上る課税処分を受けた。その結果、これは政府も与党も、どう個人株主、個人投資家をふやそうというふうに腐心しておられると思うんですけれども、四〇%の株主がその配当課税、払うために、納税をするために株を売却して、株主数が激減をしたという結果が起きたわけであります。
 これについては、実態が価値の増減がないということでありましたから、会社も、株主からいろいろなクレームがあって、そしていろいろな関係省庁、特に国税当局に対してもいろいろと交渉に行ったわけでありますけれども、結果は、とにかく今の税制ではどうしようもないということで、課税がされたという報道がされていたわけであります。
 そして、そのブリティッシュ・テレコム社は、塩川財務大臣やあるいは主税局長、また国税庁長官に対してもブリティッシュ・テレコムとしての見解を伝える書簡を送ったそうなのでありますけれども、新聞によりますと、それに対しての何らの返事もないという状況であるようなのでありますけれども、こういう事実については、どう認識しておられて、事実関係はどうなのか、その点について御説明をいただけますか。
村上政府参考人 お答えいたします。
 まず、ブリティッシュ・テレコムの話をお話しでございましたが、これは個別にわたる事柄ですので具体的な回答を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で言いますと、税法の適用関係を申し上げたいと思いますが、課税対象となる収入金額には、金銭以外のもの、または権利、その他の経済的利益の価額も含まれますので、会社分割等により株主に対して株式が交付された場合には、原則としてその株式の時価相当額を収入金額として課税されます。
 ただし、御案内のとおり、一定の要件を満たす我が国商法の規定による株式交換等や特定の会社分割につきましては、法律の規定により、課税関係は生じないということになっておりますが、これはあくまで一定の要件を満たす場合に限られるということであります。
 それからもう一点、申し入れみたいなお話がございました。
 上申等々ということだと思いますが、これまた一般論でお答えいたしますが、国税庁では、納税者の方の予測可能性を高めるために、税法の一般的な解釈であるとか取り扱いについて、その法令解釈通達を公表いたしております。また、個別の取引につきましての税務上の取り扱いにつきまして、納税者の方々から事前の相談に応じております。この事前の相談に対しては、原則として口頭でありますが、口頭で回答をいたしておるところであります。
 なお、その上申とか申し入れといった、どういう性格かよくわかりませんが、これは陳情であろうかと思いますが、一種の陳情だと思いますが、陳情があったからといって、課税関係が変わるということではございませんので、あくまでそういう税法の取り扱いについて回答させていただいているということであります。
古川委員 今のお話を伺いますと、では一般論として聞きますが、そうしたら、このブリティッシュ・テレコム株は、日本の商法じゃない形の中での会社分割を行ったわけでありますけれども、そうであれば、日本の商法に基づいたものじゃないですから、どんな形であれ、企業分割に関しての特別措置で免税になるようなことはないと考えてよろしいわけですか。
村上政府参考人 お答えいたします。
 我が国の税法は、我が国の商法に基づく規定に基づいて税法の規定がなされておりますので、我が国の商法に基づく企業分割についてのみ規定があると存じます。
 これも一般論でありますけれども、ブリティッシュ・テレコムは英国の法人でありまして、英国法に基づく分割であろうかと思っております。
古川委員 要は、法律がこうなっているからいたし方ない、そういう御回答なのかもしれませんけれども、これは大臣にちょっとお伺いをしたいんですけれども、実態として見ると、日本企業が企業内で日本の商法に基づいて分割をしようが、あるいはこういう形で外国企業が分割しようが、ある意味で個別の、それこそそういう会社に投資している人たちから見れば、企業が何に基づいて、どういう法律に基づいて分割を行っているかというのは、なかなかそれは個別の投資家の人たちから見ると、こちらで、日本の法律で分割をしろとかいうことはやはり言えない話ですよね、一般的に言えば。
 そういう中で、今回のような形の、欧米においては課税がなされないで日本においてだけ課税がなされたということが、今回の件はもう法律がこういう形であるから仕方ないというふうにいたしましても、今後もこのような事案が起きてくる可能性というものはあるんじゃないのかな。
 先日、この委員会でも質疑をいたしました連結納税制度の導入なんというのは、企業再編を進めていく、企業の活力、競争力を高めていくためにはそうした連結納税制度のような制度が必要だという議論で導入したわけなんでありますけれども、いろいろな企業再編のあり方に対して、税制がそれを抑制するようなあり方というのは、基本的にはやはり私は好ましくないのではないかと思います。
 今政府で検討しておられる活力のある税制ということから考えると、個人投資家の立場からいったら、日本の株式市場に上場しているからといって、ほかの日本の株を買うのと同じように買ったんだけれども、その会社が分割したら突然、その人は何も、配当も、実際には配当をもらっていないわけですから、何にも経済的価値が変わっていないにもかかわらず、突然それは配当だと言われて、税金を払えと。実際には、税金が払えなくて、その株を持ちたいと思っても売り払って納税をしなきゃいけないという状況が起きてくるような中では、これは投資家にとっても非常に不安定な状況に置かれてしまって、日本の競争力、そして企業の競争力も高めていく、そして、かつ資本市場の育成も図っていくという観点からすると、こういうことがこれからも起きかねないような状況が今の法律の中ではあるということについては、私は問題ではないかというふうに思うんですけれども、大臣はどのようにお考えになられますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。事実関係にかかわることもございますので、最初に私の方から御説明させていただきたいと思います。
 実は、我々に対して、確かにインターネット等でも質問というようなものが出されておるわけでございますが、組織再編税制自体は、先ほど課税部長が説明しましたとおり、我が国の商法、企業の経営実態等を前提としている。これは何も日本だけに限りません、アメリカでもイギリスでも同じだと存じます。
 我が国の商法は、会社分割につきまして、会社を設立し、営業の全部または一部を承継させ、その会社の株式を株主に割り当てると規定されていまして、いわゆる直接分割という手法を認めているんですが、今回のブリティッシュ・テレコムのような、子会社を設立して子会社の株式を株主に現物配当するという、いわゆる間接分割の手法は認められていないという見解がなされているわけです。
 現在、各国ごとにやはり商法のあり方が違うものですから、ある意味では多様な法制度が存在する中では、それぞれの国ごとにそれぞれすべてのケースに対応できる制度とするというのは、実は非常に困難でございまして、今先生のお話のありました英国、米国でも、一定の要件のもとでは課税繰り延べを認めないというケースも逆にあるわけでございます。
 そういうのがいいかどうかというのは、もちろん、先生が言われるとおり、世界共通の商法なりをつくっていくということが求められるのかもしれませんが、現行ではまだそこまで行っていないというのが実情でございます。
 そういう中で、実は、このBT社に関して言えば、私どもが得ている情報では、例えばオーストラリアとかカナダとかニュージーランドに対しても、株主にかなり不利に課税される可能性があるというような注意喚起のレターが出されているようでございまして、それぞれの国ごとにこうした問題がやはりどうしても潜在的にあるということかと思います。
 いずれにしても、こうした問題、各国ごとの制度の違いというのが根底にあるものですから、今後の商法改正の動向ですとか組織再編税制の適用状況等を踏まえまして、やはり中期的には、特に世界共通の場で本当は検討していかなければならないことかという感じもいたしているところでございます。
古川委員 現行制度で限界があるのは私もわかるんです。そういう状況を、今、政府あるいは与党の皆さん、今回出した法案もそうなんですけれども、考え方の流れの中でこういう状況を放置しておいていいのか。
 こういうことが今の制度上では、今のお話であれば、要は商法を変えない限りは税法上では対応できないということなんですけれども、それであれば、逆に商法も含めた改正に向けた動きを政府としてもとっていくみたいなこともないと、このままこういう状況があると、また、これからの時代というのは、日本の企業だけでなくて世界じゅうの企業がいろいろな形で日本人にもかかわってくるわけですから、そういう今後のことの対応という意味でも、今回の事例を、現行法では仕方ないからということで、ただそのままで置いておいていい問題というふうに認識しておられるのか。
 あるいは、やはりこういうことが起きた以上は、少し商法のあり方も含めて、これは税のことで現実にこういう不利益な状況が生まれたわけですし、実際にヨーロッパとかアメリカでは課税がされていなかったわけですから、そういうところを考えると、日本が競争力を回復していくという視点に立てば、今後に向けてはこうした問題について検討していくということも必要ではないかというふうに思うんです。
 その点については、大臣、これから税制改正なんかを行っていく、その中には商法の改正とかそういうものも含まれていくのかもしれませんけれども、その辺についての大臣の御認識、御見解はいかがか、それを教えていただきたいと思います。
大武政府参考人 やはりこうした問題、これは今回の政府税調の答申にもありますが、法人税全般について、まさに御質問がありましたとおり、世界共通のルールというのが徐々に求められる状況になってきているかと思います。
 そういう意味では、今回の政府税制調査会の答申では、基幹税という言葉が法人税の中には触れられていない。それは、どちらかというと、制度そのものの仕組みを世界共通のルールにしていかなければならないという流れの中で、実は置かれてきているんだと思います。
 ただ、現実問題からすると、日本のように、どちらかというと大陸型の、商法というか民法も含めてですけれども、制度を前提にしてきているものですから、特に確定決算主義というのをある意味ではとってきているわけでして、このあたりも含めて、かなり大幅な見直しをしていく課題の一つだという認識はしております。
 ただ、今回の連結納税制度、先般成立させていただいた制度をごらんいただきましたとおり、極めて膨大な法人税法に現行でもなってきておりまして、そういう意味では、簡素化という流れの中で一体どう対応するのか、まさに極めて難しい課題を我々は抱えてしまっているというのが実情だということは御理解いただきたいと思います。
古川委員 事務方としてはそこまでしかお答えできないと思うんですけれども、大臣は政治家なんですから、経済財政諮問会議のメンバーとして、こういう状況が今後も起こるかもしれないという状況を放置しておいていいと思われますか。何かこれはやはり考えていかなきゃいけないというふうに思いませんか。
塩川国務大臣 この問題につきましては、私も、BTがどういう状態でどういうことをやったかというのを、詳細は知らないんですけれども、大体は常識と話を聞いておりまして、これは、日本が無償交付なんかやったのとちょっと違うやり方なんですね。
 私は、昭和三十年ごろでございましたけれども、会社で無償交付をもらうのを楽しみで、株をどんどん買って一もうけしたことがあります。その時分は、無償交付に対してはやはり税金かかってきていましたね。ところが今度は、このBTの場合は、分割した会社をつくって会社の株を渡したんじゃないでしょうかね。そうですね、違いますか。子会社をつくって、その子会社の株を渡したんですね。(古川委員「親会社がなくなっちゃったんだ」と呼ぶ)ですから、これは新しいやり方だと思いまして、幸い日本でも会社の分割法もできたし、連結決算法もできたし、そういう環境は整うてきたと思うのです。ですから、いろいろと会社が知恵を絞ってそういう資本を集める方法をいろいろ考えてくる、これは私は非常に興味ある研究課題だなと思っておりまして、一生懸命勉強してみたいと思います。
古川委員 午前中、大臣いらっしゃらなかったところの質疑の中で、市場環境とか金融状況というのは刻々変わっていくという話がありました。企業再編についてもやはりあり方はどんどんと変わっているわけでありまして、三十年の話と今とは全くさま変わりしているわけなんですね。そういう中でいろいろな手法があって、それは企業の戦略としてどういう形で企業分割したらいいかということは、いろいろと知恵を絞ってそれぞれの企業がやっているわけであります。
 そういう中で、今回のように、今回の場合は、会社がダメージを受けたというよりも、要は、会社というものは、投資する人たちがいてそのお金で成り立っている、もともと成り立っているわけでありますけれども、その投資家が、実態的には何ら経済的な利益を得たわけでもなくて、分割の前と分割の後で変わらない状況であるにもかかわらず、突然課税当局から税金を納めろというふうに言われて、それで納税のために株を売り払わなきゃいけないような状況になってしまったりした。そういう不測の事態が起きたということを考えると、マーケット環境を整える意味でも、やはり何らかの考えというものは示していかなきゃいけないんじゃないのかな。
 そこは、柳澤大臣、マーケットを監視している立場としても、こういうことで急に株主がごそっと抜けちゃうというと、その市場環境云々じゃなくて、とにかく税金を払わなきゃいけないからといってばっと売りが出ちゃうという話になって、さっきから言っているような、市場に急激な株価の変動も起きてしまうかもしれないわけですね。
 そういう不安定要因になるような形のこういうことが起きたということは、今後の教訓として、何らかのいろいろな形の、今の制度では無理なのであれば、商法改正などを含めたそういう措置へ向けての政府としての取り組みというのをしていかなきゃいけないんじゃないか。それは、個人株主をふやしていく、証券市場を、資本市場をより活性化していく、そのためにも大事な環境整備の一環ではないかというふうに思いますけれども、御見識はいかがでしょうか。
柳澤国務大臣 古川委員から、きょう、BTの会社分割に伴う株式面での措置ということについて御質疑をいただくということで、新聞記事等を見させていただきましたが、ちょっとよくわからないわけですね。
 何がゆえに固定の電話会社の株を携帯の電話会社の株の配当として渡すかという、そもそもそういうスキームを何がゆえに選択したのかというところが、私、イギリスの商法に該当するようなものであるとかというものについて全く知識がありませんでしたので、それを課税当局としてどう判断すべきなのかというようなことも、私なりに考えてはみたいと思いますけれども、まず、何がゆえにそういうスキームを選択したかがわからないものですから、ちょっと我々として、例えば課税当局に対してどういう御要望を申し上げたらいいかということも全くわからないわけでございます。
 もし、何かその方が利益になるようなこととかいうような背景がなくして、新聞記事が言うように、何も資産の増減がないということであるとすると、私は、課税には実質課税の原則というのがあって、形式的にどういう取引であろうと、実質的にはこういう経済的利益の帰属があるんだから課税だというようなこともなさる伝家の宝刀みたいな条項があるわけでございますので、納税者の側にも実質課税の原則を適用しろという請求権ぐらいあってもいいかなとちらっとは思いますが、しかし、一番の基礎のところのスキームが、何がゆえにそういう形をとったかということがわかりませんので、さらに勉強させていただきたい、このように申し上げます。
古川委員 私がきょう指摘をさせていただきたかったのは、今大臣がちらっと言われましたけれども、実質課税の原則からいって、本当にこれは何ら利益を得ていないのであれば、そこで課税されるのはおかしいなと思ったりもしますけれども、そこは一歩譲っても、今の制度ではこういうことが起きてしまうということであれば、個人株主をふやしていこう、証券市場を活性化させていこうというふうに考えていらっしゃるのであれば、なるだけそういう人たちが参加しやすいような、突然税金が、何にも株も動かしていない、売買もしていないのに、会社側の勝手な、それは今の話で、なぜこういうやり方をしたのかというのは、それは会社側の判断でやったわけでありますけれども、一株主からすれば、会社側のそういう判断の中で突然そういう課税処分を受けるみたいなことは、やはり今後投資をする際の萎縮効果も生んでしまうんじゃないかなというふうに思いますので、今後の課題として、こういったことについては、私は政府としても検討する話じゃないかということで持ち出した話でありますので、別に今回のをどうこうしろというふうに言っているわけではありませんから、そこのところは御理解をいただいて。
 かつ、やはりこういうことがあると、企業の方で、今柳澤大臣言われましたが、企業のいろいろな行動に、やはりそこはかなり自由に選べるような環境を与えてやるということが企業の競争力を高めるためにも必要だと思うのですね。いろいろなやり方があってその中から選ぶ。それがもう本当に限られた方法しかないということになると、やはり企業行動にも制約があるわけですから、そういう面も含めて、今後の、税制改正もありますけれどもいろいろな場面で御発言もいただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に行きたいと思います。
 私どもが提案をしているNPOに対する税制優遇措置についてでありますけれども、私どもは、今の認定NPO法人というのが極めて少ない、申請がわずか十一団体で、認定されたのが六団体というような状況にある。この現状の原因というのはどこにあるというふうに、私はこれは今の制度にあるというふうに思っておりますけれども、政府としてはこの原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 事実関係から申し上げますと、昨年十月一日から施行されまして、今の申請件数は十四件でございまして、現在まで認定は六件ですが、さらに近々二件追加認定される予定でございます。
 いずれにしても、昨年十月から施行されたところでございまして、照会自体、相談は五百六十二件、六月末までに参っておりますが、今後もできるだけ多くのNPO法人に活用していただくということで期待をしておりまして、その認定要件につきましては、今後、NPO法人の実態等を見きわめた上で検討していく必要があるというふうに我々も認識している次第でございます。
古川委員 ということは、要するに、十月から始まったから時期的に見てまだ少ない、そういう認識だということですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 一つは、まさに始まったばかりだというのが確かにあります。それから、確かに認定要件自体が、特に事務局というのがNPOはしっかりしていないところが多いものですから、そうしたものについて、アメリカのようにNPO設立の専門の弁護士さんがいるような国とは実情も違うものですから、申請その他で手間取るというところももちろんあると思います。
 いずれにしましても、そうした実態も見きわめた上で、認定要件につきましても今後検討していく必要があるという認識でございます。
古川委員 私どもは、認定要件について既にこうして法案も提出して改善を求めているわけですから、政府の方も、これから見てなんというふうに言わないで、早く見直せるところは見直していただきたいというふうに思います。
 最後に、ちょっと大臣に、もう半年ぐらい前に言いましたから忘れていらっしゃるかもしれませんが、「ライオンは眠れない」という本をお貸しして、二カ月ぐらいしたら返ってきて、その後感想を聞いておりませんので、ちょっと感想をお伺いしたいと思うんです。
 これはその後、あの時点ではまだ余り知られていなかったんですがベストセラーになりまして、何十万部も売れているようなのでありますけれども、大臣は読まれてどのような感想を持たれたか、そして、それがベストセラーになっているということについてどう思われるか、お聞かせいただけますか。
塩川国務大臣 早速、すぐに読みました。
 日本も表現が自由になって楽しい社会になったなと思っておりますが、遊園地の中で遊んでいるような話ですね。私も、そういう自由な空想、おもしろいなと思って読んでおりましたが、しかし、現実味は全くないなと思っております。
古川委員 そういう認識だからこそ、みんな大臣が心配になってこれを買うんですよ。
 何で売れているのか。こういう読んでいる人たちから来る手紙などは、やはりほとんどが、このままの状況で大丈夫なんだろうかと。非常に多くの国民が心配しているその結果、こういう本が売れているんだと思うんですね。それを、自由な議論ができて空想の世界で遊んでいると言われると、本当にこういう人に財政を任せていて大丈夫なのかという不安に私は一国民としてなりますよ。
 言わせていただければ、それこそ政府の方が、有名な人気女優を使って、国債、いいかもといって個人に売ろうとしている、それこそ現状認識が甘くて、遊んでいるんじゃないか。個人に対して、国債、いいかもと人気女優を使って売る前に、もっと個人が安心して、逆に言えば国債に投資しようと思えるような財政状況に向けていく、そういう指針をちゃんと示すことこそ大事なんじゃないですか。それが、この本を読まれて、いや、こんな空想の世界でと、そういう認識ではこれは極めて認識が間違っているんじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
塩川国務大臣 それは各人のとりようですから、私はそうとったということです。
古川委員 質問を終わりますけれども、こういう御答弁をされるとますます心配になって、こういう本が売れてしまうんじゃないか。そういう意味では、こういう不安がかき立てられて本が売れるような状況というものを一日も早くなくしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
坂本委員長 次に、海江田万里君。
海江田委員 今回の与党提案の法案でございますが、最初に、これは柳澤大臣にお尋ねをしたいと思います。
 先ほど来、柳澤大臣御自身も答弁をされていますように、事業法人が持っている銀行の株を買い取ってはどうかというような議論が、立法過程でとかあるいは当委員会での審議の過程で出たということは明らかであります。そのときの大臣の答弁でございますが、要点を言えば、あるいは結論を言えば、結局そういう考え方は、つまり銀行に対する株式の保有制限をやって、そしてそこで当然これまで持っておった株を放出する、だけれどもそれは、持っておった事業法人の株を放出するとき、買い取り機構でその買い取りのところまではいくけれども、そこから先の、では事業法人が持っている株を買い取り機構が買うかといったら、それはとらないよ、そういうことにはしないよというのが結論だったんじゃないんですか。
柳澤国務大臣 そのとおりだと言ってよろしいかと思います。
海江田委員 そのときの答弁、これは中塚委員に対する答弁でございますが、例えば、「これは、議論の過程ではそうした議論も正直言ってなかったわけではありません」とか、私も大臣の答弁を随分聞いていますが、「正直言って」という言葉が出るときは大体、余り言いたくないんだけれども、あえてストレートに言えばということで、まさに正直に、実際その議論があったことを発表しているわけです。これは、議論があったんだけれども、それはこの流れから、つまり先ほどもお話をしましたけれども、株式の保有制限のところからくる手当てとしては、そこで一たん切れるんだよという考え方だろうと思うんですね。
 あるいは参議院の方の我が党の櫻井委員のところでは、やはり櫻井委員が同じような、事業法人が持っている銀行の株を買うんじゃないだろうかということに対しても、それはもう思想からいって違うんだというようなことを御答弁されているんですね。「その思想というものを一貫させてこういう形になった」ということで。
 つまりこれは、先ほどは若干、視点がどうのとかいう話ですけれども、株式保有制限のところからくる話としては、もうここで一度断絶されてしまうんだという考え方がやはりまさに立法の思想であり、それから当委員会での結論なんですよ。
 これは相沢提出者にお尋ねをしたいんですが、やはりそういう認識を持っていただかないと間違えてしまうんじゃないだろうかというふうに私は思うわけですけれども、いかがでしょうか。
相沢議員 確かに、私も柳澤大臣の答弁も読みました。ただあそこにも、今引かれましたように、そういう議論もあったけれどもということも、これもそのとおりでありまして、確かにそういう議論があったんです。あった結果、とにかく当面の、言葉はちょっといけないかもしれませんけれども、当面の問題としては、銀行等の保有株式を自己資本、ティア1の範囲内に制限することに伴う受け皿の一つとしてつくるんだということでやったわけですね。
 ですから、そういう議論があったということは、結局、逆に事法の持つ銀行株を買うということについても、言うなれば全くとんでもない話だったということじゃないので、あわせてあった議論であることは事実なんですね。
 ですから私は、表現がどうか知りませんけれども、やはり生々流転の世の中でありますし、経済情勢も動くことでありますし、その後における状況等を勘案して、やはりこの際は事法の持っている銀行株も機構で買えるようにすることも適当じゃないかというふうになったわけなんでありまして、一遍決めたから絶対にそいつを変えてはならぬということではないというふうに思っておりますけれども。
海江田委員 議論がなくて初めて議論が起きたのならば、それも一つの、大いに議論する価値があるんですが、一たん議論をして、そしてそれは退けられた考え方ですから。
 先ほど増原委員からも、与党提案に対して大変厳しい質問があったと思うわけですけれども、増原委員も去年の秋、十一月ぐらいからもう当委員会に所属をしておりまして、こういう議論をつぶさにやはり聞いて、御自身も議論に参加をしているわけですよね。ですから、その意味において、もし本当に、生々流転とかいろいろおっしゃいましたけれども、それならば、去年の十一月でございますから、十一月の十九日でございますから、委員会が開かれまして議論しましたのは。そこから六カ月の間にどれだけドラスチックな変化があったのかということについて、どうしてもこうだからということであるのなら、それはやはりお聞かせをいただきたいわけです。
 それからもう一つ、不均衡、不均衡というふうにおっしゃいますけれども、これは論議が一回断絶されているわけですから、もし不均衡というのであれば、事業法人に対する金融機関の株を買っちゃいかぬとかいう制限法律をつくって、そして、ではそれを今度は放出するためにどういうような買い取りをつくればいいかとかいうことになれば、これはその意味では均衡ということが成り立つのでありまして、ここが全く急激に不均衡という言葉が通る、それは理屈的にいきまして通らない話だと思うんです。
 二つ今お尋ねをしましたが、どういうふうにこの六カ月の間に変わってきたのか、特に大きな変化があったのか。それからもう一つは、不均衡というけれども、本当に不均衡だとお考えになるのなら、やはり同じようなこの論理立ての法律をつくっていただいて、それでおやりになった方がいいんじゃないですか。
相沢議員 あの当時から見ますと、先生も御案内のように、非常に株式市場も低迷をして、一万円を割るかというようなところまで来たわけですね。特に、先ほどもお話がありましたように、銀行株に関しては一般株の値下がりよりもひどい値下がりを示しておる。これには無論、そういう需給関係以外に、銀行の経営自体に対する評価の問題等々があると思うんです。しかし、この制度をつくったのは、そもそもやはり銀行が価格変動の激しい株をできるだけ持たないようにという趣旨でこの制度をつくることにしたわけなんですね。ですから、そういう意味で、銀行の経営、資本の安定というものを図るという考え方の線上に、今回の事業法人の持っている銀行株も買うということも考えられたわけなんであります。
 どれだけ半年の間に変わったかと言われると、具体的な問題としては株価のことが挙げられます。特に銀行株の下落のことが挙げられると思いますが、やはりその間の情勢を我々見まして、あのときに議論はあったことであるけれども、議論があって結局それは取り上げられなかったけれども、やはりそれは再び取り上げる必要があるんじゃないかというふうに判断したわけなんであります。
海江田委員 今、相沢提出者は御自身の口からお話がありましたけれども、やはり中長期的に見たら、銀行株が落ちたということでございますが、これはやはり銀行の収益性を上げていく、資本の収益率をよくしていく、あるいはROEを高めていくとか、やはりそこにしかないわけですよね。需給というのは、あくまでも、本当にごく短期的に見ればそれは需給ということも株価の大きな要因になるかもしれないけれども、中長期的に見ればやはりそこのところなんですよ。だから、銀行の収益率を上げていくことに例えばこの法案が資するというのならば、それは若干議論してもいいかもしれませんけれども、それは先ほど来、午前中のお話でもそんな話は全然出ていないんですね、需給だ、需給だということを言っているわけですから。
 この法案が、銀行の収益性を上げていく、銀行のROEを高めていくということに役立ちますか、どうですか。何か役立つ点があったらそれをお聞かせください。
金子(一)議員 基本的にはありません。
 中長期的には、まさに海江田先生が御指摘のとおり、私も午前中そういう答弁をさせていただいたわけでありますけれども、あくまでも中長期的には、セーフティーネットでありますから、市場に対しても中立になってまいります。短期的には、先ほどもまさに海江田先生が御指摘いただいたような、効果としては持ってくるという、それがまさにセーフティーネットだと思っておりますので、銀行のいわば、そもそも収益構造を強めていく、体質を強めていくというものをこの機構に期待するということは、私たちは考えておりません。それはやはり別の、銀行自身のいろいろな諸政策、あるいは政府の諸施策で対応していくべきものと割り切っております。
海江田委員 ないというお答えですが、ではそれなら、むしろ銀行自身の収益性を高めていく努力に対して足を引っ張るようなことになりはしませんか、どうですか。どう考えてもこれはなるでしょうね。(金子(一)議員「質問の趣旨がよくわからない。足を引っ張るというのは」と呼ぶ)
 収益性を高めていくことにはならないということは今お答えがありましたけれども、ではそれなら、翻って、こういう買い取り機構が銀行の株を買うということによって、株価がある程度、セーフティーネットという言葉を使いましたけれども、安定をしていくわけですよ。そうすることによって、銀行自身が自分自身の努力でもって、いろいろな努力がありますけれども、収益性を高めていこうということに対してブレーキになりはしませんかということです。当然のことだと思いますが。
金子(一)議員 保有機構は最長でも十年でありますし、しかも、いずれマーケットに、何遍も申しておりますとおり、買い上げられたものについてはいずれ市場に還流されるわけでありますから、むしろそれまでの間に銀行が自身の努力によって収益構造をつくり上げていかなければもっとひどいことになるという意味では、むしろそういう意味でいえば、銀行の収益をスティミュレートするというんでしょうか、やりなさいよという、ある意味、そういう意味でのむしろ効果こそあれ、足を引っ張るということにはならないと思うんですけれども、海江田委員がほかに足を引っ張る……(海江田委員「ブレーキをかける」と呼ぶ)ブレーキをかける、つまり、これは買われていることによっていわばモラルハザードとかが起きてくるとか、何かそれでもって手を抜いてしまうということにはならないと思っております。いずれ、すぐにマーケットに出てきますから、そんな手を抜いていたらあっという間にどんとマーケットは、見ますので、その銀行の構造につきまして。ということだと思っております。
海江田委員 全く矛盾をしているお話でありまして、これはマーケットじゃないんですよ、マーケットじゃないです。マーケットからのシェルターなんですよ、退避ごうなんですよ。そこの中での話でしょう。だからマーケットのことで、マーケットがまさにそういう力を持っているわけですから、それだったらマーケットにお任せになればいいんじゃないですか。
 足を引っ張るというのは確かにちょっと文学的な表現かもしれませんけれども、では、きちっと事実を挙げて、こういう形になって、こういう買い取り機構が銀行の株を買い取ることによって銀行がどういうふうに努力をしていって、この買い取ることと密接に関連をさせて、どういうふうに収益性を高めていく努力をしていくことにつながるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
相沢議員 直接的なお答えにならぬかもしれませんけれども、御案内のとおり、やはり所有株が含み損を出せば、当然その四五%ですから自己資本を減損するわけですね。ですから、BIS規制からいいますと、当然にそれは貸し出しの抑制につながってくる。銀行の収益というのは結局貸し出しの量にもよるわけですから、ですから、ちょっと回り回ったあれかもしれませんが、資本が欠損してくるということについてはやはり銀行の収益と無関係ではないというふうに思っていますけれども、これでお答えになりませんか。
海江田委員 それはあれじゃないですか、銀行が事業法人の株を所有することの意味合いでしょう。そうでしょう。だから、それはもう片づいている話なんですよ。
 そうじゃなくて、もうわかっていながらああいう答弁をされているんだろうと思いますけれども、そうじゃなくて、事業法人が持っている銀行の株をこういう買い取り機関が買うことが、それが何か金融機関の資本の効率を高めていくような努力に後押しをすることになりますかというお尋ねをしたら、それはならないということを先ほど金子提出者はお答えになったわけですよ。
 では、全く中立かというとそうではなくて、十年というお話もありましたけれども、むしろその間は、買い取り機構が銀行の株を買ってくれるんだから、その意味では株価が安定をするからということで、安心しちゃうじゃないですか。私はそう思うんです。何かそれが全く違うんだというふうなことであれば、それは反論をいただきたい。
相沢議員 金子委員が関係ないと申し上げたのは、直接的なあれはない、こういう意味だと思うんですね。
 ただ、実際問題として、まさにシェルターという言葉を柳澤大臣が使われたわけですけれども、今回、事法の持っている銀行の株も機構で買えるようにするということにつきましては、持ち合いになっている銀行株を事法が一時に放出をする、殊に多量に放出するというようなことになれば、やはりそれは当然に株式市場に対して影響を及ぼす、特に銀行株の価格を下げるということになってくる。銀行の株価を下げるということになれば、さっき私が申し上げたような因果関係で、それがまた貸し出しの抑制にもなってくる、それが収益の減にもなってくる。私は、そういうような因果関係は当然あろうかというふうに思っています。
海江田委員 それは、風が吹けばおけ屋がもうかる式のへ理屈でございまして、この場合は当てはまらないわけです。
 先ほど柳澤大臣が確認をしましたけれども、この議論、銀行の株式保有の議論とそれから銀行の株を買い取り機構に買い取らせるというところは、一回この議論を遮断したんだということは、金融審議会金融分科会第二部会の平成十三年六月二十六日の銀行の株式保有に関する報告の中でも、はっきりと書いておるんですよ。
 「近年、銀行は株式売却を進めているものの、過去の売却額と株価動向との間の相関関係は明確ではない」、需給だけじゃないですよということをまず言っているわけですよ。「しかし、銀行の株式保有制限の導入に当っては、保有制限を受けた銀行による株式売却が株式市場にどういうインパクトを与えるかという点をも考慮する必要がある」というところで、本来的に需給じゃないけれども、まあ少しは、短期的に見れば考えなきゃいけないかなと。「ただ、この場合でも、銀行保有株式取得機構による買取りは、株式市場に歪みをもたらさないよう、株式市場へのインパクトという点からやむを得ない場合だけに留めるべきであろう」という、やはり自己規制したといいますか、これは禁欲的な態度がそこにあるわけですよ。
 だから、無制限に広げていくんじゃなくて、やむを得ないけれども一時的なインパクトを吸収する意味で、だからセーフティーネットというのはその意味で、あるいはシェルターと言えばいいのか、そういう考え方が成り立つんですよ。だけれども、それ以上に広げて株式市場にゆがみをもたらさないよう、やむを得ない場合だけにとどめるべきであるということが、はっきり書かれているわけですよ。
 先ほど、提出者のどなたか、金融制度審議会に諮っておったら時間がかかるとかおっしゃいましたけれども、時間がかかる話じゃないですよ。退けられているんですよ、そういう考え方は。どうですか、時間がかかると言いましたけれども。どなたでしたっけ、ちょっと忘れましたけれども。お答えください。
石井(啓)議員 当初といいますか、平成十三年六月の金融審議会ではそういうお考えだったんだと思いますけれども、一時的な影響にとどめるということであったわけでありますが、私どもは、実際にこの機構を運営してみて、やはり、持ち株解消という動きの中で、事業法人が持っている銀行株も相当売られているということも踏まえまして、保有制限をかけた二次的影響である事業法人の銀行株へも対応すべきであるという考え方に立ったところでございます。
海江田委員 では、これは柳澤大臣にお尋ねをします。この報告を受けられたのは柳澤大臣ですから。
 これは、先ほど私は禁欲的という言葉を使いましたけれども、むやみに市場をゆがめちゃいけないよ、やむを得ない場合だけにとどめるべきであるということは、私の理解のようなことで、この買い取りを無制限に広げちゃいかぬよ、無制限どころか、これ以上拡大してもらっちゃ困るよ、せいぜい金融機関が持っている事業法人の株だけだよというふうに解釈をするんですが、それでいいんですか、どうですか。違っていますか。
柳澤国務大臣 それは数量的なことを恐らく言っているんであって、どこに保有されている株かということは、端的に言えば、論ずるまでもないこととして議論が展開されているんだというふうに今のくだりは読むべきだ、このように私は思っております。
 その上で、余分なことのようでございますけれども、そのときは保有制限をかけるということとの論理の一貫性というものが考えられていたということでございまして、今回の御提案というのは、そのよって来る経済的な実態に着目して、そのことを、つまり閣法で決められたことをも実質的により円滑にするということのために、セーフティーネットとしてこういう措置をとっておこう、こういう御提案だと私は受けとめさせていただいているということは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
海江田委員 思想が全然違うと先ほどおっしゃったばかりじゃないですか。思想が違うものを一つの法律の中に入れようなんというのは無理がある話でありまして、それだったらまた別の法律を出し直しをすればいいんですよ、この銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案じゃなくてね。全く違うものなんですから。だから、そういうこともある。
 それから、あともう一つは、今までは金融機関が持っている事業法人ですから、一部上場だけでも一千四百ぐらいあるわけですよ、事業法人の数が。だけれども、やはり今度の場合は、銀行の株ということになれば、幾つですか、わっと数えてみたら七十ぐらいですよ。しかも、大手の銀行というのは十幾つですよ。その十幾つの株を、その意味では買い取り機構が買うよということになるわけですから。
 そうなると、例えばインサイダーの問題だって、今までは、個別の銘柄を幾らで買ったとか、それからそれをいつごろ売るかとか、そういうような情報が漏れちゃいかぬと。それについては、委員にしっかりとした守秘義務なんかも課して、そういうことのないようにするよということですが、例えば、当委員会でこういう議論がされていますと、議員提案があって。これが、ではいつごろ国会を通過しそうだなんというような話を、例えばここにいるだれかがそういう株を売ったり買ったりしている人に話をして、そうなのか、ではいつごろにその銀行の株の保有の法案が通るのかと。そうなれば、場合によってはもうかるんじゃないかと思って買う人がいたら、その人に細かな国会の中の審議の過程を漏らして、それで、これで買いなさいとかいって勧めて、そうしたらこれはインサイダーになるんですか、ならないんですか、そういうような情報を漏らしたといって。どうですか、これは。証券監視委員会でもよろしゅうございますが。
新原政府参考人 お答え申し上げます。
 国会で御議論されていることでございますので、インサイダーの対象にはならないと承知しております。
海江田委員 では、国会で今こういう銀行の買い取りのことをやっています、それで、これがいつごろ法案が成立をしそうだからとか、これを買ったらどうですかということを言っても、全然構わないんですか。
新原政府参考人 国会での御議論であれば、問題ないと承知しております。
海江田委員 ただ、これはちょっと釈然としないんですね。
 では、ちょっと別な角度から聞きますが、本当にいいんだったら、国会で議論されたことなら、そのことを材料に株を売ったり買ったりしても、全然これはならないんですか。
新原政府参考人 お答え申し上げます。
 インサイダー取引につきましては、法律で重要事項が列挙されておりますので、その対象にならない限り問題にならないと承知しております。
海江田委員 インサイダーそのものにならなくても、やはり本当に銘柄が限定をされてしまって、これは一つ二つじゃないですけれども、先ほどもお話をしましたけれども、事業法人の株なら一千幾つあるからどれかわからないわけですけれども、これが銀行の株だということになれば、目ざとい人はそういうのを買うかもしれない。それで別にどうでもない、それならそれでいいということなら、それはそれでいいんですが、やはりそれは市場をゆがめるんです、市場の形成を。
 だから、そういうことも注意をしなければいけないので、この銀行の株だけを買うというのは、どう考えたってやはりおかしいんですよ。しかもそれが、先ほど来お話をしておりますように、銀行の資本効率を高めるとかいうことに少なくとも直接つながってはいかないわけですからね。
 提出者は一回これを引っ込めて、それで、もうちょっとしっかりした法案を出し直すつもりはありませんかね。これでいいんですか、本当にこんなものをつくって。
相沢議員 今の御意見については、私ども、昨年の、この仕掛けといいますか、機構をつくるときに議論もあったということも再々申し上げているところであります。
 でありますので、そういうこともありまして、その後、株価の低迷している、特に非常に落ちている状況も考えて、もう少し全面的な株価対策というものも考える必要があるんじゃないか、デフレ対策の一環として考える必要があるんじゃないかということで、例えば、銀行よりも持っているところの生損保の株についても、この機構の買い取り対象に加えたらどうかという議論をしたこともございます。
 それからまた逆に、生損保が持っている事法の株を買うときに、事法の持っている生損保の、これは生保についてはほとんど株式会社はありませんけれども、損保等の株を買ったらどうかというような議論、つまり、言うなればもう少し広くそういう株価対策というものを考えたらどうかという議論も事実いたしました。これは新聞等にも出ております。また、私の党としては、デフレ対策の一環として、そのことも一つの検討項目に挙げておったわけであります。
 ただ、そうなりますと、それこそPKO的な色彩を帯びるような施策になってきて、望ましくないんじゃないか。したがって、この際やはり一番問題なのは、銀行の株価を安定させるということ、つまり、当初のこの法律の目的でありますけれども、それの延長線上にある施策に限定して考えたらどうだろうかということで、銀行が持っている事法の株を売ったときに、持ち合い関係にある事法の持っている銀行株をこれが買えるようにということで、いわばかなりそこのところは制限的に考えてやったわけでありますから、野方図にこれをまた広げてやるという考え方はありませんので、ですから、これはシェルターとしては、言うなれば、今考えられる段階ではごく自粛した姿だというふうに御理解賜れば幸いであります。
海江田委員 細かく聞いていると、言葉は悪いですけれどもかなりいいかげんな答弁をされていますね。申しわけないけれども、この銀行等の株式保有の制限の法律というのは、これは別に銀行株を安定させるための法律ではありませんよ。そうでしょう。
 今そういうようなことで、今度出た法律はそうかもしれませんけれども、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律が銀行株を安定化させるための法律ならば、まさにこの法律案と一筋につながっていくわけですよ。だけれども、そうじゃなくて、もともとの本法律案の趣旨でありますとか目的には、銀行の株価を安定するなんて一言も書いていないわけですよ。銀行の経営の健全化とか、そういうことが書かれているわけですからね、これは。だから、一回そこは切らなきゃいけないわけですよ。一回切れているんですよ。
 だから、時間も限られていますが、私がきょうの質問で一番言いたいのは、これをつなげて考えていくところに、どうしようもない断絶があるわけですから、それはもう無理ですよということを最前から申し上げているんで、だから、どうしても銀行株を安定させたいということであれば、銀行株の安定化に関する法律とかなんとかいうのをもう一回出し直しをすればいい話であって、それはもう論理的に破綻をしていますよということを最前申し上げているんですよ。
 だから、そこのところはしっかりと、もし私の考え方が違っているんだ、どうしてもつながっているんだというのであれば、それはそれで納得のいくような説明をしていただければいいので、ちょっと答弁がラフ過ぎますね。
相沢議員 最初の、今、現行法についての目的に、銀行の株の安定と言いましたのは、私の言い間違いであります。銀行の経営の安定、あなたのおっしゃるとおりなんです。
海江田委員 だから、そうなってくると、銀行の経営の安定と銀行の株価の安定というのは、先ほどお話をした、風が吹けばおけ屋がもうかる方式の論理展開でいけばつながっていきますけれども、そこはやはり株式市場をゆがめるという懸念もこれあり、一回断絶しなければいけませんねというのが、実は当委員会の、あるいは立法の、政府の側の、金融庁の側の、あるいは金融審議会なりの一つの結論であるということは、やはり踏まえていただかないと、これは。だから、先ほど与党の委員からもあのような質問が出るんですよ。どうですか。
相沢議員 先ほどの答弁の繰り返しになるかもしれませんけれども、銀行が持っている事法の株を放出しなきゃならない、限度がありますから。それを一般市場にいろいろな形で出すことによって銀行の経営に影響を及ぼすということが一つ。
 それからもう一つは、やはり銀行が事法の株を放出するときに、持ち合い関係にあるものが多いですから、事法が銀行の株を出さざるを得ない。そのときに、これについてはそういうシェルターの仕組みがない。
 そうすると、一般市場に特に多量にまとまった株が出るおそれもあるということですから、それはおっしゃるとおり、全体として、銀行の株の価格の安定が主目的ではありませんけれども、やはり銀行の株価を安定させるということが当然その銀行の経営の安全性にも、安定にもなってくるということは否定できないだろうと思います。
海江田委員 同僚委員から、理屈にならぬという話ですが、本当に風が吹けばおけ屋がもうかる方式の話であって、それでいけば、では真の銀行株の安定とは何なのか。ごく短期の、一週間だとか二、三日の間の株の安定ということであれば、それは需給関係も影響してきますけれども、本当の株の安定というのは何なんですかということでいえば、まさにROEを高めていくことしかないじゃないですか。それは先ほどもお認めになったわけでしょう。それが、やはり今度こういう形で買い取り機構が買い取りをするということは、むしろそういうROEを高めていく努力に対して、それをやらなくたって、先ほど十年という話も出ましたけれども、また失われた十年にして、トータルで失われた二十年にするのかもしれませんけれども、そういうことになりはしませんかということを私は言ったわけです。
 時間がないんですけれども、やはりそこを説明していただかないと、私らも、いずれはこの法案に対する賛否を、いつになるか、まだわかりませんけれども、明らかにしなきゃいけないわけですから、そのときにその理屈がわからなければ、反対のしようもないし、ましてや賛成のしようもないですよ、これは。だから、そこだけはやはり理屈のいくように説明してくださいよ、申しわけないけれども。
相沢議員 基本的には、海江田先生がおっしゃるように、銀行の経営自体の問題であるし、そして、銀行の経営について一般の人の信頼が得られるような努力をしなきゃならぬことは当然です。しかしながら、事やはり株価ということになってくれば、こういうような仕組みも、少なくともシェルターといいますか、補助的な手段、補完的な手段として役に立つことも否定できないし、そういうことでこれをやっているわけでありますから、あくまでも、これでもって銀行経営の安定とかなんとかというものを期せられるというふうに私どももちろん思っていません。
海江田委員 全く答えになっていません。さっきからの繰り返しですから。これはむしろ、本当にその間何にもしなくたっていいということにつながりはしないですか。そういうことになっちゃいますよ、一度シェルターに隠しておけば、その間は。しかもそれが十年だなんという話、最長の場合ですけれども十年だなんという話になれば、これはそういう努力をしないですよ。ただでさえもしないんだから。だから、本当に努力を促すような制度になっているのか。
 それから、これによって、努力を促す制度になっていないというお話があったけれども、私どもは、それではむしろそういう努力をしないで済むような制度になっているんじゃないんですかという問題提起をしているわけですから、これこれこういう理由で努力をしないで済むような制度にはなっていないんですよということだけでも、せめて教えてくださいよ。それだけだったらいいでしょう。
金子(一)議員 先ほど海江田議員に対して私が申し上げた、シェルターは短期的な話にすぎない、シェルターというのは。セーフティーネットといっても、十年といっても、これはやはりいつ出てくるかわかりません。十年間ずっとそのまま凍結されるということでは決してありません。それが一つ。
 もう一つは、同時にでありますけれども、この保有機構が保有する銀行株というのは、全体の市場も含めた当該銀行株、あるいは全体の銀行株の中での割合という意味でいえば、これは相対的に少ない。何十%とかはあえて申し上げませんけれども。
 そういう意味で、銀行の収益性、将来性がないとなれば、この保有が一時的に株を支えたとしても、シェルターになり得たとしても、相対的な動きの中で当該銀行の株というのは当然ですけれども動きますから、したがいまして、先ほどの質問で、あえて繰り返しになりますけれども、その間銀行がモラルハザードして、もう買ってもらったからいいやという、座していられるという状況ではない。
 したがって、足を引っ張ることもなければ、逆に反対のこともない……(海江田委員「そんなことはないでしょう」と呼ぶ)いや、それは先生が先ほど足を引っ張ることになるんだろうとあえて御質問があったから申し上げましたけれども、一方で支えるという要因も、短期的にはあり得ても、中長期的には市場に対しては中立だと思っておりますので、そういう意味でセーフティーネットというのは意味があるんだというふうに我々は理解しております。
海江田委員 ちょっとこの問題だけでこんなに長くやるつもりはなかったんですが、ただ、きちっと納得のできる議論ができませんでしたので、これはぜひまた引き続き、これはもうしようがないもの、やらせてもらうしか。もう一回でも二回でもやらせてもらうしかありません。
 塩川大臣、せっかくお越しをいただきましたけれども、一つだけ。大臣は減税を、減税というか税制改正を、まず最初は減税だよ、減税先行だよというお話があったわけですが、最近になって、いや減税先行ではない、これはやはりトータルで増減税をあわせたニュートラルなものにしなければいけないというような発言もあるようでございますが、これから税制改正、抜本的な税制改革に取り組む際の基本的なスタンスですね、まず先行するのは減税だというふうに今でもお考えですか。
塩川国務大臣 その議論は政府税調の中でも確実な議論としてまだ定着しておりませんし、また、経済財政諮問会議におきましても、でき得れば減税先行でやりたいという意向の、意見の議員もおられます。おられますけれども、大勢といたしましては、減税先行をあえてするんではなくして、歳出削減の財源の中において減税を考えていけという中立的な意見も多いということは言えると思っております。まだこれからもうしばらくこの議論は続くんではないかと思っております。
 ついては、私としては、できるだけ有効な減税で、対策で、措置であるならば、実行していきたいと思っております。
海江田委員 持ち時間がきょうの分は過ぎましたので、これにて終わらせていただきますが、やはりもう少し、本当にぜひしっかりとした答弁をお願いしたいと思います。
 以上です。
坂本委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 まず、法案に先立って、法案自体、原案自体は金融システム、金融機関の健全性という点から立案されていたということですので、金融システムということも含めて、提案者のお三人さん、皆さん各党の経済なり金融なりの政策の責任者というお立場でもおありでしょうから、お尋ねをしたいのは、来年度からのペイオフの全面解禁ということについて、各党のお考えをお聞かせください。
相沢議員 御案内のように、ペイオフに関しましては、当初予定よりも若干延期されまして、定期預金につきましてはことしの三月末までですね。来年の三月末まで普通預金、当座預金等決済性預金は認められておりますけれども、それから先はペイオフになるということになっています。
 そこで、来年の三月の普通預金等につきましてどうするかという御質問だろうと思うんです、どういう意見かという御質問だろうと思うんですが、これは私どもも、デフレ対策特命委員会とか、あるいは金融調査会とか、党内においての検討をいろいろとしております。どうも今のような情勢のもとにおいて全面的なペイオフを解禁するとすると、かなり特に中小の金融機関から大幅な資金シフトというものが起きる、あるいは、風評被害等がこれに絡まって金融機関の倒産を招くこともあるんじゃなかろうか、そのことがまた中小企業に対していろいろな面で大きな影響を与えるおそれがあるんじゃないかということでありますので、これを簡単に予定どおりにやるということについてはいろいろ問題点があるということで、今慎重に議論をしているという段階だろうと思います。
石井(啓)議員 私ども公明党といたしましても、ペイオフ全面解禁については議論を始めたところでございまして、まだ意見集約ができている状況ではございません。
 したがって、これから申し上げますことはあくまでも個人的な見解ということでお聞きいただきたいと思いますけれども、まず、当座預金、普通預金等の決済性預金の解禁を一年間ずらしたのはなぜかということは、これが企業や個人の決済に利用されるということで、金融機関の破綻によって決済に支障が生じるということになると、これは経済に大変な影響を与えるということから、そういう不安といいますか懸念が解消できるように、例えば、金融機関の破綻処理を速やかにできるようにする、あるいは他の決済手段が民間で開発できるような猶予を与えるという意味から、一年間ずらされているというふうに認識をしております。
 また、ペイオフ解禁を行うに当たっては、やはり金融システムに不安がないということが前提でございますので、特に今、地域金融機関について若干の、いろいろなことが言われておりますから、そういった状況が払拭されるのかどうか、そういうペイオフ解禁に至る前提条件がきちんと満たされるのかどうか、そこら辺はしっかりと冷静に判断する必要があるだろうというふうに考えております。
小池議員 決済性預金、全面解禁はどのようにするかという御質問でございますが、保守党では、各マスコミ等々でそれぞれが発言もいたしているところでございます。ただ、党としての取りまとめはこれからかかるところでございます。
 認識から申し上げるならば、不良債権の処理、そして金融業界としての再編、さらに強化ということに向かっていかなければならない。と同時に、各地域を含めての経済情勢、景気がどのようになっているか。これは極めて総合的に見ていくことによって答えが出てくるのではないかと考えております。各分野での情報等々をとりながら、これから総合的な取りまとめに入るところでございます。
中塚委員 この今の法案についてもそうなんですが、午前中からずっと質疑を聞いていても、需給関係の問題等に多くお触れになる。株価のために株価の話をしてもしようがないのと同じで、ペイオフのためになかなかペイオフの話だけしていてもしようがない。
 つまり、こういう経済状況でペイオフ解禁するということについて懸念をお持ちの意見が多かったように思いますけれども、確かに、このままの経済状況で解禁するということについても無責任であるならば、解禁というのが決まっていながら経済政策の下支え等何にもしないというのも、極めて無責任な話だろうというふうに思います。
 次に、法案の方に移りますけれども、そもそもこの原案ですが、原案については緊急経済対策というのがあって、そのときには株価維持策というふうな意味合いが非常に強かったわけですけれども、その後の検討過程で、だんだん機構創設というものが構造改革の一部というふうな位置づけに変わってきた。しかし、それでもやはり私は、これは構造改革でも何でもないというふうに思いますし、公的資金を使って株価対策なり、また金融機関への利益供与をするということでしかないというふうに思っていました。
 また、副作用という点については、金融機関への公的資金導入に続いて一般企業にまで不完全なコーポレートガバナンスの構造を持ち込む。特に今回、事業会社の持つ銀行株まで買い取るということになっているわけですけれども、そういう構造改革でもなければ株価対策にもならないということについて、お伺いをしていきたいというふうに思います。
 日本の株式市場に限らず資本市場全体についての問題点というのは、やはり政治が余りにも介入し過ぎることだと思うんですね。そういうふうな後進性というものが、時々、外資系なんかに利益を上げさせるような温床にもなっている。PKOということも言われ続けているわけです。もう十年近くそういうふうな相場操縦についてのいろいろなことが言われているわけですし、国が市場に関与するというのは、大変に危機的な状況であるならばそれは別だと思いますけれども、それ以外のときに、国民の方にリスクを転嫁してまでこういうふうに、それも直接的に市場に介入をするというふうなやり方は、これは絶対避けるべきだと思うんですね。
 特に、持ち株解消ということについて申し上げれば、これもかねてより、前から持ち株解消ということ自体がよくないということはわかり切っていた話ですし、持っている株の時価評価ということだって、始まるというのはわかり切っていた話なのに、ずっと持ち株解消をやってこなかったということが背景にあるわけで、それを、やってこなかったものを急に慌てて、じゃ、しようがない、国が買ってやろうというふうなことでは、構造改革でも何でもないというふうに言わざるを得ない。
 金融システム安定化策といっても、それも聞こえはいいんですけれども、結局は銀行救済策なんだろうし、それに今回はおまけがついて、事法の持っている株まで買い取るということだと思うんですが、提案者、いかがでしょうか。
小池議員 まず、原案のところでございますが、御指摘のように、緊急経済対策、骨太の基本方針ということなどを通じて繰り返し指摘させていただいたことがベースになりまして、銀行等、相当程度の株式を保有しているということから、株価の変動によって銀行等の財務面の健全性に影響を与える、ひいては銀行等に対する信認、金融システムの安定性に影響を与えかねないといったことから、銀行等の株式保有を制限して、適正な規模に縮減していくということからまずスタートをしたわけでございます。
 そして、この株式保有制限の導入に伴う銀行等の株式の処分が円滑に進められるように、市場売却を補完するセーフティーネットとして、まず銀行等保有株式取得機構の設立がぜひとも必要ということで、まず原案をつくらせていただいた。そして、持ち株でということは、銀行等が持つ部分と事業法人等が持つ部分と、まさに持ち株であるから、これまで、先ほど不均衡という言葉を使いましたが、あえてかえるならば非対称ということで、このたび受け皿の着目点を変えて、今回の改正案を出させていただいているところでございます。
 後半の部分の御意見はよく承りたいと思いますけれども、多分、御質問の一番のポイントは、コーポレートガバナンスが失われるんじゃないかという御指摘なのではないかと思います。その意味では、今回、株式持ち合い解消の動きに対応できるように改正案を出しているわけでございますけれども、これまでの銀行と事業会社との間の株式持ち合い構造の解消をこれによって円滑に進展させるということで、むしろ私どもは、最終的にはコーポレートガバナンスの強化に資するというふうに考えておりまして、そこは若干見解の相違があるというふうに思います。
 と申しますのも、機構が株式を保有する間でも、その管理、そして議決権の行使、これは信託銀行または投資顧問業に委託することとなっておりまして、コーポレートガバナンスという今の御指摘の観点からは問題があるというふうに私どもは考えておりません。
中塚委員 まず、その原案について伺いますけれども、そもそも、市場で売れば価格下落が避けられない株式というものを、市場メカニズムにゆだねた場合よりも高い値段で買うということなわけですね。それはまず原案は銀行からということになるわけですけれども。ということは、その差額分が贈与されるということになるわけですね。
 それで、資本注入の場合には議決権がある。銀行に努力を迫って、注入した資金の回収等を確保するという手段だってとれるわけですけれども、株式買い取りの場合には、これは単にお金を上げるだけということになってしまって、その上げたお金の回収の成否というのは、その株式を発行している会社の努力だけということになるわけです。
 そういうことになると、汗をかかないで痛みを取ってもらえるということ、それがまず原案の買い取り機構の問題点だというふうに思うんですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 今、中塚委員の方から、何か時価よりも高くに買ってもらえると言わんばかりのお話がございましたが、それはそうではないことは既に御案内のとおりでございます。
 そして、しかる後、買った買い取り機構が何らその発行体に対して物を言わぬ、物言わぬ株主におさまってしまうのではないか。これは、先ほど小池委員がまさしく言われたように、そういうコーポレートガバナンスが緩むような、物言わぬ立場には立たない、物を言うんだ、こういう仕組みになっておりますので、この点もここで確認をしておきたい、このように存じます。
中塚委員 いや、時価より高く買うなんて言っていませんよ。市場で売れば下落が避けられない株を買うわけでしょう。市場で売れば混乱するかもわからないから機構が買ってあげるわけですね。だから、市場で売れば価格下落するかもしれないものを買ってあげるということで、やはりその差額は贈与になるんじゃないですかというお話をしているわけです。
 今回、それを事業会社にまで要は差額分を贈与するという仕組みなんですけれども、これは本当にもうモラルハザードもきわまったというふうにしか言うことない、私はそういうふうに思いますが、これだと結局、持ち合いをしていた方が得だったということになるんじゃないですか。
石井(啓)議員 ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったんですけれども、持ち合っていた方がだれにとって得なんでございましょうか。済みません、補足してちょっとお聞きします。
中塚委員 持ち合っていた方が銀行にとっても事業会社にとっても得だったということになるんじゃないですか。
石井(啓)議員 それは、そもそも出発点が、銀行に対して保有株制限をかけたというところから出発しているわけですから、銀行はいやが応にもティア1以上の保有株は売却しなきゃいけない、そこから派生していることですから、いいか悪いかという議論ではないんです、そこは。得か損かという議論ではなくて、ティア1以上の株式はこれは売却しなきゃいけない、そのときの影響をセーフティーネットとしてカバーしているということでございます。
中塚委員 いや、けれども、それなら別に市場に売ったっていいわけですね。ゆっくりと市場に売ればいいわけで、機構が買い取るということになれば、その差額は贈与することになるんじゃないですかと言っているんです。
石井(啓)議員 それはゆっくり買い取れればいいんですけれども、平成十六年九月までという時限を区切って銀行に制限をかけているわけですから、その決められた期限の中で大量の株式を処分させられるわけですね、銀行からとってみれば。そういうときの対応としているわけでございます。
中塚委員 不測の事態ということを前提にこの機構が創設されたわけですけれども、ゆっくりとマーケットに売ったって、私は売れると思いますよ。そのことはまた後で触れますが。
 あと、そういうふうな銀行なり事業会社なり、両方にとって得だというお話をしましたが、今度はその関連で株主ということについて申し上げれば、買い上げ対象になる銘柄の株主というのは、価格支持の恩恵を受けるわけですね。それ以外の株主はそうではないわけですが、ここは不公平ではないんでしょうか。
石井(啓)議員 これは、そもそも株価を支えるためだという前提のもとに御質問をされていると思うんですけれども、全くそういう効果がないとは否定いたしませんけれども、あくまでも、銀行に対して持ち株の保有制限をかける、そういうことに伴う影響をカバーするためのセーフティーネットということでございますから、公平、不公平という議論ではないというふうに思っています。
中塚委員 財務大臣、お越しいただいていますが、今御提案者と議論をしていまして、やはり株価というのは、そもそも経済のファンダメンタルズと企業業績というものを反映して決まっていかなきゃいかぬというふうに思うんですね。それで株価が形成されるのがマーケットであって、それが大原則なわけですけれども、そういうふうなものをゆがめてしまって、しかも、それも政府保証つきのお金で買うわけですね。
 財政再建ということで一生懸命にならなきゃいけないときに、買い取った株が下がったり、あるいは買い取った株を発行している会社がつぶれたりすることもあって穴があく、財政負担になるリスクというものだってあるわけなんですが、そこまでして得るものというのは一体何なんでしょう。
塩川国務大臣 この制度は、決して市場原理を尊重する現在の資本主義社会からみたら余りいい制度じゃないとは私も思いますが、しかし……(発言する者あり)ちょっと待ちなさい、しかし、資本主義、自由主義社会を守ろうとするならば、場合によったらいろいろな手をやってきたんです。過去の歴史を見ましても、いろいろな行政的あるいは経済的措置をやってまいりました。
 今、構造改革をしようというときでございますので、いろいろな面で変化もございますから、特に資本関係について、今までの間接金融から直接金融に切りかえるとしたら、株式の問題はどうしても解決しなきゃならぬだろうと思います。
 そのときに、要するに保有株がどっと市場に流れるということになってきたら、多少の混乱は起こってくると思いますが、でございますから一時的な、要するに保有池ですね、分水池へちょっと分水して、保有池をつくっておいて、そこで一時プールしておいて、また本流へ流す、そういう制度を導入してもいいんじゃないかと私は思います。
 したがって、これが永久にこういう制度で株操作のために使うんだということであれば、これは非難されるべきだと思いますけれども、そうじゃなくて、やはり株式保有の相互の解消をしていこう、そういう目的のためにとる手段であると見るならば、私はこれも一つの非常に有効な手段だと思っております。
中塚委員 では次、柳澤金融担当大臣に伺いますが、金融機関の株式に保有制限をかけるというのは、確かにそれは構造改革なんだろうと思うんですね。大臣もそういうふうにおっしゃっていたと思うんですよ。やはり株価の変動で金融機関が影響を受けるというふうなことはあっちゃいけないわけで、そのこと自体は構造改革なんだろうというふうに思うんですね。
 また、持ち合い解消ということも私は構造改革だというふうに思っているんですね。その部分はいいんですが、この機構のところになると、本当にこんなので大丈夫なのか。
 まず、今申し上げた、株主にとっても、あるいは銀行にとっても、事業会社にとっても、公平不公平、有利不利が出てしまうんじゃないかというふうな思いもあって、その部分についてはもうはっきりと反対なんですけれども、今回のこの改正案、提案者から出ている一部改正、これでも、この案自体はやはり構造改革策だというふうにお考えですか。
柳澤国務大臣 もともとのスキーム、これは株式の保有制限とそれの実施を円滑ならしめるためのスキーム、こういうことで、私どもは、これを総体として構造改革のための施策というふうに申し上げてきたわけでございます。
 今回は、そこの、その実態が、銀行の保有株式の制限に係るわけですけれども、その制限に係るもののうち非常に多くの部分が持ち合いによって保有しているものだ、こういうことがあるわけでございます。したがって、保有株式のうち持ち合いの部分について、これを解消するものである場合にその処分を円滑ならしめる。そこのところでは、処分を円滑ならしめるという具体的な施策の目的というのは、全くこの前の、もとのスキームと同じということになっているわけであります。
 そういう意味で、株式の保有制限に係るもののうち持ち合い解消のための部分、それに見合っている部分については処分の円滑をするということは、全体としてこのスキームが円滑に動く、そういうことになるだろう。こういうふうに、私ちょっと今、法文の第一条の目的の部分を横目で見ながら以上申させていただいたわけですが、そういうふうに御理解いただければ、これは構造改革の一環というふうな位置づけができようかと思っているところでございます。
中塚委員 今、持ち合い解消というお話がありましたが、持ち合い解消の問題点というのは、やはり、メーンバンク制なり、あるいはコーポレートガバナンスが働きにくいということが問題なわけであって、それを解消するというときに、じゃ何でそれを機構が買うのかということなんですね。
 さっきから、信託銀行なりなんなりが議決権行使をするとかいうお話もありましたが、それにしたって、ちゃんとマーケットに売却をして個人の株主なりなんなりがそれをチェックしていくというのが本来の姿なわけであって、これは別に持ち合い解消ということには、機構がかわっちゃえばなり得ないというふうに私は思います。結局、今までのもたれ合いの構造をずっと温存していくということにしかならないし、また、金融機関がこの機構自体に出資をしているわけですから、その辺の透明性も私は確保できないというふうに思います。
 次、提案者に伺いますが、じゃ、この機構が創設されて、その際に、参考人招致をして参考人にいろいろ意見を聞きました。そのときに、どなたも、私どもから依頼したものではありませんというお話だったわけですね。今回、この一部改正案なんですが、一部改正案、これをだから、事法の持っている銀行株も買えるようにしてくれと、例えば経済界なりあるいは銀行業界からそういう要請というのはあったんですか。
七条議員 今、創設をするということの関係者の方からということでありましたけれども、もともと、先ほど来から柳澤大臣からも話がありましたように、現行法というのは、銀行がたくさんの保有株を持っている、それが健全化のためにティア1まで保有を制限するべきだ、こういう制限をするという観点の視野に立って現行法ができたものでございます。
 じゃ、いざそこで、どうしてこんなにたくさん銀行が保有株を持たなければいけないかという原因を突き詰めていきますと、これが一つ、持ち合いだ、持ち合い株の解消をしていくことが必要だ、こういうふうに考えてきて私たちは提案をしたわけでありますけれども、その持ち合い株の解消に伴う市場の混乱を回避することの備えがさらに必要ではないか。あるいは、それをセーフティーネットとしてさらに厚くしていくことが必要ではないか。あるいは、株式保有制限に伴います保有株式の処分を円滑に行うことができることになることから、銀行界としても評価をしていただいておると認識をするわけでありますし、さらに産業界にとっても、市場に流してこれを売ることもできますけれども、機構に対して銀行の株を売却することができるようになったという意味では、メリットがさらにふえた。したがいまして、銀行界もあるいは産業界も一定の評価を得ているものと認識をしておるわけでございます。
中塚委員 いや、評価じゃなくて、具体的に皆さんのところに、この法律改正をしてほしいというふうな要請なり依頼なりあったんですかというお話なんですけれども。
相沢議員 お答えします。
 もともと、銀行が持っている株を自己資本、ティア1まで減らすということ自身も、これは別に銀行が要請したわけでも何でもない。国の施策として、アメリカのグラス・スティーガル法では銀行が株を持たないようにということもありますけれども、一挙にそこまでいくわけにまいりませんが、やはり株価の変動が銀行の経営に及ぼす影響を考えると、逐次減らしていった方がいいだろう。これはむしろ国の金融行政としてそういう考え方を持ってやったわけなんであります、そもそも。その考え方の延長線上に我々はあるというふうに今回の法律も見ておりますから、先ほどの答弁で、銀行界も経済界もこれに対して歓迎しているという言葉はそのとおりだと思いますが、別にどこかから頼まれてどうこうしたというものではございません。
中塚委員 銀行の株式の保有制限を銀行が依頼したという話じゃないんですよ。そうじゃなくて、この機構が金融機関から株を買う、あるいは事業会社から銀行株を買う、今回の改正はそういうことですよね、ということについて、ぜひともそういうふうにしてくれという話が金融機関なりなんなりからあったんですかというお尋ねなんです。歓迎されているというふうにおっしゃるわけですけれども、私は、ぜひそれを、原案のときにも参考人招致をしたわけですから、今回もぜひとも関係者にお運びをいただいて、参考人質疑をしたい。
 委員長、ぜひ理事会の方で、この参考人質疑の件についてお取り計らいをよろしくお願いします。
坂本委員長 それでは、後ほど協議します。
中塚委員 では次に、結局、今回これで事業法人から銀行の株まで買うということになったわけですけれども、政府保証つきのお金で株を買うということになれば、それこそ何でもありになっていくわけで、もうモラルハザードもどんどんどんどんと広がっていくということになるわけですけれども、相沢提案者に伺いますが、これだと最終的には、銀行が持っているとかあるいは事業会社が持っているとか、そんなこと関係なしに、もうどんな株でも買えという結論になっちゃうんじゃないですか。
相沢議員 さっき御答弁いたしましたが、そういうような考え方もなかったわけじゃないけれども、そこまでいったんじゃ、これはまずい、PKOそのものになる。そこで、考え方をその点は極めて慎重にいたしまして、そして、また繰り返しになりますけれども、銀行の経営の安定ということを考えて、持ち株を自己資本、ティア1の範囲内におさめるということから、これに関連するところの対策としてこのことは考えられてきたわけでありますから、おっしゃるような考え方もないとは申しません、ないとは申しませんが、我々のとるところではない。
中塚委員 次に、柳澤大臣に伺いますけれども、今、需給関係の悪化ということを恐れる、不用意に市場が混乱することがないようにということで株を買うわけですね。ということは、やはり、そうではないと言っても価格維持的な政策になりますよね、どうしても。出れば冷えるものを、まず機構で買うわけですから。ということになりますと、将来の企業の価値が変化しないという前提に立つならば、現在の株価を高目に置いておく、高目に維持をしておくということは、これからの株式投資のリターンを低下させるんじゃないですか。
柳澤国務大臣 リターンというものを具体的にとるか、指標的にとるかでございますが、今委員が仰せられたのは、指標的にとって、例えばROAなりROEなりがどうなるか、こういうことかと思いますが、一株当たりの株価収益率というようなものは、株価が高くなれば、分母が高くなれば、分子が一定であるならば、その答えは小さくなる、こういう単純な算術の教えるところになります。
 ただし、リターンというものをもうちょっと具体的にとるならば、これはやはりもうそこに、先ほど来シェルターという言葉を使わせていただいておりますが、シェルターたる買い取り機構において、株主としての発言をすることによってコーポレートガバナンスを機能させていく、その結果、銀行の収益というものが向上することによって、やはり具体的なリターンというものはそこで向上するということが期待できるというふうに考えます。
中塚委員 そうやって、将来の利益を先食いしてまで今これをやるということの意味が、全然わからない、やる必要ないというふうに思います。
 午前中のときにもちょっと出ていましたけれども、昭和四十年代の証券不況の折に、買い上げ機構というものができて、それが株式を買い取ったわけですけれども、結局最終的には、この株というものは安定株主にはめ込まれることが多くて、今に至る持ち合いの強化というふうなものにもつながった、そういった経緯があるわけです。
 コーポレートガバナンスの話なんですけれども、機構が持つということよりも、やはり一般の株式市場に公開する。先ほど提案者の方からも、一般の人からの信頼と金融機関の経営の改善というもののドライビングフォースは何なのかということになれば、それはやはりマーケットにおける株の価値ということなわけですね。みずほなりUFJがシステム障害を起こしたというときでも、そういったことが株価に敏感に反応するから、何とかしなきゃいかぬと。当局からのプレッシャーやら何やらだけではなく、それが本来の市場原理だというふうに思うし、これが本当の産業の構造改革の推進力になるはずだと思うんですけれども、いかがでしょう。
小池議員 お答えいたします。
 推進力になることは事実でございますが、一方で、今回のこの取得機構、改正した取得機構というセーフティーネットがあることによって、経営者、事業者そして銀行等、どちらにとっても、この取得機構に必ず売らねばならないというわけではなくて、経営の選択肢としてのセーフティーネットとして存在するわけですから、もちろん任意ということでありますから、そこで経営のプレッシャー・プラス・セレクションということが出てくるのではないかと考えております。
 それからなお、この機構でございますけれども、機構が買い取った株式の議決権の行使ということも考えなければならないと思うんですけれども、これは、この機構の経済的利益の増大を目的とすることを求めております機構の運営委員会が策定した議決権行使の基本的な考え方に基づいて適切に行使をされるということで、この機構そのもののむしろ経営ですね、これは。そういったことも考えているところでございます。
中塚委員 適切にというふうな答弁でしたけれども、日本の民間の機関投資家といっても、機関投資家が議決権行使を行い始めたのも実は近年ですね。もう本当に一応やっていますというふうな形でしか始まっていないし、もっとその議決権行使がきちんと行われていれば、不良債権の問題だってここまで長くはならないはず。
 加えて、運用会社なりあるいは組織というのは、大体金融機関の子会社であったり一部門であったりするわけで、要は機構に出資している人たちということになるわけです。だから、そういう点でも、その機構がやはり安定株主ということで振る舞うことになる。安定株主として議決権行使をする、しないということについても、何もそれをこの機構がする必要はないわけで、ちゃんと市場に放出をした株を取得した人たちがマーケット原理に基づいてやればいいことだと思うんですが、いかがでしょうか。
小池議員 繰り返しになりますけれども、この取得機構の一種の経営といいますか、そこでやはり市場等を見ながら、一たんこの取得機構が受け取ったものを、またそこも株式を売買していくということでございまして、この法律の目的に沿った形での最終的な局面を迎えなければならないということから、議決権行使の基本的な考えに基づいて、この株式を信託された信託銀行が適切に行使をするということを想定させていただいております。
 ですからそこは、経営者、銀行なり事業法人の経営者が考えると同様に、この機構の運営委員会もきちっとそういう状況を見ながらの運営ということになっていくものと考えております。
中塚委員 それで、やはり原則、マーケットで消化するのが当然だというのは、それはちょっと私も調べた数字の根拠というのがあって、平成八年の末から十一年の末の三年間で、銀行の株式保有率というのは大体二・三%ぐらい減っているんですね。十一年度末の都銀が上場株式数の一三%持っているんですが、これが十兆円なり十一兆円が移ると、大体これが一三から一〇になるわけなんです。だから、三%という数字が、小さくはないけれどもそんなに劇的な数字というわけでもなく、きちんと計画的に売っていけば、そんなに市場にマイナスインパクトを与えないで消化することは絶対可能なはずなんですね。
 やはり株価は本当に企業経営のシグナルということで、間違った経営をすれば下がるし、すばらしい経営をすれば上がるということが本当に根本原則なわけですから、株価の下落を恐れてそのシグナルを汚すというのは、結局、日本に対する信認を失わせることになるということを申し上げまして、質問を終わります。
坂本委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後二時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 現在の提案されている法案の内容に入る前に、現行の銀行保有株式取得機構についてお聞きをしたいと思います。
 昨年秋の臨時国会で与党三党の賛成で法案が成立して、ことしの一月に発足をしたわけでありますが、現在の銀行等株式保有制限法の内容をまず確認をします。これは、特別勘定の政府保証枠は二兆円ということで、銀行業界からは設立時拠出金プラス買い取り価格の八%の売却時拠出金、それから、銀行のこの拠出金額を上回る損失が出た場合に国民負担が発生する、こういうふうに仕組みを理解してよろしいかどうか、まず確認をしたいと思います。柳澤大臣に。
柳澤国務大臣 大筋そのとおりでございます。
佐々木(憲)委員 我が党を初めとして野党各党は、銀行の保有株の買い取り、それから、その価格が下がった場合、なぜ国民に負担を求めなければならないのか、これが一番問題だったわけでありまして、株式買い取り機構の設立に野党は反対をしたわけでございます。
 これに対して政府は、極力国民負担につながらないようにする方策を盛り込んでいる、こういう答弁でありました。例えば、原口総務企画局長は昨年の十月二十六日の当委員会で、「国民負担に極力つながらないようにするということで、まず、買い取りは可能な限り国民負担につながらない、一般勘定と申しますか、そこで、ETFとか投資信託の組成あるいは自社株取得を目的としたそういう勘定を設けている。それから、政府保証を付したセーフティーネットとしての買い取り。これには政府保証をつけておりますが、これにつきましても、買い取りの対象株式を限定する。それから、買い取りの開始には運営委員会の議決を要する」こういうふうに答弁をしていたわけですね。
 柳澤大臣も私の本会議質問に対して同様の答弁をしておられますけれども、これは間違いありませんね。
柳澤国務大臣 大筋間違いございません。
佐々木(憲)委員 そこで、実績を確かめたいんですけれども、株式買い取り機構は、ことし一月三十日に発足して、既に半年の活動を行っております。本当にこの答弁どおり、国民負担に極力つながらない、そういう運営が行われてきたのかどうかということであります。
 まず、特別勘定の買い取り状況についてお聞きをしたいと思います。
 この間、株式買い取り機構は買い取り期間としてどのような期間設定をされたか、また株式を幾ら買い取ったか、この点についてお聞きをしたいと思います。
村田副大臣 機構でございますが、運営委員会を開きまして、その決定に基づきまして、二月十五日から四月二十六日までの期間に特別株式買い取りを行いまして、一千三百一億円の株式買い取りを行いました。その後に、運営委員会で新たに五月十七日から十一月一日までの特別株式買い取りを実施することを決定いたしまして、今買い取りの業務が行われているということでございますが、この買い取り実績につきましては、市場に不測の影響を及ぼすおそれもあるということで、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
 なお、一千三百一億円の株式買い取りを行うに当たりまして、買い取り時の拠出金として八%、百四億円の拠出を受けているということでございます。
佐々木(憲)委員 一月三十日に発足して、二月の十五日から四月二十六日まで、二カ月以上開いて買い取りを行った。その後、今度は五月になりますと、十七日から買い取りを再開して十一月一日までやる。事実上、この特別勘定というのは開きっ放しであります。現在も開いている。
 ですから、先ほど示したように、昨年秋の法案審議の中で金融庁は、買い取りの開始には運営委員会の議決を要するから国民負担の歯どめになるんだという答弁をされていたわけですけれども、これじゃ、議決をしたって何の歯どめにもならぬじゃありませんか。
村田副大臣 これはもとより、専門家が集まりましてその買い取り期間を決めているものでございまして、そういう意味では、買い取り期間についても慎重な考察がなされている、こういうふうに考えております。
佐々木(憲)委員 慎重に考察をして開きっ放し、これはもう全然いいかげんだと思うんですね。
 大体、運営委員会が発表した買い取り期間決定の発表文書というのがありまして、決定の理由としてこういうことを挙げているんです。会員の株式処分ニーズが引き続き高いこと、株式相場の本格的な回復の見きわめにはなお時間を要すると考えられること、こういう二点の理由を挙げておりますが、この議決が国民負担の歯どめになる、そういう発想は全くありませんし、現実に歯どめになっていないと思いますけれども、いかがでしょうか。
村田副大臣 国民負担の歯どめということももちろんあるわけでございますけれども、もとより、ニーズとか市場への影響とか、そういうことを予想して、また、現にある状態を認識してそうした期間を決定する、こういうふうに考えております。
佐々木(憲)委員 結局、銀行のニーズにこたえた、こういうことですね。これでは全く歯どめにも何にもならないわけで、銀行が、買ってほしい、はい、わかりました、こういう関係になっているわけですね。しかも、これは特別勘定で一千三百一億円ということですね。
 では、一般勘定では幾ら買われましたか。
村田副大臣 一般勘定の実績はございません。
佐々木(憲)委員 おかしいじゃありませんか。何で国民負担につながる特別勘定だけを使うんですか。柳澤大臣は、一般勘定が中心になると言ったんじゃありませんか。
 柳澤大臣は、例えば昨年十一月八日、参議院財政金融委員会で、「特別勘定よりも一般勘定の方が順番からいっても先に出てくる話でございまして、一般勘定を我々は大いに活用したい」「これを主に考えていきたい」こう答弁されているわけですね。
 それから、「保有制限というものを課そう、そして受け皿がその場合には必要だけれども、しかしそれはできる限り公的支援が必要でない一般勘定というような形で、ETFとかそういうものを使う形にしようと。しかし、それでもなお、そう言ってはなんですけれども、いろんな事情でうまく売却ができなかった銀行の最後のよりどころということも考えておかなければならないという形で」公的資金を用意した、こういうふうに答えているんですね。
 国民負担につながる特別勘定は最後の最後の手段である、最後のよりどころだ、最初に使うのは一般勘定だと。全く逆じゃないですか。最後のよりどころが最初のよりどころになっているんじゃないですか。これは全く逆立ちしていると思いませんか、大臣。大臣の答弁と違うんじゃありませんか。
柳澤国務大臣 銀行の保有株をどのように減額していくかということを当時考えておったわけですが、率直に言って、あの当時の新聞とかその他の報道でも、また、国会の論議でも多分お尋ねいただいて、柳澤大臣は本当は反対だったんだろう、こういうような話もあったように記憶しています。
 したがって、私はどういうことが――しかし、買い取り機構というものでやるということはもう決定されたわけです。そこで、何を考えたかといえば、これはETF等を使うということを考えるしかない、こういうことで、企画担当の事務方にそのことを命じて、現在のスキームができ上がっているということです。
 ただ、正直言って、このETFを活用してやるというのはかなり実はテクニカルなことでございまして、今の私もこの点、若干不満、かなり不満で、実績がないのはけしからぬということを事務方にも言っておりますが、事務方は今その取り組み方を検討しているんでという話になっているのが現状でございます。
 いずれにせよ、私は、ETFを現実に銀行の保有株でやったのは、実はこの買い取り機構と独立に東京三菱銀行がやったということは新聞報道等で承知しておりますけれども、こういうことにもっともっと積極的に取り組んでもらいたい、こういうふうに考えておりまして、私としても今後督励してまいりたい、このように申し上げます。
佐々木(憲)委員 つまり、大臣の御答弁とは違う実態になっているということを今事実上お認めになったわけでありますが、結局、公的資金で、つまり国民の税金で負担をするという方向ばかりが強まっているわけですよ、結果として。そういうことは最後の手段だと言いながら、最初にそれをやっているわけですよ。答弁と違うんです、現実が。そこのところを明確にしておきたいと思うんです。
 それからもう一つは、提案者にお聞きをします。
 銀行等保有株式制限法は、昨年秋の国会に政府が提出したわけですね、先ほども出ましたが。閣法なんですね。今回、与党三党の衆法で改正する。その根拠は、どうも先ほどの議論を聞いてもよくわからない。もう一度答えてください。
相沢議員 確かに、昨年提出して成立した現行法は閣法になっておりますが、その過程におきましては、当然我々与党とも十分な連絡をとりまして、最終的には閣法という形で提出をしたわけであります。
 その後、約半年になりますが、株式市場の動向、あるいはまた銀行の経営状況等を判断してまいりますと、今の法律によりますところの、銀行が事法の株を売った場合に、それを、言うなればその一部を引き受けるという形の機構になっていますけれども、それと持ち合い解消という形で、事法、事業法人が銀行株を売った場合には、この受け皿がない。そこで、やはり均衡をとって、その場合も機構で買えるようにした方がいいじゃないか、こういうことを、主としてこれは党側の議論から始まったという経緯がございます。
 そういうことでありますので、今回の改正については、我々与党の議員が提案者となって、議員立法で行った方が妥当だろうというふうに判断したわけであります。
佐々木(憲)委員 先ほども同じような答弁ですが、全く説明になっていないと思いますね。そんなことは最初から、昨年の議論の中でそういう議論もあって、バランスとか何とか、バランスの議論というのは成り立たないと思いますが、しかしそういう議論もあって、それは否定されたわけですよ。否定されて、銀行の保有株式の買い取りをやるということだけが決まったわけですね。我々は反対だけれども、しかしそれを決めたわけですよ。そのときには、事業会社保有の銀行株を買うということはやらないというふうに結論が出ていたわけですね。それを今度は覆すわけですね。
 だから、結局、一般紙にも書かれていますけれども、成立したばかりの法律を改正する話は政府側から持ち出しにくいと。そういう思惑があったが、自民党の方から出そうかということになった、ただそれだけの話だ。しかし、それは全く理屈が通らない話でありまして、説明には全然なっていないと思いますね、今の答弁では。
 柳澤大臣にお聞きしますが、現行法の立法趣旨で、現行法では、株式買い取り機構の買い取り対象から事業会社が保有する株式を除外しているわけですね。なぜ対象外としたのか、その理由をもう一度ここで説明していただきたいと思います。
柳澤国務大臣 これは御質問になられた前の委員の先生にもるる御説明させていただいておりますが、要は、銀行に対する株式の保有制限を課するということを実施した場合に、やはりそれを円滑に運ぶためにはある種のシェルターが必要である、こういう考え方で一貫させた結果、そのようになっているということでございます。
佐々木(憲)委員 つまり、一貫した考え方とおっしゃるのは、銀行が保有している株を制限するというものであるので、それに対応する法律として、その銀行保有の株を買うんだということであって、事業法人が持っているものを買うというのはこの法律の趣旨からは外れているから、その趣旨から外れているから対象にしていないんだ、こういうことですね、今の答弁では。
 これはもう何度も答弁をされているわけでありまして、ところが、今回のこの与党の提出法案では、スキームの中に入らない、あるいは想定されていない、そういう事業会社保有の銀行株を加える。全く否定されたものをいわば復活させているということになっているわけです。
 この与党提案の法案というのは、現行の法案の考え方、趣旨とは相入れないものだというふうに思いますが、大臣はいかがでしょうか。
柳澤国務大臣 これもまた先ほど御答弁したことの繰り返しになりますが、今回の改正法の第一条の書きっぷりを見ていただきますと非常に明瞭であるというふうに思います。
 要するに、この法律の目的は、施策としては何を実際やるんだというと、「銀行等による株式の処分の円滑を図り」、つまり株式の処分の円滑を図るということ。それはなぜか。それは制限の実施をするためである、こういうふうに書いてあるわけでございます。
 今回は、銀行等の株式の処分の円滑化を図るわけですが、その株式というのは、銀行以外のものが持っている株式のうち、銀行と相互にその発行する株式を保有する関係を解消するものである場合、つまり持ち合いの場合というふうに限定しているわけです。
 よく考えてみますと、そもそも、銀行に株式保有制限を課さなきゃならないほど銀行が巨額の株式を持つに至った実態的な背景というのは、やはり持ち合いなんです。そこで、今回は、その持ち合いの解消というものを円滑化するというところに焦点を当てて、やはりそれを円滑に行うためには、その相方、つまり銀行の持ち合いとそのカウンターパートになっている部分の株式の処分の円滑も図るということが、全体としてこの法律の趣旨を実現するという意味でも十分意義のあることである、こういう判断にお立ちになっているというふうに私は受け取っているわけでございます。
佐々木(憲)委員 半年前の答弁と全然違うじゃないですか。何も変化はなかったはずです。
 つまり、持ち合いという状況は半年前もありましたし、それを解消するといいながら、どういう答弁をされていたかというと、柳澤大臣は十月三十一日のこの委員会で、「持ち合い解消ということが実態としてあることは否定しませんけれども、すべからく今度の場合には、銀行の株式保有の制限というところに焦点を当てて、これをどう円滑に実現するかということでございますから、事業会社の持っている銀行株については、これがスキームの中に入らないというのは当然の帰結であった」と。当然の帰結として事業会社はスキームの中に入らない、持ち合い解消はもちろんやるんだけれども。
 この答弁と今の答弁では百八十度違うじゃないですか。入らないと言ったのを今度は入っても当然だ、全然違うんじゃないですか。
柳澤国務大臣 佐々木先生も今読んでくださったくだりですけれども、すべからく今度の場合には銀行の株式保有の制限というところに焦点を当ててと、私わざわざ言っているんです。今度は、この銀行の株式保有のうち、持ち合いの解消ということに焦点を当てているんです。ですからこれは、それを円滑化するという意味では非常に重要なこの制度のある種の補完である、こういうお考えに多分立っていらっしゃるんだろうと私は受けとめているのでございます。
佐々木(憲)委員 全然説明になっていないですよ。持ち合い解消ということは実態としてあることは否定しませんけれどもと、今の話の前のところでおっしゃっているんですから。持ち合い解消はあるが、しかしやるのは銀行保有の株式の買い取りである、事業会社は対象としておりません、スキームの中には入っておりませんと言ったんですよ。それが半年前のやつですね。今回は、スキームの中に入れようと。何でこれが一貫するんですか。
 入らないというのが基本思想で、持ち合い解消というのはあるが、しかしそれは、銀行の株式保有の面に限って買い取りはやるんだ、そういう答弁だったのに、与党の出てきたのは、全く百八十度違うものが出てきた。出てきたら今度は与党のそれを合理化する立場に立つ。全然入らないと言ったのが入るということになるわけですから、何の一貫性もないじゃないですか。全然だめですよ、そんな答弁は。
柳澤国務大臣 重ねて御答弁申し上げますが、よく読んでいただきたいと思います。
 すべからく今度の場合はかくかくしかじかのところに焦点を当ててという前提を私置いてお話ししているんです。ですから、まさに今回は別のところに焦点を当てれば別のことが付加されるということは、これは論理の当然の帰結でございます。趣旨は同じなんです。
佐々木(憲)委員 全然だめですよ、それは。答弁になっていないですよ、そんなの。
 だって、入らないという法律をつくっておきながら、入れないんだとわざわざ説明しておきながら……(柳澤国務大臣「今回は」と呼ぶ)今回だって同じ法律じゃないですか。この同じ法律じゃないですか。持ち合い解消も同じだし、全然状況は変わっていないにもかかわらず、中身を百八十度変える。全然違うんじゃないですか、この答弁。そんなものが何が一貫しているんですか。説明になっていない。
柳澤国務大臣 ですから、もうたびたびで大変恐縮には存じますけれども、今度の場合にはここに焦点を当てて考えておりますのでこのスキームの中には入らないという議論をしているんです。ですから、今度は別のところに焦点を当てれば、今度は入るという結論になるスキームも十分考え得るということは、この段階でもほぼ明確に、いわば裏の議論としてはあり得るという話を私はしておるというふうに、私の発言でございますけれども、そういうふうに解していただくということは十分可能ではないでしょうか、こういうことを申し上げているわけでございます。(佐々木(憲)委員「それは全然だめだよ、そんな答弁は」と呼ぶ)
坂本委員長 佐々木君。――佐々木君、時間がたっていますよ。
佐々木(憲)委員 私が質問しているのは、この法案の趣旨について言っているわけです。
 柳澤大臣が法案の説明をされたときに、持ち合い解消というのはもちろんあるけれども、しかし、法律の対象となるのは銀行株の制限である、したがって、それを、銀行が持っている株を買い上げる、ここに限定しているのであって、ですから、事業会社の株の買い上げというのは対象外ですと。スキームの外です、想定外ですというふうに言っていたんですよ。それが趣旨なんですから。それと全く違うものを持ってきて、事業会社の株を買うと。買わないと言っていたのに今度は買いますというものを、なぜそこで一貫した形になるんですか。一貫していないじゃないですか。その説明は、一貫しているという説明は成り立たないと思いますね。
 何度同じ答弁を聞いても、これ、このまま進まないですよ。同じ答弁じゃだめだよ。
柳澤国務大臣 これは、言葉の問題もさることなんですが、言葉の問題でもいいですよ、言葉の問題、幾らでも議論させていただきますけれども、要するに、私は、焦点をここに当てて今度法律のスキームをつくらせていただきますということを申し上げたのです。
 ところが、今度は少し焦点をずらしている。私、最初の答弁で申し上げているんですよ。そうじゃなくて、銀行の保有株式の制限をするほどに銀行はなぜこの株式を保有するに至ったかというと、その大宗は持ち合いという動機によるものである。ですから、その持ち合いの解消というものに焦点を当てたスキームということも付加的に十分成り立ち得ると私は考えます。
 佐々木先生、それはもう私は前提を加えてこの命題を話させていただいているわけでありますから、その前提を少しずらすことによって違う結論を導くということも十分可能なんです。そんなことは、本当に、もうこれ以上説明するというのは非常に佐々木委員に失礼になるかと思いますよ、本当のことを言って。私はそう思います。
坂本委員長 佐々木君。――柳澤金融担当大臣。
柳澤国務大臣 問題があります。問題がここにあるとします。そのときに、ここに焦点を当ててどういう措置をとるか、少しずれたここに焦点を当てたらどういうことを付加しなきゃならないか、こんなことは私は当たり前のことだと思いますよ。
佐々木(憲)委員 全然違いますよ。(柳澤国務大臣「問題は同じ問題なんです」と呼ぶ)問題はあります、同じ問題が。その問題に対して、全体として検討して、いろいろな意見があって検討した結果、最終的に選んだのが銀行保有株の買い取りなんですよ。ほかの事業会社の株は買い取らない、対象外、全体の問題を検討した結果そういう結論を出したのじゃないですか。そういう選択をしたのでしょう、そのとき。そういう選択をして、今度出てきたのは全く違うものじゃないですか。
 つまり、否定したものなんですよ。否定したことが今度出てきているということなんですよ。買わないと言ったものを買うという結論、全然違うものを持ってきている。何でそれが一貫しているんですか。どう考えてもこれは一貫したものではないですよ。
相沢議員 改正案を提出しているのは我々でございますので。柳澤大臣に、おまえ、なぜ改正案をあれしているんだ、こういうことを言って余り責めていただいてもいかがかという気もしまして立ちましたのですが。
 やはり、世の中いろいろと動きますし……(発言する者あり)いやいや、それはやはり動きますですよ。それは世の中、日進月歩ということもあります。去年の段階では、確かに、銀行の保有株式を減らさにゃならぬと。繰り返しになって恐縮ですけれども、アメリカじゃ、もう銀行が株を全然持たないようにしよう、グラス・スティーガル法がありました。だけれども、そこまでいかないけれども、せめて自己資本の範囲内に抑えようじゃないかと。
 そうなると、相当、当時十一兆と言いました。放出をする、その受け皿をつくる、そういうようなことで制度がスタートしたわけですが、その際にも、記録にもありますけれども、やはり同時に事法が銀行の株も買うということも当然考えられるじゃないか、持ち合いですから。ですから、そういうことでやったらどうかという意見もありました。正直言いまして、我々は、一緒にやったらどうかという意見も相当強くあったのです。
 しかし、やはり事は銀行の持ち株を減らすということが第一義であるから、それに対応するところの受け皿、シェルターをつくるということでもって、とにかくスタートをしたらどうだろうということでいったわけです。ですから、全く、その反対の事法が今度は銀行株を買うということは考えられもしないというような状態では、少なくとも我々はなかったのであります。
 ですから、ちょっと待ってください、そういうことで、やはりこの不均衡になっている状態を解消するということで進めた方が、法の本来の目的にも沿っていくのじゃないかということでもって、今度の改正案を出させていただいたわけであります。
佐々木(憲)委員 相沢委員の提案されているこの内容というのは、昨年、法案の提案のときに、検討された上で否定された考え方なんです。否定された考え方を復活させたのです、ここで。それを、政府がやると格好悪いから、与党がやろうということになっているんですよ。全く私は、つじつまの合わないことをこういう形で出してくるというのは、やり方として非常に問題があると思います。
 では、ちょっと角度を変えますが、相沢委員にお尋ねしますけれども、事業会社が保有している銀行株が落ちる、値段が下がる。今回のスキームでは、最終的にそれが一定限度穴があいたら政府保証で国民が負担しなきゃならぬということですね。事業会社の株の値下がりの責任を、それは国民にその責任があるというふうにお考えでしょうか、それとも国民には責任はないとお考えでしょうか。
相沢議員 それは最初に制度をつくったときに十分検討したことでありまして、銀行の持っている事法の株を買う、それは、買った段階から両方考えられるわけですね。上がることもあるし、下がることもある。(佐々木(憲)委員「いや、事業会社の保有株」と呼ぶ)だから、事業会社の保有株も同じことですね。事業会社の持っている銀行株についても、買った時点から上がることもある、下がることもある。
 ですから、そこは同じだろうと思うのですが、要するに、上がっても下がっても、そこはバランスをとって考えておるんです。ですから……(佐々木(憲)委員「いやいや、そういうことを聞いているんじゃない。国民に責任があるのかと聞いている」と呼ぶ)それは法律でもって、最終的に、とにかく拠出金を、売却時拠出金も食いつぶし、当初拠出金も食いつぶし、そして、それでも足らぬときには、それは国が保証していますから、国の責任でそれを補てんするということになっております。
佐々木(憲)委員 事業会社が保有している銀行株の値下がりに、国民は責任があるのかと聞いているんです。
相沢議員 それは、言いましたとおり、拠出金を食いつぶして、なおかつ不足した場合は、それは国が保証していますから、責任になる。
 同時に、そこを申し上げないといけませんけれども、仮にもうかった場合も、全部それを銀行に返すんじゃないので、とにかく、当初に出した拠出金、それから売却時の拠出金、その金額を超えて、なおかつもうかったら、それはもう銀行に上げません、国でいただきますと。そこでそのバランスをとっているわけですから。
佐々木(憲)委員 事業会社は拠出金を出すんですか。どうなんですか。
相沢議員 事業会社は拠出金を出しません。
佐々木(憲)委員 今の説明と違うじゃないですか、拠出金を食いつぶしてなんて。それは銀行保有株の話でしょう。
相沢議員 それはもちろん、銀行が保有している事法の株についての話です。
佐々木(憲)委員 私が聞いているのは事業会社の話ですよ。質問の趣旨をよく聞いていただきたいし、提案している法案の中身を正確に認識して答弁していただきたい。こんないいかげんな答弁じゃだめですよ、そんなのは。
 事業会社の持っている銀行株が値下がりする、それは国民に責任があるんですかと聞いているんです。きちっと答えてください。
相沢議員 それは、事業会社が買った、事業会社の持っている銀行株を機構が取得した際に、それは値上がりすることもあるし、値下がりすることもあります。ですから、それは……(佐々木(憲)委員「そんなこと聞いていない」と呼ぶ)いやいや、それは、ですから、銀行が出している拠出金との関連において考えればいいことなんです。
佐々木(憲)委員 私が聞いていることに答えていただいておりません。きちっと答えてください。
相沢議員 だから、申し上げますと、事法が持っている銀行株が値下がりをした場合にどうかとおっしゃったから、それは、まずやはり銀行が出した拠出金を食うわけなんですから、最終……(佐々木(憲)委員「私が質問している趣旨と違うじゃないですか、答弁が」と呼ぶ)すぐ国の責任じゃないんです。
佐々木(憲)委員 委員長、ちょっと正確に答弁させてください。私が聞いていることに対して直接答えてくれるように言ってください。
 私が聞いているのは、極めて当たり前の単純な話なんですよ。事業会社が持っている銀行株が値下がりして損失が出る、その損失に国民は責任があるんですかと聞いているんですよ。あるんですか、ないんですか。
相沢議員 ですから、それは、お答えしているように、銀行が出している拠出金、それは当初とそれから売却時とありますが、その拠出金の中で処理される、第一義的には。(佐々木(憲)委員「責任があるのかどうかと聞いているんです、国民に」と呼ぶ)ですから、それを超えた場合には責任がありますよ。
佐々木(憲)委員 銀行の株が落ちたことに、なぜ国民の責任があるんですか。銀行の株が落ちる、事業会社が持っている銀行株の値下がりが起こる、どうしてそれが国民の責任になるんですか。はっきり答えてくださいよ。何で国民の責任なんですか、それが。
相沢議員 それは、何遍も申し上げますけれども、要するに、銀行の持っている事法の株を取得したときに、さっき申し上げましたように、プラスになってもマイナスになっても、そのときには、そういうような責任の分担をしているわけです。だから、もうかった場合でも、全部は国がもらわないということになっているわけでしょう。
 ですから、今、事法の持っている銀行の株を買った場合も、それじゃ、それが値下がりしたら、それはすぐ国の負担になるというものじゃないので、拠出金の中で、ここを食っていく、それを超えたらそれは国の責任になる。同時に、事法から買った銀行株が値上がりして、それでそれが倍を超したら、それは国の、来るんですから、そこはバランスをとっているわけです。
佐々木(憲)委員 委員長、答えていないです。だめだよ、これ。答えていないんですよ、私の質問に。イエスかノーかですよ、答えは。
坂本委員長 直接的に、もっとわかりやすく。
佐々木(憲)委員 国民が何で責任を負わなきゃならぬのか、国民に責任はあるのかと聞いているんですよ。
相沢議員 何遍も同じことを申し上げますけれども……(佐々木(憲)委員「同じことじゃだめだよ」と呼ぶ)同じことを申し上げますけれども、それは当初の閣法においてもそういう形になっているということを御認識いただきたい。(佐々木(憲)委員「答えていないよ。だめだ、これ。答えていないよ」と呼ぶ)
坂本委員長 もう時間でしょう。最後の質問。
佐々木(憲)委員 全然質問に答えていないんですよ。私はまだこの倍ぐらい質問を用意していますけれども、終わっていないんですよ、まだ入り口なんです、これ。一番基本的なことを聞いているんですよ。
 今回の法案の提案というのは、事業会社が保有している株を買い取る、銀行株を買い取る、もしそれが、値上がりすることもあれば値下がりすることもある、値下がりするときには国民が負担しなければならない。銀行株の値下がりに国民に責任があるのか。そういう単純な話を聞いているのに、わけのわからぬ仕組みの、仕組みなんていうのはわかっていますよ、そんなこと言わなくたって。そういうことにさえ答えられない、まともに。これはもう審議、私はこれだけじゃとても済まない。あと二日や三日はやらないと、これは本当に内容がきちっと解明できないということを申し上げまして、終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 閣法のときにも、かなりいろいろと基本的なことは伺ったわけですが、先ほどからの議論も踏まえながら、まず金融担当大臣にお伺いしたいんです。
 我々の立場からすれば、そもそも、機構をこしらえること自体がけしからぬというスタンスです。そのことの主張の中身は、この間るるそれぞれの質疑者がおっしゃっていますので繰り返しませんが、当時も、法案の審議に当たって金融担当大臣は、あくまでも、金融機関の財務を健全に保つために経済変動の著しいリスクからできるだけ遠ざけるというか、そのリスクを縮減しておこう、こういうことに尽きるというふうにおっしゃっていたわけでございます。ですから、この間議論になっているのが、そもそもそうであるならば、今回の法案というものは全く別物じゃないですかということだろうと思うんです。
 そこで、実際に、いわゆる株価変動に左右されにくい金融機関の経営を確立するということをむしろ強調されていたにもかかわらず、今回の改正案では、やはり金融担当大臣が当初否定されている株価維持策だと言われても仕方がないじゃないか、どうですかというふうにお伺いしたかったんですが、それに、この間の質疑の中で柳澤金融担当大臣はこうおっしゃっています。恐らく、これが、今聞いてもそういう答弁になるんだろうと思いますが、政府の閣法というのは、保有制限というところに光を当てた、しかし、今回の議員立法、衆法は、なぜ保有が起こったのかというところに着目した、要は持ち合いに着目したんだよというふうに整理をされたわけです。その整理の妥当性については、この間さんざん議論、今もあったと思いますが。
 とするならば、少なくとも現段階において、持ち合いの解消に向けて今回の法案が必要になってくる必然性、少なくとも、半年前、昨年の十月あたりと決定的な持ち合い解消に係る情勢の変化があるということが現認できることが一つ前提に、立法事実としてなければならないと私は思います。
 ちなみに、これは村田副大臣の答弁だったんですが、昨年の十月の二十六日の段階では、「確実に議決権行使による経営監視、そういう方向に進んでいるということは、全般的な傾向」だとか、「株式の持ち合いにつきましては、企業と銀行との関係を含みます昨今の社会経済情勢の変化等を踏まえまして、銀行と事業会社双方において、双方の経営戦略に基づきましてポートフォリオの見直しが行われてきた、その結果、持ち合いの解消が進んでいる」要は、民間レベルで進んでおるわけです。
 そして、当時、昨年度末がどうなのかというのを、データ、ちょっと私急いでいたので持っていませんが、平成十年段階で全上場企業の発行株式に占める金融機関の保有株式の割合が三四・三パーだったのが十二年度には三〇・五パー、着実に解消が進んでいる。
 要するに、民間レベル、社会経済情勢の変化によって、それぞれの経営戦略にのっとってその持ち合いの解消を進めている現状にあるというふうにまず柳澤金融担当大臣は御認識でしょうか。
柳澤国務大臣 そのように認識しております。
植田委員 そのように認識されている柳澤金融担当大臣にもう一度お伺いします。
 後で、これは、提案の趣旨、立法趣旨についてはむしろ提案者に伺うべきでしょうが、横で今回の衆法、議員立法を見ていて、進捗している状況にあるにもかかわらずかかる法案が必要になったとする必然性というのは那辺にあるというふうにお考えなんでしょうか。
柳澤国務大臣 与党の先生も非常にいろいろなところと接触をしていろいろな情報をおとりだろうと思います。そういう意味で、私がこれから申し上げること以上に別の事実を掌握されて、それを踏まえて御提案になっていることも十分あり得る、こういう前提でお話し申し上げます。
 私は、やはりやりやすいところからやっているんだろうと思っているんです。やりやすいところからやっているだろうと。ですから、だんだん、実際、再来年の九月末にかけてはハードコア部分にいくんじゃないかなということは漠然と私、特別に銀行の皆さんと話をしたわけではないんですけれども、そのように考えております。だんだん困難な分野に踏み込んでいくんだろう、こういうふうに思います。コンプライアンスというか、我々の保有制限にコンプライするためには、そういうことだろうと思うんです。
 そういうものであってもなおかつ円滑に進めるということの方途は、やはりいろいろ多方面にわたって考えていくというのは自然なことだと言わせていただきたいのでございまして、そういう一環としてやはり今回のようなこともお考えいただいたのではないか、このように受けとめている次第でございます。
植田委員 要は、持ち合いの解消は進んでいるという認識を持ちつつも、いろいろなお話も皆さん聞いているだろうから、そういう中でこういう問題意識が醸成されてきたんだろうということだろうと思うわけです。ただ、それだと、今回の改正案というものが出される必然性、要するにだれにでもわかる立法事実、立法根拠ということを示しているということにはなかなかならないんじゃないのかなと。
 いろいろなことはあります。いろいろなことはあるけれども、少なくとも状況が閣法が出た段階と現段階で、持ち合い株の解消に係る状況がそんなに言うほど変わっていない、要するにずっとこの数年持ち合い解消は進んでいる、そのことの流れは別に変わっていないわけですよね。変わっていないというふうな認識に立っておられるわけですよね、まず担当大臣は。
柳澤国務大臣 私も、今回の御提案の基礎を直接手がけたわけではありませんから、いかなる情報をもって今回のような提案に至ったかということをすべて知っているわけではないんですが、横から見ていてどう考えるかという御質問でございましたので、進んでいるんだけれども、だんだん進むにつれて難しい局面に入ってくる、そういう変化があるんだろうということを私は申し上げたという次第でございます。
 ですから、私としては変わっているということを言ったつもりでございました。
植田委員 では事実関係として、最初私が昨年の、これは村田副大臣の御答弁の全般的な傾向のところを引っ張り出して申し上げまして、持ち合い解消にかかわってのお話、それについては、現状においてもそういう御認識でございますと一言、端的に柳澤大臣おっしゃっていただいたわけなんです。
 要は、十月のこの閣法の法案審議の段階と現状の段階で、持ち合い解消に係っての現状認識については、全般的に解消の方向に進んでいる、民間の方がそれぞれの、双方の経営戦略に基づいてどんどん見直しをやっている、結構なことじゃないかと私は思います。その状況は変わっていないというふうな認識なんですから、変わっていないわけでしょう。そういう現状認識でいいんでしょうということを、おっしゃったじゃないですか。それが何か今聞くと、いや、いろいろな要素があるんだろうななんていうような話なんで、ちょっと整理しませんか。(発言する者あり)
柳澤国務大臣 不規則発言はお慎みください。
 私が申し上げたのは、みずからの経営判断に基づいて持ち合い解消を進めている、そういう事態は今進行中なんですねという委員の御指摘に対して、私はそういう認識を持っています、こういうことを申し上げたんです。その上で、現状はそうなんだけれどもこれからどうなんだろうかということを考えたときに、私は、これは先ほど来申し上げているように、いろいろな意見をこの法案を立案するために聴取した結果というわけではないんですが、私の観察しているところでは、だんだん難しい、胸突き八丁のところに近づいてきているなというふうに、近づくであろうなということを考えているということを申し上げたのでございます。
植田委員 胸突き八丁とおっしゃられましても、そうだと、今の話で伺っていますと、もし同じことを仮に昨年の段階で、今の持ち合いのことも込み込みの法案が閣法で仮に出たとしても、同じ答弁だったと思うんですよ。要するに、去年の段階であろうが、今、現段階でこの法案が提出されていることの必然性について、事実関係に沿った御説明は少なくとも金融担当大臣、なさっていないわけです。胸突き八丁と言われましても、はい、そうですかと言うわけにはいかないわけです。
 要は、そうなると、今度は逆説的に言えば、今出さないでも、では昨年、閣法で、このことも込み込みで法案を出していても一緒だったじゃないですか。同じ説明になっていたじゃないですか。でもその際には、いろいろないきさつがあって落としたものですよね。落とした理由にかかわっての議論は佐々木先生となされましたから、そこは私は省いて、では今度は、保有制限と、保有がなぜ起こったかという視点で今回の法案が出てきた。ならば、持ち合いの解消が進んでいるという現状認識に立つにもかかわらず、現状として、それが昨年の答弁の段階よりも厳しい事態になっているんであれば、具体的にそのデータなりなんなりというものをお持ちですかと、事実を示していただきたいということを申し上げたら、胸突き八丁という言葉が返ってきたものですから、ちょっとたまげているわけですよ。
 要するに何となく、ただ何となくぼんやりとした不安がありますと。何か芥川竜之介の遺書みたいな、そんな程度のことにしかならないわけでしょう、胸突き八丁と。
 要するに、事実関係として、この先、近々、今この法案を上げないことには持ち合いの解消というものがとまってしまう、座礁するというような条件というものを具体的に、専門家なんですから、どんな現象からそういうことを考えておられるか、担当大臣、御教示いただけますでしょうか。
柳澤国務大臣 私も常に正確な表現を心がけておりますつもりですけれども、胸突き八丁云々は、何と申しますか、必ずしも正確な表現でないかもしれませんので、余りおこだわりをいただかないようにお願いをいたしておきます。
 そこで、申し上げるのはどういうことかと申しますと、私は、持ち合いの解消も進んでいるんだけれども、これはどうしてもやりやすいところから、全体が難しい問題だろうとは思うんですけれども、その中でもやりやすいところからやっていくというようなことも大きな判断の要素にはなっているんだろう、こう思うんですね。
 そういたしますと、時間が経過するに従って、つまり期限がだんだん近づくに従って、これはどうしたって難しい問題が後に残るであろう、そういうようなことも一つはお考えの背景としてあるのではないだろうかということを、あえてお聞きになられるので私の立場から申し上げた、こういうことでございます。
植田委員 自分で出している法案じゃないので、もっと言っていただいてもいいんですが、時間がありませんので。
 何も私は、機構の中で、機構そのもの自体がけしからぬという立場ですから、そもそも論の話になるわけですが、仮に、では今度ちょっと視点を変えて、これはまずちょっと提案者にお伺いしたいんですが、株式の持ち合いを解消するというのであれば、それこそまず真っ先にやりやすいところからというような話、先ほど金融担当大臣ありましたけれども、何を政策として優先順位として順位づけせないかぬのかということからすれば、持ち合い解消というのであれば、むしろ生保と銀行の持ち合いこそ問題にすべきなんじゃないかというふうに思うわけです。
 というのは、実際これは、もう生保が銀行株をぎょうさん持っているというのは周知のことですが、実際銀行も劣後ローン、劣後債の形で生保に拠出をしていることも当然ですね。しかも過去の生保の破綻例等を見れば、破綻前後に大量の株式が売却されている。やはり銀行と生保の持ち合いが新たな危機の連鎖を招く、そこのところの方が重要であろうと私は思います。
 ちょっと古いデータなんですけれども、二年前でも、銀行は生保へ二・三兆円、生保は銀行に対して、株式で七・七兆、劣後債券で六・七兆、拠出しておるわけです。その後どんどん持ち合いが進んでいて、むしろそのシステムを複雑な構造にしているわけですね。
 むしろ提案者にお伺いしたいのは、今回のようなものよりも、ここに切り込むべきなんじゃないんでしょうか。どういうお考えでしょうか。提案者にお伺いします。
相沢議員 確かに、銀行に比べて生損保は株をようけ持っています。ちょっとうろ覚えですけれども、昨年の三月で銀行が三十七兆でしたか、それから生保三十兆、損保十兆、四十兆ですね。ですから、保険の持っている事法の株の方が多いわけですね。ですから、その株価対策ということを考え、それからもう一つは金融機関の経営の安定ということを考えれば、確かに保険の株もこの機構へ売れるようにするということも一法だなということで、実は我が党のデフレ対策特命委員会はこのことを項目に挙げておったのでございます。
 ただ、銀行の場合は持ち株を自己資本ティア1の範囲内に制限するということを法定いたしました。そういうことにしました。しかし、保険の場合は、ポートフォリオで見て三〇%ぐらいずつ生損保とも持てるようになっていますけれども、大体持っているのはその半額、半分ぐらいのものですから、持ち株を制限するという形で売らせるといいますか売ってもらうというような、そういうことにはならない。プレッシャーもない。また、保険としては資産運用の面でもって株を持っておりますから、これを仲間に入れるということについては保険会社も必ずしも希望しないというような諸般の情勢がありましたから、これはギブアップいたしまして、後日の問題にしたということであります。
植田委員 いやそれだったら、要は、事業会社と銀行との持ち合い解消は、現場できっちりとそれぞれの経営戦略にのっとってどんどん進んでいる、その事実認識は恐らく、提案者にあえてお伺いしませんが、御同様だと思うんです。柳澤金融担当大臣がおっしゃった認識と共有されていると思うんです。
 ギブアップされたとおっしゃっているそこの問題が、むしろ持ち合いということに着目をしたという、そこがこの法案のすばらしいところだという柳澤金融担当大臣の解説からすれば、持ち合いの株の解消というか、ここの一番危険な持ち合い構造にメスを入れへんでそこでギブアップしたんであれば、わざわざこんな法案出さぬでもいいんじゃないですかと思うわけです。
 というのは、今の持ち合い構造というのは、実際、金融危機の連鎖につながっていきますよね。実際、生保は大手銀行にとっては超大口の融資先なわけですから、破綻となれば一遍に金融危機になる可能性だって否定できないことは、当然事実認識として、現状認識として共有できるはずです。しかも、破綻までしなくても、結局生保の経営危機になれば保有する株式を売却する、では株価が下落する、それがさらに加速するということはあるわけですよね。
 ですから、むしろここの部分についてどんな手だてが必要なのかということの検討こそ、もし持ち合い株の解消というところに着目をするのであれば、やるべきなんじゃないんでしょうか。ギブアップだとおっしゃったので、提案者にはそこはお伺いしません。
 むしろそこは、そうした実態を金融庁さんが十分把握されているわけですが、少なくとも柳澤担当大臣に伺いたいのは、その持ち合いに対しての規制を含めた対策、これについては、やはり政府として責任持って何らかの対応方というものをこれから考えるべきだろう。何か与党の方はギブアップということですけれども、はい、そうですかでは済まないと思います。というのは、今回の法案が、柳澤金融担当大臣が、なぜ株式の保有が起こったのかという視点に立って、そしてその持ち合いに着目されたすばらしいものだとおっしゃられる以上、この重大な問題についての処方せんを書く責任はお持ちだろうと思いますので、金融担当大臣、その点をお願いします。
相沢議員 保険に関しましては一言ちょっと申し落としましたが、損保の場合は株式会社組織ですからまさに持ち合いという格好もあるんですけれども、生保の場合は、ほとんどが協同組合組織と申しますか、ですから株式会社になっていません、ですから持ち合いというような関係がない。
 先ほど申しましたように、金額的に言うと、損保が十兆で生保が三十兆。ですから、四十兆の中でそういう持ち合い関係のあるのは十兆円。金額的にも余り大きくないと言っちゃ失礼ですけれども、そういう程度の金額ですし、では生損保を別に取り扱うかということになりますとそこはまた問題がありそうなので、だから、さらに検討したらどうかと。ギブアップという言葉が適当でなければ、そういうふうに言わせていただきます。
柳澤国務大臣 持ち合いというのは通常は株式の持ち合いということでございまして、そういう意味合いでは、今相沢提案者も触れられたかと思うんですけれども、特に植田委員の御指摘になられた生命保険というのは株式会社組織ではないものですから、そういう意味で、我々が今ここでテーマとして論じていることとはちょっと違う面を持っている、これが一つでございます。
 それから、生命保険会社というのは機関投資家でございますので、その機関投資家が株式を持つ、相当数持つということは、ある意味で想定されていることだと言ってよろしいかと思うんです。もちろん、資産の運用のありようとして、今、現行では株式には三割というような枠がはまっておりまして、それで持っていたわけですけれども、しかし、昨今の株式の変動ぶり、それからまた時価会計というかソルベンシーマージンとかなんとかというようなこととの絡みで、それでは少し多過ぎるではないか、そういうことをそれぞれの生命保険会社が判断をして、少し売りに出ているというように私は考えて、認識をしているわけでございます。
 株式ではないけれども、例えば劣後ローンだとかというようなことで、銀行からの貸し付けあるいは基金への拠出というようなことについてどう考えるかということでございますけれども、これについては、私どもは、これは国際的な基準から見ても、別段ダブルギアリングで、そこのところの拠出金というものは資本金から控除しておくべきだとかというような規律がないことにあらわれているように、やはりそれぞれの金融機関が持っているリスクというのはやや異質、ややというか異質なものである。こういうことからそこのダブルギアリングの規律というものが働いていない、そういう分野であるということを考えておりますので、そのあたりのことをぜひ植田委員にも御理解を賜っておきたい、このように思います。
植田委員 だから、生保が、正確な意味で株式の持ち合いというふうな表現をすると、これは質的に違うでしょう。機関投資家として生保が銀行株を持っている。それで、銀行の方は劣後債で、劣後ローンということで拠出している。だから、そういう、ある種、今論じられている株式の持ち合いと意味合いが違ってくる分野であるということを御理解くださいというお話やったんです。
 そのことを踏まえて、じゃ今後、その実態がどうなっているのかということを御承知でしょうから、この銀行と生保間におけるいわゆる疑似的持ち合い構造と言っておきましょう、持ち合いと言ったら不正確だったら、疑似的な持ち合い構造をこのまま放置しておけば、むしろ、今後の金融危機というものを起こす可能性、危険というもの、それこそ先ほどの、今回の法案の対象になっている持ち株の解消よりも危険度が高いんじゃないかと私は認識するものですから、そのことを踏まえた処方せんを考える必要があるんじゃないですかと。
 与党の提案者の方が、ギブアップだというふうなことで私が受けとめたら、いや、そういうことじゃなくて、今後も慎重に検討していく課題であるという認識が示されておりますが、政府として、じゃ今後その処方せんをどういうふうに書いていくのかということはどうかということを改めて御教示いただけますか。
柳澤国務大臣 そこのところについても答弁したつもりでおったんですけれども、繰り返しになりますが、以下申し上げます。
 それは、生命保険会社の持っているリスクと、それからそれに基金等を拠出している金融機関の持っているリスクというのはやはり違うものである。だから、常に同時発生的にそのリスクに直面するということではない。こういう事実に基づいて、国際的な規律においても、これをダブルギアリングということで資本勘定に組み込むなというようなことにはなっておりません。
 そういうことでございますので、私どもとしては、それぞれ両者は適切な、また必要なリスク管理はするというのは当然の前提でございますけれども、あえてルール化するということでそれをどうしても排除しなければならないというふうには現段階考えていない、こういうことを申し上げたつもりでございます。
植田委員 要するに、今私が質問させていただいた生保と銀行との、造語では疑似的持ち合い構造の問題については、検討の課題にあらずということですね。それは私の念頭に、テークノートをしておきます。後でどうなってもわかりませんけれども。
 もう時間がないので、最初に初歩的なことを聞かないかぬかったんですが、これは最後に提案者に二点ばかり伺います。
 そもそも、私は、この取得機構というスキームそのものが、小泉総理の言葉をかりれば、民間でできることは民間でやるというその原則に反するものだ、これは閣法が出たときからそういうふうに考えていました。それは、実際、今回のいわゆる閣法、前回、昨年出たときも、人為的な方策で株式の売り買いのバランスを調整するということは、自由な株取引で適正な株価を決めるという市場の大事な機能を損ないかねない市場の自殺行為だと、財界からも取得機構については市場機能を壊すので絶対反対という意見があったわけです。そういう意味で、そもそもこの機構というもの自体がそうした市場原理と背反するんではないかどうかという点。
 それと、最後にもう一つ、実際、リスク管理ということであれば、やはり銀行のあらゆる資産というものを総合的に見るべきですし、株式といったそういう一つの資産だけを取り出して規制するどうのこうのというのは、私はもともといかがなものかと思っていました。ですから、これは昨年もそういう反対討論をさせていただいたわけですけれども、実際、これは何で銀行資産の中で株式保有だけ取り上げたかといえば、まあ日本の国の事情もあるんでしょうけれども、こうした人為的なものというものは恐らく成功しないだろうと思います。
 しかも、今回、銀行に加えて一般事業法人ということであれば、こういう取得機構が、本来の株式市場を健全に発展させるための努力が滞ってしまう、むしろ逆効果ではないかというのも、これも、この種の議論もこの間あったと思いますけれども、少なくとも仮に持ち合い株式の解消というものを根本的に進めるのであれば、買い取り対象の範囲を広げるというようなつけ焼き刃的なことではなくて、いかに効果的な株式市場の活性化を実現するのかというところにやはり知恵を出すべきなんじゃないのかなというふうに私は素朴に思っているわけですが、この点について最後に提案者にお伺いいたします。
相沢議員 確かに、こういうような機構というものは、本来、なくて済めばその方がいいと思うんです、建前として。
 ただし、繰り返しになって恐縮ですけれども、銀行に対して保有株を自己資本の範囲内、ティア1以下にするということを法で強制をしているということがありますから、そのことによって事法の株を三年間に放出せざるを得ない。そのことが市場を冷やす、株価を冷やすということになれば、また銀行の経営の安全性にも響くおそれがあるということですから、そういう意味で、一種の救急措置といいますか対策としてやったわけなんですね。
 ですから、本来ならば、そういうものがなくて済めば、それは一番いいと思うんです。ただし、その程度のことはやはり最小限度のセーフティーネットとしてつくっておく必要があるんじゃなかろうかと。その考え方との関連におきまして、持ち合いの解消ということになれば、当然事法も銀行株を売る。それについては、言うなれば受け皿がない。それではちょっと、少し不均衡じゃなかろうかということで、今回、議員立法でそれを追加することにしたわけでございます。
 どの程度それが実際役に立つのかということになれば、それはやはり、市場が非常に活性化して株価も上昇してくる、そして、そんなところに売らなくても十分やれるんだというような情勢になれば利用されないかもしれません。それはそれでいいと思っているんです、こういう組織ですから。
 ですから、その点は、おっしゃるように、強いて官製の機構をつくってやらなければならないんだという頭でもってそもそもこのことを企画したわけじゃないというふうに思っています。
植田委員 もう時間なんで終わりますけれども、提案者の方から今お話をお伺いしていても、今回の立法の必然性というものが少なくとも明確に、明示的には論証されていないなというふうに言わざるを得ないと思います。
 いずれにしても、引き続きこの法案について審議していただきたいと思いますが、そうでなければ、恐らくこのきょう一日の議論の中でかなりこの法案が破綻しているということは明らかでしょうから、速やかにお取り下げいただいて、もう一度、今回の、仮に持ち合い株の解消をどうするのかということであれば、そうした政策論議は別途やる方が賢明ではないかということを最後申し上げまして、終わります。
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会


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