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第2号 平成14年10月30日(水曜日)

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平成十四年十月三十日(水曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 江崎洋一郎君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      大島  敦君    海江田万里君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    上田  勇君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      小池百合子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   財務副大臣        小林 興起君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   参考人
   (日本公認会計士協会会長
   )            奥山 章雄君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十日
 辞任         補欠選任
  小泉 俊明君     大島  敦君
同日
 辞任         補欠選任
  大島  敦君     小泉 俊明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本公認会計士協会会長奥山章雄君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として国税庁課税部長村上喜堂君、金融庁監督局長五味廣文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
渡辺(喜)委員 渡辺喜美でございます。
 先週、あるラジオ番組に出ましたら、電話でアンケート調査をやっておりまして、竹中さんを支持するかどうか、こういうことだったんですね。何と六五%が竹中支持、反対という人たちは二五%でございました。私のように、小泉支援隊でもない、抵抗勢力でもない、第三の道を歩んでいる人間にとっては非常に複雑な数字だったわけでございます。時に、私は、竹中バッシングの側に立つ人間でございますが、個人的な恨みがあってやっているわけではございませんので、御了解をいただきたいと思います。
 きょうの新聞を見ますと、いろいろなことが躍っております。例えば産業再生機構とか、あるいは産業再生委員会とか、どこかで聞いた話だなと思っておりました。お手元に私の渡辺案というのがお配りしてございますが、産業再生委員会と平成復興銀行、このアプローチは、実は過剰債務問題から入っているわけでございます。
 日本の経済を、この十年間、潜在成長率まで含めてだめにしてしまったのは、とりもなおさず過剰債務の重圧である。過剰債務があるから、資産の投げ売りが起こり、資産デフレに歯どめがかからない。過剰債務があるから、企業間の信用が収縮する。過剰債務があるから、投資の抑制、研究開発の抑制が起こり、生産性が低下をし、競争に負ける。こういったことが本質的な原因でございまして、私は、この過剰債務をカットする枠組みを何年か前から提案してきたわけでございます。
 そのツールとして産業再生委員会、その実行部隊としての平成復興銀行という構想を提言してきたわけでございますが、この渡辺プランについて、けさの新聞に出ていることを聞いてもまだ決まっていないと言われるに決まっていますので、渡辺プランについて両大臣はいかがお考えでしょうか、御感想をお伺いしたいと思います。まず竹中大臣から。
竹中国務大臣 日本の経済の足かせの最大の問題が、過剰債務の問題、いわゆるデットオーバーハングの問題であるという認識は全く共通して持っておりまして、その過程で、渡辺委員の実行案についても私なりにかなり勉強させていただいたつもりでございます。
 基本的には、私自身は、大きな仕組みをつくれるのが理想であるけれども、そこまではなかなか難しいなというふうに思っておりましたんですが、今回、不良債権処理を加速させるという一連の議論の中で、なかなか今まで腰を上げてくれなかった官庁も、そういったやはり仕組みづくりが必要だということに一気に動く可能性が出てまいりまして、その意味では、渡辺プランの詳細について、非常に細かいオペレーションの部分まで私理解していることはないかもしれませんが、基本的な考え方については、私はやはり日本の中にそういう仕組みを取り入れていくことは必要であるというふうに思っておりますし、それを何とか実現するチャンスが今来ているというふうに認識をしております。
塩川国務大臣 私は渡辺先生の前からの考え方はよく承知しておりまして、大体、私も、考え方はよく似ているなと自分でも思うておったんです。
 同時にまた、過去のことをよく研究しておられるなと。といいますのは、私、復員してまいりました二十二年でございましたが、そのときに、おやじの会社を整理いたしました、国家補償を打ち切られてしまって。その整理をしたのがまさに、新勘定、旧勘定分けて、それでやって、それで復興金融公庫、今の政策投資銀行ですね、これが我々を、新会社を助けてくれたんです。その経験がございますので、私はその構想を今でも閣内で言っておるんです。
 そこで、もう一歩私は考えていただきたいなと思うのがある。今、渡辺プランでございますが、全産業を対象にしたプラン、これは構想ですね、平成復興公庫。それと同時に、今直ちにやらなきゃならぬ不良債権、不良債権の整理をさばく管理委員会と両立てにやっていただいて、当面のものは時限立法でもいいですから、不良債権の方をやる。
 それで、やはり日本の経済全体をやるのに、昔、経済安定本部というのがございましたが、そこが構想しておりましたが、そういうもので復興構想を持って、それを支援する実働部隊というもの、そういう構想をしていただいたら、当面と中長期的な検討ということが非常にはっきりしてくるんじゃないかなと思っております。
渡辺(喜)委員 この世界は知的所有権はございませんので、ぱくりオーケーでございますから、ぜひ渡辺案を大いにぱくっていただければと思います。
 私の平成復興銀行は、今大臣がおっしゃられた実行部隊として考えております。したがって、この平成復興銀行で問題債権まで含めた買い取り、そして再生ができる仕組みになっております。こういった産業と金融の一体再生のコストは一体どれぐらいかかるのかということを、やはり取りかかる前にあらかた想定をしておく必要があるのではなかろうかと思います。
 私の大ざっぱな計算では、問題債権まで含めた買い取り、再生をやるわけでございますし、また、日銀ができない資産の買い取り、例えば持ち合い株式なども平成復興銀行で一たん引き取ってしまおう、こういう構想でございますから、全体で百五十兆から場合によっては二百兆円。これが全額国民負担になるわけでは毛頭ありませんけれども、日銀マネーを使ったそれぐらいのお金が必要になるのではないかと考えておりますが、両大臣におかれましてはどのような御見解をお持ちでしょうか。
竹中国務大臣 どのぐらいの政策コストがかかるのだろうか。今の御質問ですと、政策だけではなくて、グロスで、ネットだけではなくてどのぐらいの規模を考えなければいけないのだろうかという御質問だと思います。
 言うまでもありませんけれども、これは、再生のスキームをどのような形でつくっていくのかということと、現実にどのような速度で銀行がオフバランス化を進めていくだろうか、そのときに世界を含めた経済情勢はどのようになっていくだろうかということでありますから、これはなかなか簡単に今の時点で見通せるものではございません。渡辺委員は既に非常に先を走っておられまして、その数字をお持ちのようでございますが、そういう数字は数字としてぜひ御参考にさせていただきたいと思いますが、具体的にスキームを固める中で適切に判断をさせていただきたいと思っております。
塩川国務大臣 私も、スキームなりあるいは規模、どういう程度かということについてはまだ全く予想もつきませんですが、しかし、構想は私はぜひ生かしていって、その構想が生かされてくることによって産業界にまた新しい考え方と力が出てくると思っておるのです。
 今私が見ていますと、産業界は、自分で力のあるオーナー企業はどんどんと伸びておりますが、いわば組織でやってきた旧財閥系の企業というような、合議制でやっていくようなものだと、うろうろしておるばかりで全然方針も立たない。そういうところに、国と企業が一体となった要するに戦略機構をつくるということは、私は、新しいよりどころ、どっちもがよりどころができてきて、力が相関的に大きくなってくると思っておりまして、そういう弾みが出てくるということに私は大きい期待がかかってくると思っております。
渡辺(喜)委員 きょうは公認会計士協会の会長さんにもおいでをいただいております。
 この不良債権、過剰債務の問題を考えるときに、どうしても公認会計士協会の御見解をお伺いしなければ解決しない問題がたくさんございます。
 そこで、まず第一に、ディスカウント・キャッシュフローということでございますが、確かに、インフレのときにはこのディスカウント・キャッシュフローは大変に正確な数字を出してくれるんですね。では、デフレのときには一体ディスカウント・キャッシュフローというのは有効に機能するんだろうか。そのあたりを、まず、公認会計士協会の会長さんの方から御見解をお承りをさせていただきたいと思います。経済学の説明は結構でございますから、わかりやすく、結論の方だけで結構でございます。
奥山参考人 会計士協会の奥山でございます。
 今渡辺先生がお尋ねの、いわば私どもDCF法と言っておりますけれども、そのディスカウント・キャッシュフロー法、DCF法がデフレ経済で果たして有効かどうかというお尋ねですけれども、大変この答えは難しいと思います。
 会計基準は、インフレだろうがデフレだろうが、国内であろうが国際的であろうが、とにかく一つというふうに私ども理解しておりまして、そういう意味では、これがインフレで有効かデフレで有効か、そういう意味での検討は特に行っていないわけでございまして、要するに会計基準として妥当かどうかという立場でございますので、必ずしもデフレ経済で有効かどうかということについてお答えはできないと思いますし、また、一概にどちらで有効かという答えもなかなかできないのではないかと思っております。
 以上でございます。
渡辺(喜)委員 竹中大臣。
竹中国務大臣 基本的には奥山会長のおっしゃったとおりであろうかと思います。
 ディスカウント・キャッシュフローといっても、幾つかのテクニカルな方法があるでありましょうし、このデフレの状況をどの程度と想定するかということにもよりましょう。したがいまして、技術的になかなか難しい問題があるというふうにも思いますが、現実にそれを採用しているところも多い、少なくないというふうにも聞いておりますので、そういった専門家のお知恵によって解決されていく問題であるというふうに思っています。
渡辺(喜)委員 デフレのときにはディスカウント率がマイナスになってしまいますので、正確な数字がはじけないと考える方がむしろ普通なんですね。このディスカウント・キャッシュフローのデフレ下における適用については、大いに検討してもらわなければなりません。
 次に、繰り延べ税金資産の問題でございますが、お手元に、「将来の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性の判断指針」、こういう一枚紙が配られておろうかと思います。
 この中で、大半の銀行は、この4の重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社に分類され、原則は、翌期に確実に黒字が見込める場合に限り、その年の分だけ税効果を認められる、この4の基準でやっているわけですね。これが5に来てしまう場合があり得るわけでございまして、おおむね三年以上連続して税務上の欠損金を計上しており、当期も税務上の欠損金の計上が見込まれる場合には、原則として繰り延べ税金資産は計上できない、こういう規定なんですね。
 したがって、こういう規定に当てはまってしまう場合には、公認会計士協会としては繰り延べ税金資産の計上を認めないという御判断をされるんでしょうか。いかがでございますか。
奥山参考人 先生が御指摘の件は、私ども公認会計士協会が平成十一年に公表しております監査委員会報告第六十六号というのがありまして、それは、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」、いわば私どもが監査に対応するときに判断のよりどころとなるものでございます。そこでは、繰り延べ税金資産の回収可能性について、おっしゃるように五段階に分けまして、その五段階ごとに判断をしております。
 それで、お尋ねの件でございますけれども、おおむね三年以上連続して重要な税務上の欠損金を計上している銀行は、当期も重要な税務上の欠損金の計上が見込まれる場合には、原則として繰り延べ税金資産の回収可能性はないと判断するということになっておりますので、したがって、このような場合は繰り延べ税金資産は計上できないこととなるというふうに私どもは判断しております。
 以上でございます。
渡辺(喜)委員 幻に終わるのかどうか知りませんが、竹中プランにも、外部監査人にも責任があり、重大な誤りがあった場合には損害賠償の責めを負うことを確認する、こういう当たり前のことが書いてあるわけでございまして、公認会計士協会としてもいよいよ正念場に差しかかっているのではなかろうかと思います。
 いずれにしても、このような繰り延べ税金資産が実は貸しはがしを生むというメカニズムについて、我々はもう一度確認をしてみる必要があると思うんですね。つまり、査定を厳格化する、有税引き当てを積む、繰り延べ税金資産が増大する、ティア1資本に算入をされる、さらに不良債権処理圧力が加わり、一方では収益力の向上のためプライシングの要請が行われる、一方では自己資本比率の維持のためにリスクアセットの削減が行われる。したがって、貸しはがしという問題が起こってくるんですね。
 今の有税引き当て制度のもとでは、債務者企業が破綻すれば税金が戻ってくる、こういうことでございますから、税金が戻ってくればティア1資本も維持される、こういうことでございまして、こうした繰り延べ税金資産が年々拡大をしてきているというのは大変に問題が多いと私は思います。
 したがって、有税償却制度ではなくて、やはり無税償却ができる、こういう制度を拡大していく必要があるんですね。ですから、先ほど私が申し上げた平成復興銀行などはまさにその受け皿になるわけであって、不良債権、問題債権の買い取りということで、オフバランス化がなされた時点で、これは当然売却損は税金がかからないわけでございますから、こういう制度の整備と同時に、やはり日本の引き当て、不良債権処理と税の問題は、かなり複雑にでき上がっているわけでございます。ですから、これをもっと単純化する必要があるんですね。
 しかし、間接償却は有税で債権売却は無税だ、こういうぐあいにもいかないんですね、日本の制度は。例えば、現行では、無税償却ができるのは、会社更生法や民事再生法の認可を受けた場合、法的に債権が消滅をしてしまうというようなケースですね、この場合は一〇〇%無税。民事再生法の申し立てを行った場合には五〇%だけ認めるとか、灰色債権については法定貸倒引当金の限度を超えた部分は有税、こうなっているわけでございますが、例えば、金融検査の結果、引き当てをもっと積みなさいと言われた部分については、これは無税を認めてあげていいんじゃないですか。ですから、そういうことをやれば、のべつ幕なし繰り延べ税金資産が膨れ上がってくるということはなくて済むんですね。
 今私が心配しているのは、地域金融機関ですよ。こっちの方は、正直申し上げて、繰り延べ税金資産は割と小さい。なぜかというと、不良債権処理を余りやっていないからですよ。これが地域金融機関にこれからどんどん広がっていきますと、こっちの方も繰り延べ税金資産が年々ふえていって、結果として貸しはがしにいってしまう。こういう問題があるわけでございます。この繰り延べ税金資産と税の関係について、これは竹中大臣、塩川大臣、お考えをお聞かせいただけますか。
竹中国務大臣 大変本質的で重要な御指摘をいただいたというふうに思っております。
 今まさに委員御指摘になりましたように、今回、繰り延べ税金資産がいろいろな形で議論の対象になっているわけでありますけれども、これはいわゆる経済実態、取引実態に即して表現されるべき企業会計の基準の話と、それとやはり公平のもとでの安定した税収を確保しようとする税制の話と、それと金融監督の話、三つが、まさにこの焦点、その三つの問題の中心、交差するところに位置しているのがこの問題であるというふうに考えております。
 したがって、一つの観点だけから議論するということになりますと、これは非常にゆがみが生じることもあり得るわけでありまして、今御指摘のような税の話とか企業会計の話とか、さらに、我々はあくまで金融監督の行政の立場でありますけれども、そういうところとあわせて総合的に議論して、あるべき姿を考えなければいけないというのが基本的な立場であるというふうに思っております。
塩川国務大臣 御提案ありましたことは、私は政府税制調査会に、こういう質問があったということの報告をして、検討してもらうようにいたしますが、しかし、私個人としての考え方を言いましたら、この問題は深く貸倒引当金をどうするかという根本的な税制の問題にひっかかっておるわけです。これは一方から見ましたら、有力な実は国庫の財源でもあるわけなんですね。ですから、これを根本的にどうするか。銀行だけをどうするかということの問題とやはり区別して考えなきゃいけないんじゃないかなと思っておりますが。
 なぜ今日までこの問題が余り議論されていなかったかというと、やはり企業全体の問題として、そして税制との関係で議論がされなくて、今改めてクローズアップしてまいりましたので、この問題をまず考える。同時に、そうならば、銀行だけ特別扱いいたしましても、金融制度調査会等において、これを会計基準でどう扱われるのかということ、ここらもやはり我々、税の改正を検討するのならばそういう問題も並行して、同時的に解決の方法を考えてもらわなければ議論ができにくいんじゃないかなと思っておりまして、まず、なお検討してまいりたいと思っております。
渡辺(喜)委員 とにかく、この問題は一年も二年もかけて検討する話ではございませんので、早急に結論を出す必要があろうかと思います。
 次に、竹中プランと言っちゃいけないのかもしれませんが、アクションプログラムですね、この中には、いわゆる緊急対応プランがどうも希薄であるという気がいたします。我々が今考えなければいけないことは、コンティンジェンシープランなんですね。したがって、例えば株価が八千円を割ってくる、こういうことになりますと、今のルールでも銀行の自己資本は相当にえぐられてきてしまうわけでございます。
 したがって、そういった場合の緊急対応として考えておかなければいけないのは、やはり次の公的な増資の問題なんですね。この場合に、では減資はやるのか、あるいは増減資でいくのか、減資、増資でいくのかという問題が一つございます。
 それから、もう既に入っております公的資本、これは竹中プランの中でも、優先株を普通株に転換する、こういうことが書かれておりますけれども、公的資本を毀損させるということは一言もこのプランの中には触れられていないんですね。しかし、公的資本を毀損させなければ、次の増資は難しいということは考えられるわけでございますから、この点についてはどうお考えなのか。
 また、次の公的増資は普通株でやるのか、はたまた議決権のない普通株、あるいは優先株というような種類株でやるのか。私は普通株でやるべきだという立場をとっておりますが。
 このような三点について、竹中大臣の御見解をお聞かせいただけますか。
竹中国務大臣 大きな問題、三点だと思います。
 コンティンジェンシープランに関しては、基本的にはこれは、万が一に、万が一にも金融機関に経営危機的な状況が訪れて、それが社会的な広がりを持つような場合には、やはりそこから、この問題から経済全体、金融を底割れさせないという仕組みをつくっておかなければいけない。それは実は金融のシステム強化の枠組みの中で、私はやはり大変重要な問題だと認識しておりますので、底割れさせないという仕組みは、今最終的に検討してまいります中にやはりしっかりと埋め込まなければいけないというふうに思っております。
 恐らくその間は、コンティンジェンシープランとしてより重要なのは、やはり日銀にお願いして、日銀特融等々でしっかりとそこで防ぐということが基本でありましょうから、その上で恐らく二番、三番の問題が出てくるんだと思いますが、これについては、個々の対応ということになりますから一般的なことはなかなか申し上げられないというふうに思うのでありますけれども、これはやはり基本的には、政策コストを最小化するやり方で、かつ効果が一番大きい方法は何なのか。そのとき、企業経営のガバナンスでありますとか、先ほど委員が御指摘になった緊急性、コンティンジェンシーですから緊急性に対応して適切な政策をとっていくということに尽きるのであるというふうに思っております。
 そうしたことも含めて政策のやはり選択肢をしっかり持っておくということが大事である、こう思っております。
渡辺(喜)委員 竹中大臣は全く私の質問にお答えになっていないわけでございます。
 今問われているのは、銀行経営のガバナンスだけではないんですよ。国家経営のガバナンスが問われているわけでございまして、国家の一番大切な役割は非常時対応なんです。まるでこの非常時対応策ができていないということこそが危機そのものでございまして、私はこのことを深く心配するものでございます。
 きょう発表されるものがどういうものになるのか私はあずかり知りませんけれども、アクションプログラムの原案を見ておりますと、あちこちにアメリカンDNAみたいなものがちりばめられているんですね。先ほど申し上げたディスカウント・キャッシュフロー、それから、ティア1の一〇%以内に繰り延べ税金資産をとどめることとか、それから、平成十四年までに辞職した頭取については無罪放免にする、これなどはもう典型的に司法取引の流儀ですよ。
 きわめつけは新旧分離勘定の創設。これは、先ほどいみじくも塩川大臣がおっしゃられたように、マッカーサーの時代にやった話なんですね。あの時代に企業再建整備法とか会社経理応急措置法とか金融機関経理応急措置法というような法律をつくり、まさに新旧分離をやって損失処理を一気にやったわけでございます。
 そのときにまず最初に何をやったかというと、一九四六年二月十七日、マッカーサーが、ある日突然預金封鎖をするわけでございます。間髪を入れず大口預金、法人預金から切り捨て、個人預金も切り捨てたのですね。したがって、そのような占領政策をもう一度やるのかななんて、透かしてみると見えないこともないのでございますけれども、こういうことであってはいけないのですね。
 やはり我々は、日本の国益を第一義に考える、アメリカンスタンダード、グローバルスタンダードを排除もしないが妄信もしない、あくまでナショナルエコノミーの安定を第一義に考えるということが大事なことでございまして、ちょうど時間となりました。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻でございます。昨日に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。
 竹中大臣の、昨年、大臣就任のときの資産公開の件でございますけれども、この資産公開の資料を見させていただきますと、建物として二つ公表をされておられます。一つが、竹中さん御本人の所有ということで、中央区のマンションでございますか、四十五平方メートルが公表されている。もう一つは、奥様の所有ということで、これも東京都中央区のマンションだと思いますが、七十二平方メートルのものが公表をされておるわけでございます。そして、この七十二平方メートルのものは、昨日私が指摘しましたこの三十一階の部分であるというふうに思うのでございますが、いかがでございますか。
竹中国務大臣 その資産は私の所有ではございませんし、公開はしていないと思います。
長妻委員 いや、資産公開で、奥様の名義で七十二平方メートルのマンションだと思いますけれども、中央区の部分が公表をされております。
竹中国務大臣 手元に資料がございますけれども、その数字はちょっとございません。ちょっと、御確認、もう一度させていただければと思います。(長妻委員「奥様は」と呼ぶ)ございません。
長妻委員 これは奥様の建物の所有ということで公表されているわけであります。三十一階の部分、七十二平方メートルということで公表されておりますけれども、じゃ、それは間違いないわけですね。でも、これは本当に公表されているんですよ。奥様所有。
竹中国務大臣 ちょっと、手元に資料がございますけれども、そのような公表した資料は手元で確認してもないと思います。
長妻委員 そうしましたら、ちょっと確認したいんですが、奥様が所有されている建物、これの公表されたものというのはどんなものでございますか。
竹中国務大臣 所有している建物は、私と家内で共有しているマンション一戸でございます。私の持ち分と家内の持ち分がそこに記されているというふうに思います。
長妻委員 これ、もう一度ちょっと確認をいただきたいというふうに思います。ちょうどこの七十二平方メートルというのが、この謄本によりますと、三十一階部分の床面積とほぼ一緒でございますので、御確認をいただきたいと思います。後日、御確認をいただきたいと思います。
 そして、次に参りますと、きのうお示しを申し上げたこの資料一という、そのアクションプログラム、竹中案と言われているものでございますけれども、この点について、ちょっとまた質問をしたいと思うんですが、これは日本の国の政策の意思決定に非常に禍根を残すような、大変まずい意思決定がなされたんではないかというふうに私は問題意識を持っておりまして、この文章というのは、世間に出回って、金融担当大臣の竹中プランということで、ずうっとその議論をしている。
 きのうの竹中大臣の御答弁で、これ、速記録ですけれども、きのう私が質問した、お配りいただいている資料は、これは私がつくったものでも、金融庁のものでもないと認識しています、これはまあ、出所はよくわかりませんと。大臣の御答弁ですよ。こういうものがテレビに映ったりしていたのは拝見したことがございますし、中身についてさらさらっと見させていただきました、こういうふうにきのう言っているんですが、さらさらっと見させていただいたわけですけれども、だれから見せられたんですか。
竹中国務大臣 これは、こういうものが出回っておりますというのを秘書官からもらいまして、それで目を通したということです。
長妻委員 そうすると、これ、大臣の責任は重いと思うんですね。この資料が、世間はもう竹中プランということでずうっと歩いているわけですよ。
 竹中さんは、これは私がつくったものでも金融庁のものでもない、出所はよくわからない、でも見ている。そうしたら、もしこれが本当であれば、国会でそれは本当のことを言っているはずだと思いますけれども、本当であれば、それは、事前にこういう資料が外に出るのを阻止するとか、あるいは、もうマスコミに流れていれば、いや、これは全然私の知らない怪文書だ、全然知らない文書だというふうにきちんと宣言しないと、大混乱に陥りますよ。株が乱高下したわけですよ、この資料で。竹中さんのプランであればいいですよ、それは。ただ、全然竹中さんが知らない怪文書が出て、竹中さんのプランの名前で出回っている。それで株が乱高下している。自分は全然知らない資料だ。これは不作為の責任ありますよ。とめなきゃだめじゃないですか、これが本当であれば。その責任、どうお考えになっていますか。
竹中国務大臣 その点に関しましては、記者会見等々で重ねて、そういうものは私はつくっていないし、まだ私自身何も決めていませんし、そういうことはないということは繰り返し繰り返し申し上げたつもりでございます。しかし、この過熱報道の中で、結果的にはいわばそういうものがマスコミの中でひとり歩きしてしまった。その点に関しては、これはやはり、引き続きそういうことはないということを私は言い続けているつもりでありますけれども、はっきりと申し続けたいというふうに思います。
長妻委員 これはぜひ委員の皆様も考えていただければと思うんですけれども、一国の日本の国の政府が、それも、今重要な、この市場に敏感に反応する金融問題で、竹中大臣の名前で、大臣の言によれば怪文書ですよ、全然知らない、竹中をかたった文書が外に出て、これだけ報道されて、国会でも問題になり、マスコミ、市場、マーケット、銀行もこれに基づいて日本じゅうが議論をする、これは怪文書だ、こんなばかな国というのはあるんですかね。これは本当に真剣に我々も考えなければいけない問題で、政治は結果責任ですから、竹中大臣、これが怪文書ということであれば、大臣としてどういう御責任をとられるおつもりですか。
竹中国務大臣 例えば、経済財政政策担当大臣として、経済財政諮問会議でこれまでもいろいろなことを言ってきましたが、その過程でも、こういうふうに決めた、こういう文書がつくられたと、私が見たこともないようなものが、これは物すごい数、新聞で出てまいりました。そのたびに、そういうものはまだ決定していないし、そういう正式なものはないはずだということを申し上げてきたわけでございますけれども、これはとにかく情報管理をしっかりとして、その都度はっきりと申し上げていくしかもう方法がないのだと思います。いわば言論の世界でいろいろなことが言われて、これは今の社会のシステムの中ではとめようもない部分というのが残念だけれどもあるように思います。その点は大変残念に思いますが、私としての責任は、繰り返し、そういうものは、ないものはないとはっきりと申し上げてきちっと政策を立案していくことである、それが責任であるというふうに思っております。
長妻委員 これは本当に大きい問題だと私は思っていまして、ある意味では、風説の流布とまでは言いませんけれども、それに近い、大臣の名前で大臣は全然知らない怪文書がひとり歩きして、これだけ株価が乱高下しているということでありますので、本当はこれは大臣、重大な責任を、これだけ市場を混乱させ、市場あるいは国会でもこれに基づきマスコミも含めているわけですので、責任を痛感していただきたいと思います。政治は結果責任でありますので、ぜひ、御認識をいただきたいと思います。
 そして、おとつい朝、竹中大臣と銀行の皆さんがお会いをされた、そして、その後、お昼に自民党の幹部の方にその銀行の方が会っていろいろな陳情といいますか、これも竹中プランのペーパーに基づいた陳情みたいなものがあった。そして、自民党は、過去、銀行業界から巨額の献金をもらっている事実はあるわけでありますけれども、何か銀行業界の言い分を不自然に、非常に聞き過ぎているんではないのかなというふうに私自身は感じておりまして、これは、きょうはまずは問題提起だけにとどめますけれども、非常に銀行業界寄りの、特に自民党の幹部の動きが私は大変気になっているということを申し上げてまいります。
 そして、昨日もこの委員会で質問が出ましたけれども、平成十七年三月期に不良債権問題を終結させるという小泉総理の公約があって、竹中大臣もその指示をもらっているという話がありました。そして、この委員会での質問で、では、その平成十七年三月期はどういう状態になったら不良債権が終結なのかという質問があったときに、大臣はちょっと抽象的なお話がありましたけれども、当然小泉総理の本会議での発言というのは大臣も御存じだと思うんですが、これは昨年の十月三日の参議院の本会議場で小泉総理が「平成十六年度には、不良債権残高の貸出金に占める比率をおおむね三%台後半から四%程度とするなど、不良債権問題の正常化を図るよう努めていきたい」というふうに言っておりまして、これは小泉総理の具体的な数値目標ということで出ているわけでございます。
 それで、この三%台後半から四%程度にする、これはもちろん総理の発言でありますから、これ以下にするというのは、これは大臣も当然御認識して、これは間違いないということでございますね。
竹中国務大臣 総理の御答弁はもちろんよく承知をしております。昨日も少し申し上げましたけれども、基本的な目標というのは、金融システムを強固にすることであり、そういうような、信頼感を獲得するという全体的な評価であろうというふうに思いますが、一つのメルクマールとして総理が御指摘になっていることというのは、私自身も重要なポイントになろうかと思っております。
長妻委員 平成十四年の三月期の不良債権比率が八・四%でありまして、そうすると、平成十七年三月期に三%台後半から四%程度にするということは、約半分にするということでありますけれども、本当にこれは、もう自分はやるんだということで間違いないわけですね。
竹中国務大臣 これは大変重い仕事でありますけれども、総理からは、とにかく十六年度には先ほど申し上げましたような総合的な信頼感を取り戻せているような状況をつくり出せ、それが不良債権問題の終結ということでありましょうから、これは大変、繰り返して言いますが、重い目標ではありますけれども、やはりその目標に向けてやらなければいけないというふうに思っております。
長妻委員 では、改めて大臣の口から、今、三%台後半から四%程度というのを平成十七年三月期に実現するというお話がありましたので、これは最低のラインということでありましょうが、これは国際公約でありますのでよろしくお願いをいたします。
 そして、きのうちょっと質問を申し上げて若干途中になったんでございますけれども、重要な雇用問題でありますが、改革先行プログラムで、昨年の十一月からですけれども、三年間で百万人分の雇用を出すということで、竹中大臣は年度ごとに実績を集計してそれを発表するというふうに言われました。何人、実態として、実績としてふえたかという発表を年度ごとにするということでありますけれども、では、この百万人に関して、第一回目の発表は、年度が来年三月終わりますから、四月とか五月とかその時点ぐらいで発表されるということでよろしいんでございますか。
竹中国務大臣 昨日申し上げましたのは、これはやはり政策の評価をしっかりしなければいけない、そういう中で、委員御指摘のような点についてもおこたえできるようにしていかなければいけないというふうに思っております。
 これは、したがって、この問題だけではなくて、政策を打ち出して、その評価、レビューをどのようにしていったらいいかという、その制度設計の中で、時期の問題、その表示の仕方等々を少し詰めてみたいというふうに思っております。
長妻委員 大体めどとしては何月ごろに、これは重要なんですよ。雇用をふやす、何万人、何万人、何百万人というのがいろいろ過去出ていますけれども、検証が全然なされていないわけですね。ですから信頼性が余り出てこないわけで、大体年度が終わった後、何月ごろ、実態、何人雇用がふえた、大体何月ごろか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。うやむやに、過去、なってしまう例が多いので。まあ、大体。
竹中国務大臣 ちょっと、御通告もいただいておりませんでしたので。
 それは統計のアベイラビリティーもございますし、事務作業等々の都合もございますので、これはもちろん早ければ早い方がいいわけでありますから、どのような政策評価の中での方法が可能かということをぜひ事務的な問題点も詰めて検討させていただきたいと思います。
長妻委員 これは、通告もして、昨日も質問をしている件でありますので、ぜひ速やかに、委員会でこういうふうに時期を明言されないでお約束されたことがなかなか守られていないケースがありますので、大臣は本当にビジネス感覚があられると思いますので、やはり期限がない約束というのは約束じゃないということでありますので、ぜひよろしくお願いします。
 最後に、業務改善命令を今月十八日にUFJとあさひ銀行に出された。これは、なぜ出されたかといいますと、中小企業への貸し出しが目標を大幅に下回るどころか、UFJは、二兆五千億円も中小企業への貸し出しがマイナスになった。あさひ銀行は、一兆四千億円も中小企業への貸し出しがマイナスになった。ことしの三月期でありますけれども。
 こういうとんでもないことが起こっていて、さすがに金融庁も業務改善命令を出したと思うんですが、これも、ただ出しっ放しじゃなくて、本当に最後きちんとやらなければ、最終的なデュープロセスを踏んで、これは一番きつい処分というのもあるわけでございますので、今後のプロセスの概要、何月にこういう計画を出させて、どのくらいの時期までに改善しなければこういう命令をまた出すとか、こういう措置をするとか、大体の概要を、大臣、毅然とした態度で銀行に臨んでいただきたいと思うのでございますが、お教え願えればと思います。
竹中国務大臣 まさしく今回の件は大変遺憾なことであったというふうに思っております。したがって、当局としても、毅然とした態度でこの両社に対して業務改善命令を発出した。これを着実に実行していただくことがやはり重要でありまして、業務改善計画提出後、三カ月ごとにその状況をチェックしていくというような方向でしっかりと指導していきたいというふうに思います。
長妻委員 最後に、退職金ですね。これはみずほ銀行が、ことしの三月期ですけれども、役員の平均の退職金ですが、七千五百万円出ている。それでUFJ、二兆五千億円、これだけ中小企業の融資を減らしておいて、役員の平均退職金が、平均ですから、四千四百万円出ている。あさひ銀行も四千九百万円出ている。
 本当は退職金は要らないんじゃないですかね。これだけ経営判断を誤って中小企業に苦しい思いをさせているわけですので、大臣、退職金の問題、これはちょっと高過ぎるといいますか、支給をすべきでないような御指導といいますか、そういう御見解を、民間だから民間に任せるという御答弁じゃなくて、もうちょっと厳し目に、スタンスが何か急に銀行寄りに大臣はなっているようなイメージを私は受けるんですが、厳しい御発言をお願いします。
竹中国務大臣 これは行政、仕組みのもとに基づいてやっておりますので、例のいわゆる健全化計画の中のチェックを金融当局がさせていただいているというのが基本的な立場です。それはもう十分おわかりの上での御発言でありますけれども、これについては、国民の感情というものもやはりあろうかと思いますから、その全体の計画のあり方も含めまして、国民感情、まさにきのうは市場の評価との差というふうに申し上げましたけれども、国民感情とのそのギャップのような問題につきましても十分に配慮していきたいと思います。
長妻委員 どうもありがとうございました。
小坂委員長 次に、佐藤観樹君。
佐藤(観)委員 民主党の佐藤観樹でございます。
 当委員会で私も一年間皆さんと一緒に議論をしてきたわけでございますけれども、柳澤大臣のときには、いや、銀行は健全なんですと。我々は大体、他党の方もそうでございますけれども、民主党の方は、公的資金を入れてしゃんとしないといかぬのじゃないかということを言ってきた。自民党さんでも、今問題になっております税効果会計を入れたら、これは資本金割れをしているんじゃないかということを言う方々も、与党の方もいらっしゃった。にもかかわりませず、いや、大丈夫なんですということを言っていった。竹中さんになってから、いや、銀行は大変でございます、大変な状況になっているので、これは早く直さなきゃいかぬということを言われている。
 私は、基本的に、基本的にですよ、後で細部につきましてはしますが、銀行の不良債権の処理から始まるところの一連の改革、これ自体は基本的には賛成であります。細部についてはいろいろと後でお伺いをしますけれども、基本的に賛成でございますが、国民の皆さん方に、いや、健全だ健全だ、何も心配はないんだと言っておきながら、今になったら、株価から見ても何から見ても大変だというような状況にあるという背景には一体これは何があるんだろうか、我々は一体何を審議してきたんだろうかと。
 結局、この問題は、我々議員というのは基本的にはトランプの表側しか見られないわけですね。その他のいろいろな資料をいろいろ駆使して、できる限り実情に近いものにしたいと思ってやっているわけだけれども、これは、トランプの裏、つまり金融の実態を把握しているのは金融庁なわけですよね。
 それをもとに今まで議論をしてきたら、今度は百八十度違う状況になっている。この背景には何があるのか、このことをはっきり国民の前に明らかにしないと、まず出発点から全然違っちゃうということになるわけであります。だから柳澤さんが更迭されたんだといえばそれはそれまででありますけれども、同じ金融庁の役人自体は変わっていないわけですよね。したがって、この背景として、どういうことがあったのかということをまずお披瀝いただきたい。
竹中国務大臣 これまでの厳しい経済金融環境の中で、前大臣、それと金融庁は、限られた環境の中で危機を起こさせないための万全の措置を講じてきた。特に、昨年、一年ないし一年半は、世界的に見て非常に強い下方圧力の中で、まさに危機を起こさせないために万全の政策をとってきたというふうに思っております。
 その中で前大臣が、危機ではないということをやはり強調する必要があったと私は思いますし、そのことはそのことで高く評価されるべきだというふうに思っております。
 しかし一方で、金融システムは危機、危篤状態ではないけれども、やはり病がそこにはあるということは、これは、私はこれまでも金融庁はその病の部分があるということは否定してこなかったと思いますし、そのことを改めてこの時点で強化しよう、その政策を強化しよう、つまり、危機を起こさせない行政からさらに一歩踏み込んで、政策を強化して根本的な治癒に乗り出そうではないかというのが、私は今の現状であろうかと思っております。
 構造改革をこれからますます加速させていくためには、この構造改革を支えられるような強い金融システム、単に危機を起こさないだけではなくて、強い金融システムをつくっていかなければいけない。そういった点を踏まえて、経済、金融一体となった政策を打ち出して、この政策、構造改革を支えるシステムを強化していきなさいというのが総理からの指令でございますので、そのような流れの中で、今議論している不良債権処理の加速を位置づけて評価をしていただきたいというふうに思っております。
佐藤(観)委員 危機がというのはどういう状況で、病んでいるというのはどういう状況なのかという抽象的な議論は私は余り好きじゃないものですからそれはやりませんが、そういう意味で、国民に対しての説明責任といいましょうか、なぜ竹中さんになったら、百八十度変わったと言っていいのかどうか、という表現が当財務金融委員会として正しい表現かどうかわかりませんけれども、その説明責任というのがあると思うんです。
 もう一つ、金融機関の不良債権の処理を加速化すれば、日本経済がどういうプロセスで、どうやって健全化、活性化していくのかというプロセスを示さないと、今新聞に躍っているのは、税効果会計がどうかとか、あるいはディスカウント・キャッシュフロー、DCFがどうだとか、銀行はどうだとか、銀行首脳とどうだとかという話ばかりを報道されていて、これがどういうふうに日本経済の健全化につながっていくのかというプロセスをはっきり国民の前に示さないと、話が銀行の国有化なり、あるいは、一部そういうところがあるんですが、現経営者の首をとること、これも後で触れますけれども、そちらが目的化しちゃって、その目的のためにやっているというふうにしか報道を見る限りは出てこないわけであります。
 最終目標は経済の健全化の問題であり、発展性のある日本をつくっていく問題でありますから、そのプロセスをどういうふうに考えていらっしゃるのか、竹中大臣の御意見を伺いたい。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
竹中国務大臣 非常に重要な御指摘をいただいたと思います。
 金融の話というのは、これはどちらかというと非常に抽象的な概念を積み重ねて議論をせざるを得ない面がありますので、大変経済にお詳しい方にもわかっていただくのがなかなか難しいという面があります。であるからこそ、この問題に対する説明責任というのは大変重いというふうに感じております。
 残念ながら、こういう政策の議論が始まりますと必ず、御指摘のように、このディスカウント・キャッシュフローはどうなのかというような、これは御専門家の間では大いに議論をいただかなければいけないんですが、世論といいますかマスコミの議論全体が局部的に矮小化されていく兆しがありまして、ますます議論の全体が見えなくなっているというのが現状であろうかと思います。
 私としましては、就任のときから、日本の金融システムというのは、危機、危篤ではないけれどもやはり病んでいるというふうに考えて、そのプロセスをこうしていきたい、その中では、先ほどから議論いただいております資産査定やガバナンスを通してこういうふうにやっていくのだということを申し上げてきたつもりではありますが、しかし、これでもやはりわかりにくいというのはそのとおりなのであろうかと思います。議論を積み重ねる中で、これは毎回毎回そうでありますが、経済対策の取りまとめと同時に、国民の皆さんに対する広報というのは内閣府を中心にやっておりますので、今回は、従来以上にこの問題に対して十分な説明責任が果たせるように努力をしたいというふうに思っております。
 もう一つは、どういうプロセスがということでございますけれども、このプロセスについては、先ほど渡辺委員からのお話の中に、まさに産業との、再生との一体化というお話がございました。金融機関から見ると非常に重い不良資産、不良な貸し付け、企業から見ると過剰な債務の問題でありますから、これをどのように解きほぐしていくのかということを、政策全体の姿を示す中でできるだけわかりやすくプロセスを示していきたいというふうに考えているところでございます。
佐藤(観)委員 プロセスが出てくるのかなと思ったんですが。
 私は、この問題というのは、私流に言えば三段階あるんだと。今の状況、まさに不良債権で満ち満ちているという言葉がいいかどうかわかりませんが、そういう状況と、最終的にはニュービジネスなりベンチャーなり産業の活性化なりという構造改革がなされた日本の産業の姿、企業の姿というものが三段階目にはある。そしてその途中に、まず、不良債権でまさに不良なものはRCCで処理をしてもらう、それから、後で塩川財務大臣にお伺いしますけれども、健全な、これは立ち直れるというものの処理はまた別のところでやるという金融サイドの問題があります。
 それから、どうしてもそれで対応できない部分がありますから、先ほど触れられたように、働く人々の、職場を失った人が今言った三段階に行くまでのセーフティーネットをどうやって張っていくかという問題。雇用の問題、セーフティーネットをどうめぐらせていくかという問題。
 いわば破壊と創造があるんであって、そしてその途中がまた大事だということなんで、今はまあ、強いて言えば破壊の段階だというふうに私は思っているんです。いわばこういうプロセスというものをはっきりと、金融のみにかかわらず、あなたは経済も諮問委員会の委員という立場でしているんでありますから、そのこともはっきり国民の前にしていかないと、繰り返しになりますけれども、結局、やれ税効果会計がどう、このことも大事なことでありますよ。DCFを日本に入れたらどうかということ、このことも非常に大事なことでありますが、いわば銀行、金融機関の最終的に国有化なりなんなりというのが目的のように見えちゃって、これは一つの手段なのであって、過程なのであって、出発点なのであって、最終的には産業の活性化へ持っていく過程というものを国民の前に見せないと、本筋が見えないのではないかというふうに思いますが、いかがでございますか。
竹中国務大臣 全く佐藤委員のおっしゃるとおりであるというふうに思っております。
 先ほど申し上げましたように、政策の取りまとめとあわせまして、御指摘のような、まさにそのプロセス、つまり何のためにやっているんだ、まずこういうことをやりましょう、それにあわせてこういうことをやっていくつもりであります、したがって、最終的には日本経済を以下のような姿に持っていきたいんです、これは基本的な考え方は既に骨太方針等々で何回か示してはいるのでありますけれども、今回の措置にあわせまして、そのような説明責任をきっちり果たすということをぜひなしたいと思っております。
 ただ、それが段階的にというか、現実には同時進行になりますので、そういった点もぜひ御理解いただけますように、しっかりとやりたいと思います。
佐藤(観)委員 言われるように、私も大まかに言って三段階に分けましたけれども、ある部分では入り乱れているんですね。現在でも、ニュービジネスなりベンチャーなり、あるいはまたニュービジネスをつくる背景を、研究所の問題とか税務上これが現状でいいのかというようないろいろな問題も、今もやらなきゃいかぬわけでありまして、だからぴしっと三段階に分けられるわけではないけれども、いわばあえて段階に分ければそういうことであって、しかしお互いにそれは入り乱れて、なるべく早く最後の段階に持っていかなければいけませんよ、三段階目に持っていかなければいけませんよということであることは、そのとおりであります。
 そこで、三番目にお伺いしたいのは、今長妻さんからもお話がありましたけれども、UFJとあさひ銀行の中小企業向け貸し出しの問題であります。
 事態については、ことしの三月期、UFJは、五百億円ふやすという約束どころか、ざっと二兆五千億円の中小企業向けの貸し出しを減らしている。あさひ銀行も百億ふやす予定にもかかわりませず、一兆四千億円中小企業向けを減らすというようなことで、業務改善命令が出されているわけであります。
 それで、特にUFJは、新聞の報道では、そこまでは金融庁の業務改善命令には書いてありませんが、中小企業向けの融資をこれだけふやしなさいという、各支店にすら何らの計画もつくっていなかったということも報じられておるのでありますけれども、これはそのとおりなんでしょうか。
 そして、帝国データバンクによりますと、半期九千件台の倒産が三年連続しているというわけですね、三年。だから、一年にしても約一万八千件近くの倒産が三年間立て続けに続いているという状況、このことは、今申しました金融の中小企業向け貸し渋り、あるいは貸しはがしというものにつながっているというふうに思います。
 というのは、UFJのやっているやり方というのは余りにも金額が大きい。そして、もう一回確かめたいのでありますが、支店には貸し出しをふやしなさいという計画も何ら示させていない。この間、平成でいえば十三年から十四年までのこの一年間、一体金融庁というのは何にも言ってこなかったのかね。それは、二兆五千億という金額の余りの大きさに唖然としたのでありますけれども、ここのところはどういうふうに金融庁はやっておったんですか。
竹中国務大臣 何度かこの委員会で御指摘をいただいていますように、今回の措置、こういう事態を招いたということは、これは大変残念なことであるというふうに思っております。まさに御指摘のように、これは健全化計画の履行状況の報告を受けて公表しているわけですけれども、大手行では、みずほ、住友信託を除くすべてで減少になったわけでありますし、特に、みずから的確に履行しようとしていない、ちゃんとやる形に、体制になっていないと認められるところに対しては、やはり厳しく今回業務改善命令を出したわけでございます。
 ちょっと個別の事例について今御紹介がありまして、必ずしも即座に答えられないのでありますけれども、このUFJホールディングス及びあさひ銀行に対して行政処分を行った理由としては、貸し出し増加に向けた取り組み状況等の報告徴求を行って精査しましたところ、UFJについては、中小企業向けに限定した貸し出し目標の設定を行っていなかったということ、あさひ銀行については、十三年度下期において中小企業向け貸し出し目標の設定を行っていないなど、つまり、達成目標に向けた実効性のある政策が十分に講じられたとは認めがたい、したがって、みずからこれを的確に利用しようとしていない、そういう場合に明らかに当たるというふうに厳しく判断したものでございます。
 したがって、これは業務改善命令を出したわけでありますけれども、それまでも報告をいろいろ求めてやってはいるわけでありますけれども、結果的にこういうことが起こって、それで業務改善命令を出せばそれで済むということではもちろんありませんので、そもそもこういうことが起こらないように、しっかりと奥を見ていく仕組みをつくる必要があると思っております。
佐藤(観)委員 これはやはり、きょうは金融庁の幹部を呼びませんでしたけれども、金融庁のいわば事務方の怠慢ですよね。それは最終的にではあるけれども二兆五千億もの貸し出しをされていない。いや、来年度は五百億円ふやしますなんということがよう恥ずかしくもなく出してこられる。またそれを許している金融庁というのは一体何なんだ。その間に、貸し渋りによって、あるいは貸しはがしによって倒産した人はどうなるんだ。金融庁も含めて、自分たちがやってきた事態でどんどん経済の実態を悪くしているということにつながるわけでありまして、先ほども長妻委員からも御指摘があったように、これは厳しく今後監視を、三カ月に一回ずつ報告書を出させるということのようでございますけれども、厳しくこのことはやっていただきたいと思いますが、よろしいですね。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 今回の件を一つの反省材料として、どういうような手が打てるか、しっかりと検討をさせたいと思います。
佐藤(観)委員 それで、委員長、各位も御同意いただけると思いますけれども、一度、何行でもいいですが、少なくもこの前、この当財務金融委員会にお呼びをした銀行の頭取に参考人として来ていただいて、しっかりとそのあたりのことは、間接話法ではなくて直接話法として、今の実態について聞く機会をつくっていただきたいと思いますが、委員長、よろしいですね。
小坂委員長 理事会で協議させていただきます。
佐藤(観)委員 それから、皆さんもそうだと思いますが、我々は、地域を歩いていますと、全く、銀行に対する批判というのは非常に大きいです、これは。そもそもが、今の不良債権というのは、バブル期のときに、借りてくれ、借りてくれ、貸出先がないから借りてくれ、借りてくれといって拝み倒して借りさせておいて、バブルがはじけてこれが不良債権化するようになると、手のひらを返したように、全くそんなことを言ったことは忘れたようにやるこの銀行の態度。このことは今まで何度も当委員会でも指摘されましたけれども、この貸し渋り、貸しはがしの対応というのは、非常に国民の中に不満がある。
 それからもう一つ。これも長妻委員から御指摘がありましたが、銀行員の給与というのは非常に高いと言われているんです。四十歳代だと大体国会議員並みの給与だと言われているのであって、なぜ、だと言われているかというと、公表しないからであります。各マスコミの、いろいろなことで公表しないから。個人のプライバシーを私は言っているんじゃないんです。プライバシーを言っているんじゃなくて、春闘なんかでも、金融機関の給与というのはどういう実態にあるのかというのは全然表へ出てこない。この不透明さ、これも中小企業のおやじは怒っているわけですよね。自分たちをさんざん苦しめておいて、自分たちはぬくぬくと大変な高給を取っているということ、これもはっきりさせていただきたい。
 先ほど長妻委員から言われましたように、退職金についても、全く、今の状況の中で退職金を取るというのは、これは、本人たちは一生懸命やっているつもりだろうけれども、国民感情からいきますと、とても甘受しがたいことですよ。
 ぜひひとつ、そういう意味での金融機関の透明性を増すこと。金融機関がもう一回信頼を回復しようと思ったら、みずから、何も個人の給与の実態を言えと言っているんじゃなくて、各世代ごとにどのぐらいだということを何らかの格好で言わなければ透明性というのは確保できない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
竹中国務大臣 まさに、日本の銀行及び銀行システムの信頼性と透明性をどのように回復していったらよいのかという根本的な御指摘だというふうに思います。やはり私は、ここは日本の銀行にぜひとも襟を正して頑張っていただきたい重要な局面であろうかと思います。
 これまで、日本の銀行システムというのは、安定的な資金供給等々でやはり重要な役割を果たしてきたわけでありますけれども、この九〇年代、特に九〇年代後半の経済変動の中で新しい姿を今求められた。九八年から九九年にかけて一段の銀行システムに対する変化が生じて、今、それを受けて、さらに銀行システムそのものを大きく変質させて強くしなければいけない状況であろうと思っております。
 やはり社会の一つのインフラを担っている機関でありますから、何よりも信頼性が基盤になりますし、その意味では、公的な役割を果たしているわけですから、透明性の問題も出てくる。そうした観点から、これは金融の不良債権処理を加速する新しいシステムの中で、銀行部門に、今御指摘のような点も踏まえて、一段と襟を正して信頼性を確保する、透明性を高めるというような努力をしてもらいたいし、金融庁としてもそのような方向でぜひ行政を進めたいと思います。
佐藤(観)委員 ひとつぜひ、私は、金融機関というのはますます厳しい方向に行っていると思っているわけで、状況は悪くなっていると思っているわけでありますから、今竹中大臣が言われるような、透明性を高める、国民の信頼を得ることは一つ一つやはりやっていかなきゃいかぬというふうに思っておりますので、ぬくぬくとしておられるような状況じゃないということを、しっかりとやっていただきたいと思います。
 次に、後の問題とも関連するんですが、ダイエーの決算が発表になりました。別に、これはダイエー、一つのダイエーというスーパーの問題を取り上げるのではありませんけれども、ファンドを組んで、日本政策投資銀行がそのファンドにも入ってくるという問題、小泉内閣というのは、民でできることは民間に任せるというのが小泉内閣の基本的な方針じゃなかったんでしょうか。
 そういうことから見ますと、今現在、一兆二千三百五十五億という膨大な有利子負債額を持っていて、確かに半年前よりは減っているし、売り上げも一兆何千億という一兆円台しているところでありますが、この決算を見ますと、百十億円だったのが九十億円台にとまっているという。いつこれで完済できるんだろうか。
 一兆二千億もある有利子負債額を持っているところが、今期利益が九十一億円という、いつできるんだろうかと思うし、これは後の問題とも絡んでまいりますが、今度新しくそれを振り分けるところをつくるということのようでございますので、しますが、要するに、私のお伺いしたいのは、行政改革で、政策投資銀行を初め政府関係金融機関というのはなるべく撤退するんだ、民間は民に任せるんだ、今任せられるような情勢じゃないといえばそれまででありますが、といいながら、一方では、大変な、三年間で再建計画ができるかどうかというような企業に国の金融機関が出ていく。こういうことは、何かとてもちぐはぐ、矛盾、政策変更をしたのかなというふうに感ずるのであります。
 たまたま目についたのがダイエーであったものですからダイエーを例に挙げておりますが、これは、今後とも、政策投資銀行等公的金融機関、政府系金融機関、こういったものがこういう救済に乗り出していく、これは後の質問とも絡んでまいりますけれども、こういうことなんでしょうか。そこは、政策変更なんでしょうか。行政改革とはどういう関係になってまいるんでしょうか。
 そのあたり、これは担当がちょっとややこしいようでございますが、金融機関であるけれども監督官庁は塩川さんのところだということでありますので、どちらからでも結構でございますので、お答えをいただきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、一般論で言いまして、政策金融機関でございますね、政府が関与しております政策金融機関は、これはやはりいつの時代かは民に任せていく趣旨において行政改革の対象にしなければならぬというこの方針、政府の方針は、私はもう当然のことだと思って、私たち自身もそれは提案したものであります。そして、それは五年後においてこれを果たしていこうという一つの目標も持っておることも事実でございます。
 しかし、現在の時点に立って考えます場合に、政策銀行というのは非常に重要な意義合いをまだ持っております。一部、住宅金融公庫は民間が肩がわりしてくれるから、これで業務のいわゆる縮小を図っていく段階に入っておりますけれども、そのほかの中小企業金融、またあるいは国民生活の金融というようなものは、まだ現在の金融機関がそういう金融機能を発揮してくれておりませんので、その間は、しばらくの間、政策銀行としての使命を果たしていこう、そういうポジションに現在あるわけでございます。
 その中の一つとして、政策投資銀行につきましては、政策投資銀行の従来設立いたしました日本の産業界の活性化というものと産業界におけるところの調整的金融の役割ということを、当分の間、やはり続けざるを得ないのではないか。いわゆる市中銀行がその機能を発揮してくれない以上は、やらなければならないんじゃないかということで、現在、政策投資銀行の、一般銀行が、一般金融機関がやっております融資対象は減らしていって、そして、地域の調整なりあるいは企業の再生資金というものについては、やはりこれを継続して業務を拡大させておくということをやらせております。
 その一環として、今回、ダイエーの問題が出てまいりました。私もダイエーに、その決定した後、事後報告で受けたのでございますけれども、そのときに申しておいたんですけれども、こういうことをやるのには、やはり国民の、何で政策投資銀行がこれに介入したかということを説明がきちっとできるようにしなきゃならぬじゃないか。そのためには、政策投資銀行ではこういう事態、あるいはこういう企業、あるいはこういう整理に対しましては再生を可能として判断したので政策投資銀行も融資をしたという説明ができるようにしておかなきゃいかぬということを言っておりまして、それは、それなりの手続をやはり投資銀行としてはとっております。けれども、国民にはそれはわからない。そこを明確にする必要があるだろう。
 しかも、ダイエーの再建資金を出したことは、これはやはりダイエーとしては重大な決定でございますし、また、中小企業なり下請にとって非常に重要なことでございますので、このことは投資銀行の使命の達成の一つとしてやったので当然であると私はこれは是認しておるんですが、これが、今佐藤先生が質問した、わかりやすくやはり説明をできるようにしておかなきゃいかぬ、私は、そこを今後の心得として、管理者として指導していきたいと思っております。
竹中国務大臣 もう財務大臣がおっしゃったとおりであるというふうに思います。
 民は民で、民でできることは民でというのが大原則でありますが、本来、民でやってほしいようなことが、現実に、非常に弱った今の民間のシステムの中ではできないという厳然たる事実がございます。
 そういうところをむしろ積極的に補っているのが、今の政府系の機関の重要な役割であるというふうに思っておりますので、原則論を、実際、長期的にどのように官と民の役割分担をするかという議論は議論で進めながらも、現実にはその重要な役割を、やはり、今政策投資銀行の例が出ましたけれども、まさに社会の中で求められていることに対しては、これは積極的にやっていくということが方向だと思います。
 その際に、同時に、そのことをきちっと説明するという姿勢を貫くことが重要だというふうに思っております。
佐藤(観)委員 小泉流というのは、小泉内閣というのは、言われているように、原則はあるけれども、異例の場合というのはなし崩しというのが、これが小泉流ですよね。ペイオフでも、あれは五カ月だったか、延期すると言ったら、今度は二年延期するという話になって、だんだんなし崩しに、原則が虫食いになっていくというのが、これが小泉流というやり方で、皆さん方は、それを繕い、そして抗弁をし、何とかつじつま合わせをしているというのが皆さん方の姿に見えてならないわけであります。
 別にダイエーにこだわるわけではありませんが、そもそもダイエーの、これはとても再建は無理なんじゃないかということで当時は言われて、しかし、最終的には一千億積み増しをして五千二百億円の債権放棄をして、ファンドをつくったりしてやったわけでありまして、これで、これは後の質問につながる話でございますけれども、そのために、私的整理に関するガイドラインというのもわざわざ議論をしてやったようなわけでありまして、そういった意味では、今は非常事態だ、だから許されるんだというあり方というのは、大変、まさになし崩し的だと思うのであります。
 もう一つ、ちょっと問題が違うんですが、塩川さんはきのう、財務省からの天下りというのはやめるべきだというお話をなされた。日銀は財務大臣の管轄とは言えない、管轄という言葉は使えないから、ですが、もう一つ、金融機関、これも結局相手企業に振りかぶっていくものですから、親元の銀行のことばかり気になって、そういう相関関係になっていることが日本の銀行の健全性というものを失わせているんじゃないかというふうに私は常々思っているわけであります。
 あえてそのことを申し上げますのは、日産が大変な膨大な借金を持っていたわけですね。それが、来期の財務見通しでありますけれども、来期は八百億円、これは二兆八千億あった有利子借金を八百億円に来期の末にはしたい、するということをゴーン社長は言っているわけですね。
 つまり、借金まみれになったところに、銀行は何とか再建したいというつもりなんでしょう、人を派遣しているような、そういう日本流のやり方というのにこれも限界が来たんじゃないか。だれか、アメリカのDNAが入っていると竹中さんのことを言われたけれども、そのことは別にして、まさに、塩川さんも言われたように、大手でずっとやってきたところがなかなか伸びが悪い、むしろ一人の指導者がリードしていく企業というのは伸びているという話をきのうもされておられましたけれども、まさに日産なんというのは、まさに瀕死の状態だったのが、一人の指導者のもとでこういう経営改善を図られる。
 そういう意味からいうと、銀行が貸出先の相手に人を派遣するということも、これもやめるべきではないかというふうに思いますけれども、お二人の御意見をお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 天下りというのは、基本的には監督権限をある意味で活用して、ないしはその上に乗っかって、それで人的な、人員を送り込む、そういうことになるわけでありますから、これは本来やるべきではありませんし、そうしたことが、これは決して官民だけではなくて、民間の間の、親会社、子会社の間の関係でも、同じように、その優越的な立場を利用して人を送り込んで、それが変化を拒んだ、柔軟な意思決定を阻んだ、これは、もちろん会社ごとによって違うわけですけれども、やはり社会全体としてはあったという点は私は認めなければいけないんだと思います。
 その意味では、これはもうそういうことは断じて続けないという、きのう財務大臣のお話にもございましたけれども、一方で、これからまた、しかし、再生を進めるためにはやはりこれは人を送り込まなければいけない。いい人を、もちろん権力等をバックにして人を送り込むわけではないわけですけれども、これは本当にいい人材を送り込まないと再生はできないわけでありますから、人材の活用ということは、これはむしろ前向きに考えなければいけない面が出てくると思います。
 その辺の仕切り、仕分けをはっきりとして、人材を有効活用しながら、しかし今までの問題点を克服していく、私はこれはできると思います。そういうような今状況に、これは社会全体が立たされているというふうに認識をしております。
塩川国務大臣 要するに、天下りというのも、金融機関と財務省、今財務省でございますが大蔵との関係は、これはやはり相当癒着の関係があったと思うておるんです。それは、見てまいりますと、事務次官をやった者はこういう格付のこの銀行のこういう役割、こういう局長クラスのこれはこういうところというような、一定のランクのようなものがあってやっておりまして、これはやはり、何としてもこういう就職のあっせんというものはやめるべきだと私は思います。
 けれども、人材を必要としている銀行が、自主的に、だれそれさん、うちの方のこういう仕事をやってくれませんかということであれば、私はこれは結構なことだと思って、何もこれを阻害する必要はない。けれども、いわばしきたりといいましょうか、当然のポジションのように人事が交流されていくということは私はもうやめるべきだと思っております。
 そこで、佐藤さんに私ひとつ提言があるんです。これは佐藤さんが、民主党の大幹部なんだから、ひとつ政党として考えていただきたい。私は自民党にもお願いしておるんですけれども、今、公務員が大体五十七、八歳で肩たたきですね。こんなことをしておいて、天下りいかぬのどうのということを言っていることも一つの大きい矛盾なんです。私はやはり、優秀な人材相当おると思いますよ、それは。ですから、これなんかやはり活用できるように、定年を延長するか何かして活用することも考えないかぬ。
 そこで、問題となりますのは給与なんですよね。定年延ばしていったら、どんどんと退職金がふえるやないか、仕事もしよらぬじゃないか、こういうことを言いますけれども、決してそうじゃない。
 だから、給与の面は、五十七歳、定年のところで停止して、ずっと下降線をたどるようにしてもいいから、とにかくその人材を、それと経験を、行政の方へ生かすようにして、そうしますと、そこからは、自分はもう第二の人生としての公務員だということになれば、もっと冷静な判断をすると思うんですよ。そこをやはり公務員制度全体として研究してもらったらどうだろうと思いますね。
 でないと、若い子はどうするか。優秀な子は途中で、この役所にいても先見えとんのやから、おれはもう飛び出して一旗上げよう、ここの中、いやいや、民主党の中にもおられますよね、そういう人。そういうのも出てくるんです。
 それから、そうすると、私はやはり人材の使い方。要するに人的資源ですよ、これは。この使い方の問題もやはり考えてもらいたいと思うんですね。不良資産ばっかり考えないで、こんな人材の問題も同時に……(発言する者あり)いや、やはり政党としてですよ、政党として考えてみるべきだと思いますよ。ぜひ、ひとつ私は提案しておきたい。
佐藤(観)委員 もうその発想は民間では現にやられているわけですよね。それから、今人生八十年時代で、五十七なり八なりで民間で肩たたきするにしては、肉体的には若過ぎる。労働力が減ってくる時代でありますから、そのこともそうだし、それから、企業によっては民間では、民間ですよこれは、五十歳なり五十五歳で一時退職をして、その後もう一回再就職を、延長して、ただし、給与は減っていきますよ、退職金の中に算入するものは、する部分としない部分とか、年金の問題とか、医療の問題とか、いろいろ民間はかなり工夫してやっていると思うんですよね。最終年齢を幾つにするかは別にしても、民間はやっているわけです。
 そこで、私が答える立場ではないんだが、これは私の個人意見でありますが、公務員をどうするか。公務員が余りにも早いがために、不幸にしていろいろ悪いことをする人も出てきた例が過去にあるわけで、そういう意味で、民間に準拠したやり方というのを考えるゆとりというのはあるのではないかというふうに、私は個人的にはそう思っているのであります。
 八十近い塩川さんと六十になった私とがこれ以上の年代の話をしていても時間がたちますので、それはとりあえずそう思っていますが、基本的には、公務員の問題は過去のいろいろな経過がありますから、これはもう少しいろいろ考える必要がありますが、基本的に、流れとして、私は塩川さんの言われたことを理解いたします。
 次に、本論に戻ります。
 要するに、私は、日本のよき風習であった、仕事をする環境というものは、それはそれであったと思うけれども、今は時代が違うんじゃないかというのが、日産の二兆八千億の有利子負債が来年度末には八百億になるという、こういう経営のあり方、考えられないような経営のあり方というものにやはりするためには、民間金融機関も、相手先に行くということももう少し自粛をする必要もあるんじゃないかと思います。
 それで、実は、今の事態、銀行首脳と竹中さんもいろいろと最近会っていらっしゃるわけなんですが、税効果会計というのは、突然ルールの変更をするのはおかしいということは、言っていることがおかしいというのはきのう五十嵐委員からも御指摘があったし、私もそう思います。
 実は、こういうふうに甘やかしてきたというのは、金融行政あるいは金融庁の責任なんじゃないか。もう時間がないから言いますけれども、銀行を窮地から救うためにこれまで政府は何度もルール変更をして、そのたびに株式市場の機能というのが低下をしてきて、デフレ不況から脱出する道のりというのを遠くさせたのは、いわば政府、金融庁の責任ではないか、こういうふうに私は思います。
 もう時間がないから縮めますと、例えば、九四年には自社株買いということを解禁いたしました。そして今、昨年の十月からは取得、保有というのを全面自由化であります。それから、自己資金を膨らませるために会計基準の変更というのを行って、九八年三月には、土地の含み益を自己資本の中に入れていいですよと、算入できるようにしましたし、また九九年の三月には、今問題になっております税効果会計というのを一年前倒しでやったわけですよね。こういう自分の都合のいいルール変更にはルールを変更するのはおかしいとは言わずに、竹中さんがやろうとしたと言われておりますルール変更にはおかしいと言うのもおかしい。
 株式市場への介入強化にいたしましても、ことしの一月に銀行等保有株式取得機構、これが余り機能していないことは御存じのとおりでありますが、あえて今そのことはあれしませんが、ことしの三月からは空売り規制の強化、あるいは九月からは日銀が株式の購入までをするという、世界でも異例のことをやっているわけであります。
 こういうことをやっているものですから、経営内容に不安があるんだと、銀行や企業というものを政府が支えようとしているということを見れば、株価自体に信頼性というものを欠いてきて、株式市場から人が去っていくという悪循環というのを繰り返している。その原因というのは政府側にあったのではないか。あるいは、銀行の言いなりに、何とか救済しよう、しようと思ったつもりが、ますますアリ地獄のように悪い方向に入っていっている。これはもう銀行だけの話じゃなくて、生命保険会社、あるいは年金制度まで株安ということは波及してきているわけでありまして、その原因というのは、金融庁自身が、よかれと思ったつもりでやったんでしょうけれども、つくったとがというものが今あらわれているんじゃないだろうかというふうに思っております。
 そういう考えというのは、竹中大臣はいかがですか。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、金融の行政というのは、ある意味で非常に精緻な実務の積み重ねによって成り立っている部分がやはり否定できないと思います。さまざまな問題が生じる中で、しかし、この一つの実務といいますか制度、そういったものそのものが非常に複雑に絡み合って成り立っているものですから、一種の制度の補完性と言いますが、一つのことをよかれと思ってやると、またそれに対応して別の制度もやらなきゃいけなくなってくる。そういうところが制度全体を非常に難しくしてきた面はやはりあったのだと私は思います。
 であるからこそ、やはりルールはシンプルでなければいけない、シンプルな方がいいというふうに思いますし、今回、部分的に、例えばここだけを直す、ここだけを直すということではなくて、資産査定全体を見直して、自己資本のあり方を見直して、それでガバナンスのあり方を見直す。制度が補完的であることを踏まえて、全体的に不良債権処理を加速させるための新しい政策を議論するというところに立ち至ったわけでございます。
 こうした点も踏まえて、もちろん反省すべきところは反省して、生かすべきところは生かして、問題の終結に向けてよい政策システムをつくりたいと思っています。
佐藤(観)委員 時間もそうありませんので、次に移ります。
 どうやって金融機関を再生させ、また企業の活性化を図っていくかということで、いろいろとお互いに議論を闘わせているわけでありますけれども、なぜか塩川大臣の写真入りで再生委員会というのが報じられております。いやいや、まだ完全に決めたことじゃないんだというふうにどうせ否定されるでありましょうから、そういう意味ではお伺いしませんけれども、韓国がやった方式、つまり、不良債権を抱えている旧債務とそれから健全な債務というものを分ける、新旧債務を分けるというやり方、これは韓国方式と言っておりますけれども、そういうやり方というものの発想が再生委員会なるものにあったのではないかというふうに思うんですが、今、どちらでも、お二人でも結構でございますが、銀行再生のための基本的な考え方の根本というのはどういうふうにお考えですか。
塩川国務大臣 今、金融庁の方で竹中大臣が中心になってやっておりますように、まずは要するに不良債権の引き当て率、これを十分に積ますということが一番大事な問題でございまして、これは早急にやらにゃいかぬ、これが不良債権処理の原点でございます。
 そういたしますと、いわば債権の処理につきまして、時価に相当近いものになってくるということ。そこで、その時価に近いものになりましたら、銀行が、私の言っているのは、仮定の再生委員会等にこの債権を譲り渡していくということにして、その再生委員会がそこで再生可能な、あるいは再起可能な部門と企業とを分けて、そこには新しい融資の体制をとって支援していく。
 その中の一方において、もうこれはどうしても破綻であると認定される資産並びに企業についてはRCCに送って、そこで処理をしてもらう。その際、RCCとしては引当金が十分積まれておることが前提でございますから、引当金が十分積まれたものであるならば、もう銀行の、時価でというよりも簿価で引き取ってもいいのではないか、そういうふうに私は思います。
 そういう循環を速やかに、スピーディーにやることによって、不良債権の処理がついていくということでございます。
竹中国務大臣 原点は、しっかりとした資産査定を行う、資産査定を行うことによって、簿価と時価が一致する中でオフバランス化を進める。しかし同時に、その中に再生のメカニズムをしっかりと入れていく。ともすれば、これまで回収のイメージが強かったわけですけれども、我々が目指すところは再生でありますから、再生がしっかりできるようなシステムをつくっていく。御紹介になった新聞記事はまさにそういう点だったというふうに思いますが、それに当たっては、管理、会計上の当然適切な措置を行いながら、マーケットのメカニズムを十分に活用して、かつ、そのような仕組みをつくっていくということが重要だと思っております。
佐藤(観)委員 もう時間がないものですからさらに詰められないのでありますけれども、発想はそのとおりだとは思うんですが、先ほど渡辺委員の質問にもありましたように、そのやり方で金融機関の資本というものは、減らないというか、そのことを傷つけずに一体できるんだろうかと。
 確かに、不良債権に近い部分のものまで、そして再生可能なものはそこから外すわけでありますから、資本に対しては楽になることは事実でありますけれども、そのシステムをつくるのに、例えば隣の韓国はGDPの約三割という、百三十五兆円という膨大な金額を入れたわけですよね。
 先ほど渡辺委員からもお話があったように、公的資金を使うということは最終的に政府保証を使うことでありますから、最終的には、うまくいかなかった場合には国民負担になるわけですね。ですから、そのことを十分注意しながら、しかし、やるからには大きくやらなきゃいかぬということ。
 そして、ダイエーの例を挙げましたが、果たして、これ、再生するだろうかなというものまで塩川大臣が言うような再生委員会に持ち込まれたら、これはまた同じことの繰り返しになるということで、ガイドラインも、私的整理に関するガイドラインというのはできているわけでありますけれども。
 いずれにしろ、抽象的なことを言ってなんでございますけれども、公的な資金なしに、あるいは銀行の資本を増強することなしに、皆さんが考えていらっしゃるような再生の道というのは可能だろうかと思いますが、いかがでございますか。
竹中国務大臣 担当の大臣として、予見を持っていろいろなことを申し上げるのは適切ではないというふうに思いますが、あらゆる可能性を当然のことながら考えてやる、必要な場合には大胆かつ柔軟な政策をとるというのが基本的な姿勢でありますので、これは結果を、公的資金を入れるかどうかというのは、これは一つの結果でございますから、予断を持って申し上げるべきことではないというふうに思っております。
塩川国務大臣 私が言っております中に、再生管理委員会というのは、昔こういうことがありましたね。早川さんという優秀な方がおられて、たくさん企業を再生しましたですね。私はああいうイメージを持って、ああいう機関があれば、そこでさばいて、どんどんとあの方は生かしていきましたね。そういうことを考えておるので、それは私は可能だと思うんです。
 これは、現在のRCCの、いわば法律一本やりで片づけようということも無理だし、といって、法律の知識のないような人が、やはり経営の能力だけでやるということも難しいだろうし、この管理委員会の人的構成というものは非常に大事だ、これがうまくいけば非常に成功するんではないかと思うております。
佐藤(観)委員 終わりますが、私は、構想自体は、細部は別にいたしましても、いろいろあるにしても、予見を持って、公的資金を入れるかどうかというのは、一般論としてはそうだけれども、私の見る限り、かなり、そのくらい公的資金を入れることも覚悟してやらなければ、とてもできる話ではないということを最後に申し上げて、終わります。
小坂委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 竹中大臣に、ツービッグ・ツーフェールについて伺います。
 先週、二十四日の衆議院予算委員会において、ニューズウイーク日本語版に「「大きすぎてつぶせない銀行はない」と言う竹中」、そういう見出しで竹中大臣のインタビュー記事が掲載されたことについて、竹中大臣は、こんなことは言っておりません、大き過ぎてつぶせない銀行はないというような発言は一切しておりません、また、その英語のインタビューでそういうことは一切言っておりません、これは英文の本論を見ていただきますと、その英文のタイトルにはそういうものは出ておりません、これは意訳であると。さらに、オリジナルのものを見ていただければ、主語が何であるか等々を含めて、そういうことは申し上げていないというふうに答弁していました。
 ところが、今お手元に資料をお配りさせていただきましたが、そのもとのオリジナルの英語版のニューズウイークには、はっきり「ノー バンク イズ ツー ビッグ ツー フェール」、大き過ぎてつぶせない銀行はないという、そのままの見出しが載っております。また、インタビューそのものについては四段の構成で書かれておりますけれども、その二段目の最初の質問ですね、メガバンクが四つある、「アー ゼイ ツー ビッグ ツー フェール?」、その四つのメガバンクというものは大き過ぎてつぶせないというものですかという質問に対し、大きい銀行にはよさがある、規模の経済を享受し、財務基盤が強化できる、しかし、「ウイ ドゥー ノット ホールド ジ アイデア ザット ゼイ アー ツー ビッグ ツー フェール」、我々はそれが、その四つのメガバンクがツービッグ・ツーフェールだとは考えていない、こうはっきり言っているわけであります。これは一体どういうことでありましょうか。
竹中国務大臣 二点ございます。
 まず、本文の方に関しては、これはインタビューで答えたことを要約して、その「ゼイ」が何であるかが非常にわかりにくくなっているわけでありますが、私は、一般的な企業の問題として、大き過ぎてつぶれない企業というのはないだろうと、私の意思としてはそのように申し上げました。これを見る限り、向こうはインタビューを縮めてやっておりますから。
 ただ、いずれにしても、つぶせないというのは違うだろうと。私の意思は、これは予算委員会で申し上げましたように、これは、フェールというのは自動詞でありますから、英語の文法からいう限り、大きいからつぶれないということは、これは市場の経済の中ではないでしょうと。これが第一のポイントでございます。
 その上で、タイトルについて申し上げましたのは、この「ノー バンク イズ ツー ビッグ ツー フェール」というのは、これは私のインタビューの中で言った言葉ではなくて、編集者が勝手につけたタイトルです。これはまあ編集権ですからよしとするとしても、日本語のタイトルには、括弧をつけて、これは括弧ついていません、括弧をつけて「「大きすぎてつぶせない銀行はない」と言う竹中」と。これは、編集権を超えて、これは括弧ですから、私が言っていないことをやはり言っているようにということで、弁護士を通じて正式に抗議をしたわけでございます。
達増委員 文字どおり追えば、竹中大臣が答えたのは、メガバンクについて、それらはツービッグ・ツーフェールじゃないと言ったわけで、あらゆる銀行についてそう言ったわけではないということでしょうけれども、しかし、論理的に考えますと、日本で最も大きい四つの銀行が大き過ぎるわけじゃないということは、あらゆる銀行が大き過ぎないという、ノー・バンク・イズ・ツービッグ・ツーフェールというのは、極めて論理的な整合性はあるんだと思います。
 また、企業一般についての話をしたんだとおっしゃいましたけれども、今の、メガバンクについてツービッグ・ツーフェールかという質問の前のところは、大きい会社をつぶす、破産させるときの調整コストの話をしていて、そこで竹中大臣は、もし業績の悪い会社が何らかの特別な理由でまだ存在しているのであれば、政府は市場の調整のスピードを加速しなければならないということを言っていて、つまり、つぶさなきゃならないという趣旨の発言を前にやっている。銀行問題やその銀行問題に関連して大企業の問題がある中で、そういう文脈で答えていれば、これはつぶそうという話だと解釈するのは当然だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 その調整コストというのは、調整を早めなければいけないというのは、これはつぶすとかそういう話とは全然次元が違うことなのではないのでしょうか。
 これはもうおわかりの上でお聞きだとは思いますけれども、きちっと資産査定をして、その資産査定を本来のあるべきものに近づけていただくというのも、これもやはり調整のスピードでございますし、そういう意味での議論がつぶすとかそういう議論に直接結びつくというのは、これは私の本意ではもちろんございません。
 繰り返しますが、しかし、結果としてそういうふうに受け取られ、実はこの出版社は、私たちがこう書いたのを別にさらに報じた新聞社に責任があるという言い方をしているわけでありますが、結果的にはそのようなことが広まってしまったということに対しては、これは私の不徳のいたすところであるというふうに反省をしております。
達増委員 平壌宣言について、北朝鮮は国交正常化交渉の中に拉致に関する協議を入れていないじゃないかということに、小泉総理が、自分は入れたつもりなんだからいいんですと言い張っていたのを思い出すんですけれども、取材する側は、当然、日本におけるそういうゾンビ企業、倒れるべきなのに倒れていない企業の問題という問題意識があり、かつ、長年にわたってメガバンク、都市銀行が大き過ぎてつぶせないということで生き残っているという問題意識を聞く側は持っているわけで、それに対して肯定的に答えれば、当然こういうインタビュー記事になると思います。
 ツービッグ・ツーフェール、文法的には、つぶせないという意味じゃなく、つぶれないという意味もあって、その意味に使ったとおっしゃいましたけれども、エコノミスト、植草一秀さんが書いた「現代日本経済政策論」という本で、ツービッグ・ツーフェールの意味をこう書いています。大銀行の破綻はリスクが多過ぎる、そういう意味でツービッグ・ツーフェールという言葉が使われている、大銀行を破綻させれば甚大な影響が生じるから破綻させるべきではないとの主張ということで、ツービッグ・ツーフェールという言葉が使われている。
 これは、本当に金融問題、日本経済問題に関心のある人たちの間では共通の認識だと思うので、そういう文脈で、ツービッグ・ツーフェールという言葉が人口に膾炙している中で、あえて文法的に中立な意味で使ったというのは、これは、そういう発言自体、大臣としては異常なんだと思います。
 さらに言えば、ノー・バンク・イズ・ツービッグ・ツーフェールというのは、全く正しいことだと思いますよ。それを予算委員会で、いやそんなことは言っていないと逃げ回るように否定して、かえって政府の不信感を高めていると思います。株が下落したのは、ツービッグ・ツーフェールな銀行はノー・バンク・イズ・ツービッグ・ツーフェールということで株価が下落したというよりも、一方でやっておくべきデフレ対策が全然できていないから株価が下落したわけであって、そのデフレ対策といいますか、景気の下支えといいますか、そういう日本経済がブラックホールに落ち込んでいかないような手当てをちゃんとした上でノー・バンク・イズ・ツービッグ・ツーフェールと言うのは、これはもう胸を張って、威張って言っていいことなんだと思います。それを、言っていない言っていないとか言い張ることで、かえってまた信用をなくしている、そこが問責決議案が出る理由なんですけれども、この点、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 今の委員の御質問の中にも、そういう言葉を使うのは担当大臣としていかがなものかという御主張が前半にあり、後半で胸を張って言えばよいじゃないかという御主張があり、これは、やはり言葉の問題にはさまざまな受け取り方があるのだと思います。
 委員会におきましては、そういうことを言ったかということに対して、言っておりませんということの事実を答えたまででございまして、いずれにしましても、こういう問題に対して、私の真意はそういうところでありますし、きのうも御紹介させていただきましたが、出版社自身の後記で、そういうことは言っていない、竹中は言っていないということも書いておりますので、この点をぜひ御認識賜るとともに、私自身は、こういう問題、混乱が生じませんよう十分に注意したいと思っております。
達増委員 出版社が、ニューズウイーク日本語版が言っているのは、「業績の悪い企業は無条件に市場から退出すべきであり、つぶれるべき銀行は大きさにかかわらずつぶしていく」「竹中大臣はそんなニュアンスのことは一言も口にしていません。」こう言っていますが、確かに、つぶれるべき銀行は大きさにかかわらずつぶしていくとは言っていないわけで、もともと記事の中にない、極端な文章を掲げ、そんなことは本誌は言っていないと弁解しているわけで、これはこれで変な弁解なんですけれども、インタビュー本文についての間違っていましたということには、この「編集部より」というのはなっていないということを指摘させていただきたいと思います。
 もう一つ、小泉内閣の今抱えている問題、大島大臣の秘書口きき疑惑について、税務行政の観点からの質問をさせていただきますけれども、宮内秘書が豪邸を建てた、そのお金、どこから工面したのかということが問題の発端でありました。それで、本人は、遺産だとかあるいは贈与だとか、いろいろ言っているんですけれども、一方では、確かに宮内秘書に大島議員の会館事務所でお金を渡しましたと証言する人が出てきている。いずれにせよ、収入をきちんと税務当局に報告していなかった、そういう脱税の問題が生じると思いますけれども、この点、参考人、いかがでしょう。
村上政府参考人 お答えいたします。
 あくまで、個別の問題は答弁できませんので、一般論で答弁させていただきたいと思います。
 まず、贈与のお話がありましたが、贈与税の基礎控除は六十万円になっています。これは平成十二年までですが。したがいまして、六十万円を超えて贈与を受けておられる、なおかつ申告しておらないということであれば、それは申告漏れだと、贈与税の申告漏れということになろうかと思います。
達増委員 報道されているところによりますと、百万単位でお金が動いておりまして、合わせると一千万単位になっていきますので、この点は税務行政上もきちんと調べていくべきということを指摘したいと思います。
 さて、不良債権処理問題に関連し、銀行問題について質問をしますが、やはり自己責任原則ということが重要なんだと思います。今、金融対策、いろいろ案がまさにもまれているところでありますけれども、公的資金投入云々の話が大きく浮上してきていると思うんですが、やはり銀行の徹底的なリストラなどの自助努力というのが前提になるべきだと思うんですね。
 どうも見ておりますと、護送船団方式あるいは担保主義への過度の依存とか、そういう生ぬるい経営の仕方が、さらに腐敗してバブルを生み、そしてバブル崩壊後立ち直れないでいる大きな原因であって、そういう大銀行をさらに保護するような政策をとってしまったのでは問題の解決にならない。この不良債権問題、また今の金融問題の核心は、日本の大銀行等の金融機関が、リスクに挑んでそこから稼ぎ出す、そういう能力を育ててこなかった、また、そういう能力を喪失しているところだと思うんですね。
 ですから、まず、お金がないんであれば、必死でとにかく自力で調達する。そのためには、一等地にある本社ビルなどを、もうそこから退いて、そこはどこか貸して、丸ビルみたいにそこでお金をもうけるとか、あるいは店舗の持ち方や人員の配置の仕方なども思い切った省力化、インターネットの活用とか、そういうことができるような規制の改革も必要だと思います。そういう規制の改革もしつつ、まずは銀行のそういう自助努力を徹底的に促すことが今必要だと思うんですけれども、いかがでしょう。
竹中国務大臣 達増委員の御指摘は、まさしく、自助努力のメカニズムをしっかりと組み込んで、銀行にまず努力させなければいけない、護送船団方式から脱して、リスクテークがきちっとできるような健全な金融機関にしていかなければいけない、その御指摘は全くそのとおりだと思います。
 そのために、どのようなシステムをつくっていったらよいかということを今検討しているわけでございまして、結果的に、銀行というのは、今まで自己資本比率が不十分な場合に早期是正云々という措置、それが一つの健全化を図るプレッシャーになっているわけでありますけれども、そういうものをしっかりと活用しながら、さらに、自助努力のメカニズムがうまく働くような仕組みを今回のシステムの中でもつくっていきたいというふうに思っています。
達増委員 銀行などの金融機関というのは、やはりリスクにかけるというのが本質で、リスクを引き受けてそこから稼ぎ出すということが本質なので、今のようなよりリスキーな環境においては、そういうリスクを避けて、逃げて、身を守るということではなく、むしろ平時よりも積極的にリスクに挑んでいくような経営が必要なんだと思います。それによってこそ今の危機から脱出し、そして新たな繁栄を維持することができる。こういう弱いときに守りに回って、かえってそういう攻めの姿勢を失い、攻めの能力を失ったのでは、回復もできなければ繁栄を維持することもできないんだと思います。
 そういう意味で、財務の健全化といった目標を追求する場合に、ともすれば、引当金を積み増す努力よりも貸し渋りや貸しはがし、そういう貸出金の分母の部分を減らして財務の健全化を図る傾向になってしまっていると思うんですね。
 本来は、引当金を十分に積んで、平時以上にある意味では引当金を積んで、平時以上に積極的にリスクに挑戦していく。なかなかお金を返せないような中小企業にも積極的に貸していく。こういうときだからこそ、資金繰りに困っているところにもむしろ積極的に貸して助けていく。そのために十分な引当金を積んでおくということが必要なんだと思います。
 ところが、どうも今の金融庁の金融検査のやり方によって、むしろ、引当金を積むのは大変、引当金はむしろ減ってもいいくらいに、貸し出しを減らして帳じりを合わせるというような行動を銀行がとっている。ここはやはり金融当局、検査当局としても、そういう貸し渋り、貸しはがしに走るんではなくて、むしろ積極的に貸し出しはふやす、それに応じる引当金をふやす、そういう方向に誘導するような金融検査を行っていかなければならないと思うんですが、いかがでしょう。
竹中国務大臣 不良資産という一つの大きなリスクを抱えているがゆえに新たなリスクがとれない。しかも、資産査定をきっちりとやりましょうということは、まだリスクが隠れている可能性がある。それはしっかりと出して、それを切り離していきましょうというのがやはり基本的のとるべき道であるというふうに思います。しかし、その際に、リスクが一時的であれ出てきた場合に、かえってその総与信を圧縮して貸し渋りのようなものが起こってはいけない、その御指摘は全く正しいと思います。
 したがって、何度も申し上げますけれども、資産査定をしっかりするということが大前提でありますけれども、それだけをやってそれだけで終わってしまったら、今御指摘のような、銀行は銀行でしっかりと最適化行動を行いますから、総与信を圧縮するというようなことにもなりかねないわけであります。したがって、そこは自己資本をしっかりと見るとか、本来、そんなことをしたら、短期的にはともかく長期的には金融機関はみずからの首を絞めていって、よい顧客を失っていくわけでありますから、そういうことにならないようにガバナンスの仕組みをしっかりと入れていく。
 したがって、検査が悪いとかそういうことではなくて、検査は検査で、資産査定は資産査定でしっかりとしながら、他の自己資本の問題やガバナンスの問題を組み合わせて、トータルとしてシステムがうまく回るようにしていくということが今求められていることであると思います。
達増委員 町の中小企業や商店経営者で、銀行、金融機関の貸し渋り、貸しはがし被害に遭っているという皆さんは、やはり金融庁の検査が厳しい、金融庁の指導が厳しいからそうなっているというふうに言うのでありまして、そこはやはり気をつけて、銀行、金融機関がそういう行動に走らないように、金融庁の指導、検査を口実にしてまた貸し渋り、貸しはがしをしないように、そういうところは気をつけて気をつけ過ぎることはないというふうに思います。
 さて、どうもこの金融危機を乗り切るに当たって、銀行を守る、銀行を保護するようなトーンが強く出ているのではないかなと思うことのもう一つに、金融機関等の組織再編成の問題があります。
 平たく言えば合併を促すということで、都市銀行からは四大メガバンクが生まれました。また、地方銀行や信用金庫、信用組合等の合併促進についても今度法案が出てきているということでありますけれども、実は合併というのは非常に受け身、守りの対応でありまして、本来、リスクにさらに挑戦して攻めの姿勢で事態を打開していくのであれば、むしろ分社化とかあるいは社内ベンチャーとか、そういう攻めの組織再編を促していくことが重要ではないかと思うわけです。
 うまくいっている企業とか、また結果として成功する企業は、そういう分社化を積極的にやっているわけでありまして、ソニーがプレイステーション、コンピューターゲームの部門を独立させているのがいい例なんでありますが、銀行でも、例えばですけれども、そういうコンピューターゲーム関連融資専門の銀行を分社化して立ち上げる。これは、もうそういう分野について詳しい人ばかりが集まって、ことしはこういうのがヒットするとか、アメリカではこういうのが受けるとか、韓国、台湾ではこういうのがはやっているとか、そういうことに詳しくて、であれば、こういう事業は高い利子を取ってこのくらい貸し付けてもいい、そういうプロ集団のようなものを立ち上げる。
 また、ついでにこれは預金もインターネットで集めたり、また利息についても、日本銀行券の円で利息を払うだけではなくて、ゲームが好きな人が預金してくるように、ネットのオンラインゲーム、インターネット上で遊べるゲームへのアクセス権を利息がわりにしたりとか、ゲームの中でしか使えないお金、またゲームの中でキャラクターのエネルギーとか、そういうものに利息を払うような、そういう規制の撤廃、緩和、そういう大胆な規制改革をしながら、攻めの姿勢で銀行が戦っていけるような、そういう組織再編を促す必要があると思うのですが、いかがでしょう。
竹中国務大臣 前半の合併等々の話、要するにこういうのは、まさに合併がよい悪いの問題ではなくて、それを戦略的な意識を持って行っているかどうか、行えるかどうかということに尽きるのだと思います。場合によっては合併がよいし、場合によっては分社化がよい場合もあるということなのだと思います。
 御指摘の点は、そうした機動的なものを、組織の姿を確保しながら、より専門的ノウハウを生かして、リスクをとって、リスクに見合ったリターンをとって、健全性の高い、収益性の高い金融組織なり金融機関をつくっていけるかということだと思います。
 御承知のように、一部の銀行には、インターネットバンキングに徹した子会社をつくって運営をきちっと始めているところもございますし、そういうことは現実に、ビジネスのフィールドでは十分にもう議論はされているというふうに思っております。
 要は、そういうことが自由にできるような環境をつくる。その意味では、参入を積極促進するということも重要でありましょうし、やはりうまくやったところはそれなりに高い評価が得られるような仕組みをつくっていくという意味で、これもガバナンスでありますけれども、そういった意味での行政の対応は、これはやはり十分にやっていく必要があるというふうに思います。
達増委員 時間ですので一つ指摘にとどめますが、やみ金融問題であります。これは非常に深刻化しておりますので、対策は必要と指摘させていただきます。
 これは、出資法の上限金利が四〇%から二九・二%に引き下げられたせいだという指摘もありますので、その上限金利の見直しも含めて検討していく必要があるということを指摘して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、不良債権処理の問題についてお聞きをしたいと思います。
 昨年、政府は大手行の十一・七兆円の不良債権を二年間で処理するというふうに言いました。私が二十四日の予算委員会で金融庁に確かめたところ、一年間で六・二兆円処理したということであります。不良債権を減らす計画を立て、計画どおり処理しているわけですね。おくれているわけでも何でもないわけであります。それなのに竹中大臣は、不良債権処理を加速しなければならない、こう言われました。
 一体なぜ加速するのか、その理由を明確にしていただきたいと思います。
竹中国務大臣 これまでも、不良債権処理に向けては計画を立て、ルールをつくり、銀行もそれなりに一生懸命やってきましたし、金融庁もそれをチェックしてきたというふうに思っております。
 しかしながら、二点申し上げたいと思いますが、それでも見ていますところ、当事者から見ると、銀行から見ると不良債権処理はやっているということになるわけですが、市場からの評価はそれでも相当厳しいものがある。その意味では、これはいろいろな尺度があろうかと思いますが、現状と市場の評価の間にギャップがある。そのギャップが、例えば経済危機が何月期か来るのではないかというような議論にもつながってきたということを受けて、ここはやはり政策を強化しなければいけないというのが基本的な判断でございます。
 これは第二の点になりますけれども、一つ現象面で申し上げるならば、実態的な経済、実質成長率、もちろん経済は厳しいわけでありますが、それでも当初の政府経済見通しから大きく乖離している状況にはないと思いますが、一つやはりデフレ、それが深刻化をしている。
 昨日も議論をさせていただきましたが、これはやはりマネーがなかなかふえないような状況にある。このマネーがなかなかふえないというその一つの大きな要因として、銀行の金融仲介機能がやはり極めて大きいものとして存在している。そうした点からも、この不良債権の処理ということを加速する、この政策を強化することが必要であるというふうに考えている次第であります。
佐々木(憲)委員 加速をしなければならないという理由が、今の説明ではどうもよくわからないんですね。
 経済危機が来るのではないかというおそれが強まっている、あるいはデフレ状況にあるのでより急がなければならないのだということでありますが、しかし、経済危機のおそれ、これはなぜ起こったのかといえば、不良債権処理の問題ではなくて政府の政策が、国民負担をふやし、不良債権処理を進めて倒産、失業をふやす、このいわばデフレ加速政策が招いた結果でありまして、デフレ加速政策をやっていながら、デフレが大変だからといってまた不良債権を処理する、不良債権を処理したらまたデフレが加速する、こういう状況になっているのではないかと思うわけであります。根本的に私は疑問に思うわけです。
 竹中大臣は、たびたび、そのために公的資金を投入しなければならないとおっしゃっています。まず確認をしたいんですけれども、現行の法律の枠内ではどのようなときに公的資金の注入ができるのかという点ですが、今の預金保険法では、金融危機対応会議の議を経て、内閣総理大臣の認定を受けた金融機関のみが定められた期間内に申し込むことができる、そして資本増強を実際に行うかどうかの決定は内閣総理大臣が決定する、こういう仕組みになっていると思うんですが、そのとおりですね。
竹中国務大臣 発言について誤解があるといけませんので、ぜひ申し上げさせていただきたいんですが、経済危機が来るとか、私、そんなことは発言しておりませんので、その点は誤解のないようにお願い申し上げます。
 それと、公的資金投入が必要だということをたびたび口にしているという御指摘もありましたが、そういうことは、公的資金の投入が必要だというようなことは私は一度も発言していないと思います。
 それと、途中でおっしゃった、経済の停滞の要因が何であるかということに関しては、そこは佐々木委員と私と見解の相違はあるのかもしれません。
 しかし、いずれにしましても、政策手段が大変限られた中で、これだけ財政赤字も拡大して厳しい状況の中で、非常に細い均衡の上に立って運営しなければいけないという一つの制約の中での厳しい政策選択であるということを申し上げた上で、御質問の公的資金の注入の現行法での枠組みということでありますが、預金保険法においては、金融機関について資本増強が行われなければ信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときには、金融危機対応会議の議を経て、資本増強を行う必要がある旨の認定をすることができる、また、その認定に係る金融機関は資本増強の申し込みができるという旨の定めがございます。
佐々木(憲)委員 先ほどの御発言ですけれども、経済危機が来るというふうにいろいろと言われていた、市場の評価とのギャップがあると。そのことはいわば、もっと経済を厳しく見る必要がある、そういう認識を言われたんだというふうに思います。
 それから、公的資金の注入が必要だとは言っていないというけれども、しかし、必要な場合は現行法でためらうことなく十分に対処しなければならない、こういう趣旨の発言をされているわけですね。ですから、何か全く私が違うようなことを言ったかのようにおっしゃいましたが、大臣自身が発言されていることを紹介して質問しているわけであります。
 そこで、先ほどの現行法の問題ですけれども、信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認められる場合に、内閣総理大臣が危機対応会議の議を経て決定することができる、こういう仕組みですね。つまり、現行法では、システミックリスクを引き起こす危険性があると認定された特定の金融機関が対象になるということだと思うんです。そういう理解でよろしいと思いますが、もう一度確認したいと思います。
竹中国務大臣 危機が何であるかというのを特定化することは難しいわけでございますし、これはできないことだというふうに思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認められるときには、金融危機対応会議の議を経て、資本増強を行う必要がある旨の認定をすることができるということでございます。
佐々木(憲)委員 つまり、システミックリスクのおそれのある場合、こういうことになるわけで、これは、私は、この法律が改正されるときに当委員会で質問をし、大臣からそのような御答弁がありましたので、間違いはないと思うんです。
 ですから、小泉総理は、現状は金融危機対応会議を開く時期ではない、現時点で直ちに金融機関に公的資金を注入する段階にはないという趣旨の答弁をされています。つまり、そういう現状認識だと思うんですが、竹中大臣はどのような認識をお持ちですか。
竹中国務大臣 現時点において、直ちにそういった金融危機対応会議を開くというような状況にはないというふうに思っております。
佐々木(憲)委員 つまり、現時点で公的資金を投入する時期でないということは、システミックリスクの危険性が現時点であるとは言えないということだと思うんですね。
 では、今準備されているという金融政策の内容についてお聞きをしたいと思います。これから発表されるというわけですが、その柱は、不良債権処理を加速するという方向に沿って出されるわけでありますが、細かなことは別としまして、中心的な柱というのは、資産査定を強化して引当金を積み上げるということと、それから税効果会計の見直し、この二つが柱だと言われていました。
 税効果会計の見直しについては先送りになったようでありますけれども、いずれにしても、こういう体制をつくって不良債権処理を一気に強行する、こうなりますと、当然、大量の倒産と失業が発生をするわけであります。
 これ自体、デフレ加速だと思うわけですが、同時に、それを実施すると、大手行の多くが自己資本比率が八%を下回ることになって、この自己資本比率を穴埋めするために、公的資金による資本注入を行って銀行の体力を回復させる。大体、発想、考え方というのはそういうことが骨格だというふうに理解してよろしいでしょうか。
竹中国務大臣 柱としては、何度も申し上げておりますように、資産査定をしっかりとやる、自己資本が十分かを見直す、さらに銀行のガバナンスを発揮してもらう、その結果として、銀行の収益力が高まるようにしてもらう。さらには、けさからも少し話題になりましたけれども、企業再生の仕組みをそれと表裏一体の問題として絡めていく、そういうことではなかろうかと思います。
 そこで、どういうシナリオが起こるかということでありますが、それはデフレを加速させるという指摘がございました。短期的にはさまざまなことがあり得ると思いますが、これは、しかし同時に、本当に銀行の経営がしっかりして、本当に資金を必要としている優良な企業にきちっとお金が行き渡るようになるというプラスの面が当然のことながらあるわけでありまして、そういう点も評価しなければいけない。
 結果的に、その結果どのようなことが、どのような調整が銀行の部門に起こっていくかということでございますけれども、今佐々木委員がおっしゃいましたような、そんな極端なことがこの社会で起こるというふうには、私は現時点では考えておりません。
佐々木(憲)委員 そうしますと、公的資金を投入するような状況は起こらないと。竹中プラン、そういうふうに言わせていただきますと、それを実行しても公的資金を投入するような状況にならない、そういう判断なんですか。
竹中国務大臣 私が申し上げたのは、佐々木委員が御指摘になったように、ほとんどすべての銀行で資本割れが生じるというような、そういう事態は想定しておりませんということでございます。公的資本の話がどうなるかというのは、これは結果であって、予断を持って申し上げるべきことではないというふうに思います。
佐々木(憲)委員 それは、すべての銀行に資本割れが起こるというふうに私は言ったわけじゃありません。幾つかの銀行が八%割れになるという可能性というのは当然出てくると思うんですね。そのときに、公的資金を投入するということを想定されているわけですね。
竹中国務大臣 その全体の枠組み、先ほど申し上げましたように、資産査定をきっちりして、自己資本の質を見直す、ガバナンスをそれにしっかりとやっていく、そういうものをどのように組み立てていくかという議論を今最終的に詰めているところでございます。
佐々木(憲)委員 ですから、私が聞いているのは、資本割れが起こる銀行が幾つか出てきた場合に、そこには公的資金を入れるのか入れないのか、このことを聞いているわけです。
竹中国務大臣 そういう点も含めて、トータルな仕組みを今最終的に詰めているところでございます。
佐々木(憲)委員 つまり、公的資金投入の可能性を否定されなかったわけであります。
 そうなりますと、現在の状況でいいますと、システミックリスクを起こすような可能性、そういう状況ではないと先ほどお認めになりました。しかし、竹中プランを実行すると、結果的に銀行の資本が、自己資本比率が低下して、体力が弱まる。銀行の体力が弱まって、システミックリスクのおそれが強まる。つまり、あなた方のやり方が金融不安、金融のシステミックリスクの危険性をつくり出している、こういうことになると言わざるを得ないと思うんですね。
 私は、それは非常に危険なやり方だと思うんです。つまり、金融システムを安定化させるとか銀行を強くするためというふうに言いますが、やっていることは、銀行にダメージを与えて、その結果、銀行が貸し渋り、貸しはがしに走らざるを得ない。そういうことを促すものになり、あげくの果てに金融システムを不安定にする、そういうことをやろうとしているというふうに言わざるを得ない。しかも、その上に、体力が落ちた銀行に税金を投入する、とんでもない話だと思うんですね。私は、その基本的な考え方自体を、発想そのものを根本的に改める必要があると思う。いかがですか。
竹中国務大臣 銀行を中心とする金融システムは、社会のインフラとして大変重要な役割を担っております。そこが、今、さらに構造改革を進めるために必要な強い基盤を必要としている中で、銀行を強くしていくということが我々があくまで目指しているところであります。その結果として、銀行から融資を受ける、銀行に預金を預ける企業や人たちが経済活動をより容易にするということを目指しているわけでございまして、そのための方法を今さまざまな観点から検討をしているわけです。
佐々木(憲)委員 銀行を強くすると言いながら、実際にやっているのは銀行を弱くすることをやっているんですね。
 厳しい資産査定を実行し、不良債権がどんどんふえていく。それに対して引当金をどんどん積み上げていく。そうすれば、銀行の体力は落ちる。自己資本比率は低下する、八%割れになる。そうなった場合に、税金を投入するという場合は、ただ八%割れになっただけじゃ投入できないんです。先ほど言われたように、地域の金融そのものが不安定になる、システミックリスクを起こすようなおそれがある、そういう状況になったときに公的資金を入れるわけですね。
 ですから、公的資金を入れるという結果をもたらすというのは、銀行が大変なダメージを受けて、信用不安を引き起こすような状況になったときでありますから、そういうことを当然想定しているわけでしょう。公的資金を入れるという可能性を、必要な場合にはためらうことなく十分に投入するという話を今までされてきたんですね。
 私は、こういう政策というのは根本的におかしいんじゃないかと思うんですよ。むしろ大事なことは、税金を使うなら、銀行に使うんじゃなくて中小企業支援に使うべきだ。同じ税金を使うなら、そういう使い方をしなければ銀行の体力増強にならない、結果的には。
 大体、今まで政府は公的資金に関して何度も、言っていたことと現実にやってきたこと、これが乖離をしているといいますか、約束をほごにしてきた。例えば、一九九六年に公的資金投入の枠をつくったわけですが、あのときに、信組以外には入れないというふうに言っていたんじゃありませんか、あの時点の約束は。どうだったですか。
五味政府参考人 私の理解では、九六年、信組以外には入れないとおっしゃいましたが、そういう仕組みではなかったように記憶しておりますけれども……。
佐々木(憲)委員 これはもう明確に、当時の銀行局長の答弁が私の手元にもありますが、当時、信組は体力がないので、信組以外には入れないけれども信組には入れるんだ、信組だけなんだ、こういうことが国会で答弁をされていたわけであります。
 九八年になりますと、この答弁が覆されまして、特例業務勘定を預金保険機構につくって、一般金融機関も対象にした破綻処理の仕組みがつくられました。十兆円の政府保証に加えて、七兆円の交付国債を使って公的資金の投入が行われたわけであります。これに金融機能安定化緊急措置法によって資本増強、資本注入も合わせますと、三十兆円の銀行支援の枠組みがこの段階でつくられたということであります。このとき政府は、これで十分なんだと言っていたわけであります。
 ところが、九八年の十月になりますと、金融国会のときですけれども、あのとき六十兆円の金融支援策がつくられた。現在は七十兆円の枠組みであります。このようにして、公的資金投入の仕組みは非常に、最初の公式の政府答弁がどんどん覆されまして、複雑怪奇に枠が広がり、対象も広がるということになってきたわけです。その結果、国民負担はふえる一方であります。
 数字を確認したいんですけれども、これまで、銀行に対する公的資金投入は幾ら行われたか、国民負担が確定しているのは幾らか、これについてお答えいただきたい。
五味政府参考人 お答えいたします。
 十四年三月末現在でございますが、預金保険機構による主な資金援助の実施状況といたしましては、金銭贈与が十六・五兆円、それから破綻金融機関からの資産買い取りが五・六兆円、資本増強が十・四兆円などとなっております。このうち、ペイオフコストを超える資金援助のために手当てをされました十三兆円の交付国債、これにつきましては、十四年三月末までに、その使用額、償還額の累計が九・一兆円となっております。この九・一兆円というのが現段階で国民負担として確定している数字でございます。
佐々木(憲)委員 大体三十兆円投入されたけれども、九・一兆円が国民負担として確定した。これは大変な負担なんですよ、国民一人当たりにして何万円にもなるわけですからね。そういう大変な負担を国民に負わせて、銀行に対して支援策が行われた、税金投入が行われた。しかしながら、全く銀行の状況は改善しない。不良債権はふえるばかりである。ふえた不良債権をさらに処理する、さらに処理すれば倒産、失業がもっとふえて、デフレががんがん加速される、加速されればさらに不良債権がふえる。ですから、不良債権の残高がこの間どんどんふえているじゃありませんか。ふえた不良債権の処理を加速すれば、失業、倒産の加速がもっとふえるじゃありませんか。そういうデフレ加速策を政府がやっているわけですよ。
 私は、こういうやり方というのは、根本的に逆の方向を向いていると言わざるを得ないと思います。やはり今のやり方というのは、私は間違っていると。不良債権処理はデフレ要因であるとお認めになりました。その上に、来年は三兆二千億円という国民負担、医療の問題やそれら全部含めまして。それはまた消費を冷やすわけです。
 ですから、今政府がやろうとしている方向というのは、完全に日本経済を破綻させる方向だ。竹中プランは金融を破綻させる方向だ。何か金融を応援するかのようなことを言いながら、結果的にシステムを弱めて金融機能を低下させる。その次にどういう展望が出てくるか、全くその展望さえ、必ずよくなるという説明が合理的にできない。私は、そういう政策を改めるように申し上げまして、ちょっと時間が来ましたので、以上で終わりたいと思います。
小坂委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 塩川財務大臣並びに竹中金融大臣には、昨日に引き続いて本日、連日の委員会で長時間御苦労さまです。また、非常に経済、金融のかじ取りが難しい時期の御就任に当たって、ぜひとも遺憾なくお力を発揮していただきたいと思いながら、昨日並びに本日の御質疑を聞いておりました。
 そして、聞いておりまして、だがしかしです、だんだん何が何だかわからなくなってくる御答弁もこれあり、私は、やはり今この困難な時代、例えば経済の状況一つとりましても、空洞化の問題並びにアジアの全体的な経済状況の中で我が国が果たすべき役割が何であるのかという問題、多面的に考えても、今まで経験しなかった事態に直面している折でありますから、実は何が本当に正しいのかは、本当に変な話ですが、やってみなければわからないということもあると思うのです。
 以前の金融大臣であった柳澤大臣が私によくおっしゃっておられましたが、先生はいろいろな今の銀行が自己資本比率を含めて不安定じゃないかと言うけれども、大丈夫なのです、今の金融状況は大丈夫なのです、御心配はないのですと繰り返しおっしゃっておられて、それはそれで、柳澤大臣のおとりになる一つの姿勢であり政策であると私は思います。
 竹中新大臣も、実はニューズウイークの中で、先ほど達増委員が御指摘の点以外にも、例えば、政府のとる方針というのは、何もしない方針から、アグレッシブに非常にドラスチックに方針をとる、この二極のどちらにおいても、ある意味で市場からの批判も含めて批判を受けるものであるというふうにおっしゃっておられます。これは、英文そのまま間違いなく訳したと思いますので、政府は何も策をとらずとも、あるいはきょうドラスチックなアクションをとろうとも、どちらにおいても批判されるだろうと。私もある意味でそうだと思います。
 であるならば、今国民にとって、国民の目から見て一番必要なことは、一体何をしたいのだということをもっとはっきりと、そしてそのやることに伴う痛みの大きさ、深さ、それに対しての対処方法をきちんと明示して進まれるべきが、私は政治家としての見識であろうかと思います。
 そこで第一問、通知をしてございませんが、竹中大臣であればきっとすぐお答えくださると思いますが、現下のアジアの経済状況における我が国金融の役割について。
 このことを一問目に伺いますのは、小泉首相が訪朝されて、特に北朝鮮問題は、外交問題あるいは平和の問題、核の問題としては我が国は一定の方向性を見据えた形になっております。そして、これからの北朝鮮の我が国との経済交流、あるいは全体的な、中国の上る竜と言われるような隆盛あるいはASEAN諸国の大きな羽ばたきの前で、一体、我が国の経済、特に金融はアジアにおいてどういう役割を果たさねばいけないか。
 これは冒頭、所信表明演説でございますので、抽象的でも構いませんから、忌憚なき御意見をお願いいたします。
竹中国務大臣 いきなり大きな問いかけをいただいております。
 今、アジアはというふうに限定されましたが、世界は、そしてアジアは、やはり日本経済を本当に注目していると思います。特に、日本の金融システムがいかに安定化し、強固なものになっていくかということに極めて大きな関心を払っていると思います。
 要因は二つあろうかと思います。一つは、やはり日本の経済は、九〇年代以降大変厳しい厳しいと言われながらも、世界の中で圧倒的な貯蓄を生み出しているということだと思います。世界が発展するためには投資資金が要る、しかし、その投資資金が、だれかがどこかで投資をしようと思ったら、だれかがどこかで貯蓄をしていなければいけないというのが、これは恒等式でありますから、その貯蓄資金を日本が、恐らく世界全体で見れば五分の一とか四分の一をこの一国が生み出していると思いますが、それをどのように積極的に活用して、うまく効率的に配分して、世界経済を引っ張っていけるような力になってくれるのか。
 その意味では、日本の経済は、貯蓄というものを通して見る限り、やはり金融、経済の一つの間違いないエンジンであるというふうに見ているのだと思います。その意味で、金融システムを改革、効率化していくということは、やはり日本は世界に対しても大きな責任を持っているというふうに思うわけでございます。
 もう一点、アジアが恐らく日本の金融を注目する理由は、これも委員会で一部御指摘がございましたが、ある意味で、世界じゅうが今、デフレの強い圧力の中に入りつつあるということだと思います。特に、よく現実を見ますと、アジアの地域で昨年は、日本はもちろん物価はマイナスでありましたけれども、日本だけではなくて香港、シンガポール、マレーシア、ちょっと不正確かもしれません、一カ所ぐらい違っているところがあるかもしれませんが、そういうところで物価がマイナスになっているわけです。このデフレが、さらにこれがアジアのみならず欧米にも広がるのではないかという中で、デフレをとめる、つまりその意味で金融の仲介機能を回復していくシステムをどのようにつくれるかという意味でも、やはり注目をしているのではないかと思っております。
 日本経済の存在感、それとデフレの克服という点で、やはり重要な役割を内外ともに果たさなければいけないのだと思っております。
阿部委員 ともすれば落ち込みがちな日本国民が、いつも塩川大臣がおっしゃるように、みんながだめだ、だめだと言うからだめになるんだ、こういう方向に行けばいいことがあるよというメッセージを送ることが政治のかなめであるという御指摘もございますから、今竹中大臣から御指摘のあった二つの点、日本の高い貯蓄高、それから全般的に、全世界的にデフレ傾向でありますが、その中でも、もしも今日本の貯蓄に蓄えられている部分が流動性のものになれば違ってくるだろうというお見通し、そのことを私も期待したいですが、果たして現実はそうなっているかと申しますと、昨日の読売新聞でしたか、「邦銀、海外撤退に拍車も」という見出しでございまして、実は、邦銀の海外支店による貸出金が、九七年には八十兆円前後に達しておるものが、現在は二十兆円余りと四分の一に縮小しておるという指摘がございます。
 このことについて、竹中大臣の御所見を伺いたい。
竹中国務大臣 ちょっと新聞の記事の詳細及び数字について正確に把握をしておりませんが、日本の金融機関は、もちろん金融機関としての独自の活動をしておるわけでありますけれども、同時に、海外で活動するメーカーを中心とした日本の企業の金融部門をサポートするという非常に重要な役割を担ってきたというふうに認識をしております。
 そういう中で、日本の銀行がみずからの比較優位を考えて、日本の銀行の得意なものは得意なものとして伸ばして、そうでないところはむしろ他の力を活用するような形で新しい仕組みづくりをしているというのは、これは私は当然必要なことであろうかと思います。これは決して海外での進出量とか、そういうものではかれるものではなくて、いかにそのネットワークを形成しながら、世界の資源で使えるものは使えばいいわけでありますから、それを活用していけるような、本当の意味での金融機関としての力をつけることができるかという点にあるのではないかと思っております。
 数字が小さくなること自体は、正直言って寂しいという感じは恐らく持つのかもしれませんけれども、これはやはり、そういうことを通しても、力そのものを強化していく一つのプロセスとして生かしていただきたいと思っております。
阿部委員 例えば、中国で元を現地調達すればいいという考え方も成り立ち得ると思いますが、だがしかし、先ほど御指摘の、日本の貯蓄の中に蓄財という形になっているものをより積極的に生かそうというのであれば、やはりトータルの邦銀の貸出額というのは重要な意味を持つと私は思います。
 それから、邦銀の貸し渋り、貸し渋りというか貸し出せない状態になっていることが、逆に言うと、自己資本比率を損なうおそれがあるということがまた一つの足かせになっているという指摘もございますので、きょう大臣、詳しい記事はお読みにならなかったということでありますから、そういう観点からも、やはり我が国、これから国内も、そしてアジアのみならず世界ですが、きちんとした金融の一翼を担えるようにということが、これはもう国民の強い願いでもあると思いますから、ぜひとも御検討をくださいますようにお願い申し上げます。
 そして、私はもう一点、達増委員がお出しいただきました英文の中で、竹中大臣がお話しになっているところで、日銀の株式の買い取りの事態をどう思われるかというインタビューがございまして、これに関しましては、正直に言って、私は最初はこのニュースは驚いた、しかしながら、このニュースを聞いて、これが私に投げかけられた、私が今何をなすべきかの、一つの大きなある意味での投げかけられた問題であるというふうに考えたと。
 ジス・マスト・ビー・マイ・ジョブとなっていますが、これが私の仕事だという、これはというのは何かというと、よりディサイシブ、決定的な行動をとるということが私の役割だというふうに日銀のボールを受けとめたとおっしゃっておられますが、この点についていかがでございましょうか。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、私、日銀の金融政策決定会合があった日だというふうに記憶しておりますが、金融政策について、いわゆるマクロの金融政策について議論をしているというふうに認識をしておりましたのですけれども、これは金融政策ではない、信用秩序の維持のための政策という形で御承知の日銀の政策が出てきたということに、最初は、正直言って予想外であったという意味で驚いた次第でございます。
 しかし、日本銀行が、信用秩序維持のために非常に強い政策決意を持っている。ディサイシブというのはそういう意味で、強い決意を持っているという意味で申し上げたんだと思いますけれども、日銀もそういう姿勢でいるし、私自身もそういう姿勢でこの問題に当たらねばならないというふうに考えた、そのようなことを申し上げたと記憶をしております。
阿部委員 この文章どおりとれば、銀行が非常にダメージされた状態にあるということに、私はそういうシグナルとしてこれを受け取ったとおっしゃっておられますから、よくお読みいただきまして。
 私がなぜこういうことを聞くのかというと、例えば、私個人が今のこの不良債権問題にどういうふうな処方せんを考えておるかということ以上に、今決定的なポジションにある竹中大臣が、やはり国民に対してどのような言葉で語り、どのようなシグナルとしてこの事態に臨むかが極めて重要だと思います。このインタビューの中で竹中大臣も、国民は非常によく理解しておる、状況をわかっておるというふうにお書きですので、であるならば、政治家の責任というのは、どのような形でこれを考え、対処していくのかを明確になさることだと思います。そして、もしそれが、先ほど来の御質疑の中で、公的資金の注入をも必要とするもの、あるいは大きな失業や倒産の、一つの貸しはがし圧力になるものであるとするならば、その痛みの強さはどのくらいのものであるのか。
 例えば、幾つかの総合研究所、特に銀行関係の総合研究所の方たち、例えば、日本総研の試算では、三百三十二万人の失業者が生まれ、GDPが六・四%減少する。あるいは、第一生命経済研究所では、平成十六年度までに四万四千社が倒産、四十五万人が失業、GDPが六兆七千億円減少すると試算している。
 これを、あくまでもそういう総合研究所の試算ですよというふうには笑って済ませられない、無視してよいものでもないと私は思います。政策を発表なさるときには、そのことにはこのくらいの副作用があるかもしれない、あるいは、大きく言えば、もっと副作用以上の大ごとがあるかもしれない、しかしながら今やらなくてはいけないことがこれであるというふうに、きちんと説明責任を果たされた方が私は政治の姿勢として誠実であろうかと思いますが、その点について御答弁をお願いします。
竹中国務大臣 技術的な問題はともかくとしまして、やはり説明責任はきちんと果たさなければいけないと思っております。
 むしろ、今は基本的な枠組みを決める段階でありますので、しっかりと、さまざまな方の御意見を含めながら審議している段階でありまして、この基本的な方針が定まった後、これは、小泉内閣は「改革と展望」を毎年出す、その「改革と展望」を毎年見直して、マクロ経済がどうなるかというシナリオを示していくという明確なスタイルをもうとっているわけでありますので、「改革と展望」の見直しの時期ももう数カ月の、二カ月ぐらいのうちに参ります。その中に、この新しい政策を織り込んでどのような姿が描いていけるかということはこれはきっちりと説明をしていくつもりでございます。
 同時に、金融は技術的に大変難しい問題でもございますから、特段の配慮をして、先ほども御指摘をいただきましたけれども、要するにこういうことをやっていって、その中でこういう変化を期待しているのだということについても、ぜひ新たな工夫をして、御理解いただけるように努めたいと思っております。
阿部委員 昨日の株価の動きを見ましても、むしろ優良株の方が売られるような形になってきて、株式というものも非常に風評で動く事態が生じておりますので、市場にとっても望ましくない状態と思いますから、竹中大臣にあっては、本当に重要な任務、きちんと説明責任、国民にメッセージして事を運ばれるように、一点希望いたします。
 あと、塩川財務大臣にお願いいたします。
 私は、先ほど来申しますように、もしもこの不良債権処理というものを竹中大臣がおっしゃるように一丁目一番地というふうに認識されるのであれば、そのことに伴ってあらゆる政策動員が必要となる。その一つに、先ほどの失業、倒産、あるいは貸しはがしによる企業の経営困難を初めとして、いわゆる補正予算の問題がもう一方で出てまいると思います。
 もしも政府が一丸となってこの対策を打たれるのであれば、当然、来期の通常国会に補正予算をというようなことではなくて、既に税収の落ち込みもことしは十兆もあるやもしれないという指摘もあり、大臣は、十一月中旬になったら税収も確定されるし、来期の補正予算で何とかという御発言ですが、私は、やはりそれは政府としての決意が感じられない。やはり迅速な手で、昨日の御答弁では、まだ使い残した予算があるからいいではないかという大臣の御発言でありましたが、やはり極めて重要な時期の政策であれば、まず現下のデフレ状況も含めて、失業の増大、倒産の増大、中小企業のさまざまに困難な局面も含めて、より積極的に補正予算の編成をやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 今のお話を聞いていますと、何でもまず補正予算という言葉がありきという感じでございますけれども、私たちは、要するに、加速していくことにつきましてのアクションがどういうところに出てくるかということを、これをよく検討いたしまして、もうこれで三回にわたりまして経済関係大臣が集まりまして、いわゆる今阿部さんの心配しておられるセーフティーネットの問題等、それから企業をどうして再生するかということについて相談しております。
 そして、特にセーフティーネットや中小企業あるいは雇用の問題等については、現在の予算の中においてどれだけのものの余裕があるかということの計算もきちっと見直しまして、かなりの額があるということを確認しておりますが、なおこれで足らぬことも十分承知しております。そうなった場合はどのような処置をするかということもあわせて現在検討しておりまして、これがきょうの総合対策の中に意思表示として明確に出てくると思っておりますし、また、きょうは総理が特に、何というか総理発言のような形でその点についても明確にされると思っております。
 御心配になっておることは私たちも十分受けとめまして、そういうことの起こらぬように万全を期してやっていきたい。金が必要ならばどんなときでもやはり用意しなきゃならぬのは、これは政府の責任でございますから、事態を見きわめて適時適切な措置を講じたいと思っております。
阿部委員 国民の苦しみが増しますので、くれぐれも後手にならぬよう、よろしくお願いいたします。
 終わらせていただきます。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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