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第3号 平成14年11月6日(水曜日)

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平成十四年十一月六日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 江崎洋一郎君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      海江田万里君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    上田  勇君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      小池百合子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君、厚生労働省職業安定局次長三沢孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増原義剛君。
増原委員 自由民主党の増原でございます。
 本日、非常に微妙な経済、金融、財政状況の折に、こうして一般質問をさせていただきますことをまことにありがたく思っております。
 まず最初に、財務大臣、塩川大臣にお聞きしたいと思います。
 九月末の税収、対前年に比べますと、その進捗割合を見ましても、かなり落ち込んできております。かつて私が大蔵省に在職いたしておりましたときに、亡くなられました渡辺美智雄先生が大蔵大臣のとき、経済は生き物である、山もあれば谷もある、こういう言葉を、ちょうど私そのときに財政演説を担当しておったんでございますが、大臣の御直筆でそれが指示が回ってまいりました。かつて財政演説にこんなことを書いていいのかなと随分物議を醸したんでありますが、さすがはと思いましたのは、その年、案に相違せず大変な税収の減が生じまして、いわゆる歳入欠陥であります。今思い出しますと、渡辺喜美議員もおられますが、お父様の渡辺美智雄先生、やはり非常に大きな政治家であったなというふうに感服をいたしております。
 そうした中にあって、このたび、三十兆円の国債の発行枠というところで、厳しく財政改革にメスを入れられて予算編成をされたわけでございますが、今のところ、ざくっと見ても五%強の進捗割合の減になっております。これを掛け合わせれば、二兆円を優に超すような歳入欠陥になると思われます。
 一般的であれば、それは経費の節減とか、数千億とかそういうオーダーであれば対応できると思うんでありますが、ここまで、当然のことながら今後の経済情勢にもよりますけれども、全体の、改革加速のための総合対応策にも書いてありますように、金融経済情勢をめぐる不確実性が増しているということでありますので、来年の三月末、年度末の法人税収などを見なければわからないという面があるにしましても、相当大きな税収の減が生じる危険性があると私は見ております。
 まだ総理は、いろいろなことは言われておりますが、はっきりと補正予算を組むとは言われておりませんが、私は普通、三月末の、上半期の税収を見て、これは補正予算を組むかどうか決めるべきだと思っております。そういう意味で、このたびの税収の減につきまして、今後どのように対応されるつもりか。
 また、その原因でありますけれども、私は、もう明らかに経済の体力が弱ってきている。本当にまさに経済情勢の不確実性が増しているがゆえに、それが端的に税収にあらわれている。特に所得税とか法人税とか、なっております。当然、所得税の源泉徴収分は郵貯の利子の課税、これは満期が来ます、これはどんどん減っていくということは織り込んでつくってある、こういう税収なんですね。にもかかわらず、このように進捗割合が悪い。これはどういうところに原因があり、またどのような対応をこれからとろうとされているのか、財務大臣にお聞きしたいと思います。
塩川国務大臣 仰せのとおり、渡辺大蔵大臣の発言というのは、私ちょうどそのとき運輸大臣をやっておりまして一緒でございましたんですが、そのときはちょうど第二次石油ショックがじわじわと経済界に浸透しておったときで、非常に難しい運営のときでございました。もう二十年になろうかと思いますが、懐かしい思い出であります。
 そのときもとられました対策は、やはりきめ細かく需要を喚起しよう、内需主導に持っていこうという政策転換であったかと思っております。今とよくそういう状況は、下地が似ておるようには思っております。
 そこで税収の問題でございますけれども、確かに、おっしゃるように税収の収入が悪い。この八月末のもので見まして、正確な数字はちょっと後でまたあれですけれども、昨年度に比べまして、八月同期で比べますと、大体八四%ぐらいなんです。ということは、一六%の、予想が少ないということが言えるわけですね。これを今懸命に追及しておりますけれども、滞納額を私は非常に心配している。滞納額がふえてきておるという事実が実はございまして、それに対しましては、東京国税局長もきのう来まして、報告がございました。全力を挙げてその対応をとっておるようなところでございまして、これは追いつきでいくと言っています。
 根本は何だろうといったら、やはり所得税の申告分が非常に悪いということなんですね。源泉分は、さっきおっしゃったように、落ちておりますけれども、これは利子の分が見込みが外してございますのでそんなに悪くないんですが、対前年と比べますと悪いことは悪いんですけれども、しかし一般に見まして、申告分がちょっと悪いように思う。それと法人税が非常に悪いということですね。ここを我々はよくもう一度精査してみたいと思っております。
 でございますから、私、正直に言いまして、十四年度予算を立てましたときの見通しから見て、より以上に減収的な要素が非常に強いということは思っておりますので、非常に心配しておりまして、これはいずれ何かの形で手当てしなきゃならぬのでございますが、それをどういう形でするかということにつきましてはまだ根本的に考えておりません。
 したがいまして、補正の問題もございましたけれども、まだ閣内で十分に相談しなければならぬし、何としても、総理の意向としては財政の節度を損なわないということが根本精神になっておりますので、その点に関しても十分研究いたしたいと思っております。
増原委員 わかりました。
 今のところ、まだ不透明ということのようでありますけれども、一般的であれば、この九月末税収を見て補正を検討し、補正を組むというのが普通のパターンでありまして、現下の厳しい経済情勢にかんがみますと、できるだけ早くそれを閣内で議論されまして、その方針をきちっと出していただきたい、そういうように考えております。
 次に、竹中大臣にお聞きしたいと思います。
 大臣は高名な、いわゆる経済学者でもございますものですから、それも踏まえましてお聞きしたいんですが、近年、我が国で生じておりますいわゆるデフレ、資産、物価、両面にわたるデフレ現象につきまして、その原因というものは何だろうか、またそれにどのように対応したらいいんだろうかということについて、私も常々考えております。どうもデフレ対策という言葉は私は好きではありませんで、その原因をきちっと突きとめないと、これは対策をしたって意味がないわけであります。
 いろいろ議論はありますが、やはりITバブル、はじけはいたしましたけれども、IT関連の技術が各分野に波及しまして、相当生産性は上がってきているんだろうと私は思います。生産性が上がれば、理の当然として、その商品コストは下がってくる、商品価格は下がってくるわけでありますね。
 そしてまた一方で、日本国内だけではなくて世界じゅうを見ますと、中国を初めとするアジアの諸国が、いわゆる生産基地として世界経済の中に参加してまいりました。ということは、例えば中国の貿易収支が、収支とんとんといいますか、向こうでも内需がたくさんありまして、有効需要があってとんとんということであれば別ですが、御承知のように対日黒字も二百五十億ドルを越すような状況であります。もちろん対米黒字は中国は第一位でありまして、そういう意味で、いわゆるこれまでの私どもが考えていた世界に、中国を中心とするアジア諸国が大変な供給力を持って参入してきている。一方で、中国あるいはアジア諸国の内需といいましょうか、有効需要がまだ十分に図られるまで来ていない。
 そういうことを考えますと、世界的に見まして、構造的にそこには供給力が過剰になってきているのではないか。その余波が一方で我が国にも来て、製造業を中心に非常に厳しいリストラをされている、生産調整も含めて、設備の廃棄も含めてされているのではないかと私は思っております。もし、デフレの原因がそういうところにあるとするならば、いかに日本の国内だけで有効需要を引き上げたところで、それはとても解決にならないのではないかというようなことを私は思っております。
 そうした中で、いろいろなとり方がありますが、購買力平価、いわゆる為替の問題でありますけれども、何を基準にやっていくか。幾つか試算はあるようでありますが、大体一ドル百五十円前後になってきておりますね。大体その前後であります。そういうところから見ますと、我が国の今一ドル百二十円台の為替相場、これは極めて円高である。これもある意味ではデフレの大きな要因になっているのではないか、少なくとも輸入価格の低下という意味におきまして。そういうこともあわせ考えますと、一体これからその原因に対してどのような対応策をとるべきなのか。
 それとまたあわせまして、これは密接に関連してまいりますが、我が国の産業構造。特に、行政改革とか財政改革とかいろいろあります、これもどんどん進めていかなくてはいけませんが、一番今求められているのは経済改革なんですね。不良債権の問題も私はそうであろうと思います。この構造改革を、経済の構造改革、これをどのようにやっていくか。私は、はっきり申し上げて、今の日本は遅いと思っているんです、やり方が。余りにも遅い、もっと早くやらないとだめだ、いろいろな分野の経済の各主体の体力がどんどん落ちてきている、私はそのように思っております。
 そういう意味で、この構造改革問題も含めまして、竹中大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
竹中国務大臣 増原委員の御質問、大変大きな観点からの御質問であると存じます。
 まず第一は、デフレの病理をどのように見ているのかということでございますが、これは、基本的には三つの要因が非常に複雑に絡まって、今の日本のデフレ、物価の持続的な下落というのが起こっていると思っています。
 第一の要因は、これは委員も御指摘になりましたように、やはり需要が不足している面というのが確かにあるのだろう。需給ギャップの推定等も経済財政白書で昨年来行っておりますけれども、その問題は確かにあると思います。ただ、需要をふやすにはどうしたらよいかというようなこと、それを財政の制約の中でどのように行ったらよいかということ、幾つかの難しい問題があるということだと思います。
 第二の要因は、まさにこれは、需要に対して供給側の要因がある。供給側の要因にも幾つかありますが、技術進歩が高まって、あと、御指摘になったように、IT等々で生産性が高まったという国内の要因と、中国の安い人件費圧力のもとでどんどん供給力、生産力が高まっているという海外的な要因があります。現実に、日本の物価の下落を見てみますと、消費者物価や卸売物価に先駆ける形で、GDPデフレーターが七年、八年前から下がり始めたわけでありますから、このいわゆる供給側の、生産要素デフレの様相というのも相当強いというふうに考えなければいけないと思います。
 ただ、これは簡単には我々としてコントロールできない性格のものである。生産性が上がること自体はむしろ歓迎すべきであるという面もございます。
 第三番目の要因が、実は金融的な要因というものもある。マネーサプライがやはりなかなかふえてくれない。そこに一つ着目して、不良債権の処理をやはり加速して、それによって金融仲介機能を高めなければいけないという一つの重要な処方せんが出てくるわけでございます。
 後半御指摘になりました、為替レートの問題も含めた上での産業構造の転換の問題でありますが、まさしくこれは経済全体が、不良債権の問題一つとりましても、これは銀行の不良資産であると同時に、企業から見た過剰債務の問題、過剰債務を抱える中で、なかなか収益力の高いイノベーティブな分野にその生産の要素が移っていけないという非常に深刻な問題をこの十年間、日本は抱えてきたと思います。
 今回、この問題に関しては、不良債権の処理を加速する中で、今度、借り手側の企業の再生、いわゆる企業の再生の機構等々も、産業再生機構も含めて総合的に全内閣を挙げてこの問題に取り組もうとしている段階でございます。
 委員御指摘のように、これはなかなか、遅いといいますかスムーズにこれまでいってこなかったということも事実かと思いますが、今回、新しい機構の設立も含めまして、御指摘のような問題により積極果敢に取り組む必要があるというふうに思っております。
増原委員 今、三つの要因を挙げられました。第一の要因と第三の要因、まあ第二の要因はなかなかコントローラブルでないということのようでありますが、では一と三についてどのようにやるかということにつきまして、このたび、改革加速のための総合対応策とそれから金融再生プログラム、これを先月の三十日にお出しになったんだろうと思います。
 そこで、まず基本的なことなんですけれども、この総合対応策と金融再生プログラム、これはどのような関係になるのかということについてお聞きしたいと思うんです。
 私が読んでみますと、もうあっちへ飛びこっちへ飛び、その総合対応策のところに金融再生プログラムのどこのどこを参照と書いてあるんですね。この対応策というのは、内閣が決めたものというふうに見てよろしいんでしょうか。金融再生プログラムは金融庁と書いてあるんですね。改革加速のための総合対応策、これは何も書いていない。詠み人知らず、こうなっておるんですけれども、この両者の関係につきまして少しお話をいただけたらと思います。
竹中国務大臣 先ほどから御指摘のありました、日本の構造改革を進めるためには具体的にはどのように考えたらよいか。かねてから、四つの改革の柱を進めていくべきであるということを、諮問会議を中心に検討してまいりました。
 一つは歳出の改革。これは、財政の健全化を目指しながら、より有効な資源の配分を行うこと。歳入の改革。これは税制の改革でありまして、税収の基盤をきちっと固めながら、かつ、それが経済の活性化に結びつくような仕組みをつくっていくこと。第三が金融システムの改革。そして第四番目が規制の改革。この規制改革は、新しい需要をつくり出すという意味でも大変重要だということに相なります。
 総合対応策は、その意味ではこうしたこと、これは、以前から各省が取り組んでいることを、現時点で各省の対応を取りまとめたというもの、これが総合対応策の性格でございます。
 今回、総理から特に御指示がありまして、金融システム改革についてより強化するようにという御指摘がありました。それを踏まえて、この金融再生のプログラムというのを金融庁として作成したという形になっております。
 したがって、金融庁で取りまとめたもの、これのエッセンスが総合対応策の中にカセットのようにいわば組み込まれていて、これは同じように、中小企業の対策に関しては経済産業省では非常に大きな政策全体を持っているわけですが、そのエッセンスの部分がこの総合対応策の中に組み込まれている。
 そういう意味では、御指摘のように、金融再生プログラムそのものは金融庁として取りまとめたものでございますが、その基本的な枠組みの部分を集めて、現時点で全内閣として取り組んでいるこの四つの、四本柱の改革を中心に総合的な対応策が取りまとめられている、そういう仕組みになっております。
増原委員 わかりました。要は、総合対応策は内閣全体としての方針である、こういうことでありますね。
 今四つの柱と言われましたが、歳出改革、これについては、このたびこれには盛られていません。これは恐らく来年度予算でおやりになるんだと思いますね。あとの三つ、金融システム改革と税制改革とそれから規制改革、これが入っているわけであります。
 そうした中で、今言われた性格だとしたときに、参照という意味はどういう意味かという話になるんですが、もし、この総合対応策に金融再生プログラムのどこどこを参照と書いてある、それが全部この総合対応策の中に入っているんだということですと、幾つかおかしい点があるんですよ、正直申し上げまして。
 細かいことを申し上げますけれども、金融再生プログラムの中で、例えば四ページにあります「新しい企業再生の枠組み」というところの「「特別支援」を介した企業再生」の中の(ア)の「貸出債権のオフバランス化推進」というところに、云々と来まして、「その際、RCCによる買取に関しては、必要に応じ財政的措置についても検討する。」と。実はこれは中に入っていないんですね、対応策の中に入っていない。いいですか。これは金融庁なんですよ。金融庁が検討するんだからいいんだろうということかもしれませんが、財政的措置となると、これは財務大臣ではないですか。
 それから今度は、例えば八ページのところの「自己資本の充実」とあるんですね。これは総合対応策に入っているんですよ。総合対応策に入っておきながら「自己資本の充実 (ア)自己資本を強化するための税制改正 金融機関の自己資本を強化するため、以下の措置を関係府省に強く要望する。」と。これはどういうことなんですか。そこでいろいろ、ここに「無税償却制度の導入」とか書いてあるんですよ。「繰延税金資産」とか書いてありますよ。しかし、これは総合対応策の中に入っておるじゃないですか。関係府省に強く要望するとかなんとかというのはおかしいんじゃないですか、内閣として。これはやはりおかしいですよ。財務大臣は知りません、こういう話ですか。これはおかしいと思いますね。だから、改革加速のための総合対応策というのと金融再生プログラムというのはどうなっているんですかということを私は聞いたわけですよ。
 まあ与党ですから余りいじめてはいけないんでしょうけれども、やはりもう少し対策の整合性、どたばたでやっちゃだめなんですよ。もっときちんと事務方で詰めてやらせないと、こういう読むのも難しいような対応策です、それは。あっち見てこっち見て。こんなことをやっておったんでは、私どもが見てこれなんですから、国民の皆さんが見てわかるわけないですよ。野党の諸君も、わかりますかね。その点、私はそういう感じがしますよ。そういう意味でどうなっておるんですかということをちょっとお聞きしたわけでありまして、与党でありますのでこの程度でやめておきたいと思います。ちょっとそこらあたり。
 しかも、例えばもう一言つけ加えておきますと、総理の談話は、改革加速のための総合対応策について出されているんじゃないんですね、これは。金融再生プログラムについて出されているんです、どう見たって。総合対応策について一切書かれておりませんよ、皆さんこれは。金融再生プログラムだけなんですよ。これで総理のお墨つきですか。おかしいじゃないですか。ここらあたりちょっと、これは答弁要りませんよ、よく検討しておいてください。後で野党の諸君が十分これは追及するでしょう。ということでありますので、これからその対応をやる場合はちゃんと考えてやっていただきたいと思います。
 時間の関係もありますので、次に参ります。
 総合対応策の中に……(発言する者あり)ちょっと野党の諸君、拍手が足りませんからやらないだけです。拍手をいただければもっと突っ込んでもいいんですがね。
 それは別としまして、次に参りますが、総合対応策の中に「最近における金融・経済情勢の不確実性の高まり」とあります。これは一体何か。先ほどの税収の進捗割合の減なども当然こういったものに、経済情勢に入っているのかどうか。私は入っていると思いますよ。とりわけ、金融の不確実性の高まり。経済はよくわかります、私ども深くかかわっていますから。金融の不確実性の高まりとは一体具体的には何か。
 そしてまた、これは両方に入っておりますが、総合対応策と金融再生プログラムに入っておりますが、「日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、」とある。これはどういうことなんですか。日本の金融システムとか金融行政、これは信頼されていないということなんですか、今。それはどうなんですか。
竹中国務大臣 大変しっかりと評価をしていただきまして、ありがとうございます。
 一言だけ、先ほどの点につきましては、総合対応策というのは、現段階で各省庁が取り組んでいるものを現時点で取りまとめたという性格のものでございますので、各省庁でこのようなことをやっている、それを一つの取りまとめたということでございますので、内部でのまだ議論が続いているものはもちろんたくさんございます。
 そういう点もぜひお含みの上で、今の二つの質問でございますけれども、その不確実性につきましては、これは現実問題として、よくリスクが高まっているというような言い方があるわけですが、リスクというのはいわば分散の問題でありますから、分散が高まった場合は、それについてそれなりのリスクを減ずるための手当てをするというのは技術上幾つか方法があるのだと思います。しかし、今の世界じゅうの経済で起こっていますのは、まずリスクが高いか低いかも含めて不確実である。不確実であるとすると、まさに立ちどまってしまうわけでありまして、立ちどまってしまうから全体に、これはマーケットなんかで典型にあらわれますけれども、やはりどうしても商いが薄くなって、その中で価格形成が非常にゆがんで変動が大きくなってしまっている、これが現状なのだと思います。
 現実には、アメリカの経済一つとりましても、七―九の経済成長率はかなりちゃんとしている。ちゃんとしているんだけれども、しかし不確実で、何が起こるかわからない。これは特にアメリカの場合は、今後の軍事面での行動等々があるわけでありますけれども、そういう問題が世界じゅうを幅広く覆っているというふうに感じるわけであります。
 日本についても、したがって同じように、実物経済の成長率だけ見ますと予想からそんなに外れているわけではないんですけれども、先ほど御指摘いただいたようなデフレ等々について、なかなか先が見えない、不確実な要因がある。
 特に、それをば、しからば金融について何かということになりますと、今のデフレとも関連いたしますが、やはり世界的に見て資産市場が大変不安定である。資産市場の典型は株式市場でありますし、為替レートの市場も入ろうかと思いますけれども、こうした資産市場の不安定によって、再び金融が非常に大きな影響を受ける。特に、御承知のように、日本の場合は株価によって銀行行動が影響を特に受けやすいという体質を持っておりますので、そういう点が特に不確実性の問題としては重要な問題であるというふうに認識をしております。
 二番目の、信頼の問題でございますけれども、これは我々、金融を預かる人間としては、金融当局、日本の銀行業界、これまでそれなりに不良債権の処理のために努力をしてきましたし、一時の危機的な状況を脱してここまで何とか運営をしてきているわけですけれども、謙虚に振り返って、しかしやはり信頼が十分では決してないという点を踏まえて、心してこの行政に当たっていかなければいけない、そういう意味、決意を込めてそのような表現をさせていただいた次第でございます。
増原委員 わかりました。
 確かに、総合対応策につきましても、何も書いていない、詠み人知らず、こうなっているわけですね。普通、内閣であれば、これが閣議了解とか閣議決定とかいう形で出てくる、そういう性格のものである。まだそれよりもはるかに及ばない、詠み人知らずのペーパーである。各省がいろいろ検討しているのをとりあえずまとめたペーパー、このように私も解しました。したがって、決して閣議決定でもなければ閣議了解でもない、このように解してよろしいわけですね。――わかりました。
 その次に、その中で、総理が談話で後押しをされております金融再生プログラムの中に特別支援の枠組みがありますね。その中で、新しい公的資金制度の創設について言及されておりますが、これは一体どのような公的資金制度を想定されていらっしゃるのか。緊急にとかいろいろありますけれども、そこをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 御承知のように、万が一にも公的資金が必要になった場合に、現行の法的枠組みのもとでは、預金保険法百二条に基づいて二つの条件、具体的には、この資本注入等の措置が講じられなければ、我が国または当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認められるときで、第二に、金融危機対応会議の議を経た上で、資本注入の必要性の認定を行うことができるというふうになっているわけでございます。
 この枠組みはこの枠組みで、大変重要な枠組みでございます。しかし今後、まさに、単に危機を回避するというだけではなくて、より強い金融システムをつくっていくという中で、この枠組みだけで果たして十分かどうかということについては、専門家の間にもいろいろな御議論があるというふうに承知をしております。そういうことを含めまして、新たな制度の創設が必要かどうかということも含めて検討していきたいというのが今回の再生プログラムの趣旨でございます。
 私が今の時点で先見的にこういうものというものを持っているわけではございませんが、幅広く専門家の御意見も伺いながら、関係者の御意見も伺いながら、その必要性を含めてぜひしっかりと検討していきたいというふうに思います。
増原委員 今後検討していく課題ということだと思います。
 実は、私は既に、一年余り前にこの財務金融委員会で、公的資金の強制注入論、私はもともと強制注入論者なんです、はっきり言いまして。
 というのは、不良債権の処理をどんどん進めていけば、当然のことながら自己資本は毀損するわけですよね。毀損していきます。しかし、まさに一方で今度は自己資本の比率の規制があるわけですから、それを保とうとすれば、当然のことながら思い切った不良債権の処理はできない。このジレンマにあるんだろう。であれば、思い切って自己資本を大きくしておいてあげないと、各銀行、どの銀行も思い切った不良債権の処理はできない。これは理の当然だと私は思っているんです。
 そういう意味で、私は前から、もう一年余り前ですかね、竹中さんが大臣になられる前だと思いますけれども、そういうことをこの財務金融委員会で質問をした経緯があります。そのときには全然金融危機でも何でもないということの御答弁でしたが。要は、金融危機を私は言っているわけではなくて、金融機関のその先にある貸出先を早くやっていかないと、これは経済の構造調整も進まない、そこに大きな問題があるんだということを申し上げていたようなわけであります。
 そうした意味で、このたび、総合対応策の中で、産業再生機構というものをつくってやっていくということを言われております。やっと来たかな、やっと関係省庁も動き始めたかなという嫌いがしておりますが、それにしてもやや遅きに失するのではないかという個人的な気持ちを持っております。
 そういう意味で、公的資金の強制注入が即、イコール国有化といったようなものでもないし、また、公的資金を入れるからすぐ経営責任を問うというものでもないと思うんですね。今起きていることはそれだけではないのでありまして、いろいろなことが積み重なって、やってもやっても不良債権がどんどんどんどん出てくる。こういうときに、本当にそれをマネジメントする人たちをいかにして、北風と太陽とありますが、いつも北風ではだめなのでありまして、太陽も要るのでありますね。だから、いついつまでにこれをきちっとしなさい、こういう猶予を与えて、しっかりとそのマネジメントをしていただく、これが私は一番大事ではないかというふうに思っておりますので、ぜひ竹中大臣の頭の片隅に置いておいていただけたらと思います。
 それから、その次に、ちょっとこれも全体を見て私が疑問に感じているんですが、日銀の金融機関が保有する株式の買い取り、これのみについて金融再生プログラムは触れられておりますが、私どもは既に株式買い取り機構というものをつくっているわけでありますね。これについてはおよそ言及されていない。これは役立たずの機構であるというふうに思われているのか。
 確かに使い勝手は悪いんですよ、八%の拠出金を出すとか何とか。野党の諸君がぎゃあぎゃあ言いますからね、税金がどうかどうかと言って。そういうことになったんですが、こんなもの取っ払っちゃえばいいんですね。日銀と同じ立場で株式買い取り機構はやればいいんですよ。今参議院で継続審議になっていますから、思い切って改正すればいいんです、そんなものは。
 本来これは、日銀が株式を買い取る、そんなことは日銀のやることじゃないんですよ、はっきり言いましたら。政府がやることなんですよ。株式買い取り機構をきちんと改正する、そこから行くべきだと思うんですよ。そういうことがあります。ですから、それとの関係をどういうふうに考えていらっしゃるのか。
 また、不良債権の処理につきまして、RCCと企業再生ファンド。恐らくこの金融再生プログラムで触れられております企業再生ファンドは、民間のファンドを指していらっしゃるんだと思うんですね。しかし、我々は先般の国会で法律を変えまして、RCCがただ単に処分屋ではなくてちゃんと企業再生もできるように、そういう権能も付与したんですね。これとの関係と、それと今度は、仮称ですけれどもこれから政府がつくろうとされている産業再生機構、これは一体どういう関係になるんですか。
 それから、とりわけ竹中大臣がお好きな市場評価といいますか市場原理、これとの関係でいった場合、先ほど申し上げた株式買い取り機構にしましても、あるいはこのたびの産業再生機構にしましても、何がどういう関係になっていて、それと今度は市場原理との関係はどうなるんだ。わかりますか。政府が関与するんですから、市場原理じゃないですよ。それをどうするんだ。
 これについて、明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘、御質問が三点あったかと思います。
 第一の株式買い取り機構でございますけれども、確かに再生プログラムでは日銀の施策を早期にということに言及しております。もちろんこれは、買い取り機構の役割が大変重要であるということは私たち強く認識しておりまして、しかし、今これの改正に向けて大変国会でいろいろな観点から御審議をいただいているというふうに承知をしておりますので、その御審議に大変期待を申し上げているという趣旨で特に言及はしていないわけでございますけれども、これは、やはり買い取り機構が重要な役割を果たしていく、日銀はそれと補完的な役割を果たしていくものであるというふうに認識をしております。
 二番目の、企業再生ファンドと再生機構との関係でございますが、これは大変重要な問題であると思います。これも委員初め皆様の御尽力によって、当初これは回収業務、回収機構として出発したRCCが、回収のみならず、さらに売却を加えて、それに再生を行えるようになったというのが、これは大変重要なポイントであろうかと思います。ことしの八月に企業再生のファンドを設立して、これがしっかりと動き始めた段階であるというふうに認識をしております。
 その再生機構とRCCの再生機能の関係をどのように考えていくのかというのは、これも大変重要な問題であります。政策のコストを最小化させながら、しかもその政策効果の最大化を目指すためにどのように仕組みをつくっていったらよいか、大変重要な問題意識として位置づけておりますので、これは再生機構の仕組みをどのようにするかという議論が今始まった段階でありますので、御指摘のような点を踏まえて、ぜひしっかりと内部で各省庁と連携しながら議論をしていきたいと思っています。
 三番目の市場評価、これは大変大きな問題ではございますけれども、基本的にはこれは、やはり企業を再生できるかどうかというのはまさに市場の評価にかかわります。そこに国が関与するということは、いわば、これはよく申し上げるんですけれども、本来民間でもっと積極的にできるはずのことが、残念だけれども今の萎縮した金融の状況の中でなかなかできないというのが日本の現実であろうかと思います。例えば、DIPファイナンス一つにしましても、これは当然民間で行えるはずなんですが、実際に民間の企業がなかなか入ってこれなくて、政策投資銀行がむしろモデルを示して引っ張っているというのが日本の現状でございます。
 その意味では、やはり市場評価をしっかりと位置づけながら、しかし、最初は公的な部門がそれを少しリードして国全体を活性化するような中で、また同時に、しかしそれが安易な企業の延命に結びつくのではなくて、しっかりと再生に結びつくような、人材にしましても資金にしましても、やはり市場のノウハウ、力を利用するような形でしっかりと制度設計をしていく必要があるというふうに思っております。
増原委員 もちろん、今大臣がおっしゃったことはよくわかりました。ありがとうございます。
 私が申し上げたのは、例えば、企業再生ファンド、既に民間にも大分できているやにもお聞きしているんですね。そういう意味で、それは民間ベース、ある意味では市場ベースの話なんですよね。それと、RCCの中に再生ファンドをつくってやっていこうという形で先般法律改正をしたこと。そこでもやはり問題があったんですよ。市場で既にいろいろ育ってきているではないか、そういうところの分を阻害するんではないかといったような話もあったわけですね。そういうところに加えて、今度はもっと大仕掛けに産業再生機構というのをつくっていこうとされているわけですね。
 そうすると、民でできるものは民で、今、民でできないから官でやるんだということなんだとすれば、例えば産業再生機構にしましても、やはり期限を設けて、しかも、どういうケース、大きいのをやっていくんだ、あとは民間の企業再生ファンドに任せていくんだというふうなところを、きちんとやはり仕分けをしていただく必要があるんであろうと思います。
 加えて、あとは、産業再生機構とRCCの再生機能の話。これは、もしその産業再生機構をきちっと立ち上げるんであれば、私は、RCCの企業再生機能は削除すべきだと。だって、あそこはトップは法律屋さんですから、弁護士さんですから、これは処分しかできないですよ。マネジメントできないんですから、はっきり言いまして。そういうところがあると思いますので、そこをはっきり分けて、そのときはRCCの再生機能はもうなくする、それで産業再生機構だけにする。そこを通して再生するものは産業再生機構は引き続き持ち、しからざるものはRCCに行って、これまでどおり処分をしてもらうというふうに、仕分けをきちっとしていただきたいというふうに私は思っております。
 最後になります。時間が参りましたので、あと一問だけお願いいたします。
 大臣は、市場評価をいろいろ言われております。いわゆる資産査定の基準、これが市場の評価との整合性を得ているかどうかとか、あるいは、繰り延べ税金資産につきまして、その資本の脆弱性があるじゃないかということも言われておりますが、市場評価を大事にされる大臣とされまして、では具体的に、今の状況がどの市場でどのような評価がなされているのかということについてお聞きしたいと思います。
 例えば、それでは今の日本の大手行、これにつきまして、海外資金調達のときにジャパン・プレミアムはついているんですか、ついていないんですか。ついていないんであれば、何ら市場評価と実態とは乖離しているとは言えないでしょうね。
小坂委員長 質問を端的に願います。
増原委員 はい。
 大臣がおっしゃる市場評価とは、一体どういうところに言われているのか、これをお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘のように、ジャパン・プレミアムは、九九年の半ばごろからいわゆるジャパン・プレミアムと称するものは消えていくという形で安定的に運営をされているというふうに承知をしております。
 市場の評価というのは、市場の声は多様でありますから、これ一つということは、これは当然のことながら難しいわけでありますが、一つには、やはり株価を通した企業の評価等々、さらには、これはどれをとるかによって難しいですけれども、アナリストと称する人たちのさまざまな分析、それが全部正しいとはもちろん思いませんが、そういうものを総合的にやはり勘案しまして、その市場の声に対しては謙虚に耳を傾けながら、しかし我々の信念を貫く形で、ぜひ政策を遂行したいと思っております。
増原委員 ありがとうございました。
 くれぐれも、偏った市場、偏ったアナリストではなくて、最後に今大臣が言われましたように総合的な観点から、そういう意味では我々政治家も市場の一部かもしれません、そういう意味で、総合的な観点からいろいろ議論も詰めて、その度量を持ってこれからやっていただきたいと思います。
 以上であります。オーバーしまして済みません。終わります。
小坂委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。
 きょうは、塩川大臣、竹中大臣、まことに御苦労さまでございます。
 きょうは、私の方からは、いわゆる総合対応策、金融再生プログラムの内容を中心といたしまして御質問させていただきたいというふうに考えております。
 今、増原議員の方からもいろいろと御指摘があったところでありますけれども、やはり、今我が国の経済が抱えている大きな問題がデフレであるということは、もう間違いがないというふうに思います。
 先ほどの質問でもありましたけれども、現在進んでいるこのデフレについては、いろいろな原因が指摘されているわけでありますけれども、その中で、先ほども質問にもあったんですが、経済のグローバル化が進んでいくと多くの産業分野で価格低下に対する圧力がやはり大きくなっているし、また、国内的にも、残念ながら日本の今の供給サイドというものが変化している需要に十分適応できていないというような、そういうような質的なギャップもあるような感じがいたします。
 こうした原因に対して、今度の経済財政諮問会議でまとめられました総合対応策でさまざまな対策が盛り込まれているんですが、そこで、将来の日本経済の成長を支える新しい産業分野をどのように育成していくかという観点が若干不足しているんじゃないのかなというのが、私の受けた印象であります。
 日本経済を本格的に再生していくためには、付加価値の低い産業分野を縮小していくという一方で、やはり経済を引っ張っていくような新しい生産性、付加価値の高い産業分野を育成していく、これが経済の構造改革ということなんだろうというふうに思うんですが、そういう必要があるというふうに思います。
 この総合対応策では、今ある企業の再建についていろいろな施策が盛り込まれているんですけれども、新しい産業分野を生み出して育てるというような意味では、どうも具体的な施策が余り明示されていないんですけれども、この点について御見解を伺いたいというふうに思います。
竹中国務大臣 先ほどの増原委員の御指摘とも少し絡む点がありますので、まず一点だけ最初に申し上げておきたいんですが、政府としてどういう対応策を、政策をとるべきかということに関しましては、ことし六月末の骨太の方針の中でかなり細かく、三十のアクションプログラム等々を掲げて、しっかりとした議論を踏まえて、これは閣議決定もして政策を組み立てさせていただいております。今回は、そこで内閣が決めた各政策をより早く、より大きくやる、そのために、各省が今どういう努力をしているかということを現時点で各省別に取りまとめたものというのが今回の総合対応策の位置づけでございます。
 それを踏まえた上で、御提示の一つの重要な、新しい産業分野をどう考えるかという問題でありますけれども、基本的には、高度成長期の通産省がやったような、いわばチャンピオンインダストリーのようなものを政府が何らか指定して、そこに資源を国家的に集中投下するというようなことは、やはりさまざまな観点から時代にそぐわなくなっているのだと思います。
 しかし、さはさりながら、上田委員御指摘のように、やはり産業をしっかりと育てていくということは重要でありまして、大きく二つの考え方に基づいて、さきの骨太第二弾、そして今回の総合対応策が成り立っているというふうに理解をしております。
 第一は、いわば先端的な産業の育成に関連しては、例えば科学技術等々の四つの重点分野等々を指定して、それに対してできるだけ資源を重点配分していくというような思想、仕組みを持っているということでございます。これは先端的な、特に科学技術に関連する分野。同時に、第二の点としては、私たちの身の回りに埋もれているまだ発掘の余地がある産業がたくさんあるのではないだろうか。これは、例えば観光などもそうですし、健康回りの産業もそうでございますし、そういうものに関しては引き続き力を入れていくということにしております。
 その一つとして、実は例の構造改革特区があるわけで、地方の特性を生かして、地方の知恵を生かす形でそういう埋もれた産業を発掘する、その手助けとして規制改革を絡めていく、そのような発想を持って新しい産業の発掘に努力をしなければいけないというふうに考えている次第です。
上田(勇)委員 ありがとうございます。
 私がこの点を申し上げたのは、今回示された対応策、将来の日本経済がこういう方向に成長に向かうんだという文章がなかなか見えてこない、そこに非常に不安もあるし、不満もあったところだというふうに思いましたんで、ぜひこれはやはり、今ある悪い部分というか成長性の低い部分を整理する、縮小していくということも重要なことなんですけれども、将来、日本経済の着実な成長を引っ張っていく部分というものをもっと力を入れて育成していかなければいけないんだろうというふうに思います。
 そうした中で、今、実態としては、国内の金融機能が健全に機能をしていない。成長性のある新たな産業分野にどうやって資金を円滑に供給していくのかということを考えると、その一つとしては、対内直接投資をもっとふやしていくということが一つ有効な方法なんじゃないかというふうに思います。ところが、ジェトロの資料とか見ていますと、日本が受け入れている直接投資の額というのは本当に少なくて、世界で二十四番目だと。アメリカの三十分の一、ドイツの二十分の一という額であります。
 しかも、日本の場合には、日本が受け入れる投資とそれから外国に出す対外投資との比率というのが、これが四分の一なんですね。通常、ほかの先進国を見てみると、出ていくものもあれば入ってくるものもある、ほぼ大体同じぐらいの水準でパラレルに進むんですが、日本は余りにも偏り過ぎている。これはどういうことかというと、日本にある資金が外国での経済を支えるふうに使われていて、国内の経済に使われないということでありますので、これでは国内の経済はよくならないんではないのかなというふうに思います。
 もちろん、いろいろな今製造業の海外移転というようなこともあって、海外に投資が出ていくということは、これは避けられないことなんでしょうけれども、やはり、もっと日本の国内の産業が海外からも資金が集まるような魅力ある環境をつくっていかなければいけないんだろうというふうに思います。
 そういう意味で、この対内直接投資をもっとふやしていくためのさまざまな方策が必要なんだろうというふうに思っているんですけれども、このことについてのお考え、それからまた具体的な御提案があればお聞きをしたいというふうに思います。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、日本の対内直接投資、海外投資の受け入れというのは、これは大変諸外国等に比べても規模が小さいし、特に投資額に比べて規模が小さい。GDP比で〇・二%でございますから、アメリカの約三%、イギリスの約八%強に比べると、やはり著しく低い水準になっているというのが現実でございます。これは、決してお金を受け入れるということではなくて、まさに経営ノウハウ、経営資源そのものが、よい経営資源がやってきて日本の経済を活性化させるという意味で、大変重要な役割を果たさなければいけないと思います。
 先ほど御紹介した骨太第二弾、ことし六月に閣議決定した骨太第二弾でも、対内直接投資の拡大を目指した具体策を平成十四年度中を目途に取りまとめるというふうにしておりまして、これを受けて十月、先月に、対日投資会議専門部会というのを我々としても、内閣としても開催しております。ここで、この直接投資を拡大する具体策等々をしっかりと検討していきたいと思います。
 専門家の間には既に多くの議論がございますけれども、やはり、社会のシステムのわかりやすさというか透明性の問題、さらには人材の問題、中には言葉の障壁等々を指摘する人もいますけれども、なかなか重要な問題がたくさんあると思いますので、そういう場を通して、御指摘のような方向に実態が動きますように、しっかりと政策を議論したいというふうに思っているところです。
上田(勇)委員 今大臣がお話しになったように、対内直接投資というのは、資金の面だけじゃなくて、やはり、今こうしたグローバル経済の中では、お互いにすぐれた技術や経営ノウハウ、そういったものが行き来することによって、それぞれの経済の成長性が高まっていくということだというふうに思うんです。ところが、今私の方からもお話をさせていただいたように、日本の額は非常に少な過ぎる。その原因はどこにあるんだろうなということをさまざま私も考えて、勉強させていただいているんですけれども、制度的な面では随分改善されてきたようではありますが、やはり日本の経済に、それだけ海外から投資をしても魅力がある十分なリターンが期待できるというようなところがまだ足りないのかなという感じがいたします。
 これは、今後税制の問題や規制改革の問題なども通して考えていっていただかなければいけないというふうに思いますけれども、やはり、グローバルエコノミーの中で日本の経済が今後成長していくためには、外からも資本を受け入れるというような体制をしっかりと整備していかなければいけないんではないかというふうに考えておりますので、ぜひまた取り組みのほどをよろしくお願いしたいというふうに思います。
 それで、今のデフレの現状を克服していくためには、やはり需要を創出していくということも必要になってきているわけでありまして、そういう意味では、今いろいろなところで補正予算の問題が議論されております。補正予算の必要性について、いろいろな主張が出ておりますし、またその規模についてもいろいろなことが言われているわけでありますが、私も、今の経済の現状を考えたときに、やはり需要不足があるんで、これは補正予算が必要なんだろうというふうには考えているんですけれども、ただ、最近いろいろ議論されている中で、その補正予算の規模だけがどうも先行している嫌いがあります。
 私は、財政出動だけで需要の不足を全部賄うというのは、やはり今もう無理になっているわけでありまして、現状を考えれば、必要な投資はしなければいけない部分はあるんですが、ただ、それはやはり内容が非常に重要になってくるんだろう。内容はやはりしっかりと吟味して、必要性、緊急性の高いところに必要な予算をつけるということにしないと、単に財政出動だけで全部の需要を賄おうとすれば、出動に見合うだけの効果というのはなかなか上がってこないんじゃないのかな、むしろ結果的には財政赤字が大きくなってしまうというようなことになりかねないので、今求められているのは、やはり内容をよく吟味した財政出動だというふうに思います。
 例えば、今度のこの総合対応策等でも書いてありますが、都市機能を強化する部分だとか少子高齢社会に適応したような社会資本整備に重点化するとか、これはどうしてもこれからの日本の社会を考えたときにはやらなければいけない部分でありますので、それは今の景気対策という意味で実施することも必要なんではないかというふうに思っております。
 現時点で、補正予算をやるかやらないかというようなことについてお伺いをしても、非常に難しい面があろうかというふうに思いますが、この補正予算も含めて、来年度予算の編成も含めた今後の財政方針について、やはりその内容をよく吟味した、そして必要に応じた財政出動を行っていくべきであろうというふうに私も考えておりますけれども、塩川大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
塩川国務大臣 私が答弁するまでもなく、今、上田さんがおっしゃった、私もそのとおり、全く私が思うていることをおっしゃっているので、私はそれで今感心して聞いておったんですけれども、一つは、補正を議論しなきゃならぬ段階にどうせなるかもわからぬと思うんです。それは、税収が不足してきておることが、これがやはり一番大きい要因でございますが、しかし、できるだけ補正は避けて、先ほどおっしゃるように、ただ単に補正を出したからといって景気がようなる、あるいは経済に活力が出るということには限らない。しかし、要するに、国政全般の、行政全般をスムーズにするために、資金の運用を絶えず考えておかなきゃならぬだろうと思っております。
 その中で、私は、今役所を挙げて検討しておりますのは、予算を配分いたしましたその後において予算がどのように使われておるのかという実態を調査する、有効に使われておるかどうかということ、これが一つ。それからもう一つは、予算を配分しておりますけれども、その配分が公平なのかどうか、非常に偏った実態が残っておらぬだろうかということであります。
 それは、一つは何かといったら、制度的に決められておる負担金、助成金、こういうようなものが、現在の経済社会においては余り機能しておらないのに、それが依然として補助対象あるいは負担金の対象になっておる。そういうところを振りかえていくということによってカバーができないだろうかということ。
 それから、現在の既設の施設なりあるいは制度というものをもっと有効に使えないのか。例えば、義務教育施設なんというのがございますけれども、地域によってはもう非常にあいておるし、また再生、活用し得る余地のあるものも随分ある。そういうようなものを利用して、例えば福祉関係に投入するとかそういうことができないだろうか、そういうことを今十分検討させまして、それを今後の予算に生かしていきたい、そういう準備をしておるんです。
 しかし、おっしゃる補正についての議論は、まだ具体的にいたしておりませんけれども、もしそういうことがあるとするならば、その準備のための、さっき言った基礎的な条件というものを整備してやっていきたいと思っております。
上田(勇)委員 私は、今のこの経済が、先行きに対する見通しが一段と厳しくなっている中で、やはり財政出動が必要になってきているだろうというふうには考えております。
 ただ、申し上げたのは、単に需要だけ創出すればいいというわけじゃなくて、やはりその内容がしっかりしたものでなければ支出に見合った効果が上がってこないんだろうということでありまして、やはり将来にわたってやらなきゃいけないこと、例えば都市機能の部分でまだまだやらなきゃいけないところだとか、少子高齢社会対応、特に高齢社会対応では、どこでも老人介護施設などは圧倒的に不足しているわけでありまして、これは、いずれどうしても投資をしなければいけない部分については、今財政出動に対する期待が非常に高まっているときに、そういう分野を重点的に今度の補正予算を組んで投資すべきではないかというふうに考えるところでございます。
 やるかやらないかという議論でこれ以上やっても、現段階では意味がないかというふうに思いますので次に移らせていただきますが、この総合対応策の中で書かれていることなんですが、潜在需要を喚起するために構造改革特区、先ほど竹中大臣からもこのことに言及がありましたけれども、これを推進するということが盛り込まれております。
 この構造改革特区を創設して、そこでは規制緩和を行って需要を喚起していこうというふうな考え方、私はその考え方には賛成でございます。この特区は、そもそも、モデル的な地区をつくって、そこで規制緩和による効果がどれだけ上がるのか、また、今ある規制、それなりの理由があるわけですので、その規制を緩和したことによって果たして問題が発生するのかどうかというようなこともここで検証する。そのことによって、将来の全国的な規制緩和が可能なのかどうかということをこの特区で見きわめていくというのがこの考え方の一つの基本だったのではないかというふうに思うんです。
 しかし、現在検討されている構想、これは地方団体等からもさまざまな意見が出てきて、それに対する政府からの回答というような形で出ているんですけれども、それを見てみますと、どうも何か特区と言われるところがたくさんできて、その一つ一つが少しずつ何か規制が違うというような、むしろモデル的というよりも、何か一つ一つをとってみると、内容的には余り大きな緩和ではないような特区と言われるものがたくさん全国にできてしまうのではないかというような気がいたしております。
 それでは規制緩和してどういうような効果が上がったのかということもなかなか検証しにくいでしょうし、逆に問題が発生するのかどうかといったことも検証しにくいのではないかというふうに思っておりまして、最終的にはこれから決めていくというふうなことだろうというふうには思うんですが、ぜひそういう特区に指定する地区、これはできるだけ絞って、そして、ただその指定した地区については思い切った規制改革を行うべきだというふうに考えますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。
中城政府参考人 お答えを申し上げます。
 構造改革特区では、これまで実行することが難しかった規制改革こそ先行的に実施してみるという価値のあるものであるというふうに考えております。
 今回提出させていただいています法案におきましても、農業生産法人以外の法人の農業参入の容認や、株式会社の特別養護老人ホーム運営への参入の容認など、これまで実現が難しかった規制改革についても特区において実現可能とするというようなものが含まれております。今回の構造改革特区は、国があらかじめモデルを示すのではなく、地方公共団体が、民間の提案も受けながら、それぞれの地域の実態に合わせた構造改革の計画を策定するというものでございます。
 去る十月十一日の、構造改革特区の推進本部で決定されました構造改革特区推進のためのプログラムにおきましては、「特区法制定後も、定期的に地方公共団体や民間事業者等から構造改革特区において実現すべき規制改革の要望を受付け、必要な法令等の改正を行う。」というふうにされておりまして、これを踏まえて、一月十五日を締め切りとして第二次の提案募集もすることにしておりまして、構造改革特区推進室といたしましては、再度の提案募集において、また地方公共団体や民間から大胆な構想が提案されるというようなことも期待しておりまして、そうした構想をできる限り実現するように関係省庁との調整も進めていきたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 考え方は私が今申し上げたものと同じなんだろうというふうに思うんですけれども、ただ、今ちょっとお話にもあったんですが、例えば農業に株式会社が参入できるとはいっても、これが非常に、今具体的にちょっとどういう条件かというのはこちらの方から申し上げられませんけれども、さまざまな条件がついていて、極めて限定的だと。しかも、今もう一つあった特養老人ホームに株式会社の経営が参入できる、しかし、これは特養ホームと限定しただけで、社会福祉関連事業にもっと幅広く参入できるような規制改革も行ってみなければ、実際にどういうような効果があって、どういうような問題点が起きるのかというのはわからないんじゃないかなというふうに感じます。
 それは多分、その特区に指定する地域がたくさんあって、いろいろなところにつくろうとし過ぎるがゆえに、一つの地域において規制緩和についてはちょっと消極的になっているんじゃないのかなというふうに思うので、やはりもっと重点化し、しかもそこでの規制改革についてはもっと抜本的にやっていただきたいなということを要請をしたいというふうに思います。
 ちょっと次に話を移らせていただくんですが、デフレをとめるために、今ちょっと需要創出、需要喚起の話をさせていただいたんですが、ここのところの財政政策、金融政策をずっと見ていると、どうもそれだけでは十分な効果が上がってきていないというような感じがいたします。これはやはり、デフレをとめるには、人々がもう物価は下がらないんだ、デフレはとまるんだ、政府としてそのためのあらゆる政策を総動員しているんだということを、そういうふうに理解をしてもらわなければいけない。そういうデフレ予測を払拭する必要があるんじゃないかというふうに思います。
 その点に関して、今いろいろなところで専門家の方々も、かなり多くの方々がインフレターゲティングが必要なんではないかというような御提案がございます。そういう意味で、私もそれは有効な手段の一つではないのかなというふうに考えております。それはやはり、政府あるいは日銀としてのデフレ克服に対するコミットメントを明確に示すという意味では、具体的な政策が伴わなければ意味がないという御意見もありますけれども、そういうコミットメントの姿勢を示すという意味では、このインフレターゲティングというのは重要なんではないかというふうに思いますけれども、それについての御見解を伺いたいというふうに思います。
竹中国務大臣 デフレ問題の難しさ、要因の複雑さについては先ほど御答弁させていただきましたけれども、その中の一つとしての金融要因、特にそれに関連して、やはり人々のデフレ期待を、デフレが続くのではないかという予想を払拭するためにもいわゆるインフレターゲティング論が重要であるという専門家の強い意見があると承知しております。一方で、これに対しては技術的な困難さ等々も含めて否定的な意見も、これまた専門家の間にはあって、専門家の間で意見が分かれているというのが現状であろうかと思います。
 しかしながら、委員御指摘のように、これが持つアナウンスメント効果、さらには政府の非常に強いコミットメント、決意を示すという意味で、私は、やはりこのいわゆる物価目標政策というのを、これは日銀も含めてしっかりと議論しなければいけないというふうに思っておりまして、技術的な問題も含めてぜひ議論をしたいというふうにかねがね申し上げているところであります。
 現実問題として、日本銀行はいわばゼロインフレになるまで現下の金融緩和を続けるというふうに言っているわけですから、非常に弱い形でのこういった目標のコミットメントをしているというふうな解釈も実はできるわけでございます。その意味では、そうした点も含めて、これを上昇率でいくのか、水準で見るのかというふうな問題もございます。この問題については、ぜひ重要な政策問題として議論を深めていきたいというふうに思います。
上田(勇)委員 ひとつよろしくお願いをいたします。
 それで、今デフレが進行する中で、中堅サラリーマン、私も、大体同年代の人間の中で、どういう点が一番大変かというようなことをいろいろと話をすることがあります。そこで必ず出てくる話というのが、一つは住宅ローン、もう一つは教育費。実質的な所得が減少する中で、これが非常に生活に対する過重な負担になっている。
 ちょっと教育費というのは、今の教育のあり方自体に、その支出の部分が、必ずしもここだけで論じられる問題ではない部分がありまして、学校に払うお金よりも塾に払うお金の方が大きいみたいなところがあるものですから、一概に論ずることは難しいというふうに思うんです。ただ、その中で一番大きく問題になっているのがやはり住宅ローンでありまして、これは特に我々の年代などだと、バブルが崩壊し、その直後ぐらいに住宅を購入した人たちが非常に多いわけでありまして、四十代、五十代だというふうに思いますが、そうすると、資産価値は下がる、ローンは残る、大変な負担になっているわけであります。
 そういう意味で、ちょうど中堅層のマインドもそのことによって大変冷えるし、消費が減退するというのもそこに一つ大きな原因があるんじゃないかというふうに思っているわけでありまして、今は数年前から住宅取得減税が大幅に実施をされたわけでありますけれども、それ以前に住宅を購入したいわゆるローンについて、やはりそこを何らかの手当て、これは税制措置なのか、ほかの措置なのか、いろいろな対策があろうかというふうに思いますが、そういった税制措置も含めて、こういったことに対する対策をとらないと、本当の意味での景況感というのがよくなってこないんじゃないのかなというふうな感じがいたしますけれども、それについてのお考えがあれば伺いたいというふうに思います。
塩川国務大臣 その問題につきましては議論をしておりますけれども、政府税調内におきます議論の中で見ました場合、そういう過去において時々刻々に動いてくる経済の中の変化を税制に、的確にそれへ反映していくということは、なかなか実は公平にそれを判断して運用できるだろうかという議論がございまして、そういう場合の変更というものは、改革は恣意的になるおそれもあるということで、議論はしておりますけれども、具体的にそれに対応する措置というものはまだ結論として出ておりません。
上田(勇)委員 時間になりましたので、あと幾つかお願いをしていた質問もあるんですがこれで終わらせていただきますけれども、最後にちょっと、これは質問ではないんですけれども、ぜひお願いしたいことが、例えば今回の金融再生プログラムでいろいろな対策が示されておりますし、その中で大変な議論を呼んだ、注目を集めたいわゆる税効果会計の話とか、それを金融再生プログラムの中では、引当金に対する無税償却の制度も導入を強く、特段の配慮を求めるというふうにそこに書いてあるんですが、そうしたら、何かきょうの新聞を見たら、政府税調ではことしはやらないという。一体全体どうなっているんだろうなというような気がいたします。
 そういう意味では、ぜひ内閣の中でよく意見を調整していただいて、ベストな方向に進めていただくように御協力のほどを、きょうは両大臣おそろいでございますので、ぜひお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 以上です。
小坂委員長 次に、小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 金融財政委員会には不似合いかもしれませんけれども、昨今の、十月後半、もしくは竹中大臣が金融を御担当になるようになりましてから、非常にいろいろなことが一気に噴き出てきまして、ある意味で社会学的にいっても非常におもしろい状況が起こっているのではないか、その点でも大変興味を持っております。
 また、日本の意思決定システムがどういう形になっているのかということに対して、これは私は、マイナスの世界への発信になってしまったということが大変問題であると考えるわけでございますけれども、いろいろな意思決定の過程が、例のプロジェクトチームの密室性、これは私わからないでもないんです。最初にばっと出しちゃうとすぐその場でつぶされるとか、そういったこともおありなので、いろいろとお考えになった上でのことだとは思いますけれども、残念ながら、それが結果として、遠回りの結果というか、遠回りであり、かつその目指すところの目標を少し下げてしまわれたのではないかというような、そういう思いがするわけでございまして、むしろこれは、私いつも出すんですけれども、山本七平さんの日本の空気の研究みたいなところが、申し上げるならばこの一連のどたばたにつながってきているのではないかと思います。
 そこら辺は客観的に見ているだけではいけませんで、これによって日本の経済、そして金融の再生が早まるのか、もしくは、またあの失われた十年につながってしまうのか。このあたりも、金融、財政といったいろいろなシステム上の問題と同時に、日本の文化、社会、考え方といったような、もしくは人間関係、こういったところからの分析というのは、遠回りなようで意外と実は非常に重要なのではないかなというふうに思っていることをまず申し上げておきたいと思っております。
 ちなみに、話は全然違うんですけれども、これまたちょうど日本の金融をめぐっての混乱が続いているときには、モスクワで劇場がチェチェン勢力、武装勢力によって占拠されて、そして最後はガスを使って、その人質が約百人、百十七名ですか、亡くなられたけれども、そのほかの六百何人でしょうか、多くの方々は命が助かったというようなことで、プーチン大統領のやり方については、いろいろと批判もあるけれども、一方でまたよくやったというような議論もあります。
 これと金融問題と一緒にするわけではございませんけれども、このあたりの対応というのは、これまでの日本の危機管理の対応の仕方、そして、何を最大公約数として求めていくかというのは、ある意味では政治的な責任も負いつつ、そしてなすべきことはやっていくという意味で、私はちょうどあの混乱の中にいてモスクワの状況を見ておりまして、非常に考えさせられる点があったということもつけ加えさせていただきたいと思っております。
 ちなみに、竹中大臣、ああいう場合にプーチン大統領の立場に立たされたらどういう対処の仕方をされたのか、もしコメントがあればお教えいただきたいんですが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 とてもお答えするその立場にはないというふうに思いますが、いわゆる極限的な状況においては、やはり自分の信ずるところをしっかりと踏まえてやっていく、最後はやはりそのように、自分自身で信じるところを責任を持って決断していく。もちろんその前にはしっかりとした情報の収集が必要でありますが、最終的にはそのようなことなのだと思います。
小池委員 その意味で、今回は、決断のところが揺るぐようなことになったのではないでしょうか。そのあたり、これからの動き、そしてこれからの流れの中でしっかりと見きわめさせていただきたいし、また、申し上げることは申し上げていきたいというふうに思っております。
 また、この混乱の中で私は非常に不可解だなと思ったのは、これは、あっちも悪いけれどもこっちも悪いという議論はいつもは成り立たないんですけれども、銀行のお歴々がずらっと並んで全銀協の方で記者会見をされました。私は、あれこそが今竹中大臣が戦っておられるその姿ではないかというふうに思ったわけでございまして、まさに、いい銀行、悪い銀行というのは余りにも短絡的な仕分けの仕方かもしれませんが、あの中にずらっと並んでおられる頭取とか、今名称がいろいろ異なっておられるんでしょうけれども、今それこそが、あそこでまとまって護送船団方式を続けるという金融界の心構えこそがもう時代おくれであり、今、本来金融の行政において、もしくは金融の世界において求められていることと乖離しているということで、私はあの姿を大変奇異なものと感じたわけでございます。
 いまだにこの護送船団方式が続いていることに対して、竹中大臣はきっとおいら立ちをお感じになっていると思っております。今の件につきましての何か御感想ありましたら、お聞かせください。
竹中国務大臣 みんなでまとめてリスクを軽減するシステム、できるだけ速度の遅いところに合わせて行政を行っていく、そういうものを総称して護送船団方式というふうに呼んできたのだと思いますが、これはもう明示的に、四年前の金融システム改革法の成立等々によって、さらに大蔵省からの金融監督行政の分離を契機にして、市場原理を踏まえて、国際的なルールとの整合性、ルールの明確性、透明性、一貫性等々を十分に配慮する行政というものに我々は移ったつもりでございます。もちろん、これは規制、監督する側とされる側では言い分が違って当然でありますから、意見は意見として大いに言っていただきたい、しかもオープンに言っていただくのは結構なことだと存じます。
 しかし同時に、申し上げたように四年前からの新しい行政のもとで、行政もしっかりやっていきますし、銀行におかれても、それぞれの立場でしっかりと行動して結果を出していただきたいというふうに思っております。
小池委員 私は、ずっと金融のいろいろな場面場面を見てまいったということから申し上げれば、やはり金融の、これは基本的に金融政策が背景にあるわけでございますけれども、バブルをかなりあおって、要らないというところにまで貸し付けて、今になって貸しはがしなんという話をするのはこれまた言語道断でありまして、やはり金融のそもそものあり方というのを逸脱した形がこれまで温存されてきたということでは、その意味では私は大変大英断であるというふうに思っているんです。
 ですから、これをどのようにして、先ほどのモスクワの事件ではありませんけれども、人質の死亡というか犠牲者をいかにして減らして、なおかつ不良債権という武装勢力を排除していくかという、ここはまさに英知を傾ける瞬間であろうというふうに思っておりますので、ある意味では、信念を貫かなければ、これまた違う別の失われた十年をつくるだけの話でございますので、そこは踏ん張るところは私は踏ん張っていただいていいと思っています。
 ただし、やはり総合的に、デフレという大きな別の勢力がどかっと居座っている限り、そしてまたそれを押しのける需要の部分の対策がしっかりできない限り、この不良債権による日本国家の占拠事件というのはなかなかうまくいかないというふうに私は思っておりますので、その意味で今の点を挙げさせていただいたところでございます。
 遅まきながらと私の目には映るんですが、各銀行等々で、私ども国会議員も一〇%の歳費を削減というので、みんな実は言いたいけれども言えない、結構それはそれで痛い思いもしている中で、ようやく高給取りと言われていた銀行員の給与にも手がつけられるようになった。私は、何でも下げれば世の中うまくいくというような、そういう話ではないと思いますが、このあたりは、やはりこれまでやってきたこと、そしてまたこれまで公的資金等々を受けて政府のある種の庇護のもとにあったところがそのまま高給取りでいいのかといったら、これは国民感情論的にも、ポピュリズムではありませんけれども、今後のうまくいくことまでうまくいかなくなるという一つのポイントであろうと思いますので、そういった動きがようやく出てきたというふうに思っているところでございます。
 さてポイントですけれども、今回の金融再生プログラムと同時に改革加速のための総合対応策ということがセットで出されて、私は、かなり効果が失われるところもあったと思いますし、また、むしろもっと強化していかなければならないところ等々、結構まだら模様だなというふうに思っているわけでございますが、現実に今後、産業再生委員会、そして産業再生機構、これを預保の下にRCCと並列の形で置いていくわけでございますけれども、一体だれがどのような方法で運営をして、そして最大の効果を上げていくのかどうか。この辺の見通しについて、竹中大臣、お願いいたします。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
竹中国務大臣 産業再生機構、それを内閣としてサポートする委員会の仕組みというのは、まさに今回の一連の議論の中で、不良債権の処理の加速というのはまさしく産業、企業の再生のためにするものである、これを内閣を挙げて取り組むようにという総理からの強い指示を受けまして議論が始まったものでございます。
 同時にしかし、これは組織づくりが大変難しいというふうにも私自身も思っております。具体的にどのような仕組みをとるのがよいのか。政策コストの最小化と政策効果の最大化、しかも行革の強い方向の中で、それをどのように、市場の活力を損ねないだけでなく市場の活力を最大限活用する形でやるための組織づくりについての議論をまさに今行っているところでございます。
 恐らく委員の御指摘は、経営者の選任が重要であるということと、その仕組みづくりが極めて重要なのだという御指摘だと思いますので、そういった御指摘も踏まえて組織づくりをしっかりと、これは内閣でしっかりと相談して、また関係の皆さんにも御相談をして進めたいというふうに思います。
小池委員 さらに具体的に、現在の金融庁の中にあります金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム、大変有名になったわけでございますけれども、これは存続されるというふうに伺っておりますけれども、その辺の御確認。それから、やはりこれはセットで、これからの金融、産業の再生ということも、二つともやはり裏腹の関係にあるわけでございまして、これまでのメンバーだけでは足りないんじゃないか。そういった再生のさらなるプロをその中にお入れになる方が、お続けになるのならばその方がより効果が得られるのではないかと思っておりますこと。それから、非常に密室でやられてきたことが、先ほど冒頭に申し上げましたように、よかれあしかれの部分がございますので、その辺の見直しをどうなさるのか。以上三点、お聞かせいただきます。
竹中国務大臣 このプロジェクトチームというのは、私自身がいろいろな政策を決定する上で、ぜひ参考になる意見を聞かせてください、ブレーンストーミングをしてくださいという、私自身のいわば勉強会でございます。これについては、今後さらに、再生プログラムを受けて工程表をつくったりいろいろなことをする中で、ぜひ引き続き意見を聞かせてもらいたいと思っている次第であります。
 その際のメンバーの話でございますけれども、再生機構そのものは、これは金融庁の私の勉強会の域をもう既に超えておりまして、内閣全体で取り組む仕事でございますので、この再生機構そのものは内閣の場できっちりと議論を積み上げていくべきであるというふうに思います。今後どのような問題が生じるかによって、私自身の勉強会でありますので、メンバーについてもどのようにするかということを適宜判断していけばよいのかなというふうに思っているところです。
 御指摘の密室性云々の問題でありますけれども、委員にも一部御理解いただいていますように、当初の段階では、これはやはりしっかりと中で議論をするということが大事だったものですからそのようにさせていただきましたけれども、今後勉強会の性格も変わってまいると思いますので、そこは適宜適切に判断して、こういう議論をしているんだというようなことについてお伝えできることはお伝えする中で、柔軟にこれを運営していきたいというふうに思っております。
小池委員 私的な勉強会というふうな位置づけでございましょうけれども、ただ、その謝礼、謝金等々、やはり税金から出ているわけでしょう。であるならば、位置づけはどうであれ、その瞬間からはやはり公的な色彩を帯びてくるわけでございますので、私は要望として、私的な勉強会であるのならば、さらに肉づけをされることをお勧めしておきたいというふうに思っておりますので、御一考いただければと思っております。
 それから、産業再生委員会。これは財務大臣に伺った方がいいんでしょうか。これは、今後いろいろな形で行われて、お金の捻出等々もどれぐらいかかるかわからない。言ってみれば、高名な芸術家に作品をお願いしたら、大体、こっちの見積もりをやっているうちに、高名な芸術家の場合は何か余り口を出せないので、結果としてどえらい請求書が回ってくるのではないかというふうに思ったりもするんですけれども、その請求書、すなわち税金等々にもかかわってくる話になることも考えられるということで、この辺のところ、ざっくりどれぐらいの見積もりを立てて、どのような形でその目算を立てておられるのか、お聞かせください。
塩川国務大臣 見当はつきませんけれども、不良債権の処理をいたしまして、再生するのには不良債権の処理の額内でおさまるということは到底考えられない、それの数倍はかかるであろうという予測はしております。
 けれども、その資金が、結局国民の負担において支出されるのではなくして、一応は、要するに公的な資金としてお立てかえのようなことではありますけれども、将来はそれは回収できる企業に対して貸さなきゃならぬということがあるし、また、それを回収していく過程において、国に対する、経済にそれだけのことを寄与してくることでもございますから、いわば迂回生産的な利益というものが国に返ってくる、そういう視点に立って考えていくべきだと思っております。
 額については、幾らということの見当はまだついておりません。
小池委員 国家予算でも、いろいろと予算委員会などを通じて検討をされるわけでありまして、そして毎年財務省と各省庁との大変な攻防を経て、一円だ十円だということで見積もりがされて、そして国家予算というのは最終的に成り立つわけでございまして、その意味では、すごく大ざっぱな、どんぶり勘定で、やってみなきゃわからぬというような世界でございます。
 私は、これまで余りに小出しにやってきたことでかえって時間がかかったということですから、その意味では大いにやってほしいとは思うんですけれども、しかしながら、やはりそこの、最初のゲーム設定をきっちりやっておかないと、日本は社会主義になるわ、後戻りするわ、そしてまたお金ばかりかかって、結局日銀特融の話なんかでも、焦げついた日にはこれまた結局はしりぬぐいは納税者の方にかかってくるでは、これはもう本当に、一大社会主義国への後戻りになってしまうということなんですね。
 ですから、これは私は、むしろ出すときはどかんと出しても、どのようにして早く健全な資本主義な、そしてまた自由競争が確保できて新産業もつくるというような、そういうデザイニングをぜひとも間違えずに、そしてなおかつ、その上で思い切ってやっていただきたいと思っているところでございます。
 さて、もう時間がございませんので、先ほど、これは増原議員だったかしら、デフレに絡んでちょっと為替の話もしておられましたので、一言だけ伺います。
 国内のデフレ対策、幾らやりましても、冷戦構造が終わった平和の配当ともいうべき安価な労働力が国際労働市場にこれだけあふれ出ている、そしてその大量な供給源がお隣、近くにある。その国がまた、香港と一緒になった上でまだペッグ制を維持している。私は、いろいろなデフレの根源は実はこういうところにも求められるのではないか。前も申し上げたかと思いますけれども、これは、かつて日本がプラザ合意ということをきっかけに円高になって、そして円高不況と言われつつも逆で、結果とすれば大変なバブルに走ったというようなこともございました。
 やはりこの為替の関係というのがこれからデフレ対策を考える上で極めて重要なポイントになってくるということの認識を、先ほどの増原議員の御質問の中でまた再認識もしたところでございますので、この点について竹中大臣のお考えを最後に伺って、質問を終わります。
渡辺(喜)委員長代理 竹中金融大臣。手短にお願いします。
竹中国務大臣 為替の話そのものは財務省の御管轄ではございますけれども、御指摘のように、要素価格デフレという点が非常に強いということも踏まえて、そのような視点を持っていくことは重要であるというふうに思います。
小池委員 ありがとうございました。
渡辺(喜)委員長代理 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 おはようございます。民主党の江崎洋一郎でございます。
 既に、塩川大臣におかれましては公私ともに日ごろから御指導いただいておりますが、本日は、竹中大臣には初めて質問をさせていただきます。
 竹中大臣は、かつて私の地元の大学で講義をされておられたということもございますし、私にとりましても、留学先の先輩でもございます。きょうは、大学の講義のごとく明快な御答弁をお願い申し上げたいというふうに思っております。
 さて、そこで竹中大臣にまず最初にお伺いしたいんですが、今回の金融再生プログラム、またその他の場面におかれましても、大臣はたびたび、なお一層の金融緩和を期待というふうにおっしゃられておりますが、今の金融緩和というのは、構造改革の進展に伴って、経済に与えるネガティブインパクトを和らげる、あるいは景気の底割れを防ぐということで有用であって、もはやこれ以上金融緩和に意味を持たせるというのは難しい状況まで来ているのではないかなとも思いますが、大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 金融政策の役割と効果、その限界につきましては、専門家の間でも実は意見が非常に微妙に分かれているところであろうかと思います。
 私がよく申し上げるのは、今、マネーサプライの伸び率が三%とか三%台半ば。これは、日本の潜在成長力が二・五とかあって、それで、さらにそれにしかるべき物価上昇率を考えると、今のマネーサプライの伸び率は結果としてはやはり低いのではないのだろうか。日本銀行には、マネーサプライをコントロールする当局として、これが結果的にもう少し高くなるような運営を期待したい。そういう意味でいつも申し上げております。
 もちろん、日本銀行の方から見れば、いやいや、ベースマネーは三〇%、二十何%ふやしているんだ、しかし信用創造の力が銀行で弱まっているからということで、日銀としてはいっぱいいっぱいだというような言い方、これはこれで理解できる面もございます。
 ただしかし、不良債権の処理に関しましては、これは金融庁の方で一段と行われる努力をするつもりでありますので、日本銀行の方でもさらに、そうした点を踏まえながら、結果的にマネーサプライがもう少し伸びて経済を安定的に発展させていくような努力をしていただきたい。そういうような期待を申し上げているわけでございます。
江崎委員 その金融緩和なんですが、やはりデフレに対する効果ということにつきましては理解ができるわけです。とりわけバブル崩壊後の資産デフレを解消していくということにつきましては、この金融緩和は重要な役割は果たしているとは思うんですが、一方で、今我が国が置かれているデフレの現況の中で、いわゆる産業構造調整、貿易財を中心として、今小池委員のお話にもありましたが、世界的な供給過剰感というものがあろうかと思います。
 こういう流れの中では、貨幣の役割というのは非常に限界的であり、また我が国だけで問題を解決できる問題でもないということであろうかと思いますが、その中で、構造調整、我が国にとりましては、やはり労働賃金の問題もあり、なるべく高付加価値化した商品をつくる産業を創出していくということが重要ではないか、また、昨年の骨太の方針以来これらが非常に期待されてきたということではあると思いますが、一方で、今見回してみたところ、具体的な新産業の創出というのがないんではないかなというふうに私個人は思っております。
 そういった意味で、大臣、お伺いしたいんですが、昨年度の骨太の緊急経済対策以来、構造調整というものはどの程度進捗したというふうに御認識されているんでしょうか。経済へのネガティブインパクトが緩和されたのならまだしも、まだまだやはり景気は悪い方向にあるというふうに私は感じておりますし、どちらかといえば現在進捗はほとんどないんではないかという認識を持っておるんですが、大臣の御見解をいただければと思います。
竹中国務大臣 構造改革が目指しているものというのは、これは総理がよくおっしゃいますように、民間でできることは民間に、地方でできることは地方に、それで民間の創意工夫を引き出すために規制改革をどんどん行っていこう、それによって民間部門がより活力を取り戻して、結果的に生産性が上昇する、イノベーションの力が高まるというような、まさに供給力、供給サイドが強化されていく、そのような事態を想定しているわけでありますが、それが既に結果が出ているかということに関しては、これは残念だけれども、やはり時間がある程度かかるということになるのだと思います。
 ただ、民営化に関しては、特殊法人等々の改革、これは民営化に向けた議論が着実に進んでいるというふうに思いますし、地方でできることは地方にという、これも大改革でありますけれども、補助金、交付税、税源移譲の三位一体の改革を来年の前半までに一気に工程表を決めてしまおうということでありますから、時間がかかる中で構造改革政策そのものは私は多くの制約の中でそれなりに進展を遂げてきたというふうに思います。
 さらには、この構造改革の重要な一部として、財政の一方的な悪化を防ぐということを掲げているわけでありますけれども、厳しい情勢下で国債の発行目標を立てて、さらには「改革と展望」という中長期のシナリオの中で十年をめどにプライマリーバランスを回復させるというシナリオを提示して、その線に沿った運営を始めたところでありますので、これも結果が目に見えて市場に浸透していくには時間はかかると思いますが、その重要なスタートは切れたのではないかというふうに思っております。
 いずれにしても、御指摘のようにそれがさらに結果に結びつくようにするためには、これはさらに努力をしなければいけないと思っております。そういう意味では、今の政策の方向性を小泉内閣になってから変えるという一つのスタートを受けて、引き続きこれを加速させてしっかりやっていきたいというふうに思っているところであります。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
江崎委員 今御答弁いただいた中に、我が国の構造調整という話が主でございましたが、ちょっと先ほども申し上げました、デフレ要因の中で世界的な供給過剰という問題についてお伺いをしたいわけなんですが、今、商品、物の価格は米国あるいはイギリスでも前年割れという現状にあるわけです。そして、サービスの価格につきましては、前年比やっとプラスを保っている。これはそれぞれの国でサービス価格の主を占める家賃なり賃金がまだ上昇しているということかとは思いますが、これもいずれ収束してしまうということで、我が国に限らず、米、ヨーロッパ含めて世界的な物の供給過剰感という中でデフレ現象がスタートしているという状況にあるわけですが、その中で大臣はどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、実はデフレというのは世界的な問題であるというふうに思います。
 先ほどから需要の問題とそれと供給サイドの問題、これは特に中国の人件費という問題に根差す部分が大きい、プラス技術進歩でしょうか、それと金融の側面というふうにあると申し上げましたが、このうち実は需要の側面と、世界的な供給過剰とおっしゃいましたが、需要の側面とそれと要素価格のデフレというのは、実は世界的な現象であります。中国と日本の距離は近いですけれども、中国の物はアメリカにもヨーロッパにも行っているわけで、そういう意味での物の値段を中心としたデフレ圧力というのは世界的に強まっていますし、今後ともこれは継続する可能性があるというふうに思っています。
 これは、世界の問題として今後非常に幅広く検討していく、その中でやはり金融政策がどういう役割を果たすかということが重要なポイントになると思うんですが、実は金融の仲介機能の話は、これは日本固有の、日本だけではないかもしれませんが、アメリカやヨーロッパとは違う問題であろうかと思います。であるからこそ、そういう世界的なデフレ問題という非常に根強いトレンドがあるからこそ、早い時期にこの日本だけが持っている問題にはっきりと決別しなければいけない、決着をしなければいけない、それが私は日本の今の問題であると思います。
 この問題、不良債権の問題だけで即デフレがしたがって片づくわけではありませんが、しかしそういう世界的な圧力がある中にいるからこそ、日本としてはこの問題に取り組むことが大変重要であるというふうに認識をしております。
江崎委員 確かに時間のかかる話であると思いますが、一方で金融の環境、また景気の環境、大変厳しい環境であります。そういった意味で、一日も早く結果が出せる、そういった政府の決意というものが重要じゃないかと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは、今回の金融再生プログラムについての質問に入らせていただきたいと思うんですが、まずこのプログラムの守備範囲についてお尋ねを申し上げたいと思います。
 今回のプログラムというのは、主要行をターゲットとしております。しかしながら、私が考えますに、主要行もさることながら、地域の金融機関の中にも不良債権問題あるいは有価証券投資の失敗から財務面に問題が生じている先があるというふうに感じております。
 地域金融機関におきましては、この金融再生プログラムの中で、平成十四年度内にリレーションシップバンキングのあり方を多面的な尺度から検討した上でアクションプログラムを作成すると言っておられるわけですが、体力的には主要行より地域金融機関の方が相対的には弱いんではないかというふうに思います。経済的に大きなショックが仮に生じた場合、平成十四年度内、三月までといってもまだ数カ月あります。このプログラムの策定が追いつかずに地域金融機関の危機が来てしまうということも考えられるわけですが、大臣、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、今回の再生プログラムは主要行を対象にすると。やはり主要行が果たしている経済的な役割、社会的な存在感にかんがみて、やはりこの問題をまずしっかりと決着させることが大変重要であるというような、いわば集中して当面はこれに当たるということにしているわけでございます。
 同時に、リレーションシップバンキングといいますか、地域に根差した、コミュニティーに根差したそういう金融については、これはもう各方面から、これはグローバルバンキングとは行動原理が違うはずだ、こういう指摘がずっとなされてきたわけであります。私もまさにそのように思います。
 しかし同時に、ではリレーションシップバンキングはどのようにしたらよいのかという、その範囲も含めてでありますけれども、方策についてなかなか実は、冷静に考えていけばいくほど、詰められた議論がこの社会全体でなされてこなかったのだと思います。もちろんいろいろな方策を民主党等々でも考えておられるということは存じ上げておりますけれども、そうした点を踏まえて、少し幅広くこのリレーションシップバンキング全体をそもそも考えた上で対応策を練っていくべきであるというのが基本的な立場でございます。
 しかし、その上で、これまた江崎委員御指摘のように、体力が弱っているところもあるのではないのかと。今回、合併等々を促進するための施策も、これは必要なものとして御審議をお願いしたいというふうに思っておりますのですけれども、これはあくまで一般論でありますけれども、一般論として、万が一にも地域の金融機関等々にいろいろな問題が生じた場合には、これは現行の枠組みの中でしっかりと対応をしていかなければいけないというふうに思っております。
 これは、既に今の枠組みの中で一方で対応をしながら、より広い範囲での、より大きな問題をこのリレーションシップバンキングの議論を通じて行っていきたい。これは幅広く皆さんの意見を、国民の意見を聞きながら、日本の風土、歴史、制度に根差したリレーションシップバンキングのあり方を検討していきたいと思っております。
江崎委員 そういった意味で、十分に深く考察をしてということではありますが、一方で、地域経済の疲弊というのは、この東京を中心とした大都会の経済よりはさらに厳しい環境にあるのは間違いないわけであります。そういった意味で、むしろ、掘り下げは掘り下げとしても、この地域金融機関の危機に対する対応というものにつきましては、同時並行的に準備を十分にしていただきたいというふうに思います。
 今、では危機が訪れたときどうするのかということにつきまして、現行の体系の中で判断をするとおっしゃられたわけですが、具体的なお話として、ペイオフ、これらも地域の金融機関に対して実施をするというお考えをお持ちなんでしょうか。また、地域の中小の金融機関に対しても預金保険法の百二条の適用というものはあり得るというふうにお考えなんでしょうか。
竹中国務大臣 今の制度、対応策の基本的な枠組みに関するお尋ねだというふうに思います。
 もちろんこれは一般論でございますけれども、金融機関が業務もしくは財産の状況に照らして預金等の払い戻しを停止するおそれがあるような場合においては、預金保険法に基づいて、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を行うというのが原則であろうかと思います。
 もちろん、そこに至る前に、これを未然に回避するために、これは現実にはそこが大変重要でありまして、早期是正の措置とか収益性の向上に向けた総合的なモニタリング等の監督上の措置を、これは従来以上に早目早目の対応をしていく必要があるというふうに思います。
 また、資金繰り困難に陥った場合、金融危機のおそれがあり、法令に照らして必要があると判断される場合には、政府、日銀は、信用秩序の維持、金融システムの確保のために、法律の枠組みの中で資金を含めた万全の措置をとるということになるわけでございます。
 お尋ねの後半のペイオフでございますけれども、ペイオフ解禁後の現状において、万が一にも金融機関が破綻に至った場合には、当該金融機関の資産の状況によっては定期性預金等の一千万円超の部分等については一部カットが行われるということも、これは想定されるところであります。
 他方、預金保険法百二条において、例外的な措置が講ぜられなければ、我が国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障のおそれがあると認められるとき、金融危機対応会議の議を経て資本増強等の例外的措置を講ずることとされておりまして、地域における信用秩序の維持にもこれは十分に着目しているというところでございます。
 以上のような枠組みの中できちっとした判断を行っていくということなのだと思っております。
江崎委員 そうすると、ペイオフは状況によっては実施するんだという理解でよろしいんでしょうか。
竹中国務大臣 先ほど御答弁したとおりでございますけれども、さまざまなそれに至る措置、努力を前提とした上での話でありますけれども、ペイオフ解禁後の現状においては、万が一金融機関が破綻に至った場合には、当該金融機関の資産の状況によっては定期性預金等の一千万円超の部分等については一部カットが行われるということも、想定としてはあり得るということだと思います。
江崎委員 私のあくまで個人的見解ではございますが、民主党の見解とはちょっと違うかもしれませんが、私は、債務超過に陥った金融機関、特に地域金融機関に対してペイオフを原則どおりに実施した場合に、今のような金融経済情勢の中では、金融不安というのが一気に高まってしまうのではないかというふうに懸念をしております。
 そういった意味で、当面の金融対策のトッププライオリティーが金融システムの再生ということであるとすれば、預金者を犠牲にするペイオフは金融機関の大小を問わず避けるべきではないかというふうに考えております。当面、金融対策の主軸ということで金融システムの再生を考えるとすれば、債務超過の金融機関は従前どおり全債務全額保護のもとで破綻処理をしていくというのも考えだというふうに私は感じている次第でございます。
 続きまして、次に産業再生機構のお話を伺いたいと思います。
 まず、この産業再生機構なんですが、この役割と、あと中堅、中小企業との関係についてお伺いしたいんです。
 今回の産業再生機構の主たる業務対象というのは、大口問題債務者、要管理先ということになるわけですが、一方で、今地域金融機関のお話も申し上げましたが、中堅、中小企業というものが今非常に、大変な負担を負っているということもあろうかと思います。そういった意味で、この中堅、中小企業の再生に国は今後どのようにかかわる可能性があるのか、お伺いをしたいと思います。
竹中国務大臣 これは、産業再生機構をどのように位置づけるか、それと、先ほどからも御質問がありましたように、RCCが持っている再生機能とどのように位置づけをするか、それとの中できちっとした議論をこれからまさに行っていくところでございます。
 言うまでもなく、中堅、中小に関しても当然のことながらこの再生の機能を強化していくということは、これは大変重要な課題であるというふうに位置づけておりますし、また、何よりもやはり銀行がしっかりとして、もちろんこれは再生への支援を必要としている程度によるわけでありますけれども、やはり銀行そのものが、特に日常的な取引関係にあるいわゆるメーン、このメーンの概念は少し変わっているかもしれませんが、メーンと言われる銀行がしっかりとしてその企業を支えていくということが、これは何よりもやはり重要な、基本的な問題であろうかと思っております。
 今回も、再生プログラムの中に、中小の企業に対してもデット・エクイティー・スワップのようなものも認めていくべきではないかということを書き込ませていただいておりますが、そういうことを踏まえて、総合的に、やはりまず銀行、そしてRCCの再生機能と新しい再生機構をどのように重複をしないようにしっかりと位置づけるか、そうした中で御指摘のような中堅、中小企業の再生をいかに軌道に乗せていくかということをしっかりと示していきたいというふうに思っております。
江崎委員 そうしますと、あえて産業再生機構の中でまた機能を拡充して中堅、中小対策をしていこうということではなく、あくまでメーンバンク中心に中堅、中小については対応をしなさいということで、国としては直接関与しないという考えでよろしいんでしょうか。
竹中国務大臣 これは、今申し上げましたように、産業再生機構をどの程度の規模で、どのように政府の役割を限定して行うかという根本的な役割定義の面でございますので、そうした中でしっかりと御議論をしていく。この議論、今一生懸命事務的に詰めているところでございますので、最終的にどのような形になるか、これは各省の意見もいろいろございますし、関係者の意見もいろいろございますので、トータルとしてしっかりとした仕組みにしていきたいと思います。
江崎委員 私が心配しますのは、また産業再生機構に似たような形で、また別組織として、例えばこの中堅・中小向けの再生機構みたいなものができて、この組織がどんどん分散化していくと、非常に、それぞれに対応するというきめ細かさはいいかもしれませんが、一方では、人的資源を考えた場合に、それだけ分散する意味があるのかなと。やるなら一カ所でまとめてやるとか、そういった判断が必要なんではないかなというふうに感じるわけであります。そういった意味で、ぜひ、絵にかいたもちに終わらないような形で進めていただきたいというふうに思います。
 次に、この金融再生プログラムの二ページ目にございますが、今の関連でもありますが、「中小企業貸出に対する十分な配慮」、この中に出てまいります一節を御質問したいんですが、(ア)の「中小企業貸出に関する担い手の拡充」という件についてお伺いをしたいと思います。
 この文章を読んでみますと、「中小企業の資金ニーズに応えられるだけの経営能力と行動力を具備した新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化や中小企業貸出信託会社(Jローン)の設置推進などを積極的に検討する。」というふうにあるわけですが、まず、ちょっと聞きなれない言葉で、この中小企業貸出信託会社、Jローンというのは一体何を指しておられるんでしょうか。
竹中国務大臣 今、委員が御指摘してくださった二つの項目は、実は、今回の金融再生プログラムの中で、なかなか一般には目立たないんでありますが、私としては大変重要な部分であるというふうに認識をしています。
 やはり、金融システム、金融市場、金融業界そのものを活性化させるためには、また、資金を受けたいというそのニーズを充足するためには、私は、やはり新規参入というのがもう大変重要であると。これまでこの日本の銀行業界が、なかなか新規参入が出てこない状況の中で閉塞感を高めていったということに照らしましても、この部分は大変重要であるというふうに思っております。
 この新規参入は比較的わかりやすいわけでありますが、そのほかに、実は、ここで一つの問題として提起をさせていただきましたのは、これ、皆さん、今、どこのお金のある企業も、お金を有効に活用するのは考えたいんだけれども、自分のバランスシートにそれが載ってくるということに対しては、これはROA、ROE等々の関係で大変抵抗感があるというふうに聞いております。
 これは一部の企業で現実にいろいろ検討していただいているようなんでありますけれども、これをだから信託して、そこがうまくその信託のシステムを活用する形でローンを組んでいくというようなことはできないであろうか。その一例としてそういう格好で書かせていただいているんですが、これは今後さまざまな知恵を出していただければ、いろいろなやり方が私は出てき得るのではないかなというふうに思うんです。この意味でのやはり金融のプロフェッショナルの知恵というのは、私はすごいと思います。
 ここで書いておりますのは、バランスシートに出ないような形で、信託の方式を利用して、実質的に資金が供給されるような仕組み、そういうものも含めて、単に銀行業態だけではなくて、さまざまな形で実態的な新規参入が実現されるような、これは私は日本のビジネスの活力を大変高く信頼しておりますので、そういう姿をぜひつくっていきたいというふうに思っているところでございます。
江崎委員 今、信託を利用した形で、バランスシートに負担をかけないでローンを組む仕組みということでございましたけれども、これは、具体的に何かイメージできる例というのはおありなんでしょうか。また、実際に、書かれた以上は恐らく何か想定されているものがもう既におありなんじゃないかと思いますが、もし差し支えなければそれはぜひ聞かせていただきたいと思います。
竹中国務大臣 これは、そういうことを検討している当事者と、事業化について、私自身が交渉したわけではございません。
 しかしながら、さまざまな情報を通じまして、そういうことは技術的に可能であろうし、参入の可能性を検討しているところもあるというふうに聞いておりますので、これはぜひとも、この再生プログラムを決めた今の時点でできるだけ早くこれを実現するように、もちろんこれは、実務上、詰めていけばいろいろな問題をクリアしなければいけないのだとは思いますが、一つの事例として何とかこれを示していきたい、それがさらに新しい知恵を生み出す刺激になるような、そういう形に持っていきたいと思っております。
江崎委員 そうすると、ここにお金を出資する、出資というか信託する方は、投資家というよりは事業会社が考えられるということなんでしょうか。
竹中国務大臣 これも恐らく知恵の出し方で、小口のものを集めるということも可能かもしれませんし、しかし、最初はある程度まとまった資金を持っている会社等々ということなのかもしれません。今の時点で予見は持っておりません。これはぜひとも金融の専門家に知恵を出してもらいたいところだというふうに思っております。
江崎委員 続きまして、今、冒頭にもちょっとお話がございましたが、新たな貸し手、銀行参入についてお伺いをしたいわけなんですが。
 新しい貸し手の参入については、銀行免許の迅速化ということがうたわれているわけなんですが、異業種の銀行等々も既に入れるような環境にあるわけですが、具体的にどのような銀行参入というものを期待されておられるんでしょうか。
竹中国務大臣 この問題も、大体我々が役所の中で考えているようなことを超えて、どの国でもどの時代でも、やはり民間から常に新しいアイデアとエネルギーが生まれてきたというのが現状であったかと思います。これは、現実に非常に資金をたくさん持っているキャッシュフローの大きい企業というのは存在するわけでございますから、そういうところから参入者が出てくるというのも一つのパターンであるというふうに思います。また、現実に非常に、ITなのかどうなのか、先端の分野で非常に成功した事業家が、個人の資金を核にしてさらに別途お金を集めてそういうふうな形に参入してくるというのもあるのかもしれません。
 私はしかし、非常に、今申し上げましたのは、ある意味で、お金があるからやってみようということでありますが、そういうことだけではなくて、例えば、融資事業等々のプラットホームになるような基盤を持っているところというのはございます。例えば、これはもう日本でもあるといえばあるんですが、一九八〇年代のイギリスのビッグバン等々では、プラットホームを持っているスーパーマーケットがイギリスで積極的に金融に乗り出して、非常に新しい、まさに新しいビジネスモデルを提示した。私は、今持っている資源、これはお金だけではなくて、それは店舗のプラットホームなのか情報のネットワークなのか、独自のプラットホーム、資源を活用した新しいビジネスモデルを提示しながら参入してくるような、そういうところがぜひ活発化してほしいというふうに思っています。
江崎委員 そうしますと、私が思いますに、既にイトーヨーカ堂のアイワイバンクですとか、新規参入はあるわけですが、実態としては、銀行業として収益を上げようというより、やはり本業のスーパーというかコンビニエンスストアにかけて、そこがもちろん収益基盤になって、さらに便利にするために銀行も持っているということではないかなと、今の時点では理解するわけですが。
 それはなぜそうなってしまったかというと、やはり日本の銀行法が大変厳しい規制にあるということがあって、先ほど大臣もおっしゃられた、イギリスにおいてスーパーのレジでキャッシングができるような、こういうことについても、日本の銀行法上は、店舗があり、そしてテラーが銀行員でないとできないとか、そういった規制に阻まれて、コンビニエンスストアのキャッシャーでキャッシングができるというのは、その店員を介してということはできないわけですね。日本の銀行員であるという人がテラーをしなきゃいかぬというルールがあったり等々あるわけですので。
 そういった意味で、今回のこのお考えの背景としては、規制緩和、とりわけ銀行法を将来にわたって変えていきたいんだ、そういうようなことも展望されておっしゃられているんでしょうか。
竹中国務大臣 江崎委員は大変銀行の実務にもお詳しゅうございますから、さまざまな観点からの御示唆をいただいております。
 今の時点で銀行法云々ということを申し上げるつもりはございませんけれども、やはり銀行業界、この産業を活性化する上で何が一体必要なのか、そういう新規参入者のアイデア、ビジネスモデルが提示される中でどういうことが今後必要なのかということは、これはぜひいろいろと幅広く総合的に考えていきたいというふうに思っております。
江崎委員 塩川大臣にちょっと、質疑通告は申し上げていませんが、この銀行法について、今非常にやはり新規参入というものについては阻んでいる部分というのがあると思うんですね。将来的に少し、展望として、新規参入を促すような形で規制緩和もあり得るんではないかというお考えをお持ちでしょうか。
塩川国務大臣 私は新規参入をやはりやってくれてもいい、そういう刺激があったらいいと思っておりますが、それには金融のやはりテリトリーをもっと広げていってもいいんではないかなと思ったりしております。
 特に、最近盛んになってまいりました通信販売だとかクレジット、ありますね。ああいう面における金融、あるいは一般庶民の金融というような分野がまだまだいわば身近なものになっていないと思います。そういう面の業務を開拓してくれれば有効なんではないかと思います。
江崎委員 金融機関に対する信用あるいは信頼性というものは重視しつつ、一方で間口を広げるということも、やはり今これからの経済活性化ということでは重要なことではないかと思いますので、ぜひとも、今の銀行法というものが既存のものでいいのかどうかということについても十分にまたこれから検討いただければというふうに思います。
 次に、この金融再生プログラムに関しまして、あわせて改革加速のための総合対応策というものが出ているわけでございますが、この全体像を眺めてみますと、竹中大臣も大変御苦労され、また事前にも相当な議論があったやに伺ってはおりますが、盛りだくさんの内容になっているというふうに思います。本当に、金融のプロの人たちがいろいろな観点から出せるアイデアはとにかく出し尽くすというぐらい盛りだくさんではあると思うんですが、一方で、日本の不良債権については、平成十六年度末までには半減させるという目標がついているわけでございます。
 これだけ総花的に大きなプログラムについて、短期間に具体化できるのかなという心配もあるわけですが、この辺は大臣いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 金融担当大臣を拝命した直後からいろいろ御指摘をいただいていたのは、小泉総理から平成十六年度には不良債権問題を終結させよと。その終結というのは一体何なのかということだったと思います。これは、この委員会でも一度御答弁をさせていただきましたが、終結の意味は、これはやはり投資家、預金者、そして国民、市場から信頼を得ることである、これで本当にこのシステムがしっかりしたという信頼を得るというトータルな判断だというふうに申し上げてまいりました。
 しかし同時に、政策である以上、何らかの中間的なメルクマール、目標はやはり掲げる必要があるということで、今回の金融再生プログラムには、十六年度には現状の不良債権比率を半分ぐらいというふうに書いたわけでございます。これは、かねてから小泉総理が答弁されていた目標と、これは国会でも答弁をしておられたと思いますが、実は矛盾しておりません。一致しているということであろうかと思っております。
 御指摘は、この包括的なプログラムをこの二年半で実施に移せるかということでございますが、これは総理から、とにかくこの不良債権問題というのは日本の経済の構造改革の中で極めて重要な位置づけである、したがってしっかりとやりなさいという、これは私としては指令、命令を受けたわけですから、これは何としてもこれを実現したいというふうに思っております。
 そのために、これを、再生プログラムで示したものを、具体的にいつの時点でどのようにやっていくか、実現するかという工程表を今事務的に詰めておりまして、その工程表をまずしっかりとつくってこの十一月中にお示しをしたい。それに沿ってしっかりと実現していくことによって、目標を、大変難しい目標ではありますけれども、達成していきたいというふうに思っております。
江崎委員 この中には、金融にかかわる問題だけではなく、都市再生の問題ですとかあるいは雇用創出に係るプログラムですとかさらにセーフティーネットの問題等々、あらゆる対策が盛り込まれておるわけなんですが、金融については十六年度末までに不良債権の半減というものがあるわけですが、この後半の方の雇用創出ですとかセーフティーネット、都市再生、これについては年限目標というのはあるんでしょうか。
竹中国務大臣 金融再生プログラムとあわせてといいますか、同時に発表させていただいた総合対応策の中の政策項目でございますが、先ほどの答弁と一部ダブりますがもう一度あえてこの位置づけを申し上げさせていただきたいんですが、ことし一月に「改革と展望」を示しまして、日本の経済をマクロ的に見てどのように運営していくかという一つのビジョンを示しました。それを実現するために、経済を活性化させなければいけない、そのためには税制も必要である。その肉づけのための政策を織り込んで三十のアクションプログラムにしたのが、ことし六月末の骨太第二弾でございます。
 したがって、そこで政策の体系を示させていただいているわけですが、今回の総合対応策というのは、これまでの骨太等々に基づいて各省庁が既に政策を打ち立ててやっている、それをさらに早く、さらに大きくするためには現時点でどのような取り組みが可能であるかということを各省として示した、それを一枚の紙にしたという性格のものでございます。
 その中で、さらに今後議論を詰めなければいけない問題はございます。特に雇用等々については、これは大変重要な問題、幾つかの不確実要因の中でどのように進めていくかということを、総合的にさらに考えなければいけない問題がございます。これについて、これは雇用が一例でありますが、今、坂口厚生労働大臣の方で、雇用についての総合的な展望、政策を取りまとめて近く総理に提出をされる、これは先般の経済財政諮問会議で、坂口大臣、そのようにおっしゃったわけでございます。
 そうした中で、今までの骨太第二弾で示したものをさらに具体化してどのようにやっていくのかということについては、これは各省で、これは担当大臣のリーダーシップによっていろいろ検討されておりまして、これは、年金もしかり、たくさんの問題がございますので、順を追って具体的な議論を深めて制度にしていくというような段取りになっております。
江崎委員 しかしながら、この不良債権処理を進めれば進めるほど雇用の不安というのは高まるという現実もあるわけです。そういった意味で、部分的に、必ずしもパラレルに動かなくてもよいという問題と、ぜひともパラレルでなければいけないという問題に分類されるとは思うんですが、そういった意味で、この雇用及びセーフティーネットの問題というのは、やはり平成十六年を目標に設定していただかないと、不良債権処理と雇用の不安というものが解消されるような工程表というのがきちっと出てこないと、やはり政策としての整合性がとれてないという評価をされても仕方がないのではないかと思います。そういった意味で、ぜひとも、関係省庁と申しますより内閣が一体となって、この問題に取り組んでいただきたいというふうに強くお願いを申し上げる次第でございます。
 そこで、大変盛りだくさんな内容でありますが、この施策に対して国はどれだけの予算を計上する予定なのか、また、具体的にいつこの予算を要求するということになるのか、そのお考えをお伺いしたいと思います。
 これは、竹中大臣に要望側として伺って、また、受ける側として塩川大臣にお答えをいただければと思います。
竹中国務大臣 この総合対応策の中に明示的に書かせていただいておりますけれども、これは現在既に行っている政策ないしはこれから行うという政策でございますので、それをさらに制度化する中で、引き続きどういう措置が必要か、これは財政の措置も含めてということになると思いますが、どういう対応策が必要かということを引き続き検討するということにしておりますので、その中で、しっかりと内閣で相談しながら判断をしていきたいというふうに思っております。
江崎委員 その中で、金融再生プログラムはゴールが決まっているわけですよね、十六年度中に結果を出すと。すぐにでもスタートしなければいけないという問題があると思います。項目によっては予算計上しなくてもスタートできるような問題もあろうかとは思いますが、しかしながら、一日も早いスタートが望まれるということですから、これはもう来年度予算にどんどん計上していくというふうに、金融再生プログラムに絞って考えると、竹中大臣はお考えなんでしょうか。
竹中国務大臣 金融再生プログラムの中核をなしますのは、金融行政の中での資産の査定の問題でありますとかガバナンスの強化であろうかと思っております。そうしたところに関しては、しっかりと各方面と相談をしながら基準をつくって、それを速やかに実行に移していただく。その意味で、こういうコアの部分に関して予算措置を必要とするものというのは原則としては見当たらないというふうに申し上げてよいのではないかと思います。
 ただ、産業再生機構とかそういうものに関しては、これは事情は違ってまいります。当然のことながら、この産業再生機構は、これは内閣を挙げて今制度設計をしている段階でありますので、それに必要なものが、どういうものが出てくるのかということを見定めた上で、しっかりとした対応を内閣としてしていくということになるのだと思っております。
江崎委員 先ほど塩川大臣、ちょっと私が間に入ってしまいましたので。
 塩川大臣とされては、この金融庁のつくられたいわゆる改革加速のための総合対策については、予算要求を今後積極的に受けていくという認識でよろしいんでしょうか。
塩川国務大臣 産業再生機構がどういうようなもので機能をどの程度付与するかということ等の問題が決まりましたら、すぐに対応をとると思うのですが、今、まずは人的な配置が必要でございまして、これは一応内閣の方針としては内閣官房に置くということになっております。そこで決めてくると思います。
 そこで、資金の問題でありますけれども、私は、別建ての法律でやる、再生機構のものではなくても預金保険機構の枠内で資金の運用はできると思っておりまして、したがって、RCCとは別の組織ではございますけれども、同じ、資金スキームからいいますと預金保険機構の資金を使う、そういう異系列の状態で発足していくと思っております。
江崎委員 そうしますと、この産業再生機構に政府が幾ら出資するのか、これは今まだ規模もわからぬということではありますが、一方で、今回の大口問題債務者についての主要行のボリュームというのは今約十二兆円と言われているわけですよね。それら以外の、メーン行以外から、いわゆるぶら下がり行からの債権をこの産業再生機構が買い取るというふうに聞いておりますが、そういうことではないのですか。
 そのときに、どれぐらいの資金が想定されるのでしょうか。民間からの出資があるとも聞いておりますが。
竹中国務大臣 これはいろいろな御意見があると思います。しかし、再生をどのようにしていくのか、その中でどのようなところを対象にしていくのか、これは非常に基本的な問題でございますけれども、現時点でまだそこまで議論が煮詰まっているということではございません。
 したがって、その資金云々につきましても、ちょっと私自身、今の時点で想定額は持っておりませんし、何よりもまず、どういう目的でどういう仕組みをつくっていくのか、その中でどういうところを対象にするのか、大きな問題は、今まさにしっかりと議論をしている最中でございます。
江崎委員 この産業再生機構の出資自体をどれぐらいにするかというのは、これは金融庁の管轄になるのですか。それともまた、今財務大臣から預金保険機構の資金を使ったらどうかというお話もありましたが、所管はどのように考えたらよろしいのですか。
塩川国務大臣 金融庁の直属の所管事項とはちょっと違いまして、内閣官房でこの事務を所管するということになりますので。
 金融庁の関係は、査定に至るまでの銀行間におきますところの不良債権の実態調査とかいうのは金融庁の仕事でございますけれども、金融機関が再生機構へ投げてくる、投げてくるというとえらい失礼な言い方ですが、渡してくる、そこ以降におきますところの所管事項は、内閣官房におけるところの再生本部でやるということになります。
江崎委員 わかりました。
 しかし、いろいろまだまだ議論の過程ということのようでありますので、決まってないことも多いのではないかと思います。
 そもそも、この産業再生機構が出てまいりましたときに、やはり一番重要なのは、産業再生機構が銀行から幾らで債権を買うんだと。いわゆる買い取り価格の問題にやはり収れんされてくるのではないかと思います。そこでやっと存在意義が出てくるということではないかと思います。
 これはRCCのときも同じですが、時価に近づければ近づけるほど、金融機関は売却インセンティブが薄れる。また、簿価に近づければ近づけるほど、今度は機構にとってロスをこうむる、そういう危険性が高まるというジレンマがあるわけですよね。それで、RCCが買い取るということについても、買い取り価格というのはいまだにいろいろな議論があるわけであります。
 今回、産業再生機構につきまして、債権の売却価格、これはどのようにお考えなんでしょうか。今までの、恐らく産業再生機構をつくろうという話になったときに、必ずこの買い取り価格の話は出ていると思いますので、これから相談中ですという議論もあろうかと思いますが、想定し得る考え方というのがおありかと思いますので、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 制度設計の中で、最終的には、技術的な問題も含めて、さまざまな問題をクリアしなければいけないということにはなるのだと思います。ただ、今回の金融再生プログラムそのものの基本的な考え方は、資産査定をまずきちっと行うということでありますので、この資産査定が本当に厳密に行われたならば、これはあくまでも理論的な想定ではありますけれども、簿価と時価の区別というのはなくなるはずだということになるのだと思います。もちろん、実務的にはいろいろな問題をクリアしなければいけないのですが、そうした中で、簿価買い取り、時価買い取りというかつてあった議論は、私は実体的にはほとんど意味を持たなくなってくるのだというふうに思っております。
 その意味でも、この金融の枠組みの中で資産査定をきっちりと行っていくということは、これは市場の信頼をかち取る、評価を得るというだけではなくて、今後の企業再生等々を円滑に進める上でも大変重要な意味合いを持ってくるというふうに思っております。
江崎委員 そうしますと、作業の順番としては、あくまで資産査定が先で、十分な引き当てを積む、その上で産業再生機構に売却だということで、銀行側は時価でもほとんどロスがない、許容範囲のロスで済むんだ、そういう認識でよろしいんでしょうか。
竹中国務大臣 基本的には、より厳格な資産査定というのは、これは一刻も早く金融機関に行っていただきたいと思っておりますので、そういう姿が想定されるというのが私は望ましい姿であるというふうに思います。
江崎委員 あくまでやはり私が思いますのは、時間がないことだと思います。そういった意味で、厳格な資産査定をこの十四年度内に終わらせるという目標もあるわけですね。その上で、次のステップとして産業再生機構だということであろうかと思います。
 いずれにせよ、かなりスピードを上げて、また資産査定の仕方についても、ディスカウント・キャッシュフローですとかいろいろな手法を取り入れようというお考えもあるようですが、しかしながら、日本の金融土壌というか、銀行の今までの貸し出しに対するスタイルというか、それになじむかどうかという議論もまだ残っているようですので、そこは非常に急いで結論を出していかないといけないと思っております。
 そういった意味で、今、工程表はこれからなんでしょうけれども、何よりも資産査定の厳格化、これがまず第一だというふうな認識でよろしいんでしょうか。
竹中国務大臣 御指摘のとおりだと思います。もちろん自己資本の問題、ガバナンスの問題、同時に解決していく必要があるわけでありますけれども、何よりも資産査定をきちっとやっていただくということが重要なスタートになると思っております。
江崎委員 最終的には、やはり私は二次ロスを、国が民間のビジネスに入っていくということになれば……(発言する者あり)いや、それは私も想定していた問題ですから。やはり国が民間のビジネスに入っていくということを考えますと、この二次ロスを政府が負うのか負わないのか、ここに、その覚悟にかかってくるんじゃないかと思います。
 そういった意味で、早急な結論を、今まだ結論は出ておられないんだと思いますけれども、そこがすっきりすると、また市場へのメッセージとして重要なメッセージを発することになると思いますし、金融機関に対する信頼回復というものも出てくるんじゃないかと思いますので、やはり政府の覚悟を早く決めていただきたいというふうに思う次第であります。
 そこで今度、では銀行側の自己資本の充実のお話につきましてお伺いをしたいんですが、この金融再生プログラムの中の八ページですか、「自己資本の充実」という項目がございます。ここでは、金融機関の自己資本を強化するため、財務省への要望というのもうたわれておるわけでございます。ここでは、今回議論が事前に相当あったと思われます税効果会計のルール見直しと、これら税制改正の要望との関係についてお伺いをしたいわけですが、私の認識では、日本の金融機関は、これまで積極的に有税償却をして、結果として繰り延べ税金資産が積み上がってきたという事実があろうかと思います。一方では、米国で行われている償却のスタイルというのは、無税償却が容易であるということが言えるんではないかと思います。
 そこで、今回のこの要望というものが総合的な税制改正を前提としたルール変更なのかどうかということをお伺いしたいんですが、具体的に申し上げますと、この中にあります財務省への税制改正要望といたしまして、無税償却引き当て範囲の拡大、それから二つ目が税の繰り戻し還付、三つ目が欠損の繰越控除期間の延長を要請するということがありますが、税効果会計の見直しというのはこれと引きかえになるんでしょうか。いわゆる、言いかえれば、税制面の新たな措置が導入されなければ税効果会計ルールの見直しというのは導入しないという意味になるんでしょうか。セットになるということなんでしょうか。
竹中国務大臣 江崎委員、専門家としてよく御承知のように、この税効果会計の問題というのは、税制の問題と、それと企業会計の原則、基準の問題と、それとBIS基準に基づく金融監督の基準、この非常に大きな制度が複雑に絡み合って、その絡み合った接点のようなところにある問題でございます。その意味では、我々としては、かつて有税償却を行ったからこういう資産項目が今できているという意味で、税制の改正については、これは当局としてしっかりと要望をさせていただきたいと思っております。
 しかし、税の問題として考えるならば、御指摘のように一つのこれは前提ということになるのかもしれませんが、税の問題であると同時に、企業会計の問題であると同時に、これは監督基準の問題であるということを考えますと、これはやはり前提にするというよりは、さまざまな要因を考えて、総合的にどういう対応策がよいかということを、これは英知を結集して結論を出す必要があるというふうに思っております。
 繰り返しますが、その三つの観点から、ぜひとも総合的に、しかもマーケットの、市場の評価にこたえるような形で議論を深める必要があるというふうに思っています。
江崎委員 そうしますと、総合的に判断をされるということではありますが、税効果会計ルールの見直しだけが行われるということもあり得るということでよろしいんでしょうか、税制改正がなくても。
竹中国務大臣 これは我々は、金融庁としては監督基準をどうするかということを考える立場にございますので、そういうことを踏まえながら、総合的に、しかし、監督当局として何が必要であるかということは、これは適宜適切に監督の立場から判断をしていかなければいけないと思っております。
 ただし、その場合に、この制度が非常にいわば日本の制度、歴史とも絡まった問題でありますので、この点は総合的に考えた上で、金融当局としてきちっとした判断をできるように検討を深めたいと思っているところであります。
江崎委員 塩川大臣にお伺いしたいんですが、この三点ですね、税制改正要望については御検討されるということはお考えなんでしょうか。
塩川国務大臣 まだ正式な議題として私たちの中で取り上げてはおりませんけれども、しかし、この国会で御質問がございましたし、また、金融庁の方で自己資本の改正ということを議題にしておられますので、これはどうしてもやはり税制上等非常に重要な問題だと思いまして、政府税制調査会に、国会の動向なり、政府内におけるこういう意見があった、ついてはこれを検討してもらいたいということを申し出ております。
 その根本は、三つの税が関係しておりますけれども、それは、一番の根本になりますのは、いわゆる繰越資金をどうするかということでございますね。貸倒引当金を、これを無税にするのか有税にするのかというここの根本でございまして、このこと自体を別に切り離して考えますと、これを無税にもしするということになりましたら、税収欠陥が物すごく出てくることは当然でございまして、そうであるならば、それの補てんをどうするかということもあわせて考えていかなきゃならぬ。要するに、貸倒準備金の扱い方が決まりましたら、これに伴うところの税効果というものの各企業、銀行のとり方が出てくると思っております。
 その際に、銀行だけ特別な扱いをするんだということは、これはなかなか難しいような感じがいたします。これは貸し倒れの、不良債権の処理のこれからの進行状態で国がもっと深刻に取り上げなければならぬというときには特別な措置も考えなきゃならぬだろうと思いますけれども、現在の状況からいいますと、これだけ、金融機関の分だけ別の扱いをするということはちょっと難しいようなことになります。
 そうしますと、先ほど言いました根本問題にさかのぼって議論をし、そして同時に、これは切り離した問題として、金融機関だけがいわゆる会計基準で変えられるということ、これについては私ども何とも申し上げることではない、こう思っております。
江崎委員 そうしますと、一般事業法人にもこの三項目については当てはめることを前提に十分検討するんだという認識でよろしいのでしょうか。よろしいですか。ちょっと時間がないようですから。
塩川国務大臣 その観点で検討を進めていきたいと思います。
江崎委員 そうしますと、きょうの日経に出ておるような政府税調の見解というのは、これは石さんの、どちらかというと今の大臣の認識が、まだ議論されていない、前の議論だという認識でよろしいのでしょうか。来年度、不良債権処理の支援税制については見送らざるを得ないというようなお話をされておりますけれども、そういう認識でよろしいのでしょうか。
塩川国務大臣 私、それをまだ読んでいないのですけれども、寝ぼけておって読んでなかった。要するに、そう書いてあるのは、恐らく来年度要望事項の問題だろうと思っておりまして、税効果の問題に直接触れていないような感じも、まだそこまで私たちの方はコメントを出しておりませんので、取り上げてはないのじゃないかと思います。
江崎委員 時間が来ましたので、質問は以上で終わらせていただきますが、やはり不良債権処理の問題につきましては、これは現況、喫緊の課題であろうかと思います。一応年限を切って結果を出すという覚悟を、決意を政府がお持ちだということでありますが、ぜひとも、言葉だけに終わらず、結論、結果を出していただく。やはり、政治というのは結論を出すことが私は大事じゃないかというふうに考えておりますので、ぜひともいい結果が出るようにお願いを申し上げたいと思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
小坂委員長 次に、古川元久君。
古川委員 民主党の古川元久でございます。
 竹中大臣におかれましては、かなりいろいろなことで、激務でお疲れの御様子も見られますけれども、この国会質疑はやはり国民の皆さんに対して説明責任を果たす場として非常に大事でございますので、お体にお気をつけになりながら重責を担っていただきまして、また国会でも国民の皆さんに対してわかりやすい御説明をいただきたいということをまず最初にお願い申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。
 さて、私、インターネットを中心にしまして、国民の皆さんのいろいろな声を私自身の国会活動、政策立案活動に生かしたい、そういう思いで、モニターになっていただく方というのを募集しまして、そのモニターの皆さんからちょっと声を集めるということを先月から始めました。
 十月は、せっかく私、こうやって委員会で竹中大臣、塩川大臣に質問させていただく機会があるわけでありますから、皆さんがもしここの場に立って竹中大臣、塩川大臣に一言言うとしたら何が言いたいですか、そういう形でちょっといろいろと聞いてみました。そういう中に、こんな話がありました。我が社も小さな企業ですが創業九十年たちました、こんな不況は初めてです、そういうのがわかっていますか、そういうメッセージだと思うんですけれども。
 今の日本の経済状況、これが危機なのか、危機だとしたらどれくらい深刻な危機なのか、あるいは危機じゃないのか。実はいろいろな政策をやるに当たりまして、どうもその辺についての政策当局者あるいは与党、いろいろなところの認識がまずやはり一致していないというところが、私は一つの、いろいろな政策が右に行ったり左に行ったり、そういう右往左往してしまう、そうしている大きな原因じゃないのかな。まずは、今の現状、どういうふうに認識をしているのか、やはり認識の一致というものがあって、そこの現状認識で一致したところからその現状に対して適切な政策というものも打たれていくことになるんじゃないのかな、そんなふうに思うわけであります。
 中には小泉さんのように、危機だ、危機だと騒ぎ立てる方が問題だというようなことを言われていることもありますけれども、ただ、じゃ危機じゃないのだったら、小泉さんが言うように、構造改革なくして景気回復なしという、危機じゃないのに何で構造改革をやる必要があるのかというふうにも思ってきますし、やはりそういう意味では危機なのかなという気がするんですけれどもね。
 だから、危機の見方が、いや、将来来るであろう危機なのか、あるいはもう今既に始まっている危機なのか。既に始まっているのであれば、これはどれくらいの重大性を持って始まっている危機なのか。やはり、危機のレベルといいますか、現状認識というものをきちんとしておくところからまず私は始まるんじゃないのかなと思うんですね。
 私は、やはり今の日本が陥っているこの危機というのは、危機というものが、ある人に言わせれば、いや別に危機じゃない、将来的には危機があるかもしれないというような人もいらっしゃるように、実は余り目に見えないところで進んでいる危機だからこそより問題が深刻なんじゃないのかな。私は、竹中大臣、塩川大臣も多分そういう御認識を持っていらっしゃるんじゃないかなというふうに思いますけれども。
 やはり今現状でいろいろなことを見ていきますと、大体、自殺者が四年連続でこれはどうも年間三万人を超えるというような状況になる。四年連続で三万人を超えるということは十二万人ですね、この四年で。自殺者の場合には、これは病気で亡くなったわけじゃないですから、みんな自分で命を絶つわけです。しかも、これが男性が多くて、自殺者の場合には非常に男性が多い。しかも、特に最近ふえているのが四十代、五十代という中高年の自殺、これだけの犠牲者が出ている。よく、今の日本の状況を経済敗戦だということが言われることがありますけれども、これだけの犠牲者が出ているというのは、いわば戦争以来と言ってもいいくらいの犠牲数じゃないのかな。
 ですから、そういった意味では、戦時中と言ってもいいぐらいにこれはやはり今の危機というのは進行している、深刻だという認識を持っていかなければいけないのじゃないか。そういう危機感を持った上で、やはりその危機を突破していくということを目指していかなければいけないのじゃないかなというふうに思いますけれども、ここで、両大臣の今の危機というものがどういう危機であるか、そしてどういう認識を持っておられるのか、そのお二人の御見識をお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
塩川国務大臣 私は、危機という言葉は、古川さんがおっしゃるように、いろいろなとり方があって難しいだろうと思っておりますが、私は、今、大変化の時代だと思っております。変わっていっている時代だと思っております。危機というよりもそういう認識で私は立っております。ただ、この変化にどう対応するかということが実は一番難しいことだと思います。
 こういう数字が実は国際間で議論されましたときに言われるんですが、一九九七年、金融二法をつくろうと日本が言い始めましたとき、その当時の日本の個人の金融資産は一千二百兆円だった、そして二〇〇二年になりまして三月末の個人金融資産が一千四百五十兆円だ、二百五十兆円、五年の間にはふえておる、これはどういう現象なんだろうということが一つ。それからもう一つ、同じく九七年のときの外貨準備高はたしか三千四百億ドルでしたか、現在四千億ドルに膨れておる、こういう状況はどういうことなんだろうと。
 そうすると、日本の危機というのは構造改革の危機であって、要するに経済のいわば底力が割れてきておるというか、潜在的能力が欠陥しておる、そういう危機ではないという認識を持っておるように私は思うし、私はそういう認識を実は自分で持っておるんです。
 ですから、変化が、いわゆる産業構造の変化、技術構造の変化、そういう変化に対応することこそが大事であって、それにおくれておるものが、おくれた場合にはそこには危機というものがあるのではないか、こう思っております。
 先ほどおっしゃいました中小企業の方、業種は何でどんな仕事をしておられるのか、教えていただいたら私たちも大体それに対する想像といいましょうか、おっしゃっている言葉も納得するのでございまして、中小企業の中で、変化に対応しておるところは物すごい調子よく、また利益をも出しておる、そういうことも各般ございますので、私は、今は危機というよりも変化に対応する時期だ、こういう認識であります。
竹中国務大臣 日本の経済が、今日特にそうでありますけれども、やはり十年以上にわたって非常に厳しい状況に置かれてきたし、今まさにそのさなかにいるというのは疑いのないことであろうかと思います。
 この現状をどのようにとらえるかという御質問だと思いますが、これは財政の問題一つとってみても非常にわかりやすいと私は思いますけれども、これまで確かに、成長率、九〇年代を通して一%程度と非常に低かった。しかし、事実の問題としては、バブルが崩壊してこれだけ危機というふうに言われながら、国民の平均的な実質所得を見るとバブルのピークよりもむしろ今の方が一五%程度高い水準にある。これはこれで一つの事実なのだと思います。ことしの四―六期の実質成長率は、四―六期に関して言えばですけれども、年率換算では二・六%成長していたというのも、これも事実。
 私は、その意味で日本の経済の真の問題というのは、やはりこのままではしかし財政はもたない、このままでは年金はどうなるのだろうか、不良債権の問題、銀行システムも、このままでは銀行はどうなるのだろうかという、現実問題としては経済は非常に強い製造業と非常に高い貯蓄によってある程度大きな混乱なく過ごしてきましたけれども、それはやはり非常に大きなツケを財政に与えてきた、非常に大きなツケを特定の部門に与えてきた、そういったことが今ほころびとして非常にはっきりと見えてきているというのが現状なのだと思います。
 これは、日本のイノベーションの力そのものが停滞してきたという意味で緩やかな衰退過程に入ったと言う人もおります。その緩やかな衰退ではなくて、財務大臣が言われたように、日本には大きな潜在力があるわけですから、このサステーナブルではない財政をサステーナブルにして、サステーナブルかどうか非常に大きな疑念のある社会保障の制度を立て直すことによって、そういうことをつくり返すことによって緩やかな衰退ではないんだということを示していくことが必要なのではないかと私は思います。
 経済は、非常によいところ、悪いところの格差が出て、全体としてはとらえにくくなっているという面もございますし、私たちは、その意味では緩やかな衰退という言葉が示すような危機感はしっかりと持たなければいけないのだと思っております。
 現状、非常に厳しい中で、今申し上げたような観点から根本的な治癒、そこがまさに構造改革であろうかと思っておりますが、しっかりと進めていくことが求められていると認識しています。
古川委員 塩川大臣の方からは、今は危機じゃなくて変化だ、竹中大臣からは、この変化は緩やかな衰退でないように、ただ、このままでは、例えば財政もあるいは年金制度、そういったものももたない、そういう危機があるというようなお話があったと思うのですけれども、今お二人が言われた、この十年間所得もふえているじゃないか、貯蓄もふえているじゃないか、資産もふえているというのは、私から見ると、これは日本は緩やかな衰退過程に入っているんじゃないのかなという感じがするんですね。
 人を考えていただいても結構なんですけれども、今なんか、それこそ問題になっているのは、高齢者の人たちが資産をたくさん持っていて、その資産がなかなか動かないというわけですね。それこそ、日本はずっと働いてきて、お金を稼いできて、ある意味でそれこそ高齢期でこれから年齢を経て衰えていく。大臣のように何歳になっても衰えない方もいらっしゃいますけれども、一般的に言うと、やはり七十、八十となれば衰えていく。
 そういう意味では、緩やかに衰退していっていつの間にか老衰で亡くなるというのが、これが一番のハッピーな人生だと言われていますけれども、今の日本経済もそういう過程を何となくたどっているような、ですから、そういう、いつの間にか気がついたら、朝起きてみたら息を引き取っていたというような、私は、実は今の日本の経済の危機というのはそういう危機がどんどんと進行しているんじゃないかと思うんですね。だからこそ、怖いと思うんですよ。
 そこの中にいる人たちにとっては、今この時点だけ見れば、別にあしたすぐ財政が破綻するとも思わない、年金が破綻するとも思わない、十年先、二十年先のことを思うと不安はあるけれども、でも、まだあしたのことではないというような認識が、やはりそれがいろいろな問題をこれまで十年先送りさせてきた。そういう意味では、この緩やかな衰退、そういう過程の、そのラインに乗ってしまっている。そこが私は、そういうところについての危機感というものは極めて強く持たなければいけないんじゃないかな。
 だから、何か変化だ、見えてくる数字だけ見て、後でも質問しますけれども、預金はふえたじゃないかと言いますけれども、ふえた部分の多くはどこへ行っているかといったら、郵貯だとか簡保だとか年金、そういうところなんですね。つまり、こういう言い方をしてはなんですけれども、一番資本効率の、収益率の悪いような部分にどんどんとお金が流れていって、民間の、要するにもっとお金を利用してうまく効率的に運用して、そして新たな企業を起こしたりまた雇用を生み出すような、そういうイノベーティブなところにお金が使われていく流れよりも、老後を何とか生き延びていくために必要に、確実に守っていこうというように何となくお金はマクロで見ても流れているような、そんな感じが見えるわけですね。
 そういう意味では、今のようなお二人の認識のままでいきますと、なぜ、じゃ、例えば今回竹中大臣から出た、銀行界などからあるいはマスコミの人たちから日本経済を殺すのかと言われるような、そういう劇薬だと言われるものをやらなきゃいけないのか。今の御説明の、今の現状認識から言われたら、私も、なぜ、じゃ今こんなことをわざわざやる必要があるんですかというふうにやはり見えてきてしまうんですね。
 このままではもたないというのであれば、じゃ、どの時点でこれは解決しなきゃいけない問題なのか。もう今目の前で解決しなきゃいけない、これはそういう問題、ということであれば、これは今まさに我々は相当な危機的状況にあるという認識を持っていなきゃいけないと思うのですけれども、先ほどの竹中大臣のお話なんかを伺うと、どうも何となくそういう危機の切迫感というのが見えなくて、そこのところ、竹中大臣から出てくる政策とが非常にギャップがあるように見えるのですけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 私自身が先ほど緩やかな衰退という言葉を使ったつもりでありますし、緩やかな衰退過程にあるということに関しては強い危機感を持たなければいけないと申し上げたつもりでありますので、そこは古川委員御指摘のところと全く違和感はないというふうに思っております。
 まさに今、これはアジア経済危機を経験したアジアの国々は、いわゆるパニックのような危機があった、そこで一気にいろいろなことを調整した、日本の場合は、非常に強い製造業のベースと非常に分厚い国内貯蓄があることによって、いわゆる資本逃避による為替の暴落のようなことは起きないし、そういう意味でパニックが起きないこと、幸いにしてパニックが起きないような非常に強いベースを持っていることが、いわば緩やかな危機のような状況をもたらしてきたというふうに私は認識をしております。
 しかし、さすがにこのままではいろいろもたないのではないかということを国民が強く認識してきたからこそ、やはり構造改革を掲げる小泉総理に対する非常に強い支持が集まったのだと思っております。
 その中で、この緩やかな危機を突破するためには、やはり今の時点で、つまりパニックが起きていない今こそむしろしっかりとした抜本的な対応策をとらなければいけない、そういった思いから今回の金融再生のプログラムを取りまとめたという次第でございます。
塩川国務大臣 私は、今の話を聞いていて、がっかりしちゃったですね。私のちょうど孫と子供の間ぐらいの若さの若い古川さんがそんなことを思ったなんて、とんでもない。衰退なんて、日本はしませんよ。これからサンライズですよ。これから本当に上がっていくんですよ。何を言っているんだと私は思うのです、若い人が。そんなことじゃないですよ。
 本当に日本、これから新しくなっていきますよ。それを、大人が足を引っ張っているんですよ。変えさせようとしてもなかなか変えさせないところに古い勢力があって、それが抵抗勢力。これが変えさせないんですよ。そこが問題なんですよ。それをよく考えてごらんなさい。
 だって、最近になってから日本の科学技術は物すごい勢いで伸びているじゃないですか。その技術が伸びておるのに、それに対して企業が対応してなかったじゃないですか。最近も出ておりましたけれども、どんどんと日本が大型投資したものが撤退しているじゃありませんか。そして、新しいものに変えていこうとしている。そのスピードがおくれたんですよ。もっと早く。そのスピードに早く乗ったのは韓国であり台湾なんじゃないですか。東南アジアも。
 要するに、私は、このまま何もしなかったらおっしゃるようになるかもわからぬが、今目覚めて構造改革をしようという気分が起こってきた。ここでしっかりと構造を変えていく、仕組みというか考え方を変えていくということをやったら、必ず日本はもっとすばらしい国になります。サンライズですよ。私はそう思っています。
古川委員 私こそ、大臣からそういう言葉を聞くのは全くがっかりする。そういう認識でいるからこそ、私はこういう言葉は使いたくないですけれども、一般の人から見たらちょっとのうてんきなんじゃないのというふうに思われてしまうんじゃないかと思うんですよね。
 我々若い世代は、本当に物すごい危機感を感じて、これは変えたいと思っているんですよ。それを変えさせないでいるのは、まさに今大臣も言われた抵抗勢力だとか、あるいは今までの体制の中にある意味でどっぷりとつかってきた方々なんですよ。一番それをわかっていらっしゃるのは大臣じゃないですか。大臣こそが、今、ではどういうふうにしたらこれが本当に変わっていくのか。私は、大臣、別に年齢の高い方が財務大臣のポストにいらっしゃることが悪いとは言いません。でも、では本当に将来のことを考えて、もちろん大臣は、私は非常に見識もあられると思いますよ。しかし、もう大臣も長くやっていらっしゃいますけれども、財政の問題、こちらの方にだってほかにもいろいろとたくさん若い方々で、後進に道を譲るという道だってあるはずですよね。
 これは、アジアの国々という話がありますけれども、日本ほど、特にこの政治の世界ほど先輩方が頑張っていらっしゃる世界もないわけでありまして。アジアの国々の、今お話をしましたけれども、みんな元気がよくて頑張っている企業の経営者を見ると、みんな二十代、三十代、せいぜい四十代ですよ。そういう世代交代を本来進めていく、やがて私は日本もそういうことをやっていけば大きく変わっていくと思いますよ。そういうところが、大臣が、私は繰り返しますけれども、一生懸命やっていらっしゃると思いますし、能力もあられると思います。ただ、ではいまだに大臣がそういう御年齢で後進をもっと前へ立てようとしないのかどうか。それで何か若い連中は元気がないとか少ないとは。一回かわって、やらせてみたらどうですか。ほかの方々はもっと一生懸命、元気にやられるかもしれませんよ。これは、やはりもうちょっと大臣の認識を考えていただきたい。
 我々は、決してもう先に悲観しているわけじゃないです。悲観していないからこそ、今自分たちの手で変えたいからこそ、こうして政治の場に出てきて、こうして政治を変えようと思っているのでありまして。ですから、そこは全く誤解をしていただきたいとは思いませんので、ぜひそこは御認識をいただきたいと思います。こんな話をしていると時間がなくなっちゃいますから。
 竹中大臣から先ほど、こういう緩やかな衰退になってはいけないから今パニックが起きないうちにやっていくんだという話がありました。そういう意味では、パニックは起きていないけれども、今この時点でやらなければいけないことというのは、いわば一つのこれはやはり危機管理の体制じゃないかと思うんですね、先ほどからほかの委員からも質問がありますけれども。その危機管理という体制であれば、これは平時とは違った、相当にしっかりした体制をとらなければいけないと思います。
 私のモニターの中に、言ってきた人の中でも、抵抗勢力に負けてしまうのじゃないかという不安がある、そういう声があったんですけれども。また、大臣はスピードを標榜したがスピードが上がらない、そういう声もありました。竹中大臣、ファスト・イート・スローなんという言葉もよく竹中大臣自体も使われていたんじゃないかと思いますけれども、そういうスピードが非常に大事な時代になって、果たして今の体制で、大臣自身もこの対策をまとめられるのに大変に苦労されたようでありますけれども、本当にスピーディーな政策決定、そしてスピーディーな政策遂行ができるような体制ができているというふうに思われていますか。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 スピードの時代に関して私のかつて書いた本の紹介を一部していただきまして、大変ありがたく思っております。
 これはもう釈迦に説法でありますけれども、政策を決める、政策論というのはもう間違いなくプロセス論であると思います。例えば、財政においても、予算の編成のプロセスの中で粛々とやはり議論していかなければいけない面がありますから、そこは受け入れなければいけない面があると思います。
 ただ、スピードに関しては、今回、私が直接所管できる金融庁の問題に関しては、これまで十二年間日本の経済を覆ってきた不良債権問題に関してどのような方針で臨むかということを、目標も含めて、プロセスも含めて一カ月間で、これは実はさまざまな方々の御協力をいただいて、とにかく一カ月間でまとめたというのは、これは当初、一カ月間などは無理だよ、無謀だという御指摘もあったんですが、私は私なりにスピードは発揮できたのではないかというふうに思っております。
 もちろん、これを実行に移すに当たってもまたスピードが要るわけでありますから、ここは工程表をこれは十一月中につくるということをみずからに課しておりますし、資産査定の問題に関しては、多くの問題を来年の三月期に実施に移していただけるように、各方面と御相談しながら、ぜひともやっていただきたいと思っています。
 これは、査定は決算でしかできませんから、一番早い時点というと来年の三月ということになる。その意味では、古川委員御指摘のように、スピードというものを大変重視しながら行政を進めているつもりでございますので、この一カ月間の取りまとめ、今後一カ月間の工程表、それと来年三月までの資産査定の適用、こうした点はこうした点としてぜひ御認識をいただきたいと思います。
古川委員 時間が来ましたんで午後に回したいと思いますけれども、私が今聞いたのは、ただスピードだというだけじゃなくて、今の体制で本当に大臣が考えていらっしゃるようなことがきちんとできる体制になっているんですかということを聞いたわけでございますので、ぜひ午後一の答弁でその点をお答えいただきたいと思います。
小坂委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十七分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。古川元久君。
古川委員 午前中に引き続きまして質問させていただきたいと思います。
 先ほど体制の話を伺いましたけれども、スピードはあるというお話だったんですが、竹中大臣が大臣になられる前に、私、直接聞いた話で、やはり政権というのはチームでとにかくやっていかなきゃいけないんだ、一人で大臣が頑張ったって物は動かないんだというので、やはりチーム、自分の意をきちんと受けた、そういうチームをきちんとして、それでやはり政権運営をしていくことが必要なんだというお話を私は大臣から聞いたというふうに記憶をしているんですけれども、そういうきちんとしたチームが今大臣、できておられる、事務方も含めて、そして政府内、与党内にそういうチームがきちんとしてできておられるというふうにお感じになっておられますか。
竹中国務大臣 チームというのは幾つかの意味で申し上げたかと思います。総理が中心となって、閣内、閣僚としてまとまって一体となってやっていくという意味でのチーム。さらには、大臣として何か仕事をする場合に私を支えてくれるさまざまな人員という意味でのチーム、これはもちろん最初からできるものではありませんで、仕事の中でつくっていくものであると思いますし、その時々に応じて、またいろいろな方にお願いしていくものだと思います。
 同時に、もう一つ重要なのは、これは議院内閣制のもとで与党の方々にしっかりといろいろなアドバイスをいただけるようなチーム。そういう意味でも非常に、時にはフォーマル、時にはインフォーマルで、やはりチームでの体制というのは必要であるというふうに思っております。
 そういうものをつくりながらやっていくのがある意味で大臣としての仕事であると思っておりますので、そのような形で日々努力をしているところでございます。
 とりわけ、閣内においては、総理のリーダーシップによりまして、今回も内閣一体となってやれということで、産業再生機構等々の話も浮上したという経緯がございますし、そのような方向でやっていっているつもりでございます。
古川委員 チームをつくっていくというお話がありましたけれども、まず政策に取りかかる前に、そういうチームをつくってから本当はやはり政策に取りかかっていくのではないか。大臣、なかなか与党の議員の皆さんもいる前ではいろいろ言いにくいのかもしれませんけれども。
 本当にきちんとしたチームが事務方も含めてできているのであれば、なぜ、法的な位置づけについてはまた後でうちの同僚議員が聞きますけれども、プロジェクトチームのような私的な勉強会みたいなものをつくられて、竹中チームをつくる必要があったのか。本来であれば、これはちゃんとそういうことを検討する、もし必要があればそういう人たちをちゃんと役所の中なり自分のスタッフなりに任命して、そういうチームをつくるべきだったんじゃないかなというふうに思うわけでありますが、それをされないで、あるいはできなかったということかもしれませんけれども、今の法制の枠の中から横にはみ出たような形で別にこういうチームをつくられたのは、やはり今の体制が、大臣からすると、なかなか御自分の思うように動かれないという認識からつくられたんじゃないですか。違いますか。
竹中国務大臣 その時々に応じて、時にフォーマルに時にインフォーマルに、やはりチームを柔軟に編成していくことが必要だというふうに申し上げたつもりでありますが、今回のプロジェクトチームはまさにそれに当たっているというふうに思っております。
 これは何かの側道に外れたというものではなくて、プロジェクトチームのメンバーというのは、私と副大臣と金融庁長官と三局長、それと、さらに幅広い英知を結集するという意味で民間の有識者を五名お願いした。民間の有識者五名は金融庁の顧問に就任をしていただいて、それでまさにチームでいろいろと知恵を授けていただいたわけでございますから、これは私に対する私的なインプットでありますけれども、これはまさに金融庁の中にそのような形のものをつくってサポートしてもらった。金融庁が持っているこれまでの非常に強いノウハウ、英知と、民間の幅広い英知を結集するという意味で、まさに柔軟にチームをつくって、チームとしてよりよい政策が可能になるように工夫したつもりでございます。
古川委員 この話については後ほど同僚議員がまた詳しく質問させていただきますので、これくらいにさせていただきまして、次の話題に行きたいと思うのです。
 午前中にも申し上げました、私のところでやっているモニターの声の中に、失われた九〇年代の総括と反省をすべき、そういう声があったんですね。
 午前中のほかの議員の質問を聞いていましても、今回の対策、屋上屋を重ねたんじゃないかとか、今まであった機構とどういう関係になるのかとか、そういう質問が幾つか出ていたわけなんですけれども、どうもこれまでやってきた政策についてきちんとした総括がなされてないんじゃないか。総括がない上に、また新しい政策がそこに上塗りされる、そのことが結果として、失われた十年というような、そういう時代を生んでしまったのではないかと私は思うわけであります。
 やはり過去の失敗とかそういうものを繰り返さないためにも、しかも、今これからやっていこうという政策は、かなり手段が限られた中で、しかも相当劇薬にもなるようなものでありますから、やってみました、失敗しましたというわけにはいかない。そういう意味では、これまでやってきた政策について、何が足らなかったのか、何が問題であったのか、そしてその責任はどこにあるのか、そういうことについてきちんと検証した上で、整理をした上で新しい政策に取り組んでいくべきだというふうに思いますが、その点については御認識はいかがですか。
竹中国務大臣 過去の政策についての評価を行うということは、それ自体、委員が御指摘になっておられるとおり、大変重要なことであるというふうに私も思います。しかし同時に、けさほど古川委員が御指摘になったように、スピードが大切である。金融担当大臣としては、とにかく与えられた任務に向かって一刻も早く政策を行っていかなければいけない立場にございます。
 この一カ月間、そのようなつもりで仕事をしてきたわけでありますけれども、総括そのものにつきましては、これは政府が行うべき総括もあれば、民間のいわゆる専門家が行うべき総括もあるというふうに思いますし、これに関しては、十年間の蓄積の中でそういうものも、専門家の研究、蓄積としては私は次第にできつつあるというふうに思っております。
 さらには、内閣府においてもさまざまな形の政策分析を行っているわけでありまして、これは大変地味ではありますけれども、幾つかの重要な事項についてそういうものが蓄積されつつあるというふうに認識をしております。
 私としては、過去を振り返るということも大変重要でありますが、行政の最前線にいる者としては、やはり前を向いて、フォワードルッキングで政策をスピードを持ってやらなければいけませんので、そうした今までのさまざまな専門家の御指摘を踏まえた上で、特に三つの点を重視して、三つの点をバランスをとらせてやることが、過去の行政を踏まえた最善の政策であろうというふうに判断をした次第でございます。それが、とりもなおさず、資産の査定の厳格化、自己資本の充実、見直し、それとガバナンスの強化、そういうものを、やはりどれが欠けてもなかなか政策というのはうまくいかないのだと思います。
 総括そのものは、金融担当大臣としてのフォワードルッキングにやっていく中で、なかなか位置づけが難しいと思いますけれども、これは社会の中で担っていただく、ないしは内閣府の調査機能の中でこれからも続けられていく。私としては、それらを踏まえた上で、今の三点に基づいて、三点をバランスよく政策に反映させていくということをもって、よりよい政策をつくっていきたいというふうに判断をした次第であります。
古川委員 フォワードルッキングはいいのですけれども、スピードが大事だと言われましたが、野球でも、ただ速い球を投げれば打たれないというわけじゃないんですね。やはり甘いコースに投げたら打たれるわけです。今までの政策は何で打たれてきたのか、失敗してきたのか、それを研究しないで、ただ速い球さえ投げればいいというのとは違うと思うのですね。
 ですから、そういう意味では、フォワードルッキングは大事なんですけれども、やはりここまで、それこそ竹中大臣も先ほど言われた、財政赤字を拡張させるような経済政策もずっと打ってきたわけです。それでもこういう状況になってきたのは、どこに問題があったのかどうか。やはりそれは、民間やあるいはシンクタンクに検証を任せるのではなくて、政府としても、政策を打ってきた責任者として、その政策のどこがよくてどこが問題があったのか、そして今度の政策でどういうふうに過去の問題点を直していくのか、そこについての説明をきちんとしないと、これはやはり国民の皆さんもなかなか、これからやろうとする政策についての理解をしろという方が難しいと思うのですが、この点についてはいかがですか。
 ぜひ塩川大臣にも、これは質問通告してありますから。
 それこそ財務省は、大蔵省の時代からずっとこの十年、いろいろなことをやってきたわけであります。ですから、そういう面での過去を総括して、どこに問題があって、どういうことを直していけば、これからは、それこそ今竹中大臣が言われたフォワードルッキングで前向きにいいことがやっていけるというふうに考えておられるか、お二人の大臣から御見解をお聞かせいただけますか。
塩川国務大臣 役所の仕事というのはペーパーを書くことが仕事なのか、紙が多過ぎますね。計画だとか報告だとか、これに皆精力を使ってしまって、実際どこまでだれがどんな責任を持って仕事をしておるかという実態調査を余りつかんでないですね。
 私はその方針を変えまして、今どこまで仕事が進んでおるか、どこに欠陥があるのかということの、プラン・ドゥー・シーのシーの方にうんと重点を置いておるのですよ。プランは、どこでも引き出し引っ張ったら出てきますから、プランはもう十分ですから。小泉内閣になりましてから、何とかプランだとか何とか計画だとかいうのが十ほど出ているんじゃないかな。だから、それはこれから、どこまでやったかということをやるということが、それがやはり宿題だろうと思います。私はそこへ重点を置いてやっております。
竹中国務大臣 説明責任が重要であるという点については、私もそのとおりだと思います。
 先ほども言いましたように、政策の評価に関しては、内閣府の中で、非常に評価にたえるような、非常にきっちりとした分析を積み重ねておりますし、それはそれで一つの政府の役割だと思います。さらに、同時にやはり政策評価のシステムというのが御承知のように動き出しているわけで、政策評価の中で、これはどのぐらいのタイムスパンがとれるかという問題はあろうかと思いますが、総務省を中心に各省庁でもやることになっておりますが、そういう中で、今委員が御指摘のような点をしっかりと踏まえていくことも重要だというふうに思います。
古川委員 その評価こそ、まさにスピードを上げてやってもらわないといけないと思うんですね。そういうものがなくて、それこそ今財務大臣が本当に無責任な話、こういう無責任な人が財務大臣をやっていること自体が私は問題だと思いますけれども、そのことによって、要は、どんどんと限られた資源が浪費されて、そして手段がだんだんと限定をされて、ますます副作用の大きい政策をとらなきゃいけなくなっている、そういう悪循環に陥っていることは一番大臣が理解していらっしゃるんじゃないかと思うんですね。
 そうであれば、前に進むのも大事ですけれども、まず、これまでの政策について、どこがよくて何が悪かったのかと、きちんとスピードを上げて検証をして、その悪い部分を直すんだということで、やはりきちんと国民に対して説明をするということが大事なんじゃないでしょうか。
 まさにそこが、過去の総括が前に行くために非常に大事なことだと思いますし、それがまた、最初にもお伺いをしました、現状の認識をどう思っているのかと。非常に限られた手段の中でこれからやれることというのは、本当にそんなにいろいろな選択肢があるわけじゃありません。どの選択肢をとるにしても、いろいろな副作用も覚悟していかなきゃいけない。そういう中だからこそ、やはりしっかりと過去の検証が必要じゃないか。
 その流れの中で、もう一つ、金融行政の部分についてフォーカスを当ててみますと、九九年以降の、私たちも一緒に参加をしてつくることになりましたいわゆる金融再生法ができて以降の金融行政でありますけれども、それから大手行では四回、検査とか日銀考査が行われたわけでありますね。そこについては、その時点で、不良債権の処理については適切だというふうに、当時の行政当局は判断をしているわけですね。
 今竹中大臣は、今回の不良債権処理の加速のためのプログラムで、そういうやり方を変えていこうというふうにしているわけでありますけれども、今までが問題があったんであれば当然それは変える必要はあると思います。しかし、問題があるのをそのまま看過してきた行政側の責任も問われるべきではないかというふうに思いますが、その点については、大臣の御見識はいかがですか。
竹中国務大臣 行政は、経済環境がどんどん厳しくなる中で、その時々の対応をしてきたものというふうに思います。とりわけ、この一年ないし一年半につきましては、やはり予想以上に世界の経済が低下した。アメリカもヨーロッパも日本も、前期に比べますと成長率がちょうど三%ポイントぐらい一気に下になるという状況の中で、その時々の対応をしてきたものというふうに思っております。
 多額の不良債権を抱えて、それを社会の中で消化していくという経験そのものが、政策的に見ても、なかなかこれまでになかった経験でありますから、銀行においても、また金融当局においても、さまざまなことをいろいろ考えながら、試行錯誤の中で政策をしてきたものというふうに思っています。その意味では、経済環境が著しく悪化する中で危機を回避するという意味では、私はやはり、これまでの行政も銀行もそれなりの成果を上げてきたと思っております。
 今申し上げたいのは、そういった点を踏まえた上で、先ほど緩やかな衰退という言葉を私も、古川委員も使われたわけでありますけれども、そういった状況を受けて、さらに、よりロバストなといいますか、より強い金融システムをつくっていくという段階に踏み出さなければいけない、そういう位置づけで今回の政策をとらえていただきたいというふうに思います。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
古川委員 今の大臣のお話を銀行経営者の人が聞いたら、おれたちにだけは責任をとれと言って、行政は、ちゃんとやってきた、最善の努力を尽くしてきたんだからそれは責任問題にならない、そういうふうに言っているというふうに聞こえるんじゃないかと思うんですね。
 私は、銀行経営者は責任をとるべきだと思います。しかし、その反対側にあった行政側の責任というものも、こういう事態を招いたという意味では、やはり同じように責任というものも問われなければいけないんじゃないか。そこのところだけは、いや、一生懸命やりました、状況が予想した以上に変化したんです、悪化したんですということで、すべて責任がなくなってしまうということになったら、これはやはり行政側として余りに無責任ということが言えるんじゃないか。
 私は、そういう意味では、竹中大臣に経営責任を追及してもらうのは結構です。しかし同時に、こういう状況を生んだ行政側の責任についても、きちんとそれは、行政庁の長として責任問題をしっかりと確認していただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 先ほどのほかの議員の質問の中でも、竹中大臣は、今回の総合デフレ対策、ビジョンを政策に落としてそれを加速させるものだ、その流れの中だというお話がありましたけれども、しかし、私のところのモニターに来る声の中では、将来ビジョンが見えない、政府が十年、三十年先に目指す国家像が見えない、だから不安感があるんだという声があるんですね。果たして本当にビジョンが見えてきたのかどうか。
 例えば、私は、この金融システム改革、それこそ金融ビッグバンをやるということを八〇年代後半に政府が決めて、それ以降進んでくるわけでありますけれども、今までの流れを見てみますと、果たしてこの先に、例えば竹中大臣が言う不良債権の処理が終了するというその先に、日本の金融の地図というのは、どういう地図をイメージしておられるのか、なかなか見えてまいりません。
 例えば、きょう資料でお渡しをさせていただきました「公的金融部門の資産と対外投資」という紙を見ていただくと、九〇年から二〇〇一年までの十年間、先ほどの話の中でも、とにかく資産はふえているんだという話があったんですけれども、もちろん民間の方もふえているといえばふえているんですけれども、圧倒的にふえているのは公的部門の方なんですね。
 一九九〇年には、民間金融機関と公的部門との全体に占めるシェアで見ますと、民間の方が八〇%を超えていて、公的部門は二〇%以下だったのが、二〇〇一年になりますと、民間の方が七〇%にまで一〇%以上下がって、公的部門が今度は三〇%近くまで繰り上がっている。これを見ますと、マクロで見ると、これまでの十年間の日本のお金の流れというのは、民間部門からだんだんと公的部門の方にウエートが置かれていってしまっている、そういうような姿にも見えるわけですね。
 金融システム改革と言いながら、小泉総理は、郵政三事業の民営化というものを一番の旗頭に掲げながら、郵貯、簡保については何の方向性も示されなかった。もし本当に日本の資金循環の流れを大きく変えていこうということであれば、郵貯、簡保も含めた、公的金融も含めたマクロとしての日本のお金の流れをどういうふうに変えていくのか。
 そして、そのお金を循環させていくシステムというので、国際業務をやる銀行、何行ぐらいがいいのか。あるいは、地方、それぞれの地域経済にお金を流していく、そういう金融機関はどういう姿がいいのか。そういう将来の日本のお金の流れ、そして、だれがお金の流れを、金融仲介機能を施していくのか。すべてそこは外資系、大手はみんな外資になってしまうのか。あるいは、ナショナルフラッグの銀行が幾つかはあって、ちゃんとそういうところは守っていくのか。
 そういう面も含めた、国家としての経済の血液ともいうべき金融、お金の流れについてのビジョンというものがまず示されなければいけないんじゃないかと思うんですが、その点については竹中大臣はどのようにお考えですか。
竹中国務大臣 ビジョンを示せという話は、さまざまな方から御指摘を受けます。これはもう一年半前、経済財政政策担当大臣に就任したときから、そのような御指摘は受けているというのは承知をしております。しかし、ビジョンというときに、いろいろな方にお話を伺いますと、それがイメージしているものというのは随分と違っているのだなというふうにも感じます。
 実は、マクロ経済的なシナリオという意味でのビジョンは、小泉内閣はかなり明確に示しております。これは、ことし一月の「改革と展望」の中で、マクロ的な経済の推移と財政のバランス、これも国、地方に分ける形で、かなりこれは、マクロと財政を整合的に示したという意味では過去の政権はやっていない初めてのものを示したわけでありますので、私は、このマクロのシナリオは、これは政府が示すべきであるし、実際に示しているということを申し上げたいと思います。
 ただ、例えば国民生活がどうなるのかというふうなビジョン、これを求める声もありますし、また、今古川委員がおっしゃったように、産業が一体どういう構図になっていくのかということを求める姿もございます。これはしかし、非常に難しいと思います。特に産業の場合は、一つの競争の結果がどうなるであろうかということでありますから、競争の結果というものを政府が果たして明快に見通せるのだろうか。翻ってみると、アメリカやイギリスに十年後、二十年後の自国の金融業界のそういった姿というものが、どういう銀行が何行あるとか、そういうものが示されているのだろうか。これはやはりなかなか技術的にも難しいし、政府としてはなかなか難しい点があるのではないかと思うんですね。
 ただ、古川委員が御指摘された中で、マクロの金融の、ここで言うところのプライベートなセクターと公的なセクターでの金融のバランス、こういうマクロ的な動きについては、これはやはり何らかの形で議論をしていかなければいけないというふうに思っております。
 実は今、経済財政諮問会議で政府系金融機関に関する議論をしておりますが、その中で、このマクロ的な側面について今後議論をしようという点は民間議員からも明示的に出されておりまして、そうした点につきましては、これは少し時間はかかると思いますけれども、しっかりと議論を私たちなりにしていきたいと思います。
 ただ、競争の結果として出てくる姿でありますとか国民の生活の姿、これはどうもなかなか技術的にも難しいし、他の国においてもそれほど、少なくとも政府が明確にそういうものは示していないのではないのかなというふうに認識をしております。
古川委員 郵貯、簡保はいかがですか。
竹中国務大臣 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、政府系金融機関のあり方を議論する中で、まさにマクロの金融の流れ、これについてはしっかりとそのバックグラウンドを議論しようというふうに諮問会議の民間議員からの提案もございますので、繰り返して言いますが、政策金融機関のあり方そのものについては十二月までにある種の結論を出さなきゃいけないんですが、このマクロの議論というのはそれまでに容易に結論を出せる性格のものではないと思っておりますが、問題意識としてはこの中でしっかりと踏まえて、引き続いて議論をしていきたい。その上で、何らかの形であるべき姿のようなものは、議論を煮詰めて示していきたいというふうに思います。
古川委員 でも大臣、金融再編はどんどん今進んでいるわけですよね。それをまさに加速させていくということですよね。ペイオフも二年延期して、不良債権処理も二年後までに終わらせると。つまり、それはどういうことかといったら、要は、二年後のときにはもう金融システムに不安がないような状況をつくり上げるということですよね。ただ、そこは民間の金融機関という話になりますよね。
 そういう形ができちゃったときに、今のこの私の資料でも示したような、非常に偏った形でお金が集まってしまっている公的金融、そういう、一回再編が済んじゃってから、それから手をつけるのでいいんですか。
竹中国務大臣 したがいまして、目途としては、これは具体的に民間部門の金融の強化というのがどのぐらいのペースで進んでいくかということを当然見なければいけませんし、まさに資産査定もきっちりとこれから行っていただくわけですから、そういうものを見ながら、ある種並行して、民間金融がどのように変わっていくのか、それと表裏一体の関係にある公的部門がどのようになっていくのか、なっていくべきなのかということを、歩調を合わせる形で議論をしていきたいというふうに思います。
古川委員 今、歩調は合っていないんですよね。まさに、それこそ郵政三事業については、もう総理の私的諮問機関で一回報告書が出ちゃったわけですよね。その中でも、結局、郵貯、簡保の話について具体的に触れられなかった。やはりここは金融という全体で考えるのであれば、公的部門についてどう考えるかということも、当然かなり具体的なものが出てこなければ、何も今まで議論していなかったら別ですよ、それこそ小泉総理はずっと三十年以上、郵政三事業民営化、郵政三事業民営化、こればかり言い続けてきたわけですから。それで出てきた郵政三事業の改革というのは、郵便事業の新規参入を認めるという、そこのちょこっとだけで、限度額を下げるということさえも出てこなかった。
 これについて、竹中大臣、金融を担当している、しかもそれだけじゃなくて経済財政諮問会議も主宰しておられる。そういう中で考えますと、余りにこれは一方の民間のところだけがクローズアップされて、こちらがどうなるんだと。やはりこちらの部分がはっきり見えてこないのが、一つのビジョンの欠如だと私は思うんですよね。全体として日本のお金の流れ、特にその中の中心になっているような、公的金融の中心になっている郵貯、簡保、そういうものについての政府としての明確な方針というものが見えない。これはやはり非常に問題であると思いますし、そういうものはきちんと示されなければいけないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、民間と公的な部分の金融というのは、まさしくこの古川委員の表にも示されているように表裏一体の関係にあるわけで、これを同時に議論していかなければいけないという問題意識は強く従来からも持っております。であるからこそ、例えば経済財政諮問会議で政策金融、公的な金融の議論をするときには、これは民間と一体でなければいけないということで、当時の柳澤金融担当大臣にも必ず御出席をいただいて、民間と公的な部門の金融を同時に議論していくというような体制をとってきたつもりでございます。
 しかし、当面、行政として、民間の不良債権問題というのにとりあえず焦点を当てなければいけないという政策的ニーズは、これはニーズとして私はやはり間違いなくあると思っております。こうした議論を深める中で、古川委員御指摘のように、公的な部門についても、これは当面、経済財政諮問会議における公的金融の議論の場を使う形で、御指摘のような問題意識を反映した形の政策論議をしていきたいと思います。
古川委員 とりあえず今のに対応しなければいけないというのが、これがまた最初のところに戻るんですけれども、今そういうことでいいんですかというところなんですよね。やはり、それこそ総力戦で当たっていかなきゃいけないときに、ここの部分だけ置いておいてこっちだけ、そういう姿勢でいいのかどうか。やはりそこのところは私は非常に問題だということを指摘させていただきたいと思います。
 次に、もう少し今回の総合デフレ対策の話に入っていきたいと思うんですが、モニターの声などでも、やはり具体的な提案がないという声が多いんですけれども、私は大臣と一緒に十月初めに東アジア経済サミット、同じセッションに出させていただいて、今月の末にはパッケージで政策を打ち出しますからという、非常に鳴り物入りで。私も非常に期待したわけですね、パッケージ。
 どんなものが入っているのかなと思ったら、箱をあけてみたら、近日発売とか、ただいま製造中とか、そういうパンフレットだけは入っているんですけれども、現実に何か今すぐにでも食べられるような商品は何も入っていない。これから法案をつくりますから来年の四月以降まで待ってくださいとか。ただ、見えてきたのは、銀行に対しては厳しくやりますよ、そういうところだけのアナウンス。これが、大臣があのサミットの場で言われたパッケージというものの、本当にこれが中身だったんでしょうか。
竹中国務大臣 クアラルンプールに御一緒いたしまして、そのセミナーの中で、金融の問題と、それをサポートする関連する経済政策についてということを申し上げました。
 今回の総合的なものについては、例えば来年度の予算編成を控えて、さらには引き続き検討する財政的な措置を含む検討項目を含めて、冒頭申し上げましたように、やはり予算の日程、プロセス等々を踏まえなければ決まらないことがございますので、全部が全部出そろっているわけではもちろんございません。
 しかし、今回、民間の不良債権処理に関連して、やはりセーフティーネットが特に重要であるという観点から、これはセーフティーネット保証、セーフティーネット融資の拡充のことは明快に織り込まれていたと思いますし、雇用の対策につきましても、これまで非常に限られた予算を活用する形で、これまでにない新しい二つの仕組みを厚生労働省の方で取り上げて、その中に現出させているつもりで、付記したつもりでありますし、その意味では、不良債権処理の加速と一体化したものが現時点で可能な範囲では私は盛り込まれているというふうに思っております。
 しかし、御指摘のように、これは残された問題はあります。これは今後の予算編成の過程でしっかりと議論を詰めていきたいというふうに思います。
古川委員 私も、金融の問題については、これ以上問題を先送りすることはよくないと思います。ですから、ネバーランディングじゃなくて、永久に先延ばしするというんじゃなくて、どこかでランディングしなきゃいけない。ただ、それがハードであってもきちんとランディングはしなきゃいけないんですね。クラッシュになっちゃいけないんですよ。しかし、そのためには、ちゃんとこれはレスキュー部隊を事前に用意しておかなきゃいけないんですよね。今、竹中大臣が言われたセーフティーネットというのは、今言われたように、これから準備するという話ですよね。ところが、もう飛行機は降下を始めちゃったわけですよね。ですから、そのセーフティーネットの話、まだ法案化が必要でしょうし、あるいは予算化が必要だ。それまでの間、本当にこの降下を始めた飛行機がクラッシュしないで待っていられるのかどうか。
 やはりそういう意味では、今回のデフレ対策が閣議でも諮問会議でも報告に終わっている。なものですから、自民党の中の総務会、自民党の中からの声も、これは報告ということは決めていないということじゃないかというような話もあるみたいですし、山崎幹事長は、法案化になった段階でまた相談しますと。そうすると、相談するとまた変わっちゃうということもあるんじゃないか。
 ですから、さっきも申し上げたような、近日発売というので今は入っていますけれども、では実際に申し込みをしてみたら、やはり製造取りやめになりましたということだって起きちゃうんじゃないか、そういう不安を持ってしまうと思うんですけれども、やはりここを、報告にせざるを得なかったのか、あるいは意図的にこれはしたのか。これは内閣としては、ここで書かれていることはどういう意味づけを持つ、閣議決定と同じような意味づけだというふうに考えてよろしいんですか。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 先ほど、政策の位置づけ、流れの全体的なことをお話ししたつもりでございますけれども、まず、金融再生プログラムに関しましては、今後検討していく中で法的な措置が必要なものも出てくる可能性はあるわけですけれども、基本的には、金融庁の行政の問題、行政権限の中で処理できる問題がほとんどであるということに思います。時間の流れでいいましても、これは資産査定等々、来年の三月期に、これは決算のときに適用していただくわけですから、そのときまで、いろいろな形での準備が金融機関でも我々の方でも進んでいくということになろうかと思います。
 関連するセーフティーネット等々については、そうした時間の流れの中でしっかりと措置をするということになるわけでありますが、これらの政策そのものは、既にことしの骨太第二弾の中で閣議で決定されて政府の政策になったものであります。それをさらに、今後、より早く、より大きくするということで、各省庁が大臣のリーダーシップで進めているものを今回取りまとめたという形になっておりますので、金融の方は金融の方で、来年のそういう決算期を目指してやれることをやっていく、それに合わせて予算編成のプロセス等々でさらに必要な措置をしっかりととっていく、そういう流れであるというふうに理解をしております。
古川委員 そうだと、そんな大々的にパッケージ出しますというほどの話じゃなくて、今までやってきたものを取りまとめましたというだけのような気もするんですよね。ですから、時間がなくなりますからもうこれ以上言いませんけれども、やはり今回のはそういう意味では新鮮味がないし、また具体的な提案というふうにもなかなか見えない。
 そういう中で、かなり具体的かなと思っていた部分が金融の部分でありますけれども、そこが非常にいろいろなところでハレーションを起こしている。特に、資料で出しましたけれども、繰り延べ税金資産のこれが妥当かどうか。これは単純計算ですから、必ずしもこれが正しいというわけではありませんけれども、過去の例から見積もってみると、やはり今の繰り延べ税金資産の計上額というのは余りにも楽観的に将来の収益を予想して立てているとしか見えない。大臣も多分そういうふうに見られたからこれは税効果会計の見直しというものを示唆されたんじゃないかと思うんですが、ただ、示唆だけして将来こういうふうに変えますよというのが、これは私は一番危ないことじゃないかと思うんですね。銀行側からすると、これから厳しくされるというので、とにかく資産をどんどんと圧縮しようと。
 ですから、最後になりますけれども、資料につけさせていただいた、この「マクロ経済」というこれですけれども、これは我が党の政策調査会の方から手に入れたものなんですが、どうもこれはみずほグループの広報担当部門に十月の初めごろに配られた内部文書であって、竹中大臣が資産査定の厳格化や公的資金投入の方針を打ち出したころに、何か危機感を抱いたグループが反竹中キャンペーンを張るためにこれを作成したんじゃないか。竹中プランが実行されると、「第二の「新生銀行」」と何か黒くここだけ太くしてありますけれども、そういうことが起きるぞといって反竹中キャンペーンを張ったというような話もあるやに聞いておるんですが、みずほホールディングスの前田社長は、竹中大臣との懇談会でも、こういうプランが実行されたら三十兆円ぐらい資産圧縮しなきゃいけないという、貸しはがしをするぞとも受け取れかねないような御発言もしておられるようでありまして、こういう文書について認識しておられたか、また、こういうことをもし銀行がやっているとすればどのように大臣は思われるのか。
 こういうこともありますので、ぜひ一度これは法案審議の中で銀行の方々にも来ていただいて、よく確認をさせていただきたいというふうに思いますけれども、最後にこの点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 この文書がどういうものであるのか、私初めて見ましたし、よく認識をしておりません。したがって、これに対するコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 銀行は銀行の立場でいろいろ今考えていると思います。しかし、この問題をやはり解決に向かわしめなければいけないという思いは、これは銀行部門の皆さん方、トップの方々、そういう意味での問題意識は共有をしてくれているというふうに確信をしております。ぜひとも、意見交換をしながら、しかし立場は当然違うわけですから、意見を闘わせながら、しかし日本経済のためにしっかりと、我々でもやっていきたいし、銀行にもやっていただきたいと思っております。
古川委員 ぜひ、大臣だけじゃなくて我々の委員会でもこれは、委員長、銀行の皆さんとも意見交換をさせていただくような機会をつくっていただきたいと最後にお願いをしまして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
小坂委員長 次に、小泉俊明君。
小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。
 まず最初に、先ほど古川委員の質問に対しまして塩川大臣が、今の時代は変化の時代である、対応力が一番大切であるということをさっきお話しされました。確かにそのとおりだとは思うんですが、私が考える政治というものは、特殊な能力ある方はどんな時代であってもこれは対応はできると思います。しかし、九七、八%、私も含めましてほとんどの普通の能力しかない人たちが、まじめに一生懸命努力すれば何とか生活をしていける、結婚して子供を持って家を持てるんだ、それが私は政治だと思うわけであります。
 ただ、今の変化の時代と申しましても、やはり私は、今の変化は明治以来の大変革期であると思います。これは私も含めまして、普通の能力ではなかなか対応できないほど急激な変化だと思うわけであります。ですからこそ政治というものは、変化の方向とかあるべき姿とかビジョンとかを明確に今こそ示すことが、私はこれは政治家の今求められている役割だと思うんですが、冒頭、これはちょっと質疑通告していないのですが、先ほどの先生の御答弁に関連しまして、大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 変化の時代が起こります前に、一九八〇年代はどんなことを言ったかといいましたら、産業界は挙げて、政府の干渉から外してくれ、規制緩和だと。今でも言っておりますがね。したがいまして、金融機関の指導というものも、実際は一九九〇年ごろ、いわゆるバブル崩壊の直前に全部規制を外しちゃったんですね。これは皆さんも御存じのとおりだと思っております。
 でございますから、今は金融機関を指導するだとか、あるいは誘導するということはない。けれども、過去に組んだ護送船団的感覚、安易な運営ですね、この護送船団的な仕組みだけは残しておいて、法律的な仕組みは全部切っちゃった、こういうことです。一般産業界においてもそうでございまして、指導とかあるいは誘導とか、それから補助金でインセンティブつけて誘導するというようなことは全部なくなってきたんですね。
 そこへもってきて技術革新がぱんと来たんです。先生御存じのとおり、一九九〇年から九三年ごろまでの間、物すごい技術革新が、軍事技術が民間へ放出された。この対応に日本の経営者はようついていかなかったんです。これにぼんやりしておったんです。その後遺症が今日来ているんです。ですから、そのとき政府がこうせいああせいと言えるようなそういう仕組みに産業と政府の仕組みを、それはいかぬからといって外してしまったんです。例えば、コンピューターにしましても、一九九五年まで依然として日本の大企業がスーパーコンピューターだ、そんなことをやっていた。こんな古臭いことをやっておって、時代の対応におくれた。それがここへ来ておる。
 だから、私は、変化の時代に対応できなかった、そこが一番の欠点だと。今それに気がついて、産業界にしても学界にしてもすべて、世間がこれはならぬというので改革への弾みをしましたから、だから私はこれから日本はうんとようなってくると。ただ、おくれているのは何か。行政なんですね。これは抵抗勢力がおってなかなかできない、ここが問題なんだということであります。
小泉(俊)委員 それでは通告どおり質問に移らせていただきます。
 閉会中に私、実は、数限りないたくさんの経済団体、そして企業経営者、金融機関の経営者を含めて、融資担当者、いろいろ話を聞かせていただきました。
 その中で、やはり今の企業経営者、そして中小企業の経営者、国民も含めて、どうも竹中大臣含め、あと小泉総理に対しても不安を実は持っている、これがわかったわけであります。その中で、その不安をストレートにちょっと御質問させていただきたいと思います。
 竹中大臣、経済、金融という二つの重大な職務を担当する大臣になったわけでありますが、金融担当大臣就任直後に株価が大きく下落し、竹中ショックとも言われました。これは、竹中大臣に対して国民や市場が二つ、まず大きな不安を持っているからではないか、私はこう思うわけであります。
 その中で、まず一つの不安でありますが、竹中大臣が国民から選ばれた政治家ではなく、学者から大臣になられたということであります。これは何かといいますと、まず、政治家の場合は選挙がありますので何か失敗すれば落とされるわけでありますが、大臣の場合は、もし経済運営に失敗をしても学者に戻れば済んでしまうし、国民が責任を問うことができないのじゃないか。また、閣内、そしてまた経済財政諮問会議などでいろいろな交渉をするわけでありますが、どうしても政治家じゃないと腰が引けるのじゃないか、そういった不安を国民が持っているわけでありますね。
 しかし、大臣というのは明らかに政治の最高ポストですよね。ですから、これは通常、マスコミ等では政治家はいろいろ言われておりますが、やはり政治家、この激烈な選挙を上がってくる人たちは全員、実は、国家をよくしたい、国民の生活をよくしたい、そして子供たちにすばらしい未来を残したいという、その夢を必ず持っているわけであります。
 そういった中で、かつて、大久保利通も、大久保さんも犬養さんも原さんも、高橋是清さん、そして石井紘基さんもああいう形になったわけでありますが、やはり大臣をやるためには、私は気構えと覚悟が必要だと思うんですね。
 それについて、竹中大臣の、どういう思いで大臣をお受けになられたのか、その心構え、そしてまた、今現在大臣をやっている覚悟をぜひとも披瀝していただけますでしょうか。
竹中国務大臣 一年半前に、小泉総理から、入閣して一緒に仕事をしてくれと言われましたときに、これはやはり私自身、正直言って驚きましたですね。これは大変なことであるなというふうに思いました。今回、二つの仕事をやれと言われたときも、これまた二重の驚きでございました。
 御指摘のように、国会議員でない者が大臣をやるというのは、これは幾つかの難しい問題があるというふうに思います。その点を今、小泉総理、さらには先輩の塩川大臣、皆さんが補って支えてくださっているわけでありますが、私としては、小泉総理そして小泉内閣はこの日本が悩んできた問題を必ずや解決できる、その歴史的な仕事をする政権であるというふうに思っております。非力ではありますが、その末席で何らかの形のお手伝いをしたいというふうに純粋に思いました。
 私としては、むしろ大変、自分が望んできた学者の道を外れることによって、私自身はそれなりの人生の中で予想もしなかったような大きなリスクを負うわけでございますけれども、しかし、自分の若干なりとも専門的な知見が生かされるのであるならば、これはやはり私自身が生まれた国のために尽くしたい、そのように純粋に思ってこの仕事に取り組んでいる次第でございます。
小泉(俊)委員 竹中大臣の大臣をお受けになられたその勇気を、私は高く実は評価しているわけであります。
 ただ、もう一つ、いろいろな方々とお話をしますと、大臣に対するもう一つの不安が、竹中大臣はミスター・アメリカンスタンダードではないか。新聞などによりますとアメリカの代理人なんて書かれているわけですね。しかし、これは、なぜこういうことが起きるかといいますと、大臣のまず政治の経歴、身を置いた日が浅いために、大臣が一体どういう考えなのか、どういう基本的姿勢、スタンスをお持ちだということが国民にわからないんですね。私たちもわかりません。
 この辺について、このような見方をされていることについて、大臣のみずからの基本的な姿勢というか所見をお述べいただけますでしょうか。
竹中国務大臣 小泉委員御指摘のような見方がある、かつ、一部の人たちがかなりな悪意を持ってそういうことを吹聴しているということも十分に承知をしております。
 御指摘のように、そういう意味では、別の世界からぱっと来たものですから、そういう、なかなかお話しする機会もない。経済学者としては、やはり学者としての話し方で、こういうときはこうあるべきだというような議論を当然しますから、それはいわゆる経済学的なにおいといいますか、それがともすればアメリカのにおいというようなものを感じさせた面があるかもしれません。
 しかし、私自身は、今週の東洋経済に私の生い立ちについてもいろいろな特集があるようでありますけれども、和歌山市の商売人の息子として育ちまして、非常に日本の中で、私自身の父親を見ながら、これだけ日本の、私の父親は別に特別な教育を受けたわけではありませんけれども、黙々と商売に励んできた人間でありますが、父親、母親がこれだけ一生懸命やっているのに、なかなかやはり豊かになれない、これは一体どうしてなんだろうか、日本人、これだけ頑張っているのに、もっと豊かになれるはずだ、特にアメリカに留学したときに、日本人はもっともっと豊かになれるはずだ、この日本を本当によくしたいというふうに素直に思った次第でございます。
 アメリカに生活した経験、これはいろいろな経験があるかもしれませんが、私は、アメリカのよさも、それ以上にアメリカの問題点も、一般の方以上によく認識しているつもりでございます。
 したがって、日本の潜在力を発揮するためにはどのようにしたらよいのかということを常に考えてきたわけでございまして、一つの国がすぐれていて一つの国が劣っているなどということはあり得ません。どの国にも、どの社会にもいいところと悪いところがあるというふうに思っております。それは、どの人間にもよいところと悪いところがあるということと似ていると私は思っております。
 そういう誤解を受けませんように注意はしているつもりでありますけれども、先ほど申し上げましたように、一部そういうふうに吹聴している節もございますので、より注意はしたいと思います。
小泉(俊)委員 これにも関連いたしまして、ちょっと具体的な案件をお話しさせていただきますけれども、今回閉会中にまたいろいろな方とお話しいたしまして、いまだにちまたで結構話題になっているのが実は長銀の譲渡問題なんであります。
 この点につきましてちょっと確認させていただきますが、まず、長銀の処理にかかりました公的資金の総額と譲渡直前の長銀の資産額、そしてまた譲渡金額について、念のためにもう一度確認させていただけますでしょうか、大臣。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 旧長銀の破綻処理に当たって預金保険機構が行った資金援助等の額は、金銭贈与等が三兆七千三十五億円であります。その内訳は、金銭贈与が三兆二千三百五十億円、そして、損失補てんが四千六百八十五億円であります。また、不適資産の買い取りについてでありますが、これが七千百二十三億円となっております。
 また、もう一つのお尋ねの譲渡直前の長銀の資産額は、長銀譲渡、これは平成十二年三月一日でありますが、この直前の平成十二年二月二十九日現在の確定基準日貸借対照表によれば、資産の部における貸出金は約七兆八千億円となっております。
小泉(俊)委員 譲渡金額についてはどうなっていますでしょうか。
伊藤副大臣 旧長銀の譲渡に際してニュー・LTCB・パートナーズ社が預金保険機構に支払った旧長銀普通株式約二十五億株の買い取り額は、十億円となっております。
小泉(俊)委員 今お答えいただきましたように、約八兆円近い譲渡前の資産があったわけであります。これを十億円で譲渡した。やはりこの辺に国民一般が大きな不信感と不安感を持っているというのが現実であります。
 ただ、この譲渡は前の内閣でありますし、大臣も宮澤大臣そして柳澤大臣のときに行われたわけでありますが、今この時点で、一連の長銀の処理に当たっての譲渡に関しましてどういう評価をされているか、塩川大臣と竹中大臣、御両名にお伺いさせていただけますか。
谷口副大臣 小泉委員のお尋ねでございますが、長銀問題は、平成十年当時に与野党のさまざまな議論があり、その結果、金融再生法のもとで特別公的管理の開始決定が行われたわけであります。
 長銀の譲渡先につきましては、金融再生委員会において、金融システムの安定、また費用の最小化の観点から総合的に判断をいたしまして、米国のリップルウッド社が中心となって設立をいたしましたニュー・LTCB・パートナーズを最優先交渉先として決定したものであります。
 また、瑕疵担保条項につきましては、各譲渡候補先が十分な二次ロス対策を求めてきたということがあり、速やかな譲渡を実現し、当時この資産がどんどん劣化しておるというような状況もありましたので国民負担を抑制するという観点から、不可欠な二次ロス対策として設けたものであります。
 評価といたしましては、当時の金融再生法のもとで、その枠組みの中で当局として最大限の努力をした、このように考えております。
小泉(俊)委員 二人の大臣の率直な御感想をお聞かせいただきたかったのですが。
 ただ、今そういう御答弁をいただいたんですが、実は、長銀の本店がありますね、あれだけでも十億で買えるものではありませんよ。明らかに、八兆円の資産額のものを十億で売ったと。
 政府は確かにそういうふうに御答弁されるかもわかりませんが、やはり国民は、あの処理に関してはかなり今も根が深く不信感を実は抱いている。今回不良債権の処理とか銀行のいろいろな処理をするに当たっての不信感は、実はそこに根づいているということが、私、かなりあると思います。
 竹中大臣、今、今回のいろいろな対策で、不良債権処理の加速と銀行に対する公的資金の投入とか今後あると思うわけでありますが、この長銀の処理のような、国民からすればこれは悪夢なんですよ、こういったことというのは起こる危険性はないと考えていいんですか、大臣。
竹中国務大臣 これは法律の枠組みにのっとってその手続を行ったという点は、今副大臣が答弁したとおりだというふうに思いますが、事後的にさまざまな思いをさまざまな方々が持ったということは事実なのだと思います。
 なぜあのようなことになったかということを踏まえて考えますと、時間とともにどんどん資産が劣化していったという非常に重要な点があったかと思います。それと、情報の開示が十分になされなかったことによって、それがまたさらに内容を悪くしていったという点があったかと思います。
 実は、そういう点もあったということを踏まえて、資産の査定をより厳格にして、ガバナンスをしっかりと発揮してもらいたい、それが今回の再生プログラムの思いにつながっております。
 また同時に、まさしく今委員御指摘の点は、特定のグループの人たちだけが利益を結果的にこうむるということがないように、かつ、日本の貴重な資源が国民のために生かされるような再生の仕組みをやはりしっかりと定着させていくことだというふうに思っております。
 今回の議論されております再生の仕組みも、そういうような観点から、国民経済に資するような仕組みにしていくことが重要であるというふうに思っております。
小泉(俊)委員 また、九七年以降、いわゆる外資のハゲタカファンドと言われるところが、簿価で大体三十兆円の不良債権を取得した。それも、まず三%とか五%とか、一〇%以下と言われているわけですね。これで膨大な利益を上げて、脱税でかなり摘発されているところもあるわけですね。
 ですから、今回の不良債権処理の加速によって、またこういったハゲタカファンドのえじきになるんじゃないか、こういった思いも、国民が非常に危惧を抱いているところでありますが、竹中大臣、いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 今の御答弁とダブりますけれども、これは、我々、国民生活を豊かにするためにこうした資源がさらに有効に活用されていくようにするというのが、やはり不良債権処理の重要なポイントであるというふうに思っております。
 今申し上げた資産査定等々の三点を踏まえて我々としては対策を取りまとめた。その中に、企業再生の仕組みも入れた。こうした取り組みを実施することによって不良債権問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えていきたい。
 繰り返しになりますけれども、やはり今この不良債権問題、企業から見ると過重な債務の問題等々で貴重な経営資源が有効に活用されていないところを解きほぐして、これが国民経済のために生かされるようにしていくことである、この点がやはり政策の最終的なねらいであるというふうに位置づけております。
小泉(俊)委員 次に移りますが、先ほど古川委員の方からも指摘があったようでありますが、竹中大臣の指導というか、主宰されている不良債権処理問題PT、プロジェクトチームでありますが、このプロジェクトチームの法的な位置づけというものをお示しいただけますでしょうか、大臣。
竹中国務大臣 これは、金融担当大臣を中心とした私的な懇談会であるということになろうかと思います。
小泉(俊)委員 私的懇談会となりますと、これは法的根拠というのはどこになりますか。単なる大臣の相談する機関みたいなものなんですか、個人的な。
竹中国務大臣 これは、もちろん、何かを決定する機関ではございませんし、何らかの権限を与えられた機関でもございません。先ほども申し上げましたように、メンバーは、私と副大臣、それと金融庁の幹部、民間人は、金融庁の顧問としていろいろアドバイスをしてくれる立場でございますので、そういうアドバイスをしてくれる立場の方々に集まってもらって議論をしていただくというのが目的であります。
小泉(俊)委員 今、民間のメンバーは金融庁の顧問として参加していただいているというお話でありますが、このメンバーの中に木村剛氏が入っているわけでありますね。
 この点についてちょっとお伺いしたいんですが、木村氏の本業というのは不良債権処理関係のビジネスですよね。これは、不良債権が加速すればするほど商売が繁盛するような関係にあるんじゃないか。またもう一つ、金融コンサルタントもたしかやられておりますので、私は、これはいろいろな意味でインサイダーの危険もあると思うんですが、この辺に対する法的な防御、そういったネットというのはどうなっているんでしょうか、大臣。
竹中国務大臣 メンバーである木村氏は、金融のコンサルティングを仕事としていらっしゃいます。他の方々は、財団法人の理事長であるとか大学の教授であるとか公認会計士であるとか、それぞれの専門性を生かして貢献をしていただいております。
 先ほど申し上げましたように、PTのメンバーは、金融庁設置法に基づく顧問でございます。この顧問の立場は、実は非常勤の公務員に該当して、国家公務員法上の守秘義務が課せられているということでございますので、これは厳正に守られているというふうに思っております。
 いずれにせよ、このプロジェクトチームに参加するメンバーは、そういったさまざまな疑念を持たれることのないよう法令遵守の特段の配慮を行うべきでありまして、その趣旨を徹底しているつもりでありますし、皆さんそのように行動をしておられるというふうに認識しております。
小泉(俊)委員 ぜひともそういう守秘義務等の趣旨を徹底するようにメンバーにもう一度、大臣、徹底していただきますよう、よろしくお願いをいたします。
 また、経済四団体初め、先ほどもお話しいたしましたいろいろな会合に出ましたところ、今度は、小泉総理自身に三つの大きな不安があるんじゃないかということを、いろいろなところでお話を聞かせていただきました。本来、政治というのは、国民に夢と希望を与えるものでなければならないわけでありますが、逆に、どうも国民に不安を与えてしまっているわけであります。
 この点についてちょっとお尋ねいたしますが、まず第一の不安というのは、小泉総理自身が経済音痴なのではないかと。これは、私が言っている言葉ではなくて、数多くの企業経営者の方たちとかが皆さん今おっしゃい始めたんですね。
 これはなぜかといいますと、就任後一年六カ月たつわけでありますが、実体経済がどんどん悪化しているわけですね。失業も倒産も自殺も、減るどころかふえている。また、特に問題なのは、新卒の卒業者の就職率が落ちてきているんですね。特に、景気の先行指標と言われます株価は、森内閣で一万四千円ありましたものが、最悪の場合は八千二百円台、きょうは九千円台ぐらいまで戻ったみたいですが。これは国家予算の一・五倍から二倍近い、百三十兆円から百五十兆円という国富が失われている。実は、ことしの年末から来年の三月にかけまして、ほとんど企業経営者の方とサラリーマンの方たちは、本当に戦々恐々としている、これが現実であります。
 しかし、この前の、今国会の冒頭の小泉総理の代表質問に対する答弁を聞いておりましても、相変わらず、改革、改革しか叫ばないんですね、かけ声で。それで、難しい政治課題というのは審議会等に全部丸投げをする、リーダーシップを全然示さない。そして、ようやく一年半たって出てきたのが、今回の総合対策というわけでありますね。
 ただ、この一年六カ月間でわかったことは、小泉総理というのは、佐藤一斎などの陽明学は非常に詳しい、これは造詣が深いのはわかるんですが、経済自体に関しては、かなり本当に経済音痴なんじゃないか、こういった話が今非常にあるわけであります。
 この点につきまして、総理のそばで現実に経済問題に携わられております塩川大臣と竹中大臣に、率直な御感想をお聞かせいただけますでしょうか。
竹中国務大臣 小泉総理のそばで、いろいろ経済の問題を担当させていただいて、議論する機会は多うございます。
 このことはぜひ明確に申し上げておきたいと思いますが、小泉総理は、この前身である大蔵委員会で、大変長く活躍してこられたというふうにお伺いしております。委員長もやられたと。小泉総理は、経済の枠組みといいますか、特にマクロ的な枠組み等々に関して極めて深い造詣を持っておられて、さまざまな対応策等々について位置づけも申し上げると、これも本当によく、のみ込みが大変早いし深く理解しておられるというふうに、私は、そばで働いている人間として痛感しております。
 しかし、総理として、当然のことながら、外交を担当しさまざまな政策を担当する中で、それぞれの細部については、これは担当大臣が責任を持ってやるべきだと。私は、これはリーダーのあるべき実に立派な姿であるというふうに思っております。
 経済が悪化したというのは事実でございますが、株価の悪化にしましても、どの時点をとるかによりますけれども、実は世界じゅうが悪化している。むしろ、ことし最初からの株価の悪化をとりますと、日本は最も下落率が低い国であって、ニューヨークの方が下がっているし、ドイツはもっと下がっている。そういう状況の中で、やはり経済の議論はフェアになされなければいけないのではないかなというふうに思っております。
 また、丸投げ論というのは新聞に確かに載っておりますけれども、今回の私の金融再生プログラムをつくるに当たっても、これは事実と全く反するというふうに思っております。基本的な考え方を御相談した上で、私の方でいろいろやる過程でも総理からは毎日、その基本方針でいくようにと、非常に示唆に富んだ激励、御指示がありましたし、党の方とのお話し合いについても、総理が道筋をつけてくれました。また、閣僚懇で、これは内閣全体の問題であるというふうに、決して金融庁や竹中大臣らの問題ではない、全内閣を挙げて取り組むようにというふうに御指示がありまして、実は、それが一つの引き金となって、内閣を挙げて産業再生機構をつくろうということにもつながってまいりました。
 その意味では、私は、総理のリーダーシップというものを高く、大変尊敬申し上げておりますし、信頼申し上げております。
小泉(俊)委員 塩川大臣も、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 今竹中大臣が答えました内容とほぼ同様でございまして、小泉総理も、経済は十分に自分で鍛錬もし、勉強しておりますしいたしますので、正確に行動しておると思っております。
 ただ、今、日本の国は、すべてが法律によって規制されております、行政の隅々まで。したがいまして、スピードの問題を盛んにおっしゃいますけれども、何か一つ変えようとしましたら、全部法律にかかわってくることで、そのことは国会の審議を経なければならない。そこに時間を要するということも理解していただきたいと思っております。
小泉(俊)委員 その次の、小泉総理に対する三つの不安のうち第二の不安が、これは先ほど竹中大臣もお答えになりましたが、小泉総理は、大蔵委員会に長く身を置きました。その関係で、どうもこれは財務省の言いなりなんじゃないかというような指摘が、やはりいろいろなところでされるわけであります。この点について、三つちょっと具体的にお話を聞きますが、まず小泉改革の目的が何なのかということであります。
 日本は、敗戦によりまして、国力の源泉というのは経済力だけになったわけでありますね。特に、資源もなく、食料を年間六兆、エネルギーを七兆円も輸入しているんですね。経済がもしだめになれば、餓死者が出たり、国民経済が一遍で崩壊する危険を持っているというのが、この日本の国だと思います。それゆえ、何といいましても、経済力を高め経済の活性化を図ること、これが日本の政治の最大の問題であります。これこそが政策のすべての基本を貫くものでなければならないと思うわけであります。
 しかし、これは先ほどお話ししましたが、どうも小泉内閣は、実体経済がどんどん悪化しているにもかかわらず、この実体経済を無視した歳出削減と増税と国民負担増。例えば、今議論だけでありますが、政府税調の答申等、あれを検証しますと、どうも全部やると七兆円の実質増税ですよね。まさに、結果的にどうも日本経済を収縮させるような政策をとっているとしか私には思えないわけであります。
 私は、こういったことから考えて、小泉内閣の改革の目的というのは財政均衡至上主義、そしてまた財政再建だけなのではないかとどうしても思わざるを得ないんですが、竹中大臣、いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 ぜひ御理解賜りたいのは、小泉内閣のもとで経済財政諮問会議がさまざまな活動を重ねてまいりまして、その中で、財政とマクロ経済の間の整合性を保つためのこれまでになかったようなチェック機能がこの内閣府にあるということでございます。この経済財政諮問会議の議長は、総理自身でございます。
 したがいまして、経済の活性化が重要であるという委員の御指摘は、私たちも全くそのとおりだと思っております。歳出を効率化させて、歳出がこのまま膨らんでいきますと国債残高が無限大まで拡大して、それこそ日本の経済が大変なことになりかねないという危機意識のもとで、マクロ経済と財政の非常に狭い道を今探ろうとしているわけでございます。
 財政についてはきっちりとしなければいけないところもありますけれども、同時に、マクロ経済が安定的に推移できるように、その中で財政も健全化していけるようにということを、「改革と展望」の中でその狭い道を示しているつもりであります。これの今年度の改定ももう間もなく行う予定にしておりますので、来年度、さまざまな負担の増加というものも確かにございます、それを踏まえた上でマクロ経済がどのようになっていくのか、そのマクロ経済が失速しないようにするためにはどのような運営が必要かということも踏まえて、きっちりとした議論ができる体制になっているということをぜひ御理解賜りたいと思います。
小泉(俊)委員 それでは、小泉総理は常に三十兆円枠というのに非常に固執していますね。しかし、これは三十兆円になろうと、例えば三十五兆円だろうと、これほど膨大な財政赤字のもとでは赤字を減らす効果というのはほとんどないわけですよね。それどころか、私は、これに固執することによって機動的な政治的な政策がとれなくて、かえって日本経済を崩壊に導く危険が大きいのではないかと思っているわけであります。
 三十兆円枠というのをお考えになられたのはだれかわかりませんが、どうもこれは、私は、中国の古典の列子に出てくる朝三暮四そのものではないか。御存じのように、猿をいっぱい飼っている男が、貧乏になって猿を飼えなくなりましたので、猿のえさを朝三つ、夕方四つにするぞと言いましたら大騒ぎしたと。では、朝四つ、夕方三つならどうだと言ったら、猿は喜んで、丸め込んだわけですね。
 どうもこれは、実質が全く変わらないのに、数字のトリックを使って国民を丸め込んでいるのがこの三十兆円枠なんじゃないかと私は思うんです。特に、米ソ冷戦の終了によって、政策を質的に転換しなければ絶対問題は解決できないんですね。それを数量的な違いでどうもごまかしているとしか思えないんですが、この点について、なぜ小泉総理がこれほどに三十兆円枠に固執するのか、これを、そばにいらっしゃる竹中大臣、そして塩川大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
塩川国務大臣 竹中、いやいや、小泉政権でございます。
 小泉さんにお答えいたします。
 小泉政権が発足しましたときに、三十兆円ということを内閣の一つの方針にしようということを決めました。そして、その当時、閣議で総理が言いましたのは、こういう縛りをして一つの目標を立てないと、予算の編成、財政の運営についてけじめがつかないんだ、こう言った。その意味で三十兆円ということを堅持しておるというところでございました。
 そして、たしか五月の末ごろだったかな、六月だったかと思うんですが、去年のことですよ、民主党の鳩山代表が、三十兆円というのならば、それでも甘いんじゃないか、今、国債の発行残高が二十八兆幾らで、一兆七千億円のげす板があいておるじゃないか、だからして法律で縛れということをおっしゃったことがありまして、法律で縛ると運営ができなくなるからという問答があった。それほど、その当時はやはり財政のいわゆる規律を、財政再建というよりも規律をやかましく言った時代でございますので、それでやりました。
 そのおかげで、十四年度の予算編成に際しましてもその効果が出てまいりましたし、現在、十五年度予算編成に当たりましても、三十兆円というこのいわゆるシンボリックな方針が徹底してきておりまして、それがやはり予算編成上に相当効果がある。予算の節減というよりも、予算の効率化をどう考えるかというときの一つの反省の柱にしておる、こういうことでございますので、三十兆円ということは、その意味において非常に重大な政治的意味があったと私は思っております。
小泉(俊)委員 ただ、大臣、状況がどんどんどんどん悪化しておりまして、君子豹変し、大人は虎変すといいますよね。やはり状況の変化に応じ、過去、一年六カ月前は意味があっても、現状においてこれに固執していることは私は政治家としては望ましくないと思うのでありますが、大臣、いかがでございましょうか。現状でお考えいただけますか。
塩川国務大臣 何も初めに三十兆円ありきというのが財政の運営をする責任者のことではございません。でございますから、それは、いろいろと変化は私たちも認識していかざるを得ないと思いますけれども、だからといって、君子豹変する必要があるとおっしゃいますけれども、それをやっていたら、朝令暮改だといって怒られちゃうんですね。
 ですから、それは何でもコインの裏表の話になってまいりまして、そこで大事なことは、その認識に立ってどのように将来を判断するか、見通しをどう見るかということが一つですし、それからもう一つは、現時点に立って、何か有効な対策を打って、変更しなくてもそれを乗り切っていけるのかという対策を立てるということも必要だろうと思いまして、私たちはその二つの方法で現在考慮しておるというところでございますが、基本となりますのは、財政の節度をきちっと守っていくことにあるということでございます。
小泉(俊)委員 実は、今回の総合対策の中に雇用対策等いろいろありますが、これは三十兆円枠にこだわっていてできるんでしょうか、塩川大臣。この点について。
塩川国務大臣 雇用対策とか中小企業対策だ、福祉だとかいろいろと言います。しかし、先ほど古川さんの答えに言っていましたように、予算がどのように使われておるのかということの実態をきちっとつかんで、それではこういうふうな対策で必要なんだ、あるいはここにもう少し資金の配分を回すべきであるとかいうことを考えないかぬので、そこのいわゆる調査といいましょうか調整というものが従来は非常におろそかにされておったんです。現在、それを一生懸命やっておるところでございまして、その結果を見まして、雇用対策に欠陥が起こらないように十分な措置を講じたいと思っております。
小泉(俊)委員 実体の経済は、先ほどの党首討論でも、実は自殺者の問題とか、鳩山代表が小泉総理に質問したわけであります。
 これは私、二年四カ月前からこれをずっと言っているんですが、実は、四年連続三万三千人を超える自殺者であります。これは、米国テロの十倍の人たちが毎年毎年この国で亡くなっております。一日九十人ですよね、三万人といいますと。
 また、倒産も六十社だと。毎日六十社ですね。昨年、年間二万社を超えているわけでありますね。いろいろな統計等によりますと、これによる被害が、まず失業が二十万。二万社が倒産することによって二十万。そしてまた、家族を入れますと、倒産被害は八十万人と言われているわけですね。
 今こうやって委員会をやっているときにも刻々と、そういうときでありまして、その段階で、やはりこの霞が関ないしは永田町の理論と、それほどの余裕を持った議論をしていていいのかというのが、実は私は非常に強い不満と危機感を持っているわけであります。
 ですから、やはり現実の実態の、非常な今、本当に修羅のような状態に置かれている方たちが日本の中にいるということをぜひとも大臣、もう少し御認識いただいて、そういった政策を早急にやっていただきたいと思う次第であります。
 また、もう一個、いろいろな方々とお話ししますと、小泉内閣というのは橋本内閣と一緒じゃないかと。あのときは、橋本内閣のときは、日本経済がバブル崩壊から立ち直りつつあったわけでありますが、九七年の九月に消費税を五%に値上げしまして、また同年十一月に、たった一年で凍結しましたが財政再建を目的とする財政構造改革法を成立させまして、これでまた日本経済が右下のベクトルに入っていったわけでありますね。どうもこれは、小泉内閣を株価だけで見ましても、全く橋本内閣と一緒なんですね。このままトレースすると、三月に内閣がつぶれるんじゃないかというほど、実は非常に軌を一にしております。
 特に、アメリカなんかでも、当時、フーバー橋本と言われたわけですね。不況に増税で立ち向かって失敗したフーバー大統領をもじったわけでありますが、今、フーバー小泉と呼ばれているとも聞いておりますけれども、この点については大臣、いかがでございましょうか。これは竹中大臣かな。
竹中国務大臣 九七年から九八年にかけて、経済が非常に悪くなった。我々にとっても大変教訓とすべき幾つかの問題が確かにあるのだと思います。ただ、あの当時と比べて、違う点をあえて申し上げるとすれば、これは、当時、不良債権に関する情報の開示が全く進んでいなかった。例えば、財政だけの問題でありましたら、財政を引き締めただけで生じた問題でありましたら、財政をもとに戻せば戻ったはずであります。ところが、本質的には当時はやはり金融の問題がベースにあって、それに対して財政が一つのきっかけになったというのが私は正しい認識であろうかと思います。
 その意味でいいますと、金融の問題に関しましては、今回の再生プログラムでぜひきちっと、より正しい情報を得て、より正しい、ソリッドな、しっかりとした方向に導いていこうと思っておりますので、そうした点については、当時と単純に比較できない問題はあろうかと思います。
 同時に、先ほども申し上げましたように、財政は経済に影響を与えます、マクロ経済はまた財政に影響を与えます。そうした点について、総合的に経済財政諮問会議で、「改革と展望」の枠組みの中でチェックをして、しっかりと総合的に見ていくという仕組みを持っておりますので、いわゆる経済が過度に失速することがないように、しかし財政の中長期的な健全化の道を踏み外さないように、しっかりと運営していく必要があるというふうに思っております。
小泉(俊)委員 次に移ります。
 また、いろいろ国民が不安に思っている中で、第三の不安が、皆さん必ず話をするのが、総理大臣やまた各大臣が、非常に現状認識が現実と大きくずれているんじゃないか。どうも、テレビで大臣の発言とか聞いていたり、政府の発表と、自分たちが実感しているあれが大きく異なると。
 先日も商工会議所の大会に出ていったわけでありますが、必ず皆さんが引き合いに出すのが、月例報告であります。十月の経済月例報告、「引き続き一部に緩やかな持ち直しの動きがみられる」、これを必ず引き合いに出されます。だけれども、こんな状態じゃないんだという話を必ず皆さんしゃべられるわけですよね。これは私は前も委員会で一回やったことがあるんですが、何で大臣や政府の発表の認識が実際の現状からずれるんだろうか。これは、実は大きな原因が経済統計にあると私は思っています。
 経済統計は、御案内のように、QE初めさまざまなものが、三カ月から六カ月おくれて発表になりますね。ですから、この場で発表されるのは、三カ月前の事実とかそういったものが実は委員会とか政府の発表として出されていて、ところが、現実の経営をやっている方たちは今現在の実態を肌で感じておりますので、ですから、ここにずれがあるんじゃないかと思うわけであります。
 その意味で、やはりまずひとつ、経済統計の精度を高めるとともに、スピードアップをしっかり図っていかなければならない、これが実は現状を正確に認識する意味では非常に大きなウエートを占めていると私は思うのですが、これは、内閣府を代表されます竹中大臣、いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 御指摘の点は、これは大変重要な問題であるというふうに思っております。
 統計そのものは、やはり手続にのっとってきちっとつくっていかなければいけない面がございます。統計は統計として、きっちりと継続性を持って分析しなければいけないという面は、これはこれでやはり重視はしていただきたいと思うのですが、同時に、まさに町の実感のようなものも入れていくことが大事だと思います。
 御指摘の早くという点に関しましては、今回、GDP統計が、前回と今回で一カ月弱ですけれども一気に早くなります。そういった点では、すべての統計を集約したものとしてのGDP統計でありますから、これはやはり大きな進歩なのではないかなというふうに思っております。他の統計についても引き続き努力をするつもりです。
 もう一点、これは堺屋経済企画庁長官の時代から始まったものでありますけれども、景気ウオッチャーの制度というのがあります。これはまさしく、タクシーの運転手の方、それとかスナックの経営者の方、非常に生活実感に近いところで景気ウオッチャーの方を全国にお願いしていまして、それを集計するというシステムでございます。これは、統計の精度という点からはまたいろいろな御指摘もあるようでありますが、非常に早く風の流れを得るという意味では、大変重要な統計だというふうにも思っておりまして、実は、そういうものも観点に入れながら、月例の経済報告は行っているつもりでございます。しかし、こういう統計の活用に関しても、より努力をしたいと思います。
塩川国務大臣 経済が非常に不況で深刻だということは私たちも承知しておりますが、その影響が一番来ているのは、企業活動に来ておるわけですね。それは何かといいましたら、企業の仕事が変わっちゃったということ、これが一番大きいんです。いわゆるデジタルを中心とした新しい産業体制に変わったんです。それに対応した、やはり産業の構造を変えてくれなきゃならぬ。そこに、事業の切りかえから起こってくるところの失業対策とかいうのが必要になってくるわけなんでございます。
 その一端の話として、こういうことを聞いていただきたいと思うのです。
 今、国税庁が各企業全部を集計いたしまして毎年発表しておる数字で、給与の総額というのがあります。源泉徴収を受ける、あるいは報酬申告をやっておりますが、給与の総額は幾らだと御存じでしょうか、御存じだと思いますね、二百十四兆なんです。これが平成十三年度なんです。これで税金を取っているんです。二百十四兆です。その前はどうだったかといいましたら、十二年も、十一年も大体同じなんです。横ばいなんです。二百十七兆、二百十六兆、横ばいなんです。平成七年から大体同じなんです。ずっと横ばいなんです。ただ、一時期、平成十年だけ、五兆円ほどふえたという程度でして、あとは全部二百十四兆から二百十七兆というところなんですね。この六年間というもの、同じ給与所得だということ。
 そして、この間において、先ほども申しました、国民の金融資産は二百四十兆円ふえておるんです。この関係を見ましたら、個人の経済というものと、それから、現在動いておりますところの企業を中心とした日本の経済との間に相当ずれがあるということ、このずれはどこから来るのかといいましたら、やはり産業体制がいわゆるグローバリゼーション化にきちっと対応がまだとられておらないというところがある、私たちはそう認識しております。
 でございますから、今、企業を活性化して、そういう新しいいわゆる技術体系、産業体制の中に一刻も早く日本が積極的に参入してくれるように、体質の改善をやってもらうということが大事だ。そのためには、税制なりあるいは金融なりというものを積極的にやるべきなんですが、そこらがまだおくれておるということは事実でございますので、これをスピードアップしていかないかぬということになります。
小泉(俊)委員 塩川大臣には、先ほどの質問からずっとお答えいただき、ありがとうございました。今、実は経済統計のお話をさせていただいたんですが、塩川大臣から御答弁いただきましたので。
 ただ、私は、六年間ずうっと給与所得が変わっていないというお話でございましたが、これは逆に、富の偏在化が日本の中にやはり出てきたんじゃないかなと、大臣、思っております。かつては、日本というのは世界でも最も平均化した、非常に富の偏在化のない国であったわけでありますが、やはりこの激変の中でだんだんこれが崩れてきたのが、実は、実態でかなりの自殺者、企業倒産がありながらもしかし全体の給与が変わっていないというのは、その点もあることを私は大臣に御指摘させていただきたいと思います。
 ただ、また経済統計に戻りますが、竹中大臣もう一つ、企業統計。大企業等を見ますと、実は統計は性質上、当然数カ月おくれるんですね。そのかわり、当然、そのおくれていることを前提に現状をしっかり分析して未来を読むというその担当者が、実は、人事異動しないで要るんですよね。ところが、政府で聞きましたところ、この統計を読み込む方が、人事異動で二、三年ごとにかわっているんじゃないかと。
 この統計をいかに読み込むかということが極めて重要な国家運営の基本になるものですから、やはりそういった意味では、専門の部署を設ける。特に、いろいろ経済統計、五十ほどありますが、各省庁ばらばらなんですね。財務だと法人企業統計、内閣府でQEとか、一カ所でこれが集まらないわけですよ。ですから、今、こういう情報化を一元的に、集中的に管理し分析するポストというのをやはり内閣府に置くべきだと私は思うんですが、竹中大臣、いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 統計を読むということだけではございませんけれども、経済の実態把握と分析に関しては、これは実質的に一つの局がございます。そこに政策統括官がおられて、ここは、まさに御指摘のように非常にプロフェッショナルが集まっているというふうに思います。旧経済企画庁の職員でこうした分野に特に秀でた人が集まっておりますし、特に今の局長は東京大学教授の岩田一政先生においでをいただいていまして、岩田先生は大変、日本のまさにトップでございますから、その意味では大変すぐれた機能を既に持っているというふうに私は思っております。
 統計だけを読むということでは必ずしもないんでありますけれども、そうした判断、時にはヒアリングも必要でありますし、そこについては、私は、内閣府のこの経済分析機能というのは相当高いというふうに思っておりますので、それをより積極的に活用するようなことはぜひ考えていきたいと思っております。
小泉(俊)委員 次に移りますが、これも改革加速のための総合対策なんでありますが、これは何度もお話し申し上げておりますように、私は、何しろ日本の政治の最大の課題というのは、経済の活性化と景気の回復、今これこそがこの最大の政治課題なわけでありますね。
 今回、この総合対策が出てきたわけでありますが、政策というのは、何しろ一番大切なのは、理論よりも効果であります。効果がなければ絵にかいたもちですから、政策は、私はそれは妥当性がないということになると思うんですが、現在出されている、それも小泉内閣一年六カ月でこれほど政策をきちっと打ち出されて、これを推し進めていった場合、実際に日本の経済とか景気というのは回復するんでしょうか、竹中大臣。どうお考えでございますか。
竹中国務大臣 その想定された姿を描いたのが、先ほどから紹介している「改革と展望」であるというふうに思っております。不良債権処理を進める集中調整期間、この間につきましては、短期的にはさまざまな問題が起こり得ますので、これはしかし低い成長率を甘受しなければならない。しかし、それこそ総理のお言葉によれば、民間でできることは民に、地方でできることは地方にということを積み重ねて、さらに、骨太第二弾で示したようなさまざまなプログラム、この中には税制の改革しかり、構造改革特区の話しかり、今までにはない政策も織り込まれています。
 そういうことを活用することによって、日本が本来持っている成長力を発揮することができるようにする。これは、二年ないし三年後には日本の本来の成長力に復帰できるというふうにそのビジョンを描いているわけでございます。そのためにも、ぜひとも今、まさに仕掛かり中から、これから実現しようとしているさまざまな政策、これをしっかりとぜひ実施していきたいというふうに思っているところであります。
小泉(俊)委員 今回の対策を見まして、やはり柱となるのは不良債権の処理ですね。
 それではもう一度聞きますが、不良債権を処理して、なくなれば日本経済というのは回復するんでしょうか。大臣、この点についてお答えいただけますか。
竹中国務大臣 私は、実は、不良債権の処理を進めることによって日本の経済を活性化させる効果というのは、極めて大きなものがあるというふうに思っております。もちろんそれだけではなくて、イノベーションの力とか、そういうものを別途政策としてしっかりとやっていく必要があるわけでありますが。
 基本的に、今の日本の経済が抱えている最大の病理の一つは、やはりマネーがふえていかないということであろうかと思います。ベースマネーをふやしてもマネーサプライがふえない、そこに金融の仲介機能が滞っている。それをしっかりさせることによって、本当に必要なところにお金がしっかりと回るようにしていく。その意味では、金融が担っている役割というのは、私は、どの国でも極めて大きいと思います。だからこそ、どの国でも経済の調整を行うときは普通は金融政策で行うわけです。その金融の機能が非常に健全に機能できるような状況に持っていくということは、これは日本経済にとって非常に大きな効果があるというふうに考えます。
小泉(俊)委員 今、マネーがないというわけではなくて、銀行にはあふれていますね。それで皆さん国債を買っていて、お金はあるんだけれども企業に行かない。特に、九九・七%を占めます、直接金融市場から資金調達できない中小企業に回らない、ここが問題だと思うんですね。
 ただ、実は、今回の閉会中に融資担当者、そして中小企業の、お金を借りている側の担当者にもいろいろ聞きました。しかし、これはどうも、不良債権が原因でお金が借りられないんじゃないんじゃないか。例えば、銀行が貸せない理由というのは、私はずうっとこの委員会で、二年四カ月前から、最初の委員会から言っているんですが、地価がやはり継続的に下落をしているために担保価値がどんどんどんどん下落しているわけですね。ですから、例えば、現在お金を借りている会社は、増し担保を要求されても、もう出すものがないわけですね。
 この経済のバケツの底が要するに抜けているような状態、ここに歯どめをかけない限り、銀行もお金を貸すことができませんし、企業もお金を借りることができないわけですね。現実に、地価が下落し続けている関係で、昨年一年で、不良債権の処理額七兆七千億円ですが、新規で九兆九千億円もふえているわけですね。これは私は、地価の下落がこのままずっと続く限り、どんなに一生懸命不良債権処理をやってもイタチごっこになるのではないか。
 また、景気の回復で一番大切なのはGDPの六割を占める個人消費なわけでありますが、これを持っている、きょうも党首討論でも言っていたと思いますが、一千二百兆円も資産が目減りしているわけですね。例えば、住宅を五千万円で買った方が、御案内のように八割しか借りられませんから、四千万円借りるわけですね。ところが、買ったとき五千万円のものが、住宅が三分の一の値段になります。しかし、借金は三千五百万円近く残っている。ここにやはり個人消費が伸びない本当の理由がありまして、私は、不良債権の処理を進めるのであれば、それ以上に、経済のバケツであります地価の下落を下げとめる政策も同時に発動しない限り、ずうっとこのまま日本のデフレスパイラルというか経済の失速が続くんじゃないかと思っているわけでありますが、大臣、この点はいかがでございましょうか。
竹中国務大臣 基本的に、土地という資産の価格下落をとめるということは、これはこれで大変重要なことであるというふうに思っております。であるからこそ、税制改革の中にも、この土地、資産税制についてしっかりとした枠組みをつくるべきであるということを諮問会議でもずっと議論してまいりましたし、現実に政府税調においてもそのような方向での議論が進むものというふうに期待をしております。
 ただ、一方で、人口減少の中で中長期的に、利用価値の高い土地はともかくとしまして、それ以外の土地について、これを中長期的な観点からとめることはなかなか難しいかもしれないという専門家の指摘もございます。税制は税制でしっかりとやっていくというのが原則でありますけれども、一方で、しかし、土地担保にだけ頼って融資をするという銀行にも明らかに問題があるわけです。
 この点に関しては、無担保の、まさに企業の経営力、企業の収益力を担保とした新しい融資制度というのは実は定着しつつあるわけで、そういう面からの問題の解決というのも必要であろうと思いますし、現実に、それは少しずつだけれども進みつつあるのではないか、その合わせわざが必要であるというふうに思っております。
小泉(俊)委員 まだしかし現実に、戦後五十七年たちましたが、金融機関というのはずっと土地担保でやってきまして、現実にはそういう人材がないんですね。要するに、プロジェクトファイナンスみたいな、アメリカみたいな、そういう判断できる能力がある人が金融機関にいないわけですね。
 ですから、例えば日本政策投資銀行もやはり土地担保でありまして、本来であれば、一部政策投資銀行が認め始めましたが特許とか、いろいろあるわけですね、担保になるものが。例えばそういうものについて担保として認めていくような方向は、これはもちろんであります。しかし、九九%はまだやはり土地担保なんですね。これを激変できない限りは、この土地の価格の目減りをとめなければ私はやはり本当の経済の回復はないと思います。
 特に、これは実は一説によりますと、バブルのときに日本の土地総額はアメリカの土地総額の四倍だったと。今でも二倍だという指摘もあります。しかし、これは考えていただければすぐわかるんですが、日本の国土はアメリカの二十六分の一であります。特に、その二十六分の一の国土のうちの、日本は、農地まで含めて使えるのは二割しかないんですね、山岳地帯でありますから。百三十分の一です、アメリカの。ここに一億二千七百五十万人、アメリカの約半分の人口が住んで、アメリカのGDPのちょうど半分生産しているわけですね。私は、土地の生産性からいえば、単純計算すれば六十五倍近い、アメリカよりあると思っております。
 ですから、やはり土地が高過ぎるという認識も、現実としてまだお持ちの方が政策担当者の中にはあると思うんですが、私は、アメリカと日本はその点は大きく違うということを、ぜひともこれは大臣にも、どうお考えになるかを御答弁いただけますでしょうか。
塩川国務大臣 それは、おっしゃるように日本の土地の値段が非常に高い。なぜ、それでは企業がどんどんと海外へ進出していくのかということを見ましたら、その一つの要因は、土地の値段が高いということなんです。それと賃金と、それから規制がうるさい。これのために海外へ行っている。これが日本の経済にとって非常に悩みとなっています。
 ですから、逆に日本も海外から企業を呼び込めばいいんでございますけれども、その条件が逆になっておる。土地とか株とかもそうでございますが、すべて市場で値段が決定いたしますので、なかなかこの操作というのは難しい。
 ですから、我々としてできることは、規制を緩和するということと、税制においてそれだけの有利な、優位性を保障していくということ、これをやって、その地価の安定を図っていくということをやらざるを得ないということであります。
小泉(俊)委員 いずれにいたしましても、対策に土地の流動化対策がほとんど抜け落ちておりますので、この辺につきましては、やはり税制面、すべての、その点をもう一方でやらなければ、必ず、私はこの対策というのは効果がないと思いますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。
 あと、時間がありませんので、今非常にちまたで大きく問題になっておりますのが、不当な超高金利による金融業者の問題であります。これは特に、ある一社の法律事務所だけでも、何と一〇〇〇%から三〇〇〇%という会社が、やみ金が数千社以上あるという報告が来ております。
 金融庁そして警察は、このやみ金業者の実態をどの程度把握されているのか。そして、これに対する今後の取り組みについてお答えいただけますでしょうか。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 今委員御指摘のとおり、私どもも、やみ金融に対しては大変強い問題意識を持っております。こうした問題も含めて、財務局及び都道府県の監督部局に対し出資法違反の高金利貸し出しに関する苦情等の件数が増加していることは、金融庁としても把握をいたしております。財務局登録業者については、金融庁としては、出資法等の違反の疑いのある業者に対しては、説明や報告を求めるなどにより事実関係を調べ、事実が確認された場合には、法律に基づき、業務停止、登録の取り消し等、厳正に対処することといたしているところでございます。
 いずれにいたしましても、違法な金融業者への対応は、これまでも、罰則の強化といった対策や、違法事案に関する捜査当局との連携などの対応がとられてきているところでありますが、引き続き、関係当局間の連携を図りつつ、適切に対処してまいりたいと考えております。
瀬川政府参考人 携帯電話等を連絡手段とします〇九〇金融など、いわゆるやみ金融と呼ばれる違法な高金利や無登録の貸し付けについては、事業者のみならず、一般の市民にも被害が大変拡大しているという状況であります。
 貸し付け実態でございますが、一般市民には三万から五万円の少額な貸し付けを反復して行うというものが多い一方、事業者相手には一千万以上貸し付けるという例も見られるところでありまして、その金利は数百%から数千%と、出資法の法定上限金利を大きく超えているという実態であります。
 警察では、取り締まりを強化しておりまして、平成十三年は二百十事件、五百十七人を検挙しております。これは、検挙事件数、人員とも、過去十年間で最高ということになっております。
 被害状況を見ますと、検挙事件に係るものだけでも、貸付人員等は約八万人、貸付総額等は約百八十七億円に上っている、こういう実態でありまして、引き続き、強力な取り締まり等、関係機関と連携した被害防止のための活動を推進してまいることとしております。
小泉(俊)委員 いずれにしましても、今、社会不安の大きな要因の一つになっておりますので、ぜひとも関係諸機関が連携して、より徹底した調査、そして取り締まりをよろしくお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 まず、財務大臣にお伺いをしたいんですが、旧正田邸のことをお伺いいたします。
 品川区東五反田に、皇后陛下の生家、御実家、旧正田英三郎さんのお宅ですか、これが、遺族の方から十七億円に上る相続税の一部として物納されたということで、その物納された財産について、財務省の方でこれを取り壊して、そしてそれを売却するということで伺っていますけれども、その方針というのはお変わりはありませんか。
塩川国務大臣 その方針に変更はございません。
中塚委員 この家が、お役所の方としては、解体をした上で土地を売却した方が国にとって有利ということだというふうに聞いていますが、この旧正田邸、昭和八年に建てられた、また、和洋折衷住宅で設計、施工も、そういう古い建物なんですが、日本建築学会が、八〇年に、大正、昭和、戦前の主要建築をまとめた「日本近代建築総覧」というものにも登載をされていて、特に重要、注目すべきものの一つということにもなっているわけですね。
 そういった文化財的な意味合いもありますし、あともう一つは、やはり、戦後、民間からおきさきになられて、そして今、皇后陛下でいらっしゃるわけなんですけれども、私は、そういう意味で、戦後民主主義の象徴のような話だと思うんですね。その戦後民主主義の象徴のような建物について、行政の手続ということについては、方針というのは、もちろんそれは大臣が御答弁になったとおりだと思うんですけれども、そういうモニュメント的な建物に関しては、私は別の判断があってもいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。
塩川国務大臣 私たちの判断いたしましたのは、確かに、昭和八年にお建てになったときは英国風の設計であった、それが特徴である。ところが、その分よりも建て増しをした方が大きいんです、面積は。その分は戦後でございまして、建築の材料等が十分に施工者の思うているようなものがなかったようでございまして、その状態で建て増しをされた。でございますから、文化財として扱うということについてはいろいろ議論があるだろうということが一つであります。
 それからもう一つは、過去における所有者がだれであったかということをある程度意識して活用する、あるいは利用するとかいうようなことがもしあった場合、かつての所有者の方に御迷惑をかけることにもなるということもございますので、それが第二番目の問題。
 それから三番目の問題は、原況に復して、つまり更地にして売却した方がより有利であるということがいろいろな鑑定士の間から鑑定されたことでございますので、そういういろいろな客観的情勢を考慮いたしまして判断したというところでございます。
中塚委員 激動の昭和といいますか、そういう中でのシンボル的なものでもあると思うんですね。確かに財政事情が厳しいということで、一円でも高くというのは、それはもちろん財務当局としては当然の考え方だと思います。
 ただ、民間企業でも何でもそうですけれども、財務をやっている人というのは一円でもむだにしたくないわけでしょうし、今、現実問題、政府としても三十兆円の国債発行枠なんかをつけて財政の、赤字国債の発行を抑制する、借金をするのをやめようというふうなことになっていると思うんですが、ただ、経営者というのはまた別の判断があるのが民間企業でも当然の話ですし、そしてまた我が国はそういう意味では国民主権の国ですし、我々は全国民の代表として国会にいるわけで、まずは世論で、特に署名運動なんかも今展開をされているというふうにも伺っております。
 ここはひとつ、やはり大臣の御英断といいますか、例えばその建物をどういうふうに活用するのかというのはもちろんいろいろなやり方があるんだろうと思うんです。ただ、いろいろな方法はあるんだろうと思うんですが、壊してしまうというのはちょっと忍びないといいますか、何でもかんでもお金の話に結びつけてしまうというのはいかがなものかというふうに考えます。もう一度いかがでしょう。
塩川国務大臣 私が申しましたのは、ただお金のことだけではなくして、それも一つの条件になります、その方が有利だということはあります。ただ、行政はやはりそういう公正さというものを持たなければ、この方が有利だからと恣意的に解釈することもできないと思います。
 それはありますが、そのほかに、先ほど申しました二点の問題、文化財としての問題点ということがあることと、それから、以前の所有者、物納される前の所有者の方の意向といいましょうか、これをやはり我々でそれを逆手にとるというようなことがあってもいかぬし、またそれを保存するということによって完全にその意向を尊重してできるかというと、なかなかこれは難しいことでもある。そうした場合、意図せざる方向に利用されるということになった場合に、旧所有者の方に御迷惑をかける、それも私たちは非常に避けるべきことだ、そういう判断がいろいろございまして決定したということであります。
中塚委員 所有者の意図の問題というのは、私は関係ないと思うんですね。それは、所有者というか被相続人あるいは相続人が物納したものを売ってくれとか残してくれというふうな話によって行政が左右されるということは、それはおかしいと思います。ただ、そのこととは別に、政治としてどういうふうにそこを判断していくのかということがあるんだろう、その余地があるんだろうというふうに考えているわけです。
 なかなかそれは、この場ですぐお返事をいただけるような話ではないんだろうとは思いますけれども、十一月中に取り壊されるというふうに伺っておりますが、ぜひともそこはもう一度よくお考えをいただいて、何かいい活用の方法がないのかということを財務省挙げて、あるいは内閣挙げて知恵を絞っていただきたいというふうに思います。これは意見としてお伝えをしておきます。
 それで、次に、この間発表になりました、改革加速のための総合対応策ということについてお伺いをします。
 閣議決定ではなくて閣議了解ということのようですし、そのときに出された総理の談話も、首相談話というのは閣議決定が要るそうですが、内閣総理大臣の談話ということで間に「の」が入るとこれは閣議決定も要らないということでそんな形のものが出ているというふうなことなんですけれども、いろいろ漏れ伝わってくる話を聞くと、内閣とあと与党の間でかけ合い漫才というかいろいろなてんまつがありながら、完全に細部自体も決まり切っていないというふうな印象を持っておりますし、また、金融庁の方から説明をいただいてもなかなか細部のことについてはきちんとした御説明をいただけないような、そういうふうな中身になってしまっているんですが、まず、竹中大臣は、この改革加速のための総合対応策、とりわけその中でも金融再生プログラムなんですけれども、これを策定される中で金融庁とちゃんと連携をとりながらやっていらっしゃるのかどうか、いかがですか。
竹中国務大臣 基本的に、金融再生プログラムは金融庁として取りまとめたものであります。
 もちろんこれは極めて大きな方針でございますから、しかも監督当局のいわば行政権限の中での決定事項が非常に多いものですから、それを非常に前広に、幅広く議論して前広に議論するということはなかなかできない性格のものであったわけでありますけれども、基本的には、主要問題については、先ほどから申し上げておりますプロジェクトチームで主要な議題を議論いたしました。プロジェクトチームのメンバーは、私と伊藤副大臣のほかに金融庁長官、それと三局長、それと民間の有識者でございます。
 こうした点を踏まえて、これはいわば方針に対する担当大臣と金融庁長官のトップダウンの意思としてこういう大枠を今回決めました。それに基づいて今工程表という形でそれをどのように実現していくかという議論に入っている段階でございますので、その過程で細部についてもいろいろ担当部署で詰めて、より詳細な姿が描かれていくというふうに思っております。
中塚委員 詳細がおわかりの方は恐らくそのプロジェクトチームの中にはいらっしゃるんだろうと思うんですね。そうでなければなかなかこういったものは出ないんだろうというふうに思います。
 ただ、この中身を見ますと、やはり大分大胆なというか急進的なものが含まれているわけなんですけれども、これをやろうとすれば、トップダウンというふうなお話がありましたが、そのトップダウンということを徹底するんなら、余り与党の幹部に呼ばれて、何か中間報告ではないというふうにおっしゃるのかもわからないけれども、それが延期になったりするような形とかいうのはとるべきじゃないし、中身自体も私は、これの中身のよしあしは別にしても、もしこれを本当にやるんだったら、例えばバンクホリデーを一週間ぐらいばっと設定して、東証も閉めて、それからやるべきような中身なんじゃないかというふうに思うんですね。
 そのことを、大体二週間ぐらいですか、中身がぽろぽろとマスコミなんかに出るというふうなことが繰り返される、そのことがまた不安をあおるというふうなことに立ち至ってしまっているというふうに思いますけれども、その決定のプロセスということについてはいかがでしょう。
竹中国務大臣 委員からはバンクホリデーをやるほど大胆だという御評価を今いただきましたが、骨抜きであるという御評価も一方でありまして、大変多様な評価があるなというふうに改めて思うわけでございますが、私たちとしましては、バンクホリデーとかそういう性格のものではないともちろん思っております。
 資産査定を厳格にしてガバナンスを強化するということでありますから、それはそれで決算のプロセスにおいてしっかりとやっていっていただきたい、そういう内容が中心を占めていると思っております。もちろん一方で、再生のために新たな仕組みをつくるという工夫、努力もしております。
 それで、プロセスでありますけれども、先ほども申し上げましたように、これは金融庁の行政の範囲のものが大部分を占めているというふうに思います。しかしながら、これは関連の業界、借り手等々に非常に大きなインパクトをもたらす可能性もありますものですから、この問題の大きさにかんがみて、これはやはり与党の皆さんとも、また銀行の皆さんともしっかりと話をしておきたいというふうに思ったわけでございます。論点を整理して、それでいろいろな方の御意見を伺って、しかし最後は、金融庁の行政として、行政の問題として決めさせていただいた、それを閣議に報告したというのが今回のプロセスでございます。
 通常の法律事項等々とその意味ではプロセスそのものが違いまして、どういう形でそのプロセスを実現していったらよいのかというのはなかなかわかりにくい面も私たちにとってもあったわけでありますけれども、これは与党の方で非常にいろいろと工夫をして御理解してくださいまして、三幹事長、三政調会長を中心にしっかりと議論の場をつくっていただいて取りまとめに至ったということであります。
中塚委員 骨抜き批判というのは、私は、そういうふうな、今実際行われているようなプロセスというものの中で、最終的には骨抜きにならざるを得ないということだろうと思うんですね。そういう意味で骨抜きになってしまうという批判が出てくるんだろうと思うわけです。
 例えば、十月一日に、竹中大臣は会見で、金融システムに病がある状況ということをおっしゃっていますね、ペイオフとの関連で。そういうふうに御認識になっていると。またいろいろな案が出てくる中で、銀行の経営者もわいわいわいわい大騒ぎになっているということなんですから、やはりそれは与えているインパクトというのはすごい大きいわけですよ。そのプロセスについて、やはりちゃんと腰が定まっているのかどうかということ。そういったことが、今予算委員会でも出ている問責の決議の対象というふうなことだと私は思うんですね。
 いろいろとそういう発言が揺れる中で、ペイオフということについてちょっと例としてお話ししますと、ペイオフはやるべきだ、解禁するべきだというお話をずっとされていましたよね。それで、十月一日の内閣改造のときに、金融システムに病があるというふうなお話になったんですが、これは、要は、金融システムに病があるというのはずっとそういうふうに思っていらっしゃったんですか。それとも、ことしのある何月の時点で、やはり金融システムというのは病んでいるというふうにお考えになったんですか。
 柳澤大臣がおっしゃっていたことと竹中大臣のおっしゃっていたことというのが余りにも違うわけですね。そういう意味で、金融庁ともちゃんと打ち合わせてやっていらっしゃるのかというふうなお尋ねにもつながるんですけれども、いかがですか。
竹中国務大臣 この問題は、経済財政政策担当大臣のときから申し上げてきたつもりでありますけれども、これは当局がある問題でございます。当局が当局としてしっかりと判断をしていく性格のものであるということであります。
 以前私が主張してきたのは、これは、健全で競争的な金融市場においては、ペイオフというのは、どの国においてもそういうシステムがあるし、かつて日本にもそういうシステムがきちっと作用していた、そういう形が本来の形である、だからペイオフは実施すべきだということを申し上げてきたわけですが、同時に、そういったことの最終的な判断は、これは当局においてなされるべきものであるというふうに申し上げてきたつもりであります。十月一日の時点では私は金融の担当になっておりまして、まさにその当局の人間になっておりますので、これは当局として判断をしなければいけない立場になったということであろうかと思います。
 前大臣がおっしゃってきたように、これは決して危機的な、危機が起こっているような状況ではもちろんないと認識をしております。しかし、このまま放置してよいとも思っておりません。やはり解決すべき問題はそこにあるというふうに認識をしております。それが十月一日の発言でありますし、そうした問題意識を踏まえて今回の金融再生プログラムに至っているわけです。
中塚委員 ということは、経済財政担当大臣のときは、横目でにらみながら、本当はよくないんだけれども当局じゃないから言えないなというふうなお考えで、御自身が大臣におなりになったから本当のことを言ってやろうという話になったのかなというふうに今の答弁からはうかがえました。
 それで、ムーディーズなんかはこの案でも資本不足は解消されないというふうなことを言っているわけだし、竹中大臣が、今の御答弁にあったとおりで、やはり金融システムというのはなかなか問題があって、今大臣になったからやっと言えたということなんでしょうけれども、今危機があるないということとは関係なく、今においてもやはりそういう潜在的な脅威というか、自身、病がある、こういうふうにおっしゃっているんですが、それなら、まずこの金融再生プログラム云々ということよりも、早期是正措置なりなんなり発動するべきなんじゃないですか。まず、当局としておやりになるというのはそのことじゃないんでしょうか。
竹中国務大臣 その金融再生プログラムにすべてのことを、基本的な考え方に関してはすべて明記したつもりでありますけれども、基本的には資産の査定をしっかりとやっていただく、資産の査定をしっかりとやっていただくための幾つかの方法はこういうことであろうかというふうに明記させていただきました。
 その上で、まさにガバナンスでありますから、そのガバナンスの中には、早期是正措置について、これはやるべきときはこの早期是正措置をしっかりと活用して、その銀行がガバナンスを発揮できるような形にしていくというふうに明記しているわけであります。
 繰り返しますが、では、それをどのような形で具体的な金融の行政に落とし込んでいくか、以前申し上げましたように、金融の行政というのはやはり非常に緻密な実務の積み上げであるというふうに思っておりますので、その実務としてどのようなことを準備し、どのような基準で判断をして進めていくべきかということを工程表の中で、今明らかにしようとしているところであります。
中塚委員 プログラムとか工程表とか方針とか、いっぱいいろいろなものが出てきていて、いろいろなものがいっぱいあるんですが、それがどういうふうに結果になっているかというのも全然、ほとんど明らかになっていない。
 こういうプログラムが出ていても、与党の方からは了承したわけじゃないとか、今後法案になるときにまた議論をするんだとか、あるいは政府税調の会長は、不良債権処理の支援税制を来年度は見送りみたいなことが、もう活字になって躍っちゃっているわけですね。
 だから、そういうプログラムをお出しになるということは大事なことなのかもしれませんけれども、大事なことなのかもしれませんけれどもまず当局としておやりになること、大臣自身の問題意識というか、現状認識というものがそうであるならば、このプログラムよりも先におできになること、おやりになれることがあるんじゃないですかということなんです。
竹中国務大臣 行政はルールにのっとって、最終的には行政が判断するわけでありますが、ルールにのっとって、それを、そのルールをオープンにした上できちんとやっていかなければいけないと思っております。その基本的なルールといいますか考え方を今回示したわけで、その基本方針にのっとって、すぐできること、やるべきことが幾つかあると現実に考えております。それについては速やかに実行に移していきたいと思っております。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
中塚委員 何かよくわかったようなわからないようなことをおっしゃるんですけれども、まず行政の責任者としておできになることがあるんだから、まずそれをおやりになるべきですよ、それは。こういう案をつくっていろいろなところにぱっぱかぱっぱか粉をかけるよりも、先にやれることがあるわけですから、それから手をつけるというのが、それは正しい行政の責任者としての立場だろうと思います。
 その中身について、不良債権比率を半分にするとか、半分にするということが不良債権問題の正常化、不良債権問題の終結というふうなことになっているわけなんですけれども、これは一体どういうことなんですか。不良債権問題の正常化とか不良債権問題の終結というのが、すごくあいまいなような感じがするんですが。
竹中国務大臣 前回のこの委員会でも少しお話をさせていただいたかと思いますが、総理から命ぜられている不良債権問題の終結というのは一体何を意味するのか、これはいわばトータルの判断の問題だと思います。多くの方々、マーケットへの参加者、借り手等々から見て、日本の金融市場が非常に健全になった、強固なものになったというふうにトータルとして判断していただけるような状況をつくり出すことが、私たちの仕事、責務だと思っております。
 ただ、行政を進めていく上で、中間的な目標といいますか、そういうものはやはり持っておきたい。そういう目標を持つべきだと、これは参議院の方の委員会だったかもしれませんが、委員会の中でも御指摘を多々受けたというふうに思っております。そこで、一つの事実、一つのわかりやすい指標として、不良債権比率を、八%強の現状を半分程度にするというような基準を掲げたわけでございます。
 実は、これにつきましては、小泉総理、柳澤前大臣が、別の機会に、そういうことを目指したいというお話をされたこともありましたので、より厳しい資産査定の基準の中でそういう姿を目指していくというのは、行政として一つの方向であるというふうに思っております。
 これは、諸外国の例とか、例えばアメリカの格付機関等々の主張等々も勘案してはおりますけれども、我々としては、過去の行政の継続も考えて、当面、この実現を目指して、金融システムの改革に努めたいというふうに思っています。
中塚委員 それだったら、問題の正常化を図るということがまずあって、それの目安として不良債権の比率を現状の半分程度に低下させるということでなきゃおかしいわけですね。不良債権の比率を現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図ると書いてあるわけで、何でそこが半分なのか、半分になれば正常になるのか、あるいは終結するのかということをお尋ねしたわけです。
 次に行きますが、特別支援という言葉が出てきていまして、これもちょっと耳なれないというか、お初にお目にかかる言葉なんですけれども、特別支援というのが、しかも枠組みというふうな書き方になっているわけですね。この特別支援の中で、日銀特融であるとかあるいは預金保険法に基づく公的資金の投入とか検査官の常駐的派遣というふうなことが枝になって書いてあるわけなんですけれども、この特別支援というのは要は一体何なのかということと、あと、特別支援をするために今後法律をおつくりになるのかどうかということはいかがですか。
竹中国務大臣 特別支援という言葉は、御指摘のように、今回初めて使った言葉であるというふうに思います。
 ここで明らかにしたかったのは、とにかく、現状の法律、預金保険法百二条等々に基づく現状の枠組みの中で、これに基づいて、万が一にも個別の金融機関に経営難等々の問題が起きたときに、どのように金融当局としては日銀と協力してしっかりとした対応をとるのか、それによって金融面から経済の底割れを防ぐのかということを一つの姿として示したわけであります。
 そこに書かれていますように、当然のことながら、日銀の特融、日本銀行と一体となった支援が必要になります。さらに、必要が生じた場合は、現状の枠組みの中で、公的資金の投入ということも当然その選択肢に入ってくるわけであります。かつ、金融機関がしっかりと経営していけるように、先ほど委員は枝葉というふうにおっしゃいましたけれども、幾つかのことをやっていこうと。こういう形で、今の枠組みの中でも万が一にも問題が起きたときにはしっかりとやっていきますよという、我々の一つの枠組み、イメージ、同時にそういう管理をしていくという我々の意思を示したものだというふうにお考えおきいただきたいと思います。
 その中で、したがって、この特別支援云々に関しては、これそのものが特に新たな法律の準備を必要とするものというふうには思っておりません。同時に、それ以外のものについて、現状の枠組み以外のものについても、法的な何か枠組みが必要かどうかについては、その必要性を含めて広く検討をするということを明記した次第であります。
中塚委員 今のお話ですと、要は、特別支援の枠組みとはいうものの、個別の項目というのは、例えば検査官の常駐的派遣ということについては新しいことなのかもしれませんね。ただ、これも検討するというふうな書き方になっちゃっているわけですが、これが新しいことなのかもわからないけれども、日銀特融なり預金保険法に基づく公的資金の投入というのは、別に特別支援の枠組みとかそういうことじゃなくて、おのおの独立してできるということですよね。おのおの独立してできることをちょっとつまんできて、特別支援というふうな名前でくるんだということだけなわけですか。
竹中国務大臣 繰り返しになりますけれども、万が一にもそういう問題が起きたらどうするのかということに関しては、金融問題から経済の底割れを起こさせないように、しっかりと金融当局としては運営していくということを示したわけです。これはもちろん今までの枠組みを使って当然のことながらやるわけでありますから、それをつまんでというふうにおっしゃいましたけれども、今の枠組みの中でやるとしたらこういう姿になるということを明示したということであります。
中塚委員 よっぽど今までの金融行政が経済の底割れをさせるようなイメージでお考えだったのかもしれませんけれども、ここに書いてある預金保険法に基づく公的資金の投入というのは、いわゆる資本注入ということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 預保法百二条に基づく資本の注入でございます。
中塚委員 そこで、特別支援であれそうでないであれ、百二条がある以上、資本注入は、金融危機あるいは金融危機が起こりそうなおそれがあるとき、そのときにはできるということになっているわけなんですけれども、以前、柳澤大臣と予算委員会で議論をしたときに、柳澤大臣がおっしゃっているのは、預金保険法、この法律を運用する立場として、危機対応投入論というのが根本だというふうにおっしゃっていて、ただ、物の本によりますとというふうにそのときは言っておられましたけれども、資本不足解消投入論があるということやら、また予防的投入論があるというふうなこともおっしゃっていたわけなんですけれども、この三つの今申し上げた投入論、竹中大臣は一体どういうお立場にいらっしゃるのか。
竹中国務大臣 ちょっと申しわけありません。予防投入論と、あと何とおっしゃったのでしょうか。(中塚委員「危機対応投入、資本不足解消投入」と呼ぶ)ちょっと、今伺って、それぞれがどういう概念なのか、にわかに判断できないところがございます。
 私の立場はどうかということになりますけれども、基本的には、危機的な状況に対応して、資本の不足が生じた場合にはそれに対して政府がしかるべき対応をする、そういう考え方だと思います。
 それぞれの三つのものがどういう定義に基づいているのか、必要でしたら、また改めて調べて、議論をさせていただきたいと思います。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
中塚委員 ちゃんときのう、夕方にこのことは質疑通告をしてありまして、資本不足解消投入論、予防的投入論、危機対応投入論という三つが今巷間あるように言われておりますというふうに、柳澤大臣はことしの予算委員会で答弁をされているんですね。
 今大臣は、危機対応投入論というお話をされたわけなんですけれども、そこのところを私が質疑通告をしたにもかかわらず、ちゃんと読んでいらっしゃらなかったからそういう答えになっちゃったのかもしれませんが、ただ、危機対応投入論しかないということなら、それは、この金融再生プログラムで金融機関をぎりぎり搾れ、査定もDCF方式でやれ、繰り延べ税金資産も今までの繰り入れより下げろという話にして、日本の金融システムを危機に追い込んでやっと投入ができるということになっちゃうんですね。そこはどうですか。
竹中国務大臣 我々は、別にぎりぎり搾れとか、ぎりぎり搾るとかというふうに考えているわけではもちろんありません。きちっとした形での査定をしようではないか、そういうことを言っているわけです。
 これは、やはり査定をしなくてよいという理屈はないのではないかと思います。査定については、やはり市場の信頼にこたえるためにも、中長期的な銀行の経営の健全化を図るためにも、これはしっかりとやっていっていただきたい、その点に尽きると思います。
中塚委員 いや、査定の話は、私はそのプロセスに至ることとして申し上げただけで、査定を甘くしろなんていうふうには言っていないわけです。そうじゃなくて、公的資本を注入する、投入するというときに、危機対応しかできないということであるならば、結果として竹中大臣の意図というのは、この再生プログラムによって日本の金融システムを危機に追い込んで、そのときやっと投入ができるようになるんじゃないですかということ、そういうことを意図されているんですかという質問なんです。
竹中国務大臣 危機によって公的資金を投入しよう、注入しようというふうに考えているわけではありません。これはもちろん一つの結果であります。
 そこで書いているくだりは、その前後のことを読んでいただきましたらわかるように、個別の金融機関が危機に瀕したような場合について、どのような責任ある対応をとるかということをわかりやすく書いたつもりであります。これは現実には、金融危機対応会議を開いて投入するという、今の枠組みはそのようになっているわけです。
 加えて言いますけれども、それだけで十分なのかどうかということも踏まえて、ぜひ検討をしてみたいというふうに思っているわけです。
中塚委員 このプログラムの後の方で、新しい法的枠組みも検討するみたいなことが書いてあるので、それはこれから検討されることなんでしょうけれども、ただ、ここに書いてあるのは預金保険法に基づく公的資金の投入ということだし、今大臣がおっしゃったように、現行の制度なんだというお話をされたわけですね。現行の制度だったら危機対応しかできないんじゃないのかということは、私はことしの予算委員会のころからずっとやっていました。
 というのは、日本銀行総裁も、あるいは経済財政担当大臣であった竹中大臣も、そのころから資本注入が必要だ、必要だという話をされていたわけですね、予算委員会で。そうであるならば、それはやはり日本の金融システムは、では今危機なのかという話にもつながってくるわけですよ、危機のときしか投入できないわけですから。
 そこのところを柳澤さんは、前広にみたいな、おそれと書いてあるので予防的資本注入みたいなことにも関心を払っているというふうな御答弁をされていて、そのこと自体もよくわからない答弁だったんですけれども、というふうな答弁をされていたんですが、今お話を伺う限りでは、危機対応投入論しかないというお答えでしたので、そういう意味では本当にびっくりするというか、やはりこの一連のパッケージのプログラムというものが、危機が起きることを前提に、あるいは査定を厳しくすると危機になる、繰り延べ税金資産を見直すと危機になるというふうなことを前提におつくりになっているのだなというふうに、今よくわかりました。
 その続きに、経営者の責任ということも明確化するというふうに書いてあるんですが、特別支援を受けることとなった金融機関を代表する経営者について責任の明確化を厳しく求めるということが書いてありますけれども、これは、けれども、特別支援ということになれば、要は資本注入ということになるわけで、そこには健全化計画なんかを出させるということになるわけですから、では、その中で別に経営者の責任を問うということは十分可能ですよね。ここも別に改めて書く必要はないことなんだろうと私は思うんですが、改めて書いたということの意味と、あるいはここについても何か新しい枠組み、新しい立法なり枠組みというものをお考えになっているのかどうか、いかがですか。
竹中国務大臣 御質問にお答えする前に、ちょっと二点、明確にさせていただきたいんですが、予算委員会での中塚委員の御質問等々を私も記憶しておりますが、私は、資本注入は必要であるというふうなことを答弁したことは一度もないと思います。
 その点と、あと、繰り返しになりますが、危機をつくり出すことを前提にしているという点も、決してそうではないということを申し上げた上で、中塚委員、済みません、御質問のポイントを、もう一度ちょっと聞かせていただけますか。もう一度お願いします。
中塚委員 時間もないのであれなんですけれども、それはもちろん、予算委員会で竹中大臣やら日銀総裁が資本注入が必要だという話はされていませんよ。けれども、いろいろな国際会議に出たときとか、いろいろなところで講演をされたときに、資本注入が必要だと。実質の自己資本比率というふうな言葉まで引かれて、いろいろなところでそういう話をされていたわけですね。
 そういったことがあったものだから、私はこのことをずっと言っていまして、予防的注入論というのが成り立ち得るような可能性がある、そういうふうな柳澤大臣の答弁だったんですが、きょう竹中大臣は、危機対応しかできないんだという話をされた。危機対応しかできないということになるならば、それは、この再生プログラムがパッケージとして、要は危機を起こす内容になっているというふうにしか理解をすることができないじゃないかということなんですね。
 済みません、ちょっとまだまだやりたいんですけれども、時間がなくなりまして、三分の一もできなかったんですけれども、また法案のときにお話ししたいと思います。
 終わります。
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、今度の改革加速のための総合対応策に関連して質問したいと思いますが、これまで政府のデフレというものの定義は、ちょうど昨年四月の六日の参議院本会議で、当時の麻生経済企画庁長官答弁の中で、二年連続して消費者物価が前年度比を下回ること、持続的な物価下落というふうに、デフレについては大体そういう定義といいますか、言い方をしてこられました。要するに、物が売れない、物価が下がる、利益が出ない、企業活動が縮小する、リストラが進む、雇用者所得が落ちて消費購買力が落ち込んで消費が冷え込む、将来不安でマインドも冷え込む。要するに、この悪循環ですね。
 ですから、そうすると、物が売れるようにするには、まず可処分所得をどうして伸ばすかということが大事な問題になってまいりますが、この総合対応策の中で、国民の可処分所得を伸ばす対策というのはどれに当たるのか、どういうことを考えているのか、この点を最初に伺っておきたいと思うんです。
竹中国務大臣 吉井委員の御指摘は、GDPの重要なウエートを占める消費を活性化するためにも、やはり可処分所得が伸びなければいけないのではないかという点であろうかと思います。
 基本的な、構造改革を通じての一貫した考え方は、可処分所得を伸ばしたい、しかし可処分所得はどのようにしたらふえるだろうかという点であろうかと思います。所得を固定して考えれば、一つの方法は、税の負担を下げることということにもなろうかと思います。
 これは、国民経済全体で見た税負担の軽減、これは先行減税として取り上げるということを考えているわけでございますが、同時に、やはり民間部門がしっかりとした所得を生み出せる力をつけていくこと、これが実は持続的に可処分所得を増加させる唯一の方法であろうかと思います。そのために構造改革を進める。
 具体的には、今回の措置の中でも、構造改革特区について非常に力を入れる、その構造改革特区の中で地域が活性化し、新たな付加価値が生み出されていくということが実は持続的に可処分所得をふやしていくことでありますし、さまざまな税制の改革等々もそれに当たると思います。
 同時に、あえて言えば、セーフティーネットにつきましても、失われた可処分所得、失業等々でもしも可処分所得が失われた部分があればそれを補えるような制度をつくっていこうということでございますので、構造改革を通して経済を強くして、可処分所得がふえるようにしていきたい、そのような考え方に立っております。
吉井委員 この一年、構造改革、不良債権最終処理ということを進めてきて、現実には倒産、失業がふえて、国民の所得が失われてきたというのが現実の姿です。ですから、国民の可処分所得をどうふやすのかということについては、今出されてきた総合対応策の中では結局何もないということがわかりました。
 次に、総合対応策の三の「セーフティ・ネットの拡充」というところで「雇用対策の推進」というのがありますが、これは、失業者の方は九六年の二百二十五万人が〇一年には三百四十万人へと、五年で百十五万人増加しております。九五年の「光り輝く国をめざして」の中で、規制緩和を行ったら新しい産業が生まれ雇用が進むとか雇用の面では言われてきたんですが、現実には規制緩和でリストラがどんどん進んできました。規制緩和をやれば一千万人雇用だとか、電気通信など新しい雇用がふえるとかいろいろ言われておりましたが、現実はそうじゃない。昨年も、構造改革で五百万人新規雇用というお話もありましたが、現実はそうではないというのが実態です。
 昨年の五月十一日、経済財政諮問会議が雇用拡大戦略調査会緊急報告というのをやっておりますが、これは五百三十万人創出ということでした。もう少し前の九六年十二月十六日の閣議決定で、経済構造の変革と創造のためのプログラム、成長十五分野の雇用創出というお話がありましたが、これも医療、福祉関連で百三十万人ふえるんだ、それから、全体では九五年の一千万人が二〇一〇年になったら千八百万人で、七百四十万人ふえるというお話もありました。
 もう少し前の九四年の十一月には、「規制緩和の経済効果に関する分析と雇用対策」というのもあって、二〇〇〇年時点で、構造改革による推計で、内外価格差の是正で五百七十九万人ふえて、輸入拡大の構造調整で九百三十四万人減るんだが、新規産業創出効果が四百八十五万人あって、差し引き百三十万人の、これは二〇〇〇年時点で雇用の増加があるという話だったんですが、実は、内外価格差是正分のプラスと輸入拡大による構造調整の失業の分とを差し引きした三百五十五万人が、ちょうど今の、ことし九月の三百六十五万人の失業に相当する数字であって、新規産業創出効果というのは見られていないというのが現実の姿としてあらわれております。
 九〇年代にずっと言ってきた、経済構造改革だ、規制緩和だ、これをやったら雇用がふえるという話だったんですが、九月の完全失業率は五・四%、完全失業者三百六十五万人、潜在失業者を合わせると一千万人を超えるほどの失業者というのが今生まれております。
 ですから、どうも九〇年代からずっと繰り返し繰り返し、ふえるふえる、ふやすんだ、新規雇用の創出だと言ってきたんだけれども、現実は逆の姿になっているということについてはやはりきちんとまず見て、その上でセーフティーネットをどうするのかということを考えていくというのが本来の筋じゃないかと思うんですが、少なくとも現実に出ている姿は逆だというふうに竹中大臣も認められるのかどうか、伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 雇用については、日本を含め大変その見込みが、予測が難しいという基本的な問題があります。これは、よく言われる派生需要といいますか、民間の雇用でありますけれども、民間の企業は雇用をしようと思って存在しているわけではない、物を売って利益を得ようとして存在している、そのプロセスにおいて人を雇うことが必要になる、そういう意味で派生的に発生する需要であるということで、なかなかどこの国においても、これは日本のみならず大変苦労をしているんだというふうに思います。
 この雇用の政策ないしは見込みの評価については、その技術的な問題に加えて、これがネットの効果なのかグロスの効果なのかという問題もあろうかと思います。吉井委員が御指摘してくださった中にグロスとネット両方掲げているような見込みもございましたが、総じて言うならば、これはグロスの見込みないしは可能性を示しているものが多い中で、結果として雇用情勢は大変厳しいわけですけれども、例えばですけれども、もしそういった規制緩和をしていなかったら、では雇用は一体どうなっていたんだ、規制緩和をしていなかったらやはりその分の雇用は生み出され得なかったでしょうから、雇用情勢はもっと厳しくなっていただろうというふうに考えるのが自然であろうかと私は思います。
 ただ、いずれにしましても、雇用の問題については、各国がそうでありますように、日本においても、さらに経済全体の中で雇用をしっかりと確保していくための努力が求められているというふうに認識をしております。
 先般の経済財政諮問会議におきまして、坂口厚生労働大臣が、雇用の問題というのは従来の概念を超えてもっとしっかりと見直す必要があると思っている、その意味での雇用問題に対する中期的な、中長期的なビジョンのようなものを示して総理に提出をしたいというふうにおっしゃっておられます。こうした点を踏まえて、厚生労働省等とも協力しながら、また要請するべきことは要請をしながら、よりきめ細かく実効性の上がる雇用の政策を打っていきたいと思います。
吉井委員 雇用は難しいとお話しですが、リストラの方で、失業の予測だけはよく当たっているんですよ、減った方は。
 規制緩和をすればふえるという話ですが、例えばの例で言いますと、大店法を廃止して大型店をどんどんふやしました。大型店で雇用した分よりも中小商店の倒産、廃業で職を失った人の方がはるかに多いんです。ですから、簡単に、規制緩和をやればふえるというふうな、そんな話は当たらないということをまず言っておきたいと思います。
 それで、それにしても大事なことは、今セーフティーネットだというんだったら、本当に新規雇用が生まれて失業した人が就職できるようになるまで、一つ新しい失業者をつくらないという対策が大事なんですね。それからもう一つ、失業者の生活保障を完全に行うという、少なくとも政治はこの二つの責務を果たさなきゃいけないと思うんですが、この二つの面で何か具体的なものを考えてはりますか。
竹中国務大臣 厚生労働省の非常に細かなさまざまな政策を挙げる必要はないというふうに思いますけれども、今回の総合対応策においても、セーフティーネットにはやはり万全を期したいということで、就職、再就職の困難な状況に対応した給付の重点化を中心とした雇用保険制度の見直しでありますとか、自営業者、雇用保険の給付期間が終了した失業者に対して生活資金を貸し付ける離職者支援資金の貸し付け条件の緩和でありますとか、保護者の失業等、家計の急変により緊急に奨学金貸与の必要が生じた場合に利用できる緊急採用奨学金制度の積極的な活用、さらには失業等によって住宅金融公庫等のローン返済が困難となっている者に対して返済条件の変更を行う制度の着実な実施等々が織り込まれております。
 御質問の特に重要な、失業者が出ないような制度ということであろうかと思いますが、これは、例えば不良債権の処理を加速することによって、一時的に失業というようなことが生じたとしても、それがさらに成長力のある産業に資金が向かうことによって、人材が向かうことによって、より長期的な、安定的な企業の活動と雇用の体制ができていくということが、私はやはり持続的な経済発展のためにはぜひとも必要であろうというふうに思っておりますので、そうした観点からの政策を進めるということが重要であろうかと思います。
吉井委員 結局、具体的には対策としてないわけですよ。失業して、本当にきちんとした対策とらなかったら、塩川大臣は大阪の方だからよく御存じなんですけれども、ホームレスがどんどんふえていますよ。そしてホームレス予備軍というのが物すごい多いですよ。大体いつ就職できるかわからないんですよ、本当に一人一人の人が深刻な、人間としての尊厳が脅かされるという危機的なところへいっているんですよ。
 そういう中で、過剰雇用、債務、施設のこの三つの過剰を整理して、選択と集中で経営資金を新しい分野に移すとか、いろいろ言ってきました。しかし、過剰だといって切り捨てられる側、生身の人間の側の対策というのは結局ないというのが実態じゃありませんか。
 例えば、失業保険が切れても働く意欲を持ちながら就職できない人には就職できるまで生活保護法を適用して生活をきちんと保障するとか、あるいは生活保護法以外の新しい制度をつくって失業者の生活支援をきちんと行っていくとか、やはり政府として、失業者の生活保障ということについては、きちっとしたことを示さないことには、本当の意味でのセーフティーネットじゃないですよ。何かこの点について考えてはることあったら聞かせてください。
竹中国務大臣 まさしく人間の生活がかかっている問題であります。であるからこそ、セーフティーネットをしっかりとしたものにするということに関しては、これは総理の談話も含めて、内閣として非常に重視して取り組んでいくつもりではおります。その意味では、先ほどから申し上げましたように、当面できる幾つかの細かなセーフティーネットにつきましては、今回の総合対応策にも織り込まれました。
 しかし、さらにより大きな観点から、この雇用、失業の問題をどのようにとらえていくかという大きな絵、ビッグピクチャーみたいなものは同時に必要だろうと思います。この点については、まさに先ほど申し上げましたように、そう遠くない時期に坂口厚生労働大臣の方からその全体的なビジョンのようなものが総理に示されるというふうに聞いておりますので、そういったものを受けて、内閣府としても、しっかりとそういったものを政策の中核に位置づけて、対応策がとれるように努力をしていきたいと思います。
吉井委員 結局、今のお話もセーフティーネットという言葉はあるんです、言葉だけで具体的な中身がないんですね。今求められているのは、具体的な、何をセーフティーネットとして、失業したときには本当に失業した人の生活はどうして保障されるのか、どうして人間の尊厳が守られるのか、そのことが必要なんです。どうも、結局、今度の対応策というのも、対応策とはいいながら本当の必要な対応がないということが雇用の面でわかりました。
 次に、中小企業対策の方を伺っておきたいのですが、総合対応策では、金融再生プログラムの一、「新しい金融システムの枠組み」、その中の(二)に「中小企業貸出に対する十分な配慮」というのが一つあるわけですね。これは、しかし、先日取り上げました公的資金注入行の中小企業貸し出し計画未達成先に業務改善命令を出すというものですが、これも先日紹介しましたように、加速策を実施するなら貸しはがしに走らざるを得ないと言い、達成できない貸し出し計画を出すより業務改善命令を出してほしいと言っているのが大手銀行の実態でして、果たしてこれで中小企業対策が進むのかどうかということがまず疑問になります。
 もう一つ挙げてはるのが「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の創設」というのがありますね。しかし、これも、答弁にあったように、要するにモニタリングをするとかチェックをするというだけで、個別案件について、相談者がどんどん個別案件の相談を持ってきたときに、ホットラインとはいうんだが、貸し渋り、貸しはがしを一件一件具体的にやめさせる、解決するというものは結局ないわけですよ。
 そこで伺っておきたいのですが、総合対応策には政策金融の活用ということも挙げられております。現在、国民生活金融公庫と中小企業金融公庫と商工中金の三つについて、九八年、九九年のころの特別保証の取り組みをやった以降、要するに貸付金残高はふえたのか減ったのかということですが、この三つの政府系金融については貸付金残高は減っているんじゃありませんか。これはちょっと事前に資料もいただいたし、言っておきましたので伺いたいと思います。
竹中国務大臣 残高については今ちょっと調べさせるようにいたします。
 御指摘の点で、中小企業の対応策、特に金融が滞らないようにするということは、これは我々の当面の金融行政の中でも最も重要なポイントであるというふうに強く認識をしています。
 今回のプログラムは、そこに書いておりますように、主要行を対象にしておりますので、前回も申し上げましたが、中小企業のいわゆるリレーションシップバンキングについては、これはやはり別の観点からしっかりと考えたいという強い意向を持っております。
 もちろん、主要行が貸し付けている中小企業というのも多いわけでありますから、それに関しましては、今回の総合対応策の中で、これは経済産業省が中心となってセーフティーネット融資、これは政府系金融機関を使います、セーフティーネット保証、それをより拡充していくということを明確な方向として打ち出しておりますので、それをどのように具体化していくかということにつきましては、どのような裏づけがあるか、必要かということも含めて引き続き検討をしていくことになっております。
 貸し渋り等々に関するモニタリングに関しては、これは前回も申し上げましたけれども、基本的にはこれは貸し手という優越的地位を利用して不当な条件を押しつけるような、そういったことがあっては厳にならないと思います。
 この優越的地位を利用しているかどうかということは、これは実は公正取引委員会のマターでありまして、公正取引委員会にこれの窓口がございます。もし、そういう事例があるのでしたら、これは公正取引委員会の窓口にそのことをぜひとも言っていただきたい。公正取引委員会と私たちの方で連絡をとりまして、行政として処分する、対応するべきことがあればこれはぜひきちっと対応をしていきたいというふうに思っております。
吉井委員 ホットラインというんだから、本当にホットラインの役割を果たしてくれるのかと思ったら、何か、公正取引委員会へ行けという話では、これは本当に対策の名に値しないということを言わざるを得ないと思います。
 政策金融を積極的に活用という場合に、いただいている資料で、私から申し上げますが、国民生活金融公庫は九八年度期末から〇一年度期末にかけて四百八十六億円残高が減っているんです。中小企業金融公庫は同じ時期に一千四百四十二億円減っています。商工中金で八千三百八十八億円減っています。ですから、この四年間で、三つ合わせて一兆三百十六億円の貸しはがしということになってくるわけです。こういう状況の中で政策金融の活用といっても、これまで政府系金融は民間金融機関の補完的役割を果たすということを言ってきたのですが、これはできていない。この現実をそのままにして、どのように積極的な活用ができるのかということが問われると思うんです。
 大臣、ここはやはり、どういう形で積極的活用できるように政府系金融をやっていくのかということは、これは一言でいいですから簡単に言っておいてもらう必要があると思います。
竹中国務大臣 こちらの方で残高を確認できなくて申しわけございません。
 残高のトータルを御指摘くださいましたけれども、一つには、やはり九〇年代に入ってこの残高がわあっと拡大していって、それの調整の局面というのも一つあるのかと思いますし、また、政府系の金融機関は、そこの中身をいろいろとスクラップ・アンド・ビルドしておりますので、貸しはがし等々に遭っている中小企業に対する融資そのものがどうかという問題もあろうかと思います。この点については確認をさせていただきますが、吉井委員の御指摘で、政府系金融機関はこの局面ではやはり積極的に活用しなければいけないというふうに思っておりますので、その対応策については十分な配慮をしていきたいと思っております。
吉井委員 私は、たしか九七年の秋ごろの予算委員会で指摘したと思うんですが、実は国金などについても、当時貸付率目標というのを立てて、それは六〇%。つまり、申請があっても全部貸してあげない、そういうことをやってきたりしてきた経過もありまして、これはほかのバブル期がどうとかこうとかいう話あったけれども、そうじゃなくて、現実に政府系金融機関まで貸しはがしということをやっておったんです。ですから、ここをやはりきちんと是正するということをやらないと積極的活用はできないということを申し上げておきたいと思います。
 次に、信用保証の拡充対策については塩川大臣に伺っておきたいと思いますが、もともと中小企業金融安定化特別保証制度は、景気がよくなるまでとにかく倒産しないで頑張り抜いて、とにかく景気がよくなったら返せるわけです。ですから、景気がよくなったらきちんと返済してもらうという立場で、九七年春から急激に落ち込んだ消費不況の中で、景気が悪くなった、そういう中でこういう制度もつくられたんですが、不況が長引いているものですから、返したくても返済が困難になっている、こういう例が非常に今多いわけですね。
 景気がよくなるまで返済を猶予すると、実は中小企業も助かりますし、景気回復して立ち直ってくれるならば代位弁済も要らないわけですよ。これまで特別保証で、期限内に返済できないところへの代位弁済した総額は、この九月末で一兆四千億円になっているんですね。景気を回復させれば代位弁済の必要もなくなってくるし、その間低金利に借りかえも進めて、金利だけの支払いで、とにかく返済猶予して、中小企業の皆さんに、あなた、頑張りなさいということをやっていけば、実は信用保証協会の基金の取り崩しも要らないわけです。それから中小企業信用保険公庫の支払いも不要になってきます。
 ですから、この点では、国が信用保証協会に出している予算額は年間四十二億円ほどだときのう聞きましたが、それから中小信用公庫分が二百九十億円ほどですが、どんどんつぶれていくということがこれぐらいの額でとまれば、中小企業が倒産して代位弁済しているのが年平均三千億円ぐらいに比べたら、信用保証協会や中小信用公庫の支援をきちっとやって、とにかく景気回復まで頑張りなさいということで、返済猶予などもして取り組んでいくということは今非常に大事だと思うんですが、これは塩川大臣、経済産業大臣などとも協議されて、景気回復までの特別の返済猶予を含めた対策というものをやはり考えていかなきゃいけないと思うんですね。これは塩川大臣に伺っておきたいと思います。
谷口副大臣 中小企業の経営が大変厳しいということにつきましては十分理解をするところでございます。
 そんなこともございまして、特別保証の債務返済につきましては、経済産業省におきまして、従来から、個々の中小企業の実情に即した柔軟かつきめ細やかな条件緩和の対応をするように信用保証協会を指導しておりまして、既に十七万件の条件変更に対応しておるものということを承知しておるところでございます。もっと詳しく申し上げますと、十四年の九月末でございますけれども、件数が十六万五千九百八十三件、金額が三兆一千二百二億円ということになっております。
 また、経済産業省においては、今後も、現下の経済情勢、個別中小企業の事情に対応して、これらの指導を一層徹底するということを承知しておるところでございます。
 今委員がおっしゃった返済猶予ということでございますけれども、この返済猶予につきましては、財務省として直接的な財政負担がない。これは支払いの繰り延べで、事故が起きないということでございますから直接的な財政負担が生じない、こういうことで生じないわけでございますけれども、一方で、今おっしゃったような返済猶予につきましては、一つは債務者のモラルハザードを招く。今我が国は構造改革を進めておるわけでございますが、逆行するのになりかねない。また、返済猶予によって債務者の資金繰りに余裕ができるということで、金融機関が自行の、プロパーの債権の回収を加速化させるということで、結局金融機関の救済策になる可能性もある。
 また、代位弁済でございますけれども、代位弁済総額の増大を招き、信用保証収支の悪化を招来し、ひいては財政負担増になってくるというおそれがあるということで、返済猶予ということについては好ましくないと考えております。
吉井委員 さっき挙げはった数字は、みんなわかった上で聞いているわけですが、質問をよくわかって、のみ込んでお答えいただいたのかどうかわかりませんが。
 モラルハザード云々を言い出すと、それは中小業者を本当に信用していないという立場ですよ。中小企業が景気回復まで生き残れる対策にどういうふうに力を尽くすかということが一番大事なところで、生き残れる対策に必要な資金というのは、代位弁済のコストより安いものにつくということも考えられます。だから、加速策で倒産と失業をふやせば、これはもうとても代位弁済のコストぐらいじゃ済む話じゃありませんから、そういう点では、やはり返済猶予ということを含めた、本当に苦しい時期をどう中小企業の皆さんが乗り切っていけるか、そのことについての真剣な対応というものを、これは塩川大臣と、それから経済産業大臣を中心に、本当によく研究して取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、実は産経の十月三十一日付で指摘しておりますが、「「旧日本長期信用銀行(現・新生銀行)は、一時国有化して不良債権を分離し、優良な銀行に生まれ変わった」。旧長銀のように、不良債権を切り離せば、銀行が積極的な融資を再開し、意欲ある企業にお金が回る。新しい産業が成長し、株価も上昇。雇用・消費が拡大し、デフレは解消する。」これが竹中さんの持論だということが産経の書いているところですが、この竹中発言とされることに対して、日本証券経済研究所の紺谷典子さんは朝日の方に寄稿されて、「竹中案は後退したとされるが、不良債権の査定や自己資本の算定を厳しくし、自己資本が過小になった銀行に公的資金を注入し国有化するという基本は何ひとつ変わっていない。」「竹中案の目的は「また新生銀行を作る」ことにあるらしい。十億円で買った長銀で、外資は一年で六百億円の利益をあげた。国は「瑕疵担保特約」を果たすため新生銀行に多額の公的資金を支払い、邦銀は巨額の不良債権の肩代わりを迫られた。一体誰にとって優良な銀行だというのだろう。」ということを、これは指摘ですが。
 金融再生プログラムを見たんですが、信金、信組を破綻させたような特別検査をやって、自己査定を金融庁検査に合わさせるよう、業務改善命令を出し、自己資本不足なら公的資金注入で、不良債権とされるものを切り離して、安くハゲタカのえさにする。銀行も国有化して、旧長銀のように安くハゲタカのえさにしてしまうということになると、私はこれは大変だと思うんですが。その一方で、不況脱出の具体的な政策、中小企業や地域経済産業を守って、物づくりの基盤がしっかり発展していくための方策も、見たところ、具体的なものはないわけですね。
 一番肝心なところは、一体日本の経済や産業がこれでいいのか。特に私は物づくりにかかわる分野で生きてきましたから、物づくりがこういうことでいいのか、そこを一番心配しているところです。
 それで、時間がもう迫ってきたようですから、あと三分ほどですから、あわせて伺っておきますけれども、一つは、日本の経済、産業、これでいいのかということが一つです。
 もう一つは、先ほどもありました竹中さんのプロジェクトチームには、エンロン事件で企業破綻したアンダーセンも買収して、会計監査から銀行査定から債権回収、売却、MアンドAまで世界的に展開しているアメリカの不良債権ビジネスのKPMGグループの人が入っていますね。
 ところで、このKPMGグループの一つ、KPMGコーポレートファイナンスの久世洋一代表パートナーは、一昨年三月一日に通産省と米国務省が共催した対日投資シンポジウム二〇〇〇のパネリストになっておられます。このシンポジウムの目的というのは、対日投資の主要形態であるMアンドAに関する問題を中心に、現状分析、今後の課題で議論するとして開かれたものです。そのセッション一が、久世さんがパネラーだったわけですが、ここのテーマは「外資系企業の対日投資の現状と課題 M&A促進のための環境整備」ということになっておりました。
 このシンポジウムは日米のワーキンググループでアメリカ側から提起され、このシンポジウムの報告書は日米首脳会談でも取り上げられるんだというのが、通産省が当時つけておった文書にあるわけですが、アメリカのハゲタカグループに銀行や長期不況で苦しむ中小企業の債権を投げ売りするようになる加速策では、これは日本の経済や産業をどう発展させるかという根本問題が消し飛んでしまうと思うんですね。これでいいのかと。私は、このことが今非常に鋭く問われているときだと思います。
 この二点について、竹中大臣に伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 最初に、私の考えだということで要約されたのは、産経新聞とおっしゃいましたでしょうか。産経新聞のインタビューは私は受けておりませんので、これは、そういう解釈をしておられる方がいらっしゃったということだと思います。
 私自身は、そういったふうにはもちろん思っておりませんし、しかし、この中で、日本の経済の足かせになってきた不良債権問題はやはりきちっと処理していかなければいけない、これは骨太の方針以来の一貫した考え方でありますし、その中で、非常に極端な形でそれが歪曲されてハゲタカファンド云々という議論が出てくるのは、私はやはり議論として間違っているというふうに思います。これは、資産をきちっと評価して、それによって企業を再生する道を築いていくということに尽きるわけでありますので、この点はやはり経済政策の基本的な理念、考え方として御理解を賜りたいというふうに思います。
 もう一つの、経済活性化こそが重要である、物づくりが重要であるという吉井委員の御指摘は、私もそのとおりだと思います。今回、それが見られないという御指摘かもしれませんが、これに関しては、経済活性化の基本的なシナリオとして、既に骨太第二弾の中で三十のアクションプログラムをつくって、それを今鋭意実行に移しているところであります。構造改革特区もそのうちの重要な一つでありますし、税制についても今後予算日程の中で議論をしていくということでありますので、しっかりと活性化に向けてやりたいと思います。
吉井委員 もう時間が参りましたので。この加速策は、国民の財産をハゲタカにただ同然で売り渡すという危険性が非常にあります。大体、プロジェクトチームのメンバーからして、アメリカのそういうメンバーを加えているわけですから。私は、この問題については今後引き続いて取り上げていきたいということを申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 まず、財務大臣にお伺いしたいんですけれども、十月の二十五日、いわゆるデフレ対策にかかわって、財務大臣が、官邸で開いた政策懇談会に先立つ記者会見で、記者から、雇用等のセーフティーネット整備にかかわった質問に答えられて、財源の問題は総力を挙げて財務省で手当てするというふうにお答えになったと伺っているわけでございます。
 この点、そのことがまず事実であるならば、なければないとおっしゃっていただければいいわけですが、財源の問題は総力を挙げて財務省で手当てするというふうにおっしゃった。このことを素直に聞けば、財務省としては、塩川財務大臣としては、万全の措置をとるというふうにおっしゃったと理解してよかろうなと思うんですけれども、いずれにせよ、今進めようとしている不良債権の進め方によっては、当然、そのセーフティーネットの規模もやはり変わってくるわけでございまして、そうしないことには、デフレ圧力とバランスもとれぬわけですよね。
 ですから、不良債権処理を集中的、短期的に、言ってみれば派手ばでやる以上は、そのセーフティーネットの網もそれだけやはり充実した規模の大きなものになるだろうというふうに当然推察するわけですけれども、とはいえ、ことしの税収は、景気回復もなかなか遅々として進まない、恐らく法人税を中心に大幅に落ち込むだろうということも、予想は容易にできるわけでございますね。
 とすれば、もはや国債増発というのが避けられぬ情勢になってきているんではないかと。要するに、万全の措置をとるということであるとするならば、その万全の措置をとるためには国債増発は避けられない情勢になっているんではないのかなというふうに、私は素朴に理解するわけですが、財務大臣、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 雇用対策、セーフティーネットに関する中の一環としての雇用対策でございますが、これに対して、私たちは万全の対策を講じるということを申したことは事実でございまして、また、そのつもりで現在準備も進めておるところでございます。
 だからといって、この財源をどうするかという前に、その前に、一体現在の雇用関係の対策費はどのように使われておるのかということと、それから、実際に効果的に仕組んでいくのにはどういう方面に出したらいいのかという、新しい対策のとり方があると思っておりまして、その方の勉強を現在関係省庁といたしております。それが決まってまいりましてから、具体的な計数の整理に入っていきたいと思っております。
植田委員 恐らく、いろいろと御研究をなさっておられるんでしょう。そうだろうと思います。
 ただ、要は、私がお伺いしたかったのは、不良債権処理を派手ばで展開すればするほど、そっちのセーフティーネットの網の規模も大きくなってくるでしょう。その際に、現状の税収等を見たときに、国債を増発することが避けられない情勢に立ち至ることもありますよねということを私は伺ったんです。その点はいかがでしょうか。そのことを聞きたかっただけなんです。
塩川国務大臣 そういう質問をされますと、何が何でも補正予算をやるんだと言わせてやろう、そういう意図ですね。それは私は言えません。ですから、十分に対策をした上で、その措置を考えるということでございます。
植田委員 いや、言わせてやろうと思ってもう一回聞くんですが、実際、税収が落ち込むことはもうはっきりしているわけですよ。どれぐらいの税収があるかというのを見きわめた上で云々かんぬんと別に言わぬでも、それは減収することはもうはっきりしているわけなんですよね。
 そのときに、実際、九月の源泉所得税が前年比で七・五%減っている。そして、特に夏のボーナスの収納月に当たる八、九月も前年割れになっている。要は、結局、失業の増加というのが税収減として実際あらわれているということは、この傾向は明らかだろうと。結果的には、不況の影響が家計にこれから及んでくるわけですね、そうなってくると。とすれば、これは、ますます税収不足というのが、法人税等にとどまらずに、消費税等の減少に通じてますます加速していくという状況にあるという現状認識は、恐らくお持ちだろうと思うんです。
 とすれば、この税収の落ち込みを防ぐことができへんのであれば、デフレ対策も当然大きな影響を与えるわけですから、仮に少しでも税収を増加させるということであれば、これは、家計を元気にするということ、そして所得税、消費税の増加に期待をつなげる、そういう方向をやはり展望しなければならないのではないかと思うんですが、この点も、財務大臣、いかがですか。基本的な事実認識は御同様だと思いますが、大体私のそういう方向性でいいかどうか、いかがですか。
塩川国務大臣 おっしゃっている方向は、もう間違いございません。
 ただ、先ほども答弁申しましたように、平成八年ごろからずっと、それ以前よりはふえておるんですけれども、給与所得全体を見ましてもほぼ同様で、変化は余りない。このことは、経済の成長がとまっておるということを如実に語っておることでございますけれども、しかし、一般国民の所得に関しましてはそういう変化は余りない、こう見ざるを得ないと思っております。
 したがって、これからの対策は、要するに、企業が積極的に雇用を開発してくれて、それによって経済を活性化し、所得をふやしていく、そういうことをやらないかぬ。そのために、雇用対策のいわばセーフティーネットの方も、単に失業対策だけのものには限らず、雇用を増進するための雇用対策としてのネットワークも考えていかないかぬ、こういうことを複合的に現在考えておるということでございます。
植田委員 いろいろと複合的に考えれば、何らかの形で需要追加策が必要だというところに帰結するわけですけれども、それ以上ひつこうは、きょうはそんなに聞きません。答えへんでと先に予告されているわけですから。今おっしゃったことを実際具現化しようと思ったら結論は大体見えてくるだろうというふうに思いますので、大体そういうおつもりなんだなという財務大臣の御内意を今承ったというふうに理解しておきます。
 そこで、ここは竹中大臣にもお伺いしておきたいんですけれども、私自身は、少なくともこの公共投資が、この間、とりわけ九六年からどんどん減少してきて、二〇〇一年度の五年間で大体十一兆減少した。またことし、今年度は一〇%減らしたわけですけれども、このことが、そのことの評価はとりあえずおいておいても、いずれにしても景気回復には相当のおもしになったことは事実だろう、私はそのことは認識すべきだろうと思うんです。
 私は、この間ずっと、公共事業イコール悪、そういう言ってみればふれ込みというのは非常に疑問を持ってきました。ただ、少なくとも、これまでの公共投資の政策効果のはかり方がやはり幾ら使ったかという量的評価に偏していたのではないかと。むしろこれから、投資された社会資本としての公共投資が実際社会サービスをどんなふうに提供してきたかという質的な評価に転換していくことで、改めてその投資の有用性、有効性というものを再確認しつつ作業をしていく必要があるんじゃないだろうかというふうに思うわけです。
 ですから、そんなことがきちんとやはり明示的に示されれば、当然これは国民的合意も得られるだろうし、例えばそれは都市再生もそうでしょうし、教育であろうが福祉であろうが環境であろうが、そうしたところにやはりプロジェクトを精選して出していく。もちろん雇用もそうですね。こうした国民にとって本当に必要であるところに、そうした社会資本に重点的に投入をするということは非常に理解が得られやすいですし、そういう観点で、やはり公共投資悪論というものを脱皮して考えていくべきだろうというふうに思うわけですが、その点は竹中大臣の御見解はいかがでございますでしょうか。
竹中国務大臣 基本的には、社会資本、インフラ整備は大変重要な国家社会の基盤であるというふうに考えておりますし、それを質的に高めていくという点では、まさに植田委員がおっしゃったことは、我々の骨太の方針等々に書いて実行していることとほとんどそごはないというふうに思っております。
 一つ、量的な問題に関しても、名目値が減っているほどには実は実質値は減っていない、価格が低下しておりますから。そういう面も重要である。しかし、工事量ではかるのではなくて、やはりそれがもたらす効果である。その効果にやはり着目して重点化していく。骨太二〇〇二、骨太第二弾におきましても、公共投資の配分の重点化とか事業評価の改善などによって効率化、透明性を向上化させるというようなことを目指している次第でございますので、基本的には、委員のおっしゃったようなことは重要だと思います。
植田委員 ですから、今竹中大臣がおっしゃった部分がどれだけ本予算で積まれておるのかということを検証したときに果たしてどうかというふうに私は思っておるので、それ以上は申し上げませんけれども、竹中大臣のおっしゃっておられることをまた具現化しようと思ったら何が必要かということは、やはりおのずと明らかではないだろうかということだけ申し上げて、とどめおいておきたいと思います。
 次に、これはどちらかというと金融担当大臣としての竹中大臣にお伺いしたいわけですけれども、この金融再生プログラムの中での引き当てに関するDCF的手法の採用にかかわって、一つはプラスの面、もう一つはマイナスの面、双方からお伺いしたいんです。
 まず、プラスの面ですけれども、企業の将来性も重視するこうした手法というものは、やり方次第では、物的担保主義に寄りかかっている日本特有の融資慣行、こうした弊害を除去していく、そして銀行の健全な融資行動を促すという点で有効に働く、そういう面はあろうかというふうに私は思っております。
 ですから、そこでお伺いしたいのは、まず一つは、具体的な運用等についてどう考えておられるのかということと、ここの再生プログラムでは、当面、主要行において要管理先の大口債務者ということに限っているわけですけれども、本来でしたら、これが本当にうまく活用されるのであれば、物的担保資産に乏しい中小企業なんかが持っているノウハウ、知的財産、人材等々、そうしたいわば成長可能性、成長の芽に着目した融資行動を促していく、そういう意味で、健全な、優良な地域経済を支える中小企業を育てる上で、使い方によっては有効ではないかという面があるかと思うんです。
 そういう意味での、中小企業にこれをうまく活用する手だてというものがあるのかないのか、これはDCF的手法のプラスの側面での話でございますが、この二点、御教示いただけますか。
竹中国務大臣 将来のキャッシュフローの優劣を現在価値で置きかえることによって企業の価値をはかろう、これは決してそんな特別な方法ではありませんで、恐らく企業経営者としては、ある意味で反射的にといいますか、そういうことは行った上で常に経営の判断をしているのだと思います。
 これを、前向きであるということと物的担保に頼らないという意味で、御指摘のように、やはりプラスの効果があると思いますし、そうすることによって市場の評価に近づけるという重要な側面も出てくると思います。これを具体的にどのように運用するかということにつきましては、これはまさに実務の指針、積み重ねでありますので、工程表等々の中でしっかりと位置づけていきたいと思います。
 もう一つのお尋ねの中小企業への適用であります。そこの金融再生プログラムに書いておりますように、今回は、主要行であるということと、それの対象も非常に大口に絞っているということでありますけれども、これはどの将来かはともかくとして、将来的には、まさに物的資産を持たないでソフトなノウハウ、いわゆるのれん的な、ソフトなものを資産評価されるべきベンチャーのようなものについてはこれが適用されていくというのは悪いことではないというふうに思っております。
 しかし、当面、行政としては、大手行、そこに書いておりますような範囲でしっかりと定着させていきたいというふうに思っているところです。
植田委員 今のが、実際このDCF的手法をうまく活用してほしいなという場合のお話です。しかし、マイナスの側面は否定できないだろうと思うんです。
 というのは、要は、これは運用のいかんによっては貸し渋りを促す側面があることは否定できない。というのは、私も思うところは、実際、日本の銀行の場合、事業に融資するというよりは、企業に融資するスタイルがあるわけなんですよね。ですから、そのスタイルを転換しない限り、結局、貸し渋りを促進してしまうという危険性は常につきまとってしまうんだろうと私は思うんですよね。
 その意味で、恐らく、竹中大臣、当局の意図と銀行の思惑がうまく合致していれば別ですよ、銀行の側が決して、竹中大臣の理想どおりにこれについて受けとめるのかどうかという疑問もあるわけですので、私は、このマイナスの側面を取り除いていくためには、いわゆる、そもそもの融資スタイルですね、事業に融資する、これも何かアメリカでは将来の価値をつかむというのは非常に難しいと言われているわけですけれども、企業向け融資から事業向け融資への転換というものを一方でやらないことには、このDCF的手法というものが十分な効果というか、発揮するどころか、むしろ貸し渋りを促進してしまう、そういう危険が常につきまとってしまうんじゃないかという疑問を持っておるわけですが、その点は、大臣、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 企業向けかプロジェクトファイナンスかというのは、よく指摘される問題であろうかと思います。
 しかし、プロジェクト向けじゃなくて企業向けに対してはそういうことが、もちろん難しい面もありますけれども、決してできないということでもこれまたなくて、プロジェクトの積み重ねが、プロジェクトの集合体が企業であるというふうな見方も現実には行われている。であるからこそ、一部の金融機関ではこういう手法が採用されていますし、RCC等々では、まさにこういうやり方が基本になっているというお話も伺いました。
 結局のところ、この手法をきっちりと定着させていくということ。しかし同時に、これはやはり資産の査定をしっかりとすることですから、資産の査定をしっかりしたから貸し渋り云々ということでは私はないと思っております。いいところにしっかりと貸すということが銀行の使命でありますから、そういう意味では、委員御指摘になったような点にとらわれずに、やはりこのような手法をしっかりと定着させていくということが必要なんだと思っています。
植田委員 わかりました。それ以上の話は、現段階では聞きようがないようですから、お話は承りました。
 続いて、これももう簡単に、時間がありませんので端的に聞きますけれども、金融庁さんの来年度の税制改正要望に、繰り戻し還付の凍結解除、欠損金の繰越期間延長というのが盛り込んであるわけですけれども、具体的にどのくらい戻して還付したらと考えておられるのかという点を、まず金融庁さん、そして、これも財務大臣でいいと思うんですが、具体的にこれは実現の可能性はありますかということを財務大臣、続けてお願いします。
竹中国務大臣 これは、要求する私たちの側でございますので、どのような形で要求させていただくかということを今検討しております。
谷口副大臣 税についてのお尋ねでございますが、金融再生プログラムは、財務省といたしますと、要望をいただいたわけでございますが、突然のことで、どういう対応をするかということで今検討を進めておるところであります。
 それで、具体的に、今おっしゃったようなことでいいますと、一つは、無税償却は国税庁の運用の問題であります。このことにつきましては、アメリカの税務処理におきましては、貸倒引当金が損金に算入が認められていない、一方で直接償却は幅広く認められているといったような、アメリカの税務処理と日本の税務処理の違いがある。
 また、前一年の繰り戻し還付は、従来のように、今凍結中でございますけれども、このようなことと、あと、欠損金の繰越期間を、今現在五年でございますが、これを延長ということ、この二つにつきましては、金融業界だけにこれを認めていいのかどうかという観点もあるわけで、そのような全体の税の適正、公平、公正の観点から検討させていただきたいというように思います。
植田委員 非常にお詳しい御説明、ありがとうございます。今の話は、検討中でございますという答弁だけで、それ以上のことは期待しなかったのですが、勉強になりました。ありがとうございます。
 厚生労働省さんもお招きしておりますので、そこまで至らないとあれなんで、ちょっとはしょりながらいきたいのですが、とりわけ、中小企業に対して、この再生プログラムの中でも、「中小企業貸出に対する十分な配慮」ということでメニューをかなり明記されておりますので、それはそれとして、金融当局として、金融機関に対するきめ細かな配慮は求めているということはそれぞれの項目を読んで見てとれるわけですけれども、その趣旨からすれば、中小企業、零細企業向けの債権と大企業向けの債権というものを同一リスク基準で処理されるということが妥当なのかどうなのかという疑問があるんですよ。
 それで、時間がありませんので、二点続けて聞くのですけれども、例えば、一つは、地域経済の発展と雇用維持に役割を果たしてきた、そうした中小企業等に対しては、単にオフバランス化だけに固執するのではなくて、必要とされる引き当ての積み増しに努めさせた上で、やはりそれらの企業が融資遮断で倒産せぬように、融資の継続が前提となる方法なり手法を工夫していくべきなのではないかと思うのですが、その点についての御見解をお伺いしたいのが一点。
 もう一つ、例えば、先ほども出てきました物的担保主義というのとはやはり一線を画した融資姿勢というものを貫く地域金融機関、例えば、さっき言ったような中小企業が持っている財産、人材、ノウハウ等に着目した融資姿勢を貫く金融機関については、そうした融資姿勢を勘案した資産の算定基準を別途新たに設けるとかいった、これは今度は地域の優良な金融機関を育成していくという観点からの検査も行っていくというようなことが私はあっていいんじゃないかというふうに思うわけですが、この二点について、竹中大臣は前向きに御検討されるようなお考えはおありでしょうか。
竹中国務大臣 地域を支えてきた中小企業が、きちっとした金融を受けて、引き続きその地域に貢献していくという姿は、これはだれにとっても好ましいことであろうかというふうに思います。ただ、その場合に、例えば、金融当局がそういった企業を認定するというような、これは極端な例だとは思いますけれども、やはりこれは現実にはあり得ないことなのだと思います。
 そういったところに資金がよく行き渡るような金融システムをつくっていくという点でどのような工夫ができるか、これは、先ほども申し上げましたように、まず、銀行がしっかりと、いろいろな意味でよい企業を選ぶ能力を高めていただくということに尽きると思うのですけれども、行政としては、そういう立場を通して、結果的に、やはり貢献度の高い中小企業が残っていくような仕組みをつくっていくことだと思います。
 二番目の御質問も今の質問と関連していると思うのですけれども、地域の金融機関に関しては、これはリレーションシップバンキングという、まさに多様な価値を反映した中でのそのあり方を今議論していこうというふうに思っておりますので、今委員の御指摘は、検査にそれを反映させるというような御指摘であったかというふうにも思いますけれども、もう少し総合的な観点から、年度末にかけてリレーションシップバンキングのあり方を議論しようということにしておりますので、そうした中で、御趣旨も踏まえて、いろいろと、いろいろなやり方を議論してみたいと思います。
植田委員 要は、そこは、早期健全化法に基づいて公的資金の注入を受けた銀行が、貸し出し増を義務づけられてきたんだけれども、実際、その計画値を下回っているということで、業務改善命令を受けたところも二行ばかりあるわけですよ。それは、単に計画値を下回ったということだけではなしに、それぞれの金融機関の融資姿勢というものに問題があったということですから、やはりそこをちょっと見きわめていただいて、今私が申し上げたようなことがそのまま反映されるかどうかは別にしても、要するに、優良な中小企業をこれからどう育成していくのか、また、それとともに歩み得る地域の金融機関というもの、健全な金融機関というものをどう育成していくかという観点から御検討いただきたいと思います。
 これは、時間がありませんから改めて何かお伺いはしませんので、お願いしますということで終わっておきたいと思うのです。
 ただ、一言だけ感想を言わせていただくと、この金融再生プログラムの中で、やはり貸し渋りの問題についても、これは不良債権の存在が根本的な、本質的な原因というふうに私は思っておりませんので、貸し渋りの解消というのは、言ってみれば、供給側だけではなくて、金融行政もそうですし、需要側、いわば資金を、企業側、それぞれ三位一体の対応策というものが必要だろう。やはりここは、そこの部分が片面的かなという印象を私は受けております。
 結局、そういう意味では、実際、貸し渋りの抜本的解消策というものは、本来的に言えば実体経済の需要刺激だと私は考えているわけですが、そこは突っ込んでいっても見解を異にするところだろうと思いますので、これ以上時間がありませんから突っ込みません。
 最後、厚生労働省にお伺いしたいんですが、例えば有効的ないわば雇用対策で効果を上げるためには、当然制度設計に十分な考慮が必要なわけですけれども、私は、厚生労働省のこの間の雇用対策の個々のメニューは、実は非常に高く評価しています。ただ、問題は、それぞれの事業が互いにやはり余り連関し合っていないがために、言ってみれば、一個師団でだっだっだっと雇用対策がいけばいいのを、一個小隊ごとにいっているものだから各個撃破になっちゃって、結局効果があらわれていないんじゃないか。
 そこで、時間がありませんから一つだけ言うと、何度かよく話題になる緊急地域雇用創出特別交付金ですけれども、これは、財政規模もさることながら、もともとは小渕内閣時代にできたものですよね。でも、若干この間充実はしてきている、それは理解します。
 ただ、要するに、基本的な、根本的なこの制度がまずいというか問題なのは、要は、一部を除いて雇用期間が半年に限定されていると、更新が認められないので、幾ら職業訓練で技術を習得したとしても、実際はそういう技術習得を要する事業には不向きになっていて、結局単純労働にならざるを得ない。もともと技術を持っている人は別ですよ。だから、そういう意味で、そこのところが問題であって、失業者にとってみれば次に結びつかないだろうと思うんですよね。
 その意味で、やはり単に不安定雇用を創出するのではなくて、今必要なのは、持続的な雇用をどう創出していくかという観点からこの交付金制度というものを改めてもう一度検討しないことには、五十万雇用を見込んでいて、現状では二万三千プラスアルファということですけれども、今の二万三千人の方がでは五年後どうなっているかと聞いたら、五年後どうなっているかわかりませんということでございますから、やはりそういう観点から、持続的な雇用をこしらえるという観点での新たなこの制度の設計の見直しというものが必要だろう。
 実は、これはあした本会議でも聞くつもりでしておったんですけれども、あしたはあしたで、ちゃんと大臣から元気な答弁を聞きたいんですけれども。私はそう思っておるわけですが、私としては厚生労働省を励ます意味でこの質問を入れたつもりですので、それなりに景気のいい答弁がいただければと思っておりますが、どうでしょうか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 この緊急地域雇用創出特別交付金は、緊急かつ臨時的な雇用機会の創出を図ることを目的に、昨年度の補正予算で設けられたものでございます。
 それで、一定の雇用創出効果を上げているというお話もございました。昨年度は二万三千人、本年度は約十四万人の雇用創出を見込んでいるということでございます。
 ただ、こういう中で、実際に事業を企画、運営している地方公共団体の方々から、運用改善について、例えば御質問にありましたように原則六カ月に限られている雇用期間を含めまして、種々の要望がなされているということは我々も承知しております。
 したがいまして、私どもとしては、このような実際に事業を企画、運営している地方自治体の意向も勘案しつつ、今後、本交付金制度の本来の目的に立脚して交付金事業の効果的な実施が図られるようこの改善について検討を行ってまいりたいと考えておる次第でございます。
植田委員 だから、私は……
小坂委員長 時間が終了いたしております。
植田委員 はい。もう終わりますが、要するに今私が聞いていることは、その制度の中身についてと、その実績を聞いているわけじゃないんですよ。要するに、せっかくこういうスキームをつくらはったんだから……
小坂委員長 時間が終了いたしておりますので、簡潔に願います。
植田委員 それを持続した雇用の創出につなげていくために、制度設計を見直す気がおありかおありでないかということを聞いていたんです。
 励ますつもりで聞いているのに、私、そういう答弁を聞いたらやはり頭にきますよ。あした大臣答弁を求めますので、今みたいな答弁やったらあきませんので。それだけ言い置いて、終わります。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十五分散会


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