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第8号 平成14年11月19日(火曜日)

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平成十四年十一月十九日(火曜日)
    午後二時三十六分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 江崎洋一郎君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    海江田万里君
      小泉 俊明君    小林 憲司君
      佐藤 観樹君    手塚 仁雄君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    牧野 聖修君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      達増 拓也君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    小池百合子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室次長)   小手川大助君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人       
   (国税庁徴収部長)    立川正三郎君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十九日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  海江田万里君     牧野 聖修君
同日
 辞任         補欠選任
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  牧野 聖修君     手塚 仁雄君
同日
 辞任         補欠選任
  手塚 仁雄君     海江田万里君
    ―――――――――――――
十一月十八日
 共済年金制度の堅持に関する請願(園田博之君紹介)(第一九三号)
 同(中山太郎君紹介)(第一九四号)
 同(前原誠司君紹介)(第二三八号)
 同(松岡利勝君紹介)(第二三九号)
 同(達増拓也君紹介)(第二五七号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第二七五号)
 同(野田毅君紹介)(第二七六号)
 金融トラブル解決のための裁判外紛争処理制度の充実に関する請願(保利耕輔君紹介)(第一九五号)
 島民の生活安定と産業の振興のために離島における揮発油税の軽減に関する請願(山田正彦君紹介)(第一九六号)
 島民の生活安定と産業の振興のために離島における消費税の免除に関する請願(山田正彦君紹介)(第一九七号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(中林よし子君紹介)(第三〇〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)
 金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案(内閣提出第六二号)


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案の両案を議題といたします。
 この際、ただいま議題となりました預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、五十嵐文彦君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。古川元久君。
    ―――――――――――――
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
古川委員 民主党の古川元久でございます。
 ただいま議題となりました預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 小泉総理は、これまで再三にわたって、金融システムは健全でありペイオフは予定どおり実施すると明言してきました。しかし、総理は、金融危機ではないと言いながら、なぜ政策転換をするのかの説明責任を果たすこともなく、ペイオフ凍結の二年間延長を決定しました。すなわち、本法律案は、まさに小泉経済失政の象徴とも言える法案なのであります。
 現下の金融危機の本質は、大手銀行の過少資本問題です。すなわち、大口問題企業に対する引き当て不足、繰り延べ税金資産の過大計上及び公的資金による自己資本のかさ上げにより、表面上は八%以上の自己資本比率を確保している大手銀行が、現実には過少資本であり、したがって貸しはがしに走らざるを得ないという構図があるのです。この結果、中小企業等に対する金融仲介機能が失われ、経済再生の大きな妨げとなっています。
 現下の金融危機を克服する唯一の道は、民主党金融再生ファイナルプランを直ちに実行することです。しかし、その間、一年程度の時間を要するというのであれば、事ここに至ってペイオフ凍結解除を再延期することもやむを得ないと考えます。政府案のように、延長期間を二年間とすることは、中小企業に対する貸しはがしを二年間も放置するということになりかねません。
 また、永久に全額保護の対象とする決済用預金を創設することは、全額保護の対象でない預金が決済用預金に預けかえされることにより金融機関の資金繰りがかえって不安定になるなど、大きな問題があります。
 これらの考え方に基づき、本修正案では、普通預金、当座預金等の全額保護のための保険金の額の特例について、期限を一年延長して平成十六年三月三十一日までとするとともに、決済用預金にかかわる改正部分を削除することとしています。
 委員各位の御賛同をお願いします。
小坂委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事三谷隆博君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として国税庁徴収部長立川正三郎君、金融庁総務企画局長藤原隆君、金融庁監督局長五味廣文君、内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室次長小手川大助君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより両案及び修正案を一括して質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。
竹本委員 少し時間をいただきましたので、日ごろ考えております幾つかの問題について、両大臣、また関係者にお聞きいたしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 この夏休みというか、国会閉会中に少し時間がありましたので、私は、コロンビア大学教授のスティグリッツという人が書いた、日本語訳では世界を不幸にしたグローバリズムという題になっていたと思いますけれども、原文と両方で読みました。
 言っていることは、IMF体制が世界を支配しているわけでありますけれども、その現実の適用が必ずしも開発途上国にうまく機能していない。むしろ、IMFの言うことをそっくり聞いた国、例えばタイとか、あるいはインドネシアとか、フィリピンもそうかもしれませんが、あるいは日本もそうかもしれない、割合今の経済が大変な苦境に立っておる。逆に、マハティールのマレーシアはこれに全く盾を突いたわけでありまして、そういう国が案外健全な成長を今なお続けておる。そういうことを見ると、やはりIMFの指導理念というものはすべての国に当てはまるものではない、そのような感じを書いておるわけでありますが、私も全くそのとおりじゃないかというふうに思いました。
 そういう目で今回の、日本の現下の大変な経済的苦境を見ますと、いろいろな疑問がわいてまいります。
 まず、大変な不良債権の処理を言われておるわけでございますけれども、その量もさることながら、何ゆえにこの不良債権を処理し、そしてそれを二年以内に半分まで処理するというわけでございますけれども、それだけ加速する必要があるのか、この点は竹中大臣に、ぜひもう一度確認のためにお聞かせいただきたい。国民の大多数は、なぜそれを急ぐ必要があるのかということについて十分な理解がいっていないんではないか、そんな感じもいたすわけでございますが、まず、この一点についてお聞きいたしたいと思います。
竹中国務大臣 不良債権問題の本質というのは、なかなか難しいといいますか、複雑であるというふうに私も思います。不良債権、不良とついていますから、何となくよくないという感じは皆さんお持ちになるわけですが、それがマクロ経済、経済全体にどのような悪い影響を与えるかということが割と専門家の間でも明らかになりましたのは、私は、そんなに以前のことではない、九〇年代半ばから後半ぐらいのことであろうというふうに思っております。
 基本的には、不良な資産を多額に抱える、これは、銀行から見れば不良な資産であり、同時に、借り手の企業から見ますと、なかなかお金を返せない、利子を払えない企業から見ますと、不良な資産と一方で過剰な借入金の存在を意味している、過剰債務を意味している。そういう状況下では、企業も銀行部門も新たなリスクがとれない。そうすることによって、経済の本来の発展力を発揮することができない。そういう状況が基本的な問題点であるというふうに思っております。
 具体的には、不良債権の処理によって、銀行の経営の健全化、非効率な部門の効率化を通じて、そうして初めて日本の経済を再生することができるというふうに考えるわけでございます。
 そうした観点から、総理の方からは、十六年度にこの問題を終結させるようにという大変厳しい命を受けまして、さらに不良債権問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強い金融システムの構築を目指してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
 これは決して海外からどうこうということではなくて、まさに、日本の国のために、私たちの生活のためにこの不良債権問題を着実に解決に向かわしめなければいけないというふうに思っております。
竹本委員 そこで、この不良債権問題と対極の位置にあるのが、自己資本比率の問題であります。
 それで、この自己資本比率の計算の仕方でございますけれども、現在我が国がとっております計算方法によりますと、大体メガバンクと称されるところは、BIS規制の八%をオーバーして、一二%とか一一%とか、そういう数字がほとんどだと思います。ところが、先般、新聞報道によりますと、三菱銀行が今期通期決算で、だから来年の三月決算になるんだと思いますけれども、予測で千五百億円の赤字を計上したと。逆に、三井住友、あるいはUFJも数百億円の黒字を出しておる。では、赤字を出す三菱銀行と黒字を出すこの二行との間にそんなに財政内容に差があるのかというと、どうもそうじゃなさそうだ。
 そこで、よく実際に調べてみますと、ディスカウント・キャッシュフローというんですか、アメリカでとっている計算方法をとっているのが三菱であり、そして他の二行はそうではない、従来の日本の計算方法で自己資本を計算しておる。
 だから、二つの尺度があるわけでありまして、当然のことながら、より厳しいDCF方式をとった三菱の方が厳しい結果が出る。仮に他の二行について同じ方法をとれば、恐らくもっと厳しい赤字が出てくるんではないか、このように予測されるわけでありますが、なぜこのような二つの基準があるのか。
 現実にあるんだから仕方ないわけでございますけれども、ならば、日本の計算方式、現在の計算方式が国際的に認められているのであれば、その方法で計算し、我が国のメガバンクは規制の八%をオーバーしているから問題ない、そう言い切っていいのではないかと思うわけでありますが、そういうさなか、どうしてアメリカが採用しているDCF方式を我がメガバンクもまた採用しなくてはならないのか、あるいはしなくてもいいのか、それは自由意思によるのか、その辺のところを少し御説明をお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 竹本委員から、ディスカウント・キャッシュフロー的な方法による資産の評価をどのように位置づけるのかというお尋ねがございました。
 冒頭で委員がおっしゃいました、各行の決算の数字というのは、まだ私たちは正式には承知をしておりませんので、一般論として申し上げたいというふうに思いますが、ディスカウント・キャッシュフローという言い方は、要するに、将来この企業がどのぐらいもうかるだろうかという、先を見越して、その先を見越した、これはキャッシュフローで見越すわけですが、それを今の価値に置き直したというものでありまして、これ自体がアメリカ的であるとかそういうことでは決してないというふうに思っております。具体的に、例えば日本のRCC等々で資産の評価をするときはこういう評価によっているわけでありますし、かつ、御指摘ありましたように、この方法が常に厳しい方法と言えるかどうかということも、それもそんなに定かではないというふうに思います。
 ただ、現時点で、例えば現時点でこれを売ったら幾らになるんだろうかとか、これまでと同じような確率でいろいろな損が出てきた場合にどうなるだろうかという、現時点ないしは過去のデータに基づいて判断するのがよいのか。ディスカウント・キャッシュフローというと、要するに、これからどれだけもうかるかという、前向きに見るのがよいのか。どちらの方が厳しいかというのはその置かれた状況によりまして、したがって違ってくるわけでありますけれども、やはりさまざまな形で構造が変わっていく中で、今までに基づくとこういう価値でありますというよりは、やはり将来に向かっていろいろ考えてみるとこのようにこの資産を把握しなければいけない、そういう考え方を積極的に取り入れていくということは、私は、やはり一般論としては、方向としては少なくとも考えるべきであろうかというふうに思っております。
 もちろん、これには技術的な困難さとか問題点とかが伴いますので、そういうものについてはきっちりと議論を専門家に重ねていただく。かつ、常にこちらの方法がいいということではない。しかし、原則としては、将来に向かってどのように企業の価値、資産の価値を見ていくかというのがやはり市場の評価につながっていく、市場の評価と近いところにつながっていくということを踏まえまして、今回の金融再生プログラムの中では、大口の、あるカテゴリーに属する大口のものについてはこういうものを原則取り入れてはどうかというふうにしたわけでございます。
 したがいまして、繰り返しになりますが、これはひとつ市場の評価に近づけるための一つの工夫、工夫の一つであるというふうに御理解を賜りたいと思います。
竹本委員 お話のように、将来を見越した評価の方法の方がより妥当性があるんではないかとおっしゃいますと、そんな感じもするわけでございますけれども、この方式、どっちがいいかわかりませんけれども、我が日本の銀行にとって、自己資本比率の数字が低くなるような方法というのは対外的に極めてまずいんではないか。逆に、それだけ厳しい見方をしてもきちんと八%以上あるということは国際的信用につながるといえばつながるのかもしれませんが、その辺が、何ゆえにより厳しい方法をとる必要があるのか、その辺がちょっと私にはわからない、こういうことであります。
 そもそも、BIS規制というものは、国際的銀行取引において最低限これだけの自己資本を持った信用力のある銀行でないと国際のマーケットには入ってこれない、特に資金調達等はもってのほかだ、こういうことで決められた基準であるんだろうと思います。ならば、我が国の利益を考えれば、特に諸外国あるいは国際機関からその計算方法がおかしいと言われていなければ、あえてそれを修正する必要もないのではないか。ただ、計算の中で査定が甘いとかいうことがございますが、そういうことがあるのであればこれはまた別だと思いますけれども、他国あるいは他の機関からそれを修正しろと言われていなければ、従来の計算方法で堂々と国際的な開示につなげていけばいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、これが日本のやり方、これが諸外国のやり方ということでは決してないというふうに思っております。RCCでは資産の評価として積極的にこのDCFを活用しているわけでございますし、日本の銀行にも活用しているところがある。
 今、日本の金融システムの強化を考える場合に大変重要なのは、これまでの評価とマーケットでの評価の間にやはり乖離があったのではないかということを、そこはそことして謙虚に再考することなのではないかというふうに思います。
 マーク・ツー・マーケットという言葉がありますけれども、そこは市場の評価を積極的に取り入れながら、しかしこれは基準、方法でございますから、やはり専門家に積み上げていただいて、しっかりと基準としてはつくっていかなければいけない。そういう日々の工夫の中で、やはり金融システムそのものが進化をしていくわけですし、そうした進化の中で本当の意味での強さが発揮できていくのではないのかなというふうに考えております。
竹本委員 国際市場の方は、そのようにマーケットが最終的には判断するということになるんだろうと思いますけれども、目を国内に転じますと、大変な不況で皆が苦しんでおるわけでございます。その国内の銀行は四%の自己資本比率ということを言われておるわけですけれども、そもそも、八%というのは、BIS規制というのは国際的な取り決めでありますが、四%でいいというのは日本国内で政府が決めたことだろうと私は思うわけでございまして、変な話、これが六%でもあるいは二%でもいいのではないか。
 つまり、開き直った言い方をいたしますと、日本経済がもし社会主義国であれば、銀行の業務形態について担保主義云々ということは余り言われない可能性もあるんではないか、つまり日本国の自由に判断できる領域ではないか。そうならば、今、現下のいろいろな中小企業の貸し渋りあるいは貸しはがし、こういった現状を見ますと、もう少し何かやりやすい方法があってもいいのではないか、つまり、国際的な基準と同じやり方で国内の金融、融資の機能を煮詰める必要はないのではないかというふうに思うわけであります。
 そういう意味におきまして、特に地域のリージョナルバンクといいますか、中小企業の相手をするところに対しては、担保を十分積まなくても融資ができるような仕組みを導入し、そしてそれをきっちりと実行していくことが今の大変な不況を救う一番いい道ではないか、このように思うわけであります。そういう意味で、金融庁の検査マニュアルの見直しということをぜひやっていただきたい。
 つまり、国際的取引は別として、国内取引については、少し担保が十分でなくても、企業の将来性あるいはそういったいろいろな成長性等を見ながら融資をするというようなこと、ダブルスタンダードと私は言っておるんですけれども、そういうことを検査マニュアルに導入してもいいのではないか、そのように思いますが、金融庁の方の御判断をお聞きいたしたいと思います。
竹中国務大臣 先ほどマーク・ツー・マーケットという言葉を使わせていただいたんでございますけれども、これは、より正確に言えば、グローバルな市場と直接関係をしているか、ないしは非常に強い関連性を持っている主要行の場合について、そういう基準なり目が大変求められているんだと思います。
 しかし、そのことは、裏を返せば地域に根差した中小の金融等、いわゆるリレーションシップバンキングについては、各国、各社会の風土、歴史的背景に根差した別のあり方があるということも意味しているというふうに考えております。したがって、金融再生プログラムの中では、このリレーションシップバンキングのあり方については、別途もう少し時間をかけてそのあるべき姿を議論したいという立場をとっているわけでございます。
 お尋ねの、担保主義にとらわれないで成長性等を重視するような融資が可能になるように、検査マニュアルの見直しが必要なのではないかという点でございますけれども、ぜひとも御理解を賜りたいのは、金融検査というのは、金融機関の健全性と適切性を確保するために、金融機関の自己責任に基づくリスク管理を前提に、自己査定の正確性、償却引き当ての適切性などリスク管理体制が適切に機能しているかどうかというのを確認するものでありまして、各金融機関の個々の融資対応、ここの取引先は担保ありなし等々を含めて、貸すべきかどうかという、これは経営判断の問題であるということであります。
 金融検査が、融資に対し、その担保を要求するかどうかとかそういうことは、金融機関の経営方針、金融姿勢にまで立ち入るということは適当ではないというふうに思っております。したがって、これは金融マニュアルの見直し等々の問題ではなく、やはり経営判断の問題なのではないのかなと。
 お尋ねのマニュアルに関しましては、特に中小零細企業等については、その技術力、販売力、成長力等総合的に勘案して、経営実態のより的確な把握を目的とした金融検査マニュアル別冊、中小企業編というのを公表したところでありまして、今その現場レベルでの周知徹底を図っているところでございますので、御心配のようなことが極力起こらないように、適切なマニュアルの運用と周知の徹底をしたいというふうに思っているところでございます。
竹本委員 その中小企業編が十分本来の趣旨を生かして機能し、貸し渋り、貸しはがしがないという状況になれば何も言うことはないわけですけれども、どうもそういうふうには必ずしもいかないんではないか。
 そこで、何とか中小企業を救う道はないかというふうに考えますと、そこに考えられるのが、やはり政府系の金融機関の活用ではないかと私は思うわけであります。もちろん、政府の方においては、各種金融機関の整理、統廃合ということを言っておられますし、私も必ずしも反対ではないわけでございますが、これだけの経済の危機的状況の中では、何とか現在ある政府系の金融機関を十分に活用して、そして中小企業に資金の流れを起こしてもらいたい、そんなような気がするわけであります。
 それを言いますと、特別信用保証で二十九兆ぐらい融資をいたしましたけれども、既に一兆五千億ぐらいのデフォルトが起きておる。恐らく数兆円のデフォルトが起きるんだろうと思いますけれども、しかし、現実に中小企業が困窮していることは事実なんでございます。そういう意味において、商工中金、あるいはセーフティーネット貸し付け等をやっておられる中小公庫、国民公庫、それから商工中金、こういったものをフル活用して、担保的には十分でないけれども事業の将来性がある、あるいは発展性がある、そういったところについては、望まれる融資をしていく道を積極的にとるべきではないか。
 そういう意味において、この緊急の時代でありますから、統廃合という問題を例えば三年間凍結をして、現在ある政府系の金融機関をフル活用することが現在とる対応としては一番ベストではないか、そのように思っておりますが、これは経済産業省の西川副大臣にぜひお聞きいたしたいと思いますので、よろしくお願いします。
西川副大臣 今、中小企業政策に大変詳しい先生からのお尋ねでございます。
 例えば、中小企業向けの政府系金融機関の貸付制度の整備というものを鋭意進めているわけでございますが、商工中金におきましては、貸し渋り対応無担保保証つき制度というものを本年三月に創設をいたしまして、十月末までに一万三千件、金額にして六百十億円の利用実績を上げております。さらに、今月十一日から、今般の改革加速のための総合対応策を受けまして、その貸付限度額を三千万から五千万に引き上げる、こうしたところでございます。
 また、担保や保証人の提供が困難な場合が多い創業者の資金調達を支援するために、ビジネスプランが適切でございますれば無担保無保証人、本人保証もなし、こういう国民公庫の融資というものの創設を行いまして、創業融資制度、こういうふうに名づけておりますが、これも十四年一月から十月までに千八百七十五件の実績がございまして、六十一億六千万円の実績を金額的にも数えております。
 このほか、政府系金融機関からの貸し付けにつきましては、担保徴求の特例措置というもの、これはセーフティーネット貸し付け、経営革新貸し付け等におきまして、貸付額の五〇%を限度といたしまして担保徴求の一部を免除する、こういう仕組みでございますが、これらを行ってきているところであります。
 長くなって恐縮でありますが、なお、信用保証制度につきましても、土地担保のみならずできるだけ違うものを、こう考えております。その一つとして、先生が創設にもお力を大いに発揮していただきました売り掛け債権担保の保証制度、これも当初少し説明不十分でございましたが、現在は三千五百件ほど、千四百三十億円ほどの実績を上げております。
 以上のようなことでございまして、御指摘のように、政府系金融機関の機能をフルに発揮して、現下の厳しい中小企業の資金需要に対応してまいりたいと考えております。
竹本委員 今お話しのように、売掛金債権にまで、それを担保としないと金が借りられないというほど、すべての中小企業はもう無担保状態なわけであります。これ以上融資をするとなると理屈がつかないというのが現状だろうと思いますので、何とか担保の規制の枠を広めてもらいたいというのが私の願いであります。
 もう一点、我々が現場におっていろいろ聞きますのは、かつて銀行あるいはその他商工ローン等もあるのかもしれませんけれども、高金利でバブルの末期ごろに借りた金をいまだに抱えて、毎月何百万と返さなきゃいけない、そういう人たちがすべてまともな仕事をしていた人たちばかりとは限らないわけでございますけれども、少なくとも事業自身には将来性があり、本人もやむを得ない事情のもとでそういうところへ手を出してしまった。しかし、そのために、業自身はうまくいっているけれどもなかなか金利払いに追われている、何とか借りかえをしてほしいという声があちこちの、ほかの我々の仲間の先生方もよくそういう陳情を受けるようでございますけれども、こういったことに対して、何とか救う道はないものかと思っておりますが、西川副大臣、いかがでしょうか。
西川副大臣 これも先生御案内のとおり、政府系金融機関は、運転資金でございますとか設備資金にはお金をお貸しいたすわけでございますけれども、ただいまのような借りかえにつきましては、この場でこういう御答弁を申し上げるのはまことに恐縮でございますが、できかねるというのが現在の状況でございます。
 日本銀行の調査によりますと、平成十四年三月の国内銀行貸出残高のうち、四百三十三兆円ほどございますけれども、貸出金利が五%以上のものは一・四%、一〇%以上の高金利のものは〇・三%となっておりまして、商工ローン初め二九%とか大変高利のものに手を出されている、こういう状況に至る前にもっときちっとした金融対策をするべきではなかったか、こういう御意見が与党の先生方、野党の先生方からあることは十分承知をいたしております。
 これはせっかくの先生の御質問でございますので、私の権限では十分なお答えができませんので、持ち帰りまして検討をする努力をしたいと思っております。
竹本委員 ありがとうございました。ぜひ御研究、御検討いただきたいと思います。
 最後に、塩川財務大臣にぜひお聞きしたいことがございます。
 それは、現下の経済体制、経済状況に対してどのように対処すれば経済が浮上するかという問題について、私なりの意見を述べさせていただきまして、財務大臣の御意見を拝聴できればと思う次第であります。
 私は、八〇年代の中ごろに登場しましたレーガン大統領、この方が八一年と八六年、二回にわたってやりました大変抜本的な税制改革、これがアメリカ経済を浮上させた、この事実。特に、所得税、法人税を大幅に引き下げたわけでございますが、所得税に至っては、十四段階で最高で七〇%の所得税がかかっていたのを最終的には一五%と二八%というふうに、ほぼ三分の一以下にしたわけでございます。所得税はそうですし、法人税も四六%から三四%、これも大幅に下げたわけでございます。その結果、ちょうど日本とのプラザ合意のころでございますけれども、大幅に経済が急浮上した。
 この経験を踏まえますと、今こそ日本は大幅な減税を税先行でやるべきだというふうに思います。それに伴う財源不足についてはどうするか。これは国債を発行してその手当てをしてもいいのではないか、そのように思っておるわけでございますが、税を減税いたしましても、きょう減税してすぐ翌日効果が出るわけではありません。きょう、あすの問題がございます。
 そういうことを考えますと、どうしてもここで一日も早く補正予算を組んでいただき、そして、それも小さい規模ではなくて、ああそうかと思わせるような大きい規模。例えば、私は十兆円ぐらいと思っておりますけれども、そういう補正予算をできるだけ早く組んでいただくことが、この経済を浮上させる大きい一石を投じたことになるのではないか、このように思うわけでございます。
 そう言いますと、小泉政権の方針転換かと言う人がいるわけでございますけれども、私は、竹にも節があり、木にも年輪があるように、この一年半、節約財政を強いてきたことは、財政投資が非常によくきく経済体質に日本経済は変わってきている、そういう功績が小泉政策の中にあったと私は思うわけであります。
 したがいまして、だぶだぶの財政投資をする中で十兆円ほうり込んでも大した効果はありませんけれども、今のように本当にからからの状態でありますから、そこにもし十兆円ほうり込めば、必ず経済は、地中深くしみ込んで、そして大きい花を咲かすのではないか、私はそのように考えておりますが、財務大臣のこの問題についての見通し、御意見をお聞かせいただきたい、そのように思います。
塩川国務大臣 十兆円の補正予算とは、非常に大きい要望でございますが、御希望でございますが、実は現在、補正は当然必要になってくると思っております。それは、十四年度税収が予想以上に未収が多いというか、減税がきいてきておるということでございますので、その分の補正をしなきゃならぬことと、それから、雇用とか中小企業に対するセーフティーネットの多少の予算も用意しなきゃならぬだろうというので、当然考えておるのでございますけれども、だからといって、この国会で提出をするほどの時間的な余裕が実はございませんので、予算を組もうといたしましたら、最低限四十日ぐらいの日数がどうしても必要でございますので、結局は来年一月の通常国会冒頭に提出させていただこうと思っております。
 ついては、その規模についてでございますけれども、御承知のように、日本は世界でも実は非常に注目されているような国債発行、要するに公的借金の多い国でございまして、国債の格付もこれだけじりじり下がってまいりました。そういたしますと、海外で事業をしております企業も、格付が落ちてまいりまして非常に困っておるという状況でございますので、国債の維持というものだけはやはり心得ていかなきゃならぬだろう。
 そこで、三十兆円を割ることについて、小泉総理もこれに対しては柔軟に対応すると言っております。けれども、何としても財政の基盤というもの、節度というものは守らなきゃならぬので、我々、二〇一〇年のプライマリーバランスを維持するためにはどういう格好の財政にするのがいいかということを考えております。
 それのグランドデザインに基づきまして、十五年度の本予算及び十四年度の補正予算について考えていきたいと思っておりまして、現在、与党と政府との間でこの話し合いをしております。それで、二十二日に、小泉総理から、補正予算に対する基本的な考え方、これを内閣に指示するということになっておりますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思っております。
竹本委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
小坂委員長 次に、海江田万里君。
海江田委員 それでは、冒頭、竹中金融担当大臣にお尋ねをしますが、十月の二十四日、予算委員会、今国会で唯一開かれました予算委員会で、私が竹中大臣に、ニューズウイークの十月十六日号、ツービッグ・ツーフェールという「大きすぎてつぶせない銀行はない」と考えるというふうな発言があったかどうかということをお尋ねしましたら、竹中大臣は、「そういうことは一切言っておりません。これは英文の本論を見ていただきますと、その英文のタイトルにはそういうものは出ておりません。それを日本語に翻訳するときに意訳をして、加えて、私が言っていないことを括弧でつけて、コーテーションのように、さも言ったような見出しをつけている。この点に関しては、既に出版社に対して、弁護士を通じて正式に抗議を申し上げるとともに、その訂正を求めているところでございます。」という答弁がございます。
 この十月の二十四日の時点で、既に弁護士さんをつけて出版社に抗議を申し込んでいるということでございますが、その後、何か出版社の側が、申しわけありませんでしたと謝ってきたような事実はございますか。
竹中国務大臣 ニューズウイーク日本版、これはTBSブリタニカ社でやっておりますけれども、そこから十月の二十五日に、私及び私の代理人の弁護士あてに返事が来ております。答えは、訂正及び謝罪広告を掲載する必要があるとは考えておりませんというそのものでございます。
 これを受けて、どうするかということを今弁護士と相談しているところでございます。
海江田委員 どうして訂正、謝罪をするつもりがないというふうにおっしゃっているんですか、出版社側は。
竹中国務大臣 これは今後法律的な対応もちょっと考えておりますので、余り詳細に言うのは戦術上の問題もございますのですが、大事なお尋ねでございますので、二点だけ申し上げたいと思います。
 予算委員会で海江田委員とやりとりさせていただきましたように、破綻するには大き過ぎるという自動詞なのか、破綻させるには大き過ぎるという他動詞か、そういうポイントでございますけれども、私は、文法的には私が申し上げたとおりしか訳せないではないかというふうに申し上げたところ、先方は、そういうふうに、破綻させる、つぶすと訳出することが日本語表現として自然であると考える、これは見解の相違でありますが、先方はそういうふうに言ってきております。
 加えて、私が言った、一般論として可能性を述べたにすぎないことは、そういう表現でも十分に留意されていると思いますので、私が心配するようなことはないですよということを先方は申し添えております。
 もう一つ、私が抗議しましたのは、メガバンクでもつぶれると言う竹中金融相というかぎ括弧つきで書いているじゃないか、それは、英文にはそんなかぎ括弧つきのコーテーションはないのに、日本語だけそんなかぎ括弧つきで、しかも、そういうことを私は言っていないじゃないか、これはひどいではないかというふうに申し上げたところ、括弧書きにいたしましたが、これは大臣自身の発言ではないということを強調するためにかぎ括弧をつけたと、ちょっとわけのわからないことを言ってきておりまして、こうした点については、法的な措置を含めまして、弁護士と対応を考えているところでございます。
海江田委員 ここは英文学の授業の場じゃないので、自動詞や他動詞ということはおいておきますけれども、要するに、十一月の六日号でニューズウイークの側は反論を載せているわけですけれども、そこで、竹中大臣は英文に当たってくださいということで、その英文も出ているわけですよね、これは。「マージャーズ ハブ レフト ジャパン ウイズ フォー メガバンクス。 アー ゼイ ツー ビッグ ツー フェール?」という質問があって、それに「ビッグ バンクス ハブ ゼア メリッツ」、少し抜けて「バット ウイ ドント ホールド ザ アイデア ザット ゼイ アー ツー ビッグ ツー フェール」というふうに書かれているわけですよね。
 この発言は、こういう英語の表現はされたわけですよね、これは。どうですか。
竹中国務大臣 これは予算委員会のときに申し上げたとおりでございますけれども、銀行については申し上げません、一般論として、したがって企業というものは、ゼイというのは、企業というものはそういうものであるというふうに認識をしております、そういうことを申し上げた。それを英文では縮めてそういう形になっている、これは予算委員会で申し上げたとおりでございます。
海江田委員 今、質問も英語ですけれども、ここにはメガバンクスと書いてあるわけですね。合併、統合をやった結果、四つのメガバンクが残ったけれども、そして、これらというのは、つまり四つのメガバンクスですよね、四つのメガバンクスについては、大き過ぎてつぶせないということはないですねという確認をしたわけですから、そこはもうはっきりお認めになればいいんじゃないですか。要するに、言っていないと言うけれども、言っているから、それは向こうも認めない話であって、そうじゃないんですか。
 もう余りこのことで長々とするつもりがありませんので、余りそれをお認めにならないと、この十一月六日号は、「政治家や官僚、銀行経営者の無責任ぶりにうんざりした人々は、」まあ、政治家がというのは、書いてあるのはいいかどうかということは異論のあるところでございますけれども、「既得権益層とのしがらみがない民間出身の「学者大臣」なら改革を断行できるのではないかと期待した。その人物が金融行政の現場に入ったとたん、自らの発言に責任をもたない政治家と同じ感覚の持ち主になってしまったとしたら、これほどの不幸はない。」というふうにまで書いているわけですから、ここは素直にそういうことを言ったんだということをお認めになればいいんじゃないですか。どうですか。
竹中国務大臣 委員おっしゃるように、こういう議論を余り続けても仕方ないと思いますが、そういう趣旨では私は申し上げておりません。ここはニューズウイークの立場もございますでしょうから、彼らはこういう言い方をしておりますが、これを受けまして、法的に、他の対応措置も含めてどのようにすべきかということを今弁護士と相談をしております。
海江田委員 それでしたら、自動詞や他動詞とかいう話じゃなくて、むしろこの十一月六日号の方が、政治家と同じになってしまったんだということは問題ですけれども、かなりこちらの方が、はるかにその意味では名誉毀損なわけでございますから、竹中さんを傷つけることになるわけですから、やはりこちらの方に抗議をすべきだと思います。
 これ以上、この問題では言いませんが、それははっきりとそういうことを言った、だけれども、それがいろいろな、金融担当大臣ですから、しかも状況が状況で、その前から株価が急落をしておったときですから、いや、これはまずかったということであれば、それはそれで、過ちを認むるにはばかることなかれで、おやりになった方がいいんじゃないですか。
 もう最後にしますが、いかがですか、まだ言い張るんですか。
竹中国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
海江田委員 なかなか悔い改めませんね。
 本論に入ります。
 本法案の中身に入りますが、まず、これも金融担当大臣にお尋ねをしたいんですが、この預金保険法の一部を改正する法律案でございますが、一部を改正する法律案ということになっていますけれども、私は、この法案を見てみましてびっくりしたのは、法律の一丁目一番地である目的のところから実はもう変えているわけですね、これは。
 この法律の目的というのは、従来でしたらこれは、預金保険法でありますから、いわゆる預金者等の保護を行うというのが従来の法案の目的でございますよね。そこのところに今度は、預金者等の保護を行うということの下に、決済用の預金の保護を行うという形で、つまり、従来は目的が非常にはっきりしていたわけですね、まさに預金者、あるいは信託や何かの購入者でありますとか、そういう人たちを保護するんだよ、これは金融機関が破綻をしたときにそういう人たちを保護するんだよというところが、第一条の目的のところから、新たな概念といいますか、決済用の預金を保護するということが書き込まれているわけです。しかも、新しい法律案を見てみますと、これは本当に一部じゃなくて大半を改正する法律案ですよね。
 ここで目的に決済用の預金を保護するということを書き込んだ結果どういうことになったかというと、全部、これまでの預金を一般預金と決済用預金に分けて、一々、一般預金等に係る保険料の額でありますとか決済用預金に係る保険料の額でありますとか、それから決済用預金に係る保険金の額でありますとか一般預金等に係る保険金の額等とかいう形で、つまり預金を、従来だったらこれはまさに預金等で、ほかの信託だとかそういうものでよかったわけですけれども、それを一般預金とそれから決済用の預金と分けて、全部新たな書き込みをやっているわけですよ。
 これは本当に、この法律のそもそもの趣旨からいって大変おかしなことじゃないかな、一丁目一番地の、第一条の目的のところから書き直しをするということは大変おかしなことだと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
竹中国務大臣 海江田委員の御指摘は、むしろ、決済機能の安定確保策を講じるために我々はそういう法の目的規定を改正しているわけだけれども、目的規定を改正するぐらいであれば、別の法律とか、何か別の枠組みでやるべきなのではないか、そういう御趣旨なのかと思います。
 これまでの預金保険制度というのは、確かに基本的には少額預金者保護を目的としたものであるわけでありますけれども、これは同時に、決済用の資金が一定水準まで保護されることを通じて決済機能の安定確保にも一定の役割を果たしてきた、そういう位置づけであったというふうに私たちは考えております。
 したがって、今回の決済用預金の全額保護措置というのは、預金の保護が実質的に決済機能の安定確保に果たしている機能を改めて検討し、必要な措置を預金保険制度に盛り込んだものである、そういう位置づけになるわけでございます。
 また、今回新たに導入することとしている措置は、預金の保護でありますとか破綻金融機関への資金の貸し付けなど、少額預金者保護のために預金保険法に設けられている措置と同様の仕組みを実は活用するものになっております。
 したがって、決済機能の安定確保のための方策というのは、そもそも預金保険制度は決済機能の安定確保の役割を果たしてきたという点、それと、全く新たな組織や仕組みを設けるよりも、現在の組織や仕組みを活用した方が効率的、合理的と考えられることから、預金保険法の「目的」に「破綻金融機関に係る資金決済の確保」という目的を明文で追加して、預金保険法の一部改正として措置するのが適切であるというふうに考えたわけでございます。
海江田委員 恐らく竹中金融担当大臣も、余り明快にといいますか、説明できないと思うんですよ。今も本当に、明晰な頭脳を持った大臣にしては珍しくメモを読んで、しかもこれは大体同じ中身を二回言いましたから。
 その意味では、従来も預金保険というのはあって、しかも、これは基本的に少額の預金を守ろうという話ですが、そこで決済の機能も全部守られていたわけですよね。そこに何でわざわざ、今回決済用の預金を別途につくって、しかも問題なのは、この制度そのものが十七年の四月以降も、二〇〇五年度以降もずっとこれは続いていくわけですよ。そうでしょう。
 そうすると、これから実際にやってみなければわかりませんが、例えば決済用の預金の方に普通預金が流れていったりしたら、これはペイオフが意味がなくなっちゃうんじゃないですか。だから、その意味では、本当にペイオフの本来の持つ意味を非常に大きく減殺させる仕組みになっていないだろうかということを私は危惧するんですが、この点はどうですか。
竹中国務大臣 ここは、決済性預金とは何であるかということの定義を通して、まさにいわゆるモラルハザードが生じないような仕組み、具体的には、金利がつかないという点が大変重要なポイントになると思いますけれども、そういう形で、もちろん我々が資金運用するときには、当然のことながら通常は、特別に決済目的でない限りはやはり金利を付保されるところに預金をするわけで、そういうメカニズムを通じて、これは銀行に対する選別というのは、当然のことながら私はやはり進んでいくんだろうと思っております。
 むしろ、日本の場合は、これは既に答弁をさせていただきましたが、我々の決済の九五%が銀行、金融機関の預金等に依存して、諸外国にもないような非常に偏った決済システムになっている。その現金にかわる決済システムをきちっと、これはこれで金融システム全体の安定のために持っておく。一方で、通常の付保される預金に対しては、これは二年数カ月後には、ペイオフの制度の中で預金者の銀行に対する選別も進んでいく、そういう姿は私は決して不自然ではないというふうに思っております。
海江田委員 今し方、我が党の古川委員が我が党の案を提案したところでございますが、五十嵐提案者、今私がお話をしました決済用の預金の口座ができるということによって、私はやはり、ペイオフが括弧つきで解禁をした後も、そこへどんどんお金が集まっていって、結果的には、ペイオフが何のためにやったのか意味がないんじゃないかというふうに考えているんですが、この点はどういうふうに提案者はお考えですか。
五十嵐委員 お答えをいたします。
 私もまさしく、決済性預金だけが優遇されるということになれば、定期性預金からのシフトが起きる。それによって、かえって安定的な融資というものができなくなってくるおそれがありますし、あるいはまた、これによって自己責任原則というものが崩れてしまう。
 もしある一つの銀行が破綻をした場合に、それによってすべてがだめになるということをなくすためにペイオフ制度を実施して、限定的な被害にとどめて、たとえ破綻をしていても、これは一千万までということはないわけですよ。実際には八割、九割返ってくるのが普通でありまして、そういうことによって、ほかの健全な銀行に預けている預金者を保護しようというのが本来の目的ですから、その仕組みが崩れてしまう。あるいは、今申し上げました自己責任原則が崩れてしまうということにつながるので、決済性預金というものを、特別にこれだけを保護するというやり方はよろしくないのではないかというふうに考えている次第でございます。
 もし、それでは自治体等の公的な資金をどうするんだという場合は、これは自己責任原則とは納税者は直接結びつきませんから、それは別にそれこそ保護すべきだというふうに考えているところでございます。
海江田委員 やはりこのペイオフの二年延期、これは普通預金なんかもそうですけれども、その話と、やはり決済用の預金をそこから先も守らなきゃいけないという話は、本来はやはり切り離して考えるべき性格の問題だと思うんですね、これは。
 塩川大臣にちょっとお尋ねをしましょうかね。
 塩川大臣は、十月の七日付の、ここに十月四日付のニッキンという金融の専門紙があるんですが、そこのインタビューに答えて、これはまだ十月四日ですから、さっき私が十月七日と言ったのは、実は十月七日に方針を変えるわけですが、十月四日付の紙面ですからその何日か前だろうと思いますが、「来年四月のペイオフ解禁の延期の考えは。」という記者の質問に対して、「ペイオフはやはりやるべきです。一年延ばせ、半年延ばせ―という論議はあるものの、解禁の原則だけは崩してはいけない。中途半端な事をしては金融システム安定は望めない。」と。
 この「中途半端な事」というのが、まさに今私どもが指摘をした決済用の預金を新たにつくってとかいうことだろうと私は解釈をするんですが、この時点ではどういう思いでこの発言をなさったんですか。
塩川国務大臣 私は、これは直接担当しておる大臣ではございませんとお断りしてあると思っておりますが、私はやはり今でもそう思うております。要するに、ペイオフの問題というのは、金融機関の体質改善のためにはどうしても避けて通れない関門なんですね。そうであるとするならば、できるだけ早く不良債権の処理を急いで、金融機関の体質を改善することが必要だろうということだと。
 ところが、一般世間の考え方は、金融機関に対する認識は甘くて、やはり金融機関の保護というものに重点に置く、そういうことならば、ペイオフを急速に実施したら、金融機関の中で非常な格差が出てくるということに対するいろいろな心配があって、それが一つの、一種の金融不安だというような形になってきたと私は思うております。
 そうであるとするならば、金融庁としては、やはり金融を担当する役所として、金融機関の安定を図らなきゃならぬという観点から、このようにペイオフの一部、つまり決済性預金については考慮しようということの政策になったんだと思っております。
 私の信念としては、やはりペイオフは急ぐべきだと思っております。
海江田委員 どうも塩川財務大臣もちょっと誤解があるようですが、普通預金自体を二年間延ばすというのが今度の法律案の一つの柱で、それとは別途に決済用の預金というものを新たにつくって、これは二年後以降も、正確に言うと平成十七年の、二〇〇五年の四月一日以降もそれはずっと続けていきますよという法案なわけですよね、これは基本的には。
 そうすると、私どもが再三言っておりますのは、今こういう時期だから、これは、私どもは一年延ばせということを、延ばすのは一年に限定すべきだという考え方なんですが、それが、与党の側は、政府の側は二年だという考え方。それは一つの考え方で、私どもは同意するものではありませんがそれも一つの考え方ですが、そこのところに、全く木に竹を接ぐような、決済用の預金を新たに設けて、そして、未来永劫ですよ、これは、ずっとそういうところは保護をしますよということになってしまったら、何のためのペイオフなんですかと。
 ペイオフの、何のためかというのは、これは本当に、金融機関もリスクをとるかわりに預金者もリスクをとりますよと。この世の中に、お金を持っておったらそのときから不幸の始まりで、不幸の始まりとは言いませんけれども、これはやはりそれなりのリスクはつきものなわけですよ、銀行預金でもそうだし、それから株だってそうだし。だから、まさに、株式にお金が行かない、お金が行かないということを言っているけれども、片一方でノンリスクのお金が無制限であれば、行かないですよ、特にこういう時期には、大臣が言うようないろいろな控除の制度なんかを幾らつくったって。
 だから、広く押しなべてお金の世界はリスクは伴うものなんですよ、ただ、そのリスクが、預け入れの先によって、ローリスクであったりミドルリスクであったりハイリスクであったり、そのかわりリターンも違ってきますよ、こういう世界ができるかできないかの話なわけですよ、ペイオフを本当に実施するというのは。
 それが、この決済用の預金をつくることによって、決済用だとは言うけれども、もちろん限度額なんかないわけですよ。だから、そこのところにお金が流れていったら、せっかくのペイオフの制度自体がこれはほとんど意味をなくなしてしまうんじゃないですかということを最前から申し上げているので、これは竹中大臣でお答えをお願いしたいんですが、そういう懸念というのは全くの危惧なんですか、それは。ペイオフの意味が、先ほどもお話をしましたけれども、もう減殺をされてしまうんじゃないだろうかというふうに考えているんですけれども、そういう心配はないんですか、これは。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどから大臣が御答弁しておりますように、従来の少額預金保護ということで、その一部において決済機能は保護されてきておりました。また、ペイオフの全面延期という状態のもとで、決済機能の大部分がほとんど保護されてきたという状態でございました。
 しかし、今回、不良債権処理を加速するということで二年間延期いたしますが、その後ペイオフは解禁するわけでございます。その際に、我が国の決済機能が金融機関に極めて依存しておるという状況を踏まえて、その決済機能の保護を図る必要があるというのが今回の趣旨でございます。
 海江田先生御指摘のように、では、そうなった場合、みんなその決済用預金の方に来てしまってペイオフが実質的に骨抜きになるんじゃないかという御指摘があるわけでございますが、今、現下のような非常な超低金利の場合、そういう事態も想定されないわけではないわけでございますが、いずれ経済が回復するわけでございますから、その際には金利の選好というのが当然働くわけでございまして、また、今回の決済預金につきましては、金融機関の側に対しても、預金保険の料率を通常保護されないものよりも高くするということもありますし、金利がつかないということを考えますと、必ずしもそこにすべて滞留するということにはならないんじゃないかというふうに考えております。
海江田委員 私は竹中さんに答弁をお願いしたんです。出てこられても構いませんが、今のお話でも幾つかおかしな点がありまして、例えば、二年間たったら、じゃ、普通預金なんかも含めて何で二年間ペイオフの延期をするのかといえば、この二年の間に集中的に不良債権の処理をしますよということは、つまり、二年後にはその意味では金融不安はなくなるということでしょう、これは。そうでしょう、竹中さん。ちょっとそこだけ答えてください、一つ一つ。
竹中国務大臣 先ほどから海江田委員がおっしゃっているように、ペイオフを延期する。それは、一年か二年かという問題はあるでしょう。ペイオフを延期するという問題とこの決済性預金の問題というのは、独立のといいますか、これは別々に考えるべき問題という点、これは私はもう全くそのとおりであるかと思います。御指摘のように、十六年度が終わった段階ではそういった一切の不安がないように持っていきたいわけであります。これは今の局長の答弁と結局は同じことになりますけれども、今おっしゃったように、これは十六年度にはそういう状況にはなっている、そういうことを目指して政策を行っていくわけであります。
 その上で、先ほどから私も局長も申し上げていますのは、日本では、例えば、これは普通に決済をやっている普通の商店等々で決済の日に入金がかさんで、三百万円のところが三件来たらもう九百万円でありまして、一千万を超えるというようなことはこれはあり得るわけですね。そういうことに対して、その瞬間に万が一のことがあったらどうなろうかという不安はやはりあるんだと思います。
 通常でしたら、これは、やはり幾つかの国の例で見ますと、当座預金等々がそういう役割を果たしてきたんだと思いますが、日本では、その当座預金というのがいろいろな経緯からなかなか普及しないで、そこの機能が社会全体で抜け落ちているという点は、私はやはり事実なのだと思います。
 先ほど申し上げましたように、決済そのものが銀行に非常に過度に依存している。しかしながら、決済の仕組みのための当座預金というのは、これは当座貸し越し等々の仕組み等もあって、なかなか普通の我々には利用しがたい状況になっている。その中で、安心して決済ができるような仕組みというのを制度として持っておくのは、私はやはり意味があると。そういう趣旨から、金融審の中で専門家もそういう答申をしておられるわけでございます。
 今回は、その意味で決済預金を、これは御指摘のとおり、ペイオフの延期というのと時期は重なっておりますけれども、そういう趣旨からここで導入をお願いしているということでございます。
海江田委員 今、金融審がそういう答申をしているということですけれども、必ずしもそうでもないんですよね。もう一つ、ナローバンクという制度も言っておるので、こっちにもメリットはあるということを言っているので、必ずしも金融審は言っていないということ。
 それから、先ほど私がお尋ねをしたのは、二年間かけて不良債権の処理をやりますよ、そして、だからその時点で普通預金の方のペイオフは解禁をしますよということになったら、では、その二年たった時点で金融システムは安定をするんですねということをお尋ねしているので、それは問題ないですね。安定するんですね。安定するんですね。
 安定するんだったらば、これまでだってちゃんと、余計なことを言うと聞いていないからだめですよ、いいですか、安定するのならば何もわざわざこんな、無用の長物という意見もありますけれども、こんなシステムをつくらなくたっていいじゃないですか、これまでもやってきたんだし。
 それから、先ほどもお話をしましたけれども、ナローバンクという一種の信託勘定を一つ別につくって、そこで短期国債なんかを買って運用して、流動性があるという形できちっと資金供給をする。これは何も制度の中の、この預金保険の制度とは別途に、当座預金だってちゃんと銀行は独自につくってきたわけですから、そういう口座をつくればいい話じゃないですか。何でなんですか、それは。特に、二〇〇五年の四月一日からもう安定をするんでしょう。安定をするんだったら要らないじゃないですか、これは。どうですか、そこについて。これはもう大臣でいいです、簡単な話だから。
竹中国務大臣 簡単な話だから大臣だと言われてもちょっと困るのでありますけれども、これは、しかし、経済がよくなって活性化した後でも失業保険の制度というのは必要なわけでありまして、これはまさしくセーフティーネットである。そのセーフティーネットを整備するための仕組みであるというふうにやはり御理解をいただきたいと思います。
海江田委員 では、もう少し、そもそもこの預金保険というシステムは、小さな預金保険という考え方があるのは御存じでしょう。余り大きなものにしないで、できるだけ、小さなというか、国民の負担も少なくして、それから預金者の負担も少なくして、そういう制度にしようという考え方がこれは根っこにあるんですよ。だから、預金保険法の第一条のところでは、目的を「預金者等の保護」という形で非常に限定をしているわけですよ、そもそものところは。
 だから、そこのところの考え方と、こういう形で決済用の預金について新たなシステムをつくっていくということは、大きく矛盾するんじゃないですか。それについてはどうですか。小さな預金保険というものを否定しちゃうんだったら、もう話にならないんですけれども。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 海江田委員御指摘のように、小さな預金保険制度というのはおっしゃるとおりでございまして、これを目指すべきであるというのは金融審の答申でもそう書かれております。その中の一つの典型として、先ほど御指摘がありましたナローバンク制度、信託機能を活用したナローバンク制度というのが指摘されております。これは金融審の答申の中でも高く評価されておるんですが、ただ、現実に今これを導入するとなりますと、現下の状況からかんがみましてなかなか難しい。したがって、将来課題として、これは貴重な提言として今後とも研究していく必要があるということでございます。
 したがいまして、海江田先生のおっしゃいました小さな保険制度、これを実現するためのナローバンク制度、これにつきましては、我々も今後とも研究課題として取り組んでいきたいと思っております。
海江田委員 だから、それだったら二年あるんですよ。だから、さっき五十嵐委員が説明をした我が党の案は一年ということですけれども、その間にこの種の話をきちっと詰めていけばいい話なんですよ。それはやはり銀行の側にもそういう商品開発、新たな口座を設けるための準備期間として、来年の四月一日までにやれとかいうことをいえばこれは無理がありますけれども、一年だとか二年だとかの間にそういう準備作業というのは当然できるんですよ。それをやらずにこの決済用の預金というのをつくってきて、これは絶対、小さな預金保険という考え方から外れますよ。
 法律自体だって、今までは非常にコンパクトな、まず第一条に預金者の保護がありきというところから始まっていって、後から預金保険機構のところにいろいろな形はついてきましたけれども、そもそもそこから発している考え方であって、さっき木に竹を接ぐという話をしましたけれども、本当にこれはやはり基本的に相入れない考え方なんですね。
 これがあることによって、本当にペイオフ本来の意味合いといったものが損なわれてしまって、結果的に、株式でありますとか債券でありますとか、国だって国債にもしっかりちゃんと、売らなきゃいけないとか、それから株式の方にもちゃんとお金が流れていかなきゃいけないということになりますけれども、そういう考え方が、そういう必要性があるんですけれども、そこのところが、根っこのところでこういう制度をつくることによって大きく全体のお金の流れといったものを損なうことになりますよ、これは。そう思いませんか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどちょっと説明を省略しまして簡略化したものですから、もう一回説明させていただきたいと思いますが、ナローバンク制度というのは極めて高く評価されている制度でございまして、金融審議会の中でもかなり議論があったのでございます。
 その際、何が問題になったかと申しますと、やはり、それを信託制度として入れた場合、現在の我が国金融機関の収益構造、極めて低収益の構造、その中で果たしてこういうものが作用するのか、それから預金者の安全性の選好とか、さらには、これが、仮にここに金が集まりまして、それが国債等に運用されました場合、資金仲介機能にさらなる悪影響を与えるんじゃないかというような状況、それが、今の状況、現下の状況にかんがみますと、なかなか短期にその状況が改善できると思えないということから、極めて高い評価は与えられたものの、もうしばらく研究して、その状況が変わるのを待つしかないというような御議論でございました。
海江田委員 短期とかしばらくとか文学的な表現が出てきますけれども、例えば二年あるんですよ。二年は短期なんですか。おっしゃるような、局長が考えておる短期というのは、二年は短期じゃないんですか。もっと長いんですか。そうしたらそれは、やはりその間は本当に金融システムが安定しないということになるわけですよ、別な表現をとれば。
藤原政府参考人 たびたび誤解を与えるような発言をして申しわけございませんが、やはりいろいろなこういう一つ一つのものがかなりこれからも検討を要するというようなことでございまして、将来の制度化を視野に置きつつ、中長期的な課題として検討されるのが適当であるというのが審議会の結論でございました。
海江田委員 今のでもよくわかりませんけれども、どういうふうに言えばいいんですか、やはり基本的に、この制度を設けることによって本当の意味のペイオフの意味合いというのを私はかなり損なっていると思うんですよ。残念なんですよ、そこのところが。
 うまくきちっと、一年なら一年でペイオフ延長するのはこれはやむを得ないということですが、それは、先ほど来お話をしておりますように、今金融の状況が尋常でないから、私どもは金融有事とか経済有事とかいう表現を使っておりますけれども、そうだから緊急避難的にそういうシステムをそういう形で延長しますよというところで、そこのときに、やはり未来永劫、未来永劫という言い方はおかしいですが、いわゆる金融が安定をしたときに当たっても、そういう大きな、いわばペイオフの抜け穴といいますか、そこをつくってしまうと、本当にペイオフ本来の意味が大変大きく損なわれますよ。
 確かに、決済のシステムというのは、日本はアメリカなんかとは違います、ほかの国とも違うけれども、預金保険にこんな決済用の預金というのをわざわざつくって、それだけ青天井でもって保証しようなんという制度はどこにもないんですよ、世界のどこにだって。あったら教えていただきたいんですが、恐らくどこにもないですよ。それは、その意味でいうと、それができちゃった瞬間にペイオフという制度自体がもうほとんど意味がなくなってしまうということで、そのことをぜひ、金融庁のお役人は何を言うかはわからないけれども、そこに座っておられる財務大臣も、それから金融担当大臣も、やはりしっかりとそういう認識を持っていただきたいと私は思うんですが、どうですか。
竹中国務大臣 そのペイオフの仕組み、それによって預金者が銀行を選別して、健全なる競争状態ができるような形にしなければいけない、その御趣旨は私は全くそのとおりだというふうに思います。したがいまして、ペイオフを解禁できるような状況に一刻も早く、この金融再生プログラムをうまく働かせることによって持っていきたいと思います。
 その過程で、繰り返しになりますけれども、ナローバンクの議論は私も比較的長く勉強してきたつもりでございます。しかし、金融審でも、これはやはり中長期の課題だというふうに位置づけられている。中長期の中に、二年とか、二年ではやはりちょっと中長期ではないと私は思いますので、その点に関しては、先ほど申し上げましたように、日本の中でなかなか定着してこなかった当座預金の制度、それを補う、そのファンクションを、機能を補うものとしてこういう新しい決済性預金というものが定着していくことを私は期待しているわけです。
 しかし、繰り返し言いますが、健全なといいますか、そういう決済ので、特定の日に特定の大きな決済資金を扱わないような通常の預金者というのは、私はやはり、金利のない預金ではなくて、金利のつく預金を求めて健全な銀行の選択の行動をしていくのだと思います。
 そういう状況下では、私はやはりペイオフの解禁によって銀行の健全な選別行動というのは進むと思いますし、今回の決済性預金がそれを決定的に阻むということは、これは私はないというふうに思っております。
海江田委員 先ほど来本当にお話をしておりますけれども、それから、世界でこんなの例がないですね、全然。それをちょっと聞かせてください。
藤原政府参考人 すべてを調査したわけではないのでございますが、少なくとも主要先進国においてはございません。
海江田委員 ということは、つまり、こんなのつくっちゃったら日本は金融先進国になれないということなんですよ、これははっきり言って。物笑いの種ですよ。
 それから、金融庁はいろいろ言っているけれども、やはり今度の、預金の流出だとか何だとかが、大体もう一段落しましたけれども、さっき五十嵐委員も発言をしましたけれども、一千万円しか戻ってこないと思うから、これは決済の問題とは若干違うんだけれども、本当は八千万とか九千万、仮に一億あって、一億あったら八千万から九千万円戻ってくるのがペイオフの制度だというのが、これは世界の常識なんですよ。
 だけれども、これは金融庁がそういうことを、私なんか何度も言ったのに、パンフレットに、確実に戻ってくるのは一千万円までですよ、確かに、確実に戻ってくるのはそうだけれども、金融庁がしっかりと検査をやって、早期是正措置なんかをしっかりやっておけば、資金の調達ができなくて倒れるところがある、だけれども、それはせいぜい債務超過の割合でいけば一〇%ぐらいで、概算払い戻し率というのは九〇%ぐらい戻ってくるんですよ、これは。また、そういうものでなきゃペイオフというのはいけないんですよ。
 だけれども、それも、私は最初、何でこんな書き方ばかりするのかな、それで正確な情報をみんな国民に、預金者に伝えないのかなと思ったけれども、今となってはもう勘ぐって、それは悪いけれども検査も十分できないんだよとか早期是正措置も十分できないんだよと思いたくなりますよ。これは穴があいたら何割かもっと減るじゃないかとか。
 それは国民だって、仮に一億あって九千万円戻ってくれば、しかも残りの一千万円は相殺という制度があるから、借金と棒引きにすれば、ちゃんと一億なら一億戻ってくるんですよ、そんな人はごく少数だけれども。だけれども、これがやはり穴があいて、それこそ、実際、預金保険から戻ってくるのは一千万だけれども概算払い戻し率が三〇%とか四〇%なら、これは黙っていないですよ。国民だって怒りますよ。だから、そういうような制度にしちゃいけないので、これまでも、検査をしっかりやりなさいよとか早期是正措置をしっかりやりなさいよということをずっとやってきたわけですよ。何にもやってこなかった話じゃないんですよ、これまでの間。
 そういう議論の上に立って、では、今決済の問題、ことしの春にメガバンクでもいろいろな事件があったけれども、これにどう対応するか。さっき当座預金が育たないと言うけれども、当座預金は、何も預金保険法でもって手当てしなきゃいけないあれじゃ何でもないですよ。金融機関がつくるわけですよ、そういう意味では。だから、そういう金融機関が自分自身の努力でもって、そういうナローバンクも、ナローバンクの勘定も一つの考え方だし、ほかにも当座預金の方をしっかりと宣伝をするというような考え方もあるだろうし、そういう形でフォローできる話なんですよ、これは。
 そこのところをやらないでいて、やはりここのところで大きな制度をつくってしまうということは、本当にこれは、よく画竜点睛を欠くというけれども、蛇足か、どっちがいいんですかね、これは。かなり大きな穴があいてしまって、こんなものでペイオフですよということを、二年たって、その後の四月になって、日本はペイオフ実施していますよなんて言ったって、世界から物笑いの種ですよ。それはやってないんですよ。
 そこがあると、結果的に、大臣も話をしている株式市場にお金が流れていかないとか債券市場にお金が流れていかないとか、必ずそういうことになりますから、ここはしっかり、我が党が出している案のように、今緊急の事態だから、まずそれを認めなきゃいけませんがね、本当は、そこも大事なところですけれども、そこをまずしっかり緊急の事態だからということで、では一年延期しよう、二年延期しようということにして、その間に金融機関は一生懸命勉強しろ、研究しろということでやった方がずっといいんですよ、これは。
 どうですか、財務大臣、うなずいておられますが。
塩川国務大臣 私は担当じゃございませんので、発言控えさせていただきたいと思います。
海江田委員 では、もう一回、最後に竹中大臣。
竹中国務大臣 我々としましては、金融のシステムが、不良債権問題を終結させて、平成十六年度末には、これがペイオフをきちっと迎えられる状況になっている状況をまずつくるということ、その中で健全な預金者は金利を求めた預金行動をすると私は思いますので、こういう一つの今回やる決済預金が、新たな決済機能として、決済手段としてこの中に定着していくこと、同時にしかし、ペイオフによる預金者の健全な選別の仕組みが機能すること、そういうことが可能になるような努力をしたいと思います。
海江田委員 もう最後ですので。
 賢明な財務金融委員の皆様方、ぜひ我が党の案、本当にいい案なんですよ、これは。ぜひ御賛同いただけますよう心からお願いを申し上げまして、それから、竹中大臣も、本当に早く過ちを認めた方がいいですよ、これは。
 私の質問を終わります。
小坂委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 五十嵐文彦でございます。
 この委員会でも、あるいは予算委員会でも何度か質問をいたしておりますけれども、今は金融危機である、その危機に沿った手当てをしなければいけないということを申し上げてまいりました。その中で、繰り延べ税金資産についても、三割も四割も自己資本の中の比率が繰り延べ税金資産だというのは異常ではないかという話も何回かいたしております。
 きょう、与党の質疑を聞いておりましたら、日本のルールにのっとってやっているんだから、海外から何と言われようとそのまま通したらいいじゃないかという趣旨の御発言があったかと思います。ディスカウント・キャッシュフローについて中心でしたけれども、そのような議論がありましたけれども、この税効果会計については、そういうことではないんじゃないかというふうに私は考えます。
 ちょっと調べてみましたら、会計原則の実務指針の中に「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」というのがございます。その中に「将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性の判断指針」というのがありまして、その中のただし書きによる例外規定の中に、例えば法改正で特別な損失が生じるとか、特別な事業のリストラをするとかいうことに、非経常的な出来事が起きたことによって見積もり可能期間を五年まで延ばせるんだ、こういう規定があるんですね。それに沿って五年分計上しているということだと解釈できるんですが、それで、特別検査というのは特別な検査なんだ、だからその五年分いいじゃないかという理屈が成り立っているのかもしれません。
 しかし、私は、特別検査といえども、それは単に通常の検査と同じような、全く同じ検査マニュアルで行っているわけですし、変わったことがあるわけではありません。ただ、市場の評価とのギャップに着目するという着目点が違うだけなんですね。ですから、これは非経常的とは必ずしも言えないんじゃないかと思いますし、百歩譲って、去年の特別検査が非経常的だとしても、ことしもまた続けて、一年後にまた特別検査をやるというのであれば、これはもう非経常的とは言えないんじゃないか。
 それならば、特別の五年分認めるというのではなくて、会計上否認されて、監査上否認されて、一年分しか認められないということは当然なるんじゃないか、こう思うんです。竹中チームに所属する日本公認会計士協会会長の奥山章雄さんも同じようなことを言われているわけですが、これを今年度から適用するということになる可能性も高いと私は思うんですが、大臣の所感を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘の繰り延べ税金資産の問題は、その資産性をどのように認定するのかという点、これは大変重要な問題であるというふうに私たちも認識をしております。
 御指摘のように、公認会計士協会の実務指針にのっとって、つまり、企業会計を見るという専門家の立場からこの資産性を今認定している。それが、幾つかの条件を組み合わせて、今五年間という形で認められているということであろうかと思います。それに対しては、まさに市場から、その資産性について、これをどのように見たらよいのかという幾つかの異なった見方があるというふうに私自身も認識をしているわけでございます。
 そういう非常に技術的な問題も含めて困難な問題があるということを認識した上で、今回の金融再生プログラムの中では、この資産性の認定、その上限設定の問題も含めて、専門家で速やかに検討して結論を出したいというふうに考えているわけでございます。
 委員よく御承知のように、これは日本の税の問題がございます。いわば有税償却をすることによって、税金の前払いのような形になっている、したがって資産性があるという会計上の論理。しかし、今日の収益力から見て、それが返してもらえるという意味での資産性があるのかという、そのまさに税制の問題、それと企業会計の実務指針の問題、それと、それとはまた違った観点から銀行の健全性をチェックするBIS基準の問題。この非常に大きな、かつ背景の異なる三つの制度の接点にあるものでございますので、再生プログラムにありますように、専門家の英知を集めて速やかに検討を進めたいと思っております。
五十嵐委員 否定も肯定もしないような答弁だったわけですが、方向としては、やはり厳しく見る、銀行の健全性を維持していくためには厳しく見ていく方向だ、ただし、いろいろな問題がありますねと。有税償却を、無税償却の部分を拡大して一定の面倒を見てやるということも、それは引き当てを積ませるために必要ではないかということだろうと思うんですが、基本的な方向性としては、繰り延べ税金資産についての考え方は厳し目に見ていくんだということでいいですか。
竹中国務大臣 その資産性につきまして、ないしは資本の質というふうに呼んでもいいのか、繰り延べ税金資産の資産性について、マーケットからは厳しい目があるということを踏まえて議論をしたいというふうに思います。
五十嵐委員 お手元に資料をお配りいたしましたけれども、私の方で試算をしてみました。五年分を認めないということ、すなわち、非経常的要件を適用しないと先ほど申しましたことを計算していきますと、三菱東京フィナンシャル・グループ、そして住友信託銀行を除いた主要行は八%割れに直ちに追い込まれるわけであります。
 これはやはり、これを考えると、今の銀行の健全性というものは極めて危ういものだというものがわかると思うんですが、これについて御感想があればお述べになってください。
竹中国務大臣 これは一つの試算であるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、資産性に関してそうした幾つかの異なる視点があるということを踏まえまして、しっかりと専門家によって英知を集めた議論をしなければいけないと思っております。
五十嵐委員 どうも危機意識というものが我々と随分違うんじゃないかなというふうに思うわけであります。
 日銀においでをいただいていると思うんですが、日銀は大変厳しい危機意識を持っておられるから、極めて異常な、銀行保有株の買い取りというようなものにも、禁じ手にも手を染められたということがありますが、危機意識をどこから感じ取ったかというと、やはり日銀考査から感じ取ったのではないかなと思うんです。
 私たちは、ずっと金融庁に要求をし続けてきて、金融庁の検査、特に特別検査と銀行側の自己査定との乖離率がどのぐらいかという話をしてまいりました。通常は二五%だったのが、特別検査の結果、三五%になったというような数字が出ております。その後のでは一四、五%まで落ちてきたということですが、日銀の考査、これは対象が違うから必ずしもすんなりいかないとは思いますが、しかし、大体感じとして、乖離率というのがわかると思うんですね。日銀考査と、それから銀行の自己査定との乖離率はどのぐらいというふうに見られているでしょうか。
三谷参考人 お答えいたします。
 金融検査マニュアルが導入されましてから、私ども、主要行の考査、まだ一巡しておりませんので、金融庁と同様の計数は作成できないわけではございますが、ただ、現時点までの感触をあえて申し上げますと、平成十二年度以降、これまで実施した主要行考査、平均いたしますと、償却、引き当て額で三割程度の乖離が発生しておりまして、金融庁の検査とほぼ同様の傾向がうかがわれるところでございます。
五十嵐委員 日銀は、より厳しい見方というのをこういうところから見ていたんだと思いますね。やはり日銀も、要引き当て額がそのままでいくと三割ぐらいふえてくるんだろう、こういう見方だと思うんです。
 これに対して、金融庁の見方というのは非常に甘いんですね。株との関係ではあって直接これとは違うんですが、高木金融庁長官が十一月の十八日、今週の月曜日に、金融庁で記者会見をしております。今の株価の下落を大変国民は心配しているわけですけれども、それが銀行の健全性にどのように影響するか、あるいは自己資本比率にどのような影響を与えるかという記者の質問に対して、高木金融庁長官は、現時点で各銀行の健全性に問題があるということは全くないというふうに思っています、また自己資本比率に関しても、健全性の観点から問題があるようなことはないんじゃないかというふうに思っています、こういうふうに答弁をされておりまして、何度も銀行の健全性には問題がないんだというような認識を示されているんですね。随分その間には乖離があるんではないか、こう思うわけであります。
 金融庁は、金融庁長官だけではなくて、私の手元に特別の資料が実はあるんですが、十一月の十四日、午後三時から銀行会館八階で、金融再生プログラムにかかわる、金融庁とそれから各銀行、主要行だと思いますが、企画担当役員との意見交換会というのがありました。これは、あったことは間違いないですね。当局側からどなたが出席をされたのか、金融庁、お答えできますか。
五味政府参考人 お答えいたします。
 ちょっと記憶を頼りですので、申しわけありません。私と、それから同じ監督局参事官の西原、それから監督局銀行第一課長の鈴木、検査局総務課長谷川、それから総務企画局開示担当参事官羽藤であったと記憶しております。
五十嵐委員 実は、そのときの議事録が私の手元にあるのですが、これを見ますと、極めて銀行側、またしてもといいますか、銀行寄り、銀行すり寄りというような状況になっていて、本当に金融庁は厳しく見ていく必要があるんだという認識があるのかどうか、大変疑わしいのであります。
 一番問題になる点は、質問の中で、大口債務者の査定区分の共通化とは米国におけるシェアード・ナショナル・クレジット・プログラムを想定しているのか、こういう質問がありまして、これは横ぐし論といいますか、どこにその査定を合わせていくか、こういう問題であります。金融庁側の回答は、準メーンの査定が厳しいというケースもあろうけれども、横ぐし論というのは単純に厳しい査定に合わせるということではなく、最も情報量の多い銀行、すなわちメーン行に合わせるということだという答弁をされているんですね。
 これは、メーン行というのは、もともと自分のところで大きな損失を出したくない、確定したくない、したがって甘い査定をして温存をしてきた。何度も言っている逆算論ですね、私が何度も、日本の銀行のこの不良債権問題を雪だるまのように膨らませてきた根本的な問題の一つである逆算論、逆算主義、これに立つからだめなんだと。メーン行に合わせるというのは、まさに逆算主義に合ってしまうということなんですね。
 これはまさに、このやり方は竹中さんが考えていることとは違うんじゃないですか。本当にこういう考え方をお述べになったのかどうか。なったんだと思います、私は議事録を見ているんですから。この考え方でいいのかどうか、両方から伺いたいと思います。
五味政府参考人 意見交換会ということで、私どもの方が議事録というものをつくっておりませんので、ちょっと記憶に基づく御答弁で御容赦を願いたいと思いますが、今のシェアード・ナショナル・クレジット・プログラムに関して確かに質問がございました。
 当方出席者から、シェアード・ナショナル・クレジット・プログラムというのは、アメリカに特有の、シンジケートローンの場合に情報の非対称性がないということから使えるものであって、日本でそのまま使うのは難しい。ただ、再生プログラムの中にも、自己査定につきまして、「大口債務者に対する銀行間の債務者区分の統一」ということで述べられておりまして、「主要行について正常先でない大口債務者の債務者区分に関しては、適正な資産査定を実施している先にレベルを揃えるための具体的な仕組みを導入する。」ということになっておりますので、何かこういう仕組みを検査の場で実現したいというようなことで答えておりましたと記憶しております。
 その中で、メーン行という話は確かに出ておったように記憶します。これは、発言者が申しておりましたのは、当然のことですけれども、メーン行の自己査定にそのままそろえるということを申しておったわけではありませんので、メーン行というのが最も債務者に対する情報量が多いので、そのメーン行において適正な債務者区分というものを検証して、それを横ぐしを通す形で他の方へ及ぼしていくんだ、これは特別検査は同じ考え方で行われたわけでございます。現在これが私どもの検査の主流になっていると考えております。
 他方で、準メーン以下がメーンよりも厳しい査定をしているケースがある。これは、私も検査局長時代の経験から、そういうことは散見されました。これは最近に割合特有の現象でして、いわゆるメーン寄せをやりやすくするために、準メーン以下がこれといった十分な情報もなくただ厳しい査定をしているというケースがございます。こういうようなケースを、そのまま横ぐしを通すときに厳しければいいんだということで使うわけには当然いかないわけでして、メーン行において十分な情報量のもとで適正な債務者区分というものを確認して、検証し、そしてこれを横ぐしを通していく。結果として、メーン行の査定が甘ければ、準メーン以下の厳しい査定にそろってしまうということも当然あるわけでございます。
 発言者の趣旨はそういうことを申しておったと私、記憶しておりますが、その議事録、どなたがつくられたかあれですが、かなり、もう少しきちんと丁寧に説明しておったように私は記憶しておるのですけれども、あるいは説明の仕方がちょっと足りなかったのかと思って、今後気をつけるようにいたします。
五十嵐委員 それは、だけれども、言葉では美しいんですよ、最も情報量の多いところに合わせるんだと。しかし、実態的には、最も情報量の多いメーン行はその分だけ最も甘く、粉飾をしてきた、粉飾まがいのことをしてきたというのは事実ですから、これは今までどおりのやり方にほかならないと私は思うんですね。
 例えば、厳しい査定で有名なのは今、東京三菱ですよ。ディスカウント・キャッシュフローを先に取り込んで、厳しいんです。いわゆる今問題になっている大口の債務者の中で、その他のメガバンクがメーンで、三菱あるいは新生銀行が準メーンになっているところは、おっしゃるとおり、かなりたくさんそういう準メーンの方が厳しいというのはあって、どちらが正しいかというと、実はメーンじゃない方が正しいケースの方が多いんだと思うんですよ。私は、そういうところから見て、情報量が多いところが正しいんだとする考え方は間違いで、これはもう銀行に対するすり寄りだ、こう思うわけです。
 このことだけじゃないんですよ。この中には、例えば、工程表であっということはないのかという質問があって、我々もそのようなことはないと期待しているが、最終判断は上のレベルで行われる、こう答えているわけですね。これはまさに、私たちはあなたたち銀行側の味方なんだけれども、竹中さんはどうもそうではないらしいから、そういうことはないと期待しているんだけれども、怖いんだ、こういうふうに受け取れるんですね。大事な金融行政の二元行政が行われているんですよ。
 そのことも問題なんですが、とにかく、金融庁の姿勢はかなり銀行寄りですねと、今までもさんざんこの場で指摘をしてきましたけれども、かなりそういった姿勢が目立つのです。そのことについてもう少し後でまた述べますが、続けて、この中身について言わせていただきたいと思うのです。
 産業再生機構なんですけれども、産業再生機構というのは不良債権をメーンに寄せて再生を進めるということなんですかという質問があって、これに対して、再生しようと思うが非メーンが協力しないといった場合に利用されるイメージなんだ、こういうふうに答えている。
 それから、産業再生機構について、非メーンが債権を売却しないといった場合などに強制力を持つのかという質問があるんですね。産業再生が目的ということで、過剰供給の産業のうち、Aは生かしBはつぶすというようなことがあっては困るんだけれども、どうなんだと、これは質問の側です。それに対して金融庁の回答は、これからの検討課題だ、業界の特性も踏まえて準備室で検討していく、強制買い取りをすると表明してしまうと機構の稼働前にメーン寄せが起こる懸念があり、金融庁としては反対したいと考えている、また、再編のために金融機関に過度な負担が生じるのも避けるべきだと申し入れたい、こういう回答をしているんですね。
 これはこの間の議論になるのですが、産業再生機構というのは大口債務者を救うための機構にしかすぎないのじゃないですか、中小は救えないのでしょうという話をしたときに、そんなことはありませんという答弁が小手川さんの方からあったのですが、これが財務大臣の今までの答弁と食い違うじゃないかという追及をさせていただいたわけですが、これを見ると、やはり非メーンのところの重荷を取ってあげて、そしてメーンに合わせて再生をしていくんだということになるから、これは小さいところまでは面倒見切れない、大きいところだけ政治が介入をして選別して救っていくんだ、こういうふうに見えるんですが、これについてはどうなんですか。こういうやりとりがあったかどうか、また、これについて竹中大臣はどのような感想をお持ちか、伺いたいと思います。
五味政府参考人 産業再生機構に関連しまして、今おっしゃいましたようなおおむねそういう趣旨のやりとりがあったと記憶しております。再生しようと思うが非メーンが協力しないといった場合等に利用されるイメージといった趣旨の発言は確かにあったように思います。これは、この機構そのものがメーンとそれから産業再生機構という、関係者を絞ってそこに公的色彩を持たせる中での再生というお話ですので、一つの見方かなと思って私は聞いておりました。
 それから、金融機関に過度な負担が生じるのを避ける、これは、質問者の側から、個々の債務者の再生ということについては、確かにメーン行あるいは債権者全体でそれを責任を持ってどうするかを決めていくし、実行していくんだろうけれども、これが業界の再編みたいな形で、X行がメーンをやっているAは存続させるがY行がメーンをやっているB社はつぶすというような、こういう産業再編的なことが行われる場合というのは、損失の負担が銀行によって一種の不公平が生ずるんではないでしょうか、こういうようなお尋ねがありましたときに担当課長が答えておったと思うんですけれども、それは、個々の債務者でなくて産業再編というような話からの整理というのはまさにこの機構が担う話であって、この機構の出資機能なり融資機能なりというものを活用していく場面なんであろう、そういう形で活用していくことによって、個々の銀行に片寄せされたような負担が起こるということを避ける、こういうことが可能になる、こういう説明をしておったように私は記憶しております。
竹中国務大臣 五十嵐委員の今の一連の御指摘は、金融庁、事務的に非常に甘いのではないかということを御心配いただいているということだと思いますが、そういうことは断じてないように大臣として仕事をしているつもりですし、金融庁の職員は金融再生プログラムの実現に向けて非常に努力をしてくれているというふうに認識をしております。
 一点、ぜひ御認識を賜りたいのは、先ほど日銀の考査との比較で、金融庁の査定は甘いという御指摘がございましたが、これは三谷理事の話からしても、数字の上ではほとんど同じだということでございますので、そこはぜひとも御理解を賜りたい。
 それともう一つは、そうした数値の公表も含めて、銀行に対してきちっと自己査定を求める、これも今回踏み切ったわけで、かつ分布といいますか、五〇%以上乖離があるところが何行あるとかという分布まで我々としては公表して、銀行に対してしっかりとやってもらいたいという強いメッセージを送っているつもりでございます。
 シェアード・ナショナル・クレジット・プログラムの比較等々、これはまさに再生プログラムに書いていることを実務のベースで実行に移そうとしている段階でこういう話が出てきているわけでありまして、中身そのものについては、これは再生機構の役割とも絡みますが、日本の場合、メーンの役割というのを、メーンが持っている情報量、そういうことを含めて非常に重視するというのは、私はこれは一つの方向としてどうしても必要であろうかと思います。
 それによって甘くなるかということでありますが、これに関しましては、例えば再生計画を持っている再生計画企業、再生計画そのものを、また今度は検査でチームもつくってしっかりと検査をして、それで資産査定を厳しくしていくという方向と合わせわざで行っていくわけでありますので、御指摘のようなことが起こらないような仕組みを金融庁全体として着々とつくっているというふうに認識をしております。
 産業再生機構そのものの仕組みにつきましては、これは私たちの担当ではなくて、谷垣大臣の方で制度設計を含めていろいろ御検討くださっておりますけれども、その中でも、やはりメーンの役割を重視するという基本方針のもとに、しかし、民間の活力を取り入れながら、この制度が実効あらしめるように、これは各省が意見を出してしっかりと今制度設計を行っているところであるという点を御認識賜りたいと思います。
五十嵐委員 しかし、では再生機構というのはだれが発案者なんですか。竹中さんが発案者なんじゃないんですか。これを見ていると、二元的で、金融庁の事務当局は余り関知をしてなかったというふうにも見えて、どうも勝手な解釈をしているんじゃないかというふうに見える節もあるし、担当大臣はこの場には出てこないし、再生機構の発案者は一体どなたなんですか。
 預保の下に置いているんだけれども、例えばどういうファイナンスを考えているんですか。例えば政府保証債を預保が発行して原資にするというようなことなんですか。スキームが全然はっきりしていないんですよ。それで、財務省との調整もついていないし、省内との調整もついていない。それで持ってくるというのは余りにひどいと思うんですが、どうなんですか。
塩川国務大臣 どうも言い出しっぺが私だそうでございまして、ちょっとそれで事情を説明いたします。
 私は、随分といろいろな中小企業で苦労してまいりましたし、整理にかかったこともあるし、整理させられたこともあるし、体験してまいりまして、この種の不良債権の整理というのは、要するに大体共通した経済活動の中で動いておると思います。
 そういたしますと、銀行から見ましたら、一つの企業に貸してある不良債権などの整理をするときに、その企業と相談して、一度その企業の中身を不良債権と再生できるものと分ける必要があるということでございまして、そして生きるところは生かしていくということをする。
 その場合に、その企業にいろいろな、メーンバンクのほかにちょうちんがたくさんついていますから、メーンバンクに対してバイスバンクというんですか、その銀行ですね、そこをやはり整理しなければ、企業の整理が進まないんです。それをメーンバンクが中心となってやってもらって、おまえのところの債権は七割で買う、おまえのところは五割で買うとかいって整理をして統合していってもらう。そして、その上で企業の整理をするというのが私たちが経験した順序なんです。そうして、その結果として銀行が、メーンバンクが、その企業のこことここは整理しなさい、これはもうだめです、ここはこういうように合併しなさいというような指図をするということになる。
 ところが、現在の状況を見まして、銀行はたくさんの不良債権を持っていますから、そう一々丁寧にやることができないだろうから、ですから、どこか公的な第三者機関にそういう仕事を委託してやったらどうだろうというのが、私の経験から出た話なんです。それはいいなということになって、ひとつ考えてみようじゃないかというので、現在、準備室みたいなものができまして、財務省の方からも人を派遣せいというので、しております。準備室で十分勉強していると思いますので、どうなるか、これからの先はわかりません。しかし、準備室でその準備をして進める。
 そうすると、資金はどうするんだという話が出まして、資金は、とりあえず預金保険機構の中にポケットがあって、そこから保証をしたら金が出るじゃないかということになって、預金保険機構の政府保証の枠内でその金を使おうかということになった。
 ところが、預金保険機構ではRCCというものもございますから、これと重複してはいかぬから、ですから、金のスキームは、資金のスキームは預金保険機構の枠を使うけれども、しかしながら産業再生委員会というのは別個に、要するにRCCと全く違う形で、独立したものでやっていったらどうだろう、こういうのが、粗雑なことでございますけれども、私の言ったことなのです。それをこれから準備委員会できっちりと煮詰めてもらおうということでございまして、これは役人の仕事やと思うんです。
五十嵐委員 私も、RCCには企業再生はできないから、別に、やはり民間中心になって、一時国有化した銀行を再編して民間にして、それでやりなさいということを申し上げて、RCCから切り離したというのは正しいと思うんですが、預保の下に置いて役人が中心になってこれをやるというのは、まずおかしい話になるし、そのお金の問題でいえば、RCCの再生勘定、これを使うとなれば限られているから、これは大した話はできないでしょうということになるわけですね。だから、そこのスキームをきちんと考え直さなければちゃんと機能しないじゃありませんか、もっと全体のスキームをきちんと考えてきてから表へ出して持ってきてくださいね、こういう話なんですね。
 大臣みずから粗雑だと言われてしまったら、これは何とも言いようがないんですが、本当にもっと、思いつきではなくて、きちんと考えて議会の場に出していただかなければ、これは大変困ると思うんですよ。
塩川国務大臣 いや、ちょっと、それは現在、私が言っていることは粗雑な案だったけれども、それを準備委員会ではきちっと、ベースに乗せたきちっとしたものを、こういう合法的なものにすると。こういう仕事は私たちではできません、役人がこういう仕事はきちっとやる。運営するのは民間人です。これはもう絶対に、役人やとか銀行家やとか政治家、ましてや政治家なんかに任せたらだめです、むちゃくちゃにしてしまいよる。ですから、きちっとした、こういうことを経験した民間人の人にきちっと委員をお願いする、こういうことを私はこの前申し上げたとおりです。
五十嵐委員 いや、だから、準備委員会の準備をきちんとしてから表へ出さなきゃいけないんじゃないですか、こう言っているわけですよ。余りにも思いつきが多過ぎる。緻密な議論がされていない。これは非常に将来に禍根を残す可能性があると思います。
 そういう意味では、重要な問題が余り議論されないままに来てしまった。例えば、その一つが、何度も言っていますけれども、日銀が銀行保有株を買い取るという禁じ手に足を踏み入れた。日銀法の四十三条を、財務大臣の認可でこれをやってしまったわけですが、日銀法というのは、こういう、日銀がリスクをとるということを、これは予想をそもそもしていないんじゃないですか。私は、個別法をきちんと立てて、こういう新たな業務に足を踏み入れるなら、すべきだ、日銀法の四十三条の認可でやるというのは、これは大変な手抜きだ、財政民主主義や財政法定主義に反する、こう思うわけですね。
 アメリカは、十三本ぐらいの、分野ごとに全部法律で大統領ないし政府に予算の支出権を、議会の承認を得て法律にして、そこで初めて支出権限が与えられるわけでありまして、このリスクマネーということは、当然、損があり得る。日銀が損をするということは、最終的に国が、国民がかぶるということでありますから、議会、国民の監視のもとに入らないで、単なる財務大臣の認可でこれを認めてしまうというのは、大変イレギュラーなことだというふうに私は思いますが、それについては、財務大臣はどのようにお考えですか。
塩川国務大臣 この件につきまして、速水総裁から私の方に相談がございました。そのときに念を押しまして、何の目的でおやりになるんですかということを、まずその目的と趣旨をただしました。
 それに対しまして、速水総裁は、金融機関が現在持っておる企業の株式が、これが変動する。それがデフレの影響を受けてもし価格が下落していくということになれば、どうしても含み損というものが大きくなる。ですから、銀行が持っておるところの株式を安定さす必要がある、ここが原点なんでございますと。そのためには、日銀が買い取って保有しておくということも一つのやり方ではないかと思ったということ。私は、それは結構な発想ですなと。
 そこで私は、もしおやりになるんだったら条件がございまして、一つは、長期に保有する。長期間保有することによって、売買に投機性がなくなってくる、薄くなるということで、リスクを回避することができるであろうと。いつまでも銀行がそうべべたこの、一つ安くなっているということはないだろうと思うので、だから、長期に保有するということが一つ。それからもう一つの条件は、できるだけ客観的な基準というものを、買ったり売ったりする基準を明確にする、客観性を持たすということを条件にする。こういうことを言って、私は、結構ですなと申し上げたわけです。
五十嵐委員 全然答えになっていないんですね。個別法でやるべきではないんですか、ちゃんと法律にして国会の承認を得てやるべき事柄ではないのか、日銀法がそもそも想定していない認可ではないのかということを申し上げているわけですよ。それに対して、答えになっていないです、全然。それは、目的は何度も聞きましたからわかりますけれども、それは全く答えになっておりません。
塩川国務大臣 では、もう一度私から返事いたします。
 日銀法の、他業の禁止というところが実はございます。それと、目的が第一条にはございます。第一条の目的のところで、「信用秩序の維持に資すること」、日銀の目的になっております。それから、他業の禁止のところで、いわゆる四十三条でございますが、「ただし、」こうございまして、「ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。」つまり、この目的を達成するため、ということは、第一条に言っておりますところの信用秩序の維持に資することを目的とする、私はそう解釈いたしました。
五十嵐委員 大変な拡大解釈なんですよ、それは。そんなことを言ったら何でもできちゃうことになるわけで、それは、ほかで制限されている、国債を直接引き受けることも、土地を買うことも、何を買うことも、みんなできてしまうんです、そんなことを言っていたら。ですから、私は、それは異常なことだ、国会の審議を経るという財政民主主義、財政法定主義というのにきちんとのっとらなければいけないということを申し上げているわけであります。
 それから、時間がなくなってまいりましたので、聞くべきことを急いで聞いてしまいます。
 合併促進の、再編の法律の方なんですけれども、健全行同士のスキーム、健全行同士の合併に公的資金を注入し得るというスキームはおかしいんではないか。粉飾を実はして、本当は過少資本行なのを隠して、そして合併してしまえば、責任を問われないわけですね、経営者が。そういうことに使われる、悪用されるおそれがあるではないかということを申し上げました。
 特に私は危惧しているのは、朝銀、朝鮮銀行信用組合の問題を何度も取り上げてきた人間として、朝銀の北東や西あるいは中部といった信組は、実態的にはかなり財務内容は悪いと聞いています。これを合併して、実は責任をとらせないままに公的資金をやみの中で注入するということがあってはならないということを私は思っているわけですが、このような合併話が持ち上がってきたときも、これは例外なくやるんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 金融機関が本法案に基づきまして資本増強を受けるに当たっては、経営基盤強化計画の認定を受ける必要がございます。特別措置による支援を受けることを踏まえまして、認定に当たりましては、経営基盤強化計画の実施によりまして業務の効率性の向上が図られ、その収益性が相当程度向上すること、それから計画が円滑かつ確実に実施されること、それから対象となる金融機関が健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当すること、こういうものを要件としておるところでございます。
五十嵐委員 今のは、まだ破綻するに至っていない朝銀信組の問題について私は言ったわけですけれども、破綻をしてしまった朝銀信組の処理の問題についても、まだ完全に決着がついておりません。
 私どもは、朝鮮総連向け融資の実態を明らかにすべきだ、それができないのであれば、少なくとも、処理の段階で厳しい責任追及作業をこれからしていくんだ、そして実態解明をするんだという意思を政府がはっきりと明確に宣言するべきだという考え方を持っているわけですが、これについてはいかがですか。
竹中国務大臣 金融機関の個別債務者に係る情報につきましては、守秘義務の対象として開示できないことを御理解いただきたいと思います。また、総連向け融資については、責任追及作業、債権回収作業の過程でその実態解明を進めているところでありまして、この作業の途中段階で情報を開示することは、相手方に当局の情報把握状況をみずから明らかにすることになりますので、差し控えさせていただきたいと思います。
 しかしながら、開示可能となった段階においては、国民への説明責任を果たす観点から積極的に開示することを基本的考え方とし、このため、預保、RCCの責任追及作業、債権回収作業を徹底的に行ってまいりたいと思います。
 このような考え方のもと、未処理の破綻朝銀を処理する際には、一層厳格な責任追及作業、債権回収作業を通じ、開示可能となるよう実態解明を行い、全体像を明らかにする旨を表明することにより、国民への説明責任を果たしていきたいと考えております。
 いずれにしましても、当局としては、預保、RCCと密接に連携しつつ、国民の負託にこたえられるよう最大限努力をしてまいりたいと思います。
五十嵐委員 まだ追及すべきことはたくさんあったんですけれども、時間が来ましたので、終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 民主政治ですから多数決が原則なので、多数党の出した案が通るというのはある意味当然の話だと思いますが、我々の意に染まない案であっても、成立をすれば、竹中大臣は行政の責任者として、それに基づいて着実に行政をやっていかなきゃいかぬということになるわけですね。
 ペイオフの二年延期ということと、あと金利がつかなきゃ全額保護するですか、何か銀行にたんす預金せいと言っているような案で、また流動性の預金も保護するというふうなことになっていますけれども、この法律を通した後、お伺いをしたいのは、ペイオフはこれで二回延期をされたことになるわけですね、法案を通して二年延期をした後、再々延期というものはないということを御答弁いただきたいんですが。
竹中国務大臣 金融再生の作業は大変難しい仕事であると思っております。しかしながら、日本の経済の再活性化のために、まさに今回の延期を繰り返すことのないように全力を尽くす必要があると思っております。
 そのために、今回、資産査定のさらに一層の厳格化、自己資本の強化、それとガバナンスの強化という総合的なプログラムを準備させていただいたわけでありまして、このプログラムを着実に実行することによりまして、平成十六年度に問題の終結が実現するよう努力をするつもりであります。
中塚委員 直接の行政の責任者になられたからそういう御答弁になってしまうんでしょうけれども、今までは、経済財政担当大臣として、ペイオフは絶対に解禁は延期しないというふうにずっと言われていた割には、何か御自身がおやりになったら、そうならないように努力しますみたいな話になっている。
 加えまして、定期性預金のペイオフというのは、もう解禁されているわけなんですけれども、この定期性預金のペイオフを再凍結するということは、流動性の方の二年間凍結期間のうちにあり得ないということを伺いたいんですが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 御承知のように、定期性預金の全額保護措置につきましては、ことしの四月に終了して以来、預金者による金融機関の選別等を意識した金融機関の経営基盤の強化に向けた努力が進んでいるところです。全額保護に戻すということは、金融機関の緊張感ある経営姿勢に逆行するものであるというふうに思います。
 また、本年三月までのすべての預金の全額保護措置の際は、元本一千万円とその利息を超える部分の保護財源は、特別保険料収入に加え、国民負担、交付国債によっていたところでありまして、こうした負担を再び求めるのかという問題があります。
 以上から、定期性預金について全額保護措置に戻ることは適当ではないというふうに考えております。
中塚委員 ペイオフ二年延期を決めたにもかかわらず、流動性預金は金利がつかなきゃ保護するとか、決済性預金は保護するとか、本来、延期するということだけ決めれば別にそういうのは必要ないはずなんですけれども、質疑でもっとただしていきたいというふうに考えておりましたが、次に行きます。
 先ほども話題になっていました産業再生機構なんですが、もちろん細部は、別に担当大臣ができているということですから、まだ細部については決まっていないことの方が多いのでしょうけれども、考え方の問題として、この間、金融機関の経営者を参考人で招致をして質疑をしたときも、いろいろな参考人から声があったわけですが、私自身は、産業再生というのは銀行の本来業務であって、要は、貸した先がちゃんとお金がもうかるようになっていけば、それによって利息がリターンとして入るわけだから、産業再生というのは銀行の本来業務である。その本来業務であるものができなかったものを、どうして国が引き取れば産業再生ということが可能になるのかどうかというところ、いかがでしょう。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
竹中国務大臣 御指摘のとおり、今、制度設計でありますから、非常に一般的な基本的な考え方ということにあくまでなりますが、銀行にとっては、貸付先を健全にあらしめて、そうすることによってみずからの債権の確保、回収を図るというのは、当然のことながら大変重要な仕事に入ってくると思います。
 しかしながら、現状の日本の経済において起こっていることは、この再生を要する部分、ないしはそれも含めた不良債権の部分が非常に大きなウエートを占めていることによって、銀行のリソースだけではなかなかそうしたものに対応できないという状況が現実にはあるのだと思います。そういう意味では、いわばこの大変厳しい状況下で、ある意味で国が音頭をとって、そうした再生のリソースを一元化してそれを活用していくというような仕組みは、私はやはり今は必要になっているのではないかと思います。
 ただし、その場合に、先ほど塩川大臣の御答弁にもありましたように、これはしかし国が一件一件の経営判断に直接関与してできるなどということはあり得ないわけでありまして、そこには民間の判断、民間のリソースを思い切って活用するような仕組みを柔軟に入れていかなければいけない。したがいまして、その制度設計が極めて重要であるというふうに思っております。
中塚委員 お答えになっているようでなっていないんですけれども、銀行ができないということをおっしゃいました。では、それを国がやるということで、その国には民間の人を持ってくるということなんですが、例えば佐々波委員会だって民間だったし、今のRCCだって社長は民間ですよね。それがうまくいっているかというと、決してそういうふうには言えない、私はそういうふうに思います。
 次に、きょうは谷口副大臣にお伺いをさせていただきますが、繰り延べ税金資産の問題、税効果会計の問題なんですが、平成十年の金融国会のときに、谷口先生、副大臣はもともとこの分野に御造詣の深い方だし、御自身公認会計士でもいらっしゃいます。いろいろな交渉等の場面も実際に副大臣がおやりになったことが多いわけなんですけれども、そもそも、税効果会計というのは、不良債権処理のためにあのときに決めたわけですね。それで、不良債権処理のために決めた税効果会計を、今度、金融再生プログラムで、また不良債権処理のために見直すということになっている。そういうことについて、どういう御意見をお持ちなのか。
 税効果会計を導入することによってやらなきゃいけないことは不良債権の処理だったんですけれども、それができていないから、再生プログラムが出て、また資本注入しようみたいな話になっておるということにかんがみれば、では、あのときの税効果会計の導入というのは間違いだったのかということにもなると思うんですが、いかがでしょうか。
谷口副大臣 中塚委員とは、一時、一緒にさせていただいたことがございまして、質問をいただいたわけでありますけれども、まさにおっしゃったように、現行の企業会計と、もう一つは、今、税務会計と申しますか、この二つがあるんだろうと思いますね。
 現行の企業会計というのは、費用収益対応の原則で、発生主義に基づいた、期間帰属をきちっとした会計なんですね。一方で、税務会計というのは、これは税金目的で行われるものでございまして、企業会計の収益、費用と、また税務会計の益金、損金との間に差異が出てくるわけでございます。その差異についての調整を行えばどうかというものがこの税効果会計であります。
 ですから、今まで、税効果会計が入れられない前は、税引き前当期利益の後の法人税等というものは、法人税充当額と申しますけれども、これは課税所得の計算をしておった。これを、税引き前利益に見合う形の、いわば広い意味での費用収益対応という観点で、この法人税等を税効果会計を考慮した形でやるということは国際的な動きでありますから、もう当然これを採用することが望ましいわけで、そんなことでこの税効果会計が入れられたわけです。
 昨今の議論を聞いておりますと、税効果会計というのは非常に悪いんじゃないかというような議論もあるわけでありますが、会計の分野でいきますと、そのような、むしろこれを導入するのが望ましいということがまずあるんだろうと思います。
 その際には、やはり資産性の検討と申しますか、資産性のないものを税効果会計で繰り延べ税金として処理するということは望ましいことではないということでありますから、先ほどの議論の流れでいっても、それは見直していく必要があるということでありますけれども、一方で、税効果会計はむしろ導入が望ましい、こういうことでございます。
 ですから、このような企業会計の正当な利益を算出するという観点から、これは非常に重要だということで言っておるわけでございますが、その後、自己資本比率の問題になるわけでありますけれども、これは金融庁が所管でございますから、金融庁の判断でなされるわけでございますが、そもそも私が言いたかったのは、繰り延べ税金の処理については非常に慎重にやる必要があるわけでございますが、一方で、これを入れるということに対しては、むしろ望ましい方向なんだということを言いたいわけであります。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
中塚委員 いずれにしても、結局、何のためにやったかということが大変に大事なわけで、だから、導入した以上は不良債権を処理しなきゃいけないわけですね。処理ができないで今日まで至っていて、また金融再生プログラムみたいなものが必要になってくる。
 だから、そういう意味で、次に、景気、経済と不良債権との関係、最後に竹中大臣に伺いますけれども、銀行の貸し出しが伸びない、それは、不良債権というものがあって貸し出しが伸びないということを常におっしゃるわけですけれども、銀行自体は、バブルがはじけた後の、バブル要因の不良債権というのはほとんど処理し終えたということをこの間、参考人招致で経営者の皆さんも言っておられました。今、やはり問題なのは、新規発生の不良債権ということなんだと思うんですね。
 新規発生の不良債権をどうするかということですけれども、新規に発生しているというのは、やはり日本の産業の構造調整にひっかかっている部分が圧倒的に多いわけですね。過剰債務を抱えているということ、また、グローバル経済に対応できないこととか、そういうふうなことが多いわけで、だから私は、産業再生ということでは物事の解決にならない、日本の産業構造というものがそういうグローバル化なり技術革新なりにちゃんと対応していくようなものを考えていかない限り、やはり不良債権の問題というのは解決をしないというふうに考えております。
 だから、貸し出しが伸びないのを銀行の経営者に聞けば、資金需要がないんですと言うけれども、要はそれは、銀行にしてみれば、貸したいところは借りてくれないし、借りてほしくないところは貸してくれということなんだろうというふうに思うわけですね。そういう意味で、では不良債権の穴を税金で埋める、資本注入で埋めるということで、何の問題の解決にもならない。
 銀行が貸している先の産業側の方を、そっちの構造調整なり構造改革ということについて、大臣は、金融担当大臣におなりになる前から経済財政の御担当をされて、デフレ対策も担当されていたわけですけれども、一年半たってもなかなかそれがちゃんと達成できているようには全然見受けられないわけなんですが、日本の産業の構造調整ということ、あと、景気対策ということ、不良債権の関係について、お願いをします。
竹中国務大臣 中塚委員御指摘のように、不良債権の処理、これはぜひとも加速させなければいけないのですが、同時に、産業構造のダイナミックな転換を通して資金需要が出てくるような、そういう状況をつくっていかなければならない、これはもう全くそのとおりであろうと思います。
 そもそも九〇年代、失われた十年といいますけれども、年平均しますと一%強の経済成長はしていた。昨今でも、四―六月期は年率で四%、七―九月期は年率で三%の経済成長をしている。そういう状況で、不良債権がそれでも出てくるというのは一体どういうことなのかということ。
 これはやはり、あえて経済の活性化と呼ばせていただきますが、そういうことに関する規制緩和でありますとか税制の改革でありますとか、そういうことをダイナミックにやっていかなければいけないというのは、全くそのとおりでありまして、かつ、それが経済財政政策担当大臣としての私の一つの重要な仕事であると思っております。
 骨太の第二弾の中で三十のアクションプログラムを書きました。そのアクションプログラムに基づいて、特区もようやく実現しつつあるわけでありますし、税制改革も、来年度の予算編成の中で、ここ一カ月ぐらいの間で活性化のための減税の姿をあらわしてくるというふうに思っております。
 こうした観点、あわせて不良債権の処理の加速と、今申し上げたような経済活性化を合わせわざで行うことによって、初めて日本の経済は再生することが可能になるんだと思います。この面はこの面で、ぜひとも引き続きしっかりとやって、少しずつですけれども、もう間もなく形が出るようになってきておりますので、そこはしっかりとやりたいと思っております。
中塚委員 終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 再編促進特別措置法についてお聞きをしたいと思います。
 この法案では、金融機関の合併を促進するということのためにさまざまな手だてを盛り込んでいるわけであります。その一つが、合併で自己資本比率が低下をした場合、公的資金を投入するという仕組みがあります。
 政府は、地域金融機関というのは自己資本比率四%以上ということを求めておられますけれども、例えば、自己資本が一二%あるいは一五%、こういうことになりますと、地域金融機関としては相当高い自己資本比率という部類に入ると思うのですけれども、大体そんな感じでよろしいでしょうか。
竹中国務大臣 この法律的枠組みのねらいというのは、今委員既にお話しくださいましたけれども、現実に金融機関からヒアリングをいたしますと、自己資本比率が健全な水準にある銀行が合併等を行う場合においては、それよりも低いところと一緒になってその低下が認められるような場合には、やはり若干ちゅうちょする、一つの障壁になる。
 このため、この法案では、金融機関から申請があった場合には、その自己資本比率を合併前の水準に回復させるために必要な限度において、預金保険機構が資本増強を行うことができるという形にしているわけであります。
 この資本増強の申請が行われるかどうかというのは、これは個々の経営判断によるために一概には言えませんけれども、資本増強の額については、合併の前の自己資本比率を上限として、これが本当に必要であるか、ないしはこれは回収可能性も考慮して決定されることになるというふうに思います。制度上は、資本増強の可能性を排除する必要はないんだというふうに思っております。
佐々木(憲)委員 お聞きをしたのは、一二%あるいは一五%というような水準というのは、地域金融機関としては相当高い水準にあるというふうに私は思うので、その認識をお聞きしたんですが、当然そうだろうというふうに思うんです。
 それで、その場合は、これは数字だけから見ますと、いわゆる健全性という点では非常に高いものだというふうに政府の基準では判断されると思うんですね。しかし、一二%、一五%の二つの金融機関が合併をするということになりますと、それでも公的資金を使わなければならない、自動的にこれは使うということに当然なるわけですね。そういう場合でも、これは資本注入をやるわけですか。
竹中国務大臣 今申し上げましたように、資本増強の申請が行われるかどうか、これは個々の経営判断でありますから、一概には言えないということになります。資本増強の額については、合併等の前の自己資本比率を上限として、今申し上げたように、申請が行われるか、それと必要性、回収可能性を考慮して決定されるわけでありますから、入れることになるかどうかということになりますと、これはケース・バイ・ケースであるということになろうかと思います。
 ただし、私が申し上げましたのは、制度上は資本増強の可能性を排除する必要はないだろうというふうに考えているわけでございます。
佐々木(憲)委員 そうすると、制度上は公的資金の投入というのがあり得ると。しかし、そういう個々のケースによって、ない場合もあるということなんでしょうか。
藤原政府参考人 まず、先ほど御質問のございました一二%か一五%、これが高いのか低いのかというのをちょっとお答え申し上げますが、十四年三月期で見ますと、大体、地方銀行の自己資本比率、これは単体ベースですが、平均で約一〇%弱、第二地銀も八%強、それから信用金庫で一〇%強、信用組合で九%強という状況でございまして、比較的高いところは多うございますが、こういう状況でございます。
 それから次の、じゃ、合併した場合、必ず投入するのかというのは、先ほど来大臣から御答弁申し上げていますように、それはそこまでは、申請してきた場合我々として排除するわけではないわけでございますが、まず、そういう高いところが申請してくるかどうかというのはよくわかりませんが、仮に申請してきた場合は、やはり幾ら高い金融機関といいましても、それが若干低い金融機関と合併することが、自己資本比率が下がるということが風評につながったりして合併を阻害する要因になるというふうに、我々はいろいろの金融機関からヒアリングした際にそういうお話がございましたので、それが障壁になっているのであれば、そういう可能性は排除しない方がよろしいというふうに私ども今考えております。
佐々木(憲)委員 まあしかし、かなり、自己資本比率が一五%などというところになりますと相当高いわけでありまして、それが合併でちょっと落ちたからといって国民の税金を使うというのは、これはなかなか国民には納得ができないのではないかと思います。
 もう一つお聞きしますけれども、この対象というのは地域金融機関というところに限定されるのか、それとも、例えば大手の銀行が合併をする、自己資本比率の差のある二つの銀行が合併する、そういう場合もこれは対象になるということでしょうか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の法律におきましては、金融機関ということにしておりまして、対象金融機関から大手の銀行を排除しているわけではございません。これは、大手といいましても、例えば地域の銀行に特化するというような選択とか、あるいは地域の金融機関と合併するというようなさまざまな選択の余地がありますので、これはあえて排除しておらないわけです。
 ただ、我々、今回の法の目的としております財務基盤の強化でありますとか健全性の確保とか、そういうことを考えます場合、合併によってより効果が達成されますのは、むしろ地域の金融機関というふうに認識しております。
 したがいまして、今般お願いいたしております自己資本の増強策の積算におきましても、大手の金融機関ということはカウントしておりませんで、専ら主眼は地域の金融機関の合併ということを念頭に置いております。
佐々木(憲)委員 そうなりますと、これは国民の税金を使う方法をたくさん、今回、政府の金融再生プラン、それから今回の法案の提起、これを合わせますと三つのルートがある。一つは、金融システム的な危機が進行するという場合に注入できる。それからもう一つは、それ以外の枠組みを考えて検討している。それで第三は、合併の際に、大手も含めて、自己資本比率の格差がある銀行同士が合併したら税金が使われる。これは、かなり野方図な税金の使い方ではないでしょうかね。
 これは、健全な銀行同士の合併になぜこういう公的資金を使う必要があるのか。金融機関というのは、どのような形で経営を強化していくかというのはこれは自己責任に基づいた経営判断の問題でありまして、対象となる金融機関の自己資本比率に上限がない、それから対象となる金融機関の規模にも上限がない、これは、体力のある金融機関に税金を投入するというわけでありまして、全く税金のむだ遣いだということを指摘しておきたいと思うんです。
 それでは、仮に、投入した資金が中小企業の融資に回る保証はあるのかという点ですが、資本注入を受ける金融機関というのは、経営基盤強化計画を提出するということになっております。しかし、法案の経営基盤強化計画の記載事項を見ましても、「経営基盤強化による収益性の向上の程度」という項目はありますが、中小企業向け融資に関する規定というのはありますか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の法律におきましては、合併等の組織再編というのが経営基盤強化を通じまして融資の円滑化を可能にするものであって、健全な中小企業融資の拡大に資するものというふうに考えております。
 ただ、本案におきましては、その政策支援の前提としまして、先ほど先生がおっしゃいました金融機関等が提出いたします経営基盤強化計画、この認定に当たりまして、金融の円滑が阻害されないということを要件としまして、融資体制等については、計画認定に当たりましてチェックをしていきたいというふうに考えております。
 それとあわせまして、先ほどから申し上げておりますように、今回の施策は、主として地域の金融機関のことを念頭に置いておりますので、地域の金融機関、すなわちその融資対象は中小企業ということでございますので、そういうところの融資が円滑化されるということに資するものというふうに考えております。
佐々木(憲)委員 阻害されないという程度の規定があるわけでありますが、しかしそれも、計画を認定する要件なんですね。これはあくまでも認定段階の話でありまして、計画の中に中小企業向け貸し出しをふやすというものは盛り込まれていないわけであります。
 ですから、中小企業向け貸し出しについては、本来こういう計画の中に盛り込んでその履行状況をチェックするということをやっていかないと、税金は投入されたわ、しかし中小企業向けの全体の貸し出しは減ってしまう、こういうことがあってはならないと思うんですね。
 竹中大臣にお伺いしますが、やはり中小企業向け貸し出しの中身もこの計画の一環としてきちっと履行状況を判断する、指導する、あるいは監視する、こういうことが大事だと思うんですが、いかがでしょう。
竹中国務大臣 委員のお尋ねは、中小企業向け貸し出しのいわば数値目標みたいなものをつくるべきではないかということなのだと思います。
 そもそも今回は、地域金融機関を主として念頭に置いているわけでありますから、現実問題としてかなりのウエートが中小企業向け貸し出しであるというのが現状であろうかと思います。
 加えて、これは自主的な合併等に係る支援措置でありますから、経営の自主性をやはりできるだけ尊重しなければいけない。そうすることによって合併等経営基盤の強化を図るわけでありますから、貸し出しの金額に関する数値目標まで徴求するということは考えてはおりません。
 しかしながら、融資体制等については、先ほども言いましたように、計画認定に当たりチェックをすることとしていますし、また、中小企業貸し出し等資金供給の円滑を図ることの重要性については、あらゆる機会を通じて金融機関に対して努力を要請しているところでありますので、この法案の運用においても同じように十分留意をしてまいりたいというふうに思っております。
佐々木(憲)委員 塩川大臣にお伺いしますが、前回のこの委員会で大臣がおっしゃっていた、金融機関の合併の一つの基準として、腰だめの数字とおっしゃいましたが、預金量で、この地域金融機関、特に信金、信組の場合には八千億円、それから地銀は一兆円という一つの基準を示されまして、あくまでも金融機関の合併が必要であるということをおっしゃったわけです。
 しかし、先週金曜日、十五日の参考人質疑で各協会の代表に私お伺いをいたしました。そうしましたら、信用組合の田附会長は、この基準というのを聞いてびっくりした、量的なものでミニマムラインを設けるのは極めて問題があるというふうに言っておられましたし、信金の長野会長は、金融機関の適正規模は地域によって違う、一千億円でもその地域で役割を果たしている金融機関もあるというふうに述べておられます。また、第二地銀の森本会長も、規模の大小で物差しを当てるということについて、個人の意見ですが余り賛成できないと。それから地銀の平澤会長は、規模が大きくなると効率性がよくなるという面もありますが、それによって地元と密着して相手の懐まで入って金融をやっていく面が失われる、こういうふうに述べているんですね。
 実際に地域金融を担当している方々は、塩川大臣の考えと全く違うわけであります。これはやはり現場感覚と塩川大臣はかなりずれているということになると思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 それは聞く相手によってそうなりますよ。当然ですよ。だって、自分で経営している人が、いや私は小さいから合併を望みますとか、そんなばかなこと言いませんわな。しかし、佐々木さんは金融を業務でやったことないでしょう。私はそれをやってきたんです。地域金融をやってきましたからね、よくわかります。金融機関ほど生産性というもののきついところはないんです。つまり、従業員一人当たりの預金量、動かし得る生産性ですね、量というもの、これは決定的な条件を持ちます。
 それはなぜか。これは、現在金融機関が不安状態になっておりますけれども、この中の一つの原因にオーバーバンキングがありますよ。このオーバーバンキングを解消しないと、ペイオフの問題も解決しないんです。そうなるとするならば、金融機関はある程度体力があるものにしなきゃだめです。都市銀行の従業員一人当たりの預金扱い量は二十二億ぐらいだと思います。私、ツボカンでちょっと当てました。信用金庫ですと七億です。これじゃ勝負にならないんです。信用組合では五億ないんです。農協は三億ぐらいです。こういうのを、やはり金融機関は自由競争でやっているんですから、そこらをよく考えていただいたら、適正規模が必要だということを考えていただけると。一番賢い佐々木さんなんか、こんなことわかり切った話じゃないですか。
佐々木(憲)委員 塩川大臣、大分、大きいことがよいことだという古い考えにかなりとらわれていると思うんですね。現場の実際に金融をやっている方が、やはり規模よりも内容だと。特に学者の研究、私、きょう時間がないので紹介する時間ありませんが、学者自身も、地域密着で、狭い地域で密度の高い金融をやっている、そういう金融機関が安定しているというふうに実証的に研究もされていますので、どうかそういう点も、よく現場の声を聞いていただきたいというのを最後に申し上げたいと思います。
小坂委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。外ももう真っ暗になりましたし、皆さんも長時間の審議でお疲れと思いますが、最後の質問ですので、よろしくお願い申し上げます。
 この二法案をめぐって計三回の審議が行われましたが、私にとりまして、いまだに、なぜ政府がきちんとした説明責任も伴わずペイオフ解禁の延期を実施されるかということが、今もって判明いたしません。このままでは、銀行はよくて金庫だという、ただお金をそこに閉じ込めておくだけのものになるのではないかという不安を抱きますが、きょうはもう、その件は何度も聞きましたので、政府提案については質疑いたしませんで、民主党の出されました修正案について質疑をまず冒頭させていただきます。
 この修正案では、決済性預金、こうしたものをまずつくっても、つくる労力もむだであるし、つくることによって、そこにまたある資金の動きをとめてしまうということもあって、二重に問題が大きいという御指摘が海江田委員からもありましたし、私もその点はそう思います。
 そこで、その点に関しては民主党の修正案を評価いたしたいのですが、このペイオフ解禁の一年延期というふうな法案になってございますが、提案の理由を読みますと、民主党金融再生ファイナルプランを直ちに実行することです、しかし、その間、一年間程度の時間を要するというのであれば、ペイオフを再延期するのもやむを得ない。この部分は、読みましても、申しわけありませんが、実際にどのようなことを語っておられるのか。
 例えば、一年間でこのさまざまなペイオフに向けた段階が準備できるとされる客観的な証拠と申しますか、客観的な部分はどうお考えかということで、提案者から御意見を伺いたいと思います。
五十嵐委員 お答えをいたします。
 大事なことは、これは金融システムを早く健全化するということなんですね。何よりもスピードが大事だ。そのスピードを怠れば、貸しはがしがその間に起きてしまう。いわば執行猶予期間なんですね。執行猶予期間というのは、法律上もそうなんですが、判決で執行猶予が長いと、これは罪が深いんです。一年ぐらいの間に健全化をするということが大切だと思います。
 私どもは、金融再生ファイナルプランで金融危機を認定して、私どもが提案をしてきた民主党案の金融再生法そして早期健全化法を復活させて、強制的な注入、厳格な査定を直ちに行って強制注入を行う。そして、十分な引き当てを積ませて健全性を早く取り戻す。健全性が早く取り戻されれば、これは貸しはがしがなくなるわけですね。その後も速やかに再民営化を行って、そして健全な、中小企業にもお金を貸せる銀行システムを取り戻すということが必要だ、何しろスピードが大切だということを申し上げております。
 韓国の場合でも、一年半足らずの間にあのIMF管理から立ち直って、金融が立ち直りました。韓国で一年半以内でできることを日本で一年でできないことはない、こう思っている次第でございます。
阿部委員 では、引き続いて、そのような趣旨は十分理解した上で、踏まえて、この論議がずっと続けられてきました中で、果たしてそのように全体が動いておるかというと、思いは私も五十嵐委員とそうは変わらないと思うんです。そして現実判断をしたときに、現実的整合性はどうか。
 これは、審議が重なってまいりましたから、この時点で出る修正案といたしましては、例えば当初案であれば私も了解いたしますが、いろいろな審議をする中で、例えば竹中大臣のおっしゃることにも、与党内でも賛否両論があり、財政的な裏づけもまだまだであり、論議は失礼ながら迷走しておる。
 その中で、現実的にこの修正案、どのような意味をお持ちか、この一点もお願いいたします。
五十嵐委員 お答えいたします。
 確かにおっしゃるとおり、悩ましいところでもありますし、今の政府のやり方をそのまま続ければ、私は二年でも怪しいと実は思っているわけですが、問題先送りが続いて、金融システム不安はそのまま継続され、そして貸しはがしもますますひどくなるんだろう。最悪の選択だと思っていまして、先ほど執行猶予期間と言いましたけれども、執行猶予を切らなかったら、逆にこれはずるずると、こうした悪化、問題の先送りが続いてしまうだろう、私はこう思っている次第でございます。
 では、民主党が提案している金融再生ファイナルプランが直ちに実行できるのか、こういうお話だと思うんですが、それは政権交代しかございません。政権交代が実現されれば、これは私どもは一年以内にやってみせるということでございます。
阿部委員 私どもとて、野党筆頭の民主党に一日も早い政権交代を実現していただきたいと思いますが、現実の政治の動きですから、お互いに頑張りたいと思います。
 ここで、極めて現実に戻りまして、塩川財務大臣にお伺いいたします。
 先般の総合デフレ対策というところで打ち出されました五兆円程度の補正予算ということについてのお伺いですが、総合デフレ対策にも、最も大切な部分はいわゆるセーフティーネットの充実、先ほど来審議されております中小企業のいろいろな支援策と同時に、もう一歩雇用の問題。失業率もずっと高どまりでございますし、それから、これから不良債権処理が行われた場合に、経済産業省試算ではさらに三十万から五十万、また坂口厚生労働大臣も、三十万からの失業が増大、実質、率にして〇・八%増大するのではないかと言われております。
 塩川大臣にあられては、この補正予算の中で雇用対策というところ、私自身はそこにウエートを置くべき、特に今高校生の新卒が、この間有効な、実質に就労に結びつくような方が三人に一人、北海道では十人に一人という数値になっており、幾ら塩川大臣が若い者に夢を持て、夢を持てと言っても、職がなくては夢も持てないと思いますので、雇用対策というところを本当に充実していただきたいと存じますが、お考えと御決意のほどを伺いたいと思います。
塩川国務大臣 ちょうど昨年の九月でございますが、第一次補正予算をいたしましたときは、重点を雇用対策に置きまして予算を編成いたしまして、あの当時で一兆数千億ぐらいの事業規模だったかと思っておりますが、いたしました。
 それで、今回も、不良資産の整理が加速されるということになるならば、雇用対策、それから中小企業対策に十分な措置を講じなきゃならぬと認識しております。
 したがって、近く十四年度補正予算を計上しなければならないのではないかという判断を持っておりますけれども、その際には、ただ税収の不足を補うというだけではなくして、雇用対策と中小企業対策を兼ねたセーフティーネットにも十分な配慮もいたしたいと思っております。
阿部委員 本当の意味で、ぜひとも日本の次の世代を支える若い人たちの現状をお考えいただき、手厚い雇用政策をお考えいただければと思います。
 次の質問ですが、先ほど塩川大臣は、御自身の経験から、銀行の、さまざまな都銀、地銀、信金、信組の方々が、一人当たり行員がどれくらいの労働生産性があるかというお話をされておりまして、おもしろいなと思って伺っておりましたが、私が本日問題にしたいのは、いわゆる国税職員、マル査の女ならぬマル査の男、女もいるでしょうが、その国税の職員の問題でございます。
 まず実態についてですが、国税、ことし税収減でございますが、滞納状況について、法人税並びに消費税に関しまして、担当部局の御答弁をいただきます。
立川政府参考人 ただいまお尋ねのありましたここ数年の滞納の状況についてお答えいたします。
 滞納がバブル崩壊以降増加傾向にありましたため、国税庁といたしましては、平成十一年度以降、組織を挙げて、滞納発生の未然防止と滞納整理の促進に努めてきたところであります。
 滞納整理中のものの額、いわゆる残高でございますが、これは平成十年度末の二兆八千百四十九億円をピークといたしまして、平成十一年度以降、三年連続で減少を続けております。平成十三年度末では二兆四千八百四十二億円となっております。
阿部委員 ただいま御答弁をいただきましたように、確かに滞納額は年々少しずつ減少しておりますが、現在でも二兆四千八百四十二億円。平成四年度がおよそ二兆円ですので、せめてそのレベルまで下げることができれば、逆に税収としても五千億の増収になるというふうに考えます。
 そして、そのためには、やはり現在滞納している方、あるいは法人税で不正な申告をしている方等々を調査するための税務職員の増員ということも私は当然必要となってくると思うのです。今は、課税サイドでいろいろ働く職員が、税収サイド、徴税というんでしょうか、実際に税収を催促に行くような方にまで手を広げて兼務しなければならない状態で業務が行われているということで、実際にチェックを受ける法人も、二十三年に一回しかチェックを受けないような状態が引き続いておるということです。
 法人実調率四・三%まで下がっているということですので、ここは先ほどの一人の職員の労働生産性ということを考えました場合に、ぜひとも国税職員のしかるべく増員、今インターネット時代で、これから申告制になろうかというときに、税をめぐる業務は多様化しておりますので、財務担当大臣としてのお考えと御決意、それから御配慮のほどを、私は恐縮ですが大臣にいただきたいので、一言で結構です、よろしくお願いします。
塩川国務大臣 いい提案をいただきましたので、これをぜひ省内に持ち帰って、阿部先生からこういう質問があったからどうするかということの相談をいたします。
阿部委員 相談じゃなくても前向きに、これは大臣、どこから、やはり国民が公平性、公正性で税を納めて成り立っていい国ですから、よろしくお願いいたします。
 最後に、竹中金融担当大臣にお願いいたします。
 この間、不良債権処理か景気対策か、右か左かとやってきましたが、実はその真ん中に、あんこの部分に産業再生あるいは産業創造の部分があるということは、これまで何回かの質疑で大臣もおっしゃっておられました。
 私は、この間の地域金融機関の合併、適正サイズという問題と同時に、金融と地域の雇用と産業再生が連動して回っていく仕組みということについて、大臣がどうお考えか、この一点だけお伺いして、終わりたいと思っております。
竹中国務大臣 地域の中で、そうした金融と産業の活性化、それを実行する主体という一つの重要な役割は、私はやはり地域の金融機関であろうかというふうに思います。地域の金融機関はそうした役割をこれまでも果たしてきましたし、そこに特区とか新しい刺激が加わりまして、委員御指摘のような活性化が進んでいくということを期待しているわけでございます。
阿部委員 小泉政権になりましてから、需給ギャップも三十兆と、極めて異様な数値でございますので、今おっしゃられた観点から、さらに地域の産業の活性化に向けて御尽力いただきたいと思います。
 ありがとうございます。
小坂委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。林田彪君。
林田委員 自由民主党の林田彪です。
 私は、与党三党を代表して、ただいま議題になっております政府提出の預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案について賛成の立場から、預金保険法等を一部改正する法律案に係る民主党提出の修正案について反対する立場から討論を行います。
 まず、預金保険法等の一部改正法案について申し上げます。
 現在、各金融機関は多くの不良債権などの問題を抱えており、預金者は金融機関に厳しい目を注いでおります。そうした中、構造改革を加速しつつ経済を持続的な成長軌道に乗せるため不良債権処理を加速するに当たって、金融システムの安定に配慮しつつ、中小企業金融等金融の円滑化に配慮することが不可欠であります。したがって、現在の流動性預金の全額保護措置を十七年三月末まで二年間延長し、ペイオフ解禁は不良債権問題が終結した後の十七年四月とすることは適切と考えます。
 また、経済取引にとって決済を確実に完了させることが重要であることは言うまでもありません。要求払い、無利息等を要件とする決済用預金を全額保護する制度を創設し、決済のためのセーフティーネットを設けることは、国民経済にとって極めて有意義なことと考えます。
 以上から、本法案に賛成し、一刻も早い成立が必要と考えます。
 次に、金融機関組織再編特別措置法案について申し述べます。
 本法案は、経営基盤を強化するための自主的な経営判断により組織再編成を行おうとする金融機関を支援するための措置を盛り込んでおり、我が国金融システムをより強固なものとするため時宜を得た法案であると考えます。とりわけ地域金融機関については、地域経済の中核として地域の資金需要に適切に対応するため、融資対応力、経営基盤の強化は不可欠であり、こうした点についても本法案は十分にこたえるものになっていると考えます。
 以上から、本法律案に賛成し、一刻も早い成立が必要と考えます。
 なお、民主党提出の修正案につきましては、不良債権処理の加速化に対応した金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化の配慮を欠き、また決済機能の安定確保も考慮されておらず、反対するものであります。
 以上です。(拍手)
小坂委員長 永田寿康君。
永田委員 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、政府原案に反対し、民主党提案の修正案に賛成の立場で、また、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案に反対の立場で、討論を行います。
 もはや、小泉内閣の経済政策が行き詰まっていることは明らかであります。総理は、ペイオフは構造改革の一環であり予定どおり実施すると公約したにもかかわらず、政策転換の説明責任を果たすこともなく、二年間の延長を決めました。また、経済失政の結果、税収が大幅に落ち込み、国債発行額三十兆円以下の公約も放棄せざるを得なくなりました。内閣発足後一年半の間に新たな経済政策を次々と発表したにもかかわらず、現実に改革は遅々として進まず、最近ではその経済政策を閣議決定することさえできなくなりました。
 本法律案は、小泉構造改革の重要な柱であるペイオフに関する公約をほごにするという点で、民主党修正案提案者の述べたとおり、まさに小泉経済失政の象徴と言えます。
 以下、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、政府原案に反対し、民主党提案の修正案に賛成する理由を申し述べます。
 第一に、総理はペイオフ再延期の理由について説明責任を果たしておりません。総理が繰り返し述べてきたように、金融システムが健全ならばペイオフは予定どおり実施できるはずであります。
 第二に、ペイオフ凍結期間を二年間延長するということは、金融システム健全化も二年間先送りされることになりかねません。民主党が主張するように、凍結期間は一年間の延長にとどめ、速やかに金融システムを健全化しなければ、多くの中小企業が銀行の貸しはがしによって力尽きるおそれがあります。
 第三に、永久に全額保護の対象となる決済用預金が創設されることは、預金の預けかえによって金融機関の資金繰りを不安定にするおそれがあり、かえって問題があります。
 民主党提案の修正案は、これらの問題点を的確に修正しており、既に提案済みの金融再生ファイナルプラン関連法案とあわせて、現下の金融危機を克服する唯一の政策と言えます。
 次に、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案に反対する理由を申し述べます。
 第一に、健全な金融機関同士の合併に際して、なぜ資本注入が必要なのかという理由が不明確であります。九九年三月、政府は、健全な銀行をさらに健全にするというコンセプトのもと、大手行に総額七兆円を超える公的資金を投入しました。しかし、そのコンセプトが全くのフィクションであったことは、公的資本増強行の現在の株価を見れば明らかです。同じように、本法律案の真の目的は、健全でない金融機関を救済合併することにあるのではないでしょうか。
 第二に、健全な金融機関同士が合併した合併金融機関の預金全額保護限度額を、時限的措置とはいえ、引き上げる理由も不明確であります。この特別措置も、健全でない金融機関を救済合併することにあるのではないでしょうか。
 第三に、本法律案は、朝銀信組に適用されるおそれがあります。現在、金融庁が健全だとのお墨つきを与えている朝銀信組が三組合あり、仮に資本注入の申請があれば、破綻した朝銀信組に一兆円を超える公的資金を安易に投入する政府の姿勢から見て、これに応ずることは十分に考えられることであります。
 以上申し述べ、討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 達増拓也君。
達増委員 私は、自由党を代表し、ただいま議題となりました預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部改正案及び金融機関組織再編特別措置法案の二法案につきまして、反対の討論を行います。
 小泉総理就任から一年半がたち、国民のだれも実感しない景気底入れを政府が宣言してから半年がたちますが、株価は続落、東証一部上場の株式の時価総額は、百三十兆円以上が消えてしまっています。市場は既に小泉総理の経済政策が失敗であるという評価を突きつけているのであります。
 そして、ただいま議題となっているこの二法案についても、何も経済政策を持ってこなかった小泉内閣の失敗を穴埋めするための方策にすぎず、経済、金融に対する基本的考え方も整理できておりません。
 反対の第一の理由は、今回の改正の大きな柱の一つであるペイオフ完全実施の二年延期という明白な小泉内閣の経済政策の転換について、十分な説明責任を果たしていないことであります。小泉総理は、かねてからペイオフ実施は予定どおりと明言していましたし、竹中経済財政担当大臣は、ペイオフ実施延期に象徴される政府の信頼を損ねることがない経済運営をぜひ行いたいと就任当初から言っておられました。
 しかし、経済運営に失敗し、新たな不良債権も増大し、それによって金融システムも不安視されてきているのにもかかわらず、小泉総理も竹中大臣も、それを認めないばかりか、政策強化と言葉のすりかえに終始し、説明責任を全く果たしておりません。
 反対の第二の理由は、今回の改正案では、決済性預金の保護策として、普通預金にゼロ金利の決済用預金を位置づけ、これを全額恒久的に保護する措置が盛り込まれていますが、これはペイオフ完全実施を予定して講じられた措置であり、来年四月から決済用預金をつくる意義が明確ではありません。金融問題に対する基本方針を持たずにびほう策を行った結果を如実に示しているものであります。
 以上の理由により、政府提出の二法案には反対いたします。
 なお、民主党提出の修正案につきましては、我々自由党の見解と異なりますので、反対いたします。
 以上、討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表し、預金保険法及び金融機関等更生手続特例法の一部改正案、同法案に対する民主党提出の修正案並びに地域金融機関組織再編特別措置法案の三案に対し、反対する討論を行います。
 まず初めに、預金保険法等一部改正案に反対する理由を述べます。
 深刻な不況と信用不安のもとで、現在、預金の全額保護措置を全面解除する条件にないことは明白です。しかし、今回の延期措置は、不良債権処理の加速化を図るものとして、その集中処理期間に対応して二年間に限定されています。預金全額保護の解除は、経済の立て直しによる景気の回復を大前提とするべきであり、不良債権処理による企業つぶし、金融機関の淘汰、再編の方針と結びついた今回の措置には反対であります。
 地域での金融不安をつくり出し、預金者の金融機関への信頼を失わせてきたのは、金融検査マニュアルをてこに金融機関の整理、淘汰を進めてきた政府の金融政策です。金融機関の財務内容だけを健全性の基準とする行政手法のもとでは、ペイオフ解禁を二年延期しても問題の解決にはならず、決済用預金の創設も、地域金融機関からの預金流出に歯どめをかけるものとはなり得ません。
 民主党提出の修正案は、政府案よりも延長期間を短縮するなど、ペイオフ解禁による金融機関選別を徹底させようというものであり、賛成できません。
 次に、地域金融機関再編特別措置法案に反対する理由を述べます。
 同法案は、地域金融機関に収益力強化を求め、合併による再編を促すものですが、規模の拡大が必ずしも地域金融機関の経営にプラスにならないことは、さきの参考人質疑で地域金融機関の代表が口をそろえて述べたとおりであります。合併に伴う店舗の廃止やリストラは、中小企業支援を後退させ、不況で苦しむ地域経済に追い打ちをかけるものとなります。これは、収益力強化どころか、地域金融機関の経営基盤そのものを掘り崩すものであります。
 法案は、再編を促すために、合併等で金融機関の自己資本比率が低下した場合に公的資金で補う仕組みを用意していますが、地域金融の機能を弱体化させるために公的資金投入の仕組みをつくることは到底認められません。
 地域金融機関の経営を安定させ、国民の金融への信頼を回復するには、収益性に傾斜するのでなく、地域金融機関が地域経済と中小零細企業を支えるという本来の役割を発揮するような行政的支援が必要であります。地域経済への貢献度などで金融機関を評価する我が党の地域金融活性化法案の方向こそその道であることを強調して、討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及びその修正案に反対し、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案に賛成する立場から討論を行います。
 小泉総理は、これまで再三にわたって、金融システムは安定しており、ペイオフは予定どおり実施すると明言してきました。しかし、小泉総理は、なぜ延期するのか、国民に対する納得のいく合理的な説明責任を果たすことなく、なし崩し的な政策転換を行い、ペイオフ凍結の二年間延長を決定しました。情報開示についての責任ある提示もないまま、かつ政策変更でないと強弁する小泉総理の姿勢は、求められている説明責任をなおざりにするものであり、断じて容認しがたいものであります。
 一九九六年六月の預金保険法改正でペイオフ問題が提起されてから早くも六年が経過しておりますが、この間のペイオフ解禁問題のたび重なる迷走は、金融機関が抱えている不良債権の状況を国民が正確に把握できる条件、環境が整備されてこなかったことにあります。また、来年四月に予定されていたペイオフの全面解禁を前にしての政府の迷走は、準備不足を露呈したものであります。このことは、先日まとめられた政府の金融再生プログラムが主要行の資産査定の厳格化を掲げていることからでも明白であります。
 ペイオフ解禁の二年間凍結延長という本法案は、まさに、小泉構造改革、小泉政権における金融改革の失敗の象徴とも言えるものです。
 そもそもペイオフ解禁の問題は、解禁の是非を問うのではなく、どのような条件下でなら解禁が実現できるのかを冷静に論ずべき問題でありました。
 現在のような状況下で解禁に踏み切るならば、金融システム危機の発生を回避するべき危機管理の強化と、健全、優良な中小企業への円滑な資金供給の確保が前提となります。また、逆に、解禁延期をするのであれば、金融機関経営のモラルハザードを回避し、経営の不健全な金融機関の退出を促進することが条件となります。
 今急がれているのはペイオフを実施する環境を整えることであり、二年間凍結を延長したからといって、それがまた失われた二年間にならないという担保は依然行われておりません。金融システムに対する信頼回復のためには、政府、金融庁に対する国民の信頼がなければなりません。そのためには、まずは預金者が納得し、信頼できる説明ができなければ、まやかしに終わります。
 また、民主党提案の修正案も、決済性預金創設にかかわる改正部分を原案から削除することについては理解できるものの、同案が私たちの疑問に根本的にこたえているものとは言えず、賛成できません。
 なお、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案については我が党は賛成するものでありますが、地域経済の活性化にとって、地域金融機関、とりわけ協同組織金融機関である信金、信組の果たす役割は大きく、地域に一番密着し、中小零細企業にとって地域の最後の貸し手である信金、信組がその役割を十分に果たせるよう環境整備を行うことを強く要請いたしまして、私の討論といたします。(拍手)
小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより採決に入ります。
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 まず、五十嵐文彦君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十七分散会


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