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第7号 平成15年2月26日(水曜日)

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平成十五年二月二十六日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    林 省之介君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    上田 清司君
      大谷 信盛君    小泉 俊明君
      佐藤 観樹君    中津川博郷君
      永田 寿康君    平岡 秀夫君
      石井 啓一君    遠藤 和良君
      達増 拓也君    赤嶺 政賢君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   杉本 和行君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           渡辺 芳樹君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           山田 修路君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十六日
 辞任         補欠選任
  仙谷 由人君     大谷 信盛君
  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君
同日
 辞任         補欠選任
  大谷 信盛君     仙谷 由人君
  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第二号)
 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長杉本和行君、財務省主税局長大武健一郎君、国税庁課税部長村上喜堂君、総務省行政管理局長松田隆利君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺芳樹君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君、農林水産省大臣官房審議官山田修路君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上和雄君。
井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄と申します。当委員会では初めて質問をさせていただきますので、塩川大臣、竹中大臣、よろしくお願いいたします。
 まず初めに、発泡酒の増税に関して、塩川大臣にお伺いしたいと思います。
 昨日もちょっとこの質問がありましたけれども、大臣はお酒は飲まれないというふうに聞いております。なかなか酒飲みの気持ちはおわかりにならないんじゃないかなというふうに思うんですね。
 私はかなり飲む方で、よく発泡酒も買っております。特に、多くの人を呼んでパーティーをやる場合なんかは、やはりたくさん買いますから、発泡酒の方が安いんで、発泡酒にしますね。最近は発泡酒も非常に種類がふえてまいりまして、どれが発泡酒かどれがビールかよくわからない、まぜちゃうとわからないということで、私も割と気安く発泡酒を出しています。時々、友人のうちに招待された場合なんか、奥さんが何かちょっと遠慮がちに、うちは発泡酒なんですけれどもとか言って、ビールより安いから、いつも発泡酒を恐らく使われていると思うんですけれども、大した客じゃないからということで、ビールのかわりに発泡酒を出されることもあります。
 つまりは、発泡酒というのがいかに日本の社会に定着していて、特に庶民の味方であるかということを申し上げているわけです。
 大臣は、昨日、今回は十円ぐらいだから国民に納得してもらえるだろうというようなことをおっしゃったんですけれども、恐らく国民は、今回の十円だけじゃ済まないだろうとほとんどの人が思っていると思うんですね。きのう、御質問にも、同種同等同様課税ということをおっしゃいました。つまりは、これは結局は、将来的にはビールと同じように、同じレベルの課税をされる、そういうことを国民は恐らく心配していると思うんですけれども、将来的にはこれはビールと同様レベルの税率になるんでしょうか。どういうふうにお考えなんですか。
塩川国務大臣 私も随分と、若いときは酒をあふれるように飲んでおりまして、それで結局体を壊して、それ以降飲まなくなった。だから、体、健康のために飲まない方がよろしいですから、値上がりした分だけ節約していただいたらいいと思うんですが。
 しかし、それにいたしましても、お酒はアルコール度を中心にして調整する必要がやはりあるだろうと思っております。私たちは、発泡酒を開発された努力というものを十分評価して今までおつき合いをさせていただいたんですけれども、これにおきましても、ここまで発泡酒が大衆化し、浸透してまいりましたら、他の、ビール等との均衡をとる必要があると思うてやったわけでございます。
 十円の増税が非常に大きい話題になっておることは承知しておりますけれども、しかし、ちょっと御辛抱していただいて、国のために奉仕していただくという気持ちを持っていただけたら結構かと思います。
井上(和)委員 とにかく、私はこの値上げには大反対でございます、酒飲みですから。そういうことを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 私は、これまで国土交通委員会の委員でございました。特に住宅問題を中心に取り組んでまいりましたので、本日は、今回の法案の中に住宅関係の税制のこともありますので、住宅関係についてお伺いしたいと思っております。
 私、この世界に入る前に、十六年間外国に住んでおりました。欧米が長かったんですけれども、竹中大臣も当然外国に、アメリカだと思うんですけれども、長く住んでいらっしゃいました。恐らく私と同じお考えだと思うんですが、やはり日本の住宅のおくれが非常に甚だしい。
 つまりは、狭いし、高いし、それだけじゃなくて、私はニューヨークにいたときは大体アパートに住んでいましても、ほとんどセントラルヒーティングですね。冬でもトレーナー一枚ぐらい、場合によっては半そでのシャツで過ごせる、快適に過ごせるという状況。ところが、日本に帰ってきて、広さは、高いからもう半分ぐらいに減っちゃうわけですね。ニューヨークにいたときは八十平米、九十平米のマンションに住んでいて、東京に帰ってきたら五十平米ぐらいになっちゃいます。ところが、冬、やはり寒いんですね。何かやたら着込まないと寒い。
 一体これはどういうことなんだということをずっと不思議に思っていたんですけれども。つまり、日本の住宅というものは、高いだけじゃなくて非常に質も低いということがあると思うんですね。
 また、家計に占める住宅ローンの比率が非常に高いです。ほとんど国民が生活、大変だなと思うのは、住宅ローンと教育費というふうに一般的に言われていますね。そういった意味で、住宅の分野でやはり日本は相当、今後二十一世紀、投資をしていかなきゃいけないと思うし、住宅投資というものが日本の内需の中心になってくるというふうに私も思いますし、よく島田晴雄先生なんかもそういうふうにおっしゃっています。
 最近、テレビでも、私も先日見たんですが、何か大改造とか、リフォーム何とかという番組がありまして、二十四時間でうちをすごく変えちゃう、そんなような番組があって、非常に人気があるそうです。つまり、国民の関心がこれまでの、どちらかというと着るものとか食べ物から、欧米並みのインテリアとか住宅、そういうものに向いてきているんだろう。
 私がアメリカにいたときも、よくアメリカ人のうちにお伺いして、例えば家具とかインテリア、特にサイドボード、これがそれこそ百万円ぐらいするサイドボードだとか、そういう話を聞きまして、随分高い家具を買うんだな、随分お金をそこに使うんだなというふうな印象を持ったことを今でも覚えているんですね。つまり、それだけ家具とかインテリアに対してお金を使う、そういう状況があったと思うんですが、恐らく日本も、今大体そういう状況になりつつあるというふうに思っています。
 そこで、竹中大臣、一般論として、日本経済における住宅投資の意義というものに関してどういうお考えか、ちょっとお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 住宅の重要性といいますか、それと、日本が、広さだけではなくて質の面で、一般に考えられている以上に実はクオリティー等々でまだ改善すべき余地が多いのではないか、その思いは井上委員の御指摘のとおりであるというふうに私も思っております。
 ともすれば、経済の論議でいいますと、住宅投資という、その投資額だけに目がいくわけでありますが、これも実は、かつてはGDPの五%、六%あった、今四%弱ぐらいに下がってはいますけれども、そこだけに目がいくわけでありますけれども、それに関連した、例えばインテリアの問題とかちょっとした内装の資材の問題とか、日本では、恐らく住宅を購入するということはむしろ土地を購入するということに大きな主眼が置かれていて、その上物に対して、これは需要の側も供給の側も、気がついてみると、大きな改善の余地を残してきたということなのではないかと思っております。
 この点は、やはり国民の生活を直接豊かにするという点もあり、まさにこれは発掘すべき需要がそこにある、大変重要な分野であるというふうに、これは担当大臣としても思っておりますし、また、個人の生活に照らしても思っておりますので、そこは、今回の税制の改革等々の議論もございましたけれども、これは非常に幅広く検討をしていかなければいけない課題であるというふうに思っております。
井上(和)委員 今大臣が質の点をおっしゃいましたけれども、マンションに限って話しますが、日本のマンションというのは大体何年ぐらい今もつのか、何年ぐらいで建てかえされているか御存じですか。
竹中国務大臣 これも井上委員から御質問いただいて勉強させていただいたんでございますけれども、国土交通省の実態調査によりますと、これまで実施された、老朽化を理由としたマンションの建てかえは、築後三十年から四十年のものが多いというふうに聞いております。全国に三百八十六万戸マンションがあるわけですけれども、三十年超のマンションは十二万戸を占めているというふうに聞いております。しかし、このマンション、二〇一〇年には、築三十年も九十三万戸にふえていくということであります。
 これはもちろん、個々によって老朽の度合い、さらには、単に物理的な老朽だけではなくて、経済的な減価といいますか、ライフスタイルの変化等々も考えなければいけないわけでありますが、そういう状況にあるというふうに認識をしております。
井上(和)委員 今御答弁にあったように、マンションというのは、大体今三十六年ぐらいで建てかえ時期を迎えているんですよ。つまりは、三十歳ぐらいで三十年ローンを組んでマンションを買って、定年になってやっとローンを払い終わったとなったら建てかえになっちゃうわけですね。
 前国会で、マンションの建てかえの促進法というのを国土交通委員会でも議論をしたんですが、私は、これはもう人生の悲劇じゃなくて喜劇だと。やっとローンを払ってマンションが自分のものになったと思ったら、今度は新たにローンを組んでマンション建てかえだと。一体いつまでローンを払えるのか。ローンをまだ、定年になっても借りられる人はいいですけれどもね。これはもう本当に大きな問題だというふうに私は認識しています。
 それで、マンションの質がいかに低いかということを、恐らく皆さん、ここは国土交通じゃないので余り御存じじゃないと思うので、ちょっと五分ほど説明させていただきたいんですね。また、竹中大臣はマンションを幾つか持っていらっしゃるということで、ぜひ聞いていただきたいと思いまして、ちょっとパネルを持ってまいりました。
 なぜ今の日本のマンションがだめかといいますと、大きな問題として、断熱の問題があるんですね。つまり、今のマンション、恐らく竹中大臣のお持ちのマンションも、これは内断熱マンションといいまして、断熱材が内側に張ってあるわけです。ところが、欧米は全部違う、これと違うんですね。特にヨーロッパはもう全然違いまして、外断熱マンションといいまして、ビル全体が断熱材で囲われているんです。こういうふうになっているのは、今大体、日本とか、まだあとは開発途上国ですね。もう中国も今全部こちらに移っている。
 ごらんになってもわかるように、まず断熱性能、これは、断熱材が周りに張ってあるこちらのマンションの方がいいに決まっているんですよ。だから、先ほど私が言った、アメリカで暖かいのに何で日本は寒いのかといったら、やはりこの断熱の方法が違うということであります。
 それで、もう一つは、例えばここも、ここはコンクリですから、コンクリが外気の温度にすぐ反応するわけです。冬だったら、すぐコンクリ、寒くなる。床下部分がこういうふうになっていますから、これはヒートブリッジといって、当然床下から外気が伝導してくるわけですね。中が寒くなっちゃう。ところが、外断熱で全体を断熱材で囲ってありますと、そういうことがない。つまり、外気が入ってこれないんですね。
 それで、耐久性の面でも、結局これですと、夏は暑い、冬は寒いというと、コンクリがしょっちゅう冷たくなったり熱くなってしまいます。それだけ劣化の程度が早くなるわけです。ところが、こちらですと、この外側に新たに壁をつくるわけですね。つまり、コンクリートの温度というのがほとんど室内温度と同一なわけです、一年を通して。つまり、それだけコンクリートの耐久性があるということ。だから百年二百年でももつんですね。だから、日本のマンションというのは、こういう構造があるからもたない。
 もう一点は、ちょっとこれも御興味のある方に御説明したいと思います。
 配水管がマンションの中を通っているわけです。日本だけなんです、こういうふうにやっているのは。御存じですね。区分所有法で専有部分に共用部分が通っているのは日本だけなんです。欧米の方は、全部ビルの両側にあって、床下は二重床になっているんですね。二重床になっているから、間取りを変えることができる。これをSI、スケルトン・インフィルといって、とにかくこういうものを日本でも導入していかなければいけない。
 つまりは、私が言いたいのは、今あるマンションというのはほとんど、要するにスタンダードのレベルからいったら非常に質が悪い。では逆に、これをちゃんとヨーロッパ並みにしていくには大変な投資が必要だし、これは逆に言えば非常に大きなビジネスチャンスでもあるし、大きな需要をつくり出していくということなんですね。そういうことをちょっと申し上げて、また次の話に移りたいと思います。
 それで、どちらかというと、今度は塩川大臣にお伺いしたいんですが、今回の税制でもそうなんですけれども、日本の場合はとにかく住宅取得、住宅取得、そういう面での税制優遇なんかをつくっているんですが、では私が今申し上げたような、こういう良質な住宅を、マンションなどを供給するという面では非常に税制上もおくれているんじゃないかと思うんですが、ぜひ今私が申し上げたような、こういう良質な住宅をつくるという側面からも税制面で支援していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 良質な住宅というもの、良質な住宅地あるいは住宅というものとあわせましてやっておりますが、今後の急増する老朽マンションに対しまして、建てかえの円滑化を図る見地から、マンションの建てかえの円滑化に関する法律に基づく制度が整備されておりますが、その政策の一環として、これを支援するため税制によってもいろいろ措置を講じていくということをいたしたいと思っております。
井上(和)委員 ぜひそうしてください。そうでないと、こういう古いマンションがふえちゃうんですよ。
 私が言ったように、共用配水管が住宅の真ん中を通っているんですね。そうすると、もうこれは三十年たつと、共用管が古くなると、交換できなくなっちゃうんです。日本のマンションが三十年、三十五年で建てかえなきゃいけないというのはこういう共用管がかえられなくなっちゃうから、そういう面があるんですね。だから、欧米並みのSI、二重床になっている、非常にメンテナンスもしやすいし維持をしやすい、だから百年以上もつ、こういったものをつくるような税制をぜひ財政当局として考えていただきたいと思います。
 それでは、とにかくいいものをつくっていくには当然高くなる。ただ、実は、外断熱にしてもそんなには高くならないんですね。今、いや外断熱は高くて無理だというのは、要するに技術的な、ゼネコンなんかは技術力がまずないということで、まだ施工数が少ないということなんですね。ただ、現実に、私、いろいろな人から話を聞くと、そんなに高くありませんよと。せいぜい一割ぐらい、一割も高くならない。
 しかし、現実に、非常に省エネです。先ほどもセントラルヒーティングの話をしましたけれども、日本だと、セントラルヒーティングはすごく高いんじゃないかというふうに思われるんですね、つまり維持費が。逆なんですね。こういう外断熱にしてきちっと断熱すれば、日本みたいに部屋ごとに冷暖房機をつけているのに比べて全然安いんですよ。
 実は私も、昨年マンションを買いました。角部屋なんですね。前にベランダがあって、横にベランダがあって、また後ろにベランダがあるんですよ。何でこんなに、三つベランダがあるのかなと思ってよく考えたら、つまり、部屋に冷暖房機をつける、そうすると室外機が必要なんですよ。その室外機を置く場所をわざわざつくらなきゃいけないんですね。だから、これもセントラルヒーティングだったらそんなむだがないわけじゃないですか。つまり、それだけ日本の住宅の質が悪いという話なんです。
 いいものを供給するとなると多少は高くなる。今の、年収五倍で住宅を供給するという国の政策、ただ、五倍というのは、私は、はっきり言って勤労者の負担能力を超えていると思うんですね。だから、これを何としても、欧米並みの年収三倍以内、できれば二・五倍ぐらいで住宅を供給できるような社会を私はつくっていかなきゃいけない、そうしなければ国民生活は豊かにならないというふうに思います。
 ただ、日本の場合、先ほど大臣もおっしゃいましたように、土地が高い、住宅というより土地だ。だから、これは土地代を何とか下げなければいけない。そこで、どうやって上物にお金を使って土地代を下げるかということを考えると、これからは、将来は定期借地権を使うしかないと私は思うんですね。
 定期借地権を使った住宅またはマンション、なかなか普及しない。私は、今土地が余っている状況で、国も土地を持っているし、地方公共団体も土地を持っている。また、不良債権もたくさん今出ていますね。こういう土地を国民に定借で貸し出して、貸し出すわけですから安いです、地代が安く済むわけです。そこにどんどんうちをつくってもらったら、日本の景気がもっとよくなる、それで国民生活も豊かになるというふうに思うんです。
 昨日の新聞に、東京の足立区の方で、こういう区の用地を使って、そこに民間がマンションをつくった、定借だから二千万ぐらいでマンションを供給できたというようなことが出ていました。こういうことを本当に真剣に、私、今考えていく必要があると思うんですけれども、国有地を定借にして国民にどんどん貸し出したらどうですか。住宅をつくってもらったり、逆に別荘でもいいですね。地方なんか、それこそ千坪ぐらいのところに別荘を建てられるような環境をつくってあげたら、どんどんうちが建って景気がよくなると思うんですね。塩川大臣、いかがですか。
谷口副大臣 今井上委員がおっしゃった、定借でやればどうかということでございますけれども、今国有地の方は、大宗は物納財産でございまして、なるべく早く換価するようにということで処分を進めておるわけでございます。今おっしゃるような定期借地権ということになりますと、五十年を超えるということになりますので、そうなりますと、今進めております早期売却の障害になるということもあり、なかなか難しいところがあるわけでございます。
井上(和)委員 今の副大臣のお話なんですが、結局、今どんどん土地がマーケットに出ている状況ですね。さらに供給するということは、さらに土地代を下げることになるんじゃないですか。だから、私はやはり、わざわざ土地を下げるようになる売るということよりも、これは貸した方がいいんじゃないかというふうに思いますね。大臣はどう思いますか。
塩川国務大臣 本当に、住宅需要、どんどんと住宅を建ててくれるならば、定期借地権の活用というものができますけれども、先ほど谷口大臣が言いましたように、これは物納財産でございますから、できるだけ早く現金化するということが目的なので、できるだけそういう趣旨に沿って、短期の借地権というものを、例えば二十年ぐらいにして、それで二十年で買い取ってもらう、そういう方法をあわせてやっていくということも一つの考え方だろうと思っておりまして、ずっと五十年、六十年というのを借地権でいくということになりましたら、これは物納の趣旨というものを変えなければならぬと思うので、その点の問題はいろいろ考慮する必要はあるだろうと思います。
井上(和)委員 竹中大臣、もし御意見がございましたらお伺いしたい。
竹中国務大臣 これは私の担当ではございませんけれども、大臣、副大臣おっしゃいましたように、物納されたものということをどのように解釈するかという問題であろうかと思います。一般の国有財産に関しては、その他別の理由で持っている国有財産については、それはいろいろな有効活用の仕方があろうかと思います。それについては、当然理財の関係で、そのような観点から運用をされているというふうに思っております。
井上(和)委員 私は、売っちゃうよりは、やはり国の財産ですから、持っていた方がいいんじゃないかと思うんですよ。それをやはり有効利用するということで、貸してあげた方がいいんじゃないかなというふうに思っていますので、ぜひ検討してみてください。
 それで、定期借地がなかなか普及しない理由に、定借で住宅を建てた場合に非常に銀行ローンが借りにくいとか、マンションを買った場合に、保証金というのを普通かなり高額取られますけれども、それに対してローンがないというようなことがあるようですね。ぜひ、これは質問じゃないですけれども、竹中大臣にお願いなんですけれども、ぜひその辺をちょっと制度的にいろいろ見直していただきたい。もしできれば、金融機関に、定借でもちゃんと金を貸せということを言っていただければと思うので、これはちょっと検討課題としてお願いいたしたいと思います。
 先ほど、住宅の質の問題でマンションの話をしたんですけれども、これは持ち家ということなんですね。賃貸住宅の話に移りたいと思うんですが、日本はこれまで持ち家促進ということで、国民に年収の五倍、六倍という多額な借金を背負わせた。その結果、今、ローンが払えなくなっちゃって自己破産している人が非常にふえているわけです。
 その一つに、やはり良質な賃貸住宅がない。家族が、子供が二人ぐらいになってくるとなかなか賃貸住宅が見つからない、あっても高いということで、ではやはり買った方がいいかなということで、無理してマンションを買ったり戸建て住宅を買ったりするわけですね。
 これまでは、国として、持ち家政策ということで、持ち家促進ということでやってきたわけですが、今後は多様な選択肢のある住宅を供給する必要があるということで、やはり、賃貸住宅がもっともっとふえるし、また質のいいものがふえる必要があると思います。
 御存じだと思いますが、日本の賃貸住宅の平均の平米数というのは四十平米ですね。私、国土交通省からもらったデータを見てみましたら、三十年間ほとんど広くなっていないんです。一戸建てだとすると、戸建ての住宅というのは、昭和三十年代は九十平米ぐらいだったのが、今百二十平米。百二十平米になりますと、アメリカにはかなりまだ差がありますが、ヨーロッパ並みの広さです。ところが、戸建て住宅の平均四十平米というのは、これは国際的に見ても非常に狭いという状況があるんです。
 賃貸住宅の供給を促進することが必要だと思うんですが、これは塩川大臣に御質問なんですけれども、その賃貸住宅の供給を促進するような税制というものをもう少し考えていくべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。
谷口副大臣 まさにおっしゃることが重要だと思います。優良な賃貸住宅を供給するということが非常に重要だと思います。
 委員はもう御存じだと思いますけれども、現行法上もこのような税制がございまして、一つは、優良な賃貸住宅の供給の促進、また大都市地域における良質な住宅の供給促進、また高齢者の居住の安定確保の観点からの特定優良賃貸住宅等の割り増し償却制度というのが、これは割り増し償却でございますけれども、租税特別措置で講じられておるわけでございます。
 また、今回の税制改正におきましても、事務所用に建てた建物を居住用に回したいといったような、既存建物の優良賃貸住宅へのリフォームを促進するという観点から、再生賃貸住宅供給促進税制を創設させていただいたところでございます。
井上(和)委員 今、副大臣が最後におっしゃった、今回の法案にもあります、いわゆる二〇〇三年問題で、中古のビルがふえてくるから、オフィスビルがふえるから、それを住宅にかえていこう、いわゆるコンバージョンというものを税制面でも応援していこうということだと思うんですけれども、コンバージョンといってもほとんどまだ行われていないですね。本当にまだ数例だと思います。
 つまりは、賃貸住宅を促進する、先ほどおっしゃった特優賃なりコンバージョンなり、非常に小出しというか、スケールで非常に小さい支援策じゃないかなと私は思うんですね。今の再生賃貸住宅の供給促進税制で、これは何戸ぐらいこの税制の優遇を受けられるというふうに考えていますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま副大臣からも御説明させていただきましたこの制度自体、まさに先生が言われておりますように、既存の建築ストックを活用して、いかに良質な賃貸住宅として再生するかということをねらいとした制度でございます。
 ただ、この措置自体、民間事業者が主体的にオフィスビルを活用して良質な賃貸住宅供給を行うということに対する支援措置なものですから、あらかじめ計画的に国が言うというようなことはできませんので、いわゆる具体的利用見込み数ということをお示しすることは困難でございます。
 ただ、国土交通省が一定の仮定のもとに推計しておりまして、東京都都心部で、一応、二〇〇五年度までに一千戸強程度の転用の見込みというふうに聞いております。ただ、この制度は何も東京都だけはございませんで、三大都市圏の既成市街地等も対象となるということでございます。
 いずれにしましても、こうした制度を活用いただきまして、良質な賃貸住宅供給が促進されるということを期待しているところでございます。
井上(和)委員 いずれにしても、数千戸ということで、全体的に与える影響というのは少ないんじゃないかというふうに思うんですね。
 もうちょっと時間があるので竹中大臣に、これまではどちらかというと持ち家ということで、いろいろな面で税制優遇してきた。しかし、こういう賃貸、要するに借りて住んでいる方に対して何か税制なり優遇措置をあげて、つまり、ライフスタイルとして、うちを持つんじゃなくて借りて、家族に合わせて、状況に合わせて移り住んでいく、そういうライフスタイルができるような社会を築いていく必要があると思うんですが、大臣、どういうふうに思いますか。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、日本の今までの住宅投資の特徴を見ますと、持ち家に対する投資と貸し家住宅投資というものに明らかに差があったということだと思います。
 これは言うまでもありませんけれども、持ち家はとにかく、土地神話という言葉に象徴されるように、圧倒的なキャピタルゲインが期待される、だからとにかく持ち家の方が得だということはだれの目にも明らかなわけですね。結局どうなるかというと、多くの人は持ち家を持ちたいというふうに思う。政策はそれを助けて、それで、ある程度所得のある人は持ち家を持ってキャピタルゲインを得ようとする。その意味では、そういうキャピタルゲインに参加できない方がどちらかというと貸し家に住まざるを得ないというような状況になってきて、それがそのような格差になってきたということだと思います。
 ところが、今むしろ起こっていることは、キャピタルゲインがなくなってきているわけですから、これがむしろイコールフッティングになってきているということなんだと思うんですね。イコールフッティングになってきているということは、これは理屈から考えれば、政策的な補助がなくても住宅投資はある程度出てくるはずである。現実に、東京の地域では非常に良質の貸し家住宅ができてきている状況にあると思います。そういう状況が新しくできつつある中で、政策としてさらにそれを後押しする必要があるかどうか、ここはやはりちょっと実態を見ながら判断していくべき問題であろうかというふうに思います。
井上(和)委員 あと、今回の法案の中にありますマンションの建てかえ事業、つまり、マンションをこれから建てかえていかなきゃいけない。これまでは、建てかえする際に、割と古い時代に建てたマンションというのは容積率に余裕がありましたから、今まで五階だったものを十階建てにして、余ったうちはどんどんそれを売って、新しいマンションに建てかえる。つまり、自己資金が要らないでもマンションを建てかえることができたわけですね。実際に建てかえになっているのはそういう例なんですけれども。
 ところが、今建てかえに来ているものの中で、もう容積率が目いっぱいだ、逆にもう容積率を超えているというマンションも非常にふえてきているわけですね。そうなりますと、非常に自己資金が必要で、建てかえできにくいという現状がある。また、狭いものは、環境もよくないから、とにかく周りの土地を買って少し敷地をふやして、敷地がふえれば容積率も上がりますから、少し幾つか余計な住宅をつくって、そこを売って多少資金にする、そういうことが考えられて、今回法案の中にも、マンション建てかえにかかわる特例措置として、隣接敷地の譲渡に関しての軽減税率というのが出ているわけですけれども、この軽減税率は何%なんでしょうか。
大武政府参考人 ただいま先生が言われましたような御趣旨から、マンションの建替えの円滑化等に関する法律というのが実はできておりまして、一昨年も実は税制改正で措置をさせていただいたんですが、さらに今回の改正でも、今言われたような意味で、譲渡益四千万円以下の場合の税率を一五%、これは所得税でございますが、一五%、住民税五%というふうな引き下げをさせていただくということにしているところでございます。
井上(和)委員 今ちょっと聞いた範囲で、本当に隣接地を買収して区画をある程度大きくしてやる場合には、やはり相当の優遇措置がないとなかなか地主も売らないと思うんですね。そういう意味で、どうもやはり小出しだなという感じがします。密集市街地なんかでも、大きな問題は、本当に小さな敷地をどうやって集約して大きな土地にして、そこに共同住宅をつくっていくかということが現実に非常に難しい問題であるので、やはりよほど思い切った優遇措置をつけて、少しでも土地を集約化して大きくして、良質な建物をつくる、そういう必要があると思います。ぜひ、その辺、今後も考えていただきたいと思います。
 私の質問を終わります。
小坂委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 私は、まず、消費税法の改正について質問をさせていただきたいと思います。
 今回の提案では、消費税法一部改正、中小事業者に対する特例措置に関するものとして、事業者免税点制度、その課税売上高の上限を現行三千万円から一千万円に引き下げる、もう一つ、簡易課税制度について、課税売上高の上限を二億円から五千万円に引き下げる、こういう改正案が提案されております。
 この二点の改正につきましては、税制調査会の答申、「平成十五年度における税制改革についての答申 あるべき税制の構築に向けて」という答申の中でこのように書かれております。「消費税については、将来その役割を高めていくための前提として、消費税に対する国民の信頼性、制度の透明性の向上を図る観点から、事業者免税点制度を大幅に縮小し、簡易課税制度については原則廃止とする方向で抜本的な改革を行う」。この答申のとおり、閣議決定を経まして、今回、法改正案として、事業者免税点制度の縮小と簡易課税制度についての廃止の方向に向かった改正が行われているわけですけれども、税制調査会の答申では、この改正は、将来、消費税の「役割を高めていくための前提として、」と書かれているわけであります。
 消費税の将来の役割を高めていくというのは消費税率を上げるという意味だと思うんですが、今回の提案されている消費税法改正案が消費税率を上げるための前提として提案されているとしたら、小泉総理が繰り返しおっしゃっている、在任中は消費税率を上げないということと矛盾していると思うんですが、この点、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 小泉総理の発言と、今回のあるべき税制改正というものとは、直接結びついたものではないと思っております。
 政府税調のあるべき税制の姿の中に言っておりますことは、それは、消費税をやはり税収の根幹にしたいという意向は政府税調にあることは事実でございますけれども、それに対する準備として、国民の理解を得られるいろいろな手段を講じていかなければならぬ、そこを言っておるんです。
 小泉総理の言っております、私は任期中消費税を上げませんということは、要するに、消費税のアップによって、引き上げによって安易な財政構造の改善を図ってはいかぬ、安易な社会保障財源あるいは公共事業財源を求めたらいかぬ、こういう警告的な意義合いというものが非常に強いと思っておりまして、その点を私たちはかみ分けていかないかぬ。
 ですから、小泉総理自身も言っていますように、中長期的な問題として検討して、調査してもらうことは結構だ、こう言っておることでございますので、決して総理自身が消費税の存在を、あるいは将来を否定してしまったものじゃない。ただ、政治的な発言として重要な意味を持っておる、そう解釈していただいたらいいと思います。
達増委員 政治的な発言というのも、それがもし、単に内閣支持率を下げたくないとかいうことだけであれば問題だと思います。
 今、大臣、最初のところで、安易な消費税率引き上げはよくないということを言いたいんだと。それならそうはっきり言えばいいんだと思います。安易な増税がよくないのは、これはもう古今東西全くそのとおりでありまして、最近、南州遺訓、西郷隆盛の遺訓集を読む機会があったんですが、その中でも、増税はよくない、むしろ減税に努めた方がいいと西郷隆盛がかつて言っていたのが書いてありました。そもそも、国会というものも、むやみに税金を上げさせないために欧米で発達したものでありまして、安易な増税がよくないというのは全くそのとおりなんですが、それならそうはっきりおっしゃればいいと思います。
 在任中消費税率を引き上げないという言い方は非常に無責任だと思っておりまして、消費税率というのは、今こういう不景気の中で引き上げることは、景気をさらに悪化させ、消費や投資を萎縮させ、経済をより悪くいたします。
 しかし、将来的には消費税率を引き上げる。私は、景気が安定し、日本経済が成長軌道に乗ったような状態であれば、消費税率を国民が求める福祉のレベルに合わせて引き上げていくことは、国民がそう希望するならそれは当然のことだと思っているわけでありますけれども、逆に、そういう消費税率引き上げの可能性を否定してしまうことは、かえって持続可能性のある財政というものに対する不安、不信を高め、将来不安を高めて、今の経済をやはり萎縮させてしまう。
 ですから、小泉総理が自分の在任中と言うときに、それがもう年内で終わると思って、自分はもう年内、やめてしまった後は引き上げるというニュアンスで言っているとしたら、それは余りに尚早な消費税率引き上げの話になるでありましょうし、ひょっとして、十年ぐらい総理を続けることを念頭に置いて、十年間消費税率引き上げないと言い切るのであれば、それもまた財政の持続可能性、将来不安をなくすということからして無責任。そしてさらに、期限を明らかにせずに消費税率を引き上げないと言うこと自体、また無責任だと思うのでありますけれども、この点、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 消費税率の問題というのは、これは確かに財政の根幹問題に触れるものであると思っております。
 そこで、現在、我々政府が考えておりますのは、三十兆円の枠を外すときに、将来の財政展望をどうするのかということが真剣な問題となってまいりまして、そうすると、ここで将来の財政を考える場合に、大きい三つの柱がある。
 一つは、社会保障制度というものをどのようにして維持していくのか、どういう姿にするのか。それからさらには、国と地方との関係をどうするのか。それと、公共事業のあり方、そしてその負担というものをどうするかというこの三つの大きい柱、これを煮詰めて、その将来的なあり方等もきちっとしなければ財政構造は組めないではないか、こういうことが起こってまいりました。そのことを前提にして、やはりこの消費税というものを安易に上げてはいかぬという考え方が総理の中にあることは事実でございます。
 したがって、私たちは、消費税の重要性ということを十分に認識しておるのでございますけれども、先ほど申しました財政の将来あるべき姿というものをきちっと把握した上で消費税をどうしようかという議論をいたしたい、こう思っておりまして、その努力はしたい。
 したがいまして、達増さんのおっしゃるように、消費税の問題について余り無責任な発言をするということは、これはかえって財政の将来に対する不信を招く、これは当然だと思います。けれども、消費税だけありきという議論も、またこれは無責任な議論になってくる。だから、それを兼ね合わせたものの中でセットされていくべきだと思って努力をしていきたいと思います。
達増委員 無責任ではいけないというのは全くそのとおりでありますが、もう少し科学的に、景気の回復、経済の立て直し、このくらいの水準であって、かつ、そのときに国民がこのくらいの福祉水準を求めるのであれば消費税率はこのくらいになるとか、そういうことを政府としてきちんと明らかにして、今頑張って、景気回復、経済立て直しができれば消費税率もこのくらい引き上げて、将来財政も安心、将来の社会保障も安心というような、そういうビジョンをはっきり打ち出さないとやはり無責任なんだというふうに思います。
 したがいまして、自分の在任中消費税率は引き上げないと言うことは、どんどん議論をしてくださいとは言っていますけれども、かえって議論を封じる、思考停止に陥らせてしまう、少なくとも議論を大きくゆがめる無責任な発言だということを重ねて指摘したいと思います。
 今、政府は、あるべき税制という言葉を使っています。あるべき税制というのは普通名詞、当たり前の話で、税制はあるべき税制にしていかなければならないのは言葉の意味から当然で、ただ、政府は、そのあるべき税制にかぎ括弧をつけて、独自のスローガンのようにして、固有名詞のようにして、あるべき税制というものを使っています。
 今回の閣議決定に基づくこの税制改正関係法案、一月十七日閣議決定によれば、これは「「あるべき税制」の構築に向け、次のとおり改正を行うこととする。」あるべき税制の構築に向けた改正だということになっているんですね。政府が目指すあるべき税制の中で、一方で、総理は、消費税率は絶対在任中引き上げないと言っているということは、小泉内閣が目指すあるべき税制の中に消費税率引き上げというのは含まれていない、消費税率の引き上げはあるべき税制の姿じゃないというのが小泉内閣の立場なんでしょうか。
塩川国務大臣 このあるべき税制の姿、改正というものと、先ほど言っていますように、小泉総理の、私は在任中消費税上げませんということとは、直接結びついた、いわゆる、あるべき税制の中で私は上げません、こう言っているんではなくて、要するに、財政の規律を維持するために言っておる発言であるということでございまして、私たちはそのように解釈しておる。
 そこは相当政治的な発言になってきておると思っておりまして、あるべき税制の姿というものは、やはり、政府が設定しておりますところの政府税制調査会の意見として、これはやはり政府としてもこの税制方針というものは十分に尊重して実施に移していくべきものだと思っておりますけれども、しかし、この実施を、いつ、どういうスケジュールでやっていくかということは、これは税制調査会でもうたっておらないわけでございますので、それはやはり、経済の状況がどのように変化するかということと、政府の、行政改革なりして、予算に対する努力というものと兼ね合わせた上で、税制の答申を実行していけということを示唆しておるものだと思っております。
達増委員 たしか小泉内閣では、去年一年かけて、税制改革、きちっとしたものをつくってやるんだということになっていたと思うんですね。
 そういう意味で、あるべき税制というものは、小泉内閣のさまざまな改革の目玉の一つ、税制改革のあるべき姿として、まさにあるべき税制というのを出してきているんだと思いますが、今の御答弁を聞いていますと、特に締め切りを設けているわけではない。いつまでに達成とかいう話ではなくて、いわば見果てぬ夢といいますか、いつ実現できるかわからない、そういう、方向性として、はるかかなたに輝く星のようにあるのがこのあるべき税制ということなんでしょうか。それとも、ちゃんと今回の法改正で、あるべき税制が大体実現できる、あるいは足りないものについてはもう一年かける、そういう、きちんと、何年までにというプログラムなんでしょうか。この点、確認させていただきたいと思います。
塩川国務大臣 あるべき税制の姿ということで政府税調が答申いたしましたのは、今後、願わくは十年、二十年の将来に向かって有効に働くであろう、そういう基本的な考え方というものを述べておるんで、それを実行に移していくのは、この方針に基づいて、政府はその時々の流動的な状態をつかまえて、あるいは政治的な配慮を考えて実行に移していったらいいということで、そういう方針のもとにあるべき姿というものを出しておる、私はそう認識しております。
達増委員 小泉内閣の諸改革、不良債権処理についても当初二、三年でやると言っていたのが、まだ終わらないで、もう一、二年延長、ペイオフについても解禁が二年間延期、確かに締め切りをつくればいいというものでもなく、つくった以上は守ってもらわなきゃならないわけですが、それがなかなかうまくいかない実態があるわけであります。ただ、この税制改革ということについても、今目の前にある経済社会情勢に対応して、どのような税制が必要かということをきちんと踏まえて、機動的に税制の改革をやる必要があるのだと思います。
 十年、二十年の長期計画ということについては、今目の前にある経済危機を乗り越えるためにはそれだけではだめなんで、やはり今回の法改正でこれだけ日本経済社会がよくなるという、きちっとした改正というものを提案していただかなければだめなのではないかというふうに考えます。
 さて、次に、租税特別措置法の中から幾つか質問をさせていただきますが、まずはIT投資促進税制であります。
 情報通信機器等を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除制度の創設というタイトルでありますけれども、具体的には、パソコンでありますとかICカード利用設備、インターネット電話設備等のそういうIT関連の設備について、またソフトウエアも、投資促進税制、そしてまたリースについても、以上述べたような設備でありますとかソフトウエアについて税額控除を行う。
 その発想はよろしいんですけれども、投資促進税制については、資本金三億円以下の法人については百四十万円以上の設備とあります。ソフトウエアについては、同様、資本金三億円以下の法人については七十万円以上、リースについては設備が二百万円以上、ソフトが百万円以上。
 しかし、今、このIT革命を推進していく、あるいは突破口を開いていくために期待される、本当に中小の企業、あるいはもう一人か二人で始めるような企業、SOHOという言葉があります。個人で、あるいは在宅で、例えばアップルコンピューターが、最初は自分のうちのガレージを工房として使って、そこでコンピューターを組み立てたりソフトを開発したりしていた。そういう、本当にやる気と能力のある人が小規模でスタートしていく場合には、この金額というものはまだちょっと高過ぎるんではないかと思います。
 今実際に販売されているパソコンや周辺機器の金額でありますとかビジネスソフトの価格からすれば、せめてこの半分くらいの額にしなければ、本当に未来を切り開いていけるような、IT革命の先頭に立てるようなところを刺激することはできないんじゃないかと思うんですが、この点、いかがでしょう。
谷口副大臣 今達増委員のIT投資促進税制でございますけれども、これは、我が国の競争力を強化しなければならない、また構造改革を促進するという観点で今回の税制が行われるわけでございますけれども、これは、事業の効率化だとか付加価値の向上につながる。ですから、一定規模以上のIT投資に対して優遇措置ということでございます。おっしゃるとおりでございます。それで、そういうこともございまして、規模要件を設けておるわけであります。
 しかし、一方で、資本金三億円以下の法人、個人についてはこの規模要件を引き下げております。リースを、賃借した場合に、税額控除の適用を認めることにより、小規模な事業者にも特段の配慮をいたしておるわけで、例えばリース期間五年のソフトウエアでございますけれども、小規模の事業者の場合、これはリース費用総額百万円以上ということになっております。リース期間が五年でございますから、年間は二十万円以上ということになるわけですから、そうしますと、月々一万数千円でございますか、このくらいのところでも適用できるということになります。
 また、それにつけ加えまして、このたびの税制改正には減価償却資産の一時償却を入れさせていただきました。これは、従来は十万円未満の場合に一時償却ということでございましたが、今回は三十万円未満の一時償却ということですから、ほぼパソコン程度は大体一時償却できるのではないかというように考えておりまして、その観点から、小規模な事業者にも特段の配慮をいたしておるというように考えております。
達増委員 次は、贈与税と相続税の関係について伺いますけれども、今回の改正で一体的な税の支払いを可能にするということでありますけれども、加えて、相続税、贈与税、それぞれ税率を引き下げているわけでありますが、現役世代、働いたりあるいは資産運用したり、若いうちに親の資産、財産を受け取ることができる、そういうことを促進するという意味では、まだまだこれは足りないんではないかと思います。
 そもそも、日本の場合、贈与税というものがもう罰則のようなくらいにまで異常に高かったわけでありまして、それは今回の改正でもまだ是正されていないと思います。相続税逃れを防ごうということで贈与税が異常に高かったのかもしれませんけれども、私は、そもそも相続税についてもさらに下げていく必要があり、また贈与税についても相続税並みに、もっと生前贈与、超高齢に達する以前に子供が資産、財産を受け継いで、運用したり事業につなげたりすることをもっと積極的に推進していくべきと考えますが、この点、いかがでしょう。
谷口副大臣 今達増委員がおっしゃったのは、今回の相続、贈与の一体課税ということがございますけれども、これは要件がございまして、六十五歳以上の親から二十歳以上の子供の贈与ということで、今回、贈与税の税率も最終的には相続の段階で精算するというような税制、抜本的な税制をさせていただいたわけでございますけれども、今おっしゃったのは、むしろ、そういうことではなくて、この一体化を選択しないような場合のことをおっしゃったんだと思います。
 いわゆる暦年課税の贈与税のことを言及されたんだと思いますが、この暦年課税の場合も、従来の非常に高いと言われておった最高税率を今回引き下げさせていただきました、七〇から五〇。また、それぞれのところで、税率は、今回はかなり率を引き下げさせていただいておるわけでございます。
 しかし、おっしゃるようなところもあるわけで、これは相続課税の存在を前提にして、生前贈与による相続課税の回避を防止するという意味合いがございますので、相続課税を補完する機能を果たしていること等を考えれば、その税率構造は相続税よりも累進度を高くする必要があるという観点から、このような、相続税の税率より贈与税の税率が高い。しかし、従来から比べますと、かなりの税率の引き下げがあった、させていただいたということでございます。
達増委員 相続税については、中小企業、相続に当たって多額の相続税を払わなければならないので事業を引き継ぐこともままならないということをよく言われるわけでありますけれども、私も、身近なところで、相続によって、非常に長い間商店街の中心でやってきたお店を畳まざるを得なくなってしまった悲惨なケースを見ておりまして、要領のいい人といいますか、うまく会社形式やら何やら使って節税対策等々を図るのかもしれませんけれども、要領のいい人だけが得をするのではなく、まじめに一生懸命働いている人たちがきちんと報われるような、そういう観点からこの相続税または贈与税の改革というのを進めていかなければならないというふうに付言したいと思います。
 さて、次は住宅関係の税制でありますが、住宅ローン控除をめぐる改正。
 今回は、一たん転勤した人がまた帰ってきて再び入居した場合に住宅ローン控除適用が受けられるようにするという微調整が出ているわけでありますけれども、日本の今の経済情勢、この景気の低迷を打開して経済を立て直すに当たっては、やはり住宅が大きなかぎになる、住宅投資の促進や消費の面から見ても、住宅の需要をふやしていくことが景気の回復、経済立て直しに非常に有効だと思うんですね。その観点からして、住宅ローン控除については、これはまだまだ維持していくべきではないかと思います。
 平成十一年から十三年前期にかけて、十五年間の控除期間を設定し、一年目から六年目まで五十万円、以下だんだん少なくなってはくるんですが、そういう控除額を設定した。これが平成十三年後期から平成十五年までは、控除期間が十年間に短縮。ただ、十年間目いっぱい、最大控除額が五十万円でありますから、それまでに比べ、さほど損した感じはしないわけでありますが、平成十六年以降は、控除期間が六年間に短縮される上、各年の最大控除額は二十五万円に減ってしまう。これはかなりの目減り感であります。
 まだまだ日本の経済、軌道に乗っていないわけでありますし、また住宅についても、地域によっては、新しいマンションなどどんどん建ったはいいが、さて実際中に人が入るだろうか、そういう疑問も呈されているところであります。住宅ローン控除についてはもう少し高い水準の控除をさらに維持していくべきではないかと考えるんですが、この点いかがでしょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 今先生が申されましたこの制度は、二つの目的、一つはやはり持ち家取得の支援ということと、それから住宅投資の促進による景気効果、その二点から講じられているものでございます。
 ただ、税を見ている観点から申しますと、現行制度、最高五十万円の税額控除というのは、夫婦子二人で年収九百三十四万円の水準まで所得税がかからない、それがしかも十年間続くという制度でございまして、実は最大の租税特別措置の減収項目になっておりまして、よく言われます税負担の空洞化という要因にもなっているわけでございます。
 また、実は我が国の住宅市場を見ますと、諸外国に比べまして新築住宅投資の割合が高いにもかかわらず、実は持ち家比率が横ばいで、空き家率が上昇しているというようなこともございます。しかも、今後はやはり、借家とか住みかえ等の需要が多様化する中で本当に持ち家取得促進を中心とした住宅政策のあり方がどうなのか、こういうあたりも、もちろん景気状況も見ながらでございますが、そうした住宅政策の見直し等も踏まえた上で、今後こうした制度のあり方を検討していく必要があるんじゃないかというふうに思っている次第であります。
達増委員 賃貸は賃貸で大事ですし、定期借家権のような制度についてもさらに活発に利用されていく必要はあるわけでありますけれども、住宅全体として、日本が、まだまだ国民にとって満足できる水準にないわけですし、これから伸ばすべき分野、それが内需の拡大から経済の活性化につながるということで、そういう観点からの税制改正を望みたいと思います。
 さて、次に、電線地中化設備の特別償却制度の見直しということ、これは今回の租税特別措置法改正の特定電気通信設備等の特別償却制度についての見直しというところに入ってくるんだと思いますが、電線地中化については、これはかなり、各地で行われている中心市街地活性化の中で目玉の一つになっていると言ってもいいと思うんですね。
 そういう、町づくりの中で、中心市街地活性化、地域の商店街、地方の中小企業から景気を回復させる、経済を立て直す、真の経済構造改革に資することだと思うんですけれども、また、これは、IT関連のネットワーク技術にも関連しているものでもありますし、今回の租税特別措置法の縮減等の中に入れてやっているわけでありますけれども、この点について伺いたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 実は、後でお話ししますように、電線地中化設備の特別償却制度の見直しはしておりますけれども、今先生の言われた特定電気通信設備等の特別償却制度の見直しのように、機器を見直したり、そういうことは一切しておりませんで、別の制度でございます。
 この電線地中化設備につきましては、昭和六十一年に設けられた制度で、もうほぼ二十年近くたってまいります。したがいまして、今回は、いわゆる緊要度の高い地域に単純に絞った上で適用期限を延長するということをしていまして、ではその適用地域はどんなところかと申しますと、御存じのとおり、もともと大都市及びその周辺地域となっていたわけですが、その中の用途地域及び歴史的景観地区というところにしました。この用途地域というのは、住居専用地域、あるいは先生の言われた商業地域及び工業地域、すべて入っておりまして、いわば重点化を図ったということでございます。
達増委員 次に、所得税関係の質問をいたしますけれども、自由党は、源泉徴収制度というものは撤廃して、サラリーマンでも一人一人確定申告をして、もちろんそれが簡単にできるくらい所得税制を簡素化して、その上で一人一人が納税者意識を持ちながらきちんと納税する、そして会社の負担をなくしていく、そういうことが税制改正の根本にあるべきと考えているのでありますが、今回の税制改正の中で、芸能人について、映画、演劇の俳優等の芸能人、その役務提供を本業とする法人の経営上の負担を軽減し、文化産業の活性化を図る等の観点から、芸能人に関する源泉徴収制度を廃止すると。
 これは私も、俳優さん関係の方からぜひこのような制度改正が必要という話を聞いておりましたので、基本的に方向性としてはいいと思うんですけれども、こういう形で法人等の経営上の負担を軽減ということは、芸能人に限らず社会一般に広めていく、経済全般に広めていくべきことだと思いますけれども、これに関して、改めてこの改正の趣旨とそういう将来の方向性について伺いたいと思います。
大武政府参考人 ただいま先生から申されましたとおり、今回の改正で芸能法人に対する源泉徴収制度の廃止を入れさせていただきました。
 これは、実は、芸能法人が芸能の方個人に対して報酬等を払う際の源泉徴収制度はあるわけですけれども、それに加えて、その前段階で、興行主から芸能法人自身が受ける芸能人の役務提供に対する報酬等に関しても源泉徴収する制度がございました。これは、そもそも昭和三十九年、いわゆる興行主などが支払う都度、相手方が個人であるのか法人であるのかを確認する必要があるとか、そういう実務上の理由もありましたし、それ以外にも幾つかの理由がありまして、こういう特殊な制度を設けてきたわけでございます。
 しかしながら、現状におきましては、まさに先生が言われましたとおり、そういう意味では、これは芸能法人に対する芸能報酬のみを対象としているという特殊な制度であるということ、それからさらには、まさに文化芸術振興基本法などが制定されている今日におきまして、芸能人だけこういう差別的な取り扱いというのはおかしいのではないか、そういうような御意向も受けまして、今回廃止させていただいたということでございます。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
達増委員 最後に、所得税法関係の質問で、根本的な質問をさせていただきたいと思いますけれども、それは、やはり所得税率のさらなる引き下げが必要なのではないかということであります。
 この所得減税については、税制調査会の答申は非常に厳しいことを言っていまして、「わが国の個人所得課税は、定率減税を含め累次の減税の結果、主要国と比較して税負担水準が極めて低く、基幹税として本来果たすべき財源調達や所得再分配などの機能を喪失しかねない状況にある。」というふうに、これ以上の減税なんかあり得ないみたいなことを言っているわけであります。
 ただ、よくよく考えてみますと、あるいは調べてみますと、累次の、その場その場の減税、全体として整合性を欠き、課税最低限が異常に高くなっているんじゃないか、課税ベースが狭くなっているんじゃないか、そういうゆがみはあると思いますけれども、基本的には、直接税から間接税へという流れ、そしてその背景には、できるだけ経済活動というもの、一たん国がお金を集めて国が使うのではなく、それぞれの民間主体、個人、家計でありますとかあるいは投資を受けた企業でありますとか、民間部門でお金が自律的に回転していくようにするのがいいわけであります。なるべく個人から税金は取らないで、個人が自由に、企業に投資するもよし、NPOに寄附をするもよし、自分自身に投資するもよし、それこそあるべき税制、そういう方向に日本を変えていくのがあるべき改革の方向性だと思うのであります。
 改めて、所得減税すべきということについて、大臣の考えを伺いたいと思います。
塩川国務大臣 私は、所得税の問題について、所得税政策としては、空洞化を、やはり平等なものにして、余り所得間の格差というものを極端にしないようにする、平準化していくということがまず第一、その上で税率をどうするかということを考えるべきだと思うんです。
 ところで、今の日本の所得税の税率は、諸外国に比べまして非常に低過ぎる。それは、やはり空洞化が起こっておるからこうなっておるのでございまして、念のためにちょっと数字を申しまして、御迷惑かもしれませんけれども、諸外国と比べてみますと、国税だけについて見まして、イギリスは一四・四%、それからイタリアは一四・三%、そういう状態になっておりますが、日本は平成十五年度で三・八%という負担率なんです。これは、先ほど申しました空洞化の問題があると思っております。
 そこらのものを平準化して、その上で改めて間接税との比較というものを考えていくべきであって、今直ちに消費税率だけを問題にするということはちょっと早計ではないかと思っております。
達増委員 現状でも、確かに負担が低過ぎる社会階層がある一方で、負担が高い部分、その軽減が経済社会の活性化につながる部分もあると思いますので、その辺をきめ細かく検討すべきということを付言しまして、私の質問を終わります。
林田委員長代理 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、昨日に続きまして、最初に、免税点の問題にかかわって質問したいと思います。
 きょうは、まず農業の分野なんですが、米農家の例を少し見てみたいと思います。
 記帳実務も大変な高齢者の農家が多いですし、農業経営が大変ですから後継者がなかなか生まれてきにくい、こういう実情にあることが日本農業の今日の現状だと思いますが、全国の農家は三百十二万戸で、販売農家は二百三十四万戸、このうち三千万円超の販売農家は二万六千戸。免税点が一千万円に引き下げられると、新たに消費税の課税対象者になる販売農家が十二万一千戸で、合計十四万七千戸が課税対象農家になるというふうに思います。それは、課税対象農家としては現在の五・六五倍にふえるということになると思いますが、まずこの点を最初に確認しておきたいと思います。
山田政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま先生がおっしゃいました数字は、農林水産省がセンサスをもとにして推計した数字でございまして、そういう数字と思っております。
吉井委員 農業所得者で所得税納付をしている農民が十三万一千人ですから、消費税課税対象農家十四万七千戸となりますと、所得税課税農家のほぼ全部が入ると思っていいかと思うんですが、この点も確認しておきたいと思います。
山田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申しました、数字、農林水産省のセンサスで推計をしたものですので、必ずしもその両者の数字が突合しているかどうかについてははっきりいたしませんが、おおむねそんなことではないかと思っております。
吉井委員 それで、米市場での全銘柄平均の指標価格の推移を少し見てみますと、一九九五年に六十キロ当たり二万一千四百五十七円が、二〇〇二年で一万五千九百六十四円。消費税分をオンして支払われても、人件費分、つまり農家の取り分が五千五百円引き下がっているわけですね。そこで、さらに、消費税を簡易課税でかけるとすると、大体一千万ぐらいのところで、一千万ですと三〇%掛ける五%ですから、十五万円。
 米などの売り上げが一千万円を少し超えるぐらいの農家は非常に多いわけですが、今まで消費税の入った肥料、農薬その他は全部支払っているわけですから、売れたものから肥料、農薬その他支払い分を引くと、それが人件費分、農家の取り分ということになるんですが、実際はこの取り分がどんどん減っているわけですね。六十キロ当たり五千五百円減っている中で新たに十五万円を支払うということになってきますと、そうでなくとも米価がどんどん下がってきている中で大変であります。
 そこで、農水省にこの点を伺っておきたいんですが、免税点を三千万から一千万円に引き下げれば事務的制約からは助かるんだ、こういうことをおっしゃっているのか。あるいはまた、実際私は、いろいろ親戚等でもどんどん高齢化していっているわけですが、なかなか、農業をやりながら高齢者は事務も大変なんですが、事務的制約からは助かると。農家の取り分が減っている中でのこの十五万となるとなかなか大変だと思うんですが、特例措置の見直しについてどのような意見を表明されたのか伺っておきたいと思います。
山田政府参考人 お答えいたします。
 昨年六月に、政府の税制調査会におきまして、免税点制度の大幅な縮小などの消費税の見直しの方針が示されたところであります。それを受けまして、農林水産省といたしましては、八月末に財務省に、十五年度の税制改正要望を提出いたしておりますが、その中で、消費税の見直しに当たっては農林水産業等への十分な配慮を行うようにということを要望しております。
 この十分な配慮というのは、具体的に申しますと、先生今お話ありましたが、農家の方々、新たに記帳の事務等が必要になる農家の方も出てきますので、ふなれな方々もおられるということで、一定の経過的な期間が必要ではないかというようなことを具体的には申し上げたところであります。以上です。
吉井委員 高齢者で農家の方は、記帳の問題はもちろんあるわけなんですが、記帳のことだけじゃないんですね。実際に米価がどんどん下がってくる、農家の取り分が減ってくる中での、例えば一千万をちょっと超えたぐらいのところで十五万円の支払いとか、こういうふうになってくることが実は農家経営にとって大変なことになってきております。WTOでも輸入の関税率はどんどん下がってくる、消費税でも免税点の引き下げだ、米輸入でも野菜の開発輸入でも大変大きな打撃を受けてきているというのが日本の農家の実情であります。
 日本の農業、食料の自給率の引き上げが必要なときに増税を行っていくということに今度なるわけですが、一千万円だったら農家の人もあるいは零細企業の人々も事務的な制約から助かるということでございました、そこで一千万円ということを想定してやったのですというのが、税のタウンミーティングを踏まえての大臣の国会答弁なんですが、農業分野での一千万円の影響、そして今日の日本農業の実態からして、一体これが持つ問題はどういうところにあるか、どういう検討を大臣としてもされたのか。ちょっと大臣のその辺の考え方を伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 三千万円から一千万円に免税額を引き下げたことの影響でございますけれども、確かに、農林センサスにおきましても、一千万円以下の農家二百十九万戸、総農家数でいいまして三百十二万戸でございますが、そのうち販売農家二百三十四万戸でございますんで、大体九三%が実は一千万円以下の免税点業者になっておるということです。一千万円から二千万円の農家は三・九%となります。そして、二千万円から三千万円の農家というのは一・三%という状態になっておりまして、農家の大部分、九三・七%は免税業者であることは継続できるということでございます。
 私は、被害は確かに一千万円から三千万円までの間の方に及ぶであろうけれども、この方々も、きちっと記帳さえしていただければ消費税の自己負担というものは軽減されてくることでございますので、要するに、記帳指導等を通じまして、税の透明化、公平化を図っていきたいと思っております。
吉井委員 私は、この分野の問題は単なる記帳の問題じゃないと思うんですね。とにかく、新たにふえる農家が十二万一千戸。これは率の問題じゃなくて、絶対数で、全国で十二万農家が、今度一千万円に免税点を下げることによって新たな課税対象農家となるんです。
 現在米価がどんどん下がってきて、六十キロ当たりで大体五千五百円ぐらい下がってきている中で、では、きちんと記帳されて十五万円の納税ぐらい知れているじゃないかという発想かもしれないけれども、しかし、今の農業経営を考えたときに、非常に冷たい考え方だと思いますね。日本農業の再建ではなくて、さらにこういうやり方で農業を衰退させる、こういう税制、農政のあり方というものについては、私はこんなことは許されないということを申し上げまして、次に福祉事業への影響についても見ておきたいと思います。
 無認可保育所の問題なんですが、児童福祉法に基づく保育所の保育料は非課税です。しかし、保育所不足で、父母の皆さんが集まって、それで設立したのが無認可保育所です。こちらの場合は条件が非常に厳しくて運営に苦労しておられるわけですが、そこが年間一千万円を超える保育料の徴収を行わないと運営できなくても、課税されるということになる。
 まず、この部分は一千万円を超えると課税の対象になると思いますが、これを確認しておきます。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 社会福祉法第二条に規定する社会福祉事業、こういうものにつきましては、消費税法第六条の規定により既に、委員おっしゃられたとおり、非課税となされておるわけですが、認可外保育所につきましては、社会福祉事業に該当しないという法令上の位置づけでございますので、従来より課税対象というグループに入っておるわけでございます。
吉井委員 それで、無認可の保育所ですが、全国で現在、児童数十人から二十人未満の施設で千六百七十九カ所、二十人から三十人未満で一千七十七カ所。ですから、十人から三十人の合計で二千七百五十六カ所全部が、全体の四五%がこういう状況なんですが、調査によると、二十人を超えるとほとんどが一千万円を超える。だから、消費税が新たに課税される無認可保育所が全国で大体三千カ所近くに上ってくるのではないかと思われます。
 厚生労働省としては、無認可保育所の課税について、それを防ぐ申し入れを行うとか、あるいは財務省との間で非課税とする話し合いなどについての話はまとまったのかどうか、それはどういうふうにしているのか、伺っておきたいと思います。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもで把握しております認可外保育施設でございますけれども、事業所内保育所を除きまして、約六千百ぐらいというふうに承知しております。ただ、その具体的な利用人員の規模につきまして委員今御指摘がございましたけれども、それぞれの売上高等につきましては、これは認可外保育所でございますものですから、大変恐縮ながら、私ども、十分に情報を承知する立場にございません。
 そして、今般のこの免税点引き下げの問題でございますけれども、まず第一に考えるべきことは、私ども、一定の補助をもって促進しておりますが、児童福祉法上は、やはり保育サービスは認可保育所というところで提供されることを旨としておりますので、さまざまな規制緩和措置を講じまして、認可保育所に転換しやすくなるような条件を近年整えておりますが、さらに予算的にも助成いたしまして、認可外の保育施設を運営されている方々が認可施設になり、そして消費税法上でいえば、社会福祉事業として非課税となるという方向で指導をしてまいっているところでございます。
 税制改正に当たりましては、そういう立場から申し上げますと、従来課税対象となっている認可外保育所が、一定のルールのもとに公平な税負担という観点で、実際上も課税対象となるということはやむを得ないことと理解をしております。
吉井委員 全国で調査されて、四千ぐらいのうち一千ぐらいは新たに認可保育所に、条件を少し変えればいけるだろうという調査をされたことなんかも伺っているんですが、しかし、それは、余り極端に規制緩和ということをやると、実際には子供たちの遊び場もないような非常に劣悪な環境のもとで、そういうものを福祉法人としてやればいいのかという問題が出てまいりますから、この話はそう簡単な話ではないわけなんですね。
 ですから、現実に無認可の保育所について、おっしゃったように全部が社会福祉法人というふうには簡単にいかないわけですから、そのもとで、免税点一千万にすることによって課税対象になってくる。これは、そうでなくても父母の皆さん方が今の保育所不足の中で苦労しているのに、さらにこれを苦しめることになることは明白であります。待機児ゼロ作戦といって児童福祉に力を入れるようなポーズをとりながら、しかし増税で苦しめるというようなことをやっちゃならないわけですから、私は、この点でもそもそも、一千万に引き下げて課税対象にするということは大問題だということを指摘して、別な問題も見ておきたいと思います。
 それは、小規模作業所です。社会福祉事業法で、こちらの方は、授産施設が他に譲渡等をする場合にも課税となるということになってくるわけですね。
 そこで、厚生労働省は、作業所の運営は大変だということは御存じだと思うんですけれども、私もそういう小規模作業所づくりを支援したりして取り組んでまいりましたからよくわかるんですが、例えばグリコなんかのお菓子のおまけ、そういうものの仕事をとってきて、非常に工賃が安いということでも苦労してやっているわけです。しかも、せっかく作業所から、訓練して、企業に就職してもらえるようにしても、しかし、このリストラの時代ですから、真っ先に障害者は切られてしまってまた作業所へ戻ってくる。だから経営も大変になっているんですが、その上今度一千万円ということで消費税課税では、本当に大変なんです。
 共同作業所の収支の調査と、免税点一千万円に引き下げて消費税の課税となる作業所は幾らになるのか、まずこの辺の基礎的な調査をしておられるのかどうかを伺います。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
上田政府参考人 小規模作業所の実情については、すべて十分な把握はしておりませんけれども、私ども、小規模作業所について、その売上高につきまして、一部地方公共団体、団体等に聞いた範囲におきましては、これは小規模作業所でございますが、大部分におきましては一千万未満であるというような状況をお聞きしているところでございます。これはあくまでも一部の調査でございます。
吉井委員 大臣の東大阪で、障害者作業所があることはよく御存じだと思いますが、障害者の自立、社会的参加を口にする政府が、十分な調査もしないで、障害者と家族が小規模作業所で非常に苦労してやっておられる、そういうところまで、現状のままでいきますと課税対象が出てくるわけですね。そういうことでいいのだろうか。ここのところはやはり大臣としても考えてもらわなければいけないんじゃないかと思いますが、これは大臣に伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 私も随分と作業所の方は知っておりますが、その中で、やはりちゃんと消費税を払っておられる作業所もございますし、また、非常に零細で、免税点であって、申告しておられないところもあります。
 ずっと吉井さんの先ほどからの質問を聞いておりまして、農家の質問、保育所の質問と、消費税というものに対する根本的な考え方が我々とちょっと違うなという感じがするんです。
 要するに、消費税は、国民全部が払っておるんです。これは、生活保護者の方でも消費税は、しようがないなと思って払ってもらっておるわけなんです。でございますだけに、これは国民全部払っておるものだから、その消費税が国庫にどういう状態で納まっておるかということはやはり国民全部が大きい関心を持っているもので、そうであるとするならば、本当は全部、いただいた消費税を完全に納入をしてもらうというのが原則なんですけれども、しかし、そういう事務的な問題等ございますんで、今までの零細業者というもの、対象のところには免税点を引いてきた。
 しかしながら、これが、世間で見ましたら、その免税点が果たして妥当なのかどうか、もう少し透明度をはっきりしたらどうだという声が高くなってきて、それを受けて、一千万円までということにしたのでございまして、もともとは、本当は全業者が申告してもらうべき性質のものでございますけれども、それを、いわば零細業者保護のためということで、申告を、ある程度の線で引いて免除しておるというのが現状なんでございますので、その点はひとつ理解してもらいたいと思います。
吉井委員 その話は昨日しております。
 実は前段階でみんな払っているんですから、消費税を払っていない人はいないわけなんです。これは作業所もみんな払っているわけなんです。当たり前の話なんです。
 そして、昨日も言いましたように、今度一千万に下げることによって、これは中小企業庁のことし一月の調査によっても、三八・七%は全部転嫁できますから、ここは現在やっていますから、これは全く損税にならないんだけれども、他の六一・七%については、一部損税になる人もあれば、全面的に損税になる人も出てくるというのは実態なんですから、そういう中での話ですから。
 そして、まあおっしゃったから、何か、記帳をすればうまくいくようなお話ですが、社会福祉の分野でも課税に向けての記帳実務を強調するわけですが、工賃を計算する上で、もし仮に税務署が代行したら大変ですよ、大変なことなんですよ。それを、お願いして、皆さんに記帳をやってもらうわけですが、これは課税、これは非課税、これは免税など、仕分けする記帳実務はなかなか大変なんですよ。
 指導員という不安定な身分で頑張っている職員の方が、一日じゅう仲間の指導をして、送り迎えもやる、トイレのお世話から食事の支援などさまざまな仕事をこなした上で、記帳実務などをやっていくわけです。零細企業も高齢化している農家の方も大変なんですが、残業賃金ゼロでこういう新たな実務に追われる、どれほど大変なことかわかった上で、それを調べた上で、事務的な制約からは助かるということでの一千万円を判断されたのかどうか。実際には十分な調査もなしに、とにかく庶民増税の方だけがどんどん進んでいるというのが実態じゃありませんか、大臣。
大武政府参考人 お答えをさせていただきます。
 消費税も、やはり導入してから十五年という歳月がたっています。今大臣申し上げましたように、一体どこの線で免税業者にするかどうかというのは、やはり時間とともにそういうものは見直していかざるを得ない。特に、先ほども吉井先生も言われたとおり、皆が払っている消費税ですから、そういう意味では、できるだけ免税点というのは低い方がより好ましい。
 その中で、今先生が言われたように、確かにそういう実務上の問題があることもそれぞれありますけれども、しかし、やはり四割の方がそれでも非課税になるわけですから、免税業者になるわけですから、そういう意味では、まあ四割ぐらいまでで我慢していただきたいということで今回の改正をさせていただいている。
 ちなみに、諸外国を見ても、どの国でも、日本の一千万円という水準は実はイギリスのみでございまして、ほかの国はもっと低いいわゆる免税点になっているわけでございまして、ぎりぎり国際水準である、ぎりぎり高い、イギリスということも一方では念頭に置いてやらせていただいているということであります。
吉井委員 まず、これは、実際にやったときには六割の方は損税になってきますから、益税の方というのはないわけですから、そのことを申し上げておいて、そして、これは記帳実務が、その点は認めておられるんだけれども、小規模作業所の方にとっても本当に大変だということを、その大変さを、残業代もなく頑張っている人たちにさらに押しつけることになるんだ、そんな実態も把握しないで増税だけ考えるのはけしからぬということを言って、次に、多年度税収中立について質問したいと思います。資料の配付をお願いします。
 まず、この資料のことを聞く前に、今回の税制改正法案の例年と違った特徴は、多年度税収中立という原則のもとに一括法案として提出されているんですが、多年度税収中立というけれども、来年度以降の税制改正はその都度行うということになっているんですね。それが順次、今年度改正に上乗せされるということになります。ですから、多年度税収中立は、あくまでも本法案に係る多年度であって、来年度以降の税制改正はこれに上乗せされてくるということは入っていない。来年度以降は、当然これは上乗せされてくるものであるということをまず確認しておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま先生が申されましたとおり、いわゆる十五年度の税制改正の後年度への影響というものを、各措置の適用期間も踏まえまして、十五年度予算ベースで機械的に試算したものでございます。したがいまして、これは、後年度、要するにこの改正は、こういう法律であれば、どこまで期間が適用され、期間のないものは継続するという仮定において、法律に基づいた法的措置としてどうなるかという試算を出したものでございます。
 したがいまして、各年度ごとの改正を拘束しているものは全くありませんから、例えば適用期限が切れたからといってそれで終わるということではない。この法律ではそう書いてありますけれども、それぞれ、その時点においてまた判断をして、必要とあれば延長するし、必要がなければやめる、そういうような制度として持っているわけでございます。
 ただ、これを多年度税収中立という言葉で言わせていただいておりますのは、今般の財政の状況を考えますと、歳出の半分しか歳入がないという状態の中で、やはり減税をする以上は財政規律というものを確保しなければならない。全体像を今回の改正の中でいわばどう位置づけていくかということをはっきりさせ、財政規律を一つの判断としていただくために、こうした多年度中立という言い方で出させていただいているということでございます。
吉井委員 まず、この資料の表の一をごらんいただきますとよくわかりますが、前半は先行減税があるんですが、後半は、先行減税の多くが期限切れとなって、一方、増税効果の方が効いてくるわけですね。それで、四年目の〇六年度には〇・八兆円の増税に転じて、七年以降は毎年一兆円以上の増収。九年度になれば、税収中立どころか、むしろおつりが出てくる。これを、間違いないと思いますが、まず確認をしておきます。
大武政府参考人 お答えをさせていただきます。
 まさに本改正による法理的期限で計算すればこのようになるということでございまして、それ以上のものではありません。
 したがって、今後の改正次第で変わる。例えば、昨年の税制改正は、連結納税制度等によりまして、多大の減税超過に実はなっておるということでございます。
吉井委員 次に、表の二の方ですが、結局、多年度税収中立というんですが、これは、今後七年間の増減税を累計した総括表ですね。減税の恩恵を受ける人と増税になる人が一緒なのかどうかというのを見ればよくわかるわけで、大企業向けはこの間五兆四千億の減税、資産家向けは二兆五千億の減税、庶民・中小企業向けは、中小企業減税分が最初ありますが、それを差し引きして八兆三千億円の増税。
 だから、税収中立というのは、減税を受ける人と増税になる人が同じ人だったら多年度でも中立の意味もあるかもしれないと思うんですが、庶民は増税だけで減税はない。そして、多年度税収中立といっても、結局、庶民と中小企業から九兆三千億円を吸い上げて、それで、約一兆円は中小企業にまず先に戻す分がありますが、八兆円を、一部勝ち組大企業と資産家、投資家に分配、こういうことになっているのがこの表を見れば歴然としておりますが、これは違っていますか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 数字は今いただきましたので、ちょっとまだ細かいところはわかりませんけれども、いずれにしましても、この整理が若干私どもは違うのではないかと思っています。
 例えば、研究開発減税は大企業向けとなっていますが、実は、大企業といっても、そこでいわば雇用の場をいかに確保していただくか、あるいは、IT投資減税みたいなものも、投資をしていただくことで実需を起こしていって雇用の場をつなげていきたいという思いでできているわけで、いわゆる法人税率一律下げという大きな考え方と若干違う形でやらせていただいているわけであります。
 それから、資産家向けとわざわざお書きになりましたけれども、今回の相続・贈与税の減税の大宗は一体化でございまして、先生よく御存じのとおり、むしろ、相続税のかかる方ではない、百人亡くなられれば、九十五人の相続税のかからない方への贈与、それに対する軽減でございますから、一般的に、金融資産では約五割の方が三千万以下ということのようなんですが、そういう方々がむしろ利用しやすいようにというようなことも頭に置いた改正でございます。
 それから、金融・証券税制というところも、一般の大量投資家を念頭に置いているんじゃないので、一般庶民の人が、銀行預金だけではなくて、現下のこういう金融の状況で考えれば、むしろ証券というようなものに投資しやすくしたいという思いでやったものでございまして、決して資産家をターゲットにしたということは、必ずしもこの整理が、こっちの左側の分類が若干私どもとは違うという気がいたします。
吉井委員 その議論は、私はこれまで、増加試験研究税制のときなんかもきちんと議論しました。建前は、大企業も中小企業もそれは全く差を設けずに法律としてはつくるんです。だけれども、だれが一番減税の恩恵を受けてきたのかというのは、これはかつて国会でも、増加試験研究税制の実際の数年にわたる実績値に基づいて議論をしまして、これは明らかに大企業減税ということになってきます。
 それで、結局、大企業向けには制度減税、それに特別減税の上乗せ分というのもあるわけですが、庶民の方はどうか。大企業向けは、特別減税で一定期間が切れたら切れる、それにさらに制度減税分が一部あるわけですが、庶民の方は制度増税だけなんですね。ですから、庶民の方は、今度、一定期間が来たら減税がなくなるというものじゃなくて、ずっと増税だけあるんですよ。それが今度の特徴なんですね。
 大臣に伺っておきたいんですが、今度の、庶民だけ増税を持ってくるこのやり方だけじゃなしに、今、財務省の方では、今度の配偶者特別控除の原則廃止を突破口にして、〇四年度には高齢者向けの公的年金控除を縮小することとか、個人所得課税の強化、つまり、さらなる所得税の課税最低限の引き下げをねらっているわけですよ。これは税調での議論が、既に昨年来そういうことでやられておりました。また、消費税の中小企業特例は、今後の消費税引き上げの条件づくりにほかならないという問題を持っています。今後、こうした庶民増税が上乗せされてくる、こういうことは必至だと思うんですね。
 ですから、この増税分が一定期間が来ればなくなりますという話じゃなくて、こっちは制度増税ですからずっと続いていくんですよ。さらに上乗せの制度増税が今度来るわけですから、そうすると、このやり方をやれば、結局、家計消費を冷え込ませる、景気の面でさらに悪くする道でもあり、こういうふうな庶民増税をどんどん進めるやり方というものは、景気対策で減税先行ということをお話しされたけれども、景気のことを考えてもこんなやり方はやめるべきだし、そして、昨日来取り上げてきました零細業者の問題にしても農家の問題にしても、福祉事業分野で頑張っている人たちの問題にしても、私は、暮らしにこれだけ打撃を与えるようなこの制度増税のやり方というものはやめるべきだというふうに思うんです。これは最後に、塩川大臣に伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 現在提出しております法案によりまして、見ていただいたらおわかりだと思うんですけれども、過去五、六年前から数度にわたりまして、個人所得税を中心とした大幅な減税をしてまいりました。そのことが国の財政にどのような影響があったかということは、これは吉井さん自身が十分御存じのはず。その起こってきた空洞化を今回は是正しようというものでございまして、空洞化全部を是正するものじゃございませんで、その一部でございます。
 でございますから、従来からの所得税の趨勢等を見まして、今回の所得税の一部改正、つまり配偶者特別控除等は、それは大して大きい所得税の増税につながってくるというものではない、均衡をとってきたという程度のものであると認識していただきたい。
 そしてまた、企業に対する減税でございますけれども、大企業と書いていますけれども、これは、大企業という書き方をするから政府は大企業優先ということになるのでございますけれども、そうじゃなくて、産業界全体、企業全体に対する措置だと。国会でも数次にわたりまして、景気対策のために何とか減税しろということを、特に設備投資あるいは研究開発の減税をしろということは国会の大きい要求の波になってきておる。我々はそれを受けて、そういう措置を講じたのであります。
 それでは、なぜ五年間という限定をしたのかということでございますけれども、今まで何遍も申しておりますように、減税を一回やりましたら、ある程度正常化してきた場合に、この減税をもとへ戻そう、正常化しようとしても、なかなか国会で承認してもらえない。一回減税したら、国会は、これを戻すことは拒否される。でございますから、増減税のバランスをとらないと財政の均衡が崩れてしまう、そういう考えから、減税と同時に増収の方もセットしていったということでございます。
 したがって、特別措置についての時限立法によって減税措置いたしましたけれども、また景気の動向とか、あるいは投資の実態等を見まして、国会が税をお決めになるのでございますから、そういう事態が起こってきた場合、国会からの発議がまた起こってくるであろう。我々は、まず国会の発議に基づいて企業減税等を実施に移したのでございますから、またそのときの事情等もあろうと思いますので、税は永久固定のものではございません。やはり中期的な展望を、しっかりしたものをとってはおりますけれども、しかしながら、時代の変化に適応した税制を運営していくということは、これは国会としての、政府としての使命であると思っております。
吉井委員 時間が参りましたので、締めくくって終わりますが、まず、シンクタンクなどでも指摘しているように、税の空洞化の問題というのは、景気が悪くなれば税収が落ちるのは当たり前で、回復したらふえるわけですが、問題は、法人税率を引き下げていますから、景気回復しても税収は簡単にふえてこない。それから、トリクルダウン論で考えたってだめだということも申し上げておきたいと思います。
 庶民増税を制度的に続けていく、庶民増税の方だけは制度増税でやっていく、こんなやり方は断じて認められないということを申し上げまして、時間が参りましたので終わります。
小坂委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 通知してございます質問の順番を変えさせていただきまして、きょうは日銀の速水総裁に御無理を申し上げまして、お時間をちょうだいいたしましたので、速水総裁への御質問から始めさせていただきます。
 この間、日銀の新総裁並びに副総裁人事等々が内定という形で発表されておりまして、随所で取り上げられておりますが、日銀が新しい日銀法になりましてからずっとその重責を担ってこられた速水現総裁にあっては、とりわけ金融行政、非常に難しい折、また日本の経済の低迷も、先ほど来問題になっております空洞化などの問題もありながらの、日銀総裁としての仕事が今も続いておるわけだと思います。
 きょうは、私は主に三点にわたってお伺いをしようかなと思っておりますが、この五年を振り返ってごらんになって、新聞等々ではいろいろなお考え、総括と言ってもよいのでしょうか、そういう向きの御発言を見かけますが、国会で一度、速水総裁のこの五年を振り返ってということのお話を、まず冒頭に伺わせていただきたいと思います。
速水参考人 私、九八年の三月に日本銀行に総裁として戻ってまいりまして、それから五年になるわけでございますが、参りましたときは、既に公定歩合は〇・五%、短期金利、無担保コールは〇・五%を下回る水準でありました。
 日本銀行は、わずかに残った金利引き下げの余地をぎりぎりまで活用して、短期金利を〇・〇〇一%まで低下させていきますとともに、短期金利以外の金融緩和の波及ルートにつきましても、どういう道があるかということをいろいろ模索し、そして、いわゆる量的緩和の枠組みというのを採用いたしました。これをもって、情勢の変化に対応して、潤沢な資金供給を続けてきたつもりであります。
 こういった、内外の中央銀行の歴史に例を見ないような思い切った金融緩和によりまして、金利は、やや長目のものを含めて広範に、ほぼゼロまで低下しております。また、期末を控えて、金融システムがなお問題を抱えておりますもとでも市場の流動性懸念が払拭されるなど、市場は非常に安定的に過ごしております。こういったことを通じた景気の下支えには、私どものこういった政策が貢献してきたというふうに考えております。
 ただ、現在のこの金融緩和は、一段と強力な効果を発揮していくためには、やはり構造改革を通じた経済の活性化、それともう一つは金融システムの機能の強化ということが不可欠だと思います。
 特に、後者の金融システムの機能の強化ということを具体的に今言わせていただければ、一つは、銀行の信用仲介機能というものを強化していくということと、もう一つは、借り手である企業サイドの、企業金融の市場化といいますか、証券化といいますか、企業がそういった資金を市場から直接調達する道をもっともっと広げていく必要があるということを感じております。
 そういったことがございますけれども、日本銀行としましては、景気の本格的な回復とデフレの克服のために、今後とも中央銀行としてなし得る最大限の努力を継続してまいる考えでおります。
阿部委員 金融行政の評価は、恐らく、短期的になされるよりは、歴史を振り返ったときに、おのおのの評価がつくものではないかなと私は考えております。そういう観点に立ったといたしましても、今速水総裁のこれまでやってこられたことのお話も伺い、また、せんだっての質疑の折にも、世の中でインフレターゲティングと言われておりますようなインフレ目標に向けてさらに日銀ができることがないかということの質疑の折にも、速水総裁は、既に量的緩和ということにも踏み込んでおるし、基本的にはこれまでの政策の延長で行うんだというお話でございましたし、私もそのようなものであろうかという認識にも立っておるのでございますが、いま一点。
 せんだって、総裁もG7に御出席なさいましたが、私は、今アメリカのイラク攻撃という問題が、世界の金融情勢だけではなくて、経済情勢に与えている影響というものをどのように考え、またどのように対処しておくかということにおいて、ちょうど総裁の交代時期にも当たるやもしれませんし、せんだってのG7での速水総裁の、皆さんのプレゼンテーションの御感想並びに総裁自身のお考え、そして、私は、恐らく、そのときG7では、今後の課題として株価の暴落を防ぐ、あるいは随時金利を引き下げる、ないし為替できちんとした安定をつくり出すというふうなことが皆さんで合意されたと思いますが、そういう点を踏まえた上で、特に一点。いわゆる円安誘導のことが今我が国でもこの間話されてまいりましたので、このことの認識も含めて、総裁の御見解を伺いたいと思います。
速水参考人 先日、週末に行われましたパリでの七カ国財務大臣・中央銀行総裁会議におきましては、確かに皆さんが地政学的な問題が近く起こるという危険性や不確実性を持っておりました。しかし、それについての、そのときにどうするかという議論は、それぞれお考えになっておられると思いますけれども、議論の対象にはなっておりません。
 公表されたコミュニケをごらんになりましても、最初のパラグラフに、地政学的な不確実性が高まっている、しかし、我々の経済の基礎的な強さとより力強く成長する能力に引き続き確信を有しているということで、これは、既に、近く起こり得ることであるけれども、それが長く続くものではないということを考えた上で、むしろそれが終わった後の主要国の経済の成長率を高めていくということが、欧州も日本もアメリカも、それぞれの今考えていることを述べて、中期的に先行き経済の成長を伸ばしていかなかったら、国内も経済的にうまくいきませんし、それだけでなくて、七カ国がやらなければならない世界全体の貧困の問題とか、いろいろな問題がたまっておるわけでございます。そういうものにどうやって手を伸ばしていくかといったようなことも、結局、こういう七カ国の経済の成長率が上がっていくということが必要なんだということをみんな強く意識して議論をしておられました。
 日本につきましてもそのことは同じでありまして、日本は金融・企業セクターを含む構造改革に取り組んでいることを改めて表明したということがこのコミュニケにも書いてあります。
 そうやって、先行き、少し先の経済の成長を伸ばしていくということを議論したというのが実情でございます。
 それから、地政学的なリスクについて、我々が今どういう準備をしているかということにつきましては、イラク情勢などの地政学リスクが顕在化していることは確かであると思いますけれども、その場合に、三つのルートがあると思うんです。一つは、金融資本市場の動揺が起きはしないか。二つ目は、原油価格の高騰が起こりはしないか。三つ目は、海外経済への悪影響等が起こりはしないかといったようなことでございます。日本経済にも何らかの形で影響が及ぶ可能性は否定できないと思います。
 ただ、具体的な影響の度合い等につきましては、地政学リスクがどのような形で顕在化していくかによって異なっておりますし、一概に申し上げることは難しいと思います。
 日本銀行としましては、こうした点も含めまして、経済金融情勢について注意深く見てまいりたいと思っております。
 為替の問題につきましても、どういう影響が市場に起こってくるのかというようなことを見た上で検討すべきものだ、対応すべきものだというふうに思います。
阿部委員 私があえてこの文脈の中で、円安を例えば政策的に誘導してはどうかというふうな意見もある中で、速水総裁の見解を伺いたかったのは、今、地政学的という言葉が使われるときは、かなり戦争時のリスクという、当然その地域の持つリスクということで好んで使われておりますが、例えばですが、日本とアジアの諸国も、当然ですが、日ごろ地政学的なリスクを共有し合っておるわけです。
 その中で、速水総裁が、例えば今後日本が円安誘導などをした場合に、当然アジアの市場、アジアの信頼、アジアの国々との関係等においてよい方向には向かわないであろうという、中長期的なことを展望されての円安誘導についての否定的なお考えかなと私は思ったのです。
 すべて論じられるとき、非常に短期的、そしてその場の、何か起こったらどうするんだという形でしか他国との関係、あるいは、これは経済的、歴史的、外交的関係が金融に組み込まれていないとすると、やはり私は、非常に今の金融というのは将来を見誤ると思うのです。逆に、速水総裁があえて円安誘導に傾かずとおっしゃるときにお使いになる、アジアとの関連というところに地政という意味も持ちたいと思いますので、私の認識しているような意味で、速水総裁が円安誘導ということにあえて乗らないというふうに御認識なのかどうかという点を、一点お願いいたします。
速水参考人 為替の問題は、これは財務省の問題でございまして、政府が決めるべきことで、私の方からこうやれ、ああやれと言うことは、持論としては言わせてもらう場合もありますけれども、政策をお決めになるのは財務省でお決めになるわけで、今の、地政学リスクというのが顕在化してきたときに為替市場にどういう影響が出るであろうかということは、あらかじめ、いろいろ予測しておく必要があるとは思いますけれども、世界全体のマーケットですからね、為替というのは。二十四時間、一兆五千億ドルの金が動いているわけですから、それが、何か起こったときに、こういうことが起こったときに何が起こる、どういうふうになるのかというようなことは、今の時点で予測することは非常に難しいと思います。
 そういう意味でも、これは、確かに問題が生ずる可能性はあるかもしれませんけれども、今ここで、平時のときに何かやらなければならないというものではないと思います。
阿部委員 私は、逆にそれゆえ、なるべく平時を保つような経済の仕組み、あるいは金融の、お互いの信頼がこれからの世界の基盤になると思うのです。
 今、アメリカがイラクに対して武力攻撃に出るということは、ブッシュ大統領がサダム政権をどういうふうに見るかという、極めて政治的、軍事的な側面で論議されておりますが、実は、一番このことの与える影響が大きいのは経済金融市場になってまいると認識するものです。特に、グローバル化した経済の中では。
 先ほどの、為替の問題は財務省であるという日銀総裁の、それは正論でございますから、そのように受けとめておって、また財務大臣にも質疑をしたいと思いますが、私は、なぜ日本の経済界や金融に携わる人が、もっとこのイラク問題、アメリカが今まさに着手せんとする、アメリカの武力攻撃という不安定要因に、むしろ安定性を増すために穏やかな解決ということを望まれないのか非常に不思議でならないので、速水総裁にあえて御質問をいたしました。
 そして、三点目、もう一つだけお願いいたします。
 きょう、日経新聞にも出てございましたが、これまで、政策決定委員会でいろいろな重要政策をお決めでございましたが、組織的に業務委員会というものの立ち上げをなさったというふうに出ておりますが、組織運営上、どのようなお考えでこうした新しい委員会の立ち上げをなさったのか、それ一点だけお願いいたします。
速水参考人 今おっしゃいました業務委員会というのは、私どもの銀行の中でいろいろな問題を理事方が話し合って、それを検討して、打つべき手を間違いなく打っていくという内部の制度でありまして、これは副総裁がチェアマンになって動いております。何かあれば私のところへ相談に参りますけれども。そこで今おっしゃったようなことがどの程度議論されているかというのは私もよく存じませんが、当面のいろいろな課題を日銀の中にある委員会で議論して、やるべきことを決めておりますことは、おっしゃるとおりでございます。
阿部委員 よく聞き取れなかった部分もあるのですが。
 速水総裁は現総裁でありますし、この業務委員会の発足も既に現実になっておるというふうにメディア報道では、私もじかに聞いたわけではないのでわかりませんが、でございますので、その委員会の性格とか期待されるものについては、これは質問予告もしてございませんでしたけれども、十分存じませぬがではなくて、もう少しきちんと御答弁をいただきたかったかなと思います。
 これで速水総裁への質問は終わらせていただきますので、極めて玉虫色のものかもしれないということがわかったということにとどめて、総裁にはお時間がございますので、御退席をいただいて結構でございます。ありがとうございました。
 そして、引き続いて、塩川財務大臣にお願いいたします。
 為替の問題は財務大臣だよと振られましたが、それ以前に、私は、やはり、塩川大臣はもちろん戦争も御存じだし、戦前の経済、戦後の経済、ずっと見てこられて、そして今、二十一世紀初頭という時期で、先ほど言いましたが、経済も金融もグローバル化した中で、いざアメリカは攻撃をするんだというふうな事態を一方に控えて、もちろん、小泉政権、それを支持なさるというお考えのようでありますが、特にこのことが、我が国への影響としてもどうあるか。もちろん、世界経済、アメリカ経済にも影響は大きいと思いますが、我が国経済へのという点においても、財務大臣でいらっしゃいますし、経済が悪くなれば税収も減りますし、困ってまいることと思いますから、ぜひ、ラフな印象ではなくて、どこまで、どのように現時点で御認識であるか。
 例えば、影響が、今言われているのは短期的であるからまあいいんじゃないのと、簡単な言い方で恐縮ですが。しかしながら、必ずしもそうはならないかもしれませんし、まして、私は思いますけれども、短期的であっても、今、原油価格も高騰しておりますし、私どもの日常生活でもガソリンも上がってまいりましたし、タクシーの運転手さんも大変だろうなとか思ったり、あと、仕入れ値も原油価格の高騰で上がりますから、今、極めて日本の経済にとっては立ち上がっていかなきゃいけないという大事なときに、アメリカのイラク攻撃、やはりリスクファクターとしてきちんと踏んでおかないと、もちろん、やめてくれというのが一番いいと思っておりますが、私は。
 そうした私の思いも含めて、財務大臣としての今の、どういう対応ないし体制をお心に考えておられるかということを一言お願いいたします。
塩川国務大臣 これは、まだイラク問題が未発のことでございますので、空想で、あるいは単なる想定だけで申し上げるのはいかがかと思いますので、遠慮させていただきたいのでございます。
 しかし、我々願うことは、イラクが過去において設置した大量破壊兵器の実際を、実情はどうなっておるのかということを能動的に証明していくということが一番大事だと思っておりまして、それがない限り、この不安は解消しないと私は見ておるのでございます。
 いずれにしても、これからの進展はどうなるかはわかりません。わかりませんが、もし不幸な事態になった場合どうするかということは、先ほど速水総裁のお話にございました、パリのG7の会議でも、この問題が一時間半議論されました。結局、推移を見なけりゃならぬという結論になったのでございますけれども、短期に収拾する場合と長期になる場合、そして、うまくいって全く、武装解除が行われて事態が無事収拾するという場合、この三つのことについて議論いたしましたが、やはり、議論の中心は短期のところに集中いたしました。
 そこで一番重点にされた議論は、原油がどうなるかということと、為替がどう変動するかということ、そして貿易の程度が収縮するのかどうかということ等でございまして、貿易の収縮は経済成長に非常にマイナスになる、だからこれは避けなければならない、そのためには為替の安定が必要であるという点が議論になったところでございまして、それについては各国、G7加盟国はロシアも入れて八カ国になりますが、さらに一層協調の体制をとろうということを一致して確認したところであります。
阿部委員 今の大臣の区分けを使うと、私も、未発、それが起こらない方向にぜひとも、日本も実はもっと働きかけられるやり方があると考える者の一人です。
 しかし、今の政府の既存の方針は、国連安保理に提出される、アメリカの武力攻撃をも含む一連のイラクに対しての対処に賛成なさる立場をとるやに伺っておりますので、私は、この段階で、やはりぎりぎり、実際に経済混乱を来さないような、先ほどおっしゃいましたが、貿易の収縮ということでも、必ずこれは、今既に為替も変動、株価も、アメリカの株も非常に下落しておりますし、当然ながら、貿易、為替の関連するものもいい影響は何らないわけでございます。何か戦争をして逆にもうかることがあるのか、単純に思えば。
 私は残念ながら戦争経験者でないので、でもきっと塩川大臣は、ちょうど二十くらいでありましょうか経験されて、経済に与える影響というのも何であるか、それ以上に、本当にさまざまなマイナスしかなかったこととお思いでいらっしゃると思うんです。
 例えばイラクという離れたところだからいいんだよと言っていられないほどの影響を、現下の経済、金融はグローバル化しておりますので、与えるというところで、なお大臣の説得力をもって小泉首相をおいさめいただきまして、なるべくイラクの武装解除に我が国も手をかそうじゃないか、武力による解除じゃなくて、兵器破壊の実際に手をかそうじゃないかという方向に、塩川大臣が後見人として小泉首相に御進言いただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
塩川国務大臣 これは政府として決めていくことでございまして、政府の決定について小泉総理のリーダーシップというものは当然とられるものでございます。
 しかし、私は阿部さんに申し上げたいと思いますのは、要するに大量破壊兵器を世界からなくしていこうという運動、少なくとも拡散をしないようにしようという運動がアメリカを中心にして行われておる。このアメリカとヨーロッパとの関係、アメリカと日本との関係というものは非常に違うということも考えていただかないかぬ。
 日本におきましては、安全保障の問題をどういうふうにするかということは重大な問題でございまして、現に、昨日ですか、ロケット弾の実験が行われておるのでございますから、そしてまた、台湾海峡等におきましてもいろいろな問題を含んでおりますし、そういうアジア全体の平和ということを、アジアの関係国が集まってどうやっていくかということがまず重要でございます。そのためには、大量破壊兵器というものが世界からだんだんと減産されていくということが一番重要な問題じゃないだろうか、ここに焦点を絞って努力していくべきだと思っております。
 おっしゃるように、我々も戦争なんてやるものじゃない。私も昭和十八年に行きまして、二十二年に復員してまいりました。それはもう実に辛酸をなめて復員してきたのでございますけれども、阿部さんはまだ生まれていない。それだけに、そういうことは人以上に私は骨身にしみておりますから、戦争を避けることの努力は一層言ってまいりたいと思います。
阿部委員 私は、単に空想的に戦争がなければいいと思っているわけではなくて、塩川大臣のおっしゃったように、大量破壊兵器も含めた軍縮にいろいろな手段がある、ただ、その手段に武力攻撃ということを加えないでほしいと思うだけであります。まだまだやれることはあると思うし、核軍縮も含めて日本は先頭に立つべきだという思いでお尋ね申し上げたので、塩川大臣もそこを酌んでいただいての御答弁だったと思いますので、なおよろしくお願い申し上げます。
 それから、もう一言申し添えれば、例えばCTBTからの離脱ということも含めて、アメリカ自身も、核軍縮並びに一般的な軍縮にきちんとした態度を示さないと、これはやはり示しもないと私は思いますので、日米が友好関係にあるならきちんとそのことも物が言える日本としてやっていただきたいというふうに、これは政府関係者に強くお願い申し上げます。
 引き続いて、竹中財政金融担当大臣にお願いいたします。
 実は私は、同じ質問予告を三度も竹中大臣にしていながら、きょうが三度目の正直で、このほかの委員会ではほかの、例えば森山大臣の御答弁などにちょっと時間を要しまして、竹中大臣に予告をしながら伺うことができませんで、きょうが三度目になりました。
 失礼をまずおわび申し上げて、テーマは同じで、私は、やはりこの間ずっと、アメリカがもしも実際にイラク攻撃というような事態になったとき、それが経済にどう考えてもプラスじゃない、ETFがもうかりますよという以上に、アメリカのイラク攻撃は全然買いではありませんね。これはよろしくないですねと私だったらアナウンスしてほしいと思うのですが、竹中大臣、アメリカのイラク攻撃が経済に対して与える要因、マイナス、プラス、非常に簡単な質問で恐縮ですが、まずそれからお願いします。
竹中国務大臣 以前から御通告をいただいて、その分長く考えさせていただく時間があったわけでございますけれども、基本的に、戦争というのは破壊の行為でありますから、それが新たな価値を生み出すということは当然ないわけであります。もちろんこれは今、そういうことがないように、ぎりぎりの平和的解決に向けた交渉が行われているわけでございますし、それを我々も期待しているわけであります。
 しかし、外交そのものの選択というのは、非常に多面的な判断で、これは最終的に国益の観点から行われなければいけない。
 その中で、具体的に、アメリカの軍事的な行動がもし仮にあった場合の影響については、これは塩川大臣が先ほどG7の議論を御紹介してくださいましたが、私の知っている範囲でも、アメリカの経済専門家の間で同様の議論がなされているというふうに認識をしております。
 これは、短期なのか、中長期なのか、それが特に原油価格にどのような影響を及ぼすかによって影響は違ってくるわけでございますけれども、やはり破壊的な行為であるという意味において、その意味でのプラスはないわけであります。
 繰り返しますが、外交的な選択というのは非常に多面的に国益を考えて行われるわけでありますが、経済に関しては今申し上げたようなことが原則であろうかと思います。
阿部委員 竹中平和担当大臣というふうにいたしまして、経済側面からも絶対にこのイラク攻撃がないように御尽力いただきたいと思います。
 私は、この間のドル売りや、あるいはポンドも売られておりますところを見ますと、おっしゃる多面的な側面というのは、世界じゅうが本当に、戦争を起こさんとするアメリカやイギリスに対して、もちろん損得のところもありますが、気持ちの上でも、反戦のデモ、渦は、世界各国、大きな流れですから、昔は有事に強いドルと言われておりましたが、ドル売り、イギリスのポンドも売られるという状況があるわけです。
 こういうことをごらんになって、一つは財政学者として、経済学者として、あるいは日本の金融担当大臣としてどのように御認識なさいますか。もう一問お願いします。
竹中国務大臣 G7でのキーワードも地政学的な不確実性ということであったと聞いておりますけれども、まさにその不確実性というものが、今の個々のニュースに対して市場が非常に敏感に反応するという状況をつくり出しているのだと思います。その点に関して言うならば、やはりその不確実性をなくしていくための努力ということが、政策上は大変重要な問題であるということだと思います。
 前半の、有事、ドル云々ということに関しては、これは、エネルギーの消費の状況であるとかその他の生産力の変化とか、さまざまな要因が、例えば一つの事件が起こったときに対する各国の経済への反応度というのを、非常にダイナミックにその変化をもたらしつつある状況なのだろうなというふうに思っております。
 いずれにしても、我々にとってできること、特に経済的な観点から申し上げられることは、その不確実性をとにかく減らせるように政策的な努力をすることであるというふうに思っております。
阿部委員 一番の不確実性をなくすのはやはり武力攻撃をしないということだと端的に思います。果たして、この武力攻撃を含めて、アメリカが行動した場合に、戦費の負担、あるいは最近はやりの戦後処理、何かたたいてから処理するというところで、日本は特に戦後処理関係の財政支出を求められるこれまでの経緯がありますが、塩川大臣、お伺いいたします。
 アメリカが軍事攻撃に出た場合、アメリカの国内経済にも非常に経済負荷が加わるだろうと言われておりますが、日本にもそれなりの、応分の負担が求められることになるとまず御認識であるか、そして、そうした場合どうなさるかの二点、お願いします。
塩川国務大臣 まだ不確定なことでございますので言明は避けたいと思いますけれども、いずれにしても、こういう事態が起こってそういう事実が発生してまいったということになれば、これはやはり国として、国益を中心にして考えることは当然でございますが、同時に、国際的協調の面からもどう処理するかということの問題だろうと思っております。現在は全く考えておらないということであります。
阿部委員 何度も申しますが、考えなくて済むように、くれぐれも内閣一体となって行動していただきたい。いろいろな試算がございますが、一たん軍事的なものが起これば、非常に短期的といっても幅があります。日本の負担分が一・八兆円ではないかという試算をなさる方もおられるわけです。そうであれば、本当に、今の我が国の経済状況、どう見ても、今本当に頑張って再生していかないと、日本の国益にも反すると私は思いますので、大臣にはよろしくお願いいたします。
 そして、最後に、本来はこのことで長くやろうと思っておりました配偶者の特別扶養控除の問題を論議させていただきたいのですが、一つだけお願いします。
 この配偶者特別控除が廃止された場合に、一番打撃と申しますか影響が大きい層はどういう層だと御認識でしょうか。塩川大臣、この一つで終わりますので、お願いします。
塩川国務大臣 一応、一番影響が出てくるのは中産階級の家庭ではないかなと思います。
阿部委員 私もまさにそうだと思うのです。今、富は偏在し、アメリカでもそうですが、一部の非常に富裕層と貧困層の間にあった中間階層が貧困化していくということが極めて国を不安定にしていると思うのです。制度として、配偶者特別控除並びに配偶者控除そのものに我が党は対案を持っておりますが、今回の案は何ら追加措置もなく、例えばかわりに子供の手当で給付するとか、いろいろな考え方があります。その一番打撃を受ける層への何ら補完的な給付なく、削減だけを行われたということで、非常に問題が大きいと私は思いますが、追ってまた委員会で御質疑をさせていただきます。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 税の上げ下げの話の前に、まず、下品な言い方をすれば、取れるところからきちっと取らなあかんのと違うのか、その体制をちゃんとせなあかんのと違うやろうかという点について若干聞きたいと思うんです。
 現実に国税庁のホームページを見ていますと、平成十四年度六月現在の法人数が二百九十万八千、これは前年に比べて二万三千ふえておるわけです。これで計算しますと、実際、平成十三事務年度で実地調査件数が十二万五千ですから、実調の割合が大体四・三%。何年に一回やということになれば、全法人を実際やってみたら、二十三年に一回ということになります。四半世紀に一回実調が入る、そういうのが実態であります。
 その一方、この実調の結果、どういう申告漏れがどれぐらいの金額出ているかといえば、一兆四千六百億円、一件当たり千百七十万円という結果が出ているわけですね。実際、滞納税額というのは、数年前に比べるとやや下がっているとはいっても、それでも、昨年でも二兆五千億という高どまりの状況が続いているわけです。
 実際、滞納税額が縮小されない中で、国税の職員の定員が削減されている。適正な税務行政を推進していくために、やはり事務量に見合った適正な人員の確保というものは必要だろうと、私は毎年、年中行事のようにこのことはしつこく言うているわけです。
 これだけ申告漏れが多いということであれば、財政の根幹にかかわる問題だという観点からも、この国税職員の人員の確保というものは要請されるべきだろうし、また、経済取引の国際化等々、そういう中での職務の複雑困難性というものをかんがみたときに、こうした国際取引等にかかわって対応する専門的な機構も充実を図っていく、そうしたことも必要ではないだろうかというふうに考えておるわけです。いわば必要な人員の確保にかかわって、まず、当局のお考え、決意をお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
谷口副大臣 今植田先生おっしゃったように、昨今、実調率も大変低迷いたしておりますし、税の滞納もふえておるわけで、執行体制につきましては、拡充強化も含めて、これから検討していく必要があるというように考えております。
 税務行政を取り巻く環境で申し上げますと、申告件数が増大しているということと、高水準で推移する滞納残高がある。また、今おっしゃったように、経済取引が大変高度化、情報化、国際化、広域化している、また、不正手口の巧妙化により、質、量両面の対応が求められているということがあるわけでございます。
 これに対しまして、国税庁はこれまで、一つは、コンピューターの活用による事務の高度化、効率化、また有効な資料情報に基づく効率的、効果的な調査の実施に従来から努めてきたところでございます。
 一方で、税務調査や滞納処分を初めとして、専門的知識を持った国税職員の人手に頼るものが事務の中核になるといった税務行政の困難性、また歳入官庁としての特殊性にかんがみまして、所要の定員確保にも従来から取り組んできたところでございます。
 今後とも、税務行政をめぐる環境が厳しさを増すということが考えられるわけでございますので、厳しい行財政事情のもとではありますけれども、必要な確保については、先生がおっしゃっていただいたように、最大限の努力をしていきたいというように考えております。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
植田委員 これまでも所要の定員確保に取り組んではこられたけれども、なお一層、厳しい行財政事情のもとであるけれども、必要な人員の確保に努めるという御決意であったかと思います。
 そこできょうは、ちょっとこの一件だけで申しわけないんですけれども、総務省さん、行管局長、お願いしておるわけです。
 行管局長さんの方には、ありていに言えば、国税当局があらかじめ遠慮して人員の要求をしなくてもいいよ、必要な人員の確保をきちっと要求してくださいよという答弁をきちっとしていただければ結構なわけなんです、露骨に言いますけれども。わかり切った話はせんでもいいんですが。
 というのは、実際、国税庁の定員が平成十年度以降純減がずっと続いている。繰り返しませんけれども、それとは一方、実調率の低下、そして申告件数の増大、金額の増大、その中での滞納税額がなかなか減らない。だって二兆五千億ですからね。そういう状況の中で非常に低い水準に落ち込んでいると言わざるを得ないわけです。その意味で、歳入官庁としての特殊性を勘案した場合においても、ここはやはり配慮しなければならないんじゃないか。
 現実に、全般を見れば、例えば金融庁での金融検査体制の強化のための増員であるとか、法務省では入管、矯正施設は増員しておるわけです。私は昨年まで法務委員会に属しておりましたけれども、ついぞ矯正施設や入管の増員なんて私は質疑で取り上げたことはない。それはそうです。既に問題があり、現に御承知のような大問題も生起しておる。そもそも、そんな人員以前のところでの体制の問題、姿勢の問題というのがあるんで、少ないことはわかっているけれども、私は一度もそんなこと法務委員会ではやったことはありません。
 ただ、国税の場合、誠実に仕事と向き合っている職員さんがいる。その中から、それこそ悲鳴が上がってきているわけですよ。そういうことを考えるからこそ、私はこのことは常にしつこく言うてきました。きょうは、だから初めて行管局長にお伺いするわけですけれども、現実にこうした増員というものをやっているわけですから、まして人に依存した事務であるということは十分御承知いただいているというふうに思います。その意味で、査定当局としても、やはり大幅な増員を認める必要があるだろうと思いますし、国税当局の側が遠慮がちに要求しなくても済むような査定当局側の御認識なり御見解、お願いできますでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 国税庁につきましては、今御指摘ございましたように、厳しい行財政事情、それから定員事情も非常に厳しいわけでございますが、そのような中で、適正、公平な課税の実現を図るということで、増員につきましては従来から相応の措置を講じてまいったところでございます。
 平成十五年度におきましても、株式譲渡益課税の申告分離一本化ですとか、あるいは連結納税制度の導入ですとか、税制改正等が行われ、行政需要も増大してまいりますので、税務行政の現場を中心に、前年度を相当大幅に上回ります増員措置を講じて、めり張りのきいた体制となるように措置してきているところでございます。
 今後とも、国税庁の体制につきましては、財務省とも十分協議しながら、また財務省における定員再配置の努力等もお願いしながら適切に対処していきたいと考えております。
植田委員 引き続いて、財務大臣にお伺いしていくわけですけれども、行管局長もあんなふうにおっしゃっていますので、あらかじめ遠慮せんと、きちっと言うべきところは言うた方がよろしいんやないか。必要な人員はこれだけ要るんや、そこからの引き算で考えた方がいいと思いますので、ぜひ来年度含めて、積極的に、まず、税の上げ下げよりも、実際取れないかぬところで二兆五千億も取りっぱぐれているわけですから、その体制をまず強化するというのが基本だと思いますので、ぜひそこは遠慮せんと物を言うてもらいたいなということだけ言いまして、次の質問に移ります。
 そこで、財務大臣、先ほども多年度税制中立の話ありましたけれども、少なくとも今回の税制改正の前提にあるとして、この先行減税、当然先行減税によって景気が回復する、それで増税が可能なような好景気のもとで今度は回収する、こういう考え方が根っこにあるんだろうと思いますけれども、そうするならば当然、今のかかる先行減税が景気回復に効果があるということが前提になければならないわけでございますが、この効果がまず問われるべきだろうと思います。
 きのう、きょうのやりとりでも、きのうなんかもやりとりあったみたいですが、そこのところ、本当に効果があるという確信があるのかどうか。気分的に明るいとか、今回の税制改正、結構人気あるんですよとか、そういう主観的な話ではなくて、大臣としてのお考えをお聞かせ願えますか。
塩川国務大臣 これは、一兆八千億円減税先行でございますが、必ずGDPに影響してまいることは確実であります。プラスになります。ただ、これをいかに早く、この減税を利用して経済の活性化に努力していただけるかという民間側の態度になると思っております。
 それじゃ、正確に何%GDPが向上するかということにつきましては、精査は私どもの方でまだしておりませんけれども、漏れ承るところによりますと、〇・三%の押し上げがあるということを聞いておりますので、そのような認識でおっていただいたらと思います。
大武政府参考人 大臣の御答弁にちょっと補足をさせていただきます。
 大臣が申された〇・三というのは、実は設備投資減税、IT減税について大胆な仮定で経産省と一緒に策定したものでございます。実は、今回の改正というのは、大臣も何度か申しておりますが、例えば相続、贈与の一体化ですとか、あるいは証券税制ですとか、個人がどのぐらい利用してくださるかということと全体とつながっておりますので、利用の仕方によってかなり変わっていくものでございます。したがって、まさにこれから、この法案が通りましたら積極的に広報なり努めていくことによって、より一層の拡充、利用が行われて、より、いわば経済効果も大きくなるんじゃないか、そのように思っている次第であります。
植田委員 丁寧に補足があったわけですけれども、〇・三というのも、あくまで当たるも八卦当たらぬも八卦の範囲内で、一つの目安で聞いておいてくれということだろうと思うんですが、設備投資減税をやったとして、現状、減税効果というのは、企業の設備投資に向かうというよりは、いわば過剰債務の処理に吸収されてしまって、そもそも効果を発揮しないような条件にあるんじゃないんですか、今は。その点どうですか、塩川大臣。
大武政府参考人 ただいま植田先生が申されたとおり、最近は、企業はキャッシュフロー上はむしろ過剰になってきておりまして、そういうあたりも議論しながら、今回の投資促進税制なりあるいは研究開発減税というのは、一般的ないわゆる設備投資を促すというようなことではありませんで、まさにこれからの構造改革に資するIT投資あるいはナノテクや環境やバイオ、そういうものも含めた研究開発用設備といったものに集中・重点化することで、より経済構造を変えていこうという趣旨でやらせていただいているということであります。
植田委員 その趣旨は、それは説明資料を読めば書いているんですけれどもね。要は、現実に、それはお認めになっているように、企業が過剰債務に苦しんでおる中で、要するに企業のキャッシュフローが支出に向かわへん、このメカニズムのもとで設備投資減税をやって、ではそれで企業の支出性向がそんなに上向くのかということは、それこそかなり大胆な予測でもしないことにはプラスには上向かへんということは御承知されていると思うんです。
 次に行きます、もう時間ありませんので。
 もう一点、これも別に主税局長に御登場いただかなくても、財務大臣に御答弁をお願いできると思うんですが、もう一つ、先行減税について、この危うさを、過去の事例でこんなことがありましたよということからお伺いしたいんです。
 九四年の村山内閣のときですけれども、このとき先行減税をやっていますね。村山内閣とだけ言っておけば何か社会党だけが悪いみたいになるので、自民党が政権に復帰した村山内閣のときでございますけれども、税制改正の方針として所得税減税を先行させた、そのかわりに九七年に消費税率を引き上げたという事例がございますね。
 そのときは、九五年で終わるはずの所得税減税が、結局、景気に配慮ということで、赤字国債の発行で賄って、九六年も延長されたわけです。その結果、どうなったか。一方で、九七年四月の消費税率の引き上げを契機にして、結局、日本経済は失速する。所得税の特別減税を追加した分、財政赤字がふえた。九六と九八年度で赤字国債が四兆円ふえているわけです。しかも、このときは、村山内閣時は今のような構造改革路線ではなくして、適切であったかどうかはまた検証が必要でしょうけれども、一定大規模な財政出動をやっている。その結果、九五年でも二・五%、九六年でも三・四%と比較的高い成長率の中でこういう結果に終わってしまっているわけです。
 とすると、これは明らかに、後年度の増税というのが、先行減税が本当に景気回復を成功させない限り大きな禍根を残すという、一つの歴史的教訓だろうと私は思っております。
 今の現状と比較した場合、現下の経済状況の方が当時よりももっと悪いんですから、素朴に、今回の税制改正というものが本当に適切な措置なのかどうなのかは、過去の事例をひもといてみても疑問に思うわけですけれども、財務大臣の御見解はいかがでしょうか。
谷口副大臣 今委員が過去の事例のことをおっしゃったわけですけれども、おっしゃるように、平成九年四月の消費税率引き上げでございますけれども、これは、平成七年度から実施いたしました所得税、個人住民税の恒久減税と一体となって実施されたものでございます。これは、高齢化の進展など、構造改革に税制面から対応するという意味での重要な改革であったと認識をいたしておるわけでございます。
 また、平成九年度以降の経済状況の低迷というのがあるわけですけれども、御存じのとおり、九年の七月に始まりましたアジア通貨危機、金融危機の影響がございまして、この九年の秋以降、金融機関の相次ぐ経営破綻等を背景といたしまして、経済的な低迷があったわけでございますけれども、これをもって、そういう意味で、この増減税一体とした改革が適当でなかったということは当たらないと思うんです。
 それで、今まさに植田委員がおっしゃった、現下の経済状況、財政状況はその当時よりも悪化しておるじゃないかということがあるわけで、一つは、今回先行減税をいたしたわけでございますけれども、減税のみを先行して増税をしないといったようなことになりますと、国民一般に、この財政状況の中で、財政のばらまきと申しますか、減税だけを優先することについての危機感が生じるということもあるわけで、そういう意味において、後年度の増税を一体にした多年度税収中立ということが、むしろ今の状況の中で好ましいというふうに考えたわけであります。
植田委員 財務大臣、お疲れなんでしょうかね。何か、私、大臣に嫌われるようなことしたかな。大臣に聞いているのにね。そんな難しい話は聞いていません。
 ただ、私も、一般論として、減税をして企業、家計を支援するということの有効性自体は理解しているつもりなんですが、要は、今回の税制で本当に消費が刺激されるのか。もっと言うならば、そうした消費の拡大というところに着目した改正になっているのかどうなのかという基本的な疑問があるということなんです。というのは、減税の効果というものについて、将来の増税要因を我々国民がどう認識しているかということに依存するわけですね。
 だから、今回、今の枠組みでの、先ほども申し上げましたけれども、本当に、例えば投資減税をやるということが、最終的に賃金のアップにつながり、そしてまた消費の拡大まで結びつくのかという点では、かなり弱いんじゃないんですか、そこが今回、いわばまなざしを向けていない点なんではないんですかということを私は非常に心配しておるんですけれども、そういう心配は当たらないというのであれば当たらないで結構なんですが、財務大臣、いかがですか。
塩川国務大臣 私、最近いろいろな業界の方々とお会いしまして話をしておりまして、証券業界等については、確かに、今回の税制改正、これを早く国会で通してもらうということを条件に言っておりますけれども、これによって問い合わせが非常に多い。つまり、買い出動の気配は強いんだけれども、本当に経済が安定しているかどうかということの見通しについてです。でございますから、企業活動のこれからの動向というものが非常に影響してくる。
 私は、そういう証券業界の方々に言っていますが、だから、復配、配当を復活する、この運動を、やはり証券界等が中心になって、音頭をとって積極的にやってもらいたい。そうすれば株の動向も変わってくる。税だけで株価が上昇するとは思わない、なかなか。でも、税制改正がそれにインセンティブをつけていくことによって動機が起こってきたということは事実だろうと思っております。
 それから、設備投資につきましても、御存じのように、今度、中小企業等におきましての小型の設備投資というものは相当進んでくるんではないかと思って、期待しておるんです。現に、電機関係のメーカー等に聞きますと、パソコンの購入は相当ふえるということを予測しておりますのと、それから、一部いわゆる設備改造等の話が進んできておるということ等ございます。
 しかし、いずれにしても、こういうのは小型のものが多いんじゃないかという話なんですが、どうしても大型の設備投資というものを誘導していくために、そのための産業構造の改革というものを、業界全体、政府と一体となった進め方をしていかなきゃならぬと思います。
植田委員 個々の政策メニューの是非はともかく、例えば中小企業向けのメニューも、それは、あれ自体取り出してみれば、いいか悪いか、いい部分もあるでしょう。
 ただ、今の中小零細企業が置かれている経済環境の中で、そうしたものが活用できるだけの条件にあるのかどうなのかというところは、私は大いに疑問だということと、先ほど谷口副大臣が御答弁された部分ですけれども、結局、先行減税をやって、それは当たらないとおっしゃいましたけれども、一番ポイントは、一たん成長率を保っても、賃金の上昇まではいかなかったんですね。だからそのたびに政策を転換してきた。それでまた景気が落ち込んで消費が落ち込む、結局賃金が上がらなかった。そこまで持っていくだけの今回の改革というよりは、むしろそれを押し下げてしまうんじゃないかという基本的な疑問があるということなんです。
 そこで、竹中大臣に、時間がありませんので一点だけお伺いしたいんですけれども、そこで別に議論しようとするわけではありませんが、いずれにしても、小泉内閣の構造改革なるものが効果を示していないというのは、そもそも緊縮財政にこだわっているからだろうというふうに私は思います。そこのところについてコメントを求めているわけではありません。
 というのは、現状の経済状態を見たときに、予算は削る、不良債権の処理はやる、それを同時に行えるような経済状態にあるんですかという疑問があるわけです。例えば、この不良債権処理の加速化に伴って、これは別に乗数効果を想定しなかったとしても、実際、雇用が、創出じゃなくて、かなり喪失するわけですね。
 では、その場合の、言ってみれば、失業保険なり雇用あっせん、職業安定等々のコストは本来ふえるはずなんだけれども、結局、本年度予算全体を見渡しても、予算の削減なり、もしくは必要な施策の予算をどれだけ積み上げているのかというと、積み上げていない。そういう道を選択しているということ自体が、税制改正以前に間違った選択をなさっておられるのではないかという点。
 そしてもう一つ、今塩川大臣にもお伺いしたんですけれども、私は安易な増税も減税も慎重な立場ですけれども、現実に、現下の景気低迷の理由が実際に需要不足にある以上、例えばそれは社会保障の充実であり、減税ということでいえば、やはり消費をできる限り刺激する、そこにプッシュする減税を行うということが、そこに着目すべきだろうと考えるわけですけれども、その点の所見は、竹中大臣、いかがでございますか。
竹中国務大臣 植田委員からの御質問、二点であったと思います。
 経済の状況が厳しい中で不良債権処理を進めるということのリスク、それに見合ってきちっとしたセーフティーネットがとられているのか、これが第一点だったと思うんですが、不良債権の処理は、バブルが崩壊してから十年間、これをさらに先延ばしして、それによってよい結果が出るというふうに私はとても判断できないわけであります。これは厳しいけれども、不良債権の処理をきちんと行って、資金がいいところに回るような形をつくっていくことが重要だ。
 セーフティーネットがそれに対して十分に行われているかということでありますが、これは、どういった効果が出てくるかということも踏まえて大変難しい問題ではありますけれども、今回の予算配分の中では、早期再就職に向けた取り組みの推進、中小企業向け信用保証の強化、これはその典型だと思いますが、坂口大臣、平沼大臣とも協力してかなり力を入れたつもりでございます。平成十四年度補正予算の中身とも相まって、何とか対処できるように持っていったつもりでございます。
 二番目の、需要不足であるから消費を刺激するような、特に税制という御示唆だと思いますが、需要が不足しているという事実は私は確かにあると思います。しかし、需給ギャップそのものが過去の不況期に比べて著しく大きいという認識は持っておりません。それにしても、もちろん需要を刺激して経済を活性化することは重要であります。そのために、税ももちろんやりますけれども、それに加えて規制の改革、特に特区等々でありますけれども、そういうものを総動員して経済を活性化して、需要が出てくるような形に持っていきたい、そういう政策を総合的に考えているわけでございます。
植田委員 わかりました。
 時間がありませんので、そこのところのやりとりはとりあえず承ったということに、次の質問に進みたいと思うので。
 そこで、財務大臣にお伺いします、御指名でございます。
 小泉内閣における税制改革の基本的な方針といえば、一言で言うなら広く薄くということで理解をするわけですけれども、一般的に流布されている広く薄く税金を取るというのは、これが公平なんだというふうにまことしやかに言われるわけですけれども、私はそのこと自体にどうもまやかしがあるように思えてならないわけです。実際、課税ベースを広げて低税率にする、フラット化するというのは一見公平に見えますけれども、実質はやはり中低所得者層には増税、高所得者にはその負担が減るという、一言で言えばそういうことだろうというふうに思うわけです。
 そもそも、広く薄く課税という考え方自体、応能負担の原則に照らしてどうなんだと。これは憲法上導き出される理屈ですわね。そこから累進課税の原理というものが導出されるわけです。私は、この小泉構造改革における税制改革の基本的な哲学自体、この憲法の基本精神に反する、もしくは反する方向に歩み始めているのではないかと思うわけですが、その点は塩川財務大臣はどういうお考えですか。
塩川国務大臣 税についての応能、応益の論理というものは随分古典的な論理でございまして、私らもそれは十分心得てバランスをとっておるつもりでございますけれども、今私は、応能、応益のバランスはそんなに崩れているとは思わないんです。むしろ、以前は応能的に走り過ぎておって、そこに経済の活性化の問題等もいろいろあったと思っておりますが、今回の分については、そういうことを意識せずして、ただ今までの税制のあり方を見直して、将来あるべき中期的な姿というものを探求した。
 そのために、広く薄くという一つの考え方は、要するに税の不公平が散在しておる、特に所得税におきましてその傾向があったこと等を是正するという意味において行ったものでございまして、応能、応益のバランスを、これは私、そんなに崩れているものじゃないと思っております。
植田委員 時間が来ましたけれども、古典的なと。要するに、税のあり方がゆがめられるかもしれない、そういう状況に至ったからこそ、改めて原点に返った議論をしなければならないでしょうということを私は申し上げたわけです。
 それと、何か財務大臣のお話から聞くと、応能負担と応益負担の課税の原則が並立して存在をしておって、それがまるで何かバランスをとりながらやらないかぬというふうにも話を聞いていて思うんですけれども、応能負担の原則というのは、憲法十三条、十四条、二十五条、二十九条等々から導き出される。これは憲法上の根拠のある原則です、応能負担の原則というのは。あくまでも応益課税の原則というものは、これは憲法上何の根拠もないわけですわ。便宜的に、課税の理屈として言われてきたにすぎないわけです。
小坂委員長 時間が来ております。
植田委員 そういう意味で、応益課税の原則というのを本当に突き詰めていったら、租税って一体何なんですか、使用料や負担金ということになってしまいますよ。そうなると、もはや租税とは言えなくなるんじゃないでしょうか。
 その点は、時間が参りましたという、委員長からにらまれていますので、とりあえず言い置いておくに終わりますけれども、この件はもう一回、古典的かもしれないですが、どこかでやりたいと思っています。
 終わります。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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