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第8号 平成15年3月3日(月曜日)

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平成十五年三月三日(月曜日)
    午後九時二十分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      林 省之介君    増原 義剛君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      五十嵐文彦君    井上 和雄君
      上田 清司君    大谷 信盛君
      小泉 俊明君    佐藤 観樹君
      中津川博郷君    永田 寿康君
      平岡 秀夫君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月三日
 辞任         補欠選任
  仙谷 由人君     大谷 信盛君
同日
 辞任         補欠選任
  大谷 信盛君     仙谷 由人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第二号)
 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 両案につきましては、他に質疑の申し出もありませんので、これにて質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、所得税法等の一部を改正する法律案に対し、生方幸夫君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。松本剛明君。
    ―――――――――――――
 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
松本(剛)委員 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由の説明をいたします。
 政府提案の税制改正案は、現下の経済情勢を無視し、将来に対するビジョンや理念を欠いた内容となっています。特に、極めて厳しい国民生活の中で、酒、たばこなどの大衆増税を強行し、平成十六年からの所得税等増税を現段階で決めてしまえば、国民の将来に対する不安を高め、消費の低迷を通じて一層景気を悪化させることは必至であると考えます。
 民主党は、国民生活の破局を回避するために四点の修正を求めます。以下、修正案の概要を申し上げます。
 第一は、消費税の総額表示の義務規定の削除です。税制改正の議論の中で唐突に浮上した本改正は、十分な議論を経ておらず、一方で国民生活に多大なる影響を与えるものです。義務づけの明確な理由も政府からは示されておらず、本規定の削除を求めます。
 第二は、酒税の増税に関する規定の削除です。酒類間の税負担格差の縮小という大義名分を掲げていますが、実態は異なり、いたずらに民間企業の努力を踏みにじり、また、国民に増税を押しつけるものであります。
 第三は、たばこ税の増税に関する規定の削除です。本改正は、国民の健康増進などの理念を全く欠き、まさに取りやすいところから取るという政府の姿勢を示したものであり、許されるものではありません。
 第四は、連結付加税の廃止です。民主党は昨年の通常国会においても同様の修正を求めましたが、実際に導入された結果を見れば、私たちの主張が正しかったことは明らかです。連結納税導入の趣旨に反し、単なる増税策となっている連結付加税は即刻廃止すべきであります。
 大衆増税によって国民生活を破滅へ追い込もうとする小泉政権、自民党にかわって、民主党は、国民を守るために、以上の修正を求めます。その内容は、今からでも容易に見直しが可能な観点に絞っています。
 委員各位におかれましては、私たちの主張の真意を御理解いただき、何とぞ御賛同いただけますようお願い申し上げまして、趣旨の説明を終わります。
小坂委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
 この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 ただいまの所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。永田寿康君。
永田委員 平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に反対し、民主党所得税改正案に対する修正案に賛成する討論を、私、永田寿康は民主党・無所属クラブを代表して行いたいと思います。
 まず、特例公債法案に反対する理由を申し述べます。
 小泉総理は、平成十四年度の補正予算編成で、国債発行三十兆円枠の公約をあっさりと破棄してしまい、その原因となった経済失政の責任をとらないまま、平成十五年度には三十六・四兆円分の国債を発行しようとしています。これにより、国債依存度は当初予算としては最高の四四・六%にも上り、平成十五年度末の国債発行残高は対GDP比九〇%に当たる四百五十兆円まで膨らむ見通しで、国民に対して公約破棄の説明を全くしないままにこうした財政運営を続けることは、到底容認することはできません。
 政府は二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス黒字化を新たな目標としていますが、これは目標とは言えず、また、小泉内閣の経済運営では実現性にも甚だ疑問があります。将来の財政展望が全く欠如しているとしか言えません。
 以上、将来を含めて、国民に対する責任を全く欠いている財政運営の結果である本法案に対しては、反対いたします。
 次に、所得税等改正案について申し述べます。
 第一に、シャウプ勧告以来の抜本改革を目指したはずの税制改正は、税制の基本理念に関する議論が迷走したあげく、従来どおり自民党税調という密室の既得権益保護で決着しており、「あるべき税制」に向けた抜本改革にはほど遠い、小手先の改正であります。
 第二に、今回の税制改正は、大衆増税のオンパレードとなっています。民間業者による商品開発努力に水を差すこととなる発泡酒の税率引き上げ等や、単なる財政赤字穴埋めのためのたばこ税引き上げには反対します。
 第三に、消費税の価格表示の内税化、いわゆる総額表示方式の義務づけは、中小企業等において価格表示変更にかかわるコスト増や消費税の価格への転嫁を困難にすることが予想され、その影響を十分に検証することが必要です。
 第四に、NPO支援税制については、本改正をもっても、認定されるNPO法人の割合が全体の二%から五%にとどまると推定されております。これからの社会の中でのNPOの重要性を考慮すれば、政府案はNPO支援税制としては全く不十分で、さらなる認定要件の改善、寄附金制度全体の抜本改革が必要であります。
 第五に、単なる増税でしかない連結付加税の廃止が盛り込まれていないことです。昨年の導入時にも民主党は修正案を提出いたしましたが、今までの実績を見れば私たちの主張が正しかったことは明らかであり、連結付加税は即刻廃止すべきであります。
 その他にも、公約である道路特定財源の一般財源化が盛り込まれていない、意味不明な電源開発促進税の改正など多々の問題点があることから、本法案には反対いたします。
 これに対し、民主党修正案は、税制や財政の抜本改革を先送りしたまま、経済失政のツケを国民に負担させようとする政府のやり方に待ったをかけ、酒税、たばこ税の引き上げの撤回、消費税の総額表示義務づけの撤回及び連結付加税の廃止など、国民生活を守るために最低限かつ今からでも対応可能な項目を盛り込んでおります。
 国民生活優先に考えたこの修正案への御賛同をお願い申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 私は、自由党を代表して、平成十五年度公債発行特例法案、所得税法の一部を改正する法律案、民主党提出の修正案の各案に反対の討論を行います。
 国債発行三十兆円枠、抜本的税制改革と小泉総理は昨年絶叫していましたが、それから一年たち、出てきたものは、経済運営の失敗による史上最大額の国債発行特例法案と小細工きわまった税制の見直し案でした。これは、小泉総理が言っていることとやっていることの実態とが完全に乖離してしまっている典型であります。
 以下、両案に反対する理由を申し上げます。
 第一に、小泉内閣の経済財政運営の方向性が不明確であるために、日本の経済社会への財政効果も明確にならないまま、赤字国債を積み増しするだけにすぎないことです。
 国債発行三十兆円枠にとらわれ、不況期の緊縮経済政策を実行している小泉内閣の経済財政運営は、結果として予想をはるかに超える税収不足をもたらしています。これを穴埋めするために、本年度補正予算で国債を積み増し発行し、名実ともに三十兆円枠は崩壊しました。
 そして、来年度予算案では、当初予算案としては最悪の三十六兆四千億円の国債を発行しようとしています。これは、小泉内閣の経済運営の失敗のツケを借金積み増しでお茶を濁すだけのことで、日本経済に何の効果もありません。
 また、来年度予算案が、デフレ対策、景気対策、構造改革、いずれにも配慮せず中途半端であり、何も資することがないまま、国債発行で財政は悪化するという経済財政悪化のスパイラルに陥ってしまっており、日本の経済的危機という風船をさらに膨らませたまま先送りしているだけにすぎません。
 第二に、来年度税制改正のキャッチフレーズである多年度税収中立は、時限的な減税と恒久的な増税の組み合わせにすぎないということです。
 本来、減税をするならば恒久減税であり、その財源は行政改革によって捻出すべきです。それができずに、結局増税によって財源を確保することは、歳出構造の見直しを放棄して、安易な増税に終始することを宣言したようなものです。
 また、増税項目は恒久的であることから、年数がたてばたつほどトータルとしては増税になります。減税が時限措置なら増税も時限措置にすべきですが、そうでないところに、景気に配慮したといいながら、ちゃっかり確実な税収確保を盛り込ませる政府のこそくな意図を感じます。
 第三に、来年度税制改正は、その内容も日本経済の実態に全く合わないことです。
 法案では投資促進減税を行うとしていますが、そもそも企業が設備投資を行わないのは先行き不安や過去の過剰債務返済のためであり、税制を優遇したとしても、先行き不安の解消、実体経済を下支えすることを行わない限り、企業の投資意欲がわくことはなく、税制改正の効果は限定的です。一方で、そうした効果の薄い法人税減税のために、消費にマイナス圧力をかける所得課税の増税や、一部の企業に対して赤字でも納税させる外形標準課税をこの時期に導入するなど、どういう理念で税制改正を行うのか、支離滅裂です。
 また、一時的な減税規模についても、健康保険の本人負担引き上げ、介護保険料の引き上げ、年金物価スライド復活による年金給付引き下げなどを勘案すれば、減税効果は相殺されるばかりか、年を追うごとの加速的負担増によるマイナス圧力が膨らむばかりです。この点においても景気への効果は乏しく、税収落ち込み、財政悪化という悪循環を断ち切ることはできません。
 最後に、民主党提出の修正案については、賛成できる部分もあるものの、原案を完全に修正することに至っていないため、反対することを申し上げ、討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、日本共産党を代表して、政府提出の二〇〇三年度公債特例法案及び所得税法等一部改正案の両案に対し、反対の討論を行います。
 まず、公債特例法案についてです。
 来年度の赤字国債発行額は、当初予算としては過去最高の三十兆二百五十億円、国債依存度は戦後最悪の四四・六%となるなど、記録ずくめの異常な国債発行です。これは、小泉内閣が発足以来のこの二年間進めてきた構造改革によって、すべての経済指標が悪化し、税収不足、国債増発の悪循環に陥ったためです。本法案による巨額の赤字国債発行は、まさに小泉内閣の構造改革路線の破綻を象徴するものであります。
 しかも、小泉内閣は、この失政のために、みずから立てた経済目標の修正を余儀なくされ、財政再建の見通しも持てず、財政危機を国民負担増で糊塗する路線をさらに暴走しようとしています。これは、不況深刻化、税収不足、国債増発の悪循環を加速し、財政再建を一層困難にするものであり、容認することはできません。
 次に、所得税法等一部改正案についてです。
 本案に反対する第一の理由は、経済危機の中で、配偶者特別控除の原則廃止、酒・たばこ増税、消費税の中小事業者特例縮小などの制度増税によって、地方税を合わせ一兆七千億円もの国民負担増を押しつけるからであります。これが社会保障改悪の負担増と相まって、冷え込んだ家計消費に追い打ちをかけ、景気悪化を一層ひどくすることは必至です。中でも、消費税免税点の大幅引き下げ、簡易課税制度の縮小は、今でも消費税を価格に転嫁できずに損税を強いられる多数の中小零細業者、農家などの経営実態を無視した改悪であり、中止を求めます。
 第二に、政府がしきりに強調する研究開発・IT投資減税、金融・証券減税、相続税・贈与税減税などを中身とする先行減税は、専ら大企業を中心とした勝ち組企業と資産家だけに恩恵をもたらすもので、景気対策には何ら役立たないからであります。さらに、今回の多年度税収中立なるものの実態は、七年間に庶民と中小企業から九兆円以上を奪い取って、大企業と資産家に配分するものでしかありません。
 反対する第三の理由は、本案が小泉内閣の進める抜本的税制改悪の第一弾に位置づけられるからであります。
 配偶者特別控除の上乗せ部分廃止は、戦後初の本格的な所得税増税であり、今後の所得税の課税最低限引き下げの第一歩です。また、消費税の中小事業者特例の縮小は、消費税率引き上げに向けた条件づくりにほかなりません。戦後つくられてきた、直接税中心、総合累進課税、生活費非課税など、税制の民主的原則を根本から破壊する小泉税制改革の「あるべき税制」は、到底認められないものであります。
 本改正案には、NPO支援税制の改善策や住宅ローン減税の再適用など、賛成できる項目も一部ありますが、以上の看過できない改悪を柱としており、全体として反対いたします。
 なお、民主党提出の修正案については、酒・たばこ増税や消費税の内税方式を削除することなど、それ自体に限れば賛成し得るものでありますが、これだけでは政府案のひどい中身を抜本的に修正するものにはならないものであり、全体としては賛成するわけにはいきません。
 最後に、両案は、国会法第五十一条が総予算と並び公聴会開催を義務づけた、慎重審議を必要とする重要な歳入法案であります。かつての大蔵委員会は、一九七二年から九三年までの二十年以上の間、公聴会に準じた参考人質疑はもちろん、当時の佐藤総理から宮澤総理に至る十一人の歴代総理大臣が出席して審議してきました。抜本的な税制の変更など、歳入法案の重要性にかんがみ、審議の重大さを考えた運営を委員長に求めて、両案に対する私の反対討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、本委員会に付託された平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案及びその修正案に反対する立場からの討論を行います。
 まず、特例公債法案について反対する理由を述べます。
 財務省の財政状況に関する試算によれば、今後しばらく国内総生産のゼロ成長が続くと仮定した場合、二〇〇六年度の国債発行額は四十五・五兆円、また国債への依存度は、四四・六%と過去最悪が確定している来年度当初予算よりもさらに五ポイント近く悪化、一般会計の四九・四%に達するとの計算です。額面どおりに受けとめれば、国家予算の半分を国債に頼ることになります。
 国債の大半は国内で消化されているため、当面、大変な問題を引き起こすことはなく、また投資家の間でも極めて人気のある商品であることは確かに事実であります。
 しかし、銀行などの金融機関が六九・九%を占めるなど、その保有構造は偏っており、銀行なども不良債権処理で体力が極端に低下しており、いつまた金融が危機的状況に陥るか予断を許しません。また、二〇〇三年度末の国債残高は約四百五十兆円となる見込みであり、金利低下でリスクをとれない投資家が資金を国債に回しているがために、国債のバブル化がますます深化しています。二〇〇五年度には、借換債だけで百兆円の時代が到来します。また、大量の国債が償還期を迎える二〇〇八年問題も抱えています。赤字財政拡大に拍車は必至であります。
 国債が著しく累増し、財政の持続性の信頼に対して疑念が向けられ、既に市場からはリスクプレミアが求められています。明確な財政再建方針の提示や、国債発行に過度に依存しなくても済むような歳出の合理化、債務残高の処理方針、発行国債の期間構成の工夫や、短期的な利害を重視するのではなく長期的な視点からの国債発行を行うなど、適切な国債管理政策なしに、野方図に財政法の理念に反するような措置を施すことには反対であります。
 次に、所得税法等について反対理由を述べます。
 まず、前提として置かれた多年度税収中立でありますが、これは先行減税イコール後年度増税という考え方であります。しかし、現下のような経済情勢のもとで景気回復が実現することは困難であり、過去の失敗の実例から学んでも、先行減税が景気回復にきくかどうかという点については大いに懐疑的であります。減税が景気を回復させなければ、増税感ばかりを募らせ、しかも、後々財政赤字を膨らませることにもなりかねません。
 また、広く薄くという基本方針についても、一見公平な税負担のように見えますが、近年、税の応能負担原則、累進課税原理が税制改正のたびごとに後退しており、実質は、より多くの納税者に増税して税収を確保し、法人企業を含む高額納税者の負担を軽減することにほかなりません。我が国の税による所得分配効果は、ここ二十年ほど、一貫して弱体化の傾向にあります。租税民主主義の原点は憲法にあり、税制改正に当たっては、憲法の要請する応能負担原則、累進課税原理に基づかなければならないことは言うまでもありません。
 個々の改正内容についても、消費税の中小事業者特例の廃止縮小についてでありますけれども、免税点制度、簡易課税制度は、事業者の事務負担及び経済的負担に配慮して導入されたものであり、応能負担原則にかなっております。消費税の滞納額の実態を勘案したとき、これを廃止縮小することは、ますます滞納事業者、滞納額をふやすことにつながり、また、中小事業者の倒産の引き金になるものであります。
 総額表示方式の義務化は、安易な増税を可能にする手段であり、税率引き上げの布石と言わざるを得ません。
 また、配偶者特別控除の廃止についても、目的が希薄であり、財政論理の優先が見え見えです。
 法人税減税の目玉としている研究開発減税も、企業の支出性向が上向く可能性は低く、十分な効果が期待できないと思われます。
 設備投資が落ち込んでいるのは、サプライサイドの過剰、言いかえれば需要が少ないからであり、設備投資がふえるには需要がふえることが不可欠であります。また、今日の日本経済では、税以外の要因によって企業活動が萎縮しており、法人に対する税を軽減してやれば企業の活力が新たに引き出されるというほど単純な状況にはありません。
 政府は経済活性化に資する税制改革と言っていますけれども、その効果は大いに疑問であり、本法案は、税制全体のあり方を考えるのではなく、財政論理優先、配偶者特別控除の廃止に象徴される個人増税に支えられたものであります。
 これに対して民主党さんが修正案を提案されたわけでございますけれども、自党の考え方を表現されたという点においては真摯に評価をするものでありますし、その中身を見ましても、賛意を表するところも少なからず散見せられることも事実でありますが、そもそも法案審議というものは、真摯な提案者と質問者との間の審議を通じて賛否を最終的には判断するものであります。にもかかわらず、この修正案については一切審議がこの場でなされていない以上、そもそも賛否に足り得る判断をあらかじめ排除したという点においては、この委員会運営に対して大いに疑問を表しつつ、残念ながら、民主党の修正案に対しても反対であるということを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより採決に入ります。
 平成十五年度における公債の発行の特例に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、生方幸夫君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、七条明君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守新党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。七条明君。
七条委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 財政の持続可能性に対する懸念に対して、中長期的な財政構造健全化の必要性が一層増大していることにかんがみ、今後の経済動向にも留意しつつ、歳出の重点化に努めるとともに、歳入の根幹をなす税制に対する国民の理解と信頼、税負担の公平性を確保する観点から、課税のあり方についての抜本的見直しを行い、持続的経済社会の活性化を実現するための税制の構築に努めること。
 一 租税特別措置については、政策目的、政策効果、利用状況等を勘案しつつ、今後とも一層の整理・合理化を推進すること。
 一 納税者数・滞納状況等の納税環境の変動、業務の一層の複雑化・高度情報化・国際化、更には滞納整理等に伴う事務量の増大にかんがみ、複雑・困難であり、かつ、高度の専門知識を要する職務に従事する国税職員について、税負担の公平を確保する税務執行の重要性を踏まえ、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯等に配意し、今後とも処遇の改善、定員の確保、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を行うこと。
 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の広域化・複雑化及び電子化等の拡大が進む状況下で、従来にも増した税務執行体制の整備と、事務の一層の機械化促進に特段の努力を行うこと。
以上であります。
 何とぞ賛成賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
小坂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。
 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 ただいま御決議ありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
小坂委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後九時四十八分散会


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