衆議院

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第9号 平成15年3月18日(火曜日)

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平成十五年三月十八日(火曜日)
    午前八時四十三分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    北村 誠吾君
      倉田 雅年君    小泉 龍司君
      坂本 剛二君    砂田 圭佑君
      田中 和徳君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      萩山 教嚴君    林 省之介君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    上田 清司君
      小泉 俊明君    後藤  斎君
      佐藤 観樹君    鮫島 宗明君
      仙谷 由人君    中津川博郷君
      永田 寿康君    平岡 秀夫君
      山田 敏雅君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      江崎洋一郎君    山谷えり子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局長)      上杉 秋則君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    渡辺 博史君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   参考人
   (株式会社富士通総研理事
   長)           福井 俊彦君
   参考人
   (東京大学教授)     岩田 一政君
   参考人
   (財務省顧問)      武藤 敏郎君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十八日
 辞任         補欠選任
  田中 和徳君     北村 誠吾君
  井上 和雄君     山田 敏雅君
  上田 清司君     後藤  斎君
  永田 寿康君     鮫島 宗明君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     田中 和徳君
  後藤  斎君     上田 清司君
  鮫島 宗明君     永田 寿康君
  山田 敏雅君     井上 和雄君
  山谷えり子君     江崎洋一郎君
    ―――――――――――――
三月十八日
 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)
同月七日
 国民に大増税をもたらす税制改革中止に関する請願(大森猛君紹介)(第四九六号)
 国民に大増税をもたらす税制改革の中止に関する請願(大森猛君紹介)(第四九七号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第六三三号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六三四号)
 延納から物納への切替特例を認める相続税法緊急改正に関する請願(小泉龍司君紹介)(第五一八号)
 計理士に公認会計士資格付与に関する請願(山本明彦君紹介)(第五三一号)
 同(吉田公一君紹介)(第五四三号)
 同(木村隆秀君紹介)(第五七二号)
 同(中川秀直君紹介)(第五八一号)
 同(松島みどり君紹介)(第五八二号)
 国民本位の減税による景気回復に関する請願(中西績介君紹介)(第五四二号)
 所得税の基礎控除引き上げによる課税最低限度額の抜本的な改正等に関する請願(植田至紀君紹介)(第五七一号)
 消費税の免税点制度維持等に関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第五九六号)
同月十三日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六五五号)
 所得税の課税最低限引き下げ反対、国民本位の減税による景気回復に関する請願(吉井英勝君紹介)(第六五六号)
 同(大森猛君紹介)(第七一〇号)
 同(吉井英勝君紹介)(第七一一号)
 国民本位の減税による景気回復に関する請願(中津川博郷君紹介)(第七〇九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第八一八号)
 個人消費を減退させ、景気回復を遅らせる大衆増税反対に関する請願(赤松広隆君紹介)(第七六六号)
 同(石毛えい子君紹介)(第七六七号)
 同(上田清司君紹介)(第七六八号)
 同(生方幸夫君紹介)(第七六九号)
 同(枝野幸男君紹介)(第七七〇号)
 同(大出彰君紹介)(第七七一号)
 同(大谷信盛君紹介)(第七七二号)
 同(大畠章宏君紹介)(第七七三号)
 同(海江田万里君紹介)(第七七四号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第七七五号)
 同(金田誠一君紹介)(第七七六号)
 同(川端達夫君紹介)(第七七七号)
 同(北橋健治君紹介)(第七七八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第七七九号)
 同(桑原豊君紹介)(第七八〇号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第七八一号)
 同(小泉俊明君紹介)(第七八二号)
 同(小林守君紹介)(第七八三号)
 同(五島正規君紹介)(第七八四号)
 同(後藤斎君紹介)(第七八五号)
 同(今田保典君紹介)(第七八六号)
 同(今野東君紹介)(第七八七号)
 同(近藤昭一君紹介)(第七八八号)
 同(城島正光君紹介)(第七八九号)
 同(鈴木康友君紹介)(第七九〇号)
 同(仙谷由人君紹介)(第七九一号)
 同(田中慶秋君紹介)(第七九二号)
 同(高木義明君紹介)(第七九三号)
 同(玉置一弥君紹介)(第七九四号)
 同(土肥隆一君紹介)(第七九五号)
 同(中川正春君紹介)(第七九六号)
 同(中沢健次君紹介)(第七九七号)
 同(羽田孜君紹介)(第七九八号)
 同(葉山峻君紹介)(第七九九号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第八〇〇号)
 同(日野市朗君紹介)(第八〇一号)
 同(肥田美代子君紹介)(第八〇二号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第八〇三号)
 同(平野博文君紹介)(第八〇四号)
 同(古川元久君紹介)(第八〇五号)
 同(細川律夫君紹介)(第八〇六号)
 同(堀込征雄君紹介)(第八〇七号)
 同(牧野聖修君紹介)(第八〇八号)
 同(松野頼久君紹介)(第八〇九号)
 同(松原仁君紹介)(第八一〇号)
 同(三井辨雄君紹介)(第八一一号)
 同(山井和則君紹介)(第八一二号)
 同(山花郁夫君紹介)(第八一三号)
 同(山元勉君紹介)(第八一四号)
 同(横路孝弘君紹介)(第八一五号)
 同(米澤隆君紹介)(第八一六号)
 同(渡辺周君紹介)(第八一七号)
同月十八日
 所得税の課税最低限引き下げ等反対に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第八五三号)
 同(石井一君紹介)(第八八九号)
 同(植田至紀君紹介)(第八九〇号)
 同(小沢和秋君紹介)(第八九一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第八九二号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第九七八号)
 同(石井郁子君紹介)(第九七九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第九八〇号)
 同(大幡基夫君紹介)(第九八一号)
 同(大森猛君紹介)(第九八二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第九八三号)
 同(児玉健次君紹介)(第九八四号)
 同(穀田恵二君紹介)(第九八五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第九八六号)
 同(志位和夫君紹介)(第九八七号)
 金融アセスメント法の法制化に関する請願(五十嵐文彦君紹介)(第八八八号)
 同(北橋健治君紹介)(第九六六号)
 同(東門美津子君紹介)(第九六七号)
 同(松原仁君紹介)(第九六八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)
 金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。
 経済産業委員会において審査中の内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案の各案について、経済産業委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会につきましては、経済産業委員長と協議の上決定いたしますが、本日午前九時から第一委員室において開会する予定となっておりますので、御了承願います。
     ――――◇―――――
小坂委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 金融に関する件の調査のため、本日午前十時、参考人として株式会社富士通総研理事長福井俊彦君、東京大学教授岩田一政君、財務省顧問武藤敏郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 午前十時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前八時四十五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時五分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 金融に関する件について調査を進めます。
 本日は、参考人として株式会社富士通総研理事長福井俊彦君、東京大学教授岩田一政君、財務省顧問武藤敏郎君に御出席をいただいております。
 委員御承知のように、来る二十日、福井参考人は日本銀行総裁、岩田参考人及び武藤参考人は日本銀行副総裁に就任される予定となっております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 議事の順序について申し上げます。
 福井参考人、岩田参考人、武藤参考人の順序で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、福井参考人、よろしくお願いいたします。
福井参考人 福井でございます。
 今回の人事に関しまして、国会の御承認をいただきました。また、本日、このように所信表明の機会を賜りまして、大変ありがたく存じております。
 まず初めに私が申し上げなければなりませんのは、私は、五年前、日本銀行の不祥事件の責任をとりまして辞任した身でございます。今なお、その責任を非常に重く感じ続けているということでございます。小泉総理にもそのことを申し上げました。総理からは、その反省の上に立ってしっかり仕事をしてほしい、ぜひこの任務を引き受けてほしいと強い御要請がございました。このことを申し上げました上、本日、ここで所信を述べさせていただきたいというふうに思います。
 国会の御承認を賜りました先週金曜日でございますが、直後に、官邸をごあいさつのため訪問いたしまして、総理からお話を伺いました。
 総理からは、政府としてデフレ克服に全力を挙げている、日本銀行の独立性は十分尊重するので、日銀としても万全の対応をしてほしい、そういうお言葉をいただきました。
 総理が、日銀の独立性を尊重する、その重要性を理解しておられるということは大変心強いというふうに感じました。日本銀行の持てる力と知恵をフルに発揮しなければならない、そういうふうに努力したいというふうに思っています。
 現在、我々が直面しております日本のデフレ、その背景にはさまざまな要因があるというふうに考えています。世界共通の要因としては、申すまでもなく、経済のグローバル化、そして情報通信革命の進展、そのもとで、財、つまり物です、物とかサービスの価格の形成プロセス、価格の決定過程というものが大きく変化してきていること、これが第一でございます。それから、国内の要因としては、経済の成熟化、それから人口動態の変化、人口の伸び率がかなり下がってきておりますが、間もなく減少過程に入る、そういうことで日本の高度成長の基盤が損なわれてきていること、そうしたことが要因として挙げられるというふうに考えています。
 こうした経済の大きな潮流変化に対しましては、日本の経済モデルを根本的に刷新する必要がある、技術や知識のイノベーション、これを基軸に、より創造性の高い経済モデルをつくり上げていく必要があるというふうに考えております。要は、我々の持っている資源がそうした新しい方向にしっかりと向けられていく、それを促していくということが大切でございまして、日本銀行が仰せつかっております金融政策、今は金融緩和政策を推進中でございますが、その方向にしっかりと接点を求めながら実効を上げていく、そういう努力が必要だと痛感いたしております。
 デフレは貨幣的な現象であるという見方は十分承知しております。しかし、以上のように考えますと、現在の日本のデフレは単なる貨幣的現象ではないというふうに受けとめております。民間企業と民間の金融機関、それから政府、そして日本銀行、これが三位一体の努力が欠かせないというふうに感じておりまして、日銀は日銀として、みずからの役割をしっかりと果たしてまいるということになると思います。
 一方、世界の経済でございますけれども、申すまでもなく、グローバル化の進展の中で、地域経済の戦略的統合、この動きも同時に加速しているという状況でございます。欧州と米州と比べますと、アジアはまだ初期の段階だと言えると思いますけれども、巨大な中国の存在を前提としながら、アジアの諸国の間、日本も入って、プラスサムの新しい相互依存関係を築いていかなければならない。現にそれを模索する動きが始まっている。特に民間経済主体の間では、それが現に進み始めているというふうに感じています。日本は、こうした動きの中で、これからアンカーとしての役割を担っていくべきだ、積極的な取り組みが必要だと考えておりまして、日銀としては、当然、通貨の面からこの問題に貢献できるよう道を切り開いていく努力が欠かせないというふうに考えています。
 日銀というのは、特に、権威をかさに着た頭の高い集団であってはならないというふうに常々考えております。市場メカニズムの尊重ということが第一でございますし、それをベースとするとともに、市場参加者との間の信頼関係を強固に築いていく、それなしに日銀の仕事はできないというふうに考えています。常に目線を低くして、国民の皆様のニーズにしっかりこたえていく、ニーズに即して行動できるように心がけてまいりたいというふうに思います。
 特に、世界や日本の経済、社会、この先、さらに大きな変化を遂げていくものと展望されます。イラクの問題も、間近に厳しい展開が始まろうとしているというふうに受けとめておりますけれども、世界におきましては、価値観の相克が一層強まる形勢にあると言うべきでありましょう。経済の面でも、イノベーションの競争がますます熾烈になる。
 日本においては、間もなく人口が減少過程に入る。地球上のあちらこちらから、環境保全や再生可能エネルギー源開発への動きも予想以上に活発化してくるんではないか。そういうふうに、さまざまな展望が予想される今日でございます。日本は、今、悲観一色でございますけれども、私は、日本におきましてもこれからいろいろ新しい動きが出てくる、そのことは間違いないというふうに考えています。
 日本の金融システムに対しましては、国民の皆様に、とりわけ、これから先進的な事業とか先進的な活動に対してリスクをとって取り組もう、そういう気概を持った人々に、質の高い金融サービスを提供できなければならないし、そういう質の高い金融サービスを提供できるよう、日本の金融機能の飛躍的な向上が期待されているというふうに受けとめております。金融システムの主な担い手であります金融機関は、今、不良債権問題など、引き続き困難な問題を抱えておりますが、これを早く克服して、新しい金融サービス業として生まれ変わってもらわなければならないというふうに考えています。
 日本銀行というのは金融サービス業の親玉でございます。金融機関と常に対話をして、よりよき金融システムの構築そして金融サービスの提供に努めてまいりたい、そこにすべての力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 次に、岩田参考人、よろしくお願いいたします。
岩田参考人 本日は、私に所信表明の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 一九九〇年代半ば以降の日本経済を顧みてみますと、経済には、デフレと不良債権という二つの頭を持った竜がすみついてしまったというふうに認識しております。そのために、日本の経済活動は活力を失って、そして衰退への道をたどっているのではないかというふうに恐れております。この双頭の竜、二つの頭を持った竜を早期に退治することなくして、力強い景気回復、これは国民の皆さんが切望しておられることだと思いますが、力強い景気回復というのはあり得ない、そして経済の再生というのもあり得ないというふうに考えております。私は、福井総裁のもとで、執行部の一員として、このデフレ克服のために全力を傾注したいというふうに考えております。
 私が、この二つの頭の竜、双頭の竜と申しましたのは、仮に不良債権の問題を処理しようということで、これに全力を注いでしまいますと、デフレの方が悪化してくる、もう一つの頭が攻撃してくるということでありまして、反対に、今度はデフレを克服しようとしますと、不良債権の問題が立ちはだかるということで、まことに困難な状況に直面しているというふうに思います。
 ですけれども、幸いなことに、デフレにつきましては、我々は、一九三〇年代に、デフレよりももっと度合いの激しいデフレスパイラルの状況にあったわけでありますが、これを克服した経験を持っております。私は、この戦前におきます一九三〇年代の経験というものをよくかみしめて、今回、日本がデフレを克服するということに当たりましても、しっかり学ぶべきではないかというふうに思っております。
 学ぶべき教訓というのは何か、私、三つあるというふうに考えております。
 一つは、スウェーデン銀行が金本位制を離脱いたしました一九三一年の九月、金本位制から、物価水準を一定にする目標を立てまして、それに基づいて、物価水準安定化目標政策というのを実行いたしました。この政策を実行することによりまして、三%ぐらいのデフレの状況でありましたけれども、これを見事に克服したということでありまして、私は、金融政策の枠組みとして極めて有用なものであるというふうに考えております。
 二つ目の教訓というのは、アメリカのルーズベルト大統領のもとでとられた金融政策であります。ルーズベルト大統領は、一九三三年、ニューディール政策というのをとりましたけれども、金融面ではどういう政策をとったかといいますと、長期金利を一定水準に維持するという政策をとりました。
 このとき、実は、直前の三二年には、アメリカの短期金利を見てみますと、〇・〇四%という、今の日本と極めて似たような状況、しかもデフレは一〇%以上のマイナス、消費者物価ではかっても一〇・四%のマイナスということでありまして、極めて大幅なデフレでありました。デフレスパイラルだったわけであります。
 ところが、このルーズベルト大統領のもとで、長期金利を一定に維持する、このために、必要なら国債を幾らでも買うという政策をとりまして、その結果、デフレを克服した。私は、この政策というのは、政策手段として日本は学ぶべき点があるというふうに考えております。
 三番目の教訓とは何かといいますと、日本の高橋是清大蔵大臣のもとで、国債標準価格制度というのを一九三二年七月に採用いたしました。これはどういう政策かといいますと、国債の消化を促進するために、つまり国債の価格を安定化するために、商法に特別規定を設けまして、時価でなくて簿価でもって評価する、つまり評価損というのを計上しなくてもいい、こういう特別の規定を置きました。この結果、金融機関を初めとしまして国債を保有する人は安心して国債を保有できるということがございました。この三つ目の政策も、私は、デフレを克服する過程では非常に重要な教訓を与えてくれているのではないかというふうに考えております。
 まず、この中で、物価の安定数値目標ということを考えてみますと、これは多くの先進国で、一九八八年末以来採用されております。日本でも、この政策の枠組みを採用するということによりまして、日本銀行の国民に対する説明責任というのを明確化することができる。これは、日本銀行の金融政策の目的は物価の安定にある。物価の安定といっても、それは何%の物価上昇率なのか、あるいは下落率なのか、あるいはゼロ%なのか、こういうことを国民にはっきり数値で示す必要があるというふうに考えております。
 そういう物価安定数値目標ということを掲げることによって、同時に政策決定過程の透明性を一層高めることができるというふうに考えております。
 現在、日本銀行は、ゼロ以上の物価上昇率になるまで量的緩和政策を続けるということをおっしゃっておられまして、広い意味での物価安定目標を掲げているというふうに考えております。ですけれども、私はこの政策をさらに発展させて、物価上昇率に上限を設ける、例えば二%、ゼロ以上といっても幾らでも上がってもいいということではない、上限をやはり設けるべきだ。ゼロ以上になることが必要でありますけれども、これが高くなり過ぎては困るということであります。さらに、その目標を達成する期限をやはり明示すべきだというふうに考えております。そういうことによって、市場参加者の予測可能性を高めることができるというふうに考えております。
 この枠組みを採用した場合の問題は何かといいますと、この政策の枠組みを採用しますと、市場参加者の中には、今はデフレがずっと続くだろう、一%、二%のデフレが続くと考えている人が、ゼロになるかもしれない、そういう期待を抱くようになるとしますと、その人は国債を売ろうとする。そうしますと、長期金利が、上昇圧力が加わるということになります。この長期金利高騰のリスクということに対しては、二つの方策を講ずるべきだというふうに考えております。
 一つが、アメリカのルーズベルト大統領のもとでとられた金融政策であります。長期金利を一定に維持するということでありまして、そのために必要なら国債の買い切りオペの増額をするということであります。現在、市場参加者の期待デフレ率は、GDPデフレーターで見ると二・三%ある。仮に長期の名目金利が一%であっても、実質の金利は三・三%だということであります。仮に、人々のこの期待デフレ率が、今二%なのがゼロ%になるということになりますと、実質の長期金利が実は一%まで下がる。三から一%に下がるということであります。そういうことが可能になるというのが一番目であります。
 二番目は、高橋大蔵大臣が行った政策の措置であります。例えば国債をいつでも物価連動債に交換しますというような政策措置をとるとしますと、これは国債を持っている人が、物価上昇率が上がっても、いつでも価値の安定した債券に取りかえることができるという安心感を持つことができます。そういうことで、長期金利の安定化を図ることが同時に可能になるということであります。
 こういったような金融面での政策対応をとりますと、名目金利は一定のままだ、仮に一%のままだということであっても、長期金利は三%から一%に下がる。こういうことがありますと、もちろんこれは民間投資を回復させる要因になります。同時に、新規事業の開始でありますとか新規参入によって、資源をより効率的に配分するということがより容易に行うことができるわけであります。そういうことで、このことこそ実は不良債権の最終処理を意味しているわけであります。ということで、これが金融面でできることであります。
 ですけれども、デフレを本当に退治するためには、金融面だけではなくて実物面での対応というのも同時に必要だと私は思っております。大胆な税制改革と規制改革の実行、それから、銀行を含めました企業、産業の事業再構築を図るということで、実物資産に対する収益率を高める。今企業の収益率というのは非常に低いわけでありまして、実物資産に対する収益率が低過ぎる、つまり、長期の実質金利に比べて低過ぎるということがデフレの根本原因だというふうに私は考えております。この意味でも、政府と日銀が一体となりましてデフレを退治するということが大事だというふうに思っております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 次に、武藤参考人、よろしくお願いいたします。
武藤参考人 武藤でございます。
 日本経済の置かれた現在の厳しい状況を考えますと、この時期に日本銀行副総裁という大役を仰せつかることに責任の重大さを痛感しておるところでございます。本日は、このような形で私の所信を述べさせていただく機会をちょうだいし、厚く御礼を申し上げます。
 私の果たすべき役割は、副総裁として福井総裁を補佐し、日本銀行の使命、言いかえれば物価の安定と信用秩序の維持を達成するために全力を傾けていくことと考えております。
 現下の我が国経済が抱える重要課題は、言うまでもなく、経済を回復軌道に乗せ、デフレの克服を図ることであります。
 日本経済は、九〇年代に入りまして以降、総じて停滞色の強い動きを続けてきました。そのもとで物価の緩やかな下落傾向が続いております。
 デフレの原因は、第一に、バブル崩壊後の長期的な景気低迷による内需の停滞、第二に、効率化圧力の高まりや安価な輸入品の増加など供給面の要因、第三に、金融システムの機能低下など金融面の要因が総合的に作用しているものと理解しております。
 デフレを克服するためには、日本経済をしっかりとした回復軌道に乗せていくことが何よりも重要であります。そしてそのためには、産業、金融一体での不良債権問題克服への努力や、さまざまな分野における規制・制度改革などを通じて、経済全体が環境変化に柔軟に適応できる仕組みや基盤を整備していくことが必要であります。
 そうした取り組みと同時に、デフレ克服に向けて、金融政策の果たすべき役割が大きいことは言うまでもありません。
 日本銀行は、短期金利の低下余地がなくなる中で、量的緩和政策を推進し、潤沢な流動性の供給を続けていると理解しております。こうした政策は、金融市場の安定確保と景気の底割れ回避の面で有効に機能してきたと思います。しかしながら、そうした努力にもかかわらず、デフレ克服のめどは必ずしも立っていないというふうに言わざるを得ません。
 私は、現在の金融政策がデフレ克服という面で十分な効果を発揮できていないのはなぜなのか、さらに効果を高めるためにはどのような工夫があり得るのか、さまざまな可能性を検討しつつ、今後の金融政策運営を考えていきたいというふうに思っております。
 日本銀行は、信用秩序の維持、すなわち金融システムの安定確保という面でも大きな役割を担っております。特に、不良債権問題の早期解決に向けた取り組みは目下最大の課題であると考えます。不良債権問題の解決は、金融仲介機能の回復を通じて金融緩和の有効性を高め、デフレの克服を実現していくことにも資するものであります。
 日本銀行は、このような認識のもとに、これまでも銀行保有株の買い入れなど、積極的な取り組みを行ってきていると理解しております。しかしながら、金融システムの健全化への道のりはなお険しいものがあります。私は、政府と連携を図りつつ、金融システムの安定確保の分野においても日本銀行がさらなる努力を傾注していく必要があると考えております。
 最後に、政府との関係について考えを申し述べたいと存じます。
 日本銀行は、五年前に抜本改正されました日本銀行法によりまして、金融政策における独立性が保障されておりまして、金融政策の決定は日本銀行の判断で行うことは当然のことであります。しかし、そのことは、政府との意思疎通の重要性をいささかなりとも軽くするものではありません。むしろ、独立性が確保されているからこそ、日本銀行自身が国民への説明責任を果たすと同時に、政府との意思疎通を密にする努力が求められているのだと考えます。日本銀行法も、金融政策が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、政府の基本方針と整合的なものとなるよう、政府と十分な意思疎通を図るべきことを定めております。
 この点、私といたしましては、これまで長く政府に身を置いて仕事をしてきた経験を生かしながら、政府と日本銀行との間での意思疎通のさらなる充実を図るため、私なりに貢献をしてまいりたいというふうに考えております。
 今後、各界の御意見に耳を傾けながら、総裁のリーダーシップのもと、最大限の努力を傾注する所存でありますので、どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、本日午後一時より本会議が開会されますので、時間を厳守されるようにお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、御苦労さんでございます。これから長いおつき合いになると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 時間が限られておりますので早速本題に入りたいと思いますが、まず、今御三人の所信を伺いまして、岩田先生には大変共感を覚えましたけれども、まだ正式に任命されていないのでさんづけで呼ばせていただきますのでお許しいただきたいと思いますが、福井さんと武藤さんにはちょっと失望いたしました。
 特に福井総裁予定者、福井さん、一体、今、日本経済の状況について危機意識があるんだろうか、本当に大変な状況にあるんだという認識があるのかということを疑いました。それから、それに対して、デフレ克服、もう全力を挙げて、命をかけてやるというような決意が見られない。そのデフレの原因も、グローバル化だとかなんとか言っていましたけれども、結局、相対価格と絶対価格の話を混同して、要するに、単なる貨幣的な現象じゃないんだから我々は余りできませんよと逃げを打っているような話でありまして、大変失望いたしました。これでは困る。
 そこで、きちっとこれからやってもらわなきゃいかぬということでありますが、こういうことをやるときには、まず前任者の総括をきちっとしなきゃいけない。そこから始まるんですよ。私はそのためにこの実績をつくってきましたけれども、まず最初に、速水総裁についての福井さんの評価は、どういうふうに評価しているのか、まずお聞きしたい。
福井参考人 お答え申し上げます。
 山本先生から委員会提出資料をちょうだいしておりまして、この各数字を見まして、大変現状が厳しい状況にある。私自身の現状認識が甘いんではないかという冒頭の御指摘でございますけれども、私は、現下の日本経済の状況は、本当に厳しい状況にある、一歩誤れば本当にデフレスパイラルのふちに陥りかねない、そういうぎりぎりの、危うい均衡を保ちながら今日まで推移してきているというふうに認識をしております。そのことをまず申し上げておきたいと思います。
 それから、前任者の業績をどう評価するか、なかなか難しい御質問をいただいたというふうに思いますが、速水総裁がリーダーシップをとられました過去五年間、日本銀行が直面した経済の情勢というのはかつてない厳しい状況であった。単に国内景気が悪化したというだけではなくて、御承知のとおり、戦後初めての大型金融破綻というふうな、実体経済と金融面、両面からの厳しい状況、さらには、海外ではアジア通貨危機、こういうふうなことも重なりまして、本当に厳しい時期に就任されて、五年間、職務を貫いてこられたというふうに思います。
 実際、お仕事の事績を振り返ってみましても、思い切った量的緩和というふうに、マクロの金融政策も大きな局面転換を進められましたし、信用秩序維持の面でもいろいろな手を打ってきた。特に最近は、銀行から株式の買い入れ措置というところまで踏み込んで実施しているというふうなことから考えまして、恐らく、速水総裁としては全力あるいは全霊を傾けてこの政策を遂行してこられたのではないか。
 ただ、現在の時点の経済情勢は、山本先生御指摘のとおり、日本経済が持続的成長軌道への復帰というめどを立てるには相当距離のある段階にまだいる、デフレからの脱却もまだ見通しが立っていない、金融システムの面でもまだ立て直しの途上にあるということでございます。
 前任者を引き継ぐ我々といたしましては、こうした残された課題が非常に重大だということをいたく認識いたしておりまして、全力を挙げてこれに取り組む、本当に命がけで取り組む。先生のお言葉を返すようで失礼でございますけれども、そういうふうに思っております。
山本(幸)委員 何か評価するような感じでありましたけれども、日本銀行総裁というのは、全力でやっているとか信念があるだとか、そんなことは関係ないんですよ。結果なんですよ。結果責任を負う仕事なんです。
 それで見ると、もう結果は明らかじゃないですか。名目GDP、五百二十二兆円が五百一兆円。株価なんて半値以下。地価もどんどん落ちた。稼働率も落ちた。失業率は三・八から五・五に上がった。企業倒産はこの五年間の間に九万一千三百六十にふえた……(発言する者あり)ちょっと黙っておいて。静かに。人が言っているときはちょっと聞いてください。自殺者、累積で十二万、これは二〇〇一年だから、去年を入れるともう十六万ぐらいになっていますよ。自己破産者七十四万。銀行貸出残高、五百三十兆円から四百十八兆円に減った。不良債権はふえ続けているじゃないですか。それはデフレが続いているからですよ。そして、日銀が最も責任を持つべき物価、GDPデフレーター、消費税のときを除いて、九四年から下落を続けている。国民に一番関係のある消費者物価、総裁就任以来下がり続けているんですよ。
 この結果を見れば、結果責任をとってもらわないと困りますよ、これは。あなたの最初の仕事は、速水さんに結果責任をしっかりとってもらうということが最初の仕事だと私は思いますよ。
 あの二〇〇〇年の八月にゼロ金利解除をやったときに我々はみんな反対したんだ。私は声明まで出して反対した。それを、みんな間違ったから私が間違っても構いませんなんて言っているんだから。あのときに、こんなことをやれば企業が倒産して失業者があふれるようになるよとこの場で私は強く警告したんだ。そのことを、一言の反省も、申しわけなかったということもないような総裁に対して、あなたはちゃんと結果責任をとるように言わなきゃだめですよ。せめて退職金返しなさいぐらい言うつもりはありませんか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 私自身が速水総裁に責任を問うという立場よりは、私自身は、先輩が残された仕事をすべて受け継いで、よりよき成果を出すということが私の職責だというふうに考えております。
 速水総裁の業績に対しましては、国民的にきちんと判断をされて必要な批判を加えていただく、その方が私としては仕事がやりやすいわけでございますけれども、私自身は、真摯に現状を受けとめながら、ここを出発点にいたしたい、その点につきましては、強い信念と決意を持って対処させていただくということでございます。
山本(幸)委員 どうも情けないね。この結果だけ見れば、史上最低の日本銀行総裁ですよ。すべて悪くなっているんだ。いいことなんかない。そういう総括をきちっとして、結果責任をとるのが日本銀行総裁だ、その職務だということをはっきり認識してもらいたいと思います。
 それでは、あなたは、これからデフレ克服という課題に対してきちっと結果責任をとるという覚悟を持っておられるんですか。
福井参考人 先ほども申し上げましたとおり、これは責任転嫁で申し上げるわけではありませんが、現在の日本経済のこの厳しい状況、デフレの本質ということを考えますと、民間と政府と日本銀行、この三者の行動が平仄が合って、相乗効果をしっかり出す、そうでなければ本当の成果は出ないというふうに思っております。
 日本銀行は、情勢を先取りしながら、民間よりもあるいは政府よりも先行きをもし正しく予見できれば、そこに対してはリスクをとって行動に踏み込む、そういう決意をいたしております。
山本(幸)委員 もうちょっとはっきり聞きたいんですが……(発言する者あり)いろいろうるさいんですが、政治家は結果責任をとらされるんですよ。内閣だってだめになればつぶれるし、政治家個人だって選挙におっこちるということで結果責任をとらされるんだ。日銀総裁は、一たんなっちゃったら責任とらされないんですよ。だから僕は言っているんだ、今、これは重要だと。政治家は選挙で結果責任をとらされるじゃないですか。
 だから、そこでもう一回言っておきますが、今の御答弁では、結果責任については、何かほかのこともあるからよくわかりませんと言っているように聞こえましたけれども、あなたは、デフレ克服というのがきちっとできなかったらちゃんと責任をとるということをはっきり言明されるんですか。
福井参考人 あらゆる厳しい条件を前提にして、その中で最高の経済のパフォーマンスを実現していく、そういう点では責任をとって対処いたします。デフレは、民間、政府、日銀の対応が相乗効果を出すところまで整合性がとれていないといい結果は出ない、しかしその中で日本銀行は最善の努力をする、これを確約いたしておるわけでございます。
山本(幸)委員 日本銀行として、デフレ克服に対して、結果が出なかったら責任をとるとはっきり言明されたというように理解しております。
 それでは、デフレ克服のためにどうするか。私は、岩田さんと同じように、物価安定数値目標政策をはっきりととるべきだ、それを目標として思い切った金融政策を打つべきだというふうに思っていますが、この政策を、福井さん、あなたはとるつもりがございますか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 物価安定数値目標政策、先生の御指摘は恐らく、インフレターゲティングの採用をどう考えるか、そういう御質問かなというふうに思います。
 私もかつて長く中央銀行に職を奉じておりましたその立場から、あるいは自分自身でその後勉強いたしました立場から、インフレターゲティングというのは中央銀行にとって非常に重要な道具立ての一つであるというふうに考えております。現在におきましてもそういうふうに考えております。
 なぜインフレターゲティングというのが中央銀行にとって重要な道具立てか。一つは、政策の透明性。国民の皆様に対して、中央銀行が何を目指しているかということがわかりやすい、わかりやすくするための道具立て。もう一つは、そういう目標数値を置くことによって中央銀行自身が自分に対して自己規律を強める、セルフバインディング効果をみずからに課す。この二つの点が重要だろうというふうに思っています。
 私は、就任いたしましたら、日本銀行の政策の透明性について、より透明度の高いものに持っていくようにいろいろな工夫を凝らしたい、こういうふうに考えています。
 それから、自己規律という点が非常に難しい点でございまして、自己規律と申しますのは、日本銀行がある目標に向かって進むときにいろいろな政策を毎日のように、あるいは毎月のように、あるいは情勢に合わせて打っていく、その打ったことが、最終的に目指したところに対してどういう波及過程を持って効果実現の実を上げていくか、この波及過程が明確でなければ、中央銀行としては責任を持った政策ということにならないわけです。先ほどから山本先生は盛んに結果責任とおっしゃいますが、めくらめっぽうで結果責任はとれない、波及経路に確信があるときに責任を負えるというふうに私は信念を持って考えております。
 目標数値を置き、それに対して政策の、例えば今は量的緩和政策をとっておりますが、量的緩和を行ったときにどういう波及経路でそのターゲットに到達するか。
 現状は、御承知のとおり、通貨乗数も極めて不安定な状況にあります。こういう通貨政策を施した場合の効果の波及過程というものをしっかり磨き直したい。いろいろなパイプが目詰まりになっているかもしれませんが、そのパイプの掃除をきちんとやりながら、いつの日か、本当に、先生のおっしゃるようなインフレターゲットを、結果責任を負える形で持っていけるようなところになりたいと個人的には思っておりますが、現状、その条件が整っているかどうか、政策委員のメンバーの方々とよく議論したい、こういうふうに思っています。
山本(幸)委員 今があなたの一番のチャンスなんですね。本当にデフレ克服に覚悟を持ってやると市場にはっきりと訴えることができるかどうか。このときに、このタイミングに、自分は結果責任についてこれだけ負いますよ、命がけでやりますよ、できなかったら責任をとるんだということをはっきりするのがこの物価安定数値目標なんだ。インフレターゲットというのは、いかにもインフレを起こすような、そういう気持ちを含むものだから余り使いたくないんですが、話をわかりやすくする意味でインフレ目標政策と言いますが、これを今打ち出さなかったら、後でずるずる追いまくられて結局それになるようじゃ、全く効果もないし、そしてあなたの覚悟も評価されない。
 今しかないんですよ。あなたは、きょうここか、あるいは二十日、ブッシュさんは四十八時間の猶予を与えてやるそうですから、二十日が、イラク攻撃も始まるでしょう。そのときに、あなたが就任した第一声で、インフレターゲット政策をとりますと言うしかもうチャンスはないんですよ。その後でずるずる、ああでもないこうでもないと言ったって、そしてやらせられましたと言ったって、恐らく効果はないでしょうね。
 それじゃ伺いますが、波及経路が不明確だから、だからできない、これはどういう意味ですか。
福井参考人 お答え申し上げます。
 現在は、金利がほぼゼロという水準でございますので、金利を操作することによってある目的を達する、この波及経路がないことは当然でございますが、流動性を量として多く供給していく、流動性をより多く供給したときに、銀行貸し出しが伸びる、あるいは、市場の中で投資家あるいは個人がさまざまな金融資産に対して多角的な投資を行う、そういうふうな形で、ある段階でマネーサプライの増加に結びつき、そして実体経済に対して刺激的な効果が最終的に及ぶ、この過程のことを波及経路と言っております。
 しかし、そこは、私が見ます限り、現状は、中央銀行が流動性を相当多目に供給しても、そこから先の効果が出ていない。狭い意味の金融市場の中で流動性が空回りをしている状況、これを流動性のわなの中に日本経済が陥っているという表現をなさる方もいらっしゃいますが、私もそういうふうに思っています。
 流動性のわなから脱却できるようにさまざまなパイプをきちんと整備したい。これは大変地道な努力でありますし、目立たないような努力という部分も出てくるかもしれませんが、そこをしっかりやりながら、金融面からの展望の糸口を一つ一つ地道につけていきたい、地道な努力という面についてもいずれ先生から御評価をいただきたいというふうに思っています。
山本(幸)委員 地道な努力なんて、わけのわからない言葉は使わないでくださいよ。
 流動性を供給したら、では何が起こるか、詰めましょうか。では、銀行から国債を買い切りオペで続けていったら、銀行はどうしますか。
福井参考人 国債を買い続けて、しかし銀行が動かなければ問題にならないではないかというのは、御指摘のとおりでございます。
 しかし、今、より広く民間の経済の世界をごらんいただきますと、大企業、中小企業、それぞれに、やはり苦しい中にも新しい展開を求めて努力をされておる、新しい投資口というものを懸命になって模索していて、それを民間の世界では組み立て始めているところも結構あるわけでございます。しかし、金融機関がリスクをとらないと、中央銀行が流動性を供給しても、そういう最先端の努力をしている人たちのところにお金が届かないという現象が今起こっているということを私は御指摘申し上げているわけで、地道だけれども、日本銀行の出したお金を、これからの世の中を切り開こうとして努力をしている人たちのところにきちんとデリバリーしなければいけない。
 金融機関は金融サービス業だと私は申し上げましたが、中央銀行はその金融サービス業の親玉だというふうに申し上げました。そういうことを言っているわけでございます。
山本(幸)委員 私の質問に答えていないんですが、銀行が貸し出しをふやさなければデフレを克服できないなんというは、そんなことはないんですよ。
 これは岩田さんがよく知っているけれども、一九三〇年代の昭和恐慌のときと、アメリカのときと、高橋財政が始まってもルーズベルトが来ても、一気に株は上がりGDPはふえるけれども、銀行貸し出しはそれから三、四年減り続けますよ。それは、だって今キャッシュフローが潤沢にあるんだから、まずそれを使う。だから、銀行が貸し出しをしなければデフレが克服できませんという議論は、事実において否定されておる。
 そこで、私がお伺いしたのは、その波及メカニズムについて僕はちょっと細かく議論したい。そこで、では国債を民間銀行から買い切ったときに、民間銀行はその後どうするんですか。
福井参考人 民間銀行は、ポートフォリオと申しますか、自分のバランスシートをこの先将来にわたって固定的に考えているわけではないというふうに思います。
 民間の資金需要の出方というものを注視しながら、どういう方向にお金をつけていくか。とりあえずは、資金需要が銀行の目から見たら余り見えない、したがって金融市場に出てくる国債に対してお金を振り向けているということでありますけれども、民間の資金需要が少しでも見えるようになってくれば、金融機関としてはバランスシートの構成の仕方を、もちろんこういう経済情勢ですから大量に国債を買い続けるでしょうけれども、やはり次第に民間セクターにお金を流していく比率をふやしていく。場合によっては、既存の国債を市場で流動化しながら、一方で民間部門にお金を出していくというふうに資金供給のパイプを次第に太くしていくだろう。
 デフレ克服というのは、最終的に、付加価値を生む民間部門の活動が活発にならないとデフレは克服できない。付加価値活動をする民間部門の人たちに新しい芽が出てきたときに、金融機関の目が曇っているとすれば、日本銀行は、情報を与えて金融機関の目の曇りを消していかなきゃいけない、そして、現実にそこにお金を流していくためのさまざまな技術的な工夫に対しても支援をしていかなければいけない。
 そういったことは、こうなればこうなりますというほど単純でないがゆえに地道と申し上げました。地道と言うとおしかりを受けるかもしれませんが、一つ一つパイプをやはり解きほぐしていく。金融政策は、金融論の理屈からいえば割り切ってさっと一本の線をかけるかもしれませんが、本当は、地に足をついた、非常に地道で広がりのある努力という面も大きいわけでございます。繰り返して申し上げますが、そういうサービスをきちんとやっていきたいということでございます。
山本(幸)委員 私と議論するときに、地道だとかそんなわけのわからぬ言葉を使わないでくださいと言っているんですよ。
 あなたがおっしゃったように、日本銀行が長期国債買い切りをやれば、民間銀行は今度は市場から国債を買うかあるいは外債を買うか、場合によったら、まあ株は限度があるから株へは簡単に行かないかもしれないけれども、余裕があるところは行くでしょう。そういうことを考えてやっているでしょうね。今は恐らく、買ってもらったらすぐ国債を買うということをやっているでしょう。国債を買ったらマネーサプライはふえるじゃないですか。違いますか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 民間銀行が国債を買って政府に供給をする、政府はそのお金を財政支出として使う。マネーサプライはふえますが、民間の経済活動が活発でなければ、民間は借金を返すということで、結局マネーはもとに戻ってしまうということです。そこのところが私は大事だ。付加価値創造を生む民間活動が広がる、民間活動を行う人たちがより多くお金を使うということになって初めて本当にマネーサプライがふえるわけです。そこのところをよくお考えいただきたい。国債にだけお金がついただけでは、回り回ってお金はもとに戻るというふうに思われます。
山本(幸)委員 そんなばかな議論をしないでくださいよ。私だって金融論を四年間教えていたんだから。
 民間銀行が国債を買えば、それは政府から買うかもしれないし、あるいは恐らく市場から買うでしょう。そうしたら、売った人の預金口座に入れるんだから、マネーサプライはふえるんですよ。あるいは、国債、国が発行したものを買えば、国がそれを投資して使っているわけだから。そして、そのときに日本銀行が方針を変えなければ、金はそこで回りますよ、マネーサプライはふえますよ。そのときに日本銀行が金融政策で引いちゃえば別だけれどもね。
 だから、たとえ長期国債を買うということでもいいんですよ、それをどんどん続けていけば国内のマネーサプライは必ずふえてくる。そして、それがふえるということによって、そのふえ方が、スピードにもよるけれども、スピードを速くすれば必ずデフレ期待は直っていくんじゃないですか。違いますか。
福井参考人 現状、お金のもとになりますベースマネーと申しますか、日銀当座預金がふえる形で非常に大量の流動性を供給している。先生のおっしゃるようなお金の流れが本当に生きているんだとすれば、それをもとにしてマネーサプライが相当ふえていなきゃいけない。マネーサプライは確かに幾らかふえておりますけれども、極めて不満足な伸び率しかふえていない。
 それは、民間が、有効にそのお金を使う道をまだ十分見出していないか、見出していても、金融機関のリスクを回避する気持ちが強くて、そこにお金をつけていないか、どちらかだ。そういうことで、結局お金は過去の借り入れの返済という形でもとに戻ってきてしまっているということではないかというふうに思っています。
 したがいまして、お金が、単純にもとに戻るのではなくて、付加価値創出という活動に使われて、資金需要がさらにふえて、民間に滞留する残高というものが多くなるようにしていくというのが本当の金融緩和政策の効果だ、私はそう思っています。
山本(幸)委員 マネタリーベースを伸ばしてもふえないというのは、それはまたストップ・アンド・ゴーをやっているからふえないんですよ。おっしゃったように通貨乗数が落ちているんだったら、その落ちた分を考えてどんどんふやせば、必ずふえていきますよ。もしそれがふえないとあなたが言うんだったら、四百兆円ある国債を日本銀行が全部買い切って、何も変わりませんよ。そうしたら、税金なんか上げる必要ないんだ。全部国債償還、一発で終わっちゃうんですよ。そんなばかなことあり得ない。買い続けていけば、必ずインフレ期待が生ずることになるんですよ。そこのところを理解していないようでは、僕は金融理論を理解しているとはとても思えない。
 では、その場合に、そういう状況で金が回ってくると言っているけれども、そんなことはないんで、これは時間のあるときやりますけれども、日本銀行が金を出すという姿勢を続けていく限りは、必ず市中にお金は出ますよ。そのときに、今どうもそこのところは理解されていないようだから、最後にもう一個聞きますが、そういうふうに金融機関がそれは回らないといったら、では、日本銀行は直接マネーサプライをふやすような政策を考えることもあり得ると思いますが、例えばETFを買うとかなんとか、そういうことをあなたは考えているんですか。
福井参考人 マネーサプライをふやす非常に有力なルートが銀行貸し出しということで今までお話を申し上げておりましたけれども、マネーサプライをふやすルートはそれだけではない、おっしゃるとおりでございます。日本銀行が直接マーケットからいろいろな債券を買う、結果としてマネーサプライがふえる、このルートも非常に重要。日本銀行はそこも今後とも重視していきたい。
 これは、オペレーションの対象とする債券の種類、資産の種類、これが最も有効なものを取り上げていかなきゃならない。ETFというものを取り上げるかどうかは別にいたしまして、民間の新しい価値創出活動にしっかりつながっていて、市場において安定性のあるような資産については、日本銀行としては、オペの多様化、オペの効果を上げるために、そういう道具立てについてはきちんと評価しながら取り上げていきたい、そういうふうに考えています。
山本(幸)委員 どうもあなたは、最初の、国債買い切りを続けていったらそういう経路があるということを理解しておられないように思いますし、その結果、何か少し、小出し、後追いを結局続けるような印象を持ちまして、大変危惧を感じています。
 もう二日間ありますから、二十日のあなたの就任会見が最大の勝負ですよ。そのときにはっきりと、デフレ克服、結果責任をとるという形で市場に示すことができなければ、イラク情勢とかもあって、日本経済は危機的な状況になりかねない。非常に心配ですね。そのことを私は、しっかりと覚悟して、もう二日あるから、よく考えてもらいたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方幸夫でございます。
 参考人の皆様におかれましては、お忙しい中、当委員会にお越しいただきましたことをお礼申し上げます。
 山本委員の質問を聞いていますと、きのう、たしか自民党さんは同意人事に賛成をしたはずなんですけれども……(発言する者あり)先週ですか。何やら賛成をしていないようで、我々はもともと、国会で同意をする前に、きちんとこの委員会で呼んでお話を聞いて、その上で、総裁としてふさわしいか、副総裁としてふさわしいかどうかを判断するべきだというふうに主張してきたんですけれども、残念ながら自民党さんの方がそういうことをしてくれなくて、きょう初めてそういう機会を持った。山本委員は、もしこれを聞いていたら、では先週の採決のときには福井総裁については反対をしていたかどうか聞きたいんですけれども、山本さんが参考人ではないので、参考人の方に質問を戻してお話をさせていただきたいと思います。
 恐らく、きょうの十時から、ブッシュ大統領がイラクに対する攻撃は四十八時間以内に行うというような演説をしているんではないか、もう終わったんだと思います。これは世界的に、もちろん戦争という非常に大変な事態を引き起こすわけですから、経済にも非常に大きな影響が出てくるだろう。
 きょうの株価は午前中は一たん値上がりをしているようでございますが、これは、戦争という先行きがある程度見えたというので一たん値上がりをしているんだろう。しかし、これは、実際に戦争が始まれば、どのようになるのか、期間がどのぐらいかかるのかも含めて、その影響が世界にどのように波及していくのかも含めて、経済的にも大変大きな危機になるんではないかというふうに思っております。
 特に、今の日本の経済の状態は、半病人から本当の病人になりかかっているような状態の中に極めて厳しいあらしが吹き荒れるわけでございまして、そういう大事な時期にまさに新日銀総裁が誕生するということで、大変御苦労もこれから多いと思いますが、まだ国会で同意されてから少しの時間しかたっていない中で、急にこういう事態に対処しなければいけないわけです。
 まず最初に、日銀としての危機管理、まさにこれは、恐らく危機になることは間違いないというふうに思いますので、日銀としての危機管理体制をどのようにお立てになるように考えておられるのか、そこからお伺いしたいと思います。
福井参考人 私が正式に着任する前に戦争が始まるかもしれないというぐらいの危機意識を持っております。いずれにせよ、戦争が始まりますと、日本銀行の運営も戦時モードでいかなければならない、つまり危機対応ということにうんとウエートをかけていかなければならないというふうに思っております。
 日本銀行が今進めております金融緩和政策、恐らく二つの方向を意識しながらだと思います。それは、一つは、先ほども申し上げましたとおり、日本経済が引き続き非常に厳しい状況にある。わかりやすく言いますと、外からのショックに対して非常に弱い、ショックに対して脆弱な状況にある、これが基本認識だと思います。したがいまして、日本銀行の進めております緩和政策その他の政策は、まず第一に、ショックを金融あるいは資本市場の中においていたずらに増幅させない、ショックを増幅させて人々の不安感を大きなものにしない、こういうことをまず念頭に置いてやってきている、こういうふうに思います。プラス、デフレ克服のために、マネーサプライの増加あるいは実体経済への好影響というところまで、いい影響を出そう。こういう二つの目標を頭に置いて金融政策は進められてきているというふうに思います。
 今後ともその点は変わらないわけでありますけれども、とりあえず、その入り口の、ショックが及んできたときに、マーケットで、これが、不安心理が渦巻く形で増幅する、ここは中央銀行が身を挺してやはり対応しなければならない。そこに重点を置いて、少なくとも開戦当初の大きなショックは防いでいかなければならない。
 恐らく、ショックをある程度緩和することができても、戦争の影響というのは、世界経済それから日本経済の先行きの動きに対しては実態的にやはり厳しい影響を及ぼしてくるだろう、これがデフレ克服の努力に対してさらなる負担をかけてくるだろう。これは、先行きの情勢判断をより研ぎ澄まして見ていかなければならないポイントだ、おおよそ今のところはそういうふうに考えております。
生方委員 二つお伺いしたいんですけれども、日銀の中に、今、戦争が始まった場合、危機対応チームみたいなものをおつくりになるつもりがあるのかどうかというのが一点と、外からのショックに非常に今日本が弱いということで、そのショックに対応するために身を挺して日銀は闘っていくというふうにおっしゃいました。重ねて、日銀の説明責任ということを福井参考人は先ほどからおっしゃっておりますので、具体的にどんなことを日銀がおやりになれば日本経済に与えるショックを少なくすることができるのか、その二点をお伺いしたいと思います。
福井参考人 どういうチームをつくるかというのは……(生方委員「いや、どういうチーム、チームをおつくりになるつもりがあるのかどうか」と呼ぶ)はい。
 日本銀行は、金融市場を運営するための部局がございます。これは二十四時間態勢で世界のマーケットをウオッチいたしております。この態勢を強化しながらやっていくというのが恐らく基本だろうと思いますが、二十日から任命されます私と二人の副総裁、これがそのチームをきちんと指導していくということがコアになるだろうというふうに思います。
 それから、速水総裁が現になさっておられることを見ておりますと、日本銀行は既に戦時モードに少し入っているのかな。流動性の追加供給というところから既にステップを踏み出しているわけでありまして、マーケットの反応をよく見ながら、新たなショックの及び方を見ながら、そこは対応を考えていきたい。
 今から予断を持ってこれをするということではございませんけれども、やはり市場に足元を見透かされないようにやっていきたいということでございます。
生方委員 予断を持って何か言うというのと説明責任とのその関係が非常に難しいと思うんですね。事前に言っていいことと言わなくてまずかったことと両方あると思いますので。
 いずれにせよ、金融政策というのは非常に難しい問題でございますし、それにもかかわらず、国民の生活に非常に密接にかかわる問題でございます。インフレターゲットの問題も、アナウンス効果ということできっと山本議員も言ったんだろうというふうに思います。その辺の効果や、その反動も含めて、いろいろその都度きちんと国民に説明をしていただければ、日銀が持っている機能は非常に私は大きいと思うのですが、それが十全に果たされているというふうには必ずしも思っていない。
 それが果たされない原因の一つに、日銀がおやりになろうとしていることがいま一つ国民に十分伝わっていないということもあります。速水総裁は御高齢ということもございましたので、ここにもたびたびお越しいただきましたが、我々も余り突っ込んで質問をするのがはばかられるような状態もございましたので、ぜひともそういう説明責任を果たしていただきますようにお願いを申し上げます。
 それから次にお伺いしたいんですが、五年前に新日銀法ができまして、日銀の独立性というのが非常に確保されたわけでございます。
 日銀から経済財政諮問会議に出席もなさいますし、その一方で、政府からは、担当大臣が政策委員会に出て意見を述べることもできるし議決を延ばすこともできるようになったということは承知をいたしております。今度、福井さんが小泉総理とお会いになって、新たに政府と日銀のまた定期的な会合を開くんだということをお決めになったということが新聞に出ておりましたが、これはまさに屋上屋を重ねることにならないか。
 既にこれだけ日銀と政府とはいろいろな会合を開いているわけで、そこの上にまた総理との会合を開くということは屋上屋を重ねることにならないかということと、日銀の独立性がそのことによって私は多少損なわれてしまうのではないかという危惧を持っているんですが、その点について、福井さんの御意見をお伺いしたいと思います。
福井参考人 御指摘のとおり、先週金曜日、官邸をお訪ねいたしましたときに、総理の方から、政府と日本銀行との間で定期的に会合を持ちたいと思うがどうか、こういうお話がございました。私の方は、これはむしろ望んでおりましたところです、日本銀行からも積極的に意見を申し上げさせていただいて、政府と日本銀行の政策が、単に整合性をとれるといいますか、先ほども申し上げましたとおり、相乗効果が出るようないい組み立て方を目指して建設的な議論をさせていただきたい、こういうふうに申し上げました。
 独立性が阻害されるのではないか、大変御心配をいただいております。その点は私も非常にありがたく思いますが、私自身の気持ちは、日本銀行の独立性は五年前に成立した新日銀法によってしっかりと担保されているというふうに認識しております。
 法律できちんと担保されているものですから、日本銀行は独立性に対して守りの姿勢に入ろうという気持ちは私にはございません。むしろ、積極的に政策行動をすることによって、それが評価を得られれば、独立性のよさということが国民の皆さんにわかっていただける、そういう段階に既に移っているのではないかというふうに思います。したがいまして、生意気なようですけれども、政府との間ではむしろ好んで議論をさせていただきたい、そういう姿勢で臨みたいというふうに思っています。
生方委員 そうしますと、今まで経済財政諮問会議に出て発言をしていたのでは不十分だというふうな理解だということでよろしいですか。
福井参考人 大変失礼いたしました。経済財政諮問委員会のことを、私、お答えいたしませんでしたけれども、経済財政諮問委員会の議事録は私も比較的詳しく読ませていただいております。
 あの場の議論というのは、実は非常に広範囲な政策テーマが議論されていまして、金融政策と政府の政策との整合性というふうな点に、もちろん時間が割かれてはおりますけれども、それだけで十分かどうかという点になりますと、そこにしっかり焦点を当てて、そのための会議がもう一つあるということは必ずしも屋上屋にはならない。
 そして、定期的というのは一体何回ぐらいですかというところはまだ決まっておりません。これは私もまだ希望を申し上げておりませんが、ただいたずらに機械的に一定のインターバルということになりますと、先生御指摘のとおり重複感が出るかもしれません。やはりこれは、機動的に、必要なときは頻繁に、必要でなければそんなに頻繁に開く必要はないというぐらいの感覚が、政府と日銀と両方で共有できればうまい運営ができるのではないかというふうに思っております。
生方委員 恐らく福井参考人がおっしゃりたいことは、日銀に対しては要求ばかりいろいろ突きつけられているので、我が方としても政府にきちんと要求を、言いたいことはきちんと言っていこうという姿勢だと思いますので、それは評価をいたします。
 私も、福井さんのインタビュー記事、いろいろ読ませていただきましたが、政府に対してもいろいろ御批判というか意見を述べております。その中で、政府の歳出構造が非常に硬直的である、税制改革も不十分であり、税財政に期待されている資源再配分機能が十分に発揮されていないという御指摘もなさっております。福井さんが政府に対して注文をつけるとすれば、今ここに申し上げましたことに対しても、具体的にはどのように政府がやるべきだというふうにお考えでしょうか。
福井参考人 既に国会で議決のされました前年度の補正予算、それから今参議院で審議中の新年度予算、その中身を見ておりますと、確かに、以前に比べますと、資源の再配分あるいは税制の面でも新しい動きが入ってきているというふうに私は思っています。
 しかし、この今の難しい経済に対して先行きの展望をきちんと早く見出していくためにそれで十分かという点になりますと、やはりまだ資源を古いところに張りつけ過ぎてはいないか。もっと新しいところに資源を振りつけていく。そのためにはかなり、既得権をお持ちの方々に犠牲を強いるというふうな、政治的には難しいプロセスを経ざるを得ないかもしれませんが、そこは、日本銀行の政策がよりよき効果を上げるためにも、つまり、日本銀行が供給いたしますお金は、将来の希望が開けるような方向で使っていただける方のために出している、政府のお金の配分も、政府の判断によってそういう方向にお金がついているということになって初めて財政政策と金融政策の相乗効果が出る、こういうふうに思っております。
 したがいまして、今後さらにいろいろな施策を政府が施されます場合には、資源のシフトをいかに促すかという点にカメラのファインダーを当てて、そこにピンぼけがないようにやっていただくというのが基本でございます。
生方委員 今おっしゃったことはまさにそのとおりだと思うんですが、今年度予算を見ても昨年の補正予算を見ても、必ずしもピントが合っているわけじゃなくて、旧態依然たる予算のつくり方をしていることは間違いないわけでございますので、ぜひともその辺は、日銀総裁として、これから忌憚のない意見をどんどん政府側に述べていただきたいということをお願い申し上げます。
 それともう一つなんですが、今、日銀はたくさんの国債を市中から買い上げて貨幣の供給を多くしているということなんですが、先ほど来の議論にもあるように、せっかく多くしても、銀行が、市中で運用する先がないからまた国債を買うという格好で、国債がぐるぐるぐるぐる回っているだけで、福井さんがおっしゃるように、本当に必要としている企業にお金が回っていないというのが実態だと思いますね。したがって、それを何とか打開していかなきゃいけないはずなんですが、どういうふうにすればそれが打開できるというふうに思っておられますか。
福井参考人 これはなかなか難しい課題でございます。つまり、日本銀行がお金を供給するというその動作だけであらゆるパイプが自然にほぐれてお金が円滑に回るということではないというのは、これまでの金融政策の実行ぶりとその成果、これを見た場合に、単純にそれだけでは動かないということは明らかになっています。
 したがいまして、日本銀行としては、お金を供給いたします場合に、どういう道具立てでやっていくか、どういうものを担保にとっていくか、どういうものを買い取り対象の資産としていくか、どういうものを日本銀行が受け取ることによって、民間の活動、これから新しくいろいろな活動をしていこうという人たちに刺激効果が及ぶような、あるいは債券の投資の仕方を変えようと思っておられる方々にインパクトを与えるような、そういう行動が日本銀行ができるかどうかというのが第一でございます。
 第二は、日本銀行としては、先ほど申し上げましたように金融サービス業の親玉と認識しておりますが、金融サービス業の本当の担い手であります民間の金融機関、この方々と本当にしっかりと対話をしていきたいというふうに私は思っています。日本銀行というのはひとりではプレーはできない、民間金融機関と一緒でなければ、政策効果が上がるようなプレーはできないわけでございます。
 御承知のとおり、日本の大きな金融機関は、最近、民間の市場におきまして非常に大型の増資を努力をして実現した、あるいは実現しようとしているということでございますが、民間の金融機関に対して増資に応じた、お金を出した投資家あるいは事業会社等々の立場からいきますと、民間金融機関は単に増資をしてこれを過去のロスの穴埋めにだけ使うということでは、お金を出した人たちの立場はないわけでございます。民間金融機関は、資本を新しく受けたからには、その資本を生かして、新しく付加価値を生む人たちにお金をつけて、価値創造をサポートしなければいけない。そうでなければ、金融機関自身もキャッシュフローを生まないから、せっかく受け入れた増資が本当の効果を出さないということになってまいります。
 したがいまして、日本銀行が持てる情報を十分金融機関に差し上げたいし、金融機関の悩みも十分日本銀行は聞きながら、金融機関がやはり金融市場にもっと前向きに出て、増資という大きなバックグラウンドを得たわけですから、新しいリスクテークのための行動に出られるように、いろいろ御相談にあずかりたい、こういうふうに思っております。
生方委員 増資をしましたけれども、ほとんどが今度の株の下落ですっ飛んじゃったんじゃないかというふうに言われておりますので、リスクをとる余地は、実際問題、ないと思うんですね。
 福井さんはかねてから公的資金導入に熱心だったんですけれども、今のお話を聞くと、実際、増資しましたけれども、これは株の下落によってほとんどもうなくなってしまったわけですから、リスクをとるためにはやはり思い切った公的資金を導入するべきだというのは、今でもお考えが変わらないということで理解してよろしいですか。
福井参考人 今御指摘の点でございますけれども、私は、公的資金の必要性というのは引き続き感じ続けております。日本の金融システムに潜在する不良債権の大きさ、金融機関がリスクテーク能力をつけるまでの距離感というものを考えますと、やはり、公的資金投入のパイプというものはいま一段整備しておいた方がいい。
 現在は、預金保険法、つまり金融危機のときに資本注入ができるという法律でございますが、危機に至らなくとも、もっと、予防的にと言うとおかしいんですけれども、早期是正措置、早期健全化措置として、公的資金が投入できるルートはやはり必要ではないか。
 私が思っておりますのは、金融機関に、早くリスクテーク能力をつけて、リスクテークの場に出てほしいということが最終目標であります。しかも、それは、もうこれ以上余り時間をかけないでというところがございます。したがいまして、公的資金賛成論者だということに私はなっているんですけれども、公的資金を入れることによって、かえって銀行がシュリンクするというふうなやり方は非常に困ると実は思っておりまして、銀行経営者の責任を追及するということと銀行をシュリンクさせるということとはちょっと別問題。ここはなかなか難しいですけれども、責任はきちんと追及するとしても、銀行はやはり、いわば体力が落ちているわけですので、政府と銀行経営者の間で、きちんとインフォームド・コンセントを受けて、必要な外科手術として公的資金が必要ならば受け入れる、そのかわり、受け入れたら早く市場に出る。このステップがきちんと認識された上で、新しい公的資金提供のフレームワークができるべきではないか。
 公的資金を入れたからといって、銀行の経営の自主性を損なうようないろいろな規制をたくさん課するということでないやり方が望ましいと考え続けてきているわけでございますが、これは今まで民間人としてそう考えてきたわけでございまして、政策委員のメンバーとこういう議論を一度もしたことはございません。よく議論してみたいというふうに思います。
生方委員 自主性を尊重するというのは、それはそうなんでしょうけれども、でも、今までの経営者の責任というのはやはり明らかにしないと、せっかく公的資金を導入、公的資金というのは我々の税金ですから、税金を投入して、責任が一切明らかにされないまま、同じ経営者が同じマインドでやられたんじゃ、今福井さんがおっしゃるような形で民間にお金が回っていかないと思うんですよ。やはり、そこはそこで思い切った策をとらなきゃいかぬというふうに思うんですが、今言っていることだとちょっと矛盾するんじゃないかと思うんです。
 シュリンクさせないように経営責任をとらないまま公的資金をずるずる導入するというのは、私は、モラルハザードを起こすんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでございますか。
福井参考人 経営責任はきちんととるということは申し上げました。
 そして、公的資金投入後の銀行の経営については、新しいコーポレートガバナンスを確立する。場合によっては銀行経営者がかわるというふうなことも含めて、新しいコーポレートガバナンスを確立して、自主的な銀行経営にゆだねる。公的資金を入れたからといって、その後の銀行の経営について、いろいろ細かい干渉が政府から入るということではない方がいいのではないかという意味でございます。
生方委員 それはそのとおりだと思います。
 ちょっと角度を変えて伺いたいんですけれども、先ほどもしっかりした返答はなかったんですが、国債以外にいろいろなもので資産の分散をしなきゃいかぬというのは先ほども述べられましたが、具体的に政府からは、政府からというか自民党さんからというか、ETFを買えとかREITを買えとかあるいは国債の買い切り額をもっとふやせとか、いろいろな要求がこれから出てくると思うんですけれども、もちろんこれから御検討になるということだと思うんですが、株とか不動産をこれ以上、不動産はもちろん買っていませんが、買うというような、そういう、いわゆる伝統的な手法ではない手法を取り入れるおつもりがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
福井参考人 ETFとかREITとかいうふうに非常に限定したお話を拝聴することが多いわけでございますけれども、我々としては、より幅広く検討してみたい。
 実際、民間の事業家の方々の動きなどを見ておりますと、中小企業の方々の動きなども非常に参考になることがございまして、新しい形のCPを発行するとか、シンジケートローン、銀行がお金を入り口で出すけれども、それはマーケットにつないでいくというふうに、金融市場と資本市場とのパイプをきちんとつけていくような新しい工夫とか、いろいろなものが世の中で開発されつつございます。
 そういったところで、どこを日本銀行が直接買い入れの対象とするのが金融政策の効果がより上がりやすいかということは、やはりきちんと点検する必要がございますし、いずれにいたしましても、達観して申し上げれば、国債を買うよりは、そういったいろいろなマーケットにある債券、手形等の方がリスクが高いということが言えると思います。
 日本銀行は、恐らく御想像以上に自己資本はそんなに厚くないのでございます。自己資本をどういうふうに割り当てながら、そういうリスク度の高いアセットを金融政策の道具にしていくか。日本銀行としては、キャピタルのアロケーションの問題もきちんと厳密に考えながら、そこは選別していかなければいけないということでございます。
生方委員 今でも日銀は非常にたくさん国債を買っているわけで、これは、国債が、長期金利が上がれば、いつ暴落するかわからないわけですね。この暴落に対しては、どのようにリスクヘッジをなさっておるんですか。
福井参考人 先ほど申し上げましたのは最終的な信用リスクのお話でございますが、今お尋ねがありましたのはマーケットリスク、市況の変動による、日本銀行がこうむることがあり得べきリスクということでございますが、これに対しましては、価格変動準備金等の形で内部留保を引き当てることによって、想定されるリスクに対してはかなりの程度カバーしている、こういうふうな状況でございます。
生方委員 先ほど岩田参考人の方から、デフレ克服に関連してお話があった中で、具体的に三つほど案が出されました。福井総裁候補もお伺いになったと思いますが、この三つの政策について、福井さんはどのような、これはいいというのか、ここはちょっと違うよというのか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
福井参考人 岩田先生の御意見につきましては、かねてから岩田先生の御著書その他で私勉強させていただいておりまして、きょうまた改めて、ここでの意見表明ということで非常にわかりやすく御説明があって、私も、岩田先生の物の考え方について理解を深めた次第でございます。
 幾つかおっしゃいましたけれども、日本銀行が最終的に目指す物価安定というのはどういうものかというのをもうちょっとはっきりした方がいいのではないかという御指摘がございまして、これは、どういう形で日本銀行の政策意思の透明性を図っていくかというのは、私自身も重要な課題だと思っております。岩田先生のおっしゃるような形になるかどうか、これはこれからの議論でございますが、いずれにしても、そういう、我々が行き着くところの最終ゴールというものをもうちょっと透明にできないかというのは、私の頭の中にある課題と同じでございます。
 それから、国債の金利の安定化を図りながら政策効果を上げていくべきだというお考えがございました。この点につきましても、現在日本銀行がやっております政策というのは、流動性を多目に供給することによって、イールドカーブを比較的フラットな形で安定させるということをベースに、政策効果の浸透を図ろうとしているわけでございまして、現在の政策との連続性、それから、これから恐らく日本銀行がもう少し横に幅広くやっていくとは思いますけれども、国債を中心に考えた場合の一つのルートという点では、私はそんなに違和感がないというふうに思っています。
 それから、国債管理政策について、例えば物価連動債、インデックス債が重要じゃないかというふうなことも岩田先生おっしゃいましたけれども、私も、持論として、これから先の国債管理政策の中で、つまり、将来、我々の政策がうまくいって経済が持ち上がるときには当然金利が上がってまいりますけれども、世の中で金利リスクというものを非常に広範囲に一挙に現出させないためにも、あらかじめ政府がインデックス債という形でそのリスクを相対的に少なくしていくというのは一つの知恵ではないかなというふうに思っておりますが、これはまだこれから議論を始めなきゃいけない点でございます。
生方委員 非常に大変な時期にお三方はこれから日銀のかじ取りをなさるわけで、ぜひとも、言いたいことはどんどんきっちり政府に言っていただいて、国民に向けても明確なメッセージを発してもらって、相互批判をしながら運営していただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
小坂委員長 次に、石井啓一君。
石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず、私も、速水総裁時代の日銀を振り返りまして、いろいろやはり反省すべき点があったと存じます。
 まず一つは、ゼロ金利政策の解除ということで、これは判断を誤ったということがあったかと存じます。
 二つ目には、政府との意思疎通が必ずしも十分でなかった。政府のみならず、私どもとの意見交換でもなかなか聞く耳を持っていただけなかったという印象があるわけですけれども、国民への説明責任というのは、まず国民の代表である私たちにきちんと説明をしていただくということが第一でございますので、その点はよろしくお願いをいたしたいと思います。
 三つ目でございますけれども、これからの質問にかかわるわけでありますが、市場との対話が必ずしも十分ではなかったんじゃないかということがございます。
 といいますのも、ゼロ金利政策にしろあるいは量的緩和にしろ、これまで日銀がやったことのない非常にドラスチックな政策だったわけですけれども、これは必ずしも日銀が積極的にやったという印象を持たれなかった。どっちかというと、外部からの圧力に負けて嫌々日銀がやったと。何かみずからこの効果をおとしめるかのようなパフォーマンスがあったということを私は反省すべき点ではないかというふうに思っておりまして、市場との対話ということにつきまして、福井参考人、どのように今後取り組んでいかれるか、お伺いをいたしたいと思います。
福井参考人 市場は、経済原則にのっとって動いている部分と、魔物のように不規則に動く部分と、両方まざっています。中央銀行から見ますと、市場は非常に有力な味方でありますと同時に、大変手ごわい相手でございます。
 したがって、こういうやり方で対話という、一定のパターンはないわけでございますが、やはり中央銀行は、先を読む、そして先手を打つということが常にないと、後から弁明ということになってまいりますと、市場から逆に足元を見透かされるということの繰り返しになりかねない。そういう意味では、市場との対話ということは、常に先取りしながら物を考えており、現状よりは先を読んだ情勢判断が必要であり、したがって早い行動が要る。
 そして、海外の中央銀行との間で、マーケットの情報について綿密なる意見交換が常に行われているということが大事だというふうに思います。当面、イラクの問題が起こって、いろいろな形のショックが日本の市場にも及んでくるといった場合にも、海外の中央銀行との情報交換ということがしっかり行われていませんと、実際に起こってきたことを十分読み解くことができないというリスクもあるというふうに思っております。
 そういうふうなさまざまな努力の重ね合わせの結果だというふうに思います。
石井(啓)委員 それではまず、当面の株安についてお伺いをいたしたいと思います。
 これは言うまでもなく、イラク問題で、我が国の地政学的なリスクということから、経済のパフォーマンスでなくて、政治、外交面から株安に至っている、こういうことでありますが、これに日銀はどう対応をされるお考えなのか、福井参考人にお伺いしたいと思います。
福井参考人 最近起こっております株安、日本の株価の下落率と諸外国の株価の下落率を比べて、同じであるとか、あるいはむしろ日本の株価の下落率の方が例えばドイツに比べて少し少ないとか、いろいろな論評をなさる方がございますけれども、私はそういう、現在、諸外国との株価の下落率の大小ということを比較することにはほとんど意味がないというふうに思っております。それはなぜかと申しますと、日本経済の実態がショックに一番弱い状況にあるということでありますので、海外に比べて株価の下落幅が大きいか小さいかに関係なく、株価の下落が日本経済に及ぼすショックは非常に大きいのだという認識をしっかり持たなければいけないということ。
 そして、今、これが地政学的情勢の変化からとおっしゃいました。そういったことを、発信源がそこであっても、だからといってこの現象を軽く見るということもまたよくないというふうに思っておりまして、結局のところ、マーケットは、それぞれの国の経済あるいは金融の弱いところを目がけて、こういうところにはショックを及ぼしてくるということであります。したがって、日本経済の弱点をつかれているんだという認識をしっかり持たなければいけません。
 対応としては、政府も日銀もそうですが、マーケットが変動するときに、慌てた対応が一番いけない。慌てた対応は、マーケットから足元を見透かされるということがございます。したがいまして、あくまで冷静に対応しなければいけません。こういうときこそ、将来にわたっていわゆるデフレ克服のための基本政策のフレームワークというのはこれでいいかどうかということをきちんと点検する、これをベースに、日々の動きとしてはショックに対してきちんと対応しなければいけない、こういうことだというふうに思っています。
石井(啓)委員 今、与党の中で金融政策プロジェクトチームというのを設けまして、さまざまな金融政策を検討しているわけですが、当面の株安対策について検討しております。
 その中で、日銀に対しましては、何せ今、株を売る圧力ばかりで買う方がないということから、今、日銀がおやりになっております銀行保有株の買い取り、これは上限二兆円ということで、既に九千億円以上の実績があるわけでございますけれども、この二兆円の銀行保有株の買い取り枠をさらに広げたらどうか、これを日銀に要請しようということで先日このプロジェクトチームの中では一致をしたわけでございますけれども、この要請についてはどうお答えいただけますでしょうか。
福井参考人 先ほど私は、ショックが及んでくるとすれば、日本経済とか日本の金融の持っている弱点のところをついてくるんだ、こういうふうに申し上げました。日本経済は、デフレスパイラルに陥りかねない厳しい状況にある実体経済、それから金融の面では、引き続き金融システムが安定化するまでの努力の途上にある、こういうことでございます。
 そして、金融システムが問題であるという点につきましては、不良債権の問題等々いろいろございますけれども、日本の金融機関が、過去の日本の資本主義経済のパターンの中で株式保有ということをたくさん行っていて、株価変動の影響と銀行経営との間に十分な遮断がなされていない、これがまた、ただでさえ弱い金融システムの弱さを一層増幅しているというふうに多分市場は見ていると思います。
 したがいまして、昨年から日本銀行が行っております銀行保有株式の買い入れ措置というのは、非常に異例な措置ではございますけれども、そういうショックをアブソーブしながら、株価の変動と銀行経営とを遮断していくという将来の方向性にも合った措置として、これは、私は、民間にいる人間としても評価できる措置じゃないかと考えてきております。
 まだ日本銀行の買い取り枠というのは余裕があると聞いているんですが、将来、増枠をする必要があるかないかというのは、今私が申し上げました、この措置の意味合いというものを前向きに受けとめながら考えていきたい、こういうふうに思っております。
 株式の買い取りということになりますと、一方、政府の方で買い取り機構というのがございます。こちらの方の機能向上をしていただくということも、我々がこの先、さらにステップを踏むかどうかを考えます場合の前提として非常に重要な点ではないかなと思っている点を一つ加えさせていただきたい。
 それから、日本銀行が、この株式買い取り、それから金融調節のためにいろいろな新しいオペレーションの手段を考える場合に、いずれにしましても、日本銀行の自己資本がそんなに厚くなくて、キャピタルをどういうふうに割り振っていくかというこの判断、これがもう一枚入ってくるという点もお考えおきいただきたいというふうに思います。
石井(啓)委員 ところで、新しい総裁、副総裁、三月二十日に就任をされるわけでありますけれども、非常に微妙なタイミングといいますか、イラク問題を考えてみましても、ちょうどそのころに場合によっては攻撃が開始されるかもしれないという時期でございますし、また、三月の期末を目前に控えている、こういう時期でございます。
 ところで、今、定時の政策委員会・金融政策決定会合は四月の七、八ということで予定されているわけですけれども、私は、現下の緊急事態を考えますと、福井参考人が総裁に就任されたら、時を置かずに臨時に緊急の会合を開いていただいて当面の課題を検討していただく、そういう柔軟な、スピーディーな対応が必要ではないかと考えますが、この点についていかがでございましょうか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 危機に対してはしっかり対応したい、ただし予断を持って臨まない。これは非常に大事な点でございまして、危機には敢然と立ち向かわなければいけませんが、予定の行動で危機に対応できるというふうにも考えておりません。状況の変化をきちんと把握してもちろん機敏な対応をさせていただきますが、予断を持って臨まないという点も明言させていただきたいというふうに思います。
石井(啓)委員 それでは、お三方にそれぞれお伺いしたいと思いますけれども、きょうの最初の意見の陳述の中でも、お三方の意見、それぞれに若干色合いの違いがあったと思います。私は、それは結構なことだと思うんですね。三人がいつも同じ意見だというのは変なことでございますし、むしろ日銀の首脳部の間でしっかり意見を闘わせていただいて、よりよい方向に進めていただくということが大切だと思いますし、私はその点で岩田参考人に大変期待をするところでございますけれども、今後、総裁、副総裁に就任されまして、三首脳の間にどういうふうな意思の疎通を図っていくのか、意見の交換をしていくのか。方針について、取り組みについて、それぞれお三方から最後、お答えをいただきたいと思います。
福井参考人 私ども三人は、政策委員会のメンバーでありますと同時に、執行役員でございます。執行役員といたしましては、日本銀行のマネジメントを過不足なく、効率よく運営していかなければいけない。そういう意味では、執行部としてはやはり強い結束が要る。異なる意見は大歓迎、私は大歓迎するたちでございますけれども、執行部としての統一的な実行力というものにいささかの陰りも、それを及ぼしてはならない、そういう意識の持ち方が必要だと思います。
 一方、政策委員会のメンバーとしては、他の政策委員のメンバーの方々と同じく、いずれも等しく一票を持っているわけでございます。その一票の力を等しく出していただいて、合議体としての政策決定プロセスに万全を期したい。合議体によって意思決定をするということは、それぞれの意見が異なっていて、単純に多数決で決めるというふうな、そういうものではないと私は認識しております。合議体は新しい価値創造の場だというふうに思っておりまして、新しい価値発見を伴うような答えをみんなでつくり出していく、そういう意識で、異なる意見も持ち寄っていただきたいというふうに思っております。
 両方を通じまして、私は、異なる意見の持ち主は大歓迎でございます。
岩田参考人 ただいま石井先生の方から御指摘ありましたように、私自身も、一つの役割は、金融政策について、例えばさまざまな政策手段が考えられますけれども、そのメリットとデメリットがどこにあるかということを、ある意味では国民の皆様方によく理解いただくためにも、できるだけはっきりとした、論点を絞った議論を行いたいというふうに思っております。
 ですけれども、私、同時に執行部の一員でありまして、一たび決定が行われるということになりましたらば、福井総裁を全力をもってサポートして、強力に政策を実行するということで努力いたしたいというふうに思っております。
 以上であります。
武藤参考人 総裁、副総裁、三人ともいろいろ経歴が異なるわけでございますので、政策に対する考え方等、異なる面があるのは当然だというふうに思っております。
 金融政策の運営ということにつきましては、今お二人からお話がありましたとおり、政策決定会合ということで徹底的な議論を闘わせて、そこで結論を出すということに尽きるかと思います。
 執行部としての立場としては、副総裁としては総裁を補佐するという立場でございますので、十分な意見交換をした上で、一致団結して事に当たりたい、こういうように思っております。
石井(啓)委員 以上で終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚ですが、まず、福井参考人にお伺いをいたしますが、現時点で株も大変に下がっている、八千円前後なわけですけれども、日本の金融システム及び金融機関の健全性に問題はないというお考えでしょうか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 日本の金融システムを健全化させるための努力というのは、既に相当の年月を費やして、官民挙げて努力を継続中ということでございますけれども、まだ道半ばと言わざるを得ないというふうに思います。
 不良債権問題の処理が完成していない。あるいは、将来を見渡しますと、預金・貸出業務を中心とする銀行ビジネスのウエートが場合によってはもっと下がっていかなきゃいけないかもしれない、いわゆるオーバーバンキングという問題。それから、おっしゃっておりますとおり、株価の変動リスクが銀行経営に強い影響を及ぼし過ぎている、これは持ち合い解消の問題。こういった動きがまだ途上である。最終的には、銀行がしっかり新しいリスクをとれる能力を身につけるというところまで前進しなければいけない。
 したがいまして、残された課題の方が大きいわけでございますけれども、これから先は、単に過去に起こった問題の処理というだけではなくて、やはり新しいビジネスに銀行がチャレンジしていく、その努力にも早く手を染めてもらわなければいけない。そういう意味では、重大な局面転換の時期だ、特に民間からああいう多額の増資を募ったということが非常に大きな折り返し点になるべきだというふうに私は思っております。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
中塚委員 中長期的な不良債権問題というのはまさにそのとおりだと思うんですが、いわゆる三月危機的な、今、現時点における金融機関の健全性という意味についてはどうですか。
福井参考人 現在の銀行の自己資本の状況等から見まして、あるいは金融市場の金融機関に対する評価の動向等から見ておりまして、三月末を控えて、金融危機というふうなものを非常に強く懸念されるという状況ではないと思います。
 政策当局者としては、そうであっても、物すごく綿密にそこをウオッチしなければいけない。私、まだ着任しておりませんが、着任しました後は、それは残り何日といえども、そこは綿密に目を凝らして見ていくということではございますけれども、やはり国民の皆様がそこのところに強い懸念を持たれる必要がないようにしなければいけないというふうに思っています。
中塚委員 今御答弁の中でお触れになりました民間金融機関の増資計画についてでありますが、例えば三井住友のように、海外からああいう形で資金を引っ張ってくるという、今回の民間の増資計画についてはどういうふうな御所見をお持ちですか。
福井参考人 各銀行とも、増資の方式、中身、あるいは対象とする投資家の範囲、それぞれ違っているというふうに思います。それから、資金を調達いたします場合の利回りと申しますか条件も非常に違っている。しかし、これらはすべて民間の世界で行われていることですので、余り、どのやり方がいい、どのやり方が悪いということをはたから言うよりも、これはマーケットの評価に素直にゆだねた方がいいのであろう。
 しかし、いずれの増資の場合も、一番重要なことは、お金を集めた金融機関がこれからはっきり、お金を提供してくれた方に対して収益性モデルを示して、きちんと実績を上げてこたえていくという点が重要だと思います。今現在のお金の集め方が、あるいは多少見方によって批判があるというふうなお金の上げ方であっても、それこそ、これから先の金融機関の収益の上げ方によっては、きちんとそれはこたえていける可能性があるわけですので、そこの点が非常に重要じゃないかというふうに思っております。
中塚委員 かつて、新聞、雑誌のインタビューにお答えになって、公的資金の再投入には新法を制定した方がいいというふうにお答えになったことがあります。他方、竹中金融担当大臣は、金融再生プログラムを発表し、新法は考えていないというふうに御答弁をなさっているわけですが、福井参考人は、新法を制定するとすれば、どういうふうな新法が必要であるというふうにお考えですか。
福井参考人 民間におりまして、いろいろ金融の問題をそういう目で拝見させていただいた立場から申し上げていたわけでございますが、預金保険法という、つまり危機発生時の資本投入ということだけで十分かどうか。つまり、ここから先は、危機を待って措置をするというよりは、先ほど申し上げましたとおり、より早く企業が市場に出て収益を上げるという局面に移ってもらいたいし、あるいは、移るために背後からプッシュすべきではないか、こういうふうに思っています。
 したがいまして、いわゆる金融危機が起こる前の段階で、先ほども申し上げましたけれども、金融機関が、体力が衰えているのであればどの程度衰えているかということを自己診断し、金融当局もその金融機関を診断し、いわゆるインフォームド・コンセントが行われて、必要なキャピタルの調達が行われて、今度はリスクテークの世界に早く移っていく。そういう意味での金融再生法ですね、産業再生法でなくて。早く金融機関をリスクテーク能力の場に出すということを唯一最大の目的とした法律があった方がいいのではないか。
 民間人としてはそう考えてまいりました。こういったことは、金融当局とかあるいは日銀の金融政策委員会のメンバーの方々とお話をしたことはございませんので、今のところは私見でございますが、これからメンバーとよく意見を交わさせていただきたいというふうに思っています。
中塚委員 次に、先ほどから金融緩和ということが盛んに言われておりますけれども、今までもしてきたし、これからもしていくということなんだろうと思います。他方、日本銀行のバランスシートなんですが、すさまじい勢いで膨張いたしておりますけれども、福井参考人はこの件についてはいかがお考えですか。
福井参考人 金利ターゲットから金融政策のターゲットが量的ターゲットに変わり、昔、一九七九年に、アメリカのボルカー議長がアメリカで量的ターゲットに踏み切った場合の量的ターゲットとちょっと意味が違う。七九年のときの量的ターゲットは、金利でなくて量にターゲットを絞りましたけれども、量そのものを大きく操作するのでなくて、量は固定して、そのかわり金利はマーケットの中で自由に変動させて、均衡金利をマーケットに探らせるというやり方でございました。しかし、今の量的ターゲットというやり方は、金利がほぼゼロということで動かない、金利はゼロバウンドで動かないという前提での量的ターゲットですから、情勢に合わせて量をふやす、つまり量を動かすという方の政策でございます。
 当然、緩和は進めるという方向でございますので、今までのところは、時の経過とともに量はかなりふえている、したがって、日本銀行のバランスシートが膨れてきている。これは、政策の結果としてやむを得ないということでございますけれども、何回も申し上げておりますが、日本銀行は、クレジットリスクそれからマーケットリスクを十分考えながらやらなければいけない。日本銀行の自己資本はそんなに厚いものではないわけでありまして、日本銀行がこうむるリスクの計算ということを、いつも綿密にこれまでもやってきておりますし、これからもやっていかなければいけないということだと思っております。
中塚委員 冒頭の所信の中で、量的緩和だけではデフレ克服には不十分だというふうなお考えだし、また、日本のデフレの問題点は貨幣的現象ということだけではないというふうにも言っておられましたが、では、その貨幣的現象ではない部分の問題点というのはどういうものですか。
福井参考人 一言で申し上げますと、まず、企業の企業モデル、ビジネスモデル、これがやはり引き続き高度成長時代のモデルから完全には脱却し切れていないのではないか。つまり、大量生産、大量販売を前提にした企業の仕組み、相当変わってきていると思いますけれども、まだ十分変わっていない。
 これからはやはり、付加価値創出という一つの点で世界じゅうの企業が激しい競争をしていくということでございますので、価値創出に最もふさわしいビジネスモデルに早く日本の企業も到達しなければいけない。そのことは企業は全部認識済みのことであり、現に相当な努力をしている。それを後押しするような規制の緩和、撤廃も進んできているということでありますので、これをもう少し政府の政策、日本銀行の政策が後押しできるようなことができればすばらしいことではないかというふうに思っております。
中塚委員 ビジネスモデルというのはまさにそのとおりだと思うんですが、規制の緩和もやらなきゃいかぬし、そういう意味では、今の自民党政権のやり方というのは遅いということだと思いますけれども。
 あと、それに加えて、そういうビジネスモデルを選別していく要素に、やはり金利というものがあるんだろうと思うんですね。要は、金利によって企業が選別されていくということはあるでしょうし、それが今ゼロに張りついてしまっているという中で、ビジネスモデルを変えていく、その選別の物差し、尺度になるようなものは何かお考えですか。
福井参考人 おっしゃるとおり、最もその点が難しい点でございます。
 よく中前さんが、やはり金利はプラスであった方がいい、その方が、いわゆる金利機能、経済の新陳代謝を促すという意味の、つまり、金融の面から資源の再配分機能を強く発揮していく、ついては経済の構造改革、企業のビジネスモデルの変換を強く進めていく、おっしゃるとおりだと思います。
 しかし、デフレの状況が非常に厳しくなって、金利が今ほぼゼロになっているという前提から考えますと、金利による資源再配分機能というのはかなり封じ込められている。それは日本銀行としてはハンディキャップを背負っているというふうに、率直に申し上げまして認識しております。
 したがいまして、それ以外のところでいかに知恵を出すかという大変難しい問題に直面していることは事実でございますけれども、しかし、資源再配分機能を促すというのは、金利による機能は少し衰えていますけれども、財政政策は、本来、国民から強権的に税を召し上げて、人間の判断で資源の再配分をしていく。支出をふやすことによって景気を刺激するという面もありますけれども、資源の配分の仕方を変えて経済の活力をつくっていくという意味でも財政政策は重要な機能を持っているわけですので、そうしたところについてもっと力を発揮していただきたいなという気持ちは持っています。
 それから、規制緩和、撤廃というのは、さらに進めば、新しいことをやりたい人が自由に動ける、動けば必ずそこにはお金がついていくという形で、金融も結果的に資源再配分機能を果たすことができる。そういう新しいところにお金がついていこうとすれば、その部分は一体どういう道具立てでお金がつこうとしているのか、そこを見つけて、私どもは、もしできれば、中央銀行の調節の有力な手段としても取り上げていきたい、こういうふうな仕組みを一応頭に置いているのでございます。
中塚委員 同様に、ビジネスモデルを選別するというときに、やはりこれからの我が国は国際分業ということも考えていかなきゃいけないわけですけれども、そういう意味では、金利と同様に為替の問題もあると思うんですね。
 まだ総裁には御就任になってはいないわけですけれども、政府では円安待望論というのが大変に多いわけなんですけれども、この為替というのもやはりビジネスモデルを変えていく上での選別の物差しになっていかなきゃいけないというふうに思いますが、その為替のレート、水準について、どういう御意見をお持ちですか。
福井参考人 為替相場というのは、広い意味で一つの資産価格でございます。
 日本銀行の金融政策が引き締めぎみになったり緩和ぎみになったりいたしましたときには、さまざまなルートを通じて金融引き締めないし緩和の効果を及ぼしていくわけでありますけれども、資産価格の変動を通ずるルートというのが金融政策波及経路の一つの有力なルートでございます。為替相場の変換、つまり、金融が緩和方向に動けば日本の為替相場は安くなる、それを通じて実体経済にも影響が及んでいく、これは金融政策の波及経路の一つでございます。
 したがいまして、日本銀行が緩和政策を行う、それが為替相場という資産価格を円安の方向に振れさせる、それが経済に対して多かれ少なかれ刺激的な効果を及ぼしていくということは、日本銀行の緩和政策と平仄の合った為替相場の動きであるし、実現した為替相場が今の日本経済の実態、いわゆるファンダメンタルズというところに沿っているとすれば、それはそれで日本銀行としては受け入れていく為替相場だ、そういうふうに理解いたしております。
中塚委員 終わります。ありがとうございました。
渡辺(喜)委員長代理 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、三人の参考人の皆さんには大変ありがとうございます。
 最初に、福井参考人にお伺いしたいと思います。
 日本経済は、デフレスパイラルに落ち込んでいく深刻な不況の中にありますが、これまで、金融緩和とそれから構造改革をセットにした供給面での対策だけでやってきていますが、速水総裁は、資金はじゃぶじゃぶ回っているんだが、資金需要がないことが問題だということを言っておられました。
 不況の長期化で個人消費が冷え込んでいるときに、幾ら日銀が銀行に日銀券を供給しても、借り手の側に需要が生まれてこないことにはだぶつくのは当たり前で、そういう点では景気対策にならないわけですから、景気の立て直しには、個人消費の冷え込みを打開する、国民の懐を温めるという対策、つまり需要面での対策を国が政策として進めていく必要があるというふうに考えるわけですが、福井さんは、国に対してはどのような対策を需要面で求めておられるのか、その辺をまず伺いたいと思うんです。
福井参考人 大変大きな御指摘を受けたわけでございますが、まず、需給ギャップが非常に大きい経済である、したがって、供給面だけでなくて需要の面についても政策が必要だということは正しい御指摘で、私もそういうふうに思っています。
 ただし、その需要追加の仕方が、かつての高度成長期時代に、景気がアップし、あるいはダウンしたときに、ダウンしたときに追加的に例えば財政資金を余計投入するというふうな単純なメカニズムだけでは、今回は十分目的を達成することはできない、そこは少し難しい、複雑な課題を背負っているというふうに思っています。
 なぜかと申しますと、もう財政資金そのものが、量的に追加する、それはかなり限界があるという状況の中で、しかし、資源の割り振りを変えればやはり追加的な刺激効果というのは結構出る、そういう残りの有力な武器をまだ我々は持っているという点が一つあります。
 それから、民間の企業の段階では、確かに、以前と同じものを、あるいは同じサービスを、少し目先を変えただけで織り出そうかとしても、それはもう人々は、経済が成熟化していて、余り食欲を起こさない。つまり、民間企業の段階では、景気が刺激されて自分の持っているものに対して需要が出てくるのを待つという段階よりは、もっと知恵を絞って新しいものをつくる、あるいは知識を創造するということで、このごろは需要創出という言葉が合い言葉になっております。民間企業は、今、景気がよくなるのを待つというよりは、いかにして新しく需要をつくり出すような供給能力を身につけるか。つまり、企業にとっては、供給政策と需要政策とが表裏一体になってきている。その一番大事なものは、規制緩和で新しいことをやる人たちのリスクへの挑戦を妨げないということなんですけれども、そのルートが一つあるということだと思います。
 それから、民間金融機関が、そういう新しいビジネスにチャレンジする人たちのために、そこにきちんとお金をお届けすることができるかどうか。これは二つのルートがあります。民間金融機関自身が貸出業務で、ある程度それは力の及ぶところですし、貸し出しっ放しではリスクを負い過ぎるというのであれば、その貸し出したお金を流動化して資本市場の方につないでいくというやり方もありますし、初めから資本市場がそこにお金をつけていくというやり方もある。そのルートの整備が、これは日本銀行の責任範囲に相当入ってまいりますが、その努力をしていかなきゃいけない。
 したがって、需要追加といいましても、従来のように単純に財政支出をふやせばいいということだけではなくて、かなり幅広い努力が必要だ。したがいまして、経済財政諮問委員会での議論がそういう方向にいつも焦点が合っている、あるいは、日銀と政府との意見交換がそういう方向で焦点が合っている。
 最後は、個人部門は、どちらかといいますと、物価が下がる局面におきましては、まず企業が苦しむ。しかし、賃金レベルの修正がタイムラグを持っている部分は、個人部門は相対的に、助かると言うと言葉が変なんですけれども、有利なポジションにある。したがって、消費性向を上げて消費をしてもらわなきゃいけないということですが、その場合には、将来不安がないということが非常に重要な条件で、したがいまして、年金あるいは医療といった社会保障制度が、制度崩壊リスクがない形できちんと整備されているということが一つの条件になるだろう、そういうふうに思っております。
吉井委員 追加的に従来型公共投資のやり方ではこれはだめだというふうにもちろん思っているんですが、ただ、同時に、企業への金融というのは通常直接的に行くわけですが、しかし、その企業の側が、個人消費が伸びるなど、企業活動がやはり活発になる方向への、その需要面での対策を進めないことにはなかなか金は回転しませんから、私は、その点で御意見があれば、それも伺っておきたいと思うんです。
 あわせて、速水さん、さっき申しました、資金は銀行にじゃぶじゃぶしているんだが、要するに資金需要がないという、そこには、現実には中小企業に金が流れていかなくて苦しんでいるという問題が一方であるわけですね。これは、貸し渋りとかいわゆる貸しはがしとかいう現象がありました。ですから、日銀の金融緩和と、現場では金融引き締めとでもいうべき、貸し渋り、貸しはがしといった、日銀のやっていることと現場の矛盾がありますね。この矛盾をどういう金融政策をとって解決していこうというふうにお考えになっておられるか、この点を次に伺いたいと思うんです。
福井参考人 金融機関の貸し出し態度がますます渋い方向に行っている、貸しはがし、貸し渋りと言われておりますような、リスクをとるのを極端に避けるという動きを示している状況をいかに転換していくか。物すごく難しい課題でございます。
 不良債権問題の処理を急がなければならない。そのためには金融当局が金融機関に示す不良債権の判定基準を厳しくしていかなきゃいけない。新しく不良債権がふえてくるということに対しても銀行は注意深くなければならない。なぜならば、それは、金融危機という構図との背中合わせで不良債権の問題処理を急ごうとするから。それが、背後にある法律が預金保険法という法律でこれを行われている。
 これは、正しく問題を処理しようとしながら、一つの副作用を伴っている。それは、銀行の経営の自主性を、知らないうちにそいできているという面がやはりあると思います。つまり、経営判断で新しいリスクをとっていく余地というものをこの枠組みがそいできているリスクがあるのかなというふうに私は思っております。
 したがいまして、これはこれで非常に重要な金融システム保全のための措置だと思いますが、もう一つ別の法律が要るんではないかというふうに私は個人として考え続けてきているという意味は、不良債権の問題処理、たとえ公的資金を投入するとしても、もう危機対応ということを離れて、新しい局面をつくるんだ。金融機関の経営の自主性を明確に回復させるということを今度はメルクマールに置きながら、そのかわり、その一歩手前のところではインフォームド・コンセントあり、厳しい手術あり、しかし、手術を経た後は、新しい経営体、ガバナンスにゆだねて、むしろ積極的にリスクテークに向かわせる。
 今度の民間から調達した資金については、資金の性格上、必ず金融機関の背中をつつくと思います。つまり、今回お金を投じた人が、金融機関がリスクもとらないで収益を上げないということは我慢できないことでございます。もし、今後新しい法律ができて、政府が資金投入をしたとしても、これは政府が貸し付けた金だという感覚ではなくて、政府も資本投下したんだ、稼げという感じのお金でなければそういう局面転換はできないわけで、そういう発想の転換が必要じゃないかというふうに私は思っているわけであります。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
吉井委員 次に、政策決定会合で、財務省の方は国債の引き受けを求めていくなどしておりますし、既に、これまでの、発売後一年以上を経過した国債を銀行から買い上げるのを、二カ月過ぎたら引き受けを可能にするなどやってきておりますが、福井さんはこの引受額の限界をどのあたりに置いて考えておられるのか。つまり、ずぶずぶの引き受けを認めるというわけにはもちろんいかないと思うんですが、その辺のお考えはどうなのかということ。あわせて、財務省と金融庁の方から銀行保有株の買い上げ枠の大幅拡大の要請も、これは先ほどの与党の方からの質問とも関係しますが、あるいはETFの購入や、そういう株価対策を迫ってくるという考え方が見られておりますが、そういう国債引き受けなんかの引受額はどの点に限界を置いておくか。
 あるいは、中央銀行としての健全性を損なわないようにすることと、それから、国債の大量引き受けとなりますと、これは、日銀が銀行からどんどん買い上げるという形をとるにしても、実質的には日銀の国債引き受けそのものになりますから、財政構造をやはりおかしくするという問題があると思うんですね。ですから、その辺の歯どめをどのようにしていくのか。こういった点についての福井さんのお考えを伺いたいと思います。
福井参考人 日本銀行による国債の引き受けとおっしゃいましたけれども、一応日本銀行による国債の買い入れという形で日本銀行の国債保有残高が今非常に大きくなってきているということでございます。
 これに対して機械的な歯どめを設けるということはなかなか難しいというふうに思います。結局のところ、日本銀行がみずからの財務の健全性をいかに保っていくかという自分自身の努力、そして、それが国民の皆さんに説得力をいかに持つかということに最終的には帰すると思いますけれども、とりあえずのところ、銀行券の発行残高の範囲内というふうな形で、目に見える限度を置いている。現実に、これは、日本銀行が金融政策実行上の規律をこれによって守るという意思表示、ひいては、日本銀行が無限に国債の引受機関にいつの間にか化して、政府の財政政策ないしは国債管理政策が規律を失うということに対する歯どめにもなっているかもしれないというふうなものでございます。
 したがいまして、この限度というのはそういう重みを持っているものだということをやはり十分認識していなければいけないと思うんでございますが、しかし、経済の状況いかんによってこれが絶対的なバインディングになるかどうか。そうならないようにしていくために最大限の努力をするということですし、なるべく歯どめというものは歯どめとして保持したい、その気持ちは非常に強うございます。
吉井委員 次に、岩田さんに伺いたいんですが、物価目標、ゼロから二%ということで、さきの冒頭陳述でもお話がありましたが、日本経済研究センターの「金融政策論戦の焦点」などで書いておられたりしている問題ですね。それで、この目標を要するに幾らとお考えなのか、これが一つ、それから、どういう方法でそれを実現していこうとするのか、インフレにならない歯どめをどうするのか、この三点についてのお考えを伺っておきたいと思います。
岩田参考人 それでは、お答えいたします。
 まず、物価の安定ということについて、数値で示したらどのくらいの大きさが望ましいのかということであります。
 私自身は、物価の安定というのは、一つの考え方としては、物価水準が全く変わらない、つまりゼロインフレという、これは戦前のスウェーデンの中央銀行が採用した方策であります。ゼロインフレというのを目標に掲げる、これを政策のフレームワークとして使うというのがスウェーデンの例でありまして、私は、それも今の日本でも十分通用する考え方だというふうに思っております。
 ただ、問題は、現在我々が使っております消費者物価指数というのが、例えば安売りですとか特売りですとか特売品ですとか、あるいはデパートで特別の日に安売りをしている、あるいは質の向上が特に電気製品等はかなり急速に進んでいるわけでありまして、こういうものを十分反映しているかというと、どうもそれは必ずしも十分ではない。ですから、現在、消費者物価は前年比でマイナス〇・八%ぐらいですけれども、実勢は、実態はもしかするとその倍ぐらいあるかもしれないということも考えられるわけであります。そういうことを考えますと、ゼロインフレといいましても、それは実態上はややマイナス、デフレになってしまうという意味合いがあろうかというふうに思います。
 そういうことを考えますと、私は、今の日本で望ましい物価水準というのは一%程度に置くのがいい。だけれども、現実の目標、一%をピンポイントで当てるのは非常に難しいですから、それにプラスマイナス一を足してやるということをやりますと、大体ゼロから二%という範囲が一つの案としては考えられるんじゃないかと思います。
 ヨーロッパの中央銀行は、実は上限の方の二%しか決めておりませんで、インフレにならないようにするということで、上限の二%だけで、下の方が書いてありません。今ヨーロッパの中央銀行が議論いたしておりますことは、その下限も決めた方がいいんじゃないか、例えばゼロというのを入れたらどうかというようなことを議論しているかのように私伺っております。
 ということで、私も、一つの案としては、そうした、ゼロから二%ぐらいのものを目標に置いておくということで、できるだけ早くプラスの、ゼロ以上になるということを目指す。ただし、それが本当のインフレになってしまっては困るから、だからまさにその上限の値の二%もはっきり事前にマーケットに予告しておくということが私は大事だというふうに思っております。そういうことで上限の値も下限の値も示す。現在の日本銀行の政策、ある意味で、物価上昇率がゼロ以上になるまで量的緩和と言っているのは下限を言っているんですが、上限を言っておりませんので、私は、インフレをまさに心配する向きもございますので、はっきりそれは事前に言っておくべきだというふうに思います。
 それから、もう一つの御質問は政策手段ということでありますが、これは私の冒頭の所信で申しましたように、基本的には、今金利というのは、短期金利はゼロでありますが、長期金利は〇・七%ぐらいなんですが、この長期金利、名目では、恐らくこれ以上下げていくということはほとんど難しいわけであります。ですけれども、実質金利というのは動かす余地があるというふうに私は思っております。
 実質金利はどうやって動かすのか。これは、人々の、物価上昇率が将来幾らになるかという期待インフレ率あるいは期待デフレ率を変えるということであります。期待を変える、期待に働きかける政策を金融政策として使う、そういうことによって実質利子率を下げることが可能だ。
 それは、私申し上げましたように、物価安定目標を設定した上で長期金利は一定に置くという政策を仮に発想しますと、マーケットの人の中には、やはりこれは二年後はマイナス一%のデフレじゃなくてゼロ%のデフレになってしまうかもしれない、そうすると、実は長期国債の価格がその分下落しますので、もうこれで売ってしまおうかという人が出てきます。それを直ちに日本銀行が買い上げるということをしますと、そのときにベースマネーが出てくるということでありまして、マネーが出てくる。マーケットの方は、あ、マネーが出てきた、これは日本銀行は本気だというふうに思うようになると、ますます多くの方がゼロインフレにどんどん近づいていくんじゃないかなということを考えるようになる。そうしますと、結果的には……
小坂委員長 手短にお願いいたします。
岩田参考人 実質金利が下がるということになって、これがデフレ脱却の一つの手段になるというふうに考えております。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。よろしくお願いいたします。
 まず、福井参考人にお伺いをしたいわけですけれども、福井参考人御自身が新日銀法の制定には非常に御尽力された。当時、私ども社民党も与党でございましたが、私の大先輩でもあります伊藤茂当時の衆議院議員がこれに積極的にかかわってきました。我々といたしましても、この新日銀法というのは我々なりに非常にコミットしたんだという自負を持っておるわけです。
 ただ、もう三年前、二〇〇〇年の八月のゼロ金利政策解除以降、これは私の印象ですけれども、日銀側が、政府の財政運営に引っ張られる形で、言いなりになっているとまでは言いませんけれども、どうも、そうした意味での独立性、三条の独立性というものについてクエスチョンマークがつく局面も私はあったのではないかなというふうに印象を受けております。
 その意味で、改めて、福井参考人が総裁になられましたら、まさに新日銀法の理念に基づく独立性を築き直していただきたい、そう思っておるわけでございますけれども、その点についてのまずは御決意をお伺いできればと思います。
福井参考人 新日銀法制定の途上で、当時の伊藤先生から大変御指導を受けました。今でもその点につきましては深く感謝をいたしております。
 新しくできました日銀法というのは、世界の先進国の中央銀行法に比べて本当に遜色のないものだというふうに思っています。法律によって十分今の日本銀行は独立性を保障されている、その点はみずから確信を持って、自分の信ずるところをやはり政策という形できちんと国民の前にお示ししていくということが本来の仕事だ。独立性を守るために消極的になるというのではなくて、やはり新しい政策をできる限り知恵を出して形成しながら、そこに信頼を集めて、独立性の本当のよさというものをこれから上積みしていくというのが私たちの使命だというふうに思っております。その点について、強い決意を持ってスタートしたいということでございます。
植田委員 三条で書かれているその独立性を、日銀がみずからしっかりと気張ってほしいわけですけれども、一方で、当然ながら、政府との意見調整、意思疎通というものは、これは四条で述べられているとおりでございますから、これはこれで尊重しなければならないわけです。
 一点そこで聞きたいのは、どうも、報道なんか見ておりますと、どちらかというと政府主導で、日銀と政府との定期協議の場を新たに設けようじゃないかというような話が出てきております。どうもこれも、その中身次第によっては私は日銀の独立性を脅かしかねないのではないかという心配もしているわけですけれども、実際、以前、速水現総裁が、そうした動きがあったときに、今さら定期協議を始めることはないだろうというふうな姿勢を示したというようなことも伺っております。仮にこうした申し入れが政府からあった場合、福井次期総裁はどう御返事されますか。
福井参考人 やり方と中身次第だとおっしゃいましたとおりでございます。
 海外の例を見ましても、中央銀行の総裁と、総理あるいは財務大臣あるいは経済担当大臣とのカンバセーションは実は非常に綿密に行われているというのが実情でございます。そのカンバセーションを通じて、中央銀行として、やるべきことをきちんと政府の理解を求める、そういう中央銀行の主体的な立場をいかに強く出していけるかというところがポイントだというふうに思います。
 中央銀行に対してだけ注文がつくという形にならないように、これは、我々の勉強の仕方、そして努力の仕方、そして決意次第というふうに思っておりまして、何も政府と対決するということが意味があるというふうには思っておりませんが、主体的な物の考え方と判断にまず自信を持つというところからスタートしたいというふうに思っております。
植田委員 そこは日銀の主体性を持って対応するというお話でございます。
 時間がありませんから、次に、これも入り口の話ですけれども、速水現総裁のいわば金融政策の基本的な考え方、そしてその政策路線を、福井次期総裁は当然ながら継承されるというふうに理解していいでしょうか。
福井参考人 金利ターゲットに容易に戻れない、量的ターゲットを中心に金融政策の体系を築いていくという点では路線を引き継ぐということになると思いますけれども、先ほどから御説明いたしておりますとおり、日本銀行は量を供給しても、それが末端まで効果が及ばないという点については、多面的展開をこれから施して、もっと血の通う金融政策にしたい。そういう意味では、一見路線の踏襲に見えて、その上に進化を図っていきたい。
 日本は、経済も市場もこれから大いなる進化を遂げるだろうというふうに思います。日本銀行の金融政策は、その中にきちんとフィットさせていかなきゃいけない。一見路線を踏襲したようでも、この先の進化ということをお約束したいということでございます。
植田委員 その進化というところで、具体的な政策手法の話に及ぶわけですけれども、ちょっと私もしつこう聞いていたことがございまして、速水総裁また竹中大臣に、いわゆるインフレターゲティングをめぐって、それぞれの御見解を伺ってきたわけなんです。
 これは、速水総裁が、私が聞いた最後は二月の二十四日の予算委員会で伺ったんですけれども、政府の閣議決定した「改革と展望」の中で「政府・日本銀行が一体となって、デフレ克服を目指し、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。」というこの文言の理解をめぐって、実はこの財金委員会で竹中大臣に聞きました。すると、この「できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。」というところには、竹中大臣がおっしゃっているようなことも含めたいわゆるインフレターゲティングというものも排除されていないんだというふうに竹中大臣はおっしゃった。
 そこで、私は、今度は速水現総裁に予算委員会で聞いたんです。すると、速水総裁はこの「改革と展望」に当然賛成されたわけですけれども、どういう趣旨で賛成されたんだと伺ったときに、「できる限り早期のプラスの物価上昇率実現」に取り組むというこの文言は、速水総裁は、現在我が国で論議されているインフレターゲット政策を意味するものとは考えておりませんというふうにおっしゃいました。
 この点については、福井次期総裁は、速水現総裁と同様の御見解をお持ちか、そうでないか、その点、お聞かせいただけますか。
福井参考人 幾つかの点だけ申し上げますと、政府がデフレ脱却の時期的目標をそういう表現で言っておられる、現在までの日本銀行が国民の皆様にお約束している、インフレ率が安定的にプラスになるまで今の超金融緩和政策を続けると言っています、この日本銀行の約束と政府の目的とは、それは平仄が合っているんじゃないかというふうに私は思っています。
 次に、政府の方の表現の中に、竹中大臣が、特に日本銀行の金融政策について具体的にどういうやり方でというところまでインプリケーションを込めておられるかどうかということは、現在までのところ、私は全く承知していません。
 それから、これからの日本銀行ということになって考えますと、政府の目標は尊重をしたい、ただし、その目標を一緒に達成していく過程でどういう方法を日本銀行がとるかということについては日本銀行の判断にお任せいただきたい、こういうふうな組み立て方になると思います。
植田委員 うまいことをおっしゃいますが、では、もう一点福井総裁に伺いますが、私は、単純にここの文言の理解について伺っているわけでございまして、もちろん、そこで日銀の独立性を踏まえた今御答弁だっただろうというふうに理解するわけです。
 では、この「改革と展望」の、今私が何遍か申し上げた文言、そうした文言があるけれども、最終的には金融政策を日銀の責任においてやらせていただきますよということなんですが、この読み方として、例えば二%の物価上昇率の上限を、目標を設定するとか目標の達成の期限を設定する、こうした政策も、ここで言うところの「できる限り早期のプラスの物価上昇率実現」に取り組むという文言の中に包摂されているというふうに次期総裁はお考えでしょうか、そうでないでしょうか。
福井参考人 「改革と展望」の文章は、何回も私、民間人として読ませていただきましたけれども、そこまで深い意味が入っているというふうには私自身は読んでおりません。今後とも、そういう意味合いが含まれている、つまり、日本銀行の具体的な政策のやり方までその中に縛りとして入っているという読み方はしないつもりでございます。
植田委員 とすれば、要は、速水総裁は想定されていなかったけれども、速水総裁とは福井次期総裁は違う読み方をするんだというふうに理解してよろしいでしょうか。
福井参考人 まことに申しわけありませんが、この文言について速水総裁がどういう読み方をしておられるかということを伺っておりませんし、この点については、申しわけないんですが、国会の議事録も拝読していないんでございます。厳密に同じであるかどうか、ちょっとこの場では確認できません。
植田委員 だから議事録を紹介したんですよ。速水参考人が、二十四日の予算委員会で私が今の点を質問したときに、今の御質問の「改革と展望」の文言は「政府・日本銀行が一体となって、」云々、そういうふうに書いております、これが現在我が国で議論されているいわゆるインフレターゲット政策を意味するものとは考えておりませんというふうに答弁されているので、今私が紹介した以上、以下ではないんですよ。
 だから、速水総裁はそういうふうにおっしゃっているんだけれども、どちらかというと、福井参考人は、政策手法の考え方はともかくとしても、竹中大臣御同様に、いわゆるインフレターゲット政策もこの文言は排除していると考えるのか、していないと考えるのかというその点だけ私は聞いたわけです。今紹介したとおりですから、それ以上、以下でもありませんので、今の話を聞いていただいて、もう一度お願いできますか。
福井参考人 インフレターゲットを日本銀行が一定の方式で具体的に採用するようにというインプリケーションまでその文章の中で入っているというふうには私も読み取れないと思います。
植田委員 ということは、二%の上限、物価上昇の目標であるとかその目標達成の期限を設けるというのは、お隣にお座りの岩田次期副総裁が先ほどおっしゃられたことですけれども、日銀次期総裁としてはそこまでのところは「改革と展望」には書き込まれているというふうには理解はされていない、そういう理解だろうと思いますけれども、岩田参考人はそれで御同意でしょうか。
岩田参考人 ただいま福井総裁のおっしゃられたとおりだというふうに思っております。
 実は、今の日本銀行が行っております量的緩和政策というのも、ゼロ以上ということは明示しているわけでありますが、そのほかのことについては触れていないので、厳格な意味でのターゲティングということをやっているわけではないというふうに理解しております。
植田委員 岩田次期副総裁が副総裁になられた暁には先ほど申し述べられたことを積極的に発言なさっていくんだろうとは思いますが、現段階ではそういうことだということですね。
 最後、一点だけお伺いして終わりたいと思うんですけれども、先ほども自民党の山本先生の方から資料がございました。この間、日本の経済状況また国民生活がどれだけ悪化したかということが一目でわかる表でございまして、ただ、申しわけないんですが、速水総裁の実績というふうに、速水総裁の通知簿にするには異論があるところでございまして、むしろ政府・与党の通知簿と言うべきなんじゃないのかなと私は思ったわけでございます。
 ただ、いろいろな形で、福井次期総裁、量的緩和の限界ということが言われます。そういう意味で、日銀に対して、もっと工夫ができないか、さらなる量的緩和、はたまた言えば、先ほどまで話題にしておりましたインフレターゲット等々いろいろな声はあるだろうと思います。
 ただ、私個人は、先ほどからの議論もありますので、マネーサプライの伸び率が非常に低いというようなこと、その原因については繰り返しませんけれども、日銀の固有の政策としての金融政策、それが今量的緩和というところに踏み出してきた、その政策がそもそも限界なのか、それとも、日銀のこうした金融政策を実効あらしめるための、それと連動した政府の政策に問題はないのかと立てたときに、私は後者だろうと思うわけです。
 そういう意味で、日銀の政策によって自己完結するわけじゃないわけなので、これから、独立した日銀が政府の財政政策に対しての積極的物言いをしてもらいたいわけですが、その点についての、量的緩和が那辺に効果をもたらさないのか、もたらしてこなかったのかということの基本的な要因についてのお考えを最後に福井次期総裁にお伺いして、終わりたいと思います。
小坂委員長 手短にお願いをいたします。
 福井参考人。
福井参考人 金利がほぼゼロで、金利が動かないということでは、確かに中央銀行の政策にある種の限界があることは事実でございますが、一方、量的ターゲットを設けながら、それを通じて政策効果をできる限り浸透させていくというのはやはり我々の責務でございます。そこのところに対してこれから愚直なまで努力を施していきたい、こういうことでございます。
 それから、政府の政策が十分か不十分か。もちろん政府の政策も完璧というふうになかなかいかないんだろうとは思いますけれども、やはり資源の再配分機能というものを中心に、もっといい政策をしていただければ、中央銀行の政策効果もそれだけ上がりやすいということは言えると思います。
 私は、着任しました後は中央銀行の責任者でございます。中央銀行がやるべきことを棚に上げて政府に注文をつけるという気持ちはありません。そういう注文のつけ方はいたしませんが、中央銀行の我々が行います政策効果がよりよく発揮できるために、政府の政策と相乗効果を出せるようにするためには政府の政策はこういうふうにあってくれればより望ましいというふうな角度からは強く御意見を申し上げたいというふうに思っています。
植田委員 終わります。
小坂委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 多くの方々がさまざまなことをお聞きになりました。福井次期総裁のお考え、意気込み、伝わってきた部分とまだあいまいな部分がございます。
 日銀は、物価の安定を金融政策の焦点とし、適正成長率達成という目的には特に明確な焦点を当てておりません。アングロサクソン系諸国の多くでは、物価の安定と適正な経済成長率の達成を中央銀行の金融政策の目標として挙げております。しかしながら、日本での法律的定義はそうであるにせよ、経済成長率が適正成長率から大きく外れた場合は物価と資産価格のインフレやバブル、デフレが起こるわけで、つまり、日銀は、物価安定を日銀法第二条で理念として明示しておりますが、実際には経済成長率を適正レベルに維持するよう努力しなければならないと考える。
 福井次期総裁のお答えをずっと聞いておりまして、十分そのことを意識していらっしゃるというふうに思いましたけれども、副総裁を長く務められていたときも、この辺のことはどのような思いで受けとめていらっしゃったんでしょうか。
福井参考人 中央銀行が物価の番人として物価の安定ということに最重点を置いていろいろな政策を考えていく、これは一貫性のあることでございますけれども、なぜそうするかということになりますと、結局のところ、この日本という国の国民経済が持っている潜在成長能力をフルに発揮する、そのためにはやはり基軸になるものは物価の安定だ、そういう意味でございまして、潜在成長能力をフルに発揮させるという点について中央銀行は無関心ではおられないということでございます。
 プラス、最近の状況を考えますと、その潜在成長能力そのものが陰りが見えてきている、あるいは少し落ち込んできている。潜在成長能力をこれから強くしていくという部分についても目を通していく必要がある、そういうふうに考えております。
山谷委員 福井参考人は金融のプロフェッショナルでいらっしゃいまして、また、資産デフレに強い関心をお持ちでいらっしゃる。
 一九八七年以降、日銀は、マクロ経済を適正成長率レベルに維持することに失敗しまして、最初は極端な資産バブル、その後は長期デフレ状態を発生させました。まあ日銀だけが悪いというわけではございませんけれども、この辺をどういうふうに反省、総括なさっていらっしゃいますでしょうか。
福井参考人 八〇年代の半ば以降が戦後の日本経済の歴史の中で大きな転換点であった、しかもそれは、後々になって振り返ってみてより明確にそのことが言えるようになったということだと思います。
 しかし、実際に、八〇年代、プラザ合意が境でございますが、その後の状況をずっと、日本銀行の中の、当時私は職員でございましたけれども、仕事をしておりました立場から見ておりまして、経済の大きなパラダイムシフトがこれほどのスケールで起こったということが一〇〇%完全に認識できていたかというと、そこは確かに不十分な点があった。
 やはりあのころは、引き続き相当の成長が可能ではないかという世間の認識、それを妨げているのはプラザ合意以降の極端な円高だと。日本は黒字がたまり過ぎて貿易摩擦が起こる、それから為替相場が極端に円高になる、そうなると、持てる力が発揮できなくて、デフレと申しますか、経済に対して不況圧力が及んでくる、これを取り払うためには内需拡大ということにうんと焦点を当てなければいけないんではないか、こういう政策的な枠組みについて、これはもう国是ともいうぐらい強い意識が形成されておりました。日本銀行もその中にしっかり位置づけをみずから置いていたという点が、やはり、大きなパラダイム変化についての認識が、十分目が行き届いていなかったという点はあると思います。
 しかし、あのころから、日本銀行もそうですが、やはり世の中の識者の多くの方は、内需拡大ということにウエートを置くにしても、一方で市場開放、規制緩和ということが非常に重要だと。構造改革ということが言われ始めたのはそのころからでございます。だから、大きなパラダイムシフトを人々が全く感知していなかったわけではない。しかし、それよりも、やはり内需拡大に焦点を当てたい、この意識でもう一〇〇%統一していた。
 その結果がバブルの発生ということにやはり私はつながったと思いますけれども、バブルの発生を前もって認知することがなかなか難しい。これは言いわけではなくて、日本の経験を十分参考にしたアメリカのグリーンスパン議長ですら、アメリカのハイテクバブルについて、やはり事前の認識は不可能であったと議会証言をしておられます。日本銀行にとって決してこれはエクスキューズにならないことで、今後も起こり得ることについてこのエクスキューズを利用しようなんという考えは毛頭ありませんけれども、八〇年代後半にさかのぼっていえば、確かに、バブルの認識は、十分行き渡って見通すには眼力が不足していた、あるいは不可能なことであったというふうに思います。
 世の中の人すべてが収益を上げていた、だれ一人ロスを出していないというのはやはりバブルなんでしょうけれども、しかし、みんなが収益を上げている状況を中央銀行の力で全部封じ込めることができるかどうかという非常に大きな宿題があのころあったんだろうというふうに思います。
山谷委員 先ほどからさまざまな方が、マネタリーベースはふえているのにマネーサプライの方がどうもそういう形ではついていっていない、おかしいじゃないかというような話がありますが、デフレギャップ、先ほども出ましたけれども、不良債権の処理の問題の解決も、このデフレギャップがどのぐらいあってどう解消していくかということに詰まる部分もあるわけでございますけれども、デフレギャップはどのぐらいあるというふうにお考えでございましょうか。
福井参考人 日本銀行に着任しておりませんので、日本銀行がデフレギャップをどういうふうに計算しているかということはまだ存じておりません。
 ただ、民間のシンクタンク等がいろいろ試算しておりますが、その中で幾つか代表的なものを見ますと、GDPの大体四、五%ぐらい、金額でいうと二十五兆円ぐらいというふうな計算をされているところがございます。その計算が正確かどうかは別にいたしまして、現在におきましてもなおかなり大きなデフレギャップがあるということは事実だというふうに思います。
 ただ、一つだけ注意しなければいけませんのは、計算上のデフレギャップと実際の、実際のデフレギャップという言葉は表現が適当でないんですけれども、言ってみれば供給能力の方が多過ぎるという話でございますが、その供給能力というのは、企業が過去に設備投資を行ったその設備の残高でございます。これはさまざまなものがございまして、一方で技術革新が急速に進んでいるわけですから、技術革新の進歩と照らし合わせて今持っている過剰な設備の残高を見ますと、技術進歩が速いものですから、設備残高は新しく見えてもどんどん陳腐化しているという部分がございます。陳腐化している設備を稼働させても、新しい経済のダイナミズムには通じない。したがって、新しいダイナミズムに通ずる設備残高というのは二十五兆円よりも少ないかもしれない。
 そうしますと、二十五兆円のうちもう陳腐化した設備に張りついている部分は、早く償却をして資源を次の新規の投資に振り向けていく、こういう作業も必要かなというふうに思っています。
山谷委員 日本経済センターで二十五兆円、それから、けさ内閣府と日銀の方に聞きましたら、四十兆円ぐらいではないかというお答えがございました。そうしますと、処方せん、カルテも大分変わってくると思いますし、また、マネタリー・トランスミッション・メカニズムの使い方なんかもかなり違ってくるというふうに思いますので、先ほどから、資産価格チャネルや為替レートチャネルをいかに使うかというようなお考え、大枠では伺いましたけれども、ぜひそのような積極的なチャネルを使いつつ、また、国民に見える説明責任を果たしつつ、それでこその日銀の独立性でございますので、新しい日銀の総裁、副総裁の体制に期待したいと思います。
 ところで、五年前、接待不祥事の監督責任をとり、世間に迷い出ると言い残されて副総裁を辞任なさいましたけれども、迷い出た世間はいかがでございましたか。
福井参考人 今でも幾らか迷っているかもしれませんけれども、大変民間の世界は私にとりましては刺激的な世界でございました。これだけ日本全体が不況の中、閉塞感の中、経済は流動性のわなに陥っている、マクロ的にはそう思われておりますけれども、実際、産業界の一人一人の方々、あるいは、いわゆる産業界というエスタブリッシュされた世界だけでなくて、これからフロンティアを築いていこうという、より若い世代の方々の活力は相当なものがあると私は感じ取っています。
 中央銀行のあの堅牢強固な建物の中に入って、これから情報遮断になるということを一番恐れておりまして、やはり世の中の第一線を走ろうとする人たちと対話を続けながら、私の感性を新しくしながら、これからの仕事をさせていただきたいというふうに思っています。
山谷委員 森永総裁は開かれた日銀とおっしゃって、三重野総裁が民間企業との接触の大切さをおっしゃって、また、日銀法が改正になりましたときは、日銀の金融政策決定会合、私、随分議事録を取り寄せて読んでおりましたけれども、金融緩和の主張とか、インフレ目標の主張とか、外債購入の主張とか、いろいろあって、採決も割れることが当たり前というような状況でございました。
 しかしながら、二〇〇二年、この一年間は十五回すべて全員一致だったという、何かまた昔の法王庁に戻っちゃったんではないかというような雰囲気もございますので、ぜひ、迷い出た世間の風をまた体じゅうにいっぱい膨らませて、新しい体制をおつくりいただきたいというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
小坂委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。
 この際、休憩いたします。
    午後零時四十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時十四分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 本日付託になりました内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣塩川正十郎君。
    ―――――――――――――
 関税定率法等の一部を改正する法律案
 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
塩川国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 まず、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応する等の見地から、特恵関税制度等について所要の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
 以下、本法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、特恵関税制度の改正であります。
 後発開発途上国への一層の支援を図るための特恵対象品目の追加等を行うこととしております。
 第二は、暫定税率の適用期限の延長等であります。
 平成十五年三月三十一日に適用期限が到来する暫定税率の適用期限の延長等を行うこととしております。
 第三は、知的財産権侵害物品に係る水際措置の強化であります。
 植物の品種登録により発生する育成者権を侵害する物品の輸入禁制品への追加、輸入差しとめ申し立て制度の拡充等を行うこととしております。
 第四は、通関の一層の効率化のための対応であります。
 納税申告前の貨物の引き取りを可能とする簡易申告制度に係る担保提供額の見直し等を行うこととしております。
 次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 国際開発協会は、世界銀行グループの中核機関として、所得水準が一定以下の開発途上国に対し、長期かつ無利子の融資を行うことを主たる業務とする機関であります。先般、同協会の二〇〇三事業年度から三年間における財源を確保するため、第十三次の増資を行うことが合意されました。
 政府といたしましては、国際社会の一員として開発途上国の経済発展と貧困削減に貢献するとの見地から、この第十三次増資に係る追加出資を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
 本法律案の内容は、政府が国際開発協会に対し、二千四百七十八億四千四百四十万円の追加出資を行い得るよう、所要の措置を講ずるものであります。なお、今回の追加出資額については、我が国の現下の経済力や財政状況、昨今のODAをめぐる国内の議論を踏まえ、前回増資時より減額しております。
 以上が、両法律案の提案の理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
小坂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、ただいま議題となっております両案中、関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、生方幸夫君から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。生方幸夫君。
    ―――――――――――――
 関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
生方委員 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由の説明をいたします。
 関税暫定措置法第七条の五第一項に定める措置、いわゆる牛肉の特別セーフガードは、元来は輸入の急増による国内の畜産業への重大な影響を避けることを目的とするものであります。
 しかるに、政府提出に係る改正案が施行された場合、一昨年のBSE発生によって急激に落ち込んだ牛肉の輸入量が基準となり、従前の水準よりはるかに低い輸入水準で、同措置が発動されることとなってしまいます。
 そもそも、我が国におけるBSEの発生とそれに伴う牛肉消費の急激な落ち込みは、セーフガードの制定当時は想定されていなかった突発事態であります。昨今の牛肉の輸入数量の回復は、単に牛肉の消費水準の正常な状態への回復を反映したものにすぎず、BSE発生により異常に落ち込んだ輸入水準から一七%を超えて増加したからといって、直ちに国内の牛肉生産に悪影響を与えるようなたぐいのものではありません。牛肉消費の回復途中におけるセーフガードの発動は、牛肉及び牛肉製品の価格の上昇をもたらし、牛肉消費の回復をおくらせる懸念があり、かえって国内畜産に対する懸念材料となりかねないことも考えますと、平成十三年九月のBSE発生以降の牛肉消費が異常に落ち込んだ期間を除外して制度の運用を図るのが適切であると考えるものであります。
 以上が、修正案を提出する理由であります。
 次に、修正案の概要を御説明いたします。
 関税暫定措置法第七条の五第一項の適用については、同項中「当該年度の前年度」とあるのは「平成十二年度」とする旨の規定を新設することといたします。
 以上が、ここに修正案を提出する理由及び概要であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
小坂委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長田村義雄君、財務省国際局長渡辺博史君、公正取引委員会事務総局経済取引局長上杉秋則君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより両案及び修正案に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
上田(勇)委員 それでは、内閣提出の両法案に対しまして、何点かにわたりまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質問させていただきます。
 いわゆる低所得の開発途上国にソフトローンを提供する必要性というのは十分理解できるものでありますし、今回のこの国際開発協会の増資に我が国としても応分の負担を行っていくということについては賛成でございます。その上で、今よく、こうした援助が本当に適正に利用されているのか、十分な効果を上げられているのかということは常に提起される問題でございまして、今回のことについても、そうしたことはしっかりと検証していかなければいけないことではないかというふうに思っております。
 したがいまして、この国際開発協会、IDAが適正な目的のために資金を提供しているのか、また、その資金が効果的、効率的に相手国政府において利用されているのか、そうしたことを検証する必要があるというふうに考えておりますけれども、こうしたことについてはどういうように対応されているのか、お考えを伺いたいと思います。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 国際開発協会、IDAでございますが、これと世界銀行の融資プロジェクトにつきましては、すべてのプロジェクトにつきまして、事務スタッフのトップである総裁からは独立いたしまして、出資国を代表する理事会に直轄する組織でございます業務評価局というのが事後評価を行っているところでございます。
 この業務評価局の評価によりますと、IDA及び世界銀行の融資プロジェクトのうち、満足できる結果を上げて終了したプロジェクトの割合は、例えば一九八〇年代末には六〇%程度ということでございましたが、その後、傾向的に上昇してまいりまして、直近時点では、満足できる結果を上げて終了したものの割合が七九%に達しているという状況にございます。
 我が国は、出資者といたしまして、IDAでこのような独立性の高い事後評価体制が整備されていること、及び、事後評価の結果によれば、プロジェクトの質が傾向的に改善してきていることを評価しているところでございます。
 また、事後評価により得られました教訓が今後の業務運営に生かされていくことによって、IDA支援の一層の有効性の向上と効率化につながっていくものと考えているところでございます。
上田(勇)委員 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして何点かお伺いしたいと思います。
 我が国のハブ港湾の国際競争力ということがよく言われております。それを高めていく上で、二十四時間体制が必要であるというようなことも提案されておりますし、また、諸手続の簡素化、迅速化ということが強く求められているわけでございます。そのためにも、輸入手続において必ず必要なのがこの通関の手続であるわけでありまして、こうした二十四時間体制あるいは迅速化に対応するための体制の整備を進めていかなければいけないというふうに思っております。
 本法案でも、幾つかの点についてそうした方策が盛り込まれているわけでございますけれども、さらにこうした要求に対して、国としても、特に通関業務の効率化、迅速化については努力をしていかなければいけないというふうに考えておりますけれども、どういうような方針で臨まれているのか、所見を伺いたいと思います。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 まず初めに、通関の二十四時間体制の件でございます。
 これにつきましては、先生も御承知のように、成田空港等、税関の執務時間外に輸出入通関等の業務処理が恒常的に発生する主要官署におきましては、既に二十四時間、三百六十五日体制が採用されているわけでございますけれども、先般さらに、民間の要望、あるいは、今先生からお話もございました大きな国際物流の変化等を踏まえまして、港湾の二十四時間化への動きに合わせて、昨年の十月からでございますが本年三月までの間、コンテナ貨物の取り扱い実績の多い八つの官署におきまして、ただいま、税関の執務時間外における一定の時間帯、夜あるいは土日、休日におきまして職員を配置いたします通関体制の試行を実施しているところでございまして、この執務時間外における通関体制につきまして、今後とも、その利用実績、あるいはその効果の波及状況や利用者の意見等を踏まえまして、本年の七月から本格的に整備、実施する方向で検討しているところでございます。
 また、その際には、余り必要のないところに職員を常駐させるのは効率的でございませんから、そういうところには事前の申請があれば必ず職員を配置するというようなことも含めまして、全体的に本格整備を図ってまいりたいと思います。
 もう一点、全体的な簡素化についての御質問でございます。
 ただいま質問にございましたように、私ども、税関行政の一つの大きな柱として、迅速化とともに適正化、両方の柱だと思っておりますが、特に迅速化については非常に要請も高いわけでございますので、この法案におきましても、例えば簡易申告をより使いやすくするとか、あるいは到着即時輸入許可制度を導入するとか、さまざまな工夫を凝らしておりまして、今後とも通関手続の迅速化ということについては尽力をしてまいりたい、かように存じております。
上田(勇)委員 今答弁にもございましたけれども、税関というのは、まず水際で、犯罪性の高い薬物だとか銃刀類だとか、そういったものを防がなければいけないし、不正な物品が我が国へ入ってくることも防がなければいけない。そういう意味では適正、厳格でもなければいけない、同時に迅速でなければならないということでございますので、そこで出てくるのが、特にこれから二十四時間体制というようなことも含めますと、やはり人員の問題が出てくるんじゃないかというふうに思います。
 これは御要望として、ぜひ、こうした体制をしっかりと支えていくためにも、適正な人員を積極的に確保していくためにまた努力をしていただければというふうに要請をさせていただきたいと思います。
 次に、今回の法案の中で、知的財産の保護に関する措置が何点か含まれております。これは将来とも、我が国の産業の国際競争力を高めていく上で、こうした知的財産を形成する、蓄積していく、そしてそれに適切な保護を与えていくということは、国家戦略としても極めて重要であるというふうに認識をいたしております。そういう意味で、今度の法改正で対策が強化されているということについては非常に評価をするものでございます。
 その中で、ちょっとあえてお伺いいたしますが、今回の改正で、種苗法による育成者権を侵害する物品を輸入禁制品に追加する等の措置が講じられているわけでございますけれども、こうした改正が必要となった背景、また、今回の改正による措置によりましてどういう効果が期待できるのか、所見を伺いたいと思います。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 育成者権でございますが、これは種苗法に基づきます品種登録によりまして発生する権利でございます。最近、品種登録件数が極めて増加いたしております。そして、この育成者権を侵害する事例も極めてふえているわけでございます。そして、こうした状況の中で、侵害物品の水際の取り締まりということに対する要望が高まっておるところでございます。昨年の七月に決定されました知的財産戦略大綱におきましても、育成者権侵害物品の水際阻止というものが求められているところでございます。
 このような状況、背景にかんがみまして、今回の改正によりまして、育成者権侵害物品を輸入禁制品に追加することにいたしまして、税関として、これに対して水際取り締まりを実施することといたしたところでございまして、育成者権の侵害物品の輸入に対する抑止効果、防圧効果も含めまして、植物の品種改良が今後より促進されまして、ひいては国民経済の健全な発展にも寄与し得るものではないかと期待しているところでございます。
上田(勇)委員 次に、牛肉及び豚肉等に係る関税の緊急措置につきまして、本法案の中で適用期限を一年延長することとなっておりますが、このことについて何点かお伺いしたいと思います。
 これらの関税の緊急措置については、ウルグアイ・ラウンド交渉の協議の結果といたしまして、輸出国を含めます同意を得て導入されたものと承知いたしておりますが、改めて、この牛肉及び豚肉等に係る関税の緊急措置の意義、それから必要性についてお考えを伺いたいと思います。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 牛肉に係る緊急措置でございますけれども、今先生からもお話ございましたように、ウルグアイ・ラウンドに際しましての米国等関係国との協議の結果に基づきまして、我が国が自主的に、ウルグアイ・ラウンド合意による譲許水準、これは五〇%でございますが、これをさらに関税率等の引き下げを行う、そのことのいわば代償として、パッケージとして導入されたものでございます。
 こうした経緯のもとで、この緊急措置は、関税率の自主的引き下げとあわせまして、輸出国あるいは国内事業者、消費者の利益と、一方で国内生産者の利益のバランスを考慮したものとなっているわけでございまして、したがいまして、譲許水準五〇%から関税率等の自主的引き下げ、三八・五%への引き下げとあわせて、一方で、牛肉の輸入が一定の水準を超えて、前年比一七%という水準を超えて増加した場合には、国内生産者へ与える影響を緩和するためにこの緊急措置は必要なもの、そのように考えているところでございます。
上田(勇)委員 そこで、今の牛肉についてなんですが、最近の輸入動向等についての御見解を伺いたいと思うんですけれども、平成十三年の九月に、残念ながら我が国でもBSEの患畜が発見されまして、それ以降、相当長い期間にわたりまして牛肉の消費が落ち込んでまいりました。国内消費量も輸入量も、その間減少してきたわけでございます。国内生産量につきましては、昨年の初めから、月別で見ますと対前年比でプラスに転じて、生産量が回復に向かったわけでありますけれども、輸入量はその後もずっと低い水準を続けまして、昨年末になってようやく対前年比がプラスに転じたということになっております。
 こうした傾向を見ますと、輸入量が減ったのは、必ずしもすべてがこのBSE問題に起因しているというふうには言いがたいのかもしれませんが、少なからずこうしたBSEによる消費の落ち込みが影響しているということは言えるんではないかというふうに思います。
 そうしてみますと、平成十五年度では、このまま延長しますと、比較的低い輸入量の水準でこの緊急措置が発動される可能性が相当高いんではないかということが想定されます。ちょっとデータから試算してみますと、十三年度の第四・四半期の輸入量、これは十四年の一月から三月期でありますが、約九万九千七百トンであります。十四年度の第四・四半期、ことしの一月から三月期に、その一・一七倍ということになりますと、十一万六千七百トンなんですね。この水準でこの緊急措置が発動されるというわけであります。しかしこれは、十二年度の第四・四半期、その二年前と比較してみますと、その同じ期間の輸入量の約七割の水準で発動されるということになるわけであります。
 ずっと輸入量が低水準で推移していたんですけれども、昨年末から、そういう意味では輸入増に転じているということを考えると、この十四年度の第四・四半期の輸入量に基づきまして、十五年度から発動される可能性が大きいんではないかということが想定されます。
 緊急措置が導入された意義、必要性については、先ほど御説明いただいたとおりで、私も、今の国内生産に対する影響等を考えたときに、こうした措置が必要であるということで、これは輸出国も含めて合意をされたということについてはよく理解するものでございますけれども、ただ、発動された場合には、輸入牛肉を取り扱う流通業や外食産業の事業者、あるいは価格の上昇ということから、それが転嫁されて消費者にもやはりマイナスの影響が出るんではないかということも懸念されるわけであります。そうした影響についてはどのように予想されているのか、見方を伺いたいというふうに思います。
須賀田政府参考人 牛肉関税の緊急措置、これは三八・五%の関税を五〇%に上げる、一一・五%引き上げるというものでございます。私どもの試算によりますと、他の要素が一定であれば、まず卸の方に約八%程度の影響があるんではないか、さらに、小売価格段階に約二・五%程度の影響があるんではないかというふうに試算はされているわけでございます。
 仮に、流通業者、小売業者あるいは外食業者の方々がこの上昇分を販売価格に転嫁しないということになりますと、その分、経営面で何らかの影響というものが考えられないわけではないわけでございますが、実態的に聞き取りを行いますと、流通、小売段階におきましては、関税のほかに、現地価格、国際価格でございますとか為替レートの変動というようなものがございまして、ある程度の価格の上昇というのは商売上のリスクであらかじめ織り込んでおられるということでございますし、外食事業者の方々も、これはBSEの間経験したことでございますけれども、牛肉の消費が減退すれば、豚肉とか鶏肉とか、あるいはシーフードだとか、こういうものに食材を変える等の経営努力もされておりまして、個々の事業者が、食材コストというものを販売価格にどう織り込んでいくかというのは、経営戦略として総合的に判断をされているようでございます。
 ただ、今後、仮に牛肉関税の緊急措置が発動された場合、こういう事業者あるいは消費者の方々への影響について十分注視していく必要があろうというふうに考えているところでございます。
上田(勇)委員 今答弁にもあったんですが、特にその中でも、外食産業の方々からは非常に強い懸念が示されております。確かに、いろいろと食材を多様化するというようなお話も今ありましたけれども、牛肉を主体としたメニューを扱っている事業者も多いわけですね。例えば、焼き肉店でほかのものに変えるといってもなかなかそう簡単なことではありませんし、また、どうしても外食産業の場合には輸入牛肉を利用している事業者の割合が高いということでありますので、今八%程度というようなお話もありましたけれども、輸入価格が上昇するといったことについては懸念するのは当然のことであろうというふうに思っております。また、聞くところによりますと、国際市況も、オーストラリアやアメリカなどでの天候の影響などもあって、どうも強含みであるというようなことも伺っているところでございます。
 そうすると、こうした事業者の方々は、平成十三年度のBSEが発生したときには、本当に国民全体が牛肉離れを起こして、経営内容が相当苦しくなったという経緯があります。私の地元でも、そのときに多くの外食産業、これはかなり大規模に展開しているところも含めて、業態を変えたり、また、個人で行っているところについては廃業に追い込まれたというような事例もたくさんございました。
 そういうことを考えますと、そのときに経営内容が相当圧迫されているわけでありますので、事業経営にはいつも多少のリスクはつきものではありますが、もう既にそういった大変厳しい経営内容になっているときに、今言われたような価格の変動が非常に決定的な悪影響を与える可能性もあるというふうに思っております。
 私は、今の御答弁でいいますと、仮にこの緊急措置が発動されても、その他いろいろな要素で価格やコストというのは実は決まっていくので、それほど大きな影響はないんではないかというような想定で考えられているというふうに受けとめましたけれども、私は、必ずしもそうではないんではないのかなというふうにも思っております。逆の言い方をすると、もしそれほどそういう影響が出ないのであれば、もともとのセーフガードとしての機能を発揮していないというようなことにもなりかねないわけでございますので、そういう意味では、事業者も含めて、消費する側には少なからず影響があるんだろうというふうに思っております。
 そうしたことはともかくといたしまして、もしそうした発動される可能性が高いことがわかった場合には、先ほど、いろいろな影響については注視をしていくというような御答弁がありますけれども、もしそうした可能性が高いということが想定された時点で、価格が上がった場合にどういうような影響が出るかということについては、関連業界のことも十分調査をしていただいて、やはり機動的に対策を講じていただきたいというふうに思っております。
 外食産業というのは、我が国の経済の中でも今や非常に重要な役割を果たしているわけでありますし、特に、多くの雇用を提供しているという意味では、重要な産業分野であろうというふうに考えております。そういう意味で、そういったことを踏まえて、経営が著しく悪化することがないように必要な施策を機動的に講じるような体制で臨んでいただきたいというふうに思いますが、改めて答弁をお願いいたします。
須賀田政府参考人 国民の皆様に安心で安全な牛肉を安定的に継続的に供給するというのは、農政の重大課題というふうに受けとめているところでございます。したがいまして、生産者から外食事業者に至るまで、その健全な発展を図ることは重大な政策課題というふうに認識をしております。
 先生も御存じのように、BSE発生以降、特に先生の強い要請等もございまして、外食事業者の人たちに対しまして低利の運転資金の融資でございますとか、あるいは、中堅以上の焼き肉屋さん等の外食事業者の方々に対しまして無担保の保証措置、こういうものを措置したところでございます。
 今後、牛肉関税の緊急措置の発動が外食事業者の方々にどのような影響を与えるか、現時点で推定することは難しいわけでございますけれども、仮にその経営に重大な影響が出たという場合には、措置の必要性を見きわめながら検討をしていきたいというふうに考えているところでございます。
上田(勇)委員 ぜひ状況を十分に把握していただきまして、機動的に対策を講じていただきたいということを重ねてお願い申し上げます。
 最後に、塩川大臣に一つお伺いをしたいと思うんですが、今、株価が非常に低迷をしております。きょうも、先ほどの終値を見たところ、日経平均七千九百四十五円と、また八千円割れというようなことでございます。こうした要因については、いろいろな方がいろいろな要因をおっしゃいます。イラクの情勢といったことも非常に大きな要因であることは間違いがないんだろうというふうに思います。ただ、先日の政府の月例経済報告を見てみますと、企業の収益は改善しているということでありますので、これは株価に対してはプラスの影響になるだろうと思うんです。
 そうすると、今の株価が二月の半ばからずうっと下がってきているということは、それぞれの企業の経営の問題というよりも、株式市場における需給の問題なのかなというような感じがいたします。ただ、それも、いろいろな専門家の方々からもいろいろな分析が示されているんですが、いま一つ、どれがどういうような要因なのかというのがはっきりしないところがあります。どうも、年初来の株安の傾向を見てきますと、株を売っているのは金融機関と外人投資家だというようなデータも出ているようでございます。
 こうしたことを踏まえて、ぜひ大臣、今のこの株安の傾向、これは、これからの対策を考えていく上でも、要因をどういうふうに分析しているかということは非常に重要な前提になるというふうに思いますので、大臣の御見解をお伺いいたしまして、きょうの質問を終わらせていただきます。
塩川国務大臣 今の株安という趨勢は、世界各国ともそうですね。どうも株価の大幅な変動が起こってきておるように思っておりますが、我が国もその例に漏れず、非常に低迷しております。
 一つは、私はいろいろな人に聞きますと、売り傾向の思惑がいまだに残っておる。ということは、イラク戦争の問題がやはり前提になっておるんじゃないかということでございまして、これが早く何とかめどがついてくるということになれば少しはまた変わってくるのかなと思うたりいたします。
 それからもう一つ、私はいろいろな団体に行きまして話を聞きますと、株価が下がっているのは、やはり利回りといいましょうか、それと相関連しているようなことをよく言いますね。そうしますと、もう少し企業が配当を明確に示してくれるならば変わってくるんではないかなと思っておりますが、三月期の配当をちょっと聞いてみましたら、企業収益はいいんだけれども、配当を復活するところもあるんだろうけれども、余り頼りになるものじゃないということを聞いてちょっとがっかりしておるんです。配当が復配してくればまた景気が変わってくるんじゃないかと思っております。
 いずれにしても、株価対策について、私たちは、空売りによるところの冷やし方、これだけは厳重に注意していきたいと思っております。
上田(勇)委員 以上で終わります。
小坂委員長 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。
 私も牛肉の特別セーフガード関連の質問をさせていただきますが、一部、既に今上田委員が質問をしたこともありますので、なるべく重複を避けながらしたいと思います。
 BSEの発生で、一時は国産の牛肉は二三%まで消費が落ち込んだ。それから、輸入の肉については六割ぐらいまで落ち込んで、これは大変なことだと大騒ぎになったわけですが、徐々に市況は回復して、現在、輸入肉も八割水準まで来ていますし、国産の牛肉は九五%、ほぼ平年並みにまで戻っていると思います。そういう戻りつつある中で、幾ら権利とはいえ、特別セーフガードを発動するのは少しおかしいんじゃないかという立場で質問させていただきます。
 このことは、今も話が出ました外食産業の方々、輸入牛肉のビジネスに携わっておられる方々、非常に重大な関心を持って見守っておりますし、また、もちろん牛肉輸出国のアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも大変関心を持って見ている。私はずっとこういう質問をしたいと言っていましたら、あいつはオーストラリアとかアメリカから金をもらっているんじゃないかという話もありましたが、どこかの国の農林大臣と違って、私はそういう金権体質はありませんので、そんなことは全くないということを蛇足ながら申し上げておきます。
 先ほど財務省の方から、特別セーフガード導入の経緯について御説明がありました。ウルグアイ・ラウンドの合意では五〇%という水準だったけれども、日本がアメリカや豪州の立場をそんたくして、三八・五というふうに自主的に下げました、その代償措置として、輸入がふえたときはいつでも五〇%に戻せるという権利を留保しておりますという説明がありました。
 経緯はわかりましたが、では、この関税効果ですね。特別セーフガードに限らず、今WTOでも、関税をめぐっての各国間の激しい駆け引きが行われているところですが、関税の効果というのは、財務省の方はどういうふうにとらえておるんでしょうか。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 関税の効果といいますか、関税の目的等を含めて、基本的には二通りあろうかと思います。一つは、やはり何といっても、関税は、国内産業の保護という観点から、いわば保護関税と称しているものでございまして、もう一点は、国庫収入の確保、財政関税と言っていますが、この二つの主要目的を有しているわけでございます。
 この牛肉関税につきましても、先生御承知のように、以前は牛肉の輸入が自由化されていない、それが輸出国の強い要請等によりまして、平成三年度から輸入が自由化されたことから、その輸入牛肉に課税をいたしまして国内の牛肉生産者を保護することを目的とする保護関税的な政策であります。もう一点は、これによって上がってくる関税収入によって国の財源を確保する、そういう機能、効果を果たしているものと考えております。
鮫島委員 国内産業の保護が大きな目的の一つだということはわかりました。
 先ほどの須賀田局長の答弁にありましたが、牛肉の特別セーフガードを発動すると、末端の消費価格は中間段階で吸収されるし、ある程度ビジネスをやっている方々はこういうことを織り込み済みなので、そんなに末端の消費価格には影響しないんじゃないかという観測でしたが、じゃ、輸入牛肉の消費量はどの程度減少するというふうに見込んでおられるでしょうか。
須賀田政府参考人 大変難しい御質問でございます。
 私、先ほど申し上げましたのは、ある程度業者の方も商売上のリスクを織り込んでおられるのでというお話をいたしました。まず、順番に申し上げますと、先ほどの答弁と重なるわけでございますが、他の条件が一定ならば、関税が一一・五%上がりますと、卸に約八%、小売に約二・五%価格が上がるということでございます。
 この価格の上昇がどれだけ量に響くか。古典的な理論でございますけれども、牛肉の価格弾性値というものを用いないといけないわけでございまして、価格弾性値がマイナス〇・八ちょっとでございますので、二・五%小売価格が上がりますと約二%需要に影響が、これは純粋に理論値で、他のものが一定であると仮定した場合の計算でございまして、理論上はそのようになるんじゃないかというふうに思っております。
鮫島委員 関税局長にもう一度お伺いしますが、先ほど、関税をかける大きな目的として、国内産業の保護というふうにおっしゃいましたが、国内産業を保護するためには、輸入牛肉の消費が落ちることが必要条件でしょうか。イエスかノーかで。
 関税をかけて国内産業を保護するわけですね。関税をかけただけでは別に保護にならないわけで、関税をかけると競争条件が不利になって牛肉の輸入量が減ります。したがって、牛肉の消費量も減ります。このことがないと国内産業の保護につながらないんじゃないですか。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 基本的には、先生のおっしゃるように、関税をかけることによってその価格が上がる。ただ、その価格の上がり方の態様は今るる農水省から御説明のあったとおりだと思いますけれども、基本的な方向としては、余計に関税が多くなればその分だけ価格は上がるわけですから、いろいろな流通過程を通じてその影響度合いはさまざまであろうと思いますが、上がる分だけはその分消費が減るということがまず基本的な考え方としては当然あろうかと思います。
鮫島委員 ちょっとよくわからないんだけれども。
 マーケットが飽和しているときと、今のように――委員長のお許しをいただいて、ちょっと消費の変化のグラフをお配りしたいんですが。
小坂委員長 どうぞ。
鮫島委員 国内産の牛肉の消費量の推移と輸入牛肉の消費量の推移をそれぞれ折れ線グラフで示したものを二枚紙でお配りしております。上の図は単純に対前年同月比で比べたもの、下が、前年が異常年だったもので、標準年の十二年度と比べたものです。上が非科学的なグラフで、下が科学的なグラフというふうに御判断いただいてもいいんですが。例えば、二枚目の「国産牛肉の推定出回量の推移」というのを見ると、単純に対前年同月比で比べると、平成十三年十月には、十二年に比べて二三%まで落ち込みましたと、先ほど言ったように。ところが、次の十四年の十月は、前の年にめちゃくちゃ落ち込みましたから四六一%なんというすごい数字になるわけですね、単純に対前年度でグラフを書くと。
 それで、普通に考えれば、この下のグラフの方がいいと思いますが、輸入数量は約八割まで戻りました。国産の方は一〇〇%前後、九四%が直近の数字ですが、そこまで戻りましたと。ただ、両方ともまだ飽和水準に達していない。輸入肉も国産肉も飽和水準に達していないときに、関税で国内産業の保護につなげようと思っても、こういうときは効果が出ないんじゃないですか。
 つまり、飽和して両方が競争条件にあるときは、輸入肉に関税をかければ国産牛がふえるということもあるかもしれませんが、両方ともがまだ飽和水準に達していないときに関税をかけても、私は国内産業の保護につながらないんじゃないかと思いますが、関税局長の御見解はいかがでしょうか。
田村政府参考人 まず、基本的に、今回の措置を、まさに先生御承知のように、五〇%を三八・五に自主的に引き下げるということのいわばパッケージとしての、一定の数量を超えた場合にはもとの譲許税率に戻すというパッケージの措置であるということを、何度も繰り返して恐縮ですが、申し上げておきたいと思います。
 その際に、確かに今のような消費量、価格動向をたどっているわけでございますけれども、そして昨年の牛肉輸入の減少自体がBSEという極めて特殊な事情によるものではございますけれども、しかしそうはいっても、その低い水準から安価な外国産牛肉が入ってくる、そしてそれがふえてくるということであれば、それはやはり国内に影響を及ぼすことは、その部分において懸念されるわけでございますから、そういう意味で、やはり来年度においても必要であると考えているわけでございます。
鮫島委員 よくわかりませんね。私は、余りこういう状況の中で効果はないんだと思います。
 先ほど関税局長は、国内産業の保護が主目的のように言っていましたが、何となく関税収入を得る方が主目的みたいに微妙に言いかえているところが若干気になります。
 農水省にお伺いしますけれども、このセーフガード、五〇%から自主的に三八・五%に下げます、しかしパッケージとして五〇%にいつでも上げられる権利を留保するという合意をしたときに、BSEの発生のように、需要が国産牛が二割まで落ち込むとか輸入肉が六割まで落ち込むとか、こういう異常な事態を想定されていたんでしょうか。
北村副大臣 お答えいたします。
 想定していたわけではありません。BSEがまさか我が国で発生するなんということは、想定をしてこの措置をとったわけではありません。
 しかし、低い水準から急激に輸入が増加することによって、先ほど国内保護という言葉がありましたとおり、国内産業に影響が及ぶ場合には適切に機能することが期待される、こういう面でこのセーフガードというのはあるというふうに思っております。
鮫島委員 先ほど上田委員の方から、ことしの一―三月期と去年の一―三月期を比べて、ことしの方が一一七%を超えていたら、四月一日からセーフガードが発動される的な発言がありましたが、今の状態でセーフガードが発動される可能性が一番高いのは、四、五、六の第一期、それを去年の四、五、六と比べて一一七%超えたら、八月一日からその年度ずっと五〇%になりますというのが一番可能性のある状況だと思います。これは、四半期ごとに比べて、累積していってというところがなかなか理解されていない面もあるので若干誤解があると思いますが、要するに、一番可能性の高いのは、今度の四―六の輸入量にかかっているということだと思います。
 では、政府が言うように、一一七%、恐らく確実に超えますよ。それで八月一日から五〇%にしましたと。そうすると、平成十五年度で見込まれる関税収入はどのぐらいというふうに推定していますか。
北村副大臣 これは、どのぐらい見込まれるということを明確に言うことが市場等々に与える影響を考えると、そう無責任な言い方はできないわけでありますけれども、仮に十二年度を一応ベースにしたということにしますと、数値的には、機械的に計算すると約二百億ということが考えられるということであります。
鮫島委員 いろいろな方々が推定していますが、さすが北村副大臣、ほぼ専門家の方々と同じ数字をお答えいただいて、無通告なのによく答えられたなと思って改めて感心する次第です。
 農水省が、牛肉の一人当たり購入数量、全国全世帯、対前年同月比、こう動向を示した図がありまして、これは総務省の家計調査の資料に基づいて牛肉の消費量の推移を示しているグラフをみんなに配っていると思いますが、これではなぜか、牛肉の消費の推移のとき、対前年同月比なんですが、脚注がついていまして、「平成十三年九月以降の購入数量はBSE発生により低下していたため、十四年九月以降は十二年同月比を用いている。」というふうにしてあるんです。なぜこういうときだけは十二年同月比を用いるんでしょうか。
須賀田政府参考人 我々もいろいろな政策をやっておりまして、所管も、牛肉だけではなくて豚肉、鳥肉等も所管しております。そして、このBSE発生後、食肉の消費が牛肉から豚肉、鶏肉へとシフトしてございます。そして、この間、例えば消費拡大の政策等々の政策をとってまいりました。
 そういう政策を今後も継続すべきかどうかというようなことを判断する場合には、やはりBSE発生前の水準と比較して消費がどの程度回復していったのかというのを見ないといけない。豚肉の消費が落ちているけれども、その落ち方は牛のBSE発生前に比べればまだ上にあるとか、そういう、価格政策なんかを講じるに当たって判断材料の一つにする必要がありますので、こういう比較をしているわけでございます。
 それぞれの比較によってやることが必要だと考えておりまして、やはり、苦しい経営を余儀なくされている今の畜産経営についての関税の緊急措置のような政策については、先ほど副大臣御答弁ございましたように、低い水準からの輸入量の急激な増加による影響というものを見る必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
鮫島委員 私も、先ほどお配りしましたように、グラフをかいてみたら随分違うわけですね。単純に対前年同月比をとるのと標準年と比べるのとで、全然変わってくる。つまり、対前年同月比をとると、例えば十四年の十一月は一〇〇%超えているみたいな数字になりますが、実際は約八割水準というぐらい、本当の消費の動きを見ようと思えば、農水省がまさに説明資料として配っているように、標準年と比べないと、異常年と比べても何が何だかわかりませんよということを農水省の方がみずから言っている資料だと思います。
 先ほど北村副大臣から約二百億円程度の関税収入になるんじゃないかという話でした。これは、関税の趣旨からいって、国内産業の保護と関税収入を得ることと二つあるとおっしゃいましたが、この場合はやはり牛肉の生産農家の保護というところに力点があるわけでしょうから、この関税収入はちゃんと牛肉の生産の現場の方に使われるのかどうか、それがどう担保されているのか、御説明いただきたい。
須賀田政府参考人 牛肉の関税収入を特定財源化する措置は、牛肉の自由化に踏み切ったとき以降用いられているわけでございます。これは法令によりまして、肉用子牛生産安定等特別措置法という法律によりましてその使途が決まっているわけでございます。
 肉用子牛生産者補給交付金の交付、これは子牛の生産者に子牛価格が下がったときに補給するものでございます。あるいは、食肉に係る指定助成事業等の業務に必要な経費、それから肉用牛生産の合理化、食肉の流通の合理化その他畜産の振興に資する施策に必要な経費に使えというふうに法令上決まっているわけでございます。
 それから、先ほどから先生、量のこと、回復したんじゃないかということを申されております。
 実は、輸入牛肉と品質的に同等の国産の牛肉、これは規格でいいますとBの2という規格でございます。乳用雄の種類でございます。これは、国内で非常に経営が圧迫されて、出荷が滞留していて、なかなか市場に出なかった、しかし、それ以上飼うとコストがかかるということで出荷をした、そのときには物すごい安い価格で市場に出ております。
 例えば、BSE発生前の十三年の八月、国産の乳雄B2はキロ七百十八円、豪州産がそのとき四百二十円でしたから、豪州産よりも高かったわけでございますけれども、BSE発生後の十三年十二月はこれが何と百七十八円に落ち込んだ。そのときに豪州産の方は四百十七円、ほぼ同水準であった。ことし十五年の一月でも、この国産の乳雄B2の水準は四百四十三円ということで、豪州産の四百五十六円も下回っているということで、こういう面で苦しい経営を余儀なくされているということでございますので、そこへ輸入の増というのはやはり経営を圧迫するんではないかというふうに考えております。
鮫島委員 ちょっと答弁が長いので時間がなくなってきましたが……
小坂委員長 終了しております。
鮫島委員 農水省は、BSEの発生についてさまざまな反省をした中で、どうも軸足を生産者に置き過ぎていた、これからは消費者側にも軸足を移して、均等ににらんだ農政をしたいというふうに態度を変えたんだと思いますが、今度もこういう、実態的には別に輸入牛肉が急増しているわけでもないのに、特別セーフガードを適用して、流通サイド、消費サイドから約二百億を生産サイドに移していく、こういう措置をとるんですね。
 私は、普通に、科学的に考えて、今世界とのさまざまな交渉をしていく中で、日本はちゃんと科学的、理性的に判断するんだということを表明するためにも、余りおかしなセーフガードの発動はしない方がいいんじゃないか。私は別に国内の農業を軽視しているわけでもないし、それは大変大事な問題だと思いますが、余りおかしな発動の仕方というのは国際常識に反するんじゃないかということだけ最後に申し上げますが、もし関税局長、一言ありましたら。
小坂委員長 答弁は、時間終了しておりますので、次の方、お譲りになりますか。――はい、わかりました。
北村副大臣 鮫島先生のおっしゃりたいことはよくわかりますが、今WTO、確かに抱えております。しかし、ウルグアイ・ラウンド等々で議論したときに認められたそういうルールを、我々はやはり粛々とそれをやっていくということが大切だ、このように感じておりまして、このことはルールどおりやっていきたい、こう思っておるところでございます。
鮫島委員 牛どんは半分米ですから、余り牛どんをいじめると米の消費にも影響を与えることだけ申し述べて、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
小坂委員長 次に、松本剛明君。
松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。
 法案の審議に先立ってお伺いをさせていただきたいと思っておったんですが、鮫島議員との質疑が続いているようでありますので、この件に関して一、二、私の方から先に御質問をさせていただきたいと思います。
 もう一度確認させていただきますが、今の議論を伺っていて、輸入量の急増が国産の肉牛生産者の経営に影響を与える、こういうお話であったかというふうに思います。まさに、鮫島議員がおっしゃったように、今回のように輸入牛肉の輸入量が急増している、だからこそセーフガードが発動されようとしている時期だろうと思いますが、一方で、国内産の牛肉の方も着実に増加しているという状況からすると、輸入牛肉の増加が国内の生産業者に影響を与えるのは必至だ、こういうふうに先ほども、また先日の予算委員会の分科会でも農水省、御答弁されておられますけれども、どうしてもそこの論理は我々には理解できない部分がある。ふだんの場合はそういう部分があるんだろうと思いますけれども。この点について北村副大臣の御所見をまず確認しておきたいと思います。
北村副大臣 先生御承知のとおり、ホルスタインは、搾乳牛と乳雄が出ます。先ほど須賀田局長の方からも答弁ありましたとおり、輸入してくる肉の基準というのはB2、B3、これはまさしく日本の乳雄、つまりホルスタインが雄を産んだ、それが肉になっていく、そこの基準と同じなんですね。
 ところが、この乳雄のところというのは、先ほど局長の答弁のように、価格的にまだきちっと戻っていない。そして、戻ってないそのときに、非常にBSEで負債も抱えている。そして、これからその負債を返済もしていかなきゃならない。こういった時期を考えると、この肉の価格についてはやはり安定したことをきちっとさせてやらないと、生産者の方々も安心して返済にもいかないし、それからB2、B3という、輸入肉との規格、ここのところできちっと勝負ができないということになるわけでありますので、私は、そういう面では、今回の措置というよりも、この制度があることによってB2、B3の国内の生産者、乳雄の安定した供給に役に立つ、このように思っております。
松本(剛)委員 二月二十八日の予算委員会の分科会での議論も、きょうの議論も、いつまでたってもかみ合っていないような気がいたすわけでありますが。
 お話を伺っていて、百歩譲って、二百億円を生産者のために使えば確かに生産者へは大いに資することはあるんだろうと思うわけでありますが、一方で、これは国際的な問題であろうというふうに思っております。大変お忙しい中、茂木副大臣にもおいでをいただきましたのも、この問題が大きく、外国との関係でも、WTO交渉含めていろいろ取り上げられているんではないかというふうに思いますが、どういったところから牛肉セーフガードについて話が来ているのか、また、外務省としてどう認識されているのか、お話を伺いたいと思います。
茂木副大臣 この問題に対します諸外国の反応ということでありますけれども、我が国への牛肉の主な輸出国、アメリカ、オーストラリア、カナダそしてニュージーランドから、これまでもさまざまな機会に、我が国の政府に対しまして、牛肉関税の緊急措置の発動を回避するよう申し入れが来ております。
 具体的に三点ぐらい内容というのはあるわけですけれども、一点は、先ほど来出ております、結局ことしの場合は、昨年がBSEで輸入量が落ち込んだ、そのレベルが回復しているということであり、措置の発動の本来の趣旨である輸入の急増に対応するためとは解されない、これが一点であります。それから二点目に、これを発動いたしますと、高い関税によりまして牛肉価格が上昇する。それは、各国の、アメリカの牛肉業者もそうでありますけれども、日本の消費者それから小売業者それからレストラン等々にも悪い影響を与える。特に、御案内のように、アメリカとかニュージーランドは昨年干ばつでありまして、それだけですら牛肉の値段が上がる傾向にあるんだ、それがこの措置の発動によりましてさらに高くなってしまうんではないか、こういうことから、緊急措置の発動を回避してほしい、こういう要望はなされているところであります。
松本(剛)委員 既に議論が繰り返されておるところで、もうこの点を質疑の対象にはしませんが、先ほども北村副大臣、定められたルールなので発動するという話でしたが、この部分についても、英訳と日本語の法律の関係の整理もまだ残っている部分があるんではないかというふうに思います。
 茂木副大臣、今の話を伺って、諸外国からははっきりと、セーフガードの発動について、関税の引き上げに対しては懸念が示されているというふうに私は理解をしておるんです。そして、今御議論を聞いていただいても御理解をいただけたかと思いますが、今回のこのセーフガードの発動措置によって、私ども理解する限りでは、直接国内の生産者の保護に必ずしもつながるものではない。関税収入はふえるという点は事実だろうと思いますけれども。
 そんな中で、我が国の全体の国益を考えたときに、本当にこれだけ各国が懸念を示してきているものに対して、我が国がやることが適当だと言うことはどうなのか。この辺、外務省として見解をお持ちであればお伺いをしたいと思います。
茂木副大臣 我が国の国益という観点でありますけれども、既に北村副大臣の方からも答弁等々あったかと思うんですが、まさに今WTOの新ラウンドの交渉、国益をかけてやっているところでありまして、アメリカそしてまたオーストラリア等々とはいろいろな部分で意見がなかなか合わない、こういうところもあるわけであります。
 広い意味の国益ということで申し上げると、確かに消費者の利益であったりとかそういう観点も十分考慮しなきゃなりません。しかし、今回の措置の発動、このものだけではなくて、全体の、例えば今進んでいる交渉等々も考えながら最終的に判断はされるべきだ、こんなふうに思っておりまして、もちろん外務省として、農水省初め関係省庁、そしてまた関係省庁の方から関係団体等々の意見も吸い上げていただいて、そこの中で総合的に判断すべきものだ、こんなふうに考えております。
 個人的な見解としては、そういう観点からは、やはり慎重な対応というのは必要なんじゃないかなと思います。
松本(剛)委員 おっしゃったような見解は私も一緒であります。慎重な対応というお話がありましたし、最終的に、総合的に判断するということが必要な局面だろうというふうに思っております。ぜひその点、外交全体をカバーするという意味で、外務省の立場を発揮していただきたいということを御要望申し上げたいと思います。
 この件に関して、私も幾つか質問の通告をさせていただきましたが、かなりの部分が鮫島議員、そして上田議員の方からも御質問がありましたので、重複するところは割愛をさせていただきたいと思います。
 最後に、塩川大臣に、この関税、牛肉セーフガードの話、二月二十八日の予算の分科会で鮫島議員と塩川大臣と御議論されたと思いますし、きょう話があったかというふうに思いますが、二月二十八日のときも、農水省とよく協議をしたい、このように御答弁をいただいたかと思います。今外務省の方も、総合的に判断する必要がある案件だという趣旨の御答弁だと私は理解をさせていただきましたが、大臣として、既に二週間ほどたっておりますので、よく協議をされた結果ないし経緯をここで御披露いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 これは国益に非常に重大な影響を及ぼす問題でございますので、十分に協議をして決定するという方向で進めておりますので、その点、御安心いただきたいと思います。
松本(剛)委員 御安心いただきたいと言われたということは、私どもは、大変いい答弁ということで、安心させていただくということで確認をさせていただいて、この件に関する質疑は終了させていただきたいと思います。
 重複の部分があったので、申しわけありませんでしたが、外務省と農水省の方はこれで結構でございます。ありがとうございました。
 さて、法案の審議に入らせていただきたいと思いますけれども、その前に、きょうイラクの危機の問題がありましたし、また私どもの当委員会としては、日銀の総裁、副総裁をお招きして、参考人としてお話を伺わせていただきました。財務大臣そして金融担当大臣にお話を伺う機会がなかなかありませんので、この機会に、両大臣の御所見を少し伺ってまいりたいと思います。
 経済にとっても大変厳しい状況だということはもう繰り返し申し上げるまでもないと思うわけでありますが、武藤副総裁を送り込んだ財務省として、また岩田副総裁を送り込んだ竹中大臣として、日銀に対してそれぞれどう今期待されているのか、またどういう形で日銀と連携して経済政策を運営されようとしているのか、簡単にコメントをいただきたいと思います。
塩川国務大臣 日銀は、法改正以来、独立性を維持して一生懸命やってきたと思っております。速水総裁のときも懸命に努力されて、かつてなかったことも随分やってこられたと思っております。
 私たちとしては、やはり日銀と一体的に財政、経済、金融、こういうようなものを進めていかなきゃならぬという、それは基本でございますので、その点は密接に連絡してやっていきたいと思いますが、しかし、それぞれの立場と役割というものを、独立性を十分に尊重したいと思っております。
 それと同時に、日銀と政府との間で絶えず意思疎通を図って、共通の目標に向かっては間違いなく意思を統一する。やり方はそれぞれの機関においてやっていくということをいたしたいと思いますけれども、一点、今において十分にとられるべき措置は、できるだけ早く物価の水準を変えて上昇させていくということ、これを双方ともに心がけて努力していきたい、こう思っております。
竹中国務大臣 財務大臣がおっしゃったとおりだと私も思っております。
 あえて二点申し上げるとすれば、一つは、やはり共通の目標に向かってお互いが努力する。その際、政策手段の選択においては、日本銀行の独立性というものを我々としても大切にしていきたい、これが第一の点。
 第二の点は、まさにデフレという未知の領域に我々は直面しております。政府としても、例えば経済活性化のために規制改革をやらなければいけない。その意味では、未知の領域ではあるけれども特区というものをやってみようではないか、活性化の税制に向けて先行減税というものをやってみようではないか、そういう未知の領域に対する一つの試みを行っているわけでございます。
 同じように、日本銀行におかれても、これまでもそういった挑戦はもちろんあったわけでありますけれども、いわばフロンティア精神といいますか、そういうものをともに発揮していくことが必要だと思っております。
松本(剛)委員 塩川大臣、一点確認ですが、今物価水準を上昇に向けることがというお話でしたが、今言われているような物価水準目標を設定するべきだというお話だったというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
塩川国務大臣 それは、日銀の方でどういうふうに手段をとられるかは別といたしまして、私たちとしては、別に物価のターゲットというもの、つまり、ターゲットをつくるということは、何%のものをいつまでにということと、それと同時に、それをどうしてやるかということとが整合性を持って一つの政策として提示されなければターゲットにならないと思っておりますけれども、私たちは、そういう厳しい縛りをするのではなくして、一つの物価のあるべき水準というものを定めて、そこに向かって努力するということでいいのではないかと。
 私は、かねてからこの委員会等で申しておりますように、平成九年のときの日本の物価は、バブル崩壊後ではあったけれども、まだ安定した水準にあったと思っておりまして、そういう事態が早く到来するようにということで努力をしていきたいと思っております。
松本(剛)委員 法案の審議をしなきゃいけませんので、このことは議事録にとどめて、与党の皆さんにも、早くこの続きの議論をする機会をいただくようにお願いをさせていただいて、法案の審議に移ってまいりたいと思いますが、もう一点、これは関税定率法にも関係のある話だろうと思いますが、WTOに関連をして。
 先般、塩川大臣と御議論をさせていただいたとき、二月二十五日の所得税の議論であったかと思いますが、中国の人民元に関する問題意識を共有させていただいたのではないかというふうに思います。このことを、WTOを絡めて何か考えていきたいといったようなお話をそのときにいただいたというふうに記憶をいたしておりますが、その後、これについて大臣の方で何か動きをとられたのか、また内閣の方で何かこれについての問題を取り上げられたのか、伺いたいと思います。
塩川国務大臣 中国元のことについて、内閣で議論したことはございません。また、私もこの問題について、国際的な問題でございますので、方々でこれを主張してきているということでもございません。しかし、先月パリにおいて開催されましたG7におきましても、私の世界経済に対する見方の報告の中の一つとして、貿易が自由化して非常に拡大しておることは結構だ、であるならば、同時に金融も自由化すべきではないか、特に為替について取扱銀行等を開放すべきではないかということを申したのでございまして、特定の国名を挙げて言っているわけじゃございません。しかし、私は、これは機会あるごとにその主張を続けていきたいと思っております。
松本(剛)委員 お伺いした話が重複していると思います。その続きがもしあればということでお伺いしたかったわけであります。閣議では、内閣の中では特にその問題を取り上げてはないというお話でしたので、先へ進ませていただきたいと思います。
 与えられた時間が残りわずかになってまいりましたので、具体的にこの関税定率法の法案について、今回の法案の一つの目的は後発開発途上国の支援だというふうに御説明をちょうだいいたしました。それに支援を目的として、対象品目の拡大であるとかいう法案の改定がとられているというふうに理解をしておりますが、こういったものは各国の方から要望があるものなのでしょうか。そして、そのことによってどのぐらいの効果があると見ておられるのか、こういった試算があれば、いただきたいと思います。
小坂委員長 指名がありません。
 谷口財務副大臣、答弁できますか。
谷口副大臣 後発開発途上国、LDC支援のことでございますけれども、対象品目は、各産業省の要望を受けまして、協議の上、行っておるわけでございます。
 それで、この後発開発途上国に関しましては、一層の支援の必要性が認識をされておることにかんがみまして、国内産業の影響も配慮しつつ、できるだけ後発開発途上国に実質的な恩恵をもたらすように配慮をして決めておるところでございます。
松本(剛)委員 一応、通告をさせていただいた質問だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 お聞きいたしましたのは、何らかの形でフェーバーを与えるということは、国民にとっては、ある程度得べかりしものを差し出すということになるんだろうというふうに思いますから、後発開発途上国の支援ということであれば、やはりそれぞれの国に感謝をしていただく、まあ感謝をしていただかないといけないといって押しつけたらいかぬのですけれども、そういう部分において、きちっと相手の国々の要望を確認していただいて、そういう形でやっていただくという手続をきちっととっていただくようにしていただかないと、一方的にやって向こうは余り感謝をしていないということであると、国民が、得べかりしものを失う中では一番損をする形になるのではないか。それで、どういう形でお決めになっているのかということをお伺いしたような次第であります。
 これからぜひそういう形でお進めいただくように御要望、お願いをしたいと思います。
 私の持ち時間が間もなく終わると思いますので、もう一つ、国際開発協会の法案についてもお伺いをさせていただかないといけないと思っております。
 こういった国際貢献というんでしょうか、援助をさせていただくに当たってのポイントになろうかと思いますが、援助をさせていただくのは、大きく分けたら、二カ国間と、こうした国際金融機関を通じて行うものと、二種類のものがあるだろうというふうに思います。
 各議員の先生方もそうであろうと思いますが、地元へ帰られると、私のところにもたくさんあるのですが、これだけ国が赤字だというんだったら、海外にぼんぼんお金をやらぬと、そっちを削ったらいいんじゃないか、こういう声は地元の方ではよく出てくる話であります。
 広く御理解をいただくように我々も話をするわけでありますけれども、最大のポイントは、相手の国がどのぐらいそれを感じてくれているのかということが何となく伝わってきてないということに問題があるのではなかろうか。そうなりますと、二カ国間援助はあれですが、国際的な機関を通して行った場合、どのぐらい日本が努力をしているのかがどのぐらい伝わっているのかというのが大変大きなポイントになるのだろうというふうに思います。
 残念ながら、今回の国際開発協会についても、このIDAについては特に日本の出資比率が大変高いわけですね。世銀そのものであったり、民間に行くIFCなんかに比べても、日本の出資比率は相対的にこのIDAは高いのではなかろうかというふうに思います。いわば、子会社の部分にたくさんお金を出して、もとの親の、最も決議ができる部分の出資比率は必ずしも高くない。この辺、国際開発金融機関の部分で、どうも日本は負担ばかりさせられているのではないかという懸念がぬぐえないような格好になっているような感じがするわけですけれども、こういった国際的な開発金融機関の援助について、この効果をどう考えて今回これだけの出資をお決めになったのか、それだけお伺いをして、私の質問を終了させていただきたいと思います。
谷口副大臣 今回は、二国間援助ではなくて、IDA、国際開発協会を通じて援助したわけでございます。
 この利点について申し上げさせていただきますが、第一は、援助に関する専門的な知識経験が蓄積をされているということで、これらを活用して効果的な援助を行うことが可能になるということがございます。
 また、国際機関としての中立的な立場から途上国に対して適切なアドバイスを行える。また、融資を中心とした資金供与をみずから行うほか、協調融資、保証といった仕組みを活用することによって、いわば触媒的な、途上国の資金の流れを促進するというようなことが期待できるということでございます。
 また一方で、被援助国の立場で見ましても、必ずしも行政能力が十分ではない途上国にとりまして、このIDAの豊富な知識経験に裏打ちをされた融資、政策のアドバイスというのは極めて有益であるというようなことからも高く評価されておるわけでございます。
 また、先ほど先生おっしゃったように、今回も、出資の割合につきましても、従来に比べまして、前回増資は我が国が一八・七%でございましたから、これを一六%、二・七%減らしたわけでございます。
松本(剛)委員 もう終わりますが、ちょっとお聞きしたこととずれていると思いますのが一点と、今おっしゃったことは財務省の政策評価書等を見れば大体答えが書いてある話で、私は、二カ国間の援助に対して、本当に向こうの国からどのぐらい感謝されているかというのをどういうふうにはかっておられるのかをお聞きしたつもりであります。
 改めて、そういう点についても御留意いただいてお進めいただくことをお願いして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 国際情勢が大変に緊迫の度合いを増す中で、関税定率法とIDA出資法の審議ということですので、法案の中身にも関連しながら、ちょっとそのほかのこともお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、この関税定率法ですけれども、特恵関税制度というのが入っているわけですね。もちろん、開発途上国からの輸入産品に対して通常の関税よりも低い税率を適用して、相手国の経済発展を促進しようという考え方自体は間違ってないというふうに思いますけれども、ただ、特恵受益国なんかを見ますと、私は一つ気になるのは、中華人民共和国、中国が入っているんですね。
 私も、日中友好はもちろん大事だと思っていますし、中国が経済発展をしていくことによって、そしてまた日本とイコールフッティングな形で競争ができるようになっていけば本当に望ましいのだろうというふうには思いますけれども、ただ、こういう景気の状況の中で、大臣の選挙区も中小企業の町でしょうし、中国産の製品がいっぱい入ってきて大変なんだという声はよくお聞きになっているんだろうと思う。副大臣の選挙区もそうなんでしょうね。そういったこともありつつ、あともう一つは、中華人民共和国、中国は核兵器まで持っているわけですね。そういうふうな国に対して、核兵器に使うお金を経済発展の方につぎ込んでもらえば、また違う局面は開けてくるはずなんだろうと思うんですね。
 そういう意味で、この特恵受益国、特恵待遇国ということについて、我が国として明確な基準をつくるとか、あるいは国際的にそういった基準をつくっていくとかいうふうな働きかけをするべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
谷口副大臣 国際的な基準を定めるような働きかけをすればどうかということでございますが、特恵は、ガットにおきまして、先進国から途上国に対して自発的に与えることができるものとされておりまして、一義的な国際的基準は定められておらないわけでございます。
 特恵の運用に当たりましては、多くの供与国は、開発途上国を支援するという制度の趣旨を踏まえまして、所得水準を基準としつつ、さらに途上国からの要請等も考慮しながら、おのおのの制度を運用しておるわけでございます。
 このような特恵関税制度の性格にかんがみまして、各国がおのおのの事情に応じて運用するということが適当だというように考えておるわけでございます。
中塚委員 ですから、その所得等の事情ということについても、別に軍事費を使わなければもっとほかの部分にお金を回していけるわけでありますし、おのおのの事情ということもあるのであるならば、特恵待遇の見直しということもありますが、例えば、特恵関税を適用するから、ちょっと核武装というのは考え直した方がいいんじゃないのかというふうなことを我が国として言ってみてもいいんじゃないですか。財務大臣、いかがですか。
塩川国務大臣 本音はいろいろ言えると思いますけれども、なかなか国際関係というものは建前が大事でございまして、そういう見解を言いまして、それぞれの国内の重要な政策、特に安全保障問題なんというのはそれぞれの国の固有の一番大事な政策ですから、これを不当に介入するということはどうかと思います。
 しかしながら、我々としては、そういうことに対して、おっしゃるような問題について関心を持っておるんだということの意思は通じるようなこともいろいろな手段を通じて努力すべきであって、ストレートに言うべきものではないだろうと思います。しかし、我々の意思というものをある程度察知してもらうような、お互い意思が通じるような方法で伝達をすべきことではあろうと思います。
中塚委員 でも、やはり、本音とか建前とかいう話じゃなくて、国民の生命財産を守るということが政治に課せられた一番大事な使命であって、株が四分の一、土地が十分の一で、拉致問題で生命も守らぬということじゃ、一体この国の政治は何なんだということになりかねないわけですね。
 また、今戦争が起こるんじゃないかというふうに言われている中にあって、私は、国際協調主義、平和主義の理念を持つ我が国が、特恵はいいんですよ、特恵はやってもいいんだけれども、やるならやるで、相手国に我が国の主張はきちんと伝えるべきではないか。世界の平和にいかに貢献していけるかというのは経済大国としての日本の大きな役割だと思うんですね。
 ぜひとも、中国に行かれるようなことがあれば、このことを相手の方にもお伝えいただきたいというふうに思います。
塩川国務大臣 ちょっと、誤解があってはいけませんので。
 私たちは、中国の要人との話し合いでそのことは言っておりますけれども、特恵関税の問題の交渉の中でそれは言わないという趣旨でございますので。政治問題としてお互いが話をするときは、それはもう堂々と私たちも主張しております。けれども、今おっしゃるような関税の特恵制度の問題に関連してそれを言うということはやっていない、こういうことでございます。
中塚委員 先ほど松本委員の質問の中でも、得べかりし利益の喪失というようなこともありましたので、私は、日本としてそれだけの失うものがあるんだったら、やはり得るものもなければいけないというふうに思います。
 次に、十三日に共同通信の配信なんかで流れまして、地方紙では一面に載ったような記事なんですけれども、北朝鮮への経済制裁の問題です。もし北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を行った場合は、国連安保理の制裁決議が得られなくても、米国など多国間で連携し、現行の外為法に基づく送金停止などの経済制裁措置を発動する方針を固めたというふうな記事が載っておりました。
 この質問を伺う前に、今回、アメリカとイギリスが、国連決議なしでも、四十八時間以内にフセイン大統領が亡命しなければ攻撃を開始するというふうな方針をとっておりますが、この国連決議なしのアメリカ、イギリスのイラクに対する攻撃ということについて、財務大臣はどういう御所見をお持ちですか。
塩川国務大臣 それは私の所管事項ではございませんので、私の個人の意見だということで受けとめていただかないと、政治問題がまた違うところに行きましても困りますので、その意味において申し上げたいと思っております。
 一つは、やはりフセインの政治志向というものは独裁であるということ。ですから、何をやるのかわからないということ、これが一つございます。
 ところが、我々は、民主国家というのはこうして議会で議論を、きちっとしたことをやっておりますので、その点はある程度透明になってきておる。そこの違いがあるんだということを基準に考えなきゃならぬということ。
 それからもう一つは、非常に危険な化学兵器を多分に持っておるということ。これは国際的に常識として考えられておると。これは拡散させてはいかぬ。そのためには、何とか防止しなきゃいかぬということ。これはもう、一つの事実だろうと思っておりまして、その点において私は、現在のイラク政府のやっていることは不透明で、我々信頼することはできない、こう思っておりますので、この拡散の予防には全力を挙げてやはり国際的に協力すべきだと思っております。
 一方、アメリカとの関係でございますけれども、日本の過去五十数年にわたりまして見てまいりましたら、日本とアメリカとの間にはそういう道義的な責任はお互いあるだろうと思っております。ましてや、現在の日本の安全保障を考えます場合に、日本は盾となっても矛は使わないという安全保障の政策をとってまいりました。けれども、今日、東アジアの方においては非常に不透明な、どうなるかわからぬような、そういう暗雲が垂れ込めておるというような感じがいたします。そうであるとするならば、矛と盾はやはり一つにならなきゃいけないんじゃないか、私はそう思うのでございまして、盾だけでは国の安全はできない。そういう意味におきまして、やはり日米同盟というものは非常に大事だろうと思っております。
 これは私の個人の考えでございますから、絶対これは政府の意見ではないということだけはっきりと申し上げておきます。
中塚委員 日米同盟が大切だというのは私ももちろん否定はいたしませんし、大変重要な二国間関係だと思いますが、今回、決議なしでアメリカ、イギリスがイラクを攻撃する。他方、今度北朝鮮問題が緊迫化してきた場合に、経済制裁ということについて考えた場合に、経済制裁が本当に実効性を上げるということであるならば、やはり国連決議に基づいて経済制裁をした方がより効果は上がるはずですね。例えば、北朝鮮ですから、中国とかロシアとかが北朝鮮に対する経済制裁に反対したということになった場合に、アメリカと日本の二カ国だけで経済制裁をしても実効は上がらない、私はそういうふうに思うんですよ。
 ですから、矛と盾の関係をおっしゃいましたけれども、北朝鮮の問題があるからアメリカを支持するということではなく、やはり北朝鮮の問題があるからこそ国連決議をちゃんととった上でイラクに対する攻撃というものも行われなければいけないし、北朝鮮問題が緊迫化した場合には、国連決議に基づいての経済制裁の方がより効果を上げることになるんではないのか。そういう意味で、国連決議というのは重要なんではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 国連決議をとるということになりますと、国連の合意というものは、それは国連の中で、それぞれの参加しておる国がやはり自己の国益というものを中心に考えますから、先ほど言ったテロの防止で一致するということは言っても、実際、実行については、やはり国益優先でありますので、意見がまとまってこないのが現状なんです。
 そういうことをただ傍観して国連の決議を待っておるのか。あるいは、ちょうど第二次世界大戦が始まります前に、ミュンヘン会議がございまして、チェンバレンの失敗を私たちよく見ております。でございますから、国際政治というものはそういうふうに動いていくものだということをやはり意識して、自分らの国益をどう守るかということは、国の自主的な判断で決めるべきであろうと思っております。
中塚委員 十九世紀的な主権国家論を振りかざすと世界じゅうから戦争はなくならないんで、もちろん、独裁者を甘やかしちゃいけないのは、大臣のおっしゃったとおりだと思いますが。
 最後に一つ。
 七時半から、経済金融関係の会議が開かれるというふうに伺っております。
 今、速報で見ましたら、アメリカは十一兆円規模の補正予算を編成するというふうなことだそうです。戦費や、あとイラクの復興支援ということなんでしょうが、十一兆円規模の補正予算を編成する。他方、ドイツも二兆円程度の経済対策を実施するということになっているわけなんです。
 我が国も、米英を支持するというふうに言っている以上、攻撃ということだけじゃなく、やはり我が国の国内の経済というものを真剣にウオッチしていかなきゃいけないということでありましょうし、総理も戦費は負担しないというふうにたびたび予算委員会で答弁されていますが、復興支援ではできることもあるんじゃないのかというふうな気がいたしますけれども、この復興支援等のために、今後補正予算編成ということはお考えになりますか。
塩川国務大臣 まだ、現時点では私は全然考えておりません。ましてや、財務大臣として、その問題は一切考えておりません。
中塚委員 終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 法案の質疑の前に、若干、銀行の手数料問題について簡単にただしておきたいと思います。
 二月二十四日の予算委員会で、銀行の手数料問題について質問をいたしました。ATMの手数料が、なぜ大手が横並びで百五円なのか、また、両替機での手数料も、百円玉を一円玉に両替すると二百円の手数料が取られる、こういう問題を取り上げたわけであります。
 その後、公正取引委員会は三月十二日に調査結果を公表しておりますので、公取にまずお聞きをしておきたいと思いますが、今回のATM手数料に関する調査で、大手四行でコストを積み上げて百五円とした銀行があるのかどうか。これをまず確認しておきたいと思います。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 当方の調査結果によりますと、四行ともコストを積み上げて百五円というふうに決定したものではなくて、土曜日の他の時間帯あるいは日曜日の手数料が百五円であるということに合わせたものであるということでございました。
 それから、検討に当たりまして、ATMの利用コストを試算している銀行と、試算を行っていない銀行があったということでございます。
佐々木(憲)委員 つまり、今回、手数料を百五円、横並びで決めたということでありますが、それはコストを積み上げて決めたものではない、それからATMの利用コストを試算していない銀行がある、これが公取の調査結果だということであります。
 竹中大臣にお伺いしますが、コスト試算もしないで一方的に値上げを決める、しかも各行横並びで行う、こういう銀行の姿勢は果たして正常なのかどうか。大臣の見解を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、公正取引委員会の調査結果において、今答弁があったような結果が出ているというふうに認識していますが、銀行という非常に大きな組織を持った企業で、それぞれの非常に細かな行為について事細かな原価計算のようなことを行うというのは、銀行のみならず、一般論としては、やはりなかなか難しいことではないかというふうに思います。
 銀行として、例えばATMの営業時間外の手数料であれば、ATMの銀行の営業時間外に稼働させるために追加的に生ずるメンテナンスの費用とか、サービス提供にかかる費用とかを勘案して、それぞれのやり方で、個々の銀行において独自に決定しているというふうに理解をしております。
佐々木(憲)委員 極めて銀行寄りの答弁でありまして、コスト計算もしないで何で手数料が決められるのか。これが正常だという認識は、私は全く理解できません。しかも、横並びであります。
 もう一つの側面からいいますと、では、百五円と決めた、それを押しつけるわけですから、明らかにこれは優越的地位の乱用ではないかと思うんですね。
 竹中大臣も、私の質問に対する答弁で、「その個々の経営判断に優越的な地位の乱用がないように、これは公取でしっかりと監視をしていただく。さらに、競争がさらに促進するような環境を我々としてはつくっていく必要があると思っております。」こう答弁されていたと思うんですが、これは覚えていますね。
竹中国務大臣 一般論として、もちろん、優越的な地位を乱用して云々ということは許されることではないというふうに思います。
 しかし、今回の公取の報告の中でも、この四行間で土曜日のATM手数料の有料化について、決して話し合いが行われたり、「共通の意思が形成されるなどの事実関係は認められなかった。」というふうに言っているわけでありまして、これは手数料でありますから、先ほども申し上げましたように、それぞれの銀行で、例えば追加的にどのぐらいの費用がかかっているのか、それをメンテナンスするためにどのような費用があるか、これは個々には当然のことながらいろいろと計算しているわけですけれども、例えばそれにかかった共通の費用をいかにそれぞれに案分するか、そういった意味での原価計算は、やはり一つ一つには大きな組織ではできないのではないかというふうに私は思います。
 その意味では、優越的な地位というふうにおっしゃいますが、銀行大手は同じような料金であるけれども、それに準ずる銀行について料金はやはり違いますし、地銀においてもそれぞれ違っている。そうした中で、決して一方的に価格を押しつけるということではなくて、それぞれに、それなりの競争メカニズムの中で各行が経営戦略として価格設定をしているというふうに思います。
佐々木(憲)委員 追加的な費用あるいはメンテナンスの費用、これを計算していると思うとおっしゃいましたが、計算していないじゃないですか。
 先ほどの公取の報告によっても、コストを積み上げて百五円とした銀行はないというわけでありまして、大臣は何か非常に、各銀行とも計算をして決めたようなことをおっしゃいますけれども、これは全く事実と違うわけであります。しかも、横並びで百五円なんというのを勝手に決めて押しつけるわけですから、これは一方的な通告だけでありまして、何の競争原理も働かないわけであります。
 公取は、カルテルについて、その調査結果に基づいて注意というようなことを一応されたようでありますが、今回は優越的地位の乱用というようなことは調査をされていないわけですね。これは当然調査すべきだと私は思うんですが、いかがでしょうか。
上杉政府参考人 今回調査を行いましたのは、従来から、各種の手数料につきまして大手銀行が値上げを実施しますと、他の銀行が追随するという形が見られましたので、今回の土曜日のATM利用手数料につきましても、同調的な行動がとられたというような報道がございましたので調査を行ったものでございます。
 なお、私どもは、調査を行う場合には、まず事実関係の究明ということを行いまして、それに独占禁止法の諸規定に照らして問題があるかどうかということを調べる、こういうことを行いますので、当然、優越的地位の乱用というような問題についても視野に置きながら調査を進めたということでございまして、そのような観点からの問題は見られなかったということでございます。
佐々木(憲)委員 それはATMについてそういう結論を出されたと思うのですが、私はATM自体も問題だと思いますが、それ以外も、例えば当座小切手用紙の交付、つまり、当座勘定を開いている方が小切手用紙五十枚つづり一冊を交付される。その場合に、今まではこの手数料が六百三十円だった。ところが、新しい手数料は、昨年十二月二日には二千百円に上がっているんです。三倍以上です。あるいは、手形用紙五十枚つづり一冊、これが、千五十円だったのが三千百五十円。三倍ですよ。これは昨年十二月二日に、両方ともみずほ銀行です。
 こういうことが一方的に行われるというのは、ここに何の競争原理も働いていないわけです。例えば、三千円以上に上げたいと思いますが、いかがでしょうかという相談はありましたか。ありませんね。一方的にやるわけです。つまり、まさにこういうことは優越的地位の乱用に該当する疑いが強い。
 今回は、ATMの手数料の問題、これについてのカルテル的行為を調査されたようですけれども、しかし、それ以外にも、手数料のこのような一方的値上げというのは優越的地位の乱用の疑いが濃厚であると私は思いますけれども、これからも、こういう問題については全く調査をする意図も、そういう視点からの考慮もないという立場なんでしょうか。それとも、多少はこういう問題について検討していく、あるいは調査していく、そういう姿勢はあるんでしょうか。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 公正取引委員会として、金融機関による優越的地位の乱用というような問題が多々指摘されておりましたので、平成十三年七月に、金融機関の取引慣行につきまして調査を行い、その結果に基づきまして、優越的地位の乱用に当たる場合についての考え方を示し、それを公表したところでございます。
 したがいまして、私どもとしても、金融機関による優越的地位の乱用というものについては十分注視してまいりたいと考えておりまして、具体的な情報がございますれば、この考え方に基づいて厳正に対応したいと考えているところでございます。
佐々木(憲)委員 事実関係は、私が指摘した問題はほかにもいろいろありますので、それを調査して十分対応していただきたいということを要望しておきたいと思います。
 では次に、法案についてお聞きをしたいと思います。
 今回の法改正の中に、通関の一層の効率化という立場から、海上貨物到着即時輸入許可制度というのがあります。これは、税関検査が不要と判断された場合、相手国から出港する時点で申告を受けて予備的な審査を開始する。つまり、出港の段階で予備審査を行う、港に入るまでに輸入許可を出すというものであります。
 そうすると、貨物が到着したら、コンテナヤードに搬入せずに、直ちに国内に持ち込むということになるわけですね。これは、現物検査というものは全く行われないことになると思うのですが、いかがでしょうか。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 海上貨物の到着即時輸入許可制度でございますが、基本的には、今先生おっしゃられたとおり、まず大前提として予備申告が必要でございますが、その予備申告が行われた海上貨物のうち、税関における審査の結果、取り締まり上の支障がないとして検査が不要とされた貨物につきましては、その貨物を積載した船舶の到着が確認され次第、輸入を許可するということでございまして、予備申告により検査扱いとなったものについては、従来どおり保税地域へ貨物を搬入して、そこで実際に実物を審査、検査を行って、輸入貨物を許可することとなるということでございます。
佐々木(憲)委員 結局、現物検査は行わない、こういうことになってしまうわけでありまして、それでは、その前提となっている、今おっしゃいました検査が不要と判断をする、これは何を基準にして不要であるという判断をされるのでしょうか。
田村政府参考人 私ども、貨物の通関に当たりまして、これは全般的にそうでございますが、限られた人員で社会悪物品等の流入を水際で効果的に阻止しなければなりませんので、そういう観点から、いろいろさまざまな情報を蓄積したシステムであります通関情報総合判定システムというものを持っております。そして、これを基本的には活用することによって、適正な申告が行われていない可能性が高いいわばハイリスクな貨物なのか、あるいはローリスクな貨物なのかによって選別をいたしまして、そういう判定の中からいわば決めてきているということでございます。
佐々木(憲)委員 簡単に言いますと、総合判定システムというのは、疑いという点での情報があるかどうか、あるいはこれまで問題を起こしている企業であるかどうか、そういうような情報を基準にする。
 そうしますと、情報がない、あるいは従来問題を起こしていない企業が輸入すると、これは検査が不要であるというふうになりまして、フリーパスになるわけですね。
 しかし、そういう対象が、例えば輸出をする積み出しの港で不正なものが混入される、こういう場合、自動的にフリーパスになるわけです。そういうもののチェックが働かなくなるということで、我々は、こういうやり方というのは、水際での例えば社会悪のチェックなどを後退させるものではないのかということで、これまでもこれに厳しい批判をしてきたわけですけれども、今回も、この新しい制度の導入によって、保税制度そのものも形骸化していく、そういう危険性が非常に強いということであります。
 この点、もう時間が参りましたので指摘だけにとどめておきますが、こういうやり方については反対であるという立場を表明して、質問を終わりたいと思います。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 法案に即しながら何点か時間の許す範囲でお伺いしたいのですけれども、今回の法改正にかかわりましては、いわゆる侵害物品に係る水際措置の強化ということで、育成者権侵害物品を輸入禁制品に追加した、また、既に輸入禁制品になっている特許権、意匠権などの侵害物品とあわせて輸入差しとめ申し立て制度の対象にしているという点については、政府の姿勢を示すものとして、時宜を得た対応であると私は評価をしているわけです。
 そこで、最近の知的財産権侵害物品の輸入差しとめ実績の件数を見てみますと、一昨年で、全体で二千八百十二件、その前年を七七%上回っておるわけですが、公表されておる昨年の一月から九月での実績では、これがさらに四千百九十六件というふうになっております。
 さて、権利の種類別で見ますと、この四千百九十六件の大半は商標権、著作権で占められておりまして、今回の改正で輸入差しとめ申し立て制度の対象となる特許権、意匠権はほとんど差しとめられていない状況ではないかとデータからは推察するわけです。今回、育成者権も新たに加えられるわけですけれども、これらも、そもそも水際で差しとめることは非常に困難であろうと推察するわけですが、その点について、どんな対応をお考えなんでしょうか。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま先生からお話がございましたように、今回の改正法案におきまして、一つは育成者権侵害物品の輸入禁制品の追加を図り、また、特許権、意匠権等侵害物品に係る輸入差しとめ制度の導入、この二点をお願いしているところでございます。
 今回の法改正に係ります知的財産権侵害物品の取り締まりに際しましては、例えば特許権、意匠権、こちらの方につきましては、特許庁の特許等の情報を税関においてオンラインで検索するようなシステムをつくるとか、あるいは育成者権につきましては、農水省の、例えばDNA鑑定とか、そういった技術を活用することで協力をいただくとか、そういった効率的、効果的な実施も図ってまいりたいと考えております。
 また、税関におきましては、現在、知的財産権の侵害物品に係る業務を専門的に処理する者として知的財産調査官等が配置されております。これらの要員につきまして、これまでも何回か充実を重ねてきておるところでございますけれども、知的財産権侵害物品、非常に数もふえてきております。特許権等につきましては、先生がおっしゃったように数は余りありませんが、総体的に非常にふえてきておりますので、知的財産権侵害物品の取り締まりの重要性という観点から、今後ともこうしたスタッフの面におきましても充実に努めてまいりたい、このように考えております。
植田委員 今も局長のお話で出ておりましたので、この知的財産調査官というポストは、実際、税関では一ポストしか増設されへんというふうに聞いています。そういう意味で、法律は整備した、これは私はいいと思うんですよ。実際、私は賛成するわけですから。ただ、本来、実行できる体制をしっかりとこしらえぬことには、法はできたものの、ではそれを実行しようと思ったら、非常に心もとない体制ではないだろうか。まず執行体制を十分整備した上で、それを実行あらしめる、それを根拠づける法整備というのが普通手順なんじゃないかと思うんですが、その点どうお考えか。
 もう一点、少なくとも知的財産権にかかわっては、今もそれぞれの各省庁のノウハウ等々のお話もされていましたけれども、当然これは非常に高度な専門知識を要するわけでございます。一朝一夕にそういうスキルが身につくわけじゃないわけですけれども、税関職員のスキルの開発、専門知識の習得について特段の対応、体制というものは考えておられますか。税関職員の方々に対してそうした専門知識を習得させていく、それについては具体的にどういうことを考えておられますか。
 この二点、お願いします。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 まず第一点の、知的財産調査官を初めとした人員の面でございますが、先生おっしゃるように、確かに、数としては極めてわずかでございますし、知的財産調査官等専門的に当たっている人数だけでとりますと、十四年度も二十五名程度でございます。ただ、少し前の年で比べますと、例えば九年度ですと二十二名ぐらいでしたから、少しずつではございますが、人員はふえてきているという点を申し上げたいと思います。
 もう一点、知識や技能の開発といいますか、育成でございますけれども、まさに知的財産権の内容は千差万別でございますし、登録件数等も膨大に上がっているわけでございます。このような状況のもとにおきまして水際取り締まりの実効性を確保していくためには、まずは権利者から侵害に関する的確な情報の提供をいただく、そして、そうした情報を含めて、職員に対する研修を十分実施して、職員の能力の向上に努めていく、これがまず第一だと思います。
 このため、権利者に対しまして輸入差しとめ申し立て制度の利用を促して、そして、知的財産権の設定内容とか、あるいは本物とにせものとの見分け方等の情報、これをまず権利者から教えていただいて、それをきちっと周知していくということがあります。
 そういった周知のほかに、税関におけるさまざまな研修あるいは知的財産権全体にわたるセミナーの開催等を含めまして、職員の知識や技能等の習得を図っていきたい、そのように考えております。
植田委員 その程度のものだろうと思いますので、時間がありませんから結構です。
 次に、今回は、通関の一層の効率化ということで、簡易申告制度の改正等々、いわゆる効率的な業務運営を図っていくという観点から改正が行われているわけです。これは、この間の経過、改正のたびにさまざまな業務運営の効率化を図ってきたということは私も承知はしておりますが、いずれにしても、幾らIT化等々の促進で機械化、合理化をやったとしても、機械が選別したいわゆる重点的審査、貨物の検査というのは、最終的には通関部門の職員がやるわけです。
 これは、毎度毎度、年中行事のように聞いておることですけれども、要員にかかわって例えば去年聞いたときの答弁は、税関の人員配置については機械化、重点化により事務の効率化を図りながら、毎年、業務量の推移や職場の実態を踏まえ見直しを行っている、こういう答弁ばかりいただいておるわけですけれども、それは結果の話ではなくて、皆さん方のお立場として、要するに、現状においては税関の職員というものを増員せなあかんとお考えなんですね。
 実際、ちょびちょびとはふえていますから、そこは答えやすいとは思うんですよ。ふやさなければいかぬなという事実認識、現状認識をお持ちなんですか、お持ちでないですかということを私はいつも聞いているんですが、いかがでしょうか。
谷口副大臣 今、植田委員がおっしゃっていただいたように、税関の業務は、ここ十年近くで見ますと、輸入申告件数は約二・四倍になっておりますし、空港入国者数は約一・五倍になっておるわけでございまして、業務が煩雑また非常に困難な状態になっておるわけでございます。
 そんな状況の中で、先ほどもおっしゃったようなIT化に努力をしたり、効率化を今まで図ってきたわけでございますけれども、麻薬、覚せい剤、銃砲等の社会悪物品の水際取り締まりの強化のためには、やはり我々も税関職員の増員が必要であるとは考えております。
 そんなこともございますが、一方で厳しい行財政事情がありますので、引き続き、先生おっしゃったような定員の確保のために、我々としても最大限努力してまいりたいというふうに考えております。
植田委員 要するに、ふやさなければいかぬというのは共通認識だということは今おっしゃったとおりで、いろいろな枠組みの中で努力しますと、いつも、千度私聞いて、ふやさなければいかぬと思っているんですとさえ言っていただければ、しつこく聞くこともなかったのでございます。
 ただ、ここまで質問通告で細々とは言っていませんけれども、例えば、通関部門の職員の働く職場では、去年から全国の八官署で執務時間外の通関体制の試行が行われて、元日を除くすべての日を開庁とした対応がトライアル的に実施されているわけです。これは、増員されないままに、限られた人員の中でやりくりをしているわけですね。これは現時点でどうなっているかということもやはり伺いたいところです。
 実際、この件については、とりわけ港湾における国際物流の促進を図る観点からすれば、港湾の二十四時間のフルオープン化というのが進んでいる。そうしたことで、今後の動向が注目されるわけですけれども、税関では、現行のいわゆるトライアル、試行をもとにして、七月には本格実施に向けた検討が行われると聞いています。
 仮に本格実施になれば、これは当然増員せぬことには対応ができなくなるだろうということを私懸念するわけですし、業務負担が高まれば適正迅速な通関が阻害される場面も出てくるだろう。そういうことがないように体制の整備をしていただきたいわけですけれども、先ほど、ふやさなければあかんとおっしゃったところには、今申し上げた点についても当然念頭にあるということですね。それだけ確認させていただけますか。
谷口副大臣 今先生がおっしゃったように、二十四時間フルオープン化等々、やはり業務の上でも大変複雑化しておるわけでございますし、また人員が必要な状況でございますので、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、増員は必要だというその考えの中で、最大限私どもとして努力をさせていただきたいというふうに思います。
植田委員 現実に、去年なんかのワールドカップのときでも、実際、全国から、言ってみれば成田等に人を張りつけたわけですね。その場合、不正薬物の摘発が、その前の年、一昨年の四倍もあった、三十六件摘発できた。これは、一昨年よりも去年の方がふえたというよりは、むしろ巧妙な事件に対して人員を、体制をとったことで、隠匿したケースを適切に摘発することができた。例えばのみ込みなんかも九件も発見されているということを聞いておりますけれども、これはやはりきちんと多くの検査職員を配置した、それで効果的な取り締まりができたということの証左だというふうに私は思うわけです。
 その空港の話で、最後、一点伺いたいんですけれども、平成十七年に中部国際空港が開港する。これは二十四時間空港を目指しているようですけれども、当然、名古屋空港、現在の小牧の需要を上回るということは見込んでいるわけですけれども、その辺の見込みがどうであるのかという点。
 そして、その見込みから導き出されるのは、業務量が現在よりも当然上回るということでございますけれども、実際それに対応する税関職員が、では、採用したからすぐその職責を全うできるものではないわけですから、当然ここでも十分な要員を確保するよう最大限政府としても努力をされたいと思っておるわけですが、その点の要員の確保について。
 この二点、中部国際空港の件に限ってなんですけれども、いかがでございますでしょうか。
谷口副大臣 今おっしゃったように、十七年三月開港予定で、今中部国際空港が建設を進められておるわけでございます。
 この開港に伴う要員につきましては、当該空港における国際空港需要、また内外航空会社の具体的な運航計画等を見きわめつつ、出入国旅客の検査等、税関業務の処理に支障のないように、前向きに人員の確保と申しますか、適切な人員の確保を図ってまいりたいというように考えております。
植田委員 ぼちぼち時間になるかと思いますのでもう終わりますけれども、今いろいろな例を出しながらしつこう増員が必要やなという話ばかりさせていただいたわけですけれども、なぜ私がそういうことをしつこう聞くか。迷惑な質問じゃないと思うんですね、そのことを聞くこと自体は。
 これまで、税関行政というものは、税関職員の努力によって、少なくともその時々の社会経済情勢に的確に対応してきただろうと私は評価するから聞くんですよ。その責務はきちっと果たしてきただろう、現場の職員の皆さんの御努力で。そうした方々がこれからも適切にその職務が遂行できる、その責務を果たすことができる環境を、やはり政府として常に問題意識を持っていただきたいということで、関税定率法にひっかけてこの要員の話を聞かせていただいたわけでございますので、今副大臣の方から御答弁ありましたことが結果としてきちっと出るように、その結果を見て、またいずれお伺いする機会があろうかと思います。
 以上で終わります。
小坂委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表して、関税定率法等の一部改正案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正案の両案に反対の討論を行います。
 関税法案に反対する理由の第一は、加工再輸入減税制度の対象品目への革製履物の甲の追加が、一層輸入を促進し、我が国の革靴製造産業の空洞化と衰退を招き、特に圧倒的多くを占める中小零細の製造業者、職人に倒産、廃業など深刻な打撃を及ぼすからです。
 第二に、石油関係の関税の還付制度は、石油精製業者などへの還元がそれぞれ二十億円弱に達しています。これは大企業優遇の性格を持つものであり、その延長は認められません。
 第三に、簡易申告制度の改正は、輸入品現物に対する検査体制を骨抜きにし、貿易の公正で安全な発展を阻害する可能性のある同制度を一層促進させるものです。また、海上貨物到着即時輸入許可制度は、水際でのチェック体制と保税制度を形骸化するものであり、賛成できません。
 なお、港湾問題では、現在、税関の執務時間外における通関体制が試行されていますが、多くの問題が明らかになっており、本格的整備は急ぐべきではありません。
 本法案には、特恵関税制度、農産品の特別緊急関税等の適用期限延長、輸入禁制品の追加等、賛成できる点もありますが、以上の理由から、法案全体としては反対します。
 なお、国内生産者保護のための牛肉に係る関税緊急措置制度は守るべきであります。BSE事件を考慮しても、対日輸入について、今後もさまざまな原因によって増減する可能性がありますが、その都度法律の特例をつくることはこの制度を骨抜きにしかねず、民主党修正案には賛成できません。
 次に、国際開発協会増資法案についてです。
 第一に、国際開発協会を含む世銀グループは、アメリカが自国の戦略的利益を追求するための経済的道具となっており、本法案による日本の追加出資は、アメリカの世界戦略を補完する役割を果たすためのものだからであります。
 第二に、国際開発協会を含む世銀グループの進める構造調整融資は、画一的な経済政策への変更を融資条件とし、途上国に緊縮財政、公的部門の民営化、市場開放などを押しつけてきました。その結果、福祉予算削減、増税など国民に犠牲をもたらし、一部の成功例を除き、経済困難に陥った多くの国を混乱と貧困化に陥れ、債務増大をもたらしています。九〇年代後半のアジア経済危機では、危機を拡大する役割さえ果たしました。
 国際開発協会の今回の増資は、世銀グループのこの仕組みを温存したまま融資規模の拡大を図ろうというもので、これでは、同協会が目的とする後発発展途上国支援の拡大どころか、世銀と途上国間の矛盾を拡大することになります。
 以上、両法案について反対であることを表明し、私の反対討論を終わります。
小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより採決に入ります。
 関税定率法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、生方幸夫君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 ただいま議決いたしました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、七条明君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守新党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。松本剛明君。
松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。
 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、国民経済的観点に立って国民生活の安定に寄与するよう努めること。
   なお、関税の執行に当たっては、適正・公平な課税の確保により一層努めること。
 一 関税暫定措置法の牛肉に係る関税の緊急措置の延長に関しては、その発動に当たり、平成十三年九月のBSE発生以降牛肉消費が不安定的に推移していることにかんがみ、その影響に配意すること。
 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の国際化及び電子商取引等の拡大が進む状況下で、税関における事務の一層の情報化・機械化を図るとともに、従来にも増した執行体制の整備に特段の努力を行うこと。
 一 最近における国際化の著しい進展、相互依存等による貿易量、出入国者数の伸長等に伴う業務量の増大、銃砲、覚せい剤をはじめとする不正薬物、知的財産権侵害物品、ワシントン条約該当物品等の水際における取締りの国際的・社会的重要性にかんがみ、高度の専門知識を要する税関業務の特殊性を考慮し、職務に従事する税関職員の定員確保はもとより、その処遇改善並びに機構・職場環境の充実等に特段の努力を行うこと。
   特に、港湾の二十四時間フルオープン化及び構造改革特区の進展に対応した、通関部門等の新たな勤務体制の移行に当たっては、その趣旨を十分に考慮した体制の実現に努めること。
以上であります。
 何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
小坂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 多数賛成いただきまして、ありがとうございました。ただいま御決議のございました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
小坂委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三十二分散会


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