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第12号 平成15年4月18日(金曜日)

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平成十五年四月十八日(金曜日)
    午前十一時四十七分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      相沢 英之君    上川 陽子君
      倉田 雅年君    小泉 龍司君
      坂本 剛二君    砂田 圭佑君
      田中 和徳君    竹下  亘君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      林 省之介君    福井  照君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    上田 清司君
      小泉 俊明君    佐藤 観樹君
      中津川博郷君    永田 寿康君
      平岡 秀夫君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  畠中誠二郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   牧野 治郎君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    渡辺 博史君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   参考人
   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君
   参考人
   (日本銀行副総裁)    武藤 敏郎君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   参考人
   (日本銀行理事)     小林 英三君
   参考人
   (日本銀行理事)     白川 方明君
   参考人
   (日本郵政公社理事)   伊藤 高夫君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  坂本 剛二君     相沢 英之君
  竹本 直一君     福井  照君
同日
 辞任         補欠選任
  相沢 英之君     坂本 剛二君
  福井  照君     竹本 直一君
    ―――――――――――――
四月十七日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)
 (第一七三五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書並びに破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本銀行副総裁武藤敏郎君、日本銀行理事三谷隆博君、日本銀行理事小林英三君、日本銀行理事白川方明君、日本郵政公社理事伊藤高夫君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長牧野治郎君、財務省国際局長渡辺博史君、金融庁検査局長佐藤隆文君、金融庁監督局長五味廣文君、総務省自治行政局長畠中誠二郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、厚生労働省大臣官房審議官青木豊君、厚生労働省年金局長吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、参考人及び委員の各位に申し上げます。
 本日、大変暑い気候になっておりますので、上着をおとりいただいて、質疑を進めたいと存じます。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、去る平成十四年十二月六日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁福井俊彦君。
福井参考人 日本銀行の福井でございます。
 ただいま委員長からお話をいただきましたとおり、日本銀行では、昨年の十二月に、平成十四年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出させていただきました。今回、日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会を賜りまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 私自身は、約一カ月前の三月二十日に就任をいたしました。日本銀行の持てる知恵と力をフルに発揮して、日本経済の持続的成長軌道への復帰とそれからデフレ克服のために、中央銀行として最大限の貢献を果たしてまいる決意でございます。
 まず、最近の経済金融情勢についてお話を申し上げたいと思います。
 日本の景気は、このところ、企業の設備投資に若干持ち直しの動きも見られますけれども、イラク情勢の影響を含めた海外経済の動向など先行き不透明感がなお強い中で、全体としては横ばいの動きを続けております。
 先行きにつきましては、海外経済が緩やかな回復傾向をたどるもとで、日本の輸出や生産が再び増加に転じて、経済に前向きの循環が働き始める、そういうふうに考えられるところでございます。もっとも、米国を初めとする海外経済の先行き自体に不確実性をまだ抱えております。また、国内でも過剰雇用や過剰債務といった調整圧力が根強いということを踏まえますと、景気はなおしばらくの間、自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高いというふうに思います。
 この間、物価面を見ますと、国内企業物価は、輸入物価の上昇あるいは素材業種での需給改善を反映いたしまして、全体としてほぼ下げどまりの状況となっております。消費者物価につきましては、引き続き緩やかに下落をしておりますけれども、先行きについては、原油価格上昇の影響に加えまして、社会保障負担あるいは間接税に係る制度変更の影響も見込まれまして、マイナス幅は若干縮小すると見られます。
 金融面の動きを見ますと、日本銀行の潤沢な資金供給のもとで、金融市場は三月末、年度末を含め全体として落ちついた動きとなっております。もっとも株価は、御承知のとおり、内外経済の先行き不透明感などを背景といたしまして、不安定な動きを続けている状況でございます。とりわけ、日本の金融機関の収益性に対する厳しい見方などを背景といたしまして、銀行株価の弱い動きが目立っているという状況でございます。
 企業金融の面では、全体としては緩和的な環境が維持されておりますけれども、相対的に信用力の低い企業の資金調達環境は、なおかなり厳しい状況にあると認識をいたしております。
 次に、最近の日本銀行の金融政策の運営について申し述べさせていただきたいと思います。
 私は、この一カ月近くの間、イラク情勢の展開を踏まえた当面の危機防止のための対応と、それからもう一つは、やや長い目で見た金融緩和効果の強化、このための対応に取り組んでまいりました。
 まず、イラク情勢の展開が株式市場や為替市場を通じて経済全体にどのような影響を及ぼしてくるか、注視いたしますとともに、年度末を控えて、金融市場の安定確保に万全を期するために、市場に対してかなり多額の追加資金供給を実施いたしました。
 また、取引先金融機関が担保の範囲内でいつでも日本銀行から資金調達を行うことのできる補完貸付制度につきましても、当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とすることといたしました。
 以上のような措置のもとで、金融市場では流動性をめぐる懸念はほぼ払拭された状況が今日まで続いておりまして、去る三月末の年度末もおおむね問題なく越えることができた次第でございます。
 また、今後の金融政策の運営に当たりましては、潤沢な資金供給を経済活動の活性化、デフレ克服にきっちりと結びつけていくことが重要な課題であるというふうに考えております。このような問題意識を踏まえまして、現在、金融政策の透明性向上、あるいは金融緩和の波及メカニズムの強化といった観点から、金融政策運営の基本的な枠組みについての検討を進めているところでございます。
 日本銀行が現在とっておりますいわゆる量的緩和政策は、金融市場の安定を確保し、経済の面でも、デフレスパイラルを防止する上でかなり大きな貢献を果たしてきたというふうに考えております。しかしながら、金融機関の信用仲介機能は万全ではない状況が続いておりますし、民間の経済活動も、十分には刺激されるには至っていないというのが率直なところでございます。
 申すまでもなく、金融システムの信用仲介機能が十分に発揮されていない最大の要因としては、不良債権問題が挙げられます。この問題を解決するためには、民間及び政策当局が一体となった取り組みをさらに敢然と進めていくことが重要だというふうに思います。
 同時に、日本銀行といたしましても、信用仲介という金融政策の重要な波及経路が十分には機能していない中で、金融緩和のメカニズムを強化するために、企業金融の円滑化、金融調節の面において改善を図っていくことが非常に大きなポイントであると考えております。
 こうした観点に立ちまして、今般、日本銀行では、中堅・中小企業関連資産を主たる裏づけ資産とする資産担保証券を時限的に買い入れることにつき、検討を進めることを決定いたしました。
 資産担保証券は、企業が持っている売り掛け債権などをプールして、これを証券化して市場に流通させるものでございます。資産担保証券市場は日本ではまだ発展途上にございますが、この市場が活性化すれば、中堅・中小企業にとって銀行借り入れにかわる資金調達ルートが開かれるなど、企業金融面にさまざまなメリットをもたらすことが考えられます。
 日本銀行といたしましては、新たな資金仲介のルートとなる市場の整備、発展をサポートすることを通じて、金融緩和の波及メカニズムが強化されることを期待しております。
 日本銀行は、現在、具体的な買い入れ方法についての検討を進めておりますが、その際、広く市場関係者の意見も聞きながら、市場の発展に資するような方向での検討を行ってまいるつもりでございます。
 もちろん、金融市場は、本来は民間のイニシアチブのもとで自律的な発展を遂げていくことが期待されるものでございまして、中央銀行として、資産担保証券といった民間の債務を買い入れること自体、極めて異例の措置でございます。
 したがいまして、日本銀行といたしましては、波及効果の大きさ、市場機能をゆがめないといったような観点に加えまして、日本銀行の財務の健全性を維持し、将来にわたる金融政策の遂行能力を確保するといった点にも配慮しながら、具体的な買い入れの方法を考えてまいります。
 また、金融政策に直接該当する事項ではございませんが、日銀は、銀行による保有株式の価格変動リスク削減努力をさらに促すという観点から、昨年十一月以降、銀行保有株式の買い入れ措置を実施いたしております。ことしの四月十日時点の買い入れ額は一兆二千九十億円に上っております。この措置は、金融システムの早期健全化に向けた日本銀行としての一つの取り組みでございます。同時に、金融システムの健全化は、金融政策の波及メカニズムを強化する上で欠かせない条件であるというふうに考えております。
 最後に、現在、日本経済が抱えております課題は大変大きいと言わざるを得ないわけでございます。
 日本経済は、経済の成熟化、グローバル化の進展に加えまして、情報通信革命あるいはエマージング諸国の急速な台頭といった大きな環境変化に直面しております。こうした大きな変化の中で、日本の戦後の成長を支えてまいりました経済モデルにかわる新しいモデル、つまり、技術や知識のイノベーションを原動力とした新しい経済モデルの構築が求められている状況だと思います。日本経済がこうした新たな環境に果敢に適応していくためには、民間部門と政府、日銀が共通の目標に向かって力を結集していくことがますます重要になってきているというふうに考えております。
 日本銀行といたしましても、今後とも、私どもの使命であります物価の安定、信用秩序の維持、これを達成するために全力を挙げてまいりたいと考えております。
 ありがとうございました。
小坂委員長 これにて概要の説明は終了いたしました。
 次に、去る平成十四年十二月六日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣竹中平蔵君。
竹中国務大臣 昨年十二月六日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、昨年四月一日以降九月三十日までを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。
 本日、本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、簡単ではございますが、本報告の概要について御説明を申し上げます。
 まず初めに、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容について御説明申し上げます。
 一昨年十二月二十八日に金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分がなされた石川銀行については、昨年四月十八日、預金保険法第八十条の規定に基づき同行の金融整理管財人より金融庁に対して、同行の業務及び財産の状況等に関する報告並びにその経営に関する計画が提出されております。
 また、昨年三月八日に管理を命ずる処分がなされた中部銀行については、同年五月二十日、預金保険法第八十条の規定に基づき同行の金融整理管財人より金融庁に対して、同行の業務及び財産の状況等に関する報告並びにその経営に関する計画が提出されております。
 次に、被管理協同組織金融機関について申し上げますと、今回の報告対象期間中に、六信用金庫、三十八信用組合について事業譲渡が行われ、管理を命ずる処分が取り消されております。
 次に、新生銀行及びあおぞら銀行からの預金保険機構による瑕疵担保条項に基づく債権買い取りの状況について申し上げます。
 今回の報告対象期間中に預金保険機構が引き取った案件は、新生銀行については六十四件で、債権額千四百十三億円、支払い額千二百二十九億円であり、あおぞら銀行については二十三件で、債権額千三百五十四億円、支払い額千百八十一億円となっております。
 最後に、これらの破綻金融機関の処理に係る預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び公的資金の使用状況について、御説明を申し上げます。
 破綻金融機関の救済金融機関への営業譲渡等に際し、破綻金融機関の債務超過の補てん等のために預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助の額は、今回の報告対象期間中において一兆七千三百五十四億円であり、これまでの累計で十八兆千九百四十四億円となっております。このうち、ペイオフコストの範囲内の金銭の贈与に係る資金援助の額は、報告対象期間中で一兆千八十四億円、これまでの累計で六兆九千四百四億円であり、ペイオフコストを超える金銭の贈与に係る資金援助の額は、報告対象期間中で六千二百七十億円、これまでの累計で十一兆二千五百四十億円となっております。
 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産買い取り額は、報告対象期間中で五千九百六十八億円、これまでの累計で六兆千六百八十二億円となっており、金融再生法第五十三条に基づく健全金融機関からの資産買い取り額については、報告対象期間中で債権簿価六千九百一億円、買い取り額八百九十億円、これまでの累計で債権簿価一兆九千九百三十五億円、買い取り額千四百三十九億円となっております。
 これらの預金保険機構による資金援助等について、昨年九月三十日現在における公的資金の使用状況について申し述べます。
 まず、特例業務勘定の特例業務基金に交付された十三兆円の交付国債の償還額の累計は、九兆六千四百九十二億円となっております。
 また、一般勘定、特例業務勘定、金融再生勘定及び金融機能早期健全化勘定における政府保証つき借り入れ等の残高は、各勘定合計で二十兆九千七百一億円となっております。
 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定の確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。
 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
小坂委員長 これにて概要の説明は終了いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。相沢英之君。
相沢委員 最初に、この委員会の常任メンバーでない私に発言の機会を許していただきましたことについて、感謝を申し上げます。
 なかなか、このように財務大臣、金融担当大臣また日銀総裁おそろいのところで御質問を申し上げる機会がありませんものですから、本当を言いますと三時間ぐらいちょうだいいたしたいのでありますけれども、一時間ということでありますので、思いのたけを述べることもできず、また質問も限られると思いますけれども、その点はお許しをいただきまして、そのかわりと申してはあれでありますけれども、答弁はできるだけ簡潔にお願いを申し上げたいと思います。
 それから、日銀新総裁、御苦労さまでございます。就任以来まだ一月足らずということでありますが、早速、党のデフレ対策特命委員会などの要望にありました株買い入れの枠の拡大などを実施していただきまして、感謝をいたしております。審議委員九人のうち六人は前からおられる方で、そう言っちゃなんですけれども、いわば小じゅうとみたいなところがあるんじゃないかななんて、よそから見てそう思っておりますが、ひとつどうぞ思い切って現下の経済情勢に対処する日銀の施策をやっていただきますように、心からお願いを申し上げる次第でございます。
 最初に、これは私はよく考えているんですけれども、もちろんバブルという異常な現象があったその反動で、いわゆるバブルの崩壊に伴うところの現象、これをデフレスパイラルに突入したと見るか否かという点については議論があろうかと思いますけれども、そのようになった原因、それからまた、これをどのようにして対処していったらいいのかということについて、非常に漠然とした質問で恐縮でありますけれども、最初に各大臣、日銀総裁のお考えを承りたいと思います。
塩川国務大臣 私らの大先輩ですから、もう何もかも知り尽くしておられる相沢先生、簡単に申し上げますと、私はやはり、一九九〇年、東西戦争が終結して、それからいろいろな軍のテクニックといいましょうか、いわゆる技術というものが全部公開されまして、そこで思い切った技術革新が起こった、それに日本が乗りおくれたということが一つの原因だと思っております。
 それから、バブルの性格も、アメリカで起こったバブルの性格と日本で起こったバブルと、根本的な原因が違いまして、日本のは本当に水膨れのバブルだった、その処理を、なかなか処理し切れなかった。
 この二つの原因が大きく今日まで尾を引いてきておると思っております。その当時の、そのときの切りかえを敏速にかつ大胆にやっておったならばこんなにまで長続くものじゃなかったと思うんですけれども、そのときにぐずぐずして、いわば日本国民の国民性でございますが、ああでもないこうでもないでここまで来てしまった。それがやはり私は大きい原因じゃないか、こう思っております。
竹中国務大臣 相沢委員が御指摘になるデフレというのは、物価の低下に加えて経済全体が停滞している、そういう両方の意味を込めておられると思いますが、やはりこれは、実物の要因と、マネタリー、金融の要因、両方あると考えるべきだと思います。
 実物的にはやはり、経済の成長力が低下してしまった。その低下の要因としては、今塩川大臣がお話しになりましたように、さまざまな、八〇年代から九〇年代にかけての世界的な環境変化にうまくシステムが適合できなかったという点が大きかろうかと思います。もう一つ、物価の下落というのはやはり金融的な側面を伴っている。この点に関しては日銀総裁からもお話があろうかと思いますが、実物と金融の両方の連結管に位置しているのがいわば不良債権の問題であろうかと思います。不良債権の存在によって信用乗数が低下してマネーがなかなかふえない。一方で、この不良債権の存在が実物での投資決定や消費決定を曇らせている。
 そういった観点から、実物面での構造改革を進め、不良債権処理を急ぎ、かつ金融面で日本銀行にも御協力をいただく、そのような処方せんが必要になっているというふうに思います。
福井参考人 私は、八〇年代後半以降、世界経済と日本経済を取り巻く環境の変化が、いわゆる潮流の変化と言えるほど大きなものが起こった。世界的には、経済のグローバル化、そして情報通信革命の進展、国内的には、高度成長の結果として経済の成熟化、そして新しい動きとして人口動態の変化、人口の伸び率が次第に下がり始め、今後は減っていく、こういう大きな変化に日本の経済と社会の枠組みがうまく適応変化できなかったということだと思います。
 戦後五十年間の高度成長の過程で、高度成長そのもの、それから輸出を先頭に立てて国際収支の黒字化を達成する、こういう大きな目的が余りにも見事に達成されて、高度成長にふさわしい経済の枠組みというものが余りにも強固に確立された。したがって、こうした経済の大きな潮流変化に、急速にこの枠組みを変えるということが、既得権の累積ということもあって、非常に難しくなったということが最大の理由だというふうに思っています。
 かつ、八〇年代の後半には、旧来の枠組みのままもう一度経済をふかした、その結果が大きなバブルになって、そのバブルがその後破裂し、その後、必要な枠組みの変換を促す過程でバブルの処理というもう一つ大きな課題が重なって、困難度を一層強めたというふうに思っています。
 したがいまして、引き続き、我々の課題としては、民間の努力、政府の努力、そして中央銀行による金融政策面の努力、この三位一体の努力がすき間なく効果を上げるというふうな姿で進められていくことが最も大切だというふうに考えております。
相沢委員 それぞれお答えをいただいたわけでありますが、私は、日本経済の実態がこの十数年の間に悪くなってきたということはそのとおりだろうかと思いますが、しかし、それにしても、かつては三万九千円もした東証の平均株価が今や八千円を割るかと、きょうどうなっているかちょっと聞いてきませんでしたが、いずれにいたしましても、もう四分の一以下、五分の一近い。では、ほかの国はどうかというと、そういう情勢ではない。一々数字は申し上げません。
 私は、やはり土地の価格とそれから株価が下がったということが、日本経済のこの不況の最大の原因である、あるいはまたこれが結果なのかもしれませんが。その原因の一つに、あるいはその原因の最大のものに、かつて行われたバブル期の銀行貸し付けの、不動産に対する貸し付けの総量規制、それが非常に厳しくかつ急激だったということが一つの大きな原因じゃないかというふうにかねがね思っているのであります。
 とにかくまあ、当時は浮かれたような状態でありまして、確かに、銀行も、もうとにかく何でもいいから貸す。一億の担保のものに一億二千も三千も貸す。貸付実績を上げた支店長は腕がいいと出世をする。絵でも土地でも何でも買わせた。私の友達も、そういうことで被害に遭っている者がおりますが。ですから、借りた方も悪ければ、貸した方も私は大いに責任があったというふうに実は思っているんです。その後始末もなかなか大変だ。
 ですから、あのときにあれほど急激な総量規制というものを強行しないで、もっとソフトランディングをする方法はなかったんだろうかということをいつも考えているのであります。ただ、これは過ぎたことでありますから、教訓として記憶をしておくしかないというふうに思っておるのであります。
 いずれにいたしましても、やはり株価あるいは地価というものの対策、これがもう今の水準でいいというお考えもありますよ。ありますけれども、多くの人はそう考えていない。とすれば、やはりそれに対する対策を思い切って考えていかなきゃならぬのじゃないかというふうに思っているのでございます。
 それから、いきなりその問題に入って恐縮なんですが、そういう実態的な変化とあわせて、竹中大臣、嫌な顔をされるかもしれませんが、例の時価会計、固定資産の減損会計の問題がございます。
 これにつきましては、今まで、とにかく財務会計基準機構の下に委員会があってやっている。これは、国際的な考え方として、できるだけそういう民間の専門の方々の意見によって公正、妥当な会計基準をつくっていくという考え方に対して、私どもは異論があるわけじゃありません。ただ、最終的に責任を持つのは、私は政府だ、持たざるを得ないのが政府だ。
 今の形でいきますと、どうも法律を読んでみると、それは商法その他の規定はありますけれども、ではこの財務会計基準機構が決定したものはそのまま、何が何でもそのまま認めざるを得ない、アンタッチャブルなんだということについては何にも規定がない、法律的には。
 そこで、時価会計あるいは固定資産の減損会計の処理の問題があるわけでありますけれども、今、現に三月末決算ということが当面問題であったわけでありますけれども、いずれにいたしましても、こういう状況のもとに、時価会計を、言うなれば強行することによって、非常に会社の経理状況が悪くなる、それがまた株価に響いてくる。したがって、時価会計の適用を停止するあるいは選択制にする、あるいは減損会計につきましては、二〇〇五年にこれを実施することになっておりますけれども、これを二年ないし当分の間延期をするということが、これは実は与党三党の金融に関するPTにおいてそういう結論を出し、そして三党のいわゆる三幹三政、幹事長・政策責任者会議においても了承をされて、政府側にこのことについてもお伝えをしているわけであります。今の時価会計の見直しと減損会計の実施の二年延期につきましては、これは文書は、「金融庁、財務会計基準機構に強く要請する」、こういう言葉にしているわけなんです。
 そこで、この問題に関して、いろいろと今までも私どもも金融庁ともお話し合いをしていましたが、大臣としてはどうお考えになるか、それを承りたいと思います。
竹中国務大臣 相沢委員の御指摘は、今の資産デフレ、資産の水準についてどのように認識をし、その中で会計の基準がどのようにかかわってくるのか、また、それを検討する、今検討を依頼している機構の性格をどのように認識するのか。これ、丁寧に一つ一つ答えていきますと、自然に何か誘導されていくような、そういう質問の巧みな並びになっていようかと思いますが、資産デフレといいますか、土地、株の水準に関しては、言うまでもなく、大変重大な関心を持って、危機感を持って我々も見ているところでございます。
 しかし、言うまでもありませんが、資産価格というのは、その資産が将来どれだけの収益を生むか、その収益予想を現在価値に割り引く、割り引くときに恐らく、金利とリスクファクター、リスクプレミアムをどのように考えるか、そういう多様な要因で決まってくる中でありますので、我々としては、その期待に働きかけ、将来収益を高めるための活性化に努力し、金融面でもしっかりと実質金利が下がるような状況を日銀と協力してつくっていく、そういう不断の努力をしているところでございます。
 それとの関連で、今のような厳しい資産の価格を受けて、会計の問題が出てくる。相沢委員が中心になってまとめられた、その与党の懸念事項、問題意識、これは我々も大変重要な問題であるというふうに重く受けとめております。
 しかし、これは、もう繰り返しになって大変恐縮でありますけれども、商法の規定では、我々は、金融庁としては、一般に公正妥当と認められる会計慣行をしんしゃくする。一般に公正妥当な会計慣行が何なのかという点がやはり大変重要なことになるのだと思います。この点は、国内の信用、世界のマーケットからの信用、いろいろな観点を総合的に考えて、一般に公正妥当なものでやる。
 御承知のように、かつてはこれは大蔵省の中の企業会計審議会等々で議論が行われてきた。しかし、やはり、時代の流れの中で、こうしたものは政府からも独立していなければいけない、特定の民間企業の利害からも独立していかなければいけないということで、数年前から財務会計基準機構の中の委員会でそういうものを議論するという新しい仕組みが定着しつつあるところであるというふうに思っております。
 今ここで、与党からの御依頼も受けまして、我々としては、まさに一般に公正妥当な会計慣行としてこの時価会計等々の問題をどのように考えるのかということの検討を依頼して、機構は機構として非常に精力的にこの議論を始めているというふうに認識をしております。我々としては、その審議を注目して見守りたいというふうに思います。
 また同時に、委員御指摘の、一般に公正妥当と認められる会計慣行として今この機構が定着しつつあるわけでありますけれども、それについて、例えば、今後どのようにこれを不断に発展させていけばいいのか、進化させていったらよいのか、これはやはり、時間をかけて我々としてもしっかりと考えていかなければいけない問題であるというふうに認識をしております。
相沢委員 よく国際会計基準だということを言われるわけでありますけれども、私が申し上げるまでもなく、例えばアメリカにおきましても、一九三三年から一九九三年でしたか、時価会計を、意味は多少違いますけれども、ストップしている。それから、ほかの国におきましても、現に時価会計を全部がやっているというわけじゃない。
 これは日本のいいところかもしれませんけれども、国際的な基準とか何とか言われますと、大変にそれに対してまじめですね。私は、ちょっと言葉はあれだが、ふまじめさを欠いているぐらい、忠実にやるというようなことがあるんじゃないかという気がしてならないんであります。
 そこで、やはり、どのように会計基準をつくるかということについては、これは経済全体が大きな影響を受ける問題であります。ただいまのところは、三百万法人の中で、上場企業並びに証取法の対象になるわずか一万社にすぎないじゃないか、こういうふうにおっしゃるわけですけれども、どうするかということは、やはりこれは私、日本の国益にも関することなんで、そういう問題について、幾ら公正妥当な基準というものを財務会計基準機構に任せると言っても、最終的にはそれはあくまでもやはり政府の責任、金融庁の責任だ、金融大臣の責任じゃないか。ですから、もしその辺についての法的な根拠というのが明らかでなければ、やはりそこを法的に構築する必要があるんじゃないかというふうに思っているんですが、それはどうでしょうか。
竹中国務大臣 まさにそこは、先ほどから申し上げている、一般に公正妥当な会計基準は何かというところにやはり帰っていくのではないかと思います。
 相沢委員の御指摘は、一般に公正妥当と認められる会計慣行の中に、いわば国益というようなマインドがちゃんと入っているべきではないだろうか、そういう問題意識であろうかと思いますが、それは確かに、我々なりの、日本の社会にふさわしい一般公正妥当なものというのはあるわけでございますから、そういった視点も当然のことながら必要になってこようかと思います。
 ただ、その場合も、そういったことも踏まえて、国益であるとか日本の実情にふさわしくするとか、こういったことも含めて一般に公正妥当なもの、そういう一種の、手続としてこれを決めていくデュープロセスのようなもの、これはやはりしっかりしていなければならないのではないかというふうに思っております。
 我々も、その意味では問題意識は持っておりますし、一般に公正妥当な会計慣行を議論する中で、今委員御指摘のような問題意識、非常にこれは重要な問題意識であると思いますし、こういった問題について非常に強くやはりインプットしていただくというのが当面大変重要なことではなかろうかというふうに思っております。
相沢委員 これは竹中大臣の御指示だと思いますが、財務会計基準機構におきましても、この問題については検討をする、結論はともかくとして検討するということで審議に入られたということを聞いておりまして、それはそれなりに評価いたしますが、ともかく五月いっぱいぐらいまではかかるよ、とても三月には間に合わぬよと、これは新聞でも見たわけなんですけれども。そういうようなことでは本当はない、本当はこれは三月末の決算が一番大きな問題だというふうに我々は思っておったんですが、いずれにいたしましても、その審議はせっかく始められたのならば、とにかく極力急いで結論を出していただきたいと思いますし、最終的には会計実務指針の改定で間に合うなら、それでやっていただきたい。
 もし、そういうことでもってやれないということであれば、これは三党のプロジェクトチームでも話し合っておったことでもありますし、特に三幹三政の中ではそういう議論が強いのでありまして、もう議員立法でやる、こういうようなことも言っているわけであります。無論、形としては商法の一部改正というようなことになろうかと思いますので、そう簡単にはいかぬと思いますけれども、それほどこれは緊急の問題であるということを、釈迦に説法でありますけれども、重ねて申し上げて、今後の対処をお願いしたいというふうに思っております。
 それから、ではひとつこれは変えまして、ちょっと少し株に飛びます。不良債権の問題は後にします。
 株価対策で、いろいろ会計基準の変更とかなんとかというような小手先でやったって株価の実質に影響ないじゃないか、これは確かにそういう考え方もありましょう。株はやはり需給で決まる、大きな要因は。したがって、株の実需をどのようにして大きくするか。
 従来、機関投資家として、郵貯、簡保あるいは年金基金等というものが出動をしておって、かなりのシェアを持っていた時期もあるわけです。ところが、今は非常にそれが少なくなっている。その原因は、一つには、株の暴落によりまして、郵貯でも、聞くところによりますと、これはうわさですから確かじゃないかもしれませんが、二・六兆円ですか、それから、簡保では六・二兆円、合わせて九兆円、三月末現在で損失を出している。世の中に、あつものに懲りてなますを吹くという言葉がありますけれども、まさにそういうような状態じゃないのかなという気がしているんです。
 今後、株価はどうなるか。それはお聞きしてもお返事はあれかもしれませんが、ここまで下がればもうこれ以上大きく下がることはないだろうというのが、それが竹中大臣のETFを買ったらどうですかということの発言にもなるし、総理も買いどきじゃなかろうかということをおっしゃったというのは本当かうそか知りませんが。
 でありますから、まあ株にもナンピン買いということがあるので、やはり郵政あるいは簡保、これについてもぜひ買い出動してもらいたい。御担当の方おられませんから、なんですけれども、そういうことは私の方からお話もしております。
 ただ、遺憾ながら、四月一日から郵政公社になりましてから、従来のような形での、総務省、郵政省との関係のない、つまりこういうような問題に関して公社の総裁を郵政大臣が指示するというような状態にありませんから、その点は大変に、歯がゆいと言ってはなんですけれども。
 ポートフォリオを変えろということを言っているんじゃない。郵政公社になる前は、大体、郵便貯金については五%マイナス四プラス三でしたか、それから簡保資金については六%プラス・マイナス五でしたか。ですから、かなりの幅もありましたし、買ってもいた。今はもう最低のところですよ、持っているのは。
 しかも、聞くところによりますと、四カ年間の資金運用の中期計画をつくる、これについては総務大臣の認可が要るけれども、その中で、毎年度の資金計画については、運用については、公社が決定をして総務大臣に報告するということになっているだけのことなのであって、大臣としてはこれを指示するというようなことは難しい。それはそのとおりでしょう。そのとおりでしょうけれども、こういう情勢にあるということについての判断をしていただいて、公社がその行動を起こしていただくことを我々として要請するということはあながち間違いじゃないんじゃないかというふうに思っています。これは要請ということでとどめておきます。
 そこで、ちょっと時間が大分押してきましたから、なんですけれども、例の厚生年金の年金基金の代行返上の問題、これが十月一日にならないと代行返上ができない。その間、去年の三月に認められた、株によるところの言うなれば物納を十月までできない。しかし、十月までの株価を考えてみると、下がるかもしらぬ、今のうち処分して現金でもって納めた方がいいということが、いわゆる代行返上に伴うところの株売りとなって、これが市場を圧迫しているということであります。
 そこで、この点につきましては、厚労省の方に、私どもの方から、十月一日について、その時期を繰り上げられないだろうか。あるいはまた、現物でもって受け取るのにいろいろな制限がくっついておるんですね、それを緩和できないかということについての要請をしております。これも答弁は結構ですけれども、そういうことをお話をしているということをよく認識いただきたいというふうに思っております。
 それから、ちょっと時間があれですけれども、中小企業についてのマニュアルの問題なんです。私は、不良債権の整理を促進するということは結構でしょう。しかしながら、今のようなやり方で不良債権の整理を促進するということは、結局、いろいろ私どもも実情を聞いていますけれども、中小企業つぶしになっちゃっているんです。ですから、いわゆる不良債権の検査に当たって、一般の主要行に対するマニュアルとは別のものをつくってほしいということを前々から要請をして、これは事例集というようなものを出しておられますけれども、やはりはっきりと中小企業に対する検査マニュアルを別建てにしてほしいということを要求しておったんですけれども、この点はいかがでしょう。
竹中国務大臣 中小企業に関する不良債権処理に関しては、これは、先般、三月の二十七日まで、実は金融審議会のワーキンググループの中で、メガバンク、グローバルな活動をする銀行とは別の基準の、地域に根差した地域中小金融機関を対象とします、いわゆるリレーションシップバンキングのあり方についての包括的な議論を、検討をお願いしておりました。堀内座長を筆頭とする中で非常に意欲的な議論を行ってくれまして、これは、リレーションシップバンキングのあり方について、行政上も非常に大きな、我々一歩を踏み出せたのではないかと思っております。
 この報告書を受ける形で、翌日の三月二十八日には我々としてのアクションプログラムを報告しております。
 これは、やはり、世界の中から非常に厳しい目を向けられている大手の主要行の場合に関しては、数値目標を決めて、約二年で不良債権比率を半分にしていくという目標をぜひとも実現してほしいというふうに思っているわけでありますけれども、リレーションシップバンキングの場合は事情が違う。
 まさに委員御指摘のように、これは地域の中小企業、事情が違うだろう。それで、金融機関としても、地域の中小企業を再生させながら、強化させながら、みずからも金融機関としての健全性を強化していく。そうした中で、そういう特定の数値目標を求めるということではなくて、今までとは違う形の不良債権処理、リレーションシップバンキングの機能の強化というのをかなり思い切って打ち出したつもりでございます。
 お尋ねの検査マニュアルの件でございますけれども、検査マニュアルに関しても、これは私が就任する以前、柳澤大臣の時代から、検査マニュアルの別冊中小企業編というのをつくりまして、その中で、これは形式要件だけではなくて、中小企業の実態に応じたことをしっかりとやはり見なけりゃいけない。これは例示を含めてかなり詳細なものをつくっております。
 我々としては、この別冊、金融機関のみならず、その借り手である企業に対しても、こういうものがあるんだということを実際にやはり知っていただきたい。別冊マニュアルはつくったけれども、それが末端まで行き届いていないではないか、銀行はこんなふうに言っているぞというような御指摘もいただくものですから、これは企業の皆さんに対しても実態を知っていただくということで努力をしておりますが、そうしたことを受けて、さらに今後、調査、議論を重ねまして、この別冊中小企業編の改定は必要に応じて行っていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
相沢委員 とにかく、重ねて、やはり、中小企業に対するマニュアルを細かく規定することはいいんですけれども、細かくすればするほどかえって窮屈になっちゃって、検査がうるさくなって、そういう話も聞かぬではないので、ひとつその点は、中小企業金融の実態に即したマニュアルを作成していただくようにお願いを申し上げたいと思います。
 それから、次に移りますと、例の金融システムの安定化の一環として、無税償却の拡大、金融機関に対する欠損金の繰り戻し還付、それから繰越控除の期間延長の問題がございます。
 これは、ちょっと今ここで議論を申し上げるにはいささか時間が足りないと思います。いろいろと問題点が多いということを大臣も十分に御承知だと思いますが、ただ、これはほっておけない問題だということで、とにかく、今までのような有税償却ということではなくて、無税償却を原則として考えるというような方向も含めて、損失の繰り越しあるいは繰り戻し還付について、これらの検討を進めていかなきゃならない。私どもも、党の税調としても検討をしていくつもりでありますけれども、この点につきまして、塩川大臣、いかがお考えでしょうか。
塩川国務大臣 これは、先ほども相沢さんがおっしゃっているように、検討しておかなければならぬ問題であるということの認識は持っておりますけれども、それじゃ直ちにこれを政府税制調査会の議題に上げて急いで検討してもらう、そういう順序にはなっておりません。けれども、政府税調の方に、この問題について、機会を見て御検討してくださいということの要望を出しております。
相沢委員 急ぐ問題の一環として早急に検討を進めていただきたいということを重ねてお願いを申し上げておきます。
 それからもう一つ、公的資金の注入の問題、竹中大臣、引き続き、恐縮ですけれども。
 これは御承知のように、早期健全化法によるところの資金注入は、あれは一昨年の三月ですか、協同組合金融機関に対しても終わったわけですね。そこで、今は、預保法の百二条の第一項の第一号で、第二号が支払いの全額保証、第一号が公的資金の注入ということになっていると思うんですが、ただ、預保法の百二条を動かすためには、総理を座長とするところの危機対応会議を開いてやらなきゃならない。
 これは、全国的な、あるいは地域的なシステミックリスクがある場合ということになっているんですけれども、私は、総理を議長とするところの危機対応会議を、そう言うとなんですけれども、地方の一信用組合とか信用金庫等についても開き得る、理論的にはそうだし、そういう考えもあるというふうに私ども実はずっと聞いておったんです、金融庁も。ですが、それはどうも、余り実際に即しないので、何らかの形で、そういうことの状態に至らない前段階で公的資金の注入を考えたらどうだろうか。
 ただ、早期健全化法によるところの資金注入に関してはいろいろ問題点があるので、そのままがいいかどうか、そこは検討の要があると思いますが、大臣もその点については御賛成のように聞いていますけれども、改めて。
竹中国務大臣 御指摘がありましたように、今我々、公的資金の注入の枠組み、法律の枠組みを持っておりますけれども、まさに金融危機が起きたような状況で金融危機対応会議を開いて、かつ銀行から申請があった場合に注入する、その意味では非常に限定的な枠組みになっているというふうに私自身も認識をしております。
 本当にこのままでよいのだろうか。昨年、金融再生プログラムをつくる段階で私自身もそのような問題意識を持ちましたし、したがいまして、予断を持たずに、新たなこうした公的資金の枠組みが必要かどうかも含めて、しっかりと専門家で検討してもらいたい、このことを金融再生プログラムの中に明記したわけでございます。
 やり方としては、これはいろいろなお考えがこれから具体的にあるのだと思います。早期健全化のものを復活させたらどうか、いや、いろいろな問題点があるから、そこからはこのように変えたらどうか、こういう点については、今後そのワーキンググループでしっかりと検討をなされると思いますが、私としては、その金融の工程表の中で、そんなに時間をかけてもらっても困る、ことしの前半、六月ぐらいまでにワーキンググループとしての何らかの結論を示してほしいということを申し上げておりますので、その中でぜひ、予断を持たずにいろいろな問題についての検討を深めてほしいというふうに思っております。
相沢委員 次に、日銀総裁にお伺いしたいんですが、例のインフレターゲットの問題なんですね。
 これは前々から私どもはそのことについて党内においても検討をしておりまして、日銀が自主的にやるということでなければ、日銀法の改正をもってやるということでもって、実は法案もできております。党内の金融調査会としてもこのことを了解していることでありますけれども、いろいろと議論がありますので、日銀がこのことについて自主的な立場からやられるということであれば、それも一つの考えだ。あるいは、そのことについて政府と日銀とでアコードを結んだらどうかという話も実は竹中大臣がおっしゃったというふうにも伝えられているんですね。
 そこで、今までは、金利もこういう状態になってきているし、資金は本当にじゃぶじゃぶに供給しているんだから、これ以上言われてももう手がないじゃないかというような御意見と承っております。しかし、やはり資金供給の多様化ということもありますし、銀行に対してだけではなくて、例えば株の購入、あるいは私どもはETFの購入、これもお願いをしておりますけれども、あるいはABCP等の購入をやるというような形で、言うなれば、資金が、銀行ではなくて直接企業に供給されるような形も日銀として考えておられるふうに聞いております。
 いずれにしましても、このインフレターゲットの問題、日銀としても、既に政策決定会合において、CPIがゼロとなるところまで資金の供給、運用を考えるということを、これは一昨年ですか、もう決定されておる。
 問題は、私どもは、ある一定の時期に対してプラス一とか二とかという数値になるような目標を持ってやっていただく。これは日銀が決められても結構なんですけれども、各国の例を見ると、セントラルガバメントが決める、セントラルガバメントとバンクとが協定する、セントラルバンクが決める、いろいろな方式があるようですけれども、いずれにしても、そういうような目標を持って、時期を限って、それはそれでも成らぬことももちろんあると思うんですけれども、やられることについて、総裁としてはどうお考えですか。
福井参考人 相沢委員ただいま御指摘のとおり、日本銀行では、消費者物価が安定的にプラスの状況になるまでは現在の超緩和の金融政策を続けるということを広くお約束いたしております。
 これはある意味で、日本銀行にとりましては非常に強い約束事でございまして、つまり、現実のインフレ率がプラスの世界になり、かつそれが安定的に推移するまでは今の超緩和を続けるということであります。それ以前の段階で、実体経済が少し上向きになり始める、人々がインフレ期待を持ち始める、インフレ期待がかなり高くなったとしても、現実の物価がゼロを超えて安定的になるまでは今の超緩和を続けるという、将来の時間軸に対しては、日本銀行はかなりリスクを冒してお約束をしている。別の形のある種のターゲットを設けているという意識でございます。
 ただし、その場合に、相沢委員御指摘のとおり、いついつ幾日までにという具体的な期限を置いていないということもまた事実でございます。ここのところが、いわゆる相沢委員も御主張のインフレターゲティングという政策をとるかどうかということの重要な判断の分かれ目になるわけでございます。
 私自身は、かねてから申し上げておりますとおり、インフレターゲティングというのは、中央銀行にとっては大変重要な道具立ての一つで、現在あるいは将来にわたって、日本銀行は、これはいつか有効な道具として使える可能性というものはやはり持っているものだというふうに率直に思っております。
 それはなぜかと申しますと、インフレターゲティングは、いろいろな意味合いがあると思いますが、やはり何といっても、ある物価目標をいついつまでにというふうなことで、国民の皆様に対して、日本銀行が目指すところが非常にクリアカットにお示しできる、政策の透明性というものが非常に完璧に近い形で示せるというところに最大のメリットがあるんだろうというふうに思います。
 現在、私どもは、先生おっしゃいましたとおり、せっかく流動性を供給しても、それが実際にお金をお使いになられる方々のところにきちんと届き、経済が活発化して持続的な成長に向かう、デフレからも脱却するというふうな前向きのモーメンタムをもたらすまでに、いま一歩力が欠けているというところに大変もどかしさを感じている。そこのところを克服するために、やはりさらに透明性を高める必要がある。それから、お金をきちんと届けるために、流動性を供給した後の効果の波及過程というものをもっともっと整備する必要があるということで、この三月二十日以降は一段と努力を注ぎ始めているということでございます。
 すぐにもインフレターゲット、つまり一定の期間を設けてターゲットを設けることができないのか。ここの最大の問題点は、やはり、流動性を供給しましても、物価に及ぼす経路、メカニズムがいまいち十分確立されていない段階でターゲットを設けた場合には、流動性を供給した後、それを、ターゲットに向かって一体政策効果はどう上がっているのかということを日本銀行が、逆に言えば、きちんと説明ができなくなってしまう、かえって不透明になってしまうリスクがあるというふうに考えております。
 したがいまして、今、つい先般から、既に具体的にアセットバックトCPについてマーケットをつくりながら、日本銀行はそうした波及経路の確立に一歩前進しようという決意をしたわけでありますけれども、今後ともこういう工夫をさらに加えさせていただく、それもそんなに長い時間を置かないで実行させていただくということで、波及メカニズムの確立、それに対する私どもの自信というものをもう少し持ちたい、そのプロセスをぜひ我々としては持たせていただきたいというふうに思っているのが現状でございます。
相沢委員 前総裁のときには全面否定の御返事ばかり聞いておりましたが、そうではないというふうに承ってよろしゅうございますね、そこは。
 いずれにしても、早急に検討を実施していただきたいですし、私どもも、早く結論が出なければやはり法律を提出することもやむを得ない、こういう考えでおりますこともお含みおきいただきたいと思います。
 それから、なお、資金運用に関しまして、株の買い取り、二兆を三兆にしていただきましたが、これはちょっと、列記ですけれども、初めは自己資本を超えるものは無理だとおっしゃっていたんですけれども、あれは二・四兆円ですか、それを超えたんですから。ぬれぬ先こそ露をもいとえということもあるんですから、もうここまで来れば、でき得べくんば、もう一兆足して四兆お買いいただいてもいいんじゃないか。
 それから、国債も、今お買いになっているのは一兆二千億です、年に十四兆四千億ですが、来年の新発債三十六兆、それの二分の一で十八兆、そうすると月一兆五千億ですね。三分の二とすると二十四兆で月二兆。ちょうどいいところになるわけですが、ひとつ国債の買い入れについても、これはいきなり新発債を買えという議論もありますけれども、そこは私は申しませんが、御検討をぜひいただきたい。
 それから、ETF、REITにつきましても、ぜひこれは対象に加えていただくように。
 なお、日銀が購入される株の中には銀行が入っていないんですね、銀行債が。日銀が買われる株の中には銀行が入っていない。これは私は非常におかしいと思うんです。そのことは申し上げました。そうしたら、日銀は考査を通じて銀行の内容を知っているから、もしそれを買うとなるとインサイダー取引になるおそれがある、こういう御説明ですが、だって、買うのは日銀が買っているんじゃないんですよ、信託銀行に任せているわけでしょう。信託銀行に何を買うかということを任せているんですから、仮にその中に銀行株が入っておったからといってインサイダー取引になるおそれがあるとは思えないし、もしそのことを心配されるならば、信託銀行に日銀が買うことを任せておきながら、裏で何か指図しているんじゃないかという疑いが起きるんですよ。今一番問題があるのは、一つは銀行株ですから、ぜひひとつ銀行株を日銀の買い入れ対象に加えていただきたい。
 外債の買い入れについてもぜひ、これをお願いしていますが、検討をお願いします。
 このごろ、日銀の中でも、例えばこれは中原委員がしゃべったということが新聞に出ております。「ETF、排除せず」云々と、物価安定目標についても触れておられますが、これは一委員の発言でありますけれども、そういうことがありますものですから、ぜひこれらの点についても引き続き御検討願いたいし、特に、日銀の買う株の中に銀行株を含めるということについてはぜひお考えおき願いたい。これについて御回答願いたいと思います。
福井参考人 私どもは、銀行保有株式の買い入れ枠を、つい先般、二兆から三兆に拡大いたしまして、現在までのところ、買い入れ実績は一兆二千億円ぐらいになっております。
 私どもが銀行保有株式の買い入れを行っております目的は、株価変動が銀行経営に及ぼす非常に不規則な影響というものを遮断する、そのために、銀行が持っている株式を早く手放すということを促進していただく、そこを最大のねらいとして実施しているものでございます。
 したがいまして、金融機関の持っている株式を買い入れるということに主目的を置いておりまして、株価全般の買い支え、あるいは、今特に下落が目立っております銀行株を買い支えるというふうなところが、私どもの買い入れ措置の目的の本質的なところからは少し違っているところがございます。そういう観点から、我々の、日本銀行として株の買い入れ行為が可能であるかどうかという点については、かなり難しい問題を含んでいるなというふうなのが、とりあえず、きょう相沢先生から御質問を受けましたときの私のとっさの感覚でございます。
相沢委員 まだ総裁にお尋ねしたいことがありますが、時間が詰まりまして、あと九分か。
 そこで、塩川大臣にお聞きしたいことは、私は、株の問題、景気の問題等を議論する際に、必ず人も言われ、私たちも言っていることの一つは財政問題なんです。税制もこれは財政問題の一環なんですが、税制改正はこの間やっと法律が通ったばかり。財界代表がこの間総理のところに、総理との会合の際に、相続に際して株の評価を半分にしろとか、あるいは譲渡所得税やそれから配当課税を当分ストップしたらどうかとかいろいろありました。これはなかなか今どうこうということではない、今後の問題かと思いますが。
 ただ、予算が成立しました、この予算を実行するのに対して、ぜひ繰り上げ実施をしていく、前倒しをしていただきたい。前倒しをすれば、また補正の問題が起きるじゃないか、これはそうでしょう。だけれども、今まで、大体こういう景気情勢のもとで補正をしなかったことはない。そんなことを言うといけませんが。しかも、大体、前倒しをしなくても、年間予算の七二%ぐらいは上半期で契約をしているんですね。前倒ししたときの実績で、多いのが、たしか八二%ぐらいなんですね。そこで、塩川大臣もあるところでおっしゃったように聞いていますが、私は、特に公共投資等は前と違って圧縮されていますから、それをぜひひとつ実行していただきたい、それが一つ。
 もう一つ、あわせて言いますと、財政投融資の問題なんです。私は、財政投融資解体論というもので今まで来ていますが、これは非常に疑問を持っておるんです。郵政民営化の問題と絡んでいるとは思いますけれども、やはり国の信用をバックにして集めた資金について、これが、ただ集めたところの判断でもって資金運用を考えるというべきものじゃないんじゃないか、やはり国の財政運営の一環として考えるべきものじゃないかというふうに思っているんです。あるいは古いかもしれません。
 しかし、今までも、こういう景気対策のときに、予算ではなかなかできないが、財投でこういう面倒を見ますというようなこともやってきているわけです。今、財投債とか財投機関債の調達がそう私はできないとは思わない、金利はもうこれ以上下がらないという状態のもとですから。
 やはり、道路にしても、港湾、空港その他にしても、やれるものはやったらどうだろうか。実際問題としては、例えば高速道路なんて途中でやめるわけにはいかないですよ、これは。万里の長城みたいな大きなあれをつくっておいて、途中でストップしてどうするんですか。鉄道のレールを途中で切るような話なんですね。ですから、やるものはやる、どうせやるのなら早くやった方がいい。そういうことで、しかも、できないんじゃないんです、財投でやると。せっかく予算総則には五〇%増の規定までくっついているんですから。それを活用して、経済の実需面からその促進をするような方向をぜひひとつ大臣にお考え願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 まず、予算の早期執行についてでございますけれども、私もあらゆるところで言っておりますことは、十四年度の補正予算と十五年度の本予算とを切れ目なく、連続して、一体として配分し、それを執行してもらうということをやかましゅう言っておりまして、この前も知事会と、あるいは市長会等に言った。
 今度は相当自治体の方も用意を、準備を早めているようでございまして、できれば七月の議会等で配分を受けて事業化、予算化したいという県が相当ございますので、従来のように九月予算とか十二月予算じゃなくて早いと思っておりますので、その趣旨は貫徹できるのではないかと思っております。
 それで、切れ目なくやるというのと同時に、もう一つお尋ねのところの財政投融資資金でございますが、これにつきましても、私はもういつも、それはこの金を使えと言っておるんです。ちょうど相沢先生が三十年前に主計局長をやっておられたときに、こればかりやって、どんどんと、僕らよくとりに行ったことがありますよ。だから、それを思いっ切りやったらいいと言うんですけれども。
 例えば政府系金融機関なんか、あなた、計画を達成しないんですよ。金、使い切らないんですね。(相沢委員「抑えているんですよね」と呼ぶ)いや、それは、例えば中小企業なんかの問題の金融機関になりますと、保証問題が、抑えていないんです。抑えていないんだけれども、抑えておるというのは住宅金融公庫の方は少し抑えましたけれども、それ以外のところは抑えていない、もっとやれと言っているんですが、保証の問題でうまくいかぬということなんですね。ですから、これは何かもう少し考えて、保証枠等、我々は考えてやりますから、これはやっていきたいと思っております。
 それから、一般の事業の、公団なんかは、これは私たちの方も決して抑えるのはやぶさかじゃないんです。例えば道路につきましても、仕様とそれから規格をもっと考えたらどうだ、余りにむだが多いじゃないかと。今度の道路四公団の検討委員会で、規格を変えることによって二〇%節約できる、こんな粗っぽい話はありませんよ。ですから、早急に、公共事業全般について規格と仕様書を変えてくれたら何ぼでもやってくれたらいいと思うんです。これが、むだが多いから反発が出るんです。むだが多いから出るので、やることに対しては反発が出ていないんです。そこを私はよく心得ておりますので、仰せのように、どんどんとそういう事業をやるように督促いたしますので、どうぞ、そういうことのまた道を開いていくようにひとつやっていただいたら結構だと思います。
相沢委員 時間が来ましたけれども、二、三点、あとちょっと。
 一つは、竹中大臣、例の生保の運用予定利率の引き下げの問題ですね。検討を急がれているようですが、ぜひひとつ今国会に出していただきたいということが一つ。
 それから、やみ金融が今問題になっていますけれども、これは、二九・二%の利率をどうするかということについてはこれからの検討なんですけれども、それよりむしろ貸金業の執行面においていろいろと問題がある。これは、参入についての規制を厳しくするとか、そういった点について検討をしていただいておりますので、ぜひひとつそれはお願いを申し上げたい、そのように思っています。
竹中国務大臣 手短に。
 生保につきましては、もうかねてから申し上げておりますけれども、これは国民経済的にも大変重要な問題だと思っております。さまざまな観点から勉強しなきゃいけない点がありますので、委員御指摘の点も踏まえて、しっかりと勉強を急いでいるところでございます。整理をしまして、また国民的な議論もしていただきたいと思っております。
 やみ金融については、これも与党でいろいろ御議論いただいておりますし、我々としてもこれをさらにしっかりと検討していっているところでございますので、引き続き、連絡を密にして、いろいろな議論をさせていただきたいと思っております。
相沢委員 ありがとうございました。
 最後に一言だけ。こういう状態のもと、こういう経済の窮状を変え、開く、一つの大きな手段はデノミネーション、デノミだと思っております。よろしくひとつまた御検討をお願いしたい。
 これをもって終わります。
小坂委員長 次に、佐藤観樹君。
佐藤(観)委員 民主党の佐藤観樹です。
 本筋に入る前に、日銀総裁にお伺いをしたいのでありますけれども、日本の中央銀行というのは、ニッポン銀行というんでしょうか、ニホン銀行というんでしょうか。小坂委員長はちゃんと気をつけてニッポン銀行と言っておられるのですが、きょうあなたの答弁を聞いていますと、あるいはあなたの就任のごあいさつを聞いておりますと、どうもニホンが多い。
 お札にはNIPPON GINKOと書いてあり、そして財務省印刷局というのが書いてあるので、これは私はニッポン銀行というのが本当だと。きょう聞いておりましたら、最初の陳述では六回しかニッポン銀行と言われませんでした。これは、やはりこのお札に刷ってあるニッポン銀行というのが本当なんじゃないでしょうか。
福井参考人 お答えを申し上げます。
 大変恐縮な御質問をちょうだいいたしました。
 私も、日本銀行に入りまして、実は若いころリーガルセクションにおりました。法律的な問題を検討するセクションにおりまして、ニッポン銀行なんだろうかニホン銀行なんだろうかということを私自身も興味を持ちまして、先輩にも伺いましたけれども、余り明確でなかったんです。それで、登記簿を調べましたら、漢字で日本銀行と書いてありまして、仮名を振っていないんですね。仮名を振っていないがゆえに、これはニッポン銀行でもいい、ニホン銀行でもいいという説がずっとございました。今でもあると思います。
 しかし、委員御指摘のとおり、日本銀行が債務証書として発行しております日本銀行券にはNIPPON GINKO、こうなっているわけであります。したがいまして、ニッポン銀行の方がより正確だというふうに私も思っておりますし、今、日本銀行のメンバーは大方そういうふうに思っているというふうに思います。
佐藤(観)委員 全然別の件ですが、きのう説明に来られた日本銀行の課長クラスの方も、一回もニッポン銀行という言葉は使わない、ニホン銀行だ。ニホン銀行がニッポン銀行券を発行するというのは、これはおかしいのであって、わざわざ、あなた、ローマ字でNIPPONと書いてあるわけだから、ニッポン銀行が正しいんだろうと思います。
 さて、もうそのことはいい。次に、イラクの戦争が終わった後、G7に行かれていろいろな協議をなされてきた。これから世界経済、日本経済がどうなっていくんだろうか。アメリカは、大変な軍事費と、それから貿易赤字という、双子の赤字を抱えている。日本も御承知のとおり。ドイツがよくない、フランスも余りよくない、たしか三%、財政のEUの基準を上回っていると思います。いずれにいたしましても、イラクの問題が終結をしたら、これが取り除かれれば、もちろんイラク復興のお金もありますけれども、世界は順調に進んでいくんだろうか。
 細かいことは別にいたしまして、G7ではどんなふうな雰囲気で話されたんだろうか。G7の声明を見ますと、何か中途半端、はっきりまとまったような感じがしない、政策の行き詰まりというのを感ぜざるを得ないように思うのでありますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。
塩川国務大臣 佐藤先生はG7のステートメントを読んでいただいたと思いますので、重複は避けたいと思っておりますが、一般に言いまして、こういうことを言っております。
 確かにイラクの問題はあったけれども、割と経済は順調に進んでおる、したがって、不確定要素の一部が除かれたので見通しとしては一部明るいものが出てきたけれども、なお経済全体は世界的に低調である、そこで今後ともさらに一層協力をしていこう、こういう認識で立っております。それと、貿易、為替等は安定しておるのと、それから原油についても大きい変動がないだろうということが議論の中で確認されてきております。
 それからもう一つは、日本経済についての議論もございました。日本経済については、二〇〇二年の補正とそれから二〇〇三年の本予算を切れ目なく実行することによって、日本は一層の経済活性化に努力しておるということと、それから産業再生と、それから経済特区のことについて、ある国際機関の専務理事が触れてくれまして、そういう多様な努力をしていることは評価するけれども、なおしかし一層の努力は必要ではないのかということを言っておりまして、それで同時に、不良資産の解消についてさらに努力をする、こういうことを言っておりました。
 それから、アジア経済につきましても、WTOに加盟して、自由化が進んで、アジアが現在地球上において最も経済活性化しておるところである、さらに一層の活力を発揮してもらいたいということでございました。私は、そのときに、WTOにおいては、貿易の自由化を進めると同時に、為替、流通、金融、こういうものの自由化も同時に進めてもらいたいというようなことを申し上げたということが大体のことでございました。
佐藤(観)委員 日本銀行総裁にわざわざお越しいただいているので、きょうは前段の話を聞くためにしたわけじゃないので、大体今の塩川大臣の話でよろしゅうございますか。
福井参考人 塩川財務大臣と一緒にG7に初めて出席をさせていただきまして、世界経済及び日本経済についての見方は、ただいま大臣がおっしゃったとおりでございます。世界全般としても、コーシャスオプティミズムといいますか、非常に慎重ながら、先行きについては、期待感も込めて、楽観的に見える雰囲気ではないか、こういうことで統一されているわけであります。
 ただ、実際に、私ども日本銀行で、これからも慎重に金融政策を運営していこうという立場から見ますと、幾つかのリスク要因はやはり明確に認識しながら運転していく必要がある。
 国内的に申し上げれば、企業の過剰雇用、過剰債務といった調整圧力がなお根強いんだということ。それから、金融システムの健全性回復もまだ宿題を残している。現実の動きとして、銀行株などを中心に株価が不安定な動きを続けていて、経済の基盤の脆弱なところにいつ何どきショックを及ぼすかもしれない。こういうふうなリスク要因はきちんとカウントしておかなければいけない。
 海外を見ましても、一番リード役の米国経済が、生産、雇用、所得の拡大のモーメンタムが弱まっている。より基調的に、おっしゃいましたとおり、双子の赤字がさらに拡大しているということがありますし、ヨーロッパの経済も、このところ、ドイツを先頭にかなり元気がないということでありますので、こういうリスク要因はしっかりカウントしておかなければ、楽観主義に流れているうちに失敗する危険がある、こういうふうに思っております。
佐藤(観)委員 次に、法案としては本委員会を通っていったのでありますけれども、議事録を見てみますと、これはちょっといかぬなと思ったのは、生命保険契約者保護機構の問題でございます。
 御承知のように、これは、あと二百億、三月三十一日まで残っていて、さらに一千億、契約者分、俗に言う業界分は出してもらって、残りは四千億ということに説明では聞いてまいりました。しかし、よくよく政府側の答弁を聞いていますと、だれも四千億と言っていないんですね、だれも四千億と言っていない。みんなお互いに共通のものとしてしまっておるわけで、これはやはり業界には、あるいは契約者には、一千億はさらに皆さんに出していただきますよ、それがなくなった場合には政府が予算措置をして、そして出しますよということになっているわけで、そういう事態が起こらないことを私は願っておりますけれども、セーフティーネットですから、そうは言っていられないわけでございます。
 これはどちらにお伺いしたらいいのかわかりませんが、最終的に予算を組む財務大臣に聞いた方がいいのかと思いますけれども、万が一そういうふうになったときには、四月一日を過ぎましたから、今、結局二百億と、それから業界が出す一千億しかないわけですよね。四千億と言っているのは口約束でございまして、これは見せ金にすぎないのであります。予算的な措置をしなければこれは現実にお金にならないわけでありまして、問題なのは、背後に、契約者の人が心配がないように契約できることが必要なのであります。
 まずは、担当の大臣は竹中さんだから竹中さんに答えてもらって、実際に金を出すのは塩川大臣ですから、お二人に答弁をお願いいたします。
竹中国務大臣 前回法案の審議をいただいた件でありますけれども、今委員御指摘のとおり、生保のセーフティーネットに対する業界負担については、現状の生命保険を取り巻く環境にかんがみれば、平成十二年度改正時を上回る負担を求めることは困難と考えられますことから、十五年度以降三年間の破綻に係る業界対応分を、平成十二年度と同様一千億円として、十五年四月以降の破綻に係る資金援助が一千億円を超えた場合に、四千億円を限度として政府補助が可能となる仕組みとしている、そのような趣旨でございます。
塩川国務大臣 政府はやはり約束をしておりますから、そういう事態にならないことを我々願っております。同時に、そういう事態になりましても、なおさらに生命保険業界でカバーをする力がないかどうかを確認したならば、必ず約束どおり、政府は四千億円の範囲内において予算措置を講ずるようにいたします。
佐藤(観)委員 これは、亡くなられた小渕総理あるいは宮澤さんの時代から、生保の持てる金額はもう限界であるということを、三、四年前から言ってきているわけですよね。
 したがって、今度の制度をもう一度再編するについても、もうそれは業界に持たせる、業界というのは要するに契約者ですからね、契約者が自分の契約している会社と全然関係ないところのつぶれているものを持つわけですから極めて不合理なのでありますけれども、しかし、こういう状況だからいたし方ないということで我慢をしてもらっているわけであります。
 この一千億、まず一つ確認をしておきたいのは、今二百億しかない、これからまた一千億、契約者のお金で積んでいくわけでありますけれども、これ以上、この三年間には契約者に積んでもらうことはありませんですねということを、まず一点確認をしておきたいと思います。
竹中国務大臣 業界負担が一千億円を超えた時点で、業界の負担能力を改めて検討した上で政府として予算措置を講じる、これは塩川大臣も先ほど言ったとおりでございますけれども、生命保険業界を取り巻く厳しい環境にかんがみますと、経営環境に相当の好転がない限りは基本的には予算措置を講ずることになる、そういう必要になる可能性が高いというふうに私たちは認識しているわけでございます。
佐藤(観)委員 確かに、予算は単年度主義ですから、これは今起こっていないことも予算に組んでいけということを私は要求しているんじゃなくて、いわば関係のないといいましょうか、自分の負債ではない、他の保険会社がつぶれたものについて、契約者がこれ以上負担をしなきゃならぬということはあり得ませんねということが一つ。
 それから、万が一、不幸にしてこういうことが起こった場合には、破綻が起こった場合には直ちにちゃんと予算措置をしてくれますねという、この二点でございます。
 よろしゅうございますね。言葉で残しておかないといかぬから、両氏からお願いいたします。
塩川国務大臣 私なり竹中大臣の答えておることは政府の答弁であると受けとっていただいて結構です。
佐藤(観)委員 まだ若干ひっかかるところがありますが。
 それともう一つ、今度の、二回目の、さらに契約者に一千億持たせ、さらに四千億を、これも見せ金だったわけですね、使わなかったんだから。その前のときには、あるよ、あるよということを言ったけれども、結局業界の側に一千億出させて、幸いにして、三月三十一日までには使う事態にならなかったわけですね。それで、今度のものも、これは見せ金のまま政府にある。セーフティーネットですから見せ金なのかもしれませんが、それは出してもらうということを塩川さんが言いましたから、大臣が言われましたから、それは了解をするとして。
 いずれにしろ、この三、四年、四、五年の中に、残念だけれども、さらに全体的に不良債権の問題もあるいは保険会社の問題も、経済全般がそんなにすばらしくよくなるという状況には、大体、見通したほどお互いにないんじゃないかと思うんですね。そういうことを考えますと、一体、契約者保護機構というもののあり方、あるいはセーフティーネットの張り方というものが、毎回、三年ごとにこんなことをやっていていいんだろうか、抜本的な補償の水準なり、あるいは税法上の取り扱いなり、その他いろいろ、何かもう少し工夫して考えてみる必要があるんじゃないだろうか。
 そのためには、こういったことを考えてもらう、学者さんなり業界なりあるいは契約者なり、こういったものの代表が金融制度審議会の中で議論を始めるということがあってしかるべきだと思うのでございます。ところが、内閣改造が言われたり、あるいは役人は七月で大体異動になったりするということで、そのところに積極さが見られないんですね、各答弁の端々に。
 したがって、早速この国会が終わったら、生命保険会社のセーフティーネットの張り方についてどうあるべきかということを、金融制度調査会の中でいろいろな方々のお話を聞いて、これはかなり時間かかると思いますよ、時間かかると思いますので、なるべく国会が終わったら直ちに金融制度調査会の方で審議を始めるというお約束をいただきたいと思いますが、いかがですか。
竹中国務大臣 これも先般、一部御答弁をさせていただいていると思いますが、御指摘のように、今回の措置は三年の時限であります。その後一体どうするんだ、時限、時限を重ねていってよいのだろうか、当然そういう意識は私たちも持っております。十七年度までに、平成十八年度以降の生命保険のセーフティーネットのあり方については金融審議会において幅広く検討するということは、これは前回もお約束したとおりでございます。
 三年間、時間があるようでないのだと思います。この御審議の後速やかにというのはちょっとどの程度のことなのかという問題はございますけれども、私としては、これは責任を持って、時期を失しないように、しっかりとした検討をこの審議会でさせるつもりでおります。
佐藤(観)委員 私は、国会が終わったらすぐ、結構これは時間かかると思うんですよ。いろいろな、初めてのケースでもあるし、今申しましたような、学者さんだけじゃなくて、契約者なりあるいは業界なりその他の方々の意見をいろいろ聞くには時間がかかると思いますので、そういう意味では、結構あっという間に時間がたっちゃいますから、すべてが竹中さんの時代かどうかわかりませんけれども、早速やっていただきますように期待をしておきます。
 それで、次の問題でありますが、きょうは仲よく座っておりますけれども、塩川大臣が竹中さんのことを、うそっぱちだとかでたらめだとか、四月一日のエープリルフールだから言ったんじゃないと思いますけれども、いろいろ議論を醸しておりますけれども、塩川さんがそう激高するようなことだろうか、片方の総務省におきますいろいろな議論の経過を見ると、そんなに激高することはないんじゃないかなと。私は元自治大臣をやらせてもらったという関係もあるのかもしれませんけれども、それはそれなりに順序を経てきてやっていると思いますが。
 地方分権につきまして、お二人の意見は大体了解点に達したのでしょうか。
塩川国務大臣 これは、財政諮問会議の席で議論がありましたけれども、私の言っているのは要するに、えらい大げさなことを言いますと、国と地方との財源を分ける前提としての哲学を言っておるんです。ところが、あの諮問会議では、その中で、テクニックの一部としての財源の配分だけを議論しておって、財源の配分が優先だということを言っておるから、私はそれは違うということを言っておるということで。そこは、私も明くる日、総理のところへ行きまして、私が言っているのはこういうことじゃと言ったら、それはわかったわかった、こう言っていましたのでね。
 私が言っているのは、財源を三位一体で分けよう、調整しよう、これは総務大臣も私も竹中大臣も皆一緒なんです。
 ところが、その財源を分ける前に地方の分権を確実に進めようじゃないか、そのためには国が持っている権限を地方に渡してしまわなきゃならぬ、これが今中途半端になっておるんです。要するに、法定委任事務のような格好になって中途半端なところがあったら、それをきっちりと地方に分権してしまうということが大事だ。その分権をした分に対する国の行政負担、まずそれをそのまま三位一体の中に譲ってしまおう。その分について、それを税でやるのか補助金でやるのか、それとも交付税でやるのか、それは三位一体で考える、こういうことを言っておるんです。
 それで、総務省の方の言っている主張は、まず財源をくれたら、その中で一般財源にするものと、それから要するに委任事務の財源と、区別してやろうじゃないか、税源を配ってくれたら我々の力で、自分らの方でできるだけ分権を取り込んでいく、こういう考えなんですが、それも一つの方法です。
 それも一つの方法だけれども、私は、一体として分割すべきものだ、こういうことを主張しておる。そこが違うということなんです。
佐藤(観)委員 だから、私が言ったように、そんなに違うわけもないがなということを申しておるわけで、竹中さん、そういうことでよろしいですか。
竹中国務大臣 基本的に三位一体であるということは、これは総理、財務大臣、総務大臣、私、皆さんもう一致しているわけですね。これは、補助金、負担金の削減、それと交付税の改革、税源の移譲、この三つをぐっと動かしたいと思っているわけです。ですから、一つだけ、例えばですけれども、税源移譲だけやるとか、そんなことはあり得ないわけですね。
 しかし、これを動かすときに、人間、三つ同時に議論できませんから、例えばこれをやったらどうか、そういう議論の中で、当然いろいろな議論のやりとりはございます。
 財務大臣は、私にとってはちょうど父親と同じ年齢の大先輩でいらっしゃいまして、いつもいろいろなおしかりを受けながらやっておりますが、三位一体に関して、これは意見は全く一致しているということでございます。
佐藤(観)委員 塩川大臣が言われたように、国の補助金あるいは負担金、これを減らしていこう、それと同時に、地方も、地方がやらなきゃいかぬこと、これは本当はもう少し、一体それがどのくらいで、どういうふうにするのか、これは六月いっぱいまでに決められるということでありますから、それも並行的に待ちながら。そうなってくれば、国から税源移譲するわけですから、地方交付税ももう少し少なくて済むということになって、まさに三位一体で全体がうまくいくんじゃないかというふうに私は思っているので、なぜうそっぱちだ、でたらめだという論争になっているのかよくわからないと冒頭言ったとおりであります。
 ただ、私は、今の論議、少し地方自治をさわった者から言いますと、どうも財政の健全化論議というのが先に出ちゃって、金目の話ばかり先に出ちゃって、それはおかしいんじゃないか。
 本来、地方分権というのは、地方に財源も渡すけれども、同時に権限も、やるべきことも一緒にしなきゃいけませんよということが地方分権で、もう少し地方自治体がやりやすいように権限を持つことですよ。権限も一緒に行き責任も持たなきゃいけない、そういうのが一体になって三位一体になるのであって、それは財政の健全化はもちろん大切ですよ、大切ですけれども、報告書によっては、全部減らす減らすの話ばかりになってしまっていることは、どうも整理がなされていないんじゃないかなという感じもなきにしもあらずなんですね。総務省がずっと、あるいは片山総務大臣が言ったのを見ていますと。
 そういう意味で、ひとつこれからは仲よく、認識は一緒だと言うんですから仲よくやっていただきたいと思いますが、最後に答弁を求めて、終わります。
塩川国務大臣 これは非常に大きい、国の政治の課題でございますから、懸命に努力をいたします。
佐藤(観)委員 本来ならば、もう少し細かにいろいろ詰めていかないかぬところでありますが、時間がありませんので、きょうはこれで終わらせていただきます。
小坂委員長 次に、上田清司君。
上田(清)委員 極めて与党側の出席が、おられませんので、集めるまで私は審議いたしません。
小坂委員長 本日は昼食時間も日程が入っておりますので、その点について、野党理事さんの御了解をいただいております。若干その点についても御配慮の上、御決断をお願いします。――定足数に達しましたので、お願いいたします。上田清司君。
上田(清)委員 民主党の上田でございます。
 先日、二月十七日の予算委員会で、住民票コードの問題で竹中大臣と少しやりとりをいたしました。その中で、早速、全銀協の百八十行からの聞き取り調査をやって、七十九行、二百三十六件の住民票コードを使った事例が発表されました。
 銀行中四〇%がこれを使ったということでありますが、あくまで竹中大臣は、きちんと、金融庁の所管する本人確認法の規定に違反しなくても、他法に違反し得る場合が存在するので、これについて十分注意を行うようにというような指示を行ったということでありますが、全銀協の立場では、金融庁から了解を得た、こういうことでかみ合いませんので、予算委員会で全銀協の頭取をぜひ参考人で呼んでほしいということですが、いまだに実現しておりません。
 小坂委員長にお願いいたしますが、ぜひこのことについては、極めて重要なことですので、全銀協の会長を財務金融委員会に参考人として招致いただきますようにお願いをいたします。
小坂委員長 当問題は他の委員会で発生している問題でございますが、理事会で協議をしますので、預からせていただきます。
上田(清)委員 ありがとうございます。
 それでは、福井総裁にお願いをいたします。
 福井総裁、九七年に、副総裁として引責辞任をなさいましたが、原因は一体何だったでしょうか。
福井参考人 九八年の三月だったかと思いますけれども、当時の日本銀行におきます、接待を中心とする不祥事の責任をとって退任いたしました。
上田(清)委員 当時、たしか百人前後の処分がなされて、ザブンだとかドブンだとか、そういう非常に忌まわしい接待事件がございました。
 私は、当時、日銀考査と天下りの関連を図表にして提出したことがございます。日銀の局長以上ぐらいの方々が各金融機関にOBとして天下りをされる、それに考査の時期が余りにも近い場合には何かと問題があるんじゃないかということで、時系列的に資料を提出したことがございました。
 同じように、まことに恐縮ですが、福井総裁も、富士通総研という富士通のグループ会社、コンピューター機器等を製造販売する会社でありますが、この中にも元局長もお二人、総研の中におられるというふうに私は伺っておりますが、これが、全国の金融機関に天下りしておられるところの日銀OBを通じて営業活動ができるためにある意味ではお迎えもされているんではないかというふうに、私はあえてうがった見方をしております。
 それは、富士通総研が、売り上げ五十億、純利益二億から三億の企業の中で、日銀の、局長を含むOBを三人役員で抱える、そういう仕組みで業として本当に成り立つのかどうか、こういうことも含めて私は大変気にしておりますし、また、IBM、日立製作所、NTTデータ、こちらにも元局長がそれぞれおられます。日銀の威光を使って、もし金融機関に何らかの形でコンピューター等々の機器あるいはシステム等を購入させる、あるいは採用させるという仕組みをしているとすれば、私は、日銀のある意味での正当性みたいなものがうまくいかないんじゃないかということで、この際、こうしたところも含めて、天下りを一切しないというぐらいの決意が福井日銀総裁にあられるかどうか、そのことを確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
福井参考人 上田委員は既に十分御承知おきいただいていると思いますけれども、日本銀行の役員それから職員の再就職のルールにつきましては、過去五年間のうちに非常に明確なものを設けております。
 繰り返すまでもないと思いますけれども、中央銀行が業務として主として関連がありますのは、当座預金取引先ということに特に焦点が当てられると思います。したがいまして、当座預金取引先につきましては、役員については二年間再就職をしない。それから、局長クラスにつきましては、退職するまでの前二年間にそうした当座預金取引先と関連のある仕事をしていた場合には、その後、退職後二年間就職をしない。それから、今おっしゃいました考査、実地考査が特に問題だということでございまして、実地考査を経験した者については五年間考査先には就職しない。こういうふうな厳しいルールを設けて、その後これは明確に遵守されているということでございます。
 それから、当座預金取引先に限りませんで、それ以外の企業、広く企業も含め、日本銀行の役職員が再就職をいたします場合には、おっしゃいましたとおり、日本銀行との利害関係を絶つということが基本でございますので、広く個人の識見あるいは能力を期待されて、かつ日本銀行から要請するということではなくて、当該企業から、つまり外部から人材を求められた場合に限って、かつ慎重に対応するという方針で臨んできているというふうに承知しております。
 なおかつ、その結果を透明にいたしますために、役員それから局長級職員に関する再就職については、毎年度、実は業務概況書というのを出しておりますが、この中で公表いたしておりまして、透明性確保にも努力をしているということでございます。
 私が着任しまして間がございませんけれども、こうしたルールを今後ともきちんと守るということは当然でありますけれども、世間から疑惑を呼ぶような再就職の仕方を断固しないということは貫きたいというふうに思います。
上田(清)委員 必ずしも私の意図しているところは伝わらなかったみたいですが、通信機器メーカーに、日銀の皆さんが振るわれてきた見識、能力というものがどれほど本当に必要なんだろうかというふうな疑念を私は持っております。あくまで、コンピューター機器、システム等々の採用について、極めて、日銀のOBの方々がおられると都合がいい、こういうことだというふうに私は判断しておくということをあえて申し上げておきます。今後考量していただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 財務大臣、外為特会における外国旅費の問題で、予算委員会で若干指摘をさせていただきました。四十人の職員が担当して、この外為特会を運用というんでしょうか事務をつかさどっておられるわけですが、十五年度の予算で二億五百万予算が計上されておりますので、まさか四十人で使っているわけじゃないでしょうねという感じだったら、実は国際会議で使っておるというお話でございました。
 十三年度の決算の資料だけ、私は今手元に持っております。そして、国際会議のそれぞれのコミュニケ等々を資料でいただきました。例えば、十三年度に、G7、サミット、ASEAN、APEC、ASEM、OECD、それぞれ、一般会計から八千万、外為特会から六千万の海外旅費を出しているわけでございます。十三年度ですが、大体同じようなパーセンテージで年度過ぎておりますので、十五年度の予算についてもそんなに大差ありません。
 それで、問題なのは、通貨、為替の議論をしているのであえてこの外為特会のところから旅費を出しているんだという御説明でございました、二月十七日の予算委員会では。
 しかし、例えば、平成十三年度のOECDの閣僚理事会のコミュニケを読みました。文字数で一万六千六百四十文字、日本語訳ですけれども。この中で、「経済見通し」というところで若干経済のことを触れております。千八十文字、十六分の一、約六・五%。この中で、国内向けの、アメリカの金融政策、日本の金融政策、欧州の金融政策ということで、それぞれ一行ずつぐらいありまして、百十一文字、パーセンテージにすれば〇・六六%。全然OECDでは通貨や為替の議論をしていないんですね。
 にもかかわらず、なぜ外為特会から海外旅費の支出ができるのか、これはずぶずぶになっているんじゃないですかということを申し上げたんですけれども、いやいや、そうじゃないということでしたから、一々文字数も調べてみました、あるかないか。そうすると、全然ないんですよ。
 もともとOECDは、御承知のとおり社会開発関係です。しかも、事実、寺澤局長が二月十九日の答弁で、開発政策であれば一般会計で出しています、こういう答弁までなさっているんです、御丁寧に。だから、これは、好ましくないというよりも、目的外使用みたいな形になっているのではないかということを財務大臣にまずお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
谷口副大臣 上田先生がずっとこの問題に一生懸命取り組んでいらっしゃることに対しましては、敬意を表する次第でございます。
 それで、今お尋ねの件でございますけれども、OECDの件で、コミュニケに全くその言及がなかったというような、海外旅費についてのお話でございましたが、一般的に、コミュニケには議論の全体がすべて盛り込まれているということではないわけでございます。盛り込まれておる場合も、平成九年度、また十年度のOECD閣僚理事会においては盛り込まれておるわけでございますけれども、必ずしも盛り込まれていないというような状況の中で実態的にそのような為替に関する議論があったというような場合には、定員外であっても、外為特会で海外旅費を計上するというような形にさせていただいておるわけでございます。
上田(清)委員 少なくとも、第四十回のOECDでは全然そういう議論がなされていないんです。確かに、コミュニケに関してはそういう代表的な意見をアピールする場合が多いということも私も承知しておりますが、ないんです。
 会計検査院長、来ておられますか。ああ、院長じゃないんですね。これをよく読んで、答えを出していただきたいと思います。全然通貨や為替のことをOECDではやらないんです、メーンテーマじゃないんです。社会開発問題がメーンテーマなんです。よく読んでいただいて、どういう御判断をされていますか。
石野会計検査院当局者 お答えいたします。
 今、OECD関係の会議に出席するために外国旅費が外国為替資金特別会計で支払われているということは、十分承知しております。そして、なお、先般の先生からのお話で、外国旅費について種々疑問点といいますかが提示されているということがございまして、その後の検査におきまして、十分注意を払うということで検査してきておるところでございます。
 さらに、今お話しの、特別会計の目的に沿っているか否か、目的外支出になっているのではないかという点につきましては、当該旅費を支出するに至りました経緯とか、あるいは当該会議での討議内容等を検討の上、判断していくことになろうかと考えております。
上田(清)委員 スピーディーに対処してもらいたいと思います。
 会計検査院に明確な形で宿題ではなかったかもしれませんが、地震再保険、六人で運用されていて、毎年二百万の外国旅費が計上されている。地震国も限られておりますし、毎年毎年制度の変更を諸外国に求めるために調査団を派遣されるという仕組みが、六人しか職員がいないのに毎年二百万の海外旅費を使うという、これはどう考えてもおかしいと私は思っております。
 別に、制度や仕組みは、調査団を派遣しなくたって、インターネットもあれば国会図書館もありますし、いろいろな議論はできるというふうに私は思っています。民間の保険会社もたくさんあります。そういうところの議論と関係なく、なぜこんなことができているのかということについて、杉浦総裁を通じて、できるだけ調べてくださいということですが、この件についてはどんな状況ですか。
石野会計検査院当局者 お尋ねの地震再保険特別会計の外国旅費につきましても、先般の国会で御議論があったということは十分踏まえております。したがいまして、必要に応じてということでございますが、今お話しの、こういった海外調査の必要性ということにつきましてやはりさらに、そういった調査の実施時期やその内容というものを検討いたしまして、今後判断していきたいというふうに思っております。
上田(清)委員 二カ月たっているんですから。なお検討すると。
 六人で毎年二百万使っているという中身を、あなた方は何人でやっていらっしゃるか知らないけれども、これじゃ会計検査院が本当にやっているというふうに私には思えません。
 まことに恐縮ですが、財務大臣にお願いしたいんですが、自分自身で調べますので、少なくともここ十年ぐらいの地震再特会と、それから外為特会の海外旅費についての隅から隅までの細かい資料を私の方に提出いただきますようにお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
塩川国務大臣 提出する努力をするようにいたします。
上田(清)委員 ありがとうございます。
 会計検査院がそんなふうに時間をかけちゃだめですよ。二百万の支出を年間どんな形で使っているのか、私の方からお願いをしているんですから、国会の論戦できちっと議題になったんですから。二カ月あるじゃないですか。今なお検討していますというような、そんなことで会計検査院の仕事ができると思っているんですか。最初から私がやった方が早いじゃないですか、そんなことだったら。極めて不見識な対応だということを抗議申し上げます。
 もうきょうはありませんから、どうぞ御退席ください。
 それから、石川銀行の問題についてお伺いをしたいと思っております。
 御承知のとおり、十三年の十二月二十八日に、こちらの方でも詳しく触れておりますが、破綻をいたしました。
 破綻前にたくさんの増資をこの石川銀行がして、御承知のとおり、もう何回かこういう議論は出ておりますが、ある程度金融機関との取引を維持するために、強制ではないんですが、強制的強迫観念に駆られるというのが中小零細企業主の、これはもうことわりのない、間違いのない事実だと私は思っております。
 私どもの仲間でもそういう人はたくさんおりました。新潟中央銀行の増資に対しても、十億お願いをされる、そうすると、せめて半分ぐらいはつき合わざるを得ないかとか一割ぐらいはつき合わざるを得ないかというのが、一般的な銀行との取引関係をなさっている企業の皆さんの中身だというふうに私は思っております。当然、この石川銀行においても、いろいろうわさがあっても、しかし、全く取引を遮断されるのはつらいということで、そこそこ増資に応じられることがある、こういうふうに私は思っております。
 それは単なる増資じゃなくて、事実上の一種の預金だというふうな見方をすべきだという我が党の五十嵐議員なんかの指摘も過去にもあったと思いますが、私は、それの視点よりも、金融庁がこの石川銀行に、破綻に至るまでに、どのような形でかかわられたのかを少し確認させていただきたいというふうに思っております。
 十二年三月の業務改善命令はどのような指摘を中心になされたのか、このことをお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。――後ろの方で準備をしている間、結構です。
 十三年の一月に金融庁の検査をなさって、三月、四月に百五十億と七十億の増資をして、六月に二度目の業務改善命令をされた経過がありますが、こちらの方はどうだったんでしょうか、二度目のときには。
伊藤副大臣 最初にお尋ねがありました業務改善命令云々については、ちょっと、今調べさせていただいておりますので。
 今お尋ねがございました、石川銀行に対して十三年一月から行われた、十二年九月末基準での検査については、増資終了後の十三年五月に検査結果が通知されたところでありまして、増資が行われた時点では、検査が同時並行で行われておりました。したがって、この時点で検査結果はまだ出ていなかったという状況でございます。
上田(清)委員 正確な日付を教えていただきたいんですが。債務超過だということが確認できた日付を教えてほしいんです。五月というんじゃなくて、五月の何日なのか。――一応は通告しておったつもりですけれども、若干混乱があるみたいです。
 それはまた補充しながら、次に入りたいんですけれども、十月に改めて立入検査をなされたわけですが、これはどういう理由で立入検査されたのか。
伊藤副大臣 申しわけございません。
 先ほどの、検査が終了した時点は五月の二十一日でございます。
 十月に検査を開始いたしましたのは、十三年の九月期基準の状況を確認するために検査が入っております。
上田(清)委員 十三年の十月の立入検査が十月二十四日、そしてこれは十三年の九月末の決算等々の検査ということになりますが、その二カ月後に破綻をしております。このときには、当然、二カ月ぐらいで中身がわかったわけですね。だから破綻させたわけですね。
 なぜ前のときは半年ぐらいかかるんですか。その時々でスピードが違うんですか。
伊藤副大臣 この破綻の事実関係でありますが、破綻は検査が入っているときに起きたわけであります。
 もう一度申し上げさせていただきますと、先ほどお尋ねがありました、十三年の一月に検査に入らせていただいて、そして五月の二十一日に検査が終了し、検査結果、経過を通知させていただき、そして報告徴求をとっているわけであります。そして、十三年の十月十一日に次の検査を予告して、二十四日に立入検査を開始し、そして十二月の十四日に立入検査は終了したところでございますが、その後、金融機関石川銀行が破綻の申し立てをしたということであります。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
上田(清)委員 このときは、今私が御指摘させていただいたように、二カ月で調査が終わっておりますが、なぜ前回のときは半年かかるんですか。
伊藤副大臣 前回の場合には、検査が入って、そして債務超過するかどうか、ある意味では銀行の経営の命運を決める検査ということになるわけでありますけれども、不動産の鑑定をめぐって、この問題について大変いろいろな議論があって、銀行側からもこの問題についてはさまざまな意見が出されており、それに対して挙証するというようなこともあり、時間がかかったということでございます。
上田(清)委員 私には必ずしもそんなふうに思えないんです。石川銀行クラスでなぜ六カ月近くかかってしまうのかというのが理解できません。むしろ、もう二カ月ぐらいでわかっていたんじゃないですか、中身が。わかっていた上で、増資をしている状況について黙認したんじゃないんですか。違いますか。
伊藤副大臣 これは黙認したということではございませんで、もう一度事実関係の方を私の方から述べさせていただきたいと思います。
 前回の石川銀行に対する検査、十二年の九月三十日基準日については、十三年の一月二十三日より三月二十日まで立入検査を実施したところであります。立ち入り期間は、営業日ベースでございますが、四十四日間、当該事務年度に実施した他の地域銀行に比べると、平均二十五日間長期の期間を要しておりますが、これは既に公表しているとおり、債務超過という、銀行の存続にかかわるような重要な検査結果に至ったわけでありまして、財務内容等の慎重な実態把握のために、他行に比べ、より多くの検査事務量が必要であったからでございます。
 検査結果につきましては、必要な精査を行って、十三年の五月二十一日に通知したところでありまして、十二検査事務年度を通じて実施した第二地銀に対する検査の事例と比べても、特段、石川銀行に対する検査結果通知がおくれたとは考えておりません。
上田(清)委員 四十四日というのは何ですか。ちょっと前後がよくわからなかったんですが。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきます。
 四十四日間というのは立ち入り期間でございまして、これは営業日ベースの期間でございます。
上田(清)委員 しかし、現実的には約六カ月かかっているわけですね。これが他の金融機関と比較して決して長いわけではないという根拠はどこにあるんですか。
伊藤副大臣 先ほども答弁をさせていただきましたように、債務超過という、銀行の存続にかかわるような重要な検査でありまして、銀行側からも、先ほどお話をさせていただいたように、不動産評価にかかわる問題について意見が激しく対立をいたしておりまして、その挙証について時間がかかったということでございます。
上田(清)委員 だからおかしいと言うんですよ。そういう問題であればあるほど早く結論を出さないと、現に増資がかかっているわけじゃないですか、百五十億、七十億と。一たん三月が百五十億、四月が七十億改めてまた増資をしているという。まさに債務超過を消すために増資をしているんじゃないですか。違うんですか。
伊藤副大臣 立入検査が終了してから検査結果通知が出るまでが五十二日間でございまして、他の銀行の平均と比較しても、これが特にかかっているということではございません。
 そして、先生御指摘のように、並行して増資ということが行われていたわけでありますから、私どもとしては、その増資にかかわる部分について、当時石川銀行に対して、この増資というものが法的に適正かどうかということを監査法人そして弁護士に確認をするということも警告をいたしていたところでございます。
上田(清)委員 五月ごろ高木頭取が引責辞任をされていますけれども、何でやめたんですか。金融庁と裏取引やったんでしょう。責任をとらせたんじゃないですか。
小坂委員長 伊藤副大臣、時間が来ておりますので、手短にお願いいたします。
伊藤副大臣 頭取がやめたという事実は承知をいたしておりますが、そのやめた理由、子細については私は今承知しておりません。
上田(清)委員 それは無責任だと思います。(発言する者あり)今場外から話があったとおりです。金融庁が知らなくてだれが知るんだと。
 何の理由でやめたのか、まさにもう破綻していたからでしょう、中身が。ただ、存続させてあげる、しかしあなたは身を引けという、これだけの話じゃないですか、一口で言えば。だけれども、存続させたけれども破綻した。
 このパターンが幾つもありました、今までに金融行政の中で。それがゆえに、どれほどそういう増資とかに応じた人たちが泣いたかということについて、だれが責任をとるんですか、こういうことに関しては。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 今御指摘のとおり、金融行政に対する信頼というものをしっかり確保していかなければいけないわけでありますから、委員からも厳しく御指摘をいただいたわけでありますけれども、私どもとしては、そうしたことを踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。
上田(清)委員 時間になりましたので終わりますが、一応は通告もしておりますし、何回かこれは話題に上っている話でもありますから、もう少し事務方との連絡もきちっとして、大臣や副大臣がきちっと答えられるような態勢にしておかないと、文字どおりそれが金融行政の不安につながりますので、申し上げておきます。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、中津川博郷君。
中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。
 株価についていろいろお聞きしたいと思っておるんですが、実は、イラク戦争が長引けば日本の経済も影響を受けるだろう、ところが、短期に終われば、これは株価も上がって景気が回復する兆しになるんじゃないか、こんなような大方の考えであったわけです。
 しかし、実際、三週間で終わった、短期で一応終息したというんですが、結局株価は低迷し続けています。きのうは七千八百二十一円九十銭ですね。きょうの午前の終値、先ほど調べてみましたら七千八百七十三円八十一銭ですか。しかも、二十数年ぶりに、十五日にはバブル後最安値を更新しているわけでありますが、こういう現象を、竹中大臣、どういうふうにとらえておりますか。
竹中国務大臣 株式市場の動向に対しては、大変重大な問題であるというふうに受けとめております。
 委員御指摘のように、三月ぐらいまでの間は、戦況によって株価が一喜一憂して、特にアメリカ、ヨーロッパが大きく揺れる、それに日本の市場も引きずられるというような形で推移をしてまいりました。戦争の状況が比較的短期であるというふうにわかった段階で、アメリカの方が比較的持ち直した。しかし、残念ながら、日本は四月に入っても、今度は、アメリカが上がったときに同じように上がるという動きを示さないような状況になっている。
 まさに、日本の株式市場に関しては、先ほどからも議論しましたが、これはもちろんいろいろな要因はあるわけですけれども、戦況に一喜一憂するという状況から、日本の経済の不確実性に敏感に反応するというような状況になっていると思います。
 加えて、きょうの当初の段階でも議論がなされましたけれども、日本の株式市場の場合に、短期の需給の変化に対して非常に市場が敏感に反応しているのではなかろうか。これは専門家の指摘でございますけれども、そういう状況が確かに出現しているという状況も重なっていると思います。
 一例としては、これは十年ぐらい前、日本の株式市場の取引のうち、大体二五%が銀行によって取引が行われていた時期がございました。それが、金融システムが傷む中で、今そのウエートが一%になっている。そういう、厚みのある取引をするプレーヤーが、銀行、生保等いなくなるような状況の中で、非常に小さなニュースにでも株価が敏感に反応して不安定化しているというのがもう一つの特殊要因であろうかと思います。
 こうした点も踏まえまして、先般の経済財政諮問会議でも、民間議員の方から、いろいろな問題を包括的に議論して改めて問題提起をしてみたいというような御指摘をいただいておりますので、そうしたことも踏まえて、大変厳しい状況ではありますが、しっかりと対応をしていきたいと思っております。
中津川委員 いつも竹中大臣は、これは世界同時株安の流れでもあるということを、きょうも言われるかなと思っていたんですが、きょうは触れませんでしたが、実は、欧米の下落というのは、二〇〇〇年初めにかけてのバブルの反動として、今いわば調整局面にあるというような感じですね。ところが、日本は、もう十年以上も長期にわたって下落が続いている。日米の株価の比較の資料を私調べてみたんですけれども、グラフを見ると、明らかにアメリカと日本は全然違う。非常にこれは深刻なんですね。
 特に小泉政権になってから、この間も私ここでお話ししましたが、百七十兆円、これが株式市場からまさに泡と消えてしまっている。これは我々の、国民の資産ですよ。その辺のところ、竹中さん、この危機感、これはいわば、株価の問題というのは日本の経済の実態をあらわすものなんですね、通信簿ですよ。そういう認識は持っておられるんですか。
竹中国務大臣 株価というのは、先ほど申し上げましたように、いろいろな要因を総合して示しておりますが、ある意味で、中津川委員今おっしゃったように、将来の日本の経済はどうなっていくのかという期待を集約的にあらわしている意味では、日本の経済の強さ、弱さ、そういったものを示す通信簿であるというような側面を持っていると思います。
 株価の変動、変化については、御指摘のように、例えば九〇年代からの変化をとりますと、日本の下落というのはもうこれは極めて厳しいものがある。同時に、この二年間ぐらいの変化を見ますと、これはまさに小泉内閣になってからの二年間を見ますと、ドイツあたりが一番厳しくて、日本は多分、ドイツ、アメリカの中間ぐらいのところにいる。しかし、四月以降の動きを見ますと、アメリカ、ヨーロッパが少し戻している中で日本がまた厳しい。これはいろいろな要因で、どのぐらいのディメンションで見るかということに関しては、いろいろな評価があろうかと思います。
 ただ、委員の御指摘は、株価にあらわれているように日本の経済は非常にまだ問題がある、この点は私たち全くそのとおりだと認識をしております。その日本経済が持っている脆弱性、それは、規制改革等々をやはり進めて、生産性の高い仕組みをつくって、資源の有効な配分、効率配分を実現して、不良債権処理等々その中で進めて、やはり今我々が行っている構造改革をさらにさらに強力に進めなければ、あしたの日本経済に対する明るい期待、展望はなかなか出てこないのではないかというふうに思っております。
中津川委員 そこで、毎年三月に近づきますと、ことしは金融恐慌が起こるか起こらないか、いや大丈夫だ、同時に、株価対策、こんなことをするんだというようなことをもう繰り返していますね。毎年毎年同じことですね。だから、株価対策ではなくて日本の経済なんですね。景気対策、経済対策をどうするかという議論が、そこのところが見えてこない。
 これは原因は、竹中さん、小泉内閣の経済、これが失敗したんじゃないか。だから株価がこれだけ低迷しているんだ。いいですか。
 だから、来年三月が近づきますとまた銀行は大変ですよ、不良債権処理、どうしよう。これは後で触れますけれども、また土地も下がっているわけですから。きょう午前中の審議にもありましたが、株価も下がる。資産デフレの問題、これは後で触れますが。不良債権を処理しても、処理しても不良債権ができてくる、土地が下がっていますから。
 そうすると、ことしは七千円ぐらい、これでもう限界だろう。竹中さんもこの間、ETFをもう買ってもいいんじゃないか。たしか総理も、もう底だ、こんなようなことを言われましたけれども、底だという認識で言ったという午前中の委員がありましたが、来年は、今度は六千円、五千円ですよ、どんどんどんどん。バナナのたたき売りじゃないというんですよ。そういう現象が起きるわけです。予測できますね。
 竹中大臣、今、構造改革をどんどんすると。構造改革をやることは、与野党の議員、私は、だれもこれは反対する者はいないと思いますよ。さっきの上田議員の質問ありましたけれども、もうどんどん行政のむだなところは削っていく、当たり前ですよ。だけれども、問題は、今これだけ体力が、経済が悪くて、不良債権処理を加速するというと実体経済はさらに悪くなっていく。だから、今やっている政策というものを反省して、やはり見直しも含めて検討する余地があるんじゃないですか。
 竹中さんは、政策転換しろと私が言っても、それは、そうだとお立場上言えないかもしれない。それでまた、いまだに、緊縮財政であるということは、塩川大臣も平沼大臣も、私が質問しても、緊縮財政じゃないなんて言っているんですね。
 こういうところの認識から始まって、とにかく経済政策が、今までこの小泉内閣でやってきたものが間違っていたんだ。人間がやるんだから間違うことありますよ、それは。いいですよ。これを転換しないと、どんどん日本の国はつぶれてしまうんじゃないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 中津川委員には御賛同いただけなく、またおしかりを受けるかもしれませんが、私は、今の経済政策の方向というのは、大変厳しい中ではあるけれども、やはり間違っていない、これしかないのではないかというふうに思っております。
 イギリスの例等々を見ても、サッチャーの改革等々で、今でこそ評価されておりますけれども、そのプロセスではやはり、失業率に関しても非常に厳しい時期を通り抜けなければならなかった。日本の経済は私はそういう中にあると思っております。
 経済失政という言葉がございましたけれども、厳しいということは、この調整期間、特に二年間、厳しいということは当初から見通していた。しかし、その中でも実は、当初の十四年度、例えば経済に関しては当初ゼロ%と見通していたものが、これはまだわかりませんけれども、十四年度は一%を超える成長率になりそうだ。実物経済に関しては、そこそこの姿が出てきているという面もあろうかと思います。
 繰り返しになって恐縮でございますけれども、日本が抱えている問題を考えますと、資源の効率配分のためにやはり規制改革をやらなければいけない。そのために特区も有効であろう。それと、やはり歳出改革をしなければいけない。むだを省くのは重要だというふうに御指摘をいただきました。それと、歳入の改革ということで、その中では、大変厳しい財政状況の中で先行減税も行うことになりました。さらに、金融の問題に関しても、これは先ほどからもいろいろな御意見がございましたけれども、やはり、不良債権を処理して、これも資金がきちっと効率的に配分されるように、結果的にまた金融政策の効果が行き渡るような金融の状況をつくっていくしかない。四本柱の改革というのは、まさにその意味ではどうしても避けて通れない方向であろうかと思っております。
 最後に、マクロ政策に関して、緊縮云々の御指摘がございました。
 これは、財政が、今プライマリーバランスでGDP比五%を超える赤字でございますから、プライマリーバランスの赤字が続く限り赤字はどんどん発散してまいりますので、中期的には、やはりこの状況を続けることはどうしてもできないわけであります。
 しかしそれでも、そうした中にあって、今年度、十五年度に関しては、これは「改革と展望」の参考試算をごらんいただきたいと思いますが、政府の貯蓄・投資のバランスに関しては、マイナスにならないように、つまり、結果的には財政が景気に対して中立になるような非常に微妙な配慮をしたつもりでございます。
 今、大変経済が厳しいじゃないか、そういう御指摘に関しては、我々も謙虚に耳を傾け、さらに努力をしたいと思いますが、この方向については、今申し上げたような方向で努力しているんだという点を、ぜひ御理解賜りたいと思います。
中津川委員 今「改革と展望」の話が出ましたが、私も拝見しました。
 同時に、竹中さん、今の御発言に触れて、GDPについて、名目はマイナスだけれども実質ではプラスであるから心配ないということをいろいろなところで述べておられますね。
 しかし、実際の経済活動というのは、名目が、これが現実なんですよ。経営者の視点に立てばこれはもう当然でありまして、毎日営業の現場に立っている人たちは、日々のビジネス、売り上げが幾らでもうけが幾らで、一円一銭の死闘を繰り返しているんですよ。だから、竹中さんというのは実体経済がわからないんじゃないかなということを、私も元経営者でありますから、いつもあなたの発言を聞くたびにそういう思いをするんですよ。
 だから、名目GDPがマイナスで実質GDPプラスというのは、これはデフレの結果、あるいはこれはデフレの特色と言ってもいい。そうですよね。だから、私は非常に深刻に、竹中さんよりはるかに今の経済状態を深刻に考えておりまして、もうデフレスパイラルに入っている。政府はあの手この手やって、やってきても、全然もう効果は出ないじゃないか。流動性のわなという経済用語がありますけれども、昔学校で習いましたけれども、それが日本の現実で、今、我々には起きているんじゃないかという、私はそこまで厳しい認識をしているわけであります。
 地価はこの十年間で千兆円、株価は三百八十兆円消えたということを前回の質問でも申し上げました。この資産デフレをとめない限り、もうどんな手だてをやってもこれを解決できない。株価対策云々もいい、竹中理論もいい。だけれども、実体経済というものに照らして、僕は、この問題を一日も早く解決するために、思い切った政策を、市場に任すといったって、そうなったら政治家要らないんですよ。思い切った政策を出して、みんなで議論しましょうよ。いかがですか。
竹中国務大臣 私は、実質が伸びているから大丈夫だというふうにはもちろん思っておりません。ビジネス等々、特に、例えば資産運用を行う生保等々は名目の値に非常に依存している部分が世の中にはあるわけで、やはり名目も十分プラスにしなければいけない。その意味で、だからデフレを克服するということが大変重要であるということを認識しておりますし、その点での認識は、まさに政府、日銀ともに一緒であろうかと思います。
 今、スパイラル的に悪くなっているのではなかろうか、ここがやはり大変重要なポイントであろうかと思います。しかし、実質的な所得が上がっている、すなわち、国民の生活水準が、実質的な意味では、わずかだけれども上昇が見られるような状況の中で、スパイラルというのは、何かが悪くなるとほかのも悪くなる、だからほかのもどんどん悪くなって、どんどんどんどん悪くなっていくという状況であろうかと思いますが、そういうような状況に日本経済があるわけではないと認識をしております。しかし、危機感は持っております。であるからこそ、構造改革等々を急がなければならないと思っているわけです。
 資産デフレの問題についても、これは株、土地、大変重要な問題がありますけれども、可能な限りの政策を我々としては打ち出しつつあるというふうに思っている。
 中津川委員の御指摘は、思い切ったことをやろうではないかと。
 私自身も、例えば特区というのは、その意味では実は思い切った政策に、今までの延長では考えられないような政策になっているというふうに思う。
 しかし同時に、日銀にとっても、これ以上名目金利を下げることは難しいわけだし、財政としても、これ以上財政赤字を拡大するということに対する国債市場への不安もある。政策の余地がこれまでの十年間のいろいろな積み重ねで大変難しくなっているという状況の中で、非常に狭い道をやはり慎重に歩まなければならない。そういう方法しか今の日本経済にはなかなか見当たらない。魔法のつえのようなものがあれば我々も飛びつきたいわけでありますけれども、やはりここは四つの改革をしっかりと進めていくということに尽きるのではないかというふうに思っております。
中津川委員 特区も、今触れられましたけれども、これはあくまでも特区ですからね。地域的、部分的なものでありますね。今の答弁にもやはり、資産デフレに対して本当に取り組むという、政策も今おっしゃられなかったし、その意気込みも感じられない。
 前回私もお話しさせてもらいましたが、竹中さんも、私の論文、「正論」に載っけていただいたものを読んでいただいたと思うんですが、例えば、これは私案ではあるんですが、何でバブルが崩壊したか、土地が下がったか。あのとき国土法を発動しまして、そして全国に指定地域をつくって上限を設定しましたよね、これじゃだめだと。それで十分だと思うのですが、そのほかに、あと地価税とか総量規制とかやって、とどめを刺されて、いまだにこうなっているというんです。
 今も、逆バブルですから、私は、そういう意味で、下限を設定してやる。当初は余り、我々の党内でも、その話についてはちょっと社会主義みたいだというようなことがあったんですが、もう経済有事ですから。そんなことも、とにかく土地を、バブル以前の八三年、八四年に戻さないといけない、こんなふうに私は思っているんですが、ちょっと感想をお聞きしたいと思うんです。
 あと、今いろいろ議論が出ています。例えば、銀行が不良債権を持っているものを日銀が思い切って買っちゃう、日銀がつぶれるときは日本がつぶれるんだから。こういうような議論も今、割と行われるようになった。竹中さん、個人的に、そういう意見、ちょっと感想を聞かせてください。
竹中国務大臣 要するに、政府というのは、本当に危機が起きればこれはやはりいろいろなことを、まさに総理の言葉で言えば、柔軟かつ大胆にいろいろやらなければいけないという大きな責任を負っているのだと思います。
 しかし、その場合に、例えば先生が今おっしゃった一種の価格規制を行う、これは、非常に思い切った、まさしく革命か何かが起きて、経済が非常に破綻的な、大恐慌的な状況になった場合はそういうことがあろうかというふうに思うのでありますけれども。不良債権の日銀の購入等々についても。
 経済のことを案じて、さまざまな、一種のリスク管理としてのそういう議論を進めるということは、これは政策のフィールドでは私は必要だとは思います。
 しかし、繰り返し言いますが、今の状況で、実質経済が、実質GDPが、不十分だったとは言いながら、十四年度経済に関しては少し伸びている、そういう状況下で、そういう市場のメカニズム、インフラを全部壊しかねないような措置をとるのがよいのかどうか。これはやはり、政策というのは常に多様な目的のバランスをとって考えていかなければいけないのかと思います。
 ただ、やはり日本の経済は厳しい、そういう御懸念を中津川委員御自身は大変強く持っておられて、一種のクライシスマネジメントとしていろいろなことは考えておかなければいけないということに関しては、土地の価格制限はともかくとしまして、これは我々もひとつ常に頭の中に置いておかなければいけない問題だとは思います。
中津川委員 私が最初申し上げた私案は、実は地元の中小企業の人たちも、非常に、そうだと言う声が強いものです。
 私は、竹中さんに、ぜひ中小企業のおやじさんたちに会ってもらいたい。私の地元の江戸川も、前は三万弱、中小企業があったんですけれども、今は二万ちょっとですよ。数字の上ではそうですが、実態は、もっと廃業しているんだとか休業しているのもある。ほとんど活性化していないという状況で、一生懸命に働く、汗を流して油まみれになって働いている、そういう中小企業のおやじさんたちに会って、話を聞いて、そして思い切った政策をやってもらいたい。それは答弁しなくていいですから、要望をしておきますので。江戸川に来るんだったらいつでも私は案内しますので、どうぞ時間をつくってください。
 福井総裁にお伺いいたします。
 大変厳しいときに総裁になられたということでありまして、総理や、竹中、塩川両大臣や、それから政府・与党あるいは我々野党にも気を使いながら、大変大役を今お引き受けになってやっておられるということで、御苦労はわかるんですけれども、ぜひひとつ力を十分発揮してもらいたい、こんなふうに思っております。
 早速、銀行保有株の買い入れ増額、それから中小企業の資金繰り対策だということで、売り掛け債権を証券化し、その購入を決定する。大変スピード感ある動きは、私も敬意を表しているんですが、しかし私は、それは技術的なことで、やらないよりは何でもやった方がいいわけでありますが、大した効果はないというふうに思っているんです。いや、効果が出てくれれば、それは結構なことですよ。
 だけれども、今、問題は、当座預金だって、当初は五兆円ぐらいなのがもう二十兆円を超えていますでしょう。銀行にはお金がいっぱい余っているんだ、じゃぶじゃぶなんだけれども、市中に回ってこない、中小企業には回ってこないんですよ。これが問題ですね。
 この原因は、総裁、何だと思いますか。それで、日銀は、それに対して何ができるというふうに思っていらっしゃいますか。
福井参考人 今、中津川委員の経済に対する見方を拝聴しておりまして、まず、経済全体に対する見方、ここ何年も、物価が下がるという状況で、経済がぎりぎりのバランスを保っているという、非常に脆弱な状況で推移しているという点で、私も同様の認識を抱かせていただいております。
 その中で、実際に経済活動に携わっておられる企業の方々は、言ってみれば、古い経済モデルから新しい経済モデルに移行するために、大変苦痛に満ちた改革の努力を続けておられるということでございます。
 私ども日本銀行といたしましても、こうした民間の経済界で苦労しておられる方々、つまり前進しようと思って苦労しておられる方々に、少しでもバックアップできるような、行き届いた金融政策を志向したい。別の言葉で言えば、金融緩和効果を十分浸透させるやり方でこれから進めていきたいというふうに思っているところでございます。
 御指摘のとおり、日本銀行は、金融市場には非常にたくさん流動性、お金を供給しております。しかし、これは、金融市場あるいは金融機関相互間の中でかなり滞留していて、実際にお金を使う企業の方々の手元に十分届いていない。流動性のわなに陥っている状況と言う方もいらっしゃいますが、まさに委員御指摘のとおりの状況が今ある。私どもは、地道ではあっても、ここにまともに挑戦して、やはりブレークスルーをしていきたい。
 もともと、こういう、経済のモデルが大きく変わっていく過程においては、民間部門も、政府においても、あるいは金融政策を担う者にとっても、かなり苦痛に満ち満ちた道程というのは続くんだ、ある時間はそういった苦痛に満ちあふれた期間を経過するということはもう覚悟の上でスタートしているということでございますので、途中でこれをあきらめないで、あくまで地道にこの努力を貫き続けるということが非常に大事だというふうに思っています。
 私どもは、先ほどからも申し上げておりますとおり、我々がやろうとしていることがどういう筋道を通して政策の効果をしみ渡らせようとしているか、つまり、透明性の問題をはっきりさせたい。もう一つは、本当に現実にお金が企業の手元に届くように我々の金融政策手段を磨きたいということなんですけれども、本当にお金を手元にお届けしようと思えば、お金の運び役は日本銀行でなくて、日本銀行が提供したお金は金融機関が企業にまで運んでくれなきゃいけない。そういう意味では、金融機関の健全性回復へのさらなる努力ということがやはり大前提になると思います。
 しかし、それを前提としても、なおかつ、日本銀行の用います金融政策手段そのものに新しい工夫がやはり加えられていかなければならない。アセット・バックトCP、中小企業の売り掛け債権などもこの裏づけ資産に入ってまいりますが、これは迂遠なように思えますけれども、これから先の金融というのは、銀行貸し出しということと、それから市場を通ずる金融、この二つが、かけ橋が行われて、相互乗り入れの形で発展していく。中小企業もそういう意味では直接あるいは間接に市場からお金を受け取ることができるというふうな、新しい金融の姿にこれがつながっていく。将来展望につながるところについて、我々は、同じ地道な努力をするのならば、まず最初にここから着手をしたいということから始めたということでございます。
中津川委員 福井総裁の熱意は感じますよ。でも、考えてみますと、政府がもういろいろ経済政策をやって、ギブアップだ、だから日銀に責任転嫁というか丸投げというか、まあ福井さんに全部振ろうと。そういう意味では気の毒だと思うんですね。
 私は、だから、本来日銀というのは物価の安定と通貨の番人というのを教科書で習いましたけれども、しかし、もう何でもやれ、金融に頼るしか経済はよくならないんだと。まあ、だらしないですよ、政府は。そういうふうに考えると本当にそら恐ろしくなりますが、総裁、答えなくていいです、もう時間がないですからね。やはり、日銀でやる限界があると私は思うんです、日本の経済をよくするのに。
 また今度、いずれそれについては議論したいと思うんですが、最後になりましたが、塩川大臣、福井総裁にも、簡単に、これは数字を言えばいいことですから、お伺いしたいと思うんですが、円・ドル、為替レートですね。日本はとにかく輸出に頼っている国でありますから、国益を考えて、どのくらいの為替レートが適切だということを大臣はお考えでしょうか。
塩川国務大臣 これは、幾らということは私たちは明言できませんし、また言うべきではないと思っております。
 けれども、私は、絶えず言っておりますように、日本のファンダメンタルズが正確にこれに反映されておるかどうかといいましたら、現在はやや、私は順調なことではあろうと思っております、大きく離れていないと思いますけれども、しかし、これは外貨の、いわば標準から申しまして、私は、現在は少し円高にあるんではないかなという感じをしております。
中津川委員 今の大臣の話で、また円高に進むんじゃないですか。前回も、私に言った後、百十七円が少し下がって……(塩川国務大臣「ちょっと聞き違っておられると思うんですね。現在は、円高になっておるんじゃ……」と呼ぶ)
小坂委員長 では、確認します。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 円高になっておるんじゃないかなという感じが私はしておるということであります。
中津川委員 どうせ円が高くなると覆面介入をするわけでありますから、中国に余り気兼ねしないで、大臣、思い切って、百五十円から百六十円、大臣が言うのにはお金はかからないんですから。そうすると市場が反応して、やはり日本の経済界は歓迎しますよ。大臣が言えないんですから、私が数字を言って、私の質問を終わりにします。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、小泉俊明君。
小泉(俊)委員 委員長、まず、定足数の確認をしていただけますか。
小坂委員長 定足数に達しましたので、お願いいたします。
 小泉俊明君。
小泉(俊)委員 今、経済状態が大変厳しい状況の中で、この委員会の持つ意味は大変大きいと思いますので、ぜひとも与党の皆さん方にもきちっと定足数に足りるよう御出席いただくことをまずお願いいたしまして、質問に入ります。
 小泉総理大臣が、私、名前も一緒ですが、実は私の誕生日の四月二十六日に就任されまして、ちょうど今月の二十六日で満二年になります。この二年間の小泉内閣を簡単に数字で総括いたしますと、自殺者がこの約二年間で六万人を超えました。そしてまた、倒産がこの二年で四万弱、個人破産が何と三十五万六千七百件、失業が三百五十万人を超えたままです。これは死亡者だけを見ても、イラク戦争と九・一一米国テロをはるかに超えるほどの惨状であります。
 そういうさなか、御案内のように、株価が三月末、何と二十一年ぶりに八千円を割れました。土地の公示価格も、中津川先生も先ほどおっしゃいましたが、十二年連続で下落しています。地方の土地の価格に関しましては、何とバブル崩壊後最大の下げ幅という大変な状態になっているわけであります。
 私は、この二年間の小泉内閣のこういった失政の最大の原因を、総括してみまして感じますことは、やはり株と土地を下げどめるという止血措置を全くとらないで構造改革、これはやることはいいんですが、大手術をしている。止血措置をしっかりしない点に、こういった惨状を招いた原因があると私は思います。
 まず、喫緊の問題であります株についてちょっとお伺いいたしますが、アメリカでは、株式市場こそ支持率だ、そう言われまして、平均株価の騰落で大統領の評価が決まると言われています。
 そこで、日本におきましても、ここ三十年、田中角栄総理大臣から小泉総理まで、十七人今まで総理大臣が出たわけでありますが、平均株価の騰落率で総理の評価をしてみますと、金メダル、まず上昇率の方の第一番は、中曽根総理が約二・八倍であります。第二位、銀メダルが竹下総理、一・四七倍です。三位、銅メダルが小渕総理で一・二六倍ですね。
 それでは、下落の幅のワーストスリーを言いますと、第三位、ワーストスリーが二九%の下落で海部総理大臣であります。ワーストツーが森総理で三二%であります。小泉総理大臣が、何と一万四千円から七千八百二十一円、きのうの終値でありますが、これは下落率が四三%と、先ほど中津川さんも言いましたが、百五十とも七十兆とも資産が失われたと言われております。こう見ますと、この三十年間で小泉総理は最悪の総理大臣なわけであります。
 これは当然、塩川大臣の方も見てみますと、三十年前の植木大蔵大臣から数えまして十九人目の大蔵大臣、財務大臣になるわけでありますが、株価の騰落で見ますと、三十年間で最悪の財務大臣になります。実は、私は統計をとってみたんですが、株価の騰落で見るとこうなるわけですね。
 今、実業界も経済界も国民も、この株価の八千円割れに大変強い危機感を持っております。しかし、本委員会の大臣の発言を聞いていますと、余りこの株価の八千円割れに対する強い危機感というのが、率直に、どうも私は聞いていて感じられないんですね。実業界とか国民との危機感のずれがどうも大きいように感じるのでありますが、塩川財務大臣、そして竹中大臣、今回のこの八千円割れという株価の下落について、どの程度の危機感をお持ちなのかというのをまずお尋ねいたします。
塩川国務大臣 非常に重大な案件だと思っております。
竹中国務大臣 先ほどから議論されておりますように、株価というのは将来への期待をあらわすという意味が大きく込められておりますので、我々も大変重大に受けとめております。
小泉(俊)委員 これはよく言われておりますように、金融機関と法人がまず五〇%株を持っています。ですから、三月末の決算が出ましたが、この営業利益がほとんどぶっ飛んじゃうんですね、この株価の下落で。あと、最大の問題は、やはり株式市場の底が抜けたままですと経済成長の源泉であります企業に資金が全く回らない、そして日本経済がますます収縮をしていくという大変な大問題が今この日本の中で株式市場を通じて起きている、私はこういった認識であります。そういう感覚からしますと、今御両名、大臣の御答弁いただいたんですが、私は、どうも現実に危機感がちょっと甘過ぎるんじゃないか。
 そこの点についてお伺いいたしますが、危機感を持っているとおっしゃるのであれば、今回の株価の八千円割れの直接的な原因分析というのはどのようにお考えでしょうか。塩川大臣、竹中大臣、両名にお尋ねいたします。
塩川国務大臣 いろいろ御質問の中に出ておりますけれども、小泉内閣が発足いたしましてから、たび重なるいわゆる株価対策、証券対策、税制の対策もやってまいりました、保有機構もつくってまいりました。やれることは何でもやってまいりました。それでもなおやるというのは、どういうことをやるかということを我々も模索しておりますが、決め手になるものはございません。したがって、あらゆることをやってまいりましたけれども、現在が現在の状況なんです。
 であるからして、これを改善するというのは、やはり経済全体が活力が出てこなければ、株価ばかり幾らいじってみたって改善されてこない、経済全体を変えなきゃならぬ、そのためにはやはり構造改革しなきゃならぬ。
 この十年間、私も先ほど申しましたように、世界の経済がグローバリゼーションに変わったことと、それから技術革新が物すごく変わった、その対応が間違ったんです。それを徐々に改革してきて、やっと民間も、これではならぬということで、世界経済への対抗力をつくろうということで積極的に体質改善してまいりました。ですから、私は、これからは今までのような落ち込みばかりではないだろうということも思っております。
 けれども、まだまだ厳しいところはあります。経済の体質全体が弱い。ですから、これを変えなきゃなりません。これはやはり構造改革をやらなきゃならぬ。これを進めなければ、いかに株価を、それではまた証券対策で税制を変えろといったって、何ぼやったって朝令暮改。要するに、朝令暮改を繰り返しているだけではよくなっていかない。
 そういうことを思いますと、経済の全体をよくするための努力をこの際にみんなで、国民全部で、政治が悪いの、経済界が悪いの、そんなこと言っているときじゃないと思います。やはり国民全体が、日本の活力を取り戻すために努力しようということをやっていただかないと、もちろんそういう雰囲気をつくっていくのは政治の責任でございますけれども、そういうことが私は必要なんではないかと思っております。
竹中国務大臣 まさに私の思いも塩川大臣がおっしゃったことに尽きていると思います。
 株価そのものは非常に多様な形で変動をいたします。誤解されると困るんですけれども、今確かに株価は低いですけれども、バブルの三万七千円のとき、あのときの日本の経済、政治、社会経済システム、企業経営、みんなよかったのかというと、やはりそういうことではない。株価はいろいろな要因を反映して、時には非常に大きく、必要以上に大きく動く性格のものでもありますから、我々としてはとにかく経済をしっかりと再生させることだ。それで、経済がよい方向に向かっているということを、まさに先ほど申し上げました、期待を国民に幅広く持っていただけるように我々なりの努力をすることであるというふうに思っております。
小泉(俊)委員 どうも、お話を聞いておりますと、二年間やっていて先ほど申し上げた惨状なんですよ。日本経済自体が回復しない限り株価が回復しないという、百年の河清を待つようなことを、本当に危機感を持っているんですか。ですから、私は一番最初に、この株価が八千円割れの事態に対して本当に危機感を持っているんですかというお話を聞いたんですよ。持っているという話と、今の原因分析の点が大分私はずれていると思いますね。そういう一般論を言っているときではもうないと私は思います。
 ですから、今のこの株価の本当の下落の原因を見ますと、明らかにこれは売り手ばかりで買い手がいないということです。需給のギャップがある。例えば、ことしの初めから三月までで最大の買い手がだれかといいますと、あそこにいらっしゃる日銀が最大の買い手ですよ。ことしの年初から三月二十日まで、日銀は八千八百二十二億買っているんですよ。これは事業法人や外国人の約二倍ですよ。日本の市場におきまして、日銀が最大の買い手だという極めて異常な事態が起きているわけであります。この点をやはり直視しなきゃいけないと私は思います。
 そしてまた、来年九月までの持ち合い解消、そしてまた代行返上の売りなどによりまして、市場で今売り圧力が大体八兆円から十兆円と言われているわけですよ。ですから、今のお話を聞いていますと、そのまま売り浴びせを食いまして、六千円近くまでいってもやむを得ないというような発言としか私はちょっと思えないんです。
 ですから、実は経済三団体も大変危機感を持ちまして、株価対策をこの前発表されましたね。そしてまた、経済財政諮問会議の民間議員も、こういう危機的な状況であるからこそ、今新しい株価対策を独自に発表しようとされているわけですよ。
 今、一般論としてはいいんですよ。ただ、それでは、具体的な対策をとる意思というのは、塩川大臣、竹中大臣、両大臣、何にもないんですか。
塩川国務大臣 何にもないということじゃありませんよ。一生懸命やっているじゃないですか。
 第一、補正予算と現在の本予算と連続して一刻も早く配分をして執行するために、そのためには地方自治体にもその準備を早くやってもらおうと。ことしは、予算の消化、速いですよ。例年よりは速いですよ。そういう努力をしているということが一つ。
 それから、一兆八千億円の減税をいたしました。この減税を活用してもらうために、あらゆる方法でまず宣伝をすると同時に、それを誘導していくということをやっております。
 それから、経済特区をつくりまして、四月一日に始まりました。幸いにして、五十七件の市町村が、府県も入れてですけれども、これに応じてくれましたし、いよいよ五月八日から産業再生機構が稼働いたします。こういうことをやっております。
 ですから、政府もそういうことを一生懸命やっているから、民間もこれに呼応してほしい。例えば、株式の買い取り機構をやりましたけれども、一体どこまでこれの効果が出てきておるんでしょうか。これは、要するに株を保有している民間の会社なり銀行なりが本当になってこれに取り組んでくれなきゃ、損だろうか得だろうか自分のところの銀行のことだけ考えておっては、それではやはり日本の経済はよくならない。
 要望されることは、我々は全部やってきております。証券の税制改正にしましても、今度は思い切った改正をしたつもりです。これを利用して考えていこうということの検討を一斉に進めてくれなきゃいかぬと思っております。それを、中身を検討もしないで、ぽこんと三団体で、これをやったらどうだと。まるで衝動買いですよ、これは。そういうことでは困る、だから反省してほしいと私は言っておるんです。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、株価を決める要因というのはすごい多様です。だから、それぞれ多様なものについて、これをやれば本当にうまくいくぞという魔法のつえのようなものは残念だけれども存在しなくて、一つ一つの要因について、きめ細かくできることを辛抱強くやっていくということしかないのだと私は思います。例えば、やはり経済を活性化させなければいけない。それについては、特区等々で企業に頑張ってもらわなきゃいけない。
 一方で、今ちょっと委員おっしゃいましたけれども、これは私先ほども答弁いたしましたけれども、今の日本の株式市場そのものが一種の構造的な問題を抱えていて、かつては、繰り返して言いますが、二五%なり三割が機関投資家的なところが介入していたのが、そういうプレーヤーがいなくなっている。だから、ちょっとした需給の変化に物すごく大きく動いているのではなかろうかという専門家の意見が出てきている。そういうことに対しては、やはり個人の投資家を引き込みましょうと。ことし四月に成立していただいた証券の税制というのは、その意味では今までとは違う画期的なものになっているんだと私は思います。これはこれで、いいものをつくったんだから、やはり今、私、塩川大臣がおっしゃったように、まずしっかりとこれを定着させて、民間にも使ってほしい。
 さらには、諮問会議の民間議員の御発言がありましたけれども、民間人の立場からいろいろとこの案を諮問会議で議論しようという状況に今なっております。
 株価そのものの変動要因も、実は中身も多様です。銀行株が大幅に下がっている、これは事実でありますけれども、主要銀行の中でこの半年間で七〇%下がっている銀行もあれば、ほぼ横ばいの銀行もあるんです。基本的には株価というのは企業の努力だという面もありますから、これはやはり民間にも頑張っていただきたい、そういうことを、国民的に問題意識をシェアしてしっかりとやっていく段階だと思います。
小泉(俊)委員 そうしますと、今、経団連が出しているいろいろな提言とか、経済財政諮問会議の民間議員がいろいろ出されている理由というのは、やはり本当にこれは危機的な状況だということを強く認識して、やむにやまれず、お二人のおっしゃっていることはわかっていながらも、この今の株価下落に対しての需給のギャップを何としても解消しなければいけないという一つの危機感のあらわれだと私は思うのであります。
 その中で、私は何も株価対策をやれというんじゃないんですよ。もともと構造的に日本の株式市場というのは、先ほど申し上げましたように、五〇%は金融機関と法人であります。諸外国を見ますと、アメリカの場合、まず四割ぐらいが個人で、あと年金が大体二割です。今、三十年間かかってできた日本の持ち合い構造を大きく転換しようとしなければいけない時期なわけであります。
 ですから、間接金融から直接金融へと市場を育てる、そのためにこういう危機的な状況にあっても粛々と、どうやって個人株主をふやしていくのか、または安定株の主として長期的リスクのとれる年金とか簡保とかそういったものに移していくのか、それのインセンティブを今こそしっかりやっていかなければ、今言っているような一般的なことを言っていて、では本当にこれが六千円近くなったときに責任がとれるのかというのを、私もかつては経営者でありましたので、民間企業経営者の一人として、私は非常にその辺を危機感を持っているわけであります。
 具体的な問題に移りますが、この市場の構造実態を、長期リスクのとれる個人と、海外でいえば年金でありますが、そういったものにどうやって転換していくか。それの具体的なお話でございますが、個人株主に持ち主になってもらうためには、それなりの優遇措置を、現金で持っているよりも有利にしない限り入ってくるわけがありませんので、その中で、株式配当課税の問題と譲渡益課税の問題を私はずっと当選以来言わせていただいておりますし、株式配当課税に関しましては一年前からずっと言い続けて、ようやく向こう五年間は一〇%になってきたわけであります。
 ただ、アメリカ等におきましても、やはり二重課税じゃないかというお話がありまして、ブッシュさんは、今この株式配当課税をゼロにしていこうじゃないかというような動きもあると思うのでありますが、塩川大臣が一生懸命やられているとおっしゃった、ここにも書いてありますよ。何か全部一〇パーになります、こんなに簡素で有利になりますと。今ごろ出しているんですよ。これは、いかに今まで不利で簡素じゃなかったかということですよ。
 また、株式譲渡益課税でありますが、これはさんざん私たちが簡素化しろ、下げろと言ったら、大臣自身がわしでもようわからぬと言うほど複雑なものが一回できて、それがようやく、これほどの長い時間がかかってようやくことしの一月から、五年間は一〇パー、原則二〇パーですけれども、そうなってきたわけであります。
 こういう点について、これだけ危機的な状況になれば、一〇パーにはしたけれども、これをやったときの平均株価の事態と、今のこの八千円を割る、きのうの段階で七千八百円ですよ。百円下がると二兆五千億国富が消えると言われているわけですね。非常に微妙なときに、株式配当課税並びに譲渡益課税をより一歩踏み込んで、民間議員の言っているように一年凍結するとかないしはゼロにする、そういう御意思は、塩川財務大臣そして竹中大臣、ないんでしょうか。
塩川国務大臣 それは、証券のこと、あるいはまた間接金融から直接金融へという趣旨でやろう、それだけで取り組むというのならば、一つのまた考え方として、一応、一定期間だけ配当課税を全くゼロにして控除する、そういう宣伝的な効果はあるかもわかりません。
 しかし、国民全体のことをやはり考えなきゃいけないんです。多くの方で、それは公平だろうかという疑問が出てくるんじゃないかと思いますね。ですから、今度は五年間一〇%という暫定措置をして、国民の理解を得ようとしたわけです。
 それともう一つは、今まで株式証券投資が少ないということの一つに、証券投資をして、その結果、利益が出た、損をした、配当をもらうとすぐ税務署の窓口に呼び出される、これがやはり困るというのが一般の大衆であった。それで、私たちは、ない知恵を絞って、何とかしてこれを簡単にする方法はないだろうかということで、証券会社に全部代行してもらって、証券会社の窓口のところで投資をして、投資家が全部用事が済むようにして、税務署に直接呼び出されないようにする、こういう措置が一月一日から適用されているということがまだ十分に承知してもらっておらないんです。認識されていかないんです。
 国会の先生方は、こんなもの、しょっちゅう議論しておられますから十分御存じですけれども、一度皆さん方が後援会の人たちに、こんなに変わったんですよ、だから証券投資をしてくれぬかということをそれぞれの後援会などでやっていただけぬでしょうか。そうすれば、思い切りこれは普及していくと思うんです。そういう努力をやらないかぬ。政府はその広報活動をやっているんですが、なかなか行き届いておらない。一生懸命またやりますから。それを認識してもらうならば、私は、郵便貯金から相当こっちへシフトしてくるんじゃないかと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思っております。
竹中国務大臣 税制の役割は重要だというふうに基本的には思います。しかし、先ほど申し上げましたように、四月一日にスタートしました今回の税制というのは、その意味では今までとはかなり違うスケールないしはシステムになっていると思います。これをやはりしっかりと定着させたい。
 いろいろな御提言があるということは承知をしております。税制改革そのものは、複数年をかけて抜本的な税制の構築をしていきたいというのが昨年の骨太の中で議論されたことでありますので、そうした中で議論はしていきたいと思います。しかし、まずは、今の新しい制度を定着させるべきであると思います。
小泉(俊)委員 大臣のお考えは大体わかりましたが、私が何でこれをしつこく申し上げるかといいますと、一番最初に申し上げましたように、この二年間の小泉内閣の失政というのは、やはり株と土地の下落をとめるという止血措置、その措置を十分とらずに、先に改革を、大手術をして、いつまでも血がだらだら流れているという状況をとめないからだと私は思っております。また、基本的な認識も、やはり株式市場の日本経済に与える影響力というか、心理的に含めても、実態的に見てもいかに大きいかという認識の違いがちょっとあるんだと思いますが、私は、株式市場の影響力というのは極めてインパクトが大きいものだと認識しております。
 時間がないから、先に進みます。
 結局、持ち合い解消の一手段として株式保有機構が十四年一月から施行されたわけでありますが、これは、二兆円枠あるにもかかわらず、塩川先生さっきおっしゃいましたが、現在二千二百億円弱しか使っていないんですね。この理由は、竹中大臣、端的にお答えいただけますでしょうか。
竹中国務大臣 株式買い取り機構の役割と日本銀行の役割というのは、それぞれ補完的な役割になるようになっています。そのどちらを使って売却するか、それは恐らく手持ちのいろいろな銘柄等々の問題もございましょうし、各銀行の経営判断に左右されるということになりますので、結果的に見ると、御指摘のように余り進んでいない。しかし、これは制度としてはそれなりにあるものでありますから、日銀の制度と相まって、市場への売却圧力を相当程度軽減しているということにはなっていると私は思います。
 今、与党の中では、現下の動向も踏まえて、よりさまざまな立場からこの機能強化をどのようにしていくかということが検討されているというふうに承知しておりますので、我々としてもその動向を、検討状況については十分注視をしていきたいというふうに思っているところです。
小泉(俊)委員 日銀は、十四年の十二月十日から約一兆二千億、これを購入されているわけですね。それにもかかわらず、これほど需給のギャップがあるにもかかわらず、もう片方が二千二百億円弱しか使われていない。これは私は、使い勝手がどこか悪いんだ、そう思います。
 あと、日銀が直接株式買い入れるということが、上限が二兆円から三兆円に引き上げられました。ただ、これは確かに、現下の状況におきまして、この需給ギャップを解消してリスクをマネジメントするという意味では、私は、日銀が買うというのもやむにやまれぬ緊急事態によってやられていると思うんですが、しかし、これはどう考えましても、中央銀行が直接株式を買うというのは、戦後の世界の初めての事態ですよ。私は、これは非常に異例な事態だと思うんですが、この点につきまして、まず御認識だけ、日銀総裁にお尋ねできますでしょうか。
福井参考人 我が国の株価の下落につきまして、その背景については、ただいまの御議論の中に出ておりますとおり、さまざまな理由がございます。
 しかし、その中でも一つの大きな理由は、日本の資本主義が大きな変質を遂げつつある。つまり、株式の持ち合い構造というものがメリットとなって機能していたような資本主義から、そうでない資本主義に今大きく変わりつつあって、したがって、その中で持ち合いの解消という動きが急速に進んでいるということだと思います。
 ところが、金融機関の持ち合い株が大きい、したがって、見合いとなっている企業の持ち合い株も大きいということでありますけれども、持ち合いの解消が急速に進みますと、多大な株価変動リスクが日本の金融システムを直撃する、こういう状況になる。
 日本銀行としては、金融システム全体の安定性を保持する重大な責任を負っておりまして、したがいまして、金融システム全体にこういういきさつから株価の下落が大きなショックをもたらすという場合には、他に方法がなければ日本銀行がみずから身を挺してこれを防がざるを得ない、そういう意味では極めて異例の措置だというのは御指摘のとおりだと思います。私どもとしてもある限界を感じておりますし、したがって、時限的な措置として実行させていただいているということでございます。
小泉(俊)委員 これは、法的には日銀法の四十三条一項ただし書きですよ。あくまでも例外規定でありますので、例外はやはり厳格にいくべきだと私は思っております。
 そして、今いろいろな新聞紙上のお話を聞いていますと、日銀はティア1の自己資本を超える金額のところの三兆円だけ買うというお話なんですが、どうも日銀に四兆か五兆、六兆買わせよう、買った方がいいんじゃないかといういろいろなお話も出てきております。ただ、私は、これは筋が悪いと。
 実は、この中で、私が申し上げる制度を現実に知っているのは塩川大臣ただ一人だと思うんですが、昭和四十年の山一の日銀特融のときに、国が日本共同証券株式会社と日本証券保有組合を設立しまして、これはまさに設立の趣旨が、証券市場における需給の改善と資本市場の機能回復のために、株式市場の約五%を買い上げたわけですね。それで、五年間でそれをまた売りまして、それぞれ三四%と二〇%の売却益を上げて金融危機を回避した。こういったことをかつて日本はやったわけであります。
 まさに私は、今のこの八千円を割る段階というのは、この昭和三十九年、四十年代のときよりも危機的な状況にあると思っております。
 その中で、もちろんこれは例外的な措置ではありますが、これからもし、売り圧力によってもっと急激に下がっていった場合、こういったものも一つの手段としてお考えになる余地があるのかどうかを、まず塩川大臣と竹中大臣にお尋ねさせていただきたいと思います。
塩川国務大臣 一つの考え方としてはあるとは思いますけれども、しかし、現在の買い取り機構は、日銀さんがやっておられるのは金融システム安定のためでございますから、株価対策じゃありません。それから、民間でやっております株の買い取り、銀行自身がやっております株の買い取り、それぞれ目的を持っておりまして、これはもっと私は趣旨を生かしてくれたらいいと思っております。
 確かに、昭和三十九年の暮れからでございましたが、山一の問題がございましたときに、あれは長期保有したらやはりもうかるんです、株というのは、長いことやっておったら。慌て者は、慌てるこじきはもらいが少ないと言いまして、ちょこちょこやるからもうからないんです。じっとやっておれば、保有すれば、それだけの利益は必ず出てくるんです。
 ですから、私は、そういうことから見て、買い取り機構も、やはり自分らの責任においてその買い取り機構を十分使ってくれればいいと思っておりますので、そういうことを今やっている。ですから、今御提案のようなことは、直ちに我々考えるということはなし。現在やっておる機構をまず充実させてもらうということが先だと思います。
竹中国務大臣 委員が御指摘のような昭和四十年の制度というのは、今の成熟した市場に当てはめるには、やはり二、三点問題があるのかなと思います。
 一つは、そういう形で需給調整のようなことをするのが、かえって世界に通じた日本の市場の信頼を損ねないのかということ、これが第一点。当時はマーケット全体が小さかったですから、当時の規模でもう全体の五%を超えるぐらいのシェアがあったのだそうです。それをやるならば、今で十数兆円というような規模になりますから、これはやはり非現実的ではなかろうか。さらには、それに対するコストの負担を一体だれが行うのか。
 そういった点では、やはり基本的には慎重であらねばならないと思います。
小泉(俊)委員 塩川大臣がおっしゃるように、これは長期的に保有していけば、確かに株は企業の成長、国家の成長性に準ずるわけでありますから、利益は出るんだと私も思います。ただ、長期的リスクをとれる個人と、また年金とか、三十年ぐらいリスクをとれる。ですから、海外はそういうのが保有主体になっているわけですね。
 きょう来ていただいて、もう時間がないものですから、年金資金の運用方針と簡保、簡保もある程度の期間リスクをとれるわけですね。これは、ここ数カ月の発表を見ますと、片方の年金の運用に関しましては今までの長期運用の中で株式も組み込んでいく。ただ、簡保の方は、公社化した段階で同じ長期リスクをとるべきであるのに、どうも株式の運用はもうしていかないような方向で、大きくこれは違ってきている。
 この辺について、きょう、簡保と年金の運用担当者の方が来ていらっしゃると思いますので、それぞれその理由だけをちょっと御説明いただけますか、時間がありませんので。
吉武政府参考人 公的年金の運用につきましては、昨年十月から社会保障審議会の資金運用分科会で、この厳しい状況を踏まえまして検討を行いましたけれども、年金積立金の運用目標は、長期的に賃金の上昇を上回る運用収益を確保するということを踏まえまして、もちろん債券が中心でございますけれども、リターンとリスクが異なるものを複数の資産に分散して投資することによって長期的な収益目標をとってくることが基本であろうということで、そういう考え方で平成十五年度も運用することにいたしております。
小坂委員長 伊藤日本郵政公社理事。質問時間が経過しておりますので、手短にお願いします。
伊藤参考人 お答えさせていただきます。
 簡易保険の資金につきましては、確かに、負債が長期固定的で、特性を踏まえて、収益を長期安定的に確保できるように、株式等を最適な資産の組み合わせ、いわゆる基本ポートフォリオに従って分散投資を行うことが望ましいわけでありますけれども、公社の第一期の中期経営期間中、すなわち十五年度から十八年度までは株式等の価格変動リスクに備える価格変動準備金が必要な積立額を大きく下回る見込みであります。
 そういったことから、株式等については、リスクを抑制する観点から慎重な運用が必要だということで、公社承継時の資産額を基本としまして、保有許容幅の上限を抑えた資産構成割合を設定しまして、その保有許容幅の中で運用を行って価格変動リスクを抑制していくということで、こういうふうなことになっているわけであります。
小泉(俊)委員 時間が経過しましたので。
 何しろ、経済成長の源泉である企業に資金を回すのが株式市場でありますので、ぜひとも株式市場に十分な注意を払っていただけますようよろしくお願いしまして、終わります。
小坂委員長 次に、永田寿康君。
永田委員 竹中大臣に、ちょっと肩の力が抜けるような質問をしたいと思います。
 三月二十八日付の日経新聞の第二部なんですけれども、全面広告になっています。「広告特集 新時代に対応した資産運用を考える」「企画・制作 日本経済新聞社広告局」ということになっています。竹中大臣が写真入りで出ています。そして主な論調は、これからは資産運用を、多様化を図るべきだ、リスクをきちっとはかった上で、みずから判断をして分散投資を初めとする資産運用に積極的になるべきだ、大体こんな論調ですね。
 下には、日興コーディアル証券の広告がでかでかと真っ赤になっています。民間企業が出している広告に大臣が登場するというのは、僕は余りいいことじゃないと思っているのですけれども、まず、御意見をお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 今まさに永田委員御紹介してくださいましたように、それは日本経済新聞の投資促進のためのイシューであります。
 その下にどこの会社の広告が出ていたか、私はちょっと記憶しておりませんが、そこの会社の広告に出たわけではもちろんございませんので、貯蓄から投資への流れということで、我々がかねてから主張している問題をアピールするよい機会だというふうに思ってインタビューの要請に応じたつもりでございます。
永田委員 この企画は、大臣がおっしゃるとおり日経新聞の広告局が作成したものであります。しかし、この紙面の中身を全部見ても、いろいろなインタビューは確かに、かつて競輪で頑張った中野浩一さんとかタレントさんとか生島ヒロシさんとか、こういった方々がコメントを出す一方、下は全部広告なんですよ。
 つまり、これは主に日経新聞が広告収入を得るためにつくった紙面でありまして、報道とか、あるいは政府の意見を世間に知らしめるための紙面とは全く性格が異なるものであります。そういうような企画に大臣が大臣の立場として協力をすることは、僕はいかがなものかと思っているのですが、改めてこの点からの見解をお願いします。
竹中国務大臣 私の立場としましては、我々が考えている政策について、日本が目指すべき方向について情報発信する機会があれば、それはテレビであれ講演会であれそういう新聞のインタビューであれ、積極的に出ていってお話しをする、一種の説明責任であろうかと思っております。
 それが日経新聞の広告局の企画であったという御指摘だと思いますが、これは、実は過去の内閣の大臣でも、そういうような形で自分たちの主張を、説明責任を果たす一環としてそういうことに協力した例はあるというふうに聞いておりますので、私も、その意味では、政策についての御説明の機会をインタビューを通して行ったというつもりでおります。
永田委員 では、まず形式的な事実関係を確認したいと思います。
 この企画、インタビューに応じた経緯なんですけれども、日経新聞から恐らく申し込まれたんだと思っているのですが、どのような形で申し込まれたのか。つまり、大臣が直接個人的に依頼を受けたのか、それとも金融庁の、多分広報室かもしれませんが、そういったところを通しているのか。その経緯を教えてください。
竹中国務大臣 二月の最初ごろに、日経新聞の広告局開発部の編集委員の方から、金融庁の広報室に対してインタビューの申し込みがあった。なかなか時間がとれなかったんですが、二月の二十七日にインタビューを実施いたしました。
永田委員 このインタビュー企画に関する報酬というのはどこかに支払われているんでしょうか。役所、あるいは大臣個人に支払われているのであれば、教えてください。
竹中国務大臣 先ほど確認しまして、私個人に支払われているようでございます。
永田委員 お幾らでしょうか。
竹中国務大臣 三十万円です。
永田委員 だれの名義で、振り込みだと思いますが、どこからどこに振り込まれたのでしょうか。
竹中国務大臣 日本経済新聞から私の個人口座であります。
永田委員 いいんですか。普通に考えると、これは「竹中平蔵金融・経済財政政策担当大臣に聞く」と書いてあるので、恐らく大臣というポストに着目して人選をされたものだというふうに考えますが、そうした人選をされた後に、インタビューに応じて三十万円の報酬を取るというのは、先ほどおっしゃったような、あらゆる機会をとらえて政策を発表する、情報発信をする、説明責任を果たす機会を生かしていくんだという考え方とはちょっと違うんじゃないかというふうに思うんです。
 そうやって報酬を取ってやるということは、僕は余りいいことじゃないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 依頼は、国務大臣である竹中平蔵に来たというふうに思っております。
 これは、講演会等々で、講演会でいろいろ話してくれというふうに頼まれて、場合によっては、私との都合が合って意見をしっかりと聞いてくれる主体であるならば私も講演会に応じます。
 御指摘は、大臣規範との関係だとも思いますが、大臣規範では、関係業者との接触等について規定されておりますけれども、日経新聞は当該関係業者ではない。したがって、本件が大臣規範に抵触するものではないと思っております。
 報酬の額についても、社会的な常識を超えるものではないというふうに思っております。
永田委員 では、これが全然問題がないというのだったら、僕の後援会の機関紙に大臣との対談を載せたいと言ったら、三十万円の報酬で受けてくれますか。
竹中国務大臣 そこは与党の先生方との御関係等々いろいろあろうかと思いますが、私は、例えばそういう場合に、これはケース・バイ・ケースだと思います。そういう企画で、いろいろなところでインタビューないしは対談してくれ、講演してくれということでありましたら、私は、話をきちっと聞いてくださる場合であるならば、喜んで参ります。
永田委員 与党の先生との関係もあるしという言葉が非常にひっかかるんですけれども、与党だとか野党だとか、日経新聞だとかそうじゃない僕の機関紙だとか、そういうことが出たり出なかったりすることに影響するんですか。
竹中国務大臣 今申し上げましたのは、例えば、永田先生大変選挙にお強いと思いますが、その選挙区で、それとの関係にいらっしゃる先生がおられた場合に、その先生のことも私はよく存じ上げているというような場合に、それはそういうこともやはり考えに入れなきゃいけないという場合はあろうかと思います。
 そういうことを申し上げたわけで、基本的には、繰り返し言いますが、いろいろなことについて、政策のことを非常にフランクに聞いてくださるという立場であって、私の時間的な都合がつくような場合には、できるだけお話をさせていただくのが、これは一種の説明責任、説明責任の一部であろうかと思います。
永田委員 語るに落ちるとはこのことで、説明責任を果たしてください、要するに、政策を発信する現場が与えられるのであればできるだけ活用していくというようなお話だったのが、それは、僕が選挙で戦っている相手との、その対立候補が大臣と仲がいいかとかよく知っているかとか、そういうことと関係するんですか。僕は、政策を誠実に世間に知らしめようとする行為とは全く無関係の考え方だと思うんですけれども。何でそういうこと、じゃ、日経新聞に出るんだったらそういうことは関係ないと言っているわけですか。おかしいですよ、絶対。もうちょっとちゃんと説明してください。
竹中国務大臣 例が適切であったかどうかはともかく、大臣というのは政治的なポジションでございますから、必要に応じて政治的な配慮はしなければいけないということだと思います。
 しかしながら、基本的には、私としては、できるだけいろいろな場に参上させていただいて、政策の話を、説明をさせていただく機会があるならば積極的に活用したいという基本的姿勢を持っております。
永田委員 日経新聞はこの世の唯一の報道機関ではありませんで、読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、それからテレビなんかとも競合するポジションにあるわけですが、そういう競合する関係のもの、要するに僕の対立候補と同じような考え方ですね、ほかのものにも何か対立するものがあるということは、今回の場合は考慮されたのでしょうか。されたのだったら、その結果、どういう判断がなされたのか教えてください。
竹中国務大臣 具体的にそういうことを今回考えたということはなかったと思います。例えば別のライバル紙から同じような依頼があった場合に、時間の依頼等々あって、同じ日に同じ企画というのはちょっといかがなものか、こういうことは私も考えると思いますが、日数等々あいていて、きちっとまた御説明の機会になるということであれば、これは喜んでさせていただくつもりでございます。
永田委員 政治的判断も時にはしなきゃいけないという話も先ほどありましたし、一方で、基本的に新聞の場合、今回のケースは、余りそういうことは考慮していないというお話で、何かちぐはぐな印象をやはり受けますね。時には政治的判断をし、今回のケースはしなかったと。一体どういう基準でこういう仕事を受けたり受けなかったりするのかということはすごく気になります。
 また、日経新聞の割りつけの判断だと思いますけれども、日興コーディアル証券は、竹中大臣の関与のあるなしにかかわらず、ここに結果としては張りついているわけですよ。日興コーディアル、もちろん無数の競合会社を持っているわけで、競合会社、いっぱいあるわけですよ。何か特別な関係にあるのかな、特に処分されたばかりの日興コーディアルですから、ああなるほどなと、そういう印象を持たれてもこれはしようがないと思うんです。それは知らなかったで済む話じゃないんですよ。
 つまり、僕が何を言っているかというと、ETFは絶対もうかるというのと、これは非常によく似ているんですよ。これを記者会見で言う、確かにあなたはそう思ったのかもしれない。だけれども、それを、そのホームページをコピーして証券マンが販売に使ったら、広告に使ったらどうするんだというところから、陳謝されたわけですね。それでホームページから削除されたわけですよ。
 これを日興コーディアルの販売員が持って歩いて、いや、うちは手打ちしたんですと言って回ったら、一体どうするんですか。軽率だと言っているんです。そういう意図があったかどうかじゃないんです。広告に使われたり、あらぬ関係があるというふうに意図的に誤解させたりすることに使われる可能性が否定できないでしょうという話をしているんです。この点から、軽率だという指摘についてはどうお考えになりますか。
竹中国務大臣 ETFに関する発言に関しましては、表現が不適切であったということは今も反省しております。しかし、今のは、委員、例えばその紙面ではなくても、別の新聞社のインタビューに応じて、その新聞の下に別の会社の何か広告が載っているということはあり得るわけで、そこの編集の中身に対して立ち入るということは、普通はインタビュー記事の場合ないのではないのでしょうか。この件に関して、私は軽率だとは思っておりません。(発言する者あり)
永田委員 あちこちから声が出ているとおりなんですよ。
 政府の政策を発表する場というのは、確かに、大臣があちこちの記者から、番記者もいっぱいいるでしょう。そこでインタビューを受ければ、それは紙面に載ることは前提ですよ、オフだと断らなければ、それは前提ですよ。それが記事になったって、何も文句を言うことはないですよ。僕だって、これは記事になっちゃうとやばいなと思うようなことがいっぱい載っていますよ。だけれども、本紙の紙面じゃないんですよ、これは。明らかに広告企画。広告特集と書いてあるし、広告局の制作だと書いてある。
 政府は、政府の言いたいことを広告を使って発表しようと思えば、政府広報というものをちゃんと持っているんですよ。予算もつけてやっているでしょう。そういうものに比べると、僕は全然性質の違うものだと思っていますね、広告特集に載ってしまったということは。しかも、下に処分されたばかりの日興コーディアルの広告が載っているというのは、これはやはり配慮が足りなかった、注意が足りなかったというふうに一言認めるのが筋だと思いますよ。一言、ごめんなさいと言うべきだと思いますよ。どうですか。
竹中国務大臣 これは、繰り返し申し上げますけれども、広告局開発部の編集委員の方から、自己責任時代の資産運用をという別冊特集を予定している、民間活力を生かした経済回復等々の問題について、資産運用について、政府の施策についてお話をいただけないか、そういうことであります。
 もちろん、政府の広報誌、広報紙で時間を割いて出ておりますけれども、それに加えて、しかし、媒体として非常に広く読まれるものに関しては、よい機会であるから積極的に出てお話を広めたいというふうには思います。例えばテレビ出演の場合も、テレビで話をして、その後別の証券会社の広告が出るということはあり得るわけでありますけれども、それはそういうことの問題ではないというふうに私は思っております。
永田委員 それは全然違いますよ。テレビの場合は、番組とコマーシャルがちゃんと時間的に区分されているし、それは見ている側も明確に意識しているわけですよ。だけれども、これの場合は、明らかに広告特集と書いてありますよ。読んでいる人はみんなこれは広告だと知っていますよ。
 僕らだって、何か雑誌を読んでいて、フォーカスとかフライデーとか、ああいう写真週刊誌を読んでいて、パチンコの台を打つ前にどれが出るかわかるというような何かテクニック本が載って、そういう特集が載っていると、紙面とよく似ていますけれども、これはPRのページだと書いてあるから、なるほどこれは講談社が認めている記事じゃないんだなということは明確に意識しながら読んでいますよ。広告なんだなということを明確に意識しながら読んでいますよ。
 これは広告なんですよ。だから、テレビでいえばサンデープロジェクトの番組の後にある、あるいは間にある広告の時間に竹中さんが出てきて、政府としては、これからグローバル化の時代ですから、投資をもっと分散投資しなきゃいけないと思っています、それで最後に、提供は日興コーディアル証券と出てくるのと同じなんですよ。これは広告なんですよ。そういうものに出るのは軽率じゃないですか、配慮が足りなかったんじゃないですかという指摘に対しては、そういう面も一部あったかもしれないぐらいの答弁じゃないと納得できないですよ。ちゃんと言ってくださいよ。
竹中国務大臣 私は、日本経済新聞の広告特集に関して、開発部の編集委員から依頼をされて、そこでの資産運用に関するインタビューに応じたということでございます。
 また、先ほどの繰り返しになりますが、こういう形で大臣が出るというのは、過去の内閣にもあったというふうに確認をしております。その意味では、我々としてのやっていることをしっかりと説明する、その説明責任の一環であったというふうに思っております。
永田委員 過去にどんな大臣がどんなことをやっていても、それは今までも悪いことをやっていたからこれからもやっていっていいという話にはならないので、僕はそれは余り参考にする必要がないし、悪いことであれば、これから改めて、一切やらないというふうに政府の方でお決めになればそれで済むと思いますよ。
 ただ、大臣が政策について国民に対して説明する責任を負っている、これはそうだと思いますよ。大臣という職務の重みから考えれば、自分の考えを説明するのは当たり前のことですよ、それは仕事の一環です。そういう仕事をするから、大臣は、お国から、税金から報酬をもらっているんですね。その説明責任を果たすのに、何で三十万円もらう必要があるんですか。そんなの、自分の仕事を普通にやっているだけじゃないですか。警察が泥棒を捕まえて、ああよかったよかったといって、被害者の方からお金をもらったらばかみたいでしょう。そんなこと、やらないんですよ、当たり前のことをやっているだけなんだから。何でお金をもらうんですか、僕は返すべきだと思うな。どうお考えになりますか。
竹中国務大臣 これも繰り返しになりますが、講演会等々に呼ばれて講演をした場合に、向こうの規定等々に合わせて、社会常識の範囲で謝礼を受けるということはございます。
 例えば、NHKのテレビに出演したって、これは経済討論に出演したって、金額は正確には記憶しておりませんが、出演料というのは出るわけでございます。そこはまさに、社会常識の範囲で判断をしていただく問題だと思います。
永田委員 講演会に出てスピーチをする、それはなぜお金がもらえるかというと、聞いている方も、自分が考えつかないような考え方を説明されたり、自分が知らなかったことを教えてもらえる、ありがたいから、それに対して報酬を払うんですよ。だけれども、政府が政策の方針を説明することにそういう要素はありません。政府が、AとBという二つの政策的選択肢があったときに、どっちの方を向いているんだよということを説明する場合には、ありがたいとかそういう話じゃないわけですよ。それは単なる説明責任を果たしているというだけなんですね。
 だから、講演会でスピーチをして報酬をもらうのとはわけが違う。これは勉強会じゃないから、大学の授業じゃないんですからね。だから、それに対して、僕は、説明責任を果たすだけで報酬を取るというのはいかがなものかと相変わらず思うんですが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、そうした観点から、テレビで経済討論等々に出た場合、サンデープロジェクト等々に出た場合、そこでは、社会常識の範囲でのというのがあるのだと思います。今回もまた、その社会常識の範囲であったというふうに認識をしています。
永田委員 金額の話をしているんじゃないんですよ。多いとか少ないとかそういう話じゃなくて、ゼロか一以上かという話をしているんです。少なければいいとか多ければだめだとか、そういう話じゃないから、社会的常識とは関係がないんですね。
 それで、これは広告料なんですよ。何を意図して、この新聞紙面をつくっている人、あるいは日興コーディアル証券を初めとする、ほかにも証券会社はありますよ、UFJ信託とか、そういうところはみんな莫大なお金を払っている、多分何百万と払っている。そういうような性質の広告に大臣がお出になって報酬を取るというのは、これは、広告塔になったような感じで、非常に国家の権威にかかわる話だというふうに思っているんですけれども、改めて、広告にお出になるということの道義的、法的、政治的責任についてどうお考えですか。最後にしますけれども、教えてください。
竹中国務大臣 特定の会社の広告に出たわけではありません。投資特集を組むと日本経済新聞がおっしゃるので、その趣旨に賛同して、私が考えていることを述べたわけでございます。
 繰り返し言いますが、これは広告に出たわけではない。広告に出たんであるならば、この会社はいいですよ、あの会社はいいですよという話になるわけですが、これはそういう話とは全く性格が違う。貯蓄から投資へというその流れで、骨太方針以来小泉内閣で考えていること、私がかねてから主張してきたことをマクロ的な観点から述べているわけです。
永田委員 この論調は、税制改正も今後やっていかなきゃいけない、税制改正をするその主眼は、投資家のチャレンジをしやすくするような環境をつくるというような話が主眼になっているわけですよ。この下に、日興コーディアル証券は、「新税制活用セミナー」、「新証券税制あんしんセミナー」、こんなものを、参加してくださいと書いてあるんですよ。紙面がいいように利用されているんですよ、わかりますか。
 大臣が最初からそれを意図していなかったのはわかります。それは、僕は善意に解釈しましょう。だけれども、広告に出る以上は、そういうふうにして活用される可能性があるということなんですよ。それは、ETFは絶対もうかるという発言で我々が指摘したのと同じことなんですよ。
 だから、そういうふうに悪意に活用される可能性があるということを考えれば、今回の行為は軽率であった側面が一ミリもなかったというふうに主張するのであれば、それは我々は許せないと思いますよ。少しは、配慮が足りなかったぐらいのことを言ってくださいよ。
竹中国務大臣 御心配をいただいて大変申しわけございません。
 ただ、今回は、編集委員の方から、こういう貯蓄から投資へという流れの趣旨でインタビューに応じてほしいということであって、現実に、そのインタビューの記事に関しては、きっちりとそのように、中身に載せてもらっている。
 御指摘のような指摘は、しかし民間媒体である以上、必ずどこかに広告等々がつくわけで、それは繰り返し言いましたが、普通の紙面の場合にも下に広告はついているわけで、そこは、それこそ、解説委員からインタビューがあって、自分の思っていることを述べる、それでまさに常識の範囲で活動していくしか方法はないのではないでしょうか。
永田委員 今、ついうっかりだと思いますが、言ってしまいましたね。
 政府の方針を説明するためにあらゆる機会をとらえるんだという話であれば、政府の方針は最初からあって、それをインタビューに応じる形で説明をすれば、それは紙面に載るかもしれない。それは確かに一つの説明責任のあり方だと思いますよ。
 今、おっしゃいましたね。貯蓄から投資へという流れに従ってインタビューに応じてほしいという依頼を受けて、自分はその流れで話をしたと。今、そうおっしゃいましたね。政府の方針が最初にあったものを、それを説明しようとする姿勢ではなくて、日経新聞から、貯蓄から投資へという流れで話をしてほしいという依頼を受けて、その流れで話をしたとおっしゃいましたね。
 おかしいじゃないですか。広告に使われたんですよ。
竹中国務大臣 いやいや、政府の方針なり、我々が言いたいことと全く違うことをやってくれといったら、これは応じないわけですね。しかし、投資を活性化したい、投資を促進したいという、そこの紙面の趣旨が、私たちがまさに考えていることと一緒だから、先方の要望に応じるということになったわけです。
 全く、投資なんかけしからぬ、そういうことで応じてくれといったらお断りしているわけでありますから、これは、まさに方向が一致していないと、こういうものには参加しないということではないでしょうか。
永田委員 今後も、こういう依頼があったら、受けるんですか。
竹中国務大臣 媒体の社会的信頼性とか企画の趣旨、そういうことを考えて、改めて、これは我々の考えをお知らせするよい機会であるということであるならば、引き続き、説明責任の一環として積極的に活用したいと思います。
永田委員 社会的信頼性を考慮して今後は判断していくとおっしゃいましたけれども、では、日経は社会的信用性があるというふうに大臣がお墨つきを与えるわけですね。これは、日経新聞の販売員が、うちは社会的信用を大臣に認めてもらいましたと言って、今の議事録と一緒に持って歩いたらどうするんですか。そういうのがいけないと言っているんですよ。わきが甘いと言っているんです。もう一回。
竹中国務大臣 しかし、媒体を選ぶ場合は、そういうことを考えるのは当たり前のことなのではないのでしょうか。やはり我々も、その媒体がどのような形で受けとめられるのかということを、それこそ、変な形で広告塔に使われないように、しっかりと選ばなきゃいけない。それはしかし、むしろ、わきをしっかりと締めてやっていくことだと思っております。
永田委員 ぜひ、私の後援会の機関紙に登場するという依頼をしてみて、自分の機関紙がどれぐらい社会的信用があると大臣に考えられているのか、チェックしてみたいなというふうに思うわけであります。
 さて次に、これは続けますけれども、ちょうどいいので、大臣に、大手銀行による増資について、跳び上がるほどうれしいというコメントを出していますけれども、その後、跳び上がるほどうれしいという事態が発生したんでしょうか。どういうようなことが起こるとうれしいなというふうにお考えになったのか、そして、実際にそういう事態が起こったのか、教えてください。
竹中国務大臣 これは、二月七日に、三菱東京フィナンシャル・グループが、国の内外の投資家に対して普通株の公募増資を行うということを発表したときに、私は、これは大変前向きに評価したいということを、幾つかの、それこそテレビとか記者会見とかでお伝えしたと思います。
 その当時の私が申し上げたかったことは、これは十三年ぶりの日本の大手銀行による普通株の公募であるということ、それと、本邦金融機関で最初の日米欧三極市場を対象としたグローバルオファリングであるということ。
 私がそれとの関連で特にもう一つ申し上げたかったことは、金融再生プログラムに基づいて、銀行自身が、みずからしっかりとリスクを負って、前向きに市場の中でファンドレイズをしようというふうな行動に出てくれた、これはやはり、繰り返し言いますが、非常に大きな進歩であろうと思います。
 ただし、私はそのときに記者会見等々で同時に申し上げたつもりですが、しかし、これはスタートであるから、やはり結果を出してくれと。その結果を出すという意味は、そこでファンドレイズして、それをきっちりと将来収益に結びつけていく、かつそれを市場に評価してもらえるようにしていく。そういうことでありますから、スタートとしては大変よい、しかし、しっかりと結果を出してもらいたい。今そのまさにプロセスにあると思います。
永田委員 本当はいっぱいお聞きしたいんですけれども、せっかく初めて日銀総裁に質問する機会が得られているので、こっちの方も触れておきます。
 例の、通告をしてあります日銀による民間銀行の保有する株式の取得についてでありますが、速水体制では、その株式の買い取りの法的な根拠として、日銀法第四十三条、つまり目的達成業務ということでやっていました。目的達成業務ですから、どの目的に合致しているのかと言われれば、第一条第二項、すなわち決済の円滑を図るためというところが目的であるというふうに言っています。
 新体制になりまして、福井総裁もそれでよいというふうにお考えでしょうか。私は三十八条の方が適切だと思うんですけれども。
福井参考人 お尋ねの点でございますが、日本銀行の金融機関からの保有株式買い入れ措置につきましては、日本銀行が、平たく言えば好きこのんでやっているわけではない、まさに異例の措置であり、やむにやまれぬ状況を勘案しての措置だということでございます。
 そして、何のためにそれをやるかといえば、やはり御指摘のとおり、日本銀行法一条二項に定める信用秩序維持に資すると。また、この資する措置を日本銀行がとり得るならば、そして他にタイムリーにとられる措置がないのであれば、今の事態の状況のもとで、金融システムの安定性を保全するためにこれをとらざるを得ないという判断に至ったということでございます。
 したがいまして、そういう判断に至った以上は、日本銀行の責任で主体的に判断して、たまたまそれは日本銀行法の通常業務に該当しないということでありますので、財務大臣に認可を申請申し上げて認可をちょうだいした、こういうことでございまして、結論的に申し上げれば、前任の判断と違っていないのではないかというふうに思っています。
永田委員 いや、ですから、第一条第二項は、決済の円滑を確保することによってという部分がありますね。決済の円滑の部分で、僕はどうしても、法的に今回のケースは当たらないというふうに思っているんですよ。
 再三申し上げますけれども、この問題は、万人が、日銀本体も政府も、あるいは我々国会も国民もみんなが、奇策というか禁じ手だというふうに認識をしていることなんですよ、日銀が株を買うということは。万人が禁じ手だと思っていることを、法改正せずにできると思っているんですか。
 日銀がどんなことでもなし得るわけではない。この程度のことしかできないということを限定列挙するために日銀法というのはあるんですよ。なのに、ここまで禁じ手だと思われていることが法改正なしでできるというふうに考える方が、僕はちょっと常識外れているんじゃないかと思うんです。こんな調子でいったら、土地だろうが何だろうが買えるんだというふうに話が飛んでしまうと、また日銀の資産の健全性というもので大変大きな注目を浴びることになりますから、今後、私これをまだ注意深く見ていきますので、ぜひ誤ることのないようにお願いをしたいと思います。
 きょうは時間がありませんのでこれぐらいにしておきますけれども、また引き続き時間をとっていただきたいと思います。きょうは、ありがとうございました。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 きょうはまず、国債市場の問題から伺いますけれども、日銀総裁、お越しいただいておりますが、塩川大臣も竹中大臣も、そして日銀総裁も、金融緩和ということを盛んに言っていらっしゃるわけだし、現実問題、そういうふうになっている。それでまた、今度は資産担保証券も日本銀行の方でオペレーションするというふうなことを今計画されているようですけれども、ある意味、国債がじゃぶじゃぶとあふれているということで、言ってみればモラルハザードみたいなのが起きているんじゃないかというふうに思います。
 三十年債でも利回りが一%ちょっと、一・一%ぐらいということなんですが、このことは結局、資金が回っていないということですね。全部国債市場に流入しているということ。あともう一つは、三十年たっても経済状況が改善しないということをマーケットが判断しているということなんだと思うんですが、その件について、まず福井総裁から、いかがですか。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
福井参考人 御指摘のとおり、現在、日本の金融市場におきましては、長期金利が非常に低い水準に下がってきております。引き続き低下傾向をたどっていると言ってもいいぐらいの金利の低下ぶりということでございまして、レベルから申し上げましても、最近は、既往最低水準の〇・六%台というところで推移いたしております。
 恐らく一部は、御指摘のとおり、日本銀行が大量の流動性を供給して、いわゆる資金の需給感からそういうふうなイールドカーブが形成されているということはあろうと思いますけれども、より基本的には、マーケットが見る日本経済の将来の姿、景況感をやはり反映したものだろう。
 何も、今後三十年間、日本経済がだめだというところまで極端にマーケットが見ているわけではないと思いますけれども、やはりさまざまな構造要因と絡んだ日本経済、そして世界経済全体についても必ずしもバラ色の展開を一様に描くということが難しい昨今の状況の中で、引き続き、日本経済はかなり苦痛に満ちた前途が用意されている。しかし、これをブレークスルーする努力とその困難との相克というものを市場もきちんとウオッチしたいということで、今は市場自身が余り動けない、そうなりますと、勢いイールドカーブはフラットになる方向に今動いているということだと思います。
 しかし、三十年間ずっとだめだと見ているわけではなくて、この先、あるタイミングで経済がいい循環を示し始めたということになりましたら、イールドカーブは急速に修正されていく可能性があるというふうに考えています。
中塚委員 同様の質問を、竹中大臣、今うなずきながらお聞きになっていましたけれども、三十年債が一・一とかいうふうな利回りになっておる。そういう意味で、三十年たっても経済状況が改善しないというふうに市場が見ているんじゃないかという質問をしたわけですけれども、竹中大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 イールドカーブが大変寝ている状況になっている。しかしながら、ある意味で、我々が行おうとしている構造改革というのは、そうした中で、実物経済の活性化等々を通して人々の期待をさらに高めていく、そういうようなダイナミックなメカニズムが働く中で、実物市場が金融市場を変え、金融市場が実物市場を変えるというようなメカニズムを左右していくということを期待しているわけでございます。
 その意味では、期待というのは、その時々の短期の要因に過度に影響を受ける場合もございますし、我々の政策運営の基本としては、あくまで、構造改革を進めることによって、実物経済の活性化を図る、それと、実物市場と金融市場の有機的な連関強化を強めていくということだと思っております。
中塚委員 そういう状況の中で、一部にインフレターゲット的な議論をする人がいるわけなんですが、三十年債の利回りが一・一%ということは、インフレターゲットを仮に設定するとしても、私は設定しろと言っているわけじゃありません、しない方がいいと思っていますけれども、するにしても、ゼロ%近辺じゃ余り意味がないということなんだろうと思うんですね。
 ただ、余り高目のターゲットにしますと、これは逆に日本銀行の資産の劣化ということを意味するというふうに思うんですが、そこについて、福井総裁の御意見はいかがですか。
福井参考人 御質問の趣旨を正確にとらえたかどうか自信がないんですけれども、インフレターゲットというものを無理に設定して、そしてそれをある期間のうちに無理に実現するために、日本銀行がまさに無理なマーケットオペレーションをする、異例の上に異例を重ねて、リスクの多いアセットを日本銀行のバランスシートに沈め込んでいくということになりますと、それは日本銀行の財務の健全性を将来大きく損なう可能性が強いということは明確に言えると思います。
中塚委員 この間、そのバランスシートが急速に膨張しているというお話をしましたけれども、日本銀行の自己資本比率が、昨年九月のときの発表だと、今七・六二ですか。民間の金融機関には八%、八%と言っているにもかかわらず、中央銀行の自己資本比率が七・六二%と。そのことによって営業ができなくなるとか、そういうことではないと思いますけれども。
 日本銀行の自己資本比率が今七・六二%しかない。その上に、今度、資産担保証券みたいなのをオペレーションの中に加えるかもしれないということです。さっきの質疑者の方から株の話も出ていましたが、株の下落リスクとか、あと、資産担保証券なんかでも下落するリスクがあるというときに、では下落した分は利益の中から落としていかなきゃいけないわけですね。そうすると、さらに自己資本比率がこれからも下がっていく可能性がある。
 昨年九月の日本銀行の自己資本比率七・六二ということ、あるいは、これからそういう資産を買うことにより、持つことにより、さらに自己資本比率が低下をしていくということについて、いかがですか。
福井参考人 日本銀行の自己資本比率は、市中銀行の自己資本比率と少し概念が異なることは御承知おきいただいていると思います。銀行券の平均発行残高に対してどれだけ資本を持つかということでございまして、かつて、日本経済が平静なころ、順調に発展していたころは、平均的に見て、日本銀行の自己資本比率は一〇%レベルのところを維持していれば、日本銀行のオペレーションの結果として日本銀行の財務の基盤が揺らぐ心配はないという概念でずっと推移していたと思います。
 しかし、経済の状況がこういうふうに厳しくなってきて、日本銀行が金融政策の目的、あるいは金融秩序維持の目的のために思い切った行動をとらなければいけない、普通のときよりはリスクテークの度合いを強めなきゃいけないという状況になり、一方、世の中に金融危機に対する感覚が強まりますと、銀行券の発行残高そのものがふえる。この両方の要因で自己資本比率がある程度下がっている。
 この状況は、やはり両面が私たちに対して一つのサインを出してくれている。銀行券の伸びが異常に高いこと自身が世の中に危機が存在しているということのサインですし、一方で、我々がリスクをとって、踏み込んでそれを防圧しようとしている、それがまた自己資本比率にはね返ってきているということですので、私どもは、この両面からくる日本銀行へのサインを厳しく受けとめながら、そしてきちんと秤量しながら、さらなるアクションがとれるかどうか、これからとらなければならない可能性のあるいろいろな対応策ということを頭に置きながら、現在に振り戻して、現在必要な措置をやっていく。こういう将来にわたるリスクを十分計算しながら我々は行動をとり始めている。かつての日本銀行にはなくて、非常に厳しい投資家のマネジメントのようなことを今やっているということであります。
中塚委員 本当に、日本銀行の健全性みたいなことを議論していかなきゃいけない、そういう大変厳しい経済状況であるということなんだろうと思います。ただ、いずれにしても、金融緩和ということが、先ほど申し上げたとおりに、やはりモラルハザードを引き起こしている部分もあると思うわけだし、そうなると、竹中大臣は実体経済の構造改革ということもおっしゃっていましたけれども、やはりそこの歩みというかスピードが非常にポイントになってくると思うんですね。
 次に、福井総裁に伺いますが、このことはちょっと通告をしておかなかったので御所見がおありかどうか。今の時価会計の凍結なり減損会計の凍結ということについて、公認会計士協会の会長なんかがいろいろな発言をされていますけれども、福井総裁として何か御意見はおありですか。
福井参考人 私も、つい最近まで、五年間も民間で仕事しておりまして、民間の経済界、特に経営者の方々とふだんから接しておりまして、最近のようにマーケットの変動が非常に激しいときには、地道にある営業期間あるいは年度、経常利益のベースではきちんと収益を上げても、マーケットの変動リスクが余りにも大きくて、最終利益の段階では想像もしなかったような姿に変わってしまう、これは企業経営を安定的にやっていく上に非常に難しいんだ、そういう現実の難しさの話というのはたくさん私も耳にしておりました。
 しかし、さはさりながら、同じ経営者が、内外にわたるこの厳しい環境に打ちかっていく、そのときに、投資家に対して、他の企業が、あるいは外国の企業が提供しているのと同じ精度の正確な情報提供をしていかないと逆にまたマーケットから評価されないということも、これまた肝に銘じて経営している。
 言ってみれば、経営者というのは、そういう板挟みの心境で狭い道をずっと歩んでいるというのが実際でありますけれども、どちらかというと、投資家にきちんと正しい情報提供をするということの重要さというのは時の経過とともに経営者の心の中には沈殿してきている。IR活動というものに、担当者に任せないで、CEO自身が乗り出して、国内はもちろん、海外まで乗り出してやっていかなきゃビジネスの先端が切り開かれないという状況になっているということでありますので、時価会計の持つ、投資家に対して的確なる情報を提供するという部分の重みは、時の経過とともに増しているというふうに私は思っています。
中塚委員 今の御発言だと、時価会計を凍結したり減損会計を凍結したりするというのはやはりよろしくないということなんでしょうね、今の御発言の趣旨で伺いますと。うなずいていただきましたのでもうこれ以上は聞きませんが。
 次に、民間金融機関のお話なんですけれども、この三月三十一日に、以前資本注入をした銀行が公的資金を返済しておりますけれども、これも、そのときの契約で四月から金利が上がるからということで返したということのようです。
 ただ、そもそも、普通株に転換するとか、あるいは新たに資本注入するとかいうふうな議論もあって、金融再生プログラムですか、そういうようなものもつくって金融機関の健全性、あるいは金融システムの安定ということには強い注意、関心を払っておられたと私は思っていたんですけれども、この返済というのは、例えば三井住友なんかは、外資から高い金利でお金を調達して、そして、その調達したお金で低い金利の公的資金を返済しているわけですね。
 このことについて、竹中金融担当大臣はどういうふうにお思いなのか。もちろん、それをやめろとか、返すというものを返さなくていいというふうにはおっしゃらないんだろうと思いますけれども、でも、低い金利のものを返して高いものを引っ張ってくるというふうなことでは、これは余計、日本の金融機関の財務内容、特にPLが毀損をするんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、例の劣後債・ローンに関連する金利のステップアップ特約が付されているものについてということであろうかと思います。
 御承知のように、約款上、ステップアップ期が到来した後は、当局の承認を受けた上で、発行体が発行価額をもって期限前償還を行うことが可能である、いわゆるコールオプションがあるということになる。このコールオプションの行使に当たっては、民間からの調達、公的資金を問わない、これは公的資金であれ民間の資金であれ、銀行法施行規則においては当局に届け出がなされる。届け出に対しては、事務ガイドラインに沿って、期限前償還後においても自己資本比率の健全な水準が維持される旨の合理的な説明がある場合には、承認を与えるという仕組みになっているということであります。今申し上げたのはあくまで手続でありますけれども。
 今、若干の固有名詞を挙げてコールオプションの話がありましたけれども、自力増資後の自己資本比率の状況でありますとか、あと、金利がやはり上がるわけですから、金利動向等を踏まえてこれは各金融機関が経営判断、どちらが有利かということをきちっと判断しているというふうに我々は考えます。
 もう一つ、優先株、優先届け出証券はいわゆるティア1でありますけれども、劣後債はティア2になるということでありますから、そのティア1、ティア2のバランスをどのように考えるかという自己資本戦略もそこには絡んでいる。
 いずれにしても、これは経営判断によるものであり、我々としては、先ほど申し上げましたように、そうした自己資本比率の健全な水準が維持されている旨の合理的な水準がある以上、これを承認するという立場になるわけでございます。
中塚委員 それは各行の判断なんですが、そもそも、国有化なりなんなりというときに、普通株に転換したりあるいは議決権行使をしたりするということで、ガイドラインまでお決めになったわけですね。そういうふうなものが金融機関にしてみればプレッシャーになっている。では、それなら早く返した方がいいということになっていくでしょう。でも、返すときのお金がより高い金利のものを引っ張ってきているわけですよ。そうしますと、金融機関自体はより財務内容が悪くなっていくんじゃないか。
 そのことについて、監督官庁の行政の責任者としてどういうふうにお考えになっているのか。
竹中国務大臣 これはまさに今申し上げましたように、不利な資金調達方法に変えている、そういうことではないわけですね。何が有利か不利かというのは、判断は大変難しいと思います。単に表面上の金利だけではなく、それのマチュリティーがどのように来るかという問題もあるでしょうし、その意味では、まさにここは金融主体として経営判断をきっちりと行っている。自己資本比率について、それが原因で問題が生じることはないというふうに我々は判断をしております。
 しかし、これは先ほどの話ではありませんが、そういったことも含めて、引き続きしっかりと経営力を強化して結果を出していただかなきゃいけないものでありますから、今まさにそのプロセスにあるというふうに思っております。
中塚委員 危機というのは、危機、危機と言うけれども起こらぬじゃないかというふうに財務大臣はよくおっしゃいますが、でも、起こらないでどんどん先に延びていけばいくほどクラッシュの度合いも大きくなるわけで、そういう意味では、私はやはり、低い金利の公的資金を返して高いお金を引っ張ってきているというふうな行動を続けていくようでは、なかなか日本の金融機関の健全性というのは、よくなるわけはない、ますます悪化するんじゃないかなというふうに思います。
 財務大臣と竹中経財大臣に伺いますが、まず財務大臣、四月の十二日の報道なんですけれども、総理が、今の恒久的減税ですね、定率減税の廃止を政府税調の石さんに指示をしたというか相談をしたというふうなことのようなんですが、財務大臣の方には総理の方からそういうふうなことはありましたでしょうか。
塩川国務大臣 私は、そういう指示があったとは承知しておりません。政府税調でも指摘されているとおり、個人所得課税の機能を回復させていくことは極めて重要な課題であると認識しておりますが、定率減税のあり方について、今後のあるべき税制の一環として検討されるべき問題であるというふうに考えてはおりますけれども、直接議論があったということは聞いておりません。
中塚委員 議論があったということは聞いていないという話ですが、そうしますと、総理から塩川財務大臣に対しても、特に指示というか話というのはなかったわけですね。
塩川国務大臣 ありません。
中塚委員 というのは、国から地方への財源移譲の話ともちょっと関係するわけなんですけれども、経済財政諮問会議のつくった例のプライマリーバランスを回復させるスケジュールというか見通しによると、二〇一〇年ぐらいにはプライマリーバランスが限りなく回復するようなシミュレーションになっているんですけれども、あのシミュレーションは地方が黒字で国が赤字なんですね、その時点でも。ということは、地方が黒字で国が赤字になっている中で、国から地方に税源ですか、そういったものを移譲することが果たして可能なのかというふうに思うわけですよ。
 それで、仮に税源なり財源というものを国から地方に移譲しようとすれば、増税をして移譲するとか、あるいは地方の方で勝手に増税するということで、まあ地方の方で勝手に増税するのを税源移譲というのかどうかはちょっとわかりませんけれども、いずれにしても、今の税制の中で国と地方の税収の配分を変えるということではなく、増税をした上で地方に渡していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思うんですが、塩川財務大臣はいかがですか。
塩川国務大臣 私は、国と地方の財源の配分の問題について、根本的な問題が十分に承知されておらないと思うんです。ということは、やはりそれだけの権限、行政的ニーズを削減することにもつながってくることであります。
 国が今プライマリーバランスが非常に赤字である、そうなのに、地方は逆にプライマリーバランスがプラスじゃないかということ、それは当然なんですよ。国は地方の財源不足を全部財源保障しておるんですから、当たり前の話じゃないですか。ちょうど昔の国鉄と同じですからね。ですから、地方財政計画でそれはきちっと黒字になるようにできておるんです。これを認めないと予算が通らないんですから。ですから、黒字になるのは当たり前の話です。
 でも、今度は、国の委任事務を、権限をどんどん移していって、そのかわり、それに見合う分の財源を地方の一般財源で移していきますから、今後は、地方自治体も自立した財政を組んでもらわなければ困ると私は思うんです。
 そのためには、三位一体でやっておりますけれども、私は、さらに加えて、今後は、地方財政計画を変えるならば、地方財政計画を、これは白書でいいじゃないか、財政計画というてそれを閣議決定する必要はないんじゃないか、そういうことも言っておるんです。そうすれば、地方の自主的な努力でやりますから、今度はプライマリーバランスを維持していくのに地方も汗をかいてもらわないかぬ、こういうことになります。
中塚委員 ちょっと今の答弁は、国が地方の歳出保障をしているということはそのとおりだと思うんですが、現時点では、地方財政はプライマリーバランスは赤なんですね。ただ、地方の方が黒になりやすいというのは財務大臣のおっしゃるとおりだと思うんですが、そういう中にあって、国から地方に税源を移譲するというのは果たして可能なのかということなんですね。
 同じことを竹中経済財政担当大臣にも伺いたいんですが、やはり国が赤字、地方が黒字というふうなことの中で、確かに地方分権の方向としては、税財源を移譲していくというのは間違いない方向だと思いますけれども、ただ、そういう中にあって、増税なしで国から地方に税源を移譲することが果たして可能なのか。というのは、そもそも小泉総理は、就任のときに、増税はしないというふうに言っているんですね、今は消費税を上げないというふうにおっしゃっているんですが。そういう中で、増税はしないというのが発足時の公約だったはずなんですけれども、増税なしで国から地方に財源を移譲することは果たして可能なのかどうか。
竹中国務大臣 中塚委員の御懸念は理解できるんですが、実は、だからこそ三位一体でやるんだというふうに我々は考えるわけです。これは「改革と展望」の中で試算を出しておりますけれども、現行の大枠を変更しない場合に国と地方のバランスがこうなる、この問題点は今塩川大臣からも指摘があったとおりであります。
 だからこそ三位一体の中で、これは基本方針二〇〇二で明示したことでありますけれども、まず、国庫補助負担金についてその規模を大幅に削減をするということをやはりやらなければいけないわけです。交付税の財源保障機能全般についても見直して縮小していく、そういうこととあわせて、実は、今交付税改革、税源の移譲というのも可能になってくる。かねてから三位一体が必要だというのは、まさに補助金、負担金の削減と、交付税の改革と、税源の移譲、これは三つをやらないと物事の解決にはならないということなわけであります。
中塚委員 終わります。
渡辺(喜)委員長代理 次に、達増拓也君。
達増委員 統一地方選挙の第一弾がありまして、今週久しぶりに、各役所から届けられる資料の山を、今まで東京を留守にすることが多かったものですから、大分ためていた資料の山を手にとって見始めましたところ、平成十五年三月付で財務省の平成十五年度政策評価実施計画というのが届いていまして、これはおもしろそうだと思って手にとったわけであります。
 今回の統一地方選挙でもこの政策評価というのはイシューになっていまして、私の地元岩手県でも、この政策評価の自治体への導入あるいはさらなる活用、こうしたことを政策にした人が当選したりしておりまして、この政策評価というのは、二十一世紀のガバナンス、国であれ自治体であれ、高度情報化社会、知識社会において適切に行政を進めるに当たって非常にキーになる、かぎになるものではないかと思うわけであります。
 この平成十五年度の財務省の政策評価実施計画、平成十四年度におきまして、財務省、広く政府全体と言ってもいいんですけれども、国債の発行を三十兆円以下に抑える、そういう目標を華々しく掲げ、それは見事に目標達成できなかったわけですね。補正ベースで三十五兆円の国債発行。当初予算では三十兆円ぴったりに抑えていたわけですが、税収二・五兆円少ない減額補正をせざるを得なくなったりということもありまして、補正で約五兆円の国債の追加発行で、結果、平成十四年度予算における国債の発行高は三十五兆円になってしまいまして、小泉内閣の発足当初からの目玉の公約、平成十四年度予算での国債三十兆円という目標は見事に失敗してしまった。
 総理は大したことないとおっしゃいましたが、これは近代財政史に残るずっこけ、大変な歴史に残る大失敗だったと思いまして、これからもいろいろな学者やいろいろな人が分析をしていくのでありましょうけれども、これが国民の暮らしや国民の仕事に非常に悪影響を与え、その結果、日本経済が非常におかしくなっている。これも統一地方選のイシューだったわけです。
 そういうことからして、平成十五年度の政策評価実施計画、この予算の編成と税収の確保に関する部分、言いかえると財政構造改革に関する部分と言ってもいいんですが、これは総合目標一、政策目標一―一、一―二といったところがそうなんですけれども、平成十四年度予算での大失敗を踏まえて劇的に変わっているんじゃないかと思って見たら、平成十四年度の実施計画とほとんど変わらない、大体同じなんですね。平成十五年度の実施計画が平成十四年度の実施計画とほとんど変わっていない。これはすごいおかしいんじゃないかなと思いまして、この点どうなっているのか、伺いたいんです。
牧野政府参考人 お答えさせていただきます。
 今先生御指摘のございました政策評価実施計画でございますが、これは、財務省が行います政策評価の対象となる政策でございますとか、あるいはその評価の具体的な方法、こういったものを定めるものでございます。したがいまして、その中には当然、財政運営に関する目標も掲げられております。ただ、その内容は、財政運営の性格から、中長期の目標でございますとか、それから基本的な態度をお示しするというものとなっているわけでございます。
 確かに、先生おっしゃいましたように、平成十四年度予算につきましては、当初予算で国債発行額三十兆以下というのを実現したわけでございますが、その後、当初予算の編成時には予期できなかったような税収の落ち込みあるいは経済情勢に適切に対応する、そういうニーズがございまして、おっしゃられましたように、国債の追加発行に踏み切ったわけでございます。ただ、国債の追加発行に踏み切ったわけではございますが、財政秩序の維持でございますとか財政の信頼性確保でございますとか、そういう財政運営に関する目標は変わっておりません。
 そういうことで、今度の平成十五年度の政策評価実施計画の策定に当たりましても、御指摘の、総合目標一でございますとかあるいは政策目標一―一、一―二などの財政運営に係る目標につきましては、従来の目標を堅持したということでございます。
達増委員 平成十三年度の実施計画は、これは、当初の実施計画は森内閣のときにつくられたので、小泉内閣発足後に、九月に修正されているんですけれども、総合目標七として、「平成十四年度予算は、財政面における抜本的構造改革の第一歩として、国債発行額を三十兆円以下に抑えることを目標とするとともに、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、思い切った縮減と重点的な配分を実現する」と。国債発行額を三十兆円以下に抑えることを目標とするということが平成十三年度の財務省政策評価実施計画の総合目標七の中ではっきり書いてあるわけです。
 それが大失敗に終わったのに、三十兆円云々ということは、予期できない税収の落ち込みとかで、財務省のせいでは全くなくて、かつ、政策評価ということは中長期的な目標に関するものだから、三十兆円問題は関係ないと政府はおっしゃるわけですか。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
牧野政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のように、平成十三年度の実施計画は、内閣がかわりまして、大きな政策変更があったということで改定をいたしております。
 財政は、先ほども申し上げればよかったんですが、財務省限りでその基本的な政策を決められるわけではございません。経済財政諮問会議がございまして、その御議論を経て、大体六月に従来から骨太の方針というのを出していただいて、そこで最終的にその翌年度の財政運営の方針が決まる、そういう性格でございますので、やはり、年度初めに政策評価の実施計画を出さなきゃいけないわけですが、その中に十分書き込めないという面があることはぜひ御理解をいただきたいと思います。
達増委員 であれば、三十兆円の国債発行額という目標の評価についても、財務省限りではできなくて、経済財政諮問会議にやってもらわなければだめということになるんでしょうか。
 平成十三年度については、実績評価書も出ております。去年六月に十三年度の実績評価も出ていますので、さっきの総合目標七、「国債発行額を三十兆円以下に抑えることを目標とするとともに、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、思い切った縮減と重点的な配分を実現する」という目標の評価が財務省から出ているんですけれども、どういう評価になっているかといいますと、
  指標等に照らした目標等の達成度  ほぼ達成した。
  目標を達成するために事務運営のプロセスが適切、有効かつ効率的であったか  おおむね適切かつ有効であった。
  結果の分析(特に目標未達成の場合の反省点の把握)が的確に行われているか  分析がおおむね的確に行われている。
最後、
  当該政策自体の改善や、政策評価システムの運用の改善について有益かつ積極的な提言がなされているか  当該政策について有益な提言がなされている。政策評価について有益な提言がなされている。
これはもうお手盛りの大本営発表としか言いようがなくて、こんな無責任な政策評価があるのかいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
牧野政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生御指摘の、平成十三年度実績評価書、これは平成十四年六月につくったものでございます。その段階では、平成十四年度当初予算ができたわけでございまして、その平成十四年度当初予算を評価しているということでございます。その後、先ほど申し上げたようないろいろな経済情勢の変化とか税収の落ち込みがございまして、補正予算を組みましたが、それは評価をいたしました後のことでございますので、そういうことで御理解をいただきたいと思っております。
達増委員 今回出た平成十五年度の政策評価実施計画で、この財政構造改革、予算編成、税収の確保といったことについて、非常に甘い実施計画が出ているのは、多分、今の十三年度の実績評価書、つまり、十四年度予算を編成したところで終わり、その先はまだという、そこの評価をもとにしているから、こういう楽観的な計画になっているんじゃないかと思われます。
 民間企業の場合などは、四半期ごとに今のままでいいのかと見直して、そして経営、改めるべきところは改めるということを四半期ごとにやるわけでありまして、政策評価というのをとりあえずやってみようということで平成十三年から十六年までですか、法律で各役所やろうということになっているんですが、どうも、一年ごとに計画を立て、評価をするというサイクルではとても政策評価として機能しないんじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
谷口副大臣 達増先生がおっしゃるように、今現在は、会計年度が一年でございますので、評価対象年度が四月から三月まで、こういうことになっているんです。
 それで、おっしゃることもよく理解できるんですが、例えば今おっしゃっている四半期に評価したらどうかというようなことも含めまして、今後できるだけの改善も念頭に入れてやっていきたいというように考えております。
達増委員 あと、この政策評価の仕組みについてもう一つ確認をしたいんですけれども、十三年度の実績評価書の中で、「今後の政策等に反映すべき事項」として、「予算編成過程において政策評価を一層活用してまいりたい」、これは、平成十三年度から、概算要求時に各省庁から政策評価に係る調書を収集して、その上で予算編成をするというふうにしているということなんですけれども、各省庁の政策評価というものを財務省として予算編成にきちんと活用しているんでしょうか。
谷口副大臣 平成十五年度の予算編成に当たりましては、おっしゃるように、各府省が行った政策評価の結果を適切に反映、活用するという観点から、施策の意図、目的、必要性、効率性、有効性等を明らかにするために、各府省から概算要求に当たり政策評価調書の提出を求めたところでございます。財務省では、提出されました約二千五百の政策評価調書を参考にいたしまして、要求、要望の中身の精査、また優先性の判断を行いまして、歳出の質の改善、また予算の重点化、効率化を図るように努めたところでございます。
 なお、政府案決定時に、六十八の施策については政策評価の予算編成過程における活用状況を公表させていただいております。
 ただし、各府省の政策評価の内容につきましては、今後に向けて課題も残されておると考えております。一つは、一般的に定性的な評価が多いものでありますので、可能な限り定量的分析を行う等、政策評価の精度を高めるということが大事だと思っております。また二点目は、各府省の自己評価である政策評価の客観性を高めるということ等、今後取り組みを通じまして、予算編成にさらなる活用を図ってまいりたいというように考えております。
達増委員 国債三十兆円枠という、平成十四年度における国債発行額を三十兆円以下に抑えるという目標、小泉内閣の財政構造改革というものを一言であらわした政策であり、公約だったはずであります。それが物の見事に達成できなかった、三十五兆円になってしまったということは、これはよほど反省し、かつ二度とこのようなことのないように、これは日本国全体として、国会としてでもそうですし、国民としてでもそうです。二度とこういうことのないようにということの一つには、もう総理大臣をかえるしかない、内閣をかえるしかないというのも含まれると思うんですけれども、何でこんなことになってしまったのかというのはやはり真剣に検討しなければならないことなんだと思います。
 そこで、さっき政府委員が、こういうことは財務省限りでできることではなく、予算編成の基本方針の取りまとめなど予算編成のプロセスについては経済財政諮問会議で決めることでもあるということでありますが、平成十四年度国債三十兆円という目標が達成できなかったことについては、経済財政諮問会議が鳴り物入りで経済財政に関するいわば内閣の戦略部門としてできたわけですけれども、実際にはうまく機能していないということなんじゃないでしょうか。竹中大臣、いかがでしょう。
竹中国務大臣 経済財政諮問会議は、マクロ経済的な観点と財政の観点を整合的に考え、財政の重点的な配分の方針について基本方針を議論するとともに、マクロ経済についての枠組みを示す、これは大変重要な役割になっていると思います。
 結果として、国債三十兆円を年度としては達成することができなかった。しかし、当初としては三十兆円の枠で予算を組んでいる。もしも、その後経済が非常に悪くなって、その結果これが達成できなくなったということであるならば、諮問会議の役割がやはりもっとしっかりせいということに当然なるんだと思います。しかし、きょうも何度か申し上げましたが、平成十四年度の経済は、私たちが想定していたよりも数字の上ではよくなっております。ゼロ%成長といっていたものが、一%を超える成長になるでありましょうし、デフレは引き続きなかなかしぶといですが、それでも名目成長率も予想より高くなるんです。
 しかし、ではなぜ三十兆円が達成されなかったのか。二つ要因があると思います。一つは、税収の見積もりが大きく違った。これも予算委員会等々で議論をさせていただきましたが、税収の見積もりが違った大きな要因は、繰り返しますが、名目成長率が予想より低かったからではなくて、その発射台である十三年度の補正の時点での見積もりが、これは技術的な困難さによって違っていた。したがって、一つの教訓は、税収見積もりについてより精度の高いこと、これは財務省の主税局でありますけれども、我々も協力してやっていかなければいけない、これが第一点だと思います。
 第二点は、十四年度経済そのものは予想よりも高い数字であったんだけれども、十五年度にかけて、イラクの不確実性等々に関してきっちりとそれなりの補正をしていく必要が生じた。これは状況に応じてそれなりの対応をして、十五年度と切れ目ない予算編成をしたということではなかったかと思います。
 その意味では、先ほど言いましたように、一つは状況の変化、もう一つは税収の見積もり困難ということでありますので、こうした点を我々としては改良していきたいと思っております。
達増委員 今の点について、ではもう少し伺いますが、税収の見積もりがうまくできなかったということで、内閣としての大きい公約の三十兆円目標が達成できなかったというのは非常に大変な事態だと思うんですけれども、竹中大臣に伺いますが、税収見積もりの担当について何らかの責任を追及するおつもりはありますか。
竹中国務大臣 これは主税局がいろいろな情報を集めて一生懸命やってくださっているわけですけれども、基本的には、経済全般の動向等、ちょっと乱暴ですけれども、名目成長率に合わせて税収が上がってきたような状況ではなくて、名目成長率と少し乖離した形で税収が変動するような、まさに企業収益の構造変化が起こっているということだと思います。
 これは責任云々の問題ではなくて、どうしてそういうふうに企業収益の構造が変わってしまったのか。一つには、それこそ時価主義とか時価会計とか、そういう要因もあるのかもしれません。しかし、ここはまだ、まさにそこをしっかりと今原因究明しているというふうに認識をしておりますので、この難しい構造、これもやはり構造問題であります、しっかりと対応していきたいと思います。
達増委員 そうしますと、税収見積もりというのが非常に難しくなって、これからも一兆円、二兆円単位で税収見積もりが狂う可能性があるので、毎年の国債発行高何兆円、何十兆円という目標はもうつくらないことにした、そういうことでしょうか。
竹中国務大臣 財政の規律、これは中長期的には、プライマリーバランスを回復させるというのは長期の規律でありますが、短期の規律について、その方針を諮問会議で決定したのは昨年の一月です。昨年の一月の時点で、税収云々にかかわりなく、我々としては、収支の差額よりは歳出でしっかりとキャップをはめて、その規律をはめていく方がよいのではないかということを決めております。したがって、十四年度の決算を締めて、税収の見積もりが難しいからやったということでは、これは時期的にもそうではない。一年前に、もうそのことは、私たちは「改革と展望」の中に明記して閣議決定をしております。
達増委員 わかりやすい答弁で、そうしますと、そういう国債三十兆円枠という目標の立て方自体間違っていたということですね。
竹中国務大臣 総理が掲げた三十兆円というのは、財政赤字の問題の所在を広く国民に知らしめて、この問題を非常に深刻にとらえなければいけないんだというメッセージを送ったという意味で、大変重要であったというふうに思っております。
 これは、専門家としては、最初からプライマリーバランスだと言ったらどうだという議論もありましたが、そういうことを最初から言ってもなかなか御理解をいただけなかったんだと思うんです。ですから、三十兆円というシンボリックなわかりやすい数値を国民に示して、それを実行していくことの困難さも御理解をいただいて、それで、塩川大臣の言葉のように、この三十兆の精神を、プライマリーバランスであるとか歳出の緩やかなキャップの中によりはっきりと示していくことで、財政の中長期的な健全化を図りたいというふうに思っています。
達増委員 国債三十兆円問題を総括するのに非常に参考になる答弁だったと思います。
 さあ、これから先の話であります。十六年度予算をこれから編成していかなきゃならないわけですけれども、そうしますと、そういう三十兆円枠とかいう目標でやっていくのではなく、それにかわってどういう方針、どういう手法で平成十六年度予算に取り組んでいくのかを、まず経済財政大臣に伺いたいと思います。
竹中国務大臣 それは、まさにこれから経済財政諮問会議でみんなで議論をしていく問題でございます。
 ただ、平成十六年を待つまでもなく、平成十五年度の予算に関しては、一つの規律として、歳出に関して、一般歳出、一般会計ともに前年度を上回らないというような、先ほどから申し上げている緩やかなキャップということでそれなりの編成、これはそれでうまく機能した面があったというふうに思っております。
 十六年度以降については、それを基本にしながら、さらに改良の余地があるのか、これは経済財政諮問会議で、総理、官房長官、財務大臣、民間議員の皆さんも含めてしっかりと議論をしていきたいと思います。
達増委員 なるほどなるほど。平成十三年度の場合には、平成十四年度の予算編成についてかなり明確な目標を政策評価実施計画の中でも出していたんですけれども、十五年度の実施計画には書いていないんですね。
 そういう意味では、経済財政担当大臣はこれからの議論だということですけれども、これは財務省としてもそうなんでありましょうか。塩川財務大臣に伺いたいと思います。
塩川国務大臣 先ほど来ちょっとお話しございました三十兆円のお話でございますが、これは非常に重要な意義がございまして、竹中大臣の話のように、要するに財政の規律を一つ変えたということでございます。
 それで、私たちは、二〇〇三年から三年間、四年、五年度にかけてこれを集中的に改革していく時期として決めております。この中に三十兆円の精神を具体的にしていきたい。それは何か。先ほど竹中さん言っていましたように、対前年度の一般歳出予算を上回らないようにするということを一つの原則として、三十兆円の枠の精神を生かすということ、これが一つです。
 もう一つは、当然増がございます。当然増は、できるだけ一般歳出予算の中で削減によって吸収していこうということです。それでは、その削減はどこに焦点を置いてやっていくかというと、一つは公共事業は二%削減しようということであります。そして、選択的助成、補助金とかいうもの三%節減する、そしてなお義務的経費負担についてはできる限りの削減をするということ等を通じて、一つの当然増に対する対策の財源をそういうところから生み出そうと。これは私は、三十兆精神がきちっと残っておる、こういうことでございますので、これは非常に貴重な教訓である。それは二〇〇五年までこれを続けていくということになってまいります。
達増委員 三十兆円の精神ということで、小泉内閣は、米百俵の精神とか平壌宣言の精神とか、精神というのが多いんですけれども、それが目標と現実のずれを覆い隠すための方便として語られるのではなくて、やはりきちんとした実績を残していかないとだめだということを指摘させていただいて、私の質問を終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 初めに、貸金業の問題についてお聞きをしたいと思います。
 このところ、サラ金、やみ金などから融資を受けまして返済不能に陥るという多重債務者が急速にふえておりまして、その結果、夜逃げ、ホームレス、自殺など、看過できない重大な社会問題を引き起こしております。しかも、貸金業者は、過剰貸し付け、威迫的な取り立てなどでさまざまな事件も引き起こしております。
 まず竹中大臣にお伺いしますけれども、このような事態をどのように見ておられるか、貸金業界のあり方についてどのような認識をお持ちなのか、最初にお伺いしておきたいと思います。
竹中国務大臣 町の中で、駅、公衆電話、いろいろなところで非常に無秩序な形でこういったものの広告が出ている。こうしたことが一つの今の問題を象徴しているのだろうなというふうに感じます。
 具体的には、無登録営業や違法な高金利貸し付けなどを行っている深刻なやみ金融の問題が、まずそこに非常に大きな社会問題としてある。登録貸金業者に関する監督当局への苦情件数の増加も見られます。自己破産件数の大幅な増加に見られるような多重債務問題の深刻化があります。こういったことを取り上げた小説が有名になったりもしている。非常に深刻な、まさに社会として放置できない問題があるのだろうというふうに強く認識をしております。
 金融庁としては、貸金業登録の審査の一層の強化をどのようにしていくか。貸金業規制法等の関係法令の遵守の徹底、政府広報等の活用による違法な金融業者に対する注意喚起や消費者啓発、この消費者啓発も大変重要だと思います。このような積極的な取り組みを、我々としても手をこまねいているわけではなく、行ってきたつもりでございます。
 今後とも、関係当局との一層の連携強化を図りながら、やみ金融問題に対処するとともに、貸金業者の適切な指導監督に努力をしたいというふうに強く思っているところでございます。
佐々木(憲)委員 そこで、まず基本的事項を確認しておきたいのですけれども、貸金業者が債権を取り立てる際に、債務者を威迫したり私生活に介入するような行為というものは禁止されているというふうに思いますが、いかがでしょうか。
五味政府参考人 お答えいたします。
 貸金業規制法第二十一条第一項におきまして、「債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」という規定がございます。
佐々木(憲)委員 債権者が、債務者との契約上全く関係のない第三者に、あなたは支払い義務があるといって取り立てを行うというようなことは、法律上許されないのは当然だと思います。これは、既に昨年吉井委員が七月九日に当委員会で確認をした点でありますが。
 この契約者以外の第三者というのは、たとえ親や兄弟の場合でも第三者であれば取り立ては許されない、こういう理解でよろしいですね。
五味政府参考人 お答えいたします。
 今御紹介をしました貸金業規制法第二十一条第一項を受けました事務ガイドラインの規定によりまして、債務者の親族も含んだところで、法律上支払い義務のない者への債務の取り立て等の行為は行ってはならないというふうに規定をしております。
佐々木(憲)委員 当然、親や兄弟であってもそういうことは許されないということですね。
 もう一点確認をしたいんですが、借りる人の返済能力を超えて多額の金額を貸し付けることも禁止されているというふうに思いますが、いかがでしょう。
五味政府参考人 お答えいたします。
 その点は、貸金業規制法第十三条に規定がございまして、資金需要者の返済能力を超える貸付契約の締結は禁止されております。
佐々木(憲)委員 そこで、そのことを確認した上で、具体的な事例として、私、きょうは武富士の問題を取り上げたいと思います。
 配付いたしました資料でも明らかなように、武富士というのは、昨年三月末決算の貸付残高は一兆七千六百六十七億円、大変巨額なものであります。貸金業、サラ金業界では最大手であります。しかも、東京証券取引所に上場されている大手企業で、ここにありますのが有価証券報告書であります。
 その武富士から払えないほどの貸し付けを受けて悪質な取り立てを受けているという苦情が、実は私のところにも多数寄せられております。「武富士の闇を暴く」という本がここにありますけれども、この中でも多数紹介されておりまして、この本は、武富士被害対策全国会議が編集したものであります。
 金融庁のガイドラインでは、借り手の年収額の一〇%に相当する金額を貸し付けの上限と定めていると思うんです。ところが、これが実際には全く無視されているというのが実態なんですね。
 例えば、年収三百万円の三十歳の男性の場合、三十万円が貸し付けの限度なのに百万円の貸し付けが行われているとか、あるいは、年収百四十四万円しかない三十四歳の女性に百万円貸し付けている。年収百二十万円の三十五歳のアルバイトをしている男性に対して、十二万が限度なのに百万円貸し付けている。こういう事例が枚挙にいとまがないわけであります。
 それだけではありません。武富士は、無職の人あるいは収入のない人、こういう方々にも貸し付けておりまして、収入ゼロの二十九歳の男性に七十万円貸した。収入のない四十九歳の男性に百万円貸した。これは挙げたら切りがないんですけれども。
 金融庁に聞きますけれども、これらは事務ガイドラインで定められた上限を超えて融資をしているわけでありまして、これは明らかに過剰融資だと言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょう。
五味政府参考人 お話のありました事務ガイドラインにおきましては、窓口における簡易審査、無担保、無保証のケースとして、資金需要者に対する一事業者当たりの貸し付けの金額五十万円または資金需要者の年収の一〇%に相当する金額といったものを資金需要者の返済能力を超えるものであるかどうかということの目安としております。もちろん、これは目安でございまして、その資金需要者の保有資産でございますとか生活の実態ですとか、いろいろ考慮すべき要因がほかにあるわけでございます。
 こうしたケースにつきましては、具体的な法令の違反になるかどうかというのは事案ごとに判断されるということで、一般的に、この金額を超えていれば直ちに法令違反であると断ずることはなかなか難しいかと存じます。
佐々木(憲)委員 いや、私が挙げたのは、例えば無職の人、収入がない人、こういう方に例えば百万円貸し付ける、七十万貸し付ける、これはどう見たってガイドラインに違反しているということは明らかだと思いますけれども、それはいかがでしょう。
五味政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、ガイドラインに違反しているケースもあるかもしれませんし、債務者の方のその他の資産の状況等を勘案すれば必ずしもそうでないケースもあるかもしれません。個々の事案について、事実関係の確認を行った上で判断されるものであると考えております。
佐々木(憲)委員 では、個々の事案について、どういうふうに対応しているかという点についてお聞きします。
 これらの実態に基づきまして、武富士の被害者の皆さんが、関東財務局に対して、昨年の四月から十二月にかけまして合わせて五回、四十四名が行政処分を求める申告をしております。貸金業規制法二十一条違反だということで業務停止を求めているわけですが、財務省は、これに対してどのような対応をしたのか、そして是正措置をどうとったのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
五味政府参考人 個別具体の事案についての御答弁は差し控えさせていただきますが、一般論で申し上げますと、個別の事業者について貸金業規制法等の法令違反に関する苦情などを受けました場合には、事実関係について確認を行いまして、法令違反などの事実がその結果確認されました場合には、法令にのっとって適切に対処することといたしております。
佐々木(憲)委員 その一般論はわかりましたが、具体的に、昨年の四十四名の行政処分を求める申告に対して、まず、それを受け付けたわけですから、それに対する調査を行っているのかどうか、それからどういう対処をされているのか、答えられる範囲でお答えをいただきたい。
五味政府参考人 申しわけございませんが、一般論でのお答えしかできませんが、しかし、貸金業規制法等の法令違反に関する具体的な苦情があるということでありますれば、事実関係についての確認は行います。
 また、その結果、法令違反などの事実が確認され、コンプライアンスに関する行政処分というものが行われる、あるいは刑事告発のようなことが行われるというようなことがございますれば、適切なディスクロージャーを行うという扱いになっております。
佐々木(憲)委員 処分が行われたら公表するということだと思いますが、返済能力を超えて過剰に貸し付けられた債務者は、当然返済できないわけであります。これに対して武富士は、さまざまな威迫行為を行いまして、強引な取り立てをしております。
 例えば、広島県に住む三十二歳の男性の場合は、昨年八月上旬から毎日十回以上取り立ての電話がかかってきて、大変悩まされている。
 東京都内の焼き鳥屋で働く五十六歳の男性は、武富士から百万円借りていた。年収は百四十四万円で、ようやく生活しているという状態なんですね。それを、自宅にまで来てしつこく催促して、勤め先に十人で押しかけるぞ、あるいは詐欺罪で告訴する、こういうおどしをかけているわけであります。
 神奈川県のある女性は、裁判所に対して自己破産を申し立てた。その日、午後六時ごろに帰宅をし、アパートのドアをあけようとしたら、武富士の社員があらわれた。家の中のものを売って金をつくる人もいる、知り合いに電話して必ず金をつくれなどと二時間にわたって執拗に金を要求した。
 このような行為は、明らかに貸金業規制法二十一条、先ほどの威迫あるいは私生活への介入であります。これにはっきりとこれは違反するということになるのではないかと思いますが、それはいかがでしょうか。
五味政府参考人 貸金業規制法二十一条に言います「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」といったものの類型を事務ガイドラインで定めております。
 例えば、威迫する言動といたしまして、「暴力的な態度をとること。」「大声をあげたり、乱暴な言葉を使ったりすること。」「多人数で押し掛けること。」
 また、私生活または業務の平穏を害する行為ということで、例えば「正当な理由なく、午後九時から午前八時まで、その他不適当な時間帯に、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」あるいは「反復継続して、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」あるいは「勤務先を訪問して、債務者、保証人等を困惑させたり、不利益を被らせたりすること。」
 こういったような行為類型の一例を挙げまして、こうしたことが行われた結果として債務者を困惑させるということは、二十一条で禁止されておるわけでございまして、事実関係を確認して、こうした事実に該当するということでありますれば、適切な措置をとる必要がございます。
佐々木(憲)委員 借りた本人に請求するという場合ならまだいい方でありまして、武富士は、支払い義務のない親兄弟にまで請求をしてくる例があるわけです。
 例えば、債務者である、Bさんとしておきましょう、このBさんの母親が住むマンションに武富士の社員が訪れて、母親が住んでいる部屋のドアを何度もたたいて、近所に響き渡るような大声で、Bさんに会いたいから連絡先を教えろとわめいた。母親が帰ってくださいと言うと、一万円だけ払ってくれれば帰るということで、約五十分間にわたって執拗にその返済を迫った、こういう例があります。それから、他の事例では、母親が病気で生活保護を受けているのに一万五千円払わされた、こういう例もあります。
 これは、二十一条にも違反しますけれども、同時に明白な第三者請求になっているわけでありまして、その違反に当たるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
五味政府参考人 取り立てに関しまして、二十一条を受けました事務ガイドラインには、「法律上支払義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立てへの協力を要求すること。」はしてはならないというように規定しておりまして、これも具体的な事実関係を確認をして、それがこういうものに該当するということであれば、適切な措置をとる必要がございます。
佐々木(憲)委員 今、私がこれら幾つか事例を挙げましたけれども、これは明らかに貸金業法に違反しておりまして、このような事例は、すべて財務局に対する申し立て書の中に書かれている中身を、私、今紹介しているわけです。ですから、金融庁は当然こういう事実関係を掌握しているはずですが、いかがですか。
五味政府参考人 通報がございました苦情ですとか事実関係につきまして、これに法令違反の疑いがあれば、事実関係について確認をするというのは一般論として先ほど申し上げました。
 あと、困難なのは、こうした行為規制に関します事実の確認というのが、なかなか証拠がきちんと残っているケースが少ないということがございまして、事実の確認というところでは私どもも大変苦労をしているというのが実情でございます。
佐々木(憲)委員 例えば第三者請求というのは、確認は比較的容易だと思うのですね。そういう点については、既に訴えられているわけですから、調査をし是正するというのは当然だと思うわけです。
 私、大変不思議に思うのは、申し立てがあって半年たっているのですね。これは放置しているのじゃないかという気がするのですけれども、まともにこれに対応するような体制になっているのかどうか。
 先ほどから一般論のお話がありますけれども、具体的にこういう訴えをされた方が、これで解決しました、あるいはこういうふうに相手方に処分が行われたということを確認しておりますという話はなかなか伝わってこないわけですね。財務局としてあるいは金融庁として、こういう訴えにまともに対応する体制がきちっとできているのか、具体的に対応しているのかどうか非常に疑わしいのですけれども、その点、どのようになっているのでしょうか。
五味政府参考人 お答えいたします。
 財務局所管の貸金業者に関しましては、担当いたします部局が財務局にございまして、そちらでこうしたさまざまな通報に対する対応はいたしております。特に、これが法令違反、ここでいいます行為規制に触れるような疑いのある事実の御通報があったというような場合には、そうした人材を使いまして事実の確認をすると同時に、必要に応じまして、別のセクション、すなわち検査を担当するセクションにもそうした情報を通報をするという形でこれを活用させていただいております。もちろん、個々の債権債務の間を財務局が仲介をするというわけにはまいりません。ただ、そこに違法行為があるということが確認できますれば、これはしかるべき措置をとることにいたしております。
 その確認というところがなかなか、片方の方の言い分だけで、最後、例えば行政処分というようなところまで持っていけるのかどうかというところで苦労が多いという実情はございます。しかし、精いっぱい対応はしておるつもりでございます。
佐々木(憲)委員 精いっぱい対応しているつもりなんだけれども、なかなか対応が緩慢で成果が上がっていない。これはきちっと厳正に事実関係を直ちに調査して対応するようにしていただきたいと思います。
 具体的な資料として、今お配りした二ページ目をあけていただきたいのですけれども、武富士は、第三者請求を本店の指示でやっている、こういう証拠であります。
 配付した資料を見ていただきますが、この文書は、営業統轄本部から特別連絡として各支店に出されたものであります。金利が取れないものに対して和解条件を示したものですね。ここでも「第三者」と書いてあるわけですね。「第三者」として、「残元金に拘わらず 二千円以上」とか、「本人、第三者に拘わらず 残元金の八〇%以上」、こう書いてありまして、これは第三者からの取り立てというものを会社ぐるみで組織的にやっているという証拠なんですね。これは貸金業規制法とガイドラインに明白に違反している文書であります。これは直ちに調査し是正すべきだと思いますが、いかがでしょう。
五味政府参考人 私はこの文書を見たのは実は初めてでございますので、確たることが申し上げられませんが、この「第三者」というのが真の意味での第三者なのか、あるいは保証人とかそうした種類の方なのか、ちょっとわかりかねます。いずれにしても、これはちょっとどちらのどういう文書なのか、これだけではわかりませんので、これは何であるかということを調べてみます。
佐々木(憲)委員 これはそこに書いてありますように、武富士の営業統轄本部が平成十三年十月十六日に特別連絡として各支店に送った文書であります。ですから、これはこれで調査していただければ直ちにわかりますし、この「第三者」というのは明確に、連帯保証人とかなんとかじゃなくて、親族ですとかそういうものを指して、ともかく金を取ってこい、こういうものであります。まずは調査をし、今調査をされると言いましたので、その上で厳正に対処されるように求めておきたいと思います。
 それでは、私が今ずっと挙げてまいりました過剰貸し付けですとかあるいは取り立て行為の違法なやり方、こういうものが武富士という最大手の貸金業の会社で行われているということがなぜ起こるのかという点です。私は、これは従業員に対して膨大なノルマを課している、その達成を図ろうとして無理に無理を重ねる結果、こういう結果を招いているのではないかというふうに思うのです。
 武富士は、貸出残高で毎年、前年比約一〇%という高い伸び率を示しておりまして、この裏に驚くべきノルマがあります。会長が年頭の辞で、一一〇%伸長ということをよく言われているそうでありまして、基本的には毎年一〇%の貸付残高をふやすということがノルマとなっているようであります。
 この伸びというのは、返済金があるわけですから、返済金を差し引いて、その上で純増分が一〇%プラスである、こういう目標なんですね。ですから、例えば二〇〇三年度でいいますと、前年度が一兆七千六百六十七億円ですから、一〇%分といいますと千七百六十六億円の貸出残高を純増にする、これがノルマになるわけです。返済分を埋め合わせた上での残高をふやすという目標数字なんですね。
 支店の数が五百二十九あるわけです。ですから、一支店当たりの純増額というのは三億三千三百九十六万円、こういう計算になるわけですね。毎年、支店で、一年間これだけのノルマが課せられる。それを一カ月のノルマに直しまして、これ十一カ月で割るそうなんです。なぜ十一カ月かというと、十二月はボーナスで返済することが多いので、これは返済金額が非常に大きいものですから、残高が減りますから、ノルマの達成というのはできないわけで、そうすると十一カ月で割るというんです。ですから、一月のノルマは三千三十六万円、約三千万円ですね。毎月毎月、これだけ純増にしなければならない。一カ月の返済額が四千万あるとすると、それを差し引きますから、新たに七千万円を貸し付ける、そういうノルマになるわけです。ATMでの貸し付けもありますから、そういう分を引いても四千万とか五千万の新規貸し付けを行わなければならない。
 支店の従業員は何人ぐらいいるかというと、四、五人というのが一般的なところでありまして、そうすると、一人当たりにすると大体一千万円の貸し付けということになるわけです。これはどういう金額になるかというと、土日、休日を除いて、一人の従業員が毎日五十万円ずつ新たに貸し付けなければ達成できない、こういう金額になるわけです。
 これはとても不可能でありますが、しかし、全員が貸し付けに当たるという体制にないわけですね、現実には。一人は必ずティッシュペーパーを配らなきゃならない。皆さん、町で歩いているとサラ金のティッシュペーパーをよく受け取ることがあると思います。ああいうように、一月に例えば十万とかあるいは二十万とか、支店の単位でティッシュペーパーの配布のノルマがある、こういうわけであります。本当にこれも大変なことで、そちらに人をとられる。
 それから、本店から、あるいは支社から、目標はどの程度達成したのか、こういう、まさに社内で威迫的な電話がじゃんじゃん鳴ってくる。最悪の場合、五分に一回鳴ってくる、それでどなられる、こういう状況であります。ですから、その電話に対応しなければならぬ、こうなるわけですね。
 ですから、人手が四、五人なのに、そういうことでどんどん人手がとられて、実際に貸付業務をやるという、その一人当たりの金額はどんどんふえていきますから、そうすると毎日一人で八十万とかそういう金額を新たに貸し付けるということをやらざるを得ないわけです。だから、とてもそれは達成できないわけですね。それを本店がどんどんしりをたたくわけです。目標達成しろ、こういうわけですね。だから、これは違法な貸し付けとか回収ということに当然つながってしまうわけです。
 竹中大臣にここでちょっとお聞きしたいんですが、こういう過大なノルマを課して、しりをたたいてやっていくということになりますと、当然これは違法な貸し付けをやらざるを得ない、あるいは無理やり回収しなきゃならぬ、こういうふうに追い込まれることになると思うんですけれども、そういう点についてはどういうふうにお感じでしょうか。
竹中国務大臣 どういうふうに感じるか、印象ということだと思いますが、これも今初めてお伺いいたしましたので、実態、どういうことなのか、にわかに、ちょっと判断の材料を私自身は持っておりません。
 ただ、仮に今おっしゃったようなことが本当にどんどん、一つの、しかも決して小さな組織ではない、大きな企業体で続いていったならば、いろいろなほころびが生じてくるであろうし、それによってその企業の社会的信用が失われていくであろうし、今おっしゃったようなことが本当に全部続いていくならば、これはやはりいろいろな問題が出てくるだろうというふうに思います。
 ただ、個別の問題に関して、今突然お伺いしただけで、判断の材料を私自身は持っておりませんが、その意味では、どの企業も経営努力は大いにしていただきたいが、一つの節度の中で中長期的な発展を目指してやっていく必要があるだろうと思います。
佐々木(憲)委員 この武富士は節度を逸脱しておりまして、皆さんのお手元に、三ページ以後にあります資料を見ていただきたいんですが、これはパソコンの画面に次々と指示が来るわけであります。
 例えば三ページ目を見ていただきますと、「武富士魂!本部長に教えて頂いた、「絶対に諦めない精神」」こういうことを書いていまして、具体的にどういうことを書いているかというと、「全店二〇%伸長せよ。」これは本日中に貸し付けの月間目標二〇%を達成しろ、こういう指示であります。しかも、「十一時一三%、一時一五%、三時一七%、五時一九%で二〇%」こういうふうに時間ごとに指令を出して、このパーセントを達成しろ、こういうわけであります。
 それから、「十〜十六」というのが下の方にありますけれども、この「十〜十六」というのは、返済期日から十日から十六日おくれの未回収債権のことだそうであります。これを「初日六五%絶対」こう書いてありますけれども、こういう回収業務は月曜から始まるそうですけれども、初日の月曜日に回収率を六五%以上にしろ、こういう指示であります。その下に「GW」と書いてあります。これはゴールデンウイークのことで、中締めノルマを達成しないとゴールデンウイークは休めない、こういうことがここに書かれている。
 四ページ目をあけていただきますと、「三回転即実施せよ!」と書いてあるんですね。これはどういうことかというと、三―十六該当者全員に今から三回督促の電話をしなさい、こういうことだそうです。「総スパンダイヤル二回転」とはどういうことかというと、それ以外の未返済者全員に今から二回督促の電話をしなさい。だから、ともかく電話攻撃なわけです。大変な状況であります。下の方に「未達支店は必ず二十一迄に取り切り最終で結果報告せよ!」こう書いてあるんですね。十八時までに達成できなかった支店は二十一時までやり切りなさい、夜の九時までにやり切りなさい、そしてその結果を報告しなさい、これが四ページ。
 五ページに、達成できない場合はどうなのか。これは見せしめでありまして、「十―十六「大危機」!全管理職!ダイヤル突っ込め!」と書いてあるわけです。この大号令の中でやれなかったブロック長、これを名前を挙げているわけです。黒で消したところは名前が書いてありまして、「回収ゼロ!」「これが「幹部か」!」と書いてあるんです。「目標七〇%未満」これだけのところが挙がっていて、何が何でもやれ、こういう指示がある。
 六ページ目、目標が未達の場合はどうなるのか。下記リーダーは、あす、新大阪七時のひかり二〇八号に乗り、東京の本社に十時に来なさい、こういうことがそこで指示されているわけです。(発言する者あり)つまり、二十四時間戦いますという声も出ておりますけれども、こういう形で、達成できない者は呼び出されて、つるし上げを食う。
 七ページ目をあけますと、「今日の結果でWブロック長が本社研修!」、こうなっていますね。これは、きょうの結果が悪いとワーストブロック長が本社研修になります、本社でのつるし上げ、こういうことなんですね。「五分前着席、全員朝請求体制」、こうなっていますね。午前八時五分に着席して、全員で朝の督促電話の体制をつくりなさい。「営業は七時半〜リレー配布」、これは、営業業務としては朝七時半からティッシュをリレー配布しなさい、こういうものであります。だから、出勤のときにティッシュが配られるわけであります。
 「本日八五%未達は研修実施予定!二十一時〜」、八五%の目標を達成できなかった場合は、夜二十一時から研修を実施する。
 次、九ページ目。「土曜出社は遅れの取り戻し!」、これは、目標の達成がおくれており、その取り戻しのために土曜出社しなさい。あるいは、その下には、あすの土曜日の目標をあすの朝いちまで提出しなさい、そのノルマは画面表示の目標が達成できる内容である必要があるというようなことが、本当に矢継ぎ早にこういうものが、毎日毎日指示が出るわけであります。
 当然、こうなってくると、ノルマを達成するために土日のただ働きは当たり前、サービス残業は当たり前、こういうことになってくるわけでありまして、結局、こういう訴えがあるんです。上司から、おまえは土曜出勤しないからやめろ、こういうようなことを言われて、退職に追い込まれた。後輩が朝七時半に出社したら、臨店というのがあるそうなんですが、臨店というのは支店に対する抜き打ち検査でありまして、先に来ていた副支社長に胸ぐらをつかまれて、何時に来ているんだ、こういうふうにどなられた。ここは、就業規則では九時からの出社なんですよ。それが、七時半に来たら、何時に来たんだと言ってどなられる、こういうことがまかり通って、サービス残業は全社に蔓延しております。
 厚生労働省にお聞きしますが、この武富士に対して、ことしの一月九日、大阪労働局は武富士本社や大阪支店など七カ所に対して強制捜査を行ったというふうに聞いております。強制捜査というのは大変異例だと思いますが、その事実はあるのかどうか。あれば、その容疑内容、捜査の進行状況について述べていただきたい。
青木政府参考人 御質問の件ですが、これは大分マスコミでも報道されたところでありますが、御指摘のように、平成十五年の一月九日に、労働基準法三十二条それから三十七条違反の疑いで、大阪労働局と東京労働局が合同で強制捜査、捜索と差し押さえを行ったところであります。
 これについては、現在、捜査中でございます。
佐々木(憲)委員 こういう実態は徹底的に明らかにして、きちっとした処罰をしていただきたい。
 先ほど紹介した本に出ている武富士の元支店長の御木さんなど二人が、武富士を残業代未払いとして大阪地裁に訴え、二〇〇一年七月に大阪労働局傘下の天満労働基準監督署に告発をしております。
 大阪地裁の方は、ことしの二月二十日になりまして、武富士の側が御木さんたちと和解したいと言ってきたわけであります。その和解書のコピーも私の手元にありますけれども、これを見ますと、被告武富士は、原告ら両名に対し、時間外手当等の未払いが発生したことにつき遺憾の意を表明する、こう書かれておりまして、サービス残業について認め、支払いに応じております。
 大阪労働局の調査はまだ続いているという話ですけれども、大阪、東京が合同でやっているそうですけれども、これは厚生労働省としても本当にきちっと調査をし、結論を厳正に出して、処罰をしていただきたいと思います。
 次に問題にしたいのは、従業員の債務保証という問題です。
 武富士も、社内で、貸し付けや回収の遵守事項というのを一応定めているわけです。ところが、その一方で、先ほど言ったように、社員に対して過剰なノルマを課しております。ですから、社員は、ノルマを達成するためにこの遵守事項を守れないという状況に追い込まれているわけであります。そうしますと、今度は、武富士の会社の側が、社内規則違反だ、こういうことを言いまして、社員に顧客の債務を肩がわりせよ、こう言ってくるわけです。
 これについても、この本の中で証言があります。例えば、自宅に集金に出向いて、本人が不在の場合、滞在時間は五分、これは社内で定められておりますが、現場では、家族を相手にして、三十分も一時間もおりまして帰らない。そうすると、これに違反をしたということになってしまう。あるいは、営業目標という名のノルマを達成させるために、支店長が指示して、客から人を紹介してもらって融資をするということがある。
 これについても証言がありまして、Cさんとしておきましょう。この方は、最初のころは三カ月に一人程度だった、しかし、だんだんふえていった。ところが、武富士は、一人から紹介してもらえるのは二人までと定めた業務規則がある、これに違反しているということで、この従業員Cさんに、その全貸付額、約四千八百万円の巨額の債務保証をさせたと。
 それで、Cさんはこう言っているわけです。
  好きで多数の紹介を受けるわけがない。会社から散々恐怖心を植えつけられていて、業績を上げなければどのような目に遭うか考えると、規則違反と思いつつ貸付を増やそうとするのである。おそらく武富士の社員は同じ心境だろう。
こう述べているわけです。中には数億円の債務保証をさせられた者もいる、こういうことであります。
 配付資料の十ページに債務保証のひな形が入っておりまして、これを書かせるわけであります。
 このCさんの場合、どういう状況で債務保証をさせられたかというのを、この本の中ではこういうふうに証言しているんです。
  二〇〇二年四月下旬の三日間、朝八時から夜九時まで本社十四階で監視付の状態で軟禁、外部との連絡を断たれた上で、テレビドラマで見る警察の取調べのような厳しい尋問を受けた。さらに、親や身元保証人に連絡しろ、刑事告訴をする、もう警察が来ているなどと様々な脅迫を受け、債務保証書を無理矢理書かされた。それによって、四千八百万円を回収できなければ私が払いますと武富士に約束したことになった。
こういうことなんですね。
 法務省にお聞きしますけれども、こういうやり方で本人の意思に反して無理やり債務保証をさせられるというのは、だれが見ても違法だと思うんですね。どのような法律に触れるのか、刑事局長、民事局長、それぞれの視点からお答えをいただきたい。
房村政府参考人 まず、私の方から、民事関係についてお答えいたします。
 具体的な事案については答弁は差し控えさせていただきますが、一般的な考え方として、例えば、例に挙げられたような、強制に基づいて保証契約が結ばれた、こういう場合には、その程度が強迫の程度に達していれば、民法九十六条一項に違反して、その保証契約を取り消すことが可能となります。
 また、強迫の程度がより強く、その従業員が完全に自由意思を失う、そういうような状況にまで至っておりますと、これは、取り消すまでもなく、当然に無効ということになります。
 また、考え方として、その保証契約の締結を要求した側が、いわば従業員に対する優越的地位を利用して保証契約の締結を強要し過酷な負担を強いたような場合、こういうような場合には、民法九十条に違反して、公序良俗に反するということで、無効になるということも考えられます。
 これは、いずれにいたしましても、具体的な状況によりますので、あくまで一般論ではございますが、以上のとおりでございます。
樋渡政府参考人 犯罪の成否は、捜査機関によって収集された証拠により認定された事実関係に基づき判断されるべき事柄でございますので、お尋ねのような事案につき、犯罪が成立するのか、また、いかなる犯罪が成立するのか、一概にお答えすることはできないと思いますが、あくまでも一般論として申し上げますれば、人を恐喝して財物を交付させ、または財産上不法の利益を得、もしくは他人にこれを得させた者には刑法二百四十九条の恐喝罪が成立し、また、生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した者には刑法二百二十三条一項の強要罪が成立する。さらに、恐喝罪及び強要罪のいずれにつきましても、その未遂を処罰する旨の規定があるものと承知しております。また、不法に人を逮捕し、または監禁した者には刑法二百二十条の逮捕罪または監禁罪が成立することを承知しております。
佐々木(憲)委員 これは、本人に無理やり債務保証をさせるという問題だけではないんです。従業員の家族を連帯保証人にするということがあるんです。皆さんのお手元にある十一ページの資料を見ていただきたいんですが、「連帯保証書記入のお願い」、こういうものまで送りつけまして、家族に連帯保証をさせる。驚くべき状況であります。
 竹中大臣にお聞きしますけれども、貸した相手の債務を従業員に払わせるように強制的に債務保証させるとか、あるいは家族に連帯保証人を要求する、こういうやり方は正常だと思いますか。
竹中国務大臣 先ほどの答弁と同じでございますけれども、個別の事例について申し上げる立場ではございませんけれども、一般論として申し上げれば、個別のそうした業者について、ないしは人に対して脅迫的な債権回収等の法令違反等に関する行為を行ったような場合、私は法律解釈そのものは専門家ではございませんけれども、これは常識的に考えて、強要してしかも債権債務関係を確立させるというようなことはあってはならないことであろうというふうに思います。
 繰り返しになりますが、個別の事例について申し上げる立場にはございませんが、お話を今伺った印象としては、そのようなものでございます。
佐々木(憲)委員 金融庁は、昨年十一月十二日からことしの三月三十一日まで、大変長い検査を行っております。一番最後のページを見ていただければ明らかなように、通常だと二週間から七十日程度の検査がありますが、今回、武富士に対する検査は百四十日間と大変長いんです、五カ月近くも行われておりまして、なぜこれだけ長い検査が行われているのか。今回の検査の中で私が指摘したような実態をつかんでいるのではないかというふうに推定をいたしますけれども、当然これはいろいろな形で表にも出てきているわけですが、こういう実態はしっかりつかんでいるのかどうか、お伺いしたいと思います。
佐藤政府参考人 先ほど御指摘いただきましたように、関東財務局が株式会社武富士に対しまして、昨年の十一月十二日から本年の三月三十一日まで立入検査を行っております。
 それで、日数が長いというような御指摘がございましたけれども、個別機関に対する検査にかかわることでございますので、具体的内容についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げますと、検査を実施する際には、検査を受ける金融機関についてのさまざまな情報を入手した上で、それを生かして立入検査での実態把握に努めているということでございます。
佐々木(憲)委員 竹中大臣にお聞きしますけれども、この武富士の過剰なノルマ、社員に対する異常な締めつけ体制、あるいは違法な貸し付け、回収、これは相互に関連しておりまして、ノルマが過剰なために違法なことが加速されているわけです。これを改めないと武富士の被害というのはなくならないと私は思うんですね。
 金融庁として、この社内の実態について厳正に調査して、是正の指導をすべきだと思いますけれども、大臣の決意をお聞きしたいと思います。
竹中国務大臣 我々としては、貸金業者に対しては、法令や事務ガイドラインに基づいて厳正な対応をしていく、その法令遵守を徹底していきたいというふうに考えます。
 今、検査局長から話がありましたように、今立入検査を終了したところでございますので、それぞれの対応については、今後しっかりと事務的に最善の努力をしていきたいというふうに思います。
佐々木(憲)委員 もう時間が参りまして、日銀総裁にお聞きをする予定でありましたが、まことに申しわけありません、時間がなくなってしまいました。
 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、当面の金融政策運営にかかわりまして、日本銀行福井総裁にお伺いをしていきたいと思います。
 まず、先月三月二十五日の臨時政策決定会合にかかわりましてですけれども、新日銀法施行後初めてこういう臨時政策決定会合を開かれたということでございますので、その背景、そしてまた意図、そして、今後どういう事態のときにこうした臨時会合という手法をとるのかという点について、まず簡単にお聞かせいただけますか。
福井参考人 お答え申し上げます。
 ちょうど私が着任いたしました三月二十日からイラクとの戦争が始まりました。定例会合は四月の上旬ということは承知しておりましたけれども、やはり期末を控えておりましたこともございまして、戦争が始まりますと金融市場が非常に神経質になった、ナーバスになったということが即座に認定できましたので、どうしても金融市場に及ぶ外からのショックに対してきちんとした対応が必要だ、四月上旬の予定された決定会合を待つわけにはいかない。
 日本経済の基盤がなお脆弱な上に、戦争からくる強いショックに対応するということになりますと、やはり危機防止の観点から当面講ずべき対応というのは当然見えてくるわけでございますので、その措置をとる必要がある。と同時に、その措置をとる場合には、その時点で見て、その先、やや長い目で見て、現在の金融緩和の枠組みをより強固なものにするということを議論するのは当然なことだ。この二つの点から、臨時会合を開いた次第でございます。
 たまたま政策委員会のメンバーのうち、総裁、副総裁二人、三人かわったということで、三分の一の構成メンバーが変わった後の日本銀行の政策姿勢、枠組みについて、余り長い間不透明なままおくということはどうかという問題もあわせて考慮したということはございます。
 したがいまして、今回の臨時会合というのはあくまで例外中の例外と位置づけておりまして、日本銀行の政策決定会合というのは、あらかじめ日にちを特定して、外に公表して金融政策を運営してきておりまして、透明性の観点から、この仕組みは非常に重要だと思っております。今後は、この原則をきちんと守っていきたい。
 今から想定し得るケースとして、臨時会合が想定できるというふうなことは一切念頭にございません。
植田委員 あくまで異例のことだということでございますので、どういうケースの場合ということはそもそも考えていない、そういう意味では重大な意味を持つ臨時政策決定会合であったというわけですが、そのとき出された文書を見ますと、例えば三月五日の、これは今の福井総裁就任前ですけれども、三月五日の決定会合のときの文言とやや微妙に違っているところがあるわけなんです。
 というのは、三月五日にせよその前の二月十四日にせよ、大体文言が一緒で、「金融市場調節を行う。」と言った後、後段は「なお、当面、年度末に向けて金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」これは二月十四日も三月五日も同様です。三月二十五日ですから、年度末と言うにはちょっと、もうほとんど年度末ぎりぎりなんですけれども、今回の二十五日のペーパーでは「なお、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」というふうにあるわけです。
 何も変哲もないようなんですけれども、微妙に言い回しが違うなということがちょっと気になったのでお伺いするわけですけれども、実際、例えば、補完貸付制度にかかわっても、「当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とする」等々、これらの決定は恐らく、冒頭の質問でお答えいただきましたように、イラク戦争における帰趨がどうなるかわからない、そこの中で金融機関の資金繰り等々が支障出ぬようにという配慮だというふうなことはわかります。
 それは、そういうお考えなんだろうなとわかりますけれども、特に、今回、二十五日のペーパー、「当面の金融政策運営について」の決定内容の、文言としてはわずか七行です。この五行目以下の部分を見ますと、確かに、それは、その趣旨はわかるけれども、実際、場合によっては青天井に資金供給を行うこともあり得るよというふうに読めなくはないでしょうか。その点についてはどうでしょうか。
福井参考人 なお書きはなるべく限定的な文言で書くべきであるという大原則があるというふうに思います。
 三月二十五日の時点で、そこを非常に限定的に書きますと、やはり期末対応ということを中心に書くことになろうかと思うのでありますが、その時点で既に戦争が始まっていたということを考えますと、期末が終わってしまえば、戦争に対する対応という部分が文章的に非常に空白になってしまう。したがって、機動的な対応ができないということを心配いたしまして、御指摘のような文言にいたしました。ただし、これが無期限のなお書きということではなくて、日本銀行の政策決定会合の運営の基本方針としては、政策運営方針は、今回決めても次回の政策決定会合までという決まりでございます。
 したがいまして、文章はいつもの期末対応の表現よりは幅の広いものになっておりますけれども、期間限定は次の政策決定会合まで。そこできちんと判断いたしまして、文言に書かれたような国際政治情勢などの不確実性が著しく減っているということになれば、そのなお書きは全くもとに戻ってしまう、そういう方針でございます。
植田委員 今の御答弁自体は明快なんですけれども、私も、だから今質問のところで、いずれにしてもイラク戦争の帰趨を気にしてこういう書きっぷりになったんだということは理解しつつも、ただ、今後青天井にならないだろうかという一抹の不安があるのは、それならばそのことをもっと限定的に書き込むべきじゃないか。「国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、」というふうな文言ですと、この十年の間でどこの政策決定会合でこの文言を使っても、それはそれで、国際政治情勢を含めて不確実性の高い状況はおおむね常に続いておるわけでして、ややイラク問題にかかわってそこを照射したのであれば、この文言は必ずしも適切と言えたかどうか、私はちょっとそこは疑問に思えるんですけれども、いかがでしょうか。
福井参考人 大変難しいことでございまして、私どもとしては、意識としては、イラク戦争を中心に日本経済に及んでくるショックということでございます。
 したがいまして、表現上もっと限定的な工夫の余地がなかったかどうかと言われますと、もしかしたらあったかもしれないというふうに思いますが、ショックというのは、非常にさまざまな形で増幅されて、あるいは反響が反響を呼んで及んでくるということもございます。いろいろなところに飛び火をして、ワンクッション、ツークッションを経て及んでくるということも考えられますので、とりあえずのところはやや広い意味合いの表現文体というふうになっておりますが、中心はあくまでイラク戦争発ということでございます。
 こういった文言は、今後、政策決定会合を経る都度、状況を判断して、必要に応じて修正していきたいというふうに思っています。
植田委員 今のところは文言の趣旨を改めて確認をさせていただいたということでございますが、この二十五日の政策決定会合で、「今後、金融政策運営の基本的な枠組みについてさらに検討を進める」ということも書き込まれています。「基本的な枠組み」とおっしゃる以上、例えば従来の長期国債の買い入れを増額するという、その種の延長線上の施策にとどまらず、いわば伝統的な手法にこだわらない、そういう大胆な施策もこの基本的枠組みという部分には含まれるというふうに理解していいんでしょうか。
福井参考人 この金融政策の基本的な枠組みという表現も、今のような御質問を受けてみますと、少し大きく構え過ぎた表現というふうな印象になっているのかなというふうな気もいたします。
 しかし、実際考えましたところは、イラクの問題を端緒といたしまして、日本経済の基盤がなお脆弱だということをやはりベースに考えよう。そういうふうに考えますと、単にイラクの戦争に対応するというだけではなくて、今後、将来にわたって日本銀行がとっていきます金融政策の効果をより強く浸透させていこう、当然そういう発想になるわけであります。その場合に必要なことをすべて総点検しようということでございます。
 さはさりながら、大事なポイントは、透明性の向上、もう一つは政策の波及過程をさらに強力なものにする、この二点がポイントだというふうに意識して全体を見直そうということでございますので、少し表現は大枠に過ぎたかもしれませんが、その中で、もし絞ればその二点というふうなことでございます。
植田委員 それもよくわかります。というのは、この「本日の金融政策決定会合について」というペーパーが、三点目のところを今聞いたわけですが、四点目に、まさに今総裁がおっしゃった「金融政策の透明性向上」、「金融緩和の波及メカニズム強化に関する論点」ということを、次回の定例金融政策決定会合においてその論点を報告するように執行部に指示をされたというふうなことがあるわけでございますので。
 では、この論点整理、いつごろをめどに公表していただけるのかという点。それと、「金融政策の透明性向上」というのは、いわゆる非伝統的な施策についても、要するにタブーを設けず、当面考えられる施策もしくはこの間提起されているさまざまな問題提起がありますね、いろいろな施策、そうしたものも、それを採用するしないは別にしても、総合的に検討を求めているというふうに理解していいでしょうか。
福井参考人 詳しいことは政策決定会合が行われました都度、そしてその後、しばらく期間を置いて議事要旨というものが公表されます。その議事要旨の中に逐次内容をごらんいただけるというふうに思いますけれども、例えば五月二十三日には前回の議事録の要旨の公表がございます。
 先般の決定会合では、執行部から金融政策の透明性向上をめぐる論点というのは既に示されております。それから、金融緩和の波及メカニズムの強化の観点から、調節手段に関する視点というものも提示されております。さらに、その視点の上に立って、具体策として、資産担保証券市場を通ずる企業金融活性化策についても報告があったわけであります。
 そうした論点視点、あるいは報告に基づいた議論の展開というふうなものは、来月、五月二十三日公表の議事要旨の中で大要は御理解いただけるように公表するというふうな方針になっています。
 なお、大きな物の考え方でございますけれども、透明性確保、向上という点につきましては、いわゆるインフレーションターゲティングというふうに初めから焦点を絞らないで、もっと幅広い観点から議論しようというふうになっております。
 それから、金融調節手段につきましては、日本銀行が、財務の健全性を害しない限り、従来よりもより大きなリスクをとるということになっても、効果が上がるようであればそれは実行していきたいというふうな方向で議論が行われているということでございます。
植田委員 大体話はわかりました。
 五月の半ばからその後ぐらいでですかね。ですから、あくまでこの論点整理というのは論点整理であって、そこで例えばインフレターゲティングが項目であろうがなかろうが、あくまでそれは論点整理であって、それが適切であるか、施策としてどうかということはそれから検討する、その検討課題を列挙するのが論点整理ですね。だから、それが、四月七日に指示して、我々が目にできるのが一月以上かかるというのは、ちょっと面妖にも思えるんですけれども、そこはちょっと、ほかにも聞きたいことがあるので、そんなに問いません。
 そこでもう一点、この二十五日の政策委員会で、いわゆる金融機関の保有株の買い入れ限度を二兆から三兆にするというのがありましたけれども、この間、日銀が説明してきたのは、二兆円という枠はあるけれどもまだ一兆円程度余っているじゃないか、だからそれをふやすというのはまだ時期尚早だ、必要性は薄いと説明をされていたというふうに私は理解しています。その理解が間違っているのであればそれを御指摘いただければいいですが、そのことと今回の措置というのは明らかに違うわけですから、その点について。
 それと、実際そうなれば、少なくともティア1を超える六兆円分で、日銀二兆、株式保有機構は二兆、市場で二兆という、大体そんな目安だったと思いますけれども、その目安を日銀としては、ちょっとこれはつらいなということで変えはったということなのかという点が二点。
 それと、そうなると当然出てくるのが、実際、スキーム等はできたけれども余り使われていない保有株式取得機構は一体何のためにあるんだという疑問を私は持つわけですが、その点、いかにお考えかという、基本的にその三点について、簡単で結構です、御説明いただいた上で、その都度その都度日銀法四十三条のただし書きを使うというのは、私はこれも好ましくないと思っているんです。
 例えば、今冒頭で聞いた臨時政策決定会合についても、あくまで異例とおっしゃった。この四十三条も、これは本当にめったにない話でなきゃならないんだけれども、いや、それは認可を受ければできるんですと言いますけれども、実際、それは今のところ、塩川財務大臣が判こを持って、あれやれ、これやれと、持ってきたらいつでも押したるでと待っているのかもしれへんけれども、四十三条のただし書きを使うというのは、これは伝家の宝刀やろうと思うんですよ。だから、これを乱用すると何でもやれるということになってしまいます。それは本来の日銀の役割から乖離していくということにはなりかねないか、その点。
 四十三条のただし書き、この臨時政策決定会合でおっしゃったような総裁答弁と同じ答弁が返ってくるものと思いますが、三点の細かい質問をお答えいただいた上で、その最後の四十三条にかかわる点をお願いできますか。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
武藤参考人 私どもの方からお答えをさせていただきます。
 まず第一点目の、二兆円の購入枠を三兆円に引き上げた理由でございますけれども、米国等によるイラク武力行使の開始、あるいはこれらに伴います株価変動の一段の増大の可能性というものを踏まえまして、金融システムの安定を確保する観点から、金融機関に対しまして株価変動リスクの早期軽減に向けた努力をさらに促す必要があるだろうという判断のもとで増枠をしたわけでございます。
 そうなりますと、政府の方にあります株式取得機構との関係いかんということになるわけでございますけれども、御承知のとおり、株式取得機構の利用が今までのところ少額にとどまっているということは私ども理解をしております。私どもとしては、強いて聞かれれば、同機構の機能の改善が図られて利用が促進されることを期待するわけでございますけれども、現在、政府あるいは与党の中でいろいろ御議論があるようでございますけれども、直ちに結論が出るという状況ではないというふうに認識しております。
 一方、今申し上げたような次第で、イラク戦争の開始など、この情勢判断からいたしますと、日本銀行としては機動的に対応する必要があるだろうというふうに考えたわけでございます。そういうことで、さきに申し上げました、株価変動リスク軽減に向けた努力を金融機関にさらに促すということを目的に決断をしたわけでございます。
 株式取得機構の機能改善ということにつきましては、ぜひとも、そういうことができればそれで結構だと思いますけれども、私どもとしては、それはそれといたしまして、緊急な対応が必要であるというふうに判断をした次第でございます。
福井参考人 御指摘のとおり、日銀法の財務大臣の認可を受けて、いわば例外業務としてやらせていただいているということでございます。
 これは、今武藤副総裁からも答弁いたしましたけれども、昨年の秋の時点でこの措置を初めて導入しましたときは、それ以降のマーケットの状況というのは必ずしも明確には読み取れなかった。しかし、委員御承知のとおり、イラクとの戦争が始まる直前からごく最近までのところを見ておりますと、本当に株式市場で買い手として出ているのは日本銀行と、あとは自社株購入、発行した会社がみずから買い取っている、これが非常に大きな買い手としての存在になっているというふうなマーケットでございます。
 そういう状況で、イラクとの戦争が始まって追加的なショックが及んでくるというふうな場合に、金融システムの安定を守るという観点からは、もう一段、日本銀行が身を挺してでもそのショックを吸収する必要がある、こういう判断に至ったということでございまして、政府の要請を受けて判断を下したというよりは、危機に臨んでの主体的な判断ということでございます。
 したがいまして、日本銀行がみずから財務大臣にリクエストをして認可を申請したということでございます。しかし、枠組みとしてはあくまでこれは例外業務ということでありますので、今後ともこれを多用する、乱用するという気持ちは一切ございません。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
植田委員 伺っておりますと、まくら言葉でイラク、イラクという話が出てくるわけでございますけれども。
 では、もう一度、しつこいようですけれども伺います。当然、四十三条も例外規定ですので乱用はしないとおっしゃいますけれども、ここのところ、例外が気にかかるわけですが、では今度、こういう聞き方で、もう一度そこのところを伺いたいんです。
 というのは、実際、デフレ不安が海外を含めて高まる中で、確かにそれは、デフレ時における中央銀行としてのいわば非伝統的な手段にかかわってさまざまな議論がある。それは私も十分理解していますし、恐らくそれは日銀の中でもいろいろと深められているだろうというふうに思います。確かに、その意味でのこうしたデフレ状況における柔軟な発想は当然求められるだろう、それは私も否定しません。
 そこで、では実際に、今、イラク問題、イラク問題とおっしゃいましたけれども、これは生き物を相手にしているわけですから、こういう一般論としてという言い方で聞くとむしろ答えづらいのかもしれませんけれども、いかなる条件のときに、いわゆる非伝統的政策と呼ばれるものに中央銀行として踏み込み得るのか、いかなる段階に立ち至れば通常の政策に戻るのか、言ってみれば、その端境といいますか、最後の一線をどこに引くのか。ここは、その時々の事態に応じて対応しますという話にはならないと思うんですね。そこはやはり一線というものはあるだろうと思います。僕は、四十三条というのもその一線だろうと思うんです。
 だから、そういう意味で、もう一度、そこの中央銀行としてのいわばルビコンを渡るか渡らないかというものは、基本的にどういう認識で臨んでおられるのかということを改めてお聞かせいただけますか。
福井参考人 イラクの問題を少し強調して申し上げましたのは、そういう強い外からのショックに対して臨時的に対応するケースがあるからということでございます。それは、今回の措置に関して言えば、追加的な流動性の供給と銀行保有株式の購入、この二つの措置でございます。これはタイミングが非常に重要だという意味で、イラクを強調させていただきました。
 しかし、金融政策一般という話に戻りますと、今後の経済の実態的な姿、それから海外の環境の変化の中で、日本銀行の行います金融緩和政策がより強く末端まで浸透するという原点に立ち返った政策の組み立て方の話になります。非常に多量の流動性を供給しても末梢神経のところまで流動性が行き渡らないという場合に、これをどういうふうに解きほぐすかという、ショックとは関係のない、通常の金融政策の運営効果を上げるという問題でございます。
 しかしながら、そうした資金のパイプの目詰まりの度合いがひどい場合には、伝統的に中央銀行が行うであろう行動の範囲を超えて、日本銀行がより高いリスクをとって踏み込まなければその目的が実現できないケースがあるし、現に、我々は相当程度そういう状況に直面しているのではないか、こういうことでございます。したがいまして、そのときの判断基準は、我々が新しく取り上げる政策手段がどの程度、目的とする金融のパイプの目詰まりを是正することができるかということが第一の判断です。
 第二は、例えばマーケットで利用されているいろいろな金融の手段を金融政策の対象として使うということになりますと、日本銀行が市場に手を出していくということになりますので、市場の機能をかえって日本銀行の行動で害しないか。むしろ、逆に市場のよりよき発展のためにプラスになるようなことになるかどうか、あるいは中立であるか、この辺の判断が二番目に非常に重要だ。
 最後に、より大きなリスクをとるということであれば、我々は限られた自己資本しか持っていない銀行でございますので、自己資本の厚みから見て過大なリスクをとり過ぎないか。
 この三つの判断でふるいにかけて順次取り上げていくということでございまして、この三つの判断基準を飛び越えて日本銀行が思い切った行動をとろうと思っても、それはできないということになろうと思います。
植田委員 その三点が、言ってみれば、いわば日常と非日常の端境だということでございますね。わかりました。
 本当だったら聞きたいことがぎょうさんあったのです。実は、資産担保証券の買い入れにかかわって、今の話を承った上で各論、とりわけ今おっしゃった三点も念頭に置きながらお伺いしたかったのですけれども、質疑時間、あと二、三分ですので、いずれまた聞く機会が連休明けでもあるかと思いますので、資産担保証券の買い入れにかかわる質問は、きょうのお話なんかをもう一度議事録を見させていただいてお伺いしたいというふうに思っております。
 とりわけ、今最後に御答弁いただいたところは、やはり日本銀行としての矜持をそこで示していただきたいと私も思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 ちょっと一、二分余りましたけれども、あと三十分ぐらいかかる質疑なので、終わります。
小坂委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 皆さん、本当に暑い中、長時間、御苦労さまでございます。
 それから、日銀の福井総裁には、私はきょうはもう質問はございませんので、もしお疲れであれば御退席いただいても結構でございます。ありがとうございます。
 では、お残りの皆さんで、私もなるべくいい答弁を得て早く審議が終わるように頑張りたいと思います。きょうは、ぜひとも私は皆さんのお知恵を拝借したい。特に与党の皆さん、たくさん残ってくださいましたので、ありがたいので、皆さんの知恵袋をぜひとも拝借したい。野党もいるのですけれどもちょっと少ないから、与党の皆さんでお願いいたします。
 私は、きょう実は、この委員会に先ほどまでずっと出られませんでしたのは、食品衛生法といいまして、さまざまな食品の安全性、特にこれからの季節ですと、サルモネラ菌中毒とかブドウ球菌中毒とかあるいはO157とか、そういう食べ物の安全性をめぐる審議の方で厚生労働委員会におりましたので、ちょっと席を外しておりましたが、皆さんにも少し景色が変わっていいテーマかと思いますので、その関連のことで、そして、なおかつ財務金融委員会にかかわることから御質疑申し上げようと思います。
 一九九五年に製造物責任法、世で言うPL法というのができまして、製造物に異物が混入したり細菌がくっついたりさまざました場合に、消費者保護の観点から製造者の方にきちんとした責任を負わせようとそれなりに一歩進歩した法律で、しかしながら、その法律をまともにきっちり運用すると、なかなか生産者もリスクが高うございますので、自分のところでつくっていて思わぬことで思わぬものが混入したりして、特に中小製造者に対してリスクも同時に伴うので、これに伴ってPL保険というものができてまいりました。一種の責任保険でございます。
 これはこれでまた金融庁の管轄で、前向きなのですが、一つ皆さんに御紹介したい事案は、九九年の四月に熊本県で、女の子が乾燥焼きイカを買って食べたところ、それにサルモネラ菌がついておりまして、食中毒が原因で左足のつけ根が壊死といって腐ってくる障害を負いました。当然ながら、この女の子は後ずっと歩行が跛行、差別ですが、世ではびっこと言っていますが、跛行になりまして、このお嬢ちゃんに対して二千九十万円の示談というか補償がおりることになりました。
 当然ながら、この菓子製造業者はPL保険に入っていたのですけれども、倒産してしまったのですね。小さな製造業者、特に食べ物の製造業者等々は小規模でございますので、一度食中毒とか問題を起こすと即破産に結びつく。PL保険に入っていても、業者が破産すると、被害者であるお嬢ちゃんに払われるお金は払われずに、今度は破産法の適用を受けて、PL保険から払われるお金も全部破産法の網がかぶってしまいまして、このお嬢ちゃんは請求権もないという状態になっております。
 それを問題として、お嬢ちゃんの両親が裁判に訴えましたけれども、それでも、破産の場合は、例えば不動産の抵当権とか勤労者への給与が先ですので、そのような処遇をされると被害者救済には回らない。そもそも、PL保険が製造物の何らかの問題によって起こった消費者への負担をカバーするといううたいなのですが、現実には補償されないという事態が起こりました。
 実は、医賠責というのは御存じでしょうか、医師の損害賠償保険。今、医療も医療ミスがしょっちゅうで、申しわけないですけれども。そのときに、医師も保険に入っているのですけれども、これがまた医師が倒産したり死亡したりすると、医賠責も払われない事態も生じてきます。すべての責任保険の中では起こり得る事態なのですが。
 そこで、まず法務省にお伺いいたしますが、今回の事件から教訓にできることは、被害者保護、被害者保護といいましても、実際に法の体系が必ずしもそれに沿っていないことも、現在このようなリスクの高い社会では生じておる。もし、このお嬢ちゃんたちに対して、あるいは医療被害者に対して、破産処理の際に被害者の直接請求権を認めるようなことを考えるとさまざまな法改正が必要となってくると思うのですが、こういう現実を見て、法務省としては、まず、きょう参考人で来ていただきましたが、どのようなお考えがおありか、お教えいただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、責任保険に加入していた場合であっても、保険会社から支払われるのは、被保険者にまず支払われますので、破産等があった場合には、一般的に言いますと、それは一般債権者の引き当てになりまして、特に被害者の方に優先的に支払われるという仕組みにはなっておりません。
 ただ、これは、保険契約の内容いかんによるわけでありまして、例えば、責任保険の保険約款で、被害者の方に直接請求を認めるというような内容をしておれば、これは、契約自由の原則によりまして、被害者の方が直接請求権を持つ。その場合は、その請求権は破産財団の制約を受けませんので、被害者の方が直接その保険会社に請求する道も開けるということにはなります。
 ただ、これは、責任保険一般についてはそういう考え方はとられておりませんので、個別にそのような保険約款を採用するか、あるいは、特に特別法で手当てをするというようなことが必要になろうかと思います。
阿部委員 ありがとうございます。
 自動車については、自賠責保険は直接請求権を持っておって、けがないしは死亡した場合に直接その被害者が請求するということができますが、今の法務省のお答えでも、一般的にはそういう組み込まれたものがない。
 例えば、これも金融庁の直の管轄ではないので恐縮なのですが、先ほど法務省がお答えくださったように、約款の中に、例えばPL保険においても、被害者保護を明確に定めるような直接請求権、ないしは、こうした場合は被害者が直接請求できるんだよというふうなことをうたうということも可能であり、なおかつ、あえて言えば、必要となってくる時代でもあるかなと思うんです。
 なぜならば、先ほども申しましたけれども、この間、企業倒産は非常に多うございまして、それも、中小の製造業というのは、御承知おきのように、一つのミスなり一つの予測せざる事態が起きたときに、もろにそれを振りかぶって倒産していくということがかなり多うございますので、現在の法体系ではそうはなっていないけれども、やがて、どこかで被害者保護の精神をこの社会の中にビルドインしていかないといけない事態かなと思います。
 このPL保険を管轄しておられる金融庁として、もちろん、金融庁が保険商品について、あなたたち、それを約款に入れなさいとか言うことはできないのは承知しておるのですけれども、世の中の流れの変遷の中で、保険を監督する金融庁として、また、こういう事態の多発をごらんになって、皆さんもこれも御記憶にあるかもしれませんが、九州の方のからしレンコンという事件もございまして、これは、食べた人が亡くなってしまいまして、当然、業者もつぶれてしまって、死亡しても何も救済もないという事例もございます。
 竹中大臣には、先ほど申しましたように、業者に命令せよとかいう意味ではなくて、でも、提示を受けて、金融庁として何らかお考えのところがあれば、御意見をちょうだいしたいと思います。
竹中国務大臣 阿部委員からの御質問に関連しまして、私も、そうしたことを報じている新聞報道等を少し勉強させていただきました。
 確かに、直接請求すれば、その御紹介くださった女の子の場合等々、随分状況は違う。しかし、現状では、他の債権者とこれが同列に扱われるというふうに聞いております。
 金融庁は、保険の新しい商品に対して許認可するという立場にありますけれども、基本的には、我々としては、そういう申し出が業界からあれば認可はできるというふうに思っております。
 ただし、我々が保険会社から聞いているところでは、例えば直接請求等々に関しては、保険金額を上回る損害が発生した場合の保険金の支払い方法、つまり、被害者への分配方法はどうなるのか、多くの被害者との示談をする体制及び費用、さらには破産法上の法的な整理、一般債権者に対抗できるか否か、そういった種々の検討課題があって、現時点では商品化するに至っていないというふうに聞いております。
 繰り返しますが、金融商品の認可という観点からは、我々はそういう心づもりはございますので、これは業界でさらに努力をしていただく、さらには必要な法整備を行っていただくという中で、ぜひ、いろいろな制度そのものが前進していけばよいというふうに思っております。
阿部委員 社会の需要に応じて、そういう新たな保険も商品化されるようなことも同時に望みますし、また、知恵の府であります立法府においても、何か可能なことがあるか否か。きょうは私も、これが答えというものを実は定かには持っておらないのですけれども、でも、問題が余りにも多発しており、先ほど申しました医賠責、医療ミスの問題も折があれば取り上げさせていただきたいと思いますが、非常に深刻になってきておりますので、ぜひとも皆さんの心にとどめていただいて、また、これからの何らかの方策に結びつけていただきたいと思います。
 では、この件は終わりにいたしまして、あと少し、本来のことで伺わせていただきますが、三月期決算についてでございます。
 省庁の方から確定した数字は出ておりませんが、新聞報道によりますと、UFJ、三菱東京、りそなの三銀行は三年連続で最終赤字、みずほと三井住友も二期連続の赤字で、大手十二行のうち、七グループの赤字集計三兆六千億円、逆に、黒は五グループということになっておりまして、大変に不良な成績だと思いますが、金融庁、監督官庁のトップとしての竹中大臣の御所見をまず伺いたいです。
 それで、これ、もしどなたかが聞かれていたらごめんなさい。席を外していたので。聞かれている場合は、簡単な御答弁で結構でございます。
竹中国務大臣 詳細についての御質問はこれまでございませんでしたので、お答えさせていただきたいんですが、実は、御承知のように、今まだ決算の数字を確定しているところでございますので、私からコメントできることは実はほとんどないというのが現状でございます。
 主要行の十五年三月期決算につきましては、本年に入りまして、すべての銀行等が業績の予想修正を発表しておりまして、発表によれば、これらの銀行等は、与信関係費用の増加でありますとか、株式等の償却・売却損が増加した、また、そうした結果、経常の利益、当期利益ともに赤字になると予想しているというふうに承知をしております。
 繰り返しになりますが、しかし、今各行において決算の取りまとめを行っているところでありまして、現時点では確たることは申し上げられないという状況でございます。
阿部委員 わかりました。
 それと、引き続きまして、この大手十二行を対象に、三月末までの間に特別検査を再実施なさったかと思うのです。その結果はいつごろ公表されるのでありましょうか。
伊藤副大臣 特別検査についてでありますが、現在作業中でございますので、検査終了後、速やかに、その結果をとりまとめて、集計ベースで公表させていただきたいというふうに考えています。
 なお、その具体的な公表方法につきましては、対象の債務者やあるいは対象金融機関を風評リスクにさらすことのないように留意しつつ、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
阿部委員 確定的なものも出ておりませず、また、風評リスク等もあるということは今の御説明で承知しておりますが、大まかな見通しをしただけでも、この三月期決算を予測いたしますと、不良債権についても、昨年より六兆円ほどは減少させたでしょうが、二十兆円を超すものになるかもしれないと。
 いつも竹中金融大臣がおっしゃる金融再生プログラムでは、平成十六年度中には半分以下に低下させるという目標ですから、そうすると、これから十兆低下させていかなくちゃならないということで、現実性のある見通しなのか否かというところも含めて、大臣の御所見を伺います。
竹中国務大臣 不良債権の額がどのようになっていくのか、これも決算の過程でありますので、どのような形になるのかということを我々も注目して今作業を見守っているところでございます。
 今回、新たにDCF等々を導入するということで、その基準が少し変わる分、不良債権が増加するという要因も特殊要因としてはあろうかと思います。そうした点も踏まえて、実は決算が確定した段階で、我々としては、不良債権比率を半分に目指すということについてのシナリオをより明確に把握していきたいというふうに考えているところでございます。
 さらに、その中で考慮するべき要因としましては、産業再生機構ができましたですけれども、要管理先の中の債権が産業再生機構で健全化していく、そのようなプロセスも実は不良債権比率の低下のためには大変重要だというふうに思っておりまして、そうしたことを、決算の結果を踏まえ、さらには産業再生機構の稼働も見据えながら、その道筋を明確にしつつ、ぜひともその目標を達成したいというふうに考えております。
阿部委員 ただいま挙げられましたあれこれのもの、例えば産業再生機構にしても、これまでいろいろな方策も打たれてきたものとは思いますが、さはさりながら、結果として見た場合に、これまでの改革プログラムなるものは全般で評価するとまずまずうまくいっているのか、いやちょっとなのか、大変だめなのか、一言で、ABCでお答えを最後にいただいて、終わらせていただきます。
竹中国務大臣 御承知のように、四月四日の金曜日で、工程表に書かれているすべてのプログラムが出そろったところでございます。一部まだ金融審で検討しているものもございますけれども、我々としては、これが軌道にようやく乗ったというふうに思っております。
 ABCというのは結果でございますから、いい結果を出すための条件が整ったところだと思っておりますので、結果を出すように我々も努力しますし、金融機関にも努力をしていただきたいと思っております。
阿部委員 七千円割れ株価になりますと極めて危機的になってまいりますので、よろしくお願いいたします。
 終わらせていただきます。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時十二分散会


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