衆議院

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第7号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午後一時三分開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 鈴木 俊一君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 中塚 一宏君

   理事 長妻  昭君 理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    熊代 昭彦君

      小泉 龍司君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西田  猛君

      林田  彪君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    宮下 一郎君

      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君

      楠田 大蔵君    小泉 俊明君

      鈴木 克昌君    武正 公一君

      津村 啓介君    永田 寿康君

      藤井 裕久君    馬淵 澄夫君

      松原  仁君    村越 祐民君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   財務副大臣        山本 有二君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    五味 廣文君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    大武健一郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    渡辺 博史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田 一政君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  木村 隆秀君     古川 禎久君

  仙谷 由人君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     木村 隆秀君

  楠田 大蔵君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁岩田一政君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君、財務省理財局長牧野治郎君、財務省国際局長渡辺博史君、金融庁検査局長佐藤隆文君、金融庁監督局長五味廣文君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺芳樹君、社会保険庁次長小林和弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 おととい、年金問題をテーマにした某民放テレビ局の特別番組の収録がございまして、与野党ともたくさんの、合計十人の議員が出ていたわけですが、そこで与党側の議員さんが、一斉に、口々に、これからは年金保険料は年金の給付以外に一切使わせないようにしたんだということを、手柄話をされておりました。私はおとなしいものですから、なかなか口を挟む間がなかったんですけれども、これはうそだな、こう思うので、こういう宣伝をされるなら改めて取り上げなきゃいけないなということで、先日から問題になっております年金保険料の流用の問題について最初にお聞かせをいただきたいと思います。

 最初に、社会保険庁の方にお伺いをいたしたいと思うんですが、社会保険庁の、社会保険庁長官以下幹部いらっしゃるんですが、その幹部の交際費とか、あるいはハイヤーを使われると思うんですが、そうしたものはこの年金保険料の中から支払われているんですかいないんですか、端的にお答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘の点につきまして、交際費につきましては、ほかの社会保険事業、年金事務の執行に必要な経費というものと合わせまして計上されておりまして、現在、平成十年度から、財政構造改革法を受けた特例措置ということで年金保険料が充当される、こういうことになっております。(五十嵐委員「あとは答えていないじゃないですか。全部答えなさい。車は」と呼ぶ)

 今御指摘のハイヤー代につきましては、この年金事務費というところでの計上はされておりません。(発言する者あり)公用車の維持管理費でございますとか、あと職員宿舎の整備費、こういった経費につきましては、今申し上げましたように、交際費と同様に年金事務の執行に必要な経費としての計上がされております。

五十嵐委員 それから、報道等によりますと、例えば借り上げのマンションとか職員宿舎についてもかなり豪華だということが言われているんですね。その交際費をこれから出すというのはどうも解せないんですね。

 私、昔、実は新聞記者、通信社の記者でございまして、農林省の、農水省の大臣官房に予算課があるんです、予算課で私が予算課長に取材をしていたところ、その当時、その後自民党の参議院議員になられて、その前に事務次官になられた方が予算課長だったんですが、そこに、財務省、その当時の大蔵省の主計局から電話がかかってきて、そろそろ今週あたり飲みたいよ、連れていってというのがありました。これは昔の話ですから、今はないとは思うんですが。

 つまり、農水省には特別会計がいろいろあります。かつては、そのころはもう危なかったんですが、かつては国有林野事業の勘定なんか非常に潤沢だったですね。ですから、いろいろな省庁にかかっている、立派な油絵があると思うんですが、昔、あれはかなり林野庁の特会で買ってそれぞれかけていたりしていたんです。そういうことがあるので、官官接待というのはこういうところを使うんだなというふうに思った次第なんですが。

 今でもこういうふうに幹部の交際費がこういう特別会計の方から出されるというのは、これはおかしな話ですし、先日財務大臣にお伺いしたときは、これは民間の保険会社でも保険料の中からいろいろ経費が出ているじゃないですか、当たり前なんですよと言って、そうだそうだという与党の皆さんの声が上がりましたけれども、それはどうもおかしいと私は思うんですね。なぜなら、民間の保険というのは、主に預かった保険料を非常にうまく運用して、その運用益に期待して皆さん保険会社を選んで出しているわけで、それはその収益の中からいろいろなことに経費として使われるというのは当たり前なんですよ。

 だけれども、強制保険でしょう。いわば税と等しい関係にある社会保険税的な強制保険である年金保険料を、これを直接年金保険の事務とは関係ない自分たちの交際費等、この間フリンジ的だと私は言いましたけれども、そういう部分について適用するというのは、民間会社と一緒にするとはどうも筋が違うじゃないですか。これはおかしい理屈だと思うんですよ。民間会社でも保険料をいろいろな経費に使っているんだからこちらだっていいじゃないか、それだったら、もともと国民年金法の本法というのはおかしな法律だったということにもなるわけですね。

 もう一度財務大臣に伺いますけれども、そういう解釈で押し通そうというんですか、それとも、ここまで言われるとおかしいから、やはり直さなきゃいかぬのかなと思うのか、お伺いをしたいと思います。

谷垣国務大臣 結局、年金事業費から支出をお願いしておりますというのは、あくまで、これは本則ではありません、本則は国民年金法等において国家で賄うということにされておりますから、それで、財政再建上、年金から出していただくのをお願いすると。

 その考え方の背景には、ちょっと委員は御批判がございましたけれども、年金の運用していく費用は年金から出すという考え方もあり得るのだから、暫定的と申しては何ですが、特例としてお願いをしていこう、こういうことで厚生労働大臣と御相談をして、こういう形でことしはお願いをしているということであります。

五十嵐委員 要するに、平たく言うと、余り胸を張って言える話じゃないから、お願いして、国が財政が苦しいから、少しは特別会計の方で持っていただけませんかという話なんでしょう。

 そうすると、ここまで批判が出てきたら、胸張って民間会社でもやっているんだからいいでしょうと言うんではなくて、国民から、我々が出した保険料を本法から外れて流用するんであれば、それは極めて限定的にやってほしいという話が出てきて当然であり、それは財務大臣も一定程度認められていると思うんですね。

 先ほど言いましたように、与党の皆さんも、これからは保険料は保険給付以外に使わせないんだということをあれだけテレビの前でおっしゃっているんだったら、これはもう少し踏み込んで、大臣の方から、いや、十六年度は法律出しちゃって、これはあれかもしれませんけれども、凍結しますとか十七年度以降はこれはやめますというような前向きのお話があっていいんじゃないですか。もう一回御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 十六年度はこういう形で整理をしまして、厚生労働大臣と御相談をして、こういう形にさせていただいた。現状では、私は、こういうやり方でやるしかないと思っております。

 そこで、来年どうするかという御趣旨も今ございましたけれども、今度お願いしておるものは一年限りでございますから、来年度はまたいろいろな事情を見ながら、厚生労働大臣とよく御相談をする必要があると思っております。

五十嵐委員 いや、来年はもっと苦しくなりますから、苦しくなったらまたやらせてくださいという話になるんじゃ何にもならないんです。

 与党の中でもこういう議論はなかったんですか。与党は、私も新聞記者でしたからわかっていますけれども、政調審議会、政調、それから総務会と経なければ法案というのは認められないということになっているわけでしょう。その過程の中でこういう議論は出なかったんですか。出たんでしょう。出てどういうふうにお答えになったんですか。ある程度のお約束をされているんじゃないですか。今と同じような言い方で切り抜けられたんですか。そうすれば、相当甘い審議だったなと思うんですが。

谷垣国務大臣 自民党の福祉ワーキンググループで作業をされて報告を出されておりますが、それを拝見しますと、保険料を財源として行われてきた事業を徹底的に見直すためにそういうワーキンググループをつくったと。主要課題とされていた福祉施設については、整備に保険料財源を投入しないといった厳しい見直しが指摘されたというふうに承知をしておりますが、社会保険事務費については、その報告書を拝見しても、「今後の財源については、国の財政や社会保障予算の状況等を踏まえた検討を平成十七年度予算編成において行う。」こういうふうな報告書になっております。

五十嵐委員 いや、本当に不誠実だと思いますね。

 先ごろ、毎日新聞の一面トップで、年金保険料、給付以外に四・五兆円も使用されていたんだという記事が出ました。この記事の内容については、社会保険庁の方ではお認めになりますか。

渡辺(芳)政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日、三月一日の毎日新聞の記事についてのお尋ねでございます。

 その中には、いわゆる福祉施設事業等として行われてきた、御承知のような年金福祉施設の建設、グリーンピア、年金住宅融資、こういうことのほかに、年金資金運用基金に対する事務諸経費に関する部分が報道されておりました。

 数字は、私ども見せていただく限り、報道機関の方で直近の予算書などから拾われましたのか、独自の推計だというふうに私どもは感じました。

 ただ、この部分につきましては、今では、法律は、もともとは年金福祉事業団法の二十七条という規定、それで現在は年金資金運用基金に関しては年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律第二十一条という規定に基づきまして全額政府出資により設立された、こうした法人についての事務経費を交付金という形で支出できるということに基づきまして出されております交付金というものがございます。そういう中に、報道にございました事務諸費というものがある、位置づけられている、こういうものであろうというふうに考えております。

 数字につきましては、過去四十年余りの部分を独自に推計された数字ではないかとお見受けいたしますので、ちょっと、その正確さについてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

五十嵐委員 いや、当たらずといえども遠からずということなんだろうと思いますけれどもね。そんなに違っているはずはないと思うんですね、これは。調べられたものだと思うんで。それはお認めになると思うんですが。

 例えば、先ほど言いましたが、社会保険庁の幹部の交際費、まあ必要事務だということで認めていると言いましたけれども、一体、社会保険庁の幹部の交際費って何ですか。だれと交際し、どんなものに使われるんですか。ちょっと教えてください。

小林政府参考人 交際費につきましては、関係者との協力関係あるいは信頼関係を維持増進する、もって社会保険事業を円滑に実施するという観点から、儀礼的、社交的な意味の経費として、従来から厚生保険特別会計の業務勘定に計上させていただいておる、こういう経費でございます。

五十嵐委員 関係者ってだれでしょうね。それから、儀礼的に何が必要なんでしょうね、社会保険庁の事務を主に行う人たちが。これは、そうすると、主計局の主査あたり、年金関係の関係者が関係者になるんですか。私が最初に言った農水省の官官接待と同じ構図がここで成立するということですか。そうなっちゃうじゃないですか。

 こんなのはおかしいでしょう、明らかに。誠実さに欠けますよ、やはり。国民が本当につめに火をともすようにして無理やりひねり出している国民年金の年金保険料を関係者との飲み食いに使う、公用車の後部座席でそっくり返って偉い人が乗るために使われる、豪華な宿舎に使われる、そんなばかなことがないでしょう。

 それから、もう一つけしからぬことは、財務省は、口を開けば、一般経費を本当に削りに削ってもう限界なんですと言っていましたけれども、その一般行政経費を削るといって国民に発表していながら、一方では別の財布に押しつけただけで、実際には何にも削っていない。表向き削ったように見せているだけで、実際には努力していない。これも含めて努力とおっしゃるのかもしれないけれども、国民の側にしてみれば、右のポケットから取られるのも左のポケットから取られるのも同じじゃないですか。それはちっとも国民の側を向いた政治とは言えないんですね。ですから、こういうことははっきりともうやめる方向で考えるべきだ。

 しつこいようですけれども、先ほどから聞いていて、国民はあきれていると思いますよ。御答弁、もう一度だけお願いしますけれども、本当に十七年度以降も相談の上で続けるつもりなんですか。

谷垣国務大臣 これはまた十七年度の予算編成過程できちっと御議論をしなければならないことだと思っております。

 それから、先ほど交際費について五十嵐委員からいろいろ厳しい御批判がございましたけれども、これはやはり各省各庁それぞれの責任においてきちっと適切な判断をしていただかなきゃなりませんし、それは不断の見直しを行って適正な執行に努めていただく必要がある、当然のことだと思っております。

五十嵐委員 こればかりやっていられませんから移りますけれども、一方でこういうことをしていながら、私は大変なむだ遣いがやはりこの分野であるんだろうと思いますが、国の財政は大変なことになっているわけです。

 資料をお配りさせていただいていると思いますが、これは私がちょっと計算をさせていただいたものですが、平成十三年度に小泉純一郎総理が三十兆円枠というお約束を公約されました。後で、そんな公約、破っても大したことないんだとおっしゃったんですが、私は、三十兆円枠というのは小泉さんが思いつきで言ったんではなくて、多分財務省がこういうことが必要ですということを説明されて、多分それを小泉さんが決断されて、やられたんだろうと思うんですね。三十兆円というのには意味があったと思っているんです。意味がなくてただ三十兆円と言ったんではないんだと思う。それがこれなんです。

 私が言っているのは、税収入から地方交付税を引く。なぜ交付税を引くかというと、これは、税収は歳入で交付税は歳出ですからおかしいじゃないかと思われるかもしれないけれども、地方交付税というのは結局は地方政府の収入なんです、国にとっては、中央政府にとっては可処分所得ではないんです。ですから、税収入から地方交付税を引くと国の可処分所得が出ますね、その国の一年間の可処分所得の範囲内で公債金、借金をするならば許されるんじゃないかという考え方があるんだろうと思うんですね、一つのめどとして。

 そうすると、このときの可処分所得は三十三兆九千四十億円ですから、公債金二十八兆三千百八十億円、三十兆円ぐらいまでは許される範囲かなというのが出てくるということなんだろうと思うんですね。仮に、税収入だけでは厳しいじゃないかということで、私は財政当局の側に立って、税外収入もカウントしてみたらどうかということで、隣に税外収入をカウントした場合の計算も入れさせていただいたというわけです。

 これが国の可処分所得という考え方なんですが、そうすると、現在、十六年度の政府の予算案ではどうなるかというと、国の可処分所得は、私の計算では、二十五兆二千五百三十五億円、税外収入を甘く見て入れたとしても二十九兆二百七十四億円。これに対して来年度予算の公債金は三十六兆五千九百億円ですから、もう大分突破しちゃっている。私が税外収入を入れて計算した場合の三十兆円でも突破するということなんですが、しかし、これぐらいに抑えていかないと、やはり最終的には赤字財政は発散をしてしまう、つまり破綻に走ってしまうということだと思うんですね。

 私はこういう新たな考え方を入れなければ、国の借金体質、この赤字というのはおさまっていかないだろう、こう思うんですが、こういう見方についてはどう思われますか。財務大臣、お伺いしたい。

谷垣国務大臣 五十嵐委員が過去の財政を研究されてこういうお考えを出されまして、これは一つのお考えだろうと思います。

 ただ、私ども、いろいろな観点から財政を見る必要があると思っておりますが、現在のところ、私どもが立てております目標の立て方というのは、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していくということでいろいろな手だてを講じていこうというのを目標にしてやっているわけでございます。

 それぞれのいろいろな指標がございまして、それはいろいろな指標を全部改善したいんですが、結局、税収というのは経済、金融の諸情勢を受けて変動するものである、これはもう申し上げるまでもございませんし、そういうときにまたいろいろな経済の情勢がございますから、私どもとしては、経済の実体等を見ますと、先ほど申し上げたような、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していくということでいろいろな努力を傾注していきたいと考えております。

五十嵐委員 プライマリーバランスというのは、私どもも使っておりますけれども、わかりにくいんですね。国の可処分所得というのは、自分の家計の可処分所得に引き合わせればわかりますから、非常にわかりやすいと思うんですよ。これを見ていけば、いかに国の家計が苦しくなっているかというのはすぐわかると思うんですね。やはりこういうわかりやすい数字で説明できるような財政運営をしていただきたいと思う。

 一方で、わかりやすい説明を国の方もされていると思うんですね。すなわち、歳入歳出の総予算全体に対する税収入の割合、これを五〇%を割らないようにしようというのを一つのメルクマールとして来年度予算を組まれたというお話を伺っていますが、本当ですか。

谷垣国務大臣 政府税調におきまして、平成十六年度の税制改正に関する答申の中で、国税収入の歳出総額に占める割合が五割を辛うじて上回る程度となっている現状を踏まえ、財政規律に最大限配慮すべきである、こういう御指摘がございます。

 確かに、私どももこういう御指摘が頭の中にあることは事実でございますが、具体的な数値目標というよりも、厳しい財政の現状を踏まえて、財政規律への配慮をこれまで以上にやれ、こういう御趣旨で受けとめているわけでございます。

五十嵐委員 財務省が出されている、主税局が出されている税制の主要参考資料集の中にちゃんと一項目、歳出及び歳入に対する租税収入の割合の国際比較というのが入っているんですね。私は、これは重視している証拠なんだと思うんですね。

 これを見ますと、アメリカは実は社会保障税がありますので、それを入れるか入れないかで変わってくるんですが、入れますと、アメリカは八八・八%、イギリスが九九・九%、ドイツが七八・五%、フランスが七七・一%、イタリアが八〇・〇%、これに対して我が国は五〇・八%しかない、こういう極めてかけ離れて悪い日本の税収割合の数字が出てきているわけですね。

 なぜこれにこだわったかという話を実は伺ったことがあるんですが、これは、五〇%を割ると、海外の格付機関の日本国及び日本国国債に対する格付評価が落ちてしまうだろう、そうすると、これは大変大きな金融問題になるんだという、金利の上昇、日本国債の暴落という事態を招きかねない、だから五〇%を死守するんだと。今、財務大臣がおっしゃった以上に深い意味があるんだというふうに伺っておるんですが、これはその説はとられますか、とられませんか。

谷垣国務大臣 必ずしもその説を厳密に私どもとっているわけではございませんで、いろいろな財政の状況を示す指標がございますから、いろいろなものが気になることは事実でございます。いろいろなものが気になりますが、私どもがある意味での目標として申し上げているのは、これは再三同じことを繰り返しますが、二〇一〇年代初頭プライマリーバランスを回復するということで努力をするということで頭を整理しているわけであります。

五十嵐委員 しかし、その経路、ルートが全然示されていないんですよ。ただ、皆さんの、内閣府がつくられた、財務省がつくられたものを見ても、突然二〇一〇年代初頭というのが出てきて、その間の、二%台後半の成長だとか書いてあるのを見ますけれども、それがどうしてそうなるのかということは、それは証拠立てていない。それは難しいのかもしれないけれども、非常に都合のいい仮定を置き過ぎた結果、そうなるとしか思えないんですね。

 実は、私どもも今マクロモデルをつくっておりまして、民主党案を間もなく発表させていただきますけれども、我々は二〇一五年に実はプライマリーバランスの回復というのを目標にした数字を示させていただきたいと思っていますが、我々から見ても、実は皆さんの計量モデルを利用させていただいているわけですけれども、どうも甘い、都合のいい数字を採用し過ぎているということが言えると思うんですね。

 その一方で、おやりになっていることは、国債をどんどんどんどんふやす政策をおとりになっていて、全く矛盾をしていると思うんです。

 今、理財局長、牧野さん、お出ましいただいているわけですけれども、理財局が必死に努力されて、個人への消化方法を多様化される、あるいは、国債の区分そのものも、三十年債、十五年債、十年債、五年債、いろいろなバラエティーに富んだ国債を発行され、そのバランスも考慮されて消化をされやすいように努力をされているわけです。牧野さんの立場としては、それは正しい努力なんですが、そうやって消化されやすくすると、実は国債は膨らんでしまう。国民にとってはリスクが極大化してしまうという、私は、国民の利益とは必ずしも理財局の利益が一致しないという事態が起きているんではないかな、こう思っているわけであります。

 これから先も何か金利が変動しないタイプの固定金利型の国債を出されるんだとか、そういう話も出ているわけですけれども、理財局の方向としては、これから先も、国債消化に問題がないように、どんどん国債を日本の民間あるいは個人が持てるように拡大をしていくということで努力をされる、そして、その国債の、私はバブルだと思いますが、バブルのリスクについては余り念頭に置かない、そういう運用のされ方をするのかどうか、お伺いをしてみたいと思います。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 理財局の立場にいろいろ御配慮いただいたわけでございますが、あくまで基本は、理財局といいますよりも、やはり政府全体としまして、財政構造改革を推進していきまして、国債への信認を確保していくということが基本であることは相違ございません。

 その中で、そういう財政規律を確保する中で、発行する国債をできるだけ円滑に消化していく、これは重要な役割でございますから、そのためには、先生御指摘のように、今保有割合の少ない個人層により多くの国債を持っていただくとか、あるいは海外の投資家の保有を拡大する、そういうことを通じて国債の保有層が多様化することが国債マーケットの安定なり円滑な消化につながっていくんだ、かように考えております。

五十嵐委員 いや、理財局は理財局の役目を忠実に果たすんだというお話でございますけれども、先ほど言ったように、全体としてのリスクが高まるということにもやはり配慮をされなければ、むしろそういう努力をすることが逆に問題を大きくする。

 それに関連しまして、こういう情報があるんです。某メガバンクの十二月末時点の債券保有状況で、満期保有目的債券が九月末にはゼロだったのが、十二月末に約六千億円と大幅に増大をしている。これは何か特殊な事情があるんだろうかというのがマーケットで今話題になっているという話なんですね。これは理財局が直接メガバンクにお願いをするということはないんだろうと思いますが、しかし、例えば、金融機関全体に対して、満期保有目的債券をふやしてくれというようなことをお願いしたりした事実はあるんでしょうか。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 財務省が、金融機関などに国債の保有目的の区分につきまして何らかの要請を行ったという事実はございません。

 金融機関が保有される国債については、それぞれの金融機関がそれぞれの御判断で適切なリスク管理を、それぞれの投資目的に沿って御自分の責任でされるべきことだと思っておりますので、そういう意味で、それぞれ会計基準に沿って会計処理が適切に行われているというように考えております。

五十嵐委員 そうすると、新たな国債管理政策として何かこれで打ち出したということではない、こう解釈するわけでありますが、今度は金融庁、竹中大臣にお伺いしたいんです。

 満期保有目的債券というのは、これはほとんど国債だと思うんですが、簿価評価になるんですね。最初から時価会計のリスクを負わないということになるんです、満期まで持つんですよというふうに宣言をすると。そうすると、これは、ここまで国債が各金融機関に積み上がってくると、やはり時価会計評価のリスクというのは高まってくるので、リスク分散の面からこういうのもあり得ることかなと思うんですが、逆に言うと、これは粉飾決算の手段として使われかねないということなんですね。

 要するに、簿価評価でしておいて、満期目的債券ですよと金融機関が決めればいいんですが、それが、事情が変わったからといって、途中で売ってしまったからといって、実は何かがあるわけではないんだと思うんですよ。そうすると、これは都合によって時価評価での資産減を免れるための便法に使われて、これは粉飾の新たな手段として用いられる危険があると思うんですが、それについての御認識はいかがでしょうか。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

竹中国務大臣 まず、五十嵐委員、先ほどプライマリーバランス等々を含むいろいろな御試算をしておられる、これはぜひそういうものを出していただけるんでしたら、我々もしっかりと勉強させていただきたいと思います。

 その上で、お尋ねの満期保有目的の債券の扱いでございますけれども、これはもう御承知のように、満期保有の有価証券の企業会計上の取り扱いといいますのは、これは、平成十一年の一月に企業会計審議会から公表された金融商品に係る会計基準に定められている。これは委員の御指摘のとおりでございます。これもまた御指摘のように、それは原価評価であるということになります。

 これについては、こうしたものの扱いは、とにかく目的をみずから明らかにした上で区分経理するということが当然その条件になっているわけでありますので、万が一にも途中で保有目的の変更を行った場合には、その時点で時価評価をすることになります。この扱いがともすれば何かリスク隠しになるのではないかという御指摘なのだと思いますが、これはアメリカなどの国際的な会計基準と同様になっておりまして、さらに、商法の特例法や証券取引法等により監査を受けるということも義務づけられている会社については、こうした会計処理が適切に行われているかどうかということについても、この監査の中で確認されているというふうに承知をしておりますので、今の枠組みの中でこれはしっかりそういう手続をとっていくということになるのだというふうに思っています。

五十嵐委員 これは粉飾決算に使われないように厳しく監視をしていただきたいということでしかないんですが、一方では、これが使われれば、先ほど言いましたように、金融機関にもっと国債を持ってもらえるということにつながってくるんですよ。

 日銀がざぶざぶ量的緩和で銀行に供給をしていただけるものですから、短資にどんどん積み上がり、また国債という形でどんどん積み上がってくる、このリスクが大きなものになってくる。そのリスクを避けるために、この満期保有目的債券というものが、今度はここの部分が膨らんでくる、こういう構図になってくるんですが。

 いずれにしても、しかしこれは国債バブルを膨らませることに変わりはないわけで、私は、もうここまで来ると、量的緩和というのも、これは確かに金利を低いところに押しとどめるために効果はあったといえばあるんでしょうけれども、副作用が大きくなってきたなと言わざるを得ないと思うんですが、量的緩和をどこの高さまで続けるのか、いつまで続けるのか、そして、続けるという宣言をされているわけですけれども、その副作用についてはどの程度考慮されているのか、岩田副総裁からお伺いしたいと思います。

岩田参考人 それでは、お答え申し上げます。

 ただいま御指摘がございました量的緩和政策、日本銀行、ここ二年ほどとっておるわけでありますけれども、副作用として考えられますのは、一つは、私ども、短期金利をゼロに近い状態に保つということで長目の金利も安定化させるという政策をとっているために、例えば、預金あるいは貯金の金利が極めて低い水準であるということで、家計部門にとっては利子所得が減少してしまうというのも一つの副作用だというふうに思っております。

 それから、生命保険あるいは年金基金等の機関投資家にとっては、このように金利が低い中では資金運用するのが大変難しいというようなことも副作用として考えられると思います。

 三番目は、短期金融市場におきましても、金利がゼロに近いという状況でありますと、やはり価格を通じます資金の配分機能というのが低下してくるということでありまして、副作用としてはこういった点が現実にあるというふうに私どもも認識いたしております。

 ですけれども、私どもはなぜこういう量的緩和を行っていくのかといいますと、基本的には、流動性を潤沢に供給するということで、流動性が不足するんではないかというような懸念を払拭する、そして金融・債券市場というのを安定化させる、そういうことを通じて景気回復の足取りをさらに確かなものにする、そして最終的にはデフレ脱却をするということを目標にしましてこれまで量的緩和を堅持してきたということであります。

 私、デフレ脱却までこれまでの量的緩和を続けるということを、実は昨年十月に三つの条件ということを明示いたしまして公表いたしたわけでありますが、そうした枠組みのもとでこの政策を続けることによって、国民に安心感を与えるということで持続的な成長を実現する、あるいはデフレから脱却するということが可能になるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

五十嵐委員 私は、デフレはこれによって脱却するんではないというふうに思う。実体経済がよくならなければ絶対にデフレは脱却できないと思っていて、この流動性の供給によってデフレを脱却するということは、むしろ調整インフレ論に近い話になってきて、インフレ待望論につながっていくんだろうと思う。こういう状態の中でインフレが起きた場合には、スタグフレーションになって、不景気の中の実は物価の上昇という事態を招き、かつ、こんなに世界の経済が小さくなった時点では、デフレ的な調整局面をもう一回招いてしまうんだろう、こういうふうに思っています。

 ですから、この量的緩和というのは、非常に危険が大きくて、私は、デフレ脱却には実は効果がない、脱却したときにはむしろハイパーインフレにつながるんではないかなという懸念を強く持っていて、これはまた改めて時間があるときにさせていただきたいと思うんですが。

 私が心配しているのは、この量的緩和の結果としての国債の積み上がり、これが非常に大きなリスクになってきて、そして最終的には未達だとか、札割れですね、未達だとか国債の暴落につながりかねない、こう思っているんです。また、景気上昇の側面では、今までは起きてこなかったけれども、クラウディングアウトというものも当然懸念をしなければならないというふうに思っているわけであります。

 そこで、こういう傾向がつながっていけば、最終的には、もういっそのこと日銀さん、直接国債を引き受けてくださいという話が、結局のところ、有能な理財局長がいてもどうにもならなくなって、そういうことになりかねないな、これはまさにインフレ、ハイパーインフレへの引き金になるのではないかなということを心配しているんですが、日銀の立場として、国債の直接引き受け論に対してはどういうお立場をとるか、改めて確認をさせていただきたいと思います。

岩田参考人 お答え申し上げます。

 その前に一言申し上げますと、量的緩和を通じまして持続的な成長を実現する、そしてデフレを脱却して物価を望ましい安定した状態に持っていきたいということであの政策を行っておりますということをまず申し上げます。

 御質問の件でありますが、直接引き受けにつきましては、これは財政法第五条、これはもうよく御存じのことと思いますけれども、公債の発行については、これを日本銀行に引き受けさせてはならない、こういう条項がございまして、私ども、明確に法律で禁止されていることでございますので、そうした措置をとる考えは全くございません。

 以上でございます。

五十嵐委員 いや、何でもありの政府・与党の状況になっていますから、いざとなればそれは持ち出されてくるんじゃないかなということなんですよ。そういう押しつけがあった場合でも断固として拒否できる姿勢を持っているかということをお伺いしたいというふうに思う。

 特に、財務省の大事務次官が副総裁になられたわけですから、財務省の意向が反映されれば、それは日銀の中でそうなってしまうのではないかと思っている国民もいるわけですよ。今の法律が禁じていることはよく知っていますよ。しかし、そういう事態が近づいてきても、日銀の立場としては、独立性、せっかく私どもは日銀の独立性を高めたと思っているんですが、にもかかわらずそういうことになるのではないかということに対してどうお考えになるかということをお伺いしたいと思います。

岩田参考人 それでは、お答え申し上げます。

 重ねて申し上げるということになると思いますけれども、私ども、新しい日銀法のもとで独立性が法的により強化された状況にありまして、決して安易に財政、ファイナンスのためにマネーを供給するというような政策はとらない、こういう方針でこれまでも金融調節を行ってきております。今後も、そうした直接引き受けというようなことを行う考えは全くございません。

 以上でございます。

五十嵐委員 もう日銀は結構でございます。どうぞお引き取りください。

 私どもは、国債の増大が債券市場をゆがめ、あるいは財政融資資金特別会計の郵貯、年金等の資金を使って、これが運用されるようになっているわけですけれども、これの運用によってまた株式市場、マーケットがゆがめられるという心配もしているわけであります。いわゆる官のお金によって民間のマーケットが正常に機能しないおそれが非常に高まっているということを私は心配しているわけであります。

 特に郵貯や簡保のお金というのは、これは有能な投資専門家がいるわけではありませんから、どうしてもこの巨大なお金を動かすのはパッシブ運用、特にインデックス運用になりがちであります。すなわち、結局は、株式市場に上場されている全銘柄を、いわば加重平均で、平均値で買うということになってくるわけですね。

 そうすると、この部分が、インデックス運用が厚みを増してくるとどういうことになるかというと、本来退室すべき、負け組になるべき銘柄がそこで買われるということになりますから、勝ち組が残って負け組が退室をするというマーケットの原理がゆがめられるということになると思うんですね。公的資金がマーケットに流れることによってマーケットの機能がゆがめられるということについて、そういう観点から御心配をされているかどうかというのをお伺いしたいと思います。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 今、五十嵐委員が指摘されましたように、過去十年間では、景気の下支えをするために何度も経済対策をやってきて国債が大量に発行されている、それとともにバブルの崩壊やその後の景気低迷で民間資金需要が低迷したこと、こういうのが相まって結果として政府への資金の流れが民間部門に比べて大きくなっているというふうになっていることは事実で、そのことはやはり我々はきちっと注意をしておかなきゃいけないと思っております。

 したがいまして、政府としては、経済活動の主体を小泉総理が言っておられますように官から民へ移していく、そして民間需要主導の持続的な経済成長につなげていく。これまでも、金融それから税制、規制及び歳出の各分野の構造改革を推し進めてきたわけでありますし、日本銀行におきましても、オペの多様化といった金融緩和のいろいろなメカニズムを強化するために努力をされてこられたわけでございますが、今後とも、官から民へ移していくということで、政府、日銀一体となって努力をする必要がある、これは委員の御指摘のとおりだと思っております。

五十嵐委員 あと、今、住宅金融公庫を廃止して民間に住宅ローンはどんどんやってもらおうと、これはある意味ではいいことではあるんですが、逆に、金利の変動があった場合に、民間では今度はローンを支え切れなくなるという事態が考えられるんですね。そのときに、実はバッファーとしての国、公的な分野の役割というのは、逆に今度は出てくるだろう。そのときに公庫がないということは逆の問題が出てくるのかなという、組み立て方がどうもちぐはぐになっているなということを私は感じているところであります。

 それは後で、また別の機会に議論をさせていただきたいと思いまして、次に移ります。

 金融庁の方で、金融検査マニュアル、中小企業編というのを改定されたというふうに報道をされております。これはどういうことかというと、銀行と中小企業者、金融機関と中小企業者の間で根雪的に繰り返し貸し出されている部分については、金融機関と借り手が話し合って劣後ローンに組みかえたらどうかということだと思うんですね。

 これについては、私どもは使われないんじゃないかなと。つまり、銀行がうんと言わないのではないか、肯定しないのではないかということなんですね。この指摘については、機能しないのではないかという指摘についてはどのようにお答えをされますでしょうか。

伊藤副大臣 私からお答えをさせていただきたいと思います。

 今回のDDSについては、新しい中小企業金融の道を開いていくために、あるいは中小企業の経営健全化の一環として、いわゆる根雪あるいは疑似エクイティーと称される資本的性格の資金の権利義務関係を実態に合わせて法律上明確にしていくために、DDSに対する考え方を整理したものでございまして、今回の検査マニュアル別冊において、根雪部分となっている貸し出しについて資本とみなすに当たり、いわゆる資本的劣後ローンに転換する契約が締結されることを前提としているわけであります。

 これは、DDSにより転換された債権が資本的性格を有するものであることを明確に担保するものでありまして、具体的には、資本的劣後ローンの返済についての劣後性があること、債務者にデフォルトが生じた場合における資本的劣後ローンに関する金融機関の請求権の効力に劣後性があること、そして債務者が金融機関に対して財務状況の開示を約していること等が明確にされる必要があるわけであります。

 そこで、委員は、金融機関が本当にこれを使うのか、あるいは金融機関が承諾をするのかということについてのお尋ねだと思いますが、その中にはその手法の実効性があるのか、そういうお尋ねでもあろうかと思います。

 私どもは、この手法の実効性を確保する観点から、昨年の七月、各業界団体に対してこの手法の具体化に向けた実務レベルの検討を要請いたしておりまして、現在、各業界団体において、契約書記載事項等、実際にこうした手法を活用する際の考え方、留意点を検討していると聞いております。

 なお、第二地方銀行協会においては、「「中小企業金融におけるデット・デット・スワップおよびコベナンツの活用」について」、先月の二十日、これを公表したところでございます。

 当庁といたしましては、関係者により当該手法の内容がさらに検討され、円滑な運用が行われることを期待しているところでございます。

五十嵐委員 よくわからないんですよ。易しい言葉で言っていただきたいんですが、要するに、根雪として貸していた部分が劣後ローンになったら劣後してしまうわけでしょう、何かあった場合に返ってこなくなってしまう。それをそう簡単に銀行が認めるんですかという話なんですね。

 私どもは、むしろ、金融検査の上で、金融検査側が、金融庁の側が、当局側が資本そのものと見てしまった方がいいのではないかと。それはなぜかというと、実態的に資本だから。銀行自体が、景気のいいときには、返さなくていいですよ、こう言ってきた事実があるわけですね、大体。返さなくていいですよ、むしろ借りていてください、金利を稼げるからというふうに言ってきた事実があるから、その実態に合わせて資本そのものと見てしまう。そして、十年ぐらいたってデット・エクイティー・スワップで実際にそれを株式、資本化して、最終的には、その後さらに実力がついた企業にはその株を引き取ってもらうというところまで見れば、これは流れが起きて役に立つ、私どもはこう思っているわけですが、今のように話し合いで劣後ローンにするというのでは私は機能しないと思うんですが、今の副大臣のお話ではどうもその辺が、今後検討するとか実務的に検討するとかいうお話でわかりにくいんですが、わかりやすくお話をしてください。

伊藤副大臣 今、前段にお話をさせていただいたように、これはある意味では中小企業の経営健全化の一環としてこのDDSに対する考え方を整理させていただいたところでありまして、また、この整理に当たっては、実は、監督局長のもとに新しい中小企業金融の法務に関する研究会というものを設置させていただいて、昨年の春、四月から七月にかけて研究をさせていただいたわけでありますが、この研究会に金融機関の方々にもオブザーバーとして出席をしていただいて、いろいろな検討をさせていただいて、報告書を取りまとめさせていただき、そして、今回の金融検査マニュアル別冊においてこの問題について整理をさせていただいたところでございます。

五十嵐委員 まだ何だかはっきりしないんですが、これはまた後で議論をさせていただきたいと思います。

 もう時間が迫ってまいりましたので、主税局長、わざわざおいでをいただいておりますので、NPO税制についてお伺いをしたいと思います。

 一年前の税制改正でNPO税制をかなり変えていただきました。これは主税局長のお力だと思って感謝をしているんですが、そのときのお話で私が覚えているのは、パブリック・サポート・テストの基準を緩めて、それでかなり認定NPOをふやしていただけるというふうに思っておりました。

 たしか一年前には認定NPOは十団体ぐらいだったと思うんですが、私どもは少なくとも五十ぐらいにはなるのかなという期待を込めてこのNPO税制を見せていただいたんですが、その後、認定NPOはどのぐらいに増加をされたのか、そしてそれが、その程度に多分おさまっているんだと思いますが、思ったように伸びなかったと思うんですが、それはなぜなのか、お伺いをしたいと思います。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 NPO法人の行います民間非営利活動、これ自体はやはり活力ある経済社会を構築していく上で我々も大変大きな役割を果たしていくだろうと期待しているところであります。

 そういう意味で、先生言われましたように、平成十五年度の税制改正で、認定NPO法人の要件の緩和を初めとしまして、大幅な見直しを行いました。現在までの、二月の終わりまででは二十二法人、再認定がさらに二つありますけれども、二十二でとどまっているわけですが、ただ、次第に申請件数も増加してきているということであります。

 なおまだ二十二件、再認定を入れるとさらに二つあるわけですが、いわゆる二十二にとどまっている理由というのは幾つか考えられます。

 一つは、やはり認定NPO法人制度そのものがまだ創設されてから二年余であり、今回の認定要件の緩和からはまだ十カ月ぐらいしかたっていないというようなこともあるかと思います。

 それから、さらに一番根本的には、どうも認定NPO法人になるためには経理についての情報公開等、実は帳簿が不十分という問題がございます。

 それから、さらには認定NPO法人になるためのバックアップ体制、これは、アメリカなどは御存じのとおり弁護士グループが日本と同じようなNPO法人になるためのバックアップ体制を実はしいておりまして、それのための専門の弁護士グループがいらっしゃるわけですが、当然のことながら、日本ではそのようなことがないということでございます。

 こうした事情からかんがみまして、NPO法人における経理面での対応をきちっとしていただくということもありまして、NPO法人を税理士が支援するというようなことで、税理士の補助的業務の一環として考えていただくことも必要かと考えています。今、日本税理士会連合会の方のいわば総会におきまして、このような認定NPOの支援をする活動というような諸施策を打ち出そうとしておられると聞いております。

五十嵐委員 ぜひ、経理の方の透明化、それから外部監査化を進めていただいて、きちんと会計を明瞭にされたNPOがふえて、そして認定NPOがふえることを望みますが、それと同時に、やはり私どもは、六割ぐらいのNPOが認定されるようでないと日本のNPO活動は盛んにならない、アメリカにおいてはその経済活動のかなりのパーセンテージをNPOが占めるということもありますので、ぜひパブリック・サポート・テストをなお改善してNPOがふえるような努力もしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、島聡君。

島委員 島聡でございます。

 きょうは、一般質疑をさせていただきますが、森厚生労働副大臣にもお越しいただいておりますので、後ほどしっかりと議論をさせていただきますから、お待ちください、恐縮でございますが。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 竹中大臣にお聞きします。

 今、週刊誌とか、それからいろいろな総合雑誌等々を見ますと……(発言する者あり)委員長。

田野瀬委員長 不規則発言はおやめください。(発言する者あり)

島委員 委員長、今ちょっと、これは断固抗議します。どうですか、これは。

田野瀬委員長 どうぞ不規則発言を控えてください。

島委員 どういうことですか、これは。謝罪すべきじゃないですか。委員長、どういう議事整理されるんですか、これは。

田野瀬委員長 今注意いたしました。

島委員 またこれも後ほど理事会できちんとやりますので。

 力み過ぎじゃなくて、国民のために力を入れてやっているんだから、それを言うというのはどういうことだ。極めて委員会の審議に臨む姿勢が低い。私、だれか知らないけれども、あの人。(発言する者あり)江藤さんの委員会に臨む思いが極めて低いということがわかったということをまず申し上げます。

 竹中大臣にお尋ねをします。

 今、UFJという言葉がいろいろなところで起こっています。これは、大臣に聞いても、個別行のことは言われないでしょうから、それは言いません。

 ただ、まず最初に、こういうことがよく言われているんです。UFJの問題について、昨年十月に、二重資料が発覚した、隠された資料がある、調べてください、具体的な部屋番号を伝える匿名の電話が入った、これについてUFJは、融資先の財務内容をシミュレーションした資料にすぎない、検査をごまかす意図は全くなかったと反論した、しかし金融庁は検査忌避だと言い立てて徹底的な検査に乗り出したという記事があります。

 この個別の問題についてお尋ねするということはしません。問題は、この検査忌避という法的な問題について、きちんと詰めていきたいと思います。

 銀行法六十三条に、要するに、検査した場合、「当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」、これは「一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」とあります。これがいわゆる検査忌避という問題であります。

 厳格な検査、及び金融庁がどのように公平に検査するかというのは、要するに法に基づいてどうやっているかという話だと思います。そうしないと国民は公平だと思わないわけですね。ですから、明らかにしていきますが、例えばどのような要件を満たせば今ここにある検査の忌避ということになるのか。個別ではありませんが、例えば、別のところに資料を隠していたとか資料を置いてあったとか、そういうのは検査忌避に当たるんですかということもお尋ねします。

竹中国務大臣 島委員は、個別の金融機関に関する問題について言及できないということは理解したということでございますので、これは一般論としての議論ということになります。

 これも今委員既に御指摘くださいましたように、検査忌避に関連する法律は、銀行法第六十三条で決められている。質問に対して答弁しないもしくは虚偽の答弁をする、またはこれらの規定による検査を拒み、妨げもしくは忌避をする。その要件やいかんという御質問なわけですが、具体的にどのような検査対応が検査忌避に該当するかというのは、これはさまざまなケースが考えられるし、考えなければいけないんだというふうに思います。その上で、実態的に我々の検査が妨げられたかどうかということを総合的に判断するということになる。

 したがって、こうした場合、ああした場合、いろいろな議論はあろうかと思いますが、あらかじめ判断のポイントになるような条件ないし要件のようなものを申し上げるのはなかなか難しい、このこともぜひ御理解をいただけるのではないかと思います。

 いずれにしましても、我々としては法にのっとって適正に対処して、もって金融システムの安定強化を図っていく、それが我々の務めであると認識をしております。

島委員 明快な竹中大臣らしくないですよ。さまざまで総合的でそのたびに判断するといったら、法にのっとっていませんよ、それは。そのたびごとに裁量が入るという話になるわけですから。

 だから、ここで私が言っているのは、どのような要件を満たせば検査忌避になるわけですかということだから、さまざまで総合的だといったら、要件がないというのと、あるいは自分で決められますというようなことを言っているじゃないですか。もう一度きちんと答えてください。

竹中国務大臣 基本的には、これは法律に書かれているとおりだというふうにしかちょっと申し上げようがございません。

 法律には、例えば検査官の質問に対して答弁しない場合、これは当然のことながら検査忌避になる。もしくは、うそを言う場合ですね、虚偽の答弁をする。それらの規定による検査を拒む、これは拒み方はいろいろあるんだと思いますが、拒む。ないしは、妨げる、我々が検査をする場合の妨げになった。もしくは、これを忌避する。これは、法律に書かれているのはまさにそういうことであります。

 それ以後、では、それに基づいて、裁量かというと、これは裁量とかそういうものではなくて、これは個別にはいろいろなケースがあり得ましょうから、ここに書いているように、質問に対して答弁をしなくて、その上で我々の検査が妨げられた、我々の権限を十分に発揮することができなかったという場合は、これは検査忌避になるでありましょうし、そこはやはり実態に即して、この法律にのっとって判断していくということになると思います。

島委員 今、判断するとおっしゃいましたが、その判断する主体はだれですか。

竹中国務大臣 主体というのは、実際に、最終的にそれを認定する権限ということになりますと、これは金融庁の職務、権限によっていろいろあるわけでございまして、基本的には金融庁、金融当局が判断する。

 その場合の意思決定メカニズムはどうかという御質問でございますれば、これはまた別途お答えさせていただきます。

島委員 個別具体的――いいですか、今の答弁で。いいですか、今の答弁でいいですか。――はい、どうぞ。

竹中国務大臣 忌避そのものは、これは銀行法に定められている刑法の特例として定められておりますので、それに違反するかどうかというのは当然捜査当局が絡んでくる問題でございます。

島委員 今後、この問題については、具体的になってきたときにまた議論をしていきたいというふうに思います。

 同じように、私ども、結構、検査忌避一般論とすると大きな問題だと実は思っておりまして、同じく銀行法二十七条が特に重要だと思っておりまして、二十七条でございますが、「内閣総理大臣は、銀行が法令、定款若しくは法令に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき」、これは、処分に違反したというときには、「その業務の全部若しくは一部の停止若しくは取締役、執行役若しくは監査役の解任を命じ、又は」「免許を取り消すことができる。」とあります。これは極めてすごい権限ですね、すごい権限です。

 要するに、検査をして、検査を阻んだというのは、これは、これに言うところの「内閣総理大臣の処分に違反した」と、検査を拒んだわけですから、そういうことで理解してよろしいですか。

竹中国務大臣 申しわけありません、ちょっとポイントが、最後のポイントがよくわからなかったので、済みません、もう一度言っていただけますでしょうか。

島委員 要するに、最初質問通告したとおりで結構ですが、どのような場合に金融担当大臣は業務停止を相当と考えて、かつまたどのような場合に内閣総理大臣は免許取り消しというのを判断するか、まず先にそっちをお答えください。

竹中国務大臣 一般論として申し上げますと、仮に金融機関に法令等に違反するような問題があれば、これは法令にのっとって対応する。

 銀行法でありますけれども、法第二十六条第一項及び第二十七条の規定による、業務の全部または一部の停止の命令を発出する権限は、これは、五十九条の規定によりまして、内閣総理大臣から金融庁の長官に委任をされております。それで、二十七条及び二十八条の規定による銀行免許の取り消しを行う権限については、内閣総理大臣がこれを有している。このように、業務停止命令及びその免許の取り消しについては、これは委員言われたように大変重いものでありますけれども、おのおの金融庁長官または内閣総理大臣の権限とされております。

 この権限を行使するかどうかにつきましては、金融担当大臣として、これは内閣府の外局であります金融庁、その長が長官でございますが、金融庁の所管事務を掌理して一般的な指揮監督を行うというのが私金融担当大臣の立場でございます。したがいまして、私自身が金融庁長官と相談をして、あるいは免許取り消しが相当であると考えられるような極めて重大な案件である場合には内閣総理大臣の御指示を仰ぎながら、対応していくということになると思っております。

島委員 つまり、物すごい権限なんですよ、大臣、竹中大臣は。業務停止は金融庁長官の所管だから、ある意味で金融大臣だけで決められるし、免許取り消しも、総理に相談はするけれども基本的にはできる、そういう話ですよね、これは。それでいいですか、理解は。

竹中国務大臣 もちろん、決定者は総理でございますけれども、これは内閣府の特命担当大臣全般について言えることでございますが、総理をお助けする立場でございますから、総理の意思決定がスムーズに行われますように、それなりの、我々なりの部分を掌理して、それで最終的な御指示を総理に仰ぎながら内閣として決定をしていく重要な役割だと思っております。

島委員 という、非常に重いかつ重要な、すごい権限を持っているということでやっていただいているわけです。

 今、二〇〇五年四月、来年の四月にはペイオフを解禁するということの全面方針に対しましては揺らぎはありませんか。

竹中国務大臣 ペイオフというのは、もう言うまでもありませんが、一定限度内での預金保険での預金の保証はいたします、しかし、それを超えるものについては、これはまさに預ける側の自己責任ということになるわけですから、預金者が金融機関を選別する、預金者に選別されているという、その緊張関係の、緊張感の中で銀行が健全な経営をして、まさに競争的な市場を実現していく、その意味で、ペイオフというのはやはり実現しなきゃいけないプロセスだと思っております。

 それをしかし、実現するには環境が整わなければいけない。その環境を整えるために、金融再生プログラムを主要行に実施し、地域機関、中小機関に関してはリレーションシップバンキングの集中改善の期間ということで、今最大の御努力をいただいている。それに向けて最大限の努力をしたいと思っております。

島委員 ということは、環境が整わなければ再延期もあり得る、そういうことを今おっしゃったわけですか。

竹中国務大臣 仮定の話で、その環境が整わないのにやってはいけないわけでございますけれども、その環境は十分に整いつつあるというふうに認識しているところでございます。

島委員 今の答弁で、これ以上は進まないと思いますから、要するに、環境が本当に整っているかどうかで変わるということだろうというふうに私自身は理解をいたしました。本当にそれでいいのかなという思いはありますが、ともかくそういうふうに理解したというのが今のことでございました。

 ところで竹中大臣、一月にスウェーデンに視察に行かれたそうでありますが、私も行ってきたんです、スウェーデンに。もう二年ぐらい前になりますか、今政策統括官をやっていらっしゃる中城さんと一緒に行ってまいりまして、ノルドバンケン、あのスウェーデンの第三の民間銀行の処理の方法なんというのを聞いておりまして、それで、なるほどな、なかなか大胆にやっておるなという感じを思ってまいりました。あそこはたしか、私の当時のメモが間違いでなければ、九二年九月にノルドバンケンを完全に国有化していった。それで、同じように救済策定法をつくって、その三年後の九五年には政府保有株をだんだん放出し出して、また再民営化にも成功していったというような話を聞きました。相当大胆な、当時、三年前のメモですから私の方が間違っているかもしれませんが、大胆な動きをしてきたなというふうに思って帰ってきたところでございます。

 スウェーデンのそういう金融危機対応につきまして、竹中大臣、視察に行かれて何か学ぶ点がありましたら。学ぶ点がございましたでしょうか。

竹中国務大臣 一月の出張は、まず、郵政民営化の関係でドイチェ・ポスト、ボンに参りまして、それからスウェーデンの方にお邪魔をいたしました。

 お邪魔した目的は幾つかあったのでありますが、一つは、スウェーデンの金融セクターの改革について、その後の進展状況について改めて勉強させていただく。もう一つは、これは財政の方でありますけれども、いわゆるニュー・パブリック・マネジメント、これは日本も十六年度予算からモデル事業として取り入れておりますので、その先駆的な地域についてのいろいろな情報収集をしたかったということでございます。

 お尋ねの金融に関しましては、現地では、リングホルム財務大臣、ルンド国際経済金融担当大臣、ヘイケンステン、スウェーデンの中央銀行総裁等々からお話を直接伺ったわけでありますけれども、御承知のように、これは、かつては一一%あった不良債権比率を今一%台までに削減している。

 何を学んだかということでありますが、基本的には、資産査定の厳格化、それと、企業と不良債権問題の一体再生、それに対して資産管理会社をつくって非常に果敢な対応策をとった。そういう点については、やはり改めて学ぶところが大変ございましたし、その意味では、資産査定の厳格化等、我々が金融再生プログラムで目指しているところと重なるところがあるというふうにも感じました。

 さらに、スウェーデンでは九〇年代の半ばに金融危機が終結するわけでございますけれども、その後、危機対応措置が一たん廃止された後、今現在、恒久的な危機管理措置の導入を検討しているというところでありまして、そうした点についても、引き続き参考になるべき点はぜひ学んでいきたいというふうに感じたところでございます。

島委員 何でこんなことを聞いたかといいますと、こんなうわさが出ているんですよ、竹中大臣が一月初頭にスウェーデンに出張したのは、大手銀行の処理方法を学ぶためだという。それがそうですかなんて言ったって、とてもそうですとは言えるわけがないから聞きませんけれども。

 そういうようなことがうわさとして流れ、かつ活字になっています、いろいろな。そういうことで、いろいろなことが今流れているという話なんですね。

 これはともかくとしまして、もう一つ、こんなことも流れています。これも活字になっていますが、さっき検査忌避について聞きました、私。特定行の検査忌避を不問に付すかわりに、公的資金新法の申請をその特定行に強要する、そういう一種の手打ちみたいなことがあったと。そんなようなうわさが流れていますが、当然、そんなことはありませんよね。

竹中国務大臣 いろいろなうわさがあるようでございますが、我々は法にのっとって粛々とやっている。うわさに基づいた、憶測による報道はぜひ慎んでいただきたいなと思っております。

島委員 今申し上げましたのは、これから未来の、うわさというのは、未来のことを、あることないこと言う場合もあるし、当たる場合もあるんですよ、当たる場合があるんですね。ですから、今の話では、ないということですが、そうなっていった場合にはおかしな話になりますから、あえて今この最初の一般質疑で、ありませんよねということを聞いたわけであります。

 ないという話でしたからそれで結構でございますが、当然でありまして、そんな手打ちなんてあったら、法の、粛々じゃないけれども、厳正な執行じゃないとだめなんだから、これは。厳正な執行じゃないと。そうしないと、国民が、本当に痛みを伴うような改革なんかに、それはサポートしませんよね。大事な権限を持っている大臣になられたわけですから、大きな権限を持っている大臣になられたわけですから、それは法に基づいてきちんとやっていかないといけないということを申し上げておきたいと思います。

 谷垣大臣、スウェーデンで私が学んだもう一つは、ちょうどスウェーデンも金融危機で極めて経済的に厳しかったときに、スウェーデン経済が復興した一つの原因がスウェーデンの為替が随分安くなったというんです、通貨が。それが復興の大きな要因であったということを聞いたんです。もちろん、日本のような大きなGNPを持っている国と、スウェーデンのようなGNPとを考えますと、いろいろな問題があることがありますが、為替政策についてお聞きしたいと思います。

 外国為替市場で、二月の円売り介入が三兆三千億になったというふうに発表されました。そして、日本経済新聞ですが、円反落後も押し下げ介入を実施していくというような報道もありました。きょう谷垣大臣は、ドバイのG7、昨年の九月のドバイG7以後の市場の流れが是正されているというコメントを残したということになっています。

 今百八円九十三銭から百九円十三銭ぐらいだそうですが、私の最新のデータを見ますと。谷垣大臣は、今の為替市場の動向をどのように見ておられますか。

谷垣国務大臣 為替の具体的な水準とか、あるいはどういうふうに介入したかということは、これは申し上げるのを差し控えさせていただきますが、二月の下旬になりまして、やや円安の傾向になっております。

 これは、市場で米国経済の強さというものが再認識されたということが一つあると思うんですが、もう一つは、ちょっとお引きになりましたけれども、結局、このところ、マーケットは、いわば円買い・ドル売り、そういうポジションがずっとあったわけですが、それが相当積み重なってきた。その、いわば自動的な巻き戻しと言っていいのかどうかわかりませんが、そういうようなことではないかなというふうに見ていることは事実でございます。

島委員 今おっしゃった、巻き戻しということなんだという御認識のようでありますが、今、日本は、経常収支も黒字で、貿易収支も黒字になっていますね、基本的に。三十四年ぶりに黒字だという話じゃないですか。いわゆる経済理論の基本から考えますと、これだけ黒字だということは極めて円高方向に流れやすいと思うんですが、それについてはどう認識されておられますか。

谷垣国務大臣 この為替市場に参加するプレーヤーと申しますか、いろいろな方がいらっしゃって、実需に基づいて取引を行うような輸出入業者ももちろんいらっしゃいますし、それから金融機関もございますが、また同時に、思惑的、投機的な取引を行う方々も、プレーヤーもおられて、さまざまな参加者がそれぞれの資金需要や思惑とか相場見通しについて動いておられるということなんじゃないかと思うんです。

 今委員お触れになったのは貿易収支ですね。貿易収支の問題は、結局、どの国に対する黒字がふえているかどうかということによって……(島委員「資本収支、資本収支」と呼ぶ)資本収支ですか。

 資本収支の黒字については、その資金の流出入が短期的なものか長期的なものかとか、あるいは資金の流出入がどういうタイミングで行われるかということによって為替市場における需給が影響を受けるんだろうと思いますが、そういったことから、貿易収支も含めて資本収支が実際に円高につながるのかどうかというのは、やはりそのときの市場の取引状況とか思惑によって随分違ってくることがあると思いますので、一概に申し上げるのはなかなか難しいなと思っております。

島委員 なかなかこういうところで言うのは難しいということを認識しながら言っていますが、要するに、こういう外国為替市場の問題というのは非常に日本にとって重要な問題だとこれから特に思いますので、注視していっていただきたいということを思う次第でございます。

 ずっと今までデフレ、デフレという話をしてきました。デフレ脱却を何とかしなくちゃいけないという話を随分してきた。

 きのうマーケットが一万一千三百を超したんでしたっけね。極めて活発になってきていると思います。だんだん何か、例えば実需面から見ましても、鋼材、非鉄なんかというのが商品価格も上昇している。例えばデジタル景気というのがあって、半導体メモリーなんというのは三割上がっているそうですね、今。それから、土地なども、例えば港区、渋谷区ぐらいですと今五%ぐらい上がりつつあるそうです。

 そういうようなことを考えまして、今までデフレと言っていましたけれども、現在、いわゆるデフレから脱却という、あるいはインフレへという、この前、私どもの中塚議員が中期的にはという話をされましたけれども、割と、中期的というよりも、かなり近くなってきているんじゃないかというような思いもあるんですが、その辺の認識を経済大臣にお聞きします。

竹中国務大臣 島委員御指摘のように、国内企業物価で見ますと、世界的な景気回復、それと素材価格の上昇というのがかなりはっきりと見られる。したがって、国内企業物価から見ますと、少し新しい動きが出ているというふうに私も認識をしております。

 しかし一方で、消費者物価はほぼ横ばいということ、さらには、横ばいにはなっているんだけれども、これは一時的な要因もこの中には含まれている。

 あと、そうすると、GDPデフレーターをどう見るか。これは、いわゆる要素価格、生産要素の価格が入ってまいりますから、これはマイナスが続いている。その意味では、総合的にまさに勘案して、物価は依然として緩やかなデフレ状況にある、現状ではそのような認識を持っております。

 しかし、一部の商品の国際市況の価格の状況等、そういうようなものは、引き続き注意をして見ていかなければいけない状況であるというふうに思っております。

島委員 ということは、今引き続き、まあすぐ転換とはなかなか言えないと思いますけれども、私は、徐々にそういう転換期が近づいているのかなというような思いもしているんです。

 と思っていましたら、財務省が今週、物価連動国債というのを出された、物価連動国債を新規に発行したということですが、今この時期にこの物価連動国債というのを出された理由は何ですか。

谷垣国務大臣 これは、国債を大変大量に発行しておりますから、国債の安定的な消化を進めていくためには、市場のニーズというものをとらえて国債の商品の多様化を進めなきゃならぬ、こういうことからいろいろ考えてやってきたことの一環でございます。

 それで、物価連動国債は、元本の額がもちろん物価動向に応じて変動しますから、確かに将来のインフレリスクを回避したいという投資家のニーズにこたえることができる商品だろうと思います。またそれから、市場の期待インフレ率みたいなものを把握する手段ともなり得るものだと思っておりまして、いわゆる骨太の方針でも、物価動向を適切に把握する等の観点から、物価連動債を含む新たな方法について検討を進めようということが記述されているわけですが、こういったことを踏まえて、ことしの三月からやりたいということで今進めております。

島委員 確かにみんな、将来インフレになるかなと思って国債を買わなくなっている人もいるということは事実ですよ。これだけ財政赤字も多いし、国債も累増しているから、将来的にはインフレになるだろうとみんなだんだん思い出してきた、今デフレだけれども。

 長期的に見ればインフレになるというのは私の予想、それは、谷垣さんはそうだと言えないでしょうけれども、私はそう思っていまして、そうなったときに、物価連動国債というのは物価に連動するわけですから、物価連動国債というのはかなりまた重い負担になると思うんですが、そのリスクはどうお考えですか。

谷垣国務大臣 なかなか難しいお問いかけなんですが、これは、インフレとなれば、物価連動国債は確かに想定元本それから利子の額がふえていくということは否定できない事実でございますが、その水準は、その時々の市場参加者の期待インフレ率をどう見ているかという予想によって決まる面があるんだろうと思います。

 これと、実際の物価の変動との違いというのを見ませんと、発行当局として調達コストが上昇したかどうかという判断をすることは、これは一概に言えないという面がございまして、一概にコストが上昇するとも言えない面があるのかと思うんですが、いろいろなことを見なきゃなかなかこれは申し上げにくいことでございます。

島委員 私も、三月に発行されたばかりだという話ですから、まだ規模が少ないこともよく存じ上げていますから、動向を見ながら注視していきたいと思っております。

 時間がどんどん過ぎていますので、森副大臣、お待たせいたしました。済みません。

 まず最初に、政策の話をお聞きします。

 今、「代行返上」という本がはやっていまして、幸田真音という、例の国債を書かれた人のものなんです。

 要するに、二階建て部分の企業の基金、年金を代行していた部分を国に返す、そのときに、その基金も株をたくさん持っていますから、その株を、国に返すときには、一部物納もありますけれども、株じゃなくて、一回売って現金で返してくれという話だ。それを非常に大量に売ることになるから、それを代行返上するとマーケットに影響を与えるんじゃないか、つまり要するに株が下がるんじゃないか、そういうことが書いてあることがメーンの本であります。

 森副大臣に来ていただきましたので、お尋ねをいたします。

 厚生年金の二階建て部分の一部、代行部分を返上する企業が今ふえているんですね、そういう形で。既に、千六百五十六基金があるんですけれども、そのうち七百四十六の基金で代行返上が認可されています。大まかに試算しますと、七百四十六基金で十四兆円の資金がありまして、そのうち四分の一が株式だそうですから、三兆五千億円ぐらいですか、それぐらいがマーケットに放出されるという計算になります。

 結果として、昨年は、この幸田さんが書かれた、想定されたのが去年の二〇〇三年だったんですが、余り影響を与えていなかったんですが、一般論で考えれば、放出があれば、せっかく今マーケットがいい調子なのに影響を与えると思うんですが、そのマーケットに与える影響をどのように考えていますか、森副大臣。

森副大臣 今さら申し上げるまでもなく、一般的に、株価につきましては、国内外の経済動向や投資家の予想などさまざまな要因が影響し合って決まるもので、厚生年金の代行返上が市場に与える影響を分析することは困難であるというふうに思います。

 ただ、今御指摘のとおり、代行返上は現金によることを基本とするものですから、保有する株式等の売却が必要となって、その結果、定性的には、市場の需給に対しては一定の売り要因になることは否めないというふうに考えます。

 そのため、今これも御指摘あったとおり、代行返上に係る積立金の国への納付については、市場に与える影響を抑えるなどの観点から、現金による納付以外にも、一定の要件を条件に、株式などの有価証券による、いわゆる物納を認めているところでございます。

 特に、今引用されました幸田女史の御著書につきまして、実体験に基づいた大変うんちくのある御指摘だと思いますけれども、彼女の一番の危機感というのは、このまま株価が五千円になっちゃうんじゃないかというふうな大変な危機感を持ってお書きになられたわけでございますけれども、代行返上がそれほどの影響がなくて、結果としては現在一万一千円超の株価を保っているということでございますので、総合的にこれも考えなきゃいけないですけれども、私としては、一概にマイナス要因、下げ要因としてきくというふうには考えておりません。

島委員 マーケットというのは、森副大臣、私なんかよりもお詳しいでしょうけれども、大体、そうなると思っていると身構えて下がらないんですよ。サプライズで起きるときがありますから、何が引き金、トリガーになるかわからないのでということをまず指摘しておきたいと思います。

 次でありますが、その幸田女史の著作を私も読んでいまして、こんなことが書いてあったので、もしそれが事実なら、まさに財務金融委員会で直せばいいと思って取り上げました。

 要するに、現金で納付する場合、市場に対して国内株の売りを出して、その現金を国庫に納付する、そこまではそうですね。年金資金運用基金に納められるのですが、実際は、その現金でまた株に投資する場合には、予算が絡んでくるから翌年度の会計になってしまう。会計年度が翌年になるので売りと買いとの間に時差が生ずる、要するに現金が年金資金運用基金で一年間寝てしまう。

 予算の関係でそういうことがあるとするならば、こちらにそう書いてあるんです、とするならば、マーケットにいろいろな影響を与えないような形でやる方法があるんじゃないかと思って質問通告をしたんですが、これは事実ですか。

森副大臣 これは、代行返上に係る国への納付金につきましては、厚生保険特別会計の歳入に計上されます。一たん歳入に計上された資金は、まず年金給付等に充当されるものですので、代行返上分が一年間、翌年まで寝ちゃうとか、そういうことはございません。

島委員 今のがポイントでして、要するに、代行返上で、基金の中の株の分を売って現金にします。それを納付しますと、保険料、運用収入、国庫負担、そして代行返上のお金を合わせて、そして、それを給付にするんですよ。そうですね、森さん。そうすると、結局、売ったものはそのまま、マーケットに出すことなく、出ることなく、基本的に、年金運用基金の中、要するに給付に回っちゃう、そういう理解でよろしいですね。

森副大臣 まず第一点、基金に返るんじゃなくて、国に返るということでございます。

 それで、確かに、返ってきた分については、運用されずにそのまま給付になるということでありますけれども、それは、お金に番号がついているわけじゃありませんから、特段問題はないというふうに考えます。

島委員 失礼しました。その差が年金資金運用基金に来るんだ、そういうことですね。

森副大臣 今は赤字基調でございますので、差はございません。

島委員 今はそうだけれども、差があった場合には年金資金運用基金に入るという理解でよろしいですね。

森副大臣 そのとおりでございます。

島委員 この年金資金運用基金に非公開経費があるという話になっておりますが、そういう形で差が出て年金資金運用基金に行った場合には、企業が、株、基金であったもの、年金であったものを代行返上したものが、お金になって、今お金には縁がないと言われましたけれども、それが、差が出たら年金資金運用基金に行って非公開経費に行っちゃうということも理論上あり得るわけですね。

渡辺(芳)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど五十嵐先生の方にもお答え申し上げましたけれども、全額、厚生年金の、厚生保険特会という特別会計から出資されてできている年金運用基金でございます。そこの経費は、すべからく年金保険料ということで最終的には賄われておるわけでございますけれども、先ほど副大臣から答弁申し上げましたように、現時点では、保険料収入が年金給付に満たない状況が続いております。

 そういうこともいろいろございまして、年金改革の法案を提出させていただいているわけでございますが、例えば、十五年度当初予算の厚生保険特会の年金勘定のところを見ますと、御指摘の代行返上等の歳入につきましては三・二兆円ほどを見込んでおるということでございますが、それを合わせてようやく特別会計の支出を賄う、こういう状況にあるということでございます。

 副大臣が申し上げましたのは、この条件が全く違って、歳入が剰余という形であらわれる場合に、厚生保険特会から寄託いたします先でありますこうした年金運用基金に支出されることはあり得るということを申し上げました。

 なお、現実には、今、年金運用基金は、旧資金運用部でございますが、財政融資資金から年間二十兆円程度の資金を償還していただいておりまして、それが市場運用分に回っておりますので、こうした、例えば三・二兆円程度の代行返上の基金というものが歳入に計上され、給付に消えていくというプロセスの中でも、市場運用分の拡大というのは現在の状況ではなお続いているというところでございます。

 そんなようなメカニズムの中でございますが、先ほど申し上げましたように、年金資金運用基金の事務諸費等に関しては、法律の規定をもって、これが交付金という形で厚生保険特会から支出されているということでございますので、これも、今現在起きていることとはちょっとまた違いますけれども、観念的には、先生がおっしゃられたようなつながりというものが制度的に存在し得ないわけではない。ただ、今起きているそれぞれの会計の現状というのはそういう状況ではないということを御説明いたします。

島委員 きのう聞きましたから、今は起きていないことは知っています。全部給付に回っちゃっていることは知っていますけれども、制度上そうなんですよ、制度上は。

 だから、営々と積み立てた、各企業のサラリーマンたちが積み立てた年金、代行返上すると、余った場合には、年金資金運用基金というふうにいって、そのときには今問題になっておる非公開経費になるということもあるという話ですが、これも制度的にいろいろな問題もあると思いますので、それをきちんと今後追及していきたいと思います。

 森副大臣、綸言汗のごとしという言葉がございます。口から出た言葉というのは、特に一度出た言葉というのは責任を持たなくちゃいけない、そういう話でありますし、引っ込められないという話でありますが、二十七日の森副大臣と長妻委員との審議、もう一度読みますと、調査に関してのところでございます。

 長妻委員、法律の採決までには、されますね。極力、努力いたします、森副大臣。長妻委員、極力というか、採決までに、じゃ、採決までに出すと、そういうふうに言ってください。森副大臣、努力いたします。そして、誠意を持って努力いたしますということでございます。

 今、誠意を持って、調査はどのように進んでいますか。中間報告をお願いします。

森副大臣 現在、鋭意調査中でございまして、今御報告申し上げる段階ではございません。(発言する者あり)

島委員 これが誠意を持ってということかどうかということの判断は、今、皆さん、委員の各位が思われたとおりでございます。

 この問題につきましては、私どもも、不規則発言で予算委員会での審議だろうということもございましたので、予算委員会でのより深い審議を視野に入れながらやっていきたいと思っておりますので、森副大臣、誠意を持って調査を進めていただけますね。

森副大臣 誠意を持って調査中でございます。

島委員 ということでございまして、これは恐らく、予算委員会での、またもう一度きちんとしたことを視野に入れながらやっていきたいと思っております。

 済みません、たくさん質問通告をしまして、あと五分になっておりますが、私が……

田野瀬委員長 訂正があったようですが、いかがですか。

島委員 訂正ですか。

田野瀬委員長 訂正させますか。

島委員 はい。

田野瀬委員長 渡辺審議官。

渡辺(芳)政府参考人 まことに申しわけありません、貴重なお時間を。

 先ほど、現在では生じていない事態であるし、観念的な話ではございますがと申し上げましたが、業務勘定と年金勘定、運用の勘定というのは完全に分かれておるものでございますから、年金基金の方に積立金剰余が出ていく場合には、これは業務の事務経費の方に充てられるのではなく、純粋に積立金の運用の方に充てられることになるというのが、今起きておりませんけれども、制度的な予定になっております。

 一点、ちょっと誤解を招く発言がございまして、大変失礼いたしました。

島委員 ここは財務金融委員会ですから、厚生労働省に対して少しは惻隠の情を持って私ども接しておりますので、これぐらいで終わらせていただきますが、極めて答弁きちんとしてください。この趣旨については、私、割と通告でもきちんと言っているはずですので、そういうふうにしていただくべきだと思いますので、それをお願い申し上げます。

 幾つか通告をしていますので。

 先回、公的債務につきまして資料要求をしました。資料要求を出して、これはまた本当に誠意を持って出していただきましたので、それについてきちんと委員会で取り上げさせていただきたいと思います。

 その資料におきますと、公的債務を八百七十兆円とした資料が出されました。ただ、これには地方債が入っておりません。国と地方の借金合わせという言葉がよくありました。ということは、これは国と地方の借金を合わせなくちゃいけないと私は思いますので、八百七十兆円と地方債を合わせますと一千六十三兆円になるんですが、国、地方を合わせた公的債務は一千六十三兆円になる、そういう認識でよろしいでしょうか。財務大臣、お願いします。

谷垣国務大臣 私どもも、委員に資料をお出ししましたけれども、できるだけ、一覧して全体がつかめるようなものをどうつくるかというのは、実は今いろいろ作業して研究している最中というのが実態でございます。もう少し早くこういうものがきちっとできて、我々もそういう認識のもとでいろいろな議論をするのが本当は正しいやり方だったと思うんですが、いろいろな性格の差をどう見て今詰めていくかというのは、委員が関心をお持ちになっておられる公的債務管理政策に関する研究会の議論も、いわばそういう、どうやったら一番きちっとできるか理論的にももう少し詰めようという一つの努力の過程でございますので、私どもも、これが一番学問的といいますか、きちっとしたものだというのをお示しするところには実はまだ行っていないというのが実際の姿でございます。

 それで、やや、そういうことがございますのでいろいろなことを前提として申し上げますが、国及び地方という公的主体が負う債務の中には、国債とか地方債、資金調達に伴う債務がございますが、そのほかに、公的年金に係る債務であるとか、それから、国が一義的には履行義務を負わない政府保証債務といったさまざまな性質のものが含まれておりますし、相互に重複もございますので、公的債務の全体像を数字で厳密にお示しするというのはなかなか実は難しい。

 そこで、先ほどの公的債務管理政策に関する研究会では、国の公的債務管理政策の対象範囲について一つの考え方をお示ししたわけですが、そのうち、仮に国の資金調達及び郵貯、簡保、公的年金に係る債務の合計額を、重複分を除いて試算しますと、平成十三年度末時点でこれは八百七十兆になるわけです。国、地方の債務全体を統一的に計算する手法は、先ほど申しましたようにまだ確立しておりませんで、単純に重複分を除いた国の債務、すなわち八百七十兆と地方債残高百九十三兆円を足し上げますと、さっき委員がおっしゃった数字は、国が保有する地方債、それから地方公共団体の保有する国債などが重複して計上されるということになると思います。その辺をさらにどう整理していくかは、我々もこれから懸命に議論してみたいと思っております。

島委員 まず、実態をお互いに認識することが一番最初に必要だと思います。

 恐らく、この国というのは大変な債務を負っていることはみんなわかっているんですが、本当にどれだけかということはわからないというか、そういう状態ですね、今。だから、実態を知った上で、それから財務金融委員会でしっかりとまた審議していって、この国の進路をつくっていくべきだと思いますので、きょうは初めての一般質疑でございますが、これからそういうことを追及していくことを宣言しまして、きょうの質問を終わります。

 ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、永田寿康君。

永田委員 初めて谷垣大臣に質問させていただくということで、私、大変光栄に感じておるところでございますが、ぜひ格調高い質疑にしたいと思いますので、よろしくおつき合いをお願いしたいと思います。

 さて、冒頭、ちょっと通告しにくいというか、恐らく通告しても意味のない質問だと思ったので、僕は役所の職員の方がいらしたときには言わなかったんですけれども、一個、個人的な質問をしたいと思います。

 大臣、大臣は個人的には国債は幾ら買っておられるんでしょうか。

谷垣国務大臣 この前も御質問いただいて、そのときは持っていないと返事をいたしました。今の段階は、家内に少し買えと指示をしている段階でございまして、まだ家内も、そこまで動いて買ったというところまでは行っておりません。

永田委員 これはなぜ買っていなかったんですか。やはり自分で、仕事で、国債を買って買ってと、国民に買ってくださいとお願いをしているのに、谷垣家の家計の中に国債が一円も買われていないというのが大変不信感を招くというか、何でそういうことになっているのかというのを国民がやはり邪推するといけないので、事情を説明してください。

谷垣国務大臣 私、こういうのがいいのかどうかわかりませんが、弁護士時代は、少し経済もわからなきゃいけないと思って株を買ったり何かしていたことがございます。その後、国会へ出まして、いろいろな情報が集まるようなところで、余りそういうそしりも受けてはいけないと思いまして、ややそういう意味では萎縮していたという面もございますし、自分の資産管理みたいなことは控えていたという面もございます。

 そういうことで、国債を持っていないというのが私の家計でございます。

永田委員 ぜひ、日本の大蔵大臣と谷垣家の大蔵大臣が同じ認識で同じ行動をとるように、整合性のとれた谷垣家になっていただきたいと思っておりますので、国民に説明のできるような国債の保有をちゃんとしていただきたいなというふうに思っております。

 さて、最近、為替介入が膨大な額に上っていて、昨年一年間で二十兆円、ことしは一月に七兆、二月に三兆三千億というような金額が発表されておりまして、この是非について議論をしたいと思うんです。

 一つは、この間、補正予算が成立をする前に、財務省が持っていた米国債を五兆円ほど日銀に売却をしたというニュースが流れていましたが、これはどういう事情でそういうことが行われたのか、いま一度御説明ください。

谷垣国務大臣 外為特会と日銀との間で、去年の末取り決めをしたわけでありますけれども、これは、政府が為替市場のいかなる動向に対しても十分な余裕を持って引き続き機動的な対応を行うことができるようにするというのが目的でございまして、時限的な対応で、外為特会が持っている米国債を日本銀行に買い戻し条件つきで売却することとしたものでございます。

 それは、昨年末の時点で、平成十五年度当初予算において外為特会借入金限度額、これは七十九兆でございますが、それと実際の借入金残高の差額が残り少なくなりまして、補正予算による外為特会の借入金限度額の引き上げが実現するまでの間、政府が為替市場の急な動きに機動的に対応することが困難となるのではないかというような印象を市場関係者に与えて市場に影響を及ぼす事態になることを避けることは為替相場安定のためにも必要である、このように考えてやったわけであります。

 今回のこの取引は、米国債の売却残高の上限を十兆円、そして売却を行う期間を平成十六年三月三十一日まで、それで、買い戻し期限を最長で平成十六年六月三十日までという形で限度を設けておりまして、売却価格それから買い戻し価格の算出の際に用いる為替レートは、いずれも売却時の基準外国為替相場を適用するということにしております。

 したがいまして、今回の取引で、日銀が、米国国債保有に係る価格変動リスクや為替リスクを負わないという仕組みになっております。

永田委員 最後に、日銀がリスクを負わないという仕組みにした、そういう部分を強調されましたけれども、なぜそのような仕組みにしたのか、御説明してください。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から御説明申し上げましたように、市場におけるいろいろな印象を避けるために行う措置でございますので、なるべくマーケットに影響を与えないような形で処理をするということが一番原則であります。

 そのためには、取引の相手であります日銀に対してもまた、いろいろな意味でのリスクなり負担を負わせるということは適当ではないということから、先ほど大臣から申し上げましたように、価格について、あるいはその為替の相場について、固定した形で、つまり、日銀が価格の変動のリスクも負わない、あるいは為替のリスクを負わない形での取引をすることによって売買を成立させるということが、いろいろな意味でさまざまな影響を最小化するのに必要なことであるという観点から行ったものでございます。

永田委員 いろいろな意味でさまざまなリスクを最小化させるなんて、そんな抽象的な議論を私はしたいんじゃないんですよ。

 そうじゃなくて、今おっしゃったのは、市場の印象を避ける、つまり、よからぬ印象を持たれることを避ける。すなわち、もうこれ以上介入ができないんじゃないか、介入資金が底をついたんじゃないかというふうな印象を避けるという意味だと、僕は、大臣の先ほどの答弁と組み合わせると、そういうことだと思いました。

 それをするということと、もう一つは、日銀にリスクを負わせないことが適当だと考える、何かそんな答弁だったのかもしれませんが、とにかく、印象を避ける、そういうよからぬ印象を持たれないようにするということと、日銀にリスクを持たせないということは、僕は因果関係が結びつかないような気がするんですが――日銀に売買を成立させると言ったんですね、ごめんなさい。売買を成立させるということは、すなわち、このリスクを日銀が負うような形だと、日銀は買ってくれないんじゃないか、そういうような思惑から、もういいですよ、日銀さん、リスクは負わないで済みますからぜひ買ってください、そういうふうな条件をつけることによって売買を成立させたんじゃないかと僕は思っているんです。

 しかし、確かに、日銀にとってみれば、リスクを自分が負わないようにしてくれれば買いやすくなるというのは事実かもしれませんけれども、市場の印象を避けるということと、売買についてこういうような条件をつけるということの因果関係が私には理解できないんですが、どういう事情でその因果関係が理解されているのか教えてください。

渡辺(博)政府参考人 お答えを申し上げます。

 言葉足らずで申しわけございませんでしたが、まず、マーケットに対してどういう印象を与えるか、あるいはその印象を除去するために何が必要かという行為をするために、とりあえず、外為特会において、市場に対して、必要があれば必要な措置をとるための原資がどれだけあるかということについてのイメージを与えるというのが、先ほど大臣が最初に申し上げたことであります。

 では、そのときに、その必要な原資をどのような形で調達するかというときには、特段日本銀行に限らず、いろいろな道はあるわけでありますが、現在の為替の状況からいいまして、別の形で売買を行いますと、為替市場の方に逆向きの影響を与える、あるいは憶測を与えるということもありますので、一応、市場の外での取引として行い得る対象として日本銀行にお願いするのが適当ではないかというふうに私どもとして考えたわけであります。

 それを日本銀行にお受けいただくに当たって、為替リスクなり価格変動リスクを与えるような形での売買をお願いするのか、そうではなくて、それは外為特会の方が処理をする形でお願いする方がいいのかということを考えた上で、私どもとしては、リスクがない形で日銀との間の売買の仕組みをつくることが適当ではないかということで行ったということでありますので、市場と日本銀行の間に直接の因果関係があるわけではないというのは委員御指摘のとおりであります。

永田委員 本件売買契約は、どの法律のどの条項に根拠を置いて行われた行為なのか教えてください。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 外国為替資金特別会計法、これが外為資金についての会計の処理の仕方を定めたものでありますが、その第一条に基づいて行ったものでございます。

永田委員 第一条のどの規定ですか。

渡辺(博)政府参考人 長い文章でありますので要点だけで申し上げますと、第一条に、「政府の行う外国為替等の売買及びこれに伴う取引を円滑にするために外国為替資金を置き、その運営に関する経理を一般会計と区分して特別に行うため、特別会計を設置する。」というのが本条の趣旨でありまして、その面におきまして、一番冒頭に申し上げました政府の行う外国為替等の売買を日銀との間で行ったということでございます。

永田委員 しかし、これは設置法ですから、第一条で設置をするというのは当然ですが、これは、特別会計を設置するという規定ですよね。

 特別会計はそこにあるんですよ、あるんだけれども、その後に、その会計を使って何をやるかという行為は別の条文に規定されているはずじゃないですか。この第一条の文章の一番最後は「特別会計を設置する。」と書いてあるだけですからね。だから、これをもとに何か行為ができるというわけじゃないんですよ。別の部分に行為を根拠づける規定があるはずですけれども、それは何ですか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、一条に合わせまして、第五条「外国為替資金は、外国為替等の売買に運用するものとする。」と書いてあります。これで行ったという御指摘の方が正しいと思います。

永田委員 売るまでは多分法律に根拠があるんでしょう。問題はそこから先です。

 ここで得た資金を使って為替介入を実際に実施しましたか、していませんか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 日銀との売買を行った段階において借入金限度額が既に枯渇していた状況ではございませんので、どの部分がどこに充てられたかというふうに御質問されますと、ちょっとなかなかお答えしがたいことはありますが、その分だけ外国為替資金特会において円資金がゆとりができましたので、それを含めて実際の介入を行ったというふうに御解釈いただいて結構でありますが、そのうち幾らの分が充てられたかということについてはちょっと難しいと思います。

永田委員 そこで得た外国為替資金を、要するに、第五条「外国為替資金は、外国為替等の売買に運用するものとする。」、それに基づいて米国債を日銀に売った、そこで円資金が手に入った。この円資金を使って為替介入をやってもいいという法律上の根拠はどこにあるんですか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 外国為替資金におきまして、外貨建ての資産及び円建ての資産がある場合に、円建ての資産を見合いとしてそれを外国為替に運用するということが本来の会計の趣旨でございますので、そういう形で円を使って外国の為替を売買したというのが介入の意味でございます。

永田委員 この外国為替資金特別会計法は、為替介入を根拠づける法律だと僕は思いますけれども、その介入資金としてはどのようなものが許されていますか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 外国為替資金特別会計法の第四条でございますが、「外国為替資金に属する現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をし、又は融通証券を発行して、一時これを補足することができる。」したがって、現金あるいは広い意味での余裕金がない場合には、一時借入金または融通証券の発行によって調達することができるというふうに記されております。

永田委員 つまり、介入資金に不足がある場合には、その調達方法としては、一時借入金または融通証券の発行で手当てすることがこの法律で予定されている行為だというふうに私は思っていますけれども、認識が違いますか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 全体についての運用をする中で、どれだけの現金を持っているか、持っていないかということで仕切られているわけでございますので、仮に、手持ちの外国為替あるいは外国通貨建ての証券を市中で売却をして、その売却代金が入ってきても、それは現金になるわけでございますし、今回の場合は、日銀との間で買い戻し条件つきの売買を行いまして、外国通貨建ての証券を売って、その見返りの円代金を特会がいただいて、それで現金が造成されているわけでありますから、それを使って介入を行ったということでございます。

永田委員 この法律は、そういうことを予定していないでしょう。やはり、借入金あるいは融通証券を発行することによって資金を調達するということがわざわざ書いてあるということは、これはやはり、確かに運用して売買するというのはこれは当然の行為ではありますけれども、日銀に売ってまで、米国債を日銀に買わせてまで円資金を調達して、それで介入するというのは、僕は、この法律の当初予定していたこととは全然違うことなんじゃないかというふうに思っているんですけれども、これは法律の想定の範囲内だというふうにお考えですか。

渡辺(博)政府参考人 お答えいたします。

 外為特会においてどのような形で資金あるいは資産を保有するかということについては、運用全体を特別会計にゆだねられているわけでありますから、それを全部現金の形で持つ、その現金が外国為替であるのか、あるいは円現金であるのか、それは資産と負債の両側に立つわけでありますけれども、それについてゆだねられているというふうに思いますので、今議員が御指摘になったようなことも含めまして、本法の対象に入っているというふうに我々としては認識しているものではございます。

永田委員 一方、この特別会計が、為替介入の資金として、資金を調達するための手段として法律上明文化されている借入金、借入金の枠は、予算でその上限を定めることになっていますね。実際定められています。これはなぜ、予算で借入金の上限が定められているというふうに、法律の趣旨は、本旨はどういうふうに理解されていますか。

谷垣国務大臣 特会の予算総則で最高額を規定しているわけですが、その趣旨は、一定額以上の借入債務を行政の裁量によって負担するということを規制しようということだろうと思います。ここまでは負担していいけれども、それ以上はだめだと。外為特会の運営が要するに不健全に陥らないようにするために、その限度額を国会の議決によって定めていただくということだろうと思います。

 他方、今回の日銀との保有米国債の買い戻し条件つきの売却は、これは売買取引でありますが、外為特会において新たな債務を負うものではない。そういう意味で、限度額の制限には抵触しないというふうに考えているわけでございます。

 それで、過去にも同様の形態の取引を行ったことがございますけれども、今のような考え方に基づいて実施したものでございます。

永田委員 今の大臣の答弁、特会が大きな負担を負わないように、そして、特会の運営が不健全な状態に陥らないようにするための制限であるというふうにおっしゃいました。

 この制限を課さないとどういうような事態を招きかねないと、どういうような事態になったら不健全になるかもしれないと、いや、何か想定している部分があるからそういう制限を加えているんでしょう。どういう事態に、どういう不健全な事態に陥らないようにするために制限を加えているというふうにお考えですか。

谷垣国務大臣 これはやはり、国会に見ていただいて、この辺までなら為替のあり方として妥当だろうとその都度その都度国会で認定をしていただくということでございますから、数値をもって、どこが今健全で、不健全であるかということは、なかなかお答えは難しい。それは過去の積み重なりもございますから。

 ただ、そこは国会の御議論を経て我々も考えよう、考えようといいますか、国会の議論をしていただいて、上限を定めていただいて、その枠内で我々が行動しよう、こういうことでございます。

永田委員 借入金の限度額を定めているというのは、きのうも実は財務省の方にもお越しいただいて御説明をいただいたんですが、その中で私が強く印象に残っているのは、やはり、限度を超えた大きなリスクをこの特会が負ってはならない、そういう趣旨から借入金の限度額を定めているんだ、こういう説明を受けました。大臣、これは、こんな認識もあるんだと僕は思うんですけれども、よろしいですね。うなずいていらっしゃいますから、多分外れる話じゃないでしょう。

 ただ、限度を超えた、要するに無制限にリスクを負ってはならないという話だと思うんですけれども、日銀に実際売却をした米国債、その米国債の価格変動リスクないしは金利リスク等々は、今はこの特会が負っているわけですよね。つまり、これは買い戻し特約がついているわけで、つまり、五兆円を売ったんだったら、その五兆円分のリスクはこの特会が負っているという認識でよろしいんですよね。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、売却の価格、それから買い戻しの価格の場合の、まず、為替相場については基準外国為替相場、これは一月から六月まで同じでございますから、今百十五円。その間のいわゆる運用利回りといいますか、つまり、日銀が円を提供していただいたことに対する、対価と言うと変でございますけれども、それにつきましては、その当時の政府短期証券の利回りを参考にして、それに日数分を掛けてということでございますから、まさに円建てで金額は固定されているわけであります。

 したがいまして、あと、リスクはまさに外為特会が持っているということでありますが、そのリスクはアメリカの財務省証券そのもののリスクでありますので、今あるかどうかと言われると、なかなかお答えしがたいところですが、我々としてはないと思っておりますが、いずれにせよ、日銀がリスクを負うのではなくて、外為特会の方が米国財務証券を持っている形で処理をしているというふうに認識していただければと思っております。

永田委員 そうなんですよ。そこが問題なんですよ。本来のこの仕組みの法律の趣旨というのは、借入金の限度額を予算で定めることによって、過度のリスクを特会が負わないようにしようというのがこの法律の趣旨だったんですよ。

 ところが、今、日銀に形式的に売却をした五兆円分の財務証券は、これは、その財務証券から発生する為替リスクとか金利リスクというものは、もし仮に発生すれば、数字が確定すれば、それはこの特別会計が負うということになっている。これは、局長もうなずいていらっしゃるので間違いないと思うんですよ。

 この五兆円分のリスクを七十九兆円分の為替介入資金のリスクに、それはもうほとんど上限いっぱいいっぱいまで介入はしたんでしょう、それに加えて、さらに上乗せで五兆円分のリスクをこの特会が負っているということなんですよ。それは、法律が本来、予算で借入金の上限を決めようとした意思を逸脱するものではないかと私は思っているんですよ。いかがですか。

渡辺(博)政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の日銀との売買につきましては、まず、昨年の暮れに、補正予算及び十六年度予算の姿が明らかになりまして、いわゆる政府の側の意思が明らかになって、補正予算で百兆円に借入限度額を増額する、あるいは、十六年度予算におきまして、それを百四十兆まで上げる。

 したがって、今の七十九兆円が、仮に補正予算が成立した場合、あるいは本予算が成立した場合にどこまでいくかということを見た上で、その中において、為替市場においてさまざまな動きがあったときにどれだけ適切なことができるかということを、どういう形で配慮をするかということでやったわけであります。

 先ほど五兆円とおっしゃいましたが、実際は十兆円、二回に分けて、五兆円、五兆円ということで日銀との売買をしていますから、十兆円弱、今、日銀に行って、また若干、既に買い戻しを行っておりますので、そういう状況にあるわけであります。

 したがって、その間の売買というのは、今申し上げたような形で、為替市場において不規則な状況が起こったときに、どのように政府が対応するか。そのためには、やはり、外為特会においてある程度資金のゆとりがあることは必要である。それを行うために何ができるかということからいいまして、先ほども申し上げました、外為特会において想定されております売買という手法を使って行う。

 その売買という手法を使って行う場合に、市場において、日銀以外の第三者、それは内外含めてでありますが、そういう方たちに売って円に取りかえるということもできるわけでありますけれども、現状においてそういうことがいいのかどうか。もちろん、ドル以外の通貨も持っておりますから、ドル以外の通貨を売って円にかえるということはできるわけでありますけれども。

 そういう状況の中で、今申し上げたような規模、五兆円あるいは十兆円というような規模を行うのに当たって、日本銀行との間での取引をすることは望ましいということで行ったわけでありますから、そういう意味でのリスクの問題は、先ほども申し上げましたように、本源的に持っているものについてのリスクの問題はございますけれども、それ以上のリスクを抱えたというものではないというふうに思っております。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

永田委員 では、別の切り口で質問しますけれども、売買をする、売ったり買ったりする、これは普通に考えたら、米国債をだれかに渡して、かわりに対価として円通貨を受け取る、これが売りですよね。売買というのはそういう行為だと認識していますけれども、買い戻し特約をつけたり、これは買い戻し特約って言っていいんですよね。買い戻しをするときのレートも売るときのレートも一定のものに固定をするという特約もつけているわけですね。この特約をつけたのは、どういう法律的な根拠に基づいて行われた行為なんですか。

渡辺(博)政府参考人 先ほども申し上げましたように、外為特会において売買ができるという規定がございますので、売買というのは、いわゆる売り切り、買い切り、あるいは条件つきの買い、売り、すべてを含んでいるというふうに思いますので、その中において対応したということでございます。

永田委員 うそでしょう。やはりそんなことやっちゃいかぬでしょう。これはリスク保証をしたんですよ、買い手に対して。日銀だから、買った側に対してリスク保証をしたんですよ。リスク保証をすることがこの特会に許されているんですか。どういう法律的な根拠に基づいてやっているんですか。

 この売買というのは、ここに、第五条に規定されている売買の運用という言葉の中に、リスク保証した上での売買契約も含まれているというのは、一体どこから出てくる解釈なんですか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 今、リスク保証という御議論がございましたけれども、まず、外為特会において、先ほども申し上げましたように、この一月一日から六月三十日までにおいて、一定通貨、例えばドルであれば百十五円という金額が固定されているわけでありますから、まず、そういう意味で、特段、日銀に対してフェーバーを与えるという意味ではなく、一月一日に売りが始まり、六月三十日までの間に買いがあった場合には、いずれにしろ百十五円ということは、まさに現状の特会の仕切りでそういうふうになっているということであります。

 あとは、売却価格に対して買い戻しの価格の方が高くなっているわけでありますけれども、これは、日銀が通常持っている円資金を運用された場合に想定される金利、それを我々としては、あるいは日銀と御相談をした上で、政府短期証券というのが、本来の契約自体は九十日とか百日とか短いものでございますから、それに該当する金利としてはそれが一番適当であろうということで、それを日数分に割り戻して乗せたものというふうに思っております。

 そういう意味でのリスク保証ということではなくて、まさに、先ほど申し上げましたように、アメリカ財務証券そのものについてのリスクがあるとすればそれは我が外為特会が負い続けているところでありますけれども、今、アメリカの財務省証券についてそういったリスクがあるかということについては、我々はそういう認識を持っておりません。

永田委員 それでは運用じゃないじゃないですか。米国債を日銀に売るときと買うときが額面としては同じ値段になっている。そして、日銀に対しては、金利相当分を上乗せして、買い戻すときにその分高い値段で買ってあげるという話をするんだったら、これは、運用とは言わずに、単にリスクのない利益を日銀に供与しただけじゃないですか。こんなものは運用とは言わないですよ。第五条が想定している運用はこういうことじゃないんじゃないですか。

渡辺(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、特別会計において売買を行うあるいは運用を行うと書いてあるわけでありますけれども、さまざまな手段があるということは先ほども申し上げたようで、日本銀行以外の内外の、投資家と言うと変かもしれませんが、買い手に対して同じことをする、あるいは売り切りのこともするということも含めた上で、何が一番影響が少ないか、ロスが少ないか、総合的に勘案してやるということも運用の内容だというふうに我々は理解しております。

永田委員 いろいろな特別会計があると思うんですよ。あるいは、例えば特殊法人とか独立行政法人とかそういうところが行っている事業というのは、独立した会計で行われているものもあって、例えば道路公団なんというのは道路という膨大な資産を持っているし、それを売却することもあれば、都市基盤整備公団なんかも、さまざまな財産を、不動産を初めとして持ちながら、これを売ったり買ったりしているわけですよ。

 そこに、買い戻し特約とか、値段を決めて、先に指し値で買い戻すときの値段をつけておく、それはあれですよ、西武不動産がやっているのと同じじゃないですか。総会屋に対して、あなたにはこれを幾らで買ってあげるからと言って特約をつけて売ってあげるのと同じじゃないですか。そんな利益供与が許されるのかという話なんですよ。それを財務省は広範に認めるということなんですね。

 世の中の法律には、特別会計とか特殊法人の独立した会計とかさまざまなものであちこちに売買という言葉が出てくるけれども、そこには、買い戻すときの値段を売るときと同じにして固定しておいて、そこにさらに幾らで買い戻すかという金利分を上乗せしてあげたり、要は、買い手、相手側としてみれば全くリスクを負わずに利益が出るような、そんな売買契約も売買という言葉の中には含まれる、そういうふうに財務省は解釈しているというふうに受け取っていいわけですね。

渡辺(博)政府参考人 今回の我々の買い戻し条件つきの売買の相手方について、今議員が御指摘のような表現をされるのはやや我々としては不本意でございますけれども、先ほど申し上げましたように、まず、売り値、買い値につきましては、為替の価格については外為特会法上そういう形で規定をされているということでありますので、これは特段裁量の余地があったわけではございません。

 あとは、先ほど申し上げましたように、円資金が日銀から我々に来、逆に我々から外為証券が行くという中で、日銀も資産の健全性を図らなければならない立場の中において、それに必要な対価が何であるかということをお互いに探って、それは、当時で言えば政府短期証券の利回りというのがそれに該当するではないかというふうに考えておりますので、その限りにおいて、特段の利益供与というのには当たらないというふうに我々は思っております。

永田委員 こんな、売買でリスクが生じないような、まるっきりリスクがなくて、それで金利分だけもうかるなんという、そんなおいしい取引があるんだったら、今度私のところに持ってきてくださいよ、やりますから。何兆円も買えるとは思いませんけれども。

 これは、全然、第五条の売買の運用というのはやはりこういうことを規定しているんじゃないでしょう。相変わらず質問に答えていないんですけれども、財務省としては、それは国際局のお話かもしれないけれども、売買という言葉が法律に出てきたら、買い戻し特約をつけて相手に一方的に利益をもたらすような、そういう契約をしてもいいというふうに考えているんですね。これはちょっと法律的な解釈ですから、教えてください。

渡辺(博)政府参考人 売買という言葉の中に、いわゆる売り切り、買い切りのものとあわせて買い戻し条件つきあるいは売り戻し条件つきのものが入るということについては、我々はそういうものだと思っております。

 ただ、利益供与をそういう形でやることができるかということについては、そういうことはやるべきではないと思いますし、それはできないというふうに思っております。まさに、適正な市場で形成される対価、あるいはそれにふさわしいもの以上のものを利益供与するということについては、ちょっとほかの特会について私はお答えする権限がございませんけれども、そういうことではないというふうに確信をしております。

永田委員 国際局がどんな確信をしていても関係ないんですよ。ここは、政府が考えていることが国民に納得できるような形で説明がされるかどうかということを審議しているんであって、国民が納得をしなきゃいかぬのであって、それを国民一人一人に対して納得する説明をするのは手間だから、国民の代表を選んで会議をしようというのが国会の意味じゃないですか。だから、自分たちがどういう確信をしているかということはこの際余り関係ないことなんですね。

 ぜひ、もう少し、私たちがああなるほどなというふうに感じるような答弁をしていただきたいなというふうにお願いをしておきます。

 それで、財務大臣、では、今回補正予算で百兆円、本予算で百四十兆円というように借入金の限度額をふやすというようなことをやっているわけですけれども、それをなぜふやさなきゃいけないんですか。だって、こんな形で、財務省のこんな特会が買った米国債を政府短期証券の金利でもって日銀に買ってもらって、またそれを介入に使えるんだったら、何もこれは上限をふやす必要はないじゃないですか。無制限に買ってきて、無制限に日銀に売りつけて、無制限に資金調達してやればいいじゃないですか。何で、こんな借入金の上限をふやすなんという面倒くさいことをやるんですか。

谷垣国務大臣 面倒くさいことをやっているわけではございませんで、やはりその都度国会で御議論をいただくという姿が定められている姿でありますから今回お願いをしたということで、極めて明快な話でございます。

永田委員 いや、必要性がないじゃないかという話をしているんですよ。だって、七十九兆円のままだって、枠なんて本当に、数兆もあれば、その分だけ買ってきて、また日銀に即時に売ってまた資金調達してとやれば、日銀は無尽蔵に円通貨を発行する権限があるわけですから、だから何の不都合も生じないと思うんですけれども、どういう不都合があったから、どういう必要性があったからそういう予算の限度額の変更を行ったのかという説明を求めているんです。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 それは、先ほど国際局長が答弁いたしましたように、限度額がないことによって市場のやたらな思惑があってはやはり困るというようなことから先ほどのような日銀との契約を結んだわけでありますけれども、しかし一方で、限度額が因で筒いっぱいになってきていたことも当時事実でありますから、それはやはり国会に出して御議論をしていただくというのが私たちのとるべき道だ、こういうことではないでしょうか。

永田委員 各特別会計を担当している財務省の方々、部局の方々も日銀も、法律に従って正しい行動をしたつもりにみんな見えるんですよ。確かに日銀法の方では、これは売買契約、四十条ですか、日銀法の四十条だか四十三条だか、何かそういう法律に基づいて買い入れ契約を結んでいるわけですよ。皆さん法律に基づいて正しい行為をやっているように見えるけれども、全体として見れば、日銀が米国債を買っているということはもう、そういうふうに外見的にはやはり見えますよね。間違いなく日銀は今十兆円弱の米国債を保有しているわけであって、そのリスクは確かにこの特別会計が負っているのかもしれないけれども、外見的には日銀がやはり買っているわけですよ。

 これから、これからという言い方も変だけれども、米国債の発行残高は七兆ドルぐらいになっているんですか、そのうち十兆円に近いような金額を日銀が買った、そしてこれからこの特別会計自体が総額百四十兆円に及ぶような為替介入をすることが可能になるということは、総額やはりそれぐらい買うことに多分なるんでしょう、今後の推移を見てみると。結局、米国債の発行残高のうち二割に近いようなものをこの特会が持つようになるという話になると、一体この特会とか日銀というのはどこの国の制度なんですかという話になっちゃうんですよ。結局、アメリカの財政を助けているだけじゃないかというふうに見えちゃうわけですね。

 それはやはり僕は不健全なことだと思うし、それを合理化するというか、日本の政府とそれから日銀がそれだけのリスクを負うということについて、国民に対してちゃんとした説明が必要だと思うんですよ。なぜこういうことをやる必要があるのか。それは為替介入資金をたまたま運用しているから結果的にそうなっているだけですという説明じゃ国民は納得しないと思いますよ。なぜこういうことをやらなきゃいけないのかという、そのリスクを負うだけの価値があるんだということはやはりちゃんと説明してください。

谷垣国務大臣 私どもは、一定の為替水準を維持しようとか一定の方向に誘導しようということを考えて介入をしているわけではありません。

 これもたびたびこの委員会でも申し上げていることでありますけれども、やはり為替というのは経済のファンダメンタルズというものを安定的に反映していくというのが、これは日本にとっても望ましいことであるし、日本と取引をする諸外国にとっても私はあるべき姿だと思います。

 ただ、これも何度も申し上げて、同じことばかり国会で繰り返すのもいささかいかがかと思いますけれども、市場は、先ほど申しましたように、いろいろなプレーヤーが参加しますから、実需に基づいて取引をしようという方ももちろんありますけれども、投機的な思惑等で走っていくということも、これはあります。それから、そういった動きがありますときに、これはいろいろな国によっていろいろな事情があると思いますけれども、我が国の場合には、貿易等いろいろなことがございますので、そういった影響をやはり受けやすい体質というものがあると思います。

 それに対しては、では円を国際化しなきゃいかぬとか、いろいろな議論がありますし、それはそれで努力をしなきゃならぬことだろうと思いますが、急激な為替の動きに対しては我が国はやや弱いと申しますか、市場も非常にナーバスになっている面が私はあると思いますので、それは、おかしな動きといいますか、急な動きが起きたときに介入をする必要が私はあるんじゃないかと思っております。

永田委員 一般論として言えば、投機的な動き、それから急な動きがあったときには為替の急激な変動を抑えるために為替介入する必要があるというのは、それは一般論としてはそうなんですよ。

 問題なのは、今個別に、具体的に見てみて、去年は二十兆円、ことしはもう既に十兆円という介入が行われているわけですよ。しかも、その背景には、大臣は投機的な動きは注視していかなきゃならないということを再三おっしゃっている。

 そして、今私がこの発言のすぐ直前にやった発言では、今これほどのリスクをこの特別会計と日銀が負うことにどういう正当性があるのかということを国民にきちんと説明する必要がある、自分たちはどう思っているという、自分たちのつもり、都合を説明するだけではなくて、国民が納得をするということ、私たち国民の代表が納得をするということが大切なんだということを申し上げた上で、大臣が投機的な動きを注視していく必要性があるからだというふうにお述べになった。

 であるならば、昨今の具体的な為替介入の金額、二十兆円なり十兆円なり、こうしたものを正当化する具体的な投機的な動きに関する言及がないといかぬわけですよ。それは、一般論として投機的な動きがあれば常に介入は機動的にやっていかなきゃいかぬ、そういう話で正当化するんではなくて、去年二十兆円、ことし十兆円という介入をしたわけですから、それに対して投機的な動きは注視していかなきゃならぬという理屈づけをお述べになったんであれば、具体的にどの辺に投機の兆候が見られるということは言及されないと議論が成り立たないんですよね。

 ぜひ、最後にそのことに一言言及をしていただきたいと思います。それが終わったら質問を終わります。

谷垣国務大臣 これは、永田委員がおっしゃったことにすぐ全部お答えできて、もう私もこの腹の中にあるものを、コイの吹き流しじゃありませんけれども、全部見てくれと言えれば、これはまたこれで一つの議論で、もっと永田委員と実りある議論になると思うんですけれども、なかなか、さつきのコイの吹き流しだ、どうだというのを、市場をにらみますと、いかないところがつらいところでございまして、そういうつらい顔をしながら議論をしているということも御理解をいただきたいと思います。

永田委員 恐らく、私が以前予算委員会で申し上げた、財務省によるドル買い介入そのものが投機を招いているんだということをお認めにならなきゃいけなくなる展開になるのでお逃げになったんだと思いますけれども、秘密会を開いても何でも構いませんから、ぜひ腹の中にあるものを全部ぶちまけていただきたいとお願いを申し上げまして、きょうの質問はこれにて終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 きょうは、先週の二月の二十六日に発表されました金融検査マニュアルの別冊、中小企業向けの融資編、これにつきまして竹中大臣並びに金融庁の皆様方に御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、この金融検査マニュアル、平成十一年に策定をされ、そして金融機関の検査という形で広く使われてきたわけでありますが、機械的、画一的な適用というものに対して、なかなか実態にそぐわないんじゃないか、中小企業、特に小さな零細企業などはこうしたマニュアルの運用に十分乗らない場合がある、こうした声を受けて、財務状況、財務諸表だけを見て決めるのではない、もっときめ細かい運用が必要だということで、平成十四年に金融検査マニュアルの別冊が策定されたわけでございます。

 そして、この別冊を運用していく中で、さらに中小企業団体や金融団体、さまざまな方面からの声を聞いて実質的に運用を変えていけるような形に変えていこうということでつくられたのがこの平成十六年版の金融検査マニュアル別冊である、こう認識しております。

 さて、このマニュアルでございますが、今回の改定におきましては、適用を受ける側、あるいはそれを運用していく者、双方にしっかりと世情に合ったものに変えていこうということがあったかと思われますが、まず私は、このマニュアルの適用を受ける側である企業、いわゆる借り手側ですね、インセンティブとでも申しましょうか、借り手側がこうした検査を受ける上ではこういう形で十分評価してほしいという、そんな要望を酌み取ったというマニュアルの中身につきましてぜひお伺いをしたいというふうに思います。

 このマニュアルの中で、借り手側、中小企業の経営実態というものをきめ細かく勘案する、こういうことで、実質的な与信を受ける力、受信力とでも申しましょうか、この実質的な受信力をどう評価してもらえるかということが非常に重要な観点であると考えます。

 それで、この金融検査マニュアル、私も資料をいただきましたが、これを見ていきますと、まず、そうした実質的な受信力を高めるため、確認するために、十分に意思疎通を図りなさいよということを大前提に掲げておられるわけですが、その中で、平成十四年に、既に、中小企業というものは特別な状況である、大企業のように財務諸表だけで評価できないんだということが議論されておりました。この財務諸表だけで十分議論できないということでポイントとなったのが、代表者との一体性という部分であります。

 この代表者の一体性というのは、例えば代表者が会社に対して貸し付けをしているあるいは多額の報酬を受け取っているというような形の部分においては、これは単純な会社側の借り入れであったり、あるいは報酬支払いというよりも、中小企業などというものは代表者と企業が一体になっている。公私混同も甚だしい部分も確かにあるんですが、そういったところではこれは資本とみなしていこうということで、中小企業の実態に即す形で資本へのみなしを行おうということが十四年にも考えられた。これがこの代表者との一体性の観点であります。

 私自身も中小零細の企業におりました。これはよくわかります。実際、親方が公私混同、もう全くごっちゃになって、しかしながら、会社のためには何とかして、それこそ自分が財産を削ってでも守っていこうという姿勢がかいま見える。だから、財務諸表だけで読み取れるものではないという、こうした観点が酌み取られたのは非常に大事なことであるとは思っています。

 そして、この代表者との一体性という観点と、もう一点、十四年にこれは組み込まれていますけれども、企業の成長性という部分ですね。この企業の成長性、これについてはだれもがなかなか読み切るのは難しいとは思われますが、しかし、大企業のように大きなパイで物を動かしている会社ではない、例えば小さな町工場、こういったところできらりと光る技術、こういったものが潜在的な目に見えない成長性である。こういうことをしっかり評価していこう、きめ細やかに見ていこうということ、これが、この十四年、並びに今回も、十六年も継続しておりますが、中小企業に対する借り手側の実質的な受信力を評価する目線として大事だ、こういうふうにこのマニュアル策定の中では考えられていると私は受け取っています。

 ところが、実質この運用の過程におきましては、例えば、先ほどお話ししました代表者との一体性の問題、これは中小零細でいえば当たり前の話であります。殊さらにこれを取り上げて、この部分を今まで十分に確認できていなかったのかと、金融機関に対して私は逆に民間におった立場では文句さえ言いたくなるような気分でありますが、こうした当たり前といえば当たり前な話の部分。さらには、企業の成長性ということで見れば、何をもって成長性とするのかということでいいますと、これも担当の方にお話を聞くと、右肩上がりの数値実績があるという、こんなお話がありました。あるいは業界誌に取り上げられている、あるいは後継者が存在する、これは息子さんとかそういった形だと思うんですが、これが潜在的な成長性を裏づける、きめ細やかな対応の中で潜在的な成長性を裏づけるという大きな要因として評価するとなっているわけですが、右肩上がりの数値実績で成長性があるというのは、これは当然なんですよ。この数字を見て、だれもが成長しないなどとは感じない。そして、後継者が存在することによって、これが潜在的な成長性があると。

 果たして、このマニュアルに書かれている本来の趣旨の部分で、具体的な運用の中で、今申し上げたような企業の潜在成長性であったり、あるいは代表者との一体性という部分、いいことは書いてあるわけですけれども、この部分で本当にしっかりとこのマニュアルの運用の過程の中で評価できていくのか、これにつきましてまず御所見を伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 検査マニュアル別冊、中小企業融資編の運用でございますけれども、ただいま御指摘いただきましたように、代表者との一体性につきましては、今般の別冊の改定では、従来からその一体性に着目していたわけでございますけれども、例えば代表者等からの借入金につきましては、借入金の回収の意思の確認がなくてもその中小企業の自己資本相当額に加味することができるというような点をさらに明確化したというようなことがございます。

 それから、成長性につきましては、今御指摘いただきました右肩上がりの数字というのはもちろんでございますけれども、御指摘いただいた業界誌への記載とかあるいは後継者の存在とかといったことにさらに加えまして、当該企業が持っている独特の技術力であるとか、あるいは代表者の当該地域における信頼性であるとか、あるいは販売のネットワークであるとか、そういったことにも着目しようということでやっておるところでございます。

 それで、平成十四年六月にこの別冊というのを策定いたしておりまして、それ以降、その検査においては、特に中小企業向け融資については、先ほど先生からも御指摘いただきましたように、財務諸表には直接あらわれないような中小零細企業に独特の定性的な要因というのをきめ細かく拾い上げようということで努力をいたしておるところでございまして、具体的に各検査官への研修というのも密度の高いものをやっておりますし、私ども、その検査をやります場合には、立入検査期間中に検査班とは別の人間が検査モニターという形でその検査を受けている金融機関にお邪魔いたしまして、頭取から進行中の検査のパフォーマンスについて御意見を伺うというようなプロセスも設けておりまして、そういう中でこのマニュアル別冊のできるだけきめ細かい反映ということに努めておるところでございます。

馬淵委員 今御指摘の部分、これも私は見せていただいて、よくわかるんですよ。例えば、ここにも書いています、成長性の部分では、ISO等の資格の取得状況等をも含むとか、あるいは中小企業診断士の評価なんかでよく評価されている部分があるとか、いろいろなことが書いていますがね。私が言いたいのは、マニュアルというものが整備されて、そしてここまできめ細かくできたよということで評価すると言いながらも、いわば市井に生きる者でいえば当たり前のようなことをマニュアルの中に列記しているだけで、潜在成長が評価される、あるいは先ほどお話があった一体性の部分に関しても、返す意思、改めて会社に貸し付けたお金を返せという意思表示がない限りはそのまま資本に組み込むという部分、これも通常の小さな会社の中においては当たり前の部分なんですよ。これを殊さらにマニュアルの中できめ細やかな対応だと言って御指摘されても、私は、果たして金融機関の担当者がこれを十分知悉の上で行動できるかというのは、本当に疑問に感じるわけなんです。

 そして、借り手の問題の中では、平成十六年、今回の改定の中にはもう一点組み込まれました。これは金融庁さんの方でこれも重要だなということで一点入れられたというふうに聞いていますが、キャッシュフローなんですよね。財務諸表で損益だけでなくてその潤沢な資金、まあ潤沢までいかないかもしれませんが、少なくとも資金繰りの試算、試算表レベル、こんなものがしっかり確認されて、赤字だけれども、損益厳しいけれども、何とか自転車操業で金は回っていくんだという、そんなところを評価しようという取り組み、私はこれはなかなかいいなと思ったんですが、これも担当者の方にお尋ねしますと、当座預金残高の推移に着目すると。この程度の話であるならば、これはよく考えてください、当座預金残高の推移を見て、なるほどこの企業は回るなと見えるレベルというのは、これは全然問題ないんですよ。

 私が言いたいのは、企業経営の中で、本当に厳しい経営の中では、銀行の当座預金に十分にお金が置けない中で、それこそ経営者がみずから、今、自分とは人格が別の親戚のところから、あるいはおじいちゃんのところからそうした試算のところのお金を持ってきて、それをキャッシュフロー、すなわち運用に充てている、会社の資金繰りに充てているというのは、これは現状としてよくある話なんです。

 つまり、私が申し上げたいのは、このマニュアルの中で、突き詰めていろいろなことを書いておられると言っておりますが、現実に即するような部分という表現が全く見られない。果たして、このマニュアルという部分でキャッシュフロー重視とおっしゃってはいますけれども、本当に重視されているという姿勢がここにあるのかどうか。これは、具体的な方法論よりも、今申し上げたように、借り手側の部分に関して、適用を受ける側が要望したことに対して、これで十分対応できているとお考えでしょうか。これは、大臣、ちょっとお答えいただけますか。

竹中国務大臣 委員お尋ねの、企業の実態に即した、特に中小企業の実態を踏まえた検査の実施、これは我々にとって最も重要な仕事の一つであるというふうに思っております。実は、そもそもこうした検査マニュアルの中小企業融資編をつくったということは、とにかく中小企業の実態は多様であって、その多様な実態に即してやれ、それが大前提なんでございます。実はその一言に尽きるわけであります。

 しかし、さはさりながら、そうはいっても、これはもうこの委員会等でもいろいろな御指摘をいただいたわけですが、実態に即したことをやれというふうに言っても、現場ではなかなかそうならないぞ、現場では、場合によっては銀行にも、検査の名をかりてといいますか非常に厳しい対応をとったこともあったぞと。そういう状況の中で、できるだけわかりやすく事例なんかを示していって、実態に即してやってくれという趣旨が徹底するように我々もある意味で非常にきめ細かい対応をしようではないか、それが今回のマニュアルの改定につながっているわけでございます。

 しかし、まさに委員おっしゃったように、世の中の事例は本当に多様だと思います。したがって、マニュアルをどんなに丁寧につくろうとも、それですべてを書き切れるわけではない。しかし、我々としては、できるだけいろいろな状況に即して、かつ、今までのいろいろな実例の声も踏まえて、できるだけ効果のある事例をわかりやすく書こうとしたのが今回のマニュアルでございます。

 しかし、マニュアルはしょせんある意味でマニュアルでありますから、全部を、万象これはとても書き尽くせるものではない。したがって、我々は、マニュアルはマニュアルとしてしっかりつくって、かつ、これをやはり現場に周知徹底させて、その精神を借り手も検査する側も銀行も共有する、そのプロセスが極めて重要であると思っています。

 とりわけ、これは債務者の方にこういう仕組みになっているんだよということをしっかりと我々としては知っていただきたいんですね。そういう呼びかけ、説明会等をこれまでも地方の財務局等々でやってまいりましたが、このマニュアルの改定を機に、そのことは我々としてもより徹底をさせたいと思っています。

 マニュアルはマニュアルとして、やはりできるだけわかりやすく事例を書く。しかし、それでは書き尽くせないところも、それは世の中のことでございますからあるかもしれない。それに関しては、その精神が徹底するように、現場への徹底を我々としても全力を挙げて図りたいというふうに思っております。

馬淵委員 今のお話、さまざまな態様があるのでマニュアルには書き切れないというお話でしたが、結局、キャッシュフローの部分なんかでありますと、これは聞きますと、大体八割ぐらいというお話でした。金融庁の担当の方からそんなお話が出ましたが。

 繰り返し申し上げますが、これなら十分余裕のある会社ですよ。もっともっと厳しい状況の中で、本当に中小企業というのは個人資産をつぎ込みながら運営されておられる。今、どうも、この数字というか、私から見れば、繰り返しになりますが、中小企業のことを十分理解する体制で検査をしますよと言いながらも、その実、それができていかないような気がしてなりません。

 一方で、金融機関の側の御指摘をさせていただきます。

 この新しい検査マニュアルの中で金融機関の側のインセンティブというのはどんなものがあるのかなと、これを見ますと、二点ございます。

 金融機関側に、もちろんいろいろ書いてはあるんですが、私から見た場合、金融機関がこの検査マニュアルをしっかりと運用していく中でのインセンティブとなる部分はどういう部分かというと、まず一つは、いわゆる中小企業の再生支援ということを訴えたときに、グルーピングと呼ばれる――中小企業の再生を支援していけそうな、十分再生可能な企業をあるグルーピングにして、そして、その結果の実績を引き当て数値として一年後に反映させることができるというのが金融機関のインセンティブにつながるという形で挙げられたんじゃないかなというふうに私は見ているんですね。これはマニュアルの六にありますが、この債務者のグルーピングをする、そして引き当て率に格差を設けることができる、こうしておるわけですね。

 これに関しては、現実には、これを一年間待って、この部分が金融機関に十分インセンティブとして働くというのは、私はそんなにないんじゃないかなという気がするんですが、これが一つあります。

 そして、もう一つが足切り基準、俗に言う足切り基準と呼ばれるものですか基準金額の部分ですね、抽出の基準金額と呼ばれるもので、これは金融機関が、優良な金融機関が、比較的一生懸命よくやる金融機関が、良好な金融機関が、検査において検証を省略してもいいですよという基準金額が二千万円だったのが五千万円に引き上げられるという部分があります。これが二つ目のインセンティブの部分だと思うんです。

 確かに、金融機関によっては、検査に対するコストというのは大変なものがあると思うんですよ。この検査コストということを考えれば、二千万が五千万に引き上がることによってかなりのメリットがあるんじゃないかなとは思います。これも、担当者のお話の中では、大体、信金の三分の一、信用組合の二分の一がこの恩恵を受けるような形になるんじゃないかというお話でしたが、しかし、例えば二千万から五千万に引き上げることができるといえども、現実には、その中での判定は主任検査官が行って、そこでの判断に任されるという部分になります。この判断の客観性という部分において、どのような部分で担保されるのかということをお尋ねしたいと思います。

佐藤政府参考人 御指摘の点は、資産内容に特に問題がなくて、前回検査の結果も良好な金融機関について、いわゆる足切りの基準につきまして、これはもともと、対象金融機関の資本の部あるいは資本金の一%あるいは与信額二千万円、いずれか小さい方の額未満の債務者について主任検査官の判断で省略することが可能であるという考え方でございます。

 それで、私ども検査を行いますときに、金融機関の財務の健全性の状況をチェックするということが最も基本的な任務でございますので、足切り基準を引き上げるあるいはその検証を省略することによって、そういう意味での検査の実効性を損なってしまってはいけないということがございます。したがって、主任検査官が判断をする際には、当該金融機関の財務の実態あるいは債務者の状況、この金額基準よりも場合によって少し下回っていても、明らかに金融機関にとって相当大きな影響のある債務者であって、なおかつ、財務状況が非常に問題があるというような場合には、例えばそれを対象にするということもあり得るということで、客観的な基準としては、金融機関の財務の健全性をチェックするという私どもの基本的な任務に照らして、必要性がある場合にはチェックする、その観点に照らして問題がない場合には省略するということになろうかと思います。

馬淵委員 今のお話を聞いても、結局は、検査という権限の中でインセンティブをちらつかせながらも、金融庁の方々の判断という部分について客観性というのが十分担保できているかというのは、私はどうも納得しにくいんですが。

 改めてお聞きしますよ。この検査というのは、そもそも何のための検査なんですか。端的で結構です。

佐藤政府参考人 預金取扱金融機関に対する検査の目的ということでございますけれども、例えば銀行に対する検査の権限を規定しております銀行法第二十五条は、「銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため」というふうに記しておりまして、これがいわば検査の直接の目的であろうかと思います。また、銀行法第一条に目的規定というのがあるわけでございますけれども、先ほど申し上げた銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保する、このことが「信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図る」ことを目的とする、そういうものであるということを述べているところでございます。

 したがいまして、信用の維持、預金者等の保護、それに金融の円滑、この三点がより上位の目的として存在しているというふうに理解いたしております。

馬淵委員 今、検査の目的ということをお話しされましたが、このマニュアルの改定によってまさに信用の維持あるいは預金者の保護、そして金融機関の健全性ということを確認していくという、この作業が果たして本当にこのマニュアルにのっとった行為として十分なされているのかということを私はぜひお伺いしたい。

 つまり、こうしたマニュアルの改定によって進められている作業も、結果、健全性の確認といいながらも不健全行の市場からの退出ということを目的としているのではないか。健全か不健全かという判断をした後に、一部は公的資金などの注入が行われて再建が図られる場合もありますし、そうでない場合は市場からの退出も求められる。つまり、検査によって健全か不健全かの判断、そして市場からの退出を求め、そしてつまるところは、恣意的な判断によってのペイオフ解禁をにらんだ金融機関の整理統合という流れにあるのではないかという気が私はしてならないわけであります。

 そこで、今回の検査マニュアルを見ても、借り手サイドという視点が大きく抜け落ちているのではないかという気がしてなりません。銀行法一条、先ほども御指摘がありましたように、公共性にかんがみ、円滑な資金需要に対応して、さらに利便性の向上を図るものというのがこの銀行法一条にも定められているわけでありますが、現在のこの検査、今のお話の中でありますこの検査、中小企業等の状況を確認するにはほど遠いと思われるようなこの検査の方法で、現実には、逆に資金需要の対応を狭め、そして利便性を阻害しているのではないか。

 今、お手元の方に配りました検査体制と検査人員という資料があるんですが、この金融検査の体制を見ますと、過去十年で約二・五倍に、体制の方は、職員数の方はふえておりますね。そして、検査実績は、直近三年度、三カ年分を振り返ってみますと、十三年度四百三十五人日、そして十四年度で四百七十二人日、十五年度は十二月末までですから四分の三ですが、四百五十二人日。これを見れば、本当に大変な工数を割いて、そしてまた人員も割いて投入されているわけであります。これほどまでの検査をなされて、そして最終的には金融機関の経営者以上にその状況を十分把握されている金融庁の検査官の皆さん方が、結果、これをむしろ金融機関の評価そのものに置きかえるぐらいの考えをお持ちになってはいかがか、私はこう主張したいと思っております。

 アメリカにありますCRA、アメリカの地域再投資法におきましては、同様のような検査の実務の上で地域金融に資するか否かという部分で評価を行っています。具体的には、格付という形で評価を行っている。そして一方、優良金融機関には検査の頻度を低減するというようなインセンティブも与えています。この検査を超えて、そして評価に踏み込むといったことに対する必要性というのは、大臣、いかがお考えでしょうか。御所見をお願いします。

竹中国務大臣 委員、今非常に重要なことをたくさん御指摘いただきましたので、全部網羅するのはなかなか大変なんでございますが。

 まず、検査は、当然のことながら金融庁の中でも独立して行っております。その検査結果を受けて監督をするというのが一方の重要な仕事になりますので、検査を受けて、それで退出させる云々とか、そういう趣旨で検査をやっているわけではございません。そのことはもうよく御存じかと思いますが。

 その上で、今最後に非常に重要な御質問があったわけでございますが……。その前に一つ。借り手側の視点に基づく評価が重要であると。これも、まさに借り手側を重視して中小企業融資編のマニュアルをつくっているというのは、一つの事実でございます。と同時に、金融機関の検査監督というのは、これは先ほど局長も申し上げましたように、銀行法第一条で定められている信用の維持、預金者の保護の確保、金融の円滑化を目的としている、その非常に多面的な要素を総合的に勘案して行う必要がありますので、借り手側の視点ももちろん踏まえるわけでございますが、同時にやはり預金者等総合的に行っていかなければいけないという、我々金融庁の任務の問題があるというふうに思っております。

 その上で、これだけ検査をやっているんだから、金融機関そのものの評価を金融庁はむしろ行わないのか、そういう趣旨の御指摘であったかと思いますが、これはいろいろな御意見があろうかとは思いますけれども、基本的には、金融機関の経営というのは自主的な判断に基づいて行う、それで、その利用者、投資家、まさに市場の声、市場のメカニズムによってその評価が行われていくというのがやはり市場経済のあるべき姿であろうかというふうに思っております。例えば、金融機関への画一的な基準に基づいてまさに政府がそれを評価するというようなことについては、これはやはり慎重でなければいけないというふうに考えております。

 いずれにしても、地域の金融機関に関しましては、リレーションシップバンキングのアクションプログラムの中で、それぞれが、やはりみずからが評価されるようにしっかりとディスクローズ、情報開示をしていけということを申し上げて、現実にほとんどの金融機関において地域貢献等に関する情報開示が実施されておりますので、我々としては、今の枠組みの中でこれをしっかりと実行していきたいというふうに思っております。

馬淵委員 この評価、格付という部分を、もちろん検査は検査というのはよくわかります、しかし、この検査を実質的にここまでの作業としてやってこられて、最終的には、先ほど私が申し上げているように、検査の実態が結局は金融機関の統合整理といった部分に使われているだけではないかということの懸念とともに、ここまでやっている検査において格付までの踏み込みをすべきであるということを私は申し上げておるわけであります。大変難しい問題であるとおっしゃっておりますけれども、むしろ、金融の公平性だとかあるいは公正性という部分、これを金融システムにビルトインさせるということは、この資料にもありましたように、信金、信組、これは大変初期におきましてはその検査がなされている、こういったところには逆に本来の使命から見て援護射撃となるんではないか。そして、かつての大手銀行、今はメガバンクとなりましたが、こういったところが利潤至上主義に走っていた、こういったものに歯どめをかけて、むだな金融検査基準あるいはさまざまな是正措置などを金融庁あるいは政府が恣意的に行うということを再考させる屈強なルールとなり得るのではないかということを私自身最後に御意見として申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介と申します。竹中大臣への初めての御質問となります。よろしくお願いします。

 本日は、主に、九六年秋に、当時の橋本首相の強いリーダーシップで提唱されました日本版金融ビッグバンの歴史的な意義、そして今日残された課題につきましてお伺いをしたいと思います。

 三十分の質問時間をフルに使いまして、生命保険業界のあり方や年金資金の運用等、個別具体的なテーマにも触れながら、大臣の認識を伺いたいと考えておりますが、まずその前に、冒頭、二点ほど、竹中大臣が現在置かれている環境、お立場につきまして御質問をさせてください。

 まずは、地方経済の実態に対する大臣の御認識と、その実態把握のための御努力についてでございます。

 最近の月例経済報告におきまして、内閣府は、「景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している。」との認識を示しております。次第にトーンを上げながら景気回復をPRしていると受けとめているわけですが、率直なところ、ある種の違和感を禁じ得ないわけであります。なぜなら、少なくとも、地方経済や中小企業経営に対する目配りというものが、この報告や大臣の御発言からは十分には感じられないからであります。

 しかし、そうはいいましても、実は、竹中大臣の置かれているお忙しいお立場を考えますと、余り厳しく申し上げられないかなという気もします。大臣は、現在、経済財政と金融という二つの重要な担当大臣を兼務されていますが、大変な激務とお察しいたします。また、政策判断に必要な生きた情報を集めるための時間も、大臣御自身が十分満足されるほどにはとれないのではないかと御心配を差し上げます。

 例えば、小泉内閣発足以来、鳴り物入りでお始めになった例のタウンミーティングについて、少し数字を調べさせていただきました。大臣の御出席回数を内閣府と金融庁の皆さんから伺ったわけでありますが、経済財政担当大臣を専担されていました平成十三年五月から平成十四年九月の十七カ月の間に、計二十九回、月平均一・七回の御出席をされていました。それに対しまして、金融担当大臣を兼務されました平成十四年十月以降は、合計で八回、月平均ですと〇・五回という数になります。いただいた資料が正しければ、特に最初の半年間、平成十三年中には二十四回、月四回、毎週のペースで御努力をされていた。しかし、ことしに入っては、先月一度行かれただけということでございます。

 これだけ地方経済の現状について議論がされている中でありますから、ぜひ、こうしたことも優先順位を高く置いていただきたいわけでありますけれども、この数字を見る限りでは、タウンミーティングの優先順位が急激に落ちているという印象を持ってしまうわけです。

 私は、タウンミーティングのあり方自体にも実は若干の疑義も持っておりますので、これがすべてだとはもちろん申し上げません。しかし、御自身が提唱されて、当初は積極的に取り組んでおられた取り組みなわけですから、このタウンミーティングにおいてさえこうであれば、あるいは、それ以外のチャネルでも地方や中小企業の声を数多く吸い上げられているということにはなかなかなっていないんじゃないか、そういうことを心配しているわけであります。

 以下、私の推測ですけれども、こうした大臣の激務ぶりを見て、国民、とりわけ地方や中小企業からは、竹中さんは経済のいいところしか見ていないんじゃないか、あるいは、日本の国の全体、隅々まで目を配って、真の日本の国益を真剣にお考えになるその余裕がないんじゃないか、そういった心配の声が上がっているわけだと思います。

 私は、経済財政、そしてさらに金融も担当される大臣となれば、相当な配慮を持って、情報のアンテナを張って、こうした永田町の部屋とかあるいは霞が関の机の上で議論するのではなくて、地方経済の空気、あるいは中小企業経営者の声を生で感じていただかなければならないと思うわけです。また、逆に、竹中大臣御自身の声も、生の声を現場の皆さん、地域の皆さんにお聞かせいただいた方が、これは、説明責任という意味でも、またマクロ経済政策の円滑な運営という観点からもよりよい努力なのかなという気がするわけですが、大臣が地方経済や中小企業の経営実態を把握されている中で、その努力、あるいはその努力に基づく地方経済、中小企業経営に対する現在の御所見をお聞かせください。

竹中国務大臣 津村委員から、冒頭、私の政策に臨む姿勢に関して大変重要な御指摘をいただいたと思います。また、タウンミーティングの出席回数等、大変丁寧にお調べいただきました。驚きました。

 まず、地方の経済が重要である、マクロ的経済全体は総じてよい方向に向かっているが、それが必ずしも地方に十分浸透していない、そういう危機感を非常に強く持っております。したがって、地域再生本部を内閣の中につくってほしい、地域担当大臣を設置してほしい、地域再生プログラムをつくってほしい、それの以前に特区という制度をつくってほしい、そのことを内閣の中で提唱し、実行に移したのは私自身でございます。

 私自身、地域の出身でございますし、和歌山という地方都市の出身でございますし、地域の状況は私なりの実感を持って見ているつもりでございます。

 タウンミーティングの回数が減っているのではないかという声に関しては、これは御承知だと思いますが、小泉内閣が平成十三年の四月に発足してから、六月から半年の間にすべての都道府県を回る、これも私自身が総理と官房長官にお願いして、そのようなプログラムをつくりました。

 毎週、二つのチームに分かれまして二カ所ですから、大体、毎週末に三カ所から四カ所でやっていたんです。それには、私は半分には出ました。二つのチームに分かれますから、一方に出たら一方は出られません。したがって、まさに、十一月までは、毎週土曜、日曜はこのタウンミーティングで、週末地方を走り回っておりました。その後、地域を一巡した後、タウンミーティングのペースも落ちておりますので、それがこういう数字にあらわれていると思います。

 私自身の、経済財政を担当する大臣としては、引き続き、地域の情報のアンテナを張り続けることは大変重要だと思っております。実は、今も地域に出かける機会は相当多うございます。二月、三月は予算委員会がありますので、余り過密な日程、出張は入れないようにしておりますが、例えばですけれども、この週末、私、また北海道へ参りますし、一週置きまして、さらに小豆島、姫路等々でお話をする機会、いろいろな方のお話を伺う機会を入れております。

 今申し上げたのは、いわばオンサイト、現場に出かけた情報収集でありますが、オフサイトもこれは重要でございまして、内閣府では景気ウオッチャー調査というのを行っております。毎月行っておりますが、景気動向に敏感なタクシー運転手やコンビニ店長、スナックの経営者等々、全国二千五十人の方々の生の声を聞く、それを収集して、さらに政策に反映させるという機会も持っております。

 繰り返し申し上げますが、私自身、地域に積極的に出かけて、引き続き皆さんと対話する機会を持っているつもりでございますし、もちろん、時間の限界はございますが、そのような、少なくとも心がけはなくしていないつもりでございます。

津村委員 二つの目の御質問を、多少重なるわけでありますけれども、少々制度的といいますかアカデミックといいますか、日本のあるべき政治システムを考えるための御質問ということで、多少重なる御質問をお許しください。政治的任用制度の是非に関するものでございます。

 竹中大臣の就任は、小泉内閣の発足時そして改造時の二度にわたりまして、世間の耳目を大変引きました。目玉人事とも言われたわけであります。高名な経済学者としての大臣の高い識見と、そして弁舌さわやかな印象が国民に期待を抱かせたもの、そう理解しておるわけです。私自身、アカデミズムの世界とリアルな政治の世界の接点はもっと多くてもよいと常日ごろ考えておりまして、そういう意味からも注目をしてまいりました。

 大臣は、国民との直接のパイプを持った職業政治家ではいらっしゃいません。民間人や学者を登用する政治的任用制度、いわゆるポリティカルアポインティーのシンボル的な存在でいらっしゃるわけでありますけれども、実際に三年近くお務めになってみた大臣自身のお言葉で、政治的任用のメリット、デメリットを聞かせていただきたいと思います。とりわけ、大臣が、東京と地元を往復して地域の声を吸い上げる職業政治家でいらっしゃらないという現実といいますか事実に照らした上でお答えをいただければと思います。

 具体的にお答えいただくことによりまして、竹中さんは国民の声を聞いていないとか、日本の国益のために働いていないといった、批判、怨嗟、時には中傷に対する大臣からのお答えにもなるのではないかと思います。

竹中国務大臣 私のように国会議員でない人間が内閣に入る、これは、憲法等含めて、制度上そのようなことが内閣の半分以下で今は可能になっているわけではございますが、現実に、事例等々からいっても大変難しい事例なんだと思います。民主党の菅代表も、次の内閣をつくった場合は、例えば二名だったか三名だったか忘れましたが、民間の方を閣内に入れるというようなお話をしておられたと記憶をしております。

 いずれにしても、外からこういう民間人が入るということの一般的なメリットというのは、やはり、多少なりとも専門的な知見を持った人間が入って、それを政策に生かせということなのだと思います。さらには、より長期的な観点から、民間の自由な発想を生かせ、そういうことなのではないかと思っております。

 デメリットでございますけれども、恐らく、今委員おっしゃいましたように、私自身、選挙の地盤というのを持っているわけではございませんから、選挙の地盤、地元から直接の声を聞くという機会は、これはないということなのかもしれません。これがどのように評価されるかというのはいろいろな御意見のあろうところだと思います。

 一般論としては今申し上げたとおりでありますが、私自身、どのようにメリット、デメリットがあるというふうに見ていただけるか、これは、私は評価される側でございますから、せいぜい、わずかでも専門的知見を生かして、いい金融行政、それとマクロ経済財政の行政を行って、政策を示して、総理の構造改革をお助けすることによって、後々、いろいろな方々からいろいろな御評価をいただきたいというふうに思っております。

津村委員 先ほども申し上げましたとおり、地方経済や中小企業の経営に対する目配りが十分じゃないんじゃないか、そういった見方があるわけですし、また経済の現状につきましても、シマウマ論とか、いいところと悪いところが分かれているという話もある現状でありますので、ぜひ、その政治的任用のデメリットが出ないように御努力をいただきたいと思います。

 二つ、そういう、竹中大臣の最近のお立場についてお伺いしたわけですが、ここからは、東京金融マーケットに関する諸問題につきまして、日本版金融ビッグバンの論点整理という形で伺ってまいりたいと思います。本日は時間が十分ございませんけれども、今後も長い視点でフォローをさせていただきたいと考えておりますので、多少総論的なところから伺わせてください。

 いわゆる日本版金融ビッグバンですけれども、先ほども申し上げましたとおり、九六年秋に提唱されまして、当初の構想としては、二〇〇一年までに東京マーケットをロンドン、ニューヨーク並みの国際金融マーケットに育てていこうという非常にアンビシャスな取り組みとして打ち出されたわけですが、その後、たび重なる金融危機の中で、金融システム安定化という大義のもと、目の前の危機に対する対応が優先されまして、システム改革が後ずれしてきたという経緯があると思います。そうした繰り返しの中で、金融ビッグバンという言葉自体が少しずつ風化をし、置き去りにされたような印象さえあります。

 しかし、新たな公的資本注入や各種金融自由化も今国会の検討課題となっている中で、明確なゴール設定や将来像が不明確になっていると、政策の予見可能性が低まるといいますか、結局何を最終的なゴールにしているかが見えないという意味で、国際マーケット、海外の投資家から見れば、日本のマーケットには政治的なリスクが常にある、政治リスクの高いマーケットじゃないかという印象を持たれかねません。そのこと自体が、本来の目的であったはずの、東京マーケットをグローバルスタンダードに引き上げるという目的に、ともすればそごしてしまうということを大変心配しております。

 ぜひ、このタイミングで整理をさせていただきたいのですが、日本版金融ビッグバン構想が今どういうステータスにあって、あるいは、それに続くそのシステム改革の取り組みが今どういうゴールを持って、国際的な金融市場としてビジョンを持って取り組みがなされているか、そのことを整理していただければと思います。

竹中国務大臣 津村委員御自身、日本銀行等々で、大変この金融の分野で深い御見識を既にお持ちだというふうに思います。

 今の御質問は、橋本総理の平成八年十一月の総理指示、九六年の総理指示を受けて、それが今どのように進化、今の中に生きているのか、そういう、ある意味で評価に係る御質問でありますので、なかなか今の現場を担当している者としては難しい面があるわけでございますけれども、当時の橋本総理の指示というのは、日本経済が二十一世紀の高齢化社会においても活力を保っていくために、また、我が国金融資本市場を世界的に競争力のあるものにするために、フリー、フェア、グローバルの三原則のもとで、銀行、証券、保険の各分野において大幅な自由化、規制緩和が行われた、それが金融システム改革法という形で具体化して、それに関連するさまざまな自由化への流れをつくったというものであると思っております。

 そのビッグバンの総理指示の中にも書いているわけでございますけれども、同時にこれは、当時、不良債権の問題等々にも言及されていたわけでありますけれども、当時と若干状況が違うのは、この不良債権といういわば負の遺産の部分が、当時想定されていたよりも、その後の進展で非常に重いものであるということが明らかになってきた。我々の金融再生プログラムというのは、まさにその部分に焦点を当てて、それを早くもとに戻そうではないか、この不良債権問題を終結、あと一年程度でさせようではないかということであると思っております。

 したがって、大きな流れとしての日本版ビッグバン構想、ビッグバンというのは、これは先ほど申し上げました金融システム改革法の流れを受けて、我々も引き続きこの流れの中で、世界の中で自立できる立派な東京市場をつくろう、ないし、これはもちろん東京だけではございませんが、金融資本市場をつくろうということで努力を続けております。ただ、それに加えて、その後の若干の修正としては、中期的には、不良債権問題という負の遺産の部分に対して、当面のある程度の政策のリソースを割いているという状況ではないかと思っております。

 こうしたことを踏まえて、やはり金融ビッグバンの精神は我々としては引き継いで、しっかりと、競争力のある市場をつくっていかなければいけないと思っております。

津村委員 もう一つ、金融ビッグバンとは直接重なるものではありませんが、制度的な質問といたしまして、金融行政の一元化というテーマにつきまして御質問したいと思います。

 金融行政は竹中大臣の一元的な責任のもとで整合的に行われているのでしょうかという質問なわけですが、ここにこういう本がございまして、これは、私、日銀時代に、日銀法改正そのほかさまざまな制度改正があった、これをどう理解していけばいいのかということで、一つの種本といいますか、仲間で読んでいたりしたものなんです。

 これは、当時の大蔵省や日銀を担当されていた記者が膨大な関係者のインタビューをもとに書かれた本なわけですけれども、この中に、九七年秋の金融危機、山一証券が破綻をしたりというときですけれども、あの金融危機は、その年の春に行われた一連の経済政策が、例えば消費税率の引き上げで国民負担が五兆円程度ふえたとか、あるいは医療費の負担増が二兆円程度あった、特別減税の廃止が二兆円程度あった、こういった、それぞれはよかれと思ってなされた政策が、この著者に言わせれば、無謬の合成という言い方をしています、よく言われる言い方で言うと、合成の誤謬というか、そういう言い方になると思うんですけれども、これが大変、日本の金融システムが崩壊の危機に瀕する大きな背景になったということをこの本は言っております。

 少し時間もありますので、その該当箇所を読んでみたいと思うんですが、「経企庁のエコノミストたちは特別減税の廃止に疑問を抱きながら翌年の経済見通しを作成した。 大蔵省主税局の幹部たちは消費税率の引き上げを確実なものにしようと走り回った。 汚職事件の逆風の中で、医療制度改革に全力を挙げたのは厚生官僚だった。 政策立案にたずさわる官僚はみな自分たちの仕事に忠実だった。しかし、次の年に全体でどの程度の負担増が発生し、日本経済の成長にどのくらいのマイナス効果があるのか。そんな基本的なファクターを政策立案にたずさわる者たちの誰一人としておさえてはいなかった。」こういった記述になっているわけです。

 当時、先ほど大臣からも触れていただきましたけれども、私自身、日銀の営業局証券課という部署に在籍をしておりまして、まさにこの間の事態の推移を間近に見ておった一人であります。

 その後、財務省と金融庁の分離、そして日銀法改正による日銀の独立性強化といったプロセスを経まして、日本のマクロ経済政策運営を少しでも透明化しようということでそういう取り組みが図られ、不透明なパワーバランスによる裁量行政を排除しながら、ここが昨今も問題になるわけですけれども、排除しながら、経済財政諮問会議の設置等により、一元的な意思決定プロセスを築こうとされてきた、そういうふうに理解をしているわけです。

 しかし、そうした中で、いわゆる金融行政あるいは金融業界の健全な育成を促す機能が金融庁に一元化されて竹中大臣の責任下にある、私は、こう理解してきた、あるいはそれがその改革の趣旨だったと理解しておるわけなんですけれども、最近の幾つかの取り組み、例えば総務省による簡保、共済の新商品認可などを見ていると、こういったことが果たしてその一元的な金融行政としてなっているのかということを疑問に思うわけです。また、ほかにも多くの省庁が共済等の商品について所管をしているという事実もあります。

 合成の誤謬ということになるかどうかわかりませんけれども、日本銀行は、現在、デフレ克服のために低金利を継続しております。また、総務省は、簡保、共済の新商品を認めました。金融庁は、生命保険の銀行窓口販売の解禁を、まあ、これはまだ審議会で御議論されているとは思いますけれども、一部報道によれば、本年中にもこれは解禁する可能性があるということも言われております。

 そうした中で、それぞれは一定の流れや理由がある取り組みだとは思いますけれども、言うなれば、合成のあやによって、具体的に言えば、生命保険業界に、この今私が申し上げた三つのマイナス効果というかしわ寄せが寄せられているのではないか、そういう気がするわけですけれども、これは、経済財政、金融の両担当を兼務されている竹中大臣の一元的な責任のもとで明確な意思に基づいて行われている取り組みと理解すればよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 今の経済政策の決定プロセスの極めて本質的な部分の御質問であるというふうに思います。私自身、常に大変難しい問題であるというふうに認識しながら仕事をしているポイントであります。

 一般的な部分と、それと、最後、特に金融の生保に関する部分がありましたので、少し分けてお答えさせていただく方がよいと思います。

 まず、全体の流れにつきましては、委員も言及されました、やはり経済財政諮問会議の役割というのが、これは私は大変大きいというふうに思っております。

 この経済財政諮問会議には財務大臣、経済産業大臣、それと総務大臣、日銀総裁においでいただいて、加えて、その時々、必要に応じてまた別の担当大臣にも臨時議員として参加をしていただいて、総理の前で直接議論をして決める、必要な調整を行って、総理からの指示も出していただくというものでありますから、その意味では、いわば縦割りの弊害を、縦割りの弊害、もちろんまだまだあると思います、しかし、その縦割りの弊害を破って、整合的な政策を行っていく上でやはりこの機能が重要であるということ。その役割は、まだこの制度そのものが始まりまして三年目なわけでありますけれども、これは、大臣を呼んで集中審議を行ったりする過程で、少しずつではありますけれども、よい方向に向かっている。しかし、さらに努力をもちろんしなければいけないというふうに思っております。

 合成の誤謬という言葉をお使いになりましたが、我々はよく、自分の庭先だけきれいであればよいのか、そういう言い方をするわけでありますが、どうしても、特に官庁は、官僚として一生懸命やればやるほど、自分の庭先がまずきれいでなければいけないというところがありますので、そこはやはり総理のリーダーシップもいただきながら、総理の御指示もいただきながら、やはりさらにここはしっかりやっていかなきゃいけないと思います。

 金融についても同じ問題がございます。金融についても、例えば政府系金融機関等々は、それはそれぞれの所管省庁がございます。例えば郵政公社は、ことしから信用リスクの検査の部分については金融庁で行っておりますが、郵政公社の監督そのものは総務省で行われているという問題もございます。これは、制度は常に進化をしなければいけませんが、そういうことも踏まえながら、総合的な立場で議論をしていかなければいけないと思います。

 生保については、これは、低金利である、そのことが資産運用を主たる業とする、収益源とする生保に対して非常に不利な状況をつくっているのではないかという御批判は承知をしております。しかし、これはまさに総合的に考えて、低金利をとることによって、そうすることによって、それを上回る国民経済全体の利益がある。逆に、今、生保のことを考えて金利を上げたならば国民経済的には大変になるということは、これは御理解いただけると思いますので、そういうことを踏まえながら、今非常に狭い道を歩んでいる。しかし、生保も、今のところ、逆ざやを克服しながらも一兆円を超える基礎利益を計上しておるわけでありますけれども、引き続き金融が正常化するようにしっかりと運営をしていきたいと思っております。

津村委員 ありがとうございます。

 多少時間が押してまいりましたので、細かいといいますか、具体的な事実に関する御質問を一つだけさせていただいて、次に、お越しいただいております森副大臣への御質問、もう一つありますものですから、竹中大臣への最後の質問とさせていただこうと思うんです。

 今、生保の話でありました、もちろん、私も日銀の金融政策と絡めてというつもりではなかったんですけれども、少なくとも、金融庁のお仕事として、生命保険の銀行窓口販売の解禁の問題につきましては大臣の御判断があり得ると思っておるんですけれども、消費者側に新たなリスクを発生させる懸念がある、保険業界という意味だけじゃなくて、消費者の方にも、これは消費者保護法制等とも絡みまして一つの大きなテーマを与えていると思うんです。

 卑近なことを申し上げますけれども、例えば私の同世代には、銀行で、まさに窓口で、投信とかあるいは外貨預金とかそういった商品を販売しているような友人が何人もおります。このところ販売商品が急速に拡大しておりますので、私の友人なんかも、研修があって、試験があって、資格を取って、またノルマを課されて一生懸命売ってということで、相当タイトなことをやっておるわけです。これがまた保険商品も売れということになっていくと、それは、彼らが大変だということを言いたいわけじゃないんですけれども、消費者との間でトラブルが発生し得る潜在的なリスクといいますか、そういったプレッシャーがあるんじゃないか。

 また、もう少し大きく言いますと、保険については、融資等の取引との絡みで圧力販売の懸念も既に指摘があるわけでして、こうした中で、専門的な商品知識を持って全国で顧客への説明をしている数多くの生保レディーや営業の方々がいるわけですけれども、こういう、先ほど私が合成の誤謬と呼んだような生保業界への過度なプレッシャーによって、急激に銀行の窓口販売に顧客がシフトするようなことになれば、まさしく消費者保護が重要なテーマとして浮上することになるのではないか、そのことを申し上げたいと思います。

 消費者保護法制の議論を加速するとともに、金融庁内でも保険課初め事後チェック機能を果たすマンパワー、定員の増加等も当然これは必要になってくると思うわけですけれども、一部報道では、先ほど申し上げましたように、窓口販売が本年中にも解禁されるかもしれないという話もありますが、本年中かどうかはともかくとして、消費者保護拡充の努力について、例えば定員の増加とかあるいは保護法制の法案提出とか、具体的な御予定があればぜひお聞かせください。

竹中国務大臣 保険商品の窓口販売に関しては、消費者の新たなリスクの問題も含め、委員御指摘のようにさまざまな御意見があるということを承知しております。

 先ほど、委員、金融ビッグバンのお話をされましたが、そうした金融ビッグバンに象徴されるような、一つの世界の傾向としては、金融機関、金融業態そのものの垣根をやはり低くしていって、総合的なサービスを消費者のために受けられるようにすべき、これは世界の一つの流れとして強く存在しているというふうに思っております。それは、消費者の利便に資するという面も私は非常に大きいと思います。

 同時に、生命保険に関しては、やはり、二つの点で、今回の場合非常に特殊な問題があるということも事実だと思います。それは、生命保険という商品の特性。これは、金融商品とはいいながら、極めて個人にユニークなものであって、自分が一度契約したら、それを売って流動化したりとか、そういうものにはなじまないわけであります、極めて長期のものでありますから。その特性を考えて、それは売り方にもやはり反映されてくる可能性がある。

 もう一つは、銀行の優越的地位というのが強いことによる弊害が生じないであろうか、そのような御懸念は、これはこの場でもいろいろ御表明をいただいておりますし、真摯に耳を傾ける問題であろうと思っております。

 いずれにしましても、現在、金融審議会の第二部会、保険の基本問題に関するワーキンググループで、この中で、やはり賛否両論いろいろな方がいらっしゃいます。いろいろなお立場の方がいらっしゃる、専門家がいらっしゃる、その方々の間で幅広い視点から御検討いただいているところでございますので、その検討も踏まえて、我々として適切にぜひ判断をしていきたいというふうに思っております。

津村委員 竹中大臣、ありがとうございました。

 次に、同じく、議論の出発点といたしましては同じ視点から、東京金融マーケットの健全な発展という観点から、今国会において審議が予定されております年金の運用の問題につきまして、一点だけ森厚生労働副大臣に御質問したいと思います。

 東京マーケットの参加者は、現在の日本の年金資金運用制度は政治介入の余地が大きいのではないか、そういったような疑いといいますか、そういう目を持っている方も大勢いらっしゃいます。そうした一つのあらわれとして、株価が下がるたびに年金資金を利用したPKOについての思惑が生まれやすい環境にあるわけですけれども、こうした思惑が生まれやすい市場環境自体が東京市場を国際レベルに引き上げていく上での一つの大きな障害、あるいは非常に大きなマイナスになっていると思います。改めるべきと思いますが、いかがでしょうか。

 今次改革における工夫として、例えば独立行政法人の設立目的に、現在、専門性の徹底とか責任の明確化ということがうたわれていますが、政治からの独立性を新たに加えて明記するとか、あるいは運用委員会の人選が、まだ特に基準が示されておりませんけれども、そうした基準を明示していっていただくとか、あるいは、約一〇%ほど残っております自家運用がありますけれども、これも、外からなかなかわかりにくい、思惑を呼びやすい位置づけだと思いますので、この自家運用についてはもう外部委託にして廃止をするとか、こういった具体的な取り組みについて御検討をされていらっしゃいますでしょうか、お尋ねいたします。

森副大臣 まず、実情でございますけれども、年金積立金の運用につきましては、長期的観点から定めた基本ポートフォリオに基づき運用を行っているところでございまして、実際の運用において、株価維持操作、いわゆるPKOは一切行っておりません。また、年金積立金の運用に従事する関係職員等については、法令上、専ら年金加入者の利益のために行わなければならないと定めているところで、年金積立金を利用したPKOなどの政治的介入は、制度的に排除されているところでございます。

 また、今次の改革案におきましても、この点につきましては従来と同様の整理を行っております。また、独立行政法人におきましても、運用に係る情報開示を徹底することで、透明性を高める中で、PKOについての思惑も払拭されていくものと考えております。

津村委員 もう質問時間が終わりましたのでこれで終わりますけれども、この金融のテーマは、先ほど私、一元化ということを申しました。責任が明確化されることが非常に重要だと思うんですが、しかし、年金の問題も含めて、幅広いお立場から同様の意識を持って取り組んでいただかなければならない、そういうテーマだと思います。今後とも引き続きフォローさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

田野瀬委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 きょうは、竹中大臣に、中小企業向け融資の問題についてお伺いしたいと思います。何度も、貸し渋り問題、あるいは中小企業の資金難といいますか、そういう問題について質問させていただきましたが、きょうは、別な角度からお聞きをしたいと思います。

 まず、資料の配付をしていただきたいんですけれども、日銀の統計に基づきまして作成をした表ですけれども、金融機関の業態別の貸し出し動向で整理をいたしました。

 これによりますと、二〇〇一年の三月から昨年末までの間に、大手行が大変大きく貸し出しを減らしております。例えば、地銀の場合はマイナス一・三%、第二地銀がマイナス一〇%、信金がマイナス五・五%、これに対しまして、都銀等の場合、大手ですね、これは一九・五%のマイナスであります。つまり、二割マイナスなんですね。極めて大きなマイナスが特に大手銀行の方で起こっているわけであります。

 大臣にお聞きしますけれども、この理由は一体どこにあるとお考えですか。

竹中国務大臣 ちょっと、今のこの表、比較年は、二〇〇一年三月と二〇〇三年十二月の、この比較になるわけでございますか、この数字は。(佐々木(憲)委員「そうです、はい」と呼ぶ)

 確かに、日銀統計で見ますと、国内銀行の貸出残高は減少の傾向が見られます。これは手元の数字でございますが、十五年三月末は四百二十五兆円で前期比七兆円マイナス、同年六月末は四百十四兆円で前期比十一兆円のマイナス、同年九月末は四百十一兆円で前期比三兆円のマイナス、このうちいわゆる大手行の期末貸出残高は、それぞれ、マイナス五兆円、マイナス四兆円、マイナス五兆円というふうになっておりまして、これはどこの期間をとるかにもよるんだと思いますが、国内銀行の貸出残高と同様に大手銀行の減少が続いているというふうに思います。

 この要因についてのお尋ねでございますけれども、大手銀行の貸出金が減少している要因としては、積極的な不良債権処理によって不良債権のオフバランスが進んでいること。御承知のように、これはオフバランス化のルールを決めておりますけれども、それで不良債権の比率を二年間で半減してくれということを主要行については求めているわけでございます。債権の流動化が進展しているということもございます、これは銀行の方の事由でありますが。一方で、貸し出し需要が、これも期間のとり方にもよりますが、低迷しているということもあるというふうに思っております。

 一方で、大手銀行は、特に最近、不良債権処理が順調に進展する中で、銀行も収益を高めるためにはいい貸し出しをしなければいけませんから、そのよい貸し出しをするための努力に積極的に取り組んでいるという面も出始めているというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 そうしますと、不良債権処理を進めれば進めるほど中小企業向け融資が激減する、こういう関係にあるということなんですね。

竹中国務大臣 今私が申し上げた数字も、委員がお示しになった数字も、これは残高、ストックベースの話でございますから、この不良債権をオフバランス化すればストックは減ります。しかし、これが例えば債権の流動化等々で行われれば、企業に対するファイナンスは影響を受けないわけでございますから、これは、ストックが減っているということが即融資がしぼんでいるということではないという点は御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 流動化と言いますけれども、そういうことが可能なのは大手の企業であって、中小企業はその恩恵というのは受けないわけでありまして、やはり、銀行、金融機関から直接貸し出される、その部分が大変重要なわけでありまして、ちょっと大臣の説明は納得がいかないわけでございます。

 また、不良債権処理をやればやるほど中小企業向け貸し出しがどんどん減っていく、そういうことであるならば、この処理の仕方が問題でありまして、私は、この中小企業向け貸し出しを、これは銀行にとって荷物だからどんどん減らしていく、こういう発想が根本的に間違っているというふうに思うわけであります。むしろ、大手に対して、例えばこの二年九カ月の間、五十四兆二千二百億円減っているわけです、そういうところをどう指揮監督して中小企業に貸し出しをふやしていくかということが重要でありまして、どうも、そういう観点がないというのは残念であります。

 では、具体的にお聞きしますけれども、大手行は、東京三菱銀行を除きまして、軒並み公的資金の注入を受けているわけです。資本注入行というのは、中小企業向け貸し出しをふやすということを国民に約束して公的資金を受けているわけです。それでは、公的資金を受けた大手行の中小企業向け貸し出し状況はどうでしょうか。今年度末の目標に向けた昨年九月期の実績、一体どうなっているか、金融庁、お答えいただきたい。

五味政府参考人 今年度末の目標というのはいずれも増加計画になっておりますけれども、今九月期について申しますと、目標値というのは特にございませんので、前期比、すなわち、十五年の三月末比でどういう数字になっているかということを御紹介申し上げようと思います。

 主要行、六先ございますけれども、この十五年九月期のこの主要六先の中小企業向け貸し出しの実績、これは、十五年三月末比で申しますと、三先では増加、三先では減少でございます。

 具体的には、増加の方を申しますと、みずほ二行は三月末比で二千二百八十二億円の増加、三井住友が五十八億円の増加、住友信託が七百三十七億円の増加というふうになっております。

 これに対しまして、三月末比で減少いたしましたところ、三グループございますが、UFJ二行は合計で七千九十七億円の減、りそな五行は合計八千七百二十五億円の減、三井トラスト二行は合計で一千七百九十五億円の減というふうになっております。

佐々木(憲)委員 これは大変な減り方でありまして、中小企業向け貸し出しをふやす計画を立てておきながら、逆に大手行全体で一兆四千五百四十億円も貸し出しを減らしているわけですね。

 大手六行のうち、UFJ、りそな、三井トラストの三行が、今数字の紹介ありましたように、特別に貸し出しを大きく減らしております。三井住友は、中間期の時点で計画の一割にも満たない実績にとどまっている。これから、三月末ですから、今月の末ですから、前期で減らした分を取り戻して、四行で一兆八千八百億円も貸し出しをふやさなければならない。これは、そうしないと約束は守れないということになるわけであります。

 金融庁は一体どうやってこの計画を達成させるのか、各銀行に対してどのような指導をしているのか、竹中大臣にお答えをいただきたいと思います。

五味政府参考人 資本増強行が各年度におきまして中小企業向け貸し出しを減少させた場合、この場合には、直ちに、銀行法二十四条に基づきまして、貸し出しが減少した理由、それから今後の取り組み状況などについての報告を求めるということにいたしております。その報告の内容を精査した上で、必要に応じて厳正に対応してまいるというのが基本でございます。

 十五年九月期に中小企業向け貸し出しが減少いたしました資本増強行、主要行では三グループでございますが、これに対しましては、今申しました減少の理由、それから今後の取り組み状況などについての報告を求めております。その報告は一月の十六日に提出を受けております。

 この内容を見ますと、ヒアリング、精査などで確認をいたしましたところ、各行それぞれに計画達成に向けた努力、計画達成のための取り組み努力を行っている、また下半期もこれを強化するという状況が認められます。例えて申しますと、営業店別に例えば残高の目標を設定する、あるいは組織面で中小企業向け貸し出しを増加させるための取り組みを強化する、あるいは業績評価の重要項目として貸し出しの達成度合いなどを組み入れる、さらには、進捗の芳しくない営業店は臨店指導する、こういったような努力が認められております。

 こうしたことでございますので、この上半期の段階において、的確にこの計画を履行しようとしていないというような状況は必ずしも認められないということでございますけれども、こうした報告で、書面で取り組み状況を出してまいりましたことを踏まえまして、下期における取り組み状況、これについては引き続き注目をして、十分監視をしてまいりたいというふうに存じます。

 また、昨日、年度末金融円滑化のための銀行業界、金融機関の業界との意見交換会が行われましたが、その席上におきましても、大臣から、資本増強を受けている銀行については、早期健全化法の趣旨に沿って、真に中小企業への信用供与の円滑化に資するという観点から、中小企業のニーズを十分踏まえて目標達成に向け尽力するようにということで念を押させていただいているところでございます。

佐々木(憲)委員 今長々説明がありましたけれども、本当に実績が上がるのかどうかですね。

 配付した資料の二枚目を見ていただきたいんですけれども、ことしの三月、つまり今月でありますが、月末までにふやさなければならない貸出額、これは九月を見た上での話ですけれども、一兆八千八百億円。これは、未達、九月の実績でマイナスになっているところ、あるいは極めて低いところ、こういうところを合わせますとそれだけの金額になるんです。四グループ。これは大変な金額だと思いますが、必ず達成できると竹中大臣はお考えでしょうか。

竹中国務大臣 今監督局長が御答弁させていただきましたように、これは我々としては報告を求めて、それに対応してこういった体制をとっている。この報告の結果を一月十六日に受けておりますので、その線に沿ってしっかりと達成をしてもらうように努力してもらいたいと思っております。

 そうした向こうからの報告に基づいて、我々も、下期、引き続き状況を注視していきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 これは極めてまだ甘いと思いますね。業務改善命令を出すというようなことも当然やらなければならぬと思うわけです。九月の段階でもう既にこういう大変重大な事態になっているわけですから、なぜ業務改善命令を出さなかったのか、これは非常に私は疑問に思うわけです。

 なぜかといいますと、資本注入行に対しては、一方で、中小企業向け貸し出し融資とともに収益改善計画というものも出させているわけですね。この収益改善計画、この点については、昨年業務改善命令を出していると思いますけれども、これはどの銀行に出されましたか。

五味政府参考人 十五年三月期の当期利益などが三割以上下に振れた先というのが、資本注入行、地銀まで含めまして十九先ございました。その内容を精査いたしまして、そのうち十五先について、積極的な不良債権の処理が行われたということを考慮したとしても、なお当期利益が健全化計画対比で大幅に下振れていたということで、抜本的収益改善策の策定、履行を求めます旨の業務改善命令を発しております。

 具体的な発出先は、みずほフィナンシャルグループ、UFJホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、三井トラスト・ホールディングス、住友信託銀行、あしぎんフィナンシャルグループ、もみじホールディングス、北陸銀行、熊本ファミリー銀行、北海道銀行、千葉興業銀行、八千代銀行、東日本銀行、福岡シティ銀行、和歌山銀行、以上でございます。

 中小企業向けの融資につきましては、これも年度の話でございますけれども、目標を年度で定めておりますので、中間期におきましては非常に大幅な計画未達ということが認められるというような特異なケースを除きまして、報告において下半期における増強計画というものが具体的に述べられております場合には、その履行状況を注視し、年度末の実績を確認し、またその実績の背景となりました努力なども、取り組みなども勘案した上で改善命令が必要かどうかを検討するという扱いにしております。

 みずほフィナンシャルグループにつきましては、一昨年の九月期において、非常に大幅な、つまり五兆円余りという目標未達がございましたので、これは年度末を待つことなく、業務改善命令を発出をいたしまして改善を求めたという経緯がございます。

佐々木(憲)委員 一昨年のみずほに対しては、九月の状況を見て改善命令を出しているわけですね。ですから、仕組みの上で出せないはずがないわけであります。収益の方について言うと、利益が上がっていないというだけで業務改善命令を十五行にどんどんどんどん出している。一方では、中小企業に対して貸し出しが計画どおりいっていないだけではない、大幅に削減されているにもかかわらず、まともに業務改善命令も出さない。私は、そういう姿勢は根本的におかしいんじゃないかと。

 やはり、中小企業の今のこの経営状況を考えますと、抜本的にここは改善をして、中小企業向け貸し出し、九月の時点でこの数字が大幅に減っているようなところについては、単に実情を聞くというだけではなくて、例えば、このUFJなどは七千九十七億円という大幅なマイナスでありますし、りそななんというのは八千七百二十五億円ですからね、これはもう本当に大変な事態でありまして、この二つだけでも貸し出しのマイナスのほとんどを占めているわけです。ですから、そういう点をよく考えて、的確にこちらは業務改善命令を出していく。収益ばかり頭に置いて、そちらの方ばかり、銀行の利益ばかり考える、こういうことではなくて、中小企業の貸し出し計画が達成されないような事態になっているわけですから、そちらにもっと目を向けていく、こういう姿勢が大事だと思うんですが、大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 お話を伺って、少し誤解があるといけませんが、我々は、そういう厳しい態度で臨んでおります。

 繰り返し言いますが、これは年度の目標でありますから、やはり年度の終結を待ってそこで評価するというのが基本でございます。

 ちなみに、収益について業務改善命令を打ったではないかということでございますが、これも年度の収益であります、途中で打ってはおりません。しかしながら、一昨年の九月期の例につきましては、これはむしろ、年度を待たずに、異例のこととして私たちは行いました。それは、数字の未達が余りに大きかったということに加えて、やはり、それを実現しようという、その体制そのものが非常に不備があったということ。

 今回の場合は、体制そのものについては、先ほど局長からも御答弁させていただきましたように、店別の残高の目標をきちっと設定している云々、そういう体制はとっている、しからば、年度の約束であるんだから年度末までしっかりやれ、その様子を見ようではないかというのが現状でありますので、これは決して、こちらの収益には厳しくこちらには甘いとか、そういう問題ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 かつ、りそなについて言及がございましたが、りそなの上期というのは、御承知のように、預金保険法百二条の第一号措置をとったときでございまして、これは少し異常な状況下にあったということ、これは考慮しなければいけないというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 実態を見ますと、中小企業向け貸し出し計画の実績で、大手行全体では昨年度も一昨年度も中小企業貸し出しを減らしているわけです。二〇〇二年度がマイナス五兆九百九十六億円、二〇〇三年度がマイナス五兆六千五百六十三億円。毎年のフォローアップを追いかけていくと、二〇〇二年度から巨額の未達を出すようになっているわけです。つまり、竹中大臣が不良債権の最終処理を、そういう政策をとり始める、小泉内閣がとり始めたその時点から、大手行の中小企業向け貸し出しが大きく悪化し始めている、これが私は事実じゃないかと思うんです。これはやはり根本的に姿勢を変えていただかなければならない。そういう点で、根本的な政策の転換を求めておきたいと思います。

 次に、足利銀行の問題についてただしたいと思います。

 足利銀行の事実上破綻、国有化、そういう事態になったわけですけれども、その直前に、優先株を購入してもらいたいということで、たくさんの中小企業あるいは現地の個人に対して、優先株の募集ということで足利銀行の側からぜひお願いをしたいということで引き受けを求めたわけであります。

 しかし、私のところに、その要請を受けて株を購入した方から訴えがありまして、これがその訴えなんですけれども、こういうふうに言っているんです。支店長が来社の際のお話では、足利銀行は現在自己資本比率が六%です、しかし、それを八%に引き上げるために優先株の募集をしているんですから、こういう話をして、ああ、六%なのか、それを八%に上げるんだなということで応募したということなんですね。

 しかし、当時の自己資本比率というものは、これは平成十一年の六月の話なんですが、一体幾らだったのか。自己資本比率、幾らだったですか、そのときは。

竹中国務大臣 ちょっと申しわけありません。これ、質問通告いただいておりましたので、数字は、ちょっと調べておりますが、今、わかりません。申しわけありません。――手元に資料が……。何月期かもう一度言っていただけますでしょうか。

佐々木(憲)委員 平成十一年の三月期です。

五味政府参考人 平成十一年三月期の足利銀行の自己資本比率は、四・二九%でございます。

佐々木(憲)委員 そうしますと、その直後に、自己資本比率は六%ですが八%に上げたいんだ、こういうことで優先株の引き受けをぜひお願いします、こういうふうに回ったということなんですね。それで、この人は、もしその四・二九%ということを、事実を購入時に説明を受けておりましたら購入などすべきはずもありません、詐欺行為に等しいものであります、こう言ってかんかんになって怒っておるわけです、もう紙くずになっちゃったと。

 そういうやり方について、これは真っ当な優先株の勧め方だったというふうに思いますか、大臣。

竹中国務大臣 その個別のケースについて、今お話を伺っただけで、ちょっと私、なかなか全容を判断することは難しいわけでございますが、これは一般論として申し上げると、その会社の、事業会社の従業員による購入の勧誘方法に重大な問題があるような場合は、あくまで限定でありますけれども、事実と違うことを言って、間違った情報を与えて買わせたということになると、これは極めて重大な問題であるというふうに思います。

 そのような場合、出資者による訴訟が提起されて、裁判手続においてその従業員の不法行為が認定された場合には損害賠償責任が生ずるでありましょうし、しかし、いずれにしても、これは不法行為でありますから、もしそれが、今申し上げたようなことが現実であるならば、これは裁判所において、そうした判断に基づいてしっかりとした手続がとられなければいけないというふうに思います。

佐々木(憲)委員 裁判の問題はもちろんありますけれども、こういうことが、私がお聞きしているところでは、かなり広範に行われました。したがいまして、こういういわばだまし討ちのようなやり方、しかも、この間、私もこの委員会で何度もこの問題を取り上げてきましたが、金融庁自身が引き金を引いているというところがあるわけです、そういうことを考えますと、これは事実上、二重、三重に地域の住民をだましたことになる。極めて重大だと私は思うわけです。

 裁判の問題はあるでしょう。もちろん、そこで法的には認定というのが必要かもしれません。しかし、行政として、これだけの被害を与えたわけですから、しかも事実関係がこういう実態であったということであるならば、何らかの対応、被害者に対してどういう形でこれを補償するのか、やはり検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 足利の場合、第三者割り当ての増資を行った。これは、増資そのものはもちろん経営の自主的な判断に基づいて行うわけでありますけれども、優越的地位を乱用したりそうした不公正な取引は防止しなければいけない、ディスクロージャーは確保しなければいけない、法令等遵守には十分に対処する必要がある、これは言うまでもございません。

 その上で、今般、足利銀行が行った第三者割り当て増資に関して、現時点において刑事、民事ともに訴訟は特に発生していないと聞いておりますけれども、仮に、同行の増資をめぐる個別具体的な取引について銀行の勧誘方法に重大な問題があって、出資者による訴訟が提起されて、裁判所手続において当該銀行の不法行為が認定されて、不法行為に基づく損害賠償責任の存在が認められた場合は、これは請求権そのものは全債務保護の範疇に入ってくるわけでございますから、そこは我々としても対応すべき点はしっかりと対応していくつもりでおります。

佐々木(憲)委員 この問題は引き続き、私は、現地の中小企業の皆さんあるいは住民の皆さんが大変な損害を受けているわけで、単に法的な対応あるいは裁判所に任せるというだけではなくて、やはり行政上もさまざまな対応策を検討すべきだというふうに思いますので、その点を指摘いたしまして、以上で質問を終わらせていただきます。

田野瀬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会


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