衆議院

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第14号 平成16年3月31日(水曜日)

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平成十六年三月三十一日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 鈴木 俊一君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 中塚 一宏君

   理事 長妻  昭君 理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    熊代 昭彦君

      小泉 龍司君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西田  猛君

      林田  彪君    原田 令嗣君

      宮下 一郎君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    市村浩一郎君

      小泉 俊明君    鈴木 克昌君

      武正 公一君    津川 祥吾君

      津村 啓介君    寺田  学君

      藤井 裕久君    馬淵 澄夫君

      松原  仁君    村越 祐民君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   議員           五十嵐文彦君

   議員           津村 啓介君

   議員           中塚 一宏君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   財務副大臣        石井 啓一君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (内閣府産業再生機構担当室長)   江崎 芳雄君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)   栗本 英雄君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    五味 廣文君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 河村  博君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    渡辺 博史君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局勤労者生活部長)   松井 一實君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  松田  昇君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  永田 寿康君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     永田 寿康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律案(内閣提出第一八号)

 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第五号)

 金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第六号)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成十五年十二月十九日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣竹中平蔵君。

竹中国務大臣 昨年十二月十九日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成十五年四月一日以降九月三十日までを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。

 本日、本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、簡単ではございますが、本報告の概要について御説明申し上げます。

 初めに、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容について御説明申し上げます。

 金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は、報告対象期間中には行われておりません。

 次に、新生銀行及びあおぞら銀行からの預金保険機構による瑕疵担保条項に基づく債権買い取りの状況について申し上げます。

 報告対象期間中に、預金保険機構が引き取った案件は、新生銀行については三十五件で、債権額千七百五十三億円、支払い額千六百三十二億円であり、あおぞら銀行については二十六件で、債権額四百三十七億円、支払い額三百七十三億円となっております。

 続いて、預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び公的資金の使用状況について、御説明申し上げます。

 破綻金融機関の救済金融機関への営業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助は、報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十八兆六千六百八十六億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産買い取りは、報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆三千六百六十三億円となっております。

 これらの預金保険機構による資金援助等について、十五年九月三十日現在における公的資金の使用状況について申し上げます。

 一般勘定、金融再生勘定、金融機能早期健全化勘定、危機対応勘定、金融機関等経営基盤強化勘定における政府保証つき借り入れ等の残高は、各勘定合計で二十一兆千三百七十二億円となっております。

 最後に、参考として報告しております公的資本増強に係る取り組みのうち主なものについて御説明申し上げます。

 昨年五月十七日、金融危機対応会議の議を経て、りそな銀行に対して、預金保険法第百二条第一項に基づく資本増強の必要性の認定が行われました。五月三十日、同行から資本増強の申し込み及び経営健全化計画の提出がなされ、六月十日、一兆九千六百億円の資本増強を行うことを決定し、預金保険機構から六月三十日に公的資金が払い込まれました。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定の確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

田野瀬委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省国際局長渡辺博史君、金融庁検査局長佐藤隆文君、金融庁監督局長五味廣文君、内閣府産業再生機構担当室長江崎芳雄君、警察庁刑事局長栗本英雄君、法務省大臣官房審議官河村博君、法務省民事局長房村精一君、厚生労働省労働基準局勤労者生活部長松井一實君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。竹中大臣には連日大変御苦労さまでございます。

 きょうは何点か質問させていただきますけれども、まず最初に、これはもう極めて総括的な質問になりますけれども、平成十四年十月に金融再生プログラム、その後作業工程表を策定いたしまして、今それに沿って各種施策を進めてきているところというふうに承知をいたしておりますが、現段階で、その達成状況、どのように評価をされているのか。そしてまた、現在我が国の金融システム、これは来年にはペイオフの完全な解禁ということも控えているわけでございますので、安定性はどうなのか、また、本来の役割を十分に果たしているのかどうか。大臣の基本的な認識をまずお伺いしたいというふうに思います。

竹中国務大臣 上田委員から、金融再生プログラムの達成状況と、金融システム全体の機能を今どのように評価しているかという、包括的なお尋ねでございます。

 金融再生プログラムは、不良債権問題の終結、その問題の正常化を図っていくということで、御指摘のように二〇〇二年の十月に作成されたわけでございますけれども、基本的には、作成当時の比率というのは八%を上回っていたわけでございまして、これを四%台にするということを目標にしているわけでありますが、主要行の十五年九月末の不良債権の比率は六・五%ということで、十五年三月からの半年間で〇・七%ポイント低下をしております。このペースを続けていくことができれば四%台ということは可能になるわけでございまして、我々としては、着実に進捗しているというふうに認識をしております。

 しかし、これからまだ一年間、やはり上り坂は最後に行けば行くほどきついということもあろうかと思いますので、ぜひとも、この当面の目標に向けて着実にこのプログラムを実践したいというふうに考えているところでございます。

 我が国の金融システム全体の話ということでございますと、この金融再生プログラムに加えまして、これは主要行の話でございますから、中小・地域金融機関に対してリレーションシップバンキングのプログラムを別途持っておりますので、それを同時にしっかりと図っていくことが必要であるというふうに考えております。目下その執行を着実に進めているところである、地域をまず再生させて、中小企業を再生させて、そうすることによって金融機関自身も健全化していくというプロセスをぜひ強力に引き続き進めていきたいと思っております。

 さらに、金融機能ということでありますと、不良債権問題の正常化に加えまして、その資金供給の機能をしっかりしていかなければいけない。不良債権が低下する中で、主要行においては、四大グループのすべてで、無担保、第三者保証不要の融資商品を設けて、貸し出しを急速に拡大するという動きが出てまいりました。また、中小・地域金融機関の八割におきましても、担保、保証に過度に依存しない融資に取り組むというような新たな動きが出ております。このような動きを本物にしていくということが、金融機能を高め、正常化し、さらに高めていく重要な仕事であるというふうに考えております。

上田委員 今、経済の先行きに若干ながら明るい兆しが見えてきた、これを、本格的な経済の再生、景気回復につなげていく意味では、やはり金融の、金融システムの果たす役割というのは非常に大きなものがありますので、また引き続きしっかりと取り組んでいただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 以下、消費者や一般投資家の利益にかかわるような個別の問題を幾つか御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、外国為替証拠金取引の問題について何点かお伺いしたいというふうに思うんですが、この外国為替証拠金取引、業界筋の方の話では、市場規模も三千億円ぐらいになるんじゃないかとか、あるいは取扱事業者も、さまざまな業態を合わせますと二百社以上に上るというような話もございます。こうした多様な市場が発達すること自体は、これは私は決して悪いことではないというふうに思っておりますが、あわせて、どうもそれに関係します被害も非常に拡大、増加をしているという現実があります。

 国民生活センターに寄せられる相談件数、これも急増しておりまして、資料を見てみますと、二〇〇二年度には相談件数が七百二十四件あって、これは実にその前の年度に比べると五倍にふえているということがありますし、二〇〇三年度はさらにそれがまた倍にふえるというような勢いになっております。そして、その被害に遭った当事者の方というのが六十歳代、七十歳代の方が多い。これは本当に大きな社会問題になりつつあるというふうに思っております。

 こうした外国為替証拠金取引について、金融庁としてどの程度実態を把握されているのか、また、被害を防止するためにどのような方策を講じられているのか、お伺いをいたします。

伊藤副大臣 私からお答えをさせていただきたいと思います。

 上田委員から外国為替証拠金取引について御質問いただいたわけでありますが、御承知のとおり、平成十年の外為法の改正によりましてこの取引が行われるようになったわけであります。

 そして、この取引に関する相談については、上田委員からも御指摘がございましたように、国民生活センターによりますと、相談が急増いたしておりまして、二〇〇〇年度には二十八件、二〇〇二年度には七百二十四件、そして今年度の上期においては、昨年度の同時期に比べると二倍以上の勢いで増加傾向が続いている。そして、この相談の内容を見ますと、高齢者を中心に、リスクの説明なく、元本割れしないと言われ、契約したが、元本割れした、あるいは、必ずもうかると言われて取引をした、こうした相談事例が寄せられている、このことを承知いたしているところでございます。

 こうした被害を防止していくに当たって、私どもの取り組みでありますけれども、昨年の十二月にガイドラインを策定いたしまして、直ちにこれを適用させていただいております。また、注意喚起を行う、こういう観点から、金融庁のホームページにおきましてその注意点というものを公表させていただいたところでございます。さらに、金融商品販売法の施行令というものを改正させていただきまして、さまざまな方々がこの取引を行っているわけでありますけれども、この取引を行うすべての取扱業者、こうした方々を同法の適用対象とさせていただいて、本年の四月一日、明日から施行させていただきたいと考えているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした一連の措置の効果をこれから十分注視していきたいというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 もともと、先ほど申し上げましたように、いろいろな、多様な業態があって、それ自体、業法としての監督というのは行われていないわけでありますので、いろいろと限界はあるのかもしれませんけれども、やはり特にお年寄りの方がこの被害に遭っている、しかも、この取引自体非常に振れの大きい、リスクの高い商品でありまして、その辺が十分理解をされていないまま被害が急増しているという実態でございます。

 今、金融商品販売法の適用対象とするということがございましたけれども、金融商品販売法で販売業者に課せられている義務というのは限定的なものではないかというふうに思っておりまして、リスクの説明とかは義務が課せられておりますけれども、本当にそれだけで十分理解できるんだろうかということは私もちょっと疑問に思っております。

 ちょうどきのうの新聞で、金融審議会の委員でもあります神田秀樹東大教授が書いていることでありますけれども、やはり、こうしたさまざま新しく出てくる金融商品に対する、被害が起こることを未然に防ぐ、特に一般の消費者、投資家に対する被害が及ばないようにしていくためにはどうしても横断的な投資家保護法制の整備がさらに必要なのではないかということを言っておりますし、またさらに、市場の番人としての金融庁や証券取引等監視委員会の機能強化、あるいは裁判外での紛争を処理するためのADRの整備、こうした点を提案されております。

 私も、こうした提案、大変重要なことであるし、参考になることではないかというふうに思っておりますけれども、こうした提案に対します大臣としての御見解をお伺いしたいというふうに思います。

竹中国務大臣 神田先生の御提案は、基本的な考え方、方向としてはやはり大変御示唆に富むものであるというふうに思っております。といいますのも、金融審議会の答申そのものの中で、平成十二年六月二十七日の答申でございますけれども、二十一世紀を支える金融の新しい枠組みとして、縦割り規制から、委員言われたような、機能別、横断的なルールに転換するという視点に立って金融サービスに関するルールの整備を進めていくことは重要であるというふうに述べられている。私も、まさにそれはそのとおりであろうと思います。神田先生の御主張も、基本的にはそういう観点からの御主張であるというふうに思っております。

 我々としましても、そうした点も踏まえて金融商品の販売等に関する法律を制定したわけでございますけれども、この国会にも、教授が指摘されますように、例えばでありますけれども、投資事業有限責任組合の出資持ち分をみなし有価証券とするとか、証券取引法の違反行為の抑制を図るための課徴金制度を導入する、そういった内容の証取法の一部を改正する法律案を提出したところでございます。

 昨年末に、さらに金融審議会の「市場機能を中核とする金融システムに向けて」という報告においても提言をいただいておりますけれども、これまで投資家保護策の講じられていない投資サービス、さらには新たに登場するであろう投資サービスについて証取法を中心とした有効な保護のあり方について検討する、さらには、証取法の投資サービス法への改組の可能性も含めたより幅広い投資家保護策について中期的に検討を継続していくというふうな提言をいただいております。

 証券取引等監視委員会の体制の強化についても、我々も、体制の強化というのは必要だというふうに考えておりまして、ADR、監視委員会の強化、技術的な問題、多々ございますけれども、方向として、十二年の答申の方向にも沿ったものであるというふうに認識をしておりますし、我々としても引き続きしっかりと対応をしていきたいと思っているところでございます。

上田委員 今御答弁にもあったんですけれども、やはり、商品に着目をして規制を加えていくことになると、次から次へと新しいものが考えられ出してくるわけでありますので、どうしても、これは金融商品を横断するような、そういう新たな規制というのは必要なのではないか。特に、これからますます消費者、一般投資家の方々にもそういったものに安心して参加をして、むしろ積極的に参加をしてもらわなければいけないわけでありますので、金融審議会でも御検討いただいているということでありますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、いわゆる無認可共済、根拠法や監督官庁がない共済制度の問題につきましてお伺いをいたしますが、この無認可共済についても、共済事業者が破綻をしてしまっただとか、あるいはマルチ商法まがいの行為が行われているといった被害が非常にふえているというふうに承知をいたしております。このことについても、これは根拠法や監督官庁のない制度でありますので限界はあろうかというふうに思いますけれども、金融庁としてどの程度実態を把握されているのか、お伺いしたいというふうに思います。

五味政府参考人 御説明申し上げます。

 今お話ございましたように、無認可共済は不特定の者を対象としているものでございませんので、保険業法の規制対象外ということで、金融庁として、この無認可共済の実態について、あるいはその被害の実態について、なかなか詳細までは承知しているところではございません。

 しかし、保険業法に抵触する疑いがあるものがあるとすれば、その実態把握というのは極めて重要でございますので、そのための情報収集には努めております。

 具体的には、全国の財務局に対しまして、保険業法に抵触する疑いがある共済についての情報を得た場合、金融庁に、本庁に速やかに連絡するようにといった指示をしております。また、生命保険業界、あるいは損害保険協会等の関係団体に対しましても情報収集の協力を要請しているというところでございます。

 現在まで財務局あるいは金融庁に寄せられております情報というものにつきましては、その大半が、ある共済が金融庁で免許を受けた業者であるかないかといったような、こういったお問い合わせが大半でございます。あるいは、国民生活センターなどにも入っておりますけれども、マルチ商法ではないのか、本当に大丈夫なのかといったようなお問い合わせ、こういったようなものが現状では大半でございます。

 私ども、いずれにしましても、財務局あるいは業界の関係団体と協力いたしまして、保険業法に抵触する疑いがあるといったような共済の情報を得られました場合、できるだけ詳細情報を集めた上で、必要があれば捜査当局へも御通報するといったようなことで、厳正な対応を図ってまいりたいということで現在処理をいたしております。

上田委員 ありがとうございます。

 今、共済事業には、根拠法があって監督官庁が明確になっている、例えばJAの共済とか全労済とか、そういった事業と、それ以外の無認可の共済があるわけでありますけれども、いずれも、職域、地域などの特定の者を対象とした事業に限られているわけであります。

 今答弁にもありましたように、不特定の者を対象に事業を行う場合には保険業法の適用を受けるというふうに承知をいたしておりますが、対象が特定されたものであるのか不特定のものであるのかというのを、これは見分けるというか判断するというのは相当難しい面があるんじゃないかというふうに思います。これは、いわゆる根拠法のある共済事業の例をとったとしても、結構、その辺、特定なのか不特定なのかというのはなかなか判断の難しいところがあるわけであります。

 そうすると、これだけ大きな社会問題となっている以上、やはり消費者を保護するために何らかの規制が必要になってきているわけでありますので、特定、不特定、そういう基準もあるんでしょうけれども、加入者の数とか資金量など、もっと客観的にわかりやすい基準を設けて、例えば一定数以上の加入者がいる共済事業あるいは一定基準よりも超えるような資金を扱っているようなものについては保険業法の適用をするとかあるいは別途法律を定めるとか、そういうような規制が必要なんではないかというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいと思います。

伊藤副大臣 確かに委員御指摘のとおり、特定、不特定というものを判断していくことは大変難しいところがあるわけでありますが、不特定の判断基準につきまして、私どもといたしましては、当該団体の組織化の程度、構成員の団体帰属にかかわる意識度でありますとか、あるいは当該団体への加入要件についての客観性、難易の程度、そして当該団体の本来的事業の実施の程度、こうしたものを、実態に即して総合的に判断する必要があるというふうに考えているところでございます。

 そして、この無認可共済に対する規制についてでありますけれども、委員御指摘のように、共済というものは、さまざまな規模、形態で多様な事業展開を行っており、また自発的な共助を基本とする、こういう性格のものでありますので、十分な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、無認可共済の問題については金融審議会において御審議をいただくことといたしておりまして、今後、どのような対応が考えられるか、幅広く意見を伺ってまいりたいと考えております。

上田委員 これから金融審議会でも議論をしていただくということなんですけれども、私も聞くところによりますと、相当な資金量を扱っているものもあるというふうに聞いておりますし、また、被害に遭った事例などを見ますと、これはもう相当大きな掛金で掛けていくわけですので、被害に遭った額が相当大きなものも出ているというふうに承知をしておりますので、ぜひその検討を早急に進めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、銀行によります保険商品の販売規制の緩和の問題につきましては、ここのところ随分と論議が行われてまいりました。金融審議会でも、その販売規制の緩和に伴いますメリットやデメリットについてさまざまな論議が行われて、一定の方向が示されたというふうに承知をいたしております。

 聞いているところでは、その方向性については、我々もいろいろと検討してきたものと方向性としてはおおむね一致するんではないかというふうに思っておりますが、私どもも、公明党の財政・金融部会でも、そうした保険業界とかあるいは信用金庫、信用組合の方々などからも御意見もいろいろと伺って検討してきたところでございます。

 今後、原則としてすべての保険商品の販売を解禁するということを前提といたしまして、それに伴います弊害防止措置の内容や実施時期などについては金融庁で具体的に検討されていくことになるんだというふうに承知をいたしておりますが、やはり、そうしたものを検討していく際には、消費者、ユーザー、また中小企業等の利益を、そこを最優先して御検討いただきたいというふうに思っております。

 金融審議会等でもいろいろと議論があった中で、具体的には、例えば、規制緩和のメリットを生かしていく、そのためには、やはり、金融機関でできるだけ複数の保険会社の多様な商品を取り扱うということが重要だというふうに思います。また、特に、大手の銀行が取り扱う場合には、圧力販売の被害を受けやすい融資先事業者などへの販売ルールは、やはりこれは一般の顧客とは別のさらに厳しいものを定める必要があると考えておりますし、また、万一そうした被害等が出た場合には中立的な苦情処理の窓口も設ける必要があるんではないかというふうに思います。また、もう一つ、よく議論の中で懸念になっていたのが、指摘されていたことが、医療情報等の個人情報の利用の問題。これもやはり不適切な利用を防止するための措置も明確にする必要があろうというふうに思います。あわせて、違反した銀行等に対しては、内容の公表であるとか厳正な処分を行うということも重要なんではないかというふうに思っております。

 こうしたことで、今、保険業法の中に保険仲立ち人、業者、いろいろな義務が課せられておりますけれども、こうしたものも参考になるんではないかというふうに思うわけでございます。

 これから金融庁として具体的な弊害防止措置あるいはその実施時期などについて検討していくわけでありますけれども、どういう方針、方向性をお考えになっているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

竹中国務大臣 銀行等による保険販売の問題に関しましては、上田委員にもいろいろ御指導いただいております。感謝をしている次第でございます。

 今御指摘になられましたように、消費者の、ユーザーの利益を最優先にすべきである、全くそれは基本であるというふうに私自身も考えております。その意味でも、取り扱いのラインアップは多様な方がよいのではないか、同時に、販売ルールは厳格にしなければいけないのではないか、そういう御指摘も今ございましたし、苦情処理をどうするのか、個人情報の管理をどうするのか、今御指摘いただいた点は、基本的にどれも重要なポイントばかりであるというふうに認識をしております。

 この問題につきましては、ことし一月から金融審議会において議論をされてまいりましたけれども、本日、報告の取りまとめに向けた審議が行われる予定でございます。この報告がまだ出ていない段階で確たることを申し上げるのは避けなければいけないと思いますが、いずれにしましても、金融審議会からの報告をいただければ、それを踏まえて金融庁において検討を進めまして、速やかに結論を得たいというふうに考えております。

 基本的な考え方というのは、まさに今上田委員おっしゃったような点であると思います。やはり業態間の垣根を低くして消費者の利便を高めていくということが基本線である、同時に、保険というのは非常に長期にわたる契約商品であって流動化が難しいわけでありますから、その特殊性をしっかり考えなければいけない、さらには、銀行等がその取引先に対する優越的地位を乱用しないようにしっかりとルールをつくっていかなければいけない、そういった点を基本線といたしまして、審議会での答申を踏まえて金融庁においてしっかりと検討を進めて、速やかに結論を得たいというふうに思っているところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 この保険窓口販売の問題は非常に関心も呼んだわけでございますけれども、いろいろな例えば懸念されることがある一方で、特に地域の金融機関、信用金庫や信用組合などでは非常に新たなビジネスチャンスでもありますし、また、これを消費者の側から見ても利便性は相当高いのではないかというふうに思う面もあります。

 そういう意味では、これだけ非常な関心を集めたことでありますので、これから慎重に進めていただく必要はあるんですけれども、今お答えをいただいたような方向でぜひ進めていただきたいというふうに思います。また、これから、具体的な解禁の時期などについてもあらかじめやはりはっきり明らかにしていただいて、関係者もそのことについて十分理解を進めた上でできるようにしていただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、今度、信用情報の適正な取り扱いについてちょっとお伺いしたいというふうに思うんです。

 私が承知している事例で、消費者がクレジット会社と裁判で係争中の事件がありまして、提訴者がクレジット会社への支払いを停止したところ、そのクレジット会社が信用情報機関にそのことの情報を流した。その結果、その後解決はしたんですけれども、その提訴した者はブラックリストに載って、その間、他の金融機関からの借り入れなどに著しい支障が生じたというものがございます。

 そうなると、こういうことが起きると、やはり、消費者の権利が本当に適正に保護されるためにはこういった信用情報の乱用というのは防がなければいけないというふうに思います。こういう事態が起きると、正当な権利を実現することが事実上困難になるわけでありますし、また、本来、信用情報というのは、金融事業者などが契約するに当たって個人の返済能力などの経済的な情報を把握するためのものであるはずでありますけれども、こういう、いわば目的外に利用されると、不当な圧力になるわけであります。

 こうした信用情報の乱用防止についても一定の規制を加える必要があるのではないかというふうに思いますけれども、御見解を伺いたいと思います。

伊藤副大臣 御指摘の個人信用情報も含めまして、金融分野における個人情報保護のあり方につきましては、平成十三年の三月より、金融審議会金融分科会特別部会において審議を行ってきたところでございます。

 そして、個人情報保護、この基本法が昨年成立をし、そして関係政令も成立したところでございますので、先般、この特別部会の審議を再開させていただいて、今後どのようなルールを追加する必要があるのか、もし追加するとすればどういう形でやっていかなければいけないのか、そうしたことも踏まえて検討していきたいというふうに考えているところでございます。

上田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、きょうはもう時間になりましたのでここで終わらせていただきますが、中央労働金庫に対する業務改善命令などの問題につきまして通告をさせていただいていたんですけれども、これは政治絡みの問題でもあり、大きな問題でもあるというふうに思いますので、また後日取り上げさせていただきたいと思いますので、以上で終わらせていただきます。

 以上でございます。

田野瀬委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 きょうは、FRC報告に対する質疑ということで、まず冒頭に、竹中金融担当大臣に金融行政について伺います。

 今日に至るまで、例えば平成七年、八年、東京二信組とか住専とか、いろいろ日本の不良債権問題というものがあって、これまでいろいろな法律をつくり、そして使った公的資金、贈与したりあるいは買い取ったり、預金者保護に使ったものもありますし、加えて、資本増強、資本注入というふうに使ったものもある、それら全部ひっくるめますと、合計で四十兆円以上にもなるほどの額が使われているということなんですけれども、いまだに不良債権の問題、解決というふうにはいかないでしょうし、その証拠に、やはりこの後は金融機能強化法案という法律案も国会に提出をされるということになっているわけです。

 昨年は、資本増強を受けておりました金融機関が破綻したり、またあるいは、さらに資本注入を受けるというふうな事態に立ち至っているわけなんでありますが、これは要は結局どういうことなのかということをまずお伺いしたいというふうに思います。

 といいますのは、資本増強を受けていたということは、資本増強を受けるそのときに、やはり経営の再建が可能であったという判断があったはずだというふうに思います。その前提として、ちゃんと資産査定が行われたのかというふうなことがあるというふうに思います。また、加えて、資本増強を受けた金融機関は経営健全化計画を提出することになっておりますし、その経営健全化計画に応じて監督官庁たる金融庁は業務改善命令を出すというふうな権能も持っているわけですし、それ以外にも、例えば早期是正措置とか、皆さんはいろいろなツールをお持ちのはずです。

 資本注入をしたにもかかわらず、その金融機関が再度破綻をする、またあるいは再度資本注入を受けなければいけなくなってしまう、この原因というのは一体どこにあるというふうにお考えですか。

竹中国務大臣 御指摘のように、不良債権問題というのは、もう十数年間日本の経済を悩ませ続けている問題でございます。結果として、四十兆という数字を挙げられましたが、今のところ確定しているのは十兆強でございますけれども、いずれにしても非常に深刻な問題である。

 私は、この問題の本質は、もう一にも二にも日本経済全体のバランスシートの調整ということだと思います。

 バブルのときに資産が膨れ上がった、資産に見合うような借入金、負債が、過剰な債務がそのバランスシートの裏側にありました。しかし、バブルが崩壊して、その後、経済のパラダイムも変わり、経済が萎縮する中で、その資産が劣化した。この資産を劣化したままでほっておけない。そうすると、今度はバランスシートの借方を何らかの形で経済全体が調整していかなければいけません。そうすると、そのしわ寄せというのは債権者、投資家、いろいろなところに及んでくる。

 しかし、ある意味で、そのバランスシートの最後の引き受け手というのは銀行部門になりますから、その銀行部門がそれを、具体的には債権放棄とか新たな資金援助という形でやらざるを得なくなってくる。そのときに、債権放棄して損失が出た場合に、今度は銀行自身のバランスシートがもたなくなってくる、それが過少資本の問題。そのときには資本注入をせざるを得なくなる、ないしは破綻をして国有化等々の措置も経て、どこかで資金援助をしなければいけなくなる。

 それはもういや応なしに、どこかでやはりそのバランスシート調整をやっていかないと、日本経済全体が新たな対応策をとれないという状況になってきたんだと思います。

 今にして振り返れば、では、そのためには何が必要だったのかというと、今、中塚委員、資産査定の話をされましたけれども、これも私自身、金融再生プログラムをつくる過程で申し上げさせていただいたように、やはり三つのことが同時にできていないとこのバランスシート調整はできない。一つは資産査定が厳格に行われていることであり、二番目は十分な自己資本があることであり、三番目は、その自己資本を生み出すもとというのは収益でありますから、その収益を生み出せるようなしっかりとしたガバナンスがあることである。この三つがそろっていれば、この問題全体がこんなに長引くことはなかったんであろうというふうに私も考えます。

 しからば、その中で、銀行には銀行の責任があり、金融当局には金融当局の責任があり、それぞれどういう役割を果たしてきたのか。これはやはり、少し長い時間をかけて、私は、本当に、専門家によってしっかりと検証されなければいけないと思っております。

 ただ、例えば一つの例をとりましても、資産査定の手法そのものが、やはり我々の社会全体としてそういった知見を、残念だけれども、今から思うと、少なくとも一九九〇年代の前半、半ば、後半ぐらいには持ち合わせていなかったのではないのだろうか。しっかりとした基準に基づいて資産を査定して不良債権を公表しなさい、そういう枠組みができたのは、気がついてみると、ごく最近のことでございます。

 資産査定の手法に関しても、例えばでありますけれども、マーケットに近い、マーク・ツー・マーケットということで、我々が大手銀行の一部の債権に求めているディスカウントキャッシュフローというような、そういうやり方そのものも、やはり社会全体でしっかりと議論されて採用されるに至ったのは非常に最近であった、そのようなことなのではなかったかと思います。

 いずれにしても、そういう、資産査定、自己資本、それとガバナンス、私は、ガバナンスの強化に関しては、これはまだまだ緒についたばかりであるというふうに思っておりますから、これは、民間の企業の問題、それと銀行の問題、物すごい努力を今後とも重ねていかなければいけないというふうに思っております。

 繰り返しになりますけれども、社会全体で三つの要件を今後ともしっかりと拡充をしながらバランスシート調整を進めていかないとやはりこの問題は終わらないわけで、その問題に向けて、今のところ、主要行に関しては、そういう状況を金融再生プログラムで整えて、数値目標も設定して向かっているところでございますけれども、その努力というのを、やはりその業態の態様に応じた形で、引き続き我々の経済はやっていかなければいけないのであろうというふうに思っております。

中塚委員 今の答弁は答えになっているようで答えになっていないというふうに思うんですが、私がお尋ねをしたのは、要は、これだけのお金を使ったのに、何でいまだに不良債権問題が解決をしないのか、それは、金融機関側に問題があるのか、あるいは経済の問題なのか。バランスシート調整ということもおっしゃいましたけれども。

 しかし、注入をする以上は、それは行政の意思として、監督庁の意思として、注入をすることによって銀行が再生可能だというふうに判断をされたからこそ注入をされているわけだし、しっ放しではなくて、経営健全化計画等を出させて、その履行をちゃんとモニタリングしていくというふうなこともできたにもかかわらず、再度銀行がまたつぶれたりあるいは資本増強を受けなければいけなくなってしまうということについて、では、一体何が原因なんだというときに、金融庁として、その責任といいますか、今までの行政を振り返っていかがなんでしょうかということなんですけれども。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、例えば、資産の査定、それと自己資本を十分確保すること、それとガバナンスを強化すること、それぞれについてはまだまだ我々自身途上でありますから、その意味では、過去の分の評価も含めて、時間をかけて、これは専門家にしっかりと御評価をいただかなければいけないのだと思っております。

 中塚委員の直接のお尋ねは、主として、例えば、資金注入するときに資産査定が十分なされていたのか、資産査定をして注入するときの注入額が十分であったのか、さらには、その後のガバナンスが十分確保されたのか。このガバナンスの責任は、例えば、コーポレートガバナンスとして、株主の責任、経営者の責任ございますけれども、当然、これは監督者としての責任というのもその中には入ってくるということだと思っております。

 公的資金を入れたけれどもうまくいかなかったというお話でございましたけれども、うまくいった例もございます。公的資金を入れて、返した銀行もございます。しかし、まさに委員御指摘のように、公的資金を入れたのにまた必要になったところもございます。こういうところの例えば経営責任、過去の問題の責任等々については、りそな、足利の場合は、今その社内でしっかりと調査もなされておりますし、我々としても、金融問題のタスクフォース等々で、今後さらにどのような検証が必要なのかということを絶えず議論しているところでございます。

 この問題については、繰り返し言いますけれども、公的資金を入れてそれが返ってきた、いわば成功したところもあるけれども、残念だけれどもそうじゃなかったところもある。そうした問題につきましては、我々としても引き続き、しっかりと検証を深めながら政策のあり方を議論していきたいというふうに思っているところでございます。

中塚委員 返してもらうのは当たり前の話ですね、注入をした場合に。

 残念ながらつぶれたと言いますが、それは、注入をした以上つぶれることはあってはいけないわけですよ。かつて早期健全化法を審議した際にも、また、その他資本注入の法案を審議した際にも、それは、時々の野党の委員なり、またあるいは与党の委員からも、これでつぶれることはないんでしょうね、つぶれたらどうするんですかという指摘はたびたびと行われていたわけでありまして、それは、残念ながらつぶれるということでは決してないと私は思います。

 だからこそ、ここの問題をちゃんとクリアにしておかないと、それは、後から検証するのは重要なことだとは思いますが、また新たに資本増強の法律案を審議するということに当たって、過去の失敗というものをちゃんと検証しないことには、私たちは税金を使うということ自体を否定しているわけではありません、金融再生のファイナルプランというものを提出しているわけですから、それは、税金を使うこと自体は否定はしておりませんけれども、その前提として、やはり注入をする以上はちゃんと元気になってもらわなきゃいけないわけだし、だめなところはだめで破綻処理をしなければいけないわけだし、そういった意味で、過去の総括というものがなければ、この新しい法案の審議というものに大変に大きな影響を与える、審議の充実というか、法案の成立あるいは否決ということにも大変大きな問題になってくるというふうに考えるんですが、そこはいかがですか。

竹中国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたように、資産の査定の問題、自己資本の問題、これは、常に新たな知恵を出しながら進化をさせていかなければいけない。これほど大きな不良債権を抱えた大国というのは世界にも類がなかったわけでありますから、そういう努力は常に我々やっていかなければいけないと思っております。

 そうした観点からいいますと、例えば自己資本については、これは、金融審等々でも自己資本についてのワーキンググループで今しっかりと議論をしていただいているところでございますし、過去の責任の問題につきましては、破綻ないしは資本の新たな注入が必要になった銀行の中においてしっかりと議論していただいて、金融問題のタスクフォースにおいて、さまざまな各主体の責任についても含めて、しっかりと議論をしているところでございます。

 しかし、やはりこれはかなり歴史的な評価をいただかなければいけない問題だと思いますので、我々としては、引き続きその点はしっかりと議論、検討を深めまして、さらなる政策の枠組みの強化をしていかなければいけないというふうに思っております。いずれにしましても、資産査定の厳格化、自己資本の強化、そしてガバナンスの強化、それを実現するための政策的な枠組みにつきましては、引き続き我々としてもしっかりと議論を深めていくつもりでございます。

中塚委員 資産査定は、私は例えばということでお話をしたわけで、注入をする場合には大前提の一つだと思いますが、大変重要な一つだと思いますけれども、それだけではありません。やはり再建可能性というものをどういうふうに判断するのかということについてはもっといろいろな要因があるだろうと思いますが、資産査定だけのことではなくて、これだけお金を使って、まだぼこぼこつぶれたりさらにお金が要るというのは、難しい言葉や専門知識の問題じゃなくて、普通の人が考えたってやはり明らかにおかしいわけですね。一体何をやっておるんだということになる。

 また、経済のお話ということになれば、竹中大臣は、まさに経済財政担当もお兼ねになっているわけでありますから、以前の柳澤担当大臣のころは、私はマクロ経済政策を所管する立場にはありませんという答弁もされていたわけですけれども、竹中大臣の場合は、まさに経済政策についても所管事項としてのお立場というものがあるわけなので、きょうはこの問題についてはこれぐらいにしますけれども、法案の審議入りまでに、また、あるいは審議をしている中ででも、私は、やはり過去の反省、総括というものをちゃんとすることなしに、これ以上、本当に、そんなに税金をまた銀行に入れるような法律案を審議したって意味がないし、結果また同じことになるだろうというふうに思っています。そのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 続いて、昨日の、我が党の長妻委員が質問をいたしましたUFJ銀行に関する検査の問題について若干伺いたいわけですが、竹中大臣はこういうふうに答弁をされています。

 実地調査の有無についての答弁は差し控えさせていただきます、そもそも実地調査といいますのは、資産内容の健全性に係る検査に当たって、本店、支店または各本部におきまして、自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出しまして、自己査定の正確性について実態を把握するというものでございます、というふうにおっしゃった。

 したがって、この実地調査というのは、立入検査をしている間の一つの検査手法を示す用語でございます、これをいつ、例えば、やったかやらないかということを認めれば、個別行の立入検査中、どのような具体的な検査をやっているかということが明らかになるわけでございます、ということです。この実地調査については、やる場合もやらない場合もある、これを明らかにすることは、その中身を、ある意味、わかる人にはわかってしまうという性格のものでございます、今までも答弁を差し控えさせていただいております、というふうにお答えになられたわけであります。

 きょうは検査局長にお越しをいただいておりますが、まず一般検査、そして特別検査、加えてこの実地調査というこの三つの検査について一つずつ御説明をいただいて、この三つがどういう関係になっているのかというのをお話しをいただけますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一般検査とおっしゃいましたのは、恐らく私どもの用語で通常検査のことかと思いますが、通常検査と特別検査というのは、それぞれ別のものとして相並んでいる概念であろうかと思います。

 通常検査と申しますのは、一般的に言えば、リスク管理の分野、それから法令等遵守の分野、こういった分野全体をカバーする非常にカバレッジの広い検査でございます。これを、主要行の場合ですと、近年においては、通年専担検査体制のもとで年一回やる、こういう体制になっております。

 それから、特別検査というのは、その特別という意味合いでございますけれども、通常検査が事後検証の原則ということで、銀行が自己責任に基づいて決算を組み、それに対して外部監査人の監査が入って発表された決算、これを前提といたしまして、自己査定等の正確性がどうであるか、あるいはリスク管理体制、それから法令等遵守の体制、こういうものをチェックするということでございますけれども、特別検査の場合には、事後検証の考え方の例外といたしまして、対象となっている決算を、まさに銀行が自己査定作業をやっているタイミング、同じタイミングで立入検査に入りまして、その結果が決算に反映される、こういう仕組みでございます。

 この特別検査の特別という理由は幾つかあるわけでございますけれども、事後検証の例外であるということに加えまして、主要行における大口の債務者であって、かつ、市場からの黄色信号と申しましょうか、いろいろなシグナルが出ている、こういった債務者に焦点を当てまして、こういった債務者の主要行における、特にメーン銀行、メーンバンクにおける資産査定、具体的には債務者区分でございますけれども、これが正確であるかどうか、これをチェックするという仕組みでございます。

 それで、三つ目の実地調査でございますけれども、これは通常検査の場合に行われるケースが多いわけでございますけれども、通常検査、あるいは、概念的には、論理的には特別検査でも排除されるものではないと思いますけれども、立入検査を進めていく際に一つの検証の手法として行っているものでございます。

 具体的には、資産査定を含むリスク管理、それから法令等遵守などの体制とか状況を実態把握するという目的でございますけれども、担当をしている部店、これは本部のこともありますし支店のこともございますけれども、これに検査官が直接臨店いたしまして、実地で原資料等を抽出したり参照したりして検証を行う、こういう手法でございます。

中塚委員 通常検査、特別検査の違いについては理解をいたしましたが、いずれも銀行の自己査定というものをチェックするということで、特別検査の場合は、特定の債務者に注目をし、そしてまた銀行が自己査定をしているのとあわせて同時に行うというふうなことでよろしいですね。

 それに加えて、この実地調査ということなんですが、きのうの大臣の御答弁だと、自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出をするということになっているんですが、これだと、特別検査、要は、特定の債務者に注目をして検査を行うということとこのこと自体は変わりませんよね。

 あと、実地調査ということは、特別検査と比べて、何が、何を余計、余計にしていると言ったら変ですが、特別検査に加えて実地調査というのは何をなさるんですか。

佐藤政府参考人 実地調査と申しますのは、通常検査とか特別検査と相並ぶ別の概念というよりは、通常検査の中で、あるいは、場合によっては特別検査の中で、具体的な立ち入りの際の検証の手法として、直接臨店をして、原資料を抽出したり参照したりする、こういう手法のことを指しておりますので、そこの関係は、相並ぶ概念ではございませんので、包含関係というのはなかなか難しいことであろうかと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、担当の店に検査官が直接臨店をいたしまして、実地で原資料を抽出する、参照する、こういうことをやるというのが実地調査でございます。

 それで、この結果を通常検査における検証に役立てるということもあるでしょうし、それが通例でございますけれども、さらに言えば、場合によっては、特別検査の際にも実調を行って、実調での検証というのを判断の参考資料にするということもあろうかと思います。

中塚委員 ということになると、特別検査であれ、通常検査であれ、実地調査を行うということはあり得るということですね。ただ、特別検査の場合は、特定の債務者に着目してということでしたね。実地調査はもちろん特定の債務者に着目してやるものなわけですね。実地調査をするときには特別の債務者に着目をしておやりになるということですね。

佐藤政府参考人 実地調査の対象は、必ずしも特定の債務者に着目するものだけではございません。法令等遵守の体制を見る、あるいはリスク管理の状況を見る、体制を見る、チェック・アンド・バランスがきいているかといったようなことも見る、そういった目的のために臨店をいたしますので、必ずしも特定の債務者に着目したものだけとは限らないということでございます。

 特別検査の中で実地調査を行う場合には、特別検査そのものが特定の大口債務者に着目しておりますので、恐らく特定の債務者に着目した実地調査ということになろうかと思います。

中塚委員 そうすると、ちょっときのうの大臣の答弁は違いますね。だって、個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出してということだったわけですが、今の局長のお話だと、個別の債務者は関係ないというふうなことのようですから、きのうの大臣の御答弁は違うということになると思います。

 ただ、いずれにせよ、今検査局長からお話をいただいたことが、なぜ、あるとかないとかいうことが言えないのかということなんです。くだんの話というのは、昨年十月七日に実地調査実施ということがあったかどうかという問いかけに対する答弁でありますけれども、この十月七日の火曜日というのは、これは通常検査だったんですか、特別検査だったんですか。

佐藤政府参考人 個別の金融機関に対します個別の検査における具体的な取り運び方に関することでございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

中塚委員 検査に入った日とか終わった日とかいうことは報告をしているという答弁だったと思うんですけれども、通常検査であったのか、特別検査であったのかということについてもお答えになれないということですか。

佐藤政府参考人 UFJ銀行に対しましては、通常検査が、昨年の八月二十八日から立ち入りを開始いたしまして、現在も継続中ということでございます。

 それから、特別検査でございますけれども、これは予告と検査結果の通知を全主要行一斉にやっておりますけれども、その日付でございますが、検査を予告いたしましたのが昨年の八月十八日、それから、通知をいたしましたのが十一月七日ということでございます。これは昨年の、十五年九月期を対象といたします特別検査、フォローアップの日程でございます。

中塚委員 ということは、十月七日のときにやっていたのは通常検査ということでよろしいんですよね。いかがですか。通常検査ということでよろしいわけですか。

佐藤政府参考人 十月七日という、御指摘のその十月七日に具体的に起きた出来事について、それが具体的にどの検査であるかということを申し上げますと、どの検査でどういうことをやったということにつながりますので、恐縮でございますが、差し控えさせていただきます。

中塚委員 いや、私がお尋ねしているのは、十月七日、この日当日じゃなくても、このころやっていたのは通常検査なんですねということ。

佐藤政府参考人 その時期におきましては、先ほど申し上げましたことから容易に推察可能でございますけれども、通常検査と特別検査と両方が進行中であった時期かと思います。

中塚委員 ありがとうございました。通常検査と特別検査と両方進行していたということですね。

 では、大臣のきのうの御答弁は、これは違うわけですな。個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出してというふうに御答弁になったものだから、私はてっきり、特別検査とそんなに変わらぬことをやっているんじゃないかと。そのことについて言えるとか言えないとかというふうなこと自体おかしいじゃないかというふうに思っていたんですが、そうしますと、これは大臣の答弁が違っていたということですか。

竹中国務大臣 きのうの答弁は違うではないかという御指摘でありますが、きのうはきちっと答弁をさせていただいたつもりでございます。

 これは、基本的には検査の手法であるということを何度も申し上げておると思います。検査の手法で、資産内容の健全性に係る検査に当たっては、検査はいろいろやります、コンプライアンスから、いろいろやりますけれども、資産内容の健全性に係る検査に当たっては、例えば実地調査で、検査の実地調査において、資産内容の健全性に係る検査に当たっては例えばこれを抽出したりするんですよ、その場に行ってサンプルをとるんですよ、そういう説明をさせていただいているというふうに思っております。議事録もそのようになっていると承知をしております。

中塚委員 いやいや、だから、そういうことを伺っているわけではなくて、きのうの御答弁でいくと、資産内容の健全性に係る検査に当たって、本店、支店または各本部において、自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出して、自己査定の正確性について実態を把握するということを御答弁されているということで、であるならば、特別検査とそんなに変わることはない。それを言える言えないという話にはならないんではないかというふうに思ったわけで、だから、きのうの御答弁というのはやはり正確性を欠いているんではないでしょうか。(発言する者あり)

田野瀬委員長 ちょっと、静かにしてください。

佐藤政府参考人 昨日私どもが大臣にお渡しいたしましたメモというのが、必ずしも全体をカバーした正確なものではなかったということはあろうかと思います。ただし……(発言する者あり)

田野瀬委員長 ちょっと、静かにしてください。答弁中ですので静かにしてください。

佐藤政府参考人 そうではなくて、先ほど来申し上げておりますように、実地調査というのは一つの手法でございまして、通常検査でよくやることがありますが、特別検査でもあり得る。したがって、その中で、個別の債務者についての資料を抽出し、原資料に当たるということも当然行われるわけでございます。その部分を中心に大臣は御答弁をさせていただいたということかと思います。

 私の先ほどの答弁では、それに加えまして、法令等遵守、リスク管理体制といったことについてもチェックをするということでございます。

 恐れ入ります。

田野瀬委員長 中塚君。――今、手を挙げておるんですよ、手を挙げておるんですよ。質問しておるんです。中塚君。

中塚委員 大臣、今局長からお話があったとおりで、きのうの御答弁については十分なものではなかったということなんですが、そのことはいかがですか、お認めになりますか。

竹中国務大臣 基本的には、実地調査というのは手法でございます。特別検査、それと通常検査というのは、これは検査の、全体のことの体系。

 通常の、通年の検査というのは、これはいろいろなことをやります。コンプライアンスもやるし、いろいろなことをやります。当然のことながら、通常検査の中にも、これは資産の査定が入っておりますから、個別の債務者についてのそういうチェックは当然通常検査の中にもあります。特別検査というのは、その中で、リアルタイムに、幾つかの重要な債務者、これは基準を設けて、債務者を取り出して、それについてリアルタイムで検査するのが特別検査です。通常検査というのは、ある意味で、コンプライアンスから個別の債務者から、すべてをやります。

 そのときに、通常検査、特別検査それぞれについて、手法として実地で調査するというのがあり得るわけでございます。実地で調査するときはどういうことなのか。例えば、資産内容の健全性に関する検査に当たっては、私が申し上げましたようにいろいろな債務者をピックアップする、そういう説明をさせていただいたわけでありますので、非常に正確に御答弁をさせていただいたつもりでございます。

中塚委員 自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出する、自己査定の正確性について実態を把握する、手法ということが御答弁がありましたけれども、結局、通常検査、加えて特別検査もやっていたということをお認めになったわけですけれども、それであるならば、何でやっているやっていないということを言えないのかというふうにも私は思うわけですよ。手法の一つですね。今、うんうんというふうにうなずかれましたけれども。何で、では、それについて、やるやらないということについてお答えをいただけないのかということにまた話は戻るわけなんですが、いずれにしても、またUFJの寺西頭取にお越しをいただいてお話を伺わにゃいかぬなということを強く思いました。

 あともう一つお伺いをしたいのは、その参考人質疑の際に、私が、UFJ銀行の貸し渋り、貸しはがしの実態ということについてただしました。その際に、寺西頭取は、調査をして、しかるべく対処をするというふうにお答えになられたわけですけれども、何か金融庁の方に御連絡があったとか、UFJ銀行から何か報告があったというふうなことはいかがでしょうか。

五味政府参考人 国会での参考人質疑の後でございますけれども、UFJ銀行から、この問題になりました案件についての経緯、現状等についての報告を受けております。

中塚委員 受けておりますということであるならば、御披露いただけますか。

五味政府参考人 御報告はちょうだいいたしましたけれども、特定の銀行と特定の債務者の方のお取引に直接関係するお話でございますので、この件につきましては情報保護という観点からコメントは差し控えさせていただきたいと存じます。

中塚委員 では、私が寺西さんにお願いをした、実態の調査としかるべく対応ということについてはどのように履行されるんでしょうか。それを金融庁がお話しになれないということだけれども、金融庁がUFJ銀行の申し出に沿ってちゃんと指導をされるということなんでしょうか。

五味政府参考人 銀行において調査をなさるという寺西頭取のお話でございます。銀行におかれて、これは、適切な調査、対応が行われるということであると存じます。

 御報告はちょうだいをいたすことにしたいと思いますけれども、その内容については、個々のお取引に関連するお話ですので、コメントを申し上げるのは控えざるを得ないということでございます。

中塚委員 であるならば、しかるべき調査をした上でしかるべき対応をとるということでありますが、調査の結果がわからなければしかるべき対応であるのかどうかも私たちにはわからないということになるわけで、委員長、今金融庁に対してUFJ銀行からあった報告ということを、これを資料として要求したいというふうに思いますので、理事会で協議をお願いいたします。

田野瀬委員長 お申し込みの案件は、資料として中塚君に報告するということでよろしいでしょうか。(「理事会で」と呼ぶ者あり)理事会に報告ということでよろしいでしょうか。どちらですか。(中塚委員「どっちでも構いません。――理事会に報告してください」と呼ぶ)それでは、理事会で取り扱いをさせていただきます。

中塚委員 では、また理事会で御報告をいただいた上でこの問題については対応したいというふうに思いますし、それについては、やはり寺西頭取から、御自身の口からお話をいただきたいというふうにも思いますので、重ねて参考人招致の要求を、委員長、お願いいたします。

田野瀬委員長 失礼いたしました。もう一度、恐れ入ります。済みません。(中塚委員「いや、わかりましたと言ってくれればいいですよ、わかりましたと言ってくれればいいですから」と呼ぶ)どうぞ、もう一度。(中塚委員「どうぞじゃなくて、わかりましたと言ってくれればいいですよ」と呼ぶ)いや、ちょっと、意味がちょっとわからなかったので、どうぞもう一度、恐れ入ります。(中塚委員「意味がわからないんじゃなくて、聞いていなかっただけじゃないですか。それは、そんなのはだめだ」と呼ぶ)質問の趣旨がわからない。(中塚委員「そんなことじゃない、聞いていなかったじゃないですか。それはだめだよ」と呼ぶ)ちょっともう一度……(発言する者あり)

 それでは私、筆頭、筆頭……(発言する者あり)

 それでは、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田野瀬委員長 速記を起こしてください。

 お答えいたします。

 ただいまの質問に対しまして理事会で協議をいたします。

 中塚君。

中塚委員 それでは、ぜひ、私も理事の一員ですから、強く理事会で求めたい、また、委員長にもお願いをしたいというふうに思います。

 ちょっと何か時間が大分押してしまって、本当はきょう一番やりたかったことが、時間が短くなってしまったんですが、本日取り上げたい課題として、銀行のキャッシュカードのスキミング被害の問題についてお伺いをしたい。私は、この話を聞いたときに、こんなに大変な問題だとは思わなかったんですね。大臣も事前のレクチャーでお受けになっているかもしれませんけれども、こんな不条理な話が本当にあっていいのかというふうに思わざるを得ないような問題なわけなんです。

 お手元に資料をお配りしておりますけれども、資料に沿ってお話をしたいと思いますが、ある方がA銀行で銀行口座を持っていらっしゃる、銀行口座を持っていらっしゃればキャッシュカードというものも銀行はくれるわけですね。そのキャッシュカードが、最近、スキミングというふうに言われて、偽造されるという事件が相次いでいる。この偽造されたキャッシュカードで、A銀行ではないB銀行のATMからお金を引き出す、そうするとこの預金口座を持っている人のお金がなくなるわけですね。また、あるいは、最近は、カードによって預金を引き出すだけではなくてローンが組めてしまうというふうなものもある。そのローンも、所得に合わせてローンが組める、そういうふうな機能を持っているものもあるということで、要は、知らない間に預金はなくなるわ、借金はつくられてしまうわ、そういうふうな事件が相次いでしまっているわけなんです。

 まず、きょうは法務省、警察庁にもお越しをいただいているんですけれども、第一に、キャッシュカードを偽造するといったことは、まず刑法上どういう罪になるのか、そして、その被害者は一体だれなのかということについてお答えいただけますか。

河村政府参考人 御説明申し上げます。

 犯罪の成否自体は収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄ではございますが、一般論として申し上げますと、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、預貯金の引き出し用のカードを構成するものを不正につくった者につきましては、支払い用カード電磁的記録不正作出罪が成立いたします。

 この偽造罪と申しますか不正作出罪など、この犯罪の被害者につきましては、さまざまな考え方があり得るところではございますが、一般には当該犯罪によりまして直接害をこうむった者、つまり、犯罪とされております構成要件の保護法益の主体というのをまず一般的に考えられております。

 お尋ねの支払い用カード電磁的記録不正作出罪につきましては、いわゆる社会的法益に対する罪と位置づけられているわけでございまして、また、キャッシュカードを構成いたします電磁的記録をつくる権限と申しますのも、その当該カードの発行者でございますので、いわゆるキャッシュカードの電磁的記録の不正作出といったものにつきましては、預金者自体を被害者ととらえるのはその意味で困難な面があるようには思われます。

中塚委員 大臣、ちょっとちっちゃな声だったからあれだけれども、お聞きいただいたと思うんですが、要は、キャッシュカードをスキミングにより偽造される、そのことの被害者というのは実は預金者ではないわけですね。今銀行というふうなお話がありましたが、あと、加えて社会的信頼というふうなことなわけで、結局、預金をしている人というのは被害者にならない、なり得ないということなんですね。

 そして、B銀行のATMからキャッシュカードを使ってお金を引っ張り出すということになるんですが、では、このB銀行の被害というものは、これは刑法上どういうことになるんでしょうか。

河村政府参考人 支払い用カードを用いまして現金を出すという場合には、相手が人、自然人ではございませんので、これにつきましては、現金という他人の財物を窃取した場合には窃盗罪ということで、当該ATMの中の現金を占有管理しておられる方が被害者ということになるわけでございます。

中塚委員 というわけで、結局ここでも預金者は被害者にならないんですね。つまり、被害者というか、まず被害を受けたのは社会的信頼ということであり、またこのATMを管理する銀行から窃盗ということでお金が抜かれたという話になるわけです。

 私は、にせのカードを使ってお金を引き出すわけだから詐欺なんじゃないのかというふうな気がしたんですが、詐欺というのは人に対してしかないわけですね、機械に対しては詐欺ではないということになるわけです。

 この話は、要は、損をするのは預金者。もう預金はなくなる、借金までつくられる、でも刑法上は被害者は預金者ではないということになってしまう。被害届を出しに行くと、刑法上は被害者たり得ないわけですから、そうすると、警察の方でも被害届というものを受け取れないということになってしまうわけです。

 ここで、警察庁にもきょうはお越しをいただいておりますが、そういったことで、では、例えば預金者の方が被害届を出されて警察で受理をされた件数、また、あるいはB銀行が窃盗ということで被害届を出した件数について御報告をいただけますか。

栗本政府参考人 今お尋ねの、偽造のキャッシュカードを使いましてATMから現金を引き出した事件、これは昨年の、十五年中でございますが、私ども警察庁に報告をいただいておりますのは合計で十八件ございます。そのうちの十七件につきましては、ただいま委員御指摘のB銀行になろうかと思いますが、同じ場合もございます、要するに、先ほど法務省の審議官から御説明がありましたように、ATMを設置して管理している者が窃盗の被害と見ておりますから、それは十七件でございます。

 それから、今、警察に行った場合に何か相談に乗らないんじゃないかというようなお話もちょっとございましたが、それは、私どもは、被害届はもちろんでありますが、一つの捜査の端緒でございますから、それぞれの被害について真剣に承った上で捜査を進める、そういう中で名義人の方からの被害届を受理したケースもございます。

中塚委員 今、十八件、十七件というお話があったから、要は、預金者の方から被害届を受理した件数というのはやはり一件あるんです。だから、それは、やはり現場の警察官が本当にこの人のことをかわいそうだと思って被害届を受理した、やっとそこから捜査が始まっていくというふうなことになるんですね。

 お配りした資料の二枚目なんですけれども、この二枚目は何かといいますと、ジャーナルというふうに呼ぶんだそうですが、ATMの中に、引き出したカードの写しが残るんです。これはトイレットペーパーみたいにロール紙になっている。今被害が十七件とおっしゃったのは、実はそのジャーナルが一個で、ジャーナル一つで一件と勘定するわけです。だから、十七件といったって十七回引っ張ったわけじゃないんです。

 これを見ていただければわかるんですが、この黒く写っているのは実際カードが白いということなんですね、要は真っ白のカード、それで下に磁気テープの欄があるということで、要は、犯人は偽造カードを使って引き出したということはもう明らかなんです。この紙の一番下のカードだけは、ちょっと見にくいですけれども、字が見えておりますね。銀行の名前も何となくわかる、あと、キャッシュカードの中に番号が打ってありますけれども、その番号の写しのようなものもわかるということになっているんですが、結局この一番下のものだけが本物。それで、その上の三つはみんなにせもの、偽造カード。

 しかも、犯人は、偽造カードを四十枚、五十枚と持ってATMに行って片っ端から抜くわけです。上を見ていただければわかると思いますが、九十九万円抜いていますね。残高不足ということも書いてあるけれども。こういうことで、この一人の人がそのATMに行って、その犯人が行って、もう二時間も三時間も要はばあっと抜くわけです、お金を。それで、その抜いた件数を一回というふうに考える、一回というふうにカウントするんですね。だから、被害に遭った人は、十七人ではなくて、もう本当に数知れないぐらいたくさんいらっしゃるということになるわけなんです。

 ここまでお話をして、大臣もこんなばかな話はないとお思いになっていただけるというふうに私は確信をいたしております。

 刑事の問題は、それは悪いのは犯人ですから、ところがなかなかこれが捕まらないわけですね、犯人も。なかなか捕まらない。では、警察庁に、もし今わかればお答えいただきたいですが、このキャッシュカードのスキミングで犯人を逮捕した、あるいは検挙したという例はありますか。

栗本政府参考人 この問題、大変重要な問題として今全国に督励しておりますが、残念でありますが、現時点まででの検挙事例はございません。

中塚委員 というわけで、犯人は全然捕まっていない。けれども、それは考えようによっちゃ当たり前な話で、被害届さえ出せない、銀行が被害届を出さなきゃ事件にもならないわけですね。だって、A銀行は、別に自分が痛むわけじゃありませんから、預金者のお金がなくなるだけの話で。銀行自体が困るわけじゃありませんね。B銀行は、ATMを使われただけだから、これだってそんなに困る話ではないわけですよ。ということになると、要は、銀行が被害届を出さないと、これは事件として捜査が始まらないということなんですね。

 だから、本当にこんな不条理な話はないというふうに思うんですが、きょうは法務省の民事局長にもお越しをいただいているんですけれども、こういったことで、預金が抜かれて借金までつくられてしまう、本当に哀れでかわいそうでということになるわけなんですけれども、この預金者、要はお金を持っていた人ですが、この人を、例えば、では、民事上救済するというか、この人の持っていた預金を取り戻し、あるいは借金をなかったことにするというふうなことが果たしてできるのかどうかということについてお伺いをします。

房村政府参考人 御指摘のような、偽造カードを用いまして払い戻しを受ける、あるいは貸し付けを受けるという、その場合の銀行の責任に関しましては、通常は銀行との間の約款に定めがございます。したがいまして、その約款に定める事由が存在するかどうかということを判断して決めることになります。

 仮に、その約款に定めがない、あるいは約款が無効であるというような判断がされた場合には、民法に従って判断をされます。

 民法の基本的考え方といたしましては、債権の準占有者に対してした弁済で、かつ弁済者が善意無過失であれば、その弁済者が保護される。無権原の者に本来弁済した場合には権原のある者にもう一回弁済をしなきゃいけないわけですが、その無権原の者がいかにも権原があるように見える、しかもそのときに払う人に落ち度がない、そういう場合には弁済者を保護しよう、これが民法の基本的な考え方でございます。

 したがいまして、御指摘のような事案につきましては、偽造キャッシュカードを用いた人がいわゆる債権の準占有者と、取引観念の上から見て真実の債権者と信じさせるような外観を有しているかどうかということがまずは判断される必要がございます。

 次に、銀行側が善意無過失であったかどうかという点ですが、この点については、機械でやっているわけですが、そういう機械で払っている場合につきましては、機械払いシステムの設置管理の全体について、可能な限度で無権原者による払い戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたと言えるかどうか。したがいまして、単に暗証番号等を確認したというだけでは足りないというのが裁判所の考え方だろうと思います。

 したがいまして、そういう基準に従ってこの具体的な事実を判断いたしまして、弁済が保護されるか、あるいは保護されない場合には改めて、逆に言えば、名義人の方が保護されるということになります。

 貸し付けの場合についても、この弁済の場合と同じように考える考え方と、貸し付けの場合には弁済そのものではありませんので、貸し付けについて民法で言っている表見代理が成立するかどうかということを別途判断すべきだという考え方もございます。これも、行為した者が、いわば代理権があると信ずるに足りるような外観があるかどうか、あるいはそのことについて名義人について落ち度があるかどうか、またそれを信頼した銀行側が善意無過失と言えるかどうか、そういうような点を判断して裁判所で最終的に結論を出すということになります。

中塚委員 それで、ここでもう時間がないので残念なんですが、竹中大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 資料の三枚目と四枚目は、この被害に遭われた方が弁護士を通じて要は銀行にかけ合っているわけですね。五百七万円を不正に引き出されたということなわけなんです。それについて銀行にかけ合うということなんですが、四枚目が銀行からの回答書です。一応名前は全部伏せてありますけれども、これが本当にもう木で鼻をくくったような答えなわけなんです。

 今、民事局長からもお話がありました。では、暗証番号だけ確認したからそれでいいのかということとか、やはり、それは約款に書いてあったとしても、では、例えば銀行法でいえば、預金者保護ということはその目的にうたってあるわけですね。それはやはり、銀行と預金者というのは対等ではないということだと思います、法律の目的というのは。それは民法は対等かもしれませんが、銀行法や預金保険法というのは、銀行と預金者が対等ではないからこそ、預金者の保護ということをわざわざ目的にうたっているということだと私は理解をいたします。

 二つお伺いをしたいんですが、まず一つは、こんなにぽこぽこ偽造されるようなキャッシュカードを銀行につくらせておいていいのかということですね。それがまず第一の問題点。そして、二番目の問題として、この絵でいけばやはりA銀行でありますけれども、A銀行は、オンラインが正常に稼働していた、オンラインに不備がないから請求は本人にするというふうに一点張りで言うわけですよ、多くの場合。そんなことでいいのか。要は、A銀行はちゃんと事実関係を調査するべきではないのか、そしてもっと誠意ある対応をするべきではないのかというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 中塚委員からキャッシュカードの御質問があると聞いたときに、私自身、この問題、御指摘のように、余り我々、私自身は少なくとも不勉強でございまして、そんな大事なものの偽造がそもそも簡単にできるのか、そういうような本当に素朴な疑問を持ちました。しかし、いろいろ御指摘をいただいて、また今の法律の関係の御答弁も聞いて、これはなかなか厄介だなと思っております。

 これは基本的には、今のあれで我々で何ができるかということを考えると、やはり銀行がちゃんとした被害届を出すような仕組みに持っていかなきゃいけないだろう、そうしないと始まらないだろう。あとは、暗証番号というのが一つのやはりプロテクトとしてあるわけですから、これがしっかりと管理されるような注意喚起を預金者にも銀行にもしっかりとしていかなきゃいけないだろうというふうに思います。それと、これは基本的にはカード規約、先ほどの答弁にもありましたけれども、カード規約というんでしょうか約款というんでしょうか、そこで、善意の預金者に関しては、それなりに、その責任が最終的には及ばないような規定もあるというふうに聞いております。そういうところを整備して、しっかりとそれが履行されていくような状況をつくっていくこと、そういうことに尽きるのかなというふうに考えております。

 あと、この偽造のカード、これは偽造がどんなふうに行われるのかどうかとか、そういう実態そのものがよくわかりませんので、それの解明も、これは当局にもお願いしてしっかりとやらなきゃいけないし、法律の非常に複雑な問題も含めて、完全になかなか頭の中を整理し切れないわけでございますけれども、我々としては、今申し上げたようなできることをしっかりとやっていくということ、それと、より大きな枠組みとしては、そんな、偽造が本当に生じないような技術の問題も含めて、ぜひ、きょうの御指摘を踏まえてしっかりと検討をしたいというふうに思います。

中塚委員 いや、そんなに難しい問題じゃなくて、簡単な話なんですね。ジャーナルをお見せしたとおりで、偽造されたことはわかっているわけなんです。

 それで、ではカードホルダーは、はっきり言って、カードはもう肌身離さず持っておる、そんな、どこかに置いたことはないという人がほとんどなわけですね。ということで、それは預金者、カードホルダーに過失はないわけです。過失があるかないかということについても銀行側は調べる責任があるんではないのか。

 要は、電磁的記録不正作出の保護法益は社会的信頼だという答弁がありましたけれども、社会的信頼というのはまさに金融システムそのものだと私は思いますよ。だから、そうであるならば、やはりそれは金融庁としてちゃんと銀行に、金融機関に、こういうときにはちゃんと対応しろ、キャッシュカードのこういう偽造で被害を受けた人がいらっしゃる場合には銀行としてちゃんと対応しなさい、事実関係は少なくとも調査しなさいということを金融庁から銀行に対して行政指導するなりなんなり、ちゃんと対応されるべきだと思いますよ。最後に、いかがですか。

竹中国務大臣 さっき、銀行に対して金融監督の立場から何ができるかということに関しては三点ぐらい申し上げましたけれども、それぞれについて、これは誠意を持ってぜひ対応していきたいというふうに思います。

中塚委員 終わります。

田野瀬委員長 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 最初に、きょう、為替が百四円台に入りました。これはかなり重大な問題だと思いますし、また、FBを発行して為替の介入資金を調達してきた、しているという状況から見ても、銀行の、金融機関の問題にも密接に関係しておりますので、この問題から入らせていただきたいと思います。

 昨年一年間の為替介入の額が二十兆五百七十三億円でございました。それまでの最高が一九九九年の七兆六千四百十一億円でございます。まれに見る増大ぶりを二〇〇三年はしたわけですが、ことしはもう既にかなりの額を使っていると言われております。現在までの介入の額についてまとめたものがありましたら、国際局長おられるようですが、お教えください。

渡辺政府参考人 それは今年に入ってからということでしょうか。

 先ほど議員からも御指摘ございましたように、一月が約七兆、二月が約三兆、三月はきょう締めで夕方発表させていただきますが、二月を若干上回る数字というところでございます。

五十嵐委員 去年一年間で二十兆ちょっとなのに、今のお話でも三カ月で十三、四兆円という、大変な額ですね、昨年がそれまでになく大きくて二十兆ちょっとだったわけですから、三カ月で十三兆ちょっとというのは。特に一月の九日でしたか、一日で一兆七千億円使った。それから、一月末から二月の初めにかけて、数日間で三兆三千億円使った。特にこの間のある一日は二兆円を超える額を一挙に投入した、こう言われているわけであります。

 その結果で、なぜか本日の午前中の為替レートが百四円台、これは効果がなかったと言わざるを得ないわけですね。これだけのお金を使って効果がなかった。特にこれは百三円を割り込むと一五%ルールにひっかかるんではないかなと思われますが、貿易だけではなくて、金融にも大きな影響があるんではないかな。この今の状況、これだけのお金を使ってこういう状況になったということについて、これはどういうふうにお考えなのか、財務大臣から伺いたいと思います。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 きょう、ちょっと時間は正確ではありませんが、百四円を切って百三円台に、今現在どうなっているかわかりませんが、一時そうなって、一時百三円台に入ったこともあるとまず申し上げます。

 今、委員がおっしゃいましたように、去年は二十兆ほど、ことしに入りましても、国際局長が御答弁申し上げたような形でやってまいりました。これは、為替介入の基本的な方針は、この委員会でもるる申し上げておりますように、また、あるいはボカラトン等のG7でも合意を見ておりますように、為替水準はファンダメンタルズを安定的に反映すべきもので、そうでない場合にはしかるべき措置をとる、こういうことでやってまいりました。

 去年、あのように二十兆ほど多くなりましたのは、いわゆるドルに関して地政学的な要因あるいは双子の赤字ということが非常に喧伝をされたといいますか、こういう評価的な言葉を使っていいかどうかわかりませんが、やや過度に強調された面がございまして、必ずしもファンダメンタルズを反映しない動きが多く出たわけでございますから、ああいう形になったということでございます。

 それでまた今の委員のお尋ねは、今百四円ないしは百三円台ということが急激な円高を招いて、多分、これは余りうまくやっていないんじゃないかという御趣旨だと思いますけれども、今の為替水準をどう見ているかということは、御答弁は差し控えさせていただきたいと思っておりますが、必要なときには適時適切な動きをとる、こういう方針は変えておりません。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

五十嵐委員 一時効果があったかに見えたんですが、それも短期の間に解消してしまった。一定の円安に振れたときはあったんですが、それでもなお押し上げ介入をし続けたために、いわば米国側のある意味ではげきりんに触れて、スノーさんでしたか財務次官でしたか、あるいはグリーンスパンさんも、アジアの介入は余り好ましくない、日本を名指しはしませんでしたけれども、グリーンスパン氏もそのような発言をされて、米国側が明らかに日本の財務省の介入姿勢について牽制をしてきた。牽制をされた途端に、いわばそれに震え上がって手を放してしまった。その結果がこの急激なドル安・円高になっているというふうに思うんですが、それは押し上げ介入をしたのかどうかも含めて御返事をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 押し上げ介入をしたかというようなことはちょっとお答えができにくいことでございますけれども、今の委員の御立論は、それまでやっておったのに、アメリカから一喝されると腰が引けてしまって今の結果を招いているじゃないか、こういう御趣旨だったと思います。

 あのとき、確かにグリーンスパン議長の御発言なりあるいはスノー財務長官の御発言が報道で出たわけでございますけれども、他国の首脳の御発言を、私が真意はこうですとかあるいはこうこうですというふうに申し上げるのも失礼ですし、また、そういう資格もございませんけれども、あの御発言は、特にグリーンスパンさんの御発言というのは、為替水準についておっしゃったわけでは必ずしもないと思います。今の日本の金融政策というものの出口はどういうところにあるかという御趣旨の発言だったと思いますし、また財務省と我々は頻繁に連絡をとり合ってやっているということでございますから、委員が今こういう図柄だとお示しになったような図柄では必ずしもないと私は思っております。

五十嵐委員 いや、マーケット全体は私が申し上げた図柄だというふうに判断をしておりますね。

 それから、この過程の中で、どうも財務省の中で大きな意見の食い違いが起きているということも言われているわけですね。スノーさんから電話を受けた財務省のこの問題でのトップに近い方が、部下がやり過ぎました、こういった発言をして財務省の担当部局と摩擦が起きたというようなことも聞いているわけでありまして、余りにもお粗末な姿勢だなと思うわけです。

 私は、前に発言をさせていただいた機会にも、継続的にやる為替介入というのは意味がないんだ、麻薬のようなもので、どんどんどんどん必要量が多くなってくるし、効果は薄くなってくるというようなことを申し上げました。市場では、こういう介入を、私が言っているんじゃないですよ、ばか介入と言っているんですね。

 それはなぜかというと、これはファンダメンタルズを反映しない投機的な相場づくりに対する反論なんだ、反撃なんだということを財務大臣はおっしゃるわけですが、投機と闘うためには、国家のようにお金をたくさん持っているところが本当は勝てるはずなんですよ、ちゃんとした闘い方をしさえすれば。ところが、勝てない闘い方をしてきた。だから、ばか介入だと言われているわけなんですが、それはどこでもギャンブルはそうなんですが、原資を明らかにしたら、その上を上回られれば負けてしまうわけですよ。

 それで、六十兆円まで用意しましたとか、四十兆円まで用意しましたというような形でずるずるずるずるそれを使っていくやり方、使い切っていくやり方では、絶対これは負けるんですよ。六十兆円とか四十兆円とか、これも三月まで十三兆円ですから、四倍をすれば四十兆円を超えるわけですけれども、四十兆円用意すれば普通は勝てる勝負だ。それをなぜ勝てないかというと、それはちゃんと途中で売ったりして幻惑をしていないからですね。押すばかりで、ちょっと引いて利食いをして資金をつくって、また市場に参戦して投入してくる、こういうやり方をしなければ絶対負けるんですよ。

 なぜ外国のファンドが勝てるかというと、資金量は日本の政府に比べてうんと小さいはずなんですが、常にもうかったと思ったらそこで一たん売って、利食って、チャンスを見てまた投入してくるということで、何回も戦士が生まれ変わって出てくるから日本に勝てちゃうわけです。

 それに対して日本は、ただ与えられた予算を使おう使おうと、使って、おもちゃを与えられたからこれを使い切らなきゃというような形でやっているのではないかと思われるようなやり方、そうだとは言っていないんですが、思われるようなやり方でやっているから勝てないんですよ。だから、ばか介入と言われるんです。反省があるのかということなんですよ、これをやって。僕は大きな問題だと思いますよ。

 たまたま今までの特別会計ではまだ利益が残っているとおっしゃるかもしれないけれども、リスクはどんどん膨らんでいる。それから、日本がこれだけ大きな介入をしてきたことで短期証券がたまってきていますから、それがいろいろなマーケットに矛盾を引き起こしている、問題を引き起こしているわけですから、この責任はだれにあるのかということを明らかにして、このところ大規模な、少しおかしいんじゃないか、常軌を逸しているんじゃないかと言われるような介入を指導してきたのはだれなのか、財務官なのか局長なのか市場課長なのか、はっきりしていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 ばか介入という表現は、委員のお言葉ではないと今おっしゃいましたけれども、こういうことをやっているから負けるんだとおっしゃっていると、結局はしかられているという気がいたします。

 それで、私は、そういうばか介入という表現には、断固として撤回をしていただきたいと。先生がおっしゃったんじゃないから先生に申し上げるわけではありませんけれども。

 ただ、介入の方針というのは、私が方針を立てて私の責任でやっております。そのことは申し上げる必要があると思います。

五十嵐委員 いや、責任とってほしいですね。これだけお金をつぎ込んで前より悪くなっているというような話は、これはどうにもならないですよ。

 為替介入、先ほどの話ではこれからも適宜やらせていただく、こうおっしゃっていましたけれども、とにかく介入の方針がふらふらしているように思えてならない。きちんと負けない戦いをして、かつ適正な水準に誘導できるような、あるいは、私は市場にある意味では任せてもいいんだと思いますけれども、そういう方針をはっきり、きちんと理念を明確にする必要があると思いますので、注文をつけておきます。

 本題に入ります。

 私は、日本の金融、本来、大改革を目指したときに、事後的な介入にとどめるんだ、昔のような手とり足とりということはやめるんだ、裁量的な行政もやめるんだ、こういうことで金融行政の大きな転換があった、護送船団方式もやめるんだという転換があったと思っていたのが、いつの間にかなし崩しになってしまった。そして、口では、そういうことをやって目指してきているんですと竹中さんはおっしゃるんだけれども、言っていることとやっていることが正反対だということを何回も申し上げ続けてまいりました。

 この間違いはどこから来るのか、あるいはそごはどこから来るんだろうかということを見ると、官僚組織が、結局、責任回避、危機を認めない、現実を見ないというところから来ているんだろうなということが容易に想像ができるわけでございます。

 例えば足利銀行の問題につきましても、僕は、この足利銀行の破綻処理はやはり不公正だったというふうに言わざるを得ないと思います。もともとが粉飾決算あるいは粉飾決算まがいのことをしていた。ですから、本来あるべき早期是正措置が働かなかった。いきなりある種の方針変更によってつぶしてしまったということが起きたわけでありますけれども、それも、今は危機ではないんだというシナリオに全金融機関が乗ろうとした、乗せられたということから始まったと思いますし、あるいは実際の破綻後の処理の仕方についても、本当に私は公正ではないと思っているわけであります。

 私が今回指摘したいことの一つは、本来は預金を、足利銀行、地元の銀行を助けなきゃということで出資に振りかえた善意の投資家が、渡辺先生を初めたくさんおられるわけですね。実質上の預金者、これは僕は実質的に預金だったと思うんですが、これが無価値になってしまって、投資の専門家である機関投資家、生保等の機関投資家が保有する劣後債、劣後ローンが債権としてこのケースでは守られてしまった、保護されてしまった。これは大変おかしな不公正だ。しかも、これを直そうとしない。

 なぜこういうことが起きたかというと、九八年の金融危機のときに、劣後ローンをペイオフしてしまうと生命保険会社のシステミックリスクが起きるだろう、そして、生保がばたばたといってしまうと、これがまた銀行にも波及して大変なことになる、だから、この際、危機対応として劣後ローンや劣後債は守っておこうじゃないかということで実は法律が仕組まれてしまった。

 この仕組み方にはそれなりの理由があったと思うんですが、これが皆さんの言い分だったら、もはや今はシステミックリスクはない、危機状態ではないとおっしゃるんですから、これは正常な姿に戻さなきゃいけないのに、しようとしない。つまり、本当は今も危機対応の時代なのに、それをやらない。要するに、危機対応の処理を完全にやるか、それとも、私はフィクションだと思っているわけですが、片っ方で危機ではないということを貫徹するかという、そのどちらかにしなければならないのを、両方残して併存しているというのが今の状況だ。

 私は、むしろ、劣後債や劣後ローンは、大臣、金融機関に全部強制的に持たせなさい、それによって金融機関の経営というものを投資家に監視させるという方がいいぐらいだと思っているわけです。本来、劣後しない劣後ローンや劣後債というのは問題が大きい、こう思っているわけで、今の制度は、劣後させないわけですよ、今の足利銀行の破綻処理のあり方で見ると。これはやはりおかしなことだと考えざるを得ない。

 ちょっと幾つか言いましたけれども、今言ったことについて、後たくさん控えていますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 いつもながらたくさん厳しい御指摘をいただきましたので、ちょっと簡潔にというのはなかなか難しいのでございますが、これは繰り返しになりますけれども、我々は、透明で、事後から事前へ、護送船団ではない、裁量的ではない行政を目指してやっております。

 今委員のお話の中で、足利に関して、粉飾であった、方針変更したという御指摘、これは大変厳しい御指摘でございますが、私は事前の足利の決算が粉飾であったとはやはり考えておりません。これは公認会計士においてきっちりと監査がなされていたものと思っております。

 方針変更があったと、これは金融監督の方針変更という御趣旨に伺いましたが、我々は一貫して、基本的なセーフティーネットは預金保険法百二条に依存して、さらに、主要行は金融再生プログラム、リレーションシップバンキングの枠組みの中でしっかりと対応しているところでございます。

 劣後ローンを強制的に持たせろというところ、済みません、私よく理解できなかったのでございますが、足利との関連で、善意の預金者が出資をした、それと劣後ローンを持っている機関との対比という問題、これは、その出資に踏み切られた善意の方々の心情を思うとまことに遺憾であるというふうに我々も思っております。そうした方々に対してできるだけ被害が及ばないような連携措置というのもしっかりととっておりますし、さらにとっていくつもりでございます。

 ただ、これも形式的な答弁だと言われるかもしれませんが、優先株は株式である、劣後債は債権である、その法律的な性格を、やはりこれは制度上、取り扱いを制度に基づいてやらざるを得ないという状況になっている。その範囲で、我々としては、善意の方々にできるだけ被害が及ばないような対応策は、引き続きしっかりときめ細かく見ていく所存でございます。

五十嵐委員 とにかく実態をよく見て、石川銀行でもあったわけですけれども、銀行が優越的な地位を利用して実際に預金を出資に振りかえたというようなケースについては、これは事実上の預金とみなしてきちんと払い戻しをすべきだと私は思うということを改めて申し上げておきます。私の質問にはお答えになりませんでしたが、結局、今は危機なのか危機でないのかという認識があいまいだからこういうことが起きるのではないかというのが私の今の質問の趣旨であります。

 それで、りそな問題についても同じようなことが言えると思うんですね。預保の松田理事長にもおいでをいただいておりまして、いつも御迷惑かけているんですが、お呼びしては質問が及ばないでお帰りをいただいたりして、大変失礼をいたしております。

 そもそも預保法の中で、第七章というのは「金融危機への対応」というテーマがしっかりついているわけですね。そして、今回、りそなの問題でも足利の問題でも問題になっている百二条というのは、小見出しで「金融危機に対応するための措置の必要性の認定」と書いてあるわけですよ。そしてその中には、いわゆる以下の一号、二号、三号の措置については、我が国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障があるときに限ってこれを使うんだという、これは限定なんですよ。要するに、国の公的資金を使うんだからむやみに使っちゃいけませんよ、こういうときに限って使いなさいよというのが、この百二条の本来の法の趣旨なんだろうと思います。

 ですから、柳澤前大臣も何度も言っているわけですよ、個別の金融機関を救うために使うんじゃありませんと。システムの危機があるときに初めてこれは使うんですということを何度も答弁をされております。私もそう思うんですね。ところが、いつの間にか、金融庁は、システミックリスクに関係なく、個別の金融機関を救うためにこの条項を使おうとしたりしてきたということなんですね。

 りそなの問題もそうなんですよ。りそなについても、これは破綻の危機ではなくて予防なんだということを総理も竹中大臣も繰り返しおっしゃいました。単なる予防ならば、私は、この百二条、わざわざ危機対応会議を開いて、御前会議を開いて、総理にお出ましいただいて、この法律にのっとって、厳重な限定のあるこの条項を適用するというのはおかしいと思うんです。

 単なる予防なら、一兆九千六百億円という投入額は大き過ぎますし、予防であるなら毀損を予定していないはずなんです。返済の見通しがかなりの確率でなければ、これは一〇〇%とは言いませんけれども、なければ予防措置としては注入してはいけないと私は思うんですが、実際にはそうなっていない。注入した資本が毀損をするという見通しが本当になかったのかどうか、ないまま一兆九千六百億円を注入したのか。

 なぜならば、いわゆる四%割れしたから注入したと言うんですが、一二%強まで自己資本比率を戻すためにこれだけの注入をしたわけですから、実際には、ある程度目減りをしても四%を相当程度超えるということを見込んでやったはずであって、もともとが矛盾しているんですよ。危機対応ならいいんですよ、本当の危機対応なら。これはシステミックリスクに直結するんですと言うんだったらいいけれども、そうではない。単なる予防だと言いながらこういうことをやるのは、もともと論理的に矛盾しているんですよ。

 時間がないので続けて私言っているんですけれども、安全保障で言うと武力攻撃事態というのがありますが、いわば武力攻撃予測事態という直前の事態というのを想定して法律でしていますけれども、まさにこの本来の法律というのは、第七章の一項というのは、これはいわゆる武力攻撃予測事態という規定なんだろう、寸前の規定だ。システミックリスクに直結するかもしれないというところまで来ている規定として、そういうときでないと使ってはいけませんよというのがこの規定だと思うんですが、松田理事長、私の解釈は間違っていますでしょうか。

松田参考人 お答えいたします。

 先生、まず前提なんですけれども、私、預金保険機構の立場は、預保法の百二条にのっとって、要件に従って行われます政府の認定に従って株式等の引き受けをするというのが主たる立場でございまして、金融危機対応の認定そのものには関与した経験がございません。

 その立場から申し上げましても、これは軽々に行うべきではないというのは一般論として当たり前でございますが、現在のところは、私ども引き受けておりますりそな銀行の例をとってみますと、慎重に総理大臣が、このシステミックリスクにのっとって、かつ、預金保険法の百二条の要件に従って粛々と認定をされた、それに従って我々はやっている、こういう認識でございます。

五十嵐委員 そのとおりなんですが、そのとおりというのは、別に粛々とやっている部分を言ったんじゃないです、その前段の部分なんですが。しかし、公的資金を預かって、法律に従って着実にこれを動かすというお立場からすれば、公的資金は効率的に使わなきゃいけない、そういう義務を負っていると思うんですね。

 私は、極めて保守的に、損をしないように動かれるのが松田理事長のお立場だと思うんですが、本当にこの一二%強、一兆九千六百億円というのは、そういうお立場から見て、真っ当な注入の仕方と言えるんだろうかということを私は申し上げているわけであります。

 注入資本の毀損の可能性、見通し、今まだ途中でありますけれども、三月期末決算は出ていないわけですけれども、その見通しがどうなっているのか、それでは具体的にお尋ねしたいと思います。

五味政府参考人 平成十五年十一月に、りそなの経営健全化計画というのが公表されておりまして、十七年三月末までの集中再生期間中は、持続的な黒字経営への体質転換のための施策に取り組む一方、十八年三月期以降、こうした挑戦の効果も踏まえてさらなる収益力強化を図っていく、こう述べられております。そして、計画では、今後、株式の買い入れ消却、市中売却等も含めて国が早期に公的資金を回収できるよう企業価値の増大並びに剰余金の積み増しに努める、こういう記述がございます。

 こういう記述に従いまして、この計画を着実に履行いたしまして、内部留保の蓄積を含めた企業価値の増嵩ということを図ることによりまして、公的資金の回収を確実なものにしていくということであろうと存じます。もちろん、この計画の履行状況については、当局として適切にフォローアップをしてまいりたいと存じます。

五十嵐委員 何か全然お答えになっていないんですが、私は一兆九千六百億円注入した部分のかなりの部分が毀損しつつあるというふうに思っているので、その数字がつかめたら、途中経過でいいから発表してください、こういうお願いをしたんですが、出ないようですから、ほかにも問題がありますので……。これは、今二つ目に言った、危機か危機でないかという認識の混乱からくる二つ目の間違いの実例だ、こう思うわけであります。

 三つ目が、今これから審議されようとしている金融機能強化法、これはペイオフ解禁のどたばた騒ぎ、何回も延期をされる、そして今回も来年四月からのペイオフ解禁を控えて再延長論が出ている一方で、それは余りにもみっともないから、何とかそれをごまかしてしまおうというのが金融機能強化法だというふうに思っているわけです。

 その前に、組織再編促進法という法律を我々の反対を押し切って通したわけですけれども、これは今までに一件しか使われていない、こんなみっともないことはないと思うんですよ。わざわざ国会の審議に供して無理筋の法案を通しておいて、使われる実例がないと。責任をとってほしいですね。それでだめだったら、今度は金融機能強化法だ、これはひどい話なんですよ。

 もともとが、これは本来の本旨、先ほど申し上げました、金融危機でなければ公的資金注入なんて軽々にしちゃいけませんよと松田理事長もおっしゃった、その法律の趣旨に反してやることで、まだ組織再編促進法の方は、その気持ちにややひっかかりを持っていたから、簡単に言えば、組織再編のときだけは許してちょうだいよ、そういう法律なわけですね。組織再編に限って言えば、これは公的資金を入れてもいいじゃないの、許してね、ごめんなさいねという法律だったんですが、それがだめだったら、今度は機能強化法で、単体でもいいんだという法律をつくろうとしている。

 これは、何かをやるときにちょこっといいことを先に出しておいて、それを口実に次にまた広げてしまうというお役人の得意の手だけれども、非常にひどいやり方なんですね。我々はその点に対して怒っている。これはまるで、物置をつくりますといって住宅建築の確認申請を出しておいて、途中で設計変更しましたといって母屋をつくっちゃったようなものなんですよ。だと思いますね。

 こういうやり方は、やはり許されてはならない。それは法の趣旨に反するからです。法の趣旨は、公的資金というのはそういうもので使っちゃいけませんと。本当にシステムが壊れるかという、国民全体に、善意の借り手や善意の預金者に、全体に迷惑を及ぼすかもしれないときだからこそ許されるんだ、そういう法体系になっているのに、それを全く無視しているんじゃないですか。

 これは危機か危機でないかのごまかし、それは、役人が危機だと言うと自分の責任になっちゃうから嫌だなということなんですね。そこをごまかしているからこういうことが起きてくる。今は危機なのか危機でないのか、危機でないならどうしてこんな法律が出てくるのか。明らかにペイオフ対策じゃないですか。危機だからこういうものが出てきたんでしょう、こういうイレギュラーな法律が。そのことを正直に白状していただきたい、竹中大臣。

竹中国務大臣 私自身は、就任以来、危機云々の問題に関しては、日本の金融は危機ではない、つまり、人間の体でいえば危篤状態というようなわけではない、しかし一方で、決して健康体という状況ではない、そういう状況の中でしっかりと体力を強化していくことこそがまさに金融行政の役割であるというふうに一貫して申し上げてきているつもりでございます。

 その意味では、今のマクロ経済全体がよくなる中で、地域経済の活性化というのが一つの政策的要請としても非常に高まっている。しかし、リスクをさらにとって対応していくような能力が今の金融機関には十分発揮できない場合がある。そういう場合には、経営改革を一方でしっかりやって、その上で経営改革をやりながら地域の金融を強化して地域の再生に資して、金融機能をまさに強化していく。そういうところに関しては、政策的な観点から政府も資本参加しようではないかというのが今回の趣旨なわけでございます。

 その意味では、危機か危機でないということをごまかしているというつもりは毛頭ございませんし、まして、これがペイオフ対策という形で出てきたという性格のものでもございません。

 これは組織再編のときにもいろいろ御議論を賜りましたけれども、それをさらに金融機能を強化するというところに高めて、今の日本の問題を根本的に解決して、国民の利益を高めたいという観点から、今のこの法案の準備をずっと我々としてはしてきたつもりでございます。この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。

五十嵐委員 いや、法律の趣旨の間に矛盾があると私は指摘しているんですが、そのことについてお答えがないし、先ほども言いましたけれども、それだったら、なぜ劣後債をちゃんと劣後させないんですか。劣後債について、それは債権であって株券ではないんだから守るんだというのは、本来のあり方としてはおかしいんですよ。それは直すべきじゃないんですか。

 端的に、その劣後債の扱いについての見直しをするのかしないかだけ、イエス、ノーかだけで御答弁ください。

竹中国務大臣 劣後債というのはほかの債権より劣後する債権だということでございますから、それをどのように見直せというのか、それを出資に急に切りかえろというふうにおっしゃるのか、それはやはり法律的にできることとはとても思えませんし、これは劣後債、劣後している債権である、そのような解釈しかできないのではないのかなというふうに思っております。

五十嵐委員 いや、ですから、この問題は、九八年の法律をつくったときに議論になったんですよ。劣後債を含めるか含めないかというのは、そのとき議論しているんですから、法解釈として。こんなものは法律で、あるいは法令で決めれば決められるんですよ。こんなものを所与の事実としてあなたが決めつけるのはおかしいと思いますよ。おかしいと思いますね。

 私は、先ほど言いましたように、先ほど言った善意の預金者、事実上の出資者、出資に振りかえさせられた人たちとの比較からいって、機関投資家が守られるというのは、それはおかしい。これはペイオフの対象にすべきだというふうに私は思うわけであります。こんなものはペイオフの対象にすると決めれば、決まる話だと思うんですけれどもね。おかしいと思いますよ。

 それから、次に移りますけれども、先ほどから伺っていたUFJの問題です。非常にうまく論理構成したとお思いになっているようですけれども、風評リスクがあるから、個別の金融機関なり企業に重大な影響を及ぼすからそういうことは言えないんだというのが、ずっとこの間、竹中大臣の趣旨でしたが、風評というのは、虚偽の事実または不確実な事実を流布することによって不当な損害を与える、そういうおそれがあることを風評リスクと言うんですね。過去に生じてしまったこと、すなわち、もう確定してしまったことについての指摘が事実に即していれば、これは事実であれば風評ではないんですよ。風評ではないんです。

 疑うに足る指摘を我々はいたしました。それは、当事者しか知り得ない秘密の開示があるからだと言って。そのこと自体を否定できないということを、UFJの寺西頭取も否定できなかった。否定してみなさいよと言ったら、否定できなかったんですから。これは、すなわち、蓋然性、極めて合理的な疑いがここにかけられている。しかも、その疑いの事実は、単に業績がどうのこうのというんじゃなくて、重大な法令違反の疑いがかかっている。

 これは、竹中さんが言うように、一般論で答えるべきじゃないんですよ。ここで事実を明らかにしたら、一般論として、どこかの特定の企業にあるいは金融機関に損を与えるかもしれない、風評リスクがあるかもしれないから答えられないんですというのは、これは一般論の世界なんです。こんな重大な法令違反の疑いがある案件について、しかも過去のことですよ、これについて事実かどうかをはっきりさせるのは、これは義務ですよ。私はそう思いますね。あなたが盛んにモデルとしているのかどうか知りませんけれども、住まわれてきた米国ではこんなことは通用しないと思いますよ。

 秘密会でも何でもいいですよ。これは明らかにこういう疑いを持たれている金融機関という公的存在は、その事実を明らかにする責任がありますよ。我々は国民の代表として、それを国民の前に明らかにする責任がありますよ。あなたの理屈は単なる一般論で、一般論は一般論でとっておいていいですよ、ずっと一般論で通用させてください。この件に関しては当てはまらない。アメリカであってもそう言うはずだ、この問題は。そういう問題としてお答えをいただきたい。

竹中国務大臣 何度も申し上げていますように、個別の金融機関の検査に関する話については、これはやはり言及はできません。要因は三つ挙げさせていただいております。一つは、個別当該金融機関や取引先の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがある。それと、検査一般において、これは銀行監督、検査監督という観点からやらせていただいているわけですから、それをさらに外に出してしまえば、今後の検査の実効性を損ねるおそれがある。それと、被検査機関を場合によっては深刻な風評リスクにさらす、それがさらに大きな経済的不利益をもたらす可能性もある。

 法令違反があれば、我々は責任を持って、まさに責任を持って対応いたします。そういう責任が我々にはあるというふうに考えております。同時に、我々として、責任を持って守らなければいけない守秘義務というものもございます。その上で、我々としては、責任ある監督当局、検査当局として、すべての金融機関に対しまして、検査監督上しっかりと対応しているつもりでございます。

五十嵐委員 今の大臣の答弁は極めておかしい。私がこれは風評リスクに関する問題ではないという指摘をしたのに、依然として、私の言っていたことを全く無視してお答えになっている。そんなばかなことはないでしょう。

 それから、今申し上げましたけれども、一般論は一般論としてとっておいていいですよとも言ったんですよ。これは一般論に当てはまらないケースではありませんかと言っていることについても、一般論であくまでも通された、今のは。全然議論がかみ合っていないですよ。私が言ったことにまじめに答えていないんだもの。聞いていなかったんですか。おかしいじゃないですか。もう一度答えてください。

竹中国務大臣 個別の金融機関の検査に関する話ができない、このことは三つの理由から御理解をいただきたいと思います。

 一般論と個別論。これは、この問題が、委員がおっしゃる問題がどのように個別なのか。私たちは、これはまだ個別の検査の問題でありますので、私たちはしっかりと検査をしていく、検査をしていく上で法令違反等があれば、当然厳正に対応するということになります。事実であればどうこうと、その事実であるかどうかを含めて、我々としてはしっかりと検査をする責任があると思っております。

五十嵐委員 あなた方がそういう態度をとるから、あなた方はぐるになって事実を隠しているんではないかという、逆に疑いがあなた方に持たれているんですよ。これは単にUFJの問題ではないんです。あなた方も重大な検査忌避があったということで怒り狂って、あなた方の幹部はあちこちで言っているじゃないですか。そういう事実がありながらそんなことはありませんでしたと言っているのは、国民あるいは投資家の目から、あるいは預金者の目から、事実全体を共同して隠ぺいしようとしているんじゃないかという疑いが今かかっているんですよ。

 だから、我々はそれを明らかにする重大な役目がある、国会としてそれは必要だという判断をして言っているんです。単なる一般論で、これは答えられない答えられない、一般論と特別なケースとを分けるわけにはいかないなんという理屈は通らないんですよ。

 それでは、私は別に角度を変えて、今度は皆さんの好きな一般論で聞きますよ。皆さんの好きな一般論として、検査の中間協議のときに録音をさせろとか、弁護士、会計士を同席させろという要求をしたという例は、一般論ですよ、今までにあるのですか。あるいは、弁護士、会計士同席で実際にこれを行った例はあるのですか、お答えください。一般論でいいんですよ。

佐藤政府参考人 一般論とおっしゃっておられますけれども、限りなく個別の検査の具体的な進め方にかかわる話であろうかと思いますので、恐縮でございますが、差し控えさせていただきます。

五十嵐委員 それでは、このUFJの問題、ケースを別にしてと言いますが、別にしてと言えば答えられるんでしょう、別にして、こういったことを求められたりした例はあるんですか。

佐藤政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、一般論ということで御質問でございますけれども、まさに個別の検査の具体的な進め方にかかわる話でございますので、差し控えさせていただきます。

五十嵐委員 それはおかしいじゃないですか、そういうような例があったのか、あるのかということを言っているんですから。別にこれでどこか都合が悪くなる企業とか金融機関とかあるんですか。別にこれに答えたからといって、どういう支障があるんですか。

佐藤政府参考人 一般論といたしまして、立入検査が入りました場合には、リスク管理の問題あるいはコンプライアンスの分野それぞれについて、銀行側と検査班との間でさまざまな議論を行います。その議論の過程で、検査班の検査官と銀行の担当者とのさまざまなやりとりがあるわけでございます。その立入検査の過程で、例えば公認会計士、担当している監査人の意見を聞くといったことはあろうかと思います。

五十嵐委員 公認会計士の意見を立入検査の途中で聞くことはあるという、それが一般なんだろうと思います。そのとおりなんだと思いますよ。

 だから、弁護士を同席させろとか録音させろというのは破天荒のことなんですよ。だから、こういうことが書かれたし、特記されたし、このメモにあるようなことで金融庁のトップなり大幹部は激怒したわけですよ。そういう破天荒のことが書かれているから、これが実は秘密の暴露なんですよ。だから、これは事実なんですよ。これはそうなってきちゃうの。これは刑事事件でもそうですよ。当事者しか知り得ない秘密の暴露があれば、それは証拠になるんです。

 これは、だから、否定するんだったら否定されればいいじゃないですか。否定できないんでしょう。これは極めてこそくな答弁忌避の手段ですよ。これはまたやらせていただきますけれども、私からも改めて、高木金融庁長官と寺西頭取の改めての参考人招致を求めます。委員長においてお取り計らいください。

田野瀬委員長 理事会で協議をさせていただきます。

五十嵐委員 次に、佐藤副大臣、お待たせいたしました、カネボウの問題。

 お手元に、皆さん、私がお配りした資料の二枚目をおあけいただきたいと思います。これは私の手元にある資料なんですが、「事業再生計画 二〇〇四年三月十日 カネボウブティック株式会社」と書いてあります。それからもう一冊が「カネボウ株式会社及び同グループ三十四社」というふうに銘打ってありまして、ストリクトリーコンフィデンシャルと書いてあります。日本語で言うと厳重秘の書類であります。

 その中の一ページ、これは両方に含まれているんですが、「企業再編 ストラクチャー」と書いてあって、カネボウの化粧品部門の事業価値の算定が書かれております。真ん中の囲みの欄を見ていただきたいんですが、化粧品部門、九月末現在、表面上のバランスシートが書いてあります。資産と負債がちゃんと合っていることになっているわけでありますが、その下に矢印で実態のバランスシートが書いてあるんですね。ここに欠損金四百七十億円というのが書いてあるんです。

 つまり、唯一黒字だと喧伝をされて、商売する上での価値があるというふうに、資産価値があると言われていたこの化粧品部門も、実際には巨額の赤字、欠損を出している事業部門だったということが明らかになった、こういう資料なんですね。これがちまたに四百七十億円という数字が流布したもとなんですね。これは回収されたそうなんですが、なぜか私の手元にあるわけなんですが。

 この四百七十億円もの欠損を出している、そのほかは全部赤というのはもう既に発表されています。こういうところに三千八百億円の企業価値を認めているわけですね。これはおかしいんじゃないですか。どういう根拠で、この四百七十億円を知りながら、三千八百億円の企業価値を産業再生機構は認められたのか、お答えください。

佐藤(剛)副大臣 しばらくでございます。

 ただいまの五十嵐委員の御指摘でございますが、この表でございますね、これにつきましては、産業再生機構の作成したものであるかどうかについてはコメントを差し控えさせていただきたい。

 それから、今おっしゃられております三千八百億円の点でございます。

 これについては、例えで言いますと、家族の中の長男坊、これが化粧品部門で非常に頑張って利益を上げておる、それから、次男、繊維関係等、そういう赤字を補ってまいって、そして運営されているわけでございます。この長男坊の価値というものを三千八百億円と算出しておるわけでありますが、これは市場におきまして確定しておりますディスカウント・キャッシュフロー法、先生御存じの方式でございますが、これによりましてこの三千八百億円というのを算出いたしているわけでございます。これは営業権、商標あるいはのれん等々のものが含まれているわけでございまして、厳格な査定を行い、それから第三者の専門家からの意見も聴取いたした上ででき上がっているものでございます。

五十嵐委員 何を言っているんだかさっぱりわからなかったんですが、化粧品部門は黒字だ黒字だと言われていたけれども、黒字でなかったという証拠が出てきたというわけですね。そのことについて、化粧品部門は長男坊でもうかっているんだなんてピントの外れた答弁をしているんですね、これは許しがたいことなんですが。

 その上で、その黒字の化粧品部門を計算して、のれん代とか含めてディスカウント・キャッシュフローで三千八百億円、正当に評価したなんて、それが甘いんじゃないか。実際に、不良在庫がかなりある、すごい規模である。だから、本来はこれは民事再生なりあるいは清算に持っていくべき事案であって、国が手を出すような案件じゃないんじゃないかという疑問が国民の間から出されている。

 国民の間からだけじゃないんですよ。三月十日付のウォールストリート・ジャーナルでも、なぜカネボウの比較的健全なセクターである化粧品部門を国が支援する必要があるのかというようなことについて疑問が出されている、というような質問、これも健全だということがまだ言われているわけですけれども。フィナンシャル・タイムズ三月三日付は、商業的に処理ができる企業の救済に政府が乗り出すことのモラルハザードが問われている、こういうようなことがあります。外国からも、なぜ国が乗り出さなきゃいけないのか、サービサーはあるし、花王との協議だって進んでいたわけですから、なぜ国が乗り出さなきゃいけないのかということがわからないということを言われているわけですね。これに対して、今の副大臣のお答えは全くピントが外れております。

 カネボウは本当に国がやるべき事業なのか、そして、カネボウが言われてきた資産の状況というのは実際と違う、全体的にもうかなりの債務超過であったのではないか、あるのではないかということについて、もう一度的確なお答えをいただきたいと思います。同じ言葉なら要りません。

佐藤(剛)副大臣 先ほど御説明申し上げましたように、機構が支援決定を行う場合、対象となる企業が事業の再生計画を実施すれば再生可能かどうか、そして事業の再生計画の実現可能性が高いと判断した場合に支援を行う、これが法の目的であり趣旨でございます。

 そして、これについて機構は厳格な査定を行って、化粧品事業部門のみでカネボウ全体を支援するのに足りる十分なる価値が認められる、こういうことで支援いたしているわけでございます。ある瞬間に、稼ぎ頭の化粧品部門が債務超過であるということが仮に事実でありましても、そのことによって支援決定の是非を判断することにはなりません。

 厳格に機構は査定をいたしまして、事業の再生可能性ということを判断して支援決定をいたしておるわけでありまして、そこにこの機構の御審議を賜りまして成立しました趣旨、目的があるわけでありますので、御理解を賜りたい。

五十嵐委員 全然答弁になっていないんですが、四百七十億円というのは半端でない額なんですね。その裏には一千億円にも上るという飛ばし、不良在庫、決算の時期が来ると不良在庫を各お店へ戻して在庫隠しをするということで実際に繕ってきたのではないか。そういうような企業を救っていいのか、実際には再生の価値がないのではないか、ブランド力もブランド価値も落ちていますねということを指摘しているのに、お答えになっていません。

 これは、私は、やはり大臣にここにおいでいただいて、本格的にこの問題で一回審議をしなければいけないと思う。金子大臣をこの委員会にお招きして質問をしたいということについてお取り計らいをいただきたい。

田野瀬委員長 理事会で協議させていただきます。

五十嵐委員 時間がなくなりましたので、最後に、三枚目の資料を、前にも申し上げました、口頭で読み上げました数字も入れて、西川三井住友銀行頭取が認められた悲観シナリオ、悲観リスクという問題についてお伺いをしておかなければならないと思います。

 これは私どもは粉飾だと思います。この悲観シナリオ、悲観リスクというのは、本音の数字だ、そう思っているんですが、どういう認識をお持ちなのか。そして、西川さんは、これは古い時点の話なので、その後引当金をちゃんと積んだから、もうこの問題はなくなっているんだからいいんでしょうという趣旨の発言をされましたけれども、本当にそれでいいんですか。今こういう悲観リスク、悲観シナリオというのはほかの銀行もつくっているのか、どういう認識をこの悲観シナリオや悲観リスクというものについて金融庁は持たれているのか、どういう対応をこれについてされているのか、伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 個別の銀行の個別の債務者にかかわる話でございますので、直接の言及は差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論としてでございますけれども、一般的に金融機関が資産査定に当たりまして、債務者の実態的な財務状況を判断したり、あるいは再建計画ができている場合にはその債務者の将来予測等を行うことがあるわけでございますけれども、その際に、いわば標準的なシナリオに加えまして、楽観的なシナリオあるいは逆に悲観的なシナリオ、こういったさまざまなシナリオを描いて検討を行うということは普通に行われているものと存じております。

五十嵐委員 しかし、それをちゃんと積算させたというのは、私どもが伺っているのは、あのときにも言いましたけれども、金融庁側が三井住友銀行にいわば指示をしてつくらせた資料と伺っているんですね。だから、本音を引き出そうとした、こういうふうに思っているわけです。

 今個別の企業論をまた言いましたけれども、なぜこれを明らかにしたかというのは、これは個別の企業といっても、実際には三井住友銀行と一体の企業なんですね、ここへ出している企業は。そして、三井住友銀行の本店に土地や建物を貸していたり、それだけで商売をしているというところをお出ししているんですから、ここに飛ばしだとか高目の資産評価をさせたり、そういうことはできるわけで、こういうところはやはり問題が大きいということで私どもは示しているんですけれども、そういう問題意識があるからこそ金融庁もこれを出させたんだろうというふうに私どもは判断しています。

 この問題についても引き続き、私は今の御答弁では満足できませんし、極めて重大な問題を含んでいると思いますので、一般論としてほかの銀行も楽観シナリオ、悲観シナリオをつくっているんだというような答弁だけでは納得できません。最後にもう一度、今私が指摘したことについて大臣からお言葉をいただいて、時間が来ましたので、終わります。

竹中国務大臣 一般的に、当然のことながら、いろいろな将来シナリオをやるときは、人口推計でも中位推計の上下をやる、経済シナリオでも同じだと思います。その意味では、企業のシミュレーションにおいてもそのようなことは当然に行われているというふうに認識をしております。

 個別の企業については、これは当然のことながら、我々は厳しい検査体制のもとで、そういうような疑義がある対象企業があればしっかりと検査をいたしますので、責任を持って検査と監督を行っていきたい、金融庁としてそのような対応を行っていきたいと思っております。

五十嵐委員 終わります。不満ですが、終わります。

     ――――◇―――――

田野瀬委員長 次に、内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案並びに五十嵐文彦君外二名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案及び金融再生委員会設置法案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣竹中平蔵君。

    ―――――――――――――

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律案

 預金保険法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

竹中国務大臣 ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 現下の経済情勢のもと、地域経済の活性化等が課題となる中で、我が国の金融機関等においては、地域等における金融が十分な安心感を持って行われるよう、企業再生や不良債権問題への対応など、リスク対応のための体力を高めることが重要となっております。

 こうした状況に対応して、金融機能の強化を図るため、金融機関等の資本の増強等に関する特別措置を講ずることにより、金融機関等の業務の健全かつ効率的な運営及び地域における経済の活性化を期し、もって信用秩序の維持と国民経済の健全な発展に資することを目的として、この法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、金融機関等は、合併等の組織再編成を行う場合を含め、平成二十年三月末までの間、預金保険機構に対し、自己資本の充実を図るために株式等の引き受け等に係る申し込みをすることができることとしております。あわせて、金融機関等を子会社とする銀行持ち株会社等は、当該子会社である金融機関等の自己資本の充実を図るために株式の引き受けに係る申し込みをすることができることとしております。

 次に、金融機関等は、株式等の引き受け等に係る申し込みに際して、収益性等の経営の改善の目標、当該目標を達成するための方策、責任ある経営体制の確立に関する事項、信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策等を記載した経営強化計画を主務大臣に提出しなければならないこととしております。その際、合併等特定の組織再編成を行わない金融機関等の場合には、経営の改善の目標が達成されない場合における経営責任の明確化に関する事項も記載することとしております。

 主務大臣は、経営強化計画の実施により収益性等の経営の改善の目標が達成されると見込まれること、経営強化計画に記載された方策の実施により地域における金融の円滑化が見込まれること、その他、当該方策が地域経済の活性化のために適切なものであること等の要件に加え、合併等特定の組織再編成を行わない金融機関等の場合には、当該金融機関等の経営基盤の安定のために必要な措置が講じられていること等の要件を満たす場合に限り、株式等の引き受け等を行うべき旨の決定をするものとしております。

 そのほか、株式等の引き受け等の決定に従い金融機関等が発行する議決権制限株式の発行の特例等商法等の規定の特例、経営強化計画の公表及び変更、経営強化計画の履行を確保するための監督上の措置、経営強化計画の実施期間が終了した後の措置、株式等の引き受け等が行われた金融機関等が行う株式交換及び合併等について所要の規定を整備するとともに、預金保険機構の業務の特例及び金融機能強化審査会等について所要の規定を設けることとしております。

 第二に、協同組織中央金融機関がその会員の協同組織金融機関から引き受けた優先出資等を信託する場合において、平成二十年三月末までに協同組織中央金融機関から信託受益権等の買い取りの申し込みを受けたときには、所要の要件を満たす場合に限り、主務大臣の決定を経て預金保険機構の委託を受けた協定銀行が信託受益権等の買い取りを行うことができることとする等所要の措置を講ずることとしております。

 次に、預金保険法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 金融危機に対応するための公的資金制度である預金保険法第百二条第一号措置においては、金融機関への直接の資本増強のみが可能とされております。

 こうした中で、金融危機への円滑な対応を確保するため、預金保険法第百二条第一号措置の必要性の認定を受けた金融機関への銀行持ち株会社等を通じた間接的な資本増強を可能とする等所要の措置を講ずることを目的として、この法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、預金保険法第百二条第一号措置について、銀行持ち株会社等を通じて、当該措置の必要性の認定を受けた金融機関への間接的な資本増強を行うことを可能とし、その際、当該金融機関に対し直接資本増強した場合と同様の効果を及ぼすこととなるよう、銀行持ち株会社等は、みずからが受けた資本増強と同額以上の資本増強を子会社である当該金融機関に対し行わなければならないこととすること等所要の措置を講ずることとしております。

 第二に、預金保険法第百二条第一号措置において金融機関等が発行する株式の総数の増加並びに当該金融機関等が発行する議決権制限株式及び優先出資について、商法等の規定の特例を設けることとしております。

 第三に、経営健全化計画の適切な履行を確保する観点から、預金保険法第百二条第一号措置により株式等の引き受け等が行われた金融機関等が株式交換及び合併等を行う場合について認可を受けなければならないこととすること等所要の措置を講じるとともに、優先株式等の引き受け等に係る資金援助についても同様の趣旨の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

田野瀬委員長 次に、提出者五十嵐文彦君。

    ―――――――――――――

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案

 金融再生委員会設置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

五十嵐議員 ただいま議題となりました金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案及び金融再生委員会設置法案、いわゆる民主党金融再生ファイナルプラン関連法案につきまして、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 経済再生の第一歩は、金融再生です。そして、真の金融再生とは、銀行が中小企業にお金を貸せるようにすることです。しかし、現実には、銀行はお金を貸すことができず、銀行貸し出しはこの五年間で百兆円以上も激減しました。これまで、自民党政権は、金融再生のために四十二兆円の公的資金を投入しましたが、根本的に間違ってきたと言わざるを得ません。

 民主党金融再生ファイナルプランは、お金を貸す銀行をつくることを目的としています。そして、そのためには、銀行に粉飾をやめさせ、本当の意味で自己資本を健全化することが必要です。このような考えのもと、金融再生法及び早期健全化法の改正である金融再生ファイナルプラン関連法案を提案させていただく次第です。

 以下、内容の概要を申し述べます。

 まず、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律、すなわち金融再生法について、次のとおり改正することとします。

 第一に、金融機関の破綻に対する施策についての期限を延長することとします。今年九月末までに不良債権の引き当てを完了させて特別公的管理等必要な措置を講じ、二〇〇七年三月末までにそれらの施策を終了することとします。

 第二に、適切な資産査定と引き当ての基準を規定することとします。

 第三に、健全な金融機関からの資産の買い取りについて、買い取り価格の弾力化に関する規定を削除することとします。

 第四に、新生銀行に悪用された瑕疵担保特約の愚を繰り返すことのないよう、譲渡後の債権に生じた損失の補てん行為を禁止することとします。

 次に、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律、すなわち早期健全化法について、次のとおり改正することとします。

 第一に、金融機関の資本増強に関する緊急措置の期限をことし九月末までに延長することとします。

 第二に、金融機関の経営責任及び株主責任の明確化、資産査定及び会計処理基準の遵守及びディスクロージャーの義務づけの三つの原則を加えることとします。

 第三に、金融再生委員会による株式等の引き受け等の承認の要件として、いわゆるシステミックリスクが生じるおそれがあること、過少資本または著しい過少資本の金融機関であること、経営責任の明確化及び減資を義務づけることなどの要件を加えることとします。

 次に、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法について、これを廃止することとします。

 最後に、金融機関の破綻に対する施策及び資本増強に関する緊急措置を講ずるため、内閣府の外局として改めて金融再生委員会を設置することとします。金融再生委員会は、国務大臣たる委員長及び委員四人をもって組織し、我が国金融機能の安定を確保し、預金者、保険契約者等の保護を図り、もって金融の円滑を図ることを任務とすることとします。

 国家的粉飾と欺瞞の金融行政から脱却し、真の金融再生をなし遂げる唯一の道は、民主党金融再生ファイナルプランを断行することです。

 議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

田野瀬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十分散会


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