衆議院

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第17号 平成16年4月14日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年四月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 鈴木 俊一君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 中塚 一宏君

   理事 長妻  昭君 理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    熊代 昭彦君

      小泉 龍司君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西田  猛君

      林田  彪君    原田 令嗣君

      宮下 一郎君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    加藤 尚彦君

      鈴木 克昌君    武正 公一君

      津川 祥吾君    津村 啓介君

      永田 寿康君    藤井 裕久君

      馬淵 澄夫君    松原  仁君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   議員           五十嵐文彦君

   議員           津村 啓介君

   議員           中塚 一宏君

   国務大臣

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   財務副大臣        山本 有二君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    五味 廣文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    渡辺 博史君

   参考人

   (日本銀行考査局長)   稲葉 延雄君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     増原 義剛君

  小泉 俊明君     加藤 尚彦君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 尚彦君     小泉 俊明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律案(内閣提出第一八号)

 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第五号)

 金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第六号)


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案並びに五十嵐文彦君外二名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案及び金融再生委員会設置法案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行考査局長稲葉延雄君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省理財局長牧野治郎君、財務省国際局長渡辺博史君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁検査局長佐藤隆文君、金融庁監督局長五味廣文君、法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田泉君。

吉田(泉)委員 皆さん、おはようございます。民主党の吉田泉です。

 遠くイラクの地では、きょうもまた三人が拘束中でございます。見通しが立っておりません。三人の早期解放を強く祈りつつ、きょうは、金融機能強化の新法を中心に何点かお伺いいたします。よろしくお願いします。

 これまで、公的資金の投入を含めまして、三十七兆円余りのお金が金融機関の資金援助に使われたということであります。これは金融庁の数字でございます。しかしながら、日本の金融システムは、いまだ健全と呼ぶには、それまでには至っていないというのが大方の共通の認識だと思います。そういうことで、十六年度は、さらに六十兆円という枠が新規の枠として予定されているということでございます。そして、その六十兆円の中に、今回提案されました強化新法の二兆円も含まれているということでございます。

 そういう状況の中で、この新法の必要性、そして妥当性について議論をしたいと思います。

 一番最初に御質問したいのは、非常に初歩的なことでございますけれども、金融機関が公的資金を受け入れるメリットについてでございます。今回の新法が、いろいろな金融機関にとってどういう使い勝手があるのか。例えば、私が地元に帰りまして、地元の金融機関の皆様に、この新法をどういうふうにお勧めすればいいのか。例えて言いますならば、私がセールスマンだとして、そのセールスマンを教育するようなおつもりで教えていただきたいということでございます。

 最初は、これも初歩的なことでございますけれども、今回の公的資金、返済の義務はあるのでしょうか、ないのでしょうか。つまり、もらいっ放しでよいのでしょうか。それから、当然これは利息、配当、そういう支払い義務はあるわけでございますが、民間から調達するときに比べて有利な条件なのかどうか。そこからお伺いします。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 この新たな公的資金制度におきましては、国の資本参加に当たりまして、公的資金の回収が困難でないことということを審査要件としております。具体的には、株式等の商品性から、第三者への処分が困難でないか、あるいは、剰余金の積み上がり方が合理的な年限で行われているか、さらに、申請を行う金融機関において株式等の処分等を要請する時期のめどだとか、あるいは、処分等の方法につきまして見通しを立てていないなどによりまして協定銀行が取得する株式等を早期に譲渡その他の処分を行うことが見通しがたくないかどうかといったことを要件といたしまして、その要件を満たすかどうかをチェックするという仕組みになっております。

 これは、資本参加を受けました金融機関の策定した経営強化計画を適切にフォローアップすること等によりまして、公的資金の回収可能性を担保するということにしているところでございます。

 それから、どういった資本参加をするかということで、資本の種類でございますが、これは、先般来御説明をいたしておりますように、銀行の場合には基本的には株式ということになっておりまして、それぞれの種類に応じまして、当然のことでございますけれども、配当等が返ってくるということでございます。

 商品の具体的な条件につきましては、申請金融機関からの申請に基づくことがまず第一でございますが、私どもといたしましても、第三者の意見を聞く等いたしまして、不利にならないような、そういった条件を考えていきたいというふうに思っております。

吉田(泉)委員 もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

 そうしますと、回収困難でないというようなことが条件となるということでございます。それはそうだと思いますが、それは、優先株式を引き受けた預金保険機構がそれを第三者に売るということが可能でなくちゃいかぬということだと思いますが、銀行にしてみると、特に返済義務というのはないということでよろしいんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、金融機関の方で経営強化計画というのを出すことになっております。その際に、そういった返済のこと等についてもそこに書かれてくるということになりますので、それが仮に実行されないようなことになりますれば、私ども、最終的には監督上のいろいろな措置ができますので、そういった意味で回収を確保するということになるかと思われます。

吉田(泉)委員 そうしますと、株式と融資と両方あるわけですけれども、株式については、銀行にしてみれば、特に返済義務はない、融資の場合については、それぞれ契約になるというようなお話だと思うんです。

 融資の場合、永久劣後ローンとかいう仕組みも今まで使われてきたようですけれども、そういう永久的に借りられるお金なのか、そうではないのか、十年ぐらいなのか。そういうのは、その都度契約によって決めていくということなんでしょうか。

増井政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、銀行の場合には株式に限るということにしてございます。

 もうちょっと具体的に申し上げますと、経営強化計画に結果責任の記載がある銀行の場合には取締役等選解任議決権つき優先株式を基本としまして、その中で、さらにその自己資本比率が基準値未満の場合には普通株式も可能とするという考え方であります。

 さらに、もう一方で、抜本的な組織再編成が行われる場合などの、要するに結果責任を求めない場合には、無議決権優先株式ということにいたしまして、必要に応じ、普通株への転換権を行使することを可能とするというような形にしております。

吉田(泉)委員 よくわかりました。銀行については株式のみと。

 そうしますと、信金、信組はいかがでしょうか。

増井政府参考人 協同組織金融機関につきましては、法律上、会員以外からの資金調達の手段というのが優先出資あるいは劣後ローンに限られているということでございますので、協同組織金融機関についてはそういった形での資本参加をするということを考えております。

吉田(泉)委員 そうしますと、信金、信組については優先出資または優先ローンというんですか……(発言する者あり)劣後ローンということです。劣後ローンの場合、この金利というのは、民間から調達した場合に比べて有利だと言ってよろしいんですか。

増井政府参考人 先ほどちょっと申し上げましたように、国が資本参加をする場合については、基本的には金融機関からの申請事項というふうになっております。したがいまして、商品性につきましては一義的には申請金融機関の経営判断というふうになると考えております。

 ただ、配当だとかあるいは利子といったことにつきましては、市場調達を補完し金融機関のリスク対応を高めて金融機能を強化するというのがこの法律の目的でございますので、そういった観点から、要するに、預金保険機構が資金を調達するわけでございますから、原資の調達コストを下回らない範囲内で極力抑制をするということが適当というふうに考えております。

 いずれにいたしましても、その商品性全体としては、私ども、フィナンシャルアドバイザーの意見も踏まえまして、金融機関あるいは投資家たる国の双方にとって経済合理的なものである必要があるというふうに考えております。

吉田(泉)委員 そうしますと、ローンの場合の利子については特に民間よりも有利ということはあり得ないということだと思います。そういうふうに解釈します。

 それでは二番目になりますけれども、公的資金を受け入れた場合、その使い道に制限はないのかということでございます。もしくは、これは提出が義務づけられている経営強化計画、そういうもので使い道も縛られるものなのか、それとも金融機関が自分の裁量で自由に使えるお金になるのか、そこをお伺いします。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 新たな公的資金制度におきましては、国が投入をいたしました資本について、使途を具体的に制限しているわけではございません。

 ただ、いずれにしても、国の資本参加に当たりましては、申請金融機関に対しまして、収益力の改善などに向けました経営改革の内容あるいは金融の円滑化に向けた取り組み等を盛り込んだ計画の提出を求めております。その中で、収益性、効率性等の向上が見込まれること、あるいは地域における金融の円滑化等が見込まれることなどの、法令に定めた要件を厳正に審査するという枠組みになっておりますので、いずれにいたしましても、国の資本参加によって確保されました自己資本というのは、おのずからそういった金融機能の強化のために活用されるというふうに考えております。

吉田(泉)委員 そういう経営強化計画上の縛りはあるけれども、具体的な使途の制限はないということだと思います。

 それから、公的資金を受け入れたとして、一番の問題は、自己資本比率とか不良債権比率という、今非常に問題になっている比率の改善にどう結びつくのかということだと思うんですが、確かに公的資金を受け入れて、それを貸し出しに回せば、両方の比率とも改善するふうには思うんです、貸し出しのリスクはともかくとして。そこを金融機関にどう説明するか、比率の改善に公的資金導入がどうつながるのかということを改めて教えてください。

増井政府参考人 基本的には先生のおっしゃるとおりだと思います。

 この新しい公的資金制度というのは、先ほど申し上げましたように、金融の機能の強化を図るということでございまして、そういった観点から、収益力の改善等に向けた経営改革を行う、そういった金融機関を選別して資本参加をするという仕組みになっております。

 そういった趣旨、目的を踏まえまして、申請金融機関に対しまして、数値目標として収益性や効率性の相当程度の改善あるいは不良債権処理の進展を求めて、その裏づけとなるビジネスプランとともに、その実現可能性あるいは妥当性を審査するという仕組みになっております。

 そういうことでございまして、こういったビジネスプラン等を盛り込んだ経営強化計画の着実な履行を求めていくということにしておりますので、こういった枠組みによって、収益性の向上を通じた内部留保の充実によります自己資本比率の向上あるいは不良債権比率の改善といったものにつながっていくものというふうに考えております。

吉田(泉)委員 最初の質問は大体以上なんですけれども、ちょっと繰り返しになりますが、お伺いしておきます。

 信金、信組、劣後ローンを受け入れる。そのときに、永久劣後ローンなのか期限つきの劣後ローンなのか、それはどういう基準で判断されるんですか。

増井政府参考人 お答えいたします。

 劣後ローンの中身、種類について、こうという制限を設けているつもりはございません。いずれにしても、まず第一義的には申請金融機関の判断ということがあるかと思います。

吉田(泉)委員 そうしますと、株式の場合はもちろん返済義務はございません。劣後ローンの場合についても、申請機関の判断で、永久にする、期限つきにする、そういうこともできる。それから、使い道に具体的な制限はない、経営強化計画に従ってその資金を使えば、いろいろな経営の比率の改善にもつながる、そういうメリットがある。それは私、一面認めるところでございます。

 次の質問は、今度、その反面でございます。一体この公的資金はどこが負担するのかという問題であります。これは当然、預金保険機構が負担するということになります。

 これは三月二十四日の日付でございますけれども、経済同友会がある提言を発表しました。「あるべき金融システムへの改革」と題されております。その中で、この預金保険機構の問題を取り上げました。そして、この機構は四兆円の債務超過になっていると指摘しました。そして、引き続いて、このコストをだれが負担するのか議論されていない、日本の金融セーフティーネットは必要以上に高いコストになっているのではないかという問題を提起したわけでございます。

 そこで、私も預金保険機構に求めまして、財務諸表に当たってみました。そうすると、今、民間企業仮定貸借対照表というのをここ数年前から認可法人である預金保険機構がつくっております。それの最新版、十五年三月末のバランスシートを見せていただきました。

 そうしたところ、そこにおいては債務超過額が六兆三千億ということでございました。内訳を推定しますと、先ほど同友会が指摘した四兆円、これがいわゆる一般勘定、保険勘定でございます、これが四兆円。それから金融再生勘定、ここで債務超過一兆円。それからこれは長銀、日債銀関係だということでございますが、有価証券評価損というのが一兆円ありまして、合計六兆円余りという債務超過になっております。債務超過というのは結局累積赤字ということでございますが、この累積赤字六兆円という数字は、数ある認可法人、特殊法人、独立行政法人、こういう中でも一番大きい金額ではないかという指摘がされております。

 管轄官庁として、そういう実態をどう見ておられるのか。そしてまた、今後、この六兆円の債務超過をどうやって補てんしていく見通しであるのか、それをお伺いします。

五味政府参考人 御説明申し上げます。

 お話しのとおり、預金保険機構の平成十四年度の状況でございますが、いわゆる行政コスト計算書におきます累積欠損額は六兆三千百八十四億円となっております。内訳は、おっしゃったとおり一般勘定とその他に分かれますが、この欠損金の生じ来りましたゆえんは、百八十機関にも上ります金融機関の破綻処理などによって生じているものでございます。

 この解消はどういうことになるのかということでございますが、一般勘定につきましては、金融機関から徴収をいたします預金保険料収入、それから、その他の勘定につきましては買い取り資産あるいは資本増強で引き受けた株式といったものがございますので、この買い取り資産からの回収あるいは引き受けました優先株式等株式の処分収入、こういったようなものによって今後回収に向けた努力がなされる、こういう仕組みになっております。

吉田(泉)委員 回収方法については原則そういうことだと思います。

 もう一つ、六兆円という債務超過、数ある公的な法人の中で一番大きいんじゃないかという指摘については、どうでしょうか。

五味政府参考人 たしか一番か二番だったと私記憶しておりますが、非常に大きなものでございます。

 この点についての評価といたしましては、預金保険機構による公的資金の投入というものを通じまして預金者を保護する、あるいは信用秩序を維持する、そうしたことが守られたわけでございますし、特に、我が国の金融システムの安定化を通じまして日本の信用秩序というものに対する内外の信頼の確保ということが図られたということで、こういった役割を果たした、その結果のコストであるということでございます。やはり、それだけ信認の回復ということは困難な課題でもありましたし、また重要な問題でもあったということであろうと思います。

 いずれにいたしましても、回収の道というものが別途用意をされた形で行われておりますので、この回収に最大限の努力を尽くしてまいりたいと存じております。

吉田(泉)委員 回収の道は別途確保されているということでございますが、確かに制度上はそういうことでございますが、その道を踏み出すのかという非常に難しい問題は依然としてあるわけでございます。

 ちょっと繰り返しになりますけれども、今ある六兆三千億の債務超過、その中で一般勘定分が四兆円でございます。一般勘定というのは、預金保険を担当している勘定でございます。この勘定の過去の累積分については、別名責任準備金と呼ばれております。例えば、民間の保険会社ですと、保険金の支払いに備えて、これは責任準備金と言うわけですから、責任を持って積み立てておく、そういうことが民間の場合は義務づけられている準備金だと思います。

 それが、今局長おっしゃったように、預金保険というのは特別な保険ではございますけれども、準備金が四兆円のマイナス準備金になっているということでございます。年間保険料収入でこれはいずれ補てんするというお話ですが、年間の保険料収入が五千億円ということですから、八年分の累積赤字になっているということでございます。

 改めてお伺いしますが、これで一体、保険法人と言えるのかという問題でございます。

五味政府参考人 御説明申し上げます。

 お話しのとおり、一般勘定の累積欠損金が現在約四兆円でございます。この預金保険機構と申しますのは、お話ございましたが、一般の保険会社とはちょっと違う形態の手法をとっておりまして、預金保険法の規定、五十一条でございますけれども、ここに、保険料率は長期的に預金保険機構の財政が均衡するように定めるという旨の規定がございます。現在、確かに四兆円という累積欠損金がございますけれども、お話しのとおり、預金保険料収入が年間約五千億円強ございます。今後、金融機関からの保険料によってその回収を図る、それによって長期的に預金保険機構の財政が均衡する、こういった流れになりますように十分な監督に努めていく。制度の趣旨もそういうことであろうというふうに存じます。

 何分にも、先ほど申し上げましたような、百八十という破綻金融機関が生じたといった事態の中での事柄でございますので、少し時間をかけて、しかし確実にこの累積欠損を消していくための監督をしていく必要があるというふうに考えております。

吉田(泉)委員 確かに、預金保険法五十一条で長期的に収支を均衡させるべきだということでありますので、私もその方針でよろしいと思います。

 今、慌ててここで保険料を上げたりという状況でもございませんし、ある程度時間をかけて何とかこの四兆円を消していくしかないと思うんですが、既に八年分の赤字になってしまっている。今後、金融機関の破綻が全くなかったとしても八年の時間がかかるということでございます。もう既に長期的な収支均衡が非常に困難な事態になってしまったという認識はぜひ必要じゃないかと思います。

 それからもう一つ、預金保険機構の関係で、一〇〇%子会社でございますが、整理回収機構というのがあります。ここは、御存じのように、預金保険機構にかわって金融機関の優先株とか貸付債権を保有しております。そして、貸付債権の回収業務を営んでいるわけでございます。

 こちらのバランスシートも拝見したんですが、やはり自己資本が非常に急速に縮んできております。十四年三月、二年前ですが、その決算ですと自己資本が一千五百億円あったんですが、去年、十五年三月は五百億円を切るというところまで来ました。今、十六年三月期決算をしているところだと思いますけれども、どうもこのままでは、何か、この三月期決算で整理回収機構の方も債務超過になりそうな気配を感じますが、いかがでしょうか。そして、もしこの三月期に債務超過になってしまったというときにはどういう対応があるのか、そこもお伺いします。

五味政府参考人 RCCにおきましては、平成十三年度以降赤字決算となっております。

 この要因は、一つは住専勘定でございますが、住専勘定におきまして回収環境が悪化しているということを反映して貸倒引当金を積み増してきたということ。それから、整理回収銀行の方の勘定では、預金保険法の改正によりまして、平成十三年度から、破綻金融機関から譲り受けました資産に対する回収を行いまして、回収益が出た場合、この回収益を預金保険機構に納付する、これは内部に留保せずに納付をするといったような、こうした法律改正があったといったようなことが主な要因でございます。

 お話のとおり、バランスシートの状況は悪化しておりまして、お話のありました十五年三月期、五百億円弱の資産超過、さらに九月末時点では二十五億円の資産超過といった状態にまで来ております。この十六年三月期、十五年度決算は、お話のとおり現在作業中でございまして、実際どういう数字が出てくるかということについて現時点でまだ確たることをお答えする状況にございません。

 ところで、RCCに最終的に損失が生じてきた場合の措置ということになりますが、法律では、RCCに生じました損失は預金保険機構により補てんをすることができるということになっております。おりますけれども、現在、RCCにおきましては、債権回収等に最大限の努力を行っております。最終的に損失が生ずるか否かということを現時点で判断することは困難でございます。今やらなければいけないのは、引き続き回収に最大限の努力をするということであろう、ということに尽きると思います。

吉田(泉)委員 そうしますと、整理回収機構の住専勘定については、今どんどん引き当てを積まざるを得ない、これがマイナス要因である。そしてもう一つの、整理回収銀行ですか、そちらの勘定では回収益が出ているんだけれども、これは親会社の預金保険機構の方に納付しなくちゃいかぬということですね。そうしますと損がどんどんたまってしまう。しかし、たまって債務超過になったら、今度は親会社である預金保険機構がそれを補てんするということですね。

 大変、この親子の関係が複雑で、わざわざこの整理回収機構というのは、これは株式会社だと思うんですが、独立の株式会社にした意味というのが何かよくわからない気はしますが、それは大分また別な問題になると思いますので、次に参りたいと思います。

 今お話しのように、預金保険機構それからその子会社である、一体の子供である整理回収機構、この両機構が大変傷んでしまったと言わざるを得ないと思います。しかしながら、今、既に傷んでしまったその機構を使いながら、新法でさらに公的資金を金融機関に入れていかざるを得ないという法案だと思います。大変厳しい局面にあると思います。

 それで、次の質問は、数年前だと思いますが、組織再編成促進特別措置法というのができました。調査室からもらったこの黄色の本なんかでも、この法律の名称を合併促進法と略して書いている場合が何カ所かあります。つまり、組織再編成促進特措法というのは、霞が関においては通称合併促進法であるとどうも言われているようでございます。それがこの過去にできた法律の本質だと思いますけれども、改めてこの旧法といいますか法律の目的は何だったのか、お伺いします。

竹中国務大臣 吉田委員には、ここまで法案の重要なポイントについて幾つか大変重要な御質問をいただいたと思っております。大変厳しい状況であるという認識も我々は共有をしております。

 それで、合併促進法という通称があるのかどうか、ちょっと私は存じ上げませんが、再編特措法のねらい、目的は何かということに関して申し上げますと、合併というのは、やはり、経営判断の中で非常に重要な、経営判断の一つの有力な手段であると思います。それが、うまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もある。これはまさに経営の実態に即して経営者に御判断をいただかなければいけない問題だと思います。ただ、幾つかの場合には、やはり、金融機関の経営基盤の強化という観点からは大変有力な手段であるというふうには位置づけてよいのだと思っております。

 しかし、その再編を具体的に見ていきますと、さまざまな煩雑な手続が必要である、そういう問題がございます。また、組織再編成によって、自己資本の高いところと低いところが合併すると、その中間のどこかに自己資本比率が決まるわけでありますから、合併することによって自己資本比率が低下するというような事態も生じ得る。それと、預金保険の限度額を意識して、今まで二つの銀行に一千万ずつ例えば預けていたところは一緒になったらどうなるんだ、また分散させなければいけないのかというような懸念も生じる。

 つまり、この有力な手段である経営基盤の強化のための組織再編には、幾つかのバリアがあるということなんだと思います。そうした点を踏まえまして、この手続を簡素化する、さらには資本増強等の支援措置を講ずるということによって、組織再編を図りたいと思っている機関にはそれを円滑化する、そうすることによって健全で効率的な運営を期すということがこの組織再編特措法の目的だったわけでございます。

 繰り返しになりますが、これはあくまでも自主的な経営判断に基づくものでありまして、政府として合併等を慫慂するということを目的としたものではないということでございます。

吉田(泉)委員 通称合併促進法ということを御存じないということでございますが、この黄色本に入っている資料等でも再編成促進法のことを合併促進法と呼んでいるようでございます。上からの合併促進ではないということで、しかし結果的に合併促進を目的とした法律だろうというふうにしか考えられません。

 それで、今回のこの新法案を拝見しますと、旧法、再編成促進の特措法の資本増強にかかわる規定が廃止されることになります。つまり、この法律に基づく公的資金投入はもうやらないということだと思います。したがって、今まで預金保険機構で経営基盤強化勘定という勘定をつくって、そこでこの法律の受け皿になっていたわけですが、これも間もなく廃止されるということでございます。

 新法の附則で旧法の今言ったような規定が廃止される理由を改めてお伺いします。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

増井政府参考人 新たな公的資金制度は、今お話のございました組織再編成促進特別措置法の資本参加の水準それから範囲を拡大するといった部分もございますので、組織再編促進特別措置法の資本参加の部分は金融機能強化法に吸収をし、一本化することとしております。

 このために、金融機能強化法の施行後におきましては、資本参加はこの法律に基づいて行われることになりますので、その経理は金融機能強化勘定という勘定において行われるということにしてございます。

 一方、組織再編成促進特別措置法に基づきます資本参加につきましては、御指摘のように、金融機関等経営基盤強化勘定というところで経理をされておりました。ただ、この金融機能強化法施行後は、この勘定で経理される新たな案件は生じないわけでございまして、また、実績を勘案すると、今後独立して経理する必要性に乏しいというふうに考えまして、既往分の経理はこの新しくつくられます金融機能強化勘定に引き継ぐことにいたしまして、金融機関等経営基盤強化勘定は廃止をするということにしております。

吉田(泉)委員 金融機能強化新法に一本化されるということでございます。

 一本化するからには、法律の目的が同じだ、趣旨が同じだということで一本化されると思うんですが、それでよろしいでしょうか。

増井政府参考人 先ほど申し上げましたように、組織再編成促進特別措置法の資本参加の部分につきまして水準及び範囲を拡大するという面で、基本的に似たところがあるということでございまして、そういう意味で、資本参加の部分を新しい金融機能強化法に吸収するということにいたしております。そういう観点から、勘定面でも、前の勘定を廃止して新しい金融機能強化勘定に一本化するということでございます。

吉田(泉)委員 それでは、あと、時間も迫ってまいりましたので、改めて新法についてお伺いしたいと思います。

 政府保証枠二兆円という問題がきのうも議論になりました。詳細な計算根拠をいただきまして、それを拝見すると、地方金融機関の合併促進ということで一兆円、これは九十行の合併を前提とした数字でございます。それから、さらにその自己資本比率を上げる、さらなる改善に一兆円、こういうことで合計二兆円という大枠だという計算になっておりました。

 そして、これは、計算根拠を発表するときの単純なミスじゃないかと私は思うんですが、その計算には含まれませんでしたけれども、主要行への資金投入を排除するものではない、二兆円の計算根拠の一番最後にちょっと一行その部分を書けばよかったものを、何か書いてなかったものですから、あくまでこの二兆円というのは、地方金融機関の合併、さらに自己資本比率の改善だけだなというふうに受け取ったわけですが、主要行への資金投入を排除するものではないという答弁がきのうもございました。

 一応、そういう解釈でよいかどうか、改めてお伺いしておきます。

竹中国務大臣 二兆円の根拠につきましては、昨日も同僚議員から御議論いただきました。

 これは、組織再編特措法の場合と同じような考え方なんだということを改めて申し上げたいと思います。この再編特措法の場合は、業界の平均以上の地域金融機関と平均以下の金融機関の一定割合が合併するとの仮定を置いて、機械的に算出した。これはまさに仮定を置いて機械的に算出したわけでございますけれども、新たな公的資金制度におきましては、この組織再編特措法の資本増強の水準と対象を拡充するものであるということを踏まえまして、組織再編成特措法の積算の前提を用いながら二兆円という数字を出したところでございます。

 これは、機械的な積算に当てはめると、合併した金融機関について、さらに自己資本比率の一定程度、二%程度の引き上げを可能とするものという、数字の注釈、解釈としての説明もさせていただいております。

 いずれにしましても、これは、きのうも重ねて申し上げたことでございますけれども、この政府保証枠の二兆円という数字はあくまでも限度額でございます。また、機械的な積算を行う上での一定の仮定を置いたものでございます。具体的にそうした合併を想定しているというものではありませんし、ましてや、この合併が政策の目標というようなものではございません。

 いずれにしましても、金融機関からの申請に基づいて国が資本参加をするというのが今回の制度でございますので、予測は大変困難であるということを御理解いただいた上で、この保証枠の積算の意味について御理解を賜りたいと思います。

吉田(泉)委員 合併がこのたびの政策の目標ではないというお話でございます。

 今回の新法の目的について、やはり改めてお伺いしたいと思うんですが、一カ月前、この法案が本会議に上程されました。その直後だったと思うんですが、私も質問で、今回の新法は合併促進を目的としたものということでよろしいですね、こうお尋ねしたところ、そうではないと。きのうも、あくまでこれは合併促進を目的としたものじゃないという答弁が改めてありました。

 確かに、二兆円の内訳を見ても、合併だけが目的ではないということはわかります。しかしながら、先ほどからお話の出ている、今までの再編成促進法、これが旧、合併促進法と言われておりますが、これを法律の上でも引き継いでいる。それから、預金保険機構の勘定の上でも今度の新法は引き継ぐ。それから、二兆円の計算の根拠としても九十件の合併を前提にしている。ここまでくると、合併促進も今回の法案の目的の一部であるとなぜ言えないのかなと、大変不思議な気がしてくるわけでございます。

 私たちも、合併そのものを否定するわけではないんだと思うんです。営利会社というのは、生き残るためには何でもする、合併もありだということだと思います。しかし、合併というのは、これは、例えば社内の人間関係が非常に複雑になります。できたら自分たちだけで何とかやっていきたいというのが普通の会社の本音だと思います。ただし、いざとなったら合併もせざるを得ない。どっちがいいかというのは、それぞれの民間の金融機関が自分たちで決断するしかないということだと思います。そこに国が上から介入してきて、合併すべきだとかすべきじゃないとか言うことはいかがなものかというところが私たちの言い分でございます。いわば、発展途上国的な、統制経済的な手法になってしまうからというのがその理由であります。

 しかしながら、こういう緊急事態といいますか、金融危機が続いている状況で、そういう統制経済的な方法が必要なんだという考え方もあるんだと思うんです。それで、私は、今回の法律が、合併促進、上からの合併促進というニュアンスが非常に強い法案だなと思っているんですが、法案の目的をもう少しはっきりさせて、そして賛成か反対か議論したいと思うんですが、あくまで、機能強化ということだけで、合併促進を目的としていないということをずっとおっしゃっているわけで、目的がはっきりしないということがこの法案の一番の問題ではないかというふうに私感じているこの一カ月でございます。

 そこで、繰り返しになりますが、改めて今回の新法の目的をお伺いします。

竹中国務大臣 今回の法案の目的は、この表題、タイトルにある、まさに金融機能の強化、これにもう尽きるんだろうというふうにやはり我々は考えております。

 今の今、統制経済的な手法なのではないかというお話もございましたが、決してそうではないというふうに考えております。重要な点は、やはり、今、経営改革をしっかりと行って、その上で、地域を中心にしっかりとした金融機能の強化を行ってもらえるところ、これは当然金融機関としてそのようにやっていただきたいわけでありますけれども、そうした中で、市場からの自力調達がなかなか難しいというような市場環境、一方で、デフレが続いて、さらにリスク対応力を高めなければいけないというような一つの状況、そうした中で、必要に応じて、条件を満たす場合には国も資本参加をしようではないかというのが今回の法律でございます。

 重要な経営改革をやはりしていただかなければいけない、その経営改革の一つのパターンとして抜本的な組織再編というのはあり得ることだというふうに思っております。恐らく重要な手段にはなり得るんだろうと思っております。

 しかし、それが目的かというと、いや、そうじゃなくて、そういうことをやらなくても、重要な経営改革を行って金融機能を強化していただける面というのは当然のことながらあるわけでございます。したがって、法律のつくりも、抜本的な組織再編を伴う場合とそうでない場合というのをはっきり分けて、それぞれの条件を示させていただいたところでございます。

 これは仮にの話でありますけれども、幾つか応じてくるところがあって、抜本的な組織再編ではなくて、その他のカテゴリーでたくさんのところが応じてこられて、それで抜本的な再編のところで応じてこられるところがなかったとしても、私たちは、法律の目的としては、金融機能の強化に資すれば、それはそれで十分な当初の目的を果たしたことになり得ると、これは仮定で今申し上げておりますが、考えております。

 したがって、決して合併促進を目的としたものではない、あくまでも経営改革を行う、経営改革を行って重要な金融機能の強化を行ってもらう、その経営改革の中の一つの手段として抜本的な組織再編というのはあり得ることだ、そのような位置づけをしているわけでございます。そのような法律の目的と法律の基本的な仕組み、つくりについて、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

吉田(泉)委員 合併を国として促進するものではない、しかし、合併という大きな経営改革をする場合については、これは一種、受動的と言っていいのかもしれませんが、国は受動的に、受動的ということはおかしいですか、取り消します。国は支援をする、こういうお話だったと思うんです。

 ただ、金融庁というのは、片一方で検査機能を持っているわけでございます。ここでぎりぎりやれば、検査される側はいろいろ言うことを聞かなければいかぬというのが世の中の普通の状態だと思います。この法律は、一応、建前は合併促進ではないということだとしても、実質的に、何かそういう検査等を通じて圧力を加えるというようなことになると、この法律の趣旨が貫徹されないということになりますから、そこを気をつけていただきたいとお願い申し上げます。

 最後になりますが、これは、実はきのう五十嵐委員も取り上げた問題でございますが、金融機関の自己資本比率を計算するに当たって、貸出金の扱い方でございます。

 御存じのように、自己資本の比率というのは、自己資本をリスク資産と言われるもので割った数字であります。これが国内行、四%以上なくちゃいかぬというふうに、これは財務省の告示だと思いましたが、決まっているということでございます。

 リスク資産を計算するに当たって、いろいろな資産がございますが、リスクウエートという言葉があります。例えば国債、これはリスクウエートはゼロ%です。ということは、幾ら国債を買ってもリスク資産はふえません。ということは、自己資本比率に影響しないということでございます。それに対して一般の貸出金、これはリスクウエートが一〇〇%ということであります。ですから、貸し出しをすると、これは全額分母に入ります。ということは、比率を下げるということになってしまいます。

 そして、先ほど申し上げたように、国内行については四%プラスアルファ、エコノミックキャピタルというんですか、プラスアルファの比率を守るようにということになっているわけでございます。そうしますと、金融機関としては、それじゃ、貸し出して比率を下げるよりかは国債を買った方がいいんじゃないかという経営判断に傾かざるを得ないというふうに思うわけであります。

 そこで、これは金融機関の現場の声でもあるんですが、少なくとも、貸出金の中で、担保をとっているとか保証人をとっているとか、そういう格好で保全されている貸出金については、リスクウエート一〇〇%の数字を引き下げたらどうだ、七〇とか七五とか、そういう数字に引き下げたらどうでしょうかという声がございます。そうすれば、結局、これは貸し出しの増加に直接結びつきます。

 考えようによっちゃ、これが一番簡単な金融機能強化法ではないかというふうにも思います。預金保険機構、整理回収機構、いろいろ使って、これからまた公的資金を入れてどうこうということと比べて、この貸出金のリスクウエートを下げるという政策は、お金もかからないで、一番金融機関を元気にして貸し出しをふやす、そういう方法ではないかと思うんですが、その点についていかがでしょうか。

 そして、どうしたら、具体的にどういう見直しの方法があるのか、お伺いしたいと思います。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 自己資本比率についてお尋ねがございましたが、これは、バーゼルの銀行監督委員会の議論を踏まえて設定された、国際的に用いられている客観的な基準でございまして、これに基づいて金融機関の経営の健全性を確保することを通じて、信用の秩序の維持でありますとかあるいは預金者保護を図っていく、こうしたことが大変重要であるというふうに私どもは考えております。

 現在、このバーゼル委員会では、BIS規制の見直しの作業を行っておりまして、本年の半ばまでに成案を得たいということで、今、鋭意作業が続けられております。

 新しいBIS規制においては、例えば不良債権などリスクが相対的に高い資産の自己資本負担というものを重くする一方、信用力の高い優良先向け貸し出しや、あるいは小口でリスク分散の働く中小企業、個人向け貸し出しについて自己資本負担を軽減するなど、銀行の持つリスクをより正確に計算することを目指すものでございます。このうち、中小企業あるいは個人向け貸し出しに対するリスクウエートは、標準的な指標を用いると、現行の一〇〇%から七五%に引き下げられることが予定をされているところでございます。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、我が国の金融の実務を十分踏まえた上で、適切な規制となるよう努めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 ちょっと確認でございますが、そうしますと、本年半ばまでにBISの新しい規制が決まれば、七五%までリスクウエートが下がるという貸出金があると。それはどういう貸出金ですか、もう一度教えてください。

伊藤副大臣 今お話をさせていただきましたように、新しいBIS規制については、本年の半ばまでに成案を得られるように鋭意作業をさせていただいているところでございますが、成案が得られましたら、これを公表して、そして二〇〇六年末に新しい規制の適用が開始をされるということであります。

 そして、先ほど御説明をさせていただいたように、こうした、今議論されている考え方というものが実現をすれば、中小企業、個人向けの貸し出しに対するリスクウエートは、標準的な指標を用いますと、現行の一〇〇%から七五%に引き下げられる予定になるということでございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 時間ですので終わりますが、いずれにしましても、知恵を出し合って、何とか全国的な規模で起こっている金融の危機状態を救っていくのが政治の役割だと思います。力を合わせてやっていきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 おはようございます。鈴木克昌でございます。

 竹中大臣と初めてこうして意見を交わさせていただけるわけでありまして、ひとつよろしくお願いをいたします。

 きょう、私は、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案ということで四点通告をさせていただいておるわけでありますが、先ほど来、きのうからではありますけれども、お話を聞いておって、冒頭に大臣にお伺いしたいんですが、抜本的組織再編と合併というのはどう違うんですか。私は何回聞いておっても、結局同じことを言っておるとしか思えないんですよ。私、レベルが低いですから、わかりやすく教えてください。これは、言葉の遊びを三十分も一時間もやっていても仕方がないなと思うんですよ。抜本的組織再編と合併とはどう違うんですか。まず、それをお伺いします。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 抜本的な組織再編というのは、合併などを含むことになります。合併のほかにも、例えば営業の全部譲渡といったようなケースもあると思いますが、いずれにいたしましても、そういった形で抜本的な組織再編が行われる場合ということでございます。

竹中国務大臣 抜本的な組織再編というのは、非常に幅の広い概念であるというふうに思います。そのわかりやすい一つの例として、まさに合併というのは抜本的な組織再編の中の非常に重要なものになるんだと考えられますが、抜本的組織再編というのは、決して合併だけではない、営業の一部譲渡、今局長からありましたように、そういうものも標準的に想定されるというふうに思います。

 現実に、例えば合併さえすれば抜本的組織再編になるかというと、これは単に数合わせといいますか、一緒になるだけでは抜本的な組織再編には私はならないんだというふうに思います。まさにここは質の判断も伴って、非常に大きな組織の効率化等々の再編が行われる。標準的にはその中の重要な部分として合併は想定されますけれども、まさにその中身は抜本的でなければいけませんし、合併ではなくても、一部営業の譲渡のようなものもこの抜本的な組織再編の中には含まれてくる、その意味では大きな概念であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

鈴木(克)委員 頭の悪い私ですから、ますますわからなくなってきたんですが。しかし、おっしゃらんとすることは、ちょっとわかるんですね。ちょっとです。大部分はわからない、このように御理解ください。その程度の頭だというふうに御理解ください。

 二つ目。先ほどから、この法案の目的は何ですか、意義は何ですかと、こういうことをいろいろな委員が先輩諸氏も含めて聞かれておるわけですね。私は、また目的は何ですか、意義は何ですかと聞いても一緒だと思うんで、あえて聞き方を変えます、必要性は何ですかと、このように変えます。そうすれば目的や意義とは違うはずです。必要性は何ですかと。同じ答弁だったらこれはおかしいわけですよ。必要性は何ですか。

竹中国務大臣 御答弁申し上げる前に、先ほど私は営業の一部譲渡と申し上げましたけれども、営業の全部譲渡ということで修正をさせていただきます。

 必要性は何なのか、なぜ必要なのかと。これは、一つの全体的なわかりやすい話で申し上げますと、私、以前から、日本の金融は、危篤状態、危機状態ではないけれども健康体ではない、一種のグレーゾーン的な状況にいるというふうに申し上げております。なぜそういう状況の中で今回のような枠組みが必要かというと、このグレーのところから――普通の状況であると、少し時間がたてば、人間には普通の治癒の能力がありますから、そうした努力で健康体の方にある程度戻っていけるはずでございます。しかし、残念ながら、今の日本の経済の状況というのは、そういう状況ではない。

 どういうことかというと、例えば、いろいろなリスクをとろうと思っても、市場で自力調達がなかなかできない。経済そのものもまだデフレが続いていて、またさらにリスクが高まる可能性がある。つまり、ほっておいては自然治癒ができないような状況に、そういう特殊な状況に今の日本経済は置かれているということだと思います。

 一方で、自然治癒できないということに加えて、しかし、それでも早く治ってほしいというニーズは極めて強い。これは、経済そのものが全体がよくなる中でなかなか地域に浸透していかない。その一つの理由として、やはり地域の金融を活性化させなければいけない。

 その両面、グレーゾーンから何とか早く脱したい、健康に戻したいんだけれども自然治癒ができない、しかし早く戻ってほしいという要求は非常にある、まさにそれが私は必要性であるというふうに思っております。その必要性、金融機能の強化に資するような枠組みをつくりたいということで、今回の法案の提出をさせていただいているわけでございます。

鈴木(克)委員 そうしますと、国会は金融機能安定化法を出しましたね。そして、金融機能早期健全化法を出しました。そして、金融機関等の組織再編の促進に関する法律も出しましたよね。私は、これは何回屋上屋を重ねていくのかなと思うんですよ。

 今回の法律は平成二十年までということでありますが、では、さらにその先にはどんな法律が考えられるんですかね。

 私は、もちろん、現実を見据えて対処していくということは大事だと思うんですよ。しかし、やはり国政の場ですから、日本の金融をあずかっておる大臣として、将来、どういう金融政策を持っていくのか、日本の国をどういうふうな国に持っていくのかというところから始まっていかなくちゃおかしいと思うんですよ。名称は少しずつ違うけれども、たびたび違う法律が出てきて、しかも、二兆円でございます、六十億しか使いませんでした。それは、一体全体、本当にだれがこの日本の将来、国民の幸せを考えているんですか。

 それから、ちょっと見回しますと、大分委員さんが少ないような気がするんですが。これは私の話をどうにも聞きたくないということで……。

田野瀬委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田野瀬委員長 それでは、速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。鈴木君。

鈴木(克)委員 大臣に御質問をして終わったんです。

田野瀬委員長 竹中大臣。

竹中国務大臣 鈴木委員から大変大きな問いかけでございます。前半おっしゃいました、今までのさまざまな法律を踏まえて今回が出ている、この流れは一体どうなっているんだという趣旨であったかと思います。

 これまでの法律につきましては、これは基本的には、危機対応のための措置というのは現在の預金保険法百二条に集約される形でこれまでの改正が行われているわけでございます。そうした意味での恒久的な措置ないしは危機対応としての枠組みというのは、これは今までの幾つかの経緯を経てしっかりとしたものに今なってきているんだというふうに思っております。

 今回お願いしている法律というのは、現下の状況下で時限的なものとしてその時々の政策の要請にこたえていかなければいけない、そういう趣旨でございます。この先々どうなるのか、これは、先々のことはその時々の政策要請がございますから、今の時点でそんなに明確に見通せるわけではございませんですが、この恒久的な措置を基盤にして、さらに経済全体の政策要請にやはり適切に対応していくという姿勢は、これはこれで私は必要なのではないかというふうに思っております。

 後半お問いかけになった問題は、より重要な問題だと思います。

 まず、金融のビジョンそのものがどうなっているんだ、ビジョンなくして国政、政策はないのではないか、この点につきましては私も全くそのとおりだと思います。これは小泉内閣ができましてから、政策全体については、骨太の方針ないしは「改革と展望」ということで、将来を展望してそれを現在に位置づけるというような形で説明責任を果たすという仕組みが一応とられるようになっております。

 その中に、もちろん金融も産業の再生も入ってくるわけでございますので、それを受ける形で、金融については当面の課題としての不良債権の処理を加速するという意味での金融再生のプログラム、地域に関してはリレーションシップバンキングのプログラムというのを提示させていただいているわけでございます。

 さらに、より大きな、より長期の問題ということになりますと、これはどういう性格のビジョンが適切なのかというのはいろんな御議論があるかもしれませんが、例えば金融に関しては、お亡くなりになった蝋山昌一先生を中心としたビジョン懇等々で、市場機能をベースにした金融のシステムの確立、その中では、流れとしてはまさに間接金融から直接金融へ、相対型の金融から市場型の金融へというような一つの流れを明示させていただいているところでございまして、そういう流れに沿ってそれぞれの今の我々の政策を行っているという状況にあるわけでございます。

鈴木(克)委員 ただいまの大臣の御答弁については、また後日、時間をかけて一つ一つ検証させていただきたい、このように思っております。

 通告に従って少し話を進めさせていただきたいと思いますが、今回の新法の有効性という点で二点お伺いをしてまいりたいというふうに思うんです。

 要するに、これは新聞記事でありますけれども、地域金融機関では新法が成立しても公的資金の自主的な申請は考えないとの声が強い、なぜかというと、収益性や効率性まで国が経営を厳しく監視し、介入する可能性が高いためだ、こういうような意見もあるわけですが、本当にこの新法は機能をされるというふうにお考えなんでしょうか。その点をまずお伺いします。

竹中国務大臣 今回の枠組みといいますのは、それぞれの金融機関がそのリスクに対応して地域にさらに貢献をしていきたい、そういう意欲を持ったところに関しまして、そのお手伝いをするというのが趣旨でございます。さらにリスクが高まる中で、しかし、地域からの金融機関に対する期待が高まる中で、前向きの経営者がこうした枠組みを活用してみずからの金融機能を強化していこう、もって地域に貢献していこう、私は、潜在的にそういうニーズは当然のことながら出てくるであろうというふうに思っております。

 同時にしかし、これは国が資本参加をするわけでございますから、先ほども少しお問いかけございましたけれども、やはりどこにでも無条件に何か出せるようなお金では当然ございません。これはやはりモラルハザードを回避するという意味から、今御指摘になったような収益性の向上であるとか地域への貢献、それを可能にするような経営の体制の確立、これは当然のことながら求めなければいけないということだと思っております。

 できるだけ使い勝手のよい制度にしなければいけない、しかしモラルハザードを回避しなければいけない、そういうすき間をしっかりと詰めなければいけない法律であるわけでありますけれども、この制度設計の細部にわたりまして、我々なりにそのような工夫をしたつもりでございます。

鈴木(克)委員 先ほど来から吉田委員初めその他の皆さんからも質問があったわけでありますが、金融庁は検査を厳しくして資本不足の懸念が強い地銀を申請に追い込むのではないかという懸念をする声もあるわけですよね。この点を含めて、地域金融の再編の方向性というものを今金融庁はどのようにお考えになっておるのか。

 いろいろありますよ。例えば、一県二行にするんじゃないかとか、広域合併を進めるんじゃないかとか、いろいろなことを言われておりますが、その辺のところは、報道されておること、言われておることとやはり違うんですか。私は、言われておるとおりだというふうに思っておるんですけれどもね。なぜかということは後でまた申し上げますけれども。

竹中国務大臣 報道は、いろいろな報道があろうかと思います。しかし、例えば今おっしゃったような、各県どうする、各地域でどのような数にする、そういう点について我々は上からのお仕着せのような目標を持っているという事実は全くございません。これは、あくまでも経営の判断によってしっかりと判断をいただいていかなければいけない問題であるというふうに思っております。

 それともう一点、今お尋ねがございました、何か検査を厳しくして追い込んでこの法律を使わざるを得ないような状況にする、そのような書きぶりをしている報道も確かに私も承知をしておりますが、これも事実とは違っております。

 まず、検査で追い込むというような概念は、これはございません。検査というのは、これは大変公正不偏な立場で資産の査定をしっかりとやって、信用リスクをしっかりと見ている場であります。ここは金融庁の中でも非常に強い独立性を持って、検査が今どのような形でなされているか、そういうことは私自身も関与しない、関知しないという立場で、まさに検査の独立性を持って、しっかりと公正不偏にやっているわけであります。したがって、検査で追い込んで監督でどうこうするとか、そういう体制では全くございませんし、そのようなつもりは毛頭ございません。

 そこは、したがって、地域についてどのようなビジョンを持っているかというふうに問われますれば、これはリレーションシップバンキングのアクションプログラムに尽きるということになろうかと思います。リレーションシップバンキングのアクションプログラムの中に、地域の金融機関をどのようにしようなどと、そんな話はもちろん全く出てまいりません。これは、まず地域の金融機関がしっかりと地域に根差して、その地域金融機関でしか持てない定性的な情報を活用していただいて、企業を再生していただきたい、地元を再生していただきたい。その中で、金融機関がしっかりとした経営判断のもとでみずからの力を強くしていくという方向を目指していただきたい。我々が地域金融機関に対して持っている政策的な枠組みは、それに尽きているというふうに思っております。

鈴木(克)委員 大臣、そうはおっしゃいますけれども、例えばこの合併の仮定、地域銀行十二行、それから信用金庫四十九金庫、そして信用組合二十九組合、こういう仮定を出されておるわけですよ、これを見れば、何を考えているのか、今の大臣が言われたこととそれは違うというふうに思うのが当然だと私は思いますけれどもね。だったら、こんなもの出すべきじゃないですよ。なぜこんなものを出されたんですか。こういうものを出されれば、当然そういうふうに思うんですよ。それが世の中なんです、それが民なんですよ。

竹中国務大臣 この点に関する委員の御見解は、確かに我々は賜りたいと思います。

 しかし、この点もぜひ御理解をいただきたいんですが、これは保証枠を予算として申請しなければいけません。その場合に、やはりその枠としての一つのめどをつけなければいけないという、これは予算上の我々のニーズがございます。

 そうした場合に、これは一つの仮定として、地域銀行、信用金庫、信用組合について一定の仮定を置く。しかし、こういうことを考えているわけではもちろんないわけでございます。こういうふうにしようと思っているわけではもちろんない、これは繰り返し責任ある立場で国会でも答弁をさせていただいているとおりでございまして、これは一つ政府保証枠を積算するための仮定である。主として地域金融機関を対象に今回の機能強化を考えているということから、地域金融機関を例示的に挙げてこのような仮定計算をさせていただいております。

 これは、こういう趣旨に尽きておりますので、ぜひ御理解を賜りたく存じます。

鈴木(克)委員 確かに、一つの考え方を出さなきゃならないということはわからないわけでもないんですが、こういう形で、何行、何割というような形で出れば、やはりそういうことを国は考えているんだなというふうに考えられていくのは私は当然のことだというふうに思うわけでありまして、今後、こういうようなケースの場合は、もう少し違った形の出し方もあるんじゃないかなというふうに思っています。

 では、次に参ります。資本増強の基準についてちょっとお伺いしたいんです。

 今回の場合は、判断基準が定量的に示されておるわけじゃないわけですよね。そこで、結局裁量行政が復活をしてくるんではないか、こういうことを考えられておるわけですけれども、その点と、それからもう一つ、中小企業向けの融資の増額を義務づけない、こういうふうにされておるというふうに思うんですが、この理由。

 この二点、資本増強の基準ということでひとつお答えをいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 前半の裁量云々の部分をちょっと先に答えさせていただきまして、後ほど中小企業の部分についてのお答えをさせていただきます。

 今回、国が資本参加をするに当たって、国として当然のことながら判断をしなければいけない、これは事実であろうかと思います。要は、その判断を回避するわけにはいかないんだと思うんですね。しかし、その判断が恣意的なものになってはいけない。これはやはり裁量行政という批判を受けるんだと思います。我々としては、その判断をするに当たって、そういう恣意性、担当者のたまたまの、そのときの思惑なり恣意性が入らないようにするために、法の設計に当たっては、我々なりの工夫をしているつもりでございます。こうした金融機関の選別に必要な、すなわち、審査基準等については、法令等に可能な限り明確に規定をしたつもりでございます。

 具体的に言いますと、申請の金融機関には、収益力改善等に向けた経営改革の内容でありますとか金融の円滑化に向けた取り組み等も盛り込んだ計画をまず提出していただく、これが一つの重要なポイントになります。そこでは、収益性、効率性の向上が見込まれるのか、地域における金融の円滑化が見込まれるのか、こういった点を、法令に定めた要件を厳正に審査いたします。また、合併を初めとする事業の再構築を求める、金融機関に厳しい自助努力を求める、これもやはりルールをつくってお願いをするわけでございます。もう一点、これは収益性の数値目標を実現するための裏づけになるようなビジネスプラン、これがやはり大変重要な経営の判断といいますか、生きた経済、市場に根差した判断が要るところでございます。

 こうした問題に関しては、原則として、民間有識者から成ります審査会を設けて、その審査会の意見を聞くという形をとることにしております。つまり、外部の客観的かつ専門的な知見を活用するというような制度もこの中に織り込んでいるところでございます。

 そうした点、恣意性を排除する、裁量行政にならないような仕組みがあるということについての御理解を賜りたいと存じます。

 中小企業につきましては、今、また別途説明をいたします。

伊藤副大臣 中小企業向け融資を義務づけないかという御指摘でございましたが、私どもも、中小企業貸し出しというものが多くの金融機関にとってコアの収益源であり、国が資本参加する以上は、中小企業を中心とした資金仲介機能というものを高めていく、これは極めて重要なものだというふうに認識をしています。

 このため、今回の制度においては、国が資本参加するに当たって、経営の強化計画というものを提出していただくわけでありますが、その中で、信用供与を円滑化をしていく方策、あるいは地域経済を活性化していく、それに資する方策を具体的に盛り込んで計画として提出をしていただいて、そしてそれを厳正に審査する、こういう枠組みになっているわけでありますが、地域経済を活性化していくというのは、これはさまざまな取り組みが必要でありまして、一律の目標で設定するものではないんではないかというふうに考えております。

 そして、その活性化の方策、取り組みというものが外部から評価できるような、そういう指標というものもこの計画の中に盛り込んでいく、こういうことを求めているわけでありまして、そうした指標の中に、例えば中小企業あるいは地元の企業に対する信用供与の総資産に対する割合というものが考えられる。そして、その他の指標も組み合わせて、地域における周知といいますかパブリックプレッシャーのもとで、こうした実績というものを公表しながら取り組みを促していくということが重要だというふうに考えているところでございます。

鈴木(克)委員 この問題の最後に、株主責任のあり方ということでお伺いをしたいわけであります。

 基準適合金融機関でない金融機関への資本増強に当たり、株主責任として配当の抑制等が考えられるということでありますね。しかし、減資のような形を私はとるべきではないのかというふうに思うわけです。公平公正といいますか、また株主責任ということの意味からいっても、やはり私はそういう措置をとっていくべきではないのかな、このように思いますが、いかがでしょうか。

増井政府参考人 今御指摘のように、この新たな公的資金制度につきましては、自己資本比率が基準値未満の金融機関につきましては、資本参加時に、基本的に配当抑制によりまして株主責任の明確化を図るというふうにしております。

 減資の方のお話でございますが、幾つか減資のやり方があるかと思います。例えば株数減資というのがございます。こういったやり方ももちろん考えられるのじゃないかという御意見もあるわけでございますけれども、これにつきましては、理論的に株数減資の前後で各株主の持ち分となります純資産価値というのは変わらないということでございまして、基本的に株主の不利益が発生しないというような形になっておりますし、さまざまな事務上のいろいろな負担ということを考えますと、なかなかそういったことはとれないなというふうに考えております。

 ただし、一般的に繰越欠損が金融機関にある場合には会計上の減資を行うということはよく見受けられることでございますけれども、公的資金制度につきましても、繰越欠損の処理によりまして、国の保有する株式に対する配当を可能とすることは意義があるというふうに考えております。

 したがって、この新たな公的資金制度におきましては、申請金融機関においてこのような繰越欠損の処理が行われていることを前提として資本参加をするということにしてございまして、そういう意味での会計上の減資ということをやっていただくということになっております。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、今回二兆円という、これは本当に、ある意味では国民にとって大変なお金なわけですね。したがって、本当に公正で公平で、しかも日本の将来にとって間違いのない政策であってほしいというのは国民の切なる願いだというふうに私は思いますので、そういう意味で、また我が党のそれぞれの議員のお立場からこのことについていろいろ意見があろうと思いますが、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。

 それでは続いて、金融政策全般、特に巨額な為替介入、それから、国債、財投債を初め財政規律の問題について順次お伺いをしてまいりたい、このように思うわけであります。

 まず、外貨準備及び為替介入の関係ですが、去る四月七日の財務省の発表によりますと、ことし三月末における我が国の外貨準備は、約八千二百六十六億ドル、八十七兆円となりました。そして、ことし二月末と比べ約四百九十七億ドルの増加、前年同月に比べて三千三百億ドル、約三十五兆円増加したということであります。これは七カ月連続で過去最高を更新し、初めて八千億ドルを超えたわけであります。円高阻止のために、政府、日銀は、昨年度、大変な過去最高の三十二兆円の円売り・ドル買いの介入をしたわけでありますが、これが結果として外貨準備の急膨張につながっておるわけであります。

 そこで、このことに関して、以下三点お伺いをしたいというふうに思うんです。

 まず一点は、国際通貨基金、IMFは、去る四月六日、国際金融の安定に関する報告書を発表したわけでありますけれども、その中で、我が国を含むアジアの為替政策について、大規模介入の持続性に疑問が残るため市場に与える効果が低下する可能性があると強調したわけであります。自国通貨の上昇を抑える市場介入の効果は長続きしない、こういう見解を示しておるわけでありますが、このIMFの見方に関しての御見解をまずお伺いしたいと思います。

山本副大臣 先般公表されましたIMFの世界金融安定報告書、これは半年に一回、定期的にIMFのスタッフが、世界の金融システムの現況、政策課題等について分析するものでございます。今回の報告書におきましては、全般的に、世界の金融市場を取り巻く環境がさらに好転していること等を指摘する一方で、先生御指摘の、世界的な、特にアメリカの経常収支不均衡、こういったことについてのリスク等を指摘しております。

 経常収支不均衡の是正につきましては、IMFといたしましては、主要国の当局が秩序ある市場環境を維持しつつ協調的努力をすることが重要と指摘しておりまして、為替介入の持続性に重点を置いた記述ではないというように理解をしております。

 いずれにいたしましても、IMFのこの報告書は市場の見方の紹介等も含む一つの分析であると認識しておりまして、ボカラトンのG7の声明にもありますように、我が国の為替レートは経済のファンダメンタルズを反映すべきでございまして、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとりましては望ましくないという考え方に変更はございません。

鈴木(克)委員 三月中旬以降ですか、ちょっと我が国の介入が抑えられておるというふうに、慎重になっておると言った方がいいんですかね、というような動きのようでありますけれども、いずれにいたしましても、こういう見方があるということは、私は、やはり厳然たる事実として我々はよく心得ていく必要があるのではないのかな、このように思っております。

 続いて、我が国の外貨準備のうち、証券として持つ資産というのは全体の約八割、六千二百五十八億ドルというふうに言われておるわけでありますが、その大半は、要するに為替介入で得たドルで購入したアメリカ債、米国債だというふうに思うんですね。そして、アメリカの二〇〇四年度の財政赤字は約五千二百十億ドルに達するというふうに言われておるわけでありますが、このアメリカの財政赤字の穴埋めを我が国の為替介入資金がバックアップしておる、こういうふうに見られておるわけですよね。これはマスコミでもそのような報道が連日のようになされておるわけであります。

 結局、これは非常におかしなあれがありまして、大量の米国債を買い続けるということは、米国債の価格下落に歯どめをかけ、米国債相場の金利安定化に寄与する。ただ、その反面、我が国が大量に米国債を売るときは、米国債相場の暴落を招くわけですよね、そういうおそれがある。これは十分御理解いただけると思うんです。

 一方、EUはどういうふうにしておるかというと、ドル安・ユーロ高を放置しておるんですね。そしてユーロ売りをしておらないわけです。逆に、ドル安であるがゆえに、その資金をアメリカから我が国やその他に移しかえた、これが今の株高の一つの外国人の購入ということにもなってくるわけでありますけれども。昨年十月以降、我が国株式の外国人による買い越しは、この資金もかなり入っておるというふうに思われるわけです。

 今後もEU資金のアメリカ離れが進むと、ドルの暴落、アメリカ経済の下降というふうになっていくわけですね。そうすると、結局、急激な円高となりかねないわけであります。そうなれば、我が国もアメリカも、同時に株が落ちていくということになるわけですよね。

 そこでお伺いしたいのは、我が国は、今後こういうような形で大量の為替介入を続けていくんですか、どうなさるんですかということが一つ。もう一つは、結局、アメリカの今後の経済をどのように見てみえるのか、このことについてお伺いをしたいと思います。

山本副大臣 まず、我が国の為替政策の基本ですが、繰り返しになって恐縮ですけれども、為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきであり、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくないとの我が国の基本的考え方に何ら変更はございません。今後とも、日米のファンダメンタルズをよく注視しまして、適切に対応してまいりたいと考えております。

 また、日本経済の回復の傾向が明確になっている一方で、アメリカ経済も力強く回復していると認識しております。例えば、OECD、経済協力開発機構の二〇〇四年の経済見通しにおきまして、GDP成長率は我が国が一・八%であるのに対しまして、アメリカは四・二%でございます。また、EU諸国も大体二%弱、イギリスが二・七%というような推移でございます。

 また、米国債の購入について、ポートフォリオについて御懸念があるわけでございますが、いわゆる流動性、安定性、こういったことから考えまして、一番適切な措置だということにおいて十数年変わらない考え方をとっているわけでございます。

鈴木(克)委員 もう一点この問題でお伺いして、後は国債の問題に入っていきたいというふうに思うんですが、政府、日銀による為替介入の結果、二〇〇三年度に一兆四千億の運用益が出ている、こういうことを政府はおっしゃるわけであります。この一兆四千億を一般会計に繰り入れるに当たって、円高圧力回避のために、運用益外貨と同額の政府短期証券を発行して円を調達しなきゃならぬという、これはある意味では矛盾になっていくわけですよね。また、巨額介入資金の手当てのために、たび重なる政府短期証券を発行しておる。これは、さらなる金利上昇を避けるために、政府が日銀に対して米国債の買い戻し期限の延長を決定した、このように伺っておるわけでありますが、このように政府は巨額介入により生じる矛盾と介入の後始末に追われておって、円高と介入の悪循環に陥っておるのではないのかな、このように私は思うんですけれども、政府の御見解はいかがですか。

山本副大臣 我が国の為替介入は、円安を誘導したり、相場の特定の水準を維持するために行っているものではございません。市場の思惑的、無秩序な動きに対応して、相場の行き過ぎを防ぎ、乱高下を抑制することを目的としているわけでございます。

 先生御指摘の、日本銀行との間で交わした取り決めに基づきまして、約十兆円の米国債を日本銀行に対して買い戻し条件つきで売却し、このうち三・九兆円相当は既に買い戻した。けれども、残余の六・一兆円について、この取り決めに基づいて外為特会が売却した米国国債を買い戻すための必要な円資金の調達が懸念されるのではないか、こういう御懸念を御指摘いただいたわけでございますが、これにつきましては、買い戻し期限を延長することを日本銀行と確かに合意しておりまして、しかしながら、遅くとも平成十六年六月三十日までには確実に買い戻すわけでございます。これにつきましての円資金の調達に支障は全くないわけでございます。

 それなら何で延長するんだと先生御懸念でございますが、これは、谷垣大臣がいろいろなところで発表される言葉でございますけれども、資金繰りの平準化、こういう言葉で大臣は表現されておられまして、円資金の調達に支障はないけれども、極端に資金繰りを急にしますと、市場にひょっとすると影響があるかもしれないというような懸念のもとに平準化した、こう御理解いただければ幸いでございます。

鈴木(克)委員 今の御答弁について、また改めていろいろと申し上げていきたいと思うんですが、通告をいろいろさせていただいておりまして、一通りずっとやらせていただいて、本当に、きょう仮に全部やらせていただいても、まだ私が伺いたいことの一%ぐらいだというふうに思っています。百時間ぐらいさせていただかないと自分としては納得いかないというふうに思っていますので、そういうことで、とりあえずざっと流させていただきます。

 では、国債に入ります。これからが、実は、私が本当に国会を目指してきた最大の目的と言ってもいいところだというふうに御理解をいただきたいんですが。

 不況の中で、国税収入は減少する一方であります。平成二年度の六十・一兆円から、平成十四年度は四十三・八兆円、そして本年度は四十一兆円ということだと思うんですね。他方で、国債と借入金を合わせた残高というのは、平成十六年度末で八百十四兆円となる見込みであります。これらを返済するためには、新たに借金を重ねて借換債を発行せざるを得ない。この借換債と新規の国債を合わせた国債発行額は、平成十六年度が百二十一兆円、平成十七年度が百四十一兆円、最も多くなる平成二十年度には百七十二兆円に達すると思われます。また、平成十七年度には、借換債だけでも百四兆円ということで、初めて百兆円を突破するわけですよね。

 かつて、大蔵省は、銀行のシンジケートに半ば強制的に国債を買わせる、また、郵貯や簡保や年金資金に売りつけてきた。しかし、郵政民営化という状況の中で、国債の安定消化に懸念が生じてきておるということではないかなと思うんです。したがって、私は、郵政民営化というのも、そういった意味からいっても、これは簡単なことじゃないというふうに思っておるわけですが、それはまた別の議論とさせてもらいます。

 国債の発行量が市場の許容度を超えると、当然のことながら、国債価格の下落、そして、利回りの上昇によって長期金利の上昇につながっていく。そして、長期金利の上昇が続けば、来年度予算編成で国債発行の想定金利を上げる必要が出てくるんだと思うんですね。その結果、利払い負担が重くなり、国債費の膨張によって政策経費を圧迫していく。景気が低迷を続ける中で長期金利が上がれば、一段と景気に悪影響を及ぼしかねない。明らかにこれは悪循環ですよね。

 こうした悪循環は未然に断ち切る必要があるというふうに思うんですが、大量の国債を消化するために政府はどのような方策を講じようとしておるのか、ぜひその具体策を聞かせていただきたいと私は思うんです。

 これは本当に大きな問題だと思うんですよ。ひとつ腹を据えて、この問題はずうっと私のテーマでやっていきたいと思っていますので、きょうの御発言をまた次回の質問のネタにさせていただきたい、こう思っておりますので、腹をくくって御答弁をいただきたいと思います。

山本副大臣 国債の発行に当たりましては、財政構造改革の推進によりまして、国債に対する信認を確保しつつ、中長期的な調達コストを抑制しまして、確実かつ円滑な消化を図るという基本的な考え方に基づき、市場のニーズ、動向、これらを十分に踏まえた上で国債発行を行うなど、適切な国債管理政策の運営に努めてまいっているところでございます。昨年十二月には、今後の国債管理政策上講ずべき新たな施策を取りまとめました「国債管理政策の新たな展開」を公表しているところでございます。

 今後とも、引き続き、この取りまとめに盛り込まれました施策を含めまして、国債市場のインフラ整備や、国債の商品性の多様化を通じた国債保有者層の拡大などの施策を進め、大量に発行される国債の安定的な消化を確保しまして、国債市場の安定を図ってまいりたいと考えております。

 なお、先生御指摘の金利の動向でございますが、国債の需給に加えまして、景気や物価の動向、財政金融政策等の複合的な要因によりまして変動するものでございます。今後の動向につきましては、一概に申し上げることは困難でございますが、市場の動向につきまして注視してまいりたいと考えるところでございます。

鈴木(克)委員 当然、そういうふうな御答弁だろうというふうに思っておるわけですけれども、本当にもっと深刻な問題だと私は思っています、これは。きょうはそれぐらいにしておきますけれども。

 もう一つ、非常に重要な指摘を私はさせていただきたいと思います。これは、偶発債務ですよ、偶発債務、これを当然視野に入れた債務管理をしていかないと、これは大変なことになっていくというふうに思うんです。このことについてちょっと申し上げていきたいんです。

 我が国の政府債務残高は、直近で名目GDP対比一五〇%ということであります。この比率は、主要先進国の中では群を抜いて高いわけですね。この場合の政府債務には国債や地方債などが含まれておるけれども、政府の債務は実はこれだけじゃないわけです。例えば、将来、特定の出来事が起こった時点で初めて政府の支払い額が決定するような偶発債務も政府債務の一種であり、これがまた大変なことだというふうに思います。

 私も、かつて、小さな町ですけれども、市長をやっていまして、公営企業金融公庫へ行ってお願いをしてきたことがあります。あれはいいところにありますね、ガーデンコートのツーフロアを借り切って、理事長さんは年収三千何百万、余分な話ですけれどもね。私は、蒲郡市役所であいた部屋があるから来てください、ただで貸しますよと言ったことがあるんですが、恐らく家賃は数千万だと思いますね。もっと大きいかもしれません。きょうはそんなことを言うつもりはありませんけれども。

 いずれにしても、そういうことで、偶発債務というのが本当に大きな問題になってくる。意外にこれは言われていないわけです。偶発債務の代表例は、特殊法人等の資金調達に対する国の債務保証ですよね、これは御案内のとおりであります。その残高は、平成十四年度末で約五十九兆円というふうに聞いております。また、特殊法人の債務で国の保証がついていない部分についても、暗黙の政府保証ということが見られておるわけですね。そういうものがついておるというふうに巷間言われておるわけであります。

 我が国における政府債務の管理策というのは、これまで国や地方自治体が発行する債券を対象とする形で行われてきた。財務省がやった、昨年十一月ですか、公的債務管理政策に関する研究会がありましたね、その報告書の内容も、どうも対象が国債に偏っておるような気がするわけですよね。こういうものは、わざとかどうかはわかりませんけれども、触れられないという状況にあると私は思うんです。

 幸いなことに、現在、日本は低金利ですよね。だけれども、もし金利が急上昇したり、それから、現在国債を大量に保有しておる民間銀行が、例えば多額の評価損が発生して、その経営が不安定化――だから、先ほどから金融大臣は一生懸命で、銀行はしっかりしなきゃいかぬということをやられておると思うんですけれども、こうした事態を防ぐためにも、政府は、広い意味での政府債務を視野に入れたリスク管理を適切に行っていかなきゃいかぬ、将来に向けた政府債務の償還をめぐる不確実性を減らすことが欠かせないんではないか、このように思うわけですが、このいわゆる偶発債務を含めた二番目の問題、国債以外の問題についてどのような御見解なのか、お伺いしたいと思います。

山本副大臣 まず、国の債務残高につきましては、世界の先進国の中でも大変厳しい状況にあるという認識をしております。こうした観点から、公的債務残高を適切に把握することは極めて重要な課題でございます。その上で、先生の御指摘にありましたように、公的債務管理政策に関する研究会の報告書でも、緊張して政府は歳出あるいは財政運営にかからなきゃならぬという指摘があるわけでございます。

 特に、特殊法人等の債務について、国会に提出する予算の参考書類としまして、既に公表されておりますが、国の貸借対照表試案、さらに連結貸借対照表、こういうものを示しておりますけれども、十三年度末における債務の合計額は、国と特殊法人等の合計で一千三十五兆というような数字も示しているわけでございまして、こういう先生御指摘の偶発債務も含めましたいわゆる国債管理というものの重要性、そして、これの縮減というものに対する緊張感は、今後ともかなり厳しく持っていかなきゃならぬというように思っております。

 そこで、公的債務残高につきましての現状や政策を示しつつ、説明責任を果たしていくことがまず何より重要であると考えておりまして、ことしからは、債務管理レポート、こういうものも作成して公的債務に関する情報提供に一層努めることによりまして、こうした緊張感を維持していきたいというように考えるところでございます。

鈴木(克)委員 私は、国の偶発債務についてもっと国民の前に明らかにしていく必要があるというふうに思うわけでありまして、一つの提案も含めて御質問をしたいと思うんですけれども、いわゆる政府保証を民主的にチェックをしていく体制をつくるべきだ、こういうことでございます。我が国で国の偶発債務の中心をなしている政府保証債務をめぐり、国が必要以上のリスクを抱え込まないためにも、個々の案件に政府保証をつけることの是非を納税者の視点で事前にチェックできる体制づくりが欠かせない、このように思うわけであります。

 ところが、我が国の予算制度はこうした理想像からはほど遠い状況にあるわけで、政府保証制度をめぐる現行の手続は、毎年度の保証限度額を保証を受ける特殊法人ごとに一般会計の予算総則で示し、その内容を国会の議決に付すというだけのことなんですね、今現在は。このために、政府保証の付与に伴い、国が将来に向けて実際にどれほどの金額を支払わなければならないのかというのがわからないわけです。また、国の実際の支払い額は、それが確定するまで一般会計の予算総則に計上されないわけですね。しかも、政府保証については、保証限度額の五〇パーまでは国会の議決なしで保証額の上限を引き上げられる弾力条項が認められておる、こういうことなんです。現行制度は、いわゆる財政民主主義の立場からいっても、これは非常に問題がある、私はこれは絶対放置すべきではないというふうに思うんですよね。

 例えば海外はどういうふうになっているかというと、アメリカの連邦信用計画では、将来に向けて見込まれる国の支払い額を保証債務の発生時点で現在価値に引き直して表示する方法、将来キャッシュフロー分析というふうに言うんだそうでありますが、それと連邦議会による承認とを組み合わせた枠組みを取り入れることで、連邦政府が民意に反した保証を行うことに歯どめをかけているというふうに言われておるわけですよね。

 今後、やはり我が国も政府保証債務の実質的な規模を、それが発生した時点でタイムリーな形で開示して、そして国会を通じて国民にわかりやすく知らしめていく必要があるのではないかな、私はこのように思うわけでありますが、この点についていかがですか。

山本副大臣 先生御指摘のように、特に偶発債務の中の保証債務、こういったものについて、管理でき得るものとリスク管理できないものがあると思います。しかし、できる限り、リスク管理が可能なもの、そうでないもの、民間部門に対するもの、非民間部門に対するもの、そういったものを仕分けしつつ、適時適切な説明責任を可能にしていくような管理レポート、こういったものに努めてまいりたいというように考えるところでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、きょうはこれぐらいにさせていただきますが、私は、やはりこの問題を何回もきちっと取り上げさせていただいて、本当に、先ほどから申し上げているような形で、もっと明らかにしていく、そして安易な形で債務保証を国民が受けることのないような形をぜひ制度化していく必要があるのではないかな、このように思っておりますので、ぜひその点も御理解をいただきたいし、お願いをしたいなというふうに思っています。

 さて、時間もあとわずかになりました。全部どうもできそうもないわけでありますが、財投関係、特別会計関係ということで支度をさせていただいていますが、また次回に回させていただきたいというふうに思っていますけれども、財投だけここでやらせていただきたいと思います。

 平成十三年度の財投改革に伴い、郵貯、年金の全額預託義務が廃止され、これは制度が変わったわけでありますけれども、しかし、依然としてこの預託金残高が平成十四年度末で三百二十・五兆円あるというふうに思います。預託金は貸付金の返済を受ける前に返済しなければならず、そのために、一つ、財政、金融資金の資金繰り確保のため、また、二つ、財投債の発行による市場への影響を配慮する観点から、平成十三年度から、御案内のように、七年間の経過措置が設けられておるわけですよね。経過措置は、これはやはり過渡期としてやむを得ない面もありますけれども、もっと速やかに財投の郵貯、年金離れを行って、ひいては特殊法人を自立させていく、このことは財投改革の目的の一つだったというふうに思うわけであります。

 他方、財投債の相当額を引き受けている郵貯、簡保は、いずれ郵政民営化、先ほど申し上げたとおりであります、郵政民営化の方向で、国債の新規発行額も残高も累増しておるという状況ですよね。このような中で、果たして経過措置終了後の財投債全額市中消化の見通しというのは立っておるんでしょうか、このことをぜひお伺いしたいわけであります。

 私は、結局、郵貯、年金に引き続き相当額を引き受けてもらうことになって、実質的には財投改革以前と何ら変わらないことになってしまうんではないか、こういうふうに思っておるわけですけれども、この辺、どのように今お考えになっておるのか、きっちりとひとつ御答弁いただきたいと思います。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、財政投融資制度の改革に伴いまして、経過措置として、預託期間が七年であることにかんがみまして、それが払い戻されるまでの七年間、当初七年間につきましては、市場に与える影響等に配慮して、郵貯、年金等に財投債を直接引き受けてもらうという経過措置を設けております。

 これが終了した後に財投債の消化は大丈夫なのか、そういう御質問だと思いますが、それは、経過措置終了後の財投債の発行額がどの程度になるか、それは財投計画の規模等によるわけでございますから、今の段階で限定的なことを申し上げることはできないというように思いますが、ただ、事情として申し上げられますことは、まず経過措置が終了いたしましたときは、基本的に郵貯や年金に対する預託金の払い戻しも終了しております。現在は七年間で順々に預託金が払い戻されるものですから、それで急激に原資が減っていきますから財投債の発行額が大きいという事情にあるわけでございますから、そういう払い戻しが終了いたしますので、その分の財投債の発行は必要なくなるということがございます。

 それから、財投改革後、財投の規模は大幅に縮減しておりますから、財政投融資資金の貸付規模は十六年度計画で十四・一兆円ということになっておりますから、規模自体も相当圧縮されております。したがいまして、私どもとして、経過措置の終了後、国債、財投債の消化に何か特段大きな問題があるというようには現在のところ考えておりません。

 したがいまして、先生おっしゃいましたように、経過措置終了後も、郵貯あるいは年金に財投債の引き受けをお願いするじゃないかという御指摘につきましては、私どもは、そういった措置を二十年以降継続することは考えていないということでございます。

鈴木(克)委員 どうもありがとうございました。冒頭申し上げましたように、きょう初めて私も竹中大臣にこういう形で御質問させていただいたわけでありますが、これは始めでございまして、これから本当に、私は、先ほど言っておるように、国債の問題と、偶発債務を含めた陰の借金といいますか、この問題をやはり徹底的にやらせていただきたい、このように思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、松原仁君。

松原委員 松原仁であります。

 今回の法律が出て、これで中小企業に対する貸し渋りや貸しはがしがどうなるんだろう、こういうことで、有効であればいいわけでありますが、そこに結びつくのか、大変に大きな疑問を感ずる一人であります。

 冒頭申し上げたいことは、一般の民間企業には公的資金というのはなかなか入らないわけでありますが、金融機関には公的資金が注入される、これは当たり前のように議論をしているわけでありますが、一応、その原点、これはなぜゆえ公的資金が金融機関に注入されることが妥当とされているか、竹中大臣、お答えください。

竹中国務大臣 基本的には、金融機関、特に銀行システムが持っているインフラとしての公共性ということなのだと思います。預金者がいて、善意の預金者の保護というのが重要な問題になってくる。さらには、決済システムというのは、これはまさに我々のインフラでございます。我々も、個人生活をかんがみても、企業はもちろんでありますけれども、特に日本の場合、多くは銀行システムによって決済が行われているということがあります。

 もう一つ挙げるとすれば、銀行というものが、一種の、いろいろな形での連鎖的な影響を非常に引き起こしやすい体質を持っているという点、そういう点もやはり政策を行う上での非常に重要な考慮の対象になる。

 基本的には、預金者の保護、それと決済システムに万全を期する、そういうところがそのベースにあるというふうに思っております。

松原委員 中小企業に対するさまざまな貸し付け等というのももちろんその公共性に入る、こういうことですね。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

竹中国務大臣 失礼いたしました。

 預金者の保護と同時に、事業者等に対する円滑な資金の供給、これはまさに金融セクターが担っている大変重要な社会的使命でございます。

松原委員 よく例えられるわけでありますが、経済の血液がお金である、したがって、お金という血液を経済に循環させる、経済という体に循環をさせる心臓のポンプのような役割を果たしている、こういう認識でよろしゅうございますか。

竹中国務大臣 一言で言えば、金融の円滑化、それが金融セクターが担っている、また金融行政が担っている重要な役割だと思います。

 今松原委員は、血液に例えられて循環というふうにおっしゃいましたけれども、その血液の循環、まさに金融が円滑化しないと経済活動というのは順調に支えられない、これは大変重要なポイントであると思います。

松原委員 アナロジーを使って表現するというのはいい点、悪い点もあるかもしれませんが、率直に申し上げて、日本の経済を一個の人間の体というふうにひとつ比喩を、例えて言うならば、血液は十分に回っているとお考えでしょうか。

竹中国務大臣 委員おっしゃったように、比喩というのはいい面、悪い面あるんですけれども、あえて血液で例えるならば、基本的には、血圧が、少なくとも高い状態ではない、低い。それは、マネーサプライの増加率が過去一年間一%台であったというようなところに象徴されているんだと思います。

 しかし、これはあくまでもマクロの数字でありますから、ミクロで見ると、本当に必要な部門に血が行っているかという、より重要な問題がございます。そうした観点からする限り、金融機能というのは、以前よりはよい方向が私は出ていると思いますが、決して十分ではない、問題をまだまだ抱えているというふうに思っております。

松原委員 血が少し行っていないんじゃないかという議論があるわけですよ。要するに、中小企業を多く回っていると、お金がないわけですよ、金が回っていない。借りようとしても借りられない。これを俗に貸し渋りと言うわけでありますが、貸し渋りは当たり前であって、それがもう当然のような状況になっている。また、貸しはがしも、これも当然のような状況になっている。これはもう完全に血液が不足している状況というふうに認識をするべきだと思っているわけです。したがって、これを何とかするということが金融庁の最大の責任であろうというふうに思っております。

 そういう中で、データを見ると、貸出残高というのはそういった意味で一つの指標になると思っておりますが、貸出残高は、これは、いわゆる国内銀行にしても、また信金、信組にしても、非常に落ち込んでいるわけであります。

 これを見ますと、一九九三年の三月は、信金が六十五兆四千億円、信組が十八兆四千億円、国内銀行は五百六兆、こういうふうな状況でありましたが、どんどんとこれが落ち込んでいきまして、一九九四年の三月期では、この段階はまだ余り落ちていないですね。その後、例えば一九九六年三月期は、国内銀行五百二兆、そして信金が六十九兆ですか。そして、二〇〇〇年、この辺でぐっと落ちてきますね。三月期では、これは、国内銀行が四百七十四兆、信金が六十八兆、信組が十三兆。そして、二〇〇一年、二年、三年と、二〇〇三年の現在では、国内銀行は四百十一兆、約百兆弱の貸出残高の減少をしている。信金は六十二兆ということで、これは三兆円。信組は九兆円ということで、半分になっているということであります。

 要するに、そういった意味では、企業に対しての貸し付けがこれだけ減っているということは、金融機関が公的機関としての役割を現状では十二分に果たしていないと言えるのかどうか、御答弁をお願いします。

竹中国務大臣 今、個々の数字についてちょっと一つ一つはフォローできなかったのでございますけれども、傾向として、九〇年代の半ば、後半以降、銀行の貸付残高が低下しているというのは御指摘のとおりでございます。これを受けてどのような政策的な対応、我々なりの現状判断をしていくかというのは、やはり今の銀行行政の重要な出発点になるというふうに思います。

 ただ、ここで、やはり私自身大変難しい問題だと思っておりますのは、今委員がおっしゃった数字を少し形を変えて申し上げさせていただきますけれども、これは銀行貸し出しの相対的な大きさという意味で、GDPに対する比率でございます。

 これはもう何度か申し上げさせていただきましたが、八〇年代の前半ぐらいまでは、日本の銀行貸し出しの対GDP比というのは七〇%ぐらいで推移していた。これが半ばぐらいからどんどんどんどん上がっていきまして、一九八九年、九〇年、まさにバブルのピークのときには一〇二%、一〇〇%を超えるわけでございます。これがまさしくバブルに向かう道でありました。結果的に見ると、銀行は貸し過ぎた、企業は借り過ぎた。非常に過大なバランスシートを背負ってしまって、一方で資産デフレが起こったことによって、そのバランスシートの調整が必要になった。

 しかし、今、委員少し言及くださいましたけれども、九〇年代の半ば、後半ぐらいまで、この比率というのはほとんど変わらないんですね。つまり、減らなかったんです、バブルが崩壊したにもかかわらず。それが、九七年の、いわゆる金融が危機的な状況に直面する、それを契機にして急激に減ってきた。この中で、貸しはがし、貸し渋りという問題が社会問題として表面化してきた。今どのぐらいのところにあるかというと、八〇%強でございます。

 したがって、今委員御指摘のように、企業から見るとなかなか貸してもらえないというような事実、そういう困っている企業がたくさんある、それは事実だと思います。しかし一方で、企業から見ると、また銀行から見ると、今までバブルのときに膨れ上がった資産のバランスシートの調整はやはり何らかの形でやらざるを得ない。

 私は、一〇〇%を超えたところから八〇%強まで来て、だから今、最終段階、この調整の最終段階に入った、大変重要なチャンスだというふうに思っておりますけれども、これが一気に進むということは、これはやはり企業部門に対して大変大きなショックがございます。そこを、できるだけ必要なところにはお金がしっかり回るようにしながら、しかし日本全体のバランスシート調整が進むような形にしていかないと、日本経済がなかなか次の段階に行けない。やはりそこは大変苦しい調整を企業部門も銀行部門もしているんだというふうに思っております。

 その中で、やはり我々が考えなければいけないのは、日本経済がこういう非常に特殊な状況に置かれているということを踏まえて、主要行のようにリソースを持っているところにはしっかりとした不良債権の処理をやっていただきたい。しかし、地域金融機関のようなところには、まず地元をしっかりとさせて、それで自分が強くなっていくというような、違うアプローチをとっていただきたい。私たちは、そうした中で、そこに地域金融機関を念頭に置いて、金融機能の強化をこの時期に図ることの必要性というのを感じているわけでございます。

 それから、一点。済みません、長くなって大変恐縮ですが、数字のことでぜひ認識賜りたいのは、貸付残高が減っているんですけれども、実は、貸付残高が減る裏で、これを証券化する等々の幾つかの新しい手法を我々は準備してきているわけでございます。したがって、例えば今貸付残高が一兆円減りましたという場合に、そのうちの半分とか三分の一とか、そのぐらいはオフバランス化されて、銀行の貸出残高は減っているけれどもファイナンスは別についています、企業についているファイナンスはついています、そういう状況は出現しつつあります。

 これはこれで、バランスシート調整を銀行はやりますけれども、ファイナンスはしっかりつくような、そういうことは構造改革の一環としてやらなければいけないし、それはようやくでありますけれども、進みつつある状況であるというふうに認識をしております。

松原委員 これは八〇%ぐらいだと今お話があったわけですが、竹中大臣の認識としては、かつて七〇%の時代があって、今八〇%というのは、逆に言えば七〇%までは、それぐらいまで落ち込んでもこれは別に、それは一つの正常値だ、こういう認識でありますか。

竹中国務大臣 何が正常値かというのは厳密に申し上げるのは、これはちょっと無理だと思います。

 例えば、前の七〇%という数字が本当に正しかったのかということに関しても当然のことながら疑問があるわけでございます。そこは、各企業が、各銀行がしっかりとした経営を続ける中で、結果的に一つの均衡値に到達していただくしかない問題であろうかと思っております。

 ただ、大変ラフな現状認識としては、過去の経緯等々から判断して、しかし、日本はやはり間接金融に依存している割合が高いわけでございますから、バブルのときに異常に膨れ上がったものが今調整の最終局面に達しつつある、この状況を大切にして、今だからこそやはりしっかりとバランスシート調整を終局させて、しかし、そのときに摩擦が生じないようにして、それで次の段階に行く、大変重要なこの時期を乗り切りたい、そのような認識を持っております。

松原委員 そういったことであれば、ただ、金融庁が一つの施策を打ち出してやる場合にどこのあたりが一番、GDPが変わるわけですから、これも生き物ですから変わっていくわけで、その他新しいファイナンスのあらわれ方もあるという議論もありますが、どれぐらいが一つの健全な状況なのか。血液が回り過ぎるというのは、アルコールを飲んで回っているような状況かもしれないし、それはわからない。そういうような形ではなくて、どのぐらいが妥当なものかという認識がなけりゃいけない。

 私は、一本調子で下がるよりは、途中揺り戻しながら下がらないと、やはりこれは大変なことになると思うんですよ、そうは言ったって。それは、熱いふろに入っていた人間がいきなり氷ぶろに入るような話でありますから。

 そういったことでは、私はやはり大臣に、その辺もうちょっと詳しく方向性の所見を聞かせてもらいたい。

竹中国務大臣 これも本当に大変難しい問題だと思います。これは、専門家に聞けば、例えば、調整がほとんどもう終わりに来ているんだ、だからこそ日本の経済がここのところ元気になり始めたんだという認識の方もおられます。一方で、より長期をとって見るならば、日本は間接金融から直接金融へさらに移っていかなければいけないんだ、アメリカの貸し出しのGDP比というのは、もっとはるかに低いわけでございますから、やはりかなり長期にかけてこういう調整を続けていかなければならないのではないかというような認識の方もいらっしゃいます。そこはやはり、ちょっと、我々の知見でもってはなかなか長期、具体的には語れない問題でございます。

 しかし同時に、政策でありますから、何らかの中間目標的なものは何か持っていなければいけないという議論は、これはあり得るんだと思います。私たちは、銀行に関して言うならば、貸し出しの残高について中間的な認識を持つことは難しいけれども、正常化の一つの入り口として、不良債権の比率に関しては、これもバランスシート調整の一つのメルクマールでございますから、四%台というのを掲げて当面の仕事を続けているわけでございます。

 これについては、そういったことを掲げた当初も、これが適切かどうかといろいろな御議論をこの場でもいただきました。今後、来年の三月にはこの目標を我々は達成したいと思っておりますけれども、しかし、その先金融行政をさらに強化していく必要があるわけで、この点については、我々は当面そこを目標にして一生懸命やっておりますけれども、さまざまな幅広い御議論をいただきながら、また我々もしっかりと検討をしなければいけないと思っております。

松原委員 アメリカは日本よりはるかに低いということでありますが、日本が高くてアメリカが低い理由というのは何か、竹中さん、所見をおっしゃってください。

竹中国務大臣 実は、この問題は本当に古くて新しい問題でございます。

 日本は、個人の金融資産で、額からいいますと欧米先進国の中でもトップクラスの資産を今持っている。資産をたくさん持っているということは、ある程度のリスクテーク力があるはずでありますから、非常に多様なリスクとリターンを考えて、一部はローリスク・ローリターンかもしれないけれども、一部はミドルリスク・ミドルリターン、一部はハイリスク・ハイリターンというようなポートフォリオを資産の熟成とともに組んでいくはずだというふうに一般には思われている。こういう議論、もうほぼ二十年間なされているんだと思います。

 しかし、御承知のように、日本の家計の資産の五六%、六割弱はローリスク・ローリターンの銀行預金に集まっている。さらには郵貯に集まっている。郵貯は、今の場合だとローリスクというよりはノーリスクという状況にあるわけでございますから。これがしかし、どうして、もっとミドルリスク・ミドルリターンのような、投資信託とかいろいろなところに向かうはずなのにと言いながら、もう実は二十年を経過しているんだと私は思っております。

 これはいろいろなアンケート調査がございますけれども、我々としても、投資教育を含めて、貯蓄から投資の流れを一生懸命つくろうというふうにしている。

 昨今、株式市場が活況を呈する中で、個人の投資家の売買高、売買に関しては実は個人のウエートが三割に達した、個人の取引が一年間で二倍になった、こういうような状況も少しは出ておりますが、しかし、それでもまだ五六%が、五〇%か六〇%が預貯金、安全な預貯金に行っている。国民のポートフォリオが背景にある。

 アメリカのことをお尋ねになりましたので、アメリカ、一概には言えませんけれども、やはりその意味では、日本よりはミディアムリスク・ミディアムリターン、ハイリスク・ハイリターンの投資ポートフォリオを組むような社会的な風土が定着している。

 ここは我々にとって政策上も大変重要な挑戦の課題でございますけれども、やはり、決してこれは直接金融だけではなくて、投資信託に象徴されるように、市場型の間接金融、相対型の間接金融が銀行取引であるならば、市場型の間接金融というのは投資信託等、さらには直接金融、そういうもののウエートが結果的に国民の選択によってふえるような、そういう環境はぜひつくっていかなければいけないと思っております。

松原委員 結論的に言えば、日本とアメリカでは経済の風土が違う、これはもう実際そういうことです。いろいろな理屈があっていろいろな理由がある。私が今申し上げたいのは、今の議論の中で、ああ、そうか、それだったら、これは経済の風土が違うということははしなくも明らかなんだ。全然違うと。その経済風土の違いというのが、私は金融問題を考える上で一番重要だと思うんですよ。これは後で議論しますが。

 したがって、日本の経済風土というのはアメリカと違う。アメリカの経済風土の方程式を、もしくはインターナショナルということでグローバルな方程式を日本に持ってきて、それが全然成功しない可能性というのは極めてあるわけですよ。それは、法人二税の水準だって、今は日本も安くなってきたけれども、過去、全然違う。そういった意味からいくと、経済風土の違いということを竹中さんは徹底的に認識した上でやらなきゃいけない。

 これは後で議論するつもりだったけれども、民主党の金融マニュアルの中で、後で中塚さんに答弁してもらおうと思っているけれども、要するに、どこまでがみなし自己資本かという議論もここから出てくるわけですよ。経済風土が違うんだから。

 経済風土が違うのを、バランスシートの数字上だけ、字面だけ見て一緒にやってしまっているところに私は、それだけが原因とは言いませんよ、しかし、それは、今日の日本の経済が低迷している大きな原因の一つであるということを、アメリカ流で仕込まれてきた竹中さんではあるけれども、やはり日本の大臣でありますから、徹底的に御認識をいただきたいと思っているわけであります。これは答弁はいいです。

 それで、地域金融機関と都銀の役割の相違点ということで御質問申し上げます。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 都市銀行は、もう言うまでもありませんが、主として大都市に営業基盤を置いておりまして、そして、各地に支店網を擁する、全国的な規模で業務を展開する銀行でありまして、そうした意味からしますと、我が国の金融システムの中核を担っているというふうに考えております。

 こうした都市銀行は、金融のグローバル化の進展の中で国際的な競争にさらされているわけでありますから、内外の我が国の金融システムへの信認、こうしたものを確保していくためにも、金融再生プログラムにおいて、先ほど大臣からもお話がございましたように、不良債権比率を半減していく、こういう目標を課したところでございます。

 一方、地域金融機関というのは、地域に根差して、そして長期的な取引関係の中で得られた情報、いわゆるリレーションシップバンキングとしての業務を柱として事業展開がなされているわけでありまして、こうした地域金融機関というのが地域の中小企業に対する金融の円滑化、そのための重要な役割を果たしているわけであります。

 私どもといたしましては、地域の金融機関がリレーションシップバンキングの機能というものを強化していく、向上していく、そうしたことを確実に図りながら、中小企業の再生と地域経済の活性化のための各種の取り組みというものを着実に進めていく、こうしたところを求めているところでございます。

松原委員 今、リレーションシップバンキングという表現があったわけでありますが、このリレーションシップバンキングということを考えるならば、私は、やはりそれは地域金融機関だけではなくて大手金融機関にもそういった要素というのは極めて重要だということは申し上げたいわけであります。

 そこで、次の質問に移りますが、そういう中で、現在日本はオーバーバンキングと言われております。これについての御所見を伺いたい。

竹中国務大臣 ちょっと一言、風土の違いを踏まえろというのは、これはもう私自身、全くそのつもりでやっております。だからこそ、リレーションシップバンキングのそういうプログラムをつくろうというのは私自身が提案して形になったものでございますし、その中で、例えば、欧米の方は、地域銀行についても大手銀行と同じような形での不良債権処理、目標を掲げて云々というふうに言っているわけですけれども、国際機関は言っているわけですけれども、私たちはそういうことはしないというふうに、まさに日本の風土を踏まえてやっているつもりでございます。

 お尋ねのオーバーバンキングの問題というのは、これはそういう議論があるということは承知をしております。しかし、そのオーバーバンキングというのが、どの程度の銀行の数、それとか銀行の規模が適切なのか、そういうようなことに関して言うとするならば、これはやはり一概に言える問題ではない。したがって、そういう議論は承知しておりますけれども、オーバーバンキングであるかどうか、そういうことは一概には言えないというふうに私自身は考えております。

松原委員 前段の部分に関して、リレーションシップバンキングをやったと。それは、一つ、それはそれで評価しましょう。しかし、大事なことは、リレーションシップバンキングだけで日本の経済風土の、それは百あるとしたら、そのわずか、幾つかの部分なんですよ。

 私は、根本的には、我が民主党が出している金融マニュアルじゃないけれども、いわゆる資本の見方をどうするか。これは、長期にずうっと、いつ返済期限が来ますよということがなくて、だらだらと借り続けている運転資金というのがあるんですよ。これはもう事実上資本だろうというのが我々の議論であるので、そこのいわゆる日本的な風土。それは、例えば会社が金をなかなかプールできないような税制の仕組みがあったとか、いろいろな理由があるかもしれないけれども、それを我々は考えた上で、それが風土なんですよ。やはりリレーションシップバンキングだけでは極めて不十分であって、そこまで踏み込まなければいけないというのは後で議論しようと思うので、今ここで議論をする気はありません。

 ただ、オーバーバンキングかどうかというのを、ちょっと、今竹中さんの御答弁は明快におっしゃっていなかったんですが、今回のこの法律で、いわゆる二兆円のお金を想定して、まあ、言ってみれば、全体数の一〇%の信金とか、幾つかが合併する、そういうふうなことを予測しているわけですよね、皆さんが出してきた提案書の中にも。

 ということは、それは、それぐらいで終わるか、それよりさらにふえるかわからないけれども、やはりオーバーバンキングという発想が恐らくあって、統合することに対して、そのプラスのお金を出すと。総務省でやっている、地方自治体のいわゆる市町村合併みたいなものですよ、合併したら少しお金を上げますみたいな。やはりそういうふうなニュアンスが私はあると思うんです。いや、竹中さんがないと言っても、それはそういうふうに見えますよ、みんなそう言っていますよ、マスコミだって。

 私は、御自身の理論が自分の頭の中では一つ明快にあるというのはわかりますよ。しかしそれは、一般の社会でどう見られているかということで判断されるのがやはり政治でありますから。

 ですから、これは、そういった意味で、オーバーバンキングということで私はやっているんだという認識を持っていますが、もう一回答弁お願いします。

竹中国務大臣 事実は事実として重要かもしれないけれども、どう見られているか、パーセプションはまさにリアリティーそのものだと。特に政治の場ではそれは大変重要なことだと思います。それゆえにしっかりと我々も説明責任を果たさなければいけないと考えます。

 繰り返しになりますけれども、これは保証枠の積算根拠でございますから、保証枠の積算の根拠としては、それは仮定を置いて機械的に計算せざるを得ない。

 例えば、この中には、これは例でありますけれども、地域銀行、信用金庫、信用組合が入っておりますけれども、例えば労金が入っていない、農協が入っていない。では、これは全く排除するのかというとそういうことではないわけでございます。これはあくまでも代表的な事例を取り上げて、仮定を置いて計算しているということでございますので、ここは、委員はパーセプションは違うぞという事実は事実としてしっかり賜って、今申し上げたような趣旨を、あらゆる機会で我々なりにしっかりと説明責任を果たしたいと思います。

 繰り返しになりますけれども、どのような数を目指してそれで合併を促進しているとか、そういう事実は全くございませんし、組織の再編、合併というのは大変重要な経営判断になります。これはもうまさに経営判断でありますから、民間がそれぞれの場で、リレーションシップバンキングといってもいろいろなタイプのリレーションシップバンキングがあり得ますから、そこは御判断をいただく。

 ただし、そういうときに、そういうところを、今のような状況でさらにデフレが進んで、リスクテーク力が求められている、さらに一般的に市場からの調達は難しい、そういう状況の中で、国が資本参加という形で後押ししようではないか、それがあくまでも今回の法の趣旨でございます。

松原委員 実際は、恐らくこういった地域金融機関の強化をするという中に結局そういった再編統合も入ってくると思うんで、私は、それはお認めになってもいいんじゃないかなと思っているわけですが、この法律の趣旨からいって。やはり合併を促すような要素というのは極めて大きいと。

 それで、民主党の方にお伺いしたいわけでありますが、民主党の方は、このオーバーバンキングと言われているような状況の中で、このことについてどういうふうな御認識をお持ちか、御答弁お願いします。

津村議員 お答えいたします。

 先ほど、オーバーバンキングというのが、特に中小企業の実態を見るとどういう実態があるかということにつきまして、松原委員の方からお話があったと思います。大切なところで、まさに竹中大臣もおっしゃったようにパーセプションというか、マーケットあるいは国民の皆さん、そして地域金融機関の経営者の方々にきちんとここは趣旨を御理解いただかなければいけない部分ですので、少し言葉を尽くしてお話ししたいと思うんです。

 一般的な我が国の金融の現状として、間接金融中心でオーバーバンキングの状態にあるというのは、巷間よく聞かれる議論ではあると思います。しかし、実態を、ここは、金融機関の業態別にきちんと分析することも含めて、私たちこれは見ていかなければいけない。単純にはオーバーバンキングとは言い切れないと思います。

 例えば、大企業では、資本市場から直接資金を調達することができる、社債の発行等で資本調達ができる。そうした中で、経営判断の幅がいろいろと広いわけですから、直接金融と間接金融をバランスよく組み合わせて、効率的、安定的な資金調達を行うことができるわけです。

 しかし、今回のポイントといいますか議論の中心であります中小企業、とりわけ地域の中小企業におきましては、資本市場から直接資金を調達するということは、率直に言って現実的ではありません、困難な場合が多いと思います。資金調達の手段としては、主として地域の金融機関からの借り入れに依存している実態があります。そうした中で、先ほど委員の御指摘もありましたけれども、普通の銀行借入金というよりは、むしろ資本の性格の強い部分が多く含まれて、その結果、俗にべったり貸しとか転がしとか言われるような、そうした融資が非常に大きくなっていると思います。

 そういう意味では、まとめて申し上げますと、中小企業金融について、銀行そのものが間接金融のみでなく直接金融に近い役割も担っているという面があると思います。こうした状況を踏まえますと、間接金融中心でオーバーバンキングだという指摘は、必ずしも的を射ていないのではないかと思います。

 また、別の観点になりますけれども、地域の金融機関が地域経済においてどのような役割を果たすべきかという観点から見ても、この議論は重ねて申し上げることができるのかなと思います。つまり、地域金融機関はまさしく地域に密着した商売を行っているわけでありますから、それを貫いていくためには、金融機関の規模拡大にもそもそも限度があるのではないかという趣旨でございます。

 ここはまさにパーセプションの話ですけれども、オーバーバンキングだから合併を促進し、そのために公的資金を注入しようと一般に受けとめられている政府案は、このような意味で地域金融の機能を強化するものではなく、むしろ損なうものであると考えます。

松原委員 パーセプションといういい言葉が出てきたわけでありますが、このパーセプション、大事ですよこれ、竹中さん。やはりそういうふうなことを、だから、御自身の方向性がどうあろうと、現実の日本の経済や多くの有識者がどう見るかということが、それがメッセージであって、右へ走るぞと言っても左へ走っていたら左に走っているという話になるわけですから、そういう意味ではなかなか難しい部分ですよ、これは。ですから、このパーセプションを大事にしていただきたい。

 それで、私申し上げたいのは、ただ、オーバーバンキングという議論が仮にあるとしても、リレーションシップバンキングをやるためには、私は、金融機関の数を余り減らし過ぎてはいけないということを、今既に津村議員の方からも答弁があったわけでありますが、このことを申し上げておきたいと思うわけであります。

 次に、今回出てまいりましたこの強化法案というのは、従来さまざまな金融対応の法案がありましたが、どうも昔の集団護送体制返りではないかという議論が一部あるわけであります。言ってみれば、金融庁が、そういった金融機関に対してはひとつ責任を持って全部カバーしてやろうではないか、予防的注入ということを含めてやろうと。その発想というのは、判断としてそれがどうだという議論と別にして、一つの発想として私はあるんだろうと思っているんですよ。あるんだろうと思っているんですが、結果として従来と違う集団護送体制が復活したのではないかと、同じようにそのパーセプションの中で言われているわけでありますが、このことについて、竹中さんの御所見をお伺いします。

竹中国務大臣 重ねて、パーセプション・イズ・ア・パート・オブ・ザ・リアリティーという言葉に任じて我々はやっているつもりでございますが、パーセプションというのはいろいろな形でつくられてまいります。マスコミでつくられる場合もありますし、こういった議論の場を通してつくられている場合もありますので、そこはやはり、まずパーセプションをしっかりするためにも、松原委員にぜひしっかりと御理解を賜るというのが一番重要なことだと思っております。

 そこで、ちょっと私よくわからないのは、新たな集団護送船団である、そこがちょっと私自身はどういうロジックなのかなというのがよく理解できておりません。繰り返し言いますけれども、今の金融の行政というのは、これはまさに、経営の判断でしっかりとやっていただくんだ、我々はそれに対してしっかりとその事後的なチェックを行うんだ。

 今回の問題というのは、その意味では、今までの、ずっといろいろな法律がありましたけれども、恒久的な制度としての危機対応に加えて、時限的な形で、時代の要請に応じる形で今回の措置を講じるのである、しかし、そこに当たっては、経営の判断をあくまでも重視して、まず申請するかどうかが経営の判断でございます。申請しない、そういう自由はもう完全に経営主体に与えられております。その上で、中身そのものについても、申請するに当たってどのような経営改革を行ってどのようなビジネスモデルでやっていくのか、これまた経営の判断でございます。

 我々としては、必要最低限のことについてのルールを明確化した上での審査は行います。これは、公的な資金を使う以上、審査を行って、結果として地域の金融が円滑化していく、そういうような結果は出してもらわなければいけないということになります。

 そこは一種の、申請する側の経営の判断と、我々としての政策効果の確保の問題、そのバランスの問題であろうかと思っております。

 いずれにしましても、ここは、金融行政全体がそうでありますけれども、経営の判断を重視して、我々は必要最小限のサポートをする。しかし、現時点で、今の日本の金融に問題があるというふうにいみじくも松原委員おっしゃいましたように、金融に対してこれをしっかりさせなければいけないという政策的ニーズはある、それにはしっかりとこたえなければいけないというふうに思っております。

松原委員 確かに申告なんですよね、申告をしてやるということでありますが、これが、ある方が新聞で言っているんですが、例えば、言うことを聞いて再編に応じれば予防的注入で新法、聞かなければ債務超過で預金保険法百二条三号ということがないだろうかということを非常に危惧している人も中にいるわけでありますよ。

 例えば足利銀行は、御案内のとおり、当初はこれは健全行と言われていたわけでありますが、突然それが債務超過に転落をしたわけであります。この一事をもってすると、やはり金融庁は怖い、やはり金融庁の意向を――世の中というのは、申し出があって決めるというのは、西洋流はそうでありますが、どうも日本社会というのは、言わず語らず目を見てわかれみたいな部分があるので、金融庁がこういうのを出したんだからわかっているよなというふうにとる金融機関が僕はあると思うんだ。足利銀行だって、別にそれはわからないですよ、見方ですよ、これは。パーセプションですよ。足利銀行も健全行だったのが、突然、見方によってはああいうふうな形になった。

 だから、何かそのシグナルというものが、それぞれの金融機関にとっては非常に、自分から言わないとこれは大変かなと思わせるアナウンスメント効果というのがあると僕は思うんですよ。竹中さんがおっしゃるとおり、確かにそれは、具体的には申告を、申請をするということでありますが、結果として、暗黙の、じわじわと、再編、合併しろよというふうなことが私は来るんじゃないか。そのことは当然新しい集団護送体制になるだろう。これも、それは竹中さんは、いや、これはあくまでも申告なんだからといえばそれは申告でありますが、申告をしないでいると突然何かあるかもしれない、そういうふうなことはやはりあるわけですよ。

 しかも、予防的注入というのは、極限のシステミックリスク云々じゃなくて予防的注入という新しい段階に足を踏み込んでいるわけでありますから、私は、やはりある種、それが悪いいいじゃなくて、方向転換が少し行われたのではないですか、こういうことを聞いているんです。

竹中国務大臣 まず、今いろいろな例をお話ししてくださいましたけれども、もしこれを申請しなかったら債務超過だと。ちょっとこれは例を極端におっしゃったのかもしれませんが、債務超過だったらやはり問題なわけで、これはこれでルールにのっとってしっかりと対応していただかないけない、そういう問題になるんだと思います。

 私は、今の松原委員の御懸念、そういうふうに、政策当局というのはやはり力を持っているから、どのように思われているかということもしっかり考えろという御趣旨に関しては、それはやはり謙虚に耳を傾けるつもりでございます。

 実は、そういうことも含めて、我々に何が求められているかというと、つらつら考えるに、やはり我々のコンプライアンスの問題なんだと思います。例えば、何かやって、それでにらみをきかせる、ないしはこれを聞かないと次に大変なことになるよというふうなことをもしも金融庁の担当者が言ったりというようなことになりましたら、これはやはり私は、コンプライアンスに違反している。

 我々は、同時に、オープンな行政を進めていくに当たって、コンプライアンスの強化というのは、これはしっかりと庁内で行っているわけでございます。実は、コンプライアンスの対応室というのも、ここでいろいろ御議論をいただいたことを受けてでありますけれども、昨年金融庁につくりました。霞が関の役所の中で、コンプライアンス対応室をつくったのは金融庁が最初でございます。それに続いて実は内閣府も私の方でまたつくりましたけれども、まあその意味で役所のコンプライアンスというのはおくれているということなのかもしれませんが、少なくとも霞が関の中にあっては、コンプライアンスに関して我々は非常にしっかりとした体制を持って、外部の専門家を招いて行っているということでございます。

 委員が最後にお尋ねになった、政策の対応が何か変わったのかどうかということに関しては、これは我々、その基本的な考え方、枠組みを変えたわけではございません。公的資金の必要性を検討するというのは私が就任のときから申し上げてきたことでございますし、金融審でずっと議論したことでもございます。その意味では、我々としては、一貫した姿勢の中で、情報はしっかり公開していく、コンプライアンスはしっかり確保する、そういう中で、今回の法律についても、しっかりと御議論をいただいて、しっかりと説明させていただいた上で、承認をしていただければしっかりと運用をしていきたいというふうに思っているところでございます。

松原委員 確かに、債務超過であれば当然そういうことになるわけでありますが、これも、検査の仕方によって、変わらないと竹中さんおっしゃるけれども、それによって変わるんじゃないかという見方も専ら一方にあるわけで、同じような検査をしたら、今津々浦々にある日本の金融機関がすべて大丈夫というふうになるかどうかというのは、金融庁がきっちりやって、これはわからぬわけです。その辺はやはり、竹中さんは、それはそういうふうにおっしゃるでしょう。しかし、現実社会はそうかなというクエスチョンマークを持って見ているということは、金融庁の裁量というか、恐ろしさというふうに認識している場合もあるということはやはり御認識をいただかないといけないと思うんですよ。

 時間も過ぎてくるので、今回の金融機能強化法案について、これは大前研一さんという方がこう言っているわけでありますが、これは、現在の預金保険法では健全行への資本注入は基本的にできません、しかし、これまで政府はいつも危ない銀行を健全行だとうそをついてきましたと。これはいろいろと反論があると思いますけれども、大前さんが言っているわけです。したがって、預金保険法の基準に従うと役人が後でつるし上げられる可能性があります、そこで、自分たちがその気になればどこでもお金を突っ込めるという法律をつくったわけです、つまり、これは役人を無謬化する法律なんです、役人に誤りはないことにしようという、ある意味ではとんでもない法律であります、この法案では、金融機関が経営強化計画を提出し、金融大臣がそれを審査して決定すれば、資本注入ができるようになります。

 従来の総理大臣を含む金融危機対応会議を開いて決定する手間が省けるということであって、ある種、そういう裁量行政的な要素がやはり復活しているんじゃないか。これは大前研一さんの議論でありますが、こういった議論は大前さん以外もたくさんあるわけであって、ここで議論をしても、恐らく、いや、違うんだということでありますが、そういう議論がある。これはたくさんの人が見ていますし、実際、どうもそういうふうにも見れるんですよ。見れるんですよ、非常に。その点は、答弁は結構でありますから、これはやはり慎重にやっていただかないといかぬだろうと思います。答弁はいいんですが、もし何か御所見、おっしゃりたいことがあれば。いいですか。

竹中国務大臣 改めて、そういうパーセプションがあるんだということはしっかりと伺って、そうじゃないということを我々の行動で示していく必要があると思っております。

 繰り返しになりますけれども、今回この法律に至った経緯は、先ほど貸付残高のGDP比の話を申し上げましたけれども、やはり、バランスシート調整、我が国全体のバランスシート調整が今大変重要な局面に来ていて、それをぜひともこのチャンスにしっかりと実現して、新たなスタート台に日本経済を立たせたい、その思いでございます。

松原委員 それで、今の議論で、総理大臣が出てくるこの会議を経ない、簡略化したというのは、これは何か理由があるんでしょうか。

増井政府参考人 御承知のように、現在の預金保険法の危機対応のときには金融危機対応会議というのが開かれます。今回は、いわゆる危機対応ということではなくて、いわば金融機能の強化ということでございますので、そういう意味で、私ども金融庁の方で判断をしたいというふうに思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、いろいろな観点で、例えば新しく申請があったときのビジネスモデル、そういったものが果たして適正かどうかというような目ききも必要でございますので、そういう意味で、金融機能強化審査会というのを設けまして、そこで御意見を聞くというような仕組みも考えております。

松原委員 何か答弁になっていないような気がするんですが。だって、結局公的資金を入れるんだから、従来は、そういった、総理大臣が出てきてやる、理由の説明として危機ではないからと言うけれども、お金を入れるという点は同じだし、どうもちょっとよくぴんと来ないんだけれども、竹中大臣、御所見を。

竹中国務大臣 基本的には、危機対応というのは、これは危機の定義についてもいろいろ御議論をいただきましたけれども、いろいろなケースがあり得るわけであります。したがって、一つ一つが違う危機でございますから、それぞれについて非常に大所高所からの判断が要る。そういうことを担保する意味で、総理大臣が招集する危機対応会議でその判断をする、総理みずからの判断をしていただく、これはやはり重要な手続だと思います。

 今回は、そういう危機対応、さまざまな場合がある危機対応というよりは、危機対応ではないわけであります。いろいろなケースが想定されて、その枠組みに基づいて行政的な判断をしていく、まさに、これは行政の判断であるというふうに考えるわけでございます。

 しかし、行政の判断でありますけれども、それをよりしっかりとさせるために、いろいろな場合、いろいろなことをルール化している。このルールは法律、政令等でしっかりと定める。同時に、今局長も申し上げましたように、さらに、ビジネスモデル等々については、これは外部の知見、専門家の知見も活用して、しっかりとした判断がなされるような仕組みをとっている。そのような趣旨でございます。

松原委員 ちょっと納得できない部分もあるんですが、次に進みたいと思います。

 ただ、大事なことは、今言ったように、大前さんの感想というんですか、これがあるような状況もある。だから、それはやはりきちっと受けとめて、これはほかにもあるんです、同じような議論は。これはきちっと受けとめていただきたいと思います。

 次に、こういった今回の強化法案によって、地域金融機関が健全になったとき、果たして、具体的な中小企業に対しての貸し出しというのはどれぐらいきちっとできるのか、お伺いします。

伊藤副大臣 信用秩序の維持でありますとか、あるいは預金者保護の観点からしますと、やはり、銀行の経営の健全性あるいは業務の適正性というものをしっかり確保していくというのは重要でありますが、では、健全性が確保されたからといって中小零細企業にとっていい銀行かというと、これはまた別の議論だというふうに思います。

 地域金融機関に求められているのは、地域に根差して、そして地域における金融の円滑化というものを図っていく、また、金融の円滑化を図っていくためには、地域経済の活性化でありますとか、あるいは地域に貢献をしっかりやっていくということが求められているわけであります。

 私どもは、そうした視点を踏まえて、今回この新たな公的資金制度を設けるに当たって、国が資本参加するに当たっては、信用供与の円滑化についての施策でありますとかあるいは地域経済の活性化についての方策、これを経営強化計画の中に具体的にしっかり盛り込んでいただいて、それを、審査基準に基づいて厳正に審査をいたします。そして、その後、この計画に基づいてそれがしっかり行われているのかどうかをフォローアップし、そして定期的に、履行状況というものを報告を求めた上で公表して、そして地域におけるパブリックプレッシャーの中で地域金融機関が実績を上げていく、そうしたことを期待しているわけであります。その上で、この計画の履行状況を見て、必要があると認められるときには監督上の措置を発動する、これを可能とする仕組みといたしております。

 こうした取り組みを通じて、地域における金融の円滑化、そして中小企業の再生というものが図られるというふうに考えております。

松原委員 ということは、中小企業に対する貸し付けの数値目標等は設定がされる、こういうことですか。

伊藤副大臣 これは、当委員会でも何度かお答えをさせていただいたように、数値目標を単一的に設定するということではなくて、地域の経済の活性化というのは、これは、さまざまな取り組みによって、多面的なやはり評価が必要だというふうに考えております。

 そして、私どもは、具体的にどういう取り組みをするのかということを経営強化計画の中で申請する金融機関の方々に出していただいて、そして地域の金融の円滑化に資する施策、あるいは地域の経済の活性化に対する指標というものもその中に盛り込ませていただいて、それを公表して、パブリックプレッシャーの中でこうしたものを実現していく、そうした取り組みを進めていく、そういう枠組みというものを設けさせていただいたところでございます。

松原委員 よくわからないわけでありまして、多面的と言うとそれでオーケーみたいな、そういうことじゃないわけでありまして、何かぴんと来ない。これで強化されて金融機関は助かる、助かるというかそれなりの形になる、しかし、実際に公共性のある血液が回るかどうかということに対して大変疑問があるんですよ。もうちょっとぴしっと定量的にわかるような要素か何かないんですか。そういうのは想定していないんですか。

竹中国務大臣 今、副大臣が答弁させていただいたのは、ちょっと私なりの言葉でもう一度申し上げると、いろいろなことに対してリスクテーク力をやはり持っていただかなければいけない。バッファーとしての自己資本を充実させるというのはそういう意味があるわけです。

 いろいろな形でのリスクのテークの可能性があるんだと思います。貸し出しをふやすということもあるだろうし、これは大変やはり期待されることであるし、委員もそのことを期待しておられるのだと思います。さらには、例えばですけれども、担保に頼らないような融資を行う、これもやはりリスクテークで、金融を円滑化させる一つの方法だろうと思います。さらには、貸付先に対してしっかりとした支援を行う。これは、例で言うと債務免除とかも含めて、バランスシートをきれいにしてあげるための手助けをする、これも金融機関としてはリスクをとるということになる。

 そういう意味でのリスク対応力でありますから、貸し出しだけではなくて、貸し出しの質もあれば、相手に対する、貸付先に対する支援も、そういうものについてやはり多面的な評価が必要だろう、そういうことを我々は重視しているわけでございます。

 しかし、同時に、多面的でありますけれども、実績をしっかりとディスクロージャーしてもらって、その実績を示す中で地域におけるパブリックプレッシャーをきかせて、金融機関が実績を上げていくことが必要だろう、これは、我々もそのように考えるわけです。

 そこで、実績を示す指標として、例えば、信用供与の円滑化のための方策の中では、銀行の総資産に占める、中小企業あるいは地元企業とか地元の事業者、そういうところに対する貸し付け、信用供与の割合、それをしっかりと一つの指標として挙げていただくとか、今申し上げたような観点からいうと、取引企業先に占める経営改善支援等の取り組みの先数がどのぐらいかというような実績等々を示していただく。そういう中で、今申し上げたような多面的なものがしっかりとリスクテークという形であらわれて、それを実績として示して、パブリックプレッシャーの中で実績を上げていただく、そのような仕組みを考えているというところでございます。

松原委員 金融機関も厳しいと思うんですよ。それは、竹中さん、そうおっしゃってあれしますが、また金融庁がそこで検査に入るわけですよ。いろいろと、これはどうだ、あれはどうだという議論もある。極めておっくうな状況で、貸そうかどうかと思うと。

 実際は、今の金融機関のこれを見ると、いわゆる信金、信組は、公債買い入れは、平成十一年三月末から今日に至るまで信用金庫で四兆二千八十一億、今八兆七千六百四十二億と、もう二倍以上に膨れ上がっていますよね。つまり、お金があってもノーリスクの公債にみんな行っちゃうわけですよ。これじゃ、公債を買うことが金融機関の公共性だなんてそんなばかな話ないでしょう。だから、その意味において全然、実際、だからお金があったってもうリスクのないところにみんな行っちゃうんですよ、これは現実に。それはほかの金融機関もそうでしょう。

 それはやはり、金融庁もチェックするし、自己資本比率もあるし、そういうことで、もうみんな懲りているんですよ。今まで自己資本比率があると思っていても、足利のように突然来て。本人はあると思っていたんでしょう、きっと。会社の人たちも、一般の人たちを含めて。突然、いや、もうないよと。これじゃ危なくて貸せないわけであります。

 私は、やはりそこで、アメリカと日本の経営風土の違いもあるし、日本の経済は、この間も言ったように、戦後この半世紀以上の間に急速にフェニックスのように伸びてきた、世界に冠たる経済の風土があるんですよ。これ、自信を持っていこうじゃないか。その風土の原点は何かという議論を我々はしていかなきゃいけない。リレーションシップバンキングでその日本の経済風土を語られるような問題ではないわけでありますから。

 それで、我が民主党は金融マニュアルを出しているわけであります。民主党が今金融マニュアルをつくっているわけでありますが、この中で、先ほどの津村議員の話にもあったように、ずっと長いこと運転資金で貸し付けているものはみなし資本にする、これは大変に重要な発想で、これによって引当金も変われば自己資本比率も変わる。実体経済はそうなんだ、私、この間言った、経済のリアリズムはそうなんだ、こういうように思っております。

 この民主党の金融マニュアルの骨格を、開陳をお願いしたいと思います、中塚委員。

中塚議員 まず、リレーションシップバンキングということなんですが、そもそも信金、信組というのは地域金融機関、協同組織金融機関ですから、もう初めからリレーションシップバンキングなわけですね、そういう言葉をかりて言えば。

 ところが、近年、景気もよくないというふうなこともありますし、いま一つはやはり金融庁の検査ということがありまして、本来資本とみなすべきもの、金融機関から持ち込んで融資をしたというふうなものもあるでしょうし、あるいは借り手と貸し手の間で多年にわたってもうずっとそういう貸し借りの関係ができているというふうなものまでを、担保が割れたから返せとかいうふうなことになって、今、貸しはがし、貸し渋りというものの原因になっているということが一番大きいと思いますし、金融機関は、金融庁から言われているというふうに言って貸しはがしたりする。またあるいは、現実問題として、金融庁が検査で、これは不良債権だから回収しなさいとかあるいは償却しなさい、そういうふうな指導をするという例が多々見受けられるわけなんです。

 それを、要は実態に即して見てやろうということです。多年にわたって貸し借りの関係がずっと続いている、べったり貸しとか根雪のように貸し続けているものについては、これは貸し金ではなくてもう資本だとみなすべきだというふうに考えておりますし、また、これをすることによって、借り手、中小企業側は、今度は借入枠というものがふえるわけですね。加えて、金融機関側は、今度は貸し出しの枠というものがふえることになりますから、そういった意味で、資本とみなしていくということによって、より一層の金融の円滑化というものが図られるというふうに考えています。

 ちなみに、政府の方も金融検査マニュアルの中小企業編、別冊というのを改定しておりまして、こういう多年にわたる貸し借り関係をDDSに振りかえるというふうなことを言っておるようでありますけれども、ただ、現実問題としては、ではそれが、銀行がそのDDSに振りかえることに応じるか、そういうふうな観点に立ちますと、なかなか実現をしていない。やはり、経営再建計画の中で、公認会計士が認める、またあるいは経営コンサルタントが認めるということでなければDDSには振りかえられないというふうに聞いておりまして、なかなか、制度としてはあっても使われていないというふうに伺っておりますが、私どもは、そうではなくて、貸し金自体を資本とみなすということで金融検査マニュアルを改定するべきだというふうに考えております。

竹中国務大臣 先ほどから松原委員からもお尋ねをいただいておりますので、ちょっと重ねて申し上げたいんですが、我々は、いわゆる根雪の部分、長期の運転資金で実質的には出資部分、これを疑似エクイティーだというふうにみなして、それに対してしっかりとした位置づけを与えよう、これはリレーションシップバンキングの考え方の中心でもありますし、今回の検査マニュアルの別冊、中小企業編の改定の非常にキーの部分でもございます。そのやり方が少し違うということの御議論は大いにいただいたら結構でございますけれども、その意味では日本の風土に照らした形を我々はとっているということは、これはぜひ御認識を賜りたい。

 それと、今、例えば、細かい話かもしれませんが、中塚委員がお話しの中で、これは不良債権だから早く処理しろ、回収しろというふうなことを金融庁は言うというふうにおっしゃいましたが、そういうルールは金融庁は設けておりません。資産の査定は行いますが、それをオフバランスするというようなルールは地域金融機関には我々は求めておりません。

松原委員 何か時間がなくなってあれなんですが、金融庁のマニュアルの中の、いわゆる自己資本的な、劣後債というんですか、そういったものにみなすことも含め、これがどこまで現実にできるのかどうかということに関しては非常に疑問を感じておりまして、次の機会に別の人が議論すると思いますので、ここでは申し上げません。

 もう一つ言いたいのは、金融庁は指示しなくても、金融庁の指示がなくてもあっても、あったかのようにして金融機関が動くという実態、この前も質問しましたけれども、この部分を考えて金融庁は行動しなかったらだめだということは、これもまた一つ言っておきたい。

 時間がなくなったので、最後に一つだけ申し上げますが、どこまでの企業を金融機関がつぶすのを金融庁は見ているか、こういう議論であります。

 私は、その企業の事業経営における採算がとれているところは基本的に生き残らせるという一つの明確な意思を持つべきだろうと思っております。それは、簡単にどういうことかといえば、かつてバブルで大量に借金をした、その返済によって圧縮されて倒れる企業というのはあるけれども、これは、最終的にその責任をとらなきゃいけないけれども、しかし、それがなければその企業は十分に黒字でやっているところというのはたくさんあるんですよ。黒字でやっているのに、バブルのときのそれで資産が圧縮されて、要注意先、何とか先になって、最後は破綻懸念先になっていくというような、現実の事業は万般うまくいっているもので、そういうケースもあるわけですよ。

 そういったところまで軒並みつぶしてしまう不良債権処理の方法というのは、私は、結果として日本経済を強めるものにはならないということを申し上げて、時間も参りました。本当は、その辺をこれからじっくり、債権分類の議論と中小企業の実態の部分の議論をしようと思ったのでありますが、アメリカと日本の経営風土の違いで、竹中大臣にも強く御認識をいただいたと思いますので、きょうはそこまでということで私の質問は終わります。

 以上です。ありがとうございました。

田野瀬委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十五分開議

田野瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日、三十分ばかりいただきまして、主に民主党の法案につきましてお聞きをいたしたいというように思っております。そこに座っていらっしゃる五十嵐先生も中塚先生も、以前一緒に仕事をしたこともありまして、非常に親しい間柄でございますけれども、本日、質問をさせていただきたいと思っております。

 民主党の金融再生ファイナルプラン関連法案ということでございますけれども、九〇年代後半の大変金融が揺れ動いたときに、金融国会、私も特別委員会の理事をさせていただきまして、その当時、金融再生法、早期健全化法、このような法案のところでいろいろな私自身の考え方も申し上げてやったわけでございます。

 当時は、日本長期信用銀行が経営破綻をするんじゃないか、そういううわさが飛んでおるときに委員会が同時進行で進んでおりまして、大変危機感を感じたわけでありますけれども、この法案ができて、いわばセーフティーネットが当時なかったわけでありますけれども、落ちつきを見せたわけでございます。

 それで、その後、この二つの法案がいわば時限的な法律ということで行われておったわけでございますけれども、これが役割を終えたということで、その後、預金保険法の改正が行われて、いわばこれを恒久化するというような制度になったわけでございます。

 ですから、今回のこの民主党の提案をされております法律を拝見させていただきますと、現行の預金保険法とオーバーラップをするところがあるわけで、そういうようなことをあえてする必要があるのかなというように私は思うわけで、今までりそなであるとか足利銀行の対応が非常に悪かったということで、運用が悪いというようなことだけで、現行の恒久的なこの制度を問題視するというようなこと、この重複するようなものを延長するとおっしゃっておられるわけでございますけれども、これはちょっと好ましくないのではないかと私は個人的には思っております。これは通告しておりませんけれども、もし何でしたら御見解をお伺いしたいと思います。

五十嵐議員 お答え申し上げます。

 確かに、谷口委員の御努力もあって、金融国会、早期健全化法と金融再生法はききました。これによって危機を脱したということは確かだろうと思います。それを受けて預保法ができたことも確かでありますけれども、まず、あの法案、野党案を丸のみしたと言われているわけですが、実際には丸のみではなくて一部換骨奪胎をされているということもありました。それから、預保法もその換骨奪胎された部分をもとにしてつくられているという意味で、私どもの一気に不良債権問題を決着させるということとは少し、少しというか大分ずれがある。

 しかも、その後、法体系として、もともとあの金融関係改革が目指していたものと違う方向の法案が次々と出されてきて、粉飾体質、そして経営責任を問わない、あるいは株主責任を問わないといったことが法令的にも進められてきましたし、実際の運用上でも、先生今御指摘にありましたように、運用上もかなりずれてきているというふうに思っておりますので、ここは一気に、私どもの認識は今もなお金融危機というものが目の前に存在をしているというふうに解釈をしておりますので、一気にこの問題を片づけて、お金の回る、経済の血液であるお金がきちんとマーケットに回る、中小企業に回る、そういう社会をつくるために、この法案をもう一度生き返らせて、ここで最終的な決着をつけるということが大切だと思っているわけでございます。

谷口委員 まさに、今五十嵐先生おっしゃったように、重複しているということを認めていらっしゃるわけでございまして、私は、この現行制度の中で、いろいろな工夫のやりぶりがあるわけでございますので、やるべきであるというように申し上げたいと思っております。

 次は、この民主党の法案、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法案についてお尋ねをさせていただきたいわけであります。

 この第六条に「多数の金融機関等の国際業務が廃止されることに伴い国際金融市場において重大な障害が生ずると認める場合又は多数の金融機関等の業務の全部の廃止若しくは解散が行われることに伴い我が国の経済活動に重大な障害が生ずると認める場合」のみ公的資本注入が行われることを認めようというように、かなり限定的なことを考えていらっしゃるようでございます。

 金融危機というのは、これはいろいろな形で起こり得るわけでございます。そういういろいろなパターンで起こり得る金融危機に対しまして、この法案は、そういう意味で非常に硬直的な、限定的な金融危機対応であるというように思うわけでございますけれども、どのようにお考えでございましょうか。

中塚議員 まず、今谷口委員自身がお述べになりましたように、危機というのはいろいろな形で起こるということがあると思いますし、あともう一つは、現状の認識をどういうふうに考えるのかという問題もあるというふうに考えております。

 その上で、私どもは、今回、この「多数の金融機関等の国際業務が廃止されることに伴い国際金融市場において重大な障害が生ずると認める場合又は多数の金融機関等の業務の全部の廃止若しくは解散が行われることに伴い我が国の経済活動に重大な障害が生ずると認める場合」のみ公的資本増強を行うというふうにしているわけでありますけれども、まさに、後ほどお尋ねになられると思いますが、資産査定を厳格化し、そして十分に引き当てを積むということになれば、恐らくそういうふうな状況になるだろうというふうに考えておるわけであります。

 メガバンクは、今大変に業界の再編が進みまして、世界最大規模で四つに集約をされることになったわけでありますけれども、かつて、金融特別委員会で谷口先生が御活躍になっていらっしゃったときも、一つの銀行が連鎖破綻を招くというふうなことがありましたし、金融システム全体を危機に陥らせる、そういうリスクが存在をしておりました。それと同様のことが、今、そのリスクとしては比較にならないぐらい大きくなっているというふうに考えております。

 そういった意味で、私どもの民主党の金融再生のファイナルプラン関連法案は、緊急一斉検査を実施して、半年以内に金融システムを健全化する、それも、ファイナルということですから、これで最後にしようということで、そういう意味で預金保険法以上に危機管理色の強いものになっているというふうに考えております。

谷口委員 私も、この仕事につく前に公認会計士をやっておりまして、金融機関の検査をやっておった時期があるんです。それで、この審議の中でいろいろお話を聞いておりますと、経済は生き物だというようなことがたびたび出てくるわけでありますけれども、一斉検査というようなこともおっしゃっておられるわけでありますけれども、一時点でその状況がこれからも続き得るのかというと、これは全くそうじゃないんですね。まさにおっしゃるように経済は生き物でございまして、大変好調な企業が急に悪化するというような場合もありますし、非常に低迷しているところが一発大きな契約が起こって回復するといったこともあるわけで、そういう意味で、一断面で判断をするというのは、非常にある意味では危険なところがあるわけでございます。

 ですから、このような状況を考えますと、今ここで挙げていらっしゃるような限定的な要件で資金注入を行うということになりますと、私は、かなり無理が生じるのではないかと。

 中塚先生おっしゃったように、これは査定すればいいんだというようなことなんですけれども、その査定というのは、私自身が現場におって見ておった状況を申し上げますと、そういうことが非常に起こり得る。例えば一般企業の、三月末に決算を行うといったような場合でも、三月末の有価証券の評価を行うわけでありますけれども、これが翌日に大きく株式相場が好転するといったようなこともあるんですね。そのくらい企業の業況というのはある程度の方向性を持っておるわけでありますけれども、そういうことも非常に起こりやすいわけでありますので、一時点の検査だけでそのような評価を行うということについては、私は非常に問題があるのではないかというように思っております。

 また、この六条のところに「我が国」ということで書いてあるわけでありますけれども、地域でということを明言されていらっしゃいません。この地域の信用秩序に関して、これは非常にまた重要でございます。地域金融が重大な支障を起こした場合に、地域に与える影響というのは非常に重要なわけでございますけれども、この法案には地域でということが明定されておらない、その理由をお聞きいたしたいというように思います。

中塚議員 まず、経済は生き物ですから、ある時点の資産査定をとらまえて、その上で資本注入をするということでは危機対応にならないのではないのかということでありましたけれども、ただ、今まで過去の資本注入の実績なんかを見ますと、やはりある時点での査定をもとに自己資本のかさ上げというものを行ってきたわけでありますが、結局、資本注入をしても、さらにまた自己資本比率が下がってしまうあるいは破綻をするというふうなことが相次いでおりまして、そこの部分はやはりより保守的に見るべきであろう、そのことが内外からの金融システム不安を払拭することにつながるだろう、そういうふうに考えておるわけです。

 今お尋ねの、地域の信用秩序の維持ということについて明定をされていないということでありましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、私どもは、危機が覆い隠されているというふうな認識に立っております。政府は危機ではないというふうにお考えのようですが、私どもは、危機が覆い隠されている、そういうふうに認識をいたしておりまして、その問題意識は、実は地域金融機関についても全く同様ですし、金融システム、金融がまさにシステムであるというのは、地域においても連鎖的にそういう危機が波及をするということを示しているというふうに思っております。

 また、金融庁が提出した全金融機関の財務データ等を見ましても、まさに、たくさんの金融機関が過少資本または債務超過の状態にあるだろうというふうに考えておりまして、こういった状況を放置すれば多数の地域の経済活動に重大な支障が生ずるおそれがあるということでありますので、この第六条を適用して多数の地域金融機関への資本注入というものを実施することは可能であるというふうに考えております。

谷口委員 地域の金融機関にも資本注入をしようということでございますね。この法案を見ると、そのようなことが読み取れないのではないか、こういうようなこともございまして申し上げたわけでございます。

 中塚先生の方は、先日の議論の中でオーバーバンキングについて言及されていらっしゃって、地域金融機関は残していかなきゃいかぬ、こういうようなお話ですから、そういう観点で申し上げますと、まさにこの法案は、地域金融機関を中心にして予防的に資金を注入しようという法案でございますね、政府提案の法案です。そういうような観点で考えましたときには、地域の混乱、地域金融機関に重大な支障が出てくるといった場合には、事前にこれを阻止するために、私自身は、やはりある程度のロットの資金を注入していくべきだというように考えておるわけでございます。そういう意味では、若干この法案からはそのあたりが読みにくいということを申し上げたかったわけでございます。

 それと、次に、五十嵐先生がずっとこの法案の審議の中で、粉飾だ粉飾だということをたくさんおっしゃっておられるわけで、私も公認会計士を以前やっておりまして、この粉飾というのは、余り、たびたび言うべきことじゃないと思うんです。非常にそのあたりを慎重におっしゃっていただきたいわけで、大多数の公認会計士の人たちは一生懸命監査業務に打ち込んでおられるわけでございます。おっしゃるような粉飾の事例というのは余りないわけです。

 それで、金融庁の検査が入って、今一番問題になっている税金繰り延べ資産でぜひ意見交換したいと思っておりまして、どうもこの税金繰り延べ資産について誤解があるんじゃないか。というより、むしろ会計そのものに対する誤解があるんじゃないかというように思うわけです。

 そもそも企業会計というのは、絶対的な真実性のもとにあるわけじゃないんですね。例えば、企業の損益計算書を見ていただきますと、売り上げがあって利益が出ているわけですけれども、この利益というのは絶対な利益ではありません。御存じのとおり、会計処理の変更が行われますと、この利益が変化する、変わるということはあるわけです。ですから、そういう意味で絶対的な真実性ではない、相対的真実性と言うんですけれども、それを支えるためにいわば継続性の原則というのがありまして、会計処理は継続的にこれを適用していかなければならないというようなことがあるわけです。

 それとともに、現行会計は、ゴーイングコンサーンと申しまして、企業が継続する、継続企業の前提に立った会計なんですね。御存じのとおり、商法の会計の考え方というのは債権者保護の立場に立っていますから、企業がゴーイングコンサーンでなくなった場合にどうなるかということなんですね。清算をした場合に企業をどう見るかというような見方が商法の基本的な考え方であります。それに対しまして、現行会計、企業会計はゴーイングコンサーンの立場に立っているということです。

 ですから、人間に例えますと、生まれて、いずれ死ぬわけでありますけれども、死んだ段階でこれは亡きがらになって、これはいわゆる企業を一断面で見ている、例えばさっきからおっしゃっておられます一斉検査の問題にしましても、その段階では確定するわけでありますけれども、しかし、ゴーイングコンサーンといいますか、人間がずっと生きている間にはいろいろな人脈もありますし、また、目に見えないような付加的な価値がどんどん出てきたり、目に見えないような負債もあるかわかりませんけれども、そういうようなものだということをよく認識していかないと。

 本来資産性のないような、例えば繰り延べ資産というか、会計上では、試験研究費というのがありますけれども、これを資産計上したりするわけですね。これは、もう既に支払われたんですけれども、効果がこの期だけではなくて将来の期にもあらわれるということですから、現行会計は今言うように発生主義という立場に立っておりまして、当期の売り上げに対応する費用を当期に上げるんだ、当期の売り上げに対応する費用が将来にも発生するといった場合には、将来分を負債計上したり資産計上したりということで当期の損益に反映させないということでございます。そのような現行会計の対応ぶりをよく理解していかないと、おかしな形になるわけです。

 一般的に、利益が例えばあの企業は十億あった、それが会計処理の変更によって、このところ会計ビッグバンというような会計処理の変更がたびたび行われております、そんなことで、会社の方は一生懸命頑張って売り上げは前期と変わらない、ところが、利益が圧縮されたというようなことになるわけですね。会計というのはそういうものなんだということを、ひとつよく頭に入れていただきたいということがまず第一点でございます。

 それと、税金繰り延べ資産のことで、これは五十嵐先生も、先日、会計士協会の監査委員会報告六十六号のことをおっしゃっていらっしゃいましたが、この監査委員会報告六十六号というのは、繰り延べ税金資産について言及しているわけですね。これは一年もしくは五年ということでやっているわけです。この根拠も、五十嵐先生の方はもうごらんになっていらっしゃると思います、極めて多額な損失が出たといったような場合は一年で、あとは大体五年でやっているというのが一般的なんです。

 ですから、そういう意味においては、会計の指針は一年もしくは五年を認めておるわけでありまして、企業がこれを採用してやっていることについては何ら粉飾ではないわけであります。これを粉飾だ粉飾だと言ってしまいますと、また大きな社会的な影響が出るわけでございますので、そのあたりを、私はちょっと慎重に言っていただければというように思っておるわけでありますけれども。

 税金繰り延べ資産が発生するケースが二つありまして、一つは、商売を行って損失が出る、そういう繰越損失が出た場合に、将来の利益を充当するといった形になりますから、これはこの税金繰り延べ資産が発生するわけですね。もう一つは、銀行のように、金融機関のように、税法上認めておらない以上に償却を行うといった場合、これは有税償却といいますけれども、有税償却をした場合には、将来、この当該債権が費用化されるときが出てくるわけですね。このときに税金繰り延べ資産へ落とすということで、この有税の前払い税金のところを税金繰り延べ資産として上げておるわけでございます。

 このような税金繰り延べ資産について、頭からこれが粉飾だとかこれは問題だというような議論はおかしいんです。というのは、従来は税金繰り延べ資産というのはなかったんです。これは、税引き前利益がありまして、税引き前利益に対しまして、当期の支払う税金の実額を計算して法人税等ということを上げまして、それからそれを控除した金額を税引き後利益として上げたわけです。この金額の対応関係がおかしい場合があるわけですね。いろいろなケースがあります。税引き前利益が百であるのに、その税引き前利益を上回るような税金が出る場合もあるんです。いろいろなケースがございます。これは話すと長くなりますから。

 そういうような対応関係は、先ほども申し上げましたように、現行会計は費用と収益を対応させるということがございますから、世界的な一つの流れとして、税引き前利益に対しまして実効税率を上げまして、この実効税率を法人税等で上げておる、こういういわば広い意味での費用収益対応の原則に基づいて上げられておるものでございます。ですから、私は五十嵐先生に申し上げたいわけでありますけれども、このようなことだというように申し上げて、五十嵐先生の御意見をお伺いしたいと思います。

五十嵐議員 ありがとうございます、大変詳細な御説明をいただきまして。

 私も基本的に谷口先生がおっしゃられたことは勉強させていただいているわけでありますが、幾つか違うところがあると思います。

 それは、私も、公認会計士の友人、知人たくさんおりまして、お話をさせていただいておりますけれども、やはり投資家保護のためにきちんとした情報開示を行う役目を公認会計士は持っているんだから、それは保守的に見積もっていかなきゃいけないというのが一つなんだろうと。

 すなわち、V字回復的に将来の利益を過大に見積もって、それで繰り延べ税金資産を過大に積算するというのは、これはやはり投資家に誤った情報を与えて損害を与えるということになるのでやるべきではないということを、私は、私の知っている公認会計士何人もから、そういう立場で我々は監査をしていくんだということも伺っているわけであります。

 基本的に、谷口先生がおっしゃっていることが間違いだと言っているわけではありません。しかし、そういう今のルールを当てはめても、並外れた繰り延べ税金資産の計上があるではないか。

 例えば、特に、これは事情があるのはわかります、銀行については有税償却。無税償却の部分はアメリカに比べてかなり狭く日本では解釈されておりますので、有税償却にせざるを得ない。そこでこれが大きく出てくるというのは確かでありますけれども、それにしても、直前の数期の利益、それの平均数値の九年分、十年分あるいは十数年分に当たるような繰り延べ税金資産を計上するのはやはり過大ではないか。ですから、一概に繰り延べ税金資産そのものは直ちに私どもは粉飾だと言っているわけではなくて、やはり粉飾まがいの、鉛筆をなめて逆算をして、そして体力の範囲内で償却をするということをやってきたのではありませんかということを言わせていただいているわけであります。

 それから、私も公認会計士協会の実務指針を勉強させていただきましたけれども、その中で、やはり原則としては、将来の課税所得の見積額の一年分というのが原則であって、そこに非経常的な要件が加わった場合、これは五年分まで認めるというのはルールになっているんだろうと思います。ですから、そのルールをルールどおりにきちんと解釈したらどうでしょうかという話です。

 例えば、特別検査があったからこれは非経常的要件だ、該当するんだということで五年分見ましたというのはありました。それは、私、直ちに違法だと言っているわけじゃないんですね。しかし、特別検査が毎年毎年行われていて、それでそれを非経常的と言えるのか。経常的か非経常的かというのは、やはりめったにはないことが非経常であって、しょっちゅう、毎年のように起こることは経常的というのが当たり前の見方ではないですかという常識を申し上げているわけでございます。

 それから、ゴーイングコンサーンのお話もありました。おっしゃるとおりなんだろうと思います。特に、私は、中小企業についてはゴーイングコンサーンというのをきちんと見ていくべきだと思うんですが、このゴーイングコンサーンを利用して、いたずらに拡大解釈して、これがあるからいいんだということで、本来退場すべきものまであるいは債務超過甚だしく再建がなかなか見込まれないものまで、それで救い上げてしまうということであってはならない。我々が申し上げているのは、経済は確かに生き物なんですが、ルールは明白に、明快にしましょうよということを言わせていただいているんですね。

 実態を見るべき部分は、むしろ中小企業などについては実態そのものをよく見て、実態に合わせたルールをつくっていけばいい。ルールそのものを曲げて、経済は生き物だからといって、あそこではこっちを引っ込めたりこっちを膨らませたりというようなことがあってはならないということで、気持ちとしては、私は谷口先生と全く変わるところではありません。

谷口委員 税金繰り延べ資産については、従来からそういう錯覚というか誤解がございましたので、申し上げさせていただいたわけでございます。

 五年の場合には、企業の経営計画で五年間しっかりとした計画がございまして、例えば有税処理が五年間でできるということですから五年間を認めたということでございます。ですから、監査の立場、会計の立場では、税金繰り延べ資産に五年といったような場合に、それがしっかりとした計画があれば、それは会計士としてこれを是認するということになるわけです。

 ところが一方で、ちょっとこれは大臣にお尋ねしたいわけでありますけれども、BIS基準がございますね、BIS基準は有価証券の含み益を二分の一だけ自己資本に入れるんだ、こうなっているわけです。ですから、それは行政サイドの問題で、これを自己資本に入れるかどうかというような問題があります。

 ですから、税金繰り延べ資産五年を会計士が一応上げているものについて、しっかりとした経営計画がある、これはいいかげんなものじゃなくてしっかりとした計画があるから是認しているわけでありますけれども、しかし、それは認めるんだけれども、行政の立場で自己資本を考える場合に、これを幾分か考慮して、例えばさっきも申し上げた含み益を二分の一入れるといったようなことも考えられると思うんです。大臣、お考えがございましたら、お聞きいたしたいと思います。

田野瀬委員長 質問時間が終了しておりますので、簡潔に、大臣、答えてください。

竹中国務大臣 一般論としてでございますけれども、会計のルールは会計のルールとして、これは大変しっかりしたものがあるというふうに認識をしております。これは、投資家保護等々さまざまな観点からなされている。一方で、行政の監督上のルールというのがある。そこはやはりきちっと分けなければいけない。その一点に尽きているというふうに思っております。

谷口委員 それでは、これで終わらせていただきます。

田野瀬委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越でございます。昨日に引き続きまして、政府提出の金融機能の強化のための特別措置に関する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 きのうの私の質問の中で、最後の方、ちょっとRCCに関する質問をさせていただきまして、その件に関してまず追加で質問させていただきたいと思います。日銀の考査局長にお越しいただいていますので、何点かお伺いをしたいと思います。

 まず、確認の意味でお伺いをしたいんですけれども、そもそも、日銀の考査というものが一般的にどういう目的で行われているのか、お答えいただきたいと思います。

稲葉参考人 日銀の考査についてのお尋ねでございました。お答えします。

 日銀は、お金を適切に発行することを基本的な業務とする中央銀行といたしまして、決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じまして信用秩序の維持に資する、こういう大事な役割を担っていると承知しております。言いかえますと、決済不能が連鎖するような事態、これはシステミックリスクと言っておりますが、こうした事態を回避するということを通じて金融システムの安定に資する、こういう役割を担っていると思います。

 その際、必要があれば、最後の貸し手としての機能発揮も期待されているということでございます。また、日銀の金融政策の効果も、日銀の資金供給を起点にして、金融機関行動あるいは金融システムを経由して伝わるということでございます。

 したがいまして、このような、日銀のみずからの業務の実施ないしはそれに備えるために、個別金融機関の実情を詳しく的確に把握するということが必要でございまして、そのための手段として考査を実施しているということでございます。

村越委員 日銀法第一条二項ですか、ここにも「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資する」とあるわけでして、今まさに御答弁いただいたように、いわゆるシステミックリスクを回避するということが日銀のお役目の一つである、私もきのうちょっと勉強しましてそのように考えているわけですけれども、これは二つの面が考えられるんじゃないかと私は思っています。

 一つは、システミックリスクを回避するという観点から、個別金融機関が持っている決済処理機能ないしは事務処理機能と言ってもいいのかもしれませんが、それらがきちんと整備されているのかどうか、これをまずチェックすることだ。そしてもう一つは、個別金融機関が破綻の危機にあるのかどうか、つまり、財務状況の健全性をチェックすること。

 この二つの面が考えられるんじゃないかと私は思うわけですけれども、日銀が担っている役割の中で、特にせんだって行われたRCCに対する考査におきまして、どちらの点、どのような点を主眼に考査が行われたんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

稲葉参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたように、日銀の考査は、結局のところ、システミックリスクの回避を基本的な目的にしているわけでございますが、その際の考査における調査の重点の置き方といいますものは、金融機関の行う業務の特性とかそういうもので変わり得るものだというふうに思いますけれども、一般的に言えば、金融機関行動の前提となる財務の健全性の確認をしながら、大事な資金管理あるいは決済リスクの管理を含めたリスクの管理全般を検証しているということでございます。

 こういった日銀考査の性格を踏まえまして、かつRCCの機能ということを考えまして、私どもの考査における着眼点といいますか力点は、これから申し上げるような考え方に基づいて設定いたしました。

 RCCは、もともと、不良債権を買い取ってこれを回収するということが重要な業務でございまして、その主要業務から発生するような損失は、法の定めによって預金保険機構等から補てんされるという枠組みが整備されております。したがいまして、考査では、改めて個別の不良債権、買い入れ不良債権等の内容を調査するというよりは、不良債権の処理あるいは債務者の再生といったような業務が効率的に行われているか、その前提となる、資金管理を中心とした流動性リスクあるいはシステムリスクの管理に関しての調査を実施するということが適当だと考えて実施いたしました。

村越委員 改めてもう一度お伺いしたいと思うんですが、システミックリスクの回避という大きな目的のために日銀が担っていらっしゃる役割というのは、行政による検査とどのように違うとお考えなのか。改めてもう一度お聞かせいただきたいと思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 日銀による考査は、決済システムの円滑かつ安定的な運行確保を通じて信用秩序の維持に資するということを目的にしておるわけですが、金融庁の方の検査は、銀行法等にもございますように、金融機関の業務そのものの健全かつ適切な運営を確保することを目的にしているというふうに理解しております。

 したがいまして、このように、両者は目的において異なっているものでございまして、これを大づかみに申し上げますと、決済システムの安定確保と個別金融機関の健全性確保の二つに大別いたしますと、日本銀行の考査は、日銀法にありますように、決済システムの安定性確保の方により重点を置いてやっているというふうに考えております。

村越委員 ありがとうございました。日銀の方はこれでお引き取りいただいて結構です。

 今の御答弁にありましたように、そもそも日銀の考査の目的と金融庁の役割というのは違うということで、次は、このRCCの問題に関して、ちょっと金融庁側にいろいろお伺いをしたいと思います。

 まず、RCCに対して今後金融庁が検査を行うんでしょうか。私は、必ず金融庁がRCCに対して検査に入るべき状況に今あるというふうに認識しているんですけれども、いかがでしょうか。大臣、お答えいただけますか。

佐藤政府参考人 RCC、整理回収機構は、御案内のとおり、銀行法上の銀行でございますので、同法に基づく検査権限が私どもにございます。

 それで、これまで、RCCの業務の特殊性とかあるいは私どもの検査人員のキャパシティー、こういった制約等もあって、検査を行っている実績がないわけでございますが、もちろん、金融庁として、RCCに対して検査を行わないといった方針を持っているわけではございませんで、RCCの業務の状況等にかんがみて、必要があると認めるときには所要の検査を行うことになろうかと思います。

村越委員 きのうの副大臣の御答弁でも、必要があればやるんだという旨のお話がありましたけれども、その必要性というものが現在どれほどあるのか。その必要性があるかどうかというのをどういうふうに認識されているんでしょうか。また逆に、どういう状況になったら検査に入る必要がある状況だとお考えでしょうか。

竹中国務大臣 先ほどからも説明がありましたように、我々の検査というのは銀行法二十五条に基づいて行う、業務の健全かつ適切な運営を確保するために行うということになります。したがって、必要があると認められる場合に、我々はそういう検査を行います。

 同時に、今検査に対する必要性は大変いろいろなところで高いという事情も委員御理解いただいていると存じます。我々、検査人員等々をふやしていただいておりますけれども、その我々のキャパシティーと必要性との比較考量においてしっかりと判断をしていかなければいけないと思っております。

 必要な場合というのは、基本的には、リスク管理体制、信用リスク、市場関連リスク、流動性リスク、システムリスク、事務のリスク、それと、大きなところではコンプライアンスの適切性を検証する必要がある、そのような場合には、我々全体のキャパシティーの中でぜひしっかりと判断をしていくつもりでおります。

村越委員 何か、キャパシティー云々とか比較考量とかと今おっしゃっていましたけれども、比較考量というのは要するにアドホックだということで、その場その場で適当に判断するということでしょうから、実際に検査をするかどうかというのはあくまで裁量というか気分というか、そういうものになってしまうのかなと私は今率直に思っているんです。

 きのう、戻ってちょっと調べましたら、平成十三年十一月二十七日のこの委員会において、そのときの柳澤大臣が、この銀行は別に預金の受け入れ機関でもないということで順番からおくれているというふうな答弁をされています。今の金融庁の方の御答弁または大臣の御答弁でも、また、人員が不足している、キャパシティーの問題があるというふうな発言が非常にいろいろ出ているわけですけれども、竹中大臣は、このRCCというのが、柳澤大臣がおっしゃったように、ほかの銀行と比べて優先順位が低い、そういうふうにお考えになっているんでしょうか。

竹中国務大臣 先ほど村越委員がアドホックにやるということかとおっしゃいましたけれども、これは決してアドホックではなくて、我々としては、検査計画というのをしっかりと立ててやります。その点はぜひ御信用賜りたいと思います。

 お尋ねの柳澤大臣の御答弁、これは平成十三年十一月二十七日の御答弁だと思いますが、当時、まだ金融機関に対する風評も含めていろいろな議論がある中で、柳澤大臣の御答弁というのは、預金受け入れ機関を当面優先させなければいけないのではないだろうかという当時の御認識を示されたということだと思います。

 これは、先ほど申し上げましたように、それぞれ金融機関の役割というのがございます。預金受け入れ機関としての遵守をしなきゃいけないということもございますし、RCCはRCCとして大変重要な役割を果たしているわけでございますから、そこは、まさに今の状況、ニーズを比べてしっかりと判断をしていかなければいけないというふうに思っております。

 いずれにしましても、柳澤大臣も、また私も、預金受け入れ機関は大変大事で検査の必要がある、RCCはそうではないから検査の必要性は低い、そんなことを申しているわけでは決してございません。

村越委員 今大臣がお引きになった、柳澤大臣も、預金受け入れ機関ではない云々というふうにおっしゃっていましたし、先日、副大臣も預金受け入れ機関ではない云々の御答弁をされていたわけですけれども、やはり預金というのは、少なくとも、預ける人がみずからの意思によってお金を預けているわけですね、当たり前のことですけれども。ところが、そういう預金と比較をしまして、RCCというのは国民の税金で動いているわけでして、いわば国家の意思でお金を預けて当該企業が運営されているということでして、やはりはるかに、そういった性質からして、行政による厳しい監視といいますか、チェックをする責任がもっと逆にあるんじゃないかというふうに、逆に私は考えるんですけれども、私のそのような考え方に関してどのようにお考えになるでしょうか。

伊藤副大臣 今委員御指摘のとおり、私どもが納税者の立場に立って、しっかりとした説明責任を果たしていく、あるいは国民負担というものを軽減していく、そうした認識はしっかり持っていかなければいけないというふうに思っております。

 ただ、一方で、金融行政の目的というのは、信用秩序というものを維持し、そして預金者保護をしていく、これは大変大きな目的でございまして、これに基づいて金融機関の業務の健全性でありますとかあるいは適切性、こうしたものを確保していくために、検査と、そして監督、これを適切にやっていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

 RCCは、先生御指摘のとおり、公的資金を用いて買い取りをした破綻金融機関やあるいは旧住専の貸付債権等を適切、迅速に回収して、そして国民負担の最小化に寄与するという役割を担う公的機関としての側面を有しているわけであります。私どもとしては、こうしたRCCの業務の重要性を踏まえて、そして同機構の健全かつ適切な運営を確保する観点から、預金保険機構とも連携をしながら適切な監督を行っていかなければいけない、そういう認識の中で今日まで対応させていただいているところでございます。

村越委員 では、ちょっと矛先を変えまして、実は、先日、RCCの不正が明らかになったというふうに聞いています。報道によれば、整理回収機構元課長四千百万着服で告訴へと。整理回収機構大阪第三支店の元課長が、福岡支店の課長当時、RCCが抵当権を持つ土地や建物などを無断で売却し、約四千百万円を着服していた疑いがあることがわかったというような報道がなされているわけですけれども、これに関してぜひ大臣のコメントをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 四月の八日、RCCから、同機構の元職員が債務者からの返済金を着服、横領する、とんでもない不祥事でありますけれども、これが発生したということが銀行法第五十三条に基づいて届け出がございました。その他、今、もう一つの事例も御紹介をしてくださいましたけれども、いずれにしましても、RCCというのは大変重要な、社会的な使命を担っているわけでありまして、そうした債権回収等々に関連してこのような不祥事が発生した、これはまことに遺憾なことであるというふうに思います。

 今後、RCCにおいて事実関係を解明してもらわなきゃいけない。同時に、これは、刑事告訴手続を行う等厳正に対応していくものというふうに私は承知をしております。

 金融庁としては、RCCの業務の健全で適切な運営を確保する、そういう責務がございますから、これは銀行法第二十四条に基づきまして、事実関係等について報告を求めたところでございます。今後、RCCに対しては、事実関係の徹底的な解明と厳正な対応及びその再発防止に我々も強く取り組んでいく決意でおります。

村越委員 こういった不祥事に対する金融庁の監督責任というものがやはりあると私は思うんですが、それに関して、まず、どうお考えなのかということ。

 もう一つは、これは、二〇〇〇年五月にこういう不正が行われた。もう四年近くたって、今発覚をしているわけであります。これはもう本当に、やはり財務状況云々とかという話じゃないと私は思うんですね。この事件の概要を見ますと、非常にわかりやすい悪さというか、非常に不謹慎な発言ですけれども、初歩的な、何かだれでも思いつくようなちょろまかしだと思うんですね。本当に、考査だとか検査だとか、そうやって財務状況云々という議論をする以前に、非常にいいかげんな経営が行われているんじゃないかと私なんかは推察するところなんです。

 こういった不祥事が仮にまかり通っているのであれば、やはり、即刻、監督官庁である金融庁が検査に入る必要性というのが今まさに強くあるんじゃないかと私は考えるんですけれども、それでもまだ検査に入る状況では今ない、人員不足等々を理由に、まだ検査をしなくて大丈夫なんだ、そのようにお考えになるんでしょうか。

竹中国務大臣 まず、村越委員から監督の責任というお言葉がありましたが、これはもう大変重要なことだと思います。

 先ほど申し上げましたように、これは銀行法五十三条に基づいてまず届け出があったということでございます。これは、我々の監督のルールにのっとって、この五十三条に基づく届け出があった。その上で、やはり我々としてしっかりとやらなければいけないのは、先方において事実解明を行わせることでありますが、それに関連して、何でこんな、非常にわかりやすい犯罪だというような御指摘がございましたけれども、やはりRCCの内部のコンプライアンス、法令遵守、それを監視する体制が本当にできているのかどうか、そこがもう最大のポイントだと思います。

 そうした観点から、先ほど申し上げましたように、銀行法第二十四条に基づく報告徴求を行ったわけです。この報告徴求は罰則規定つきでございます。事実に反することを言ってきたらこれは罰則がかかるわけでございまして、この中で、コンプライアンス体制がどうなっているのか、それをやはりしっかりと我々としては見きわめなければいけないと思います。

 今、とにかく報告徴求、これを求めているところでございますので、それを待って、我々は監督する立場からどういうことをすべきか、これは厳正に判断して対応してまいります。

村越委員 再三私が申し上げてきましたとおり、やはり金融庁がRCCに検査に入るべきじゃないかと私は考えています。聞くところによりますと、金融庁の検査というのは金融機関が震え上がるほどの恐ろしいものだというふうに承っていますから、国民に対する説明責任を果たすという意味でも、ここでやはり大臣に御英断をいただいて、きちっとわかりやすいように検査に入っていただくのが私はいいのではないかと考えています。

 それでは、ちょっと時間もありませんので、きのう、通告をしましてちょっと積み残してしまった、本来の法案に関する質問に移りたいと思います。

 やはり、わざわざ法律をつくるわけですから、この法案によってどういったメリットが国民の皆様に対してもたらされるのかというのが、私はひとつ検証する必要があるのではないかと考えるんですが、預金保険機構の借り入れ等に政府保証を与えるというふうになっているわけですから、国民のまさに財産を用いることによる措置になるということですから、資本注入をすることによって国民の皆様が受ける恩恵というかメリットというのが一体どこにあるのかというのをお聞かせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 今回の法案の枠組みというのは、金融機能を強化する、金融機能が強化されることによって、これはもう国民広く、特に地域の企業、預金者、幅広くメリットを受けることになるわけでございますけれども、その資本注入との関係、結びつけの考え方をもう一度申し上げますと、やはり自己資本というのは金融機関にとってリスクを吸収するバッファーになるものである。今大変、今のマクロ経済の状況を地域に浸透させたいという非常に強い期待が国民に広くあるわけでございますけれども、その中で、地域の金融機関がその金融機能を強化させるに当たって、今回の資本の参加というのは大変大きな役割を果たすのではないかというふうに考えるわけでございます。そのリスクのバッファーがふえることによって金融機関がリスクをとれるようになる。

 例えば、一つの形としては、それを貸し付けに回す。貸し付けするというのは金融機関にとってのリスクをとることになるわけですから、そういう形にあらわれる可能性があるだろう。ないしは、貸し出しそのものというよりは、その質の内容として、例えば無担保の貸し付け、第三者保証をとらないような貸し付けにリスク対応できるのではないだろうか。企業の、債務者の再建そのものに対して手をかすことができるのではないだろうか。本業がよくて、しかし、過去の債務を持っているところ、たくさんの債務を持っているような企業に対して、例えば債権放棄をするというようなのも一つの手段でございましょうし、そういう意味で、バランスシート調整を助けることが可能になるのではないか。

 その意味で、まさに資本を厚くするということが、金融機関のリスク対応力を高めて、金融機能を高める、これはやはり地域にとって、住民にとって、国民にとって、大きなメリットをもたらし得るものである、それが実現するような枠組みをつくりたいというふうに考えているところでございます。

村越委員 銀行に対する株式引き受けによって、言ってみれば国民全体が株主になるんじゃないかと私は考えるわけですけれども、株主である国民の利益が確保されるためには、銀行の経営に対する関与ができなくてはいけないわけですけれども、ここで言う株式というのは議決権制限等のない株式なんでしょうか。

増井政府参考人 お答えいたします。

 資本参加時の資本の種類につきましては、銀行の場合には、ガバナンスの確保を確実にする観点から株式に限るということにしておりまして、より具体的に申し上げますと、経営強化計画に結果責任の記載のある銀行の場合、結果責任の明確化等、経営強化計画の履行を確保する観点から、取締役等選解任議決権つきの優先株式を基本といたします。ただ、自己資本比率が基準値未満の場合には、さらに国によるガバナンスを強化する観点から、普通株式も可能とするというふうに考えております。

 さらに、抜本的な組織再編成が行われる場合など、結果責任を求めない銀行の場合でございますが、こちらの方は無議決権優先株式といたしまして、必要に応じ、普通株への転換権を行使することを可能とする予定になっております。

村越委員 これは、いろいろおっしゃっていましたけれども、制限があるということですよね。そうだとしたら、なぜそういうふうにされたのか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 この引受株式の種類につきましては、金融審議会の報告で一定の整理がなされております。ちょっとそれを引用させていただきますと、

  公的資本増強行に対し、国は資本増強の法目的に沿ってガバナンスを発揮することが求められている。その場合、株主としての議決権行使に拠らなくとも、基本的には行政命令権等を通じた監督行政によって、金融機関の経営を健全化するために適切なガバナンスが発揮される。仮にガバナンスが不十分な場合には、株主による経営のコントロール手段として取締役等の選解任に係る議決権を国が有することにより、ガバナンスは強化される。この組合せであれば、法律による行政の原理に基づき、金融機関の個別の経営に対する過度な関与は避け自主性を尊重するという監督行政への一般的な要請を満たしながら、適切なガバナンスの発揮が可能であると考えられる。

というのが一つでございます。

 さらに、

 国が普通株主となる場合には、金融機関の健全化と株主価値の増大という二つの要請に沿って議決権を行使することとなる。これらの要請は一般的に齟齬を来たすものではないが、他の株主にとっては、国の議決権行使に不確実性があり、却って市場の信認を低下させるおそれもあると考えられる。また、国民負担を極力回避する観点からは、配当や残余財産分配の順位が普通株式に優先する株式の方が望ましく、典型的な危機対応の場合以外のケースにおいては、この観点はなおさら重要と考えられる。さらに、普通株式による多額の資本増強により、他の株主が必要以上に希薄化の懸念を持つ可能性もある。

 ちょっと長くて恐縮でございましたが、そういった考え方で整理されております。

 こういった普通株式に係る利害得失を踏まえまして、普通株式による公的資金増強は、経営改革のための株主権を通じたガバナンスの発揮を特に要するような場合に限定してそういった形にするというふうに考えております。

村越委員 ちょっともう時間がないので急ぎたいんですけれども、預金保険機構のことに関してちょっと何点かお伺いしたいんですが、預金保険機構の債務残高は最新で今いかほどなんでしょうか。

伊藤副大臣 平成十六年三月末時点の預金保険機構の借入金残高及び債券発行残高の合計でございますが、十九兆八千七百九十一億円となっております。

村越委員 この十九兆余りの金額というのはどこから借り入れているものなのか、公的資金を注入されていない民間金融機関からなのでしょうか。

伊藤副大臣 預金保険機構の借り入れに当たりましては、多額の公的資金を公正、透明かつ低コストで調達する必要があります。そうしたことから、内外の金融機関を広く対象に、透明な入札手続により実施をいたしているところでございまして、公的資金注入行を排除しているものではございません。

村越委員 ちょっと残念ながらもう時間が来てしまいまして、我が党の真打ちが後ろに待っていますので、私はきょうはこのぐらいで下がりたいと思います。ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 本日は、前回の委員会で取り上げましたキャッシュカードの偽造被害の話から、この間ちょっと時間がなかったものですから、そのことからお伺いをしたいというふうに思います。

 きょうは資料等はお配りをしておりませんけれども、この間お話をしたことでおわかりをいただけているというふうに思います。ある預金者が銀行に預金をしている、そのキャッシュカードが偽造をされまして、別の銀行、違う銀行のATMからお金を引き出されてしまうということです。

 このケースで問題なのは、結局、キャッシュカードを偽造されるということ自体は、キャッシュカードホルダーは被害者ではないということがまず第一点ですね。そして、第二点目として、被害者はATMの管理銀行であって、あくまで預金をおろされ、またあるいは、今はカードで借金までつくれる、ローンまで組めるということになってしまうわけで、預金はおろされ、ローンまでつくられる人が被害者にはならないということをこの間申し上げました。

 個別の案件についてもいろいろと私のところには話がありまして、それこそ退職金を預金口座の中に入れておいたところ、とらの子ですね、とらの子の退職金のお金を全部引き出されてしまった、おまけにローンまでつくられてしまったというふうな、大変に本当に悲惨なかわいそうな話であります。

 被害者の救済ということも大切ですし、もう一つは、これ以上こういう気の毒な人をふやさないということでぜひとも監督庁としてお願いをしたいということでこの間の質疑が終わりまして、そのときに竹中大臣が三点ほどというふうに例を挙げて、そして誠意を持って対応したいというふうにお話をされていたわけです。三点とおっしゃっていましたが、議事録を見ると、もっと、五点ぐらいのことについてお話をされていたわけでありますけれども、三月の三十一日に質問させていただいて二週間たっておりますが、その後、どういうふうにこれは御対応いただいているんでしょうか。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

伊藤副大臣 私からお答えをさせていただきたいと思います。

 過日の委員会でも、中塚委員からこの偽造キャッシュカードの問題、その深刻さについて大変詳しく問題提起をいただいたところでございまして、私どもといたしましても、この問題については極めて重要な問題だというふうに認識をいたしているところでございます。

 これまでも、金融庁といたしましては、金融団体との意見交換会をさせていただいて、そして金融機関に対して適切な対応策の検討を要請しているところでありますが、今月開催される金融団体との意見交換会においては、中塚委員からも今二点御指摘がございましたけれども、そうしたことを踏まえて、銀行システムにかかわるセキュリティー対策あるいは被害者に対する銀行の窓口の対応、責任分担の問題、そして警察の捜査に対する対応等、偽造カード問題に対する適切な対応について改めて要請を行うことといたしておりまして、きょうもこの午後の委員会が始まる前に地銀協会との意見交換がございまして、こうしたことを、国会での御審議も踏まえて、私ども金融庁から地銀協会に対してお話をさせていただいたところでございます。

 いずれにいたしましても、関係機関と連携をして、この偽造カード問題の発生をなくしていく、そのために銀行業界の取り組みを引き続き促していきたいと考えているところでございます。

中塚委員 この間の質疑で竹中大臣がお答えいただいたことについて、まず被害届をちゃんと出す仕組みをつくるということをお答えいただいておりますので、そのことはぜひ、銀行との懇談会ですか、その席では強く強く言っていただきたいというふうに思います。そしてまた、暗証番号の問題で、暗証番号というのが一つのプロテクトとしてある、しっかりと管理されるような注意喚起を預金者にも銀行にもというふうなことをおっしゃっておられましたから、そのことが二つ目だと思います。

 次に、現実問題、被害に遭われた方をどう救済していくのかということについては、実はこれは積み残しということになるわけですね。銀行が被害届を出すということから捜査が始まって、犯人が捕まればそれは最もいいことではあるんですが、さきの委員会で警察庁からも答弁いただきましたけれども、実は犯人は一人も捕まっていないということでもあるわけですから、そうなりますと、善意無過失のカードホルダーというものが預金を引き出され、また借金までつくられてしまうということになれば、やはりここはちゃんと救済をされるような体制づくりというものが必要になるだろうというふうにも考えるわけです。

 きょうは法務省の民事局長にもお越しをいただいておりまして、前回の質疑の際にも民事局長から、このお金を引き出された人またあるいはローンをつくられてしまった人ということについて、民事上の関係といいますか、民事上の問題点ということについてお話をいただいたんですが、それをもう一度お願いできますでしょうか。

房村政府参考人 まず大きく分けまして、預金が払い戻されてしまった場合と、先ほど出ました、ローンを組まれた場合に分けて御説明をしたいと思います。

 最初は、キャッシュカードが偽造されて預金が払い戻されてしまった場合、これは、本来は権原のない人が払い戻しを受けたわけですから、そのままであれば銀行としてはもう一度正当な権利者に払わなければならないわけです。

 しかし、その場合に、銀行と預金者との間で通常は約款が結ばれておりまして、その約款にそういった事態が生じたときの損害をどう負担するかというようなことが決められているのが通常でございます。約款がそういうぐあいに想定した事態であれば、その約款に従った解決がなされるということになりますし、約款にそういう定めがない、あるいは約款が何らかの理由で無効である、こういうことになりますと、民法に従ってどちらを保護するかということが決められることになります。

 民法の基本的な考え方は、無権原者に対する弁済であっても、弁済者を保護する必要があるときにはこれを有効なものとして扱おう、こういう考え方に立っております。民法では、債権の準占有者に対してした弁済であって、弁済者が善意無過失の場合には、無権原者に対する弁済でもこれを有効なものとする、したがって、もう一度払わなくていい、こういうことになります。

 ここで言われております債権の準占有者というのは、取引観念の上から見て真実の債権者と信じさせるような外観を有する者をいう。典型的なのが、通帳と判こを持ってくる、そうであればこれはまず預金者だと信ずるのが普通である、そういうような形で準占有者というものが考えられております。

 また、これに対して、その人に弁済することについて銀行が善意無過失であると。これは、取引の窓口であれば担当者がどういう注意を尽くしたかというようなことで判断されますが、御指摘のようなカード、機械でやる場合、これはまずは普通は暗証番号の確認でやっているわけでございますが、裁判所の考え方といたしましては、そういう機械払いシステムの場合の善意無過失というのは、機械払いシステムの設置管理の全体について可能な限度で無権原者による払い戻しを排除し得るような注意義務が尽くされていたかどうか。例えば、預金者に向かって、暗証番号を入力すれば払い戻されるのです、そういう意味で暗証番号の管理には十分な注意をするようにというようなことを銀行側が注意喚起をしていったかどうか、そういうようなことも含めて総合的に判断をされる、こういうことになっております。

 以上が払い戻しの場合ですが、ローンの貸し付けの場合には、大きく分けまして、今と同じ考え方をそのまま貸し付けにも適用する考え方が一つございます。

 ただ、払い戻しというのは従来ある債権の弁済ということですが、ローン貸し付けの場合は新たな債務も負担してしまうという側面がありまして、そちらを重視いたしますと、払い戻しの場合とは違って新たな契約がなされたわけであるから、これについては民法上の表見代理の考え方を適用すべきだ。その考え方によりますと、正当なカード名義人であるかのごとき外観が存在するのかどうか、また、その外観の作出についてカード名義人に責められるべき事由があるかどうか、そして銀行が善意無過失であるかどうかという、非常に似てはおりますが、やや違う要件で判断をする。

 この双方の考え方があって、いずれも裁判で採用されておりまして、今どちらが確定的に裁判所の判断だというぐあいには申し上げる状態ではございませんが、そういう考え方で判断がされているところでございます。

中塚委員 というわけで、民法上でどちらが過失があるかということを争うということになっていくわけなんですね。カードホルダーの方は、これは要は、どこで偽造されたかわからないから偽造カードなわけでありまして、落としてその間に偽造されたとかいうんなら、それはもちろんそのカードホルダーにも過失責任というものがあるというふうに思いますが、でも、そういうことではないんですね。

 そもそもキャッシュカード自体は余り人に渡したりするものではありませんし、例えばクレジットカードなんかは、これも第一線の警察の方にお伺いした話ですが、ガソリンスタンドで払うときにクレジットカードを渡す、その間にスキミングされることがあるというふうな話は聞きました。それは確かにむべなるかなと。要は自分の手を離れていってしまうわけですね。デパートで買い物するときなんかでもそうですが、デパートなんかは特に奥に行って会計をしてまた戻ってくるわけですから、その間は自分の見えないところにカードが行ってしまうということはありますけれども、ただ、キャッシュカードの場合は、そういったケースというのは余り想定できない。いつも持っているわけです。最近は、例えばデビットカードなんかで使えるようにもなっていますから、銀行のATM以外でもそのカードは使えるようにはなっておりますけれども、それでも、肌身離さず持っているという意味でいうと、クレジットカードなんかよりははるかに自分の身の回りにあるということですね。

 そういう意味で、私もいろいろな話を聞きますが、多くの場合はカードホルダーに決定的な過失というものがあるかというと、それはそういうふうに思えない例というのが圧倒的に多いわけなんです。

 あと、銀行の方は過失があるのかどうかということになってまいりますと、今民事局長から、機械で払い戻しをするというふうなことでありましたけれども、機械が正常に作動しているんだからということで、引き出されたお金はもうその銀行としては関知しない、それをだれが引き出したのかというのは問題ではないということで、話し合いにすら応じないという例がいっぱいあるわけなんです。

 前回も申し上げましたが、こういった場合に銀行と預金者が民事上では対等の関係で過失の有無を争うということは、確かにそれは民法の世界では理解できなくはありませんけれども、銀行と預金者が果たして対等かといえば、それは決してそうではないわけでありますし、銀行法だって預金保険法だって対等ではないからこそ預金者保護ということをうたっている。やはり、情報の非対称性ということだと思います。預金者が銀行のディスクロージャー誌を見て、端から端まで読んですべてがわかるのかというと、それは決してそうではない。だからこそ、監督庁としての金融庁の役割もあるということになるわけであって、この被害の救済ということについて、きょうからの懇談会等で金融庁としてはどういうふうな問題提起なり指導というものを銀行に対してされるおつもりか、いかがでしょうか。

五味政府参考人 お答えいたします。

 先ほど副大臣から答弁申し上げましたけれども、今御指摘の視点につきましては、銀行における窓口の対応、特に捜査機関との協力などを中心に銀行における窓口の対応を誠実に適切に行っていただくようにということ、それから、責任分担の問題について誠意を持って取り組むようにということをお願いするようにしております。

 各行において、とにかくこれは非常に重要な問題であるということ、それから、これは預金者保護――銀行法の一般的な預金者保護は、むしろ信用秩序を安定させる、金融機関の健全性を確保するということによって預金というものを守っていくという意味での預金者保護でございます。こちらはどちらかというと消費者保護とか利用者保護とかいった、大きな企業と個人である利用者といった、そういう意味での情報の非対称性。ですから、銀行の預金者保護に限らず消費者保護という視点からも大事な話ですので、こういった視点から銀行に対して適切な対応をするようにということを、きょうも、私は先ほど国会に来ておりましたので行かれませんでした、別の者が対応しましたが、あす以降もそういうことで対応しようと思っております。

中塚委員 今局長は、責任分担という言葉があったんですが、責任分担というのは何の責任分担なんでしょうか。銀行と銀行の責任分担の話なのか、あるいは銀行と預金者の責任の分担の話なのか、そこのところはどうなんでしょうか。

五味政府参考人 今申しました責任分担といいますのは、銀行同士の話ではございませんで、預金者の責めに帰すべき事由というのが約款上ない場合、銀行は免責を必ずしも主張しない、こういう約款になっておりますので、この預金者の責めに帰すべき事由があるのかないのかというような点について、真摯に預金者の方というか被害に遭われた方とお話し合いあるいはそういった意見交換というのをしていただくようにと、こういう趣旨でございます。

中塚委員 ということは、預金者に責任があるのかないのかということについて、銀行はちゃんと調べるようにということでよろしいんでしょうか。

五味政府参考人 ケースによって対応がさまざまだと思いますが、銀行においてよく預金者の方から事情を伺うということは必要だと思います。そういう意味で、銀行もよく調べるようにと。それから、預金者の方も自分に落ち度があったのかなかったのか、あるいはキャッシュカードがどういう場面で、人手に渡ったことがあったのかなかったのか、こういったようなことについてももちろんよく説明をしていただく必要があって、それぞれの立場でよく事実関係を確認する、こういう趣旨でございます。

中塚委員 それぞれの立場でということなんですが、今局長、預金者というだけではなく、消費者というふうなお話もされておりましたけれども、しかし、いずれにせよ、銀行と預金者がそんな完全に対等であるということではないと思うんですね、銀行法であれ消費者の保護という意味であれ。であるならば、責任分担ということについても、おのずと責任の割合というものは変わってきて当たり前だと思いますし、何とか被害に遭われた方を救済するための方策ということについて取り組んでいただきたい。

 実は、今、この問題も集団提訴というものが起こるかもしれない、それだけ深刻な課題になってきているんですね。そうやって銀行の方と懇談会を開いていただいてお話をされているということでありますけれども、竹中大臣、ぜひ被害者の救済ということについて、お考えを、あるいはこれからの方針ということについてお聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 前回、中塚委員から御指摘をいただいて、我々も改めてこれは本当に深刻な新しいタイプの問題であるということを認識いたしました。

 これに関しては、今監督局長が申し上げましたように、それぞれの立場で事実関係をしっかりと把握して認識をしながら、それぞれがやはり誠意を持って解決策を見出していかなければいけないという性格のものであろうかと思います。何よりもこの犯罪の全容がどうもわからない。なぜあんなもののにせものがこうも出てくるのか、その事実がわからないというのが背景にございますので、これは捜査当局とも協力して、しっかりと事実を把握する。その上で、情報はしっかりと確認して、双方の立場で誠意を持ってこれは前向きに対応をしていく必要があると思っております。

中塚委員 引き続きこの問題は取り上げていきたいというふうに思います。特に、また銀行の経営者の方が参考人で来られるときもあるでしょうから、その際にも直接私は問いただすようにしていきたいというふうに考えておりますので、この件はきょうはこれぐらいにいたします。民事局長、どうぞ。

 次に、金融機能強化法案の問題について質疑をしようと思います。

 まず、これも前回の質疑の際にお伺いをしたことなんですけれども、過去、資本注入をした銀行が再度過少資本になる、またあるいは破綻をするということについて、いろいろな要因があるというふうにお答えになりました。

 確かに、それはそのとおりで間違いはありませんが、じゃ、そのときの行政の責任というのはどうなんだ、あと、銀行の責任というのはどうなんだということをお伺いしたわけなんですけれども、そのときに竹中大臣は三つお挙げになられて、まずは資産査定が厳格に行われているということ、十分な自己資本があるということ、そして、その自己資本を生み出すもとというのは収益だから、その収益を生み出せるようなしっかりとしたガバナンスがあるということ、その三点をお挙げになられたわけですね。

 では、結局、この三点が欠けていたがために、再度自己資本が不足になり、過少資本になり、資本注入をしなければいけなくなった、またあるいは破綻をしてしまったということでよろしいんでしょうか。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 私が申し上げたのは、この三つの要因というのは、金融再生プログラムをつくる過程で、この三つについてしっかりとさせなければ日本の金融の再生はない、これは今も当然そういう方針で、資産査定の厳格化、自己資本の充実、そしてガバナンスの強化、この精神は今回の法案の中にも反映させていただいているつもりでございます。

 これは、私が申し上げた三点は今の行政全般に係る一つの基準であるというふうに御認識をいただきたいと思いますが、これまでの資本注入を受けた銀行云々に関してはもちろんこういう視点も重要かと思われますけれども、これはケース・バイ・ケースでございますけれども、それぞれに、例えば足利銀行においては、今、調査ワーキングチームを設置をして、いろんな要因を調べております。また、りそなグループにおいても内部調査委員会を設けていろいろ調べております。我々としても、さまざまなヒアリングを行ったり、金融問題タスクフォース等についてフォローアップを行っております。

 こうした中で、それぞれいろんな要因がありますでしょうから、今の一般論は一般論として、しっかりとそれぞれの要因について掘り下げなければいけないというふうに思っております。

中塚委員 さまざまな要因があるということは私もよく承知しているし、理解もできますけれども、ただ、今回、また資本注入の法律案を審議するということに当たって、過去何でだめだったのかということは、やはりそれは審議の前提だと私は思うんですね。

 要は、四十二兆円のお金を使い、上げたものもある、あるいは資産の買い取りに使ったものもある、資本注入に使ったものもある、でも、不良債権問題というものはなかなか解決をしない。だから、四十二兆円を使っても、また銀行が破綻をしたり過少資本に陥ったりするということが、世間の人が、幾ら大臣が金融システムは危機ではない、不安はないというふうにおっしゃっても、やはり何かあるんじゃないか、まだまだおかしいんじゃないかというふうに思う一つの原因であることは間違いないわけですね。そういう意味で、今回また二兆円の枠を張るということになるんですが、やはり過去の問題の総括ということについてはちゃんと行わなければいけないというふうに思うんです。

 それで、私は、金融庁から出てきたレジュメを見て、今までとは違う言葉が出ていたんでびっくりしたんですが、国の資本参加というふうな言葉が出てくるわけですね。今までは資本注入とか資本増強とかいうふうに言われていたわけなんですが、国の資本参加という言葉が出てきておりますけれども、これは資本注入とか資本増強ではなくて資本参加というふうに言いかえる何かの必然性というか、あるいはそのねらいとか意図というものはあるんですか。

増井政府参考人 お答えいたします。

 今回、私ども、そういう資本参加という言葉を使っております。言葉の意味といたしまして、今回の法律、国がそれこそ資本参加をして金融機能を強化しようということでございますが、資本注入というのは、どちらかというと資本を注入したということでございますが、私ども、今回は資本を入れることによって、いずれにいたしましても、経営自体に、もちろん一つ一つに物を言うということではございませんけれども、国が経営に資本参加をすることによって、地域経済を活性化し金融を円滑化する、そういう意味で資本参加という言葉を使ったわけでございます。

竹中国務大臣 法律用語ないしは法律的な概念としては、これは変わりはないというふうに思います。

 私たちのある意味でニュアンスというか思いを酌み取っていただければと思う部分でございますけれども、危機対応としてはこれはまさにキャピタルインジェクションでありますから、それを注入することによってしっかり保つ、そういうようなニュアンスになるんだと思います。

 資本参加はパーティシペーションになるのか、むしろここの場合はインベストメントみたいな意味も込められるのかもしれませんが、これは危機の対応ではなくて強化をするときに政府がそれを後押しする、そういうニュアンスでこういう言葉を使わせていただいておりますけれども、法律的な概念とかそういう意味ではこれは変わりがないというふうに御理解をいただきたいと思います。

中塚委員 法律的な意味云々ということはお伺いしていなくて、今まで資本注入、資本増強と言っていたのが資本参加になったのは、やはり何か違う意図があるのか、政策意図としてこれを使う必然性というのがあるのかということでお尋ねをしたわけなんです。

 この言葉について、私の思いなり感想を述べさせていただきますと、国が資本参加するというか小泉自民党政権が資本参加するということになると、大変に心配だな、不安だなというふうに思いますね。それこそ毎年毎年赤字国債ばかりぼこぼこ出して、これだけ借金を積み上げているような人たちが銀行に資本参加をするということになったら、まともな銀行もだめになるんじゃないのかというふうな思いを禁じざるを得ないわけなんです。そこはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 我々の思いはむしろ逆でございまして、小泉内閣になって不良債権がちゃんと減り始めた、小泉内閣の財政改革によって構造的な赤字、つまり、プライマリーバランスがようやく減り始める、そういう政権でありますので、ぜひ信頼を持って見ていただきたいと思います。

中塚委員 過去の資本注入を行ってきた法律、それに加えて今回こういう枠組みをつくるということですけれども、過去失敗をした、要は注入をした銀行が過少資本になったりあるいは破綻してしまったということで、そのときの法律と今回と一体どう違うんだろうということですね。

 まず、前提として、危機ではないというふうにおっしゃいますね、危機ではないということは、銀行はみんな健全だということが大前提としておありなんだろうというふうに思いますけれども、ただ、それは例えば早期健全化法のときだって、危ないから注入をするということではなかったはずですよね。あのときだって健全だということは前提になっていたわけです。

 だからこそ、相も変わらず申請主義といいますか、金融機関が手を挙げて、お金を下さい、貸してください、株買ってくれ、あるいは劣後ローンを買ってくれというふうな手を挙げるスキームになっているということだと思うんですけれども、私は、入り口のこの審査の基準というのがやはり大変に大きな問題だと思うんですよ。過去に、お金を使ってもだめだった、それはやはり入り口がおかしかったんじゃないのかという議論というのはあってしかるべきだと思うんですね。その後、景気の動向ということもあるでしょうけれども、入り口が果たして適正だったのかどうかということは大変に大きな問題だと思います。

 竹中大臣は、金融再生プログラムをつくるときに、資産査定が厳格に行われているということをおっしゃっていましたし、また、今回の金融機能強化法においても、資産の査定ということについては、適切な資産査定がなされていることというのが審査基準に入っておりますけれども、では、適切な資産査定というのはどういうことをおっしゃるのか。つまり、注入を受けるというふうなことで、例えばある銀行が手を挙げたとする。AとBが合併して今度C銀行になるんですがと、そのC銀行が手を挙げてきて注入を申請するというときに、資産を適切に査定するというのは現実問題どういうことをされるのか。

竹中国務大臣 まず前段でおっしゃったことでございますけれども、過去の資本注入のこと、これは前も申し上げましたけれども、これは長いスパンで政策全体の評価は専門家によってぜひいただかなきゃいけないということだと思います。ただ、今回の対応は、過去の反省で、何か過去がうまくいかなかったから今度はこうだということでは全くないわけでございます。今回は、今の地域経済からのニーズ、新しいニーズに基づいて、新しい状況を踏まえて我々としては枠組みを考えているということでございます。

 ちなみに、過去のものについては返ってこなかったじゃないか、りそなと足利はそういうふうになったじゃないかという御指摘がございますけれども、一方で完済した銀行が三行ございます。安定化法については、多分七割か八割ぐらいは返ってきております。健全化法の注入については、これはまだ評価の途上でありますけれども、これも今一割近く返済の計画を含めてあるわけでございますので、これはやはりそれなりの役割を果たしたというふうに私は考えております。

 後半おっしゃいました、入り口が重要だ、つまり、資産査定が重要だという御指摘は、これはそのとおりであろうかと思います。資本の参加に当たっては、金額が適切なものであるかどうかをチェックしなければならない。したがって、その資産査定は重要な前提になります。このためには、金融機関がみずから厳格な資産査定を行うというのが重要な出発点でありますし、そこに会計監査人による厳正、適正なチェックを受ける、これを確認する必要がございます。

 同時に、資産内容、資産査定の内容について当局が検査によって確認する必要もあると思います。このために具体的にどうするかといいますと、経営強化計画の提出に当たりましては、まず直近の財務諸表とその適正性について経営陣が宣誓した書類を出してもらう、会計監査人による適正なチェックが行われている旨の書面を提出してもらう、さらに、当該直近の財務諸表が当局による検査でその適正性が確認されたものであるか、または当局による検査の内容が反映されたものである、そういうことを求めるというふうにしているわけでございます。

中塚委員 今の答弁の中で、前半の部分で、過去の失敗を踏まえたものではないということをおっしゃいましたが、それはもちろん政策目的が違うということを言いたいんでしょうね。早期健全化法とこの金融機能強化法は政策目的が違うんだということをおっしゃりたいんだと思うんですけれども。それは、私がそのことを理解するしないということは別にして、政策目的が違うというのは、立法者というか提出者としてお話しになる分には構いませんけれども、ただ、私が申し上げているのは結果責任の部分の話であって、要は立法の趣旨なり政策目的というものが前の早期健全化法とこの金融機能強化法と異なっていたとしても、つまり、現実問題としてうまくいったところもあるというお話だったですが、うまくいかなかったところもあるわけですね、それがなぜなのかということについての検証というのは必要だというふうに思う。

 だから、何かの反省の上に立ってやっているわけではないというふうにおっしゃったのは、政策目的が違う場合には何かの反省に立って政策目的を変えたということではないという意味だと思いますけれども、そうじゃなくて、国民の税金というものを使うということで、国民の税金というものを使い、それが失敗して返ってこなくなってしまう問題については、やっぱり反省の上に立ってやってもらわなければいけないということなんですね。そのことを一つ申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一つ、資産の査定の話なんですが、今のお話を聞いておりますと、直近の検査ということですね。直近の検査ということですが、では、申請があったときに検査を改めて行うということではないのかということが一つ。

 あともう一つ、ディスカウントキャッシュフローですね、DCF方式というものをおとりになるのかどうかということについてはいかがですか。

増井政府参考人 今の、検査のタイミングのお話でございます。

 新しい公的資金制度につきましては、先ほど大臣がお話しされたようなことでやるわけでございますが、いろんなケースが考えられると思います。

 例えば、申請前の直近の決算に対する検査が既に行われて、当該直近の決算の適正性が検査で確認された上で当該決算に基づく申請がなされたケース、さらには、その直近の決算が前期の決算に対する検査結果を反映している場合に当該直近の決算を前提に申請がなされたケース、こういったケースにつきましては、審査後改めて申請を行った金融機関に検査に入るまでもなく、検査によって確認された決算に基づいて審査がされるものというふうに考えております。

 一方、こういったケースに当てはまらない場合もあると思います。そういった場合には、例えば当局が申請あるいは事実上の予備的な申請を受けて検査を行って、直近の決算について変わりがないことを確認した上でなければ、決算に基づく資本参加の決定は行わないということとするのが適当ではないかというふうに考えております。

 また、検査の内容につきましては、基本的に、私どもが公表しております検査マニュアルに基づいて行うということでございます。

中塚委員 ということは、合併をするということになって公的資金の投入申請というか、皆さん方の言葉で言うところの国の資本参加申請があった場合に、そのときに検査をするということもケースとしてはあり得るということでよろしいんですかね。

増井政府参考人 場合によってはそういうケースもあり得るということだと思います。

中塚委員 次に、合併をしない場合のことを伺いたいんですが、合併をするときは合併をして低下する自己資本比率を補う、要は、私どもの党の会議に資料提出をいただきましたけれども、自己資本比率の高いところと低いところを合併させるということで合併をした場合に、高いところまでは引っ張り上げてやる、そういう資本注入の仕方をされるということでよろしいんでしょうか。

増井政府参考人 もちろん、いろんなケースが考えられると思いますが、そういったケースもあるかもしれませんが、あるいは合併をした後に新しいビジネスモデルを考えた結果さらに自己資本が必要だということになりますれば、さらにそれを上積みする、そういった申請もあり得るかと思われます。

中塚委員 それは、要は経営強化計画なり、あるいは銀行が申請をしてくるわけですか。何%まで自己資本をかさ上げしてほしいということを申請してくるということでよろしいんですか。

増井政府参考人 基本的にそのとおりでございます。

 要するに、金融機関が申請をしてきまして、そのときの資本の量というのは、今申し上げましたように、金融機関だとか地域経済の状況によってさまざまでございますけれども、いずれにいたしましても、金融機関が地域経済において現状よりリスクをとって金融機能を発揮するために十分な資本の量を確保するという考え方でございますので、そういった考え方で、申請が来れば、もちろん厳正な審査の上でございますが、それを認めるということもあると思います。

中塚委員 合併をしない場合、単体の場合はどうなんでしょうか。単体の場合も同様に申請によって自己資本比率のかさ上げというのを行うんでしょうか。

増井政府参考人 単体の場合でも同様でございます。

中塚委員 護送船団行政ではない、ルールに基づく公平で透明な行政を目指すということだったと思うんですけれども。

 今、検査のお話と自己資本比率のかさ上げのお話をお伺いをしたわけなんですが、そのことも含めて、もう一つお伺いしてからその基準ということについて最終的に伺いたいんですが、この審査基準で、計画の中身には収益性、効率性等の数値目標というのを書くことになっておる。しかも、その審査の基準には収益性、効率性等の向上が見込まれることというふうに書いてあるということなんですが、それはどういう基準によってこの収益性とか効率性が向上すると見込まれると判断をするんですか。

増井政府参考人 御指摘のように、収益性、効率性についての向上が見込まれるというのは審査基準になっておりますが、まず、この経営強化計画の記載に求める経営改善の目標について、収益性については、具体的に申し上げますと、私どもはコア業務純益、ROAという指標を考えております。効率性については経費率を考えております。その他の指標、数値目標といたしましては、不良債権の処理に関する数値目標を求めることを考えております。

 計画でそういった数値が出てくるということでございますけれども、それに対する審査基準といたしまして、まず、収益性の向上につきましては、今申し上げましたように、コア業務純益、ROAの向上幅が、同一業態のうちコア業務純益、ROAが比較的上位の水準にある、例えば上位三〇%程度であろうというふうに考えておりますけれども、その金融機関のコア業務純益、ROAの向上幅を上回るといったような審査基準を考えたいと思っております。さらに、業務の効率性につきましては、経費率が直近事業年度の水準を下回ること、不良債権の処理に関しては、国が資本参加後、不良債権処理が進展することを求めることが考えられます。

 ただ、これにつきましては、具体的には、地域金融機関について、やはり不良債権比率の水準がばらつきが大きいわけでございまして、一律の基準は適当でないということでございますので、数値目標の最低基準として、少なくとも資本参加時の不良債権比率より減少させるということを考えております。

 以上でございます。

中塚委員 今は、何を指標にするか、どういったものを数値目標に設定するかというお話はあったと思うんですが、ROAが果たして目標どおりに向上するかどうかということについてはどうやって判断をするのかというのが私の聞きたいことなんですけれども。

増井政府参考人 先生御指摘のように、確かに、目標は立派でもそれができなければ意味がないというのは、おっしゃるとおりだと思います。したがって、その場合に、どういうビジネスプランを立てるかというのが非常に大事だというふうに思っております。

 ビジネスプランの審査に当たっては、確実性の高い収益力強化策として、経費リストラの実行だとかあるいは既存の事業の選択と集中による収益力の強化、そういったことを図ることによりまして目的を達成できるかどうかを重視するというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、こういったビジネスプランがうまく機能していくかどうかということについて、先ほど来御説明を申し上げておりますけれども、第三者の専門家の意見を聞きたいと思っておりまして、審査会を設けまして御意見を聞きたいというふうに思っております。

中塚委員 質問すると、いろいろな新しい言葉がぼこぼこ飛び出してきて、ビジネスプランというのは何のことなんですかね。ビジネスプランというのは、銀行が何かをやるプロジェクトのプランの話なのか、銀行そのものがこれからどういうふうな銀行に変わっていこうということなのか。何なんですか、そのビジネスプランというのは。そのビジネスプランによって、ROAが、それがある目標を設定して、そのとおりになるかどうかということを左右するという、その相関関係についてもちょっとよくわからないんですけれども。

増井政府参考人 先ほど来御説明申し上げておりますけれども、経営強化計画というのを出していただくことになっています。そういう中で数値目標はもちろん入っているわけですが、その数値目標を達成するための方策というのを内容で書いていただくということであります。

 そこで、いろいろなビジネスプラン、先ほどちょっと私申し上げましたが、収益力の強化策、経費リストラの実行等々ということを申し上げましたが、そういったものを書いてもらいまして、それが全体としてビジネスプランになる。そういったことで、実際にその数値目標が達成できるかどうかということをしっかり審査をする、そういうことでございます。

中塚委員 だから、その収益力を強化するための方策というのがまさに数値としてのROAになってくるわけでしょう。だから、収益力を強化するための方策というのが妥当かどうかを判断するということが一番大事になるわけですね。それによって数字が出るということだけでしょう、数値目標というのは。だから、私が聞いているのは、それを妥当だというふうに判断するのはどういう基準によるのかということを聞いているわけなんですよ。

 例えば小学生が、今、国語の成績が三で、これを五にしますという、それは確かに数値目標ですけれども、それをどういうふうに三から五にするのか。子供がこういう計画を立てますと、では、その計画が果たして妥当なのかどうかということは何によって検証するのかという話を聞いているんです。

増井政府参考人 先生おっしゃるとおり、受験生が幾らプランだけ出しても、そのとおり実力がつかないではないかというのは、おっしゃるとおりだと思いますが、いずれにいたしましても、そういったビジネスプランについて、一つは、先ほど申し上げましたが、金融機能強化審査会というものを設けて、ある意味ではプロの家庭教師なのか予備校の先生か知りませんですけれども、しっかり見ていただくということだと思います。

 それに基づいて、この計画でしっかりやっているかどうかというのは、一つは、これもたびたび御説明をいたしましたが、ディスクロージャーによるパブリックプレッシャー、あるいは、かなりできが悪ければ、監督上の措置を講ずることによってしっかり計画を実施してもらうということではないかというふうに考えております。

中塚委員 そのくだんの審査会なんですけれども、それは、要は経営強化計画が履行されているかどうかということをウオッチするわけですね。

増井政府参考人 審査会につきましては、初めに、この決定を行う際に、必要的に意見を聞く場合と必要に応じてという場合がございますけれども、基本的に意見を聞くことになっております。なおかつ、履行状況についても意見を聞くということになると思います。

中塚委員 その審査会なんですけれども、例えばどういった方をメンバーとして考えておられるのか、個別の名前は無理でも、こういう仕事の人に頼もうと思っているとかということぐらいはあってしかるべきなんだろうと思うんですが、そこはいかがなんでしょう。

増井政府参考人 金融機能強化審査会でございますけれども、まだ法案の御審議をいただいている途中でございますので、具体的な名前ということではございませんが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、収益性等の数値目標あるいはその裏づけとなるビジネスプランの妥当性や実現可能性について目ききが求められるということでございますので、そういった観点から、法律上は金融、法律、会計等に関してすぐれた識見を有する者五名以内から成る金融機能強化審査会を金融庁に置くというふうになっておりまして、そういう観点から人選を進めるということだというふうに考えております。

中塚委員 竹中大臣、大変大事なところだと思うんですよ。要は、経営の強化計画というのを出してくる、それを審査して、資本注入をする、経営参加をするということを決めるということになるわけですよね。それで、その経営強化計画というのが果たして本当に妥当なものかどうかということは、皆さんの立場からいうところの金融機能強化をする上で一番重要なポイントだと思うんですね。だって、それがだめだったら、結局のところ、また破綻をしたりというふうなことも十分に起こり得るわけだし。

 あえてもう一つお聞きしますが、この経営強化計画というのを持っていったと、ところが、その審査会でこんな計画じゃだめだということではねられることだってあるということですよね。

竹中国務大臣 委員まさに御指摘のとおり、大変重要な部分でございます。今、局長の方からきちっと説明させていただいたつもりでございますけれども、もう一度ぜひ御確認をいただきたいと思うんです。

 これは、経営強化計画が出てまいります、その中の収益性、効率性等の数値目標の中身についてはかなり詳しく先ほど局長の方から御説明をさせていただきました、しかし、それが絵にかいたもちではだめだ、ROA、業務純益がどのぐらい上がるのか、それを可能にする方策は何なのかというのがいわゆる数値目標を達成するための方策、これをビジネスプランというふうに呼んでいるわけでございます。ビジネスモデルというのは別に使われる場合がありますが、これはもうちょっと抽象的な概念で、経営の一つの全体の姿。ここで言う数値目標を達成するための具体的な方策がビジネスプランだというふうにお考えください。

 例えば、売り上げを伸ばすということであるならば、そのために従業員をふやすのか、営業拠点をふやすのか、どこどこと提携するのか、そういうことが書かれているはずのものがビジネスプランでございます。

 そこで、もう一つ、先ほどから中塚委員がお尋ねになっているのは、それはかなり重要な経営判断みたいなものだから、一体このビジネスプランが本当にうまくいくかどうかという判断をだれがどうするのか、ここが我々が言う目ききの部分であります。その目ききというのは、これは役人だけでできるとは思いませんので、専門家のお力をかりたい、そのために、このための委員会をつくりたいというふうに考えるわけでございます。これは、会計の専門家、法律の専門家、そういう方々五人程度に集まっていただいて、これは非常勤ではございますけれども、しっかりとしたいわば目ききの部分の役割を果たしていただきたいということでございます。

 これはしかし、当然のことながら、ここは厳しく審査をしていただかなければいけないということになります。審査基準を満たさない場合は国が資本参加することはできない、これは当然そういう姿勢で臨まなければいけないと思います。

 例えばですけれども、収益性の向上度合いにどう見ても飛躍がある、今までここで来たものがぽんと急にこんな高い収益性を盛り込んでいる、これはとても説明できるものではないではないか、そういうものがもし出てきたら、これはちゃんとはねなければいけないというふうに思います。その前提となる財務状況について適切な資産査定がなされているか、先ほど御質問いただきましたが、そういった査定が当局として十分確認できなかった、その場合もこれはしっかりとはねなければいけない。

 そういうために、我々としては、しっかりとした審査、目ききも活用した審査を行う必要がある、そのための仕組みをつくっているつもりであるということでございます。

中塚委員 断られることもあるということでよろしいわけですよね。いいですね。断られることもあると。断られた銀行というのはどうなるのかというと、それは、要は収益力が向上しない銀行だということになって、恐らく悲惨なことになるんだろうなというふうに思うんですね。そうすると、必然的にこの審査委員会なるものは申請があったものは認めざるを得ない、実質的には。

 もう一つは、申請があったら認めなきゃいけないということは、事前審査が必要になってくるということなんだろうというふうに思うわけです。予備的審査を、事前審査を皆さんの方でおやりになって、この計画だったらまあ妥当だろうというふうなものを審査会に持っていけということになる。その結果として、先ほどお伺いをいたしました、例えば自己資本の問題にしても、銀行からの申請に応じてかさ上げをするということでありましたが、結局、自己資本を何%まで上げるのかということも当局の恣意的な裁量によって決まることになってしまうのではないのかというふうな疑念を持たざるを得ないわけですが、そこはいかがですか。

竹中国務大臣 それこそ尊敬する中塚先生でございますが、今の疑念というのは、ちょっと、私たちが今御説明申し上げていることからジャンプがあるのではございませんでしょうか。そういうことがないように、我々はしっかりと運営をいたします。

 もしそれを出してきてだめだったらどうかと。これは、このプランはだめだ、だめなものはだめだというふうに我々は当然言わなければいけません。しかし、そんなことはなく、それによってなあなあで全部進んでいくのではないかと。そういうことは断じてございません。そのためにも第三者の目ききも活用しておりますし、基準等々も非常に厳格なものにしたつもりでございます。

中塚委員 それはちょっと考え違いなんじゃないのかということを今おっしゃいましたが、ということは、逆にこういうことは言えるんではないですかね。組織再編特措法というのが、要は資本増強としては一件しか使われなかったということですね。何でだと思われますか。

 要は、組織再編特別措置法をつくる立法の趣旨として、政策目的として、合併をさせるあるいは資本注入をするということを目的に特別措置法までおつくりになられたということだと思うんですが、合併手続の簡略化なんかでは割と使われているというふうに聞いておりますけれども、資本注入ということについては使われていない、一件だけだというふうに聞いているんですが、それはなぜだというふうにお考えになりますか。

竹中国務大臣 これはまだ一年程度のことでございますから、時間の問題もあろうかと思います。加えて、御承知のように、今の組織再編の特措法の問題というのは、自己資本比率が高いところと低いところが合併するとして、その差を埋めるだけでありますから、これが、例えばですけれども、ほとんど同じところが合併する場合は今の枠組みに入る余地もないわけでございます。そうしたことも勘案して、非常に大きな開きがある場合はこれを申請するというインセンティブが働くでありましょうけれども、そうでない場合は余り働かない。これは一つの考え方として申し上げているわけですが、いろいろな要因があろうかと思います。

 しかし、時間とともにこれが特に手続等の面でしっかりと使われているという点も事実かと思います。

中塚委員 ということであるならば、結局、この法律だって使われないということですよ。金融機能強化法だって使われないですよ。組織再編特措法だって資本注入は一件だけだった。これを出したって使われない。皆さんが裁量行政を否定されればされるほど、こんな法律、だれも頼んでくるやつはいないということになりますよ。

 昨年の生命保険の予定利率の引き下げもそうだったですが、何でこんな使われない法律ばかりいっぱいつくるんですかね、本当に。優秀な行政官僚のいっぱい集まっている金融庁と、世界に冠たる経済学者の竹中大臣までいただいておいて、何でこんなに使われない法律ばかりつくって非生産的な仕事をしているんだということだと思っておりますが、ちょうど時間になりましたので、きょうはこれで終わらせていただきます。

田野瀬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十九分散会


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