衆議院

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第23号 平成16年5月11日(火曜日)

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平成十六年五月十一日(火曜日)

    午後二時二十二分開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 西野あきら君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 中塚 一宏君

   理事 長妻  昭君 理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    川崎 二郎君

      熊代 昭彦君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西田  猛君

      林田  彪君    原田 令嗣君

      増原 義剛君    宮下 一郎君

      森山  裕君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    小泉 俊明君

      鈴木 克昌君    高井 美穂君

      武正 公一君    津川 祥吾君

      津村 啓介君    藤井 裕久君

      馬淵 澄夫君    松原  仁君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣        

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   財務副大臣        山本 有二君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月六日

 辞任         補欠選任

  木村 隆秀君     森山  裕君

同月七日

 辞任

  永田 寿康君

同日

            補欠選任

             川崎 二郎君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  仙谷 由人君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  高井 美穂君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

五月七日

 消費税の増税反対に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一九三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)

 株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長増井喜一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。

 証券取引法改正に関する質問をさせていただきたいと思います。

 具体的な質問をさせていただく前に、先日、ジャスダックの社長が辞任を表明されたという報道がありました。これは証券市場に関して非常に大きな影響を与えたんではないかと私考えておりますので、具体的な質問に入る前に、何点か、大臣にこの件に関して御質問させていただきたいと思います。

 このジャスダックの社長が辞任を表明するに至った一連の騒動についてなんですけれども、これは、証券取引に積極的な既存の一般投資家はもとより、今後証券取引市場に新たに参加してくる、今まで証券市場に対して若干違和感を持っていたような、これから投資家になる普通の人たちに対しても、証券市場の複雑性だったり証券市場の不透明性といったものを感じさせてしまって、証券取引そのもの、全部に対してある意味ネガティブな印象を与えてしまう事件だったのではないかと私は考えているんですけれども、今回の騒動に対して大臣の御所見をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 村越委員御指摘のとおり、今回のジャスダックの社長が辞任に至った件というのは、取引関係に係る者全員について、やはり改めて身を引き締めて当たらなければならないという思いをもたらしたというふうに私自身も考えております。

 そもそも、ジャスダックでございますが、これは御承知のとおり、日本証券業協会の業務委託先でございます。ちょっと形式的なことを申し上げますと、証券業協会の業務委託先でございまして、金融庁として直接監督するという対象にはなっておりません。しかし、証券業協会の特別調査委員会、これは委員長は日野元金融庁長官が行っておられますけれども、そこが行いました調査によりますと、法令違反はなかったんだけれどもジャスダックの社内規定等に抵触している、全体として証券市場の信頼性、公正性を害するものであったという指摘がなされているというふうに承知をしております。

 金融庁としましては、証券市場に対する信頼性を高めるための各種の措置をこれまでも講じているところでございますけれども、すべての市場関係者がその重要性をこういうことを機会に改めて認識しまして、一層の努力をしていく必要があるというふうに改めて思っているところでございます。

村越委員 今回の騒動の発端というのは、辞任を表明された社長が節税目的でクロス取引ということをなさったと。ある証券の価格を確定するために瞬時に売ってまた買うということだそうですけれども、その取引そのものには違法性はないというふうに私が調べた限り言われているそうですけれども、おっしゃるとおり、業界のトップが不透明な行動をされるということになりますと、やはり業界全体に不信感を招いてしまうのではないかと思うわけです。

 公正で透明な取引を確保していくことによって市場を活性化していくという立場から見て、今後、業界に対して金融庁としてどのような指導を行っていくおつもりなのか。例えば、そういった責任ある立場の人、今回社長なわけですけれども、役員だとかという、そういう立場のある人たちに対して、具体的に自粛といったようなことを求める指導をされていくおつもりがあるのでしょうか、お聞かせいただければと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、今回のクロス取引というものでございますけれども、これは取得価額が不明な株式を保有する個人投資家などが取得価額を明らかにするために行うというものでございまして、法令上問題になるというものではないというふうに考えております。したがって、その取引自体は特段指導の必要がある状況になっているというふうには考えておりません。

 また、先ほどちょっと大臣が御説明をいたしましたが、形式的にはジャスダックというのは日本証券業協会の委託先でございますので、当局として直接監督する関係にはないわけでございますが、証券業協会から店頭登録銘柄の売買取引等を禁じた社内規定の適正な運用を確保するようジャスダックに対しても指導しているというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましても、市場の関係者がそういった証券市場に対する信頼性を高めることの重要性というようなことをよく認識して努力をしてもらう必要があるというふうに考えております。

村越委員 今の御答弁に関連して、もう一点だけお伺いをしたいんですけれども。

 取得価額を確定する意味でのクロス取引というのは問題ないと。ところが、今回のように専ら節税の目的でクロス取引をするということは従来行政側は黙認をしてきたというような報道がされておりますが、今後もこういったスタンスでこのクロス取引を考えていかれるのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるクロス取引の関係につきましては、証券業協会が会員に対して通知を行っております。平成十二年に行っておりますけれども、この通知というのはクロス取引を推奨するものではないと書いてありますが、その中で、取得価額が不明な株式等を保有する個人投資家の不安の解消を図るためのものであって、これを営業推進に利用する等、いたずらに社会的批判を受けることのないように慎重に対応してほしいということを証券業協会の方で会員の方に通知をしているというようなことをやっているわけでございます。

村越委員 今の御答弁を要約すると、今後も黙認をされるということになるのかなと思っているわけですけれども。

 次の質問に移らせていただきますが、証券会社の自主規制に関してお伺いしたいんですけれども、証券会社によっては現時点で役員の株取引を原則禁止するなどの自主規制を行っているというふうに承っています。私の友人でも証券会社に勤めている人がいるんですけれども、自分は取引ができないんだなんて言っていましたけれども、こういった現状に対してどのようにお考えなのか、お答えください。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 法令上、証券会社の役員または使用人が、職務上知り得た特別の情報に基づいて、また、専ら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買等をする行為等を禁止する規定があるわけでありますが、証券会社においては、今委員からも御指摘がございましたように、役職員の株式の取引について、さらに各証券会社自身の判断に基づいて何らかの自主規制を行っている場合がある、このことについては承知をいたしているところでございます。

 証券市場に対する信認を高めていくためには、まず証券会社及びその役職員、関係者が信頼に足るものでなければいけないというふうに考えているところでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、証券取引等監視委員会による検査などによりまして法令違反行為が発見された場合には厳正に対処する、こうしたことを通じて、より公正な市場となるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。

村越委員 今度は同様に銀行に関してお伺いしたいんですけれども、今度の法案、この改正によって、銀行が証券の仲介業務を行うことができるように法案が通ればなるわけですけれども、これは、要するに、銀行が証券業界のいわば当事者になるわけですけれども、そうなった場合、銀行の役員の株取引についても証券会社と同様に節度を持つ必要が出てくるのかと私は思うんですが、これに関してはいかがでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、今回銀行が証券仲介業務を行うということでございますので、そういった節度の問題というのは出てくるかと思います。

 まず、銀行等の役職員の行う株取引につきましては、現行におきましてもインサイダー取引規制等の適用がございます。ただ、今、今回の証券仲介業務の解禁に伴いまして株式等の取り扱いが可能となることを踏まえまして、職務上知り得た特別の情報に基づいて、または、専ら投機的利益の追求を目的として株式等の売買等をする行為を法令上禁止するということで考えております。

 それからもう一つ、証券業協会の定める自主規制がございますが、これは、株式等の取り扱いを行う証券会社は、内部者取引の未然防止を図るために役員及び従業員がその業務に関して取得した発行会社に係る未公開情報の管理、顧客管理及び売買管理等に関する社内規則を策定するなど、内部者取引に関する管理体制の整備に努めるものとする、そういった内容の自主規制がございますが、今回、証券仲介業の解禁に伴いまして、証券業協会におきましても、この規定の証券業務を行う銀行等に対しての適用についても検討されることとなるというふうに考えております。

 また、いずれにいたしましても、証券仲介業等の証券業務を行う銀行等におきましては、こうした点も踏まえまして、取引の仲介者として、証券業に対する信頼を失墜しないための内部管理体制の構築など、適切な対応がなされるものというふうに考えております。

村越委員 これは素朴な疑問なんですけれども、株取引が非常に好きな銀行員もたくさんいると思うんですね。銀行が証券の取引仲介を始めたおかげで、銀行員の株取引というものが、法的なものなのかそれとも自主的なものになるのかわかりませんが、そういったものによってある意味制約というか規制が加えられるようになった場合、そういう銀行員からすれば非常にいい迷惑だと思うんですが、これに関してはどうお考えでしょうか。

竹中国務大臣 個人の自由と市場の信頼性を確保するための枠組みをどうバランスさせるかということに基本的には尽きるのだと思っております。

 今局長から答弁させていただきましたように、銀行等の役職員が行う株取引については、現行でもインサイダー取引の規制がかかって、今回、協会が定める自主規制の対象範囲に銀行が入ってくる。もちろん、仲介業を行う銀行は銀行として内部での規約等々しっかり行っていく。これは、その意味では業務を拡大するに当たって必要な枠組みの整備である。そこは、先ほど申し上げたような二点のバランスをとるような格好で、ぜひしっかりとやっていっていただきたいというふうに思います。

村越委員 ありがとうございます。

 では、これより法案に関する具体的な、個別的な質問をさせていただきたいと思います。

 今回提案された改正案なんですけれども、先ほど来お話に上がっているとおり、銀行等の証券仲介業務を解禁することがいわば肝になっているわけです。私は、これに関しては非常に慎重な議論が必要なのではないかと考えています。

 銀行業務と証券業務というのが従来切り離されていたのは、預金者保護の観点から銀行にリスクの高い業務をさせないためだ、そしてもう一つは利益相反の防止のためだ、そしてもう一つは銀行のいわば優越的地位を利用しての産業支配を避けるためだ、そういったおよそ三点の理由があったと思うんですけれども、私は、これ以上に問題だと考えているのは、銀行に来る預金者というか顧客の人たちが、この銀行の証券取引仲介の解禁によって非常に混乱に陥るのではないかというふうに危惧をしております。なおかつ、今回の法案によって顧客が得られるメリットというのは明確でなく、むしろ混乱によるデメリットの方が大きいのではないか、私はそういうふうに考えてしまうわけです。

 銀行にリスクが集中している、間接金融に偏った我が国の現状において、国民の個人貯蓄を投資に向かわせる施策が必要だ、そういった立法目的に関しては私も同意見でして、正当だと思うんですけれども、果たして銀行が証券取り次ぎをすることでその目的が達成されるのか、つまり、手段として正当なのかどうか、私はそういうふうに考えてしまうわけです。つまり、疑問に思ってしまうわけです。今回の解禁によって混乱が生じて、投資に対する不信感を国民に仮に与えてしまったとすれば、さらに投資に対する積極性というものがなくなってしまって、かえって逆効果になってしまうおそれがあるのではないかと思っているわけです。

 もう一つ、ワンストップショッピングのニーズにこたえて利便性を高めるんだというような意見もあるようですが、これについても実は異論がございます。

 専門家と申しますか大家でいらっしゃる竹中大臣に経済学のお話を引用というか援用して議論を吹っかけるというのは、まことに天につばを吐くがごとき愚行であり、非常に僣越なんですけれども、経済学に代替財と補完財という概念があると物の本には書いてあります。この表現が的確かどうか私はわかりませんけれども、ワンストップショッピングによる利便性というのは、補完財というものがいっときに、同時に手に入ることなんじゃないかなと思うわけですね。例えば肉を肉屋さんに買いに行ったら、そこに焼き肉のたれが売っている。例えばハンバーガーを買いに行ったら、そこにポテトが売っている。そういう状況は、消費者にとって非常に便利な状況だと言うことができるわけです。

 果たして、こういった状況と比較して、銀行で預金もできるけれども証券も買える、これがワンストップショッピングとして本当に便利なのかどうか。誤解を恐れずに言うならば、証券と預金というのは代替財なのではないか、補完財ではないんじゃないかと思うわけですね。そういった状況の中では、顧客は証券の利回りと預金の金利を比較してどっちを選ぶか決めるわけですね。つまり、そういった状況では、証券と預金というのは相互に競合する商品なのではないかと言うことができると思います。

 そういうふうに申し上げると、例えば喫茶店に行けばコーヒーと紅茶が売っているじゃないか、のどが渇いて喫茶店に入った人はどっちでも選べるじゃないか、喫茶店では代替財を一緒に売っているじゃないかという反論が容易に出てくると思います。片方だけしかなかったら不便じゃないかと言うことができるのかと思います。

 けれども、例えば喫茶店に行って、コーヒーとか紅茶という財が大体同じ程度の値段なんだということを、消費者は多分暗黙のうちに知っているわけです。そういう状況があるから、全く問題がないのではないかと言うことができるのだと思います。

 いつも紅茶ばかり飲んでいる人が、喫茶店に行って、たまにはコーヒーを飲んでみようかと思って注文したとします。そのときに、お会計のときにコーヒーは三万円ですと言われたらびっくりするわけですね。これは必ず大きなトラブルになるわけです。お店から言わせれば、値段を最初に確認しなかったおまえが悪いだろうと言うでしょうし、より利益性の高いものをお店は売りたいわけですから、お客様、この商品はいつもあなたが飲んでいる紅茶の百倍の値段なんだけれどもよろしいですかと確認するわけはないわけですね。

 極端な話をしましたけれども、今回、銀行において証券を売ることができるようになる。銀行における預金と証券投資に関しては、こういった状況と同じようなトラブルが生じるのではないかと私は考えてしまうわけですね。

 繰り返しでしつこいようですけれども、例えばハンバーガーを買いに行って、ハンバーガーと一緒にポテトはどうですかというような勧誘は許容範囲だと思うんですね、そもそも補完財であるわけですからいいんだと思うんですけれども。ハンバーガーを買いに行っているのに、ハンバーガーよりも握りずしの特上はどうですかと勧めるのは明らかにまずいわけですね。

 銀行において証券仲介業務というのがどれぐらい積極的に勧誘をするようになるのか、これはわかりませんけれども、銀行の窓口に行って二百万円持っていって、よろしければ隣で証券も売っていますから、あなたは百万円預けて百万円株を買ってくださいというふうに仮にやったとすれば、やはりお客さんが混乱するんじゃないかと思うわけですね。

 今までの銀行というのは、今非常にいろいろ問題があるものの、辛うじて安心できるところだと思うんですね。普通預金だろうが定期預金だろうが、銀行に預けているわけには一向に変わりがないわけですから、今までトラブルはなかったと思うんですね。そういった、いわば身近な金融機関で、今までのリスクの低い金融商品である預金と、非常にリスクの高い株式というか証券投資を同時に扱うことになるわけですから、この改正案というのは非常に慎重に議論する必要があるのではないかと考えてしまうわけです。

 ちょっとつまらない話をしましたが、そういった私の問題意識に基づいて何点か以下に質問させていただこうと思います。

 肝である証券仲介業務の解禁についてまずお伺いしたいんですけれども、証取法そもそもに関してお伺いしたいんですけれども、この法のそもそもの目的というものを改めて確認の意味で伺いたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 証券取引法は、その第一条で目的の規定がございます。その趣旨を申し上げますと、証券取引法は、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめるとともに、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的としているということでございます。

村越委員 さらにお伺いしたいんですけれども、今回の改正の目的といいますか、もっと言えば、銀行による証券仲介業務解禁の点に関して、その目的がどこにあるのかということをお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 村越委員からは、補完と代替の関係という非常に格調高い概念で問題意識をお示しいただきました。必ずしもそういう問題意識で私自身も見ていなかったものですから、大変啓発された面がございます。

 時間がございましたら後で少し御答弁をさせていただきたいと思いますが、とりあえず、今の直接のお問いでございます改正を行う目的ということでありますけれども、日本の証券市場においては、これは委員も御承知のとおり、間接金融へのウエートが非常に高まっている、それがどうも、ポートフォリオ等々から見てもさらにこれから進化していく余地が非常に大きいのではないだろうか。そのためには個人投資家の証券市場への参加を促進していく、そういうインフラの整備等々、証券市場の構造改革をやはり推進していくことが時代の流れとして必要である、かつまた、それが急がれるという状況ではないかと思っております。

 今申し上げたような認識のもとで、金融審議会の第一部会におきまして、ビッグバン改革の成果を検証しながら、今の段階で必要な制度改革の方向性というのはどういうものかということに関して非常に精力的な御議論をいただきました。その結果、昨年の十二月の二十四日に「市場機能を中核とする金融システムに向けて」という部会の報告がなされているところでございます。

 我々としましては、この報告を踏まえまして、金融資本市場の基盤整備のために三月五日に証券取引法の一部改正法案を提出させていただいた、そういう目的及び経緯でございます。

村越委員 わかりやすく言えば、だれもが投資しやすい市場の整備、それから市場参加者のすそ野を広げるというのが目的になっていると思うんですけれども、そういったことをするメリットというのがどこにあるのか、さらに突っ込んでお答えいただければと思います。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今委員御指摘がございましたように、だれでも投資しやすい市場の整備あるいは市場参加者のすそ野を広げていく、このメリットでありますけれども、これは、やはり貯蓄から投資への流れというものを加速させて、そして投資家側にとっては証券投資が容易となって、資産運用の選択肢が広がっていく、多様化していくということであろうかと思いますし、一方、資金の需要者側にとってはリスクマネーというものを円滑かつ効率的に調達することができるようになる、こうしたメリットがあるというふうに思っております。

 こうしたことが、金融システムの改善強化、ひいては日本経済の発展に資することになると考えているところでございます。

村越委員 今御答弁の中で、金融システムの改善強化というお言葉がありましたけれども、前回審議していた法案もそうでしたけれども、我が国の金融システムというか金融機関を取り巻く状況というのは、認識の違いはあるとは思うんですが、いまだ健全な状態にあるとは言えないというのが一般的な認識だと思います。

 そういった状況の中で、銀行はそもそも本業に専念すべきだろう、他人の仕事にしゃしゃり出ている場合じゃないだろうというふうにも考えてしまうんですけれども、銀行が本業に専念すべきだという指摘に関してはどのようにお考えでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、銀行が本業であります銀行業を健全かつ適切に運営するということはもとより重要なことであるというふうに私どもも考えております。

 ただ一方で、現在の金融システム、間接金融に偏った我が国の金融システムのもとで、銀行などにリスクが集中をしているという現状をかんがみますと、銀行等が預金以外の金融商品を取り扱うことによりまして、リスクが市場参加者の間で幅広く分担されるというような金融システムへの転換といったことが促進されていくことは大変大きな意義があるというふうに考えております。

 また、今回の証券仲介業務は、銀行に新たな収益機会を提供する側面も有しております。それぞれの銀行がみずからの経営戦略を踏まえて必要に応じて証券仲介業務に取り組むということは、銀行業の健全な運営にも資するものであるというふうに考えております。

村越委員 銀行にリスクが集中しているということですけれども、それでしたら、リスクを分散しなければいけないということになるんですが、必ずしもそれは銀行だけにリスクの分散を図れという話にはならないと思うんですね。例えば、従来の証券業界そのものに対しててこ入れをするような施策もあり得るんじゃないか。むしろその方が僕は本道というか本筋なのではないかと考えるんですけれども、それに関してはいかがでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたのは、そういった観点から、貯蓄から投資へという形で証券市場のいろいろな制度整備をしたいということでございます。

 今回の改正は、証券仲介業、いろいろな形で銀行以外の一般の会社にも解禁をされておるわけでございますが、その中の一環として銀行にもそういった仲介業務の解禁をするという趣旨でございます。

村越委員 今盛んに金融機関では経営改善とかリストラというものを行って非常に疲弊し切っているのではないかと思うんですが、そういった体力が低下しているような状況で銀行に新たな業務を遂行する余力が残っているのかどうか、私は疑問に思ってしまうわけですけれども、その点に関してはいかようにお考えでしょうか。

増井政府参考人 お答えします。

 これも、この問題につきましては再三御議論があったかと思いますが、我が国の金融機関につきましては、今、主要行に関しては、御承知のように、金融再生プログラムに基づきまして、構造改革を支える強固な金融システムの構築を目指して不良債権比率半減目標の達成に向けて取り組んでいるわけでございます。さらに、中小・地域金融機関につきましては、御承知のように、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムに従いまして、その機能強化を図って中小企業の再生と地域経済の活性化を図るための取り組みを進めることによって、不良債権問題の解決を目指しているというところでございまして、こういった努力を通じまして、金融機関の健全性の向上が着実に図られてきているものと私どもは認識しております。

 こういった中で、顧客に対してよりよいサービスを提供するというのが一方でございますが、一方で、収益力のさらなる向上を図るためにも、各金融機関は人件費の圧縮だとか店舗の統廃合の実施などによってリストラを進めておりまして、経費削減に努めている、そういった努力をする一方で、新しいサービスの提供を通じて手数料収入の増加などいろいろな面での収益改善策に取り組んでいるという状況だというふうに認識しております。

 したがいまして、先ほどちょっと申し上げましたが、証券仲介業務を展開するかどうかはそれぞれの経営実態や戦略に基づいて各銀行が判断すべきものでございますけれども、こういった仲介業の展開は、銀行が顧客に対して新たなサービスを提供して、これにより新たな収益機会を得る側面もあるんではないかというふうに考えております。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

村越委員 僕はそうじゃないんじゃないかと思うんですね。リストラの基本というのは、今はやりの選択と集中だということだと思うんですね。つまり、採算の合わない事業からは潔くとっとと撤退をする、そして、得意な分野に集中をして投資をする、得意な部門を強化していくということだと思うんですけれども。

 政府も財政再建に向けて選択と集中を励行されていると思うんですけれども、今回の銀行の業務を追加していくということは、企業が努力してきたリストラ、つまり、選択と集中という流れに逆行するんじゃないか、逆行を後押しするようなことにもなりかねないんじゃないかと考えるんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 今回の法案の基本的な考え方と、選択と集中という非常に重要な問題についての御指摘でございます。この点で、先ほど村越委員が御指摘になられた代替財か補完財かということにやはり立ち返るのが私も大変重要であろうかと思います。

 補完財については、これはおっしゃったとおりでございますけれども、お肉が買えれば同時に焼き肉のたれも一緒に買える方がいい、これは消費者の利便にもなるし、売り上げもふやすという、需要側、供給側双方の役に立つ。一方で、代替的な性格のものというのがあるわけでございます。例えば三年物の定期と五年物の定期というのは、これは代替的であります、どちらがいいかはわからない。幾ら選択と集中といっても、三年物定期専門銀行、五年物定期専門銀行というのは存在しないわけで、そこは、そういった代替財についてはまとめてワンストップで売るということがやはり今までだって求められていたんだと思います。

 今、世界の金融を見渡して起こっていることというのが、今までの定期預金的なそういう商品と、その他の、それ以外の社債、株式等々の商品がまさにシームレスになってきて、そこの代替性が非常に高まっているということなのだと思います。そういう意味では、今何が求められているかといいますと、その意味でのシームレスにどんどんどんどん広がっていった選択肢を思い切りまず広げてみるということだと思います。

 世界の金融の動向を見ますと、明らかに二つの傾向がございます。それは、一つには、一つの会社が総合金融会社化していっているということだと思います。アメリカ、ヨーロッパの会社を見ますと、これが一体銀行なのか証券会社なのか保険会社なのかわからないようなところがほとんど総合化している。しかし、その総合化したそれぞれが非常に何らかの特徴を持っていて、ここはホールセールが得意です、ここはリテールが得意です、まさに選択と集中を行っていく。

 したがって、我々としてまずやらなきゃいけないのは選択肢を広げるということ、選択肢を広げた上で、それぞれがまさに選択と集中でそのウエートの置き方については独自の経営の努力をしていただくということではないかと思います。

 今回、証券仲介業を認めるということに当たりましても、これはすべての銀行に証券仲介業を行いなさいということを我々は申しているわけでは全くございません。しかし、そういう選択肢を持っていただく。その中で、それに非常に大きなウエートを置くところ、必ずしもそうでもないところ、そういうところが出てくるというのが、私は、今の世界の金融の動向を踏まえた上での選択と集中ではないかというふうに思っております。

村越委員 今のお話は、いわば金融業界というか、銀行だったり証券会社、金融機関から見たお話だと思うんですけれども、それでは視点を変えて顧客側から考えてみたいと思うんですけれども。

 冒頭私申し上げましたとおり、今回のいわば規制緩和による顧客から見たメリット、銀行窓口に来る一般の預金者に対するメリットというのがよくわからないんですね。つまり、証券が欲しければ証券会社に行こう、インターネットバンキングをしよう、預金をしたければ銀行に行こうと、それでいいんじゃないのかと言うこともできると思うんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の、顧客に対するメリット、デメリットでございますけれども、昨年十二月に取りまとめられました金融審議会の第一部会の報告で、銀行による証券仲介業の導入の顧客にとってのメリットというのがまとめられております。

 まず第一番は、今御議論がございましたが、ここでは、ワンストップショッピングのニーズにこたえ、利便性が高まるということでございます。それから二つ目は、さまざまな規模の銀行と証券によるさまざまなタイプの連携が、それ自体顧客の利便性を高めるということになりますが、とりわけ証券会社の店舗が少ない地域におけるアクセスの改善になるといった点が指摘をされているところでございます。

村越委員 よくわからないですよね。インターネットバンキングだってあるわけですから、証券会社がない地域でも今証券取引というのは盛んに行われているはずでして、いまいち不明確だなと思うんですけれども。

 逆に、顧客にとって考えられるデメリットがあるのかどうか。これは何も御答弁がないのかもしれません、デメリットがあるような法改正をしてもしようがないわけで。デメリットがあるのかどうか、あえてお伺いしたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今のデメリットの関係でございますが、これにつきましても、今申し上げました金融審議会の報告の中では、銀行業務と証券仲介業務の間の利益相反などの弊害が生じるおそれがあるというような指摘がされております。

 したがいまして、こういった指摘も踏まえまして、現在御審議をいただいている法案では、所要の弊害防止措置を講ずることとしているところでございます。

村越委員 それでもなお、今まで安全な、リスクの低い金融商品しか利用したことのない顧客が、今回の法改正によって混乱しないのかという危惧がぬぐえないのではないかと思うんですけれども。要するに、預金に来た顧客が、預金と比較してリスクが高い株式を銀行で購入するということを顧客が正しく認識できるかどうかというところが問題だと思うんですね。

 誤解、誤って銀行員の勧められるがままにリスクの高いものを買ってしまうというようなことが起きないための方策というものを盛り込む予定があるのか。あれば、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 そういった誤解が起きないようにしなければいけないというのは、おっしゃるとおりだと思います。したがって、そういった観点で幾つかの方策といいますか対応を考えているというか、そういった制度があるところでございます。

 まず第一に、銀行等による証券仲介業務について、既に銀行等が投資信託等販売を行っておりますが、それと同様に、顧客に対して勧誘等を行う者の証券外務員登録を要件とする、それでその適格性を確保するということにしております。要するに、きちっとした資格を持っている者が業務を行うということでございます。

 それから、こういった証券外務員による勧誘に際しましては、元本割れの危険性について明確な説明が行われるとともに、断定的な判断を提供するなどの不適当な勧誘行為が行われないよう、証券取引法の行為規制及び金融商品販売法の適用を受けるということになります。

 さらに、もうちょっと物理的な話でございますけれども、銀行は預金を取り扱っておるわけでございますが、一方で元本割れの危険のあるリスク商品を窓口で取り扱う場合には、この商品が安全確実だと誤解されることのないよう、銀行法の施行規則におきまして、預金とリスク商品との窓口を区分するというふうにされているところでございます。

村越委員 次に、銀行と融資先との関係について二点ほどお伺いをしたいんですが、銀行の融資先に対する、いわゆる圧力販売というものに対する危惧が既にあるわけですけれども、これに対してはどのような規制をかけていくつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 銀行などの行います証券業務に関しては、融資とセットで証券取引を強要する行為等いわゆる優越的な地位の乱用等でございますが、これは現行の内閣府令において既に禁止となっておりまして、証券仲介業務についても適用されることとなります。

 さらに、その実効性を確保するということも大事だと思います。市場監視機能・体制の強化に努めてきているところでございまして、この弊害防止措置についても、引き続き、法令違反行為を的確に把握して、厳正に対処することによってその実効性の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

村越委員 それに関連して、融資先の企業が株式や社債を発行する場合について、そうした証券の販売仲介について何らかの規制をするのか、あるいは情報の開示義務というものを設けるのかどうか、お伺いしたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 銀行等が融資先企業の発行する株式あるいは社債の販売仲介を行う場合には、貸出資金を回収する目的で貸出先に有価証券を発行させる等の利益相反行為が懸念されるわけでございます。こういったことを防止するために、貸出先が発行する有価証券についての手取り金が借入金返済に充当される場合に、当該事実を投資家へ開示せずに勧誘する行為を禁止することとしているところでございます。

村越委員 次に、顧客情報に関することについて質問したいんですが、先月末に、本来この質疑をする予定の当日だったと記憶していますけれども、ある信販会社の顧客情報が流出したおそれがあるというような報道がなされていました。特に、金融業界においては顧客情報というのはとりわけ重要である、そして、それだけに顧客情報に関する扱いというのは慎重になるべきであると思います。セキュリティーを確保する責任というのは非常に重いんだと思います。

 今回の解禁に当たって、銀行が持っている預金者の資産の情報だったり預金の額とかなんとかというものを証券の営業に乱用させないための規制についてどのようにお考えなのでしょうか、また、その罰則規定というものがどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 銀行等の証券仲介業につきまして、証券取引の公正を確保する等の観点から、法令におきまして、まず、融資部門と証券仲介業部門との間での情報の共有を禁止するというふうにしてございます。それから、先生御指摘の預金とか資産といった情報との関係でございますが、これは、銀行はいろいろな部門がございますしいろいろな情報を持っているわけですが、そういったいろいろな部門が保有する顧客情報の保護ということにつきましては、昨年、個人情報保護法が制定をされておりまして、この十七年四月に施行に向けた準備が今進められているところでございます。また、金融審議会の特別部会等におきましてもさらに検討が行われておりまして、今後とも、その基本法の趣旨や金融審議会における議論等を踏まえまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

 それから、もう一つ、今の罰則でございますが、それに対する罰則自体はございません。そういった意味では、監督上の処分の対象になるということだと思います。

村越委員 これまで以外に二点規制緩和に関して残りの時間でお伺いしたいと思います。

 まず、取引所取引原則の廃止という規制緩和に関してなんですけれども、従来、取引所の開設、それから運営においては厳しい審査が行われていることと思います。つまり、取引所というのはそれだけ信頼性の高い場所だということだと思うんですね。ですから、先ほどのジャスダックも取引所への転換を目指しているんだと思うわけですけれども、この改正案で取引所取引の原則を廃止することになって、取引所以外の市場の信頼性を取引所並みに担保することができるのかどうか、そのための方策をどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の取引所以外の市場として、主な取引所外市場といたしましては、私設取引システム、PTSというものがございます。

 このPTSは集団的な有価証券の取引の場を提供するものでございまして、その業務には高度な専門性が必要とされるということ、さらには取引の公正性とか透明性の確保の観点、そういった観点からこれも認可業務といたしております。その認可に際しましては、PTS業務における需給のつけ合わせ方法、あるいは受け渡しの方法、システムの適切な管理等についての厳正な審査を行うことによりまして、適切な業務の運営が確保されるものというふうに考えております。

 また、取引所外で行われる有価証券の売買につきましては、証券業協会における価格、売買高等の公表、売買の管理などの措置によりまして、取引の公正性、価格形成の透明性が確保されるものというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、市場における取引の公正性や価格形成の透明性を確保するために、証券取引法におきまして種々の規制を課しておりまして、それらの法令等の違反行為については、検査監督を通じて適切に対処しているところでございます。

村越委員 あともう一点、向かいのみ、のみ行為禁止の廃止に関して最後にお伺いしますけれども、これまでは取引所取引によって公正な取引、公正な価格形成を担保してきたわけですけれども、この法案によって向かいのみ行為やのみ行為が解禁されることになるわけですけれども、この解禁によって公正な価格形成を担保できるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、御指摘のように、向かいのみ、のみ行為の禁止規定でございますが、これは証券会社が顧客から注文を受託した以上、それを忠実に執行しなければならない、みずからがその委託取引の相手方として売買することは利益相反が生じる可能性等があるために、投資家保護の観点から禁止をしてきているものでございます。

 今般、最良執行義務の導入に伴いまして、証券会社は顧客の注文を最良の条件で執行するための方針、方法に従ってその注文を執行するというふうにされておりまして、こういった方針の中には、例えば、ある時点において顧客の注文を受けている証券会社自身が公表しています売買価格の気配等の条件がほかに比して最良と考えられる場合には、その証券会社が自己の買いあるいは売り向かうということによりまして売買を成立させることを定めるものがあり得るというふうに考えられるために、先ほどの向かいのみ、のみ行為の禁止規定を削除するというふうになったものでございます。

 この証券会社の定める方針、方法につきましては、事前に公表することが義務づけられておりまして、また、証券会社が自己で相手方となる場合には事前に明示義務が規定されておりまして、投資家保護上問題はないというふうに考えております。

 なお、取引所外で行われる有価証券の売買については、証券業協会における価格、売買高等の公表、売買の管理などの措置によりまして、取引の公正性、価格形成の透明性が確保されるというふうに考えております。

 さらに申し上げますれば、有価証券の売買に関して、例えば、株価操作の行為のような市場の公正な価格形成をゆがめる行為を行った場合、あるいは何らかの不正の手段等が用いられた場合には証取法の適用を受けるということで、違反者に対してこれらの規定に基づいて厳正に対処をしていくということになるというふうに考えております。

村越委員 ちょっと最後にお伺いしたいんですが、最良執行義務の最良という部分ですね、その最良のいわばメルクマールをお教えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 最良のというのは、すぐ浮かぶのは価格ということだと思いますが、もちろん価格ということも大事だと思いますが、価格だけではなくていろいろなその他の要件があるかと思います。したがいまして、そういったものを全部総合的に勘案をいたしましてこの条件が最良である、そういった観点から、例えば、今申し上げましたが、コストとかスピードだとか執行の可能性だとか、そういったものも勘案する材料になるというふうに考えております。

竹中国務大臣 ちょっと申しわけございません、先ほど個人情報につきましてお尋ねいただきましたときに、正確を期すためにその罰則について申し上げておきますと、これは個人情報保護法の枠組みの中の話でございますけれども、主務大臣は違反があった場合等々勧告を行うことができる、勧告に従わない一定の場合には命令を出すことができる、そして、命令に違反した場合等における罰則というものの規定はございます。したがって、直接罰ではないんですけれども、間接罰、命令に違反した場合の罰則規定はある。

 念のために申し添えさせていただきます。

村越委員 ありがとうございました。

 家計の資産というものが預金に著しく偏っている、そして銀行にリスクが集中している、そういった状況のもとでペイオフが解禁されるということでして、今後、国民の資産というものが直接金融に向かうことが、リスク分散の意味で国民にとっても金融業界にとっても望ましいということは明らかだと思います。

 ただ、投資に対して非常に消極的になっている国民のかたくなな心の扉をあけるには、信頼のできる環境を整備していただくことが非常に急務だということは言うまでもないわけです。そういう観点に立って行政が監督責任を果たしていただけることを強くお願いして、私のきょうの質問を終わらせていただきます。

田野瀬委員長 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 証取法の一部を改正する法律案について主に質問をさせていただくつもりでございますが、竹中大臣と、あと谷垣大臣にもお越しをいただきましたが、前回、前々回でしょうか、当委員会におきまして、年金の問題で、しっかりと納めていただいておりますでしょうかという御確認をさせていただきました。現在のところ納めているという御答弁を両大臣からいただきました。ただ、その時点におきましてはそれ以上の回答については保留をされておられました。

 その後、記者会見等で、未納期間があったということを公表されたかと思います。また、谷垣大臣におかれましては、一度公表された後も未納期間をさらに追加修正されたりということもございましたし、また、竹中大臣におかれましては、私の記憶が正しければですが、記者会見の方では、払っていますかという問いに対して、払っていますという答弁をされていたやに見ております。

 マスコミの報道ですから、頭としっぽをちょん切って前提を報道しなかったのかもしれませんが、そこはわかりませんが、この年金の保険料未納問題につきまして、この場で最終的な御説明をとりあえず両大臣にお願いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、たしか四月二十七日の当委員会であったと思いますが、お尋ねに対して、その時点で年金に加入しているかいないか、そして、その時点では払っておるというお答えをいたしまして、同時に、それ以上につきましては、今ちょっと、そういうふうに申し上げたかどうかははっきり記憶がございませんが、当時国対等で相当、どういう公開をするかという御議論がありましたので、それ以上、現時点でない過去の部分についてどうお答えするかはその結論を見たいという趣旨のことを申し上げたように記憶しております。

 それで、その後、国民年金の保険料の支払い状況について、国会議員が強制加入になりましたのが昭和六十一年でございますから、昭和六十一年以降のことについては閣僚はしっかり発表をせよ、こういう整理を国対でしていただいたと思います。

 そこで、記者会見をいたしまして、国民年金の保険料の支払い状況について、強制加入となった昭和六十一年の四月以降に関して、昭和六十三年十二月から平成元年の六月までの七カ月間、それと平成二年二月から十一月までの十カ月間、国民年金保険料を支払っていない時期がある、こういうふうに申し上げました。

 この保険料を支払っていなかった時期は、私が郵政政務次官それから防衛政務次官の職にあった時期とちょうど一致しておりまして、十数年前のことでございますから明確にはわからないところもございますが、要するに、役所の共済の短期給付に入ったわけですが、それが同時に長期給付、年金にも入ったと誤解をしてこういうことになったのではないかと考えております。私の勘違いによりまして保険料の支払いについて過去の一時期未納の事実があったことは、まことに不明の至りであり、申しわけないことだと思っております。

 そして、その後、昭和六十一年四月以前の状況についても私は申し上げました。これは、強制加入でもございませんし、国対の整理でも申し上げる必要はないということでございましたけれども、たまたま記者会見で聞かれましたとき、私の整理が十分でございませんで、不十分なことをちょっとお答えしたことがございまして、その訂正も兼ねて申し上げたわけです。

 それは、私が衆議院議員になる前のことなんですが、一時期、父の議員秘書をしていた時期がございます。そして、厚生年金に加入して保険料を支払っておりましたが、衆議院の解散がございまして、それから再選をされるまでの短期間、失職いたしまして、厚生年金の対象外となっていたことがございます。それは結果的に保険料の支払いをしなかったわけでありますが、これが二回、計四カ月ございました。昭和四十七年十一月から昭和四十八年の一月、昭和五十四年九月から十一月、この計四カ月でございます。

竹中国務大臣 年金の未加入の期間が私にも十一カ月ありましたことを記者会見で申し上げさせていただきましたが、大変申しわけなく思っております。

 改めて、委員から、事実関係いかん、そして国会や記者会見での言いぶりいかんという二点のお尋ねがございました。

 言いぶり、後者の方から申し上げますと、記者会見及び国会の場で、現在私は加入している、また払っているということを申し上げた上で、それ以上の情報につきましては内閣及び国会の御指示に従うという旨、これは記者会見でも国会でもそのように申し上げてきたつもりでございます。

 四月の二十八日でございましたか、御指示がありまして、過去についてもということで、大臣に就任したときから、結果的に十一カ月間、国家公務員共済に入っているという勘違い、思い違いをいたしまして未納期間が生じました。事実関係としては、それ以前の期間、大学を昭和四十八年に卒業しましてから大臣就任の直前までは、すべて加入して支払いをしております。

津川委員 もう一つ、加えてちょっと質問させていただきますが、前回の当委員会におきまして、私どもの委員から、年金を、ミステークであるにしろ払っていなかった時期に、年金を納めていたと思い込んで社会保険料の控除を行っていた場合は問題じゃないかというような話、指摘がございました。個別のことについて言うか言わないかという話があったかと思いますが、谷垣大臣の方からは、この点につきましては、もちろん個別のことは言えないけれども、そういったことがあれば当然是正をしなきゃいけないというような話がありました。

 今まで納めていると思ったけれども納めていなかった時期があったということに関して、その時期に社会保険料の控除を、御自身、お二人とも行っていたかどうか、それについて御確認をされたかどうか。確認をされていれば今ちょっとお答えをいただきたいし、確認をされていないのであればまた確認をしていただいて、問題なければそれはもうマスコミ発表でも何でも構いませんが、問題があればまたそれも当委員会に御報告をいただきたいと思いますので、その二点につきましてお伺いいたします。

谷垣国務大臣 私の自宅に所得税の申告をしたときの写しがあるわけでございますが、もうこの時期は、一番後が平成二年でございますので、我が家にもその保存はございませんでした。それからまた、私は今こういう立場でございますので、役所の方の保存年限というのもあるんだろうと思って調べましたが、もうそれもなくて、調べようがないというのが現実でございます。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

竹中国務大臣 私の対象期間は比較的新しいものですから、税理士を通じまして正式に確認をいたしました。そういう実態のない控除は行っておりません。したがって、訂正等の必要もないと思っております。

津川委員 この問題につきましてはこれでやめますが、せっかく伺ったので私のことも言いますが、私は払っていました。ちょっと自信があったんですが、改めて地元の社会保険事務所に確認をしましたら、一月の漏れもなく、途切れもなく払っていますということを言っていただいて、正直ほっとしたんですが。

 若干私の経緯を申し上げますと、私は一九七二年生まれでありまして、九一年の、学生も入らなきゃいけなくなったとき、あのときまだ私十九歳でした。二十になったときは、実は学生ですらなくて浪人生をやっていたんです。予備校に通っておりました。当然のことながら、払わなきゃいけなくなったということは知らなかったんですが、父が、これは本当に父に感謝しているんですが、こういうことになったと。何でおれがおまえの老後のことまでやらなきゃいかぬのだ、こんなことを言われましたが。それで、ただ、とにかくこれは規則だから払ってやる、ただし、自分が払う、私の父が、自分で払ってしまうとおまえは多分このことをわからないだろう、だからこれは、このお金を、たしか一万円弱だったと思いますが、このお金をおまえに渡すから自分で振り込んでこいと言われました。ですからしっかり覚えているんです、ああ、こんなことやるんだと。

 これはちょっとおやじの宣伝にもなったかもしれませんが、私は実は、日本人の大人というのはこういうものだと思っていたんです。やらなきゃいけないことはやらなきゃいけない、だれかにしかられたからやるとか、ばれなきゃいいとか、中にはそういう人もいるのはもちろんわかりますが、ほとんど多くの日本人の大人はそういうものだと。ところが、今、特に私どもの若い世代が感じているのは、どうもそうではない。大人は信用できない、言い方はどうかわかりませんが、あるいは政治家は信用できない、こういう大合唱であります。

 悪いことをしたら、追及をされて怒られて、謝罪をして責任をとる、当たり前の話ですが、私は今そのことを申し上げているのではなくて、やはり私たち、日本人の大人としての責任を当然のように果たすということが、当たり前でありますが、やはりもう一度、私たち特に国会議員ですとか、大臣であればなおさらだと思いますが、さらに自覚をしなければならないことなのかな、こう感じたわけでありますので、このことを冒頭にお話をさせていただきました。

 その後で、いや、またこういうのもありましたなんてことが出てこないようにしていただきたいと思いますが、未納があった部分についてはこれはもう既に過去の話でありますので、ここをどうやって改めてさかのぼって払えるようにできるかどうかという議論はするにしても、瑕疵があったということについては正確に謝罪をしていただいて、あとは、残された人たちがしっかりとした責任を果たしていく。これは年金だけじゃなくて、税金とか住民税とか、そういったものも当然であろうかと思います。

 この件につきましてはこれで終わらせていただきますので、谷垣大臣、お忙しい中来ていただきました。これで結構でございます。

 本題の方に入らせていただきますが、まず、この証取法の一部を改正する法律案、目的は、三つほど挙げれば、だれもが投資しやすい市場を整備するとか、あるいは投資家の信頼が得られる市場を確立する、あるいは効率的で競争力ある市場を構築する、こういったことであろうかと思います。

 一方で、日本の証券市場が活性化をしていないというのが現状ではないか、私はそのように認識をしておりますが、基本的なところで竹中大臣に一言お答えをいただきたいと思いますが、日本の証券市場の現状、活性化をしているかどうかということも含めて、どのように認識をされていらっしゃるのか、一言お答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 一言で申し上げるのはなかなか難しいのかもしれませんが、基本的には、活性化に向けて動き始めてはいるけれども、まだまだ長い道のりを行かねばならないという認識を持っております。

 まさに今津川委員御指摘のように、日本は、間接金融に非常に依存してきたという関係で、投資そのものが、なかなか家計から見ると投資をしやすいという状況にはなっていない。信頼性、透明性についてもさらに高めていく必要があるということだと思います。その上で、やはり、経済全体を反映して市場が活性化する、非常に活力のある、価格形成そして取引高の増加等々、そういう状況にならなければ全体の活性化というのはないというふうに思っております。

 ここのところ、若干ではありますけれども、よいサインも見えてはおります。個人の株式シェアが増大して十三年ぶりの高水準になっている等々、そういうのがございますけれども、引き続き、貯蓄から投資へという大きな流れをやはり見据えて、幅広い投資家が参加できるような、真に厚みのある市場にしていく努力が必要であるというふうに思っております。

津川委員 昨年、この証取法が、まさにその門戸を開くというような形で改正をされたはずであります。その後の実績について、まさにこの四月から始まったばかりだからまだ何とも評価しにくいというようなことはこの委員会の中でも既にお答えがありましたけれども、その後も若干変化があるというような話を伺いましたので、昨年の法改正以降、どういった評価ができるのか、影響が見られるのかということ。

 それから、今回これをまとめることでどのような効果が期待できるのか。これを、できれば数値で、どのくらいの効果が期待できるのかということをお答えいただければと思います。もちろん、数値的なものは表現のしようがない、そういう認識であれば、そういうお答えで構いませんが。答弁をとってしまったようですが、その辺のところについてお答えをお願いします。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年、証券取引法等の改正をさせていただきましたが、その際に、証券仲介業制度、これにつきましても、銀行以外につきましてそういった制度ができたわけでございます。この四月一日に施行されまして、もう既にその登録申請がなされておりまして、早速反響が得られているものというふうに考えておりますが、ただ、証券市場への影響ということにつきましてはまだ申し上げる段階ではないというふうに考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、この証券仲介業制度につきましては、さまざまなビジネスモデルの構築が可能であるというふうに考えておりまして、多様で新しい担い手が証券仲介業務に参加することによりまして証券の販売チャネルが拡充されることを期待しております。

 具体的には、まだ申請あるいは構想の段階でございますが、例えば、その参入形態におきましては、コンビニエンスストア等の無人端末を利用したものだとか、あるいはフィナンシャルプランナーなどの金融知識を有する個人による申請、あるいは大規模な顧客基盤を持つ事業法人によるもの等々、構想、申請がございますので、これからいろいろなものが出てくるのではないかというふうに期待しております。

 それからもう一つは、今の、具体的な、定量的にというのはなかなか難しゅうございます。先ほど来御説明を申し上げておりますが、金融審議会の第一部会の報告では、ワンストップショッピングのニーズにこたえて、顧客にとって利便性が高まる、あるいは、投資経験のない銀行顧客層の市場参加を促して、新たなすそ野の拡大が期待できる、あるいは、さまざまな規模の銀行と証券によるさまざまなタイプの連携はそれ自体顧客の利便性を高めますけれども、とりわけ証券会社の店舗の少ない地域におけるアクセスの改善となる、そういったメリットがあるというような御指摘をいただいております。

 いずれにいたしましても、こういった一般事業会社や個人による証券仲介業務への参入と相まって、証券の販売チャネルが拡充して、市場機能を中核とする金融システムの改善強化が図られることを期待しているというところでございます。

津川委員 なかなか数値的には示せないというお話でございました。

 大臣、ちょっとそもそも論に入らせていただきますけれども、なぜ日本で間接金融がメジャーなのか、なぜ直接金融にシフトしていかなきゃいけないのか。そこを大きな目標ととらえるなら、間接金融と直接金融の割合がこのぐらい改善されました、直接金融の割合が多くなりましたと、別にこの法律だけでということではなくてもいいと思います。幾つかのメニューで、このぐらいのことをいつごろまでにやりたい。それに対して、例えばこの法律では具体的にこういったことを目標としているというのが今お答えいただいたことだと思います。全体的にどのくらいのところまで目標にしているのかということが一つ。これは、恐らくある程度のものはあると思います。

 もう一つは、なぜ日本でそういった直接金融というものがはやらなかったのか、あるいはなぜ皆さん貯蓄に走ったのか。これは、私は、日本人の文化というんでしょうか特性というんでしょうか、そういったものも多少影響しているのかな、こんな思いもあるものですから、大臣、その辺も含めて、御所見があれば伺いたいと思います。

竹中国務大臣 非常に基本的な、重要なお問いかけであろうと思います。

 まず、なぜ日本でこれほどまでに間接金融、正確に言いますと、銀行を中心とする相対型の間接金融にこれまで依存してきたのか。

 非常に大きな流れで申し上げると、まず、日本は急成長した国でありますから、少なくとも高度成長の初期の段階では家計は十分な金融資産を持っていなかった。十分な金融資産を持っていない場合にはやはり流動性の高い金融資産を持たざるを得ないですから、これは銀行に行く。一方で、日本は非常に高い潜在的な成長力を持っておりましたから、企業としては、設備投資のチャンスがあれば、つまり資金の融通さえつけばとにかく設備投資をして成長をしたかった。それを支えるものとしての間接金融、当時の低金利政策とも相まって、銀行を通じて、さらにはメーンバンク制度等々で銀行がしっかりと企業、産業にコミットする形での、設備投資を可能にするような供給が行われた。

 つまり、資金の出し手の家計は十分な資産を持っていなかった。資金の取り手の企業は、非常に高い潜在力を背景に、銀行を仲介とした金融を望んだ。したがって、よく経済学者が言うんですけれども、高度成長期には日本のシステムというのは非常に大きな歴史的な役割を果たした、これは本当であろうというふうに思います。

 しかし、その後、日本の金融資産が、家計の金融資産がどんどんふえていく。家計の金融資産がどんどんふえていけば、もう少しリスクをとってもよいではないか。安全性だけではなくて、流動性だけではなくて、リスクをとるようなポートフォリオに移っていくはずである。そう言われて、しかしもう二十年ぐらいなかなかそのように進まなかった。産業の、取り手の方は、実はその間どんどん直接金融へのシフト等々、ないしは、今はもう企業部門は全体で金余りのセクションでありますから、外部への資金調達に余り依存しないような体系になってきている。しかし、国民のポートフォリオが変わりませんので、日本の銀行部門が非常に大きなリスクを背負ってしまって、運用難に慢性的に陥っているというような状況が出現しているというふうに思っております。

 したがって、恐らく我々としてさらに踏み込んで考えなければいけないのは、やはり、これだけ、千四百兆円の金融資産を持っている家計のポートフォリオがもう少しリスクテーク型に変わっていってもよいのではないか。

 そういう観点から国際比較をしてみると、ポートフォリオを見ますと、日本の現預金の比率が五六%ぐらい。アメリカは、一方の極端な例ですけれども、一三%。ドイツが三四%。国によって実は差が非常に大きいので、一概に数値目標は立てられないんですが、日本の現金、預金への、銀行預金への依存が余りに高い、これは方向としてやはり是正される余地があるのではないかということから、貯蓄から投資へという流れになっているというふうに認識をしております。

 したがって、二つ申し上げたいのは、各国の事情がありますので数値目標を立てるのはなかなか難しい。しかし、この五六%という比率は、日本の今の経済力からいってやはりどうしても高い。非常に、これがもっと下がって、リスク資産をとっていく余地は大いにあるのではなかろうかという点が一点。

 それと、もう一つ。にもかかわらず、これがなかなか進まなかったのは、要因は幾つかあると思いますが、家計がそういう投資になかなかなれてこなかったということ。さらには、日本の場合に、金融商品の多様化がやはりどうしてもおくれた可能性があって、非常に極端なローリスク・ローリターンの商品と、株に象徴されるようなハイリスク・ハイリターンの商品が二極分化していて、その中間のミドルリスク・ミドルリターンの商品がなかなか出てこなかった。そういう点の、いろいろな商品開発等々、さらにはアクセスの改善等々で大きな方向をつくれるのではないだろうか、ここが今の我々の政策の一つの基本的な考え方になっているという点。

 余り明確な数値目標は立てられないんですが、御理解を賜りたいと思います。

津川委員 そうはいっても、もう少し明確な数値目標を出してもいいのかなと私は思います。別に、本当に、例えば三〇%とか四十何%と言う必要はないかもしれませんが、例えばこれを三分の一まで下げるとか、どのぐらいまで下げるとか、こういった大まかな目標ぐらいはまず立ててもいいのかなというのが一つ。

 もう一つは、今の大臣の御説明は、まさに今までの日本の歴史的な、高度成長以降の日本の歴史の中で、個人金融資産が少なかったところが非常に大きくなってきた、大きくなってきたけれども、これがなかなかリスクテークするような形にならなかった。ただ、その説明では問題点の説明には多分なっていないと思います。まさに、現実こうでした、これは変えた方がいいでしょうと。まさにそうですが、ただ、普通に経済の論理からいえば、そっちが有利ならそっちに金が流れていくはずなんです。そうならない理由がやはりどこかにあるんでしょうね。その規制緩和をしなきゃいけないということで多分されていらっしゃると思います。

 ただ、その流れの中で、それが悪いと言っているんじゃなくて、余り指摘をされてこなかったように思うものですから、ここをお伺いしたいんですが、貯蓄から投資へということは、非常に大ざっぱに言うと、国民の側から見ると、これまで銀行に行っていたものを証券会社に行くという話です。それは、証券会社にとっては仕事がふえるいい話ですね、銀行にとっては仕事が減るという話です。これはこういう認識でよろしいですか。

竹中国務大臣 先ほども少し申し上げさせていただきましたけれども、非常に典型的な、銀行の預金という商品と株式という商品、その間をつなぐようなミドルリスク・ミドルリターン、ミドルリスク・ミドルリターンといってもこれはもう千差万別、そういうものがシームレスで利用できるような金融商品の開発技術を私たちは持ってきたということだと思います。したがって、方向としては、そういったところの分野を各業態がしっかりと、とり合うというとおかしいですけれども、可能なビジネスチャンスとしてうかがっている、それをまた可能にすることが消費者の利便にもつながるというのが今の状況ではないかと思います。

 したがって、今の委員のお尋ねは、銀行から証券に行くのかというお尋ねと聞きましたけれども、基本的には、つまり、銀行も証券も保険も、やはり垣根がどんどんどんどん低くなっていって、現実に、世界の金融会社を見ると、銀行か保険会社か証券会社かわからないけれども金融会社だというところがたくさん出現している。そういうのを中期的な方向としてにらみながら、それぞれの得意分野を生かして分野を広げていこう、もって消費者に対して利便を提供していこうではないか、今、そのような形での新しい分野を切り開く努力が各方面でなされているという状況だと思っております。

津川委員 そのことについてまた後でちょっと触れますが、いずれにしても、今の状況のままで貯蓄から投資へという流れをつくれば、銀行にとっては必ずしもいい話じゃないはずだと思います、この垣根をそのままにしたとすれば。いわゆるミドルリスク・ミドルリターンの商品を証券会社がやるんだということにすると、銀行はまさに貯蓄だけであって、ローリスク・ローリターンはできるけれども、そこから資金がほかに移ってしまう、こういう話ですよね。

 その中で、銀行は銀行として得意なこともやりながらというような話をされましたが、現状、では銀行がどうなのかという、こちら側の認識に立つと、必ずしも今健全な状況ではない、これはもう大臣も当然そういう認識をお持ちだと思います。銀行を取り巻く環境が非常に厳しい、先日も当委員会で金融機能強化特別措置法の議論をしましたけれども、こういう厳しい中でさらに銀行に新たな仕事をお願いしていく。別に新たな仕事をお願いしちゃいけないというわけじゃないんですが、本来の本業のところをやはりしっかりさせるということが多分前提なんだと思います。

 その中で、例えば、これまでのビッグバンの流れの中で、言葉は悪いかもしれませんが、いわゆる護送船団方式というものから市場原理、あるいは市場機能を中核とした金融システムに移行していこう、国際間で公平なテーブルに着いて、なおかつそこで勝っていこう、こういう方針であったかと思います。

 その中で、日本の国内の銀行が厳しい競争環境の中で幾つか倒産するところも出てきて、破綻するところも出てきて、やはり倒産させちゃいけないんだ、こういうマインドが出てきたのではないかと私は受けとめています。だから、銀行をしっかりさせなきゃいけない、あの手この手の指導を金融庁が一生懸命されているのかな。これは誤解かもしれませんが、そのように感じる部分が正直ございます。

 別に金融庁は裏でよからぬことを考えてけしからぬということを申し上げているんじゃなくて、これまでの流れの中で、自由化だ、あるいは競争原理だ、市場原理だ、公平性だ、公開だ、こういうことをやっている。まだまだ足腰が弱い中で例えばそれをやってしまうと、この間も議論になりましたけれども、地域金融とか中小企業・零細企業金融というものがまず最初にだめになってしまう。これは非常に望ましいことではない。こういったところで、いろいろな手を打っていくうちに、何だかんだ言って、結局金融庁がいろいろなところまで管理をしなきゃいけない。検査が非常に最近多くなったという指摘もございますが、これが新たな護送船団方式と言えるかどうかは別といたしまして、方向性として結局もとに戻りつつあるのじゃないかという懸念は、やはりこれは指摘をしておかなきゃいけないところだと思います。

 例えば、民主党がどういうふうに考えているか。これは、お金を貸せる銀行をつくろう、特に中小企業、零細企業に対してお金を貸せる銀行をつくろうということを軸に据えて、その上で、では今の金融機関はどういう状況か。本当にお金を貸せる金融機関を、銀行をつくるという前提の中で考えたときに、最終的に今破綻させなきゃいけない、破綻処理をさせなきゃいけないというものが出てきたときには、それはするべきだというのが私どもの考え方です。

 ただ、今の金融庁さんのやっていることを見ておりますと、どちらに軸があるのか。金融機関、銀行を、ごめんなさい、通告しているのと若干流れが違うかもしれませんが。銀行を守ろうとしているのではないか、こう見えて仕方がないところがございます。

 その点のところで、改めてこの一点で、質問をさせていただきます。竹中大臣に質問させていただきます。今の竹中大臣が進められているこの金融改革の中で、今後やはり経営の行き詰まった金融機関、銀行は当然つぶすこともあり得る、こういう認識でよろしいでしょうか。ここを確認をしていきたいと思います。

竹中国務大臣 私たちが銀行をつぶすわけではありません。しかし、足利銀行に見られますように、債務超過になったような銀行に関しては、これはしっかりと破綻のための処理をしていくということになります。御承知のように一時国有化をしているわけでありますから、そこは、守るというふうに委員はおっしゃいましたが、これは、銀行を守るとかという立場で私たちは仕事をしているわけでは一切ありません。

 日本の金融システムは強くしていかなければいけません。預金者は守らなければいけません。それと、借り手企業に対してはしっかりとした金融が進むようにしていかなければいけません。

 しかし、厳しい検査というふうにもおっしゃいましたけれども、これは、厳しい検査は決して銀行を守るために行っているわけではないわけです。銀行にしっかりとしていただいて、結果的に金融システムが強くなるように、我々としては検査を行って、自己資本を充実してもらって、そしてガバナンスを強化してもらうということをやっているわけでございますので、そこは逆戻りしているとか銀行を守るとか、そのようなことでは決してない。それは、一つの我々の対応として、りそなに対する公的資金の注入、足利に対する一時国有化、ルールに基づいてしっかりと対応してきたつもりである。この点、ぜひとも御認識を賜りたいと思います。

津川委員 確かに守るという表現は少し踏み込み過ぎかもしれませんが、今強化するという話をされた。金融機関が強くなるかどうか、これを果たして本当に金融庁がやるのが正しいんでしょうか。私は、これは本来は市場の中で選択をされて、ここの金融機関がよりいい、ここがそうでもないというのはマーケットが基本的に判断をする、それが原則だと思います。

 一つ伺います。

 今、これから、大臣、金融構造強化プログラムですか、こういうのを取りまとめられるというお話を若干小耳に挟んでおりますが、これがどういったものになるのか、お答えいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 改めて申し上げますけれども、金融機関を強くするというふうに私申し上げておりません。金融システムを強くするんだ、そのためには市場のメカニズムを活用しなければいけない、そこはもう委員おっしゃったとおりだというふうに認識をしております。

 それで、先般新聞で、何か新たな金融のプログラムについての報道がなされたことは承知をしておりますが、私たちとしては、そういったプログラムについてまだ正式の検討を始めておりません。問題意識は持っております。

 金融再生プログラム、これは来年の三月期に不良債権比率を四%台にするという目標を立てて、今最後の厳しい上り坂を上ろうとしている、そこはしっかりとやっていくつもりでございます。その後、金融再生プログラムを受けてどのような金融の行政を行っていくかという問題意識は、我々、しっかりとこれから高めていくつもりでおりますが、新聞で報じられているような、何かを決めた、こういう目標を課す、そのようなことを決めたという事実は一切ございません。

津川委員 まだ決めていないからお答えできないという話だと思いますが、新聞報道ですから、これについてはこれだけにしておきます。

 ただ、銀行への公的資金の注入について、前回も指摘したかったんですけれども、ちょっとできなかったので、今、一つだけしておきます。

 銀行への公的資金の注入に関する国民の声、自分は銀行からお金を貸してもらえなくてつぶれたのに、銀行は国から税金を貸してもらって経営している、その税金は自分が払っている、これはけしからぬ、こういう話がよくあります。これが国民のすべての声だと言うと言い過ぎかもしれませんが、まさにそういう状況があって、そのように認識をされているというふうに思っていいかと思います。

 ですから、公的資金の導入というのは、まさに今おっしゃった、一つ一つの金融機関ではなくて、金融システム全体に危機を及ぼすような、そういう状況があるときには公的資金を投入しなきゃいけない、これは当たり前の話であります。こちらの方で考えるのか。それとも、金融機関が危なくなる前に事細かにいろいろ指導する、そこまでやる必要があるのか。そこはやはり少し整理をする必要があるんじゃないのかなというふうに思います。金融庁の優秀な方々から見れば、現場の金融機関の方々は何をやっているんだという思いがひょっとしたらあるのかもしれませんが、しかし、だからといって一々指導をしたり何かをしていては、これはやはり実は足腰を弱めるということにつながろうかと思います。

 ひとつ資料についての評価をいただきたいんですが、前回津村委員が指摘をしたところでございます。

 金融ビッグバンが起こって以降、日本の、東京のマーケットの評価の話であります。これが、シンガポールや香港と比較をしたときに、マーケットのプレゼンスがどのくらい上がったと評価できるかどうか、あるいはできないかどうか。その辺について、資料を私もいただきましたが、この分析についてお伺いをしたいと思います。

竹中国務大臣 平成十年の金融システム改革におきましては、これは東京市場をニューヨーク、ロンドン並みの国際市場とするということを目指して、具体的には、仲介者の新規参入でありますとか業務の自由化といった措置を行ったわけであります。同時に、市場間競争を促進するという観点から取引所集中義務の撤廃等自由化の措置を講じた。金融のビッグバンをまさに目指していろいろな措置をとったわけでございます。その結果をどう評価するかというのは、今の時点で大変重要であるというふうに私も思います。

 若干の計数を申し上げますと、これはまずニューヨーク、ロンドン等々と比べさせていただきたいと思うんですけれども、これを上場会社、株式の売買代金、時価総額につきまして、平成十五年の数値と金融ビッグバン当時の平成十年の数値を比較してみますと、いずれも、ニューヨーク、ロンドン市場の東京市場に対する比率が低下している。つまり、東京に比べてニューヨーク、ロンドンの相対比は低下をしています。その意味では、東京市場のプレゼンスは向上した、ニューヨーク、ロンドンに比べて相対的に上場会社数や株式の売買代金、時価総額はふえた、これは一つの成果として評価できる面があろうかと思います。

 もう一点、アジアの金融市場としてのシンガポールとの比較も、それはやはり意味があることだと思います。これも同じように平成十五年と十年を比較してみますと、例えば、現物の株式売買代金で比較しますと、平成十年のシンガポール取引所の売買代金は、東京に比べて七・八%のシェアでありました。十五年には、これが四・三%になっております。つまり、東京の方は相対的に大きくなったということであります。日経二二五先物取引について同じようにして見ますと、これは大阪証券取引所になりますけれども、シンガポール、平成十年は六七・六%のシェアであったものが、十五年には五四・四%ということで、これも日本の方が相対的に大きくなっているということになります。

 一方で、ユーロ円の三カ月金利先物取引で比較しますと、これはシンガポールの取引高というのは、東京の金融先物取引所のかつては四一%であったものが、平成十五年には四八・五%まで上昇する。これはシンガポールの方が相対的にふえているということであろうと思います。

 いろいろな指標がほかにも可能だとは思いますが、それなりに、日本のマーケットの国際的な競争力の強化にある程度の成果は見られている、今後さらにこういう状況を踏まえて努力をしなければいけない、そういう状況であろうかというふうに思っております。

津川委員 もう一つ、不良債権の問題です。

 不良債権の処理につきましては、大臣は、非常に進んでいると非常に高い評価をされているのかなというふうに伺っておりますが、いわゆる不良債権という枠ではなくて、以前に民主党でお伺いをいたしまして数値を出していただきました要注意債権以下の総額というもののこの間の推移につきましてお伺いをしたいと思います。

伊藤副大臣 要注意先以下ということでございますが、これは預金取扱機関のということでよろしゅうございましょうか。その要注意先以下に対する債権は、十二年三月期においては百五十・九兆円、十三年三月期においては百四十・九兆円、そして十四年三月期が百三十五兆円、そして十五年三月期が百十六・九兆円となっているところでございます。

 ただ、委員御承知のとおり、この要注意先と申しますのは、単に債権管理上注意が必要な債権というものが相当含まれておりますので、国際的な基準においても不良債権に該当しないということがある、この点は留意しておかなきゃいけないんではないかというふうに思います。

津川委員 副大臣おっしゃった指摘もそのとおりでありますが、逆もあるわけでありまして、果たしてこれが本当に不良債権と言わなくていいのかどうかという話も当然あるわけであります。それを無視したとしても、全体的な数字は、私は、必ずしもそう大きく評価をできるほどはいっていないと言ってもいいのかと思います。つまり、大臣がおっしゃっているようにこれは急激に不良債権の処理が進んでいますというような話ではない。当然、不良債権の額が減りさえすればいいという単純な話でもありませんから、それだけで評価できるかどうかというのは何とも言えません。

 ただし、冒頭も申し上げましたが、この金融ビッグバンの流れの中で、何を目標としているのか。当然、今やらなければならない不良債権の処理の部分もあれば、債券市場の活性化という部分もあります。銀行の体力を、足腰を強くするということも当然出てきます。地域金融を活性化させる、こういった目的も出てきます。いろいろな目的がありますから、一つの指標だけ見て、これがよくなったからよかったんだというふうにはなかなか言えないと思いますが、そこはまさに大臣がどのように判断をされるかだと思うんです。

 つまり、いろいろな指標がある中で、ここがよかったからよかったじゃないですかという話ではなくて、これは申しわけないんですけれども、金融庁の考え方としてはそういう言い方ができるかもしれませんが、大臣がどう考えるのか、自分の中でまさに一番重要としている指標をどこととらえるのか、その中で、実はそうでもないところはどこにあるのか。これは正直にどんどん言っていただいていいんだと思います。それは、政治家としては結果責任という部分ももちろんありますが、それは責任をとっていただければいいだけの話であって、そこは思い切りやっていただければいいんだと思うんですね。

 以前にも申し上げましたが、大臣が、大臣になられる前に、ある会合で、日本の政治家はわかっていない、非常に不勉強だというようなことをお話をされていたのを聞いて、では竹中さんが大臣になったらちょっと変わるかなという期待をした部分もあります。まだ必ずしも期待を捨てたわけじゃないんですが。そういった意味で、私は、大臣は政治家の中の一人だと思いますけれども、いわゆる選挙で選ばれてきた政治家とはちょっと違う立場で、そこは思い切りやっていただきたい部分だと思います。ここがこれだけ数値が若干改善したからよかったんだろうというような話ではないと思います。今必ずしもこれの答弁を求めませんが。

 私は、逆に言うと、必ずしも御自身が思ったほどの効果が出ていないからこそ、さまざまな施策を追加的に出さなきゃいけなくなっているということだというふうに認識をします。今回の改正も、昨年まさに銀行は別だというようなことをしたにもかかわらず、それ以外の成果がどのくらい上がったかもまだはっきりしないうちに銀行を入れてしまう。これはやはり、見方としては、証券業界の活性化云々、それがどこまで活性化されたかという視点に立っているのではなくて、今の銀行を何とかしなきゃいけない、来年ペイオフ解禁だ、それまでにさまざまな施策を銀行に対してとらなきゃいけない、そういう危機感からやっているというふうに感じられてなりません。

 私は、国の裁量行政が拡大するということは必ずしも正しいことではないと思います。

 そこは大臣も恐らくよく御存じだと思いますが、一つだけ例を挙げさせていただきますが、例えば、大規模な公共事業が大手ゼネコンの救済事業になっているじゃないかというような指摘があります。大臣も昔そういうことをおっしゃっていたような気がするんですが。国土交通省に聞けば、いや、適正な、コストを圧縮しているんで、ゼネコン救済に回るようなむだはないんだというような話はされてきます、国土交通省の方から。ただ、実際にはそういう面が多くあります。

 それとか、あるいは、例えば農業を守ろう、日本の農業を守ろう、個々の農家を守ろうというんじゃない、日本の農業を守ろうというふうにやったはずの日本の農政が、結果的に日本の農業の足腰を弱くしてしまったという事実は、これは竹中大臣も以前も指摘をされていたことだと思います。

 そういった視点から見ると、まさに今の金融行政というのは、銀行に対する施策、それは、日本の銀行をある意味で信用していない、信用していないからもっと情報公開をさせなきゃいけないというのは、これはやらなきゃいけないところですが、もっと金融庁が何とか手を施してやらなければ倒産をしてしまうんだ、あるいは金融恐慌が起きてしまうんだ、こういうことを認識されているのではないかというふうに思います。もし本当にそうされているのであるならば、その問題意識を明らかにしていただきたい。

 今別にそんなに問題はないんだと言いながらやるから、今回、何でこれはいきなり急に銀行までやらなきゃいけないのと。証券業の活性化、それはそれで必要だ、それはそれで我々も一定の評価をします。しかし、何でいきなり銀行なのか、そこはもう一度説明をしていただきたいと思います。昨年なぜ銀行を除いたのか、なぜ今回銀行を入れたのか、もう一度御答弁をいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 非常に大きな問いが背景にあって、また具体的なお問いかけがあったわけでございます。

 基本的にどのように現状を認識しているのか、改革は進んでいるのかということに関しては、まず、やはり、まさに日本の制度を戦後一貫して支えてきた構造があります。三十年、四十年続いてきた構造を変えるというのは、そんな簡単なことではもちろんありません。

 不良債権の問題というのは、あえて言えば、バブル崩壊後の一つの現象ではありますけれども、その背後には、先ほどから議論させていただいている、間接金融を中心とした日本の金融の構造がまさにそこにある。当事者だけでも、銀行があり、監査法人があり、株主のガバナンスの問題があり、それを見守るマスコミ、世論があり、もちろん金融当局がある。そういうところが、すべてやはり主体が変わっていかないと構造改革にはならないわけですから、これは本当に時間を要する、辛抱強くやらなければいけない仕事になっているというふうに思います。

 そうした中で、小泉内閣、これはまさに小泉総理の非常に強いリーダーシップによって、とにかくその方向を変えようということ。この三年間、その方向を変える、改革に向けたレールが敷かれたという意味では、私はやはりそれなりの大きな成果があったというふうに思っております。

 しかし、今、個別の建設業や農業や、いろいろな例を挙げられましたけれども、まさにこれが今、地域再生を行うに当たって、建設業をどうするのか、農業をどうするのかという中心的な課題になっているわけで、それに対して何か明確な答えが出ているかというと、これは必ずしもそうではないわけです。方向を模索してさまざまな枠組みを今つくろうとしているわけでありますけれども、その答えが出るのには、まださらに時間を要するということになろうかと思います。

 直接お尋ねの銀行のことについて申し上げますけれども、ここは、金融市場というのは、さまざまな市場の中でも特に日進月歩、世界が物すごいスピードで動いている状況にあります。そういう意味からは、やはり日々これは進化させていく必要がある、これが金融の市場だと思います。

 銀行の今回の証券の仲介も、決してこれは急に出てきたことではございません。九七年、九八年の金融のビッグバンのときから既にずっと議論されてきたこと、それをいろいろ関係者等々の納得もいただいて、ことしようやく調って今御審議をいただいているという状況でありますので、これはいきなり出てきたというよりは、むしろ非常に時間がかかっているというような評価をする方も決して少なくない。しかし、いろいろな評価をいただきながらも少しずつ少しずつ前へ進んでいかなければいけないのが、これが改革であろうかと思います。そのようなつもりで、以上のような認識を持ってやらせていただいております。

津川委員 急にこれが出てきたとは申し上げません。ただ、昨年からの流れからいうと、やはりそこは拙速なのかなという感じがします。

 それから、もう時間がないので、幾つかまとめて質問します。

 最終的に、きょう大臣の御答弁でそういうお答えになっているのかもしれませんが、今回は、銀行は証券業を直接やるのではなくて仲介業務をやるだけだというような御説明があったはずです。ただし、大臣のお話を聞いていると、最終的にはこれはもう一緒にするんだというような御回答であったかと思いますので、そういうことを想定しているのかどうかをまず御答弁いただきたいと思います。

 もう一つは、例えば農業の話を先ほど申し上げましたが、これは、問題はある程度はっきりしているんです。農業を守るというところに軸を置いてしまったから間違った。やはりこれは消費者の方に軸を置けばいいんです。消費者の方から、日本人が安心して安全に食べられる食料を確保しなきゃいけない、こういう考え方をとったときに、値段だけで競争して日本の国内の農業が本当にだめになってしまっていいんですか、それはやはりだめでしょう、それは市場原理というものも重要だけれども、それだけでは日本の消費者の利益を守ることはできない、そういう流れの中で日本の農業もしっかり守っていかなきゃいけない、こういうことだと思うんです。そういう、要するに軸をどこに置くかという問題で相当見方は変わってくると思います。

 もう一つ、次の質問をさせていただきますが、銀行の本業の中で常に私が問題意識を持っているのは、中小企業、零細企業に対して個人保証をとっているというところです。この委員会の中では余り取り上げられていないようでありますので、この個人保証について大臣の御認識をお伺いしたい、これが二つ目でございます。

 最後に、私の意見も若干申し上げますが、証券市場の活性化、大いに賛成でございます。大いにやるべきだと思います。ただし、今回のような、やはり銀行サイドに立った、これは違うとおっしゃるかもしれませんが、そう思われるような改革をするよりも、まず先にやることがあるだろう。それは、真に今の証券業界を、現状を見詰めて、例えば公的規制、法的規制と自主規制、これをしっかり整理をするということ、それから、投資家保護法制の整備をするとか、あるいは証券取引等監視委員会の独立性の強化を求めるとか、あるいは投資教育の推進をする、こういったことがまず先に行われなければならないことだと思います。

 最終的にはこういった改革そのものは賛成をしますけれども、こういった点についてお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。

竹中国務大臣 農業等々はちょっとお答えできかねますので、私のお答えできる範囲で、申し上げさせていただきますけれども、まず、証券業と銀行業の垣根の、証券業の六十五条の話は、これは私、変えるというようなつもりはございません。垣根が低くなっているということに対して、どのような形で対応できるのかという現実的なアプローチを私たちはとるべきであるというふうに考えております。

 個人保証につきましては、これは大変重要な問題だということで、問題意識を持って私たちも取り組んでおります。御承知のように、法務省において、各省庁とも連携をとりながら必要な措置を検討していただいておりますけれども、我々としましても、とにかくこういった担保や保証に過度に依存しないような、そういう融資を行ってもらうということで、いろいろな働きかけをこれまでも行ってまいりました。

 今、リレーションシップバンキングのアクションプログラムによりますと、強化プログラム、強化計画を出していただいておりますけれども、金融機関の八割が、そのような担保、保証によらないというものを計画している。また、主要銀行におきましても、四大グループだけで昨年度一兆円を上回るような、そういった、担保、第三者保証に依存しないようなものを今進めつつあるということでありますので、我々としては、今後ともこうした動きはぜひ推進していきたいと思っております。

 最後に、証券業の活性化のためには、こういうことだけではなくて、もっと幅広いことをやらなければいけないのではないか、証券監視の枠組み、さらには投資教育、これはもう全く私たちもそのとおりだと思っております。投資教育につきましても、金融庁がシンポジウムを開くというようなことも最近はふやしておりますし、今御指摘のような点を踏まえて、我々としてもしっかりとやっていきたいと思っております。

津川委員 終わります。ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 きょうは二法についての質疑をさせていただきますが、前回の財務金融委員会の質疑で、お手元の方にきょうは委員長、理事等のお許しをいただいて資料を今配付させていただいておりますが、貯蓄率が近年下がっている、これについての御認識を竹中大臣、そして山本副大臣からいただきました。

 きょうは財務大臣もお見えでございます。先般は副大臣からこのような御答弁がございました。「銀行のいわゆる投下資本あるいは融資資金となるような財源にも枯渇が見られるということになりますと、どうしても国債の金利を上げたり、あるいは国債の消化というものにまさに支障を来す事態があり得ないとも限らない。」これは貯蓄率の低下についての御答弁でございましたが、貯蓄率が近年下がってきている、六・二という数字を一ページ目に掲げておりますが、五・九という数字もございます。

 貯蓄率は言うまでもなく家計貯蓄割る家計可処分所得、家計貯蓄は可処分所得から消費支出を差し引いた残差ということでございますので、要は可処分所得における消費支出の割合がふえている。その理由は高齢化等ですよというようなことでございましたが、こうした先ほどの副大臣の発言も含めて、国債の消化に支障を来すようなことに至らないだろうか、こういう懸念があるんですが、財務大臣、この点、お答えいただけますでしょうか。

山本副大臣 前回の私の答弁の引用をしていただいたわけでございますが、それは、その御引用された前に「常に危機に備えるということからして、また、仮定を置いて、」と、こういうような、直ちに今どうこうというわけではないということをちょっとお断りしておきたいと思います。

 そして、先生のきょうの御指摘の国債消化の懸念、それがあり得るのではないかという御質問に対しましては、先生の言うように、近年、家計の貯蓄率は低下傾向にございます。ストックとしての貯蓄について見ますと、個人の金融資産は依然として高水準でございます。したがいまして、国債の消化に直ちに支障を来すという状況ではございません。

 また、さらに、国債の発行に当たりましては、財政構造改革の推進によりまして、国債に対する信認を確保しつつ中長期的な調達コストを抑制しまして、確実かつ円滑な消化を図るという基本的な考え方に基づき、市場のニーズ、動向等を十分に踏まえた国債発行を行うなど、適切な国債管理政策の運営に努めなければならないと存じております。

 今後とも、引き続きまして、国債の商品性の多様化を通じた国債保有者の層の拡大などの施策を進めまして、国債の安定的な消化を図ってまいりたいと存ずるところでございます。

 したがいまして、消化の懸念ということは直ちにないものの、先生の言われる消化の懸念があった場合、そのときには万全の体制というものを今からつくっていかなきゃならぬ、こういうように考えております。

武正委員 財務大臣にぜひ御感想なり御意見もあわせてお伺いをしたいということで、先ほどお願いをしたわけでございます。

 竹中大臣からは、あわせて、前回、貯蓄が減るということは投資する力が減る、投資する力が減ると成長力が減るということになりますので、長期的には経済の活力の根底に影響を与えると。最初の御答弁では中期的にはということだったのが、最後は長期的にはになりましたが。

 財務大臣、この国債の消化と経済の活力に対する影響ということで、貯蓄率が今下がっている、要は可処分所得から消費支出を引いた残余が減っている。私は、高齢化、あるいはフリーターの増加、あるいは貯蓄を取り崩してそれを消費に充てているような実態も踏まえて、この貯蓄率の低下について懸念というものを持っているんですが、財務大臣、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 貯蓄率が下がってきている、これが一体どういうことに由来するかということはいろいろ竹中大臣のもとでも御研究をいただいて、またいろいろな資料も出ております。

 そして、今も御議論がありましたように、長期的、まあ、長期といいますか中期といいますか、これはよく注意して見なきゃいけませんが、山本副大臣から御答弁申し上げましたようにストックはやはり相当な厚みがまだありますので、私の責任でございます国債消化という観点から見ますと、ストックはまだ十分な厚みがある。

 ただ、もちろん国債管理政策というのは、これは十分注意してやっていかなきゃいけないと思いまして、山本副大臣からお答えいたしましたので重複は避けますけれども、これは十分工夫して、意を用いていかなければならないと思っております。

武正委員 お手元の一ページ目には、既に見なれている、いわゆる千四百兆円の個人金融資産の円グラフがございます。二〇〇〇年十二月末の速報ということで、多分これはもっと新しい数字があるんじゃないかなと思うんですが、ちょっと私用意ができませんでした。これは後ほど。

 いわゆる間接金融から直接金融へと、ここのグラフでいえば有価証券のこの部分をふやしていきたい、これが政府のお考えだというふうに思うんですが、貯蓄率がこうやって減少していくということは、今、分厚い千四百兆のストックがあるという御答弁でしたが、実はこれがどんどん毀損をしている、目減りをしている、減っているんではないか、あるいは減っていくんではないかということも私は懸念をするわけなんですが、こうした私の認識について、竹中大臣、よろしいですか。

竹中国務大臣 貯蓄率の動向を幅広く検討するというのは、経済の問題を考える上で私も大変重要だと思っております。ただ、この問題を議論するときに、私自身も常に注意しなければいけないなと思いますのは、いわゆるフローの概念とストックの概念がともすれば混同してしまう。

 千四百兆円というストックがございます。貯蓄率は減ってきたけれども今プラスでありますから、非常に単純に考えれば、この貯蓄されたものはストックに積み上がっていくはずであります。よく貯蓄を取り崩してというふうに言うわけですけれども、これはマクロ的に見ると、貯蓄率がマイナスになったら貯蓄を取り崩すということはあり得ますけれども、貯蓄率がプラスの間は、ストックは伸び方が減るんですけれども、一応そこは積み上がっていくというのがストックとフローの基本的な考え方であろうかと思います。

 ただ、フローはフローで極めて重要でございまして、国民経済計算の定義式からいいますと、民間の貯蓄超過は財政赤字と経常収支黒字の合計値に必ず事後的には一致いたしますから、投資率が一定であれば、貯蓄率が下がるということは、これは財政赤字を減らしていくかないしは経常収支の黒字を減らしていくか、そういう調整がどこかで起こってくる、起こらざるを得なくなるということを意味している。そういう観点から議論を進めることは大変重要であると思います。

武正委員 この点、財務大臣にもお聞きしたかったんですが、時間的におしりが決まっているものですから、次にさせていただきます。

 お手元のこの円グラフでございますが、間接金融から直接金融にということで、今回の法案も、個人の株式購入、銀行に証券仲介業を認めることによって個人株主に取得を促していこう、そういった趣旨というふうに理解をしておりますが、これは素朴な御質問になろうかと思いますが、個人の株式購入をある面ふやせふやせというようなことが本当にいいんだろうか。要は、株につきまして、当然上がり下がりがあるといったところを、何とかふやしたい。諸外国との比較も挙げられますけれども、この比率が、日本の場合は預貯金が多いからというようなことで言われ、そしてまたそういった法律を出されているんですけれども、どうなんでしょうか、それは本当によいことなんでしょうか。ちょっと素朴な疑問なんですが、お答えをいただけますでしょうか。これはまず金融担当大臣、よろしいですか。

竹中国務大臣 個人の資産運用、ポートフォリオというのは、まさに個人がいろいろな制約条件の中でこれが一番適切だというふうに考えて行っているわけですから、その家計の意思決定に政府が手を突っ込んで、もっとふやせふやせと、そういうことをするつもりは毛頭ございません。

 ただ、先ほどからも少し申し上げましたけれども、これだけ金融資産が積み上がってきて、所得水準が高くなって、そうすると、諸外国の例から見ても、日本のポートフォリオはもう少しミドルリスク・ミドルリターンのところに偏っていってもいいはずではないか、それがそうなっていないのは、やはり何かそれを阻止するようなボトルネックがあるのではなかろうか、であるならば、そのボトルネックと考えられるものを少しでも除去してやろうではないか、そうすることが家計のためにもなるし、日本経済全体のためにもなる。そのために、アクセスをふやしたり、より信頼性の高いものにする。そういうボトルネックがあるかもしれないということで、それを取り除いてやろうというのが政府の姿勢でございますので、無理やりふやせと、そういう趣旨では全くないと思っております。

武正委員 何となく私が受け取っていたのは、預貯金から有価証券の方の割合をふやしていかなければならないんだ、こういうような姿勢が見受けられたから申したわけですが、それは懸念である、あくまでも個人それぞれの、あるいは家計、あるいは家庭の考えであるといったことを確認させていただいたわけでございます。

 この質問、財務大臣の所管かどうかというところがあろうかと思いますが、同じく財務大臣に、ちょっと私もそういった懸念を持っているんですが、それは今言われた竹中大臣の答弁のとおりということで……。お答えをいただいてもよろしいですか、財務大臣。

谷垣国務大臣 今、竹中大臣がおっしゃったように、これだけある意味で成熟してきたわけですから、家計の多様な選択ができるような市場の整備といいますかインフラの整備を進めていくことは、私は大変必要なことだと思います。決してそれは家計にリスクマネーに手を出せ手を出せと言っているわけじゃなく、多様な選択が行われることによってまたリスクの分散も広く行われていくというのが健全な姿ではないかと私は思っております。

武正委員 今、リスクというお話がございましたが、法律についての質疑の方に移らせていただきます。

 既に竹中大臣からは金融システム全体でのリスクテークというような御答弁を前回の委員会でもいただいておりますが、先ほど来同僚委員が指摘をしておりますように、この証取法の改正、やはり懸念でありますのは、系列の証券会社への仲介業を認めない、あるいは同じ持ち株会社傘下の証券会社、これは同じことですが、引き受けた社債の販売の勧誘と自己勘定での保有をしてはならないという業務隔壁が必要ではないかというふうに考えるんですが、この点お答えいただけますでしょうか。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 銀行が系列証券会社から委託を受けて証券仲介業を営む場合に、銀行と証券業の間での利益の相反や、あるいは公正な競争を確保する、こうした観点から問題が生じると考えられますが、既に現行法令におきまして、親子間の取引にかかわるいわゆるアームズ・レングス・ルール、親子間の非公開情報の共有の禁止、そして、親銀行等の融資と系列証券会社との証券取引との抱き合わせ行為の禁止、さらには、社債等の引き受けを行った系列証券会社が、引受人となった日から六カ月以内に当該社債等を親銀行等に売却することの原則禁止などの弊害防止措置が講じられているところでございます。

 また、今般の証券仲介業の解禁に伴いまして、新たに法令において、金銭の貸し付けを条件として証券取引の受託等をする行為の禁止、証券仲介業務部門と融資部門との間の情報の共有の禁止、そして、貸出先が発行する有価証券についての手取り金が借入金返済に充当される場合に、当該事実を投資家へ開示せずに勧誘する行為の禁止などの措置を講じているところでございまして、これらの措置によりまして、委員御懸念されている弊害の防止が適切に図られるものと考えているところでございます。

武正委員 この点は多くの委員が指摘をするところですので、さらにその懸念がなきように努めていただきたいというふうに思います。

 さて、同僚委員が証取法六十六条の二十二を銀行に準用すべきだ、こういった指摘もあるわけですが、これは私から再度この点をお願いというか指摘をして、必要なことを申し述べたいと思います。

 先を急がせていただきます。

 金融システム全体でのリスクテークというお話ですが、証券取引等監視委員会の独立性といったことでございます。人事権は金融庁が握り、そしてまた、同僚委員からの指摘もあったように、告発件数も米国の十分の一。竹中大臣から独立性はあるんだということでございますが、私は、この証取等監視委員会の独立性を担保するためにも、いわゆる国家行政組織法三条委員会に格上げもすべきだと思っておりますが、この点、独立性があるということでありますが、やはり独立性に欠けているというふうに考えるんですが、大臣、再度これは御答弁いただけますか。

竹中国務大臣 証券取引等の監視が大変重要である、その点を踏まえて、いろいろ御指摘をいただいているところでございます。

 ただ、これは前回申し上げさせていただいたと思いますけれども、この委員会は内閣府設置法の五十四条及び金融庁設置法の第六条、九条等に規定された委員会組織でございまして、これは職務の執行上、金融担当大臣や金融庁長官の指揮監督を受けずに独立して職権を行使する、これが法律上保障されているわけでございます。

 現実問題として、私自身、今この担当大臣をしておりまして、まさに独立をして、独立した意思決定のもとに職務を遂行していただいているという非常に強い実感を持っております。

 この体制等々につきましても、今一生懸命強化をしておりますけれども、委員今の御指摘の中に、告発件数が少ないという御指摘がございました。ただ、告発件数云々に関しましては、むしろ日米間の不公正取引に関する、背後にある市場規模の差とか、摘発を担当する人員数、機能、制度面の相違等々の要因によるというふうに私は理解をしておりまして、この機能を強化するということはぜひ我々もやりたいと思うんですが、それが即組織、特に八条か三条かという議論にならないのではないかというふうに私は思っております。

 いずれにしましても、この委員会は大変重要であるという認識は持っておりますし、その機能を強化するということは、これは私としてもぜひ力を入れてやりたいというふうに思っているところでございます。

武正委員 金融担当大臣からの独立性というお話でございましたが、人事権は金融庁が握っていますよね。これはどうですか。

竹中国務大臣 事務局長は長官でございますけれども、委員は総理、国会同意人事であるというふうに認識をしております。

武正委員 私が言っているのは、証取等監視委員会の職員の皆さん、今二百三十七名、この人事権は金融担当大臣にあるんじゃないですか。

竹中国務大臣 金融庁長官にございます。私は人事権を持っておりませんが、金融庁の長官にございます。ただし、仕事そのものは独立した委員長のもとに独立して行われている、この点が重要だというふうに思っております。

武正委員 委員長初め委員二名、つまり、三名ということと、任期は三年ということでございますが、そのとおりだと思います。三名の委員会、そしてまた任期が三年というのは、他のいわゆる八条委員会、三条委員会と比べて、非常に、人数といい、あるいは委員長、委員の任期といい、これは独立性が欠けるというふうに指摘せざるを得ないんですが、この点の御認識はいかがでしょうか。

竹中国務大臣 申しわけありません、組織の詳細についてちょっと答弁の準備をしておりませんので。

 ですけれども、基本的には、今三名が少ない、三年が短いのではないかという趣旨であったかというふうに思いますが、ここはやはり、もっと多い方が仕事ができるという面はあるのかもしれません。それは機能の問題であろうかと思います。

 しかし、繰り返し言いますけれども、これは、私、担当大臣や長官の指揮監督を受けずに独立して職権を行使しているわけでございますので、その意味では、今の状況が非常に大きなボトルネックになって独立性が発揮できないということではないというふうに私は認識をしております。

 繰り返しになりますけれども、我々としては、この機能の強化ということはぜひしっかりとやっていきたい。しかし、既に、今でもその意味では独立して非常にしっかりと仕事をしていただいているというふうに認識しております。

武正委員 私は、そういう意味では、金融庁の検査官の増員をしなきゃいけないという答弁がよく政府側あるいは大臣からあるんですが、この証取等監視委員会の人数をもっとふやしていいと。そのときには、この委員会自体の格付というふうに申しましょうか、権威、これは当然――例えば委員長の歳費と言ってよろしいんでしょうか、こういったものも八条委員会よりも三条委員会の方が高い、等を含めて、やはり政府内での位置づけというものがございます。そういった意味では、やはりこの証取等監視委員会の独立性を担保する。そのための検査官の増員、そのためにはこの委員会の独立性が、政府内での格付として高い、そうした意味での三条委員会に変えるべきと。それは、先ほど私が懸念を示したように、決して個人に強いることはないんだ、しかしながら、間接金融から直接金融へと、そういった選択肢を広げるための金融システム全体のリスクテーク、そのときに果たすべき証取等監視委員会の役割が重いからでございます。この点を再度指摘させていただきたいと思います。

 さて、お手元に、懲りないようで恐縮でございますが、前回に続いて資料を提出させていただきました。二ページ目、三ページ目、また二〇〇三日本金融名鑑からひもときまして、地銀、第二地銀、前回は信用金庫のみでございましたが、加えて、証券業協会、証券会社、投信協会、格付会社、投信会社、生保協会、生命保険会社、損保協会、損害保険会社における役員、日本金融名鑑に載っているものから旧大蔵省、日銀についての再就職の状況をお手元に用意させていただきました。

 前回、竹中大臣からはこのような御答弁がございました。「一般的な金融機関への旧大蔵省職員の就職状況については、公務を離れた個人の情報でもあり、役所としては把握する立場にはない、そのような資料を調査ないしお出しするということは、ちょっと私どもの立場では難しいのではないかというふうに思います。」

 私は、六百九十九しか金融機関がないわけですから、その金融機関に、旧大蔵省あるいは日銀からどのように今就職されているのか、これを再三求めたわけでございますが、出せないあるいは把握する立場にないの一点張りでございました。そこで、委員長にお願いをして、理事会での御協議ということをお願いし、先ほどの理事会でも引き続き民主党の理事からこの資料の提出を求めたというふうに聞いております。

 そこで、財務大臣、前回御出席いただけなかったんですが、前回は、二兆円の公的資金を地域金融機関に投入をしよう、そういった法案の審議の中で、特に信用金庫を例に、全国の三百四十九のうち半数以上の信用金庫に、合計二百三十九名の旧大蔵、日銀のOBが現在役員として再就職をしている。それがまた、ほとんど、いわゆる金融検査官あるいは日銀で考査役をされていた方が不思議とその信用金庫の検査部長、検査室長のような役になって、そして、今、役員として働いている。これはやはり、検査をする側とカウンターパートの検査を受ける側の関係が、OBに対してどうしても検査、考査が甘くなるんじゃないですかと。そういった懸念から、そんなことがないように、特に金融検査官の再就職については金融担当大臣に日銀を例に自粛を求めましたが、そのことについてはやるという御回答はいただけなかったんですが。

 財務大臣、この資料を見ていただいて、私は、金融担当大臣が、先ほど御紹介をしたように、役所として把握する立場にないという御答弁だったのは、金融庁としては、旧大蔵省のOBの再就職については、旧大蔵省から分離した金融庁ということで把握する立場にないといったことなのかなと。それだけではないというふうに多分お答えになると思うんですが、だとすれば、旧大蔵省から金融庁部分は離れたといっても、当然、旧大蔵省は財務省にといった流れの中で、財務大臣として、この旧大蔵省のOBの方が現在全国六百九十九の金融機関にどのように再就職をされているのか、その資料をこの委員会に出していただきたいと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、先ほど竹中大臣の前回の御答弁を伺っておりまして、私も全く同感でございまして、今、公務を離れられた方のそれぞれの職業、就職先というのを私どもは把握しておりません。

 もちろん、人事院承認を得なければならないというようなルールがつくられております。これは、天下り批判というものがある中でそういうルールがつくられている。そういうものは、もちろん、人事院ルールにのっとってやらなければならないようなものは、我々も当然把握してそのようにやっておりますけれども、それ以外のものについては特にそういう資料というものを我々は持っておりません。

武正委員 竹中大臣は、前回、役所として把握する立場にないということでお答えをいただいたんですが、財務省としても把握する立場にないということでございましょうか。

谷垣国務大臣 そういうことでございます。現にございませんし、OB、公務を離れられた、公務員の身分を退かれた方々の一々の動向まで私どもはつかんでおりませんし、また、そうすべきだとも思っておりません。

武正委員 私が前回指摘をしたのは、金融ビッグバンだ、そしてまた、先ほど来の指摘のように、ある面、間接金融から直接金融へ促すんだ、そういうような政府の姿勢、これは当然国民の皆様にさまざまな形で影響があるわけです。決して強いるわけではないと。そしてまた、さきの法案の審査では、二兆円の公的資金を、税金ですよね、これをまた金融機関に投じよう、地域金融機関の合併促進ではないと言いますが、それも促そうと。そういった中で、旧大蔵省あるいは日銀、こうした方々の再就職によって、一番大事な、この金融システム全体でのリスクテーク、その中でのいわゆる金融検査、考査が、あだやさじかげんがきいたり手かげんがあってはいけないし、ましてそのような疑い、疑念を持たれるようなことがあってはならない。だから、旧大蔵省、日銀、特に旧大蔵省からの再就職状況を把握する立場にないというふうに言い張ることは、今こうした法案の審査、審議、そしてまた政府としての姿勢、今の現下における姿勢としてはやはり問題がある。そういった姿勢をどうしてあくまでも貫くのか、私には到底理解できないわけでございます。

 そこで、お手元の方に、今回は証取法の改正ということで、三ページ目をお開きいただきたいんですが、旧大蔵省、日本銀行からの再就職が、いわゆる協会、投信協会、生保協会、損保協会、これは何というんでしょうか、自主規制組織というのか、あるいは業界団体、まあ、業界組織というんでしょうか、こういったところにはやはり旧大蔵省、日銀から再就職の率が高い。証券業協会、証券取引所は二十九人中九人、投信協会、格付会社は十九人中五人、生保協会五人中二人、損保協会八人中一人ということでございますが、証券会社、投信会社、生保、そして損保の役員を調べてみると、その二ページ目のいわゆる金融機関との非常に際立った特徴は、旧大蔵省、日銀からの再就職が少ないといった点でございます。

 これは、うがった見方というのはいろいろできるわけでありますが、要は、旧大蔵省、日銀から多くの方々が再就職をされている銀行を中心に日本の金融システムの再編成あるいは強化をやろうという背景には、やはりこの再就職状況というのが密接に絡んでいるのではないかというふうに見受けられるわけでございますが、この点いかがでしょうか、この認識。全然違うよ、再就職していないから損保、生保の窓販を銀行に認めたり、あるいはまた銀行での証券仲介業を認めるといったことで、あくまでも銀行主体の日本の金融ビッグバンなんだよというような誤解を与えかねないと思うんですが、担当大臣、いかがでしょうか。

伊藤副大臣 今御指摘がございましたように、天下りの問題について議論があるわけでございますから、そうしたことについて真摯に受けとめなければいけないというふうに考えております。特に、権限というものを背景にして押しつけ的に再就職をあっせんする、こういうことはあってはならないわけであります。

 しかし、今回のこの法律につきましては、顧客の利便性の向上でありますとか、あるいは投資家のすそ野を広げていきたい、証券会社の店舗が少ない地域におけるアクセスの改善といった政策的な意義にかんがみて御審議をお願いしているところでございますので、ぜひこうした点について、銀行救済ではないということについて御理解を賜りたいというふうに思います。

武正委員 誤解だとすれば、そういった誤解を生じかねない銀行と証券、投信、生保、損保に対する再就職の余りにも際立った状況の違い、こういったところは、また、疑念を持たれないようにそうした再就職は自粛をすべきである。

 そしてまた、速やかに今の状況について、私もこうやって日本金融名鑑から引っ張ればできるわけですので、委員会への資料の提出を、委員長、再度お願いをしたいと思います。

田野瀬委員長 理事会で協議させていただきます。

武正委員 ここで、先ほどちょっと触れた、いわゆる監督機関というか業界機関というんでしょうか、ここには旧大蔵省、日銀の方が結構再就職されているんですね。先ほどジャスダックのお話も同僚委員からございましたが、「ジャスダック 社長、不透明な株売買か 金融庁と日証協調査」ということなんですね。ですから、いわゆる業界団体というかこういう協会の役割というのは、やはりそれぞれの傘下の会社に対して大変重いものがあるというふうに思うわけなんですね。私は、そのときに、このような再就職状況、果たしてこれがいいんだろうかと。

 金融庁も調査します、日証協も調査します、でも、日証協にはこのように多くの旧大蔵、日銀から再就職をしている。こういったことでは、何だ同じところがやっているんじゃないか、第三者あるいはそういったさまざまな観点からのチェックが甘くなるのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。

伊藤副大臣 御指摘がありました業界、協会というのは、ある意味では自主規制機能というものも担っているわけでありますので、国家公務員がそうした協会あるいは民間金融機関に再就職することによって自主規制機能がゆがめられてはならない、これは当然のことであります。そして、協会等の自主規制機関において、これまでもそのようなことはなく、適切に自主規制機能というものが果たされてこられたというふうに考えているところでございます。

 今、日本証券業協会のことについても御指摘ありましたが、これまで数度の証券取引法の改正によって自主規制機能の強化に努めてきたところでありますが、私どもといたしましては、同協会の活動が証券市場の発展に資するものとなるよう、引き続き適切な監督を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

武正委員 監督じゃなくて、要は、そうした独立性なり自主規制機能の強化のためには、旧大蔵省、日銀から、このように二十九名中九名の役員の再就職状況というのは、今言われた副大臣の答弁が疑わしいものというふうな疑念を持たれますので、やはりこの再就職については自粛すべきであるというふうなことを指摘させていただきます。

 本来であれば、国債保有の多様化を目指す観点から、海外投資家が購入しやすい規制緩和の実態もお聞きしたかったんですが、時間の関係で先を急がせていただきます。お許しください。

 さて、国債事務取扱諸費に必要な経費が平成十六年度四千九百二十八億円、これは特別会計の予算書に載っておりますが、このうち、シンジケート団に、前に手数料を年間千二百億円払っているというような話がありましたが、今、実際のところ、このうちシンジケート団への手数料は幾らになるのか、これをお答えいただけますか。

山本副大臣 平成十六年度の国債整理基金特別会計予算におきまして、国債事務取扱諸費に必要な経費としまして四千九百二十八億円計上しているというところは、御指摘のとおりでございます。その内訳といたしまして、国債の発行、償還等に係る手数料を約二千七百億円計上しているところでございまして、さらに、その手数料のうち、国債募集引受団、いわゆるシ団への引受手数料の支払いといたしまして九百三十億円を見込んでいるところでございます。

 なお、シ団への引受手数料につきましては、平成十六年五月発行分の十年利付国債から額面百円当たり三十九銭から二十三銭に引き下げることとしたため、この見直しに伴いましてシ団への引受手数料の支払いも減少することが見込まれているところでございます。

武正委員 一時、シ団はもうゼロに、廃止にということだったんですが、今回二〇%から一五%に引き下げるというようなお話ですけれども、本来のシ団廃止に比べるとペースが遅いという指摘があるんですが、この点はいかがでしょうか。

山本副大臣 御指摘のように、シ団を廃止する、二〇〇三年度中に国債募集引受団、シ団を廃止したらというような考え方もあったわけでございますが、我が国では十年国債につきましてシ団制度のもとで国債の引き受け、発行が行われておりまして、シ団制度は国債の安定消化という意味におきましては従来より重要な役割を果たしてきているものと考えております。

 他方で、平成十六年十月から、国債の安定的な消化の促進及び国債市場の流動性の維持、向上を目的とした国債市場特別参加者、仮称でありますが、いわゆるプライマリーディーラー制度でございますけれども、これを導入することとしておりまして、同制度は十年債に対象を限定しない国債全体の安定消化の新たな枠組みとして有効に機能することが期待されております。

 したがいまして、国債市場特別参加者制度の導入後、同制度の国債の安定消化機能を評価いたしまして、特段の問題がないと判断するということになりますればシ団制度は廃止することになるというように、手順を踏んで、ある程度評価をいただかなければならない、こう考えておりますので、やや時間が先に延びておるというように御理解賜ればと思います。

武正委員 ある面、この九百三十億円の手数料、これがシ団の金融機関に対する大変ありがたい手数料になっている、これをやめるにやめられないというような指摘があって当初の予定がおくれているのではないか、こういう指摘もあるわけなんですね。ですから、私は、やはりこのシ団廃止を、当初考えたわけですので、そのペースを落とすことなくこのシ団廃止を進めていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 さて、ペイオフの方にちょっと話を移させていただきたいんですが、財務大臣、金融担当大臣それぞれ、もう既に委員会ではお話をいただいていると思うんですが、改めて、来年四月のペイオフ解禁は当初予定どおり実行するということで言明をいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 何度か御答弁させていただきましたように、ペイオフというのは、預金者がみずから銀行を選別する、そういう健全な競争環境といいますか緊張感の中で銀行が経営を行う、もって非常に規律のあるガバナンスを発揮した経営を行って金融システム全体を強くしていく、そういう意味ではやはりぜひとも必要なプロセス、経なければいけないプロセスであろうかというふうに思っております。

 そうした意味で、金融システム全体の効率化を図るためにも、十七年四月から予定どおりペイオフ解禁を実施することといたしております。これを前提として、我々としては、金融再生プログラムをしっかりと実行していく、リレーションシップバンキングのアクションプログラムをしっかりと実行していく、さらに、そのために必要な趣旨の周知徹底等々、さらには決済機能の安定確保のための制度的な手当てを今粛々と進めているところでございます。

谷垣国務大臣 私の方は預金保護でどれだけお金を出すかということが主たる問題でございますから、ペイオフを実施するかどうかという観点から申しますと、今の竹中大臣の御答弁に尽きているのではないかと思います。

武正委員 既に日銀総裁にもお聞きしたんですが、ペイオフ解禁を延ばしてきた一つ背景として指摘されるのが、地方自治体が合計二十兆円のお金を特に指定金融機関を中心に預けている、これがペイオフ解禁を延ばし延ばしにしてきた一つ理由であるという指摘があるんですが、この点が改善をされているのか。あるいはペイオフ解禁の支障にならないように、例えば、地方自治体あるいは指定金融機関を含めてお取り組みをされているのか、この点、担当大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 御指摘の公金についての議論というのを私もよく耳にするところでございます。そうした問題意識を踏まえまして、これは十四年四月に定期性預金について一部ペイオフが解禁されておりますけれども、それに先立ちまして、この公金については総務省において研究会が開催されて検討されております。十三年三月に公金預金に係るペイオフ解禁への対応方策が取りまとめられまして、自治体に周知されているというふうに承知をしております。これは、具体的な方策としましては、借入金等の債務と相殺する、指定金融機関からの担保を充実する、国債等の債券による運用、普通預金等の流動性預金の活用、こうした点がこの中では挙げられているところでございます。

 ぜひ強調させていただきたいのは、平成十四年の預金保険法改正においてペイオフ解禁拡大が十七年四月というふうになったわけでございますけれども、日本の場合、非常に銀行預金に決済が大きく依存しているという実態も踏まえまして、無利息、要求払い、決済サービスを提供できること、この三つの条件を満たす預金を全額保護します決済用預金の制度が設けられている。これは、私はペイオフを考えるに当たっては大変重要な制度であるというふうに思っております。自治体の公金につきましても、この決済用預金として預け入れられれば全額保護が可能になるというシステムが既にあるということでございます。

 いずれにしても、我々としましては、この決済用預金の制度も含めまして、預金保険制度に係る誤解やたまたま知らないということから無用の混乱を来さないように、適切な広報活動を今申し上げた点も含めてしっかりと行っていくつもりでおります。

武正委員 時間が来ましたから終わりますが、実は地方自治体がペイオフ対策がおくれている。いわゆる指定金融機関は総務省マターであるというようなことで、あだや、金融庁あるいは財務大臣を含めて、政府としてこのペイオフを必ず実行するという、あるいはそういった御発言を実効あらしめるためにも、地方公共団体の二十兆円の指定金融機関との関係、これがペイオフを妨げないようにお取り組みをお願いしたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 本題に入る前に、竹中大臣に、先ほどの年金の未納問題に関連をして確認しておきたいと思います。

 大臣は先ほど、結果的に十一カ月未納となったというふうに御説明されました。そこで、確認をしたいんですけれども、それは、大臣になって十一カ月目に気がついて払ったのか、それとも、ずっと三年間未納であって、最近気がついて二年間さかのぼって納めたけれども、結果として十一カ月未納期間が残ったという意味なのか、これはどちらなんでしょうか。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

竹中国務大臣 後者でございます。

 四月に手続をして二年さかのぼった、結果的に十一カ月が未納として残ったということでございます。

佐々木(憲)委員 そうしますと、気がついたのはいつでしょうか。払ったのはいつでしょうか。

竹中国務大臣 私、国家公務員共済に入っているというふうに思っておりましたんですけれども、いろんな問題が生じましたので、念のために、三月だったと思いますけれども、内閣府の人事の方に、国家公務員共済に入っていますねということで確認をさせていただきました。

 その結果、四月の最初ごろに、いや、実は国家公務員共済の制度は短期と長期に複雑に分かれておりまして、短期には入っているんですけれども長期には入っていないということがわかりましたと。それを受けまして、すぐ手続をとって、その時点のものを払って、かつ二年間さかのぼって払わせていただいたということであります。

佐々木(憲)委員 なるほど。そうしますと、四月二十七日の答弁で、今は国民年金に入っておりますし、保険料を払っておりますというのは、今はというのは、四月の中旬以降の時点の話だということがわかりました。となりますと、年金の法案を提出するときにサインをされたわけですが、その際には未納のままであった、その時点では未納のままだったということでありますね。わかりました。

 やはり、これは責任は非常に大きいと思います。官房長官はおやめになりましたけれども、あとの大臣はおやめにならないということでありまして、これは責任を感じていただかなきゃならない。私はやめるべきだというふうに思いますので、その点を申し上げておきたいと思います。

 さてそれで、具体的に、証取法改正案に関連をして聞きたいんですけれども、金融機関が証券仲介業を窓口でできるように求めたのは銀行業界なのか、それとも証券業界なのか、これはどちらでしょうか。

竹中国務大臣 どういう要望、どういう趣旨で今回の取り次ぎを解禁したのかという問いかけだと思いますけれども、証券仲介業務につきましては、昨年の金融審議会の第一部会におきまして、銀行界の代表者からも解禁の要望はございました。同時に、市場機能を中核とする金融システムに向けた制度改革の一つとして、事務局の方から問題提起をさせていただいて、各界の有識者等から構成されるこの部会においていろいろ御指摘をいただいた。指摘の内容は、顧客の利便性の向上、投資家層のすそ野の拡大、アクセスの改善といった、政策としての意義がある、銀行であるがゆえに必要となる有効な弊害防止措置を条件にこの国会で所要の法的措置を行うことが望ましい、そうしたことを金融審の有識者から御提言いただいたということでございます。

 証券界、銀行界に関して申し上げますと、証券界には銀行等との競争激化を懸念する意見もございますが、一方で、市場のすそ野を広げる施策としておおむね御理解をいただいているというふうに認識をしております。

 この部会においては、学界、経済界、金融、銀行界以外の委員からも、政策としての意義にかんがみて解禁すべきだ、その意味では、審議会の場でありますので、それぞれの場を代表して、幅広い方々からの御議論をいただいて、このような方向性が出てきたということであります。

佐々木(憲)委員 いろいろな意見があったというふうにおっしゃいましたが、具体的に、例えば全国銀行協会、全銀協などが、金融機関への証券仲介業の解禁に関する私どもの意見という意見書を昨年十二月十九日に出されております。この中で、「金融機関にとって」「むしろ収益源の多様化、リスク分散が図られ、経営の安定化に資すると考える。」ということが言われ、それから、そのために具体的に解禁をしてもらいたい、こういう要望が出されております。銀行業界としては極めてはっきりした要望を出している。

 これに対して、証券業界は、おおむね理解をいただいたというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、果たしてそうなのかどうか。とりわけ中小の地方の証券会社というのは一体どういう対応をされているか、その点についてお聞かせいただきたい。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 証券業界自体、中小の証券業界で特定の意見をまとめて何か物を発表しているということではないかと思います。

 したがいまして、証券会社によっても経営戦略上いろいろな判断があると思いますし、特に、今回の解禁につきましては、中小証券会社にとっても金融機関のネットワークを通じました顧客層の拡大等のメリットがあるという観点から、そういうビジネスチャンスがあるというようなこともありますので、必ずしも中小証券会社の経営を圧迫するということではないというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 それは全く違いまして、全国の証券業界というのは、さまざまありまして、証券業界は会社ごとに立場が違う。したがって、先ほどの銀行業界のように統一した意見を出そうとして、例えば昨年の十二月十日にそういう会合を開いたようなんですけれども、地方証券は激しく反発したということで、結局まとまった意思統一ができない、こういう状況だったと言われております。

 したがいまして、地方証券、中小の証券というのは大変不利な立場に置かれていくのではないか、こういうことで、実際に、この法案に対しては批判的な立場をとっているようであります。例えば、新聞報道によりますと、「全国銀行協会など金融機関の七団体は、早期の解禁を要望しているが、証券業界は会社ごとに立場が異なり、意見統一ができない」「証券業界では、地方の中小証券が、地元の地方銀行に客を奪われるとの懸念がある。」こういうことが報道されているわけであります。

 実際考えてみましても、地方の中小証券は、個人の投資家の委託注文の受注を主な営業対象としております。ですから、銀行による幅広い支店網を生かした営業によりまして顧客を奪われることになるのではないか、こういう懸念を持っているわけですね。実際に、実態上そのような形になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、恐らく、いろいろな証券会社によって、つまり、中小証券会社によってもいろいろな経営戦略があると思いますし、意見はまちまちだというふうに思います。

 今の証券仲介業の解禁によりまして証券の販売チャネルが拡充するということでございますから、そういうことによって顧客層がふえるということで、それがまた中小証券会社のメリットにもなるということを考えるところもございますし、あるいはこれは、中には地域の銀行と連携提携をして、こういった形での顧客を開拓していこうというような考え方を持つものもあるかと思います。したがいまして、証券会社によっていろいろだというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 そういう説明をしても、現実の、現場の中小証券会社自身がこれは激しく反発しているわけですから、幾らそういう説明をしても実態とは違うと思います。

 例えば、早稲田大学の上村達男教授は、日経金融の一月二十六日付でこういうことを言っているんです。「証取法六五条の緩和論は、不良債権問題に苦しむ銀行に収益チャンスを与える「不健康対応」が目的で、不公正取引の取り締まりなど資本市場のインフラを整える「健康対応」ではない」。不健康である、この対応の仕方が。こういうふうに厳しく指摘をしているわけであります。

 銀行は、支店がたくさんありますから、幅広い支店網を生かして顧客を囲い込むことができる、新たな手数料を得ることができる、しかし、中小証券は銀行に客を奪われて営業に大変大きな打撃が加えられる、こういう格差がこのことによって非常に広がるのではないか。これは私ははっきりしているというふうに指摘をしておきたいと思います。

 次に、課徴金問題についてお聞きをします。

 証券市場の信頼性が必要だという点について前回私質問させていただきました。今度の証取法改正では、市場監視機能の強化を掲げまして、不公正取引などのルール違反に対して課徴金を新設するということになっているわけであります。

 そこで、大事なことは課徴金の水準なんですね。ルール違反を抑止するということでありますと、そのために十分な水準でなければならないと思うわけであります。つまり、違反をして、違反で手に入れた利得というのは、これは吐き出すのは当たり前だと思うんですね、それは不当な利得ですから。しかし、違反をしたら割に合わないという、ペナルティーを科すような水準というのが私は必要だというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案の課徴金制度でございますけれども、インサイダー取引などの証券取引法違反行為の抑止を図って、証券取引法の法規制の実効性を確保する、そういう行政目的の達成のために、証取法の一定の規範の違反者に対して金銭的な負担を課す行政上の措置でございます。

 その水準については、今御指摘のように、違反行為によってその違反行為者が得られる経済的利得相当額を基準として、算定方法を法律に定めておるわけでございます。

 そういう観点から申し上げますと、今回、こういった制度を初めてある意味で導入をするということもございまして、違反行為の抑止のための水準として、経済的利得相当額を基準というふうにしておりますけれども、あくまで違反行為を抑止して、この法規制の実効性を確保するための行政上の措置という観点でございます。

 したがいまして、この課徴金の水準につきましては、初めての措置でございますので、こういった制度が達成できるかどうかという観点から、よく検証はしていく必要があるというふうには考えております。

佐々木(憲)委員 この点について、この法案では必ずしも十分ではないと私は思うわけです。

 例えば、金融審議会の金融分科会第一部会報告、これを見ますと、こういうふうになっているわけです。「ルール破りは割に合わないという規律を確立し、規制の実効性を担保するため、少なくとも違反行為による利得の吐き出しは必要であるが、違反行為が市場への信頼を傷つけるという社会的損失をもたらしていることをも考慮し、抑止のために十分な水準となるよう検討すべきである。」つまり、不公正取引などの不当な行為によって得た利得、これは当然、吐き出すのは当たり前なんであります。しかし、ペナルティーを科すというようなことをやらないと抑止力にならないというのがこの金融分科会第一部会の報告なんですね。

 実際にそうなっているのかどうかということ。今回の法案は、今御説明ありましたように、不当な利得だけは吐き出して結構ですが、それ以上は結構ですよ。これでは抑止力にならない。

 具体的に外国の事例を聞きたいんですけれども、不正取引に対する制裁金制度は、アメリカの場合、例えばインサイダー取引については利益の何倍を上限にしているか、フランスでは、違反行為についての課徴金は利益の何倍を上限にしているか、イギリスは上限があるか、この点について答えていただきたい。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 欧米主要国では、これまで、証券取引規定に違反する行為に対して課徴金制度が導入されておりまして、その水準について、各国それぞれ定めを置いております。

 まず、アメリカの場合でございますけれども、これは、特に重大な違反につきましては、自然人に対しては十万ドル、日本円にして一千万円ちょっとということだと思いますが、法人に対しては五十万ドル、五千五百万かそのぐらいかと思います。これをその上限として課徴金を賦課できるというふうにされておりまして、かつ、これらの金額よりも多額の利得が違反者にもたらされた場合には、その利得額を上限とするというふうにしてございます。さらに、インサイダー取引につきましては利得額の三倍を上限としております。

 これらの上限額の範囲内で、米国証券取引委員会が個別の事案ごとに、違反の内容あるいは深刻さの度合い、違反者の支払い能力、それから違反者の協力度などのさまざまな要因を総合的に勘案して課徴金の額を決定するというふうにされております。

 それから、イギリスの場合でございますが、イギリスは、法律上上限の定めはございませんけれども、英国金融サービス機構、FSAが、違反行為の深刻さや得られた利得の額等を総合的に勘案して課徴金の額を決定することとされております。

 それから、ドイツの場合でございますが、ドイツは、上限額は百五十万ユーロでございまして、約二億円、フランスの場合には、上限額が、百五十万ユーロと利得額の十倍のいずれか高い方というふうにされております。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 いずれの場合も日本よりはかなり厳しいわけです。アメリカは、インサイダー取引については利益の三倍を上限にしている、フランスは利益の十倍、こういうところまで可能である。ですから、この不当利得を吐き出すだけではだめだというのがこの第一部会の報告であるにもかかわらず、現実にそういうふうになっていないんですよ、法律が。

 法案の策定過程では、利益の二倍を上限にしようということが言われておりまして、ことしの一月十五日付日経によると、「課徴金の金額は不当利益の二倍を軸に調整している。」という報道があります。つまり、調整した結果、結局その利益と同じだ、こういう低い水準になってしまったということが結果として出ているわけで、ほとんど効果がないです、これは。つくらないよりつくった方がいいという意見もあるかもしれないが、しかし、これでは効果が上がらない。やはり欧米並みにしっかりとしたペナルティーを科すべきだというふうに思います。

 それから次に、株のペーパーレス法案についてお聞きをしたいと思います。

 証券決済のシステム改革というのは、これは、安全性を確保し、効率よく、利用者の利便性を高めるということがあれば望ましいと思いますが、現在提案されている案は、体力のあるところとないところでかなり格差が生まれるんじゃないかという懸念を持つわけです。

 具体的にお聞きしますが、今度の株のペーパーレス法案が実行された場合、株式の発行会社や証券決済を行う個々の金融機関というのはIT化のためにどの程度の設備投資が必要になるか、また、関連する金融機関全体では幾らの設備投資が必要となるか、この点について回答していただきたい。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案は、株式等について、ペーパーレス化を図るとともに、新たに振替制度の対象とするための枠組みを示すものでありまして、今後、この法律案を仮にお認めいただければ、その枠組みに沿って、実務界におきまして、振替制度の具体的なスキームの策定をいたしまして、しかる後に、その制度を実際に稼働する上で必要となるシステム開発が行われるということになります。

 したがいまして、今の御指摘の、証券会社などが負担するコストにつきましては、こういった実務界における検討の後に初めて算出可能になるものでございまして、現時点においてその算出を行うことはなかなか困難であるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 例えば、昨年一月から始まりました国債のペーパーレス化では、システム導入の設備投資に数百億円を要した、中小証券会社にとっては過大な負担になったと言われております。それならば、みずから開発をせず、そのシステムに参入したらどうか、つまり、大手のところに接続すればいいじゃないかとか、こういう発想もありますけれども、しかし、かなり手数料が高いということで、国債業務をやめる中小証券が続出をしております。これが現実ですね。

 今回の株のペーパーレス化にまでいきますと、一社当たり数十億円の設備投資が必要だ、あるいは、関連する金融機関全体で五百億円程度の投資が必要ではないかと言われているわけであります。ですから、費用を負担できないところが生まれるわけであります。

 この法案によると、結果的に、やはり体力の弱い中小証券、先ほどから中小証券のことばかり言いますけれども、ここにはかなりの負担がかかっていくのではないか、それに耐えられないところも出てくるのではないかと思いますけれども、そういう傾向は現実として起こると思いますが、いかがですか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど国債のお話が出てまいりましたが、国債の場合には、いろいろなほかの設備投資も含めて、一体としていろいろなシステム開発を行っているということがありまして、なかなかこれを切り分けて考えることが難しいようでございます。

 さらに、中小証券会社のコストの関係でございますけれども、今申し上げましたように、実務界における検討を踏まえてコスト負担の算出が可能になるということでございますので、必ずしも今の段階でわかるわけではございませんが、一方で、今ちょっとお話にございましたように、新しい振替制度では、振替機関と投資家の間に証券会社等の口座管理機関が複層的に介在することを可能とする多層構造を実現いたしております。これは、中小証券会社からのいろいろな要望も踏まえてそういったことをしておりまして、そういう観点から、証券会社等が振替機関に直接に口座を開設しなくても、より安い手数料を提示する他の証券会社等に口座を開設するという選択が可能となるといったことでございまして、そういった実務界の意見も踏まえまして、振替制度に係るコストが低減するように配慮をいたしているところでございます。

佐々木(憲)委員 多層構造になり、ほかの大手のところに軒先を借りるんだ、こういう話でありますけれども、それもかなりの手数料を取られるということで、現実に、国債の事例でも、そういう国債業務をやめるというところが出てくるほど大きな負担になっているという点を指摘しておきたいと思います。

 それから次に、このペーパーレス化によって株主の権利というのは一体どうなるのか、これを確認したい。

 二年前の五月十七日の衆議院財務金融委員会で、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律、長い名前の法律の審議が行われました。そこで、ペーパーレス化が社債、国債について行われるというその法案の審議が行われましたが、株式がそこから除かれたその理由について、柳澤金融担当大臣はこう説明していたわけです。「もし過大記載があったときにはどうやって責任をとれるんだということが非常に問題になります。 特に、経済的な問題だけでしたらいろいろな解決の方法もあり得るわけですけれども、株主権というような議決権、こういうようなものが絡んでまいりますと、なかなかここに難しい問題が出てくるというようなことがありまして、そういったことで、なおこのあたりのことについては時間をとって結論を出さなければいけない、」こういうふうに説明をされているわけですね。つまり、株主権が損なわれないように検討していかなければならない、まだ結論は出す段階ではない、これが二年前の話でありました。

 さて、そこで、今回、一体それがどのようにクリアされたのかという点でありますが、例えば過大記載が発生した場合、ミスをした機関が消却義務を負うということになっておりますが、その消却義務が履行されない場合は、例えば一株または一単元の株主の場合、これはどのようになりますか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の過大記録がなされた場合でございます。これは、過大記録の状態が解消されない間はどういうことが起こっているかといいますと、振替口座簿に記録されている株式数が発行者の発行済み株式総数よりも大きくなりまして、すべての振替口座に記録された株式について権利行使がされますと、発行者によって全く不合理な結果を招くということになりますので、過大記載を行った振替機関等の傘下に口座を開設する加入者等は、過大分に相当する株式についてはその持ち株数の割合に応じて会社に対抗できないというふうにしてございます。

 ただ、しかしながら……(佐々木(憲)委員「一株当たりどうなるのか、一株の株主はどうなるのか」と呼ぶ)一株の株主でございますか。

 したがいまして、そこの口座にある株主については、その部分について持ち株数の割合に応じて対抗できないということでございますから、その分だけ割合が減るということになると思います。――もうちょっとよろしいですか。

佐々木(憲)委員 いや、もう時間がないから。

 それで、つまり、一株の権利というものは一株でなければならぬのです。しかし、過大記載、つまり、これは現実に株がある今の状態と違いまして、すべて記録が電子化されるわけですから、電子化された場合、百を三百と間違えて書くということもある。そういう場合に、一株の権利というものが、複雑な説明はやめますけれども、結果的に一株の株主は〇・九とか〇・八になるわけですよ。ですから、株主の権利というものがしたがって制約をされる、結果的にそういうことを招くということなんですよね。

 したがって、この法案では、投資家の権利が縮減されるということになるわけでありまして、そうなりますと、一体、二年前の、株主の権利という大変大きな重い問題がありますから、これを解決するためには大変時間がかかるんです、検討しなければならぬのですと言っていたのが、いつの間にか、何か株主の権利が制約される、もちろんゼロにはならぬという意味で、ゼロにはならぬけれども、しかし〇・九とか〇・八になり得る、そういう結果をもたらすということになるわけでありまして、もう時間がありませんから、質問時間も終わりましたので、一方的に言っちゃいますけれども、そういう内容の法案になっているわけですから、これは問題がクリアされておりません。

 したがいまして、私どもは、さまざまな問題点を持っておりますのでこれらの法案については賛成するわけにはいかないということを最後に申し上げまして、終わらせていただきます。

田野瀬委員長 訂正。はい、どうぞ。

増井政府参考人 恐縮でございますが、今の私の説明の中で一つ訂正させていただきたいと思います。

 一株の場合には、一株は対抗できます。要するに、何株もあった場合にはその割合が減りますけれども、一株株主の場合には一株ということで対抗できるという規定を設けております。

佐々木(憲)委員 一株は今言ったようなとおりかもしれないけれども、つまり、何株かあった中の株の重さは、株の権限は縮小されるわけです。つまり、過大記載が行われたり、そういうミスが起こった場合、その処理のためには株主が被害を受けるということを認めるということになるわけです。だからそれは反対だということを言っているわけです。

田野瀬委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 私、馬淵澄夫は、民主党・無所属クラブを代表して、証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案、これらに賛成する立場で討論を行います。

 まず、両案に賛成する討論に先立ち、両案の提出者であります竹中金融担当大臣及び両案を審議する本委員会の所管事項を担当する谷垣財務大臣の両大臣が、小泉内閣の年金保険料未納閣僚にそろって名を連ねたことは、財務金融委員会の一員として大変残念であることをこの機会に申し述べておきたいと思います。

 次に、ただいま議題となりました両案に対する賛成の討論を行います。

 フリー、フェア、グローバルの三原則を掲げた金融ビッグバン構想が打ち出されてから七年が経過しました。この間、証券取引法の改正や金融商品販売法の整備、証券取引等監視委員会の強化等の措置が講じられましたが、とりわけフェアネスに関してはまだまだ道半ばだと言わざるを得ません。

 昨年十二月に取りまとめられた金融審議会の「市場機能を中核とする金融システムに向けて」という報告の中でも、米国の証券取引委員会、SECと比較して、我が国の市場監視機能が制度的に大きく制約されているとの指摘があります。

 例えば、破綻直前の増資で多くの投資家に被害を与えた石川銀行のように、ディスクロージャー面で大きな問題があったケースもあります。ディスクロージャーとは、単に有価証券報告書等に小さな字で書けば済む問題ではないのです。

 フェアネスの確保についての危惧がいかに大きいかは、銀行における保険商品の窓口販売全面解禁、いわゆる窓販に対する反響の大きさを見ても明らかです。

 圧力販売等のおそれについては、私も、四月二十三日の本委員会における質疑の中で、現場から実際に圧力だとの指摘のあった販売事例も紹介しつつ、圧力販売が顕在化しにくいこと、また事後規制が難しいことなどを指摘させていただきました。その際にも、私は、銀行による保険商品の窓販解禁にとどまらず、金融商品全般にわたる横断的ルールが必要であることを主張しました。

 そして、そのためには、民主党がかねてから主張してきたように、日本版SECを設置して市場監視機能を大きく強化するとともに、より幅広い投資家保護の枠組みとして、現行の金融商品販売法からさらに踏み込んだ横断的ルールとして、英国の金融市場サービス法のような金融サービス法を整備することが必要不可欠だと考えます。

 このような観点から見れば、本法律案は内容的にはまだ不十分であるとはいえ、金融資本市場の整備という大きな方向性においては一定の前進と見ることもできます。政府におかれては、これで一件落着とすることなく、民主党の主張も十分に取り入れつつ、引き続きよりよい金融システムの構築に向けた努力を行うべきであることを申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)

田野瀬委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、証券取引法一部改正案並びに社債等振替法等一部改正案に対する反対討論を行います。

 まず、証券取引法案について、反対理由の第一は、銀行等金融機関への証券仲介業の解禁により、銀行の利益相反行為や不招請勧誘などを招き、顧客の利益を損なうものとなることであります。とりわけ、投資家保護策の整備が不十分な今日、預金、融資、株式所有など経済的影響の強い銀行が窓口で株を仲介するようになれば、その優越的地位の乱用による投資家の被害拡大が大いに懸念されるものであります。

 第二は、本法案により、銀行は、幅広い店舗網を生かし、顧客の囲い込みが可能となり、新たな手数料収入を得ることができる一方、個人投資家の委託注文の受注を主としている地方の中小証券会社にとって、銀行に顧客を奪われるなど、その営業に重大な影響を受けることとなるからであります。

 第三は、市場監視機能・体制の強化として課徴金制度等を新設していますが、その水準は、違法行為によって得た利益を吐き出す程度のものであり、金融審議会の報告でも強調された、抑止のために十分な水準となるものとはほど遠いものであります。諸外国の制裁金と比較しても極めて不十分なものであります。

 次に、社債等振替法等一部改正案についてであります。

 本法案反対の一つ目の理由は、株式のペーパーレス化とそれに伴う証券決済のIT化によって、巨額のシステム開発費を要し、すべての関係金融機関に設備投資を強いることとなり、この負担に耐えられない中小証券会社は淘汰され、その結果、大手証券会社を頂点とした再編が加速されることとなるからであります。

 二つ目に、議決権など特有の問題を持つ株式のペーパーレス化には政府も慎重な態度をとってきたにもかかわらず、本法案は、流通段階でのミスを株式の発行会社や株主に転嫁するなど、株主の権利を損なうおそれを含んでおります。また、名義書きかえや口座開設をしていなかった株主が後にトラブルに巻き込まれる可能性も否定できません。

 このことを指摘して、私の反対討論とするものであります。

田野瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 これより採決に入ります。

 まず、証券取引法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 ただいま議決いたしました証券取引法等の一部を改正する法律案に対し、山本明彦君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山本明彦君。

山本(明)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    証券取引法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 銀行等による証券仲介業務の解禁にあたっては、投資家保護を図るため、利益相反や銀行の優越的地位の濫用等の弊害防止措置を十分に講ずるとともに、機能別・横断的な考え方に立った投資家保護法制の整備について引き続き検討すること。

 一 投資家保護法制の整備に向けた検討に併せて、金融・資本市場における健全な取引を確保する観点から、米国の証券取引委員会(SEC)を含む諸外国の事例等も参考に、引き続き市場監視機能等の強化について検討すること。

以上であります。

 何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

田野瀬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣竹中平蔵君。

竹中国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨を踏まえまして十分検討いたしたいと存じます。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 次回は、明十二日水曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十五分散会


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