衆議院

メインへスキップ



第2号 平成16年10月26日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年十月二十六日(火曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 鈴木 俊一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      岡本 芳郎君    木村 太郎君

      熊代 昭彦君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    竹本 直一君

      谷川 弥一君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山下 貴史君

      渡辺 喜美君    井上 和雄君

      岩國 哲人君    小林 憲司君

      鈴木 克昌君    園田 康博君

      田島 一成君    樽床 伸二君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   総務副大臣        今井  宏君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣府産業再生機構担当室長)          藤岡 文七君

   政府参考人

   (国税庁次長)      村上 喜堂君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    西村 雅夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  園田 康博君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 この際、たび重なる台風と新潟県中越地震によって犠牲になられた方々の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと思います。

 御起立をお願いします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

金田委員長 ありがとうございます。黙祷を終わります。

     ――――◇―――――

金田委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として国税庁次長村上喜堂君、内閣府産業再生機構担当室長藤岡文七君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君、中小企業庁次長西村雅夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。

熊代委員 きょうは、谷垣財務大臣、また伊藤金融担当大臣、田野瀬財務副大臣、七条内閣府副大臣、福井総裁、御出席を賜りましてありがとうございました。

 最初に災害対策について質問をさせていただきたいと思いますが、ただいま黙祷もしていただきました。たび重なる台風と、それから新潟中越地震、国民生活が甚大なる被害を受け、影響を受けております。私の地元選挙区でも、玉野市で五人の死者が出まして、まことに痛ましい限りでございまして、本当に、亡くなられた方にはお悔やみを申し上げるとともに、被害を受け、あるいは負傷された方々には心からお見舞いを申し上げる次第でございます。しかし、政治としては直ちに復旧作業に取り組む、そしてまた、温暖化の影響か、潮位が非常に高くなっておりまして、従来までの堤防、防波堤では、三メートルの高さというのは、楽々と五十センチぐらい超えられるとか、一メートルぐらい上げないといけないんじゃないか、そういう話もされているところでございます。

 それらも含めまして、復旧作業のために、それから予防対策もできれば含めて、そしてまた激甚災害に速やかに指定していただくとか、復旧のために万全を期していただきたいというふうに思うわけでございますけれども、これほど災害があると、現在の予算では足りないんじゃないだろうか、速やかに補正予算を組んでいただく必要があるんじゃないかというふうに考えるわけでございますけれども、財務大臣に決意のほどをお願い申し上げます。

谷垣国務大臣 今次の台風、それから地震、大勢の方が犠牲になられまして、私からも心からお悔やみを申し上げ、また、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げたいと思っております。

 この週末、私も台風の災害の現場を見てまいりました。これは私の選挙区内でもございますが、私のところは由良川という川の洪水でございましたけれども、我々の地域では昔から、昭和二十八年の水害、その前は明治四十三年の水害が非常に規模が大きくて大変だったという話を子供のころから何度も耳にたこができるほど私たちは聞かされて育ったわけですが、今度実際に見てまいりますと、その昭和二十八年のときの水害にまさるとも劣らない、やはり何十年ぶりかの大きな台風が襲ったということが如実にわかりまして、住民の方々の苦しみも大変なものだと思って、東京へ戻ってまいりました。したがいまして、我々としては、できることに万全を尽くさなければならないという気持ちでおります。

 ことしの発生の災害被害は、たび重なる台風等々で、十月十五日現在、公共土木施設等に係ります被害報告額七千二百五十九億円と、これは平年を上回る規模となっております。また、今般の台風二十三号、それから新潟県中越地震による被害状況が明らかになりますと、当然、災害被害額が大きくなってくるわけでございます。

 財政当局としては、まず、災害復旧事業等の円滑な執行、それから、先ほどもお触れになりました激甚災害への適切な対応、これが迅速にできるように努めなければならないと思っております。

 それから、災害被害額の早期把握にも努めて、災害復旧等のための経費が、必要経費がどの程度になるのかというのも早期に見きわめなければならないと思っております。その結果、必要があれば、補正予算に所要額を計上して、そして通常国会冒頭に提出する用意がございます。

 それからさらに、緊急に必要となる経費については、予備費の使用を含めまして適切に対処するということにしたいと思っておりまして、対応に万全を期してやっていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

熊代委員 見積もりに二、三カ月はかかることもございましょうし、額がはっきりしないということでございますけれども、恐らく補正予算を組まなければ済まないということでございますので、大臣から必要であれば補正予算を組むというお話をいただきましたので、ぜひそのとおりよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

 それから、災害対策とか海外のいろいろな援助対策に広範に活躍しておりますNPO、当然、政府の職員、それから消防団員、自衛隊の方々とか、政府関係の人も大活躍をしていただいておりますけれども、民間ボランティアのNPO法人も大いに活躍しているところでございます。このNPO制度、認定は、認定というか認証、法人の認証だけ考えれば、もう一万八千を超えまして、毎月五百以上、新たな法人が誕生しているわけでございますが、認定NPO法人になりまして税法上の支援措置を受けられる法人というのが、現在のところ二十五法人ということですね。非常に低い比率でございまして、せっかく、なかなかいい制度をつくっていただいたと我々は思っているんですけれども、実際問題としては数が少ないということでございます。

 アメリカでは公益法人と認定されますといわば仮免制度のように直ちにパブリック・サポート・テスト、これは日本でも御承知のように採用しているわけでございますが、広いパブリックからサポートされているということで、それをテストして認定NPO法人ということになっているわけでございますけれども、アメリカでは四年間はいわば仮免許のように直ちにPST、パブリック・サポート・テストの資格をもらえるということのようなんですね。

 これがありますと、非常に法人の方も活気づきますし、そして、認定NPO法人を取るというのにどういうことが必要なのかがよくわかってくるということでございますから、日本もだんだん、だんだんといいますか、もうかなり長い間、豊かな民間、貧しい政府、政府は景気対策をやりましたので貧しくなりまして、そういう時代になってまいりましたので、ぜひ民間のお金が生かされて使っていただかなきゃいけないということでございますので、日本でもそのパブリック・サポート・テスト、PSTテストに仮免許制度のようなものを入れて、公益法人と認証されたらば四年間はパブリック・サポート・テストを仮に取ったものにするんですよ、その後厳格なテストをきちっとやります、こういうようなものが導入されれば、アメリカに負けないおおらかな寄附文化を持った日本をつくり上げることができるというふうに思うわけでございますけれども、財務大臣としまして、日本のあすを切り開くためにぜひ御検討いただいて、御決断いただけないかということをお願い申し上げたい。

谷垣国務大臣 熊代委員がNPO法人を定着させるために大変今まで御努力をいただいたことは、よく承知をしているところでございます。

 今御指摘のように、今認定されているのが二十五ということもおっしゃるとおりでございますが、パブリック・サポート・テストというのは、NPO法人が広く一般から寄附金を受け入れている、つまり、一般からの支援を受けているということを示す、いわば公益性を図る客観的な手法として設けられたものだろうというふうに思います。

 それで、これを認定されますと寄附金の優遇措置を受けることができて、寄附金の優遇措置は結局公的サービスの財源となる租税を減免するということでありますから、要件はやはり税制上の優遇措置を受けるにふさわしい法人であることを担保するものであることが必要ではないかと私としては考えておりまして、今仮免許とおっしゃいましたけれども、当初の認定のみということであっても、要件を緩めて認定を行うことが適当なのかどうかということは、これは私は若干疑問を感じているところでございます。

 それから、NPO法人制度自体がまだ年数も浅くて、財政基盤が脆弱なものが多い。こういう現状で、平成十五年度税制改正でこの要件も相当大幅に緩和したところでございますので、まずはそれを十分利用していただきたい、こんなふうに思っております。

熊代委員 財務大臣としてのお答えとして当然のお答えではございますが、しかし、アメリカに負けないおおらかな寄附文化を持った日本をつくるということがこれからの一番大きな課題であろうというふうに思いますので、ぜひアメリカのいわば仮免許制度ですね、どういうものか部下に調べろということだけは命じていただきたいというふうに思います。

 次のテーマに移らせていただきたいと思います。

 地方経済や中小企業に速やかな景気回復を図る方策というのが大変待ち望まれているわけでございますけれども、資料をお配りしておりますか、ちょっと古い新聞記事で恐縮でございますが、昨年の一月三十日、東京新聞「「インフレ目標策」是か非か」という、もう当時と大分情勢は変わっておりますけれども、賛成者と反対者、プロズ・アンド・コンズが極めて明確に書いてありますのでお配りしてあるわけでございます。

 景気回復につきましては、大企業と東京それから愛知県は非常にいい、顕著だということでございますが、しかし、中小企業と地方経済、景気回復は遅々として進まない、そういう印象といいますかそういう実感でありまして、もうしばらく待てば必ず全国に行くんだという話もありますけれども、バブル崩壊から十四年、いつまで待たすんだという声がちまたに満ち満ちているわけでございます。実質では既に経済成長しているということでありますけれども、名目で経済成長しなければ実感がわかないということでありまして、ぜひ名目でプラスの、例えば実質二%で名目四%ぐらいのものになれば、それは本当に実感がわくわけでございます。中小企業と地方経済が景気回復するというためには、デフレの克服というのが間違いなく重要だというふうに思います。

 イギリスを初めとして十九カ国で、物価安定数値目標、インフレターゲットというと何となくインフレを起こすようなターゲットというふうに聞こえますけれども、これは当然インフレをここまで下げようというターゲットなんですけれども、それと同時に、デフレで物価が非常に下がっているときには一定程度上げてこよう、こういうことでございますけれども、十九の国で既にそれをやっているということでございまして、日本の、日銀のそれは事実上ゼロ%を目標としているということだと思いますが、最近はゼロ%を上回る物価上昇というふうに目標を上げたとも伺っておりますけれども、諸外国の目標は大体二%プラス・マイナス一、一%から三%ぐらいが非常に多いというふうに思います。それに比べますと下限が非常に低いということでございます。それから、上限については何も言っておられないので、今はデフレで悩んでおりますけれども、そのうちハイパーインフレになるんじゃないか、こういうおそれを抱いている人もいらっしゃるわけでございますから、上限についてもはっきりさせる、そういうことを公表されるべきではないか。

 いろいろ専門的観点から検討すべき問題もございましょうが、諸外国の例を勘案しながら公表されるべきではないかというふうに思いますが、日銀総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 最初に、中央、地方のことに一言だけ触れさせていただきたいと思いますが、日本銀行でも、金融政策を運営いたします場合に、経済、物価情勢を判断するに当たりましては、マクロの経済指標などを拝見しながら、全国的にどういうふうに景気が回復しているか、景気回復のメカニズムというのがうまく働いているかどうかということを点検するだけではなくて、中央、地方の格差、地域ごとの違いということもまたつぶさに点検しながらやらせていただいております。

 先週も全国の支店長会議がありまして、全国の情報を伺いました。中央における景気の回復の好影響が次第に地方に及びつつあるけれども、まだ中央、地方の格差はかなり大きいという状況を把握いたしております。そのことをしっかり踏まえながら、今後も金融緩和政策の効果をよりよく浸透させていきたいということでございます。

 金融政策の効果を浸透させていく場合に、こういう市場が発達した経済の中にありましては、市場との対話、特に金融政策の透明性向上を図るということが非常に重要な課題だということは私どもも痛いほど認識していることでございます。

 そうした金融政策運営の透明性向上を図る一つの方策として、物価安定数値目標というもの、つまりインフレターゲットというものがございまして、諸外国の中ではこれを採用しているところも、委員御指摘のとおりかなりの数の国においてあるということでございます。ただ、透明性向上を図るといいました場合に、いろいろな方法があるのもまた事実でございまして、それぞれの国によって、その国の経済、物価の情勢、経済の構造いかん、あるいは市場の構造いかんということによって最適な方法を選択しているというのが現状だということだと思います。

 日本におきましても、今申し上げましたとおり、金融政策運営上、透明性向上は非常に重要な課題、トッププライオリティーに置いていい課題ということで、私どももこの点については大変苦心、腐心をしているところでございますけれども、現在、私どもは、おっしゃるとおりインフレターゲティングというものを採用しておりません。それは、現在、日本経済は回復の過程に入っておりますけれども、まだ少しデフレの要素を残していて、世界各国を見回してみましても、まだ日本はやや特殊な状況を脱し切れていない。したがいまして、金融政策運営上も世界の金融政策当局がとっている以上に深い工夫が要るということで、いささか独自の方法をとらせていただいているということでございます。現状におきましては、短期金利がゼロ%という状況でございまして、いわば金融政策の手段が非常に制約された状況にある。そうしたことも念頭に置きながら、特殊な方法をとらせていただいているということでございます。

 現在、私どもがとらせていただいております方法は、委員もう既に御承知のとおり、いわゆる量的緩和政策、これをしっかり続けていく、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでこの政策を続けるというかたい約束のもとに、いわゆる時間軸効果を働かせながら市場の期待を安定化させ、そして、そのもとで企業も金融機関も、つまり、民間部門の経済主体が前向きの行動をとりやすくなるという環境をしっかり保全しながら金融政策を進めていく、こういう体制をとっているわけでございます。

 こうしたやり方について、日本の経済がなお諸外国に比べて異常な状況を脱し切れていないという状況、そして、日本銀行がとっておりますこういう金融政策のフレームワークについては、日本経済の実情に合っているということについて、各国の中央銀行、それからIMFを含む国際機関、その判断はこれをサポートしてくれている、そういう状況に今あるというふうに私どもは認識しております。

 重ねて申し上げますが、インフレターゲティングというのは、金融政策の透明性向上を図る場合の一つの重要な道具立て、日本経済が将来より正常な姿になった場合に選択肢の一つとして考え得ることでございますけれども、現状、このデフレを脱却し景気回復の過程をより持続可能なものにしていく、そのためには異常な状況からまず脱却する必要がある、その通過点がCPIゼロ%ということでありまして、CPIゼロ%が最終目標ではございません。したがいまして、この目標がゼロであるからといって、物価安定数値目標をとっている国の数値と比べて低いというのは、これは通過点なるがゆえであって、最終目標ではないというふうに御理解いただきたいと思います。

熊代委員 通過点であるのはよく承知しているわけでございますけれども、通過点を通過するのに時間がちょっとかかり過ぎる。物すごく時間がかかっているような気がいたします。与党の方は、例えば長期国債の買い入れ量を、一兆二千億ずつ毎月買っていただいておりますけれども、もう少したくさん買うべきではないかといろいろ申し上げたこともあるわけでございますけれども、日銀の独立性ということでいろいろお考えだというふうに思いますが。

 各国の実情を簡単にお知らせいただきたいと思います。物価安定数値目標、そして、その国の景気。EUとかイギリス、カナダ、韓国。韓国は法律で物価安定数値目標を明定しているそうでございます。EUもマーストリヒト条約の中には二%以下という上の方のターゲットが載っているようでございますが。それから、北欧諸国、アメリカ。それから、CPIとコアCPIのいずれを使っているのか。日銀の使われる場合のコアCPIというのはどういう定義なのか。まずそれをお伺いしたいんです。

 時間も限られておりますので先の質問もさせていただきますが、我々の考えは、非常に通過点を通過するのに時間がかかり過ぎるということでございますから、物価安定数値目標を一%以上三%以下、または、そういう数字を具体的に入れないまでも、間接的にそれを思わせるような文言を日銀法に入れるというようなことについてどのようにお考えになるか、日銀総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

 日銀の独立性というのは、確かに専門性の上から独立が大切でございましょうけれども、国民の意思から独立してはいけないというふうに私は思っているんです。国民の意思は代議制のもとでは国会に反映されるということでございますから、国民の意思としてそれを課すこともあるべしということも含めましてお答えをいただきたいというふうに思います。

福井参考人 順次お尋ねにお答えしたいと思います。

 まず、簡単に、諸外国のとっておられます金融政策でございます。

 世界経済全体、グローバルエコノミーに対して非常に影響力の強い米国の連銀、それから欧州の中央銀行、それから日本銀行、この三つをまず申し上げますと、米国の中央銀行はインフレターゲティングをとっておりません。いわばかなり伝統的な金利政策中心のやり方でございます。

 それから、欧州中央銀行も厳密にはいわゆるインフレターゲティングではございませんで、物価安定の数値的定義というものを置いて、これは、やや中長期的に見て欧州中央銀行が頭の中で持つ物価安定の概念というのはもし数字であらわせばこういうものだ、それは、ユーロエリア全体の消費者物価指数の上昇率が中期的に見て前年比二%未満、これが定義ですが、運用上の概念としては中期的に見て物価上昇率を二%未満、ただし二%に近い水準に維持するというふうな運用上の定義を重ねて置いているというふうなことでございます。

 日本銀行は、御承知のとおり、両者とは異なり、今量的緩和、全く違ったフレームワークでやっておりまして、その通過点としてCPIゼロ%ということを置いている。

 それぞれの国の状況に合わせてやっているということでございまして、アメリカは、金融政策はフレキシビリティーが非常に大事、余り機械的なルールによって金融政策を縛ることが必ずしも適当でないという考え方に立っているということのようでございますし、ヨーロッパの方もインフレターゲティングというほど強い縛りは設けない。ただし、ヨーロッパは構造改革という面で非常に大きな課題をまだ残している経済でございますので、経済体質的にはインフレリスクがやはり引き続き強い国で、したがいまして、インフレ目標、物価安定の数値的定義によって、むしろ上限というものをなるべく意識するというふうな感じでそういうものを置いているということでございます。日本はマイナスの物価から上がっていく過程でございますので、とりあえず通過点というものをしっかり実現するために今頑張っている、こういう状況でございます。

 なお、それ以外の国、例えば北欧諸国、それからアジアでは韓国、それからカナダ等、オーストラリアといったようなところがインフレターゲティングあるいはそれに近い目標というものを置いておりますが、これらの国々におきましては、どちらかと申しますと、過去のインフレ克服に苦労したその経験から、物価安定の上限というものを意識しながらこういうものを置いている。デフレ脱却のためにということで置いている国は今のところないというふうな状況だと認識しております。

 それから、日本経済につきまして、持続的回復へのパスへの到達、あるいはデフレからの脱却に時間がかかり過ぎているではないか、御指摘のとおり、過去十年余り時間を費やしたということは、大変時間を費やした、私どもも率直に言ってそれは感じているところでございます。

 ただ、最近は幸いにも日本経済、持続的な回復パスへの到達ということが次第に展望できる状況になってきている。それは、民間部門、企業及び金融機関の構造改善努力、政府における諸施策の成果、そして日本銀行の量的緩和、この三つの合わせわざのもとに、実体経済の改善と物価の基調の改善、これが表裏一体となって今いい方向にようやく動き出したということでございます。

 これからこのせっかくつかみかけたいい方向への動きをさらにしっかり後押しして、最終的に望ましい経済を実現していく、その時間的距離をなるべく短くしていきたい、私どもも強く心に決意している、そういう状況にございます。

熊代委員 デフレの克服には金融政策だけじゃなくて財政政策も必要だという議論がございます。それは当然のことだというふうに思います。

 二〇〇一年九月十一日の例の同時多発テロの後に、ダボス会議が特別にニューヨークで開かれました。ダボス・イン・ニューヨークがありましたけれども、そこに小泉セッション、「レトリックから行動へ」と書いて、ちょっと失礼な題ではありますけれども、そういうセッションにいわば総理の代理で、当時補佐官をしておりましたので出していただいたんですが、そのとき小泉総理にお会いしましたらば、毎年三十兆以上の国債を出しているんだよ、これはとんでもないインフレ予算だというふうに非難されるならばわかるけれども、これを緊縮予算だと非難されるのはわからない、全くおかしいじゃないかということでございました。そういう意味では今もそうでございまして、まだ当分続くわけですから、財政政策は十分にやっているというふうに言わざるを得ないと思います。

 そういうことでございますから、問題は金融政策で日銀総裁にそのように申し上げたわけでございますけれども、財務省の方の問題点として、やはり物価安定数値目標などを導入して速やかなデフレ脱却を図る。これは、人間性としまして、物価が下がれば買わないですから、できるだけ待った方がいいやと、一、二%も上がれば必要なものは素早く買おうかというようなことになりますので景気回復が隅々まで行こうというわけでございますけれども。そういうものを導入すれば、インフレ期待が起こって、それだけで長期金利がはねるんじゃないかと。それを財務省さんが大変恐れていて、一生懸命これを抑えているんだという、これはうわさですよ、うわさでございますけれども、そういううわさがございます。しかし、それは、こういう量的緩和のときに単純に金利を上げてみてもだれも借りる人がいないわけですから、それは上がらないんじゃないかというふうに思いますけれども、そういう杞憂が弾力的な政策を打つのを妨げているんじゃないだろうかということでございます。

 本当にデフレのときに金利がはねるのが心配ならば、高橋是清当時の大蔵大臣がやられましたように、国債の日銀直受け、デフレのときだけに限ってやるんだというふうに、一遍改正した法律をもとに戻すとか、そんなことも考えてもいいと思うものですから、それはともかくとして、長期金利がはねるんじゃないかというおそれを大変抱いておって、デフレ克服に消極的であるというふうに感じているんですが、この点、財務大臣、ひとつよろしく御見解をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、熊代委員がうわさだと限定しておっしゃいましたが、我々としていわゆるインフレターゲット論に今おっしゃったような観点から制肘を加えているというようなことはないんじゃないかというふうに私は思っておりますが、大勢の人間がおりますからいろいろな議論がございますけれども、必ずしもそういうことではない。

 熊代委員がおっしゃったように、デフレ克服のために金融政策が大事だというのは、私はまさにそのとおりだと思っておりまして、今、日銀がああいう量的緩和にしっかりしたコミットメントをしていただいているのは、そういう意味で我々とも認識が全く一致して、よい方向をやっていただいていると思います。

 インフレターゲット論については、これはまさに日銀が金融政策決定会合で適切に判断されるべき問題だというふうに思っているわけでございますが、もちろん我々としても無関心でいるわけではありませんで、現時点でインフレターゲット論をとったときのプラスマイナスはどういうことかとか、あるいは金利面でも、デフレが継続しているような状況で金利がどんどん上がっていくというのは大変困ったことでありますけれども、この金利についてどういう影響があるか、これもいろいろな議論がございます。我々も関心を持って、中でそれなりに議論はいたしておりますけれども、日銀においてやはり金融政策としてお決めいただくべきものだ、こんなふうに思っております。

熊代委員 質問時間が終了いたしておったのでこれで終わりたいと思いますが、両大臣、そしてまた日銀総裁、大変真摯な御議論をいただきましてまことにありがとうございます。よろしく今後とも御検討をお願いしたいと思います。

金田委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。

 私も、冒頭、このたびの台風二十三号を初め一連の大型台風の到来でお亡くなりになられた方、被害に遭われた方、そして今般の新潟県の中越地震でお亡くなりになられた方、そして今なお十万人近い方が避難生活をされているということでございますが、こうした皆様にお悔やみを申し上げるとともに、心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 補正予算云々かんぬんのお話は先番の熊代委員からお話がありましたけれども、先ほどの谷垣大臣のお話の中で、被害総額が十月十五日までにもう七千億を超えていると。これに台風二十三号と今回の大地震が加わってくるわけでありますので、到底当初予算の災害復旧費や予備費で間に合わないことは、これはもう明らかだろうというふうに思います。

 恐らく、補正というと財源はどうするか、いろいろとあるかもしれません。昨年度の剰余金を充てるとかいろいろあるかもしれませんけれども、財源論はともかくとして、我が党の岡田代表も、兵庫県の豊岡初め台風の被災地域やあるいは今回の新潟にも足を運んで、現場で皆様からさまざまな声を聞いたようでありますが、補正予算は必至だろうという認識のようでございますので、万全を期して予算措置をとっていただくように、これは質問ではなくて、私からも要請をさせていただきたいというふうに思います。

 同じように、これは金融庁としてもさまざまな取り組みがあるだろうと思います。お札がぬれて破れたとか、あるいはキャッシュカードや通帳をなくしたとかという事例は無数にあるだろうと思いますので、金融機関を通じて万全を期していただきたい、これも要請をさせていただきたいと思います。

 さて、本題の質問に入りたいと思うんですけれども、実は、二年ぶりの委員会の質疑でございまして、長らく樽床さんとともに違う仕事をしていた関係で、懲罰委員会とか出番のない委員会におりました、二年ぶりでありますので、初心に返って丹念に一時間の質問をさせていただきたいというふうに思います。

 それで、これは大臣所信でも触れられていました平成十七年度の予算編成のあり方について、一般会計、特別会計、そういう順番でまずお話をさせていただきたいと思います。

 私ども民主党の考え方としては、予算編成のあり方そのものをまず抜本的に変えていかなければいけないのではないかという強い認識を持っておりまして、その意味では、シーリングをつくって、そして各省に振って、概算要求を出してもらって、それで前年度比どうのこうのというやり方には限界があるというふうに思っております。そういうお役所主導ではなくて、まさに政治主導で予算編成の大方針を決めて、そして、何が必要か、財源はどういうことかということを、常に国民が接している政治家が主導して予算編成をしていくべきだという立場でございます。

 その編成の過程からそもそも今回違うわけでありますが、今回の予算編成を見ておりますと、大枠であるシーリングが七月に決められました。これは、港、空港などの公共事業、こういう公共事業関係費を前年度に比べて三%削減、そしてODAであるとかいろいろなこういう裁量的経費ですね、省庁の裁量の判断にゆだねているところを二%削減、そして自然増でやむを得ざるところでありますけれども、ふえざるを得ない社会保障などの義務的経費はその増額分をどう抑制するか、そういう決め方でシーリングを決められました。

 でも、実はこのやり方というのはほとんど三年ぐらい続いてきているやり方だろうというふうに思います。結果的には、そうすると、所信では「歳出改革路線を堅持、強化」というお言葉を使われましたけれども、結論からいうと前例踏襲型で終わってしまっているのではないか。これからどういう査定をするかということはわかりませんが、今までの流れを見るとそう思えてならないんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今野田委員から、最初に、災害に対しては財政面でも万全を期せというお話がございました。それは私どももしっかり受けとめてやらせていただきたい、まず最初にそれをお答えしたいと思っております。

 それから、予算編成について、結局は前例踏襲型ではないかというお話がございましたけれども、小泉内閣になりまして、予算編成のあり方を変えていこう、予算編成の手法を変えていこうというのは小泉内閣の一つの大きなテーマでございまして、いわゆる経済財政諮問会議等を活用して、マクロ経済の動向等も入れながら予算を組んでいこうということで、この数年間同じだとおっしゃいますけれども、全体では私は大きな予算編成手法の変化があるというふうに思っております。

 それで、平成十七年度予算については、一般会計歳出、それから一般歳出の水準を、「実質的に」という言葉を使っておりますけれども、前年度水準以下に抑制していこうと。これは従来の小泉内閣の歳出改革路線を、堅持、強化と言っておりますけれども、基本的にその流れにあることは事実でございますけれども、これから実際の査定に当たりましてはめり張りというようなものをきちっとつけて、でき上がったときには、なるほど、相当その辺に踏み込んだなと野田委員にも評価していただけるようなものをつくりたいと思っております。

 それから、今三%とか五%とか据え置きとかいうような基準だけではだめだとおっしゃいましたけれども、ことしは、要望はたくさんやっていただく、そういう中でスクラップ・アンド・ビルドみたいなこともできるだけ工夫していただいて、しかし査定は厳しくしますよというような方針でやっているわけでございまして、いずれにせよ、概算要求基準というのはあくまで予算措置の上限を定めるものでありますから、今後、編成過程で要求の内容を厳しく精査してまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 いずれにしても、例えば関空をどうするかとか整備新幹線をどうするかとか、具体的な査定を見ながらまたこれからも議論をしていきたいと思います。

 今大臣お触れになりましたけれども、一般歳出と一般会計の歳出総額、これを実質的に前年度以下というお話でありました。この実質的にというのが、要は実額ではないということだと思うんです。これを実額においても前年度以下にすべきというのは経済財政諮問会議の民間議員の方も御指摘をされたというふうに聞いておりますけれども、私自身も、社会保障費に今の時点で大幅に削減に踏み込むというのは困難かもしれませんが、まだまだこの公共投資の部門においてはかなり削減の余地があるんではないかというふうに、切り込める余地があると思っていますので、安易に実額で前年度以下をあきらめてしまった、前年度以下という考え方を余り我々はとらないということを言っていますが、あえて前年度以下にこだわるならば、実質的にになってしまったというのは、私は切り込みがまだ足りないんではないかと思いますけれども、お考えはどうでしょう。

谷垣国務大臣 確かに、概算要求の枠組みを決める際に、野田委員がおっしゃいましたように、実質というだけじゃなしに名目でもそうせよという御議論もあったことは事実でございます。

 ただ、そういうふうに切り込むという議論は、一つはNTT―B償還時補助金というのが相当ふえてきております。それから、国債残高がもう相当ふえておりまして、定率繰り入れというのも相当ふえている。それから、今、先ほどお触れにもなりましたけれども、どうしても社会保障関係費、これは制度改革にも踏み込まなければならないんですが、自然増があることはやむを得ない。こういうことを考えますと、直ちに名目までというのはなかなか高いハードルでございまして、まず、予算を預かる私としては、実現可能なことを一歩一歩やっていく、そしてその査定の中でできるだけめり張りをつけて厳しくやっていくということで対応しようと思ってやっているわけでございます。

 今の経済情勢とか税収動向を踏まえますと、財政規律堅持の姿勢を明確にするためには、新規国債発行額について昨年度より減額していこう、これは、まだ税収等の動向もはっきりいたしませんけれども、ある程度視野に入ってきた。そうしたら、それにチャレンジして、この三年間、国債発行増額というものをやむを得ずせざるを得なかったわけですけれども、その流れを変えていく予算を平成十七年度ということでやってまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

野田(佳)委員 大臣から今国債のお話も出ましたけれども、我が国の今の大借金国家的な状況というのは、本当に危機的な状況だろうというふうに思います。

 アメリカの第三代大統領トマス・ジェファーソンは、子孫に借金を残すのは詐欺と同じだという言葉を残していますけれども、今の日本は、GDPに占めるあの借金の割合を見ると、一九四四年の戦時下と同じぐらいでありますから、まさに国家的な詐欺的な状況が今続いているんだろうと思います。それに歯どめをかけていくには、まず新規国債の発行を抑制していく努力ということは欠かせないわけであります。

 そこで思い出すのは、かつて小泉総理大臣も国債三十兆円枠を公約にして、残念ながらそれを破らざるを得ない状況になって、その後、ここ三年ほど見ますと、世界一の借金王になってきたわけであります。その中で、ようやく財務大臣がこういう歯どめをかけて前年度に比べて抑制をするというお話をしたということは、これは一歩前進だと思いますけれども、これからちょっとその推移を、どれぐらい抑制するのか、見なければならないと思いますが、こうやって四年ぶりに新規国債の発行を抑制すると、前年度に比べて抑制すると決断をされた背景、理由、これは当然三位一体とか税収だとかいろいろなことを考えていらっしゃるんだと思いますけれども、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 背景の一番大きなものは、まさに今おっしゃったように、一年間のフローで見ましても、四四・六%を国債で頼っている状況、それから、ストックで申しますと、今年度末には四百八十三兆に残高が及ぶ。こういう状況を放置しておきますと、財政の持続可能性ということに対する信認がなかなか得にくくなるということが一つございますし、それを超えて、やはり経済の堅実な発展ということにも影響を及ぼしかねない、こういうことが大きな背景としてあるということは申すまでもございません。

 それで、先ほどちょっとお触れになりました、小泉内閣当初の三十兆国債発行枠というのがそのまま守れなくなったではないかという御指摘がございました。

 当時は、大体一年間の歳出が八十兆、それから税収が五十兆という状況のもとで小泉総理があのような線を打ち出されて、その年はそれでやったわけですが、その後税収等が落ち込んだり、そういうようなことがございまして、現実には守れなくなった。しかし、ある程度、経済も少し明るいものが見えてまいりましたし、税収等も、まだ平成十六年度も四分の一ぐらいしかわかっておりませんので、先のことを判断するにはまだ若干早いんですが、そういう状況の中で昨年度より抑え込むということが、まだ完全にできると確信を持っているわけではありませんけれども、視野に入ってきたなと思いました。

 視野に入ってきたなら、それを単に視野の中で遊ばせておくだけじゃなくて、それをやはり具体的にとらえていく努力をしようじゃないか、それをひとつきっかけにして努力してみよう、こういうことで先ほど申し上げたような線を打ち出したわけでございますので、今後、一生懸命努力をして何とかそれを達成したいと思っております。

野田(佳)委員 関連しますけれども、国債の発行額自体は前年度以下という、これは具体的な目標だと思いますが、あわせて、国債依存度については触れられておりませんが、この依存度については具体的な目標を心の中ではお決めになっていらっしゃるんでしょうか。

谷垣国務大臣 まだその依存度については具体的な目標を設定するというところまで行っておりません。

野田(佳)委員 新規国債を抑制していくということは、これはいいと思うんです。

 加えて、心配なのは、借換国債の発行がどんどんふえていて、来年度では百四兆円、二〇〇八年には百三十兆円と言われている。借換国債の大量発行時代だと思います。新規国債は抑えても借りかえがどんどんどんどんしばらくふえていく状況です。こういうときの国債管理政策というのは、とても長期金利の問題とも絡めて大事だと思いますけれども、これについてはどういう展望を持っていらっしゃるんでしょうか。

谷垣国務大臣 国債管理政策の重要性については、今野田委員が御指摘になったとおりであると思います。これに対応していく一番基本的な方針は、個々の技術的なことよりも、政府が財政規律に対してやはり意欲を持っている、その闘志を捨てていない、こういうことをあらゆる機会に示していくことが私は大事なんではないかと思っております。

 その具体的な目標というのは、大きく申しますと、二〇一〇年代初頭にいわゆるプライマリーバランスをとっていこうということでありますし、実質的に抑え込んでいこうというのもそれでございますけれども、先ほど申しました国債発行額、前年度以下に抑えられることが視野に入ってきたので、それをきちっと追求していこうというのもその一つでございます。そういう前提のもとで、中長期的な国債調達コストを抑制しながら、確実、円滑に消化を図っていくというのが基本的な考え方でございまして、そのためには、市場のニーズとか動向を十分に踏まえた国債管理のあり方というものを考えていく必要があると思っております。

 こういう観点から、昨年十二月に、国債管理政策の新たな展開というものをまとめさせていただいたわけでございますが、これを着実に実行していくというのが今私どもの基本的な考え方でございます。そういう一環で、ことしの十月から、国債の安定消化の促進と国債市場の流動性の維持向上を目的とした国債市場特別参加者制度というのを導入いたしました。それから、中長期的な観点から、国の債務管理について高い識見を有しておられる民間の方々等の意見や助言を得る場として、国の債務管理の在り方に関する懇談会、こういうものを催すこととしたところでございまして、こういう取り組みを通じて適切な国債管理に努めてまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 順を追って予算編成のいろいろな視点を確認させてきていただいておりますけれども、今回の予算編成で恐らく最大の焦点は、三位一体の改革がどうなるのかだろうと思います。そのときに、本来ならばこれは十一月の中ごろまでに決まって、そして予算編成が具体的に動き出すというスケジュールだったはずなんですけれども、これはどうやら大幅におくれそうですね。私が見ているところは、三位一体の改革というよりも、財務省と総務省と経済財政諮問会議の三すくみの膠着状態という状況だろうと思います。

 これは、基本的には、もともと総理大臣の三位一体の全体像がないということが大混乱のもとだろうと思っていまして、今年度も地方交付税の減額とかいろいろあって、地方はいろいろと困難な目に遭いました。今回もなかなかこれは見通しが立たない状況が続いていて、皆さん本当に歯がゆい思いで見ていると思うんですが。

 この議論の過程で大臣が地方にもむだがあるじゃないかという御指摘をされています、交付税の減額とか地方財政計画に絡んで。一面、私は当たっている部分があると思うんですね。

 私も、かつて地方議会にいたことがありまして、大臣も触れられている公務員の給与の問題、いろいろ調べたことがありました。特に、人件費の中で手当に当たる部分にはおかしなものが随分ある。例えば特殊勤務手当というのがあるんですが、特殊勤務手当という、定義は不快な仕事、危険な仕事をした場合、特殊勤務です。でも、雨中作業手当というのがあって、ウチュウって、別に向井千秋さんのように宇宙飛行士で作業をするわけじゃなくて、雨の中で作業をすれば特殊勤務。あるいは、税務とか福祉の仕事は特殊勤務。こういうのが、志を持って公務員になったはずなのに、何で特殊勤務なのか。遠隔地手当というのがありまして、同じ自治体でも、遠くで仕事をする出張所に行くと遠隔地手当です。馬車で通勤する時代ではありません。一番おかしいと思ったのは、窓口業務も特殊勤務手当になっている事例がありました。窓口で市民と接することが不快なのか、危険なのか。そう思うと、かなりメスを入れられる部分があると思うんです。

 だから、おっしゃっていることで一理はあると思うんですが、ただ、今回の三位一体改革の流れを見ている中で、少なくともあの全国知事会、地方六団体、最初は財源移譲先行論であったはずですが、すったもんだの末にいろいろ立場を乗り越えて補助金の削減案をつくったわけで、かなり折れてきています。

 という状況の中で、さらにもっともっと地方リストラというよりも、その前にまだ中央はやるべきでしょう。そういう意識を持つのは多分私は自然だろうと思っていまして、余りこのことは、私どもは補助金の十八兆円削減というマニフェストを掲げているので、三兆円の話にどうのこうのという立場ではありませんで、もっと超然としておりますけれども、中身には余り入りません。恐らくこれは午後の中川委員が触れられると思いますので、中身は触れられませんが、問題は予算編成に絡めて言うと、この三位一体の全体像が本当にいつまとまるのか、それを踏まえた予算編成は具体的にいつ終結するのかというところに私の関心があるのですが、渦中にある財務大臣の見通しをお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、野田委員から三位一体どころか三すくみだという辛口の御評価をいただきましたけれども、麻生総務大臣にせよ私にせよ、確かに、今のところ議論で完全に溝が埋まっているわけではない。これは率直に申し上げてそうでございますが、これがまとまりませんと私は予算が組めませんし、麻生さんは地方財政計画ができ上がらないわけですから、いろいろ今議論しても、最後はやはり抱き合ってやらなきゃしようがない、この点では完全に麻生さんと私は一致しているわけであります。

 どうするんだ、どういう段取りでやっていくんだということでありますけれども、これは総理から、先ほどの地方六団体の案を正面から受けとめて真摯にやれ、それで十一月半ばをめどに全体像を取りまとめるようにという指示がございますので、これが基本であります。それで、官房長官から、この指示を受けまして、さらに補助事業等の所管官庁において地方改革案を実現することを原則として検討せよ、それから、改革案にいろいろ異議がある場合であっても、その理由を明らかにしながら、提案されている補助金の廃止額に見合う代替案を提出せよ、こういう指示がなされておりますので、今いろいろ議論をしておりますが、各役所から十月二十八日までに検討結果が示されることになっておりますので、それを受けて十一月半ばに取りまとめるようにしなければならないと思っております。

 それで、財務省の立場としましては、これはいろいろな議論がございますが、納税者の視点に立って、先ほど幾つかお触れになりましたけれども、不要不急の事業は廃止、縮減していくという視点が私どもとしてはやはり基本の視点になるわけでございますけれども、そういう視点に立って十一月半ばにはきちっと取りまとめたい、このように思っております。

野田(佳)委員 次に、定率減税の縮小、廃止の検討がどうやら行われているようでありますけれども、この問題について触れたいと思うんです。

 もともとこの定率減税の縮小、廃止というのは、与党の中では、たしかこれは基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に上げる際の財源にするための、言ってみれば年金財源として考えていたということだったと思います。どうも最近の動きを見ていると、年金財源論だけではなくて、先ほど触れた三位一体の中で所得税から住民税へと、これを税源移譲する際に、その穴埋めとして一般財源としても考えているような、そんな節もあるのではないかと思われるんですが、この定率減税の縮小、廃止論は年金財源として考えているのか、あるいは一般財源の可能性も考えているのか、率直なところをお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 野田委員がおっしゃいましたように、与党の税制調査会でこの定率減税に触れたお考えが示されました発端は、基礎年金の税負担を三分の一から二分の一にどう持っていくかという議論の流れの中で出てきたことは、おっしゃるとおりでございます。

 ただ、定率減税というものがどういうものであるか、今さらこれは申し上げるまでもございませんが、小渕内閣のときに、当時の非常に厳しい経済状態の中で、それを克服していくためには大きな所得税減税が必要であるということから出たという面がございます。それからもう一つは、抜本的な所得税体系を見直すまでの、恒久的と言っておりましたけれども、それまでのいわばつなぎの措置であるという面がございました。

 景気の面については、私は、ある程度議論ができる環境になってきたんじゃないかな、廃止、縮減というものを議論できる環境になってきたんじゃないかなと思いますし、それから、所得税体系の全面的な見直しをするまでのつなぎという趣旨では、先ほどお触れになりました、所得税を中心に三兆円をめどの、地方住民税に税源移譲していくという流れが一方でございますから、これはどうしても所得税体系の抜本的な見直しをいたしませんと、三位一体というのは、税源移譲というのはできなくなりますから、両方の視点、今どっちの財源にするんだとおっしゃいましたけれども、両方の視点からやはり議論をしていかなきゃならないという面がございます。

 そういう意味では、連立方程式をちょっと解くようなところがあるわけでございますけれども、いずれにせよ、定率減税の縮減、廃止、それに伴う増収分の使途、こういうものをどうするかというのは、税体系全体を見渡しながらこれから議論を進めていくという段階でございます。

野田(佳)委員 要は、年金財源論としてスタートしたけれども、今や一般財源の可能性も考えているという、可能性の示唆をされたんだろうと思います。私自身は、年金財源論としては、例えば民主党の場合だと、国庫負担を三分の一から二分の一へ上げるときに、これは歳出カットが財源論なんですね、極めてクリアカットに考えているんですが、今本音が出たところだと思いますが、ねらいはそうだとしても、この時期にこういう増税の路線が、今日本の経済の状況、景気を見ると議論できる環境だとお話しになりましたけれども、果たしてそうなのか。

 これは定率減税だけではなくて、十月一日から厚生年金の引き上げもありました。年末には配偶者特別控除の年末調整の問題も出てきますし、来年も国民年金の引き上げとかいろいろあるわけで、この流れというと、ちょうど九七年から八年のころの、今また話題になっている元総理大臣が内閣を持っていたころであって、消費税増税、特別減税の廃止、医療費の引き上げで九兆円ほどの国民負担になりました。景気の回復局面にあったときに、言ってみれば風邪から治りかけてきたときに冷たい水を浴びせて肺炎になってしまって、その後の日本経済はえらい目に遭ったという教訓があります。

 そのことはよく考えて進めなければいけない話で、財政規律を回復するという理屈だけの話ではそれはわかるんですが、そうではなくて、よく経済をにらんで、これから本当にデフレからちゃんと脱却できるかどうか。いろいろな総合的な判断があると思うんですが、その辺の御判断をもう一回確認させていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今野田委員がおっしゃいましたように、財政改革という視点だけから議論すべきものではないと思いますし、また、定率減税、これだけを取り上げて議論するのも正しくないんだろうと思います。いろいろな全体の施策の中で、これはどう位置づけられるのかという視点がなければいけないと思っております。

 それで、先ほど議論できる環境になってきたということは、これを導入したのは平成十一年でございましたけれども、その当時と比べますと、不良債権処理等が随分進んできて経済の体質強化ができてきたということがやはり一つございます。それから、設備投資とか個人消費といった国内の民間需要に支えられて、着実な経済的な回復が進んでいるということがございます。大きく申しますと、この二つが平成十一年当時とは大きく違っているというふうに思っておりまして、要するに、先ほど議論できる環境になってきたという背景にはこのような認識がございます。

 今後、おっしゃるように、よく景気の動向を見ながら議論をしていかなければなりませんし、やるとしても、どういうスピードなりステップでやるかというようないろいろなことがあると思いますので、十分また御議論をさせていただきたいと思っております。

野田(佳)委員 ずっと一般会計中心にお話をさせていただいていますけれども、私は、特別会計も含んで日本の財政をどうすべきかということをやはり議論すべきだろうと思っていまして、これは、かつて原口筆頭理事とコンビを組んで、民主党の中で特殊法人の改革をいろいろメスを入れるどころかなたを入れた作業をしたことがありました。そのときにとても気になったのはその裏腹の関係にある特別会計でございまして、この存在が非常にわかりにくい存在で、何をやっているか流れがよくわからない。このブラックボックスを解明することが日本をよくしていくかぎを握っているんではないかという直観を持ちました。

 一九六〇年、一般会計の予算は今と比べると五十二分の一、特別会計は百九分の一だったということであって、この四十数年の間に特別会計は異常に膨らんできています。昨年度を見ても、大体八十二兆円規模の一般会計に比べて、特別会計三十一、これは全部合わせると、もちろんこれは重複がありますけれども、三百九十兆円近く、四・七倍。一般会計よりはるかに額は大きい。だから、実体の予算としてはやはり特別会計ではないかというところで、この部分にもっとメスを入れていくべきだろうという認識を私は持っています。

 そういう認識のもとで、今回民主党の中でも特別会計の整理をするためのワーキングチームをつくって、これからちょっと精力的に調べていきたいと思うんですが、政府としても、昨年財政審の答申があって、平成十六年度の予算で少し特別会計の改革を行われたと思いますが、平成十七年度はどういう取り組みをされるのか、お尋ねをしたいと思います。

谷垣国務大臣 野田委員がかつて研究されて、ブラックボックスを解消しなきゃいかぬ、ブラックボックスという表現でしたか、今そうおっしゃいました。

 私どもの検討は、私の前任者の塩川大臣が国会の御議論の中で、母屋でというのは一般会計ですけれども、母屋でおかゆをすすっているのに離れですき焼きを食っているようなことはけしからぬ、こういうことで特会の総ざらえ的な見直しを指示されまして、そこで、財政審で議論をしていただいて去年取り組んだ、こういうことでございます。

 国会でも随分御議論を賜りまして、私どももできるだけ国会の議論に資しますように、一般会計だけではなくて特会もできるだけわかりやすい書類をつくってお示しして、どんどん議論をしていただいて、国会の議論として特会のあり方も突っ込んでいただくことは大変ありがたいことだというふうに思っているわけでございます。

 厳しい財政状況でもございますから、ことしも特会については不断の見直しを進める必要がございまして、ことしも財政審で特会の見直しの議論をさらに進めていただいているところでございます。それから、経済財政諮問会議でも、いろいろな特別会計の性格に応じて、中期的な目標を含めた改革論を議論するということになっておりまして、年内にそれをまとめて予算編成に生かしたい、このように考えております。

野田(佳)委員 去年の財政審の報告書というのを私も読ませていただきましたけれども、すべての特会を総ざらえして、しっかりした問題意識で分析をされているように思いました。ただ、ちょっと道路とか年金とか肝心な部分への踏み込みは弱いという印象ですが、かなり弱いと思うんです。

 そのうち七つの会計については、これはある意味では存廃を含んだ見直し論だと思うんですが、登記であるとかですね、特別会計としての区分経理の必要性の点検という表現ですけれども、これは根本的な見直しを迫っているお話だと思います。この七つの会計、地震再保険であるとかいろいろ保険関係も多かったと思いますが、その後の検討状況はどうなっているんでしょうか。せっかくいい、それなりの答申を出しても、フォローアップが必要だと思いますので、確認をさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 七つですね、登記、国有林野事業、石油及びエネルギー需給構造高度化、電源開発、地震再保険、森林保険、船員保険、これについて今委員がおっしゃったような指摘がなされておりまして、それで、特会として区分経理をしていく必要性があるのかどうかということについて、この中には中長期的な観点から検討しなきゃならないものもあると思いますが、個々の特会の事業をめぐる社会経済情勢の推移等を見ながら、提言に沿った見直しをしていく必要があるというふうに思っております。

 七特会のうち、一部につきましては、ことしの財政審議会でも改めてさらに突っ込んだ議論をしていただいて、それを生かしていきたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 ちょっと個別の特会で知りたい特会がありまして、それは厚生保険特会の業務勘定。これはずっと問題になりましたけれども、社会保険庁の事務費に入っていて、その事務費で、まあ、保険料を使っていろいろとむだなことをやってきたということは、この国会でも、この国会というか通常国会でも随分指摘をされました。

 県人会に長官が出るときのお金であるとか、公務員の宿舎であるとか、社会保険庁全般、本当にこういうことが多いんですが、私の選挙区のすぐ北隣の白井というところにも社会保険大学校というのがあって、週刊誌にも書かれましたけれども、その研修所でゴルフの練習場があって、ボールもクラブもネットも全部保険料だと。役人は打ちっ放し、国民は払いっ放しという状況とか、本当にむだ遣いが多いんですが、その保険料を社会保険庁の事務費として使いまくることがいいのかどうか。

 この業務勘定、とても注目をしていまして、来年度も同じようなことをするのかどうか、これはことしの議論の反省があるかにかかっていると思いますので、その辺どうなるか、お尋ねをしたいと思います。

谷垣国務大臣 平成十七年度にどうしていくかということについては、ことしの七月三十日の閣議了解がございまして、平成十七年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針の中で、予算編成過程で検討していくということになっているんです。

 それで、ことしの年金事務費の扱いについては、今委員もおっしゃいましたようなむだ遣い批判というものが、もう極めて強く御議論があったところでございますから、事務費の内容を精査して、極力縮減を図るということがまず第一に必要ではないかと思っております。

 その上で、年金事務費の費用負担をどうするかということについては、これは広く国民を対象とした事業であるから国庫で負担すべきだという考え方が一方にありまして、これがむしろ法律の上では前提となっているわけですけれども、民間保険の場合でありますと、業務運営の経費はその事業の収入により賄う、事業運営をしていくというのがむしろ基本だと思いますし、政府が行っている保険制度でも、例えば労働保険等では保険料を基本として事務費を運用していくという体制になっておりますので、税で賄うものの範囲と保険料で賄うものの範囲というのをきちっと詰めて議論していく必要があるのではないかと思っております。

野田(佳)委員 きちんと詰めて議論をして、そういう流用をするところもあるかもしれませんが、社会保険庁に限ってはもうだめですよ、これまでの使い方をいろいろ見てくる限りにおいては。その議論は、ちょっと今、思い切りの足りないお話だと私は思いました。

 それで、ことしですか、平成十六年度の、例の、財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律というのが出ましたね。この「等」の中に保険料の流用が含まれているという、潜り込んでいたということで議論になりましたが、こんな法律はもうこれから出ませんよね。改めて確認をしたいと思います。

谷垣国務大臣 これは、ですから、先ほど申しましたように、ことしの予算編成の過程で厚生労働大臣とよく議論を詰めていくということでございますので、まだ結論を申し上げるのはいささか早うございます。

野田(佳)委員 結論じゃなくて、決意を聞こうと思ったんですが、ちょっと慎重な御判断のようです。

 特会とか原油の高騰とか、まだ財務大臣にお聞きしたいことがありました。ただ、せっかく金融担当大臣も張り切って待っていらしゃる中、全然聞かないのは申しわけないので、金融担当大臣にこれからの質問をしたいと思います。財務関係の残った質問は、また後刻取り上げたいと思います。

 そこで、伊藤大臣でありますが、伊藤大臣とはかつて同じ学びやで学んだ青春時代もありました。同じ党で一緒に汗をかいた時代もありました。よく夢と志を語り合った仲でありますけれども、したがって、伊藤大臣のいいところはよく知っているつもりです。あなたも、私のいいところ、悪いところ、悪いところをいっぱい御存じだと思います。そういうことで、本来ならば、ペイオフ解禁をどうするか、あるいは、今後の金融情勢を見ながら前向きな議論をしたいと思ったんですけれども、残念ながらちょっときょうはそうはいかないなと思っています。

 大臣所信の中でおわびをされました、信託業法の誤りについて。これはおわびをするのは当然だと思うんですが、問題は、なぜミスをしたのか、なぜ最近になって公表したのか。これは継続審議になっていたものです。なぜ最近になって気づいたのか、責任の所在はだれにあるのか、端的にお答えいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今御指摘がございました信託業法案については、二カ所の誤りがございまして、まことに遺憾なことであり、重ねて心からおわびを申し上げたいというふうに思っております。

 法案作成に当たりましては、誤りがないように慎重な作業を行ってきたところでございますけれども、法律案における誤り防止を徹底する観点から、信託業法案につきましても精査を行ったところ、法案作成の過程において、条文を追加したことにより引用条文箇所の誤り、そして条文の引用において項番号を記載しなかった誤りの二カ所の誤りが判明をいたしました。繰り返し精査を行っていくために御報告が遅くなりましたことを心から遺憾に思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、法案チェック体制を含め、再発防止対策というものをしっかり講じて、法案作成に当たり万全を期してまいりたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 まあ、だれもが感じているとおりで、それだけじゃ済まないだろう。経過は、その条文でいろいろ過程があって何とかということだったんですが、これは、昭和六十二年以降、議運で正誤の問題で、要は法案に誤りがあって正誤の問題が議論になったというのが八本あるんですよね。

 昭和六十二年が所得税法、地方税法、そして、平成二年が老人福祉法、平成四年が証券取引ともう一つ金融関連なんですが、ここまでは法案の付託前に明らかになっているんです。残念ながら、その後、飛び飛びですけれども、平成十一年の国立公文書館法一部改正案、これは付託後に明らかになった。そして、去年の消防法の一部改正案は法律公布後です。ことしはどうかというと、年金も公布後。

 たまたま信託業法と労組法は継続審議ですけれども、もし状況によっては多数決で通っていたら法律公布後になっていた可能性があるんですね。ということは、事前のチェックが前に比べてどんどん悪くなっていて、後から気づくような状況なんです。かなり変わってきています、状況は。私は、もっと大臣に厳しい認識を持っていただかなければならないと思っているんですが、正誤表の提出でそもそも大体済む問題だとお思いでしょうか。

伊藤国務大臣 再発防止に向けては、しっかりとしたチェック体制というものを行って、また審査に当たる体制というものも充実をさせていかなければいけないというふうに思っております。

 今後の取り扱いにつきましては、私どもとしては、正誤でお願いしたいというふうに考えているところでございますけれども、再発防止については万全を期していきたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 違うテーマで、ちょうど隣の岩國先生が政治資金の規正法の改正案をつくっていまして、報告漏れとか何かは、うっかりではなくてちゃっかりというケースもあるんじゃないかというお話を前に聞いたことがあるんです。法案の間違いも、うっかりだったらまだ許せるというのも問題なんですが、うっかりを簡単に見過ごしていくと、ちゃっかりやっていく可能性が私はあると思うんです。大事な根幹にかかわるテーマを国会で審議させないで、後で、公布後に正誤表をもってとか、こんなになったらもう国会はもたないと思います。これは野党だから言うんじゃなくて、これは与党も多分同じ認識を持っていただかなければいけない話だと思いますので、正誤表の提出ではこれは済まない問題だ、これは国対マターになっていますのでこれ以上言いませんけれども、そういう思いでいていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、今回の所信表明の中では触れられていないんですけれども、金融庁としてもう一つおわびをする案件が本当はあるんではないかということです。それは、個人情報、フロッピーディスクの紛失の問題です。

 組織的犯罪処罰法に基づいて二つの金融機関から郵送で届けられたフロッピーディスク、これが行方不明になって見つからない。これは、起こったのが七月の末から八月の初めですよね。公表になったのが十月です。二カ月以上経過しています。なぜこんな問題が、公表がおくれたのか、まず端的にお聞きしたいと思います。

伊藤国務大臣 金融機関を監督する私ども金融庁が、個人情報に関するフロッピーディスクを紛失いたしましたことにつきましては、心からおわびを申し上げたいというふうに思っております。担当者レベルにおいて探索を継続して行っていたところでございますけれども、庁内における報告体制が十分ではなく、公表に至るまで結果的に時間がかかってしまったことは極めて遺憾なことだというふうに考えております。

 私からも、専担の監察官に対して徹底的に原因究明をするようにということで調査を命じ、また、それだけではなくて、金融庁のガバナンスの充実強化あるいはその実効性を担保するために、専門家の方々から成るコンプライアンス対応室というものを設けさせていただいておりますけれども、その対応室に対しまして、第三者の立場から原因究明と再発防止策の策定について依頼をさせていただいたところでございます。

 これらの調査結果あるいは提言を踏まえて再発防止策を早急に作成し、そして実施をしていきたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 金融機関というのは、本当に個人情報がいっぱい集まるところだと思います。大事な個人情報がいっぱい集まると思います。その機関を監督する立場の金融庁でありますので、個人情報保護の重要さというのは、ほかのお役所にもそれは十分認識していただきたいんですが、金融庁には本当にしっかりしていただかないと、これは示しがつかないだろうと。UFJを刑事告発したりとかいろいろやっていらっしゃいます、行政処分をしたりとか、そういう処分をする前に、身内に甘いんじゃだめだと思います。これは大事な問題だと思います。

 再発防止策はこれから考えるんですか、今、依頼をして。これもちょっと遅い。公表も遅いけれども、その対応も遅い。関係者についてはどう処分するんですか。あわせてちょっとお聞きをしたいと思います。

伊藤国務大臣 この個人情報の保護の問題について、私どもが監督する立場から、このような事案が生じてしまったことに対しましては、重ねておわびを申し上げたいというふうに思っております。

 再発防止については、まず、徹底的な原因究明ということが非常に重要であります。早期にまとめて、それを実施していかなければいけないということは重々承知をいたしておりますけれども、その原因究明をしっかりやっていくためにはそれなりの時間が必要でありまして、先ほどお話をさせていただいたように、専担の監察官による徹底的な原因究明作業、そして、第三者の立場から、コンプライアンス対応室から、今、原因究明と再発防止についての御提言をいただくべく作業をお願いしているところでございます。

 そうした調査結果、提言を踏まえて、今御指摘がございました、関係者に対する処分についても適正に対応していきたいというふうに思っております。

野田(佳)委員 まさに金融機関や企業のガバナンスを問わなければいけない立場の金融庁のガバナンスが問われているということだと思います。

 今、調査をしているということですが、では、果たして、そのフロッピーディスクの盗難とかあるいは情報の外部漏えいとかなかったのか、その辺はどうだったんでしょうか。

伊藤国務大臣 事実関係につきましては、現在、監察官においてヒアリングが続行中でありますけれども、これまでのところ、外部への情報漏えいの痕跡はなく、また、盗難があったとも考えにくい状況でございます。

 いずれにいたしましても、監察官及びコンプライアンス対応室の調査結果報告を受けて、有効な再発防止策を早急に講じてまいりたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 先ほど金融担当大臣の質問が信託業法の誤りから始まりました。そして、今回の金融庁の個人情報漏えいの問題。これは一言で言うと、組織としての緊張感のなさだと言わざるを得ないと思います。新任の大臣だったら、こんなこと、苦言を呈しません。ただ、副大臣からの継続でありますので、緊張感が足りないんじゃないかということを強く指摘させていただきたいと思います。

 それから次に、株式会社UFJ銀行への刑事告発及び行政処分についての関連で質問をさせていただきたいと思います。

 十月七日、大臣は談話で、株式会社UFJ銀行等の検査忌避等の行為について東京地検に告発を行った旨、また、銀行法第二十七条の規定に基づいて行政処分を行った旨の談話を発表されましたが、この株式会社UFJ銀行等の「等」のところで、当然これは個人も含まれているんだろうと言われています。これは一体どなたなのか、明らかにしていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 お尋ねでございますのでお答えをさせていただきますと、株式会社UFJ銀行のほかに、早川潜元常務執行役員、稲葉誠之元執行役員の審査第五部長、そして土屋英敏元審査第五部次長が被告発人となっております。

野田(佳)委員 あっさりと名前を言われましたけれども、過日、金融庁を呼んでヒアリングをしたときには、この個人名を明らかにしませんでした。幾ら聞いても言わない、根拠も言わないという状況だったので、きょう大臣はどうされるかと思っていましたけれども、答えられました。

 そもそもマスコミ各紙には、今申された三人のお名前はすべて出ていました。もし誤報だったらそれは大変なことだったと思うんですが、金融庁は今発表したわけでありますけれども、なぜそんなに慎重だったんでしょうか。今、答えられたからいいものという問題ではなくて、我々が一生懸命聞いても、例えば公党のヒアリングで答えない。なぜだったんでしょうか。何か葛藤があったんだろうと思いますが、ちょっと教えてください。

伊藤国務大臣 公表ができない理由についてのお尋ねがございましたが、これまでは、現在、捜査当局において捜査が行われておりますので、捜査に支障を及ぼすおそれがあることなどから、被告発人の氏名については明らかにしてこなかったわけであります。しかし、強制捜査のその後の進展、そして、現段階では捜査等に支障を及ぼすことがない旨の捜査当局の見解を受けて、告発を行った私ども当局として、本件の有する公共性や、あるいは公益を図る目的に照らして、一定限度で被告発人の氏名を明らかにすることが適当と判断して明らかにさせていただいたところでございます。

野田(佳)委員 すらすらとお答えになっているんですが、本筋のところはわからないんですよね。なぜならば、では、法人のUFJ銀行はどうだったのか。法人と個人は違うのか。UFJ銀行は最初から名前が出ている。UFJ銀行だって名誉権はあるし、営業権があるわけです。それは捜査の状況によっては慎重にやらざるを得ないかもしれない。何で法人と個人は違うのか、今の説明ではちょっとわかりません。もう一回お答えください。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 重ねてになりますが、捜査に対する影響というものを考えながらこのような形をとらせていただいた経緯がございました。特に個人につきましては、個人のプライバシーの問題がございます。そうした点にも配慮をさせていただく中で、今までこの被告発人の問題については明らかにさせていただかなかったところでございますけれども、捜査当局の強制捜査の進展、また捜査当局との考え方のすり合わせの中で、私ども当局として、プライバシーの問題も踏まえて、こうしたことを開示させていただくということが適切であると判断をさせていただいて、先ほどお答えをさせていただいたということでございます。

野田(佳)委員 これだけでもわからな過ぎちゃって、とまっちゃうわけにはいかないんですけれども、何であんなに早くマスコミでみんなで報道していたのかですよね。

 そうすると、金融庁がそこまで慎重にやって、検察当局とやっていたというなら、何でそんなのがばれているんですか。金融庁がリークしたか、検察がリークしたかしかないじゃないですか。それはそれでまた問題だと思いますけれども、これはこれ以上やってもしようがないので、先へ進みます。

 これは刑事告発をせざるを得ないほど検査忌避等の行為が悪質性があったということが明白であったならば、これはもっとその時期は早くてもよかったのではないのかと思うわけですが、なぜこのタイミングで、ここまでおくらせたのか、背景を教えていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 今回の告発に当たりましては、今御指摘がございましたような検査忌避等の行為の悪質性だけではなくて、今後の検査一般の実効性に与える影響、あるいは金融行政の目的の遂行の確保、そして一般国民に処罰を求めることの重大性等を総合的に勘案して検討を行ってきたところでございます。このために必要な期間であったというふうに考えております。

野田(佳)委員 日本の金融当局がこういう刑事告発をした、あるいは行政処分をしたということになると、当然、海外の金融当局も気になるところであって、特にUFJの場合は春に決算が変わったりとかいろいろあります。こういう検査忌避なんという悪質行為もあったということは、これは国内の金融当局じゃなくて、例えばUFJはロンドンの取引所にも入っていますよね、いろいろとかかわりが出てくる話だろうと思いますが、海外の金融当局がUFJに何らかの処分をするとかという動きがあるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

伊藤国務大臣 個別金融機関にかかわる海外当局の対応についてはコメントを差し控えさせていただきたいというふうに思います。海外当局においては、それぞれの法律に基づいて、必要があれば適切に対応されるものと承知をいたしております。

野田(佳)委員 それ以上しゃべれないということですね。何らかの、例えば照会だとかあるいは報告書の取り寄せとか、具体的な形跡があればと思ったんですが、わかりました、ちょっと、今の話は進めません。

 もう一つ、これは金融関連で、今問題になっています西武鉄道の株売却問題。ちょっともう時間がなくなってきましたので、かいつまんでお願いをしたいと思います。

 有価証券虚偽記載疑惑、そして、これはインサイダー取引の疑惑も出てきている、独禁法の優越的地位利用の疑いもある、大量売却報告義務違反の疑いもある、いろいろな要素のある事案でありますけれども、金融担当大臣はこの動きをどのように見て、どのような対応をされようとしているのか、お尋ねをしたいと思います。

伊藤国務大臣 公取に関係するところについては私から答弁ができる立場ではございませんけれども、今御指摘がございました西武鉄道の問題については、私どもが権限を委譲しております関東財務局に有価証券報告書の訂正報告書が提出をされておりまして、個別事案にかかわることでございますが、子細についてコメントできないということについては御理解いただきたいと思いますが、同財務局において訂正の内容、そして経過について必要に応じて確認を行うことになります。また、一般論ではございますけれども、仮に有価証券報告書等の虚偽記載、あるいはインサイダー取引に該当する事実があると疑える場合には、証券取引等監視委員会が必要に応じて調査を行うことになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、証券市場の信頼を確保するためには、適切なディスクロージャーと、そして公正な取引の確保が大変重要なことでございますので、金融庁としても適切に対応していきたいというふうに思っております。

野田(佳)委員 財務局のチェック体制とか含めてさらにお尋ねをしたかったんですが、時間がなくなりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚でございます。

 本日は日本銀行の総裁にもお越しをいただいておりますので、まず、日本銀行の総裁からお伺いをしたいというふうに思います。

 今、ゼロ金利政策、金融緩和政策をずっとおとりになっている。それの功罪はいろいろあるわけなんですけれども、景気がこういう状況だからということでこの政策をおとりになっているわけなんですが、ただ、政府の方は、景気がよくなっているというふうなこともたびたびメンションをしている。そういった中で、このゼロ金利政策を解除する場合、出口政策についてきょうはお伺いをしたいというふうに思います。

 その政策の一環として日本銀行の当座預金にお金を積み上げているということですけれども、多分に政治的なメッセージの意味合いがあるんだろうと思うんですね。それに、日本銀行の当座預金にお金を積み上げること自体が自己目的化になってしまっているし、当預にお金が残っちゃって、有効にお金を使っていくというインセンティブがなくなっているという面もあると思うんですが、この景気と、あと、そのゼロ金利政策の解除の問題について、まず伺いたいのはそのタイミング。

 CPIが前期比プラスになればということをおっしゃっているわけなんですけれども、果たして、このCPIが前期比プラスということをずっと金科玉条のように言い続けていらっしゃって本当にいいのか。当座預金の額と同様に、このCPIも政治的なメッセージという意味合いが強いんだと思うんですが、そこはいかがでしょうか。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 日本経済は、持続的な回復への軌道を目指して今前進を続けているというふうに私どもは判断しておりますが、物価の面では、消費者物価指数の前年比変化率がなお若干マイナスの状況で推移している。とは申しましても、この物価面でございますが、かつてのように大きな需給ギャップ、GDPギャップを背景にして強い物価押し下げ圧力があるという状況から、次第にやはり、生産性の向上、あるいは企業が競争力をより強く築くためにコスト削減努力、特に賃金調整努力を続けているというふうなことを主たる背景とするものに変わってきております。

 言いかえますと、これから先さらに経済の回復を持続可能性の強いものにしていくということと、今わずかに残っておりますデフレの状況からの脱却というのは、方向として表裏一体をなすものになってきている。したがいまして、この持続的な回復軌道への到達ということをより確実にしていくということがデフレからの脱却ということと両立する課題になってきておりますので、現在の金融緩和政策は、照準がまさに実体経済と物価、両面に合っているというふうに私どもは判断しております。

 したがいまして、今の量的緩和政策を解除する条件として、昨年十月にその内容を明確に申し上げたわけでございますが、繰り返しになりますけれども、一つは、消費者物価指数の前年比が、基調的な動きとしてゼロ%以上となること、それから、先行き再びデフレにならないようにという意味で、消費者物価の前年比が先行き再びマイナスとなると見込まれないこと、それから三つ目に、実体経済の方もよく見ましょうということで、単に物価だけでなくて、実体経済の面から見ても量的緩和政策を修正ないし解除しても大丈夫だという判断に至る、こういう三つの条件を掲げております。

 したがいまして、消費者物価指数に非常に焦点を当てながら、我々は、将来の金融政策のフレームワークの修正のタイミングということをずっと考え続けておりますけれども、最終的にやはり、経済の面の判断も十分織り込みながら判断したいということでございます。

中塚委員 これだけ流動性を供給していて、それでまた景気が回復局面にあるということになると、やはりインフレの心配だってしなきゃいけないお立場だと思うんですね、総裁は。だから、そういった意味で、CPIがプラス、あとちょっと二つほど今お話しになられましたけれども、そのことだけを言い続けて果たして本当にいいのかどうかということですね。

 CPIがプラスになったからといって、ではすぐそのゼロ金利政策、金融緩和政策を解除することではないということですね、今二つあったわけだから。二つの条件をおつけになったわけだから、プラスになったとしてもすぐ解除をするということではないと伺いましたけれども、そのタイミングはかなり機動的に行う必要があるんじゃないかと。要は、ゼロ金利政策を解除するタイミングなんですが、機動的に行う必要があるんじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

福井参考人 緩和の修正に当たって三つの条件を申し上げました。

 最初は、CPIの前年比変化率が基調的にゼロ%以上になる、これは明確な基準でございます。それからもう一つの、再びデフレにならないという場合にも、政策委員会のメンバーの多数が先行きの物価見通しをゼロ%以上ということでございますので、これもかなり明確な条件でございます。

 ただし、三つ目の条件、経済、物価情勢によっては量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる、こういうことでございまして、これは委員のお言葉ではございますけれども、必ずしも、物価がゼロ%以上になってもなお、ゆっくりやるというばかりではない。おっしゃいましたとおり、資産価格の動きその他懸念材料というのは、将来にわたっては出てくる可能性も全くないとは言えません。そういった点も含めながら、この第三の条件については、経済の情勢を判断しながら、いわば機動的にやる。機動的にやるという場合に、ゆっくりやるというケースと非常に急がなきゃいけないケースと両方あり得るだろう、こういうふうなことは当然念頭に置いているわけでございます。

中塚委員 私が懸念いたしますのは、日本銀行の独立性ということを保障されているわけなんですけれども、ちょっと総裁は政府に配慮され過ぎているんじゃないかというふうな思いがあるからなんですね。だからそこで、もっと機動的に、金融緩和をやめる、ゼロ金利政策を解除するタイミングというものを本当に独自の御判断でやっていただきたい、そういうふうに思います。

福井参考人 物価が、わずかとはいえまだマイナスの基調で推移しているということは、経済の将来にとりましてはなお大きな問題を引きずり続けているという基本的な判断に立っております。

 諸外国の経済を見ましても、景気が全体として回復傾向で動く中で、物価がマイナスで動いているという国はやはり非常に例外的だ。日本は、やはりまだそういう例外的な経済状況にあるということでございますので、少なくとも消費者物価指数の前年比を安定的にゼロ%以上に持っていくまでというのは、金融政策にとりましては、やはり異常な事態への対応ということがなお続いているということでございます。

 したがいまして、現在の政策をしっかり続けるとともに、将来再び機動的な金融政策のパスに確実に戻っていかなければならない、そういう考え方に立っているわけでございます。

中塚委員 総裁、どうもありがとうございました。これで結構でございますので、どうぞ。

 次に、災害の問題、財務大臣にお伺いをしたいと思うんですが、先ほど御答弁の中で、補正予算は通常国会の冒頭というお話がありました。実は、私ごとですが、私はあそこで議員秘書を五年やっていたことがあるんですね、平成二年から七年まで。旧新潟三区ですが、今新潟五区ですけれども、あそこ選出の議員の秘書を五年間やっていたことがありまして、小千谷市や長岡市を本当に走り回っていたことがある。今回被災をされて、当日は電話も通じなかったんですが、きのう、おととい、やっと通じるようになって、様子を聞きました。やはりもう家は追い出されちゃって、車の中で寝ているという話も聞きました。私は個人的に、そんなにたくさんのことができるわけじゃありませんが、水やらラーメンやらを送ったわけなんです。

 それで、そういった意味では、通常国会の冒頭というのはちょっと私は余計なんじゃないかと思うんですね。できるだけ早く出す、この臨時国会に会期延長をしてでもやはりお出しになるべきじゃないか。そう言えなかったとしても、そのことを否定されて、通常国会に出すということを決めてお話しされるというのは、私は違うんじゃないかと思うんですね。

 特に、かの地はもう大変寒い。日本でも有数の豪雪地帯ですね。谷垣先生の選挙区にも恐らく豪雪地帯があるだろうと思いますし、兵庫県の台風で被害を受けた地域にも豪雪地帯はある。そういった意味で、やはり早くしないと、あの、雪がいっぱい降って寒い中を仮設住宅で暮らせるのかどうか、そういった問題だってあると思うんですよ。

 ですから、先ほどの御答弁ではありますが、通常国会の冒頭というのは余計なんじゃないでしょうか。できるだけ早く実態を調査して、できるだけ早く出す、もうこの臨時国会を会期延長してでもやるべしと。いいことなら、それは頼まれなくたって賛成するのは当たり前のことだと私どもも思っていますので、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 中塚委員の御趣旨は私もよくわかります。ただ、現実問題として、どうしてもこの被害、どういうものかというのを調査し、それを査定するのに二カ月から三カ月かかるわけでございますので、そういたしますと、現実的な対応としては先ほどのような表現になったわけでございます。

 それから、もう一つ申し上げますと、災害復旧事業等を始める前に緊急の対応をしなければならないような経費というのは、私は十分あり得るんだろうと思っています。それに対しては、当初予算もございますし、また予備費の支出というのもございますので、むしろ一番緊急なのはそれで十分対応できる状況だと思っておりますので、私は、御趣旨はよくわかりますが、今私が申し上げた手法で、じゃ現実に予算執行上いろいろな作業をやっていくのに御支障をかけることはない、こういうふうに思っております。

中塚委員 今のお話はよくわかるんです。よくわかるんですが、何のために政治家をやっているかという話になったときに、それこそ、あれだけの方が今避難生活を余儀なくされているということで、その方に予算の編成の手順の話をしても私はしようがないと思うんですね。だから、とにかく政治家として、それは役所の都合はあると思いますよ、二カ月、三カ月かかるかもしれないけれども、それだって督励をしていただいて早くやるということだと思うし、それは政治家として、被災地の方を勇気づけるということがやはり大事だと思うんですね。だから、通常国会の冒頭に出すということを一番初めに言わないで、できるだけ早く出す、この臨時国会だってやるんだということを言っていただきたい、そういう趣旨なんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 できるだけ早くやるというのは、私は当然のことだと思います。

 それで、予算のやり方の手順なんか説明しても勇気を与えることにはならないという御趣旨ですけれども、それは私ども万全の措置をとって、御不便をかけるようなこと、御不便をかけるというのは、現実には災害でいろいろな御苦労をされているわけですが、財政面のいろいろな、進捗が悪いので御不便をかけるようなことは絶対させない、全力を挙げてそれは万全の対策をとらせていただくということでございます。

中塚委員 繰り返しになりますが、やはり本当にすごく雪が降るんですよ。もう、雪が降ると二階から出入りするようなところなんですね。そういった意味で、本当に、避難されている方はこれからすごく難儀な思いをされると思いますから、ぜひそこのところはよくお考えをいただいた上で対応をしていただきたい、重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、金融の問題を伺います。

 まずUFJなんですけれども、きょうは委員の皆さんのお手元に資料を配付させていただいております。三枚の資料をお配りいたしておりますが、この一枚目と二枚目の資料については、さきの通常国会でも、この財務金融委員会において配付をされ、大変な議論の対象になった資料なわけなんですね。

 UFJの検査忌避の問題、資料隠しがあったんじゃないかとか検査妨害があったんじゃないかということを、私どもはたびたび指摘をいたしてまいりました。それについてはお答えになれないという答弁が多かったと思います。加えて、UFJ銀行の寺西さん、前頭取ですが、当時頭取を参考人招致いたしまして質疑をしたこともございます。結局、あのとき私どもが指摘をしたとおりになっているじゃないですか。そうでしょう。ずっと私どもが主張し、指摘をしてきたとおりになってしまっているんじゃないですか。

 特別検査を行われた。問題企業と言われるところの再建妥当性を判断するという話だったわけですね。それはまさにダイエーのことだったんじゃないですか。後ほどお伺いをするダイエーの産業再生機構入りのことにも関連をいたしますけれども、この特別検査というものの対象の中にはダイエーが含まれていたんじゃないんですか。いかがですか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 二〇〇四年三月期を対象にして特別検査を実施させていただいたところでございますけれども、この中では、再建計画を有する貸出先について、再建計画検証チームを中心に再建計画の妥当性の検証を行ったところでございます。

 特別検査につきましては、もう委員御承知のとおり、市場の評価に著しい変化が生じるなど、大口債務先が対象となるわけでありますが、個別の対象債務先の具体的な選定基準については、対象債務者やあるいは対象金融機関を風評リスクにさらすおそれがございますので、具体的なことについて言及は差し控えさせていただきたいというふうに思います。

中塚委員 今の御答弁で二つあるんですが、風評リスクも何も、もうダイエーは産業再生機構に入るわけですね。これから資産査定を受けて再生へ向けて歩み出すということで、今私が質問したことに答えて何の風評リスクが出るんでしょうか。いかがですか。

伊藤国務大臣 金融機関や債務先の競争上の権利やあるいは正当な権利を侵害するおそれもございますので、私どもとしましては、こうした問いかけについて慎重に取り扱いをさせていただいて、具体的な内容について言及を差し控えさせていただいていることにつきましては、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

中塚委員 D社、「D社についてのうわさ」と書いてあるわけですね、この一枚目の紙に。まさにD社ですね。再生機構に送られたD社について、それが検査の対象であったかどうかということをお答えになって、なぜそれが風評リスクになるのか、私には全然わからない。

 UFJ銀行にしたって、経営統合する、経営統合するからこそ、早目に不良債権の処理をする、来年の三月三十一日までに不良債権比率を半減するという目標があったからこそ、ダイエーだってこうやって処理に踏み切っているわけなんだから。そしてもう処理は始まっているわけですよね。であるならば、それは一体何が風評リスクになるんでしょうか。具体的にどういう風評リスクがあるのかお答えをいただけませんか。

伊藤国務大臣 具体的にお答えをさせていただくことがまさに風評リスクになります。先ほどからお話をさせていただいているように、金融機関においてもあるいは債務先の企業においても、競争上の権利でありますとかあるいは正当な権利が万が一侵されることがあってはなりません。そうした観点から、私どもとしてはこの点について言及を差し控えさせていただいております。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

中塚委員 万が一侵されることがあってはならないというのならこそ、正しい情報開示をしなければいけないわけですね。今うなずいていらっしゃいますけれども、正しい情報開示をしなければいけないわけですよ。

 このUFJの問題、そしてそれに関連をしてダイエーの問題、はっきり言って、我が国は官製談合経済であるというふうに私ども言ってまいりましたけれども、こんなに役所同士の手あかにまみれて、結局再生機構に送られてしまったわけなんだけれども、こんなことで本当にいろいろなところからの信任が得られるのか、マーケットからあるいは世界から正しい信任が得られるのか、そういうことを私は問題にしているわけなんであって、D社が果たしてダイエーであったかどうかそれが答えられない、それを答えると風評リスクが生まれるという答弁には、私はちょっと納得できないですね。

 それが明らかになることによってどういう具体的な被害があるのか、具体的な、一つでも結構ですから、言っていただけませんか。

伊藤国務大臣 まず、この資料につきましても出所不明のものでございますし、そうしたことも踏まえて、今までも個別金融機関の検査の内容にかかわることについてはコメントを差し控えさせていただいてきたわけであります。

 先ほどからお話をさせていただいているように、金融機関においてもあるいは債務先の企業においても、正当な権利もございますし、また競争上の権利を侵すということが万が一においてもあってはならないわけでありまして、こうした観点からも、私どもとして言及を差し控えさせていただいているということでございます。

中塚委員 出所不明のこの資料というのは金融庁の内部資料だというふうに私どもは申し上げてまいりましたが、出所不明であるかどうかということは別にして、あの通常国会の委員会でこれが提出をされ議論したとき、結局このとおりになっているじゃないですか。だから私はお伺いしているので、この資料の真偽の問題、それは別にしても、このとおりになっているではないですか、だからこれはダイエーのことなんですかということをお伺いしている。

 そして、もう一人、この資料を出所不明だということを言っていた方がいらっしゃって、それはほかならぬUFJ銀行の寺西頭取、当時の頭取なわけですね。寺西さんがこの委員会に参考人としてお越しになられて、そして自民党の林田委員の質問にお答えになっているということですけれども、その答弁の中で、

  検査官より御指示いただいたものにつきましては、当然ながら、組織として正式なものを御説明の際に提出させていただいております。したがいまして、一部報道にございましたような、資料を意図的に隠ぺいあるいは破棄をしたという事実は一切ございません。

  また、内部告発という報道もございました。事実関係につきましては、関係各部より報告を上げさせておりますが、特段の認知はいたしておりません。したがいまして、現状、特段の内部調査は実施しておりませんが、今後、コンプライアンス体制充実の観点から必要と判断いたしました場合は実施してまいりたい、かように考えております。

こういう答弁だったわけですね。

 伊藤大臣、この答弁を今お聞きになって、どう思われますか。

伊藤国務大臣 本件、UFJ銀行の検査忌避等の行為につきましては、金融庁としては告発を行い、現在、捜査当局の捜査が行われているわけでございますので、捜査に支障が生じるおそれがあることから、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、金融庁といたしましては、UFJ銀行の前頭取であります寺西頭取が当時どのような事実を把握し、そしてどのような認識に基づいてそうした答弁を行われたかについては承知をいたしておりません。

 いずれにいたしましても、検査忌避等に該当する行為があったと認定をして、そして本年六月十八日に業務改善命令を講じ、そして本年十月七日に告発を行ったところでございます。

中塚委員 捜査に影響が出る、それもよくわからない。今の私の質問に対する答えにはなっていないと思いますね。要は、この寺西さんの御答弁について伊藤大臣がどう思われるのかということをお伺いしたので、何でその感想を述べることが捜査に影響が及ぶのかわからない。

 というのも、UFJ銀行に対する行政処分には、「以下のような行為が組織的に行われた事実が認められた。」と書いてあるわけですね。要は、事実があったから処分をされたわけでしょう。

  当行においては、債務者区分や償却・引当の判定等に重大な影響を与える重要な資料を執務室以外の場所へ移動・隠蔽する行為が行われた。また、同様の重要なデータ等を廃止された部署のサーバに移動し、さらに、事実上その存在が探知できない状態に置くなどの行為が行われた。これらの行為は、検査に先立ち、累次の部内会議における指示等の下、組織的に行われている。

  さらに、立入検査において、検査官が執務室以外の書類保管場所の存否について質問したのに対し、そうした場所は存在しない旨の虚偽の回答を行うなどの対応が行われた。また、検査官の傍らで一部の資料について破損等が行われた。

というのが行政処分の理由なんじゃないですか。そうですよね。

 これが行政処分の理由ということならば、今お手元にお配りをした資料の二枚目、これとほとんど同じことが書いてあるじゃないですか。ごらんになりましたか。資料の二枚目に書いてあることとほとんど同じことが書いてあるじゃないですか、この行政処分の中身には。

 そして、寺西さんはこの場で、そんなことはありませんという答弁をされていたわけですね。その、そんなことはありませんという答弁をされていた寺西さんに対して、伊藤大臣はどういう御感想をお持ちなんですかということをお伺いしているんです。

伊藤国務大臣 大変恐縮ではございますけれども、私どもといたしましては、UFJ銀行の検査忌避等の行為について告発を行っているところでございます。そして、その告発を受けて現在捜査当局が捜査を行っているわけでありますので、その捜査に影響を与えてはいけない、そうした観点からもコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 また、委員御指摘の寺西前頭取の御発言につきましては、当時どのような事実を把握して、そしてどのような認識に基づいて答弁が行われたかについては、承知をいたすところではございません。

中塚委員 いや、それは、寺西さんが報告を受けていたか受けていないか、あなたは知らないと。それは知らないと思いますよ。でも、そんな、知らないから寺西はここで何を言ってもいいんだという話にはならないでしょう。それはUFJ銀行のガバナンスの問題じゃないんですか。今の答弁はおかしいですよ、それは。

 だから、UFJ銀行は、頭取が参考人でここへ来て話をするということは、それはUFJ銀行としての意見を言っているわけじゃないですか。そんなことはありませんということを頭取は言っていたわけでしょう。だから、それに対して伊藤大臣はどう思われるのかということ。寺西さんはうそを言っていたということなのか、そこはどうなんですか。

伊藤国務大臣 大変恐縮ではございますけれども、私どもといたしましては、検査忌避等の行為に対しまして金融庁として告発を行わさせていただきました。現在捜査が行われておりますので、捜査に対する影響がないようにという観点から、コメントを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

中塚委員 寺西さんは告発はされていないんですよね。さっき、告発された方のお名前をずらっと読み上げられておりましたが、寺西さんは告発されていないんですね。

伊藤国務大臣 被告発人は、先ほどお話をさせていただいた三名でございます。

中塚委員 それならなおさら、はっきり言って、捜査と関係ないじゃないですか。捜査と関係ないはずですよ。

 私らは、民主党は、この問題をずっとこの委員会で取り上げてまいりました。それはやはり、銀行としてちゃんと正しい財務内容を開示する、不良債権だってちゃんと処理せにゃいかぬということだからやってきたわけですね。そして、四大銀行の頭取あるいは経営者の方をお招きして、そして質問もいたしました。

 それで、そのときの答弁を読んで、あるいはここで聞いて、結果、UFJ銀行に対する行政処分というものが行われて、この行政処分の中身を見たら、普通の人だったらだれだって、あの寺西さんというのはこの委員会で正しいことを言っていなかったということになるんじゃないですか。いかがですか。

伊藤国務大臣 もう大変重ねてで恐縮でございますけれども、私どもといたしましては、現在、検査忌避等の行為に対して告発を行わさせていただいたところでございますので、それを受けて捜査当局が捜査を行っております。その捜査に支障が生じてはいけませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

中塚委員 全然話にも何にもなっていない。参考人だったからまだあれですが、これが証人喚問であれば、はっきり言って、偽証罪にでも問われるような話ですね。では、一体、国会に来て何を言ってもいいんですか。正しくないことを言ってもいいんですか。

 与党の皆さん、ちょっと欠席が目立つけれども、この財務金融委員会に参考人が来て、事実と違うことを言ったって、それで構わないんでしょうか。

 国権の最高機関である日本の国会に参考人として来て、事実でないことを言う。私はけしからぬと思う。それについて、監督官庁の責任者である伊藤大臣はどうお思いになるんですかと、それを言うことが何で捜査に影響が及ぶんですか。

金田委員長 もう時間なんですけれども。――では、最後にどうぞ。

伊藤国務大臣 重ねてになりますが、私も立法府に所属する者でございますので、当委員会において参考人の方がしっかりとした御発言をするということは当然のことだというふうに思っております。

 ただし、本件につきましては、私どもは告発をさせていただいているわけであります。そして、捜査当局の今後の捜査に影響を与えてはいけない、そうした観点から答弁を差し控えさせていただいていることについて、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

中塚委員 午前中はこれで終わりますけれども、では再度、これはやはり寺西さんにもう一度お越しいただかなきゃいかぬと思いますよ、はっきり言って。

 委員長、ぜひとも、寺西さんの参考人招致を求めますので、理事会での協議をよろしくお願いいたします。

金田委員長 後刻理事会で協議します。

中塚委員 では、終わります。

金田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十九分開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中塚一宏君。

中塚委員 午前中の質疑で、伊藤大臣の御答弁、答えられないということが何度も何度もあったわけで、お答えになれないことというのもそれはあるんだろうと思いますけれども、ただ、答えられないということについて、やはりそれは理由がちゃんと明らかでなければ、明確でなければ何度もお答えをいただく、お答えいただきたいということを言わざるを得ないわけですね。だから、捜査に支障が及ぶとかそういったお話なら、どういうふうに具体的に支障が及ぶのかということも言っていただかなきゃわからないわけですよ。

 だから、あと三十分なわけですけれども、後半では、答えられないなら答えられないで、何で答えられないのかということについて、ちゃんと明らかにしていただきたいということをまず申し上げておきます。

 それで、このUFJに対して、次に刑事告発される、銀行法違反で告発をされるわけですね。その告発をされたことに対して、UFJ銀行の今の沖原頭取ですけれども、これは記者会見ですが、意図したものではない、組織的ではない、法令違反とは認識していないというふうに答えているわけなんですけれども、これらの沖原頭取の発言について、金融担当大臣としてどのようにお考えになりますか。

伊藤国務大臣 告発につきましては、検査忌避等の行為の悪質性、そして今後の検査一般の実効性に与える影響、さらに金融行政の目的遂行の確保、そして一般国民に処罰を求めることの重大性等総合的に勘案をして行ったものでございます。

 他方、UFJの沖原頭取が、当時どのような事実を把握し、そしてどのような認識に基づいてそうした発言をしたかについては、私どもは子細を承知していないことから、コメントについては差し控えさせていただきたいというふうに思います。

 また、UFJ銀行の検査忌避等については、金融庁として告発を行い、現在捜査が行われていることからも、コメントを述べることは適当ではないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、UFJ銀行においては、新しい経営陣のもとで、私どもの業務改善命令を受けて業務改善計画を提出し、そしてガバナンス体制の充実強化に向けて取り組みがなされているものと承知をいたしておりますので、こうした取り組みが早期かつ着実に実施されることを期待するとともに、私どもとしても適切にフォローアップをさせていただきたいというふうに思っております。

中塚委員 午前中の野田委員とのやりとりの中で、以前、私ども民主党の会議では告発した人物の名前は答えられないということを金融庁の皆さんはおっしゃったわけなんだけれども、伊藤大臣はこの場でちゃんと告発をした方のお名前をおっしゃいました。このことにしたって、要は、では何であのとき言えなくて、今言えるようになったのかということですね。

 沖原さんが、意図したものではないとか組織的ではないとか法令違反とは認識していないというふうに言っていることについて、告発をした当事者の金融庁がこれについてどう思うかということが何で言えないんですか。いや、そんなことはない、沖原さんの言っていることは間違っていると。だって、意図したもので組織的で法令違反だからこそ告訴したんでしょう。違うんですか。だからこそ告訴をしたわけなんだから、それについて金融担当大臣としてのお考え、御意見というのが、何でお話をいただけないんでしょうか。

伊藤国務大臣 沖原頭取がどのような事実関係というものを把握されて、そしてどのような認識のもとに発言されたかということについての子細は、私どもは承知をいたしておりません。

 ただ、委員から御指摘がございましたように、平成十六年の六月十八日、いわゆるこのときは私どもが行政処分を行いました。それを受けて、同日付でUFJが発表した「ガバナンス体制の抜本的強化に向けて」は、先生が御指摘をされたような記述がなされるような報告があり、そして、同趣旨の記者会見が行われたことと私どもとしても承知をしております。しかしながら、七月二十八日付でUFJ銀行が公表した業務改善計画においては、第三者による調査委員会による調査を行った結果を踏まえて、検査忌避に該当すると思料される行為があった、そうした認識を持つに至ったという記述がなされているわけであります。

 いずれにいたしましても、新しい経営陣のもとで、業務改善命令を受けて業務改善計画が作成をされ、そしてその中でガバナンスの強化充実に向けての取り組みがなされるということでありますから、私どもも、そうした取り組みが早期に実施をされ、そして着実に行われることによって信頼を回復されることを期待しておりますし、また、そのことについて適切にフォローアップをしていきたいというふうに思っております。

中塚委員 沖原頭取の認識云々ということは、実は関係ないんですね、それは。沖原頭取がどういうふうに認識しているかということよりも、金融庁が検査をして、その結果として検査忌避があり、その検査忌避の事実があったからこそ告発をされたということなんでしょう。だから、沖原さんがどういう事実認識をしているかどうかというのは関係なくて、金融庁として、違反行為があったから告発をしたということであるにもかかわらず、沖原さんが、意図したものではないとか組織的ではないとか法令違反とは認識していないと言っているということはどうお考えですかという質問なんですね。おわかりいただけますか。いかがですか。

伊藤国務大臣 今委員から御指摘があった発言がなされたということは承知をしております。そしてその後、六月十八日の時点における、当局における行政処分における指摘と、UFJ銀行の認識に大きな隔たりがあったため、UFJ銀行としては、顧問ではない、弁護士のみで構成される、第三者による調査委員会による調査を行った結果を踏まえて、七月二十六日の時点においては、UFJとして検査忌避に該当する行為があったとの認識に至ったという旨を公表されたというふうに考えております。

中塚委員 要はこういうことなんですね。結局、この間の私ども民主党の会議で、告発した人の名前を教えてくれと言って教えてもらえなかった、きょうはおっしゃいましたけれども。加えて、今の御答弁なんかを聞いていますと、本当にちゃんと信頼に足る調査、検査を行った上で告発をされているのかどうかということが、すごく疑問に思えてしようがないわけですよ。この委員会でお尋ねをしたって、全部、それは個別の案件については答えられませんとか、捜査に影響が及ぶから答えられませんとかいうことで、お答えになったことというのは、実は一つもないですね、きょうのこの委員会であっても。それほど信頼に足る政府であるならばそれはまた話も別だけれども、この後からまた伺いますダイエーなんかでも、はっきり言って裁量行政の最たるものだというふうに私は思います。

 だから、ぜひとも、沖原さんが言ったことについて、確証を持って皆さんが告発をされたということであるならば、それは、いや、沖原さんの言っていることは間違っている、私たちは自信がある、調べてちゃんとした確証があるから告発をしたんだというふうに御答弁になるのが当たり前だ、私はそういうふうに思いますが、そのことは申し上げておいて、次の問題の方へ参りたいと思います。

 午前中から、以前この委員会でお示しをした資料にも関連して伺ってまいりましたけれども、要はダイエーの話ですね。午前中お配りしたこの席上配付資料の一枚目、九日の夜―十日金曜日、「D社についてのうわさ」ということが書いてある。本日は、経済産業省からお二方、迎審議官と北畑局長にお越しをいただいておりますけれども、巷間聞くところによると、この十日あたりに、経済産業省が金融庁に対して、UFJ銀行をよろしくというふうに言ったという報道があるわけなんですが、そのことは事実でしょうか。

北畑政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の担当の者に確認をいたしましたが、UFJをよろしくと頼んだような事実はございません。

中塚委員 では、伊藤大臣にお伺いいたしますが、経済産業省から、UFJ銀行をよろしくというふうなことが金融庁にあったと、話はお聞きになったことがありますか。

伊藤国務大臣 この点につきましては、個別の検査に関する他省庁との面会の有無やその内容について言及を差し控えさせていただいているところでございまして、こうした取り扱いをさせていただいている理由は、行政府内部の円滑かつ率直な意見交換等に支障を及ぼすおそれがあること、特に検査については、面会の相手やその有無に言及するだけで個別の検査の内容を示唆する結果となるおそれがあるからでございます。

 一般論として申し上げれば、情報収集そして意見交換等の観点から、金融庁幹部と他の省庁の幹部が会うことは通常行われており、その限りにおいては検査局も例外ではないというふうに思います。

 いずれにいたしましても、検査は厳正に実施されており、外部の意向によって検査がねじ曲げられたり、あるいは判断がゆがめられるということはないということであります。

中塚委員 今、伊藤大臣は、経済産業省からその種の話があったかどうかということについて、明確に否定はされませんでしたね。要は、そういう情報交換をやっておるということだったと私は理解をいたします。

 さて、きょうお手元にお配りした資料の三枚目なんですが、私、予算委員会でもこの問題を取り上げまして、予算委員会で資料要求をいたしましたが、これは別にその予算委員会での資料要求に応じて出てきたものではありませんで、私が独自に入手をしたものなんです。これが、要は、産業再生機構あるいは産業再生委員長、これは高木さんが委員長ですが、高木委員長が内閣官房長官細田さんにあてた要望書なんですね。要は、行政の介入、特に経済産業省の介入ということについて、何とかしてくれ、そういうことがこの要望書の中には書いてある。

 まず、この要望書の中身をちょっと読んでみますと、

  産業再生機構は、日本の金融システムが十分に機能していない状況を踏まえ、本来民間の自主的努力に委ねられるべき個別事業の再生に力を貸し、不良債権問題との一体的解決を図るべく、特別法によって設立された組織であります。準公的機関であるにもかかわらず株式会社とされたのは、政治や行政の指示ではなく、市場原理に則った方法で事業再生を行うためであります。それ故、個別事業の再生を支援するかどうかなどの決定は、産業再生委員会の専権事項とされております。委員会が支援決定などをするにあたりましては、予め主務大臣の意見を聞き、また事業所管大臣は意見を述べることができますが、主務大臣等は、それ以上に政治的・行政的理由から個別案件に介入してはならないのが機構法の趣旨と理解しております。主務大臣は機構を監督し必要な監督命令を発することができるとされておりますが、それは一般的な業務執行に関するものであり、個別事案に関する機構の対応に関与することを予定したものではありません。

 そして、その一つ下のパラグラフですが、

  ところが、今般、さる個別の案件をめぐって経済産業省から強い介入を受けたと感じざるを得ないような事態に直面し、困惑致しました。これに抵抗するには他に術がなく、辞表をしたため、その写しを経産省にお届けしました。介入や圧力から産業再生機構と産業再生委員会を守るためであります。幸い、総理、官房長官及び官邸の関係者の皆様のご尽力により、その案件については進展が見られましたので、敢えて辞表は提出しないことと致しました。

  今般の経産省の介入は、産業再生機構の独立性、事業再生のあるべき姿についての誤解に基づくものであろうと考えられますが、二度と再び同様の事態が繰り返されることがないよう、関係府省を厳しくご指導、ご監督いただけますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。

ということが書いてあるわけですね。

 経済産業省からお越しのお二人にお伺いしますが、そして、加えてきょうは内閣府の藤岡さん、再生機構の担当室長にもお越しいただいておりますが、この要望書はごらんになったことはありますか。

北畑政府参考人 御指摘の高木委員長からの書簡につきましては、官房長官あての私信であるというふうに聞いております。私どもは見ておりません。

藤岡政府参考人 御指摘の書簡でございますけれども、高木委員長より官房長官あて私信が出されたということは承知してございます。内容については承知してございません。

中塚委員 ということで、今初めてごらんになるということなんでしょうか。

 これがその要望書なわけですけれども、これを今ごらんになって、どのようにお考えになるのか。特に、今般の経産省の介入、経済産業省から強い介入を受けたと感じざるを得ないような事態に直面をし、困惑をしたということが書いてあるわけでありますが、これについてどうお考えになるのか、まず北畑局長、そして迎審議官にもお答えをいただきたいと思います。

北畑政府参考人 私どもといたしましては、民間でできることは民間が主体的にやっていく、産業再生機構は民間を補完する公的組織である、こういう基本的考え方で再生機構に意見を申し上げてまいりました。

 以上でございます。

迎政府参考人 私ども経済産業省の立場は、今、北畑の方から申し上げたとおりで、私としても、特段違うこと等ございません。

中塚委員 今、北畑局長、民間でできることは民間でというふうにおっしゃいました。小泉内閣は常にそういうふうに言っているわけですけれども、民間でできることは民間でというのはどういうことなんですかね。その御説明をいただけますか。

北畑政府参考人 ダイエーのケースということでお答えをさせていただきたいと思います。

 ダイエーの再建策につきましては、ダイエーと銀行との間で、まずは民間の、民間による再建ということで作業は進んでおったと承知しております。ダイエーの方で民間からスポンサーの入札募集をいたしました。その作業が進んでおりました。その作業をまず見守るべきであって、公的機関である再生機構は、その後で再生機構に行くかどうかの判断をすべきだということを常に申し上げておりました。

 これが、民間でできることは民間でという私どもの考え方でございます。

中塚委員 今局長が御答弁になりました民間でできることは民間で。では、ウォルマートとかあるいは丸紅、そういったところをスポンサーとして一生懸命御用意をされたといったことは事実なんでしょうか。いかがでしょうか。

北畑政府参考人 ダイエーの行いました入札について、最初七グループ、最終的には三グループが応札をいたしておりました。その中に、今先生御指摘の丸紅とかウォルマートも手を挙げておったことは事実でございます。

中塚委員 直接お電話をされたと言われております迎さんはいかがですか。

迎政府参考人 まず、ウォルマートとの件でございますけれども、一般論として、所管の企業との間でさまざまな形で情報交換をするというふうなことは私も常々やっておるところでございます。しかしながら、何か今の、入札に関して具体的な働きかけを私が行ったというふうな事実はございません。

中塚委員 では、その入札について、日本政府を信用してくれ、白紙でもいいから入札してくれというふうにおっしゃった事実はないんですね。

迎政府参考人 さようなことを申し上げた事実はございません。

中塚委員 どうも、いろいろと聞いている話とかなり違うというふうに思いますね。今の程度の話で、どうして高木再生委員長が内閣官房長官あてに要望書を出さなければいけないのかということ。

 北畑局長、もう一度伺いますが、よく思い出していただいてお答えをいただきたいし、できるだけ事実に近い形で思い出していただきたいわけでありますけれども、例えば、産業再生機構の社長のところに直接お電話をされてお話しになったということなんかはございませんか。

北畑政府参考人 経済産業省は産業再生機構の主務大臣でありまして、窓口は私のところでございます。斉藤社長とはたびたびお会いもしておりますし、電話もいたしました。

中塚委員 いや、お電話されているのはそういうことだと思うんですが、先ほども御答弁になられておりましたけれども、その電話の中身について、高木委員長がこれほどのものを官房長官に送らなければいけないような、何せ辞表まで書かれているわけですね。

 民間でできることは民間で、私もそれは否定いたしませんが、民間といったって、丸紅には御省の天下りもいる。副社長は御省のOBだそうですね。それがどこが民間だということも思いますが、ただ、民間でできることは民間でということ自体、私は否定いたしませんけれども、では、どうして、再生委員長が辞表を書かなければいけないほどの強い介入を受けたというふうに思わなければいけないのかどうか。要は、斉藤社長とお電話されたときにどういったお話をされたのか、それを御披露いただけますか。

北畑政府参考人 斉藤社長とは、お会いをして、ダイエーの問題について議論をしたことがございます。

 ダイエーの再建につきまして、斉藤社長との間では、再建のためのビジネスモデル、それから御指摘のスポンサー、流通政策上の考慮点、こういったことについて、フランクな意見の交換をしたことがございます。それが介入というふうに受け取られたということについては、私はそういうふうな趣旨で意見交換をしたというふうには思っておりません。

中塚委員 では、何で辞表まで書かなきゃいけないんですかね、その程度の話で。その程度の話で、辞表を出すというところにまでは至らないと私は思うんですね。いかがでしょうか。

北畑政府参考人 私に聞かれてもお答えのしようがございません。

中塚委員 北畑局長にお伺いしてもわからない、いや、当たり前だと思います。要は、北畑さんはそんなつもりで言ったわけじゃないけれども、高木さんやら斉藤さんがそういうふうに受け取ったんだというふうにお考えになるのであるならば、委員長、斉藤社長と高木委員長をこの場にお招きをして、やはりちゃんとお話を聞く必要がある、私はそういうふうに思いますが、理事会で御協議いただけますか。

金田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。

中塚委員 北畑局長にもう一つだけお伺いをいたしますけれども、斉藤社長あるいは機構の幹部に対して電話でお話をされた、あるいは直接会ってお話をされた。そのときに、機構の関係者に対して、今度村上誠一郎さんが大臣になったから、機構はイオングループとつるんでいるんじゃないか、ダイエーをイオングループに売り飛ばすつもりなんじゃないかということをおっしゃったことはありますか。

北畑政府参考人 たしか九月二日であったと思います。その時点では、民間の入札作業だけが進んでおりまして、機構の方はまだ作業に入っていなかった時点で、斉藤社長とスポンサーについて議論をいたしました。

 私の方からは、ダイエーが行っておる民間の入札について、三グループの具体的な企業の名前を斉藤社長に伝えまして、斉藤社長からそれぞれの会社についてコメントをちょうだいいたしました。片方、斉藤社長から私に対して、仮に将来再生機構にダイエーが来た場合にスポンサーになりたいと手を挙げている企業ということについて、斉藤社長の方から具体的な名前が出まして、私はそれに対してコメントをいたしました。

 こんな意見交換を行ったというのが、九月二日の私と斉藤社長の会談の趣旨でございます。

中塚委員 今のもお答えになっていないんですけれども、私が聞いている話では、そんな穏やかな会ではなかったようですね。そういう穏やかな会ではなくて、北畑さんとお話をされた方は、大変に恐ろしい思いをしたというふうにおっしゃっているようでございますし、この件についてはテープがあるというふうにも言われているんですね。

 だから、そういったことはまたおいおいと実態が明らかになっていくというふうに思いますけれども、きょうここでお答えになったことについては、よくよく覚えていただいて、もちろん議事録も残っておりますから、今、また斉藤社長や高木委員長の参考人招致も要求をいたしましたので、その際にまたこちらにお運びをいただいて、改めて議論をしていきたいというふうに思います。

 次に、伊藤大臣、またダイエーとUFJの問題に戻りますけれども、結果、要は検査忌避をしなければいけないほどダイエーというものが傷んでいたということなわけですが、ということは、実はこれは検査忌避ということだけにとどまることなく、粉飾決算だったということなんじゃないんでしょうか。

 例えば、さっき検査は厳正に行っている、信用してくれということをおっしゃっていましたが、二〇〇三年三月期でちゃんと引き当てておったら、自己資本比率は八%を割っていた可能性だってありますね。カネボウのときにもそういった指摘を民主党の委員からさせていただいたわけでありますけれども、これは要は粉飾決算だったということなんじゃないんでしょうか。いかがですか。

伊藤国務大臣 検査結果につきましては、もう委員御承知のとおり、各金融機関において通知後一番早い機会の決算に反映させるものでございます。

 また、今個別金融機関の財務状況に関するお尋ねがございましたが、検査の内容について言及することは差し控えさせていただきたいというふうに思います。このような対応をさせていただくのは、一般論として、当該金融機関そして債務先企業の権利あるいは競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあることや、場合によっては風評リスクにさらすからでございます。

 また、粉飾決算ではないか、そうしたお尋ねがございました。具体的には、証券取引法上の有価証券報告書虚偽記載の罪を想定されるものと考えますが、一般に、この罪が成立するためには、重要な事項について虚偽の記載があり、有価証券報告書もしくはその訂正報告書を提出することが必要であり、かつこれらの要件について故意を有することが必要でございます。

 金融庁といたしましては、UFJ銀行に対して、貸出先の財務内容の実態を隠ぺいし、そして検査官による同行の資産の実態把握を妨げ、検査忌避行為に及んだものと認められるものから、UFJ銀行が粉飾決算に至ったものではない、そうした認定はできなかったということでございます。

中塚委員 ちょっと、今、長い答弁で、一番最後のところだけが重要だったんだけれども。粉飾決算ではない。でも、要は、決算の内容によれば実態とは違ったということでしょう。だったらそれは、さかのぼって言えば、粉飾決算だったということなんじゃないんでしょうか。何で第一義的に粉飾決算ではないというふうに言い切れるんでしょうか。

伊藤国務大臣 今お話をさせていただきましたのは、検査忌避行為の問題と粉飾決算の認定の問題は違うということであります。

 私どもは、検査そしてUFJ銀行からの報告に基づいて精査、検証する中で、検査忌避行為については、これは行政処分を行い、そして個人等に対する処罰の重大性等を総合的に勘案をして慎重に検討をした結果、告発をさせていただいたところでございます。

 しかし、粉飾の問題については、そうした認定をさせていただくには至らなかったということでございます。

中塚委員 ちょっと時間がなくなってきたので残念なんですけれども、要は、検査と粉飾が別のものだというのは当然のごとく理解をしておりますが、検査の結果、業績修正だってされたわけでしょう。二回にわたって業績を下方修正して、最後は赤字の決算にまでなっちゃったわけですね。その土台には検査というものがあるわけなので、それをさかのぼって考えれば、実は粉飾決算だったんじゃないかということがまず第一点。

 もう一つ申し上げたいのは、結局、日本の銀行というのはこんな調子でみんな粉飾なんじゃないかということですね、前々から私どもが言っておりますけれども。だからこそ、いつまでたったって、金融システムの安定ということだって、マーケットからの信頼を得ることができないでいる。何かあるんじゃないか、何かあるんじゃないかということになっているわけであって、きょうの答弁でも、答えられないと。ぜひ議事録を読み返していただいて、何回答えられないというふうにおっしゃったか、勘定しておいていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、樽床伸二君。

樽床委員 先ほどの午前中に、私どもの野田議員に対して、財務大臣の答弁の中で、今の国家財政の厳しい状況についての考え方、一端を述べられたとは思っておりますが、正直言いまして、この危機的とも言える我が国の財政状況を一々説明する必要はなかろう、このように思っております。当然御存じのことでありますので、基本的な数字はすべて省略をいたしますが、そういうことを前提に立ちますと、大変解決が難しい問題であることは私どもも重々認識はしております。しかしながら、難しいからといってそのまま放置できる問題ではない、このように思っております。

 私の認識では、過去の、古今東西のいろいろな国々を見まして、その国がおかしくなっていくときに、必ずと言っていいほどその国の財政がおかしくなる。これはどちらが先かどうかは卵か鶏かの問題ではありますが、不即不離の問題として財政状況と国の盛衰ということが関係あるということで考えますと、我が国の国家財政の状況は、難しいからというだけで済ませられる問題ではない、このように思っております。

 そういう前提で、きょうの朝のお話でも、二〇一〇年代の初頭でプライマリーバランスの黒字化をする、こういう話がありました。実際、このプライマリーバランスを黒字化したからといって、我が国の財政が根本的に解決するんですか。大臣、どうですか。

谷垣国務大臣 プライマリーバランスを回復できたといたしまして、それはまだ、今ストックで今年度末で四百八十三兆、これからも大量発行が続きますからふえてまいりますけれども、それを抜本的に解決するというところに至るわけではありません。プライマリーバランスを回復したということで言えることは、要するに、その年にいただいた税金でその年の政策は打っていこう、したがって、ツケは後の世代に送らないようにしようというところまででございます。

 ですから、極めてモデストな目標といえばモデストな目標なんですけれども、現状から考えますと、これは実はモデストと簡単に言えない。全力を挙げて、必死になって何とかそこにたどり着きたいという目標でございます。

樽床委員 モデストと言われても私はちょっと理解が難しいんですが、要は、プライマリーバランスの回復は入り口だというふうに私は認識をしております。ただ、入り口まで行くのも大変だ、こういうことだと思います。

 しかし、今このときに、改革を標榜された内閣のもとで財務大臣をやられ、そして、せんだっての所信でも、子や孫に負担を先送りしない持続可能な財政制度を構築することが必要である、このように明言をされている以上は、入り口だけではなくて、その後の、まさに国家百年の大計ぐらいの決意で、百年先のことが、今決めたからといって全部一〇〇%そのとおりにいくとは思いません。ただ、百年計画、百年の大計で計画を立てるということですね、そういうことをして、百年後にはこうしますというぐらいのことを示さなければいけない、それが今の責任者としての使命だと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 百年先のことであろうと、こうだとお示しできるような状況まで持っていけば、よくやったということだろうと思います。現状ではまだなかなかそこまで自信を持って申し上げられるわけにはまいりませんで、今掲げております目標は、さっきからおっしゃっていただいております、二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスを回復しようということでありまして、そのためには、私は奇策みたいなものはないんだろうと思います。

 要するに、むだな歳出をカットする、それからやはり、入るをはかって出るを制すと申しますが、入るをはかる、きちっとした租税体系をもう一回つくり上げていく、そして全体の持続的な経済成長を図りながら解決していくというしかお答えがなかなかできない問題であります。そういういわば一歩一歩取り組んでいかなければならないことじゃないかと思っております。

樽床委員 役所とすればそういうふうに言うのは当然だと思いますが、大臣は役所のトップであると同時に、小泉内閣のナンバーツー、ナンバースリーでもあります。政治家として、そういう目指すべき道筋というものを示す必要があるというふうに私は思っておりますが、私案でも結構でございますから、谷垣私案として、こうすれば百年後に日本の財政はきれいになるというようなことをぜひともお示しいただきたい。

 実は、我々もいろいろな人から話を聞いて、またいろいろな人と話をして、五百兆にもなんなんとする国債の残高、これを解決する方法はあるんですかというふうに聞かれます。我々も詰まってしまいます。五年、十年でこれを解決しようと思えば、徳政令のようなものをするしかないのではないかと半分あきらめてしまうような気持ちになるんですが、しかし、そうではなくて、粘り強く百年間目指して頑張っていくというぐらいの決意をぜひともお示しをいただきたいと思いますが、もう一度、いかがですか。

谷垣国務大臣 なかなか難しい玉を出せと樽床さんから言われていると思います。しかし、そうなかなか、百年の先まで全部絵が描けるところまではまだ参っておりません。

 やはり二〇一〇年代の初頭といいますと、今から十年たちますと二〇一四年ですから、一四年になるとちょっと初頭とは言いがたいかなと思いますから、もう十年ないことになりますが、その十年にやや満たないプロセスの中でプライマリーバランスを回復していく。そのために、要するに、ことしは実質的に歳出を昨年度同等に抑え込んでいくという手法、そしてめり張りをつけていく手法、そして国債発行残高を、この三年間伸ばさざるを得なかったけれども、ことしはそれを抑え込んでいく年にしよう、そういうようなことで一歩一歩運んでいきたいと思っております。

樽床委員 これ以上このことを言っても押し問答になると思いますが、先ほど、午前中の話もそうでした、今の話の中でも、経済の順調な回復も期待してというお話がありましたけれども、経済がこのまま回復したからといって、どれだけ国の財政の赤字が減っていくのかということを考えると、今の体制のままでは私はなかなか厳しいというふうに見ております。

 御存じのように、我が国の過去最も税収が上がったとき、一九九〇年ですよ、バブルの最終盤、はじける直前ぐらいだと思いますが、バブルのピーク時に、一番高かったときに我が国は過去最高の税収を記録したんです。そのときの税収が、何と六十兆ですよ。約六十兆一千億であります。今が八十二兆の歳出があるんです。過去のバブルのピーク時の税収であっても二十兆足らないわけです。ということは、今、約四十二兆ですね、経済がバブルのときほど過熱をして、あのときほど経済が、わあっと税収が上がるということはなかなか考えにくいし、それをしていいのかどうかということがありますが、そうなったとしても、まだ二十兆足らないということについてどうお考えですか。

谷垣国務大臣 確かに、景気をバブルが発生するほど過熱させるというのは、我々その後遺症で苦しんできたわけですから、そんなことを二度三度繰り返すわけにはいかないと思います。

 ですから、我々が望むのは、そういうような成長ではなくて、持続的な安定的な成長という中で、しかし、今お話しのように、それだけで今の日本の財政が解決できるというものではないわけでありまして、やはりむだな歳出を抑制していくことと、そして必要な歳入を計画的に着々と手を打っていくということと、あわせて、今の持続的な経済成長といいますか、三位一体というのは別なところで使われておりますけれども、この分野でも三位一体で取り組まなければとても我々の目標は達成できないというふうに思います。

樽床委員 とにかく、入る方ですね、税収を経済を活性化させて、とにかく景気が回復すれば日本の財政はもうバラ色だ、一気に好転するというのは幻想であるということをぜひともきっちりと説明をしていただかなければならぬだろうというふうに私は思います。私も、景気が当然よくなってもらいたいし、景気がよくなって財政が好転することを望んでおります。ただ、景気が三%ぐらいの、そこそこのほどよい成長がずっと続けば、これで我が国の財政はよくなるんだというのは、ちょっと安易に考え過ぎだ。実際、財務省が出しておられる、広く一般の皆さん方に出しておられるであろうこのパンフレットの一番最後にも、その程度の成長をしても十九年にはさらに赤字額がふえるという試算まで出しているわけでしょう。そうすると、とにかく経済成長で財政再建は何とかなるということの楽観的な考え方はぜひともやめて、やめていただくというのもおかしいんですが、しっかりと慎んでいただきたい。

 そういう前提の中で、出の部分で要らないものを削っていくというお話がありました。それは確かにそうでありますが、普通、国の財政だけではなくて会社でも団体でも一緒でありますが、悪くなった予算を回復していくというときに、まず大どころのところを、額の大きい大どころのところというのはやはりきちっと手をつけなければならぬのは当然であります。

 そういうふうに考えると、釈迦に説法の話でありますが、我が国の今年度の今動いておる国家予算の中で、大きい方から三つ、大臣も御存じだと思いますが、一番多いのが社会保障関係費で、これは十九・八兆円、これは全体の二四%ございます。それから、その次に多いのが国債費、これは十七・六兆、これが二一%以上あります。地方交付税が十六・五兆、これが二〇%であります。これが多少の金利の動向とかそういうもので上下いたしますが、この三つが大体大どころで並んであるという状況でありまして、この三つを足しますと、何と全体の三分の二なんです。国の一般会計の三分の二は、今申し上げましたこの三つの項目で占められておるということであります。

 ちなみに、四番目に多いのは公共事業でありますので、公共事業が七・八兆、これを入れると、何と国の一般会計全体の四分の三がこの四項目で占められる。

 こういう状況であるならば、この三つの、切り詰める程度じゃなくて、この三つの項目の抜本的制度の見直しというのが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 まさに樽床委員がおっしゃったとおりで、三分の二を三つの項目で占めるわけでございます。

 そこで、その中で国債費ですね、これはこれだけで圧縮するというわけにはいきません、ほかのところを切り詰めた結果、国債費が何とか圧縮できていくという構造になりますから。やはり手をつけなければならないのは社会保障と、三位一体という形で今やっておりますけれども、国と地方の関係、これを合理的なものにし、身の丈に合ったものにしていくということがなければこの財政再建の道筋はつけられない、まさにそこがポイントだろうと思っております。

樽床委員 三位一体の改革についてはまたいろいろ話があると思いますので。

 今大臣がおっしゃった、まさに社会保障の問題ですね、この社会保障のところに制度的な抜本的解決をしなければ、これは国民の皆さん方の生活、老後の不安を解消するためにも大事であるという側面と、当然そこにはお金がついて回る、必要な財源が要るわけでありますから、国の財政という両面からこれはアプローチしていかなければならぬというふうに思います。

 ここは財政の話をしておりますので、社会保障の問題を財政の面から見ますと、社会保障の関係費というと、一般の方は福祉予算というふうに考えます、これが大体十九・八兆、約二十兆円ございますが、そのうちの八割近くは実は社会保険に対する補助ですね。社会保険というのは、平たく言えば年金と医療と介護であります。年金と医療と介護、この三つの社会保険制度に国が補助を出している、これだけで何と十五兆円以上。毎年、ことしの予算でも出ている。これは全体の八割近い、正確には七七・七%の額が社会保障関係費の中で占めておる。つまり、これは年金、医療の改革なくして国の財政の再建はないということであります。

 そういうことを考えますと、私どもは、さきの国会で無理無理通過をいたしました年金制度については、小手先の改革であって抜本的な改革ではない、このように主張しておりましたし、今でもそのように主張しております。我々の年金制度案について、ここで厚生労働委員会ではございませんので一々説明はしませんが、御存じのとおりだと思います。

 年金の一元化ということでありますが、このことについて、大臣、どのようにお考えでございましょうか。まず、大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 年金の一元化の前に、先般の国会で、今御批判もございましたけれども、年金法の改正を通していただいた。我々から見ますと、そこの一番のポイントといいますか肝というのは、結局、負担水準に合わせて給付水準を設定していこうということで、長期的に給付と負担の均衡を図ることによって持続可能なものにしていこうということであったと思います。それについては、民主党のお考えからすれば当然御批判があることは承知しておりますが、私はかなり大きな歩みを年金改革の中で進めたんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、年金一元化というのは、その次に先にある課題で、重要な課題であるというふうに思っておりますが、単に一元化するだけでは負担と給付のバランスが必ずしもとれるわけではないんで、その一元化の議論の中にも負担と給付のバランスといいますかそういうものをとっていくという考えがなければ、年金一元化だけでは解決しないんだろうというふうに思っております。

 年金一元化というのは何なのかというのもいろいろ議論があるところでございますけれども、社会保障の在り方に関する懇談会というのを官房長官のもとで先日発足させました。それから、経済財政諮問会議でもこの議論を始めたところでございますので、そういう中の議論、それから、いわゆる三党合意というのもございました、そういう中でどういう議論が進んでいくかということを我々も注視しながら、我々の担当でございます財政面とうまく平仄の合った改革に持っていくように我々も努力しなければいけないと思っております。

樽床委員 我々は、一元化と同時に、その財源として消費税のことを提起させていただいております。正直言いまして、消費税の議論をするというのは、政治の世界においては、消費税で過去幾つ内閣がつぶれたのかという歴史を振り返ると、それなりに勇気の要ることであります。それを党の政策として、一元化と同時に、財源は消費税で我々はしっかりと賄っていこうという提案をずっと一貫してさせていただいております。

 小泉総理は、自分が総理のときには消費税は上げないというふうに言っておられます。しかし、大臣のせんだっての所信では、消費税を含めた抜本的税制改革を検討する、このようにおっしゃっておられますが、この小泉内閣のもとで消費税をどのようにされるおつもりでございましょうか。

谷垣国務大臣 まだどうするかというところまでは実は議論は進んでいないわけでありますけれども、我々、社会保障の財源と申しますかそれをどうしていくかという中で、消費税だけに必ずしも着目しているわけではございません。基礎年金、三分の一から二分の一にどう持っていくかという中で、まず所得税体系の見直しをして、十七年度、十八年度でどうしていくかということを考えて、その後、平成十九年度からやはり消費税をどうしていくかということでなければならないんじゃないか、そういうふうに考えております。

 それで、こういうふうに考えますのは、社会保障の財源をどうしていくか、基礎年金の税負担をどう高めていくかという議論もございますけれども、他方、いわゆる三位一体という議論の中で、所得税を中心として、まあ基幹税、地方住民税に持っていくという形で税源移譲を考えておりますので、そっちの方からも所得税体系を見直さなきゃならない。いろいろな複雑な連立方程式でございますけれども、まず所得課税の方から議論をして、次に消費税体系というようなものを議論すべきではないかというふうに考えているわけです。

樽床委員 我が国の中に当然いろいろな意見があります。一億三千万人おられますので、まあ、子供も入れての話でありますが、すべての人が同じ意見を持つとは考えられません。ですから、いろいろな意見があります。賛否両論、当然、難しい問題であればあるほど賛成と反対がいろいろあります。

 そういう中で、ちょっと表現を考えますが、それなりのボリュームの数の方が、日本の年金制度を維持していくには消費税しかないんではないかと真剣に考えておられる方もたくさんおられる。私は、これはかなり論理的な思考も伴っていると思います。そういう方について、消費税の議論を検討すると言いながら、今でも何かよそへ逃げるような気がいたしております。せっかくここで、せんだって消費税も含めてとおっしゃったその決意が、聞かれるとふっとしぼむということで国民の信頼が得られるとお思いですか。

谷垣国務大臣 樽床さんに聞かれたらしぼむというふうには思っておりません。

 ただ、手順としては、順序としては、所得課税から入ろうというふうに考えているわけであります。それで、将来も増大していく社会保障の財源をどう支えていくかという観点からしますと、消費税は極めて大事な税金だと私は思っております。特に、増大していく負担を広く公平に分かち合うにはどういう税が適当かという観点から考えますと、消費税はある意味で最も適した税金であるということが言えるんじゃないか。

 だから、これは大切なものでありますから、きちっと議論を、これはまだ我々の考えも十分煮詰まってはおりませんけれども、前広に議論をしていかなければ、きょう議論したらあした実行に移せるというものではありませんから、前広に議論していくことは私どもはやらなきゃいけないと思っております。

 一方、所得税は、所得税体系の見直しもやはり急務でございまして、これは長い間に、景気を刺激させるというような目的から相当思い切った減税等をやっておりまして、世界的に見ても、日本のこの所得税体系と申しますか、極めてある意味では低いものになっている面がありまして、現在、このごろしばしば見られます議論に、こういう経済が非常に厳しい中で金持ちと貧乏人が二極分化していくじゃないかというような御批判があることは事実でございます。

 そういう問題に対応して、やはり所得再分配ということもある程度視野に入れて税制を議論していかなければならないということになりますと、所得税の持っている機能、これを余り低い小さなものにしないで、やはり基幹税としての役割を果たして、所得再分配機能も所得税に担わせるということは考えていかなきゃならない。ですから、税制は全体を見ながらやはり議論をしていかなければいけないんじゃないかなと思っております。

樽床委員 先ほどもちょっと言いましたが、社会保険にことしだけでも十五兆以上出ているんですよ。それで、年金に対する国庫からの、一般会計から六兆円近いお金がことしでも出ているんですね。これで基礎年金の負担を三分の一から二分の一にすると、それだけでまたどんとはね上がっていく。しかも、これから高齢化が進んでいくということになると、今、医療保険には八兆円以上出ておりますが、それをはるかに超えていくのは恐らく当然の予測であろうというふうに思います。

 そうすると、数兆の単位の額ではないという前提に立ちますと、消費税のことについて、きょう言ったからあした導入するとか、そんな拙速な話ではないのは重々わかっております。しかし、国民の皆さんに年金の制度を維持していくためには、我々は目的税として消費税ということを言っておりますが、これを御理解いただくためにかなりの時間がかかるのではないかと私は思います。

 それを政府の中の議論で、政府の中だけではいろいろやったけれども、そして政府の中で一応順番は尽くしましたよということでどんと国民の皆さん方にまたいろいろな話が出るよりも、将来の年金財政を考えると、消費税のことは、これはもう避けて通れないという明言の中で、いつどうするかは別にして、どうやって皆さんが納得できるような消費税と年金財政のあり方を考えるかということを、リンクしているんだということぐらいのはっきりとした意思表示がなければ私は国民に対して無責任だと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 その点は、樽床委員のおっしゃるとおりだと思います。

 年金だけではなくて、社会保障はやはり一体的にとらえなきゃいけない。というのは、やはり国民の身の丈に合ったものでなければ持続できませんから、国民経済の身の丈に合ったものとするためには、個々一つ一つばらばらに議論していってもなかなか全体の身の丈がつじつまが合ってこないということだろうと思います。

 社会保障は全部制度がございますから、単に数字だけでやるわけにはいかない、制度自体をいじらなきゃなりません。ことしは介護ということになっているわけですが、その介護を議論しますときにも、年金のあり方、あるいは医療のあり方、全体を視野に入れて、身の丈に合ったものにしていくにはどうしたらいいかという議論を常にフィードバックしてやらないと、うまくいかないと思うんですね。

 そういう議論をしていくときは、今委員がおっしゃったような、その裏打ちの税はどうなるんだという議論が必ずあると思います。それで、この議論をやっていきますときに、先ほど私はまず所得税体系からというふうに申し上げましたけれども、それだけでは身の丈に合った議論は完結しないということは明らかでありますから、今から前広に、では消費税をどのようなものにしていくかという議論は、私たちもこれからどんどんやらせていただかなきゃいけないと思っております。

樽床委員 私も、とにかく消費税さえ入れればいいという主張をしているわけではなくて、年金制度をつぶさないように、しかも、国の財政の状況の中で最も、最もというか、唯一ではありませんが、かなり重要な部分を占めるこの社会保障、社会保険の制度の改善のためにはということで、喜んで消費税を上げろと言っているわけじゃございませんが、いろいろ国民の皆さんの理解をいただいてやるためには時間がかかるということを申し上げておりますので、これはぜひとも、小泉総理のように私の任期中には上げませんの一言で済ますようなことではなくて、しっかりとした議論をオープンな形でやっていただきたい、決して逃げることがないようにお願いを申し上げたいと思います。

 それから、次に移りますが、午前中も国債管理制度のことについて野田委員の方から少し話が出ました。現在それについていろいろ取り組みをしておる、こういうお答えがあったわけでありますが、その国債管理制度を考えるときに、一つ私は素朴な疑問があります。

 国債には、建設国債と、俗に赤字国債と言っている、これは特例公債、こういうふうに言っております。赤字国債は、正式名称は特例公債であります。特例であります。元来、我が国は、かつて均衡財政の方針を出しておりましたから、国債を出さないということでずっと国の財政を戦後つくってきた。それが、昭和四十年代だと記憶をいたしておりますが、国債を発行し始める。そのときに、建設国債ということで、これはもう説明は要らないと思いますが、赤字国債は特例公債であって、特例であるというふうに位置づけて現在まで至っておりますが、本当に今の現実も赤字国債は特例なんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 特例公債でございますから、特例であることは間違いないんですが、本当に特例かと樽床さんに問い詰められると、やや舌がもぞもぞするという気持ちは正直言ってございます、これだけ大量発行を続けておりますから。

 ただ、今、樽床委員の御関心、つまり、この二つを分けて、建設公債はいいが特例公債は例外だというようなことは現実に合っていないじゃないかと御指摘なんではないかと思います。

 確かに、ここのところは若干私も答弁が苦しいところでございますけれども、ただ、建設公債の場合には、それでつくったものが後に残りますから、世代間の公平という観点からも、ある意味では借金をしてやるというようなことも合理性があるけれども、その年その年のやりくりが足らないからといって特例公債を発行するのが原則だというわけにはいかないので、やはりそれは特例である、例外であるということは動かすわけにはいかないんじゃないか。やや詰まりながら、私は、それでもそういう答弁をしなければいけないと思っております。

樽床委員 今、大臣が苦しいとおっしゃいましたけれども、本当に苦しいんですよ。

 ことしの予算で、特例公債は三十兆ですよ。建設国債は六兆五千億なんですよ。約四倍、五倍近く実は特例公債の方が多いんですよ。これで何で特例なんですか。しかも、一年だけ見たらそうかもしれぬと、ずっと残高を見たらどうなんだと、残高を見ても特例公債の方が多いんですよ。四百八十三兆のうち、二百六十兆は特例公債なんですよ。引き算ができればあと建設国債は幾らかはおわかりだと思いますが、もう特例の方が多い。単年度でも四倍から五倍多い、残高でも特例の方が多い。

 これで、いつまでも建前として、それは、おっしゃっていることは、理屈はそのとおりです、理屈はそのとおりですが、その建前でやり続けて現実に支障が出ませんか。もう特例公債ということの概念を、この現実を考えたら、私も子供じゃありませんから、今、すぐあしたから均衡財政に戻らないかぬ、理想はそうですが、できないのはわかります。そうすると、赤字国債を出さなきゃ国が現時点では回っていかないという現実があるんです。そういう現実と建前との乖離というのを、特例公債と言い続けなければいけないということで覆い隠していていいんでしょうか、どうでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに、樽床さんがおっしゃるように、今の事態が本来目指していたものから見ると大きくかけ離れているということは、これは率直に認めざるを得ないと私も思います。だからこそ、プライマリーバランスの回復をして、先にツケを送らないように持っていこうとひいひい言いながらやっているわけでございまして、建前が随分現実と乖離しているから、建前を捨てて現実にそのままどっぷりつかって、それを全部それでいいんだというのは、やはり私は避けなければならないと思います。

樽床委員 私は、何も現実にどっぷりつかってやれというふうに言っているわけではございません。我々は机の上で生きているわけではございませんので、人間社会、現実の中で生きております。現状を踏まえて物を改革していかなければどうにもならぬわけであります。現状が丸なのに、理論的には四角ですといって四角に変えましょうといったって、現実は変わらない。だから、現状は現状として、不本意であっても、いい悪いは別にしても、受け入れざるを得ないということから考えると、私は、特例公債という位置づけを今後いろいろ検討していただきたい、このように思っております。

 なぜかといいますと、実は建設国債が中心であるからという発想のもとで六十年償還のルールがあるんじゃないですか。要するに、国債とは建設国債のことである、建設国債は橋とか道路とかいろいろなものをつくる、後世の人のためにもなる、だから六十年で償還するんだということで、建設国債だったら六十年でそれは成り立つでしょう。でも、赤字国債でそれは成り立たない。だから、役所は、六十年じゃなくてもっと短く償還します、こういうふうに言っている。でも、短く償還していくと言っている特例公債の方が額が多いという、これはむちゃくちゃな話であります。ですから、六十年の償還ルールですべての国債を償還しようとするから、残高も百分の一・六を毎年毎年積み上げていかなあかん。これがことしでもう八・六兆円ぐらい行っているわけでしょう。

 これが例えば、先ほど言いました、今の現状から考えると、国家百年の大計で、百年間かけて国の財政を変えるんだ、もとに戻すんだということでいくと、この特例公債については申しわけないけれども百年償還するというふうに考えれば、単年度は百分の一の支出で済む、こういうことにもなるわけであります。これはどちらがいいか悪いか。そのためにはちゃんと長期的な計画を立てないとのうずるになってしまいますから、これはもろ刃の剣だとは思いますが。

 そういうことも踏まえて、特例公債という概念をすべて前提にすると六十年償還のルールもそのままいって、もっと柔軟にいろいろ試行錯誤してみるというような気はございませんでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに、六十年償還ルールは建設公債の特質からきているんだと思うんですね。大体耐用年数とかいうことを考えてみると、平均的に六十年かな、だから六十年かかって返すようなルールにしようということであったわけですね。それで、それを特例公債にもそのまま踏襲しているわけですけれども、本来は、要するに、今足らないからそれで借りて使っているというものですから、本当は六十年というのも随分長い話なんだと私は思うんです。

 それで、今の樽床委員の、そうはいったって現実を見れば六十年だってひいひい言っているんだろう、では百年にしたらどうかということになると、確かに、その当座は楽になる、楽になるかどうかわかりませんが、少しゆとりが生まれることは間違いありませんけれども、しかし、それはうんと先の世代まで今の借金を送っていくという意思表明にある意味ではなるんだろうと私は思いますね。

 私は、そういう百年先まで今の借金を送り続けるという意思表示というのがどういう効果を持ってくるか、国債マーケットなんかにどういう影響が、これはいろいろな議論の仕方がありますから私も今その効果を全部分析することはできませんけれども、せっかくの御提案でありますけれども、簡単に乗るわけにはいかない話じゃないかと今思っております。

樽床委員 私も、経済学者ではありませんから、すべてコンピューターではじいたように全部だあっと計算ができません。もろ刃の剣だとも言いました。だから、非常にこれも微妙な話だと思うんです。でも、凝り固まるんじゃなくて、いろいろ考えていく必要があるんじゃないですかということを申し上げているわけであって、それだけ厳しい財政状況だとおっしゃるんだったら、二〇一〇年初頭にプライマリーバランスだけのことじゃ全くお話にならない。もっとドラスチックなことを提案してもらわないと、我々も何じゃこれはということになるということを申し上げておきたいと思います。

 最後に、もう一つちょっとお聞きしたいことがありまして、実は国債でありますが、今発行されている国債の残高のうちだというふうに認識をしておりますが、所有者ですね、国債をだれが持っておるのかということでいきますと、こういう場でもし間違いがあったら恐縮でありますが、政府などという分類のところが四〇%以上持っているんですね、所有者として。そのうち、郵貯が一五・一%、ことしの六月末段階で持っておる。簡保が八・五%持っておる。この二つが八十七兆と四十九兆ですから、足せば幾つになるのかということであります、足せば百三十六兆、郵貯と簡保で持っておるということになります。最近は郵貯と簡保が預託義務がなくなったといいますが、昔預託しておった旧資金運用部、ここが持っておりますのが四十九兆、約五十兆持っておるということであります。

 こうなると、今、小泉内閣が一丁目一番地とおっしゃっておられる郵政民営化、郵政民営化といってもいろいろ概念がありますからいろいろありますが、郵政民営化の議論の進展とこの国債をこれだけたくさん郵貯や簡保が持っておるということで国債管理制度にどのような影響が出るんですか。

谷垣国務大臣 今樽床委員がおっしゃったように、国債をこれだけ大量発行して、それを消化していくインフラ、インフラという言葉が適切かどうかわかりませんが、郵政事業は確かにインフラ的な役割を果たして、我々としても、大変郵政事業に負っている、国債の管理のために負っている部分が非常に大きいわけでございます。

 ただ、今の御議論の中で、従来、いわゆる資金運用部が持っていたものは平成十九年度までに大体郵政事業の方にお返しするということでやっておりますし、それから、過渡期の現象として郵政事業の方で直接引き受けていただくというような計画をつくって、平成十九年度まではそういうことでやっておりますけれども、そこから先は自由にやっていただく、今の段階でもそうなっております。

 そこで、郵政民営化がどういう影響を与えるかということでありますが、これだけ大きなインフラ的な役割を果たしておりますと、急激な変化が来ると国債マーケットに不測の影響を与えることなしとしないということだろうと思います。したがいまして、郵政民営化の議論の中でも私が申しておりましたのは、つまり、民営化したらこういう姿になるというだけではなくて、過渡期の姿というものもはっきりわかるように透明に示して、国債マーケットに不測の影響を与えない、予測可能性は与えなきゃいかぬということ。

 それから、それぞれの移行していく時期にもやはり適切な配慮がなされるべきだということを私はいろいろな議論のときに主張しておりまして、先月十日に閣議決定されました「郵政民営化の基本方針」の中でも、「移行期のあり方」に関して、郵貯及び郵便保険事業に関しては、「国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行う」、それから「大量の国債を保有していることを踏まえ、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行う。」と書いていただきまして、私が主張していたことがおおむねこの面では取り入れていただいたのかなと思っておりますが、こういう基本的な考え方を踏まえて、今後のマーケットに不測の影響を与えないように制度設計をするように我々も議論をやっていくつもりでございます。

樽床委員 一行二行書かれたからといってすべて解決するわけではございませんで、先ほど言いましたように、旧資金運用部を除いても、郵貯と簡保だけで二三・六%持っているんですよ、約四分の一、百三十六兆、六月の末の段階で。これは甚大なる影響を与えるわけですよ。

 ここの問題について、当然、国債がしっかりと消化をされて発行されなければ、国債が暴落して金利が上がって日本の経済はぼろぼろになるというのがシナリオとしては当然御理解をされている上で、この郵政民営化の議論に、当然、内閣の一員として参加をされている以上、私の郵政民営化についての意見は、ここはそれをする場所じゃございませんから全部しませんけれども、担当としては、ここの問題がはっきりめどがつかなければ、これはただ総理が言っているから、はい、そうですかというわけにはいかないと思いますが、いかがでしょうか。それを質問して私の質問を終わらせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 私の職責として一番大事だと思っておりますことの一つが、民営化によって国債マーケットに不測の影響が出て、そのために今おっしゃったような国債の価格の思わざる下落といいますか、金利の急上昇があるというようなことは何としても避けなきゃいかぬ、それをそうしないような制度にしていくというのが私の職責でもあると思っております。

樽床委員 また今後この委員会で追跡していろいろ質問をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

金田委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 同じく民主党の中川正春です。ちょうど二年ぶりぐらいに委員会に戻ってきまして、改めて張り切ってやらせていただきたいというふうに思っていますので、よろしくお願いします。

 先ほどから議論を聞いておりまして、かつ、これまで谷垣大臣就任以来何回にもわたっていろいろな席で述べておられることを聞いておりますと、いろいろな政策の課題がある、その中でも、先ほどから話の出ている、いわゆる財政の健全化、プライマリーバランスを中心にして、何とかまともな形に近づくように持っていこうということ、これが政策課題としてはまず第一なんだ、そのために大臣に就任したという、それぐらいの気持ちで取り組んでおられるのかなというふうに思っているんです。

 私も、次、解散がいつあるかわかりませんが、恐らくその解散に向かってそれぞれの党が、与党も野党も集結していく一つの政策課題で、その方へ向けてどんなシナリオを書いていくか、いわゆるマニフェストの一つの大きなテーマ、中心的なテーマになっていくのではないかなという認識をしているんですけれども、そういうことで取り組んでおっていただくということでいいんでしょうか。まずそこから確かめていきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、財政をまともな姿に持っていくのが極めて大事なことだとおっしゃいました。私は、どなたが今私のやっているポジションにおつきになろうと、あるいはどなたが政権をとられようと、避けて通れないのがこの財政を健全にしていくという課題じゃないかと思っておりますので、国会でもそういう立場で皆様とも議論をさせていただいて、切磋琢磨して少しでもいい方向に持っていきたいと思っております。

中川(正)委員 それは、現在の状況が異常だ、ある意味では危機的状況にあるという認識から始まっているんだろうというふうに思います。これは、みんなどこかで共通した気持ちで今の状況を見ているわけですね。

 それで、改めて確かめさせていただきたいんですが、さっきの国債の議論というのは二通りあると思うんですね。

 一つは、量的に異常であるということ。四百八十兆なんなんと言われましたけれども、もう既に、これ、さっき樽床さんが使われた資料で、六月末というと所有者別の国債の保有残高というのが五百七十五兆九千億という資料が出ていますけれども、これだけじゃなくて、恐らく民間から借り入れた額、よくエコノミストが使いますが、そういうのを全部合わせると七百兆円、さらに特殊法人や何か、あるいは政府保証をしている部分も全部合わせると千二百兆円を超えてくるんじゃないか、こういう数字がよく出てきています。

 まず、この量的な部分について、特に国債はどこで歯どめをつけなきゃいけないのか。ことしの予算も、去年を超えない、いわゆる三十六兆円の国債発行を超えない額で努力をしていこうということをさっき言われましたけれども、これでもふえるんですよね。どんどん発散していくんですよね。その発散の限界というのがどこにあるのかという認識ですね。これは、もうそれこそが大臣としての認識であるし、これ以上はだめだという一つの数値目標なんだと思うんです。その大枠なんだと思うんですよね。そこをひとつ聞かせていただきたい。どこに限度額というのを持っているんですか。これが一つ。

 それからもう一つは、マーケットの状況があるんだと思うんですよ。さっきも御指摘あったように、国債市場というのは全く八百長なんですね。何でもっているかといったら、さっきの指摘があったように、政府等で保有しているのが四〇%、それから日本銀行がそれに合わせて今一四・七%持っていますよ。政府関連で保有が五五%を超えているんですよ、この国債市場というのは。その中で回しているわけですから。これは、どう見ても価格操作がそこにあるし、政府がもたせているからこの今のマーケットがもっているんだ、これは共通した認識なんですよね。それはちょうどタコが自分の足を食っているようなもので、これは、いけばいくほど麻薬的効果でどんどん発散していって、ここでもどこかで破綻が来るだろうという、国民の本当にふわっとした感触と、それから専門家の中でそれをかたずをのんで見ている状況があるんだろうというふうに思うんです。

 そういう意味からいって、さっきの御指摘があったように、郵貯の改革をやりますよということ、それから日銀もさっき、午前中ですね、発言があったように、景気回復に伴って、ゼロ金利からそれを誘導していく過程で、そろそろ量的緩和というのは考え直していかなきゃいけない時期もありますねというのは、もうそこに来ているんだと思うんですよね。そういう要因であるとか、あるいは国際的に見ても、為替の問題、中国の問題等々あわせると、どうも、マーケット自体をどういうふうに構成していくかというのが大きな課題になってきたんだろうというふうに思うんです。そういう意味で、今政府とあるいは日本銀行、この質、中身、うそっぱちをどのように健全なものにしていこうとしているのか、この二つですね。量的なものと、マーケット自体をどう運用していくのか、この方向づけをしっかりしておかないと、これは国債だけが発散していくんじゃなくて、日本の国民の不安も発散していくし、あるいは専門家の中でも、どこかでクラッシュというところが来るだろう、そういうことだと思うんです。

 もしこの問題がさっきのお話のように最重点課題だと言われるんだったら、ここのところを大臣としてはっきりさせなきゃいけないところなんです。あるいは、財務省としてもはっきり言わなきゃいけないところだと思うんです。どうですか。

谷垣国務大臣 中川委員の御質問はお答えするのが難しくて、どこにいったら発散するんだ、そこをどの時点だと考えているんだというのは、なかなか明確にお答えできないわけです。

 その一つは、これは金利と、それからいわゆる経済成長率と申しますか、そういうものがどういう関係になっているかということによっても変わってくるんだろうというふうに思います。そういうすべての関数ですから、なかなかここで、このぐらいになったらこうだということも実は申し上げにくいということで、ここは御勘弁いただきたいと思っているわけです。

 それからもう一つは、マーケットのあり方自体も、今のように国ないし国に準ずるものがたくさん占めているような状況でどうか、このマーケットの構造を変えていかないともたないぞ、そうおっしゃったわけですよね。それは市場を見ながら、市場の求める国債商品というのをつくり、そして保有主体を多様化していくということをやはり目指さなければいけないんだろうと思います。

中川(正)委員 私、以前に、この国債を市場ではかしていく窓口担当、いわゆる国債課長初め、その部門の皆さんと本音でトークというのをやったことがあるんですよ。彼らは、常に緊張しながらマーケットの情勢を見て、前にも指摘のあった、ことし発行するだけじゃなくて借りかえも含めたらかつては八十兆円、今百兆円、そのうち百二十兆円という金額を回しているわけですね。彼らは、一言で言うと薄氷を踏む思いだ、いつ相場がひっくり返るか、その予兆が一つあると、いろいろな知恵を出して今の状況をつくり出してきたわけですね。その知恵というのは、長期を短期に変えて自転車で回すとか、あるいは郵便貯金で買う、あるいは日銀で買う、そういう操作をしながらここまで来ましたよということなんですよね、現実は。

 だから、私はそのとき感じたんです。例えば担当者が、いや、それはもうできませんよ、そんなことをやったら国債のマーケット自体に、マーケットの本質というのが失われてしまいますよ、そういう話であるとか、あるいは、日銀、量的緩和でこれをやり始めましたけれども、幾ら何でも戦争中のような状況はつくり出すことはできません、こんなものはやってはいけないことですという形で、その都度その都度財務省がそれをやってきたら、実はこういう形になってとんでもない負の遺産を将来の世代に残すということはなかった、これも言えると思うんです。これは政治の、それこそ補正予算を中心にした景気対策でどんどん押し込まれて、それを防げないまま今この状態になったという、この責任を財務省は改めてしっかりと感じるべきだ、肝に銘じるべきだというふうに思うんです。

 その上で改めて言うと、日本の政治の内部で、そうした一つの使命感を持ってモラルを持って言うべきことを言って、その議論の中で日本の政治がコントロールされていくということはこれまで余りなかったんですね。安全保障も含めて黒船頼りということで、こういう国民に対して非常につらいところも言わなければならないような政治プロセスというのは、これは機能してこなかった。イタリアを見てください。何であれが物になったかといったら、EUという黒船があったからでしょう。

 そういう意味では、日本の財政規律の中では、この先も何にも黒船がないんだと思うんですね。ということを指摘をさせていただいて、その黒船をつくるとすれば、これは大臣がみずから、限界はここまでですよと言うことなんですよ。そうでないと、これはどんどん発散していきます。そのことを、まず冒頭、指摘をしておきたいというふうに思います。

 何か反論があったら。

谷垣国務大臣 特段、今の中川さんの御意見に反論があるわけではありません。

 ただ、私、申し上げたいことは、これを解決していくのに、黒船とおっしゃいましたけれども、妙手、奇策みたいなものはなかなかないんだろうと思います。やはり歳出歳入両面から構造を変えていくという努力を続けていくということではないかと思います。

 余りこれは反論になりませんから、このぐらいでやめます。

中川(正)委員 それは、次の議論に結びつけるためのまず入り口だったんですが、そういうお話が出たので改めて申し上げますけれども、そうした議論を我々もしていきたいんですよね。それには、そっちから話が出てこないと、限界はここまでだと思っているんだとか、今の状況はこうだと思っているんだとかという話が出てこないと、さっきのように逃げられたら、これは議論にならないし、国民もそれは見えない。

 もう一方で、パンフレット、方々で配っていますけれども、その財務省から出ているパンフレットはどんなパンフレットかというと、身近なところで家庭の財政になぞらえて、日本の国の状況というのは家庭の家計に比するとこういうことになりますよというような、本当に納得できる話がここに書いてあるんですね。その結果、見ているとどういうことかといったら、家庭でいったらこれはもう破綻していますよということなんですよ、メッセージは。そんなメッセージを片方でしっかり出しているんですよね。それでさっきのような話では、国民はますます不安になるし、これで本当にいいのかなと。その不安というのがすべてに今行き渡っていて、なかなか景気回復の部分でも足を引っ張っているということがあるんじゃないか。あるいは、特に年金や医療、これから改革論議が進みますけれども、それの基本になっているところはここにあるんじゃないかということ、これを指摘しておきたいと思うんです。

 その上で、もう一つ必要だと思うのは、そこへ持っていくグランドデザインだと思うんですよ。さっきの二〇一〇年初頭のプライマリーバランスということ、これも、さっきからの議論を聞いているとなかなか、論拠というか、どういう形でどういうシナリオでそこに持っていくのかというプロセスが見えない。今のところは、二〇一〇年初頭でそれを達成しますよという題目があるだけで、これは題目じゃなくて実際の政策目標であって、具体的に、一年一年の政策の中で実現していけるシナリオはこれですよというところが見えてこないというのがもう一つの問題だと思うんです。

 それで、見えてこないどころか、実は実際にはどんなことになっているかというと、これまで閣議決定されたものの中だけでも、年金、医療、介護が自然増でふえていくのにプラス、よく言われる基礎年金の二分の一税負担が入って、かつ今の状況がずっと続けばということ、これは本当は経済学者が使っているようなマクロエコノミックのモデルでずっと出していくような議論というのがここでもやってみたいなというふうに思うんですが。

 そういうことのない中で、目の子でいっても、これで合っているんですかね、社会保障関係で、大体、税として年々ふえていく金額というのが、今のままでいくと平均して〇・八兆円、多いときで一兆円を超えていくでしょうということ、これは自然増ですね。二分の一負担、これはさっきの話で、所得税の減税、この分を戻そうという話もありますけれども、そんなことを含めても、トータルでそこで三兆円アップをしますよね。この二、三年だけでそんなシナリオになるんですよね。これはプライマリーバランス、五年かけるのか十年かけるのか、その辺の話になりますけれども、五年としても、トータルで毎年毎年ふえていって七兆円ぐらいの増というのは、こんな単純な目の子でやっただけでも閣議決定の中では内包されているということ、これが一つありますね。

 それから、三位一体。これはもっと詳しく後でやりますけれども、三位一体も、単純に言って三兆円、今の構想でいったら所得税から住民税へ向いて移換をしていくということがありますね。これだけ考えてみたって十兆円ですよ。プライマリーバランス、今の時点でどれだけあるのか、マイナスがどれだけあるのかということでいけば、十九兆円。これはトータルでいっても、十九兆円の幅を狭めるだけじゃなくて、こうした、もうコミットしてしまった、あるいはしてしまおうとしている負担増を加えても、幅というのは実は三十兆円なんですね。これはもう単純な目の子計算ですけれども、そんなふうなことを考えていくだけでも、これはどうもプライマリーバランスという数字は、あるいはプロセスというのは、念仏で終わるんじゃないかなというふうなことになってくるわけですよね。

 これは恐らく、年金、医療、それから介護にしても、負担と給付の割合とか、あるいは保険と税の割合とかということの根本的な議論に入っていくんだろうと思うんですが、これは勝手に入っていって勝手にどんどんどんどん、そういう意味では、これは勝手にさせておいたら税の負担をふやしていくというプロセスに入っていくんだろうと思うんです。恐らく、三位一体の話も、六団体、現在のところ四兆円の補助金カットで議論をしていますけれども、彼らの意向、そして私たちの意向もそうですが、これは四兆円どまりじゃないんだ、トータルで八兆円だと言っていますね。私たちはもっと言っているんですよ、十八兆円と。

 そういう意味で、トータルに描かないままに、それぞれの部署がそれぞれの議論を重ねていって、どこで結論に到達するのかということ、これが見えてこない。見えてこないにもかかわらず、財務省だけがプライマリーバランスということを言い続けている、こういう図柄が今浮かんできているんですよ。

 そのことについて、本来のいわゆる政策としての、あるいは政治が機能していないということについての危機感を今私は持っているんですけれども、このトータルな話について、どのように今取り組もうとしておられるのか、聞かせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 それぞれのところがばらばらにいろいろ絵を描いてトータルの絵がないという御批判をいただきましたけれども、いわゆる骨太の方針というようなものをよく読んでいただきますと、今おっしゃったようなことはかなり書き込んであるんだと私は思っております。

 それから、これはむしろ二つありまして、私どもの出しておる数字と内閣府がつくっておられる数字が二つあって、二つはどういう関係にあるんだと、二つ出すと国会が難しいなと思うぐらいさんざんいろいろ御議論をしていただいて、いろいろな数字は確かにございます。

 むしろ、さっきおっしゃった、先ほどの樽床さんへの答弁でも申し上げたことでありますけれども、社会保障と三位一体と税との関係をどう持っていくかというのは、いろいろなことが書き込んでありまして、今連立方程式を解くような形になっておりまして、決してそういう姿がないわけではないというふうに私は思っております。

中川(正)委員 では、どういうふうにそれを説明していただけますか。見えないんですよ、私には。私には見えない。大臣に見えているんだったら、それはどういうふうに着地点まで持っていこうとしているんですか。

谷垣国務大臣 着地点まで全部描けているのかと詰め寄られますと、そこはまだなかなかそうは申し上げられません。まだここから先数年の絵にしかすぎないわけでありますけれども、先ほどの樽床さんの御議論にもありましたけれども、やはり社会保障とそれから三位一体というものをかなり仕込んでいく中で、税制についても、所得税体系それから消費税体系を見直していこうという図式はかなり描けていると思います。

中川(正)委員 税への負担を上げていくというプロセスは見えるんですが、それがどのような形でプライマリーバランスを健全化していくような方向でトータルの枠組みの中に入り込んでいくのかということ、これについて見えないということなんです。

 これは逆だと思うんですよ、今のプロセスは。このままで行ったらまた、景気が大切だからといって補正予算をばんばんばんばん組んでいったことと同じように、プライマリーバランスを先送りしながら、それぞれの施策のいわゆる政治的な決着がつくところでついてしまう。結果的には、この国が一番懸念されるクラッシュに向けての発散していく状況というのがここで生まれてくる可能性がある。

 これは、ひっくり返そうと思ったら、逆に行かなきゃいけない。まず大枠のところでどこに限界があるかというのを示さないと、それぞれが自分の部署の中で政治的決着をやるわけですから、それは今の手法でしっかりとしたバランスがとれていくとは到底思えない、このことを指摘しておきたいというふうに思います。

 これから事に触れて、そうした意味での中身、来年の予算案を初め、その中身を議論しながらこれを詰めていかなきゃいけないんですけれども、それよりも何よりも、まずは最終に行くグランドデザインとシナリオを出してくださいよ、政府の方から。出してくださいよ。それがまず出発点だというふうに思うんですね。

谷垣国務大臣 マクロの観点からは内閣府が試算を出しておられまして、「改革と展望」の資料としてお出ししているのが、一つのシナリオを数字化したものだろうと思います。

 ただ、あれはマクロの視点で書いてありますから、当然それをどうやってやっていくかにつきましては、それぞれの制度的なものを我々はつくっていかなきゃならないので、その制度的なものまで全部整理できている形ではないのは事実であります。

中川(正)委員 あれは政策でも何でもないんですよ。大塚さんと参議院の方で大分その議論をしていただいたようで、私も手元に持っているんですが、あれは現在の状況をマクロモデルに引き直してどうなるかということを持っていった話なんですが、逆に、よくよく見ていると、これは参議院でもそんな議論があったんだろうと思うんですが、ちゃんとした着地点に行くようにそれぞれの計数を都合のいいようになぶっただけの話で、政策にも何にもなっていないということなんですね。

 そのことも指摘をしながら、まずは政治としてやはりそこのところを議論しましょうよということをぜひつくり上げてもらいたい、そこから議論が始まるんだろうというふうに思います。

 それで、次の三位一体の話に移っていきたいというふうに思うのですが、大臣は、それぞれ、今、総務省とそれなりの立場で頑張っておっていただくようでありますが、これはざっと見て、地方六団体に投げたのは小泉さんですね、小泉総理が、一遍つくってみてください、こういう形で投げたわけですね。この中身、私もこれは手元に持っているのですが、大臣はトータルでどう評価されますか。

谷垣国務大臣 六団体のおつくりになった案についてですね。

 これは、六団体も、それぞれ財政力や何か、いろいろな違いがある中で、大変御苦労されながらこの案をまとめられたと思っておりまして、私どもは、やはりこれを一つのたたき台として案をまとめなきゃいけないと思っております。

中川(正)委員 中身については、またこれからおいおい、総務省の方も含めて議論が重ねられなければならないと思うのですが、きょうはちょっと、もう一つ違った観点でお尋ねをしたいというふうに思うのです。

 それは、これも着地点の話なんですが、四兆円、負担金、補助金をカットする、あと三兆円を、これは基幹税ということになると所得税だと思うのですが、所得税を削ってその分地方税、これは住民税になるんだろうと思うのですが、そこへ向いて乗せていきますよ、税財源の移譲をやりますということ、このことはそれでいいのですね。

谷垣国務大臣 そういうことであります。

中川(正)委員 そのときに、その決着の仕方をはっきりしてくださいよというのが、それぞれいわゆる税源移譲を受けるサイドの話でもあろうかと思うのです。

 それで、その決着の仕方というのは、トータルの話ではいいけれども、実際、私たちの自治体としてこれまでとどう変わってくるのか。いわゆる配分の問題ですね。これについてはどのように整理をされていく予定なんですか。

谷垣国務大臣 まだそこらは姿が全部でき上がっておりませんので、こういうふうに整理するというふうには申し上げにくいわけでありますけれども、一つ、その三兆円の税源移譲をやりますと、その前に、私どもの立場からすれば、やはり納税者の立場で考えてむだなものは省く、必要のないものは廃止する、こういうスリム化の努力を当然しなきゃいけないと思っておりますが、その上で、やはり地方がやっていただくべきものについて、経常経費について税源移譲するのは、私は当然のことだと思います。

 それで、それをやりますと、今のお尋ねは多分、それぞれの地域の財政力の格差というものがやはりあるじゃないか、それをどうしていくんだ、そういう御趣旨ですか。

 それにつきましては、結局、今までそれを調整するのは交付税の役割だったわけですね。不交付団体をふやしていくというのを一つの目標に掲げておりますが、不交付団体と交付団体の間を交付税で調整することはこれはできないわけでありますけれども、交付団体の間では調整することができる。それはやっていかなきゃなりませんし、交付税にそういう機能を果たしていただかなきゃいけないわけですが、私どもからしますと、ここが若干総務省とはまた違う議論かもしれませんが、やはり交付税の前提となっている地財計画のむだは省いていくということをやらなきゃいけないと思っております。

中川(正)委員 総務省の方からどなたか来ていただいていると思うのですが、そこのところはどのように総務省は考えているのですか。

今井副大臣 中川委員にお答えいたします。今井でございます。

 御案内のように、この問題につきましては閣議決定をされているところであります。閣議決定というのは大変重いものである、こういうふうに認識をしております。したがって、交付税のありようにつきましても、補助金改革をどのようにしていくのか、それから税源移譲をどういう形でしていくのか、その内容によって交付税のありようということも考えていかなければなりませんが、閣議決定では、交付税につきまして、いわゆる十全賄い切れない、財源の乏しい自治体に対しては交付税で補てんする、こういう位置づけになっております。

 以上です。

中川(正)委員 今井さんは地方の首長も経験されて、よくわかっておられると思うんですが、そうしたさっきのような展望だけで地方が納得してこの話についてこれるかどうかといったら、私は非常に大きな問題があるんだろうというふうに思う。だから、先に税源移譲の話をしてくれということだったんだろうと思うんですよね。それはそれなりにうなずける。

 なぜかというと、片方、これは中身をずっと見ていると、公共事業も含めて、補助金それから負担金をカットするんですね。そのときの配分のパターンと、個々の自治体への配分のパターンと、今度は税財源移譲で持ってくる方ですね、これは所得税を住民税に切りかえる、しかも、住民税が今の三段階になっているものを、真ん中の一〇%に合わそうじゃないかという案も出ているらしいですが、こういうパターンでやる。結果的にどんなことになるかといったら、それは一言で言ったら東京のひとり勝ち、都市部へ向いてどんどんどんどん金が集まるというパターンがこの中に内包されているということ、それが指摘されると思うんですよ。今のスキームを見たら、これはすぐ自然に出てくる話ですよ。

 そこのところがわかっているだけに、これは地方はたまったものじゃないと思うんですよね、今の進め方でいったら。それに対して、どのような水平調整をやるシステムをこの中へ入れ込むのか、そこが政治なんですよ。もっと言えば、転換をしたときに、東京から金を取ってきてでもその水平調整をやりますという政治力がなければ、この話はできないんですよ。それを淡々と進めていくということに対して、こんなばかなことはないじゃないかという話があるんだと思うんです、この三位一体の話には。そこを、財務大臣、どう考えますか。

谷垣国務大臣 先ほど今井副大臣が答弁されたように、交付税の機能はある程度発揮してもらわなきゃいけないわけですが、今の点をどう解決していくかということは、交付税改革その他の中で、やはり総務省が案を出していただかなきゃいかぬと思いますが、私は、そういう議論に真剣に向き合っていきたいと思っております。

中川(正)委員 これは、この交付税の話だけじゃなくて、これまで削った分も変わっていますけれども、譲与税もあるんですね。これは余り皆議論の俎上にのせてきませんけれども、この譲与税の種類ですね、これはどういう譲与税で出すんですか。

 これは種類が幾つもあるんですね、譲与税の。いわゆる分配の仕方の種類と言ったらいいのかな。所得譲与税、地方道路譲与税、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料、それから特別とん譲与税、これはみんな分配の仕方が違うんですよ。例えば、自動車重量税なんかだと、道路の長さ、村道の延長それから面積によってこれは分けていますよね。所得譲与税の場合は、これは人口が入っているんですよ。これは全部分け方が違うんですね。

 今から譲与税に置きかえようとする分ですね、税源移譲までに一つクッションを置いてこの譲与税に置きかえようとする分、これはこのうちのどれでやるんですか。

今井副大臣 中川委員にお答えします。

 御案内のように、所得譲与税という形にしております。最終的には住民所得税にして、基幹税で移譲する、こういう考え方でございます。

中川(正)委員 そうすると、この譲与税の分け方というのは何で分けているかというと、全体の二分の一を都道府県の人口、それからあと二分の一、市町村の人口、これを譲与基準にして分けているんですね。片方、補助金で削った分が、あと人口割で分けられるんですよ。その結果、何が起こってくるんですか。来年の予算から相当部分、都市部へ向いて資金が移動するということはここで見えていますよね。もう既に始まっていますよね。

 今井さん、総務省はここのところの議論をなぜしないんですか。どうしてしないんですか、これは。

今井副大臣 私も経験いたしまして、東京というのはいわゆる働く場で、法人所得税も含めて大変な収入がございます。実は、その働く場に行って働いている人は、東京都の周辺の都道府県が住まいの場なんですが、実は住んでいる場所、極端に言いますと、赤ちゃんがおなかに入ってからお亡くなりになるまであらゆる費用がかかっている人たちが、東京へ行って働いて東京に稼がせているという実態もあるわけであります。

 そういう意味で、今回の一〇%のフラット化でございますが、御指摘の視点もわからなくはありませんが、フラット化することによって、東京都の平均所得、いわゆる高額所得といいますか、それが多いわけでございますので、今までの従前のやり方から比べますと、今中川委員御指摘の件につきましては多少その偏在が縮小される、こういうふうに考えております。

中川(正)委員 いや、逆ですよ。田舎の方の住民というのはこれで苦しくなって、町の方が楽になるという話ですよ、高額所得者が。何言っているんですか。これは、総務省、頑張らなきゃいけないところなんですよ、この水平方向。だから、東京から引っぱがしてでも水平調整をするという心づもりがしっかりないと、こんなものはできない話でしょう。

 そこで、大臣、これはもう譲与税、始まっているんですよね。この普通譲与税、いわゆる所得譲与税というのは、これは全くの人口割なんですよ。だから、何らかの形で、これから始まってくる譲与税の配分の仕方というのは、この水平的な話も含めた政治決着をしないとだめだと思うんです。いわゆる一般の所得譲与税で配分をするということではだめだと思うんですよ。そこのところを指摘しておきたいと思いますし、私は、自民党さんというのは田舎に優しいのかと思ったんです。そうしたら、これは全く逆ですね。

 結果的には、恐らくこれは、いわゆる住民税一〇%でそろえたら、田舎の人たちは、税金は上がるけれどもそれでもなお自分の自治体は引っぱがされて、東京へ向いて所得が移転しているというふうな結果になりますよということですね。そのことをしっかり指摘をしておきたいと思うんですが、これはどうしますか。

谷垣国務大臣 今井副大臣から御答弁いただいた方がいいのかもしれませんが、今御指摘の所得譲与税は、本格的な基幹税を移すまでの過渡期の措置でありますから、所得税を地方住民税に移す場合は、こういう頭割りというような形ではなくなると思います。

中川(正)委員 当たり前でしょう、それは。とりあえず移すということであっても、これは所得の再配分がされるんですよ、これで。政治決着がついていないじゃないですか。こんなものは、我々のところにも議論として上げてきていないし、皆さんが黙ってやっているだけだ。これは税の根幹にかかわることですよ、所得の再配分というのは。だから、それをまだ続けるということはやめてくださいよ。ちゃんとそれに対して説明責任があると思うんですよ。

今井副大臣 委員御指摘の水平的調整ということでございますが、外国の例ではドイツ、スウェーデン等々でありますし、日本の専門家でもそういう御指摘を、そういう形でするべきだという議論は承知はさせていただいておりますが、例えば東京都に集まった税をもう一度再調整して地方にというのは、現実の問題を考えますとそんなに簡単な作業ではないわけでありまして、水平的な調整を図っていくということは現実は大変困難である、こういうふうに思っております。

 したがって、それ以外に、地方に対する補助金の削減をしたけれども、従前以上に困難なところについては交付税でしっかり補てんしていくということが閣議決定されているわけであります。

中川(正)委員 総務省がそれを言っちゃったらだめですよ。何のためにあるんですか、総務省は。

 それで、もう一つ、交付税の話をしたでしょう。交付税はもっとひどいんですよ。交付税をいらうときに何が問題になるかといったら、東京だけが交付税を払っていないんですよ。それに税源移譲したら、東京、ひとり勝ちじゃないですか。この構図があるんですよ。だから、どうしてもここのところは政治的に決着をしないと地方分権はできないんだというのは、これはスタートなんですよ。そのために政治があるんですよ。

 時間が来てしまいましたけれども、やりますか。

今井副大臣 東京も一地方であります。したがって、東京の補助金も減るわけでありますから、そういう意味では交付税を調整していく、こういうことであります。

金田委員長 どうしますか、時間ですけれども。

中川(正)委員 わけわからぬ。

 というのは、東京は交付税に関係ないんですよ。東京だけが交付税に関係ないんですよ。ほかは交付税で調整されているんですよ。それで、税財源を移譲してどうなるかといったら、東京だけが交付税で削られずに一〇〇%もらえるわけだけれども、交付税のかかっているところは基準が変わってきますから、それだけ税収がふえた分は交付税が減らされて調整されるということになる。だから、ますます地方は減って東京だけがひとり勝ちというのは、ここにその交付税のメカニズムがあるということなんですよね。

金田委員長 まだまだありますので。時間が来ましたので、中川さん。

中川(正)委員 総務省、頑張ってください。そっちから話がちゃんと出てこないと。本当は谷垣さんがもうちょっとその辺はしっかり考えて、こうじゃないんですかという話もしながら、全体の調整メカニズムを考えましょうという話が出てきたらいいんだけれども。だから、そういう意味もあって、全体のグランドデザインを描きながらこれを進めていかないと、そんなもの、どれを削ってどれを残すかという話だけで一生懸命やっていると、とんでもない結果になってくるということ、これを指摘しておきたいと思います。

 これは引き続きやりますし、一遍出してください、総務省。この水平調整をどうするのかということと、それから財務省の方も、結果どうなるのか。今回の譲与税で置きかえた、いわゆる補助金を削って譲与税で置きかえた、これを水平的に配分したときにこれまでとどう変わっていくのか、その資料を出してください。

金田委員長 中川正春君、質問時間が終わっております。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、台風、震災の対策についてお聞きをしたいと思うんですが、先ほどの谷垣大臣の答弁の中で、万全を尽くすというふうにおっしゃいました。今問題になっているのは、被災された方々が今後の生活あるいは営業をどう再建していくかということであります。自治体の中では、破壊された住宅の建設、あるいは家財道具など個人の被害、これに対する補償を行っているところがあります。政府としてもこういう支援をしっかりやるべきだと思いますが、いかがでしょう。

谷垣国務大臣 一般論は先ほど本会議でも申し上げましたから、省かせていただきます。

 それで、中小企業とか一般家庭等をどうしていくのかという課題がございまして、これは災害救助法の適用をまず踏まえまして、中小企業に対しては、政府系金融機関等によって特別相談窓口を設ける、あるいは災害復旧貸し付けを適用する、それから既往債務の返済条件の緩和等の措置というものを考えていかなきゃならぬことだろうと思います。

 それで、負傷したとか、あるいは住居、それから家財、被害を受けたという方に対しては、災害援護資金の貸し付け措置を行うというようなことをそれぞれ担当省においてやっていただくことになるということだろうと思います。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 しかし、貸し付けだけでは、返済という問題が非常に困難なわけでありまして、そういう点を考慮して、やはり損害を補償するという、個人的に、個人補償といいますか、そういう発想がないと、なかなか実態に合わないと思います。ぜひ検討していただきたいと思います。

 伊藤金融担当大臣にお聞きしますが、私、三日前に、台風二十三号の被災地であります岐阜県の高山市、それから清見村を訪れました。要望を聞いたんですけれども、大変印象的だったのは、かなり大きな工場、川の近くにある工場が河川のはんらんで直撃を受けまして、流木が工場の中にどんと飛び込んできてめちゃくちゃになった。土地自体も崩れて、今まで土地だったところが川になっている、こういう状況であります。その社長さんにお話を聞いたら、本当にこれはどうしていいかわからない、何とかしてほしい、こういう訴えであります。こういう人を助けるというのが本来の政治であり、政府の役割ではないかと思うわけです。

 例えば銀行は大手企業に対して債権放棄をやっている、そういうところがある。しかし、中小企業に対しては貸し渋り、貸しはがしというのが横行しているというのが現状でありまして、やはりこういう被災地の中小企業を何とか再建を図っていく、それを応援するということが大事でありまして、例えば返済を猶予する、あるいは債権放棄をやるように指導する、そういう支援措置が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 私からも、今回の一連の災害で、被災された皆様方に対し心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 今委員から具体的な事例を引きながら御指摘があったわけでございますけれども、債権放棄という問題につきましては、これは債権者の考え方によるところでございますが、私どもとしましては、災害の実情、そして資金の需要の状況、そうしたものに応じて、関係機関と緊密な連携をとりながら、民間の金融機関に対しても適時適切な対応を求めるよう要請をしているところでございます。

 特に中小企業庁との間におきましては、一連の災害においてセーフティーネット保証制度がございます。これを適用するということでございますので、こうしたことも踏まえて、中小企業庁とさらに緊密に連携をとりながら、中小企業に対する資金の円滑化、このことについて特段に私どもとしても対応していきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 大企業には債権放棄するけれども、中小企業・業者には債権放棄はしない、取り立てるだけだと、こういう姿勢ではだめだということを言っておきます。当然、これは返済猶予ですとか、あるいは債権そのものの縮小ですとか、そういうことはやるべきだし、国もそういう姿勢に立って指導すべきだということを申し添えておきたいと思います。

 次に、消費税の徴税問題についてお聞きをしたいと思います。

 昨年、消費税法が改定されました。免税点を売上高三千万から一千万に引き下げる、あるいは簡易課税制度の縮小というのが行われました。ことしから来年にかけてこれが実施をされるということであります。私たちは、これは中小企業・業者あるいは消費者に新たな犠牲を強いるものだという理由で反対をいたしました。

 まず、前提として、谷垣大臣の認識をお聞きしておきたいと思います。

 現在、景気回復ということが言われておりますが、確かに大手企業の利益は、黒字はふえていると思います。しかし、中小企業はそれに反してなかなか大変な状況にあると私は思います。赤字法人、欠損法人、この比率は大手企業よりも中小企業の方が非常に高いというふうに私は思うんですが、大臣、どういう認識をお持ちでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに景気は堅調に回復してきていると思いますが、業種や企業の大小によって随分ばらつきがあるのは事実だろうと思います。

 それで、欠損法人は、どちらかと申しますと、結果としておおむね資本金が少ないほど欠損法人の比率が高くなっているというのが現実だろうと思っております。

佐々木(憲)委員 確かにおっしゃるとおりで、国税庁の統計によりましても、お配りした資料の一枚目でありますが、欠損法人の比率は、大手、十億円以上になりますと大体五割程度でありますが、中小企業になればなるほどその比率が六割、七割とふえてきまして、資本金百万未満のところに行きますと、大体八割が欠損法人。大変深刻な二極分化が発生しているわけであります。

 問題はそういう中小企業が、法人税や所得税は利益が上がる、所得がある、そういうところにかかるわけですけれども、消費税は赤字企業でも納税を義務づけられるわけでありまして、先ほど言ったように、新たな課税対象が約百四十万者ふえるというわけでありまして、転嫁するのが消費税だといいますけれども、しかし、実際に転嫁できていればそれを預かって納めることはできますけれども、転嫁できているのかどうか。

 そこで、経済産業省にお聞きをしたいと思うんですが、実際に転嫁できているかどうかですね。一昨年の八月から九月にかけて実態調査をされていると思います。転嫁できているか、説明をしていただきたい。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業庁が平成十四年八月に実施した調査によりますと、既に課税事業者となっている事業者に出荷・販売段階で消費税分をどの程度転嫁しているのかという問いに対しまして、事業者全体におきましては、すべてを転嫁していると回答した事業者は五八・六%となっております。

佐々木(憲)委員 すべてを転嫁しているというのが五八・六%。つまり、すべてあるいは部分的に転嫁できていない、そういう業者は四割、四一・四%あるということですね、逆に言うと。

 小さな企業になればなるほど転嫁できない業者がふえておりまして、例えば、皆さんにお配りした資料の二枚目ですけれども、平均で今紹介のあった五八・六%が転嫁しているというんですが、一千万円以下あるいは一千万から一千五百万以下、こういうところを見ますと大体三割しか転嫁できていないわけです。つまり、七割程度が転嫁できていない、全部あるいは部分的に転嫁できていないということであります。

 そうしますと、谷垣大臣にお聞きしたいんですが、今赤字が大体七割あるわけです、企業の中で。しかも、消費税を転嫁できていないという業者が平均して四割ある。中小企業になればなるほど六割、七割になっている。そこで、赤字の企業で、しかも転嫁ができていない企業、これらの企業というのは大変経営が苦しくて借金もしているわけです。その業者が消費税を納税するために一体どこからお金を持ってくるのか。これはどこからお金を持ってくるんですか。

谷垣国務大臣 消費税は、こういう表現が適当かどうかわかりませんが、一種の預かり税的なところがあるわけですね。代金を受け取って、まだ消費税を払わない段階というものがございますから、その段階は預かり税、預かり税という言葉が適切な言葉かどうかわかりませんが、そういう性格がありますから、そこらあたりを意識して、計画的にそれをストックしておいていただくといいますか、そういうことが必要なんじゃないかと思います。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 赤字企業で預かっていないんですよ、転嫁できていないから。その企業が大体七割、八割ある。どこから持ってくるんですか。前からずうっとこれはそういう状況なんですよ、赤字企業がずっと続いていて。何年も統計とって、七割赤字なんですよ。全部転嫁できていないところもさっき言ったようにかなりあるんです。どこからお金を持ってくるんですか。それは積み立てることはできないんじゃないですか、預かっていないんですから。どこからお金を持ってくるんですか。

谷垣国務大臣 その前提として、やはり消費税というのは転嫁をするという性格でつくられておりますから、転嫁がきちっとできるような納税者、消費者両方への我々の取り組みを強めなきゃいかぬということは事実だろうと思います。

 それから、先ほどお挙げになった中で、四割ぐらいが転嫁が全部できていないという御指摘がありました。確かにそういう統計が出ていることは事実でございますけれども、免税事業者の場合には仕入れ段階の消費税分のみを転嫁することが適正な転嫁の方法であるわけですけれども、御指摘の四割近いものが転嫁できていないという統計ですが、この中には今のような意味での免税業者としての適正な転嫁をしている人も、これはどのぐらいか私はよくわかりませんけれども、含まれているんじゃないかというふうに思います。

 それから、赤字法人であってもそのときに売り上げを受け取れば、そこに一種の預かり税的な性格が生まれるということは、赤字法人の場合でも否定できないのではないかと思います。

佐々木(憲)委員 どうもよくわからないですね。

 転嫁できていないわけですよ。転嫁できていないところがあるわけです。四割できていない。これは、仕入れも含めて、消費税が消費者の方に、次の段階に転嫁できていないわけですね。それは納税の義務あるなしにかかわらず、そういうことはやらなきゃ預かっていくことはできませんね、転嫁しなければ。できていないわけですよ。赤字なんですよ。預かっていないんです、転嫁できていないんですから。その税の性格として、転嫁するというのが基本的な性格である、これは前提である、それは転嫁できている場合に言える話であって、転嫁できていないんですから。結局、これは身銭を切って、どこかから借金するか、あるいは自分の生活を切り縮めて、それで税務署に納める、こういうことしかないんじゃないですか。

谷垣国務大臣 今の佐々木委員の御質問は幾つかの段階があると思いますが、まず、やはり私どももきちっと転嫁できるような取り組みを高める必要がございますし、それは転嫁していただくということも必要だろうというふうに思います。

 その上で、今申し上げたような、赤字法人でも預かり税的な性格が生ずる、こういうことじゃないかと思います。

佐々木(憲)委員 全然答弁になっていないですよ。払えないじゃないですか。どこからお金を持ってくるかといったら、結局、身銭を切るということしかないんですね。それしかほかにないんですよ。

 これだけの数字、これだけの比率、かなり大きな比率ですよ。そういう業者が生活を削り、あるいは借金をし、それで納税しているわけです。大変な状況なんですよ。何か法律をつくって仕組みをつくったら自動的に入ってくる、転嫁するのは当たり前と、そんなこといったって、現実にはそうなっていないんです。それだけ現実の生活、営業が厳しいということなんですね。

 それで、税務署の側は「消費税の納税資金の積立てを」というものをどうも配っているようなんですが、積み立てをといったって、赤字なんですから、納税するのも大変なのにどうやって積み立てするのか。こういうチラシは、全国でこういうのを配っているんですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生御指摘のように、免税点の引き下げにより新たに消費税の課税事業者になる納税者が大変増加いたします。その方々に対して制度の趣旨をいろいろ説明しているわけでありますが、先ほど大臣からもお答えがあったように、消費税は日々の取引に含まれているわけでありますが、実際の納税は若干タイムラグがございます。これは年間の納付税額によって違うわけでありますが、年一回であるとか二回とか。その間、タイムラグがありますから、日々、取引に含まれている消費税を積み立てていただいて納付期限に納めていただきたい、そういう意味で、そういうチラシをつくって、全国でPRをさせていただいています。

佐々木(憲)委員 しかし、実際に積み立てることができるようなゆとりがあれば、その企業は黒字であり、かつ、納税もどんどんやれるような企業だろうと思いますが、現実に赤字企業が七割あり、転嫁できていないのが平均して四割あるわけです。積み立てるといったって、積み立てられないじゃないですか。そんなむちゃくちゃなことを、まあ、しかし、本当にこれは現実離れしていると思いますね。

 結局は、生活を切り縮めて、借金をして、ある場合にはサラ金から金を借りる、商工ローンから借りる。多重債務に陥っているという場合もあるんです。多重債務の原因を調べてみると、税金を納めるためにサラ金から金を借りて多重債務になったというのは幾らでもいるんですよ。それが現実なんです。

 ですから、余りにもこれは無慈悲な感じで、現実にそういう状況があるのにともかく取り立てるという発想ではいけないわけであって、中小業者をどう支援するかという立場に立つべきだというふうに思います。

 それから、今度改定された消費税の徴税を行うために、税務署はさまざまな、これはその一例ですけれども、文書を出しておりますが、この中にはルールを逸脱した文書がある。

 例えば、藤沢税務署ですけれども、このもとになったのはここにある文書なんですけれども、後でこれにおわびの文書が配付された。そのおわびの文書は皆さんのお手元に配付してありますが、これは一体何が悪かったんですか、何がまずくておわびしたんですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 これは所得税法百二十条に規定がございます収支内訳書というのがございますが、これは法令上、確定申告に添付していただくということになっております。したがいまして、税務署といたしましては、確定申告書に収支内訳書の添付のない場合、出してくださいということを御指導させていただいているところであります。

 今回、御指摘がございましたのは、収支内訳書の未提出をもってあたかも税額控除が受けられないがごとく、これは実は間違った文書を送付したことでございます。

 例えば医療費控除みたいなものがありますが、医療費控除は、現行法令上、添付書類、医療費の用紙をつけてくださいということになっているわけでありますが、そういうのがないとなかなか医療費が適正かどうかわかりませんので、出してくださいというお願いをするわけでありますが、その文書を過って送付した結果であります。

 したがいまして、御心配をおかけしました納税者に対しましては、既にここに配付されております書面をもちまして所轄の税務署長より謝罪させていただいております。今後、こういうことがないように万全の指導に努めてまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 ほかの税務署ではこういう文書はありませんか。

村上政府参考人 少なくとも、収支内訳書、本件に関する過ちは今のところ見つかっておりません。

佐々木(憲)委員 調査した上でですか。

村上政府参考人 全国の国税局に指示いたしまして、チェックはさせております。

佐々木(憲)委員 もう一つ取り上げたいのは、今、地震災害で大変大きな被害を受けている小千谷市の小千谷税務署の文書であります。一番最後にそれを添付してありますが、これを送られた業者は大変驚いたというんです。

 本人が了解しておりませんのに、その業者の情報が税務署から税理士に伝えられていた。今度指導を担当していただく税理士が決まりましたので、お知らせします、こうなっております。そこに担当税理士の名前が書いてあるんです、住所も電話番号も。何でこんなことを勝手にやるんだというので、本人は頼んだ覚えもないのにこんなものが送られてきたと、非常に怒っているわけですが、財務省はこんなやり方を全国に指示しているんですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 これも、大変申しわけございませんが、事務処理が不適切な事例でありますが、それは既におわびして訂正いたしております。

 ちょっと背景を御説明しないとわかりにくいかと思いますが、我々国税庁は、申告納税制度の健全な発展のためにさまざまな納税者サービスを行っているわけでありますが、記帳指導、記帳が十分できない方に対しまして記帳ができるように指導をさせていただいているわけです。その場合にあくまで希望を聞いて実施するということは当然のことでありますが、そういった方に希望を聞いた上で、税理士さんにまたお願いして記帳を指導していただくということになっております。

 ただ、今回のケースは、事務処理の過ちがございまして、納税者の方の希望を聞かずに、先に担当税理士に連絡してしまったというケースでございます。大変、事務処理上、不適切な部分がございましたので、今後こういうことのないように万全を期してまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 本人の了解がないまま、その本人の個人情報が第三者に流れた。極めて重大ですよ。この事例だけですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 記帳指導は全国で相当の数やっておりますが、これにつきましても、一応、こういった納税者の御希望を聞かずに割り振った例があるかどうかはチェックしましたが、今のところそういうのは見つかっておりません。

佐々木(憲)委員 でたらめなことを言っちゃいけないよ。川崎西税務署にはありませんか。

村上政府参考人 済みませんが、私は聞いておりません。

佐々木(憲)委員 調査したとかなんとか言っても、実際にはやっていないじゃないですか。

 川崎西税務署は、ある業者が確定申告時に消費税課税事業者届出書というのを提出した、しかし、消費税アンケートには回答していない、つまり、税理士の指導も希望しておりません、にもかかわらず、本人に今小千谷税務署で配られたこれと同じようなものが、あなたは今回この税理士が担当者ですからと、こういうのを送られているんです。調査して是正してください。

村上政府参考人 調べさせていただきます。

佐々木(憲)委員 これはたまたま私がそういう事実を把握しただけでありまして、一例を挙げて、ほかにないかと言ったら、ほかにはありません、聞いておりませんと。それで、事例をもう一度出したら、それは調べてみますと。何もまともな調査をやっていないんでしょう。こういうことをやってはなりませんという指示を各税務署に出すべきじゃありませんか。しっかりそれをやってください。

村上政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと日付は忘れましたが、全国の所得税、個人課税課長会議で既に指示いたしておりますが、再度指示の徹底を図りたいと思っております。

佐々木(憲)委員 なぜこういう問題が起こるかというと、新たな課税業者が百四十万者出てくるわけです。つまり、売り上げの三千万から一千万への引き下げ、納税義務が負わされる、そういう業者がたくさん全国で生まれるから税務署としては対応できない。そのために第三者に頼む。だれに頼むか。商工会議所ですとか税理士協会に頼む。そのときに、その個人情報を本人の承諾なしにどんどんどんどん出しているわけですよ。だから、こういうことがあちこちで生まれてくる。

 私は、やり方として非常に問題があると思うんです。どの税理士に頼むかは、その本人の自由じゃありませんか、頼むか頼まないかは。なぜそれを勝手に税務署が決めて、担当者はこれです、そんなことを押しつけるんですか。本人の選択だというのが基準じゃありませんか。

村上政府参考人 お答えします。

 これは個人の方が税理士を雇用される委任契約を結ぶケースと違いまして、これは税理士法第一条に基づくかと思いますが、日本税理士連合会で税理士会の規則が制定されておりますが、そこに税務援助規則というのがございまして、税理士会の事業としてやっておられるわけであります。したがって、我々としては、個々の税理士じゃなくて税理士会にお願いしていますので、納税者から特に選ばれますと恐らく調整が大変困難であります。これは全部無料でやっておりますし、したがって、通常のビジネスとしてやっております税理士の顧問契約とは違いますので、自由に選ばすことはちょっと無理かと思います。

佐々木(憲)委員 しかし、本人の承諾なしに、あなたのところはこういう税理士ですよと勝手にやることはいいんですか、その情報を流して。

村上政府参考人 お答えいたします。

 今回のケースは、小千谷だけじゃなく川崎西などもあるのかもしれませんが、間違ったケースでありまして、あくまで御本人の意思を確認して、税理士に記帳指導を受けていただくかどうかを確認いたします。確認した以上は、税理士さんに最小限の情報を、これは住所、氏名、電話番号、業種、こういったものでありますが、こういった最小限の情報を提供しているということであります。その後は、税理士さんと個々の納税者の方で、実際に記帳指導をやっていただくということでございます。

佐々木(憲)委員 本人の了解がある場合はいいですよ。了解がない場合にそういうことをやってはいけないということですね。

村上政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、あくまで納税者の了解を得て実施しているものでございます。したがって、今回のケースは誤ったケースであります。

佐々木(憲)委員 終わります。

金田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.