衆議院

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第5号 平成16年11月5日(金曜日)

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平成十六年十一月五日(金曜日)

    午前十時八分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 鈴木 俊一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      砂田 圭佑君    田中 和徳君

      竹本 直一君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      平井 卓也君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山下 貴史君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      小林 憲司君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    樽床 伸二君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   農林水産大臣政務官    加治屋義人君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐藤  悟君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    木村 幸俊君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    井戸 清人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         長谷川真一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           伊地知俊一君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           三輪  昭君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  渡辺 喜美君     平井 卓也君

同日

 辞任         補欠選任

  平井 卓也君     渡辺 喜美君

    ―――――――――――――

十一月四日

 消費税などの大増税計画反対に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第六号)

 同(山口富男君紹介)(第七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八号)

 消費税の大増税反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五五号)

 消費税の引き上げ反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六号)

 同(石井郁子君紹介)(第四七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四九号)

 同(志位和夫君紹介)(第五〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五二号)

 同(山口富男君紹介)(第五三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五四号)

 旧租税特別措置法の規定の復活に関する請願(西村真悟君紹介)(第八九号)

 旧租税特別措置法の規定復活に関する請願(小泉龍司君紹介)(第九〇号)

 地方分権一括法に伴う国有財産の譲与に関する請願(前田雄吉君紹介)(第九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長木村幸俊君、財務省国際局長井戸清人君、内閣府大臣官房審議官堀田繁君、外務省大臣官房参事官佐藤悟君、厚生労働省大臣官房総括審議官長谷川真一君、農林水産省大臣官房審議官吉村馨君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、農林水産省大臣官房審議官染英昭君、農林水産省大臣官房参事官伊地知俊一君、農林水産省生産局畜産部長町田勝弘君、経済産業省大臣官房審議官三輪昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。

木村(太)委員 金田委員長初め皆さん、おはようございます。自由民主党の木村でございます。きょうのトップバッターを務めさせていただきますので、大臣初め皆さん、よろしくお願いいたします。

 まず、私ごとなんですが、ことしの七月末に、前亀井農林水産大臣、また、今委員長を務めております金田副大臣の命を受けましてメキシコに私初めて行ってまいりまして、ウサビアガ農業大臣とお会いしまして、メキシコとのFTA協定に向けての最後の詰めの会談をしてきました。

 私にとっても大変いい経験になりましたけれども、その際、初めてのメキシコ訪問でしたので、自分なりに印象を持ったのは、日本の車が余り走っていないなというふうに感じました。ただ、データ的に見ますと、一年間百万台の需要があるようでして、数字の上からいきますと日本のメーカーのシェアというのが二五%を占めているそうでありますが、実際、その二五%という実感はありませんでした。

 メキシコという国、初めてでしたが、いろんな印象を持って帰ってきたところでありましたが、谷垣大臣はメキシコに行ったことはあるんでしょうか。

谷垣国務大臣 メキシコとのこの問題を議論させていただくんですが、残念ながらまだ行ったことがありませんで、委員から聞かれるとまずいなと思いながら今伺っておりました。

木村(太)委員 そうですか。いい国だと思いますので、機会があったらどうぞ。

 そこで、九月十七日、小泉総理とメキシコのフォックス大統領との間でFTA協定に向けての署名がなされたわけであります。これを受けまして、その署名直後からメキシコ政府は、対日の輸出が年平均一〇・六%の伸びを示すだろうという、みずからやった試算というものを結構PRしている感じがあります。

 日本とメキシコとのFTA協定を実施するための関税制度につきましては所要の改正を行うということになっておりますが、具体的には条約の中で詳細が明記されているというふうに認識しております。その具体的な内容を踏まえながらも、相手側がPRしているというか言い出しております一〇・六%という数字をどのように財務大臣はお考えでいるのか。もしかしたらメキシコ政府は自国に対して国内向けにPRしているのかもしれませんけれども、しかし具体的に一〇・六%という伸びを示すということを言っておりますから、この点を日本側としてはどうとらえているのか、御認識をお聞かせいただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員の方から御質問のございましたメキシコの試算についてでございますが、本年の三月十二日に大筋合意がなされた際に、メキシコ側の方からプレスリリースが出されております。その中で、アメリカ、EUに続く世界第三位の国との協定は我々市民の生活の質を向上させる機会を生むだろう、協定により日本への輸出は年間一〇・六%伸びというふうに書かれております。

 ただ、そのところはわかっているわけでございますが、具体的にその試算がいかなる根拠に基づいて行われているかなど、私ども、詳細については承知しておりません。

 ただ、本協定におきましては、委員御承知のとおり、全体で日・メキシコ間の貿易額の九割以上が無税化される、今後両国間の貿易が促進されることが期待されるわけでございます。同時に、関税の撤廃をした際におきましては、個別品目の事由に応じまして例外品目や関税割り当てを設定することなどによりまして、国内への影響を極力回避できるように対応してきたものでございます。

木村(太)委員 これからの話ですので、安易にずばり言えないのかもわかりませんが、ただ、この一〇・六%ということを具体的に言っているわけですから、それが日本側から見た場合に何らか驚異的に感じるのか、あるいはよく解釈して、いろんな分野で両国の貿易が、本当に交流が盛んになるというふうに評価していくべき数字なのか、その印象というか、どう一〇・六%をとらえたらいいのかなということをお聞きしたいので、もう一回答えていただけませんか。

木村政府参考人 まさにその数字の根拠もわかりませんので、なかなかお答えが難しいわけでございますけれども、やはりメキシコというのは今非常に大きな経済大国の一つでございます。その国との間で両国間の貿易というものが非常にこれから促進されることは、私ども非常に期待しているところであり、また、そういった意味では、今回こういった協定の締結ができたことは非常にうれしく、いいことだと思っております。

木村(太)委員 今答弁があったように、いい意味で交流が盛んになることを私も期待したい、こう思います。

 次に、メキシコとのこのFTAは、投資や金融も含めた経済連携協定、もっと突きとめて言いますとEPAということだそうでありまして、シンガポールに続きまして二カ国目ということであります。ただ、農業分野も含めますと、初の包括的な協定であるというふうにもとらえることができると思います。

 この協定の中には二国間のセーフガード規定というものが整備されておりますが、署名に至るまでの経緯を考えたときに、せっかくいろんな困難を乗り越えて締結に至りましたから、できる限りこのセーフガードというものが発動されないことが一番いいことだと思います。

 ただ、私ここで思い出すのは、二〇〇一年の年でありましたが、中国からイグサ、畳表やネギあるいは生シイタケが日本に向けての輸出が急増の動きがありまして、その際、財務省はセーフガードというのを発動していただいたわけであります。私も農業県出身の議員でもありますので、当時、先輩の議員の皆さんと一緒に党内に議員連盟みたいなものをつくりまして、みんなで早期のセーフガード発動というものを、財務省初め関係省庁、政府に対していろいろと行動したことを思い出しております。当時、我々の行動した中で、何となく、素早いセーフガード発動であったというふうにはなかなか思えなかったなと、今そう振り返っております。

 繰り返しますが、セーフガード発動ということはないことにこしたことはないわけですけれども、協定に盛り込まれている以上、万が一そういう事態になったときに、財務大臣としてちゅうちょなく毅然とした態度で発動するという決意を持っているかどうかということを確認させていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 メキシコと今回の協定を結ぶに当たりましては農林水産物がやはり一番問題だった、これだけではありませんが、農林水産物が大きな問題でございまして、いわゆる農林水産業の多面的機能であるとか、あるいは食糧安全保障であるとか、それから農業で一生懸命やっていただいている構造改革の努力に水を差すんじゃないかとか、そういうあたりに意を用いて関係者が努力をして今度のができたわけですね。

 それで、そういう心配を排除するための具体的な措置が、個別品目の事情を踏まえて例外品目や関税割り当てを設定するということと同時に、今御指摘になった二国間セーフガードということであったわけでございます。

 それで、必要なときにはちゅうちょなくやるかどうか決意を言え、こういうことでございますが、必要なときにはこれは適切に、もちろんこの協定や何かにのっとって適切な対応をとらなければならないことは当然なことだと思っております。もちろん、セーフガードを発動するに当たりましては、財務省だけで決断するというわけではございませんで、その物資を所管している役所、具体的には農林水産省や経済産業省ということになると思いますし、また、貿易を所管するという意味での経済産業省ですね、そういうところとよく相談をしていかなければいけないことはもちろんでありますけれども、適時に適切な行動をとらなきゃいけないと思います。

 ただ、この二国間セーフガードは協定上、輸入量の増加、それから国内産業への損害、それから因果関係、こういった実体的要件と同時に、調査の上という、各種指標を総合的に勘案して判断するということになっておりますので、そういう手続は当然踏まなきゃいけない。もちろん、調査の終了を待たずに発動が可能な暫定措置というものも設けられておりますので、そういったものも適時に使わせなきゃならない場合があると思いますが、そういういろいろな要件を踏まえて、適時に適切な行動をとらなければいけないと思っております。

木村(太)委員 技術的な点を一つお聞きしたいんですが、二国間セーフガードにおきまして定量的な基準が定められておりません。こういうことを考えますと、きちんと発動できるのかどうか、その点お答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 定量的な何か基準を設けて、必要な場合にさっと発動できるようにしたらどうかというお問いかけだと思いますが、先ほど申し上げたように、やはり協定上の要件というものがございます。それから、そういった実体的要件を当然踏まえた上で、調査の上、各種指標を総合的に勘案して判断するというのが協定上の要件でございますので、定量的というのはこの協定上の要件から見るとなかなか難しいのかなと思っておりますが、必要な場合には、先ほど申し上げたような、調査の終了を待たずに発動できる暫定措置というのもあるわけでございますから、そういうものを適切に使っていくということではないかと思っております。

木村(太)委員 まあ、ないことにこしたことはないわけですので。暫定発動もあり得るということでありますから、もし万が一そういうことになったときには機敏に対応していただきたい、こう思います。

 次に、我が国では税関におきまして原産地証明書の確認を行うことになっておりますが、財務省ではこの原産地のチェックに十分な体制を整えているのかどうか、お聞きしたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現行の制度でございますが、貨物を輸入しようとする者は、税関長に対しまして輸入申告をし、その貨物につきまして必要な検査を経て許可を受けなければならない。この輸入申告に際しましては、仕入れ書を税関に提出するほか、日墨FTAに基づく税率を適用する場合には、メキシコ経済省が発給した原産地証明書を提出しなければならないことになっているのは委員御承知のとおりだと思います。

 税関におきましては、輸入申告書、仕入れ書、原産地証明書に基づきまして、審査、検査を行いまして、さらには、必要に応じまして関係書類の提示を求める、そういった形で適切なチェックを行うことによりまして原産地の確認を行うことといたしております。

 さらに、輸入許可後でございますが、これはいわゆる事後的な調査ということを行っておりまして、必要に応じまして、輸入者のもとに赴きまして事後的な原産地の確認を行う、そういうことも行っております。

 また、こうした過程で輸入をされる産品の原産地に疑義が生ずる、そうした場合には、原産地の決定のため、今回のFTA協定におきましては、メキシコ経済省に対しまして原産地証明書の発給状況についての照会等を行うということになっております。

 いずれにいたしましても、税関といたしまして、原産地による税率の適切なチェックに努めてまいりたいと考えております。

木村(太)委員 ここで、FTAとは直結するものではございませんけれども、念のため農林水産省に聞いておきたいと思います。

 メキシコから、BSEに感染した牛の肉や、アメリカ産の肉骨粉を食べた牛の肉が入ってくる可能性は全くないと考えていいのかどうか、確認したいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 BSEの発生国は世界的には二十六カ国ございますが、我が国の場合には、BSEの発生した国からは現在牛肉の輸入は停止しております。メキシコは現在のところBSEは発生しておりませんので輸入可能な国ということになりますけれども、こうしたBSEが発生していない国、メキシコなどBSEが発生していない国からの牛肉の輸入につきましては、農林水産省におきましては、家畜伝染病予防法に基づきまして、輸入検査を行っております。

 その際には、メキシコで生まれ育てられた牛のものであること、あるいはアメリカなどBSEの発生国で生まれそこで育てられた牛のものではないこと、そういったことの証明を求めまして、米国などBSE発生国からの牛肉がメキシコを経由して日本に輸入されることがないように措置を講じているところでございます。

 それから、アメリカの肉骨粉がメキシコに入って、そこでメキシコの牛にその肉骨粉が与えられて、その牛が入ってこないのかという御懸念について御指摘がございましたが、これにつきましては、メキシコにおきましては、二〇〇〇年から牛などの反すう動物の肉骨粉を反すう動物にえさとして与えるということは禁止をされておりまして、そういった飼料規制の整備が行われているというふうに聞いております。そういった意味で、メキシコの牛につきましては、肉骨粉についての規制措置は十分講じられているというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、現在のところ、メキシコ国内におきましても九六年からBSEの広がりを調べるためのサーベイランスの調査を行っておりますけれども、それにおきましてもBSEの発生は確認されておりませんので、国際的にもBSEの発生は確認されていない国だというふうに認められているところでございます。

木村(太)委員 全くないと考えていいかどうか、どうなんですか。

高橋政府参考人 まず、これまで私どもが得ている科学的な知見に基づけば、今のところそういう可能性はないであろうというふうに考えております。

木村(太)委員 ありがとうございました。

 最後に二点お伺いしたいと思いますが、先週の本会議の答弁の中で、町村外務大臣の言葉に、日本はWTOを中心とした多面的貿易体制を基本とし、それを補完するものとしてFTAの活用をという認識を示されております。

 いろいろ調べてみますと、WTOに通報されました地域間の貿易協定数というのが、例えば一九七〇年のころは六つあったようですが、二〇〇四年には既に二百八に急増している。二国間など地域間で自由化を進めるこのFTA締結というものが世界の潮流になっているというのが現実かと私は思っております。この点、谷垣財務大臣の御認識をお聞きしたい。

 あわせて、今、日本は、シンガポール、メキシコに続きまして、タイやフィリピン、マレーシア、韓国などとも交渉が続いているようであります。仮にこれらの国々や地域との間でFTA協定締結が進んでいくとしたならば、その都度その相手国の姿を見ながら関税制度というものを改正していくことになるのかどうか。あるいは、どこの国、どの地域であってもいいように、関税制度というものを根本的に見直す時期ととらえているのかどうかお聞きして、終わりたいと思います。

谷垣国務大臣 まず、WTOとの関係ですけれども、WTOの新ラウンドは、関税引き下げといったような貿易自由化だけじゃなく、アンチダンピングといったような貿易ルールの明確化等も対象としておりますので、私は極めて大事なものだと思っておりまして、財務省としても、WTOの新ラウンドに積極的に取り組んでいかなきゃならないと思っております。

 それで、今委員は、FTAを含む経済連携は世界の潮流だとおっしゃいました。私もそれもそうだと思います。WTOが一時、なかなか進行が難しかった時期がございまして、そういうこともあって、FTAというのも随分そういう流れになってきた面もあるんだろうと思います。こちらの方は、しかしながら、町村さんがおっしゃいましたように、多角的な貿易体制を補完して貿易自由化あるいは経済活性化を促進させていくという位置づけではないかと思っております。

 それで、今FTAを、シンガポール、メキシコに続いて韓国やASEAN諸国と行っているわけでありますが、そういったときに、シンガポールのときもやりましたし、今回も関税法の改正をやらせていただくわけですけれども、一々その都度やるのかと。もう少し、何かバスケットみたいなもので、包括的に経済連携協定に対応できるような関税法をこの際考えるべきじゃないかという御示唆をいただきまして、我々もこれは十分検討しなきゃならないと思っております。

 ただ、やはりこれはFTA、経済連携協定、それぞれの国との交渉事でございますから、それぞれ、二国間セーフガードとか関税割り当てといいましても、かなり細部にわたると違ってまいりますので、多分、具体的に交渉いたしますと、いやちょっと想定しなかったというようなものがあるいは出てくるのかもしれません。その辺は十分今後研究をして対応してまいりたいと思っております。

金田委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、日本とメキシコとの経済協力協定ということでありますけれども、このような二カ国間というかあるいは地域を限定したような貿易自由化といったような問題については、もともと我が国もWTO体制の中で多角的な貿易体制を進めていくという中で頑張っていかなければいけない、基本的にはそういう立場に立っていると思うんですけれども、世界的な潮流の中で、今FTAが世界のいろいろな地域で拡大しているという状況の中で、日本もある程度はそういう動きにもおくれをとらないという意味において、いろいろな地域とこういうFTAが進められているということについてはそれなりの評価というのはあるんだろうというふうには思うんですけれども、やはり基本はWTOという多角的な貿易体制というものをしっかりと日本としてリードしていく、そういう姿勢が大切なんだろうというふうに基本的には思っております。

 そういう中で、実は中国が二〇〇一年の十二月にWTOに加盟をしているというようなことで、中国それ自体の経済の成長も非常に大きいわけでありますけれども、中国と日本との経済関係というのも非常に高まってきています。中国に対する日本からの投資というのも、この二〇〇一年のWTO中国加盟を前後としてかなり伸びてきていますし、最近の貿易量も急激に拡大してきている。日本にとってみても中国というのは非常に大きな貿易相手国になってきている、もちろん中国にとっても日本は二〇〇三年では最大の貿易相手国である、こういう状況に今なってきているわけですね。

 そういう中で、中国も実はいろいろな形で、貿易をいかに拡大するかという観点から、中国・ASEAN経済連携というものも考えながら、二〇一〇年にそれを完成させるんだという、そういう意図を示しながらいろいろな経済の拡大を図っている、こういう状況にあるわけであります。

 そういう中で、日本と中国の関係、もう一度よく振り返ってみますと、この前私も中国に行ったときによく言われたんですけれども、政冷経熱、つまり政治が冷たくて経済が熱いという状況の中で、これからの日本と中国の関係を考えたときには、むしろ政治がネックになってくる可能性があるんではないか。例えば日本と中国との間でFTAのようなものをやろうとしたときに、今は中国とのFTAは政治的な問題でできないというんじゃなくて、いろいろな状況があってできないということになっているわけでありますけれども、仮にそういうような方向で物事が進んだときにも、やはり中国と日本との政治の関係というのは大変重要な意味を持ってくるんだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味で、谷垣大臣におかれては、中国との関係、いろいろ考えてはおられるんだろうと思いますけれども、大臣就任後に、中国の政府あるいは党の要人とどういうところでどういうお話をされたことがあるのかということをまずお伺いいたしたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 今平岡委員がおっしゃいましたように、私も中国との関係というのは極めて大事だと思っております。アジア全体、今日本の東アジアとの貿易自体が、アメリカ、それからヨーロッパ、欧米を足したものよりも多くなってきていると思いますが、アジアとの関係が非常に強化されて深まっている中で、今回の日本の景気が回復してきましたのも中国の経済成長に引っ張られた部分もかなりある、こんなふうに私は認識しておりまして、中国との二国関係をさらに強化していくということは大事なことではないかと思っております。

 それで、どういう機会に中国とあれしているかということでございますが、私が財務大臣に就任いたしましてから、私のカウンターパートは金財政部長でございます。それから、カウンターパートという意味では日銀総裁のカウンターパートかもしれませんが、人民銀行総裁の周小川さん、こういった方と、日中韓財務大臣会議というものやら、あるいはAPECの財務大臣会合、それから、ことし十月のG7のワーキングディナー、こういうようなときにかなり時間をかけて議論をいたしております。それから、いろいろな国際会議で出ていらっしゃることが多いものですから、例えばIMFの開発委員会というような場合でも、フロアで短時間ではありますけれども、そのときそのときの意見交換をするというようなこともやっているわけでございます。

 それから、あと、日本にお見えになったときという意味では、まだ金財政部長、周人民銀行総裁に日本でお目にかかったことはございません。日本でお目にかかっているのは、現在の王毅大使あるいは武大偉大使、こういう方に時々財務省に来ていただいて、意見交換なりそういうものをしております。

平岡委員 今大臣の方から中国との関係は大変大事であるという認識を示されておりますけれども、今言われたような中国の政府あるいは党の要人との会談というのは、国際会議といったようなものとかあるいは儀礼的なものにどうも限られているような感じがして、余り谷垣大臣が積極的な日中関係の改善といいますか政治関係の改善に努力しているというふうには余り受けとめられないんですけれども、それはそれで、非常に大事だと言われているので、また頑張っていただきたいというふうには思うんですけれども。

 日中関係について言うと、やはり大きなネックになっているのが小泉首相の靖国神社参拝問題なわけですね。実は、私もこの問題については予算委員会で小泉首相にも直接聞いたことがあります。どちらかというと、私、政教分離の話とかそういう憲法上の制約の問題についてお聞きしたわけでありますけれども、当然のことながら、それだけの問題じゃなくて外交的な問題も含まれているということもあると思うんですけれども、谷垣大臣は、靖国神社の小泉首相の参拝、これに対してはどのように思っておられますか。そして、それが日中関係との関係では、谷垣大臣、どうあるべきだというふうに思っておられますか。

谷垣国務大臣 まず最初に、財務大臣として、中国との関係が儀礼的なものに限られているというふうに今平岡さんおっしゃいましたけれども、私自身の気持ちとしては、必ずしもそのように思っておりませんで、かなり本音、本音の話といいますかそういうものをしているというふうに思っているわけであります。また、私自身も機会をとらえて、中国のカウンターパートと、中国へ行ってまた議論をするような機会をつくりたいというふうに思っているわけでございます。

 御質問の、ちょっと脱線していけませんが、中国の金財政部長と私は、日本流に言いますと学校の学年も同じでございまして、向こうはさる年、私はとり年で、同じ学年だなというようなことを言いながらいつも話をしているわけでございます。

 それで、ちょっと靖国神社のことでございますが、小泉総理の靖国神社参拝については、これは総理の個人的なお考えに基づく、要するに私的参拝であるというふうに私は承知しておりまして、内閣総理大臣といえども私人として信教の自由は保障されているので、その中で靖国神社へ参拝されるということは、それは総理の私人としての御自由な判断ではないかというふうに思っております。

平岡委員 その問題は、私もさっき言った予算委員会でやっているので、憲法上の問題はいいとして、だから、とりあえず私がきょうお聞きしたのは、対中関係との問題でどのように谷垣大臣として認識しておられるかということを聞いたんです。

谷垣国務大臣 これは、やはり個人には信教の自由がございますから、小泉さんがどういう信教を持つかということが対外関係にどういう影響を与えるかというようなことを私が論評するのは差し控えたいと思っております。

平岡委員 そういう答弁をして、何といいますか小泉流のすれ違い答弁みたいなことで、物事をある意味じゃ先送りしていくというようなことというのは、決して、これから谷垣大臣もさらにこの国のリーダーになるべく頑張っていこうとしておられる方でありましょうから、そういう対応ではなかなか私たちも谷垣大臣を信用するということにもいかないので、またしっかりと答弁をする機会を設けていきたいというふうにも思います。

 中国に対する谷垣大臣のお考えを聞こうと思ったんですけれども、既に答弁されましたので、谷垣大臣としてはしっかりと対中関係の重要性を認識して、これからも機会があれば中国にも行ったりあるいは中国の要人ともいろいろなことを話をしてみたいというふうに言われたので、そこはそのままお受け取りさせていただいて、次の問題に移らせていただきたいというふうに思います。

 今回のメキシコとの協定の中で、いろいろなことが書いてあるんですけれども、FTAということで、あるいはEPAということで、どちらかというと貿易の自由化を進めていこう、投資の自由化を進めていこう、こういう方向にあるんですけれども、この協定の中で、シンガポールとの経済協定の中にないものとして、関税割り当て制度、対メキシコに対する関税割り当て制度というのが出てきているわけですね。

 関税割り当て制度そのものは今の一般の仕組みの中でもあるわけでありますけれども、この関税割り当て制度については、ある意味ではいろいろなところから批判が出ているということもあります。その批判の一つに、この関税割り当て制度、特に事前割り当て方式になっている関税割り当てについて少し既得権益化しているような問題があるのではないかというような指摘もされているわけでありますけれども、この事前割り当て方式の関税割り当て制度については、特に農産物あるいは革・革製品というものがあるわけでありますけれども、それぞれの所管省庁からどのように運用されているのかということについてまず説明していただきたいというふうに思います。

山本(明)大臣政務官 経済産業大臣政務官の山本でございます。平岡委員の御質問にお答えしたいと思います。

 私どもの経済産業省では、ホームページで全部開示しておりまして、申し込み方法だとか、いつどういった形で申し込みができるかということを全部開示しております。しかも、既得権は既得権であります。新規参入者も、希望があれば新規参入者にも希望をかなえて参加をしていただくということで、量については全部計算式ができておりまして、いわゆる不透明なところはない、私はそんなふうに理解をしております。

加治屋大臣政務官 農産物の関税割り当て制度の運用についてのお尋ねでございました。

 まず数量枠につきましては、品目ごとに原則として各年度の国内需要の見込みから国内生産の見込みを差し引いた数量を基準としておりまして、年度ごとまたは半期ごとに定めをさせていただいております。

 また、関税割り当ての申請手続、資格要件、割り当て基準等については、あらかじめ品目ごとに具体的かつ詳細に定めて公表しておりまして、その運用の透明の確保に十分配慮させていただいているところでございます。

 また、実際の割り当てに当たっても、数量枠の範囲内において、申請者による該当物品の国産、輸入別の使用実績や計画等を勘案して、適切な割り当てをさせていただいております。今後とも、正確な、適正な割り当て運用に努めてまいりたい、このように思います。

平岡委員 今、山本大臣政務官から既得権という、既得権がありますとかいうようなちょっと変な発言で、既得権という言葉をそういう場合に使うのがいいのかどうかというのをちょっと疑問には思ったんですけれども、例えば革とか革製品について言うと、新規の人も認められているということでありますけれども、新規の人でも、この要項を見ると、申請日前一年間においてみずから輸入し通関した実績を有する者というような限定がついているんですよね。完全に新規が認められているというわけじゃないように思うんですけれども、この点、やはり新たに参入する人についての障害というのがあるんじゃないですか。

山本(明)大臣政務官 既得権という言葉は、実績のある人という意味で御理解いただければいいというふうに思います。

 一年目ですけれども、まず、初めて参加する場合に参加できます。そして、それが二年続きますと実績があるというふうに判断される、そういった形でできますので、特別に支障はない、こう思っております。

平岡委員 ちょっと私の質問とかみ合っていないのであれですけれども、新規参入という、新規者について言うと、全く枠が与えられていない人が、実際に実績として輸入をしていなければいけない、輸入した人でなければ今回それぞれの関税割り当てのときに申請ができない、申請者の資格を欠いている。そういう仕組みになっているということが新規に入る人に対して障害になっているのではないか、こういう意味なんですけれどもね。

山本(明)大臣政務官 枠はございます。新規の枠は二%とってありますので、その中で参入することができます。

平岡委員 言っているのは、新規の人に枠が与えられるというのじゃなくて、新規という人の定義ですね。新規という人が、どういう人が新規なのかというときに、輸入の実績がなければいけないという、そういう制限をしているという、そこがやはり障害になっているんじゃないか、こういう意味なんですけれども。

山本(明)大臣政務官 要するに、皮革だとか革靴の輸入の実績ということではなくて、輸入というものをしたことがないというような人の場合になかなか難しいということはあるかもわかりませんが、参加することは全員がだれでもできるということでございます。やりにくいかどうかだけのことであります。一切排除しておりません。

平岡委員 ちょっと答弁がおかしいように思うので、後で議事録でチェックした上で、また私の方から機会があれば質問あるいは質問主意書で質問していきたいというふうに思います。

 それで、今回新たに対メキシコについて関税割り当て制度ということで協定の中に設けられたわけでありますけれども、この新しい部分について言うと、これはどのように運用されていくんでしょうか。特別な運用の方式というのがあるんですか。何かメキシコに対して実績があるような人に対して、特別に便宜を図って割り当てられるというようなことはないんでしょうか。それぞれ経産省と農水省にお答えいただきたいと思います。

山本(明)大臣政務官 そういったことはございません。メキシコの実績というようなものはございません。(平岡委員「どういうふうに運用されるのか」と呼ぶ)

 今までの例と一緒でございまして、関税の事前割り当て制という形でございます。一緒でございます。

加治屋大臣政務官 メキシコに対する関税割り当て制度の具体的な運用に関しましては、本法律が改正された後に、新たに政省令等で定めることになると思っておりまして、既存の割り当て同様に適正かつ透明性を期してまいりたい、そのように思っております。

平岡委員 認識の違いかもしれませんけれども、関税割り当て制度については、いろいろなところでいろいろな批判がある、あるいはいろいろと疑惑があるというようなことも言われていることもあります。そういう意味で、制度はやはり透明、公平というものをしっかりと認識して運用していっていただかなければいけないというふうに思いますので、その点は強く要求をしておきたいというふうに思います。

 それで、この関税割り当て制度のそもそも論なんですけれども、もともと関税割り当て制度というのは、国内業者との関連もあって、ある意味では非常に輸入あるいは輸出については障害というか、それなりの制約を与えるものだというふうに私は基本的には思っているわけでありますけれども、こういうFTAとかEPAと言われているようなものの中で新たに関税割り当て制度というものを追加していくというのは非常におかしいのではないかというふうに私としては思っているわけでありますけれども、これについてなぜこういう関税割り当て制度というものがつくられたかということも一つの問題ではありますけれども、WTOとの関係でこれは問題はないんですか。

 WTOの中では、私の理解している限りにおいては、関税割り当て制度についても、特定の国に対して差別的に適用しないことを条件として認められるんだというふうに説明がされております。これは逆に言うと、メキシコに対してだけ特別に関税割り当てを認めると、それ以外の国は一般の枠ですからみんな競争の世界の中でそれぞれの国が競争する、だけれども、メキシコだけは自分に特別に関税割り当てがされるということで、メキシコにとって特別的あるいは差別的な取り扱いがされてきているのではないか、こういうふうに思うんですけれども、この点についてどうですか。

谷垣国務大臣 平岡委員が先ほどおっしゃいましたように、経済連携協定、EPAの中で、いろいろな例を見てみましても、関税撤廃困難な品目についてこういうような例外を設けている例は少なからずあるわけでございます。そこで、そういったものがWTO上どうかと。

 これは、WTOの協定上、関税割り当て制度については、おっしゃるように特定の国を差別的に取り扱ってはいかぬ、こういうことでございますが、一方、WTO協定ではこの無差別原則の例外として一定の要件のもとで特定の国や地域との間のみにおいて貿易の自由化を行うという自由貿易協定の締結が認められているわけでありまして、日本とメキシコのEPAは、今申し上げたWTO協定上の要件を満たすFTAだと思っております。それで、この協定においてメキシコに対する関税割り当て制度を設けるということは、無差別原則の例外としてWTO協定にも整合的なものであるというふうに考えております。

平岡委員 今、大臣、引用というか引き合いに出して説明されましたけれども、WTO協定のどの規定がそれを示しているんですか。これは大臣じゃなくても、事務方でも結構です。

小野寺大臣政務官 平岡委員にお答えいたします。

 まず、先ほど大臣がお話しされました一定の要件、無差別原則の例外ということの一定の要件ですが、ガット第二十四条の基準というものがございます。一つは自由貿易地域の設置前よりも関税その他の通商規則が高度または制限的なものであってはならないということ、それに、事実上すべての貿易について関税その他の制限的通商規則を廃止するということ、そして、三番目ですが、中間協定については原則として十年以内にこの自由貿易地域を完成させるものでなくてはならないということ、この要件に当てはまれば先ほどありました一定の要件ということが満たされますので、このWTOの協定に整合するというふうに考えております。

平岡委員 今、小野寺政務官が言われた最初の部分ですね、自由貿易協定締結前とその後とで、これはそれぞれ、関税その他の通商規則が高度なものであるかまたは制限的なものであってはならない、こういう規定が多分関連する規定だというふうに思うんですけれどもね。ここに書いてあることはどういうことかというと、協定を結ぶ前と結ぶ後で、自由貿易協定以外の地域においてどういうふうな取り扱いになっていなければいけないかという話をして、それ以外の国にとって制限的なものであってはいけない、協定を結んだ結果としてそれよりも制限的になってはいけない、こういう話なんですよね。

 そうだとすると、これはメキシコが関税割り当てということで有利な枠をもらって、ある意味では、今までよその国から高い関税を払って輸入していたのが、メキシコが今度は関税割り当ての中で無税とかあるいは低い税率で輸入できるということになると、ほかの国の輸出枠をとってしまうような、そういう状況になってきてしまう。それは実質的にほかの地域にとって制限的になっているんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、今政務官が言われた解釈というか考え方というのは、これはWTOで確認されている考え方ですか。

木村政府参考人 外務省の方から答弁がある前に、少し事実関係で補足させていただければと思っております。

 まず、主要FTA、例えばNAFTA、それからEUとメキシコのFTAとか、そういった例を見た場合、やはりそこにおいても関税割り当て品目の例はございます。現在、WTOにおいてはそれが問題となっているという話は聞いておりません。

 それからもう一点、関税割り当てという、もう委員御承知のとおり、まさに一定の輸入数量の枠内に限りまして無税または低税率、それから、それを超えた場合に高税率を掛けるということで、まさにおっしゃるように一定の枠内におきましては優遇された税率になっているわけでございます。ただ、御承知のように、FTAというのは、基本的に考えた場合、WTOの原則でございます無差別原則の例外といたしまして、今外務省の方から答弁がありましたように、二十四条、一定の要件のもとに無差別原則の例外が認められております。税率についても認められているわけでございます。

 関税割り当てというのは、要するに、一定の枠内につきまして税率を優遇するというものでございますので、そういったことを考えますと、先ほど外務省の方から御答弁がありましたように、基本的に、今回、FTAにおきましてメキシコに対する関税割り当て制度を設けることはWTO協定に整合的であると考えております。

平岡委員 確かに、WTOの解釈ではいろいろなことが考えられるのかもしれません。ほかの地域でもそういうことがあるのかもしれません。

 それはそれとして、この関税割り当て制度というものが、貿易自由化という観点から見たときには、やはり我が国としてできる限りこういうものはなくしていくという方向で行くということが、国内の問題はありますけれども、国内の問題も克服しつつ、そういう方向に持っていくということが必要ではないか、こういうふうに思っているわけですけれども、財務大臣、これは問題ないんだというような趣旨の答弁が先行してしまったような気がするんですけれども、今私が指摘したような観点からいって、こういうFTAあるいはEPAの中で関税割り当て制度というものを持ち込んでいくということについて、本来のあり方というんですかこれからの方向性、これについてはどのようにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 EPAを結ぶという以上、WTOの文言にもございますけれども、実質上すべての貿易について関税撤廃を目指していくという精神は、私は基本的な考え方として持つべきだろうと思います。

 ただ、現実に、先ほど木村委員のお答えの中でも申し上げましたけれども、例えば食糧安全保障をどう配慮するかとか日本の中での構造改革の努力とどう整合さすかとか、これは日本の場合でとればそういうことでありますけれども、世界のそれぞれの国にとってやはりそういうような課題があると思います。直ちにすべてをやるわけにはいかないというようなことがあろうかと思いますから、その両方に目配りをしながら自由貿易体制を推進していくということが大事じゃないかと思います。

平岡委員 次の質問を、幾つか用意してあったんですけれども、時間がなくなったので、最後の質問です。

 シンガポールとの経済連携協定については、もう既に二〇〇二年の十一月三十日から発効して、日本とシンガポールの経済関係はいろいろ変化してきているというふうに聞いていますけれども、これが具体的にどういうふうに変化したかということはちょっと時間がないので置いておいて、このシンガポールとの経済連携協定というものを締結し、そして、その後の日本とシンガポールとの経済関係の流れを見て、本来、経済連携協定のあり方についてどういうふうにしていくべきなのか、経済連携協定についてどのように評価しているのかということについて、大臣からお伺いいたしたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 おととしの十一月にシンガポールとの連携協定が発効したわけですが、その後、貿易や投資の自由化、円滑化といっただけではなくて、幅広い分野で二国間の経済連携を強化するものになっていると思います。協定により関税撤廃された品目、例えばシンガポールのビール関税とか我が国のプラスチック製品関税、こういった品目で貿易が拡大しておりますし、去年十二月に閣僚レビュー会合というのをやりましたけれども、その中でもこの二国間の経済関係が一層強化されていることが確認されております。

 したがいまして、私どもとしては、シンガポールだけではなくて、東南アジアあるいは韓国と今進めているわけでありますけれども、先ほど申しましたように、できるだけ幅広い視野から推し進めていかなきゃならない、こう思っております。

平岡委員 終わります。

金田委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉であります。

 平岡委員に続きまして、私の方からも、提案されております関税暫定措置法改正案を中心に質問をいたします。

 さて、この改正案は、日本とメキシコの間の経済連携を強化する協定に基づくものでございます。せんだって、民主党の首藤議員が衆議院の本会議においてこの協定の問題を取り上げました。そして、これはあくまで経済連携を強化する協定である、エコノミック・パートナーシップ・アグリーメントである、EPAである、単なる自由貿易協定、フリー・トレード・アグリーメント、FTAではない、しかしながら一般的に大変そこに誤解があるという発言が首藤議員からありました。

 確かに今回のメキシコとのEPA、これも自由貿易協定、FTAの部分を中心部分として含んではいるわけでありますが、投資それから政府調達、幅広い包括的な協定であります。しかしながら、マスコミ、それから国会議事堂もそうですが、世間一般で、今までの慣行といいますか、FTAという言葉が使い続けられております。これはある意味では誤解が続くということにもなりかねません。

 そこで、政府として、今後はこういう協定に当たってEPAという正確な英単語もしくは略称が使われるように広報活動を強めていったらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 EPAとFTAの違い、また日本政府が目指しているのはEPAであるということは、先生御指摘のとおりでございます。

 EPAに関する我が国の取り組みにつきましては、これまで、パンフレットの作成とかホームページによる紹介とかNGO等に対する説明会とか、いろいろ広報に努めてきております。最近では、各方面において経済連携協定、EPAという用語もそれなりに普及してきていると承知しております。

 ただ、いずれにせよ、まだFTAという用語が用いられるのは確かでございますので、引き続き用語の普及も含めて広報に努めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 EPAという正確な略称が世間一般で使われるような広報活動を極力強めていただきたいということを要望いたします。

 次の質問ですが、先ほどの平岡委員の質問にもございましたけれども、日本としてはWTOにおける多角的な貿易交渉、これがメーンだ、そして今回のような二国間、地域間のEPAを補完として取り入れて、自由貿易のための多層的なアプローチをやっているんだということであります。しかしながら、世界全般を見ますと、このWTOに参加している、すなわち自由貿易を志向している国だけでも、今百四十六カ国に上るそうであります。そうしますと、日本としては、そのうちのどこと優先的にEPAを結ぶべきだろうか、いわゆる締結対象国の選定基準という問題であります。

 そこでお尋ねですが、日本政府として、そういう選定基準がもう大体あるのか、もしくはどのように考えているのか、お伺いいたします。

佐藤政府参考人 日本として、どのような国とEPAを結んでいくかというのは非常に重要な問題でございます。現在我々が考えておりますのは、我が国がEPAをどの国と結ぶかということを考えるに当たっては、EPA締結を通じて得られる経済的利益の大きさ、政治、外交的関係強化の必要性、相手国・地域の状況といったさまざまな要素を勘案の上、いかなる国、地域といかなる分野において経済連携の強化を図っていくか、また、それが我が国にとって望ましいかどうか、総合的な観点、戦略的な判断をしながら検討していきたいと考えております。

 当面は、我が国と特に緊密な関係を有します東アジアの国々との経済連携が重要な戦略的課題であると考えております。現在、韓国それからASEAN三カ国と二国間経済連携協定を交渉中でございますが、まず、これをできるだけ早く完成させたいということを考えております。

吉田(泉)委員 総合的にかつ東アジアを重点的にという選定基準であるということだと思います。

 ということは、日本との距離、近接している国かどうかということも重要な選定基準であるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

佐藤政府参考人 EPAの対象国を検討するに当たっては、先ほど申し上げましたように、さまざまな観点から判断が必要でございまして、距離が近い遠いということは、必ずしもそれだけの基準で判断することにならないと考えております。

吉田(泉)委員 近い遠いだけではないということでございます。

 それで、三番目の質問なんですが、今回、メキシコという非常に遠いところにある国がEPAの二番目の相手国に選ばれたわけでございます。この間の本会議の質問でも、なぜメキシコかという質問が出まして、外務大臣の方からは、メキシコの市場というのは非常に大きくて重要だ、それから米州市場への橋頭堡になるんだという答弁がありました。

 もう一つ、さらに私は、今回のEPAの具体的なきっかけになったことは、アメリカとEUは既にメキシコとEPAないしFTAを結んでいる、しかし日本はまだ結んでいない、そこに日本企業にとっての不利益がある、不公平がある、それを是正するんだというのが、きっかけとしては一番大きかったような気がして見ております。

 そこで質問ですが、今までの日本企業の不利益、主なものは具体的にどういうものであったのかお伺いします。

三輪政府参考人 答弁申し上げます。

 我が国がメキシコと自由貿易協定を結んでいなかったことにより、我が国は貿易、政府調達などの分野で深刻な不利益をこうむってまいりました。まず、貿易でございますが、平均一六%という高関税率により、我が国企業の競争力を著しく損なってまいりました。また、政府調達においても、メキシコ政府が入札資格を自由貿易協定を既に結んでいる欧米企業に限定したため、我が国企業が市場から排除される事例が見受けられたところでございます。

 今回、日墨経済連携協定を結ぶことにより、メキシコへの輸出において幅広い関税撤廃を実現するとともに、政府調達における入札資格上も欧米企業と格差が解消される予定となっております。

吉田(泉)委員 一六%平均の関税が日本からの輸出品にかかっていたということであります。もう少し具体的にお聞きしたかったんですが、輸出リストといいますか、日本のメキシコに対する輸出の主要品目を見ますと、一番大きいのが自動車ですか、それから自動車部品並びに自動車用の鉄鋼ということで、今回のEPA締結に当たって、結果的かもしれませんが、自動車産業が非常に今までの不利益を挽回した、利益が大きいということだろうというふうに思っております。

 さて、四番目の質問ですけれども、自動車産業を含めて、自由貿易というのは経済的な合理性は広く認められているところでございます。しかしながら、世の中はそれだけでないわけでありまして、例えば食糧の安全保障ということを考えますと、日本の食糧自給率、これをもう少し上げようということも必要であります。政府としても、カロリーベース、今四割を切ったと言われる自給率ですが、四五%にしようという方針があります。民主党も、五〇%ないし六〇%という数字を挙げております。

 そこで質問ですが、今回のメキシコEPAによって、日本の食糧自給率、減ることは間違いないと思うんですが、どの程度影響を受けるものでしょうか。また今後、今交渉中ないし検討中のEPAがあります、ASEAN十カ国それから韓国、こういうところと数年後EPAが成立した場合に、今度は相当な影響があると思うんですが、日本の自給率ですね、カロリーベースを中心に考えてもらっていいと思いますが、どのぐらいの影響があるものか、お伺いします。

吉村政府参考人 自給率への影響に関するお尋ねでありますけれども、メキシコとのEPA交渉に当たりましては、メキシコの輸入余力、それから我が国の関税水準とを総合的に勘案して、必要に応じて、関税撤廃の例外品目を設けたり関税割り当て制度や長期の経過期間を設けるということによりまして、輸入が増大して国内生産にそのまま置きかわることがないよう留意したところであります。したがって、食糧自給率への影響を極力回避したところであるというふうに考えております。

 また、現在行っておりますASEAN諸国それから韓国との交渉、あるいは来年から開始されますASEAN全体との交渉におきましても、交渉相手国や個別品目の事情等に応じて、同様の措置を講ずることで食糧自給率への影響を極力回避していきたいというふうに考えております。

吉田(泉)委員 食糧自給率、ASEAN十カ国、韓国とEPAを結んでも自給率に影響がないようにするという答弁だったと思います。

 それでは、今回の法改正に織り込まれております二国間セーフガードの問題をお伺いします。

 一般的なセーフガードというのが関税定率法でもう既に決められておるわけですが、今回は、日本とメキシコのこの協定に基づいて、日墨間だけのセーフガードを暫定措置法に織り込むということであります。

 発動要件の問題です。

 先ほども御質問に出たと思いますけれども、一応、メキシコからの輸入が増加する、国内産業に重大な損害が出る、国民経済上緊急に必要がある、そういうときにこの二国間のセーフガードを発動するんだということでありますけれども、先ほども指摘がありましたけれども、具体的、そして数量的な要件は書かれていないということであります。そうしますと、その都度大きな声を出した業界を救うのかと。それでは困るわけでございます。

 そこで、質問は、実際どういうふうにこのセーフガードを発動するのか、その発動の要件を具体的にどのように考えておられるのか、お伺いします。

 それからもう一つ。一般セーフガード、関税定率法の中では輸入数量制限ということも認められているわけですが、今回の二国間セーフガードには、これは含まれておりません。その辺の事情も教えてもらいたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員のお話にありましたとおり、二国間セーフガードにつきましては、協定上、輸入量の増加、それから国内産業への損害及びその因果関係について調査の上、各種指標を総合的に勘案して判断することとされているわけでございます。

 輸入量の増加、それから国内産業への損害といった発動要件の認定に当たりましては定量的な基準が定められていない、そういうことで今委員御指摘のようなお話があったのかと思いますが、これはケース・バイ・ケースで、調査の上判断する仕組みになっております。ただ、その判断に当たりましては、客観的かつ数値化された各指標についての水準の変化を評価することとされております。したがって、適切に対応していきたいと考えております。

 それから二点目の、協定上、一般セーフガードと違いまして、輸入数量制限をなぜ採用していないんだと。委員の御指摘のとおり、今回の協定では、そういった二国間セーフガード措置は関税上の措置でなければならないとされているわけでございます。この理由でございますが、二国間セーフガードという場合、輸入数量制限を採用いたしまして仮に一定数量を超えた場合に、FTA税率の輸入を停止したとしても、WTO協定に基づく譲許を撤回しない限り、最恵国税率、メキシコに対しては特別の税率を張っているわけでございますがその他の国に対しては最恵国税率があるわけでございます、その最恵国税率による輸入までは制限できない、これが二国間セーフガードの、まさに限界になるわけでございます。一般セーフガードでございますとそういったものはございませんので。

 したがって、二国間セーフガードの場合でございますと、結果として、最恵国税率による輸入は制限できない。したがって、最恵国税率までの関税の引き上げ措置と同じ効果しか持ち得ないということもございまして、御指摘のような輸入数量制限は採用していないということだと考えております。

吉田(泉)委員 輸入数量制限は採用できないということだと思います。

 もう一つ法改正に織り込まれたのが関税割り当て制度であります。メキシコ産の農産品五品目がその対象になりました。筆頭は豚肉であります。二〇〇二年度輸入実績は四万一千トン、今回のEPAによってこの税率を半分にしようという部分の割り当て量が、初年度は大体四万一千トンの実績に見合った三万八千トンということになっております。そして、これを五年目には約倍増、八万トンに拡大しよう、関税率を半分にする割り当て量を倍にしようということですが、なぜ八万トンなのかというその根拠をお伺いいたします。

 それからもう一つ、牛肉も含まれております。これは、資料によりますと、輸入実績二〇〇二年度六十トンということを踏まえてメキシコと交渉して、市場開拓枠として十トンという枠をつくったわけであります。しかしながら、現実は、これはアメリカ牛肉のBSEの影響でしょうが、一けた大きい六百トンという輸入実績が既に昨年度出ております。

 そうしますと、この六十トンをベースにして行ったEPA協定が、既に実態とそぐわなくなっているんじゃなかろうかと思うわけですが、いかがでしょうか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、豚肉についてのお尋ねでございます。

 豚肉につきましては、農産物の中でメキシコ最大の関心品目であったということから、当初は、今般の合意内容を大幅に上回る特恵枠の設定等の要求があったという経緯がございます。

 こうした中で、豚肉につきまして、国内生産への影響を極力回避するという観点から私どもは粘り強い交渉を行いまして、先ほどお話がありましたように、特恵枠の大きさにつきましては、まず、三・八万トン、これは九九年から二〇〇三年までの五年の平均の実績でございます。この実績をベースに、五年目までに約二倍の八万トンにするということで合意をしたということでございます。

 豚肉につきましては、輸入につきましては、安価な豚肉の輸入を抑制するという観点から、差額関税制度というのが設けられております。本合意につきましてはこの差額関税制度の根幹を維持するということができましたことから、国内の養豚経営への影響ということは極力回避できるのではないかというふうに考えております。

 次に、牛肉の輸入量についてのお尋ねでございます。

 輸入量、お話がございましたように、くず肉、調製品等を含めてでございますが、二〇〇二年に六十トンでございました。二〇〇三年は〇・二トンということでございますが、本年におきましては、九月までで千七十三トン、うち、くず肉等を除きます冷蔵、冷凍牛肉は八百六十五トンというふうになっております。

 この輸入増加につきましては、昨年の十二月の米国のBSE発生におけます米国産牛輸入停止、これに伴う代替輸入という側面があるのではないかというふうにとらえております。

 また、十トンにつきましては市場開拓枠ということで、御指摘のとおりでございます。これは、輸入実績の少ないオレンジ生果ですとか鶏肉との横並びということで開拓枠を設けているということでございます。

 以上でございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 質問時間が七、八分残っておるんですが、定足数が足りていないような感じがしております。

 一たん質問をとめたいと思いますので、委員長、よろしくお願いします。

金田委員長 定足数はあるんですが、与党の出席が少ないことは認めざるを得ません。すぐに電話してください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

金田委員長 速記を起こしてください。

 吉田泉君。

吉田(泉)委員 シンガポール、メキシコに次いで、今度はASEAN諸国とのEPAが交渉中でございます。御存じのように、タイ、フィリピン両国においては、看護師さんとか介護福祉士、こういう人の移動の自由化も要求しているということであります。日本がこれから人口減少する時代に入ろうということで、私は積極的にそういう方針で臨んだ方がいいというふうに考えておるんですが、幾つかASEANそして中国に関しても質問を準備したんですが、時間の関係で、残りの時間を、人口減少時代の財政運営ということをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

 実は、最近の新聞ですけれども、ことしの五月一日時点で日本の総人口が前年比初めてマイナスになったという新聞記事がございました。これは一時的なもので、また回復するということでありますが、しかしながら、政府の推計でも、これは平成十四年に出された推計ですが、中位推計ベースで、二〇〇六年、一億二千七百万で日本の人口はピークを打って、二〇五〇年、ちょうど一億人ぐらいまでに減る、ということは、二〇%ぐらいこれから四十五年で減るということでございます。その中でも、十五歳から六十四歳、いわゆる生産年齢人口が激しく減少して、これはピークから比べると四〇%減る、二〇五〇年には四〇%減るという政府の推計が発表されております。民間といいますか、大学の先生によってはもっと厳しい数字を出す方もございます。

 せんだって、十月末の、今度は参議院の本会議で、民主党の朝日議員は小泉総理大臣に対して、この問題をどう認識するかという質問をしたんですが、総理大臣は、少子高齢化が進んでいるという答弁に終始しまして、はっきりした認識は示されなかったと私は思っております。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

 そこでお伺いしますが、一つは経済に与える影響であります。

 人口が減少する、労働力人口が減少するということは、生産力、供給側に対しましても、それから、給料を稼ぐ人が減るわけですから需要側に対しても、両面マイナスの要因になります。五十年単位で見て、日本のこの人口減少、経済の成長にどういう影響を与えると考えておられるのか、お伺いします。

堀田政府参考人 人口減少の経済成長率への影響についてお尋ねでございます。

 先生御指摘のように、我が国におきましては今後世界に例を見ない急速なテンポで高齢化が進展し、二〇〇六年をピークといたしまして順次減少するというふうに見込まれております。

 一般に、人口減少は消費者の減少や労働供給の減少など需要と供給両面に制約要因となりまして、長期的には経済成長へマイナスの影響を及ぼすというふうに考えられます。しかしながら、他方で、女性や高齢者が働きやすい仕組みを構築し労働力率を高めていくといったこと、それから規制改革等によりまして新規需要を創出する、あるいは生産性や国際競争力を強化するといったことによりまして、持続的な経済成長を達成することは可能であるというふうに考えております。

吉田(泉)委員 マイナス要因ではあるが、生産性の上昇や女性の労働参加等で持続的な経済成長は可能であるという認識と承りました。

 私はもっと悲観的に見ております。そこを、機会を見てもっと詰めていきたいと思います。

 最後になりますが、谷垣大臣に、人口減少時代、私はこれは経済の縮小も伴わざるを得ない、それを前提に経済財政を運営すべきだというふうに考えておるんですが、改めて、この財政運営の基本哲学、五十年先をにらんだということでよろしいんですが、大臣の哲学をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 大きな問題ですので、十分隅々まで考え詰めているお答えでは必ずしもないんですが、今委員が御指摘のように、人口が減るということは労働力が減ってくる、委員はちょうど団塊の世代の真っただ中で育たれたと思いますが、戦後の日本の経済成長も、そこの非常に労働力が多い時期にいわばボーナス的に頑張ったという面も私はあるんじゃないかと思いますね。その団塊の世代がこれからだんだん定年を迎えていく、労働力が減っていくということが日本経済に影響がないはずはないというふうに私は思います。

 それから、もう一つの問題は、日本経済の成長を支えてきた一つの力は労働力ですけれども、もう一つの力はやはり資金だったと思うんですね。日本は貯蓄率が高い、豊富に貯蓄がある、こういうふうに言われてまいりまして、つい最近までは確かに世界的に見てもそうだったと思いますが、この数年急速に貯蓄率が落ちておりますのは、やはり高齢化が進み、現役世代にためたものをだんだん吐き出していく、さっき申し上げたその労働力のボーナスがあった時代を過ぎ去りつつあるということが貯蓄率の面にもあらわれているんではないかと思います。そうしますと、経済成長を支える、人だけではなくて、金も今後十分にあるのかどうかという問題が出てくるんではないかと私は思います。

 それに対する答えとしては、先ほど内閣府からもお答えがありましたけれども、やはり日本の技術力を高めるとか、あるいは魅力を高める。昔はよくハゲタカとかいう言葉がございまして、外資は歓迎しないという雰囲気もありましたけれども、資金が少なくなっていくと果たしてそういうことでいけるのかどうか、やはり日本に投資をするのが有利なことであるというような魅力を日本がつくる必要があるのではないか、資金の面ではそういうふうに思います。

 財政運営の基本は何かということをお問いかけになりました。

 今財政は、御承知のように大変国債がもう積もっている状況でございます。これは次世代の人たちに将来税を納めていただいて返していこう、そういうものでありますから、人口が減っていく、労働力が減っていくときに、余りツケを先送りにしているととてももたなくなっちゃうぞというのが、現在の日本の現状を考えたときに、財政運営の基本哲学はやはりそこに置くべきではないかというふうに私は思っておりまして、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを改善するとか言っておりますのも、できるだけ早い時期に何とかツケを先送りしない体質をつくっていかなきゃいかぬということだというふうに考えているわけでございます。

 では、そのためにはどうしたらいいかということになるわけでございますが、これも論じ出せば切りがございませんけれども、ことしの一年間の歳出を見ますと、大きな部分は、一つは社会保障でございます。それからもう一つは交付税、国と地方の関係でございます。それとあとは国債費、つまり利息の支払い。この三つを合わせると六五%でございますから。ただ、利息の方はそれだけを圧縮するというわけにはなかなかいきませんので、どうしても社会保障それから国と地方の関係というのを見直していく。まあ、今その議論をやっている最中でございまして、いろいろ苦しいことも多いわけでございますけれども。

 今委員が、さっきの御趣旨は、これからある程度労働力も減っていく、ダウンサイジングもせざるを得ないんじゃないかという御趣旨だったと思います。すぐにダウンサイジングと決め込む必要があるというわけでは私は必ずしもないと思っておりまして、科学技術で生産性を高めるとか、いろいろなことを試みなければいけませんけれども、やはり社会保障等に関しましては身の丈に合ったものにしていくという努力がこれからしばらく欠かせないんではないかな、こんなふうに考えております。

 大きな問題でございますので、十分隅々まで目が行き届いたわけではありませんが、あらましの今考えていることを申し上げた次第でございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、五十年で生産年齢人口が四割減るというときに、持続的な今までのような経済成長はあり得ないと思います。今のような財政哲学で何とか、小さな政府といいますかスリムな政府を目指したいと思います。ありがとうございました。

金田委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 今回議題となっておりますメキシコとのEPA関連の法改正につきまして、財務大臣以下政府参考人の皆さんにもお越しいただいておりますので、質問を続けさせていただきたいと思います。

 本来、国家間の貿易につきましては、今百四十六カ国という数字もお示しいただきましたけれども、多くの国が加盟するWTOのルール、そしてまた協定に基づいた形で、可能な限り円滑に、そして自由に貿易が行われているというふうに認識をしております。

 WTOの役割、そしてまた機能のおかげで、今日、政治的また軍事的紛争に拡大する危険もはらむ貿易障壁であるとか、また貿易摩擦が削減されているというふうに認識しておるわけですが、近年、WTOの基本原則であります最恵国待遇の例外として認められていますFTAが世界の潮流になっておりますけれども、EPA、そしてまたFTAというこの地域貿易協定、なぜ今取り組まなければならないのか、基本的な部分ではありますし重複もありますけれども、まずその点につきまして財務大臣の立場でお答えをいただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 今の御質問は、メキシコというだけではなくて、一般的になぜFTAに取り組まなければならないのかということと、メキシコについてなぜというのも含まれていたのかなと思うんですが、一般的に申しますと、FTAあるいは経済連携協定を結ぶ流れというのは世界じゅうで非常に加速してきているというふうに私は思います。そうするときに、日本は、やはり貿易立国、資源も海外に求める、こういうようなことでずっとやってまいりましたし、今後ともそういう流れは日本にとっては必要なものだろうと思いますが、自由貿易協定がどんどん諸外国で進んできておりますときに、日本がその流れの外に立つということは、いろいろな意味で不利益をこうむってくることが多いだろうというふうに思います。

 もちろん、WTO等の流れもございますけれども、先ほどもどなたかに御答弁しましたように、WTOもどんどん進んでいけばいいわけですが、一時WTOはなかなか進まないなと思うような時期もありまして、そういう時期にFTAがどんどん伸びていったわけでありますので、日本もやはりその流れの中で自国の経済的な繁栄というものを考える必要があるということが基本ではないかと思います。

 メキシコのことはお聞きでなかったのかもしれませんが、次ですか、じゃ、これで。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 なかなか思いどおりにあれかもしれませんけれども、第一段階、シンガポールと協定締結された中で、今回、アジアの諸国ではなくてなぜメキシコになったのか。今までの答弁と重複する部分はあるかと思いますけれども、私たちは、何らかの大きな理由であるとか何らかの動向というものが存在したのではないかというような、そんな疑問を実は持っております。

 日本がメキシコとの地域貿易協定を推進するに至ったこれまでの経緯、そして背景、また締結によって得られる効果というものを財務大臣はどのように見込んでいらっしゃるのか、その辺をあわせてお答えをいただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 私も、自民党の木村委員にお答えしたように、メキシコへ行ったことがなくて申し上げるのは甚だ内心じくじたるところがあるわけですが。

 メキシコという国は、人口も約一億人、やはり一億人を数える人口を持つ国というのはなかなか大国でございます。それから、経済面で見ましても、経済規模は世界第十位の経済規模を持っている、成長していく市場だ、そういう国なわけですね。それで、御承知のように、北米自由貿易協定、NAFTAですが、これを一九九四年に結んでおります。それから、二〇〇〇年にEUとの協定をメキシコは結んだわけですが、そういうふうになりますと、先ほど申し上げましたように、日本企業が関税の面で欧米企業に比べて不利な立場に立ってきたというのは現実であろうと思います。

 それから、政府調達等におきましても、メキシコはFTAを締結した国の企業を未締結国の企業よりも有利に扱ってきたということの中で、その政府調達の面でも我が国の関係の不利益が顕在化してきたということがございまして、そういう流れの中でメキシコと経済連携を進めようじゃないかという話になったわけでございます。

 それで、ここでこういう協定ができましたので、今申し上げたような不利益の状況を解消することができる。そして、今後、先ほど一〇・六%とメキシコは推計している、これは根拠ははっきりいたしません、本当にそんなにいくかどうかはいろいろ議論があるところでございますけれども、これが二国間の健全な貿易の発展、相互の経済の発展というところに私は結びついていくんではないかというふうに考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 今回は、財務だけではなく、ありとあらゆるいろいろな分野に関連していることでもありますし、きょうは経済産業省の方にもお越しをいただいておりますので、今後の日本としての戦略について質問をさせていただきたいと思います。

 今後、協定締結が予定されているタイ、そしてフィリピン、マレーシアなど、現在交渉中のアジアの諸国との間で、例えば、先ほど吉田委員も触れられましたけれども、外国人労働者の受け入れ問題という大きな課題を初めとして、非常に際限なくこの対象分野というものが広がっていこうかと思います。その過程の中で、交渉もかなり難航が予想されるわけですけれども、この先、日本として一貫した姿勢というものを貫いていかなければならないというふうに思いますが、その辺の覚悟につきましてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

三輪政府参考人 答弁申し上げます。

 我が国が現在取り組んでおります経済連携交渉におきましては、締約国の経済全体の活性化に資するべく、単に関税の撤廃のみならず、投資ルールの整備、人材交流の円滑化、ビジネス環境整備、政府調達、知的財産権、二国間協力等、さまざまな分野を取り扱っております。

 経済産業省としては、我が国が貿易立国であるということにかんがみまして、とりわけ関税の撤廃及び投資ルールの整備というのが我が国の持続的な経済発展にとって極めて重要な分野であると考えております。他方、交渉は相手国がございますので、交渉におきまして、先方の関心分野というのが議論の対象になります。その中には、農産物を含めた関税の撤廃、外国人労働者の受け入れ等、我が国にとってセンシティブな分野も含まれてくることになると理解しております。

 とりわけ外国人労働者の受け入れにつきましては、我が国で少子高齢化が進む中、外国の優秀な専門技術家の受け入れにより、我が国の経済社会の活性化や国際化ということについてメリットがあるというふうに考えております。要は、双方センシティブな分野はございますが、双方がこの点につきしかるべく配慮をして、譲るべきは譲る、守るべきは守るという精神で、双方にとってメリットの高い約束を実現するということが肝要だと考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。ぜひ一貫した姿勢、経産省だけではなく各省庁との連携をしっかりと深めていただいた上で、今後交渉をぜひ進めていただきたい、そのことだけは要望をしておきたいと思います。

 さて、対アジア諸国との協定の締結でも最大の懸案事項というふうになることを予想されている農林水産の分野について、質問をさせていただきたいと思います。

 農水分野については、我が国の国内の構造改革の推進、そして国際競争力ある農林水産業の育成の必要という観点からも問題が非常に大きいのではないかというふうに考えるわけですが、とりわけ、今回、農産品の問題で一番大きい課題、焦点と言われております豚肉の取り扱いについてでありますが、日本における養豚農家に対しての影響をどのようにお考えでいらっしゃるか、まずそこから答弁をお願いしたいと思います。

染政府参考人 お答えいたします。

 メキシコとの交渉に当たりましては、農林水産業の多面的機能への配慮、あるいは食糧安全保障の確保や構造改革の努力に悪影響を与えないように十分留意して取り組んできたところでございます。

 このような中で、豚肉につきましては、現行の従価税率、これは四・三%を二・二%にするなどのメキシコの専用枠を設定いたしました。また、その枠内数量を現行輸入量の三万八千トンから五年目に八万トンにすることとしております。これは安価な豚肉の輸入を抑制するという差額関税制度がとられておるところでございますが、この根幹を堅持するものでありますことから、国内養豚経営への影響は極力回避できるものではないかというふうに考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、オレンジの果汁生産につきましてですけれども、これは当初よりも輸入枠の設定が随分拡大したようですけれども、この点について影響をどのようにお考えか、お願いをいたします。

染政府参考人 オレンジジュースについてでございます。

 昨年の十月の閣僚交渉時に、メキシコ側から最後の段階で突然千トン台のオーダーから万トン台のオーダーと大幅に要求がエスカレートされましたことで交渉が妥結しなかったという経緯がございます。我が国といたしましては、その後粘り強い交渉を積み重ねまして、最終的には、最近の輸入量相当の四千トンから五年目に六千五百トンの枠を設定したところでございます。

 今回のオレンジジュースの交渉結果は、メキシコ果汁の、これは今後輸入されると予想されるところでございますが、その過半が他の国の果汁と代替するものと見込まれますことから、国内果汁農業への影響は、極力これも回避されるのではないかというふうに考えておる次第でございます。

田島(一)委員 農産品の主要五品目、この輸入枠、そして関税率などに関する五年後の再協議、これから恐らく検討課題というふうになっていくかと思うんですけれども、この再協議に向けた政府の考え方、据え置いていくのか、それとも拡大をしていくのか。こうした見きわめが多分必要になってくると思うんですけれども、この再協議に向けての考え方、それと、再協議後、農家へどのような影響が及ぶとお考えか、その辺の見込みも含めた形でお答えをいただけないでしょうか。

染政府参考人 FTA交渉におきましては、実質的にすべての貿易に関する関税を十年以内に撤廃することが原則でありますが、今回の日墨FTAにおきましては、農産物五品目につきましては、一つは現在進行中のWTO農業交渉の帰趨や、あるいは今後輸入されることとなりますメキシコ産農産物と他国産農産物との代替関係、この辺を見きわめる必要があるというふうに考えています。このため、関税撤廃の原則を適用せずに、とりあえず五年の低関税枠を設定することでメキシコ側と合意したところでございます。

 五年後の再協議のことでございますが、五年後の再協議に当たりましては、以上の事情を十分に踏まえまして、これらの品目の国内生産への悪影響が生じないよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

田島(一)委員 そうお答えいただくしか仕方がない段階かとは思いますけれども、随時、国内産業の育成、いわゆる豚肉もそうですし、オレンジ果汁もそうです、地域の基幹農業が本当に今回のこのFTA推進によって迷惑をこうむった、被害をこうむったというようなことのないように十分目を行き届かせていただきたい、このことだけはぜひお願いしておきたいと思っております。

 それにも増して、農業基本法に基づく基本計画の見直しにおきます農業の構造改革との整合性、このあたり非常に気になるところでありますけれども、今後どのように図っていこうとお考えか、お答えいただけませんでしょうか。

吉村政府参考人 基本計画の見直しとFTA交渉の整合性に関するお尋ねであります。

 まず、基本計画の見直しに関しましては、我が国の農業をめぐる状況について、消費者の食の安全、安心への関心の高まり、構造改革の立ちおくれなどの課題に対応した政策改革が求められている状況にあるというふうに認識しております。こういった状況の中で、現在、今後の農政推進の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しについて、食料・農業・農村政策審議会で精力的に検討を進めているところであります。審議会における各界各層の代表者の幅広い意見を踏まえながら、食糧自給率の目標や基本政策につきまして、来年三月の閣議決定を目指して取り組んでいるところであります。

 一方、各国とのFTA交渉に当たりましては、農業の多面的機能への配慮、我が国の食糧安全保障の確保に加えまして、ただいま申し上げましたような我が国農業における構造改革の努力に悪影響を与えないように、国内農業政策と整合的に交渉を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 次に、WTO交渉との整合性についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、WTO交渉における我が国の農業の多面的機能の主張というものと、今回の本協定における農林水産物の市場開放、この二つの整合性について気になるところであります。経済効率性になじまない農業の多面的機能というものをどのように踏まえ、この市場開放との整合性をとっていかれるのか、この辺のお考えをちょっと整理したいんですけれども、御答弁いただけませんでしょうか。

吉村政府参考人 委員御指摘のとおり、私ども、WTO交渉におきましては、多様な農業の共存ということを基本理念に、農業の多面的な機能、それから食糧安全保障等の非貿易的関心事項に適切な配慮が払われた柔軟性のある貿易ルールの確立を目指して交渉に臨んでいるところであります。

 各国とのFTA交渉に当たりましても、本年の六月に農林水産省において、農林水産物の取り扱いについての基本方針というものを決定しておりますが、その中で、農林水産業の多面的機能等に配慮しながら品目別の柔軟性を確保するということにいたしております。具体的には、我が国の基幹作物あるいは地域農業における重要品目など、守るべきものは守り、譲れるものは譲るという考え方で、個別品目の事情に応じて関税撤廃の例外品目や経過期間を設ける、こういったことにより対応していきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 きれいなお答えをいただくんですけれども、本当に大丈夫かなという心配を実はしております。

 経済効率性にはどうしてもなじまない多面的な機能というものをしっかりと踏まえておかないと、この先、いわゆる時代の潮流としてこのFTA、それからEPAがどんどん世界各国と協定締結という足がかりになってまいりますと、本当にこの日本の農業に対してどのような影響を及ぼすのかという点が案じられてならないわけであります。これは私ども民主党だけではなく自民党の皆さんも同じことを多分御懸念されていることというふうに思います。

 日本の農業、農は国の基本といいながら、それが脅かされようとしている今、本当にその危機感を感じてならないわけでありますけれども、本当に大丈夫なのかなと心配をしております。また違う場面でこの議論については引き続きやらせていただきたい、そんなふうにも思っておりますので、またこの先よろしくお願いをいたします。

 さて、最も懸念をされているのが迂回輸入の防止であります。他の委員からも質問がありましたけれども、アメリカ産のBSE感染牛がNAFTAの主要国でありますこのメキシコを迂回して輸入されるのではないか、そんな危険性が最も懸念されているところであり、消費者はもちろんのこと、関係団体にも大きな不安を与えているところであります。

 御答弁でも、今日まで日本とメキシコ両国が原産地証明を徹底することで迂回輸入の防止に努力するということをお答えいただいておるんですけれども、ことし七月、これは韓国の朝鮮日報で拝見したんですけれども、韓国に輸入されているメキシコ産の牛肉にアメリカ産の牛肉がまじっていたということが明らかになり、また、そのまじっていたアメリカ産の牛肉も既に韓国市場の中で流通、販売されていたということが明らかになっております。業者がこうした安いアメリカ牛をメキシコ牛にまぜて、約一%程度の数字だったという検査結果ではありますけれども、この日本に対しても全く入ってこないと本当に断言できるのかどうか、この危険性が消費者を初め一番不安材料として投げかけているように私どもは感じております。この先、原産地証明の徹底が果たしてどこまで信用できるのか疑問でありますけれども、この点につきまして、もう一度確固たるお答えをいただけませんでしょうか。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 メキシコからの牛肉の輸入につきましては、農林水産省といたしましては、家畜伝染病予防法に基づきまして輸入検査を実施しております。その際には、メキシコ政府に対しまして、メキシコで生まれ飼養された牛のものであること、または米国などBSEの発生国で生まれ飼養された牛でないことの証明を求めるなどして、米国などBSE発生国からの牛肉がメキシコを経由して日本に輸入されることがないよう措置を講じているところであります。これらの措置の実施に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

田島(一)委員 その万全というのが本当にできるのか、何を担保におっしゃるのか、非常に不安なわけであります。

 例えば、EUなんかは非常に、この間の首藤議員の質問でもあったように、そこまでやるかと思えるくらいの、検査官であるとか調査団を派遣して日本にもかなり厳しい形で輸入対策というものをとられております。本来でありますならば、日本も、相手が証明する原産地証明だけではなく、何らかの検査体制もしくはそれ以上のものを相手国に相当要求していって、初めてそれで大丈夫だというふうに言えると思うんですけれども、本当に絶対、危険なBSE感染牛が入ってはこないと断言できるのかどうか、そこをもう一度しっかりとお答えいただけないでしょうか。万全な対策というものについて、具体的なものをもう少しお示しください。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 私ども、輸入条件につきまして、輸出国で遵守されているかどうかを確認するために、現地に職員を派遣して調査を行う等の対策をとって、そういう形での万全をとっていきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 調査団を派遣できるというふうに盛り込まれているわけですけれども、これは、できるということはやらなくてもいいという裏返しになるんですね、ちょっと言い方はすごく嫌らしいかもしれませんけれども。ただ、きちっと検査をして、そして安心、安全を国民の皆さんにお示しする、これが当然やらなければならない務めだというふうにも思います。

 私たち、それこそスーパーで表示はしっかりとされているだろうと信じて、皆さん、アメリカではない牛肉を買い求めていただいて消費もされています。しかし、一たん例えば流通の過程が変わっていく、例えばスーパー以外で加工品として売られてしまった場合、それが果たしてどこのものなのかもわからないような状況、これは今回のFTA等々関係なしにですけれども、ただ、メキシコ産ですらアメリカから迂回して入ってきたという事実が韓国で実証されているところであります。

 本当に日本に入ってこないんだということが一体何を担保にして皆さんに示せるのか、そういうお答えをいただかないと、私たちもこの不安を抱えて、例えば地域の皆さんにメキシコの牛肉だって危ないですよということを言って回らなければならないような、そんな危険性を今はらんでいるというように思うんですね。この辺の、絶対安心だという担保をしっかりお示しいただかないとやばいと思うんです。

 その一方で、メキシコ産の、例えば牛に対してでも、一体飼料として何が与えられているのか、この辺についてももう少ししっかりとした説明をしていただくべきだと思います。例えば、アメリカ産の肉骨粉は絶対に入っていないということが何をもって証明できるのか。また、飼料の輸入状況等についてもまだまだ疑問を持たざるを得ないところがあろうかと思います。肉骨粉の使用状況であるとか穀物のアメリカからのメキシコへの輸入状況等、この辺の説明もあわせてお聞かせいただけないでしょうか。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの現地調査でございますが、行けるという規定ということでありますけれども、実際にこれまでにも行っております。具体的に申し上げますと、平成十一年の三月、それから平成十二年の三月、平成十六年の四月にそれぞれ調査に行っておりまして、現地の衛生条件の確認等をやっているところでございます。

 それから、肉骨粉の件でございますが、メキシコでは、一九九四年からBSE発生国からの反すう動物の肉骨粉の輸入を禁止しております。アメリカからは、昨年末の発生確認以降、禁止がされているところであります。また、二〇〇〇年からは、反すう動物の肉骨粉を反すう動物へ給与することをメキシコでは禁止しております。さらに、メキシコ政府が二〇〇四年一月に制定いたしましたBSE対策プログラムにおきまして、農場や飼料関連施設のサンプリング調査など、牛用飼料の交差汚染防止対策を講じているというふうに承知をしております。

 なお、飼料規制を含むBSE対策の実効性を確認するために一九九六年から実施しておりますサーベイランスにおきましても、BSEの発生は確認をされておりません。

 これらを総合的に勘案いたしますと、メキシコの牛に米国で製造されました肉骨粉が給与されることは想定しにくいというふうに考えております。

田島(一)委員 例えばEUのように主権侵害をしてまでその検査体制を充実しろ、本当はそこまで言いたいところではありますけれども、主権侵害には当たらない範囲で、やはり日本に対して、日本の消費者に対して安心、安全をしっかりと示していくこと、このためには検査官であるとか調査団というものを、一年に一遍というようなペースではなくて、それこそ抜き打ち的にでもやっていただかなければ、この先、今回のFTA自体が全くむだになってしまう可能性もはらんでいると私は思います。国民の皆さんが一番不安に思っていらっしゃるところ、これをしっかりと取り除いていくことが農水省においては一番重要な課題だと思いますし、今回の協定締結を実効性あるものにしていくことの大きな役割ではないかというふうにも思います。

 とりわけ、肉骨粉等は輸入が禁止されているというふうにありましたけれども、例えばスターリンクに汚染されているトウモロコシの穀物の話も首藤議員からもお話がありました。こうした課題はまだまだ出てくるかと思いますので、こうした検査体制、チェック体制というものをしっかりと確立していただくことを強く要望させていただき、時間も参りましたので、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 提案されている法案は、日本・メキシコEPA、経済連携協定、これに定められた農産品などの関税を軽減、撤廃するための国内措置と、それから二国間セーフガードを定めたものであります。

 まず前提として、経済産業省にお聞きしたいんですが、この協定によって輸出面で日本に幾らの利益が発生すると見ているか、試算を示していただきたいと思います。

三輪政府参考人 答弁申し上げます。

 メキシコは、一九九四年にNAFTA、二〇〇〇年にEUとの自由貿易協定を締結しておりまして、この結果、主要先進国がメキシコの市場に有利にアクセスする一方で、我が国の企業は平均約一六%の関税負担をこうむり、競争上不利な立場に置かれてきました。この結果、一九九四年、NAFTA締結直前のメキシコの日本からの輸入のシェアは六・一%でございましたが、九九年には三・七%に減っております。

 この数値を用いまして、一九九四年から九九年まで、仮に日本よりの輸入のシェアが維持されたとしたときに日本が幾ら輸出機会を逸したかということを経産省において試算しておりまして、この数値が四千億円ということでございます。

 今後どれだけの利益がという御質問でございますが、経産省としては、これで欧米企業と対等の立場で日本の企業がメキシコ市場において競争することが可能となりましたので、今後漸次アクセスが改善されるのに伴ってビジネスが従来どおり拡大していくものと期待しております。

佐々木(憲)委員 輸出では四千億円の利益というふうに想定をしていると。そのほとんどが工業品であります。

 では、輸入の面で、これは関税局長に、この関税引き下げあるいは廃止で幾ら輸入がふえると想定しておられますか。その試算はありますか。

木村政府参考人 直接お答えするのはなかなか難しいわけでございますが、今回の日・メキシコ協定におきましては、先ほどもお話し申し上げましたとおり、全体で日・メキシコ間の貿易額の九割以上が無税化されるということで、今後、両国間の貿易が促進されることが期待されるわけであります。

 同時に、その関税引き下げにおきましては、これも先ほど農水省の方から説明がありましたように、個別品目の事情に応じまして関税撤廃の例外品目や関税割り当てを設定することなどによりまして、国内への影響を極力回避できるよう対応してきたところであります。

佐々木(憲)委員 要するに、数字はないわけですね。数字はないんですね。あるかないか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 定量的に数字でお示しすることはなかなか難しいと思います。

佐々木(憲)委員 農水省に聞きますが、日本にメキシコの農産物が幾ら入ってくると見ておられますか。それは日本農業にどのような損失をもたらすというふうに想定していますか。数字があったら示してください。時間がないので簡単に。

吉村政府参考人 ただいま財務省からも御答弁ありましたように、今回の協定におきましては、品目ごとの農林水産業における重要性等を勘案して、必要に応じて関税撤廃の例外としたり経過期間を設定するなど、国内農林水産業への影響を極力回避するとともに、仮に輸入が急増した場合には、国内で影響が生じた場合に発動できる二国間セーフガードを確保しているところであります。

 関税の引き下げや撤廃による農林水産物の輸入の増加につきましては、為替レートの動向や他の国からの輸入動向等を勘案することが必要であり、個別品目の具体的な輸入増加量を見通すことは困難というふうに考えておりますけれども、さきに申し上げたような措置によりまして、輸入が急増することはないというふうに考えております。このため、直ちに国内対策を講ずることが必要な状況になるとは考えておりません。

佐々木(憲)委員 要するに、数字がないわけですね。

 つまり、輸出の面で、工業品が今まで輸出できなかったものができるようになる、それが約四千億であると。しかし、輸入で、幾ら輸入されるか、その想定はない。農産物にどういう影響があるか、これも具体的な数字はない。被害を受ける側は数字はない。具体的な保護措置といいますか法措置あるいは補償措置、それも、今話がありましたように、被害が想定できないと言いながら具体的な措置もとらない、セーフガード以外にないと。

 どうもこれは、大臣、輸出と輸入の面で、工業品の輸出者は利益を受けるけれども、被害の方の想定はないと、ちょっとこのバランスが欠けるのではないか。ちょっとどころか大変バランスが欠けるのではないかと思いますが、どう思われますか。

谷垣国務大臣 今までの御答弁にもありましたように、定量的な数字でどうなるかと示すのはなかなか難しいことだと思っておりますが、委員が御関心の農業に対するマイナスの影響という点は、この協定を結ぶに当たって関係者が一番意を用いたところであるというふうに思っております。

 具体的に申しますと、農林水産業の多面的な機能を損なうことにならないかとか、それから食糧の自給率あるいは安全保障という観点もあると思いますし、それから、日本国内では農業をより強いものにしていくための構造改革の努力が進んでおりますけれども、そういうものに水をかけることにならないかというようなことを考えながら、向こうの相手のあることでありますから、議論をしてまとめたのがこの案でありまして、その具体的なあらわれは、今までも御議論をいただいておりますけれども、例外品目とか関税割り当てとか、あるいは二国間セーフガードというような制度ではないかと思います。したがいまして、もし問題があるという場合には、今申し上げたような制度を適切に使うということで弊害を乗り越えていかなければならないと思っております。

佐々木(憲)委員 どうも、輸入の面での損害といいますか、それが想定されるのにその試算はないと。つまり、交渉でいろいろやるというのは、それは確かに影響が少ないようにやるというのは当然だと思うんです。その場合、最初の相手側の要求からいうとこのぐらいの大きな影響が出る、しかしそれはこの程度にとどめたんだというような具体的な数字も示さないというのは、私は、これは説明として国民に対してやはり不誠実ではないかと思います。影響が想定はされるがわからないがと言いながら、では具体的にその影響が出た場合の補償措置というのはセーフガードしかないんです。セーフガードの発動も非常にやりにくい、これが現実ですね。

 ですから、私はこういうものが、もちろん、日本とメキシコの間で今回こういう法案が提起されておりますけれども、しかし、これはアジア、フィリピンですとか、さらにマレーシアですとかタイですとか、あるいはそのほかの国々に広がっていく、そうなりますと、その影響は積み重なっていくわけです。

 影響の試算はできません、しかし影響はあるでしょうと言いながら、現実にはそれに対する保護措置がない。私は、これは全く無責任だと思いますので、今回のこの二国間協定、初めて農産物が入ってまいりましたが、第一歩でそういうあいまいなやり方ではこれは賛成することはできないということを申し述べまして、終わらせていただきます。

金田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案は可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

金田委員長 次回は、来る九日火曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十三分散会


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