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第7号 平成16年11月10日(水曜日)

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平成十六年十一月十日(水曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 鈴木 俊一君

   理事 村井  仁君 理事 中塚 一宏君

   理事 原口 一博君 理事 平岡 秀夫君

   理事 谷口 隆義君

      岡本 芳郎君    木村 太郎君

      熊代 昭彦君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    高木  毅君

      竹本 直一君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      宮下 一郎君    森山  裕君

      山下 貴史君    渡辺 喜美君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      小林 憲司君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    樽床 伸二君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   財務副大臣        上田  勇君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  小野 晋也君     高木  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     小野 晋也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 信託業法案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第八五号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、信託業法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁監督局長佐藤隆文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。私、一年間副大臣をさせていただきましたので、きょうは一年半ぶりの質問でございますので、よろしくお願い申し上げます。

 信託業法でございますけれども、今回の改正の一つの柱は、従来の受託可能財産を限定しておりましたものを、範囲を拡大しまして、財産権一般を受託可能化したということが一つございます。もう一つは、信託業の担い手を拡大いたしまして、従来は金融機関に限られておりましたのを、一般の事業会社を含む参入に拡大した。

 この二つが大きな柱かと思いますけれども、この法案提出に至りました、具体的にどういうニーズがあって今回の改正につながったのか、その点をまず伺いたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 受託可能範囲の拡大あるいは担い手の拡大に伴う具体的なニーズはどのような点があるかという御質問でございますけれども、受託可能財産の範囲の拡大に関するニーズについては、例えば知的財産権の信託について、知的財産権のグループ企業内での集中管理、あるいはTLOによる大学技術の企業等への移転促進、そして、ベンチャー企業、中小企業等が保有する特許あるいはブランド等を知的財産の管理を専門とする者に委託することによる権利の効率的な管理、こういったニーズがあるというふうに考えております。

 また、一般事業会社を含む信託業参入拡大の具体的なニーズといたしましては、不動産会社が、不動産の販売あるいは賃貸に関して有するノウハウというものを生かして受託不動産の管理運用業務を行うこと、そして信託会社が、投資家から信託を受けた資金を利用し中小企業等に貸し出しを行うこと、そしてその他、金融機関以外の者が信託業へ参入をし、あるいは多様な信託商品の提供を行うこと、こうしたニーズが高まってきているというふうに考えております。

石井(啓)委員 それでは、条文に即しまして基本的なことを幾つか確認していきたいと思っております。

 まず、今回は、信託業以外に信託業の一類型として、管理型信託業あるいは信託契約代理業、信託受益権販売業等々の新しい業種をふやしているわけでありますけれども、それぞれの参入基準が新たに設けられておりますので、それを順次確認していきたいと思っています。

 まず、一般の信託業の参入基準でございますが、法文の第五条の第一項の第二号には「信託業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有していること。」とありますけれども、これが具体的にどういうことを言っているのか。

 次に、同じく同項の第三号「人的構成に照らして、信託業務を的確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有していること。」これが具体的にどういうことを指すのか。

 さらに、第五条の第二項の第二号では、政令でゆだねられておりますけれども、最低資本金を定めることになっていますが、これが具体的にどういう額なのか。

 この三点、まとめて確認したいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問の信託業の免許の関係の参入基準でございますけれども、まず第一に、御指摘のように、信託業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有することということが規定されております。

 一般的に、信託制度が国民に活用されるためには、やはり委託者が安心して財産を任せることができるということ、さらに、安定的、継続的に信託サービスを提供することができるということ、さらに、仮に管理失当責任などが生じた場合に、それによる損害賠償にもたえ得るといった点、そういった要請を満たす必要があるというふうに考えておりまして、そのためには、やはり確固たる財産的基礎を有することが大事であろうというふうに考えております。

 そういった観点からこの財産的基礎といったものが基準に入ってきているわけでございますが、具体的にはこの財産的基礎は、資本の額が政令で定める最低資本金額を上回っていること、さらに、純資産額が政令で定める金額を上回っていること、さらに、収支の見込みに照らして、営業開始後三営業年度を通じて純資産額が基準純資産額を下回らない水準に維持されると見込まれることといったことを基準にしようというふうに考えております。

 それから二つ目の、人的構成に照らして、信託業務を的確に遂行することができる知識経験を有し、かつ十分な社会的信用を有しているといった基準がございます。

 これにつきましては、例えばこの基準を満たさないケースといたしましては、営業部門、資産部門、運用部門、あるいは内部監査部門、法務・コンプライアンス部門と、信託の受託者にはそれぞれの部門があるかと思いますが、そういった部門に信託業務あるいは信託関係法令に係る知識を有する者を配置していない場合、こういった場合にはやはりこの基準を満たさないのではないかと思います。

 さらに、経営者の経歴がその行おうとする信託業務と無関係であり、かつ信託業務の的確な遂行に問題があると認められる場合、さらには、経営者が他の法令違反で処分を受けたことがあるといったような場合には、やはりこの人的構成の要件については問題があるというふうに思っておりまして、そういった観点からの基準をつくることを想定いたしております。

 さらに、最後のお尋ねの最低資本金の額でございます。これにつきましては、今御紹介のございましたように、法令上、特に顧客資産の運用等の高度な業務をみずからの裁量でもって行う免許制の信託会社につきましては、やはり顧客保護の必要性が大きいというふうに考えられますものですから、政令で定める資本金額に一定の制約を課すべく、下限額について法定をするというふうにしておりまして、法律上は一億円というふうに書いてございます。

 政令で定める最低資本金の額につきましても、免許制の信託会社につきましては、また今後、パブリックコメント等によりまして、関係者の意見を踏まえて決定することといたしたいと思いますが、私ども、今基本的にはやはりこの法定下限額である一億円が一つの水準というふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

石井(啓)委員 確認ですけれども、財産的基礎と人的構成というのはどこで公にされるんでしょうか。どこでというか、どういう文書で公にされるんでしょうか。

増井政府参考人 今後、私どもで制定をいたします政令、府令あるいはガイドラインで明らかにしようというふうに思っています。

石井(啓)委員 それでは次に、管理型信託業の参入基準、第十条でございます。登録の拒否要件として、第十条の第一項第二号では、やはり政令でゆだねられていますけれども、最低資本金の額が定められていますけれども、これが幾らになるのか。

 それから、同じく第五号で「人的構成に照らして、管理型信託業務を的確に遂行することができる知識及び経験を有すると認められない株式会社」、こういうことでありますけれども、これは具体的にどういうことを指すのか、確認をしておきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、管理型信託の参入基準であります最低資本金の額の関係でございます。

 管理型の信託会社の最低資本金額につきましては政令においてその具体的な水準を定めるというふうに書いておるわけでございますが、この検討に当たっては、まず第一に、信託の担い手の拡大に支障とならない水準にするという観点が大事であろうと思います。一方で、第二に、財産的基礎を確固たるものとして経営の安定を図る必要もあるというふうに考えておるところでございます。したがって、そういったことを総合勘案する必要があるというふうに考えております。

 その際に、例えば、顧客から預託を受けた有価証券や顧客の分別金の分別保管が義務づけられている証券会社、こういった義務づけがなされているわけでございますが、この証券会社につきましては、やはり最低資本金制度がございまして、これは五千万円という水準になっております。

 他方、株式会社の方は、現行商法上は一千万円の最低資本金額というふうになっているといったこと等を勘案して判断する必要があるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、この問題につきましては、パブリックコメント等を通じて広く関係者の御意見を聞きながら、最低資本金額の水準について速やかに検討を進めていきたいと思っているところでございます。

 それから、もう一つの要件でございます人的構成の関係でございますが、こちらは先ほどちょっと御説明をした免許制の方とも似たお答えになるかと思いますけれども、具体的にこの基準を満たさないケースといたしまして、例えば、営業部門、資産運用部門、あるいは法務・コンプライアンス部門等に信託業務、信託関係法令に係る知識を有する者を配置していない場合、あるいは経営者の経歴がその行おうとする信託業務と無関係であって、信託業務の的確な遂行に問題があると認められる場合、さらには、経営者が他の法令違反で処分を受けたことがある場合、そういったものなどを基準とすることを想定しているところでございます。

石井(啓)委員 管理型信託業の最低資本金、これはまだ決まっていないんですか。何か、五千万ぐらいだという話もちょっと伺っていましたけれども。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、先ほどちょっと申し上げましたが、証券会社の最低資本金が五千万ということがございますので、それが一つの考え方だとは思いますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、今後、パブリックコメント等を通じまして広く関係者の意見を聞きながら決めていきたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 では、続いて、信託契約代理業の参入基準でございますが、これは第七十条ですね。第七十条で同じく登録の拒否の要件が挙げられておりますけれども、ここで、第七十条の第三号で「信託契約代理業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」、それから第四号に「他に営む業務が公益に反すると認められる者」、こういうふうにありますけれども、これは具体的にどういうことを指すのか、確認をしておきます。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、信託契約代理業の参入基準の関係でございますが、まず、信託契約代理業務を的確に遂行するための必要な体制についての基準につきましては、今後速やかに具体化をしてまいりたいというふうに考えておりますが、例えば、この基準を満たさない場合といたしまして、業務方法書の規定が法令に適合しない場合、あるいは取り扱う信託契約や信託関係法令に係る知識を有する者を配置していない場合、さらには、法令遵守体制がとられていない場合、さらに、複数の信託会社に所属するというケースがあるわけでございますが、その複数の信託会社に所属する場合、どの信託会社との取引かに関する誤認防止措置がとられていない場合等が考えられるというふうに考えております。

 それから、もう一つの、他に営む業務が公益に反するかどうかということでございますが、これにつきましては、個別事例に応じて判断をするということになると思いますが、一般に、公序良俗に反する場合、また、業務の遂行のために例えば暴力団等の威力が用いられ暴力的な不法行為が行われると認められる場合、そういったものが公益に反することになるというふうに考えております。さらには、行政庁の許認可が必要な場合にこれを得ないで業務を営んでいる場合、こういった場合もこの事由に該当するというふうに考えております。

石井(啓)委員 さらにもう一つですが、今度は信託受益権販売業者の参入基準でございます。

 これは八十九条の方にやはり登録拒否要件が挙げられておりますけれども、この第三号に「信託受益権販売業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」、第四号に「他に営む業務が公益に反すると認められる者」、こういうふうにありますけれども、この具体的な中身も確認をしておきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の御指摘の、信託受益権販売業者の参入基準の関係でございます。

 まず第一に、信託受益権販売業務を的確に遂行するために必要な体制という問題でございますが、この基準も今後速やかに具体化に努めてまいりたいというふうに思いますが、これも、例えばこの基準を満たさない場合として、業務方法書の規定が法令に適合しない場合、あるいは販売を行う信託受益権や信託関係法令に係る知識を有する者を配置していない場合、あるいは法令遵守体制がとられていない場合等が考えられると考えております。

 また、他に営む業務が公益に反するかどうかにつきましては、これも先ほどの代理業と同じでございますが、個別事例に応じて判断をするということになると思いますが、一般に、公序良俗に反する場合、また、業務の遂行のために暴力団等の威力が用いられて暴力的な不法行為が行われると認められる場合が公益に反するとなると考えております。また、先ほども申し上げましたが、行政庁の許認可が必要な場合に、これを得ないで業務を営んでいる場合もこの要件に該当するというふうに考えております。

石井(啓)委員 次は、営業保証金の方の質問を行いますけれども、信託会社に対しましては第十一条で、信託受益権販売業者に対しましては第九十一条で、営業保証金を供託するというふうになっていますが、それが政令でゆだねられております。まず、この営業保証金の額について確認をしておきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 営業保証金につきましては、受益者保護の上で大変大事な制度だと思っております。これは政令において決定をするということになるわけでございますが、一方で、今回の法案では、最低資本金制度あるいは純資産額規制といったことによりまして、一定の財産的基礎を備えているということが要件になっておりますので、そういった状況にあるということが一つ。

 それから、現在の信託業法におきましては国債の供託が義務づけられておりますが、これが一千万円というふうにされております。さらに、他の金融業態において求められております営業保証金の水準、例えば認可投資顧問業というのがあるわけでございますが、これは顧客から投資判断を一任されて自己の判断によって顧客のために投資を行うといった業種でございますが、これは二千五百万円というような水準になっている。

 こういったことを踏まえまして、私どもとしましては、管理型信託会社につきましては最低の水準として一千万円、それから、より裁量性が高い業務を行って損害賠償責任に備える必要があると考えられる運用型信託会社、これは免許を受けた会社でございますが、これにつきましては、先ほど御紹介をいたしました認可投資顧問業者並びの二千五百万円とすることが一つの水準かなというふうに考えているところでございます。

 あと、信託受益権販売業者の関係もございます。

 こちらの方は、今まで申し上げました信託会社とちょっと違いまして、顧客保護のための財産的基礎として、最低資本金制度等の別途の仕組みがとられていないこと、さらに、他の業態等において求められている営業保証金の水準、これは、例えば一般の投資顧問業者につきましては五百万円という規定、あるいは宅地建物取引業者につきましては一千万円、そういった水準が定められておりますが、こういったことを踏まえまして、一千万円とすることを一つの水準というふうに考えております。

 いずれにいたしましても、またパブリックコメント等によりまして関係者の意見を踏まえた上で決定することといたしたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 この営業保証金につきましては、今お伺いいたしますと、業種によって一律の額になっているんですけれども、これからいろいろな会社が参入してくると思いますが、会社の規模も相当変わってくると思うんですね、小さなところから大きなところまで。そういうことを考えますと、本当に巨大な信託会社も小さな信託会社も同じ営業保証金でいいのかしらという問題意識を持っておりまして、例えば、資本金とか資産額ですとか受益権販売額等に応じて段階的に設定するという考え方もあっていいんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、大臣の御見解、いかがでございましょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員から、業種に応じて、一律ではなくて段階的に設定してもいいのではないか、こうした御指摘でございましたが、営業保証金は信託会社あるいは信託受益権販売業者が顧客に損害を与えた場合の備えの役割を果たすものであることから、資本金、資産額そして信託受益権販売額等に応じて段階的に設定する仕組みとすることは、一つの考え方であるというふうに思います。

 しかしながら、信託会社につきましては、営業保証金のみが損害への備えではなく、最低資本金規制そして純資産額規制などもあわせて講じられていること、そして、営業保証金の供託は強制的に手元資金の拠出を求める仕組みでございますので、資金の効率的な活用を妨げる側面もあることから、その水準を過度に高いものとすることは望ましくないのではないか、こうしたことを踏まえて政令で定める一定額としたところでございます。

 そして、信託受益権販売業者につきましては、取引の相手方の保護の観点から、一定の優先弁済権を与えることが望ましい、こうした観点がありますし、他方で、営業保証金の供託は、これも同じように強制的に手元資金の拠出を求める仕組みでありますから、その水準が過度に高いものになった場合には、例えば新規参入を阻害する等のおそれがございますので、こうした点を踏まえて政令で定める一定額としたものでございます。

石井(啓)委員 私も、決して過度に高い額を求めているわけではないんですけれども、自分で多少調べてみましたら、例えば宅建業については、営業保証金を取っていますけれども、主たる事務所につき一千万、その他の事務所につき事務所ごとに五百万ということで、事務所数に応じた営業保証金になっているんですね。それから、旅行業については、これは旅行者との年間取引額に応じた営業保証金の額になっているんです。これは非常に細かく設定されておりまして、そういったことを考えますと、私は、過度に高い保証金を設けろという主張をするつもりはありませんけれども、やはり会社の規模に応じた保証金を設けるという考え方はあってしかるべきだろうというふうに思いますので、これは今後ぜひ前向きに御検討をいただきたいと思っております。

 それから、信託業法を続けますけれども、販売、勧誘に関する行為規制の中で確認をしておきたいのが、二十四条で信託の引き受けに係る行為準則が定められておりますけれども、その第二項で「信託会社は、委託者の知識、経験及び財産の状況に照らして適切な信託の引受けを行い、委託者の保護に欠けることのないように業務を営まなければならない。」こういうふうにされています。

 これは当然のことでありますけれども、これを具体的にどういうふうに指導されるつもりなのか、確認をしたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘の条文でございますが、これにつきましては、実は、金融審議会の第二部会でこの信託業の御議論をしていただいた際に、十五年の七月二十八日に信託業のあり方に関する中間報告書というのが出されております。その中に、こういったくだりがございます。「販売・勧誘規制の具体的なあり方の検討に当たっては、相手方の属性(プロかアマか、知識・経験が豊富か等)について考慮すべきである。」こういった御報告をいただいております。これを受けまして今回の条文があるわけでございますが、これは、私どもといたしましては、信託会社に対して、委託者の属性、すなわち知識経験、財産の状況に照らして適切な信託が設定されるような説明を行い、委託者の属性に照らして望ましくない信託については引き受けを行うべきではない、そういったことの規範を課すという趣旨だというふうに考えております。

 具体的には、委託者の知識経験に照らして、設定される信託に起因するリスクが理解し得ないと考えられる場合、あるいは委託者の財産の状況に照らして、設定される信託によるリスクが許容し得ないと考えられる場合等、そういったものについて信託関係の設定を禁ずるものであるというふうに考えております。

石井(啓)委員 残り時間がわずかになってきましたので、ペイオフ全面解禁に向けての準備状況について確認をさせていただきたいと思います。

 二年前、ペイオフ解禁の議論をしたときに一つ話題になりましたのが、公金預金とかマンションの管理組合の修繕積立金、これは一千万円ずつ分散するわけにはいかぬね、どうするんだろうということと、それから、特に中小企業の決済ですね、決済がペイオフによって滞るということになると経済活動に重大な支障があるということで大分議論をしまして、決済性預金の保護という新しい対策を講じたわけでございますけれども、現在、その決済性預金が具体的にどういうふうに導入されているのか、あるいは導入に向けての準備がどうなっているのか、確認をいたしたいと思います。

伊藤国務大臣 当庁において十月時点で、決済用預金の導入状況について各金融機関に対してヒアリングを実施させていただきました。このヒアリングによりますと、四十八の金融機関が導入済みでございまして、約九割の金融機関が導入に向けて検討または準備中との回答を得ているところでございます。

 もう少し詳しくお話をさせていただきますと、導入済み、または導入に向けた検討、準備を行っていると回答している銀行は、百三十二行中百二十六行、九五・五%であります。信用金庫については、三百四金庫全部が検討している、あるいは導入済みであります。信用金庫については、百八十一組合中百六十五組合、九一・二%となります。

石井(啓)委員 ある意味、これはぺイオフ全面解禁に備えての制度的なインフラだと思いますので、実際に導入しているところはまだそんなに数多くないようでありますが、これはぜひ督促していただいて、早目に導入していただくようお願いしたいと思います。

 済みません、最後、ちょっと時間がないところ申しわけないのですが、やはりまだ預金者の方、例えば決済性預金ということを余り知られていないような状況もかなりございまして、来年の春に向けてペイオフ全面解禁ということがどれだけ周知徹底されているのか、若干懸念されるところがございますので、今後、広報の充実等、しっかり取り組んでいただきたいと思いますが、この点についての取り組みを最後に確認したいと思います。

伊藤国務大臣 先ほど、信用組合と信用金庫を間違っておりまして、最後にお話をさせていただきましたのは信用組合でございます。

 それから、今の御質問、広報が重要だということでございますけれども、私どもとしても、そうした認識を持ちながら、ペイオフ全面解禁に向けて、円滑な実施ができるようにしっかりと対応していきたいというふうに思っております。特に、この預金保険制度の内容が広く国民の方々に理解をされて、そして本制度にかかわる誤解や認識不足による無用な混乱が生じないように、適切な広報運動を行っていくことは大変重要なことだというふうに思っております。

 今後の取り組みといたしましては、マスコミを通じた政府広報というものを活用していく、また、ポスターやリーフレットの改訂をして全国各地に掲示、配布をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、十七年四月のぺイオフ解禁拡大を円滑に迎えることができるように、今後とも適切な広報活動を行っていきたいと考えております。

石井(啓)委員 以上で終わります。

金田委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介と申します。

 まず、冒頭でございますが、十月の二十九日、前回の御質問の際に、上田副大臣、御都合がつかなかったものですから、今回、政治姿勢につきまして御質問をさせていただきます。

 まず一点目、年金の未納があるかないかでございます。

上田副大臣 前回、御通告をいただいたときに、ほかの公務がありまして大変失礼をいたしました。

 御質問の年金につきましては、平成五年、国会に議席をいただいて以来、未納、未加入の期間はございません。

津村委員 続きまして、二つ目の質問ですが、今回の内閣改造の一つの大きなコンセプトと言われております郵政民営化に関しまして、上田副大臣の御見識をお聞かせください。

上田副大臣 郵政民営化の問題は、今さまざまな議論が行われているところでございますけれども、私といたしましては、今の内閣の方針に従っておりますし、また、決定した場合にはそれに従うつもりでございます。

津村委員 さまざまな議論がなされていると思うんですが、上田副大臣としては、どういうスタンスで議論に参加されるんでしょうか。

上田副大臣 お答えいたします。

 この郵政民営化、所管は財務省ということではございませんので、財務省としてどういう意見と言われても、お答えすることもちょっと難しいんですけれども、今、政府、国会でも、いろいろな委員会でもこの議論が行われております。ただ、大きな流れというのはほぼ決まっているんじゃないかというふうに思いますが、今、そういうスケジュールだとか段取り、そういったことについての議論が行われております。こうした議論、私どもも注視をしておりますが、いずれ結論が、政府、内閣として方針が決まるというふうに考えておりますので、それに従うつもりでございます。

津村委員 次の質問に移ります。

 今回の臨時国会の一つの大きな争点として、政治と金の問題が取り上げられております。本日も党首討論がありますけれども、私どもの代表であります岡田克也代表も、前回の党首討論において政治と金の問題を厳しく追及させていただいたところであります。

 それに関連して御質問いたしますが、いわゆる迂回献金と呼ばれているもの、あるいは、これは党を超えますけれども、旧橋本派からの献金等といったものは、上田副大臣、ございませんでしょうか。

上田副大臣 私の場合、いずれも、政治資金規正法にのっとりまして適正に処理をいたしておりまして、いわゆる迂回献金なるものはございません。また、今御質問にありました派閥等からの献金も、政党も違いますので、それは一切ございません。

津村委員 上田副大臣への御質問は以上でございます。ありがとうございました。

 それでは、続きまして伊藤金融大臣に御質問させていただきます。

 今回の信託業法改正案につきましては、いわゆる一般企業等の新規参入が広範に認められる可能性があることからも、監督あるいは検査の体制が十分に整備されていくのか、そういった重要な論点が指摘されております。

 そうした認識に立ちまして、まず冒頭、最近の金融検査に基づく行政処分でありますシティバンクの事例についてお伺いをしたいと思います。御質問の趣旨は、検査後のフォローアップ体制のあり方についてでございます。

 本年九月十七日、シティバンク・エヌ・エイ在日支店に対しまして、在日支店の法令等遵守姿勢及び経営管理体制などに根本的な問題が認められたことを理由といたしまして行政処分が下されました。処分の中身につきましてはここで詳しく触れませんけれども、問題の大きさを考えますと、まあ処分は妥当かもしれませんが、しかし、気になったのは、第三の処分理由として掲げられております「業務改善命令に違反する実態及び不適切な検査対応等」の部分でございます。

 そのときのプレスリリースから引用いたしますけれども、「当庁に対する改善計画への取り組み経過報告の当初の段階(平成十三年九月)から最終報告(平成十五年三月)までの間、所要の改善をすべて完了した旨の実態と異なる報告を行って、当庁より業務改善計画の実施状況の報告命令の解除(平成十五年六月)を受けていた事実も確認されたこと。」という記述がございます。

 実態と異なる報告を受けて報告命令を解除したということでありますけれども、これは、前回の検査後のフォローアップを適切に行っていなかったのではないか。言われたままうのみにして、そのまま問題が拡大したというのであれば、それはその後のフォローアップ体制が十分でなかったということを意味すると思いますが、フォローアップは、そもそも実地で行っているんでしょうか。そしてまた、担当した検査官に落ち度はなかったと言えるのでしょうか。お答えください。

伊藤国務大臣 委員は金融の実務にも大変精通をされているというふうに思いますので、一般的に検査監督を通じて、銀行の監督のプロセスにおきましては立入検査というものを実施して、その中で発見された法令違反や業務上の問題、これをその後のフォローアップのプロセスにおいて精査をして、そして必要に応じて行政処分を行うこととしているわけであります。また、業務改善計画が提出された場合には、それ以後、定期報告を通じて所要の改善の実施状況をフォローアップして、さらに次回の立入検査で改善結果を含め検証している、これが行政の今の枠組みでございます。

 御指摘をいただきましたシティバンク在日支店に対する前回の検査においては、有価証券の売買の媒介を業務として行い、銀行の他業禁止義務に違反していたこと、そして、顧客の意図的な決算調整に利用されるおそれのある不適切な取引を組成、実行していたこと、こうした法令等遵守にかかわる内部管理体制に問題が認められたために、法令違反を行った業務部門、これは代替投資開発部でありますけれども、これのすべての業務の停止命令、五営業日でございますが、これと在日支店への業務改善命令を十三年八月に発出したわけであります。

 そして、当該行政処分を受けて、当庁では、業務改善計画の提出後、これが十三年の九月でありますけれども、同計画の実施状況について定期的にフォローアップを行い、そして、シティバンク在日支店から、業務改善計画が十五年六月に完了した、こういう報告を受けました。

 そして、この改善結果を含めて、これがしっかりされたものであるかどうか、そのフォローアップをするための検証をするために、十五年十一月から十六年四月にかけて改めて立入検査を実施したところ、報告の内容と違って実際には改善が図られていなかったことに加えて、重大な法令違反や不適切な取引等が多数確認をされた。こうした行為の悪質性、重大性にかんがみまして、シティバンク在日支店プライベートバンク部門の在日四拠点に対する認可の取り消しを含む厳正な処分を行ったということでございます。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

津村委員 私の御質問をよく聞いていただきたいんですけれども。私は、十六年の四月、五月はわかりました、しかし、十三年の秋から十五年にかけての二年間、実地のフォローアップを行っていなかったのですかとお聞きしました。つまり、その間に立ち入って、在日四支店なら四支店、しっかりと現場を見ていたのですかという御質問です。

伊藤国務大臣 先ほどもお話をさせていただいたように、私どもとして、業務改善計画が提出をされたら、監督上、それがしっかり行われているかどうか、改善の施策というものがしっかり実施をされているかどうか、これをオフサイトのモニタリングで確認をしていくということであります。

 そして、それについてしっかり改善がなされたという報告を受けて、その改善の結果というものは適切に行われているかどうかを検査で検証するために、その後、実地の検査というものをさせていただいたということでございます。

津村委員 なぜ、これだけの重大な結果を生むような検査について、オンサイトでは検査をされなかったんですか。

伊藤国務大臣 繰り返しになりますけれども、銀行の監督のプロセスというのは、検査と監督の連携の中において行われるわけであります。したがって、検査において、立入検査の中で法令違反の問題が見つかる、あるいは業務運営上の問題が見つかった場合には、法令に基づいて行政処分を行って、そして、業務改善計画等を提出された場合には、その計画がしっかり実施されているかどうか、これを監督上オフサイトで確認をしていくということになります。

 そして、その中で改善がなされたという報告があった場合に、その後、その改善結果というものが適切になされているかどうかということを検査で確認していくわけであります。そして、この検査の確認の中で、報告どおりの改善が行われていなかった事実と、それに加えてさらに法令違反等々の事実が確認をされたということで、私どもとして厳正な処分を今回の場合させていただいたということであります。

津村委員 私は、現状を説明していただきたいのではなくて問題提起をしているつもりですので、それに答えてください。

伊藤国務大臣 今繰り返し御説明をさせていただいているとおり、私どもの金融行政の枠組み、検査と監督の連携については、委員も実務を御承知であると思いますので、オフサイトとオンサイト、検査と監督というものが連携をしながら、銀行の業務の健全性でありますとか適切性というものを確保していく枠組みがあるということについては御理解をいただいているのではないかというふうに思います。

 委員からすると、もっと検査の頻度を上げて確認をしていくべきではないかということであるとするならば、私どもの今の組織の体制あるいは人員というものにある種の限界があります。その中で金融機関の状況において検査の必要性というものを適切に判断して、そしてその中で検査を行っていくということが非常に重要でありますので、検査、監督の連携を強化しながら、一層しっかりとした監督行政が行えるよう、私どもとしても今後も努力をしていきたいというふうに思っております。

津村委員 まず、今のお答え、そんなに簡単に検査の限界を認めていいのかと思います。人員が少ないのはそうかもしれません。もっとふやせという話ならそうかもしれませんが、そのための具体的な努力をお示しにならずに、人員が不十分だというお答えでは、それはお答えになっていないと思います。

 それから、私が金融実務を知っているんじゃないかというふうに言っていただきましたけれども、そのことに絡めて言いますと、事後的なフォローアップというのを立ち入りといいますか実地でやるのは決して珍しいことではないと思うんです。それをされていないということですか。今回、されなかったということですか。

伊藤国務大臣 一定の周期の検査はさせていただいているわけであります。ですから、先ほどお話をさせていただいたようなスケジュールの中で私どもとして検査をさせていただいて、業務改善計画の提出を求めて、それをフォローアップして、その改善結果についてまた立入検査をさせていただいたということであります。

津村委員 一般定なケースを聞いているのではなくて、この問題事例について、その問題にどう対処したかを聞いているわけですから、ちょっと後ろの方もきちんと言っていただきたいんですけれども。

 私はこれは定期的にやっていることについて言っているんじゃなくて、十三年にやったことの事後的なフォローアップについて、十四年度、十五年度の行動について聞いているわけです。

伊藤国務大臣 先ほどからお答えをさせていただいているように、シティバンクの在日支店に対する立入検査は、前回、十三年の一月十七日に立入検査を実施させていただいて、そして検査結果通知が十三年の七月九日に行われた。その後、問題がこの中で把握をされたわけでありますから、それに基づいて、監督上、行政処分を行わせていただいて、それに基づいて業務改善計画というものが提出をされたわけであります。

 それを、私どもとして、その実施状況が適切になされているかどうかフォローアップをさせていただいて、そして、その改善がしっかりなされたという報告を受けて、その後、十五年十一月四日から十六年五月二十一日まで立入検査を実施させていただいたということであります。

津村委員 端的にお伺いしますが、平成十三年と十五年の間に平成十四年があるわけですけれども、平成十四年に検査官の方はシティバンクのオンサイトでのモニタリングはされなかったということですか。

伊藤国務大臣 検査官がオンサイトで確認をするということはしておりません。

津村委員 非常に不十分なフォローアップだと思います。この信託業法の話、この後させていただきますけれども、今まさに監督検査のあり方が問われている法案だとも思いますし、それから、前回、十月二十九日の質問のことと少し絡めて申し上げますと、ペイオフ解禁というのは一つの大きな金融行政の転換点になると思います。

 そのことは、不良債権処理ということについては一つのフェーズが変わるのかもしれませんけれども、また、新しい課題として東京マーケットあるいは日本の金融機関全体の国際的な評価をここから前向きに高めていかなければならない、そういった新しいチャレンジングなフェーズになっていくわけですけれども、そこでこういうことがあると、三年前に検査である瑕疵が見つかった、そのことが、オンサイトで現場を見もしない検査体制で、二年後、三年後になって、いきなり今回のような、これはマーケットに対して大変大きなインパクトを持つ行政処分ですよ。そのことは次に伺いますけれども。そのインパクトも十分に計量されないまま、後でお答えいただきますが、こうした行政処分がなされるというのは、海外から見たら非常に恣意的、あるいは不透明、あるいは不安定な金融検査体制だ、そういうふうな印象を与えると思うんですよね。

 先ほど、やや責任放棄されるような、今の体制じゃ不十分だ、今の体制ではトップとしてできないということをおっしゃられたわけですけれども、それでは国際的な信認は得られないと思うんですが、いかがですか。

伊藤国務大臣 責任放棄をするような発言を私はしたつもりはありません。検査は検査として厳正に検査を行っているわけでありますし、監督上も与えられた権限の中でしっかりフォローアップをさせていただいているわけであります。

 委員にもぜひ御理解をいただきたいのは、私どもの中にある組織、人員というものを最大限に活用して、そして私どもに与えられている使命というものをしっかり果たしていかなければいけないわけであります。そして、その中で、一定の期間の中ですべての金融機関に対してしっかりとした検査をやっていく、そして、検査周期において著しい差をもたらさないように配慮をしながら検査対象を決めていかなければいけない、このことも私どもにとって重要な使命であります。だからこそ検査と監督の連携が非常に重要であって、そうした連携の中で私どもとしてしっかりとした対応をさせていただきました。

 にもかかわらず、今回このような行為が行われた。この行為に対して、私どもとして、法令に基づいて厳正に対応をさせていただいたわけであります。

津村委員 そういうお答えであれば、率直に申し上げますけれども、私の想像あるいは経験からは、十三年九月の指摘の後、恐らく検査官の方は、その方がされていないんだったら本当に問題だと思いますが、恐らく検査官の方は実地にも足を運んで、いろいろなフォローアップをされていると思いますよ。

 そういうことは、実際に、担当者レベルかもしれませんけれども、それはいろいろな事後的なフォローというのはできると思いますから、オンサイト、オフサイトと余り厳格に分けなくてもそこはされると思うんですけれども、少なくともそういった枠組みというものが、問題事例あるいは重大な結果に結びつきかねないケースについてはオンサイトもしっかりとやっていくということを、組織として、一つの枠組みとして形をつくっておかないと、先ほど伊藤大臣がおっしゃられたような、そういう仕組みにはなっていない、だから行っていないということの繰り返しでは、これからまた同じことが再発しかねない。そういう意味で、オンサイトモニタリングの重要性を指摘しているつもりです。これから見直していってください。

伊藤国務大臣 検査と監督の重要性を私は否定しているつもりはございません。委員からも御指摘を受けているわけでありますし、私ども、一番重要なのは、効率的かつ的確な検査監督を行っていくことであります。そういう意味からも、検査、監督の連携を強化して、私どもとして努力ができることは一層努力をして、私どもに与えられた使命というものをしっかり果たしていきたいというふうに考えております。

津村委員 前回からも続いている質問ですし、私は重要なことだと思っていますので、これからも取り上げさせていただきますが、今のこととかなり重なる質問ですけれども、もう一つ別の質問をいたします。

 今回の行政処分の結果として、シティバンクのプライベートバンキング部門は日本市場から撤退を表明しております。このことは、銀行に対する措置としては一定の説明がされているものと思いますが、しかし、一方で顧客あるいは日本市場の側にも大きな影響を与えております。今回、シティバンクのプライベートバンキング部門というのは、たしか国内最大あるいは最大級のシェアを持っていたと思いますが、そこに預けられていた資金はどう流れていったんでしょうか。どこにシフトしているんでしょうか。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤国務大臣 今回の行政処分はプライベートバンク業務を行っているシティバンクの在日支店の四拠点の認可を取り消すものでありますが、いわゆる富裕層の顧客層に対するプライベートバンキング業務は、他の金融機関においてもこれは提供されております。

 需要面から見ますと、本業務に対するニーズは市場において一定程度安定的に存在しているというふうに考えておることから、市場全体で見れば、今回の行政処分がプライベートバンキング市場に与える影響は大きくないのではないかというふうに考えております。むしろ、今回の行政処分によって、プライベートバンク業務を提供する他の金融機関に対しても、利用者保護の観点から一定の牽制効果を有するものと考えているところでございます。

 なお、今回の認可取り消し対象となった四拠点は、平成十七年九月末に閉鎖されるため、今後これらの拠点の顧客やあるいは資金等が他の金融機関にシフトすることが想定をされるわけでありますけれども、今回の行政処分では、当該四拠点においてすべての法令違反やあるいは不適切な取引等の洗い出しと解消を命じておりますので、その実施状況について、私どもとして、現在厳しく精査、監督を行っているところでございます。

 したがって、今般の処分の実効性の確保、こうしたものを阻害するような形で他の金融機関にシフトすることは認めておりませんので、仮に行政処分の命令の趣旨に反するような実態が認められる場合には、引き続き厳格な対応を行っていく所存であります。

津村委員 御答弁のポイントがちょっとずれていると思うんですが、私は検査の実効性を確保してくださいという質問をしているんではなくて、その資金がどこに流れていくのか、マーケットがどういう変化をしていくのかをしっかりと分析されているのかという質問をしています。

伊藤国務大臣 資金がどういうふうに流れていくか、このことについて私どもが正確にフォローしていくことは、これは難しいというふうに考えております。これは、ある意味では、先ほどお話をさせていただいたように、富裕層を対象としたプライベートバンク業務というものは他の金融機関においても提供されているわけでありますので、需要面から見ると、先ほどからお話をさせていただいたように、本業務に対するニーズというものは一定程度安定的に存在をしているというふうに考えているところでございます。

 したがって、市場全体で見れば、今回の行政処分が行われたということにおいても、プライベートバンク市場に与える影響はそれほど大きくないんではないかというふうに考えております。

津村委員 それほど大きくないはずがなくて、国内最大の銀行に撤退を迫るような処分が下されたわけですし、私がその顧客であれば、シティバンクとほかの銀行の違いもよくわかりません、ですから、ああ、もしかしてこの商品はほかのところに預けても同じようなことになるんじゃないか、次に検査が回ってきたらまた同じような処分が下されるんじゃないか、その違いがよくわからないわけですよね。ですから、全く認識が甘いと思うんです。そこがまず一点。

 それから、それだけ大きなインパクトを与える行政処分をする際に、先ほどのような検査体制なわけですから、私が申し上げたいのは、これは前回から言っていることですけれども、検査の方は検査だけやっている、市場課の方は市場の分析をやっているとおっしゃっていましたけれども、今回の今のお答えのように、余り定量的な分析をされているようでもありませんし、あるいは実際にその分析も間違っていると思います、ほかのところに流れると。そんな簡単に流れないと思います。

 そういった意味で、端的に申し上げると、行政処分あるいは金融市場の育成策というものがマーケットにどのぐらいのインパクトを与えるのか、そういった定量的な分析をするセクションはないんですか、ないんであればつくった方がいいんじゃないですかという御提案です。

伊藤国務大臣 これは市場課が担当することになっているわけでありますけれども、今の市場課の体制で、委員が御指摘のとおり、十分かどうかということについては、ここは率直に言って課題があろうかというふうに思います。

 私どもの限られた定員の中で、委員御指摘のような、分析能力を上げていく、あるいは、市場に対してどういう影響を与えていくのか、そうしたことについてもしっかりとした調査を行って、それを政策に反映していくということは非常に重要なことだというふうに思いますので、私どもの組織の中での効率性、そして、しっかりとした政策を立案できるような体制の整備に向けて、今後とも一層努力をしていきたいというふうに思います。

津村委員 最後に注文いたしますけれども、今の時代、人や物やお金が限られているのはどこでも当たり前のことで、そこをしっかりと重点的な戦略分野に傾注していくことが経営者としての大臣の腕の見せどころなわけです。そういった意味で、新任の伊藤大臣に、私は前回の質問、今回の質問とかなり時間を割いて、国際金融市場に対するメッセージを出していくチャンスなのだから、ぜひそういった決断あるいは判断をしてくださいということを具体的な論点を挙げて御提案しているわけですので、そこはしっかりと意を酌んでいただきたいと思います。大臣の任期はこれからまだ時間あるでしょうから、たくさんそこは新しい施策を打っていけると思います。今回も、コングロマリット室ですか、また内部の機構改編もされているようですし、そういった弾力的といいますか柔軟な対応はこれからも次々となされていけばいいと思います。そういう中で、考えるヒントを差し上げたつもりでございます。

 それでは、信託業法について幾つか御質問いたします。

 まず、信託業法と兄弟といいますか親子のような関係にある法律として、信託法があると思います。この二つの法律は、大正十一年、八十二年前にいずれも成立しておりますけれども、今回は信託業法のみの改正が先行しておりまして、信託法の方の議論は現在法制審の方で議論をしている最中というふうに聞いております。

 法制審の議事録をちょっと見たんですけれども、信託の定義等に関する論点とか、忠実義務あるいは善管注意義務などの受託者の義務といった、いわば信託の本質にかかわる論点がまだ議論の途中にあるように思います。そういった段階で今回信託業法を全面改正するというのは、ちょっとちぐはぐといいますか、もう少し足並みをそろえてやった方が、新しく参入する人にとってはリーガルリスクをミニマムにさせるというか、余り心配させないで新規参入ができると思うんですが、どうしてこうちぐはぐなんでしょうか。

伊藤国務大臣 委員から、信託法と信託業法の改正を足並みをそろえてやった方がよかったのではないか、リーガルリスクの問題も含めて御指摘があったところでございますけれども、私どもが信託業法の見直しというものを今回させていただいて国会で御審議をお願いしておりますのは、この信託業法の見直しが金融資本市場の基盤整備を進めていくに当たって不可欠なものである、こういう認識をまず持っているということと、それから、規制改革推進三カ年計画、さらには「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」、この二つの計画において早期の対応が求められておりました。こうしたことから、私どもとして、本法案を信託法改正に先立って国会に提出をし、そして御審議をお願いしたところでございます。

 リーガルリスクの問題でございますけれども、本法案の策定に当たって、私どもとして、金融審議会のワーキンググループを設けました。その中で、委員が御指摘をされている部分も含めて、学識経験者の方々あるいは実務者の方々、こうした方々を交えた検討を重ねてきておりまして、また、本法案を作成する段階から法務省ともいろいろな意味で意見交換をさせていただいて、協議を行わせていただいてきたわけであります。そして、委員御指摘の問題も含めて検討した中で、今回、この法律を国会の方に御審議をお願いさせていただきました。

津村委員 信託法の改正はいつごろになりそうですか。

伊藤国務大臣 法務省の方からは、十七年中に行いたい、そういうことを視野に入れて今法制審での審議を精力的にされているというふうにお伺いをいたしております。

津村委員 その信託法改正案の中身によっては、今回全面改正される信託業法もまた来年改正が提案される可能性もありますか。

伊藤国務大臣 これは言うまでもありませんけれども、信託法というのは信託関係法制のいわば基本法でございますので、信託法が改正をされれば、信託業法についても見直す必要性について私どもとして検討していく所存でございます。

津村委員 続きまして、検査監督、監督検査のことについて伺っていきたいと思います。

 先ほどは外資系銀行についての過去の監督検査についてお伺いをし、提案もさせていただいたわけでありますけれども、今回は全く違う世界が広がっていくと思います。

 信託業法の改正によって、一般企業の参入も認められ得るということになります。議論の前提として、先ほどの質問に少し似ているんですけれども、一般企業の参入の規模あるいはペースをどの程度と見込んでいらっしゃいますか。

伊藤国務大臣 今お尋ねの点につきましては、これはある意味では受託可能財産の今まであった制限というものを撤廃していくあるいはその担い手というものを広げていくという初めての試みでございますので、どうした市場規模になっていくか、あるいはそれぞれがどういう規模になっていくか、これは正確に見通すことは困難であるというふうに思っております。

津村委員 正確かどうかは別として、やはり一定の見通しがなければこういったものは改正していけないわけで、こういった将来の市場拡大規模についてもぜひしっかりと見ていただきたいんですが、現在、それは市場課さんがされているお仕事なんですか。

伊藤国務大臣 これは市場課が担当になっております。

 先ほどお話をさせていただいたように、ちょっと正確な見通しをとるということがなかなか難しいところがございますので、他の国の状況等々も調査をしながら、私どもとして、この法案に対して、監督行政、検査行政、しっかりとした対応をとっていかなければいけませんので、そうしたことも含めて私どもとして適切に対応していきたいというふうに思います。

津村委員 私が一日半ほどの間にちょっと調べただけでも、民間の試算として大体二割程度、三兆円程度の市場規模になるのではないかという試算が出されていたり、あるいは、余り先進国で知的財産権の信託というのは広範には見られていないと聞いておりますが、アメリカなどの事例もあると思います。

 そういった分析というのは、今回事前にしっかりヒアリング等はされて、民間のこれからの経済活動に一定の影響を与えかねませんから、ここで具体的な個社の話とかはできないのは当然ですけれども、しかしながら、一定のモニタリング、ヒアリングをした上で、大体このぐらいの市場規模が見込まれるとか、あるいは参入企業の数も、それこそ検査監督とかかわってくるわけですから、検査監督体制を充実させるという話につながってきますので、一定の見通しを持っているのが当然と思います。先ほどの御答弁では、そういったことはしょせんわからないことだから考えても仕方がないというふうに、そもそも考えることを放棄しているようにも聞こえるんですが、しっかりとそこは分析されているということですか。

伊藤国務大臣 この法案の作成の準備過程におきまして、例えば知的財産権の信託事例や監督体制も含めて、先進国等における信託制度や信託業の実態等について調査を行っております。また、先ほどお話をさせていただいた金融審議会のワーキンググループにおいても、こうした観点から審議を行わせていただいたところであります。ヒアリングについては、アメリカでありますとかイギリスにおいてもヒアリング調査をさせていただいたところでございます。

津村委員 少し具体的な数字の話をいたしますけれども、事前にいただいた数字によりますと、金融庁検査局の所属の職員の方が、六年前、平成十年の百六十四人から、現在四百七十八人と三倍にふえ、あるいは、民間からの人材確保という意味でも百五十三人の方が本年六月三十日時点で在籍をしているということで、検査体制を充実させていこうという方向感はかいま見えるわけでありますけれども、しかし、少しつぶさに見ていく必要があると思いますが、信託会社の担当検査官、これは四月二十二日の代表質問に対する竹中大臣の御答弁ですけれども、「金融庁としては、平成十六年度予算において、信託会社の担当検査官を五名、監督担当者を三名手当てするなど、法の施行後の信託会社の検査、監督に万全を期してまいる所存」とおっしゃっているわけですが、平成十七年度も同様の姿勢が続いているんでしょうか。数字があれば教えてください。

伊藤国務大臣 十六年度については先ほど竹中大臣の答弁を御紹介いただきました。十七年度についても、これはやはり所要の人材が必要でありますので、私どもとして要求をさせていただいているところでございます。委員にもぜひ御支援をいただくことができれば大変ありがたいなというふうに思っております。しっかり、私どもとして、人員を確保するために対応していきたいというふうに思っております。

津村委員 ちなみに、何人ですか。

伊藤国務大臣 申しわけございません、今ちょっと手元に正確な人数の資料がございませんので、後ほど届けさせていただくことができればと思います。御了承いただきたいと思います。

津村委員 後ほどで結構です。

 関連して、検査監督で、一般企業の参入に検査監督体制が追いつかないのではないかという御質問をさせていただいているんですが、これはちょっと裏を返してみますと、金融庁さんとしては検査監督の数がふえるという意味での御苦労はあるわけですけれども、逆に、検査監督される側からいたしますと、一般企業というのは金融庁あるいは日銀から検査とか考査を受けた経験がないわけです。そうすると、今まで受けていた民間銀行が新しい商品を説明するのとは違って、一から準備をしなきゃいけない。大変な負荷がかかると思うんですけれども、それはビジネスに参入するんですから仕方がないといえば仕方がないんですが、しかし、そこを促していくためには、一定の、こういうことをチェックしますよとか、あるいはこれぐらいの頻度でやりますよとか、そういったマニュアル、ノウハウのようなことを幅広く開示していくべきだと思うんですが、そういった御努力はされていく御予定はありますか。

伊藤国務大臣 大変重要な御指摘でございますので、今回こうした法律改正を行わせていただいて、そして信託の担い手についてはそれを拡大していくという方向にもなるわけでありますので、この法案を成立させていただくことができれば、趣旨というものを徹底させていく、しっかりとしたPRを行っていくだけではなくて、私どもの持っている事務ガイドラインも含めてしっかりと改正をし、的確な体制ができるように体制整備に努めていかなければいけないというふうに思っております。

津村委員 参入する企業だけでなくて、もしその辺がごたごたすると結果的に投資家やユーザーにしわ寄せが行くということを念頭に置いて、この事務ガイドラインの整備をぜひ進めていただきたいんです。

 次の御質問も事務ガイドラインのことなんですけれども、まず、ガイドラインの改定時期というのはいつごろになりそうか、そのスケジュール感を教えてください。

伊藤国務大臣 今、この法案については御審議をいただいている段階でありますので、この信託業法案の改正を受けた事務ガイドラインの子細については、今後、詳細について詰めていきたいというふうに考えております。

 時期についてでありますけれども、現在、信託業法の政省令とあわせて検討を進めているところでございまして、その成案については、パブリックコメントの手続により広く御意見をちょうだいした後に、信託業法等の施行期日までに結論が得られるように、私どもとしては努力をしてまいりたいと考えております。

津村委員 事務ガイドラインの中身として一つ既に議論になっているものが信託専門店舗の件だと思います。これは、今回の信託業法の改正が幅広く従来の信託銀行以外にも門戸を開放するということや、あるいはその一方で受託者の義務ですね、善管注意義務、公平義務、忠実義務といった義務を高度化させる内容を含みますので、従来から信託を業としている信託銀行からすれば大変なコスト増につながるわけで、それはそれで企業努力していただきたいんですけれども、そうした中で信託専門店舗という新しい枠組みを許可することが、信託銀行として低コストでよりよいサービスを提供する一つのきっかけになる。それが積極的な意味だと思うわけですけれども、信託専門店舗はどのような取扱業務を許可される見通しでしょうか。

伊藤国務大臣 今御指摘がございましたように、信託専門店舗に関しましては、現行の事務ガイドラインにおきましては認められないということになっております。そして、このような信託専門店舗につきましても、今般の改正法案におきましては、信託業務のみを営む信託会社が認められることもありますので、顧客の誤認防止措置等を講じることを前提として解禁する方向で現在検討をいたしております。

 その際、お尋ねの信託専門店舗の業務についてでありますけれども、基本的には信託業務全般を営めることとしますけれども、改正兼営法の第一条第一項、各号に掲げるいわゆる兼営の業務のみを行うことは単なる他業を営むことにつながることから、この点については認めない方向で検討をさせていただいているところでございます。

津村委員 それから、事務ガイドラインの改定で一つ重要なポイントは、やはり受益者、ユーザーの保護という観点だと思うわけです。今回、信託商品が多様化する、複雑化するということもございますし、また、信託を扱う企業あるいは会社がふえていくわけですから、消費者から見て信託という言葉あるいは信託という商品でイメージするものが大分変わってくるんじゃないかな、ともすれば混乱する、わけがわからなくなってくるんじゃないかなという気がするんですけれども、その辺のユーザー保護の観点から、どのような新しい施策がこのガイドラインに盛り込まれるのか、御紹介ください。

伊藤国務大臣 今御指摘がございましたように、これは利用者保護をしっかりやっていくというのは大変重要なことであります。そして、信託についてのイメージも、これは変わってくるところもあると思いますので、そうした中で無用な混乱がないようにしっかりと周知徹底を行っていくということは大変重要ではないかというふうに思っておりますし、また、先ほどお話をさせていただいたように、他の金融商品取扱機関との誤認防止措置を講じていくということも大切でございますので、こうした点を現在検討しているところでございます。

 いずれにおきましても、事務ガイドラインにおいて規定をさせていただく予定でございますけれども、その成案については広くパブリックコメントに付したいというふうに考えておりますので、そうした手続によって多くの方々の御意見をちょうだいした後、結論を得ることとしたいというふうに考えております。

津村委員 これで質問を終わりますけれども、最後に一言だけ申し上げます。

 先ほどから金融検査監督のあり方について、あるいは今後の新しい重要性について申し上げました。そして、東京金融マーケットの国際的な信頼回復に向けて特段の取り組みが必要ではないか、そういう御認識を持っていただきたいということを先般に続いて繰り返し申し上げてきました。先ほど人員確保のことで応援もしていただきたいということを言っていただきました。それは応援をさせていただくつもりで申し上げておりますので、ぜひ、そのためにもきちんとした説明、あるいは金融検査監督の、具体的にどういう新しい取り組みをされているのか、あるいはされていないのか、もっと率直で、そしてもっと丁寧な御答弁をこれからお願いしたいと思います。

 以上、終わります。

金田委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。本日、私は、信託業法改正案に限って質問をさせていただきます。

 私がお伺いしたいところは大要二点ございまして、まず、現行法では信託業とは何ぞやという部分が不明確であるという指摘がされておりまして、そういったそもそもの部分に関してが一点。それからもう一点、やはり国民の視点に立って今回の改正法案を眺めてみますと、最も大事なのは、受益者の保護が十分に考えられているかどうかという点にあるんだと思います。この二点に関してこれから御質問させていただきます。

 まず最初に、改正の趣旨に関して伊藤大臣にお伺いしたいと思います。

 現行法が制定以来、何と八十二年ぶりの大改正だということでありますが、このように非常に長い期間にわたって改正がなされてこなかった理由に関してお答えいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 現在、信託を業として行っている者は、金融機関ノ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律により認可を受けた金融機関のみでありまして、これは十六年四月現在、五十機関であります。これは、戦後、専業制あるいは分業制を特色とする我が国の金融制度のもとで、信託業については専業信託銀行を担い手としてその育成が行われ、そして、信託業法に基づく信託会社については具体的なニーズが示されなかったものによるものと考えているところでございます。

 また、受託可能財産につきましても、現行信託業法第四条の規定によりまして、金銭、有価証券、動産、土地等に限定をされているわけでありますが、これは、信託業法制定当時、先ほど委員からも御紹介ございましたけれども、大正十一年でございます、経営基盤が弱く、業務が広範かつ不堅実な信託会社が多く存在していた、こういう実態を踏まえ、信託会社の健全性を確保し、そして受益者の保護を図る必要があったため、事前予防的な観点から受託可能財産を広範に認めることについては消極的であった。こうしたことに加えて、知的財産権の信託へのニーズが今日ほど強くなかったためではないかというふうに考えております。

 以上の諸事情によりまして、信託業法については今回のような抜本的な改正がなされてこなかったというふうに考えております。

村越委員 御丁寧な答弁ありがとうございます。

 それでは、今回の改正によって、金融資本市場に対して具体的にはどのようなメリットがもたらされるのか、また、信託勘定残高の点からいえばどうなのか、お答えいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 今回の法律改正のメリットでございますけれども、今回の法律改正におきまして、受託可能財産の範囲の制限を撤廃いたします。そして、金融機関以外の者の信託への参入を可能とするわけでありますので、担い手が広がっていくことになります。こうしたことによって、信託の活用に対するニーズに対して柔軟に対応しつつ、そして、信託サービスの利用者の保護を適切に図るための措置をあわせて講じることによって、信託のさらなる発展が期待されるところでございます。

 信託について、その有する機能からは、国民が保有資産を信託し、運用あるいは管理能力を有する第三者に運用管理をゆだねること、これは資産の運用面、そして、企業がその運用資産を信託し小口の信託受益権に転換した上で、その受益権の移転を通じて複数の投資家から資金を調達すること、いわゆる産業金融面、こうした面からの活用が想定されるところでございまして、今般の改正案は、我が国の経済構造や産業構造、こうしたものが大きく変化する中で、市場型間接金融、こうした新たな金融の流れを構築していくことに資するものであって、そして、これによって金融システムの基本的なインフラ整備が一層促進されるものと期待をいたしているところでございます。

村越委員 それでは、信託業の範囲について御質問をしたいと思います。

 そもそも、信託の本旨、これは法案を見ておりましても、また信託法を見ていましても出てくるかと思うのですが、この信託の本旨というのは何を意味するのでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 信託の本旨という言葉は、例えば、法律の中で二十八条などに出てきております。これは、解釈といたしましては、信託の本旨というのは信託行為の内容を指しておりまして、信託本来の趣旨という意味でございます。要するに、委託者の意図から見れば、信託のあるべき姿に照らして委託者の意図する目的というのが信託の本旨なんです。

 例えば、信託の委託者の意思といいましても、あらゆる場合に指針を示すほど詳細にわたるわけではございませんので、その場合に、ある部分については本来の委託者の意思というのはどういうものであるか、そういったものについては信託制度の原則に照らして委託者の意図すべきであった目的を解釈する、そういった意味で信託の本旨という言葉が用いられているというふうに思っております。

村越委員 全然よくわかりません。信託の本旨とは何かと聞いたときに、信託という言葉を使って説明するのはいわゆるトートロジーであって、説明になっていないと思います。よくわからないところがありますが、無視して次に行きたいと思います。ほかにも聞きたいことがありまして、次に行きたいと思います。

 先ほど申し上げたとおり、現行法下では、信託業への参入基準が不明確だという指摘がされているわけですけれども、これは信託業の定義が不明確だからというふうに言えるかと思います。つまり、信託の引き受けを業としていれば信託業と言えるんだと言っているにすぎないわけですけれども、これをさらにブレークダウンというか細分化して考えると、信託の引き受けという言葉の意味内容が不明確なわけであります。

 この信託の引き受けなる行為は具体的にどのような行為を指すのでしょうか、お答えください。

増井政府参考人 失礼いたしました、わかりにくい答弁だということでございますので。

 信託というのは、信託法で定義がございまして、先生御承知だと思いますが、「財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムル」ことを言うわけでございます。したがいまして、今の、それでは信託の引き受けというのは何かということでございますが、今、財産権の移転をするということでございますから、初めにその信託を委託する人がいるわけでございますね、その委託する人が信託の設定の意思表示をして、これに対してそれを引き受ける人がいるわけでございますが、それを引き受ける旨の意思表示があって、それで信託関係を発生させるということがその信託の引き受けということでございます。

 要するに、その引き受けをした人が、引き受けの意思表示をした人が今度は信託の受託者というふうになります。そして、その信託の受託者になった結果、信託法上の受託者に対するいろいろな権利義務がございますが、それが発生をする、そういうことだというふうに考えております。

    〔委員長退席、原口委員長代理着席〕

村越委員 あわせてお伺いしたいのですが、法案に信託の引き受けを営業と定義するというふうに書いてあるわけですけれども、この営業の意味はどうなんでしょうか。一般に、商法四条一項に「業トスル」という言葉が書いてあって、通説的な見解としては、営利の目的をもって同種の行為を反復継続して行うことというふうにされていると思うのですが、この法案で言うところの営業の意味はどうでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、私どもとしましても、営業とは営利の目的をもって反復継続して行うことと解されているというふうに考えております。その場合の営利の目的というのは、少なくとも収支相償うことが予定されていることと解されているというふうに考えております。

村越委員 それでは、例えば不動産業者が土地を受託して、当該土地にマンションを建てるような契約は、今で言うところの営利の目的に当たるんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの営業の定義でございますけれども、信託の受託者となって、そういった受託行為、信託の引き受けを行うという業務を営利の目的をもって反復継続する、そういう意思を持って営んでいる場合には営業を行っているということになるかと思います。

村越委員 さらにお伺いしたいんですが、ちょっとつけ焼き刃的な知識で恐縮なんですけれども、講学上、信託の引き受けが業として行われている場合を営業信託と呼称するんだと。その営業信託というのはさらに二つに類型化されるということが言われているそうでして、すなわち、営業信託において受託者が果たす役割の中心が信託財産の受動的な管理または処分を超える場合、あるいはそれとは異なる場合が商事信託と呼ばれるんだと。それに対して、受託者が果たす割合が受動的な財産の管理または処分にとどまる場合を民事信託と言うんだと。

 ここで問題になるのは、ここで言うところの商事信託と民事信託の境界にあるような信託行為をどうとらえるのかということが言われているんだと思います。つまり、投資、運用を伴わない単なる財産の預かりとか移転というような信託、例えば委託者から移転を受けた財産権を一定時期に再び受託者に移転するだけというような事例は、信託引き受けの営業に該当し、改正信託業法の規制に服するようになるんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の趣旨をちゃんととらえているかどうかちょっと自信がないのでございますが、いずれにいたしましても、信託というのは、先ほど申し上げましたように、「財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムル」ということを言うわけでございます。その信託の引き受けを営業として行う者を信託業者ということになっているわけでございます。

 したがいまして、今の例でいきますと、信託財産の管理、すなわち、その処分を伴わない単なる預かりもその信託の中に当然包含されますので、そういった行為を今申し上げました営業として行っているということであるならば、それは信託業法の中に入ってくるということだと思います。

村越委員 ただ、そうはおっしゃっても、先ほど私が申し上げたような不動産業者のような場合は、不動産業者というのは本来の目的は宅地とか建物の運用とか管理というのが本業であって、先ほどのような事例というのは単なる付随的業務にすぎないわけですね。そういった付随的業務に当たる営業を行っている業者をこの改正信託業法で規制する必要があるのかどうか。どうなんでしょうか。

増井政府参考人 今の御質問にまた正確にお答えできるかどうかあれでございますが、受託者となるためには信託契約を結ぶわけでございます。普通のただの委託、単に管理してくれ、単に処分してくれということではなくて、信託契約を結ぶということでございますので、そういったことを営業にしているということであれば、信託業法になるということだと思います。

村越委員 それでは、また別のことをお伺いしたいと思います。参入基準に関する質問です。

 金融審議会第二部会が取りまとめた信託業のあり方に関する中間報告書というのを私も拝読いたしましたが、この中で、多様化する信託業務を内容とか機能面から区分をしているわけですね。大変これは有益なことだと私は考えますが、改正法では、この法案では、その提案を踏まえて参入基準の区分というものをどのように考えているんでしょうか。

    〔原口委員長代理退席、委員長着席〕

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案につきましては、信託会社につきまして、まず免許制を原則といたしております。ただ、より裁量性が低いと見られる信託業務のみを行う者につきましては、登録制ということで参入を可能といたしたところでございます。

 その中身といいますか区分でございますけれども、先ほどの中間報告でも御指摘がございました、管理型と言われている信託会社、例えば信託契約や委託者の指図に従って信託財産の管理を行うような、非常に受託者の裁量性が限られている、そういった業務につきまして、管理型信託会社について登録制ということにいたしまして、それ以外の運用、処分を行うなどの裁量性の高い業務を行う会社の方を運用型信託会社ということにしてございます。

 したがいまして、原則として免許、それから例外的に裁量性が低いものは登録制というふうになっております。

村越委員 それでは、先ほど私が例に挙げた不動産業者というのは信託管理の維持管理だけ行っている例に当たると思うんですが、もう一度お伺いしますが、これは明らかに信託業に当たるということでよろしいですね。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん個別のケースはいろいろあると思いますが、今おっしゃったように、不動産の管理だけを行うような場合には管理型信託ということだと思います。

村越委員 この中間報告書でもこれは指摘されていることですが、いずれの類型にも属さないようなケースが出てくるんじゃないかということがありましたが、こういった事例に対してはどのように対処をしていかれるんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、この法律の三条で、「信託業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。」と書いてございます。したがいまして、私、先ほど申し上げましたように、原則として免許であるというふうに申し上げました。ただ例外的に、裁量性が低いものについて登録ということになっておりますので、そのいずれにも属さないというのは、信託業を営む以上はないということだというふうに考えております。

村越委員 それでは次に、今局長は免許というふうにおっしゃいましたが、この免許交付の要件に関してお伺いしたいと思います。

 この免許交付の要件として、信託業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有していること、人的構成に照らして、信託業務を的確に遂行することができる知識及び経験を有していること、それから十分な社会的信用を有していること、この三つの要件が本案の三条から六条に挙げられていると思うんですが、それぞれの客観的な基準というものを想定されているんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 信託業の免許の審査基準に当たっては、法律に、審査に当たっての視点が明らかになっております。それから、一定の免許拒否事由を明確化しているところでございます。

 今御指摘があったように、三つの大きな項目がございます。まず、信託業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎の問題でございますが、これは、資本の額が政令で定める最低資本金額を上回っていること、あるいは純資産額が政令で定める金額を上回っていること、さらに、収支の見込みに照らして、営業開始後三営業年度を通じて純資産額が基準純資産額を下回らない水準に維持されていると見込まれることといったものを基準にしようというふうに想定をしてございます。

 それから、二つ目の人的構成の関係でございますが、これにつきましては、具体的な審査基準として、こういった基準を満たさないケースとして、それぞれの信託会社では営業部門だとかあるいは資産運用部門、それから内部監査部門、法務・コンプライアンス部門等のそれぞれの部門があるというふうに考えられますが、それぞれの部門に信託業務、信託関係法令に係る知識を有する者を配置していない場合、あるいは、その経営者の経歴がそれを行おうとする信託業務と無関係で、かつ信託業務の的確な遂行に問題があると認められる場合には、こういった人的構成の基準を満たさないというふうに考えております。

 それから、三つ目の社会的な信用の関係でございますが、例えば経営者がほかの法令違反で処分を受けたことがある場合等、こういったものについてはやはり基準を満たさないというふうになると考えております。

村越委員 今の局長のお話を私なりにまとめますと、信託引き受けを営業する法人というのは、いわば高い公共性と、また高い信頼性が求められるんだということだと思います。

 これは、受益者保護の観点からいえば当然のことだと思うんですが、私はさらにもう一点、この信託業を営業する法人というのは、委託者に対する説明責任だったり、あるいは、先ほどおっしゃった信頼性に資するという観点から、一種の高い専門性というものがあわせて求められるんじゃないかなというふうに考えています。この専門性に関して、改正法はどういうふうに業者が持っているべきかというふうに考えているんでしょうか。およそこの法案は、参入規制を設けるんだというのが一つの視点になっていると思うんですけれども、この参入規制をあくまで緩和していくんだという観点から考えれば、たとえ社会的信用というものが相対的に低くても、受託者としての専門性が非常に高ければ、参入が認められてもいいようなケースがあると考えられるんですが、この点に関してはどうでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私が御説明申し上げましたとおり、専門性という意味では、やはり信託業務を的確に遂行することができる知識経験を有するということが要件になっておりますので、そういう意味での専門性というのは必要ではないかというふうに、先生がおっしゃるとおりだというふうに思います。

 それからもう一つの要件で、いわゆる十分な社会的な信用を有していると。これは免許制度、ほかにも金融の中にはいろいろな免許制度をとっておりますが、それも同じような要件を付しております。おっしゃるように、そういった社会的な信用というのも大事だと思っておりまして、そこは先ほど申し上げましたように、社会的な信用については、そういった法令違反などの処分を受けているような方は、たとえ非常に高い専門性があっても、そこは信託の制度の本来の趣旨から考えて、やはり免許を与えるべきではないというふうに思っております。

村越委員 次に、監督体制であったり、受益者保護のことに関してお伺いしたいんですが、二十四条関係に「適切な信託の引受け」という文言があります。この適切な信託の引き受けが行われているかどうか判断をする基準というか、審査基準というものはお考えになっておられるんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘の二十四条二項で、信託会社に対して、委託者の属性、知識経験、財産の状況などに照らしまして適切な信託が設定されるような説明を行い、かつその信託が委託者の属性に照らして望ましくない信託については引き受けを行うべきではない、そういう趣旨の規定を私ども設けたところでございます。

 具体的に申し上げますと、例えば、委託者の知識経験に照らして設定される信託に起因するリスクが委託者には理解し得ないというふうに考えられる場合、あるいは今度は、その委託者の財産の状況に照らしてやはり設定される信託によるリスクが許容し得ないと考えられる場合、こういった場合については信託関係の設定を禁ずる、そういう趣旨だというふうに考えております。

村越委員 委託者というか、受益者から考えれば、常に適切な信託の引き受けが行われていなければこれはたまったものではないわけですが、それでは、適切な信託の引き受けが行われなかった場合の罰則規定というのはどうなっているんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の信託業法の二十四条の第二項に対する違反でございますが、これは、罰則の対象とはなっておりませんけれども、一方で、監督上の措置が今回の法律ではいろいろな形で入れていただいております。

 したがいまして、例えば業務改善命令の発動だとか、あるいは最終的には免許あるいは登録の取り消し処分といったことも入っておりますが、こういったことによりまして規制の実効性を確保していきたいというふうに考えております。

村越委員 さらにお伺いしたいんですが、適切な信託の引き受けが行われていても、受託者が破産するような場合が出てくるかと思います。そういった際の受益者の保護というのは、十分に考えられているんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 受託者が、まあそういったことがあってはいかぬわけですが、破産をした場合に、基本的には、受託者の固有財産と信託財産が分別管理をされていれば、信託財産はその受託者の破産に影響を受けないということになります。これは法律で、二十八条の三項で、分別管理の義務を課しておりますので、そういった意味で、信託の倒産隔離機能がそこで発揮されるということではないかと思っております。

 また、その受託者たる信託会社が破産した場合には、受託者としての任務は当然そこで終了をするわけでございますけれども、そういうことだけではなくて、その際に信託会社の免許、登録も失効する、法律上そういう規定になっておりますので、こういった関係から、それ以後信託会社は信託業を営むことはできないということになっております。

 さらに、やや財産的な面でございますけれども、仮に、今の分別管理をしていればそれは問題はないわけでございますが、管理失当等のことがないとも限りません。そういった場合に、信託財産に損失が生じ、その結果受益者が損害を受けた場合には、営業保証金制度というのを設けておりますので、受益者は営業保証金から優先的に弁済を受けることができるというような規定もございます。

 いずれにいたしましても、受託者たる信託会社が破産する事態に至った場合でも、受益者の不測の損害が生じないよう、この法案において一定の措置を講じているということでございます。

村越委員 次に、ディスクロージャーに関してお伺いをしたいと思います。

 信託契約代理業、今回新たにこういう業態が可能になったと思うんですが、並びに信託受益権販売業をそれぞれ登録制にしている。これは相対的に緩やかな参入規制だと解されますが、その参入基準や行為規制それから監督規制、ディスクロージャーの仕組み等定めているかと思うんですが、これらが受益者保護の観点から果たして十分なものなのかどうか、お答えいただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、先生が今御指摘のように、信託契約代理業、今回そういった業務をこの改正で入れておりますが、この信託契約代理業を営む者につきましては、これは信託会社に対しても同じ規定を入れておりますが、一定の行為規制をかけております。

 例えば、説明義務が課されていたり、あるいは断定的な判断を前提とするような行為をしてはいけないとか、あるいは、先ほどもちょっと出ておりましたが、適合性の原則と言われたものも入っていたり、そういった一定の行為規制が信託会社にかかっておりますが、それと同じものを基本的に信託契約代理業についても規制をかけるということになっております。

 あるいは、代理業につきましては、これは所属信託会社制というのをとっております。ある信託会社に所属してその代理業を営むということでございますが、その所属信託会社に対しての損害賠償責任という規定を設けておりまして、その所属信託会社というのは、代理店が与えた損害につきまして、それを賠償する責めを負うという規定も入れております。

 そういった観点から、いろいろな形で受益者保護のための施策を考慮しているところでございます。

村越委員 それから、関連しまして、先ほども津村委員から御質問があったようですが、金融庁の監督体制に関して、もしあれから情報が入っておわかりになっていることがあったら、ぜひ大臣にお答えをいただきたいと思っているんです。

 当然ながら、規制が緩和されていくということで、かなりなマーケットの拡大が見込まれているわけであります。先ほど困難だというふうにおっしゃっていましたが、試算がなされているのか。なされていないというのであれば、早急にぜひ対応していただいて数字をお示しいただきたいと思うんですけれども。そういった、規制緩和によってどんどん拡大されていくマーケットに対して、具体的に金融庁はどのような監督指導体制をとっていかれるのか。急激に本当にマーケットが拡大していくというふうに思われますので、本当に金融庁が間に合うのかどうかという懸念があります。

 その辺に関して、ぜひ大臣、お答えいただければと思います。

伊藤国務大臣 申しわけございません。先ほどの津村委員の御指摘の数字につきましては、院の方にお届けをするということで今準備をしておりまして、今この現在でお答えができないことについてはお許しをいただきたいというふうに思います。

 それから、試算については、これも先ほどお話をさせていただいたように、私どもとして、正確にこういうふうになるという明確な数字は今持っておりません。ただ、委員御指摘のとおり、今回の法律の改正によって受託可能財産の範囲というものが広がっていくわけでありますし、信託業の担い手というものが広がっていく。ニーズを受けてこのような改正をしていくわけでありますので、一層の市場の拡大が期待されるというふうに私どもも思っております。

 こうした市場規模の拡大を踏まえて、私どもの検査監督体制というものをしっかりやっていかなければいけないわけでありますが、そうした中で、検査監督体制の整備に必要な定員の確保、そして中途採用等の検討もさせていただいているところでございます。さらには、検査官の研修、指導体制を充実していくということも極めて重要でありますので、こうした点についても力を入れて対応していきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、法施行後の信託会社の検査監督に万全を期していきたいというふうに考えております。

村越委員 大変若輩者で失礼な言い方かもしれませんが、法律をとりあえずつくろう、ところが検査体制に関しては検討しているとか万全を期していきたいとか対応していきたいというのであれば、何というか、まさしく泥棒を捕らえてから縄をつくるんだというふうになってしまいますので、やはりこれは早急に、マーケットの信頼性というものを担保していく上でも、ぜひ対応していっていただきたいというふうに要望申し上げます。

 それから、もう一点お伺いをしたいんですが、今回、改正の肝というのは、端的に言うと、知的財産権が受託可能財産に含まれるようになった。今まで限定列挙されていたものがいわば解除されて非常にフリーになったというのが要点だというふうに私も思っているわけですけれども、反面、この知的財産権というものの客観的な評価基準あるいは手法というものがまだ確立されていないんじゃないかというような指摘がなされていると思います、非常に散見いたします。

 この問題に関する金融庁の見解をお伺いしたい。あるいは、知的財産権の客観的な評価基準というものをお持ちなのであれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、今回、知的財産権が信託業法の業務の中に入るという非常に大事な改正だと私どもも思っております。かつ、知的財産権の価値について、その評価基準というものについても非常に大事な問題だと思っております。

 私どもが承知している限りでも、知的財産権の評価の方法が幾つかあるわけでございまして、例えば、コストアプローチということで、知的財産の取得に要したコストで評価する方法だとか、あるいは、マーケットアプローチということで、市場価値に基づいて評価する方法、あるいは、インカムアプローチということで、知的財産が生み出す将来のキャッシュフローの割引現在価値で評価する方法というぐあいに、さまざまな方法が、しかもいろいろな用途に応じて使われている。そういう意味で、客観的な一つの方法ということではないという状況にあるというふうに私どもも承知しております。

 今後、こういった知的財産権が信託に用いられることを考えますと、そういったものの評価方法についての議論というのは非常に大事だと思っておりまして、私どもの知る限りでは、例えば経済産業省においてもそういった御議論をされているというふうに聞いております。

 今後、そういった今制度が新しく整備をされて、いろいろな形での周辺の制度の整備ということが行われていくということは、非常に重要なことだというふうに考えております。

村越委員 素人考えからいえば、客観的な基準が定まっていないとマーケットは混乱してしまうんじゃないかというふうに私は考えます。

 こういうたぐいの問題というのはやはり典型的な調整問題だと思いますので、やはり、権威ある機関がいろいろ精査して、ばしっと国民に対して規範的に基準を示していく必要があるんじゃないかなと私は考えますので、この点に関しても鋭意金融庁におかれましては努力をしていただきたいというふうに考えます。

 最後に、何点か注文というか要望をして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、法律はともかく、運用面で受益者保護の徹底をぜひ行っていきたいと思います。やはりマーケットが急にどばっと大きくなりますと、市場は無用に混乱をするようなことが出てくるかと思いますので、規制緩和のツケが、国民であり委託者であり受益者に回らないように配慮をしていただきたいということが一点。

 それから、先ほど申し上げたように、知的財産権の客観的な価値基準をぜひとも確立していただきたい。

 それから、あとの二点は我が党が再三再四申し上げていることですけれども、日本版SECたる証券取引委員会の設置をぜひ考えていただきたい。それから、金融サービス法の整備を行っていかなくてはいけない。これは我々が頑張っていかなければいけないことかもしれませんが、以上の点、ぜひ御配慮していただきたいということを要望いたしまして、若干時間が余っておりますが、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

金田委員長 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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