衆議院

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第9号 平成16年11月16日(火曜日)

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平成十六年十一月十六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 鈴木 俊一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      砂田 圭佑君    田中 和徳君

      竹本 直一君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      原田 令嗣君    宮下 一郎君

      山下 貴史君    井上 和雄君

      岩國 哲人君    小林 憲司君

      鈴木 克昌君    田島 一成君

      樽床 伸二君    津村 啓介君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      馬淵 澄夫君    村越 祐民君

      吉田  泉君    若井 康彦君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 吉田 英法君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    西原 政雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  田村 政志君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    竹田 正樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行企画局審議役) 前原 康宏君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  永田 俊一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  渡辺 喜美君     原田 令嗣君

  吉田  泉君     若井 康彦君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     渡辺 喜美君

  若井 康彦君     吉田  泉君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 共済年金制度の堅持に関する請願(西田猛君紹介)(第一六五号)

 同(下条みつ君紹介)(第一七二号)

 同(前原誠司君紹介)(第二二八号)

 同(坂本哲志君紹介)(第二五四号)

 消費税の大増税に反対し、消費税率を三%に引き下げることに関する請願(山口富男君紹介)(第一八二号)

 消費税の大増税反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融先物取引法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本銀行企画局審議役前原康宏君、預金保険機構理事長永田俊一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長勝栄二郎君、財務省理財局長牧野治郎君、国税庁課税部長竹田正樹君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁検査局長西原政雄君、金融庁監督局長佐藤隆文君、警察庁長官官房審議官吉田英法君、総務省行政評価局長田村政志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林憲司君。

小林(憲)委員 民主党の小林憲司でございます。

 先般は、委員長の大きなお計らいでちょっと時間をオーバーさせていただきましたが、まだちょっと取り残しがございまして、きょうは引き続き三十分ほど、新生銀行及びその後の預金保険機構から百七十四億円という大きな、皆さんからもらった税金がまたもや八兆円にプラスアルファ払われるのではないかという問題点につきまして、御答弁をお願いしようと思っております。

 それでは、前回の質問の最後に、シャーマン・アンド・スターリングという法律事務所がグアムの裁判所におきまして、何と日本の国民また預金保険機構の皆さん、またRCC及び政府に対しても内密に十五億ドルという大きな金額を、旧長銀とイ・アイ・イ清算人との間の裁判におきまして、おまけをしてやるよといって勝手にチャラにしていたという話の証拠として二つの法廷資料を提出いたしましたが、まずは永田理事長に、きょうは三十分しかございませんので単刀直入に問題に入らせていただきますが、永田理事長、まずは、シャーマン・アンド・スターリングという法律事務所が双方の代理人になっていたということを事実として御存じでしたでしょうか。お答え願います。

永田参考人 お答え申し上げます。

 そのようなことが問題にされて、イ・アイ・イ・インターナショナルと旧長銀との間で紛争が生じていたことは、累次の報道等にもございまして、認識しております。

 しかし、真相がどうであったかということや詳細につきましては、預保もRCCもこの紛争の当事者ではないので、直接了知しているものではないということを御理解いただきたいと思います。

小林(憲)委員 当事者ではないとおっしゃいましたが、これはお配りしました資料にありましたように、「アメリカン・ローヤー」という雑誌でも言っておりますとおり、まずは、イ・アイ・イの清算人におきましても、シャーマン・アンド・スターリングに対しての免責をしておりませんし、そしてまた新生銀行も、先般私がお配りしました本に謝罪文が載っていたと思うんですが、あの謝罪があったためにすべての裁判に対して不利になったということで、その請求を免責しておりません。

 ということは、先般、私が質問いたしましたときにお答えをいただいていないんですが、もし百七十四億円のお金が預金保険機構に対して請求された場合に、これはすべて国民の負担になるわけです。ですから、そう考えると、これは直接的当事者でなくても間接的当事者ということになるわけでございまして、その間接的当事者となられる永田理事長におかれましては請求権があるないということをまずお答えいただきたいんですが、これは金融庁の方からお答えいただければ結構です。預金保険機構はシャーマン・アンド・スターリングに対して、新生銀行や旧イ・アイ・イ清算人のように請求権があるんでしょうか。これは金融庁にお伺いします。

 そしてまた、永田理事長に関しましては、間接的当事者ということをまずはお認めいただきまして、その請求権があった場合に、それを請求する可能性が御自身としてあると思われるか、ないと思われるか、お答えを願います。

佐藤政府参考人 個別の民事上の問題の解決のプロセスでございます。

 預金保険機構は直接その当事者でございませんので、請求をするという立場にはないと存じます。

 いずれにいたしましても、法令にのっとり、さらに民事上の契約に則して、きちんと詳細に検討し判断すべき事柄だろうと思います。

永田参考人 お答え申し上げます。

 現在、新生銀行からの具体的な請求内容が明らかになっておりません。その段階で、その補償の要否も判断する段階にございませんので、契約その他何ら直接の関係がないこのシャーマン・アンド・スターリング法律事務所に対して、預保が何かすべきか否か、あるいはし得るか否かにつきましても、この段階では検討しようがございませんので、今後、請求が出てきた段階で慎重に審査していきたいというふうに考えております。

小林(憲)委員 それではお伺いいたしますが、先般私がお配りしました英文の法廷資料を、永田理事長におかれましては私がお渡ししておりますので読まれたと思うんですが、この事実に関しまして御存じだったでしょうか。お答えください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 私個人は、あの段階では存じ上げておりませんでした。

小林(憲)委員 それでは金融大臣にお伺いいたしますが、預金保険機構もその一〇〇%子会社であるRCCも、このグアムの裁判において勝手に債権放棄をされていたという事実を知らないでいたということに関しまして、金融大臣はどのようにお考えですか。お答えください。

 私は、これは一つの金融犯罪ではないか、そしてまた詐欺行為に日本の納税者がひっかかった一つの事例であると思い、これは大きな問題だと思うんですが、どうお思いでしょうか。お答えください。

伊藤国務大臣 委員から、金融犯罪ではないかという御指摘がございましたが、これは民間の個別の訴訟にかかわる問題でありますので、私どもとしてはコメントする立場にはないというふうに考えております。

小林(憲)委員 先ほど来、新生銀行からはその補償についての問題がまだ何も提示されていないと永田理事長は繰り返しおっしゃってみえますが、前回の質問でも、百七十四億というお金に関しても、どこからその報道が出ているのかわからないとおっしゃりながら、臨時報告書では出ているということをお認めになった。そしてまたきょうも、新生銀行が、旧長銀と言った方がよろしいかもしれませんが、自分で行った問題について和解をした金額から五十億の引当金を引いて、さらにそれよりも多い金額を多くの納税者に再度請求するかもしれないという臨時報告書を、もうごらんであった上に数字も御存じであった。そしてまた、今、何の交渉もないとおっしゃいますが、本当に水面下でも非公式でも何の交渉もされていないんでしょうか。お答え願います。

永田参考人 お答え申し上げます。

 請求に関しまして、全く何もやりとりがないのかというお尋ねであります。

 前回申し上げましたように、私ども、正式な請求を受けているという事実は全くありませんが、請求する際の書面の形式だとかあるいは記載項目とかあるいは添付資料等形式的なものについて、どのような形にすべきかといったような問い合わせは受けております。それに対してもちろん回答も行っておりますが、それ以上のことはしていませんということであります。

小林(憲)委員 だんだんお話が前に進んできて思い出していただけたようでございますが、今おっしゃった、形式的なとかどのような請求をしていくかという書類ですか、それはどのようなことを今お話しになっているのかということをお答え願えないでしょうか。

 これは先日お答えになった内容とはちょっと異なってきていると思うんですが、ここは財務金融委員会の場でありまして、国の機関の前で、これはまた時間の経過におきまして日時と時間もすべて確実に明るみに出る話でございますので、ぜひとも今の段階で、どのような形式的フォームが新生銀行の方から出されてどのような話し合いで何の書類について話しているかを、確実に明確に私にもわかるように御説明願います。お願いします。

永田参考人 お答え申し上げます。

 事前の形式面での確認でございまして、もちろん請求内容に踏み込んだ議論をしているわけではありませんが、先ほど申し上げましたように、具体的にどういう記載項目を書けばいいかとか添付する資料はどういうものを用意してくださいとか、そういうことについて先方の問い合わせに答えている、こういうことでございます。

小林(憲)委員 それでは、伊藤大臣、今の答弁を聞かれまして、どのような資料を添付すればいいのか、それからどのような形式で出していいのかという問い合わせが来ているということは、既に新生銀行は預金保険機構に対して、百七十四億円じゃないかもしれませんが、何らかの補償を求めることを始めているというふうに私は理解しますが、今の御答弁を聞かれて伊藤大臣はどう思われますか、お答えください。

伊藤国務大臣 今はその契約の当事者間において解決のプロセスの中にある、その中でさまざまな情報交換等がなされているのではないかというふうに承知をいたしておりますけれども、具体的にどのような補償請求がされるのか、そのことについては新生銀行から預金保険機構に対してはまだなされていないということでありまして、これは再三再四、永田理事長からもお答えになられているところでございます。

 新生銀行から具体的な補償請求がなされれば、当該和解の内容の詳細等を株式売買契約に照らし、金融再生法上の公的負担の最小化という観点も踏まえて慎重に検討した上で、補償請求にかかわる対応が預保としてなされていくというふうに考えております。

小林(憲)委員 今の御答弁を聞きましても、伊藤大臣の認識でしても、私の見解でしますと、これはもう既に新生銀行がある一定の、偶発的債務として瑕疵担保条項を駆使しまして、預保に対しましての請求を始めるための書類の準備を始めているということにしか聞こえないんですが、そのような理解でよろしいでしょうか、伊藤大臣。

伊藤国務大臣 補償請求を行う予定であるということは、ある意味では情報開示されていることであります。ただ、今の段階は、その解決に向けてのプロセスの段階にあるんだと思うんです。その中でいろいろなやりとりがされている段階にあるというふうに考えておりますので、具体的にどのような補償請求がなされるのか、このことはまだ明確になっていないというふうに預保からお伺いしているところでございます。

 先ほど来の答弁の繰り返しになりますけれども、預保からは、具体的な補償請求がなされれば、和解の内容の詳細を株式売買契約に照らして慎重に検討した上でこの補償請求に対する対応を判断していくというふうに伺っているところであります。

小林(憲)委員 それでは、永田理事長にお伺いします。

 請求次第だという新生銀行は、二百十八億円の和解金からもう既に引当金の四十四億円を引いているわけですから、国のお金なんですけれども百七十四億円を偶発的債務としてすべて預金保険機構に補償を求めていこうとしているから、書類はどうしたらいいんですか、添付資料はどうしたらいいんですかということを聞いてきているのであって、もし新生銀行が、いやいや、これはもう私たちがすべて悪いんですから、シャーマン・アンド・スターリングを訴えたり、ほかの訴訟ももう一度、グローバル・セツルメントといっても怠慢をしないですべてを見直していって、預金保険機構さんイコール国民の納税者、納税者の皆さんにはもう一切迷惑をかけるつもりはありませんよということでしたら、書類はどうしたらいいんですかとか添付資料はどうしたらいいんですかというふうに聞いてくるでしょうか。どのようにお考えですか。

 もし私が請求をしない新生銀行であったらそのようなことは質問いたしませんし、預金保険機構さんにも、もう私たちは預金保険機構さんに対して偶発的債務として何の補償も求めませんから御心配しなくてもいいですよという一言があるだけであって、どのような書類を添付したらいいんですかとか、どういう形式で出しましょうかという話があるということは考えにくいと私は思うんですが、どう思われますか。永田理事長、お答えください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 新生銀行の側がどういう今後の意図を持っておられるかということは、先ほども委員御指摘のとおり、臨時報告書等に出ているわけであります。

 しかし、私どもとしましては、その意図が具体的な請求になってあらわれません限り、この両者において、新生銀行が今後機構との間に紛争が発生しない保証はありませんと言われておりますが、そういうことも含めて、先ほど大臣がおっしゃられましたようなプロセスの問題として扱っていくということには、まだその段階に至っていないということで、私どもとしては理解をしておるわけでございます。

小林(憲)委員 これ以上このお話をしても、ここにお見えの財務金融委員会の聡明な先生方には、そしてまたこれをごらんの皆様には、今の答弁でもう既に、ああ、また預金保険機構と今話し合いが始まりつつあるんだなということはおわかりになったと思います。

 国民の税金を八兆円もかけて、日本の会社をつぶし多くの経営者を自殺に追い込んだ旧長銀が、名前だけ変えて死体の上にぴかぴかの銀行に生まれ変わって、そしてまたその銀行が起こした訴訟に対して預金保険機構と既に話し合いが始まりつつあることは今の御答弁で、永田理事長、先週とは大分話が変わってきたわけですが、多分私が質問してからいろいろなことが起こったのだと私は思いたいのでありますけれども、そのようになってきている。

 もう一つお伺いしたいんですけれども、この話し合いが今プロセスだとおっしゃいますが、RCCの役員の方がこの話し合いについて中に入っているということはないですね。お答え願います。

永田参考人 お答えいたします。

 そのように理解しております。

小林(憲)委員 RCCというのは預金保険機構の一〇〇%子会社でありまして、ぜひともこの場にRCCの方に来ていただいてお伺いしたいことがたくさんあるんですが、残念ながらRCCは政府の機関ではないということで、預金保険機構が一〇〇%責任を持つということでございますのでお伺いします。

 RCCは、イ・アイ・イの正式な管財人になっておられると思うんですけれども、そうじゃないんですか。管財人じゃないんですか。お答えください。

永田参考人 お答えいたします。

 RCCは、債権者ではありますが、管財人ではございません。

小林(憲)委員 わかりました。債権者であるということは確かなわけですね。

 それではお伺いしますが、この二百十八億円から四十四億円の引当金を引いた百七十四億円のお金の預金保険機構に対する請求を始めようと新生銀行がしておるわけですけれども、それに対しまして、これから偶発的債務ということの条項に基づいて預金保険機構は補償を、対応を明らかにしていくことになっているということで私は理解しているんですが、その明らかになっていく過程を金融庁の方に報告する義務というのはあるんですか。教えてください。

永田参考人 この件につきましては、過程については御報告する義務は特にないというふうに考えております。

小林(憲)委員 それでは伊藤大臣にお伺いします。

 大臣、これは、新しくなったその銀行、名前を変えただけの銀行、これは長銀です。謄本も一冊です。ですから全く同一人物なんです。西武鉄道が上場廃止になるということですが、それがまた名前を変えて上場するかもしれませんけれども、同じように、上場廃止になった長銀が名前を変えただけで再上場して一千億の粗利を外国のファンドがもうけて、そして八兆円ものお金を出して納税者がぴかぴかにした銀行が訴訟を起こされて和解をして、百七十四億円というお金がまた税金から払われるかもしれないというこの過程を、金融庁に説明もしなくていいというのは、一体どういうことでしょうか。お教えください。

佐藤政府参考人 本件は国民負担につながる部分があるわけでございますけれども、この処理自体は民事上の契約に基づいて当事者が契約内容、法令にのっとって対応しているということでございますので、そこの逐一の民事上の処理のプロセスについて金融庁が一々介入するという立場ではないというふうに存じます。

小林(憲)委員 それでは、新生銀行に対して八兆円ものお金を投入しておきながら、これは民事上のことだからといって、全く国民不在の中でふたをしていこうということでしょうか。大臣、お答えください。

佐藤政府参考人 本件につきましては、株式譲渡契約の中にさまざまな権利義務が記載されているものでございまして、それにのっとって当事者が権利の行使をしているということかと思います。

 それに対しまして、預金保険機構におきましては、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、国民負担の最小化といった要請も踏まえて、一方の側の当事者として対応をしていくということでございます。

 したがって、仮に偶発債務の請求等があれば、それが本当にそういうものに該当するのかどうかといったことにつきまして、預金保険機構の立場で、法令にのっとり契約の内容に照らして、例えば和解の合意の内容等について詳細にチェックをしていく、こういうことで預金保険機構において動いていただくということかと存じます。

伊藤国務大臣 株式売買契約の締結、その条項の中のさまざまな問題についていろいろ御批判があるということは承知をいたしておりますけれども、前回も答弁をさせていただいたように、当時は、金融システムの安定化あるいは公的負担というものを最小化していく、そうした要請の中で最大限努力をしてこうした株式売買契約が締結されたものと承知をいたしておるものであります。

 そして、この契約というものはあくまでも民事上の契約でありまして、偶発債務あるいは訴訟提起等にかかわる預金保険機構に対する補償につきましては、これは金融再生法の公的負担の最小化、こうした観点も踏まえつつ、民事上の問題として、株式売買契約及び関連法令において適切に対応されるものと考えているところであります。

小林(憲)委員 時間が大分迫ってまいりましたので、お伺いしますが、先ほどおっしゃいました、RCCは債権者の一人であると。債権者の一人であるならば、先ほど私が示しましたリージェントホテルの十五億ドル分、このグアムのコートでそれに対しての利害を放棄したという文面をお渡ししておりますが、これに関して、RCCも知らなかったというのは、私はこれはおかしいと思うんですよ。これはまさしく、預金保険機構、RCCは、債権者として知り得なければならない情報だと私は思うんですが、これはRCCの怠慢としか思えないんですが、永田理事長はどう思われますでしょうか。

 そしてまた、つけ加えまして、先ほど来問題になっております新生銀行、最新の四季報で見ますと、今度の三月の決算で大体六百六十億の黒字を見込んでおります。これはもうすべて国民のお金を突っ込んで、八兆円もお金を突っ込んだんですよ。そしてさらに、多くの犠牲者を出しながら債権を自分だけは放棄しないで貸しはがしなんということもしてやってきた銀行が六百六十億の黒字を出すということで、これはことしの三月では六百五十三億、十分払う体力あるじゃないですか。それから株も、売り出したときにはたしか五百二十何円か四円か、済みません、数字はちょっと忘れましたが、ハゲタカファンドが売り抜いたときはばあんと千円近くまで行きまして、その後ずっと低迷を続けて、今七百円ぐらいのところを上下しているわけですけれども。

 二つまとめて質問しますが、第二の株の売り出しは、日本の国民にとって全く何の経済波及効果もない。竹中さんは大変結構な新しいモデルを示したとおっしゃっていたが、株はただのマネーゲームに使われただけで、一回目の売り出しでばんと上がっただけ、後は低迷。でも黒字が出ているのに、また預金保険機構はお金を払おうとしている。ですから、私がお伺いしたいのは、その二点について、永田理事長、どう思われますか。お答えください。

永田参考人 まず第一点でございますが、委員御指摘のグアムの裁判所の決定でございますが、この決定書には、旧長銀が、イ・アイ・イ・インターナショナルの債務のうちHICという会社に関する債務を免除したとの記載がございますが、そのHICという会社に関する債権はRCCに関係するものではないと私ども認識しております。そのような事実があったといたしましても、旧長銀がいまだ公的管理下に入る以前に自己の経営判断で行ったことでもあります。それによってRCCの債権が毀損したというような話とは基本的には関係ないのではないかと認識しておるところであります。

 それから二点目でございますが、私ども、大臣からも先ほど御答弁ありましたが、国民負担の最小化のもとに、しかしながらこの売買契約書というものに基づいて適切に判断をしていきたい、またしていく義務がございますので、そういう観点で、請求がありましたところで適切に審査し、また処理をしていきたいというふうに考えております。

小林(憲)委員 最後の質問になりますが、今のお話を聞いておりますと、追いはぎに追い銭といいまして、全くかっぱらいに遭ったようなものでございまして。RCCは全然知らないといっても、今、リージェントホテルの物件というのは整理回収機構に入っているんじゃないですか。これは一度、また私が質問するときにお伺いをして、私もちょっと調査をしてみますが。まさしく整理回収機構というのは、一円でも多いお金を回収して、納税者に対して負担をかけないためにできたものだと私は信じておりますし、そのRCCが、前にあったことは知らないですとか旧長銀時代のことはわからないとかRCCには関係ないなんという御答弁をされる。永田理事長は大蔵出身でございますが、前の松田理事長は法曹界出身でございまして、なかなかそこまではおっしゃらなかったような気はいたしますけれども。

 とにかく伊藤大臣に最後にお伺いしますが、この不良債権処理に基づく多くの問題が発生しております。その中でRCC売却なんという話も、まことらしくローンスターが買うんじゃないかなんという話もアメリカではかなりされておるわけでございますけれども、しかしながら、この百七十四億円の行方につきましては、しっかりと御指導を願いながら、そしてまた経過を報告する義務が私はあると思うんですが、そのことを最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

伊藤国務大臣 RCCとのかかわりについては先ほど永田理事長が御答弁されたとおりだと思いますが、RCCはそもそも債権の回収の最大化を図るというのがやはり基本だ、そのことは間違いない事実だというふうに思います。それから、私どもとして、必要があれば預保に対してこうした問題について確認をするということは当然の義務でありますから、私どもとしてしっかりとした対応をしていかなければいけないというふうに思っております。

 しかし、基本は、これはやはり民事上の問題でありますので、関係法令、そしてこの契約書に基づいて適切な対応がなされるものと考えておるところであります。

小林(憲)委員 ありがとうございました。

金田委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、いわゆる無認可共済あるいは根拠法のない共済という問題について少し質問をしてみたいというふうに思います。

 この問題については、既に昨年の当委員会でも議題に取り上げられているといいますか質問が行われておりますので、伊藤大臣におかれても経緯ということはしっかりと御存じだろうというふうに思うわけであります。

 この点について、せんだって、ことしの四月から十月までの間、総務省の行政評価局の方で、根拠法のない共済に関する調査ということが行われております。また、金融審議会の中でも、これからの、どちらかというと制度のあり方について中心になると思いますけれども、いろいろな検討が行われているという状況にございます。

 そこで、まず最初に、総務省の方で先ほど申し上げました調査を実施するに至った動機、あるいは問題意識というものがどういうものであったのか、まずお話しいただきたいと思います。

増原大臣政務官 お答え申し上げます。

 根拠法のない共済でありますけれども、いわゆる根拠がないわけでありますので従来行政の外に置かれておったわけでありますが、御承知のように、近年、その事業者の数が相当ふえてきておるということもございます。また多様化も進んでおりまして、いろいろな意味で加入者等のトラブルが多発するという状況に至っておりまして、消費者保護、あるいは加入者、投資家保護というんでしょうか、そういう観点から、行政としてしっかりその実態を把握する必要があるのではないかというのがそもそもの問題意識でございます。根拠法のない共済、この事業内容や運営の実態につきまして、私どもが調査をいたしたということでございます。

平岡委員 そこで、ちょっとこの調査結果報告の中身を見させていただいたわけでありますけれども、これを見ますと、実は、調査をしようと思ったけれども調査への協力が得られなかったというところが何件かあると。特に、任意団体についていうと五十団体、任意団体による共済が四百二十二ほどあるというふうに把握した中で五十団体ほどあった、こういう話でありますね。

 それから、今言われた、消費者保護の観点からいろいろトラブルがあったというような形で、この調査報告書の中に書いてあるのは、消費生活センター等における相談で二百五十一件の相談があった、こういうふうにあるわけであります。

 当然のことながら、調査に応じないところというのは比較的問題が多いところじゃないのかなというのが一般的に想定し得るところなんですけれども、この相談があったというものと調査に応じなかったというようなところとは、どういう相関関係があるというふうに調査の結果としては把握しておられますでしょうか。

増原大臣政務官 お答え申し上げます。

 平岡議員は税務もよく御承知でございますので、税務上はそういった疑義があるところが、何といいましょうか、逃れるということもあろうと思いますが、本件につきましては、必ずしも予断を持ってそのようにまだ言えないのではないかというふうに私ども思っております。

 いろいろ、各消費生活センターなどの事務の処理の都合と申しましょうか、守秘義務とは言いませんけれども、なかなか公表はしづらいといったようなところもございまして、個々の事業者名までは調査ができていないところでございます。

 そうした中で一般的に調査を行ったというところでございまして、その一般的な調査の中で、先生御指摘のように、約七十団体がその協力を得られなかったというのがございますけれども、それが直ちにいわゆる問題のある共済かどうか、これにつきましては今のところはっきりわからないという状況でございます。

平岡委員 今わからないということなら、それはそれである程度仕方ないんですけれども、ただ、問題意識を持って調査したわけでありますから、そういう相談があった業者と、そして調査に応じなかった業者というのが一体どういうふうに関係しているのか関係していないのか、こういうものがわからないと、今社会で問題になっているこの問題についての実態が本当に反映された調査になっているのかというところについては若干疑問があるというふうに思いますので、しっかりとその辺、相関関係、別に何とかという会社とこれがこうだったという個別名を挙げて言えというんじゃなくて、相談があった件数先と調査に応じなかった件数先とはこういうふうな相関関係があったという程度の、我々に対して調査の結果がもっと問題意識を持ってわかるようにしていただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 それで、この調査結果として、最後に行政上の課題ということをこの結果の中には書いてあるんですけれども、特にどこに対して、名あて人ですね、この行政上の課題に対して、どこの省庁に対してこういう課題があるからちゃんとせいというふうな形になっていないんでありますけれども、この行政上の課題というふうに書いた部分については、一体この政府の中でいくとどこに対してそういう課題を投げかけたというふうに理解したらいいんでしょうか。これは、総務省、お願いします。

増原大臣政務官 ただいまの御指摘でございますが、行政上の課題としましては何点かあるのでございますが、私どもが問題だと思っておりますのは、募集方法は適切かどうか、あるいは財務情報がしっかりと開示されているかどうか、あるいは責任準備金がちゃんと積み立っているかどうか、こういったところに個々の問題があるというふうに思っております。

 そして、この点につきましては、いわゆる広義の金融でございますので、それを所管する金融庁に対しましては、この問題をまずきちっと金融庁に通知をするとともに、あわせて、先ほど委員御指摘の金融審議会におきましても私ども説明をしたところであります。

 なお、消費者保護あるいは投資家保護、いろいろありますけれども、根拠法のある共済を所管しているところもございます。内閣府や公正取引委員会、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、そういったところにつきましても、参考のために通知をしたところであります。

 それから、委員御指摘の深度のある調査でございますが、金融庁ほかのそれぞれの省庁で、これを参考にしてさらに深度のある調査をしていただきたいというふうに思っております。

平岡委員 ということで、これは過去の議論もありますけれども、やはり金融庁に大きな問題が投げかけられているというふうに私も考えておるわけであります。政府の中でも今そういう認識が示されたということであろうと思います。

 そこで、今度は金融庁の方にお尋ねしてみたいと思うんですけれども、今回の総務省の調査でいろいろと書かれている中に、例えば、任意団体等による共済のうち、加入要件が入会金だけであるとか、あるいは特段の加入要件が設けられていないといったようなものが共済という名を名乗って、実質的にはいろいろな保険業務に相当するようなことをしているというような実態がある程度明らかになってきているというふうに思うわけであります。こうした実質的には不特定の者を相手方として業務を行っているものについては、保険業法の中では、当然、保険業法の規制のもとで行わなければならないという法的枠組みになっているわけでありますけれども、こういう、入会金のみとかあるいは特段の要件なしという加入要件になっているような共済に対して、金融庁としてはこれまでどういう対応をしてきておられるのか、この点について大臣からお伺いいたしたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 任意団体等による共済につきましては、対象者が地域あるいは職域等に制限をされ、そして不特定の者を対象としていないものであることから、保険業法の規定においてその規制、監督の対象とされていないところであります。ただし、委員御指摘のように、共済と名乗っているものであっても実質的に不特定の者を相手方として保険の引き受けを行うことは保険業法に禁止をされているところでございまして、業法の中では、違反した場合には三年以下の懲役または三百万以下の罰金が規定をされているところであります。

 金融庁といたしましては、保険業法に抵触する疑いがある共済の情報収集に努めて、そして、仮に保険業法に抵触すると認められる事例があれば捜査当局に情報提供するなど、適正な、厳正な対応を行うこととしているところでございます。また、消費者に対しましては注意喚起を行う、こうしたことも非常に重要な観点でありますので、保険と根拠法のない共済いわゆる無認可共済、この制度上の違いについての説明を金融庁のホームページに掲載するなどの取り組みを進めているところでございます。今後ともこれらの取り組みをさらに強力に推進していきたいというふうに考えておりますし、また、これらの共済については、金融庁は規制、監督権限を有しておらず、法令上、その対応は基本的には刑事罰の適用に限られることとなります。

 いずれにいたしましても、無認可共済への対応の問題については、現在金融審議会において精力的に議論をしていただいておりますので、この議論を踏まえて、今後私どもとしてどのような対応が考えられるのか考えていきたいというふうに思っているところでございます。

平岡委員 この委員会での審議等を通じていろいろ問題点が指摘されたということもあって、先ほど大臣が言われたようないろいろなことを金融庁としてもしておられるということは私も承っておるわけであります。

 そこで、ちょっと警察庁の方に聞いてみたいんです。先ほど大臣の方からも、保険業法違反の疑いのあるものについては通報するというような体制になっているんだということでありましたけれども、警察庁の方では、保険業法違反の疑いがあるといったような事例がたくさん今現実に出てきているんだろうと私は思うんですけれども、この問題については、取り締まりとしては今どういう状況にあるのか、この点について教えていただきたいというふうに思います。

吉田政府参考人 いわゆる無認可共済の取り締まりについてお答えいたします。

 無認可共済を保険業法違反で検挙した事例は、過去五年間報告を受けておりませんが、年金会オレンジ共済のように、共済と名のついた団体について詐欺罪で検挙した例は過去にあります。

 無認可共済については、金融審議会で議論されていることは承知しておりますが、警察としては、刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処してまいりたいと考えております。

平岡委員 余り詳しいことを聞くつもりはないんですけれども、先ほど大臣の答弁でちょっと気になったんですよね。何が気になったかというと、保険業法違反の事例があれば捜査当局に通報するというような形で、実際にはこれまで通報したことがないのかあるのかよくわからない、ただそういう仕組みになっていますよということを言われただけなんですよね。

 ただ、過去の議事録を見てみますと、伊藤大臣が副大臣当時のものについて言うと、「やはり実態を正確に把握する、そのために情報の収集というのは極めて重要でありますし、その中で保険業法に抵触するものがあれば、これは捜査当局に連絡をして、適切に対応していくということが重要であります。過去にもそうしたことをしてまいりました。」というような、実績として言われておられるわけですね。ほかの箇所でもまた同じように、「当然捜査当局に通報するなど、厳正に対応を行っているところでございます。」ということで、いろいろ通報は行ってきたんだという、事実として述べておられるというふうに思うんですけれども、通報した事実というのはあるんですか。

伊藤国務大臣 副大臣時代にも答弁をさせていただきましたように、通報した事実はございます。

 ただ、具体的な中身についてお話しさせていただくことは、差し控えさせていただきたいというふうに思います。

平岡委員 そうすると、警察庁、先ほど取り締まりの状況で私がお伺いいたしましたけれども、検挙の話はともかくとしても、金融当局からの通報を受けて、しっかりとそういう社会的に問題となっている事案に対しては警察庁としても対応しているというふうに言っていただけるんでしょうか。どうでしょう。

吉田政府参考人 金融庁など関係機関との連携は従来から図ってきておりますし、刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処してまいる考えであります。

平岡委員 いや、警察庁としては、金融庁からの通報に対しては適切に対応してきているのかということを聞いているんです。もう一遍お願いします。

吉田政府参考人 金融庁から通報があったときは適切に対応していると承知しております。

平岡委員 適切に対応しているという話でありますから、適切に対応をしていただきたい。いただきたいというよりは、むしろ、社会的な問題が大きな問題として発生する前に、きっちりとやはり警察当局として、あるいは金融当局として、すべきことはしっかりとしていただかなければいけないということを申し上げたいというふうに思います。

 次に、無認可共済について言うと、いろいろ実態がわからないところもあるわけでありますけれども、課税関係がどういうふうになっているのかというところも、ちょっと疑問なところがあるわけであります。

 一般的には共済事業というのは、私の理解するところでは、収益事業という位置づけになっていないために、例えば任意団体が共済事業を行っているというような場合には課税の問題が生じないんだというふうに言われているわけでありますけれども、そういう理解でいいのかどうか。そして、もしその理解が正しいのであれば、任意団体が行っている共済事業について言うと、行っている事業の中身は保険会社と同じようなことをしておりながら実質的には課税されないということで、課税逃れのような状況が生じているんではないかというふうに理解するんですけれども、そういう問題に対しては国税庁としてどうお答えになるのかということで、国税庁にお答えいただきたいというふうに思います。

竹田政府参考人 一般論として申し上げますと、法人税法上、株式会社は普通法人に該当いたしますところ、普通法人が行う共済事業につきましては、その事業から生ずる収益の額から費用及びその損額を控除した残額に対して法人税が課されることになります。また、公益法人等に該当する法人や任意団体で人格のない社団等に該当する法人につきましては、税法所定の三十三の収益事業を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税されることになっております。

 したがいまして、先生から御指摘ございましたように、これらの法人が行ういわゆる共済事業につきましては、原則として税法所定の三十三の収益事業のいずれにも該当しないということになりますので、法人税の課税関係は生じないことになるわけでございます。

 現行法人税法上、このように課税主体の違いによって課税所得の範囲に差があるというその点については御理解をいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、個々の事実関係に基づきまして、現行法令等に照らして適正に取り扱っているところでございます。

平岡委員 今、ちょっと制度の仕組みの方が中心だったんですけれども、私の最終的な問題意識は、保険会社と同じようなことをやっておりながら、こういった任意団体が行っている共済に対しては何らの課税が行われていないというような事実が発生しているんではないか、もしそうだとすると、これは社会的に見れば課税逃れのような問題があるんではないか、そういう問題意識を国税庁として持っていないのかということを聞いているんです。もう一度お願いします。

竹田政府参考人 先ほども申し上げましたように、先生御指摘のようにこういうふうに違いが生じておりますのは、現行法人税法上の制度的な問題でございますので、その点につきましては御理解いただきたいと思います。

平岡委員 国税庁の立場としては、制度があればそれを適正に執行するという立場なんでしょうから、制度の問題についてとやかく言う立場じゃないのかもしれませんけれども、やはり問題意識としてはきっちりと、課税逃れ、課税の公平性という視点から問題があるのであれば、ちゃんとそれは制度を所管するところに対しても意見を述べていくというようなことはしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 そして、現実に、いろいろな社会で行われている、共済という名前のもとに行っている事業によって、全く税金もかからない、集めたお金はどういうふうに使われているか監督もしっかりされていない、こんな状態で社会的な問題を起こされてしまうということに対しては、やはり政府としてもしっかりとした責任を感じてもらわなきゃいけないというふうに思っていますので、その点は注意喚起をしておきたいというふうに思います。

 そこで、先ほどからもありましたけれども、今、金融審議会の方でいろいろな制度論議をしているというふうに承っております。せんだって、十月の五日に金融審議会金融分科会第二部会の方で論点整理が公表されて、それに対してパブリックコメントが求められ、そしてついせんだっては、そのパブリックコメントを踏まえて、さらなる論点という形でいろいろな考え方をまとめられているということでありますけれども、そうした一連の動きを見たときに、これはどういうふうに考えたらいいのかなと疑問に思うところが幾つかありますので、ちょっとその点についての金融大臣の御見解をお伺いさせていただきたいというふうに思っているわけであります。

 まず一つはセーフティーネットの問題であります。セーフティーネットについて言うと、論点整理の中では、損失が限定されるのであれば必ずしも必要ないが募集に際して説明を義務づけるという程度でいいんじゃないかというようなことが言われているわけでありますけれども、もしそういうことであるならば、損失が限定されるような商品については、保険会社が行う場合であってもセーフティーネットは必要ないんだ、こういう話になってしまうというふうに思うわけであります。

 そういうことを考えると、セーフティーネットの必要性というのは、取扱商品の違いによって区別するというよりは、むしろその顧客となっている、取引の相手方となっている人たちがどの程度閉鎖的なのか、どの程度オープンなのかといったようなところが大変重要な要素になるんではないかというふうに思うんですけれども、その点について、金融担当大臣はどのようにお考えになっておられますでしょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今、金融審議会においては、消費者保護の観点や御指摘の保険会社規制との関係等の観点から、どのような対応が考えられるかということで精力的に御議論をいただいているわけでありまして、今委員から御紹介がございましたように、十月五日にパブリックコメントに付された金融審議会の論点整理、この中で、セーフティーネットも含めて現行の保険会社に対する規制と同様の規制を課すべきとの意見と、そして、保険会社と異なる規制を導入する場合には、制度補完の役割等の共済事業の意義を含め、取扱商品の限定等により損失が限定されるのであればセーフティーネットを設ける必要がないとの意見がある旨、両論が記載をされているところでございます。

 いずれにいたしましても、金融審議会で今精力的に御議論をいただいておりますので、こうした御議論やあるいは検討結果を踏まえて、どのような対応をすることができるのか、私どもとして検討していきたいというふうに考えているところです。

平岡委員 今、金融庁が置かれている立場からすれば、私が問題提起していることに対して、素直にといいますか正面から答えてくれないというのは仕方ない部分もあるかもしれませんけれども、しかし、問題提起の部分についてはある程度しっかりと受けとめて、一般論だけで答えるのじゃなくて、しっかりと答えていただきたいというふうに思うんです。

 セーフティーネットはとりあえずそうしておいて、もう一つ、パブリックコメントの中でいろいろなことが言われているわけです。その中でも出てくるわけでありますけれども、構成員が閉鎖的な共済、構成員が限られている共済でない限りは、同じ商品を取り扱うなら同じ監督規制とすべきであるというパブリックコメントがあるわけですね。私も、消費者保護の観点あるいは取り扱いをする者の競争のイコールフッティングといったような観点から、この考え方というのはやはり原則として当然じゃないかなというふうに思うんですけれども、大臣はどういうふうにお考えになりますか。

伊藤国務大臣 先生から御紹介がありました論点整理に対する一般からの意見募集の結果、御指摘のとおり、消費者保護や規制のイコールフッティングの観点から現行保険会社と同様の規制を課すべきとの意見が多く寄せられる一方で、共済事業の制度補完の役割と多様な消費者ニーズにこたえる新商品の提供等の可能性というものを考慮して、保険会社に対する規制と異なる規制というものを導入すべきではないか、こういう意見も相当数あったところであるというふうに承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、今まさに金融審議会の中で議論がなされておりますし、また、私どもとしては年内に一つの報告書をまとめていただきたい、そういうお願いをさせていただきながら、金融審議会の中で議論を深めていただいているところでございますので、こうした金融審議会の御議論、そして検討結果を踏まえて、私どもとして検討していきたいというふうに考えております。

 委員の御指摘も十分踏まえながら、私どもとしてしっかり今後の検討を進めていきたいというふうに考えております。

平岡委員 ある程度正面からということではあるんですけれども、仕方ない部分もあるかと思います。

 次の論点にちょっと移ってみたいと思いますけれども、さらなる論点の中で、一つの位置づけとしてこういうことが指摘されています。保険会社の提供する保険への加入が困難な者を相手方とする共済というものは規制対象外にしてもいいんじゃないかというふうな提案がなされているわけであります。私はちょっと考えてみますと、今私が申し上げたように、一般の保険会社が提供する保険への加入が困難な人を相手方とする共済というのは、むしろリスクが非常に高い商品であろうかな、そうだとすると、そういうリスクの高い商品であればこそ、やはりしっかりとした商品審査などの規制というものが行われていないといけないんじゃないかというふうに思うんですよ。

 この点について、さらなる論点整理のところは逆の方向を向いているような気がするんですけれども、この点について大臣はどのようにお考えになりますか。

伊藤国務大臣 先生の御指摘の点につきましては、構成員が真に限定され、公的な規制が不要と考えることが可能かどうか、こうした観点から、実は、前回、金融審議会の中で議論をさせていただきました。その前提として、保険への加入が困難な者を相手方とする共済とは、危険なスポーツを行う者などが団体を構成し共済事業を行うなどを念頭に置いたものであったわけであります。

 こうした御議論の中においても、先生と同じように、むしろ規制が必要であるという意見もあったというふうに承知をいたしているところでございまして、こうした議論が今まさにされているところでありますから、こうした議論を踏まえて、重ねてになりますけれども、私どもとして検討を進めていきたいというふうに考えております。

平岡委員 余り時間がないので、いろいろな論点を全部挙げるわけにいかないんですけれども、もう一つだけちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 規制対象外とするものの中に、小規模共済を規制対象外とするということについての考え方が示されているんですけれども、ただ、小規模ということはいろいろな規制逃れがしやすい概念ではないかなというふうな気がするわけです。

 例えば、一つ一つの共済は小規模なものであるけれども、その小規模なものをいっぱい集めてきて全体としての共済事業が行われているというような事例であるとか、あるいは一つの共済が大きくなってきたときに小規模にするためにこれを分割するとか、そういったような操作をするということもやり方によってはできないことではないんじゃないかと。逆に、そういうことができるとすると、小規模共済を規制対象外とするということについては、規制逃れの行為というのが非常に多発するのではないかといったような気がするんです。こういった規制逃れを起こしやすいようなものについて規制対象外にするという考え方というのはいかがなものかというふうに思うんですけれども、大臣はどういうふうにお考えになりますでしょうか。

伊藤国務大臣 先生が今御指摘をされたように、実効性を確保するということは極めて重要なことでありまして、こうした点も踏まえて、金融審議会においては精力的な御議論がされているところであります。

 論点整理におきましても、規制の対象外とするか否かという基準ではないものの、保険会社と異なる規制を導入する際のメルクマールとして、事業規模に関して基準を設ける際に、事業分割による規制の潜脱の防止について何らかの工夫が必要となるというふうにされているところでございまして、こうした議論も含めてさらに深めて、そして金融審議会の結果も踏まえて、私どもとしても、これも重要な論点であるというふうに考えておりますので、そうした論点も踏まえて検討を進めていきたいというふうに考えております。

平岡委員 中身の話は時間がないのでこれでおしまいにしますけれども、これからどういうふうに進めていくのかについて、二、三、質問してみたいと思うんです。

 十月五日には、論点整理されたものについてパブリックコメントを求められましたけれども、今回さらなる論点整理ということが行われたこの部分については、さらにパブリックコメントを求めるという予定はあるんでしょうか、どうでしょう。

伊藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 今御指摘の、さらに御議論いただきたい論点は、今まで寄せられた一般の方々からの意見募集の結果を踏まえて、今後さらに必要となる検討の材料として金融審議会第二部会に提示されたものでありますので、同部会においてはこれらの論点について再度意見募集を行う予定はないというふうに承知をいたしております。

平岡委員 パブリックコメントについて言うと、さらにまた法案の段階でやるという可能性もあったりするのかもしれませんし、どの段階でやるかというのはいろいろな判断があろうかと思いますから、そこはある程度の皆さん方の判断に任せるというところがあっても仕方ないと思うんですけれども、やはりしっかりといろいろな方々の意見を吸い上げていくといいますか踏まえてやっていくということは非常に大切なことだと思いますから、これからも引き続き十分に意見は吸収していっていただきたいというふうに思うんです。

 それで、パブリックコメントはそれとして、この法案ですね。金融審議会の結果については、これからいつごろ集約し、それについては、法案提出としてはどのようなタイミングを考えておられるのか、この点について大臣の見解をお示しいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 今金融審議会においては精力的に御議論をいただいているところでございまして、基本的には年内を目途に報告書をまとめていただきたい、こういうお願いをさせていただきながら、今真剣な御議論をいただいているところでございます。

 こうした段階にありますので、どの段階で関係法律の提出をすることができるか、そのことを今申し上げられる段階にはないというふうに思っておりますが、委員から御指摘をされているように、また私も副大臣時代から、この無認可共済の問題は大変重要な問題でありできる限り早期に対応していかなければいけないという問題意識を持っておりますので、金融審議会の検討結果を踏まえて、私どもとして、どのような対応ができるか、真剣に考えていきたい、検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

平岡委員 金融審議会の結果を早く出して、そしてそれに対応する制度的手当てをするということも当然大切なことなので頑張っていただきたいと思いますし、それともう一つは、この制度改正とは関係なくて、今実質的に保険業法違反になっているような行為に対しても、しっかりと情報連絡、通報ということを通じ、そして取り締まり等も法に照らした適切な取り締まりを行っていくということについてもぜひお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

金田委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 本日、一般質疑の機会を得られました。私の方から、二、三御質問をさせていただきたいと思います。

 四月の二十三日でございましたが、私は、当委員会におきまして保険業法三百条一項六号、比較販売の禁止規制につきまして取り上げました。いわゆる銀行窓販の問題でございます。そこで、規制による護送船団行政が、結果として消費者、契約者の利益を十分に反映していないという保険市場の現状を生んでいるのではないかということを指摘させていただきましたが、本日も、保険と規制ということに関しまして質疑を行います。

 まず最初に、一つ目に、普通死亡保険金のことについてお聞きをしたいと思います。

 この問題につきましては、実は私は、五月の二十六日、当委員会におきまして質問を予定しておりましたが、その日は急遽UFJホールディングスの決算問題につきまして質問することになりました。時間がなくなってしまった経緯がございますが、一部触れたにとどまっております。改めて取り上げたいと思います。

 私自身、かつて、この国会に来る前は上場企業の役員をしておりましたが、数が多いというわけではないでしょうが、経営者の中には高額の保険のニーズというものがございます。この高額の生命保険、これが現実、現状では一社で加入できる死亡保険というものに対しましては限度があると聞いております。

 そこで、保険業法の施行規則を見ますと、保険業法施行規則十一条四号でこのように示されています。保険金の限度額が適正であることということでここに規定があるわけでありますが、この「限度額が適正であること。」という具体的な審査基準というのはどういうものでしょうか、大臣、お尋ねいたします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 生命保険会社より商品の認可申請が行われた場合には、私どもといたしまして、契約内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれがないか、あるいは不当な差別的取り扱いをするものではないか、そして契約内容が公序良俗を害するものではないか、こうしたことが保険業法第五条に定める基準に適応するものであるか審査を行い、そして適当と認められるものについてこれを認可することといたしているところでございます。

 保険業法施行規則第十一条第四号の「限度額が適正であること。」の審査につきましては、あらかじめ具体的な上限額が定められているものではありませんで、死亡保険金の限度額にかかわる認可申請が行われた際に、その内容が、モラルリスク、道徳的危険の排除について適切な検証を行っているか、保険数理が成り立つ一定規模の保険ニーズがあるかなど、保険契約者の保護、そして保険会社の経営の健全性の確保の観点から判断することといたしているところでございます。

馬淵委員 今大臣は、上限は定められていないとおっしゃいました。保険会社があくまでモラルリスクというもの、保険数理に見合って、のっとって判断しているということをお答えいただきましたが、実態として、現在日本で高額の生命保険に入ろうとする場合、一社で最高幾らまで入れるんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 一社当たりの死亡保険金の限度額でございますけれども、各社の事業方法書で決まっているということでございまして、各社の保険引き受け方針等によって異なり得るということでございます。

 ということで、各社ばらつきがございます。ございますけれども、私ども承知している範囲では、定期保険等の死亡保険金の限度額につきましては、おおむね三億円とかあるいは五億円とかといったケースが多いと承知いたしております。

馬淵委員 ばらつきがあるというふうにおっしゃっておりますが、普通死亡保険金額の通算限度は、二年通算で五億、そして既契約の通算で七億、これが一つの限度額として、実際には大手生命保険会社の中では、その取り扱いは新既契約の取り扱いという形で定められています。私の手元には、ソニー生命あるいはオリックス生命、東京海上日動あんしん生命、明治安田生命保険等々ございますが、こちらはきれいに一列に横並びに、今申し上げたように、二年通算五億、そして既契約通算七億を限度という形になっています。

 その「適正であること。」というのは、先ほどの御指摘の中では、契約者の保護であったり、不当な差別を排除、あるいは公序良俗に照らし合わせてということでありますが、金融庁として、実際に審査をしていく段階で、これらの数値、今申し上げた二年で五億、そしてこの七億という数値に対しての指導ということはされておられるんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 この点は、先ほどもお答えをさせていただいたように、個別の事例に基づき判断をするものでありまして、その申請の内容が、モラルリスクの排除について適切な検証を行っているか、あるいは保険数理が成り立つ一定規模の保険ニーズがあるかなど、保険契約者の保護、そして保険会社の経営の健全性の確保、こうした観点から審査を行い、申請された限度額に問題がないと認められた場合に認可することといたしているところでございます。

馬淵委員 いや、大臣のお話ですと、一切の指導はない、こういうことでよろしいんでしょうか。

伊藤国務大臣 今答弁をさせていただいたように、個別の事例に応じて審査をさせていただいているということでございます。

馬淵委員 個別の事例ということですが、それぞれ個別の企業の資産内容や、当然ながらその保険の残高等々、違ってくるわけです。しかしながら、このように上限に関しては横一線である、横並びになってしまっている。つまり、「適正であること。」というこの施行規則の基準が、実は金融庁そのものがある程度の裁量を持って定めさせているのではないかという実態の反映ではないかと私は感じるわけです。

 こうした状況について、金融庁が、私は常々申し上げている、裁量によって行政が行われてしまうことをできるだけ取り除かねばならない。当然ながら、契約者の保護というのは重要です、また、消費者の保護に対して当局がしっかり目を光らすことは大事なわけでありますが、自由な競争市場、この自由な市場を阻害してはならない。

 お話の中では、一切数値的な指導は行っていない、こうお答えいただいたということでよろしいんですね。

伊藤国務大臣 先ほど来お答えをさせていただいているように、これは個別の事例ごとに私どもとして審査をさせていただいて、審査の基準についてもお話をさせていただいたところでございます。重要なことは、保険契約者の保護、そして保険会社の経営の健全性を確保するということが非常に重要なことでありますから、こうした観点から審査を行って、そして問題がなければ認可をさせていただいているところでございます。

 また、私どもとしては、やはり各社が創意工夫をして、そして利用者のニーズにこたえられるような商品開発がなされることも大変重要なことだというふうに考えておりますので、そうしたことに対する期待も持っているところでございますが、先ほど委員が御指摘になられたように、何か裁量行政をやるということでは全くありませんので、市場というものを健全に発展させていく、そのために私どもが果たさなければならない役割というものをしっかり果たしていかなければいけない、そういう問題意識を持って行政に当たらせていただいているところでございます。

馬淵委員 私も、大臣がおっしゃるように、各企業がそれぞれのリスクを算出しながら消費者のニーズに合った商品開発を行っていくことは非常に重要だと思います。しかし、現実には、こうして高額死亡保険に関しては横並び一線になってしまっている。これはある意味では業界の怠慢ということもあるのかもしれないんですが、一方で、金融庁が何らかの形での規制なり指導という形で、暗黙の中でそうした押さえ込んでいることがあってはならないと思うわけであります。

 なぜこのようなことを申し上げるかというと、実は、一部の大口資産家、大口の投資家、資本家という方々が、相続税対策等のために海外で生命保険に加入するという実態を私は聞いております。このことについて、まず、金融庁としては把握をされておられますでしょうか。

伊藤国務大臣 日本に住所等を有する者等が日本に支店等を設けない外国保険業者と保険契約を締結する際に、保険業法上、契約者等の保護の観点から、原則として金融庁の許可を要することとされております。

 このような海外の生命保険会社との契約については、当局として許可した事例はこれまで過去三十年間に十一件ございまして、このうち個人が契約の締結者であるものについては三件ございます。

馬淵委員 今、十一件、そして個人については三件おありだというふうにお話がありましたが、今どういう実態が生まれつつあるか。

 もちろん、これは大口の資本家ですから、数が多いというわけではないかもしれません。しかし、その金額というのは相当なものになります。大口の資産家、資本家の皆さん方が節税を考える、相続税対策などのために、それこそ海外の大手生命保険会社がファーストクラスで健康診断に海外へ行かせる、そしてそこで保険契約を締結させて帰ってこられる。こうしたビジネスのモデルが現に存在し、こうした契約が実態上行われている。

 このケースは、まず、先ほどの御指摘の中にあった総理大臣の認可もない話であるとすれば、これは業法違反となりますでしょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 日本に住所等を有する者等が日本に支店等を有しない外国保険業者と保険契約を締結する際には、保険業法百八十六条第二項において、契約者等の保護の観点等から、原則として金融庁の許可を要することとされているところであります。こうした契約について許可の申請があった場合には、保険業法百八十六条第三項各号に規定される許可をしてはならない要件に該当しないものについては、当局としては許可を行うこととなるわけであります。

 一方、当局の許可を得ずに当該保険契約の締結を行った海外の生命保険会社は、保険業法百八十六条第一項違反となるとともに、契約締結者も同条第二項違反となります。日本に支店等を設けない外国保険会社は当局の監督の対象外であり、その取引実態の詳細を把握することは限界がありますが、当局といたしましては、実態把握に努め、適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。

馬淵委員 御指摘いただきましたように、百八十六条でこれは規定をされていて、私が先ほど申し上げたような例は違反になる、業法違反となる。そして、業法違反の場合、日本に支店を有していない会社ですから、管轄外となります。この管轄外の保険会社にも当然ながら過料が科される、そして申込者にも過料が科されるということですね。この過料に関しては、業法違反ということで、三百三十七条の一項で五十万円という過料になっています。

 いいですか。五億円では足りないという投資家、資本家が現実にはいらっしゃるんです。こうした方々が、それこそ大変な金額の保険に入るために、そしてこれを相続税対策のために、海外に行って、海外で保険に加入してくるようなことをされている方々に対して、それをやっちゃだめですよということで過料を科している。これが罰則規定としてあるわけです。

 しかし、金額が五十万円です。私が申し上げたいのは、果たしてこれが抑止力になるんでしょうか。上限規制はしていないとおっしゃっておられますが、現実には横並び一線となっている。そして、消費者のニーズはもっと高いところにあるにもかかわらず、保険業界自体の怠慢もありますが、高額の死亡保険をつくることがない状況の中で、海外に行って保険に入ってこられる。その過料はわずか五十万。何億、十億、二十億という単位の保険に入ってこられる方もいらっしゃるようです。この抑止力。つまり、私が申し上げているのは、そうした市場を見ずにこのままで放置している状況で、果たして、先ほど来大臣がおっしゃるような市場の健全性を図るための抑止力となり得るんでしょうか。どうですか、お答えください。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 保険業法上は、契約者保護等の観点から、日本に支店等を設けない外国保険業者に対し保険契約の申し込みをしようとする者は、原則として金融庁から許可を受ける必要があることとされており、許可なくこうした保険契約の申し込みをした場合には、今委員から御紹介がございましたように、罰則が科されることとされているところでございます。

 当該の罰則は、業規制の対象となる事業者ではなくて、許可なく保険契約を締結した一般人を対象として、その義務を怠った者を罰するものであります。そして、罰則の軽重については、一般論として申し上げれば、これは対象となる者の属性や我が国保険市場に与える影響、他の罰則との平仄等を総合的に勘案して定められるものと考えております。

馬淵委員 何億も保険に入って、何とかこれで相続税対策にというように考えておられる方が、たくさんいるとは言いませんよ、でも、そうしたお考えの方が現実に海外に行って高額保険に入っておられる。しかし、過料は五十万だといえば、これが果たして抑止力になるのか。よく勘案して、思料してこれを定めてあるとおっしゃっていますが、とても市場の健全化のために勘案した結果とは私には思えない気がいたします。

 このような実態について適切な対策を講じることなく、限度額の問題を保険業界の問題だとするのは、金融庁にとってこれは大変怠慢ではないのかと私自身は感じます。こうした保険というものは、自己責任において信用リスクを自分で管理して、自分に必要な保証額を購入できるというものが本来の保険市場のあるべき姿ではないかということを私は申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 今、資産家対象のお話をさせていただきましたが、もう一つは庶民の問題について、先ほど先輩の平岡議員からもお話のありました共済保険についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 保険業界が、先ほど私申し上げたように、目に見えない規制の中で市場がゆがんでいるのではないか。現実には、保険の契約数というのは低下しています。一方で、契約数が伸びているのは共済保険であります。共済は消費者のニーズを反映しない保険に対するアンチテーゼとも言えるのかもしれません。そして、その中で無認可共済、これは先ほど先輩の平岡委員の話にもありましたように、金融審の第二部会で規制が検討されているということでもあります。

 最初に私の方でお伝えをしておきたいのは、誤解のなきようにお伝えをしておきたいのは、私自身は、共済の名をかりた悪質な詐欺まがいの募集行為、これは厳格に取り締まりを行うべきであると考えていますし、消費者保護、契約者保護のためには一定の法的規制というものは必要だと考えています。

 しかし、今回のこの機会にあえて申し上げれば、共済の規制についてより慎重な検討をすべきだと私は思っております。といいますのも、共済というのは長い歴史を有しており、資本の論理に基づく保険業とは違って、相互扶助の精神であります。常々私も申し上げておりますが、個の自立と共生というものが現代のキーワードになっていくであろう。その自立と共生という理念から考えれば、この共済という制度は決してゆがめてはならない、守らねばならない制度だというふうにも考えています。

 かつて、竹中大臣が、前大臣でいらっしゃいました竹中さんが、本委員会において、この共済問題につきましてこうした御答弁をされています。これは私どもの仲間の議員の質問に対して、当時、竹中前大臣は「一律に横の規制を課すというのはこれまたやはり難しい面もあるのではないかな、その意味での慎重さは必要なのではないかなという気もいたします。」とお答えされています。

 伊藤大臣、新任の大臣となられまして、まず、この竹中前大臣の見解につきまして、伊藤大臣もお変わりはないかということをお尋ねさせていただきます。

伊藤国務大臣 無認可共済の問題は、先ほど平岡委員の方からも御指摘があり、委員からの御指摘というのは幾つか大変重要な論点の問題であったというふうに思います。一方で、今委員から御指摘ありましたように、この共済というのは相互扶助の精神のもとに、相互扶助を目的として共済が行われていて、それは日本社会の中で非常に大きな役割を果たしていることも事実だというふうに思っております。

 実際に、金融審議会の議論においても、あるいはパブリックコメントにおいても、まじめに共済の目的を持ってなされている共済についてはほかの共済とは区別をして考えてもらいたい、こういう意見も寄せられているところでございまして、したがって、根拠のない共済のあり方についてどういうふうに今後の対応を考えていったらいいのかというのは、大変これは難しい問題が幾つもあるということは承知をいたしております。

 だからこそ金融審議会においても精力的な御議論をいただいているところでございますし、私どもも、そうした御議論やあるいはパブリックコメントによって寄せられた一般の方々からの意見というものも踏まえて、慎重に検討して、この問題に対する対応というものを考えていきたいというふうに思っているところであります。

馬淵委員 伊藤大臣も、竹中さん同様、共済というものはしっかりと守るべき部分もある、こういうお答えをいただいたと思います。

 金融庁の方では、金融審の議論がようやく詰めまで来るというところでありますが、先ほど大臣も御指摘がありましたホームページには、根拠法のない共済については呼びかけをして注意喚起をしている、こうおっしゃっております。「根拠法のない共済への加入を検討される際には、保険会社との制度上の違いについても留意し、その財務及び業務の健全性等について確認されることが重要です。」と。これが呼びかけだ、注意の喚起だ、こうおっしゃっているのだと思うんですが、私から見れば、この共済問題については、むしろ、金融庁が自分たちの管轄外だということで、今まで余りにも関係ないと言わんばかりの姿勢ではなかったのかなと。そして、ホームページにこうした文書で注意を喚起しているとおっしゃっていますが、これで呼びかけているんだというのでは、余りにも消費者、契約者に対しては冷た過ぎやしないかという気が私はするのであります。

 これらを見ますと、根拠法のない共済というものは金融庁の監督下にはないんだから自分たちとは無関係だ、こう今まで御指摘をされてきたという感じがして仕方がないんですが、今ようやく金融審の中で詰めに入ったということでもありますが、この金融審の中で詰めていくというところで、まず、この共済が保険業法の保険業に当たるかどうかというところが非常に問題になっていくわけであります。

 先週、私はこの場所で、信託の受益権の販売に対しまして、反復継続性を持つ業、これはどこが判断するのかということで、金融庁だということでお話がありましたが、無認可共済を行う者が保険業か否かの判断、これに関しては保険業法の第二条「不特定の者」というところに当たるか否かの判断、これは金融庁がされる。そして、それはどういうことをもって判断されるかということについてお尋ねします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今御指摘がございましたように、不特定の者を対象としているか否か、ここが大変重要なポイントでありますので、これがどうかという判断基準でありますけれども、当該団体の組織化の程度、これは構成員の団体帰属にかかわる意識度、そして当該団体への加入要件についての客観性、難易度の程度、さらに当該団体の本来事業の実施の程度などをもって個別具体的に判断される必要があると私どもは考えているところでございます。

馬淵委員 その特定の者に対して今個別具体的な判断が必要だというお話でありましたが、保険業を、違反を行っている根拠法のない共済に対して警告を発したり、あるいは業務停止を指導したり、場合によっては保険業法違反ということで告発ということ、これについては金融庁は取り組みをされてこられましたでしょうか。先ほどのお話では、捜査当局への通報ということでありました。金融庁自身が、告発等、保険業法の違反ということに対しての主体的な行動というのはいかがですか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 従来から、私どもといたしましては、保険業法に抵触するような無認可共済については、財務局や関係団体とも連携をとりながら、協力をしながら、その情報収集に努めてきたところであります。

 しかしながら、保険業法の適用のない共済について、金融庁は規制、監督権限を有しておりません。これらに対する捜査、取り締まりは司法警察当局の所掌となっており、金融庁として実態を把握し、その実態に基づいて対応することについてある種の限界があることについては御理解をいただきたいというふうに思います。

 なお、告発を行うかどうかにつきましては、不特定の判断に加えて、事案の悪質性、そして金融行政の目的遂行の確保、さらには、一般国民または私企業の処罰を求めることの重大性等を総合的に勘案し、個々の具体的な事例に応じて個別に判断する必要があると考えているところでございます。

馬淵委員 すべての私人を管理監督下に置いて、それに目を光らせろということは、とても無理であります。それは十分理解をしていますが、金融庁がやはり情報を収集される窓口となるわけですね。そして、もちろん、それは警察に対して通報をするということでしか権限が及ばないんだというお話でもありますが、一方で、一般論でありますが、刑事訴訟法上の公務員の告発義務というものもございます。

 金融庁が主体的に情報を取得して、そして、それに対して、業法違反なわけでありますから、業法違反に対して、みずからの立場で第三者として告発をしていく。言いかえれば、これは、告発義務というようなものを今後も課していくというような考え方も一方であるのではないかと私は考えるわけでありますが、そのような金融庁の今後の業法違反に対しての姿勢というものについて再度お答えをいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 先ほども答弁をさせていただいたように、私どもとしては、規制、監督の権限を有しておりませんので、そのためにある種の限界があります。

 しかし、保険業法に抵触するような事実が確認できれば、法令に基づき、私どもとして適切な対応をしていかなければいけないというふうに思っておりますし、また、私どもが関係機関と連携をして、問題のある無認可共済についてしかるべき対応をしていく、そのための情報収集に努めていくということも非常に重要なことでありますから、今ある枠組みの中で、最大限、私どもとしても、契約者保護という観点から適切な対応をしていきたいと考えているところでございます。

馬淵委員 もう時間も余りありませんので、ちょっと違った観点で、もう一点お伺いをしたいと思います。

 保険業法違反か否かという判断のところで、先ほど特定の者とすることに関しての判断は個別でさまざまな観点があるというお話がありましたが、今後何らかの形の規制を考えていくときに、明らかに保険業とみなされる者であるならば、これはそれなりの規制をかける、そして、そうではない者に対しては、共済のよさも考えながら、緩やかになるんでしょうか、もう一段階違った規制を考えていくというお話であったというふうに理解しております。

 しかし、特定の者に対する判断というのは、今個別個別だとおっしゃいましたが、これに対して具体的なガイドライン、これは今日まででも十分につくり得たのではないか。このガイドライン、特定の者についての判断のガイドライン、基準というものを、今回のこの規制の中でつくらねばならないということではなく、金融庁自身が保険業法で規制する中でこのガイドラインというものを当然ながらにして持てるのではなかったのかと私は考えるわけであります。

 特定のガイドラインを設置していく、具体的に設置していくということが、今回の金融審の中で盛り込んでいかれるかということ、大臣、お答えいただけますでしょうか。

伊藤国務大臣 不特定の者を対象にしているか否かについては、先ほども答弁させていただいたように、これは個別具体的に判断される必要がある。したがって、現行法のもとで一律にガイドラインのような判断基準を示すことは、これは慎重な検討が必要ではないかと私どもは考えているところでございます。

 しかし、この無認可共済の問題につきましては、先ほど来議論になっております金融審議会の論点整理において、委員が御指摘をされた具体的な基準の必要性に関して、特定性に着目をして保険会社に対する規制と異なる規制を導入する場合、特定性に着目した無認可共済と保険業との区分が容易でなくなりつつある状況を踏まえ、両者を分ける特定性について、例えば団体への加入の要件や他の活動との関連、保険契約募集の態様、事業規模などに関して一定の具体的な基準を設けることも検討する旨の記述があるところでございます。こうしたことも踏まえて金融審議会では今後も精力的な議論が行われてまいりますので、金融審議会での議論、そして検討結果を踏まえて、私どもとしても、どのような対応ができるのか、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

馬淵委員 もう時間もありませんが、最後に一点だけ。

 今のお話のようなガイドラインといいますか、方向性を持って進めていくということでありますが、やはり契約者の保護ということを考えたときに、いかに社会的な影響が大なるかを考えるべきである。そのときに、特定の者、不特定の者ということも一つの要件ではありますが、考え方としては、その規模というものも非常に重要ではないかと考えるわけです。イギリスなどでは、こうした保険に対しては、その純資産の規模によって規制を緩和するといった考え方があります。これもパブリックコメントの中にも一部ありましたが、こうした規模の区分で考えていくというのは、私は非常に合理的であるというふうに考えますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。これをお答えいただきまして、私の質問とさせていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 先ほどの論点整理の中でも、無認可共済と保険業との区分が容易でなくなりつつある現状を踏まえて、両者を分ける特定性について、御指摘の事業規模、保険契約者数等の観点も含めて、一定の具体的な基準を設けることも検討する旨の記述があるところでございます。こうした御議論を踏まえてさらに金融審議会の中で議論を深められていくというふうに考えておりますので、そうした議論を踏まえながら、私どもとして、どのような対応ができるのか、検討を進めていきたいと考えているところでございます。

馬淵委員 規模の問題というのは非常に重要な観点だと私は思いますので、ぜひ金融審の中で直截な議論をしていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 おはようございます。民主党の岩國哲人でございます。

 金融庁と財務省、それぞれの大臣に質問させていただきたいと思います。

 けさは、小林、平岡、それから今の馬淵、それぞれの三人の委員から、こうした金融庁の検査体制についての懸念あるいは欠陥、そういったことについての発言、質問がございました。私もその延長になりますけれども、今、信託業法あるいは先物取引、次々と新しい法律がつくられ、あるいは改正され、そうした民間の投資家の便宜を図るという目的のもとに、いろいろな業者の活動範囲が広げられ、あるいは新しい参入が認められ、そして新商品の許可が大きく緩和される、こういう流れにあります。

 一般に言う規制緩和、ディレギュレーションという流れの中にあるわけですけれども、私は、そういう世界に三十年間、世界のお金の顔を見て、世界のお金の流れを見ておりましたけれども、今は、ディレギュレーションよりもリレギュレーション、再規制の時代に来ているんじゃないか、そういう認識を持っております。一周おくれでどんどこどんどこ規制を緩和する。その結果として、業者の不正がどんどんふえている、そして、弱小の投資家が犠牲にされる。そういうことを今はストップする、そのためには、規制緩和ではなくて規制強化の流れに踏み込むべきではないか、私はそのような認識を持っております。

 一つの事例を申し上げますと、例えば、銀行、保険、証券、この三つに分けて、最近、いろいろな顧客とのトラブル、そしてそれが裁判ざた、訴訟になっている。この訴訟の件数、この十五年間に銀行について訴訟件数は幾らから幾らにふえたのか。銀行、保険、証券について。この三つの分野について、顧客との取引をめぐる訴訟ざた、これが十五年間にそれぞれどれぐらいふえているか、端的にお答えいただけますか。

佐藤政府参考人 金融機関をめぐる訴訟の件数でございますが、まず都市銀行でございます。

 主要十一行のベースで調べましたところ、可能な範囲で調べたわけでございますけれども、係争中の訴訟件数が、平成十四年度末で九百八十件、十五年度末で九百九件でございます。それから、訴訟が終結した件数でございますけれども、十四年度で一千三十六件、十五年度で八百七十二件。今度新たに提起された訴訟でございますけれども、十四年度で八百二十二件、十五年度で八百一件という数字でございます。

 それから次に、保険会社でございます。

 大手の生命保険会社四社について調べたところでございますけれども、係争中の訴訟件数は、平成十四年度末で二百三件、十五年度末は二百二十二件でございます。また、終結した件数でございますけれども、十四年度に終結したものが九十九件、十五年度は百二十件ということになっております。次に、新たに訴訟となった件数でございますが、十四年度で百五十件、十五年度で百三十九件ということでございます。

 次に、損害保険会社でございますが、これは大手の二社で調べたわけでございますけれども、係争中の訴訟件数は、十四年度末で九百五十四件、十五年度末に一千七十五件という数字になってございます。

 さらに、証券会社でございますけれども、これは大手三社で調べたわけでございますが、係争中の訴訟件数は、十四年度末で二百三十四件、十五年度末は百七十九件でございます。次に、終結した件数でございますけれども、十四年度が百四十四件、十五年度百六十七件。また、新しく訴訟になった件数でございますが、十四年度に百五十三件、十五年度が百十二件、こういう数字でございます。

    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕

岩國委員 私がお伺いしたのは、十五年間にどのようにふえたか。十五年前の水準と現在の水準と比較して、訴訟はどんどん減っているかどうか。法が整備され、金融庁の仕事が軌道に乗り、結果としてこういう顧客との取引はどれだけ減ったのか。十五年前の水準と今と比べてどうなんですか、お答えください。

佐藤政府参考人 大変恐れ入ります。昨日御質問の通告をいただきまして、みんなで手を合わせて一生懸命徹夜をして調べたところでございますが、十五年前の計数についてはなかなか把握し切れないということで、今申し上げたようなお答えをさせていただきました。

岩國委員 それじゃ時間のむだじゃありませんか、十五年前の数字のかわりに去年の数字だけずらずら並べられても。

 私が知りたかったのは、こうした大きな時代の流れの中で、日本のそうした投資家あるいは取引先とこういう金融機関との間に、最近のUFJのようないろいろなトラブルもあります、金融機関の営業態度、いわゆるお行儀が相当悪くなっているんじゃないかという声がこういう数字にあらわれてきているんじゃないか、そういう懸念から私はお伺いしているわけです。

 金融庁自身が、通告を受けたから一生懸命調べてみた。こういう問題意識が完全に欠落しておるんじゃありませんか。十五年前は、決してすべてが行儀がよく、お客さんも満足という時代ではなかったとは思います。しかし、大きな時代の流れが、今、日本の国会に、法律に何を必要としているのか。前へ進む法律なのか、後ろへ進む法律なのか、右へ行ってほしいのか、それを判断し、的確な認識を持つためにはこういう数字が必要じゃありませんか。

 伊藤大臣は、毎日のように適切適切とおっしゃっている。しかし、大臣が適切とおっしゃるたびに不適切な事例がどんどんどんどんふえているんです。こんないいかげんな国会や議論というのは、私は何の役にも立たないと思う。もう少し、そういう訴訟の件数はどこから起きているのか、そして、金融機関を監督し、検査し、指導する立場にあるならば、どういうところに目をつけて検査しなければならないのか、それをやるべきじゃありませんか、大臣。

 例えば外為法違反、ロッキード事件で有名になりました外為法違反。この十五年間に外為法違反で指導を受けた、摘発された、指摘を受けた、あるいは起訴された、裁判に絡んだ、こういう外為法違反の事例というものは、この十五年間に幾らありましたか。その中にUFJも入っていましたかどうか。まずそれが一点。

 二番目に、よく連帯保証で、この委員会でも取り上げられておりますし、予算委員会でも取り上げられましたけれども、印鑑の偽造、署名の偽造。こういったことが銀行員によって行われている、これが随分最近はふえているようです。裁判にもなっております。こうした印鑑、署名の不正使用、本人あるいは連帯保証人の印鑑、署名を偽造している。

 一番目は外為法違反の事例はこの十五年間に件数としてどれだけあったのか、二番目に印鑑、署名の不正使用、これが金融庁の検査で指摘されたのはどれぐらいあったのか、それぞれ件数でお答えください。

西原政府参考人 当方の検査におきましては、外為法の関係は所管しておりませんので、外為法の関係の指摘事例がどのぐらいあったかということは、我々の検査の対象外でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

 一方で、偽造等云々ということでございますが、そういった観点からはこれまでの件数というのは具体的には把握しておりませんけれども、実際には、そういったいろいろな問題がある事例につきましては、やはりこれは法令等遵守の体制が不備であるというような観点から、いわゆるコンプライアンスの問題ですが、そういった点に問題はないかどうか、あるいは事務リスクの管理がしっかり行き届いているかどうか、こういう観点からはしっかり検査をやっておりますので、そこで具体的に指摘をしていくというような体制をとっております。

 特に、今おっしゃられましたような、いろいろな説明体制が不十分なために個人のあるいは利用者の保護が不十分であるというようなケース、これは、我々としては、昨年度から重点事項の検査項目に挙げておりまして、そういったところに力を入れて努めているところでございます。

岩國委員 それじゃ、外為法違反は財務省で検査しておられるんですか。だれが検査しているんですか。一つの銀行の営業姿勢、あるいは経営方針というものが適切かどうかということを検査するのはどこなんですか。それじゃ、あの法律で日銀が、あの法律で財務省が、あの法律で国税庁が、あの法律で金融庁がと、みんな頭をなでたりしっぽをさわったり足の長さをはかったり、そういうことをやっているということですか。分業体制でやっておって、総合的に銀行の経営者として適切な経営をやっておると、その適切という言葉が使えるような検査体制はどこが責任を持ってやっているんですか。

西原政府参考人 外為法上の立入検査権限ですが、これにつきましては財務大臣または経済産業大臣にございます。

岩國委員 谷垣財務大臣は今の私の一問一答を聞いておられたと思います。それに対して余りお顔に反応らしいものが全然出てこなかったんですね。私はびっくりしております。外為法違反と言ったら、びくっとされるのが本当は普通じゃないかと思うんです。まるで他人事のような、全く感動のない形で、そこでこの議論を聞いていらっしゃって。

 では、外為法違反について、この大手の都市銀行という範疇で結構です、先ほどの十一行でも結構です、この十一行の中にこの十五年間に外為法違反というのはどれぐらいあったんですか。

谷垣国務大臣 外為法という言葉が聞こえましたのでぎくりとして座っておりましたが、過去どのぐらいの違反件数、金融機関に違反件数があったかは、突然のお尋ねですので、今手元に数字は持ち合わせておりません。

岩國委員 突然のお尋ねというのが国会の原則なんです。その原則を破ってまで、私は昨日通告してあるんです。それでも出てこないということは、突然でも出てこないし、前もっても出てこないし、どうやったら出てくるんですか。

    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 私どもに御通告があったとは承知しておりませんで、これは調べさせたいと思っております。

岩國委員 きのう私は来ていただいて、十五年間の銀行、保険、証券、くくりやすいくくり方でいいから、それで質問のための資料をいただきたいと。ゆうべ、結局私の手元に資料は来ませんでした。ですから、今ここで私は質問いたします。

 それでは、個別銀行について伺いますけれども、今金融庁から告発を受けているUFJ、このUFJの営業方針あるいは資料隠し、こういったことについて既に裁判でも取り上げられているでしょう。平成七年にモルガン・スタンレーの最高責任者の資産を三和銀行が不正な手段でもって収奪している、結果的に。そこには外為法違反が行われているでしょう。本人が外国に行っている時期に本人の署名でそういった外国への送金が行われ、帰国してみたら自分の残高からお金がなくなっている。こういう、本人が日本にいないときに外国への送金が行われるというのは、一番初歩的な違反じゃないかと私は思うんです。

 これは平成七年に既に裁判が行われ、平成十四年に結審しておりますけれども、この七年間に三和銀行及びUFJに対して何回検査に入りましたか。金融庁、お答えください。これも通告してありますよ。

西原政府参考人 お答えいたします。

 旧三和銀行、現在のUFJ銀行、合わせた検査の実施状況ですが、平成七年、これは一九九五年になると思いますが、八月に検査を実施しまして、それ以降、昨年の八月に立ち入ったものを含めまして四回ございます。現在も立ち入りを開始させていただきましたので、今現在進行中ですが、五回目に入っている、こういう状況でございます。

岩國委員 金融庁の検査では、外為法は、堂々と隣の部屋で行われておってもそれは検査の対象ではないということのようですけれども、印鑑や署名の不正使用、これについてはこの四回の検査の中で指摘はあったんですか、発見されたんですか。検査報告書というのは公表できますか。

西原政府参考人 お答えいたします。

 個別の金融機関における個別の取引に関する検査の有無あるいは検査結果、こういったものにつきまして、それを明らかにするということにつきましては、将来の我々の検査一般におきまして、正確な事実の把握を困難にするといったことなどの検査の実効性を損ねるおそれがあるというようなことから、答弁は差し控えさせていただいております。

 ただ、一般論として申し上げますと、いろんな情報がありますと、金融機関に対する検査においては、そういった情報をもとに、業務の健全かつ適切な運営状況、これは法令違反等も含めてですが、そういう法令遵守状況も含めて、業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から検査を実施させていただいているということでございます。

岩國委員 その検査報告書というのは、具体的な固有名詞は別としましても、どの程度まで公開されているんですか。どういう時点で、どの程度まで公開されておるのか。それから、検査を受けたそれぞれの銀行は、ディスクロージャーという観点から、それを株主あるいは取引先に公開しておるかどうか。それが一切、した方も公開しない、受けた方も公開しないでは、何のためにこれは、一般の取引先や株主に対して、危ない銀行なのか、行儀のいい銀行なのか、判断のしようがないじゃありませんか。どうぞ。

西原政府参考人 検査結果について、どういうタイミングで、どういうような内容については公開できるのか、こういうお話でございました。

 検査結果につきましては、例えば破綻金融機関、そういったことになった場合には、その原因たることにつきまして、そういった内容の結果について概要を発表させていただいております。

 それからもう一つは、検査結果の中身といたしまして、いわゆる法令等遵守違反があるというようなことで、その結果としてその後行政処分に結びつくというようなケース、その場合には、その行政処分についての根拠となる、その前提となる検査内容について必要な範囲内において開示をさせていただいているというのが現状でございます。

岩國委員 こうしたいろんな関連法案がここで審議され、次々と活動範囲が広がるにつれて、検査体制の充実ということが私は非常に大切だと思うんです。

 ディレギュレーションが進めば進むほど、そうした質、量ともに検査人員の充実、この点で伊藤大臣、今の検査体制は人数的にはどれぐらいで、そして、質とか内容は問わないまでも、あとどれぐらいの人数をふやせば、大臣がほぼ適切な検査が行われておりますと、その適切という言葉が真実味を帯びて聞くことができるような体制というのは、あとどれぐらいふやせばいいんですか。単純に、今の検査人員の規模と、大臣がここまでは少なくとも目指したいと思われる数字と、二つの数字をお知らせください。

伊藤国務大臣 検査の体制を充実していく、質、量ともに充実していくことは極めて重要であるという御指摘は、全くそのとおりだというふうに思っております。正しい金融行政を推進していくためにも、検査において事実認定をして、それに基づいた監督行政をやっていくということは非常に重要なことでありますし、この二年間金融行政に携わらせていただいて、それを痛切に感じてきたところでございます。

 お尋ねの現在の人員でございますけれども、十六年度末で四百七十八名になっております。そして、委員から御指摘がございましたように、規制緩和等に伴って展開する金融機関の新たな業務の実態というものを的確に把握していく、こうした観点からも、さらに検査体制の充実を図っていきたいというふうに考えておりまして、平成十七年度においては三十五名の増員を要求しているところでございます。

 現在、定員については大変厳しい事情がございますけれども、その中で、私どもとしては最大限の効果というものがなされるようにできるだけの取り組みをして、そして検査の実効性、効率性というものを確保していきたい、そのための努力をしていきたいというふうに考えております。

岩國委員 検査体制が十分できましたという時点まで、新しい法律をつくることとか新商品を認めることとか新しい業者を参入させるということは一切ストップしたらどうなんですか。

 まるで順序が逆だと私は思うんです。とにかく緩和して、新商品を出して、そこでまたいろんな不正がどんどんふえて、それを追いかけて検査が行われて、いつも検査は十分な体制ができないでしょう。金融庁は検査人員をどんどんふやすために不正をふやしているとは私は言いません。しかし、結果としてそうなっているんです。いろんな法律ができるたびに不正がふえて、訴訟がふえて、だからまた検査をふやさなきゃいかぬ。そして、一方では、追いかけたら、また今度は新しい法律ができてディレギュレーションが行われる。だから、私が申し上げたのは、もうアクセルを踏むのはやめたらどうですか、検査体制が十分追いつくまでは。

 交通規制でいえば、ちゃんと交通規制をするお巡りさんの数が充実するまでは、むやみやたらにスピード制限を取り外してみるとか、あるいは狭い道をどんどんいろんな車種を走らせる、無免許運転も結構ですよ、こんな感じで行われたら、迷惑するのは一般投資家でありマーケットだと思うんです。

 そういう点について、大臣自身ももう少し具体的に、ことしは三十五人だけれども、私は二百人ふやして、その時点だったらほぼすべての金融機関のお行儀はしっかりと見ることができます。(発言する者あり)問題は人数ではなくてリーダーシップだという声が聞こえましたけれども、私は、確かにこの場に座っておってそれを感じます。

 アメリカのSECの初代長官はだれだったか、ケネディ大統領のお父さんです。その人はそんなに優秀な法律家だったのか、役人だったのか、全然そうじゃなかった。マーケットでいいかげんな情報を流したり、悪い手口を全部使っていたのがそのお父さんだったんです。ルーズベルト大統領はSECをつくって、だれを初代長官にするか、一番評判が悪い、あらゆる裏の手口を知っているケネディ大統領のお父さんを任命した。アメリカ人は、あっとびっくり。しかし、この人事は名人事だったんです。初代の長官としてやることは、自分がやってきたことを一切やれないようにすることだった。アメリカのSECの栄光の歴史はそこから始まった。

 こういう人事を、今の自民党の中にそういう悪い手口をいろいろとやっていらっしゃる方があるやに聞いておりますから、決して自民党は人材に不足しているわけではないと私は思うんです。伊藤大臣の資質を今ここでどうこうと言っているわけじゃありませんけれども、そういう考え方もあるということです、マーケットという魔物と闘うためには。伊藤大臣はそういう経験が若干不足していらっしゃるんじゃないか。また、検査陣容についても、もう少し人数をふやして、こういう新しい法律や新しい商品をふやすためのインフラ整備をやることが必要だ、そのように御意見を私は申し上げ、次の質問に移らせていただきます。

 次に、谷垣大臣にお伺いいたしますけれども、こうした国の借金が七百二十九兆円ということは、テレビ、新聞等でもよく伝えられておりますけれども、これは今後の見通しとして、二〇五〇年ごろ、あるいは二〇二〇年というときでも結構ですけれども、国債の残高は今のままで、歳出カットも行わない、金利の変動もない、増税も行わない、すべて横ばいと前提した場合には、二〇二〇年には国債の残高はどれぐらいになりますか。

谷垣国務大臣 二〇二〇年の試算というのは必ずしも私ども持っておりませんで、私どもがつくっておりますのは、国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算、いわゆる資金繰り表というのを出しております。

 これは、将来における国債の償還財源見通しなどを展望するため、一定の仮定のもとに今後の国債整理基金の資金繰り状況等を試算したものでございまして、これは平成十九年度までは予算委員会にお出しした、いわゆる後年度影響試算において一定の前提のもとに計算した歳出と税収等の差額が全部公債金で賄われると仮定いたしまして、そして、平成二十年度以降は後年度影響試算の十九年度における差額と同額の新規国債発行が行われるという仮定のもとに試算を行ったもの、これは二〇一七年度のものまでを出しておりまして、二〇一七年度末の公債残高は九百四兆円ということになっております。

岩國委員 九百四兆円ということですけれども、その三年先の二〇二〇年には、まず確実に、この試算を見ただけでも、一千兆円という大台に達する可能性が非常に大きいというふうな印象を私は受けました。

 これは金利が二%という前提でなされたようですけれども、金利が二%じゃなくて、八百兆、九百兆、あるいは一千兆という国債が出てくるときに、二%のままで長期金利があり得るはずがないと私は思います。過去三十年間の長期金利の平均金利を見ましても、五%を上回っております。当時は高度成長という時期を抱えておりましたから、必ずしも、これからの三十年、五十年ということを見た場合に、過去の経験そのものを当てはめるのはおかしいと思いますけれども、しかし、高度成長にはなかった大きな要素は、この多額の国債を抱えた経済という新しい時代に入るわけですから、五%以上の長期金利に達することは十分これまた考えられるわけです、高度成長ではなくても。

 五%の金利と前提して、これからこの現在の七百兆円、あるいは二〇二〇年の一千兆円というものがいつになったら解消するとお考えですか。国債が消える日というのは日本にあり得るのかどうか。国債が消えるXデーというのは、二〇五〇年ですか、それとも二一〇〇年ですか、あるいは、Xデーは永久に来ないんですか。

谷垣国務大臣 今委員から日本の国債を全部償還し終わるのは二〇五〇年かあるいは二一〇〇年かというお問いかけがございましたけれども、先ほど申し上げましたように、私ども、まだそこまでの試算というのは正直申し上げてできておりません。

 私どもが今持っておりますのは、たびたびこの委員会でも御答弁させていただきましたけれども、二〇一〇年代初頭にいわゆるプライマリーバランスを回復するということを目標として、その後の世代にツケを送らない体質をつくろうということまでは視野に置いてやっておりますが、その先の考え方というのは、残念ながらまだ打ち出せていないのが現状でございます。

岩國委員 十年の国債ということは、十年たったら現金でお返ししますというのが十年という国債なんですね。借金も、十年の借金というのは、十年後にはお金を返しますというのを借金というんです。国債というのは、国が同じことを言って十年間お金を借りることです。しかし、日本の国債は十年たってもまず返ってこない。永久に繰り延べ、繰り延べ、繰り延べで、五十年たっても国債を皆さんのところに現金で返すというめどがない。ないからこそ、恐らくそういう試算もできないんじゃないかと思うんです。そういう試算ができるのであれば、私は、海外の投資家にも国内の投資家にも、ちゃんと……。

 十年の国債、二十年の国債が仮にあるとすれば、いつ償還できるのか。つまり、日本の国債には償還という言葉はついているけれども、償還という気持ちが全然にじんでこないと思うんです。プライマリーバランスに到達した。じゃ、その後はどうなるのか。プライマリーバランスを達成することが国家的目的とは私は思いません。それは単なる財務省の一つの作業工程表であって、その先、国民経済的に見て、この大きな七百兆、八百兆、九百兆という国債がいつ消えるのか、いつ現金で皆さんの財布に返されるのか、そのめどさえも立たないんです。

 財務大臣として、借金の仕方はどんどん訓練され上手になられるかもしれないけれども、返済するめどについては、頭の隅にも、胸の隅にも、腹の隅にも、どこにもないんです。自分が財務大臣である以上は、あるいは、自分たちが政権を持っている以上は、今、この国の借金は二〇五〇年には返したい、そういう願望さえもないんですか。願望があれば、ある程度の大胆な試算を置いて、そういうシミュレーションというのはつくるべきじゃないですか。いつ返すかの当てもないし、希望もないし、そういう試算も省内で一切しない、そういう現状ですか。

 新聞に報道されておりましたけれども、外国で今度日本の国債市場についてのキャンペーンをされる、これは事実ですか。

田野瀬副大臣 お答えいたします。

 特に、海外向けの広報に関しましては、従来より日本国債の種類や発行方法、制度等を紹介する日本国債ガイドブックの英語版や、その時々の日本国債に関する施策等を紹介する日本国債ニュースレターの英語版の作成、配布、あるいはまた、海外投資家向けの財務省ホームページの充実等を実施してきたところでございます。

 今後は海外向け広報の一層の充実を図るため、海外での広報活動についても検討してまいりたいと考えておりますが、現時点では、その具体的内容、実施時期あるいは場所等が確定しておるわけではございません。

岩國委員 現時点ではそういう計画もないということであれば、年度内に行われることはないというふうに理解してよろしいかどうか。

 それから、海外でPRされるときに、日本の投資家はこういう商品を買っておりますよという説明だけに行かれるのか。海外の大手の機関投資家を集めて意味のある説明会、私もそういうことをずっと経験しておりましたけれども、そういうときに、海外の投資家向けの国債、ドル建てであるいは円建てで、あるいは期間を向こうの投資家に合わせたような、時にはクーポンつきまたはクーポンのないゼロクーポン型、そういう海外の投資家、日本の国債に対する海外投資家の比率が非常に低いということは、これは国際的に見ても際立っていますし、またそれを財務省としても意識していらっしゃると思いますけれども、海外の投資家の比率を高めるために何らかの工夫が行われているのかどうか、商品のデザインの上で。そういう検討はどこまで進んでいるのか。進んでいるとしたら、一、二、端的にどういうタイプのものをこれから考えておられるのか、それを御説明いただけませんか。

田野瀬副大臣 海外広報の時期についてでございますが、先ほど申し上げましたように、実施時期あるいは場所等が確定しておるわけではございません。したがいまして、年内にやるという計画もございませんことを……(岩國委員「年度内」と呼ぶ)年度内に行うことがないということも御理解いただきたいと思います。

 さらに、御質問いただきました、海外向けにどんな商品をこれから出していくのかというお問いでございます。

 国債の安定消化を確保する上で、国債保有者層の多様化を図ることは重要な課題と私どもも考えておりまして、こういう観点から、従来より、保有割合が相対的に低い海外部門等の保有促進に努めてきたところでございます。特に、海外部門の保有促進という観点からは、海外投資家が日本国債を保有しやすい環境を整備することを目的として、平成十一年度以降、数次の税制改正により、海外投資家が保有する利付国債の利子非課税制度等の税制優遇措置を策定、拡充してきておるところでございます。

 以上でございます。

岩國委員 大臣が先ほど将来的なシミュレーション、どこの会社でも、日立の社長でも東芝の社長でも、海外の投資家と会うときには、この十五年物のストレートボンドは、あるいは転換社債は、どういう収益の見通しによって裏づけられて返済は可能でありますと、この一番大事なポイントを言えないような発行主体というのは、まず機関投資家があきれてしまって投資しないわけです。どなたが海外のマーケットに説明に行かれるのかわかりませんけれども、マーケットの仕組みや、ぜひ投資していただきたいという熱意の披瀝だけでは外国を納得させることはできないと思います。

 どんどんどんどん右肩上がりにふえる一方で、結局、十年物、二十年物、三十年物を出したとしても、永久にこれが現金として償還される可能性はほとんどない、そういう国債を私は長期国債と呼ぶべきではないと思うんです。それは永久に返されない、それは永久国債と言われるんです。それは、最初から正直に永久国債として発行された例は外国でいろいろあります、イギリスを初めとして。

 私が言いたいのは、永久国債を発行するということも考えるべきなんです。十年物、十五年物とか期間を区切りながら、その都度、結果的にはうそになる。うその繰り返しをするよりは、最初から永久国債というものもブレンドしながら、そういうものも国債の管理政策の中に組み入れていくということが必要じゃありませんか。

 二番目に、日銀に大量に買わせている、世界的にも日銀は国債に対する関与度が非常に強いわけです。銀行券の発行残高とほとんど同じぐらいを、腹いっぱい国債を抱える。つまり、日銀を経由して現金を調達している、これは国債の迂回発行ではないかと私は思います、マーケットで直接消化することもなしに。するとすれば、永久国債を考えるか。

 そして、永久国債に金利をつけると、この利子の負担が十五兆、二十兆、三十兆とどんどんどんどんふえていきます。私の計算では二〇五〇年には国債残高は四千兆円。四千兆円に対して、利率がそのときに二%でおさまってくれればいい方ですけれども、仮に低く見積もって二%とすれば、利払いだけで八十兆円です。今の予算の八十兆円全部が右から左に利払いの方に使われてしまう。

 ということは、総理大臣から市役所の職員も、あるいは我々国会議員も、全部、給料ゼロになるんです、利払いのために。八十兆円全部が、国の予算は日本銀行やその他の国債の投資家に払わなきゃいけません。利払いのために国家予算が空洞化して、そしてすべての公務員、我々国会議員も給料を一銭も受け取ることができない、そういうシナリオになるんです。我々すべてボランティア、国を挙げてのボランティア、世界で冠たるボランティア国家がそのときに完成するんです。利払いのために全部の税収をささげなきゃならぬということになりますから。こういうことにはならないというシナリオはありませんか。

 そういう恐ろしい時代は来ないんだ、二〇七五年にちゃんとこういうふうにこういう前提を使えば。例えば消費税を一〇〇%にする。こんなことは政治家として口にすることもはばからなきゃなりませんけれども、どういう前提を置いたらこれが償還できるのか。永久国債も発行しない、そして、利子を払わない、そういう形の政府紙幣、私はこれを取り上げましたけれども、政府紙幣ということも真剣に考えるときに来ているんじゃないですか。返さない、返せない国債を発行するよりは、永久国債を考えるか、政府紙幣というものの発行を位置づけて国の今の危機を乗り越えていくのか。そういうことについて研究はしておられますか。大臣、お答えください。

谷垣国務大臣 政府紙幣の発行について、年来委員が御持論で主張しておられることは、私どももよく承知をしております。

 もちろん、私どもも、どうやって財政再建をしていくかということは我々にとって最大の関心事でありますから、国債の消化等、いろいろな手段を考えているわけでありますが、ただ、委員のおっしゃった政府紙幣の発行、これは経済的には、先ほど委員がおっしゃいました永久国債というんでしょうか、無利子、無期限の国債を発行するというのと経済的にはほぼ同じ意味になってくるのかなと思っておりますが、仮に政府紙幣というようなものを発行した場合も、仮に市中に流通して、当然、その政府紙幣と日銀券というものは、互換性といいますか、交換を認めなければなりませんから、日銀が仮にそれを交換してほしいといったときには直ちに財源の保障が必要だというような、いろんな論点があろうかと思いまして、委員の御主張のように簡単にそういうものを取り入れていいのかどうかというのは、私ども議論があるところでございます。

 委員が御持論でこれを主張しておられることはよく承知しておりますので、我々もその可能性といいますかそういうものを視野に置いて、全く置いていないとは申しませんけれども、あくまでまだ、そういうときのいわばブレーンストーミングみたいなことでは時々議論いたしますけれども、それを超えるものではございません。

岩國委員 質問時間が終わりましたので、ここで打ち切らせていただきますけれども、谷垣大臣、こういう異常な危機には異常な発想が必要なんです。異常な危機に並みの普通の発想では、国債はどんどんどんどんふえるばかり。そして、日本国民は全部利払いのために奴隷のように働かなければならない。そういう時期を迎えたくないから、異常な発想でこの危機を乗り切るべきだ。徳川幕府でさえも金貨と別に銀貨をやったでしょう。金貨と銀貨の二つの通貨は立派に徳川時代に通用しておったではありませんか、互換性で。近代国家日本で、なぜそれができないのか。そういった点も含めて真剣な検討を進められることを希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょうは、日銀総裁にもお見えいただいておりますので、幾つかの点について、今の岩國委員の質問にも関連しますが、これからの経済のリスクについて、特に国債発行のリスクについてただしていきたいと思っております。

 まず、財務大臣と日銀総裁に伺いますが、十月のG7、各国の蔵相それから中央銀行総裁会議、それから今月、BIS総裁会議でさまざまな議論がなされたというふうに思っております。今、私、お手元に委員長のお許しをいただいて資料をお配りさせていただいています。これは、IMFのワールド・エコノミック・アウトルックでございまして、いつ年金改革の最終列車が発車するかという題で、それぞれ何年後に年金の改革の最終列車が発車するという数字であります。

 これを見ますと、一番下がUK、イギリスでございますが、約四十年ぐらい。つまり、有権者の中に占める五十歳以上の者の割合が五〇・一%以上になる、それはいつかということを機械的に計算すると、どんどんどんどんその割合がふえていけば政治的にも年金の改革というのは難しくなる、だから一刻も早くその改革の列車を発車させなきゃいけないということで、イギリスには随分時間がありますが、フィンランドやあるいはアメリカ、ドイツ、フランスといったところはそんなに時間がない。これを見てみますと、じゃ日本はどこにあるんだろう、日本がないんですね。これは実は、去年の今ごろもう列車は発車しているということをIMFでは言いたかったようでございます。

 これは谷垣大臣にも強く要請をしますが、私たちは、三党合意、これを合意をして、全体の社会保障像についても積極的に議論をしていきたいと思います。しかし、その前提となる数字、去年の予算委員会でも求めましたけれども、その年金の運用のところがブラックボックスになっていて、そこをしっかり開示してもらわないと、年金の議論のスタートにならないんですね。

 この列車は、今度は財政についてどうかというと、これから一つ一つ質問をしていきますが、財政改革の列車も私たちにとってはもう発車しているんじゃないか。私は、そのような論点から、きょうの質疑をさせていただきたいと思っています。

 まず、G7の会議、それからBIS総裁会議、これは日銀総裁ですが、今後の経済のリスク、特に原油高のリスクについてどのような議論が行われたのか、財務大臣と日銀総裁にお伺いをいたします。

谷垣国務大臣 十月一日に行われましたG7では、原油価格の高騰が世界経済にとっての共通のリスクになっているという認識が共有されたわけであります。我が国から、私からは、産油国が十分な供給を行うことなどによって原油価格が世界経済の成長と両立し得る水準に戻ることを期待しているというのが一つ。それから二番目に、消費国もエネルギーのさらなる効率的利用に努めていくべきであるというようなことを主張いたしまして、そういった趣旨がG7声明にも盛り込まれたところでございます。

 この問題に関しては各国からも積極的な議論がございましたけれども、各国がそれぞれどういうことを言われたかということについては差し控えたいと思います。

福井参考人 G7につきましては今大臣からお答えになられましたとおりでございますが、先週、BISの中央銀行総裁会議がございまして、やはり、世界経済の今後の方向性を考えるときに、さまざまに存在するリスク要因の中で原油価格の動向は非常に注目すべき要因だということが改めて確認されました。

 これまでかなり高騰しておりますが、この春先以降、世界経済が若干減速をしているというふうなことにも既に影響があります。しかし、かつての石油危機のときの影響に比べますと、これまでのところ、非常に幸いにもその影響度が多少限定的にとどまっているという好ましい要素もあるわけですけれども、こういった高い原油価格の状況が長く続く、あるいはさらに高騰するというふうなことまで含めて考えますと、直接の影響あるいは諸外国を通じて間接的に及んでくる影響両面から、世界経済あるいは自国の経済に及ぼす影響はしっかり注意深く見ていかなきゃいけない、そういう認識で一致したように思っています。

原口委員 BPの統計だけ見ますと、世界の石油消費量の動き、BPの統計にもいろんな不透明さや問題の指摘はございますが、とりあえずその統計をきっちり見てみると、一九七〇年代が四千六百万バレル、石油消費量の動きが、ことし、四年では八千百二十万バレル、物すごい伸びになっている。しかも、じゃ供給能力がそれほど上がったかというと、そうでもない。

 特に今、外需、アメリカ向け、中国向けのさまざまな輸出が日本経済を引っ張っていますが、中国はどうかというと、GDPに占める石油消費額もそれから伸び率も大変大きな伸びを示していて、一GDPを生産するために必要な石油消費量も、我が国のように省エネが進んだ国とは大きくその構造を異にしています。その中で、中国経済がまさに大変な投資の大きな熱を持っている、あるいは消費の大きな熱を持っている。それとこの原油高が組み合わさってきたときに、私たちはこのリスク要因を慎重にヘッジしていかなければいけない、このように思います。

 あわせてお伺いしますが、中国との会合も、今回初めてフランクなお話ができたということを聞いています。これも大臣、総裁にお伺いしたいんですが、通貨ですね、中国の通貨について、私たちはどういうスタンスでこれを見守ればいいのか。私は何回も中国にお邪魔をしてこういう話をいたしました。さまざまな国内の経済の成長や産業のゆがみ、構造の改革を、為替を固定しドルにペッグしていますけれども、そういう形ではますます矛盾を拡大してしまうだろう、国内産業間の矛盾、あるいは国の中の沿岸部と内陸部の矛盾、あるいは輸出産業と輸入産業との矛盾、これを極大化してしまうので、できるだけ為替を柔軟に保って、そして市場でもってさまざまなリスクをヘッジしていく、隣人としてはその方がいいのではないかということを僣越ながら申し上げました。

 よくフランクな議論をしてこういう議論をすると、返ってくるのは、日本はどうなのかと。プラザ合意以来、一九八五年以来そういうことをやって、大変厳しいことを日本は迎えたじゃないかという反論が来るわけですが、私はむしろ逆に、プラザ合意そのものが遅過ぎたんだ、日本の国内産業の二重構造といったものを為替でもって温存することに結果としてなってしまったので、早目に市場、特に為替の柔軟性を持つということは、これから自由貿易に船出をしようとしている国には大事なんだという議論を私はしてきました。

 今回、相手がどんなことをおっしゃったかということをここで聞く気はありませんが、フランクな議論がされたというのは大変いいことだというふうに思います。

 お二人にお伺いしますが、アジアの通貨、特に元についてどのようにお考えなのか、大臣そして総裁の基本的な認識をお伺いいたしたいと思います。

谷垣国務大臣 G7のときに、G7の各国と中国、フランクな意見交換をしたのは初めてでございます。今まで、ASEANプラス3とか中韓と日本と三大臣で会うとか、いろいろなときに意見交換の機会はございましたけれども、こういうG7の場でもできたということは、私は意義が大きかったと思います。

 先般の会合では、原油価格の経済的影響とかあるいはアジア経済の見通しとか、それから為替の柔軟性といったようなことを議論いたしまして、個々どういうことを言ったかというのは差し控えさせていただきますが、私の印象を申しますと、今、原口委員がおっしゃったような、為替の、今事実上ドルにペッグをされているわけでありますけれども、その問題点というのは、中国の当局者は十分いろいろよく認識しておられると思います。

 ただ、ここから先は、やはり中国もあれだけ大きな国で、格差もいろいろあったり、いろいろ経済運営にも苦労しておられるというのも一方事実でございますから、そういう中で、中国経済というだけではなく、中国の為替のあり方、経済のあり方というのは、中国のみならずアジアあるいは世界各国にも大きな影響が及ぶものでありますから、その中でどうしていったらいいかというのは、中国自身が賢明に判断をされるのではないかというふうに私は思っております。

福井参考人 G7の場におきます具体的な議論の中身については、特に発言を差し控えさせていただきますけれども、中国経済の問題について、私自身がふだんから一貫して考えておりますことを要約して申し上げますと、二つのソフトランディングということじゃないかと。一つは、当面のマクロの経済運営。ただいま原口委員も正しく御指摘なさいましたとおり、原油の問題一つをとってみましても、やはり円滑なスピード調整が要る、そういう意味でのソフトランディング。これは世界じゅうの人たちが期待していることであります。もう一つは、非常にロングランに見たソフトランディング。それは、中国経済社会の仕組みをより市場メカニズムの原則が適用できるような体制にうまく切りかえていく、こういうことだろうと思います。

 御指摘なさいました為替相場制度のよりフレキシブルな制度へというその方向性についても、そうした経済社会の仕組み全般のよりフレキシブルな方向への改革の中の一環として位置づけていく必要があると思っております。

原口委員 為替政策はその国固有の主権であるのかないのか、これにも議論が必要です。きょうはそのことを深く議論する余裕はありませんが、私は、それぞれの主権を主張して、それぞれの国が自分のところのことだけを議論すればいいという時期はもう越えたと思います。例えば、九月のアメリカの対中貿易赤字はもう過去最大でございますし、また、多くの国々がそれぞれ相互依存性を増しておりますので、何といっても国際協調、お互いの国々のそれぞれの事情を勘案しながらしっかりとさまざまなリスクをヘッジしていく、こういう政策が必要だと思います。また、ドルが対ユーロで最安値をつけるとか、FRBは十日でしたかまた金利を上げたようでございますが、アメリカ経済についても私たちは注意深くこれを見守らなければいけないというふうに思っています。

 さて、そこでお尋ねですが、FRBが利上げを行いましたけれども、日銀総裁、アメリカ経済に対して今どのような御認識をお持ちなのか。そして、特に九月の日本の機械受注のところは大きく落ち込むと。経済の足踏み感と申しますか停滞感のようなものも少し出てきた、こういう状況の中で、アメリカ経済の見通しと日本経済に及ぼす影響を総裁がどのようにお考えなのか、質問をしたいと思います。

福井参考人 お答えをいたします。

 米国の連邦準備制度は、幾つかのステップを踏んだ後、現在、政策金利を二%というところまで引き上げてまいりました。

 こういう金融政策の運営のもとで実際の米国経済がどう動いているかということでございますけれども、委員御指摘のとおり、米国経済、この春先から夏場ぐらいにかけまして、結果的に見ますと一時的な停滞感を免れなかった。原油価格の高騰ということもその大きな一つの要因になっていたというふうに思います。

 最近の状況を見ますと、米国経済は当面拡大を続けるということがほぼ最近のさまざまな指標で改めて裏づけられてきているというふうに判断しております。最近出ました七―九月の米国の経済成長率、これは年率で三・七%。一期前の四―六月に比べまして、四―六月は三・三%でございまして、再び加速の傾向が出ているということであります。

 中身を見ましても、個人消費、自動車販売の伸びなどから、増加傾向をたどっているようでありますし、企業の設備投資も増加しているということであります。また、一番懸念されております雇用の動向につきましても、十月の指数等で見ております限りは、やはり増加テンポが復調してきているということでございます。

 米国経済全体としては、成長速度を少し下げながら安定的な拡大のペースにたどり着こうとしているのではないか、今のところそういうふうに見ております。

原口委員 私は、その中でも、これは実際にニューヨークでもいろいろな人たちと議論をしましたけれども、注意深く見ておくものがあるだろうなと。それは、住宅であるとか消費であるとか今総裁がおっしゃった雇用の部分であるというふうに思います。

 限られた時間ですので、日銀のバランスシートについて伺っておきたいと思います。

 日銀からいただきました資料によりますと、主要中央銀行のバランスシート規模の比較というのをいただきましたが、一九九八年度におきまして日本銀行は名目GDPの約一六%の規模を持っていました。しかし、二〇〇三年度ではそれがもう三〇%になっています。FRBは、九八年度で六%、それから二〇〇三年度で七%。欧州の中央銀行ECBはそれぞれ一二%で、変わりません。

 莫大な規模の、いわゆる日銀の資産というものが大きく膨れる中で、特に私が懸念を持っておりますのは、日銀の国債保有でございます。現在大量に国債をお持ちで、速水総裁のときに質問を、ある一定の、十年の利付債やいろいろな前提を置いた上で、長期金利が一%上がったら日銀の資産はどれぐらい毀損されますかという話をいたしましたら、一兆円というお話をいただきました。

 現在、低価法から別の方式に変えられていますから、そのときとお答えが同じにはならないと思いますけれども、現在どれぐらい国債を保有していらっしゃるのか、それから、長期金利の上昇リスクをどのように考えていらっしゃるのか、日銀総裁に伺いたいと思います。

福井参考人 委員が御指摘のとおり、日本銀行のバランスシートは非常に大きく膨れております。資産、負債、両サイドで大きく膨れているわけでありますが、これはここ数年とり続けております量的緩和政策の結果を反映したものでございます。つまり、当座預金残高という形で流動性をたくさん供給する結果、負債が膨らむ、それに見合って資産サイドも大きく膨れているということでございます。その資産サイドの中に、御指摘のとおり長期国債がたくさん含まれている、こういうことでございます。

 そして、国債の日本銀行におきます評価方法、会計基準につきまして見直しを行いまして、十六年度決算からは、御指摘のとおり償却原価法というものを採用することにいたしております。そうしますと、長期金利に変動がございましても、決算上の期間損益において評価損失が計上されるということはとりあえずないわけでありますけれども、委員の御質問の趣旨は、市況の変動があった場合に、日本銀行の、決算書類上はともかくとして、含み損益という形で、損失の方向でその数字が膨れる心配はないか、こういうことだというふうに思います。

 私ども、その点につきましてもふだんから試算をいたしておりますけれども、十年物国債の金利が仮に一%上昇し、その場合、ほかの期間の国債の金利も十年物金利と仮に同じ割合で上昇するというふうなケースを想定いたしますと、日本銀行の保有しております長期国債について、約一兆四千億円程度の含み損が発生するということでございます。

 こういったことは当然想定されるわけでありますので、日本銀行はかねてより、資本の充実、それから必要に応じ個別の資産項目に応じて引当金を積むということで、日本銀行の財務の健全性については十分配意しているというところでございます。

原口委員 総裁がおっしゃるように、保有期間中に時価がどのような変動をしても、取得時から償還時までの期間を通じて見れば、取得原価と償還額の差額が収益または損失となるという意味では、どんなに評価法を変えてみたところで、保有期間を通じての損益は、低価法であろうが償却原価法でも変わらない。つまり、日本銀行のバランスシートが、評価法を変えたからといって劇的に改善するというわけではない。

 その中で、今お話しになったように、速水総裁と議論をしたのは二〇〇二年ですよ、二年前ですね、そのときには恐らく五十七兆ぐらいだったものが、ことしの長期国債保有率の前年差を見ても、もう七・一%、約十兆円ぐらいそれから国債保有が伸びているんですね。私は、このこと自体大変大きな問題だというふうに思います。

 金融担当大臣に伺いますが、今度は銀行、銀行はどれぐらい国債を持っていますか。主要行とそれから地方行、あらあらの数字をお出しいただいていますが、大臣から御答弁いただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 主要行、これは新生、あおぞら銀行を含む十三行ベースでありますけれども、平成十六年三月末の国債保有状況を見ますと、みずほ銀行が十一・九兆円、みずほコーポレート銀行が七・九兆円、みずほ信託銀行が〇・五兆円、東京三菱銀行が十二・九兆円、三菱信託銀行が二兆円、UFJ銀行が十二兆円、UFJ信託銀行が一・三兆円、三井住友銀行が十三・九兆円、りそな銀行が三・二兆円、住友信託銀行が〇・九兆円、中央三井信託銀行が一・八兆円、新生銀行が〇・九兆円、そしてあおぞら銀行が〇・七兆円になります。

 また、同じく地方銀行は二十・九兆円、第二地方銀行は五・三兆円になっております。

原口委員 それぞれの自己資本に対して大変大きな保有額ですね。

 ですから、なぜ財政再建の列車を早く走らせなきゃいけないか。つまり国が、中央政府がこれほど借金に借金を重ねていくと、長期金利の上昇リスクを吸収できるところがどんどんどんどん少なくなっていく。その結果として、私たちは、経済全体の健全性を見るに、やはりボンドのマーケット、国債のマーケットが不慮の事態を起こさないかということを常に考えなきゃいけない。

 伊藤大臣と一回ワシントンで議論をさせていただきました。あの当時は、右手に不良債権、左手に大きな財政赤字を持って綱渡りをしている、だからこの綱渡りの危機を一刻も早く抜けるのが我が国の構造改革だという議論を伊藤大臣ともさせていただきました。

 しかし、実際にどうなっているかというと、右手にある不良債権を左手に移しかえただけじゃないのか。銀行のバランスシートからはさすがにさまざまな不良債権が消えているけれども、しかし、我が党の委員が今まで議論をしましたように、本当に銀行の体力は強くなっているのか、あるいは株式市場、証券市場を含めて本当に透明性や健全性は確保されているのか、そのことについてもきっちり議論をしていかなきゃいけないというふうに思います。

 日銀総裁、どうぞもうこれで結構でございます。長期金利の上昇リスクに耐えられるような、私、本当は名目金利は実質金利プラスインフレ率で決まるとすると、名目金利が日銀がオペレートするところでございますが、結果として見れば、今のデフレという状況を現出してきているのも、このように長期金利を上げられない、まさに岩國先生がよく御指摘されますが、お金を失業させてしまっていてはならないんだということを申し上げて、どうぞ総裁、御退出なさって結構でございますので、ありがとうございました。

 さてそこで、財務大臣、また財政再建に戻るんですが、私は、経済はやはり見込み、パースペクトで動いていますから、しっかりとした財政再建のメッセージが出てくることが、こういう国債の不慮の事態、あえて暴落という言葉は使いませんけれども、それに備える一番の道だというふうに思います。

 前回の一般質疑の中でも議論をさせていただきました。プライマリーバランスをしっかり回復をして、財政再建についての確たる道筋をもう示さないと、市場もぎりぎりのところへ来ているんじゃないか。市場の関係者に聞きますと、もうちょっとでも長期金利が上がってくると国債を売り浴びせるみたいな、そういうスタンスをとり始めているところもあるやに聞いています。

 財政再建に向けてどのような認識をされているのか、これは景気回復とアンビバレンツ、つまり二律背反のことではないと私は思いますので、その辺のスタンスを財務大臣に伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 原口委員が先ほどから御議論されておりますように、今の日本の財政状況がおかしな方向に行くとしますと、今委員が御懸念になったようないろいろなリスクが顕在化してくるということが恐れられるわけでありますが、単に財政に対する信認というだけではなく、長期で見た場合に、日本が堅実な経済発展の足取りをたどるためには、私は財政をきちっと立て直していくということが不可欠なのではないかと思っております。その点では、委員がおっしゃいましたように、経済の回復と財政再建というのは矛盾する方向を行っているわけではないので、大きな方向では一致しているというふうに私は思っております。

 そして、そのためにきちっとした財政再建のメッセージを出せというのはおっしゃるとおりでございまして、今のところ、二〇一〇年代初頭プライマリーバランス回復ということをこのところずっと申してきているわけでありますが、これをさらに具体的なものに肉づけしていくように我々も努力をしなければいけないと思っております。

原口委員 今の内閣の中で御答弁なさるのはそれが限度かなと思います。総理・総裁がああいう形でお話しになっているということもよく存じ上げていますが、おくれた列車にならないために、もうとうの昔に発車している財政再建のミッションというものに乗りおくれないような施策を強く求めたいと思います。

 さて、時間がわずかになりましたが、私は今、人の金で錬金をするこのゆがんだ経済構造、この金融構造、これは決して健全ではないと思います。

 そこで、ダイエーと機構とのやりとり、あるいは機構と経産省とのやりとり、この委員会で議論をさせていただきましたが、中塚委員に対する御答弁の中でも私に対する御答弁の中でも、さまざまな疑義がございます。

 委員長にお願いをいたしますが、ぜひこのことについて理事会でも議事録を精査していただいて、当該の役所が産業再生機構に介入といったことがあっては絶対にならないので、その事実があるかないか、ぜひ精査をお願いいたします。

 それからもう一点目は、コクド、西武の問題でございますが、きょう上場廃止という報道がなされていますが、有価証券報告書の不適切な記載、これはやはりもう目に余りますね。私は、金融担当大臣、本当に証券取引等監視委員会は一体何をやっていたんだということが問われると思います。前回ここにお呼びをして、個別企業については言えませんというような、木で鼻をくくったようなそういう答弁でしたけれども、私が問題にしているのは行政のオペレーションがどうだったかということであります。

 これも委員長に要請をいたしたいと思いますが、この一連の有価証券報告書に関する不誠実な記載について、ぜひこの委員会で集中審議、これを強く求めて、時間がまいりましたので、質問にかえさせていただきたいと思います。

金田委員長 原口委員の指摘した二点については理事会で協議します。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十七分開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 景気問題についてお聞きをしたいと思うんですが、七―九月期のGDP速報値が発表されまして、ことしの初め、一―三月期のGDPなどと比べますと、そのときは年率六%という話でありましたが、今回は、実質で前期比〇・一%増、年率換算でもわずか〇・三%増ということでありまして、全体として景気減速というのが鮮明になったというふうに思いますが、谷垣大臣、このGDP統計をどのようにごらんになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、七―九のGDP、前期比〇・一%ということでありますけれども、これは外需とか設備投資の寄与度がマイナスとなっておりまして、上り坂が続く中での微調整というふうに見ることができるんじゃないか。それから、消費は堅調に推移しているんですが、そういったことがありまして、国内民間需要の増加を中心に景気は回復を続けているということかな、こう思っております。

佐々木(憲)委員 上り坂を続けている中での微調整という御発言ですけれども、果たして今後上り坂になるのかどうかというのがいろいろ懸念されているわけであります。

 輸出が鈍化した。設備投資が減少した。そうなりますと、今後の経済成長のかぎになりますのは、GDPの五割強を占めております個人消費、これがどうなっていくかというのが非常に重要だと思いますけれども、そういう認識はおありでしょうか。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、輸出と設備投資が鈍化している。私は、個人消費とおっしゃいましたけれども、外需や設備投資が押し下げているけれども、個人消費が全体の成長率を押し上げているというような状況かなと思っております。

 それで、もうちょっと足元をどう見ているかということを申しますと、輸出は七―九月期においても前期比プラスで推移しておりますし、先行きも、米国を初めとする世界経済が着実に回復しておりますので、輸出は緩やかに増加していくということが見込まれるんじゃないか。それから、企業部門の動向も、企業収益は大幅に改善して企業の業況感も引き続き改善している。それから、日銀短観の九月調査などでも、収益や業況感の回復があることで、企業の設備投資は引き続き前年比で増加する見通しとなっているというようなことがございます。

 したがって、委員が御指摘のように、確かに個人消費は重要なポイントであろうと私も思っておりますけれども、御指摘の点が今後の経済成長が個人消費頼みであるという趣旨とすれば、やや行き過ぎで当たらないのではないかと思います。

佐々木(憲)委員 私は、今の大臣の認識というのは相当楽観的だなという感じがいたします。

 今までの、ことし前半のGDPの伸びの大きかった理由としては、やはり輸出が非常に大きかった、それから、それに関連する設備投資が非常に伸びたということが支えだったわけですね。

 消費について申しますと、この前のこの委員会で議論をさせていただきましたが、所得、労働者の所得はむしろマイナスでございまして、消費は総体としては横ばいというのが現状だと思うんです。一時的に、オリンピックですとか非常に夏が暑かったとか、そういう要因で多少変動はありますけれども、しかし、全体としては、消費そのものの傾向というのはかなり停滞ぎみであるというのが私の認識であります。

 個人消費頼みとおっしゃいましたが、やはり個人消費が伸びないと景気が着実に回復していくというふうにはならないという意味で大変重要だ、そういう認識をぜひ持っていただきたいというふうに私は思うんです。

 そこで、日銀に統計をお聞きしたいんですが、これから消費が堅調に推移するかどうかという点でありますけれども、九月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」というのがあると思うんですが、その中で、一年前と比べて支出はどうしているのかの回答はどうなっているか、それから、支出を減らしている人の理由ですね、その主な理由四点挙げていただきたいと思います。

前原参考人 お答えいたします。

 第一の御質問でございます、「生活意識に関するアンケート調査」につきましてですが、「一年前と比べて、あなた(またはご家族)の支出をどのようにしていますか。」との問いに対しまして、「増やしている」との回答が全体の六%、「減らしている」との回答が全体の四二・三%、「変わらない」との回答が全体の五一・六%でございました。

 二番目の御質問でございますが、「一年前と比べて、あなた(またはご家族)の支出をどのようにしていますか。」という今の問いに対しまして「減らしている」と回答されました方につきましてその理由を尋ねましたところ、回答の多い順に御紹介いたしますと、まず「今後は年金や社会保険の給付が少なくなるのではないかとの不安から」との回答が最も多く、次いで「将来の仕事や収入に不安があるから」、さらに「将来、増税や社会保障負担の引き上げが行われるのではないかとの不安から」とか、「不景気やリストラなどのために収入が頭打ちになったり、減ったりしているから」との回答が続いております。

佐々木(憲)委員 今御紹介いただきましたように、日銀のアンケート調査によりましても、支出を減らしているという方が大変多いわけでありまして、支出をふやしたというのは六%しかないんです。減らしたという方が四二・三%ですから、これは非常に厳しい生活を消費の面でされているということがわかると思うんです。

 そうしますと、なぜ支出を減らしているか、これはいろんな不安があるわけですが、私は、大きく言って今のアンケート調査から二つ挙げられると思うんですね。

 一つは、企業利益は確かにふえておりますが、それが労働者に還元されていない、それが一つのかぎになると思うんです。それからもう一つは、今度は将来の見通しですけれども、税、社会保障負担、これがどうなるかという不安がある。この二つ、つまり、企業側の要因と政府の政策の要因と、二つの問題があるのではないかと思いますが、今後の個人消費の動向を左右するものとしてこの二つの要因というものが重要だと思うんですけれども、大臣の認識をお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 消費活動の水準はいろんな要素が総合して決まるんだろうと思うんです。雇用情勢、それから所得環境、そういったところが大事な要素であることは今御指摘のとおりだと思いますけれども、それだけじゃなくて、マインド面やライフサイクルの変化といったようないろんなものも大事な要因になってきておりますので、断定的にお答えするのは難しいんですが。

 今委員がおっしゃった、雇用の方で、要するに雇用面で所得が還元されてきていないというお話がございました。これは前回もお答えしたと思いますが、企業の、何と言うんでしょうか、人が、余剰感といいますか、そういうものもようやく底打ちをした感じがいたしますし、それから、いわゆる失業率や何かも改善してきておりますので、今おっしゃった企業収益がだんだん個人消費の方に及んできている情勢にあるのじゃないかというふうに思います。

 それからもう一つ、今お挙げになったのは、将来不安のもう一つの要因として年金であるとか社会保障制度の先行きはどうなんだということがあろうかと思います。

 それで、多分これはずっとこの間からの委員のテーマでもあるわけですけれども、いろいろな税制やあるいは制度面の見直しがかえって消費を下げているんじゃないかという御指摘が今までもありましたけれども、私は、そこは総合的に見ていただくべきことで、例えば年金についてもマクロ経済スライドみたいなものが入って、ある意味で将来に対する制度的な安心感というようなものが出てくるとか、そういうようなことを全体として見ていただくべきではないかなと思っております。

佐々木(憲)委員 二つの、企業の要因と政府の政策の要因というのは否定なさらなかったわけですが、その評価が違うわけであります。

 実際に、企業のリストラ収益といいますか、最近の利益の伸び方というのは、人件費を相当抑えて上げてきたというのが一般的な評価であります。その後も、労務費は固定費というふうになって、企業の側としては、それを抑制するというのが基本方針に大手の企業はなっておりますから、そうなると、賃金の横ばい、それから所得の低迷というものは今後も続く可能性がある。その点は我々は企業の側に行き過ぎたリストラというものをしてはならないということを要求していきたいと思っておりますが、問題は、政府の政策で国民の負担がどんどんどんどん重くなっていく傾向がこの間強まっておりまして、この面からくる不安感というものが消費マインドの低迷に相当影響を与えているというふうに思うんです。

 配付した資料を見ていただきたいんですが、小泉内閣になりまして、国民負担を相当これまでふやしてきました。そこに挙げた一覧表を見ましても、こんなにやったかと思うぐらい大変な規模でありまして、昨年までに実施したものだけでも約四兆円あるわけです。それから、今年度予算に盛り込まれたものを見ますと、約三兆円であります。これだけ負担がふえますと、合わせて約七兆円の負担増が昨年来実施されているということになるわけでありまして、そうなると、これは国民の将来にとってまた不安がふえるんじゃないか。先ほどの日銀のアンケート調査でも、その不安が大変大きかった、一番大きかったんですね。

 この負担増、これは、大体こういう実施をしてきたということは事実ですね。

谷垣国務大臣 この実施したところは、確かにそうでございます。

 それで、実は先ほど委員の御質問をちょっと先取りして答えてしまったかなと思いますが、その見方はいろいろな見方があると思いまして、私どもは、むしろ制度の安定とかそういうものに資する面があった、それが安心感につながる面があるんじゃないか、こう思っております。

佐々木(憲)委員 制度の安定に資するというふうに思われてやっている例えば年金の負担増、それが、実は保険料の支払いの人数がどんどんどんどん減っている。つまり、負担をふやせば制度が安定するんじゃなくて、逆に制度が崩壊する危険性を持っているという点を認識していただかないと。これは、ただ取りやすいところからどんどん取ればそれでいいというふうには私はならないと思うので、その点を指摘しておきたいと思うんです。

 その上で、三・三兆円になる所得税の定率減税の廃止、この点について、これは実行いたしますと、昨年来七兆円の負担増なんですけれども、さらに三・三兆円になりますと十兆円を超える大変な負担増になる。この定率減税の廃止ということが消費にとってマイナスになる、マイナスの作用を及ぼすという認識はありますか。

谷垣国務大臣 所得税構造なり租税構造をどうしていくかという全体の中で私は見ていただくべきことだと思いますが、ただ、定率減税を今度どうしていくかという、見るに当たりましては、景気動向や何かも十分注意をして議論を進めていかなければならないポイントだろうと思います。

佐々木(憲)委員 慎重にというような答弁でありましたが、私はこれはやるべきじゃないと思うんですよ。これをやったら、今でもこれだけGDPが大変な状況になりつつある、五割以上を占めている個人消費がどんと落ち込んだら、あと輸出も落ち込み、設備投資も落ち込み、消費も落ち込んだら、GDP全体が大変な陥没状態になってしまう。したがって、そういう危険な引き金は引いてはならないというふうに私は思います。

 前回ここで議論をさせていただきました法人税の税率の引き下げ、それから所得税の最高税率の引き下げ、さらに定率減税、これが三点セットで実は数年前に実行された。ところが、議論が、もとに戻すというのは庶民に打撃を与えるような定率減税の廃止ということだけが突出しておりまして、法人税の引き上げの議論や所得税の最高税率の引き上げの議論というものが行われていないんじゃないかというふうに私はここで指摘しました。

 きょう理事会に、それについての税調の議事録というものが出されました。ここに議論が行われている証拠があるんだという御説明でしたが、どうも内容をよく見ますと、それは根拠が明確ではないと思います。

 例えば所得税の最高税率の引き上げ問題は、二カ所ぐらい軽く触れられてはおります。しかし、まともな議論はやっていないんです。そういう議論をやるとしたら一挙でないとできませんねとか、所得税を全体として強化するという中に含まれる程度の話として出されている程度で、それがいいか悪いかの議論は、私はこの議事録を見ても一切行われていないと思いますし、ましてや三つの恒久的減税を戻すという議論の中で行われているわけでもないわけであります。

 それから、法人税について見ますと、国際比較の表を配付して、その中で日本は低いと。法人税は、国際的に見て、日本は欧米諸国と比べて大変低いと。そこまで下げ過ぎたと私は思うんですけれども。しかし、だから引き上げろということではありませんという議論なんですよ、発言をしている方は。したがって、法人税について今後引き上げるという議論をやっているわけではないんです。

 したがって、大臣が前回ここで、議事録を見れば、随所でそういう議論が行われているというふうにおっしゃいましたが、これは事実と違うわけでありまして、所得税の定率減税を廃止するということだけに結論を持っていって、それだけを実行するというのは余りにもバランスに欠けるのではないかというふうに思います。したがって、この点は慎重に取り扱うべきだというふうに思いますが、私は、所得税を事実上中堅サラリーマンに増税するということは今やるべきじゃないと思いますが、最後に大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 政府税調の中の所得税の最高税率をどうするかとか、あるいは法人税率をどうするかという議論についてお触れになりました。これは触れていると長くなりますので、きょうはそこは省かせていただきますが、定率減税については、これはこの前もお答えしたことでありますけれども、やはり二つ考えなきゃならない要素が私はあると思っております。

 一つは、あの小渕内閣、平成十一年当時の危機的な景気状況、これを何とか挽回しなきゃならないというための施策であったということは間違いありませんから、その状況を乗り越えられているかどうかというのは、やはり一つ大事なポイントでございます。

 それからもう一つは、所得税をもう一回抜本的に見直していく必要がある、その中でともに定率減税の問題は議論していこうと。前回は全体の見直しまでのつなぎということでございましたから、全体の見直しをやらなきゃならない環境にも来ていると思うんです。それは、前回も申し上げたことの繰り返しで恐縮でございますが、基礎年金をどうするかという問題、それから三位一体の財源をどうするかという問題の中で所得税体系は考え直していかなきゃいかぬというのが一つあります。

 それから、景気に関しては、あの当時の状況から随分変わってきて、当時足を引っ張っていた構造的な要因である不良債権処理はようやく乗り越えつつあると思いますので、私は十分議論できる環境になってきていると思います。この辺は佐々木委員とは見解を異にすると思っております。

佐々木(憲)委員 危機的な景気状況を挽回するということで三点セットの恒久的減税というのが行われて、しかし、それを見直すというふうになりますと、むしろ法人税の方は担税能力がふえているわけですから、そちらの議論をすべきであって、庶民に負担を負わせるというやり方は正しくないということを、もう時間がありませんので、最後に指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

金田委員長 次に、内閣提出、金融先物取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣伊藤達也君。

    ―――――――――――――

 金融先物取引法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤国務大臣 ただいま議題となりました金融先物取引法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、金融先物取引をめぐる環境の変化に対応し、一般顧客を相手方とする店頭金融先物取引等を金融先物取引業に追加するとともに、所要の行為、財務規制を導入するなど、金融先物取引の委託者等の保護を図るため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、金融先物取引に関する専門的知識及び経験のない一般顧客を保護するため、これら一般顧客を相手方として行う店頭金融先物取引またはその媒介等を金融先物取引業の定義に含め、このような取引を取り扱う業者を金融先物取引業者として、金融先物取引法の規制の対象とすることとしております。

 第二に、金融先物取引業を登録制とし、所要の登録拒否要件を整備するほか、金融先物取引業者が、勧誘の要請をしていない一般顧客に対して訪問または電話による勧誘をすること等を禁止することとしております。

 第三に、金融先物取引業者がリスクに見合った自己資本を有していることを確保するため、自己資本規制比率の算出、公表を義務づけるとともに、当該比率が一定の率を下回らないようにすることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十七日水曜日午前十時四十五分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十分散会


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