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第5号 平成17年2月23日(水曜日)

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平成十七年二月二十三日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 竹本 直一君 理事 村井  仁君

   理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    鈴木 俊一君

      砂田 圭佑君    田中 和徳君

      谷川 弥一君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山下 貴史君

      渡辺 喜美君    石井 啓一君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

二月二十三日

 消費税の増税反対に関する請願(田中慶秋君紹介)(第一八二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二〇六号)

 同(石井郁子君紹介)(第二〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二〇八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二九〇号)

 消費税の大増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九七号)

 同(石井郁子君紹介)(第一九八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二〇一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇三号)

 同(山口富男君紹介)(第二〇四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二〇五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 ただいま、民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属委員の御出席が得られません。

 理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

金田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長杉本和行君、財務省主税局長福田進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口でございます。

 本日の委員会、与野党の協議が相調わず、共産党さんが審議拒否をしないということで出席をしていただいたわけでありますけれども、民主党また無所属が出席をしないという中で、昨日趣旨説明をしていただきましたこの二法案、一つは特例公債法案、あともう一つは所得税の一部改正法案、この二法案とも非常に、日切れ法案でございまして、国民生活に大変重要な影響を及ぼす法案でございます。一刻も早く審議を終了して成立をしていかなければならない大変重要なこの法案、野党が一部出席をいたしておりませんけれども、私質問をさせていただきたいというように思います。よろしくお願いをいたします。

 今回の税制につきまして、私も与党の税制協議会のメンバーとして協議に参加をさせていただきました。今回のこの税制、一つは、定率減税の縮減だとか、また三位一体の税源移譲だとか、こういう重要なこととともに、金融・証券税制、国際税制また中小企業関連税制というような、この項目、多岐にわたっておるわけでございます。

 それで、私はきょうはこの中で、注目をされていないけれども本来注目すべきだと思われる法案について、税目についてお伺いをいたしたいと思っておるわけでございます。

 一つ目は、企業再生の場合の税制のサポートという見地でございます。企業再生の場合、資産評価損益の計上とともに期限切れ欠損金の控除が使えるというようなものでございます。これは、従来は会社更生法で行われておったものでございますけれども、今回の税制改正で、民事再生等の法的整理、また一定の私的整理の場合もこれが行われるようになったわけであります。

 まず初めに、この趣旨についてお伺いをいたした後、若干私の見解を述べたいと思いますので、今回の企業再生の場合の税制の対応について、まず初めに趣旨をお話ししていただきたいというふうに思います。

福田政府参考人 近年の産業金融の一体再生への取り組みの中で、我が国の企業、産業の再生の円滑化、加速化が不可欠となっているところでございます。

 過剰債務企業の抱える優良な経営資源を有効に活用いたしますためには、早期着手、抜本的な処理によりまして、企業価値の毀損を最小限にとどめ、迅速かつ確実な再建につなげることが重要であると考えられるところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、平成十七年度の税制改正におきましては、債務者企業に対する税制上の措置といたしまして、今谷口先生御指摘のような、民事再生法等の法的整理または一定の私的整理が行われる場合に、資産の評価損益の計上を認める措置と期限切れ欠損金を優先控除する措置とを一体的に講ずることとしているものでございます。

 今回の改正によりまして、債務者企業が民事再生法等の法的整理や一定の私的整理によりまして、事業再生に早期に着手いたしまして抜本的な処理を行う際に、資産の売却によります損失の実現を待たずに評価損の計上が可能となりますことから、迅速な事業再生が可能となり、また、期限切れ欠損金を優先控除することによりまして、再建期間中に生じます所得と相殺可能な青色欠損金が残りますことから、早期の事業再生が可能となる、こういった効果があると考えているところでございます。

谷口委員 今、主税局長からこの趣旨を述べていただいたわけでありますけれども、簡単に言いますと、従来、現行法は相殺の順番が、当期の損を使う、当期の損で債務免除益を相殺し切れない場合は繰越欠損金を使う、繰越欠損金でまだ充当し切れない場合は期限切れを、七年たちますと失効しますから、それを使うというような順番になっておったものを、今回は優先順位を、相殺順位を変えまして、もう既に期限の切れているものから使っていいというようなことになるわけでありまして、これは非常に、市中において企業再生を行う場合に、債務免除益が、債権放棄したんだけれども、これに対して課税されるからなかなか再生ができないというような要望にこたえたものでございまして、これはもうぜひ、私の方もこれは強く申し上げたことであるわけでありますけれども。ただ、一定の私的整理の場合というようなことで、これが政令にゆだねられることになるんだろうと思いますけれども、ここは若干幅広に行い得るようにやっていただければというように思っておるところでございます。

 あともう一つは、これも非常に細かい問題でありますけれども、LLP、LLCというのがありまして、今回会社法という法律ができるわけでありますけれども、その中で、リミテッド・ライアビリティー・カンパニー、LLCというのが新しい会社形態として登場いたします。一方で、LLP、リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップという組合形態、これも新しいタイプのものであります。このLLPにつきましても、今回、構成員課税ということで、昨年の十七年度の税制改正で議論が行われて、今回また出てきておるわけでありますけれども、これは、新規創業を促進するとか創造的な連携共同事業を促進するというような観点でこのLLPを構成員課税にしようというようになったわけであります。一方で、さっき申し上げましたLLCというのがございまして、これは新しい会社形態として出てくるわけでありますけれども、この議論がまだ行われておりません。

 それで、市中においては、LLCの課税状況がどうなるのかということで関心を持たれていることでもございますので、LLCの税改正の方向について、十八年度税制協議で行われる予定だと思いますが、その方向性について答弁をお願いできればというふうに思っております。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 会社法制の現代化に伴いまして、新たな会社法におきまして創設される予定の合同会社、いわゆるLLCの制度につきましては、現在法務省で法案策定作業中である、かように承知しております。

 また、新たな会社法に対応いたします税制の整備は、この会社法の施行に合わせまして、基本的には十八年度の税制改正において対応する予定でございまして、現時点で私どもとしての具体的な課税の考え方を申し上げることは困難であることを御理解いただきたいと存じます。

 ただ、あえて一般論を申し上げますれば、事業体の収益並びに費用を帰属させる実質が備わっていることが事業体に係る納税義務者の要件であると考えておりまして、合同会社LLCの課税関係につきましては、こうした考え方や他の会社形態とのバランス等を十分に踏まえまして、その法的な位置づけに沿った適切な課税関係が構築される必要があるものと考えているところでございます。

 なお、有限責任事業組合制度につきましては、今御指摘のように、民法組合の特例との法的な位置づけのもとで、組合員みずからが組合の収益をその発生当初から持ち分として保有している、組合事業の債務に係ります責任を直接個人的に負うこととされていること等々を踏まえまして、組合員を納税義務者とし、組合段階では課税しないこととしているところでございます。

谷口委員 いずれにいたしましても、LLP、LLCは、会社法の大改正がこの国会で審議されるわけでありますけれども、市中でこれから大きく出てまいる企業形態だと思うわけで、使い勝手のいい形になるように税制もサポートしていくということが重要だろうと思っておる次第であります。

 それで、次に行きますが、今度は国税職員のことでございます。御存じのとおり、歳入の中心が税収でございます。いわば税というのは国家の柱というべきものでございまして、税収の現場で頑張ってもらっておる国税職員、これは大変な努力をいたしておるわけであります。

 それで、最近の税の捕捉状況、国税の実調率を見てまいりますと、これは国税庁のデータでございますけれども、十一事務年度が五・七%、十二年度が四・九%、十三年度が四・二%、十四年度が四・一%、十五年度が三・九%ということになっておりまして、実調率がこのところ目に見えて低下をいたしております。この実調率が三・九%ということになりますと、大体平均にならして二十五年に一回の調査ということになるわけであります。調査一件当たりの申告漏れ所得につきまして十五年度で見ますと、一千百六十五万四千円あったということでございます。

 税は公平公正でなければなりません。脱税を放置するといったことは、正直に納税をしておる納税者に対して好ましくないわけでございまして、このようなことでまいりますと、税の捕捉ということが非常に重要でございます。

 そういう観点で、先ほど申し上げました実調率の低下というような現状の中で、私は、国税職員の定員確保は非常に重要なことではないかと思っておるわけでございますけれども、これにつきまして考え方をお伺いいたしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、谷口委員が実調率の低下に触れて御意見の開陳がございました。

 この実調率の低下は今おっしゃったとおりでありますけれども、私は、低下していくのは必ずしもいいとは思いませんが、一方、重点化して、必要なところをきちっとやろうということもこの中には含まれているとは思います。

 ただ、やはり、税務行政を取り巻く環境は、申告件数も平成に入りましてずっと増加をしてきているということがございますし、それから、まじめに税を払っていただいている方からすると、滞納残高がふえるということはあってはならないことでございます。平成十年がやはり景気等の関係でピークであったと思いますが、その後だんだんに下がってきているとはいえ、依然として高い水準にあるということがございます。

 それから、やはり取引等が国際化してきているということもあって、非常に、税を調べますにも、広域化といいますか国際化といいますか、それから高度情報化みたいなこともございますし、これは不正手口も、正直申し上げて随分巧妙になってきたというようなこともございまして、量、質ともに、私ども、対応が迫られているというふうに思っております。

 これに対応して、国税庁は、これまでIT化等を進めて、事務の高度化、効率化というようなことも努めてまいりましたし、それから、できることはアウトソーシングもして、積極的なアウトソーシングの活用等によって少しでも徴税の高度化に努めていこうということもやってきたわけでございます。

 しかし、それと同時に、所要の定員確保に努めていくということは、今申しましたような税務行政を取り巻く変化、それから、先ほどから谷口委員がおっしゃっておりますように、歳入をきちっとするということが国のあり方としても大事であるという観点から、必要な定員確保は今までも努めてきたわけですが、今後ともそこはしっかりやらなければいけないのではないかと思います。

 ただ、行財政、非常に厳しいところでもございますし、定員管理等も、全体で非常に厳しくやっております中で必要な人員を確保するというのもなかなか困難なことでございますので、今後ともまた委員の応援と督励をお願いしたいと思っております。

谷口委員 大臣におっしゃっていただきましたように、きめの細かい対応で、ぜひまた定員の確保をお願いいたしたいと思います。

 次に、きょうは大変お忙しい中、日本銀行の福井総裁においでいただきまして、ありがとうございます。金融政策についてお伺いをいたしたいと思います。

 日本経済、最近の状況を見ますと、デフレ圧力がかなり弱くなってきたというように言われておりますし、現にそうであります。

 それで、日本銀行の予測でまいりますと、この二〇〇五年に消費者物価指数、CPIがプラスに転じる見込みだというようなことで言われておるわけであります。日銀の今現在やっていらっしゃる量的緩和政策、これは、二〇〇一年の三月十九日の決定会合で、当預残高の目標五兆円程度からということになったわけでありますけれども、これが段階的に引き上げられまして、二〇〇四年一月二十日には、現在当預残高目標となっております三十兆から三十五兆円程度ということになっておるわけでありまして、かなり引き上げられたわけでございます。

 それで、最近の状況を見ますと、当預残高に資金供給をするオペレーション、日銀がやっておるわけでありますけれども、これが札割れが連続して起こっている。これは、金融機関の不良債権処理がいわば峠を越えたということで、金融システムが安定化しつつあるというような状況があるんだろうと言われております。特に、今月の決定会合の日に札割れが起こったということも、これは象徴的なことだと言われておるわけであります。

 そういう状況の中で、昨年の十二月の決定会合の議事要旨を見ますと、ペイオフ全面凍結解除の後に当預残高三十兆円から三十五兆円程度を引き下げたらどうかというようなことをおっしゃっておられる審議委員も二人見られたわけであります。それでまた、一月の決定会合の議事要旨を見ますと、当預残高を引き下げずに一時的な下割れを容認するというようなこともいいのではないかということをおっしゃっておられる審議委員もいらっしゃるわけであります。

 それで、まず初めに、総裁に見解をお伺いする前に私の考え方を述べたいと思いますけれども、こんな状況の中で、今、この当預残高を引き下げたらどうかというような考えがありますけれども、当預残高の引き下げは、この量的緩和を見直すというような、市中に対して考え方を日銀が変えたというようにとられかねない。そうなりますと、長期金利が上昇するといったようなことも考えられるわけでございますので、デフレを完全にとめるまで、私は、日銀は現行の量的緩和政策を粘り強く進めていくことが重要であるというように考えておるわけでございます。

 先ほど長期金利のことを申し上げましたが、二〇〇五年で見ますと、仮に金利が一%上昇しますと国債の利払いが一兆二千億円程度増加する、このように言われておるわけでございます。そんな状況の中で、今私が申し上げた状況になっておるわけであります。

 また一方で、余剰資金がかなり市中に出回っておりまして、都市部においては不動産価格に影響も出てきておるというような状況もございます。市場関係者は、消費者物価指数、CPIを基準とする現行の量的緩和の解除の条件がどうなるのかということに関心を持っているわけでありまして、余りにこのCPIにこだわり過ぎるということになりますと資産バブルが起こるのではないかというような声もあるわけであります。

 そういう二つの声があるわけでありますけれども、福井総裁は一体どのようにお考えなのか、教えていただきたいと思います。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 まず最初に申し上げなければなりませんことは、日本銀行は、御指摘のとおり、量的緩和という、中央銀行といたしましてはかなり異例の思い切った金融緩和政策を実施しておりまして、かつ、これを継続中でございます。この政策につきましては、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで継続する、これをかたくお約束しているわけでございまして、この姿勢は約束どおり今後とも貫いていくということでございます。

 政策決定会合の議事要旨、十二月分と一月分の内容について今お触れいただいたわけでございますけれども、あそこの議事要旨の部分は、実は、次回の政策決定会合までの調節をどうするかということに加えて、政策決定会合でございますので、常にその先、さらに時間軸を延ばして、金融市場の変化等がどういうふうに起こってくるだろうかというふうな先々の議論も同時にしているということでございます。そういうふうに見ますと、十二月のときも一月のときも、次回政策決定会合までの金融政策決定方針は現状維持ということでございます。

 そして、先行きの議論について、今おっしゃいましたとおり、札割れ現象というものから先々の金融情勢をどう理解するかという議論が既に繰り返されている、こういうことでございます。そして、その部分について申し上げますと、経済全般についての先行きの不確定感というふうなものが徐々に薄れてきている、なかんずく、金融システムをめぐる不安感というものが後退してきているということを大きな背景といたしまして、金融市場参加者の流動性の要求水準が徐々に下がり始めている。逆に言いますと、金融市場におきます流動性の過剰感というものが徐々に高まってきている。

 したがって、日本銀行が資金流動性供給のために買いオペレーションのオファーをいたしますと、それに対して市場参加者からの応札率というものが徐々に下がってきている、時には日本銀行のオファーの額に満たない、いわゆる札割れ現象が出てきているということでございます。

 このこと自身、私ども政策委員会のメンバー挙げてでございますが、やはり、経済と金融システム全体が次第にいい方向に向かってきているということの市場のメッセージであり、これは好ましい方向だというふうにポジティブに受けとめているということでございます。

 そして、政策委員会の議論も、委員もちょっとお触れになりましたけれども、特に四月以降、ペイオフ完全解禁後の日本経済と日本の金融システムの安定度合いというものを、今の時点ではまだ十分読めませんが、さらに、どの程度望ましい方向に行くか、その中で金融市場におきます流動性の需要というものがどういうふうに変化していくかということをこれからしっかり見きわめていかなければいけない。

 いずれにいたしましても、私どもは、CPIの前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで今の量的緩和のフレームワークは堅持する、そして実質的な金融緩和度合いも緩和する、こういうことでございます。

 目先、四月以前の段階で申しますと、三月の上旬、初めのところが、金融市場の中におきますと、資金需給の不足から見て資金不足の一つのピーク、山場を迎えるわけでございます。今、それを目がけて、日本銀行の市場局ではさまざまなオペレーションの手段を既に市場に講じまして、流動性を十分供給するという体制で進めております。恐らく、我々の持っております三十兆から三十五兆円程度というこのターゲットは十分満たしていけるんではないかと、今のところ予測している状況でございます。

谷口委員 今総裁がおっしゃったように、デフレ懸念が完全に払拭されるまで、私は、ぜひ量的緩和を続けていただきたいと思うわけでございます。

 総裁もそういうような内容の発言をされたわけでありますけれども、しかし、やはり、この現状を見ますと、金融システムも若干安定してきたということで、どうも当預残高目標が維持できるのかどうかというようなこともあります。ですから、これを放置しておいて、実態的に札割れがこの後も連続して起こるというようなことになってまいりますと、これもまた大変なことであります。

 そんな状況の中で、当預残高目標にまた新たな方式を入れたらどうかというような考え方もあるわけでございまして、審議委員の方が日銀の場以外でおっしゃっておられることもマスコミを通じて私聞いておるわけでありますけれども、残高目標に柔軟性を持たせるというような新方式を設定したらどうかというようなことだとか、また、ある審議委員は、資金需要が著しく低下した場合には残高目標にこだわらないというようなただし書きを入れたらどうかというようなことも言っていらっしゃる方もおられます。

 三十兆から三十五兆円程度の当預残高目標は維持するというその大前提の中で、現在起こっておるその現状を見た場合に、私が申し上げたような新方式なりただし書きなり、何らかの対応が必要なのではないかと思っておりますが、総裁、考え方を述べていただきたいと思います。

福井参考人 今委員がお触れになられました政策委員会のメンバーの中から、一部、そういう量的緩和政策の実行の仕方について、あるいは運営の仕方について、幾つか新しい提案が出始めているということは議事要旨で既に公開済みのことでございます。

 この部分につきましては、いずれの委員にも共通するところは、金融政策の基本的なフレームワーク、つまり量的緩和政策の枠組み、それから、実態的な緩和の度合いに修正を加えようという意見では全くなくて、いい意味で、情勢が好転して市場の中の流動性需要が減ってきた場合に技術的にいかに対応すべきか、対応した方が量的緩和の枠組みをより市場の状況にマッチして安定的に運営し得るか、そういうふうな種類の議論でございます。

 同時に、政策委員会で議論されておりますこと、あるいは私自身の頭の中にありますことは、特に、四月以降、ペイオフの全面解禁後、まず景気と申しますか経済情勢がどういうふうに展開するか。それから金融システムの安定度合いというのが、さらにどの程度、どのようなスピードで確立していくか。その環境の中で、金融市場の中でイールドカーブというのがどういう形状で形成されていくか。それらによって、実態的な流動性需要の出方そのものも大きく変わってまいります。そこのところをまず見きわめていくということが先決だと。

 そうしていきまして初めて、本当に札割れというふうな現象と、三十兆ないし三十五兆程度というこのターゲットとが現実的な整合性という点でどれぐらい問題が生じてくるかということが正確に認定できる。そこのところを正確に認定しながら、そうした技術的な対応というものを加味していくことがより望ましいのかどうかというのはその段階で判断できるであろう、こういうふうな組み立て方になっております。

 いずれにいたしましても、私どもは、基本の政策フレームワークと基本の実態的な緩和の度合いというものはいささかも揺るがせない。その上に、もし必要な場合に、技術的な対応というのがあり得るのかないのか。しかも、それは国民の皆さんにきっちり切り分けて理解していただけるような方法があるのかどうか。そこのところは今から、この先を見通して議論は始まっておりますが、まだ具体的な結論に向かって収束していくというふうな段階では到底ございません、まず前段階の諸情勢の変化ということをこれからもしっかり見きわめながら、必要な議論はさらに進めていきたいというふうに思っております。

谷口委員 今総裁は日銀の政策のフレームは変えないということをおっしゃったわけでありますけれども、そういうスタンスでぜひいっていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今おっしゃったように、四月から実施をされますペイオフ凍結解除後にこのような実体的な議論がなされるのではないかと私は思っておりますけれども、その大前提は、日銀の今の、現行の政策フレームを変えない、大きく市中に影響が及ぶようなことのないように、慎重の上にも慎重に対応をしていただきたいと申し上げまして、終わりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

金田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時四十九分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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