衆議院

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第6号 平成17年2月25日(金曜日)

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平成十七年二月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 竹本 直一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    大前 繁雄君

      岡本 芳郎君    木村 太郎君

      熊代 昭彦君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    佐藤  勉君

      柴山 昌彦君    鈴木 俊一君

      砂田 圭佑君    田中 和徳君

      竹下  亘君    武田 良太君

      谷川 弥一君    津島 恭一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      西銘恒三郎君    宮下 一郎君

      山下 貴史君    渡辺 喜美君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      小林 憲司君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    田村 謙治君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   総務副大臣        山本 公一君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   総務大臣政務官      松本  純君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (内閣府計量分析室長)  大守  隆君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長)   飛田 史和君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    大林 千一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  永田 俊一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     津島 恭一君

  谷川 弥一君     柴山 昌彦君

  森山  裕君     佐藤  勉君

  山下 貴史君     西銘恒三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     森山  裕君

  柴山 昌彦君     武田 良太君

  津島 恭一君     竹下  亘君

  西銘恒三郎君     山下 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     倉田 雅年君

  武田 良太君     大前 繁雄君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     谷川 弥一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、両案に対し、平岡秀夫君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。平岡秀夫君。

    ―――――――――――――

 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案に対する修正案

 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平岡委員 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案に対する修正案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨の説明をいたします。

 まず第一に、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案に対する修正案の概要を申し上げます。

 国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務費につき、その一部に国の負担以外の財源を充てる、つまり年金保険料による財源を充当するという規定の削除が内容です。

 社会保険庁をめぐるむだ遣いのうわさは相変わらず絶えません。全国各地の一等地に豪華な事務所を構える社会保険事務局や、定義の不明瞭な福祉施設費による雑多な支出、物品調達や委託業務についての不透明な巨額随意契約。会計検査院による調査の結果、汚職事件まで発覚しております。

 やはり給付以外には保険料は使わない、これを原則にしなければ将来の国民の老後の安心はあり得ないということを、国会としてあるいは政府としてきちんと認識を新たにすべきです。

 もともと、保険料の年金事務費への充当は、財政構造改革特別措置法によって六年間の時限措置として導入されたものであり、本来なら昨年度から事務費の全額国庫負担というあるべき姿に戻っていたはずでした。ところが、一年延長され、今年度さらにもう一年延長されようとしております。もうそろそろ本来のあるべき姿に立ち返る時期であります。もし仮に百歩譲って、保険料の年金事務費への充当が必要であるという部分があるのであれば、恒久的な制度改正で対応すべきであり、このような特例的措置で行うべきではないと考えます。

 次に、第二に、所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案について説明いたします。

 政府提案の税制改正案は、長期的な財政再建の見通しも抜本的な歳出構造改革もないまま、ただ安易に国民に対して負担増を押しつけるものであります。本年は、増税元年とちまたで称されているように、本格増税の開始の年であり、今後、さらなる大規模増税が毎年次々と予定されております。このままでは財政破綻が先か国民生活の破綻が先かの、出口のない破綻競争になってしまいます。

 民主党は、国民生活を守るために、すぐにでも実現可能な最低限の修正を求めます。

 以下、修正案の概要を申し上げます。

 第一は、定率減税縮減に関する規定の削除です。

 我が国の景気は、GDPの実質成長率が三期連続でマイナスとなるなど、先行きが大変不透明になっております。これまで政府が主張されてきた景気回復も、一部大企業のみを中心としたものであり、かつ、雇用の犠牲や中小企業たたきを土台とした一時的な回復にすぎません。他方、大企業と中小企業、中央と地方、企業部門と家計など、国内における経済状況の格差は大きくなるばかりです。現時点において定率減税の縮小を決めていくということが、さらなる雇用者たたきにつながり、景気の足を引っ張ることになることは明白であります。国民生活に対する重大な影響を考慮し、当委員会において十分審議に時間をかけて議論していくことを求めます。

 また、ことしの政府予算案では、大型公共事業が復活する一方で、特別会計や特殊法人の改革は遅々として進まず、昨年末の会計検査院による税のむだ遣いの指摘は、過去二十年間で最悪となりました。明らかに政府の歳出削減努力は全く不十分であると言わざるを得ません。政府は縮減により生ずる財源を基礎年金国庫負担の引き上げ費用の一部に充てるとしておりますが、我が党は徹底した歳出削減によりこの引き上げ費用を賄うと公約しております。真摯な歳出の削減努力がなされないまま、安易に負担増を求めることは許されません。

 第二は、新しいタイプのローン控除制度の創設です。

 現在の住宅ローン減税を根本的に見直しつつ、減税対象を住宅のみならず自動車ローン、教育ローン等、広範に拡大することによって、個人が借り入れるローンに係る金利分をおおむねすべて所得から控除することができるようにいたします。これにより長期にわたる低迷傾向にある個人消費を刺激し、積年の課題である内需の拡大を図るとともに、真に豊かさを実感できる国民生活を実現していこうというものであります。

 第三は、NPO支援税制の拡充に関する規定の追加です。

 パブリック・サポート・テストや対象年度、活動要件などのNPO認定要件を大幅に緩和すると同時に、みなし寄附金制度の拡充や収益事業の法人税率の引き下げなどによりNPOの事業に対する支援を手厚くします。また、個人寄附金の控除については、現行の一万円のすそ切りを廃止し、税額控除と所得控除の選択制を導入し、NPOに対する寄附を促進します。

 以上、修正案の概要を申し上げました。

 繰り返し申し上げますが、明確な将来展望が打ち出されないまま次々と増税策が打ち出されていくようでは、庶民の財布のひもはますますきつく締まり、経済は再び停滞の泥沼に沈み込むことになりかねません。民主党はこのような事態を避けるために一刻も早い政権交代が必要と考えますが、現時点では、最低限の措置を行うため、以上の修正を求めます。

 委員各位におかれましては、私たちの主張の真意を御理解いただき、何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げまして、趣旨の説明といたします。(拍手)

金田委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長永田俊一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長杉本和行君、財務省主税局長福田進君、金融庁監督局長佐藤隆文君、内閣府計量分析室長大守隆君、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長飛田史和君、内閣府大臣官房審議官堀田繁君、総務省統計局長大林千一君、社会保険庁次長小林和弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより両案及び両修正案に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党・無所属クラブの鈴木克昌でございます。

 きょうは、財務大臣、谷垣大臣に、九十分間という許された時間の中でしっかりと質疑をさせていただきたい、このように思っております。

 基本的には、今、修正の提案がなされましたけれども、私も、この二つ、所得税法の一部改正、それから財政運営のための公債の発行、これはやはり修正すべきだ、こういう視点でその理由を今から申し上げていきたいというふうに思います。

 早速ですが、一般歳出は昨年度と比べて〇・七%減、これは三年ぶりに前年度を下回った、それから、一般会計の総額も〇・一%増であるけれども四年連続で緊縮型を堅持した、一般会計の国債依存度も四一・八%と形の上では改善をされておる、こういうことでございます。

 谷垣大臣はかつて記者会見で、この予算案に対して財政の持続可能性を確保するための一里塚をつくることができたと強調されました。しかし、国債残高は過去最悪の五百三十八兆円まで膨れ上がって、財政再建の道筋というのはとてもじゃないけれども見えていない、私はこのように思うわけですね。

 大臣は、この予算に対して三点を特に強調されてまいりました。いろいろのところで御発言をされました。一つは、一般歳出を前年度以下に抑制したんだ、それから二つ目として、新規国債発行額は前年度以下に抑制したんだ、そして三つ目は、一般会計のプライマリーバランスを二年連続で改善したんだ、こういうことを強調されておると思います。

 しかし、私は、本当にこれで財政が健全化になっていくのかということを考えますと、とてもそんなふうには思えないわけですね。

 実は、きょう私は、私の地元の市、町の予算、まだ議会では議決を経てはおりませんけれども、予算案が出されております、これを実は持ってまいりました。参考にちょっと申し上げます。

 蒲郡市でございますが、これは一般会計がマイナス九・五なんですね。それから、豊川市がマイナス一二・九。いずれも一般会計です。新城市がマイナス六・一。御津町というところがあるんですが、これがマイナス七・〇。小坂井町はマイナス一七・五。音羽町はマイナス一四・六。豊根村というところはマイナス二一・九。これが、大臣、実際に今市町村が組もうとしている予算なんですよ。

 ところが、私が冒頭申し上げましたよね、〇・七%の減だとか、〇・一%の増だとか、四年ぶりに減額させたんだということで、さっき言った三点を大臣はいろいろなところで強調されておる。

 だけれども、実際に、本当に、これは私の市町村だけではないと思うんですね、全国の市町村が、ことしの予算については、今言うように平均すればマイナス一〇%に私はなると思います。正式な計算はしておりませんけれども、一〇パー以上じゃないでしょうか。これが実情なんですよ。

 それに対して国の予算は本当にそこまでやっておるんですか、改革を進めておるんですか。私は、冒頭まず、この数字をどのように大臣はお感じになっておるのか、この点から御質問させていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、私も、個別の市町村の御努力の姿は十分掌握しているわけではありませんけれども、今の委員のお話からも、委員の一番詳しい愛知県蒲郡を中心に随分努力をしていただいているなと思っております。そういう努力をあちこちで積み重ねていただいているということは、日本全体の国と地方を通じて財政状況を改善していかなければなりませんから、大変心強いことだと思っておりますが、今の委員の御質問は、国の方はそれに引きかえ十分努力が足りないのではないかという御質問だったと思います。

 確かに、数値の上から比べてみますと、今の一般会計の姿がお話を伺いますと十数%、そういうものに比べますと国の努力はまだ足りないという御指摘は、私は耳が痛いものとして聞きまして、まだまだやらなければならないことがあるのではないかというふうに思っております。

 ただ、これはいろいろな要因が絡まっておりますから、私どもも、どの辺にまだ突っ込んでいけるところがあるのか、今年度はこういうことでやらせていただきますが、来年度に向けても、どの辺に突っ込んでいけるのか、いろいろ研究してさらに前へ進めたい、このように思っております。

鈴木(克)委員 私は、今から許された時間内、ずっと御質問をさせていただき、議論をさせていただくつもりでありますが、先ほど申し上げた各市町村、マイナス二一%なんという予算を組んでいる村長さんは、本当に正直言って立っておれないですよ。恐らく自分の進退をかけてこの予算を議会に提案するんですよ。

 だけれども、私、きょうのテレビを見ましたら、小泉総理がどこか地下の農場へ行かれて、サラダをおいしそうに召し上がっておる。そのテレビのコメントが、予算は完全に成立の過程に入っておる、余裕しゃくしゃくだ、こういうようなコメントでした。これはそのテレビ局の考えかもしれませんけれども、私はとんでもないと思うんですよ、本当に。

 マイナス一〇%、二〇%の予算を議会に提案をしなきゃならない市町村長や、それを受けて審議をする市町村の議員の皆さんの気持ち。そして、それは直接生活に密着しているわけですよ、地域社会は。その人たちの気持ちを見たときに、私は、本当にこれでいいんだろうかと。

 くどくなりますけれども、私がどうしても腑に落ちないというのは、先ほど財務大臣のコメント、三つのことを申し上げましたが、その中に、最後まで、国がスリムになっていくとか歳出というぜい肉を削減したという言葉は一つもないんですよ。一つもないんです。ニュアンスとしてはあるかもしれませんけれども。でも、今おっしゃいました、本当に地方の状況は大変な状況にあるということを本当に御理解をいただきたいということをまず冒頭申し上げて、今から質問に入らせていただきます。

 社会保険庁の年金関係、年金予算について御質問させていただきます。

 一部を改正する法律案それから公債の発行の特例に関する法律案について、順番に入らせていただきますが、谷垣財務大臣は、二十八日の衆議院予算委員会で、二〇〇五年度の社会保険庁の年金事務費を年金改革による増加分を除いた実質額で九・八%、約二百七十億円削減したことを明らかにした。財務省が予算委員会に提出した資料によると、二〇〇五年度の年金事務費の総額は、前年度より十二億円ふえて二千八百億円となる。しかし、この中には、年金制度改革に伴うシステム改修費など二百八十億円が含まれており、財務省は、この分を除くと事務費は削減され、年金保険料のむだ遣いは是正されているとしておる。

 確かに、保険料の負担は百五十六億減っておるわけですね、保険料からの負担は。だけれども、基本的に年金掛金は年金に使ってほしい、総理も厚生労働大臣もそういうニュアンスのことをおっしゃっておったわけですよ。だから、当然、ことしはすべて一般会計、税金でやられるというふうに私は思っておったわけなんですが、多少減ったとはいえ、約一千億に近いものがまた出てくるというのは、私はどうしても納得がいかない。これは、本当に皆さん方は何をお考えになっているのかなと思います。

 そこで、まず、年金から出される九百二十三億の中身、これについてお伺いをしたいんですが、本当に、先ほど申し上げました地方の市町村長がどんな思いで予算を組んでおるのか、それと同じ目線に立って皆さん方はこの九百二十三億の中身を徹底的に精査されたんですか。そして、その中身は一体全体本当に何なんですか。そのことを私はまずお伺いをさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 年金事務費のあり方に関しては、昨年のこの委員会でも大変厳しく、また熱心に御議論をいただいたと思っております。

 今度の特例措置、先ほども御議論がございましたけれども、特例措置を継続させていただくわけですけれども、これに当たりましては、国庫負担と保険料負担の経費の区分のあり方、これを見直しを行いました。それで、適用であるとか徴収、給付事務あるいはシステム関係経費といった年金保険事業運営に直接かかわる経費、この財源として、平成十七年度予算においては九百二十二・五億円を保険料で負担していただこうということにしているわけです。

 去年の国会等での御議論を踏まえまして、年金事務費全体については、今もお話がありましたけれども、私どもとしても厳しく精査させていただいたつもりでございます。議員御指摘の年金保険料で負担する経費についても、厳しく精査をしまして効率化を図ったところでございます。

 具体的に申しますと、これまで納付書と通知書を別々に送付していたというようなことがございましたけれども、これを可能な限りあわせて送付するというようなことによって郵送費を削減するとか、使用実績の少ない届け出用紙の印刷システム、パピアートというのがあったんですが、そういうものを撤去するというようなこと、それから、そういうことによりまして、適用、徴収、給付事務については前年度に比べますと五十八・一億円の縮減を図りました。それから、システム関係経費については、今もお触れになりましたけれども、昨年の年金制度改革に伴うシステム開発経費などやむを得ない部分がございまして、ここは対前年度十二・八億円増加しているわけであります。

 こういうものを合わせますと、年金保険事業運営に直接かかわる経費全体では、去年に比べまして四十五・三億円の縮減を行っておりまして、ことしは九百二十二・五億円、こういう規模になったわけでございます。

鈴木(克)委員 今それぞれおっしゃったわけでありますが、私は、基本的にむだ遣いが見直されたというふうにはとても思えないんですね。

 確かに、今御指摘の点はあれかもしれませんけれども、例えば公用車というのがありますよね、それが四十二台分の更新を取りやめたというだけのことで、公用車問題に入っておるわけじゃないわけですよね。それから、一つ一つ挙げれば切りがありませんけれども、本当にこれで国民が納得をするんだろうか、いいよ、私たちの年金掛金を使ってもらってもいいよと。私は、本当に納得するか、絶対に納得しないと思いますよ。本来税金でやるべきですよ。年金の掛金を何も流用する必要ないじゃないですか。私は、この部分を本当に強調していきたい。それで、さらに将来的に、まあいいです。

 では、来年はどうされるんですか、来年。来年のことはわからないと言うかもしれませんけれども、私はどうしてもその先が見えてこない。社会保険庁の存廃が今言われておる時期に、どうしてこれが変わっていかないんだろうかな。民間ならもっとダイナミックに変わりますよ。そして、地方も、先ほどからくどいように申し上げているように、大変な改革をしておるんですよ。それに対して、相変わらず一千億近い金を年金掛金から出していくという予算を本当に出すという、その感覚が、とてもじゃないけれども理解できない。むしろ、私は、ちょうどいい、税も厳しいし年金掛金の方から出しておけばいいんだと、こんなような裏があるんじゃないかと思えるぐらい、このことについてはどうしても納得いかない。もう一度、大臣、御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今の委員のお考えに対しまして、これは年金の中から事務費を賄おうと税から出そうと、むだ遣いしちゃいけないのは、私はどっちも同じだと思うんですね。年金だからむだ遣いしちゃいかぬ、税だからむだ遣いしていいなんということは絶対にあり得ない。そういう観点から両方を精査して……(発言する者あり)それは当たり前なんです、そのとおりなんですよ。

 その上で私が申し上げたいことは、今、本来これは税でやるべきではないかというお問いかけだったと思います。これは、制度の立て方は、委員のおっしゃるように、税で出せという立て方で法律ができているのは、そのとおりでございます。現在、財革法以来、国の財政ということもあって、それは年金から出していただこうということをお願いして、ことしもまた特例法でお願いするということになっております。

 今その裏があるのではないかというふうな表現をお使いになりましたけれども、私は、こういう年金というような事業の経費をどうしていくかというのは、本来いろんな考え方があり得るんだと思います。これは前も御答弁申し上げたことがありますが、労働保険等は保険料の中から事務費を出すという体制をとっているということもございまして、制度の立て方はいろんな考え方があると思います。ただ、こういう財政事情の中で、年金の中からことしはお願いをしている、来年度はまたきちっと議論をしていかなければいけないと思っておりますが、今年度は単年度予算の中ではこういう形でお願いをするという形になっているわけであります。

鈴木(克)委員 今年度はそうだ、来年度はまた議論だということかもしれませんが、私は本当に、本来必要なものであるならば税金できちっとやるべきだと。年金は、もう一遍申し上げますよ、年金掛金は年金のためだけに使ってもらいたい、これが国民の本当の願いなんですよ。私は、やはり原点に戻るべきだというふうに思っています。

 したがって、来年について、ことしを認めるわけじゃありませんけれども、来年からは絶対やめる、私はそれぐらいの決意を持って臨んでもらいたいというふうに思うんですが、その点はいかがですか。来年について、もう一度しっかりと明確に御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これはまだ、私は来年については委員のおっしゃるように明確にお答えすることは残念ながらできません。もう一回、今の制度の立て方、原点に戻れというお話がございましたけれども、私どもも、もちろんそれを踏まえながら、財政の事情や、あるいは年金の運営のあり方をこれからもう少し勉強を重ねてまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 ぜひ年金掛金は年金だけに使ってもらいたいという国民の願いをしっかりと胸におさめておいていただきたい、繰り返しお願いを申し上げます。

 次に入ります。大臣のプライマリーバランスに対する認識についてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 政府は、二〇一〇年代初頭の国、地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指しているというふうにおっしゃっておるわけですね。「構造改革と経済財政の中期展望」二〇〇四年度の改定の審議のための参考として内閣府が作成した試算では、今後名目成長率も上昇していき、最終的には高い名目成長率のもとで、二〇一二年度、平成二十四年度にプライマリーバランスが黒字化するとしている。このシナリオ自体、私は、余りにも楽観的で現実不可能な、単なる数字合わせの目標だと思っております。

 この試算発表後の竹中大臣に対する記者会見の質疑応答の中で、二〇一二年度黒字化の実現可能性が問われた際に、竹中大臣は、実現可能性の有無については経済財政諮問会議の場では特に議論しておらず、これを実現するには大変な決意を持って今後の改革を緩めないでさらに加速しなければならない旨の発言をされておるわけです。当の担当大臣でさえ、その目標の実現の可能性を明言できないんですよね。

 ところで、その試算をつまびらかに見ると、確かに二〇一二年度には国、地方を通じたプライマリーバランスが黒字化するという形にはなっておりますけれども、では、その時点における国のプライマリーバランスはどのような姿となっておるのか、その時点で国のプライマリーバランスはどのような形になっておるのか、この点を、大臣、お聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今鈴木委員がおっしゃった「改革と展望」の参考資料にございます試算、これによりますと、二〇一二年度に国、地方合わせた基礎的財政収支が黒字化するという姿を一つ示しているわけですが、その時点における国の基礎的財政収支は、これは国と地方両方でそういうものを目標にするわけでございますが、国については対GDP比でマイナス一・四%、ちなみに地方はプラス一・五%というふうになる数字が掲げられているわけでございます。

鈴木(克)委員 今大臣の御答弁にあったように、プライマリーバランスの黒字化といっても、その実態は、国は依然として、今おっしゃったように対GDP比マイナス一・四%、これは金額にして約十兆円近いわけですよね。約十兆円近いプライマリーバランスの赤字を抱えておるということなんですね。だから、確かに国と地方を合わせればプライマリーバランスは黒字化になるのかもしれないけれども、国だけで見ればマイナスなんだ、約十兆円マイナスなんだ、こういうことなんですよね。

 では、ちょっと視点を変えまして、その時点における公債等残高は幾らになっておるのか、それをお聞かせください。

谷垣国務大臣 これはあくまでいろいろな前提を置いての試算でございますが、内閣府試算によれば、その中での改革が進んでいったケースの方でございますが、二〇一二年度における公債等残高九百四十七兆七千億、対GDP比一四六・九%という試算が出ております。

鈴木(克)委員 政府は、二〇一二年度にプライマリーバランスの黒字化が達成されて財政健全化がさも進むような説明をされておるわけですけれども、その実態は極めて憂慮すべきものだということがわかったわけですね。依然として国は約十兆円近いプライマリーバランスの赤字を抱えておる。そして、それだけではなくて、債務残高はどんどん累増して一千兆円にも及ぼうとしておる。その大もとが国債だ。この国債残高の加速度的な累増をとめ、さらにそれを減らしていくことは、国自体のプライマリーバランスを黒字化しない限りは到底不可能だというふうに私は思います。このような極めて深刻な状態をあたかも隠すがごとく、政府は、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランスの黒字化の姿を示して、そして財政の健全化が達成されるといった誤ったメッセージを国民に発信しておる、私はこのように思っております。これは一つのまやかしじゃないのかというふうに言えると思うんですよね。

 そこで、国の財政に責任を持つ財務大臣は、今申し上げた点についてどのようにお考えになっておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃったことは、いわゆるプライマリーバランスを回復しても、その先にまだ大きな問題が残っているではないかということをおっしゃったんだと思います。私も、それは全く委員のおっしゃるとおりだと思います。

 要するに、プライマリーバランスを回復するということは、その年にいただいた税金でその年の政策を賄っていこう、そういうことによってツケを後の世代に先送りしないようにしようということだけを意味しているわけでございまして、現状ではそれ自体が大きな目標、しかもなかなか困難な目標でございますけれども、今これだけたまっている国債費、さらにそれは当然利息を支払わなきゃならないわけでございますから、それを縮減していくというところまではプライマリーバランスは十分視野に入っていないわけでございます。

 したがいまして、プライマリーバランスを回復したその先に、今のような問題をどうしていくかという道筋が当然あるわけでございまして、それをどうしていくかという議論は、実はまだ十分政府の中でもできていないといいますか、差し当たってプライマリーバランスを回復していこうというところまでが今の取り組みでございます。

 ただ、経済財政諮問会議等ではその先の議論あるいは物の考え方も整理をしておかなければいけないんではないかということで議論が始まったところでございますので、やはり全体像を発信しながら物事を解決していくという姿をつくっていく必要があろうかと私も思っております。

 しかし、当面差し当たって、ツケを先に先送りしない姿をつくるために私どもは全力を挙げる必要があろうかと思います。

鈴木(克)委員 またこの「改革と展望」については金融庁の方にしっかりと伺っていきたいというふうに思っているんですが、私も一三年度が一年前倒しになって一二年度に黒字化になるという話を聞いたときに、そんなことは全くおかしいということで、何を根拠に言っているのだということで、試算にどんな根拠があるのか、それから、期待値を上げ過ぎれば幻滅が大きくなるだけだということで、いろいろなことを聞きに参りました。それで、例えば、試算の前提となる名目成長率や長期金利の動向や歳出削減などの見通しというのは本当にどうなんだと言っても、結局、明確な答えはないんですよね。私が伺った時点では、ないんですよ。

 ということは、ちょっと言い過ぎだったかもしれませんけれども、本当に、国民に対して何かバラ色の姿を見せて、そして、まやかしというかごまかしというか、目先の乗り切ればいいんだというようなことに思えてならないわけです。私は、やはりそれは厳に慎まなきゃならない。前にも私、議論をさせていただいたことがあるんですが、確かに厳しい道なら、すべて厳しいという形を僕は国民に出すべきだ、そして国民に理解をしてもらうべきだというふうに思っております。

 したがって、今大臣はそういうふうにお答えになりましたけれども、私は、やはりもっともっと厳しく、何遍でも言いますけれども、地方の市町村長が本当に大変な思いで予算をつくっておる、この気持ちをぜひ思っていただきたい、理解をいただきたい、そして大切にしていただきたい、このことを繰り返し申し上げる次第でございます。

 次に、国債の利払い関係についてちょっとお伺いをしていきたいと思うんです。二〇一〇年代初頭における国、地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化の目標と国債の利払いの増についてお伺いをしたいというふうに思います。

 現在、国債残高が多額に上り、先ほど来から指摘をしておるとおり、今後も大量発生が見込まれる中で、国債の利払い費の負担増が懸念をされておるところでございます。利払い費の負担増に影響を及ぼす金利上昇の要因としては、景気回復と財政赤字の累積による国債に対する信認低下の二つの要因が一応考えられます。

 ところが、政府の判断では景気回復過程にあり、また、国債残高が増大しているにもかかわらず、現在の金利情勢は、上昇していくどころか金利は一%台の低位で推移している。すなわち、景気状況については、平成十七年二月二十二日発表の月例経済報告によると、「景気は、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている。」としております。そして、「先行きについては、企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。一方、情報化関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。」としております。政府は、景気回復基調にあると判断をしておる。また、さきの竹中経済財政担当大臣の経済演説では、景気拡大期間は既に三年に及び、戦後の平均を、これは三十三カ月だそうでありますが、上回っておると発言をされています。

 財政状況については、政府税調の平成十七年度の税制改正に関する答申で、「わが国財政は、バブル崩壊以降の大規模な景気対策の実施もあり、長期債務残高が累増し、先進国中最悪の危機的状況にある。」とされておる。

 このような状況にもかかわらず、なぜ金利が低金利で推移をしておるのか、また、今後どういった状況になれば金利が上昇をし、それが国債の利払い費に影響していくのか、この点を私はぜひこの際お伺いをしたいと思います。

田野瀬副大臣 この件につきましては、私の方から御答弁させていただきたいと思うんです。

 委員ただいまおっしゃいましたように、我が国の経済でございますが、足元では一部に弱い動きが見られるものの、大局的に見れば景気回復局面が続いておるものと見ておるところでございます。とはいえ、財政の現状は非常に厳しい状況が続いておるところでございます。平成十七年度末の公債残高は、何度も出ておりますように、五百三十八兆円程度になるという見込みでございます。

 こうした状況の中、長期国債入札における平均落札利回りについては、十六年十月以降、一・三%から一・五%の間を推移しておるところでございます。国債の入札において、各市場参加者は、その時々における国債の需要、流通市場の状況、景気の動向、財政金融政策等を踏まえまして、各自の相場観に基づいて応札を行っておるところでございまして、したがいまして、その結果、平均落札金利の推移があるわけでございまして、そんなことで、一概にこの金利が高いとか低いとかいうようなことは、なかなか論ずることは困難であるということをどうぞ御理解を賜りたい、このように思います。

 それから、後段の御質問でございましたが、どういった状況になれば金利が上昇し、それが国債の利払い費に影響してくるのかという御質問でございますが、これにつきましても、繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたように、国債の需給であるとか景気の動向、あるいは財政金融政策等の複合的な要因によって変動するものでありまして、どういった状況になれば金利が上昇するかというようなことも、なかなか一概に論ずることは困難であるということ、これにつきましてもよろしく御理解いただきたい、このように思います。

 なお、仮に金利が上昇した場合の利払い費を含めた国債費への影響については、平成十七年度予算の後年度歳出歳入への影響試算によると、平成十八年度以降金利が一ポイント上昇した場合の仮定計算におきまして、国債費が十八年度は一・五兆円、十九年度は二・九兆円、二十年度は四・四兆円上昇する姿となっておるところでございます。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、なかなか先が読めないということかもしれませんけれども、一ポイント上昇するだけでも本当に大変な影響になってくるわけですよね。それは、基本的にはやはり国債を抑えていくということ以外ないわけであります。ぜひひとつ、そういう意味で、私は、何遍も同じことを繰り返しておりますが、真の構造改革、財政改革をやっていく以外ないんじゃないのかな、このことを強調させていただきたいというふうに思います。

 それから、続いて、先ほどから私は内閣府の試算がいかにのうてんき、楽天的かということを指摘してまいりました。プライマリーバランスというのは、定義上、国債の利払い費等は含まれておらないわけですよね。仮にプライマリーバランスが黒字になったとしても、金利の上昇によりこの利払い費がさらに巨額に膨れ上がる可能性がある。これは今申し上げておるとおりです。

 そこで、この試算の中の三ページに、「国の一般会計の姿」というところで、平成十七年度から平成二十一年度までの歳出歳入が表となって掲載されております。それには、先ほど来のお話のように、平成十八年度から二十一年度まで、それぞれ利払い費を含む国債費がどれぐらいになるかというふうに試算を出されております。

 表にはないんですけれども、二十二年度から黒字化になる二十四年度まで国債費というのはどんなふうになっていくのか、このように利払い費が巨額に膨れ上がっていくことについて、財務大臣としてどのようにお考えになっておるのか、この点をお伺いしてまいりたいと思います。

田野瀬副大臣 それでは、私の方から、二十二年度から二十四年度までの国債費はどのようになるのか、数字を御報告申し上げたいと思うんです。

 平成二十二年度は二十九・二兆円、平成二十三年度は三十二・八兆円、平成二十四年度には三十六兆円になるものと承知をしておるところでございます。

谷垣国務大臣 利払い費をどういうふうに見ていくかということでございますが、委員は内閣府試算を非常にオプティミスティック過ぎる、楽天的過ぎるというふうに評価なさいました。確かに、あの試算はいわばベストプラクティスといいますか非常にうまくいった姿だと思います。また、内閣府も余り改革が進まないケース、うまくいっていないケースも挙げていると思いますし、私どもの財務省でも後年度試算という形で余り改革を進めない場合の姿はある程度お示しさせていただいて、先にわたりますからいろいろな考え方ができるんだろうと思います。

 ただ申せますことは、委員が指摘されましたように、プライマリーバランスが回復しても、国債がたくさんあるわけですから、利払い費の動向が日本の財政のよしあしを決定的に左右してくるものになるということは、これは間違いないことでございますから、私どもは常にそれを意識しておかなきゃいかぬ。ただ、率直に申しまして、長期金利をコントロールするということはなかなか簡単にできることではないということでございますから、結局、長期金利の動向と経済成長の関係ということになるのではないかと思います。一つはそのことを常に意識しなきゃならない。

 それからもう一つは、ストックではそういうことでありますけれども、毎年度毎年度のフローをきちっと歳入歳出両面から見直していくという、両方をやらない限りベストプラクティスからは外れていってしまうということではないかと思っております。

鈴木(克)委員 次の質問に入らせていただきます。

 定率減税について、これも縮減にただ反対だと言うだけでは通らないわけでありまして、なぜ反対なのか、そして、今の景況感の見方がいかに違うかというところを中心に申し上げていきたいと思います。

 ちょっと時間をいただいて今から少しお話をさせていただきますが、定率減税は九九年に景気対策として導入されたもので、本来の納税額から所得税は二〇%、上限年二十五万円、そして住民税は一五%、同じく四万円を割り引くというものであります。全体の減税規模は国と地方を合わせて年三・三兆円。特に中高年層の恩恵が大きく、そして、今この定率減税を縮減するというのは非常に問題があるということを申し上げて、以下御説明をさせていただきます。

 まず、この背景なんですが、九〇年代後半に賃金所得の減少というのが起きまして、リストラが本格化した九七年と最近時の二〇〇三年度について一人当たりの賃金を表にしてまいりました。配付資料の一の下の表をごらんになっていただくとわかるんですが、全産業で見ますと、賃金水準は九七年度の四百九十六万円から二〇〇三年度には四百二十八万円へ一三・七〇%低下をしたわけであります。

 問題は、この低下が企業規模が小さいほど大きいんですね、零細企業が一七%、中小企業が八%、中堅企業が六%。ただ大企業のみが〇・五%ということですから横ばいである。製造業で見てもほぼ同じような傾向なんですね。ただ、製造業の大企業のみが八%上昇したということなんです。これは表にはありません。

 つまり、企業業績は二〇〇二度年から改善に転じたけれども、その恩恵は製造業、特に大企業に限られておる。大企業が占める従業員数というのは八%なんですよね。つまり、残りの九二%の働く人たちが低賃金下でやむを得ず暮らしておる、そして、賃金格差が拡大しても、それを我慢して耐えておる。これが実態なんですね。

 それで、定率減税の廃止論というか減少ということなんですけれども、廃止論について、経済はよくなってきているのだから、この減税措置を取りやめることを議論する段階に入ったと、財務大臣も税制調査会長もそのようなことをおっしゃっておるわけですね。これは明らかに、冒頭申し上げましたように、経済実態に関する見方が誤っておるというふうに私は思うんですね。

 確かに今回の景気回復、企業業績の回復は待望久しいところであったわけでありますが、実際に回復しておるわけじゃないんですけれども、例えば売り上げが回復したその大半が輸出、特に対中国輸出なんですね。そして、国内市場の伸びは、デジタル景気が一部あったとしても、最大の市場である国内需要はさして伸びておらないということです。すなわち、経済の立て直しは明らかに失敗をしておるということでございます。

 では、経済の本当の改革は何だということなんですが、これは、国内市場が回復をして企業コストに見合う価格が支払われて、企業コストの最大項目である賃金がこれ以上低下しない、さらに、低下した賃金が恒常的に増加する、これはなかなか難しいわけでありますが、それがいわゆる国内市場が回復したということなんですね。そして、そういう仕組みがつくられているという確信が国民に共有されたとき、いわゆる景気が回復したなということなんです。明らかに今はそういう状況じゃないんですよ。

 特に製造業、これはこの十年間に一六%も減少したわけですね。この減少をとめる方法というのは、要するに、為替介入によって円高進行を阻止する、また、関税を上げるとか補助金を出すとかいうことしかないと私は思っています。関税を上げることは中国からの野菜で一部やった程度、それから為替介入も結局うまくいかなかった。

 いずれにしましても、そういう状況の中で企業はリストラに踏み切らざるを得なかった、そして、多くの従業員は賃金支払い総額の減少を甘んじて受けて、賃金水準の低下または頭打ちを現状のんでおる、こういうことでようやく今国際競争力というのが若干回復してきた、こういうことではないのかな。

 そういう背景の中で行われてきたこの定率減税、これが三・三兆円というのは家計所得の一・一七%にしかならない。これは二〇〇二年度なんですけれども、雇用者所得と自営業者、自営業主の所得を足したのが二百八十一・七兆円ということですから、三・三兆円というのは一・一七%にしかならない。しかし、九八年から二〇〇二年にかけて、家計所得というのは毎年四・四七兆円ペースで減少したわけですよ。だけれども、その中で三・三兆円というのは非常に大きかったわけですよね。それがこの定率減税の効果だったわけです。

 景気を今振興させる、支えていくには、こういった国民にとって直接的な効果のある所得減税の採用を続けること、そして住宅減税をやること、こういうことが必要なんですよ。このときにいわゆる定率減税を縮減していこうというのは、私は、政策的に絶対に間違っておる、こういうふうに本当に強調させていただきたいと思うんです。

 少し長くなりましたけれども、そういう視点の中で今から少し質問をさせていただきたいというふうに思うんです。そして、この定率減税の縮減によって一番大きな負担を強いられるのはだれなのかということなんですが、これは低所得者層や年金で暮らすお年寄りなんですよ。この方々に非常に大きなしわ寄せがいく。こういうことを前提として、今から四、五点お伺いをしていきたいというふうに思うんです。

 まず第一番として、昨年度の税制改正で老年者控除が廃止された、そして年金課税の方が給与課税より税負担が重くなった、年齢によっては課税最低限も勤労者世帯より低くなった。年金暮らしのお年寄りにとっては、このたびの定率減税の縮減と相まって税負担が急増する。老年者控除の廃止等や定率減税の縮減は、世代間の公平、世代内の公平にむしろ逆行するんではないか、こういう視点で私は御質問をさせていただきたいと思うんです。

 その表が、今配らせていただいた表の二番なんですね、「給与課税と年金課税との所得税負担の比較」。これは夫婦のみであります。これは定率減税適用前の額ということであります。ここを見ていただきますと、三百万円のところを見ますと、勤労世帯は八万六千円、ところが年金世帯、これは六十五歳未満と六十五歳以上なんですが、九万五千円、そして六十五歳以上八万八千円。すなわち、もしまたもとへ戻すと、勤労世帯よりも年金世帯の方が税が高いという、高くなってしまうという表なんです。このことについて財務省はどのようにお考えになっておるのか、まず第一番目にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 委員から定率減税縮減の前提である景気の見通しについて御見解が示されまして、私としては委員の御見解とは若干違う見解を持っているんですが、今お問いかけは直接そのことではないようですので、それはちょっとおきまして。

 平成十六年度税制改正における年金課税の見直し、これは、目標は世代間それから高齢者間の税負担の公平を確保する観点からやったものというふうに承知しているわけです。その際、標準的な年金以下の年金だけで暮らしているという高齢者世帯に十分配慮する措置をやりました。そのため、年金受給者のうち年金課税の見直しの影響を受けない者が大体五分の四ぐらいおられます。それから、高齢者の課税最低限は、夫婦世帯の給与所得者よりも高齢者の場合は課税最低限が高くなっているということがございます。それからもう一つは、配偶者の基礎年金というのは実質非課税となっておりますので、高齢者の世帯収入ベースで比較しますと、給与世帯よりも税負担は相当程度軽くなっているわけでございます。

 そこで、そういうことを考えますと、委員の資料でお示しになるような高齢者いじめというのは、私は必ずしも当たらないのではないかと思っております。それは、委員の資料では、勤労世帯よりも年金生活者世帯の税負担が重くなっているんですが、さっき私が申しました、年金世帯の配偶者には基礎年金が実質非課税になっているということを加算していただくともう少し違った形になる。それから、勤労世帯の方が社会保険料を多く負担しているわけですね、そのためにいわゆる社会保険料控除等がありますので、減税といいますか勤労者世帯の社会保険料負担を考慮した税負担の軽減が行われているというあたりを読み込んでこの表を見ていただけたらというふうに思うわけでございます。

鈴木(克)委員 この表の正誤をやっておりますと時間がたってしまいますが、これは実は、今おっしゃった公的年金等控除、それから社会保険料の控除、基礎控除、配偶者控除、そういったものをすべて、細かいことまで言いませんけれども、含んで出した表でありまして、これは私も確認をしております。

 ただ、問題は、本当に六十五歳未満で三百万円年収額のある人がどれだけおるのかということにつきましては、今大臣おっしゃったように少ない、これは私も認めます。しかし、この数字は間違ってないという、私は確信を持って御提出をさせていただいておりますので、またよく検討していただければいいんですが、現実にこういう形で年金生活者は勤労世帯よりも税が重くなる、税負担が重くなるという方々が現実にみえる、こういう実態をひとつぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 それから二つ目に、低所得者にとって今般の定率減税縮減による増税額は、高所得者の場合に比べ小さい、これは確かにそうかもしれません、しかし、昨年度の配偶者特別控除の一部廃止などによる税負担増、所得に占める消費の割合を考慮すると、消費行動に与える影響は大きく、負担感も大きくなる。これら一連の税負担増は垂直的公平に反するのではないか、私はこのように申し上げたいわけでありますが、このことについての御見解をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 これは、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止と今回の定率減税の縮減というものをあわせて考えますと、所得が高い層ほど影響が大きくなるんじゃないかというふうに考えておりまして、垂直的公平を損なうということには必ずしもならないのではないかというのが第一点でございます。

 それから、配偶者特別控除の見直しに関連して、児童手当を拡充したということがございます。

 それから、定率減税の縮減による平成十七年度の増収額、もちろん交付税に持っていくものもありますけれども、それを除くと、大きな部分は年金の国庫負担割合の引き上げ等に充てることにしておりますので、こういったものが個々の家計に対して将来不安を解消していくとか、そういった効果、個別の税の影響だけではなくそういった効果も我々は考えていただきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 また機会をとらえ、この問題は議論させていただきたいと思います。

 次に、政府・与党は、所得税から個人住民税への税源移譲は、住民税所得割の税率をフラット化することで実施するとしておられます。低所得者層にとってこのフラット化とは増税というふうになるわけでありますが、所得税とあわせて負担増とならないようどのような改正を行われる予定か、そのところをお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、鈴木委員がおっしゃったように、三位一体の中の税源移譲、所得税から地方住民税へという形でやろうということで今いろいろ議論をしているわけですが、その基本的な考え方は、政府税調答申やいわゆる骨太の二〇〇四等々に書き込んであるわけです。

 個人住民税については、これは応益性というような考え方に立って、所得割の税率をフラット化していこうということで考えているわけですね。それに対して所得税については、税源移譲後においても、所得税というのは累進がとれるわけですので、所得再分配という機能をある程度果たしてもらわなきゃいけないわけで、そのために所得税の方は所得再分配機能を適切に発揮できるように税率構造等を見直していく。この二つを組み合わせてやっていこうということでございますから、平成十八年度税制改正で行うわけでありますけれども、そのときの補助金改革の状況なども踏まえながら、今言ったような方針で細部を設計していく、こういう考え方でございます。

鈴木(克)委員 四番目としまして、配偶者特別控除の一部廃止に続いて、定率減税の縮減、それから社会保険料の引き上げ、そしてまた消費税率の引き上げ、これは将来ですが、酒税の引き上げ、こういうことがいろいろ検討されておる。俗に言う大増税時代ということなんですが、ちょっと頭の痛くなるような話なんですが、少し長くなりますけれども、どういうふうな形で負担が今現実に国民にふえていっておるのかということをちょっと申し上げていきたいと思います。

 四月に雇用保険料が引き上げられ、月四百円の負担増になる。また、所得税で原則廃止された専業主婦への配偶者特別控除が六月から個人住民税にも反映されて、年二万八千円の負担がふえる。その上、昨年十月に引き上げられた厚生年金保険料が、本年九月にはまた月八百円ふえて、この引き上げが二〇一七年度まで毎年続く。二〇〇六年一月から所得税の、個人住民税の定率減税がもし半減されたとなると、六月以降、月二千九百円の負担増。パートに出て家計の足しにしようとしても、負担増でカバーし切れない。仮にパート収入が年百万を超える妻には、個人住民税の均等割が年二千円課税されて、二〇〇六年から倍の約四千円に引き上げられる。住宅ローン減税は、本年の一月入居分から縮小が始まって、十年間の所得減税額が最大五百万から三百六十万に引き下げられるということです。

 これはずっと読み上げていくと、結論として、簡単に試算をすると約十八万から二十五万の負担増になる、税の負担増になるということなんですよね。これは本当に大変な状況だというふうに思います。これだけ消費者というか国民に負担がかかっていく中で、繰り返しになりますけれども、税の節約というのが進んでおるのかどうかということが一つ。もう一つは、消費者だけにしわ寄せが行っておるんじゃないか。別に企業にも税をかけろということを強調するつもりはありませんけれども、余りにもバランスが悪いんじゃないのかな。このことについて大臣はどのようにお考えになっておるのか、聞かせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今のお話は、もう少し基本に戻って考えますと、これだけ歳入面で、ということは、税で国民にお願いをするからには歳出面に切り込む努力をもっとはっきりさせろ、こういう御趣旨だと思います。

 私は、確かに、これだけの税のお願いをするということは、同時に歳出面でもむだなものは思い切って切り込んでいくということがなければなかなか進まないことだろう、御納得も得られないことだろうというふうに思っております。その点は、余り長々申しませんが、冒頭の議論に返って、かなり努力をしているつもりでございますけれども、国債費というのは、結局、利払いというのが相当な額になりまして、これは削減しようとしたって、相当長期的な問題でございますし、社会保障経費というものはほっておくとふえていくということがございます。これもむだを切り込む努力が必要でございますが、そういう増加していく圧力がどうしても一方でかかりますから、そういう中で歳出カットということだけをやっていると、必要な方にも財源を回せないという現象がどうしても起きて財政のバランスが悪くなるということが、だんだんだんだん、やればやるほどそういうことが出てくる面がございますので、歳入歳出とバランスのとれた財政構造改革ということをお考えをいただかなきゃならない、お願いをしなきゃならないということが背景に私はあると思っております。

 それで、その後おっしゃったことは、個人に辛くていわば企業に優しいような税構造になっていくんじゃないかということだったと思うんですね。そこで、近年の税制改正について、あるべき税制、これから二十一世紀の活力ということを考えてあるべき税制にしなきゃいかぬということが我々の問題意識にございますけれども、個人に関するもので増税が多いじゃないかということをおっしゃいましたが、例えば個人に関するものを見ましても土地取引の活性化や住宅取得支援、今委員は、住宅ローン減税を延長して少し重点化していくものですから、それを上げる方に入れられましたけれども、あれは時限で景気を刺激しようということでやっておりましたので、それを、廃止の期限が来たけれどもまだ個人のそういう状況を考えると延長する必要があるだろうということで考えているわけで、土地取引の活性化や住宅取得の支援というのは、そういうふうにかなり考えているつもりでございます。

 それから、金融・証券税制の軽減や簡素化とか、相続税、贈与税の一体化といった負担軽減につながる措置も同時に講じているわけでありますし、これは先ほどの、余り繰り返しはいたしませんが、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止であるとか定率減税の見直しというのも、児童手当の拡充であるとか基礎年金の充実化、将来の国民の安心につながる部分もあるわけでございますので、全体で御判断をいただきたいということが一つ。

 それからもう一つは、我が国の個人所得課税は主要諸外国と比べても極めて低い税負担水準となっているということもございまして、個人に関する税制については私はそういうふうに見ているわけでございます。

 それから、法人税は、特に平成十一年に定率減税を入れたときにあわせて法人税も減税をしたはずである、そうすると、なぜ定率減税だけをいじってそっちの方はほっておくのか、こういうことでございますけれども、当時から、たしか当時は宮沢大蔵大臣でしたけれども、宮沢大蔵大臣も、仮に将来どうするかということが起こっても、四〇%程度の法人税は、将来とも国際関係を考えてもそれより超えていくということは問題があるんじゃないかというぐらいのことは現在からも予測できると。やはりグローバル化とか国際競争の進展ということを考えますと、逐次法人税も手を入れてまいりましたけれども、国際的な競争ということを考えますと、当時、あるべき姿を先取りしていたというふうな面がございますので、委員の御批判でございますけれども、ここはなかなかそう簡単にいじりにくいところではないかというふうに思っているわけでございます。

鈴木(克)委員 最後の、今おっしゃった企業競争力については、私が資料三でお配りをさせていただいたわけでありますが、日本の税制三〇パーということで、他国と比べても、もちろん低い方ではないということは認めますけれども、だからもうこれが限界でこれ以上上げられないという状況ではないのではないかなというふうに思っておりまして、一つの参考データとしてここにお示しをさせていただきたいと思います。

 さて、次の質問に入らせていただきます。

 今回の改正で、国民年金の保険料控除に納付証明書の添付を義務づけるというのが入っております。これについて一、二質問させていただきたいんですが、逆に今まで証明書の添付を必要としてこなかった理由は何だろう。そこからまず聞かせていただきたいと思います。

田野瀬副大臣 私の方からお答え申し上げたいと思います。

 現行の所得税法において医療費の控除や生損保控除などの所得控除の適用を受ける場合には、課税の適正性を担保する観点から、確定申告書等にその支払い額の証明書の添付等を義務づけることを基本としておることは、委員御承知のとおりでございます。

 このうち社会保険の保険料について、本来強制徴収の制度として設計されており、加入者はその保険料を納付することが前提とされていることから、納税者等の事務負担も考慮し、社会保険料控除の適用を受ける場合には、確定申告書等に保険料の支払いに関する証明書の添付は要しないとされているところであります。

 しかしながら、最近の国民年金保険料の納付率が低下している状況を踏まえまして、平成十七年度税制改正においては、課税の適正性を担保する観点から、国民年金保険料について社会保険料控除の適用を受ける場合には、確定申告または年末調整の際に国民年金保険料の支払いに関する証明書の添付等を義務づけることとしておるところでございます。

 以上が理由でございます。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

鈴木(克)委員 そういう理由かもしれませんけれども、逆にちょっと目線を変えまして、国民年金の納付率が低下をしておるのはかなり以前から指摘されておったわけですよね。年金制度の根幹にかかわる問題として重要な政策課題となっていたのに、なぜ税務当局としてこのことを放置してきたのか、ぜひこの辺をお伺いしていきたいというふうに思います。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、国民年金保険料の納付率の低下は数年前から始まっているところでございますけれども、納付率が約六〇%台前半にまで急激に低下いたしましたのは、平成十五年七月に発表されました平成十四年度分の納付率からと私ども認識しております。

 この納付率の低下を踏まえまして、平成十六年度の税制改正におきましては、国民年金法上の所要の措置を講じた上で、社会保険庁と税務当局、具体的には税務署並びに市町村との連携によりまして、社会保険料控除の適正化と国民年金保険料の納付率の向上を目的といたします対策を講じておりまして、問題を放置していたわけでは決してございません。

 具体的には、社会保険事務所は、市町村が保有しております所得情報の提供を受けますことによりまして、国民年金保険料の強制徴収等を行うことによって未納者対策の強化を図る。税務当局、具体的には税務署並びに市町村は、社会保険事務所から国民年金保険料の納付状況の提供を受けますことによりまして、税務署並びに市町村が連携して逆に社会保険料控除の適正化を図る。こういった連携措置を講ずるに当たりまして、市町村から社会保険庁への情報提供の円滑化のために必要な措置が国民年金法の改正により盛り込まれたところでございます。

鈴木(克)委員 まさにおっしゃるとおり、納付に関して社会保険庁と情報の共有を行えば、証明書の添付などしなくても私は根本的な解決になるのではないかな、このように思っておるところであります。

 もう一つ続けてお伺いをしていきますが、来年度から納付証明書の添付が必要となるわけですよね。ことしは添付しなくてもよいということなわけですね。そうすると、仮に、ことしは国民年金の保険料控除を申告してきたのに、来年は申告しなかった者についてはどのような措置をとるのか、過年度の申告について是正を促すのか、この辺はどんなふうになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

福田政府参考人 添付の義務づけが法律事項でございますので、今御指摘のように法律的には来年からということになりますが、今年度につきましては、今申し上げましたような協力措置によって対応を行うということが一つあろうかと思います。それからもう一つは、来年において仮に今議員御指摘のような事態になれば、それはさかのぼって適切に対応する、そういうことになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、今年度につきましては、これまでの両者の協力関係を通じて適切に対応していく、かようなことであろうかと考えております。

鈴木(克)委員 続いて、来年度以降の税制改正について少しお伺いをしていきたいというふうに思うんですが、もちろん、先の話でありますし、なかなか御答弁しにくいかもしれませんけれども。

 税制調査会の平成十七年度の税制改正に関する答申は、消費税率の水準が欧州諸国並みである二けた税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題としながらも、極力単一税率が望ましいとしておるのは、御案内のとおりであります。

 しかし、仮に税率を引き上げながら生活必需品である食料品に軽減税率を用いないということであるならば、低所得者層により重い負担をかけるというふうになると思うんですが、なかなか先の話で御答弁しにくいかもしれませんけれども、私は、その点は、税制調査会がここまで言っておる以上、今どんなふうに大臣としてはお考えになっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 まず、消費税でありますけれども、我が国の財政の一番大きな問題が、少子高齢化等で社会保障を初めとする公的サービスがどうしても拡大していくわけですので、それに対して安定的な財源をどうつくっていくかということが一番大きな課題の一つであることは間違いないところでございまして、広く公平な負担をお願いするという観点からいいますと、消費税という議論はどうしても避けることのできないものではないかというふうに私は思っているわけです。

 じゃ、それをどうするのかということになりますと、今、来年度とおっしゃったようにも聞こえたんですが、政府の方針としては、この平成十七年、平成十八年度というのは重点強化期間という言葉で改革を加速していこうということでございまして、その期間内に、いろいろな歳出を抑える努力ももちろんしなきゃいけないけれども、必要な公的サービスはあるんだから、その水準はどのぐらいか見きわめて、消費税も含めてそのために必要な税制を十八年度内に結論を得ろということになっております。ということは、まだ十八年度でそれをやるというところまでは政府の方針は決めておりませんで、結論を得ると十九年度かなと、何とか実現をしてお願いができればというような流れになるというふうにあらあら考えているわけでございますが、そういう中で、消費税、軽減税率等をどう考えるかということでございます。

 私は、一方で政府税調もおっしゃっておられるように、これは税率を何%にするかというのも実は私まだ非常に言いにくい、言えないところでございますので、税率がどのぐらいかによっても考え方はうんと違ってくると思うんですね。ですから、政府税調が言っているように、仮に欧州諸国並みである二けたになった場合には、生活必需品等について、特に食料品を挙げておりますが、軽減税率を考えなければならない検討課題であるということを言っておられる。一方で、じゃ、生活必需品は何なのかというのが、ライフスタイルが多様化してくるとなかなか決めにくい面もございます。消費税、売上税等の議論のときも問題になった、特に売上税のとき問題になったわけですが、毎日の、日々の、非常に日常的な総菜みたいなものに使うようなものはともかく、メロンはどうなるんだ、高級メロンはどうなるんだとかいう話になると、なかなか実は難しいところもございます。それから、税率を幾つかに分けますとどうしても徴税の手間もかかりますし、また納税者にもいろいろな御負担をおかけするということがありますので、まさにこれはどの程度の税率なのかということと関係してくることでございますけれども、できるだけ単純な制度が望ましいという面もあるわけでございますので、今後、その辺は十分議論をしなければならない分野だと思います。

鈴木(克)委員 もう一点、この税制改正でお伺いをしておきたいんですが、先ほどの答申には、「低所得者層に対する配慮については、税制全体や歳出面を含めた財政全体の中で、近年の民間非営利活動の広がりをも踏まえつつ、十分な吟味が行われるべきであろう。」としてあります。具体的にどのような方策を用いれば配慮したと言えるのか、現在考えられる政策の組み合わせをお示しいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これは特に消費税との関係で申しますと、まだ十分に詰められているところではございませんで、先ほど申しましたように税率等をどうしていくかということもございますし、その前に、まず公共サービスの水準をよく議論しろということでございますけれども、社会保障等の水準をどのぐらいにして、どういうものとして設計してその負担をお願いするかということにみんなかかってくるんだろうと思います。社会保障で、例えば低所得者層にどう配慮するかというようなことがみんな含まれてまいりますので、今、余り単純化してお答えすることはまだできない段階でございます。

鈴木(克)委員 質問の最後に、もう一度冒頭の地方自治体の予算に戻らせていただきたいというふうに思うんですが、実は、私、今手元に、これは資料としてはお出しをしていなかったかと思いますが、愛知県下の市町村の最近の財政力指数の一覧表を持ってきたんですね。これはお配りすればよかったかなというふうに思っておるんですが、実は、ここに豊田市から始まって新城市までずっと市があるんです。

 そこで、平成十四年、十五年、十六年の財政力指数を見ていきますと、これは毎年間違いなく着実に財政力指数が全市町村で上がっているんですよね。全市町村、見事なぐらいに上がっておるんです。私はこれを見まして、これは一体何だろうかというふうに思ったわけです。そうしますと、結局、基準財政収入額、基準財政需要額、言うまでもありませんね、釈迦に説法ですが、その基数を国の方で操作されるんですね、変えられるんですね。したがって、こういう傾向でいくと、数年後にはほとんど財政力指数が一もしくは一を上回るような状況も、極端なことを言うと出現するなという傾向が明らかに出ているわけですよ。

 そこで、何を申し上げたいかというと、これは一方的に国が財政力指数を操作するというのは、私は市町村長の経験を踏まえて非常にアンフェアだというふうに思っておるわけですね。これは、実はあるところで私がお話をしたところ、たくさんの市町村長から、そうなんだ、一遍このところをぜひただしてもらいたいという話がありまして、きょうはおわかりになる範囲の中で結構です、このことはまた後日、場を改めてきちっと議論をしていきたいなというふうに思うんですが、こういうような傾向にあるということを財務大臣が御承知であったかどうか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 私も自分の地元がございますので、そういうところの市町村がどういう苦労をしているかというのは時々伺っておりますので、ある程度は承知をしております。それで、確かにそういう指数が相当改善をしてきているわけですね。それで、それに対して、またこれは私が鈴木委員に言うことは釈迦に説法でございますけれども、なかなか苦労もあるんだという話も聞いているわけでございます。

 ただ、基準財政需要をどういうふうに見積もってどうしていくかということになりますと、なかなか私、余り勝手な議論を立てますと、また麻生大臣にしかられますので、ちょっとそこは遠慮させていただきたいと思っております。

鈴木(克)委員 もちろんこの場でこのことを議論するということではなくて、実はこういう背景にありまして、したがって、冒頭の、市町村長は本当に苦労しているんですよ、予算を組むに当たっても。私は、国と地方は対等だ、そして地方分権の時代だ、地方主権の時代だと、言葉だけはどんどん躍っておるわけですけれども、現実にはそうではないということを本当に強調したいんですよね。

 それで、一遍これは総務大臣としっかりと詰めさせてもらいたいんですが、国と地方の今までの構造というのは、本当に、一方的に国が、さっき言うように基数をなぶられたのでは何ともならないんですよ。大体、全市町村が間違いなく財政力指数が一に近づいていっておるなんというのは、これはどう考えてもおかしいわけですよね。だから、私は、財務大臣というお立場の中でも、これはぜひ関心を持っていただきながら、総務省としっかりとこの点も一遍話を詰めてもらいたい、このことを本当に心からお願いを申し上げる次第でございます。

 時間も迫ってまいりました。くどくなりますけれども、私はもう一度これを申し上げて終わりたいというふうに思うんですが。

 日本の国は今、先ほどから私は低所得者とか年金受給者というようなことを目線に話をしてきたんですが、一方で非常に富める人たちが出てきているんですね、裕福な方々が。例えば金融資産だけで一億円以上ある人が、この一年間で七万二千人ふえておるというデータが実はあるんです。一方で、三万五千人に近いような方々が自殺をなさっておる。もちろん、それは経済的な理由、いろいろな理由があると思いますけれども。ということで、明らかに貧富の差がふえてきておるんですよ。私はこの傾向を今ここで財務大臣にいきなりお伺いするというのはあれかもしれませんけれども、本当に日本は総中流で、みんなが豊かな、幸せな家庭を築いておるということではなくて、確かに一部非常に大きなお金を持った人も出現をしておる、その反面、大変な苦労をしておる多くの人たちがいるということを、財政をつかさどる立場にある方はぜひ御理解をいただきたいというふうに思うんですが、この貧富の差が拡大をしておるということについて大臣はどのような御見解か、お聞かせをいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 やはり努力をした者が報われてある程度富を獲得するということは必要だと思いますが、ぬれ手でアワで大もうけをして、そういう人が天下を大きな顔をして横行するような国にはしたくないなと私は思っております。

 それで、委員が今御心配になったようなこと、これは、今まで日本は脱落するような者を出さないようにいろいろなことである意味で手厚くやってきた国でもあります。一億総中流というようなことを目指してやってきた国でもあります。今やっているところは、そういったことが、ある場合には大きく伸びていこうという桎梏になっている面もあるわけでございますので、そこのところを解きほぐしていこうという作業も一方で行われているときに、委員の御心配のような面もないわけではないんだろうと私は思います。これからみんなが力を発揮できるような中で、さらに今委員が御心配のような現象をどうやってまた回避していくことができるかということも視野に入れながら、経済政策や財政政策も運営していかなければいけないのかなと考えております。

鈴木(克)委員 最後の発言とさせていただきます。

 九十分にわたっていろいろと御質問をしてまいりました。私自身の勉強不足の点もあって、次はもう少し踏み込んだ御質問をさせていただきたいと思いますが、最後にこれだけは私は申し上げておきたいと思うんですね。

 税収は少し伸びた、しかし歳出は減っておらない、この話は私はおかしいと思うんですね。この際、むだを徹底的に省き、本気になって財政改革をやるべきとき、私はそう思っておるんですね。しかし、相変わらず各省庁への配分は大きく変わっていない。つまり、前年度踏襲予算で全く改革とは呼べない。このまま族議員や各省庁の権限を野放しにしておいては、十年後のプライマリーバランスの黒字化も結果的には増税で埋め合わせる以外考えられない。私は本当にそれを心配しておるわけですね。今我々がやっておることが本当に改革なのか。私は改革ではないというふうに思えてなりません。

 ちなみに、会計検査院の報告で、ことしも四百五十億以上のむだ遣いが指摘をされました。まさにこれは氷山の一角だと私は思っています。そういうことで、本当に国政の場にある我々はもう一度この現実というものを踏まえながら、国民の皆さんの目線を大切にして、この税金のむだ遣いを一円でもなくするように頑張ってまいりたい。このことを私は日本の財務のかなめである財務大臣にしっかりとお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 今国会初めての質問となりますので、ことし一年、国民から見て内容のある、わかりやすい質疑を心がけていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めですけれども、所得税法等の一部を改正する法律案に関連いたしまして、いわゆる定率減税の見直しについてお伺いをしたいと思います。

 私は財政再建論者でございますので、今後、国民が景気回復を十分に実感できるような環境が整えば、こうした、実質的には増税と言っていいと思います、増税措置も今後避けられないということは承知をしているつもりです。しかしながら、国民に対して大変大きな負担を強いる措置でありますので、やはり過去の歴史から学ぶべきものは学ばなければいけない、そういうふうに思います。

 私は、ちょうど両親が谷垣大臣と同世代になります。谷垣大臣は私から見れば人生の大先輩でもございますし、また国会議員としても大先輩に当たられます。ぜひ御経験も、あるいは御経験から来るさまざまなお考えも披露していただきながら、建設的な議論をお願いしたいと思います。

 九七年の話をさせていただきます。当時、私は日本銀行の営業局というところにおりました。自分の話を少ししますが、私はちょうど十一年前に就職をしたわけですけれども、私なりのこういう考えを持っていました。まさしく私の一つ上の世代が、いわゆる高度経済成長、日本を平和な経済大国として戦後六十年発展をさせてきたと思います。そして、それを受け継ぐ私たちの世代、次の世代は、この経済大国となった日本、しかし安定成長期になって人口伸び悩みあるいは人口減少という局面にこれからなっていく中で、人生の先輩方、先人たちが築いてきた日本の富、繁栄を、あるいは平和を受け継いで、そしてそれを世界に対してどのように寄与していくか、世界の平和と繁栄にどうやって貢献していくかということが、私たちの世代にとっての大きなテーマであると思っています。

 そして、私たちは経済大国、少なくとも十年前の当時は経済大国と世界が認めていた、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本が出た当時ですから。世界に対して日本がそういう役割を果たしていくときに、金融の世界あるいは経済政策というものが大変重要な意味を持つだろう、そういう思いを持って、私は日本銀行というところに就職をしました。

 そして、当時、九六年の十月二十七日だったと記憶をしているんですが、どうでもいいことですけれども私の誕生日なものですから記憶をしているんですけれども、当時の橋本総理が日本版金融ビッグバンを提唱されました。私は、大変これに感動しまして、まさしく私が思っていた日本経済、大変大きな富を持っている金融大国にこれからなり得る日本だ、潜在能力を持っている、そこをまさしく自覚して、戦略性を持ってアジアの中で、欧州、アメリカ、そしてアジア、時差がありますからまさしく二十四時間、三極でマネーマーケット、三大マーケットをつくっていこう、その一極を担っていこうと。後ほど円の国際化の話もいたしますけれども、アジアの金融大国として日本がイニシアチブを発揮していこう、そういう、大変壮大な夢とビジョンのある金融ビッグバンというものが当時出された。郷土の先輩でもあります橋本龍太郎元総理、私は大変これは大きな貢献だと尊敬をしております。

 そして、去年三月十一日、これも私ごとですけれども衆議院の本会議に初めて登壇をさせていただいて、当時議論されていました公的資金新法につきまして私たちなりの民主党の対案を出して、その答弁者として初めて登壇したときも、橋本元首相のこの金融ビッグバンについてあえて触れまして、そしてこの志は継いでいきたいということを本会議の壇上でも申し上げました。今後ともこの取り組みを私はやっていきたいと、心から思っております。

 しかし、大変残念な、日本にとっても不幸なことでありますけれども、その九六年の秋に日本版金融ビッグバンが提唱された直後、九七年の四月に、例の国民負担増九兆円という、いろいろな研究された本も出ておりますけれども、消費税の増税そして医療保険料の引き上げその他で九兆円の負担増が発生をして、これは一説によると省庁縦割りの弊害ともという分析もあります。それぞれの省庁でよかれと思ってやった政策が、合成の誤謬といいますか、足し上げてみると九兆円の国民負担増だったと。当時の為政者である橋本総理以下の政権中枢の皆さんは、そのことについて余り自覚的なイメージを持っていなかったとも言われております。その後経済財政諮問会議などができたのは、そういったことへの反省もあるのかなと私は想像しておるんですが。

 いずれにいたしましても、そういった、残念ながら経済失政と私は思いますけれども、そういったことがあって、そしてその後、この定率減税を実施することが余儀なくされた。

 当時、小渕内閣において、谷垣大臣は宮沢大蔵大臣を補佐するお立場にいらっしゃった。当時、私、新聞報道を覚えておりますけれども、大臣級の政務次官が就任をされたということで大変大きく報道もされましたし、実際、定率減税の議論の経緯については、谷垣大臣大変お詳しい、当事者でもいらっしゃったと思います。そういったお立場から、私は、橋本政権の経済政策運営について、谷垣大臣が、後世と言うにはまだ近いですけれども、どのような御評価をお持ちなのか、現在の政策担当者としてのお考えをお聞きしたいと思います。

 私、そういうものだと思って事前に通告もさせていただきましたけれども、私は私自身も宮仕えをしておりましたのでわかるんですが、先輩の仕事についての評価をするというのは、官僚が書けば、いろいろなことがありましたけれどもまあそれなりに頑張りました、当時はこういう事情がありました、そういうお答えに恐らくなるでしょう。しかし、私、政治家としての谷垣大臣はそういうお答えでは満足ができないと思ってお聞きしております。先輩に向かって仕事をしているわけでありません。国民に対して、現在の政権担当者、経済政策の担当者として谷垣大臣が、つい直近のこの定率減税導入の経緯について、九兆円の負担増について、どういう反省をお持ちなのか、どういうお考えをお持ちなのかということを教えてください。

谷垣国務大臣 津村さんからお問いかけがございましたけれども、私自身も橋本内閣では科学技術庁長官として内閣の一員でもございました。その後小渕内閣になりまして、宮沢大蔵大臣からついてこいと言われて大蔵政務次官になりまして、中で翻弄されていたというか踊っておりましたので、自分自身でもまだ十分に当時のことを総括できていない面もあるわけです。

 それで、最初に、橋本内閣のおやりになったことで金融ビッグバンをお挙げになりました。私も、日本、アメリカ、ヨーロッパ、それからアジア、その中の中心として日本を位置づけて金融ビッグバンという構想を打ち出されていったということは、極めて鮮明な印象を持って受けとめたわけでございます。

 ではそれが十分所期の成果を上げているかということになりますと、なかなか実はそうも言いがたい面がございまして、特に、日本の金融の力量というものが、そういうものをするだけの十分な、何か蓄積なりそういうものがあったのかなと。これからそれをどうやってつくっていけるかというか、私、今金融担当でありませんから、きょうはまだ伊藤さんがいらっしゃいませんけれども、伊藤さんのおられないところで余りいろいろ言うのは言いにくいんですが、現在でも依然として課題なのではないかと思っております。

 ただ、それと同時に、私どもも、アジア危機などを振り返りますと、やはり、さっき円の国際化ということをおっしゃいましたけれども、アジアにおける金融の協力関係、そういうものはもっともっとつくっていかなければならない。これはある意味で橋本さんのお考えになったことの延長線の面もありますけれども、現在、その弱点を乗り越えてもう少し強固なものにしていって、地道に歩んでいくにはどうしたらいいかということも、私の大きな課題になっているわけでございます。

 それから、橋本内閣当時を考えますと、やはりバブルがはじけた以降、景気をどうやって回復させるのかというのが非常に大きなテーマでございましたし、それから、橋本総理の頭の中には、逐次の経済対策を打つことによって財政に相当大きな負担をかけてきた、それをどうやって回復していくかも課題だといろいろなことをお考えになって、当時、財革法というものに結実していったいろいろな動きがございました。

 今、津村さんの御指摘は、そういったものがいわば合成の誤謬になって、当時の、その後山一から北拓、そして長銀と続いていくような日本の金融危機を招いたのではないかという御指摘であったと思います。私は、そこのところは、当時のデータを子細に見ますと、確かにあのときの増税というものは非常に日本経済にとっても重いものであったと思います。

 ただ、ちょっと今手元に資料がありませんので、数字でもってお示しするわけにはいきませんけれども、ようやく四月から入れたいろいろな制度の重荷から、重荷がやはり確かにありまして経済もダウンしております、それをようやく吸収してきたときに、タイのバーツが下落したことから始まって金融危機が起こってきたというふうに思います。ですから、ある意味では、そういう増税等の効果を日本経済はようやく吸収しつつあるときに、タイミングが悪いというんでしょうか、タイから起こった事件が派生して、日本に非常に深い傷を負わせたということがありました。だから、あの九兆円が、あの後のいろいろな大きな低迷の引き金を直接引くものであったのではなかったんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 ただ、その背景には、やはり、ああいうバーツから起こったアジア危機というものが直撃した対象は、日本の不良債権を初めとするバブルの後始末が十分進んでいないというところを直撃したわけで、そこのところを十分意識しながら問題点を克服していくということができていなかった。

 これは、実は私、自民党の派閥のことを申し上げてはいけないんですが、当時は宮沢派に属しておりまして、宮沢内閣のときに、宮沢総理のもとでも不良債権処理というのはテーマに上がったわけですけれども、十分それをこなすことができなかったというようなことがございました。

 そういうようなことが、結局、後々まで引き継がれて、あのときにいろいろなことが合わさって、その後の山一から北拓、長銀というような流れになったのではないかなと思っております。

 ですから、したがいまして、そういった処理をもう少し早くできなかったのかなという思いは今の私にもございます。

津村委員 大変御丁寧に答弁をいただいたわけですけれども、多少、御丁寧にいただいた分、ちょっと論点がぼけたんではないかなという気は正直いたします。

 九兆円に絞って、少しずつ実務的な質問に向かっていきますけれども、九兆円の負担増というのがやはり政策的な失敗であったというところは、その原因あるいは結果も含めてしっかりと検証された方が、今のような、あのときの判断としては別にあれでよかったんだ、その後のタイの通貨の問題や、あるいは不良債権処理の仕方がまずかったというふうに、そうしてポイントをずらしていくと、結果として何も歴史から学ばないといいますか。これは大変重要なことでしたから、その後の数年間本当に、後ろにたくさんいらっしゃいますけれども、皆さんお仕事大変だったと思いますよ。大変だったわけですから、そこは、学ぶべきものは学んでいただきたい。ちょっと総括としては不十分なんじゃないかなというふうに思います。

 そういうお話ですので、揚げ足をとるようですが、申し上げると、おっしゃるように、経済、財政、金融の動きというのは、日々いろいろな出来事が起きます。ですから、予想もしないことも起きるわけですね。タイの通貨危機ということがそうだったというふうに今おっしゃいました。私は、そういったことはこれからも起きる可能性があると思います。当然のことです。

 今回の定率減税の縮減については、来年の一月から実施をするということですけれども、来年の一月からこういうことをやるのであれば、やはりぎりぎりまで景気の動き、今、ただでさえいろいろなリスクが言われています、少しでもそのリスクをチェックして、ぎりぎりまで、もちろん実務的なことがあります、お仕事もあるでしょうから、そんな前の日までというわけにいきませんけれども、例えば、雇用者所得の伸び悩みという話もされているわけですから、今、これから春闘がありますね、どういう動向になるのか、あるいは夏の夏季賞与、ボーナスがどのぐらいの水準で出るのか、それによって家計がどのくらい潤うのか、少なくとも夏、猛暑だったらまたそれで消費がふえるとか、そういったことが不確定要素としてまだまだ来年の一月までに予見されるわけですから、少なくとも七月、八月ごろまではそういったことはしっかりと精査をされて、先ほどのタイ通貨危機のような突発的なことが海外で起きないとも限らない、そういったことはしっかりと見きわめて、私は、定率減税縮減を一月から仮に実施するとしても、九月、十月までその判断をしっかりと見きわめて、もう少し時間をとったらどうかなということを思います。

 逆に申し上げますと、なぜそんなに急ぐんだろう。これからいろいろな選挙もあります。六月には都議会の選挙もあります。この定率減税の縮減をマニフェストに掲げられて、それを実行しましたということが言いたいのかもしれませんけれども、私は、こうした定率減税縮減の問題は、そうした政局、政争の具に使うべき問題ではなくて、やはり国民経済に大きな影響を与えるわけですから、しっかりとぎりぎりまで、不測の事態が起きないか、まさしくタイ通貨危機がある意味では教訓だったわけです、そういった、その後のリスクをぎりぎりまで減らしてから取り組むべき課題だと思うんですが、いかがでしょうか。もう少し判断をおくらせてはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今、津村さんは都議選もあるじゃないかとおっしゃいましたけれども、どちらかというと、都議選を前にして余りこういうのを決めたくないという気持ちもあるのではないかと思いますので、都議選でこういうことをやったと言いたいというようなことは、私は余りないというふうに思います。

 そこで、もう少し先まで経済の動向を見きわめてやるべきだという御主張ですけれども、やはり、これは、経済の、景気の見方と同時に、制度をどう立てるかということもあるわけでございます。

 それで、結局そのことは、予算のもととなっている税収をどういうふうに見積もって一年間の歳入歳出を考えていくかというような問題。それからやはり、これをやりますには、ぎりぎりといいましても、委員もそこは留保をつけておられましたけれども、納税者にはある程度準備をしていただく期間も要る。そういうようなことをあわせて考えますと、今回、一体の法律としてお願いをしているわけですけれども、現在の段階において出させていただきました。

 そして、その背後には、これはやはり、また景気の見方ということがあると思います。もちろん、景気の見方は、委員もおっしゃっておられますように、先行き心配をすればもちろん心配は幾らでもあるわけでございますけれども、しかし、基調としては、先ほど申し上げたような不良債権処理もようやく峠を越えたということでございますし、細かに言えば、確かに春闘等を見ながら労働分配率なんかの考え方もどうなるかというのは大きな関心事でございますけれども、そういうものを見込んだ上で、基調的にはかたいものが、堅実なものがあるのではないかということを経済見通し等で判断をいたしまして、この税制を御審議をお願いしているということでございます。

津村委員 私は今の大臣の考え方にはくみしませんけれども、お考えはお考えとして承りました。

 端的に、実務的なことを一点聞かせてください。もし九月に定率減税縮減を決めたとして、一月にそれを実施するというのは、大変だとは思います、お忙しくなるとは思いますが、可能なんでしょうか。(谷垣国務大臣「ちょっと済みません、これは主税局長から」と呼ぶ)

金田委員長 主税局長。

津村委員 待ってください。登録をしていただいていないと思います。

 イエスかノーかですので。お時間使っていただいて結構ですから。

谷垣国務大臣 それは、九月、これは政局とか臨時国会がいつあるかとか、みんなありますので、九月のいつの段階かというようなことも、それはちょっとわかりませんけれども、もし秋の早い段階にできてやれば、全くやれないということは、それはないんじゃないかとは思います。

 ただ、これは、システムをどう組むかとかそういうような問題がいろいろあります。それから、予算を組むときの税収見通しというのも全部違ってまいりますので、私としては、この通常国会で御審議をお願いするのが一番スムーズな方向ではないかと思っております。

津村委員 ありがとうございます。

 一応申し上げておきますと、私、これは事前に通告させていただいている質問ですし、登録についてもきちんと事前にお話をさせていただいていることですので、それだけは申し上げておきます。

 要するに九月でも、もちろん大変なことはわかります、準備期間が長い方がいいに決まっていますから、それだけ後ずらしするといろいろと実務的なコストが発生するのはわかりますけれども、私ども、これから政権準備政党ということで、自分たちが政権をとっていこうという思いでもちろんやっておりますので、事実として、九月にそういう決断をして、その後一月に実施できるということを伺えたのは、大変よかったと思います。

 では、次の質問に移りたいと思います。

 こちらも通告させていただいている質問ですが、平成十七年度及び十八年度の国民負担のネット増加額について伺いたいと思います。

 定率減税の縮減そのものについての試算というのはいただいております。平成十七年度が一月から三月まで三カ月だけですから千八百五十億円、そして翌年が一兆六千五百七十二億円ですか、こういった試算を私は手元に持っておるんですけれども、先ほど、国民負担増にはさまざまなものがある、それをトータルにとらえて、一体どれだけの国民負担増が発生するのかをしっかりと見きわめないと政策判断を誤る、合成の誤謬という議論をさせていただいたばかりですので、そういったことが繰り返されないように伺いたいと思います。

 そのほかの、年金負担増その他も含めた国民負担のネット増加額というのは、十七年度、十八年度、それぞれどの程度になるんでしょうか。

谷垣国務大臣 まず、定率減税、平成十七年度千八百五十億ですね。それから、十八年度は、一兆六千五百七十二億というふうにおっしゃったんでしょうか。私どもはこれを一兆四千百億円というふうに数えておりまして、内閣府のこれからの試算がございますね、ああいうものも、この一兆四千百という数字を使っております。これは、地方税の部分とかいろいろなものが入っておりますので、それをネットでやるとこういうことになる、この私どもの申し上げた数字になるということでございます。

 それから、家計への負担増ということでございました。私どもは歳入歳出両面での措置を踏まえて議論していただきたいと思いますが、家計への負担増を試算してみますと、これは一定の前提のもとで、現時点で把握できる範囲内ということでございますが、まず、十七年度については、これは平成十五年、十六年の税制改正、配偶者の特別控除上乗せ部分とか、そういうのも加えまして、平成十七年度に含めてやりますと、税制改正については、約〇・六兆円程度、それから社会保障制度改正については約〇・五兆円程度の負担増となりますので、合計で約一・一兆円程度ということになります。これは配偶者特別控除の廃止、年金課税の適正化等を含んだ数字であるわけですね。

 それから次に、十八年度ですが、十八年度は、税制改正については約一・八兆円程度、それから社会保障制度改正については約〇・三兆円程度の負担増となりますので、合計で約二・一兆円程度ということであります。

 それから、負担増の対GDP比は、十五年度の名目GDPを基準といたしますと、十七年度は約〇・二%程度、それから十八年度は約〇・四%程度になると試算されます。

 それから、ちなみに、こうした負担増を伴う施策が行われますが、年金の給付費総額、これは定率減税等々で基礎年金は入れていくわけでございますが、給付費総額は、十七年度、十八年度ともに一兆円を超える額の増加が見込まれておりまして、名目GDP比で見ると約〇・二%程度、各年度増加するということも申し添えておきます。

津村委員 お伺いしていないことも含めてお答えいただきました。

 次の質問に移らせていただきます。

 二〇一〇年度初頭にプライマリーバランスを黒字化させるということはずっと内閣で言われているわけですけれども、この定率減税の縮減を加味してもそれは変わらないですか、あるいは一年おくれるとか、そういったシミュレーションは内閣府の方でもされていると思いますし、財務省で議論されていると思うんですけれども。

谷垣国務大臣 内閣府は、税収の試算に当たっては、平成十七年度の税制改正等を織り込んでやっておりますので、定率減税については平成十七年度税制改正において半減するという前提でこの試算を行っているというふうに承知しております。

津村委員 それでは、時間も限られておりますので、次の、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、もう一つの法律案の方に質問を移っていきたいと思います。

 これは昨年も、昨年版の同じ法律案について、それこそ国会議員になって私の初めての質問がこれでしたのでこれもよく覚えているんですけれども、そこでも国債管理政策について議論させていただきました。当時も谷垣大臣とお話をさせていただきました。

 これは、私また後でも触れますけれども、民主党の方で、公的債務管理ワーキングチームというのがありまして、私はその事務局をやっていることもありますし、これは大変時間をかけて、それこそ私は何年政治家を続けるかわかりませんが、私が政治家である間に日本の財政危機が去る可能性は必ずしも高くありません。これは長い時間かかる問題ですので、ずっと取り組んでいきたいと思っております。

 本日も、国債管理政策につきまして重点的に伺っていこうと思います。

 最初に、私自身の考え方の話を少しさせていただこうと思うんです。政治は経営であるという松下幸之助さんの言葉を私は知っておるんですけれども、私は松下さんと直接お会いしたことがありませんので、どのような深い含蓄があるのか必ずしもくみ取っているわけではないんですが、政治というものが資源の再配分の機能を持っている、そして、人、物、金、情報、経営の幾つかの要素ですけれども、こういったものに大きな影響力を与えることは確かで、日本国の経営という観点を持ちながら政治という仕事に携わっていかなければいけない、これは全くそのとおりだなというふうに思っております。

 国債管理政策の話に入る前に一点、きょうはお役所の方もたくさんいらっしゃるので、私はあえて申し上げたいんですけれども。日本の国の資源を経営という観点から考えたときに、お金の話が国債管理政策なわけですけれども、マンパワーということで考えたときに、私は、政と官の関係、政治家と官僚という関係は必ずしも今の状態がベストではないと思っていまして、一体何が言いたいかといいますと、私は、霞が関に大変優秀な方がちょっと集まり過ぎているというふうに思っています。日本をこれからより活力のある社会、システムにしていくためには、私は、もっと官から民へとか、官から政へとか、そういう言い方がありますけれども、私は、権限を、法律を変えていくだけでなくて、何といいますか、実際に人がもっと野に下っていただいて、政治あるいは民間の立場でぜひ力を発揮していただきたいと思っております。

 実は、最近でも、私の地元岡山もそうなんですけれども、霞が関では日本の政治は変えられないという思いで霞が関から飛び出してきた仲間がおります。私自身もそういう思いで、霞が関ではありませんけれども、日本銀行をやめて政治の世界に飛び込んできたということがあります。これは個人個人の判断です。人間の人生ですから、これは一人一人が判断をして、自分がより活躍ができる、これからどういう分野で日本は新しい革新、イノベーションをしていかなければいけないかということを一人一人が思いを持って人生の決断をすることですし、私なりそうした仲間もそういう決断をしてきたわけですけれども、事お金の問題、国債管理の問題は、これは一人一人の決断ではなくて、やはり政治家、財務大臣以下の方々が、大局観、歴史観を持って取り組まなければいけない、時間をかけて取り組まなければいけないテーマだと思います。

 平成十七年度末だったかな、たしか五百四十三兆円の国債残高になるという数字だったと思うんですけれども、こうした債務をどうやって管理していくかというのは、デットマネジメントという言葉がありますけれども、普通の民間企業であれば、どうやってその借金をこれから返していくのかということは、大変大きな課題、信用力にかかわることですし、当然、日本国の信用力にもかかわっていくことですので、この国債管理政策というのは大変重要な課題である、改めて繰り返して申し上げませんけれども、そうしたことだと思っております。

 先ほども少し申し上げましたが、私たち民主党は、最近、脱野党宣言なるものをして、政権を監視する機能と政権を準備する機能と両方を兼ね備えた政党として成長していきたい、そういうことを宣言したわけです。この国債管理政策は、まさしく私たちが政権をとった暁にも取り組んでいかなければいけない大変重要な課題ですので、その具体的な取り組みについて、少し個別具体的になりますけれども、今から順に伺っていこうと思います。

 昨年、ここで伺ったときに、従来の理財局国債課が、平成十六年度、今年度から二つの課になる、国債企画課と国債業務課だと思いますけれども、二課の体制になって力を入れていきますというお話をいただきました。私も応援しますので、ぜひ力を入れてくださいというお話をさせていただきました。

 実際にこの二課体制になって、五名増員をされて、そして市場分析官というのも新設をされたと伺っていますけれども、今年度の成果というものはどういったことが挙げられるんでしょうか。

谷垣国務大臣 今おっしゃったように、去年七月、今までは国債課というのは一課でやっていたんですが、国債企画課それから国債業務課という二課体制にしまして、定員は五名ふやした。それから、市場分析官をつくりまして、これは民間から市場のことをわかっておられる方に来ていただいたというようなことをやりまして、国債管理体制を強化したわけであります。

 こういう体制の強化のおかげということもあると思うんです、平成十七年度には、新型個人向け国債を導入するとか、それから物価連動債の譲渡制限を緩めるとか、それから海外でのIRの開催といったような国債関連の新規施策を講じる予定になってきておりますし、それから国債管理政策の企画立案機能等も強化されまして、業務はより効率的にできるようになったのではないかなと考えております。

 市場分析官について一言をいたしますと、国債市場の動向の分析を担当させる観点、それから課長補佐も民間から来ていただきまして、いずれも専門的な経験、知識を有している方に来ていただいたということで、私どもは、今後とも、こういう分野では必要に応じて民間の経験のある方の能力を使っていくことができればと思っております。

津村委員 十六年度についてはわかったんですけれども、企画立案機能が強化されたとおっしゃいますので、そこは後で詳しく伺いますが、十七年度については、どのような新たな取り組みあるいは人員増を考えられていらっしゃるんでしょうか。

谷垣国務大臣 去年、定員の五名増等の強化、市場分析官の新設等々行われましたので、平成十七年度においては、それを超えた新規の要望というのは特段やっておりません。

 一方、さっきおっしゃったように、多額の国債残高を抱えて、今後も国債の大量発行が続くと見込まれますので、重要な政策課題、国債管理政策、当然でございます。今後とも、必要に応じて体制の強化はその都度考えていかなきゃいかぬと思っております。

津村委員 限られた定員ですので、そこは毎年、増員する場所は違うんだと思います。それはよくわかるんですけれども、国債管理政策の重要性は日に日に増しているわけですので、限られた定員の中でも、今、小宮さん、大変優秀な方々が日夜努力されているわけですが、これからもぜひ人材を積極的に登用していただきたいなと思います。

 そうした中、民間から三人採用されたというお話で、市場分析官の方とそれから課長補佐お二人というふうに今お話が出たかなと思うんですが、どういう基準で民間から採用されて、今後はどういう方針で採用をされていくのか。民間だったらいいということじゃないと思いますので、ぜひ、基準とか今後の展望を聞かせてください。

谷垣国務大臣 市場分析官はやはり国債市場の動向等の分析をやっていただくわけですし、それから課長補佐は債務管理を担当していただくというポジションですので、やはりそういうことについての専門的な経験、知識ということを基準にして採用したということでございます。

 今後はまだどうするということは決めておりませんけれども、先ほど申しましたように、必要に応じて民間の知恵を使わせていただきたいと思っております。

津村委員 それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。

 まさしく、その国債企画課、国債業務課の平成十六年度の成果として、海外IRのことをお触れになりました。日本国債を海外で買ってくれというお話だと思いますし、ちょっと事務方に伺うと、いろいろな数え方があるそうですけれども、基本的には、報道なんかでは、百一年前の日露戦争の際の外貨調達以来というふうな報道も出ておりましたし、少なくとも、円の、円債としての日本国債、JGBを海外でIRするというのは、恐らく初めて、少なくとも戦後初めてというふうに伺っております。

 大変意義深いと思うんですが、これはどういう目的でされているのか、まずお聞かせください。

田野瀬副大臣 国債に関する海外IRの目的はいかにという御質問でございまして、私の方からお答え申し上げたいと思います。

 多額の国債残高を抱えまして、今後とも、国債の大量発行が見込まれておるところでございます。引き続き国債の安定消化を確保することが、本当に重要な課題と考えております。その際、現在、国債の保有割合が諸外国や他の部門と比較して相対的に低い個人や海外部門等の保有を促進いたしまして、国債の保有者層の多様化を図ることが重要と考えております。

 こうした観点から、先月、ロンドン及びニューヨークにおいて、国債に係る海外説明会、すなわちIRを実施いたしまして、日本経済、財政構造改革の現状や今後の展望、国債に係る税制について、海外投資家等に対しまして直接説明をいたしまして、これらの正確な理解を促すことに努めたところでございます。

 今後とも、こうした取り組み等により適切な国債管理政策を実施してまいりたい、このように考えている次第でございます。

津村委員 この一月ですか、ロンドンとニューヨークで開催をされたということなんですが、これは、何人ぐらいの方が、どういった方がこの説明会には参加をされたんでしょうか。お聞かせください。

田野瀬副大臣 先日より行われましたロンドンとニューヨークについてでございますが、詳しく申し上げますと、一月十八日にロンドンで行いました。そして、一月の二十日にニューヨークで行いました。会場には、資産運用会社や保険会社、あるいは大口の投資家、銀行などの市場関係者、エコノミスト等、ロンドンでは百四十人、ニューヨークでは百七十人が来場いたしました。説明会においては、参加者との間で活発な質疑応答が行われまして、予定時間をオーバーすることになりました。

 有意義な説明会が行われたのではないか、こんなふうに考えておる次第でございます。

津村委員 わかりました。

 開催地について伺いたいんですけれども。後ほど少し、また円の国際化の話を触れようと思っていまして、そのことと関連するんですけれども、ロンドンとニューヨークということなんですが、ぜひアジアにも目を向けていただきたいと思います。

 開催地をどういう基準で選ばれているのか、そして、今後の御予定はどうなっているのか、お聞かせください。

田野瀬副大臣 先ほどからの海外説明会は、日本の経済、あるいは財政構造改革の現状や今後の展望、あるいは国債に係る税制について海外投資家の正確な理解を深めるということで、国債の保有を促進し、保有者層の多様化を図る観点から実施するものでございます。

 先般の海外説明会は、第一回目の開催でもあり、多種多様な投資家や市場関係者が最も集まっておる金融の中心であることから、ロンドンとニューヨークにおいて実施をいたしました。また、その際の市場関係者、投資家からの反応等も踏まえ、今後もこのような取り組みは継続していくことが重要であるということにかんがみまして、同様の海外説明会を、委員おっしゃるようにアジア地域において五月後半を目途に開催する旨先般公表させていただいたところでございます。

 第二回目の海外説明会を開催することについては、二月二十二日の国の債務管理の在り方に関する懇談会において御説明し、終了後の記者レクで公表させていただきました。これは先般、ヨーロッパ及びアメリカにおいて説明会を実施することを踏まえ、多様な投資家層による保有を促進するため、今般アジア地域の投資家に対して説明会を実施することといたしたものでございます。

津村委員 よくわかりました。また、アジア地域でもこれから取り組まれるということで、ぜひロンドンでの百四十人、ニューヨークでの百七十人を上回る大勢の方々を集めるような広報をしていただきたいと思うんですけれども。

 これは御質問じゃなくて、少し注文というか申し上げると、確かに、国債の消化を進めていくという中で、冒頭、海外IRの目的として個人や海外投資家、非居住者の保有比率が低いということはおっしゃるとおり。そういう中で、海外におけるJGBの格付は大変低いですから、簡単にそれが売れるとはなかなか思えないわけですけれども、とりあえず一回、一通り三極でやりましたと。ヨーロッパでもやりました、北米でもやりました、そしてアジアでもやりましたと。

 そこで、私冒頭、国債企画課、国債業務課の仕事は成果が上がっているのですかという御質問に対してIRやりましたというお答えで、それはそれで確かに、やりましたということは残るんですけれども、実際に成果が上がっていかないとやはりいけないわけで、今後、五月が第二回とおっしゃいましたけれども、ロンドンやニューヨークでの第二回、第三回はどういうふうにやっていくのか。今回の反省点もやはりいろいろあると思いますので、どういうふうに生かしていくのか。そこは懇談会の議論も含めてウオッチさせていただきたいと思いますので、単にアリバイみたいに、やりましたよ、以上、ということではなくて、こういう成果が上がりましたという実りのある海外IRをぜひ取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。

 その中身の話ですけれども、ここから御質問です。

 海外の投資家百七十人、百四十人がどれだけ本当に非居住者の方で、そのうち何人が実は日本の金融機関の現地に行かれている方なのか、ちょっとわかりませんけれども、通告していませんので御質問しませんが。海外投資家がどういう関心事を持っているのか、恐らく、IRですから、こちらからのプレゼンテーションをした後に質問があったと思うんですよね。どういう質問があったのかということを御披露ください。

田野瀬副大臣 二会場での説明会においてどういった関心事が出てきたかということでございますが、財政再建あるいは増税等の政策と景気との関係、これが一番目に多かった関心事でございます。それから、続いて財政構造改革の具体的方法、道筋、実現の可能性が続きます。そしてさらには日本国債の保有構造の多様化、さらには日本国債の格付に関する見解、日本国債に係る非課税手続の簡素化等税制改正の内容、そして郵政民営化の問題等々、参加者から質問があったと承知をいたしておるところでございます。

津村委員 二会場で行われたわけですけれども、ロンドンとニューヨークで大体同じような傾向で質問があったんでしょうか。それとも、やはり多少日本に対する関心が違うのかな、あるいは問題意識が違うのかなという気がするんですが、特徴的な違いがあれば、ぜひ教えてください。

田野瀬副大臣 ロンドンにおいてもニューヨークにおいても、説明会の参加者の主たる関心事、いずれも先ほど申し上げたような関心事でございまして、大きな差はなかったと聞いております。

 その上で、あえて申し上げますと、ロンドンにおいてはやや専門的、技術的な質問が見られたようでございます。例えば、税制改正の実施時期はいかがかといったような、こういった具体的な質問が見られたところでございます。

津村委員 具体的な質問が出るということは、それだけ関心というか、実際に強い関心を持っていただいているということでしょうから、それは大変有意義なことだと思います。

 私は、内部ではいろいろ研究をされているのかもしれませんが、IRというのは本当に、言いましたで終わるわけではなくて、やはり向こうからの反応を吸収して、まさしく市場分析官さんとか、国債企画課の企画立案の部分に生かしていただきたいわけですし、そういった情報というのはぜひ、市場参加者というか一般にも共有できる情報だと思いますので、その後の対応やあるいはどういう返事をされたのか、どういうお答えをされたのかということも、公開の場でされているわけですから、それは当然、公開の場で公表できるたぐいのものだと思いますので、詳細な議事録とまでは申し上げませんけれども、IRの模様について、ぜひ積極的に国内でもアピールされたらいかがかなということを御提案申し上げたいと思います。

 少し具体的なことに入りますけれども、今日本国債の保有構造多様化についての質問があったというお話がありました。まさしく海外の投資家、非居住者の保有をふやそうという目的で行っているわけですから、それがどの程度の保有比率になるのを目指しているのか、あなたたちは何のためにわざわざロンドン、ニューヨークまで来てこういうPRをしているのか、何を目標にしているのかという具体的な質問があるのは、これは当然だと思うんですよね。

 ただ一方で、国内といいますか、今まで議論をさせていただいてきた私たちから見ると、どの程度までを目標にしているのかというのがよくわからなくて、目標を持ってされているのか、それとも、とりあえずもうちょっとふやした方がいいよね、今は海外の保有比率は四%だと思うんですが、まあちょっと少ないからとりあえずやっておけということなのか、具体的な目標というのをお聞かせください。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったように、日本国債の海外の保有は四%。これはアメリカなんかは四三%ですが、ドイツも四〇%を超えているということでございますので、これは高い方の国だと思いますが、日本はやはり国際的に見ても非常に低いわけです。

 それで、やはりこれから国債保有者を多様化していこうというのは私たちの国債管理の基本的な問題意識でございますけれども、まだ緒につき始めたばかりで、委員がおっしゃるように何%を目標にするのかということはまだ具体的に打ち出しておりませんし、今そういうものがコンクリートにあるわけではありません。

 それで、今回やりまして、四%、どこにその四%、低いことにあったのかなということもいろいろ考えてみますと、一つには、今まで日本国内で消化できていたということもあると思うんですが、先ほどのIRでの御議論などを聞いてみますと、我が国と諸外国との金利の違いということは当然あると思います。それから、さっきちょっとおっしゃいましたけれども、日本国債に対する格付ということもあるんだろうと思いますね。それから、税制を指摘される方もあった。

 また、そういう方々の問題意識を聞いてみますと、海外投資家の、日本経済やあるいは財政の現状それから国債をめぐる税制等についても、必ずしも十分御承知でもないところがあるなということも感じたようでありますので、こうしたことを踏まえて我々もまた対策を打っていかなければならないんだろうと思っております。例えば非居住者に対する非課税制度拡大策というようなものもやってまいりましたけれども、やはりこれから、そういう我が国の現状、取り組みに対する広報と申しますか、そういうのをもう少し具体的に進める必要があるなと感じているところでございます。

津村委員 考え方は確かによくわかりました。ただ、冒頭申し上げた私の質問というのは、目標を持ってしているのかどうかということで、それはやはり私は持つべきだと思うんですね。国債管理、デットマネジメントということでいうと、要は、最適な、何といいますか、債務といいますか、だれにどれだけお金を借りてもらっている状態が一番安定するのか、それを考えるのはデットマネジメントの基本ですし、民間でも、資本構成をどうしていくかというのはまさしく債務管理の基本中の基本だと思います。先ほど大臣からのお答えで、市場分析官あるいは民間から来た課長補佐の仕事は債務管理だというふうにおっしゃいましたけれども、まさしくその基本なわけですから、ぜひ、少なくとも内部的には目標を持たれたらいかがかなというふうに思います。

 もちろん、幾らまで売るつもりだということをマーケットにおいて事前にアナウンスするのは、買いたたかれるといいますか、決して取引としては上手なやり方ではありませんから、必ずしも何でもかんでもアナウンスすればいいとは思いません。しかし、例えばアメリカ、ドイツ並みとか、あるいは格付に応じた保有比率というものももう少し高いかもしれませんし、そういった一定の目標は少なくとも内部的にはしっかりとお持ちになって議論していただきたいなというふうに思います。

 それから、税制のことについて少しおっしゃいましたけれども、海外投資家の方は必ずしも御承知じゃない、知らない、向こうが知らないのが悪いというお話をされましたけれども、私は、格付とか市場慣行みたいなものというのは、必ずしも財政当局がみずからハンドリングできないものもあると思います。しかし、税制については、これは財務省が戦略を持って取り組める、自分たちがその当事者となって取り組める課題ですから、ここは、やはり明らかに幾つかのボトルネックがそこにあって、私も市場参加者の方にヒアリングをしたことが日銀時代にありますけれども、やはり税制の問題とか本人確認のやり方とか、いろいろそういう本当にもう技術的なことで、日本国債というのは買いにくい、売る気がないようにしか見えないというふうに評価をする方も多いようですから、そこは、御承知じゃない方も多いということだと余り当事者意識をお持ちじゃないように聞こえてしまうので、ぜひ当事者として取り組んでいただきたいということを御注文しておきたいと思います。

 これは今後、折に触れてもう少し具体的な話として御質問していきたいと思いますので、ぜひそういう意識を持っていただければと思います。

 では、次の質問に行きます。

 先ほど、海外IRで、六つですか、こういう質問がありましたというのを田野瀬副大臣から御紹介いただきました。その中の最後に、やはり郵政民営化の問題が出てきたわけでございます。これは、私どもも代表質問のときにたしか野田大臣の方から御質問差し上げたことと大変近い質問だと思うんですけれども、郵政民営化後の郵便貯金や簡易保険の資金運用について、どの程度自由度というものが持たされるのかということについてお聞かせください。

山本副大臣 郵政民営化後の郵便貯金や簡易保険の資金運用にどの程度の自由度を持ち得るかという御質問だろうというふうに思っております。

 郵貯、簡保はその特性上長期安定的な運用が基本でございまして、国債等への運用は継続をしていくものだと思っております。民営化後は、経営の自由度の拡大を通じましてみずからの責任と経営判断により資金運用を行うことに意義があるというふうに思っております。

 しかし、経営の自由度の拡大を通じてみずからの責任と経営判断によって資金運用を行うということは、このために、財投改革に係る平成十九年度の経過措置を除き、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を制度的に買い続けることはないということでもあります。また、民営化の基本方針において、民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資金運用を行うほか、厳密な資産負債総合管理のもとで貸し付け等も段階的に拡大できるようにするとされているところでございますので、そのように考えております。

 一方、大量の国債を保有していることを踏まえまして、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮も規定をされているところでございまして、私どもとしましては、申し上げましたように、民営化後は、長期安定的な運用が基本であるということに基づいて国債等の運用を継続してまいりたいというふうに思っております。

津村委員 一つ具体的な御質問をいたします。

 十一月十六日に、原口委員の方から日銀の福井総裁に御質問をされたものの郵貯、簡保版の御質問になるわけですけれども、大変多額の国債を今、郵貯、簡保でお持ちだと思います。国債発行残高の二十数%に達する残高だと思いますが、これが民営化されるということですから、日銀以上にある意味ではまさに民になるわけですけれども、一%長期金利が上昇した場合、どのくらいの含み損が発生する、時価評価損が発生するんでしょうか、教えてください。

山本副大臣 平成十六年十二月末におきまして、郵貯は約百一兆円、簡保は約五十五兆円の国債を保有しております。このうち、その他有価証券として金利の変動にも応じて時価評価を行うこととされている国債の残高は、郵貯が約二十二兆円、簡保が約四兆円でございます。

 お尋ねの、長期金利が一%上昇した場合の影響でございますが、公社の試算では、郵貯で約六千五百億円、簡保で約四百四十三億円の評価損が発生すると聞いております。

津村委員 ありがとうございます。また数字をいろいろ私も確認していきたいと思います。

 ちなみに、日本銀行は含み損は一・四兆円という数字をお答えいただいたと思います。今のお答えを足し上げると七千億円になりますので、その保有残高と比べて、正確なのかどうか、ちょっと今すぐには計算できませんので、また確認をさせていただこうと思います。何かございますか。

山本副大臣 ただいま申し上げました数字は、あくまでもその他の有価証券分として、金利の変動に応じて時価評価を行うこととされている国債残高の分だけを申し上げました。全部を含めますと、満期保有目的の債券、今申し上げたものを含めたすべてのことを申し上げますと、郵貯、簡保とも、国債の多くは、金利の変動の影響にかかわらず簿価によって評価される、今申し上げた満期保有目的の債券、それからまた責任準備金対応債券というふうに区別をいたしております。

 それもすべて含めまして、仮に長期金利が一%上昇した場合は、郵貯は約三・七兆円、簡保は約三兆円の評価損が発生するというふうに聞いております。

津村委員 大変大きな額で、ちょっと驚いております。こうした多額のまさしくリスクを民営化された郵貯、簡保が抱えることについて、これはいろいろと制度的な工夫をしなければいけませんし、そもそもそうした施策が国益の観点から正しい選択なのかどうか、また議論をさせていただこうと思います。

 次の質問に移ります。

 コンソル債というものがあります。元本を返さずに、ずっとクーポン、利払いだけでいく債券のことですけれども、これについてお伺いしていきたいと思います。

 まず、一般論ですけれども、国債の円滑消化の観点から、今、商品の多様化に取り組まれていると思います。先ほど、新型の個人向け国債を発行しましたというお話とか、物価連動債についての工夫をしましたとか、そういったお話が谷垣大臣からございましたけれども、今後、具体的に、追加的に検討している国債関連商品というのはどういったものがございますか。

田野瀬副大臣 特に現在、私どもは、他の投資家や諸外国と比較して相対的に保有割合が低い個人等については、商品性の多様化等を通じ、その保有を促進することが重要と考えております。

 したがいまして、具体的に申し上げますと、個人向け国債について商品性の多様化を図ることとしておりまして、十七年度下期以降、現行の個人向け国債に加えまして、新型の個人向け国債を発行することといたしております。現在のところはそういうところでございまして、今後さらに、この個人向けも含めまして、引き続き、国債管理政策の適切な運営、商品の開発に努めてまいりたい、このように考えております。

津村委員 私もこれは予断を持って申し上げるわけでは必ずしもないんですけれども、冒頭申し上げたように、コンソル債という商品は、元本を返さなくていいということがありますので、そのことのメリットもあればデメリットももちろんあるわけですけれども、一つの商品として存在するわけです。

 もちろん日本国債ですから、日本国内においては最高の信用力があるわけですし、一方で、基本的には金利によって大きく価格が変動する商品でありますので、投機性の高い商品ということにも恐らくなろうと思います。そういった意味では、信用力があってかつ投機性が高いということであれば、やはり市場におけるニーズは一定のものがあるかなということがまず一つ想像ができます。

 それからもう一つ、これは金融商品を組成するときに、イールドカーブというものを計算して、いろいろ商品の価格、プライシングをしたり、あるいは商品をそもそも設計したりということがあるわけですけれども、超長期の、十年物の国債の利回りというのはよく一つの指標にはなるわけですけれども、より長い三十年、五十年の理論的な利子率というか、そういったものはなかなか計算することができない、本当に技術的なことですけれども、そういったことがあります。

 このコンソル債、要するに永久の債券ですけれども、こういったものを小ロットでも発行していくことで、少しずつ積み上げていくことになるとは思うんですが、金融工学的なそういうニーズにもこたえられるし、あるいは投機的な商品を求める市場ニーズにも合うかなということを、これは議論としてしてみてはいかがかなということを思うんですが、何か現在の議論があれば御紹介ください。

田野瀬副大臣 委員御指摘のコンソル債でございますが、発行者である国は償還権を有しますが保有者には償還請求権のない、いわゆる永久国債を意味されておられるところでございます。このような永久国債は、英国等において発行されたことはあると承知しておりますが、近年、主要国において発行されていない、そんなふうに見ておるところでございます。

 せっかく委員からの貴重な御提言でございますが、現在、我々は、このような永久国債を発行することについては次のような問題があるか、そんなふうに考えておる次第でございます。

 まず、財政構造改革の推進により国債に対する信認を確保していくことが重要な状況のもとで、償還を前提としない国債を発行することは財政規律の観点から慎重に考えていく必要があるのではないかということ、それからまた、元本償還の必要はないとはいえ、永久に利子負担が続くことを考えれば、必ずしも財政負担が軽減されるということは限定できないのではないか、そういった見方もございます。

 さらに、元本償還が行われない全く新たな商品性であること、それから、償還期限がないことから一般的に価格変動リスクが高いと考えられること等から、市場のニーズがどの程度存在し、円滑な消化が図られるかどうか、今のところ不明であると思います。

 このようなことも踏まえまして、現時点で、このような永久国債を発行することはとりあえずは考えておらないということを御理解いただきたいと思います。

津村委員 直近の議論についてよくわかりました。私は、国の側から償還するオプションがあるというか、そういうことができるということなのであれば、今、お話しになった二つ目の、永久に利払いが続くという分は、返せるときに償還しちゃえばいいわけですから、そういうオプションをつけるのであればそれはクリアできると思いますし、最初の点については、それはアナウンスの問題なので、どういう印象を市場参加者に与えるか、苦し紛れにやったというふうな受けとめ方をされると、日銀による国債引き受けと同じですけれども、ついに禁じ手をやってしまったなという意味で評価を落とすことはあるかもしれませんが、そこは、先ほどの国債管理政策の企画立案の部分で、戦略性を持ってこういう負債構成にしたいんだという何らかのロジックがあって、ロットもそれなりに考えて、とにかく出せばいいというものではないと思いますけれども、小ロットから始めるとかさまざまな工夫をすれば、もう少し議論を深める余地はあるのかなと思います。必ずしも絶対これがいいとは私も、御議論させていただきたいんですけれども、一つの議論の材料を申し上げたまでです。

 次の質問をさせていただきます。

 先ほどから何度も後で後でと言っていました円の国際化についてです。これは、冒頭に私が、日本版ビッグバンに大変感動を覚えた、当時の橋本総理が大変輝いて見えたという話を申し上げたわけですけれども、そのさらに前段が多少ありまして、日本銀行の元総裁である前川春雄さんの前川リポートというものが、もう二十何年前ですか、出た。それ以来ずっと円の国際化ということは、それ以前からかもしれませんが、長い歴史のある議論だと思います。しかし、ここ数年、先ほど谷垣大臣おっしゃられたように、不良債権処理の問題という目の前の問題があったものですから、そうした夢のある話がどうしても、なかなかしにくい状況があったということだと思います。

 しかし、今回、これは金融庁の話ですけれども、金融改革プログラムということで新しく出て、そこの冒頭に触れられているのは、不良債権処理という後ろ向きの議論はそろそろ終わりにして、これからは前向きな金融システム、国際金融戦略を描く新しいフェーズに入っていくんだということで、この財務金融委員会でも、私、臨時国会のときにまさしくそういった議論を伊藤大臣とさせていただいた記憶があるんですけれども、円の国際化というワーディングでいけば、これは実は財務省さんこそしっかり考えていただきたいテーマかなと思っておりまして、国債管理とも深くかかわりますので。

 そういった意味で、最近、金融庁もそういった新しいイニシアチブを発揮しようという中で、財務省は、この円の国際化についてどういった新しい展望をお持ちか、ぜひお聞かせください。

谷垣国務大臣 今津村委員おっしゃいましたように、円の国際化というのも長い間随分言われてきまして、かけ声としては随分大きなものがあったわけでございます。

 私は、先ほど津村さんがおっしゃいましたように、ちょうどアジア金融危機が起きた直後に、当時の宮沢大蔵大臣にお供して政務次官になったものですから、あのときの印象が非常に強くて、あのときのアジア危機の原因はいろいろなことがあると思いますが、多くのアジアの国が自国の通貨をドルとペッグをするというような形をとって、それで九〇年代からのドル価格の上昇に伴って、貿易、対外競争力というものを大幅に落としていった中で、多くのアジアの方々が余り為替リスクということを十分意識しないで短期のドル建てのものを入れてきたというようなことが背景にあって、あれだけ深刻な金融危機を起こした。

 したがって、円が国際化をしていれば、そういう点でリスクを分散することができるし、アジアの中の経済のマーケットの安定性に資することにも役立つ。あの当時そういうことを随分感じたわけでございますが、これは決してアジア各国がというだけではなくて、日本国内をとりましても、企業は為替リスクというものを軽減することができるわけですし、日本経済全体としてもそういうことによって安定性を増していくということであろうと思います。

 また、これだけアジアとの連携が深まってまいりますと、アジアとの関係も視野に入れて円の国際化を推し進めていくというのは、委員が今おっしゃいましたように、これからの我々が目指すべき大きな課題だというふうに考えているわけであります。

 そこで、こういう観点から、平成十年には対外取引を原則自由化する外為法の改正を行いまして、それから平成十五年にはオフショア市場の機能拡充等もやりました。それから平成十七年度、今年度の税制改正では、非居住者等の国債保有に係る税制優遇措置の要件緩和ということをお願いしておりまして、これも皆、円の国際化に関連した措置であろうというふうに思っております。

 今後とも円の国際化は重要な課題だと思っておりますが、一つ申し上げますと、平成十六年度におきましては、対アジア向け輸出が伸びたこと等にもよりまして、円建て輸出比率が四〇%を超えるというようなことがございまして、伸展を見せているのかなというふうには考えております。

津村委員 円建て輸出比率。輸入比率の方は多分大分低いんじゃないかなと思いますし、いいところだけ見ても問題が、先ほどのタイの話じゃないけれども、余りいいところを見てする議論ではないと私は思います。

 ただ、谷垣大臣、余り原稿もお読みにならずにずうっとこの円の国際化の重要性について今語られるお姿を見て、私は、まさしく宮沢さんのもとで政務次官をされていたころから確かな問題意識を持ってこのテーマについて取り組んでいらっしゃったんだなということを強く感じましたし、これからまさしく金融庁も新たなプログラムを出すような新たなフェーズ、新たな局面になるわけですから、ぜひ財務省も、何か私たちにも伝わるような、何とかプログラムでもいいですし何とかビッグバンでもいいですけれども、確かなビジョンを示していただいて、リーダーシップを発揮していただきたいなと。少なくとも、今そこまでは行っていないんじゃないかなということは申し上げたいと思います。

 今お話が出たアジアの債券市場のことに絡めまして、アジア債券市場育成イニシアチブという取り組みがあると思うんですが、これの現在の状況について簡単に御説明ください。

谷垣国務大臣 これはもうそもそも論は申し上げませんが、最近、中国、香港も含めますと、日本の貿易相手国としてはもうアメリカを抜くというような状況でございますから、アジアの市場をどうやって、我々も中心となって、いろいろな意味で共生、統合といいますか、を進めていくというのは極めて大事な課題だというふうに思っております。

 それで、このアジア債券市場イニシアチブでは、最近幾つか具体的成果が出てまいりましたので、ちょっとそれを御紹介しますと、マレーシアで、アジア開銀それから国際金融公社が現地通貨建て債券を発行した。それから、国際協力銀行の保証を受けた円建ての韓国債券担保証券、汎アジア・ボンドの発行が見られた。それから、タイにおける国際協力銀行の保証。それから、日本貿易保険の保険の支援を受けた日系現地合併事業による現地通貨建て債券の発行があった。それから、アジアの債券市場に関する情報発信のためのアジア・ボンド・ウエブサイトが立ち上がったというような進展がございます。

 今後とも、これはASEANプラス3の財務大臣会合の中でいろいろ議論をしているわけでございますけれども、特にやはり日中韓、こういうところが相当腹を合わせて進めていかなければならないと思っておりまして、ことしはイスタンブールでございますけれども、そのときに少しでも前に進めるように今いろいろ具体的な話し合いを行っているところでございます。

津村委員 それではもう最後の質問になりますけれども、少し時間もありますので、私の考えを少し述べてから、金融庁あるいは日銀との連携のあり方について、最後に御質問をしようと思っております。

 先ほどから、きょうはたくさん時間をいただきましたので、冒頭、私自身の日本銀行での経験や当時の思いにも触れました。そして、そういった原点があるものですから、私は今ここに立っていると思っています。財務金融委員会に所属をさせていただき、そもそも国会議員になったのは、国会でその仕事をしたいと思ったからです。

 ただ、私は、金融だけの問題に入っていく前に、そもそも日本という国がこれから二十一世紀にどういう国として、国際的なといいますか世界の中の日本であるのかと考えたときに、国連常任理事国入りの問題もあります、さまざまな安全保障の問題もあると思うんですけれども、そういった中で、やはり引き続き経済あるいは金融の分野というのは、これまで戦後六十年、とりわけその後半は、日本という国が主として経済力によって国際的な注目を浴びたり発言力、影響力という一定のものを持ってこられた、その日本にとって非常に重要なアイデンティティーの一つだと思いますし、そのアイデンティティークライシスがこの数年、失われた十年ですか、この時期あったわけですけれども、再びそのアイデンティティーを取り戻して、これから二十一世紀、新しいビジョンを持って今から歩んでいこう、そういう前向きなお話を、先ほど来金融庁との議論を引きながら谷垣大臣に繰り返し御提言申し上げているつもりです。

 そうした中で、私は、省庁再編もまた一つの橋本政権の、メリット、デメリットあるでしょうし、まだ業績と言えるのかどうかわかりませんけれども、取り組みではあったと思うわけで、その省庁再編の中で、さまざまな出来事を契機としながらですけれども、当時の大蔵省は財務省と金融庁に分離をされたということだと思います。そのメリット、デメリットもまたこれは議論のあるところだと思いますし、今後また議論をさせていただきたいと思うわけですけれども、少なくともデメリットは少しでも少なくしていかなければいけません。

 財務省さんの立場と金融庁の立場あるいは日本銀行の立場、それぞれがあるわけですが、円の国際化とか、あるいは国際金融市場の三極の一つとして、上海にも負けない、シンガポールにも負けない、香港にも負けない東京マーケットというものをこれから育てていこう、そういう問題意識に立ったときに、金融庁さんの役割というのは、市場のインフラを整備する、取引所を使い勝手のよいものにするとかさまざまな金融機関が入ってきやすいようにするとか、あるいは、これは大変重要な問題ですけれども、金融機関の検査監督の機能、ここが透明かつ公平にされるのかどうか、こういったことが金融庁さんの取り組みとして一つあると思います。

 そして、日本銀行について言えば、決算インフラなんかの、まさしくそういうインフラ整備という側面も一方でありながら、マーケットオペレーションを通じてみずから参加者としての一面も持っていると思います。

 そういった意味では、財務省もそれに近いといいますか、角度は違いますけれども、みずから発行体として大変多額の、五百四十三兆円、五百兆円前後のJGBを発行していて、まさしくIRもされているという発行体としての一面も持ちながら、一方で、税制の問題、あるいはさまざまな市場慣行についても、あるいは為替介入ということもありますね、マーケット参加者としての一面、一面というかかなり大きな性格を持っています。

 こういったものが、最初の合成の誤謬じゃありませんけれども、しっかりと連携をして、今後日本の金融をどうしていきたいのか、そしてそれは金融の世界だけじゃなくて、私は、金融庁から出てくるものを見るたびに財務省さんや日銀の影が余り見えないと感じるときがありまして、こういったものはまさしく国家戦略ですので、当時、橋本首相が総理大臣というお立場で提唱されたように、場合によっては小泉さんがリーダーシップを発揮される場面も必要かもしれませんし、少なくとも財務大臣の影が、今薄いとは思いませんけれども、しかししっかりと国民に見えてくる、そういう国際金融戦略を描いていっていただきたいと思うわけです。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、こういう問題意識に立って、金融庁と日銀との連携のあり方について、大臣のお言葉を聞かせてください。

谷垣国務大臣 私は、省庁再編あるいは新しい日銀法ができて以来の問題点を指摘される、極めてすぐれた御着眼なんではないかと思って御意見を伺っておりました。

 国債管理の立場からいっても、日銀と金融庁と私どもはいろいろな連携が必要ですけれども、さらに大きく申しますと、構造改革というのは何なんだということを考えますと、我々の目から見ると、要するに資金の流れを変えていく、金の流れを変えていくという面が極めて大きいんだろうと思うんですね。

 それで、かつてですと、旧日銀法のもとでの日銀と大蔵省との関係、金融庁が独立しておりませんでしたから、ある程度金の流れ、資金の流れを把握するという立場からいうと、かつての方があるいはやりやすい面があったのかもしれないというふうに思います。

 今は、それぞれ独立性を高めて、その評価はまだ十分ではないとおっしゃいましたけれども、それぞれ独立性を高めて、それぞれの問題意識を持ってやっておりますと、その問題意識をどこかでやはり集約し有機的なものにしていかないと、金の流れを変えていくという構造改革も空中分解していくおそれがあるんじゃないかなということを私は時折感ずることがございます。もちろん、それぞれの独立性というものは大事でございますけれども、大きな日本の改革に向けた腹がどこかできちっと合っているという形にするためには、いろいろな工夫や対話が必要じゃないかというふうに思っておりますので、また委員のいろいろお知恵も拝借したいと思っているところでございます。

津村委員 考え方は私の思いと大変近いんですけれども、もう一つだけ同じ質問をさせてください。

 知恵を出し合うとか連携をしていくというのはそのとおりなんですけれども、具体的には何か形に見える御努力をされる御予定はないんですか。例えば会議を設置するとか、あるいは何かのビジョンを出すとか、そういった目に見えるものが欲しいんですけれども。

谷垣国務大臣 かつて当時の、ちょっと私もこのごろ年をとって人のお名前がすぐ出てこないんですが。日銀も独立性を高められた当時、当時はまだ大蔵省ですけれども、大蔵省と日銀の連携というものは、どちらも新日銀法のもとでどういうスタンスをとるかということをやや戸惑っていた時期もあったように思うんですね。

 それで、当時私は、アメリカの例を聞きますと、アメリカの連銀総裁と財務長官は、たしか週に一回ずつ、やはり飯を食いながらフランクにいろいろな経済財政の見解を意見交換するという話を聞いたことがございまして、私は、日銀の独立性を尊重しながらも、何かそういうものが必要じゃないかなと思ったりしたこともあるわけでございます。

 現在、聞いてみますと、実務レベルでは相当密接に連絡をとり合ったり意見交換をしているようでございますし、また経済財政諮問会議というのが今あるわけでございますけれども、これをどううまく利用していくかというのが今の体制の中で極めて大事な問題でございますけれども、ここでも日銀総裁にもおいでいただいて意見交換というものがしばしば行われているわけでございますので、ある程度体制はできているのかなとも思いますけれども、まだ工夫の余地はいろいろあるのではないかというふうに思っております。

津村委員 お話を聞いていて聞いてみたくなったんですけれども、福井日銀総裁とはどれぐらいの頻度でお会いになっているんですか。

谷垣国務大臣 定期的にということではないんですが、今申し上げたように、経済財政諮問会議というのは、私もこのポジションに来てびっくりしたんですが、もうしょっちゅうあるんですね。ですから、月に何回かはお目にかかる機会があります。ただ、そのときは、要するに二人で会って意見を交換するというわけではございませんけれども、大体今こういう方向を考えておられるなというのはわかるわけでございますし、また、そういう折にいろいろ立ち話等で意見を交換させていただいて、今こう思っているんだけれどもどうだというようなことも率直に言ってございます。

 それから、G7等に出かけます前は、そのときそのときで定期的ではありませんけれども、できれば一緒に食事などをして、そのときの問題点、意見交換をしながら、G7等出させていただくということをやっております。

津村委員 もう質問はこれで終わりますけれども、最後の私の御質問というのは、別に、定期的に会った方がいいとかそういうことを言いたいわけではなくて、お話が出てきたので、ちょっと興味と言ったらあれですけれども、聞いてみました。

 日銀法改正から大分日もたちましたし、成熟した大人の関係で、これからどういう定期的な場、持つべきか持たざるべきかも含めて、成熟した議論ができる時期にそろそろなっているのかもしれませんので、そこはぜひいろいろ工夫していただければと思います。

 以上、国債管理政策の話を皮切りにしまして、財務省のマーケット参加者としての側面に主にスポットを当てながら、国債管理政策というのは、単にあるものを管理するというだけではなくて、ひいては利払いを抑えるという、財政を、国民負担を減らす、そういう前向きな議論でもありますので、そうした政策立案を望む立場から、るる申し上げた次第です。

 五百四十三兆円という話を何回もしましたけれども、その周辺には政府保証債もありますし地方債もあります。あるいは、これは多少学問的なというか抽象的な観念ですけれども、潜在的な公的債務としては、例えば、災害が発生するリスクや、あるいは年金財政、そういったものが破綻するリスクとか、さまざまな潜在的な公的債務というものは考えられますし、現に、さまざまな災害という形では、それが現実化しているというわけであります。

 損害保険会社や生命保険会社のような発想がどれだけ財務省という組織になじむかはわかりませんけれども、しかし、官から民へというだけじゃなくて、民間のセンス、民間企業のさまざまなリスク管理の発想を体化していく、内に吸収していくということも当然これからの努力として必要なわけで、先ほど、民間から三人、国債企画課、業務課に採用されたというお話がありましたけれども、どういう基準を設けてどれだけ採用していくかということも含めて、ぜひ戦略的な議論をしていただければと思います。

 私自身も民主党の公的債務管理ワーキングチームをやっておりますし、私たち、財政健全化プランというものをこれからさらに煮詰めまして、岡田代表ではありませんけれども、政権監視だけではなくて政権準備、準備でも私は甘いと思いますので、政権を実際にとりに行ける、そのリアリティーを高めていきたいと思いますので、これからまた、谷垣財務大臣とも建設的な議論をさせてください。

 これで終わります。

金田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉であります。

 きょうは、九十分の時間をいただきましたので、じっくりと丁寧な質問をいたしたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。

 さて、目下の経済財政の状態を見まして、私は、私なりに三つほど大きな課題があると思っております。

 一つは、景気回復が一部に偏っているということであります。そのために、景気回復とは言いながら、その言葉の陰でしかばね累々といいますか、そういう事態が起こっておる。言葉をかえれば、地方が大変疲弊している、そして、国民の中の経済格差が日増しに広がってきている、これが一番最初の課題だと思っております。

 それから二つ目の課題は、人口減少の問題であります。いよいよ二年後に人口が減少する、二百年間続いてきた人口増加の時代がいよいよ終わる、そういう大きな転換点の直前に我々はおるわけですが、それへの備えがまだ整っていないという気がしております。具体的には、国民の生活の哲学から始まって、社会保障や土地の利用の仕方、そういう仕組みの再整備、これがまだできていないというふうに思っております。

 それから三つ目の課題は、赤字国債の問題であります。三十年ぐらい前から赤字公債が発行されて、問題だ問題だと言われながら三十年たちました。そして、なかなか赤字国債の残高を解消するめどが立たない。めどが立たないどころか、ますます拡散しているという状況であります。

 以上、経済格差、人口減少、赤字国債、この三つが私は経済財政運営上の大きな課題だと私なりに考えているところでございます。

 そこで、そういう問題意識に立ちながら、今回提案されました特例公債法、所得税等改正法に関連して、いろいろお伺いしてみたいと思います。

 まず、特例公債法でありますが、この法案によりますと、十七年度の特例公債発行枠は二十八兆円余りということになっております。そうしますと、この結果、年度末の残高は二百八十六兆円ということであります。

 きょうは、お手元に一枚資料をお配りしました。財務省の資料でありますが、平成十七年度末の国債・借入金残高種類別内訳という表があります。これが国の債務の全体像をほとんどあらわしているという表でございますが、この二段目に特例国債というのが二百五十八兆円ありますが、それ以外にも減税特例国債等含めまして二百八十六兆円になる、こういうことになります。一方で、その上に建設国債というのがございます。これが十七年度末は二百五十三兆円ということになります。つまり、建設国債よりも特例国債の残高の方が多くなる、多くなっているという状態が続いております。平成十五年度からそういう状態になりました。

 この建設国債というのは、一応、基本的に財政法で認められている国債であります。借金ではありますけれども、片方で国の財産も持っている、資産がある、そういう国債でありますので、いわば、私は、財政法で認められた善玉国債と言えるんじゃないかと思っております。しかしながら、この特例債は、基本的に財政法では認めていない。片っ方に借金に見合う資産が何もないという国債でございます。いわば、財政法に認められていない悪玉国債というふうに言えると思います。

 そして、この平成十五年度から、悪玉国債の方が善玉国債よりも多くなってしまったという状況になりました。普通は、赤字は出さない。そして、不景気のときは借金してでも財産をつくって景気を支えよう、それが善玉建設国債の効用なわけであります。それが今までの財政常識だったと思うんですが、ここへ来て、その財政常識が変わってきた。変わった結果、こういうことになったんだろう。いわば、財政運営の発想が逆転したという状態が続いていると思っております。

 それで、今後、こういう債務の状態をどうするのか、そして、どうなるのかということでございますが、それを示す一番最近の資料、これが「改革と展望」二〇〇四年という資料であると思います。これは、つい最近、この一月の二十一日に閣議決定された資料であります。そして、そこでは、特例国債も赤字国債も実は一緒にされてしまっているんでありますけれども、いずれにしても、何とかこの二つの国債の拡散をとめよう、二〇一〇年代初頭までに基礎的財政収支を黒字化すればこの拡散がとまるんだ、それを何とかやろうという目標が改めて提示されたわけであります。一緒くたにされているという心配はちょっとあるんですけれども、第一次の目標ということだと思います。

 そして、その「改革と展望」二〇〇四の参考試算ということで、黒字化へ至る道筋を示す試算がつけられたわけであります。この試算を見れば、幾つかの前提を置けば、二〇一二年に基礎収支が黒字化達成できますという試算になっているわけであります。私は、この試算は大変重要な試算だと思っております。

 そこで、まずこの試算をベースにして何点かお伺いしたいと思います。

 まず最初に、この試算で考えている日本の経済の成長率であります。成長率は、実質成長率、二〇一二年、ゴールの年ですが、それまで大体一・五%、年平均大体一・五%程度の実質成長率が見込まれております。最初に申し上げたように、実は、日本の労働力人口はもう減り始まっております。経済の成長率、これは潜在的な成長率でありますけれども、供給面の成長率でありますが、これは一番単純に考えますと、労働人口の増加と一人当たりの労働生産性の増加を足したものだ、これが一番単純な考えであると思います。既に日本の労働力人口は減り始まりました。二〇一二年まで経済成長、プラスの成長一・五%でやろうというからには、その人口の減少を生産性の増加でカバーするしかありません。

 そこで最初の質問ですが、この試算においてはどの程度の生産性増加を見込んだ結果、一・五%という数字になったのか、そして、その見込みは今までの経験からして現実的なものなのかという質問であります。よろしくお願いします。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 「改革と展望」の参考試算についてのお尋ねでございました。参考試算そのものは閣議決定の対象ではございませんが、この試算におきましては、広い意味での技術進歩率をあらわす全要素生産性の伸び率について想定を置いております。

 具体的には、一九九〇年以降の平均、ただし金融不安が生じました九七年と九八年を除いた、そういう平均のレベルに徐々に戻っていくという想定に立っております。それから、二〇〇五年度から二〇〇九年度の間は、これに加えまして構造改革の加速によって全要素生産性の伸び率が追加的に上昇するということも想定をしております。こうした結果、御指摘いただきましたように、中期的には実質成長率は一・五%程度あるいはそれ以上の安定的な成長経路をたどるものというふうに見込んでおります。

 このように、将来の生産性の上昇率を見通すことは、実際にはさまざまな要因を考慮したとしてもなかなか難しい課題ではございますが、過去において実現したような水準を基準に想定するということで実現可能性を確保できているというふうに思っております。

吉田(泉)委員 きょうは時間もありますので、丁寧に御質問したいと思うんですが。

 そうしますと、私は単純に労働人口と労働生産性ということを申し上げたんですが、この試算の方は全要素生産性ということですから、労働以外に資本ですね、それを考えて全体の全要素生産性を見たんだ。そして、それは現実を踏まえて、プラスある程度の上乗せをして決めたんだというお話だったと思います。

 そうしますと、できましたらこの一・五の中身を教えてもらいたいんです。労働人口はどれだけ減る、資本はどれだけふえる、そして生産性はどれだけふえるんだ、だから一・五なんだ、そういう数字をいただけないでしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 これは年次の計量モデルを使ってやっておりますので毎年毎年違いますけれども、大ざっぱなイメージで申し上げますと、この全要素生産性の寄与分が、先ほど九〇年以降の平均と、二年ほど除いておりますが、そういうふうに申し上げたのが〇・七%ぐらい寄与しております。それから、一時的に、これは実はIT化を反映して少しその分を乗せているということを申し上げましたが、それが〇・二ぐらい。これは全期間ではございませんが、先ほど申し上げましたように二〇〇〇年代の後半でございますけれども。それから、資本ストックがふえる部分、これは年によってさまざまでございますけれども、平均すると一%弱ぐらいになるかと思います。それから、労働でございますが、これは御指摘のようにマイナス側に寄与しておりまして、マイナス〇・一とかマイナス〇・二といったような水準になっております。

吉田(泉)委員 繰り返しになりますけれども、そうすると、労働人口の減りがマイナス〇・一ですか、ちょっと少ないような気はしますが、それを、資本ストックの増加、これは民間の設備投資ということでしょうが、それと生産性の上昇で見ているという数字であるということだと思います。

 それでは二つ目ですね。この試算を計算するに当たっていろんな前提が置かれているんですが、二つ目にお伺いしたいのは、社会保障制度の問題であります。

 前提とされている解説を見ますと、年金については昨年度の制度改正をベースにしている、介護保険については今年度予定されている改正をベースにしている、医療については特に制度改正は前提にしていないということであります。常識的に考えると、日本のこれからの財政の一番の大きな負担になる要素はこの社会保障の部分だということなんですが、意外に、この試算を見ますと、今まで大体やってきた分、もしくは、ことしにやる分をやれば、長期的には財政はもつんだ、二〇一二年度には基礎収支がバランスするんだ、そういう結論になっているんですが、そういう解釈でよろしいですか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、ちょっと私、先ほどの御説明、不十分だったかと思いますが、確かに労働人口の伸び率はもう少し大きなマイナスになっておりますけれども、先ほど申し上げた労働の寄与というところに二つ差があると思いまして、一つは、労働力人口が減少してもこの労働参加率みたいなものがあるいは労働時間といったものの動きがあるということが第一点でございます。第二点は、成長会計といったような考え方で考えておりまして、基本的に生産は資本と労働の二つから成るということでありまして、労働が一%減っても丸々一%GDPが減るわけではない、大ざっぱに言いますと〇・七%ぐらい。そういったような関係になっております。

 今御質問いただいたこと、社会保障との関係でございますが、この試算では、デフレ解消後の名目成長率の高まりによる増収効果でございますとか、あるいは投資的経費の機械的削減といった財政収支改善努力の結果として、基礎的財政収支が二〇一二年度に黒字化するという結果になっております。

 社会保障については、御指摘いただいたような制度的な前提を置いて試算をしております。昨年の年金制度改正によって、年金給付の伸び率は抑制されるということになっておりますが、それでも今後の高齢化の進展を踏まえますと、社会保障給付全体としては拡大をして、公費負担も増加するというふうに考えております。

 ただ、こうした社会保障につきましては、追加的な今後の制度改正を織り込んでおりませんので、二〇〇七年度以降についても二〇〇六年度までの収支改善策を延長する、いわば便宜的な前提を置いているということでございまして、これは、これからいろいろ御審議いただいてお決めいただくということを先取りしてはいないということでございます。したがいまして、こうした想定がほかの選択肢に比べて望ましいというふうな判断をして置いた前提ではございません。

 そのほかでは、例えば投資的経費でございますけれども、これは削減を継続する、先ほど申し上げましたような二〇〇六年度までの収支改善策を延長する、そういう方向性で考えますと、投資的経費の削減の継続というようなことを盛り込んでおりますが、これもそれが望ましいからということで置いたものではございません。

 そういうことで、二〇〇七年度以降の具体的な財政収支改善策につきましては、歳入歳出を一体とした改革の検討に諮問会議でも着手をしまして、二〇〇六年度までにその結論を得るということにされております。社会保障についても、その枠組みの中で議論されていくことになると思います。

吉田(泉)委員 そうしますと、確認ですけれども、望ましいか望ましくないかはともかくとして、この試算の前提としては保険料ですね、国民からいただく保険料、それはこれ以上いただくつもりはございませんという前提になっています。そして、保険の給付の方ですね、年金、医療、介護の給付の方については、高齢化に伴う増加分、これも織り込んでいますよ。その前提でやって、それが望ましいか望ましくないかはともかくとして、その前提でやった結果、二〇一二年度に大体基礎収支がバランスするはずなんです、こういう試算になっているという解釈でよろしいですか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 二点御質問をいただいたかと思いますが、これ以上負担がふえないかどうかという点につきましては、昨年の制度改正で決まったこと以上のという意味では、御指摘のとおりでございます。しかし、昨年の制度改正で決められた率の上昇テンポというのがございますから、それは盛り込まれているということでございます。

 人口につきましては、おっしゃるとおりでございまして、人口の増加、これは厚生労働省の人口問題研究所、名前、固有名詞はちょっとはっきりしませんが、おつくりになった標準的な人口想定による高齢化を、人口構造の変化を見込んでおります。

吉田(泉)委員 そうしますと、三点目に移りたいと思いますが、今度は公共事業の前提であります。

 国、地方の日本の公共事業は、ここ数年で非常に削減をされました。ピーク時から比べて大幅に減っているというのが現状ですが、試算によりますと、今後も、これは望ましいか望ましくないかはともかくとして、毎年、機械的に三%削減していくんだということになっております。そうしますと、目標年度の二〇一二年度には、GNPに占める公共事業の割合というのが二・九%になるという前提になっております。

 そこで質問なんですが、考え方としては、公共事業には景気を下支えする機能というのがあるわけなんですが、今後についても、その機能には余り期待するつもりはないんだ、そして、公共事業を削減するということは経済にとっては需要を減らすマイナスの要素であるわけですが、それを別なものでカバーされるように運営していくんだ、その結果、実質成長率を伸ばせるんだ、こういうことだと思いますが、この公共事業の削減をカバーするものというのは何でしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇六年度以降において、先ほど申し上げましたように、投資的経費の削減など一連の歳出削減策の想定を置いているわけでございますが、これは試算の中で財政収支改善努力を表現するために一つの仮定として置いたものでございまして、具体的に収支改善をどういう方向でやっていくかということは今後の議論にゆだねられているというふうに考えております。試算ということですので、基礎的財政収支を二〇一〇年代初頭に黒字化を実現するということを達成するためにどういう姿があり得るかということを示したものというふうにお考えいただければと思います。

 その中で、一つの仮定として、二〇〇七年度以降も二〇〇六年度までの政策の方向性は継続するという仮定を置いているわけでございます。御指摘の公共事業を含めまして、政府による歳出が一般的には下支え効果といいますか需要拡大効果を持っているという点は、御指摘のとおりでございまして、私どものモデルでもそういう形になっております。しかし、「改革と展望」の今回の試算では構造改革努力を通じて民需主導による持続的な成長を図るということとしておりますので、試算でも公共投資などの財政の下支えなしで民需主導の経済成長が実現できるという結果になっております。

吉田(泉)委員 そうしますと、公共事業主導から民需主導というイメージだということですが、民需主導ということは、結局、民間の設備投資ということだと思うんですが。そうしますと、その設備投資の年間成長率というのは何%ぐらいという計算になるんですか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 需要項目別の内訳はこの試算では明らかにしておりませんが、イメージを申し上げますと、確かに設備投資もございますけれども、あと外需の部分でございますが、これはしかし民間需要中心の成長の姿ではございますけれども、海外の成長に誘発された部分もきいているということを申し上げます。

吉田(泉)委員 それでは、次の、四番目の視点は人件費でございます。

 公務員の人件費を、この試算をする上では、一八年度以降、毎年〇・五%ずつ下げるということが前提になっております。ここで言う公務員の人件費、対象者はどういう人で、何万人ぐらいいて、〇・五%ずつ下げるということは、毎年どのぐらいの削減効果があるものか、それを教えてください。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の参考試算で対象にしておりますのは、国においては自衛官を含む一般会計における予算定員でございまして、地方においては普通会計における実員でございます。

 国の人件費総額はこうした人員数とマクロ経済全体で決まる賃金の伸び率とから計算をしているわけでございますが、この試算では、全体として賃金の伸び率から〇・五%を控除した値で、〇・五%少ない伸び率で人件費の総額が伸びるというふうに仮定をしております。したがいまして、賃金の伸び率が高い場合には、そこから〇・五%引きますので、マイナス削減にならない場合もあるわけでございます。

 それから、具体的な計数でございますが、私どもの独自の定義でもありまして、そのほかの歳出の内数ということで、公表はしていないわけでございますが、実績部分について決算データなどから推計した値を申し上げますと、人件費の一般歳出における割合は、二〇〇三年度で九・五%程度というふうに見ております。

吉田(泉)委員 ちょっと確認ですが、自衛官を含む、今何とおっしゃったんですか、一般職の方というのは何人おられますか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げた人員の対象につきまして、具体的な数字で、二〇〇三年度で申し上げますと、国の一般会計、国の方は五十三・三万人でございます。地方の方は二百六十七・七万人でございます。

吉田(泉)委員 これは今週の水曜日の日本経済新聞、二月二十三日付ですが、一面トップで、政府が国家公務員の基本給一律五%下げるという方針を固めたという報道がございました。これは事実なんですか。

杉本政府参考人 公務員の給与につきましては、人事院の方で民間給与との関係を調査されまして、それに基づいて勧告が行われ、それによって措置されるということになってございます。

 今人事院の方でいろいろ今年度の人事院勧告に向けて調査をされていることだと思いますし、あと、前から人事院がおっしゃっていることは、地方の公務員と中央の公務員との格差といいますか、そういう関係もいろいろ調査されているように聞いておりますが、具体的にどうされるかという話は、私どもとしてはまだ存じ上げておりません。

吉田(泉)委員 この件は人事院の管轄だということだそうなんで、後ほどそちらの方面に確認したいと思います。

 私は、人件費については、実は、地方自治体がこの財政難の折から公務員の給与の削減というのをどのぐらいの団体がやっているのかなと思って聞いたところ、千四百余りの自治体が既に人事院勧告を下回る給与削減をやっているということでございます。我々国会議員も、数年前から一〇%の削減をやっているわけです。日本経済新聞の肩を持つわけではありませんが、二〇一二年財政基礎収支黒字をにらんで、この人件費についてもそろそろ腹をくくる時期ではないのかなというのが私の個人的な感触でございます。

 それはそれとして、今度は物件費であります。

 その他一般歳出の中の物件費は、これは毎年一%削減しようという前提になっております。しかし、物件費以外の費用、これはいじらないということになっておりますが、どうもその区別が私はよくわからないんですが、物件費だけ一%削減するという理由は何でしょうか。そして、そもそもこの物件費というのは一般歳出全体のどのぐらいの割合を占めるものなんでしょうか。

大守政府参考人 お答えいたします。

 その他の一般歳出につきまして、当初の「改革と展望」において、「聖域なく徹底した見直しを行うとともに配分の重点化を行うことにより、厳しく抑制する。」という文言がございまして、これを反映させて、試算において代表的なものとして物件費について機械的な削減を仮定しております。物件費以外の項目につきまして、実は性格の異なるいろいろな項目の集計でありまして、具体的な想定を置きにくいということから、今回の試算では特段の想定を置いていないということでございますけれども、いずれにしましても、これは「改革と展望」に示された歳出削減を表現するための想定でありまして、そこに特段の判断を加えてこういうふうに置いたということではございません。

 具体的なウエートについてでございますが、物件費は一般歳出のうちで国民経済計算の概念における中間投入的な、そういう性格、そういうものに含まれる項目を私どもで独自に集計をしてみたものでございまして、具体的な計算値は公表はしておりませんけれども、決算ベースにおける物件費の、そういう定義での私どもの物件費の一般歳出に占める比率を御参考までに申し上げますと、二〇〇二年度は六・五%程度、二〇〇七年度は七・一%程度になっております。

吉田(泉)委員 物件費の割合が六%、七%程度だと。それで、そこは毎年削減するけれども、残りは、人件費は別として、いじらないというのもちょっと甘い前提のような気がしているところでございます。

 続いて、六番目の点ですが、消費税の問題です。

 今回の試算については、消費税については基礎年金の国庫負担増加分、今回の税制改正でも一部補てんされるわけですが、それで足りない分については消費税で補てんするという前提になっております。しかし、消費税を増税して国民からいただいても、これが基礎年金の方にすぐツーカーで出ていくわけですから、これはいわゆる増税シナリオではないということだと思います。

 今回の試算に当たって、消費税増税シナリオにはなっていない、なおかつ、それで二〇一二年度黒字化が可能なんだ、こういう試算だと思いますが、それでよろしいですか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には御指摘のとおりかと思いますが、もう少し具体的に御説明させていただきますと、今回の参考試算におきまして、「改革と展望」の本文の方で、いろいろな政策を議論しているわけですが、そこに歳入側について特段の記述がないということもありまして、歳入側の制度変更としては、平成十七年度の税制改革案を含めた過去の措置分のほかには収支改善のための増税は想定しておりません。

 ただ、一つ申し上げておかなければいけないのは、これは公表資料においても明記してございますけれども、基礎年金の国庫負担割合の引き上げの財源として、便宜的な想定ではありますけれども、増収措置を仮定しておりまして、その仮定は消費税と所得税で半分ずつ措置をするということでございまして、いわば特定の財源に偏らないという意味でそういうふうに置いているということでございます。しかし、これは、御指摘ございましたように、国庫に入ったものが社会保障の方に行くということでありまして、そういう意味で収支改善のための増税ではないというふうに考えております。

 それから、それで基礎的財政収支の黒字化は達成できるかということでございますが、先ほど申し上げましたように、投資的経費ですとか人件費の抑制とか、そういったような作業上の前提を置いているということでありまして、それから、税収についても、名目経済成長率の回復に合わせて戻ってくるということを置いておりまして、結果的にはこういう試算になっております。

吉田(泉)委員 数日前の予算委員会、東大の井堀教授が公聴会に来られまして、財政再建のためにはどうしても消費税の税率を最低一〇%まで引き上げる必要があるという御発言もありましたけれども、一応今回の試算では、消費税を上げなくても、こういう前提ならば二〇一二年までにバランスはするんだ、こういう試算だということだと思います。

 七番目の質問ですが、こういう前提で二〇一二年までの状況を計算しますと、二〇一二年に、金利ですね、名目長期金利は今一%台半ばにあるわけですが、二〇一二年には四・六ですか、四%台半ばぐらいまで金利が上がりますということになります。それで、実は、今度はそのときの名目GDP成長率を見ますと、これが三・九%なんですね。何のためにこの基礎収支を黒字化させるのかというと、金利とGDPの成長率は大体同じくなるはずだから、その分の基礎収支さえバランスさせておけば国債残高がGDPに占める割合はそんなに変わらないんだというのがそもそもの前提だと思うんですが、この試算ではせっかく基礎収支をバランスさせているのに、金利、つまり国債で払わなくちゃいかぬ金利の方が成長率よりも上だという結論になっております。そうしますと、これだけのことをやっても結局国債残高は発散してしまうんじゃないかというような印象を持つんですが、いかがでしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、金利と成長率の関係でございますが、大体等しい数字になるというのは一つの考え方だと思いますが、私どもは、具体的には過去の関係から導かれた関数を使っておりまして、結果としまして、今回の参考試算では、二〇〇六年度から一〇年度までは名目成長率が名目長期金利よりも高く、二〇一一年度以降の関係は逆になっているということになっております。

 概念的には、御指摘いただきましたように、名目金利と名目成長率と債務のGDP比、この三つにはある関係がございまして、債務残高のGDP比率を安定させるためには、債務が生み出す利払い費を払うためには、基礎的財政収支は名目金利が高い場合にはそれに見合ってより黒字が大きくなくちゃいけないという関係にあることは、御指摘のとおりでございます。

 ただ、私どもの試算におきましては、結果的には二〇一二年度においても、発散傾向、名目GDP比という意味での発散傾向は見られておりません。その理由は二つございまして、いずれも債務の構成、債務の反対側の債権の満期構造をモデルの中で想定しているということでございます。一つの理由は、債務の利払いは金利よりおくれて変化をするという、過去に発行された時点で金利が決まるものが多うございますので、そういうことが一つです。それから二つ目は、ここの試算でごらんいただいている数字は十年物国債の金利でございますが、近年はより期間の短い国債の割合が高くなっておりまして、その金利が十年物国債のものより低くなっているということでございます。

吉田(泉)委員 そうしますと、若干金利の方が高くなってはいるんだけれども、いろいろな理由で発散の心配はないんだということだと思います。

 そうしますと、次の八つ目の質問なんですが、結局この二〇一二年、国、地方の公債の残高、これがGDP比で一四六・九%ということになるんだという結果が出ております。平成十七年度が一四二・三%ですから、公債残高全体はGDPに占める割合はそんなに変わらないんだ、発散しないんだということだと思います。

 それで、私が一番最初に申し上げた善玉悪玉論ですけれども、私は、何とかこの赤字公債をなるべく早くなくしたい、私だけじゃなくて皆さんそうだと思うんですが、それが非常に大事なことだと思っておるんですが、結局二〇一二年、この赤字公債、特例公債は、残高はどのぐらいになると考えればよろしいんでしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの参考試算におきましては、公債残高として、普通国債、地方債及び交付税特会の借入金の合計、その全体について試算をしておりまして、普通国債の内訳については、申しわけありませんが、分けて計算しておりませんので特例公債の残高を別途内数として申し上げることはできないという状況でございます。

 なお、公債残高全体につきましては、名目GDP比が二〇〇四年度で一三七・三%、その後一四〇%台の後半を推移して、二〇一二年度時点で一四六・九%程度ということになっております。

吉田(泉)委員 そうしますと、この国債、地方も含めた公債残全体として考えているので、その中をあけていないということですから何とも言えないということですが、基本的に全体のGDP比が変わらないわけですから、赤字公債の割合もそんなに変わらないということなんだろうと思います。そう考えるしかないと思います。

 それで、ちょっと話を変えますけれども、九番目の質問になりますけれども、昨年の九月、経団連が、経団連なりの同じような問題意識に立った試算をいたしました。二〇一二年までに、経団連の場合は二〇一三年ですか、財政の基礎収支をバランスさせよう、そのためにはどういう道筋があるかということを幾つかのケースで経団連も計算したわけです。我々民主党もその説明会を聞いたこともございます。

 経団連の結論は、一番妥当なところは、歳出削減を、これはしばらく時間をかけてでありますが、二〇%台の数字でやろうと。それから、消費税も二〇一二、三年までには一六%にまで上げよう。この二つを組み合わせて初めて二〇一三年にプライマリーバランスがバランスするんだ、こういう試算になっております。今回の内閣府の試算と比べると、より厳しい歳出削減とより厳しい増税をしないとバランスできないんだという試算になっておりますが、基本的に、この内閣府の計算と経団連の計算とどこが違うんでしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 経団連が出されました試算は、私どもと同様に経済モデルによるシミュレーションでありまして、同じような問題意識に立っているということで重要な興味を持って私どもなりに勉強をしているところでございます。

 四つケースが出されておりますが、御指摘の歳出削減二二%、消費税引き上げ一六%というケースは、改革ケースの2というものに相当するかと思っております。

 私どもの解釈でございますが、一言で申し上げますと、歳出側が我々の試算よりも拡張的な想定になっていて、その分消費税の引き上げが必要になっている、そういうことではないかというふうに思います。

 もう少し詳しく申し上げますと、二二%歳出削減ということでございますが、これは今の歳出水準から二二%削減するということではなくて、二〇二五年度における非改革ケースと名づけられた、いわばもっと歳出がふえるケースに比べれば二二%削減される、そういうことでございます。具体的には、二〇一〇年度までの間に公共投資の削減は前年比一・八%、私どもは三%でございますが一・八%、社会保障を除くその他の歳出は横ばいというふうに想定されております。

 私どもの試算と比較可能な二〇〇九年度の値を比較してみますと、一般歳出は、経団連さんの試算が五十六兆円となっておりまして、私どもの試算の五十二・四兆円よりも拡張的になっております。社会保障につきましては、経団連の試算は、年金の国庫負担割合を十分の七まで引き上げるとか、あるいは高齢者医療の公費負担を十分の七まで引き上げる、あるいは児童手当を全額公費負担にするというようなことが盛り込まれておりまして、これも私どもの試算よりも公費負担が重いという形になっております。

 彼らの試算のプライマリーバランスでございますが、これは国についてだけやっておられまして、二〇一〇年度に黒字になった後、二〇一二年度に赤字になって、再び二〇一三年度から黒字化するというようなことになっております。私どもの方は、国と地方を合わせたプライマリーバランスを中心的に表示しておりますが、国についてだけ二〇一二年度を見ますと、二〇一二年度は御存じのように国と地方を合わせればプライマリーバランス、基礎的財政収支は黒字ということになっておりますが、国だけについて見ますとまだ赤字でございまして、GDP比はマイナス一・四%ということになっております。

 以上です。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 それでは、この「改革と展望」の参考試算について最後の質問なんですが、こうして見ると、午前中、鈴木委員もこの問題を取り上げたと思いますが、何となく楽観的な試算じゃないかという感想を持たれる人もおります。

 私の感想は、確かに、公共事業をこんなに減らしちゃって景気維持できるのかとか、消費税を上げないでできるのかとか、それから景気循環の要素がこの試算には入っておりませんから、常にデフレギャップはないということですが、その辺はちょっと楽観的なのかなと思いますが、逆に言えば、この試算の結果を見ると、消費者物価がだんだん上がっていきます。二〇〇八年から二〇一二年あたりはもう消費者物価が二%台になります。いわゆるマイルドインフレーションということだと思います。結局、このデフレを克服して年二%ぐらいの理想的な物価水準にたどり着ければ、さほど税金を上げなくても、余り社会保障をいじらなくても何とか二〇一二年にはプライマリーバランスを回復できるというところまでいくんだなというのが私の印象でございます。

 そうしますと、問題は、この二%台の物価水準、そして一番最初に申し上げた一・五%の経済成長率、これをどうやって実現するのか。公共事業を減らして民間の設備投資に頼るというお話だったんですが、それが本当にうまくいくのかな、その点がちょっとこの試算は楽観的なんだろうなというふうに私は思っております。最後になりますので、できたら大臣から何かこの試算全体の御感想、もしあれば。

 それから、私、こういう試算は大変意義があると思っております。経団連もやった、内閣府もやった、いろいろなところで道筋を、いろいろなアイデアを出して、その中から進むべき道を決めていく、そういうプロセスなくして財政再建という目標達成はあり得ないと思っております。ついては、今回は単なる試算でございます、閣議決定も何もしておりません、参考資料でございますけれども、財政再建の道筋を示す総合的な目標、マクロフレーム、これは日経新聞に書いてあった言葉ですが、言いかえれば財政再建のための総合計画ということだと思いますが、その策定をなるべく早く示していただいて、国民共通の認識を持ちたいというふうに思うんですが、その点も含めていかがでしょうか。

堀田政府参考人 お尋ねの財政再建の道筋につきましては、「改革と展望」の本文におきまして、民間需要中心の経済成長を実現しながら財政再建を着実に健全化していくという大きな道筋を示しております。

 なお、内閣府が作成しております参考試算につきましては、「改革と展望」の本文に書かれております大きな枠組みのもとで幾つかの前提を置いて試算をしております。前提を選ばないといけないといった性格のものですので、目標とかあるいは政府の計画といった性格のものではないということを御理解いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今「改革と展望」の参考試算をめぐって非常に細かな分析をされた議論を伺って私も勉強させていただいたわけですが、財政あるいは経済がどういくか、それも相当先のことまで展望しなきゃならないとしますと、実際に仕事をやりますと、変数が多過ぎて、果たしてそれが現実を反映したものであるのかどうかというのは、なかなか確信を持って言えないというのが正直なところでございまして、今御議論になったものも、今内閣府の方から御答弁がございましたけれども、「改革と展望」の本文の大きな枠組みの中の一つの見方で、同時にもっと悪いシナリオも計算しておられるわけですね。

 「改革と展望」の中にはいろいろ制度面のことも触れられているわけですけれども、現実には、単に大きなマクロの数字でこれだけ伸びていくというだけじゃなしに、我々が実際に毎年度予算を組むとき、それから先を展望するときでも、相当な制度改革とかそういうものにこのマクロの流れをどう現実に落としていくかというと、実際にはかなり制度設計、制度改革という要素がなければなかなか現状が打開できないのではないかというのが私の率直な感じでございまして、その中には社会保障の制度設計をいじるということもあると思いますし、また、その負担をめぐって税もお願いしなきゃならないことがあるだろうと思います。

 私どもとして、今それからの総合プランを示せということもございましたが、同時にもう一つ考えなければなりませんのは、二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスを回復するというのが当面の目標でございますけれども、これも先日来ずっと議論がございますけれども、それは先ほど委員もおっしゃいましたように、それだけでは赤字国債あるいは建設国債を含めて公債残高というものが減っていくというわけではないわけでございますので、その後の展望をどうにらんでいくかということもこれからもう少し詰めて議論をしなきゃなりません。まだ全体像が、そういうところまでを含めての全体像がお示しできる段階ではありませんけれども、我々もいろいろブレーンストーミングもし、またこういう委員会、国会でもいろいろ御議論をいただいて、少しでもよりよい方向をつくっていきたい、このように考えております。

吉田(泉)委員 私も昔サラリーマンをやったこともあるんですが、民間企業は、危機に陥った場合は、基本的な計画をつくって、状況が変わったらまたその計画をつくり直す、こういう手法で何とか目標を実現するというのがごく普通のやり方で、私はそれが国の財政運営に当たっても大いに参考になる手法じゃないかと思っておるところでございます。ありがとうございました。

 続いて、特例公債、建設公債以外の国の債務についても見通しをお伺いしておきたいと思います。

 お配りした資料でいうと、国債の中の真ん中辺に財政融資資金特別会計国債、いわゆる財投債ということですが、この残高が今百四十四兆円ございます。基本的に、平成十三年度の財投改革で、私は、この財投債というのはいずれ財投機関債、それぞれの財投機関が自分の責任で政府保証なしで発行する財投機関債にだんだん置きかえられていくんだろうと思っていたんですが、いかがでしょうか。二〇一二年、基礎収支がバランスするころには、この財投債というのは財投機関債に置きかえられているものなんでしょうか。

 それからもう一つは、実はこの財投機関の中で債務超過団体が五つあるということが、去年の十二月の総点検の結果判明したわけであります。一番大きいのは国民金融公庫が一千三百三十八億円の債務超過、なかなか民間企業では存続できない債務超過額でありますが、それを筆頭に合計五団体債務超過があります。

 それで、財投債で集められたお金がその五つの債務超過団体も含めて貸し付けられて継続されているわけなんですが、結局一番心配なのは、この債務超過団体への貸し付け継続がいわゆる追い貸し状態にならぬか、本当にこれは返済されるのかということでございます。その点も含めて答弁願いたいと思います。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃった財投機関債ですが、財投改革に伴って取り入れられたわけですけれども、これは効果としては、それぞれの財投機関のディスクロージャーを進めるとか、それから業務効率を促進していくといったようなメリットと申しますか、そういった効果があったと思っております。それで、平成十七年度では、一定の規模を有するすべての財投機関で財投機関債を発行するというところまで来たわけでございます。

 そこで、プライマリーバランスを回復するころは全部置きかわっているかどうかということなんですが、財政審でこういう財投改革の成果をいろいろ点検していただいて、その中でいろいろな御議論があったんですが、今申しましたように、一方でディスクロージャーや財投機関の効率化に非常に役立ったというような御意見もある。その反面、これから財投機関債を拡大していった場合に今までと同じような効果があるのかどうかというような見方とか、もう少し厳しい見方とすれば、無理に発行を拡大していくとかえって資金調達のコストが高くなるんではないかというような御意見もありまして、私どもとしては、ここらあたり、もう少しよく実情を見、観察もしなければならないんではないかと思います。

 そこで、今の段階で結論を申し上げるのはちょっと早いんですが、私は、こういう御議論を踏まえますと、財投機関債と財投債のいわばベストミックスというべきものがどこにあるのかというようなことになるのかなとは思っているんですが、そこらは、これから効果やこれからの展望というのをもう少ししっかり議論していかなければいけないと思っております。

 それと、債務超過五団体の融資ですね、これは十七年度財投計画の編成で財政審で点検をしていただきまして、民間準拠の財務諸表をつくりまして、平成十五年度末債務超過となる特殊法人というのは五つあるということで、そこは委員の御指摘のとおりですが、これは五つあるわけでございますが、主として貸倒引当金をどう計上していくかという方法の差などからこういうことが出てきておりまして、いずれもその対処方針というものをつくっておりまして、今後それぞれの財務の健全性には問題を生じさせないというところを確認していただいたところでございます。

 その上で、これらの五機関については、来年度の財投計画の編成過程でその事業規模を十分に精査して、機関債による調達や回収金の額等を勘案して、必要な額を事業の実施のために貸し付けることといたしておりまして、財投の返済のために資金を追い貸ししていくというような状況ではないことを確認してやっております。

吉田(泉)委員 結局、財投の不良債権に対してはちょっと姿勢が甘い、民間金融機関の不良債権は加速化しろと。何かちょっと身内に甘いという感じを私は持っているところでございます。

 次に、この一覧表でいきますと、国債以外に借入金というのがございます。これが六十兆円ありますが、中身を見ますと、大半がいわゆる地方交付税特別会計の借金であります、五十一兆円。これは、二〇一二年、基礎収支がバランスするころ、この五十一兆円はどうなっているものでしょうか。

大守政府参考人 お答え申し上げます。

 参考試算におきまして公債等残高全体は計算をして明示的にお示ししているわけですが、その内訳の一つであります交付税特会の借入金の額について具体的に計算をしてお示ししてはございません。ただ、二〇〇七年度から既存債務分の交付税特会借入金の償還が開始されることになっておりまして、したがいまして、借入金残高は減少していくというふうに見込んで考えております。

 公表資料の中に国の一般会計という表がございまして、そこに入り口ベースの金額がございまして、一方で地方の表の中に出口ベースの金額が書いてございまして、この差額が交付税特会の貸借ということになるかと思います。私どもの計算では、その表の二つの欄を引き算してみますと、この貸借の数字が二〇〇七年度からはっきりしたプラスになってくるということでございまして、先ほどの償還の開始ということを反映した数字になっております。

 以上でございます。

吉田(泉)委員 これ以外にも政府短期証券という外為関係の債務が、大きい債務があるんですが、時間の関係で省略したいと思います。

 いずれにしましても、私、これは要望ですが、きょうお配りしたこの一覧表、これが基本的に国の債務の全体をあらわす。これ以外に、実は保証債務というのも五十八兆円ばかりありますけれども、そういう全体を国民の前になるべくわかりやすく示す必要がある。「日本の財政を考える」という財務省が毎年出しているパンフレットがありますが、これは全体像が見当たらないんですね。何かこういうパンフレットにも載せていただくような工夫ができないか、要望したいと思います。

 続いて、話は変わりますが、午前中も出ましたが、特例公債の法案の中の年金事務費の保険料負担の問題であります。

 特例措置が続いております。六年続いて、去年もう一年継続された。一体、この事務費を保険料で負担するという特例措置はどういう状態になれば終わるものなんでしょうか。

谷垣国務大臣 午前中もこれに関しては御議論があったところですが、昨年の御議論を受けて、年金の方から出していただく、保険の会計の方から出していただくものと、税で一般会計から出すものとの仕分けを行って、平成十七年度一年間の特例をまたお願いしたところでございますが、いつまで、どういう状況になるのかという点については、また平成十八年度についてもよく議論をしなければいけないと思いますが、今後の国の財政状況などを総合的に考えながら判断していくということではないかと思っております。

吉田(泉)委員 そうしますと、最初の質問との関連でいいますと、二〇一二年には基礎的財政収支がバランスされるということなんですが、そうなればこの特例的な扱いは終わると考えていいんでしょうか。

谷垣国務大臣 今の段階では何とも明確にお答えはしがたいのでありますが、結局、我が国の財政構造を考えましたときに、大きな要素は、社会保障をどうしていくかということでありますし、その社会保障負担をどういうふうに公平に負担していただく体制をつくるかということがあるわけでございまして、今こういう特例をお願いしているわけですが、この問題を根本的に整理しようと思うと、その議論をにらみながらやっていく必要があるのかなと思ったりしているところでございます。

吉田(泉)委員 午前中大臣の御答弁にもございましたけれども、結局は、税金で負担しても保険料で負担してもいいと思うんですよ。ただ、非常に社会保険庁に対する不信感があるものですから、社会保険庁が保険料でやられては困るというのが国民的な感情になってしまったということだと思います。

 続いて、今回、この年金事務費の保険料負担、厚生年金と国民年金については経費区分をして、直接的な経費は保険料、間接的な経費は税金に戻す、そういう扱いになりました。一方、国家公務員の共済組合、こちらの方はそういう区分けをしません。全部事務費を一緒くたにして、そのうちの四割を保険料で負担する、こういう会計基準が厚生年金、国民年金と比べて違うんですが、その理由は何でしょうか。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

杉本政府参考人 国家公務員共済組合の事務費の費用負担の特例の御質問でございますが、昨年も同様の措置をとらせていただいたわけでございますが、各社会保険の制度の間でやはりバランスをとっていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 ただ、国民年金、厚生年金と国家公務員共済の受給者の範囲、やっている事業、例えば国家公務員共済は、全体として長期給付、それからそれぞれの共済組合で短期給付、医療保険でございますが、そういうこともやっておるという実態の違い等も勘案いたしまして、従来からというか、去年におきましても、厚生年金、国民年金、政管健保の社会保険事務費における保険料の充当割合に準じたものといたしておりまして、そういった考え方から、国共済の場合は四〇%相当を保険料財源の充当としてお願いしているということでございます。

吉田(泉)委員 年金以外に医療保険も扱っているということなんですが、それがなぜ会計基準が違う理由になるのかがもう一つよくわかりませんが。

 続いて、年金の特別会計ではこういう事務費の扱いになっておるわけなんですが、よその特別会計、労働保険とかいろいろな保険の特別会計がありますが、そこにおいては事務費というのはどういう扱いになっているんでしょうか。

杉本政府参考人 他の特別会計の取り扱いでございますが、十七年度予算におきましては、地震再保険特別会計、地震の再保険をやっている会計でございます、それから森林保険、貿易再保険、自動車損害賠償保障事業特別会計、これにつきましては、事務費の財源に対して国庫負担は行っておりません。

 それから、労働関係でございますが、労働保険特別会計、いろいろ勘定がございますが、そのうちの雇用勘定においてはごく一部について国庫負担しておりますが、基本的には原則として保険料で事務費を賄っていただいているところでございます。

 それから、船員保険特別会計につきましては、事務費の一定割合を国庫負担、残りを保険料負担とさせていただいております。

 なお、農業共済の関係、それから漁船再保険の関係、漁業共済の関係につきましては、事務費につきましては雑収入等の財源を除きまして国庫負担となっております。

吉田(泉)委員 いろいろな会計によって事務費の扱いが違うということだと思うんですが、何か違う理由といいますか、基準というのはあるんですか。

杉本政府参考人 それぞれの特別会計の成り立ちといったこともございますし、負担と給付の関係をどういうふうに考えるかという、それぞれの会計の考え方もあると考えております。

 例えば、農業共済とか漁業共済とかは、農林漁業の特殊性だとか災害関連ということにも配慮して国庫負担としているということもあると思いますが、その他の保険会計においては、主にやはり受益と負担の関係、直接的に負担をどこで見ていくのが合理的か、効率的かという観点から考えられていると考えております。

吉田(泉)委員 それから、保険料で負担する年金事業の事務費の件ですが、特例措置ではなくて、もともと保険料で見ているという費用がございます。これが、いわゆる本来の保険料負担の事務的経費一千十億円。それから、福祉施設事業五百五十一億円という分については、これだけ予算が計上されているわけですが、状況はいかがでしょうか。来年度以降の見通しも含めてお伺いします。

小林政府参考人 年金相談業務等年金給付に関しまして被保険者のサービスの向上に直接寄与するというような経費につきまして、必要な経費を、今年度、十七年度の予算に計上させていただいておりますことは、委員御指摘のとおりでございます。

 一方、年金の福祉施設につきましては、今後その整備に新たな保険料の投入をしないという考え方のもとに民間等への売却を進めるということで考えておりますので、ただ、平成十七年度予算につきましては、用途廃止をする施設の解体撤去等の費用、最小限の費用の計上をさせていただいているところでございます。また、大規模年金保養基地、これはグリーンピアと称しておりますが、こういうものでありますとか、年金住宅融資、こういうものにつきましては、平成十七年度で廃止をするということで考えております。

吉田(泉)委員 そうしますと、福祉施設事業五百五十一億円、これが保険料から出ているわけですが、十八年度以降は全くなくなるということでよろしいですか。

小林政府参考人 今委員御指摘の五百五十一億円という経費につきましては、年金資金運用基金への交付金、出資金というものと、私が先ほど申し上げました解体撤去のための費用というものをトータルして五百五十一億円となっておるわけでございますけれども、年金福祉施設の解体撤去等の費用につきましては、十八年度以降におきまして、また同様の、廃止に伴っての解体費が必要なものにつきましては、額はそんな大きなものではございませんけれども、若干継続する可能性はございます。

 また、先ほど申し上げましたグリーンピアとか年金住宅融資、こちら関係の費用というのが十七年度五百三十六億円計上されておるわけでありますけれども、財政融資資金からの借入金の一括償還を十七年度において行いますので、平成十八年度以降は、利子補給金やグリーンピアの償還のための経費は、予算への計上は行われないということで考えております。

吉田(泉)委員 そうしますと、解体費程度の金額になるということだと思います。

 それでは、時間も迫ってきましたので、次に移りたいと思います。

 所得税法改正関係の質問なんですが、定率減税が半分なくなるという提案でございますが、質問は所得税の最高税率についてであります。

 日本の所得税の最高税率、昔は、昭和六十一年までは七〇%でした。その後、これが急速に引き下げられてきまして、今現在は三七%ということになりました。それに地方税が入りますから、実質的には五〇%ということであります。最終的にこの三七%に引き下げられたのが、この定率減税が導入されたときでした。定率減税は中堅所得者用、そして最高税率引き下げは高所得者用、この二つの減税措置を用意したわけであります。今回は、中堅所得者向けの定率減税は半分やめるけれども、高所得者用の最高税率引き下げは継続するという法案になっております。

 私は、最高税率がここまで下がってきたということは、日本の税制の所得再分配機能を非常に弱めてしまった、一番最初に申し上げました格差社会をつくる大きな一因になっているというふうに思っております。

 経済格差といいますか、平等度、国民の経済の平等さを示すジニ係数と言われている計算数値がございます。日本は、当初所得ベースでは平等度が先進十カ国中一番高い、しかし、税金を払い、保険料を払う、その後の平等度は実は十カ国中六番目にしかすぎない。ここまで来てしまったわけであります。

 実は、政府は、今回なぜ定率減税だけ手直しをして、こっちの最高税率の見直しはしないのかということに関しては、最高税率の引き下げというのは将来のあるべき税制を先取りしたものなんだ、だからいじる必要はないんだ、こういう方針のようでございますが、今るる申し上げた日本の社会の平等度が非常に下がってきたということも含めて最高税率をいじらない、私はいじるべきだ、今現在があるべき税制とは思えないという立場なんですが、いかがでございましょうか。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 今吉田委員がおっしゃいましたように、かつては七〇%、それが今三七%まで来ているわけですね。こういう最高税率を下げてきた背景には、一つは、主要な諸外国における所得税の税率構造をフラット化していこうという流れがあったことは背景としてございます。

 それと同時に、我が国の中の議論でも、例えば政府税調等の答申においても、我が国における所得格差は国際的に見ても小さいんだけれども、最高税率の水準が高くて、しかも、所得がそれほど高くない階層から最高税率が適用されるために全体としての累進性が諸外国に比べて極めて強くなっている面がある。これは当時の指摘ですが、それとか、高過ぎる限界税率のもとでは働く意欲、生産活動の意欲を阻害しかねないとか、また余り高過ぎるとどうしても、脱税と言うと言葉は悪いんですが、美しく言えば租税回避を招きやすい、またそのためのエネルギーも多大なものがあるというような指摘がございまして、所得税、個人住民税合わせて五〇%をめどに引き下げていくというような指摘がございました。

 それを受けて、昭和六十二年から平成元年にかけての税制改革、それから平成十一年度、小渕内閣のときの恒久的減税において、結局、最高税率をここまで引き下げていくという流れができたわけでございます。

 今委員が指摘されましたように、こういうことによって再分配機能が弱まって格差社会がつくられてきたという御指摘だと思いますが、去年、政府税調の中で基礎問題小委員会というのをやっていただきまして、このあたりも大分議論をしていただいたんです。それで、その中では、確かに社会の均質化や流動化の動きが近年鈍化してきているんじゃないかという指摘がございまして、確かに分配構造は国際比較で見れば相対的に格差が小さいんだけれども、おっしゃったジニ係数というようなものが八〇年代ごろを境に横ばいからだんだん上昇に来ている。その背景には、所得分配のばらつきが相対的に大きい高齢者、そういう世帯の増加等がこういうことを生んでいるとか、それから、親子の間で職業ステータスを継承する指標のオッズ比というのがあるんだそうですが、そのオッズ比というのがだんだん低下して流動性が弱まってきている。そういうようなことを税制にどう考えるかというような議論を昨年していただきました。

 そういう問題点があることは事実でございますが、他方、最高税率が適用となるのは納税者の一%未満ということでございますし、それから個人所得課税のフラット化は確かに進んできておりますが、近年は社会保障の所得再分配機能というのも強まってきている面がありますので、財政全体で見れば所得分配機能が弱まっているとは必ずしも言えない面もございますし、分配構造自体が、国際比較で見れば、基本的には高い経済水準のもとで相対的に格差が小さいというような面もあると思っておりまして、現在、最高税率の水準を直ちに見直すべき状況というふうには考えておりませんけれども、これはいろいろな幅広い観点から今後も議論をしなきゃならない点だと思っております。

 特に、午前中から御議論になりました所得税から地方住民税へという中で、個人住民税の所得割のフラット化ということがございますから、そういうことに合わせて所得再分配機能を今度は所得税の方がどう考えていくか。そういうことによって三位一体に伴う税源移譲で格差が広がらないような考慮は、これからの議論でございますが、考えていく必要があるんだろうというふうに思っているわけでございます。

吉田(泉)委員 所得税の最高税率の問題は、今大臣おっしゃいましたけれども、三七%の最高税率に引っかかる人は一%程度ですか、非常に少ない。金持ちの上から二割まで来ても、この人たちはまだ一〇%ぐらいの所得税なんですね。何かその辺の構成割合というんですか、その辺も含めて、最高税率も含めて、今現在があるべき税制だというんじゃなくて、ぜひ検討を続けていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。本日は、民主党提出の所得税法の一部を改正する法律案に対する修正案、これを中心に何点か質問をさせていただきたいと思っております。

 まず第一に、定率減税縮減規定の削除についてでございますけれども、民主党の皆様は、景気の底割れを防ぐためにも定率減税をこのまま継続すべきであるという主張をされているわけでございますけれども、まず、与党としては、定率減税縮小の見合いの歳入につきましては、主として基礎年金の国庫負担の割合引き上げに充当するということとしております。

 現在の景気がなかなか上向かないのは、GDPの六〇%を占めます個人消費がなかなか堅調に推移しない、上向かないというところに大きな原因があるわけですけれども、それを分析しますと、よく将来に対する社会保障の面での不安も言われるわけでございまして、そうした意味では、国庫負担引き上げにしっかり充当する、こうした財政措置によりまして年金がしっかりしたものになるという安心感が得られますと、個人消費の上向きに向けた可能性も出てくるのではないか。つまり、短期的にはマイナスが若干あっても、中長期的な景気対策という意味合いもあるのではないかという思いがしております。

 また、基礎年金への充当というのは年金の財政を安定化させるということで、いわば所得税で負担するわけですけれども、いずれ自分に返ってくるということで、受益者負担なんだという意識も国民の皆さんに持っていただけるのではないか、そういう意味でも理解が得られやすい面はあるのではないかと思っております。

 ところが、これをやめて定率減税を今後も継続するということになりますと、先ほど来お話がございますように、平成十七年度では一千八百五十億円、平年度ベースでは、国税だけとりますと一兆二千五百億円ぐらい税収減、歳入不足ということになります。ここで一つ穴があいてしまう。一方で、もう一つ出ております公債特例法修正案では、保険料の年金事務費九百二十三億円ですか、これを充当するな、税で支出せよということでございますので、こちらは歳出がふえるということで、一方で税収確保はしちゃいかぬ、一方で歳出を増加しろということですと、歳出歳入のギャップは増大するばっかりだと思います。

 民主党さんは、きょう配られた資料を拝見しますと、こうしたギャップを徹底した歳出削減により賄うと言っておられるわけですけれども、この場合、政府支出を一気に減少させるということの景気に対する悪影響、これを無視することはできないのではないかなと思っております。

 定率減税導入時には政府支出が景気の下支えをしておりまして、民需はマイナスだったんですけれども、今は民需がプラスで、年次の公共事業の削減の影響もありまして、今はむしろ、国内総生産の前期比の要因分析をしますと、政府支出の影響はマイナス要因ということで、いわばGDPの成長率の足を引っ張っているような状況でございます。この上で数兆円にわたる削減を一気にやるというのは、非常に景気の面では危険なのではないかと私は思います。

 徹底した歳出削減と書かれているので、一体どういうことで削減されるのかなと思って、予算についてデータをいただいて見てみたんですけれども、ちょっと見ただけでも、直轄の公共事業を半減させまして一・八兆円切る、それから公共事業の補助金は四・五兆円削減するというようなことが書いてありまして、これは、定率減税縮小をやった景気浮揚効果の何倍もマイナスが来るだろうと思います。

 こうしたことを考えますと、先ほど来景気への配慮、配慮ということでおっしゃっているんですが、本当に歳出歳入のバランスを考えて国のあり方を考えていらっしゃるのかというのが大変疑問でございます。

 今まさに、長野県では、県単事業を半分にするとかいう、これに先駆けるような大胆な実験というようなものが行われておりまして、既にこれは、県内の経済が壊滅的な打撃を得るという格好で結果が出ております。これと同じことをやってはいけないと私は強く思っております。

 今、景気回復と財政再建というのを両立させながらやらなければいけない、極めて細い道をうまくハンドルを切っていかなきゃいけないときに、金がなければやめればいいんだというような発想で歳入歳出も考えられたのでは非常にたまらないと思うわけですけれども、定率減税の廃止の削除、それの支出削減、それからそれが景気に与える影響、ここら辺についてどうお考えなのかをお聞かせいただきたいと思っております。

平岡委員 これは質問通告にはなかった話ではありますけれども、先ほどの質問の中に、公共事業費補助金について四・五兆円削減というふうに言われましたけれども、よく読んでいただきたいと思うんですね。私たちの民主党予算案では、この四・五兆円というのは、税源移譲を地方に対して行いますと。そして、地方で、この四・五兆円については、公共事業に使うのか社会福祉に使うのか、いろいろな使い道については地方で判断していただきたいということで、これは、国、地方をあわせて考えた場合には決して歳出削減ということではなく、国から地方への税源移譲という形になっているということであります。

 確かに、私たちの予算案の中では、さまざまな、一般経費も含めて歳出については徹底的な見直しを行うということで、国の直轄の公共事業については半分にする、あるいは特殊法人に対するいろいろな出資金あるいは補助金といったようなものについてもカットしていく、一般経費についても一割カットしていくといったようなことをいろいろ述べておりますけれども、そうしたことが財政の健全化につながるという意味において、これはむしろ、一般の国民の皆さんが持っておられる、財政が破綻してしまうのではないか、あるいはそれによって将来増税が起こるのではないかということに対する不安を少しでも和らげることによって、究極的には財政健全化というものが景気に対してもいい影響を与えていく、こういう考え方に立っているわけであります。部分的なところだけ取り上げて言うことになると、まさに我々もいろいろ言わなければいけないところはあろうと思います。

 先ほど、定率減税を縮減したものを基礎年金の国庫負担の引き上げに充てるというふうに言われましたけれども、お金に色はついていないわけでありますから、政府がやっている財政健全化の中で、特例公債についていえば、昨年の、平成十六年度の補正後の姿というのは、二十七・九兆円です。平成十七年度は二十八・二兆円と、むしろ財政は赤字国債という意味においては悪化しているということであります。

 そういうトータルなものの中で考えていかなければいけない話であって、国庫負担の引き上げを今言われている定率減税の縮減によって行うというのは、あくまでも公明党が選挙の際に主張したことをそのまま政府あるいは自民党の方々が口写しの形で言っているというだけにしかすぎないということで、余りまやかしの説明にならないようにしていただきたいというふうに思います。

 いずれにしても、歳出よりも歳入が大幅に下回っている状況の中では歳出を徹底的に見直していくという歳出削減の努力が求められているという状況は変わりはない。ただ、その程度がどのようになるかというのは、歳入の状況をどういうふうにしていくか、歳出をどうしていくかというトータルな中で議論していかなければいけない、こういう話だというふうに思っています。

宮下委員 今、公明党さんの主張を口写しという話でありましたけれども、これは平成十六年度の税制改正大綱でも与党がしっかりと議論した上で書き込んでいるわけでございますし、これは与党としての正式な方針だと私は思います。

 次に、ローン控除制度についてお伺いをしたいと思います。

 今回の民主党さんの案では、現行の住宅ローン減税を廃止しまして、平成十八年度からはすべてのローンを対象にした制度にする、その上で、現行の制度はローン残高に対して定率で税額控除を行う方式なんですけれども、この方法をやめまして、課税前の所得から利子を控除するという方式に変更すると伺っております。

 そうしますと、現行制度では、高所得者の人であっても低所得者の人であっても、ローン残高が一定であれば減税メリットも一定でございます。これに対して、民主党案では、構造的に、高い所得税率が適用される高所得者の方が大きなメリットを受けることになるのではないかと思います。

 例えば、一千万円を三%の利率で借りたとしますと年間の利率は三十万円になるわけですけれども、課税所得が三百万円というような方は、ここから三十万を引いて二百七十万円に税率がかかります。この場合、一〇%が適用になりますので、減税メリットは三十万円の一〇%で三万円税金が安くなるということなわけですけれども、これに対して、課税所得が三千万円の方は、ここから三十万円を引いて二千九百七十万、それに最高税率三七%がかかるということになりますので、減税のメリットは三十万円掛ける三七%で一一・一万円ということで、課税所得三〇〇万円の方の場合に比べると八・一万円減税メリットが多くなるわけですね。

 同じ一千万円を借りても、課税所得が多くて適用の税率が高い人ほど減税のメリットが大きくなるという仕組みになっておりまして、そもそも、高額のローンを組めるのは高所得者であるという現実から考えましても、今回の民主党案は高所得者優遇の税制なんではないかと言われてもしようがないと思いますけれども、いかがでしょうか。

中塚委員 まず、ローン利子控除のお話にお答えする前に、定率減税の廃止と基礎年金の国庫負担率引き上げの財源について、ちょっとお話をしたいと思うんです。

 年金法の附則に、国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げる、それには安定財源を見つけてということが書いてあるわけなんですけれども、当時私それをつくった中におりましたが、この安定財源というのはあくまで消費税ということを念頭に置いておったわけでありまして、定率減税の廃止、縮減等々、年金の国庫負担率の引き上げということについてどういう因果関係があるのか、余りにも唐突な話だなというふうに考えております。

 先ほど平岡委員からお答えを申したとおり、これだけの財政赤字があって赤字国債を発行している段階で、本当に金に色がついていないわけなんですが、安定財源を見つけるというのなら、その専門の財源をどう調達するかということが何よりも重要になってくるわけで、所得税の定率減税というものを廃止し、その分を年金の国庫負担率の引き上げに使うというのは、当時の経緯からしても、いかがなものかという気がいたしております。

 次に、民主党のローン利子控除についてお尋ねがございました。

 現行の政府案での住宅ローンの控除制度ですけれども、多分に景気対策として行われている色彩が強いということだと思います。毎年毎年住宅ローン税制も変更がございまして、ここ十年間をとってみても、大変に控除額が大きかったこともある、それを減らしていくようなときもある。毎年毎年制度が変更されることによって、住宅需要が、あるときには喚起されたり、またあるときにはへこんでしまうということもありますが、私どもは、そういう景気対策のみという考え方ではなくて、制度としてこのローンの利子控除というものを考えております。

 これからの日本経済が人口減少社会であるということ、いろいろな経済情勢なんかを見ましても、なかなか給与、所得がふえていくような環境にはない、そんな中で消費というものをいかにエンカレッジしていくかということを考えたときに、このローン利子の控除制度というものを制度として創設をするべきであるというふうに考えているところです。

 先ほど、高額所得者ほど有利なのではないのかということでありましたが、高額所得者は、確かに大きなローンを組むわけですから、その分利息の額も多くなる、また税率のブラケットも、上の方に行けばその分絶対値としての減税額は大きくなるということについては、これは否定はいたしません。ただ、税額控除と所得控除の違いということもまた他方あるというふうに考えておりまして、税額控除というのは、少額の納税者の方にとってみれば、引き切ってしまえばそれ以上減税の効果というのはないわけですね。所得控除であれば、所得から利子の分を落とす。

 しかも、私どもが提案しているのは、ローンの全期間ということで提案をさせていただいております。そのことを御理解いただきたいと思います。

宮下委員 景気対策ではなくて、抜本的な消費喚起のあり方を見直すための制度設計だというふうにおっしゃったんですけれども、定率減税を廃止しちゃいかぬということであれば、やはり足元の景気も大切だと私は思います。

 景気対策という意味で、もう一つこのローン減税には大きな問題があると思います。

 現状のような低金利下では、年間の支払い利子金額が少ないために、利子を所得から引くという仕組みでつくられているわけですけれども、所得控除方式では、中所得者、低所得者にとっては余りメリットがない、現在の住宅ローン減税よりもむしろメリットが少なくなってしまうという状況がございます。

 具体的に今説明させていただきますと、例えば、三千万円のローンがありますと、現行制度では、年間でローン残高の一%分、三十万円の税額控除が受けられます。メリット三十万円ということですね。これに対して、例えば、このローンの金利が三%だったとしますと、年間の支払い利息は九十万円ということで、例えば所得税率が一〇%であります中低所得者の方の場合、減税メリットは、九十万円の一〇%、すなわち九万円にすぎないわけです。

 つまり、現行制度だと家を建ててローンを組めば三十万円メリットが受けられるのに、民主党案に変わった途端に九万円しか減税メリットがない。つまり、現行制度よりも二十一万円増税になってしまうということなんですね。

 これでは住宅の新規取得にかえってマイナスになってしまうんじゃないかと思いますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

中塚委員 私どもが提案しておりますのは、住宅だけではございませんで、ローンの利子を控除できるという制度でありますから、例えばいろいろなほかの耐久消費財、自動車であったりテレビであったり、そういったものについても適用することができるわけで、額について一概にどちらが高くてどちらが低いかということは、家をつくるという意味においても、なかなかそういう議論は不適当ではないかというふうに考えておるところです。

 それと、あと、低金利だということについては、それはまさしくそのとおりだと思いますけれども、金利の問題は日本銀行の専権事項ですが、金利が低いから減税額が少なくてけしからぬということであるならば、金利が上がるような経済環境をつくっていくというのは、これは、政治また行政にとって、我々にとって一番大きな問題であるということだと思います。

宮下委員 安易に金利が上がると赤字国債の金利支払いもふえますので、金利がふえればいいというものではないと思いますけれども。

 次に、NPO税制についてお伺いをしたいと思います。

 今回の民主党の出された修正案では、いわゆる認定NPOを判定するためのパブリック・サポート・テストの要件を緩和して、従来除外しておりました補助金による収入を分子に加えて、それで二〇%を超えていれば、寄附した方の所得控除を認めるというふうな仕組みをつくっておられますけれども、こうしますと、相対的に補助金を多く受けているNPOほど二〇%を超えやすくなります。

 そうしますと、行政から業務の委託を受けて補助金を受けて活動する、こういうタイプのNPOを選択的に優遇することになるんではないかと思います。

 これは、ある意味、行政のアウトソーシング化ということで、それに向かうべきだというのも一つの理念かもしれませんが、一方では、今最も問題とされております天下り先ですね、一歩間違いますと官僚の新たな天下り先をふやすことにもなってしまうんではないか。やはりNPOというのはそれぞれの理念に基づいて、行政と関係なく、ボランティアでやっておられる方々も大勢いらっしゃるわけですし、そこのところよりも補助金を受けた方が有利なんだよという制度をつくるのはいかがなものかなと思うんですが、そこら辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

平岡委員 同じような気持ちは私たちも持っております。まさに、補助金に依存した形でのNPOというものが私たちは望ましいと考えているわけではありませんで、やはり、自立した財政基盤の中で本来の公益活動というものが行われるということが望ましいというふうに思っています。

 そういう意味では、これは政府の、今の現行制度と比べてみていただければと思うんですけれども、たまたま前回の改正のときに、平成十七年度までは寄附金割合は五分の一ということで政府でもなりましたけれども、それまでは三分の一というような形だったとたしか記憶しておるんですけれども、それを私たちは、五分の一というのを恒久的な仕組みにしていこうということで提案をさせていただいております。そういう意味では、ハードルを下げているということがまず言えると思います。

 それから、補助金といえども、何のために補助金が出るのかと考えてみますと、やはり、公益的な仕事をしているということを踏まえて補助金が出されているということであろうと思いますので、やっている業務について問題があるということでは多分ないだろうと。ただ、補助金に依存し過ぎてしまうようなことにならないように、私たちとしても十分注意していかなければいけないというふうに思っていますけれども、我々としては、ハードルを低くすることによって、現行の制度がほとんど適用されてこなかったような、そうしたNPO法人に対しても適用されるというようなことで提案をさせていただいております。

 ちなみに、現行の認定NPO制度でいきますと、ことしの一月末現在でNPO法人が二万一千九百三十九法人ほどございますけれども、この中で認定NPOはわずか二十六法人にとどまっているという、まずこの現実をよく見ていただきたい。これを二十六じゃなくてもっともっとふやしていきたい。我々の頭の中では、最低限、半分ぐらいのNPO法人が認定NPO法人になれるようにしていくことが今の社会において望ましいことではないか、こういう考え方に立っていますので、我々としては、むしろハードルを下げるための提案をしているということであって、補助金に依存している法人だけが財政基盤が強化されるというふうに考えているのではないということは御理解いただきたいと思いますし、その点については私たちも同じような気持ちを持っているということでございます。

宮下委員 今、やはりハードルを下げて、少しでも多くのNPOに認定NPOとしての税制メリットを与えたい、そういうお気持ちが表明されたわけですけれども、そうすると、逆に、認定を受けるところは非常に爆発的にふえるということでございまして、民主党さんはこの案の中で、新たに特定非営利活動等促進委員会という新しい認定機関を設けまして、ここが認定を行うというふうな仕組みを考えておられるわけですが、この要件緩和によりまして認定対象が大量となりますと、同時に、適切に活動が行われているのかどうなのか、そういったことの事後チェックなんかも必要ですし、認定と事後チェックあわせて、かなりの人員と予算が必要になるんではないかと思っております。今、行政をスリム化していこうという行政改革の精神にも反することなんではないかなと思うんですが、どういう体制で考えておられるのか、また行革との関係はどう考えておられるのか、お教えいただきたいと思います。

平岡委員 ちょっと、質問者の方の意図が少しわからないところもあるんですけれども、NPO法人の活動をもっともっと積極的にしていただくために財政基盤を強化していこうという目的の中で行おうとしている話であります。そうであるならば、それに対応する、いろいろな認定をする仕組み、あるいはチェックをする仕組みというのが必要になってくるということは、それは本来の目的のためにはそういう部分が大きくなるということについては、ある程度やむを得ないんだろうというふうには思っています。逆に、仕事がふえるから、国税庁の仕事がふえるからNPO法人の数はふやさないんだ、あるいは、数をふやさない形によってチェックする組織というものをつくらないんだということの方が、むしろ逆に問題だろうと。主客転倒のような気がいたします。

 我々が提案している特定非営利活動等促進委員会、これは第三者機関という位置づけにしておりますけれども、これを具体的にどのようなものにするかについては、先ほど御指摘のあった行政改革の視点とか、あるいは業務量がどのぐらいになるのかというようなことを踏まえて、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

宮下委員 それから、このNPO関連税制につきましては、収益事業における収入が三百万円以下のNPOについては法人税を免除するという規定を新たに設けられているわけですけれども、現状でも本来事業部分の剰余金については非課税で、内部留保をして次の年の事業にも使えるわけですし、それから、収益事業によって得られた所得もその二〇%までは無税で、みなし寄附ということで公益的な本来事業の収支の方に移せるというような税制のメリットがあることを考えますと、さらに、根っこからすべて減税、ゼロにしてしまえというのは、逆に言うと、収入が三百万円というような小さな商店、細々とやっているような皆さんはちゃんと、どんな小さいところでも二二%の法人税を払っていてくださるわけですから、そういったところとの公平性ということも考えれば、NPOは何売って何収益やっても三百万円をちょっとでも超えなきゃ全部無税なんだ、小さな商店は必ず二二%税金を払わなきゃいかぬ、これはやはり社会的公平という面で問題があると思いますけれども、いかがでしょうか。

平岡委員 今の御指摘については、全体的な仕組みというものをやはり見ていっていただきたいというふうには思っております。

 今の公益法人の仕組みの中でも、公益法人が収益事業を営んだ場合でも、一定の割合の収入、所得までは、これを非営利の事業に回すということによってそれを寄附金という扱いができる、こういう仕組みが既にできているわけであります。そうなると、三百万円という金額そのものが、ある意味では、収益事業あるいは非収益事業というような位置づけの中で、非収益事業としてそれを行われるというようなことであるならば、それほど大きな金額ではないんだろうというふうにも思っています。

 そういう意味では、トータルな仕組みの中でその部分もちょっと議論していただきたいというふうに思っております。

宮下委員 ちょっと、納得がいかないところは多々ございますが、以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、小林憲司君。

小林(憲)委員 民主党の小林憲司です。

 今回の地方税法改正案並びに所得税法改正案では、定率減税を二分の一縮減するとしておりますが、その縮減によって一兆六千億円もの増税になるというふうに私は思うのでありますが、我が国の経済状況は依然不透明であり、定率減税導入の目的はいまだ達成されていないと思うわけでございますが、そこで少々、この税金をまたハゲタカが食べてしまうのではないかという話をきょうも展開させていただこうと思っておる次第でございますが、関連で、新生銀行と株式会社イ・アイ・イ・インターナショナル破産管財人及びイ・アイ・イ関係者との和解金合意に伴う預金保険機構の補償に関することを、各大臣、そして永田理事長にお伺いしたいと思っております。

 新生銀行に対しましては、これまで預金保険機構から瑕疵担保条項により支払われた一兆円近い金額を含めまして八兆円に及ぶ国民の税金、公的資金が既に投入されていることは、御案内のとおりだと思います。

 そこで、これはずうっとシリーズで去年の二月から私もやっておりますので、少々おさらいを含めまして時間を追わせていただきますと、平成十六年の二月十九日に、新生銀行の株式は東京証券取引所に上場されました。新生銀行の単一株主であった外資系投資組合は、持ち株の約三分の一を売り出して、何と二千二百億円という大金を、売上代金を得たわけでございますが、保有全株式の所得コストである株式買い取り代金が十億円、第三者割り当て増資払込金が一千二百億円、合計いたしますと、一千二百十億円を差し引いても一千億円の非課税の利益が残るわけです。そして、日本において行われたこの新株上場益につき、我が国の国税庁は一銭の課税もできなかったわけでございますが、現在保有している九億一千八百万株はコストゼロという計算であることは、前回も私は御説明させていただきました。

 この残り保有株の第二回の売り出しが今月中にも行われるということで、皆様のお手元に配らせていただきましたが、その株式の目論見書が出ております。この第二次売り出しについてまずは伊藤大臣にお伺いしたいと思います。

 報道によりますと、新生銀行の大株主でありますアメリカ投資会社リップルウッド・ホールディングスを中心とする投資家グループが、保有する同株の約半数を二月中に売却すると言われておるわけでございます。経営破綻した旧長銀をわずか十億円で買い取ったリップルウッドが手にする売却金は、このたびは二千九百億円と言われておりまして、去年の二月に私が問題提起した同行株の上場益の一千億円に続いて、ぬれ手にアワの巨額の利益を再びハゲタカがゲットするということになるわけでございますが、この間の事情や内容について詳しく世の中に広く知らしめるべきだと私は思うのですが、伊藤大臣はどうお考えでしょうか、お答えください。

佐藤政府参考人 まず、事実関係だけ私の方からお答えさせていただきます。

 新生銀行が発表いたしました事柄でございますけれども、同行の普通株式の日本国内及び海外市場における売り出しが二月十七日を受け渡し期日として行われたということでございます。

伊藤国務大臣 委員はこの問題を何度となく取り上げられて、そして、恐らく納税者の立場からこの問題についてさまざまな観点から御質問いただいているというふうに承知をいたしております。

 個々の契約内容について、これはさまざまな評価があるということは承知をいたしておりますけれども、以前から委員から御質問いただいて私も何度かお答えをさせていただきましたが、旧長銀の譲渡先につきましては、金融再生委員会におきまして、公的負担の極小化、金融システムの安定等の視点に立って、複数の候補先が提示した条件を総合的に検討した結果、リップルウッド社の提示条件が最適であると判断してパートナーズ社を譲渡先に選定したものと承知をいたしているところでございます。

 旧長銀の一連の処理は金融再生法の趣旨にのっとって行われたものでありまして、当時の法的な枠組みの中で最大限努力をして行われたものだというふうに考えております。

小林(憲)委員 第二期の株式の売り出しがあるわけでありまして、また、今もライブドアの問題などいろいろと出ておりますが、今回も、堀江さんというのは旧イ・アイ・イの高橋さんと同じように私は見ておるんですけれども、フジが勝とうがライブドアが勝とうが、どっちに転んでももうけをとるのはリーマン・ブラザーズ。こんなことが子供と大人の試合みたいにして今また国内で行われて、またこの第二期で大きなお金が動くでしょう。しかしながら、それに対して、皆さんも、これからこのようなことがないようにということは前回から私も申しておりますので、今度はしっかりとこのもうけに対して税金がかけられるようにシステムは変わっていると思うんですが、いかがでしょうか、伊藤大臣。財務大臣でもいいですよ。

谷垣国務大臣 個別の件については、ちょっとお答えを遠慮させていただきたいと思います。

小林(憲)委員 非常に要領を得ないお答えでございますが、いろいろとありますので次に行きます。

 それでは、前回のおさらいに入らせていただきます。

 前回は私の質問の中で、十六年の五月の二十四日、関東財務局あてに臨時報告書が提出されました。そこに書かれておりますのは、まず第一点が裁判の和解が成立したこと、第二点が和解金二百十八億円をイ・アイ・イ破産管財人に対して支払うこと、そして三番目のその他の項目で、新生銀行は、平成十二年二月九日の株式売買契約書で決められているとおり、平成十二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構より訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能になっているということ。かかる補償は、当該費用を含め特定の損失について当初の五十億円を超える部分について行われる。当行は五十億円全額の引当金を平成十三年三月期に計上しております。当行は、上記株式売買契約書上は和解金額の全額が補償の対象と考えていますが、今回の和解に至る経緯にかんがみまして、このうち四十四億円については同機構に補償請求することを差し控える予定である。一方、残高の百七十四億円については同機構に補償請求する予定と記載されているということが、前回私が質問した中であったと思います。

 そこで、前回の質問で、永田理事長に、新生銀行の負担がなぜ五十億円ではなくて四十四億円なのかという、その数字の部分を含めましてお尋ねをしたわけでございますが、実際に請求が来た段階で説明があると思うので、その段階でないとお答えができないということで前回の質疑は終わっておるわけでございます。

 さて、きょうはいよいよ大詰めに参ったわけでございますが、本日の本題でありますのは、新生銀行から裁判の和解金についての預金保険機構に対する補償金請求について質問をするわけでございますけれども、これが出たわけですね。これは、皆さんのお手元に配りました新生銀行の平成十七年一月付の「株式売出目論見書」の中で、二十三ページにございますが、新生銀行は、二〇〇四年の十二月二十七日に、何と預金保険機構に対しまして総額百五十億円の補償請求を行っておるわけでございます。これは事実でしょうか。この百五十億円の内容はどういうものだったのでしょうか。内訳も含めまして、永田理事長、御説明を願いたいと思います。

永田参考人 お答え申し上げます。

 新生銀行からは、今委員御指摘のとおり、平成十六年十二月二十七日に請求を受けております。なお、今回の請求総額は、合計で約百五十億円でございます。

 新生銀行によりますれば、請求額につきましては、株式売買契約書の規定に基づき、請求適状となったものとともに、株式売買契約書に規定された補償の下限等を加除の上算出したものがこの金額だということでございます。

小林(憲)委員 これは、訴訟があるないから始まりまして、裁判がある、巨額請求がある、それなのに上場する、その後巨額のお金をハゲタカが持っていく、そしてまたさらに、国民が八兆円のお金を出した上に、不届きなことに新生銀行は百五十億円という金を払えと国民に突きつけてきているわけでございますが、この事実につきまして、感想で結構です、伊藤大臣、よろしくお願いします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 今御指摘がございました預金保険機構による補償の問題でありますけれども、これは預金保険機構、旧長銀及びパートナーズ社の間で締結をされた民事上の株式売買契約に基づくものでありますから、契約の当事者でない国が権利行使の態様が特に不適切でない限り直接これに介入することは適切ではなく、むしろ契約当事者である預金保険機構において、金融再生法の公的負担の最小化という観点を踏まえつつ、民事上の問題として株式売買契約及び関係法令にのっとり適切に対応されるべきものと考えております。

小林(憲)委員 確かに、これは民事上のことではございます、税金が支払われるわけでございますから。

 前回、たしか去年の十一月九日の財務金融委員会で、私が質問した中で、永田理事長が次のようにお答えになっておられます。

 現在、まだ新生銀行側から補償の請求が参っておりません。かつ、それはどういう形で請求をしてまいるのかということもわかりません。新生銀行がどの範囲で、また、どのような根拠によるものとして請求してくるか、いまだ不明であるということであります。御案内のとおり、株式売買契約書上、補償の要件を定めた状況はかなり複雑なものであります。要件該当性の判断は、実際請求を受けた内容を極めて慎重に当てはめて判断することになるということで、慎重に判断するため、請求の具体的内容に即しまして我々としては複数の法律専門家による意見も得て判断を行おうというふうに思っております。また、預金保険機構の判断が新生銀行の主張と異なる場合には、裁判所のもとで法律専門家を代理人としてお互いの法律的主張を出し合って、裁判所の判断を仰ぐこともあり得ると考えております。

 このようにおっしゃっているわけでございますが、さて、現実に新生銀行から補償請求が参ったわけでありますから、預金保険機構は総額百五十億円を新生銀行にお支払いになるおつもりですか。検討しているというのであれば、今どのような項目に対して、どのような内容に対して、どのように検討しているかということを詳しく教えてください。

永田参考人 ただいまの御質問でございますけれども、まず一つは請求を受けて支払うのかということでございますが、これは、現在、新生銀行からの請求につきまして、株式売買契約書に照らしまして慎重に審査しているということでございます。したがいまして、現在慎重に審査中でございますので、その内容についてつまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

小林(憲)委員 その内容については差し控えさせていただきたいとおっしゃいますが、ここは財務金融委員会の場でありまして、本日は税金についてのお話を長時間しているわけでございますから、その税金が百五十億円、大きなお金です、払われようとしているんですよ、永田理事長。それを払うおつもりで今検討しているのか、払わないつもりで検討しているのか、それをはっきりと今おっしゃってください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 現在、新生銀行からの請求につきまして、株式売買契約書に照らして補償対象になるか、また対象になる場合には補償の範囲や金額について慎重に審査しているというわけでございますので、先ほど申し上げたように、恐縮でございますけれども、審査中でございますので、つまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

小林(憲)委員 永田理事長、じゃ、その支払いをしなければいけないものに当たるというのであれば、これは偶発的債務という項目で払わなきゃいけないというお考えがあると今の言葉からとれるんですが、いかがでしょうか。

永田参考人 現在請求を受けておりますのは、今委員おっしゃいました、その偶発的債務に関するもので請求を受けているわけでございますので、それについて先ほど来申し上げましたような形で審査をしておりますので、内容につきましては控えさせていただきたいということであります。

小林(憲)委員 ですから、それは払うという項目が入るから、払う方向で考えて今検討しているというふうにしか私にはとれないんです。

 既に御案内のとおり、新生銀行は旧長銀時代の大変な悪事を重ねているわけでございまして、イ・アイ・イに対して、二百十八億円、ごめんなさいと言って払っているんですね。その悪事を認めた上での和解金で、その和解金の一部をまた国の税金で払えという話で、これは偶発的債務だといって言ってきているわけですけれども。

 また、その共謀者である、前回私がこの共謀者として認定をいたしましたシャーマン・アンド・スターリングという弁護事務所がございます。これは朝日新聞と読売新聞に謝罪広告まで載せて公に非を認めているわけでございまして、悪意をもって他人に損害を与えた新生銀行から百五十億円もの補償請求を受けて、それをそのまま支払うということは、まさしくその請求は、これはRCCも含めた上で、シャーマン・アンド・スターリングも全部ぐるで、それを全部預金保険機構が知っていたんじゃないかと私は思うわけでありますが、永田理事長、いかがでしょうか。

永田参考人 ただいま御指摘のシャーマン・アンド・スターリングの件でございますけれども、これについて預金保険機構が知っていたかどうかということでございますけれども、御案内のとおりRCCがこの債権を引き取りました前からの問題でございますので、私どもとしては、その件について詳しく承知しておりません。

小林(憲)委員 今おっしゃいましたね、これはよく皆さん覚えておいてください、RCCが関与する前の話だとおっしゃいましたね。その辺についてまた後でちょっと御質問と資料を出させていただきますが、前の話だったということだけは皆さんよく覚えておいてください。

 前回の当委員会では法廷の資料を提出しましたが、シャーマン・アンド・スターリングという法律事務所が、グアムの裁判所におきまして、何と、日本の国民また預金保険機構の皆さん、またRCC及び政府に対しても内密に十五億ドルという大きな金額を、旧長銀とイ・アイ・イ清算人との間の裁判におきまして、おまけをしている、チャラにしているわけです。勝手にチャラにしたという話を私したのを覚えてみえますよね。

 また、これも前回質問いたしましたが、「アメリカン・ローヤー」という雑誌で、これはアメリカの弁護事務所では皆さんが読んでみえる、きょうも配らせていただきまして、私が質問した後の次の月の号には、余り日本ではこの質問は大きく取り上げられないんですが、アメリカの「アメリカン・ローヤー」には小林憲司君がこういう質問を日本の財務金融委員会という非常に格調の高いところで展開をしているといって社会問題視しているわけですね。これはその参考資料と私の自慢で配らせていただいたわけでございますけれども、お読みください。

 そして、まずは、イ・アイ・イの清算人におきましても、シャーマン・アンド・スターリングに対しての免責をしておりません。そしてまた、新生銀行も、先般私がお配りしました本に謝罪文が載っていたと思うんですが、あの謝罪があったためにすべての裁判に対して不利になったということで、その請求を免除していないわけでございます。

 ということは、先般私が質問しましたときにお答えをいただいていないんですけれども、この百五十億円のお金が預金保険機構に対して請求された場合、今回されましたね、これはすべて国民の負担になるわけですから、そう考えると、預金保険機構はシャーマン・アンド・スターリングに対して、新生銀行や旧イ・アイ・イ清算人のように請求権を持って請求すべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。これは財務大臣と伊藤大臣にお伺いします。

永田参考人 大臣にお答えいただく前に、私の方から事実関係について申し上げます。

 現在、新生銀行からの請求を先ほど来申し上げておりますように審査しているところでございまして、契約その他何ら直接の関係がございませんシャーマン・アンド・スターリング法律事務所に対して預金保険機構が何かすべきか否か、し得るか否かということをまだ検討し得る段階ではないというのが私どもの方の立場でございます。

佐藤政府参考人 預金保険機構がシャーマン・アンド・スターリング法律事務所に支払い請求すべきではないかというお尋ねでございます。

 今回の補償請求の前提となりました和解は、御案内のとおり、新生銀行とイ・アイ・イないしその関連会社との間でなされたものでございます。したがって、預保は直接の当事者ではないということがまず背景にあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、新生銀行からの補償請求に対する預金保険機構における今後の対応を含めまして、民事上の個別の問題として、株式売買契約ないし関係法令にのっとって適切な対応がなされるべきものだというふうに思っております。

伊藤国務大臣 今佐藤局長からも答弁がございましたし、また先ほど来、預保の永田理事長からもお話がございましたように、今回の補償の問題については、預保において慎重に検討した上で補償請求にかかわる対応を判断していくということであります。

 そして、今回のこの問題は、やはり民事上の問題でありますので、株式の売買契約及び関係法令、こうしたものにのっとって適切に対応されるべきものと考えているところでございます。

谷垣国務大臣 この件について私から申し上げるべきことは今ございません。

小林(憲)委員 先ほども繰り返し言いましたが、永田理事長はいろいろなことを御存じだったんだなと私は今再確認をしておるわけでございますけれども、また、今金融庁も当事者ではなかったという話をされましたね、佐藤さん。

 永田理事長にお伺いしますけれども、前回の当委員会で永田理事長は、シャーマン・アンド・スターリングが双方の代理人となって大問題となっていたことについて、預保もRCCもこの紛争の当事者ではないので直接了知しているものではないとお答えになっております。

 これらの法廷資料をごらんいただけますかと言ってきょう配ろうと思っていたんですけれども、ちょっとグアムから来るのが間に合わなかったので、今私の手元にあるんです。皆さんに配れなかったんですけれども、グアムから法廷の資料を全部取り寄せました。そうしますと、前回も知らない、存ぜぬとおっしゃっていたんですけれども、これから私がこの資料に基づいて、前回永田さんが言っていたことが、知らなかったのかうそだったのか、全部資料と逆のことを言っているんですね。

 まず、前回当委員会で永田理事長は、シャーマン・アンド・スターリングがRCCに帰属する約十五億ドルの債務を勝手にチャラにしたことについて、HICという会社に関する債権はRCCに関係するようなものではないとか、旧長銀がいまだ公的管理下に入る以前に自己の経営判断で行ったことでありますと、先ほども言いましたね、お答えになっているところですけれども。

 ところで、前回提出しました、前回は提出しているんですけれども、法廷資料をごらんいただくとわかるんですけれども、ここに、シャーマン・アンド・スターリングが免除したのはすべてのHICまたはリージェント関連債務と明確に書いてあるところが出てきます。そしてまた、この命令の日付は二〇〇〇年の一月ですが、御案内のとおり、旧長銀が国有化されたのは一九九八年の十月でありまして、イ・アイ・イの債権がRCCに譲渡されたのが一九九九年の八月なんですよ。ですから、シャーマン・アンド・スターリングがRCCに帰属する債権を勝手にチャラにしたのは、既に旧長銀の公的管理下に入った後である事実は明らかに裁判記録に載っております。明記してあります。後で出します。

 前回のお答えは事実に反しているわけでございますし、今回もそのようにお答えになったわけですが、要するに、RCCはシャーマン・アンド・スターリングが自己の債権を毀損したことを知っているのにいまだに放置しているという状況、そしてまた、それを隠ぺいしようとする発言を永田理事長が繰り返しているというのがこの証拠物件によって明らかになったわけですが、お答えできますか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお示しになられました証拠資料ということでございますが、ちょっと私ども見ておりませんので、恐縮でございますが。

 その件ということではございませんで、昨年十一月十六日の本委員会で委員から御提示いただきましたグアムの裁判所の書面には、旧長銀が、イ・アイ・イ・インターナショナル債務のうちHICという会社に関する債務を免除したものとの記録がございますが、そのHICという会社に関する債権はRCCに関するものではないと先ほども申し上げたように認識しております。そのような事実が仮にあったといたしましても、これは、私どもとしましては、旧長銀がいまだ公的管理下に入る以前に自己の経営判断で行ったことであり、それによってRCCの債権が毀損したというような話ではないというふうに認識しております。

小林(憲)委員 永田理事長、私が先ほど言った期日は聞いていただけましたか。ここに書いてある資料には、二つありますけれども、これは英文ですけれども、それは、HICとRCCは、この期日によると……。

 もう一回言いますよ。そっちも調べてくださいよ。金融庁、すぐわかるでしょう。この命令は二〇〇〇年の一月なんですよ。イ・アイ・イの債権がRCCに譲渡されたのが一九九九年の八月なんですよ。国有化されたのが一九九八年の十月なんですよ。だから、自分たちが知らないときの前だとか後だとかって、それはめちゃめちゃな話じゃないですか。ちゃんと日にちが出ているじゃないですか。

 もう一回言いましょうか。シャーマン・アンド・スターリングが免除したのはすべてのHICまたはリージェント関係債務と明確に記載されているわけですけれども、この命令の出た日というのは二〇〇〇年の一月。旧長銀が国有化されたのが一九九八年の十月です。そして、イ・アイ・イの債権がRCCに譲渡されたのが一九九九年の八月です。どっちが前で後ですか。

永田参考人 想定でお答えを申し上げるということは控えさせていただきたいというふうに思いますが、ただいま委員の御指摘になりました点でございますが、債務免除という部分でございますが、それについては、私ども先ほど申し上げましたような日程関係であるというふうに認識しております。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

小林(憲)委員 じゃ、答えてくださいよ。日付もさっき言ったでしょう。聞いていなかったでしょう、あなた。大体、永田さん、僕もいろいろと資料もきちっと連ねて言っているけれども、永田理事長、証言一からずうっと書いて、うそばっかり言っているんですよ、本当に。

 まず、RCCはグアムの訴訟の当事者であったと。この証拠もグアムからとりましたけれども、ここにちゃんと書いてあるんですよ、「ツー ジョイン ザ リゾリューション アンド コレクション コーポレーション」、RCCは「パーティー ディフェンダント アンド カウンタークレイマント」と。そして、この資料によると、もっと明確に、中を読むと、ちゃんと「RCC イズ ア リアル パーティー イン インタレスト」、当事者であると書いてあるわけですよ。そしてまた、次の資料を見ますと、次の裁判では「ザ リゾリューション アンド コレクション コーポレーション」がちゃんとこちら側に書いてあるわけですよ。これはもう裁判の当事者である証拠ですよ。

 最後に、もっと言えば、ちゃんとユーゾー・ヤマシタという人がサインまでしている。私たちはこの裁判をやっていますと言っている。これは「アイ アム ア マネジャー オブ ビジネス ディビジョン エイトス オブ ザ リゾリューション アンド コレクション コーポレーション」、RCCの私はマネジャーですと。ユーゾー・ヤマシタという人がサインして、裁判までやっている。そういうものが出てきているのに、前回、なぜあなたたちは当事者じゃないとか。

 まず、二〇〇〇年の一月十四日付で、長銀のRCCを訴訟当事者とする申し立てをしているとこの紙には書いてあるわけです。その申し立ては認められまして、RCCは正式に訴訟当事者になっています。長銀とRCCは共同当事者としてグアム裁判所に申し立てを行っている。そして、二〇〇〇年の八月二十三日には、RCCの山下さんという人がグアム裁判所に陳述書を提出している。これ三つ、全部グアムから取り寄せましたから。あなたたちは当事者です。

 そして、すべてを知っていた上で、十五億ドルというすごいお金のリージェントの物件を、一円でも多く回収するのがRCCでしょう、そのRCCがシャーマン・アンド・スターリングという弁護事務所と一緒になって、こんなにひどい取り立てをRCCは国内でやっていると、きのう我が党の小泉という議員がやっていましたけれども、それなのに、これをチャラにして、百五十億円は払うわということをやろうとしている。

 それよりも、ましてや、永田理事長、あなたは前回の委員会でも今回の委員会でも間違った証言をしたか、うそをついたということをここで認めてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員がお示しになりましたこの新しいと言われた資料につきましては、先ほども申し上げましたように見ておりませんので、恐縮でございますけれども、その点については申し上げられないのでございますけれども、前回お示しいただきました資料につきましては、私たちも私たちなりに見せていただいて精査したわけであります。

 それによりますと、少なくとも、おっしゃられたそのHICというところの債務をいつ免除したかについては書いてございませんで、多分、二〇〇〇年の一月七日とおっしゃいましたことは、裁判所の決定が出たという日であろうかと思います。

 それからもう一つでございますけれども、RCCが不良債権を受領したときには、既にHICという会社は存在していなかったということでございます。

小林(憲)委員 ですから、さっきからまたうその上塗りをするようなことはやめられた方がいいと思うんですよ。まず私の質問に一つずつ答えましょう、永田さん。

 もう一回言いますよ。すべてのHICまたはリージェント関連債務と明確に記載されています、このことですね。この命令の日付が二〇〇〇年の一月です。御案内のとおり、旧長銀が国有化されたのは一九九八年の十月であります。イ・アイ・イの債権がRCCに譲渡されたのが一九九九年八月です。

 さあ、そこで、これは当事者としてどっちが関係ないと言える日付ですか、言えない日付ですか、お答えください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、その決定が出ましたのはおっしゃったような日付だと思います。そのときには、RCCはもちろん、その裁判の成り行きによりましてはみずからの方にも影響してまいりますので、共同被告として裁判に参加しているということでございますが、先ほど申し上げましたような形で、譲り受けの時点では既にHICは存在していなかったという事実でございます。

小林(憲)委員 だから、HICの話じゃなくて、今私が言っているのは、皆さん、RCC、これは預金保険機構が関与する前の話だったとおっしゃいましたね。後の話でしょう。それを聞いているんですよ、私は。きょうも、さっきそう言ったでしょう。財務金融委員会は国会の場でして、いいかげんなことをべらべらしゃべるところではありませんから、これはしっかりと全部記録されていますから、肝に銘じてちゃんとしゃべってください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほどから申し上げておりますことは、債務の免除をした時点と、裁判が起こって裁判の一応の決定が出た時点との問題を申し上げておるわけです。

 債務の免除というのが問題の発端でございますので、そこのところにつきましては、先ほど申し上げましたように、RCCが不良債権を譲り受けた前に起こっていることであります、旧長銀の時代に起こっていることでありますということを申し上げているわけでございます。

小林(憲)委員 では、わかりやすくもう一遍言います。

 この間の発言で、シャーマン・アンド・スターリングの十五億ドルの債務免除は、HICという会社に関する債権はRCCに関係するものではない。そして、そういうふうにきょうもおっしゃった。二〇〇〇年の一月七日付のグアムの裁判所の命令では、ここにあります、これは後で出しますけれども。でも、大体こんなこと知らないわけないでしょう、裁判やっているんだから。何で裁判やっているのに知らないとか、きょう見た資料だとか。そんなのだったら、あなた在任して……。まあいいや。

 とりあえず後へ行きますけれども、一月七日付のグアムの命令で、この裁判所記録の十二ページに、イ・アイ・イをすべてのHICまたはリージェント関連債務から免除したと書いてあります。シャーマン・アンド・スターリングが免除したのはまさにRCCに帰属する債権であるということも書いてあります。これはあなたがおっしゃることと違います。いかがですか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 要するに、その免除の時点が、先ほど来私が申し上げましたように、RCCが債権を引き取る前の話でありますので、それにつきまして、もちろん裁判は起こっているわけでございますが、御議論のそもそものところは、まさに勝手に免除をしたということについてRCCなりが責任を持つ、そういうお話だったと思いますので、私はこのように答えているわけでございます。

小林(憲)委員 ですから、そうさっきもおっしゃったから、私が何度も言いますが、シャーマン・アンド・スターリングがRCCに帰属する十五億ドルの債権を放棄するような事実は、旧長銀がいまだ公的管理に入る以前に自己の経営判断で行った、そう言いたいわけでしょう。さっきからそう言っている。

 だけれども、長銀が一九九八年十月に国有化されて、長銀のイ・アイ・イに対する債権は一九九九年八月にRCCに譲渡されているんです。ということは、シャーマン・アンド・スターリングは二〇〇〇年の一月に十五億ドルの債務を免除している。そして、シャーマン・アンド・スターリングは、長銀が国有化されRCCに債権が譲渡された後に、RCCに帰属する十五億ドルの債権を勝手にチャラにしましたよと裁判で言っているんですよ。そして、そういうことを含めますと、あなたが言っていることは全部うそだ。認めてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 RCCの不良債権受領時に、先ほど来申し上げておりますようにHICというのはもう存在していないわけですので、債務については知りようがないわけです。既に免除されたものを、さっきおっしゃられたような時期に我々は引き受けておるわけでございます。そういうことを申し上げておりますので、そもそも免除があったかどうかもRCCは関与し得ない立場にあったということでございます。

小林(憲)委員 関与している立場じゃないということはないでしょう。ですから、私がさっきから言ったように、RCCは、これも前回あなたがおっしゃったことですね、預保もRCCもこの紛争の当事者ではない。そしてまた、繰り返しますけれども、今、HICという会社はなかったとかあったとかと言っているけれども、前回何と言ったか知っていますか。HICという会社に関する債権はRCCに関係するものではないと。きょう言っていることとこの間と違うでしょう。わかりますか。十分わかってみえると思うけれども。

 だから、要するに、グアムの当事者であったということは、ここで、繰り返しますよ、二〇〇〇年の一月十四日付で長銀のRCCを訴訟当事者とする申し立てをしているんですよ、グアムで。そして、その申し立てが認められて、RCCは正式に訴訟の当事者になっているんですよ。そして、次に、山下さんという人が、私はRCCのマネジャーですよ、この裁判所に陳述書を提出しますと言って、サインまで書いているんですよ。当事者でしょう。

 そしてまた、そこで、HICという会社が債務じゃないと言うならば、関係ないと言うならば、繰り返しますよ、二〇〇〇年の一月七日付でグアムが命令を出している。そのときは、一九九八年の十月に国有化されている長銀が、RCCに一九九九年の八月に譲渡されているわけですね。そして、二〇〇〇年の一月に十五億ドルが勝手にチャラになっている。これはまさしくRCCのものを勝手にチャラにしているわけじゃないですか。どういったってそうでしょう。違いますか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 もう一度、申しわけございませんが、この時系列のことを少しく申し上げさせていただければありがたいと思います。

 九二年の六月に、イ・アイ・イからリージェント関連資産、負債を切り離してHICが引き継いだということのようでございました。九二年の七月にイ・アイ・イの負債の一部をEIEGが保証したようでございますが、HICは、その後九八年に、先ほど申し上げましたように清算され、消滅しております。したがいまして、その間にさっきの免除ということがあったわけであります。旧長銀が公的管理下に入りましたのは、今おっしゃられたような九八年の十月ということでございますので、その後、九九年の八月にRCCが旧長銀の不良債権を譲り受けているわけでございます。そして、先生御指摘の二〇〇〇年の一月七日に裁判所の決定が出た。そして、RCCとしましては、この裁判につきまして、みずからに関係することでございますので、おっしゃられたようにRCCがグアム訴訟への参加を認められたという経緯になっているということでございます。

小林(憲)委員 今、両大臣、聞かれましたね。大分話が合ってきましたね。

 要するに認めたでしょう、今。私が言っていることは正しいでしょう。あなた、うそついたんじゃない。私が今言ったことを、今、そういえばという形で。何か精査しますがどうのこうのなんて言っていましたけれども、今認めたということを認めてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来申し上げておりますように、RCCが旧長銀の不良債権を譲り受けたのは九九年八月でございますが、その以前に、長銀時代にHICの清算が行われておりますし、その前にHICに対する債務免除が行われているわけでございます。したがいまして、さっき申し上げましたように、RCCとしましては、引き継いだときには既にこの不良債権につきましては債務免除がされたものであったということになるわけでございますので、私、先ほど来言われておるように、うそをついているとは思っておりませんが。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

小林(憲)委員 だんだんだんだんまた話が変わってきますね。

 だから、RCCは国民のために一円でも多く回収をして、それを売却して、そして不良債権の処理に当たらなきゃいけないためにつくられた機関ですよね。なぜそれがHICがその前になくなっていたとか、どうのこうのとかといって。

 繰り返しますよ。旧長銀を国有化したのが一九九八年の十月。そして、イ・アイ・イに対する債権は一九九九年八月にRCCに譲渡されている。その前にHICがないとかあるとかって、もうHICという言葉がグアムで出てきているわけですよ。ということは、あるんですよ。ないものに対して裁判所が書きますか。だから、そういう詭弁を言わないで、せっかくちょっとずつちょっとずつあなたは自分で隠していたことを今はっきり言い出したんだから、私が間違っていたと認めてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 私が先ほど来申し上げさせていただいておりますのは、この裁判の決定は、御案内のとおり二〇〇〇年ということでありますけれども、そして、不良債権をRCCが引き受けたのは九九年の八月ということでもありますけれども……(小林(憲)委員「聞こえません、全然聞こえない」と呼ぶ)失礼。九九年八月にRCCが旧長銀の不良債権を引き受けたわけでございますが、その前に、この裁判の原因になっておりますHICに対する債務免除が行われているということを再三申し上げさせていただいております。そういうことでございますので。

小林(憲)委員 だから、永田さん、そうじゃないと言っているじゃないですか。ここに裁判記録があって、ここにちゃんと書いてあるんですよ。「バイ スペシフィカリー リリーシング」、リリーシング、もう放棄するということは、「ザ プレインティフ フロム エニー アンド オール HIC」と出ているでしょう、裁判記録に。ないものが裁判記録に出ますか。うそを言いましたと認めてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 HICの債務免除のことが一つの原因になってこの裁判が行われているということを裁判記録では言われておるのだろうというふうに思います。

 いずれにせよ、この問題につきましては、委員御指摘のとおり、RCCはもちろん国民負担の最小化ということで一生懸命やっております。さらに、売買契約書に基づいて、私的な契約として、その中でまた一生懸命やっております。したがいまして、今のような事実の関係の問題につきまして、今私の方が委員に御説明申し上げていること、こちらの非力もありましてなかなか御理解いただけていないわけでございますけれども、その点につきまして、いずれにせよ事実の関係でございますので、もし許していただけますれば、個別にきちっと御説明をさせて、議論をさせていただけたらというふうに思っております。

小林(憲)委員 今度は、困ってくると個別になんて言って、泣きつこうとしたって、許せませんね。

 これは、まずまとめますが、あなたはこの国会の財務金融委員会という大変格調高い場でうその発言を繰り返しておられます。まず、永田理事長うそ発言一をまとめさせていただきます。

 それはまず、イ・アイ・イ・インターナショナルと旧長銀との間の紛争においてシャーマン・アンド・スターリングの双方代理が問題になっていたことの詳細について、預保もRCCもこの紛争の当事者ではない、直接了知していないと、きょうも言いましたし、前回も言いました。これはうそです。

 RCCはグアムの訴訟の当事者になっている、さっきあなたもそうおっしゃいました。そして、これはうそだということはもうはっきりしたわけです。二〇〇〇年の一月十四日付で長銀のRCCを訴訟当事者とする旨の申し立てがなされています。これはさっき私が言いました、こちらにありますね。これはこっちにちゃんと書いてあるんですよ。だから、これもうそです。そして、この申し立ては認められまして、RCCは正式に訴訟当事者になっている、長銀とRCCは共同当事者としてグアム裁判所に申し立てを行っているということで。そして、この陳情書にサインしているのが、「アイ アム ア マネジャー」というヤマシタ・ユーゾーさんですね。その人がサインまでしてやっている。ということは、直接の関係もない当事者ではないというあなたの発言はうそであり、きょうもしましたが、うそです。

 そして、永田理事長うそ発言二つ目は、シャーマン・アンド・スターリングの十五億ドルの債務免除は、HICという会社に関する債権はRCCに関係するものではない、こうおっしゃったんです、前回は。そしてきょうは、HICという会社は私たちが債権を回収する前にもうなくなっていて、それは回収しなくてもいい、どうしたっていいものだから、私たちはそれをチャラにしようがどうしようが関係ないよとおっしゃいましたが、それもうそです。

 二〇〇〇年の一月七日付のグアムの命令、これもありましたね、その十二ページに、イ・アイ・イをすべてのHICまたはリージェント関係債務から免除した、リリースしたと書いてある。ない会社のことは書きませんね、裁判所でも。だから、それもうそです。そしてまた、シャーマン・アンド・スターリングが免除したのはまさにRCCに帰属する、国民に一円でも多く負担をかけないようにしなきゃいけない、その十五億ドルを勝手にチャラにしたということをここでは言っているわけですね。それはあなたのせいじゃないですけれども。だから訴えなさいと私はさっきから言っているわけですが、それもまたさっき違うと言ってうそをつかれました。

 そしてまた次のうそが、旧長銀がいまだ公的管理に入る以前に自己の経営判断で行ったことであるとか、さっきからおっしゃっていますが、いいですか、前か後か、これは数字の問題ですからよく聞いてください。一九九八年十月に長銀は国有化されました。長銀のイ・アイ・イに対する債権は一九九九年八月にRCCに譲渡されております。そして、シャーマン・アンド・スターリングは二〇〇〇年の一月に十五億ドルの債務を免除しております。どの点をとってもこれはRCCの債権を勝手にチャラにしたシャーマン・アンド・スターリングの悪事が出ているわけでして、なぜか知りませんが、それをあなたが一生懸命かばおうとしているから、私はぐるじゃないんですかと言っているわけです。

 そしてまた同じようなことを言いますが、ここは国会の場でありまして、きのうはあなたも予算委員会にも来ていましたが、余りそういうことをおっしゃってはいけないと思いますし、きょうはあなたがごまかしている、うそをついていることがわかりましたので、この場で辞任していただきたいと思います。どうですか。

永田参考人 お答えいたします。

 書面は、先ほど申し上げましたように、前回御提示されたものを私どもなりに精査をさせていただいております。こちらでもできる範囲で調べた結果をお話し申し上げさせていただいております。

 したがいまして、先ほども委員会軽視だということでお話をいただきました。その点につきましては申しわけないと思いますけれども、事実の問題につきまして、まさに同じものを見て違う解釈をしておるわけでございますので、その事実に関して少し詰めさせていただいたらどうかということを私は申し上げた次第でございまして、私どもも真剣にこの精査をしておりますので、ぜひ委員の方のお話も承りながら、その点について詰めさせていただければという気持ちで申し上げた次第でございます。

小林(憲)委員 ここにお見えの財務金融委員会の皆さんには、今の御答弁を聞いていただいて、小林がうそをついているのか、永田理事長がうそをついているのか、もう皆さん明白にわかっていただいていると思いますが、金融担当大臣、今の御答弁を聞いて、いかが思われますか。これがRCCという巨大組織、そして預金保険機構というその巨大組織、政府の者がおっしゃるような弁でしょうか。そしてまた、このごまかしについて伊藤大臣はいかがお考えでしょうか、お答え願います。

伊藤国務大臣 私は、永田理事長が、委員が今厳しく御指摘をされているように、何か虚偽の答弁をしたとか、何かを隠そうとか、そういう思いでお話をされているのではないというふうに信じております。一生懸命ファクトを御説明させていただいているというふうに思うんですが、委員の御指摘をされていることと、そこがもしかしてうまくすり合っていないところがあるんではないかというふうに思います。

 永田理事長は非常に誠実に職務に取り組んでおられるということを私も承知いたしておりますので、繰り返し委員の御指摘の点について答弁を重ねさせていただいて御理解が得られるようにされるというふうに思っております。

小林(憲)委員 伊藤大臣、さっき聞いたでしょう。この委員会をうそをついちゃって軽視したのは申しわけないと思っていますと言ったじゃないですか。そんな人をこのままずっとさせるんですか。辞任しないんだったら、きょう解任してください。

伊藤国務大臣 永田理事長の答弁を私も聞いておりましたけれども、そのファクトについてはしっかりお話になられていたと思います。その点についての解釈が、委員の御質問されている、委員が御理解を十分得られない、そのことについてお話しになられたというふうに思っておりますので、永田理事長は繰り返し繰り返しファクトのことを委員の御質問に答えられるように御答弁をされていたというふうに思っております。

小林(憲)委員 伊藤大臣、わかりました。私が頭が弱いかもしれませんので、伊藤大臣にちょっとお伺いします。

 もう一回言います。長銀は一九九八年の十月に国有化されました。イ・アイ・イに対する債権は一九九九年の八月にRCCに譲渡されました。そして、シャーマン・アンド・スターリングが二〇〇〇年の一月に十五億ドルの債務を勝手に免除しました。これはRCCに帰属する前ですか後ですか、ちょっと教えていただきたいと思います。数字だけ追って、今お答え願います。

佐藤政府参考人 旧長銀の特別公的管理の開始は、御指摘のとおり九八年の十月ということでございます。

 ということで、私ども当局として把握できる部分については、こういう形でおっしゃることがそのとおりであるというふうに申し上げられるわけでございますけれども、その他の部分、すなわち、個別の民間業者の間での取引関係にかかわる部分あるいはさらに訴訟にかかわっている部分、こういう部分について私ども当局がコメントすることは不適切だと思います。

伊藤国務大臣 今佐藤局長が答弁をさせていただきましたように、私どもがお話ができますのは、旧長銀の一連の処理の過程の中で、それがどういうスケジュールでということについては今お話をさせたと思います。

 個別の訴訟にかかわる問題については、これを当局としてコメントするということはできませんので、御理解を賜りたいというふうに思います。

小林(憲)委員 もうこうなったら個別のことでも何でも、これはうそか本当かということをやりましょうよ。永田理事長、これは最後のチャンスですよ。私には、カルボという弁護士とジェイコブという弁護士、当時いた人たち、すぐに飛んできて、ここでその裁判のときはどうであったか、全部証言するというサインのレターも持っています。さあ、さっきから言っていることが本当だったのかうそだったのか、言いにくかったら間違いでしたでも結構です。答えてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来申し上げておりますように、私どもも、書面等を精査の上、このようなお話を申し上げております。したがいまして、うそだったのかと、答えろと言われましても、その点は私どもは私どもなりに申し上げているとおりですと申し上げる以外にありません。

小林(憲)委員 それでは、絶対に本当のことを言ったということをここで言っておいてください。これはまた、全部記録して、私、しっかり調べて、弁護士も全部連れてきて、次回に会いましょう。全部本当だ、私は全部うそをついていないと。私が指摘している永田理事長の発言がおかしいと言った点は、全く小林が言っていることがおかしい、全くそうじゃないとここで宣言して終わろうじゃないですか。次は私が弁護士さんたちを連れてきて、証人として出させていただきますし、そのときは辞任ですよ。それか、伊藤大臣、解任ですよ。答えてください、間違いがなかったと。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来同じことで恐縮でございますけれども、私どもは私どもなりにこれを事実だと考えていることを申し上げております。私は、委員のおっしゃっていることをうそだというふうに一度も申し上げたつもりはありません。(小林(憲)委員「じゃ、これは本当じゃないか」と呼ぶ)そうではなくて、私どもの把握しておる事実はこうでありますということを申し上げただけでございますので、御理解を賜りたいと思います。

小林(憲)委員 それでは、次回お会いいたしましょう。

 終わります。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、お諮りいたします。

 ただいま審査中の案件につきまして、政府参考人として厚生労働省大臣官房審議官大谷泰夫君、厚生労働省社会・援護局長小島比登志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。きょうは、まず税制改正について、財務大臣と議論をしたいというふうに思っています。

 二月の三日に私は予算委員会で景気の話をいたしました。そのときから後でまた新しい指標が幾つか発表されております。二月十六日の水曜日ですけれども、昨年の十―十二月期のQEが発表になった。これが、七―九以前の改定実質GDPも含めて、やはり私は、日本経済の景気後退を裏づける決定的なデータになったというふうに思っています。

 実質で昨年の四―六がマイナス〇・八、七―九がマイナス一・一、十―十二がマイナス〇・五、三四半期連続でマイナス成長なわけですから、三四半期連続でマイナス成長ということになれば、これは景気後退というふうに定義をするのがやはり経済の世界の常識なわけですね。それを幾ら、足踏み状態だとか踊り場だとかいうふうにおっしゃっても、それを納得する方の方が少ないというふうに私は思います。

 そういった意味で、実質GDPのピークは昨年の一―三。もう四―六からはマイナス成長期に入っているということなわけで、これは景気後退あるいは失速という状況にあるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 去年の十―十二月期のQE、確かに委員がおっしゃいますように、三四半期連続マイナスという結果が出ているわけでございます。それを、三四半期連続マイナスということは失速ではないかということでありますが、私どもの見方は、確かに、台風の襲来とかあるいは地震もございました。それから、高温が続いたといったような天候要因もあったと思います。それから、輸出もやや弱含みであったということはございます。

 一方、設備投資が三四半期連続増加、企業部門は引き続き好調でございます。それから、家計部門でも雇用者報酬が増加するといった、今後の消費改善につながると期待される動きが見られると思っております。

 それからもう一つは、貿易に関係して言えば、米国や中国の経済も基本的に堅調に移っているというふうに考えております。

 以上のような認識をいたしますと、確かに、今まで弱い部門であった個人消費等も、企業部門の好調が個人消費、家計の部門に移っていく、そういう形になっているのではないかというようなことを考えまして、総合的に判断すると、委員の御認識とはやや違ったものを持っているということでございます。

中塚委員 QEだけじゃなくて、二月の三日に予算委員会でお話ししたときには、実は景気動向指数も出ていなかったわけですね。景気動向指数、一致係数、八、九、十と三カ月連続で五〇%割れ、十一月は五〇%をちょっと上回ったんですが、ところが十二月はまた五〇%を割っちゃったんですね。だから、先行系列は、九、十、十一、十二と四カ月連続して五〇%を割っているということで、やはりこれは、景気動向指数から見ても日本経済は後退局面に入ったということは、もう明らかだと私は思うんです。

 鉱工業生産とか出荷とか見たって、ピークは昨年の五月。四半期ベースでは、七―九、十―十二と二四半期連続で低下をしているということですから、やはり昨年の中ごろにピークを打って、下方に転換している、後退をしているということなわけで、だからこそ、四半期ベースでGDPが三期連続でマイナスになっているということなんですね。

 だから、そういう意味で、穏やかな景気回復ということではなくて、やはりこれは穏やかな景気後退なわけですよ。インディアンサマーという言葉を御存じかどうかわかりませんが、これは要は、穏やかに後退しているんですね。穏やかに回復しているんじゃない。

 確かに、後ほどお話をするような定率減税、恒久的減税を導入したときのように、急激に景気が落ち込んで、金融機関や証券会社が相次いで破綻をする、そういう状況ではありませんが、ただ、今はやはり穏やかに景気後退をしているということだと思うんです。

 先ほどお話の中で輸出を挙げられましたけれども、例えば純輸出、今回のQEでも寄与度はマイナスだったわけですね。十―十二で純輸出の寄与度はマイナス。七―九に続いてマイナスですから、これは二四半期連続でマイナスということです。企業収益は確かに増加していても、雇用者報酬という、こっちにはまだ乗っかっていない。

 要は、景気が自律的な景気回復軌道に乗ったというふうにちゃんと言える、そういう確信というものはまだまだ持てない状況にある。だから、この間の発表になったQEなんかを見ても、昨年の七―九、十―十二は、個人消費は二四半期連続で減少しているということなわけなんです。

 設備投資が好調だというふうにおっしゃいます。確かに、前期比とか前年比の伸びでいけば、すさまじい勢いで伸びているということは言えると思いますが、ただ、二〇〇四年のカレンダーイヤー、暦年の設備投資の増加率というのは、実は前回の景気回復、前々回の景気回復のときよりも増加率としては低いんですね。設備投資の増加率、二〇〇四年暦年でプラス六・九ですが、二〇〇〇年が前回の景気回復、前々回が九七年ということですけれども、そのときよりもいずれも低くなってしまっているということなんです。

 だから、これだけいろいろな、今、経済指標についてお話をさせていただいたということなんですけれども、さらに設備投資について申し上げれば、恐らく輸出関連設備というのは、純輸出が二四半期連続でマイナスですから、今度は輸出関連の設備というのはピークを過ぎると私は思います。そうすると、さらに設備投資は鈍化していくことになるだろうということなわけです。

 そういったときに定率減税を打ち切るということ、三週間前に質疑をしたときと比べて、これだけもう新しい経済指標が出て、しかも、この三週間の間に発表された経済指標を見たって、やはり私が二月の三日に申し上げたことを裏打ちするような結果になってしまっているわけなんですね。だから、ここでいま一度そういった、皆さんの発表されたインデックスから見ても、今この定率減税というのを打ち切るということについては、タイミングからいっても行うべきではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今いろいろ詳細におっしゃいまして、全部申し上げるわけにもまいりませんけれども、企業部門について見ますと、日銀短観十二月を見ますと、大企業だけではなく、中堅企業、中小企業いずれも企業収益増加が見込まれている、全体の一五%強の増収見通しだと。それから、設備投資についても今おっしゃいましたけれども、十―十二月のQEでも、前期比に比べるとふえております。それから、機械受注は先行指標と言われておりますけれども、それも、動きを見ましても、今後とも増加が期待できる状況というふうに見ているわけでございます。

 それから、確かに輸出も弱含みであったということは私もそのとおりだと思いますが、アメリカ等の動向も非常に堅調であると思っております。二〇〇四年の成長率は四・四%、この拡大傾向は今後も続くというふうに見ることができるのではないか。

 それから、中国はむしろ景気は拡大しているのは御承知のとおりですけれども、いろいろ過熱かどうとかという御議論もあって、それはもちろんそのあたりをどうしていくかという心配もあるわけでございますけれども、私は、そういう動向から見ますと、貿易等も先行きがだんだん期待できるという状況ではないかと思っております。

中塚委員 二月の三日に質疑をさせていただいたその日だったと思うんですが、アメリカはフェデラルファンドレートを上げたんですね。だから金利を上げるわけですね。要は、やはりアメリカは穏やかに景気を減速させようとしているということだと思う。それは、確かに成長率の見通しはおっしゃいましたが、でも、アメリカの政策当局は、私は景気を穏やかに軟着陸させる方向で考えているんだというふうに思います。

 いま一つは、中国のお話をされましたが、中国経済をこれからどういうふうに見ていくかということは大変に大きな課題で、ともすると中国脅威論みたいなことばかりを言う方がいるんですけれども、私は平成三年ぐらいから毎年中国の方にもお邪魔して、向こうの社会科学院というところのテクノクラートともいろいろ議論をいたしますけれども、中国は中国でやはり大変いろいろな大きな問題を抱えているんですね。

 経済の面でいくと、やはり一番大きいのはWTO加盟なわけですが、要は、WTOに加盟することによって、関税障壁はもちろんですが、非関税障壁も取っ払っていかなきゃいかぬということになると、実はこのことは中国経済に対してかなり大きなインパクトを与えることになってくるわけなんです。

 短期的にクリアしなきゃいけない課題というのもたくさんありまして、大体二つだと思うんですが、一つは国有企業改革、もう一つは農業なんですね、中国の今一番抱えている問題の大きな部分というのは。だから、改革・開放という言葉を聞いて随分久しいものだから、中国は大分市場化が進んでいるんじゃないのかというふうに思ったりもするんですけれども、実に中国の固定資産投資額の四五%は国有企業なんですよ。しかも、就業者の三五%も国有企業で働いているんですね。その国有企業改革というのは、今の胡錦濤政権にとって最大の課題であって、これをどういうふうに効率よく変えていけるかということで、今実は彼らが株式制ということを言いかけている。

 ところが、株式制というのは社会主義経済自体を否定することにもなりかねない。まさに自分たちのレゾンデートルを侵しかねないということなんですね。でも、それをやらないと中国経済はもっていかない。国有企業を何とかしないと、中国はもっていかないということを言っている。もうかなりの荒療治になるわけです。そうすると何が起こるかというと、あの国でやはり失業がどんと出る。

 実は社会科学院の経済学者なんかと話をしていると、今でもやはり中国の失業率というのは一〇%ぐらいだと言われている。それが、三五%の人間を抱えている国有企業が株式化になって本当の意味での市場経済の荒波にさらされると、またさらに失業者がふえるということですし、もう一つは、国有企業の担っていた社会保障機能というのもなくなってくる。だから、これは大変に向こうの国にとっても社会の不安定要因なんですね。

 実は、第十六回の中国共産党の大会で所得四倍増計画というのが発表されまして、これだけ聞くと本当にびっくりするんですが、所得四倍増計画、二〇〇〇年から二〇二〇年の間にGDPを四倍にするということを中国共産党が政策目標に掲げている。二十年間で四倍ということは、実質で大体七・二%成長しなきゃいけないということなんですね。

 この七・二%成長しなきゃいけないということだけを取り上げて、みんなが中国経済はすごいというふうに考えがちなんですが、逆に言うと、今後二十年間平均で七・二%で成長しなければ、この失業者の問題とかを解決できない、そういう大変に危うい状況にあるわけなんです。

 このことは実は質疑通告はしておりませんので、私が知っている範囲での中国経済の課題というものをお話をさせていただいたんですけれども、いずれにしても、そういう大変に中国経済も危ういんですね。

 ですから、やはり外需が主導で始まった今回の景気回復ということについて、私はそれは否定はしない。要は、昔は減税をやったり公共投資をやったりして内需に火をつけて景気回復させようということだったわけですが、今回それが外需になっている、外需が取っかかりだった。ところが、純輸出がマイナスになった途端にぱたぱたぱたぱたっとマイナスがふえてきてしまっていて、もう個人消費までマイナスになっているというときに、果たして、では定率減税を廃止、縮減をするというのが本当にいいのかどうかというところに、また問題は帰ってくるんですね。

 さっき景気動向についての御意見はいただきましたけれども、そういう景気動向の認識であるから定率減税の廃止、縮減は行うという御答弁になると思うんですけれども、ぜひここは、私の今申し上げたことは軽く見ないでいただきたいというふうに思います。私自身は、もう絶対に今定率減税、所得税を増税するべきではないというふうな考えを持っていますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 中国についても委員のいろいろな研究の成果をまとめてお話しいただいて、いろいろ勉強させていただいたわけでございます。私としては、中国もやや過熱の気味があるから、巡航速度にうまく入ってほしい。いろいろな問題があることはあの国の指導者と話をしても感ずるところでございまして、苦労も多いと思うんですが、まず巡航速度に持っていってもらいたいというふうに思っております。

 それで、景気の認識は委員と私の間に若干、若干かうんとかわかりませんが、溝があることは事実でございますけれども、要するに、定率減税の導入という観点で申しますと、一つは今のような景気認識もあるわけですけれども、もう一つは、導入当時のあの底が抜けるような状況と現在の不良債権処理等が進んできた状況との違いというのがあろうかと思います。

 それからもう一つは、平成十八年度で国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しを行うこと、これはむしろ議論を先に送ってしまうかもしれませんが、その際には、臨時異例の措置である定率減税をもとに戻す必要がある。

 それから、やはり今私どもは、今の財政の事情が、景気、いろいろな不安の心理とか将来に対する確信のなさから、むしろ経済の足取りを引っ張るんではないかということも恐れておりまして、着実に財政健全化を進めていく必要があるというのはるるこの委員会でも申し上げているわけでありまして、こういう取り組みの一環として、我が国個人所得課税の極めて低い負担水準も考え合わせますと、景気対策のための特例措置である定率減税は見直すことが必要じゃないかというふうに思っているわけでございまして、そういうことを組み合わせてこういう判断をしている。

 委員のおっしゃったことを、私軽くとるつもりはございません。私どもも、一遍にもとに戻すより、やはり段階的にやっていったらいいんではないかというようなことも考えているところでございますし、また、景気動向というのは当然、これも繰り返し申し上げておりますけれども、生き物でございますから、よく注意をしながら見てまいりたいと思っております。

中塚委員 定率減税を見直すというか変えるというときに三つポイントがあって、それは、やはりまず一つは景気ですよね、景気動向というものを見なきゃいかぬ。もう一つは、今おっしゃった、所得税の望ましい税制のあり方をどう考えるかということがありますね。もう一つは、それとの関連で、国と地方との税源移譲であったり補助金改革であったり交付税改革であったりするということなんですが、私は、だからそういう意味で、この廃止、縮減というのは三つともその条件を満たしていないんではないかということを申し上げているんですよ。

 まず第一、景気のことは今お話をしたとおりです。だから、今は定率減税の部分についていじくるようなタイミングではないということがまず第一点ですね。

 第二点は、法律にも書いてある。要は、ちゃんと抜本的な税制改革をやるんだと。そもそもこの恒久的減税を行ったときに、抜本改革をやろうということでスタートした。そのことは前もお話ししたんですが、恒久的減税をやるときに抜本的改革をするんだということでスタートした。だから、最高税率も下がっている、法人税の税率も下げた、減税額が積み上がらなかったから定率を入れる。

 この定率減税というのは、その前に、平成六年とか七年、八年も定率減税だったんですかね、やっていた減税制度で、そのときは特別減税というふうに言っておったわけですが、特別減税というと結局臨時の減税だから、要は増税予告つきになっちゃうんですね。もちろん財政も大切ですけれども、ただ、要は、増減税一体でなければいけないという考え方をお持ちの方がやはり多い、そういう意味でこの特別減税的なやり方はだめだという話もしたんですけれども、額が積み上がらなかったからとりあえずこれでと。それで、この恒久的減税も、制度改革、望ましい税制を目指すための改革だということで行って、減税のやり方自体は今後も協議していきましょうということになっているわけなんです。

 ですから、そういう意味で、やはり望ましい税制の姿というのをばっと示さないと、それは私は、恒久的減税の定率減税の部分だけをとって、そこが景気対策だからといってやめるというのは違うというふうに思う。

 それと、もう一つの関連で、きょうは三位一体についてもちょっと伺いたいことがあるんですけれども、では、国から地方に税源を移譲したときにどうなるのかという姿もやはり明確には示されていないですね、譲与税方式で向こうに回されているだけなわけですから。だったらせめて、その十八年というターゲットがある、消費税は十九年ということもおっしゃっているわけだけれども、では、十八年、十九年というターゲットがあるんだったら、何も今これを法律で決める必要なんかないと私は思うんですよ。今これを法律で決める必要なんかないと思うんですね。

 やはり、今申し上げた三つのことをちゃんとクリアにした上で、いつまでも税制改革やるなというふうには申しません。やはりそれは社会経済情勢の変化に応じて税制は変えていかなければいけないものだというふうに思っています。というよりも、本当に今税制は私たちの暮らしとか生活に追いついていない部分の方が多い、だから変えていくべきだと思うんですが、ただ、当時の約束事、導入時の約束事という意味もありますが、あとはやはり我々が今何をしなきゃいかぬのかということで考えた場合でも、この三つのことを明らかにしないで定率減税の部分だけを廃止する、あるいは縮減するというのは、私はやり方が間違っていると思いますが、いかがでしょう。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 委員とはたびたびこの問題で議論をさせていただいておりますので、何か同じことの繰り返しになってしまうのではないかと危惧もいたしますが、導入のときの事情についてもこの前議論をさせていただきました。私なりの当時の見方も申し上げまして、当時小沢先生のそばにおられて私どもの党との協議に立ち会われた中塚委員の感じと、当時私が政務次官として見ていた感じとの間に若干受けとめ方の差もあるのかなという気はいたします。

 それで、要するに、さはさりながら、定率減税というもの、確かに単年度ごとにやっていたんでは、委員のおっしゃるように増税予告つきみたいなイメージでとられてしまうから、単年度ごとのものではないんだ、しばらくこれはやりますよという意味でああいう定率減税という形になったんだろうと私も思うわけでございます。

 では、それならばそれで、それを縮減、廃止していくならば、一体あるべき税制とは何なんだということをもう少し示せ、こういうことであるわけでございますが、あるべき税制に向けた取り組みというのはこれまでもやってきたというふうに思っております。控除の見直しとか、あるいは現在のいろいろな、土地取引とか金融市場の動向等を見て、個人の所得課税のあり方も見直してきたということもございます。それから、そういうようなことをいろいろ見直してまいりましたし、また、特に三位一体との関係では、地方住民税というものは応益課税の原則からフラット化というものをしていく、そういうことになると、所得税の方は、もう少し所得再分配機能というのかそういうものを見直して、三位一体との関係では納税者に急激な変化を来さないようにしようとか、もちろんまだ論じ尽くされていない課題もたくさんあるわけでありますけれども、幾つか今後の方向性は示してきたつもりでございます。

 そして、そういうものと一緒にやれという御主張もあるんだろうと思いますが、私どもとしては、一遍にやるよりも段階的にやった方が、これは私どもとしての景気への配慮ということもございまして、二段階でやらせていただこう、こういうようなことでございますので、若干今のあたり、先生のお考えと違うところもありますけれども、私としてはそのように考えております。

中塚委員 十八年、十九年の抜本改正ということであるならば、やはりその十八年、十九年にどういう税制にするかというのはあわせ出すべきだということを私は申し上げているんですね。

 その上で、景気の動向を見れば、やはり景気は、はっきり言って穏やかに回復しているとは、とてもじゃないが言いがたい。特に、要は所得が伸びない環境下において、所得に税の負担をふやすということは、これはますますやるべきではないということなんです。

 今、日本経済の状況というものを見た場合に、やはり家計部門というのは厳しいですね。企業部門にはお金がある。ですから、今やるべき税制改革というのは、私はやはり所得税はもちろん抜本改革の姿を見せる必要があると思いますが、では、今すぐ景気、経済のために何をやるのかということになれば、この法人部門が上げている収益というものをいかに有効に活用させるかということに尽きると思うんですね。ですから、本来であればこれが所得に乗っかるということで景気回復の軌道に乗るということになるんですが、そうでなければ、やはりここのところは法人の上げている利益をどういうふうに有効活用するのかということが私は大変に重要だと思います。かといって、別に法人税を増税しろというつもりは全くないんですけれども、せっかく国際競争のために下げてきた税率を上げろというつもりはないんですが、今ここでやるべきは、法人の持っているお金というものがちゃんと使われるようなそういう仕組みを考えていくということだと思う、それに尽きると思うんです。

 例えばですけれども、やはり規制緩和、政府の方でも取り組んでいらっしゃいますが、はっきり言って、宮内さんでしたか、遅々として進んでいるというお言葉を昔言われたわけなんですけれども、そういった意味で、やはりその歩みが決して速いというふうには思えない。でも、これだけ今法人のところに、企業のところにお金がたまってきているわけなんだから、やはり新規に投資をしたくなるような分野を積極的に開放するべきだと思うんですよ。それこそが実は今やるべき政策だと思うんですね。

 また、あるいは、その設備投資は大臣は伸びていくという御認識でしょうが、私は、申し上げたとおり、過去二回に比べるとそんなに強いわけじゃないし、輸出関連はこれから減っていくだろうというふうに思っておるんですけれども。この設備投資にしたって、やはり税の面でもっと優遇をしてやるべきなんじゃないかというふうにも思うわけですね。加速度償却制度を入れていくとか除却損を税額で控除してやるとか、そういったやり方で、今やるべきは所得に対して課税を強化するということではなくて、法人の持っているこのお金をいかに日本経済のために有効活用させることができるか、そのためのインセンティブをどういうふうにつくれるかということだと思うんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 法人に対してどういうインセンティブを出していくか。税の方でいえば、政策減税と申しますか、租税特別措置の中で何か工夫できることはないかということにまずなるんだろうと思うんですが。きょうは実は御党鈴木先生からは法人税をもっと課税すべきではないかというようなことで、また違う形でお答えするので、ちょっと頭を整理してからお答えいたしますが。

 平成十五年度の税制改正で、企業部門が全体として資金余剰状態にある、それで過剰な設備、負債を抱えている状況の中で経済活性化を図るためには、やはり二十一世紀の我が国を支える産業技術の創出に必要な研究開発であるとかIT投資に直接つながる政策をやろうというので、そこを集中重点的にやらせていただきまして、これは、私は、相当効果があったし、現在もその効果があらわれているというふうに思っております。

 ですから、こういう基本的な政策税制の効果を検証しながら、活性化と構造改革のために役立つところに、やはり政策税制というのは余り広げるべきものではなくて集中重点化して行うべきものだというふうに思うんですが、委員のお考えに近いことは私どもも既にやらせていただいているというふうに考えております。

中塚委員 やっていらっしゃるという御答弁でしたが、やっていらっしゃってもこれだけお金がたまっているという現実があって、私が申し上げているのは、このたまっている金をどう使えばいいのかということですから、それは、私が言ったことはもうやっているという御答弁でありましたけれども、だったら、もうちょっとその控除の率を上げるとか、限度額があったらそれを取っ払うとか、そういった工夫が今必要なんじゃないかということを申し上げているんです。

 いずれにしても、やはり法人の持っている金をどう有効活用するかということは最大のポイントになるということが第一点。もう一つは、景気の動向という意味では、やはりこのすごい収益を上げている大企業、それも製造業ですけれども、その収益が私は本当に設備投資を支えてくれればいいと思っています。設備投資の増加を支えてくれればいいと思っている。やはり、雇用者報酬の落ち込みを防ぐ方に使われればいいと思っています。そうなってほしいと思っていますが、ところが、今いろいろお話をした指標からはとてもそうなるというふうには読めない。現実、現状であっても後退をしているということを申し上げているんですけれども、やはり今後のポイントというのはこの二つだと思います。企業の収益がちゃんと設備投資をふやしていくか、そしてまた雇用者の報酬を上げていけるかということが、これからはやはりポイントだと思うんですね。

 以前御答弁いただいて、景気が変動した場合には政府・与党として対応するということをおっしゃっていたんですけれども、年中では行わない、要は、来々年度の税制改正の際に考えるという御答弁であったと思いますけれども、そこはやはり、ぜひ柔軟に、もっと弾力的に考えなきゃいかぬということだと思っています。

 この定率減税については、また法人の上げている利益をどう使うかということについてはこの程度にいたしまして、次は、さっき申し上げた望ましい税制ということに関連して、今の日本の社会経済状況というものも含めて、大臣にちょっと意見を伺いたいというふうに考えているんです。

 二月の二十三日予算委員会で公聴会が行われまして、我が党推薦の公述人だったんですが、山田昌弘さんという東京学芸大学の教授が来られたんですね。大臣、パラサイトシングルという言葉は御存じでしょうか。

谷垣国務大臣 聞いております。

中塚委員 このパラサイトシングルという言葉は、何か大変にいいイメージを持っていない言葉なんですね。そういう意味で、この公述人に対して私、質疑をしたんです。この山田教授の書かれたものなんかを一通り全部目を通したんですけれども、やはり、確かに日本の社会とか日本の経済の病巣というのは、実はここにもうすべて集まっている。それは個人の問題じゃないわけなんです。よくありがちな議論として、親に甘えるな、若い者は親に甘え過ぎだみたいな、そういう精神論的な部分に陥りがちなんですけれども、これは知れば知るほど決してそういうことではなくて、まさに日本の構造問題ということだと思うんですね。

 パラサイトシングルというのは、まさにその言葉のとおりで、親と同居する単身者のことを言うんですが、大多数がフリーターであるということなんですね。パラサイトシングル自体が何か一千万人ぐらいいるという話もある。

 要は、親と同居をしてアルバイトをするわけですから、生活にかかるお金というのを一切自分で払う必要がない。だから、アルバイトで稼いできたお金というのは全部自分の小遣いというか自分の使いたいものに使えるということなんです。一見すごく経済合理的なんですね、個人のレベルで考えると。それは、親のところに一緒に住んでアルバイトに行くということはすごく経済合理的な行動様式だと思いますが、ところが、やはりこれが日本の経済社会の停滞の大きな原因にもなってしまっているということなんです。これは、別に若者が甘えているということだけではなくて、やはり親の方にもすごく問題というのはあるんですね。

 ことしちょうど戦後六十年になるんですが、今までは余り豊かではなかった。それが、豊かになるために努力しようということでみんなでやってきた。今はそこそこ豊かにはなっている。世界のほかの国から見ればかなり豊かにはなっている。豊かにはなったんだけれども、その豊かになってくる過程で、親のあきらめた夢というものを子供に強いる。今本当に豊かで自由な社会になっていますから、もうあなたは好きなことをやりなさい、何でもできる、何でもやりたいことをやりなさいというふうに言われても、ところが、経済社会というのは、そんなに若い人がやりたいことができるような世の中にはなっていないわけなんです。大体こういう場所にお集まりの皆さんは、やりたいことをやってこられた方で、世間ではやりたいことをやって成功した人だということになるんですけれども、でも、今は決してそうではない。

 高度情報化によってニューエコノミーと言われるような経済になってきているわけですね。そういう意味で、社会保険料の問題もあって正規雇用というのはどんどん減っている。正規雇用が減って、臨時雇いがふえている。だから、幾らやりたい仕事があったとしても、その仕事につけるかどうかはわからない。だったら、その仕事につけるまで、親のところに同居してアルバイトでもして暮らしていこうかというのが、実はこのパラサイトシングルなんですね。

 もっと、例えば、歌手になりたいとか野球選手になりたいという人もいるようなんですけれども、そうやって夢を追いかけてもその夢というのは実はかなうかどうかはわからない夢なんですが、でもそれをずうっと追いかけていく、そういう状況にあるわけなんですね。

 私は、本当にこれは大変な問題だと思います。というのは、例えば景気とか経済という面で見たって、親のところにいるということは一人で住まないわけですから、それだけでもやっぱり住宅投資は減るし、耐久消費財だって売れないということになるんですね。だから、そういう意味で、今なかなか日本の経済がうまく回っていかない原因の一つということであるかもしれないぐらいの、やっぱりこれは大問題なんです。

 もう一つは、出生率の低下ということが言われておりますが、結婚している人の産む子供の数というのは、減ってはいるんですが、実はそんなに変化はないんですね。だから、なぜ出生率が低下しているかというと、結婚しない人がふえているということが大きな原因のようなんですね。それも実はこのパラサイトシングルということにすごく関係する。

 要は、親と一緒に住んでいるわけですから、その親と一緒に住んでいるパラサイトシングルというのは生活水準が割と高い。それが高いから、ひとり暮らしすると生活水準が下がるからしないわけですね。ところが、結婚したらさらに下がるわけですよ。今は、はっきり言って、給料はどんどんと下がっている。昔のように、年功序列で会社に勤めればずうっと給料が上がっていくという時代でもないわけですね。結局、希望、夢を追い求めながら、実は夢も希望もない社会に生きているということなんですね。これは本当に大問題。だから、日本の若者問題というのは、今の日本の経済社会の縮図だというふうに思います。

 村上龍という小説家がいて、「希望の国のエクソダス」という小説を書いた。その中に、中学生に言わせている言葉があって、この国には何でもある、でも、たった一つ、希望だけがないというふうに言っている。そういうふうな世の中になっちゃっているわけなんですよ。この問題は本当にもう早く解決をしていかないといけない。

 特にそのパラサイトシングルに関連して、税のことでお伺いをいたしますけれども、長くやっぱり家族単位課税ですよね、我が国は。平均的なケース、皆さんが例えば課税最低限ということをお話しになるときには、要は、御主人がお仕事をされて奥さんが専業主婦で、夫婦子二人、一人は大学生みたいな、そういうのがモデルケースになっているわけですね。ところが、実はもう、そういう家族、そういう標準ケースの家庭というのはほとんどないわけなんですよ。

 もう一つは、それを標準ケースにしているということは、日本の税制というのは家族単位で課税をするということをやっぱり前提にしているからなんですね。人口減少社会の中で女性にもどんどんと働いてもらわにゃいかぬということは言われておりますが、であるのなら、その家族単位の課税ということではなくて、個人単位の課税に変えていくべきなんじゃないか。二分二乗とかいろいろやり方はありますが、やり方のことは別にして、私は、民主党として、人的控除を廃止するということを提案しているんです。

 その人的控除を廃止するということの中には、要は、片働き専業主婦で扶養家族ということではなくて、個人単位で課税をする、そういう方式へと改めていくべきなんじゃないのかというふうに思いますが、そこはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今のパラサイトシングルということから、現在の若い方の価値観や若い方をめぐる社会の状況を分析されたわけでございますが、伺っておりまして、私自身も、何十年も前ですけれども、なかなか司法試験に受からなくて親のすねをかじりながら勉強したのは、あれはパラサイトシングルだったのかな、随分流行を先取りしていたのかなと思ったりもしたわけでございますが。

 確かに委員がおっしゃいますように、今まで私どもがいろいろな政策を考えてきたときに、特に控除のことをお触れになりましたけれども、やはり夫婦それに子供二人ぐらいの世帯を標準世帯というようなイメージが何となくあって、そういう世帯としての負担調整をどうするかという観点からいろいろなことを考えてきた。その背景にはやはり、戦後の民法改正等で、今までの、家といいますかそういうものを中心とした民法から、個人を中心としたというよりもやっぱり核家族を重視した戸籍制度もつくり、民法制度もそういう考えのもとにつくってきた。そういう戦後の、何というんでしょうか、家族観と申しますか、そういうものが背景にあったんだろうというふうに私は思います。

 したがいまして、ちょっと委員のお話とはずれてしまうかもしれませんが、今行われている夫婦別姓とかああいう問題も、戦後の民法が重視した核家族を重視していくのかどうかというような、そういう理念が背景にある議論なのかなというふうに思うわけでございます。

 それで、政府税調でもそういうあたりは関心を持って議論をしていただいておりまして、「扶養に対する配慮については、少子・高齢社会における子育ての重要性を考え、今後、児童など真に社会として支えるべき者に対して扶養控除を集中することが考えられる。」としておりまして、要するに、標準世帯というものを考えて、何というか、総花的というと変ですけれども、そういうことよりももう少し集中する必要があるんじゃないかということを示唆していただいているわけでございます。

 ですから、私どももこういう指摘を踏まえて、世帯構成がやっぱり昔と大きく、意識も変化して多様化している。それから、家族の就労というものに対して、中立的な仕組みをつくっていく必要があるんじゃないか。配偶者特別控除をいじりましたのも、やっぱりそういうことが背景にあるんだと思います。

 それから、政府税調で指摘していただいたわけですけれども、子育てというものはやはり重視しなきゃいかぬというようなことで、今までのものをどう整理し、効果的なものに、新しい家族観に適したものになるのか、できるのか。今後とも幅広い視点から、今の委員のお話も幅広い視点から見なきゃいかぬということだと思いますので、私どもも議論をしてまいりたいと思っております。

中塚委員 谷垣大臣が過去パラサイトシングルだったというのはそれは実は全然違って、司法試験も合格されたわけですし、周りの人も谷垣大臣だったら合格されるだろうというふうにみんな見ていたんでしょうから。努力が報われるということで初めて希望というのが持てるんですね。努力が報われないというときに希望は持てなくなってしまうわけなんです。

 法科大学院というのもできましたけれども、でも、法科大学院ができたって、出れば必ず弁護士さんになれるというわけではなくて、やっぱりそこでは、なりたいと思っていてもなれない人というのは出てくるわけですね。今の日本の教育制度は、実はまさにそういうことだと思うんですよ。

 昔は、一生懸命勉強しろ、そうしたらいい会社へ入れるぞ、いい会社へ入ったら何か年功序列で、初めは給料が安くたってどんどん給料が上がっていって、最後は退職金ももらえるし企業年金というのもついているぞ、だから一生懸命勉強しなさいということだったんですが、でも今はもうそうじゃないんですね。一生懸命勉強していい大学に入ったって、ではそのいい大学でちゃんといわゆるいい会社に勤められるかというと、そうではない。それで入ったって、その会社がつぶれてしまうということだってあるわけですね。

 だから、そういう意味で、希望が持てるということが大切なので、谷垣大臣がパラサイトシングルだったなんて言うと、それはちょっと違うんですね。というか、本当に今のパラサイトシングルの方の気持ちというのは、そういった谷垣大臣が勉強されていたようなあれとは違うんですね。ですから、そこはちょっと申し上げておきたいと思います。

 それで、私も家族を崩壊させろなんて言うつもりは全然なくて、家族は家族で十分に、これからもいろいろな面でいろいろな意味で価値を持っていくんだろうと思っているんですが、いみじくもおっしゃったとおり、働き方に対して税制が中立じゃないというのは、これはやはりおかしいわけなんですね。

 ですから、そういった意味で、ちゃんと、共働きであろうが専業主婦であろうが、それはお金を持っている、余裕のある人は奥様は専業主婦でも構わない。また逆に、キャリアウーマンでばりばり稼いでいる人は、御主人が子育てが好きだという方もいらっしゃるかもわからない。それはそれでいいんですけれども、でも、やはりそうでないおうちというのは、御主人と奥さんと二人で働いてやっと生活を維持するというふうなことだってあるわけなので、まずはその第一点は、家族単位の課税から個人単位の課税に変えていく、税制は働き方に対して中立であるということに変えていくべきだというのがまず第一点。

 第二点目は、私ども民主党として、人的控除を廃止するということで、その財源で児童手当、子供手当というふうに私ども言っていますが、それを拡充するべきだということを提案しているんですね。これには理由が実は二つあって、要は、扶養控除があるからパラサイトシングルになろうと思っている人や子供を家に置いておこうと思っている人はいないと思いますが、いないと思いますが、でも、税制というのはやはり社会のあり方を決めるわけだから、この扶養控除という制度があるせいでどうしてもそういう形に流れていきやすいというのは、私はやはり事実だと思うんですよ。

 ですから、今の扶養控除というのは、年齢関係なく、扶養と言えば扶養控除が適用されるということですけれども、やはりこれはもうやめるべきだと思うんですね。東京学芸大学の山田教授は、親同居税をつくれみたいなこともおっしゃっていたんですが、それはちょっと、余りにもとっぴな話だと思いますけれども、でも、やはり私は、扶養控除はもうやめてもいいと思う。そのかわりに、それの財源で児童手当、子供手当、子育てを応援するべきだ。

 というのは、実は今、日本で生まれる赤ちゃん、第一子の赤ちゃんの四分の一ができちゃった婚なんです。要は、四分の一の赤ちゃんができちゃった婚によって生まれているんですね。できちゃった婚というのは、それはどういう意味なのか御存じだと思いますけれども、結局、子供ができて一緒になるということで、みんなもそれを、では認めようという話になって認められるんですけれども、結局、そんなに生活の基盤がしっかりできている人たちが結婚しているわけではないということなんですよ、できちゃった婚になるということは。だから、そういう若い世代ができちゃった婚で結婚して、日本で生まれる第一子の四分の一がそういう形になっている、こういうところに児童虐待とかいろいろな問題の根っこもあると私は思っているんですが。

 そういった意味で、扶養控除をやめて、その分の財源で子供手当をつくって、生活の基盤が整わない人でもちゃんと子育てができるような、そういう制度に変えるべきなんではないのかということを民主党として提案しているんですが、いかがでしょう。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 配偶者特別控除の改革をしましてそれを少子化対策に使おうというのと、発想としては、委員のおっしゃったのと似たところがあるだろうと思いますし、私ども、さっき申し上げた中で、控除というものは新しい家族のあり方や何かに照らして見直していかなきゃいけないんだけれども、そのときに、やはり子育てというものは大事だということは、それが委員のおっしゃった児童手当かどうかは別としまして、今の控除というものを、廃止するかしないかは別として、どういう思想で見直していくかという点では、委員のお考えというのは、私、非常に同感するものがあるわけでございます。

 要は、私どももこれから税制を考えますときに、やはり多くの国民の実際の生活というものが視野にありませんと浮き上がった税制になってしまいますので、そういう生活実態というか家庭の実態、子供が育っていくときの実態というものを十分に踏まえながら、問題点を整理していきたいと思っております。

中塚委員 要は、児童手当、子供手当と私は呼んでいますが、それにしても、月額で何千円とかいう程度の話じゃ、それは犬だって飼えないわけですよ。やはりそこはちゃんとお考えをいただきたい。何せ、人口が減っていくというのはすさまじいことですね。人口が減っていくということは、生産性が上がらなければ経済規模はそのまま縮小していくということになるわけですから、私ははっきり言って、新幹線つくったり空港つくったりしている場合じゃないと思う。だから、建設国債を発行してでも子供政策をやらにゃいかぬというぐらい、それは大事なことだと思うんですね。

 ですから、余りちまちました話じゃなくて、やるんだったら、すぱっと人的控除を全部廃止した上でその金を回すというぐらいのことをやらなきゃ、やはりインパクトは与えられないだろうというふうに思います。

 次に、三つ目なんですけれども、次は消費税のことについてお伺いするんですが、このパラサイトシングルとかフリーターと言われる人たちは年金の保険料を、多分国民年金だと思いますけれども、払っていない人の方が多いわけですね。そういった意味で、こういった方々が今度受給者サイドに回るとき、大量の無年金者が発生をするということになってしまうんじゃないか、そういう危惧を持たざるを得ないわけなんです。

 実は、このパラサイトシングルと言われる世代は、第二次ベビーブーマーですから、日本の人口の中でも大変多いんですね。そういった人たちが年金の保険料を払っていない。自分が年金をもらうときになったら、ではあなたは年金保険料を払っていないんだから上げません、年金は差し上げませんということになって、では国としてそのときに、年金払えないんだからもう死んでくれということにはならないですよね。やはり、そうなったら生活保護なりなんなりということをやっていかなければいけなくなる。そうすると、最後はやはり税金でこれを手当てするということになってしまうわけなんですね。

 だから、今の年金制度、特に国民年金は、二十以上だったら学生さんでも収入がなくても保険料は払わにゃいかぬということになっている。猶予措置やらいろいろありますけれども。だから、現実問題は、親が立てかえたり、あるいは年金をもらっているおじいちゃんやおばあちゃんが孫の年金の保険料を払っているという例だってあるわけですよ。ですから、やはりこれはちゃんとみんなで支え合う制度にして、無年金者を出さないという配慮が今何よりも求められていると思うんですね。

 私ども民主党として、消費税を年金目的消費税に改めろということを言っている。基礎年金とは言わずに最低保障年金というふうに言いますが、その最低保障年金の財源として消費税を使うべきではないのかということを主張しているんですが、この件についてはいかがでしょう。

谷垣国務大臣 確かに、いわゆるパラサイトシングルという世代の人たちが年金にも十分入っていない、それが今後どういう問題を生むかというのは極めてシリアスな問題ですから、我々も十分その対策も考えなきゃいけないのは、そのとおりだと思います。

 それから、年金に触れて消費税をおっしゃいましたけれども、これもたびたびこの委員会でも申し上げておりますとおり、年金に限らず社会保障はどうしたってふえていきますから、それに対する幅広い負担を公平にどうお願いするかということになりますと、消費税というものの議論が日程に上ってこざるを得ないだろうというふうなことは私も申し上げておりますし、そこは全く共通でございます。

 ただ、要するに年金を消費税で賄う、年金を税で結局賄っていかざるを得ないだろうということになりますと、果たしてそれがいいのかという点は、これもあるいは今まで申し上げたことがあるかもしれませんが、委員のお考えとは若干違っているわけでございます。これを全部税金でやるということになりますと、相当多額の税源確保というものが必要であることは、これは申すまでもございません。

 今の委員の御議論も私は耳を傾けなきゃならないところがあると思いますのは、現実にはできちゃった婚であっても、そうやって生まれてしまったけれども、十分な子育ての基盤をつくらずに、用意しないままに子供を産んでしまったという人が多いじゃないか。それから、やはり自分の将来設計もなかなか十分できない、これは本人が悪いというだけじゃなしに社会の環境もあると思いますが、十分なそういう意識を持てないままに、パラサイトシングルみたいな形で老後のことも余り考えずに、悪い言葉で言えば、うかうかとと言うといけないかもしれませんがそういう面もある、そういう方々に対して、やはり君らしっかりしろと言うだけでは足らないということは、私もそのとおりだと思います。

 しかし、他方、それに対する対応は欠かせないにしても、どこかでやはり自立自助という考え方がなくていいのかどうか、ここらをどのぐらいのあんばいで、自立自助という考え方と、委員のおっしゃるような、なかなか準備ができないままに進んでいってしまう若い世代をどうバックアップしていくかというその二つは、全く切り離して一方だけでいいというものでもないと私は思うんです。どこかで自立自助の考え方と、それから、しかしそうはいっても十分に準備できなかった人たちにバックアップをする体制というのは、私は両方考えなきゃいけないのではないかと思うんですね。

 そういうふうに考えますときに、やはり保険料を納付してきた者に対して年金を給付するというような、受益と負担の関係を明確にしていくということは捨てがたい面があるのではないかなと私は思っているわけです。

 それから、さらに言えば、これも何度も議論があったところでございますが、生活保護との関係をどうしていくかというような問題もございまして、現状をどう憂えて分析するかという点では、委員と私、かなり共通のところがある、あるいは全く共通かもしれませんが、それに対する処方せんではまだにわかに御一緒にはなれないところがございます。

中塚委員 まず、パラサイトシングルの人は老後を心配していないなんということではなくて、すごく心配しているんですよ。でも、心配してもどうにもならないわけですね。要は、五年先のこともわからないのに、四十年先にもらう年金の保険料なんか払えますかということなんです。

 だから私は、無年金者を出さない制度をつくるべきなのではないのかということを申し上げているわけで、そのために消費税によって最低保障年金というものをつくるべきだということを民主党は主張しているということをお話し申し上げているんです。

 財政制度からの議論は何ぼでもできるし、そのこともまた改めてやりたいというふうに思っていますが、ただ、私は、要は今の日本の社会の現状というのはこうであるということをぜひ大臣を初め皆さんに御理解をいただいて、そのために何をしなきゃいかぬのかということをこの望ましい税制のあり方というものに反映をさせていかないと、本当に日本に未来はないと思うんです。

 そういったところまで追い込まれてしまっているわけなので、大臣が方向性についていろいろお話をされて、私も、私の意見、党の意見、申し上げましたけれども、であるならば、できるだけ早く、本当にそういう姿をばちっと出すべきなんですね。

 ここで、定率減税との関係でいえば、そういう姿を出した上で、それで定率減税をどうするのかということが一番大切なんですから、まずは望ましい税制、これをちゃんと出すということを申し上げておきたいというふうに思います。

 この問題はこれくらいにして、次は三位一体の問題なんですが、三位一体に関連してちょっと幾つかお伺いをいたします。三位一体と、あと行政改革との関連ということについてお伺いをしたいんですけれども。

 この三位一体というのも、全体像が見えないわけなんですね。その全体像が全くもってわからないまま、どういう着地点に落ちつくのか。大枠は決まっていてもその大枠の中身の細かいところが決まっていないものだから、最終的にどういうふうに落ちついていくのかというのがわからない、見えないという状況になっている。

 まず一つ目、生活保護と児童扶養手当の問題について伺いたいと思います。生活保護負担金そして児童扶養手当の補助率の見直しですけれども、地方団体関係者が参加をする協議機関を設置して検討する、今年の秋までに結論を出して六年度から実施をするということになっているんですが、実施するというのは見直しを行うということであるのかどうかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

 きょうは社会・援護局長にもお越しをいただいているんですけれども、お願いします。

小島政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、生活保護費及び児童扶養手当に関する補助率の見直しにつきましては、昨年十一月の三位一体の改革に関する政府・与党合意におきまして、「地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成十七年秋までに結論を得て、平成十八年度から実施する。」というふうにされているところでございます。

 この合意に基づきまして、私どもとしては、まず最初に、地方との協議機関というものを設置するということで、関係省庁あるいは地方団体の方々とも、事務的にではございますが鋭意相談を進めているところでございまして、これはできるだけ早く設置して検討を開始したいというふうに考えております。

 その上で、この国と地方の協議機関におきまして、生活保護制度や児童扶養手当制度における国と地方の役割や費用負担のあり方につきまして幅広く議論をした上で結論を出していく、それでその結論に基づいて、十八年度、必要な事項については実施に移す、こういうふうに政府・与党合意に基づきまして手順を進めてまいりたいというふうに考えております。

中塚委員 今の御答弁は何も言っていないのに等しくて、あり方を幅広く検討するのはそれは当たり前のことなので、そのために協議機関を設置するということなんですが、補助率ということの見直しについてはいかがなんでしょうか。

小島政府参考人 昨年の政府・与党合意におきましては、補助率の見直しについて国と地方関係団体が参加する協議機関を設置して検討するということでございますから、補助率の見直しについても検討の中に入っていますが、これは非常に難しい、論点が対立している課題でございますので、その際は、やはり国と地方の役割やら費用負担というものを幅広く検討、議論した上で結論を出していくという整理にしているわけでございます。

中塚委員 ということは、その文章に書いてある、結論を得て実施するというのは、見直しをするけれども、見直した結果何も変わらなかったということもあり得るんでしょうか。補助率は必ず見直して、今の補助率とは変えるということなんでしょうか。

小島政府参考人 まずは、幅広く議論するというところから始まるということでございます。

中塚委員 いやいや、その幅広く議論をするというのは、そういうお答えだったら別にもうお答えをいただかなくてもいいんですが、そんなことは百も承知です。そうではなくて、補助率を見直すということになるのかどうか。それも、単に検討するだけじゃなくて、補助率を変えることになるのかどうかということなんです。結論を得て実施するというふうに書いてあるんだから、要は、補助率を変えるんですかということをお伺いしている。

小島政府参考人 どういう結論になるかは、やはり協議の結果決まるというのが今の段階でございます。

中塚委員 というわけで、三位一体のうちの一つの課題について今お話をお聞きしたんですが、次は、文教施設の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 公立文教施設費の取り扱いについては、義務教育のあり方等について五年秋までに結論を出す中央教育審議会の審議結果を踏まえ決定するということになっているんです。これは建設国債の発行対象経費だと思うんですけれども、建設国債の発行対象経費であるこの文教施設費について、今後の取り扱い、財務省がお認めになるのかお認めにならないのか、いかがでしょう。

谷垣国務大臣 ちょっと手洗いに行っておりまして、恐らく建設国債対象経費について税源移譲を認めるのか認めないのかという御質問だと思います。

 それで、これは昨年の三位一体で、政府・与党の合意の中で検討課題に残っているわけでございますが、ここも先ほどの生活保護と同じように、意見が大変分かれております分野でございます。ですから、これはまだ政府部内で一致したわけではない、私どもの、財務省としての考え方でございますけれども、こういう施設費を含めまして、建設国債を財源とする公共投資関係の補助金については、まず、公共投資というのは、引き続き私どもはスリム化をしていかなきゃならない分野だというふうに考えているわけです。その上で、これは建設国債を財源としているということは、要するに、物が残る、それは将来の世代が受益するわけだから、最後は将来の世代に持ってもらおうという思想で成り立っているわけでございますから、それは税源としてどこかに譲ってしまうようなものとは違うんだろうと思っております。

 それから三番目に、公共投資というのは、今も申し上げましたけれども、形成される資産からの便益が長期にわたるので、将来世代も含めた費用負担とすることが適当であるという考え方によって、公債発行を原則として禁止している財政法の特例を設けて、建設国債の発行を許容するという取り扱いがなされているわけですね。

 このことをわざわざ申し上げますのは、よく、普通の特例公債でやっている部分については税源でやるんじゃないか、だからそれはどっちも最後は国民の税金でやる意味においては同じだろうということがございますけれども、建設国債はやはり原則として将来の世代。特例公債の場合は、たまたまそうなっておりますけれども、本来は現在税金で賄うべきものであるので、ここから先を言うと地方にはしかられますが、本来からいうと、半分ぐらいしか現在は財源が、税源がないわけなんですが、そこはやはり地方自治を進めていく上から、税源として出さなきゃいかぬだろうということでやっておりまして、建設国債の場合とは違う。

 それから、地方においてもこういう事業については建設地方債の起債で財源調達をしていただいているというようなことを総合して考えますと、税源移譲とすることは私どもは不適当であるというふうに考えているところでございます。

中塚委員 というわけで、二つのことについて伺いましたけれども、何でこれをだからもっと早く決められないんですか。結局、所得税のあり方というのと三位一体ということは関係しているわけですね。さっき控除の話なんかも申し上げましたけれども、その上で、ではどういうふうに税源移譲するかということも含めて、さっき大臣自体がいみじくもおっしゃったとおりで、この三位一体というのは今の所得税制を変えるということとも密接に関係をしているわけなので、これもことしの秋までに結論を得て六年から実施するというふうに言われているんだけれども、それは実施は六年からでも結構ですが、何でそれを二回に分けておやりになるのか。これをすぱっとお決めになっていかないと、なかなかはっきり言ってみんなが期待をするような、この国がどうなるのかとか、さっきパラサイトシングルのところでもお話ししましたけれども、そういったことになっていかないと思うんですね。

 次に、こうやって三位一体の先行分といいますか、所得譲与税ということで地方に回す、それで交付税特会にお入れになる。ことしの予算なんか見ていれば、一般歳出で四十七兆二千八百二十九億円で、昨年から一般歳出の額が下回ったというふうにおっしゃる。確かに、それはそうなんですね、下回っているんですが、ただ、下回っているのは補助金削減の影響によるものであって、行政改革ということではないんじゃないか。要は、補助金削減も行政改革だというふうにおっしゃるかもしれないけれども、でも、補助金を減らして、それによって、では国が余計なことをやらなくなったとか、むだなことをやらなくなったということではないんじゃないかということなんですね。

 初夏にいつもシーリングをお出しになって、それから予算の編成をされていくということですけれども、そのシーリングのころと、そして概算要求と予算案ができたときの関係なんかをちょっと調べてみたんですが、そうすると、一般歳出の総額四十七兆二千八百二十九億に補助金削減額約一兆一千二百四十億を足すと四十八兆四千六十九億で、シーリングの額に比べてふえているんですね、千六百億円ほど。

 そういった意味で、これは、見かけは税源移譲をしているから一般歳出の額が減って前年度比マイナスの予算になったというふうにおっしゃるけれども、ところがその大宗は、行政改革をやって予算を切り詰めたからということではなくて、単に所得税が所得譲与税になって交付税特会の方に入っているということをもって対前年度比でマイナスになっているということなんじゃないんでしょうか。いかがですか。

谷垣国務大臣 概算要求基準では、義務的経費の増は一・二兆円見込まれていたわけですけれども、公共投資関係は三%減らそう、それから裁量的経費はマイナス二%でいこう、それから社会保障は制度改革二千二百億円を削減していこう、こういう〇・六兆を抑えていこうということで閣議了解をいたしまして、十七年度予算に、予算措置の上限額を四十八・二兆円、対前年度比〇・六兆ということで決めまして、それから具体的な予算編成作業にかかったわけです。予算編成過程において補助金削減額というのは、税源移譲に結びつく改革一・一兆円というのをやりました、それは今御指摘のとおりでありますが、それとスリム化の改革〇・三兆というのもやりまして、合計一・四兆円となりまして、概算要求基準を最終的には一兆円近く下回る水準に歳出を抑制する原動力となったということは、これは事実でございます。

 それで、補助金削減額のうち、税源移譲に結びつく一・一兆、これを単純に足し戻せば四十八・四兆となって、概算要求基準額からは〇・二兆円プラスとなっているわけですけれども、予算編成過程においては、御指摘のように、このほか、定率減税見直しの増収分に係る年金国庫負担の増、こんなのもございました、千四百億。こういう新たな歳出増要因もあったわけでございまして、四十七・三兆の一般歳出の水準は、相当な歳出改革努力を反映したというふうに考えております。

中塚委員 今大臣の方から、基礎年金の国庫負担の増加とか無年金障害者の救済等々、あと事務費も加えて千四百四十億円というお話をしていただいたんですけれども、実はそのことだけではなくて、社会保障関係費についても、シーリングのころからはふえているんですね。それはシーリング以降ふえているわけなんです。それも基礎年金の国庫負担の増加とか無年金障害者救済などで、これも千四百四十二億円を加算して、補助金削減額六千三百を引くと二十兆一千七百十二億円ということになっていて、原案での社会保障関係費は二十兆三千七百三十六億ですから、やはりシーリングから二千億ふえちゃっているんじゃないのかというわけなんですね。

 ですから、例えばこれからいろいろと税の議論をしていくときに、定率減税とか廃止、縮減ということをおっしゃる、その後には消費税という大物も控えているんですが、それをいかにインパクトを減らしていくかということになれば、この行政改革の取り組みというのは本当に重要なんですね。ですから、私は、かりそめにも三位一体、全体像さえ明らかになっていないんですけれども、その全体像さえ明らかになっていない三位一体をちょっとずつやるということの結果として、歳出削減というのが大変おろそかになっているんじゃないのかと言わざるを得ないような事態というものがある。

 例えば、もう一つは整備新幹線とか関西空港の工事もありますが、これにしたって、根元受益という言葉を使っている。これも、要は根元受益というものを当て込んでこういったものをつくるというのは、これはもうはっきり言って先送り、事実上先送りだと私は思うんですね。関空についても、伊丹の格下げの問題等々もあるということで、補助金削減という一般歳出減少というものがある一方で、その一般歳出の個別の項目の削減というのがおろそかになっているんじゃないのかというふうに思うんですが、これについてはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 いろいろ新幹線だとか空港の問題もございましたが、ちょっと簡単にお答えしますと、新幹線の根元受益というのは今回の着工に関するものではありませんで、将来どうしていくかという課題でございますから、今度の着工では考え方を示したというだけでございます。

 それで、従来とも、そういう根元受益と言われているものが発生することは事実でございますから、線路の貸付料という形で負担をしていただいた、それと同じ考えを新しい線についてもとろうじゃないか、同一社内でないところでもとろうじゃないかということでございますので、今回の着工とは無関係でございます。

 それから、関空の二期工事のこともおっしゃいまして、これもあるいは先生にお答えしたのかどなたにお答えしたのか記憶がはっきりいたしませんけれども、やはり関西の三空港問題について相当立ち入った整理をしていただいて、ああいう国際空港であるところの二期工事をやっていこうということになりまして、時間もありませんので細かくは申しませんが、そういうふうに考えております。

 それで、一番のおっしゃりたかったことは、要するに、補助金削減によって歳出努力はもう安心してしまったんじゃないかということだったと思いますが、確かに、補助金改革によって税源移譲した事業というのは、これは国、地方を通じた事業量という点からいえば、直ちに減となるものではないわけでございます。

 もっとも、さっきも申しましたように、スリム化の改革というのもございますから、これはスリム化になっているわけですが、しかし、そもそも三位一体の改革の趣旨から考えますと、国が関与する事業を削減して地方の裁量によってより効率的な事業の実施を考えていこう、より切実なところに決定権限を渡して、私どもの金の流れからいえば、もう少し効率的に使っていこう、そういうことによって国の予算規模が圧縮されていくということも、私は、趣旨から見て間違っていない、こういうふうに思っておりまして、一般歳出の予算額に一・一兆円なりを足し戻した水準をつくって歳出改革が進んでいないという議論は当たらないのではないかというふうに考えております。

中塚委員 大変誠実に御答弁いただいているとは思うんですけれども、根元受益の問題にしたって、要は現実の金目の話じゃなくてまさにその精神のことをお話ししているわけだし。私は、補助金をやめて税源移譲するということに反対しているわけでも何でもないんだけれども。それは我が党としても提案をしているわけですから。我が党はもっと抜本的に提案をしているわけなんですが、そのことを全然反対しているわけでも何でもないんですけれども。

 ただ、問題は、行政改革によって対前年度比で一般歳出がマイナスになったということには当たらないんじゃないのかと。その大宗はというかほとんどは、三位一体関係で所得譲与税というものをつくったせいで一般歳出が減っているということではないのかということについてお伺いをしているわけなんですね。

 済みません、もうあと五分しかないので、あともう一つ聞かないと、せっかくお越しいただいた参考人の方に申しわけないものですから。

 次は、財投機関の繰り上げ償還のお話をきょうお伺いしたいと思うんですが、今度は大谷さんという方にお越しをいただいていると思うんですけれども、年金積立金の管理運用独立行政法人になるということで、五年末で年金資金の運用基金が解散される、年金住宅の融資制度も廃止になるということですが、結局、それにあわせて年金住宅融資の元手、原資が、財政融資資金からの借り入れも五年中に繰り上げ償還をするということをお決めいただいている。ところが、既存の住宅融資というのはすぐに回収するということにはならないので、収支にずれが生じるわけですね。その資金不足は財投に以前預託をしていた資金の戻りから捻出するということになっているようですけれども、その額が四・四兆円。この四・四兆円というのは、本来運用に回すべきお金のはずですね。ところが、この部分は補償金を払うということになっている。補償金というのは本来支払うべき額を現在価値に割り戻すということにほかならないんですが、一方で、運用で稼ぐはずのお金は入ってこないということになるんですね。ということは、要は、実は繰り上げ償還しない方が有利なんですね、そのとおりに物事が進んでいけば。

 でも、これは繰り上げ償還をするということになっているんですけれども。そのおのおのがちゃんとやってくれれば、年金のこの融資については、グリーンピアとかいろいろな問題もあって、そういった一連の経緯もあってこういう措置をとられたということなんだと思いますが、でも、そういったことを全部やめていけば、本来あるべき姿というのは、やはり財政だって厳しいわけですから、繰り上げ償還をしない方が有利だということにならざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年度末に廃止いたします年金住宅融資事業に係ります旧資金運用部からの借入金につきましては、事業を廃止した後も、平成十八年以降でありますが、利子補給金等の年金財政負担が長期にわたって続く、こういうことは適切でないという判断に立ちまして、昨年の通常国会で成立させていただきました年金積立金管理運用独立行政法人法に基づきまして、平成十七年度中に繰り上げ償還を行うことといたしました。御質問のとおりでございます。

 これに要する費用が約四・四兆円ということで、厚生保険特別会計及び厚生年金特別会計、平成十七年度予算に計上しておるところでございます。しかしながら、一方におきまして、平成十八年度以降は融資債権は独立行政法人の福祉医療機構に移管いたしまして、これが引き続き融資債権の回収業務を行います。その回収により取得する資金というものが五・八兆円という金額を見込んでおりまして、これが年金特別会計に納付されるという見込みでございます。

 このように、先ほど申しましたような、今年度の、十七年度の支出四・四兆円に対しまして将来五・八兆円の納付が見込まれるということで、いわば一時的な立てかえ払いというふうに考えられます。したがいまして、年金財政上問題とすべき影響はないものというふうに考えております。

 以上でございます。

中塚委員 今の私の問題意識なんですが、財務大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今回の年金財政からの出資金等約四・四兆円で、現在年金住宅融資の財源となっている財投からの借入金を繰り上げ償還するということをやるわけですが、拠出された出資金については今後年金住宅ローン債権として運用されて、顧客からのローンの元本それから利払い、合計で五・八兆円という形で返済されることになるわけで、運用益を伴った形で回収がなされていくということでございますので、国民の年金をむだに使っているということにはならないのではないかというふうに考えております。

中塚委員 私が申し上げているのは、結局、まず第一に補償金を払うということがある、加えて、運用で稼ぐべき額というのは入ってこないということなんですから、これだったら繰り上げ償還しない方がいいんじゃないかと。もちろん基金の運営というのは適正にやっていただくということが大前提なんですが、それをやるべきなんではないのかということを思うんです。

 だから、私は、今度こういう措置をとる、年金住宅融資はもうやめるということで、手を切るということなんでしょうが、結局、そのことは逆に国民の年金をむだに使っているんじゃないのかというふうな見方もできると思うんですね。これは財政というよりは金融の方からの考え方なんですけれども。

 他方、この補償金ということについては、住宅金融公庫は、これはもう払わない、支払わないということで決着をしているようですね。保証協会は苦しいという事情はあると思います。ただ、それだけの理由で住宅金融公庫は補償金を払わないのかということになると、では、今まで財投は安全確実だというふうに言われてきたのは、それは一体どういうことだったんだというふうにもなりかねないと私は思います。

 住宅金融公庫と、あと都市再生機構、実は都市再生機構でじっくりまたやりたいことがあるんですが、この補償金なしの繰り上げ償還というのは、そもそもこの二つの財投機関に極めて問題が多かったということになると思うんですが、最後にそのことをお伺いして終わりたいと思います。

谷垣国務大臣 今、住宅金融公庫と都市再生機構の今度の見直しについておっしゃいましたけれども、これは財投改革から三年経過したことを受けまして、直近の民間準拠の財務諸表なども参考にしながら財政審でよく精査をしていただいたわけでありますけれども、今回、そういった点検の中で新たに判明した状況をもとに、国民負担を最小化するために、問題を先送りしないで早期に処理を済ませてしまおうという観点からこういう措置をとったわけでございまして、そういった処理を行うことで財投事業の健全性というのは確かなものとなったという評価を私はいただいているんではないかと思っております。

 今後とも、特殊法人整理合理化計画等を適切に反映しながら適切な財投運営をやっていかなきゃいかぬと思って、いろいろまた御批判も賜りたいと思っております。

中塚委員 では、終わります。

金田委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。先日に引き続いて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 一日御苦労さんでございます。大分お疲れでございましょうが、最後の頑張りを見せていただきたいというふうに思います。

 時間の都合もあるようなので、最初に金融関係からお尋ねをしておきたいと思うのですが、ライブドア、ニッポン放送あるいはフジサンケイグループ、今国民的関心を集めてやっていますが、大臣はどちらが正しいと思われていますか。

伊藤国務大臣 関心が高いという御指摘でございますけれども、個別の取引の問題でございますので、感想めいたことを私の立場でお話しさせていただくというのは、これは適切なことではないんではないかというふうに思っております。

中川(正)委員 しかし、これは、今最中ですからなかなか難しいということもわかるんですけれども、市場にも影響しますしね、わかるんですが、一つは裁判という形で決着をする道がありますけれども、もう一つはやはり監督官庁としてこれは結論を出していかなきゃいけないんだろうと思うんですよ。両方適当にやってくださいよという話ではない。

 まあ、さまざまな論点がありますけれども、いわゆる金融行政、あるいは金融を監督していく、あるいは正常なマーケットをつくり上げていくということからいっても、最後には金融庁なりの見解をまとめて、こんな形にならない競争原理というのをつくっていかなきゃいけないんだろうというふうに思うんですね。その必要性といいますか、そういうことが金融庁としての役割なんだということはありますよね。

伊藤国務大臣 個別の取引に対するコメントではなくて、今委員が御指摘をされましたように、金融行政上、一般論として、制度面からして私どもとして問題意識を持っている点がございます。それは、公開買い付け制度、TOBの問題であります。

 委員御承知のとおり、このTOB制度というのは、市場の透明性、そして公正な取引を確保するために導入された制度であります。立ち会い外取引は、現在の法制度においてはこのTOB規制の適用対象にはならないものとされております。そして、この使い方いかんによってはこのTOBの制度を形骸化していく、そういうことにつながっていくんではないか、そういう疑いがあるんではないか、こういう指摘がなされているところでございますので、私どもといたしましては、その立ち会い外取引が市場で果たしてきた機能、そうしたことを十分認識しながらも、この問題に対する制度的な手当ての必要性について十分に検討をしていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 これは事前に調べたというか聞いたところでは、東京証券取引所の業務規程の中でこの時間外取引ということを規定して、ルールとして運用しているということですね。それにTOBが利用されたというか、TOBがこの時間外取引を利用したというか、そういうことだと思うんですね。

 金融庁も、この業務規程というのは当然事前に出されて、これに対してのコメントというか、これでいいのか悪いのか、そういう監督をした上での規程だというふうに思うんですね。そのときに、こうしたことが起きるということについては十分想定をされていたんじゃないか、こういうふうに思うんですが、そのときの議論というのはどういうものがあったか。これは通告はしていなかったので、わかる範囲でいいんですが、答えていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 今御指摘の立ち会い外取引というのは、平成九年に導入をされたわけでありますけれども、この導入のときに、今委員が御指摘をされたことについて想定をしていたわけではございません。この制度は、一般的に、機関投資家のポートフォリオを入れかえる、あるいは、持ち合いを解消したり、自社株の取得の取引に使用されておりまして、会社支配を目的とした大口の買い付けに用いられるということを想定して導入された制度ではないというふうに承知をいたしているところでございます。

 しかしながら、立ち会い外取引が、その使い方いかんによっては会社支配を目的とした大口買い付けに利用することが可能であり、先ほどもお話をさせていただいたように、これを放置いたしますとTOB制度そのものを形骸化してしまう、その疑いについて指摘をされているわけでありますので、私どもとして、制度的な手当てを行っていく必要がある、立ち会い外取引の果たしてきた機能ということを十分認識しながらも制度的な手当てを行う必要がある、こうした認識の中で、今、十分に検討させていただいているところでございます。

中川(正)委員 いわゆる会社の乗っ取りということなんですね、平たく言えば。これにTOBの制度を使うということをしないと。それはそういう意味なんですか。それとも、時間外の部分で、TOBと組み合わせた形でのもともとの目的ではない使い方をこれからはコントロールしていくという意味なんですか。どちらなんですか。

伊藤国務大臣 今答弁をさせていただいたように、TOB制度というのは、市場の透明性、そして公平な取引を確保するために導入をされたわけであります。

 そして、立ち会い外取引が導入をした経緯を先ほどお話をさせていただきました。この制度は、そもそも、会社支配を目的とした大口の買い付けに用いることを想定して導入されたわけではないわけでありますので、こうした面から考えると、立ち会い外取引の使われ方いかんによって会社支配を目的とした大口買い付けにも利用されることが可能である、その可能性がある。これを放置すれば、TOB制度の形骸化を招きかねない。こうした観点から、私どもとして、公開買い付け規制の対象とすべく、制度の手当てというものを今後考えていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 そうすると、金融庁の今の見解というのは、時間外でやったということに対しての問題意識じゃなくて、会社支配を目的とするような大口買い付けの目的でTOBという制度を使ったということ、これは想定していない目的外使用だ、こういうことで問題視している、こういう意味にとっていいわけですか。

伊藤国務大臣 先ほど来答弁をさせていただいているところなんですが、立ち会い外取引の本来予定されている使われ方と違った形で使われてしまうことによって、TOB規制の本来の趣旨というものを形骸化してしまうおそれがある。したがって、このTOB規制の対象として、立ち会い外取引というものをその対象としていく。そうした視点から、制度の手当てというものを、立ち会い外取引の果たしている機能というものを十分認識しながらも検討をしていきたいということであります。

中川(正)委員 わかりました。

 これを検討していった結果、それなりの法規制をしていく、あるいは業務規程を変えていくということなのかもしれませんが、そういうことになったときに、それはさかのぼって今行われている取引に対しても適用するという前提で見直していく、こういうことなんですか。それとも、これはこれで、いわゆる過ぎたこととして、さかのぼったいわゆる指導ということも含めて、これはこれで関与はしないということなんですか。どちらですか。

伊藤国務大臣 現行制度におきましては、立ち会い外取引というのはTOB規制の対象となっておりません。そういう意味からしますと、委員が御指摘になられた遡及をしてとか、そういうことにはならないというふうに思っております。

 しかし、繰り返しになりますけれども、その使われ方いかんによってTOBのそもそもの制度を形骸化させてしまうことになってしまいますから、この立ち会い外取引というものをTOB規制の対象に考えていく、こうした方向の中で制度的な措置というものを今検討させていただいているところでございます。

中川(正)委員 一方、こうした乗っ取りがあったときに、増資をして、その割合というものを特定の株主に割り当てて支配権を逃れるというか、そういう手法があるわけですね。これについてはどうですか。

伊藤国務大臣 今のお話は、これはすぐれて商法の問題でありますので、私からコメントできる点は非常に限られているのではないか。私から申し上げることができるとすれば、一般論として、第三者割り当てに際して既存の株主の権利を保護する制度として、有利発行規制あるいは著しく不公正な方法による新株発行の差しとめ、こういった商法上の制度が存在する。こういうお話をさせていただくのも、私、答弁として精いっぱいでございまして、これ以上の答弁ができないことについては御理解いただきたいと思います。

中川(正)委員 しかし、これも株式市場という、いわゆる公である、あるいは公正である市場で行われる取引であるし、当然、その中に金融庁が目指しているあるべき姿というものがあるんだと思うんですよね。金融庁の立場から見ると、こうした問題はこれからも起こってくるんだろうと思うんですが、どんなようにコントロールをしていったらいいのか。いわゆる商法だけの問題でいいのか、それとも金融庁の立場として株式市場を公正なものにしていくという意味でここについてもメスを入れようとしているのか。全くそこはうちとは関係ないんだという形だけでいいんですか。

伊藤国務大臣 私どもからすれば、取引というものは、やはりルールに基づいた形で行っていただきたいということでございます。

 今委員の御指摘の部分については、これは商法の世界の問題でありますから、その今の制度の中で既存の株主を保護するための制度が存在をいたしております。ここについてはすぐれて商法上の問題でありますので、私からこれ以上のコメントができないということについては御理解を賜りたいと思います。

中川(正)委員 だから、商法上の問題を聞いているんじゃないんですよ。金融庁としての、市場を運営していく立場からの問題提起をしているんです。

伊藤国務大臣 それはまさに取引の公正を確保していく、市場の透明性を確保していくということが大切だというふうに思っておりますので、そうした観点から、私どもとして、先ほどお話をさせていただいたように、TOBの制度の問題について検討させていただいているところでございます。

中川(正)委員 TOBでごまかして逃げたつもりでおられるんでしょうが、私の言いたいのは、こうしたことでマスコミを中心ににぎわせていますけれども、ここにはやはり善意の、善意のといいますか一般の投資家の見る目というのがありまして、こういう立ち回りをやればやるほど、株式市場というものが、本来ここへ向いて投資を集めなければならないところが信頼性を欠いてくる。あるいは、一般の投資家から見るとマネーゲームに見えてしまって、我々の世界とはちょっと別だなというような、そういう感覚でとらえられたときに、これまでの投資へという我々の努力がまたここで一つ大きな壁にぶち当たるんじゃないかということがあるかと思うんです。

 それだけに、金融庁としてこれをどうさばくかということが一般の投資家に対しても一つの大きなメッセージになっていって、本来の投資というもの、それから、それにマネーゲームというか、金融としてそれなりのパイはなければいけないんだろうと思うんです、マネーゲーム的な部分も。しかし、それをどうコントロールしていくかということと、それから公正な市場と、この三つの要素を合わせて、いかにこれを表現してもらうかというのがこれからにかかっているんだろうと思うんですね。いつそうした金融庁としての見解というのをまとめて出していただく予定ですか。最後にそれだけ聞いておきます。

伊藤国務大臣 金融庁として、個々の取引についてコメントを出すとかあるいは考え方をまとめるということは適切なことではないというふうに思っております。

 委員は、市場の信頼性を確保していくために大変重要な点を何点か御指摘になられました。私どもとしても、市場の透明性あるいは公正な取引の確保、適切なディスクロージャー、こうした観点から市場の信頼が得られるようにしっかりと行政を展開していかなければいけないというふうに思っておりますし、仮に証券市場の公正性を確保する上で措置を講じる必要性が生じれば、適切に対応していきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 肝心なところがちっとも出ませんでしたけれども、どうぞお引き取りください。

 では、谷垣大臣、お待たせいたしました。進めていきたいというふうに思います。

 最初に、ごくごく一般論というか、本当はこれは小泉総理に聞かなきゃいけないことなんだと思うのですが、小泉政権ができてから、総理自身は、しっかりやっている、構造改革も進んできている、経済も立ち直ってきた、不良債権もそれなりに整理ができたというような、そういう一本調子の話をされていますけれども、手元にそれを実際の数字であらわしたものがあるんですけれども、谷垣大臣は、小泉政権のパフォーマンス、パフォーマンスというのは格好つけるパフォーマンスじゃなくて、実際のやってきたことをどのように評価されていますか。

谷垣国務大臣 まだ小泉内閣も、大分たちましたけれども、日々変身している最中でございますので、なかなか評価は難しいんですが、私は、やはり小泉内閣、それぞれどの政権もプラスマイナス、プラスばかりということはあり得ないと思うんですが、小泉内閣の閣僚としてこういうところは今までと違うなと思いますのは、よく縦割りの弊ということが主張されております。それで、縦割りは必ずしも悪いところばかりではなくて、それぞれのつかさつかさが自分のやっていることは大事だと思って一生懸命やるような気持ちがなくなったらだめだと思いますが、長い間そういうことである程度安定した仕組みができてきたものですから、それを乗り越えようとするときに物すごいエネルギーを必要とするということが今の政治運営には至るところにあると思うんですね。

 その点では、私は、小泉さんはそこを非常に努力されて、いろいろ長い間続いたことですから一遍には変えられないところがあるにしても、そういうあたりはかなり意を用いて全体を動かしてくることに成功されたというふうに私は考えております。

中川(正)委員 乗り越えればいいんですが、小泉さんの場合は、乗り越える乗り越えると言いながらいつも途中で人に任せてしまって、任せてしまったあげく中途半端になって、逆に肝心なことが先送り、これが一般の評価じゃないかと思うんですね。

 その結果、どういうことになったか。これは数字で今出ているんですが、お手元に資料として配付をさせていただきました「小泉「改革」で日本はこうなった」という資料です。

 GDPで、二〇〇〇年の実績、だから小泉さんが総理大臣になる前の実績が五百十三兆円で、就任後、これは二〇〇三年の数字ですが、五百一兆円。十一・九兆円下がりました、下がっています。それから、GDPの成長率も行ったり来たりということですね。それから、国と地方の長期債務も六百四十二兆円から、これはよく言われますが、七百四十兆円。それから、勤労者世帯の実収入、これも五十五万八千四百二十四円から五十二万七千九十二円。失業率も上がっています。それから、自己破産も大きくふえてきました。それから、自殺者もふえてきております。それから、銀行貸し出し、これが下がってきています。それから、株価、これも下がったままです。それから、東証の時価総額、そのことによってこれだけの損失といいますか、日本の財産が消えたということですね。

 実は、これだけならいいんですが、定率減税をこれから議論していくわけですけれども、そのときに、もう一つこれに伴った中身がありまして、実は、これは主税局から出ている参考資料で、そちらに配付はしていないんですけれども、統計資料があります。これの中の、国民の可処分所得の分配、この数字を見て、なるほど、私もこれは非常に象徴的にあらわれてきているなということがあるんですよ。

 それは、一つは家計の分ですね、家計に対する分配所得、あるいは賃金、このところが非常に減ってきていて、目減りをしてきて、しかし、もう一方の企業所得、法人企業の分配所得の受け払い後の額というのは逆に着実に上がってきているんですね。だから、やはり個人と法人とを比べると、法人の方は、勝ち組、負け組はあるけれども、全体としてそれなりに数字が上がってきているなというのがよくわかります。

 具体的には平成十二年から、これは十五年はないので、十四年までしかないんですけれども、この辺の傾向を見ていると、雇用者報酬が二百七十五兆四千四百九億円、これが十四年になると二百六十四兆七千二百七十四億円というような数字が出ていて、家計の方でいくと、十二年が二十一兆五千三百三十九億円、これがずっと毎年下がってくるんですが、十四年あたりでも十四兆四千百一億円、非常に極端な下がり方をしてきていますね。これの特に極端な数字というのが利子の分の受取利息ですね。これは十一兆七千四百十二億円から四兆六千九百三十三億円に極端に下がってきていますね。こういうのはすべて家計に影響をしてきているというのがよくわかります。それに対して、企業所得になってきますと、八十八兆四千四百三十億円から九十兆五千三百二十九億円という形で、逆に上がってきております。

 この傾向というのは現在でも続いていると私はみなしているんですが、谷垣大臣、どうですか。実感として、定率減税がちょうど組み込まれたころと比べると、相当、これだけの数字の動きがあるわけですから、個人の特に家計、それから雇用の収入、いわゆる雇用者報酬というか、そういうようなものが構造的にも非常に厳しく下がったままであるということと、企業についてはそうでもないんだなという感じですね。これはそのように大臣も受け取られているということでいいんですか。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 余り委員のように勉強していなくて、こういう表を今よく拝見させていただきました。

 確かに、家計が随分落ちてきているというふうに感じますし、その中で受取利子が随分落ちているなというふうに思います。それから、雇用者報酬も少しずつ落ちているということになっているのは、これは事実だろうというふうに思います。

 ただ、余りこの数字に対してどうこう言うわけじゃありませんが、大きく言いますと、過剰雇用、過剰設備、過剰債務みたいなものがあったのがようやく整理されてきた。それで、確かに、私どもがこういう議論をしてもいつも悩んでいるのは、なかなか個人消費や家計に行かないねというのが悩みの的でありまして、何とかそれをよくしたいということはお互い共通の関心事だろうと思います。ただ、これも、分配率みたいなものが、かつては低かったのがバブルの最中からがあっと上がって、今修正過程だということもあったんだろうというふうに思いますが、この議論のときに私がよく言わせていただいているのは、最近雇用者報酬等が盛り返し、少し伸びてくる兆しが出てきているのは、循環が一わたりしてきているんじゃないかというふうに思っているところでございます。

中川(正)委員 私は、これは一つの構造変化もあるんじゃないかと思うんですね。ただ過剰であったというだけじゃないというふうに思うんですね。

 それは、一つは団塊の世代がそろそろこれから卒業していくこともありますが、もう一つ、一般の社員という形から派遣あるいはパートということでいわゆる賃金単価そのものが落ちてきているということ、これは大きくあるわけですね。それにもう一つ、日本の国内の空洞化といいますか、特に製造業を中心に空洞化した。その空洞化した分がサービス業に回っている。これはアメリカでも起きたことでありますが、第三次産業というのはもともと賃金ベースが低いわけですから、そこへ向いて雇用が流動化をしたというふうなこと。こういうことがあの時代とは構造的に変わっているんだ、今のこの局面は。というふうに認識をしなければならないんじゃないかと思うんですね。これについてはどうですか。

谷垣国務大臣 それは全く委員の指摘されるとおりだろうと思います。先ほど過剰雇用であるとか過剰設備であるとか過剰債務だということを申し上げましたけれども、やはりその背後には、今おっしゃったような変化が起きているから、あるところに過剰に雇用があったり過剰に設備があったりということであったんだろうというふうに思います。

中川(正)委員 そこで、もう一つの表を取り上げていただきたいと思うんですが、もう一枚下の方にある表ですね、ここで、恒久的な減税が行われたとき、あれは所得税と法人税両方で減税を行われたわけですが、そのときの実績といいますかその金額と、それから、恒久的減税が行われてから後の増税と、社会保険料の引き上げがありましたから、そういうことを全部あわせた形で、国民の負担としては今差し引きどんな形になっているかということをなるべくわかりやすくと思って整理をした表がこれなんです。

 それで、恒久的な減税による減税額というのは、改めて言うまでもなく、所得税分が国、地方合わせて四兆三千四百十九億円、それから法人税分が二兆一千九百八億円、あの当時で六兆五千三百二十七億円の減税が行われたということなんですね。

 一方、これが実施された以降の負担増、それぞれに個人分と法人分とに分けて整理をいたしました。実は既に平成十七年で実施済みの合計額というのが、保険料の引き上げ、酒税の引き上げ、たばこ税の引き上げ、配偶者特別控除の廃止、住民税の均等割引き上げ、厚生年金保険料上げ、公的年金の控除縮小、老年者控除の廃止というところまで、ここまで合計をしまして、個人については三兆三千九百六億円、だから四兆から成る所得税の減税分は、これは国税分だけですと三兆一千九百五十億円ですが、この増税、それから保険料の値上げによって、実施済み合計額だけでも三兆三千九百六億円という形でこれは帳消しになっているんですね。

 ところが、法人税分、法人の方はそのままですから、その後の雇用保険料の引き上げと医療保険料の引き上げの法人負担分ということになっていくわけで、それだけ合わすと九千八百五十億円という構図になっています。

 その後、平成十七年度でもう既に決まっているのが、国民年金の保険料上げ、雇用保険料上げ、住民税分の配特の廃止、それから厚生年金の保険料上げということで、もう四兆を超える額が増税分としてはっきりしてきております。

 これを見ていると、さっきの統計表から考えた場合、個人の分というのはこれだけぐうっと激しく減ってきているわけですね。減額してきているわけです、報酬、家計。賃金、家計という部分でこれだけ減収をしてきている。それに対してこれまでの政策というのは、個人に対して集中的に増税政策を入れ込んできたんですよね。逆に、法人というのは大分生き返ってきているという数字が出ているわけですね。法人の減税はそのまま生きているという構図になっているんですね。だから、庶民感覚として、いや景気はよくなっていないよ、あるいは家計はさらに苦しくなっているよというのはよくわかるんですよ。それに対して、また個人をねらい撃ちした形の定率減税の廃止が入ってきたわけです。

 だから、トータルで議論している数字とどこに今しわ寄せが行っているかというその感覚というのが、これだけずれているという政策はないと思うんですね。それが今国民の中にある不安、本当にこれでいいのかと、これで経済がまたもとに戻る可能性があるんじゃないか、あるいは一番苦しいところへ向いて増税をしているんじゃないかという、そのところが出てきているということだと思うんです。

 谷垣大臣、あなたは一番大事なところへ向いて一番いじめているんですよ、今、この政策で。どう思われますか。

谷垣国務大臣 こういうふうにいろいろ今までのあれをおまとめいただいた委員の労は私は敬意を表しますが、やはりこれは負担増だけを取り上げて議論するのは、私は適当だとは申し上げにくいんですね。

 これもこの委員会で、あるいは委員とも何度も議論させていただきましたので、同じことを繰り返すかもしれませんが、例えば配偶者特別控除というようなものの見直しに関連して児童手当支給対象年齢を引き上げたというような少子化対策をやったとか、それから、社会保障給付の総額は年々ふえていって、一兆円を超える勢いで毎年ふえているということがございます。ここにもいろいろ書いてございますが、年金保険料の引き上げを含む先般の年金法改正によりまして、長期的な給付と負担の均衡を図るということができました。そして、定率減税の半減や年金課税の見直しによる増収額の一定部分は基礎年金国庫負担の引き上げ財源に充てられるわけでありますから、これは将来不安の解消にもつながっているというふうに思います。

 さらに申し上げれば、では、これをしなかったらどうなるかということでありますけれども、国債発行ということになれば、これも将来世代のことを考えますと、国民の負担であることには変わりはないわけでありますから、政策全体の中でやはり見ていただく必要があるのじゃないかなというふうに私は思います。

中川(正)委員 いい指摘をしていただきました。政策全体を見て、さらにこれは若い世代、働く世代へ向いていかに集中しているかというのは、谷垣さんみずからが今説明をされたとおりなんですよ。なぜかといったら、これは老齢者に対してシフトしているんですよね、さっきの政策は。給付を充実した、保険料を上げた。充実しなくても給付を受ける年代層というのはぐっと広がっているわけですから、そこへ向いて資金が要りますね、そこへ向いて投入をする、そのために足りない分を、保険料を上げた、あるいはこうした形でさまざまな増税をする、いわゆる定率減税をやめたいということですよね。

 これは、結局は、働いている今の若い人たちから社会構造的にもしっかりと税や保険料を取って、その分をお年寄りの方へ向いてシフトさせる、それが全体として構造として入っている。入っているところがここにあらわれているんですよ、保険料にしても税にしても。ということを一つ指摘しておきたい。

 それからもう一つは、これをやることによって法人というのはどうなっているんだと。法人は、あのときの議論では、国際的に競争していかなければなりませんね、そういう意味で国際標準で下げましょう、こういうことなんですが、逆に、今の時代は法人は元気になっているんですよね。それにもかかわらず下げ続けている、あるいは下げてきたということは、ここに非常に大きな課税ベースが毀損している部分があるんですよね、構造的に。だから、本来であれば、仮に今の社会構造を前提にした形で考えていくんだとすれば、そうした課税ベースが毀損しているようなところのもう一回の見直し。あるいは、さっき議論が出た、これから先もやらなきゃいけないんですが、投資関連税制ですね、これも投資にということで、これに向いて減税をかけているわけですよね、逆に。だから、これから資金が動くところへ向いて、あるいはこれからもうかってくるところへ向いて減税政策をどんどん入れていって、一番苦しいところへ向いて増税政策を入れていって、それをもともと担税力のない世代へ向いてシフトしていくという構造になっている、全体としては。

 そういうことが進められて、ますます公平性ということと同時にこの国の活力がそれで本当に維持できるのかということですね。そこのことも考えていくと、今は間違っているんじゃないか。この大きな流れが、いわゆる全体で見た流れが間違っているんじゃないかという気がするんですが、どうですか。

谷垣国務大臣 今、個人への課税、家計への課税と、それから法人のことを二つおっしゃいまして、一番初めの個人あるいは家計への課税については、確かに委員のおっしゃるように、高齢者といいますか、そういうところの給付というのがふえているのは事実でございます。しかし、これはやはり人口構成の変化で、ある意味でやむを得ないところが私はあると思います。もちろん、それでやむを得ないところがあるからといって手をこまねいていればいいわけではございません。年金課税の見直し等は、こういう世代間に配慮したという点も考えてやらせていただくということでありますし、それから、配偶者特別控除などは少子化に使っていくということもありますから、私は、確かにおっしゃるように若い人たちにどうしていくかということももっと考えなきゃいけない、いろいろ考える点があるとは思いますけれども、全体の人口構成の中ではやむを得ない面があるということは申し上げなければいけないと思います。

 それからもう一つ、法人税制でございますけれども、これは、今企業は活力が出てきたということはそのとおりでありますし、この企業の伸びてきたところが個人所得に回ってほしいし、個人消費に回ってほしいということは、私ども心の底からそう思っておりますけれども、これは国際的な競争というものがあるわけでございますから、逐次減税をしてここまで参りましたけれども、私は、国際的な比較からいって、このあたりなのかなというふうには考えているわけであります。

中川(正)委員 消費税なんですよね、一つは。それともう一つは、うちの党として何回も何回も主張しているのは、とにかく削るところは削りなさいよ、削った上で年金の話はできるじゃないですか、増税をせずに、まず削ってからそれを回すということが先決ですねということ。それで、民主党なりの予算案の組み替えを提示しているということ、これが一つです。

 それから、もう一つは、さっきの税制の議論からいえば、私は消費税なんだろうというふうに思うんですよ。そろそろこの話を持ち出してこないと、若い人たちはたまらない、この一番苦しんでいる世代、それから勤労者ですね、この世代がたまらないというところまで来ている。そこへ向いてまた資金をシフトさせようというわけですから、これは間違っているというふうに思うんです。

 その前に消費税を議論することによって、これは、企業にとっても同じようにかかってくる、海外から入ってくるものに対しても、これはコストに転嫁しない税ですから国内での競争力も持った形で考えられるということ、そういう意味合いを持ったものですよね。どうしてこれを先行してもっと具体的に議論をしないのか。これが封じられているだけに、全部違ったところへそれが噴き出しちゃって、その噴き出したことがさらに全体の経済構造をあるいは社会構造をゆがめていくような形で、一つのところを見て負担がぐっとかかっていくような形で今回転をしているというふうに私は思えてならないんです。

 そうした意味で、今回の判断は、判断と言いますが、間違っているというふうに思うんですね。どうでしょうか。

谷垣国務大臣 要するに、消費税を具体的に進めないとゆがみが生ずるぞという御主張だと思います。私どもも、今、日本の財政を考えますときに、これもるるお答えをしておりますけれども、社会保障というものがどうあるべきか、その負担がどうあるべきかというのは、非常に中心的な課題でありますから、これを考えていったときに、公平に広く負担していただくといえば、それはどうしたって消費税をどうするかという議論だろうと私も思っております。

 したがいまして、政府・与党の議論も、これはまた御党との間に年金の一体的改革をやるためにどうするか、一緒に協議をしようじゃないかというお話もあるわけでありますけれども、そういう議論をしていって、公共サービスの水準を見きわめて、平成十八年度までに結論を得て、十九年からできればお願いをするような形にしたいということがあるわけですが、今、順序を間違っているとおっしゃいましたのは、今もう一つの改革として三位一体というようなことに取り組んでおりまして、これも何度も申し上げておりますが、私のような財政を担当させていただく立場からいいましても、要するに金の流れをできるだけ現場に近いところ、切実に物を感じているところに流していく、回していくというのは、私は避くべからざることだと思います。

 その税源移譲という観点になりますと、これは、その税源を何にすべきかというのはいろいろな議論があり得ると思いますが、政府が今考えておりますのは、これもるるは申しませんが、所得税から地方住民税へという形でございまして、それはこういう税源移譲をするときには一番適した税ではないかというふうに考えるわけでございまして、それを平成十八年度までにやろうということで先行の課題になっている。しかしながら、消費税もそれと同時に並行的に前広に議論をしていかなければならない段階だというふうに思っております。

中川(正)委員 所得税が地方税との調整をしていくのに一番いい税目かというと、私は必ずしもそうじゃないんだと思うんです。

 前回の議論でせいぜいやらせていただきましたが、どのように調整資金というのをつくり出すかということを前提にしないと、所得税の場合は非常に偏りが大きくなってくるということ、同じことで、いわゆる地方住民税にしたときに特定の層へ向いて負担がかかる。これはもう一回言うと、フラット税制にするという前提ですから、所得の低い地域にさらに個人個人には負担がかかって、所得の高い地域にとっては減税になるし、それと同時にこの調整資金がうまく今のような形で入っていないということであるとすれば、これは都市部のひとり勝ちだという面があって、その辺の制度設計を先にしないと不安ばかりが募って、削る話が先行して、今のようにまとまらない。これは、そこが原因になっているんだというふうに私は思っています。

 それと比べると、本当は消費税というのはいわゆる応益的な税で、地方でこれを生かしていくとすれば、一般的には消費税の方が地方税としてはふさわしいと言われているんですよね。連邦制をとっている国家というのは、州によっても税率が違うぐらいのことで、ほとんどが地方税として消費税を使っているということなんですね。そういう意味からいっても、私は順番が逆さまだと、もともとの入り口で間違っているということだと思います。

 それから、実質的にこれは所得税の増税なんですよね。これを今の審議状況で入れていくわけですから、私は、これは全体のGDPの、先週これも申し上げたわけで、いわゆる景気循環ということからいくと、これから下がってくるというのは確実になってきました。だから、これは下がってくるのは、新しい状況で下がってくるということだけじゃなくて、前の減税を入れたとき、五年前の構造と、社会構造、経済構造が完全に違うんだという状況の中で下がってくるわけですから、これはもっと真剣にこの状況を判断してもらわなきゃいけないんだろうというふうに思うんです。

 そういう条項も入っているので、前回も申し上げましたけれども、この二つのことを考えていったら、もう一回仕切り直しして、まず消費税の議論を先行して、足りない部分は削ったものを充てる。それだけむだ遣いをしているというのは、私が改めて個々の問題を言うまでもなく、さっきも公共事業の話が出ていましたけれども、一兆五千億あるいは二兆というような話はそういった形の中でしっかり確保できるということは、これは財務省としてはしっかりと主張していかなきゃいけないところだと思うんです。このごろ査定が甘いから、全部あんなふうになっちゃうんですよ。それは責任を感じなきゃいけないと思うんですよ。安易にこういう形に乗るということ、これは間違いだったというふうに思うのです。

 その二つを指摘したいんですが、どうですか。

谷垣国務大臣 いろいろおっしゃったので、どこからお答えしたらいいかと思うんですが、まず最初、順序が逆で、消費税から取り組むべきだという御主張です。

 それで、地方には消費税が向いているんだとおっしゃって、いみじくも委員がアメリカのようなところでは州ごとに税率が違うということをおっしゃいましたけれども、日本で消費税をやっていったときに、市町村ごとにか県ごとにか知りませんけれども税率が違う、そこでいわゆるデタックスをしなければならないというような制度が日本の中で入れることをお考えなのかどうかというのは、私は、日本ぐらい狭くなりますと、県を出ていくごとにデタックスなんてやろうとしてもなかなかできないんじゃないかというふうに思います。

 そうしますと、結局、今の地方消費税なんかがそうですけれども、国が集めて、それを地方に配分するという形にならざるを得ないんですが、私がなぜ消費税が適しているかということを申し上げたのは、確かに、委員がおっしゃるように、地方の財政力の差が出てくるから、それは交付税等で十分配分等を考えなきゃならない面があることは間違いない事実で、それをやらないと不安が大きくなってくることも事実だと思いますが、私は、税における、財政における民主主義というのは、住民と首長といいますか行政が向かい合いまして、こういうことをやるからこういう税を入れてくれというのが地方財政においても基本じゃないかと思うんですね。

 そうしますと、消費税ですと、私の町でこういうことをやるから消費税はこれだけにしてくれというようなことで、区々に、まちまちになるということが日本では現実的なんだろうかということを私は考えて、租税民主主義という観点からいいますと、やはり地方住民税のようなもので課税自主権を発揮していただく方が、これはまだ麻生さんと私が意見をすり合わせたわけじゃありませんので、これは私の考え方ですけれども、その方がいいんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 それから、もう一つ申し上げますと、消費税も今五%のうち一%は地方ですが、それと同時に交付税に繰り入れる分なんかがありますと、実際には四十数%は地方に配分しているということになりますので、なかなか消費税で地方というのも難しいんじゃないかというふうに私は考えているんです。ここらあたりは、またいろいろ国会でも、委員会でも議論させていただかなきゃならない私の関心事でございます。

 それから、もう一つは、いろいろ言っているけれども、要するにもっと削る努力をして、それで財源をまず生み出して、それでもだめだったらというプロセスが不十分だとおっしゃったんだと思います。これは、どこを削れということがあったら私どももどんどん削りますし、決して甘い査定をしようというふうに思っているわけではございませんけれども、先ほども御議論がありましたように、かなり増加圧力のある中で、ことしはこういう形で一般歳出を削らせていただいたし、公債発行額も縮減をさせていただいたというのは、少し褒めていただくこともあっていいのかなと言うとしかられるかもしれませんが、そんなふうに思っております。

中川(正)委員 これは三位一体あるいは地方分権の議論にまた戻っていくんだろうと……

谷垣国務大臣 済みません、ちょっと訂正させていただきます。

 私、地方には住民税、所得税が望ましいという中で、言い間違えて消費税が望ましいと一度言ったそうでございますので、後で議事録の訂正をお願いいたします。

中川(正)委員 さっき、課税自主権という言葉を使われましたね。課税自主権というのは、今回のような、住民税でフラット化して、国がその基準を決めちゃって、それぞれかけなさいよと。これをやってしまうと課税自主権もくそもないんですよ。

 住民は何を感じているかといったら、あの自治体よりもこっちの自治体の方が税金が安いよ高いよ。その中で、その税金の中身がこう使われているよという、首長の、市長、町長の説明責任がそこに出てくれば、それは物すごく地方で緊張感が出てきて、最終的にはそれは例えば地方の破綻法制みたいな、今のような形でだらだら行ってどこかで助けられるんだというのじゃなくて、地方も破綻するんだというぐらいの緊張感を持ったシステムが組まれて初めて課税自主権が生きて、地方自治体がそれなりの分権という形で踏み出せるというのが私は正しい姿だというふうに思っているんです。だから、そういう意味では、これは住民税であろうがあるいは消費税であろうが同じことなんですよ。どこまで自主権を与えるかという議論は改めてやらなきゃいけないというふうに思っているんです。

 そんな中で、指摘をしたのは、いわゆる財政調整がなるべく少なくて済むという意味での、構造的には消費税が地方に向いているんだということ、これは計算してみたらそういうことになるんです、これは定説なんですね。そういう意味で、消費税をまず地方分権ということあるいは三位一体ということのシステムの中で考えていかなきゃいけないんじゃないかということを指摘したわけです。意味はわかっていただけましたか。コメントはありますか。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 いろいろな議論がこれはあり得るんだと思います。私の考えもまだ十分成熟したものとは言えないかもしれませんので、今後こういう、この委員会がそれに適しているのかどうかわかりませんけれども、課税自主権を発揮していただくためにはどういう改革が必要かというようなことも私は極めて重要な議論のテーマだと思っております。

中川(正)委員 三位一体と同時にその議論を本当はしなきゃいけないんですよ。それができていないというのは、これは三位一体もくそもない。とにかく財務省としては、私たちがすべてコントロールしていくんだという、その姿勢が変わらないという証拠ですよ。本音と建前は違うんですよ。それがあらわれているんだということを指摘して、そこのところは責任を持って政策として財務省としてもまとめる、本当の課税自主権というのをどうするんだと、真剣にやってもらいたいというふうに思います。そのことを指摘しておきたいと思います。

 さらに、この問題の最後に、改めて言いますが、こうして恒久的減税が入った以降の状況を見ていると、もう十分に個人分というのは負担増になっているんだと、この構造もしっかりわかっていただいたと思うんですね。それに対して、さらに個人の所得、賃金と可処分所得というのは下がっているんだというのもさっきの統計でわかってもらったと思うんです。それに、改めて当面一兆二千五百億、来年を合わすと三兆、この増税を、ここの一番苦しんでいるところへ焦点を当てて、ここへ向いて増税をするという施策なんです、これは。数字で見るとはっきりしていると思うんですよ。そういうことは間違っている。これをやれば、一番まじめに働いている層、一番子育てを頑張っている層、これへ向いて全部今負担がかかっているんです。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。何か言うことあるんですか。

谷垣国務大臣 全部蒸し返すと長くなります。一言だけ申し上げますと、今、日本は諸外国と比べましたときに、個人所得課税の水準が一番低い、一番というか、いろいろなところがありますから、全部私調べたわけではありませんけれども、いわゆる先進国の中では最も低い水準にあるということも、これは考慮の中に入れなきゃいけないと思います。

中川(正)委員 だから我々は提案をしているんですよ。こういうちまちました話で弱い人たちをいじめないで、一番まじめにやっている人たちをいじめないで、トータルで所得税のシステムを考えてみましょうと。扶養控除、配偶者控除、ひっくり返して、子育てというところに焦点を当てて、この世代へ向いて、しっかり落ちついてもらえるようなシステム改革をしましょうという提案。それから年金についても、所得比例をやって、最低保障をやって、税の部分というのを一番縮小した形で、安心だけを税が保障するというふうな新しいシステムを一遍一緒に考えてみたらどうですかということ。こんなことを含めてシステムをトータルに考えていくときだと思うんです。

 それがなしで、それは十八年度にやりますよ、十九年度にやりますよ、これだけで実質的には増税路線、これまでの既定の中で増税路線を走って、しかもその増税のターゲットというのは、一番まじめにやっている勤労者層へ向いてターゲットにしているということ。これまでの施策が全部それに集中してきているということ。これはやはり間違っている、幾ら考えても間違っているというふうに思います。

 ですから、もう一回確かめたいんですが、この法律は、ここにあるんですけれども、この中の見直し条項、一回立ちどまって考えてみようじゃないか、景気もおかしくなってきたということで法律を取り下げるということであれば一番いいんですが、セカンドチョイスでここのところをもう少し様子を見てみるという選択はありませんか。

谷垣国務大臣 確かに景気の状況をよく見ろという条項が、条項と申しますか一文が入っているわけでございますから、私どもも、生き物である景気を弾力的に見なきゃならない、それはそのとおりだと思っておりますが、直ちに今おっしゃった見直しをするというわけではないということでございます。

中川(正)委員 もうちょっと国民にしっかり説明のできる論拠を用意してさっきの話をしてください。ただ見直さない見直さないと言っていると、小泉さんの靖国と同じような話になってしまうということを指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、国際課税に移っていきたいというふうに思うんです。

 今回の話は新生銀行で課税できなかったということの報復法制じゃないか、こういう批判があるんですが、そうですか。批判というよりも、そういうことなんですか。

谷垣国務大臣 それはそうではありませんで、日本では非居住者などによる大口の株式の譲渡益については課税することにしているわけですけれども、組合を通じて投資した場合には事実上課税ができないわけですね、今まで免れてしまっていたわけで。これは私も諸外国全部調べているわけじゃありませんけれども、どこの国の課税当局にとっても、組合の場合、法人格がない組合の場合はどうするかというのはやはり共通の問題点ではないかと私は思っております。

 ですから、今回の改正はそういう抜け穴を埋めるためで、報復とかなんとかいうようなことでは全くございません。要するに、こういう複雑化、多様化に対応してきちっと公平にやっていこうという趣旨でございます。

中川(正)委員 あのときこの法制があれば、大体幾らぐらい取れたんですか、税としては。それを出しておいてくださいと言っておいたんですけれども。

谷垣国務大臣 あのときというのは……(中川(正)委員「新生銀行のとき、リップルウッド」と呼ぶ)これは個別の事柄でございますから、守秘義務がございますので、ちょっとこれはお答えはしにくいことでございます。

中川(正)委員 しかし、この法律を考えていくのに、あれが原点だと私は思っているんですよ。あのときどれぐらい取り損なったかということはやはり説明しておいてください。

谷垣国務大臣 これはなかなか仮定の話としてもお答えはしにくいんですが、いわゆるタックスヘーブンというんでしょうか、それを使った課税逃れ、これはいろいろまちまちで、いろいろな事例がございますので、規模についても一概には申し上げにくいんですが、御参考までに、我が国の法人のタックスヘーブン対策税制に係る申告漏れとして課税した件数とその所得金額を申し上げると、平成十五年度、これは平成十五年の七月から十六年の六月までですが、六十六件、三十六億円でございます。

中川(正)委員 リップルウッドの場合はこんな単位じゃなかったでしょう、もし取れたとしたら。

福田政府参考人 まことに恐縮でございますけれども、大臣から御答弁申し上げましたように、個別の事柄につきまして御答弁申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。

中川(正)委員 私たちもこの法案を審議するのに、出発点であれはどれぐらいのものだったんだというのはわかっていないと、この法案に対してさまざまな批判もあるわけですから、これをすることによって外資が逃げるぞというような批判もあるわけですから、そこのところはやはりはっきりさせてください。

谷垣国務大臣 これは、まず前提で委員はあのときの報復だったんじゃないかとおっしゃるんですが、それが違うのでございまして、組合のときにどうするかというのは、お互い課税当局の共通の悩みであり問題意識だともう一回申し上げたい。

 それで、個別のときどうなんだというのは、これは守秘義務を負っている私どもからこれ以上はお答えができないわけでございます。

中川(正)委員 守秘義務というのは、何を守っていかなきゃいけないんですか。大体概算で出るんでしょう、概算で。あれを買い取ったときのものから売ったときの価格というのはわかっているんだから。何を守秘義務と言うんですか。

谷垣国務大臣 これは、組合というのはどういう構成員なのか、もちろん個人もいると思いますね、それから法人もあるわけでございます。それと、やはりそれぞれの国籍がどうかということによっても違ってくる面があると思いますので、仮定計算するといっても、そこらがわかりませんと仮定計算もなかなかできないということが率直に言ってございます。

中川(正)委員 でも、今度の前提というのは、それをファンドでかけるということでしょう、今度の法の前提は。個々の話じゃなくて、ファンド全体にかけますよということなんでしょう、今度は。だから、そんなものは出るはずなんですよ。

 どうも見ていると、余りにも取れずにいた額が大き過ぎて、財務省は何だという反発が出てくるのが怖くて数字が出せないというふうな形に受け取れて仕方がないんですけれども。

谷垣国務大臣 それは、率直に申し上げると、痛くもない腹をお探りいただいているとしか言いようがないわけでございまして、先ほど申し上げたのは、守秘義務との関係でいいますと、そういう法人のどういう人が構成して、どう投資しているかというのは、すべて守秘義務にかかってくるんだと考えております。

中川(正)委員 そんなこと聞いていないんです。個々でどれだけ取り損ねたかというんじゃなくて、ファンド全体でどういうことだったのかというのを聞いているだけの話です。守秘義務でも何でもない。トータルでどうなのかという話なんです。それをここでやっていたら時間がなくなっちゃうのでこれぐらいにしますけれども、とにかく出してください。そうでないと審議が進みません。それを言っておきます。まだ続きますから、立つたびにそれは求めます。途中でこれはとまりますよということを言っておきます。

谷垣国務大臣 とまりますよとおっしゃられても、まさにどこそこの組合に全体としてどうだ、ファンドでどうだということが、要するに守秘義務、個別の問題でございますから、それをとまるとおっしゃられては、せつないですよ。

中川(正)委員 もう一回言っておきますが、リップルウッドにこだわらずに、あのときあの年度でこの法がもしあったらという仮定をして、全体でどれぐらいの増収になっていたのか、そういう出し方でもいいですから、とにかく守秘義務にかかわらない、そちらの言う、大臣の言われる守秘義務、私はそんなの守秘義務だとは思わないけれども、ちゃんと一般論で説明できるほどの数字に丸めて持ってきてください。そこからが出発だと思うんですよ。そういう前提がないと、この法がどこまで効き目があるのかわからないんだから。そのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に進みましょう、大臣。それはちょっと検討しておいてください。

 新聞紙上によりますと、外資系のグループ、カーライルやモルガン・パートナーズが、今回の法案について手紙を財務省に送りつけてきた、こういう話になっていますけれども、その中身はどんなものなんですか、何を主張しているんですか、彼らは。

福田政府参考人 議員御指摘のように、レター、意見書が出ております。意見書の提出先は私でございますので、一応私から御説明させていただきます。

 十七年度の税制改正におきます、今御議論になっております国際課税の適正化措置につきまして、一部の投資ファンド会社から対日投資促進の方向性に反するのではないかとの意見書を受けていることは事実でございます。ただ、その詳細につきましては、相手方の了解はとれておりませんので、大変恐縮でございますけれども、コメントは差し控えたいと思います。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、対日投資を促進する政策にはいささかも変更はございません。

 税制におきましても、例えば、配当等の源泉地国課税の軽減を図りました、いわゆる新しい日米租税条約と同様の租税条約を他の国々とも締結するべく精力的に今交渉に当たっているところでございます。また、今回の税制改正におきましても、租税条約の恩典に関する手続の簡素化を図ることとしているなど、積極的に取り組んでいるところでございます。

 今回の国際課税に関する改正事項について申し上げますと、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、あくまでも課税の抜け穴を防ぐための適正化措置でございまして、投資形態の相違による課税関係の不均衡を防止することを目的とするものであることを御理解願いたいと存じます。

中川(正)委員 趣旨と中身についてはそれなりの理解をしているんですが、説明するときにちゃんとした論拠が必要なんだろうと思う。特に外資に対してそのことが大切なんだろうというふうに思うんですね。それだけに、さっきの、どういう論点があって、どういう根拠があって、今回の法案が海外からの投資を損ねていくことになるだろうということになっているのか、それはちゃんと説明できるでしょう。どうですか。

福田政府参考人 お答えを申し上げます。

 そもそも、今回の改正によりまして、日本で仮に課税された場合でございましても、本国で課税されております投資家から見ますると、通常本国では外国税額控除を受けられることになると考えられますので、私どもは、このような場合には投資家の税負担の増加にはつながらないんじゃないかなというふうに考えております。

 なお、この旨は私どもにレターをいただいた方には御説明は申し上げております。

中川(正)委員 タックスヘーブンを使って税を逃れていたというのは、外資だけじゃなくて、日本の投資家もそうした意味ではあるんですね。これはどれぐらいの割合になっているとつかんでいますか。あるいは、外資を活用して日本の機関投資家が利益を得ていたという分もあるんだと思うんです。そんなものを入れて、どういう実態の把握をしているんですか。

福田政府参考人 国境を越えますいわゆる直接投資などの国際的な経済活動、実は毎年大きく変動するものでございまして、率直に申し上げまして、こうした経済活動に対する課税についてどれぐらいなのかというのは、定量的に申し上げるのは大変困難であるということは御理解いただきたいと思います。

 一つの例といたしまして、昨年、先ほど御答弁がございましたように、平成十五事務年度で、国税庁の方で実際にタックスヘーブンを活用してという調査の実績を御報告させていただいたところでございます。

中川(正)委員 一つだけ指摘しておきたいと思いますが、こんな三十六億というような数字がひとり歩きして、これを見て、税の捕捉をするためにこの法律ができたというような説明をするんだったら、これは間違いだと思うんですよ。ミスリードしますよ。だから、その辺もう一回ちゃんとした数字を出し直していただきたいというふうにお願いをしておきます。これは、これからまだ議論を続けていかなければいけないところだろうというふうに思っております。

 それから最後に、金融証券税制の方なんですが、これは今一つ一つ整理をし始めていただいておりますけれども、最終的に日本はどっちを向いていくんですか。総合課税をずっと目的として将来に置きながら、いわゆるキャピタルゲインも含めた一本化という道筋を歩んでいこうとするのか、二元的にキャピタルゲインと勤労所得というのを分けていこうという形で、今特に北欧の諸国だとかで導入が進んでいる、いわゆる二元論というのが出てきていますけれども、そういう形の見直しをしていこうとするのか、まず、基本的な方向性はどちらですか。

谷垣国務大臣 私どもは、いわゆる金融所得課税の一体化という考え方で進んでいこうとしているわけでございまして、金融商品や所得の種類ごとにまちまちとなっている課税方式を二〇%分離課税で均衡化する、それから、株式譲渡損失との損益通算を認める範囲を一定のもとで金融全般に拡大していこうということで、政府税調でも、昨年、金融小委員会で議論をいただいたところでございますので、こういう観点で、適正な税務執行の確保ということも加味しながら、これから制度設計をさらに進めていきたいと思っております。

中川(正)委員 もともとシャウプ税制以降、基本的には総合課税を歩んでいこうじゃないかという基本があったんだと思うんですね、この国に。それが金融だけでも一本化していくということ。これは総合課税をしていこうじゃないかということから方向を変えて、いわゆる二元化論に歩みが進み始めてきた、その第一歩で金融だけをやる。これは金融だけという話にならないんだろうと思う。最終的には、それぞれ管理する省庁は違いますが、それぞれ新しいファンドというのがいっぱい出てきていますよね、いわゆる人気取りファンドみたいな、馬とかタレントとか、あるいは中国の雑技団なんかのものもありましたけれども。そういうことなんかも含めて非常に大きな範疇になってくる。そういう資産、資産はもちろんのことですが、そういうようなことを大きく全体として見ていくというふうな流れもこれは必要なんだろうと思うんです。

 そういう意味で、勤労所得とこうしたリスクのいわゆるキャピタルゲインというものとを分けていく第一歩と考えていいんですか。政府としてそうした考え方の整理をした上での第一歩というふうに考えていいんですか。

谷垣国務大臣 ここはまだ委員のおっしゃるようにそのようにきれいに整理したわけではありませんで、金融所得課税というところでまずどういう問題点があるのか、そういうあたりをきちっと整理してやっていこうというところでございます。

中川(正)委員 いや、私の聞いているのは、それで終わりですかということです。では、終わりじゃないんだろうと思うんですね。終わりなんですか。それだけなんですか。

谷垣国務大臣 終わりだと申し上げたわけではなく、まず、とにかく金融所得課税で実務上どういう問題が生じるか、制度的にそれがどういう影響を持つかということをきちっと検討してやっていこうと。そこから先のことはまだ申しておりません。

中川(正)委員 では、聞き方を変えます。

 大臣はどう思われているんですか。あるべき姿というのはどういう形だと思われますか。

谷垣国務大臣 まだそこまで検討が進んでいないのを私個人としてはこう思うと言うのも、今の立場としては言いにくいわけでございまして、勉強の途中でございます。

中川(正)委員 これは、もう時間がなくなってきたので次に入れないんですが、そういう方向性というのをはっきりして、そこから具体的な議論が始まらないと、とりあえずこれだけまとめてみたんだという話では、この三つをまとめてみたんだという話では、これは議論が前に進まないですよね。だから、そこのところを改めて提起をしておきたいと思いますし、全体の体系をここでやはり真剣に議論しておくときだと思うんですよ。なし崩しに、これとこれはとりあえず一緒にしてみようじゃないかというような、そういう話じゃないと思うんですよ。

 その方向性をはっきりすることによって、民間の投資というものについてもちゃんとしたビジネスモデルというのが立ってくるんだし、将来にわたってのいわゆる民間のビジョンというのがつくれる。それなしで、とりあえずのところ、これだけを一緒にしたんだという話がいつも日本の政策の中にはあるものだから、結局そのときそのときの行き当たりばったりが不安感だけを起こす、不安感だけを醸し出すということになるんじゃないかということだと思います。そのことを指摘させていただいて、時間が来たようでございますので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょう最後の質問ですので、気合いを入れてやりたいと思います。

 まず、景気の現局面のとらえ方でございます。

 統計の遡及改定に伴って三期連続マイナスというマイナス成長になっているわけですが、今年度の政府の見通しというのは二・一%成長ということでありましたが、これを達成するには、一―三月期あと何%の成長が必要なのか、この点、お答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃいますように、十六年度の実質成長率見込み二・一ということでございます、名目の方は〇・八ですが。これを達成するために必要な一―三月期の伸びは、実質では前期比二・一%、名目では前期比一・一%程度ということでございます。

佐々木(憲)委員 これはなかなか厳しい目標だろうと思うわけです。

 配付した資料を見ていただきたいんですけれども、主な民間調査機関の成長率予測という一覧表がそこにありますけれども、十二の民間機関の二〇〇四年度の実質の成長率などがそこに予測で出されております。いずれをとりましても一・七から一・五の範囲内と、政府の目標と比べますと極めて低い水準であるわけでございます。これは、実際に先ほどの一―三月期にかなり高い成長を見込んでも、非常に厳しい現実だろうと思うんですが、それは、政府目標は達成できるというふうに確信を持って言えるんでしょうか。

谷垣国務大臣 率直に申し上げて、相当飛躍といいますか、頑張らなきゃいけない数字ではないかと思います。

佐々木(憲)委員 二〇〇五年度の見通しを見ても、政府目標は実質で一・六、名目一・三なんですけれども、これも相当高目の政府目標ではないか。十二の機関のうち十の民間機関が政府目標を下回る予測を立てているわけであります。これは来年度の目標としても相当高目の目標というふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 政府経済見通し、今委員がおっしゃったようになっているわけですが、十六年度については、先ほども申し上げたように、速報値が出るまであと一四半期あるわけですので、そこは結果を見守る必要があると思いますが、今後についても、これも、きょうも御答弁したところでもございますが、雇用情勢がよくなってきている、それから所得がこれから拡大するということが見込まれる、そういう中で消費が回復すると見込まれますので、こういう基本的な見通しは、私は維持できるのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 かなり楽観的な見通しだと思うんです。例えば、雇用者報酬が最近ふえたというお話を随分されておりますけれども、実態を見ますと、パートタイムなど正規雇用とまた別な不安定雇用層が数字がふえているというのが一つの原因になっておりまして、平均給与が上がってきているというわけではないわけであります。そういう意味では、この雇用の面、非常に不安定化が進んでいるという点、それから所得もなかなか、企業の利益の拡大と比べてずっと抑えられたままでいるわけであります。

 ここで数字を確認しておきたいんですけれども、内閣府の方がお見えだと思うんですが、暦年で平成九年、一九九七年から平成十六年、二〇〇四年にかけて、雇用者報酬は幾らだったのが昨年幾らになったか、幾らふえたかという数字を示していただきたいと思います。

飛田政府参考人 お答えいたします。

 雇用者報酬でございますけれども、平成九暦年、一九九七年におきまして二百八十・五兆円、平成十六暦年、二〇〇四年でございますが、二百六十三・四兆円でございます。この間で十七・一兆円減少いたしております。

佐々木(憲)委員 この統計、雇用者報酬ですね、最近、若干上向いているかのように見えますけれども、この間大変な減少でありまして、平成九年から十六年の間に十七兆円以上減っているわけであります。ですから、回復したとはいいながら、全然まだこの先どうなるかもわからない。この間も十七兆円という大変な規模の所得減少が起こっているわけであります。

 それでは、税、社会保険などの負担を差し引いた可処分所得でありますけれども、これは一体どうなっているか。総務省にお聞きしたいんですけれども、暦年で、同じ平成九年から平成十六年、この間、幾らから幾らにふえたか、それから、その差額はどうなっているか、数字を示していただきたいと思います。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 家計調査の結果によりますと、二人以上勤労者世帯の可処分所得でございますけれども、平成九年で一カ月当たり四十九万七千三十六円、平成十六年で四十四万四千九百六十六円となっているところでございまして、約五万円ばかり減少しているところでございます。

佐々木(憲)委員 これは月平均でありますけれども、大変な減少なんですね。つまり、四十九万七千円ですから、約五十万円から四十四万の台でありますから、これは五万円強の減少なんです。年間に直しますと約六十二万マイナスになっている。したがって、全体として雇用者報酬がずっと減り続けている。さらに、税あるいは社会保険の負担がずっしりと重くなっている。その結果、この可処分所得自体も大幅に減少しているわけであります。

 お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、これは内閣府の国民経済計算からとったものでありますが、国民所得は四年間で約五兆円の減少であります。マイナス一・三%。雇用者所得は九・五兆円のマイナス、三・五%マイナスという状況であります。一番下を見ていただきますと、家計可処分所得も十二・二兆円のマイナスで、マイナス三・九%。ですから、家計あるいは勤労者の所得、この点を見ますと、全体として非常に大きなマイナスとなっているわけです。この数字は四年間の増減を見たわけであります。

 これに反して、そこにありますように、企業所得、これは伸びているわけでありまして、四年間で企業所得、特にその下の民間法人企業、これを見ますと、四年間で八兆円ふえている。二二・三%増であります。

 こういう点を見ますと、これは、大企業を中心として利益は回復しているけれども、しかし家計は非常に疲弊しているという状況がわかると思うわけです。

 谷垣大臣にお聞きしますけれども、こういう状況を見まして、最近、雇用者報酬が若干下げどまりになった、上向きというような話がありました。しかし、やはりまだ、もとに戻ったというふうな状況では全然ないわけでありますが、そういう事実は確認していただけますか。

谷垣国務大臣 いろいろ数字を引いての御議論でございますが、雇用が改善しているといってもパートだけじゃないかという御指摘もありまして、確かに、今までパートタイム労働者の伸びが雇用者数の伸びを支えていたといいますか、そういう面があったことは、これは事実だと思いますが、ここ最近では、パートの労働者数の伸びが鈍化傾向を示している一方、一般労働者数が下げどまりを見せてきて、ほぼ前年比横ばいの水準近くまで戻ってきているということは、雇用の中身についても一定の改善が見られるのではないかと思っております。

 それで、そのほかにもいろいろ数字を指摘されておられますが、家計の所得については企業部門に比べてその改善がおくれていることは事実だと私も思います。しかし、先ほども申し上げたように、やはり雇用情勢は改善が進んでおりまして、雇用者報酬の伸びが前期比、前年比ともにプラスに転ずる、要するに、企業部門の改善が家計部門にも及びつつあるという形ができてきたのではないかというふうに思います。

 それから、労働分配率等の問題も、委員会でも随分御議論があって、これは基本的には労使でよく話し合って、特に民間部門については労使でよく話し合っていただくべきことだと思いますが、かつてやはり非常に高かったのが、バブルが崩壊後ぐっと修正過程にあって、それが最近、雇用者報酬がやや伸びてきた、こういう流れはあるのではないかなと思っております。

佐々木(憲)委員 労働分配率は、企業の利益が低かったときは労働者への分配率が高く見えるわけです。しかし、最近は企業の利益が非常にふえていまして、そういう点でいいますと、労働分配率はまた逆に下がってきているわけですね。

 それから、雇用者のあるいは労働者の賃金が上がるというのは大変望ましいことだと私は思うんですが、実際はなかなかそうなっていない。今度の春闘も大変厳しい状況にあるということでありまして、むしろ、企業の側が利益を非常に伸ばしていますけれども、それを賃上げによって回していく、あるいは新たな安定した雇用拡大に向けていっていないというのが現状なのであって、そこをどう改善するかというのが一つの政策課題になっている。この点はぜひそういう点で見ていただきたいと思うわけでございます。

 さて、そこで、家計がなかなかもとに戻らないような深刻な状況に依然としてあるわけですが、そういうときに定率減税の縮減ということが行われると、さらに家計圧迫要因になるというふうに私どもは思うわけです。

 そこで、具体的な数字をお聞きしたいんですけれども、定率減税の縮減でどれだけの負担がふえるか。まず平成十七年度、つまり来年度ですね、それからその次の十八年度、十九年度、縮減、廃止という方向が出されていますが、それが実行された場合、それぞれ幾らの負担になるか、この点をお答えいただきたいと思います。

田野瀬副大臣 私の方からお答え申し上げたいと思います。

 十七年度の税制改正における定率減税の二分の一縮減に加えまして、十八年度改正において全廃すると仮定した場合の所得税の各年度の国民負担増加額は、平成十七年度は一千八百五十億円の増でございます。平成十八年度は一兆二千五百二十億円の増、平成十九年度は一兆六百七十億円と見込まれておるところでございます。

 なお、ただいま申し上げたのは所得税でございますが、個人住民税の合計で申し上げますと、平成十七年度は一千八百五十億円、平成十八年度は一兆五千九百五十億円、平成十九年度は一兆四千五百五十億円のそれぞれ増になるところでございます。

佐々木(憲)委員 今数字をお示しいただいたんですけれども、大変な負担増になるわけですね。来年度は、確かに全体の一―三月の分だけですから、そういう意味では所得税で千八百五十億と今言われました。しかし、平年度で見ますと、一兆円をはるかに超える大変な負担増ということになっていくわけであります。

 そこで、この前のこの委員会で私も質問をしたんですけれども、与党の税調の平成十七年度税制改正大綱で「景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応する。」というふうに書かれているわけですが、そこでお伺いしたいのは、機動的、弾力的に対応するという場合、何を目安に対応するのか、その目安を教えていただきたい。

谷垣国務大臣 この一文は前回も大分佐々木委員とやりとりしたわけでございますが、要は、あのときも申しましたけれども、経済は生き物だから今後の景気動向については注意深く見ていこう、それで、その時々の経済状況に応じて、何か政策的な対応が必要になれば、どこに問題があるかということをきちっと判断して、機動的、弾力的に行っていくという必要がある、こういうことに尽きるわけで、今、何がどうなったらどうかとおっしゃいましたけれども、例えばどういう経済指標がどういう動きを示した場合に対応が必要となるというような機械的な考え方ではなく、弾力的、柔軟に臨機応変にやれ、こういうことを書いてあるわけでございますから、よくこの意を体してやりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 今の答弁では何が何だかさっぱりわからないわけでありまして、何がどうなったら見直すのかと。何がというのは何もないわけです。何か問題があればというようなことでは、意味がわからぬわけです。

 もうちょっと具体的に聞きたいんですけれども、例えば成長率に着目して大きく下がるということなのか。あるいは例えば家計がもっと大変な状況になる、家計消費が冷え込む、これは所得税の増税ですから家計に非常に影響しますから、そこに着目するのか。あるいは、企業の利益が今ふえていますけれどもこれががっと落ち込むというような状況。どういう状況を判断基準にされるんでしょうか。

谷垣国務大臣 いや、それは先ほど申し上げたとおりでございまして、個人消費ががたっとえらく落ち込んでしまったとか、企業倒産ががたがたがたっとふえてきたとか、それはいろいろなことがあり得ると思いますけれども、ではどのぐらいといっても、なかなかそれは、やはり総合的にきちっとそのときの情勢を見るとしかお答えのしようがないわけでございます。

佐々木(憲)委員 どうもよくわからぬですね。機動的、弾力的に対応する、その目安となるものも大変漠然としてわからぬ。いろいろな問題があるだろうというその程度では、これは何かようわからないわけであります。

 一番中心なのは成長率が落ちるということなんじゃないか、それがかなり大きなマクロ的な判断基準になるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 今、委員はあえて成長率ということを持ち出されたわけでありますけれども、もちろん成長率の動向というのは、今委員がおっしゃったように、経済全体のある意味では体温といいますか方向性を示すものですから、それは重要な指標ではありますけれども、ただ、やはり経済の流れを見ますときは、一瞬風速がどうなったとかいう話ではないと思うんですね。

佐々木(憲)委員 それでは、その判断する時期はいつなんでしょうか。

谷垣国務大臣 これは前回もお答えしたと思いますが、前回は、主たる含意はという言い方で申し上げましたけれども、段階的にやる。平成十七年度はこういうのを決めて閣議決定して国会へお出ししております、それでは次は平成十八年度はどうするんだという問題が出てまいりますから、そのときに、ではどうするんだという判断は周囲の状況をよく見て弾力的、機動的に判断をせよというのが、経済の動向をよく見ろというのが主たる含意だと思いますが、これはこの間は、では平成十七年はやらないんだなと決めつけられましたけれども、主たる含意がそこにあるということを申し上げているわけです。

佐々木(憲)委員 そうしますと、年末の税調答申のあたり、そのあたりが判断の時期と言えるわけですか。

谷垣国務大臣 どこを排除するというわけではないんです。ただ、これは十八年一月から実際に動き出すわけですね。そうしますと、では、入ってその影響はどうかということはやはりありますね。ですから、別にどこを排除するというわけじゃなくて、主たる含意は十八年度をどうするかですけれども、そういう十八年一月に入ってどうなるんだというようなことは、やはりそれは見ていく必要があるんだと思いますね。

佐々木(憲)委員 ということは、年末というのが一つの時期だろうと思うんですが、その場合、今、来年の一―三月の時期についても、これは初めから排除するわけじゃなくて、そういうものも含みながら、そういう時期も含めて検討の対象になり得るという理解でよろしいですよね。

谷垣国務大臣 どこを排除するわけではないとかなり緩やかに申しましたけれども、委員は、この前もそうですが、お詰めになるわけでありまして、要するに、私は、十八年度税制改正のプロセスにおいて議論していただくということは、これは当然あり得ることだろうと思っておりますが、その議論の結果どうなるかはもちろん今あらかじめこうだというふうに申し上げるわけではありませんけれども、要するに、余り予断を持たずに私は対応したいと思っております。

佐々木(憲)委員 それでは次に、定率減税の縮減の問題は、平成十一年の三つの減税の一つをもとに戻すという話でありますけれども、この平成十一年の三つの減税の対象となるのは、法人税の減税ですから企業、とりわけ大企業が中心だと思います、もう一つは高額所得者の所得税の最高税率の引き下げが行われた。それから、今問題になっている定率減税、三つの減税があったわけですね。

 そこで、先ほど数字を示しましたが、税金の負担できる力といいますか担税力、税負担能力ですね、これは、大企業の場合、高額所得者の場合、サラリーマンの場合、これまで減税の対象となってきたそれぞれ、そのうちで担税力がもとに戻ったと判断できるのはどの部分でしょうか。

谷垣国務大臣 今、三つの分野を佐々木委員は議論されたわけでございますが、個人所得課税の最高税率と法人課税の実効税率の引き下げというのは、これは当時の税調答申でも指摘されておりますように、やはり、国際化の進展、グローバル化といったような構造変化に対応して、我が国が元気を持ってやっていくためにやったわけでございまして、単純な景気対策ではなかったわけでございます。

 それで、個人所得課税の最高税率とか法人課税の実効税率というのは、確かにこういうことで主要先進国と同水準になってきているというふうに思いますけれども、他方、我が国個人所得課税の全体としての負担水準は、大多数の納税者が低い税率の適用で済んでいるということもありまして、国民所得比で見て主要先進国中一番低い水準となっているわけであります。個人所得課税の最高税率や法人課税の実効税率をそのままにして定率減税を縮減するということが、担税力という観点から見て不適当じゃないかと多分委員はおっしゃっているんだと思いますが、それは当たらないのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 私は、それぞれの税の性格、それから減税の目的を聞いたわけではないんです。それはそれで私は別な意見を持っていますけれども、今お聞きしたのは、先ほど見たように、家計の可処分所得が落ち込んでいる、あるいは雇用者所得も大変な落ち込みを示している、他方で企業は特に大手を中心に利益を拡大している、したがって、そういう点を見ると、大企業、大金持ち、サラリーマン、簡単に言いますと、三つの減税の対象があると思うんですね、それぞれの対象の中で税負担能力が高まったのはどこですかと聞いているわけです。そこを聞いているわけです。

谷垣国務大臣 そういうふうにおっしゃいますと、ちょっと委員の独特のめり張りづけに必ずしも私は同意するわけではございませんけれども、個人所得課税の水準という観点から考えますと、ここに担税力がないとは言えないというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 随分苦しそうな答弁なんですけれども、簡単でしょう、大企業の利益は拡大しているんですから。それで、サラリーマンの所得は落ち込んでいるんですから。家計の可処分所得が低下している。どこに税負担能力が高まっているかといえば、大企業のそこに負担能力が高まっている。それはもうだれが見たってそれ以外考えようがないじゃないですか。それを答えたくないためにいろいろな国際水準だとかなんとかということをおっしゃっていますけれども、それは私の質問に対する回答ではないんです。それはすりかえなんです。これはもう事実は明確なので、大臣は答えたくなかったということだけであります。

 次に、ではちょっと角度を変えましょう。

 今、こういう所得税の増税がサラリーマンを直撃するということになりますけれども、それを強行したら大変なことになるわけで、私たちはこれは撤回すべきだというふうに思っております。

 負担はこれだけじゃないんですね。今までも議論がありましたが、三枚目の資料を見ていただきますと、二〇〇五年以降の国民への負担増というのは、そこにありますように、大変な規模になっているわけであります。

 もう早速ことし一月から、老年者控除の廃止、六十五歳以上の公的年金等控除の縮小、住宅ローン控除の段階的縮小が始まっております。さらに、四月になりますと、雇用保険料の引き上げ、国民年金保険料の引き上げ。六月には配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止。さらに、九月には厚生年金保険料の引き上げ。十月になりますと、これは今まさにこれから導入されようとしている介護保険のホテルコストの導入、さらに、障害者医療への自己負担の強化、しかも、住民税均等割の妻の非課税措置の廃止、これは半減。しかも、これは昨年から行われておりますけれども、消費税の免税点の引き下げ。これらを足しますと二兆四千三百五十七億円になるわけであります。

 しかも、さらに来年になりますと、今度は老年者控除廃止ということで、これは住民税がさらに増税になる。六十五歳以上の公的年金等控除の縮小、これも住民税関係です。さらに、定率減税の半減。先ほどありましたように、大変な規模の増税になるわけであります。

 そこにずっと書いてありますように、障害者支援費等の自己負担強化、国民年金保険料の引き上げ、さらに、定率減税の半減で住民税が増になる、フリーター課税も強化される、厚生年金保険料も引き上げられる。もう本当に、これは痛んでいる家計を次々とボディーブローのように直撃するというのがことしから来年にかけての増税計画、さらに負担増計画であります。

 しかも、与党税調の増税シナリオ路線の見込み負担増、例えば介護保険料の引き上げですとか定率減税の廃止の残り分、これは所得税と住民税にかかってまいりますし、個人所得税の抜本的見直しというのが二〇〇七年、こういうことも想定されております。これは金額はまだわかりません。しかも、二〇〇七年、消費税の増税ということまでねらわれているわけであります。

 そういう、消費税と所得税の将来のこの点は別としまして、これら全体を合わせますと、今ほぼ確定的なものだけでも、ここにありますように、六兆五千八百六十四億円、約七兆円近いんですよ。これは大変な負担増が次々と押し寄せてくるというのが実態でありまして、この数字は、大臣、ほぼ間違いありませんね。

谷垣国務大臣 委員のお示しの数字は十分精査ができているわけではありませんが、私どもがちょっと用意したものは、十七年度、これは年度でございますが、十七年度については、税制改革について約〇・六兆程度、社会保険料の見直しについては約〇・五兆程度、合計で約一・一兆円程度、こういうふうになっております。これは配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止とかそういうものを含んでいるんですね。それから、十八年度は、税制改正については約一・八兆、社会保険料の見直しについて約〇・三兆、合計で約二・一兆程度というふうに見ております。

 これも委員との御議論の中で何度も申し上げたことでございますけれども、やはり負担増という観点だけで見るのは、私は違うのではないかと。年金の給付費総額というものは、十七年度、十八年度ともに一兆円を超える額の増加が見込まれておりますし、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止に伴って少子化対策を行う等々ございますので、やはり出と入りと両方で見ていただく必要があるんじゃないかと思っております。

佐々木(憲)委員 年金の給付がふえると言いますけれども、しかし、昨年通った年金のあの法律は、負担はふえる、給付は減る、しかもそれを、国会の議論なしにどんどん毎年上げていくというものも通したわけでしょう。ですから、そういう点を考えますと、給付の方はふえるんじゃないんですよ。対象が広がるから、少し額がふえるように見えるかもしれないけれども。

 そういう状況を考えますと、今私が述べましたそれぞれの項目、この項目で間違った項目はないと思うんです。ですから、このうちこれだけはやりませんよというのはありますか。これはやらないんですと。あったら教えてください。

谷垣国務大臣 ちょっと全部はわかりませんけれども、いろいろ計画しているものが入っておりますね。

佐々木(憲)委員 これ、お認めになったわけですけれども、数字は多少それぞれのとり方で違うかもしれない。しかし、谷垣大臣が今おっしゃっただけでも三兆二千億円の負担増になるんですよ。厳密に計算すれば、私どもが先ほど言ったような数字が計算できるわけであります。

 そういうことで、これが実行されると当然家計に負担が行くわけです。これは景気の押し下げ要因になる。はっきりこれは言えると思います。そういうことでいいますと、これはこれからの日本の経済、日本の国民の暮らしにとって極めて重大な引き金を引くことになる。そういう点で、私は、これらの負担増は全面的に撤回すべきだ、もう一度、財政の構造全体を改めて考える必要があるということを申し上げておきたいと思います。

 それで、この辺で、民主党から提出された二つの法案についても質問をさせていただきたいと思います。

 公債特例法の修正案、それから所得税法等改正案の修正案、この二つ出されておりますが、まず、公債特例法の修正案についてお聞きします。

 こういう修正案を提出するに至った理由といいますか、つまり原案の問題点というのはどこにあって、この修正案によってどの点が改まるのか、まず、この点をお聞かせいただきたいと思います。

中塚委員 原案の問題点につきましては、もう問題といえば全部が問題だというふうに思っているんですけれども、赤字国債を出すための法律案ということで、結局、では、その反対側の歳出である予算のむだ遣いというのが本当に改まっているのかという問題もあります。

 ただ、その中でもとりわけ特に、やはり今国民注視の問題であります年金の保険料を年金給付の事務費に充当するという部分については、これは削除をするべきだというふうに考えていまして、先ほどから佐々木委員も御質問になっているわけですが、年金制度への不信というのは、その根底にはやっぱり政治行政に対する不信というものがあると思うんですね。見直しのたびに保険料はどんどんどんどんと上がり、そして年金の給付自体はどんどんどんどん下がっていく。やっぱり大切なことは、年金の給付と負担の関係を明確にする、幾ら保険料を払ったら幾らもらえるのかということがちゃんとわかるような、そういう年金制度でなければいけないというふうに思うわけなんですけれども。

 そういった意味でも、この年金事務費については、本来は税でやるということであったものを、特例としてこういう保険料で賄っているということなわけですから、やはりここは本来の姿に戻すべきだろう、そうすることによって年金制度への信頼を回復するべきであるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 確かに、この社会保険庁の事務費の問題は、橋本内閣の時代の財革法で特例として認めて、それがずっとこう続いてきて、改まらないままに来ている。本来なら昨年の三月でこれは打ち切って、この点についてはやはり税で見るという本来の筋に戻すべきだったと私は思いますけれども、これがずうっと続いてきている、しかもまだ続けようとしている。これは本当に私は、これを直すというのは非常に大事なことだというふうに思います。

 同時に、社会保険庁の事務費の不正流用というのは、この部分を改めればそれはなくなるかというと、必ずしもそれだけではまだ不十分だろうと思うわけですね。それで、ほかに、この修正案で出された以外の手段として、この不正流用を正していく、直していく、その方法があればそれを示していただきたいと思います。

中塚委員 この社会保険庁の事務費に対して不正流用ということをどうやって防ぐかということなんですが、まずはやっぱり年金の保険料なり積立金というものは、もう給付以外には使わないということを大原則として打ち立てるべきだと思っています。実務的には、業務効率化の徹底とか、あと入札ですね、請負契約なんかの改革も必要だというふうに思っております。

 昨年、社会保険庁の長官に民間人を起用するということになったわけですが、やっぱり多くの国民は、ではそれで一体何が変わったんだという思いを持たれていると思うんですね。加えまして、厚生省と労働省がひっついて厚生労働省になったわけなんですが、では、その二つの役所が一つになったメリットって一体何なんだということにもなるんですけれども、社会保険事務所もあれば労働基準監督署もある、また職安もある、全部ばらばらにやっているわけですね。

 そういった意味でも、私どもは実は、社会保険庁につきましては、もう最終的には廃止をするべきだということを考えております。これは昨年国会に提出をいたしました年金法案の対案、民主党案の中にも盛り込んであるんですが、社会保険庁は廃止をする、国税庁と統合をして歳入庁をつくってはどうかと。保険料の徴収の業務もそういったところで同じように一元化をしていくようにしてはどうかということを提案しています。

 要は、払う立場からすれば、税金だろうが保険料だろうが変わりはないわけでありまして、だったら、税であろうが保険料だろうが、集めるところは一つにする。もちろん税であろうが保険料であろうが絶対にむだ遣いはしないというスタンスで臨むべきであるというふうに考えています。

佐々木(憲)委員 廃止すべきだという点については、我々はちょっと違う見解を持っておりまして、問題は内容なわけで、いかにしてむだ遣いを抑えるか、住民サービスをどれだけ拡大するか、それから、業界との癒着を断ち切るか、あるいは天下りを禁止するか、そういうさまざまな角度からの改革というものが大事であって、民営化したり廃止すればそれで何かできるかというと、必ずしもそうではないというふうに思っておりまして、この点は、具体策ではそれぞれの政策的な見地の違いというのはあろうかと思いますが、大きな方向として、今おっしゃった、むだ遣いを直していく、なくしていくということは同感するところであります。

 さて次に、この所得税法の改正案の修正案ですけれども、これを提出するに至った理由は提案理由説明でわかりましたが、こういう、縮減をいわば禁止するといいますか、つまり減税を継続すると。同時に、やっぱり新たな財源というものが必要だろうと思うんです。我々は、先ほど言ったように、担税能力のあるところにきちっと税金を払ってもらうということが大事だと思っておりますけれども、民主党の場合はどういう考え方でいらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

平岡委員 財源というと収入だけを見るということではなくて、やはり歳出と歳入、収入と支出、両面を見て考えなければいけないというふうに思っているわけであります。

 まず、私たちの基本的な考え方は、歳出を徹底的にやっぱり見直していくんだということが基本にあるというふうに思っています。そういう意味では、民主党予算案でも、先ほど与党の質問の中でも、私たちの見直しの中身というものを少し御紹介いたしましたけれども、徹底的に歳出の見直しを行っていくということをまず行っています。

 そしてまた、歳入面の方の見直しも、これをあわせてやっていかなければいけないということだろうというふうに思っていますけれども、我々としては、例えば子供手当というものを今回創設するという民主党案をお示ししていますけれども、その財源というものは控除主義から手当主義へということで、所得税の仕組みの中で控除という仕組みがだれに一体メリットをたくさん与えているかということを考えれば、累進税率のもとで高額所得者にとってより利益のある仕組みになっているというふうなことから、これを廃止して、むしろ手当に変えていくというような考え方の中で、子供手当というものもつくっているわけであります。

 そういう意味で、歳出、歳入両面ともにしっかりと見直していかなければいけないというふうに思っていますけれども、さらに歳入面で加えて言えば、我々の年金のあり方、一元化の中では、消費税についても、我々としては年金の一つの財源という位置づけの中で検討もさせていただいているというふうなことであります。

佐々木(憲)委員 消費税の財源化、つまり消費税の増税という点については、我々と見解が全然違うわけでございまして、私どもは、消費税というものはもともと逆進性を持っておりまして、低所得者であればあるほど所得に占める消費税の比率というのは非常に高くなる。そういう意味で、弱者に対しては非常に過酷な税制だと思っております。

 したがって、これを増税するということになりますと、いわば社会保障の対象になっている方々に大増税を押しつけるという形になりますから、社会保障の目的あるいは年金の目的のためということで、それを合理化はできないのではないかというふうに考えております。これは、まあ大いにこれから論戦をしていかなきゃならない、そういう課題だろうというふうに思います。

 それから、次にお聞きしたいのは、現在の住宅ローン控除に比べて、修正案の中にあります、この提案されている新しいローン控除というのはどういうメリットがあるのか、この点について端的にお答えいただきたいと思います。

中塚委員 まず、私どもの提案をしておりますローン利子控除というのは、住宅に限った話ではないということが第一点なんです。住宅については、十七年度については選択制、十八年度からは今の住宅ローン減税はやめてこのローン利子控除に一本化しようというふうに考えております。個別の案件については、いろんなモデルケースの立て方なんかでどっちが得でどっちが損かということはあると思うんですけれども、ただ、税額控除と所得控除の違いというのは私はかなり大きいと思っています。

 現行の制度は税額控除で、しかも期限が例えば十年とか、そういうふうに決まっているわけですから、少額の納税者の方はもう税額控除で全部引き切ってしまえばそれ以上の減税はないということになるんですけれども、私どもは、借り入れの全期間を通じてローンの利子を所得から控除できるということですので、私自身は、これからの経済の動向なんかを考えた場合に、なかなか所得も伸びていかない中にあって、消費をどうエンカレッジするかという点で考えたときには、こちらの制度の方が、日本経済にとってもまた個人にとってもメリットがあるのではないのかというふうに考えていますし、あとは、政府の住宅ローン減税というのは景気対策ということでやっているわけなんですが、私どももちろん景気対策ではないとは言いません、景気対策の意味合いもありますけれども、でも、これは制度として改正をしたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 この新しいローン控除制度というのは、住宅に限らず広げると。住宅の場合も、本人が現に住んでいる住宅に限らず広げるということになりますと、例えば別荘ですとかあるいは利殖のために不動産に投資をする、そのためのローン、こういう、一部のいわば金持ちといいますか富裕層の資産形成を対象にするということになりはしないかという懸念がちょっとあるんですが、こういう点の適用はないというふうに言えますでしょうか。

中塚委員 私どもが今回提出をしております修正案では、いわゆるセカンドハウス的なもの、別荘とかいうことについて、それを対象外にはしていないんですね。それも要はローンの利子の控除制度のうちに取り込んであります。それをどう活用するかというのは、もうそれは個人個人の才覚なり、その人の置かれているポジションの問題でもあるというふうに思っています。

 ただ、利殖のためということであれば、事業用で借り入れて、借り入れた場合の利息だって損金で落とせるということでもあるので、私は、個人個人がどういうふうにこの制度を御活用になるのかというのは、まさに個人個人の方の御判断なんだろうというふうにも考えています。

 加えて、先ほど申し上げたとおりで、住宅だけに限った話ではありませんので、例えば教育ローンなんかも、この制度を活用していただければ、ローンの利息を所得から控除ができるということですから、いろんな層に恩恵を及ぼすことになるだろうというふうにも考えています。

佐々木(憲)委員 かなり対象が広がるとなりますと、ちょっとこれは通告はしていませんけれども、財源的にどの程度の財源ということが想定されるでしょうか。もしわかりましたら教えていただきたいと思います。

中塚委員 今の住宅だけに限っていえば、政府のやっている住宅ローン減税とか住宅ローンの残高なんかを見ると減収額一兆円ぐらいなんですが、ただ、それ以外のものについての、利息でありますとか、またあるいはこの間の金利動向ということによっても減収額は左右をしてくるということであります。ただ、この制度をつくることによっての消費拡大のもたらす日本経済に対するインパクトはかなり大きい。GDPの六割は消費ということですから、そこが活性化することによっての日本経済の活性化というのはさらに大きいものがあるだろうというふうにも考えています。

佐々木(憲)委員 個人消費の拡大へのてこ入れという性格があるということは、もちろん私もそのとおりだと思いますし、そういう性格のものが必要だろうというふうには思いますけれども、対象の面、これについてはいろいろと議論をしていければというふうに思っております。

 それから次に、NGOの活動法人への税制上の支援ということですが、私もこれは大変大事だと思いまして、これは野党共同で、私ども参加して提案をしたこともあります。ほぼ同じ内容のものがここに入っているというふうに理解しておりますけれども、この税制上の支援というものが日本の社会全体にとってどういう意義を持っているか、この点についてお考えを示していただきたいと思います。

平岡委員 今佐々木委員の方からは、NGOという表現でありましたけれども、NGOに限らずNPOも含めて、私たちは市民が公益をみずから担う社会の構築を目指すという基本的な考え方を担っていまして、そういう中で、このNGOとかNPOというのは、まさにそうした公益を担っていく主体として、これから立派な活動をしていただきたい、私たちはこういうふうに思っているわけであります。

 ただ、問題は、こうしたNGO、NPOという組織が活動するに当たって、やはり財政的基盤というものがなかなかつくれないというのが大きな悩みであり、政策的な意図は、そこをいかに強化していくかということだろうというふうに思っています。

 そういう意味では、ちょっと質問から少し離れてしまうというか、先へ行ってしまうわけでありますけれども、今政府が認定NPOとして行っているのは、先ほど質問の中でもちょっと触れましたけれども、ことしの一月末現在で、NPO法人が二万一千九百三十九法人あるにもかかわらず、認定NPO法人は二十六法人しかいない。こういう状況の中では、NPOが活動しやすい財政基盤が必ずしもできない状況、環境にあるのではないか、こういうふうに思っていますので、NPOの果たす役割にかんがみて、私たちは、財政基盤をより強化していくための政策的な支援、政策的な枠組みをつくっていくということで提案させていただいているということでございます。

佐々木(憲)委員 NGO、NPOに対する支援というものは大変重要だと私も思っておりまして、やはり今後の日本の社会の発展の上でも、これをどういうふうに積極的に支援をし、また広げていくか、このことが重要だという点は、全く認識が同じでございます。

 以上で、時間がほぼ参っておりますので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金田委員長 次回は、来る二十八日月曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後八時一分散会


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