衆議院

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第9号 平成17年3月2日(水曜日)

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平成十七年三月二日(水曜日)

    午後二時四十四分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 竹本 直一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    大前 繁雄君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      鈴木 俊一君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西銘恒三郎君

      宮下 一郎君    森山  裕君

      山下 貴史君    渡辺 喜美君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      佐藤 公治君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    田村 謙治君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   大田 弘子君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  岡本 芳郎君     西銘恒三郎君

  永岡 洋治君     大前 繁雄君

  小林 憲司君     佐藤 公治君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     永岡 洋治君

  西銘恒三郎君     岡本 芳郎君

  佐藤 公治君     小林 憲司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案並びに平岡秀夫君外二名提出の両案に対する両修正案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長杉本和行君、財務省主税局長福田進君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、内閣府政策統括官大田弘子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、特例公債法案と所得税法の一部改正法案ということでございますけれども、先日、私、衆議院の本会議でこの両法案について代表質問をさせていただきました。その際、総理からもいろいろ御答弁はいただいたわけでありますけれども、いろいろと積み残された問題もあります。きょうは、しっかりと総理から答弁をいただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、これは同僚の中川議員が衆議院の本会議でも質問した事項でありますけれども、今回の法案の提出の形式の問題であります。

 定率減税の縮減というのは、国民の皆さんが大いに関心を持ち、国民経済あるいは国民生活にも大変重大な影響を与えるものであるということであります。そういった内容のものをほかの税制改正事項と一緒にして日切れ法案という形で閣議決定をし、国会に提出し、そして国会の審議を求めるというようなことになっていて、法案提案者としては極めて問題が多い姿勢であったというふうに私は思っております。このことに対して強く抗議を申し上げますとともに、総理の猛省、反省を促したいというふうに思いますけれども、総理としての見解をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今回の法案の出し方について御意見がございましたけれども、平成十七年度の税制改正では、あるべき税制の構築という共通の趣旨、目的に沿って改革を一体的に講じるということで、改正全体の姿を一本の形で、一本の法案で一覧的に示して、一体として御審議をいただきたい、それが適当だと考えてこのような形でお出しをいたしました。これは、平成十五年度、十六年度の改正も同様の取り扱いをしているところでございます。

 委員には今さらこんなことを申し上げるのはなんでございますが、歳入の裏づけがあっての歳出でございますから、歳入予算と歳出予算、これはできるだけ一体で御審議をいただくのが望ましいというふうに思っておりまして、税制改正法案は定率減税の縮減を初めとして、平成十七年度予算の歳入の基礎となる重要な事項を含んでおりますので、予算と一体で御審議を願いたいという形でこういうふうにさせていただきました。

平岡委員 歳出歳入は一体であるということを否定するものではありませんけれども、先ほど申し上げましたように、定率減税については極めて国民生活にも重大な影響を与えるものであるということで、しっかりと審議をしなければいけない、こういうものだというふうに思います。そういう意味では、今回の取り扱いは極めて遺憾だということでありますので、総理に対して、もう一度この問題について、総理としての見解をお聞かせ願いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 谷垣財務大臣の答弁のとおりでありますが、法案の扱いという問題につきましては、院が決めることでもあり、私からどの委員会がいいかどうかについては控えたいと思っております。つい先ほども、院の決めることに総理は慎重に発言しろという御注意をいただいたところでありますので、慎重に、控えたいと思います。

平岡委員 法案を提出しているのは、閣議で決定した上で内閣として提出しているんですよ。だから、委員会の進行とか国会における審議のあり方を言っているわけではないわけですから、その点は十分に御理解いただいた上で答弁をしていただきたいというふうに思います。どうぞ。

小泉内閣総理大臣 これは予算と一体でありますので、このようなお願いをしたわけでありますので、御理解いただきたいと思います。

平岡委員 反省が余りないようでありますけれども、この点についてはしっかりと私たちとしては抗議を申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、本会議での再質問の件でありますけれども、私が総理の答弁に対して再質問させていただきました。そのときの総理の再答弁の中身をチェックしてみましたけれども、私の再質問に対しては全く答えていない、すれ違いの答弁に終始しているという実態でありました。この実態を見ても、総理が官僚任せであるということは極めてよくわかるわけでありますけれども、この点について重ねてここでしっかりとした答弁、真正面から答えていただく答弁をしていただきたいというふうに思います。

 まず第一点は、地方への税源移譲の問題であります。

 総理は、民主党の予算案に対して、いろいろと評価というか、前向きか後ろ向きかは別として評価をしていたわけでありますけれども、その中に、民主党の補助金の地方への税源移譲の問題について、総理は個別に事務事業の徹底的な見直しを行いつつ改革を進めることが重要であるというふうに答弁をされておられました。

 それでは、総理に伺いたいと思います。

 今のところ、平成十八年度までで税源移譲は終わりだといったような雰囲気も一部あるわけでありますけれども、総理が言われているような個別の事務事業の徹底的な見直しの論議を、今後政府としてはどのように進めていくということを念頭に置いてこういう発言をされたのか、これを伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回の税源移譲、補助金改革、交付税改革につきましては、十七年度と十八年度、この間、おおむね三兆円程度の改革をなすということで決めたわけでありますが、十九年度以降については、この成果を見きわめながら、さらにどのような補助金改革、税源移譲ができるか等、よく判断していかなきゃならない問題だと思っております。

平岡委員 民主党の案に対していろいろと言っている割には、その手続、どういうふうにして個別の事務事業に対しての見直しを行うかということについて、全く自分の手元に持たないままにそういう答弁をされたということに対して、私は強く抗議をしたいというふうに思います。

 時間がないので、次に移ります。

 今回の特例公債法案の中に、年金事務費の負担特例の話がございます。この点については、昨年の四月の厚生労働委員会でも、総理は、「年金の保険料は余計なことに使わない、年金給付に充てる、年金事務に充てる場合も効率的に考える、これはよくわかりますから、よく検討したいと思います。」こういうふうな発言をされておられますけれども、今回も年金事務費については保険料で賄われるという特例法案が出されているわけであります。

 厳しい財政事情のもとで特例措置を継続したということで答弁をされておられますけれども、そうすると、この状況というのは、今後も、当分、しばらく続くという見通しなんでしょうか。いつまでこの特例を続けるというおつもりなんでしょうか。総理、お願いします。

小泉内閣総理大臣 この年金事務費につきましては、今、社会保険庁の改革案が議論されている最中でございます。この社会保険庁の改革ということについては、今までの保険庁の存続を前提とすることなく、組織のあり方、業務内容等を含めて見直すということで現在協議中であります。

 そういうことから、私は、この事務費の財源のあり方についてはいろいろ議論がありますが、この制度並びに組織のあり方となりますと大きな変革でありますので、この社会保険庁改革の動向も踏まえて今後検討していかなきゃならない問題だと思っております。

平岡委員 今のは、社会保険庁改革をするということ自体、それは大変大事なことでありますけれども、総理が言われたように、年金の保険料は余計なことに使わない、年金給付に充てるんだということについては、全くその答弁に対して違ったことを今回やっているわけでありますね。

 私が本会議で質問したことは、こんな特例方式でやるのはおかしいじゃないか、本当に年金保険料で賄わなければいけないものがあるとするならば、しっかりと国民の前にそういうことを示して、特例法という形じゃなくて、年金の改革の中でしっかりと取り組んでいかなければいけないんじゃないか、こういうふうに質問をしたんですね。それに対して総理は、何かその前に読み上げた答弁をもう一度読み上げるような形でしか答弁がされていませんでした。

 私が今申し上げたように、本当に制度改革の中でしっかりやるという、そういうことが今回の法律の提出でも必要ではなかったかという私の指摘に対して、総理、答弁していただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この年金事務費というのは、年金保険料の範囲でどこの部分まで使用すべきかという点について、これから私は年金の一元化を含んだ議論の中でも当然出てくると思います。そういう議論も見きわめながら、基本的に、原則として年金の保険料は年金の給付とその主体的なものに使用されるべきだ。また、事務費等、あるいはほかの問題についても、これは一般会計でやった方がいいのではないかという議論が出てくると思いますが、そういう点につきましても、これから私は年金改革の議論で当然出てくると思います。その意見を参考にしながら対応していかなきゃならないと思っております。

平岡委員 この点については、総理の答弁違反であるということ、そして、本来は制度的な見直しの中でしっかりとしたものとして出されるべきなのにもかかわらず、こうした特例法的な法案で出されてきたことに対して私としては強く抗議をするとともに、この点については明確に反対をさせていただきたいというふうに思っています。

 次の問題に移ります。

 定率減税の問題でありますけれども、総理は、この定率減税はどういう法律に基づいて行われているかというのを御存じでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、正式な名称を読み上げますと、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律、通称、恒久的減税法と言われるもので対応されております。

平岡委員 総理に答えていただけなかったのは非常に残念なんですけれども、総理はどういう法律に基づいてこの定率減税が行われているかすらも多分御存じないんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 今、財務大臣が言われた法律の第一条というのを見られたことがあるんでしょうか。第一条にはいろいろなことが書いてあります、いろいろなことが書いてありますけれども、政府の今の経済の認識というのは、まあまあのところに来たというのが政府の認識でありますけれども、この法律には何と書いてあるか。「現下の著しく停滞した経済活動の回復に資する個人及び法人の所得課税の制度を構築すること」、これが一つの目的になっているんですね。こういう経済認識をこの法律は示している。この法律が示している経済認識と今政府が示している現下の経済状況認識というのは全く違うじゃないですか。こんな違反しているような、法律と政府の認識が反しているような、そんな法律をもとに今回の定率減税を変えていくというのはおかしいじゃないですか。総理、答えてください。

小泉内閣総理大臣 この減税にしても税制にしても、永遠に変えてはいけないというものではないんです。税制改正というのは、そのときの財政状況、経済状況を踏まえながら、どのような改正が必要かというのは政治判断という要素が多分にあります。

 私は、現下の状況において、この定率減税につきまして、当時の、不況時の状況から比べれば、定率減税を全廃するのではなくて二分の一にとどめておくという改正というのは、財政の状況を見ても、また経済の状況を見ても、適切なものではないか。

 景気の状況を見ますと、これは景気に悪影響を与えるという議論もありますが、この減税を二分の一にとどめて改正するというのは、来年の一月から三月まで影響するわけでありますが、総額、やると約三兆円に、三兆三千億円ですかになりますが、三兆円の増税ということじゃないんですね。来年の一月から三月までに限りますと、約一千七百億円から一千八百億円程度ですかね。

 そういう点から見て、さらにこれを全部廃止するかとなると、ことしの景気情勢なり経済情勢なりをよく見きわめなきゃならないということで、今後の、全廃すべきか否かという点については、ことしの秋以降よく議論していかなきゃならない。ですから、この問題については、改正することについて、私は問題がないと思っております。

平岡委員 そんなこと聞いてないですよ。法律に書いてある認識と、法律に書いてある政府の認識と、今現在政府が説明している認識が違うんじゃないか。そんな政府の認識と法律の認識が不一致の法律なんか通せるわけがないじゃないですか。そのことを聞いているんですよ。

谷垣国務大臣 平岡委員から、わざわざこの一条目は資料にして配っていただいておりますけれども、ここで「現下の著しく停滞した経済活動」と言っておりますのは、当時の経済に対する認識をここに示したものでございますので、現在の認識を示したものではないわけですね。

 それで、今回は全体のこの枠組みは維持しながらそれ以降の経済情勢の変動を踏まえて一部手直ししようというもので、税率を変えようというものでありますから、私は、この本文まで全部、当時、導入時の認識を示している本文そのものを変える必要は必ずしもない、このように考えてこういう法案を、今度の法改正をお願いしているわけであります。

平岡委員 今の説明は全くおかしいですね。その認識であるから、そういうことでやるから、この所得税法の一部改正法案の中にこんな法律が入っちゃうんですよ。本当は、今の経済状況を踏まえて、どういう定率減税にとどめるべきかという新しい法律をちゃんと出さなきゃいけないんですよ。それを怠ってこんな形でやるということ、法形式にもつながってくる話ですけれども、法律に書いてある認識と今政府が説明している認識が全く違うというこんな法案は、とても通せない、反対であるということを申し上げたいと思います。

 そして、これも何度となく答弁されている話でありますけれども、ここで総理にもう一度確認をしておきたいと思います。この定率減税が実施されている法律の中には「抜本的な見直しを行うまでの間、」、これは、法人税とか、個人及び法人の所得課税のあり方について抜本的な見直しを行うまでの間は変えないんだ、見直しが行われるときに変えるんだということが明確に法律に書いてある。後ほど多分公約違反であるということは岩國先生の方からもお話があると思いますけれども、法律違反の改正を行うということについて私も強く抗議したいと思いますけれども、この点について総理の見解を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は法律違反とは思っておりません。いかなる法律もその時局に対応できるような改正をしなきゃならないならば、改正しなきゃならない。不変のものではないと思っております。今回も、解釈においては平岡議員と違いますが、私は法律に違反するものとは思っておりません。

平岡委員 少なくとも現行法には違反しているんですよ。まだこの法律は生きているんですよ。「抜本的な見直しを行うまでの間、」ということで、この法律は、抜本的な見直しを行うまでは所得税のこの法律に基づく定率減税は続けなければいけない、こういうふうになっているわけです。その点が守られていないということは、現行法違反の提案が出されていることにあるということです。

 先ほど総理は言われました、国から地方への税源移譲の問題については、十八年度までで終わるわけじゃないんだ、十九年度以降もあるんだ、あり得るんだというふうに言われました。ということは、これまで、きょうはもう時間がないので聞きませんけれども、財務大臣は、十八年度に税源移譲の問題の抜本的改革があるから、それの先取り的なものとして行われるんだということを言っていましたけれども、そうじゃなくて、十八年度にとどまらず十九年度、二十年度にもあるかもしれない、そういう状況の中での改正ですよ。抜本的な見直しが行われる中での改正じゃないということで、極めて法律違反の状況にあるもとでの改正であるというふうに私は思います。そういう点でも強く抗議したいというふうに思います。財務大臣、何かあるんですか。

谷垣国務大臣 今、まだ十九年度も税源移譲の問題があるかもしれないから、十八年度は抜本改正でないとおっしゃったわけですよね。それは、十九年度をどうするか、三位一体をどうするかは、十八年度までのいろいろなことを踏まえて、またその時点で判断するんですから。今までとにかく三兆円ということで推し進めてきたのを、所得税から地方住民税という形でやるわけですから、これは所得税体系全体を見直さなければできる話ではありませんので、十八年度抜本改正というのは、私どもはそのつもりで作業をしておりますので、全く違うというのは、委員の認識は、私は賛成できないわけであります。

平岡委員 十八年度にどういう抜本改正があるかも示されないで、この部分だけ先取りしてやるというのはおかしいですよ。そうですよ、財務大臣。

谷垣国務大臣 総理が見えているので、余りしゃしゃり出て答弁しちゃいかぬと思って遠慮しているんですが、しかし、その点は今まで配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止とか年金税制の見直しとやってまいりましたし、それから、今後の方向としては、個人住民税は所得割をフラット化して、そのかわり所得税の方は見直して、あわせて全体としては負担をフラットにしていく、負担を前と後で変わらないようにしてやっていこうと。そのほかまだいろいろ議論するところはあるけれども、そういう形で大きな方向はお示ししているわけであります。

平岡委員 それは、だから十八年度までの税源移譲を踏まえての改革の中身にすぎないですね。さっき総理は、十八年度で終わるわけじゃない、十九年度もあるかもしらぬと。十九年度にもっともっと大きなものが出てくるかもしれない、そういう状況の中でこの部分だけ先取りしてやるということは極めておかしい。この点についても、今までの政府の説明がごまかしであったということについて強く抗議を申し上げたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。

金田委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 小泉総理大臣初め関係大臣に、今回の一連の予算、とりわけこの増税と言われる国民の税負担の増加について質問いたします。

 まず最初に小泉総理、この定率減税の削減、言いかえれば税負担の増加について、景気判断と政治判断の両面から質問いたします。

 まず、景気判断について。総理もイギリスで勉強されましたから、議会が何のためにつくられたかという発祥は、すべて、税を議論しようということから世界の議会の歴史は始まり、したがって、議会は税で始まり税で終わると言っていいぐらいにこの委員会での議論は私は非常に重いものだと。そういう点で、総理に御出席いただいたことを多としておりますけれども、あらゆる政策の中で、今申し上げましたように最も大切な政策というのは税を上げるか下げるか、これで始まりこれに尽きると私は思います。税金を上げることを増税という。増税というのは国民が使えるお金を減らして役所が使う金をふやすこと。逆に減税は、役所が使う金を減らして国民が使う金をふやすこと、これを減税といいます。今の景気情勢というのは、国民の使うお金を減らしていけるような、そういう景気判断をしておられるのか。

 総理は昨日の予算委員会でも踊り場という表現をお使いになりましたね。この踊り場というのは、総理はどういう意味でお使いになっていらっしゃいますか。

小泉内閣総理大臣 踊り場というのは、私が使っている意味は、階段で例えるならば、階段を上っていきますと、途中に広い場所があります、例えば一階から曲がる場合に。そういう、まあ休むところじゃありませんけれども、かなり広い、休むところというんですかね、一呼吸置く場所、それは上がる途中にある。(発言する者あり)それは、上からおりてくれば下がる途中ですけれども。

 私が言っているのは、景気が停滞していた私が就任した当初に比べれば、今はむしろ上がる状況になってきたんじゃないか。しかし、そういう状況の中でも、一気にずっと上がっていくよりも、今の時点においては少し一呼吸置いているなという状況で、踊り場的な状況にあるというのは、経済評論家、経済専門家、あるいは日銀等、経済担当大臣、その責任者の経済の専門家の皆さんも使っている言葉でありますので、踊り場という言葉を使ったわけであります。

岩國委員 担当の大臣あるいは専門官の方のいろんな御説明もあろうかとは思いますけれども、予算の最高責任者である総理自身がどういう景気認識を持っていらっしゃるかということは、これは非常に大事なことなんです。どういう景気認識に基づいてこうした国民の税負担をふやすべき、あるいはふやしてもいいという判断をしていらっしゃるか。

 その点で、この踊り場というのは、総理、今、一休みとおっしゃいました。一休みというのは、大体何カ月ぐらいの感じをおっしゃっているんですか。踊り場に三年も四年もいる人はいないわけです。大体どれぐらいの感じで一休みとおっしゃっているのか。

 それから、ここまで上がってきて、ここで一休みとおっしゃいましたけれども、株価は、総理御承知のように、森内閣のときよりも一五%下がったままなんです。株価が下がったままで、階段を上がってきたとはとても言えないでしょう。もう一つ。金利は下がったままなんです。株価も下がったまま。大事な景気判断の指標の二つとも下がったままで、小泉総理は今まで階段を上がってきたと錯覚していらっしゃるんですか。どうぞお答えください。

小泉内閣総理大臣 どのぐらい続くかということでありますが、十―十二月期のGDPの統計によりますとマイナスである。これが、三四半期連続でこういうマイナスが続くと景気後退局面という判断をしなきゃならないと言う専門家もいるのは承知しております。

 しかし、現在の状況を見ますと、これは各企業の設備投資も堅調でありますし、業績も上向いております。なおかつ、失業率もかつての五・五%から今は四・五%程度に減ってきた。有効求人倍率も、十年、十一年ぶりですか、上向いている。求人数も多くなっている。雇用者数も増加していると同時に就業者数も増加しておりますので、私は現在の状況から見ると、多くの評論家も、ことしの後半以降、堅調に回復していくのではないかという見方も強いわけであります。実際の数字におきましても、一、二年前に比べればかなり改善状況を示しているというものでありますので、この状況が、そのままずっと踊り場を下っていくかという状況には見ていない。むしろ上に向かっていく一つの一呼吸置いた踊り場ではないかというのは、各種の統計上の数字にもあらわれているのではないか。

 私の主観的な見方よりも、岩國議員もそういう統計の指標を見れば、そのような判断をしていただけるのではないかなと思っております。

岩國委員 総理はどういう家に住んでいらっしゃるのか、私は総理の家の踊り場を見に行ったことはありませんけれども、今の感じとしては、相当長くて広い踊り場じゃないかと。しかも、複雑な階段になっておって、上がってきたのか下がってきたかもよくわからないような設計になっているんじゃないか、そう思わざるを得ないんですね。

 今、仮にことしの後半から、秋ごろから、仮に六カ月としましょうか、しかし、六カ月といえども、今までの階段が下ってきた階段なのか上がってきた階段なのか、この認識も非常に大事なところだと思うんです。

 今まで踊り場という表現を使われた総理、あるいは経済企画庁長官、大蔵大臣、何人もいらっしゃいます。今まで、福田さんがお使いになりました。越智長官もお使いになりました。それから、森総理もお使いになりました。その踊り場という表現の後、いずれも下がっているんですね、なぜか符節を合わせたように。そういう点を御承知の上で使っていらっしゃいますか。それとも、踊り場という表現を使われたときには、いつもその後は上がっていったという認識で総理は使っていらっしゃるんじゃありませんか。そうでなければ、国民の税負担をふやすということはできないはずです。

 福田さんがお使いになった後、十六カ月の景気後退がやってきております。越智長官が踊り場と言った後、長い三十二カ月の谷間が来ております。森総理の後には、十四カ月の景気後退期に入っております。なぜか符節を合わせたように、この三人の方、ほかにも何人かいらっしゃいますけれども、こういう経済判断の、景気判断のキーポストにおられたような人が踊り場という表現を使われた後には、景気が上がったという例が見つからないんです。だから、私は気になってそれを申し上げているんです。それを承知の上で総理は使っておられるのか、いや、知らなかったんだとおっしゃるのか、どちらですか。

小泉内閣総理大臣 私は、過去の、今岩國議員が言われた、それぞれの方が言ったときにどの程度下がったかというのは、定かにはわかりません。

 また、踊り場という言葉を使って上がったことがあるかということについて、この踊り場という言葉はかなり使われておりますので、私の内閣になってからも使われております。上がってきている状況もあったんだと私は今思っております。たまたまここに来て、また一呼吸置いているという状況ではないかなと思っています。

 過去の、言った方の後、どうなっているかということについては、詳しくは承知しておりません。

岩國委員 小泉内閣の中で使われたのは竹中さんだけです。十五年一月、昨年一月。それからどんどん景気は上がったでしょうか。

 それから、もう一つお伺いします。昨年の参議院選挙が行われた七月、その前の六月、この辺と今では、景気はよくなっているんでしょうか、悪くなっているんでしょうか。アバウトな判断で結構です。いろんな指標とか数字を要求しているわけじゃなくて、総理自身は、あの参議院選挙の前よりは今は景気がよくなったなというふうに判断していらっしゃるのか、悪くなっているというふうに判断していらっしゃるのか。お願いします。

小泉内閣総理大臣 私は、堅調に推移していると見ています。かなり底がたいなと。

 これだけ、今まで景気が悪くなりますと、公共事業をふやして、減税をして、財政出動をして、なかなか景気回復してこなかったということに比べますと、財政出動も前年度以下におさめている、公共事業も減らしている、そして減税というものもしていないという状況で、上がってきているということは、これは民間の方々がやる気を出してきたな、そして業績も上げてきたなと。外需ばかりではない、アメリカや中国の経済の好調もありますが、国内の設備投資等、底がたいものがあるということから見て、私は、かなり堅調に推移しているんじゃないか、そう判断をしております。

岩國委員 ありがとうございました。総理の堅調に推移しているという、総理自身の御判断は承っておきます。

 それを踏まえて、二月二十二日に発表されました内閣府の月例経済報告、これは総理も当然ごらんになっていますね。この月例経済報告を読みますと、個人消費は一休み、そして輸出とか生産については弱含み、景気回復は足踏み、このとおりの表現ではありませんけれども、この三項目について、個人消費について、そして輸出と生産について、あるいは景気回復の概況について、それぞれ一休みとか弱含みとか足踏みとか、まさに「三み一体」になっておるわけです。三つの「み」がそろっているのです。一休み、弱含み、足踏み、まさに「三み一体」。「三み一体」で矢印は下の方へ向かっているわけです。

 二月に予算を出しておる状況の中で、この一休み、弱含み、足踏みの「三み一体」の景気判断の中でなぜ国民負担をふやすことができるんですか。おかしいじゃありませんか。景気判断の点からも私はこの判断はおかしい、間違いだと思いますし、総理自身の、堅調に来ている、月例経済報告は最近弱気になって、一休み、弱含み、足踏み、こういう表現が使われているときに、それならば増税ではなくて減税をやらなきゃいかぬじゃないですか。

 昨年の六月、七月、これは自民党がお使いになったマニフェスト、政策集。私は、この中に、来年は税負担をふやします、増税という言葉が書いてあるかどうか、二度読み返して探しました。総理も、当然、総裁として目を通されたでしょう。総理自身が目を通しもしないものを一般の有権者に配るはずがありませんから。この二万字にわたる政策集の中の何ページのどこに、皆さん、来年は自民党は税金をふやします、お覚悟くださいということがどこに書いてありますか。増税のゾの字も書いていない。

 しかも、その前から、いろいろ調べてみますと、政府・与党の中では定率減税の縮小という方向で話も行われておった。北側国土交通大臣は、公明党を代表してのお立場じゃなかったと思いますけれども、予算委員会で私の質問に対してそのようにお答えになりました。つまり、政府・与党の中では、これができる前に定率減税縮小という方向の話し合いがもう既に行われておりました。しかし、公明党はこれに責任を持っているわけじゃありません。

 政府・与党は、そのころに既に話は行われているのに、国民にはこれだけたくさん字数を尽くして政策を述べながら、一番大切な政策は何か、私は一番最初に小泉総理に申し上げました、福祉政策も交通政策も農業政策もみんな大切、しかし、その中で一番大切な政策は税を上げるか下げるか、これについて自民党のこのマニフェストは一言も触れていない。この政治判断について総理の御説明をお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 マニフェスト、公約というものについて、公約に触れていないものは一切やっちゃいけないとは私は思っておりません。そして、選挙におきまして私がよく批判されたのは、消費税を上げないと言っているのは無責任だとよくいろいろな方から言われました。しかし、私は、消費税を上げると言うことの方が無責任じゃないのかと切り返した覚えがあります。なぜなら、私の任期は来年の九月です、長くても。その期間に私は消費税を上げる環境にはないと見ているんです。民主党の方からも無責任過ぎると批判されました。しかしながら、私は、その他の税制改正についてはよく状況を見きわめて判断する必要があると。あえて減税するとか増税するとか言いませんでした。はっきり言ったのは、私の任期中は消費税を上げないと言ったことであります。

 そこで、経済とか景気情勢を判断する場合には、税だけを見て判断するのは適切ではないと思います。財政状況、国債の発行。民主党は、国債発行をもっと削減しなきゃいかぬ、公共事業をもっと削減しなきゃいかぬと言っております。これも景気に影響します。そうなりますと、消費税を上げると宣言した方がいいのかどうかというものも、これも政治判断であります。私の政治判断として、私の見通しにおいて、私は消費税を上げる必要はないと言ったことでありまして、それに書いていないから、今回の税制改正、今までの定率減税を半分停止するというのが、これは問題があると言うのはいいです、問題があると批判するのは結構です。しかし、財政経済状況を全体的に眺めてみて、財政規律も維持しなきゃならない、景気も判断しなきゃいけないということから見れば、今回の定率減税を半分にとどめておくということについて、今の景気情勢、経済情勢に、大きく左右する、影響するものではない。

 先ほど月例経済報告の話をされましたけれども、これも、私も説明を受けております。これからの消費動向を見て、所得は回復するかということにも触れておりますけれども、これは、冬のボーナスも八年ぶりにプラスになっております。一人当たりの賃金も上昇しております。また、世界経済の動向を見ましても、アメリカや中国はかなり成長率は高いです、堅調に推移しております。

 そういう観点から見て、確かに景気は一部に弱い動きが続いておりまして、踊り場的な状況でありますけれども、企業部分の好調さが持続しておりまして、私は、この踊り場的な状況というのは、下がるのではなくて、上がる状況の一呼吸置いた踊り場ではないかなと判断している次第でございます。

岩國委員 そうした、そろそろ消費税か、あるいは何らかの形で税負担がふえそうだという雰囲気の中で、去年の参議院選挙は戦われたんです。そして、その中で、そういう一般の新聞さえもそのような観測記事を書いているときに、自民党の政策集そのものの中にそれが書かれていないということは、一般の解釈としては、ああ、自民党は増税というようなことはやらないんだなと解釈するのが一般大衆の常識じゃないでしょうか。だから私は申し上げているんです。

 そういうお考えがあるんだったら、ここにそういう可能性について少なくとも触れるべきだったんじゃないか。こういうことの積み重ねが、与党ばかりじゃありませんけれども、政治の不信というものを招くんじゃないでしょうか。選挙が終わってしまったら嫌な話が次々と出てくる。私は、これもその一つに数えられても、十分その責任はあるんじゃないかと思います。

 次に、政治の問題について。

 こうした予算をつくるのは、我々国会議員、そして内閣ですけれども、今の納税の時期に、そうした政治と金をめぐる疑惑がいつまでも消えていかない。その最たるものが橋本元総理のあの一億円。一億円という単位がわかりやすいから、日本じゅう、あっちでもこっちでも、出る話は大体それに象徴されるんです。自民党の総裁として、橋本元総理に国会の中できちっとこの疑惑を、あるのかないのか説明していただくことは、こうした増税ということを、国民の負担をふやしますということをお願いしている国会であるだけに、私は、今こそ橋本元総理に金の疑惑について説明していただくべきだと。自民党の総裁として、総理はどういうふうにお考えですか。一言お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 この問題につきましては、つい先ほどの予算委員会でも議論がなされたところであります。

 本来、政治家個人の問題について、その当事者が説明をすべきだと思っておりますし、橋本氏の場合におきましては、昨年の国会において出席され、各委員の質問に答えて、みずからの立場というものを表明されております。また、現在裁判中の問題であり、そういうものを踏まえて、予算委員会の理事の間で協議が続行中だと。そして、各党の国会対策責任者の間でも一つの合意がこの問題についてなされたと聞いております。

 しかるべき結論といいますか、証人喚問等の問題につきましては、しかるべき結論を得るというのを、各党の国会対策責任者の間で合意を見ていると聞いております。そういう中で、今予算の理事の中で協議されているということでありますので、その結論を見守りたいと思っております。

岩國委員 総理自身の御答弁も、微妙に表現が違うときもありますけれども、私は、今までお伺いした総理自身の御答弁の中では、きょうは一番前向きに答えていただいたと思っております。そうした、橋本元総理自身が決断される、そして、それが与野党のためにも国会のためにも望ましいというふうに受けとめさせていただきました。

 次の質問に移らせていただきます。

 予算委員会で、総理の目の前で、自民党の馳浩議員が、「政治資金の透明化に関する改革要旨」、今皆さんのお手元にお配りしました、これは、自民党を代表してと言って馳議員は質問台に立ち、そして、自民党を代表してこれは提案されたものというふうに理解してよろしいですか。自民党総裁の小泉総理は、この内容を了解されたわけですね。

 内容は大変すばらしいものです。我々民主党も、政治資金規正法にこういうものは全部盛り込んで、その方向で法案も出しております。この民主党案に含まれているこういうことについて、自民党を代表した馳議員が、総理・総裁の目の前でそのように説明し、そしてテレビを通じて全国民にこれを公表されたんです。これは、我々としても重く受けとめて、民主党としては既にこういう趣旨の法案を出しております。総理としては、総裁として、そのような提案を馳議員に認められた以上は、当然これにも了解され、そして与野党協議がこの方向で進むことを望んでおられると理解してよろしいですか。

小泉内閣総理大臣 私も、馳議員の質問の中でそのような意見を述べられたということは承知しておりますが、正確に全部は覚えておりません。

 しかし、馳議員が言われた中で、たしか、岩國議員が言われるのは四つではないかと思います。一つには「全国会議員の資金管理団体の収支報告をホームページで公開する。」、二つには「政治資金団体の残高証明書と監査意見書を党本部に提出させる。」、三つ目には「政治献金を受けるときは銀行振り込みとする。」、四つ目には「いわゆるモチ代、氷代は廃止した。」、この四つのことを言われているのではないかと思います。

 このとおり既に自民党は決定しております。

岩國委員 自民党として決定されて、そして国民の期待は、ただの内規ではなくて、これは法案化すると。だから、自民党も法案を出し、我々も法案を出し、ただし、昨年出された自民党の法案の中にはこれは含まれておらないから、我々としては自民党と協議をし法案化を進めたい、その法案化を進めることについて、総理は当然そういう方向へ行くことも了解しておられるのかどうかを今私はお聞きしたんです。

 自民党の内規というだけでは、何もテレビを通じて国民の皆さんに説明するほどのこともないわけです。その点はいかがですか。法案化することについて、自民党総裁としては何かこだわりなり反対される意見がおありですか。簡単に、ぜひお願いします。

小泉内閣総理大臣 私は、その問題について法律の専門家等でよく議論するという話を聞いておりますし、今各党で政治資金規正法の議論がなされようとしていると聞いております。その中で各党よく協議していただきたいと思っております。

岩國委員 総理、あと一つだけ御質問します、郵政民営化について。

 きょうも予算委員会でその話が出ております。私も総理がいらっしゃらないときにこの点は伺いましたけれども、麻生大臣、竹中大臣から、アメリカの大統領あての報告書の中で、アメリカの米国郵便庁は、民営化のいろいろな議論があるけれども、民営化はやるべきでないし、やっても混乱が起きる、公営を堅持すべきだと。この報告を、総理は、いつ、だれから説明を聞かれましたか。

小泉内閣総理大臣 私は、竹中大臣からもしばしばアメリカの状況の報告は受けておりますし、私自身も各国の状況は自分なりに参考にしております。

 アメリカは、日本のような郵貯、簡保を持っておりません。郵便事業は国営、公営だということも聞いております。日本と事情は違います。日本のような巨大な郵貯、簡保を持っている国は、世界にないということも承知しております。アメリカの事情と日本の事情は違うと思っております。

岩國委員 そうした事情は各国いろいろ違いますけれども、そうした世界で一番大きな郵便国であるアメリカが、郵便事業については国営が一番よろしいと。貯金、簡保の扱い方についてはいろいろな各国のバリエーションがあってもいいと思いますけれども、何も一番本体の郵便事業まで民営化しなければ、郵貯や簡保の問題は片づかないというような考え方は私は間違っていると思います。

 もう時間がありませんから、あと伊藤大臣に。生保のそうした不払いの問題、未払いじゃなくて不払いの問題。これについて私はデータを提出することを要求しておりますけれども、既に調査を終わられた、にもかかわらず、なぜ私のところに各社別のそういったトラブル件数がふえているということについてお話がないのか。

 もう一点、西武鉄道の、取引所の上場資格がないのに五十年間ずっと取引されておった。これが一件だけなのか、あと何十件かあるのか、これについても、もう百五十日たっている。百五十日たって、まだ日本の取引所は、潔白である、安全であるという宣言ができないのはなぜなのか。

 いただいた資料を見ると、これは十一月十七日に全上場会社に十二月十七日締め切りでやっておられるでしょう。そのデータを見て、その中にまだ疑惑のある会社が残っているんですか。十二月十七日から何社について調べておられるのですか。提出した会社は何社で、その中で株主構成についていろいろな訂正を申し出た会社がどれぐらいあったのか。それについて、あと何日かかったら調査が終わるのか。この三点をお答えください。

伊藤国務大臣 生保のデータのことについて、ちょっと今、私、手元に資料を持っておりませんので、後ほどまた御報告をさせていただきたいと思います。

 残り二点についてでございますけれども、昨年の十一月十七日に御指摘がございました点に対して、具体的に解決をしていくために、すべての開示企業に対しまして、有価証券報告書の株主の状況等についての記載内容、これが正しいかどうか点検を要請いたしました。そして、本年一月二十一日までに、当該要請を行った四千五百三十八社すべてより回答が提出をされたところでございます。

 その結果でありますが、三千九百四十九社が訂正の必要のない旨回答をいたしました。そして、五百八十九社からは訂正報告書の提出があったわけでありまして、必要な訂正がなされたわけであります。

 あわせて、取引所における対応でありますけれども、訂正報告書を提出した会社のうち、公開会社が四百八十九社であります。そのうち一社が名古屋証券取引所において監理ポストに割り当てられまして、その後割り当てが解除されたと承知をいたしております。

 また、当該の点検結果を踏まえまして、東京証券取引所が、一月二十七日の六社に続き、二月二十五日に上場会社一社に対して、適時開示規則に基づく改善報告書の提出を求めたほか、名古屋証券取引所が、先ほど申し上げた監理ポスト割り当て銘柄の割り当て解除に伴い、改善報告書の提出を求めるなど、合計八社に対し改善報告書の徴求が行われたと承知をいたしております。

岩國委員 そういった調査状況がいつ完了するのか。いつから安心して取引が行われる状態になるのか。きょうも疑惑の株式は取引されているのか、もう疑惑の株式はないというふうにはっきり言い切れるんですね。最後に一言。

伊藤国務大臣 必要な訂正がなされて、そして私どもの一斉点検に基づく状況把握の中で、取引所がそれぞれの自主規制ルールに基づいて適切な対応がなされたというふうに思っております。

 ただし、この一斉点検だけにかかわらず、それぞれの開示企業、そして監査人、そして市場開設者、行政がそれぞれの使命をしっかり果たしながら、ディスクロージャーに対する信頼性というものを向上させていかなければいけないというふうに思っております。

岩國委員 質問を終わります。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 消費税についてお聞きをしたいと思います。

 先ほども総理は、私の内閣では上げないという答弁を行いました。その意味を確認したいと思います。

 総理・総裁の任期というのが来年の九月というふうに聞いていますけれども、それまでは消費税の引き上げを実行しないということでしょうか。まず、ここを確認しておきます。

小泉内閣総理大臣 私はかねがね、私の任期中は消費税を引き上げないと言っておりますので、引き上げないということは実行しないということ。

 違いますか。私はそういう意味で使っているんです、引き上げないと。

佐々木(憲)委員 引き上げないと。

 そこで、この引き上げないという意味でありますが、小泉内閣は消費税増税を決めない、こういう意味ですね。

小泉内閣総理大臣 私は、消費税の重要性はよく認識しております。

 消費税の議論も、これまで、最初の三%の導入のときに私も熱心に参加いたしましたし、五%の引き上げのときも大いに議論いたしました。これは、消費税の問題は重要でありますので、私は後々の人の手足を縛ることはしたくありません。そういう観点から、私の任期中は引き上げませんが、議論は大いに結構ですと言っているんです。そういうことでありますので、議論を妨げるように受け取るのはしてもらいたくない。

 今後、消費課税、所得課税、資産課税、これは総合的に議論しなきゃならない問題でありますので、こういう点につきましては、今後大いに議論していただいて結構でありますが、私が在任中は、そういう引き上げの問題についてどうだこうだと決定することは差し控えるのが筋ではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 消費税増税は決めないという答弁でした。

 そこで、細田官房長官が、昨年の七月二十九日ですけれども、三年後施行というような、つまり消費税の引き上げを実行するということ、そういう方針を小泉内閣の任期中に決めることはあり得る、こういう表現をしております。

 それから、谷垣財務大臣は、昨年十月二十八日ですけれども、これは参議院の財政金融委員会でありますが、平成十九年度からやはり消費税をお願いするような形で議論していかなければならない、平成十九年、つまり二〇〇七年ですね、その段階では消費税の引き上げを実行する、そういう方向でやらなければならないのだと。このことは、小泉内閣としては消費税の増税を、上げる方向で議論をする、そういうことを意味すると思うんです。これは、今総理がおっしゃったように、小泉内閣では手を縛らないということと極めて大きな矛盾があるわけですね。

 具体的に聞きますけれども、例えば、毎年八月には次の年度の予算の概算要求というのを出します。そのときには税制改正要求というのも出すわけですね。そうしますと、来年、総理の任期の前の八月でありますが、この八月に消費税増税をこの税制改正要求の中に書き込むことはしない、こういうことだと思うんですよ。総理はそういう立場だということで理解してよろしいですか。

小泉内閣総理大臣 私の役割は徹底した行財政改革にあると思っています。

 今、消費税を上げると宣言するということは、行財政改革、歳出削減の努力が緩んでしまうということから、私は、民間でできることは民間に、行財政改革は徹底しなきゃいかぬということから、郵政民営化もその一環であります、そういうことから、私は、歳出削減にさらに努力していかなきゃならない。

 役所も政治家も、どちらかというと、国民の要望にこたえるために、歳出をしたい、そのための財源を調達したいという誘惑に駆られます。歳出削減するというのは痛みがすぐ見えますから、こういう点についてはなかなか抵抗が強いところであります。考えてみれば、増税もそうなんですね、痛みが大きいんですよ。歳出削減も嫌だ、増税も嫌だというのが率直な国民の感情だと思います。

 しかし、どちらに重点を置くかというと、私は歳出削減に努力をするのが私の内閣の務めだと思っていますので、私の任期中は、議論は大いに結構でありますけれども、引き上げる、実行するという決定は控えたいと思っております。

佐々木(憲)委員 谷垣大臣、平成十九年度から消費税をお願いするという発言をされていますが、来年の八月の税制改正要求の中には消費税増税というものは書かないと、今総理がおっしゃったように、それを約束してください。

谷垣国務大臣 私も総理のおっしゃったように、まず歳出を徹底的に見直して抑制していくことが財務大臣としての私の仕事でもある、こういう考えで今やっているわけであります。その上で、しかしながら、ことし、来年にかけて議論をしなければならないことの一つは、やはり社会保障をどうしていくかというのは、歳出を抑制していく上でも不可欠の道だと私は思っております。

 そしてそれを徹底的に議論していく中で、しかしそれでも、こういう少子高齢化が進んでいく中で、必要な公共サービスのレベルというものはやはりあるだろう。そこを見きわめて、では公平な負担は何であるかという議論はやっていかないと、社会保障を見直していくという議論もできない、私はこのように考えております。

 ただ……(佐々木(憲)委員「質問に答えてください」と呼ぶ)御質問に答えますと、来年の八月のことまでまだ私はよく、そこにどういう税制改革の要望を盛るかというようなところまでは、まずことしの夏に何をやるかというあたりはそろそろ考えなきゃいかぬと思っております。

佐々木(憲)委員 おかしいじゃないですか。来年の九月まで小泉内閣の、小泉総理の任期がある。八月の、その前の月まで決めないということでしょう。どうして税制改正の中にこれを書き込む、書き込む可能性もあるということですか。

谷垣国務大臣 いや、あるともないとも言っていない。まだそこまで考えていないと申し上げているんです。

佐々木(憲)委員 これはおかしいですね。決めないと言っていながら決めるということじゃないですか、それなら。決めないと言っていながら、書き込む可能性も否定しないと。

 どうなんですか。どっちなんですか。はっきりしてください。

谷垣国務大臣 そこまで考えていないという……。佐々木さんは、いつもどっちかの鋳型にはめようとなさって、初めから、おまえは黒いぞと言って、真っ黒な顔をしていると言っているんだけれども、それはどうも、まだそこまで考えておりません。

佐々木(憲)委員 これははっきりしなきゃだめですよ。

 総理は、決めないと言っているわけです。何らかの方向を示すことはしない。当然、八月の税制改正までは一切それはやらない、そういうことを書き込まない、消費税増税は書き込まないということでしょう。そういうことで、総理、それでよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 どういう税制改正するかというのは、十九年の暮れですよ。私は、そのときにはもう退任しているんですよ。いないんです。総理じゃないんですよ、そのときには。

 私は、毎日毎日、総理大臣の職責をいかに全うするか全精力を傾けておりますので、総理在任中は、全精力を傾けて、税制改正にもいろいろ議論してまいります。そういうことを言っているわけであります。

佐々木(憲)委員 もう時間が来ましたからこれ以上やりませんけれども、これははっきりと消費税増税をしないという明言ができなかった。これは非常に私は重大だと思いますよ。やらないのならやらないとはっきり言ったらいいじゃないですか。それをはっきり言わない。これは私は極めて重大である、消費税増税のよろいが見えてきたということで、時間が参りましたので質問を終わります。

金田委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 以上をもちまして両案及び両修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、平岡秀夫君外二名提出の両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。財務大臣谷垣禎一君。

谷垣国務大臣 ただいまの平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案に対する修正案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。

竹本委員 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に賛成し、民主党・無所属クラブ提出の平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案に対する修正案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案に対し、反対の討論を行うものであります。

 当委員会におきましては、これらの法律案について、昨年、一昨年の倍の時間をかけて慎重な審議をしてまいりました。

 まず、内閣提出の特例公債法案について申し上げます。

 平成十七年度予算においては、歳出改革路線を堅持、強化するという方針のもと、従来にも増して歳出全般にわたる徹底した見直しが行われましたが、我が国の財政事情は引き続き厳しい状況となっており、本法律案の成立は、平成十七年度の財政運営を適切に行うために必要不可欠なものであると考えます。

 続いて、民主党提出の修正案について申し上げます。

 修正案では、平成十七年度において、年金事業等の事務費につき、保険料財源を充当するための特例措置に関する規定を削除することとしています。

 年金給付を行う上で直接必要な事務に要する経費を保険料で賄うことは、他の制度や諸外国の例を見ても合理性のある考え方であり、仮にこれらの特例措置に関する規定が削除されれば、これらの経費を全額国庫が負担することとなり、そのために特例公債をさらに増発するのは適切でないと考えております。

 次に、内閣提出の所得税法等改正案について申し上げます。

 本法律案は、現下の経済財政状況等を踏まえ、定率減税の縮減、金融・証券税制、国際課税、中小企業税制の見直しなどを行うものであり、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けて必要なものと考えます。

 続いて、民主党提出の修正案について申し上げます。

 まず、修正案では、定率減税の縮減を取りやめることとしています。

 定率減税について、我々は、経済の動向と厳しい財政事情を十分に見きわめながら、責任ある政権与党として苦渋の決断をいたしました。そして、その増収は、基礎年金国庫負担割合の段階的な引き上げに充てることとしております。負担増の経済への影響のみを強調し、定率減税の縮減を見送ることは、日本が直面する重要な課題の先延ばしにすぎず、極めて問題があると考えます。

 第二に、修正案は新しいローン控除制度を創設することとしておりますが、これは、使途を住宅に限定せず、広範なローン利子を所得控除する制度であり、例えば、高所得の資産家が、その資産形成の手段として、多額のローンを組んで大きな節税メリットを受けることになるなど、税制の公平を損ない、課税ベースを侵食し、所得課税の根幹を揺るがすものであり、慎重な検討をされたものとは到底思えません。

 第三は、NPO税制についてであります。

 修正案は、認定法人の数を大量にふやすことをまずもっての目的とし、認定要件を極めて大幅に緩和しておりますが、これでは税制上の優遇措置を受けるに足る適正性が担保できなくなる可能性が高いと考えます。

 このように、修正案は、適切な政策運営について、民主党が自称されている政権準備党としての責任を持って検討がなされたものとは到底思えません。

 以上、内閣提出の二法案に賛成、民主党提出の二修正案に反対の立場を表明いたしまして、私の討論を終わります。

 以上です。(拍手)

金田委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の平成十七年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に反対し、民主党・無所属クラブ提出の平成十七年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成の立場で討論を行います。

 まず、特例公債法案に反対する理由を申し上げます。

 平成十七年度予算においては、見かけの国債発行額は減額されたものの、それは歳出の抜本改革という、本来あるべき手段によるものではありませんでした。現下の経済状況をまるで無視したかのような相次ぐ負担の押しつけ等により実現したものにすぎません。他方、小泉総理が就任時に掲げられた国債三十兆円枠は、三年余りを経ても実現ができておりません。

 加えて、年金不信を極限にまで高めた、年金保険料の年金事務費への流用を、今回も行おうとしています。ここには全く、昨年の国会における議論が生かされてはおりません。年金保険料ピンはね継続法とでもいうべき本法案は、到底認められるものではありません。

 これに対して、民主党修正案は、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務費につき、その一部に国の負担以外の財源を充てる、つまり年金保険料により財源を充当するという規定の削除を内容としております。これにより、保険料の年金事務費への流用を完全に断ち切り、時限的措置として始められたこの措置に終止符を打ち、年金制度を本来の姿に戻して、事務費を全額国庫負担とします。

 次に、所得税法等改正案について反対する理由を申し上げます。

 最も問題なのは、経済状況をまるで無視した定率減税の縮減であります。我が国の景気は、GDP実質成長率が三期連続でマイナスとなるなど、先行きが大変不透明になっている中、政府は、相次ぐ負担増を国民に求めてきております。政府が言う景気回復も、一部大企業のみがその恩恵をこうむっているだけであり、関連中小企業たたきや、徹底した労働力のパートタイム化等によって成り立っているにすぎません。こうした中で政府は、税収の自然増に頼り、歳出構造改革を怠ったまま、さらなる被雇用者たたきの政策を実施しようとしているのです。

 今回の税制改正案は、何らビジョンも理念もなく、つじつま合わせに終始した結果、国民に増税のツケを押しつけるものとなっております。与党税制大綱にも、景気動向を注視し見直しを含めて機動的、弾力的に対応するとあります。即刻、見直しをして名誉ある撤退をされたらいかがでしょうか。

 これに対し、民主党修正案は、以下のような項目から成り立っております。

 第一に、定率減税縮減に関する規定の削除です。

 政府は、縮減により生じる財源を基礎年金国庫負担の引き上げ費用の一部に充てるとしておりますが、我が党は、むしろ、徹底した歳出削減によりこの引き上げ費用を賄うと、既に公約をしております。真摯な歳出削減努力がなされないまま、国民に対して安易に負担増を求めることは決して許されません。

 第二に、NPO支援税制の拡充に関する規定を追加するものであります。

 パブリック・サポート・テスト等のNPO認定要件を大幅に緩和すると同時に、個人寄附金の控除を拡充し、NPOに対する寄附を飛躍的に促進します。

 第三に、利子控除に関する規定を新設し、国民の消費生活、消費活動全般に及ぶ新しいローン利子控除制度を設けます。

 昨年は、所得税の配偶者特別控除上乗せ部分の廃止、住民税均等割増税、そして、一回目の厚生年金、共済年金保険料引き上げの実施がありました。そして、ことしは既に公的年金等控除の縮小、所得税の老年者控除廃止が実施に移され、今後は、国民年金保険料と雇用保険料の引き上げ、さらには、住民税の配偶者特別控除上乗せ部分の廃止や、厚生年金、共済年金保険料のさらなる引き上げ、それに追い打ちをかける形で定率減税の縮減が予定されております。これに、近い将来、所得税や消費税の抜本的見直しが加わることでしょう。

 国民の我慢は、もう限界に達してきています。たび重なるビジョンなきツケ回しの増税、負担増は、国民の将来に対する希望を奪い、景気の足を引っ張り、国民生活を破綻の瀬戸際へ追いやろうとしています。

 民主党案は、この破綻を回避し、国民生活を守るために必要な項目を盛り込んでおります。

 修正案への御賛同をお願い申し上げまして、私の討論を終わりにさせていただきます。(拍手)

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、平成十七年度における公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

 最初に、公債特例法案に反対する理由を述べます。

 反対する第一の理由は、本法案が、むだな大型公共事業を削るなどの歳出見直しも、大企業など担税力に見合った税制構造への改革もせず、赤字国債等で三十四兆三千九百億円もの新たな国の借金をふやすものだからであります。この結果、公債依存度は四一・八%となり、歳入のほぼ半分近くを借金で賄う異常な財政運営が継続されます。今こそ財政政策の根本的転換が求められます。

 第二の理由は、年金保険料を社会保険庁の事務費に流用する仕組みを温存する点です。本来、社会保険事業に必要な事務費は国が負担すべきものであります。昨年、職員宿舎の建設やマッサージ器の購入など、保険料の不正流用が国民的批判を受けたことから、本法案では、職員宿所、公用車等の費用を特例措置の対象から外しました。しかし、年金財源を悪化させ、制度を不安定化させる性格は何ら変わっておりません。この特例措置は、すぐに廃止すべきであります。

 次に、所得税法等の一部改正案について反対理由を述べます。

 所得税と住民税の定率減税の縮小、廃止が実施されれば、サラリーマン世帯を中心に、購買力を奪い、暮らしと景気に重大な打撃を与えます。政府・与党は、経済状況に改善が見られると言いますが、業績回復は一部の大企業のみで、むしろ雇用者報酬は減り続けており、経済状況が改善したとは言えません。

 また、導入時には、所得税の最高税率の引き下げ、法人税率の引き下げとあわせて、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税と説明していました。ところが、今回は臨時異例の措置と言いかえ、定率減税のみ縮減、廃止することは、断じて許されません。

 その他、本法案には、金融先物取引課税の申告分離課税への変更や、上場会社の自社株買い付けみなし配当課税の特例措置延期など、資産家や大企業を優遇する措置を整備、温存する項目が含まれております。

 他方、無認可保育所に対する消費税の非課税措置、NPO法人課税の改善、新耐震基準を満たす中古住宅が住宅ローン減税等の特例措置の対象となるなど、賛成のできる項目も含まれております。

 しかし、既に述べたとおり、看過できない重大な内容が含まれており、本法案には断固反対であります。

 なお、民主党提出の修正案については、公債特例法修正案においては年金保険料の流用措置を廃止すること、所得税法等改正案修正案においては定率減税の縮小を廃止することなど、両法案とも国民に対して一定の負担軽減となるものであり、賛成することを述べ、討論といたします。(拍手)

金田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより採決に入ります。

 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平岡秀夫君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平岡秀夫君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、江崎洋一郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。津村啓介君。

津村委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 財政の持続可能性に対する懸念に対して、中長期的な財政構造健全化の必要性が一層増大していることにかんがみ、今後の経済動向にも留意しつつ、歳出の重点化に努めるとともに、歳入の根幹をなす税制に対する国民の理解と信頼、税負担の公平性を確保する観点から、課税のあり方についての抜本的見直しを行い、持続的経済社会の活性化を実現するための税制の構築に努めること。

 一 租税特別措置については、政策目的、政策効果、利用状況等を勘案しつつ、今後とも一層の整理・合理化を推進すること。

 一 納税者数・滞納状況等に見られる納税環境の変動、経済取引の国際化・高度情報化による調査・徴収事務等の業務の一層の複雑・困難化による事務量の増大にかんがみ、複雑・困難であり、かつ、高度の専門知識を要する職務に従事する国税職員について、税負担の公平を確保する税務執行の重要性を踏まえ、徴税をはじめ真に必要な部門には適切に定員を配置するという政府の方針及び職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯に配意し、今後とも処遇の改善、定員の確保、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を行うこと。

 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の広域化・複雑化及び電子化等の拡大が進む状況下で、従来にも増した税務執行体制の整備と、事務の機械化の充実に特段の努力を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣谷垣禎一君。

谷垣国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

金田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

金田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十二分散会


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