衆議院

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第13号 平成17年3月18日(金曜日)

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平成十七年三月十八日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 竹本 直一君

   理事 村井  仁君 理事 中塚 一宏君

   理事 原口 一博君 理事 平岡 秀夫君

   理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    木村 太郎君

      熊代 昭彦君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    菅  義偉君

      鈴木 俊一君    鈴木 淳司君

      砂田 圭佑君    田中 和徳君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      宮下 一郎君    森山  裕君

      山下 貴史君    渡辺 喜美君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      小林 憲司君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    津村 啓介君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      馬淵 澄夫君    村井 宗明君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 哲樹君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    井戸 清人君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  小野 晋也君     鈴木 淳司君

  岡本 芳郎君     田中 英夫君

  鈴木 俊一君     菅  義偉君

  田島 一成君     村井 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  菅  義偉君     鈴木 俊一君

  鈴木 淳司君     小野 晋也君

  田中 英夫君     岡本 芳郎君

  村井 宗明君     田島 一成君

    ―――――――――――――

三月十七日

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣谷垣禎一君。

    ―――――――――――――

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 国際開発協会は、世界銀行グループの中核機関として、アジア、アフリカなどにおける所得水準の特に低い開発途上国に対し、長期かつ無利子の融資を行うことを主たる業務とする機関であります。先般、同協会の二〇〇六事業年度から三年間の財源を確保するため、第十四次の増資を行うことが合意されました。

 政府においては、開発途上国の経済成長と貧困削減に果たす同協会の役割の重要性にかんがみ、この第十四次増資に係る追加出資を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。

 本法律案の内容は、政府が国際開発協会に対し、二千七百七十五億八千五百万円の範囲内において追加出資を行い得るよう、所要の措置を講ずるものであります。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省国際局長井戸清人君、外務省大臣官房審議官広瀬哲樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上和雄君。

井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄です。

 まず冒頭、アメリカのブッシュ大統領が、世界銀行の次期総裁に、今米国防副長官をやっているウォルフォウィッツ氏を就任させたいという希望を発表したということに関して大臣にお伺いしたいんです。

 このウォルフォウィッツという方ですけれども、ネオコンの代表的な、タカ派の人間だというふうに広く言われている人です。私は、こういう方が世銀という、特に途上国の人々の生活を向上させようという機関の総裁にふさわしいのかどうかということに関しては、ちょっと疑問を持っております。やはり、世界銀行の総裁にふさわしいという人は、開発途上国の問題やそこに住んでいる人々に対する共感を持っているような人が必要じゃないかというふうに思います。例えば、私は谷垣大臣なんか本当はすごくふさわしいと思っているんです、日ごろいろいろ一緒に仕事させていただいておりますから。だけれども、大臣は日本の政治に大事な方ですので、いずれリタイアしたらそういう方面でもなっていただければというふうに思っているんですけれども。

 一昨日、ブッシュ大統領が小泉総理に電話をかけてきたということも報道されていますが、その辺のことからちょっと、大臣、事情をずっと御存じなのかどうか、そしてまた、このウォルフォウィッツという方に関しての大臣の何か御意見、御感想がありましたら言っていただきたいと思うんですね。

 もうあたかも、この人が決まったということがあちこちで報道されていますが、あくまでも世界銀行のボーティングシェアの第二位は日本ですよね、やはり日本政府で当然検討しなきゃいけないし、それはほかの理事の国もあるわけですし、最終的には理事会で決めるわけで、あたかももう決まったようなことが報道されていること自体が非常におかしいと私は思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

谷垣国務大臣 今井上委員がおっしゃいましたように、十六日の夜にブッシュ大統領から小泉総理に対して電話がありまして、次期の世銀総裁候補としてアメリカはウォルフォウィッツ国防副長官を指名するので支持してほしいという電話があったわけでございます。私はその電話の場に同席していたわけではありませんが、財務省は事務レベルでいつも連絡をとっておりますが、その日の朝に財務省にもアメリカ財務省から連絡がございまして、また、スノー長官から私に対しても電話をしたいという御連絡がありました。

 私がスノー長官と電話でお話をしたのは昨日の早朝でございました。当然、前の晩に既に大統領と総理、トップ同士でお話があったわけでございますが、私に対してもスノー長官から、ウォルフォウィッツ氏を指名するので支援をしてほしいと。そこで、今井上委員がおっしゃったこととも関連するわけですが、国防副長官として大変広いマネジメント能力を有する人であるし、また、インドネシア大使や東アジア太平洋担当国務次官補をやっておられたわけですので、アジアについても造詣の深い人である、こういうようなことでぜひ支援をしてほしい、スノー長官からはそういうようなお話がございました。

 私は、日本としてはアメリカをサポートするというふうに申し上げたわけであります。我が国としては支持するというふうに申し上げたということでございます。

 世銀のあり方について、井上委員は、発展途上国に理解のある人がやはりトップについてほしいと。私も、それは当然、世銀という機関の特質からしてそういうことでなければいけないと思いますが、同時にまた、私どもは今おっしゃったように二番目ということでありますけれども、一番の拠出国であるアメリカとのスムーズな連携というようなことも今度の指名によって期待をするところでございます。

 いずれにせよ、どういう形で決まるにせよ、世銀の使命に即して新たな展開が見られることを私は期待しております。

井上(和)委員 日本も支持すれば、事実上、もうほとんどこれは決定ということになるんですが、私はやはり、これまでのブッシュ政権の方針を見ていますと、どちらかというと単独主義で、ごり押しをしてくるという面が非常に強いと思うので、世銀が本当に途上国の福祉の向上になるように、やはり理事会で申すことは申していく。総裁が余りに独走するということがあれば、それをチェックするのはやはりメンバー国であって、まして理事国ですから、しっかりと理事会で言うべきことを言って、株主としての責任を果たしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 それでは、法案の審議に移りたいと思うんです。

 今回、この国際開発協会に関して多額な出資をすることは審議されなきゃいけないんですけれども、この出資金のお金の出し方というのはかなり複雑だなという印象を私は持ちましたので、ちょっとその辺の事実確認をお伺いしたいと思います。

 このIDAに対する出資というのは、基本的には出資国債というふうに理解しているんですけれども、これは現金で上げた方が私はもっとはっきりすると思うんですよ。つまりは、現金で上げるということは、一般会計予算の中にきちっと予算を組み込んで、それが非常に透明性の高い出資になると思うんですけれども、御意見、いかがでしょうか。

井戸政府参考人 ただいま委員から御指摘のあった点でございますが、国際開発金融機関が出資国債による払い込みを認めておると申しますのは、通常、融資を承諾いたしましてからこれが実行され、つまり現金が必要になるというまでには、ある程度の年月が必要となっております。したがいまして、必ずしも、融資の承諾時に全額現金が必要というわけではないということでございます。

 他方、資金拠出国である私どもの立場から見ますと、出資国債による払い込みが認められている限りにおきましては、出資国債による方が、現金による払い込みに比べますと、実際、現金が出ていくのは将来であるということになるものですから、財政上有利である、こういった判断に立ちまして、出資国債による払い込みを行っているわけでございます。

井上(和)委員 今そうおっしゃっているんですけれども、今回、二千七百七十五億八千五百万円コミットするということですよね。これを、基本的には出資国債で出しても四年間で償還するということですよね。つまり、一年間約六百九十四億円、毎年現金化するということでしょう。ちょっと確認してください。

井戸政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、全額出資国債により払い込みをいたしますが、平成十七年度中の現金償還見込み額、約六百九十四億円でございますが、これを平成十七年度予算案の国債費の内数として計上いたしております。

井上(和)委員 それだったら、最初からこの六百九十四億円を払い込んでも同じじゃないかと私は思うし、よっぽど透明性があると思うんですが。

 では、その六百九十四億円、この予算というのは、予算書のどういう取り扱いになっているんですか。ちょっとその仕組みをお伺いしたいんですけれども。

井戸政府参考人 IDAの予算上の取り扱いについてでございますが、一般的に、IDAを含む世銀グループの機関につきましては、その規模、世界全体の経済協力における地位の重要性等にかんがみまして、法律に出資総額を明記し、増資に対する授権を政府にいただく、法律方式というものでございますが、これによりまして国会の御審議をいただいているわけでございます。

 他方、その他の国際開発金融機関につきましては、増資ごとに予算総則に出資限度額を規定する予算方式によりまして、国会の御審議をいただいております。

 さらに、各国際開発金融機関に対します出資金を含むODA事業予算というものがございまして、これは毎年度、政府全体の金額を集計いたしまして、毎年一月に外務省から公表をいたしているところでございます。先ほど申しましたように、このうち毎年の償還に係る分というのが一般会計の中の国債費の内数として計上されている、こういう形になっております。

井上(和)委員 もう一回確認なんですが、ということは、これは一般会計の国債費の中にこの六百九十四億円が入っているということですね。これは一般会計で入っているわけですね。

井戸政府参考人 そのとおりでございます。

井上(和)委員 それで、ちょっと私わからないのは、お手元の資料二枚目、財務金融委員会資料二という、これは実は衆議院の調査局からいただいた資料から抜粋したものなんですけれども、「平成十七年度ODA予算の概要」。基本的には、ODA予算の概要というのは一般会計なんですよね。この中に国際機関への出資、拠出というのがありまして、十七年度、九百四十五億円、この中に入っているんですか。

井戸政府参考人 この中には入っておりません。

井上(和)委員 入っていないんですよね。つまり、一般会計から出していて、一般会計のODA予算という中に入っていないわけですよ。なぜかというと、要するに、国債費ということで計上して、特別会計をくぐらせて払っているわけだから。つまり、国民の目には全然わからないという構造になっているわけですよ。

 私が調べますと、要するに、結局、国際機関への出資、拠出は、実際的には今年度二千四百六十億ですよ。プラス二・三%、このIDAを、出資を含むと。そうでしょう。確認してください。

 質問をもっとわかりやすくしましょう。つまり、国際開発金融機関、MDBに対する出資は、ことしは一千七百八十八億円でしょう。それはあるでしょう、手元に。確認してください。

井戸政府参考人 平成十七年度歳出予算上、財務省所管の国際機関に対する国債による払い込み総額は約千三百七十億円となっております。このほか、外務省と共管の国際農業開発基金分の十八・三億円がございます。

井上(和)委員 つまりは、この政府の平成十七年度ODA予算の概要を見ると、あたかも、国際機関への出資、拠出、九百四十五億円、マイナス七・六%となっているじゃないですか。そんなふうに、随分下げているんだなと思うわけですよ。ところが、実質的には一千七百八十八億、プラス五%ふえているわけですね。

 もっと言いますと、その参考として、主要省庁別内訳が、財務省は二千四十一億円でマイナス七・二%とある。ああ、財務省も大分ODA関係予算切っているのか、多くの国民の人はそう思うわけですよ。この不況の中、本当に中小企業の皆さん御苦労している。ODAもカットして、少しはおれたちの方に回してくれよという国民は多いわけですよ。それに財務省はちゃんとこたえているんだなと多くの国民は思うでしょう。

 ところが、現実はそうなんですか。それは全く違うじゃないですか。私の調べたところによると、財務省で八千六百八十九億円、これはJBICも入っていますけれども、プラス・マイナス・ゼロじゃないですか。ほかの省庁には予算を切らせているでしょう。ところが、自分たちの予算はふやしているじゃないですか。ちょっとおかしいと思いませんか。

 大臣、どう思いますか。ちょっとこれは、大臣、このことは私、質問通告していないんですが、もし何かあったら、御理解いただけたかどうか。

谷垣国務大臣 先ほど井戸局長が御答弁したことと関連すると思いますが、要するに、予算方式でやっているのか、それとも法律方式でやっているのかという違いがあって、これは非常に、極めて技術的な違いだと思うんですが、何かよって来るゆえんというのはあるんだと思うんですね。先ほどの説明ですと世銀関係の重要性という表現でしたけれども、常にこういうようなことでやってきたという経緯があるんだろうと思います。

 それで、全体像については、確かに予算書だけではわからないわけです。ODAの全体については、ODA白書等々でも毎年こういう国際開発金融機関に対するものも含めて発表はしているんですが、確かに、その辺はややわかりにくい、こういう仕組みの問題等あってわかりにくいところがあるなとは思います。

井上(和)委員 大臣、私は、わかりにくいというより、わからないようにしているんじゃないかと思うんですよ。

 つまり、ほとんどの人が、恐らくここにいらっしゃる委員も、ではODA予算はことしは幾らだと言われたら、この資料二にあるように、八千億ぐらいだと思っていらっしゃると思うんですよ。だから、私、ここに書いたんですよ、「見せかけのODA予算」という、私の題目ですよ。実際は違うでしょう。実際は一兆七十八億円なんですね。つまり、何でかというと、まさしくこのIDAとか国際開発金融機関に対する出資が隠されているからじゃないですか。

 ところで、今回の出資国債は一体全額幾らなんですか。ちょっともう一回確認してください。今回の予算の中で、出資国債は幾らですか。内訳も言ってください。これはIDAだけじゃないでしょう。アジ銀だってあるでしょう。

井戸政府参考人 先ほど申し上げました財務省所管分の国際機関に対する払込総額は、国際開発協会、IDA分が九百二十五・三億円、それからアフリカ開発基金、AfDFと申しますがこの部分が百二十一・八億円、アフリカ開発銀行が五・五億円、それからアジア開発基金分が三百十八・三億円となっております。

 なお、先ほど委員からお尋ねのございました、いわゆる事業予算ベースでの各省庁別のODA予算。これは先ほど申しましたように、ことしの一月に、平成十七年度予算分については外務省から発表されておりますが、これに基づきます財務省の平成十七年度の政府案による事業予算は八千六百八十九億七千八百万円ということで、平成十六年度の予算額に比べますと三億九千六百万円の減ということで、マイナス〇・〇%というふうになっております。

井上(和)委員 今の話だと、つまりは、出資国債で、IDAが約九百二十五・三億円、それ以外にもアジ銀が三百十八億円、アフリカで百二十一億とかあるわけですよ。

 私も予算書を見たんです、どこに出ているのかなと思って。特別会計の方も。全然出ていないんですよ。つまりは、国債整理基金支出の中にも、これは平成十七年度の特別会計の予算ですよ、仕組みの一つとして特別会計を通ってくるわけでしょう、この予算書にも、大体IDAのIの字も出ていない。出ているのは出資国債等で出ていますよね。

 私は、こんなにそれこそ一千億円以上の支出をするのが予算書にもあらわれていない、これは一体何なんだと思いますよ、政府として。今まさに国民の多くがODA予算に非常に関心を持っているわけですよ。いろいろなこの予算の、私もずっと見ていたんですよ、インターネットとか。ほとんどがつまり一般会計。だけれども、本来これだって組んだっておかしくないわけでしょう、もとは一般会計なんだから。だからまやかしですよ。

 先ほど大臣は、いや事業予算ベースで出ているとおっしゃいました。確かに出ています。この白書にも出ています。それはよく見ればわかるんですよ。この白書のも、ODA事業予算という形で出ているんです。上の方には一般会計予算。ただ、政府のほとんどの書類を見ても全部一般会計予算なんですよ。

 だから、もっともっと財政民主主義に基づいて透明性を高めなきゃ、これは本当に、こういうことをやっていたらODA自体が国民の理解を得られないし、まして国際開発機関、私は世銀も非常に重要な役割を果たしていると思います。しかし、何かこういう、わからないように、知らしめないようなことをやっていては、我々だってもう余り支持できないと思う。

 もし何か、大臣、副大臣、御見解がございましたら、いかがでしょうか。

田野瀬副大臣 私の方からお答え申し上げたいと思うんですが、確かにこのODA予算は一般会計予算と事業予算がございます。先ほどからお話に出ておりますように、十七年度の予算は、一般会計では七千八百六十二億円、事業予算は一兆四千六百五十八億円計上しておるところでございます。

 非常にわかりにくいというお話ではあるんですが、実はこの事業予算は、毎年一月に外務省から公表いたしておるところでございます。ODA事業予算は、我が国のODAの事業規模の全体を把握する上で意義がございますが、他方、一般会計ODA予算については、国の主要な施策が網羅的に計上されまして施策全体を通観することができる一般会計予算の中でODAがどのような姿となっているのか、一般会計全体との比較や他の主要経費との比較等を見る上でやはり重要なものでございます。

 このように、ODA事業予算と一般会計ODA予算では性格が異なるものでありますから、我が国のODAの姿を把握していく際には、単に事業予算ベースで把握していけば足りるといったものではなくて、それぞれの予算の性格の違い等を踏まえつつ、適切に両者の姿を把握していくということが重要であると考えておるところでございます。

井上(和)委員 ぜひ副大臣に御理解いただきたいんですが、とにかくもとは一般会計なんでしょう、この世銀の出資金も。ただ、特別会計を通って出資国債にしているから、国債ということだから事業予算にしか入らないというふうになっているわけでしょう。それはおかしいんじゃないのかということを言っているわけで、もともと一般会計なんでしょう、出は。どうなんですか。違いますか。ちょっとここだけ確認してください。そうなんですか。

井戸政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、最初出すという場合には出資国債により拠出をいたしまして、これが償還されるときに一般会計上の必要性があるということで国債費に入っているわけです。

井上(和)委員 だから、つまりはODA予算にこれは入るべきでしょう。つまり、世銀への出資金はODA予算なんですか、違いますか。言ってください。

井戸政府参考人 これは、先ほどから申し上げております、いわゆるODAの事業予算としてカウントされております。

井上(和)委員 とにかく事業予算でもODA予算なんですよ。おかしいんですよ、そこが。もうまやかしですからね。

 どういうことかというと、つまりは、家庭の主人が飲み代幾ら使ったかと奥さんに言われたときに、実はクレジットカードを持っていてクレジットカードで使っていた、それは違うんですよと言っているようなものですよ。もともとは給料の中で払うんだけど、クレジットカードで使っているんだからこれは飲み代じゃないんだと。そんなのは世の中通用しないの、はっきり言って。いいですか。

 だから、もう時間がないので。私は、これはもう根本的に変えていただきたいと思います。皆さんが、技術的には、いや、それは特別会計を言っているんだし、これは国債費として計上していると。しかし、もう世の中そういうことが通る時代じゃない。そして、予算書にもしっかり書き込むべきですよ。

 大臣、どうですか。本当にこれ、透明性を高めるということは、もう政府が今言っていることで、特別会計も、要するに、私もいろいろ調べたら、大体何で国債費の中に海外出張費が入るのかなと思ったんですよ、国債償還。つまりはこれもでしょう。特別会計で結局、そういう世銀なんかの旅行に行くときに使っているわけでしょう、国債償還の特別会計の中から。だからそういう、本当に、不透明なことはやめていただきたいと思います。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 結局これは、私もちょっと十分理解していなかったところがあるんですが、要は交付国債というような形で出している、国債で拠出をしているわけですね。それで、今委員の御主張は、もうそんな国債なんかで出すのをやめて、現金で出せという御主張だと思うんです。

 それで、要は、現金で出した場合と国債で出した場合とどちらがプラスマイナスがあるかということだと思うので、財政資金の使い方としては、すぐに必要になるなら現金で出した方がいいわけですけれども、必ずしもすぐに必要になるんではない場合は国債で出した方が財政資金の使い方としてよいという、まずそこが一つ議論だと思うんです。

 それで、問題は、その透明性をどう担保するかということであるんだと思うんですね。だから、今度の場合は法律でやる。それから、ほかの機関の場合は予算総則の中に書いているわけです、ほかの拠出する分は。そういう形で従来透明性を果たしてきた、こういうことではないかと思います。

井上(和)委員 いや、実は、これは質問通告のときに私もよくわからなかったんですよ。きのうの夜にずっと考えていて、何か変だな変だなと思っていて、やはり、これがこの予算のポイントだということがわかったわけですよ。今まで、このIDAの予算もほとんど審議されていないから、難なくこれで通用していた。つまり、いいんですよ、出資国債だって。だけれども、もとは一般会計なら、ちゃんとODAの一般会計の予算の中に入れてくださいよ。そうじゃなかったらODAの全体像がつかめませんよ。そうでしょう。だから、ぜひ、まずことしから、きちっと財務省として、本当のODA予算というのを明らかにしていただきたいと思いますが、大臣、どうですか。はい、局長、どうぞ、もし御意見があったら。

井戸政府参考人 ただいま基本的な考え方については大臣から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、私どもといたしましても、透明性を高めるという努力は不断にいたしているわけでございまして、例えば、先ほどから言っておりますODA白書、これはよくごらんいただけばわかると思うのですが、歳出面だけでなくて財源の方もきちんと出ているわけで、そういった点では、どういった財源でこれがファイナンスされているかということは、どなたにもおわかりいただけるだろうと思っております。

井上(和)委員 とてもわかりませんよ。私も、調査室の方がちゃんとした資料をつくっていただいたので仕組みがわかったんですよ。そうじゃなきゃ、とてもわからない。というか、もう本当にこれは、要するにわからないようにしているわけですよ、つまり。もうこんな本当にいいかげんなことをやってもらっては困るので、ぜひ変えていただきたいと思います。

 まだいいですか、時間は。もう大分言いたいことも言ったんですが。

 大臣、つまり、もう一回言いますけれども、もともとは一般会計として国債費の中に入っている世銀へのことしの予算八百億、それ以外にもあるわけですよ、一千何百億もあるわけですね、千七百億ぐらいあるわけです、ほかの機関も。一般会計なんですよ。私の資料三、平成十七年度財務省所管の予算の表を見てください。経済協力費という区分があるんですよ。ここに本来入るべきなんでしょう。ここに入れば、ちゃんと政府のODA予算に反映されるんでしょう。入っていないんでしょう。入っていますか、入っていないんですか、局長。

井戸政府参考人 入っておりません。(井上(和)委員「入っていないんですね」と呼ぶ)入っておりません。(井上(和)委員「入っているの」と呼ぶ)いない。

井上(和)委員 いないでしょう。いないんですよ。そこなんですよ、ポイントは、大臣。

 つまりは、国債費の中に一千七百億円が入っているわけですよ。これじゃ、わからないじゃないですか。普通見たら、ああ、そうか、財務省の経済協力費はこれだ、二千億の中の幾らだと思うわけですよ。ところが、よく調べてみたら、大事な部分が入っていない、国債費の中に紛れ込んでしまっている。そんなことが許されるということ自体がおかしいんですよ。もうこれは絶対に変えてください。

江崎(洋)委員長代理 谷垣財務大臣。

 質疑時間が終了しております。手短に御答弁をお願いいたします。

谷垣国務大臣 井上委員も随分一生懸命ここを御勉強になったんだと思います。私も、まだ十分、きょう初めて委員と議論をして、そういう問題点があるなということに気づきましたので、今、余りよく頭が整理されていない中でいいかげんなことを御答弁してもいけませんので、きょうの段階でお約束できますことは、もう少しこのあたりの仕組みを私勉強させていただいて、透明度を高める手法があるなら、そちらの方を選択していくということですが、何も、存在するものが合理的だとは申し上げませんが、今までやってきたことにもそれなりの理由があるんだと思います。ちょっと、その辺をよく勉強させていただきたいと思います。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

井上(和)委員 理由はあるんでしょう、会計操作上。それは、そういうふうになっているからこうなんだといえばそうなんだけれども、では、それでODAの全体像がわかるかといったら、もう完全に隠しているわけですよ、何千億円もの政府の出資を国債費という名目で。だから、必ずこれはやっていただきたいと思います。

 時間ですか。

金田委員長 はい、時間です。

井上(和)委員 では、私の質問を終わります。

金田委員長 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。前回に引き続いて二回目の質問に立たせていただきます。

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、そのことに関連する質問でございますけれども、実は私、先般二月の末に、世界銀行議員連盟というものがございまして、世界銀行に出資をしている各国の、まさに世界銀行を応援していこう、サポートしていこうという有志の議員の議員連盟でございまして、日本にもその議連があるわけでございますけれども、私はそのメンバーということで、会議に出席をさせていただくためにイタリアのナポリに出張させていただきました。会期中でございまして、二日間休ませていただいて大変恐縮だったのでございますけれども、世界銀行議員連盟の一員として、大変有意義な会議だったというふうに考えている次第でございます。

 まさに世界銀行の今までの融資がどうであったか、そして、今、例えばミレニアム開発目標というものを立てて、それに向けて邁進をしているわけでございますけれども、世界銀行がさらにその融資の効率性、効果をいかに高めていくかという努力をしているかということについて、各国の議連の議員が集まって議論をしたわけでございます。日本からは自民党の小杉隆先生と私の二人が参加をさせていただきまして、あと世界銀行の副総裁の吉村東京事務所長も御同行をいただいて、会議に参加をさせていただきました。

 その中で、さまざまな有意義な議論がなされたわけでございますけれども、一つだけ若干どうかなと思ったことがございましたので、あえて伺わせていただくのですが、アメリカのシンクタンクに世界開発センターというシンクタンクがございまして、その世界開発センターが、まさに途上国の開発に対して各先進国がどのような取り組みをしているのか、そして、その取り組みについて、援助、貿易、投資、安全保障、環境、移民受け入れ、そして科学技術という、六つの項目についてそれぞれの各国の取り組みを要は採点いたしまして、その点数を積み上げたというランキングを発表しているということで、それに関してのプレゼンテーションが一時間程度の時間を割かれて行われました。

 それは、世界銀行とは関係ない、全く別の民間のシンクタンクが発表したものなんですけれども、恐らく世界銀行議員連盟の事務局が一つのトピックとしていいだろうという判断をして取り上げたんだと思いますけれども、そのランキングにおいて、先進国二十一カ国の中で日本が総合点で最下位というポジションであったわけでございます。

 それについて、その順位については特に議論はございませんでしたけれども、指標となったような項目について、あるいは、今後どうしていくのかといったような議論がその場ではなされたんですが、まさに日本政府として、あるいは外務省としてでもいいんですけれども、その世界開発センターによる、日本が最下位という評価を受けたランキングについてどのようにお考えでいらっしゃるか、まずお伺いをさせていただきます。

広瀬政府参考人 お答えいたします。

 世界開発センターにおきますランキングについてでございますけれども、我々、援助をやっております専門家のグループには、OECDにおきますDACという会議がございます。そこでは、政府の代表が集まりまして、援助の専門的な知識をもとに、どれをODAの中に含めるかという議論をしております。国際的には、こういったODAによる貢献というのが世界的な貢献の指標というふうにとらえられております。

 御紹介がありました世界開発センターのランキングでございますけれども、世界にはいろいろな開発に関するシンクタンクがございます。こういった民間の活動によりますいろいろな指標づくり、こういったものは評価するわけでございますけれども、我々、こういった独自の指標が、あたかも世界の合意を得たような指標として使われることについては反対でございます。これまで公表の機会ごとに問題点を指摘しております。

 例えば、ちなみに、二〇〇三年におけるアメリカの順位でございますけれども、二十位。それで、二〇〇四年におきます、指標を一個加えた、先ほど議員が御紹介されました七つの指標によりますものですと七位。ただ一つ指標が加わりますと順位が大幅に入れかわるというようなこともございますので、問題点等を指摘しながら、よりよい議論を深めるような指標を開発していければと思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 確かに、今御指摘がございましたように、その会議で取り上げられましたランキングというのは、ODAに限らず、例えば安全保障という項目ですと、各国にどれだけ兵を派遣しているかといったようなことになりますので、まさに日本はほかの国に比べるとかなり低い点数になる。そういったような非常に偏った見方だなというふうに私も感じましたし、小杉先生も大変お怒りでいらっしゃいまして、その場で抗議をしていらっしゃいましたけれども、そこは、会議のときに私もどうしてこういったものが取り上げられるのかなというふうに疑問に思いましたので、あえて冒頭にお伺いをさせていただきました。

 それでは、今御指摘いただきましたように、結局、ODAによる貢献というものが日本の対外的な支援、援助を評価する際の当然一番の中心なわけでございますけれども、大変基本的ではございますが、日本のODAの総額をまず最初にお伺いさせていただきます。

広瀬政府参考人 日本のODA総額でございますけれども、今、世界の先進国で集めました統計が利用できますのは二〇〇三暦年でございます。総額で八十八・八億ドル、円で一兆二百九十二億円でございます。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 非常に多額の金額の貢献をしている。そこはもう皆様御周知の常識でございますけれども、その金額に見合うような評価を海外において受けているのか。もちろん、国内においてという話もございますが、そちらは後で若干お話をさせていただきますけれども。

 海外において、確かに金額という意味では非常に大きい。しかしながら、結局、援助というのは、お金を使って、各国のそれぞれのプロジェクトにおいてどのように融資がなされるのか、そしてそのプロジェクトにどのように先進国がかかわっていくのか、さまざまな観点というものがあると思いますけれども、まさに、世界においてそれだけ高額のODAの金額を出していて、しっかりとそれに見合うような海外での評価というものを日本は受けているのかどうか、そこら辺を教えていただきたいと思います。

広瀬政府参考人 日本のODAに関する評価でございます。

 日本のODAは、金額面では世界二位でございます。同時に、開発といいますのは地道な作業でございます。我々、五十年にわたってアジア諸国を中心に開発に取り組んでまいりました。いろいろな国からいろいろな形で感謝でありますとか二国間の信頼関係を高めるような評価をいただいております。

 例えば、二〇〇三年、二年前になりますけれども、東京でアフリカに関するアフリカ開発会議、TICAD3というのを開催いたしました。これは、アフリカ諸国からたくさんの元首が参加され、東京で開催することが珍しい会議でございました。その中でも、日本の援助に対する強い期待感、それから、例えば二〇〇三年におきます日・ASEAN特別首脳会合で、ASEAN諸国の首脳から日本の支援に対する高い評価をいただきました。

 こういった首脳間の発言だけではありませんで、途上国の一般の人たちからも評価を受けております。二〇〇二年に実施いたしましたASEANの対日世論調査、この中で、インドネシア、ベトナム、タイといったところでは、約三分の二の方々が日本の援助が非常に役に立っているという評価でございました。また、ある程度役に立っているという評価を加えますと約九割の方々が日本の援助を評価していただいております。

 また同時に、その国の顔とも言えます切手でありますとか通貨、これに日本の援助の成果が表面に印刷されたのがございます。そういった国々が、ASEANのみならず、ラテンアメリカの国々においても採用されておりますし、最近民主化されましたアフガンにおきましてもこういったものがございます。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 決して日本がお金を出すだけではなくて、まさに援助全体でさまざまな御尽力をなさって、それがしっかりと評価されている、その一端をお話をいただきまして、私もより意を強くしている次第でございます。

 先ほどから申し上げている、私が参加をいたしました世銀議連の会議におきましても、ランキングの話では確かに日本は最下位という話は当然出てまいりましたけれども、基本的に、オランダの議長を初めとして各国の議員はやはり日本の貢献というものを高く評価をしているということが、端々に日本ということを取り上げていただいて、その点は私も感じた次第でございます。もちろん、今回の国際開発協会の増資についての交渉においても、まさに当局の方を初めとして多くの方が非常に御尽力をなさって、日本の主張を通すべく大きな努力を払ったんだろうというふうに私も想像している次第ですし、その点に関しては大きく敬意を払う次第です。

 しかしながら、例えば、さまざまな見方がございますけれども、海外援助における日本のプレゼンス。先ほどまで金額の話を議論させていただきましたが、別の見方としまして、例えば今回の世銀のように、国際機関において日本人の職員数が非常に少ないということがしばしば言われるわけでございます。もちろん、一般の人には目に見えないようなさまざまなまさに担当者の御努力、日本の方々の努力というものがございますので、一般の評価というものが必ずしも、そちらばかり見ればいいというものではないことは重々承知しておりますけれども、さはさりながら、例えばまさにこの日本の国内において、本当に日本のODAというのは意味があるのか、これだけの金額を出す必要があるのか、そういった議論をする際に、やはり海外でこれだけ評価をされている、海外において日本はこれだけのプレゼンスを持っているということがある意味での一つの説得力になるんだろう、日本の皆様を納得させる一つの材料になるんだろうというふうに感じている次第です。

 その中で、国際機関における日本人の職員の数が少ないということはかねて言われていることですけれども、今回のこの世銀に関して、世銀全体の職員数、そして、そのうち日本人の数は現在何人いらっしゃるのか。そしてまた、先ほどのODAの金額もございましたけれども、世銀に対して日本が出資をしている、例えばそのシェアとか金額というものがございますが、それに見合ったような職員の数というのは、本来どれぐらい日本人の職員がいた方がいいというふうに考えていらっしゃるのか、そのお考えをお伺いさせていただきます。

井戸政府参考人 二〇〇四年六月末現在で、世界銀行グループの専門職員数は全部で四千三百九十六名でございます。このうち、日本人職員の数は九十名となっておりまして、職員全体の約二%に相当いたしております。

 日本人職員数及び職員全体に占める割合が適正かどうかという御下問でございますが、例えば我が国の世銀への出資シェア、これが八・一%でございますので、こういった点に照らしてみれば、必ずしも十分でないというふうに考えております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 確かに、出資額において八・一%のシェアがありながら、職員数は四千人以上いるのに日本人は百人に満たない、そういった状態が今でも続いているわけですけれども、日本人の職員をふやすためにどのような努力をなさっているのか。そして、ある意味で九十人というのはその努力がなかなか実っていないとも言えるんだと思うんですけれども、その障害というか、なかなか日本人職員がふえない理由というものを教えていただければと思います。

井戸政府参考人 ただいま委員から御指摘がございました日本人職員が増加しない原因でございますが、まず一つには、世銀が求めておりますのは水とか環境あるいは教育、保健、医療、こういった各分野で深い専門知識を有する人材であるのに対しまして、日本人の志願者の方の多くは、どちらかというといわゆる開発経済一般についての専門家、ゼネラリストであるという、そもそも需要と供給のミスマッチがあろうかと思います。

 また、世界銀行等におきましては、開発の現場での経験というものを大変重視しているわけでございますが、日本の終身雇用を基本とします雇用体系のもとでは、こうした経験をするチャンスがなかなか少ないのではないかと思います。

 それからまた、一たん採用されましても結構離職される方が多いのでございますけれども、こういう方の場合には、国際機関での文化に対する対応がなかなか難しいというような面もあるかと思っております。

 こうした状況ではございますが、私どもとしましては、さまざまな機会をとらえまして、日本人職員の増加に向けて努力するよう世界銀行に働きかけております。また、世銀に関心を持つ若い有為な人材にチャンスを与えるというために、我が国からの信託基金も活用しつつ支援を行っているという現状でございます。今後とも、日本人職員の状況を注意深くモニターいたしまして、世銀の人事当局に対しまして一層の働きかけを続けていきたいというふうに思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 今お話をいただきましたようなさまざまな理由が確かにあるんだと思います。日本とアメリカにある世銀の文化の違いとか、あるいはそれにふさわしい人が少ないという現状もあるんだろうと思います。

 ただ、私が一つ気になりますのは、例えば、世銀には理事がいらっしゃるわけですけれども、その理事というのは、日本人の理事というのは代々財務省からの出向者が占めているという現状がございます。確かに、財務省というのは開発金融を担当している部署もございますので、そういった経験がある、そういったスタッフもいるということだろうと思いますけれども、一般的に、財務省に限りませんが、官僚というのは、財務の専門ではあっても開発金融の専門家とは必ずしも限らない、まさに、幾つかの部署を二年、三年で異動するといったような方々が多いわけでございます。そういった中で、まさに世銀の理事というのを一つのポストのような扱いにして、二年、三年、財務省から出向している。

 世銀の理事というのは、まさに日本の政府の代表としていらっしゃるんだと思いますけれども、その政府の代表に当たるような、まさに日本の立場を世銀の中で一番発言する立場にある方が常にそういう財務省の方であるということは、日本としてそれがふさわしいことなのかどうか、その点について大臣のお考えをお伺いさせていただきます。

谷垣国務大臣 世界銀行の組織は、最高の意思決定機関は総務会というのがあるわけですね。それで、日本からの総務は私、つまり、日本の財務大臣が日本の総務としてその意思決定に加わるということでありますけれども、日常業務は理事会の場で決定をしていく。その理事は、今田村さんがおっしゃったように、日本政府の代表として行動をするということだろうと思います。何も財務省の職員に独占しなきゃならぬということは必ずしもないわけでありますけれども、日本では、総務は財務大臣が務める、それから理事も、そういう意味では連携して務めるということになってきましたのはそれほど違和感のあることではないのではないかなと私は思っております。

 世銀が公的資金、民間資金を合わせた国際金融全体の中で開発支援のあり方というのを検討しているわけですから、これは適材適所ということが一番の原則だと思いますが、今までは財務省の中で国際金融や開発の問題に通じた人を理事としてやってきた。今後とも常にそうでなければならないかどうかは別として、それが一つのベーシックな姿であるということは、私はそんなに不自然さを感じておりません。ただ、やはり視野を広くいろいろ考えていかなきゃならないとは思っております。

 それから、世銀の日本理事室は、これは田村委員もよく御存じのように、財務省だけではなく、外務省であるとかJBICであるとか、いろいろなスタッフも勤務をしていただいているわけです。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 済みません、時間がなくなってしまいまして、本来は外務省の方からも御見解をと思っておったのでございますけれども。よろしいですか、済みません。でしたら、そのことについて外務省はいかがお考えか、一言だけお伺いできればと思います。

逢沢副大臣 世銀はもとよりでありますけれども、アジア開銀を初め国際開発関係の金融機関に、志の高い、また能力のある人材を我が国から出す、出し続けるということは大変重要なことである、言うまでもないことでございます。

 今、財務大臣からも答弁がございましたけれども、外務省の立場から申し上げるといたしますと、世銀を初め開発関係の金融機関の活動、運営に、我が国のODA政策を適切に反映させる、整合性をとっていく、そのことを大変重要視させていただいているわけであります。世銀理事等の立場で活躍をされる方は、何といいましても国際開発金融機関の活動に経験を持っていらっしゃる、同時に二国間経済協力にもある種の知見や経験を持っていらっしゃる、この両方の能力あるいは経験を有する方が最もふさわしいというふうに考えております。

 確かに、委員御指摘のように、歴代理事あるいは理事代理、リストをずっと私も改めて拝見いたしました。大蔵省、財務省出身の方で占められておりますし、審議役は例外的に輸銀の方がいらした時期もございますが、基本的には大蔵省。しかし、それらを補佐いたします理事補の立場には、私ども外務省からも出させていただいておりますし、JBIC等々からもそれぞれ能力のある方が出ておりまして、全体として日本の立場を確保するという体制になっていると理解をいたしております。

 財務省、外務省の間でも常に緊密な連携をとりながら、引き続き政府、日本として全体としての目的を達成する努力をしてまいりたい、そのように思います。

田村(謙)委員 どうもありがとうございました。

 もう時間は過ぎておりますので、一言だけ。まさに世銀、日本の代表として派遣される人が、今外務副大臣もおっしゃったような資質を備えた方、もちろん財務省にもいらっしゃると思いますけれども、それが一番資質がある方かどうか、まさに民間の分野まで見た場合にそれは必ずしも言えないだろうということは明らかではないかなと思います。そこは、別の国際機関になれば、それこそ外務省の独占しているポストというのもあるわけでございますけれども、官僚がそういう国際機関のポストを一つの内部のポストのように扱って、ある意味で一つの既得権益にしているということについての問題意識だけ最後に申し上げさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

金田委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。私の方からも、国際開発協会、IDAへの加盟に伴う措置に関する法律の改正案に関しまして質問をいたします。よろしくお願いします。

 まず最初に、基本となる日本政府のODAの方針についてお伺いしたいと思います。

 振り返りますと、二〇〇〇年九月、すなわち、二十世紀から二十一世紀へ変わろうとする直前に、ミレニアム開発目標というものが国連総会で採択されました。一日一ドル、つまり一日百円未満で生活している人たちの数を半分にしよう、そういうことを含めて八つの目標をそこで決めまして、国際社会が一致協力しようということになったわけであります。そして、さらにその目標を達成するために、一年半後の二〇〇二年三月、メキシコのモンテレイで会議が開かれまして、我々先進国は国民総所得の〇・七%までODAをふやそう、それを努力目標としようということが合意されたわけであります。

 そういうことを見ますと、国際的な潮流としては、ODAを量的に拡大していこうという流れが確定しているわけであります。そして、実際にアメリカ、EU各国も、二〇〇〇年以降、ODAの額をふやしているというところであります。しかし一方で、我が国だけが、実績ベースで見ますと、二〇〇〇年がピークで、それ以降、毎年毎年ODAの額が縮小中である。モンテレイの会議では〇・七%という努力目標が示されたわけですが、日本の実績は二〇〇三年では〇・二%まで落ちてしまっております。

 これは要するに、ひとえに日本の財政事情による、赤字国債の残高が二百五十八兆円にも及ぼうという財政事情のせいということであると思います。要するに、日本の国内事情と国際社会の要請、この二つの間に矛盾があるという時期に入っている。何とかそれをバランスさせなければなりません。私は、政府のODA大綱、それからことしの二月にできた中期政策なども拝見したんですが、どうやって今申し上げた矛盾を解決していくのか、どの辺でバランスさせるのか、その辺が明らかになっていないと思います。

 そこで、まず最初に、日本のODAの全体の方針、特にその量に関する方針はどんなものであるか、ODAを減らすということならどういう基準で減らしていこうとされているのか。さらには、二国間援助、それから今度のIDAのような多国間援助、それぞれどういうふうに減らしていこうとしているのか、最初にお伺いいたします。

逢沢副大臣 大変重要なODAの基本的な政策のあり方について御質問をいただいたわけでございます。

 言うまでもないことでございますが、我が国は世界第二位の経済を誇る国でございます。また、国際社会の中にあって本当に大きな責任を有する国であることを自覚もしなくてはなりませんし、また、その立場を内外にかねてより明らかにしてきたわけでございます。

 我が国は、世界主要国の一つとして、御承知のように、ODA政策を積極的に展開してまいりました。先生からも御指摘をいただいたわけでございますが、過去の記録を振り返ってみますと、一九九〇年代は世界最大のODA拠出国であったわけでありますが、その後、厳しい財政事情等幾つかの状況を反映してODAの拠出金額を下げてきた、そういうトレンド、いわば日本のODAは今右肩下がりという状況に、今日まで、新しい世紀を迎えてからそういう状況になっております。

 一方、アメリカや英国、フランス、ドイツは、二〇〇〇年になりましてから、特に二〇〇〇年に国連でミレニアムサミットがございました。二〇一五年を一つのゴールといたします開発目標を立てた、そのことも一つの大きなきっかけであったと思いますし、また、委員御指摘のように、モンテレイのコンセンサス等々も二〇〇二年の段階でございました。アメリカやヨーロッパの主要国は急速に今ODAの予算をふやしている、そういう状況にある、そのことは事実関係として客観的に理解をしておかなくてはならないと思います。

 開発の問題、また貧困の撲滅の問題、特にアフリカ等を念頭に置いた感染症対策、そういうことに国際社会、とりわけ主要国が打って一丸となって対応しなくてはならない、そういった大きな課題を抱えた今日の世界政治状況をしっかり認識しながら我が国のODA政策を積極的に組み立てていかなくてはならない、基本的にそんな問題意識を持っておりますし、ことしのイギリスにおきますサミット、また九月の国連総会におきます首脳会合でも、そういった貧困の撲滅、開発の問題が大きなテーマとして取り上げられるということは、既にアジェンダとして決定をいたしているわけでございます。

 もちろん、過去におきまして、日本のODAは大変高い評価を受けてまいりました。実は、私ども、よく海外に出張する機会もございますが、アフリカや中東の方に参りますと、日本の、特にタイ、アジア、ASEANに対するODA政策が大変高い評価を受けているという事実に改めて気づかされるわけでございます。

 今から四十年前あるいは五十年前、ASEANの国々とアフリカの国々は余り経済力に差がなかった、一人当たりの所得はむしろアフリカのある国の方が高い、そういう時代が今から四、五十年前あった。しかし、その後の展開では、アジアの国々とアフリカの現状に大きく差がついてきた。それをアフリカあるいは中東なりに分析した結果、やはり日本の、特にタイ、ASEANや中国に対するODA政策が非常に有効であったという彼らなりの一つの結論を見出しておられるといったようなこともたびたび指摘を受けるわけでありますが、そういったことにも一つの、ある意味で、いい意味で自信を持ちながら、日本のODA政策を積極的に展開していかなくてはならないと考えます。

 GNI、GDP、〇・七%目標ということがジェフリー・サックス教授からコフィ・アナン事務総長に対して出されました。そのことを背景に二〇一五年のミレニアムゴールを目指していこうという大きな潮流がある中、確かに、我が国におきましては大変厳しい財政事情、こういったものもあるわけでありますが、適切に国民の理解を得ながら、また、もちろん国会の先生方の理解を得ながら、日本として、国際社会の中にあって責任ある一員として果たしてどうあるべきか、そのことを考えたときに、今我が国はGNP比ちょうど〇・二%のODA拠出の総体でございますけれども、これはやはりこれ以上減ることがあってはならないというふうに思います。

 もちろん、二〇一五年の段階で〇・七%を達成するということが今日の段階でコミットするということは大変困難なことでありますけれども、しかし、生産性や効率性を確保しながら適切に量を確保していく、できる限り量の拡大ということについて努力をしていく、そのことが非常に重要であるというふうに承知をさせていただいております。委員の御指導と御協力も心からお願い申し上げたいと存じます。

吉田(泉)委員 要するに、〇・二%は何とか維持し、さらには拡大をしようという方針だと承りました。一方で、財政事情が厳しい折、何かその辺の方針を具体的に国民に示して、やはり国民の納得を得る必要があるというふうに思います。

 次に、今回、法案に出ましたIDAの増資への対応の件に進みたいと思います。

 IDAというのは、世界銀行の名前に隠れて余り知名度はないといいますか、余り私もわからなかった機関ですが、国際開発金融機関としては融資残は最大であるということであります。先ほど、井上委員の質問でも、日本のODAの事業予算規模は一兆円という規模である、それでIDAへの分が九百二十五億円ということですから、日本の十七年度のODAの約一割を占める大変重要な機関であって、その増資にどう対応するかというのは、日本の財政事情も、なおかつ国際社会においても非常に大きな影響があるというふうに思っております。

 三年ごとに行われるIDAの増資ですが、今回は三年前と比べまして四割増し、大変増資額がふえたわけであります。それに対して我が国はシェアは低下させる、前回は一六%のシェアだったんですが、今回は一二・二四%までシェアを落とす、一方でSDRベースの出資額は八%ほどですが増加させる。シェアは低下させ、出資額はふやすというやり方で対応しようとしているわけであります。例えば、アメリカも財政事情が厳しいわけですが、これはシェアを落とす、額も落とす。一方、非常に今回の増資に積極的なイギリスはシェアもふやす、額もふやす。日本はシェアは下げるけれども額はふやす。ちょっと中途半端な対応になっているような感じなんですが、一体今回の増資に対する日本の方針というのはどういうものであるのでしょうか。

谷垣国務大臣 今回は第十四次の増資なんですが、基調的な意見は、二〇一五年までのいわゆるミレニアム開発目標を達成していくためには、今度の増資期間において開発援助の量を大幅にふやすべきだという考え方が、特に欧州等を中心として非常に強かった、大勢を占めたわけでございます。その結果、さっきおっしゃいましたように、いろいろな議論を経て、前回比約四一%増という大幅な増資規模になったわけでございます。

 そこで、我が国としては、先ほどからいろいろ御議論もございましたけれども、今回の増資交渉においては、非常に厳しい財政状況を踏まえますと、そこを訴えまして、日本は出資シェアの削減をしたいという主張をいたしまして、先ほどお話がありましたように一六%から一二・二四%へと引き下げた。しかし、それは出資額では減っていないわけですね。

 それで、そこはどうだったのかというと、今回の出資額は、一九九〇年に決定されました、重債務貧困国、HIPCと言っておりますが、ここの債務救済の後年度費用負担というのは日本としてどうしても受けなきゃならない部分があったということと、前回増資から導入されました無償資金供与の一部費用の補てんが含まれているということ。それから、為替が前回の増資時と比べまして対SDRで円安に動いてきているようなことがございまして、円建てでは前回比一二%増の出資額となっているんですが、通常出資分では増加していないというような数字になっております。

 こういうことで、国内から見ますとふえているんですが、要するに、シェアは抑えて、額は大体同額出すからという形が今回の結論。ちょっと乱暴に言ってしまうと、そういうことでございます。

吉田(泉)委員 シェアは落とすが、額は維持するという方針だったということだと思います。

 時間も限られておりますので、IDAの具体的な融資案件について一つお伺いしたいと思います。

 現在、IDAが審査中の融資案件にラオスのナムトゥン2水力発電プロジェクトというのがございます。ラオスの中部、メコン川支流にダムをつくって百万キロワットクラスの水力発電所を建設しようというプロジェクトであります。これにIDAが無利子融資をしようと。

 特徴が三つあると思うんですが、一つは、発電所をつくるんですが、そこで発電される電力の九割以上をラオス国内で使うんじゃなくて隣のタイに売電をするという特徴がございます。それから二つ目は、工事の費用ですけれども、十二億ドルということなんですが、何とこれがラオスのGDPの六割に当たる。非常にラオスにとっては巨大なプロジェクトであって、その大半を借金でやろうということであります。それから三つ目は、環境上の問題なんですけれども、このナムトゥン2のダムサイトというのは、琵琶湖の三分の二に達する非常に大きい湖ができる。実は、そこはアジア象の生息地、アジアでも最大の生息地ということです。しかも、東洋のガラパゴスと呼ばれている熱帯雨林であるということですね。この三つの特徴があります。そういう事情がありますので、このプロジェクトは、環境上、そしてラオス国にとっても経済上のリスクというのが少し大き過ぎるんじゃないかという心配があって、長い間国際的な議論になってきたということであります。

 それに対して世界銀行は三つの条件をつけました。一つは、ラオス政府は経済、財政、金融政策を適切に行うということ。二つ目は環境、住民の移転も出てくるわけですが、そういうことについてラオスの政策が適切であるということ。それから三つ目の条件は、国際的な支持があることという条件をつけたわけであります。これが世銀の三つの条件、これを世銀の三つの柱と呼んでいるようですが、この現状を日本政府としてはどう見ているか。

 特に、今までいろいろな問題が起こりました。ダムサイト予定地で不法伐採ということもありました。さらには、先ほど申し上げたアジア象、百二十頭がここにいるそうなんですが、これをどうやって移動、保護するか。こういう問題も含めて世銀の三つの条件の現状を御答弁願います。

井戸政府参考人 世界銀行は、本プロジェクトが大規模かつ複雑であり、環境、社会面にさまざまな影響を与えるということが想定されることから、今委員御指摘のとおり三本の柱から成ります意思決定のための枠組みというものを作成、公表しているわけでございます。

 まず、一本目の柱である貧困削減及び環境保護に関する開発枠組みの実施という点につきましては、ダムから得られます収益、先ほど委員御指摘ございましたように、タイに電力を販売いたしましてその収益があるわけでございますが、これが貧困削減に用いられますように公的支出管理制度全体の改革及び透明性の向上が必要だという点でございます。かつ、収益を優先的に配分する保健、教育等のプログラムの選択基準の明確化、あるいはプログラムの財務報告、内部監査機構の設立、外部主体によるモニタリング、こういったような措置がとられることとなっております。

 それから、二本目の柱であります適切な環境社会配慮という点につきましては、世銀側のこれは環境・社会配慮政策というのが公表されておりまして、このすべてが満たされるということを条件にいたしております。また、住民移転につきましては、移転後の住民の生業の選択肢を提示するとともに住民に一定額の収入を保障する、そういう実施体制を確保した上で進めていこうということにいたしておりまして、こうした措置は、外部の独立の機関とかほとんどの関係者からはこれまでにない手段だということで非常に高く評価を受けているというふうに聞いております。

 三本目の柱でございます国際的な支持獲得でございますが、これにつきましては、地元住民ともたび重なる協議を行っておりますほか、バンコク、東京、パリ、ワシントン、ビエンチャンにおきましてワークショップを開催いたしております。プロジェクト実施中も関係者が関与できますように、さまざまなレベルにおいてモニタリングの枠組みを発足させていることといたしているわけでございます。

 特に、委員から御指摘がございましたアジア象についてでございますが、この生息地の喪失等の影響が指摘されているわけでございますけれども、これにつきましては、専門家を雇用いたしまして、ナカイ高原、ここがアジア象が生息している地域でございますが、ここでの現況の調査を行いまして、ダム湖に貯水されるまでに保護計画を策定するということになっておりますし、そのために必要な費用は、プロジェクトのコストとして既に支出が確保されているというふうに承知いたしております。

 また、不法伐採についても御指摘ございましたが、これは、世銀がこのプロジェクトに関与する前の段階でプロジェクト予定地におきまして不法伐採が行われていたということは事実でございます。これは私ども大変遺憾に思っておりますが、その後、世界銀行が関与を始めた後は違法伐採についての対応が改善されまして、二〇〇〇年と二〇〇二年に世銀が調査ミッションを派遣した際には、森林の管理は適切に行われていたという報告を受けたというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、今申し上げました問題につきまして世銀は相当な対応をしているというふうに思っておりますけれども、今後、世銀事務局からさらなる説明も予定されておりますので、そういった説明も踏まえまして、理事会審議までの間にさらによく検討してまいりたいというふうに考えております。

吉田(泉)委員 日本のODA大綱というのを見ますと、一番最初に書いてあるのが、日本の最も重要な基本方針というのは途上国の自助努力の支援である、それが日本のODAの基本的な方針なんだと書いてあります。

 私もまことにそのとおりだと思うのですが、今回のこのラオスのダムプロジェクトの支援というのは、ラオスの自助努力の支援に本当になるんだろうかという心配をしております。借金してダムをつくって、自分で使うのじゃなくて他国にそれを売電する。そして、電気代が入ってくるわけですが、これが一種の、失礼ですけれども、いわばあぶく銭のようなことにならないか、そのお金が本当に貧困の削減とか持続的な経済成長につながるのかというところが非常に懸念される、独特のプロジェクトだなというふうに私は思っております。

 それで、最後になりますが、今申したような電気代が本当にラオスの国のためになるのかということと、それから、実は間もなく、今月末のIDA理事会でこれを融資するかどうか審査の結論を出すという予定だと聞いております。日本政府そして日本の理事は、この非常に環境上、経済上のリスクが大きいナムトゥン2プロジェクトに対して慎重に臨むべきだと考えますが、政府の方針をお伺いして、終わりにします。

井戸政府参考人 ただいま委員御指摘の点はまことにもっともだと思いますが、本プロジェクトからの収入は、当初十年間程度の見込みが出ておりますけれども、ラオス政府の歳入の五%程度になるというような予想が立っておりまして、そういった意味で、ラオス政府にとっては非常に重要なプロジェクトであるというふうに認識いたしております。

 しかしながら、こういった収入が、先ほど申しましたように、保健、教育、地方インフラ、こういった貧困削減に役立つプログラムに用いられるようにするということが極めて肝要だと思いますが、そのためには、公的支出管理制度全体の改革あるいは透明性の向上が必要というふうに思っております。そこで、先ほど申しましたように、財務報告をきちんとするとか、内部監査機構をつくるとか、外部主体によるモニタリングを行うというようなことが予定されているわけでございます。

 今申しましたように、ラオスにとっては非常にいいプログラムだと思うわけでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、環境への影響、それから住民移転等の面についてさまざまな懸念があるということは我々も十分認識しておりまして、この電力を販売することで得られました資金を生活水準の向上のために役立てるためには、ラオス政府の財政管理が先ほど申したような点で適切になされるということが極めて重要だと思っておりまして、そのためには、そういった専門的な知見のある外部機関からの支援ということが何よりも重要だというふうに思います。

 この点から見ますと、世界銀行及びアジア開発銀行はこういった点で非常に多くの経験あるいは知見を有しておりまして、国際開発金融機関がこういった面で寄与することができる可能性あるいは役割というものが非常に高いのではないかというふうに思っております。

 我が国の対応につきましては、今申しましたような環境、社会面での懸念に対しまして十分な対応がなされているか、あるいは、今申しましたように収入が貧困削減のためにきちんと使われるような財政管理の体制ができるかというような点について、実は、私どもとしても、これまで既に二年間にわたりまして、世銀事務局あるいはNGO、外部の独立機関ともいろいろな意見交換を行ってきたわけでございますが、今後、理事会の審議までの間にさらによく検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

吉田(泉)委員 慎重な対応をお願いしまして、終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 提案されておりますIDA増資法案についてお聞きをしたいと思います。その特徴とIDAの最近の変化、これを確認したいと思います。

 まず目的でありますが、昨年末のスマトラ沖地震・津波、これで二十万人以上が犠牲になりまして、百五十万人が家や仕事を失いました。特に被災各国の最貧困層が大変大きな打撃を受けたというふうに聞いております。これまで世界の緊急支援活動というのが続けられてきたわけですけれども、今後、これを復興するための取り組みに移行するということであります。その際、IDAは幾ら拠出することになるのか、その復興活動を進めるに当たって世銀はどのような指針を持っているのか、この点について確認をしたいと思います。

井戸政府参考人 世界銀行から、津波被災支援につきましては、六億六千万ドルが支援のために用意されることとなっております。内訳を申し上げますと、インドネシアに対しまして二億四千六百万ドル、モルディブに対しまして千四百万ドル、スリランカに対しまして四億ドル。以上、計六億六千万ドルでございます。

佐々木(憲)委員 この復興活動を進めるに当たって、具体的にどういう指針を持って行うのかという点について答弁がなかったのですが、お願いします。

井戸政府参考人 失礼いたしました。

 世界銀行といたしましては、この支援を進める上で特に三つの点を重視いたしております。一つは、復興のプロセスを被災国が自主性を持って進めるいわゆるオーナーシップ。それから、復旧プログラムの立案に地域社会を参画させること。それから、復旧の目標を被災前の貧困レベルの再現とはしない、より以上、よりよい状態に持っていくという、この三点が世界銀行の指針とされております。

佐々木(憲)委員 二〇〇〇年に国連が採択したミレニアム開発目標というのがありますが、ことしの九月にその進捗状況について中間レビューが行われるということです。今回のIDAの第十四次増資というのは、それとの関連でどのような方向づけが行われようとしているのか、それを示していただきたい。

井戸政府参考人 今回の第十四次増資に当たりましては、各国のパフォーマンス、政策の実施状況でございますが、これに応じてその支援の半分をアフリカに向けること、それで、その結果として、アフリカが直面する類を見ない開発の難題に対処することに特別の重点を置いております。そういった点から、IDAは、いわゆるミレニアム開発目標をめぐる先進国と途上国との間のパートナーシップの主要な支援者という役割を果たしていきたいというふうに位置づけられております。

佐々木(憲)委員 そこで大臣にお伺いしますけれども、それぞれ支援をする場合、各国の自発的な計画づくりというのが非常に大事だと思うのです。先進国が自分で考えた政策を無理やり押しつけるというのは、これはよろしくないと思いますね。

 今、すべてのIDA融資対象国八十一カ国に対して、貧困削減戦略ペーパー、PRSPというものの作成が要請されているそうです。これは、これまでのコンディショナリティーによって特定の政策へ誘導したり枠をはめるというやり方を見直そうということだそうでありますが、私はその方向というのは大切なことだと思っております。

 日本としてこのPRSPを援助するのは大変大事だと思うのですけれども、自分たちで自発的につくれるようにやっていくというのはなかなか難しい面もあるわけです。自発的にそういう条件をどう整えていくか、そこに日本がどう支援するかというのが大切だと思いますが、日本政府としての基本的な考え方を示していただきたい。

谷垣国務大臣 基本的に、今佐々木委員のおっしゃったような考え方で臨むべきでないかと私も考えております。やはり途上国の自主性を尊重しながらやっていく。これは世銀の方針でもあると思っております。そのために、今おっしゃった貧困削減戦略、PRSPと言っておりますが、それを途上国がそれぞれ自主性を持ってつくってくれということで、その実行を支援するために世銀が融資とか技術支援を供与する、こういう形で今やっているわけです。

 ただ、一番の問題点は、そういうものがなるほどぴしっとしたものができる国ばかりであればいいんですが、必ずしもそういった戦略を自分でつくって管理をしていくという能力が十分できていないところもあるわけでございますので、途上国自身のそういう能力をどうやったらバックアップして育てていくことができるかというような観点からの支援も考えていくという点がポイントの一つになるんじゃないか、私もそう思っております。

佐々木(憲)委員 昨年八月に、世銀は、今までやってきた調整融資という考え方をやめまして、開発政策融資へ変更するということを決めたというふうにお聞きをしますが、なぜそのような決定を行ったのか、その理由はどこにあるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。

田野瀬副大臣 委員おっしゃるように、昨年の八月に開発政策融資という新たな手法が導入されたんですが、この理由は、途上国の自主的な改革実行のペースに合わせて支援を行うということが非常に大事であるということから、借入国が一定の政策を実行する都度組成される開発政策融資ということになってきておるところでございます。

佐々木(憲)委員 これまでよく言われてきたように、構造調整融資ということで外側から画一的な政策を押しつけるということは、これは評判が悪いし、またなかなかうまくいかないということだったわけであります。これは大きく転換をするということが私は必要だと思うんです。

 ことしの五月にウォルフェンソン世銀総裁が退任をされるということで、先ほども議論がありましたが、ウォルフォウィッツ米国防副長官を擁立して、先ほど大臣は日本はそれを支持するんだというお話がありました。このウォルフォウィッツ米国防副長官というのは、新保守主義派、いわゆるネオコンというグループの代表格で、イラク戦争を主導したと言われているわけです。この人物については、ヨーロッパあるいは途上国からも非常に強い反発を招くおそれがあるわけです。

 今大臣が確認をされました、画一的な調整融資の政策を各国の自主的なあるいは各国の計画に基づく方向に大きく転換する、しかもその内容を貧困削減という方向へということが大きな流れになっているわけでありますが、仮に新しいウォルフォウィッツ世銀総裁が誕生するなどということになりますと、その流れがまた逆流するのではないかという懸念を抱くわけです。

 この点について、今、構造調整融資から開発政策融資ということに大きく転換するという答弁がありました。その流れというのは今後とも変わらないのか、あるいは総裁がかわったことによって何らかの変化がまた生まれるのか、その点についてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 まだウォルフォウィッツさんの就任が正式に決まったわけでもありませんので、何ともこれは申し上げにくいんですが、過去、世銀の総裁を長くおやりになった、あのウォルフェンソンさんも十年おやりになったんですかね、それから長い方ではマクナマラなんという方も十数年おやりになって、世銀の歴史を振り返ってみますと、それだけおやりになりますと、なるほど、それぞれの色合いというものが出てきますよね。ですから、今それがどういうふうに出てくるかは予断ができませんけれども、当然、新しい総裁のリーダーシップのもとで何らかの方向づけというのはなされるんだろうとは思いますけれども、世銀という機関から見て、それぞれの機関の自主性を重んずるということがなくなってしまいますと、なかなかそれはかゆいところに手の届く援助にはならないんじゃないか。

 これは、実は日本も非常にその点では、ODAの世界といいますか援助の世界では、それぞれの国の自主性、それぞれの国が長期に発展できる体制をどうやってとっていくかということは、かなり日本としても意を用いてきたところでありますので、今後とも、世銀としてはそういうようなことを基本的に頭の中に置いて行動していただくことを私は期待しております。

佐々木(憲)委員 第十一次増資以後、グラント供与、無償資金供与が認められる。これは、融資ばかりですとなかなか返済が難しいということで、そういう供与も認められるようになったというふうに聞いておりますけれども、やはり途上国、特に貧困問題を抱えている国々というのは経済的にも非常に深刻な状況にありますので、それを自主的な、自発的な内容を尊重しながらやっていくということは大変大事なことなんで、これはだれが総裁になろうと、この流れというのは大いに促進するということが大事だというふうに私は思っております。

 そこで、最後に、日本政府の従来の支援の内容というのは、どうも経済的インフラといいますか、例えば道路ですとか、あるいは橋ですとか港湾ですとか、鉄道、空港、発電所、送配電設備、ガスパイプライン、電気通信施設等々、これは非常に大きな大型のプロジェクトを中心とした投資というものにどうしても力点があったのではないかと言われております。この方向というのは、国連のミレニアム開発目標、つまり貧困削減という目標と比較しますと、かなりアプローチが違うわけであります。そこで、貧困削減という世界の流れを日本としてもさらに加速するということが大事だと思いますので、先ほどもちょっと議論があったようですけれども、無用の長物をつくって環境を破壊して後は知りませんよというのじゃ困るわけです。そういうことのないように、世界の批判を浴びないように、そういう意味でも現地の実情、現地の住民の要望をきちっと踏まえて対応するということが今後とも大事だと思いますけれども、大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今の御議論は、借款みたいなものを多用するのかグラントを多用するのかというような、ODAのあり方、開発援助のあり方の手法にも関連してくると思うんですね。

 それで、今佐々木委員がおっしゃいましたように、長期の借款、極めて低利な長期の借款をやって経済的インフラを整備するというようなことを、こういうマルチの機関は別として、バイでやっている国は、代表的な国が日本でございまして、余りほかではそう多くないんですね。これはしかし、私は、アジアや何かを底上げしてくるときには相当有効に働いた面もあるんだと思っております。したがって、すべてがグラントでいけるとも思っていないんですが、今度のIDAの増資の対象は非常に貧困な国も多いものでございますから、そういうところも長期に見てどうしていくかという視点ももちろん大事でございますが、他方、グラントみたいなものも適切にやっていくことが必要なんだろうと思います。そこはやはり柔軟に見てやっていかなきゃいけないんではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 やはり貧困克服というような方向を重視すると。余り大規模開発、大型開発というところに目が行くようなことではなくて、その住民に支持され、世界の平和と貧困克服の方向に沿う方向で大きく政策も転換していただくということを要望しまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、山下貴史君。

山下委員 自民党の山下貴史でございます。

 私も、引き続き、この国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に関連いたしまして、何点か質問をさせていただきたいと思います。ただ、国際開発金融のような分野に関しましては、私は全く門外漢でございますので、大変初歩的な質問にならざるを得ないかと思いますし、また、質疑順が五番目ということになりますと、かなり重複した質問ということにどうしてもなってしまう面もあろうかと思いますが、お許しをいただきまして、せっかくの機会でございますので質問させていただきたい、こう思います。

 そこで、まず、今次の第十四次の増資ということでございますが、第十四番目の増資というと、これまで少なくとも十三回は増資があったということになるわけでございまして、随分頻繁に増資が行われているんだな、こう率直に改めて感じたところでございます。

 そこで、これまで累次の増資の結果、我が国も出資という面で相当貢献をしてきているのではなかろうか、こう思いますが、これまでの間の出資総額というのは一体幾らぐらいになっていて、その出資比率というのがどういうパーセンテージになっているのか。そして、そのパーセンテージというのは主要国間の中でどういう順位にあるのかについて、まずちょっと御報告をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

井戸政府参考人 IDAの設立当初から第十三次増資まで、これは約四十五年間にわたるわけでございますが、この間のIDAに対する我が国の出資総額は約三・五兆円となっております。この結果、我が国の累積の出資シェアは二一・五五%に、これは二〇〇四年六月末時点でございますが、なっているわけでございます。

 なお、主要諸外国の出資シェアでございますが、米国が二三・三二%、ドイツが一一・五四%、英国が七・九三%、フランスが七・〇四%となっておりまして、我が国は米国に次いで第二位の地位にございます。

山下委員 二一・五五%という、非常に高い比率になっているなと改めて認識をいたしました。

 そこで、今次の第十四次のIDAの増資につきましては、これはまた先ほど来随分議論されておりますが、二〇〇〇年九月の国連総会で採択されたいわゆるミレニアム開発目標、これは貧困削減とか保健、教育分野での改善とか環境保護、いろいろな分野で具体的な達成目標を掲げて、二〇一五年までにそれを目指すという目標だ、こう理解をいたしておりますけれども、そのミレニアム開発目標について、二〇〇五年、つまりことし、中間レビューがあるということを受けて、昨年の二〇〇四年に増資交渉が行われて、その結果を受けて額が決まり、いよいよこの法律改正という段取りになったんだ、こう理解をいたしております。

 今次の交渉で、増資額というのは百四十一・三億SDR、これは第十三次の増資規模に比べまして四割増だ。かなり意欲的に増額されている。その中で、我が国の比率というのは、これは先ほど大臣のお話もございましたが、一二・二四%で、前々回や前回に比べてだんだん出資比率のパーセンテージポイントは落ちてきているという、これはある意味大きな特徴だ、こう思いますが、今次の第十四次の増資の交渉の背景、つまりこういうことにつながった背景でございますとか、いわゆる要因について、簡潔にその辺の説明をお願いいたしたいと思います。

井戸政府参考人 ただいま委員御指摘ございましたとおり、ことしは英国でグレンイーグルス・サミットも予定されておりますが、やはりアフリカ問題、開発問題というのが主要なことしの開発のテーマになっているわけでございます。

 そういった観点から、先ほども申し上げましたように、IDAの第十四次交渉におきましても、アフリカ等の国をどうやって助けていくのかというのが主要な議題になっておったということ、それからまた、先ほど大臣の方からも御答弁いたしましたが、最近、債務問題で苦しんでいる貧困国がたくさんある、こういった国をどうやってきちんとした健全な経済成長に戻していくか、こういった点が今回のIDA十四次増資の中でもいろいろ議論されておりまして、そういった意味で、例えばHIPCs、重債務貧困国に対する支援を強化しよう、あるいは、IDAにおいて貸し付けだけでなくグラントの割合もふやしていこう、こういった点も踏まえまして、全体で約四一%という大幅な増資規模が合意されたわけでございます。(山下委員「日本が比率を下げたというのは、何か説明ありますか」と呼ぶ)失礼いたしました。

 そういった大幅な増資が合意されたわけでございますが、我が国の場合には、非常に厳しい財政事情等ございまして、こういった点について我が国から各国にもいろいろ説明をし、その結果、我が国の出資シェアにつきましては、今回約一二%ということで各国からも合意をいただいたということでございます。

山下委員 ありがとうございました。

 それで、先ほどの議論にもあったわけでございますが、今回のIDAへの追加出資は、説明によりますと、全額出資国債で行う、こういうふうにされているわけでございます。国債で払うということでありますので、少しこまい話になるかもしれませんが、IDAへの払い込みのための国債というのはどういうものが渡されるのか。ですから、国債をそういうIDAに提供するということは、国債の発行ということと同じなのかどうなのか。つまり、要するに、予算の中で公債発行限度額というのが決められますね。その限度額の中に今回の国際開発協会に対する出資国債の総額というのは入るものなのかどうなのか、この辺をちょっと教えていただきたい、こう思うわけでございます。

 また、先ほど御説明があったように、相当多額の出資累計になってございます。これは出資金でございますので、当然、我が国から見たら資産を持っている形になると思うんであります。これは国家の会計のどの会計あるいはどの勘定にきちんと積まれ、計上されて管理をされているのか、この点についてもちょっと御説明をいただきたいと思います。

井戸政府参考人 国際開発金融機関に対します出資につきましては、合意がなされました時点でいわゆる出資国債を発行いたすわけでございます。ただ、これは当然、譲渡可能とかそういうものではございませんで、相手側に対していわば約束ということで手渡されるものでございまして、その後、各国の、現金が必要になる状況に応じまして、世界銀行本部の方から我が国に対しまして国債の償還という形で現金化の要求が参るわけでございます。これに応じまして償還することで、現金が国債整理特別勘定から先方に払い込まれるという形をとっているわけでございます。

 今委員御指摘のございましたように、国の例えば貸借対照とかバランスシート上どういう形で考えられているかという点でございますが、これにつきましては、国のストックの財政状況を明らかにするものといたしまして、平成十年度の決算分からいわゆる国の貸借対照表というものを作成いたしておりまして、このバランスシートにおける資産ということで、IDAを初めとした国際開発金融機関に対する出資の累計額を出資金という形で計上いたしているわけでございます。

 なお、先ほど申しました出資国債につきましては、これはいわゆる通常の建設国債とか特例公債等の普通国債とは異なりまして、本日御審議いただいている法案に基づきまして拠出が認められるものでございますので、通常のいわゆる予算総則に書いてございます国債の発行限度額とは別の枠ということでございます。

山下委員 ついでに、本当に事務的なことで恐縮ですけれども、そんなことはないと思いますが、仮にIDAから我が国が脱退をした場合に、累積している出資額、まあこれは全部でないにしても一定額は当然返還、返却ということになるんだろう、こう思いますが、仮にそうなったときに、その受け入れ勘定科目というのはどういうところに計上されることになりますでしょうか。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

井戸政府参考人 国際開発金融機関に対する出資金を出資国債で拠出するに際しましては、幾つかの条件があるわけでございますが、仮に脱退を行った場合には、その時点におけるその出資相手先機関の総資産から、これをプロラタで割りまして、その部分が返還をされるということになります。

 申しわけございません、ちょっとどういう費目で受けるかという点については、今手元に資料がございません。

山下委員 別の質問をさせていただきます。

 これもさきの議論で出ていた話でございますが、今の説明ですと、このIDAへの出資比率は二割を超えていますし、また、それ以外の世銀グループに対しても相当額日本は出資をいたしていると思います。先ほどの局長の御答弁だと、トータルで八%ぐらいの出資比率になるというふうな説明だったか、こうお聞きをいたしました。

 そこで、本当によく言われることでございますけれども、国連機関やその他の国際機関における日本人職員の比率ということでございます。日本の、我が国のそうした機関への出資比率やあるいはまた分担金比率に比して、日本人の職員の比率というのは極めて低いという現状があろうかと思いますし、また、このことを私は非常に残念に思っております。日本人スタッフ、日本人職員のそうした国際機関での採用の拡大ということにはさまざまな課題が確かにあろうかと思うわけでございます。ただしかし、そうした課題に果敢にぜひ挑戦をしていくべきでなかろうかなと真剣に私は思っております。

 繰り返しになるかもしれませんが、財務省として、この世銀グループ内での日本人職員の比率向上に向けて、これまでどんなふうな対応をしてこられたのか、そしてまた、これからどういうふうに新たな手を打っていこうというふうに考えて、まあそういう考えがあればこの場でぜひ御披露をしていただきたい、こう思います。

谷垣国務大臣 IDAのような世銀グループだけではなくて、拠出金や分担金について、私のところにはいろいろな国際機関の方々から要請というものがあるわけですけれども、私もその都度、日本人職員の比率を高めてほしい、それから日本人職員を影響力あるポストにつけてほしいというようなことをお願いしているわけなんです。それで、お願いすると反論を受ける場合がございまして、例えば世銀でいうと、先ほど国際局長からも御答弁しましたように、IDAなどでは水とか環境とか教育とか保健医療、そういう専門知識を要求しているわけですけれども、具体的な人が日本におったら推薦していただければ採りますよ、こう言われてしまったり、そういうようなことも確かにございます。

 ただ、今世銀グループで日本人職員が大体九十名のようですが、これは職員全体の約二%ですから、これは日本の出資比率等々から見て、やはり相当低い数字だと言わざるを得ないんだと思うんですね。

 それで、世銀に関して申し上げますと、日本人職員の増加に向けて努力するよう、世銀にもたびたびそういうことを言っておりますし、それから、特に世銀に関心を持つ若い方々にチャンスを与えるために、世銀の中に我が国の信託基金というのがありますけれども、そういうものも利用しながら支援を行っております。そういう働きかけを受けまして、世銀側も、世銀志望の方々との個別面接とか、それから日本の大学で説明会を開催するということを目的とした、リクルートミッションというんでしょうか、そういうのを定期的に派遣したりしております。それから、日本人採用支援専任のポストもつくりまして、日本人職員をこのポストに充てるといったような努力もしてもらっておりますので、我々としてはこういったことをよく見ながら一層働きかけをしたいと思っております。

 結局は、先ほど申しましたように、では、それに必要なノウハウを持った人がいるかということになり、日本の場合、多くの場合は、先ほど国際局長も答弁いたしましたけれども、開発経済一般のゼネラリストを志望する人はかなりあるんですが、個別具体的な、水であるとか環境であるとか医療、必ずしもそういうことを希望する専門家が多くない。それから、開発の現場での経験というものが相当重視されるわけですけれども、日本の終身雇用の雇用構造のもとでは、開発現場へ出向しておられるという方が、そういうチャンスを持った方が必ずしも多くない。それから、先ほど御議論もありました、世銀の文化とか、そういう国際機関の文化に必ずしもなじめないで終わってしまう、早くやめてしまうというようなこともありまして、総合的な取り組みがもっともっと必要なのかなと思っております。

山下委員 大臣、ありがとうございました。

 まさにおっしゃるとおりで、いろいろ解決すべき課題がたくさんある話だな、こう改めて思うわけでございます。でも、本当にそういう国際機関に対する我が国のプレゼンスを高める意味でも、職員の比率を高めるということは非常に国益にもかなう大事な課題だ、こう思うわけでございまして、それはただ願っているだけでは恐らく実現はされないんだ、こう思います。これは、財務省だけでなく外務省も含めて政府全体で、本当に、そういう国際機関への日本人職員の送り込みを体系的、組織的に進めていくことが重要でなかろうかと思いますので、ぜひ御検討賜りたいと思います。

 そこで、もう一つ別の、今度は少しこのIDAの業務内容そのものについて、これまた本当によくわからないので教えていただきたいと思います。

 IDAの主な業務は、いわゆる低開発国向けの長期無利子の開発融資、これを行うということだと聞いております。長期というのも、三十年以上、四十年ぐらいの本当に長期のプロジェクトに融資ということで、恐らく意味がある制度なんだろうと思うわけでありますが、具体的に、少し、概括的な説明で結構なんですが、低開発国といってもさまざまあると思います、どういった国々の、あるいは、そこで行われるどのようなプロジェクトに対して、例えば、これはいろいろあるにしても平均どれぐらいの資金規模で融資が行われるのかなといったことについて、うまく説明できればちょっとお聞きしたい。

 それから、もういろいろ融資をやって、たくさんのファイナンス案件が出ていると思います。そうした融資、ファイナンスに対する評価、つまり、うまく効果が上がったのかそれほどでもないのかという、融資案件に対する評価というのも恐らくある程度やられているんだろうと思うわけでございますが、そうした評価についてどういうことが特徴的に言えるのか言えないのか、御説明をいただきたいと思います。

 そして、あわせて、もう恐らく、相当以前に貸し付けたファイナンス、プロジェクトについては当然償還が始まっているんだと思います。無利子といえども融資ですから償還していただく。この償還については、返済については順調に行われているものなのかどうなのか、あるいは順調さを欠いて大変滞っていて、言うところの不良債権化しているようなものもあるのかないのか、もしあるとしたら、どのぐらいの比率でそういう不良債権というのがIDAにたまっているのか。

 これらについて教えていただきたいと思います。

井戸政府参考人 まず最初に、IDAの現状と申しますか、現在の融資の状況を御説明させていただきますと、IDAの対象国は、原則として、一人当たり国民所得が八百九十五ドル以下の国ということになっておりまして、対象国は八十一カ国ございます。これらの国々におきましては、約十一億人の方が一日一ドル以下で生活をしているという状況にございますし、またアフガニスタン等の、紛争から復興途上にある国もかなりございます。

 また、セクター別に見ますと、いわゆるガバナンス、行政統治能力関係支援が増加いたしております一方で、水、運輸などのインフラ関連支援と、保健、教育等の社会セクター関連支援がバランスがとれた形になってきているというふうに考えております。

 なお、今回の第十四次増資交渉におきましては、貧困削減に果たす経済成長、それからインフラ関連プロジェクトの重要性、こういったものが再認識されるということとともに、あわせまして民間セクターの育成強化がやはり重要ではないか、そのためには投資環境整備が不可欠なので、今後重点を置いていこうというような議論が行われております。

 それから、では実際、世界銀行もしくはIDAによる業務の評価、これまでの貸し付けしましたプロジェクトの評価についてはどういう状況になっているかと申しますと、実は世界銀行の中にいわゆる独立組織として業務評価局というのがございまして、これは世界銀行の理事会直属の独立評価部門でございますが、ここが評価を実施しております。この部局は、予算、人事それから業務内容等の面で世銀事務局から独立いたしておりまして、そういった意味で公平な評価ができる。ここの評価結果は世界銀行の理事会に直接報告をされるという形になっております。

 それから、最後に、お尋ねがございました返済の状況でございますが、先ほど申しましたようにIDAは一九六〇年九月に設立されまして、約四十五年を過ぎております。そういったことから、過去に行った融資の借入国からの返済が最近は増加傾向にございます。

 最近の返済状況を見ますと、例えば二〇〇三世銀年度には、これは二〇〇二年の七月から二〇〇三年の六月までですが、約十三億六千九百万ドル、それから二〇〇四世銀年度には約十三億九千八百万ドルの返済が行われているわけでございます。

 他方で、先ほどから申し上げていますように、IDAは非常に貧しい国に融資を行っておりますので、やはり返済が困難になるケースも多うございまして、一九九九年に、いわゆる先ほどから出ておりますHIPC、重債務貧困国の債務を救済しようということが世界的に合意をされまして、これに伴いまして約百億ドルの債権を放棄するということが合意されております。これは、二〇〇四年六月末時点の融資残高が千百五十七億ドルでございますので、約八・六%に相当いたします。

 このいわゆるHIPC救済イニシアチブ以外に、IDAの財務諸表上いわゆる延滞になっております債権は、これも昨年六月現在で計九カ国、五十億ドルございましたが、その後ハイチの延滞状況が解消されましたので、現在では計八カ国、約四十四・五億ドル程度というふうになっております。

 この延滞になっております国を見ますと、リベリアとかソマリアとかスーダンとか、長期にわたって紛争状況が続いているという国が多いという状況になっております。

山下委員 大変ありがとうございました。

 サミットなんかでも随分、低開発国向け債務の削減ということが、恐らくことしのG8サミットでも大きな話題になるのかなと思います。一方で、これはやはり国民の資産、財産でございますので、その辺の兼ね合いというのが難しい問題なんだろうなと思うわけであります。

 最後に、谷垣大臣にお伺いをしたいと思います。

 今、我が国は、言わずもがな、大変厳しい経済財政事情のもとに置かれておりまして、ここ数年、緊縮型の予算編成ということをやってきたと思います。大臣がよくおっしゃるように、プライマリーバランスの早期回復ということを目標に掲げて本当に粛々と進んでいくならば、恐らくこれから先も、予算編成、国家予算のあり方というのはある程度緊縮型でいかざるを得ないことになるのかなと思っております。

 他方で、私は北海道の選出でございますが、我が国の経済回復が一定程度進んできていると言われても、非常にまだら模様だと思います。北海道は残念ながら極めて厳しい状況がずっと継続している、こういうふうに言って恐らく間違いないと思うわけでございます。この国際協力あるいはまた国際開発金融への我が国の先進国としての応分の負担ということ、これは当然なんでございますけれども、ただ、今申し上げたような国内経済状況を踏まえますと、海外よりも国内にもっと資源を振り向けてほしい、こういう声は本当に実は大変強くあるわけでございまして、現に、私の知る限り、非常に厳しい財政事情のもと、地方公共団体の来年度の予算編成、私の地元を見ている限り、本当に厳しい予算編成が続いております。

 ですから、今申し上げたように、そういう資源、財源の国内、国外の配分といったものについて、より厳しい見直しの声が上がってくる可能性はあると思うわけでございます。

 そこで、大臣に、これはまさに国務大臣としての見解で結構でございますが、今申し上げた、こういう先進国としての国際協力、応分な国際貢献の責務を果たしていくということと、一方での現下の厳しい財政事情のもと、それを配慮した場合に、どの程度というか、どういう考え方でODAなりこういうものの予算配分というものを考えていかれるのか、ぜひ大臣の、個人のお考えで結構でございますので、お聞かせをいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったところは大変悩みの深いところでございまして、今まで日本が相当ODAに力を入れて、世界でもODA大国、一番のODAだと言われていたころには、諸外国は何となくリラクタントだった。ところが、日本がそろそろ財政も苦しくなってきて、減らそうというときになってきたら、今度は諸外国がやろうと言って、国連の常任理事国に入れるのも〇・七%をやっている国だなんということを言い出して、日本としても、日本の現在の財政の状況、それから国際社会の中で日本が占めている役割、これをどう両立させるかというのはなかなか簡単でなくなってきているというふうに私は思っております。

 確かに、ODAというのは一定の役割を果たしておりますし、我々としてもそのことは今後とも重視していかなきゃいけないと思いますが、そういう中で、どういう予算をつけていこうかということになりますと、私どもはやはり、むだなものは許さない徹底した重点化と、やはり効率的なところ、貧困国をどう押し上げていくかというと効率化というだけではいかないところがありますが、重点化と必要なところにやはり振り向けていくということ。

 それから、先ほどもちょっと申しましたけれども、援助しても、なかなかそれを生かしてもらえない、それだけの体制ができていないというところがあるわけですね。そういう、それぞれの能力を育成していくといいますか、やはり私は、そういうところにどうしても重点化をして、必要なところは日本の存在感を出していく、この努力をどこまでできるかと、口で言うのは簡単ですが、実際にやってみるとそう簡単ではないと思いますが、それをぎりぎりやらないと、恐らく、今委員がおっしゃったように、国内的にもなかなか批判にこたえられないんだろうと思います。

 なかなかナローパスでございますけれども、そういったところを目指して、少しでもよいODA予算にしていきたい、こう思っております。

山下委員 ありがとうございました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

井戸政府参考人 先ほどお尋ねがございました、IDAが解散した場合の我が国が受け取る残余財産でございますが、一般会計の歳入の中のその他収入として受けることになっております。

山下委員 ありがとうございました。

 終わります。

金田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時四十六分開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 ただいま議題となっております国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について審査を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

金田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十七分散会


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