衆議院

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第3号 平成18年2月24日(金曜日)

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平成十八年二月二十四日(金曜日)

    午前九時五十一分開議

 出席委員

   委員長 小野 晋也君

   理事 江崎洋一郎君 理事 七条  明君

   理事 宮下 一郎君 理事 山本 明彦君

   理事 渡辺 喜美君 理事 古本伸一郎君

   理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤 達也君

      石原 宏高君    宇野  治君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      大野 功統君    河井 克行君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      坂井  学君    鈴木 馨祐君

      鈴木 俊一君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    西田  猛君

      萩山 教嚴君    広津 素子君

      藤野真紀子君    松本 洋平君

      山内 康一君    山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    小沢 鋭仁君

      鈴木 克昌君    田村 謙治君

      長安  豊君    平岡 秀夫君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      鷲尾英一郎君    谷口 隆義君

      赤嶺 政賢君    佐々木憲昭君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       櫻田 義孝君

   財務副大臣        竹本 直一君

   内閣府大臣政務官     後藤田正純君

   財務大臣政務官      西田  猛君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 広瀬 哲樹君

   政府参考人

   (内閣府計量分析室長)  齋藤  潤君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          中江 公人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   政府参考人

   (国税庁次長)      石井 道遠君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大辻 義弘君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            小川 秀樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     山内 康一君

  木原  稔君     若宮 健嗣君

  萩山 教嚴君     宇野  治君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     萩山 教嚴君

  山内 康一君     鈴木 馨祐君

  若宮 健嗣君     坂井  学君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     山本ともひろ君

  鈴木 馨祐君     石原 宏高君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    木原  稔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第四号)

 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

 所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第一四号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

小野委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局総括審議官中江公人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 昨年の総選挙で初当選以来、この財務金融委員会に所属し、先輩諸氏の御議論を拝聴してまいりました。そしてきょう、おくればせながら私にとりまして初めての質問の機会をちょうだいいたしましたこと、心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。何分ふなれでございますので、皆様方の御協力と御理解をもとに、三十分間精いっぱい努めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、けさほどトリノからうれしいニュースが届きました。女子フィギュアの荒川静香選手が、今大会初のメダル、しかも金メダルを獲得しました。若い日本人選手が海外でも活躍し、我々国会議員としても、国民が夢と希望を持てるよう、この国の将来を真剣に考え、議論し、国民に魅力ある日本の姿を示す必要があることを実感いたしました。

 そこで本日は、先般の谷垣大臣、与謝野大臣の所信表明演説に対する質疑ということで、本委員会にとってもまた我が国全体にとっても今後の最大の課題ともいうべき財政構造改革を中心に、基本的な考え方を質問してまいりたいと思います。

 まず最初に、財政構造改革は、現在、政府・与党一体となって進めております大きな構造改革の一端であると認識しております。その構造改革をさらに進めるに当たり、基本認識をお伺いしたいと思います。

 小泉内閣は、過去数年、改革なくして成長なしということで、従来にはない構造改革を積極的に進めてまいりました。しかし、国民の中には、なぜ構造改革を進めなければならないのか、どのような状況認識をして、どんな痛みを伴う改革にどれだけ耐えていかなければならないのか、不安を抱いている方も多いのではないかと思います。

 改革なくして成長なしとはいいますが、単純に改革を推し進めていけば景気がよくなるといった状況ではないはずではないでしょうか。谷垣大臣は、これまで三年にわたり小泉内閣の中核として構造改革を支えてこられたわけです。谷垣大臣は、この構造改革の必要性と意義をどのようにとらえていられるのか、まずその点からお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 きょうは、井澤委員の満を持した初登板に答弁をさせていただけて大変うれしく思っております。

 それで、今のお尋ねは、小泉改革、その中で構造改革ですね、なぜそういうことをしなきゃならないのか、意義は何なのかというお問いかけでございました。今我が国社会が直面していて、それに対応しなければいけない、解決をしなければならない課題というのは、大きく言えば二つなのではないかと私は思っております。

 一つは、冷戦が終わりまして旧社会主義国が市場経済に参入してきた、さらに加えまして、インドとか、中国、これは社会主義国でもございますが、いわゆるBRICs諸国というようなところが市場経済に大変な成長をひっ提げて参入してきている。そういう中で日本がきちっと存在感を発揮してやっていくためにはどうしたらいいかというのが一つ目の課題でございます。

 それから二つ目の課題は、日本はもう既に人口減少社会、時代に入ったのではないかと考えられるわけでございますけれども、人口が減っていく。そして、特にこれから団塊の世代が年金世代になってまいりますので、労働力が大きく減ったり、いろいろな変化に日本は耐えていかなければいけない、乗り越えていかなければならない。この二つが、今日本が直面する大きな課題ではないかと私は思っております。

 それで、まず最初の、非常に大きな競争条件の変化というものにどう対応していこうかということになりますと、いろいろなことがございますから一言で言うのは難しゅうございますが、あえて一言で言えば、日本を魅力ある国にするということではないかと私は思っております。

 それで、これもいろいろな課題があるわけですが、要は、労働力が減ったりいろいろなことがある中で、人、金、物、情報、日本に行って住んでみたい、日本で仕事を非常にやってみたい、投資するなら日本にしてみたい、こういう国にしなければならないということではないかと思います。

 それからもう一つやはり考えなければならないことは、そういう中で、日本の財政なり社会保障に対する信認というものがなくなれば、魅力的な国もつくれない、それから人口が減っていく中で対応ができない。簡素で効率的な政府をつくっていくということが必要なのではないかなと思っております。

 小泉内閣のもとでは、今まで郵政民営化を初めとするいろいろな行政改革にも取り組んできたわけですが、人口減少ということを考えますと、今後、財政構造をどう改善していくか、改革していくかというのが極めて大きな課題になってくるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。

 こういう認識のもとで、改革なければ成長なしということで各般の改革に取り組んでいかなければならないと考えているところでございます。

井澤委員 日本を魅力ある国にするという御意見、そして世界から日本の信任を確立するという貴重な御意見を伺いました。ありがとうございました。

 次に、現在のようなグローバルな競争市場の中で、日本が世界の中で闘っていく、勝ち抜いていくためには、さらに構造改革を加速させ、やり遂げていかなければならないと思います。国民は、いろいろな場面で、大企業だけでなく中小企業であっても世界的な競争の中で闘っていかなければならないことを日々実感しています。

 しかしながらその一方で、国民は不安も感じているのではないでしょうか。このまま改革が突き進んでいくと、この先どんな社会を迎え、どんな日本になるのであろうか。強い者が勝ち弱い者が負ける社会になるのではないか。しかし、競争の結果とはいえ、勝ち負けという二極分化されていくような社会で本当によいのだろうか。

 最近は特に格差社会という、格差という言葉が話題になっています。改革を進めると格差が拡大するのではないかと国民は思い始めています。谷垣大臣は、さきの財政演説の中で、構造改革の先にある社会は、弱肉強食の社会ではなく、個を確立した個々人が、互いに切磋琢磨、競争しつつも、日本人が持つ家族や地域社会のきずなの中で支え合う、活力と信頼に満ちた社会であると述べられ、きずな社会ということをおっしゃっています。

 そこで、格差に対するお考えとあわせて、きずな社会の意味するところ、構造改革の先にどのような社会をイメージしておられるのか、大臣にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 このごろ日本の中で格差が広がっているんじゃないかという御議論が伺われるようになりました。では、それはどこから来るかということを考えてみまして、いろいろ統計等を見てみますと、格差が広がっているということを実証する材料は必ずしも多くないんじゃないかと思っております。その数字の上にあらわれてきているのも、高齢者世帯が増加しているとか、あるいは家族の規模が小さくなっているというようなことが背景にあったりするんだろうと思っております。

 ただ、そういう御意見が多くなってきたということは、マクロでとらえた現象とミクロの感覚というのが食い違っている、そこはどこから由来するのかというのは注意深く見ていかなければならないのではないかというふうに私は思っております。

 日本は自由な社会でございますから、自由な社会の競争の中である程度格差が出てくるというのは、これは自然なことだと思うんですが、例えば今の現象で見ますと、ニートとかフリーターとか言われている現象は、なかなか職業上キャリアを積んでいくことも経験を積んでいくことも難しいというようなことを固定化しておきますと、格差がある程度生じてくるのはやむを得ないとしても、その格差を固定化するというようなことにつながっていくのではないか。

 だから、私ども、こういう若年者の雇用対策というようなことにはやはり力を入れていかなければならないと思いますし、また先般も閣僚懇の中で議論したんですが、有効求人倍率が一になったといっても非常に低いところもある。そういうところの雇用対策をどうしていくかというようなことは相当詰めてやっていかなければならないんだろうというふうに思っております。

 それを超えて、構造改革の先にある社会が弱肉強食の社会なんじゃないかというような不安感を持っておられる方も、このごろあるんだと思いますが、私は、改革をなし遂げた先が弱肉強食であってはならない、こういうふうに思っております。

 日本人が伝統的に大事にしてきたのは、家族のきずなとか、地域社会のきずなとか、あるいは国と国民の信頼のきずな、こういうものを大事にしてきたわけですから、改革の目指す行く手もそういうものでなければならないと思っております。

 このごろラジオなんかを聞いておりますと、オレンジレンジとかカトゥーンとかいうのもきずなという歌を歌っていたりいたしますので、なるほど、これは広くこういう感覚があるのかなと思っているところでございます。

 それで、きずなというと、何だかえらく古い、封建的な関係を思い浮かべたりする方がいらっしゃるかもしれませんが、私は、そういうことであってはならないんで、やはり新しい時代の変化を取り入れますと、私どもが考えていかなきゃならないのは、例えば、国と国民が対立したものだというような考え方では、やはり国家はうまくいかない。

 やはり、国というのは国民が支えていくものだ、家庭というのもそれぞれの家庭の構成員が支え合うものだ、地域社会もやはりそういうものだという、一種、自分の仕事を通じて、必ずしもそれは公務でなくたっていいんです。御商売をしておられる方なら、少しでもいいものを仕入れて、お客さんに安くていいものが手に入ったと生活の喜びを増していただけるような、そういう、自分たちの仕事を通じて、あるいは日常の活動を通じて少しでも公に奉仕していこうという気持ちを高めていくことが、そういうきずなの社会、そして弱肉強食を乗り越えていく社会ということになるんではないか。

 政治の上でそれに対してどういうことができるかということは、私どももよくよく考えていかなければならないんだろう、こんなふうに思っているところでございます。

井澤委員 我々国民が公に奉仕することできずな社会を本当に築いていくということを改めて認識いたしました。御答弁ありがとうございます。

 さて、議論を財政の問題に移したいと思います。財政構造改革は今や国民の最大の関心事であり、巨額の国の借金は国民の不安のもとにもなっています。他方、やはり税金がふえたり年金が減ったりするのは困る、また景気をよくしても無駄遣いをなくせば増税などしなくてもいいのではないかと感じている国民も多いのではないでしょうか。さらに、谷垣大臣は財政演説の中で、財政構造改革の必要性に関して中福祉・低負担ということをおっしゃっています。

 当委員会では、この後、税法など財政構造改革に深く関係する法案を審議することになると思いますが、そもそも、なぜ財政構造改革をさらに進めなければならないのか。特に年々増大する社会保障費用との関係をどのように整理しておけばよいのか、国民にわかりやすく、基本的な考え方を谷垣大臣にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 我が国の財政は、これはよく言われることでありますけれども、国、地方合わせますと長期債務残高がGDPの一五〇%に及ぶ、これは先進国の中では、財務大臣としてはまことに残念なことでございますが、最も悪い数字でございます。

 それで、ここまでまいりますと、もし世の中の日本の財政を見る目が、ああ、政府は財政規律に対する熱意と申しますか、規律をきちっと維持していこうという気持ちを政府は失ったなと思わせるようなことが仮にあるとすれば、いわゆるリスクプレミアムが上がると申しますか、国債に対する信認が低くなって、国債価格、金利が急騰するというようなことがないとは言えないわけでございます。

 したがって、私どもとしては、きちっと日本政府は財政の規律をつくっていくということに烈々たる闘志を持っているということを示していかなければならないんだろうというふうに思っております。私ども、今財政改革の目標を、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスの回復をすると言っておりますが、簡単というか、易しく言えば、これはその年いただいた税金でその年の政策を打っていこう、そういうことを通じて後の世代にツケを送らないようにしよう、先送りしないようにしようと。当たり前といえば当たり前のことなんですが、それがなかなかできていない。

 それをなぜ二〇一〇年代の初頭にしたかといいますと、ちょうどそのころ団塊の世代がみんな年金世代に入って、労働力は減ってくるけれどもOBがうんとふえてくる、OB、OGがふえてくる。こういう状況になるまでに何とかバランスをとっていこう、こういうことを考えているわけでございます。

 そのために何をしていかなければならないかということになりますと、無駄をうんと省いていくということは当然のことでございます。それは徹底的にやらなければならないと思いますが、他方、高齢化が進んできておりますので、社会保障費用は毎年一兆円ぐらいの自然増がどうしてもある。

 それから、年金についても、国会で随分御議論をいただいてきたわけですが、二年前でしたか、年金改革の一つの結論として、平成十九年度までに税制改正をなし遂げて、そして平成二十一年には基礎年金を税で負担する割合、現在三分の一でありますが、それを二分の一に持っていこうとしているわけです。これをやりますと二・五兆円ぐらいその年にかかるわけですね。そういったものをどう負担していったらいいのかというあたりも十分議論していかなければなりません。

 ですから、そういうことを考えながら、今与謝野大臣のもとで、ことしの半ばまでに歳出歳入一体改革の選択肢と工程表をつくるということになっておりますが、できるだけ具体的な議論をして、幅広く国民の中でも議論をしていただいて、この財政構造改革ということの道筋をつけていかなければならないんだろう、このように考えております。

井澤委員 ぜひ引き続き財政構造改革の道筋をおつくりいただきたいと思います。ありがとうございます。

 さて次に、実は私の地元で財政再建の話をしても、必要性はわかるが、じゃ具体的に消費税が何%上がるのか、年金はどうなるのか、本当に暮らしはよくなるのかというような具体的な歳出歳入のメニューを知りたいという声がよく聞こえてまいります。最近も、経済財政諮問会議がよく開かれ、昨年末から歳出歳入一体改革の議論が進められていると伺っております。

 では、与謝野大臣に、歳出歳入一体改革のスケジュールと中身について具体的にお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 日本の財政の悪化という病気は治すのに何年ぐらいかかるのかという、実は問題があります。私は、頭の整理の中で、一期、二期、三期と分けております。

 これは、第一期は、小泉内閣のもとで行ってまいりましたいろいろな制度改正を含む歳出削減、これは相当な額を実はやりました。恐らくことしで、小泉総理のいろいろな財政上の改革で約九兆円ぐらいの効果があったというふうに私どもは考えておりますし、二〇〇一年とことしを比べますと大体十三兆ぐらい歳出削減をしているということで、削減をしても、削減というものはすぐ人々の頭の中から忘れ去られますけれども、実際は、この間、相当な努力をしてきた。

 しかし、借金のことはとりあえず忘れよう、借金のことは全く頭に入れないで家計をバランスさせよう、これを二〇一一年にやりたいと。要するに、例えばお父さんの収入でお母さんが家計をやっている場合は、その範囲で収入支出がバランスする、しかし、借金はもう全然別な話という、これをバランスさせる。

 これは、プライマリーバランスなんという難しい言葉を使っていますけれども、実際は収入支出をバランスさせるということ、ただし、借金のことはとりあえず忘れる。これがプライマリーバランスを到達するという意味で、この第二期では、やはり、相当な歳出削減をやって収入支出をバランスさせるというところまでいかなきゃいけない、しかし、借金はとりあえず横に置いておいてまずバランスさせる、それがこの第二期の改革です。

 それから、二〇一一年以降、第三期の改革は、借金を減らす。減らすということは本当にできるのか、絶対額で減らすことができるのかというと、直観的には、借金の額を減らすということではなくて、借金の比率をGDPと比べて一定ないしはGDP比でマイナスにしていく、そういうことを目指すというのが第三期だと思っております。

 こういうことを全体をやるときに、それじゃ税の話をどうするんだというと、税の話は恐らく避けて通れない話になります。しかし、家計と一緒で、やはり、使わなくていいものにお金を使うというのをやめる。それから無駄遣いはやめる。持っている財産で処分できるものは全部処分する。隠しているお金は全部出して借金を返す。それからお父さんにも頑張ってもらって収入自体をふやしてもらう。それは経済成長の問題ですけれども、成長率も頑張らなきゃいけない。最後に、削るだけ削ってもう一枚も脱ぐものがないというところまでいったら、今度は税の話をせざるを得ないと私は思っております。

井澤委員 各ステージにおきます御説明をいただきました。どうもありがとうございます。

 さて、時間が迫ってまいりましたので、消費税等についてもお伺いしたいところでもございましたが、ぜひ最後に、少々テーマが異なりますが、谷垣大臣にお伺いしたいことがございます。実は私がおりました産業再生機構について、谷垣大臣の御感想をぜひお伺いしたいと思います。

 御存じのように、二〇〇三年四月に、不良債権処理の加速化とともに産業と金融の一体的再生を目的として、日本経済再生のために官民プロジェクトとして時限で設立された株式会社が産業再生機構です。

 産業再生機構は、ダイエーやカネボウなどに代表される四十一企業グループを支援決定し、事業再生を行ってきました。その結果、二〇〇二年三月期に八・四%あった不良債権比率は、二〇〇五年九月期には二・四%という主要先進国並みの水準まで低下し、我が国の金融は正常化しました。

 実は私も、北から南までの疲弊した地方の中小企業の方々と一緒に現場を歩き続けておりました。事業再生の現場では、規模は違いますが、過剰債務を削減し、経営を黒字化させていくという企業の経営再建があります。片や、他方、国のプライマリーバランスを黒字化させ、財務を立て直していくという国の財政再建があります。これは基本的に同じであり、共通しているのではないかと思います。今後私も、このような実務経験を国政を考えるに当たっても生かしていきたいと思っております。

 そこで、谷垣大臣は産業再生機構設立当時の担当大臣であり、また、財務大臣は主務大臣のお一人でもありますので、やや所管外ということではありますが、ぜひ、産業再生機構が日本経済に果たした貢献について、なぜ成功したのか、この成功要因が財政構造改革に生かせないのかなど、一言御感想を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 井澤さんは、産業再生機構に飛び込まれて、そこで身につけられたいろいろな経験をひっ提げて、今度は政治の舞台に登場してこられた。ぜひ、産業再生機構で経験されたものを政治に生かしていただきたいなと私は思っています。

 井澤さんに言っていただきましたように、私は産業再生機構をつくったときの担当大臣でございまして、あのときの思いは、日本はいろいろな他業に手を出して、そこでは赤字まみれになってどうにも身動きがつかないけれども、本当は本業なんかできらっとしたものを持っているんだよね、きらっとしたものを持っているんだけれども、そこで幾ら稼いでも、例えばゴルフ場経営に手を出して、そこに全部利益も吸い取られてしまって身動きができなくなっているところがたくさんある、そこを何とか、民間の手法もうんと入れて再生できれば、これは不良債権のコインの両面だから、不良債権処理にも役立つし、産業も再生できる、こういう考えでつくったものですね。

 今井澤さんがおっしゃっていただきましたように、支援開始以来、四十一社支援を行って、既に半数以上の企業再生を完了しているわけですね。この支援をやってきた手法を見ますと、人材あるいは民間のリソースというものを最大限生かしてきた。政府が乗り出していってやるというんじゃなしに、そういう民間の手法を最大限利用すると同時に、政府の信用とか中立性、公平性というものが背景にあることによって、民間だけではなかなか解きがたい問題を進めていくこともできたんだろうと思います。

 それから、事業再生というものについてのノウハウが必ずしも日本に今まで十分ではなかったわけですけれども、この機構を通じて事業再生のモデルを提供することによって、事業再生とかファンドのあり方というものにも一つのモデルを提供することができたのではないかというふうに思っております。

 こういう形を通じて、本来、日本経済に貢献できる産業に再び動いてもらうような働きができましたし、不良債権処理にもめどをつけることができた。私は、大きな役割を果たしていただいたと。今後はこの経験を、産業再生機構はやがてなくなりますけれども、日本経済の中に、日本社会の中にどうやってその遺産をきちっと承継させていくかというようなことが大きな課題ではないかなと思っているところでございます。

井澤委員 ありがとうございました。

 元部下として大変うれしい御感想をいただきまして、私もぜひ頑張ってこの経験を生かしてまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

小野委員長 以上で井澤京子君の質問を終わります。

 続きまして、土井真樹君。

土井(真)委員 自由民主党の土井真樹でございます。

 初めて質問させていただきます。小野委員長、谷垣財務大臣、与謝野金融大臣、よろしくお願いします。

 私は、最近非常に不祥事等で問題になっている証券市場、金融市場について御質問をさせていただきたいと思います。

 金融市場、資本市場というものは、資本主義社会における重要な社会資本でございます。ただ、目に見えないということで、非常にわかりにくい、そして取っつきにくい社会資本ではあるんですけれども、経済発展のためには資本市場の整備というのは非常に重要であり、不可欠であるというふうに考えております。特に、信頼される公正な資本市場というものが資本主義社会においては必要不可欠で、非常に重要であるというふうに考えます。このような公正で健全な資本市場があってこそ、経済も健全に発展していくというふうに認識しております。

 そういう中で、特にこの証券市場を指導監督する証券取引等監視委員会についてお伺いしたいと思います。

 証券取引等監視委員会は、発足して約十二年、平成四年に大蔵省から分離してスタートしたわけで、その後、十二年の間に組織の形態が三度、四度といろいろ進化しているわけなんですけれども、当時から監視委員会を独立した組織にすべきだという議論はあったかと思います。当時は金融監督庁とかいう形で、今は金融庁の指導監督下にあるんですけれども、この最近の不祥事から、信頼される証券市場のために証券取引等監視委員会が果たして十分に機能してきたか、社会的責任を十分果たせていたかということが非常に疑問に感じられるわけでございます。

 特に、こういう証券不祥事等は日本だけではなくてアメリカにおいてもたびたびございまして、かつてエンロンの事件があったときにはアメリカも非常に証券市場が揺れまして、その後すぐアメリカは、企業改革法、俗に言うサーベンス・オクスレー法等を施行し、それによるコーポレートガバナンスの強化、透明性を強化することによって、資本市場の信頼を回復したわけなんですけれども、今こういう不祥事があるときというのは、アメリカのエンロンと同じように、日本も今証券不祥事があった、こういうときこそ証券市場の改革を進めるとき、絶好の機会であるというふうに感じます。

 特に、証券取引等監視委員会の機能についてお伺いしたいと思いますが、今現在、今までこの証券市場の公正性、信頼性を確保する観点から、証券取引等監視委員会には必要十分な機能、権限が付与されてきたのかどうかということを、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

与謝野国務大臣 証券取引等監視委員会は、最近数年をとっても、与えられた権限の範囲内で最大限の努力をしてこられたと私は思っております。この組織は、その職務を行うに当たっては、例えば、私からもまた金融庁からも全く独立してその権限を行使するという意味で、独立性は担保されているというふうに考えております。

 そこで、よくアメリカのSECとの比較をされる方がおられます。その比較自体が適当かどうかは別にいたしまして、単純な比較ですと、権限の面では明らかに日本の証券取引等監視委員会の方がいろいろな面で権限は私は上だと思っております。

 ただ、人数においては劣っているということも事実ですし、またアメリカのSECは、一九二九年のウォール街の大暴落の後、混乱があって、その五年後に発足した、大変歴史の長い、伝統のある、確立された組織としてやっておられる。その厚みにはまだまだかなわないなという気がいたします。

 また、監視委員会も、これから国内においてあらゆる分野の有能な人材に集まっていただく、またノウハウも蓄積していく、こういう努力をしていかなければならないと思っておりますが、また、権限等については、こういう事態が落ちついてからもう一度議論をする必要があると思いますけれども、必要な権限は与えられておりますし、またその範囲内で監視委員会は精いっぱいやってくださっていると私は確信をしております。

土井(真)委員 今、現状のお話をお聞きしたんですけれども、今、アメリカのSECとの比較をされてお話しいただいたんですけれども、まず、やはり証券市場の先輩であるアメリカの制度というのが先にきちんとした形でできているのは皆さん御承知のとおりだと思います。

 今、アメリカのSECとの比較についてちょっといろいろお聞きしたいんですけれども、経済規模が例えばアメリカの三分の一ぐらい日本があって、かつ、株式市場における時価総額も三分の一よりちょっと小さいぐらい、アメリカと比較して。その中で、日本の証券取引等監視委員会は、今現在五百五十名ぐらいの人員で監視している。アメリカは片や四千名近い規模でやっている。

 もう明らかに権限も、今、かなりあるとおっしゃったんですけれども、マンパワーというんですか、実際に実務する作業量というか、マンパワーが圧倒的に少ないんではないかというふうに感じるんですけれども、その辺、特にアメリカのSECと比較して、権限の決め方、行政機構のあり方というのももちろん違うんですけれども、もうちょっと具体的に、その機能とか人員とか予算をアメリカのSECに比較して日本の証券取引等監視委員会も有しているか、そこについてお聞きしたいと思うんですけれども。

与謝野国務大臣 後ほど、比較した表は委員のところにお届けすることにいたしまして、例えば、SECは犯罪を告発する権限があるかといえば、ありません。日本の証券監視委員会は告発できる。それから、SECは、それでは令状を持って差し押さえに行けるのかというと、それはできない。日本の監視委員会は令状を持って差し押さえもできますし、いわば質問検査権的なものもあるということで、なかなか強力な組織なわけです。

 先生、五百数十名というふうにおっしゃいましたが、実はこれは、財務省にお手伝いをいただいて、財務局の人間も入れた数でございまして、純粋ないわば監視委員会の人間の数は三百名余でございまして、そういう意味ではアメリカのSECの十分の一。

 それからもう一つは、やはりこれだけ取引の手口が複雑、巧妙になってまいりますと、ただ見張っているというだけではだめで、相当なあらゆる分野の知識が必要です。例えば公認会計士の知識で、経理、帳簿、決算の仕方、こういうものを見張っていなきゃいけませんし、また、法律に詳しい弁護士の方、こういう方も必要ですし、税務にもう極めて詳しい方も必要ですし、検察、警察の方も、取り調べ、調査という面では必要ですし、そういう人材の厚みが実は必要なわけです。ところが、やはり民間から来ていただく場合も、どうも公務員法上五年ぐらいしかそこにとどまることができないというような制限もあって、こういう問題もやはり何らかの方法で克服していかなければならない問題の一つであると私は思っております。

土井(真)委員 ありがとうございます。

 それではもう一点、先ほど最初の質問のときに、独立性が担保されているということをお話しになられたんですけれども、アメリカの場合は完全な独立行政委員会という形で、行政、通常の財務省とかそういうところが分離して独立した組織というか委員会になっているんですけれども、日本の場合、一応、組織法上は金融庁の指導監督下の中に証券取引等監視委員会があるというふうに理解しているんですけれども、そうでは全くないわけでしょうか。今大臣からは、独立されているとおっしゃっていたんですけれども。

与謝野国務大臣 まず、証券取引等監視委員会の委員長、委員の人事は総理大臣が任命をするということになっておりますし、その独立性が保障されていると同時に、身分保障もされているということですから、独立して権限を行使することについて一定の保障がされているということでございます。

 もちろん、監視委員会の予算、人事の面では金融庁はお手伝いいたしますし、また金融庁長官の権限は、委員にはもちろん及びませんけれども、職員には及んでいる、そういう組織形態になっております。

 もう一方で、いろいろな変化がありまして、証券業、銀行業その他の商品取引等々いろいろな分野、こういうものが昔みたいに判然と区別ができないような状況になっている、それからますますそういうものが業界横断的になっていくときに、どういう行政の体制がいいかということはやはり議論しなきゃいけないことであろうと思いますし、いろいろその業界ごと、業態ごとに行政の組織の方を切り刻んでいく方向がいいのか、そうではなくて、横断的に物事を考えた方がいいのかということもやはり議論しなければならないことだと私は思っております。

土井(真)委員 今のお話の続きになりますけれども、特に最近いろいろマスコミとか見ていると、アメリカのような、SECをモデルにした完全な独立した日本版SECをつくったらいいという意見が結構あるんですけれども、それについて大臣の見解は、今現在どのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

与謝野国務大臣 常に物事を振り返って考えていくという意味では、こういう一連の事態がおさまった後、組織のあり方、権限のあり方等々、冷静に議論はするべきだと思いますけれども、何か起こったからすぐ組織いじりということは適切ではないと思っております。

土井(真)委員 それでは、今アメリカのお話を申し上げましたのですけれども、もう一つ、日本より先行して金融を自由化したイギリスの方のお話をさせていただきます。

 イギリスでは、アメリカのように組織を細分化して監督するというのではなく、今おっしゃったように横断的に金融行政機構を一元化して、FSAという形で、銀行、証券、保険を含めた金融行政を一元的に管理しているようですけれども、また、我々の証券取引等監視委員会を含めた金融庁とイギリスのFSAを比較して、我が国の金融庁は十分な、先ほどの権限とか人員とか予算を有しているかどうか、お考えをお聞かせ願えますでしょうか。

与謝野国務大臣 まず、FSAの職員は二千四百人おられます。予算は、邦貨換算、約五百七十億。一方、金融庁の定員は千二百九十四名でございまして、予算額は百八十七億ということで、明らかに人員、予算の面では劣っております。これは充実していかなければならないことは、こういう時代ですから大変難しいんですけれども、やっていかなければならない。

 ただ、業界横断的な物の考え方、あるいは権限で見ると、FSAに遜色はないのではないかというふうに私は思います。

土井(真)委員 今お話を聞きまして、随分予算も人員も少ないということで、これからの充実が望まれるわけなんですけれども、FSAについてもう一点なんですけれども、横断的にこのように行政をする場合、先ほどお話しになりました独立性の問題で、FSAの話になってしまうんですけれども、監視機能の独立性というものは十分担保されるわけなんでしょうか。ちょっとその辺のお考えをお聞かせ願いたいんですけれども。(与謝野国務大臣「監視機能の独立性」と呼ぶ)イギリスの方なんですけれども、FSAの方。

 失礼。日本の証券等監視委員会は、独立性、先ほど担保されているという話だったんですけれども、FSAの人員とか予算とか権能のところの独立性が、FSAはしっかりしているかどうか、ちょっとお聞かせ願えたらと思います。

中江政府参考人 イギリスの場合は、先生御指摘のように、業態横断的な機構というふうになっているものですから、日本のような、市場監視部門につきまして独立した委員会組織は持っていないというふうに承知をしております。

土井(真)委員 ありがとうございます。

 それでは今度は、最初に申し上げた市場の信頼性確保のために、利用者保護という形でいろいろ新しい法律も今目指しているわけなんですけれども、我が国の金融行政は果たして、SEC型かFSA型か、どちらを目指していったらいいかということについて、大臣のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

与謝野国務大臣 定型的にどうとらえるかということは別にしまして、証券行政の中心的な課題は二つしかないと私は思っております。

 それは、真実性の高い情報開示をどう行っていくのかという一連の問題、これにつながる問題がワングループあります。開示ということ、これにつながる問題を解決していく。これは、監査の適正さとか、そういうことも全部その中に入ると思います。情報開示の問題が一つ。

 それから一つは、やはり取引の公正さの確保ということで、これはもう既に証券取引法に書いてあります偽計、風説の流布とか仮装売買とか、一連のものもございますけれども、そのほか、取引の公正さというのは、TOB規則の問題とか、一連の問題があります。

 そういう、情報開示の適切さを確保する、取引の公正さを確保する、それを裏づける課徴金、罰金、刑、こういう一連の問題も解決をしなければならない。

 今般、金融庁が国会にお願いをして御審議をいただく証券取引法等の一部を改正する法律案の中では、こういう情報開示、取引の公正さ、それから課徴金、罰金、刑期、こういう一連の問題を皆様方に御論議をいただくことになっておりますし、何もこれは証券だけではなく、金融取引全般、例えば商品取引等々にも及ぶいろいろな原則を皆様方に御論議をいただかなければならないと思っております。

土井(真)委員 ちょっと時間が早くなりましたけれども、以上で私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小野委員長 以上で土井真樹君の質疑を終えます。

 続きまして、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。

 財務金融委員会の両大臣の所信に対する一般質疑、こういうことでありまして、私も、日ごろから党派を超えて両大臣にもいろいろ御指導をいただいておりますものですから、余り変な質問はしないで、堂々の政策論で、胸をかりるつもりでやらせていただきたいと思いますので、どうぞ両大臣も思いのたけを御議論していただきたいなと冒頭お願いを申し上げます。

 そしてまた、経済政策の基本的なスタンスをお尋ねしたいと思っておりまして、金融政策は欠かせない、こう思うものですから、きょうは日銀から福井総裁にもお越しいただきました。ありがとうございました。福井総裁とは初めてこういった形でお目にかかるわけでありますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 先ほども話が出ておりましたが、さきの総選挙、小泉内閣、小さな政府を掲げて戦いました。この委員のメンバーの方も、恐らくそういった話を選挙の中で御主張されたんだろう、こういうふうに思います。

 谷垣大臣の財政演説を聞かせていただきますと、その財政演説の中では、いわゆるいろいろな国があって、高福祉・高負担の国もあるし、低福祉・低負担の国もある、我が国は中福祉・低負担ともいうべき状態だ、こういう一節がありました。

 小泉内閣の小さな政府は、この文脈でいうとどうなるんでしょうか。低福祉・低負担を求める政策だ、こういうことになるんでしょうか。

谷垣国務大臣 小沢さんのお顔をこの財務金融委員会で拝見できるようになって、大変喜んでおるわけでございます。

 今の、小さな政府というのは、特に社会保障との関係ではどういうことになるのかということですけれども、私は、小泉内閣の小さな政府というのは低福祉・低負担を意味するものでは必ずしもないと思っているんです。それは、国の役割を見直して、国が本来行う必要のないものは民間に持っていく、あるいは中央政府がやる必要のないものは地方政府に持っていくということが小泉内閣の言う小さな政府の要点で、全体として政府の役割を見直しながら、無駄を徹底的に省いていこうということでないかというふうに私は理解をして仕事をしているわけでございますので、必ずしも低福祉・低負担ではない。

 私、財政演説の中で中福祉・低負担ということを申し上げたのは、我々も一生懸命無駄は省いているわけでございますが、現実に公債依存率が十八年度予算でも三七・六%ということになりますと、やはり現世代は負担に比して高い給付を受けているのではないか、この状態をやはり何とか改めていくことが必要ではないかというような思いから、あのような表現を使わせていただいたということでございます。

小沢(鋭)委員 谷垣大臣の答弁、まさにそうなんだろうな、こう思うわけでありますが、しかし、国民の受けとめは果たしてそうか、こういうことなんですね。ですから、ここに小泉政治の欺瞞性があるんです、冒頭から申しわけありませんが。小泉政治の欺瞞性というのはまた後ほどるるやらせていただきたい、こう思っておりますが、いわゆる羊頭狗肉というか、看板と中身が違うんですよ。

 小さな政府という話は、普通、一般的にとれば、経済政策の観点でいえば、低福祉・低負担です。政府の役割を民間と公共のどこに置いていくのか、こういう話でありまして、無駄を省くという話は当たり前のことですよ。無駄を省くということがまさに小さな政府だという話は、これは本当に国民を惑わす議論です。経済政策の議論ではない、私はそういうふうに思います。

 そして、谷垣大臣がおっしゃられたように、国民はどういうふうに受けとめたかというと、ここは別に福祉を低負担にしてもらいたいと思って受けとめたわけでもきっとないんだろうと思うんだけれども、そこは、まさに日本の今の政治のあり方の、官僚天国だとか官僚利権だとか、そういった話を変えてもらいたいねという話で小さな政府という話を受けとめているわけですよ。多分私はそうなんだろう、こう思うんです。だけれども、それだったらば、我々民主党は、行政改革をしっかりやって無駄を省いて効率的な政府をつくっていく、こういう言い方をした、それと同じなんですよ。小さな政府という話でひっかけるんではなくて、行政改革をちゃんとやる。

 例えば、今回の官製談合の話なんてまさにそうじゃないですか。役所のOBが全部その関係業界団体に下っていって、そして国の予算を、この間前原代表が党首討論でもやりましたが、五兆円も使っていく。こういう仕組みを直していく話を国民は期待したんだと思いますよ。

 それを、小さな政府という言い方でいわゆる切りかえていく。それは政策論としたら完全に誤りな政策だと私は思っていて、まさに、この間の選挙の小さな政府論に小泉さんの欺瞞性。結果からして、皆さん方からしたら、小泉さんのある意味ではうまさなのかもしれませんが、これをこの五年間ずっと小泉さんはやり続けたんじゃないですか、この小泉内閣。これからそれを検証させていただきたいと思っています。経済政策の中でどうだったのかというのを検証させていただきたいと思いますが、まず私はそう思います。

 まず、そのことを申し上げておいて、その感想と、谷垣大臣がこれから、ポスト小泉論も出ておりますが、谷垣大臣のまさに目指す話は、この小さな政府論の、財政演説の中で言う話でいうと中福祉・中負担なのか、どこなんでしょうか。それをお答えください。

谷垣国務大臣 今の小沢さんの御認識にも実はちょっと反論したいところもございまして、低福祉・低負担ではないと先ほど申し上げましたけれども、小泉内閣でやってきたこと、単に行政改革という一言でくくれることではなくて、政府が必ずしもやる必要がないものを民間なりあるいは地方なりに移していこうということもやってまいりまして、これはやはり、簡素で効率的という表現もできるかもしれませんが、ひとつ小さな政府という方向に沿ったものではないかというふうに思っているわけです。

 それで、今は、社会保障についてどういうイメージを抱いているのかということをおっしゃいまして、実はこれこそ、これから与謝野大臣のもとでやる歳出歳入一体改革の一番大きなテーマになるのではないかと思っておりますが、私は、社会保障に関しては、例えば医療に関して、これは国民全部、皆保険という制度を日本はつくってきたわけですけれども、日本の中にもいろいろな方がいらっしゃると思いますが、じゃ、日本人の中で、この国民皆保険みたいな医療制度をやめてしまえ、そうして小さな政府にしていけという路線に賛成される方は、余りいないと思うんですね。

 ですから、中福祉・中負担というのもいろいろ定義があいまいでございますけれども、私は、そういうものを全部廃止していくような形での社会保障制度というものを国民が求めているわけではないと思っております。

与謝野国務大臣 選挙の政策は私どもで書きましたので、若干御説明を追加させていただきたいと思っております。

 まず、今、小泉内閣が使っております言葉、簡素で効率のいい政府という言葉を使っていまして、実は、我々が教科書的に知っております小さな政府というのは、委員よく御存じのいわば夜警国家的なことを言っておりまして、大きな政府というのは、いわば揺りかごから墓場まで、そういうふうに我々は習ってきたわけでございます。

 実は、自民党の選挙公約で、国民負担率を通じて国のあり方ということを実は言っておりまして、これは、国民負担率は最大限でも五〇%以内の国をつくろうというのが、いわばあの当時、選挙のときの公約であったというふうに私は思っております。

小沢(鋭)委員 まさに、今与謝野大臣がおっしゃっていただいたようないわゆるオーソドックスな、教科書的な話からすると、ちょっと違う、こういう話なんですが、そういう話を新たに定義されて提示をしていくという話と、それを国民が間違ってしまうという話は、こういう極めて重要な、大きな路線の問題なので、そこはある意味では明快にしていただきたいな、こう思います。

 たまたま谷垣大臣が、民主党のおっしゃるように、簡素で効率的な政府、こうおっしゃいましたが、簡素で効率的な政府というのは、今小泉内閣が使っている言葉でありまして、これは私、ひそかに、やばいと思って言葉をかえたんだろうと思っているんです、実は。この今回の国会、総理の所信表明、それから財政演説、経済演説、一言も小さな政府というのはないんです。あれだけ小さな政府を掲げて選挙を戦って、皆さん方は大勝されたにもかかわらず、この国会の演説に小さな政府は一言もありません。簡素で効率的な政府、まさに民主党が言っている話に切りかえてきているんですね。

 ということを御指摘申し上げながら、それから、もう一つ、谷垣大臣のおっしゃられた将来の社会保障の姿をどう考えるか、こういう大変重要な問題の中で、私どもも国民も、恐らく夜警国家的なそういう話を求めている話ではない、こうは思います。

 しかし、同時に、考えていただきたいのは、今の日本の社会保障政策を、高齢化が進んで二〇二五年の時点で考えても、この水準は、私の調査だと、イギリスよりも低くてドイツの七割なんですよ。決して、いわゆる今のままで、今の制度を延ばしていっても、必ずしもヨーロッパを超えるような大きな社会保障政策になるわけじゃないんですよ。違うところで金を使っているからだめなんですよ。

 だから、日本の国は、私流に言わせてもらえれば、決して大きな政府でも今もない、中程度のという谷垣大臣の受けとめ方は、私もそうかもしれませんが、中程度で大きな借金のある政府なんですよ。政策論でいうときに、必ずしも日本の政府は大きな政府ではない。借金は大きいんですよ。そこの現状認識をはっきりされないと、私は政策が間違う、こういうふうに思います。

 話を少しかえます。景気対策の話にかえたいと思います。

 国民にとって景気の問題は最も切実な問題でありまして、そういった意味では、この国会に対しても大変な期待があるわけであります。

 今回の経済演説で与謝野大臣がおっしゃっておりましたのは、「断固たる構造改革実行という首尾一貫した姿勢を貫いてまいりました。」「こうした」云々かんぬん、こういう話があって、「改革断行が相まって、日本経済は、その潜在力が素直にマクロの数字に反映される平時の経済に復帰しつつあると考えます。」こういう分析ですよね。いわゆる断固たる行政改革の断行が現在の経済の状態をもたらした、こういう分析だ、こう思いますが、全然違うと思っています、私は。

 私は長い間ずっとこの景気の問題を申し上げてきて、この長期停滞のトンネル、これも与謝野大臣の言葉ですが、これの最大の原因は、いわゆる生産的な側面ではない、金融的な側面だ、そういうふうに一貫して主張してきたんです。もちろん、与謝野大臣もその後、デフレからの脱却、こういう言葉を使っているわけでありますけれども、それが、一つのこれからの将来の考えなければいけない要因として、懸念材料として、デフレからの脱却というのをこのまま進めなきゃいけない、こういう話を書いているんですが、全然僕は経済に対する認識が違うと思います。私は、きょう日銀の福井総裁に来ていただいたのは、まさにそこのところなんですね。デフレからの脱却の最大の政策は、何といったって金融政策です。これは間違いないですよね。この金融政策に関する言及が一切ないですよ、この三演説の中に。

 私は、この間の話で、さっき小泉さんの政策の話を申し上げましたが、お手元にちょっと、日経平均とそれから鉱工業生産指数の表が行っていると思います。一言で言うと、鉱工業生産指数は大体ずっと標準的なフラクチュエートしているわけです。小泉内閣が発足をして、一気に日経平均はどん底まで下がるんです、どん底まで下がっていくんです。これが小泉さんの構造改革の成果なんですよ。負の成果ですよ、もちろん。

 小泉さんの構造改革の特徴を私流に言わせていただくと、一言で言えば、さっきから話が出ているような、いわゆる財政の健全化と不良債権処理の加速ですよ、特徴的だったのは。小泉内閣の経済政策の特徴は何かといえば、私流に言わせていただくと、財政の健全化とまさに不良債権処理の加速。それで、日経平均が二〇〇三年の三月から底を打つんですよ、ごらんいただいているとおり。それで、福井さんにきょうは来ていただいたんです。

 その間、いろいろな経済論争がありましたね、小泉内閣の中でも。そうした中で、要はここで政策を変えているんですよ、私から見れば。いわゆる、さっきの小さな政府論じゃありませんが、小泉さんは依然として構造改革という言葉は使っておりますけれども、これは使っておるんですけれども、実質的な政策はこの二〇〇三年の三月から変わるんですよ。これを担ったのは福井さんと武藤さん。私は、そういう意味では高く評価しているんです。百点は残念ながらつけられないけれども、大変な合格点だと思いますよ。特に、五月にりそな銀行の破綻の処理があるんです。今までの小泉内閣は一気に破綻ですよ。ここを守り切ったんですよ。それで、マーケットはあるいは経済界は、経済は底が抜けないと確信したんですよ。そこから金融政策は変わっているんですよ。そういう話が今回の、今回のというかこの一連の流れの中で何にも出てこない。

 そこでお尋ねしますけれども、金融政策というのはだれが所管してやっているんですか。一応、経済演説というので与謝野大臣に。

与謝野国務大臣 金融政策は専ら日銀が担当をしております。ただし、日銀法の四条で、国全体の経済政策との整合性もお考えいただくことになっております。

小沢(鋭)委員 福井総裁にお尋ねをしたいと思うんです。

 日銀というのは株式会社なんですね。しかし、いわゆる日銀券を発行できる公的な機関でもあるんだろうと思うんです。いわゆる日銀というのは一体何なのかと。与謝野大臣が、今金融政策は一義的に日銀がされている、こういう話がありますが、いわゆる政府かどうかという話であれば、政府では多分ないと思います。ただ、公的機関かどうかという話であれば、公的機関だと思います。そのあたりのところは、例えば福井総裁はどういうふうに御自身の、あるいは日銀の立場を認識されているんでしょうか。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 日本銀行法という単独の法律を存在根拠としておりまして、その法律に基づきまして私どもは公的使命を負託されている、そういう意味では公的機関でございます。その公的使命の中身は、物価の安定を通じて日本経済の健全な発展に貢献していくということでございます。

 ただいま与謝野大臣のお話のとおり、日本銀行法の中でも明記されておりますけれども、政府の経済政策全般と整合性がとれるように、私どもはきちんと政策運営をしていかなければならない。経済の健全な発展のためには、これは市場主義経済でございますので民間部門の努力がどうしても大前提でございますが、金融政策は、民間部門の努力を全面的にサポートしながら、いい経済の姿を実現していく。大要はそんなところでございます。

小沢(鋭)委員 そういうことだろう、こういうふうに思いますが、ただ、私が指摘をしておきたいところは、いわゆる経済政策の簡単な話ですが、大きな柱は財政政策と金融政策だ、これは何の教科書にも書いてあるわけですね。その、財政政策と金融政策だ、こういう話の中で、国会を含めて財政の話はしょっちゅう出てくる。しかし、いわゆる金融政策の話はめったに出てこない。私の持っている経済観でいうと、日本の失われた十年か十五年かわかりませんが、長期不況のトンネルは本当にデフレの問題が深刻であった。そういうときにこの金融政策の議論がなかなかなされない。決定的に私はこれはいびつだと思いますよ。

 日銀法を改正するときに、私も当時もう議席を得ていましたからいろいろな議論をしておりましたけれども、これは今も与党に残っている自民党の皆さんからもかなり心配の声が上がってきている。福井さんと武藤さんになったからよかったんです。その前の日銀というのはひどかったんですよ、悪いけれども。いや、だれとは、固有名詞を挙げると失礼だから挙げませんけれどもね。

 私は、九五年に、グリーンスパンさんとたまたまお目にかかる機会があって経済論議をしました。その九五年の、日本が大変な円高に見舞われたときです、そのときからグリーンスパンさんは、日本の経済というのはいわゆる先進国がかつて経験をしたことのない戦後最大のデフレに直面している、経済政策はまずそれに対応しなければいけないんではないかという趣旨のことを言いました。私が幾つか質問をしたときに、グリーンスパンさんは、私はアメリカの通貨当局の責任者で、日銀の皆さんともバーゼルで月一回、そうなんですか、顔を合わせている、まさにその日銀の皆さんの政策にとやかく言うつもりはないと。大変そういう意味では自分の立場をきちっと規定して、それ以上のことは言いませんでしたが。

 そのFRBが、いわゆる日本のデフレの話、日本の経済政策の話を徹底的に分析したのがこのレポートですよ、二〇〇二年に出ているこのレポートですよ。日本の長期不況は回避できる、できたと。その間、日銀の皆さんといろいろな議論をしましたよ、福井さん。そのときに、日銀のだれともこれまた言わないけれども、言い放った言葉は、アメリカも世界的なトレンドであるデフレから絶対に抜け出すことはできない、そう言い放ったんですよ。僕は、いや、それは政策で変えられるはずだと言ったらば、その人は、では将来を楽しみにしましょうと言ったんですよ。

 日銀は、その当時、もうデフレの長期的なトレンドから抜けられないと思っていたんです、ずっと。そういう政策でずっと一貫してやってきたから、日本経済はずっとこうなっていたんですよ。この責任を日銀はどうとるんですか。政府は、ある意味では、内閣が全体としての責任をとるシステムがありますよ。日銀は、責任をとるシステムがないじゃないですか、どうですか。

福井参考人 日本銀行は、少なくとも現在の日本銀行は、新しい日銀法によりまして、いわゆる独立性を付与されている。政策委員会の議決を経て、金融政策に関します限りは首尾一貫した責任を持った政策をとる。ただし、政府と常に緊密な連絡をとりながら、政府の経済政策全般との整合性ということを常に念頭に入れながら、そういう政策運営をする、かつまた、政策委員会のメンバーは、在任期間中の身分保障ということも法律によって与えられております。それぞれ任期は五年でございます。五年間の期間、いわばフルに責任を負って仕事をしていくということでございます。

 金融政策は、いろいろな行動を起こしまして効果が波及するまでにタイムラグがある。したがいまして、金融政策の評価というのは数カ年の期間をもって評価していただく、こういうこともありまして、五年間の期間、やや長い目で見て、日本銀行の政策の運営についての評価をきちんと国民の皆様からいただく、こういう仕組みになっております。

 私どもは、失敗を恐れてばかりはいられないところがございます。政策と申しますのは、先行きの情勢を読みながら行っていくわけでありますので、リスクをとって政策行動をしてまいりますけれども、しかし、失敗を恐れず、めくら撃ちをするということでもない。したがいまして、日々真剣勝負という形で、かつまた合議制で、私どもは責任を全うさせていただく。それぞれ、五年の期間を終了しました後は、それを総括して国民の皆様から御批判をいただく、それ全体まとまったものが日本銀行に対する信任いかんということでございます。

 私どもは、国民の皆様からいただく信任ということを大きく念頭に置きながら、責任ある仕事をさせていただく、そういう精神を貫いているということでございます。

小沢(鋭)委員 福井総裁のお立場での御答弁はそういう話だろうと思いますが、国の仕組みとして、財務金融委員会ですから、経済政策全般をどういうふうにこれからシステムとして考えていくのか。こういったときに、本当に今の、国民の信任を受けるんですと、そういう言い方ですね、一生懸命日々仕事をする中で、それは結局、でも選挙では信任は受けられないんですよ、日銀の理事というのは。五年間、カードを切ったら切りっ放しですよ。そして、それぞれの理事は、ばらばらばらばら途中で選ばれるんですね、たしか、一括ではないですね。

 そういうところで、先ほど来私が申し上げているような話が、正しいかどうかは別にして、重要だということは先生方もおわかりいただいていると思いますが、そういう政策がなされていく、このシステムが果たしていいんだろうか、これでいいんだろうかということなんですが、そこは、与謝野大臣、何か御所見ありますか。

与謝野国務大臣 世界の先進諸国の中央銀行が政治や政府の言いなりになるということは、私は決していいことではないと思っております。やはり、それぞれの中央銀行が、高い見識と深い経験に基づいて金融政策については独自の判断をするということが、その国に対する各国からの評価につながると思っております。

 中央銀行が政治や政府から独立して物事を判断しているということ自体がその国の信任を高めるゆえんであって、そこのところは、国全体の信頼性、信任の高さというものを担保するためには、やはり中央銀行は独立した存在として金融政策を決めるというシステムがあることが、近代的な国家のゆえんであるというふうに思っております。

 ただ、そのことは、それぞれの国の中央銀行が独善に陥るということではなくて、その間やはり政府の経済政策との整合性などもきちんと話し合っていくというプロセスは必要ですけれども、最後に物を決めるときには、独立性に基づいた、物事を決定することが、対外的な評価という点では極めて重要なことだと私は思っております。

小沢(鋭)委員 最後は日銀が日銀の独立性のもとで決めるという話は、私も賛成です。しかし、その過程ですよね、問題は。

 現に、両大臣ともそれぞれの演説の中で、政府、日銀一体となってと書いているわけですね。そうですよね。演説、書いているというかお話しになっているわけです。その、政府、日銀一体となってという仕組みが果たして今のままで大丈夫ですか、こう私はお尋ねをしていて、現行は、政府、日銀一体となってを担保する仕組みとしてはどんな仕組みがあるんですか。

与謝野国務大臣 私は、例えば、財務大臣も私も日銀の政策決定会合には出席することができますし、また意見を申し上げることもできるわけでございます。

 一体となってというのは、気持ちの上で一体となって日本の経済をよくしようというその方向性のことを言っているわけでございまして、いつもべたべたと話し合っているという意味ではありません。

小沢(鋭)委員 日銀の政策決定会合に出られて、採決権をお持ちなんですか。

与謝野国務大臣 通常は、財務大臣も私も国会等で多忙でございますので、これは多分、丸一日か一日半缶詰にされますので、なかなか私どもは時間がございませんが、かわりの者が行って政策決定会合での議論を逐一伺っております。

谷垣国務大臣 与謝野大臣にちょっと補足いたしますと、私は、かつて大蔵政務次官のときに、日銀の政策決定会合、当時は宮沢大蔵大臣でしたが、代理として大体私が出席いたしておりました。

 私どもは、出席して意見は述べることができますけれども、最後、では日銀が政策決定をされる際には、私どもは退席をするという形になっております。

小沢(鋭)委員 谷垣大臣のおっしゃるとおりだと私も承知をしています。

 ですから、その意思決定には加われない、だから日銀の独立性だという議論もあるのかもしれませんけれども、本当にそれでいいんだろうか、こういう疑問をここで投げかけさせておいていただきたい、こういうふうに私は思うんですね。

 そしてまた、日銀は、さっき申し上げたように、選挙とかそういう国民の審判を仰ぐ具体的な場面がありません。ですから、それも含めて、やはりそこは少し、金融政策全般を考えていったときに、何らかのもうちょっとつなぎがないと、この日本の失われた十年がまさにそれの帰結だったんだろう、私はこう思いまして、社会科学は実験はできませんが、そういった意味ではこの歴史がそれをあらわしているんではないかな、こういうふうな思いがあるものですから、そういった問題をここで投げかけさせておいていただきたいと思います。

 時間も大分たちましたので、またちょっと具体的な話に入らせていただきます。

 その日銀の金融政策ですが、大変今注目を浴びています。隣の鈴木委員も、先日ここの委員会の中でも質問がありました。これは、議論があるのは私は構わない、こう思っておりますが、量的緩和の解除のタイミングというのが大変今話題になっています。

 さて、そこで、福井総裁にお尋ねしますが、総裁は、二〇〇三年十月に量的緩和解除の三条件という話を日銀として発表されておりますね。CPIの上昇率が基調的にプラスになる、先行きも再びマイナスに転じるおそれがない、この二つを含めて、総合的に見て良好な経済物価情勢にある、こう挙げていらっしゃるというふうに理解しておりますが、これは当然、現在でもこの基準で量的緩和の解除を考えるんですね。

福井参考人 ただいま委員御指摘の、三つの条件とおっしゃった点でございますが、実は、量的緩和政策というのを当初導入いたしましたのは、二〇〇一年の三月でございます。そのときから、消費者物価指数、これは生鮮食品を除くベースの消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまでこれを続けるというお約束を国民の皆様にいたしました。

 先ほど三つの条件とおっしゃいましたのは、二〇〇三年の秋になりまして、この当初のCPI前年比上昇率が安定的にゼロ%以上というのをさらにブレークダウンして、国民の皆様に一層具体的に理解していただくためにブレークダウンして申し上げたのが今の三つの条件でございます。現在もこの条件は私どもはかたく守り続けております。

 最終的に、表面的な物価指数だけでなくて、その背後にある経済情勢全般をしっかり踏まえて、この三条件が満たされたかどうか、冷静かつ的確に判断したい、こういうふうなことでございます。

小沢(鋭)委員 そうしますと、この間この委員会でも議論になったのは、その三条件に照らし合わせての見方、こういう話になるのかもしれませんが、総裁は最近、二〇〇六年春ごろあたりかなみたいな新聞報道がなされておりますね。それは、さきの三条件がそろそろ整いつつある、こういう御判断でそういう発言になられているんでしょうか。

福井参考人 私ども、今申し上げましたとおり、経済全体の動きが持続的な回復軌道にしっかり乗っていっているかどうかということを一番ベースの判断といたしまして、そのべースから出てくる物価の動き、なかんずく物価指数を詳しく分析しながら判断していこうということでございます。

 景気の方は、政府の現在の景気判断と日本銀行の判断とは全くそごがない、着実に回復をしておりまして、物価を決めるのに非常に重要な需給の状況は、需給が緩和していた状況が非常に改善してまいりました。最近になりまして雇用や賃金もふえ始めまして、ユニット・レーバー・コストが下がり続けるということで物価を押し下げる、そういう力もだんだん減衰してまいりました。

 そういう経済の地合いの上に、物価指数、なかんずく、先ほどから議論の対象になっておりますCPI、除く生鮮、この指標も昨年の十月以降は三カ月連続ゼロ%以上ということになっております。この先出てくる指数は、恐らくは、より鮮明にプラスの指数になっていくであろうということを想定しておりまして、そういう意味では、条件は少しずつ成熟しつつある、こういうふうに判断しております。

小沢(鋭)委員 私も、もちろん量的緩和の解除をどこかでしなきゃいけないというのはもう当たり前のことだと思っていますし、ゼロ金利解除も当たり前のことだと思っています。問題は、要はタイミングだ、こういう話の中で、今総裁がおっしゃられた三条件をベースにしながらそれをしっかり判断していく、そういう話は大変大事なことだと思いますので、どうぞそういうスタンスでお願いをしたい。

 ただ、一番問題になっておりますのは、まあ言うまでもありませんが、アンチデフレの観点で、これまで長引いてきたこのデフレの経済、これは政府も最近そういうことを言っているわけですね、それから本当に脱却できるのかどうか、大くくりで言ったときにですね、そこが最大の判断の話でありまして、与党の政調会長や、私が日ごろはもう本当に余り評価をしない大臣まで、そこは危ないじゃないか、こういう話を言っていて、この場合は私はそこを支持しちゃう悲しさがあるわけでありますが、しかし、本当にそこは、まさにそのデフレ経済から本当に脱却するんだという話のところが最大の重要的な課題だ、そういうふうに思っています。

 ついでにインフレターゲットの話に入ると、これは長くなるので、また別の機会にさせていただきたい、こう思いますが、ちょっとせっかくですから、総裁に来ていただきましたので。

 総裁はかねがね、三%以上の物価上昇率というのはちょっと高いよね、こういうニュアンス。それから、今までずっと言っているのは、ゼロ%以上じゃなければいけない、こうずっと言っている。同時にまた、やはり経済だからのり代というのも必要だよね、こういう話もおっしゃっているやに聞こえてきます。

 のり代〇・五と見るのか、もうちょっとと見るのか、こういう話ですが、そうすると、望ましい、安定的ないわゆる物価上昇率という話は、例えばのり代が〇・五だとすると、〇・五から二・五くらいの間かな、こういうふうに私なんかは受けとめているんですが、いかがですか。

福井参考人 私どもが、金融政策の運営の責任を負わせていただいております立場から何を目指しているか。これは、過去十年以上も、国民の皆様方がバブル崩壊後の苦しい経済状態を立て直すのに大変な努力をしてこられた。これから先は、非常に長い間、仮に地味ではあっても安定的に着実な景気の拡大が続く、当然、物価の安定ということを前提に、息の長い景気回復というものを確実にしていく、これが私どもの最大の願いでございます。

 したがいまして、デフレ克服、大変な課題でございますけれども、それだけですべて全うされない。むしろ、その先です。国民の皆様方にベネフィットがお返しできるような、着実な回復過程というのをより確実に築いていくというところまでねらいに入れております。

 そういう前提でいきますと、この先の経済は、やはり物価の安定を前提として、景気の波をなるべく少なくして安定的な成長を遂げていく。国民の皆様方一人一人の経済生活という観点から見ますと、先行きの物価についてインフレの心配をする、あるいは逆にデフレに戻る心配をする、そういう物価について懸念を持ちながらであれば安定した経済生活はできないし、企業の方も、これから必要な、長期的にイノベーションを施しながらの投資も施していただけないということがございます。

 そういう意味では、国民の皆様方が、インフレでもなくデフレでもないというふうな感覚をしっかり持っていただけるような物価水準とは何か、こういうことを私どもはきちんと探り当てながら金融政策をやっていかなきゃいけない。何か理論的にシミュレーションをしたり、あるいは、外国の例からすぐ孫引きで、何%ぐらいが物価安定だ、そう簡単な問題ではないわけでございます。

 私どもは、過去の日本の物価上昇率の系譜を探ってみますと、先進主要国に比べましても、我が国の過去の物価上昇率はより低いという系譜を持っております。私どもは、国民の皆様方の深層心理に潜む物価安定感というのは比較的低い水準じゃないかととりあえず思っておりまして、今後とも、その国民の皆さんが持っておられる気持ちというものと常に照合しながら、我々は物価安定政策というものの方向性を常に探りながら前進していきたい、こういうことでございます。低目の物価安定をとりあえず国民の皆様は意識しておられるんじゃないかということを、現在では思っているということでございます。

小沢(鋭)委員 なかなか慎重な御発言で、総裁ですから当然のことかと思いますし、しかし、そういった総裁の今のような発言を、世の中は、大体何%という話で言ったんだな、日本は諸外国に比べて若干低目の物価上昇率だと言っていたなとか言いながら推測をするわけでありまして、昔、私の郷里に金丸信先生という大政治家がいて、金丸先生がむにゃむにゃむにゃと言うと、次の日新聞がいろいろ書く、そしてその新聞を見て、金丸先生が、ああ、おれはきのうこういうことを言ったのかと自分で改めて理解をした、こういう話があるんですが、今の総裁の発言を聞いていると、本当にそんなことを思い出させていただきます。

 しかし、ともかく紙幣を発行できるんですから。ですから、これはついでに言っておきますと、よく国の会計と家計を比べますが、もちろんそれはイメージを持ってもらうという意味ではいいと思いますが、私は、国の会計と家計の決定的な違いというのは、家計はマネーを発行できませんから。国はマネーを発行できるんです。これはもう決定的に違うんです。だから、家計と国の会計は決定的に違う。そこをまさにやられているのが日銀です。

 ただ、ついでにこれも言っておきますと、財務省もマネーは発行できるんです、これは。財務大臣、そうですよね。

谷垣国務大臣 マネーを発行できるとは思いませんが、税は課すことができると思っております。

小沢(鋭)委員 ちょっと僕手元に小銭がないんですけれども、小銭は、コインは全部そうですよ。これは日銀ではありませんから。

谷垣国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

小沢(鋭)委員 でありますので、ちょっと話が横道にそれちゃって恐縮ですが、政府紙幣というのは決して変な話ではないんです。日本の経済の中で、政府紙幣の発行、こういう話があると、日銀の人はぎゃっとしていろいろ言いますけれども、今でも財務省はマネーを発行できる。でありますから、そこは日銀もゆめゆめ忘れずに、私が財務大臣になってデフレになったらマネー発行しますから。日銀だけが専権事項では決してないという話もぜひゆめゆめ忘れずにやっていただければありがたいと思います。

 話が大分横道にそれましたが、戻しまして、経済演説で触れられました中小企業政策について御質問をいたします。

 与謝野大臣も、中小企業にはなかなかまだ景気の好況感が行き届いていない、そういう演説でございました。そういう御認識でございました。日銀短観の十二月を見ても、これも如実でありまして、大企業の数字は押しなべてプラスになっておりますが、中小企業というのは依然としてマイナスなんですね。そして、特に、建設、小売、飲食・宿泊、こういった、小売ですね、特に我々が本当に地元で直面しているような業者の人たちというのは、まだみんなマイナスの好況感なんですね。本当に実際それは私は肌身にしみているわけであります。だから小泉政治はだめだ、こうも言っているんですが。

 そういう中で、だめだと言っているだけでは始まらないので、EUに小企業憲章というのがあって、EU経済の中では、小さな企業、日本でいえばおおよそ中小企業に該当すると思いますが、を大事にしようというのがまさにEU経済の運営の基本にあるというふうに私は聞いておるんですが、与謝野大臣、御承知でしょうか。

与謝野国務大臣 二〇〇〇年にEU理事会で採択されましたEU小企業憲章では、小企業は、イノベーション、雇用促進、欧州の社会的及び地域的統合の原動力であり、知識基盤経済における持続的な経済成長を可能とする主体であるとしております。

 本憲章は、EU経済における小企業に関する重要な政策指針を示したものと認識をしておりますが、日本の中小企業政策は、これよりもはるかに前からこの考え方をとっていると私は思っております。

小沢(鋭)委員 最後のところだけが想定外でありましたが。

 というのは、やはり、今の日本経済を考えると、大手はいい、大都市はいい、中小きついというのは、これは政治のうたい文句だけじゃなくて、現実だと思いますね。そういった中で、何かやはり中小企業に対する政策というのをもうちょっと柱をしっかり立ててやった方がいいんじゃないか、こう思いながら勉強していたら、このEUの小企業憲章にぶち当たったんですね。

 小泉内閣というのは、ある意味では私は市場原理主義内閣だ、こう思っています。我々の社会は自由主義経済ですから、市場原理を大事にするというのは当たり前なんですが、市場原理だけで事が済むのであれば、こんなたやすいことはないんですよね。そこに政治が加わって、そのときの国民の思いを、価値観を、経済にも反映させていく、だから政治が大事なんだと私は思っているんですけれども。

 まず、このせりふを言わなきゃいけなかった。小泉政治は強きを助け弱きをくじく。これは郵政特のときからずっと言っているんですが、政治は、強きをくじき弱きを助ける話じゃなきゃいけない。これは競争原理と違うんです。私はそういうふうに思っていて、ついでに与謝野大臣にお尋ねしますが、小泉内閣は歴代自民党政治の中で最も市場原理主義内閣だと私は思いますが、感想ありませんか。

与謝野国務大臣 小泉内閣の経済政策というのは、やはり従来の財政を出動させて有効需要をふやすという、いわゆるケインズ的な経済政策はとらなかったというのが私は最大の特徴であると思っております。

 もちろん、小渕内閣のときにやりました所得税、法人税等の減税は、いわば個人の消費の力というものを付与したという意味ではケインズ的な効果はあったと思いますが、私は、完全な市場原理主義者ではなくて、やはり、弱い立場にある、そういうセクターの方々には政策金融機関等を通じてきちんとした施策をやってまいりましたし、また、一般金融機関に対しては、中小企業に対する融資比率、一定以上のものを確保するということをずっとお願いし続けてきておりますから、決して強きを助け弱きをくじくという政策ではなかったと思います。

 ただ、財政出動を通じて有効需要を高めようということをやめたということは、瞬間的にはいろいろな分野でそれに対する対応に追われた分野もあるということは私は否めないと思っております。

小沢(鋭)委員 もう繰り返しになりますから余りやりませんが、財政出動をしよう、こういう話を一律に言っているんじゃないんですね。ですから、さっきも言ったように、ただ、小渕内閣の話をされましたが、小泉内閣も、財政再建主義は、私は、途中で放棄したとは言わないけれども、変えたと思いますよ。補正は組まないと言っていて、二度ですか、ちゃんと組んだじゃないですか。だからインチキだと僕は言っているんです。この間の金融政策に救われたんです。

 それはともかくとして、時間がないのでまたいずれやらせていただきたいと思いますが、例えば、中小企業政策でも、最も重要な話は金融なんですね。金融なんです。そして、倒産しても、経営者というのはなかなか死なないんですよ。なぜ死ぬかというと、借金が残って、そして倒産しただけじゃなくて、もう未来もだめだと失望して死んでいくんですよ。それがまた連帯保証なんといったら、さらにそうですよね。自分の話じゃなくて、人の借金で未来がなくなる。

 ですから、私は、民主党は、そこのところは、例えば、中小企業に対しては公共的な政策として資金をもっと出していくべきだ、いわゆるメガバンクや何かが融資をしていく姿勢と決定的に違うんだ、その理念的なバックボーンになるのがEUの小企業憲章のようなものだ、そういう決定的な考えの区分けがあっていいのだという話を言って、民主党としては、いわゆる地域金融の円滑化に関する法律案、こういう話を既に何度もずっと出してきているんです。ここが、強きはくじかなくてもいいけれども弱きを助けるという具体案なんです。これを全部自民党が葬り去ってきた。

 どうですか、こういう中小企業政策をしっかりやったらいいんじゃないですか。

与謝野国務大臣 自由民主党の政策というのは、今小沢委員が言われたように、むしろ中小企業に本当に寄った政策をずっととってきたと私は思っております。

 これは、バブルがはじけた以降、また平成十年前後に信用収縮が起こったときも、特別信用保証を二十兆、十兆と積み上げてやりましたし、また、政策金融機関をなくせという一部の議論に対しては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金の重要性というのはやはり中小企業を守り育成する観点から欠かせないものだということで、結局はその機能は残ることになっているわけでして、そういう意味では、政府も与党も中小企業金融には極めて熱心であって、民主党にまさるとも劣らないというふうに自負をしております。

小沢(鋭)委員 時間になりまして大変残念なんですが、大臣のお立場ではそう言わざるを得ないと思いますが、それが具体的に見えるような話にしていただかないといけないし、さっき我々が言ったような地域金融の話はまた違う理念でやろうじゃないかと。きょうちょっとやれなかったんですが、後ほどまた仲間にやってもらえると思いますが、特に今回の法人税改正の役員報酬の損金算入制限規制なんという話はまさに中小企業つぶしですよ。これは、今たまたまいないけれども、与党の筆頭理事なんかはそういう関係の人だから本当によくわかってもらえると思いますが。

 そういう観点で考えたときに、やっていることは、与謝野大臣、違いますからね。大企業の自民党、中小企業の民主党だ、こういう話でやらなきゃいかぬ、こう思っていますから、それを宣言させていただいて、質問を終わらせていただきます。

小野委員長 以上で両大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

小野委員長 次に、内閣提出、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣谷垣禎一君。

    ―――――――――――――

 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案

 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案

 所得税法等の一部を改正する等の法律案

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 ただいま議題となりました平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について御説明申し上げます。

 平成十八年度予算においては、一般歳出の規模について二年連続で前年度の水準以下に抑制するとともに、新規国債発行額についても三十兆円を下回る水準としたところであり、あらゆる分野にわたり歳出を厳しく見直した上で、めり張りのある予算の配分を実現しました。

 しかしながら、我が国の財政収支は引き続き厳しい状況となっており、特例公債の発行等の措置を講ずることが必要であります。

 本法律案は、厳しい財政事情のもと、平成十八年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置等を定めるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、平成十八年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとするなどの特例措置を定めております。

 第二に、平成十八年度において、電源開発促進対策特別会計の電源立地勘定から二百九十七億円、電源利用勘定から二百九十八億円を限り一般会計に繰り入れることができることとするとともに、後日、予算の定めるところにより、それぞれその繰入金に相当する額に達するまでの金額を、一般会計から同特別会計の電源立地勘定または電源利用勘定に繰り入れることとしております。

 第三に、平成十八年度において、財政融資資金特別会計法第十五条の規定による財政融資資金特別会計からの国債整理基金特別会計への繰り入れをするほか、財政融資資金特別会計から十二兆円を限り国債整理基金特別会計に繰り入れることができることとしております。

 第四に、平成十八年度において、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務の執行に要する費用に係る国等の負担を抑制するため、国民年金法、国民年金特別会計法、厚生保険特別会計法及び国家公務員共済組合法の特例を設けることとしております。

 次に、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、最近の特別会計の見直しに伴い、国有林野事業特別会計の治山勘定を国有林野事業勘定と統合するための所要の措置を講ずるものであります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、経理対象事業の見直しとして、治山事業のうち都道府県または都道府県知事が施行するものに係る国の補助金または負担金の交付を、国有林野事業特別会計の経理対象から除くこととしております。

 第二に、国有林野事業勘定と治山勘定の勘定区分を廃止することとしております。

 第三に、勘定統合に伴い、国有林野事業勘定に係る資本、会計基準、資産及び負債等に関する規定について、勘定統合後の新たな会計に係る規定に改める等の経理に係る規定の整備を行うこととしております。

 最後に、所得税法等の一部を改正する等の法律案について御説明申し上げます。

 本法律案は、現下の経済財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するとともに、定率減税を廃止し、あわせて法人関連税制、土地・住宅税制、国際課税、酒税、たばこ税等につき所要の措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、所得税から個人住民税への三兆円規模の本格的な税源移譲に関し、所得税の税率構造を改組するとともに、平成十一年以降、景気対策のための暫定的な軽減措置として継続されてきた定率減税について、経済状況の改善等を踏まえ廃止することとしております。

 第二に、法人関連税制について、民間の研究開発活動を促進する観点から研究開発税制を見直すとともに、産業競争力の向上を図る等の観点から情報基盤強化税制の創設等を行うこととしております。

 第三に、中小企業関係税制について、中小企業の経営基盤の強化を図る観点から、中小企業投資促進税制の対象資産を拡充するとともに、同族会社の留保金課税の見直し等を行うこととしております。

 第四に、土地・住宅税制について、土地取引の活性化を図る観点から土地の売買等に係る登録免許税の特例を創設するとともに、既存住宅の耐震化を促進する等の観点から所得税の耐震改修税額控除制度の創設等を行うこととしております。

 第五に、国際課税について、租税回避行為を防止する等の観点から非永住者の範囲の見直し等を行うこととしております。

 そのほか、酒類の分類の簡素化及び酒類間の税負担格差の縮小、たばこ税の税率の引き上げ、所得税の地震保険料控除の創設、相続税の物納制度等の見直しを行うほか、情報通信機器等に係る投資促進税制の廃止等既存の特別措置の整理合理化を図るとともに、特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度等期限の到来する特別措置の適用期限を延長するなど所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げた次第であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小野委員長 それでは、休憩前に引き続きまして会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長松元崇君、財務省主税局長福田進君、国税庁次長石井道遠君、内閣府大臣官房審議官広瀬哲樹君、内閣府計量分析室長齋藤潤君、法務省大臣官房審議官深山卓也君、経済産業省大臣官房審議官大辻義弘君、中小企業庁事業環境部長小川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。

とかしき委員 自由民主党のとかしきなおみでございます。

 私は、財務金融委員会で今回初めての質問でございますので、初心者らしく素朴な国民の視点で、法案審議に際しまして基本的な内容で質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 今の日本の債務、これは世界一になってしまいまして、そして高齢化の進捗状況も世界一、下がってきたとはいえ物価もまだまだ高い。このような国民にとって高負担社会の状況下、日本が新たな繁栄の道を歩き始めるためには、新しい時代に合った税制をもう一度検討し直すときがそろそろ訪れているように感じます。

 そこで、谷垣財務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、現在日本で生活している人にとって、そして将来の日本人にとりまして、最もよい税制というのはどのようなものとお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 財金委員会、最初の質問で基本的なことを聞くとおっしゃいましたが、基本的なことというのは一番難しいんですね。

 ただ、現在の社会の状況に応じたあるべき税制は何かということになりますと、今、日本社会が直面している状況は何なのかということに関連してまいります。

 それで、それは午前の質疑でも申し上げましたけれども、一つは、日本は人口減少社会に入っているということだろうと思いますし、もう一つは、これは冷戦が終結したということでありますけれども、かつての社会主義国が市場経済にどんどん参入してきている、また、BRICsのような新興市場国もどんどんあらわれてきているという大きな競争条件の変化の中で、日本がきちっとやっていけるかどうか、この二つにこたえていかなきゃいけない。恐らく税制も、あるべき税制ということになると、この課題にこたえられる税制をどうつくっていくかということになると思うんですね。

 それを考えていきます場合に、幾つかやはり、じゃ、どういう、税に特化して考えますと、何が問題かというと、やはり高齢化等々でいろいろな経費がふえてまいりますし、必要な支出もふえてまいりますから、それを安定的に支えられる、不安定な税制じゃ困ります、安定的に支えられる税制というのは何だろうという問題意識がなきゃいけない。

 それからもう一つ、高齢化してまいりましたときに、一部の世代だけに負担が偏るような税制はやはりよくないんだろうと思うんですね。若い方から高齢者まで、幅広く公平に負担を分かち合っていただくにはどうしたらいいかというような視点も必要じゃないかと思います。

 それから、先ほどのような競争条件の変化の中で、個人や企業が持っている力を発揮できないような税制では困りますし、個人や企業が力を発揮していこうというときにそれをゆがめるような税制であってもいけないんじゃないかというふうに思います。就労とか企業の行動をゆがめないことという視点ですね、そういう視点も大事じゃないかというふうに思っておりまして、そういったものを経済状況を踏まえながらどう具体的にしていくかということだろうと思います。

 午前中の審議でも、歳出歳入一体改革、ことしの半ばまでに選択肢を示すということを申し上げておりますが、いろいろな課題を頭に入れながら、所得課税、資産課税、法人課税、それから消費課税も含めまして、そういったものをやはりバランスよく考えていかなければいけないというふうに思っております。

とかしき委員 ありがとうございました。

 安定的そして公平に、そして国民が力を出せる税制、そういう税制をつくっていきたいと私も思います。

 ということで、今大臣にお答えいただきましたけれども、新しい時代に合った税制を構築していくために、経済社会の構造変化を踏まえながら、所得、消費、資産といったさまざまな課税対象にどのような負担を求めていくべきか、きょうはこういった問題意識から質問させていただきます。

 まず最初、道具を持ってまいりまして、こちらのグラフをごらんになっていただきたいということで、これは民間の給与所得の総額なんですけれども、実は一九九〇年から後半になってきますと、ピークを迎えまして、だんだん下がってきているわけです。

 これがなぜ下がってきているのか。もちろん、これは労働人口が減ってきた、高齢化によって減ってきたという理由もあります。そして、雇用体系が、パートですとか、あとそれから派遣社員といった形で二極化してきまして、所得が少ない方も多くなってきたということで、ピークを迎えて、だんだんこういうふうに少なくなってきているわけです。

 これに反しまして、こちらは資産の方なんですけれども、この資産の方は実は一九九〇年以降全く変化なく、減っていない状況にあるわけです。ということは、これは資産がだんだんふえてきているという状況があるわけです。

 そうしますと、この二つのグラフを見ていただきますと、ストックとフローのことになるわけですけれども、今日本は、フローの、所得の方に税金をかけておりますけれども、フローの方に税金をかけていくという考え方もできるのではないかというふうに思うんですけれども……(発言する者あり)ストックですね、失礼いたしました、そのとおりでございます。ストックの方に税金をかけていく選択肢もあるのではないかというふうに考えられますけれども、谷垣財務大臣はどのようにお考えになられますでしょうか。

谷垣国務大臣 今、グラフをお示しになって御意見の開陳がございました。税をかけていく対象は、所得、消費それから資産というふうにあるわけですが、今、所得と資産を比べての御議論ですね。

 それで、それぞれやはり、資産に税をかけていく場合、それから所得に税をかけていく場合、メリット、デメリットがあるんだろうと思うんですね。

 それで、資産にかけていくというのは、今まさにおっしゃったように、経済社会がフローからストックへということでストック化してきている、その流れに合ったという面は確かにあるわけですね。それで、資産格差の是正、それから垂直的公平、ストックが豊かになってきた時代で、そういう役割に資することができるという面がございます。それから、勤労世代に税負担が偏らない、こういう税体系がつくりやすいということがあるわけですね。これはメリットだと思います。

 他方、デメリットというわけではないんですが、難しい点が一つありまして、それは、キャッシュフローがないのに税をいただかなきゃならない。そうすると、これは抵抗感も相当あるんですね、納税者の方にしますと。つまり、実質以上に負担感を生んでしまいかねないというところがございまして、そこをどう考えていくかという問題点があろうかと思います。

 それから、それに対して所得に税をかけていくということになると、どういう点があるかといいますと、今申し上げたことの逆で、その年その年の所得にかけるわけですから、キャッシュフローはあるわけですので、比較的その難しさが、抵抗感が薄いという表現がいいかどうかわかりませんが、そういう面があると思います。そういうことで、歳入確保とか、それから特に所得再分配というようなことでは、やはり基幹的な役割を果たせるということがあるのではないかと思います。

 他方で、負担が重過ぎると勤労意欲とかそういったものに水を差してしまうということがこれはございます。事業意欲に水を差すとか、そういうことがあろうかと思いますので、それぞれのメリット、デメリットをうまく組み合わせていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

とかしき委員 ありがとうございました。

 もう私の質問の先の方まで答えていただいてしまいまして、どうしようかとちょっと戸惑っておりますけれども、先に進めさせていただきます。

 ということで、私も、今大臣お答えいただきましたように、両方うまく組み合わせていく必要があると思います。しかし、今までのように所得に課税をするだけではなくて、むしろ資産の方に課税をシフトしていった方がいいのではないかというふうに考えております。

 というのは、就労人口もふえて、給与所得がウナギ登りの高度成長期であればフローに課税するのは当然の考え方だと思います。増加するフローに伴って税収をふやして、成長に必要な設備投資に回していく。しかし、成長期を終えて現在の日本のような成熟期に入りますと、グラフでも先ほどお示ししましたように、ストック大国になってまいりますので、フローが減ってくるわけです。これは高度成長を終えた経済大国の宿命のようなものだと思います。この現状を見誤って、成熟期に入ってもなおフローに偏った税体系を維持すれば、将来の財源が枯渇していくおそれもあると私は考えております。

 そして、先ほど大臣も先にお答えいただきましたけれども、資産の方に課税をしていくというメリットなんですが、先ほどお話しいただきましたように、勤労意欲をわかせる、もう一つ私はあると思うんですけれども、資産の流動化を促す、これも考えられるのではないかと思います。

 勤労意欲の方をお話しいたしますと、個人にしろ企業にしろ、今は所得を頑張って上げたら祝福されるのではなくて、むしろ稼げば稼ぐほど税額が高くなっていく、お金を稼ぐ意欲が非常に落ちる傾向にあります。そして、企業の方も、事業を日本で立ち上げないで、税金の優遇措置のある海外の方で事業を立ち上げていこうという気持ちに自然になってしまうことも考えられます。

 さらに、もう一つは、先ほどお話ししました資産の流動化の方なんですけれども、これは資産が動かないと経済の活性化を阻害してしまうことになるわけです。これは人間の体で例えますと、血液がうまく循環しない状況になっているとも言えると思います。現状を見ますと、土地は遺産相続でもない限りは塩漬け状態になり、今有効な土地利用ができにくくなっております。そこで、資産の保有の課税を重点化すれば、要らない資産はどんどん市場に出てくるわけですし、若い人たちであっても資産を有効に活用できるチャンスが生まれてくるわけです。

 このように、資産保有への課税をすれば、資産の固定化という弊害をなくし、経済が発展するとともに、人の気持ちも活性化し、さらに財政の健全化、そして税収も上がるということが考えられると思います。もちろんそれは組み合わせ、ウエートの問題だと思いますけれども、こういったことを今後少し御配慮いただくことはできないでしょうか。お答えいただければと思います。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、あるべき税制をつくる上で、消費税がどうかという点が非常に興味の関心になるわけですけれども、消費税だけではなくて、所得税、それから資産課税、法人税、全体のバランスを考えなければなりませんので、今委員のおっしゃったような視点でもう一回資産課税というものをよく見ていくということは必要だろうと思います。

 先ほどメリット、デメリットを申し上げましたけれども、メリットという点でさらに申し上げるならば、先ほど私が申し上げなかった点がもう一つございまして、それはやはり高齢者の扶養が個人あるいは家庭からだんだん社会にある程度ウエートがかかっていく中で、そういう社会が支える費用をどうやって分かち合っていくかという場合に、高齢者の持っている資産というものに着目して税体系をつくるという考え方もあるんだろう。そういう議論もあるんだと思うんですね。そういう観点も私は必要だと思います。

 ただ、どこまで資産課税にウエートを移せるかということになりますと、今それもまさに組み合わせの問題なんですが、所得課税が果たしているような基幹的な役割を資産課税に任せられるかどうか。

 それから、もう一つの問題として、今流動化ということもおっしゃいましたけれども、金融資産等に余り重い課税をしますと海外に逃げていってしまうというようなことも今日では考えておかなきゃいけない。

 それから、もう一つ、この議論をしますときによく考えていかなければいけないことは、資産課税を重くしていった場合に、資産価額というようなものにどういう影響が出てきて、それが経済あるいは企業の行動にどういう影響を与えていくかというようなことも頭に入れておかなければならないことだろうと思います。

 それから、流動化の中で、相続でも起きない限り資産というものがなかなか出てこないということもおっしゃいまして、そういう面も確かにあろうかと思いますが、そういう点を解決するために、贈与税と一緒になって生前に動かすことを可能にしようということで、相続税と贈与税と一体的に考えていけないかというような改正も私どもやったところでございまして、そのあたりも総合的に考えて資産課税のあり方を今後よく議論していきたいと思っております。

とかしき委員 ありがとうございました。

 ということで、いろいろ所得に今までかけているんですけれども、そういう資産の組み合わせもぜひ検討課題に入れていただければと思います。

 それでは、ちょっと次の質問に行かせていただきます。

 一九九五年、阪神大震災の被害額はおよそ十兆円であり、地震保険で支払われた金額はわずか三千億円でした。一方、一九九四年に起こりましたアメリカのノースリッジの地震の被害額はおよそ四兆円であり、地震保険で支払われた金額は一兆六千億円でありました。つまり、阪神大震災の地震保険での支払いは被害額のわずか三%、ノースリッジの地震の場合は四〇%だったわけです。

 今回の法改正素案に上っておりますけれども、地震保険料の控除の創設や耐震改修に関する税制措置を講じておりますけれども、どのような効果を期待しておられますでしょうか。谷垣財務大臣、そして櫻田内閣府副大臣、それぞれお答えいただきたくお願いいたします。

竹本副大臣 先生おっしゃるとおり、地震が起こりますと、日本の場合ですと、公共施設等は政府がしっかりしておりますからすぐ回復するんですけれども、個人の失われた資産というのはなかなか回復できない。ですから、今お話ありましたように、わずか三%というような例は間々あるわけでございまして、そのためはどうしてもあらかじめ地震保険に入っておいていただく必要がある。

 そういう考えのもとに、今回、地震災害に対する備えということで、自助努力を支援するという考え方から所得税の地震保険料控除を創設いたそうとしております。限度額は五万円ですけれども、控除をすればどんどん地震保険に入っていただく、これが一つ。

 もう一つは、あらかじめ住宅の耐震構造化を進めようという、この努力に対しても、やはりそれがもっと促進されるような税制上の備えをつくらなきゃいけないということで、既存住宅を耐震改修した場合に所得税額の特別控除制度を創設することといたしております。

 このようにして、国民の安全、安心の確保ということをいろいろな税制面で人々に促していこう、こういう考え方を持っておるわけであります。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 地震保険の普及促進につきましては、これまでも加入限度の引き上げや建物の構造に応じた各種割引制度の導入といった商品性の改善を行ってきたところでございます。また、民間の保険業界に対しましても、普及促進に向けて積極的な広報活動を実施してきたところでございます。現在、平成十七年三月末におきましても、普及率は一八・五%にとどまっているところでございます。

 こうした中、現在御審議いただいている所得税法等改正法案においては、地震保険料にかかわる新たな所得控除を創設することとされているところでございます。これにより、保険契約者にとっては保険料負担が実質的に軽減されることになることから、普及率の一層の向上が図られるものと期待しているところでございます。

 また、金融庁といたしましては、今後とも、各種の取り組みを通じまして地震保険の普及等に努めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

とかしき委員 ということで、地震保険というのは私たちの生活の基盤になる大切な保険だと思いますので、それが整うことによって国民の皆さんが安心して生活できる、そういった環境をぜひ整えていっていただきたいと思います。

 ということで、これらの法案、審議させていただきましたけれども、国民が負担に見合うサービスの向上が将来約束され、そして明るい未来の見えるわかりやすい税体系の一歩となることを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、どうもありがとうございました。

小野委員長 以上でとかしき君の質疑を終わります。

 続きまして、小川友一君。

小川(友)委員 自由民主党の小川友一でございます。

 時間の制限の中での質問でありますので、ちょっと早口になるかもしれませんけれども、御容赦をいただきたいというふうに思います。

 これまで小泉内閣では、改革なくして成長なしの方針のもとに、金融や規制や税制、歳出などさまざまな分野で構造改革への取り組みを進めてきたと思います。こうした取り組みの結果、我が国経済は、これまでの成長の制約となっていた雇用、設備、債務の三つの過剰が解消し、企業部門の好調さが家計部門に波及をして、民間需要中心の回復軌道をたどってきていると認識しているところであります。

 国の税収を見てみますと、平成十五年において底を打った後、上昇に転じていると思います。また、地方においても、例えば私の選挙区であります立川、昭島、日野市でも、十八年度税収はそれぞれ、前年対比三・二、四・七、三・三%と増収基調にあると聞いております。こうした税収の回復基調も、小泉改革の成果のあらわれであると言っても過言でないと思います。

 平成十八年度予算、税制改正は、こうした小泉改革を引き続き推進するものであって、本日の議題の三法案はそれを具体化するものでありますが、これらの法案に関連して何点か質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、国債の管理についてお伺いをいたします。厳しい財政状況から赤字国債を発行せざるを得ないということは理解をいたします。また、今後、国の毎年の収支を黒字化させるなどの政府の方針も当然のことと考えます。

 しかし、普通国債の残高は、平成十七年度末に五百三十六兆円に上り、十八年度の国債発行額は百六十五兆円にもなるわけであります。この巨額に積み上がったいわば借金の塊が我が国の財政に重くのしかかっているわけであります。中小企業でいえば、自転車操業的に借りかえを繰り返しているような状況ではないでしょうか。いつまでもだれもが国債を買ってくれるとは限りませんし、金利が上がったら利払いだけでも大変なことになると思います。

 そこで、まずお伺いをさせていただきます。そうした事態を招かないように、今後国債をどのように管理していくのか。政府の基本的な方針を、専門用語ではなくて国民にわかりやすいお言葉で御説明をいただければありがたい。まず質問させていただきます。

谷垣国務大臣 今おっしゃいましたように、国債、要するにこれは国の借金でありますから、国債を国民が買ってくださるということは、これは国を信用していただかないと買っていただけないということになります。ですから、国債管理政策の一番の眼目は、国の財政政策運営に対する信認をきちっと確保するということではないかと思っております。

 では、どうしたらその信頼が確保できるかということになりますと、今、日本の財政は、率直に申し上げて厳しい状況でございます。平成十八年度は、一般会計の三七・六%を借金に頼っている状況でございますから、この財政状況を少しでもよくするように政府が努力をしているという姿を見せるということではないかと思います。

 この三年間、毎年毎年の国債発行額を、国債に依存している額ですね、一般会計で依存している額を毎年毎年削減することをやってまいりまして、プライマリーバランスも、プライマリーバランスというと難しゅうございますが、要するに、どれだけその年いただいた税金で賄えるかという度合いも少しずつ改善をしてまいったわけでございますが、二〇一〇年代の初頭に、せめてその年いただける税金でその年の政策を賄うというところまで達成しようということでやっております。

 その上で、国債を買っていただく上には、政府がひとりよがりでこんなところでいいだろうといっても、なかなか買っていただくわけにいきませんから、マーケットの関係者とよく対話を繰り返して、どういうところにニーズがあるのか、こういう国債なら買ってみたいな、こういう国債なら買ってもいいという市場のニーズをよく読み取った商品を出していくということではないかと思っております。

小川(友)委員 今、財務大臣の方から御説明をいただいたわけでありますけれども、市場に国債を安定的に買ってもらうように努力することだというふうに理解をします。

 しかし、今回の法案では、そうした金利変動のリスクに対応するための資金の半分近く、すなわち十二兆円もの額を取り崩して借金返済に充てているということです。借金の重さは理解をするところでありますけれども、目先の苦しさに目を奪われないで、将来のリスクへの備えが薄くなることがないよう注意をしていただきたい、こんなことをお願いさせていただいて、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。

 私は、常日ごろ、財政再建のための安易な増税は行うべきではなく、財政の効率化や経済の活性化を通じて税収増につなげるべきというふうな考えを持って主張してまいりました。

 こうした観点から、今後の税制の抜本的改正においては、政策的な租税措置については、我が国経済を支える中小企業への支援策などに選択と集中をするとともに、制度や執行両面で納税者に不公平感が生じないよう努力することが必要と考えています。十八年度の税制改正については、景気対策型から景気中立型へと税制のあり方を戻したものであり、その中で、中小企業対策や課税の公平の確保や納税環境整備に配慮を行っているものと私は評価をしたいというふうに思います。

 こうした観点から、十八年度の税制改正について少々質問をさせていただきたいと思います。

 私が冒頭申し上げたように、小泉改革の結果、我が国経済は回復を続けてきているものの、他方で、景気回復の程度には地域や産業や企業規模でばらつきが見られることも事実ではないかというふうに思います。今後も構造改革をより一層推進をし、こうした回復の動きを地域や中小企業に広く浸透させていくことが重要であると考えます。

 税制面においても、中小企業に対して引き続きその支援策を講じていく必要がありますけれども、今回の税制改正では、全体として中小企業にどのように配慮がされているのか。特に、同族会社についてどのように改正を行っているのか、財務大臣の答弁をお願いいたします。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、景気、堅調に回復しているというものの、業種によって、あるいは地域によってまだまだむらがあると思いますので、そういったむらを改革を続けていくことによって克服していかなきゃいけないと思っております。

 それで、中小企業はもう、日本の産業の中に占める割合におきましても大変重要でございますから、中小企業に対する税制は今回も相当意を用いたところでございます。

 具体的に申しますと、中小企業の活力を最大限引き出したいという観点から、同族会社の留保金課税制度の見直し、それから交際費の損金算入範囲の見直し、それから中小企業投資促進税制の拡充といったようなことを今度は取り組んだわけでございます。

 このうち、最初に申しました同族会社の留保金課税制度の見直しでは、対象となる同族会社の範囲を縮小するとともに、課税対象となる留保金から控除できる金額を引き上げるということにいたしまして、これによって留保金課税は大幅な減税となっているというふうに考えております。

 それから、十八年度税制改正では、オーナーによる支配の度合いが高い一部の同族会社、つまり実質的な一人会社につきましては、法人経費の適正化といった観点、あるいはオーナー役員への役員給与につきまして、法人段階で給与所得控除相当部分の損金算入を原則として制限する措置を導入することとしているわけですが、これについても、中小零細企業に配慮した適用除外措置を設けております。

 こういう改正によりまして、同族会社を対象とした制度について見ますと、今般の適正化措置を加味したとして、トータルで、平年度化すると五百五十億から六百億程度の減税となっております。

小川(友)委員 ただいま大臣から説明をいただいた中で、中小企業について全体として手厚い配慮が行われているんだということで理解をいたしますが、最後に説明をいただいた実質的な一人会社のオーナーに対する役員給与についても、対象を限定した課税の適正化策ではなくて、財政のつじつま合わせや増税策といったものではないというふうに思いますが、この措置について、中小企業には趣旨を十二分に説明する必要があると思います。

 そこで、中小企業庁にお伺いをさせていただきます。今般の措置の内容について、昨年の税制改正プロセスにおいて中小企業団体とはどのような話し合いをしてきたのか、あわせて、大変恐縮ですけれども、中小企業を所管するお立場としての今般の措置への評価もお答えをいただければありがたいというふうに思います。

小川政府参考人 今委員御指摘の今般の措置でございますけれども、同族会社の留保金課税制度の抜本見直しとあわせて講じられるものでございまして、平成十五年度与党税制改正大綱におきまして、留保金課税の基本的なあり方については、法人の適正な経費のあり方とあわせて検討するとされていたことを踏まえるものと承知をしております。

 当庁、中小企業庁といたしましては、常日ごろから中小企業団体と十分な意見交換を行っているところでございますけれども、今般の措置内容につきましては、昨年末の税制調査会で審議をされ、中小企業庁といたしましても、そうした意見交換の結果も踏まえつつ、中小企業に関係する税制全体の中で検討を行ったところでございます。

 今般の措置でございますけれども、中小零細企業への配慮がなされた上での措置となっておりまして、中小企業庁といたしましては、同族会社の留保金課税制度の抜本的見直しに加えまして、中小企業投資促進税制の拡充、あるいは交際費の損金算入特例の延長、損金算入範囲の見直しなど、中小企業に手厚い配慮がなされた平成十八年度税制改正の一項目として受け入れることが可能な適切化措置である、こういうふうに考えております。

小川(友)委員 ただいま中小企業庁より御説明をいただいたところですけれども、措置の具体内容についてもう少し丁寧な説明が必要ではないかと感じています。

 そこで、再度お伺いをします。今般の措置で役員給与の損金算入を一部制限される、いわゆる業務を主宰する役員とは何なのか、一人の特定の役員のことを指す概念という理解でよろしいのかどうか、主税局長より御答弁をいただきたいというふうに思います。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 業務を主宰する役員とは、税務上の役員のうち、実態として会社の経営に最も中心的にかかわっている役員のことを指し、先生御指摘のように、常に一人の特定の役員のみを指す概念でございます。

小川(友)委員 再度お伺いをしたいと思いますが、今局長がお答えになったように、今般の措置はオーナー役員一人を対象とした措置であって、オーナーの家族の役員や従業員の給与についてまで損金算入を制限するものではないということで理解をするところです。

 先ほど、午前中の質疑の中で小沢委員の方から、大企業の自民党、中小企業の民主党というふうな発言があったように記憶をしておりますが、さらにお伺いをしたいと思います。

 今般の措置では、中小零細企業に配慮した適用除外措置を設けられているということですが、その内容について、誤解のないよう主税局長より説明をお願いいたします。

福田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の措置におきましては、まず、過去三事業年度の所得水準が年八百万円以下の同族会社につきまして、措置の適用を除外することとしております。

 その際の所得水準といたしましては、基本的に、法人の所得または欠損の金額に先ほど御説明いたしました業務を主宰する役員の役員給与の額を加算した額をメルクマールとすることとしておりまして、青色繰越欠損金も基本的に考慮されますこと、また加算される役員給与の額はあくまでオーナー役員一人分のみの役員給与の額でございまして、その親族である役員や従業員の給与は加算されないことに御留意いただきたいと考えております。

 さらに、これに加えまして、このように計算されました過去三事業年度の所得水準が年八百万円を超える法人でございましても、所得水準が三千万円に達するまでは、オーナー役員への役員給与の支給割合が高くない場合、すなわち、オーナー役員への役員給与の支給前の会社の所得の五〇%以上が内部留保等オーナーへの役員給与の支給以外に充てられている場合には、今般の措置の適用除外とすることとしております。

 また、過去三事業年度の実績が存在しない新設法人等でございましても、当期の所得水準等をメルクマールとすることによりまして、同様に適用除外措置の対象とすることとしているところでございます。

小川(友)委員 ただいまお話をお伺いしたとおりということであれば、社会的信用を得るために会社形態をとっている親子三人で経営をしている町工場、そしてまた商店といった小規模の企業は基本的には対象外になると思われますので、実態に合った配慮がされているというふうに受けとめたいと思います。

 そこで、法務省と経済産業省にお尋ねをいたします。

 今般の措置は会社法を一つの契機としていることから、会社法との関係も伺いたいと思います。

 会社法は、最低資本金規制を撤廃するなど起業を促進することとしておりますが、節税策に手をかそうという趣旨でつくられたわけではないことから、制度に適正な歯どめを行うことが当然と考えられます。会社法は昨年の通常国会で長い時間をかけて国会の議論をされて成立したとのことでありますが、こうした審議の経過を踏まえつつ、今般の税制上の措置について、法務省としての見解、そしてまた、会社を起こす、すなわち起業のためにこれまでさまざまな支援策を講じてこられた経済産業省の見解もあわせてお伺いをしたいと思います。

 時間がありませんので、端的にお願いいたします。

深山政府参考人 会社法では、御指摘の趣旨でいわゆる最低資本金規制を廃止いたしました。他方で、会社が設立しやすくなるということで、その制度の悪用事例が増加することも考えられます。しかし、このような制度の悪用事例に対して、一般的に会社の設立を困難にする出資額規制をするのではなくて、その態様に応じて適切な措置が講ぜられるべきものと考えております。

 会社法制におきましても、この悪用に対しては、発起人、取締役等に対する第三者責任や、判例上確立している法人格否認の法理をもって対処しようとしているところでございますし、会社法案の審議の結果つけられた附帯決議におきましても、今後も「必要があれば、対応措置を検討すること。」とされております。

 お尋ねの税制上の措置に関しましては、法務省としてはコメントする立場にはございませんけれども、今般の措置は、株式会社の設立が容易になることに伴って生ずる問題に対して、税法上の観点から講ぜられる適切な措置であると考えております。

大辻政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしましては、新規事業者への資金供給の円滑化や経営支援のための各種環境の整備など、さまざまな起業支援策を講じてきておるところでございます。新会社法における資本金制限の撤廃も、起業の際のハードルを下げることによって新事業の創出を後押しするものと考えております。

 今般の税制措置は、実質的に個人で事業を行っている者が、実態がほとんど変わらないにもかかわらず、法人形態をとることによって租税負担を軽減させることを防止し、課税の公平性を保つ観点から講じられたものと理解しております。

 同族関係者以外の者が発行株式の一〇%以上を保有する場合や、所得が八百万円以下の法人である場合等を適用除外とするなど、起業の観点からも配慮がなされており、経済産業省といたしましては、基本的に起業に支障を来さないものと考えております。

小川(友)委員 私は、これまで地方政治に長年携わってまいりました。平成十八年度の予算、税制改正において真の地方分権を推進し、地方自治の確立を図る観点のために三位一体の改革が実現するよう求めながら、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小野委員長 それでは、続きまして、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。きょうは税法を中心に質問させていただきます。

 まず、十八年度の税制改正では定率減税の全廃が予定をされておりますけれども、与党の税制改正大綱では、「なお、今後の景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応する。」とのいわゆる弾力条項を設けているわけでございますが、大臣のお受けとめ方をまず伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今回の税法で定率減税の廃止をお願いしているわけですが、これは、定率減税を入れましたとき、小渕内閣でございますが、日本経済の底が割れるような状況で、それを何とか税の観点からも押しとどめたいということであったと思います。その後、当時に比べて大きく経済状況がよくなってきておりますので、それにかんがみて廃止をしたということでございます。

 それで、今委員が指摘されましたように、与党の税制改正大綱には、いわゆる弾力条項があるわけでございますが、この受けとめ方は、景気をよく注視して、もし悪くなったときすぐ定率減税廃止を見直せということじゃなくて、よく注視しながら、そのときそのとき経済状況に応じて弾力的に対応をとりなさい、こういう趣旨ではないかと考えているところでございます。

 現在、構造改革等の進展の結果、いわゆる三つの過剰と言われたものもほぼ解決をしてきておりまして、企業業績の好調さが家計に回る流れも出てきておりますので、私は、十分この定率減税廃止を日本経済は吸収していけるものというふうに見ております。

石井(啓)委員 大臣おっしゃいますとおり、今の経済状況、また今後の見通しからすれば、恐らく私もこの定率減税の廃止に耐え得るような状況であろうというふうに予測をしておりますが、先のことでございますので、景気、経済、どういうことがあるかわかりませんので、万が一のことがあればその状況に応じて適切な手を打つ、こういう趣旨かと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、消費税の問題でございますけれども、消費税は、簡易課税を選択できる事業者がいるわけでありますが、この簡易課税を選択した場合、当初予定していなかった設備投資を行いますと、その設備投資に伴う仕入れ税額控除が受けられなくなるという課題がございます。

 私ども公明党は、したがいまして、年度途中から消費税の簡易課税の変更ができるようにということで、かねてから要望してきたわけでございますけれども、今般の十八年度改正では、災害を受けた場合に消費税の簡易課税の選択を変更できる、こういうふうにされたわけでございます。

 従来、簡易課税か本則課税かというのは、それは税が得するか損するかという議論ではなくて、簡易課税というのはあくまでも納税の事務の簡素化だということで、なかなかこれができなかったわけですが、今回、災害に限っての話でありますけれども、こういった従来からの方針を変更したということは私は高く評価をいたしたいと思います。

 今回改正に至った理由を確認させていただきたいと思いますし、またさらなる改正、さらなるといいますのは、災害のみならず、当初想定していなかったようなそういう設備投資を行った場合にも今後簡易課税の変更ができるような、そういう改正の可能性についてもお伺いをいたしたいと思います。

竹本副大臣 今石井先生お話しのように、中小企業、特に災害を受けたようなケースの場合に、税の処理の仕方についていろいろな不便があり、また現実に対応できないケースが非常にたくさんあるということの中で、御党におきましても久しく主張しておられたところでございます。

 今回の消費税の簡易課税制度は、中小企業事業者の事務負担に配慮するという観点から、売り上げに関する記帳のみで簡易に申告することを認めている制度なんでございますが、制度を選択するか否かにより売り上げや仕入れに関する記帳義務の内容が異なること、また事後的に選択する場合には納税額が、今おっしゃったように、有利か不利かということを考慮した上で選択をすることが可能になる、こんな問題があったわけでございますが、課税期間の開始前に制度を選択するか否かを決めておくことが制度上必要、このようにされておるわけであります。

 しかしながら、災害等により被害を受けた場合にあっては、課税期間開始前に想定されなかった事務処理能力の低下や、緊急の設備投資の必要性が生じる場合がございます。こういった場合に配慮いたしまして、例外的な取り扱いとして、与党税調における御議論も踏まえまして、災害等のやむを得ない理由により被害を受けたことによって簡易課税制度の選択の変更を行う必要が生じた場合には、所轄税務署長の承認により、その変更を行うことができることとする特例を設けたものでございます。

 なお、消費税の簡易課税制度につきましては、課税の公平性や制度の透明性、それから中小企業者の事務負担などの観点からいろいろ議論がございますけれども、いずれにしろ、今後の消費税制のあり方について、税制の抜本的改革の中で、国民的な議論を踏まえながらしっかりと検討してまいりたい、このように考えております。

石井(啓)委員 今回、災害に限られたとはいえ、そういう特例で配慮をしていただけるようになったことは私は大変結構なことだと思いますので、先ほど申し上げましたように、災害と同様に、当初予定しなかったようなことをやむを得ず得た場合、それは限定されると思いますけれども、そういった場合にも今後可能になるよう、ぜひ検討をお願いいたしたいと思います。

 さらに、今回の税制では、私どもがやはりかねてから強く要望してまいりました安心、安全への配慮として、耐震改修促進税制あるいは地震保険料控除が創設されたことはやはり高く評価いたしたいと思います。

 それから、先ほど、前の委員の質問の中で、実質一人法人の役員給与の取り扱いについて大分御議論がございましたけれども、確かに東京税理士会あるいは関東信越税理士会からは厳しい指摘がございますけれども、その一方で、先ほど大臣が御答弁されたように、中小企業投資促進税制の拡充ですとかあるいは同族会社の留保金課税の抜本的見直しとか、相当十八年度税制改正では中小企業を支援する税制改正の中身になっているということも私は評価をいたしたいと思います。これについては答弁は結構でございます。

 続いて、たばこ税に移りたいと思いますけれども、たばこ税の引き上げについて、児童手当の財源だということで報道されているところがありますけれども、ただ、私ども公明党の税制調査会で、財務大臣、谷垣大臣にお越しいただきまして、このたばこ税の引き上げの要請を受けましたけれども、これは児童手当の財源ということではなくて、やはり現下の厳しい財政状況を踏まえて、たばこ税の引き上げをお願いしたい、こういう要請でございました。

 私も、今回の十八年度予算の国債発行、新規発行を三十兆円以内に抑えるという大きな政策目標のために、財政物資であるたばこ税に貢献をお願いしたということかと思いますが、ここで公式な御見解を、たばこ税引き上げの理由についての御見解を確認いたしたいと思います。

谷垣国務大臣 今石井委員がおっしゃいましたように、今回、たばこ税の増税をお願いしているわけでありますけれども、それは、今の非常に厳しい財政事情のもとで国債発行を極力圧縮しよう、こういう観点からお願いをしたものでございます。したがいまして、いわゆる特定財源のように、この増収を何か特定の少子化対策に充てるというような性格のものではないということを申し上げたいと存じます。

石井(啓)委員 もう一つ、たばこ税について申し上げたいことがありまして、最終的には、今回のたばこ税の引き上げは財政物資という性格からお願いをしているわけでありますけれども、そもそも私どもの税制調査会でこのたばこ税の議論を始めたときには、健康対策、あるいは医療費の削減という観点からたばこ税の引き上げをやったらどうかという議論で実は始まったんです。

 これは、私どもだけではなく、実は与党の税調でもそういうことがきっかけに議論が始まったのでありますけれども、ただ、今申し上げましたように、たばこというのは、そもそも今の基本的な位置づけ、性格というのは財政物資ということがございますので、そういったものをきちんと議論しないでおいてそういった議論はできないということから、今回の与党の税制改正大綱では、今後の検討課題というふうに位置づけをされたわけであります。

 これは、私個人的には、やはり国民の健康増進という観点から見て、あるいは他の先進国との単価の比較を見ますと、一箱当たり単価からいきますと、例えばイギリスとかアメリカでは我が国の三倍から四倍近い値段になっているというようなことも考えますと、今後の課題ではございますけれども、たばこの基本的な性格を見直した上で、たばこ税の大幅引き上げということも考えてはどうかというふうに個人的には思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 たばこ税や酒税は、今石井委員がおっしゃいましたように、伝統的には財政物資として考えられてきました。財政物資というのは何かというと、要するに、特殊な嗜好品だから、できるだけ税を払っていただいて、その面で貢献をしていただこうという考え方でございますから、言ってみれば、税率を上げたときに、たばこを吸う人が減っちゃった、あるいはお酒を飲む人が減っちゃったので税収が減ってきたということでは、むいて言うと困るという考え方が今まで背景にあったと思うんですね。

 他方、今石井先生のおっしゃった考え方というのは、たばこを吸うと、やはりどうも、生活習慣病というのか何かわかりませんが、やはり健康に悪いじゃないか、それで医療費もかかるじゃないか、そういうことなら、禁止的と言ってはいけないかもしれませんが、もっと高い税を課して、できるだけたばこを吸わないようにしようということでございますから、できるだけ財政に貢献していただこうという考え方とすると、百八十度違うとは申しませんが、相当大きく違った考え方になっているわけでございます。

 したがいまして、今石井先生がおっしゃいましたように、今年度の与党の税制改正大綱の中でも、やはりたばこの健康被害というものをどういうふうに抑えていくかということをいろいろ議論して、今の問題にももう少しメスを入れられないかという観点から書いていただいていると存じます。そういういろいろな施策の検討の結果を踏まえまして、たばこ税というものはどうあるべきかという議論をしていかなければならないと思っております。

石井(啓)委員 今大臣がおっしゃったとおりですね。

 生活習慣病でお医者さんがアドバイスするのは、まずたばこをやめるか酒をやめるかということの、まずどっちかやめなさいという選択を迫られるわけでありまして、また、私の身近な周りの方も、いや、四百円だったらやめられるとか、五百円だったらやめられるとか、そういう方もいますので、やめさせてあげるためにも、何かそういうことを考えて、あえて吸いたいという方は、その上で、自分の身を犠牲にしていただいて税金を払っていただくということで、お酒は、私は酒は言っていませんけれども、ということで今後議論をしていきたいなというふうに思います。

 それから、今度、税の抜本的な改革の議論でございますけれども、かねてより与党の税制改正大綱では、十九年度をめどに、消費税を含む税の抜本的な改革を予定しているわけでございますけれども、この抜本的改革の議論というのは、私は、消費税の議論というのは避けられることはできませんけれども、ただ、その消費税だけでなく、他の主要税目ですね、特に所得税、また資産課税である相続税ですとか、あるいは金融所得課税、こういったものの議論もきちんと行うべきだ、包括的な議論を行うべきだというふうに考えますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 私もその点は石井先生と全く同意見でございまして、とかく消費税だけに焦点が当たるわけでございますけれども、社会の変化に対応して、どういう税をつくったらいいかというのは総合的に考えなければいけないというふうに思っております。

 それで、その消費税以外のいろいろな税の中で、例えば所得税については、家族のあり方とかあるいは働き方の多様化といったような社会の変化を踏まえて、いろいろな控除をどうしていくか、それから所得再分配機能というのをどうするかというような論点について、消費税とも関連させながら議論していく必要があると思います。

 それから、相続税につきましては、累次の減税でかなり負担は緩和されてきているわけですが、経済のストック化を踏まえた、先ほどとかしき委員の御質問もありましたけれども、ストック化を踏まえた上で、資産の再分配機能というようなものをどう考えるか。それから、社会全体で老後扶養の負担を支えるようになってきている、これについてどう対応していくかといったような観点を踏まえて議論する必要があろうかと思っております。

 それから、金融所得課税につきましては、少子高齢化が進んでまいりまして、これからだんだん貯蓄率が低下していくという中で、金融資産を効率的に活用していく必要があるじゃないか、あるいは再分配機能をどうしていくんだということも留意しながら、金融所得課税の一体化についての検討を進めていく必要があろうかと思っておりまして、このように、各般の税について、社会変化を踏まえながら十分議論を深めていきたいと考えております。

石井(啓)委員 やはり、消費税の議論をし出しますと、逆進性というのが常に話題になるわけでございまして、その逆進性の対策というのは歳出でやればいいという意見もあります。確かにそういう面もあると思いますけれども、税体系の中で、例えば所得税とか相続税で、所得の高い方にも、あるいは資産のある方にもより御協力をいただくというような観点も私は重要ではないかというふうに思っております。

 最後でございますけれども、ちょっと税の議論から離れまして、最後、貸金業規制法に関して質問をさせていただきたいと思います。

 今、金融庁の方では貸金業制度に関する懇談会というのを開かれて、貸金業制度の議論をされているというふうに承知しております。最近の報道では、いわゆるグレーゾーン金利ですね、出資法の金利と利息制限法の金利との差のいわゆるグレーゾーン金利を廃止する方針である、あるいはその融資額の総量規制を導入する方針である、これを金融庁が方針として固めたという報道がございますけれども、この懇談会の議論の方向、また取りまとめの時期について伺いたいと思います。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 金融庁としては、報道にあるようないわゆるグレーゾーン金利を撤廃する等との方針を固めたとの事実はございません。

 金融庁では、昨年三月から貸金業制度に関する懇談会を開催し、貸金業制度等をめぐる幅広い論点について勉強しているところでございます。

 同懇談会では、過剰貸し付け防止のための規制のあり方、いわゆるグレーゾーン金利を含む金利規制のあり方、契約、取り立てに係る行為規制のあり方、クレジットカウンセリング、消費者の金銭教育のあり方等、貸金業をめぐる幅広い論点が検討課題とされておりますが、金融庁としても、懇談会の議論の中で、貸金業制度をめぐる諸問題に対する議論を深めてまいりたいと考えておるところでございます。

 ただ、貸金業制度等をめぐる諸問題に関しては、論点が多岐にわたり、また多様な意見があることから、現時点で、貸金業制度等に関する懇談会における議論の方向や取りまとめの時期について、確たることを申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。

 以上であります。

石井(啓)委員 この貸金業規制法に関しましては、これまで議員立法で累次の改正が行われておりまして、私も法案提出者になったことがございますけれども、今副大臣の方でおっしゃっていただいたような論点は貸金業に関する抜本的な改革の論点でございますので、この議論の取りまとめ、私も非常に関心を持っておりますので、ぜひ精力的な御議論をお願いいたしたいと思います。

 以上をもちまして、私の質問を終わります。

小野委員長 それでは、引き続きまして、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 きょうは、当財務金融委員会では初めて質問に立たせていただくことになります。駆け出しの一年生でございますし、またふなれなために不行き届きの質問もあろうかと思いますが、どうかお許しをいただきたく存じます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 二月十六日、先週の木曜日になりますが、衆議院の本会議におきまして、きょう審議の三法案の一つでございます平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案につきまして、代表質問をさせていただきました。財務大臣からは大変真摯な御答弁をいただきまして、心から感謝を申し上げております。その際にもお尋ねをさせていただきました特別会計の改革につきまして、質問をさせていただきます。

 この特別会計への取り組みにつきまして、財務大臣からは、ゼロベースで見直しを行って、中略、特別会計の数を現行の二分の一から三分の一程度に削減をする、今後五年間において合計二十兆円の財政健全化への貢献を目指す、こういう答弁をいただきました。大変結構なことだと思っています。

 そして、このゼロベースでの見直しを行う、これは私たちもこの言葉を使っています。確認の意味で、まさにこの谷垣財務大臣の言われるゼロベースでの見直し、これは具体的に、なるべく具体的にどういう見直しでしょうか。これをまず確認させていただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 三谷委員ともこの間本会議でも議論させていただきましたけれども、またこれからこの委員会でよろしくお願いをいたします。

 それで、ゼロベースでの特会見直しですが、これは、今三十一ある特会を、それぞれの設置当時の趣旨を把握した上で、今の社会経済情勢のもとでも依然有効かということを考えなきゃならないという意味でございますが、具体的に言いますと、まず、そもそもそれを国の特別会計でやる必要があるのかどうか、特別会計というか、国として行う必要があるのかどうかということを吟味しようと。なければ、それは独法化であるか民営化であるかというようなことになると思います。

 では、あるんだということになれば、そもそも特別会計でやる必要があるのかどうか。なきゃ、一般会計に一緒にするということでございます。それを吟味しようと。

 それから三番目に、特別会計として区分経理をする必要があるとしても、現在の区分の仕方が妥当なのかどうか。妥当でないということになれば、ほかの特会と一緒にするとか、そういうようなことを考えなきゃいけないわけですが、そういうようなことをふるいにかけて、先ほど申し上げたように、二分の一ないし三分の一まで圧縮をしていこう、それで二十兆ほどの財政再建に対する貢献をそこから見つけ出していこう、こういうことでございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 まさに言葉どおり、ゼロに戻って本当に必要な予算だけを認めていく、こういうことだろうと思います。

 また、中身をどうするか、このことへの踏み込みがもう少し足りない、触れられていないようにも思いますけれども、特別会計が本当に必要なのか、区分経理が必要なのかどうか。あるいは廃止、統合の話、これももちろん大事でしょう。また、特別会計そのものをなくしていく。あるいは、一般財源化をするだけで、これまでのようなお手盛りではない、査定がきちんと働くわけですから、きちんと精査が働くことで、随分といいかげんな予算そのものも改まっていく、こういうことがまさにゼロベースでの見直し、こういう話だと思っています。

 ぜひこの姿勢で、これからもまた、さらなる中身、内容の徹底的な精査、切り込みを行ってもらいたいというふうに思っています。また、私たちも、まだまだ足りない、現状では切り込みがまだまだ不十分だということでしりをたたかせていただきたいと思っています。その意味では、徹底的にまずはやってもらいたい、このように思います。

 そして、前回の二月二十一日、この財務金融委員会の質疑の場で、これは大臣所信に対しての質疑でございましたが、我が党の鈴木克昌委員が、電源開発促進対策特別会計からの五百九十五億円、一般会計への繰り入れ、これは実は後日返済の話であった、実は借金だったということを指摘いたしました。

 これはよく考えてみますと、確かに活用という言葉が使われています。よく考えたものだと思うのですけれども、確かに活用には違いがありません。大臣がその際にも答弁をされたとおり、金利負担を軽減するという意味では、財政健全化に貢献していなくはないと思います。なかなかえらい言葉の使いようだなということを改めて感心いたしました。

 そして、このお金をなぜ返済しなければならないか。それは、まさに先日の谷垣財務大臣の御答弁のとおりでございます。そして、鈴木委員の指摘のとおり、これは確かに後日返済をしなければならない、この法律案にもそのように書かれております。

 そして、一つ指摘をさせていただきたいのは、財務省主計局「特別会計の見直しについて」、よく説明資料で使われるこの資料でございますけれども、平成十八年度における特別会計の積立金、剰余金の、確かに「活用」と書かれています。大変うまい言葉であります。電源特別会計五百九十五億円、歳出を厳しく見直し、その余りは一般会計に繰り入れとしか書かれておりません。返さなきゃいけないお金だということを知らない議員も実は多いわけでございます。

 私も、これを詐欺みたいな話だとまでは申し上げません。また、あの際、鈴木委員が指摘をしましたように、本当は国債発行三十兆円枠クリアしていないじゃないかと、そのことをまたここでもう一度言い立てるつもりもありません。

 確かに、そのほかの剰余金、積立金の活用、あるいは例えば財政融資資金特別会計、今までなかったことではありますけれども一般会計や国債整理基金への繰り入れ、こうしたことは、これまでも民主党の議員あるいは与党の方々も含めて、財政審議会はもちろんですけれども、声高に指摘をしながら、これまでほとんどと言っていいほど進まなかったことですから、今回の平成十八年度予算、大きく踏み込んだという意味では一歩前進したことを評価したいというふうに思っています。しかし、まだまだやり方は足りない、そのことは先般の代表質問の中でも申し上げたとおりです。

 また、このお金、五百九十五億円の一般会計への繰り入れのこのお金のことについても、よく考えてみますと、そのまま一般財源に組み込めるお金だというふうにも実は考えております。

 それで、改めまして、ここでこの電源特会五百九十五億円の剰余金、一般会計への繰り入れのことにつきましてお尋ねを申し上げます。

 まず、この繰入額五百九十五億円ですけれども、これは答えられるだけで結構です、きっとこれは積み上げられたお金に違いないと思いますけれども、どのように積算されたお金なのか、答えられるだけで結構です、答えてください。お願いします。

松元政府参考人 お答えいたします。

 電源開発促進対策特別会計につきましては、委員も御指摘のとおり、これまで多額の不用、剰余金の発生や過大な予算等が問題として指摘されてきたところでございますが、平成十八年度予算におきましては、特別会計改革推進の観点から、特別会計の歳出歳入を厳しく見直したところでございます。財源について有効活用を図り、一般会計の収支改善に寄与するため、特例措置として一般会計へ五百九十五億円の繰り入れを行うということにいたしております。

 具体的には、まず歳出面では、事業を個々に、その内容の妥当性や執行可能性等、さまざまな観点から検討を行っております。その結果といたしまして、電源立地勘定におきまして二百五十四億円を、また電源利用勘定におきましては二百十六億円を縮減いたしております。また、歳入面におきましては、十七年度予算の執行状況を検討いたしまして、節約による不用見込み額として百二十五億円を十八年度予算の歳入に計上し、こうした歳入歳出両面にわたる取り組みの結果といたしまして、歳入が歳出を五百九十五億円上回ることになったことから、これを一般会計に繰り入れることとしたものでございます。

三谷委員 本当はもう少し踏み込んだ具体的な説明が欲しかったんですが、それは結構です。

 そして、谷垣財務大臣は鈴木委員の先般の指摘にこのように答弁をされています。

 今回の繰り入れの財源、電源開発促進税、これは税法に規定、原子力発電所の設置促進等に使うために課されている。今、差し迫って使わなければならない、実はこれが必要というわけでない、後日そういう用途が生じることもあり得るから、そのときは最終的にその費用に充てるためにこうした規定を設けた。そしてさらに、不用なものがいわば遊んでいる、現段階でできるだけ活用、国債発行の抑制ということは金利負担にも影響、そのために役立てたい。そして、税法の規定によれば、使うべきときは原子力発電所の設置等に使わなきゃならないので、それをお返しする規定になっている。

 これは、私は名答弁だと思います。またさわやかにお答えいただきました分だけ余計に名答弁だと思うわけですけれども、ただ、実は、名答弁である反面、内実を考えますと、ある意味、大変苦しい答弁でもあったようにも思えます。

 電源開発促進対策特別会計に係るまさに電源開発促進税、原子力発電所等々設置などの電源開発、電源立地促進のためのまさに目的税ですから、そのために使わなければならない。これは谷垣財務大臣の御答弁のとおりであります。明確な目的税だから、一般会計を経ずして、まさに石油特会と違います、この特会に直入をされています。

 以前私も、去る特別国会ですけれども、経済産業委員会で、まさにこの特別会計について質問をするに当たりまして、ちょうど資源エネルギー庁の方々の担当者との話で、その説明の中で、剰余金があるんなら一般財源化すればいいじゃないか、こういうお話を申し上げましたところ、もちろんこれはよくわかって聞いておるつもりなんですけれども、その担当者の方々、これは何度聞いても同じ話をされます。

 まず、電源促進税は原発設置のための目的税です、剰余金については全然不用なお金ではありません、今は原発の設置が進まない、だけれども、進んだときにはこれは使うお金なんだと。これは大臣の説明と同じような話です。いわば積立金のようなものです、決して不用なものじゃない、本当に不用なお金ならば一般財源化なんというのはとんでもない、そのお金をお返しするのが本来の筋だと。こういうお話をされています。私も実は、この担当者の言われることには一理も二理もある、そのとおりだと思うわけでございます。

 ただ、この電源開発促進税、原発設置のための、まさに、もう少し正確に申し上げれば、電力利用者の受益者負担の考え方に基づき、電源立地対策、電源利用対策のための目的税で、これは大臣の御指摘のとおり、法律を変えない限り一般財源化はできません。

 もし余ったお金があるならば、本来ならお返ししなきゃならない。お返しをするということが難しいならば、目的に沿って、本当に必要な額、今使えなくても、必要な額を積算してちゃんと積み上げて、計画的に、どれぐらい必要なのか、それをきちんと積算して、なお不用な部分があるならいただいている税金を大幅に下げる。

 確かにこの促進税、幾らかは下がっておりますが、大幅に下げなきゃいけない、それに合わせて。しかし、これも、まさに大臣もそうですが、あるいは私も同じ考えなんですが、あるいはここにおられる多くの皆様方、今のこの財政状況の厳しい折に、まさに、税金を下げよう、あるいは取り過ぎたから電力会社にお金をお返ししようという発想はなかなか生まれてこない、これが現状だと思います。

 ですから、その意味では、ちゃんと議論をして理屈をちゃんと立てて、変えなきゃいけない法律があるならちゃんと法律を変える。一般財源化をして、広い意味で、電力利用者のために、あるいはエネルギー対策としてこのお金を使わせていただくということも考えられないわけではないというふうに思うのです。むしろ考えなければいけないと思うのです。

 本当は大臣の答弁が苦しい答弁だったというふうに申し上げましたのは、まさに今回のような、大変わかりづらい、そして中途半端な対応としか言いようがないこういう対応は、私は絶対によくないと思っているのです。

 まさに私たちの考えですけれども、私たちの考え、民主党の考えです、この電源開発促進対策特別会計、基本的には廃止をさせていただきたい、一般財源化をさせていただきたい。セットになっております石油特会も全く同様の話です。もちろん、いろいろな難しい問題がありますので暫定措置は必要だと思います。必要だと思いますけれども、基本的には廃止をして一般財源化させていただきたい。

 そして、政府案でも、このまさに電源特会あるいは石油特会と平成十九年度までに統合する、電源開発促進税を、特別会計直入から、一般会計へ繰り入れてまたそこからの繰り出し、これは石油特会と同じ話になりますけれども、まさにこの法改正につきまして財務大臣のお考え。

 そして、この電源特会、石油特会、廃止をして、先々も含めて今答えは出ていません、先ほど申し上げた話しか行革の重要方針の中にはしたためられておりません、工程表の中にもしたためられておりません、廃止して一般財源化されるつもりは、将来も含めてないのかあるいはあるのか。そのことも含めて、大臣、お答えをいただけませんでしょうか。

竹本副大臣 三谷先生の非常に説得力のある御説明を聞いておりまして、なるほどな、そういうことかということが非常によくわかるのでございますが、世はまさに行革の時代でありまして、昨年十二月に行革の基本方針を政府としては出しております。心は、政府の中において無駄は一切させない、遊んでいる金はそのままほっておくわけにいかない。こういう考え方から、何としてでも特会に入っておりますお金を一般財源の方に入れていただいて、それを有効活用する。そして、やがて、もともと電源開発のために積み上げているお金でございますから、それを必ず事業目的に使わなきゃいけない、必要なときにはそちらへ返す。こういうことで始まった仕組みでございます。

 そこで、お話にもありましたけれども、行政改革の重要方針の中では、平成十九年度までの立法化によって、電源開発促進税が電源特会に直入をされる構造、この構造を見直すことといたしておるわけでございます。

 具体的には、電源開発促進税が電源開発に要する費用に充てるために課せられている税であることを十分踏まえつつ、例に挙げられました石油石炭税と同じように、一般会計から石油特会に繰り入れられるこの石油石炭税と同じように、まず一般会計の歳入として、一般会計から必要額を電源特会に繰り入れる仕組みをつくることにより、電源特会において財政需要が生ずるまでの間、財政資金の効率的な活用を図ろう、こういう思いを持って、そういうふうに変えていこう、こういう考え方でいるものでございます。

三谷委員 大変歯切れの悪い、本当に苦しい対応と申しますか、苦しい答弁ではないかと思うわけですけれども。

 続いて、まさに今お話を申し上げました、電源開発促進対策特別会計、この実情につきましても少しお話を触れさせていただきたいと思います。

 そうした中身のお話を申し上げる前に、一つ確認をさせていただきたいことがあります。大変当たり前の、一番基本的な確認でございます。

 この電源特会、これまでの話です、今回のを含めて、財務省の査定は予算立てのときにきいているんでしょうか。お答えください。

松元政府参考人 主計局といたしまして、電源開発促進対策特別会計、毎年査定をいたしてきておりまして、その結果として、特別会計の予算といたしまして国会に提出させていただいて、御審議をさせていただいているというところでございます。

 ただ、先ほどの繰り返しのようなことにもなりますが、多額の不用、剰余金の発生、こういったことを根っこから、根本から洗い直すといったような作業を、来年度予算編成におきましては昨年、特に国会での御審議等もありました中で、予算要求段階から経済産業省においても資源エネルギー庁において行っていただきまして、その結果として御要求いただきまして、さらに査定をして来年度予算を作成させていただいているというところでございます。

三谷委員 査定をしているというお答えでございました。

 ここで、電源開発促進対策特別会計、この実情について少しお話を進めさせていただきます。

 まさにここに資料がございますけれども、これは、電源特会の多額な剰余金、これが指摘され続けているところがございまして、平成十三年度そして平成十六年度に会計検査院の特定検査対象にもなっています。検査院のホームページにもこの詳しい検査の状況が掲載をされています。

 この本会計、電源立地勘定それから電源利用勘定、二勘定ございますが、その一部を紹介させていただきます。

 電源立地勘定ですけれども、幾らか抜粋をしてお話をいたします。

 平成十五年度に、電源立地促進対策交付金、電源立地特別交付金等を統合して、原子力発電施設等の立地を条件とするなどして交付される電源立地地域対策交付金が新設をされた。しかし、この電源立地地域対策交付金には、新設後一年足らずで多額の不用額が発生というふうに書かれています。

 そして、まさに不用額の発生の中身、額ですけれども、電源立地勘定の十六年度の支出状況、まさに去年の話です、歳出予算現額二千六百三十九億円、これに対しまして支出済み歳出額、これは翌年度繰越額五十億円を差っ引いての話ですけれども、四百四十億円の不用額が生じており、その額は歳出予算現額の一六・六%に上る、不用額の内訳は電源立地地域対策交付金の不用額が四〇・七%を占めていると指摘をされています。

 そして、発生要因です。電源立地勘定において、依然として多額の剰余金が生じている主な原因は、電源立地地域対策交付金、電源立地等推進対策補助金等において、歳出予算現額と支出済み歳出額との間に大幅な乖離が生じ、減少しつつもなお多額の不用額が生じる事態が依然として継続をしている。同交付金の十六年度の支出状況は、歳出予算現額千百二十五億円に対して、支出済み歳出額九百十九億円、翌年度繰越額二十六億円であり、不用額は百七十九億円。ここからですけれども、同交付金は、原子力発電施設等がこの歳出予算額の大きな割合を占めているが、同施設の立地について地元との調整が難航していることなどにより同交付金の交付に至らないケースがあることが、多額の不用額を生じている要因と。

 そして、電源立地等推進対策補助金、この支出状況も、歳出予算現額二百六十五億円に対して、支出済み歳出額百四十六億円、翌年度繰越額十億円、不用額が百八億円。不用額の内訳は、電源立地理解促進対策補助金が五十一億円。

 そして、一番がここですが、電源立地理解促進対策補助金、難しい補助金の名前が並びますが、発電用施設の周辺地域の市町村に対し新エネルギー導入普及事業を実施する場合に必要な経費の一部を補助するための補助金です。そして、歳出予算現額五十六億円の何と九〇・七%に当たる五十一億円が不用額です。その中身は、同補助金の中の電源地域新エネルギー供給構造構築促進対策補助事業、難しい名前ですが、市町村から十四件の応募があるものと見込んでいたところ、実際の応募はゼロでした。九〇・七%ではありません。一〇〇%不用と言っても過言ではありません。

 そして、原子力発電所の、これは大臣も先般の答弁でおっしゃいました、立地のためのいろいろな積立金なんだと。つくるときにはお返しをしなければならない。まさにその進捗状況も書かれております。

 周辺地域整備資金、まさにこの周辺地域整備資金、一番のくせ者だと私は思いますが、少し話を離れまして、これも平成十五年度に新設されたものです。残高を申し上げます。平成十五年度三百五十一億円ふえているんです、平成十六年度八百八十一億円、平成十七年度千六億円、平成十八年度千百二十五億円です。

 そして、この周辺地域整備資金に積み立てられる資金は、まさにおっしゃられたとおり、将来運転開始が見込まれる原子力発電建設に係る財政需要に備えるものであります。しかし、原子力発電施設二十施設の十六年度までの立地の進捗状況は、十三年度末において立地可能性調査済み、または第一次公開ヒアリング済みであった十六施設のうち十二施設については次の段階への進捗が見られず、さらに十二施設のうち三施設は十五年度に計画から除外されている状況。また、原子力発電施設の立地申し入れから運転開始までに要した年数を見ると、立地申し入れから十年未満で運転開始に至った原子力発電施設は、一九九〇年代については皆無といった状況だということが指摘をされています。

 続いて電源利用勘定のこともありますが、ここを中略させていただいて、会計検査院の所見も書かれています。読ませていただきます。

 電源立地勘定においては、原子力発電施設等の立地のおくれなど各種の事情から、電源開発促進税を財源として歳出予算に計上された電源立地地域対策交付金等の電源立地対策費の相当部分が執行されずに不用額となる状況が継続しており、十六年度には九百七十九億円という多額の剰余金が依然として生じている。多額の剰余金が生じていると。

 それとは別途、まさに先ほど申し上げました周辺地域整備資金、申し上げたとおり、十五年度に新設をされて三百五十一億円だったものが、ここにも書かれております、平成十八年度千百二十五億円、ここにため込まれております。

 進捗状況は、先ほど申し上げたお話のとおり、周辺地域整備資金を設置、繰り入れを開始したことにより、結果として剰余金は計算上減少しているものの、同資金への繰入額の予算計上額を所要積立額の三分の一相当額、派手に積み上げたものを、剰余金のことが言われましたので少し減少させてはいるものの、十七年度予算における同資金への繰入額は前年度より大きく減少しているというふうにやわらかい話にはなっておりますが、中略します、今後とも厳しい状況がこの決算報告において継続するものと思料をされ、このまさに指摘した周辺地域整備資金に積み立てられた資金については、使用の目途が立たない事態に至るものが生じれば、同資金に積み立てられた当該資金は剰余金と同様になるおそれがあるというふうに指摘をしています。

 先ほど御紹介申し上げたのは、十六年度の話ではあります。

 私は冒頭に申し上げましたように、今まで指摘をされ続けて踏み込まれなかった、今回はメスが入った話だ、そのことは評価したいというお話を申し上げました。

 しかし、先ほどの御説明、まさに財務省の査定は本当にきいているんですか、あるいは、これまでも含めて査定は本当にあったのかどうか。

 と申しますのは、谷垣財務大臣もこの前の私の代表質問の御答弁の中でも触れられました。本予算でこれだけの歳出の削減の努力をしている、公共事業予算だけでも四割の削減をしている、こういうお話をされました。それはそのとおりだと思います。本予算だったら考えられないから、本当に査定をしているんですかというお話を、先ほどお尋ねをしたわけです。

 そして、今回、十八年度予算においては一歩踏み出した、メスが入った、このことは評価したいというお話も申し上げました。だけれども、まだまだ足りない。先ほどの御説明もまさにそうでありますように、まだまだ足りない。

 御紹介した周辺地域整備資金、ここにも本当にメスが入っているのか。積立金、あるいは先ほどの原発の進捗状況をかんがみながら、ここにあるお金はこれだけの額のもので本当にいいのか悪いのか。そういう御説明は全くありませんでした。だから、この繰入額もそうですけれども、どういうことで積み上げられたのか、その積算根拠を聞かせていただいたんです。

 済みません、もう一回、積み上げられた積算根拠を教えてください。

松元政府参考人 お答えいたします。

 周辺地域整備資金についての積算でございますが、周辺地域整備資金は、建設がおくれております原子力発電所等が、今後計画に従って建設されることに伴う財政需要に備えたものでございまして、立地の進展に伴い必ず今後支出される見込みがある資金ということで積み上げられたものでございます。

 平成十八年度予算におきましては百三十六億円の積み増しということでございますが、他方で、計画の進捗に伴いまして八十一億円の取り崩しがございます。こういったことから、正味では五十五億円の積み増しという形になっております。

三谷委員 今の答弁では全く納得がいかない。評価をしていると申し上げているんです、今までやってこなかったことをやり始めた。正直な話、今までほとんど査定らしい査定は行われてこなかったんだと思うしかありません。それをやり始めた、踏み込み始めた、このことは評価しているというふうに申し上げているんです。

 本当に、まさに、実は今年度もそうですけれども、来年度以降も含めて、もっともっと切り込みをやらなければならない、やってもらいたい、やらなければなりません。そうじゃなければ、最初大臣にも申し上げました、お聞きをしました、ゼロベースでの見直しにはなりませんよ、これは。全然ゼロベースの見直しじゃない。

 もう一つあります。この電源特会よりももっとひどい話だと私は思っていますけれども、まさにこの中にもございます、農業経営基盤強化措置特別会計。これもよく指摘がされる、剰余金、不用金の多いことで指摘がされる特別会計の一つです。ことしも二百九十五億円、ことしもではありません、これも今回初めてメスが入って、一般会計への繰り入れが決まりました。ここには書いてあります。一般会計繰り入れの停止等により剰余金の削減に努めてきたが、抜本的対応策として歳出を厳しく見直し、必要額を確保した上で、その余りは一般会計に繰り入れというふうになっています。同様に、まさにこの農業経営基盤強化措置特別会計、先ほどの電源特会同様に、平成十六年度に会計検査院の特定検査対象になっています。

 冒頭、御紹介します。毎年度発生していた多額の決算剰余金について、一般会計への繰り入れの仕組みはあったが、繰り入れは今回が初めて。

 そして、全部は申し上げません、肝心なところだけお話をいたします。この特別会計の業務について記されています。二つだけ取り上げます。一つ、農業改良資金です。

 これは、農業者等における農業経営の改善等に必要な資金の貸し付けを行う都道府県に対して、当該貸し付けに必要な資金の三分の二を助成。ここら辺は結構です。この助成は、五十九年度までに補助金として交付された六百九十八億九百五十二万円及び六十年度から平成十二年度までの間に一般会計より基盤特会に繰り入れられた五百二十九億四千九百六十一万円並びに昭和六十一年、六十二年両年度に日本中央競馬会から納付を受けた三百億円の計千五百二十七億五千九百十三万円、千五百二十七億円を貸付財源としています。平成十六年度末における国庫補助金及び農業改良資金貸付金、お金を貸しているわけですね、貸し付け等残高は三百三十三億四百三十六万円だけです。

 都道府県は、政府貸付金及び国庫補助金に自己の拠出金等を合わせて農業改良資金の貸付原資として資金を造成し、農業者等に対して必要な資金を無利子で貸し付けている。

 そしてまた、農業改良資金の貸付財源に余裕がある場合等には、政府貸付金について繰り上げ償還を行ったり、国庫補助金相当額について国に自主的に納付することができることになっている、こういうふうに書かれています。これが農業改良資金です。

 それに対する検査概要。

 近年、貸付実績が著しく低調、都道府県の方はいいんです、政府貸付金として使用するために基盤特会に繰り入れられるなどした、先ほど御紹介した千五百二十七億の二一・八%、使われているものがですよ、二一・八%と、その使用割合は著しく低い。そして、これらが基盤特会における決算剰余金を大幅に押し上げる要因と指摘をされています。

 そして、もっと問題なものがあります。五番目に記されています。農地保有合理化促進対策でございます。農業経営の規模拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化を促進するため、農地保有合理化法人に対し、農用地等の買い入れ及び小作料一括前払いに要する借入資金の利子相当額の一部並びに規模拡大の際に必要となる農業用機械等の導入に要する経費等について、都道府県を通じて補助金を交付しています。

 そして、この名前を覚えておいていただきたいのですが、社団法人全国農地保有合理化協会、以下全国協会と申し上げますが、大変問題な、まさに、法律の区分からいたしますと指定法人ですが、この全国協会に対しまして、農地保有合理化法人が農用地等を買い入れる際に必要な資金の一部を、この全国協会が無利子で貸し付けるのに要する経費等について補助金を交付しています。

 これらに対する財源として、平成十三年度までに一般会計より千百七十四億八千三百五万円がこの基盤特会に繰り入れられたほか、昭和六十三年度に農地流動化緊急対策事業、平成七年度に債務保証のための費用として、一般会計より四十九億二千万円がこの基盤特会に繰り入れられました。

 そして、会計検査院の、まさに検査の、この農地保有合理化促進対策費補助金に対する概要です。

 農地保有合理化促進対策費補助金の決算額の推移を見ると、都道府県に対する交付額が減少する一方、全国協会に対する交付額が増加をしています。これは、中略、全国協会が資金を一元的に管理、調達したことによると指摘をしています。全国協会に対する補助金の支出額が、全国協会から都道府県公社に対する貸付金の純増額及び助成金支出額を毎年度継続して上回り、全国協会の保有する預金、債券、その金額が毎年増加をしている。その状況は、資金の効率的活用及び補助金として効率的使用の観点からは問題と指摘をされています。

 その決算剰余金の状況も申し上げます。

 決算剰余金は、十三年度から十六年度までの間に四百二十三億九千八百八十八万円、約四百二十四億減少をしていますが、決算剰余金、剰余金と称されるものはこの基盤特会からは確かに減少をしていますが、十三年度の五十二億七千五百四十二万円、五十二億から、十六年度の二百三十八億二千七百六十四万円へと、まさにこの全国協会に交付された農地保有合理化促進対策費補助金の額が大幅に増加をしていることなどによって四百二十三億減少をしていると指摘をしているんです。しかし、その交付先である全国協会において多額の資金を保有している事態となった。私は、この基盤特会からの決算剰余金は全国協会への資金の移しかえに違いないということを考えていますけれども、まさにこの全国協会の保有する資金、預金及び債券の保有額は十六年度末で四百九十四億七千八百七十七万円となっています。

 会計検査院の所見です。もう農業改良資金はいいです。最後のところ。各事業の運営状況、全国協会における資金の保有状況を的確に把握した上で、資金規模の縮小も含め、基盤特会における資金の効率的活用を図るための方策を検討する必要があると。そして、近年、基盤特会から支出額が伸びているこの農地保有合理化促進対策費補助金については、多額の資金が預金や中長期の債券として全国協会において保有されている状況、このことを指摘しておきます。

 私が申し上げたとおり、やわらかい表現ですが、検査院自体もこれは移しかえじゃないかということを示唆している話だと私も理解しています。

 こうした状況を踏まえまして、まさに、先ほどの話と同様ですが、電源特会同様に、もう最初には聞きません、財務省は、これまでも含めて査定をされているのか。そして、この農業基盤特会につきましては、まさに、先ほど指摘をさせていただきました、今回も繰入額が二百九十五億円あります。まだまだ足りないというお話をさせていただいているんです。この農業基盤特会から一般会計への繰入額二百九十五億円、もちろんその積算根拠、どういうことでこの二百九十五億円という数字になったのか。そしてまた、この話は先ほど御紹介をしました全国協会に大変多額の現金、債券、移しかえられてたまっています。ここにためられた滞留金、滞留金とあえて申し上げますけれども、滞留金も含めて、きちんと切り込んで査定をされた、これだけのものが繰り入れられる査定をされた額なのか、そのことを教えてください。

松元政府参考人 お答えいたします。

 農業経営基盤強化措置特別会計につきまして、会計検査院からさまざまな御指摘もいただいておるわけでございます。これにつきまして、きちんとした査定をしているのかということでございますが、私ども、特別会計改革ということから、まさにゼロベースでしっかり見させていただいているということでございます。

 まず、農業経営基盤強化措置特別会計におきましては、低金利環境の継続によります無利子融資の相対的優位の低下等によります貸付事業における不用、主な理由といたしまして六百三十七億円の剰余金が存在いたしております。この剰余金につきましては、今般の特別会計改革に沿いまして、政策課題に対応した資金需要を見きわめつつ、事務事業全般を厳しく精査いたしております。担い手の農地集積等に今後必要と見込まれる所要額につきまして抜本的な見直しを行った結果、不用と判断される二百九十五億円を一般会計に繰り入れるということにいたしたところでございます。

 なお、今お話の中にもございました、農地保有合理化協会に造成されている基金につきましては、御指摘のとおり、先般の会計検査院の報告におきまして、貸付実績が低迷、基金規模が過大、終了年度を定めていないといったさまざまな御指摘があったところでございます。

 これらの基金につきましては、会計検査院の指摘を踏まえ、資金需要を精査いたしまして、平成十七年度、十八年度におけます七十七億円の特会への資金の返還、平成十七年度におきます六十四億円の執行の見合わせを行うとしたところでございまして、今般の二百九十五億円の剰余金の繰り入れはこれらの措置を織り込んだものでございます。

 また、お許しいただきますれば、会計検査院からの指摘のございました電源特会の関係の査定状況についてもお話しさせていただきたいと存じますが、会計検査院からは、電源特会に関しましては四つ御指摘をいただいております。

 そのうちの、電源立地地域対策交付金につきましては、対十七年度比で六・四%のマイナスといたしております。また、電源立地等推進対策補助金につきましては、対前年度二四・五%のマイナスといたしております。三番目に御指摘がございました、新エネルギー事業者支援補助金につきましては、対前年度一一・六%のマイナスといたしております。四番目に御指摘がございました、地域新エネルギー導入促進対策費補助金につきましては、対前年度六〇・八%のマイナスということにいたしております。

 主計局といたしましては、特別会計改革ということで、徹底して歳出につきまして精査、あるいは、歳入あるいは剰余金につきましても精査させていただいたということで考えております。

三谷委員 申し上げなければならないのは、再三申し上げますけれども、本予算だったらこういうことは私は全く考えられないと思うんです。財務省主計局も絶対に認めません。私もそれはよく存じ上げています。絶対に認めない。

 先ほどと全く同じ話ですけれども、まさにこの基盤特会ですが、電源特会同様に初めて繰り入れられました。そのことは評価していると言っているんです。初めての話です。評価しているというふうに申し上げているんです。

 だけれども、今の御説明で、今回の二百九十五億円、私はまだまだ一般財源に取り込まないといけないお金が、まさに電源特会だけでなく、この農業基盤特会にも、あるいは農業基盤特会の方がもっとあるんじゃないかというふうに思っているんです。あるいは、もっと言えば、もっとたちの悪い話だと。原発立地のための周辺地域整備資金、これよりももっとたちの悪い話だ。現金、債券の保有状況、たちの悪い話だと思っております。

 お聞きするところによりますと、ここからの吸い上げも今回の場合は中に入っているというお話でした。もっともっとやってもらいたい、返していただかなければならない。貸付金のお話も次長されましたけれども、これもそうです。こんな現状の中で、返していただくものは返していただかなければいけない、全く甘いという話をさせていただいているんです。

 今のお話は、二百九十五億円の根拠にも何にもなっていないですよ。何で二百九十五億円なんですか。絶対に、だれがどう考えても、先ほど私が説明した話の中で、二百九十五億円よりも絶対にもっとありますよ。全国協会のお金、滞留されているお金もきちんと精査をして、吸い上げるとするならばもっとありますよ。

 お答えください。

松元政府参考人 お答えいたします。

 農地保有合理化協会に造成されている基金について精査をいたしました。繰り返しになりますが、その結果といたしまして、平成十八年度、十七年度におきまして、七十七億円、特会へ資金を返還するということにいたしております。また、十七年度におきましては、六十四億円の執行を見合わせるということにいたしているところでございまして、委員御指摘のとおり、今般の二百九十五億円の中にはそれが含まれているということでございます。

三谷委員 全くよくわかりません。説明になっているとは全く思えないんです。どういうふうにお問いかけをすれば、説明がしていただけるんでしょうか。積算根拠を聞かせていただいているんです。

 何と何と何と何がどうなって、あるいは全国協会のことに絞ってもいいです、どれぐらいここの、まさに先ほど申し上げました保有されている予算、債券、そこから戻してもらわなければならない。全国協会のことだけでもいいです。今回、手をつけましたよね、それを評価していると言っているんです。評価していると言っているんです。今まで全くなかったんですから。移されたら移されたまま。そこのこともきちんと押さえて、ここから幾ら二百九十五億の中に入っていますか。

松元政府参考人 お答えいたします。

 全国農地保有合理化協会につきまして、七十七億円、特別会計資金を返還するということにいたしておりますが、若干細かくなりますがその内訳ということで申し上げますと、農地保有合理化事業貸付原資基金、これが五十五億円ございます。これにつきまして事業見直しをいたしまして、これにつきましては廃止をいたして全額を返還するということにいたしております。返還先といたしましては、特別会計に四十五億円、一般会計に十億円を返還するという形にいたしております。

 次に、農地保有合理化法人債務保証基金、この分が二億円ございます。これにつきましては、基金規模を七億円から三億円に縮減いたしておりますが、うち国費分が二億円という内訳になっております。

 次に、農地保有合理化法人機能強化事業基金、これにつきまして三十億円縮減いたしておりますが、これは基金規模を七十五億円から四十五億円に縮減いたしたというものでございます。

 そういったことの積み上げといたしまして、先ほど御説明いたしましたような数字になっております。そういった形でございます。

三谷委員 今の話でもまだまだ納得がいきません。

 再三申し上げておりますけれども、本予算だったら、私も知っていますけれども、こんなことにならないんです。もちろん、難しいことはわかっています。だけれども、これを洗えば、この基盤特会から全国協会に交付をされたお金の中で、まさに四百億以上にわたる現金、債券、ためられているんです。もちろん、いろいろな事業をやっています。だから、吸い上げるというのはそう簡単な話じゃないと思います。だけれども、今までの査定だったら、過去のどういうことをやって、何でこのお金がこれだけのものになったのかということを洗ってでも、本予算だったらやるでしょう。だけれども、やっていない。今の説明だったら、ほんのわずか、そこに手を加えただけの話です。そのことは評価しているというんです。ぜひともこのことをやってください。

 質問時間が来ましたのでこれで終わらせていただきますけれども、ぜひともそれはやってください。そうでなければ、最後に一言だけ申し上げますけれども、最初に谷垣財務大臣がおっしゃられたゼロベースでの見直しということには絶対ならない、そのことだけは最後に申し添えまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小野委員長 それでは、引き続きまして、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 それでは、私からも御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、三谷議員から特会について非常に厳しい指摘があったわけでありますが、考えてみれば、我々に課せられた国民からの期待というのは、国の無駄遣いを何としてもとめてくれ、そして真っ当に働く者が報われる社会をつくってくれ、こういうためでありますので、本当に、今から私も一時間ほど御質問させていただきますが、ぜひひとつ、そういう意味で真摯な議論をさせていただきたい、このように思っておるところであります。

 私は、きょう、昨年の十一月二十一日に出された財政審の建議をここへ持ってまいりました。長文でありますので全部読み上げるつもりはありませんけれども、我が国の財政がいかに厳しいのか、そして人口減少時代が始まって本当に大変な局面を迎えてきておる、そして国の会計、一般会計はこのままでは大変な状況になっていく、歳入が約四割増加しなければとても乗り切っていけない、そしてまた社会保障の給付がどんどんふえていく、そういう中で医療改革もあるじゃないかということで、この財政審の建議も、今の財政状況、日本の政府のあり方について非常に心配をしておるということでございます。

 きょう議題となっております所得税法の一部を改正する法律案の冒頭にも、本法律案のポイントということで、現下の経済財政状況を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、次のとおり改正を行う、こういうふうに書かれておるわけであります。

 しかし、冒頭申し上げましたように、本当にあるべき税制の姿は、そしてあるべきいわゆる財政状況は、あるべき国家予算は何かということを考えていったときに、私は、本当にまだまだ我々は改善をし、そして見直していかなければならないことがたくさんある、このように思っております。

 そこで、順番に御質問をさせていただきたいと思うんですが、まず所得税の改正についてでございます。

 今回の所得税の改革は、三位一体の改革に関連して、そのあり方を大きく見直そうとしておるものだというふうに思います。そこで、最初に確認をしておきたいんですが、三位一体改革はこれまでの国と地方のあり方を見直す大きな改革であった、このように思っております。しかし、これは改革のほんの入り口であって、本当の改革はこれからだ、私はこのように思っています。

 四兆円の補助金削減そして三兆円の税源移譲は辛うじて、いろいろありましたけれども、どうにか実現されつつあります。また、されようとしておるわけでありますが、地方にとってはこれはあくまでも第一段階なんだ、そして第二段階をぜひ実現してもらわなきゃ困るんだ、こういう要望であります。このことは言うまでもありません。地方六団体が、第二期改革として、平成十九年度から二十一年度にかけて、九兆円程度の補助金の見直しをやってもらいたい、そして八兆円の税源移譲をぜひやってもらいたい、こういう要望が出ておるのは御案内のとおりであります。

 そこで、財務大臣にお伺いしますが、いわゆる、あくまでも今申し上げましたように、現在の三位一体改革は第一弾であって、その先に第二弾があるんだ、こういうふうに理解をさせていただいてよろしいかどうか、お尋ねをいたします。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 委員おっしゃるように、三位一体改革の目標とするところは、地方の自由度を高めて自立性も高める、そして同時に責任も持っていただく、こういう方向だろうと思います。それで、これはまだまだ続く過程で、委員のおっしゃるように始まったばかりと言ってもいいかもしれません。第一期、そして四兆円の補助金改革それから三兆円の税源移譲、この法案でそれをお願いしているわけですけれども、第一期はできた。今後どう持っていくかということについては、まず第一期のやったことの評価といいますか、そういうものをよくやる必要があると私は思っております。

 それで、第二期というのの中身をそれぞれがどうイメージしているかということはいろいろあろうかと思いますが、私は今の図式の、これはある意味で私の個人的な意見でございます、総務大臣でもございませんので余り勝手に言ってはいけませんが、やはり一期の枠組みの中で延長上でやろうというのはなかなか難しいんじゃないかというのが私の個人的な感触でございまして、そこらも含めて一期の評価というものを十分やる必要がある、こういうふうに思っておるところでございます。

鈴木(克)委員 この第二期の改革については、さきの政府・与党の合意文書の中にも、これで終わりじゃないんだ、引き続きやっていくんだ、こういうことがうたわれておるわけですよね。昨年の十一月三十日でありますけれども、政府・与党の合意文書、要約をいたしますと「地方分権に向けた改革に終わりはない。 政府・与党としては、十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、国と地方の行財政改革を進める観点から、今後とも、真に地方の自立と責任を確立するための取組を行っていく。」このように述べられておるわけであります。

 もちろん、今大臣おっしゃったように、まず見きわめて、そしてさらに先を考える、しかし今と同じような状況、同じような考え方ではできないかもしれない、こういう発言の要旨であったというふうに思うんですが、もしそうであるならば、では地方は何をどのように期待をしていけばいいのか、その辺をぜひひとつ、財務大臣としてのお考えで結構ですからお示しをいただきたい、このように思います。

谷垣国務大臣 総務大臣でもありませんので実はなかなかお答えがしづろうございます。全く私の個人的な、この間の三位一体に取り組んできた視点からの考え方でございますので、政府を代表しての意見でも何でもございません。

 ただ、やはり地方の財政にはそれぞれ格差が大きくあることは委員もよく御承知のとおりでございまして、要するにそれをどんどん、補助金をどんどんカットして財源を移していくというと、その財政力格差をどう埋めていくかというような問題がやはり進めれば進めるほど深刻に出てくるのではないかというふうに私は思っておりまして、そうなるともう一回交付税のあり方とか、それから今不交付団体というのは極めて少のうございますけれども、こんな少ない不交付団体という状況のもとで本当に構想ができていくのかというようなことがまだまだメスが入っていない面があろうかと思っております。

 私、まだ地方財政については十分総務大臣のような知識を持っておりませんので、視野が欠けているかもしれませんが、まだまだメスが入らないところというか、大きな構想を立てなければならないところはあろうかと思っております。

鈴木(克)委員 今回の三位一体の改革、もちろん、財務大臣がさっきからおっしゃっておるように、総務大臣じゃないんだからということは十分承知でありますけれども、しかし、国の財政をまとめてみえるのは財務大臣ということになるわけですから。

 今回のこの三位一体の改革を少しまとめてみますと、補助金の削減を四兆円行ったわけですよね。そして税源移譲を三兆円行ったんです。だけれども、三位一体の改革というのは補助金と税源移譲と交付税、これがいわゆる三位一体になるわけですね。結局、交付税の改革については、改革前の十五年度の地方の出口ベースで見ると、十五年度は十九兆円だったわけですね。それで十八年度が十六兆七千億ということで、二兆四千億減額をされておるわけです。したがって、先ほどの補助金の改革と合わせると、地方の資金というのは六兆四千億円減額されておるわけです。それに対して、結局三兆円を移譲されたのにすぎない、こういうことなんですね。

 こういう状況だと地方はどう考えるかというと、明らかにもう地方は切り捨てられたんだ、こういう感覚しか持っていないわけですよ。だから、私は、くどくなりますけれども、あくまでも第二段階、次の改革をやはり早く示すことが地方にとって、いわゆる地方としての考え方を進めていく、そういう一つの糧になる。今のままでは全く先が見えていないんですね。何を信じていいのか、だれを信じていいのかわからないというのが今の地方自治体の首長、そして議会の状況だということでございます。

 そういう意味合いから、くどくなりますけれども、私は、やはり地方を切り捨てないんだよ、国も厳しいけれども、地方には必ずこういう形でしっかりとやってもらうだけの財源は持っていくよと。むしろ、それは国の無駄遣いをきちっとやめて、そして地方のことを考えていくよと。やはりこういうような考え方を、今この第一期が済んだ段階で国は示すべきだ、そしてまた、示してもらいたいというのが地方の実情なわけですよ。

 ぜひひとつ、大臣、そういう意味で、この三位一体改革、第一期といいますか、を終えたということに対しての感想と、第二期に向けての心意気をやはりもう一度お示しをいただきたい、このように思います。

谷垣国務大臣 第一期の三位一体改革は、地方でできることは地方にという基本方針の上で、今おっしゃいましたように、四兆円を上回る補助金改革、それから三兆円規模の税源移譲、四兆円補助金を削っておいて三兆円でどうだという御趣旨だったと思うんですが、やはりこれは、国が今までやっていたことも見直しをして、スリム化するものはスリム化しなければいけないという視点もこの改革の中で私は重要な要素だったと思っておりますので、これはそういう形になった。

 それから、地方交付税の見直しについても、さらにやらなきゃならぬことがあると思います。現に、ここは、竹中総務大臣のもとで今いろいろ案を練っていただいていると思いますが、地方交付税の改革も、特に国と地方で折半で埋めているようなところはかなり圧縮することができたのは、国、地方両方にとっての財政面で改善が見られたところではないかと思っているわけです。

 この改革によりまして、地方財政における受益と負担の関係というものが今までより明確になってきたのではないか、それから、地方がみずからの支出をみずからの権限、責任、それから財源で賄う割合はやはりふえていったというふうに考えております。したがって、住民に必要な行政サービスを地方みずからが選択できるという割合も幅もふえていったのではないかというふうに思っております。それから、行政の効率化、歳出の効率化、合理化といった、国、地方を通じた行財政改革も進めることができたというふうに考えております。

 それから、三位一体の改革を進める中で、国、地方を通ずる財政構造改革も進めなきゃならぬということで、地方歳出についても相当厳しく見直しをお願いしたこともこれは事実でございます。

 しかし、その上でなお必要な一般財源総額につきましては、各年度の地方財政対策におきまして、安定的な運営に支障を来さないように所要の額を確保したところでございますし、補助金等の改革によりまして、使途に制限のある財源を廃止縮減する一方で、地方税、地方交付税等の一般財源総額はふやすことができたということではないかと思っております。

 去年十一月の政府・与党合意でも、地方六団体は、三兆円という大規模な税源移譲を基幹税により行うこととしておって、これはこれまでにない画期的な改革であって、大きな前進だと評価をしていただいたというふうに思っております。

 したがいまして、こういったことをまたよく議論し、総括した上で、今後どういう展望を開いていくかという議論をしなければいけないと思っております。

鈴木(克)委員 この三位一体についてはこれぐらいで先に進めさせていただきますが、要は、いわゆる使い勝手のいいお金にして地方に回していただければ、地方は知恵を出して本当に有効に無駄のない使い方をしていくということです。したがって、結局、税源移譲をやはり大胆にやっていただければ、後は地方の中で、本当に首長、議会が中心になって、地域住民の目線に合った施策が進めていける。私は、やはり全部ひもつき、そして箇所づけ、こういうようなやり方は本当にやめなきゃならない、このことをぜひ声を大に申し上げて次に進めさせていただきたい、このように思います。

 次は、格差社会ということを議題にさせていただきたいんですが、今お手元に表を配らせていただきました。先ほど、午前中、井澤議員の質問に対して、大臣は、必ずしも格差を実証するデータははっきりしない、マクロとミクロでは若干違うかもしれないけれども、自由社会の中である程度の格差はやむを得ないと。しかし、問題はそれがいわゆる固定化することだ、こういうことで、今やっておる改革の先が、いわゆる行き着く先が弱肉強食ということであってはならない、こういうふうにおっしゃった。一生懸命メモをとったつもりなんですが、そんなニュアンスだったというふうに思うんですね。

 そこで、ぜひひとつ、表を順番に見ていただきたいんですが、結局、明らかに格差社会が進んでおる、こういうことなんです。

 データはたくさんあるわけですので、きょうはこういうような形で出させていただいたんですが、表一は「企業規模別の一人当たり人件費・設備投資・営業利益」ということで見ていただくわけでありますが、上の大企業は、要するに九七年と二〇〇四年ですけれども、比べて、マイナス二・一%人件費が下がっただけに比べて、いわゆる中小零細が日本の場合は勤労者の七〇%を超すわけですけれども、中小企業でマイナス一一・五、零細企業でマイナス一四%、こういうことなんですよ。

 結局、これはどういうことなのかというと、大企業は結局リストラをやったわけですよ。リストラをやってお給料を維持していった。しかし、中小零細企業はリストラのやりようがないんですよ、もうぎりぎりで。しかも、工賃の安い仕事を押しつけられて、人を切りたくても、切ったらもう仕事が回らない、回らなければもちろん切り捨てられてしまうわけですから、したがって、何をやったかというと、給料を下げたわけですよ。その結果がここに明らかに出ておるということです。

 それから、表二でありますけれども、これはもっと格差をはっきり出しておる。これは厚生労働省ですからね、厚労省から出した表なんですけれども、表というかデータですけれども、いわゆる上二割、下二割ということで、これは上流二割、下流二割というふうに置きかえていいのかもしれませんけれども、その格差が、一九八〇年から二〇〇二年との間に百六十八倍、十倍だったのが百六十八倍になった、こういうことなんですね。これは、例えば一九九六年で三十三倍、一九九九年で六十一倍。ちょっとデータはないですけれども、二〇〇二年で百六十八倍ということですから、明らかに最近になって格差がぐっと開いた、こういうデータですよね。

 それから、その下にありますように、貯金なし世帯が二三・八%。これは、金融広報中央委員会、家計の金融資産に関する世論調査のデータなんですけれども、それに対して、一方、ミリオネア、要するに金融資産一億円以上の人が百三十万人、これは世界の一七%。これでも大臣、格差は広がっていないんだ、こういうことをおっしゃるかどうかなんですよ。

 表三を見ていただくと、くどくなりますけれども、平均所得の五〇%以下の所得の世帯が一五・三%。十年前は八%だったわけですよ。明らかにこれもふえておるわけですね。そして、アメリカ、アイルランドに次いで、先進国中、日本は格差社会ということでいえば、第三位なんですよ。全世界の中でも第五位ということで。こういうデータがあるんですが、大臣、くどくなりますけれども、そういう格差が実証できるようなデータはないというふうにおっしゃるんですけれども、私は、別にこれはわざとつくってきたわけじゃないんですけれども。

 それから、表四は、先ほど言いました、いわゆる貯蓄残高ゼロの世帯がここへ来て急激にふえておるということですよね。

 それから、表五は、表五と言ったって、これは書いてあるだけなんですけれども、いわゆる就学援助を受けておる児童生徒が最近四年間で四割ふえておる。東京、大阪では四人に一人、東京のある区では四二・五%が受けておる。これも、我が党の代表が総理との一般質問でやったわけですけれども。

 給与の推移もこういう形で、資本金十億以上の大企業は一%ふえておる、しかし、一億円未満のいわゆる中小企業については一六%減っておる、こういうデータでございます。

 そこで、冒頭、くどくなりますが、大臣は格差社会ではない、こういうふうにおっしゃったことについて、いや、これはやはり若干訂正せにゃいかぬな、こんなふうにお考えになったかどうか、御答弁をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がお示しになった数字を、私、ここで細かに検証する能力はございませんけれども、例えば今、表の二で、上二割と下二割の格差が十倍から百六十八倍へ、こういう、厚生労働省の所得再分配調査からなっているということで、これだけ拝見しますと、物すごく格差が進んだなというふうに思いますが、これも私ども承知しておりますのは、これは公的年金給付を含まない、当初所得ベースで計算したものだと思うんですね。

 それで、高齢化が進展しておりますので、そういう形で計算すれば確かにこのように進んできているということなんだろうと思うんですが、高齢者世帯が増加すれば当初所得の格差は広がる、しかし、そこはやはり年金というものを考えに入れませんと、非常に偏った見方になるのではないかと思います。そういうものを入れますと、私どもは、社会保険料や税金を引いた再分配所得ベースで比較すると、格差は八・七倍まで減少しているというふうに見ているわけでございます。

 確かに、よく議論されるジニ係数等々の議論も、そういう税による所得再分配あるいは社会保障による所得再分配を入れてみたときどうなるのかというようなことがございまして、そういうものを入れてみますと、私が午前中の審議で申し上げたような感じになってきて、確かに高齢者世帯とか、あるいは世帯の、非婚者とかあるいは核家族みたいなものがふえてきておりますので、かつてより所得が減っている面がございますけれども、今申し上げたような観点から見ますと、必ずしも格差が広がっているという点は確認できなかったというのが、午前中の私の申し上げたことでございます。

鈴木(克)委員 そういうこともあるのかなということで、ちょっとこれはコピーを皆さんにはお渡ししていないんですが、総務省が出した家計調査というので、いわゆる世帯主が六十歳以上の無職世帯の家計貯蓄率の推移というデータが実はあるんです。これは、一九九七年はマイナス一〇%、要するに、貯金を崩すのが一割ぐらいで済んだということなんですが、二〇〇四年が三〇・二%、要するに三割、貯金を崩しているんですよ。

 六十歳以上というと、これはいわゆる年金世帯になるわけですよね。だから、決して年金でフォローできていないという実態もありますので、ぜひひとつこれは、やはり数字というのは大事ですから、ありとあらゆる角度からデータをごらんになっていただいて、格差社会は、余りそういうデータはない、ないというか、開いてないんだという感覚は、私は、早晩やはりこれは訂正をしていただいた方がいいんじゃないのかなということだけ申し上げておきます。これだけではありませんので、次に進めさせていただきます。

 そういう中で、二つほど、公平、不公平ということで例を挙げて申し上げていきたいと思うんですが、一つは、政府税調から出された資料によりますと、税源移譲による所得税、個人住民税負担増減額、夫婦子供二人の試算で、今回の所得税プラス個人住民税の負担は軽減されることになっておる、減額されることになっておる。そして、金額的には一万円弱、八千五百円ぐらいで、それほど多くはないんですけれども、しかし、今日所得格差が拡大をしていると言われている状況の中で、明らかに高額所得者優位の税制改正と言わざるを得ないということなんです。

 要するに、千二百万ぐらいを超える所得層は、夫婦子供二人だと、今の一万円弱軽減されていくというデータが出されたわけですよね。こういうことについて、なぜいわゆる高額所得者を優遇する、そういうような改正案が出てくるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

竹本副大臣 鈴木先生の、税源移譲によって所得税と個人住民税の負担が具体的にどう変わるのか、どうも聞いたところによると、一千二百万を超すと八千五百円ぐらい減税されている、こういうお話を聞いておられるということでございますが、三位一体改革の一環として実施いたしております所得税から個人住民税への三兆円の税源移譲に際しましては、納税者の税負担を極力変動させないという考え方でやりました。その結果、個人住民税及び所得税の役割分担を明確にいたしまして、個人所得課税の見直しを行うこととしたところであります。

 具体的には、個人住民税におきましては、応益性や偏在度の縮小といった観点を踏まえまして、御承知のとおり、税率を一〇%にフラット化いたしました。

 問題は所得税でございますけれども、所得再配分機能が適切に発揮されるように最低税率を五%に引き下げましたが、同時に、最高税率を三七%から四〇%に引き上げるなどを行いまして、より累進的な税率構造を構築することとし、両税の役割分担の明確化を図ることとしたところであります。

 その結果、個々の世帯における所得税、個人住民税を合わせた税負担の変動でございますが、独身世帯では税負担の変動はございません。ただ、夫婦子供二人世帯、いわゆる今鈴木先生がおっしゃったこの世帯ですが、給与収入が一千二百万円までの世帯には税負担の変動はないんですけれども、それ以上の世帯になりますと、八千四百円の減税が生じることとなっております。これは、我々は摩擦的なことと言っておるんですが、仮にこの一千二百万円世帯の減税がないようにプラマイ・ゼロにしますと、独身世帯に増税という現象が起こってくる。ちょっとそういうことで、ある程度はやむを得ないのかなというふうな感じを持っております。

鈴木(克)委員 きのう御担当に来ていただいて、その説明は伺っております。

 しかし、やはりこういうのを見ますと、なかなか国民感情からいうと、やはり高額所得者に対して国は優遇をしていくのかということになるわけでありまして、そういう目線で私は指摘をさせていただいたということでございます。

 それからもう一つ、公平公正という意味合いで、もう一点だけ類似というか、例題で出させていただきますが、タックスヘイブンなんですね。

 ここでライブドアの議論をするつもりは全くないんですが、堀江容疑者は関連会社の株式の売却で得た資金の受け皿としてタックスヘイブンに本店のある会社を利用したという報道がなされておったわけですけれども、個別の案件については守秘義務とかなんとかいうことで御答弁はいただけない、こういうふうに思いますけれども、課税当局は、いわゆるタックスヘイブンなど、国外に流れている資金をきちんとまず把握しておるんだろうか、このことについて御答弁をいただきたいと思います。

石井政府参考人 一般論でお答えさせていただきますが、私ども国税当局では、国外への資金の流れにつきましても、これを的確に、可能な限り把握をして、課税上問題がある場合には適正に課税をするということを基本にすべきものと考えております。

 具体的に、国外への資金送金など、海外取引につきまして、その把握がなかなか困難な面があるということは事実ではございますけれども、これを把握する手だてといたしまして、現在、平成十年四月に施行されましたいわゆる国外送金等調書の提出法というのがございまして、これに基づきまして、国外への送金あるいは国外からの送金の受領、これについて金融機関が調書を出さなくてはいけないという義務づけの制度がございます。

 これは、先生御承知のとおり、平成十年四月に外為法が大幅に改正されて、資金移動が自由化されました。これとあわせてとられた仕組みでございまして、一回二百万円を超える海外との送金もしくは送金の受領というものについて、金融機関に国税当局への調書の提出義務を課しているわけでございます。これは、調書の中には、氏名、住所あるいは送金額、口座番号等を記載することになっておりまして、金融機関で本人確認をした上で作成しているものでございます。

 したがって、こういう形で資料を収集するほかに、必要に応じて国内の関係当局との連携もとるなどして、あらゆる機会を通じて資料情報の収集に努めております。

 なお、我が国と租税条約を結んでいる国との間では、租税条約に基づく情報交換制度というものがほとんどの場合規定をされておりますが、その場合には、外国の税務当局からも資料情報を収集して、課税の適正ということを念頭に置いて努力しております。

鈴木(克)委員 今回の改正案に、情報交換規定に関する改正というのがあると思うんですが、この内容を御説明いただけますでしょうか。

竹本副大臣 租税条約上の情報交換規定によりますと、両締約国の税務当局は、税法の適正な執行のために必要な情報を国内法制の範囲内で交換することとなっております。

 また、近年、脱税等のいわゆる犯則事件調査のための情報交換の必要性に対する各国の税務当局の認識が、関心が一層高まってきておるわけでございます。

 ところで、我が国の現行法上、租税条約の相手国からの犯則事件のための情報提供要請があった場合に、我が国に課税利益がない限り、要請された情報の収集を行うことができず、相手国への情報提供が極めて困難となっておりまして、情報交換を重視する国際的な流れ、潮の流れに反しまして、我が国税当局に対する国際的信任が低下するおそれがあるわけでございます。

 これが現状でございますが、この現状に対処するために、租税条約の情報交換規定に基づきまして、条約の相手国から当該相手国の犯則事件の調査に必要な情報の提供の要請があった場合、これに応じて情報収集ができるよう、所要の措置を講ずることといたしております。

 なお、租税条約に基づく情報交換は相互主義が前提となっていることから、このような措置を講ずることによりまして、我が国からの情報提供要請の実効性も確保されるという効果も期待できると考えております。

鈴木(克)委員 次に、我が国の主要な国税局に国際化対応プロジェクトチームというのが設置をされておるというふうに聞いたんですが、このチームの成果はどんなふうに上がっておるのか、具体的に説明をいただきたいと思います。

石井政府参考人 今御指摘ございました国際化対応プロジェクトチーム、これは、国際的な資本移動の自由化を背景にいたしまして海外投資等が活発化しておりますので、国際的な租税回避スキーム、この実態把握と海外資産の保有などについて情報把握をすることを目的に設置しておるものでございます。現在、このチームは、東京、大阪、名古屋、関信の主要な四国税局におきまして設置されておりまして、合計で四十八名体制でやっております。

 具体的な成果ということでございますが、やや個別に関することになりますので、若干抽象的なことで申しわけございませんが、一つは、先ほど申しました国外送金等の調書、これが金融機関から年間三百五十万件ぐらい出てまいりますけれども、これの分析、検討をいたしております。それからさらに、海外に多額の金融資産等を保有しておられる方に係る各種の情報収集も行っております。

 このような情報の収集、分析を行いますほかに、みずからプロジェクトチームとしても調査に取り組んでおりまして、具体的な個別事例はちょっと申し上げづらいんですが、抽象的に申しますと、例えば海外居住を装って、海外に住んでいることにして租税回避をねらった事案を摘発したり、あるいは、リース取引等に絡む租税回避事案についても成果として出ております。

 本チームは、各国税局や税務署に別途三百人程度、国際税務専門官というものが配置されておりますが、そういうところに対しまして、その収集した情報あるいは課税した後のノウハウ、そういうものを伝えまして、各国税局あるいは各税務署において、その成果を活用して事績も上げておるところでございます。

 PTそのものとしての具体的な計数把握等はしておりません。

鈴木(克)委員 先ほど、一方で、格差社会ということで申し上げました。一方で、いわゆる金持ちが俗に言ううまいことをやって脱税をするというような、これはやはり絶対あってはならないことだというふうに思います。ぜひひとつ、先ほど申し上げましたように、やはり公平公正という原点というか視点というか、これを忘れずにしっかりと頑張っていただきたい、このように思っております。

 さて次に、年金について、事務費充当ということでお伺いをしてまいりたいと思います。

 このことは、私は十六年の予算で、本会議場で実は反対討論をしたわけですね。年金掛金ピンはね悪徳法だ、そして、年金掛金は年金支払いのために使ってもらいたい、これが年金を納めた人の思いだ、なぜそのお金を別途使うんだということで申し上げました。

 そのとき、国会もそういう流れの中で、今後年金掛金は年金支払いのために使うように努力をする、こういうことで翌年、たしか去年は九百億ぐらいに下がったんですね。また今度一千億を超えるんですか。だから、一体全体どうなっているんだ、こういう怒りの中で今から二、三御質問をさせていただきたい、このように思うわけでございます。

 十八年度の公債特例法にも、再び、三たび、年金保険料の事務費充当規定が盛り込まれておる。厚生保険特別会計の年金勘定の十八年度予算を見ると、十七年度の千五百九十二億円から千二百四十二億円へと、三百五十億円ほど少なくなってはいるものの、相変わらず資金が福祉施設費等のために使われておる。

 保険料の事務費等のために使われることについては、これまでもさんざん国会で取り上げられてきたけれども、改めて、十八年度では厚生年金及び国民年金合わせた事務費は幾らか、またそのうち幾らを保険料から充当することになるのか、いわゆる事務費の国庫負担分と年金負担分の内訳をお示しいただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 年金事務費につきましては、平成十年度以降、継続して年金保険料を充てることを可能とする特例措置を講じさせてきていただいたところでございますが、平成十八年度におきましても、現下の厳しい財政状況にかんがみまして、引き続き特例措置を継続するといたしているところでございます。

 御質問の平成十八年度予算におきます年金事務費でございますが、厚生年金、国民年金合計で二千八百三十六億円となっておりまして、このうち、特例措置によります年金保険料負担は一千四億円、国庫負担分は一千八百三十二億円となっております。

鈴木(克)委員 いわゆる年金保険料で負担する額が、先ほど申し上げたようにまた一千億円を超えてきておるということであります。

 年金保険料は十七年度から予算段階で不足が見込まれて、積立金から既に取り崩しが始まっておるということであります。十七年度及び十八年度の厚生年金積立金からの取り崩し額はそれぞれ幾らか、御答弁をいただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 厚生年金を経理いたしております厚生保険特別会計年金勘定におきます積立金の取り崩し額でございますが、平成十七年度予算で六兆五千三百十八億円、平成十八年度予算では四兆六千六百三十八億円となっております。

鈴木(克)委員 今言われたように、本当に年金財源というのが、いわゆる年金基金の財源が年金の貴重な財源になってきておるわけですよ。その中で、相変わらず事務費等をここから出していこうということなんですけれども、やはりこれはどう考えても、全額国庫で賄っていくべきではないのかな、私はこのように思っております。

 特例法の条文には「福祉施設費若ハ営繕費」というふうにありますけれども、福祉施設費は当然国庫負担になるというふうに思いますが、十八年度予算では幾らを福祉施設費に充当する予定なのか、また営繕費は幾らなのか、お示しをいただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年度予算におきます福祉施設費及び施設整備費の額でございますが、まず福祉施設費、これは年金相談とか被保険者の福祉の増進のための経費ということでございますが、平成十七年度に年金住宅融資事業やグリーンピアの事業を廃止したこと等に伴いまして、年金資金運用基金向けの交付金の計上がなくなったこと等がございます。こういったことから、年金保険料負担分といたしましては、対前年度マイナス四百二十七億円の一千七十五億円を計上いたしております。

 次に、職員宿舎建てかえ経費等の施設整備費でございますが、平成十七年度に引き続き宿舎の建てかえは中止いたしております。それとともに、修繕については最低限の補修に限定すること等によりまして、対前年マイナス二億円減の二十七億円を計上いたしております。

鈴木(克)委員 いずれにしても、繰り返しになりますが、やはりここのところはきちっと、一日も早くすっきりしていく必要があるというふうに思います。

 この政府から出されておる特別会計改革の工程表を見ますと、国民年金特別会計と厚生年金特別会計を十九年度に統合して、年金事務費の一部は保険料で賄うことを恒久化措置とする、こういうふうに書いてあるわけですね。

 これは、今まで、確かにこうして毎年毎年法案が出てくるものだから、まだチェックできたわけですよね。しかし、これで十九年に統合をして、いわゆる保険料で年金事務費を恒久化してしまえば、私は、こういう議論すらする機会が少なくなっていく、なくなるとは言いませんけれども、少なくなっていくと思うんですね。このような方針を打ち出したその経緯をぜひ説明していただきたい。

松元政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年度に国民年金特別会計と厚生保険特別会計を統合する方針を打ち出した経緯ということでございますが、年金事務費の費用負担の恒久的なあり方につきましては、昨年の国会等による御議論におきましても、社会保険庁改革の動向なども踏まえて今後検討していくといった御議論がなされているところでございます。

 また、特別会計改革の観点からも、財政制度等審議会の報告におきまして、「年金事務費はそもそも基本的に年金給付と密接不可分なコストであり、保険料を充てることにより給付と負担の関係がより明確になるというメリットもあることから、他の特別会計における事例等も参考にしつつ、受益と負担の関係の明確化や区分経理の厳格化の観点も踏まえ、恒久的な在り方を検討すべき」という御指摘をいただいているところでございます。

 こうした中で、社会保険庁改革におきましては、平成十八年度中に、年金運営会議の設置や特別監査官の設置等、外部専門家の登用によります意思決定機能や監査機能の強化などを行うことが予定されておりまして、これらの取り組みにより、適正かつ効率的な事業運営を確保することとされているところでございます。

 その上で、社会保険庁改革の一環といたしまして、平成十九年度から、受益と負担の関係をより明確化する観点から、年金事務費の一部に保険料を充てる恒久措置を導入するといたしておるところでございます。

鈴木(克)委員 本当にむなしくなりますね。我々は何のために毎年毎年こうやって繰り返して議論をしてきたかということですよね。

 もう一遍申し上げますと、年金掛金は年金給付のためだけに使ってもらいたい、これは国民の、本当に、思いですよ。だから、いいじゃないですか、一般会計からちゃんと見れば。何も年金掛金にこんな、しかも恒久化すると。合わせるというから、ああ、これはいいことかななんというふうに思っておったら、何のことはない、矢印の中にちゃんと書いてあるわけですね、年金事務費の一部は恒久化する、保険料で賄うことをですよ。

 これは本当に、何遍言っても聞かないということであれば、これはもう政権交代をしてひっくり返す以外ないのかな、本当にそう思いますよ。自民党の皆さん、しっかりこれをチェックしてくださいよ。いいですか、年金掛金ですよ。年金掛金は年金給付のためだけに使ってもらいたい、これは、国民、はっきりしておるじゃないですか。なぜ事務費なんですか。しかも、これは恒久化しようというんですよ。まあここで終わっておきますけれども、私も血圧上がってもいけませんので。いや、本当にもう泣けてくるわ。これだけは一つくどく申し上げておきます。

 さて次に、先ほど三谷議員から、余剰金、積立金の話がありました。私が二十一日に申し上げたのが一の矢と仮に言うと、三谷議員のが二の矢、そうすると、今度私が申し上げると三の矢ということになって、四の矢、五の矢とどんどん続くと思うんですけれども。そうはいっても、あと五分ぐらいしか時間がありませんので、結局、この積立金、余剰金ということは、特別会計の見直しをどこまでやるのかということに尽きるわけですよ。

 そこで、私は、個々の件はかなり三谷議員がやってくれたので、あれは申しませんけれども、もう一度これに戻ります。

 財政制度審議会の建議、ここに特別会計の見直しについてどういうふうに書いてあるかということです。

 これは去年の十一月二十一日に出た建議ですけれども、

 特別会計については、一昨年に設置された特別会計小委員会において見直しの検討が進められ、これまで平成十五年、平成十六年の二回にわたり、重要な提言を行ってきたところであるが、これら提言に対するこれまでの関係省庁の検討状況を見ると、特別会計個々の運営については一定の見直しが図られてきたものの、区分経理をする必要性等の観点を踏まえた制度の在り方そのものに立ち返った改革が進んでいるとは言い難い状況である。

  この状況を踏まえ、本年の審議においては運用の改善にとどまることなく、制度の根本に立ち返った検討・審議を進め、今般、「特別会計の見直しについて 制度の再点検と改革の方向性」

ということで取りまとめた、こういうふうにあるわけですよ。

 これは本当に、財政審もこれほど言っておるじゃないか、なぜもっと早く進まないのか、こういうことを言っておるわけでありますが、私は、先ほどのあれで、松元主計局次長さんがおっしゃった話について、細かいことを一、二聞いて終わりたいと思うんですけれども、端的に言って、例の周辺整備資金の残高、これは今現在幾らあるのか、十五年、十六年、十七年、十八年ということで、これをちょっと教えていただけませんか。わかりますか。

竹本副大臣 周辺地域整備資金は、平成十五年の制度改正によって設置されておるものでございますが、制度改正前の電源特会の立地勘定におきましては、原子力発電所等の建設計画がおくれまして財政需要が後ろ倒しになったことから、本来、発電所等の立地に伴い発生する財政需要に充当すべき資金が、毎年度、剰余金といった形で計上されてきたところであります。

 こういった状況にかんがみまして、剰余金のうち、原子力発電所等の建設に伴って発生する交付金等の将来の財政需要に対応すべき資金は、本年度に使用し得る通常の意味での剰余金と明確に区別いたしまして、周辺地域整備資金という透明な形で管理いたしました。

 それで、結局、資金の額でございますが、そういう経緯を経まして、平成十五年度で二百六十億、十六年度八百八十一億、十七年度一千七十億、十八年度一千百二十五億となっております。

鈴木(克)委員 結局、どんどんふえていくわけですよ。十五年度が二百六十億、十六年度が八百八十一億、十七年度が千六十九億、十八年度が千百二十四億、本当に、なぜこんなにどんどんどんどんたまっていくのに、これだったらやはり税を安くして、それで、これから人口も減っていくんですよ。こんな、原発がどんどんできていくということじゃないんじゃないかと私は思いますよね。

 いずれにしても、それではもう一つ、ちょっと視点を変えて、関連で伺っておきたいんですが、先ほどの政府の特別会計の改革案、これによりますと、十九年度までに電源開発促進対策特会と石油エネルギー需給構造高度化対策特会を統合して新しい特別会計をつくるんだ、こういう計画になっていますよね。では、そのときは勘定としてどういう勘定を設けられるのかということですよね。それはいかがですか。

谷垣国務大臣 昨年十二月二十四日に行政改革の重要方針というのを閣議決定したわけですが、その中で、電源特会、それから石油特会は、両特会を統合する、それと同時に、資金の流れの透明性を確保する観点から、勘定を設けて区分経理を行う、こういうふうになっているわけでございます。どういう勘定を設定するのかというのは、具体的な制度設計はまだこれからでございまして、現段階において内容が固まっているわけではございません。

 ただ、両特会の統合のメリットをどういうふうに発揮していくかということ、それから資金の透明性ということをどう確保していくのかというようなことが一番、考える上での基本的な考え方ではないかと思っておりますが、こういうことで今後検討してまいります。

鈴木(克)委員 最後の質問にさせていただきますけれども、特別会計改革というと非常に聞こえはいいんですよね。だけれども、特別会計を統合しても、今言った勘定を残したのでは統合の意味はないわけなんですよね。そういう意味でも、電源特会、石油エネルギー特会の統合では勘定の統合も絶対やるべきだ、このように思っております。

 ところで、この電源特会及び今後統合する石油エネルギー特会には、貸借対照表及び損益計算書の財務諸表が特別会計予算書に添付されていないわけなんですね。なぜこれは添付されていないのか。決算書のみならず予算書にも重要な書類は添付すべきではないか、このように思いますが、これについて御答弁願います。

竹本副大臣 電源特会は、特定の歳入をもって特定の歳出に充てまして一般の歳入歳出と区分経理を行ういわゆる整理区分特別会計でございまして、企業特別会計や保険事業特別会計のような、みずから事業を実施する特別会計とは性格が異なります。したがって、これまで、予算書や決算書に貸借対照表等の財務諸表を添付しない取り扱いとされてきたところでございます。

 特別会計の会計情報の開示につきましては、行政改革の重要方針におきまして、特別会計の会計情報については、その開示の内容及び要件を統一的に明示することとされていることを踏まえまして、財務諸表の添付の要否につきましても、個別の特別会計の特性に応じて、鋭意検討してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 以上で終わります。

 いずれにしましても、特会問題についてはまた、くどく、しっかりとやらせていただこうと思っていますので、よろしくお願いします。

山本(明)委員長代理 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 民主党の三谷議員、そして鈴木議員に続きまして、質問をさせていただきます。

 今回の税制改正、私は先日、代表質問もさせていただきまして、谷垣大臣にも御答弁をいただきましたので、それに続きましてということになります。

 そのときにも申し上げましたように、一言で申し上げると、今回の所得税に関しての抜本的見直しというのは、そもそも抜本的見直しに値しないし、あらゆる意味で、結局、本当の改革の先送りにすぎない、棚上げをしているということを簡単に申し上げたわけでございますけれども、今回の税制改正に関しては、個人的な思いもございます。

 私は、以前大蔵省におりましたので、主税局にもおりました。それはちょうど平成七年から八年の二年間でありまして、私の直接の上司は、今大臣の後ろに座っていらっしゃる秘書官でいらっしゃいまして、税制のエキスパートでいらっしゃると思いますけれども……(発言する者あり)遠慮はもちろんしないですよ。

 当時はとにかく主税局というのは、イギリスのエコノミストという雑誌に主税局は北朝鮮であるというふうに書かれたことは、大変鮮明に覚えているわけであります。それほど主税局はかたい、とにかく歳入第一。一、二に歳入、そしてほかは何もないと。結局何を変えるのも嫌がるという意味で、主税局は北朝鮮というふうに言われていました。

 実際、本物の北朝鮮も拉致された人を少し帰すぐらいですから、現在の主税局というのはもっといろいろな意味でよくなっているんだろうというふうに思いますし、そこは、谷垣大臣のもとでさまざまな改革をしようとしている姿勢は、もう既に外にいる私にも伝わるところがございます。

 ただ、結局、抜本的見直しというのも、当時から言われているような論点と余り変わっていないんですよね。私がいたのは十年前です。それからしばしば政府税調で同じことが議論され続けて今に至る、そのような論点がたくさんあります。結局、抜本的見直しをするする、検討すると言いながら、ずっと検討だけを続けていて、手をつけないで棚上げをしているという歴史なんじゃないかなという思いがあります。そういう意味で、決して小泉改革だけではなく、今までの少なくとも十年以上の自民党政権というものが、この税制に関しても、さまざまな抜本的な本当の改革を棚上げしてきたという思いがまず最初にあるということを申し上げたいというふうに思います。

 さて、最初に定率減税の件でありますけれども、代表質問でもお伺いをしました。それに若干、また追加的に質問をさせていただきたいと思います。

 私が、最後の方で、徹底的な歳出削減もできないし消費税の増税も見送りをする、そういう自民党政権は結局何もしない、先送りで、改革というのは偽装じゃないかということを申し上げましたが、そのときに、じゃ、民主党も増税したいのかというやじをいただきましたけれども、民主党としては、もう既に、昨年のマニフェストに限りませんが、その前からずっと申し上げているように、徹底的な歳出削減なんて当たり前だ、その上で必要に応じて増税をするんだと。例えば、民主党の場合、具体的に示しているのは年金を一元化した上での基礎年金の話でありますけれども、そういったところで、必要であれば消費税も税率を上げるというようなことは以前からお示しをしているところであります。

 例えば、民主党の昨年のマニフェストにおきましても、歳出削減において、三年間で十兆円のカットをするということを示しました。自民党側の人、与党側からは、またそんな無謀なことはできるはずがない、野党だからいいかげんなことを言っているというようなことも言われた記憶がありますけれども、以前、ちょうど私が大蔵省にいたときも、税調会長でいらっしゃった加藤寛、現在千葉商科大学の学長さんに、やはり財政構造改革の観点から民主党の十兆円カットというのはぜひやるべきだというありがたいお言葉もいただいております。

 とにかく、そういった歳出カットをするのであれば、例えば消費税とかも増税をある程度先延ばしができるかもしれない。ですけれども、先ほどから三谷議員や鈴木議員が個別に主張しておりますように、まだまだ今の政権与党における歳出削減努力は全く足りない。そういった中で、ただ一方で、財政が非常に危機的な状況にあるという認識は私も共有するものでありますので、そうすると何らかの増税はやむを得ないだろう、まさに今の自民党政権ではある程度増税するのはやむを得ないだろう、そういう意味で私は代表質問でも申し上げたわけであります。

 さて、そこで定率減税でありますけれども、その前提として、税調答申、それも古いものをちょっと読んでみました。平成十二年の政府税調の答申に、「わが国税制の現状と課題 二十一世紀に向けた国民の参加と選択」というすばらしいタイトルの答申を政府税調が出していらっしゃいます。これは今から六年前になるわけですけれども、そちらもまた後でも引用させていただきたいと思いますが、その答申にも「抜本的改革の視点」という項目があって、租税というものは社会の構成員である国民皆が広く公平に分かち合うものであることを改めて認識することが出発点であるという、ある意味で当たり前ではありますけれども、それがまさに出発点だということが強調されているわけであります。

 午前中からの議論でも、大臣の答弁でも、税制全体を考えなきゃいけない、消費税だけではなくて、所得税、消費税あるいは資本に対する課税、まさに税制全体のバランスを考えなければいけないということを大臣御自身もおっしゃっておられているわけですし、それは政府の方針としてもずっと前から言われている方針であったと思うわけですね。そういう中で、例えば消費税について、私ちょっと後でも議論させていただきますけれども、消費税というのはまだまだ税率が低い、例えばヨーロッパに比べると税率が低い。あるいは、直間比率という観点からも、まだ消費税というのは税率は十分ではないんじゃないかという議論もありまして、そこは政府税調でも、ずっとそういうことをにおわせるようなことを答申にも書いていらっしゃるわけです。

 今回、財政構造改革をしていくという中で、なぜ消費税ではなくて所得税の見直しだけをしたのかということを最初にお伺いします。

谷垣国務大臣 今、田村議員がおっしゃいましたように、政府税調等では、相当長い期間をかけて、大きな構造変革にどう対応していくかという税制の議論を積み重ねていただいているということはそのとおりだろうと思います。

 私は、その大きな流れは、一つは、先ほどから申し上げているように、少子化による人口減であり、グローバル化といったようなことではないかと思うんですが、それをどう実現していくかにつきましては、私どもは政府・与党の整理に従って議論を進めているわけでございます。

 最近においては、与党税制改正大綱で、十七年度、十八年度、これは三位一体改革を議論してまいりましたので、三位一体改革の中で税源移譲を行っていく。これは所得税から地方住民税である。その前提として定率減税の廃止も行わなければならないということで、消費税ではなく所得税に取り組んでいるわけでございます。

 それから、与党税制改正大綱の整理は、十九年度を目途に、年金、医療、介護等の社会保障給付などに要する費用の見通し等を踏まえつつ、消費税を含む税体系の根本的改革を実施する、こういうふうになっているわけでございまして、こうした方針に沿ってことしの形を出させていただいた。

 今後、これもたびたび申し上げているところでありますが、ことしの年半ばを目途に歳出歳入一体改革の選択肢と工程表を示すということでございますが、できるだけ具体的な議論をやって、国民的な議論を喚起していきたい、このように思っております。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

田村(謙)委員 今、ちょっとお伺いしていると、政府・与党の税制大綱、それはもちろん存在は知っておりますけれども、政府・与党、その中でも財務大臣のお立場なわけでいらっしゃいますから、決定に相当関与していらっしゃる、ある意味ではそこが中心的な役割を果たしていらっしゃるだろうと思うんです。

 若干言葉をかえて、また繰り返しますが、結局税制全体を見直さなければいけない、それはまさに所得、消費、資産、さまざまなバランスをとりながら、全体を見直さなければいけないということはずっと言われてきていますね。大臣も、既に財務大臣になられて三年目でいらっしゃいますし、ずっと前には政務次官もやっていらっしゃった。

 そういった中で、与党の税制大綱が十九年度を目途にとなっているからというのは、それは御本人が、まさに大臣御本人が十九年度で十分だというふうに考えていらっしゃるということですか。

谷垣国務大臣 十九年度でいいかということよりも、一つは、やはり三位一体改革というものをスケジュールにのせまして、それはやはり所得税、地方住民税だということがございました。それを十七年、十八年度でやろうということでございました。

 十九年度を目途にと、もっと早くやれということかもしれませんが、これは、年金改革をやりましたときも、十九年度を目途に、消費税を含むということになると思いますが税制改正をやって年金の財源も確保しろ、こちらはどちらかというと社会保障全体を見直していく中での税制を考えろということだろうと思います。

 そういう仕分けのもとに、今前へ進めようとしているわけであります。

田村(謙)委員 今お伺いしていると、結局、三位一体改革が先だというような、所得税だけではなくて、税制全体の抜本的な見直しというのはその後なんだというふうにお答えになっているようなイメージを受けます。

 若干先に進めますが、今回の定率減税の廃止、さまざまな観点がありますけれども、代表質問で申し上げたように、やはりサラリーマンねらい撃ちではないかという思いがどうしても払拭できないんですね。

 先ほどから、自民党議員の方からも、そして民主党議員からももちろん、格差社会という言葉がたびたび引用されておりますように、まさに格差が拡大してきた。それは、代表質問で申し上げたように、格差自体がおかしいと、それを全部否定すると社会主義になりますので、もちろんそういうことを申し上げているわけではありませんが、格差が拡大していく中で、例えば所得でいうのであれば、低所得者、中所得者に対してどういった配慮をしていくかということが非常に重要になってくるんだろうというふうに思います。

 そもそも、私は、大蔵省にいたころは、答申というのは役人の文章で、それも、自民党政権が方針を示さないからそのもとにある主税局の人も結局あいまいな言葉しか書けない、非常に限界がある答申ですので、当時余り読んでいませんでしたけれども。今読んでみて、ただ、そういう答申であっても、もう五年、十年前から、同じことをずっと何回も何回も言っているわけですよ。それはもう、ある意味で、政権を担っている自民党議員の方々へのメッセージなんじゃないかなと、最近、私も一議員として思ったりもするんですが。

 そういった中で、結局定率減税というのはいずれは廃止する、確かにそうはなっています。ですけれども、結局、私が先ほどから申し上げているのは、とにかく今、財政構造改革の中で税収をふやさなきゃいけない、その状況は私も十分わかりますけれども、三位一体改革というのは、それはもちろん当然ですよ、地方分権を進めるなんというのは当たり前のことで、それを否定するつもりは何らないし、むしろ民主党側では、それもまだまだ甘い、遅いと、いろいろ、さまざまな権限移譲、税源移譲も甘過ぎるという主張を展開しているわけです。三位一体改革を今やっているんだから、それで定率減税が先でほかは後なんだというのは、結局、単に三位一体改革を理由にして、取りやすいサラリーマンから取る、いろいろと政治的にややこしいほかの税、確かに法人税はさわっていますけれども、ややこしいような消費税はさわらないというふうにしか聞こえないんですけれども、その点は大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 それは、決してそういうことではありませんで、定率減税廃止がサラリーマン増税にしか見えないというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど、私がかつて大蔵省で政務次官をやっていたという御指摘もあります、まさに私が政務次官をやっておりましたときに、定率減税が議論されて、当時の経済状況をどうしようかということでやったわけでございます。

 三谷委員もよく御存じなんですが、私はあのとき宮沢大臣にお仕えしておりまして、この大きな減税を大臣はどう決断するのかなと思いましたら、やりましょうとおっしゃっておやりになって、恐らく宮沢大臣のお気持ちもそうだったと思いますが、かなりこれが思い切った減税であるだけに、日本の財政構造をゆがめたというと、私もその責任者の一人でありますからいけませんが、やはり経済がある程度順調な足取りをしたときにはもとに戻さなければいけないという思いがございまして、これをもとに戻さないとなかなか所得税の改革であるとか次の段階には入っていけないな、消費税についても同じような思いがございました。

 ですから、田村さんと定率減税というものに対する認識が、あるいは若干違うのかもしれません。私はそういうふうに見ておりましたので、今回のようなことはしかるべきことだろうと思っているわけであります。

田村(謙)委員 大臣がおっしゃるように、確かに認識が、若干か随分か、多分随分違うんだと思います。

 前からよく言われているように、代表質問で申し上げましたけれども、結局、よくクロヨンとかトーゴーサンピンとか言われていますけれども、給与所得というのはガラス張りで、一方で事業所得のようになかなか所得の捕捉が難しい、それは税制の中でもそういう議論はありますし、年金の一元化の中でもそれが障害になる。それこそ、自営業者の所得の捕捉が難しいから結局全体の一元化は無理なんだ、なかなか困難だというようなことをある意味で認めていらっしゃるわけですけれども、そこを結局放置したままで、やはり取りやすい給与所得、ガラス張りの給与所得だけをターゲットにしていくというのは、私はどうかなと思うんですよ。

 あと、日本の所得税の負担がほかの先進国より低いという議論があります。それは、私、全体としては確かにそうかもしれないというふうに思ったりもしています。いまだにある主税局さん作成の資料というのは、十年前、私も作成側に回っておりましたのでわかりますけれども、ただ逆に、そのいいかげんさというのもある程度知っているところがございまして、特に、まさに格差が広がっているという中で、あともう一つ、税収をふやさなければいけないという観点の中で、とにかくまさに定率のものを廃止する。低所得者、中所得者、高所得者、ある意味では低所得者、中所得者を直撃をするような、そういう定率減税の廃止などよりは、それが例えば高所得者、より所得再配分機能を強化するという観点も含めて、それこそさまざまな控除とかを見直すことによって、税率は別に変えなくても高所得者に対する課税ベースを拡大していくというような方策というのは、私は十分考えられると思うんですけれども。

 もちろんそれは控除を削るだけじゃなくて、ほかに、細かい議論も若干させていただきますが、それを結局、とりあえず廃止しやすいものから廃止をしてというのは簡単なので、簡単なところからやるというのはある意味で基本なのかもしれませんけれども、結局それだけにすぎないんじゃないかというふうに思いますが、そこはいかがですか。

谷垣国務大臣 定率減税は、あのときの法律でも抜本改革までの暫定的措置として位置づけられていたわけですから、それをもとに戻すというのは、ほかのやりにくいことを後に回しておいてということには必ずしもならないと思っております。

 ただ、委員がおっしゃるように、控除等々の問題は、やはり労働の形態、家庭の形態などが変わってきておりますので、それを前提にやはり見直していく必要というのは、私はあると思います。これはこれからまた議論をしなければならない課題だと思っています。

田村(謙)委員 最初に申し上げましたように、結局抜本的見直しに値しないというふうに私は考えておりますので、だからそういう意味で、大臣がおっしゃったように、抜本的見直しの前に定率減税を廃止しなければいけないという理屈は、私はそれで納得するわけじゃないんですけれども、若干具体的に、所得税の控除についてちょっと議論をさせていただきたいと思います。

 まさに去年、結局所得税の抜本的見直しというのも、消費税がいじれないと。それは小泉首相が自分の任期中は消費税をいじらないんだと言ったそれだけだというふうに私は理解をしていますけれども、結局それはそれで、ではとにかく所得税を見直そうという中で、昨年政府税調では、まさに一通り、それもかなり昔からの議論の焼き直しにすぎないものが多いですけれども、一通りの議論というものはしていらっしゃったんだと思います。我々民主党でも、民主党の税制調査会でかなり勉強をさせていただいて、ただ、その後選挙があって、私もかなり記憶が怪しいんですけれども、ある程度の知識の中で議論をさせていただきたいと思います。

 控除、確かにこの数年間で幾つかの控除を見直したというのは、何もしないよりはよっぽどいいのは当然ですので、そういう意味では若干の前進だとは思いますけれども、ただ、まだまだ見直さなければいけない項目があるというのは、昨年の政府税調での検討項目を見れば、まだ結局手つかずで終わってしまっているというものがたくさんあると思うんですね。

 その一つが、まず控除。控除の中でも、例えば配偶者控除、これもずっと議論をされています。

 それで、社会的状況が変わってきた、そういったデータも、財務省がつくっていただいた資料を見ました。今は共働きの世帯が圧倒的に多い。やはり昔のようにとにかく専業主婦の世帯が多いという時代はとっくに終わって、たしか共働き世帯が専業主婦の世帯よりも倍以上あるというようなデータを見せていただいた記憶がありますけれども、そういった中でも依然として配偶者控除をずっと維持している。確かに、配偶者特別控除をなくしたというのは、それはそれでいじったことにはなりますけれども、そもそもの配偶者控除自体をどうするか、この議論も本当に十年ぐらい前からずっとされていた議論だと思います。

 そもそもの立法趣旨が、専業主婦のいる家庭は税を負担する能力が低いとか、あるいは専業主婦の内助の功を評価すべきとか、そういったような趣旨だという話も聞いていますけれども、そういった考えがそもそも今なかなか通用しない。逆に、子育てでお金がかかって大変だからやむを得ず奥さんが働いているというような家庭もふえてきている。そういった中で、結局共働きの世帯もふえてきているなと思うんですけれども、配偶者控除について今回見直しを行わなかった理由はなぜですか。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、配偶者に係る控除につきましては、平成十五年度税制改正におきまして、経済社会の構造変化に対応して個々人の選択に中立的な税制を構築していく、こういう観点から、配偶者特別控除、いわゆる上乗せ部分を廃止しているところでございます。

 そして、十八年度の税制改正におきましては、先ほど大臣から御答弁がございましたように、税源移譲に伴いまして個人所得課税の見直しが行われることになるわけでございますけれども、税源移譲が国、地方の税源配分の変更である点を踏まえまして、個々の納税者の税負担の変動を極力変動させない、こういった観点を徹底いたします一方、所得税を累進化する、他方で個人住民税をフラット化する、そういうことによりまして所得税、個人住民税両税の役割分担を明確化して、国、地方を通ずる個人所得課税のあるべき姿と整合的な制度とするために、所得税並びに個人住民税における税率構造の見直しを基本とすることとしたところでございます。

田村(謙)委員 余り直接的な御回答はいただいていないような気がしますけれども、結局個々の納税者の負担を変えないと。それは、今の個々の納税者の負担が一番妥当なんだということであれば理由になると思いますけれども、変えないというのが単に政治的な理由なのであれば、というか、まさに個々の税負担を、納税者の負担を変えないという観点もあるとおっしゃっていましたよね。それも、まさに配偶者控除の場合は、結局専業主婦の家庭というものをある意味で優遇することになるわけですよね。(発言する者あり)

 先ほどからかけ声いただいていますけれども、それに、まさに今この委員会が、小泉シスターズの方がたくさんいらっしゃるのが象徴していらっしゃるように、女性の社会進出が本当に進んできている。そういう中で、逆に私なんかよりもそちらの女性の方々に言っていただきたいんですが、今のままの税負担、結局共働きの世帯というのは負担はより重いのはいいということなのか、ここは財務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 これは今主税局長が御答弁申し上げたことでございますが、いろいろ議論していかなければいけません。ただ、確かに、今おっしゃったように、女性の社会進出、そして配偶者も職を持っている方が非常にふえてきているということをどう取り入れていくかということは、さらに議論を深めていく必要があると思います。

田村(謙)委員 さらに議論を深めるというのは、先ほどから申し上げているように、かなり深い議論をしているわけですよね。大体、最近ここ数年の当たりさわりのない政府税調の答申であっても十分にいろいろ論点が大体並んでいて、先ほど申し上げたように、共働きの世帯の方がはるかに多いという社会状況はもう確定をしているわけですよね。

 そういう中で、さらに深めると。あらゆる見直しを先送りしているものについて当てはまるんですけれども、結局今後さらに深める議論というのは一体何なのか。結局何もないんだろうと思うんですけれども。

 手が挙がったので、ではちょっと御答弁お願いします。

福田政府参考人 くどいようでございますが、今回の措置というのは、先ほど別の議員からの御指摘もございましたように、国、地方の税源移譲でなぜ変動するのか、不公平じゃないか云々という議論を避けるということを主眼としたのは事実でございます。

 それから、配偶者控除でございますけれども、配偶者控除について、議員御指摘のように、これまでいろいろと議論がございました。結婚によって担税力がどんな影響を受けるのかとか、個々の世帯によって区々であって一律に論ずることはできないわけでございますけれども、夫婦のあり方、あるいは配偶者の家事労働の経済価値、財産制度、配偶者の就労に対する中立性の確保といった観点を踏まえて検討していかなきゃならないと私どもは感じております。

 いずれにしても、所得税は、釈迦に説法でございますが、家族のあり方、人々の働き方といった、人の生き方や価値観に密接にかかわる税でございますことから、今御議論をしていただいております配偶者控除も含めたこの諸控除を初めといたしまして、負担構造見直しには何よりもまず国民的な議論を十分に尽くすことが不可欠でございまして、今後、税体系全体のあり方を総合的に議論する中でさらに議論を深めてまいりたい、かように考えております。

田村(謙)委員 余り明確なお答えをいただかなかったような気がするんですが。別に私は主税局の回し者ではありませんので、別に代弁というわけじゃなくて、まさに政府税調、そこは小泉総理が諮問した政府税調において、抜本的見直しのための論点として、去年の夏にも、控除についてはそれぞれについてもう十分に論点というのは出し尽くされていただろうと私は思いますよ。

 そういった中で、結局それが全然できなかった。その理由づけも結局事務方の方がさせられちゃうので大変気の毒だと私は思っていますけれども、そこは、本当の抜本的見直しというのは、それは税制に限りませんけれども、とにかくやはり政治、その政治というのは当然政権です、政権のそれぞれの、首相なり大臣のリーダーシップがないと、結局できないわけですよね。そこは別に財務省の官僚の方々が主導してやるとかそういう話じゃなくて、まさに、税制であれば大臣がリーダーシップを持って、しっかりとした御見識、方向性を持ってリーダーシップを発揮していく。そうじゃないと、結局今回のように、さまざまな棚上げの理由はつくんでしょうけれども、先送りと。

 さらに深く検討するというのは何を深めなきゃいけないのか、結局明確なお答えが事務方から出るはずはないので、大臣は、大臣ももう三年間やっていらっしゃって、あらゆる角度から御検討は十分事務方からも説明を聞いていらっしゃると思うんですけれども、今後さらに議論を深めるというのは、一体、具体的にどういうことですか。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、ことしの所得税の制度改正におきましては、三位一体の税源移譲を中心に行うというふうに考えまして、それの前と後で基本的にその税負担を変えないということを一番の旨として行いましたので、控除等の問題は今回は触れていないということでございます。

田村(謙)委員 先ほどの議論に戻ってしまうので、ちょっと先に進めますけれども、結局、深く議論するとかというのも、御見識がないのかなと思わざるを得ないですよね。そこはやはりしっかりと、もうあれだけ検討しているわけですから、そこは大臣のリーダーシップを発揮していただきたいなというのは、例えばの話で今この配偶者控除についても議論をさせていただきましたけれども、そういった意味で、ちょうど今、先ほども申し上げたように、この財務金融委員会は自民党側に女性の議員がたくさんいらっしゃるわけですから、ぜひとも大臣のしりをたたいていただいて、配偶者控除についてもしっかりやってくれというのはしりをたたいていただきたいというふうに思います。

 さて、次に扶養控除についてお伺いをします。

 これも多分同じ回答しか返ってこないと思いますけれども、代表質問でも申し上げました、とにかく今、人口減少社会にいよいよ突入をして、結局、今までの政府・与党の施策というものが、子育てやあるいは少子化対策というものが全然効果を発揮していないというのは、ある意味で数字を見れば明らかだと思うわけですけれども、そういった中で、今はもう待ったなしだ。実際、さまざまな少子化対策のメニューがあります。どの施策がどれだけ効果があるかというのは、やってみなきゃわからないし、それはやっても、それぞれの施策が実際どれだけ少子化対策になったのかというのは、効果というのは明確に検証できないだろうというふうに思います。今の日本の状況というのは、少子化対策についてとにかくできることは何でもやる、そういったスタンスでもなければ、ますます人口は減る一方、子供は減る一方だという認識を私も、そして民主党全体も持っているわけであります。

 そういった中で、扶養控除というような中途半端な制度、それはなぜ中途半端なのかと申し上げると、結局、所得控除というのは金額が同じなわけですから、ある意味、高所得者に有利になりますよね。高所得者がそれこそ高い税率が適用されますので、控除額掛ける税率が結局その納税者の払う税金の額なわけですから、所得控除というのは結局、高所得者に有利に働く。そういう中途半端な所得控除よりも、民主党の場合には、一番わかりやすい手当にすべきだ、それが一番効果があるだろうということを強く主張しているわけであります。

 それに関して、仮に手当というのが、今歳出削減をやっていると、今の自民党政権というのはなかなかそのめり張りをちゃんとつけられない、とにかくほぼ一律に歳出削減をしていく、そういう中で、後で時間があったら触れますけれども、結局たばこ税増税のように、公明党さんが児童手当を何とかしろというのでやむを得ずたばこ税を増税するといったようなことはありますけれども、基本的には、人口減少時代にとにかくできることは何でもやるというような、明確なスタンスを持たないまま、そうすると、今の自民党政権ではなかなか手当をふやすとかは難しいんだろうなというのは思いますよ。

 ですけれども、例えば税制の中で、先ほど申し上げたように、所得控除というのは高所得者に非常に有利に働く。それよりも、税額控除の方がまさに中低所得者により配慮が厚くなるんじゃないか。そういった意味でも、税額控除の方が効果的なんじゃないかというふうに私は考えるんですけれども、大臣はその点はいかがですか。

福田政府参考人 少子化対策として、子育て家庭の経済的支援のあり方につきまして、税、財政両面でさまざまな御議論があることは十分私どもも承知しております。

 税制面について申し上げますと、現行の扶養控除は、扶養家族の人数などといった世帯構成に応じた税負担能力、いわゆる担税力の調整の観点から所得控除として設けられているものでございます。他方、政策的に子育てを支援する等の見地からは、現行の所得控除にかえて、今御指摘がありましたように、財政的支援という意味合いが強い税額控除という形態をとることも考えられるとの指摘も出されているところでございます。

 さらに、所得控除なり税額控除の場合には、これは納税をしていただいている方にしか効果が出ませんので、直接的に財政的な面で対応をとるべきだ、こういう御議論があるのも承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした問題につきましては、少子化対策全体の議論の中で、これまでの施策の効果を十分に検証した上で、諸外国におけるさまざまな少子化対策に関する政策手段の実施状況、政策手段相互の関係、そして現下の厳しい財政事情等も踏まえながら、さらに今後ぜひ議論を深めていっていただきたい、私どもも議論を深めていきたい、かように考えております。

田村(謙)委員 今、主税局側から御説明がありましたけれども、また議論を深めるという話がありましたけれども、もう十分に政府税調でも議論をなさっていますよね。それぞれ、税額控除、所得控除のさまざまなメリット、デメリットというのは昔から言われている話ですし、少子化対策全体の話というのはそのとおりで、そこはまさに主税局側から財政の手当てを含めた議論が必要だ。まさに、結局そういう全体の議論というのは財務大臣がしっかりとお考えにならなきゃいけないことだと思うんですけれども、そういった中で、大臣の個人的なお考えをお聞きしたいんですけれども、いかがですか。

谷垣国務大臣 私も、子育てや少子化対策との関係で税をどうしていくかということを考えますと、今委員がおっしゃったように、扶養控除というような制度よりも、税額控除という方がやはり実態に即したものになるんではないかなということは思っておりまして、いろいろな控除を整理しながら税額控除等々を考えていくというのが今後の議論の方向だろうというふうに思っております。

田村(謙)委員 今後の議論の方向とかおっしゃっていますけれども、税額控除の方がいいということであれば、やればいいんじゃないですか。議論はもう十分にやっていらっしゃって、それは私も存じ上げていますし、大臣はもっとよくお詳しい中で、税額控除の方がいいということであれば、それ以上議論というのは、何を議論するんですか。

谷垣国務大臣 今まで議論はたくさんあるとおっしゃった。確かにあるんですね。ただ、去年六月の論点整理も、中長期的なものという表現もございますし、今の控除の問題も、児童手当との関係をどうするかとか、社会保障制度との関係というようなことがありますから、そのあたりをよく整理していく必要があろうかと思っています。

田村(謙)委員 先ほどからの繰り返しで恐縮なんですけれども、あらゆる見直しに共通するんですが、結局、大体議論は尽くされていますよね。特に扶養控除とか配偶者控除というのは、先ほど主税局長さんは各国の状況もというふうにおっしゃっておられましたけれども、各国の状況はもう十分に政府の方でも調べていらっしゃるわけで、そんな言いわけは別につけなくていいと思います。

 ともかく議論は尽くしている。事務方はそういう意味で十分、議論の材料、そしてその方向性を含めてかなり尽くしていると思いますよ。それをなぜ、政府税調の答申ではあいまいな、今後も議論を深めるとか、先ほど主税局長がおっしゃったような言い方になるかというと、それは結局、政権が決断しないから、単にそれだけですよね。(発言する者あり)総理だけではなくて、まさに税制の責任者である大臣、確かに総理が全部税制のそれぞれ控除についてまでリーダーシップを発揮する、すべきだというのはかなり過剰な要求になるかもしれませんけれども、そこはやはり大臣がリーダーシップを発揮してしっかりやらないと、結局何も変わらない。御自身が確かに、もうどうせ来年、再来年は大臣じゃないから関係ないよというのであればしようがないですけれども、そういうふうにしか聞こえないんですけれども、それはいかがですか。

谷垣国務大臣 先ほどから、ある意味では私どもの考え方の応援演説というか援護射撃をしていただいているようにも感ずるわけです。

 ただ、今の控除等々の話にしましても、家族をどういうふうにしていくかというような議論でございますから、政府税調の中で議論が煮詰まったから、それでではすぐできるかというわけでも必ずしもない。特に税の問題は、負担との関係もございますから、特に、今の控除の問題もそうでございますけれども、消費税をどうしていくかというような問題になると、政府の中での議論、政治の中での議論と同時に、国民との対話というようなものも深めていかなきゃならないんだろうと思っております。

 随分のんびりしたことを言って歯がゆいなとお思いかもしれませんが、やはりそこらはいろいろ考えながら進んでまいりたいと思っております。

田村(謙)委員 おっしゃるように歯がゆいです。大臣も今なりたてなわけじゃないわけですから、三年間やっていらっしゃって、今お話しになった中で、結局、政治的状況、自民党の中の状況なのかなとぐらいしか聞こえないですよ。特に最近は、昔は税制はすべて自民党税調が決める、そのドンみたいな方がいらっしゃった、それがあらゆるネックになっていたという話は私も知っているわけですけれども、そういうのがなくなった。ますます財務大臣のリーダーシップが発揮しやすいはずなんですよ。

 立ち返って申し上げると、私は応援というのは、私が応援しているというふうにおっしゃいましたけれども、さっさと改革すべきものはすべきだ、結局全然できないじゃないですかということを申し上げているんですよ。私は、ずっと今の自民党じゃ結局できない、できないで来たのが自民党の政権の歴史だというふうに思っておりまして、小泉政権の中で少し変わった改革を少しした部分はあっても、結局たなざらしになっているのはたくさんある、ある意味で税制はその象徴だと思うんですよ。

 時代状況はいろいろ変わるという部分ももちろんあります。ですけれども、税制の、この所得税の話なんというのは昔からさんざん議論してきて、事務方は多分うんざりしていますよ。それを、また答申つくるのか、仕事ばかりふえて面倒なばかりだ、そういった部分を代弁しているかもしれませんけれども、私は応援をしているんではなくて、そこは結局何もそういう改革を、改革というか見直しですね、控除に限りませんけれども、例えば控除の見直しにしても、単なる先延ばしにしか聞こえない。例えば扶養控除について、所得控除よりも税額控除がというのは、大臣は御賛同いただきましたけれども、それを何か余り理解できないような理由をおっしゃっていましたが、結局それというのは、御自身が単にリーダーシップを発揮していない、そういう見直しを先送りしているにすぎないんじゃないですか。

谷垣国務大臣 そうごらんになる見方もあるのかなと思っておりますが、さらに私も、鈍な身にむち打って前に進みたいと思っております。

田村(謙)委員 いやいや、大臣にそんな御謙遜されちゃうと。

 一番言いたいのは、先ほどからそれぞれ民主党議員が言っているように、本当の改革は民主党じゃなきゃできないということを一番言いたいんですよ。ですけれども、ことし、来年総選挙がなければ政権とれませんから、その間もうちょっと頑張ってくださいよ、そういう意味で言っているわけです。そういう観点で、ですから中長期的な話じゃなくて、短期的な話をまず、そういう意味で控除はわかりやすいので、しているんですよ。

 ですので、むち打ってとかおっしゃられても、先ほども女性議員にしりをたたくようにと申し上げましたが、むちじゃないです、しりをたたくようにと申し上げましたけれども、もうそういうような言いわけではきかないんじゃないかなというふうに私は思っています。済みません、若干話が軽く聞こえるかもしれませんけれども、私は本当にそう思っていますので。(発言する者あり)何か一瞬血の気が引くやじが飛びましたけれども、時間も限られていますので、次の質問に行きます。

 そういった視点は若干変えて、一つ別の論点で、金融所得について少しお伺いをしたいと思います。

 金融所得、例えば平成十六年、これは谷垣大臣が大臣になった後ですよね、金融所得課税の一体化についての考え方という答申が出されていると思いますけれども。先ほども、大臣が金融所得の一体化について考えなければいけないというふうにおっしゃっておられましたが、時代をさかのぼっていくと、そもそも政府税調というか政府の方針として総合課税というふうにずっとあったと私も認識していますし、それというのは、金融所得も給与所得やほかの所得と全部一緒にして累進課税をかけていく、そういう総合課税を目指すべきだというふうに言っていたと思うんですけれども、最近、例えば今申し上げた金融所得課税の一体化についても、あるいは、昨年民主党で所得税の勉強をしていたときに、政府税調会長の石先生もしきりに二元的所得税のお話をしていらっしゃいました。そういった意味で、ある意味で総合課税の看板というのはおろしたんでしょうか。

福田政府参考人 大臣の御答弁の前に、まず事務的なことを御説明させていただきます。

 私ども、個人所得課税におきましては、垂直的な公平の確保という役割を期待いたしまして、累進性を維持していくべきという見地から、累進税率が適用されるいわゆる課税ベースにつきましてはできる限り包括的にとらえる必要がございまして、個人所得課税の理念として総合累進課税が基本であるというふうに考えております。ただ、利子あるいは株式譲渡益を初めとするいわゆる金融資産性所得につきましては、その特質を踏まえまして分離課税としているところでございます。

 具体的には、利子につきましては、大量発生性などの特性を踏まえまして、所得の把握体制が十分でない現在の状況のもとで、実質的な課税の公平の確保に加えまして、課税の費用面、手続面等からのいろいろな制約も考慮いたしまして、一律源泉分離課税を採用しているところでございます。また、株式譲渡益につきましては、譲渡の時期を自由に選択できるといった大変裁量性の高い所得でございます。そういった特性を踏まえまして、申告分離課税制度を採用しているところでございます。また、配当につきましては、事業参加性のある所得である点を踏まえまして、総合課税を基本としつつも、納税者の事務負担や、一般投資家にとっては他の金融商品から生ずる所得と同様であるといった点を踏まえまして、申告不要制度を導入しているところでございます。

 繰り返しになりますけれども、個人所得課税の基本的な枠組みとしましては、総合課税を基本としつつも、今申し上げました金融資産性所得につきまして、その特質性を踏まえまして分離課税としているところでございます。

田村(謙)委員 今の御答弁も、政府が総合課税という看板をずっと掲げてきて、その中で、先ほど申し上げたように、昨年、石税調会長のお話を聞いて、あれ、もう総合課税という看板はおろしたのかなというふうに個人的に思ったものですからちょっと聞いてみたんですけれども。

 総合課税かどうか、最終的目標とかそういうのはこだわらず、私は、柔軟に議論すべきだ。ただ、総合課税という理想を追求するかどうかというのは、正直、民主党の中でも意見が分かれますので、私は、個人的には、余りそういう理想を掲げる意味がなくなってきているんじゃないかな。分離課税がもう既成事実化していて、そういう中でより建設的な議論をしていただきたい。まさにこの部分は、先ほどから先延ばしの理由としておっしゃっておられる、議論を深めるというのを本当にしていただいて、もう欧米の方はかなり実際に、実態上議論も進んでいますし、それこそ北欧のように、かなり大胆な見直し、見直しというか金融課税ついて改革をしているところもありますので、ほかの、例えば先ほど申し上げたさまざまな控除のように、結局見直しをずっと棚上げをして、議論するばかりで棚上げをして、またほかの国から十年おくれということにならないように、ぜひ大臣にも真剣に議論をして考えをまとめていただきたいなというふうに思います。

谷垣国務大臣 委員おっしゃったように、スウェーデンの例なんかもお挙げになりましたけれども、二元的課税というのはちょっと、かなり税制度が違っていますので、すぐ日本に学べるかどうか、これはわかりません。私も、総合課税というのを棚上げにしていいのかどうかというのはまだ自分の考えがよくまとまっておりませんけれども、これからやはり貯蓄率が下がっていくことを考えますと、今ある金融資産をどう活用していくかという観点から、まあ、今はそういう特質に照らして分離課税という方向でやっているわけですけれども、本当に金融資産を活用していくためにはどうしたらいいのかというようなことはもっと議論を深めたいと、それこそ思っております。

田村(謙)委員 金融課税に関連して、納税者番号制度についてちょっとお伺いをします。

 この納税者番号制度というのも、はるか昔からずっと議論されていて、もう議論する中身は、控除と同じように、ないと私は思っているんですけれども、そういった中でやはり、もちろん我々民主党としても、納税者番号制度を導入するとあらゆる所得が捕捉できるというふうに思っているわけではないです。

 ただ、例えば、今ちょっと議論をさせていただいた、金融所得を捕捉する際には有効ではないかとか、あるいは、全然観点違いますけれども、最近特にIT化が進んで、そこは一般の事業者にしても個人にしても、あるいは税務行政においてもかなりIT化が進んできた中で、当然税務行政にも資するだろうというところは、もう十分に社会環境というのは変わってきたというふうに、ある意味ではもう熟してきたんじゃないかなというふうに思います。確かに、えらく前から議論していた、そのころはさまざまに整っていなかった環境が、例えばITとか一番わかりやすいと思いますけれども、まさにもう整ってきたんじゃないかな。

 そういった中で、我々民主党は、やはりそういった所得の捕捉をしっかりするためにも納税者番号を導入すべきだということはかねて主張しているわけですが、その点についてはいかがですか。

福田政府参考人 納税者番号制度につきましては、先生今御指摘のように、各種資料の名寄せあるいは突合を効率化することによりまして、税務行政の効率化、高度化、ひいては適正、公平な課税に資するものでございまして、これまで主として金融所得の課税方式との関係において議論されてきていたところでございます。

 また、金融所得課税の一体化の一環といたしまして、利子、配当、株式譲渡益といった金融所得間におきます損益通算の範囲の拡大に当たりまして、損益通算を希望する者の選択による金融番号の導入が必要との議論がございます。

 さらに、最近におきましては、諸外国の経験を超えまして、事業所得等に関しても納税者番号制度を活用することができないのか、そういった議論もなされているところでございます。

 いずれにいたしましても、この納税者番号制度は、支払い調書等の資料情報制度があって初めて有効に機能するものでございまして、この資料情報制度のあり方とあわせて総合的に議論する必要があると考えております。

 なお、資料情報制度に納税者番号を活用するに当たりましては、付番方式、どういう付番を使うのか、そういった付番方式を含みます制度の仕組み、あるいは具体的な活用の仕方、対象となる取引の範囲といった問題のほか、この番号利用に係るコスト、あるいはプライバシー保護などの問題につきまして、国民の理解を得つつ議論を深めていく必要があると考えております。

田村(謙)委員 今の御答弁でも、ちょっともう時間がありませんので、ひとつ大臣にお伺いしたいんですが、今も国民的議論という話がありました。代表質問での御答弁でも、たしか、国民的議論をというお話、税制全体の改革について国民的議論を行っていく必要があると。これもまた、いろいろな改革、見直しを棚上げする理由としてよく使われているフレーズだと私は認識しているんですけれども、何か、大臣がまさに本会議場でおっしゃった、国民的議論を広めていく必要がある、そんなの当たり前なわけですが、それはもう前から言われていることで、それなりに政府でもやっていらっしゃるはずで、さらにというのは、税制改革全体の見直し、例えばもう納税者番号制度というのは昔からの話ですよね、それをさらに国民的議論というのは、一体、単なる先延ばしの理由以外に何かありますか。

谷垣国務大臣 私は、国民的議論を喚起するというのが先延ばしの理由だというふうには全く思っておりません。もちろん今までも議論をしてこなかったわけではありませんで、先ほどからお引きになっている政府税調の議論も、それが広く伝えられて、国民の議論の資料になっていると思いますし、党税調もそうだろうと思います。それから、こういう国会の議論もそうだろうと思います。

 私どもも、副大臣や政務官と御一緒に各地に、タウンミーティングというんでしょうか、ああいうものにも出かけているわけでございますが、私の頭の中にございますのは、当時、竹下大蔵大臣でいらしたか総理でいらしたと思いますが、消費税をつくられますときに、国会の議論を六つの懸念だったか、最後は九つの懸念になったんだと思いますが、そういう形で問題提起をされながら全国あちこちに、つじ説法と御自身ではおっしゃっておられましたけれども、要するに、国民のいろいろな不安や不満をどう解消していくかという議論に一生懸命取り組まれた姿が、私がまだ当選して日が浅い時期でありましたけれども、よく記憶に残っております。

 やはり今後は、大きな財政再建をするにつけましては、単に問題の先送りだということではなくて、そういうような議論を喚起していかなければなかなか話が進んでいかないと、私はこれは掛け値なしにそう信じております。

田村(謙)委員 時間が参りましたのでもう終わりにいたしますけれども、繰り返しになりますけれども、いろいろな税制の見直しについて、かなり議論は尽くされているものであっても棚上げされているものがたくさんあります。そこは今の自民党政権では無理だと私は思っているわけです。ですので、民主党が政権をとった暁には一気に進めたいと思っていますが、ただ、今の政権の間、ぜひとも……(発言する者あり)確かにこのタイミングでは非常に、まあいいや。

 それはともかく、小泉政権のもと、自民党政権のもとで谷垣大臣にしっかりと税制の見直しについてはリーダーシップをとっていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

小野委員長 以上で田村君の質問時間を終了いたします。

 次回は、来る二十七日月曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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