衆議院

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第4号 平成18年2月27日(月曜日)

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平成十八年二月二十七日(月曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 小野 晋也君

   理事 江崎洋一郎君 理事 七条  明君

   理事 宮下 一郎君 理事 山本 明彦君

   理事 渡辺 喜美君 理事 古本伸一郎君

   理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤 達也君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大野 功統君

      河井 克行君    木原  稔君

      篠田 陽介君    杉村 太蔵君

      鈴木 俊一君    関  芳弘君

      平  将明君    とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      西田  猛君    萩山 教嚴君

      広津 素子君    藤野真紀子君

      松本 洋平君    安井潤一郎君

      北神 圭朗君    小宮山泰子君

      近藤 洋介君    鈴木 克昌君

      園田 康博君    田村 謙治君

      長妻  昭君    長安  豊君

      平岡 秀夫君    三谷 光男君

      吉田  泉君    鷲尾英一郎君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   財務副大臣        竹本 直一君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   内閣府大臣政務官     後藤田正純君

   財務大臣政務官      西田  猛君

   政府参考人

   (内閣府計量分析室長)  齋藤  潤君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   政府参考人

   (国税庁次長)      石井 道遠君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (林野庁次長)      辻  健治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  岩崎 貞二君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     平  将明君

  越智 隆雄君     安井潤一郎君

  佐藤ゆかり君     杉村 太蔵君

  小沢 鋭仁君     北神 圭朗君

  三谷 光男君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  杉村 太蔵君     篠田 陽介君

  平  将明君     石原 宏高君

  安井潤一郎君     越智 隆雄君

  北神 圭朗君     園田 康博君

  近藤 洋介君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     佐藤ゆかり君

  園田 康博君     小宮山泰子君

  長妻  昭君     三谷 光男君

同日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第四号)

 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

 所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

小野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長松元崇君、財務省主税局長福田進君、国税庁次長石井道遠君、金融庁総務企画局長三國谷勝範君、内閣府計量分析室長齋藤潤君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁運営部長青柳親房君、林野庁次長辻健治君、資源エネルギー庁次長細野哲弘君、国土交通省航空局長岩崎貞二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田泉君。

吉田(泉)委員 皆さん、おはようございます。民主党の吉田泉であります。

 きょうも、財金委員会、大変長時間のコースですが、慎重審議に努めたいと思いますので、両大臣初め、どうかよろしくお願い申し上げます。

 一番最初に、税制改正の問題をお伺いしたいと思います。

 きのうから朝日新聞で、「ホリエモンはなぜ生まれたか」という連載が始まりました。きのうの第一回目は、ホリエモンというのは「減税バブルの「あだ花」」だったという表題がつきました。つまり、ここ十年ぐらい、金持ち優遇税制、それから株の取引を優遇する税制、さらにはITを優遇する税制、こういうことが重なってきたわけですが、それが堀江氏のようなIT長者を生む舞台装置になっていたのではないかという指摘でございます。

 確かに、この十年、所得税、住民税、そして相続税、最高税率がどんどん下がってまいりました。法人税も下がりました。それから株式譲渡益、配当に対する課税も下がったわけであります。ITの関連投資をすると法人税が控除される、こういうことが重なりまして、確かにそれらが景気の浮揚につながったということだと思います。

 しかしながら、一方で、本来税制が持つべき所得再分配機能というのを下げて、日本社会は弱肉強食的雰囲気が強まったと言わざるを得ないと私は思っております。そして、それが世相を悪くしているというふうにも言わなければならないと思います。

 先日、小沢委員の方からも、弱きを助けて横暴な強者をくじくということが伝統的な日本の価値観だったのではないかというような指摘もございまして、私もそのとおりだと思います。そういう何か伝統的な価値観をもう一回見直して取り戻す、そんなときじゃないかというふうに思っているところでございます。

 以上を踏まえまして、最初に定率減税の全廃について御質問をいたします。

 一九九九年、負担軽減法という法律でもって、この定率減税、さらには所得税の最高税率引き下げ、そして法人税率の引き下げ、この三つの大きな軽減措置がとられたわけであります。そして、この三ついずれも、経済情勢が改善されるまでの、そして税制の抜本的見直しが行われるまでの恒久的な減税という位置づけをされたわけであります。そういう意味では、一九九九年当時は、この三つの措置は同等ないしは同列の措置だ、そういう位置づけをされたというふうに思います。

 そうしますと、そのうちの一つをやめるなら、三つ一緒にみんなやめる、定率減税を廃止するなら、残りの二つ、所得税率、法人税についても廃止をするというのが、もともとのこの負担軽減法の法の趣旨それから法の形式からいっても当然ではないか、合理的ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 吉田委員がおっしゃるとおり、平成十一年、小渕内閣のときでございましたけれども、負担軽減法で税制改正をお願いしたわけですね。それで、定率減税と、それから法人税、所得税の最高税率を引き下げるという三つがセットになっていたということはおっしゃるとおりでございます。

 ただ、それぞれねらったところは若干違いがあると私は思っておりまして、定率減税については、当時の、日本経済の底が抜けてしまうんじゃないかというようなことを、何とか下支えしたいということで思い切った減税をしたというのが定率減税でございましたから、経済の状況がよくなってきたときにはやがて見直すべきものである、こういう考え方であったと思います。

 これに対応しまして、あとの二つ、法人税それから所得税の最高税率の引き下げは、当時におきましても、国際競争力を維持する観点、特に法人税の方がそうでございますが、それから、余り重税を課すと勤労意欲がなくなってしまう、これは所得税の最高税率の方でございますが、そういった視点を含んでおりましたので、定率減税とは位置づけが異なるというふうに私どもは考えているわけでございます。

 したがいまして、今回、定率減税をもとに戻すことをお願いしているわけでございますが、あとの二つと必ずしもセットでなければいけないというふうには考えておりません。

吉田(泉)委員 私は位置づけは三つとも同じだと思ったんですが、大臣の御見解は、位置づけが違ったんだということであります。

 そうしますと、私は、そもそもの負担軽減法における条項の、法令のあり方がちょっと不明瞭な部分があった、そこはやはり反省すべきじゃないかというふうに思うところでございます。

 ところで、二つの条件、廃止の条件があるうちの二番目ですけれども、抜本的に見直すまでという条件がこの三つの措置にはついたわけですが、一体、この抜本的見直しというのは何を指していると考えたらいいのか、そしてその条件はいつ満たされたのかという問題です。まあ、満たされたから今回やめるということだろうと思うんですが、その辺を御説明願いたいと思います。

谷垣国務大臣 抜本的見直し、この個人所得課税について抜本的見直しということになりますと、一般的に言えば、税率構造、それから、あるいはいろいろな控除がございますけれども、人的控除といったような個人所得課税の基本的な枠組みのあり方を見直していくということを意味するのではないかと思っております。何をやっていくかというのは、それぞれのときの状況に応じて変化すると思いますが、基本的には今のようなことだろうと思います。

 そこで、定率減税は、さっきおっしゃいましたように、負担軽減法で個人所得課税の抜本的見直しを行うまでの暫定的措置と位置づけられていることは、委員のおっしゃるとおりでございますが、近年の税制改正では、個人所得課税について、税率構造あるいは人的控除などの見直しを行ってきております。

 具体的に申し上げますと、平成十五、十六年度の税制改正におきましては、配偶者特別控除上乗せ部分の廃止とか老年者控除、それから公的年金等控除の見直しを行った。これは、経済社会が変化してきておりますので、その中で税負担の不公平を是正していこうという観点でございました。

 それから平成十八年度改正におきましては、税源移譲を行っていく、所得税から地方住民税への税源移譲を行っていく。その中で、一人一人の納税者の負担を極力動かさないようにするという観点で税制改正をお願いするわけですが、地方住民税は税率を一〇%にフラット化する、そうすると所得税は、それに一人一人の税負担を極力変動させないという観点からいうと、より累進的なものに改めるという税率構造の見直しを行った。

 こういうようなことが抜本的見直しというふうに私どもは言えると考えているわけでございます。

吉田(泉)委員 確かに何回かにわたって税率並びに控除のあり方などが見直されたわけでございますが、例えば控除でいきますと、最大の問題は給与所得の控除ではないんでしょうかね。それから基礎控除の三十八万円という数字のあり方、これについて、例えば、政府税調が、去年の夏ごろだったですか、一応の答申を出したわけですが、それが今棚上げされているような状態と言っていいんじゃないでしょうか。

 そうしますと、私は、何か税制の抜本的見直しがもうなされたというのは、ちょっとどうかなという気がするんですが、その中で、最高税率についてちょっとお伺いいたします。

 国、地方合わせて最高税率が五〇%まで今下がっているわけであります。そして、先ほどお話ありましたが、これは欧米先進国並みだ、競争力維持のためにもというお話もありました。それはそうかもしれません。ただ、その一方で、去年の、私、質問に立ったときも、ちょっと大臣のお話にもあったんですが、日本の場合は最高税率五〇%の対象者が非常に少ない、納税者の四%ぐらいだというデータがあります。

 つまり、最高税率は五〇で、世界標準といいますか、平均だとしても、その対象になる人は非常に少ない、そういう意味で金持ち優遇に日本の税制はなっているんじゃないかという指摘がございますが、どうでしょうか。

竹本副大臣 金持ち優遇になっているんじゃないかという御趣旨の御質問でございますが、個人所得課税の最高税率につきましては、諸外国のいろいろなやり方を研究しながら、しかし、考えなきゃならないのは、国民の勤労意欲あるいは事業意欲がそれによって損なわれるのではないか、そういったことも懸念しながら決めているわけでございますが、現在は、住民税が一三%、最高税率で三七%、合計、足して五〇%というのはまあまあいいところじゃないかなというふうに考えております。

 ただ、先生、いろいろ御質問ありましたように、税率とか、ブラケットと言いますが適用範囲をどの程度にするかというのは、非常にいろいろな部面を配慮しながら考えて結論を出さなきゃいけないことでございまして、特に所得再配分機能をどのような形で持っていくのが一番いいかというようなことを特に我々は重視して考えております。

 そういう意味で、確かに、最高税率の三七%の適用を受ける人員は二十二万人でございまして、納税者の〇・五%、それからまた九六%の人が一〇パー、二〇パーですか、そういったほとんどのところの税率の適用を受けておられる、こういう現実でございますけれども、冒頭申し上げましたように、足して五〇パーというのはまあまあいいところではないかなというふうに考えております。

吉田(泉)委員 私どもは、ブラケットと言うんですか、この適用範囲の方も含めて、税制のあり方、検討していただきたいということでございます。

 ちょっと話題がかわりますが、小さい話ですが、今回の税制改正で、耐震改修工事、住宅の耐震改修の工事をすると年間二十万円まで税額控除されるという制度が入っております。定率減税のときは年間二十五万だったですから、この二十万もなかなか大きな控除であります。

 地元でも、一体どういう工事が対象になるものか、確定申告するときにどんな書類を出さなければいけないのかというような質問もあるんですが、その辺を御説明いただきたいと思います。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、地震が頻発しております状況等を踏まえますと、国民にとりまして、みずからの生活基盤を守るため、地震などの災害に対する備えを強化していただくことは極めて重要であると私ども認識しております。

 こうした中、住宅の耐震化を促進することが喫緊の課題となっている等の状況を踏まえまして、住宅の自発的な耐震改修を支援する観点から、既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除制度を創設することとしているところでございます。

 具体的には、平成十八年四月一日から平成二十年末までに、地方公共団体の作成いたしました一定の計画区域内、具体的には住宅耐震改修事業を定めました地域住宅計画、耐震改修促進計画、地方公共団体が独自に作成いたします住宅改修促進計画でございますけれども、この一定の計画区域内におきまして、昭和五十六年以前に建築された住宅について、新しい耐震基準、つまり昭和五十六年六月一日以後の基準でございますが、この基準を満たすための耐震改修工事をした場合に、耐震改修費用の一〇%相当額、先生御指摘の、最高二十万円でございますが、それを所得税から控除する措置を講ずることとしております。

 なお、この税額控除は、確定申告書に、地方公共団体が発行いたします、一定の区域内にある住宅である旨、住宅耐震改修をした家屋である旨、並びに耐震改修費用の額等を記載した書類等の添付がある場合に適用することとされる予定でございます。

吉田(泉)委員 それからもう一つ、今度は酒税の改正の話ですが、今回、酒類の分類が簡素化されました。十種類から四種類に簡素化されました。しかし、まだこの四種類の酒、酒類の間の税金の負担の率が、格差が大きいままになっております。

 例えば、アルコール一度当たりの税負担、清酒を一とするとワインが〇・六、ウイスキーやしょうちゅうは一・一、こういうところなんですが、ビールは清酒の四・七倍と、非常に重い負担になっております。これは、昔、ビールが高級酒扱いをされたときの名残だということでありますが、今の時代にではいかにも合わない税負担だと言わざるを得ません。

 酒税というのは、私は大人の嗜好品に対する税金だということに思いますので、それですと、致酔性というものに着目して、アルコール度数に比例するような負担でいいじゃないか、そういう単純化に進むべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

竹本副大臣 税収規模というのは大体一・六兆円ぐらいなんですが、その中でどの種類の酒にどの程度の税率を課するかという問題でございますが、基本的には、税を払う能力、担税力に応じた負担を求めるというのを基本といたしております。

 先生お話しのように、アルコール度数によって課税をしている、他の欧米諸国においても蒸留酒についてはそういうことをしておりますが、これを全部に適用すればどうかというお話だろうと思いますけれども、いろいろ不都合な点がございます。特に、酒類の消費態様や生産、消費の動向なんかも踏まえないといけない。

 仮に、ちょっと試算してみたんですけれども、税収中立を前提といたしまして、先ほどの一・六兆円の税収は必ず入るということを前提にいたしまして、一律アルコール度数課税という方法をとった場合には、税負担がビールは今の〇・四倍、先ほどおっしゃいましたように、今は税金非常に高いですから低くなるわけですが、清酒は二・一倍、ワインに至っては三・三倍になります。

 そうしますと、清酒は、一本が五千円ぐらいの清酒になると、果たしてそれが、消費者のいわゆる担税力といいますか、購買層のことを考えますと、適切かどうかということも配慮いたさなければならない、こういう事情もございますので、現行のようなことになっておるわけでございます。

吉田(泉)委員 私も、清酒一本五千円となると、清酒は飲まないことになると思います。非常に清酒を愛好している人間でございますが。

 ですから、今すぐそういう急激な是正をすべきであるとは思いませんが、一応、原則として正しい方向を示して、それをある程度の年数をかけて是正していくということが必要ではないのかなというふうに思うところでございます。

 二番目の大きな質問ですが、特例公債法についてお伺いします。

 建設国債は五・五兆円程度なんですが、この特例赤字国債がその四倍以上、二十四・五兆円、非常に異常な状態が来年度も続くということでありますが、まずこの償還期限についてお伺いします。

 特例公債については、特例公債法の第二条四項で「速やかな減債に努める」という努力規定が入っております。しかしながら、一方では、国債総額の六十分の一を毎年の償還に充てる、つまり、すべての国債を六十年で償還するという総合減債制度がとられているわけであります。一体、実態はどうなっているんでしょうか。

 例えば、今回の十八年度の二十四・五兆円、償還計画表を見ますと、平成四十八年度で償還が終わるような表示に見えるんです。何か、ここ、三十年償還で今回の赤字国債は計画されているのかなというふうにも見えるんですが、実態はどうでしょうか。

松元政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる六十年償還ルールと申しますのは、例えば十年国債で調達をいたしました場合に、満期ごとに規則的に一部を現金償還いたしまして、残りを借りかえることを繰り返すことで、全体として六十年で完全に公債を現金償還し終わるというような仕組みでございます。十年国債、五年国債、それぞれにつきまして、そういった形で、六十年たちましたところで、全体として現金償還をし終わるという形で計算いたしております。

吉田(泉)委員 そうしますと、結局、その六十年償還、借換債等の手段を使って六十年かかるんだということだと思います。そうしますと、先ほど申し上げたこの二条の四項で、特別、その特例公債については速やかな減債に努めるべきだというこの努力目標、努力条項は守られていないということだと思います。

 一つ、私の提案は、それが実態だと、なかなか今の財政状態からいってそれ以上のことはできないということであるなら、何かこの償還計画表の書き方をもう少し工夫して、確かにこの二十四・五兆円は六十年かかって返すんだなということがわかるような表示にしていただけないかなというふうに思います。

 それから、次の質問なんですが、国のバランスシートというのが発表されるようになりました。例えば、最新のものは、これは二〇〇三年度の決算ベース、これによると、これは、一般会計、特別会計合わせた国の公債残高は五百兆円余りなわけですが、バランスシート全体としては、債務超過はその半分程度、二百四十五兆円にすぎません。

 また、別なデータでは、財務省の方のデータで、二〇〇五年、去年の六月末の政府債務、七百九十五兆円という数字が発表されました。国債、財投債、短期証券、政府保証債、こういうものを含めて七百九十五兆円。

 ところが一方で、金融資産がたくさんある。社会保障基金、それから内外の投融資、外貨準備まで入れると四百八十兆円あると。したがって、差し引き純債務というのは三百兆円余りにすぎない。そうすると、イタリアとかベルギーとかそういう国と大体似たような数字だから、余り財政危機、財政危機と騒がなくてもいいんじゃないかという指摘が一部の学者の方からありますが、そういういわゆる純債務論についての御見解をお伺いします。

谷垣国務大臣 民間準拠の財務諸表をつくろうということでやってまいりまして、国の貸借対照表というのもつくってまいりました。そこから何を読み取るのかという議論は、やはりこれから十分私どももやっていただきたいと思っているわけですが、今おっしゃいましたように、資産・負債差額は、確かに、平成十五年度のもので見ますと、マイナス二百四十五兆だということでございます。

 言うほど大したことではないんじゃないかという御議論もあるんですけれども、政府の資産の中には道路とか河川とか、いわゆる公共財産といいますか、社会資本といいますか、本来売るということを余り考えていないものがあるわけでございまして、そういったものは借金のカタに使うというわけにはこれはいかぬ性質のものじゃないかと思います。

 したがいまして、どうやって借金の重みを乗り越えていくかという観点からしますと、そういった社会資本を差っ引くとこれだけ少ないという議論が、余り安心してはいけない議論じゃないかなと私は思っております。

 それで、純債務で見るべきだという議論もあるわけでございまして、確かに純債務で見るという議論も、私は全くメリットのない議論だとも思っていないんです。

 ただ、我が国で、確かに金融資産はたくさん保有していることも事実でございますけれども、その多くの部分が将来の年金給付のための年金積立金、これは取り崩していかなければならないわけですね。そうしますと、それを政府がきちっと執行できるかどうかというようなこと、債務履行能力ですね。それから、やはり、逆に言えば、それは皆金利のリスクというものを相当大きく抱えたものであることも事実でございますから、総債務残高からそういったものを差し引いてネットだけでやった場合には、なかなかそういったリスクが見えてこないということではないかと思います。

 ですから、私は、ネットで、純債務で見るという視点も全く捨てていいとは思っておりませんけれども、他方、やはりグロス、全体で見ていくということも、日本の財政の実力を見ていく上では必要なことではないかと考えているわけでございます。

吉田(泉)委員 私も、今まで政府の方で一番出してきた数字というのが、国と地方の長期債務残高、税金で返さなければならないという数字が今までも出されております。ことしも、十八年度末七百七十五兆円、これがGDPの一五〇%だとよく大臣も引用される数字だと思いますが、これが一番基本の数字だというふうに思います。その点は全く同感であります。

 それから、財政再建の道筋を今いろいろ諮問会議初め議論されておるわけでありますが、先日の小沢委員の質問にもありましたけれども、我が国は、今以上の小さい政府を目指すのか、大きい政府を目指すのか、どっちを目指すかによってこの財政再建の道筋が非常に影響されるということがあります。

 そこで、いろいろ見方がありますが、政府支出の対GDPの比率、それから国民負担率、潜在的国民負担率というのもあると思いますが、そういう数字をちょっと出していただいて、一体、今日本は、現状では小さな政府なのか、大きな政府なのか、真ん中ぐらいの政府なのか、国際的な状態を教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 大きな政府小さな政府という議論でございますが、政府としては、これまで、一般政府の支出規模をGDP比でとらえる、そういう政府の大きさについて、二〇〇六年度までの間二〇〇二年度の水準を上回らないことを目標に、国、地方がともに歳出削減に取り組もうということでやってきたわけでございます。

 今おっしゃった点は十七年度の年次経済報告の中に分析があるわけでございますが、GDP比で見た政府支出の規模あるいは潜在的な国民負担率、これは国民所得比でございますが、OECD諸国の中でも比較的低い水準にあるというふうな指摘がなされております。

 数字をちょっと申し上げますと、一般政府の支出規模、我が国ではGDP比約三七%で、アメリカの約三六%よりは高いけれども、ユーロ圏は平均して四九%である、OECD諸国平均四一%と比べると低い水準にある、こういう指摘になっているわけです。

 しかし、我が国の公的債務の規模をGDP比で見てみますと、これはOECD諸国の中でも最も高い水準になっているわけでございます。我が国の場合はGDP比一五〇%程度に上るわけでございますが、これは突出してOECD諸国の中では高いということでございます。

 それに加えまして、少子高齢化が進展していくということで、政府の支出規模あるいは国民負担、これは今後、少子高齢化のスピードからしますと、OECD諸国に比較してその増大の割合は極めて大きいというふうに見込まれておりますので、このままの政策を継続した場合に、支出と負担といった面では今後大きな政府に向かうということがどうしても避けられないだろうというふうに思います。

 したがいまして、歳出歳入一体改革と言っておりますけれども、つじつま合わせということじゃなしに、やはり、どういう国の未来図を描いていくかという議論の中でこの議論を煮詰めていかなければならないんだろうと考えているところでございます。

吉田(泉)委員 財政再建の件でもう一点ですけれども、今後の経済成長率をどう見るかということも財政再建に大変大きく影響します。そこで、経済成長率と日本の人口の関係について御見解をお伺いしたいと思います。

 総人口は去年から減り始まったわけですけれども、生産年齢人口、十五歳以上六十四歳以下というベースで見ますと、既にもう九〇年代の後半から減少が始まっておりまして、今まで二百万人ぐらいもう減っている。これが日本の内需不足、需要不足の基本的な要因の一つになって、九〇年代以降の日本の長期経済停滞の大きな背景になったのではないかという指摘がございます。

 これは、生産年齢人口はこれからもどんどん減っていくわけであります。例えば十五年で一千万人減るという予想もあります。私は、その分内需は減らざるを得ない。その分外需を拡大するという方法ももちろんあります。それである程度はカバーできると思いますが、しかし、今さら日本が世界の工場になるというわけにもいきませんから、限度がある。学者によっては、経済成長率ゼロぐらいのつもりでいた方がいいんじゃないかというゼロ成長論を提唱する方もおられますが、いかがでしょうか。

齋藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、政府の成長率の見方でございますけれども、私ども、「改革と展望」の参考試算というのを公表しておりますけれども、その基本計数におきましては、二〇一〇年代初頭までの中期的な実質成長率、これを一・七から一・八%程度というふうに見込んでおります。

 これは、御指摘のように、高齢化あるいは人口減少が進みまして労働投入が今後とも減少していく見込みというのを織り込んでおりますけれども、他方で、資本蓄積あるいは全要素生産性、TFPと言っているものですが、これの伸びが経済成長に貢献するということを織り込んでおるからでございます。

吉田(泉)委員 基本的には、私は、国内市場に働く力というのは拡大から縮小へと非常に根本的な方向転換を今遂げつつあると言わざるを得ないと思います。一・七から一・八で見ているということでありますけれども、いわゆる安易な上げ潮論というのは私はリスクがあって自重せないかぬというふうに思うところでございます。

 「改革と展望」、これが財政再建の道筋を示す基本的な資料であります。歳出項目を社会保障関係費、それから人件費、そして裁量的経費、この三つに分けて、いつも、毎年計算されます。世界経済が順調なときの基本ケース、それから順調じゃない場合のリスクケース、この二つに分けての計算がされているわけです。

 最近、この一月に出た「改革と展望」二〇〇五を見ますと、二〇一一年度までに基礎的財政収支を三つあるうちの裁量的経費のみでバランスさせようとすると、この世界経済、順調な基本ケースにおいても、毎年五・五%裁量的経費を削減せねばならない、五年たつとこれは約二五%ぐらい削減が必要になるということでありますが、裁量的経費というのは、公共事業、物件費、その他ということでありますが、二五%、五年間で減らすというこの実現可能性について、見解をお伺いします。

与謝野国務大臣 二〇一一年に基礎的収支をバランスさせるというのは、これは容易な仕事では実はありません。平成十八年度予算では、確かに基礎的収支は回復をいたしましたけれども、これは、やはり自然増収が寄与している、あるいは定率減税の廃止が寄与しているということでございまして、来年以降はそういう寄与するものをどこに求めるかといってもなかなか見つからないわけでございます。

 そういうことで、歳出削減のみで基礎収支をバランスさせようとしますと、二〇一一年までに、先生は二五%という数字をお使いになりましたけれども、実額でいいますと二十兆のカットをしなければなりません。これが本当に現実的な問題なのかどうかということは、これから勉強しなければならないわけですけれども、二十兆の歳出削減をやるためには、地方財政、社会福祉という歳出の方の二人の横綱のところにまで行かないとなかなか問題が解決できない。

 こういうことで、その他の裁量的経費は、一つ一つを眺めて見ますと、どこまで切れるか、これは非常に首をかしげるところが多いものがたくさんあるというふうに私は感じております。

吉田(泉)委員 おっしゃるように、歳出の項目によって、削減できる最大削減率というのは違うと思うんですよね、なかなか社会保障はそう簡単には減らせません。そういうそれぞれの実行可能な最大削減率を考えて、それでなおかつ不足する分について歳入改革ということも検討せないかぬということでやるしかなかろうというふうに私も思うところでございます。

 三番目の大きな問題に移りますが、年金事務費の保険料負担という問題です。

 ここ数年、毎年議論がされておりますが、十九年度以降は特例措置をやめる、恒久措置にする。つまり、年金の事務費、直接的な分については保険料でこれからずっと恒久負担するんだという予定だということであります。

 先日、鈴木委員の方からも御質問があったと思いますが、改めて、なぜ今特例措置を恒久措置に切りかえるのか、九年にわたる特例措置というやり方は何だったのかということを、反省点も含めて総括をしていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 この年金事務費の取り扱いにつきましては、平成十五年度までは財政構造改革法、それから、それ以降は特例公債法によりまして、年金保険料を充てていくこともできる、可能とするという特例措置を講じてきたわけでございます。

 では、その特例措置というようなことでやっているけれども、今後、恒久的にはどうするんだという御議論が国会の中でも随分していただきまして、私は、御答弁申し上げてきたことは、今後の社会保険庁改革の動向などもよく踏まえながら検討したいということをお答え申し上げてきたわけでございます。

 そういう中で、特別会計改革という議論も他方で進んでまいりまして、そういう中で、財政制度等審議会等々でも御議論を賜りました。

 財政審からは、「年金事務費はそもそも基本的に年金給付と密接不可分なコストであり、保険料を充てることにより給付と負担の関係がより明確になるというメリットもあることから、他の特別会計における事例等も参考にしつつ、受益と負担の関係の明確化や区分経理の厳格化の観点も踏まえ、恒久的な在り方を検討すべきである。」こういうような御議論をいただきました。

 それから、社会保険庁改革の方では、平成十八年度中に年金運営会議を設置するとか、あるいは特別監査官を設ける、あるいは外部専門家を登用して意思決定機能や監査機能の強化を行うというようなことが予定されてきているわけでございまして、こういった取り組みによりまして、社会保険庁として適正かつ効率的な事業運営を確保していくということとされているわけでございます。

 そういうことを踏まえまして、社会保険庁改革の一環として、平成十九年度から、特例ということではなくて、受益と負担の関係をより明確化させるという観点から、年金事務費の一部を保険料に充てるという恒久措置を導入することとしたわけでございます。

 いずれにしましても、これはどっちを、年金事務費を年金のあれでやっていくのか、それとも一般会計から負担するのか、どっちにせよ、最終的には国民の負担ということでありますから、かつてございましたような無駄というものは、これは許されるわけではございません。どちらでやるにせよ、徹底的にそこは明確なものにし、きちっとしていかなければならないことは当然だと思っておりますので、そういう観点も同時に踏まえていかなきゃならぬことは、これは当然のことだろうと思います。

吉田(泉)委員 私は、その九年間の一番の反省点は、年金事務費のどれを保険料に負担させるかという基準が裁量的だったのではないかというふうに思うところであります。

 最初、九年前は、この保険料負担が六百十四億円から始まりました。それが、だんだんだんだん上がってきて、千百二十三億円まで上がって、来年度は千十四億円にこれは下がる、その辺の保険料に負担させる基準がころころ変わったような気がします。

 例えば、一つここでお伺いしたいのは、国共済の方です。公務員の国共済の方の年金の事業においては、かつては、事務費総額の二五%だけ保険料負担、それが一昨年、昨年は四〇%負担ということになりました。

 今回は、そういうパーセントで決めない、厚生年金のように直接的な経費を積み上げて保険料負担にする、こういうふうに制度が変わってきたわけなんですが、その制度変更について理由をお伺いしたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員共済の長期給付事務費につきまして、平成十七年度までは厚生年金等の事務費における保険料充当割合の状況を勘案いたしまして、事務費全体の一定割合を保険料財源で賄うこととしていたものでございます。委員御指摘のとおり、平成十年から十五年までは二五%、十六年度、十七年度は四〇%といたしておりました。

 これは、平成十年度の時点で、国民年金等の事務費に保険料が充当している割合がほぼ二五%であったということを勘案いたしまして当時二五%としておりましたが、平成十六年度の段階では四〇%ということで、四〇%という形で事務費全体の一定割合を保険料財源で賄うという形にいたしていたものでございます。

 これを平成十八年度におきましては、組合員が受けるサービスとそのコストとの関係を勘案しながら、厚生年金等の事務費の費用分担に準じて考え方を合わせまして、保険料財源で賄うよう事務費区分することとしたものでございます。

 これは、厚生年金等の事務費の費用分担、これにつきまして十九年度以降恒久化されるといったことも踏まえまして、これに準じたものとすることが、国庫負担、保険料負担の区分につきまして、国民及び組合員の理解がより得られやすくなるとの考え方に基づくものでございます。

吉田(泉)委員 結局、公務員の場合の保険料負担が非常に低いときが六年ぐらい続いた。公務員だけいい思いをしているんじゃないか、我々の保険料は事務費に回っているのに、公務員の回り方が少ないんじゃないか、こういう不信感を助長したということは強く反省せねばいかぬのじゃないかというふうに思うところであります。

 最後の質問、大きな質問になりますが、消費者金融問題について若干お伺いしたいと思います。

 御存じのように、年間三〇%近い高金利で消費者金融が行われております。適正にそれを使えばいいわけなんですが、その適正な利用にしくじっちゃって返済困難な状態に陥る、多くの国民がそういう状態になっているわけであります。

 非常に生活の身近なところに自動の契約機がある、テレビではきれいなタレントさんが、テレビコマーシャルをどんどん流してくるというようなことで、だれでも、本人でも家族でも、非常に消費者金融、ひいては多重債務の問題に陥りやすい時代だと言わざるを得ません。

 そこで、まず、最近の実態について数字をお伺いしたいんですが、この十年ぐらい、消費者金融の貸出残高はどのぐらいふえたか、そして一方、自己破産の申し立て件数はどんな動きをしているのか、教えていただきます。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者向け無担保貸金業者の貸付残高につきましては、平成六年三月末は約四・六兆円でございましたが、その後増加を続けまして、平成十五年三月末は約十二兆円となっております。平成十六年三月末は約十一・七兆円でございます。

 次に、自己破産の申し立て件数、自然人の推移でございますが、最高裁判所の統計によりますと、平成七年は約四万三千件でございましたが、その後増加を続けまして、平成十五年には、これは過去最多で約二十四万二千件となりましたが、それ以降はちょっと減少しておりまして、平成十七年は、速報値で約十八万四千件と承知をしております。

吉田(泉)委員 一月二十八日の日本経済新聞の報道によりますと、金融庁は貸金業のルールを大幅に見直す、利用者ごとの借入総額に上限を設ける、金利の上限も下げる方向で検討する、そして、貸金業による過剰な貸し付けを防いで自己破産などを抑制する、こういう方針を金融庁が出したという報道をしました。

 その後、今度は二月二十二日、朝日新聞は、金融庁は、貸金業者が利息制限法を上回る金利を取っても刑事罰に問われないというグレーゾーン金利を撤廃する法改正に着手する方針を固めた、こういう報道がありました。

 これが、いわゆる総額規制それから金利の規制について、今金融庁の中では貸金業制度等に関する懇談会というところを中心にして議論がなされていると思いますが、以上のような点について、議論の状況を教えていただきたいと思います。

三國谷政府参考人 まず、金融庁といたしまして、報道にあるようないわゆるグレーゾーン金利を撤廃するといった方針を固めたという事実はございません。金融庁では、昨年三月から貸金業制度等に関する懇談会を開催しまして、貸金業制度等をめぐる幅広い論点について勉強しているところでございます。

 同懇談会では、過剰貸し付け防止のための規制のあり方や、いわゆるグレーゾーン金利を含む金利規制のあり方など、貸金業をめぐる幅広い論点が検討課題とされておりますが、金融庁といたしましても、今後、懇談会の議論の中で貸金業制度をめぐる諸問題に対する議論を深めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 消費者金融白書という白書がある。それによりますと、消費者金融を利用している人の平均利用額というのが百四十五万円だそうです。金利は二九%程度です。そうしますと、金利だけ払うとなると百四十五万円の元本に対して毎月三万五千円ぐらいの利息を払わなければなりません。元本を返していませんから、これは一生ずっと払うわけです。

 一方、この最高金利二九%というのが一八%ぐらいにもし下がるとすると、三万五千円毎月払っていると元本も返せますから、五年半で完済できる。非常に上限金利の持つ意味合いが大きいわけであります。何とかもう少し現実的な返済可能な金利水準にできないかというふうに思うわけですが、まずここで、諸外国における金利の規制の状態についてお伺いします。

三國谷政府参考人 諸外国におきましては、金利の規制はさまざまでございます。

 まず、アメリカでございますけれども、アメリカにおける金利規制は州により異なっております。上限金利がない州とある州がございますし、ある場合でも、そのレベルはさまざまでございます。なお、アメリカの場合、連邦銀行につきましては、本店のある州の金利規制が他の州でも適用される、これはいわゆる金利の輸出理論というものが存在してございまして、連邦銀行と提携しているノンバンクにもこの理論が適用されていると承知しております。

 次に、フランスでございますが、フランスの場合には、上限金利は金融機関による与信の平均利率に連動して変化すると承知をしております。

 ドイツでございますが、ドイツは、上限金利は、判例上、市場貸付金利の二倍と市場貸付金利に一二%を加えた率のいずれかの低い方とされていると承知しております。

 イギリスにおきましては、直接の金利規制は存在していないと承知しております。

吉田(泉)委員 ちょっと具体的な数字が出ませんでしたので、詳しいところはわかりませんが、関係の書類、本などを見ますと、なかなか二〇%を超える消費者金融金利を放置している国はないというのが私の認識であります。

 それから、フランスなどは、フランス銀行、日本だと日銀に当たる銀行だと思いますが、この銀行が個人過剰債務委員会というのを設置して、全国百十カ所にこの委員会を置いて、千名の職員で運営している。過剰債務に陥っちゃった人を、そこで相談に当たるという仕組みがあります。

 日本ではそれがありません。今のところ、行政でそういう救済金融までやっている制度はないと思います。その陰で、労働金庫、それから生活クラブ生協、こういう関係者がこの問題に取り組んでいるという状況であります。

 例えば、岩手県消費者信用生活協同組合というところが、一九六九年、もう大分前ですが、救済融資を始めた。年に九・二五%で五百万円まで融資をする。例えば二〇〇四年度の話ですが、相談が五千件あった、既にもう三千件を解決したというんです。

 この融資を実行した件数は一千件余り、一千件弱ぐらいには融資も実行した。実行しても、この貸し倒れの率というのが何と〇・一九%、極めて貸し倒れ率が低いという状況であります。ちなみに、大手消費者金融会社武富士の場合の貸し倒れ率が発表されておるようですが、八%を超える。この救済金融でも、やり方によっては非常に貸し倒れのないやり方ができている一つの例だと思います。

 東京でもそういう動きが出ております。生活サポート基金というのを民間で個人から集めて、それでセーフティーネット、救済金融をやろうという動きが始まっているところであります。

 いずれにしましても、我々の目の前で人生の海におぼれかけているといいますか、多重債務に陥っている何ともならないという国民が百万単位でいるというわけであります。

 私は、行政ももっと本腰を入れて立ち上がるべきではないのか、何かこのままほうっておくと国の土台が崩れていくようなそういう深刻な問題ではないかと思っているところでございますが、最後に、金融庁はどう取り組もうとしているのか、姿勢をお伺いいたします。

与謝野国務大臣 過剰債務問題につきましては、依然深刻な状況にあると認識しておりまして、金融庁としては、一つは貸し手である貸金業者に対しては貸金業規制法において過剰貸し付けを禁止しているところであり、当局としては同法の規定を受けた事務ガイドライン等により、貸金業者に対し適切な顧客審査の徹底を指導しているところであります。

 また、借り手である利用者側においても節度ある合理的な利用がなされることが必要であり、金融庁では、従来からホームページ等を通じて消費者啓発のための広報活動を行ってきたところであり、今後こうした取り組みをさらに徹底する必要があると考えております。

 また、業界や関係団体等によるカウンセリングも重要であると考えており、金融庁としては、引き続き貸金業制度等に関する懇談会において、これらの問題を含め、貸金業をめぐる問題について議論を深めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 弱きを助けて強きをくじくという、そのための具体的な課題が私はこれだと思うんです。ぜひ、そういう精神で対応していただくように与謝野大臣にお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小野委員長 以上で吉田泉君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案されている法案は、個人所得課税について定率減税の廃止というものが盛り込まれております。これは、ことし一月から半分実施されたのに続いて、来年一月から残りすべてを廃止するというものだと思うんです。

 まず、半減と廃止を含めまして、定率減税をすべてなくすということによりまして、所得税、住民税合わせて何兆円の増税になるか、数字を教えていただきたい。

福田政府参考人 定率減税の廃止によります増収額でございますが、国の方では、先生御指摘のように、定率減税の縮減と廃止合わせた場合の増収額を平年度では二兆六千億と見込んでおります。地方税につきましては、私ども、合わせて八千億円強というふうに伺っております。

 したがいまして、両者合わせますと三兆四千億程度になろうかと存じます。

佐々木(憲)委員 これだけの大変大きな増税なんですけれども、自営業者やサラリーマンも含むすべての所得税納税者が増税の対象になるわけですね。そのうちのサラリーマン、何%を占めているでしょうか。

福田政府参考人 定率減税の縮減、廃止によります負担増となりますのは納税者全員でございますので、その人数が約四千八百万人程度と見込んでおります。

 そのうち、いわゆるサラリーマンでございますけれども、給与所得者が約四千二、三百万程度というふうに見込んでおります。

佐々木(憲)委員 給与所得者のうち源泉分の人数は四千百七十万人、これは十六年度の実績推計と聞いていますけれども、そうしますと、八六・九%という、単純に計算しますと、大変ある意味ではサラリーマン中心に増税ということになるわけであります。

 昨年六月二十一日に政府税制調査会が出した個人所得課税に関する論点整理というものがございます。ここでは、まず最初に「個人所得課税の抜本的見直し」ということで、こういうふうに書いてあるんですね。「平成十八年度においては、定率減税を廃止するとともに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を行う必要がある。」このように書いております。

 その上でいろいろな控除を見直すと書いているんですけれども、まず、谷垣大臣にお聞きしますが、今回の定率減税の廃止というこの法案は、政府税調の考え方に沿って出されているということだと思いますが、そのとおりですよね。

谷垣国務大臣 今おっしゃったのは、昨年六月の中間報告ですね。(佐々木(憲)委員「はい」と呼ぶ)

 これは、所得税に関する中長期的ないろいろな課題を論点を整理していただいたものでございますが、当然、その中にも含まれていたというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 さて、そこで大臣にお聞きしますけれども、こういうサラリーマン増税をしないというのは、自民党の政策に書いてあったのではありませんか。

谷垣国務大臣 取りやすいところから取る、サラリーマンをねらい撃ちするような税制はやらない、ちょっと正確な表現がそのとおりであったかどうか、今手元にございませんが、そういう趣旨を自民党の公約には掲げていたというふうに承知しております。

佐々木(憲)委員 取りやすいところから取るサラリーマン増税のようなことはしないというふうに今おっしゃいました。

 しかし、今度出された法案は、サラリーマンが八、九割でありまして、まさに取りやすいところから取るサラリーマン増税、こういうことになっているんじゃありませんか。

 自民党のマニフェスト、これは昨年の夏に出されたものですが、その中で、何が書いてあるかというと、「所得税については、所得が捕捉しやすい「サラリーマン増税」を行うとの政府税調の考え方はとらない。」こう書いてあります。

 それから、お配りした資料の二枚目を見ていただきますと、武部幹事長は、「政府税調のサラリーマン増税ありきを自民党は「許さない!」」内容を見ますと、「六月二十一日に政府の税制調査会が発表した「論点整理」について、武部勤幹事長は「サラリーマン増税なんて安易に許さない」と、政府税調を強く批判しました。」「武部幹事長は「これはあくまで論点整理であって、党税調がしっかり対応します」とし、自民党の税制調査会で税制改革の議論を行い、政府税調の論点整理どおりの「サラリーマン増税ありき」を否定しました。 同幹事長は「誠に私も遺憾なことだと思っています。私からは財務省に厳しく注意しました」とした上で、「いずれにしても新聞の見出しだけを見て判断しますから、「サラリーマンの増税路線」という見出しが出ましたが、そういうことではありません」と明確に否定しています。」と書いている。

 これは、結局、この考え方、自民党のマニフェストと、現在出されているサラリーマン増税のこの法案というのは全く逆のものでありまして、これは公約違反じゃありませんか。

谷垣国務大臣 昨年の六月の中間報告を読んでいただきますと、定率減税についての言及とそのほかの控除等々についての見直しというのはかなりウエートを分けて書いてありまして、これを全部一括して、この政府税調の中間方針が全部サラリーマン増税を議論したものであるかのごとき今御議論でしたけれども、それはちょっと違うんだろうというふうに思います。

 それから、今いろいろ佐々木委員おっしゃいましたけれども、この定率減税というものは、先ほど吉田委員にもお答えをいたしましたけれども、当時の経済状況を何とか支えたいということでやりまして、景気の情勢がよくなってきたらもとに戻す、こういうことであったというふうに私は考えているわけであります。

 それから、この対象は、サラリーマンだけを対象としたものではありませんで、自営業者とすべての所得税納税者が対象になってくるわけでございまして、決してサラリーマンだけを対象としたものではない。だから、サラリーマン増税であるという規定の仕方は私は間違っていると思います。

 ということは、さっき八十何%とかなんとかいうような御議論がございましたけれども、やはりサラリーマンの数はそれだけ日本社会の現実において多うございますから、今のような御議論ですと、結局、所得税で何らかの増収策を考えるということになりますと、全部サラリーマン増税だということになっては、なかなかこの税制というものはさわりようがないということになってくるのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 全く反論になっていないですよ。

 この政府税調の六月二十一日の論点整理の一番最初に、「平成十八年度においては、定率減税を廃止する」と明確に最初に書いてあるわけで、このような考え方、もちろんそのほかにも各種の控除の縮減と書いています、それだって増税なんですから、このような考え方はとりませんというのが自民党の政策なんですよ。しかも、武部幹事長は政府税調を強く批判した。まさにサラリーマン増税という方針を、自民党の政策でこれを批判し、そういうことはやらないんですというのが選挙政策だったんです。選挙が終わってから、いや、増税は、サラリーマンが所得税をみんな払っているんだからサラリーマンに行くのは当たり前みたいな、そんなことは通用しないんじゃありませんか。それであれば、この自民党のマニフェストというのは国民だましだったということになるんじゃありませんか。

谷垣国務大臣 それは、六月の論点整理のお読みになり方が若干違っているんだろうと思います。

 確かに、一番最初の序文のところに定率減税についても……(佐々木(憲)委員「序文じゃない」と呼ぶ)一番最初の出だしのところに、「平成十八年度においては、定率減税を廃止するとともに、」といって、そこに定率減税という言葉が確かに出てまいりますが、その後は、ずっとたくさんページがございますけれども、全部、これから社会経済構造の変化あるいは仕事の仕方の違い、家庭のあり方の違い等々から見て控除をどう見直していくかということがこの後に書いてあることでございまして、定率減税はそこのところにさっと触れられている。

 したがいまして、これをもとにサラリーマン増税はやらないということを言った場合には、定率減税が含まれていたというふうには私は考えておりません。

佐々木(憲)委員 そんなのはへ理屈でありまして、政府税調が出したサラリーマンを中心とする増税、それを強く批判したんですよ。やらないと言ったんです。

 では、武部幹事長がやらないと言ったのは何をやらないと言ったんですか。

谷垣国務大臣 サラリーマンだけをねらい撃ちするようなサラリーマン増税はやらないという御趣旨であったというふうに私は理解しております。

佐々木(憲)委員 サラリーマンが九割、この増税によって直撃されるわけです。サラリーマン増税じゃありませんか。サラリーマン以外が一割二割あるからといって、サラリーマン増税に間違いがないでしょう。そういうへ理屈でこの公約違反を合理化しようとしたってだめですよ、それは。全然理屈が通っていない。これは、この公約違反ということはもうだれが見てもはっきりしている。

 定率減税の全廃でどれだけ増税になるか。夫婦子供二人の四人世帯の場合で、年収五百万円と七百万円についてそれぞれ増税額を述べていただきたい。または、独身の世帯はどうなりますか。

福田政府参考人 定率減税の縮減、廃止によります税負担の具体的な金額といたしましては、御質問の、給与収入五百万円の夫婦子二人世帯においては約三・五万円の増、同じく給与収入五百万円の独身世帯においては約七・六万円の増となると見込んでおります。七百万につきましては、夫婦子二人の場合が八・二万円、独身が十三・五万円でございます。

 いずれも、一定の前提を置いて計算いたしますと、今申し上げましたような数字になります。

佐々木(憲)委員 相当の増税なんです。年収五百万で三万五千円、独身の場合は七万六千円です。年収七百万円の場合八万二千円、これは四人家族。独身の場合十三万五千円ですから。まさに大増税なんですよ。サラリーマンを直撃するこういう公約違反の増税路線というのはとんでもないということを言っておきたいと思います。

 次に聞きたいのは、所得の再分配機能であります。

 政府税調が平成十四年、二〇〇二年六月に提出したあるべき税制の構築に向けた基本方針というのがありますが、それにはこう書いてあるんですね。「昭和六十二・六十三年の抜本的税制改革や平成六年の税制改革等を通じて、個人所得課税の税率構造の累進緩和等が図られ、負担水準が極めて低いものとなった結果、個人所得課税の所得再分配機能は限られたものとなっている。」こう指摘をしているわけです。つまり、累進性の緩和によって、税による所得再分配機能というのは弱まってきているということであります。

 谷垣大臣の認識も同様かどうか、お伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、所得税は累次の減税等によりまして、基幹税として国の財政を支えていく力が確かに落ちてきているということも事実でございますし、いろいろな税目の中で所得税というのは所得再分配機能というものがつけやすい税制でございますから、所得税全体がやせ細っていくということは、同時に今おっしゃったようなことも意味する面があるというふうに考えております。

 ただ、所得再分配はやはり税全体で考えていただく、それにさらには、いろいろな歳出面もあわせて、社会保障等の所得再分配もあわせて考えていただくべきことと考えております。

佐々木(憲)委員 税の所得再分配機能というのが弱まっているということをお認めになったわけです。

 国際的な水準も確かめておきたいんですが、日本の所得税、国税の課税最低限ですね、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと比べてどのような水準になっているか示していただきたいと思います。

竹本副大臣 我が国の課税最低限でございますが、平成十三年においては主要国中最も高い水準でありましたけれども、平成十六年以降は主要国中最も低い水準となっております。

 具体的に申し上げますと、二〇〇一年と二〇〇六年の比較をします。ドイツは、二〇〇一年、三百二十七万余であったものが五百八万余に変わっております。フランスは、二百六十二万余であったものが四百十万余になっています。アメリカは、二百四十三万であったのが三百七十八万。イギリスは、六十九万余であったのが三百七十六万余。日本は、三百八十四・二万円だったのが三百二十五・〇万円に変わっております。

 この理由でございますが、我が国では、平成十五年度改正におきまして、経済社会の構造変化に対応いたしました人的控除の簡素化を図る観点から、配偶者特別控除の上乗せ部分を廃止いたしました。また、他方、主要諸外国におきましては、児童を対象とした税額控除等が拡充されてきております。

 それから、さらに考えなきゃならないのは、二〇〇一年以降の為替変動によりまして、円建てで見た諸外国の課税最低限が上昇いたしております。こういった事情がありますことをお含みおきいただきたいと思います。

 ちょっとわかりやすい例でございますが、例えば、この間、ポンドは百五十九円から二百一円に変わっておりますし、ユーロに至りましては平均九十七円だったのが百三十七円に変わっております。そういう状況もございます。

佐々木(憲)委員 日本は、今御紹介がありましたように、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと比べて一番低い水準になっているわけです。今ありましたように、人的控除の一定部分を簡素化したと。だから下がったわけですよね。それから、ほかの国では、児童関係、少子化対策ということで一定の措置が行われている。そういうことを考えますと、日本の所得再分配機能というのは国際的にも低くなっており、非常に課税最低限が低いところにあるということであります。

 そのため、政府税調の二〇〇二年六月の、あるべき税制の構築に向けた基本方針というものの中に、こう書いてあるわけです。今後、「これ以上の所得再分配機能を弱める方向での個人所得課税の見直しには慎重であるべきである。」

 谷垣大臣はどのような認識でしょうか。

谷垣国務大臣 所得税について、今まで政府税調で、今委員がおっしゃったような議論が行われてきました。私もその議論は十分踏まえていかなければならないと思っております。

 ただ、この議論をさせていただく場合には、先ほどもちょっと申し上げたわけですが、社会保障等々とどう組み合わせていくかということも同時に考えなければならない問題でございまして、先ほど委員がお引きになりました、税の所得再分配機能が落ちているという御指摘、あれはたしか内閣府で出されたものだったと思いますが、同時にあそこには、社会保障の再分配機能は上がってきているという指摘もあるわけでございまして、そこらをどう考えていくかという問題があろうかと思います。

佐々木(憲)委員 社会保障の再分配機能は、上がっているというよりも、むしろ最近は下がっているわけです。

 これは、社会保障というものが存在しているということによって一定の再配分機能というものがあるわけだけれども、それを本当に機能させるかどうかということになりますと、社会保障の充実というものを図らなければならぬわけですが、現実にやっていることは、年金も介護も医療も国民負担はどんどんふえていくということを同時にやっているわけで、両方とも再分配機能を弱めていると言わざるを得ないと私は思うんです。

 この控除の問題ですけれども、六月の税調の報告書では、給与所得控除ですとか配偶者控除、特定扶養控除、廃止、縮小というような方向を打ち出しておりますが、石会長によりますと、今後四、五年かけて検討を進めるというわけでありますが、これが実際に縮小の方向に行きますと、さらに大幅なサラリーマン増税ということになるわけです。

 そこでお聞きしますけれども、仮に、妻が専業主婦の夫婦子供二人の四人家族のサラリーマン世帯で、給与所得控除を半分に縮小し、配偶者控除、扶養控除を廃止した場合、幾らの増税になるか。年収五百万、七百万の場合、お答えをいただきたい。

福田政府参考人 申しわけございませんが、今、計数をちょっと持ち合わせていませんので、至急調べましてお答え申し上げます。

佐々木(憲)委員 我々の試算によりますと、年収五百万の場合になりますと三十八・五万円の増税なんです。五百万円で三十八・五万円、四十万近い増税なんですから。七百万円の場合には六十・七万円の増税。

 ですから、これだけ増税に、定率減税の廃止のほかにこういうことが行われるというのが、まさに各種控除の縮減という方向なんですよ。これは大変な衝撃でありまして、課税最低限を一層下げる方向に作用する、慎重であるべきだというのが税調の考えではあるんですけれども、しかし、これが行われれば所得再分配機能が弱体化するということははっきり言えると思うんですけれども、谷垣大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、税と社会保障等々あわせて所得再分配機能をどうしていくかということを考えていかなければいけないんだろうと思います。

佐々木(憲)委員 では、逆に聞きますけれども、社会保障はどういうふうに充実させるんでしょうか。

谷垣国務大臣 これこそ今、歳出歳入一体改革である程度選択肢を示して議論していただきたいという背景にある問題意識でございまして、やはりこれから少子高齢化で、どうしても社会保障負担はふえてまいりますから、それを安定的に支える負担はどういうことかという議論をしていかなければ、社会保障自体が持続可能なものにならないんだろうと思います。

佐々木(憲)委員 今検討されているのは、安定的にその制度を維持するという理由で、負担をふやし給付を削減するという方向がどんどんどんどん進んでいるんじゃありませんか。社会保障をより充実させていく、再分配機能を強めるという方向には、全く今検討の対象にさえなっていないんじゃありませんか。それで社会保障は何とかするからというのは、それは全然理由にならないと思いますよ。

 一方で、ホリエモンのような、株転がしで巨額の利益を上げても税金は軽い。この間、株式譲渡課税等による税収は激減しております。平成十一年の五千八十八億円から、十五年の一千三百九十四億円。本当に、こういう株転がしでもうけるところは減税をする、あるいは所得税の高額所得者の最高税率は下げられたまま、さらに法人税は減税が続いている。しかもその理由は、あるべき税制の先取りだからだと。

 そうなると、結局、政府が目指しているあるべき税制というのは、庶民に対してはどんどん負担は重くするが、大きな会社の税金、あるいは高額所得者、あるいは金転がしで利益を上げる、そういう部分だけはどんどん減税は続けていく、本当にこれは税制として全くゆがんでいると私は思います。こういうやり方というのは根本的に見直すべきだというふうに私は思います。

 あるべき税制というものをこれから明確にしていくというわけですけれども、どうも今の路線を見ますと、私が今指摘したような方向にしか動いていないように見えますけれども、そうじゃないんでしょうか。

谷垣国務大臣 あるべき税制という言葉は、それだけではまだ何も語っていないに等しいわけでございまして、どうあるべきかということは、一つは少子高齢化、さらには人口減ということを我が社会はこれから直面して、現に直面しているわけでございます、それにどう対応していくか。それから、非常に競争もグローバル化されて、かつての社会主義国が市場経済に参入している、あるいはBRICs等の国も非常に発展をしている中で、我が国の存在感をきちっと高めていくためにはどうしたらいいか、それに見合う税制を考えていくという問題意識だろうと私は思っております。

 そのためにどういうことを考えていかなきゃいけないかというのはたくさんございますけれども、四つぐらい整理いたしますと、一つは、税制というものが、個人や企業の自由な選択、こういうことをやって頑張っていこうというものをゆがめることであってはならないということだろうと思います。経済活動に対して中立的でゆがみのない税制をつくって、構造改革も進め、それから経済社会の活性化というものもねらっていかなきゃならないというのが第一だろうと思います。

 それから二番目は、世の中が変わってまいりますと、税負担のゆがみとか不公平感が出てまいりますから、それを取り除くような措置を考えていく必要があるだろうということだろうと思います。

 それから三番目には、余り複雑でわかりにくい税制はよくないので、わかりやすい簡素な税制をつくっていこうということかなと思います。

 それから四番目は、先ほどから所得再分配機能というようなことを御指摘でございますが、それぞれ税は得意不得意のところがございますので、資産、所得、法人それから消費、バランスのとれた税制度をつくっていくような必要があるだろう、そういうことを通じて社会保障等々必要な公的サービスの基盤を支える安定的な税収構造をつくっていく必要があるだろう、こういうような四つぐらいの観点を踏まえて今後議論を進める必要があろうというふうに思っているわけであります。

佐々木(憲)委員 今、現実に検討をされている内容を見ますと、庶民には減税ということは出てこないわけです。消費税についてもこれからは増税だ、あるいは、所得税についても課税最低限をさらに下げていく、社会保障というものを見ましても、社会保障そのものの改善という方向が見えてこないですよ。財源が必要だというなら、もっと別な方向があるんじゃないか、我々は提案をしておりますけれども、どうも政府がやろうとしていることは、強きを助け弱きをくじくという、先ほどもお話ありましたけれども、本当に庶民から見ると、どうして力の強いところばかり助けるのか、一番弱いところを助けるのが政治じゃないのか、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。私は、このような庶民生活直撃の税体系は抜本的に改める必要があるということを申し上げておきたいと思います。

 さて、次に、天下り問題ですけれども、谷垣大臣にお聞きしますけれども、国税OB税理士というのは何でしょうか。

谷垣国務大臣 国税庁で実務を長くやっておりますと税理士の資格を得られるという制度がございますので、恐らくそのことをおっしゃっているんだろうと思います。

佐々木(憲)委員 端的に言うと、二十三年以上税務署に勤務して、研修を受けますと、税理士の資格が取得できるというものでありまして、税理士の中には、試験組とOB組という二種類あるというんですね。

 試験組は、大変な苦労をして税理士試験に合格して税理士になる方々でありますが、OB組というのは、国税庁で一定の年限を経過いたしますと自動的にその資格が取れる、研修もそんなに難しくはない、ほとんどの方々が取れる、こういう非常に落差があるわけであります。

 さてそこで、税理士の中でOB税理士の割合、これはどのぐらいありますか。

石井政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年三月三十一日現在でございますが、税理士登録をしている方々が六万八千六百四十二人おられますが、元国税職員がその中には二万二千三百四十三名おります。割合で申しますと三二・六%でございます。

佐々木(憲)委員 三分の一がOB税理士と言われる方々であります。

 私は、国税庁を退職して税理士を開業する、これ自体を問題にしているのではありません。問題は、このOB税理士の中でも、指定官職と呼ばれる税務署の署長ですとか、あるいは副署長以上、それから地方国税局の調査部長、局長に至る幹部が退職する際に、各国税局の人事課がわざわざ顧問先を紹介する、つまりお客さんを紹介して、これも組織的に紹介できる仕組みがあるということだそうでありますが、こういう仕組みがあることは、大臣、事実ですか。

谷垣国務大臣 そうです。

佐々木(憲)委員 私は、これは大変異常な仕組みだと思うんですよ。

 昨年七月の退職者に対して、各国税局等がどのように税理士顧問先のあっせんをしているか数字をお聞きしたいんですが、あっせんを行った退職職員の数、一人当たりのあっせん企業数、平均月額報酬を示していただきたい。それから、あっせん件数、十件以下、二十件以下、三十件以下、それぞれの人数を示していただきたい。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年七月の退職者に関して申し上げますが、あっせんを行った者は三百五十九名でございます。一人当たりの平均あっせん企業件数、これは一〇・九件でございます。月額の平均の顧問料は六十六万円ということになっております。

 それから、今先生がおっしゃられました分布でございますが、一件から十件程度あっせんいたした者が百七十一名、十一件から二十件あっせんした者が百七十三名、二十件を超える者が十五名ということになっております。

佐々木(憲)委員 そうすると、退職職員一人当たりの平均年額報酬は、六十六万円というわけですから、十二カ月掛けますと七百九十二万円で、約八百万。退職職員すべての年額報酬が、七百九十二万円ですから、三百五十九人ですから三百五十九人分掛けますと、二十八億四千三百二十八万円ということになる。あっせん件数二十数件の税理士もいるということですから、年額報酬が一千万を超える人もいる。

 これは驚くべき数字で、これは、一定年限たって、二十三年たちますと自動的に税理士資格が手に入って、そして、高級官僚の場合は、自動的に、組織的に、あなたはこの企業とこの企業をお客さん紹介しておきますよ、二十件も三十件もこうやって紹介される。それで年間一千万も懐に入る、こういう仕掛けというのは果たして正常なんだろうか。年間約四千件近い企業をあっせんしているわけです。その努力というのは、労力は相当なものですね、エネルギーは。

 では、その企業をどうやって見つけるんですか。

石井政府参考人 お答えいたします。

 あっせんを行う場合の顧問先企業でございますが、これは従来からあっせんを行っております企業のまず意向打診を行いまして、顧問税理士さんの交代要請があった企業につきましてはあっせんを行うということを基本といたしております。当局から、新規に、能動的に企業を開拓するということは行っておりませんが、新たな企業から、先方からあっせんの要請がございました場合には、その企業の具体的なニーズ等を把握いたしました上で、個別に対応をしております。

佐々木(憲)委員 従来の企業から交代の要請があった場合といいますけれども、大体これは、要請は企業からではなくて、国税局が、二年たちましたからそろそろどうですか、こういうことをやっているんじゃないですか。

石井政府参考人 今私申し上げましたのは、従来からあっせんを私どもが行っている企業について、その意向を私どもから打診を行いまして、交代要請がありましたときにはそれに応じておる、おおむね二年ぐらいということになっております。

佐々木(憲)委員 要するに、二年たったら、次を送り込みますからどうでしょうかということで、二年ごとに交代しているというやり方をしているわけですね。大体二年というのが平均だと思いますけれども、その比率はどのくらいあるんでしょうか。

石井政府参考人 ちょっと今具体的な計数を持ち合わせておりません。

佐々木(憲)委員 私は東京税理士会の資料を見ておりますけれども、大体二年というのが七割であります。つまり、二年間たちますと、そろそろ交代をいたしますよと。何でそんなことをやる必要があるんですか。

 しかも、東京税理士会の調査で、あっせん、予約の申し入れがあったときの状況について税理士に聞いているんですが、それによりますと、税務調査をきっかけとしてその前後に申し入れ等が顧問先にあったというのが一七・四%もあるんですよ。

 大臣、これは、税務調査をきっかけに、顧問としていかがですか、こういう申し入れをするというのは、押しつけじゃないんでしょうか。権力の濫用にならないでしょうか。

谷垣国務大臣 この制度は、税務署職員が在職中職務に専念できるようにということでやってきたものでございます。ただ、今まで、この制度の運用に当たりましてはいろいろな批判もございました。納税者から疑惑や批判を招かないような運用をしていくということは、これは今後とも努めなきゃならないことだろうと思っております。

佐々木(憲)委員 在職中に職務に専念できるようにというのはどういうことなんでしょうか。要するに、二年ごとにどんどん送り込むということは、在職中に専念できるんですか、そのことによって。

谷垣国務大臣 老後といいますか、退職した後、いろいろな心配をしないで、とにかく現職中は職務に専念してくれ、こういうことであろうと思います。

佐々木(憲)委員 定年まで勤めて、定年で退職金をもらって退職する、その後、その人がどのように職業を選択するかは自由ですよね。それなのに、大体五十五歳から五十九歳までの間、定年前に、あなたは大体この辺いかがですか、こうやるわけですね。そして、次々と送り込んでいく。これが職務に専念できる前提づくりだ、これはおかしいと思いますよ。職務に専念できるかどうかは、退職までちゃんと勤められるということで保障されるわけであって、この仕組みを職務に専念できるという理由で維持するというのは、これはちょっと理屈が成り立たないと私は思うんですけれども、率直な御感想をお聞かせいただきたい。

谷垣国務大臣 これは公務員制度全般の議論とも関連してまいりますが、できるだけ小泉内閣のもとでも、退職慣行のようなものは今まで割合若いうちにやっておりましたけれども、三年間それは延ばすようにしよう、天下りもできるだけ少なくやっていくためにはそういうことも必要だということで取り組んできたところでございます。私どもの組織においても、そういう取り組みはもちろん必要だろうと思いまして、今までも努力をしてまいりました。

 しかし、他方、やはり組織の活性化と申しますか、そういういわばローテーションといいますか、ちょっと今のはうまい表現ではないんですが、そういう組織の活性を維持するという観点もいろいろございますので、要するに、公務員だけではなく、民間も含めてのことでございますが、人材の力をどういうふうに発揮させていくかという大きな論点が背景にあるのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 ローテーションというのはおかしいと思いませんか。要するに、天下りという表現がいいかどうかは別としまして、定年前に、あなたは二十社いかがでしょうか、ああ、わかりました、これが次々と二年ごとに行われるのは、ローテーション、これがなぜ活性化なんでしょうか。いや、これは、定年まで勤めてその後どうするかというのは御自由なんです、それぞれ。でも、組織的にこういうことをやるというのはおかしいと思うんですよ。

谷垣国務大臣 ローテーションというのは必ずしも適切な言葉ではございませんけれども、職場、職場はやはり適切な年齢構成というものがあろうかと思います。そういうものも維持しながら、職場の活性化それから士気というものを図っていくという要請も他方にあるのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 こんなことで活性化できるなんというのは私はおかしいと思いますよ。

 東京税理士会が二〇〇四年十一月に調査した、税務職員の退職時における業務侵害行為に関する実態調査の集計結果というのがあるんです。それによりますと、国税局からあっせん、予約の申し入れがあったときどのような結果になったか。顧問先が受け入れを拒否したのはわずか一〇・一%です。既に税理士がいるのに顧問先が受け入れた、二階建てなどになったというんですね。二階建てというのは二人、三人というのは三階建て、五人受け入れたら五階建てだということらしいんですけれども、そういうのが八四・一%に上っているんです。断れないんです、実際に。それはそうですよ、税務調査に来るようなところが、今度こういう人どうですかと来たら、断ったら何か不利益をこうむるんじゃないかというふうに感じますからね。既に税理士を受け入れているのにそういう形になっている。私はそういうあっせんは必要ないと思うんですね。

 あっせんを廃止すべきだ、こういう意見はたくさん今あります。企業側からも、そういうことは必要ないという声も上がっております。

 東京税理士会の昨年の二月一日の会報を読みますと、こういう意見が出ているんです。この「予防・対策関係」という項目で、これは税理士にアンケートをとったわけですが、「税務職員の退職に際し、税務当局が顧問先を斡旋・予約する行為について、どう思いますか。」これに対して一番多いのが、これは複数回答可なんですけれども、三一・九%というのがこういう回答です。「税務行政上、不公正、不明朗等の認識を与え、税務当局への不信感を醸成する」。それからもう一つは、二七・四%を占めているのは、「税理士資格取得の面で恵まれており、このような行為は廃止すべきである」。それから二三・八%を占めているのが、「税理士の自由競争及び業界の秩序を乱す行為である」。こういうのが高い比率で挙がっておりまして、その他の中にも、「斡旋を受け入れる法人は、税務調査時に有利な扱いをしてもらえると期待している。」「斡旋は、納税者にも誤解を与えるので早急に廃止すべきだ。」こういう意見がたくさん出されているわけであります。

 例えばこの中で、税理士取得の面で恵まれておりということが言われているんですけれども、どういう面で恵まれているか。税理士の取得をする際にはいろいろな手続が必要なんですね。その手続が終わるまでは税理士とはなれないわけです、当たり前のことですけれども。つまり、登録申請を出してからおおむね二、三カ月の期間を要するということらしいですね。

 この注意点として、日本税理士連合会の税理士登録・開業の手引というのがありまして、そこにこういうことが書いてあります。「この登録が決定されるまでの間は「税理士」ではないのであるから、この期間中は下記のことに注意すること。」「税理士業務、税理士業務の受託、又は予約を行わないこと。」こういうふうに言われているわけです。当たり前のことだと思うんですね。

 ところが、退職OB税理士の場合は、退職前にもう既に、あなたはここを紹介しますよ、こういう予約をするというわけです。これは税理士のこのルールからいっておかしいんじゃありませんか。

石井政府参考人 これは先生御指摘のとおり、仕組みとして、登録をするまでは税理士業務をもちろん行ってはならないことは当然でございます。あらかじめ、私どもは、個別の企業から税理士の方を紹介してほしいというような話がありました場合に、それに応じてどのような方が当該企業の欲しがっておられる方なのか、あるいはどういう方が適任なのかということをあっせんしておるということでございます。

佐々木(憲)委員 ですから、これは組織的な予約なんです、予約の受け付けなんですよ。本来、一般の国民が税理士として試験を、大変な難関を突破して、登録するときも二カ月時間が必要です。しかし、その間は一切こんなことやっちゃだめですよ、こういうふうに、予約もできませんよと決められているわけですよ。ところが、国税庁の場合は、いや、予約はいいんです、どんどん受け付けます。これは組織的に違反をやっているんですよ。ですから、これは組織的にやるからいいとは言えないでしょう。組織的にやるから一層悪質だと言わなきゃならぬのですよ。私は、こういうやり方は改めるべきだと思います。

 先ほど谷垣大臣も、やはり今さまざまなこういう制度の見直しというものは必要であるというふうにおっしゃいました。この点については、東京税理士会も意見としてこういうことを言っております。税務当局があっせんを行うのは納税者にも誤解を与えるので早急に廃止すべきだ、税務退職者の税理士資格の取得に関しては再検討すべきであるというふうに意見を出しております。

 ことしの一月二十七日に、全国青年税理士連盟が国会議員への申し入れを行っておりまして、それはお手元の資料の三枚目ですが、「聖域なき構造改革を推進するために 国税職員の天下りの廃止を強く要望します!!」というタイトルで、こう書いているんですね。

  国税職員の天下りは、国税OB税理士と税務職員の癒着をもたらします!!

  国税職員の天下りとは、国税OB税理士が国税局から税理士顧問先のあっせんを受けることをいいます。その根拠は民間の需要に対応することにある、というのが政府の見解です。しかし、民間が高い報酬を支払ってでも国税職員の天下りを受け入れる理由は、税務行政の便宜をはかってもらうためです。また、東京国税局幹部クラスのOB税理士はほとんど税務調査を受けない聖域とされてきたことは、国税OB税理士と税務職員の癒着を示すものです。

  国税職員の退職後の生計扶助を民間に押付けるのは間違っています!!

  国税職員の天下りは、退職勧奨の代償というのが政府見解です。しかし、これは、実質的には、国税職員の天下りを通じて、早期退職により国家が支給すべき退職金を民間に肩代わりさせることと同じです。国税職員の天下りは、まさしく国家の責任を民間に転嫁させることを意味するものです。

というようなことを書いておりまして、税理士法では、やはり厳格に税理士業務というものが限定されているわけであります。予約はできない、登録に時間がかかる、こういうことになっているにもかかわらず、税務職員だけは、試験も免除される、国税局が顧問のあっせんもしている。

 今、確定申告の真っ最中ですよね。政府は、納税者の誤解を招かないようにと何回も何回もいろいろなことを言うわけですが、こういうことを続けていては、これは誤解を招くことにならざるを得ません。確定申告で中小業者は大変な思いをしておりまして、国税局が組織的にあっせんを行い、OB税理士一人で何百万円あるいは一千万単位の報酬をもらう、こんなやり方は、やはり納税者から誤解を招くことは私は必至だと思います。

 やはりここは、これらのさまざまな意見をよく聞いて真摯に対応するということが必要だと思います。私は、この東京税理士会の要望を受け入れるという方が国民に対する信頼感をかち取る上で重要だと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、この制度は、職員のモラル、それから職場の規律、こういうものを考えてやってきたわけでありますけれども、もちろん、先ほど申しましたように、国民の批判や疑惑を受けないような見直しを都度都度行っていくということは、私どももきっちりやらなければいけないと思っております。

佐々木(憲)委員 今回、防衛施設庁の談合事件がありまして、最近こういう方向が出されたという報道がされております。早期勧奨退職の慣行を見直すということです。大臣、聞いていますか。自衛官を除く全職員を可能な限り定年の六十歳まで勤務させる、天下りはそういう形でなくしていくという方向が今回の談合事件に関連して検討されているわけです。

 当然、財務省も検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 当然、その方向で、三年間退職勧奨を延ばすということでやってまいりました。今後とも、そういうことは努力しなければいけないと思っております。

佐々木(憲)委員 私は、きょうは税制とOB税理士の問題を取り上げましたけれども、やはり大手企業に対して、税制の上でも、あるいはこういう税理士の対応の面でも、非常に優遇し過ぎていると思うんです。庶民の立場にしっかり立って物事を見ていかないと、当たり前だと思ってやってきた慣行あるいは制度というものが、これは国民全体から見ると非常に大きな重圧になっている、あるいは国民の疑惑を招く、そういう温床になってしまうということだと思うんです。そういうことで、根本的にこういう従来の制度を見直していくということが今の時期必要だというふうに思います。

 以上で、少し時間の前ですけれども、きょうは終わりたいと思います。

小野委員長 手が挙がっていますが、よろしいですか、佐々木委員。答弁よろしいですか。(発言する者あり)

 それでは、福田主税局長。

福田政府参考人 先ほど、佐々木議員の方から増減額のお話が出ましたので、ちょっと仮定を置いてですけれども、さっき先生がおっしゃった数字でおおむね、増減額はそのとおりだと思いますけれども、ただ、くどいようでございますが、昨年の政府税調の論点整理と申しますのは論点を整理したものでございまして、具体的に、いろいろな控除、税率構造の見直し等も含めて、具体的な税負担の水準には触れていないということだけは御理解いただきたいと存じます。

小野委員長 以上で佐々木憲昭君の質疑を終えます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小野委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 私は、ふだんは常任委員会の経済産業委員会の方に所属しておるんですが、きょうは特別に差しかえで財務金融委員会で質問の機会をいただきましたことを、委員長を初め理事の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず最初に、大臣、財政再建の各論に入る前に、基本的な考え方をちょっと最初に伺いたいと思うんです。

 二月一日の経済財政諮問会議で、竹中平蔵総務大臣と与謝野財政金融担当大臣らの間で、新聞報道によると、激論が交わされたというふうに聞いております。中身は名目成長率と名目長期金利をめぐってでありますが、この委員会は経済学教室ではありませんから、学術論争は避けたいと思うわけであります。

 ただ、要は、せんじ詰めれば、竹中大臣、きょう当然いらっしゃっておりませんが、また、当日この会議には参加されておりませんが、自民党の中川秀直自民党政調会長らの主張といいますか考え方というのは、成長率が長期金利を上回れば、逆に言えば、金利を低く抑えれば財政再建を容易にできる、こういう考え方なのかな、非常に乱暴に整理をすればそういうことだろうと思っています。

 他方で、与謝野大臣らは、この主張に対して、いやいや、実際はそう簡単じゃないですよ、いろいろあるけれども、そう簡単じゃないんだ、成長率が高まればおのずと長期金利も上がるわけだし、その関係はともかくとして、そんなに簡単ではないよという御主張であります。

 これは、私流に解釈しますと、金融政策に安易に頼っちゃいけないよ、これだけ借金がたくさんあるんだから、金利が上がるということを常に考えなきゃいけないよ、こういう、私に言わせれば真っ当な議論かなと思っておるわけでございますが、これだけ債務が膨らんでいる中で、すなわち金利上昇のリスクを抱える中で、やや竹中大臣らはちょっと楽観的、別の言い方をすれば、ちょっと無責任、私流に言えば、ちょっとやや危ないなという議論だと思うわけでございますが、財政をつかさどる谷垣大臣の御所見をまず伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 私どもは、二〇一〇年代の初頭に、いわゆるプライマリーバランスを回復してバランスをさせたいと思っているわけでありますが、もし今の御議論のように、これから長期に向かって名目成長率の方が金利より高いという姿を実現できれば、実現することが可能であれば、プライマリーバランスを回復した後は、いわばそのまま借金を塩漬けにしておいてもそれほど問題はないという展望も描けないわけではないんだろうと思うんですが、では金利と名目成長率の関係はどうなるかということになりますと、学術論争ではありませんから結論を申し上げますと、そんなに金利というものを政策でうまいぐあいにコントロールできるわけではなかろうと思っております。

 歴史的事実を見ましても、長期間をとると名目成長率の方が高いということが言えるというお考えがあるようでありますけれども、当時は固定金利であったりいろいろなことからして、今それに当てはまるかどうか、やはり我々が実際に見てきた中期的といいますかそのぐらいのレンジでいうと、むしろ金利の方が高かったのが実際の姿であるというふうに私は思います。

 もちろん、実質成長率を高めていくということは大事なことでございますから、いろいろな手段を講じてそういう力をつけていかなければならないわけですけれども、財政を考える場合には、やはりそこは堅実に考えながら、うまく成長が遂げられたときはそれで結構で、それはいわばボーナスと考えればいいと私は思うんですが、必ずそういくとは言えないわけですので、堅実な前提のもとでどうやって日本の財政をきちっとしていくかということを考えるべきではないかというのが私の基本的なスタンスでございます。

近藤(洋)委員 それを改めて伺って、大臣、安心をいたしました。

 歴史的に見ても、財政当局が金融政策に頼るというか押しつけてしまうと余りいいことが起きておりません。バブルの生成、崩壊をかんがみても、やはり本来財政がしっかりやらなきゃいけない、しっかりというのは歳出削減なり財政がきっちり判断しなきゃいけないところを、金融政策にしわを寄せてしまうといいことが起きていない。為替のときも円高のときもそうでございましたが、いずれにしろ、そういう通貨当局、金融当局に余りしわを寄せてはいけないと思うわけであります。

 量的緩和のことをちょっと聞こうと思いましたが、時間のあれではしょりますが、量的緩和の解除論で、きょう、新聞報道によりますと、いわゆる議決延期を求めないという新聞報道が出ております、日本銀行の政策決定に際して政府側は。やはりこれは金融政策、量的金融の話は短期金利の話でありますけれども、いずれにしろ、財政の理屈で金融をいじるということは余りやってはいけないと思うわけでありますし、ぜひそこは財政再建はしっかりやらなきゃいけないんだという観点から財政金融両政策を担っていただきたいと思うわけでございます。

 具体的に、きょう、私質問したいのは、特別会計の点を質問してまいりたいと思います。

 金利上昇リスクがあるわけですから、やはり財政をしっかり見直して、財政の中身を精査していくことが肝要であると私も思います。私も成長論者でありますが、しかしながら、財政の中身をしっかり精査する、その上では、特別会計の中身を洗い直すということは非常に大事だと思うわけであります。

 我々民主党は、三十一ある特別会計、政府・与党に先駆けて、その改革の全体像、個別の中身についても議論をし、政策を提言してまいりました。政府もようやくその特別会計の見直しということを昨年末から提案しているわけでございますが、お手元の資料、委員長のお許しを得て配付させていただきました。この一枚目の一の表を見ていただきたいと思うんです。この一、「国会で指摘を受けた事業に係る十八年度内示について」と書いていますが、これは電源開発特別会計、電源特会について、我々民主党の議員が、過去一年間でさまざまな問題提起を電源特会の内容、無駄遣い等について指摘をしてまいりました。国会で指摘をし、問題を提起した結果、通産省資源エネルギー庁が十八年度予算編成に当たって我々の指摘を受けて見直しをして、そして内示が出た数字であります。

 表のところに、電源特会にかかわる予算の中での広報予算、七十七億九千万円ございましたが、内示では三十九億円に減っております。例えば、インターネットのホームページで、三年間で十億円を超えるホームページ作成費用をつくっていた。これは信じられないことでありますけれども、こういった問題を指摘した結果、これを大幅に圧縮した等々、全部で七つの事業を廃止されました。合計でいきますと、広報予算だけでも七十七億九千万円が三十九億円でございますから、約四十億円の無駄遣いを我々の指摘によって削ることができたわけであります。

 さまざまな分野において我々民主党はこうした政府の無駄遣いを国会で指摘をし続けてまいりましたが、この電源特会一つとっただけでも、これだけの無駄を、無駄といいますか不要不急のものが明らかになり、政府の内示において減額をされた。

 資源エネルギー庁、きょう政府参考人で来ておりますが、この我々の指摘も受けて、十八年度予算を作成する、大蔵省と折衝するに当たって、大幅に減っておるわけですが、この見直しについて、どのような観点から、どのような視点からこの見直しを実施したのか、お答えいただきたい。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員の御指摘になりましたいわゆる電源特会でございますけれども、実態との関係で多額ではないかとか、あるいは予算参考書の積算あるいは執行が異なっている、あるいは委託先が固定しているというようなことについて御指摘を受けたところでございます。

 これらの点につきましては、当省といたしましては、電源開発を進める、あるいは電源地域の振興などの必要な予算はきっちり確保させていただきたいと思う一方で、御指摘を踏まえまして、改めるべきところは改める、そういう考えに基づきまして、当時の大臣からの御指示もございまして、広報予算の今御指摘になりましたような額での圧縮、あるいは企画競争などを導入いたしまして競争原理を入れる、あるいはスペックとか対価につきましては、その妥当性を有識者から成るアドバイザリーグループなどできっちり検証させるというような措置を初めといたしまして、特別会計の歳出について厳しく見直しをしたところでございます。

 特に、御指摘がございました十八年度の歳出規模につきましては、広報関係で御指摘のとおり七十八億のものを四十億円弱まで圧縮をする、あるいは、今御指摘になりましたような個別な事業につきましては、個々の見直しをいたしまして廃止をするというようなことで臨んだわけでございます。

 引き続き、電源地域の振興あるいは電源立地への理解促進というもの、あるいは、安全対策などの必要な予算を確保する一方で、一段と厳しさを増すような国家財政の状況を踏まえまして、事務の効率化あるいは重点化を進めるなど、適切に運営をしてまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 要は、本当に必要なのか、ゼロベースできっちり見直せば、広報予算だけでも半分に減ったということなんですよね。一からきっちり見直したら半分に減ったということなんです。

 電源特会のこの問題は、三十一ある特別会計の氷山の一角だと私は思うんですね。各特別会計を見れば無駄な事業がまだまだ本当にたくさんある、整理をしていけば幾らでもある、見直せば十分圧縮できると思うわけであります。我々は、こういった問題について引き続き、税金の無駄遣いを許さないということを、我が民主党の基本方針でありますから、積極的に指摘をし提言をしてまいりたいと思います。

 ただ一方で、私たち国会議員は別に会計士ではありません。会計士ではありませんから、一々一々全部チェックするというのは、これまたなかなか難しいものなので、きょうはこの場では、その裏に横たわる構造問題をしっかり改めなきゃいけない、このことの議論を進めていきたいと思うんです。

 私は、この特別会計の無駄遣い、その根底にある一つの柱に、特別会計から、所管官庁から事業を委託する、受注している公益法人のあり方が大問題だろうと思うんですね。すなわち、この公益法人に対する天下りの問題であります。

 一枚めくって資料の二を見ていただきたいんですが、この資料二には、財団法人電源地域振興センターの役員の一覧がございます。この電源地域振興センターというのは、一枚目で書いています、廃止となった事業の電源地域産業育成支援補助金、マーケティング事業、通称じまん市と呼ばれる物産事業なんですが、これを六億八千万円で受託をしている公益法人でございます。それで、エネルギー庁の査定によりゼロベースで見直した結果、無駄だ、過大な予算の計上、予算参考書の積算と執行の乖離ということが明らかになり、ゼロとなったわけであります。

 この財団の役員を見ますと、会長の勝俣さんは東京電力の社長さんでありますが、理事長は資源エネルギー庁の元長官の方、そして理事等で通産省出身の方がいらっしゃいますが、ここに大蔵省の事務次官の方、そしてさらに常勤の監事でも大蔵省の方がいらっしゃいます。これを見ますと、発注先の通産省の方等に加えて、大蔵省、財務省の方も天下っている。わかりやすく言えば、よく天下りというのは所管官庁の問題だけ指摘されますが、実はそこに査定官庁の財務省の方がしっかり天下っているということなんですね。

 これでは、ずばり言うと、要するに、発注側も、そしてその予算を査定する側もそれぞれ天下りを受け入れているわけですから、無駄な事業がやめられるはずもない。今までずっとこの無駄遣いが続いていたのは、いわば通産省、経済産業省と大蔵省の、ある意味で僕はこれは共犯だと思うんですね、共犯。通産省だけのせいじゃないんです。査定側にもしっかり人がいるということなんです。これではやめられるはずがないわけであります。

 調べてみますと、これは、我々民主党が衆議院に対して調査を依頼しました公益法人等における公務員の再就職の調査報告書でございますが、これをざっと見渡しただけでも、財務省出身の方々は、経済産業省の所管の公益法人に約三十名を超える方々が天下っています。すなわち、大蔵省、財務省はさまざまの役所に対して人を派遣している。これでは公益法人の無駄遣いがとまるはずがない、そう思うわけであります。

 査定官庁、本来なら厳密に査定しなければいけない査定官庁の財務省が、こうした公益法人にまさに派遣をしているというか天下っているということは、査定が甘くなると見られても仕方がないと思いますし、こういったことは厳に慎むべきだ、やめるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 天下りの問題はいろいろ御批判がある、今も委員からも御批判が示されたところでありますけれども、そういった声によく耳を傾けて真摯に対応しなければいけないと思っております。それから、そのことを通じて厳正であるべき予算の査定や何かがゆがめられているというようなことは私はないと思っておりますが、また、そういうそしりを受けないような努力ももっともっとしなきゃいけないと思っております。

 ただ、その一方で、いわゆる再就職の問題というのは、官民を通じて人の能力をどう使うかということにも関連してまいりまして、恐らく背景には、生涯を通じて一つの組織が、企業なりそういうものが雇用していくというような体制の中にこういうものを生んでいる要素が一つあるのではないかと思っておりますけれども、官民を通じたそういう雇用、生涯を通じての雇用というものはどうあるべきかという議論ももう少し煮詰めなければいけないと思っております。

 いずれにせよ、予算等々でゆがめているというような御批判を招くことがないように、きちっとやらせていただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、現にゆがめられているんですよ。現にこれだけ無駄な予算が執行されてきたわけです。もっと言えば、財務省出身の方がいるにもかかわらずこのような無駄が行われてきたことが問題だと。現に無駄が行われているということなんです、そしりではなくて事実として行われてきた。査定においてゼロベースで見直したらゼロ査定になった、そこに財務省の方が監事としているではないですか、これは非常に問題だということを申し上げているのであります。

 大臣がおっしゃるとおり、確かに役所の方々の人事システムを考えなければいけません。財務省の方に聞きました。本省の退職されている方の平均年齢、第1種、いわゆるキャリアの方で五十五歳、その他職員の方で五十四・五歳ということでございました。随分若くしておやめになっているなという気がいたします。

 私は、何もお役人の方々を目のかたきにするつもりはありません。皆さん方も本当に頑張って仕事をしていただきたいと思う。むしろ、国家公務員というのは、我々納税者、国民から見ますと、いわば国有財産であります、資産なんですよね。このお役人の方々に、一生懸命仕事をして、その資産を有効活用しなきゃいけません。これをむしろ天下りという形で不良債権化して飛ばすことが問題だと言っているわけでありまして、本体でフル活用するシステムを考えなきゃいけない。

 とりわけ財務省の方というのは、きょう、財務金融委員会だから言うわけではありませんが、各省庁並べても、キャリアの方々は優秀なんでしょう。だけれども、もっと私が強調したいのは、いわゆるノンキャリアの方々、財務省の方々は優秀ですよね。主計局、主税局、ノンキャリアの方々がいなければ大蔵省の予算編成はできません。これはもうみんなが知っています。それだけ優秀な、まさにノンキャリアの方々が支えている役所だというのは、我々は十分知っている。だからこそ、こんな形で、変な形で天下りすることは、我々国家にとっても問題だし、大きな損失ということだと思うわけであります。

 ですから、大臣、行政改革の中で、それこそ大蔵大臣、次のリーダーとも目される本当に立派な先生だということは十分認識しておりますが、リーダーシップを発揮して、この人事システム、公益法人の天下りはもうやめる、大蔵省が率先してやめる、我々は法律を出していますけれども、大蔵省がまず率先して他省庁の法人への天下りをやめるんだ、このことを宣言した上で新たな公務員システムを提言するというお考え、政治家としてございませんか。もう一度お答えください。

谷垣国務大臣 財務省の職員、大変優秀だとお褒めをいただいて、ありがたく思っております。そういうお褒めいただいたことに恥じないように頑張らなきゃいけない、こういうふうに思うわけでございます。

 今お話がありましたように、随分早いうちから肩たたきでやめていくという現実がございました。これについては、平成十四年十二月、閣僚懇談会で、これは1種の幹部職員でございますが、この勧奨退職年齢を五年間かけて段階的に引き上げて、平成二十年度には原則として、十三年度と比べ、平均の勧奨退職年齢を三歳以上高くするということを目標としようということで申し合わせがございまして、今これを実現するように一生懸命やっているところでございます。

 天下りも、今全廃をすると宣言せよとおっしゃいました。確かに批判がありますから、あるポストに何々省出身の次官がもう自動的になるというような仕組みは見直さなければならないと私も思っておりますし、押しつけるようなことがあってはいかぬということももう間違いないことだと思います。

 ただ、一方、やはり先ほど申し上げたような雇用体制というものも同時に見直していかなければなかなか進まないことがあるのも事実でございますので、両方で努力をいたしたいと思っております。

近藤(洋)委員 他省庁から見れば、くどいようですが、やはり大蔵省から人を受け入れるということは、これは当然予算がついてくるということも思うわけですから、これはなかなか断りにくいわけですよね。だから財務省が率先すべきだということ、これがなくして本当の改革というのはできないのではないかということでございます。

 特会の話に戻りますが、今回の法改正で、電源特会にある剰余金、すなわち原子力発電所の建設計画のおくれから、現在は使わないお金を、特会、特別会計から合計で五百九十五億円、一般会計に繰り入れることになった。やはり剰余金がありますと、そこにお金が余っていると、どうも使い道が甘くなるという傾向があるわけでありますから、一たん特別会計に入れましょう、そういう意味で、財政規律を働かせようという考え方自体は、私は正しいことだろうと思っておるわけです。

 また、電促税は目的税でありますから、この点もしっかり法律に書くということ、これも基本的には私、賛成でございますし、民主党の改革案も、まあ方向感としてはこういった方向感を出しているところであります。

 ただ、お金が余っている、また今後余ることが予想されている特別会計は電源特会だけではないわけであります。代表例は、道路特別会計であります。

 道路特別会計は、本四架橋分の返済分がなくなることから、平成十九年度から年間、毎年四千五百億円という巨額なお金が新たに発生する、すなわち浮くわけでありますけれども、この使い道について、いわゆる自動車関係諸税というのは特定財源として、納税者は特定財源ということで納得して支払っているわけであります。

 この剰余金分、これについては、政府・与党、それぞれお考え方を出されているようでありますが、私は、この四千五百億円分、道路関係に使わないのであれば減税するというのが物事の道理かと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたい。

谷垣国務大臣 道路特定財源につきましては、去年の末、基本方針を政府・与党でつくったわけでございますが、その中で、特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提として、来年の歳出歳入一体改革の議論の中で、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得るということを内容とする方針をまとめまして、今後この方針に基づいて見直しを進めていく。

 具体的には、この平成十八年の年末に行われます予算、それから税の編成の中で詰めていくということになろうかと思っておりますが、非常に厳しい財政状況の中で、限られた財政資金を広く有効に活用していくという必要があろうかと思います。

 他方、しかし、納税者の十分な理解を得られなければ、これは進められないことでございますので、納税者の理解を得られるように十分な説明を行いながら、制度の詰めを行っていきたいと考えております。

近藤(洋)委員 大臣、大臣の御地元は京都ですから、どれだけ雪が降るかわかりませんが、私の地元は山形県なんです。今回、北国は大変豪雪で、灯油の値上がり、ガソリンの値上がり、本当に困っている。私も毎週末地元へ帰って、本当に困った困ったという話を聞くわけですね。ガソリンも、御存じかどうか、まあ雪国の先生方はわかるかもしれませんが、冬場は家出る二十分前にエンジンかけなきゃ動かないんですよ車、車を暖めないと。それだけガソリン代を使うんですよね。本当に生活を直撃しているんです。

 そこの中で、四千五百億円、十九年度から余るわけでしょう。みんなこの高いガソリンで本当に困っている、大変苦労している。これが、納税者は道路に使うからということで納得をして、さまざまな、では、例えば消雪道路、何ができるのかなと、雪国でいえばですよ。そういうことで納得をして払っている。そうでないものに使われるんならば下げてくださいというような、この原油高の中で。これから原油の値上がりはどうなるか、さまざまな見通しがありますけれども、高どまりしていくという見方が大方ですよ。ますます響いてきますよ、こういったものは。

 だとするならば、これは減税するということがやはり、私は、大臣、納税者の方の納得をと言いますけれども、どうやって納得させるんですか。ちょっと、これから議論することですけれども、どのようにしてこの道理を覆すのか、もう一度お伺いしたい。どうやって納得させるんですか。

谷垣国務大臣 私、京都が選挙区でございますので、近藤委員からごらんになると、芸子さんが三つ指ついて出てくるようなところで選挙をやっているとお思いかもしれませんが、私の選挙区は京都の中でも日本海側でございまして、近藤委員のところほどではございませんけれども、相当雪が降るところでございます。

 ですから、ことしの雪の状況もそれなりに存じ上げているつもりでありますが、今の余剰分といいますか、道路特定財源につきましては、昨年、先ほど申し上げました基本方針の中で、厳しい財政事情のもとで、環境面の影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持するとされているわけでございます。

 それで、確かに今、原油価格も上がってきて、今後どうなるかというのは、我が国経済に対するこれからのリスクの中でもよく注意していかなければならないことはもうおっしゃるとおりだと思っておりますが、エネルギー関係諸税の負担を見ますと、資源の節約とか消費抑制とか社会的コストといった観点、あるいは諸外国と比較した場合、税負担水準が必ずしも高いという状況、むしろ低い状況にあるのではないかと思っております。そこで、地球温暖化対策等が求められている中で、税負担水準の引き下げには、いかがなものかという考え方も成り立ち得るのではないかと思っております。

 それから、先ほど申し上げたことの、まあ私、二言目にはいつもそういうことを申し上げて恐縮ですが、国それからさらには地方を含めた財政事情等々も考慮する必要があるのではないかと考えているところでございます。

近藤(洋)委員 百歩譲って、財政状況がこういうことだからということ、これは私も十分認識しているわけであります。だとするならば、この特定財源ということで納税者が理解をして払っている税金であるならば、さらに言えば、この税率を維持したままで改革をしていきたい、一般会計化をしたいと。私どもは、一般会計化そのものには、我々民主党も道路特定財源の一般会計化ということで申し上げています。ただ、税率を見直すべきだということをあわせて我々は言っているわけでございますが、税率もそのまま維持をする、そして一般会計化だと。

 この政府・与党方針、資料三に添付させていただきましたが、この二と三にあるような考え方で、基本方針にのっとってやるというのであれば、余る部分、四千五百億円部分について、これはまさに電源特会で、財務省とエネルギー庁が知恵を出したように、余った部分については一般会計化して、一時的にほかの部分に貸し出す。貸し出すという概念を入れて、将来は、その貸し出した部分、一般会計に貸した部分について、そこを上限に道路関係に使うんだという担保がなければ、今回の特例公債法で変えた考え方と一緒ですよね。

 それを上限に使う、エネルギー予算に使うことができるという、もちろん減ることもあるわけですけれども、上限はちゃんと確保してあげますよという発想をこの道路特会の中にも入れなきゃいけないんじゃないか、入れるべきではないかと思うわけでありますが、どうかという点が一つ。

 あわせて、このことを突き詰めていくと、大臣、結局、このシーリングという考え方、予算編成過程におけるこのシーリング、横並び、全部、各省一律こうですよというこの上限をつけてやる予算編成のあり方そのものを、そろそろ僕は見直すべきだと思うんです。

 横並びで、マイナスシーリングだ、各省横並び、これでやりなさいという予算編成をやる限り、やはり本当に必要なときに思い切った予算が投入できない。ある意味で、この予算の編成のでことぼこをつける、でこぼこをつけるというのは、これは政治なんですよね。政治の判断で決める。ところが、今までずっとシーリングのことを続けてきたから、およそ各省庁、各局、予算の比率が変わらないことがずっと過去続いているわけです。

 これは、シーリングという考え方をもうそろそろやめるべきじゃないか、政治判断で予算を決めるべきじゃないか、大蔵省の予算編成のあり方を見直す時期じゃないのかと思うんですが、この点についてもあわせて、大臣、お伺いしたいんですが。

谷垣国務大臣 まず、道路財源を一般財源化していくならば、今度の電源特会等々のような工夫をすべきではないかという点でございますが、道路歳出は、財源にかかわらず、今後重点化、効率化というようなものを図っていかなければならないところだろうというふうに考えております。

 もちろん、道路につきましても、公共事業全般についていろいろな議論がございますけれども、日本の自然環境等々、災害の状況等々というようなことも頭に置かなければならないことは事実でございますが、今後とも重点化を図っていかなきゃならない分野であろうというふうに思うわけでございます。

 それから、一般財源、一般会計、一般歳出にしていくということから考えると、今委員のおっしゃったようなことがすぐ視野に入るかどうかということもあるのではないかと思いますが、いずれにせよ、これはまだ、これで決めたというわけではございませんので、今後議論をしなければいけないと思っております。

 それから、シーリング、もうそろそろやめろと、それぞれ、やはり予算の査定というものはそれぞれできちっとやればいいじゃないかという御趣旨だと思います。

 ただ、これは、平成十九年度の予算をどういう方針でつくっていくかは、まだそこまで視野が行っておりませんけれども、歳出を抑制していかなければならない流れにあることは間違いないだろうというふうに思います。今までそのためにシーリングというのをやってきたわけですが、さらに重点化をしながら、必要なところには金を回しながら歳出を抑制するという手法にいかなるものがあり得るのかということは、私たちもよく研究をしなければいけないと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、私は、やはりこのシーリングによる予算編成というのは、もはやもう限界だと思うんですね。お金がないということは皆わかっているわけです。その上で、でことぼこをつけていくということでありますから、このシーリングという発想をそろそろ排除して、各省庁、本当に必要な予算は何なんだということに踏み出す時期じゃないか。

 僕は、大蔵省主計局も情けないと思いますよ。シーリングというたががなければ予算編成できないというんだったら、大蔵省主計局なんか要らないのであります。

 我々は、大蔵省主計局、そんな優秀な方々が集まっていると言われます、当委員会にも、我が民主党にも主計局経験者がいるのかもしれませんけれども、優秀な人材を、こんなシーリングのたががなければできないなどというために税金を払って雇っているわけではないですし、ここはもう一度予算編成のあり方を考え直さないと本当の予算編成はできないのではないかということだけを指摘したいと思います。

 最後に、国有林野事業についてお伺いしたいと思います。

 五ページ目に、国有林野事業の財務状況等の資料を載せていただいています。ちなみに、きょう提出した一から五までの資料は、すべて関係する省庁の方々による資料の出典でございますが、国有林野事業の財務状況等の資料がございます。

 平成十年度の改革から、かれこれ七年、八年たちました。時間がないので数字ははしょりますが、要は、新規借り入れについては十六年度からやっとゼロになりました。資料の四では、この全体のスキームですが、三兆八千億円あった全体の累積債務を、一兆円、国有林野事業特別会計が背負いながら、事業の見直し、改革を進めてきたわけですが、新規借り入れはなくなったけれども、債務残高はずっと同じ。最後の二番目、当年度損益についても、黒三角、マイナスが続いております。

 林野庁、せっかく来ていただいておりますので簡単に。

 この五十年間で返済するというスキーム、本当に実現できるとお考えですか。

辻政府参考人 国有林野事業につきましては、先生御案内のように、平成十年の抜本的改革によりまして、当時約三・八兆円の累積債務のうち、約一兆円につきまして、国有林野事業特別会計において負担する、利子につきましては、一般会計から補給を受けつつ、平成六十年までに返済をするということにされたところでございます。

 現在、木材価格が低迷するなど厳しい状況にはございますけれども、平成十六年度には、当初の収支見通しどおり新規借入金をゼロとし、収支均衡を図ったところでございます。

 今後につきましては、成熟しつつある人工林資源を中心に収穫量は増大する、それから人件費等のコスト縮減を図る、こういったことを踏まえまして、引き続き、収支両面にわたる努力を尽くす中で、一般会計からの利子補給を受けつつ、債務の返済に努めてまいりたいと考えてございます。

近藤(洋)委員 次長にこれ以上詰めるのは酷だと思いますが、私が聞いているのは、この当初のスキームである一兆円を、五十年間かけて返済できるめどが立っているのか、こういうことなんでございます。既に十年近くたって、減っていない。現在の木材価格等を考えて、これは私は無理だと思うんですね。だれが見ても明らかに無理です。

 林野庁が苦労していないとは言いません。人員、職員数も一万二千人から七千五百人まで減りました。タオルを絞って、絞って、絞り切っている、その状況はよくわかります。ただ、問題は、もはや、この国有林野事業といいますか、木材を切って売るというので黒字が出るはずがない、この現実を直視すべきではないかと思うんです。

 そこで、最後に大臣にお伺いします。

 大臣は、趣味が登山だと聞いておりますが、ですから、山のこともよく御存じだと思います。

 この山を守るということを、日本の山を、国有林を商業生産でやるということは、もはや私はあきらめた方がいい。むしろ、山を守る、国土を守るという観点からこの国有林野事業というものを見直して、考え直さなければいけないのではないか。そう考えると、この特別会計に残っている一兆円を返済するという重荷を背負わせることは、逆に私は、国有林の保全という観点から、相当無理が来ているのではないか。

 ここに来て、十年間、間もなくたとうとしています。そろそろ、一般会計化ということも、特別会計の議論なども踏まえて、この国有林野の債務一兆円について国有林野事業に持たせるということを方針を転換し、国有林野事業そのもののあり方についても農林水産省と財務省が議論すべき時期じゃないかと思いますが、国土を守る、山を守るという観点から、山を御存じの谷垣大臣に最後にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 国有林野の問題は、今委員も御指摘になりましたように、これだけ木材価格が低迷している中で、林野庁も相当苦労しておられると思うんです。どうしていくかということを、去年の暮れにできました行政改革の重要方針の中でも、今委員がおっしゃったように、一般会計化等も含めて検討するということになっておりますが、一つは、やはり今委員がおっしゃったように、国土の保全という観点をどう入れていくか、これももちろん極めて重要な視点だと私は思います。

 ただ、もう一つ、やはりこれ以上国民負担をふやさないためにはどうしたらいいかという視点も財務大臣としては申し上げざるを得ないわけでございまして、まだそこから何のアイデアが出てくるかまでは十分至っておりませんけれども、去年のその行革重要方針を踏まえまして、これからよく議論をさせていただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 金融機関に何十兆円も投入しました。破綻した大きな企業に何兆円も投入しました。それと比べるわけではありませんが、我が国の国土、山という観点から、ぜひ真剣に議論していただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

小野委員長 以上で近藤洋介君の質疑を終了いたします。

 続きまして、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、財務金融委員会におきまして質問の機会を与えていただきまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 きょうは、郷里の先輩であられる谷垣先生、そしてまた古巣である大蔵省の諸先輩方を前にして大変やりにくい部分もございますが、遠慮なしにやっていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 今回は、定率減税の廃止の話、そして特別会計の空港整備特別会計について御質問させていただきたいと思います。

 定率減税につきましては、財務大臣も、これは短期的な景気対策だからもとに戻すのはいいんじゃないか、余りとやかく言うなということかもしれませんが、実際、これは国民の感情としては国民の負担になるわけでありまして、増税ということになるというふうに思います。

 特に名前が恒久的減税ということで、大変ややこしい。恒久減税だったら未来永劫続く減税ということになるんでしょうが、恒久的という的が巧妙に入っていて、非常にややこしい話になっている。

 私も、平成十一年度にこの減税が行われているとき、もとの大蔵省から総理官邸の方に出向していまして、小渕総理大臣の答弁を、当時大変厳しい総理秘書官、上司がいまして、その人のもとで答弁を作成した記憶がございます。非常に厳しい御指導を受けた人で、きょうは別にその復讐をはかるために質問をするわけではございませんが、国民の負担になるということでございますので、しっかりと審議する必要があると思います。

 さて、定率減税の負担軽減法には二つの法律的な要件があります。一つは経済状況の改善、もう一つはいわば所得課税の抜本的見直しということであると思いますが、経済についても実態がどうかということについてはいろいろと議論があると思いますが、きょうは、二つ目の要件の抜本的見直しについて、いろいろと御意見を伺いたいと思います。

 まず、実際何をもって所得課税の抜本的見直しとしているのか、その点について財務大臣の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 北神委員は、当時の、この法律がつくられたときの状況もよく御存じでいらっしゃいますが、抜本的改革は何かということになりますと、午前中も吉田委員との質疑の間で申し上げたことでありますけれども、所得課税ということになりますと、税率の構造の見直しと、それからもう一つは控除、いろいろな控除をどう見ていくかという二つの問題があろうかと私は思っております。

 控除の問題は、まだまだ残された課題も当然あるんだろうと思いますが、御承知のように、平成十五、十六年度の税制改正では、配偶者特別控除の上乗せ部分を見直すとか、あるいは老年者控除、公的年金等控除の見直しを行いました。

 それで、ことし十八年度でこの定率減税の廃止とともにお願いをしておりますのは、税率構造の見直しでございます。

 これはもう午前中も申し上げたことで、るるは申し上げませんが、三位一体改革の中で税源移譲をしていくという観点で、税率をいじる過程の中で、税源移譲をする過程の中で、個々の納税者の負担というものを大きく変えないように、できるだけ同じような状況にしていくことで、まずは制度設計をしようということでやらせていただきましたが、税率構造は、地方税がフラット化をしましたのに対応しまして税率のカーブというものは立ってきたということで、所得税体系としては大きな変化なんだろう、このように考えているところでございます。

北神委員 税率構造の変革と諸控除の見直しということだと思いますが、税率構造の見直しというのはよくわかるんですね。ただ、それは半分にすぎないと思うんですよ、いわゆる抜本的税制見直しの。もう一方が諸控除の話ですが、今大臣が言われた配偶者特別控除とか年金等控除とかいろいろあると思いますが、およそそれでは抜本的見直しと言えないと思うんですよ。

 いろいろな、もろもろの控除がありまして、もともと、税制調査会とかそういった議論を見てみますと、所得税の基幹税としての調達能力とか再分配能力というものが失われてきた中、それを取り戻さないといけないと。そのためには、課税最低限というか、いろいろな、給与所得控除とかあるいは特別の特定扶養控除とかあるいは政策的な控除で生損保控除とか、いろいろな部分があると思うんですね。

 これは、もちろん、全部やらなければ抜本改革と言えない、そんなことを申し上げるつもりはないんですが、やや少な過ぎるんじゃないか、これをもって抜本改革と言えないんじゃないかと。とすれば、法律的な要件であるわけですから、これは廃止することが法律違反というか、廃止はできないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げましたように、所得税の中では、控除の見直しというのも非常に大きな要素になってくるだろうと思います。

 先ほど私が二つ挙げましたように、税率構造の方で今度は抜本をやったんだというふうに申し上げたわけでございますけれども、控除については、確かに家庭のあり方とか働き方というものは変わってきたわけですから、それに合わせて控除のあり方というのも今後見直す必要があろうかと私は思っているわけでございます。

 ただ、今度は、先ほど申しましたように、税源移譲という枠組みの中でできるだけ個々の納税者の負担を変えないという方向で考えました。控除の見直しということになりますと、個々の方に、働き方とか何かそういうものに非常に影響してまいりますので、税源移譲という全体の枠組みの中で控除を見ていくにはなかなか難しいところもあるかなと。

 今回は税率構造というところに焦点を当てて改正をお願いした、こういうことだと考えておりますが、それは、やはりこれだけの税率構造を変えるというのは、私は抜本的な見直しということではないかと考えているわけでございます。

北神委員 何をもって抜本的見直しというのは、これはいろいろあると思うんですが、少なくとも今までの政府税制調査会とかの議論を見ていると、抜本的というのは、難しいですけれども、やはり諸控除をある程度、それは個々の納税者の負担がふえる部分も含めてやるというのが少なくとも私の理解であります。

 この点について、もうきょうは時間がないのでやめておきますが、整理が必要だと思うんですね。というのは、自民党さんの公約とかあるいは与党の税制大綱、あるいは総理大臣の所信表明演説とかを見ていると、そこで、来年度ですか、十九年度ですかの税制改革として消費税を含めた抜本的な税制改革というものを挙げているんですね。

 もし仮に本当に、財務大臣がおっしゃるように既に抜本的改革がなされたのであれば、来年度の税制改革の抜本改革の中には所得課税は含まれないという整理になると思うんですよ。消費税を含む税制改革ですから、もう既に所得課税の抜本改革がなされたというそちらの整理であるならば、もう来年度は所得課税は基本的にはいじらない、基本的に消費税と資産課税とか、ほかの税の部分だということになると思うんですが、その点についていかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、今与党の税制改正大綱にお触れになりましたけれども、税制改正大綱には、平成十九年度を目途に、少子・長寿化社会における年金、医療、介護等々の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する、こうなっておりまして、消費税にとかく焦点が当たることは事実でございますし、特に社会保障に焦点を当ててまいりますと、広く公平に負担するという観点から消費税にまず焦点が当たってくるというのは当然のことだろうと思いますが。

 これは、消費税をいじっていったときに、ほかの税体系をどうしてくるかという問題はやはりどうしても起きてくると思っておりまして、私は、ですから国会等では、消費税だけではなく、所得それから法人それから資産、こういうもののバランスを見ていくというふうに申し上げているわけでございますけれども。

 ですから、考え方としては、もう所得税についてはいじらないというわけではないというふうに申し上げたいと存じます。

北神委員 それではおかしいと思うんですね。というのは、所得課税の抜本改革を既にこれで一通り終えた、それで定率減税を廃止する、その次の年度においてまたその税制の抜本改革の中に所得課税をやるというのは、わかりますよ、税制というものは絶え間なく見直していく、そういう考え方はわかるけれども、抜本改革というのであれば、やはりそれぞれの時代に応じた改革というのはあると思うんですよ、時代に応じた。

 そして今回は、恐らく、少子高齢化とかさっき申し上げた所得課税の基幹税としての機能を回復させる、そういった観点の抜本改革であって、それを見直したというのであれば、次はまた新しい時代の要請に応じた抜本改革であるならばぎりぎりあり得るのかもしれませんけれども、ちょっとそれは早過ぎるんじゃないかなというふうに思うんですが。その辺、ちょっともう一回御答弁の方をお願いできますでしょうか。

谷垣国務大臣 まだ平成十九年度に向けて何をやるかという弾が十分頭の中に仕込まれているわけではございませんので、お答えしにくい部分もあるわけでございますが、今回は、やはり所得税体系にとりましても、三位一体という形の中でありますけれども、地方税と国税の所得課税の役割を見直していくという極めて大きな改革であったというふうに私は思っております。

 そういう中で定率減税をいじらせていただいたわけでありますが、その中で、今おっしゃったように、確かに控除等も考えなきゃならない課題があることは事実でございますが、そうなりますと非常に複雑に動いていって、税源移譲という考え方の中では、家庭のあり方や労働環境のあり方を全部視野に入れていくのはなかなか難しいところがあった。

 先ほどの答弁の繰り返しでございますが、今回はそういうことで税源移譲という枠組みの中でやらせていただいたということでございます。

北神委員 ちょっと納得できないところもあります。定率減税の廃止のこの法律の要件が、抜本改革をある程度できた時点で解除するとか廃止をするというのであればわかりますけれども、抜本改革を条件にするということは、やはりある程度一固まりの、その時代に応じた税制の改革の一くくりの固まりがある程度なされたということが前提だと思いますので、本当は、税率構造の見直しだけじゃなくて、やはり諸控除もある程度見直した上でやるのが本筋だと思います。

 ただそれは、いろいろ整理があると思いますが、もう時間がないので次の論点に移りますが、要は、きょう申し上げたいのは、もし財務大臣がおっしゃるように所得課税の抜本改革というものがなされていないのであれば、当然この定率減税の廃止というのは到底容認できないということですね。一方で、なされているのであれば、これは来年度の、言われている消費税を含む抜本的税制改革の中に、所得課税の諸控除とか、本当は今回やっているべき見直しというものはやらないという整理になるはずなんですけれども、またいろいろな場で追及というか質問していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の論点に移りますが、財務大臣もいろいろと、増税路線でいかれるということだと思いますが、何だかんだ言って、私も、小泉さんの構造改革というのは、大ざっぱに言って、今までの自民党政権のもとで政治家や政府がつくってきた借金を国民の負担によってしりぬぐいをしているというふうに思うんですね。これは、公共事業を減らしたとかいろいろな功績はあると思います。しかし、年金とか介護とか、この今回の税金もそうですし来年消費税の話も出ております、基本的にはやはり国民の負担に依存しているんじゃないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 私は増税というものを絶対反対するつもりは毛頭ございませんが、これは当然、地元の人たちの声とか一般的な声として、政治家やあるいは政府の税金の無駄遣いというものを徹底的に削らずに増税をするというのはおかしい、これを解決せずに増税はないだろうというのが私は一般の感覚だというふうに思っております。

 ということで、昨年の特別国会で、小泉総理が歳出を合理化、削減するということで、特別会計の改革という議論がございまして、それに取り組んでいるということだというふうに思います。しかし、昨年の行政改革の重要方針という、これは閣議決定の文書ですが、それを見ますと、個別の特別会計に関する結論を見ると、骨抜きあるいは先送りになっているというふうに言わざるを得ないと思います。

 きょうは、そのうちの空港整備特別会計について議論をしたいというふうに思っております。

 今回の予算においては、これは空港整備特別会計ですが、前年度比七百四十八億円の増、合計額が五千七百二十二億円。しかも、空港整備特別会計に対する財政投融資計画額が、前年度比二百七十七億円の増で、合計額が七百八十六億円。ふえた分の三分の一が財政投融資になっている。特別会計の改革が云々されている中で、こんなに財政投融資がふえていいのかなという気もいたしますが。

 そういった状況の中で、昨年末の閣議決定において、道路整備特別会計、治水特別会計、港湾整備特別会計、空港整備特別会計及び都市開発資金融通特別会計の五つの特別会計については、平成二十年度までに統合して無駄の排除を行うものとする、特に空港整備特別会計については、将来の独立行政法人化等について検討するものとしていると。

 これは、私は、そもそも特別会計の改革というのは数を減らすことじゃないというふうに思っているんですね。中身なんですよ。歳出をいかに減らすか。無駄な支出を縮減して、ひいては国の財政の再建に資するかということだと思いますが、単純に、社会資本整備だとか公共投資だから一緒くたにしようや、統合しようよということについて、その効果について疑問があるんですよ。一体こういうものを統合してどういった財政再建というか質の縮減に資するような効果が期待できるのか。

 その点について、財務大臣に伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 委員のおっしゃるように、特別会計の統合というのは、数合わせをすればいい、一つにまとめればいいというわけでもないというのは、私はそのとおりだと思います。やはり統合のメリットをどう出していくかということを考えなければいけないんじゃないかというふうに思います。

 それで、この五つを一緒にするということにいたしましたのは、区分経理をすることによりまして、その出と入りといいますか負担と受益といいますか、そういうもののバランスをやはりきちっと見られるようにしようということが一つでございます。ではメリットはどういうことかといいますと、やはり統合した以上はいろいろな、事業間の横断的と申しますか総合的といいますか、そういう形で事業が運ばれていくようなことを、今後私はぜひ期待したいというふうに思っておりますし、それから調査研究なども、ばらばらでやるより共同化して、連携した施策展開というものが見込まれるのではないかというふうに思っております。

 それから、あとは各事業に共通の経費というものを統合していくとそのメリットが出てくるのではないか。こういうあたりは、統合したというだけじゃなしに、実際運用が重要でございますから、ぜひともそういう形で運用されていくことを期待したいと思っております。

北神委員 今のお話を伺う感じでは、まだ内容が詰まっていない、それで私も冒頭、先送りだという話もさせていただいたんですが。調査研究とかその辺は確かに多少の効果はあると思いますが、横断的な事業を統括するとかそういうのは、別に統合しなくてもできると思うんですよ。だから、今回の統合という案は、あっても非常に少ない効果しかないと。

 やはり、今回の特別会計の改革の原点に立ち返ると、基本はもう新しい空港をつくらないことだというふうに思います。それを、特別会計を統合したりいろいろなことをしたり形式をいじったりしても、結局空港整備をまた何とか計画とかで新しくつくるということになってしまえば元も子もないというふうに思います。ですから、特別会計の議論の前提として、これはやはり、空港というものを新しくつくらないんだ、既に、多分一般の認識としてはもう日本においては大体そろったという認識だと思いますが、その点について、これは国土交通省だと思いますが、お聞きしたいと思います。

岩崎政府参考人 お答えいたします。

 今後の空港整備の考え方でございますけれども、私ども、一つは大都市圏拠点空港、この整備はまだまだ進めていかなきゃいけないと思っております。現に、今羽田の四本目の滑走路に着手をしておりますけれども、やはり、今後我が国の国際競争力を向上させていく、あるいは社会経済生活を豊かにしていくためには、大都市圏の拠点空港の整備は、現在手がけているものを含めやっていかなきゃいけないと思っております。

 地方の空港につきましては、先生御案内のとおり、おおむね概成したと思っております。したがいまして、今、地方の空港につきましては、新規の採択を抑制しております。石垣空港と新石垣空港のような離島の空港を除きまして、新しい地方の空港の整備は抑制するという方針で現在対応しているところでございます。

北神委員 今まで空港整備十カ年計画とか、その後は社会資本整備計画かな、五カ年計画とか何かいろいろあったと思いますが、今その状況はどんな感じなんですか。多分もう大体終えている段階だと思うんですが、また新しい計画というものをつくる予定はありますか。

岩崎政府参考人 今先生御指摘のとおり、空港整備五カ年計画というのがございまして、五年ごとに、どの空港を新しくつくる、どの空港は調査に着手するというようなことを決めておったわけでございますけれども、前回より、社会資本整備計画ということで、各国土交通省関係のインフラ関係の社会資本の整備を一本の形の社会資本整備計画としてまとめております。その中では、個別の空港についてどうするこうするということについて記述しているわけではなくて、空港整備の今後の考え方、こうしたものを中心に計画を策定しているところでございます。

 今の計画、既に計画策定後三年を経過しておりますので、二〇〇八年に新しい計画をスタートさせるべく今勉強を始めたというような段階でございます。

北神委員 今の局長のお話を伺っていまして、大都市の拠点の整備というのはまだ、滑走路をふやすとか、羽田空港に代表されるような事業が残っているということでございますが、恐らく基本的に新しい空港はもうつくらないということですよね。滑走路をふやしたり、あるいは維持管理とか、そういった部分はまだ当然残るということだというふうに理解していいでしょうか。

岩崎政府参考人 今、大都市拠点空港で整備に着手しておりますのは羽田空港の四本目、それからこれは国費は入っておりませんけれども、成田空港が二千百八十メーターの暫定の滑走路になっておりますので、これを二千五百メーターにしたい。それから関西空港について、二本目の滑走路の整備に当たっているという状況でございます。

 今後、大都市拠点空港、それ以外について整備をするかしないかということについては、今申し上げました次期の社会資本整備計画の中で、どういう方針で臨むのか慎重に考えていきたい、このように思っております。

北神委員 要するに、この質問をしているのは、特別会計を見直す上で、今後、空港整備の事業というものがどういうふうに予定されているのか、そういった観点で私は質問しているわけであります。

 要は、特別会計の形式をいじる前に、やはり新しい空港はもうつくらないんだ、基本的には維持管理だという整理の中で、今後その支出をどうやって縮減するかということを考えますと、特別会計のまたこれは一つ前段になるんですが、今、既存の空港で、もう必要ないんじゃないか、あるいは赤字でもう運営が非常に厳しくなっている、あるいは密集していろいろな空港が地域に重なっていて効率が悪い、そういったところを場合によっては廃止をするとか、そういったことも考えざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。

 近畿の地方で、関空もあり、今度は神戸空港もできる、そして前から伊丹空港もありますよね、これはどう考えるのか。伊丹空港なんかは騒音の問題でいろいろ騒がれておりますが、例えば伊丹空港を廃止するとか、そういった思い切った政策というものをお考えかどうか、伺いたいと思います。

岩崎政府参考人 今お話ございました関西空港、伊丹空港の関係でございますけれども、私ども、関西国際空港というのは、やはり関西圏の需要に対応する国際拠点空港としてきっちり整備をしていかなきゃいけない、このように思っております。伊丹空港、大阪国際空港については、環境という問題を抱えた空港であることは事実でございます。ただ、伊丹空港は非常に都市型の空港で、利便性の高い空港でもございます。こうしたことを踏まえまして、私ども、伊丹空港の今後のあり方については、環境調和型の都市型空港として運営していく、こういう方針で臨んでおるところでございます。

 具体的に申しますと、うるさい騒音のジェット機の利用を規制する等々措置をいたしまして、伊丹空港に環境対策費も相当つぎ込んでおりましたけれども、今後はそうしたものも半減をさせていく、その負担も伊丹空港だけの特別の利用料で賄っていくというような考え方で、伊丹空港のあり方を整理させていただいているところでございます。

北神委員 それは、いろいろ理屈はつけられると思うんですよ。ただ、今財政が厳しい中で、財政再建をしないといけない、歳出を削減しないといけない、その方法、手段として特別会計の見直しがある中で、やはり、それはいろいろな都市型の利便性があるとかそういったこともあると思いますが、近畿の地域でいえば伊丹空港とか、九州でいえば福岡と北九州と二つありますよ、こういったところを私は整理しないといけないと思いますね。改革に伴う痛みという言葉がありますが、しゃれじゃないですけれども、伊丹空港というものをやはりそういった改革の対象にしないといけないというふうに思いますね。だから、そういった点では、余りにも判断というか認識が甘いんじゃないか。そういった点について、もう一回局長に質問したいと思います。

岩崎政府参考人 北九州の区域のことについて、まずお話しさせていただきますけれども、今、福岡空港というのは御案内のとおりございますけれども、これは滑走路は一本でございます。市街地の空港で滑走路の増設もなかなか難しいという空港でございますが、今この福岡空港、年間離発着回数十三・六万回でございます。大体この数字は、これは滑走路一本の空港で一番最多の発着回数でございまして、ほぼ限界に達しておる空港でございます。

 北九州空港でございますけれども、現在は千六百メーターの空港でございますので、いわゆるジェット機、大型機材が離発着できないということで、東京路線でいいますと一日五往復程度の就航状況でございますが、この三月十六日に二千五百メーターということで新北九州空港の整備を進めているところでございます。開港後、東京便も含めまして一日当たり二十一往復が就航する予定になっております。

 この九州空域につきましては、やはり北九州空域につきましては福岡空港一本の滑走路ではどうしても、航空輸送需要はまだ伸びておりますのでなかなか対応できないので、こうした新しい空港の整備が必要だろうと思っております。

 それから、神戸空港もこの二月に開港いたしましたけれども、関西の三つの空港でございますけれども、こうした三つの空港、先ほどの繰り返しになりますけれども、それぞれの空港の役割分担、関西国際空港は国際拠点空港として、大阪国際空港は環境調和型の空港として、神戸空港は神戸周辺の需要に応ずる国内の地方空港としてそれぞれ活用していければな、このような方針で考えているところでございます。

北神委員 それはいろいろ、さっき申し上げたように、理屈はつけられると思うんですよ。そして、それは多ければ多いほどいいのかもしれません。でも、実際は財政が厳しい中でありますし、それでこの特別会計の改革の議論をしている中で、空港整備特別会計というのは一般会計から繰り入れが物すごくあるんですよ。この部分をまず減らさなければならないという認識は、多分財務当局の方にもあると思います。こういった視点で私は申し上げているんですよ。だから、新しい空港をまず整備しないこと、そして次は、今既存のもので、もう必要ない、あるいはどう考えても一つぐらいはシャットダウンしても十分対応できる、そういった観点で申し上げているつもりでございます。

 これ以上は水かけ論になりますので、次の論点に移りたいと思いますが、今申し上げたのは、新しい空港をつくらない、そして、既存の空港の中でもう効率が悪いものについては整理をする。

 三つ目の論点としては、民営化の議論があると思います。

 小泉総理は、民営化こそが日本を救うと、もうほとんど信仰のようなものに仕立てていると思いますが、空港についても皆さんはどう考えているのか、それについて伺いたいというふうに思います。実際、成田空港とか関空とか、そういった部分についてはもう民営化、形態はいろいろあると思いますが、そういった点について、ほかの空港は対象になるのかどうか、あるいは独立行政法人化もあわせてお伺いしたいというふうに思います。

岩崎政府参考人 昨年末閣議決定されました行政改革の重要方針で、空港整備特別会計は将来の独立行政法人化等を検討するとされたわけでございます。私ども、その独立行政法人化等を検討していきたい、このように思っておりますけれども、幾つかの課題があると思っております。

 一つは、この空港整備特別会計、空港の整備をすることとあわせまして、航空の管制もこの特別会計の中でやっております。それから、空港の具体的な維持運営、これもこの空港整備特別会計でやっております。現在の空港整備特別会計の収支状況でございますが、今先生もお話ございましたとおり、来年度予算案では五千七百億の事業費でございますけれども、着陸料等の自己収入は二千六百億程度でございます。歳出の抑制等はこれからも図っていきたいとは思っておりますけれども、まだまだ収支採算がとれるという状況にはならない、このように思っております。

 それから、管制の部分もやっておりますけれども、航空管制、これはある意味で交通警察と同様の公権力の行使に該当する行政行為でございます。少し専門的になりますけれども、私どもの航空管制、我々航空局の管制官だけで日本全体の空を見ているわけではございませんで、横田空域など、米軍が管制している空域もまだございます。それから、千歳等の周辺では防衛庁さんが管制をやっていただいておりますけれども、そういう米軍なり自衛隊等と調整をしながら飛行機を飛ばしておりますので、こうした業務の性格が独立行政法人あるいは民営化になじむのかどうか、こうしたこともあわせて検討していかなきゃいけない、このように思っているところでございます。

北神委員 今後検討ということで、またこれも先送りの話だと思いますが、二〇〇一年九月に、石原当時行政改革担当大臣が羽田と成田を一つの会社として民営化すべきだという話もありました。その具体的な話はもういいのですが、もう時間がないので、きょう申し上げたかったのは、最後に財務大臣にも伺いたいと思うんですが、特別会計の議論はまだまだ私も、航空機燃料税の一般財源化とかあるいは一般会計に戻すべきかどうかとか、いろいろな議論があると思うんですが、その前段の整理として、今申し上げた、新しい空港というものをもう基本的には断念せざるを得ない、今の既存の空港の中で、それは多ければ多い方がいいというのはわかりますが、やはり無駄な部分は合理化していかないといけないだろう。

 三つ目としては、イギリスなんかを見ていると基本的に民営化でやっていたり、もちろんそうじゃない国もあるというのを理解しておりますが、民営化の方が恐らくいろいろな意味で効率的な経営ができるんじゃないか。郵便なんかより、私は空港だったら民営化にふさわしい分野だというふうに思っておりますので、そういった部分について本当は詰めていかないといけないんじゃないかというふうに思っております。

 それで、きょうは、だから定率減税の廃止、これは増税と同様だというふうに思っております。基本的に、歳出削減で財政再建をするというのはなかなか難しいということはよくよくわかっているつもりです。しかし、日本の社会、政治文化というか社会の文化でいえば、財務大臣も登山だけじゃなくて歴史にもすごくお詳しいということを伺っておりますし、竹越与三郎の「二千五百年史」というのを私も愛読書でございまして、そういった意味でお聞きしたいのですが、これは、私は精神論を言うつもりは全くないんですよ。

 要は、今後消費税を引き上げるとかいろいろな計画があるというふうに思いますが、これはやはり、西郷隆盛の南洲遺訓とか何かそういう書物があって、その中に、為政者は下民、下民という言葉はよくないですね、国民に気の毒のように思われなければ政令は行われがたしという言葉があります。これは、江戸時代も藩主とかお殿様がいろいろな財政再建という問題に直面をして、彼らは、すぐ増税とかそういうわけではなくて、やはり木綿の着物を着て一汁一菜のそういった生活に徹して、みずからを律して、その上で倹約質素の令を発令したり、運上の引き上げを行ったりしてきたわけですね。

 では、今の政治家や、我々を含めてですよ、あるいは官僚が、果たして気の毒のように国民から思われているのか。今の空港のいろいろな無駄遣いが行われている中で、今度の議員年金のあんな中途半端な案というものが通されて、そういった中で、消費税というのは私は難しいと思うんですよ。

 ですから、精神論じゃなくて、私は現実主義的な観点から申し上げているんですよ。本当に歳出削減で財政再建ができなくて、やはり最後は消費税増税とかそういった部分でやらなければならないのであれば、西郷隆盛の言葉じゃないですけれども、国民に気の毒のように思われなければしようがない。これは合理的じゃないかもしれませんけれども、私はこれは日本の土壌だと思うんですよ。

 これは私も三年間浪人生活で痛切に思ったことでありますが、その点について、大臣の認識と決意というものをお聞きしたいというふうに思います。それで、質問を終わりたいと思います。

谷垣国務大臣 今、北神さんがおっしゃったことは、私はまことにそのとおりだろうと思います。余り精神論で凝り固まってぎくしゃくやってもなかなか進むものも進みませんが、やはり国民との対話というものを十分にやって、国民から、なるほど、そこまでいろいろ苦労しながらやっているのか、なら仕方がないと言っていただけるところまでやはり努力をしなきゃいけないと思います。

 今おっしゃったこと、よくよく反すうさせていただきたいと思っております。

小野委員長 以上で、北神圭朗君の質疑を終わります。

 続きまして、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。端的にお答えをいただければ幸いでございます。

 年金保険料を年金事務費に使う、これを今回は一年限りということで法律が出てまいっておりますけれども、平成十九年度からは恒久的にずっとやるんだというお話がございましたけれども、その理由は何でございますか、大臣。

谷垣国務大臣 この問題につきましては、長妻委員とも随分議論させていただいた、まだ鮮明に頭に残っているわけでございますが、今まで国会で私が御答弁申し上げてきたことは、毎年毎年こういう特例でやっているけれども、これからどうしていくかということについては今後の社会保険庁改革の動向などを見ながら議論をさせていただく、判断をさせていただくというふうに申し上げてきたところでございます。

 そこで、社会保険庁改革の議論と、もう一つ、特会改革の議論もございました。特会改革の方の議論は、財政審等の報告でも、年金事務費はそもそも基本的に年金給付と密接不可分なコストで、保険料を充てることによって給付と負担の関係がはっきりできるメリットがあるので、他の特別会計における事例も参考にしながら、受益と負担の関係の明確化や区分経理の厳格化等の観点も踏まえて恒久的なあり方を検討してはどうかというような検討結果をいただいたわけでございます。

 それから、本来この問題が出てまいりました社会保険庁改革の流れの中で申し上げますと、平成十八年度中に、年金運営会議の設置であるとか、特別監査官を設置する、あるいは外部専門家を登用して意思決定機能や監査機能の強化などを行う、こういうことが予定されておりまして、社会保険庁の中で適正かつ効率的な事業運営をできる環境ができてきたのかな、こういうこともございました。

 それで、その上で、社会保険庁改革の一環として、来年度から、平成十九年度からは、受益と負担の関係をより明確化するという観点から、年金事務費の一部に保険料を充てるということを恒久措置として考えようということになったわけでございます。

長妻委員 これは、年金保険料はもう年金事務費に使わない、こういうような趣旨の発言を小泉総理もされ、あるいは多くの与党の政治家の方も国会やテレビ等でそういう発言をされていながら、ほとぼりが冷めるともう、恒久的に年金事務費に保険料を流用するんだ、こういう驚くべき決定だと私は言わざるを得ないんです。

 受益と負担を明確化する、これは、税金が一円も入っていなければ受益と負担は明確になります。日本の公的年金制度は、当たり前ですけれども税金が入っているんです。それで、保険料でそういう事務費を見ると、今までの例では、基本的には監視が非常に甘くなって、もう自分たちの縄張りのお金だ、こういう感覚で非常にずるずるいってしまう、こういう反省があって議論が始まったはずなんでありますけれども、これは非常に見識を疑うわけです。

 そして、ルールとして辛うじて決められたのは、人件費はしかし平成十九年度以降も税金で賄う、こういう原則でよろしいのでございますね。

谷垣国務大臣 年金事務費の保険料負担と国庫負担の切り分けの問題ですが、これは平成十年度より保険料負担と国庫負担の区分を見直しまして、被保険者が直接的に受けるサービスである適用、徴収、給付事務やシステム関係、こういった保険事業運営に直接かかわる経費は保険料負担とする、他方で、従来より国庫負担としていた人件費等については引き続き国庫負担とするとともに、庁舎、宿舎管理経費や職員厚生経費など直接的には被保険者の受益とはならない内部管理事務に係る経費については国庫負担とする、こういうふうにしたところでございます。

長妻委員 職員の人件費は国庫負担というお話がありましたけれども、ちょっと今、事実と違うんじゃないでしょうか。平成十八年度の予算で五十一億円ものお金が人件費としてついているのではないですか、年金相談員の。

小野委員長 松元財務省主計局次長。(長妻委員「いやいや、登録していないですよ、ちょっと政府委員。ルール違うよ、書いていないもの」と呼ぶ)はい、入っていないですね。

 村瀬社会保険庁長官。

村瀬政府参考人 社会保険庁長官の村瀬でございます。

 先ほど御質問がありました年金相談員は、諸謝金という形で整理をさせていただいておりまして、業務取り扱い中の保険事業に直接かかわるものということで、保険料負担にさせていただいております。

長妻委員 直接業務にかかわるから保険料負担。先ほど大臣が、人件費は税金だ、こういうルールを言われたじゃないですか。そうしたら、ほかの職員は業務にかかわらないんですか。業務にかかわらない職員なんていないんじゃないんですか、社会保険庁で。

 これは大臣、今の原則、破られていますよ。

谷垣国務大臣 これは、今謝金は、職員とは異なって、基本的に職務は限定的でございます。それで継続的なものでもない。こういったことから、これまでも、職員人件費のように国庫負担とはしなくて、厚生年金保険法七十九条などに基づいて、被保険者の福祉を増進するための費用として、福祉施設費、福祉事業費として計上して、年金保険料で賄ってまいりました。それを踏まえたということでございます。

長妻委員 年金相談員は確かに、謝金職員と今まで言われて、非常勤職員でありますけれども、先ほどの原則のペーパーを見ると、人件費は税金、国庫負担だ、こういう原則があるじゃないですか。

 そうしたらば、人件費で年金保険料を流用するのは、ほかにどういう方が流用するんですか。明確にお答えください。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 職員人件費とは、国家公務員の常勤職員に対する給与や非常勤職員へ支給される非常勤職員手当であります。一方、賃金や謝金は、事業に必要な経費であり、いわゆる職員人件費には含んでおりません。

長妻委員 いや、ちゃんときちっと答えていただきたいんですが、人件費の中で保険料で今後も流用して払う人件費、それはどなたに払うんですか。全部、その役職というか役割の名前を言ってください。

村瀬政府参考人 先ほども申し上げましたように、職員人件費とは国家公務員の常勤職員それから非常勤職員へ支給ということからいきますと……(長妻委員「だれに支給するんですか、どういう非常勤職員」と呼ぶ)非常勤職員の中身を申し上げますと……(長妻委員「年金相談員と何ですか、年金相談員と」と呼ぶ)年金相談員は、サービスを向上させるということで事業運営経費の中に入ってございます。したがって、人件費ではございません。(長妻委員「あと、どういう人たちですか」と呼ぶ)保険料負担の人件費という形からいきますと、国民年金収納指導員それから適用指導員等が入ってございます。

長妻委員 そうすると、指導員と適用指導員と年金相談員、その三者だけが年金保険料流用、こういうことでよろしいんですね。

村瀬政府参考人 先ほど、等ということでお話し申し上げましたので、代表する三者ということで……(長妻委員「全部言ってください。信用できないんですよ、申しわけないですけれども。後から流用するから」と呼ぶ)

小野委員長 これは今の段階で出せますか。

村瀬政府参考人 では、後ほど調べて、すべてお出しさせていただきます。

長妻委員 そして、谷垣大臣にお伺いしますけれども、庁舎の建設費、これは税金でやるということでよろしいんですか、大臣。

谷垣国務大臣 基本的にはそうでございます。ただ、年金相談等にかかわるものには別扱いとしております。

長妻委員 先ほど、冒頭、大臣は、庁舎は国庫負担だとはっきり言われましたよ。ちょっと何か修飾語がつくのは本当によくないと思うんです。

 実際、平成十八年度予算で、年金保険料で二十二億円、これは庁舎の建設費に回っているんじゃないですか。話が違うんじゃないですか。

谷垣国務大臣 今おっしゃった二十二億は、年金相談に関する庁舎の件でございます。

長妻委員 年金相談にかかわる庁舎、その建設費は年金保険料を流用していいわけですか。その年金相談にかかわる庁舎、そういうことも、本当は冒頭の説明あるいは国民への説明の中できちっと言わなきゃだめじゃないですか。庁舎は全部国庫負担だと言われているじゃないですか、私が配ったこの一ページ目のペーパーでも。

 大臣、年金相談の庁舎というのは、具体的にどの庁舎ですか。

谷垣国務大臣 年金相談センターとか年金電話相談センターに係る社会保険事務所等の改修費用ということであります。

長妻委員 何で相談センターは年金保険料で、社会保険事務所、この社会保険事務所もみんな相談に行きますよ、そこは国庫負担だ。どういう理念で、哲学で切り分けしているんですか。またずるずるべったりでやるつもりじゃないんですか。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 庁舎の整備費につきましては、基幹的改修工事等にかかわる工事、これを施設整備費といいますけれども、その部分と、それから、年金相談コーナー等の拡充にかかわるもの、これは福祉施設費、こういう二つで分けておりまして、福祉施設費で支出するものにつきましては、保険料財源という形でさせていただいております。

 具体的には、被保険者等のサービス向上に寄与するものとして保険料財源を使うという形でございます。

長妻委員 これは与党の皆様もぜひよく聞いていただきたいんです。今村瀬長官が言われたのは、年金相談は福祉なんだ、こういうことを言っているんですよ。福祉施設費だと。つまり、平成十九年度以降も、福祉という名前で、年金相談が福祉だとは私は思いません、これは事務費だと思います、基幹業務だと思いますけれども、そういう名目で、どんどんどんどんまた保険料を流用されますよ、本当に。

 そして、この資料でも、五ページに、私はこれは何でも福祉法と命名した法律が今でもあります。福祉のためには年金保険料を幾らでも使えるという法律なんです。厚生年金保険法の七十九条、国民年金法の七十四条。もうリゾート施設など福祉施設、やめると言っているのに、年金相談が福祉だということで、またどんどんこの条文を悪用して、私は保険料が使われる懸念がある。この条文を削除するというおつもりはありませんか。

 三月に、来月法案が出てくると聞いております、この条文をどうするかという法案が。大臣、これはぜひ削除してください。

村瀬政府参考人 現在、年金の新しい組織に関する法律の整備をしておりまして、与党と協議中でございます。三月に新しい形でお示し申し上げたいと思っておりますけれども、その中で、福祉規定につきましては、現段階においてはまだ案でございますけれども、廃止して、新たに年金相談それから年金教育、広報、それから情報提供等の国民年金事業、厚生年金事業の円滑な実施等を図るための事業を行うことができる規定に変更する予定にしてございます。

長妻委員 円滑な事業を行うためには年金保険料を使える、こういうことの条文に変えるというお話がありましたけれども、これは今までの例でいっても、自主財源扱いになって、結局ずるずる無駄になるということで、我々はもう全額、絞りに絞って国庫負担にすべし、こういうことを申し上げているわけでありまして、何でこういうふうに温存したがるのか。

 年金相談というのは、そういう条文じゃなくて、これは年金事務なんだ、こういう扱いで、国庫の中で基本的に見るような、そういうカテゴリーに入れるというおつもりはないですか。

 村瀬長官、年金相談というのは年金事務だと思うんですが、長官は民間から来られているんで、長官の民間の感覚、常識感覚でいうと、年金相談というのは年金事務に何で入らないと思われるんですか。

村瀬政府参考人 よく先生の御指摘に、税と保険料という観点で、保険料だったら無駄遣いになって、税だったら無駄遣いでないのかという疑問を呈するような御質問がよくあるんですけれども、私は、国からいただく金につきましては、税であろうが保険料であろうが一緒である、いかに無駄遣いをしないようにして取り組むか、これが極めて大切だというふうに考えておりまして、したがいまして……(長妻委員「今までめちゃくちゃやっていたじゃないか」と呼ぶ)

小野委員長 今答弁中ですから。

村瀬政府参考人 それをしっかりやるというのがまず第一の仕事だろうというふうに思っております。

長妻委員 そうしましたら、ちょっと村瀬長官に、そこまで言われるのであれば、本当に社会保険庁は無駄遣い、今直っているのかどうか、お尋ねします。

 社会保険庁の建物の中でいろいろな食堂などが入っておりますけれども、家賃を全く取っていない食堂というのはありますか。

村瀬政府参考人 食堂業務に関しましては、職員の昼食等の食事に関する事業については、共済組合に委託している場合においては家賃を取らなくてもいいという規定がございまして、その関係で、業務センター並びに大学校では家賃を取っておりません。

長妻委員 その事実というのは前から御存じでしたか、長官。

村瀬政府参考人 細かな事実につきましては、最近聞いております。

長妻委員 最近と言いますが、私が質問通告して、聞かれたんじゃないですか。

村瀬政府参考人 細かな規定につきましては、本日聞いております。

長妻委員 実際、社会保険業務センターという杉並にある社会保険庁の建物、この食堂が、平成五年四月から契約して、ずっと無料で入っているということで、これは政府からの質問主意書の答弁書では、相場の月額家賃は百二十万円だ、月百二十万円が相場なんだ、こういうふうに政府の答弁書ではありますが、一銭も取っていない。そして、社会保険大学校の食堂は、平成八年四月からずっと契約しておりますけれども、これも無料。政府の答弁書によると、相場としては月七十六万二千円取るべきだ、こういうふうになっているんですけれども、そういうことも本当に御存じないと思うんですね。

 あるいは、では、社会保険庁の職員が、社会保険庁の施設、例えばみやざき社会保険センターで、自分の施設で講演して謝礼をもらった、こういうことがあったわけですけれども、これは御存じでしたか。

村瀬政府参考人 前回、先生から質問主意書等問い合わせがございまして、その中で、講演で講師料としてもらっているという事実は確認をしております。

長妻委員 ほかにはこういう事例はもう、あるんですか。そして、これは問題ではないんですか。

村瀬政府参考人 先ほどみやざき保険センターの話がございましたけれども、案件としましては、トータルで、平成十五年度でございますけれども、五十一件謝礼を受け取っております。

 ただ、ここで謝礼を受け取るということにつきましては、本事案につきましては、認可を受けた上で時間外に行ったということで問題はないと把握しておりまして、これは国家公務員倫理規程でもそこを認められているというふうに確認をしております。

長妻委員 平成十六年度以降は全くありませんね。

村瀬政府参考人 ないとは思いますが、再確認をして御報告申し上げます。

長妻委員 これは、長官に本当のいろいろな問題が私は伝わっていないという懸念を非常に持っております。

 そうしましたら、もう一点だけ申し上げますが、社会保険庁の職員が年金保険料で購入した黒塗りの車、これを下取りで買ってしまったという案件が三件あるんですが、これは御存じでしたか。これ以上もうないでしょうね。

村瀬政府参考人 一昨年長官へ就任した後、公用車の下取り問題というのが出てまいりまして、これにつきましては、今後下取りをしないようにということで確認をさせていただいております。

 おっしゃるように、三台につきまして下取りをしていた事実につきましては把握しておりますけれども、今後、この部分については、私はないというふうに思っておりますけれども、必要であれば調査をしたいというふうに思っております。

長妻委員 私は、これ以降の物件も全部調査してほしいというふうにずっと前から依頼しているわけでありますけれども、まだ調査結果出ていないんですか。ぜひ、至急調査いただきたいと思います。

 そして、社会保険庁は本当に変わったのかという疑問が私はあるんでございますけれども、今、我々民主党の調査で、百十三団体に、社会保険庁の天下り団体ありますが、七百一人が厚生労働省から天下っている。役員は二百九人。その団体に六十六億八千七百万円の補助金等が一年間で流れているということなんですけれども、こういう天下りの人事というのは、これは、人を選ぶのは、社会保険庁の人事課で人を選んでいるんですか、だれをここにはめようというのは。

村瀬政府参考人 人員要請につきましては、公益法人からの要請があり、それに対して必要な人間があるかどうかというチェックをしている、こういう形というふうに聞いております。

長妻委員 ことしは天下りは何人ぐらい、社会保険庁、予定をされているんですか。

村瀬政府参考人 十八年一月以降については、天下りというよりも、こういう法人に対する要請については、職員は移行しないというふうに聞いております。

長妻委員 いや、今の発言は私も初めて聞きましたが、そうすると、後ろの職員の方、慌てておられるようですけれども、ことしの一月から社会保険庁の職員は、偉い人もそうじゃない人も、すべての役職の方は一切天下りしない、こういうことですね。

村瀬政府参考人 十八年の話をしましたけれども、まず十六年四月以降から、年金福祉施設の受託経営を主要な業務としている公益法人について、事業及び法人の整理合理化のため以外の人材についてはあっせんを行わないという形でございます。(発言する者あり)

長妻委員 聞いていないからって、今答弁していないじゃないですか。私は十八年の一月からもう天下りしないと言われるからそれを聞いたのに、何で十六年のことを言うんですか。十八年の一月からもう天下りしない、社会保険庁の職員は。これでよろしいですね。

村瀬政府参考人 先ほど申し上げましたように、公益法人により求められる人材を除いてはということでやらせていただいております。

長妻委員 公益法人から求められれば天下りはやる、求められなければしない。いや、今までも、求められていないケースでも押しつけ天下りあるじゃないですか。これは裏でやっているようでありますけれども。

 そうすると、ことしは何人天下りの予定なんですか。もう組まれているはずですが。

村瀬政府参考人 まことに申しわけないんですが、詳細を把握しておりませんので、後ほど御回答させていただきます。

長妻委員 私も民間企業におりまして、かつて村瀬長官も民間企業におられたと思います。これは今、私も厳しく質疑しておりますけれども、本当は、長官は民間の常識感覚を持って役所の中できちっと指導しなきゃいけないと思うんですね。お役人が原稿を持ってきても、いや、自分の方針でこうやるんだと国会で答弁すれば、そういうふうに物事が動くんですよ。そのために民間から国民の税金で村瀬長官を招聘して、そして活動していただこうということでやっておられるんだと思います。別にお役人のことは気にせずに、本当に長官の常識で御答弁いただきたいと思うんです。

 そして、財務大臣もこれは人ごとではございませんで、財務省もあっせんの天下りやっておりませんか。

谷垣国務大臣 天下りのあっせんですか。確かに財務省からいろいろ公益法人のところに行っているのがおりますから、それはあっせんだと言われればあっせんなのかもしれませんが、ちょっと御趣旨がよくわかりませんでした。

長妻委員 これは質問通告しております。十ページ目に資料がございますが、これは大臣、天下り、あっせんした財務省の人数は全部で何人でございますか。

谷垣国務大臣 ちょっと、今手元にある表は総計が出ておりませんが、ちょっと、足したら何名になるかわかりませんが、読み上げましょうか。(長妻委員「いや、足して。では後で」と呼ぶ)はい、わかりました。

 済みません。約二百五十名だそうです。

長妻委員 いや、しかし、この天下りというのは、私は、あっせん型天下りというのは、私が聞いたところでは先進国で日本だけだということなんですね。社会保険庁とか財務省というのはハローワークの仕事もやっているんですか。人材が欲しい、では、だれを何人あっせんしましょう。そういうことを人事課がやっているんですか。何でこういうあっせんをされるんですか。もうやめたらどうなんですか、大臣。

谷垣国務大臣 天下りにつきましてはこの委員会でも随分御議論がございましたが、いろいろな批判があることも事実でございます。

 したがいまして、そういう批判は真摯に耳を傾けるべきことだと思っておりますし、特に、何度も議論されましたけれども、あるポジションは例えば何々省の事務次官が自動的に行くというような慣行は、これは見直さなければいけないということだろうと思います。(長妻委員「いや、あっせんのことです、何であっせんしているんですか」と呼ぶ)

 これは、ですから、やはり今申し上げたように、いろいろ見直さなければならない、批判に真摯に耳を傾けなければならないこともございますが、同時に、やはり官民を通じてどう人材を使っていくかという大きな観点もあろうかと思っております。

長妻委員 いや、本当に、あっせん、天下りというのはもうやめていただきたい。先ほどは、OB税理士、これに仕事をあっせんしているという話もありましたけれども、本当に天下りの裏には税金や年金保険料の無駄遣いがセットでついていく、私はこういうふうに本当に思っておりますので、ぜひ総理を目指されるのであれば、そういうことも果断に、お役人の目を気にせずに御答弁いただきたいと思うんですが、あっせん、天下りというのは今後も続けるということですか。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題についてはいろいろな労働の慣行があろうかと思っております。全体のそういう労働の慣行も見直しながら、改善に努めていきたいと思っております。

長妻委員 何か、天下りというのは労働の慣行なんですか。私も初めて聞きましたけれども、そういう意識を大臣もお役人の代表のような形で持っていたら、政治家が大臣をやっている意味ないじゃないですか。社会保険庁改革ということが言われておりますけれども、私は本当に、社会保険庁を何か二つに分けて、看板のかけかえだというふうに思っているんです。

 この十四ページの資料、ございますけれども、これは政府が出した資料でございますが、これを見ていただきますと、日本は年金を集めるところと払うところは社会保険庁だ、何だ、当たり前じゃないかと。しかし、海外先進国で、年金を集めるところと払うところが同じ組織の国というのはないんです。日本だけなんです。

 アメリカも、年金を集めるところは内国歳入庁、払うところが社会保障庁。イギリスも、年金を集めるところは内国歳入庁、払うところが年金サービス庁。ドイツも違う、フランスも違う。スウェーデンも、年金を集めるところが国税庁、払うところが社会保険庁。

 ちなみに、この表にはありませんけれども、カナダも調べますと、年金を集めるのが国税庁、払うのが公共事業政府サービス省というところでありまして、何で分けているかといいますと、やはりタコつぼ化を防ぐ、集めるのと払うところが同じだと、金の流れが透明性が高まらないで非常に無駄遣いがされるのではないか、こういう知恵だそうです。もう一点は効率化、つまり税金と一緒に集める、お金を集める専門の役所、お金を集めるという同じ仕事であれば一つの部署でやっていこう、そちらの方が効率的だと。

 こういう世界の流れにもかかわらず、せっかく社会保険庁改革といったときに、私は、税務署と一緒に、税金と一緒に年金を集めるという方が効果的だし、徴収率も上がる、こういうふうに思っているわけでありますけれども、大臣、何で税金と一緒に年金保険料を集めないんでしょうか。

谷垣国務大臣 去年も長妻さんからこの議論、御一緒にちょっとしたことがあったように記憶しておりますが、私は社会保険料と国税の徴収というのはかなり違った性格の作業ではないかと思っておりまして、社会保険につきましては、もちろん保険料をいただかなきゃいけません、それから、長期にわたって記録等を管理していかなければいけない、それから、その記録に基づいて給付をしていく、そういうシステムでございますから、徴収だけを取り出すということが、先ほどタコつぼ化を避けるという視点があるとおっしゃられましたけれども、私はそれが効率的であろうかと若干疑問に思います。

 それから、社会保険料と国税ではかなり徴収の態様も異なっておりまして、大体、所得税は、国民年金の一号被保険者の中で約一五%だけが所得税を申告しているというような状況にもございます。それから徴収方法も、国民年金の場合は所得にかかわらず定額で徴収する、厚生年金や健康保険はもちろんちょっと違いますが、それぞれ徴収方法も違いますので、二つ一緒にやるのが必ずしも効率的になるというふうには思っておりません。

長妻委員 現状維持の理屈を言えばいろいろあると思いますが、私も、どの先進国もやっていないのなら、こう大上段に構えて言うべきことでないかもしれませんけれども、イギリスの状況も詳しく聞いて、そちらの方が効率的だ、こういうことで、そして効果も上がるということでやっているわけですね。そういう実例があるわけです。

 そして、十一ページをごらんいただきますと、これは社会保険庁も、電話納付督励ということで、未納者に対して、電話を平成十四年度三百三十万件かけた。十六年度はその倍の六百四十九万件かけている。戸別訪問も平成十四年度は七百三十万件だ。平成十六年度は倍近い一千三百四十一万件、戸別訪問している。

 しかし、結果がやはり重要でありますが、十二ページを見ていただきますと、これはタイムラグもあるかもしれませんけれども、平成十四年、十五年、十六年と、納付率六二・八、若干は上がっています、六三・四、そして平成十六年度六三・六。十四年と十六年を比べて一%も上がっていないんですね。

 こういう非常に遅々とした形で税金や年金保険料が集めるために使われているということでありますので、これは村瀬長官、やはり年金保険料を集める権限というのは、現金が一年間に二十兆円以上社会保険庁に入ってくるんです。これは大きな利権として手放さないとすれば、これは本当に国民的損失だと思いますけれども、村瀬長官、税金と一緒に集めた方がいいと思われませんか。

村瀬政府参考人 先ほど大臣からも答弁がございましたけれども、国民年金の被保険者二千二百万人おみえでございます。そのうち、所得税という国税の関係でいいますと、それをお納めいただいている方が三百万人台ということでございまして、そういう点では必ずしも、社会保険庁の収納と国税とを一緒にしたからといって、効率的な納付ができるかどうか、これについては疑問でございます。

 一方、納付率を上げるという観点からいいますと、やはり今まで社会保険庁として十分実務をやれてこなかった部分を強化する、この部分が必要だろうということで、実は、新しい組織におきましても、国税徴収権に基づきまして強制徴収をしっかりやっていくことによって納付率を高めたい、こういう形を考えておりますし、税務当局との間でいきますと、所得情報をちょうだいするだとか、それから社会保険料控除証明書を発行しない限り税の控除ができないだとか、いろいろな仕組みができておりまして、そういうものを最大限使えば、社会保険庁で納付率は効率的に上がるんだろうというふうに考えております。

長妻委員 これはそういう反論があると思って、十三ページにその表をつけさせていただいておりますけれども、確かに、国民年金第一号被保険者約二千二百万人のうち、国税もかかわっているところが三百五十万件ということで、そのダブり部分は少ないというのはわかりますよ。ただ、集める専門家じゃないですか。やはりお金を集めるのは一つの組織に集約をしていく、そして支払う組織と分離していくということが何よりも効率性や効果的になるし、実効性も高まる、無駄遣いも少なくなっていくと私は本当に思うんです。

 今村瀬長官から、収納率を上げるために強制徴収をする、証明書を発行しないと税金の控除ができないようにする、こういういろいろなお話がありました。そういうことも必要かもしれませんけれども、その強制的に取る、北風と太陽ではありませんが、強制的にやることばかりお話があって、何で国民の皆さんは払わないのか、今の年金制度が非常に不安だからじゃないですか。

 そして、天下りは依然として社会保険庁にまだあるし、そして社会保険庁改革といったときに、ただ二つに分けて看板だけかえる、年金の徴収権を思い切って切り離すとか、そういう大きな改革があって、あっ、これでもう無駄遣いはないんだな、年金も一元化して信頼できるようになったんだな、こういうようなことがあって初めて収納率が上がってくるというふうに思っております。

 強制的に取る、取る、こういうこともある意味では必要かもしれませんけれども、まず村瀬長官のこれまでの社会保険庁の反省の弁、それで、もう無駄遣いはないんだ、こういう国民の皆さんが納得するようなお話を最後にいただいて、質問を終わりたいと思います。

村瀬政府参考人 私が民間から社会保険庁長官に来ましたときは、先生もよく御存じのように、保険料の無駄遣い、サービスがなっていない、国民年金の収納率が悪い等々、さまざまな批判の中で長官に就任させていただきました。

 その中で、最重点に取り組みましたのがやはりお金の無駄遣いのことでございまして、そういう点では、一昨年の十月から調達委員会を立ち上げて、保険料の無駄遣い、税金の無駄遣いにつきましては徹底的に排除をする仕組みを講じているつもりでございます。

 また、サービスの向上という観点にいきましたら、これにつきましても、年金相談等、さまざまな形で被保険者の皆さん方、それから受給者の皆さん方に対しましていろいろな情報をこちらから発信する仕組みもつくってございます。

 その中で、やはり最大の課題は国民年金の収納率だと思っておりまして、これについては年金法改正の所得情報をいただくことによって、職員に必死になって仕事をさせたい、そして結果を出すように取り組んでまいりたい、このように考えております。

小野委員長 長妻昭君、時間です。

長妻委員 社会保険庁の改革というのであれば、まず第一歩は集める権限を税金と一緒にするということだと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

小野委員長 以上で長妻昭君の質疑を終えます。

 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、後半の方は率直に財務大臣あるいは与謝野大臣と、日本の財政、経済、金融問題についていろいろ御教示を願いたいというふうに思っておるわけでございますけれども、その前に、今回の法案についても少し確かめておきたいことがございますので、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど同僚議員の質問の中でも、酒税の今回の見直しに関して、アルコール課税という方式ではどうかというような議論があったわけでありますけれども、そのときにちょっと気になる答弁があったものですから、まず最初に酒税の見直しについて、確認をしておきたいことがあります。

 谷垣大臣、なぜお酒から税金を徴収しているのでしょうか。まず、この基本のところを少し御教示いただければと思います。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 なかなかなぜというのは難しゅうございますが、大人の特殊な嗜好品、そこに着目して租税を負担していただこうということだと思います。

 その考え方の中には、先ほどの御議論の中にもありましたように、アルコールの致酔性に着目すべきだとか、いろいろな議論があるかと思いますが、私どもは、必ずしもアルコールの致酔性だけに着目してやっているわけではございませんで、酒類の消費態様とか、生産、消費の動向等も踏まえて酒税をかけさせていただいているということだと思います。

平岡委員 酒税を徴収する場合、かける場合はどういう考え方でかけているのかということは説明されたとは思うんですけれども、そもそも、何でお酒に税金がかかっているのかということについては特に御説明はなかったような気がいたします。

 そういう意味でいくと、先ほど、ビールの課税状況を基準にしてアルコール課税という考え方をとった場合にはお酒の料金が非常に高くなってしまうんだとかというような議論があったけれども、それは、むしろ整理されていない考え方ではないかというふうに私としては思いました。

 この議論については特に突っ込んで聞くつもりはございませんけれども、アルコール課税についての考え方は、先ほど大臣も少し触れられましたように、やはり一つの考え方として示しているわけであって、必ずしも、今のビールの税率というものを前提にして我々はすべてを考えようということではないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、今回の酒税の見直しについてはどういう基本的な考え方に基づいて行われたのかという点について、御説明いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 現行の酒税制度は、酒類を原料とか製法などによって相当きめ細かく分類して、その分類ごとに異なる税率を定めているわけでございますが、最近では従来とは異なる原料とか製法の酒類がいろいろ出てくるようになりまして、そうなりますと、酒類間で税負担の不均衡というものが感じられるようになってきたということがございます。

 今回の酒税法の見直しでは、こういう状況のもとで、今まで政府税調でもたびたびこの件では御議論をいただいたわけですが、そういった考え方を踏まえまして、税制の中立性や公平性を確保するという観点から、酒類の分類を簡素化していく、大幅に簡素化して酒類間の税負担格差を縮小するという方向で税率を見直していこうということでやりました。

 やや具体的に申しますと、酒類の分類を、今までは十種類でございますが、その製法等に着目して、四種類に大ぐくり、簡素化する。それから、各酒類の税率については分類ごとに基本税率をつくって、その上で酒類の生産、消費に与える影響にも配慮しながら、分類内での税負担格差を縮小していく。それから、ビール、発泡酒以外の低アルコール分の発泡性酒類の税率を一本化するといったような簡素化を考えたわけでございます。

平岡委員 今基本的な考え方を述べていただきましたけれども、これまでの酒税の改正の動きというのを見てくると、一般の酒類業者の中には、例えば発泡酒について、自分たちが税金の余りかからないものを研究開発してつくっていた、それを今度は、何か既存の税、例えばビールとかといったようなものに合わせるような方向で課税当局が税率を上げてくるということについては、自己努力を無にするようなものではないかというような批判があったわけでありますけれども、こういう問題については、今回の酒税の見直しについてどのような考慮が行われているのか、どのような判断でどういうことをしているのかということについて、お話しいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 一生懸命第三のビール等を開発された方からは、今、平岡委員がおっしゃったような御批判なり、そういうものがあることは承知しているわけでございます。

 ただ、考え方の基本としては、先ほど申し上げたように、同じようなものには同様の負担を求めるということにしないと、税制の中立性や公平性を損なうことになるのではないか。今までの細かく分け過ぎたものでありますと、いろいろな努力でございますけれども、この辺でこういうものを開発すれば同じようなものと違った税制でもっと安くできるんじゃないかというようなことを努力された、それはお酒の製造、販売というものに対して税がやや中立性というものを欠いているのではなかろうかというふうに考えたわけでございまして、今回の改正ではそういう中立性、公平性を確保するということから、酒類間の格差を縮小して、第三のビールも含めて、酒類の生産、消費に与える影響にも配慮しながらやらせていただいたということでございます。

平岡委員 いずれにしても、今回の酒税の見直しにおいては中立性、公平性ということをかなり重点に置いたということでありますけれども、今いろいろな民間の企業努力というものがあるわけでありますけれども、そうしたものに対して逆の効果を与えるような酒税の見直しというのは、基本的にはよろしくないというふうに思います。

 いろいろな状況を見ながらの見直しだろうと思いますけれども、民間の人たちの努力というものをしっかりと評価されるような酒税のあり方ということを常に念頭に置いていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、実は、私たち国会議員はそれぞれ地元というのを、選挙区というものを持っておりまして、その選挙区では、余り大きな酒造会社というものは周りにおられませんで、地元のお酒をつくっている中小の製造業者というのが多くいるわけでありますけれども、そこでよく議論になるのが、今自分たちがつくっているお酒というのがどんどん売れ行きが落ちてきていて本当に困っているんだというような話を聞かされます。この状況については、多分、国税当局の方もいろいろと工夫をしておられるんだろうというふうに思いますけれども、こうした状況について、酒税の税のあり方としては、こういうお酒の販売の動向というものを踏まえて、どういうふうにあるべきだといったようなお考えはあるんでしょうか。

谷垣国務大臣 今平岡委員がおっしゃいましたように、私の選挙区にも昔からの造り酒屋というのはございまして、実は私もそういう一族の中から出てきたものでございますから、日本酒の販売が不振であるということは、私自身、実は大変個人的には、個人的と言ってはいけません、財務大臣でございますから酒税もいただく立場でございますけれども、厳しい状況にあるなと思っているわけでございます。

 それで、こういう中で、財務省としては、酒類業の健全な発展を図るということから、やはり量から質への転換を考えていただいて、製造、流通、それから消費全体を展望した総合的な視点に立っていろいろな施策を考えているわけですが、特に清酒につきましては、地域ブランドの確立とか、それから市販酒の品質調査、それから輸出支援の施策、こういったものに意を用いているところでございます。

 それから、清酒製造業の構造改善を図るために、経営基盤強化計画を活用した経営改善を支援する、清酒製造業者の経営の合理化、効率化を促すといったようなことにいろいろ措置を講じているところでございます。

平岡委員 今回も、清酒については税率の引き下げのような対応もされておられるようでありますけれども、これ以上清酒の売れ行きが悪くなるというような事態がある場合に、酒税の見直しといいますか引き下げといいますか、そういったようなこともあり得る話として考えていいんでしょうか。

 税率の問題と売り上げの問題というのをどのように課税当局として考えているのかということをさっき最初にお聞きしたんですけれども、どちらかというと、税率の問題ではなくて、別の対策をいろいろ考えているんだというようなお話で今御答弁があったように思うので、改めて、私が最初にした質問として、お酒の売れ行きが悪くなるというような場合には税率の見直しというようなことも考えられるのかということについての大臣としての御見解を承りたいと思います。

福田政府参考人 事実関係だけ述べさせていただきますと、一般的に経済学では、値段が上がると需要が落ちる、あるいは供給がふえる、逆の場合は逆だということを我々習いました。

 お酒について申し上げますと、酒税の税率が上がったからといって必ず消費量が落ちる、逆に酒税の税率が下がると消費量が上がるという関係にはなっていないのもございます。例えば、しょうちゅうとウイスキーというのを想定していただければ、私が今申し上げたことは御理解いただけると存じます。

 いずれにしても、今後、税率をどうするかということにつきましては、需要動向等もろもろの事情を踏まえて私どもは検討すべきだというふうに理解をしております。

平岡委員 今おっしゃるように、いわゆる税率が高いから売れ行きが悪いということはないのかもしれませんけれども、それは税率が高くて値段が高ければ多分買わなくなるというのはある意味では当然のことでありまして、さっき税についても中立性、公平性ということを言われましたけれども、お酒とお酒以外のものとを比べたときに、税金がかかっていることによって消費が進まないというような事態があるとするならば、それは税が公平性あるいは中立性に欠けているというふうに評価されるということもあり得るということを意味しているんだろうと思うんですね。そういう意味においては、この酒税のあり方については、今後もしっかりとそうした産業としての酒類業界といいますか、そういった視点に立ってもやはり考えていっていただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 それでは、冒頭ちょっと申し上げましたけれども、財政、経済、金融問題について、二人の大臣からいろいろと御教示をいただきたいというふうに思います。

 私も、実は今まで財政等、金融とかについては自分の仕事としてもやってきたという経緯もありまして、これからもしっかりとこの分野に取り組んでいきたいというふうに思っておるのでございますけれども、あいにく今民主党も少数野党になりましたので、いろいろなことで忙しくて、なかなか財政等の問題についてしっかりと勉強する時間がないというような状況でございますので、ここでしっかりといろいろと意見交換をさせていただきたいというふうに思うわけであります。

 財政というものを考えてみますと、日本のいろいろな、経済のシステムであるとかあるいは政治のシステムであるとか社会のシステムというようなものがある意味ではすべてここに集約されて、そこにいろいろな形で日本の社会が見えてくるというものが財政のような気がいたします。そういう意味において、この財政をどういうふうに位置づけていくのかということは大変日本の社会を考えていくに当たっても重要なことだろうというふうに思います。逆に言うと、この財政というものが不健全な状態であるということは、日本の社会あるいは日本の国というものが非常に厳しい状況に置かれているということを示すことになるんだろうというふうにも思うわけであります。

 そこで、現在、財政の状況ということにかんがみれば、これは多くの方々が、借金もたくさん抱えておるし毎年の歳出も多くの借金によって賄われている、こんな状況にあるわけでありますから心配をしておられるんだろうというふうに思いますけれども、そういう状況に至った、つまり債務が非常にたまってしまった、あるいは毎年の歳出を借金で賄わなければいけない、このように至ってしまった原因について、いろいろな原因があるんだろうと思います、経済的な要因もあれば政策的要因、政治的要因、もろもろの要因があるんだろうと思いますけれども、そうした財政が悪化してきた、あるいは悪化してきているということの原因についてどのようにお考えになっておられるか、お二人の大臣にお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 委員おっしゃるように、ストックでいいましても、国、地方を合わせて、公債、GDPの一五〇%を超えている、平成十八年度公債依存率が一般会計で申しまして三七・六%、非常に悪い状況でございます。

 ここに至る原因は何なのかといいますと、私は大きく言って二つあると思います。一つは、やはり少子高齢化等が進んでまいりまして、社会保障費用というものが非常にふえてくるということが一つあろうかと思います。

 もう一つは、大変景気が低迷いたしまして、それを何とか底支えをしようというのでいろいろな手段を講じてまいりましたけれども、特に減税等というものが税収を減らしてきた。その背景には、減税だけではなくて、もちろん景気の低迷によって税収が減ってきたということもございますけれども、景気対策としての減税といったものも今日の財政悪化の一因であったというふうに考えております。

与謝野国務大臣 日本の財政は今まで何とかもってまいりましたけれども、どこまで日本の財政が持続可能かということは、ここでやはり立ちどまって考えなければならない状況に来ていると私は思っております。

 日本の社会福祉制度等は、私はもう世界のどの国にも負けないぐらいきちんとした年金あるいは医療の制度ができていると思います。こういうものを続けていくんだという前提に立てば、やはりこの際、財政について、国民とともに、将来に向かって世代間の公平も図っていかなければなりませんし、また、財政が悪化していきますと、やはり、やがてそれは経済の悪化にも結びつく。こういう観点から、財政を立て直していくという決意が今政治に求められていると私は思っております。

平岡委員 谷垣大臣言われたことは、どっちかというと、高齢化にしても少子化にしてもある程度予測がつきながら進んでいる話でありますから、それが財政に悪い影響を与えてしまう、影響を与えてしまうのは当然だとは思うんですけれども、それに対してしっかりとした対応がつくられてこなかったということについては、先ほども与謝野大臣が言われたように、政治の問題、あるいは決意の問題というようなこともあるんだろうというふうにも思うわけであります。

 ただ、こういう原因というものを、私は、それだけじゃなくて、かなり景気対策的な公共事業の実施といったようなこと、これは景気対策だけじゃなくて、アメリカからも構造改革協議の中で公共投資の増加というのが求められたといったようなこともあった、そういうようないろいろな要因もあったんだろうと思うんですけれども、こういう財政が悪化したという経験を踏まえて、これから、これ以上財政を悪化させていかない、あるいは、ある程度財政が健全な状態になってもその状態を維持していくというためには、どういうような仕組みといいますか、どのような制度というようなものを考えておいたらいいのか、この辺についてのお考えがあればお伺いいたしたいと思うんですけれども。

谷垣国務大臣 私どもは、この問題は、与謝野大臣のもとで歳出歳入一体改革の道筋をどうつけるかという形で、この年の半ばぐらいまでをめどに議論をしていって、具体的な選択肢、工程表等々もお示しして、国民的な議論をしていかなきゃならぬ、こういうふうに思っているわけです。

 それで、その中で、考え方としては幾つかあると思いますが、まず歳出については、これは無駄を省いていくというのは当然のことでありますけれども、今まで諸外国等で財政再建に成功したところを見ますと、裁量的経費を削るというだけではなくて、やはり義務的経費、制度論にまでさかのぼって議論をしなきゃならぬということが、長続きした国にはあったと思います。したがいまして、私どもも制度的に、制度論といいますか義務的経費をどうやっていくかという問題にやはり真剣に対応していかなきゃいかぬというのが一つではないかと思います。

 それから、しかし、無駄を省きましても、現在のように公債依存率が三七・六%ということになりますと、それだけでなかなかうまくいくものではない。こういうことになりますと、これはやはり歳入面、安定的な歳入面というものをつくっていかなければできないんだろうと思います。その上で、今の目標は二〇一〇年代初頭に基礎的財政収支をバランスさせるということでありますけれども、私は、基礎的財政収支をバランスさせただけでは、なかなか日本の財政を本当に改善していくということにはならないんだろうと思っております。やはり、そのときに名目成長率の方が金利より高くなれば、これだけあるストック、国債が発散するということはないわけでありますけれども、そういう状況をいつも見込めるとは限らないというふうに私は思っておりまして、基礎的財政収支の黒字を少しでもつくってやっていくということを前提に考えていかなければならないんであろうと思っております。

 いずれにせよ、できるだけ具体的な議論をまとめてお示しをしたい、こんなふうに思っているところでございます。

平岡委員 制度的な対応ということも私は必要だと思いますし、それだけじゃなくて、実際どういうふうにして仕事を進めていくかという手順的なものですね、これも重要なことだろうというふうに思うんですけれども。

 先ほど、同僚議員が、シーリングによる予算編成についてかなり批判をした質問をしておりました。私も、シーリング自体がどれだけ本当に日本の財政にとって重要な仕組みであるのかということについては、やはり疑問には思っているわけであります。本当に必要なところにお金が回っていくためには、これまでのような、ある意味での積み上げ方式とか、あるいは既存の予算というものを前提としたシーリング方式であるとか、こういうことは、基本的にはあまり私はいい方向ではないんではないかというふうに思うわけですね。どちらかといえば、やはり、今何が必要なのかということを大所高所から考えて、それによって日本の財政の方向性というものを決めていき、そしてそれに基づいて徐々に細かいところを決めていく、そういうやり方というのが必要ではないかというふうに思っているわけでありますけれども、そうした予算編成のあり方について、谷垣大臣としてはどのようなお考えを持っておられるか、御教示いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今平岡委員がおっしゃったような、シーリングで一律何%減というのではなくて、大きな見地から何が必要かというようなことをつくっていくという観点からいいますと、与謝野大臣がおられる前で申し上げるのは口幅ったいわけでございますが、やはり経済財政諮問会議というのをつくって、そこに総理も入っていただき、重要閣僚も入って、民間人も入って、マクロ経済の動向を見ながら、どういう予算編成であるべきかと、予算編成の基本方針をみんなで議論するというようなことになって、その方針のもとにやっていくというようになったのは、私は大きな変化であり進歩であろうというふうに思っているわけでございます。

 その上で、そういった問題を含めて、具体的な予算編成の手法となりますと、シーリングに対する御批判はたくさんあるわけでありますけれども、具体的に、シーリング以外に予算編成を抑制していく手法というのは何なのかというと、なかなかすぐそれに見合った手法というものが簡単には得にくいということも事実でございます。今後とも、ある意味ではシーリングをかけて、そこで、私はよく孫悟空の頭にはまった鉄のたがだというふうに申すんですが、ぎりぎりと締めていくということはある程度必要なんじゃないかなという気持ちをなかなかぬぐい切れないところがございます。ただ、その点でも、ただシーリングというだけですと、なかなか、今まで余りうまくいっていないものを取っ払っていくとか、新しいものを入れていこうというふうになかなかならないわけでございますので、そこをどうやっていくかというのは、シーリングの枠内でも相当これから工夫があるべきではないかと思っております。

 この二、三年も、現に、要求はたくさんやっていただけるけれども査定は厳しいよというようなことをやりましたけれども、まだなかなかそういうものが十分にうまく活用できているというふうにも思わないわけでございまして、何かもう少しその辺の研究の余地があるのかもしれないと。まだことしの予算を御審議いただいている最中ですから、来年の予算編成の手法まではなかなか頭が行っておりませんけれども、そんなふうなことを考えているわけでございます。

 そのほか、やはり今は国会でも、実際、予算の使い道というようなことも随分御議論が進んでまいりましたけれども、いわゆるPDCAサイクルと申しますか、今までの予算の執行実績等も十分に調査をして見ていくというようなこともあわせてやっていくということが必要ではないかと思っております。

平岡委員 今の大臣のおっしゃっていることも、現実の問題としてはある程度わかるのでありますけれども、そのような方式でいった場合は、やはり各省庁、既得権というと言葉が悪いかもしれませんけれども、なかなか我が国が進むべき方向性というものを踏まえた予算編成というのができにくい仕組みじゃないかというふうにも思いますので、先ほど言いましたように、財政というのは、経済、社会、あるいは政治といったようなものの媒介となるような、そういう全部が出会うところのものでございますから、財政がどういう方向にこの国を持っていこうとしているのかということについては、やはり政治の役割というのは非常に大きいものがある。その政治の役割をしっかりと財政におろしていくといいますか、財政の中で示していくためには、今のような予算編成のあり方というのはやはり問題があるのではないかということだけ、ちょっと私の意見として述べさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、次に移りまして、現在、我が国の累積債務といいますか公債残高というのは非常に大きくなってきているというような状況の中で、プライマリーバランスを二〇一〇年代初頭には黒字化していくんだ、そういう議論もありますけれども、逆に、これだけたまってしまった借金をどうしていったらいいのかという問題が、一つは国債管理政策の問題としてもあるとは思いますけれども、もっともっと根源的な問題として議論しておかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。

 そういう中で、よく聞く話としては、政府紙幣を発行することによって、政府紙幣ということは、政府にとってみればゼロ%の国債を発行するものであるとともに、これは償還する必要がどれだけあるのかという、また別の問題というか、さらにもうちょっと進んだ問題もあるわけでありますけれども、財政負担が少ないからぜひやったらどうかと。あるいは、ある特定の、例えば不良債権の処理という目的のために限定して政府紙幣を発行してはどうかといったような学者の方もおられるわけでありますけれども、この政府紙幣を発行することによって例えば財源を調達するあるいは国債の返済をしていく、こういったことについて財務大臣としてどのように考えておられるか、ちょっと御所見を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 政府紙幣を発行したらどうだというアイデアは私も伺ったことがございますし、また、この国会の中の御議論でも今までそのようなお考えを開陳される方がいらっしゃったわけです。

 今まで政府紙幣というものがなかったわけではないんだろうと思うんです。我が国も太政官紙幣といいますか、そういう形で出したことがございますが、今はほとんどの国が中央銀行によって紙幣を出していくという形をとっているわけでございます。

 これは、考えてみますと、無期限、無利息の国債を発行するのとほぼ効果としては同じようなものだと思うんですが、仮に負担が少ないからといって、そういうものをどんどん発行していきますと、やはりその国債の信認をどうして確保するかという問題が結局出てこざるを得ないわけだろうと私は思うんですね。

 では、現在国債をこれだけ大量に発行して、国債の信認をどう確保するかという国債管理政策の基本は、やはり財政構造を少しでも改善していくというところに、私は最後の担保はそこにあるんだろうと思っておりますので、無利子、無期限の、つまり、インフレーションみたいなのがばあっと起こってくるのを防ぐには、やはり同じ努力が基本的に必要なんじゃないかというふうに思います。

 それと同時に、一方で日銀券があるわけですが、日銀が、政府が発行した紙幣を集めてきて交換してくれといったときに、やはりこれは交換する用意がございませんと、不換のままであるということになると、果たしてその制度はワークするのかどうかというようないろいろな問題がございまして、なかなか、それでいけるなというふうには思いにくいなというのが私の正直な感想でございます。

平岡委員 確かに、政府紙幣をどんどんどんどん発行していったら、ハイパーインフレーションを招くような、そういう経済に与える影響というのが大きいというのは、それはだれでもが容易に想像がつくところなんですけれども、何か、ある意味では、どこかの調和点ぐらいまではこういう形で債務負担を軽減していくということができるのではないかといったようなものがあるのかもしれない。

 通貨について言えば、政府が通貨高権という大きな力を持っており、それがいろいろな利益を生み出していく。その利益というものを国家が利用するということも、ある程度までは考えられないことはないのではないか。

 この辺も、私もいろいろ文献を読んで勉強してみても、なかなか、こういうところの調和点までならこういった政府紙幣の発行という形での債務負担の軽減が図れるのではないかという結論が出てこないので、基本的には、今大臣が言われたことが常識的な話だというふうには思っておりますけれども、与謝野大臣がちょっと関心を示されておられるので、何か御意見でもあれば伺いたいと思います。

与謝野国務大臣 政府が独自にお金を出すということは、日銀がどんどんお金を刷ってばらまくという話とほとんど一緒だと私は思っております。これは、いずれインフレになって、まじめに貯蓄をしてきた方や働いている方の資産を収奪するということになるので、やはりインフレを当てにして財政を再建するということにはとても賛成できないと私はいつも思っております。

平岡委員 私も、インフレを起こすぐらいまでどんどん発行せいということじゃなくて、今、個人金融資産の範囲内で国債が消化されている、そういう状況の中での、一定のところまで何か通貨高権というものを利用した財政健全化策というのがあるのかなという程度の話として聞いておりますので、その辺はそういう範囲の中での議論だということでお受けとめいただきたいというふうに思います。

 ついでに、政府紙幣の話を聞きましたので、永久債についてもちょっとお聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 外国には永久債という形で発行しておる例もあるというふうに聞いておりますけれども、我が国ではこういう永久債を発行するような事態というのは、何か考えられるといいますか、現実に今考えておられるということはないとは思いますけれども、そういう事態もあり得るというふうには思っておられるんでしょうか。その辺、余り深く聞くつもりはありませんけれども。

竹本副大臣 歴史をちょっと調べますと、過去にイギリス等で永久債を発行した事例があるわけでございますが、これは、発行者である国は償還権を有するんですけれども、保有者には償還請求権がない、こういう特殊な形のものでございます。

 さて、それを我が国で対応できるかどうかということでございますが、やはり一番気になるのが、財政規律の観点からどうだろうかということが一番気になるわけであります。また、元本償還の必要はないとはいえ、永久に利子負担が国としては続くわけでございますから、必ずしも財政負担が軽減されることにはつながらない、そういう問題もあります。さらに、元本償還が行われていない、全く新たな商品性でありますので、償還金がないことから、一般的に価格変動リスクが高いと考えられるわけでありまして、市場のニーズがどの程度存在し、円滑な消化が果たして図れるのかどうか、いろいろ不明な点がございます。

 そういういろいろな問題がありますことから、現時点では、永久国債の発行を政府としては考えていない、こういうことでございます。

平岡委員 永久債の発行を考える前に、もう少し健全な方法での財政の健全化ということを考えていくべきだろうと私も思いますので、それはそれとして承っておきたいと思います。

 一方、これだけ国債がたまってしまいますと、財政の面から見たら、金利負担の問題が当然将来的には起こってくる。経済の面で見れば、国債を保有している金融機関を初めとしていろいろな人たちに対しての影響も出てくるだろう、こういうことが想定されるわけであります。そういう意味では、今の低金利政策というものが、財政的に見れば、これだけ大きな国債残高になっても国債利払い費負担というものが余り大きくないというか、むしろ減ってきているというふうな状況の中でうまく機能したのかもしれませんけれども、これから政府が言っておられるように経済がよくなってくるというようなことであるならば、当然金利の上昇ということも想定されるということになるわけでありますね。

 そういう状況で、財政負担が、金利負担といいますか、金利の支払い負担というものがふえてくるということが想定される中で、こういうことを想定して、何か低金利政策についてはどうあるべきだとか、あるいは金融政策はこういうふうにしていくべきだといった政策誘導的なもの、こういうことはあり得るんでしょうか。

 これは、金利を支払う立場になる財務大臣と、それから、金融政策については直接日銀がやっているので政府は答えるべきじゃないということもあるかもしれませんけれども、そういう金融経済についてもある程度カバーしておられる与謝野大臣、お二人にお伺いしたいというふうに思います。

与謝野国務大臣 問題は、金利というのはだれが決めるのかという問題です。特に、長期金利を決められる人はいるのかという問題に直面をします。多分、金利というのは、人工的にはなかなか決められない、日本人だけでも決められない。そういう問題であって、やはり市場で借りたい人と貸したい人が条件を決めるというのが私は長期金利だと思います。

 そこで、それでは日銀や政府が長期金利をコントロールできるのかという問題が次の問題ですけれども、多分これは、短期間コントロールすることはできても、長い時間長期金利をコントロールするということは不可能であると思っております。また、仮にコントロールできたとしても、その副作用というものは大変大きなものであるというふうに私は考えております。

平岡委員 今の与謝野大臣の御答弁を踏まえて、谷垣大臣に、政策誘導的に長期間することは副作用があるというようなお話を前提として考えれば、やはり受動的に、長期金利が上がってきて国債の金利負担というのが起こってくるということは防げないということを一つは意味しているんだろうと思うんですけれども。そういう状況認識を踏まえて、これから金利負担に対して、長期金利が上がってきた場合の財政における金利負担についてはどのように対応していかれることを考えておられるのか、この点について財務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 金利はどう決まっていくのかというのは、今与謝野大臣がおっしゃったとおりでございまして、そこで、では財政当局として何ができるかということになりますと、先ほどの国債管理政策とも関連してまいりますが、やはりリスクプレミアムをできるだけ取り除いていくということではないかと考えております。それは、やはり財政の状況を少しでもよくするように努力をしているという姿をマーケットに示していくことではないかというふうに考えておりまして、その努力は最大限しなければいけないと思っております。

 その上で、金利上昇時の財政負担というのはどの程度のものかという議論になりますと、私ども、平成十八年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算というのを出しておりますが、これは、平成十九年度以降、金利が一%上昇した場合は、つまり二%から三%になったという仮定で行いますと、平成十九年度で国債費利払いが一・六兆増加するというふうに考えているわけでございまして、金利の動向、私どもの今の財政は、これだけ多額なストックを持っておりますと、金利リスクというのに大変弱い体質でございますので、金利には十分注意をしていかなければならないと思っております。そして、その上で、先ほど申しておりますような歳出歳入一体改革の道筋をきっちりつけることによってリスクプレミアムを抑えていくということではないかと考えております。

平岡委員 今のは国債残高を踏まえた上での金利負担の問題ということでお話ししたんですけれども、今、リスクプレミアムを引き下げていくということで、財政健全化ということを示していく必要があるんだということを言われました。

 国債を発行する場合においても、その条件がどうなるかということについては財政の健全化の問題が影響してくるんだろうと思うんですけれども。

 かつて日本の国債の格付がボツワナ並みであるということでよく報道されておりまして、大変我々としても憤慨をしたわけでありますけれども、今、日本の国債の格付というのは、どういう状態になっておって、これに対しては財政当局としてはどういうふうに今見ておられるかというのを教えていただければと思うんですけれども。

谷垣国務大臣 今、日本の国債の格付を申しますと、ムーディーズが円建ての日本国債はダブルAということであります。それから、S&PがダブルAマイナス、フィッチがダブルAマイナスということでございます。

平岡委員 ついでに、そういう格付をされていることについて、今、日本の財政当局としてはどういうふうに評価しているか、どういうふうに感じているかということをちょっと教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 かつては、平岡さんがおっしゃいましたように、ボツワナより低いというので、私どもも何だというのでいろいろ反論等をいたしたことがございます。これは、金利の状況等いろいろなことがやはりあるんだろうと思っておりまして、私どもとしてはそれは高い方がいいわけですので、もうちょっと改善されるようにやはり努力をしなければいけないと思っております。

平岡委員 この金利の問題について、せっかく金融担当大臣ということでお越しいただいておりますので、ちょっとお聞かせいただきたいというふうに思うわけでありますけれども。

 ある民間の調査機関が調べたところによれば、国債の金利の状況、計算してみると、例えば利付債の十年債では、金利が一%上昇すると、今の国債残高を前提とすると、十五兆円弱ぐらいの評価損が出てくる。今度は逆にそれを一つの国債で見ると、平成十四年度発行の利付十年債では、金利が一%上昇すると国債価格が九・四%下落する。

 こういうふうなことで、大きな国債の規模になってくると、それを保有している金融機関に対しては、金利上昇によって与える影響、つまり国債に評価損が生じてしまうという影響が大きいんだろうというふうに思いますけれども、金融担当大臣としては、こうした問題については、どのように認識をしておられ、そして何らかの対処をする必要があるというふうに考えておられるのか、この点について教えていただきたいと思います。

与謝野国務大臣 実は政府は毎年約百五十兆の国債を発行しております。これは、新発債が約三十兆、それから既発債の借りかえが百二十兆、大体百五十兆ですから、実はトータルの国債発行額のうち三十兆ではなくて百五十兆が金利の影響を受ける、これは政府に対する影響です。それと同時に、新発債の金利、長期金利、表面金利が上がりますと、当然各金融機関が持っておられる国債の評価が下がる、評価損が出る。これは、先生の言われたような数字になるかもう少し小さいかは別にいたしまして、相当な評価損が出ることは間違いない。

 したがいまして、それぞれの金融機関はそれぞれの金融機関の持っている資金量に応じてリスク管理をやっておられると思います。したがいまして、自分の余っているお金を全部全部国債に投ずるというようなことは多分されていない、リスクを分散される形で、なおかつ金利収入があるという形をそれぞれの金融機関が現にとっておられると思います。しかしながら、長期金利が皆さんの予想を超えて瞬間的に噴き上げるようなことがありますと、国の財政も打撃を受けますし、また銀行だけではなく保険会社等もそれによって大きな評価損をこうむる。これは、そういう意味では、財政に対する信認を高めておくということがまずは政府ができる一番大事なことだろうと私は思っております。

平岡委員 いずれにしても、これだけ国債残高が多くなりますと、ちょっと金利動向が変わるということが非常に大きないろいろな影響を及ぼすということでございますので、できるだけ国債管理政策、しっかりといろいろな事態を想定しながらやっていただきたいというふうに思います。

 そこで、時間も余りなくなったので、ちょっと予定した質問の順番をいろいろ変えさせていただいて、財政の健全化の問題について少しちょっと触れていきたいと思います。

 よく小さな政府か大きな政府かというお話があって、先日も多分同僚議員がこの問題を取り上げたんだろうというふうに思いますけれども、ある人は、日本はもう十分に小さな政府であるということを言われています。

 例えば、OECD諸国の中で比較してみますと、一般政府支出について言えば、大体三十カ国中二十四位ぐらいの三十数%ぐらいだ。あるいは、潜在的国民負担率、国民負担率に借金を上乗せした上で潜在的というふうに表現しているようでありますけれども、この潜在的国民負担率も四〇%台半ばということで、これも先進諸国の中では極めて低い。例えば、デンマークとかスウェーデンといったようなところは七〇%を超えているような状況にあるのに対して、日本は低い。あるいは、公務員の数というものも、例えば、フランスでは千人当たり九十人、あるいはアメリカでは千人当たり六十人といったところが、日本は千人当たり三十五人であるというようなことで、もう十分に小さい政府になっているというふうに言われる方も大勢おられるんですけれども、この点についてはどのように評価しておられるか。

 日本が現在小さな政府なのか大きな政府なのか、この点についての認識を両大臣にお伺いいたしたいと思います。

谷垣国務大臣 この委員会でも、随分大きな政府小さな政府という議論がございまして、小さな政府というのは本来夜警国家のようなものじゃないかという御議論もございました。

 私は、現状認識として申しますと、今、平岡委員が引かれましたように、現状では日本はそんなに大きな政府ではないんだろうと思います。私は、財政演説の中で、これは主として社会保障等々に着目したわけでございますが、中福祉・低負担というようなことを申し上げたんですが、現実には必ずしも大きくない。福祉の面で言えば中、中の中でも比較的スリムな中ではないかというふうに思っているわけでございます。他方、負担の方はかなり低いというのが現実の姿ではないかと思います。

 ただ、低いといっても、これから高齢化等の進捗ぐあいは諸外国に比べて非常にスピードが早うございますから、このままほっておきますと、社会保障等の負担は相当どんどんふえていく形にならざるを得ないだろうというふうに思っております。

 したがいまして、今後やるべきことは、一つは、これはやはり国民の意識と関係してくると思いますが、どの程度のやはり給付というものをやるべきかということをもう少し議論を詰めていかなければならないということがあると思います。それは結局、最終的にはどう身の丈と合わせるかという議論になってくるんだろうと思います。

 それと、もう一つやらなければならないことは、大きいか小さいかということだけではなくて、かつての日本が非常に成功したシステムをつくったわけですが、そのときの成功体験に基づくいろいろな、資金の流れ方とか、そういうものが必ずしも現状に合っていないという面があって、簡単に言えば、必ずしも効率的に使われていない、無駄に使われている部分もある。そこらあたりをどう直していくかという課題も、これは大きな政府小さな政府と同じかどうかわかりませんが、あるんだろうというふうに思っているわけでございます。

与謝野国務大臣 租税負担率から見ますと決して大きな政府ではないはずなんですけれども、国民負担率を見ますと、やはり国民が負担している租税、社会保険料、そしてプラス将来世代にツケ回しをしているものがございますから、委員御指摘のように、恐らく、日本の国民負担率は四六とか四七とかというところまで私はいっているのではないかと思っております。

 これは、年金とか医療というのは今さら制度としてやめるわけにはいかないし、また介護保険、皆年金というのが社会の安定性をつくり出しているということを考えれば、こういう制度、例えばこういう二つの制度を持続可能にしておくためには、やはり国民負担率が、五〇は超えてはいけないけれども、五〇に近づくということはやむを得ないことなんじゃないかと私は思っております。

 ただ、その間に、小さい政府という、誤解をもたらすような言葉は別にいたしまして、効率性の高い、そして簡素な政府というのがやはり政治が目指さなければならない方向ではないかと私は思っております。

平岡委員 かつては、国民負担率について目標設定といいますか、大体五〇%台半ばぐらいにというような話もよく聞いたことがあるんですけれども、最近余り、ちょっと聞かなくなったような気もします。

 それはそれとして、実は、国民負担率を考える場合に、ただ単に負担だけを考えるのはいいのだろうかというような議論があります。

 私は、例えば、強制的に徴収される税とか社会保険料というものがどのぐらい、経済の中でそういう強制的に徴収されるものがどのぐらいあるのかというのを示すためには一つの目安だろうと思うんですけれども、例えばスウェーデンなんかは、国民負担率が七〇%を超えているといっても、今度は社会給付として戻ってくるものが多いので実質的な負担というのは大きくないのだということで、そういう社会給付後の負担率というものを一つの目安として考えるべきではないかというような議論もあるわけですね。

 そういうことでの論文もありまして、それで比較してみると、これは別に数字を聞いているわけじゃありませんけれども、そういった、今、社会給付後の負担率で見ると、例えば日本が一二%台なのにスウェーデンは一一%台という評価をされるというようなことで、そっちの方の社会給付後の負担率というもので社会を考えるというのも一つの考え方ではないかと言う方もおられるんですけれども、その点についてはどのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 社会保障等の給付も含めて考えたらどうだというのは、私は、やはり意味のある議論だろうと、伺っていて思うわけでございます。

 今度の国会では、格差が開いているか開いていないかというような議論も非常に行われておりますけれども、その場合でも、やはり所得再分配とかいろいろな施策の効果を見たときどうするのかというような見方がある、それも一つの見方だろうと私も思っているわけであります。

 ただ、これは具体的にやっていきますと、どこまでを負担というふうに見てどこまでを給付と言えるのかというのは、なかなか理論的には難しいところもありまして、哲学としてはわかるんですが、十分意味のある手法にしていくにはまだ少し工夫が必要なのかなという気が正直言ってするわけでございます。

 ただ、財政当局としての私の関心からいいますと、より問題にしたい点は、現世代がいわば、給付を受けるという意味においてはかなりの給付を受けながら、負担は必ずしも十分にしているという状況ではなくて、むしろツケを子供たちや孫たちに送っている、ツケ回しをしているという構造があるのではないかと。そのあたりを、どういう概念といいますか、どういう道具立てで明らかにして問題を整理していくか、そういうような何か指標みたいなものがうまくできますと、私の観点からすると、有意義な指標になるのじゃないかなというような気がいたしたりしております。

平岡委員 ちょっと時間がなくなりましたので、とりあえず、今谷垣大臣のおっしゃられた話を踏まえて、ちょっと私も、今言われた、ある意味では世代間の負担というのが、場合によっては今の現役世代と将来の現役世代とかつての現役世代、いろいろ違ってきているかもしれないという意味で、そういうものを踏まえた国民負担というのがどういうふうに世代間で分かれているのかといったような問題なんだろうというふうに思いますけれども、それが示せれば、ある意味では、これからの日本の財政、どういう仕組みであるべきなのかといったようなことのヒントになるのかもしれないなというふうに思います。

 そういう意味では、そういうことをいろいろと、これはどこがやるのかというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、関係省庁の間で議論していただいて、ぜひ我々にも示していただきたいというふうに思います。

 ということで、国民負担率の問題について議論をさせていただきましたけれども、今、健全化の目標という意味ではとりあえずプライマリーバランスの話が出されているわけでありますけれども、プライマリーバランスを黒字化させるということは、多分途中の目標であって最終的な目標ということではないんだろうというふうに思います。

 プライマリーバランス、二〇一〇年代初頭に黒字化になるかどうかということは、ちょっと私もまだ確証はありませんけれども、そういう目標の次に立てるべき目標というのはどういう目標になるのか、この点についてお二人から御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

与謝野国務大臣 欲を言えば切りがないんですけれども、多分、到達可能な目標としては、国債残高を対GDP比一定ないしは下がる方向に持っていくということだと思います。国債の絶対額を減らすということは、多分至難のわざではないかと思っております。

谷垣国務大臣 私も、基本的に与謝野大臣と同じような認識を持っております。

平岡委員 きょうは、どっちかというと余り追及型の質問じゃなくて、しばらく離れておったということもあって、いろいろな勉強をさせていただいたというつもりでございます。これからいろいろな法案もまた出てくると思いますけれども、またしっかりと委員会で審議をさせていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

江崎(洋)委員長代理 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 今回、私は、皆さん大まかな話ばかりですので、ちょっと細かい税制の話をさせていただこうかと思っております。

 まず初めに、非常に単純な言い方をして恐縮ですが、税制の問題というのは、どこからお金を徴収するのか、そういうことでございまして、これは、つまるところ、どこでどういう線引きをしていくか、いわゆる線引きの問題でございまして、この線引きについて、できるだけ納税者の皆さんに納得していただくということが税金を徴収する政府の責任であるということについては異論がないところだと思います。

 そういう意味で、例えば、増税にしても減税にしても当然いろいろと利害関係者の皆様とコンセンサスを得る、そういう必要が求められるわけであります。こういうふうに考えますと、私、ちょっと一つ問題があるなというふうに気づいたことがございまして、それは、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入の規定、これが今導入されようとしているということでございます。

 これについては、予算委員会や先日の財務金融委員会でも諸先生方の御議論のあったところでございますが、導入の趣旨といたしましては、大臣が御答弁いただいたように、租税回避行為の防止ですとか、あと、個人事業主と課税関係の不公平を正すということであったと思います。

 ただ、そこで、あえて私、一石を投じたいという思いで申し上げさせていただきますが、制度上、会社には当然、経費の損金算入が認められています。給与にも当然、これは給与所得控除というのがあるんですね。オーナー企業について、これを二重の経費の控除と言い切って租税回避行為と言うのは、ちょっと早計ではないかというのが私の立場でございます。

 当事者としては、単に制度を適切に使っているだけです。個人事業主とは違って、規模は小さいながらもこれは会社組織というのをちゃんと備えている。これは当然会社法にのっとる必要もありますし、そういう意味で個人事業主と明確な違いはあるわけなんです。ですから、これについて課税上の差異を認めるという措置だって、評価だって、これはあったっておかしくない。

 そしてまた、個人事業主と特殊支配同族会社に課税上不公平があるということでございますが、不公平というのはどこかで線引きをすればこれは間違いなく出てくるものでございまして、そういう意味で、新たな線引きをすれば新たな不公平も生まれるということでございます。

 何が言いたいかと申し上げますと、要するに、関係者とのしっかりとしたコミュニケーション、そしてコンセンサスを得るということがやはり税制の改正については重要なんじゃないか、特に政府側にはそれが求められるんじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。

 そこで私、地元の企業の方々、また首都圏におられます企業の方々にもこの制度についてお聞きしました。どんな影響があるのかというふうにお聞きしましたところ、やはりちょっと導入が唐突過ぎじゃないかとか、そしてこれは影響が思ったよりも大きいぞという声が多々寄せられております。

 そこで、谷垣大臣にお聞きしたいのですが、この実質増税の影響というのはどの程度になるんでしょうか。これをお答え願いたいと思います。

谷垣国務大臣 今おっしゃった増税の影響というのは、どのぐらいの範囲にかかっていくかということでございましょうか。

 これは、一応、法人税の負担が増加する法人数は五万社から六万社程度ということでございます。それで、どういうふうにそれを推計したのかという背景を若干申し上げますと、中小企業庁が平成十四年十一月に経営戦略に関する実態調査というのを行いまして、それに基づいて、持ち分比率や役員構成に係る要件によって今度の措置の対象となる実質的な一人会社の数を、これは同族会社が大体二百四十一万社あるわけでございますが、その二割強、五十万社強と見込みました。

 それで、この経営戦略に関する実態調査は、統計報告調整法上のいわゆる承認統計、つまり総務大臣から当該統計報告の徴集が統計技術的に見て合理的であるという承認を受けている、そういうものでございますが、その上で、この実質的な一人会社のうち所得水準などによって今度の措置の適用対象外となる法人の割合を、これは、国税庁の会社標本調査などに基づきまして、約九割は適用対象外になるというふうに見込みました。

 このように、御指摘の数値は、政府の承認統計あるいは税務統計といったものに、精度が高い統計に基づいて推計を行った結果であるということでございます。

 済みません、もう一つ、税負担増加額はよろしゅうございますか。

鷲尾委員 ありがとうございます。とりあえず企業数だけで結構でございます。

 推計についてということで今御答弁をお願いいたしましたが、私も、この推計について、五万社から六万社という数値がどこから出てきているのかということで財務省に問い合わせしました。

 問い合わせしましたところ、皆さんの手元にお配りした「推計について」という紙っぺら一枚が送られてきておりまして、あとはるる言葉で説明されまして、そういうことだからお願いしますという形で簡単に説明をされたんですが、そんな簡単なものじゃないんですよね。

 五万社から六万社という根拠というのは、これは、今大臣もおっしゃっていました、かなり精度の高い政府の統計によって導き出されていると。そういうことであれば、その資料を見せていただかないと、本当にそれが五万社から六万社になっているのか。そもそも、先ほど大臣おっしゃいました、法人企業体の同族会社が大体二百四十一万社ある中の二割強が実質的な一人会社であるというふうにおっしゃっていました。ところが、この二割強というのは、どこから出ているんですかと。そういうことも考えられるわけです。

 と申しますのは、資料におつけいたしました、東京税理士会のアンケートというのがございます。この中で、設問一で、一人会社に当たるものは何%か各税理士さんにお聞きしたところ、これは七割を超えているという話なんですね。そもそも大きく開きがあるわけです。

 ここで一つ考えてほしいんですけれども、まず、こういったアンケートの存在というのは、大臣、御存じでしたか。

谷垣国務大臣 このアンケートにつきましては、私、拝見しましたのは、一応、昨年の暮れの税制改正作業が終わりましてから拝見したと記憶しております。

鷲尾委員 大臣、そこで私、またお伺いしたいんです。こういったアンケート結果を受けたときに、かなり数字に乖離がある、開きがあるというときに、これは乖離したものをそのままでいいというふうに思ったんですか。それとも、これはさらに追求して調査しなきゃいけないと思われましたか。どうですか。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 大分、税理士会のアンケートと違うなと思いましたが、これをどう評価するか、ちょっと執行当局としては税理士会がやっておられることですから言いにくいんですが、どうだと、うちの方のいろいろこういう五、六万というのはあるけれども、その推計の基礎というのは確実なのかということを事務当局に言いまして、いろいろ報告を受けて、まあそうかと私としては納得している次第であります。

鷲尾委員 私もぜひ納得したいんです。大臣、納得するその資料をお見せいただきたい。

 委員長、私は今大臣が納得したその資料をお見せいただくことを要求いたします。

小野委員長 これは理事会に諮らせていただきます。

鷲尾委員 続きまして、先ほど大臣の方で、国税庁の方で会社標本調査をした、それもまた統計の中に入っているというふうにおっしゃいました。

 そこで、国税庁の方にお聞きしたいと思います。財務省の方から、今回の税制改正について、どういった標本調査を行うべきだ、どういった調査を行ってください、そういう依頼があったのかどうか、どういう内容だったのか教えていただきたい。

石井政府参考人 先生御承知のとおり、私ども税の執行当局でございまして、今回のこの制度の企画立案、いわゆる制度面での問題に関して、私どもとしてはこの作業に直接加わってはおりません。

鷲尾委員 国税庁の中には、当然、法人の方々、個人事業主の方々ともに申告したデータというのが残っているはずなんです。この残っているデータについて、国税庁さんに対して、要するに、きめ細かな指示をして、当然であれば、実質増税になる企業数の幅を調べるサンプルの調査なんですから、そこら辺をしっかりと指示していなかったんですか。

石井政府参考人 先生ぜひ御理解いただきたいんですが、財務省設置法によりまして、私どもは、課税の適正な公平を図る、要するに、税の執行を、与えられた仕組みのもとでいかに適正、公平な課税を図るかということをその任務としております。

 他方、税制制度の企画立案ということにつきましては、これは本省主税局の方でやっておりますので、そこら辺の役割というものが法令で定められておりますので、この件については、私どもが税制改正作業の一環として何かお手伝いをするというようなことは、一般的に制度をつくる際にしておらないわけでございます。

鷲尾委員 私、思いますのは、財務省さんの方でも税制改正するに当たって、より的確なデータをやはり求めなきゃいけないと思うんです。

 では、こういった形で五万社から六万社という推計が出ましたけれども、一方で、税理士会の方から大分違うデータが出てきているわけです。私の手元にありますデータでは、東京税理士会さんのアンケートに基づくデータでございますが、全国で影響を受ける法人数、これは実質的に影響を受ける法人数が六十二万社であるというデータが私のもとにあるわけです。

 この差異を埋めるために詳細な調査をしなきゃいけないというふうになったときに、財務省さんは政府統計というよりも、むしろ、税理士さんは何を見ているかといったら、個別のクライアントの状況をしっかりと見ているわけですから、では、国税庁さんの方に問い合わせるなりしてやるのが、的確なデータを行政としてコンセンサスを得るためにやるのが筋なんじゃないですか。

 大臣、そこら辺の御答弁をお願いします。

谷垣国務大臣 東京税理士会のアンケート、これについては、私もその背景の正確なデータはよく承知していない、結論を伺っただけでありますが。

 仮に、この推計が事実とすれば、欠損法人割合が約七割と高い我が国でございますけれども、同族会社で課税所得のある会社がそもそも約七十四万社。十五年分、これは法人全体の約三割でございますが、その約七十四万社にすぎない中で、そのほとんどが今般の措置の適用を受けるということになるわけですね。

 この推計結果については、今度の措置が同族会社すべてを対象とするものにはしておりません。実質的な一人会社という一部の同族会社だけを対象とするものでございますし、実質的な一人会社に該当する同族会社に対しても所得水準等に応じ広範な適用除外措置が設けられているわけでございますので、それを踏まえますと、率直に申し上げて、相当程度、信憑性が乏しいと私からは言いにくいんですが、どうだろうかという気が率直に言っていたします。

 いずれにせよ、そのアンケート調査が客観的なデータとなり得るためには、無作為抽出等々の統計としての偏りが生じないということが必要ではないかなというふうに考えております。

鷲尾委員 そこは、先ほど大臣が納得された資料を拝見して私も判断したいと思います。

 では、次にお伺いしたいことがございます。

 政府が、実際この税制改正に伴って、各団体にいろいろ恐らくコミュニケーションを図って、こういう改正があるけれども実際はどうだと、影響についていろいろヒアリングなりして、コミュニケーションをとっていると思うんですね。

 そのコンセンサスを、例えばどういう団体に対して行ったんですか。どういう時期に、どのようにして行ったんですか。そこを御答弁お願いします。

西野副大臣 お答えをいたします。

 経済産業省、とりわけ中小企業庁等におきましては、平素から適宜、経済界、とりわけ中小企業団体といいましても数多くございます。商工会議所があれば、商工会もございますれば、全国中小企業団体中央会というのもございますし、さらには全国商店街振興組合連合会等々の中小企業団体が数多くあるわけでございまして、適宜そういう団体と意見交換並びに情報交換をやっておる次第でございます。

 今先生の御指摘の点につきましても、昨年末の税制調査会で審議がされました。その結果を踏まえまして、中小企業、今申し上げた団体等に対して、実はそれ以外の税制も御案内のとおりあるわけでございますので、中小企業に対する税制全般の中から、その問題につきましても説明をいたし、また協議をいたした次第でございます。

鷲尾委員 先ほど、その中小企業庁さんが行った民間団体との意見交換、私も手元に資料がございます。ただ、経団連さんとか日商さんとか、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会とか、全国商店街振興組合連合会とかありますけれども、それだけでいいのかという話はあるわけです。当然ですけれども、税理士会の皆さんや、各地の法人会の皆さん、この人たちにも、やはりいろいろ調整していかなきゃいけない面はあったんじゃないかと思うんです。

 私、財務省の方に、どういう団体に対してそういうヒアリング等々、説明を行ったんですかという話をしましたら、中小企業庁さんが意見交換を行っている民間団体例として、こういうA4の紙一枚、これはちょっと皆さんにお配りしていないですけれども、それだけしかいただけなかったんです。果たしてこんなものでいいのかなと思ったんです。ですから、その点についても、重大な影響を及ぼすものなんですから、十分にコンセンサスが必要だというふうに私は考えております。

 それで、ちょっと資料でお配りしました新聞記事をごらんいただきたいんですけれども、この新聞記事の中に「同族企業の法人税増税」と、その左下の部分に「新会社法の施行に合わせ改正」という欄がございます。財務省の方のコメントとして載っているんですけれども、党関係者には十分説明をしていたと。そして、その最後の方に「税理士会は法人設立による節税策を長年PRしてきた手前、反対しているのではないか」というようなコメントが載っているんです。これについて大臣はどういうふうにお考えですか。

谷垣国務大臣 実は私も税理士登録をしておりまして、余り税の実務には詳しくないんですが、法人設立による節税策というようなものを私もいろいろ関心を持って読んだことがあるんですが、市販の書籍とかあるいはインターネット上のホームページを見ます限り、いろんな税理士の方が、こういう使い方がありますとPRしておられる例がかなりあるように私は思っております。

 ただ、あそこで財務省がこういうコメントをしたと言われますが、どうもああいうむくつけな表現で申し上げたわけではなかったと思います。

鷲尾委員 実際、記事にはなっているわけですし、私、税理士の方にもヒアリングしました。実際、節税策を第一義的にPRして法人成りを勧めるということはないですよ。やはり、法人になったら口座の開設がやりやすいとか取引、例えば財務書類の提出によって融資案件も容易にまとまるとか、そういったメリットがあってこその法人成りなわけですから、こういう一方的なことをやられては、これは至極迷惑な話でございまして。

 ですから、私が何を言いたいかといいますと、大臣も実際、大臣がどう思っているかは別として、ある税制改正を行うときに、こういった発言をして世間に、要するに、例えば税理士さんが悪者だというような暗示を与えるのは、私はこれは断固として許されるべきじゃないと思うんですよ。これは、ちまたで精いっぱい頑張っていらっしゃる税理士さんに対して大変失礼だと思うんですよ。

 実際、財務省の方から私がこの法案のヒアリングを受けたときも、税理士さんがこういうふうに営業するからきっと先生のところにも陳情が来たんですよというような言い方をされているんですよ。私、それはどうかと思うんです。特に、税制について微妙なコンセンサス、バランスをとりながらやらなきゃいけない大臣としては、官僚の皆さんの行動も十分監視しながらやっていってもらいたいという思いが一つ。

 私、財務省の皆さんというのは精いっぱいやっていただいているというふうに思っています。思っているんですけれども、やはり、一度決めたデータを、ばく進してそこに税制改正が進んでいくというわけではなくて、しっかりと地道に検証した中で税制改正、コンセンサスをとりながらやってもらいたい、そういうふうに考えております。

 それをちょっと一言申し述べさせていただきまして、私の質問を終わらせていただこうと思います。

 どうもありがとうございました。

小野委員長 以上で鷲尾君の質疑を終了いたします。

 続きまして、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 所得税法等の改正案の審議も、二日間にわたりまして、八時間目に入ってまいりました。まだまだ議論を尽くしていないというふうに思っておりまして、同僚委員がそれぞれ触れていただいたところからさらに漏れている観点等々を中心に私の方からは質問申し上げたいというふうに思います。

 まず、きょうの質疑の中で、大臣におかれましては、興味深いことを言っておられました。御党あるいは政府の税に対する基本スタンスでありますが、中立、公平、簡素、これはもう我々も大変理解しておりますが、加えてタックスミックスの話を四つの項目ということで言っておられました。資産課税でいくのか、消費でいくのか、所得でいくのか。新たに四つ目の観点が最近は加わったという理解でよろしいんでしょうか。

谷垣国務大臣 今のは、四つ目というのは法人ということでしょうか。今四つ目とおっしゃったのはどういうことでしょうか。

古本委員 改めて申し上げます。

 あるべき税制を、具体的な絵姿を見せずして所得税の定率減税を縮減、撤廃するということは約束違反ではないかということをるる我々は今指摘をしてきたわけであります。

 そして、そのあるべき税制の観点として、御党としてよく言っておられる三つの観点、公平、簡素、それから中立ですね、税制中立、これに加えまして、資産課税でいくのか、所得課税でいくのか、消費でいくのか、そのタックスミックスについても、税のあるべき姿を考える上での重要な観点であると四つ目の項目を新たにおっしゃったように受けとめましたので、新たに項目がふえたのですかというふうにお尋ねをいたしております。

谷垣国務大臣 今までも私は申し上げていたと思うんです。税を考えるときは、一つだけじゃなしに全体の構造をよく見ていく必要があるということは申し上げてきたつもりでございまして、むしろ、一般論的なことだと思いますが、重要なことだと思っております。

古本委員 それでは、大臣にお尋ねをいたしますが、あるべき税制、これは御党のマニフェストにも書いてありますし、税調にも書いてある。十九年度にはこのあるべき税制を示していくということでありますが、特にマニフェストにはこう書かれております。「十九年度を目途に、社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する。」これは御党のマニフェストです。

 今回、定率減税の縮減、撤廃の政府提案につきましては、あるべき税制が示されていない中で、この議論は余りにも場当たり的ではないかという指摘を申し上げているわけであります。

 その意味で、大臣にとってのあるべき税制、これを思い切ってお尋ねいたしますし、ぜひ答えていただきたい。今おっしゃったタックスミックスの中で、一般論としてももう既に私も申し上げておると今大臣はおっしゃった。どこに軸足を置くおつもりでしょうか、消費か所得か資産か。

谷垣国務大臣 来年度、今お読み上げになったところは、やはり年金であるとか、年金課税であるとかあるいは社会保障経費をよく見ていくというのが多分書いてあったんだろうと思います。そういう負担に対してどう対応していくかということになりますと、これはこれからの議論を詰めなければいけませんけれども、広く公平に負担していただくという意味で、消費税というものがやはり一つ大きな柱としてあることは間違いないだろうというふうに私は思っております。

 ただ、その消費税も、やはりそれぞれいろんな性質がありますから、それはやはり全体の中で消費税をやっていく場合の問題点は考えていかなきゃならないというふうに思っているわけであります。

古本委員 今回議論になっておりますのは所得税であります。したがいまして、所得税を増税するあるいは税の仕組みなり税率なりをいじるとなると、これすなわちサラリーマン増税だというふうに叫ばれちゃうと、あまたの人が大体今は給与所得者、サラリーマンなんで、これは所得税をいじったたびにサラリーマン増税のそしりを受けなきゃいけなくなっちゃう、こういった趣旨のことも午前中おっしゃっておられたように理解しておりますが。

 どうしてそういうことを言うかというと、根っこにあるのは所得の捕捉率の問題だと思うんですね。大臣は今、我が国における所得の捕捉率は、不公平な捕捉率にあるというふうに理解をなさっておられますか、それとも一点の曇りもない捕捉率になっているという理解でいらっしゃいますか。

谷垣国務大臣 一点の曇りもないか不公平かというお問いかけになりますとなかなか答えが難しゅうございますが、私は、それは捕捉率の差というのは残念ながらないわけではないと思っております。そして、その捕捉率の差異をより埋めるべく努力をしていかなければならないのは当然のことだと思っております。

古本委員 所得税は、たしか大体平均で十四兆円ぐらい歳入があると思いますが、このうち、いわゆるサラリーマン、給与所得者が支えているのはどのぐらいありますか。

福田政府参考人 お答えを申し上げます。

 所得税が十五兆一千億でございます。そのうち、勤労性所得に係る所得税が十二・一兆、給与所得に係る源泉所得税収が八・六兆ということでございます。

古本委員 大臣、つまりは、所得税の専らは勤労性所得。さらに精査すれば、いわゆる給与所得者、つまりはサラリーマンが支えているということですね。したがって、サラリーマンの所得の捕捉率は一〇〇%ですよ、これはもうガラス張り。一方で、そうじゃない人々がいらっしゃる。

 この不公平感がある中で、所得税の問題、今回増税なさいますね。それは増税じゃないという理解を政府はなさっていますが、少なくとも、るる同僚委員が御指摘を申し上げたとおり、これは明らかにガラス張りの人々から増税になるわけです。わけても、年収のゾーンでいけばいわゆる中所得層。中所得層は貯蓄率は低いですよ。ですから、稼いだ分は、消費性向を見ましても、大体消費に回る、そういう人々を直撃する増税をする。

 いいですか。もともとガラス張り、そういう所得の大体が消費に回る消費性向の高い方々が直撃を受ける、そういう定率減税の縮減、撤廃をなさる。そういうことと引きかえに、あるべき税制を示すとおっしゃっているんです。それを示すから撤廃をするということを導入したときにお約束をなさっているわけですね。

 平成十九年度、税制改正を議論するにはもうあとわずかであります。そろそろ、台所を預かる大臣として、所得税を下げるから消費税で取らしてくれと言った方が話がすっきりしているんじゃないですか。

谷垣国務大臣 あるべき税制を示すから定率減税を廃止するというふうに申し上げた記憶はないんですが、要するに、抜本的改革というのが当時の法律にございますので、その文脈にのっとっていろいろ議論をさせていただきました。

 それで今、さらに委員は、所得税は減税するから消費税を上げてくれと言うべきだとおっしゃったんでしょうか。(古本委員「はい」と呼ぶ)ちょっとそこまで私の議論は進んでおりませんが、所得税にはやはり、今回定率減税を廃止させていただきますことによりまして所得税の基幹税としての役割を回復していくという私は大きな方向があると思っております。

古本委員 委員長のお許しをいただきまして資料を配付させていただきました。

 資料の一を少しごらんいただきたいと思うんですが、これは政府税調の平成十七年と平成十八年の資料でありますが、上の段が平成十七年の方であります。「個人所得課税の抜本的見直しまでの間」と書いてある。したがって、今回、これは平成十七年の話ですよ。それから平成十八年、かぎ括弧のところ、これは私が手で書き込んだんですが、「経済社会の構造変化への対応といった観点とは関わりなく、」云々かんぬんで、「この減税は見合いの財源なしに」、こう書いてある。

 裏返せば、経済社会の構造変化への対応といった観点は織り込んで議論を進めていかないかぬということでよろしいですか、大臣。

谷垣国務大臣 定率減税は、多分これは、ちょっと今、前後をよく読んでおりませんが、法人税や所得税の最高税率の減と対応させて言っているんだろうと思います。

 それで、そちらの所得税や法人税の最高税率を下げるという方向は全体の経済情勢の変化に伴ってやるけれども、定率減税は必ずしもそういったことの対応ではなくて、当時の厳しい経済情勢を少しでも支えようという観点だったということを言っているんだと思います。よろしいですか。

古本委員 いや、大臣、それはしんどいと思いますよ。これは少なくとも、個人所得課税の抜本的見直しまでの間に緊急避難的な特例措置として導入された、見合い財源なしに。つまりは、個人所得課税の抜本的見直しはやるということなんじゃないですか。それで、そういった対策は、少なくとも今回の税制改正には織り込まれていない。それはもう冷厳なる事実としていいでしょう。

 次に、もう一年先の議論を見越して大臣におかれましてはお考えなのかということを少しお尋ねをしているわけであります。その際、あわせて確認をするわけですが、一点目はいいですね、まずそこを確認しましょうか。

谷垣国務大臣 今、私、ちょっと古本さんがおっしゃっていることがよく理解できないでいるんですが、古本さんは、この経済社会の構造変化の対応といった観点とはかかわりなくと書いてあるのを、これからやれという意味だというふうにおとりになっているわけですね、ここの文章を。(古本委員「今言ったのは上の方です、平成十七年、個人所得課税の抜本的見直しまでの間」と呼ぶ)

 それは、個人所得課税の抜本的見直しの間というのは、法律にもそのように規定されておりまして、それで午前中からの御議論でも答弁をいたしましたけれども、所得税の抜本的な見直しというような場合に、何が抜本的見直しかということに結局なってくるんだろうと思います。

 それで、ことしは、御承知のように、ことしというか平成十八年度では、税率構造の変化をお願いしているわけでございますけれども、これは三位一体との関係でやっているわけですが、これは税率構造というものをかなり今までと見ますと大きく変化させたものでありまして、やはりこれは抜本的な改革と言い得るものではないかと私は思っているわけです。

古本委員 いや、それは、本当にこの国の未来を憂う谷垣さんであったならば、それは少し御見識が甘いのではないかと申し上げたいと思います。

 その心は、大臣はお子さんいらっしゃいますか。(谷垣国務大臣「おります」と呼ぶ)大臣にとってお子さんとは何ですか。

谷垣国務大臣 いや、なかなか、どうお答えしていいのか戸惑いながら立ったわけですが、私にとりまして非常に大事なものでございます。やはり、私が今まで六十年ぐらい生きてきたあかしの一つであろうと思っております。

古本委員 資料の二の一をごらんいただきたいと思います。

 谷垣大臣は、さすが自民党総裁をねらうだけのことはあると思います、総理とは申し上げません、だけのことはある。この国民生活白書、まさにこの平均のイメージですね、「生きがい・喜び・希望」「無償の愛を捧げる対象」。一方、よく言われる老後の面倒を見てほしいなどと子供に思っている人は少ないんですね。

 ところが、徴税当局者の大臣、どうですか。子供は国の宝とよく言いますが、その心は課税当局者としてどうですか。将来の担ぎ手であるんじゃないですか。こんな左端に書いているきれいごとで済まないですよ、恐らく。

 改めて聞きます。大臣にとって子供というのは何ですか。

谷垣国務大臣 いや、先ほどお答えしたとおりでございますので、そう幾つも自分の子供が何かという答えがあるわけではございません。

 ただ、家庭の父親として子供がどうかということを離れて考えますと、やはり、今ちょっとおっしゃったことと関係があるかどうかわかりませんけれども、我が国のこれからを担ってくれる世代であるということは間違いないわけでございます。

古本委員 資料の二の二もごらんいただきたいと思うんですね。同じく国民生活白書です、「子育ての手助けを頼る相手」。これは大臣の個人的なことはもう聞きませんが、自分の親なり配偶者の親を頼っているんですね。一方で、公的な支援や有料の子育てサービス、これを求めておられる方も幾ばくかはいらっしゃる。ただ、専らは、やはり困ったときの親なんですよ。

 一方、どうですか、今日本の社会の同居率、極めて低い。親が最期をみとってもらう、これは病院の看護師さんですよ。明治から昭和、平成と変遷してくる中で、自分のうちの畳で亡くなる方はもう二割を切っている、二割前後まで来ている。そういう世の中の仕掛けが変わってきているんです。でも、同居はできない、今日本の社会はそうなっている。

 まだある。一方、結婚するつもりのない人は一割にも満たないんです。みんな結婚はしたいんです。右端に書いてありますが、約九割を超える方が男女ともに結婚願望はある。

 いいですか、大臣、まだ続きますよ。めくっていただいて、二の三、結婚のよくない点、これは何か。大臣、結婚されてよかったと思われていますか、この際ですから。

谷垣国務大臣 よかったと思っております。家内には感謝しております。(古本委員「どういうところが」と呼ぶ)どういうところかとお問いかけ、なかなか一言では答えにくいですけれども、やはり、人間一人で生きていくのはなかなかつらいことがございますし、やはり一番いいパートナーだと思っております。

古本委員 大臣も本当にこのイメージどおりなんです。

 一方で、結婚のよくない点、デメリットは何かというと、これは今の世代ですよ、若年独身男性とか、いろいろ出ていますが、自分の自由になる時間が少なくなるとか、自分の自由になるお金が少なくなるとか、大臣のように思っておられる方が少なくなってきているんですよ。

 したがって、いいですか、結婚はしたいけれども、しない。晩婚化。それから、子供に対しては、いろいろな、まさに自分の思いを託したいといいますか、そういうのがあるわけですが、でも、出生率は減っている。

 さらにあるんです。結婚している友人は幸せそうに思うか、これは幸せそうに思っているんですね。特に三十から三十四歳、七割を超えています。

 なぜ結婚しないか、なぜ子供を産まないか、そのことに対して、税は恐らく国の仕組みを変えるだけの影響力があると思いますよ。そこまで見込んだビジョンを織り込んで、あるべき税制というのを考えていくべきじゃないのかという指摘を今申し上げているわけであります。

 さらに、担ぎ手かどうかと聞かれると、大臣は、改めて聞きますよ。谷垣家のお子様はおいておきまして、一般的に言う、我が国の今後、国の宝だという子供というのは、社会保険料も含め、税も含め、担税者としての担ぎ手であるという理解でよろしいですか。

谷垣国務大臣 やはり、国家あるいは国の制度というものは継続していかなければなりませんから、それを担ってもらうのは次世代の市民、国民である子供たちであるというふうに思います。

古本委員 二の四の資料をごらんいただきたいと思います。これはおもしろいことが書いてあるんですね。子供のいる世帯の子供数ごとの割合、早い話が、子供のいる世帯は減っているんです。一九八〇年代、子供のいる世帯というのは千七百万世帯あったのが、今や、子供のいる世帯は千二百万世帯、これだけ減っています。

 一方で、子供のいる世帯で見れば、二人、三人いるんですよ。いいですか、つまりは、子供を持つか持たないかという分水嶺があるだけで、持った以上は、二人、三人いるんです。

 夫婦の完結出生児数、こういう言葉を大臣も御存じだと思いますが、結婚の持続期間十五年から十九年を経たカップルにあっては、実は、何と三十年前の一九七二年、出生児数二・二〇人だったのが、むしろ、二〇〇二年調査で二・二三人にふえているんです。

 だから、今、国を挙げてやるべきは、結婚しよう運動じゃないんですかというようなビジョンを持って税を考えていますかということを尋ねているんです。

 きょうは、先ごろジュニアが誕生された後藤田政務官にもお越しをいただいておりますが、改めて、景気認識も含めて、政務官にとってお子様とは何ですか。あえて、税の負担者でありますか。そうやって割り切って国の未来を議論しなきゃいけない局面まで来ているんじゃないですか。お尋ねいたします。

後藤田大臣政務官 お答えいたします。

 私に質問が来るとは及びもしませんでしたが、私も子供を持つ親としまして、私はこれからの将来の国家の担い手であるという思いで子供を今育てているところでございますので、そういう意味では、子供にこれ以上借金を残さないように、しっかりと景気回復をしていき、そして税収をふやしていき、しっかりとした国家を築いていきたいという思いがございます。

 その中で、委員から御質問がございました、内閣府に対して、景気の現状認識はどうだということでございますけれども、これはさまざまな客観指標を勘案いたしまして、我々は景気は回復をしているという認識をいたしております。

 この背景には、委員も御承知のとおり、今まで緩やかな景気回復が続いてきましたけれども、設備投資、または消費につきましては、国内民間需要が引き続き堅調に推移する中、輸出、生産の増勢傾向が確認されて、景気回復の足取りがしっかりしたものになっているということが挙げられております。

 また、先行きにつきましても、原油価格の動向が内外経済に与える影響等に留意する必要があるものの、企業部門の好調さが家計部門に波及しており、国内民間需要に支えられ、年率二%程度の景気回復が続くものと見込まれている、そういう認識でございます。

古本委員 景気回復の認識はいろいろな指標の受けとめによって差があると思いますが、少なくとも、冷厳なる事実として、依然として年金未納の問題が解決されていないと思うんですね。

 それで、年金未納の人のさまざまな事情がありまして、これは社会保険庁がしっかり調べてくれていまして、資料の七、八あたりを少しごらんいただきたいと思うんですが、今、政務官は景気は底がたい、上向いているとおっしゃった。一方で、年金未納の世帯所得階級別未納理由というのを見てみますと、如実に出ています。七ページの真ん中のグラフです。保険料が高くて経済的に支払うのが困難だという方が、年収二百万から五百万、あるいは二百万未満の方はもう七割近い。つまりは、その下もありますよ、もう少し生活にゆとりができたならば保険料を納めたい、これは未納に対する、述懐なさっているわけです、申しわけない、払いたくても払えないんだと。それが二百万から五百万のゾーンなんですよ。

 この人たちを直撃する増税になる、あるいは、裏返せばこの人たちの税を今後どうしていこうかということを、絵姿を描かないと、大臣、年金未納の問題の自律的回復は絶対できませんよ。

 いわゆる中低所得層における年金未納の理由の、経済的なことを理由に挙げた、よく言われる、制度が信用できないから未納だ、あれは、その理由はずっと後です。先立つものがないから払えないんです。

 大臣の御所見を求めます。この中低所得層に未納の問題が如実にあらわれている、こういう現状を見た上で、こういう所得層に対するどういう課税があるべきか。つまりは、今回、定率減税の縮減、撤廃の影響をここは受けます。そのことについて御所見を求めます。

竹本副大臣 定率減税で、サラリーマン層について相当の負担になっているんだという御主張だと思いますけれども、この定率減税は、平成十一年に景気対策として導入されたものでございますけれども、経済状況が改善されたということでもとに戻すものであります。

 そこで、どの程度の影響を及ぼすかということについての見方でございますが、課税最低限以下の収入しかなく所得税を納めていないような非納税者には税負担が当然生じません。

 それから、課税最低限以上の収入を有する納税者について負担増が生ずるといたしましても、給与収入五百万円までのいわゆる中所得者層においては、負担額は年間で二万円弱にとどまるものでございます。その規模はそれほど大きくないと考えられるわけでありまして、必ずしもこれが大変な増税になっているというふうには考えていないわけであります。

古本委員 そんなことはわかっているんですよ。問題は、年金未納の問題を自律的に回復させないと、子は宝である、これは将来の社会保険料の稼ぎ手である、あるいは担税者になってもらいたいと言っている一方で、その人々が自律的に払おうじゃないかというふうな経済環境なり、収入が入ってこないと話にならない。

 その意味で、資料の九を少しごらんいただきたいと思うんですね。これは平成十七年度予算・税制に係る合意ということで、当時の与謝野政調会長と公明政調会長井上さんが合意をした文書であります。

 いいですか。(1)番、(2)番、これはいいですよ、こういったことに充てるということで。特別障害者給付金云々に充てる、これはもちろん大事なことでありますが、大どころは二番なんですよ、二番。

 初年度増収額から、今申し上げたようなものを除いた金額を現行法による基礎年金国庫負担額に加算するものとする、一体幾ら入っているんですか。

 定率減税の縮減、撤廃によって約三兆円の税収増になるはずですよ。この三兆円の税収増になったうち、平成十七年分と、今年一月からもう増税が始まりました。それから、来年の一月から始まることを今議論しているんですが、一体幾ら入れる算段ですか。お答え願います。

 主税局長でいいですよ。事務局でいいですよ。数字だけ答えてください。

松元政府参考人 お答えいたします。

 十七年度と十八年度で二千二百億円でございます。

古本委員 今、委員長、これは私、確かに細かな通告をしていませんでした。ただ、愕然とするのは、定率減税の縮減、撤廃で、いわゆるサラリーマンねらい撃ちですよ。だって、所得の捕捉率一〇〇%はサラリーマンなんですから。

 その人々から三兆円に上る増税をしようとしていて、そのうち、気づいたらひもつき財源で二千億を年金未納分の穴埋めに使うということを決めているんですよ。その金額をお尋ねしてすっと出てこないというのは、いかにも甘く見ているとしか言いようがないです。

 この二千億を穴埋めに使うということは、結果として、未納、未加入の人は、何か知らないけれども、未納、未加入でもだれかがしりをぬぐってくれるんだ、結局そういうことになっちゃうんです。自律的回復をさせるためにはどういう税制を組んでいくか、そのことをぜひ考えなきゃいけない。その意味で、日本の家族構成のイメージがぐっと変わってきているんです。それは冒頭申し上げたとおり。

 その意味で、再度谷垣大臣にお尋ねします。所得の捕捉率は、これ以上上がりますか、上がりませんか。上げるように努力をなさっているのは重々承知しています。でも、一方で国税の職員は減っていますよ。実際に調査できている件数もどんどん減っている。そういう中で、本当に捕捉率を上げられますか。

谷垣国務大臣 大変に定員も厳しいのは、私ども非常にきつく思っていることは事実でございますが、国家公務員の定員等々も、やはり切り込んでいくところはいかなきゃならないと思っております。その中で、最大限努力をして、捕捉率を上げるような努力はしなければいけないと思っております。

古本委員 資料の五をごらんいただきたいと思うんですね。これは収入別の世帯の構成分布です。

 これで見れば大体わかるんですが、年収が六百万以下あるいは八百万以下と言った方がいいでしょうか、この辺のゾーンの方が約六割ですよ。それで、大体年収が三百万から五百万ぐらいの方というのは約四割です。つまり、日本のサラリーマンの典型的な収入ゾーンですよ。そして一方で、一千万を超える、あるいは一千五百万を超えるなんという方は数%です。所得の世帯収入ということで、これは多分事実として理解いただけると思うんですが、問題は次なんです。

 六ページ、資料の六なんですが、これは給与の階級別、大体幾らもらっているかという給与階級別に、給与所得者数と税額をちょっとチャートに落としてみました。これはおもしろい結果が出ているんです。分布が多いところが必ずしも税収は上がっていませんね。これは当然です、低所得層は税が低いわけでありますから。一方、一千万を超えるという世帯においては、大体二兆円ぐらい負担しているんじゃないですかね。

 つまり、どの所得層をねらって、あえて言います、ねらって税を取っていこうとなさっているのか。あるいは、どういうファミリーの、お子さんがいる家庭がいいのか、夫婦共働きがいいのか、どういう世帯から課税をしていこうか。これは事実があって、その後の後追いに税制を決めていくのがいいのか。あるいは、我が国として、恐らく二〇二五年には七十五歳以上のお年寄りが四人に一人になる時代が来るんですよ。あるいは出生率もどんどん下がっているかもしれない、完結出生児数でいけば数字は下がりませんが。

 そういう前提をにらんだときに、あるべき税制は、約束したわけじゃありませんとか、定率減税縮減、撤廃を議論するときのバーターで別に約束したわけじゃありませんと、大臣、もうそうやって言っている場合じゃないですよ。

 具体的にどのゾーンからどうやって取っていくという、後追いじゃなくて、我が国をどういう国にしたいから、もっと言えば、人口一億人でいいか、これがジャストサイズなのか、今の一億二千七百万人を何があっても割っちゃいけないのか、そろそろ徴税責任者として絵姿を持った方がいいですよ。そうじゃないと、総裁選挙を戦えませんよ。絶対戦えない。逆に、その絵姿をびしっとかけたならば、谷垣総裁間違いなしですよ。総裁ですよ、言っておきますけれども総裁。

 そういう意味で、そろそろどういう絵姿が、我が国を導きたい、人口、家族構成、これは大きな要件になりますね。御所見を求めます。御決意を求めます。

谷垣国務大臣 古本さんに総裁選の御心配までいただいて恐縮に存じておりますが、確かに、きょうずっと資料を示して御議論になりましたように、家族のあり方とか、いろいろな意識が変わってきておりますから、それに対応した税を考えていかなければならないことは私はもちろんだろうというふうに思います。その意味で、委員の問題提起はよくわかりますし、私どももそれに向けた精進が必要だろうと思っております。

 他方、先ほど、抜本的な改革というのに、これをしなければだめだろうというお心も含めて、きょうの御議論だったと思うんですが、他方で、やはりいわゆる地方分権をどう進めていくかという三位一体の方の税源移譲等々も、これは別な意味で重要な議論だということもございますので、ことしはそれをやらせていただいたということでございます。

古本委員 大臣、とはいえ、平成十九年度にそれを示そうと思ったら、概算は始まる、もうことしの夏には、えらい先の話を申し上げますが、あっという間に来ますよ。

 つまり、このタイミングでそういったことを申し上げたときに、例えば、私は人口一億人でいいと思っているとか、あるいは、結婚はやはりした方がいいと思っているとか、そして、結婚をするように、したくなるような税制をつくろうと思っているとか、税が国をつくりますよ。そういうことをお尋ねしたかったんです。

 なかなかそう軽々にはお答えになれないと思いますが、次回への宿題としてとっておきます。これは絶対に答えていただきたい。日本の国の台所の台所役がどうやって取ろうとしているかということは、もう国の形をつくるんですよ、実は。

 もうあえてこれ以上申し上げませんが、最後にぜひ触れておきたいことがあります。公示制度の廃止の問題であります。

 いわゆる長者番付の話でありますが、これはいかにも、議論の経過、税調の経過等々を見ていますと、かつては脱税の牽制機能ということであったんだけれども、近年は、勧誘とか寄附の依頼とか等々の理由から、プライバシー保護の観点から廃止をするということに至っておるようでありますが、これを本当にやめてしまって、日本の職種、具体的に言えば、どういう職業の人がどういう今所得階層にあるのかということを、それさえもわからなくなってあるべき税制を設計できますか。御所見を求めます。

竹本副大臣 先生おっしゃったように、この公示制度が廃止された理由は、おっしゃったような、嫌がらせとかあるいはもろもろの理由がありまして、政府税調答申でもそのことは指摘されておるわけであります。

 それで公示制度を廃止することにしたわけでありますが、ならば、何もわからない社会になるんじゃないかということでございますけれども、国税庁の統計年報書の中には、所得種類別人員、所得金額の業種別内訳といったデータが毎年掲載されておりまして、これらを活用することで一定の目的は達成されるのではないかというふうに思っております。

古本委員 この税調の資料を興味深く拝読しました。こんな議論がされているんですよね。お金持ちの御老人夫婦の連れ添いが亡くなって茫然自失のところに寄附金ねだりが来る非常に気の毒な例がある。これはまさに、独居老人が、あるいは二人の老人が大変な資産を持って人生の最期を迎えているという、そのことの方が問題なんじゃないですか。

 つまりは、先ほど来申し上げているように、この国の形をどうしたいかということなんです。一方で、この独居老人が、二人でお子さんと別居して過ごしておられたお年寄りが、一生において、例えばどういう生きざまでどういう税金を納めてきて、ある意味で国税に貢献したか。

 要するに、税を払いたくなるようなプレミアムというのは今ないわけです、ないんですよ。そんな中でこうやって長者番付に出るというのも、ある意味での一つのプレミアムであったという要素もこれは否定はできないと思うんですね。

 つまり、これは廃止するのはいいんですけれども、例えばアメリカやイギリスのように密告制度を、第三者通告制度をつくれとまでは申しません。しかしながら、何がしかのプレミアムがないと、ただでさえ所得の捕捉率がグレーな職種が多々ある中で、これはあえて申し上げません、国税当局がもう把握されている、そういう中で納めようという気にはなかなかなりませんね。

 例えば、例えばですよ、大臣、大変税金を納めておられる独居老人がいたならば、何かシルバーマークで三つ星か何かつけてあげて、映画を見に行ったって、並ばずにノンストップで入れるとか、例えば新幹線のグリーン券終身フリーパスとか、何かそういうプレミアムを考えたらどうですか。払いたいという気になる、それも含めて税のビジョンなんですよ。

 税を払うということに対するプレミアムについて大臣はどういうふうにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 今、公示制度の廃止がそういうところまでつながってくるのではないかという御議論でございました。

 昔は多額納税者というのは特別な権利を持って、それは相当なインセンティブであった。お国のために税を納めているというのが誇りであった。投票権も持っていたということがあったと思います。

 なかなか現在は、公平性ということを考えますと、そういう制度は簡単にはとりにくいことがございますし、また、ああいう公示制度にしましても、プライバシー保護の関係と、それからできるだけいろいろな場合には公表された資料があった方がいいというのとどこで調和をとればいいかというのはなかなか難しゅうございます。

 ただ、私どもとしては、やはり税を納めてよかったと言っていただけるような仕組みはつくっていかなきゃならないわけでございまして、それが今のような映画か新幹線にすぐなるかどうかはちょっとまだお約束はできませんが、何かやはり税を納めてよかったと思っていただけるような仕組みということは我々もいろいろ知恵を絞っていきたいと思っております。

古本委員 かつて日本では、お年寄りというのは、最期、孫子に囲まれて、みとられて一生を終えた。そして、今や病院のベッドで亡くなる人が大方になった。一方で、若い人は独立して、結婚する人も晩婚化が進んで、未婚率が非常に高くなっている。一方で、結婚すれば子供はもうけておられるという数字はむしろふえているぐらい。

 こういう前提をいろいろ考えますと、一刻も早く、この国の形をこうしたいんだということをきちっと出していただいて、その上で税金はこうあるべきだ、こういう議論になることを切に願いまして、質問を終わりたいと思います。

 いずれにしましても、今回の定率減税の縮減、撤廃につきましては、今申し上げたようなさまざまな課題を残しておりますので、なかなか賛成しかねるということを強く申し上げて、終わりたいと思います。

 以上であります。

小野委員長 以上で古本君の質疑を終了いたします。

 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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