衆議院

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第8号 平成18年3月15日(水曜日)

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平成十八年三月十五日(水曜日)

    午後五時十分開議

 出席委員

   委員長 小野 晋也君

   理事 江崎洋一郎君 理事 七条  明君

   理事 宮下 一郎君 理事 山本 明彦君

   理事 渡辺 喜美君 理事 小沢 鋭仁君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤 達也君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大野 功統君

      河井 克行君    木原  稔君

      鈴木 俊一君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    永岡 桂子君

      西村 明宏君    萩山 教嚴君

      広津 素子君    藤野真紀子君

      松本 洋平君    矢野 隆司君

      北神 圭朗君    田村 謙治君

      長安  豊君    野田 佳彦君

      平岡 秀夫君    福田 昭夫君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      鷲尾英一郎君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   財務副大臣        竹本 直一君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   政府参考人

   (国税庁次長)      石井 道遠君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 岡本 佳郎君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     西村 明宏君

  土井 真樹君     矢野 隆司君

  西田  猛君     永岡 桂子君

  鈴木 克昌君     福田 昭夫君

  平岡 秀夫君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     西田  猛君

  西村 明宏君     佐藤ゆかり君

  矢野 隆司君     土井 真樹君

  北神 圭朗君     平岡 秀夫君

  福田 昭夫君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

三月十三日

 大衆増税反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第六八九号)

 大増税反対に関する請願(北橋健治君紹介)(第七四二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八三五号)

 同(石井郁子君紹介)(第八三六号)

 同(笠井亮君紹介)(第八三七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八三八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第八四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八四一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八四二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八四三号)

 大増税に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八二六号)

 同(石井郁子君紹介)(第八二七号)

 同(笠井亮君紹介)(第八二八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八二九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第八三一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八三三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)


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     ――――◇―――――

小野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長福田進君、国税庁次長石井道遠君、国税庁長官官房審議官岡本佳郎君、総務省行政管理局長藤井昭夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 久々の質問に入らせていただいたと思っておりますが、きょう、今議題になっております酒類総合研究所、こういうパンフレットをいただきましたが、きれいなパンフレットで、中を読んでみましてもいろいろなことを書いてあった。特に、この法の第三条の目的ということを書いてありまして、酒税の適正かつ公平な賦課の実現を図ること、あるいは二つ目に、酒類業の健全な発達を図ること、こういうような目的が書かれております。

 実は、私、いろいろな意味で、今の酒類総研の前、国税庁醸造試験所というのがたしか東京の滝野川にありました。ここへは、私、卒業論文を書いたりして、何度も何度も通わせていただいた関係があったり、その後、独立行政法人として広島に移りましたけれども、これもやはり思い入れがあったりして、いろいろなエピソードがあったり、お世話になった関係もあります。

 よく存じ上げている一人でもありますけれども、今言う目的の二つ、この目的の二つが本当の意味でこれから運用されるのだろうか、あるいは運用をされていく上に障害がないだろうかということを検証してみたいと思っておるわけであります。

 それでは、まず、時間の関係もありますから、簡単明瞭に御答弁を賜ればと思っておりますが、先ほど言いました、この酒類総研法の三条の目的の中に書いてあることと同じようなことが財務省の設置法の中にも書いてあります。適正かつ公平な賦課をする、及びその徴収の実現、この意味。もう一つは、財務省の設置法の四条にも、酒類業の発達あるいは改善とか、酒類業の健全な発達とかいう形の書き方をしておりますが、これというのは、いわゆる企業を育成するという立場で書いておられるのか、あるいは公平公正に賦課をするというのは、中立公平、公平性を確保するという観点で書いておられるのであろうと思いますが、確認のために、この二つの目的がどういう意味で書いてあるかということを確認しておきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お触れになりましたとおり、財務省設置法の十九条それから四条、それぞれにおきまして御指摘のようなことが書いてございます。十九条におきまして、特に国税庁の任務といたしまして、一つが内国税の適正かつ公平な賦課徴収、それからもう一つに酒類業の健全な発達という二つのことが任務として掲げてございます。国税庁が内国税の適正かつ公平な賦課を行うということは、これはもう財務省主税局が租税制度の企画立案を行うことを受けまして、その執行面を国税庁が担うという趣旨で書いてあるのであろうと思います。

 また、もう一つのこの酒類業の健全な発達という表現でございますが、これは、国税庁の任務は、酒類が、お酒が高率な租税を負担しているといういわゆる財政物資でございまして、酒類業の発達が酒の税金、酒税の保全とも関連性を非常に高く有するということから、酒類業を産業としてこれを所管しているということであろうかと思います。

 ただ、このように、両者の関係はもちろんございますけれども、具体的な行政の執行においては、それぞれ各個別の実体法に基づいてそれぞれの任務を実施しているわけでございまして、この内国税の賦課徴収につきましては、各個別の税法、酒に関しましては酒税法がございます、これに従いまして賦課徴収を行っております。

 また、酒類業の発達という任務達成のために、実体法としては、いわゆる酒類業組合法、あるいは清酒製造業等の特別措置法、あるいは今御審議いただいておりますこの独立法人酒類総研法等がございまして、そういう法令に基づいて、この酒類業の発達のためのさまざまな行政を行わせていただいているということであろうかと思っております。

七条委員 確認をさせていただいたのでありますが、いわゆるこの酒類総研、目的の中に入っている、二つのこれらの目的が、今財務省設置法の中にも書いてあるが、少し感覚が違う。あるいは、国税庁の中でも、企業を育成するという意味に解していいのかどうかと聞いても、今その答えはなかった。こういうようなことで、結果的には、これは酒税法という法律の中で、酒税を保全する、税を保全するという観点があっても、企業を育成していくまでやるかどうかということには、少し私は疑問があるのではないかと思えてならないところがあるわけであります。

 それを必死になってやってこられたのがこの今の酒類総研であり、企業を育てるということまでやってきたのが総研であったわけであります。ですから、この総研が今後民営化になるようなことがあったり、あるいは独立行政法人として一つのこれからの立場を担っていく場合において、私は、一つ、この法案の中では、何とか非公務員化を、非公務員型の独立行政法人であるのならば認めていかなければならない。この法案の賛成の立場にあるわけでありますけれども、これが将来民営化になったり、もう少し、まだまだ改革を進めていって、いわゆる酒類業を育てるということをもうやめてしまうようなことになってしまって、ただただ税の保全ということだけを考えるのなら、私は、賛成をしながら反対をしなければいけないと思っている一人であります。

 が、辛うじて、法案が、賛成の立場で申し上げたいと思いますが、さらに考えてみましたときに、この酒類総研、国税庁醸造試験所と言っていたときには、主に国酒である日本酒、清酒のいわゆる醸造技術だとか、それからしょうちゅうというようなものだとか、中小零細企業の酒類業者の技術の指導をしてきたのがこの試験所であったと思っております。

 そして、その意味において、まず聞きたいのは、今、清酒、日本酒が非常に消費が減ってきた。これが長期低落傾向にあるということは国税庁も認めておるんですけれども、その原因は何だとかつて質問をしていただいた方がありまして、調べてみますと、消費者の嗜好の変化ということが要因に挙げられているところだ、そして、一概に酒税負担によるものではない、こういうふうに答えておられるんですけれども、国税庁が本当に企業を育てるという意味があったならば、もう少し違う責任の中での言葉になっていたんじゃないかと私は思えてしようがないんですね。

 ですから、今もこの清酒の消費動向を考えたときに、今なおこの言葉のままの、原因は何だと言われたら何と答えるんでしょうか。聞いてみたい。

石井政府参考人 お答えいたします。

 酒類全体の課税数量、これは平成六年度まで右肩上がりに上がってまいりましたが、それ以降、ほぼ横ばいで推移をいたしておりまして、平成十四年度からは減少に転じております。特に、清酒につきましては、昭和四十八年度のピーク時に比べまして、現在、平成十五年度の数字で見ますと、四七%の水準にまで落ち込んでいることはもう事実でございます。

 この背景でございますけれども……(七条委員「原因だけでいいよ、原因だけで。もう短くして」と呼ぶ)はい。全体として、一つは高齢化社会が進んでいるということがあろうかと思います。そういう社会情勢の中で、洋風化など消費者の生活の変化、あるいは生活様式が多様化している、さらには、最近のデフレあるいは経済情勢等も影響しているのではないかと思います。なかなかさまざまな要因が絡んでいるんだろうというふうに思っております。

七条委員 酒税法という法律があると先ほど言いましたから、あえて酒税法の話もちょっとしなければならなくなりましたが、酒税法の第三十一条一項、これを読み上げてみてください。

岡本政府参考人 酒税法第三十一条一項でございます。

  国税庁長官、国税局長又は税務署長は、酒税の保全のため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、酒類製造者に対し、金額及び期間を指定し、酒税につき担保の提供を命ずることができる。この場合において、提供すべき担保がないとき、又は酒類製造者の申請があつたときは、担保の提供に代え、納税の担保として酒類の保存を命ずることができる。

以上でございます。

七条委員 この酒税法の三十一条一項というのは、具体的に皆さん方が知っておられるかどうかですけれども、要は、企業、いわゆる蔵元が赤字になった場合は、これ以上恐らくは酒税が納められない可能性が出てきた、滞納するおそれが出てきたために酒税の担保をとるわけであります。要は、何かの積立金をしろ、あるいはもっと担保を出して、もう滞納をすることがないようにしてくれという意味なんだと思います。

 がしかし、これはよくよく考えていただいたらわかるように、酒税というのは、本来は消費者が払うものであって、それを蔵元で立てかえるという意味であるわけでありますから、立てかえるということを前提に考えたならば、酒税というのを立てかえておられるいわゆる酒類業者を、ただ赤字になっただけで、滞納もしていないのに、滞納を一度もしたことのない業者に対してペナルティーを科する、いわゆる酒税担保をとるということになるわけでありますから、これというのは、まじめにこつこつわざわざ立てかえてくれている方に大きな損傷を与えているのが今の現状ではないかと思っています。

 もう一つ言うならば、まだあるわけでありまして、では今度は、酒税を立てかえたお酒屋さんが小売店や卸へ酒を売った。けれども、この小売店や卸がつぶれてしまったならば、代金が回収できない。回収できなくなったら、酒税を立てかえているんだけれども、これも還付する制度がない。育成するとかあるいは酒類業の発展をしたいという、企業をいわゆる育成するという観点からするならば、こういう問題というのは、本当に税が公平公正に取られているかどうか。

 一方に、私が考えたときに、消費税というのがあります。消費税も、滞納をしたならば、これは当然のことながらペナルティーが科せられます。がしかし、滞納する前にペナルティーが科せられることはありません。がしかし、消費税というのは、人のお金を預かって、そしてそれを滞納した場合なんです。こちらの今の酒税の方はというと、人のお金を立てかえ払いするのに、滞納する前に、酒税が納められない可能性が出ただけで酒税担保というペナルティーをとる。これが本当に税の世界で公平公正なのかというと私は疑問になるんですが、本当に公平公正な立て方でやっているのか、税の世界でこれが許されるのか、酒税の担保という物の考え方はこういう形でいいんだろうかと疑問になるんですが、いかがなんでしょうか。

竹本副大臣 ありがとうございます。

 この道の専門家である七条先生がおっしゃられたので非常に説得力があるわけでございますが、今御説明ありましたように、酒税を滞納した場合、これは担保の提供を要求するわけですが、滞納していなくても、一定規模を超える欠損、例えば三年間、資本等の額の二〇%を超える額の欠損を出している、こういう場合には担保の提供を求めることができる、こういうことになっておるわけであります。

 では、実際どの程度それが実行されているかということなんでございますけれども、考え方は、経営の基礎が薄弱であると認められる場合でありましても、酒類製造業に過重な負担を強いるようなことのないよう、真に担保提供が必要な場合に限定する、そういう態度で対処しておるわけであります。したがって、経営が急速に悪化するおそれがないと認める場合であって一定の要件に該当する場合においては担保提供は求められない、求めていない、こういうことでございます。

 例えば、三年間滞納は全然ない、それから酒税額が一千二百万円以下だとか、あるいは親会社がしっかりしている、こういった場合には担保の提供を要求いたしておりません。そんなことで、平成十四年ですかね、以前よりは担保提供を要求する件数が大体三分の一ぐらいまでに減ってきているわけであります。

 後半七条先生がおっしゃいました、消費税と比べてどうかという点でございますけれども、酒税法では、税務署長等が、酒税の保全のために必要があると認めるときには、酒類業者に対して、今申し上げました担保の提供を求めることができるんですけれども、こうした担保保全制度は、酒税のみならず、たばこ税、揮発油税など、特定の物品の消費に負担を求める個別間接税に共通する仕組みとなっておるわけでございます。

 そもそも間接税は、税相当額の価格への転嫁を通じまして消費者に負担を求めるものでありますけれども、特にこういった個別間接税は、他の物品より高い負担を求めておりまして、事業者の納税額も大きいことから、その徴税の確保をより確実にするために保全担保制度を設けているわけでございまして、いわゆる消費税とは少し性格が変わる、このように考えております。

七条委員 確かに、酒税と同じように担保をとるものが、今副大臣が言われたように、揮発油税、あるいはたばこ税、印紙税とか航空機燃料税というようなものがあります。しかしながら、これは中小企業ではない。揮発油税というのは、石油の元売会社のいわゆる大手である。たばこ税というのは、JTであったりあるいは輸入業者であったり。印紙税というのは、金融機関、銀行であったりする。航空機燃料税と言いましたら、今度は、航空機の、飛行機というのは、JALとか全日空というような大手だ。

 中小企業、零細企業が多いところに対してここまでやるかやらないかということになれば、私はやはり、企業を育てる側、いわゆる健全な発達というのが、いわゆる今までの形の中でこの酒類総研がやってきたことを本当に財務省や国税庁はもう一度基本的に考え直さなきゃならないんだろう、私にはそう思えてしようがないんですね。

 では、もう一つ言いましょう。

 今度、酒類製造免許の基準の緩和、要件の緩和があります。これも最近やられた。例えて言うならば、しょうちゅうの乙類、企業の合理化を図る場合に限って免許の付与をする。ただし、地域の特産品であったりとか、あるいは主原料とする、販売先が該当地域に限定するとかいうような形で、いわゆる免許の要件を緩和していただける。

 例えて言うならば、清酒業をやっておられる酒屋さんが、今、もう経営が苦しくなってきて、そして合理化をしたいというときに、しょうちゅうの免許を取りたいと思った場合、企業合理化のためであっても、赤字というために納税ができないかもわからないというために、またここでだめになる。

 要は、育ててやろうというのかやらないのかということになったときに、どうしてこういうような形で、酒税というための税の仕組みだからこれはしようがないよといえばそうですけれども、国税庁もあるいは財務省も、この酒類総研も、同じように、いわゆる「酒類業の健全な発達」と設置法の中にも書いてあるじゃないですか。このことを意識したならば、こういうことのところまで手厚くできる、税の仕組みの中でできないのなら、何かの違うところでできるということを考えるべきではないかと私は思えてならないんですが、大臣、どうでしょうか。

谷垣国務大臣 私も、昔、我が党の税調の中で、酒税に関するいろいろな議論の中で、どうも国税庁は税を取るということを考えていて、業界といいますか、酒類業の健全な発展ということには少し関心が乏しいんじゃないかというような議論をした記憶が自分でもあるわけでございます。

 先ほど国税庁の次長も答弁いたしましたように、酒類業も高齢化とか、あるいは生活様式の変化、嗜好の多様化、それから流通の変化というような中で、相当いろいろ苦労をしながらこのごろやってこられた。私たちもやはり酒類業の健全な発展というのには腰を入れて取り組まなければいけないと思っております。

 我が役所でやっておりますその考え方の基本は、量から質へということを一つの統一的な考え方にしまして、それから、生産から流通に至るまで、やはり各過程全体を見渡してやっていこう、こういう考えで取り組ませていただいているところでございます。

 特に清酒につきましては、地域ブランドの確立、御承知のように、フランス等々ではワイン呼称統制法というものをつくって地域のブランドというものを確立していますけれども、清酒でもそういうようなことができないか。それから、市販酒の品質調査、それから輸出支援、こういったことに取り組んでいこう、また、これからも力を入れなければいけないと思っております。

 それから、特に清酒製造業の構造改善を図るために、経営基盤強化計画を活用した経営改善を後押ししていかなければならないな、そういう形で製造業者、酒屋さんの経営の一層の合理化を促すというようなことが必要ではないか、こういうことを考えているわけです。

 最近の成果と言ってはなんでございますが、例えば、地域ブランドについては、石川県の白山市の清酒製造業者五社が白山菊酒というブランドを去年十二月にスタートさせたというようなこと、それから、輸出支援につきましては、この五年間、西暦二〇〇〇年と二〇〇五年を比較しますと、三割輸出数量が伸びている、こういう実績も上がってきているわけでございまして、清酒に対する消費者の関心もひところより高くなってきたのではないか。私自身も、ひところはワインばかり飲んでおりましたけれども、最近、何かかんをつけた酒がうまくなってきたなというような気がしておりまして、今後とも製造、流通、消費全体を見渡しながら、酒類業の健全な発展を図っていきたいと考えております。

七条委員 大臣がそこまで言われるわけでありますから、酒類業の健全な発展、これは酒類業の健全な発展と言わずに、企業を支援するという表現も入れて、いわゆる企業を育成するという観点をきちっと入れてやるかどうかが問題なので、そこのところだけが一つの大きなポイントだと思いますが、もう一遍、いかがですか。

谷垣国務大臣 確かにそうだと思います。

 先ほど七条委員が指摘されましたように、この酒類総合研究所、これは、やはり中小零細企業が多い中で、その中小零細企業がきちっと立派なお酒をつくっていけるような支援措置というのは相当やってきた機関だと私は思っております。現に、私の選挙区の酒造業でも、この研究所へ行って、泊まり込みでいろいろ講習を受けたというのが、何と言うんでしょうか、酒づくりとしての青春時代みたいな形で語る方が多いと思っております。

 ですから、今後ともここの機能というのはしっかり発揮させていかなければいけないと思っておりまして、さっき七条委員が指摘されましたように、非公務員化ということはやりますけれども、それが全部民営化というような話ではないのであって、きちっと日本の酒づくりというものをバックアップできるような体制、これはとっておく必要があるだろうと思っております。

七条委員 少しまたはぐらかしていただいたんですけれども、私は、企業を育成するということが、さっきも言うように、発達の中に入っているんだ、健全な発達という言葉の中に入っているんだ、これをお聞きしたかったわけであります。もう一遍。

谷垣国務大臣 当然、個々の酒造業がきちっと力をつけていきませんと、酒類業の健全な発達ということはないわけでございますから、中に含まれているということだろうと思います。

七条委員 それが一つの答えだろうと思っておりますし、ただ、税を取るだけではなくして、もし酒類業、今地ビールもありますし、ワインの小さな会社もあれば、しょうちゅうの小さい会社もありますけれども、すべての会社の所管というのは国税庁であり、国税局であり、そしてその一番身近なところが税務署なんです。そういうところが所管をしているがゆえに、今のような酒税というような形で矛盾が起こるようなことが起こってきたし、酒税担保などというような、昔の統制時代、米の統制時代に始まったようなことの遺物、いわゆる忘れ物が残っているんじゃないかと私は思えてならないんですね。

 ですから、これは本来、農林省の方の所管であった方がよかったとか、あるいは経産省の所管の方であったらもっと育成してくれたのにと今思っている酒屋さんは多いんじゃないかと思うんです。ですから、そのことを意識しながら、当然、国税当局が企業を育てるという一つの観点に立って、いわゆるこの酒類総研をうまく利用してやっていただかなきゃならない。

 この酒類総研の中で、今酒税法で書いてある原料が、清酒の場合、米、米こうじ、水と書いてある。たった米と米こうじ、水だけで、あれだけ吟醸香のようなフルーティーな香りが出る、それが今の酒の吟醸の香りだとするならば、これはもう酒類総研がやってきた技術の最たるもので、これを国酒として日本が世界に先駆けて売り出していくということをやるのが、先ほど来の大臣が言われた輸出の促進であるというふうに思います。

 もう一つ言うならば、イタリアだとかフランスだとか、あるいはドイツのようなところは、自分のところのお酒を、大臣、ワインが好きだと聞いておりますし、ワインを飲まないで日本酒を今飲んでいただいていると聞きましたけれども、ワインとかビールだとかいうところのいわゆるドイツ、フランス、イタリアというところは、国のお酒、自分のところのお酒の文化を非常にとうとんで、大事にしている。私自身が考えるならば、日本も国酒をもっと大事にして、物の考え方を整理しなければならない。そういう意味において、その決意というものをもう一度聞かせていただきたい。

谷垣国務大臣 決意と問われましたけれども、最近、どこへ行きましても、和食というものは大変な人気でございます。和食は健康的であるし、うまい、世界じゅうそういうことをおっしゃる方がたくさんある。ならば、酒もそれに一番合うのは日本酒で、日本酒はうまいということになるのが自然の勢いだろうと思います。

 私たちも、税をいただくことはもちろん考えなきゃいけませんが、それと同時に、清酒を世界へということも考えなきゃいけないと思っております。

七条委員 酒類総合研究所、これをわざわざ広島に移して、なぜ広島に移したかというと、広島にもやはりたくさんの酒類業者がある。そして、あそこなら、特に広島大学の中に発酵工学がある、いろいろな環境が整っているからという形で酒類総研が広島に移されたと私は思っています。

 当然のことながら、酒類総研のようなところは、いわゆる酒類業者と一体にならなければならないし、そこで検査をするものとか検定をするものだとかあるいは鑑定官というようなものが各国税局にあって、国税庁の中にも鑑定企画官というのがあった。

 そういうものが、今度これから本当に非公務員化をしてきたときに、いい人材がそろっていくのだろうか、いい人材を確保してやっていけるのかどうかということも、またこれは非常に将来不安を感じて、酒類業者はまたここにおいて本当に大丈夫かという不透明さを感じていくんだろうと思いますから、酒類総合研究所が今のままでいけるように、これを将来民営化をしないということの前提の中で、今の非公務員型のこの独立行政法人までは私は認めたいんですけれども、それ以上やらないという決意があればうれしいんですけれども、どうですか。

谷垣国務大臣 先ほども先に答弁をしてしまいましたけれども、私は、公務員を非公務員化にするということは今度やるわけですけれども、民営化というのは適当ではない、今の形できちっと成果を上げなければいけないと考えております。

七条委員 時間が参りましたから終わらせていただきますけれども、酒類総合研究所の趣旨の徹底やら、あるいはこの法律の三条にある、目的の三条の趣旨が徹底されて酒類業が発展されることをお願いをしたり祈念をして、私の質問にかえさせていただきます。

小野委員長 以上で七条君の質疑を終了いたします。

 続きまして、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 きょうは、独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。

 この酒類総研を含みます今回の四十七対象独立行政法人に対します非公務員化については、大きな疑問を抱かざるを得ません。

 独立行政法人の職員を非公務員化する、それ自体は私は決して悪いことだとは思っておりません。明確な効果、つまり公務員の身分を外すことによって各独法の運営費交付金の大幅な節減につながることがはっきりしているのであるならば、私は大いに賛成すべきことだと思っています。

 ただ、このたびのこの独法見直し、非公務員化の流れを整理いたしますと、平成十六年十二月の二十四日閣議決定をされました今後の行政改革の方針において、非公務員化が明確に打ち出されました。中期目標期間の終了時において、組織、業務全般について極力整理縮小する方向で見直す、そして、肝心なところですが、特定独立行政法人について、その業務を国家公務員の身分を有しない者が担う場合に生じる問題を具体的にかつ明確に説明できない場合は、独立行政法人、すなわち非公務員化、独立行政法人への移行を進めると。特に、平成十七年度末に中期目標が終了する独法のうちの三十二法人、まさにこの酒類総研がそうですけれども、研究開発・教育関係法人、この役職員の身分については非公務員化が決定をされています。官民交流促進の観点から、研究開発・教育関係の法人は一律非公務員化だということになりました。

 追認、追加される形で、平成十七年の十月の二十八日、独立行政法人に関する有識者会議、同じような言葉が使われていますけれども、独立行政法人の職員について、その業務を国家公務員の身分を有しない者が担う場合の具体的かつ明確な問題を説明できない場合は非公務員化だと。ここでは、研究開発・教育関係法人だけでなく、公権力の行使を伴う業務がない法人も、そして業務があっても、非公務員化による問題点を具体的かつ明確に説明できない限り非公務員化だということになりました。

 まさにこの方向づけに沿って、今回、一部を除く対象四十七法人の非公務員化が行われることになったわけです。

 随分と荒っぽい話だと私は思います。非公務員化で生じる問題を具体的かつ明確に説明できない場合は非公務員化だというのは、まさに有無を言わせない、とにかく非公務員化だということに等しい話ではないかと思います。

 申し上げたいことは、本来、この独法の見直し、改革の目的の第一は何だったのか。今の極めて厳しい財政状況の中で、どれだけ使う税金を節減できるかにあったはずです。

 各独法が行う事業にどれだけの公益性があるのか、どれだけの必要があるのか、必要が仮に薄いならば、申しわけないけれども廃止縮小させていただく、あるいは、可能なだけ効率化をさせていただく、運営費交付金、税金を節減させていただく、それが行われなければならない一番大事な見直しだったはずです。

 それが、こうした一番大事な観点がむしろ抜け落ちて、職員の身分をどうするか、こういう話に大きな焦点が当てられて、それも、まるで十把一からげのように非公務員化だと。一つ一つの独立行政法人について、そのあり方が議論をされて、非公務員化が適している、そう決められたのではないというのが、まさに今回のこの見直しの姿だと思っております。

 そこで、総務省、きょう行政管理局長に来ていただいておりますけれども、四十七対象独立行政法人、この一律の非公務員化につきまして、その職員を非公務員化するに至ったまさに具体的かつ明確な理由を説明していただきたい。そして、非公務員化することによって得られたメリットは何なのか、何がどう変わって、どういう有効性があったのか。一番明快、明確な有効性は、使う税金がどれだけ節減できたのか、まさにそのことを踏まえて、具体的かつ明確な理由を説明していただきたい。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 まず、非公務員化する理由についてでございます。

 これはやはり、そもそも論を御説明しなければいけないのかと思っておりますが、いわゆる独立行政法人というものは、非常に、公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務事業を実施する法人ではありますが、国とは別の法人格を有する法人でございまして、したがいまして、本来的に役職員の身分はむしろ非公務員化とするということが基本であるというふうに考えているところでございます。

 独立行政法人通則法では公務員型の法人も認めているわけでありまして、その要件については先生今御指摘あったところでございますが、また、別途、中期目標期間ごとに独立行政法人の事務事業のあり方を含めて見直していただくこととなっているわけですが、その際、改めて、現時点において果たして公務員型の独立行政法人にする必要があるかどうかということを各法人ごとに見直していただいたということでございます。その見直しに当たっては、政府統一の基準として、これも先生御指摘のような基準を閣議決定してやらさせていただいているところでございます。

 したがいまして、むしろ、具体的、明確な説明ができない場合というのは、なぜこういう使い方をしているかというと、本来というか、原則が非公務員型であって、特段の事情がある場合が公務員型、そういう制度設計になっておりまして、改めて現時点において、本当に公務員型にする必要があるかどうかということを見直していただいた結果だというふうに理解しておるところでございます。

 それから、非公務員化するメリットについてお尋ねがございました。

 これは、恐縮でございますが、非公務員型にすることが直接的に節減効果があるというふうには私どもも考えておりません。むしろ、非公務員型にするということは、本来の独立行政法人、これは、非常に自律的な経営ができるようにするというような趣旨で設けられているわけですが、そういう経営面での自律性、運営の弾力性、そういったものをより一層発揮していただくために行う改革であるということでございます。

 したがいまして、間接的に、やはりそういう経営、運営が弾力的、自律的になされることによって節減効果があるということであれば、それは非常に私どもも喜ばしいこととは思っておりますが、それは直接の目的ではないということでございます。

 特に、いろいろ、法人の経営をする場合は、人事管理というものが弾力的に運営されるということは非常に自律的経営に資する話でございますが、例えば、非公務員化すれば、国家公務員法による厳格な規制と申しますか、そういったものがなくなるわけでございますので、民間企業並みの柔軟な任用、勤務形態の導入とか、あるいは民間との人事交流、こういったものが円滑にできるということで、大いに本来の独立行政法人としての機能を発揮していただける、そういう趣旨の改革であるということを御理解いただきたいと思います。

三谷委員 全く明確かつ具体的な説明になっていないと思います。

 先ほどのお話の中で、メリットとしては、直接節減効果に結びつくとは初めから思っていない、そういうお話がございました。これは全く本末転倒な話じゃないかと私は思います。なぜこの話に、どこをどう読んでも、先ほど申し上げたように、網をかけて、一部は確かに違いますよ、網をかけて一律に非公務員化だ、こういう話で進められてきた今回の非公務員化の話です。もともとの目的は何だったのか、見直しそのものの目的は何だったのかというと、どれだけ使う税金をこの財政事情の中で節減をしていくか、歳出を抑えるか、これであったはずなんです。そこに結びついていないんですよということは、全く答えになっていません。

 同じことを、財務大臣。

 今度はまさにこの財務省所管、法案にかかっております酒類総研、この職員を非公務員化されることになります。まさに非公務員化するに至った、先ほどと同じ質問です、具体的かつ明確な理由、非公務員化することによって得られるメリット、何がどう変わって、どう有効性があるのか、使う税金がどれだけ節減されることになるのか、具体的かつ明確な理由を教えてください。

谷垣国務大臣 酒類総研はいわゆる研究型の独立行政法人ということになると思いますが、研究を進めていくに当たって、大学やそれから民間の研究機関との交流、人事交流も含めて、連携というようなものが研究を活性化させていくために必要であるということが一つございます。それと同時に、研究した成果をできるだけ民間に利用、活用してもらう、いわゆる技術移転ということになると思いますが、こういうことを積極的にもっとできるようにしていくという必要があるだろう。

 それで、そうするために、酒類総研の研究者の採用、それから勤務条件、こういったものについて、国家公務員法等の制限を受けないで酒類総研として自主的に決めることができるようにすることによって、その機能を一層発揮することができるのではないか、これが今回こういう形にした理由でございます。これによりまして、例えば優秀な研究者の採用の幅を広げるとか、それから研究所の研究成果を直接民間企業に技術移転できるとか、こういう機会を広げることが可能となるのではないかと思っております。

 もう少し具体的に申し上げますと、例えば、酒類総研と広島大学との間で、現在、酒類総合研究所の職員が、非常勤の客員教授あるいは客員助教授というような形で大学院生を広島大学で指導しております。他方、広島大学の大学院生が研究所の研究生として来ていただいて、受け入れている。非公務員化することによりまして、例えば、研究所の職員が兼任教授として、ある一定の期間、大学の研究室で指導するというようなことが可能となってくる。

 それから、現在、民間との共同研究につきましては、それぞれが参加する研究者の人件費、それから関係の経費を負担する形で実施する。公務員制度の中でそういう形にせざるを得ないわけですが、これが非公務員化ということになりますと、例えば、現在、研究所から参加する者の人件費を一部民間負担としていただくというような形での共同研究をやっていくことが可能になってまいりまして、柔軟な研究を進めていく上では大きなメリットがあるのではないかと思っております。

三谷委員 今の財務大臣のお答えもそうですけれども、決して納得のいく御説明ではないと思います。

 先ほどの行政管理局長のお話の中にもありました人事交流あるいは技術移転、こんな話がございましたけれども、求めましたように、使う税金がどれだけ節減できるのか。それもはっきり局長は否定をされましたけれども、ある意味、関係ないと。あるいは、今大臣のお話の中でもお触れになられませんでした。

 本末転倒な話だと私は思います。納得のいく明確な理由はないんです。どこをどういうふうに見てもないんです。まず公務員を公務員でなくせば、今の大きな流れです、確かに国民の受けはいいかもしれません。あるいは、公務員の数の純減五%、そこにもカウントできるわけですから、その話に大きく貢献できる話かもしれません。しかし、本来の目的から外れて、これは本当に安易な見直しの結果だと受けとめざるを得ないんです。

 先ほど谷垣財務大臣のお話の中にも、研究成果を民間に技術移転するんだ、あるいは、局長あるいは大臣のお話の中にも人事交流のお話がございました。

 まさにこの人事交流ですけれども、私も一昨日、同僚議員と一緒にこの酒類総研を視察させていただきました。理事長初め管理職の皆様だけに限らず、研究職の方々ともいろんなお話をさせていただきました。やられている業務、お仕事、大変よくわかりました。

 先ほどの、まさに人事交流、官民交流、その促進ということだと思いますけれども、酒類総研、今現状で、おとつい見てきましたけれども、結構立派に官民交流をされていますよ。先ほどのお話の中にもございましたけれども、まさに民間資金の活用ということでは、民間企業との共同研究はどんどん行われています。それも、少ない人員の中でですね。大学、おっしゃるとおり、醸造学科を、今醸造学科とは言いませんけれども、すぐ近くに広島大学があります。研究員が来られたり、民間企業からも研究員がどんどん来られています。立派に人事交流、官民交流、行われていますよ。

 確かに、非公務員化されれば、手続上のこと、今の特例法とかも使わなくてもいい、もっとやりやすくなるかもしれません。しれませんが、しかし、それが十把一からげ、この酒類総研も含めて、なぜ非公務員化ということの理由にはならないですよ、人事交流が促進されるからというのは。今よりももっと手続がやりやすくなるから。ならないですよ。

 中身が仮に、民営化をしないまでも一歩踏み込んで、では先ほどの運営費交付金節減ということでいうならば、民間企業からの受託研究も受ける、民営化に近い状況にするというような話であるならば話は変わってくるかもしれません。だけれども、まさにおとつい、いろんなお話を伺いましたけれども、そんなおつもりは、ここはあくまでも公的機関だ、まさにさっきの大臣の話と一緒です。そこから先は一歩も踏み出せません、踏み出さない。であるならば、非公務員化して何が変わるんでしょうか。その人事交流でどんないいことがあるんでしょうか。

 先ほども七条議員のお話の中にもありました。私も実際行ってみて、全く同じ話を思ったんです。まさに実際の酒類総研の業務、いろいろな業務がございます。お酒の鑑定、分析、基礎研究もあれば、鑑評会も非常に大きな業務だと思っています。酒類に関するさまざまな相談、あるいは鑑定、評価、分析、研究、実際のところは、国税局の鑑定官がおられて、現場は鑑定官の方々が、例えば酒造メーカーからさまざまな相談が来る、それは鑑定官の方々がさまざまなアドバイスをされる、杜氏の方々よりもよっぽどよく知っておられる、助けておられる。

 実際、この質問をするに当たりまして、視察だけではなくて、何社かの酒造メーカーにもいろいろなヒアリングをしました。大変ありがたがられていますよ、酒類総研そのものも、あるいは鑑定官もです。実際のところは、研究職の方々ともお話をしましたけれども、ただの一人も鑑定官を経験されていない研究職の方なんておられないんですよ。それだけ一体的な仕事としてやっておられるんです。

 それで、書いてあることは、国に加え官民交流の観点から、非公務員化するんだというふうに書かれているんです。肝心かなめの業務の方は一たん外に置いておいて、今まで一体的にやってこられたこの仕事は、これからどうなるんでしょうか、お答えください。

石井政府参考人 今先生御指摘のとおり、現在、国税庁鑑定官、これは六十五名ほどおりますが、これが現場により近い形で、各国税局におきまして、酒税の賦課に関する酒類の基本的な分析、あるいは酒類業者の方に対する技術的な指導を行っております一方で、酒類総研におきましては、鑑定官が対応の難しいような高度な分析、あるいは高い専門性を有する基礎的、基盤的な研究、あるいは現場を踏まえた応用開発的な研究というものを、連携をとりながら行っているのが現実でございます。

 このような両者の関係につきまして、今般の非公務員化に当たりましては、まず、法律上この総合研究所の目的自体の変更は一切行っておりません。また、酒税の賦課に関する財務大臣からの要請規定、これは高度な鑑定を行ってほしいというような要請を行った場合に受けていただく規定でございますが、これも変更を加えておりません。また、実際の運用としましても、これは今後の話になりますが、必要に応じた人事交流は引き続き積極的に行っていきたいと思っております。

 したがいまして、国税庁、特に鑑定官室と総合研究所との基本的な関係に変化はないと考えております。今後とも相互に密接に連携をして事務を進めていく所存でございます。

三谷委員 今の話はわかりました。

 もう一回最初の話に戻します。

 実際行かせていただきまして、研究職の方々からこういう話がございました。いろいろな話をされましたけれども、三十代の方ですけれども、最初は公務員で入って、何年かで研究所が独立行政法人になりました、それからまた五年もたたないうちに非公務員化だ、一体これからどうなるんでしょうかと。切実な声だと私は思います。

 まさに先ほどのお話ですけれども、同じ厳しい話をするにしても、財政事情が厳しいからこの独法の見直しをする、そして、歳出を抑えなければいけない、よくよく、一つ一つ吟味をして、この事業を廃止させてほしい、縮減させてほしい、こういう話ならば、なかなかそれは納得はしていただけないでしょうけれども、まだ理解をしていただける話だろうと思います。だけれども、まさに今回の話は、十把一からげの非公務員化の話です。先ほどのお話がそうであったように、明確な説明なんて全くないんです。

 最後に、聞かせていただきます。

 それで、一番肝心かなめの話というのは、まさに使われる運営費交付金の話ですけれども、今、中期目標、スライドだということはわかりますが、平成十七年度予算おおよそ十二億八千万円、平成十八年度予算、これもおおよそ十二億八千万円。むしろ、これから先、この非公務員化によって、先ほど節減のことは関係ないとおっしゃいましたけれども、そんな理屈がこの見直しであろうはずがないですよ。

 まさにこの運営費交付金、これから先の見通しにつきまして説明をしてください。節減をされるんでしょうか。お願いします。

石井政府参考人 運営費交付金でございます。

 十七年度の運営費交付金、これは十一億九千三百万、十八年度には十二億七千六百万を予定しておりますが、これは一部退職者が出る見込みがある等の事情で退職手当が上積みになっておりますが、これを差し引きますと、十八年度は十七年度よりも減少する見通しとなっております。

 運営費交付金の算定は、もう先生御承知でいらっしゃいますが、まず初めに、中期目標として、五年間にわたる目標期間中の一般管理費、あるいは研究業務費について見通しを立てるわけでございます。これは直接この非公務員化に伴うということではございませんけれども、全体の今後の五年間につきまして、一般管理費につきましては五年間で一四・一%の削減、研究業務費につきましては五年間で四・九%の削減をする予定で目標を今立てているところでございます。

 ただ、これに加えまして、この非公務員化に伴います間接的な効果と先ほど申し上げましたが、積極的な自己収入の獲得を目指すとか、あるいは、一層効率的な運営を図ることによる削減ということには引き続き努めて、この交付金の削減ということにはもちろん努力をすべきものだろうというふうに思っております。

三谷委員 最後に申し上げますけれども、もちろん、一つ一つの項目ごと、まさに中期目標ですから、スライドをしていくような形で、微減のような形で、今回はまさにそうですけれども、ささやかな節減は果たされています。あるいは、中には退職金がありやなしやというような話も聞きました。

 これだけ努力をしているんだということはわかりますけれども、まさに冒頭の話です。むしろ、そんな話ではなくて、スライドをしていく話ではなくて、やはりここは大胆に、まさにこの独法見直し、一番の目的は、どれだけ使われる税金が節減をされるかという話なんです。むしろ、きちんと議論をして、やめるべきところがあったらやめていくということをぜひともやっていただきたいと思います。

 質問を終わります。

小野委員長 以上で三谷君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 七条委員そして三谷委員に続きまして、酒類総合研究所法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 七条委員の質疑の中にも、この酒類総研は酒類業の育成に非常に密接にかかわってきたという話がございました。私も全くそのとおりだということを実感しております。七条委員のお言葉の中に、国税当局ではなくて経済産業省なりが所管すればもっと業界が発展したのではないかというようなお言葉もあったのでございますが、私、個人的には、国税庁が所管でよかったんじゃないかというふうに思っております。と申しますのは、やはり酒税を取るということを考えたときに、できるだけ業界を育てていけばそこからお金をできるだけもらえるわけですから、育成にも本気になるのではないか、そういったことを私は考えております。

 ですから、今、何を申し上げたいかといいますと、国税庁と酒類業界、これは一体となって発展してきたものだ、それによって国庫の税収に安定的な影響を及ぼすようになってきている、そういうことを申し上げたかったわけでございます。

 そこで、ちょっと本題に入らせていただこうと思いますが、平成十七年十月二十八日付の独立行政法人の中期目標期間終了時の見直しに関する有識者会議の指摘事項の中に「独立行政法人の職員については、その業務を国家公務員の身分を有しない者が担う場合の具体的な問題点を明確に説明できない場合には、非公務員化すべきである。」という指摘がなされているところでございますが、その趣旨説明の中にこういう一文があるんです。「非公務員化が業務運営の効率化・活性化につながり得ることを踏まえれば、」そういうコメントがあります。その前提に立って非公務員化すべきである、先ほどおっしゃったように、特段の理由がなければ非公務員化すべきである、そういう答申がなされているわけでございます。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいことがございます。

 非公務員化によって効率化、活性化がなされるということでございますが、その一つ前の状況で、非公務員化する前に酒類総合研究所が独立行政法人化された、その独立行政法人化された趣旨と酒類総研の位置づけを大臣のお言葉で説明いただけたらと思います。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 独立行政法人化に至る過程は、先ほど三谷委員も議論の過程を詳細に読み上げられまして御説明になりました。それで、定義的なこと、役所の文書に書いてあることを除きまして。

 先ほど三谷委員の議論のときに私はお答えすべきだったのかもしれませんが、研究を活性化していくという視点から見ますと、実は私、一番最初にやらせていただいた閣僚が科学技術庁長官でございます。もう七、八年前になりますが、そのときに、何とか国立大学の研究機能をもう少し民間と連携させて、例えば、特許を申請するなどにしてももっとやりやすいことはできないかとか、研究資金をもう少し自由に使えないかということを大分やったのですが、やはり国の施設である、それから国家公務員であるというようなことで、いろんな制約があったわけでございます。

 そうこうしている間に、これは私、記憶がはっきりしておりませんから国会で御答弁するのには余り適切ではないかもしれませんが、新しくできた製薬だったと思いますが、大学の研究者が治験なんかをしますときに、私は具体的な事件の具体的な事情は存じませんので何があったのか実はよくわからないのですが、民間の会社から研究費をいただいたのが収賄罪であるという事件が起きました。この中に何があったかはわかりませんから、あるいは本当に収賄罪に問われるべき事件であったのかもしれません。しかし、いかにもその辺の研究体制の硬直化を感じまして、私は、もう少し国の研究機関が民間と自由に交流して、人事交流もできる、それからそういう研究費等の扱いももう少し効率的に使えるようなことはできないかと思ってまいりました。

 委員の御質問に三谷さんの感想を申し上げて恐縮でございますけれども、実はそういう面も見ていただきたいなというふうに思っているわけであります。

 それで、独立行政法人化された趣旨というのは、今度の通則法の第一項で書いてある「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業」、それから「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせる」というふうになっておりますが、私は、酒類総合研究所というのはまさにこれに当てはまるというふうに思っております。

 そういう形で、酒類に関する研究をより活性化できたらというふうに思っているわけであります。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございました。

 一般的なお話として、要するに、国がやっている研究というものが大学等の交流を通じながら活性化するということは、国家公務員としての身分があると非常に難しいというようなお話を今されていたと思ったんですけれども。

 酒類総研については、先ほど冒頭申し上げたとおり、業界と非常にオープンな形で従来からつき合いがあったところでございます。国税庁の鑑定官室の鑑定官の皆さんは、直接会社にお伺いしながらその会社の状況を聞いて、それを酒類総研の方に持ち帰って後の研究に生かす、そういったうまいぐあいのサイクルがもう既にずっと百年ほどやられてきている次第でございまして、そういったところを考えますと、先ほどの、国家公務員たる地位ということがあるからそういう交流ができないというような、それこそ十把一からげのような見方は、私は当てはまらないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。

 そこで、大臣にお伺いしたいことがございます。

 酒類総研というのは、実際、独立行政法人化して自律的な運営になってきているのか、そして、財政上も経営組織上も効率的になってきているのかどうか、そこの大臣の所見をお伺いしたいのです。

谷垣国務大臣 酒類総研の仕事は、確かに今おっしゃったように、かつてから民間の酒造業等々との関係は密接でございました。今までできていなかったというわけではありません。それから、先ほど広島大学の例を挙げましたけれども、広島大学に限らず、昔で言うと大学の醸造学科、今で言いますともっと別の名前になっておりますが、ゲノム解析というようなものともいろいろ密接な関係がございますが、今までもできなかったわけではありません。それをもっと柔軟にできるようにしようという趣旨でございます。

 それで、酒類総研は民間にはゆだねることが余り適切でない分野も含んでおりまして、国税庁が行う酒税の適正な鑑定を支える、適正な賦課、これを支える。それから、民間にゆだねた場合にはなかなか実施されないかもしれない基礎的な研究、こうじに関して系統的にずっと研究を続けてきているというようなのは必ずしも民間だけでは十分できなかったのじゃないか、それに非常に質の高いこうじをやはりつくってきているというようなことがございますので、中小業者がほとんどを占める酒造業で、なくてはならない役割を果たしているわけであります。

 それで、今回、次期の中期目標で公務員の人件費削減に準じた対応を酒類総研にもお願いしているわけですけれども、それをやる過程で、非公務員化のメリットを生かして、優秀な研究者の採用とか、あるいは民間や大学法人との人事交流などの連携を促進することで、より一層の効果を上げていただけないかと期待をしているわけでございます。

 こういうような答弁でよろしいんでしょうか。

鷲尾委員 大臣が、実際、独立行政法人化によって、少なくともこの五年間、これは中期目標の最終五年度目に当たりますけれども、この五年間で組織が効率的になったんだ、運営費交付金も実は節約されてかなり還付されて、今回の査定の見直しでは非常に節約効果が見込まれる、そういう査定になっているんだ、そういうような評価があるのかどうかというところをお聞きしたかったのでございます。

谷垣国務大臣 渡しきりの交付金としてお渡ししておりまして、その中で酒類総研の独立性は保たれているわけですが、中期目標計画の当初に定められました効率化の計数というのがございますけれども、それを基礎にして算定するわけですが、酒類総研の運営交付金、先ほど次長からも御答弁をしたところでありますけれども、不確定要素の高い退職金相当額を除いた額で見ると、平成十三年度に十二億七千万であったものが、平成十七年度では十一億九千万になっておるわけでございまして、効率化といいますか、そういうことを相当工夫していただいたのではないかと思っております。

 それから、これは予算ではなく決算ベースで見ますと、退職手当金相当分を除く運営費交付金債務が二億一千万、これは平成十六年度末ですが、それから、独立行政法人への現物出資を起因として発生した還付消費税分を除く積立金が一億二千万、この両方を合計しますと、三億三千万円がいわゆる運営費交付金の使い残し分として計上されておりまして、これは第一期の中期目標期間終了時に、一たん清算して国庫に返納されるわけでございますが、これは大きく見れば、先ほどの三億三千万というのは、効率化を見込んだ予算を上回る努力をしていただいた結果と言うことができるのではないかと思っております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 大臣、先ほどの御答弁の中で、従来から酒類総研については人事交流については密接であったという答弁がございました。従来から密接にあったものを、今回の法律の改正では、それこそ独立行政法人すべて十把一からげに全部非公務員化するということを言っているわけですよね。その非公務員化するというのは、要するに人事交流がその趣旨である、人事交流が一番の目当てなんだと、先ほど総務省の方もおっしゃっていたと思うんです。

 ですので、では、今従前どおりやっている中で、さらに人事交流を目指すような法律改正というのは、実際どういう効果があるのかというふうにも思うわけなんです、正直申し上げまして。では、今回の法律改正によって何かデメリットはあるのかどうかということを私は考えますと、先ほど三谷委員の質問の中にもありましたが、職員さんの立場として、私も現場を視察した中で感じたことでございますが、非常に国家公務員としてのメンタリティーを持って、国に仕えている、公僕であるという意識の中で、民間の企業発展のためにその礎になっているんだ、そういう意識のもとでやられている職員さんが多かった。

 そうなった中で、では、この公務員たる地位というものがなくなった、確かにみなし公務員だといったらそれまでかもしれないですけれども、この先どうなるかわからないような地位に職員さんが置かれたときに、果たしてそういう意識の高さを持ち続けられるかといったら、大臣、職員さんのお立場に立って考えてみて、いかがですか。

谷垣国務大臣 確かに、職員の方は、公務員としてお酒に関する研究やら酒類業の発展に貢献しようという思いで入ってこられた方たちが集まっている組織ですね。それで、これを変えていくとなると、当然不安もあるだろうと思います。自分たちの将来がどうなっていくかというお気持ちもあるだろうと思います。やはりそこは、酒類総研の今後の運営に工夫が要るところではないかなと私は思っているわけであります。

 公務員としての給与体系とか勤務体系というものに必ずしも縛られないわけですから、やはり業績評価というものをどうしていくかとか、その業績評価が給与システムにどう結びついていくかとか、あるいは、優秀な研究成果を上げた方の国際学会等へ積極的な派遣というのも今までより自由にできるようになる可能性があるわけでございますので、そういうあたりの、やはりここに来られた方の士気を落とさない、むしろ士気を上げていくような研究所の運営というのは、私は不可欠になってくるだろうと思います。

 何事にもメリット、デメリットはあるものでございますから、そこは工夫していただかなきゃいけませんし、先ほど申し上げたような、確かに今でもいろいろな人事交流はできるんですが、公務員という枠内でありますと、どうしても職務専念義務とかいろいろなものが入ってまいります。今は任期つき公務員というような制度もできまして、大分ひところよりは柔軟性ができてまいりましたけれども、それでもやはり期限の定めがありますから、そういったあたり、もう少し自由に動けるというメリット、この非公務員化のメリットを生かしていただきながら、今委員が指摘されたような不安感なりデメリットというものを乗り越える工夫をしていただかなきゃならぬところだろうと思います。

鷲尾委員 ということは、この非公務員化の法案、この改正をきっかけに、特定独立行政、特定が抜けるわけですが、特定が抜けることによって、人事給与制度も抜本的に、それこそ自律的な運営ということで、ある程度自由度を持たせながら酒類総研についてはやることができるという御認識でよろしいですか。

谷垣国務大臣 当然、士気を鼓舞して研究成果を上げていただくような運営を工夫していただかなきゃならぬと思います。

鷲尾委員 ちょっと前の話ですけれども、そもそも独立行政法人化するときに、我が国の場合は行政組織が法律によって定められることから、例えば予算制度、機構そして定員管理などの諸制約に縛られずに、独立行政法人が自律的、効率的な運営を行うことができるようにするため、独立行政法人を国家行政組織以外の独立の法人格を有する組織とする必要があったというふうに聞き及んでおりますが、とすると、これから、独立行政法人酒類総研が自律的、効率的な運営ができるように、例えば定員管理だとかもこれは外していく、予算制度、機構の制約も今までとは違ったものにしていく、そういう認識でよろしかったでしょうか。

石井政府参考人 現実だけ申し上げますと、独立行政法人については、定員から外れております。

谷垣国務大臣 基本的には、独法の定める基準によるということに制度設計がなっておりますので、その中で、この酒類総研としての工夫をしていただくということだろうと思います。

鷲尾委員 済みません、確認になるんですけれども、それは、独法で十把一からげで、例えば横並びで規定をつくっていくのではなくて、ある意味、酒類総研の経営者が自律的につくっていけるという認識でよろしかったですか。確認だけお願いします。

谷垣国務大臣 それは独法もいろいろ、それぞれの性格の違いがございますから、十把一からげで同じものをというわけではないと私は思っております。

鷲尾委員 では、済みません、続きまして、非公務員化することに対して、酒類業界についてはどういう意見が寄せられているんでしょうか。

谷垣国務大臣 特段の非公務員化に関する要望というのは、私の耳にはまだ届いておりません。

鷲尾委員 やはり、私思いますに、独立行政法人の改革というものも、今うまくいっている行政法人であればなおさら、改革するときには、例えば業界の要望なりその特殊法人の特殊な要因に基づいて法律の改正というものを逐次していくべきだというふうに私は思うのでございます。

 特に業界から何も要望がないというのは、逆に言いますと、今うまい仕組みができ上がっているんじゃないかと。大臣も御存じのとおり、やはり業界との人事交流そして共同プロジェクト、これも非常に活性化した形でやっている。そんな中での改正というのは、逆に、ある意味デメリットばかりが出てくるおそれもあるわけで、そう考えたときに、果たしてこの法律の改正がいいのかどうか、私は疑問があるところでございます。

 さて、ちょっと話をかえまして、人事交流ということでこの法案の趣旨としてございますけれども、この人事交流のあり方の問題として、官から民へ行く人も、民から官に行く人も、これはいろいろ出てくると思うんですが、それこそ職員さんたち、自律的な運営の中で工夫していくべきだというふうに先ほど大臣おっしゃいましたけれども、国がある意味制度として整備しなきゃならぬ部分もあると思うんですが、そこの手当てについて、今どういうことが考えられているんでしょうか。

谷垣国務大臣 人事交流に関して言いますと、先ほどから御議論にありますように、国税庁との間は非常に緊密な人事交流を続けてまいりまして、酒類総研の担っている任務から考えますと、今後ともそれは必要だと思います。

 基本的に制度設計は酒類総研でやっていただくということでございますけれども、法的に余り制度が違いますと、退職金とか国家公務員共済はどうなるんだというようなことが出てまいりますので、今回の非公務員化に当たりまして、退職金の通算とか国家公務員共済組合法の適用については法的手当てが講じられておりますので、そういう人事交流には支障がない制度設計になっております。

鷲尾委員 実際、これから官民交流が複雑化していくと思われます。その複雑化していく中で、要するに職員さんのこれは士気の問題になると思うんですが、それこそ酒類総研に限って言えば非常に職業意識の高い方が多くいらっしゃいますので、そこら辺の配慮もやっていかなきゃならぬことなのかなというふうに感じております。

 続きまして、ちょっと瑣末な話にはなるんですが、酒類総研さんが実はNRIBという広報誌を発行されております。この広報誌なんですが、恐らく、例えば社内の情報の共有ですとか活動内容を方々に紹介する、そういう形で広報誌をつくられているとは思うんですが、この広報に関する予算とか内容というのは御存じでしょうか。

石井政府参考人 今、先生御指摘ございましたように、研究所の方では、広報誌でございますNRIB、エヌリブと呼んでおりますが、これを発行しております。これは広報誌でございまして、研究の成果を載せて普及を図るということで、いろいろな研究の成果の内容をわかりやすく載せているという趣旨でございます。このほかに、情報誌として、一般消費者向けに「お酒のはなし」という題をつけました情報誌もあわせて発行しております。

 平成十六年度におきまして、広報誌の方の印刷製本費が約二百九十万円、それから情報誌の方の印刷製本費が約二百三十万円となっております。

鷲尾委員 それでは、この広報誌の広報の仕方というのはどういう形になっておるんでしょうか。

石井政府参考人 これは、実際の配布でございますけれども、全国の国税局あるいは税務署、それから業界の団体を通じまして広く一般の方に配布をしているということでございます。それからまた、ホームページにも内容を掲載いたしまして、利用者が必要に応じて使えるように配慮をしております。

鷲尾委員 広報誌の頒布の仕方をもうちょっと詳しく教えていただきたいんですけれども。

石井政府参考人 今申しましたように、一つは、税務署、全国で五百二十四ございますが、そこにそれぞれ約三十部程度置きまして、税務署に来られた方が御自由におとりいただけるようにしております。

 それから、そのほかに、製造業者である清酒組合、ほかの各種の組合、これは、しょうちゅう、ビール、果実酒、ウイスキー、リキュール等の組合、そういうところにそれぞれ必要部数をお配りいたしております。

 それから、そのほかに、小売関係の組合、それから公設の研究機関、記者クラブの方々等にお配りをいたしております。

鷲尾委員 私がその中でも気になったのが、税務署の窓口に広報誌を置くというやり方でございます。

 もちろん、いろいろな方がいろいろな意見を持つ部分ではあるとは思うんですが、私思いますに、この酒類総研の内容というのは、確かにお酒の研究ですとか、それこそ、良質なこうじ菌の例えばDNAの解析とか、そういうことまでやられているわけですよね。ですから、この内容を国民にオープンにしていくというのは大事なんですが、ではだれが利用していくのかということを考えると、もちろん一般の消費者である我々が利用するとはなかなかちょっと考えにくい。それよりも、むしろ、やはりその業界さん、酒類業界、先ほどおっしゃっていました小売業界ですとか、そういったところは当然その広報の対象になっていいとは思うんですが、では、税務署さんの窓口に広報誌が置かれてあって、果たしてそれが国民のニーズに合った広報活動かどうかというと、ちょっと乖離した部分があるんじゃないかなというふうに思うわけです。

 この広報予算というのは、先ほどおっしゃっていました平成十六年の実績でいきますと五百万ちょっとになるとは思うんですけれども、たとえ五百万ちょっとといえども、国民のニーズというものをやはり常にとらえ直さなきゃいけない部分ではあると思うんです。実際、この広報予算というのは、例えばウエブページの製作費であっても、これはほかの省の事例になりますが、経産省の関連の法人でとんでもない無駄遣いをしていたというような、ある意味無駄遣いの温床になるところでございます。

 要するに、何が言いたいかというと、自律的な運営ということを当然やらなきゃいけない、一方で、予算を積算して与えていかなきゃいけない、いろいろ見積もってやっていかなきゃいけない。そういう中で、できるだけ経費節減をするということを考えながらやっていくためには、こういった部分もある意味、これは実は独立行政法人の評価委員会の皆さんの全体的な評価の中にもあったんですが、広報活動はまあまあ妥当にやっておられるという形でコメントされていたんですけれども、私はやはりそうは思えないんですよね。

 ですので、これはどういう評価の仕方がされているのかというのはわかりませんけれども、特に予算の無駄遣い、これが発生する余地のある、そのリスクに応じてやはり査定というのもよりきめ細かくやっていくべきだと思うんですよね。こういうことをぜひこれから先、特殊法人、独立行政法人含めて取り組んでいっていただけたらなというふうに思う次第でございます。

 ちょっと話をこれから全体に膨らませましてお話しさせていただきたいと思うんですが、今ありました広報予算の関係、これは、例えば我々今議員生活をやっていましても、非常に無駄を感じるところが多いんです。というのは、例えば各省庁から広報誌、いろいろ出されています。いろいろ出されていますが、その出されている広報誌というのは正直見ることは余りありません。

 広報予算というのは、一応名目上、国民のニーズに合ったということで、いろいろと予算査定もある意味ちょっと甘くなりがちな部分ではあると思うんです。その広報予算について独立行政法人全体で見たときに、これは実は、算定してくれと言われたらできないから質問するのをやめてくれと言われたんですが、広報予算全体がかなりの巨額になるというふうに、私なんかはやはり日常的な感覚として思うわけですよ。

 これは谷垣大臣にぜひお聞きしたいんですけれども、予算査定というのも、やはり無駄遣いが発生するリスクに応じていろいろ査定すべきであると思うんですね。その無駄遣いの程度に応じてやっていくというふうなことを、ぜひ谷垣大臣がどう思われるかお聞きしたいんですけれども。

谷垣国務大臣 なかなか難しいお問いかけだと思うんですね。無駄が発生する温床になるようなことを防げ、そこは厳しくメスを入れろというのは私もそのとおりだと思います。ですから、この酒類総研に関しましても、次の中期計画を立てていく中でどうしていくのかというのはきちっと見なきゃいけないと思うんですね。

 だけれども、他方、行政にとりまして広報活動というのは大変大事だと思います。どう今自分たちのやっている業務をわかりやすい形で……。今の御批判、ほとんど見やしないとおっしゃったのは、なかなか、見てすぐ自分たちの疑問に思っていることに的確に答えてくれるような広報が少ないということも逆に意味しているんじゃないかと思うんですね。ただ、酒だけではなしに、私ども財政などからいたしますと、やはり財政の現状をわかりやすく的確に伝えていくというのは行政にとりまして極めて大事でございますから、無駄遣いをするなということと的確に使えということと、同じかもしれませんが両方の要請があると思います。

 この酒類総研でいいますと、お酒に関して基礎的な知識を普及していくというのは、広報していくというのは、たしか法律の中にも業務で仕込まれていたと思いますし、先ほどからの御議論のように、酒についての基礎的な情報、知識を提供していくということは、酒類業の健全な育成にもつながるのではないかと思っておりますが、無駄の起きないように、それからまた、それが配ってもだれも読まれないようなものではないようにということはやはりきちっとやっていかなきゃいけないんだろうと思います。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 その広報予算なんですけれども、実は、酒類総研さん、めでたく創立百周年を迎えられたということで、大変喜ばしい限りだとは思うんですが、その中で、一応事業関係の経費の明細をちょっと出していただきました。祝賀会、式典の費用として四百二十八万円、講演会の費用として二百六十三万円、記念DVDとして六百四十八万円、広報誌(特別号)として二百四万円、その他三十六万円で、合計千五百七十九万円ということで経費が算出されているんですけれども。

 祝賀会を盛大にやっていただくのは私はいいと思うんです。当然、広報で特別なものをつくるのもいいと思うんです。講演会としていろいろ広げていくのもいいと思うんですけれども、いかんせん記念DVDというのはいかがなものかというふうに思っておりまして、要するに、予算の使い方一つとってみても、内訳を見ればとんでもない費用が入ってきているんではないかということをぜひ御認識いただけたらなというふうに思っております。大臣、御存じでしたか。

谷垣国務大臣 先ほど広報に関しては両方の要請があるというようなことを申し上げました。

 もう一つ言うのを忘れましたのは、独立行政法人はできるだけ裁量でもって、その中で自主的にやるということになっておりまして、財務省の広報なんかですと、もうぎりぎり、無駄なものはやめろとか、もっと効率的にやれとかいうことが言えるのでありますが、独立行政法人の場合は、そこはやはり自主性にできるだけ従おうというところもありますので、やはりあんばいがあると思います。

 それから、今のDVDに関する御批判でありますが、酒類総研の百年というのはやはり日本の酒造業にとっても相当意味のあることでございまして、そこである程度、酒に対する、そしてこの研究所がやってきたことに対する総括といいますかPRをしていくことは意味がないとは言えない、御理解をいただくべきことではないかなと、私は個人的には思っております。

鷲尾委員 大変話題が瑣末になりまして、本当に申しわけなくは思っているんですが、もうちょっと、また話をかえさせていただきます。

 大臣にお伺いしたいんですが、今回の非公務員化に係る法律改正、ある意味一律で、各省庁所管の独立行政法人、十把一からげで法律改正をやられているわけです。こういうことに対して大臣はどう思われますか。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 先ほど法案を読み上げまして、三つ要件があると。それに照らせば、私はこの酒類総合研究所というのは今回の独立行政法人化していく基準に当たるんだと思っておりますし、また私は個人的には、先ほど申しましたように、国立研究機関がもう少し自由に研究をできないかという問題意識を持っておりましたので、私個人としては抵抗感が余りないんです。

 それで、もう一つ。ただ、先ほどから、三谷委員の御質問も、えらく乱暴にやるじゃないかというのがありまして、これは一つ一つ見たと思います。一つ一つきちっと見たと思いますが、ある程度改革を進めるときには、もう、えいやえいやと頑張ってやらなきゃならない面もありまして、私は一つ一つ見たと思いますが、やや抵抗感を感じておられる方からすると、流れが急だなとお思いになった方もいらっしゃるかなとは思います。

鷲尾委員 先ほど、大臣、三要件に照らせばこれは当然でもあるし、自分の思いとしてもそういうことがあればいいなという話で、余り抵抗感がないというふうにおっしゃっておりましたけれども、さはさりながら、この法律の改正自体をなぜこの時点で、そして酒類総研というある意味うまくいっている特殊法人に対して、どういうメリットがあるのかデメリットがあるのか、ある意味、現場の方々に密着したような形での検証が余り行われていないんではないかなというのが実感でございまして、七条委員が冒頭おっしゃっていました、非公務員化までにしてくれ、例えば非公務員化した後で何か要件を三つ四つつけられて、これに該当するから、では次は民営化だ、こうなってしまっては時既に遅しだと思うんですね。

 ですので、大臣、このことについて、今後酒類総研は、ではこれは民営化していったらいいのか、それとも非公務員化でとどめておくべきなのか、それとも非公務員化しなくていいのか、法律の要件云々かんぬんはなしで、率直な意見をお答えいただけたらと思います。

谷垣国務大臣 先ほど七条委員にもお答えいたしましたけれども、私は民営化すべきものではないと思っております。それは、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、酒類の鑑定、評価というものをきちっと支えるという業務がございまして、全く民営化にしていってそれができるとも思いませんし、また、基礎的研究もここでやっているということはやはり重く見るべきことだろうと思っておりますので、民営化すべきものではない、こういうふうに考えております。

鷲尾委員 最後に、では、私の思いも一言述べさせていただきたいと思います。

 今回の法案の提出、このタイミングでやるべきなのか、正直、私はまだ自信が持てません。そして、非公務員化するということについても、これだけうまくいっている業界との関係、そして民間との交流、それを考えたときに、なぜ今非公務員化しなければいけないのかという思いが多々あるわけでございます。

 そういった観点から、確かに独立行政法人というのは、将来的には、本当の意味で自律的な運営、予算制約をなくしてということが国家としての目標としてあるのかもしれないですけれども、私は、この時点で非公務員化の法案を提出されることに対して、その効果についてどうも納得できないなという部分もございますので、今回については、後ほど討論させていただきますが、私は反対の立場で討論させていただこうと思っております。

 大臣、大変丁寧な答弁をありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

小野委員長 それでは、これで鷲尾英一郎君の質疑を終了いたします。

 続きまして、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 酒税の税率は、酒の品目ごとに異なっているわけであります。そのため、公正な賦課徴収を行う上で、酒類の分析、鑑定というのは極めて重要な公的な機能を果たしていると私は思いますが、まず、大臣の認識を伺いたいと思います。

竹本副大臣 酒税法では、先生おっしゃったように、酒類を原料それから製造方法などで区分いたしまして、さらに、アルコールの度数等に応じて異なる税率を適用しております。例えば、ビール、発泡酒、第三のビール等々ございますけれども、味、香り等が類似している場合でも麦芽の使用の割合が違うといったことで、今申し上げたような酒類の違いが出てくるわけでございます。

 酒類総合研究所では、このような税率を決定する重要な要素となります分析、鑑定業務のうち、国税局では対応できない高度な分析、鑑定を担っているところでございまして、重要な公的機能を技術的に果たしていると考えております。

佐々木(憲)委員 日本の酒類総合研究所は、これまでも、世界に誇るべき酵母の開発あるいは清酒製造技術など大きな成果を上げてきたと思います。例えば、清酒酵母の世界最初の発見を初めとして、泡なし酵母の開発と実用化というのを聞いております。泡なし酵母というのは、清酒製造の省力化に非常に大きく貢献をしてきた。酒類研究所の研究内容は極めて高度で、世界に誇れるものだと私は思います。

 このような実績を持つ研究所の研究活動は、さらに発展させるということは必要だと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、あそこの研究所へ参りまして、酵母、こうじ、ずっと開発を進め、研究成果を積み重ねられた、それを見ますと、なるほど、日本の酒造業というのも、こういう基礎的な努力、こういうものがあって維持されてきたのだなと大方の方がお感じになるんじゃないかなと私は思っております。

 そういう基礎的な研究から、さらに応用研究といいますか、技術移転ができるようなことまで幅広くやってこられましたし、特にこうじ菌に関して、これはほかの大学や研究機関と共同してやられたわけですが、ゲノムを全部解析して、これの特許出願を行ったというのも、私は酒の研究というものにとって非常に意義の大きいことであると思います。ですから、今後は、恐らくポストゲノムというようなことで、さらに研究を進めていただかなきゃいけないと思っております。

 ですから、酒類総合研究所というのは、先ほどからの御議論のように、国税庁が公正に酒税というものを賦課して徴収していく上でも不可欠でございますけれども、やはりそれだけではないので、先ほどから酒類業の健全な育成ということがございますけれども、やはりその基礎となるものを提供してきた機関だというふうに思っております。ですから、こういう非公務員化ということでありますけれども、そのメリットを十分に生かして今後も発展をしてもらいたいと思っているわけであります。

佐々木(憲)委員 これだけ大変重要な機能を果たしているにもかかわらず、五年前に当時の国税庁醸造研究所を独立行政法人化し、さらに今度の法案では非公務員型の独立行政法人にしようとしているわけです。果たしてそれでいいのかというのが我々の疑問であります。

 先ほど、七条委員は、民営化には反対だ、しかし、非公務員化までは認めるというわけでありますが、しかし、私は非公務員化もよろしくないというふうに思うわけです。五年前に独法化されたときも、我々はこれに批判的でありましたが、独法化された後も、研究所は酒税の適正な賦課を行うための分析、鑑定等をしっかり行ってきたというふうに聞いております。税を公正に賦課し徴収する、そのための基礎となる研究を公務員がやったら何で悪いのか。

 大臣にお聞きしますけれども、これまで公務員が研究してきたことが理由で、公務員だからという理由で、何か不都合な事態が発生しましたでしょうか。

谷垣国務大臣 公務員が研究しちゃいかぬなんということは毛頭ないわけでございまして、今までもそういうことできちっとした研究をやってきていただいた。私どもが先ほどから申し上げていることは、しかし、より民間との、あるいは大学との研究交流等を進めていく場合に、やはり公務員の身分というのは、職務専念義務とかいろいろなものがございますのでなかなか弾力性がない、あるいは、研究費等々をどう使うかというようなことでもなかなか自主性がない、もう少しそのあたりを自由にしていくことによってより研究交流の実が上がるのではないか、そういう中でより成果も上げられるのではないか、こういう思いでございまして、公務員がやったらいかぬなんということは少しも思っておりません。

佐々木(憲)委員 公務員がやったらいかぬということではないというなら、公務員でいいと思うんですね。公務員だから何かおかしなこと、不都合なことがあったかというと、何もないというわけでありまして、私は、公務員だからこそ安定した長期的な研究、基礎的な研究ができるんだというふうに思うんです。逆に、非公務員化ということになりますと、身分が非常に不安定になる、研究基盤がその意味で弱体化をするのではないかというふうに危惧するわけであります。

 法案は、非公務員化で民間との人事交流の促進を図ると。今も盛んにこう言われているわけですが、果たして公務員がやってきたこの研究がどうなるか。それから、公務員の身分で兼業が禁止されているということで、非公務員になるといろいろなことができる、雇用形態が弾力化されるというんですけれども、これは一体どういうことを可能にするということなんでしょうか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 非公務員化によりまして、国家公務員法において規定されております職員の採用の制限や兼業禁止などが適用されなくなるということとともに、国家公務員の勤務条件等を考慮したものとすることとされております勤務時間等につきましても、独法の裁量により決めることが可能になります。

 その結果、例えば、緊急性を要する研究課題について、速やかに専門知識を有する研究者を採用して参加させたり、例えば酒類の安全性の問題とかで起こることですけれども、それからまた、逆に、大学等の要請に応じて、一定期間について研究所の研究者に出向させて研究課題に参加させる。従来以上に人事交流等を弾力的に行うことが可能になるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 緊急性に対応する方法なんというのも、今までもやろうと思ったらいろいろな形ができるわけです。

 この弾力化によって、例えば週三日間は研究所で勤務をする、二日間は民間で勤務するということも可能になるわけで、しかし、職員の給与はどうなるのか。週三回しか保障されないということにもなるのではないか。さらに、三年から五年に期間が限定された任期つき職員、こうなりますとその比重が高まる。効率化を追求するというのはいいかもしらぬが、追求すればするほど職員、研究員の身分が不安定になる、こういう側面を見落としてはならぬと思うんです。

 やはり、酒類の科学的研究、長期的な視野で取り組む、そういう基礎研究ですね、この安全性など、国民にとって必要な研究ですね、この発展にとって、非公務員化というのは私はマイナスに作用するのではないかというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。

竹本副大臣 酒類総研は、基礎的研究でその存在を示してきたところでありまして、しっかりとした仕事をやってきたと思います。

 ただ、時代の流れで、民にできることは民にという流れの中で、これの独立行政法人化を今回図るわけでございます。ですから、非公務員型の新しい形態のもとでしっかりした仕事ができないと本末転倒でありますから、その点はきっちり覚悟しなきゃいけないということでありまして、今回、非公務員化に合わせまして四月一日から開始になります第二期の中期目標期間の中では、研究すべき行政テーマ、調査テーマとして、安全性、環境保全に並びまして、技術基盤の強化ということをしっかりとうたっております。

 したがいまして、この研究所では、直ちに企業利益に結びつかないリスクの高い分野において、民間にゆだねた場合には実施されないおそれが高い基盤的、基礎的研究を中心として業務を遂行していきたい、そのように考えておるわけであります。

佐々木(憲)委員 時代の流れだからそれでしようがないんだというんじゃ、原理原則は一体どこに行くのかという話になるわけです。しっかりとした基礎的な研究ができるようにというのが大事であります。

 今、中期計画とおっしゃいました。二〇〇一年の独立行政法人移行後、財務大臣が三年以上五年以下の期間において達成すべき中間目標を定めて、研究所に対してその実現を指示したということであります。研究所は、この目標達成のための中期計画の実現を迫られたわけで、具体的には、数値目標を掲げて研究の成果が求められたということであります。

 酒類研究所の「酒類総合研究所のあゆみ」というものがありまして、それを見ますと、現場の職員からも、研究開発における成果が未知数であることから両者をいかに両立させるかに苦労した、大変苦労したというふうに吐露されているわけです。

 大臣、この腰を落ちつけた研究というのがやはり必要だと思うんですね。余りしりをたたくようなことはすべきじゃないと思うんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 独立行政法人化の目的の一つが、それぞれの研究機関が自主的に研究をして進めていただくということを意味しておりますので、やたらにその自主性を排除するような形でしりをたたくのはよくないと思います。

 ただ、同時に、五年ごとに中期計画を立てますので、その中でやはり成果を上げていただくような督励をするのは、私は必要なことだろうと思います。

佐々木(憲)委員 研究の成果というのは、今までの実績を見ましても、やはり十年とか十五年とか、非常に長期にわたって研究されたものが成果として上がってきているわけです。そういう観点でぜひ見ていただきたいというふうに思います。

 それから、この独法化されて以後、企業との共同研究、受託研究というのが増加していると聞きますけれども、この五年間の企業との共同・受託研究、どうなっていますでしょうか。平成十二年度と十六年度、この二つの件数を述べていただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 酒類総合研究所における共同研究及び受託研究の件数でございますけれども、独法化以前の平成十二年度におきましては、共同研究が十件、受託研究が三件となっておりました。それから、法人化後になりました十六年度におきましては、共同研究が二十四件、受託研究が六件となっております。

佐々木(憲)委員 こういう形でやっていきますと、外部資金の獲得を目的にするという傾向も強まるわけであります。評価委員会によりますと、外部資金の獲得を評価の対象にしているということなんですね。これが一層強まりますから、商業ベースの研究に比重が傾いて、本来あるべき研究活動から変質していく、そういう危険性もあるのではないか。

 前身の醸造研究所では、民間ベースで対応できない高リスク、高コストの基礎研究を行って、日本の清酒の生産性を向上させる上で大きな役割を果たした。また、従来海洋投棄していたしょうちゅう蒸留廃液の適正処理に役立つ酵母を開発した。そして陸上処理を可能にした。こういうわけであります。ですから、これからもこういうことをさらに発展させていく支えというものが必要なわけであります。

 特に、最初、大臣がお述べになった中小業者、これは圧倒的に多いわけです。清酒製造業というのは従業員十人未満が全体の七二%、そういう零細が多いわけでありまして、また杜氏者の数も、七三年、二千九百六十人だったのが、二〇〇三年では九百八十三人、激減しているわけです。

 ですから、そういう状況のもとでこの研究所の果たす役割は非常に大きい。日本の伝統的文化である清酒あるいはしょうちゅう乙類の中小零細企業の製造業者を守る、そういう方向での具体策を最後に大臣にお聞きしたいと思います。

竹本副大臣 佐々木先生おっしゃったように、杜氏の数も千人切っておるし、この企業形態も十人以下が七割というお話でございますが、そんな人数ではなかなか基礎的研究なんてできるわけがありません。ですから、そういった人たちを助けるために当研究所では基礎的な研究をやるわけですが、それを中小企業に返していくためにはどういうことをやっているかと申し上げますと、まず、酒については全国新酒鑑評会、それからしょうちゅうについては本格焼酎鑑評会、こういう催しをやっておりまして、その審査結果、そこから得られたデータをこれらの中小企業にフィードバックいたしております。

 また、そういう業界ですから新しい人がなかなか入ってくることは少ないわけでございますが、いわゆる新米に対しては、新人の研修もまたこの研究所でやっておる、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 しっかりとこの基礎研究を発展させることと、中小零細業者を支援する、この観点を守っていただきたい。したがって、今回のこのやり方については私どもは反対だということを申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

小野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小野委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました内閣提出の独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案について、賛成の討論を行います。

 独立行政法人酒類総合研究所は、酒類に関する高度な分析及び鑑定並びに酒類業に関する研究、調査及び情報提供等の業務を行うことにより、酒税の適正かつ公平な賦課の実現に資するとともに、酒類業の健全な発達を図り、あわせて酒類に対する国民の意識を高めることを目的とする研究機関であります。

 その研究、調査業務は、酒類全般にわたりますが、酒類業界の共通のインフラとも呼べる酒類に関する基礎的、基盤的研究はもとより、酒類製造業のほとんどを占める中小零細事業者の育成のためには、酒類総合研究所が行う研究調査は欠かすことができないものであります。

 また、同研究所が行う酒類製造技術講習等は、醸造技術の維持向上とともに、世界に誇ることができる我が国の伝統技術を後世に伝承していくために必要不可欠なものであります。

 本法律案は、このような独立行政法人酒類総合研究所について、平成十七年十二月二十四日閣議決定、行政改革の重要方針にのっとり、独立行政法人の組織、業務全般の見直し等の一環として、特定独立行政法人以外の独立行政法人、いわゆる非公務員型の独立行政法人とするとともに、同法人の役職員の秘密保持義務等について所要の措置を講ずるものであり、独立行政法人酒類総合研究所がその業務を一層効率的かつ効果的に行うことができるよう、民間及び大学等との人事交流等の連携を促進することに向けて必要なものと考えます。

 以上、本法律案に賛成の立場を表明いたしまして、討論を終わります。(拍手)

小野委員長 それでは、引き続きまして、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。

 今国会に、政府は、四十四法人、約一万二千人を非公務員化する旨の独立行政法人関連法案を提出してまいりました。本法案はその一つであります。

 政府は、非公務員化が業務運営の効率化につながるとしております。それならば、幾つもの独法の運営費交付金が増額されているのは、全くもって矛盾していると断言せざるを得ません。酒類総合研究所についても、業務運営の効率化がうたわれていながら、十二億八千百万円から十二億七千六百万円と、運営費交付金は横ばいになっております。

 酒類総合研究所については、法人自体の必要性など根本的な観点からはその存在の意義を認めつつも、自律的な組織運営がなされ、運営費交付金が節約されている現状を考えれば、運営費交付金が横ばいであるというのは不自然としか言いようがありません。また、経営、財務の規律という意味でも、組織運営にとって意義があるとは思えません。

 このたびの政府提案は、人事交流に着目した組織の活性化ということを念頭に置いておりますが、小泉総理が掲げる小さな政府を実現したかのように見せかけるために、非公務員化を数合わせ的に利用しているとそんたくせざるを得ません。真の法人改革をなすならば、まずもって、組織を合理化し、できる限り財務の健全化とのバランスを図るべきであり、人事交流というお題目をもって経営、財務が健全化するとは後づけの理屈であり、物事の優先順位がわかっていないと言わざるを得ません。公僕としてまじめに働く職員さんにとってみれば、公務員だと思っていたら、いつの間にか非公務員となっているありさまであり、無意味に現場の士気が低下しかねません。そしてさらに、非公務員化は、天下り隠しの非公務員化になる可能性を十分にはらんでおります。

 民主党は、独法の性格を抜本的に改める環境整備が必要と考えております。独法の現場視察に赴き、きめ細かく業務内容、経営状況を精査して、身を切るところはしっかりと切って、財政健全化、行政のスリム化へと提言をしてまいります。ストレートに、かつビジョンを持って、真に国益に資する独法の整備ができるのは民主党であるということを最後に申し上げて、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)

小野委員長 それでは、引き続きまして、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、反対の討論を行います。

 第一の理由は、行政機能のスリム化、効率化のもとに、研究所職員の非公務員化を進めることは、税務行政と深いかかわりを持つ本研究所に対する国の責任を弱めることになるからであります。

 酒類の分析、鑑定という研究所の業務内容は、酒税を定める際の重要な基礎データとなるものであります。それだけに、より高い公共性や客観性が求められているのであり、本来、国の機関として存続し、その機能を強化すべきものであります。非公務員化への移行は、全くの逆行だと言わなければなりません。

 第二の理由は、非公務員化により職員の身分を不安定にし、長期的視野で取り組むべき基礎研究や酒類の安全性など、国民にとって必要な研究基盤が掘り崩されることになりかねないことであります。

 泡なし酵母の開発と実用化、しょうちゅう蒸留廃液の適正処理など、従来の研究内容は極めて高度で、世界に誇れるものであります。これらは、実質十年から十五年をかけた、いわば腰を据えた研究活動の成果であるとも言われております。ところが、今回、非公務員化されれば、職員の身分は不安定となり、短期間で成果が求められる、効率のよい研究が優先されることとなります。研究所の目的である高度の専門性や、民間ベースでは困難な基礎的、中長期的な研究を進めていく上で、大きな支障となることは明らかであります。

 最後に、独立行政法人化以降、受託研究や共同研究が増加していることも危惧する点であります。財務省の平成十六年度全体的評価によると、「新たに外部資金を獲得したことで増収を図っている。」と、受託研究等に対し重要な評価を与えています。外部資金に依拠した研究活動に比重が傾くと、当然、大手企業などに依拠した研究活動が優先的に進められることも懸念されるところであります。

 今大事なことは、職員数や運営交付金を削減するのでなく、むしろ充実することであります。それでこそ、基礎的研究や独創的な研究が発展し、後継者育成を初めとする中小零細業者への支援も前進することになります。日本の伝統的文化である清酒醸造を守ることにもつながります。このことを強調し、私の反対討論といたします。(拍手)

小野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小野委員長 これより採決に入ります。

 独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時十七分散会


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