衆議院

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第2号 平成18年10月27日(金曜日)

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平成十八年十月二十七日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 増原 義剛君

   理事 宮下 一郎君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤信太郎君

      石原 宏高君    宇野  治君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      小野 晋也君    越智 隆雄君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      大野 功統君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    関  芳弘君

      平  将明君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      長崎幸太郎君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      北橋 健治君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    寺田  学君

      馬淵 澄夫君    森本 哲生君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    糸川 正晃君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   財務副大臣        田中 和徳君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高橋礼一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           御園慎一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   参考人

   (日本銀行理事)     水野  創君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     大塚 高司君

  土井 真樹君     平  将明君

  萩山 教嚴君     宇野  治君

  松本 洋平君     大塚  拓君

  鈴木 克昌君     森本 哲生君

  野呂田芳成君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     萩山 教嚴君

  大塚 高司君     井澤 京子君

  大塚  拓君     松本 洋平君

  平  将明君     土井 真樹君

  森本 哲生君     鈴木 克昌君

  糸川 正晃君     野呂田芳成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事水野創君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房参事官高橋礼一郎君、厚生労働省大臣官房審議官御園慎一郎君、厚生労働省大臣官房審議官白石順一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。

竹本委員 自由民主党の竹本直一でございます。四十分のお時間をいただきまして、久しぶりに質問する立場で立たせていただきまして、本当に機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。

 まず、私はきょうは大きい議論をしてみたいと思います。

 それは、小泉政権五年間の中でやったことはというと、日本社会を世界にオープンにした、つまり共通の社会基盤をつくることに大変努力をした。その結果、世界各国から理解しやすい日本という国になったことは間違いないというふうに思っております。

 さて、その後に登場いたしました安倍政権でございますけれども、「美しい国、日本」をつくるんだ、こういうことを言っておられるわけでありますけれども、美しい国というのは何かというと、このようにグローバリズムの中で世界共通の基盤の一つとして社会構造をつくりましたこの日本に対して、より魅力ある個性を備えつけようというのが美しい国の真意だと私は私なりに解釈いたしております。

 そういう意味で、日本古来持っておりましたいいものはきちっと残さなきゃいけない、全部変えるんじゃない、そして悪いものはやはり国際標準に合わせて変えていかなきゃならない、基本的にそういうことではないかなと私は考えるわけであります。

 そこで、今冷静に考えて、日本は一体どういう国だろうか、どの程度の実力があるんだろうかということを考えますと、そう悲観したものじゃない、むしろ自慢してもいいぐらいのすばらしい国ではないかなと私は思います。

 まず第一に、一人当たり国民所得、これは円・ドルレートによって違いますけれども、大体常に世界のトップクラスであります。

 二番目に、世界一の長寿国であります。女性は八十五歳、男性七十八・九歳ぐらいだと思いますが、このように長寿を享受できる先進国というのは、日本のような国はなかなか世界にないわけでありまして、これは非常に誇るべきことだと思います。

 第三点に、実は、戦後六十一年たちますけれども、一度も戦争をいたしておりません。ですから戦死者が一人もいない。これまた世界史のミラクルだろうと思います。

 ちなみに、アメリカはどうかというと、言うまでもなく、朝鮮戦争で三万三千人死者、ベトナム戦争で五万三千六百人死者、アフガンで三百三十人ほど、イラクで二千八百人死んでおりますけれども、実は、負傷者が二万人おりまして、うち九千数百名の重傷者を持っております。大変、国民にとって少なくとも幸せとは言えない状態だろうと私は思います。

 こういうアメリカと比較して、日本は非常にすばらしい、だれ一人犠牲者を出していない。これは、自民党を中心として、そして今は公明党と手を組んでおりますけれども、こういった戦後の政治、日本の政治はふがいないとよく言われますけれども、私は、決してそうじゃない、世界のGDPの十数%を生産している国がこのように一回も戦争をしないで、そして国民を幸せにしてきた、この事実はやはり我々自身が自信を持って正当に評価すべきではないかなというふうに思います。

 そして、いろいろ問題はありますけれども、ある意味では立派になったこの国、ではこれからどうなるかということをちょっと考えてみたいと思うわけであります。ここは財務金融委員会でございますので、主としてその面から分析をしてまいりたい。

 かつて日米機関車論という議論が交わされたことがありました。二十年前後の昔だと思いますけれども、このときは、アメリカのGDPが二五%ぐらい、約四分の一、日本が一五%ぐらい、足して四割のGDPを生産しておりました。ですから、日米が力を合わせればしっかりと世界経済を支えることができる、こういう意味合いもあったと思います。

 今はどうかといいますと、実は、足して、日米合わせて四〇%という現状は変わらない、しかし、内訳が大きく変わっております。アメリカは、世界GDPの二九・数%生産しております。ところが、日本は一一%と低下をしておるわけであります。

 日本一国だけとりましても、かつては世界GDPの一六・数%まであったときがあるんですけれども、今申し上げたように、現在は一一%。このように世界経済における日本のプレゼンスが大きく下がっていることは非常にゆゆしいことではないかと私は考えております。

 確かに、長い間のトンネルを越してまいりまして、やっと経済成長、希望の灯が大きくともりました。しかしながら、世界から期待される日本の経済力という意味で、この現状について、尾身財務大臣、どのように分析しておられるか、そしてそれに対する対策としてどういうことを考えておられるか、まずこの一点をお聞きしたいと思います。

尾身国務大臣 竹本委員のおっしゃるように、日本の世界全体の経済の中での比率が下がってきていて、かつて一五、六%であったものが一一%程度になっているというのも事実でございます。その反面、中国を中心とする新興市場国が伸びてきたということもございますし、それからアメリカもかなり健闘をしておりまして、二八%というような比率のシェアを持っているわけであります。

 ここ十数年にわたって、いわゆるバブル崩壊後の日本経済は大変苦難の時期を経てきたわけでございまして、それがようやく小泉改革を進める中で活力を取り戻しつつあるというのが私どもの実感でございます。これから日本は経済の面であるいは科学技術の面で世界に貢献する国として頑張っていかなければならない、そのように考えているわけでございます。

 財政の状況はもう御存じのとおり大変に厳しい状況でございますが、しかし、この安倍政権におきましては、成長なくして財政再建なし、つまり経済と財政は両立していく、車の両輪として発展もしていくという考え方のもとに、これからの財政再建、経済の活性化を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございまして、私どもも、イノベーションの促進やあるいは生産性を高める、そういう方向でこの日本を美しい国、力強い国にしていきたいと考えておりまして、この点については基本的な認識は竹本委員と同じだと考えております。

竹本委員 さて、その日本の経済的実力の面でございますけれども、確かに八百兆円近い借金をしております。そして、大変な国債を抱えております。ところで、その国債の保有者はだれかといいますと、ほとんど九五%を日本国民が買ってくれているわけであります。これをどう評価するかということなんです。

 実は、財務省は、昨年でも、ロンドンあるいはニューヨークに、IR、説明会を開きまして、日本の国債を買ってくれという努力をしております。それはそれとして、実は、日本の強みは、日本の政府の借金を日本の国民が持ってくれているから、ある種の安心感があるんではないか。もしこれがほとんど外国であれば、ちょっと経済情勢が悪くなると、さっと国債を売る。そうすると、ある種の取りつけ騒ぎになってしまう。そういうことは、少なくとも日本の国民が持ってくれておれば、まず起こり得ない話だろうと私は思います。

 確かに、経済的行動では、このグローバリズムの中で海外の投資家も日本の投資家も同じだという説はありますけれども、やはりそこは違うんじゃないか。そうなりますと、外国人の投資家に日本の国債を余り持たせることは必ずしもよくないのではないか。

 アメリカは基軸通貨国ですから、四八%と五割ぐらい大体持っております。ドイツなんかもそうですが、あそこはユーロをつくっておりますので、EUをつくっておりますので、これまた別の事情がある。日本は単独の国でありますから、やはり今は五%ぐらい外国人投資家が保有しておりますけれども、このほとんどを日本の国民が持ってくれている、そのうちの二割余りが郵貯だと思いますけれども、これは大いに誇示すべき。先ほど言いましたように、いいものは残し、悪いものは捨てる。こういう意味におきまして、日本のこの誇り得べき、日本のセキュリティーを考えた場合においても大事な仕組みではないかと私は思います。

 そういう意味で、これについての財務大臣の御所見をお聞きしたいと思います。

尾身国務大臣 私ども、日本の国債の中で五%程度が外国人に保有されている、そしてこれはほかの国と比べて率としては低い水準にあるというふうに理解をしております。そういう中で、日本経済のグローバリゼーションを進める中で、国債の保有につきましても、できるだけ広く、日本国民だけではなしに世界の方々にもこれを保有していただくようにということが大変大事だというふうに考えております。

 さはさりながら、今、竹本委員のおっしゃりますように、外国のいわゆる短期的に売買をするような方に日本の国債の保有を大きく依存するというような状態になりますと、非常に国債についての不安定さが増すということで、長期的な保有をしていただくような国債保有の国際化、各国の方々に保有をしていただくということが望ましいというふうに考えておりまして、そういう中で、各国に日本の経済の状況、財政の状況等の説明をして、幅の広い国債保有をグローバリゼーションの中で進めていきたい、かつ安定的な保有者の保有を進めていきたい、このように考えている次第でございます。

    〔委員長退席、増原委員長代理着席〕

竹本委員 ですから、日本の国情を考えて、あるいは他方においてグローバリズムという現実も考えながら、やはり適切な率ということを一応想定して対策を練られるのが一番いいのではないかと思います。

 ちなみに、イギリスは二五%ぐらい海外所有でありますが、ここも、日本とはちょっと違うのは、大変な、かつての植民地国をたくさん抱えておるということもあります。ですから、日本のように、植民地もない、ほんの一国でこれだけの成長を遂げている国がどの程度他国に依存していいかということは、慎重に考えていただくべきではないかなというふうに思います。

 外国で国債を広げるのにドル建て国債をという話はよく聞きます。メリットもあるしデメリットもあると思いますけれども、外国で国債を伸ばそうというのであれば、ドルの方が親近性があるから、当然国債を買う人がふえてくるだろうと思います。しかし、他方、デメリットも恐らくあるんだろうと思いますが、そういった総合的な対策を望むところであります。

 三番目にお聞きしたいのはODAに関することであります。

 日本は一九九〇年から二〇〇〇年まで、世界に対するODAの拠出が常にトップでありました。二位がアメリカであります。二〇〇一年から二〇〇五年まで、これは二位であります。特に、最近は、イラク戦争で、アメリカが巨額の、これはODA換算しておりますから、どっと出ておりますので、とても日本は追いつかないわけでございますが、いずれにいたしましても、日本はODAの巨大な拠出国であるというのは事実であります。

 ところが、世界の人はそういうことをほとんど知らない。ほとんど知らない。私は国際会議あるいは議員連盟の会合等でのいろいろな会合にちょくちょく出かけていくんですけれども、本当に知らないんです。ですから、もう少し、日本の国民の血税を集めてそれをODAとして世界に出しているんであれば、ぜひとももっとしっかりとしたPRをしなきゃならないんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 そういう意味で、これは外務省に聞きたいんですけれども、昨年一年間でもいい、過去三年間でもいいから、いわゆるODAを相手国に渡すセレモニーあるいはサインをするそういう式典に、どの程度閣僚あるいはそれクラスの人が出席したか、ちょっと数字がわかればと言ってありましたけれども、ちょっと簡単に言っていただきたいと思います。

高橋政府参考人 委員御指摘のとおり、国民の血税を集めてやっておるODAでございます。そのODAの実施に当たりましては、これは日本からの援助であるということが被援助国の国民の皆様に周知されることは極めて重要だと思っておりまして、そういう観点から、署名式ですとかあるいは供与式ですとか、そういう行事に我が国の総理あるいは閣僚、高いレベルでの御臨席を得ることができれば、非常に大きなPR効果があるというふうに思っております。

 御質問の実績でございますけれども、例えば、総理あるいは外務大臣のことを申しますと、過去三年間、平成十六年から十八年の九月までに、総理がこういった式典に御出席されたのが四件、外務大臣が御出席されたのが十件、これは外国での式でございます。このほかにも、ちょっと統計はございませんけれども、外国要人が来日した機会をとらえて、いろいろな交換公文の署名ですとか、そうしたセレモニーへの出席を総理あるいは外務大臣にお願いしていることはございます。

 それから、外務大臣以外の閣僚につきましても、例えば最近の例で申し上げますと、本年の九月に中川前農林水産大臣がケニアに行っていただきましたときに、同国の無償資金協力関係の案件の交換公文の署名式に御臨席をいただいたようなこともございました。

 今後とも、御指摘のとおり、関連行事への閣僚の皆様の御臨席を含めまして、いろいろな手段を通じまして、さらに広報に努めてまいりたいと思っております。

竹本委員 ぜひ強力にそれを推し進めてもらいたいなと思います。

 小泉さんも、総理を退かれたので、多少時間があると思いますので、世界で最も有名な日本人ですから、ぜひ重立ったところにはお出かけいただくように工夫をしたらいいんじゃないか。きょう、実は、外務大臣にこのことも言いたかったから申し上げたんですけれども、何かほかの委員会と重なっているようで御出席願えませんが、ぜひきっちりとお伝え願いたいと思います。

 ODAというのは、この不況のさなかずっと国民が血税を出してきたわけであります。ですから、有効に使っていただかなきゃいけないというのは当たり前の話でありますが、実は、私は選挙区が大阪でありますから、関西空港、これはつくるのに一兆四千億ぐらいかかりました。ところが、対岸に上海空港、滑走路五本の上海空港ができている。これに四百億円の借款を出しております。当時、物価が三十分の一でありますから、四百億というから一兆二千億、約関空一本つくるだけの金であります。

 そして、それはそれでいいんですけれども、実はその結果としてどうなっているかというと、向こうの空港の方がでかくて便利だ、だからハブ機能を全部上海に持っていかれている。敵に塩を上げるということわざがありますけれども、上げ過ぎているんです。ですから、この辺は内政と外交の関係をきちっと考慮した上でODAなりあるいは借款を出す判断をぜひしてほしい、内政と外交の一体的判断というのがこれほど求められるいいケースはないと思います。

 ちなみに、北京空港にも三百億円、先ほどの三十掛けると約一兆円、こういうことになるわけでありますから、よく考えてもらいたいなというふうに思うわけであります。

 それから、ODAをどれだけ出しているかという話なんですけれども、九月の中旬に中国でダボス会議というのがございまして、私、当時外務副大臣だった塩崎さんと二人で別々の会合に出たわけでございますが、そのときに私は申し上げました。

 実は、中国は毎年一〇%の成長をしておるけれども、その裏には、例えば、昨年だけでも支払いベースで、日本政府から一千五百億円、アジ銀から一千五百億円、世銀から一千億円、足して四千億円の金が中国へ渡っているわけであります。そういう投資をもとに、あの広い中国市場で物をつくり、それを売り、そして中国は経済成長を遂げている。ですから、中国だって、偉そうなことを言ったってその成長はこういった支え棒がないとできないわけであります。私はそれを申し上げました。そうしますと、ほかの国の人たちは、いいことを言ってくれたと。みんな知らないし、ああ、そんなんだったのか、こういう感じであります。

 ですから、日本と中国、これはもう一衣帯水の国というような古い言葉がありますけれども、アメリカのフォーリン・アフェアーズで、日米中は戦争できない関係だという論文を、ある学者が書いたのを読んだことがあります。まさにそういう関係であります。戦争できない関係であればできるだけ仲よくしなきゃいけないが、その前提として事実をリアルに相手に伝えることが必要であります。ですから、日本はもっとやっていることを自慢、自慢するというと変だけれども、はっきりと相手に言うべきじゃないかなというふうに思うわけであります。

 そういうことで、このODA、何も無駄遣いしているわけじゃないんですけれども、相手に感謝されないような状態で国民の金を使っているとすれば、それは国税の無駄遣いになっていると私は思うわけであります。そういうことを申し上げたいというふうに思います。

 海外関係のことの次に聞きたいのは、実は、皆さん方思いは同じだと思いますけれども、日本国内経済の状態であります。

 大企業は大変景気がいい、八割以上は大変な好決算を出しておる。ところが、中小企業は全然そうではない。一部にはいいのはあるけれども、やはり全体としては悪い。私の大阪でも、やはり中小企業はまだ悪い。

 ところが、きょう山本大臣おられるけれども、この間、去年でしたかね、高知へ行きました。はりまや橋へ行ったら、商店街がほとんど閉じている。ほとんどじゃない、まあ四割ぐらい閉じている。ここの代議士何しているのかなと言いたくなるような、そういう状況でありました。

 ですから、私は同じ日本国民の同胞として、中央あるいは大都市はいいが地方が悪いというこの現実を何とか救ってあげないといけないんじゃないか。それが日本人の、冒頭申し上げました、いいものは残す、悪いものは捨てる、いいものは残すところに互助の精神ということを国政の上でも実現しなきゃいけない。

 では、手っ取り早くどのようにすればいいかというと、実は数字を見ましても、北海道が有効求人倍率〇・六ぐらい、最近ちょっと上がってきまして〇・八ぐらいになっているのかと思いますが、高知も〇・六ぐらいだったものが今〇・八ぐらいに上がってきております。急速によくなってはきておりますけれども、まだ、名古屋とかこういったところは有効求人倍率が二・五、六%あるわけです。ですから、約三分の一しかないわけですね。特に、八月統計見ましたら青森が一番ひどい。いまだに〇・六の有効求人倍率で、飛び抜けて悪いんです。ですから、こういうところは、へこんだところがあるというのが現実でありますから、ここにもう少し景気の光を当ててあげなきゃいけない。

 その一つの手段として、今度五カ年の国の債務削減計画をつくりましたけれども、もちろん枠ははまっておりますが、その中でも地方に公共事業を、景気対策という意味で、地域浮揚効果をもたらすという意味で、その大きい枠の中からそこに出してやるということがやはり必要なんじゃないかと私は思うんですが、田中財務副大臣、いかがでしょうか。

    〔増原委員長代理退席、委員長着席〕

田中副大臣 竹本先生は先般まで財務省の副大臣をお務めでございまして、その直後の副大臣が私でございまして、今後とも御指導のほどよろしくお願いしたいと思っております。

 もう政治家として、実際に日本全国いろいろとお仕事で回っておられて、肌で感じたこと、多くの皆さんの御意見、さらに、同じ地域でも大企業と中小企業の格差等々、いろいろと今御指摘があったわけでございますけれども、私も全く同じ感覚を持っております。

 今お話ありましたように、失業率、有効求人倍率等々の改善については、確かに数字ではあらわれておりますけれども、地域によって大きな格差があることも事実でございます。私たちもそういうことをやはりしっかり受けとめて、細かな政策をきちっきちっとやっていくことが重要だろうと思います。

 もう御案内のとおりでございますけれども、構造改革特区あるいは地域再生、都市再生、中心市街地活性化、観光立国、これらのことを進めてまいりますし、また、頑張る地方応援プログラムも来年度からやってまいります。

 今公共事業の御指摘があったわけでございますが、その地域地域によって状況が違うと思いますけれども、やはり国民にとって極めて緊急度の高い、しかも重要な施策というものは積極的に推進をしていかなければならない、これらのことは総合的に十分に考えて、勘案をして対応していかなければならない、このように思っております。

竹本委員 要は、最後におっしゃったとおり、地域の実情に沿った対応をとるということが大事だと思いますけれども、地域再生について、あるいはいろいろな努力をする自治体は確かにあります。それに対して助成をし、助けてやることは大事なんだけれども、その努力さえできないところが実はあるわけです。そこに対して最低限何がしかのことを、手を打ってやる必要があるんではないかということで私はそういう御提案を申し上げたわけであります。

 次に、金融論に移ります。山本大臣、よろしくお願いします。

 実は、冒頭尾身大臣に御質問しましたのと同じ視点でございますけれども、私、三十数年前にカリフォルニア、アメリカにおりました。そのときには、加州住友銀行、加州三和銀行、三菱銀行等々日本の銀行がたくさんありまして、たしか三和銀行なんかは百十店ぐらいの店舗を持っていただろうと思います。この間カリフォルニアに行ったら、ほとんどありません。三菱がかすかに残っているだけであります。ことしニューヨークへ行きましたら、ニューヨークに支店を持っている銀行は八つと言っておりました。かつては六十ぐらいあったと思います。このように、何か人が少なくなったから非常に寂しい思いがするわけであります。

 日本の経済力は、先ほど申し上げましたように世界GDPの十数%でありますから、それに相応するような銀行が存在してもおかしくはないというふうに思います。ただ、バブル崩壊後の不良債権処理に忙殺されまして、そのことばかりが念頭にあり、海外の展開ということは二の次にされたのではないかなというふうに思いますし、海外に店舗を出していることがむしろ無駄であるというような判断をされたところもあるんだろうと思います。しかし、世界の主要先進国の一つとして、日米機関車論ではないけれども、しっかりとした世界経済の支えになるためには、もっと日本の銀行の存在感が高まってもいいのではないかというふうに思うわけであります。

 これについて、金融担当大臣、現状認識は同じ、思いも同じだと思いますけれども、考えられる対策としてどんなものがあるか、ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 邦銀の海外業務については、バブル崩壊後、不良債権の問題、経営統合の問題、それに伴いまして、海外支店の数や資産残高というのは御指摘のとおり、急激に減少しております。けれども、昨今の経済環境の好転から、業況改善、不良債権処理の進展、そういうことから考えますと、メガバンクの財務内容というのは、ほぼ欧米の主要行と比べましても遜色のない水準まで達しております。

 また、日系企業の海外進出、そしてまた現実の投資、これが活発でありまして、最近は、メガバンク中心に新たな海外拠点の設置も図られておりまして、邦銀の海外支店の貸出金額等もかなりの増加がございます。

 今週も天津から市長さんがおいでになりまして、新しい金融の拠点づくり、アジアの拠点づくりをしたいということでありますけれども、メガバンクはもとより、その天津に日本の邦銀の地方銀行もかなりの数、出店をしております。

 そんなことを考えましたとき、財務状況の回復に伴いまして、みずからの経営戦略に応じた海外業務展開を進めていくことが望ましいと思いますし、その際には、金融庁といたしましては、これら各行が強固な法令遵守体制や内部管理体制を構築した上で、業務運営に必要な経営資源を確保しつつ、海外市場における金融ニーズの的確な把握とそれらのニーズにこたえる金融サービスの提供を期待するところでございます。

竹本委員 おっしゃるように、そういう動きは確かに出てきております。

 ただ、幸いなことに、三大メガバンク、それぞれ公的債務を解消しましたので、これからいよいよ本格的にそういった業務に展開を強化していくことができると思いますが、そこで、ちょっと考えますのは、やはり世界のメガバンクがどういうことをやっているか。それは重々わかっているんだと思いますけれども、なぜ海外でできて日本でできないことがあるのか。

 その一つとして、預金の入金、出金、これが日本の銀行は全部、時間制限があります。朝九時から夜六時ぐらいまでしかできない。ところが、例えば、名前を挙げましてあれですけれども、シティバンクなんかは二十四時間入出金ができる。外国でできてなぜ日本ができないのか。外国でできることと同じことを日本の銀行がやらないと、グローバリズムのマーケットでは勝つわけにいかない。その辺が、何でそういう状況になっているのかというふうに思うわけであります。

 二、三の邦銀に聞いてみましたら、やはり、それはセキュリティーの面で大変なコストがかかる、だからやれないと言うのですけれども、私は、それだけではないのではないか。これから日本経済の支え役として邦銀の世界的な活動を支援するという意味で、何がしか知恵がないのかなというふうに思うわけですが、山本大臣、いかがでしょうか。

山本国務大臣 最近では主要行でも二十四時間の入出金ができるサービスも行われているという行もございます。そんなことを考えますと、今後、やがて国際基準、国際市場に向けられた新しい制度インフラ、そういったものが整備していきますと、だんだんに伍して戦えるような環境になってくるだろうというように思っております。

 いずれにいたしましても、各行の経営判断、努力、そして金融サービス、商品等の開発等にかかってくるだろうというように思いますので、その点において、議員とまた工夫を重ねていきたいというように思っております。

竹本委員 証券市場の問題に移ります。

 金融のグローバル化との関連で、証券市場の国際化ということが大きい課題になっております。IT技術の急速な進展によりまして、日本の国内だけで株の売買をやる必要はない、ニューヨークにも株を出す、そして、そういう動きがどんどん加速しておるわけでありますが、毎日三百兆円の金が地球上を回っていると言う人もおります。そういう状況の中で、日本の証券市場は果たしてこれでいいのかなという感じを、非常に意を強くするわけであります。

 実は、新聞でも報道されておりますとおり、ニューヨーク証券取引所、NYSEは、アーキペラゴ取引所と合併をいたしまして、より大きい取引所となりました。そして、それだけではとどまらず、ヨーロッパのユーロネクスト、これはフランス、オランダ、ベルギー、ポルトガル、こういったところの市場を統括しているところでございますが、そこと経営統合の合意をいたしております。ですから、米欧合体の大きい取引所ができるわけであります。

 このユーロネクストに対して、今度は、ドイツ証券取引所が経営統合の提案をして、これは合意に至らなかった、こういうことでありますし、また、ロンドン証券取引所は、ユーロネクストに対して経営統合の提案をいたしましたけれども、これはけられている。こういうことで、いつ日本の証券取引所に、ユーロかあるいはニューヨーク・ストック・エクスチェンジの方かどこかわかりませんけれども、そういったところから経営統合の提案があって全然おかしくないんじゃないかなというふうな状況が証券業界における現状であります。

 株というのは、売りたいと思ったときには必ず買ってくれる人がいる、買いたいと思ったときに必ず買いたい株がある、そのためには規模を大きくしないと、そういうことができないわけでありますから、こういった統合の話が当然出てくるわけであります。

 ことしの四月ですか、ニューヨーク証券取引所のキニーといったかな、女性の社長に会いましたけれども、彼女は、日本の証券取引所の今後の展開ということに非常に強い関心を持っておりまして、加えて、後ほど少し触れたいと思いますけれども、郵政の民営化に伴ってこの三百二十兆円というすごいお金がマーケットにいつ来るのか、こういったことに議論が移ったことをよく覚えております。

 このように、世界は、日本の証券市場、そして日本のファンドを注意深く見ておりまして、それに対して、もし、そういう動きがあればどうするかということも一方で考えながら、証券市場のマーケット対策を講じておく必要があるというふうに思いますが、これについても、山本大臣、ちょっと御所見をお聞きしたいと思います。

山本国務大臣 委員御指摘のとおり、欧米各国、ニューヨークのグループとユーロネクストは既に経営統合の合意がございますし、また、ドイツとユーロネクスト統合の提案がございます。さらに、アメリカのナスダックとロンドンの証券取引所、ここも統合提案がございます。

 そういうようなことを考えますと、この国際証券市場というのは、競争力を強化しなければなかなか難しいというように思っております。そんな意味で、我が国の証券取引所がこういった世界各国の動きに乗りおくれてはならないという御指摘はそのとおりでございます。

 そうした競争力を高めていくためには、活力ある金融資本市場を形成するとともに、情報開示の充実や市場仲介機能の適切な発揮等を通じて、投資家から信頼される公正、透明な市場を確保することがまず第一の要諦だろうというように思います。

 また、貯蓄から投資への流れを加速いたしまして、我が国の市場が内外の資金供給を通じた経済発展に貢献するため、ことしの六月に成立いたしました金融商品取引法制の適切かつ円滑な施行に取り組むなど、引き続いての制度インフラの整備が必要だろうというように思います。

 また、法制面での整備に加えまして、我が国経済の重要なインフラの一つである証券取引所市場の円滑な運営と国際競争力の強化のため、世界的に最高水準の証券取引所システムの構築等についても、関係者と今後連携をさらに強化しつつ取り組んでまいりたいというように思っておりますので、御指導をよろしくお願いいたします。

竹本委員 要は、国際化の動きの中で、日本の市場が理解され、そしてアクセスしやすい市場と評価されるためには、ルールを明確にし、そして、それに対して違反した場合にはきっちりと処分をする、措置をとる、こういうことが大事だと思います。

 そういう意味で、最近、金融庁が、ルールを逸脱したところに対しては適切に厳しい処分をしておられるのは私は高く評価したい。財務局が、いろいろ税の解釈によって、いろいろな企業から税の適正な措置をして追徴しているというのも大変な努力だと思います。

 このように、ルールはみんなで守る、守らない場合はペナルティーがある、そういうことさえはっきりすれば、世界の投資家は日本にもっともっと入ってくるだろうというふうに思いますし、世界の投資家を日本に呼ぶということが、これまた小泉政権の一つの大きい哲学的な考え方であったんだというふうに思うわけであります。

 そこで、先ほどちょっと触れましたけれども、郵政民営化の問題であります。

 実は、来年十月からいよいよ民営化のスタートを切ります。平成二十九年十月で完全民営化ということでございます。来年以降四年目に、民営化の具体的な、要するに株式の売却ということだと思いますけれども、それをやりまして、約五年間ぐらいでそれを終えたいという計画を聞いておりますけれども、先ほど言いましたように、このことが海外の投資家から見て大変な興味を持っておられることであります。

 そこで、それはそれとして、郵貯は三百二十兆円というばかでかい預金量であります。日本の総預金量の四割ぐらいを持っているんだろうと思いますが、それが今度、今まで総務省の監督にありましたものが、銀行法、保険業法等に基づく金融庁の監督下に移るわけであります。そうしますと、今の金融庁の体制でそれがうまくこなせるのかなとちょっと心配になるわけであります。人数も足らないかもしれませんし、あるいは、郵貯の投資家というのはごく普通の一般国民であります。ですから、普通の銀行に対して相当数のお金を預金している人たちとはまた違うところがあるのではないか。

 そしてまた、郵貯は、先ほど言いましたように、国債をたくさん買っております。それが日本の経済運営の安定の装置にもなっていたわけであります。それを民営化するわけですから、自由な判断でいいといえばいいんですけれども、さりとて、日本経済の頼りどころにしておく必要もこれまたまだないわけではない。そういうことになりますと、単に金融監督ということだけで純粋にやっていいのかどうか、ちょっと私は戸惑いを感ずるんですが、その辺、いかがでしょうか。担当大臣、お願いします。

山本国務大臣 郵政民営化法によりまして、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、これが十九年十月から銀行法上の銀行、保険業法上の保険会社ということになるわけでございます。

 金融監督当局といたしましては、二社についても、他の民間金融機関と同様の監督を行うこととなるわけでございます。したがって、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険につきましても、民営化当初から、民間金融機関としての業務遂行能力、業務運営体制が要求されることになります。具体的には、第一番に、適切なガバナンス、経営管理が行われているかどうかの判断をさせていただき、二番目には、適切なリスク管理が行われ財務の健全性が確保されているかどうかということでございますし、三番目には、コンプライアンス面を含めて業務の適切性が確保されているかということを見させていただこうというように思っております。

 そして、民営化につきましては、郵貯、簡保事業が民間金融システムの中で混乱を起こすことは一番避けなければなりませんし、また、うまく溶け込むことによりまして、日本の金融システム全体としての安定と活性化、これに寄与できるだろうというように思っております。

 こうした観点から注視していきたいと思っておりますので、なおよろしくお願いいたします。

竹本委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいというふうに思いますけれども、いずれにしろ、この郵貯の民営化というのは、単に国内経済のみならず、世界経済から大変な注目の的であることを再認識して対策を講じていただきたいし、それに対して万遺漏のないように、特に国内市場、他の民間企業とのフリクションを余り起こさないように、そしてまた世界から十分理解されるように体制を組んでいくことが必要であろうかと思います。

 アメリカ経済が、IT産業と住宅産業の二つの柱でずっと十数年好況を維持してきました。最近、アメリカも住宅需要がちょっと落ち込んでまいりましたけれども、先行きに対するいろいろな見方がありますが、今のところ、株価を見る限り、景気は割合堅調なような様子でございますけれども、日本経済はまさに世界経済の中に存在するわけでありますから、いろいろなツールを総合的に監視しながら、適切な判断をこれからも続けていっていただくよう最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 両大臣におかれましては、就任まことにおめでとうございます。特に山本大臣は、私、財務副大臣として御一緒させていただきましたので、我がことのようにうれしゅうございまして、ぜひ御活躍を御期待申し上げたいと存じます。

 まず、大きな問題から質問させていただきたいと思います。

 安倍内閣においては、成長なくして財政再建なし、こういう理念を標榜されておりまして、経済成長政策に重きを置かれているわけでございますけれども、それも、かつてのように公共投資で刺激をするということではなくて、民間需要中心の経済成長ということになろうかと存じますが、この民需中心の経済成長を促すために、財政、税制、金融面でそれぞれどのような施策を講じられていくのか、両大臣からお伺いをいたしたいと思います。

尾身国務大臣 成長なくして財政再建なしというスローガンのもとに、経済の活性化と財政の再建は両立をする、また両立をさせていかなければならないということで、これからの経済財政運営を進めていくというのが安倍政権の大きな方向であろうというふうに考えております。

 基本方針二〇〇六におきまして、国際競争力の強化や生産性の向上などを図りつつ、経済を活性化させ、そして地域についても十分な目配りをしながら財政再建を進めていく、特に十九年度につきましては厳しい歳出の縮減を徹底していかなければならないと考えておりますが、経済と財政は両立をする、そういう考え方のもとに進めてまいりたいと考えております。

山本国務大臣 我が国の金融システムをめぐる局面は、これまで日本経済の足かせとなってきました不良債権問題の正常化を達成し、今後は、金融機関がみずからの責任と判断で適切にリスクをとって金融仲介を行い、資源の適正配分機能を果たしていくことが重要になってきております。また、活力のある公正、透明な金融資本市場が形成され、市場を通じた円滑な資金供給が図られることが我が国経済にとって不可欠であると考えております。

 金融庁といたしましては、こうした動きを後押ししていくために、金融のイノベーションを促し、利用者の視点に立った金融の活性化を進めるとともに、金融商品取引法制の適切かつ円滑な施行など、制度インフラの整備を図っていきたいと思っております。

 特に、金融で生産性が向上できるかという先生の御指摘は重要であろうと思います。産業革命の後にまた情報革命があったり、いよいよイノベーションということで経済が大きく成長するだろうというように確信しております。その意味におきましては、金融イノベーションの実現ということが何より不可欠でございます。特に、リスクを適切に評価する金融の促進、そしてイノベーションを支えるリスクマネー供給の拡大、こういったことが重要であろうというように思っております。

石井(啓)委員 では、続いて、具体的な問題に入らせていただきますが、まず十九年度の予算編成でございますけれども、方針としてはめり張りをきかせた上で厳しい歳出抑制を堅持するということでございますが、めり張りの点で特に重みづけをしていくという点に関しては、安倍内閣の目玉政策の一つである再チャレンジ支援策ということは従来以上にしっかりやっていく、特にこれは概算要求時点では入っていなかった政策ですから、今後の予算編成に当たっては、この再チャレンジ支援策、しっかりと取り組んでいくということになろうかと思いますけれども、私はそれに加えて、少子化対策についても、これはぜひ重点的にお考えをいただきたいと思います。

 言うまでもなく、昨年から日本はいよいよ本格的な人口減少社会に入った。このまま出生率の低下を放置していけば、これは社会の存立基盤すらだんだんと失われていくというような事態でもございますし、また、今進められている社会保障制度改革に当たっても、やはり担い手となる現役世代、支え手をいかにふやしていくかというのが中長期的に大きな課題でございますので、この少子化対策ということもぜひ重点的にお考えをいただきたいと思いますが、財務大臣のお考えを伺いたいと存じます。

尾身国務大臣 再チャレンジの問題につきましては、いわゆる敗者がそのまま固定することはない、チャレンジをする機会をあらゆる人々に与えるということで、安倍政権の大きな目玉であるというふうに考えております。

 また、少子化対策につきましては、人口減少社会と言われておりますが、人口問題研究所の予測によりますと、このまま放置すれば百年後には人口が六千四百万と半減するというような見通しもあるわけでございまして、私は、そのようなことを絶対に許容するわけにいかないと考えておりまして、この少子化対策は国、地方、あるいは企業等が一体となって取り組まなければならない大変大事な課題であると考えております。

 そこで、ことしの九月に安倍政権が発足をいたしまして、各関係省の予算の要求は八月の末、九月の初めに行われたわけでございますが、新しい政権が発足したことに伴いまして、今のような再チャレンジとかあるいは少子化対策など、安倍政権の柱の政策につきましては、その後各担当の省庁から御要望があれば財務省としては前向きに受けとめますよということを先日も閣僚懇談会の席で申し上げたわけでございます。

 もとより、全体の厳しい財政縮減をするという基本的な方針は変えませんけれども、しかし、新しい政権に伴って、大きな課題として、特に取り上げるべき課題として浮かび上がってまいりました再チャレンジあるいは少子化対策につきましては、関係者の御意見を伺いながら、しっかりと頑張ってまいりたいと考えている次第でございます。

 また、少子化対策につきましては、特に予算のシーリングの際に児童手当に係る経費等の扱いについては予算編成の過程で検討するということになっておりますが、私どもとしては、財源の確保と合わせまして、今後検討してまいりたいと考えている次第でございます。

石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 続いて、日銀の金融政策についてお伺いしたいと思いますけれども、この八月に消費者物価指数の基準改定というのがございました。これは当初、ことしの年初ぐらいには、前回の改定のとき〇・三%ポイント程度下がったんですけれども、〇・一ないし〇・二ぐらいではないかという予想がございました。その後、この春になって、前回並みぐらいかな、〇・二ないし〇・三%ぐらいの低下ではないかなという予測がされていたわけですけれども、実際にふたをあけてみますと〇・五%ポイントも下がったということで、予想外の指数の低下であったわけでございます。これによりまして、消費者物価の中で生鮮食料品を除くコア物価指数は〇・三%ぐらいでプラスを維持しましたけれども、エネルギーを除くいわゆるコアコアと言われている指数についてはマイナスになってしまったということで、これは非常に重要な事項だというふうに思っております。

 したがって、私は、今、日銀の追加利上げ等も云々されておりますけれども、今後の景気、物価動向を見きわめて、ぜひ慎重に金融政策、対応していくべきだというふうに考えておりますが、まず財務省の御見解を伺いたいと思います。

田中副大臣 私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。

 石井先生は副大臣の時代に日銀を担当しておられた、こういうふうに承っておりまして、今度は私が担当いたすことになりまして、どうぞひとつよろしく御指導のほどをお願いしたいと思っております。

 本日朝、総務省から発表されました消費者物価指数も、今先生からお話ありましたように、やや下がりぎみの傾向でございまして、コアの指数は八月の〇・三から〇・二になりました。私も先生と全く意を同じにするものでございまして、努力をしていくことが非常に政治的にも重要である、このように思っております。

 金融政策については、言うまでもありませんが日銀の所管でございますけれども、財務省としては、インフレ懸念が見られない現在の状況では、景気回復を持続的なものにするために、経済を金融面から引き続きしっかりと支えていくことが一番重要だ、このように思っております。特に国民生活あるいは経済全体に目配りをしてまいりたいと思っております。また、日銀が政府の経済政策と整合的な適切な金融政策の運営に努めていくように、当然のことながら日銀と連携を密にしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

石井(啓)委員 金融大臣、直接の御担当ではないと思いますけれども、何か御感想、御意見があれば。

山本国務大臣 石井委員のお話は、マイナスというメッセージが経済に与える影響への懸念というような問題意識であろうというように思っております。日銀法三条で日銀の自主性は尊重されなければならない、他方、四条では常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないというようなやりとりの中でどう考えるかという御指摘であろうというように思います。

 特に消費者物価指数というのは全国の世帯が購入する財やサービスの価格の平均的な変動を測定するものであって、そういうような意味におきましては家計のいわばあからさまな実態、そういう分析の中での評価でございます。ただ、これは五年に一回の改定で、ことしの八月の改定があったわけでありますが、現実には〇・四ポイントから〇・六ポイント下方に修正される結果になるわけであります。そのことの御指摘でありましょうけれども、中身は価格下落の目立つ商品のウエートへの上昇、特に移動電話通信料、そして新規に追加されたものでテレビの薄型の部門がありまして、こういったことが影響されているというわけでございますので、詳しく中身を見れば御懸念はないのではないかというように思っております。

石井(啓)委員 それでは次に、年末の税制改正に向けて財務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、記者会見等でも大臣は法人税の減税に非常に積極的なお立場であるというふうに承っておりますけれども、どういう御見解なのか。あわせて、法人税を減税する場合、やはり当初は減税財源というのがどうしても必要になってくるかと思いますが、この減税財源の手当てについてはどのようなお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

尾身国務大臣 税制につきましては与党の税制調査会等の意見も十分に伺いながら考えていかなければならない問題があるというふうに考えております。

 経済がグローバル化する中で、我が国経済の活性化を図るためには、イノベーション、国際競争力の強化ということが大変大事であるというふうに考えておりまして、そういう面で、研究開発税制、既に十五年度から実施をしているわけでございますが、そういう税制の果たす役割というものは極めて重要であるというふうに考えております。それから同時に、今は企業が国を経済活動の拠点として選ぶ時代になっておりまして、税制においても、国際的なイコールフッティングということを考えながら検討していかなければならない、そのように考えているところでございます。

 他方、我が国財政は、国、地方を合わせた債務残高、GDP対比一五〇%というような深刻な状態にあるわけでございますが、そういう中で、財政再建にも積極的に取り組んでいかなければならないということでございます。

 経済の活性化と財政再建を両立しつつ、税制、財政全般にわたって検討してまいりたいと考えている次第でございます。

石井(啓)委員 財源について、ちょっと私どもの考え方、私どものというか私の考え方を申し上げておきたいと思います。

 今、企業は史上最高の収益を出している。その一方で、それがなかなか賃金に反映されにくい構図になって、まあ若干は上がっておりますけれども、収益が非常に高く上がっているほど賃金になかなか反映されていない、そういう課題がございますので、なかなか、実感なき経済成長というようなこともありますし、もう一つ個人消費が振るわない。やはり、息の長い、民需中心の経済成長ということを考えた場合、個人消費がいかに盛り上がっていくかというのが非常に重要なことだと思いますので、賃金といいますか、家計に企業の利益をいかに促していくかということが非常に重要だと私は思っております。

 したがって、法人減税をやる場合も、そういうことはないと思いますけれども、個人から財源をとるというようなことは、私は、今の大きな政策の流れからすると逆行しているのではないかなというふうに思っておりまして、その点についてだけ申し上げておきたいと思います。

 最後になりますが、道路特定財源の一般財源化の問題をお伺いしておきたいと思います。

 公明党としての考え方は、これは、五年ごとの計画の中で、道路整備に必要だということで、本来税率を約二倍ぐらい引き上げて暫定税率にしているわけでございますから、一般財源化するということであれば、暫定税率の引き下げということが妥当だというふうに本来思っております。

 ただ、昨年の政府・与党の協議の中で、そうはいっても一方で、この厳しい財政状況の中で、やはり貴重な税源は確保すべきだという議論もありましたし、また環境面からいっても、エネルギー関係の税を下げるのはどうかという議論もございましたので、税率は維持ということになりました。その条件として、税率を維持するのであれば、これは、道路特定財源の納税者である自動車ユーザーが納得していただける、理解が得られる使途でなければならない、そういう形で納税者の理解を得てということが盛り込まれたわけでございます。

 私は、一般財源化とはいっても、そもそも、はなから一般財源のものではなくて、いろいろな経緯があっての税源でございますから、やはり納税者の理解の得られる使途に使っていくということが重要だと思いますが、この点について財務大臣のお考えを伺いたいと思います。

尾身国務大臣 道路特定財源の扱いにつきましては、基本方針二〇〇六にもございますし、また、安倍総理の今国会における所信表明にもございました。厳しい財政事情のもと、現行水準は維持する、一般財源化を図ることを前提として、納税者の理解を得つつ、具体案を得る、こういう方針で進めていきたいと考えているわけでございます。

 道路の財源を、道路整備の費用に限定されている特定財源ということから一般財源化するということでございまして、これをどのように具体化するかということは大変に難しい課題であるというふうに考えております。

 私どもとしては、納税者の理解をどうやって得ることができるかということで今鋭意検討を進めているわけでございますが、先ほど申しましたような、基本的な方向が決まっております中で、具体的に関係者と十分に相談をしながら結論を出していきたいと考えております。

石井(啓)委員 よろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵澄夫でございます。

 きょうは、この財務金融委員会、私も昨年の八月来こちらの委員会に戻らせていただきました。そして、大臣所信、お二方の所信に対しての質疑ということで、一般質疑の時間をいただきました。

 まずは、お二方、尾身財務大臣並びに山本金融担当大臣、御就任おめでとうございます。

 きょう、こうして委員会で質疑をさせていただきますが、委員長席には伊藤先生がお座りで、私もこの委員会では、竹中担当大臣並びに伊藤大臣に御質問させていただきました。何とも不思議な気持ちでありますが、きょう、この委員会でお二方には、財政並びに金融の問題につきまして質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、財務担当大臣、尾身大臣の方に御質問させていただきたいと思います。

 さて、我が国の景気、経済動向、これにつきましては、所信の中でも大臣は、長い停滞のトンネルを抜け出して民間需要に支えられた景気回復を続けております、このように述べられております。

 さて、この景気の拡大局面、戦後最長のイザナギ景気を超える、まさに並んだところであります、超えるとして、この大型景気、今の景気に対するさまざまな論評等がなされております。戦後最長のイザナギ景気を超えて、一体何と名づけたらよいかなどということがエコノミストの間でも語られているようでありまして、それこそ、イザナギの神の前に、古事記をひもとけば、タカミムスヒの景気だと、このような名前を命名されておられる第一生命のエコノミストの飯塚さんなどもいらっしゃいます。

 果たしてこれは、後世どのような形で評価をするかは別としましても、明らかに戦後最長の景気に並んだ状況であるこの景気拡大局面に対して、経済財政運営をつかさどる尾身大臣とされては、当然ながら、運営には、この景気の局面の評価あるいは景気の局面に対するある一定の見方というものが重要な側面になってくる、重要な要因になるかと思われます。

 大臣、まず、現状の景気拡大局面についての大臣の御所見というものをお伺いさせていただきますでしょうか。

尾身国務大臣 今お話しのとおり、今回の景気の回復は、いろいろな構造改革の取り組みを通じまして、不良債権の問題が正常化し、いわゆる三つの過剰と言われる、雇用、設備、債務の過剰が解消している。そういう中で経済が着実に強化されている、そのように考えている次第でございます。

 企業部門は収益が改善し、設備投資も増加するという好調が続いておりまして、この好調さが家計部門にも今及びつつあるというのが実感でございます。失業率も、もう御存じのとおり、完全失業率四・一%、一番高い失業率の十四年度の五・四%からかなり低下をしてきているということでございまして、求人についてもかなりよくなってきている、そのように考えております。

 他方、財政は非常に厳しい状況でございまして、国、地方を合わせた対GDP比の債務残高一五一%、世界一高い債務残高の比率でございます。

 しかしながら、これからは、経済活性化と財政の再建を両立しつつ、成長なくして財政再建なしという考え方のもとに経済財政運営を進めていきたいと考えているところでございます。

馬淵委員 景気拡大局面の評価というよりは、それを受けての今後の御方針を繰り返し述べていただいたということだと思いますが。

 このイザナギ景気五十七カ月、そして今回のこの、何景気と呼ぶかわかりませんが、仮にタカミムスヒ景気と呼んだとしても、現在の景気拡大局面、五十七カ月プラスアルファとなるだろうと思われる。

 この大きな違いを改めて見ますと、委員長のお許しをいただきましてお手元に配りました資料一ページ目には、これは日経新聞の十月十三日の記事として、大型景気の成長率と期間ということでの分析を載せておられます。

 これを見ますと、イザナギ景気、これが実質年率平均の成長率は一一・五%。一九六五年から七〇年、つまり、オリンピックの後、まさにこれは万博の年まで、その時代まで、ちょうど高度経済成長のときに高い成長率を示していた。その後、五十一カ月のバブル景気というのがございますが、これが五・四%であった。そして、今日のこの景気、現在の景気の拡大局面は二・四%と非常に低い水準である、低成長の中での好景気というふうに見られるかと思います。

 そして、これを拡大期間の伸び率等で見ますと、これが、イザナギ景気は一二二・八%、そして今回の景気拡大局面は四・二%と、実にイザナギに関して言えば倍。この給料の伸び率を見ますと一一四・八%、つまり所得が倍増していくという状況の中で、今回の景気においては皆さん方がその景気の好況感というものを実感できない、それがこの数字に如実にあらわれているわけであります。期間の伸び率四・二%、本当にわずかこの四%増ということでいうと、皆さん方が本当に景気はよくなったのかなということに対して疑心暗鬼になられる部分があるかと思われます。

 そして、その最たる部分は、やはり個人所得、この給与の伸び率で見ますと、先ほど申し上げたように、イザナギ景気では倍増だという状況にあるにもかかわらず、この個人所得の増にまだ至っていないということの数値という意味では、現在の景気拡大局面はマイナスの一・六%、つまり、企業が収益を上げていく中で、確かに緩やかな成長を遂げているようではありますが、それが個人消費に結びつくところまではいっていないというこの状況をあらわしています。

 こうした状況の中で、この景気の局面の中で、経済財政運営は、先ほど来大臣のお話ありましたように、とにかく民間の主導で持続的な成長を図っていきたい、このようにおっしゃっているわけであります。この民間の主導ということ、これに関しては、この構造改革という流れの中では常に、小泉政権も含めておっしゃっておられたわけであります。

 さて、この経済財政運営、先ほどもお話しいただきました。小泉さんは改革なくして成長なし、そして安倍総理は成長なくして財政再建なし、このようにおっしゃっておられるわけでありますが、小泉政権から安倍政権にかわり、財政運営は何が変わられた、あるいは何が変わらなかったのか、これを端的に、財務大臣、お答えいただけますでしょうか。

尾身国務大臣 財政状況がどうかということでございますが、先ほど申しましたように、国、地方合わせての債務残高が一五一%ということで、世界一であります。二番目がイタリーのGDP対比で一二〇%。ヨーロッパの諸国、アメリカなどは大体五〇%から七〇%の債務残高になっているわけでございまして、一番に厳しい財政状況である。

 他方、国民負担率三八%という水準でございますが、これは、税プラス雇用保険の掛金とか、あるいは医療保険の掛金などのいわゆる社会保障負担、合わせまして三八%という数字でございまして、これは先進国の中で一番低い負担率であります。

 さはさりながら、私どもとしては、厳しい財政運営をしつつ、極力無駄な支出を切り詰めながら、十九年度の予算編成を進めていきたいと考えている次第でございます。

 そういう中で、国債発行額三十兆円以下に抑えるということも政府としてお約束をしているわけでございまして、その財政運営をしっかりと、厳しく無駄を省くという方向で進めていく中で、しかし、他方、経済の活性化は考えていかなければならない。これを、経済の活性化と財政再建を両立させるということで進めてまいりたいと考えている次第でございます。

馬淵委員 尾身大臣、所信の方針はお聞きをしておりますので。今私がお尋ねしたのは、小泉さんから安倍さんへと内閣がかわられた。そして、財政運営の大きな方針の中で何が変わったのか、そして何が変わらなかったのか、ちょっとお尋ねをさせていただいたつもりなんですが、それには直接お答えをいただけていないような気がいたします。

 ことしの常会、この本会議で、小泉内閣における通常国会、最後の通常国会でございますが、その冒頭での経済財政演説の中では、まさに今回の大臣所信そのまま、これを継いでいるような所信が述べられております。これはもちろん当時の大臣が財政演説をされておられますが、長期停滞のトンネルを抜けて挑戦していく局面に入った、そして、そこでの最優先事項の第一は、民間需要主導の持続的な経済成長との両立を図りつつ、危機的状況にある我が国財政を着実に健全化していくための具体的道筋を明らかにし、それを確実に実行することであります、このように述べられております。

 そして、まさに大臣も、この所信の中では同様に、民主導の持続的な成長を図って、そして先ほど来繰り返し述べられている、この最悪の対債務残高の状況、そして国民負担の、これは最低水準だというような状況の中で、新たな挑戦をされていくということであるかと思われます。

 私、繰り返しお尋ねをさせていただきます。すなわち、安倍政権においては、小泉政権の財政運営をしっかりと継いでおられるということでよろしいのでございますか。端的にお答えいただけますでしょうか。

尾身国務大臣 成長なくして財政再建なしという考え方でございますが、あえて申し上げますと、安倍政権においては、再チャレンジというテーマがあり、また、地域の活性化というテーマがあり、そういうテーマも考えつつ、これからの財政経済運営をしていくということであろうかと思います。

 そこで、この新しいといいますか、むしろ、基本的には小泉政権の改革を継続し、さらにこれを進めるということでありますけれども、再チャレンジとか、あるいは特に地域活性化という安倍政権発足のときのテーマにつきましては、政権が発足いたしまして、私が閣僚懇談会の中で、この新しい柱がある意味で言うと立っているわけでございまして、これについて、関係各省庁から予算要求等で、こういう方向でさらに追加あるいは改定要求をしたいというお話があれば、大きな財政フレームワークは変えませんけれども、御相談に応じますという話をしているところでございまして、私どもは、経済を活性化しつつ再チャレンジを進め、地域経済の活性化を図りつつ財政再建を進めていくということでこれから対応してまいりたいと考えている次第でございます。

馬淵委員 今、御答弁は端的にとお願いしたんですが、丁寧に御説明いただきました。経済活性化を維持しつつ、再チャレンジ、地域活性化テーマ、そして、当然その中での予算編成等々も勘案していきたいんだ、継承ではあるが新たなものもあるというお答えをいただいたというふうに思いますが、まさにここは民の力、経済成長はもう民の力にゆだねるんだということについては、私はこれは大きく変わっていないという御答弁をいただけたんだというふうに思います。

 さて、そこで、政府の役割というものを考えていきたいんですが、当然ながら、経済成長、これは重要であります。そして、その直接の手段というのは、財政当局が一体何を持ち得るか。もちろん、政策でいえば金融政策もございますが、この金融政策に関しては日銀の専管事項である、政府の役割としてはあくまで、調整や、あるいは交渉というのがあるのかわかりませんが、政府がそこに、専管事項に踏み入るわけにはいかない。やはり財政政策である。しかし、この財政政策の中で、今のお話でありますと、あくまで民にゆだねていく。民にゆだねることが果たして財政政策なのかということを少しお尋ねしていきたいと思うんです。

 まず、大臣所信の中には、先ほどもお話しいただきました、長期債務残高が対GDP比で一五〇%を超える見込みであるということ、これは世界の先進国でも最悪だ、しかし一方、国民負担率は実質的には最低の水準で低いんだ、こういうパラグラフがございますが、所信のこの言葉を受けて歳出歳入の一体改革をしっかりと進めるということになりますと、ここでの財政政策は当然ながら、最低水準なんだからということを述べられているわけですから、国民負担を上げていくということに言及されていると、これは読み取れるわけであります。

 その国民負担を上げる、すなわち増税等、これを考えていかれる場合に、成長は民にゆだねる、成長は民にゆだねながら、財政政策上では歳入歳出の一体改革の中で国民の負担を上げていかねばならないんだという前提になった場合に、その成長の足かせとなるもの、すなわち決して加速させるものではないという、成長戦略と財政再建を同時にやるということのその道筋がどうも私には見えてこない。

 逆に言えば、矛盾をはらんでいる大きな課題であるがゆえに大変な運営を迫られているところだとは思いますが、ここに対しては尾身大臣、いかがお考えでしょうか。できれば端的にお願いいたします。

尾身国務大臣 歳出削減を徹底して行わないままに国民の負担増を求めるということになれば、これは国民の理解を得ることは困難であるということでございまして、私どもは、この国民負担の最小化を第一の目標に歳出削減を徹底していきたいと考えている次第でございます。十九年度予算につきましては、めり張りをきかせながら厳しい歳出削減方針を貫いて、一歩でも財政健全化に向かっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

 このように、歳出削減を徹底して実施した上で、それでも対応し切れない社会保障あるいは少子化などに伴う負担増に対しましては、安定的な財源を確保するために抜本的、一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしていきたいと考えております。

 現在の諸情勢を勘案いたしますと、十九年度予算の歳出削減の状況あるいは来年七月ごろに判明いたします十八年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要がございまして、これらを踏まえて税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えております。

 いずれにいたしましても、財政再建の重要性にかんがみ、十九年度予算につきましては従来の改革努力を継続し、徹底した歳出削減に取り組んでまいりたいと思っております。

馬淵委員 大臣、ぜひ、答弁書をお読みになるのもいいんですが、御自身の意見を私はお伺いしているつもりなんですよ。いつも予算委員会で拝見させていただいたときは、議員席から活発な御意見を出されておられたわけですから、ぜひ大臣御自身の言葉で。

 私がお尋ねしているのは、成長戦略、民にゆだねるということと、そして財政政策がとり得る立場、歳出削減もあります。しかし、明らかにここでは、歳入改革ということでの、負担を引き上げなければならないという現状を、十分ここでは、所信で述べられているじゃないですか。そのときに足かせとなっていく成長戦略と財政再建のこの矛盾をいかに具体的に解決するかの財政運営方針が、これでは見えませんよと私は申し上げているつもりなんです。

 骨太方針が七月七日に発表されました。イノベーションと書かれています。しかし、それはあくまで民の知恵である。規制改革あるいはルールを緩和していくこと、これも、しかし、民にゆだねる話です。財政当局は、民にゆだねてイノベーションで変わるんだといっても、これは皆さん方の運営の話じゃないじゃないですか。成長戦略を述べられて財政再建を述べるならば、そこに具体を示していかなければならないんじゃないんでしょうか。

 そこで、お答えいただけていないので、違った観点で御質問させていただきますが、冒頭申し上げた景気拡大局面、これはイザナギ景気を超えるかという勢いでありますが、この景気拡大局面、この先に踊り場があるのか、あるいはピークがいつになるか、これはわかりません。私も、大臣にその予想をお願いするようなことは申し上げませんが、少なくとも小泉政権が誕生した当時、これは今回の景気拡大局面の前ですから、これは底なわけですね。そこで小泉政権の中で景気拡大局面が始まった。これは構造改革の結果だと政府の皆さんはおっしゃるでしょうが、さて、安倍政権発足時の今、イザナギに並んでのこの状況の中で、小泉さんは景気の底のところで改革路線を打ち出して、そして経済財政運営をされてこられた。

 さあ、先ほど私はお尋ねしました。小泉政権の継承であり、その財政運営はそれを継承されているんだというお話でありましたが、しかし、状況は全く違います。小泉さんの政策は、景気が底の段階での政策であった。しかし、安倍政権が引き継いだ今日は、タカミムスヒかわかりませんが、現状の景気の拡大局面が途上であるか、あるいはまだこの先に、ピークがどれぐらい先にあるかわかりませんが、少なくとも景気の底ではない。明確にその現状が違う中で、財政運営が同じ路線であることが果たして適切なんでしょうか。端的にお答えいただけませんでしょうか。

尾身国務大臣 経済が活性化して、かなりよくなってきているという実情にございます。そして、それは改革の成果であると同時に、民間主体のエネルギーが経済の拡大につながりつつあるということであろうかと思っております。

 安倍政権におきましても、経済の活性化という意味は、例えば企業の競争力の強化、イノベーションの促進、科学技術をさらに発展させるというような部分がかなりあるわけでございまして、そういう意味で、研究開発投資についてのインセンティブを与えるような税制も十五年度からスタートし、そういうものがやはり日本経済全体の活性化、競争力の強化にかなり効果があったというふうに我々は考えているわけでございます。

 それと同時に、経済がグローバル化する中で、国際面において、企業が国を選ぶ時代になりました。そういう時代において、税制等におきましても、イコールフッティングでいくという考え方のもとに、大きなハンディキャップを負っている。例えば減価償却における残存価額の扱い等につきましては、イコールフッティングの方向で検討してまいりたい。それによって経済を活性化しつつ、財政をしっかりと再建していきたいと考えているところでございます。

馬淵委員 お話を伺っても、私が御指摘をさせていただいていることに対するお答えがいただけているような気がしないんですが。

 民にゆだねて、そして、まさにおっしゃるようにグローバライゼーションされていく中で、民間企業、どんどん海外に進出し、究極的には本当にスタンダディゼーションされたアウトソーシングを徹底している。これが今の企業の強みだと思います。これによって今日の成長が図られている。

 しかし、繰り返し申し上げますが、財政当局がなせることというのは財政政策、すなわち歳入歳出の部分なんです。そして、歳出に関してはこれを徹底的に見直す。これは大賛成です。私も、特別会計等を含めて、これは常に申し上げてきた。しかし、歳入の部分に関してははっきりと、国民負担が低いんだからこれをどうにかしなきゃならぬという方針を打ち出されている。ならば、ここで多少法人税の引き下げがあったとしても、大きくは増税路線を踏まざるを得ない。そこで、成長戦略との矛盾がどのように解決されるかの具体的な筋道を御提示いただけていないのではないですかと、こう申し上げているわけであります。

 きょうは余り時間もありませんので、尾身大臣にお尋ねしたいところを、十分なお答えを、この二十分、二十五分ほどの間でいただけませんでしたが、ぜひ当委員会の中でも、財政運営の具体を明確にまた示していただけるような質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 尾身大臣には、大きな所信の部分について御質問させていただきました。尾身大臣、ありがとうございました。

 残りの時間を、金融担当大臣の山本大臣にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 山本大臣は金融担当ということで、この委員会にも御出席をいただいているわけでありますが、大臣は一方で、再チャレンジの担当の大臣をされてもおられます。まさに再チャレンジ、だれもが再挑戦可能な社会、これは非常に重要なことでもあります。

 そこで、きょう私がお尋ねをさせていただきたいのは、再チャレンジに直接かかわるかどうかは別としましても、まさに本当に、制度からはみ出したり、あるいは制度から漏れてしまった方々に対する取り組みというのはどうあるべきかということについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 それは、保険業法の改正における自主共済の取り扱いについてでございます。保険業法の改正がことしの四月になされました。そして、保険業法改正の中で、いわゆる無認可共済の問題というのはかねてより指摘がなされていた、それに対しての取り組みがこの業法の改正の中で上がってきたわけであります。

 お手元の資料の七ページ目をごらんいただきたいと思います。これは議事録でございます。当財務金融委員会、平成十六年の十一月十六日、これは伊藤大臣、伊藤先生が大臣でおられたときの、私は質疑をさせていただきました。

 この質疑の中で、無認可共済の問題について取り上げさせていただいたわけであります。私の質問として、いわゆる無認可共済と呼ばれるもの、しかしこの共済がオレンジ共済等詐欺まがいの行為をしている、そして、その詐欺まがいの行為をしているようなところがあった場合それを所管する省庁はない、これは大きな問題だということがこの国会でもたびたび取り上げられていた。もちろん、各省庁で所管する認可共済は別です。無認可共済に対してはどのような考え方をするべきかということを大臣に御質問させていただいたわけであります。

 この傍線部、消費者保護あるいは契約者保護のためには一定の法的規制というものは必要だと考えています、これは私の発言であります。共済というのは長い歴史を有しており、資本の論理に基づく保険業とは違って相互扶助の精神であると。そして、こうした指摘に対しては、前任の竹中大臣も、一律に横の規制を課すというのはこれはまたやはり難しい面もあるのではないかな、その意味での慎重さは必要なのではないかなという気もいたします、こうお答えをされている。伊藤大臣はそのとき、十一月の十六日には、これら前大臣の発言も踏まえてこのように述べられています。この共済というのは相互扶助の精神のもとに相互扶助を目的として共済が行われていて、それは日本社会の中で非常に大きな役割を果たしていることも事実だというふうに思っておりますと。この役割の重要性を、当時の大臣もしっかりお認めいただいておりました。

 そして、業法の改正でありました。こうした無認可共済、根拠法のない共済等々を一たんは特定の保険業者として登録していただく、そして、登録をしていただいた後、二年間の移行期間をもって、少額短期保険業者と保険会社、あるいはあとは適用除外という形で分類をしていく、こうしたことがこの法改正の中で定められました。

 お手元の資料の八ページをごらんいただきますと、その法案審議の中での私の質問をここに挙げさせていただいております。さて、ここで取り上げたいのは、保険業法改正の中でも、こうした無認可共済、今は自主共済と呼ぶようでありますが、自主共済に関しては、この法改正の中で少額短期保険業者あるいは保険会社に移行していただく、そしてそれ以外の者で、もちろん廃業やあるいは合併等をやっていただく、あるいは適用除外というのも考えていきたい、このようにお話しされ、そしてその適用除外については法で定められております。

 その法で定められている適用除外、その項目をごらんいただきたいと思うわけであります。これはお手元の資料の十ページ目でございます。

 改正保険業法の適用除外ということで、保険業法、法律の中では、これは平成十七年五月二日公布ということで、丸でございますように、「制度共済(農協、生協等)」からずずずっと下にまで、「政令で定める人数以下の者を相手方とするもの」となっております。そして、その上に、「これらに準ずるものとして政令で定めるもの」となっています。法律で定めることの後に政省令で定めていく、適用除外に関しては、それは先ほど、共済の意義も十分に認識しているという御答弁の中で、政省令で定めていくということがこの委員会の質疑の中でも語られているわけであります。私は、その点に対しては、若干の危惧を持って質疑をさせていただきました。

 八ページ目に戻りますが、私は質問として、全部政省令あるいはこれから詰めていくというお話ばかりです、このように申し上げた。つまり、政省令で定めるといっても、本当に必要と思われる自主共済あるいは本来の相互扶助の精神に基づいた共済を、しっかりと金融庁としてそれを見定めることができるのですかということに対する懸念を私は申し上げたわけであります。

 そして、十ページ目に戻りますが、ごらんいただきますと、保険業法の施行令として政令が定められました。ここにも、「地方公共団体が区域内の事業者、」からずらずらずらっとありまして、一番下、「千人以下の者を相手方とするもの」ということで、政令で定める人数をここで決めているわけであります。ぱっと見ますとわかりますように、地方公共団体あるいは企業の連結対象、宗教法人あるいは公務員、議員、専修学校、学校法人あるいはPTA等々となっているわけでありますが、さてここで、私、本当に必要なものがこの自主共済の適用除外の中に盛り込まれていないのではないかということの御指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 この自主共済、さまざまなものもあります。確かに、保険業法の改正によって解散が余儀なくされても仕方ないだろうなと思われる共済等もあるかもしれません。しかし、その中でも幾つか、本当に互助の精神でつくられてきた共済がございます。その一つが、例えば知的障害者施設利用者互助会と呼ばれるものの共済でございます。

 これは、資料の九ページ目をごらんください。

 どういう共済制度かといいますと、知的障害等の子供さんを持った保護者の方、例えば病気で入院をする、入院をしたときには、障害ゆえに治療をしっかりとみずからが認識して受けることができない、点滴の針を抜いたり、それこそ病室内で大きな声を出したり暴れてしまう、だから親御さん、保護者の付き添いが必要になる、あるいは個室が必要になるわけです。こうした状況で、かつては医療制度の中でこれも担保されておりました。しかし、医療制度の中でこの付き添いが廃止をされた。そこで、やむなく必要に迫られてつくられたのが、こうした互助会の仕組みです。

 これは互助会だよりの中にある手紙の一節ですが、下線部をごらんいただくと、まさにその思いが伝わってまいります。息子が病気になったとしても入院することなど無理であろうという気持ちがありましたと。この方は、二十七年間、施設にいる息子さん、情緒障害、大きな声を出したり暴れたりということで、病院に入院などできないだろうと思っていた。しかし、病でおとなしく、ぐったりとしていて、入院で治療も受けることができた。

 ところが、点滴を受け日増しに元気になってくるのと同時に、いつもの声が出てきました。こうなってくると、私が手を握っている程度では、自分で針を引き抜いてしまい、点滴を続けることが無理となり退院しました。五日間という短い入院だったけれども、入院生活を送る体験ができた。まあ、親御さんとしては安心されたんですね。そして、このときに感じたことです。障害者には個室が絶対的に必要であるということ、個室に入院するには金銭的にかなりの負担増となること、さらに今後は障害者の負担が増加していくことが決定している、互助会からいただく給付金は本当にありがたく感じます、入院したときにお互いに助け合っていける互助会の活動をますます発展させていきましょうと。

 この思いというのは、相互扶助の精神で、委員長席に座っていらっしゃる伊藤大臣もあるいはその前任の竹中大臣も、極めて重要だ、こう御認識をされていたと思うんですね。それに対して、今回の適用除外、先ほど御説明を申し上げたこの政令の中にはこうしたものが入らない。つまり、なぜなんだと、私はここが非常に不思議に思います。

 そして、同様のものは幾つもほかにもあります。日本勤労者山岳連盟、労山遭対基金といいまして、これは山岳で遭難をされた方々を救うために、皆でお金をためて、これをまさに基金として互助精神で使っていこうと。大変な費用がかかる、ヘリコプターなどで山岳で救難をする、それには大変なお金がかかるということで、遭難共済制度があります。また、開業医のお医者さん。歯医者さんであれ、あるいは内科医さんやさまざまなお医者さんが、みずからの休業保障をしっかりと担保するために、これも全国保険医団体連合会が休業保障制度という形で互助会的な共済制度をつくっておられる。こうしたものに対しても、この適用除外ということに対する検討が十分になされていないのではないか。

 先ほどお示ししましたように、金融庁が定めるこの施行令の中では、要は学校やあるいは企業というように、明らかに特定できるものだけということで定められたというふうに聞いております。法的外延がしっかりしているものというお話もありました。自治性が高いものというお話もありました。しかし、本当にそれが本来の趣旨にのっとるんでしょうか。この保険業法の改正の最大の趣旨は、詐欺的な行為を何とか政府が、所管のない状況は外していこう、変えていこうという趣旨だったんではないんでしょうか。

 これに対して、山本大臣、再チャレンジということで、本当に人の痛みをもう一度しっかり受けとめて応援しようという、その所管でもある山本大臣、これに対してはいかがお考えですか。

山本国務大臣 馬淵委員の資料九ページ、施設互助会だより、個室、入院費について、もし互助会から給付金がなかったら、あったがゆえに互助会の活動、これに対して大変ありがたいというような御意見、私の方も、なるほどな、お困りの方々にこうした給付があることを、必要性、本当にこれで改めて感じた次第でございます。また、知的障害者互助会、全国合計で八万六千人の加入会員がいらっしゃる。また、知的障害者の親御さん、施設関係者が任意団体をつくられて、知的障害者を対象とする入院給付を、付添看護費用の分まで行っておられる。非常にいいことをやっておられるというように改めて認識した次第でございます。

 ただ、一般論でありますけれども、昨年の保険業法の改正におきまして、保険業法の適用範囲につきましては、契約の相手方が特定か不特定か、営利か非営利かといったことにかかわりませず、およそ保険の引き受けを行うものにつきましてはその保険契約者等を保護し、健全な運営を確保するために必要な規制の対象とするとしたところでございますが、新たに保険業法が適用されることになった共済の中では、長年にわたりまして有意義な活動を行ってこられたところも多くございます。そうした観点から、新制度への円滑な移行、求められる保障ニーズに適切に対応しながら、保険契約者等の保護と健全な運営とが実現することが望ましいというように考えております。

 特に、改正保険業法のもとで事業の継続を危惧する共済からは、これまでも多く御意見や御相談を受けているところでございます。特に、先生が御支援をされておられる先ほどの施設互助会等、これに新しい保険業法のもとでも温かい何らかの仕組みづくりができないかということは、担当部局も悩んでいるところでございます。そんな意味で、なお引き続きよく御相談に乗らせていただきますので、今後検討させていただきたいというように思っております。

馬淵委員 大臣から、悩んでいる、そして今後も検討させていただくということ、これは前向きな御答弁をいただいたと私は理解をいたします。

 その上で、再度、重ね重ねで申しわけないんですが、この施行令の中で、確かにこのように、本当に団体が特定できるような適用除外ですが、この十ページ目、それこそその一番下に、その他金融庁が認めるものとして、金融庁が、それこそ第三者機関でも構わない、審査会を設けて、あるいはそういった適用除外に対してはその適用除外も覆すこともできるといった規定も設けて、これは法律じゃないわけですよね、政省令なんですから、金融庁の判断でできるわけですから、そうしたところにまで踏み込んだ政省令に、項目の追加、これはできませんか。大臣、端的にお答えください。

山本国務大臣 保険業法は大変厳しい法律でありまして、厳格、かつ例外というものについては非常に、刑事罰の適用に直結するというように考えられます。したがいまして、この法律、政令において適用除外とするものの範囲を明確に定めておかなければ、社会の安定性、特に、いいだろうと思って裁量判断したところを現実には刑事罰が科されるというような結果になってしまっては、かえって角を矯めて牛を殺すという結果にもつながります。

 そんな意味では、厳格性が他方必要であろうということの御理解の上で、なおそうした措置ができることを模索するということでございます。

馬淵委員 私の御提案には明確なお答えはいただけないようでありますが、少なくともその前の御答弁で、前向きに検討するんだということを言っていただいた。ぜひともこれはしっかりと前向きに検討していただきたい。

 そして、今お話にあった言葉の中に、保険業法、これは厳格に、まさに市場の信頼性を高めなければならないんだからというお話がありましたが、その部分についてお尋ねをしたい。

 市場の信頼性を高めるということ、これは大命題であります。まさに、伊藤委員長が大臣のときにも、しっかりと金融改革プログラム等で訴えてこられたことであります。「投資家から信頼される、公正、透明な市場を確保する」、これが大臣所信にも述べられておられます。

 さて、今保険業法の話では、市場の信頼を高めるから明確に定めなきゃならない、しかし前向きに検討するといただきました。これは私はよしとします。しかし一方で、市場の信頼というものを大きく損ねかねない問題があるということを御指摘させていただきたい。

 これは、資料の十一ページをごらんください。日本振興銀行の問題でございます。

 私は、再三再四この問題を財務金融委員会並びに予算委員会でも取り上げさせていただきました。木村剛氏が、金融庁の顧問でありながらその設立の準備室を設置し、そして顧問をやめられた直後、同日にその銀行設立申請をなされた。これに対しては大きな問題があるのではないかとの御指摘をさせていただきながら、さらに、その後の銀行運営に対して、私は幾つかの重大な証拠も資料提出をさせていただきながら、予算委員会でも指摘をさせていただきました。

 そして、金融検査が入りました。これも確認をさせていただいております。昨年の十一月の八日、日本振興銀行に立入検査が入りました。そして、一月三十一日立ち入り終了手続、四月の二十八日に検査結果が通知されました。その後、二十四条によりまして報告徴求、いわゆる資料の提出、これは一カ月以内ということが定められています。そして、それらを受けてヒアリングをする、している状況。

 四月二十八日から半年たちます。今いかなる状況ですか。これは端的にお答えください、大臣。

山本国務大臣 今の状況、検査については、六カ月たっているということでありますが、この検査結果を踏まえたヒアリングの期間について長い短いはありますでしょうけれども、結果についての公表は、お知らせすることができないものですから、その意味では、検査の結果を我々も注視しながら、今後結果発表ができるような内容であれば発表させていただきたい。

馬淵委員 内容のことを私は申し上げておりません。検査の内容についてお話しできないことは当然であります。しかし、この結果通知が行われて半年たっているんですね。そして報告徴求を終えてヒアリングをやっている。半年たって明らかにできるのは、処分を決定した通知を行ったときに、業務改善命令などの処分をしたときにこれは公表できる、そのとおりです。公表されます。しかし、何もなかった場合は公表も何もされないわけですよね。

 では、私、大臣、これはもう端的にお答えいただけませんか、お尋ねします。今ヒアリング中で、それで結構ですよ。しかし、これが二年先でも一年先でもヒアリング中だなどということが起こり得るんですか。半年が長い短いは答えられないというのであれば、では、三カ月先でもヒアリング中だということはあり得るんですか。ずっとヒアリング中だというお話をされるんですか。経過の話としてはお話しされるのに、その後どういう状況かを国会の中で御答弁されないというおつもりですか。それを明確に議事録に残してください。

山本国務大臣 金融検査というものの性質上、これは利用者保護、市場の健全性、こういった観点からしっかりとしたものをやっていただかなきゃなりません。そういうような意味では、慎重かつ厳正にというような要請がありますし、また他方、金融機関からすれば、業務の迅速性や経営のガバナンスから考えますと、早く終わって早く済ませてほしい、当然だろうと思います。その意味においては、できるだけ、金融庁といたしましても、必要な検査を迅速に行って、早い段階で金融機関に通常の業務をやっていただきたいということは、これは申すまでもないわけでありますが、例えば、JPモルガン・チェース銀行東京支店における業務改善命令、十七年九月に行ったときのことでございますけれども、やはり、こういったときに、相手の対応だとか、その事案の持っている特徴だとか複雑性だとか、こういったことに応じてある程度の長短があるということの御理解をいただきたいというように思っております。

馬淵委員 時間が参りましたが、大臣、私がお尋ねをしているのは、ヒアリングだという状況の説明をされているわけです、そして、それを二カ月も三カ月も、あるいは一年後でもヒアリング中だなどということをおっしゃらないですねと聞いているんですよ。これだけ。

山本国務大臣 だらだらやるつもりはございません。

馬淵委員 明確だとは思えませんが、御答弁をいただいたということで、この問題は、引き続きこの当委員会でも、私、また議論をさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史でございます。

 この臨時国会から財務金融委員会の委員の一人として審議に参加をさせていただくことになりました。どうぞ、尾身大臣、山本大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 本日は、財政及び金融に関する一般質疑ということでございますが、本日、私、日銀の福井総裁とお話をさせていただきたかったのでございます。それは、村上ファンドへの出資及び総裁就任の段階での拠出の継続、そして本年二月の解約という一連の行為が、「日本銀行員の心得」を初めとする日銀の内部規程に違反するのではないかということを私どもは考えているわけでございますが、現状では、福井総裁は、疑いを受けたことについては不明を恥じているが内規に違反する個人的利殖行為ではないということを御主張されていらっしゃる。

 そこで、幾つかの事実関係を本日は固めさせていただきたい。福井総裁がきょういらしていただけなかったので、水野理事にお運びをいただいておりますが、お忙しい中、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 まず、先ほども申し上げましたが、ことしの六月十三日以降の国会答弁において、あるいは記者会見においても、村上ファンドとの一連の金融取引は内部規程に違反するものではないというふうに主張をされていらっしゃいます。事実確認を幾つかさせていただきます。

 ことしの二月にこの村上ファンドとの契約を解約したということでありますが、二月の何日であったかということについてお答えください。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 解約の申し出は、本年二月十八日でございました。

川内委員 解約の手続は、どこのだれに対してどういう方法で行ったのかということについて教えてください。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 解約の手続は、書面で郵送する形で行ったと総裁から聞いております。

 送付先は、アクティビスト投資事業組合業務執行組合員オリックス株式会社とのことでございました。

川内委員 平成十五年三月の福井総裁が御就任をされたとき、日本銀行の事務方として、保有株式等について福井総裁にどういう御説明をされたのか、また、保有株式等の報告を受けたのか、さらには、保有株式等をどうするのか確認をしたのかについてお伺いをさせていただきます。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 福井総裁に対しましては、総裁就任時に内規の説明をさせていただきました。

 当時の内規では、信託等による資産の凍結が義務づけられていたというわけではございませんでしたので、凍結すべき資産があるかどうかといったような確認はいたしておりませんでした。

 以上です。

川内委員 さて、今、私の手元に、日本銀行の方からいただいた「贈与等、株取引等および所得等に関する報告要領」という文書がございます。これも日銀の内部規程の一つという理解でよろしいでしょうか。

水野参考人 お答えいたします。

 内部規程という理解でよろしゅうございます。

川内委員 この報告要領の3の「所得等の報告」の(1)に、局長級の職員は、毎年、三月一日から三月三十一日までの間に所得等報告書を提出しなければならないと書いてございます。これは、福井総裁も毎年提出をされていたという理解でよろしいでしょうか。

水野参考人 お答えいたします。

 規程にのっとって提出されておりました。

川内委員 福井総裁は、平成十六年分の所得等報告書を平成十七年の三月、平成十七年分の所得等報告書を平成十八年の三月、ことしの三月に提出しているという理解でよろしいですか。

水野参考人 お答えいたします。

 今おっしゃられたとおりの理解で間違いございません。

川内委員 さらに、「所得等報告書に記載すべき事項は、以下のとおりとする。」とこの報告要領に書いてございまして、イとして、前年分の所得について同年分の所得税が課税される場合には当該所得に係る次の(イ)及び(ロ)に掲げる金額、(イ)または(ロ)に掲げる金額が百万円を超える場合は、当該金額及びその基因となった事実と書いてあります。その(イ)、(ロ)は何かと。(イ)が「総所得金額および山林所得金額に係る各種所得の金額」、(ロ)、「各種所得の金額のうち、分離課税の対象となる所得の金額」と書いてございます。この所得等の報告書の一番下を見ると、「(1)の所得等報告書の提出は、納税申告書の写しにより行うことができる。納税申告書の写しの提出による場合において、(2)イ、(イ)または(ロ)に掲げる金額が百万円を超えるときは、その基因となった事実を当該納税申告書の写しに付記しなければならない。」と書いてございます。

 福井総裁は、この所得等報告書を、納税申告書の写しを提出されたのかということをまず御回答いただきたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 納税申告書の写しではございませんでした。

川内委員 所得等報告書では、日銀の所定の書式があるという理解でよろしいでしょうか。

水野参考人 お答えいたします。

 所定の書式がございます。

川内委員 今私の手元に、日銀からいただいた所得等報告書の書式がございます。これにのっとって福井総裁は御自分の所得について日銀に報告をされたという理解でいいんだと思うんですが、では、平成十六年分の所得等報告書、平成十七年分の所得等報告書に関して、村上ファンドからの収益はこの所得等報告書のどの欄に幾らと記載されていたのかということを教えていただきたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 所得等報告書に記載されている欄でございますけれども、「分離課税」の「株式等の雑所得」という欄でございます。そこに、具体的な書かれ方でございますけれども、十六年度には百六十九万円というふうに書かれてございます。(川内委員「十七年」と呼ぶ)十七年が六百五十万円ということで計上されております。今おっしゃられた「基因となった事実」につきましては、投資ファンド運用に基づくものというふうに記入されております。

川内委員 所得等報告書の分離課税の欄に、株式等の雑所得、「雑」に丸をつけて、所得として十六年度が百六十九万円、十七年度が六百五十万円ということで所得を記載していたということでございます。

 しかし、私がここで不思議に思うのは、本委員会に提出をされた「村上ファンドへの出資の状況」という資料によりますと、「純利益と納税額」というところで見ますと、平成十六年分が純利益が九十二万円、納税額が十一万円、平成十七年分が純利益が四百十二万円、納税額が三十八万円というふうに書いてございます。

 今、水野理事からの御説明ですと、所得は平成十六年分が百六十九万円、十七年分が六百五十万円ということで、それぞれに乖離があるわけでございますが、これは何に起因するものなのかということについて教えていただきたいと思います。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 国会に対しまして、総裁が資金を拠出した村上ファンドの運用利益について御報告いたしました。これは、ファンドの実現した利益から手数料などの費用を差し引いたものでございます。一方、所得等報告書に記載されました所得金額は、ファンドの運用資産でございます株式等の譲渡による実現利益が記載されているということでございまして、そこで差が出てきているというふうに考えております。

川内委員 今、手数料等とおっしゃいましたが、等は何ですか。

水野参考人 お答えいたします。

 手数料などと申しましたけれども、もう少し正確に申しますと、配当、利子、株式等の譲渡以外の原因による収益を加え、手数料などの費用を差し引いたということで、プラスとマイナスと両方の要因があるというふうに考えております。

川内委員 ちょっと今のはよくわからなかったんですが、後で議事録を精査させていただきます。

 先ほど、分離課税の株式等の雑所得というふうに丸がつけてあったというふうに御答弁いただきましたが、パススルー組合を通じて株式を売買する場合においては、これは税法上、納税は株式等の譲渡所得になるわけでございまして、国税庁に私確認をしておりますが、納税申告書、税務署に提出するものについては計算書を添付するということになっております。

 これは「ファンドからの利益の配分の取扱い」という国税庁からいただいた資料なんですが、利益の配分で任意組合の場合、株式の譲渡等は「(分離課税)」と括弧書きで書いてあるんですけれども、この場合には、譲渡損益を計算して、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を納税申告書につけるということになっておりまして、日本銀行に福井総裁が提出をされた所得等報告書には間違いがある。株式等の雑所得ではなく、株式等の譲渡所得なんですね。それは平成十六年、十七年の段階で、日本銀行の事務当局としてはおかしいとお思いにならなかったんですか。

水野参考人 お答えいたします。

 譲渡所得か雑所得かについては、おかしいと思っておりませんでした。

川内委員 福井総裁が御自分で、分離課税のところの株式の欄に、いずれにせよ、株式の取引なんですよ、所得等報告書における株式の取引の金額のところに所得を入れられたということでございます。

 これは、例えば「日本銀行員の心得」に、「局長級の職員は、別に定めるところにより、株券等の取得または譲渡および所得等に関し、所属長に報告しなければならない。」というふうに書いてございますし、さらに、「日本銀行員の心得等の運用基準および解釈」という内規もございまして、その中には、「金利・為替政策の変更に関する情報を事前に知り得る立場の者による当該施策実施前の関連金融商品への投資」、この投資という言葉には解約も含まれるということを私は日銀当局に確認をしております。

 いずれにせよ、福井総裁並びに日銀当局は、所得等報告書においては、あるいは納税申告書においてはさらに株式の取引をしているということを明確に認識していたはずであります。それは、運用は一任勘定で、運用は人に任せていた、運用は任せていたが、しかし売買はすべて個人に帰属をする取引をしていたわけで、そういう意味においては、これらの「日本銀行員の心得」並びに関連する内規に私は明確に違反するのではないかというふうに思いますし、実は、私も、株式等の譲渡所得、譲渡のところに丸がついているというふうに思っていたものですから、雑所得に丸がついていると聞いてちょっと余計に問題だというふうに今思っているところなんですけれども。

 これは、きょうは福井総裁はお運びいただいておりませんので、委員長、今申し上げたとおり、株式等の取引として日銀内部における報告もしているし、税務署にも報告をしているし、それで税金を納めているわけですよね。しかし、株式等の取引であれば、内規上はその取引の明細を日本銀行はきちんと把握しなければならないということになっているし、解約するに当たってはそれは個人的利殖行為に当たるから慎みなさいと書いてあるんです。

 これは大変にゆゆしき問題であるというふうに私は思いますので、ぜひ日本銀行の福井総裁の御本人の口から御説明をいただきたいというふうに思いますし、ぜひ委員会としてお取り計らいをいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

伊藤委員長 川内君の要求につきましては、後刻理事会で協議をいたします。

川内委員 それでは、水野理事、ありがとうございました。日本銀行関係はこれで終わりでございます。

 続いて、尾身大臣にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 尾身大臣、発言の中で「税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えております。」というふうに就任、所信のごあいさつというんですか、委員会でのごあいさつでおっしゃっていらっしゃいます。他方、ことしの骨太の二〇〇六には、「税制改革については、「基本方針二〇〇五」において、「重点強化期間内を目途に結論を得る」とし、また、与党税制改正大綱において、「平成十九年度を目途に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」としており、今後、この考え方に沿って鋭意作業を進めていくこととする。」というふうになっております。

 来年の秋から議論を始めるとこの骨太の二〇〇六の方針と一致しなくなるのではないか、すなわち閣議の文書に反することになるのではないかというふうに思いますが、御見解をお聞かせいただきたいと存じます。

尾身国務大臣 先日の私の所信の中で、「現在の諸情勢を勘案すれば、十九年度予算の歳出削減の状況、来年七月ごろに判明する十八年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて、税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になる」と考えている旨を申し上げました。

 いずれにいたしましても、財政再建の重要性にかんがみまして、十九年度予算については従来の改革努力を継続して、徹底した歳出削減に取り組んでまいりたいというのが私どもの考えでございます。

川内委員 済みません、私は骨太方針と大臣の御発言との整合性についてお尋ねをしているのでございますが、この閣議決定文書では、重点強化期間というのは平成十七年、十八年というふうにここに書いてございますが、平成十八年度内に結論を得る、すなわち方向性については結論を得る、さらに「与党税制改正大綱において、「平成十九年度を目途に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」」平成十九年度は実現するというふうに書いてございます。

 しかし、大臣の御発言は、来年の秋から議論を始める、方向性についての議論を始めるというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、平成十八年度内に方向性について結論を得、平成十九年度内にはその改革を実現するという閣議決定の文書と大臣の御発言というのはそごを来しているのではないかというのが私の問題意識でございまして、そこをどう御説明いただけるのかということを教えていただきたいと思います。

尾身国務大臣 基本方針の二〇〇六につきましては、経済財政運営の基本的考え方を示したものでございまして、税制改革について重点期間内を目途に結論を得るという一つの区切りではありますが、一定の幅を持って置かれた目標を示していると考えております。

 この点につきましては本年末の与党の税制改正作業における議論を見ていく必要がございますが、現在の諸情勢を勘案すれば、本格的、具体的な議論はただいま申し上げました考慮から来年秋以降になると考えているわけでございまして、いずれにいたしましても、財政再建の重要性にかんがみ、十九年度予算につきましては従来の改革努力を継続し、徹底した歳出削減に取り組んでまいりたいと考えております。

川内委員 今の大臣の御答弁は、目途にという言葉は一定の幅があるのであるという理解でよろしいでしょうか。

尾身国務大臣 先ほど申し上げましたように、この基本方針の二〇〇六は経済財政運営の基本的考え方を示したものでございまして、税制改正について重点期間内を目途に結論を得るという一つの区切りではございますが、一定の幅を持って置かれた目標を示したものであると考えております。

川内委員 済みません、大臣、ここから先の質問については通告をさせていただいておりませんので、おわかりにならない点だったらおわかりにならないという御答弁で結構でございます。

 目途にという言葉を使った場合に、私どもはその年度内にということを通常は想定するわけでございますが、政府として閣議決定文書の中で、目途にという、いわゆる骨太だけに限ってもいいです、骨太だけに限っても、目途にという言葉を使ってその年度内にその施策が実行されなかった例というのがあるんでしょうか。

尾身国務大臣 ですから、税制改革につきましての骨太の中では重点強化期間を目途に結論を得るという一つの区切りでありますけれども、一定の幅を持って置かれた目標を示している、この点につきましては本年末の与党の税制改正作業における議論を見ていく必要がありますが、現在の諸情勢を勘案いたしますと、本格的、具体的な議論は、ただいま申し上げた考慮から、来年秋以降になると考えているわけでございます。

川内委員 いや、そこの解釈はわかったんですが、今後、政府が目途にという言葉を使ったときに、それは、一定の幅があるんだな、後ろに倒れることもあるんだなというふうに理解せよということなのか、それともこれは例外的なのか、それを確認したくて、目途にという言葉を使ったときに、今までに、その年度内に施策が決定をされ、あるいは実行をされ、あるいは実現をされなかった例というのが果たしてあるんだろうかというのが私の問題意識なんです。

 多分通告していないので、これは後で、財務省の事務方に、経済財政諮問会議の事務方とかに確認をさせていただいて、その上でまたこの委員会で大臣と議論をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは続けて、山本大臣に貸金業のことについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 今回、一回決定したやに思われた、あるいは決定していた政府案が、一部削除をされ、それが見直し規定に変わり、閣議決定をされる予定であるというふうに聞いております。しかし、山本大臣は、我が党の枝野幸男議員の質疑に対してこのようにおっしゃっていらっしゃるのでございまして、「私どもとしましては、この経過措置というのは、それに合わせた十分な、万全な措置を考えてのことでございまして、私ども、その経過措置があることはお認めするところでございます。」というふうに予算委員会で御答弁をされていらっしゃいます。

 万全な措置であるとおっしゃっていらっしゃった政府案が、一部削除をされ見直し規定に変わったということに関して、万全な措置ではなくなったという御見解か、御答弁ください。

山本国務大臣 あの予算委員会でのやりとりの中で、枝野先生の質問に答える形で万全と言った意味、少し舌足らずであったかもしれません。

 私が言う万全とは、単に金利を上下させる金利の判断だけでなくて、貸金業者のことについても思いをいたし、なおかつ、借り手側の、利用者の方に思いもいたして初めて十全な対策になるであろうというように思っているわけでございます。また、多重債務者を一掃する、そういうツールとして、さまざまな見解やさまざまな手法があることは当然でありまして、与党のお考えも、ある程度の幅を持って、振り子が振れるような余裕を持った基本的合意であるという認識でもありました。

川内委員 大臣、ここに、「経過措置というのは、それに合わせた十分な、万全な措置を考えてのことでございまして、」とおっしゃっていらっしゃるんですよ。

山本国務大臣 私が先ほど申し上げましたように、枝野先生が金利のことに少しこだわっていらっしゃるのではないか。それも確かに大事なことでございます。しかし、金利プラス貸し手と借り手の議論もしたいねという意味で、三つ用意しましょうよ、三つ議論したいですよという意味で万全というようなことを言いたかったわけでありますが、時間やら、このやりとりについて十分な回数もなかったので十分伝わらなかったことについては、本当に反省しております。

川内委員 それでは、ここで余り解釈についてやりとりしてもあれですから、次に行きます。

 今般、政府の方で御決定をされた「貸金業法等改正の概要」というのをけさ金融庁から御説明いただきました。その中にこのように書いてありまして、このようにというか、私はこれは前代未聞なんじゃないかなと思うんですが、見直し規定が入っているんですね。二項目、見直し規定が入っている。特に、金利体系の適正化、出資法上限金利の引き下げ、みなし弁済制度の廃止あるいは総量規制の導入などについては、施行から二年半以内に実施すると。施行から二年半以内に、施行するが、施行する前に見直しをするということになっているわけですね。

 実施する前に見直しをするというのは、これは一体どういうことなのかな。今までこんな法律があったんでしょうか。その施策を実施する前に見直しますというようなことを書いてある法律が今まであったのか、なかったのか。

 私は多分ないと思いますが、こういうことになったのはなぜなのかということを、ちょっと大臣、御説明いただけますか。

山本国務大臣 見直し規定は大きく二つありまして、貸金業制度のあり方についての見直し、さらに出資法、利息制限法に基づく金利規制のあり方についての見直し、この二つでございます。

 この二つをどうするかということにおきましては、これから施行した後、かなり厳重な貸金業の規制がございます。特に罰則を強化するというような規制もありますし、さらには、財産的基礎を一挙に五千万円、認可法人にする、業務改善命令も行うというようなこともあります。

 そういった流れからして、ひょっとしたら見直さなくてもいい場面もあるかもしれませんし、また見直して、そこでもまだ多重債務者の危険とか、あるいは、そのほか万般の何らかの社会的不安があるということであれば、しっかりしたことをもう一回正確にやりましょうよという宣言文ではないかなというように思っております。

川内委員 宣言のようなものなんて、閣法で宣言のようなものとかいう規定が、法律があるのかどうか、ちょっと私はわかりませんが。

 では、ちょっと具体的にお尋ねをさせていただきますが、この見直し規定に「貸金業制度のあり方について、施行から二年半以内に、総量規制などの規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性について検討を加え、」「講ずべき施策の必要性について検討を加え、」と書いてあります。さらに、「出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方について、施行から二年半以内に、出資法及び利息制限法の規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性について検討を加え、」と書いてあります。二項目ですね。

 「講ずべき施策」というこの言葉が意味するところ、講ずべき施策とは何かということを端的に教えていただきたいと思います。

山本国務大臣 これはもう森羅万象あらゆることが講ずべき施策に入るわけでしょうけれども、今言われております利息制限法の改正について、ひょっとしたらあり得べき話なのかなというようなことも含めてということは先生御承知おきのとおりでありまして、ここは国民所得が変わっただとか、あるいは物価水準が変わっただとかいうような対応が必要かどうかについてしばらく研究を重ねて、有識者の意見等も考え合わせながらそんなことをやっていくという意味じゃなかろうかと思っております。

川内委員 今の大臣の御答弁は、「必要性について検討を加え、」の「検討」という言葉の意味を御答弁になっていらっしゃって、講ずべき施策とは何かということについて明確にお答えになっていらっしゃらないわけでございます。

山本国務大臣 御指摘のような施策も検討の対象となる、そのことは否定されておりませんが、現時点では特定の施策や方向性を示すものではあくまでもない。だから、もう何でもありという考え方で臨むべきだろうと思います。

川内委員 いや、大臣、ありがとうございます、まだ私が指摘していないのに御指摘のようなとわざわざおっしゃっていただいて。

 私が指摘をしたかったのは、少額短期の、要するに抜け落ちた制度ですね。少額短期の制度さらには金利区分の見直し、今回抜け落ちた部分も講ずべき施策の中に入っているという理解でよろしいでしょうか。

山本国務大臣 そのとおりだろうと思っております。

川内委員 甚だ、この貸金業法等の改正の概要というか、今回のこのどたばた劇が、私は、国民の皆様に対して申しわけないというか、施行の前に見直すとか、その見直しの講ずべき施策とは抜け落ちた少額短期の特例制度であり、金利区分の見直しも入ると。結局、ごまかして問題を先送りにしただけだということだと思うんですね、今回のこの法案というのは。

 もちろん、政府からすれば、いやいやそうではない、二年半後に、正確に言えば三年後を目途にですからね。先ほどの目途という言葉の使い方からすると、一定の幅があるとか今度は言い出しそうで私は大変心配なんですけれども、これではとてもとても多重債務者の解消にはつながっていかないのではないか。

 我々民主党は、出資法の上限金利を利息制限法へ法施行後即時に引き下げるという今提案をさせていただいているわけでございまして、大臣、このような問題を先送りにし多重債務者が出続けるような法案というのは、私はいかがなものかというふうに思います。

 それはなぜかというと、大臣、国民生活センターが出している「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」という、ことしの三月に出たレポートですけれども、この中に、皆さん、サラ金に追い込まれて自殺する方の人数というのはよくマスコミ等でも出るし、我々の議論の中でも出てくるわけでございますが、この調査報告の中には、サラ金に追い込まれて夜逃げする人、夜逃げせざるを得ない人の人数もレポートされていて、ちょっと古い数字になりますが、一九九八年には失踪者八万九千三百八十八人中、借金問題で失踪した方あるいは夜逃げした方というのが一万一千四百十五人というふうに出ておるわけでございまして、大変な問題をこの貸金業の問題というのは抱えているんだというふうな私は認識でございます。

 このような、問題を先送りにし、多重債務者が少なくとも今後三年間は現状のままということでありますから、それは規制はいろいろ厳しくなるでしょうが、しかし、根本的な問題が解決をされない法案を問題を先送りにしたまま国会に御提出されるのは、私はいかがなものかというふうに思います。

 昭和五十八年に貸金業規制法が制定をされたときには、これは議員立法で、改正もすべて議員立法でされております。今回、初めて閣法で出すわけですが、昭和五十八年に議員立法でやったときに、なぜ議員立法なのかと。このときに大蔵省の局長さんが御答弁されていらっしゃいますが、行政として閣法として出すのは無理がある、このような矛盾に満ちた法律を行政として内閣として国会に提出するわけにはまいらない、だから議員立法でお願いしたと正直に言っているんですよ。

 こんな恥ずかしい法案を閣法で出すというのは、私は、将来に大きな禍根を残すということを御指摘申し上げて、質疑を終わらせていただきたいと思います。

伊藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十三分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 両大臣におかれましては、このたびの御就任、まことにおめでとうございます。本日は、過日に承りました所信を受けての一般ということで、どうぞよろしくお願いをいたします。

 そしてまた、本日は当委員会に、新たに与党の委員として、さきの補選を御立派に勝ち上がってこられました新委員の方もいらっしゃいまして、改めて党派を超えて歓迎の意を表する次第でございます。――普通、こういうとき、拍手ぐらいしていただくとありがたいかなと思っておりますが。(拍手)

 財務大臣と金融担当大臣に、冒頭、今本会議で話題になりました例の非核三原則について、念のため、閣内一致しておるかどうか確認をさせていただきたいと思います。

 まず財務大臣、財務大臣の御見地から見ていただいたならば、NPTから脱会するということは我が国に原子力発電のエネルギーのもとになるものが入ってこなくなるということでありまして、これは実は、単なる核武装の話を超えて、まさに大都市東京の電力がとまるということも含めての議論を、閣内の枢要なポジションにある方が、その議論をしてもいいということをおっしゃっておられる。これについて、財務大臣の御見地も絡めながら、御意見をお伺いしたいと思います。

 非核三原則、並びに、結果として、議論を進めていった先にNPT脱会も視野に入っているのかどうか、そういうことも含めて御意見をまずお伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 非核三原則は堅持すべきであると思っておりますし、NPTから離脱というようなことは考えるべきではないと考えております。

古本委員 同様の質問を山本大臣にもお願いいたします。

山本国務大臣 非核三原則堅持並びに原子力の平和利用を促進する、こういう考え方でございます。

古本委員 ありがとうございました。

 それでは、所信の中身に入ってまいるわけでありますが、閣内の不一致といえば、例の道路財源の問題は少し大きな話になると思っております。

 尾身大臣におかれましては、道路財源につきましては、最初の入閣後のインタビュー等々、さまざまなメディアの場で発言をされておられますが、これを整理いたしますと、一般財源化と使途拡大は違うんだと。無色透明の何にでも使える財源に使うということが安倍内閣のねらっているところであって、したがって、国交省が小手先の、何かほかのことに使うことによって了とするのではなくて、無色透明の自由な財源にすることをもって一般財源化とするんだ、このように再三メディアにお答え、あるいはみずからの大臣御就任後に御見解を述べておられると思います。

 事実関係についてお尋ねをいたします。

尾身国務大臣 所信表明演説におきまして、安倍内閣総理大臣が「特定財源については、現行の税率を維持しつつ、一般財源化を前提に見直しを行い、納税者の理解を得ながら、年内に具体案を取りまとめます。」こう答弁しているところでございまして、この線に沿って、今鋭意関係方面と相談をしているところでございます。

古本委員 国交大臣は納税者の理解を得る、財務大臣におかれましてはその調整をする。ただ、これはそう簡単に一刀両断に切れる話ではございませんですね。

 何をか言わん、大臣御自身、就任前は、各種団体の長をお務めになる中で、むしろ、暫定税率の引き下げ等々も何やら申し入れていただいたり、あるいは一般財源化はこれはけしからぬことであるということを言っておられましたが、この個人的な思いと、今はやりの例のあれですね、議員としてと大臣としてと。これは、本音を言えば一般財源化反対、こういう感じでいいんでしょうか。

尾身国務大臣 安倍内閣総理大臣の所信表明演説の内容につきましては、私も閣議で署名をしているわけでございます。したがいまして、この厳しい財政事情のもと、現行の税率水準を維持する、一般財源化を図ることを前提とし、納税者の理解を得つつ具体案を練る、こういう考え方で進んでまいります。

古本委員 それでは、入閣の際のサインと引きかえにみずからの信念を曲げた、こういう理解でよろしいんでしょうか。

尾身国務大臣 厳しい財政事情を考え、道路の必要性も考え、しかし、シーリングのもとで道路に対する支出が、いわゆる余っていてオーバーフローがあるという実態を踏まえ、関係者の理解を得つつ、一般財源化をし、税率を下げないという方向でやってまいりたいと考えております。

古本委員 今大臣から重大な御発言がありました。

 恐らく、自動車重量税が余るということを想定しておっしゃっておられると思いますが、これは、小泉さんの五年間に公共を大変抑えてきた中で結果として余るわけでありまして、きょうは全国津々浦々から先生方いらっしゃっていますが、地方の道路需要は極めて旺盛であり、道路整備は必要でありますという立場に立って質問しておるわけでありますが、その意味では、余るというのは少し、発言訂正をなさった方が、居並ぶ道路を愛する先生方を敵に回さずに済むんではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 ことしの夏に決めた公共事業のシーリングの枠は財政厳しい折からきちっと守っていく、そういう考え方のもとにおいて道路の特定財源というものは余るということでございまして、シーリングをやめれば使い道はあるということは、もうもとより委員御存じのとおりでございますし、私もそう思っております。

 しかしながら、シーリングの考え方は、安倍内閣としてこれをきちっと守るという方針でございまして、ここで改革の手を緩めるわけにはいかないというのが私どもの考えでございます。

古本委員 それでは、いかにして、その改革の手を緩めれば、二〇一一年にプライマリーバランスが黒字になるかという議論についてお尋ねしてまいりたいと思います。これは、必要な対応額というのは大体何兆円ぐらいもくろんでおられるんでしょうか。

尾身国務大臣 現在、国のプライマリーバランスは十一兆の赤字、こういうことになっているわけでございまして、二〇一一年度までにこのプライマリーバランスをゼロにまでする、そして二〇一〇年代の前半にはGDP対比の債務残高を引き下げる方向に持っていくというのが現在の私ども安倍政権の考え方でございまして、現在、来年度予算につきましては、厳しい歳出削減を継続し、改革を継続しながら予算を編成していきたいというふうに考えております。

古本委員 これは、内閣府発行の、基礎的財政収支均衡のための要対応額というペーパーですが、これによりますれば、二〇一一年度の国、地方合計ベースで、名目三%の成長を前提に置いて、約十七兆円程度の要対応額を見込んでおられます。

 この数字は、かつて内閣の要職にもあられた大臣におかれましては精通しておられる分野でありまして、実は、平成十四年の経済財政諮問会議で大変わかりやすい説明を、尾身大臣は当時、特別委員というんでしょうか、議員の立場でおっしゃっておられます。消費税の五%程度の引き上げはやらざるを得ないんでないかというふうに考えておる、二十兆円程度の財源でプライマリーバランスの回復のめどをつけるためには、その五%程度の引き上げはやらざるを得ないんではないかというふうに御発言なさっておられます。

 去年からことしにかけての歳出削減の最大の目玉は何だったんでしょうか。

尾身国務大臣 公共事業を含め、一般歳出を含め、現在の厳しい財政状況のもとで、小泉政権のもとでは、マイナスシーリングも含めましてシーリングをかけて歳出削減を図り、また行政改革、財政改革を進めてきたところでございまして、来年度、十九年度につきましても、その線に沿ってしっかりとやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

 現在、御存じのとおり、国、地方合わせての債務残高は七百七十五兆、GDP対比で一五一%と世界一高い水準でございます。二番目がイタリーの一二〇%でございますが、ヨーロッパ、アメリカなどの先進国は、大体この比率が、GDP対比の債務残高、五〇から七〇ぐらいでございまして、日本は最大の債務国であるというふうに考えております。

 他方、国民の負担がどうかといいますと、租税及び医療保険あるいは年金等の掛金を合計いたしまして三八%というのが国民負担率でございまして、この率は世界でも実質一番低いという実情でございます。アメリカが見かけ三二%で一番低いわけでございますが、アメリカにはいわゆる国民皆保険がございませんで、そのための私的保険に掛けている負担を考えると、大体この比率に直して八%程度でございまして、日本と同じ計算の前提に立つと、大体四〇%ぐらいの国民負担率になるというふうに考えております。

 以上を総合して、国、地方の債務残高は世界一高い、そして国民負担率は世界一低いというのが日本の財政の状況であると認識をしております。

 さはさりながら、無駄な経費をしっかりと省いて財政をスリム化する、そして、合理化をしていくということをして初めて国民の理解と納得が得られるわけでございまして、十九年度予算についてはめり張りをつけた予算をしっかりと組みたい。そして、このように歳出削減を徹底して実行した上で、それでも対応し切れない社会保障の問題やら、あるいは少子化対策に伴う負担増等につきましては、安定的な財源を確保するという見地から抜本的、一体的な税制改革を推進いたしまして、将来世代へ負担を先送りしないようなことをしていく必要があるというふうに考えております。

 現在の状況、諸情勢を判断いたしますと、来年度予算の歳出削減の状況、あるいは十八年度決算の状況、あるいは医療制度改革に伴う社会保障給付の実績等を見る必要がございまして、その後に税制改革の本格的、具体的な議論を行う。そういうことになりますと、本格的な議論は来年秋以降になるのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、十九年度の予算につきましては、財政再建の重要性にかんがみまして、従来の改革努力を継続して、徹底した歳出削減に取り組んでまいりたいと考えている次第でございます。

古本委員 消費税について、これまた入閣のサインによって、そのサインをした際にみずからの志は捨てた、こういうことなんでしょうか。消費税論者でいらっしゃったわけです。そのことをお尋ねしているのです。

尾身国務大臣 私は別に消費税論者ということではございませんで、国家百年の大計を考えたら、必ずこの財政再建は実現をしなければならないというふうに確信をしております。そういう中で、経済の活性化、景気回復なければ財政再建なし、成長なければ財政再建なしという考え方のもとに、経済の活性化と財政の再建を両立させることを実現していきたいというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、この難しい問題、しかし日本という国家にとって極めて大事な問題を、皆様の御理解を得ながら解決をしていきたいと考えております。

古本委員 あと五年なんです。その間に十七兆円を圧縮していかなきゃいけないわけですね。

 この大臣の所信の中に入っています中で、目玉なのは恐らく資産・債務改革、例えば国の資産圧縮、この程度ですよ。これは約一兆円だというふうにたしか与党の試算で出たと伺っていますけれども、国有地の売却等々ですね。したがって、十七兆を圧縮しようと思うと、これは相当な、原価の構造改革のようなことをやらないと、言っておられます公務員のいわゆる削減、既に五%、約二万人でしょうか、あれだけではなかなかこの十七兆というのは実現できないと思うんです。

 その意味では、総理がおっしゃっておられた消費税の「逃げず、逃げ込まず」という精神を、尾身さんはどういうふうに受けとめておられるのか。そう簡単に、十七兆というのは、打ち出の小づちで出てくる数字ではありませんね。

 もっと言えば、今概算の段階で、劇的に、例えば一キロ一億円で道路を延伸しておったものが、例えば、これを一億円で一・二キロ延伸できる、逆に一キロ九千万円でできるようにする。これは、決して業者をいじめるということじゃなくて、途中の中間段階での国富を搾取しているいろいろな仕組みがあるわけですね。こういう部分に手を入れていくんだということがあって初めて、この十七兆も実現してくるんだろうと思いますけれども。

 それが、一年先まで口を閉じておいて、それで一年後にまた議論をするという前提の与件が、今伺えば、医療と社会保障、この辺の数字が出てきてからだということでありますが、これとて、これからの一年間で激増するとか、目からうろこが飛び出すような、何か変わるかといったら、情勢はそうは変わらない、トレンドがあるわけですから。どうして、今現在、消費税の議論をしないのか、こういう話なわけであります。

 自分が大臣のときにはやりたくない、次の人がやってくれるだろうということで決してないと願っていますので、その辺のところ、もう一度お伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 古本委員の、私から見て、ある意味で国を憂うるお考えの御発言だというふうに思っておりまして、御激励と受けとめておりますが、国の財政再建は、これは与党、野党を問わず極めて大事な課題でございまして、これを必ず実現していかなければなりませんし、逃げず、逃げ込まずという言葉もございますが、私自身は、この問題に真っ正面から取り組む決意でございます。

 そういう中で、十九年度につきましては、先ほど言いました、徹底的に無駄を省き歳出削減を実施するという方針で臨んでいきたい。痛みを伴うということも承知をしておりますけれども、これをしっかりとやっていかなければ国民の理解が得られないというふうに考えているわけでございまして、その結果を見ながら、十八年度決算の状況等を見ながら、税制改正についても来年の秋以降、本格的、抜本的な検討を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございまして、決して逃げているつもりはございません。

古本委員 その前提となる来年の結果を見る上でも、今回の予算編成というのは非常に大事だと思うんですが、めり張りの中で、先ほど来本会議の中、大変気勢が上がっていましたが、省昇格が決まれば、これは主計の話になるのかもしれませんが、大体幾らぐらい必要財源が発生するのか等々、防衛省を想定した場合、そこは手厚く盛り込んでいく、そういうお心でしょうか。

尾身国務大臣 防衛関係予算につきましても、先ほどの厳しい削減をしていくという考え方をこれは貫いていくわけでございますが、しかし、国家としての根幹の姿勢の問題として、今、省昇格の法案を出しているわけでございまして、そういう中で、国民全体の理解と支持を得ながらこれを実現していく。他方、予算につきましては、厳しい削減努力を続けていく。

 もとより防衛の問題、昨今、大変重要な問題であるということはよく承知をしておりますが、そういう中でいかにして効率的な資金の使い方をしていくか、そういうことにもしっかり取り組んでいかなければならないと考えているわけでございます。

古本委員 最後に、山本大臣に、消費税についての御見識なり御覚悟がもしおありになりましたら、金融担当大臣のお立場からでありますが、消費税というものについて御意見を求めます。

伊藤委員長 時間が来ていますので、簡潔にお願いします。山本金融担当大臣。

山本国務大臣 財政再建における税というのは、極めて慎重かつタイムリーに変更をしていく必要があろうと思っています。

 まず、日本は戦時国債で、一四〇%ぐらいGDP比でありました。それは、成長を基軸とした日本人の戦後の努力で償還できたという実績があります。そういう実績を踏まえて考えれば、成長が基軸であろうというように思います。しかし、他方で、そればかりをずっと追っていくことにおける政策の不安というものもありまして、ヨーロッパ各国の例を見ますと、破綻しかかった国が再建をしたときには行革のシェアが七、増税のシェアが三というような数字があるように聞いております。

 そう考えていけば、公的部門をさらに縮小して、もうぎりぎりいっぱいというところの国民の納得を得てからそういう措置が必要であろうということも、また現在の大切な事項だろうというように思っております。

 以上です。

古本委員 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、山本大臣、突然ですが、一昨日、二十五日の夜、東京芝公園の東京プリンスホテルで何かの集まりに出席したそうですが、どんな集まりだったんでしょうか。

山本国務大臣 私の後援会の会合がございました。

佐々木(憲)委員 後援会の会合ではなくて、資金集めパーティーだったんじゃないですか。

山本国務大臣 私の認識としては、例年、後援会の皆さんに一同お集まりいただく定期的な会合という認識の方が強くございましたものですから、そういう意味におきましては、年に一度お目にかかれるチャンスということのウエートの方が高かったというように考えております。

佐々木(憲)委員 たしか案内状に、政治資金規正法第八条の二に規定する、そういう政治資金パーティーだという案内状を出されたんじゃないですか。後援会の案内状ではないでしょう。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

山本国務大臣 例年、そうした意味において、政治資金規正法にのっとって事業報告を正確にさせていただいているパーティーであることは間違いありません。

佐々木(憲)委員 結局、後援会じゃなくて、資金集めを目的としたパーティーだと思います。

 これは、企業に幾ら買っていただいたのか、中に金融関係含まれていませんか。

山本国務大臣 現在、どこにどれだけという報告をまだ聞いておりませんけれども、例年ですと、金融関係の方には余りそういう御負担はいただいていないというように承知しております。

佐々木(憲)委員 今回はどうなんですか。

山本国務大臣 例年どおりであるというような認識をしております。

佐々木(憲)委員 つまり、金融関係も含まれていると。

 これは極めて重大だと思うんですね。金融担当大臣でありながら、それを金融機関に買っていただいて資金集めをする。しかも「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」というのが閣議決定でございまして、この中には「パーティーの開催自粛」、つまり大臣となった場合には自粛をするんだ、「政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する。」と。この規定にも抵触する可能性が非常に高い。

 また、今おっしゃったように、その資金の対象をみずから所管する金融機関から資金を集めていたとなると、二重に重大な問題だと思いますが、そこは調査をして是正をされたいと思います。いかがですか。

山本国務大臣 できるだけ、特定の業界、特定の者に負担をかけることのないように、広く薄くお願いをするように考えております。

 また、善意で、たまたま私の後援会に協力という形でパーティー券を取得される方、購入される方については、非常にありがたいとは思いますものの、そのことによって、政策、特に金融政策において何らかの不公平等があることが絶対にないように戒めながらやっていく所存でパーティー事業等を開かせていただいているという認識でございまして、御懸念、もっともであろうと思いますけれども、いよいよ、そういった観点、ますます律しながらやっていきたいというように思っております。

佐々木(憲)委員 金融機関は、これは含まれているかどうか調査をして、含まれていた場合には返還をする、当然そうすべきだと思いますが、いかがですか。

山本国務大臣 調査して、また御報告したいと思います。

佐々木(憲)委員 尾身大臣に伺いますが、このような政治資金集めのパーティーを開く予定はありますか。

尾身国務大臣 これは閣僚の規範がございまして、大規模な政治資金パーティーは自粛する、こういうことでございまして、大規模な資金パーティーは自粛をするつもりでおります。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 大規模の基準がいろいろ問題ですけれどもね。大臣は自粛するというのが本来あるべき姿だと思いますので、よくこの規範を念頭に置いて対応していただきたいと思います。

 きょうは最初ですので、この程度にしておきたいと思います。調査の上、問題があれば、さらに追及をしていくつもりでございます。

 そこで、尾身大臣に、景気の認識からお伺いをいたしますが、所信表明で、「我が国経済は、長い停滞のトンネルを抜け出し、民間需要に支えられた景気回復を続けております。」このように述べておられます。しかし、多くの国民には実感が伴わないというのが聞かれるわけですね、そういう声が。

 お配りした資料を見ていただきたいんですが、確かに大企業の利益は非常に伸びているわけです。それは確かに回復をしていると私は思います。例えば経常利益、右の上の方にありますが、十億円以上のところを見ますと、二〇〇一年には十五兆三千三百億円、これが二〇〇五年には二十九兆四千三百億円、二倍近い伸びを示しておりますし、役員賞与に至りますと、七百十六億から六千百二十六億、これは十倍近いわけであります。それから、社内留保はどんどん積み上がっている。これを見ると、確かに大手企業の利益の拡大は際立っている、このように思います。中小と比較しましても、その特徴は歴然としていると思います。

 しかし、もう一枚目をあけていただきますと、家計の側は決してそういうテンポで収入が伸びているわけではございません。逆でございまして、例えば収入の内訳を見ますと、実収入、七期連続の実質減少、そのうち世帯主定期収入は、これも七期連続実質減少、それから臨時収入・賞与、二期ぶりの実質減少、配偶者の収入、三期連続の実質減少、こういうふうになっているわけです。しかも、そういう中で、非消費支出、六期連続の減少、可処分所得、七期連続の実質減少、消費支出、二期連続の実質減少、こういうふうに、直近の統計を見るだけでも大変な停滞状況であります。

 この背後にはさまざまな要因がありまして、例えば、リストラで雇用不安、そういう中で賃金が非常に抑えられる、そういう給与の面での低下というのは非常に大きく進んでいる。さらに、負担が非常にふえているということで、消費支出が低迷しているわけですね。一番下のグラフがそれを端的に示しておりますが、これは二〇〇〇年を一〇〇としまして、ちょうど真ん中に線がありますけれども、ずっと沈んだままなんですね。水面下に低迷しているというのは直っていないわけでございます。

 こういうことを考えますと、尾身大臣、一部の大手企業の利益を中心に非常に大きな伸びを示しているけれども、しかし、庶民の暮らしは水面下を低迷しているんじゃないか。そういう意味では、この格差というものは非常に開いているというふうに私は思いますけれども、大臣、どのような認識でしょうか。

尾身国務大臣 景気が全体として順調に回復しているというのが私どもの実感でございまして、収益改善あるいは設備投資の増加などが続いているというふうに考えております。

 この企業部門の好調さが徐々に家計部門へも及びつつあるというふうに感じておりまして、特に直近、足元でございますが、正規雇用者の増加、あるいは消費につきましても基調としては増加を続けているというふうに感じているところでございます。

佐々木(憲)委員 どうもこの数字と合わないですね。増加を続けているんじゃなくて、実質減というのがずっと続いているわけでありまして。

 では、具体的にもう少しお聞きをしていきたいと思います。

 まず、山本大臣に、再チャレンジ担当大臣ということでもございますので、特に高齢者の場合、これは再チャレンジで頑張れと言われてもなかなか大変だということであります。若者は再チャレンジというと多少何とかしようかなという気にもなるかもしれませんけれども、高齢者の場合、それよりも安心して暮らせるようにしてもらいたいというのが実際の声だと思うんです。その声にどうこたえるか、これは大事だと思うんですが、大臣の見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

山本国務大臣 先生おっしゃるとおり、高齢者の中で、勤労のチャンスがない方の上に、さらに勤労の能力という意味での労働参加ができない方、こういった方にはセーフティーネットをしっかりするということの方がむしろ大事であろうと思います。

 しかし、チャンスに恵まれないという方で能力がある方、そこのところでは、むしろ再チャレンジ支援策というのが大事になってくるようでして、今回の概算要求の中にも書かれてありますが、七十歳以上の雇用促進というようなテーマで各企業にお願いするという施策も今回盛り込まれているのは、それは一つは、まだまだ若者には負けない、頑張ろうという人にチャンスを与える必要があろうというように思っておりますので、高齢者のそれぞれの方々の特性に応じて、こういった施策を講じたいというように思っております。

佐々木(憲)委員 セーフティーネットをしっかりするのは大事だというのは、私もそのとおりだと思うんですね。ところが、なかなか負担が重いために、セーフティーネットが今壊れつつあるんじゃないか、こういう感じがするわけです。特に高齢者の生活は非常に厳しいところに追い込まれております。

 そこで、具体的な数字を確認したいんですが、厚労省、来ていらっしゃると思います。

 高齢者の保険料、利用料、税の負担、この数字を確認したいんですが、例えばモデル年金世帯、夫が平均的収入で四十年間就業して妻がその期間すべて専業主婦であった、こういう世帯と言われておりますが、その場合は、夫が年に二百万円、妻が七十九・二万円、合わせて二百七十九・二万円の収入のある年金世帯、こういうことになると思うんですね。その場合、介護保険料、国民年金保険料、これは自治体によって違いますけれども、全国平均の数字を聞きたいと思うんです。

 二〇〇一年度と二〇〇七年度を比べると、介護、国保の保険料、それぞれ年額幾ら負担がふえるか、この数字を示していただきたい。

御園政府参考人 まず私から、介護保険の保険料についてお答えしたいと思います。

 介護保険料でございますけれども、御承知のように、高齢化の進展なりあるいは介護保険制度の普及、定着ということで介護保険給付費が増加しておるところでございまして、その結果、平成十八年度から平成二十年度までの第三期保険料の全国平均も増加をしているわけでございます。

 御質問のモデル年金世帯の介護保険料の合計額、全国の加重平均の介護保険料を用いて機械的に試算をさせていただきました。この私どもがいたしました機械的な試算によりますと、平成十三年度は一月当たり夫婦二人で四千四百円でございまして、平成十九年度はこれが五千百円となりますので、増加額は一月当たり七百円でありまして、年間約八千四百円の増ということになっております。

白石政府参考人 あわせて、国民健康保険料のお尋ねがございました。

 税制改正に伴いまして、国民健康保険料の影響というのは、御案内のように、基礎年金のみで生活されている年金受給者は影響を受けないわけでございますが、一定以上の収入がある方については段階的に引き上げているわけでございます。

 本当にいろいろ前提を置いてやらなきゃいけないわけでございますけれども、御案内のように、国保はそれぞれの市町村で財政状況でいろいろ違いがありますが、あくまでも試算ということでしてみますれば、御主人が二百万円ぐらい、奥様が七十九万二千円という高齢者世帯ということでは、税制改正のこと、それから応益割りの軽減、負担割合の区分が変わること、それから医療給付費がふえる等々の理由によりまして、機械的にお尋ねの年度の間では約四万三千円の増加でございます。

佐々木(憲)委員 四万三千二百円というのが一番細かな数字だと思うんですが。

 今、介護保険料は二〇〇一年から二〇〇七年の間に八千四百円の負担がふえる、さらに国保が四万三千二百円ふえる、合わせますと五万一千六百円、こういう負担になるわけです。この介護と国保の二つの保険料で、これまで年間十万五千六百円の負担だったのが十五万七千二百円にふえる。

 この世帯の場合、例えば仮に夫が特養ホームに入所したという場合、利用者負担、食費、居住費、いわゆるホテルコスト、合わせて幾らふえることになるんでしょうか。

御園政府参考人 御指摘の、介護保険の利用者負担の合計額の増加でございますけれども、在宅と施設の給付の負担の公平を図るという観点から、介護保険施設における食費、居住費につきましては、所得の低い方が入所が困難にならないような、所得の低い方に対する配慮をしつつ、食費、居住費について保険給付の対象外としたことによってその負担が増加をしているわけでございます。

 御指摘の、モデル年金世帯で食費、居住費を含めた利用者負担の合計額を見てみますと、平成十三年度は一月当たり約三万九千八百円でございましたが、これが平成十九年度は約五万四千百円になりますので、増加額、一月当たり約一万四千三百円でありまして、これを年間に直しますと、十七万一千六百円の増ということでございます。

佐々木(憲)委員 これも十七万一千六百円、こういう負担になる。実際の負担額でいいますと、約四十八万円だったのが六十五万円になる、十七万円以上の負担、大変なふえ方だと思うんですね。

 では、もう一つのケースですが、夫が七十歳以上で病気になって療養病床に入院したケース、その場合の医療費の負担は幾らふえますか。

白石政府参考人 お尋ねの、モデル年金世帯におきまして療養病床に入院したケースということでございますが、月額で当初三万九千八百円のものが十九年度には五万三千五百円、一万三千七百円月々ふえるものというふうに試算はできます。

 ただ、療養病床の場合、平均在院日数が大体半年ぐらいなものでございますので、年額にというお尋ねはちょっといかがとは思いますけれども、単純に十二倍いたしますと、十六万四千四百円の増でございます。

佐々木(憲)委員 これも大変な負担増なんですね。

 ですから、今確認いたしましたけれども、年収約二百八十万円のモデル年金世帯の場合、介護保険料、国民健康保険料の負担というのが年に五万一千六百円ふえる、その上、特養ホームに仮に入所した場合十七万一千六百円ふえる、合計して二十二万三千二百円の負担増なんですよ。病院に入院した場合、これも機械的試算ですけれども、合わせると二十一万六千円の負担増。これでは一カ月分の年金が全部吹っ飛んでしまうわけです。

 今確認をいたしましたのは、年収約二百八十万円のモデル年金世帯の場合であります。これが年収が三百万、四百万という高齢者世帯になりますと、さらに税金の負担が出てくるわけです、所得税、住民税。

 尾身大臣にお伺いしますが、高齢者世帯の場合、年収三百四・二万円、三百七十九・二万円、それから四百万円、こういう世帯の場合、所得税、住民税の増税というのは一体どういうふうになりますか、二〇〇一年から二〇〇七年の比較で。

尾身国務大臣 三百四万円の高齢者年金世帯の場合でございますが、税だけで見まして、平成十三年、二〇〇〇年前後の税がゼロでございましたのが、仮に言うと年金三百四万円でいいんですね、標準型といいますか。(佐々木(憲)委員「はい」と呼ぶ)三百四万円の方々については二万七千円になっております。

 ただ、同じ所得であっても、給与所得者、つまり現役世代と高齢者世代では現役世代の方がはるかに大きい負担になっている。同じ所得で高齢者世代が非常に優遇されていて現役世代が厳しい状態になっているということの是正をするという意味で、年金課税の見直しを二〇〇四年、平成十六年にしたわけでございます。

 例えば、今の例で税負担を見ますと、所得税、住民税を合わせまして、同じ三百四万円の収入で、高齢者負担は二万七千円の負担でありますが、給与所得の現役の世代は十四万円の負担をしているということでございまして、同じ所得の現役世代と高齢化世帯では五倍ぐらいの税負担がある、現役世代の方が負担が多いということでございます。そういう意味で、高齢化世代に対しましての税負担という面では、なお現在でも相当に優遇されている、優遇しているというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 数字、まだお答えになっていないのは、年収三百七十九・二万円と年収四百万円、この数字をお答えになっていないんです。

 それから、先ほどの、何か現役世代の方が負担が大きいという話でありますが、年金世帯で、体力も弱まり、それからいろいろな病気の可能性も出てくる、稼得が少ない、そういう方々は特別の支援が必要である、これが今までの考え方だったんですね。ですから、何か、バランスだ、バランスだと言うんだけれども、私は考え方が全く違いますので、それはそれとしてまた議論をしていきたいと思いますが、言われなかった数字だけつけ加えていただきたい。

尾身国務大臣 これは、佐々木委員は数字だけとおっしゃいましたが、私どもも感想を述べさせていただかないと国会の議論になりませんから申し上げさせていただきますが、所得が三百八十万円の場合、年金世帯の場合は、五年前は四千円の税負担でございましたが、これが十四万円になっております。他方、給与世帯の場合は、五年前十三万円の負担であったものが二十一万円に、税負担、所得税、住民税合わせてなっているわけでございまして、同じ三百八十万円の所得で、片方は十四万円の税負担、片方は給与世帯は二十一万円の税負担ということで、同じ所得でありながら、給与・現役世代は一・五倍の税負担をしているという現実も理解をしていただきたいと考えている次第でございます。

佐々木(憲)委員 年収で三百七十九・二万円の場合、二〇〇一年と二〇〇七年を比べますと年間十三万八千円の増税になると思うんです、今おっしゃったのは。うなずいておられるからそのとおりだと思うんですが。それから、年収四百万円の場合は年に十六万四千四百円の増税になると思うんです。これは大変な増税なんですよ。

 同じ所得でありながら、現役がこうで高齢者が少ないとおっしゃいますけれども、高齢者の場合だって現役のときにはちゃんと払っているんですから。高齢者になった場合には、長年働いてこられて退職されてそういう年金生活をされるということで、それを全体で支えていこう、こういうことで今までやってきているわけです。それを、支えを外してどんどん増税だ、こうなると、これは三百四万円の場合でもゼロからいきなり二万七千六百円、年収三百七十九万の場合、三千六百円だったのが十四万一千六百円、四十倍ですよ。四百万円の場合、五千五百円から十六万九千九百円、三十一倍。これは数倍とか十倍という話じゃなくて、何十倍という世界の負担に急になってくるわけですね。

 その上に、先ほどの保険料の負担が加わってくるわけです。これは、例えば三百四万の世帯では、介護保険料と国民健康保険料、所得税、住民税の負担、合わせますと十四万二千八百円から二十三万五千二百円にふえる、負担の増加分は九万二千四百円になる。しかも、特養ホームに入ると、さらに四十八万七千二百円も負担がふえる。それを加えると五十七万九千六百円の負担になる。負担増だけでですよ。夫が入院した場合、医療の自己負担が六十四万二千円もふえる。合計すると七十三万四千四百円の負担増なんです。ふえる分だけでですよ。

 負担額を見ますと、額でいいますと、例えば三百四万円程度の年収の場合、半分近くの百二十万円から百三十五万円がこれらの負担によって消えていくわけです。これは大変な額なんですよ。三百七十九万二千円の場合の世帯は、介護保険料、国民健康保険料、所得税、住民税の負担、二十二万八千円から四十三万三千二百円へ二十万五千二百円も負担がふえる。特養ホームに入ると、負担は二十九万四千円ふえる。合わせた負担増は四十九万九千二百円。夫が仮に入院したら、三十八万八千八百円の負担増。合計すると五十九万四千円、こういう負担がふえる。三百八十万の収入のうち百四十万円とか百五十五万円が、これらの保険料、税金、介護利用料または病院代、これで消えていくわけです。これは余りにも急激な、大変な負担増だというふうに思います。

 この数字自体は、これはそのとおりですね。

尾身国務大臣 保険料負担が幾らふえたかという数字は先ほど厚生労働省の方がお答えしたとおりでございますが、年収三百七十九万円という標準世帯で、私どもは、年金あるいは医療保険、介護保険等のサステーナビリティー、持続可能性ということをどうしても考えていかなければならないと思っております。つまり、制度自体がパンクをしてしまいましたら、これは国民全体が困るわけでございますし、特に高齢者の皆様が困るわけでございますから、制度の維持可能性ということをしっかりと確保していかなければいけないというのが我々の考え方でございます。

 そういう中で、税あるいはいろいろな社会保障負担についても増額をお願いしてきたことも事実でございますが、その結果としてそれではどういうことになっているかといいますと、三百七十九万二千円の標準世帯で見て、税全体及び保険料負担全体で見て、年金の世帯の場合には四十三万円、現役世代の場合には七十二万円の税、社会保障負担を払っているということでございまして、同じ三百八十万円の世帯が、片方は四十三万円、片方は七十二万円という税負担になっております。

 そういう意味で、私どもは、高齢者の方々に対しては、現役世代と比べて物すごく大きな負担軽減を実際に実施しているというふうに考えておりまして、高齢者の皆様に対してかなり優遇した税制及び社会保険制度をとっているというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 優遇していると言いますけれども、とんでもない話で、制度維持のためにこういう負担増を押しつけていきますと、生活が成り立たないという声が広がっているわけです。本当にこれ以上とれないような状況のところに突き落として、身ぐるみはぐような、こういうやり方なんです、実際上。今ここに挙げたのは一つの部分にすぎない。ほかにもいろいろあるわけです。現役世代と比べてと言いますけれども、高齢者は現役世代のときはちゃんと現役世代の負担をしているわけだから。高齢者になったら支えましょうということで始まったわけです。

 それが、ともかくこういうことで、私のところにもいろいろな訴えがありますけれども、一体幾らになるのかと考えるとそら恐ろしい感じがします、こういうことを言われます。ことしの税額通知が役場から送付され、その額を見てびっくりしました、すぐ役場に向かいましたが、国の税制が変わったからだという答えのみでした、私の市では保険料なども一緒に上がったのでなおさらです。これは住民税の増税の通知に対する声です。

 それから、税金の請求が来て頭にきています、介護保険はこれまで三千六百円だったのが一万二千四百円の天引き、国保税は一回一万七千円だったのが三万五千九百円、これを六回払えと言うんです、非課税だったのが、県民税、市民税も二人合わせて六万九千七百円の請求になっています。それだけの請求が来た、負担だけでも年金の一カ月分になる、生活できない、こういうふうに言われております。

 私も、先日出演したあるテレビの番組で、九十歳の高齢者が、国会の前に連れていってくれ、国会の前で私は死んで抗議したい、こういう声まで出ているんです。これはちょっと余りにもむごいやり方ではないかというふうに私は思います。

 それで、厚生労働省に確認したいんですが、ことしに入って高齢者の負担がどんどんふえてきましたが、ことし一月から来年十二月までの期間、既に決まって実施されているもの、これから実施するものもあわせて、すべて、どういうものがあるか示してください。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

白石政府参考人 便宜、私の方から税も含めまして御説明申し上げますと、まず、本年の一月に所得税の定率減税が二分の一に縮減がありました。

 それから、四月に、給付額の増あるいは税制改正等によりまして、介護保険料の改定と国民健康保険料の改定が行われておりますが、これはそれぞれ激変緩和措置つきでございました。それから、現役世代の負担とのバランスの観点から、年金のマイナス物価スライド、マイナス〇・三%がございました。それから、一般の低所得者世帯との均衡を図る観点から、高齢者の生活実態を踏まえまして、平成十六年度から段階的に縮小しております生活保護の老齢加算の廃止があります。

 それから、六月に、個人住民税の老年者控除の廃止と国民年金等控除の見直し、それから個人住民税の定率減税の二分の一への縮減、それから段階的に廃止されます個人住民税の老年者非課税限度額が三分の二になりました。

 七月、公的年金等控除の見直しなどの税制改正に伴いまして、介護保険の一割負担と、それから食費、居住費に係ります利用者負担段階の改定がありました。これは激変緩和措置を講じております。

 それから、八月に、同じく税制改正に伴いまして、医療保険の一割負担と食費負担に係ります患者負担区分の引き上げ等がございましたが、これも激変緩和を講じております。

 十月、今月でございますが、医療保険におきまして、御案内のように、制度の持続可能な展開ということと、現役と高齢者の負担の公平という観点から、七十歳以上の現役並みの所得の方の患者負担が見直されております。二割から三割でございます。それから、介護保険との負担の均衡の観点から、療養病床の入院患者に係ります食費と居住費の負担の見直しが行われております。

 来年の一月でございますが、所得税の定率減税が廃止されることになっております。

 また、六月に、先ほどのことし六月の残り分といいますか、引き続きでございますが、個人住民税の定率減税の廃止と、それから段階廃止であります個人住民税の老年者非課税限度額が三分の一に縮減でございます。

佐々木(憲)委員 これだけの、高齢者に対する負担増の大波が次から次と押し寄せているという状況なんですよ。全部で十五項目もあるじゃありませんか、ことしから来年にかけて。当然、こうなってくれば、今までの三十倍、四十倍の負担になるんですよ。こんな高齢者いじめというのは私はやめるべきだと思う。

 厚労省に聞きますけれども、これからこれ以上の負担は一切ない、はっきりと答えてください、一切ないと。

白石政府参考人 例えば、先般の医療制度の改革によりまして、平成二十年四月施行が決まっております七十歳から七十五歳未満の高齢者の患者の負担の割合は、一割から二割へ見直しなどがございます。また、このほかにも、平成二十年度におきましては、税制改正に伴う国民健康保険料あるいは介護保険料の上昇等に関する、先ほど来御説明しております激変緩和措置の終了等がございます。

 申すまでもないことでございますけれども、こういった制度改革というのは、先ほど財務大臣の方から御答弁ございましたように、社会保障制度の持続可能性を高めるセーフティーネットとしての機能を発揮するというために、低所得者には配慮しつつも、世代間の公平であるとかということを考えますと、特に負担能力のある高齢者に対して応分の負担をお願いするということで、現役世代も含めた国民の負担を極力抑えるという観点から行われたものでございますので、医療、介護等のサービスが引き続き続けられるようにするための見直しということでございます。

佐々木(憲)委員 これ以上ないのかと思ったら、まだあると。とんでもない話だ。

 では、もうかっている大企業、大銀行は税金を払っているんですか。大銀行の六大グループ、連結決算で最終利益は幾らになっていますか。法人税、ことし三月、払っていますか。

山本国務大臣 十八年三月期の大手六銀行グループの当期純利益は、傘下銀行合計で約三兆円を計上しております。

佐々木(憲)委員 法人税を払っていますか。

山本国務大臣 法人税は、三月期に納税額は発生していないと思料しております。

佐々木(憲)委員 銀行は空前の利益を上げているんです、三兆一千二百十五億円。法人税はゼロなんだよ。そういう状況で……(発言する者あり)ボーナスも。本当に私は、何で金のあるところに払ってもらわないのか。

 もう、ともかく大変な状況にある高齢者をどんどんどんどん痛めつけて、わずか二年間で十五項目も負担増を重ねて、その前もあわせたら大変なものだ。そういうことを放置しておいて、何が再チャレンジか。再チャレンジというなら、まずこの負担を全部減らす、全部もとに戻してから言うべきだ。私は、こういう負担増をこのまま放置していいとは思わない。

 最後に、尾身大臣、こういうものに対して何らかの対応というのが必要だと思うんだ、私は。どうですか。

伊藤委員長 質疑時間は終わっていますので、簡潔にお願いします。尾身財務担当大臣。

尾身国務大臣 今、佐々木委員のおっしゃいましたように、日本の財政を維持していかなければなりません。そして、もしこれができなければ、後世代に負担を、ツケを回さざるを得ないという状況の中にあるということは御理解をいただきたいと思います。

 そして、同時に、この今の金融機関の所得でありますが、これは税制上のルールでございまして、過去七年間に損失が出たものは損失として繰り越していくということができることになっております。これは銀行だけではなしに、すべての企業に平等に適用されるわけでございます。その過去七年間の損失の累積が相当ありまして、その損失の累積を全部消化するまでは税金は払わなくてもいい、つまり昔七年間の間に損失が出たことが、ここ一、二年、利益が出ていますが、この七年、今のことしも入れて八年間分の全体としては銀行は赤字でございまして、そういう意味で、ことしは税金を納めなくていい、納めない、これが税法上のルールでございまして、これはあらゆる中小企業、大企業、全部共通のルールであります。

伊藤委員長 時間が終わっておりますので、簡潔におまとめください。

佐々木(憲)委員 もう時間ですから、終わりますが、税制上のルールといいますけれども、こんなルールをつくった方がおかしいんですよ。大体、税金をまともに払わないようなルールを……

伊藤委員長 時間が経過しておりますので、佐々木委員、結論をまとめてください。

佐々木(憲)委員 こういう銀行からいわば献金をもらって、こんな政策をやり、お年寄りをいじめる、こういう政治はもうやめるべきだ、はっきりと申し上げたいというふうに思います。

 以上で終わります。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 法務委員会において審査中の第百六十四回国会、内閣提出、信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案について、法務委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、法務委員長と協議の上、公報をもってお知らせいたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会


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