衆議院

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第4号 平成18年11月8日(水曜日)

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平成十八年十一月八日(水曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 増原 義剛君

   理事 宮下 一郎君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      伊藤信太郎君    石原 宏高君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      小里 泰弘君    小野 晋也君

      越智 隆雄君    大野 功統君

      木挽  司君    佐藤ゆかり君

      関  芳弘君    土井 真樹君

      中根 一幸君    長崎幸太郎君

      萩山 教嚴君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      御法川信英君   山本ともひろ君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      鈴木 克昌君    田村 謙治君

      高井 美穂君    寺田  学君

      馬淵 澄夫君    三谷 光男君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   財務副大臣        田中 和徳君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   藤岡 文七君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    青山 幸恭君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    篠原 尚之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐久間 隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           板東 一彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     小里 泰弘君

  関  芳弘君     木挽  司君

  とかしきなおみ君   御法川信英君

  中根 一幸君     新井 悦二君

  北橋 健治君     高井 美穂君

  吉田  泉君     三谷 光男君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     中根 一幸君

  小里 泰弘君     山本ともひろ君

  木挽  司君     関  芳弘君

  御法川信英君     とかしきなおみ君

  高井 美穂君     北橋 健治君

  三谷 光男君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    木原  稔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官岡崎浩巳君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、外務省大臣官房審議官草賀純男君、財務省主税局長石井道遠君、財務省関税局長青山幸恭君、財務省国際局長篠原尚之君、厚生労働省大臣官房審議官草野隆彦君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君、農林水産省大臣官房審議官山下正行君、農林水産省大臣官房審議官小林裕幸君、農林水産省大臣官房審議官佐久間隆君、経済産業省大臣官房審議官板東一彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智隆雄君。

越智委員 おはようございます。自由民主党の越智隆雄でございます。

 本日は、私にとりましては本国会での初めての質問でございますので、安倍内閣になってからの初めての質問でございます。ということは、当然尾身大臣に対しましても初めてきょう質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 きょうは初めてでございますので、本日議題となっています日本・フィリピンEPAに関する本法案をめぐって、尾身大臣のEPAに対する基本的なお考えといいますか、そういった我が国のEPA戦略についての御所見を中心に、三十分間時間を使ってお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 まず第一問目が、安倍内閣におけるEPA戦略について質問をしてまいりたいんですけれども、安倍総理は九月二十九日の所信表明演説で、日本経済の成長のキーワードとして、イノベーションとオープンな姿勢ということで表明をされました。そして、そのオープンな姿勢の例として、「アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むため、お互いに国を開く経済連携協定への取り組みを強化する」といって、EPAに対する積極的な姿勢を示されております。

 また、具体的な動きとして、先週になりますけれども、十一月の二日に経済財政諮問会議で、EPAを含めたグローバル化改革、前内閣ではグローバル戦略と言っていましたけれども、本内閣ではグローバル化改革というテーマで諮問会議が行われて、同日に、七カ月ぶりに経済連携促進閣僚会議が開催されたというふうに聞いております。

 この諮問会議のメンバーの一人でもある尾身大臣に、まずは、安倍政権におけるEPAの意味合いといいますか、EPA戦略に対する基本的な姿勢について御所見をお伺いしたいというふうに思います。

尾身国務大臣 ただいま越智委員がおっしゃいましたように、安倍内閣では、イノベーションと並んで、グローバリゼーションの中に日本経済社会を置いて、このグローバル化の中で経済の活性化、国づくりをしていこうという考え方でございます。これはまさにこれからの我が国のあり方、基本的なあり方の問題であるというふうに考えておりまして、お互いにほかの国々と、あるいは国際的な関係の中で、ウイン・ウインの関係を維持しながら国際的な国家として日本を発展させていこう、そしてまたお互いにメリットを享受しながらともに成長をしていこうという日本の国の基本的な姿勢であると考えておりまして、私ども、このEPAをいろいろな形で推進していきたいと考えているところでございます。

越智委員 ありがとうございます。

 今、尾身大臣から基本的な姿勢についてお伺いしました。グローバリゼーションに対応してウイン・ウインの関係をつくっていくということだと思います。

 そういう中で、次にお伺いしたいのは、どんなEPAがいいEPAで、どんなEPAが悪いEPAなのか、そのEPAの評価といいますかEPAの競争力についてお伺いしていきたいと思うんです。

 このEPAの交渉については、二〇〇二年にシンガポール、二〇〇五年にメキシコに続いて、ことしマレーシアと協定を発効しまして、今回はフィリピンで、今後もタイ、チリ、そしてまたASEAN全体等々と続いていくわけです。このEPAの交渉に際して、経済連携の効果を最大限発揮して、国益が最大化するような形で持っていくことがもちろん正しいものだというふうに思っているんですが、その国益の定義につきましてはもちろんいろいろなものがありまして、一つには国内産業の保護も国益であるという考え方もあると思いますし、一方でこのEPAの精神といいますか市場開放も国益だというふうに思いますし、この辺のバランスをどう考えていくのか。国益を最大化する質の高いEPAとはどんなものなのか、その辺についてのお考えをお伺いしてみたいと思います。

尾身国務大臣 このEPAの考え方は、いわゆる国内産業を保護していく、そして逆に日本の産品を相手方に売るというようなことだけではございませんで、もとより国内産業の保護強化といいますか発展は大事なのでありますけれども、それを相互に乗り入れながら、向こうの国もグローバル化する、日本もグローバル化するということで、単なる貿易にとどまらず、資本関係あるいは人、物、金の移動を含めまして、総合的にお互いに経済的な交流を深めてウイン・ウインの関係を築こうということでありまして、これは日本の大きな方向であるのと同時に、世界人類全体もそういう方向に進むべきものである、そういう大きな歴史の流れの中で、日本もその流れに沿って発展をしていく、そしてまた世界に貢献をしていく、こういうことであろうかと思っております。

越智委員 ありがとうございます。

 今、尾身大臣からかなり明確なメッセージをいただいたというふうに思います。経済的な関係を深めることで、グローバリゼーションの中で日本の国益を実現していくというお話だというふうに理解をさせていただきました。

 それでは、質の高いEPAをつくっていく上で、だれが交渉に当たるかということなんですけれども、日本の政府の中でもいろいろな省庁が絡んでまいります。もちろん財務省、それに外務、経産、農水、そして場合によっては厚労省ということで、この五省が先ほど申し上げた経済連携促進閣僚会議のメンバーとなっているというふうに思っております。このEPAの交渉に際しては、これらの省庁は十分に連携をして、国益をしっかり見据えて、そして効果的な交渉の対応をしていかなきゃいけないということだと思うんですけれども、こうした複数の省庁によるEPA交渉の過程において、それぞれの役所が多分役割分担をしていると思うんですけれども、そういう中で、財務省あるいは財務大臣がどのようなお立場で政府内の交渉チームの中で仕事をされているのか、スタンスを持たれているのか、その辺をちょっと教えていただきたいのですが、よろしくお願いします。

尾身国務大臣 従来の常識でございますと、農産物の保護を図りながら工業製品の輸出を進めていく、ギブ・アンド・テークで、どちらがどう得をしたかというような考え方が古典的な交渉の中ではあったかと思っておりますけれども、昨今、農業も国際化をし、国際的な競争の中で、むしろ輸出を伸ばしていくという打って出る姿勢でいるわけでございますし、また逆に、日本の企業も、アジア諸国に生産拠点を移して、全体の、地球的なベストミックスの中で企業活動を行っていく、こういう状況になってまいりました。

 したがいまして、関係のいろいろな産業を抱えている省は、それぞれの産業のことも考えながら、しかし日本の経済全体として、先ほど申しました、単なる物の輸出入にとどまらず、人、金などの資本提携関係も含め、人的交流も含めて連携を強化していく、そしてその強化も、バイラテラルな二国間だけに限らず、アジアEPAというような構想もあるわけでございまして、そういう方向にだんだんと進んでいくというふうに考えております。

 財務省は、経済財政全般を預かる立場でございますが、今のような、日本経済あるいは世界経済を全部をにらみながら前向きに取り組んでいきたい、そういうグローバル化の流れの中でEPAの促進を全力をもって実現していきたい、このように考えております。

越智委員 ありがとうございました。

 今大臣からお伺いしたのは、各産業を所管されている省庁に関しても、これからは少しマインドセットを変えて、全体を見て日本の国益に資するような、そういった形での交渉チームとして臨んでいくべきだというお話を伺えたものだというふうに思っております。

 それでは、ここでちょっと各論に戻りまして、今回の本法案に絡んだところを財務省の方々からお伺いしたいというふうに思います。

 九月九日に署名されましたフィリピンとのEPAに関する質問でございます。

 端的に二点、日本・フィリピン経済連携協定を締結する意義と、そしてもう一つが、このEPAが発効した後の両国間の経済関係に及ぼす影響について御説明をお願いしたいと思います。

田中副大臣 お答えをいたしたいと思います。

 意義ということでございますけれども、二〇〇四年の十二月に経済連携促進関係閣僚会議で決定をいたしました今後の基本方針及び基本方針二〇〇六に基づいて、アジア諸国を中心とする現下のEPA等の交渉に全力を傾注して、スピード感を持って対応していく、こういうことが決定をしておるわけでございます。

 フィリピンにとっては、日本は第三位の輸出相手国、第一位の輸入相手国でございまして、日本にとっても、フィリピンは第十四位の輸出相手国、第十六位の輸入相手国、こういう位置づけになっております。

 当然、本協定は、日本とフィリピンとの間での物品の関税削減、撤廃やサービス貿易の自由化に加えて、投資、知的財産、競争政策、あるいは税関手続、ビジネス環境整備、人の移動、協力等、極めて幅広い分野を対象とする包括的な経済連携を推進するための枠組みを規定しておるわけでございます。

 これによって、経済活動を行う上での安定性及び予見可能性が高まって、貿易・投資を中心に日本とフィリピンの間の経済関係が一層強化される、こういうことで、我々は意義深いものだと思っております。また、当然、本協定によって、日本とアジア諸国とのEPAの交渉がさらに促進することにも寄与するものだ、このように思っております。

 以上でございます。

青山政府参考人 少し補足させていただきます。

 日・フィリピンのEPAの効果ということでございます。

 数字の点で申し上げますと、日本からフィリピンへの輸出額でございますが、九千九百九十六億円、二〇〇五年ベースでございます。この約六割が今無税になってございますが、本協定によりまして、協定発効後十年以内におきましては九七%が無税となるということで、輸出条件が改善いたしまして、輸出の拡大が期待されるわけでございます。

 先ほど副大臣の方からもございましたように、貿易の自由化、円滑化のみならず、投資の保護、あるいは反競争的行為への対処、あるいは苦情窓口の設置等によりまして、投資環境の改善あるいは企業収益の向上を通じまして、我が国経済の活性化も期待されるところでございます。

 参考までに、本交渉につきまして、交渉入りする前に、日・フィリピン間で行ってまいりました産学官の共同研究会の報告書がございまして、経済効果の分析でございますが、協定の締結によりまして、長期的には日本のGDPは〇・〇一%から〇・〇三%引き上げる、フィリピンにつきましてはGDPを一・七三から三・〇三%程度引き上げるという試算が紹介されてございます。

 数字に直しますと、日本は約千六百億円、フィリピンは約三千百億円ということで、合わせまして、両国ともウイン・ウインの関係でございますと四千七百億円のGDPを押し上げる効果があるという試算がございます。

 以上でございます。

越智委員 ありがとうございました。

 田中副大臣そして局長の方から、ウイン・ウインの関係ができるんだという御説明がございました。

 ちょっとここで、若干細かい点なんですけれども、聞いてみたいという点がございます。

 今局長の方から、日本からフィリピンへの輸出額の九七%が無税になるというお話がございました。財務省がつくられた資料によりますと、往復で九四%が無税になるということなのでありますけれども、フィリピンから日本に来る輸入額の場合は九二%が無税になるというふうに書いてあります。九七%と九二%、こういう数字は、大きければ大きいほど当然関税障壁が少ないということでありますから、貿易の自由化が進んだということになるわけであると思います。

 この数字について、シンガポールについて見てみますと、日本からの輸出については一〇〇%が無税だ、シンガポールから日本への輸入については九四%。マレーシアについては九九と九四になっております。

 EPAの交渉の結果としてのこれらの数字について、どうやって考えればいいかということなんです。もちろんそんな単純な話じゃないと思うんですが、この数字が高いほどEPAの交渉の成果を示しているというふうに見るべきなのか。そうではなくて、一方で、個別に、数字とは異なる面から評価すべきであるというふうにも考えるわけなんですけれども、一〇〇%を目指して、数字をある種の目標とすることが国益を最大にすることになるんでしょうか。あるいは、EPAはあくまで二国間協定であって、相手国の産業構造や経済情勢に応じて個別に交渉のスタンスを決めていくべきであって、交渉の成否が数字で示されるべきじゃないということなんでしょうか。

 財務省の資料で見ますと、どこのEPAの資料にもこの数字がぼんと出てくるものですから、この数字をどうとらえればいいかということについて、お考えをお伺いしたいと思います。

田中副大臣 無税譲許率のお話を、今数字をもって御質問があったのでございますけれども、簡単に言うと、その国々と大変長い時間丁寧な議論を持って、積み重ねて今数字が出てくるわけでございます。

 確かに、相手国に対して日本の税の部分が少しハードルが高いような結果も出ておりますが、物によって、それは日本の方が逆に譲っているものもたくさんございまして、それをもって日本の方が高いというようなことも一概に言えないのかなと思っておりますが、いずれにしましても、双方の国家の信頼関係に基づいてきめ細かい打ち合わせをやっていくわけでございまして、私たちも、お互いの信頼関係が損なわれないように、その結果EPAというものが成り立つということを十分踏まえて努力をしてまいりたいと思っております。

 御指摘の点は私も十分理解をしているつもりでございます。

 以上でございます。

青山政府参考人 少し補足させていただきますと、今、九十数%の差という議論でございますが、対フィリピンとの関係で申し上げますと、我が国が無税譲許しなかった主な品目といたしましてバナナがございます。これは、生鮮バナナ、シェアに直しますと大体六・四%ございますが、実は、小さなバナナについては十年間で無税にするということにしてございます。大きなバナナにつきましては十年かけて二%カットするということなんでございますが。あと、あわせまして、パイナップル等につきましても、やはり、小農家の育成という観点から、これにつきましても、タリフクオータというのを設けまして別途きめ細かな措置を講じているというところでございます。ちょっと補足させていただきます。

越智委員 ありがとうございました。

 今の御説明をお伺いしながら、基本的にはEPAというのは二国間交渉である、お互い主張するところは主張し、譲歩するところは譲歩しながらこの数字が決まってきたということだ、それは理解ができます。

 ただ、どうなんでしょうか、こういう状況をどう評価するかなんですけれども、先ほど挙げました三カ国、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ともに日本の方が関税障壁が高いと数字上は出ておりまして、これはこれでいいというふうに考えるのか、あるいは、先ほど尾身大臣からもお話がございました、経済的な関係を深めるんだという立場に立ったとき、この辺のことについてどう考えておられるのか、考えていけばいいのか、ちょっとその辺の御所見を大臣からもお伺いできればと思います。

尾身国務大臣 これは、基本的にはやはりウイン・ウインという関係をベースにして、お互いに我慢すべきところもあると思うのでございますが、全体の大きな枠組みを進めるという考え方のもとにやっていくべきだと考えております。

越智委員 それでは、ちょっと次の話に行きたいと思います。

 今は貿易額の件についてお話をさせていただいたんですけれども、一方で、今回のフィリピンとのEPAにつきましては人の移動が盛り込まれました。我が国にとっては本格的な人の移動を含む最初のEPAというふうに書いてありますけれども。

 ここで、改めて厚生労働省の方に質問したいんですが、一つ目は、アジアなどの成長の力を日本経済の成長につなげていくというEPA戦略の目標に照らして、人の移動をどう位置づけているのかというのを確認させていただきたい。二点目は、今後、ほかのEPA交渉においてもこの人の移動を盛り込んでいくのか、どういうお考えなのかという点について確認をしたいと思います。お願いします。

草野政府参考人 お答えします。

 人の移動の問題は、経済連携協定におきましても非常に重要なアイテムというふうになっているわけでございます。

 この経済連携協定におけます人の受け入れの考え方でございますけれども、まず、外国人労働者受け入れの基本方針というものがございます。これは、専門的、技術的分野の受け入れは積極的に対応するが単純労働者の受け入れについては慎重に対応する、こういう方針でございまして、今後ともこうした方針に基づいて交渉を進めてまいりたいというふうに考えております。

 また、受け入れのあり方につきましても、これは初めてのケースでございますので、今後、円滑かつ適切な受け入れができますよう、必要な受け入れ体制の整備に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

越智委員 ありがとうございました。

 この、人の移動の部分についてですけれども、ちまたではいろいろな意見がございまして、看護師あるいは介護福祉士の受け入れについては、資格取得後、在留の更新が無制限にできる、こういったことについてどう考えるのかという議論があったり、一方で、フィリピンの方で、日本への渡航といいますか、日本でこの職につくということについての応募状況にいろいろな問題があったりというようなことも言われておりますけれども、何しろ初めてのトライアルでありますので、双方の国にとってやはりウイン・ウインになるようにしっかり管理をしていっていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、ちょっと視点を変えまして、チェンマイ・イニシアチブについてお伺いしてみたいと思います。

 東アジアの通貨防衛の仕組みでありますこのチェンマイ・イニシアチブについてなんですが、尾身大臣は、二十四日の大臣所信の中でも、チェンマイ・イニシアチブのさらなる強化に触れられております。今起こっています東アジアの地域統合の流れは九七年のアジアの通貨危機に端を発したということを考えますと、その直後、AMF構想がなかなか実現しない中で、このチェンマイ・イニシアチブがそれを代替したような形でございますので、これはまさに東アジア地域統合の源流でもあるというふうに考えるわけであります。

 二〇〇〇年から取り組みが始まりましたけれども、このチェンマイ・イニシアチブ、今どんな状況で、今後どんな取り組みをされるおつもりなのか、その辺の御説明をお願いいたします。

尾身国務大臣 チェンマイ・イニシアチブにつきましては、一九九〇年代後半のアジアの通貨金融危機のような事態が起こったときに、これにどう対応するか、あるいはそれを予防するという観点から、ASEANプラス三カ国の中で流動性の困難に直面した国に短期的な外貨資金の融通を行う枠組みとしてつくったものでございます。バイラテラルにお互いに信用供与の枠を決めておりまして、これが全体で七百七十億ドルのネットワークを達成しているわけでございます。これは、この地域金融の協力のある種のモデルにもなると考えておりまして、こういう枠組みができていることが金融面での危機を回避するために有効に働くものと考えておりまして、このチェンマイ・イニシアチブの考え方をこれからもいろいろな意味で進めてまいりたいと考えている次第でございます。

越智委員 ありがとうございました。

 それでは、今、尾身大臣からチェンマイ・イニシアチブの取り組みについてお伺いしましたけれども、ここで、その上で、アメリカによりまして、最近アジア太平洋FTA構想というのが打診されているという事実がございます。いわゆるAPFTAでございますけれども、この点について質問させていただきたいのですけれども。

 今大臣御説明いただいたとおり、チェンマイ・イニシアチブは、二〇〇〇年からことしにかけて七百億ドルぐらいのスワップ契約ができてきているというふうに聞いていますし、これからそれがマルチ化されていくというようなことで、ASEANプラス3のこの十三カ国の枠組みの中でしっかりとした強固な共同体制ができてきているんだというふうに思っております。

 また一方で、貿易面については、先ほど来御議論させていただいているとおり、EPA交渉が進展するという中で、域内の結びつきが日に日に密接なものになってきている。最近特に、東アジアEPA構想とか東アジア版OECDという表現が使われるようになりましたけれども、これらの構想についても、昨年来、経済財政諮問会議のグローバル戦略というテーマの中で着実に議論が積み上げられてきて、その成果として今議論されてきているんだというふうに思っております。

 こうした東アジア域内の統合の流れを進めることは大変重要だというふうに思っている、ただ、その一方で、それと同時に、この東アジアの地域統合が世界に開かれたオープンな形でなきゃいけないという思いもあるわけなんですけれども、こうした中で、今回アメリカから提案されたAPFTAについて、今度APECで議論されるということを聞いておりますけれども、現時点でどのようにとらえられているのか、財務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 いわゆる東アジアEPA構想と言われておりますけれども、私は、インド、オーストラリア、ニュージーランドが入っている中で、むしろアジア全体の、アジアEPAというふうに呼ぶべきものであるというふうに考えております。それにアメリカも加えましたAPEC、アジア太平洋地域の経済の統合といいますか連携といいますか、そういうものを深めていこうというアメリカ側の提案が近くなされるかというふうに聞いておりますけれども、私は、そういう大きな枠組みの中で経済の連携を強化するのは、これからの世界経済の方向としてはまさに当を得たものになるのではないかと。非常に長期的な問題でありますけれども、そういう考え方というのは、我が国の開かれた経済社会をつくろうという方向にも合っておりますし、世界人類の長い将来を考えると正しい方向ではないかと考えている次第でございます。

越智委員 尾身大臣、ありがとうございました。

 ちょっとこの点について、若干深掘りをさせていただきますと、この東アジアEPAあるいは東アジア版OECDといいますと、東アジアの枠組みでございます。APFTAといいますと、アジア太平洋の枠組みであります。

 ただ、ここ十数年、冷戦崩壊後を見てみますと、冷戦崩壊ごろ、マレーシアからEAEC構想というのが出てきまして、それはうまくいきませんでした。これは東アジアの枠組みでありました。九七年の通貨危機に際してはAMFの構想が、これも実現できませんでした。これも東アジアの枠組みでありました。そういう中で、一方で、APECとかあるいはARFといったアジア太平洋の枠組みというのは着実に進展してきたわけであります。ただ、九七年のアジア通貨危機を境にしてASEANプラス3ができて、このチェンマイ・イニシアチブ等を含めて、去年の東アジア・サミットまで東アジア枠組みがしっかりと成長してきたというふうに思うんですけれども。

 今大臣からお話がありました、開かれた形の枠組みというのはいいんではないかという御意見なんですけれども、ある意味では東アジア枠組みの時代から次の時代に変わっていくんだというようなお考えなのか、それとも、それとは少し違って、やはり東アジアを大切にしながら、その上でアメリカなりなんなりという形の個別の連携をしていくというお考えなのか、その辺、もしお考えがあればお伺いできればと思います。

尾身国務大臣 私は、今、アジアEPAというふうに申し上げているわけでございますが、このアジアEPAの構想を進めながら、また同時に、アジア・パシフィック地域を含めたものとして、大きな将来の方向としてはその方向に行くこともいいのではないか、むしろ積極的にこういうことに対応すべきではないかというふうに考えております。

越智委員 尾身大臣、ありがとうございました。

 時間でございます。本日は、関税暫定措置法の一部を改正する法律案に関連して、大臣のEPA戦略に対する御所見を中心にお伺いをさせていただいてまいりました。EPAは安倍政権のキーワード、オープン・アンド・イノベーションの一つのフロントランナーだというふうに思っておりますので、より一層実効のあるEPA戦略の推進を心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 きょうは人の移動を中心に質問をしたいと思っておりますが、この委員会も今、人の移動が最中でありまして、大丈夫でしょうか。

 私は、このフィリピンとのEPA協定、大変興味を持たせていただきました。この質問も、みずからぜひやらせてもらいたい、こうお願いしてやらせていただいているわけですが、その理由は、今も申し上げましたように、人の移動が含まれていたからであります。

 物、金、人とよく言われますが、いわゆる物の移動、これは貿易でありますが、貿易については開国をした。資本についても開国をした。人の移動については、依然として日本は開国をしていないわけであって、物、金、人といったときに、その意味では第三の開国というのがある意味では必然的に起こってくる、こう常に思っておりましたが、このEPA構想というのは、それを戦略的に意識したのか意識しないのかはわかりませんけれども、ある意味ではそのきっかけになるかもしれない。もしかしたら成功し、もしかしたら失敗する。そういった意味で、このフィリピンとのEPA協定がうまくいくかどうかという話が、まさに人の移動という観点に立って見たときに大変重要な政策になる可能性がある、そういう意味であります。そういった意識を持ちながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず、その前に、いわゆるFTAあるいはEPAの重要性とその目的ということで、一般的に質問をさせていただきます。

 先ほどの越智委員からも質問が出ておりましたので、余り重複しないようにお尋ねをしたいと思いますが、先ほどの御答弁では、グローバリゼーションの中でウイン・ウインの関係をつくっていくのだ、こういう御説明でありました。

 ただ、一般的に考えますと、グローバリゼーションが進んでいくという話というのは、ある意味では、いわゆる貿易についても多国間のシステムが進んでいくというふうに考えていくのが一般的じゃないのかなと。戦後、いわゆるガット、WTO体制で進んできていて、しかし、そこにいろいろな途上国含めて入ってきた。そうすると、いわゆる多国間のシステムというのがなかなかワークしない、こういう話になって、では二国間でいくのか、あるいはまたゾーンでいくのか、こういう話なのかな、こう思って見ておりますが、それは、先ほどの大臣の御答弁のように、グローバリゼーションの中で進んでいくんだという話でいうと、どうもちょっと違うんじゃないか、グローバリゼーションという話でいえば、多国間の話をもうちょっと真剣に進めていくという話がある意味では大筋あってという話じゃないかな、こう思って聞いておりましたが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 いわゆるバイラテラルな国際的な連携と、多国間のWTOのようないわゆる多角的貿易体制というものの関係でございますが、私自身は、日本のグローバリゼーションの中で、あるいは世界のグローバリゼーションといいますか関係の進展の中で、多国間、二国間ともに、いわば車の両輪として進めていくと。非常に現実的にいろいろな細かい交渉もございますので、例えばWTOの交渉も進めながら二国間のEPAも進めていく、あるいは地域的なそういう連携も進めていくという考え方が妥当なのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、日本の経済社会のグローバリゼーション、国際社会との協力の中で、そういう大きな開放、経済の開放という考え方の中でこれからの国づくりをしていくというのが我が国のあり方として必要なのではないかというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 もちろん、車の両輪ということはよくわかります。ただ、では外交方針としてお尋ねをしたいと思いますが、やはりそういった意味では、グローバリゼーションの中で多国間の話が第一義的にあるのだという話がまずあって、そこでやり切れない話をFTAとかEPAで拾っていくのだ、こういう考え方なのか。そうではない、もう戦略的にEPAとかFTAを使って、日本がまさにある意味では経済力を伸ばし、あるいはまた影響力を持っていくのだ、こういう話かというと、かなり外交的には何かちょっとそこは相反するような気がいたしますが、外務省、きょう来ていただいていると思いますが、そこはいかがですか。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御案内のとおり、WTOにつきましては、世界の大多数の国、今百五十カ国ぐらいでございますが、メンバーとなっておりまして、これが、貿易の自由化とか新たなルールの策定といったものを同時に進めようという形で動いてございますが、他方で、今のEPAあるいはFTAというのは、二国間とか、あるいは非常に限られた数の国の間で、貿易の自由化とか、あるいは経済連携を進めるとか、少しWTOとはまた趣の異なる形で自由化等を進めるといったものでございます。

 特徴といたしましては、WTOにつきましては、多数の国が関税などを無差別に引き下げるとともに、また、国際貿易の基本的な枠組みあるいはルールづくりといった土俵の設定を行うところに特徴があると思います。他方で、二国間あるいは地域間のFTA、EPAになりますと、経済関係の深い二国間、あるいはアジア太平洋とかそういう地域におきまして、特にさらに一層進んだ貿易の自由化、あるいは経済連携を進めるといったところに特徴があると思っております。

 したがいまして、そういう中で、今既に世界各国がWTOのもとでの交渉に参加しつつ、同時に、二国間あるいは地域間でのEPA、FTAを進めているという状況がございますので、日本といたしましても、WTO体制のもとでEPA、FTAも進めていくということは、やはり、多国間自由貿易体制を補完しながら日本の経済的利益を確保していく観点から重要だと思っております。

 その意味で、財務大臣おっしゃいましたとおり、WTOと、それを補完する形で二国間のEPA、FTAを車の両輪として進めていく、こういう方針でございます。

小沢(鋭)委員 人の移動の話に入りたいと思いますので、そもそも論はこのくらいにしたいと思いますが、実は、安全保障の問題も割と同じような話がありまして、国連を中心としたいわゆる多国間の安全保障システムと、それからいわゆる日米安保のような二国間のまさに安全保障政策と、ある意味で、そういった二国間、あるいはまたそれぞれの個別の話が進行していくと多国間の話がどうも前に進まない、そういう話もありがちなような気がしておりまして、このFTAも、今は各国がやり始めているからある意味では日本もやらざるを得ない、それはわかるんですが、本当は一体何なのかというような、ぜひそういう理念も打ち出していただけるといいのかな、こう思っております。

 それでは、人の移動についての質問ですが、これもちょっと原則論を申し上げたいんですが、先ほども質問にありました、外国からの外国人の日本への受け入れについての原則論を簡潔にちょっともう一回確認しておきたいと思います、現時点のですね。

鳥生政府参考人 お答え申し上げます。

 受け入れるべき外国人労働者の範囲につきましては、出入国管理法上、我が国の産業及び国民生活に与える影響を総合的に勘案して決定する仕組みとなっております。これに従いまして、我が国では、すぐれた外国人研究者、技術者等を積極的に受け入れることとしております。

 一方、現在受け入れを認めていない外国人労働者につきましては、これを受け入れるとすれば労働市場の二層化等の悪影響が生じ、ひいては格差是正の妨げになること、欧州の例にも見られるように、滞在の長期化や定住化に伴い、治安や教育の問題を初め、極めて深刻な社会的問題が発生すること、低賃金構造の業種に対する産業政策のあり方があいまいになること等の弊害が懸念されるということから、慎重に対応することが必要だというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 今確認をさせていただきましたが、まさに労働市場に関しては、我が国はまだ開国をしていないと。これは先進国を含めて、別に、ほかの国は全部やっているじゃないか、こう言うつもりはなくてでありますが、開国をしていない、そういう状態だということを今御説明いただきました。

 ただ、今の御懸念の点というのは、まさに物のときも資本のときも、ある意味では同じような議論がされて、そして、それをある意味では乗り越えて開国をしてきた。こういうことを考えると、特にまた、日本の高齢化の中でのいわゆる労働構造の特殊事情等を考えると、そういういわゆる人の開国論という話がこれから大きなテーマになるんではないかというふうに思います。

 そういった意味で、幾つか御質問をしたいと思います。

 まず、日本とフィリピンのEPAですが、これはなぜフィリピンから始まったんでしょうか。何か御事情があったら、お答えいただきたいと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 なぜフィリピンとの間で始まったかということでございますが、交渉……(小沢(鋭)委員「人の移動ね、人の移動」と呼ぶ)はい、そのとおりでございます。交渉の過程におきまして、フィリピンの方から、フィリピンという国柄、海外への出稼ぎの労働者が大変多うございますが、そういう背景があって、特に、フィリピン人の看護師あるいは介護福祉士の海外への送り出しに積極的だという背景を踏まえまして、この受け入れに強い関心が表明されたところでございます。これを受けまして、日本側からは、他方、日本の国家資格の取得が条件であるとか、あるいは、国内労働市場への影響を十分考慮すべきであるといったことを説明して、議論してまいりました。

 そういうやりとりを含めた交渉の結果といたしまして、今回、両国間の合意に至ったという次第でございます。

小沢(鋭)委員 このフィリピンとのEPAに関しては、今御説明があったとおり、フィリピンからの強い主張があって人の移動がある意味では始まった、こういうことでありますね。それは委員皆さん御承知のように、フィリピンは労働力の輸出大国でありまして、いわゆる海外からの仕送りがGDPの一三・五%、約二年前でありますけれども、一三・五%を占める、こういう労働輸出大国ですね。ですから、そういった意味では、そのフィリピンからの申し出というのも極めて話がわかる、こういうことであります。そういう国が現にあるんだ、こういうことだと思います。

 それでは、どこまで費用負担を行うのか、人の受け入れに関して、この協定に基づいてお尋ねをしたいと思います。費用負担は、いわゆる滞在費も持つのかとか、研修費は持つのかとか、そういったことです。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、費用の負担につきましては、最初の六カ月間の日本語の研修期間と、それから、その後病院あるいは介護施設での就労期間の実は二つに分けられてございまして、制度上、私ども経済産業省の方はこの日本語の研修について担当してございますので、まず私の方から、それについて御説明申し上げます。

 経済連携協定に基づきまして、当面二年間、この看護師、介護福祉士候補者のうち、日本語の習得を必要とする者に対しまして、六カ月間、財団法人海外技術者研修協会、AOTSと申しますが、こちらで研修を行うこととしております。それに関しまして政府が負担する費用でございますが、教材、講師代、通訳代、その他研修自体の費用に加えまして、渡航費とか、あるいは滞在費を含むこととしております。

 なお、このうち一部、受け入れ機関、具体的には医療機関とか介護福祉士の介護施設でございますが、こちらの方が、一部の負担、一人当たり日額二千円を負担することになってございます。

 以上でございます。

小沢(鋭)委員 今、研修期間の話だけ御説明いただいたと思いますが、その後、六カ月後も含めて、ざっと言っていただけないでしょうか。

鳥生政府参考人 お答え申し上げます。

 日本語研修を修了した六カ月後のお話ということでございますが、修了後は、フィリピン人は受け入れ施設で就労することとなるわけでございます。その中で、基本的には賃金で家賃、生活費などを賄うことになるというふうに考えておりまして、受け入れ施設でそういった、一般の就業者と同等以上の賃金を支払うということの中で適切な研修を行うということでございます。

 なお、受け入れ施設とフィリピン人との契約内容によりましては、受け入れ施設がフィリピン人用の住宅を確保するといったことはあり得るものだというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 そうしますと、そこは受け入れ機関とそれぞれの個々の方の契約に任せちゃう、政府は一切そこからは入らないんだ、こういう理解でよろしいですか。

鳥生政府参考人 当初、施設と契約を結びます場合に、先ほど申しましたような一定の報酬を条件とした雇用契約を結ぶ、その中で適切な研修が行えるということを施設に入所する条件としておりますので、その施設と個々の、研修に来られた方の契約ということになろうかと思います。

小沢(鋭)委員 今の御説明は、どちらかというと、それは研修に適しているかどうかという観点で見るんだ、こういうことで、いわゆる賃金とかそういったことに関しては余り、余りというか、もう政府は責任を持たない、こういうことのようであります。

 そこで、そうなりますと就労になるので、在留資格はどうなりますでしょうか。最初の研修期間から含めまして。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 どのような在留資格を与えるかという点でございますが、現在、詳細につきましては検討中でございまして、最終決定には至っておりませんが、今回の受け入れが協定に基づきます個別の受け入れということになりますので、入管法に定めております二十七の在留資格がございますが、その中では、法務大臣が個別にその活動を指定するとされております特定活動という名称の在留資格がございますが、これで対応するのが適切であろうと考えております。

 具体的に申し上げますと、まず最初に入ってくるときは、看護師、介護士の候補者としてお入りになるわけでございますが、このお一人お一人につきまして、候補者としての受け入れ施設、それから候補者としての活動、これを個別具体的に指定する、そういう内容の在留資格を与えて入国、在留していただきます。

 次に、国家資格を取得された場合ですが、当然に、最初の、受け入れの在留資格としては、名称は同じ特定活動という在留資格で対応することを考えておりますが、実は受け入れの機関あるいは活動の内容が変わります。候補生として与えていたときと内容が変わりますので、これは入管法上在留資格が変わるということになりますので、在留資格の変更という手続で対応させていただくということを想定しております。

 以上でございます。

小沢(鋭)委員 その資格を取った後は、変更という形で何に変更するんですか。

稲見政府参考人 在留資格の名称としては、最初のときと同じ特定活動という名称、名称は同じでございます。ただ、内容は変わりますので、入管法上は在留資格が変わるということになります。

小沢(鋭)委員 私のここでの問題意識は、フィリピンとのこの経済協定で人の移動があって、約千人、こういうことが報道されているわけですが、これが本当に実行できるんだろうか、こういう観点ですね。まさに千人の人たちが来るんだろうかと。

 それで、何を危惧しているかというと、フィリピンでの、ある意味では、看護師さんだとかそういう人たちというのは、フィリピンの国内で、極めて教育水準が高くて、プロフェッショナルな仕事として認定を受けていて、さらにまた英語圏でありますから、アメリカを初めとするそういった諸外国にどんどん出ていっているわけですね。日本にその人たちが来る、そして日本語の研修をしなきゃいけない。ついでに言っておきますと、フィリピンでのいわゆる資格があれば、母国の資格があれば、国によってはそのまま看護師だとか介護の仕事ができる国もあるわけですね。それに対して、日本の場合には、まず日本語の研修があって、そして、フィリピンでの資格があっても日本の資格を取らなければいけない、こういう話があって、ですから、それで本当に千人の受け入れができるんだろうか、こういう意味で聞いているわけであります。

 こういったことに関しての見通しというのはどのように、どこが担当かわかりませんが、お持ちでしょうか。

伊藤委員長 指名はございますか。役所の方の指名はございますか。

小沢(鋭)委員 どちらでも結構なんですが。いわゆる実効性はどうだと、本当にこう思っているのかという質問です。質問通告をきのうしてありますよ。

鳥生政府参考人 先ほどのお答えで、日本人と同等以上の報酬ということで研修機関の就労ということを、就労しながら研修を行うということを行うわけでございます。

 そういう中で、日本の労働市場への悪影響ということも避けるといった、労働市場への影響も考慮いたしまして千人という枠を設けたものと存じておりまして、フィリピン政府のサイドからは、それを上回る枠といったような要望もあったように聞いておりますし、そういう中で、当初二年間は千人という枠を設けているということでございます。

小沢(鋭)委員 やってみなきゃわからないという意味では、今見通しはなかなか立てづらいのかもしれませんが、現に、今回の制度ができた中で、フィリピンのいわゆる外務次官ですか、なかなかこれだと入るのは難しいだろう、こういうような表明がマスコミでもなされているという話もあり、さっき申し上げたような、日本での資格認定が極めて難しそうだ、こういう話、あるいは、アメリカとかカナダとか、そういう国との比較を考えたときに、なかなか入ってこれないだろう、こういうふうに心配をするんですが、片や、EPAは、先ほどありましたように、日本の例えば自動車の関税を何年か後には撤廃する、こういう話になるわけですね。

 片やそういう話が進んでいて関税撤廃しました、千人の受け入れができませんでした、惨たんたるありさまで目も当てられない状況ですと、こうなったときはどうなるんでしょうか、この経済協定そのものが。

伊藤委員長 答弁者の指名はございますか。

小沢(鋭)委員 では、外務省ですかね、きっと。

 そういう協定というのはどうなるんですか、そういうことが起こった場合は。外務省でも経産省でも、どこでも結構ですけれども。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまでもあれは受け入れ枠の上限を示したものだということで理解してございますので、その数を完全に埋めなくてはいけないというものではないというふうに理解しております。

小沢(鋭)委員 ここは確かに、上限を示した、こういう話なんですが、お互いの国の信頼関係という言葉も先ほどありました。受け入れるからにはきちっとやらないと、ある意味では日本という国のまさに信頼を損ねるような話にもなりかねないし、もっと言うと、要は、車や何かは関税撤廃したけれども、こういった分野に関しては相変わらず、これを非関税障壁という言葉で言うわけですね。日本の非関税障壁問題というのは、尾身大臣はもともと御専門で詳しいと思います、通産省の経験もおありですから。まさに、そういう意味で、非関税障壁みたいな話になっちゃったならば、せっかくのEPAが本当に台なしになっちゃう、こういうふうに私は思っておりまして、そういった意味では、ぜひ、今言ったような受け入れ体制の整備にしっかり、やるからには取り組んでいただきたいというふうに御要望を申し上げておきたいと思います。

 最後に、これが本当に今後の労働政策の突破口になるんだろうか、こういう点を一応御質問しておきます。

 厚労省の皆さんは多分、これは特例的な話です、こういう話でお答えになるのは目に見えているわけでありますが、先ほども申し上げましたように、日本の、ある意味では人口構造が大変高齢化していく中で、まさにそういう働き手をどういうふうに確保していくかという話がある。特に看護とか介護の場面では、今そういった人手不足、人の確保が大変重要な問題になっています。

 私の地元でもよくこういう話題になるんですけれども、そのときに出る話は、自分の親もろくに面倒を見ないような人が、日当六千円とか七千円とか八千円とか、それはわかりませんけれども、それくらいで本当に人の親の、ある意味では面倒まで見られるのか、そういう話もあるわけですね。確かに言い得て妙だな、こういうふうに思います。本当に親身になって面倒見てくれるのかと、こういう話があります。そういうときに、ある意味では、そんなに高くない賃金で、それでも一生懸命やってくれるという話が、例えば今回のこのEPAのフィリピンの皆さんの受け入れ、こういう話で、一つの希望がある。

 ただ、この希望に関して言えば、しかし、これまたちまたではいろいろ話題になっておりまして、本当に日本語は、ちゃんとできるといったって、看護なんかは本当に、自分のけがだ病気だのの命にかかわる問題ですからね、そのときに、では、私は山梨県ですけれども、山梨県の方言がわかるのか、東北地方の方言がわかるのかというような話での心配があったり、最後は、これからの時代、おれらは死んでいくときは英語が話せなきゃだめなのかなとか、そんな話も話題に上るような昨今であります。

 そういった時代環境の中で、まさに外国人の受け入れを含む労働政策というのは一体どうしていったらいいのか。これは突破口になるのかならないのか。一応、厚労省の見解をお聞きしておきたいと思います。

鳥生政府参考人 お答え申し上げます。

 今般のフィリピン人の受け入れにつきましては、労働力不足対策ということではなくて、あくまでフィリピンとの経済連携協定の枠内で特例的に行うものでございまして、これによりまして我が国の外国人労働者に対する施策が変更されるということではないと思っております。

 ただ、議員御指摘のとおり、担い手不足の懸念ということも今お話がございましたが、こうした分野の離職率というのがかなり高いといった現状もございまして、それが不足感につながっているといったこともございますし、そういった中で、雇用管理の改善を通じた定着の促進、あるいは有資格者で未就労である方々の就労を促進するといったことで対応していきたいというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 時間ですので終わりますが、かつて国際化は、ある意味では日本から外への移動だ、こう言われておりました。昨今の国際化というのは、ある意味では日本への受け入れの問題でありまして、そういった意味ではそういう国際化が避けられない、私はこう思っておりますし、我が民主党も近々そういう方向に力強く踏み出すというふうに思っておるわけでありますが、安倍内閣でも、ある意味ではしっかりとした対応を最後に望んで、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官藤岡文七君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内博史でございます。

 人の移動を伴う初めてのEPAということで、大変画期的なものであろうというふうに思いますが、この関税暫定措置法のことについてお伺いをする前に、まず、昨日発足をした新たな政府税制調査会のことについて若干聞かせていただきたいと思います。財務大臣とこうしてお話しする機会はめったにございませんので、お許しをいただきたいと思います。

 政府税調は、昨日、安倍総理からこのような諮問を受けていらっしゃいます。「国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減を徹底する必要がある。」「税制については、」中略をいたしまして、「中長期的視点からの総合的な税制改革を推進していくことが求められている。」さらに、「こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、」「安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければならない。」中略をいたしまして、「以上の基本的な考え方の下、あるべき税制のあり方について審議を求める。」というふうに、安倍総理大臣が政府税制調査会に諮問をしていらっしゃいます。

 私がお聞きしたいのは、「総合的な税制改革」という言葉の中に消費税の議論が含まれているのかということ、さらには、「あるべき税制のあり方」という言葉の中に消費税の議論というのが含まれているのかということを、財務大臣から御答弁をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 昨日、新しい政府税制調査会が発足をいたしました。安倍内閣総理大臣から、今お話しのような諮問がなされたわけでございまして、先ほどのお話の中にございませんが、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体のあり方について検討を行ってほしい、そしてまた、社会保障や少子化などの負担増に対する安定的な財源を確保して、将来世代への負担の先送りをしないようにしなければならないというようなことがあるわけでございまして、そういう考え方のもとで、あるべき税制のあり方について審議を求めるということにされているわけでございまして、あらかじめ特定の税目を念頭に置いて審議を求めているわけではないと考えております。

 税制調査会におきましては、今後、このような諮問の内容を踏まえまして、専門的見地から幅広い議論が行われていくこととなると考えておりますが、今後どのような議論が行われるかについては、予断を持って申し上げることは差し控えたいと思っております。

 いずれにいたしましても、現在の状況を勘案いたしますと、二〇〇七年度予算の歳出削減の状況、あるいは来年七月ごろに判明いたします二〇〇六年度の決算の状況、医療制度改革を踏まえました社会保障給付の実績等を見る必要がございまして、これらを踏まえて税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えている次第でございます。

川内委員 本格的な議論を行うのは来年の秋以降になるということを繰り返し繰り返し財務大臣はおっしゃるわけでありますが、せんだっても申し上げたとおり、骨太方針の二〇〇六においては、「税制改革については、「基本方針二〇〇五」において、」重点強化期間内、これは平成十七年、十八年度内のことでございますが、「「重点強化期間内を目途に結論を得る」とし、また、与党税制改正大綱において、「平成十九年度を目途に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」」というふうに骨太の二〇〇六に書いてある。

 すなわち、平成十八年度内に方針を得て、平成十九年度にはそれを実行するということが閣議決定をされているわけでありますが、これからの政府税調の議論というのは、それに沿って、税制の抜本的、一体的改革について政府としての方針を得るために議論をするわけであって、今の財務大臣の御答弁はごまかしに満ちているのではないかというふうに思います。

 さらに、財務大臣は、目途という言葉は幅があるということを繰り返しおっしゃっていらっしゃるが、今まで、骨太方針の中で目途という言葉が使われた場合に、その年度内に方針が示されなかった例はないということを内閣府の方から御説明いただきたいと思います。

藤岡政府参考人 委員御指摘の経済財政運営と構造改革に関する基本方針でございますが、基本方針二〇〇四及び二〇〇五に関するフォローアップを精査いたしましたところ、これらの中でいわゆる、を目途にと記述されている事項、十五項目ございます、については、いまだ目標の期限が到達していないものを除きまして、これは実は五件ございますが、それ以外のものも、いわゆる目標期限が達成されていないものはないということでございます。

川内委員 目途にという言葉を使った場合に、その目途を外して目標が達成されていない例はない、これは当然ですよね。政府の方針を閣議決定して決めている文書の中で、それをやらないなんということはあり得ないわけです。

 したがって、私が財務大臣に申し上げたいのは、閣議決定文書の中で平成十八年度内に方針を、結論を得ると書いてあるわけですから、現時点で閣議決定が変更されないのであれば、その方針に沿って議論はする、しかしそれを実行に移すかどうか、平成十九年度に実行に移すかどうかはまたその後の議論があるのではないかとか、そういう言い方をしなければ、来年の秋以降に本格的な議論が始まるんだというのは、この政府税制調査会の議論を全く無視した議論になるのではないか、言い方になるのではないかというふうに私は思いますが、財務大臣、もう一度御所見をいただけますか。

尾身国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、現在の諸情勢を勘案すれば、二〇〇七年度の予算の歳出削減の状況あるいは来年の七月ごろに判明をいたします二〇〇六年度の決算の状況、医療制度改革を踏まえました社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えております。

川内委員 もう一度確認させていただきますが、政府税制調査会で、総合的な税制改革を議論していただく、あるいは将来の安定的な財源を確保するためにあるべき税制のあり方について審議をしていただくということの中に、政府税制調査会が消費税の議論もするであろうということは、財務大臣として、これは政府が税調に諮問するわけですからね、政府としてそれは議論をしていただくべきものであるというふうなお考えか、それとも消費税の議論は来年の秋以降にしてもらいたいという御意向なのかということを、はっきりとお答えいただけますか。

尾身国務大臣 政府税制調査会に対します安倍総理の諮問でございますが、税制については、我が国の二十一世紀における社会経済構造の変化に対応して、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体のあり方について検討を行い、中長期的な観点から総合的な税制改革を推進していくことが求められているとしているわけでございまして、るる述べておりますが、このような基本的な考え方のもとに、あるべき税制のあり方について審議を求めるというふうになっているわけでございまして、あらかじめ特定の税目を念頭に置いて審議を求めているわけではない、審議が求められているわけではないと考えております。

川内委員 安倍内閣というのは改革内閣だというふうにみずからおっしゃっているわけでありますが、かつて、抵抗勢力の権化であられたような竹下総理でさえ、みずからの内閣をつぶして消費税の導入をされたという歴史があるわけでございまして、そういう意味では、安定的な財源を確保していくためにはいかにすればよろしいかということについて、政府が、改革を標榜する政府が、消費税の議論をするのかしないのかはっきりとおっしゃらないというのは大変に残念なことだな、国民にとっては非常にわかりにくいことだなというふうに私は思います。

 政策のよしあしではなくて、はっきりと言う、信念を貫くというところが、私は小泉さんの政策に全然賛成ではないですよ、賛成ではないですけれども、そこに多分国民の皆さんは昨年の総選挙で圧倒的な支持をお与えになられたのではないかという点を考えますと、なぜはっきりおっしゃらないんだろう、政治は税ですからね、今必要なのはこれなんだということをなぜおっしゃらないのかなということを、あえてつけ加えさせておいていただきたいというふうに思います。

 政府方針ですからね。平成十八年度内に結論を得るということを閣議決定しているわけですから、それを今この時期に、いや、それはどうちゃらこうちゃらで来年の秋以降に本格的な議論をするんだというのは、ちょっとごまかしにすぎないというふうに私は思います。

 では、きょうはこれが主題じゃないので、次のEPAについてお伺いしますが、しかし、大臣、私は必ず大臣に言っていただきますので。しつこく、繰り返しいろいろな観点からお聞きしますので。

 日本とフィリピンのEPAということでありまして、人の移動が伴うということで、今同僚の小沢先生の方からも人の移動についてはお尋ねをさせていただいたわけでございますが、改めて私も、グローバル戦略としてのEPAの意義、そしてまた、今後どのような国々とEPAの交渉をされ、締結をされていかれるおつもりなのかという具体的なスケジュールなどについてもお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

尾身国務大臣 EPA等の二国間あるいは地域間経済連携の強化は、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完し、貿易自由化や経済活性化を迅速に推進するというような観点から、WTOと車の両輪をなすものとして、これを積極的に進めてまいりたいと考えている次第でございます。

 当面は、二〇〇四年十二月の経済連携促進関係閣僚会議で決定をいたしました今後の基本方針及び基本方針二〇〇六に基づき、アジア諸国を中心とする現下の交渉に全力を傾注いたしまして、スピード感を持って対応していくことが重要であると考えております。その際、貿易自由化に加えまして、税関手続の簡素化とか、あるいは国際的調和を含む貿易円滑化の推進も重要であると考えております。このようなことにも積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

川内委員 フィリピンとのEPAでは鳥肉のことが協定の中に入っているわけでございますが、鳥といえば、鳥インフルエンザが昨今大変に懸念をされているわけでございますけれども、鳥インフルエンザに関するフィリピンの現状、あるいはフィリピンとの間に鳥肉の防疫についてどのような家畜衛生条件を設定したのかということについて、農水省の方から御説明をいただきたいと思います。

小林政府参考人 フィリピンの鳥インフルエンザの現状についてお尋ねでございます。

 フィリピンにつきましては、二〇〇五年に一時期、高病原性鳥インフルエンザの発生を疑う事例がございまして、そのために一時輸入を停止いたしましたが、その後、確認をした結果、高病原性鳥インフルエンザではないということで、現在、輸入停止措置は解除されております。

 また、輸入の条件でございますけれども、それは、それぞれの二国間で、こういう条件であれば輸入をしてもいいという条件を決めております。その中で、当然鳥インフルエンザにかかっている、発生しているというふうな場合については、日本国に鳥肉あるいは生きた鳥を輸入することはできないというふうな措置をとることになっております。

川内委員 ありがとうございます。

 家畜衛生条件の中で、鳥インフルエンザが発生をしていないことということが記載をされているということを確認させていただきました。

 今、臨時ニュースで、アメリカの中間選挙で、上院で民主党が無所属を含めて過半数を確保することがほぼ確実になったというふうにメールが入ってまいりました。

 小泉内閣、安倍内閣というのは、ブッシュ政権、アメリカとというよりブッシュ政権と大変に仲よくされていらっしゃって、蜜月と言ってもいいと思うんですけれども、しかし、ではブッシュさんのやり方がアメリカの国民に全面的に支持をされていたのかというと、そうではないのかもしれないということがこの中間選挙で明らかになるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、今の日本の政治のあり方、例えば財務大臣は法人税の減税については大変積極的な発言をされていらっしゃいます、さらには、先ほど話題にした政府税制調査会の本間会長も、ヨーロッパの法人税の実効税率は日本よりも大変低い、日本は法人税の実効税率が高い、だから法人税の減税、実効税率の見直しというようなものが必要なんだというようなことをお話しになっていらっしゃる。しかし、法人税の実効税率というのは本則税率を足し合わせただけのことで、実際には、日本は租税特別措置でさまざまな減税措置が講じられているし、海外税額控除制度なども諸外国に比べて非常に緩いというようなこともある。

 実効税率の国際比較というのは、実は非常に難しいというふうに思うんですね。だから、大衆増税を求める一方で、さまざまな所得控除を廃止して、あるいは定率減税を廃止して、消費税も恐らく上がるでしょうという中で、法人税だけを下げますという議論では、これはとてもとても国民の皆さんは納得しないというふうに思うんですね。

 その議論が正しい議論で行われているならまだしも、法人税の実効税率の国際比較というのは非常に難しい、不正確であるという中でそれが行われるとなれば、さらに国民の皆さんの政権に対する目というのは厳しいものにならざるを得ないというふうに思うんです。

 そこで、財務省に、法人税の実効税率の国際比較というのは非常に難しいんだということをちょっと御説明いただきたいと思います。

石井政府参考人 法人所得課税の負担というものを考えますときに、減価償却制度あるいは先生御指摘ございました租税特別措置を踏まえました課税ベース、これに税率を掛け合わせるということが概念でございますが、その国際比較を行う場合に、課税ベースと税率の双方について検討することが望ましいということはそのとおりだろうとは思います。

 しかし、課税ベースについて申しますと、租税特別措置等、各国においてさまざまな制度がございます。それらをすべて織り込んだ課税ベースの定量的な比較をするというのは容易ではございません。諸外国におきましても、各種の特別の償却措置あるいは税額控除の措置、法人税の減免措置等々ございます。

 他方、国、地方の法人所得課税の税率を組み合わせました総合的な税率水準を示す実効税率、これは客観的な指標でございます。また、実効税率が一定の場合に、その水準を比較することは実質的な意味を持つわけでございます。例えば、我が国の実効税率が高い場合には、例えば我が国企業の海外子会社が利益を配当として我が国に還流させるよりも、進出先において再投資をするということを選択する誘因となり得るわけでございます。また、海外企業が投資先国を選択する場合にもそれが一つの理由になる可能性があるわけでございます。

 したがいまして、この実効税率というものを検討、比較するということの実質的な意味もあるわけでございまして、このようなことから、これまで政府税制調査会等におきましては、従来より、法人所得課税の負担についての国際比較を行う場合には実効税率を用いて議論が行われているところでございます。

 なお、租税特別措置等を含めました法人所得課税負担の国際比較といたしまして、例えば法人所得課税の対国民所得比というマクロ的な国際比較もございますけれども、これもなかなか対象となる企業の範囲等が国によって異なっておりますので一概に申せませんが、これを見ましても、我が国の法人所得課税の国民所得比は諸外国に比べて高いことは事実でございます。

川内委員 この前、内閣委員会で財務省が答弁したことと全く違うじゃないですか。法人税の真の実効税率というのはなかなか出しにくい、国際比較は難しいんだというふうに内閣委員会で答弁されていますよ。きょうになって、何が政府税調に提出した資料は正しいみたいなことを言っているんですか。そんなことを言っているから国民から、不信をあおるんですよ。きちんと答弁してください。

 法人税の実効税率の国際比較は難しい、さまざまな要因があると、ごちゃごちゃごちゃごちゃ前段の部分で言ったじゃないですか。国民にだけ負担を求めて大企業だけ減税するんですか、あなたらは。

石井政府参考人 ただいま、冒頭申し上げましたように、課税ベースに税率を掛けたものが法人所得課税の負担ということでございます。その課税ベースにつきましては、先ほど申しましたとおり、租税特別措置等いろいろな、仕組みが各国によって異なりますので、これをすべて織り込んだ課税ベースの定量的な比較、すなわち、法人所得課税の負担というものを課税ベースを織り込んだもので比較するというのはなかなか難しいということを申し上げているわけでございます。

川内委員 いや、だからそこが、法人の課税ベースの、実際の所得の、実効税率の比較というのは難しいという意味でしょう。それを素直に最初に言えばいいのに、ごちゃごちゃごちゃごちゃ言った後、いやそれは正しいんだみたいなことをおっしゃられて、おかしいですよ。法人の実効税率の国際比較は難しいんだ、単純に比較できない。だから、ヨーロッパが日本に比べて低いとか、だから日本も下げるんだみたいな、そんな議論をされて、大企業だけ減税して国民には負担を求めるというのでは、国民はついてきませんよと、政府のためを思って言っているんですよ、私は。(発言する者あり)いや、難しいんですよ、難しいんだよ。だからできないんだよ、なかなか。

 財務大臣、正確な議論をするのであれば、法人税の真の実効税率の国際比較、要するに、本則税率を足し合わせただけで単純に比較するのではなくて、真の実効税率、法人がどのくらい税金を納めなければならないのかということについて、しっかりとした国際比較を財務省として研究すべきである、検討すべきであるというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 この制度が全部一緒の制度に、同じ制度になっているわけではありませんから、そういう意味で制約があることは確かでございます。

 しかしながら、我が国法人税の実効税率あるいはほかの国の法人税の実効税率につきましては、例えば、我が国の法人税の実効税率は、東京都の場合は四〇・六九%、アメリカのカリフォルニア州の場合には四〇・七五%、ドイツの場合は三九・九%というふうに、零コンマ以下の数字まで一応国際的な比較はできる状況になっております。

 それから、国民所得の中で法人に対する租税がどのくらいあったかということにつきましても、法人所得課税の国民所得比という中で、日本は五・八%、アメリカ二・五%、イギリス三・五%というような数字がございます。もちろん、計算の仕方あるいは制度が厳密には同じではありませんから、これをもって、すべてこれで全部判断をするというわけではありませんが、総合的に見て、やはり日本の法人課税の率は世界的に見たら高い方に属するということは確かであろうと考えております。

 経済が国際化する中で、企業が国を選ぶ時代になりました。外国の企業も日本の企業も、一番いい場所で生産拠点をつくり、あるいは企業活動の拠点をつくるという時代になったわけでございまして、そういう中で、企業活動の活性化を日本の国の中でやるためには、そういう意味の国際比較もしまして、日本も少なくともイコールフッティングでの税制を提供することが、経済活動の活性化にも役に立ち、そしてまた、それがもとで雇用も増加し国民全体の所得の向上にも反映してくるわけでございまして、法人と個人を対立する関係に扱うことは、日本全体の中では適当でないと私は考えております。

 したがいまして、企業活動を活性化するということは、我が国の国民全体のためにもプラスになる、そういう意味で、法人に対しては少なくとも外国とイコールフッティングの税制を提供すべきであるというのが我々の考え方でございまして、そういうような考え方を持って経済の活性化を実現し、そして財政再建を両立させる形で実現をしていきたいと考えているわけでございます。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

川内委員 法人と個人が対立する概念だなどと私は申し上げていませんで、法人が自由な経済活動をしていただくというのは当然ですよ。もうけていただく、当然です。それで、もうけたものは還元していただく、それが政治の役目であるということを私は申し上げているわけで、大臣は今トリクルダウン・エコノミクスの理論をおっしゃいましたけれども、それはトリクルダウンにはならないということがアメリカの中間選挙などで証明されているじゃないですか。国民から否定されるんですよ、そういう考え方は。

 企業がもうかるのは国民がもうけさせているのであって、企業が企業だけでもうかるわけじゃないんです。国民がもうけさせているから企業はもうかる。そのもうかった分は、バブル期以上の利益を今出しているわけでしょう。

 では、法人税の実効税率の国際比較を今アメリカ、ドイツ、日本とされたが、ニューヨーク州は四五%ですからね、実効税率は。では、日本の実効税率の中に、課税特別措置で減税されている分は含まれていますか。全然考慮されていないでしょう。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

石井政府参考人 実効税率は、税率だけを比較したものでございますので、課税ベースについては考えておりません。租税特別措置について、一兆円ほどございますけれども、それは考慮されておりません。

川内委員 だから、真の法人の実効税率、真の実効税率、法人がどのくらい税金を納めるのかということについて、軽々にどこより高いとか低いとか言うのは、政府の責任ある立場の方々がそれを口にして、それを理由にして法人税の減税をしていくということに関しては、私は慎んでいただくべきではないかというふうに思っております。

 それから、政府のごまかしの例をもう一つ申し上げさせていただきたいと思いますが、十月六日の予算委員会で、我が党の菅直人代表代行が、年金生活者の皆さんの所得税、住民税、国民健康保険料、介護保険料の負担が大幅にふえて、年金生活者の皆さんが非常に困っておられる、非常にお怒りになっているというふうに申し上げました。それに対して安倍総理は、平均的な年金以下だけで生活をしている方々に対しては新たな負担増はないというふうに認識をしておるというふうに答弁されました。また、柳澤厚生労働大臣も補足説明で、介護保険料あるいは国保といったものは市町村が大体保険の主体でございますので、自分のところの地方税にスライドしてこれが定められているということがございます、したがいまして、ちょうど地方税の課税の最低限、これがおおむね二百十一万に下がるという事態が生じました、しかし、今総理がおっしゃった、通常のモデル年金をもらっている、あるいは年金だけで世帯が成り立っているということは大体二百万ぐらいでございますから、この中に入って、地方税の変動による影響は受けないというふうに認識をしておる、総理はこうおっしゃったということでありますというふうに答えていらっしゃいます。

 しかし、住民税の均等割の非課税限度額は……

伊藤委員長 川内委員に申し上げます。

 質疑時間が終了しておりますので、おまとめの方をお願いいたします。

川内委員 はい。最後の一問です。

 均等割の非課税限度額の、大臣、これは大事なことですから聞いてくださいよ、生活保護一級地では二百十一万だが、生活保護三級地では非課税限度額は百九十二万円になる。百九十二万円に非課税限度額が下がるので、モデル年金世帯百九十九万八千円の年金をもらっている世帯は課税をされるんです、新たな負担が生じているんです、住民税も。

 だから、安倍総理そして柳澤厚生労働大臣の、平均的なモデル年金世帯に新たな負担は生じていないという認識は間違っている、その認識は間違っているということを最後にお認めいただきたいと思います。

尾身国務大臣 今のおっしゃった例でいいますと、夫婦合計で二百八十万円の収入の方々の住民均等割が年間で千三百円であります。しかしながら、同じ二百八十万円の所得を取っている働き手、例えばサラリーマンの税金は十一万円でありまして、約八十倍の税金を同じ所得の働き手は払っているという実情にあるわけでございまして、こういう場合でもなおかつ現役世代と高齢化世代の間にはこれだけの税負担の格差があるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

川内委員 私が申し上げたのは……

伊藤委員長 質問時間が終了しておりますので、おまとめをいただきたいと思います。

川内委員 いやいや、質問に答えていないじゃないですか。では、委員長、ちゃんと答えさせてくださいよ。

伊藤委員長 申し合わせの時間が終了しておりますので、おまとめをいただきたいと思います。

 川内委員。

川内委員 新たな負担は生じていないと認識していると総理も厚生労働大臣も言っているが、その認識は間違いでしょうということを言っているんですよ。それに答えていないから。

 新たな負担が生じているんです。そのことを認めなきゃだめですよ。それを認めさせてくださいよ、委員長。

尾身国務大臣 私は、千三百円の税金を払っているということは認めております。その上で、同じ収入を得ている現役世代はその八十倍の税負担をしているということを申し上げているわけであります。

川内委員 また金曜日にやらせていただきます。

 終わります。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案されました関税暫定措置法の一部を改正する法律案、これは、日本・フィリピン間の経済連携協定を実施するためのものであるということでございます。そこで、前提となります日本とフィリピンの間の通商関係を確認するため、きょうは渡辺博道経済産業副大臣に来ていただいております。

 まず、質問に入る前に、渡辺副大臣に確かめておきたいことがあります。

 昨日、私が質疑の答弁者として経産省に副大臣の出席を要請しましたら、渡辺副大臣は政務のため財務金融委員会に出席できない、こういうふうに言われまして、私は、国会に出て答弁するより重要な政務というのは一体何なんだろうということでお聞きをしたんですが、経産省は、それは答えられません、こういう話でありました。きょうは、その政務の間を縫っておいでいただいたということでございます。

 それで、この重要な政務というのは、一体何のことなんでしょうか。

渡辺(博)副大臣 お答えいたします。

 きょうはきちんと出席しておりますので、それは、政務といっても、私は、その具体的な内容については、答えておりませんものですから、わかりません。

 きょう出席していることを御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 よくわからぬ話ですが。

 出席できないと最初言われたもので、何でだと言ったら、いや、政務があるからと。では、何の政務なのかと言ったら、わかりませんという話じゃ、きょう出席されていますから、その点はいいとして。

 それでは、どうも私は、副大臣が、報道されている会社のトラブルで忙しかったんじゃないかという危惧を持ったんですが、渡辺副大臣が関係していた渡辺交通という会社ですね、ことし七月、二十四億円の負債を抱えて民事再生法の適用を東京地裁に申請したと報道されているんですが、これは事実ですか。

渡辺(博)副大臣 事実です。

佐々木(憲)委員 副大臣、この渡辺交通のどんな役員をいつからされておられましたか。

渡辺(博)副大臣 千九百八十……。ちょっと記憶があいまいで申しわけございません、突然の御質問でございますので。それをお許しいただきたいと思うんですが、一九八五年ぐらいだと思います。そして、二〇〇一年に取締役をやめておりまして、一切その後は交通との関係がございません。

佐々木(憲)委員 社長を一九八五年からなさって、二〇〇一年までされている。その後、役員はされていませんか。

渡辺(博)副大臣 私は、役員は二〇〇一年でやめております。

佐々木(憲)委員 報道によりますと、この渡辺交通は、一九九〇年から九五年度に、渡辺副大臣から計六千三百五十万円を借り入れたと言われております。なぜ、その会社にそういう貸し付けをされたんですか。貸し付けの目的は何ですか。

渡辺(博)副大臣 きょうは、そんなお話をするために私は来たわけじゃないんです。

 これはどういうことなんでしょうか。私は、経済産業副大臣としてきょうは答弁に来たわけでありまして、個人的な問題になぜ私はこのような形で答えなくちゃいけないんでしょうか。少なくともこれは民事再生の事案でありまして、これは今審理しているところですよ、裁判所で。それをなぜここで答えなければいけないんですか。

佐々木(憲)委員 それは、報道でいろいろ疑惑が指摘されているからであります。副大臣として適格性があるのかどうか、そこを確かめているわけなんです。

 それで、貸し付けをされたということですが、貸し付けされたんですか。そのことを聞いているんです。

渡辺(博)副大臣 この問題についてもお答えできません。

佐々木(憲)委員 私が聞いているのは、この渡辺交通に副大臣自身が五年間で六千万円以上も貸したということなんですね。なぜそういう貸し付けをしなければならないのかということを聞いているわけです。それは当然御承知のことだと思うんですが。

渡辺(博)副大臣 ぜひとも御理解をいただきたいんですが、現在、民事再生の最中であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。

 今、裁判所の中でその実態を審理している段階なんです。私が今申し上げることが裁判にも、裁判というか、いわゆる審理の段階でも影響するということを御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 国会は裁判所ではございませんで、政治的、道義的な問題を議論するのは当たり前のことであります。

 その報道によると、貸付金を二〇〇四年度中に全額返してもらったと言われているわけです。つまり、過去に貸したお金が一昨年に全額戻ってきたと。この渡辺交通というのは、四年間連続赤字だった、だから今民事再生法を申請しているということなんですが。

 この渡辺交通と同じ住所に渡辺博道事務所というのがあるんじゃありませんか。建物は同じですよね。

渡辺(博)副大臣 はい、そのとおりです。

佐々木(憲)委員 私が質問したことに答えていただきたいんですが、貸したお金を返してもらった、こういう関係はありましたね。

渡辺(博)副大臣 私が何度も申し上げているとおり、現在、民事再生の手続の最中です。ここで答えた結果がいろいろな形で影響することはもう御理解いただけると思うんですよ。どうぞよろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 大体、私は、この民事再生法の問題でも極めて重大な問題があるのではないか。つまり、赤字の会社から以前に貸していたお金を返してもらったと。結構大きなお金ですよね。それから、二〇〇四年四月からことし七月の間に、渡辺副大臣の実父への死亡退職金、妻や長男、長女への役員報酬、妻が社長を務める別の親族会社への地代など、約一億二千三百九十万円が支出されている、これも事実ですね。

渡辺(博)副大臣 この問題も、同じくお答えできません。

竹本委員長代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤委員長 速記を起こしてください。

 佐々木君。

佐々木(憲)委員 先ほど、今民事再生法の申請をしている、それに影響するから答えたくないとおっしゃいました。どういうふうに影響するんですか。つまり、渡辺副大臣が赤字経営と知りつつここから返却を受けた。そうしますと、民事再生法を申請する以前に自分の財産だけは確保した、こう見られても仕方がないわけです。それは民事再生法二百五十五条に抵触する可能性がある。そのことを認めた形になっているんですよ、これは事実上。つまり、返却を受けたということ自体が今政治家として、副大臣としての適格性が問われているわけです。

 それからもう一つは、支部に対しても、自民党の第六支部、千葉県第六支部ですね、そこに献金もあったと。これは何か、報道によると返却したというふうに言われていますけれども、それは別として、先ほど私が指摘したこの点について、事実関係だけを私は聞いているわけで、いい悪いということではなくて、そのことを確認しているわけです。

 しかも、これは昨日、政務があるからと言われたので、何だろうなと思って考えてみるとそういう報道があったということなんで、この法案審議の前にちょっと確認をしておきたいということで聞いているだけなんです。

渡辺(博)副大臣 まず一点、政務がある云々ということは私自身は言っておりませんし、そしてまた、きょうは大事な委員会でありますのでそれは出席させていただきますということで、まず出席させていただきました。

 そして、第二点でありますが、今の質問については一切、先生からの事前の通告がありませんでした。(佐々木(憲)委員「義務はないんだよ、通告の」と呼ぶ)それはありませんでした。しかも、現在、民事再生の審理をしている最中であるということで、私の言動がやはり裁判とかそういったところに影響していくんではないかというふうに危惧されますので、お答えできませんというふうに言っておるわけでございます。

佐々木(憲)委員 通告がないと言いますが、通告義務はありません、別にそういうことは。自分自身の問題ですからそれはわかるはずなんで、それは答えて当然なんじゃありませんか。

渡辺(博)副大臣 大変申しわけございませんけれども、現在、民事再生の手続中であるということを御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 だめだよ、そんなの。それはだめだよ。事実かどうかを確認しているだけなんだから。何で影響するんだ、それが。

伊藤委員長 佐々木君、質問を続けてください。

佐々木(憲)委員 答えをちゃんと出してもらわないと困りますよ。答弁してください。

伊藤委員長 佐々木君、質問を続けてください。

 佐々木君。――速記をとめてください。

    〔速記中止〕

伊藤委員長 速記を起こしてください。

 佐々木君。

佐々木(憲)委員 今係争中ということで答えられないと。これは、みずからの立場が不利になるから答えられないということだろうと思うんですね、有利なら答えるのは当たり前だとだれだって思うわけですから。いずれにしましても、係争中だから答えられないということで答えないということですが、これは引き続き別の機会でも追及をさせていただきます。

 ただ、問題は、通告がないから答えられないというのは理由になりませんよ。通告というのは義務はありませんからね。何も、通告がないから答えられないというのは撤回していただけますか。

渡辺(博)副大臣 通告の有無にかかわらず答弁する義務はあると思いますので、撤回させていただきます。

佐々木(憲)委員 では、本論に入ります。ちょっと遅くなりましたが、済みません。

 まず、日本からフィリピンへの輸出の構成、それから輸入の構成、これは、輸出の場合はほとんどが工業製品だと思いますし、輸入の場合は、農産物は一四%、それ以外はほとんどが工業製品だというふうに思います。

 ここで、これまで関税の適用、輸出の場合、現状何%が関税の適用になっているのか、輸入の場合幾らか、それが、この新しく提案された関税の改正案が適用されたら何%が無税になるのか、そこの数字をお聞かせいただきたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、数字の話でございますが、私どもの貿易統計によりますと、フィリピンから日本への輸入額のうち八五%が鉱工業品でございます。残りの一五%が農水産品ということになってございます。日本からフィリピンということでございますが、これは九九・七が鉱工業品でございまして、残りの約〇・三が農林水産品ということになってございます。とりあえず……(佐々木(憲)委員「関税の適用は」と呼ぶ)関税の適用でございますが、無税という議論で言いますと、今は大体トータルで六〇ぐらいでございますが、これが九二と九七といいますか、そういう形になるということでございます。

佐々木(憲)委員 ほとんどが工業製品で、現在無税になっている六〇%程度のものが、輸出のうち九七%、輸入の九二%が無税になる、こういうことが今度の法案の内容だということですね。

 そこで、渡辺副大臣にも聞きますが、日本の製造業、メーカーにとっては当然利益になる、プラスになる、今まで課されていた関税がどんどんなくなっていくわけですから。そのことは事実ですね。

渡辺(博)副大臣 お答えいたします。

 今回のフィリピンとのEPAにつきましては、自動車部品や電子機器を初めとする、ほぼすべての鉱工業製品の関税が撤廃されることになります。あわせて、投資、サービスについてもルールの透明性や安定性の向上などが実現されることになります。

 これによって、日本国内でこれらの鉱工業製品を製造する企業においては、輸出に係る負担が大幅に軽減されることになります。また、我が国企業がフィリピンに進出しやすくなることも当然でありますし、自動車や電気製品などを現地で生産する企業につきましても、我が国からの部品調達のコストが下がるといったメリットがあります。

 このように、日本とフィリピンのEPAの締結によりまして、両国は、我が国の製造企業を含めてより高度な生産ネットワークを構築することができまして、両国経済全体のさらなる発展につながるものと考えております。

佐々木(憲)委員 大手メーカーも含めて、当然利益が出てくる、プラスになる、こういうことですね。

 では、日本の農業、農家にとっては一体どういう状況になるのかというのが問題でありまして、フィリピンからの輸入の一五%が農林水産品、その関税は一体どうなるのか。それから、日本の農家にとってはプラスになるのかどうなのか、その点、山本農水副大臣にお聞きしたいと思います。

山本(拓)副大臣 御案内のとおり、日本は七兆円を超える農水産物を毎年輸入しているところでございまして、それに対して、輸出しているのが三千三百億でございます。明らかに農水産分野におきましては、日本は世界で一番のグローバル化をしている国でございます。

 我々としては、全体の交渉は今やっておりますけれども、精いっぱい、国民の胃袋というか、守る役所として、また、そういう生産者に対して、全体の流れの中でしっかりと守っていけるような施策を今準備いたしているところでございますので、よろしく御理解いただきますようにお願いいたします。

佐々木(憲)委員 農産物が輸入されて、その影響が出ると、これはマイナスということになりますよね。

山本(拓)副大臣 単純にマイナスの面もありますが、ただ、今我々として考えていますのは、輸入するばかりではなしに、輸出という点で、日本のみならず世界じゅうが格差社会になっておりまして、世界じゅうで今、六十億の人口のうち約一割、六億近い人口が日本と同じような所得を有する市場がはっきりしてきているところでありまして、我々としては、それに対してしっかりと、国内生産を守るために、生産者を守るために、そういう人たちのニーズにこたえたものを逆に輸出することによって生産基盤を整備していきたいという考え方も今構築中でございます。

佐々木(憲)委員 輸出の面を聞いているんじゃなくて、輸入における国内の影響を聞いているわけです。それは、新しく関税が無税になっている部分が枠が広がって入ってくるわけですから、関連農家はマイナスの影響を受けるのはこれは当然のことであります。だから、先ほど言われたように、何とかこれを守りたいということをおっしゃったわけでしょう。

 それでは、具体的に聞きたいんですが、例えば沖縄のパイナップル、今回大変大きな影響があるというふうにお聞きしております。現状は一体どういう栽培面積、収穫量になっているのか。例えば平成二年以降どういう推移か、簡単に示していただきたいと思います。

佐久間政府参考人 沖縄県のパイナップルの生産の状況でございますが、平成の初めのころで、元年に三万六千トン、二年で三万一千九百トンということでございましたが、平成十年にかけまして減少が続き、背景としては農家の高齢化等によるものでございます。その後につきましては一万トンをやや上回る水準で推移しておりまして、直近の平成十七年におきましては一万四千トンということになってございます。

佐々木(憲)委員 大変大きな低迷状況が生まれておりまして、この数年、非常に低いところで低迷しているわけですね。

 沖縄振興策の中でパイナップルに対しても一定の支援策があると聞いておりますが、そういう中であっても、今言われたように経営は非常に困難でありまして、ぎりぎりのところでやっている。その上に新たな関税措置が実施されますと非常に大きな打撃になる。現地の農家の方々も、今後さらに熱帯果実が自由化されて輸入がふえれば農業を続けるのが厳しくなります、こういう話があります。今まででさえ農業をやっていく環境が厳しいところに、輸入がさらにふえるとますますやりにくくなる、こういう声がたくさん聞かれるわけです。

 そこで、今回のEPAによって被害を受ける農家に対して何らかの新しい措置が、支援措置があるのかどうか、それを確認したいと思います。

佐久間政府参考人 今回、パイナップルに関します合意内容につきましては、パイナップルの缶詰につきましては、現行の関税割り当て制度及び関税率を維持して、再協議といたしましたほか、生鮮につきましては、九百グラム未満の重量の小さいパイナップルに限りまして、一年目千トン、五年目で一千八百トンの無税枠を設定したということでございます。

 このように、缶詰用につきましては何も変更がございませんし、また生鮮の小さいパイナップルにつきましては、その需要先が、輸入需要が限定されるということで、沖縄のパイナップルの生産への影響につきましてはほとんどないもの、このように考えてございます。

 今後とも引き続き、生産コストの低減でございますとか品質の向上等、生産体制の強化を図るための各般の施策を推進してまいりたい、このように考えております。

佐々木(憲)委員 影響はないと言いますけれども、現実には大変な被害が及ぶという指摘を現地の農家自身がしておりますし、現に、例えばメキシコとの協定の間でいろいろな農産物が日本に入って、それが非常に急増している、たった一年ですけれども。そういう中で、農家が経営難に陥るという事態もふえているわけです。

 今何かほとんど影響がないかのようなことを言う。私が聞いたのは、影響が想定されるわけですから、当然新たな支援措置というのは必要だと思うんですが、そういう措置はあるのかないのかと聞いたんですよ。あるのかないのかどっちなんですか。

佐久間政府参考人 これまでも続けてまいった施策を推進してまいりたいということで、生産体制の強化を図ってまいりたいということでございますので、従来と同様でございます。

佐々木(憲)委員 結局、今回のこういう協定に伴って被害を受けると予想される分野についての新しい措置というのは何もないんですよ。

 以前は、例えば牛肉・オレンジの輸入自由化のときには、十二品目について新しい支援措置というのが当時決められました。今回は、新しい影響があるにもかかわらず、それに対する措置は一切ない、いわばつぶれても結構だというような態度ですね。

 私は、こういうやり方はおかしいと思うんですよ。一方では、メーカー側、産業側は、先ほどお認めになったように、大変大きな利益を得る可能性が出てきている。ところが、その犠牲で農家の方は大変な被害が予想されるにもかかわらず、とりわけパイナップルについては、沖縄の農民が米軍の支配のもとで細々と何とかこれはやってきた。それがもう立ち行かなくなるんじゃないかという、そういうときに何の新しい支援もない。これでは全く一方的なものであるというふうに思います。

 そういう意味で、私は、今回のこの協定に基づく関税の新しい法案というものは国内被害を救済する措置が一切ない、被害だけが広がるということが明らかでありますので、この法案については反対であるという態度を最後に表明して、質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十八分散会


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